嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 墓標11基

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十戒
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150625025/
■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 九死に一生
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149764666/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁八日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148998078/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁七日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148113935/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫六匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147003471/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145036205/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143547426/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142092213/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/

2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第12章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1145448125/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
2名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 10:39:43 ID:JS5Le9Su
>このスレのヒロイン達に送る、修羅場を勝ち抜くためのアドバイス。


・連載が始まったとき、真っ先に登場してはいけません(先に登場するヒロインがいつも苦戦します)
・幼馴染・姉・妹の特別属性は、むしろペナルティだと認識しなさい(属性持ちは極めて勝率が低いです)
・自分の名前に草花の名がついているなら(例:椿、梓、胡桃、楓)、修羅場は運命だと思いなさい。
・三回以上登場した脇役女性キャラは、劇中又は続編において、参戦してくる可能性が高いと思いなさい。
・主人公が童貞なら、先にセックスできるかが天王山です。強引にでも奪いなさい。
・いい人ぶった主人公でも、なんだかんだいって抱かせてくれた女に靡く傾向にあります。回数抱かせなさい。
・万が一に備えて、毎日基礎体温を測りなさい。妊娠は、どんなSSでも最強の切り札です。
・貴女が世話焼き系幼馴染なら、登下校時は要チェックです。決して先に帰ったりしてはいけません。
・総合して、幼馴染は最も不利な立場です。即効で主人公に襲いかかる以外、勝ち抜く術は少ないでしょう。
・貴女がファンタジー系ヒロインなら、自分の強さと男を寝取られる危険性は、正比例すると知りなさい。
・貴女が妹なら、自傷気味になった方が、兄の保護欲を刺激できます。盲目になるなんてどうですか?
・貴女がキモ姉なら、狂う以外に道はありません。毎日の筋トレは忘れないように心がけてください。
3名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 10:47:47 ID:JS5Le9Su
938 名前:\         . '´/ ,、ヽ キャハハハ  ../無したちの午後 [s
女の同僚か \   ___.i (ノノ"))i     ./人きりで生きてきた。
「貴方に兄の何\...{l,、,、,、,、l|l=i l| "ヮノlOi!  /
まぁ、その妹にハ.\;     リ⊂)允iソ  /全にお母さん気取り。だが
             \*  ..(( く/_lj〉)./弟が彼女を連れて来る。表情
939 名前: 名無したち...\∧∧∧∧/・ちゃぶ台の下――握った拳に
貴方が妹さんを引き受...< .の 修 .>・「明日の弁当、彼女が作った
943 名前: 名無したちの< .    .>・「もう○○ちゃんにお姉ちゃんは
いや、>>938が同僚の旦< 予 羅 .>・最近の日記は、「あの泥棒猫」
──────────<   .  >─────────────
|ヽ| | l、 レf爪| 、   | < 感 .場 .>  | | |   ::| !|: l l:..  :|:l:.  !:|::   |
ヽ_ゝ|、 Fこ|_-|、 !、  ...|< .!!!!   ..>‐:十!1「: :l:::「|`|十l―l‐!:-/-!:: :  :.l
/r->ヽy‐ィ;;;;::Tヽ \  .|/∨∨∨∨\ 示:.l:|::::::!l::l |::l示tッ〒ト/:.l/::::::: :.l
| |/个iヽ┴―┴   .../したちの午後..\l:.:l|、:::|:|:!:j/.:.`ニニ´:/:. /|::::::: .::.!
ヽ/汚| !       /に対する嫉妬に狂.\  ヽ|i    :.:.:.:.:.:.:. /ノ!:::::::.:::l
ハ.||、 i      /名無したちの午後 投稿.\ :l        /'!:::!:::::i|::::|
|  || |i ヽ   /そこにヒロインが壊れるあまり\       ..:/:::|:::|:::::l:l:::.!
|  || ! ヘ 、.../被害を出し始めて、自分に責任が...\.:.:.:/:.:.`ヽ!:::::!:!::.|


皆仲良く。修羅場は妄想の中だけにしましょう。
4名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 10:56:34 ID:i0+hf/gh
>>2
だから何でそんな職人が書きにくくなるようなもんをテンプレに入れるかね
一発ネタとしては面白いけどそんなのテンプレにしたら書きにくくなるだろうが
職人減ったらどうするつもりだよ…
5名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 14:18:02 ID:7+fx7oAS
>>4
まあ、そうだけど過ぎたことをいってもしょうがないでしょ。
そういう、激しく反応する態度は荒れの元。
マターリ仲良く修羅場はゲームの中でだよ。
とりあえず>>1乙です。
6名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 14:29:38 ID:MD4cE0MN
.:.:.:.: |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
.:.:.:.: |:/: : ; :: /V: : ヽ: ヽ: : : : : : :\\
.:.:.:.: | : : : : :i:|'~'`'|:ト;: : ::\ : :i: : :i : i:: ヽ
.:.:.:.: |: : : : i:.|.   |i |i:ヽ,: : :i: : :i: : :i: : i :ヽ
.:.:.:.: |:: i: : i:|    |i, .|ト :ヽ :ト,: ::i:: : i: : i:: i|
.:.:.:.: | :i:: ハ:|   _,,.ii, ヾ\;:::|ヾ i: : :i: : ト;::i|
.:.:.:.: | i :|_,,irーニ´  \, \ミ;,;| |:.i:: : i: ::|.|:.|
.:.:.:.: | i´|,r{チテト`.    ヽ、,ェュト、i:i: : i:: :| |:.|  >>1さん乙です
.:.:.:.: | トイ{::}:::ト;}      ケチ;}ト|リ : :i:: :| |:/ 
.:.:.:.: | :| i`ャ;;;:ソ,      {;;;;ソ`i/::: ノ::/ '   
.:.:.:.: | iヽ::: ̄        ~^'ノ::イノイ
.:.:.:.: | :ト、      .,_, '  :::: /ノ'´~:|
.:.:.:.: |i :i i .、        ィ':i : /:: : |
.:.:.:.: | i i:|  ` 、 _ , r i´::i i:: / : : |
.:.:.:.: |ヾ:.:|     |、: : : :i i:: i:/:: : : ト
.:.:.:.: | :i`;|     ト|`-、:.i i レ: : : : :||i
.:.:.:.: ト;;:i.i:|     `i  ~`/: : : : :イi |i
.:.:.:.: | ` i i:| ̄`' '´~|  i; |: : : : /|;| |i
7名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 14:30:00 ID:i0+hf/gh
と、言い忘れてたな
>>1
8名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 19:19:20 ID:yPqn4oy4
>>1
今度は簡単に埋まらなきゃいいが
9血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:20:21 ID:X1T2yC0O
投下します
10血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:21:01 ID:X1T2yC0O

 突然の辞令に、僕は当然抗議した。
 しかし、一介の監視員に発言力など欠片も無く。
 結局、白に打ち明けることもないまま、僕は血塗れ竜の付き人ではなくなった。
 
 
「ユウキさーん。ユウキさんってばー」
「……何ですか?」
「そろそろ機嫌直してよー。
 もうどうしようもないんだから、新しい仕事を頑張らないと職務怠慢だよー」
「……ちゃんと仕事はしているつもりですが」
「そんなことないー。はい、これ」
 
 テーブルの向かいに座るアトリは。
 何故かいきなり、スプーンを僕に差し出してきた。
 
「食べさせてー」
「お断りします」
 
 ――あの試合の日以来、アトリはずっとこんな感じだ。
 
 とにかく僕と四六時中一緒にいようとして、何かとベタベタ甘えてくる。
 正直、アトリのような美少女に、こう際限なく甘えられるのは悪い気分ではないのだが、
 
 怪物姉妹のことを思い出したり、
 何より、白のことが気がかりだったりして、
 素直に、アトリの好意を受け入れられない。
 
 怪物姉妹の試合の日、僕が白を送り出してから。
 僕は、一度も白の顔を見ていない。
 白の付き人になってから、こんなに長い間離れていたことはなかったので、
 何をしても身が入らなく、全てが中途半端になってしまう。
 アトリの言うことにも一理ある。
 僕の仕事は変わったのだ。
 覆せるはずがないのだから、受け入れて気持ちを入れ替えるのが筋である。
 
 でも。
 ――白のことを、忘れられない。
 
 王者のくせに何も欲しがらず。
 僕の側で微笑んでいた少女のことを。

11血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:21:33 ID:X1T2yC0O

 つまるところ。
 僕は――白の付き人だったことに、未練があるのだ。
 白は僕と一緒にいて、とても幸せそうにしていたけれど。
 きっと、こちらも彼女と同じくらい、満たされていたのだろう。
 
 
「もう、ユウキさんってば。
 食べさせてくれるくらい、いいじゃんかよー。
 どーせ、血塗れ竜にもやってたんでしょ?」
「……それは、そうですけど」
 
 アレは、ある種慣れきっていた白だったからできたことだ。
 知り合って数ヶ月しか経っていないアトリに対して、そうそうできることではない。
 ――と。
 
「……ふうん。ホントに、やってたんだ」
 
 何故か、室温が、下がった気がした。
 今日は曇りだから、冷たい風でも吹いてるのだろうか。
 
「――ユウキさん」
「うわっ!?」
 ふと目を逸らした隙に、アトリが僕の隣に来ていた。
 その手には、もはや何皿目かは忘れてしまった、アトリの夕食が皿ごと持たれていた。
「はい」
 と、皿を差し出される。
「……? もう要らないってことですか?」
 大食のアトリにしては珍しいな、と皿を受け取ろうとしたが、違う違うと首を振られた。
「あのね、」
 
「く、ち、う、つ、し、で食べさせて」
 
 微妙に頬を染めながら、そんなことをのたまった。
 恥ずかしがるくらいならそんなこと言うな、と思ったが、
 それ以上に、唐突なお願いの衝撃に僕の頭の中は真っ白で、あんぐりと口を開いて絶句する。

12血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:22:07 ID:X1T2yC0O

 と、そこへ。
 
「――とりゃーっ!」
「わぶっ!?」
 
 開いた口に料理を突っ込まれた。
 吹き出すわけにもいかず、数秒間口をもごもごさせて、どうしようか迷っていたら。
 
 アトリが、唇を合わせてきた。
 
 舌が口内に侵入してきて、そのまま食料を奪われていく。
 口の中が苦しいので、食料を押し出そうとすると、時折アトリの舌と僕の舌が触れ合ってしまう。
 そのたび、何故かアトリの身体はぴくりと震え、彼女の口の動きは激しくなった。
 やがて、口の中の食料は全て奪われて、アトリの唇が離される。
 くたり、とその場に脱力してしまった。
 いきなり何をするんだ、とアトリの方を見て、
 
 
「――ユウキさんは、私の付き人なんだから。
 血塗れ竜より私のことを可愛がってくれなきゃ、駄目なの」
 
 
 形容しがたい異国の瞳に、まっすぐ見つめ返された。
 
 
 その瞳の光は、何故か白を思い出させて。
 白は今頃どうしてるのか、とても気になってしまった。
 試合からそれなりに日が経っているが、怪我はちゃんと癒えたのだろうか。
 人づてに聞いた話だが、怪物姉との試合で、白は重傷を負ったらしい。
 とても――心配だった。
 
 
 
 
 
 
 
13血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:22:45 ID:X1T2yC0O
 
 
 かり……かり……。
 
 爪が、絨毯の上を幾度もなぞる。
 
 かり……かり……。
 
 五指の動きはバラバラで、見る者が見れば、それは意図的にそうしていると判断できる。
 外は曇天。薄暗い部屋の中で、絨毯を引っ掻く音だけが響いていた。
 
 かり……かり……かり……がり!
 
 静かだった引っ掻き音が、一瞬強く響き渡った。
 
「……失敗。薬指は、もう少し」
 
 呟きが漏れ、再び引っ掻き音が響き始めた。
 部屋の空気は淀んでいて、あちこちから異臭が漂っている。
 それもそのはず。
 この部屋に、綺麗な場所など、欠片もない。
 
 家具は軒並み破壊されて。
 毛布は無惨にも引き千切られ。
 壁紙には投げつけられた残飯がへばりつき。
 絨毯のあちこちでは、嘔吐された吐瀉物がそのままである。
 
 そんな、浮浪者ですら住みたいとは思えない、元は豪奢だった部屋の中央で。
 
 
 ――血塗れ竜が、絨毯を引っ掻いていた。
 
 
 服はこぼしたソースや吐瀉物の欠片でドロドロに汚れている。
 輝くようだった銀髪も、十数日も洗っていないため、皮脂でくすんだ鈍色にになっていた。
 右肩には包帯がきつく巻かれていて、そこに滲んだ血が黒く固まっていた。
 瞳は虚ろで、ずっと中空を眺めている。
 口は半開きで、ひたすら無言だったかと思うと、唐突に、ある単語を漏らすこともあった。
 
 
「ユウキ」
 
 
 彼女の口から出てくる単語は、これだけ。
 怪物姉に勝利してから今までずっと。
 血塗れ竜は、絶望に身を浸していた。

14血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:23:17 ID:X1T2yC0O

 どうして、ユウキはいなくなってしまったのだろうか。
 自分はちゃんと頑張ったのに。
 頑張って、相手を殺したのに。
 殺していれば、ユウキが側にいてくれるはずなのに。
 
 右腕を無くしたのがいけないのだろうか。
 もう戦えないと思われたのだろうか。
 そんなことないのに。
 右腕なんか無くたって、誰が相手でも殺してみせる。
 実際、左腕も、ほとんど以前の右腕と同じくらい動かせるようになった。
 右腕が無くなったことにも慣れ、五体満足だった頃と変わらない程度に、動けるようになった。
 
 もう、怪我は完治した。
 もう、いつでも戦える。
 もう、誰だって殺せる。
 
 もう、我慢できない――
 
 
「……ユウキ……ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ、
 ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ、ユウキ――」
 壊れたオルゴールのように。
 掠れた声を、吐き続ける。
 
 側にいて欲しかった。
 頭を撫でて欲しかった。
 優しく抱きしめて欲しかった。
 
 ついこの間まで、全部あったはずなのに。
 今はもう、暖かさの欠片もない――

「……う、う、ううう……うあああああああああああああああっっっ!!!」
 
 泣くのは一体何度目だろう。
 涙をボロボロとこぼしながら。
 ――誰が、ユウキを奪ったのか。
 そいつを、殺してやりたかった。

15血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:24:06 ID:X1T2yC0O

 ――こんこん、と。
 ノックの音が、響いた。
 
「……ユウキッ!?」
 
 大泣きしていた血塗れ竜は、一瞬で涙を引っ込めて、扉の方へ凄い勢いで振り向いた。
 やっぱり、ユウキは自分を見捨ててなんかいなかった!
 ちょっと用事があって来られなくなってただけなんだ。
 だから、ほら、すぐに扉を開いて、私のもとに来てくれる――
 
 こう、希望を抱いたのも何度目だろうか。
 
 それが両手両足でも数え切れないくらい裏切られたのにもかかわらず。
 血塗れ竜は、涙でぐしゃぐしゃに汚れた顔で、扉が開くのを、待っていた。
 
 しかし――
 
「失礼します。
 ――相変わらずですね、血塗れ竜」
 
 入ってきたのは、ユウキでは、なかった。
「…………」
 途端に無表情になり、血塗れ竜はそっぽを向く。
「そんなに邪険にしないでください。
 ……食事もろくに摂ってないと聞きました。
 最低限、食べるものを食べないと、治るものも治りません」
「…………」
「無視ですか。それは構いませんが、せめて身の回りは清潔にしなさい。
 疫病の温床にもなりますし――何より、汚いとユウキに嫌われますよ?」
「うるさい。消えろ」
 
 はあ、と溜息を吐く気配。
 そして。
 
「あーもう! いいからこっち向けチビガキ!
 そんなにグダグダしてっから、ユウキにも見捨てられるんだよ!」
「見捨てられてなんかない!」
「ふん、やっとこっちを向いたな」
 
 血塗れ竜が振り返って睨んだ先。
 彼女が唯一苦手な人物――“銀の甲冑”アマツ・コミナトが、
 兜を外して、不敵な笑みを浮かべていた。

16血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:25:16 ID:X1T2yC0O
>>1
 
 
血塗れ竜を同人誌にしたらどうなるかなあ、とか妄想してみたのですが、
 
1:絵師へ表紙挿絵を依頼する際の相場を聞いて絶望
2:印刷費を聞いて愕然
3:外伝追加したらページ数やばくね?
4:というか2chの規約的に無理ですね
5:諦めました。そんなことより、もっとホワイトする!
6:白かわいいよ白   ←今ここ
17名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:27:43 ID:sWlrCn9j
右腕が無い白テラカワイソス
18名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:31:24 ID:uHMeq1VT
相場とかいくらぐらいですか?

印刷費も驚く程高いんですかねw
19名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:34:41 ID:57sqaweh
と‐しゃ【吐瀉】
[名](スル)吐くことと腹をくだすこと。嘔吐(おうと)と下痢。「激しく―する」「―物」

白のうnk……
(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
20名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:35:33 ID:AURMK9u0
血塗れ竜を…ほかの人の目になんて出さない…
私が見てれば…それでいいの…
21 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 22:43:42 ID:X1T2yC0O
誤表現発見orz
>>13中央
「嘔吐された吐瀉物」→「吐瀉物」
 
頭痛が痛いと同じレベルですね……失礼しましたorz
22名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:48:30 ID:BHRqL9o5
同人誌ならページ数と発行部数にもよりますが。
比較的安いと言われてる印刷所↓
https://www.eikou.com/syouhin/sinkan.htm
23名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:48:31 ID:yPqn4oy4
食人姫アトリ:激しくアトリ。一族の英雄。
食仙姫アトリ:霞を食べる術を身に付けたアトリ。老獪。
食尽姫アトリ:大食なだけのアトリ。
食虎姫アトリ:虎が好物のアトリ。強そう。でもワシントン条約違反。
食鯨姫アトリ:グリーンピースに目の敵にされているアトリ。
食鯛姫アトリ:ブルジョワそうに見えて、主食は鯛焼きの貧困アトリ。
食燕姫アトリ:空に進出した種。機動力は素晴らしいが骨が脆い。
食馬姫アトリ:競馬で稼いで食っているアトリ。
食貝姫アトリ:海の家のアトリ。
食餡姫アトリ:甘党アトリ。
食苺姫アトリ:イチゴ狩りの天敵アトリ。
食熊姫アトリ:マタギアトリ。
食牛姫アトリ:アメリカを憎む、吉野家のアトリ。
食稲姫アトリ:兼業農家のアトリ。
食拳姫アトリ:はじめのアトリ。
食神姫アトリ:海原アトリ。
食鮪姫アトリ:水中に適応した人魚アトリ。
食鍋姫アトリ:鍋奉行のアトリ。
食鶏姫アトリ:鳥インフルエンザに悩ませられるアトリ。
食狼姫アトリ:一匹狼のふりをした寂しがりやアトリ。
食蝮姫アトリ:絶倫アトリ。ユウキ干からびそう。
食無姫アトリ:ダイエット中のアトリ。

某コピペのようにうまくはいかないが、
何が言いたいかと言うと神々GJ。
24名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:51:54 ID:uHMeq1VT
>>22
同人誌を刷るのって死ぬほど高いんだな・・
儲けが期待できない分、大損は確実だね・・
25名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:53:56 ID:sWlrCn9j
同人誌って子のところに浮気するつもりね!!
26名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:58:25 ID:qqRaOZFd
>食鍋姫アトリ:鍋奉行のアトリ。

想像したら、めちゃくちゃ可愛いんですが
27 ◆gPbPvQ478E :2006/06/28(水) 23:04:57 ID:X1T2yC0O
>食鍋姫アトリ:鍋奉行のアトリ。
「あ、ユウキさん、こっち食べ頃ー」
「それはまだ煮えてない! 食べたら喰うわよ!」
「あーもう、昆布汁追加して! ちょ、入れすぎー!?」

こうですかわかりません
28名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 23:10:16 ID:sWlrCn9j
>>27
口移しで食べさせてくれたら最高ですな
29名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 23:15:16 ID:BHRqL9o5
>>24
値段表の何処を見てそう思ってるのかは判らんが、極端に本の
値段を安く設定しない限り150部以上捌けるようになったら多少は
儲けが出るようになるよ。

創作の文章系は一見さんを捕まえるのが大変だから自分のサイト
持って短編をコンスタントに発表→ある程度集客が見込めるように
なったら長篇を同人誌で、ってやり方がお薦め。
30名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 23:23:44 ID:2+sgy/Cu
>>26
あれ、俺がいる。
31『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/28(水) 23:49:02 ID:utZSUUoa
「ハルー!昨日ぶりー!会えなくて寂しかった?寂しかったよね?私は寂しかったよ?」
やはり外人のノリというのはこうなのだろうか。美人でノリもいい……正直、自分にとっては不分相応だと思う。記憶喪失以前の俺は何を考えてたんだ………
「ああ……昨日ぶり。元気してたか?」
「うーん…やっぱりハルがいないから寂しかったよー。…ということで、今日泊まりに行ってもいい?新しい部屋に移ったんでしょ?」
「ん、ああ…いい、ぜ…」
前々から何回は泊まってはいたが…今は、あの悪霊が住み着いていやがった。いくらセレナには見えないからといっても、俺としては嫌な感じだ。
それに、あのアホ霊のことだから空気も読まずに話しかけてくるだろう。
「いや、やっぱ無理だ。ちょっと片付けしなくちゃいけねぇからしばらくは入れな…」
「だったら尚更ヨ。私も片付け手伝ってあげるわ。」
「えーっと、いや、ほら。力仕事が多いから、女に手伝わせるのも情けねぇし。」
「だったら私ができる事をやるわよ。掃除ぐらいできるでしょ?埃もたまるだろうし。」
32『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/28(水) 23:49:57 ID:utZSUUoa
「いやぁ…えっとなぁ…」
まずい。こうなったセレナはなかなか引き下がろうとしない。決定的に来られない理由がない限り、どうしても来るだろう。
「それとも……」
「え?」
「誰か、私以外の女でも呼んでるの?」
ギクッ
半分正解なのだが、半分はずれ。まさか女の幽霊が住み着いてるだなんて信じちゃくれないだろう。なんとか冷静を装い、返事をする。
「……わかったよ。泊まれよ。」
「うれしい!だから好き!ハルは。あ、でも浮気チェックはするよ?」
お好きにどうぞと手をヒラヒラさせる。別に新しい部屋だし、なにもやましい事はないんだ。幽霊ごときに浮気とはならないだろ。
と、すっと入口に人が入るのが見えた。セレナは……いないか。仕方ない。あまり営業スマイルは得意じゃないんだがな。
「いらっしゃいませぇ……」
「あ…晴也さん………」
「…………」
……なんで…こいつが…葵がいるんだよ!!
「てめぇっ、何憑いて来てんだよ!部屋で待ってろつっただろ!!俺はお前に纏わりつかれる筋合いはねぇんだっての!!」
「ひぁっ…ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいぃ!!」
33『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/28(水) 23:50:55 ID:utZSUUoa
そういって土下座をする葵。必死(死んでるが)で謝る。
「えっと…その……別について来ってわけじゃなくてぇ。…は、晴也さんがいなくなった途端寂しくなっちゃったから、町の中を見てみよーかなぁーって思って散歩してたら………
ほんと、ただなんとなーく、このお店に入っちゃっただけなの………なんか、引かれる感じがして……」
確かに、こいつにはここで働いているなんて教えてねぇし、スクーターについてこられるほど早くもなさそうだし……
「はぁ……本当に呪われたかもな、俺。」
「ハルー?お客様でも来たの?」
や、やばい!奥からセレナが来やがった。こいつを見られたら何て説明すれば……俺の部屋に居座ってるなんて知られたらタダごとじゃねぇ!
「おら!早く帰ってろって!」
そういって押し出そうと思ったが、また体をすり抜けてしまう。
「いやぁん。く、くすぐったいよぅ。」
……そうだった。見つかるも何も、こいつは幽霊だったんだ。セレナに見えないんだから、完全に無視を決め込めてればなんの支障も………
「き、キャァーーー!!!」
その時だった。店内に叫び声が響く。
34『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/28(水) 23:51:54 ID:utZSUUoa
他に客もいないし、葵は俺が突っ込んでる手にくすぐったそうに悶えている。となると……その叫び声は……
「せ、セレナ?」
「な、なな、なな、何!?どうなってるの!?その娘は、だって…そ、それにハルの腕、突き抜けちゃてるし……」
まるで幽霊でも見たような顔(ていうか見てる)をして、驚きを露にしている。まてよ…セレナがそんなに驚いてるってことは………
「セレナ!…お前、こいつがみえるのか!?」
「み、見えるのか?って……あた、当たり前でしょ?この娘がこんなところに……でも、なんで……」
どうやら相当ショックを受けているらしい。とりあえずセレナを落ち着かせてイスに座らせ、水を飲ませる。呼吸も安定してきたとこで、話始める。
「えっとな、セレナ……こいつは、その……幽霊なんだ。」
「え?」
それから葵の事を最初から話した。新しい部屋に寝ていた事。なんで幽霊になったのかわからないこと。生前の記憶がなく、心残りがなんなのか探している事。
最初は信じられない顔をしていたが、ふわふわと浮いたり、通り抜けるのを見て、だんだん信じてきた。
35『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/28(水) 23:52:40 ID:utZSUUoa
「そうなの……あなた、本当に幽霊……」
「そうだ、セレナ。こいつに見覚えないか?何か知ってたら、成仏の手助けになるんだが……」
「え!?う、ううん。全然知らない。……うん、知らないよ」
「そうか……チッ、消える手掛かりが見つかると思ったんだがな………」
「ぶう。また邪魔者扱いして………」
「邪魔だ。お前なんかが周りに纏わりついてたら、俺の精神が以上をきたしちまう。早く天国へ召されろ。それとも地獄か?」
「うあーん!!また、またいじめるぅ!」
「……そうなんだ……なにも覚えてないんだ……良かった……」
葵がまたギャアギャア泣き出してうるさい。セレナもまだ幽霊を見たのが信じられないのか、一人でぶつぶつ呟いている。
「だぁーー!黙れ!客が来たら迷惑だろ!」
「ぐすっ、いいもん。他の人には見えないんだから!」
開き直ったかのように、またビービー泣き出す。仕方なく隅っこに追いやり、少ない接客をこなしたが、五月蠅いせいで何度もミスをしてしまった。……ちょっと御札でもかって強制的に消し去ってやろうか……
36『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/28(水) 23:54:32 ID:utZSUUoa
>>1乙。
今日はここまでです。皆様アドバイスありがd。自分のペースで書いていきたいと思います。その分修羅場もたっぷりと。
37名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 00:10:04 ID:eyzduI56
セレナ黒っっ!!
GJです!!
38名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 00:41:16 ID:LhWV+Sfo
セレナ(*´Д`)ハァハァ
腹に一物抱えてそうな所が良い
39『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:37:21 ID:kzATXuys
 的中してしまった有華の料理の出来を思い出して、腹を撫でた。
 時刻は十時を少し回ったくらい。
 有華と言えば、飯を食ってもしばらく居ついていたが、ようやくさっき帰宅したところである。
 まったく……テレビくらいお前の家にだってあるだろうに。わからん奴だなあ。
 などと思いながら、ソファに横たわってぐったりとしている俺だった。
「あん……?」
 耳障りなメロディが……ああ、携帯が鳴ってるのか。
 こんな時間に誰かと、テーブルに俺と同じく横たわるそれを取り上げる。
 番号は――非通知?
 面倒臭いが、一応出るか……。
「もしもし」
 お決まりの台詞で、相手からの返答を待つ。
 えらく静かだった。雑音すら耳朶に届かない。
 ――おいおい。なにか喋ってくれ、かけたのはあんただろう。
 内心で見知らぬ発信者に苛立ちつつ、「もしもし、すみません、誰でしょうか」と言う。
 しかし、十秒待っても――単語の一つも言ってはくれない。
「あの――切りますよ?」
 いい加減にしろ。
 一応断わってから、俺は躊躇せずボタンを押した。――なんだったんだ、一体?
 とにかく苛立つので勘弁してくれ。
「――寝るか」
 有華の料理の影響か、眠気が濃厚である。
 ソファから立ち上がり、テレビの電源を消してから、電気も消す。
 部屋に入るともうベッドに直行するだけだ。ああ――眠い。いこう。
40『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:38:12 ID:kzATXuys
 早めに眠った恩恵だ、目覚めが抜群に良かった。
 朝飯の支度に弁当の支度。万事時間的にも余裕で片付いていく。ばっちりな朝である。
 どうせなら今日はちょっと早めに登校して見るか――と言う殊勝な心がけを起こした俺は、忘れ物はないかとチェックしていた。
 教科書入れた。弁当入れた。宿題も大丈夫だし、提出のプリントなども……。
 あとは携帯だけか。昨日テーブルに置いたまま寝たっけ。
 出発する前に何気なく開く。
「――あら?」
 また非通知で、かかっている。時刻は三時。
 これまたえらい時間に電話を――。
「……待てよ」
 思い直して、着信の履歴をチェックする。


 22:36
 22:54
 23:23
 23:38
 23:54
 24:13
 24:32
 24:46
 24:57


 ずらずらと。
 並ぶ、数字。
「なんだ……よ、これは……」
 何回かけてるんだ――変じゃないか、あまりにも、これは。
 まだ続いている……きっと、最後にかけた三時まで――かけつづけていると、俺は確信した。
 誰だよ。
 そもそも、俺になんの用事だよ?
 昨日の無言電話を思い出す。薄気味悪いほど静かだった、雑音すらない、電話の奥には――。
「――はははっ」
 とりあえず、笑っておこう。
 考えようによっては、これ――すっごい笑っちまうお話じゃないか?
 だって、馬鹿じゃないか。おかしすぎて笑えてくる。
 何時間かけてんだよって、突っ込みの入る所だろ、ここは。
「何時間、かけてんだよ」
 誰も突っ込まないから、俺が突っ込んだ。
 俺が突っ込みの役割だとしたら、なら――。
 ボケの相方は、誰なんだろうな……?
41『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:38:56 ID:kzATXuys
 結局いつもの時間に、家を出た。
 ちょうど隣の前田さんが、俺と同じく黒い袋を持って出てきていた。今日は、燃えるゴミの日だからな。
 白髪の、今年七十八だったか……とにかく高齢の、気難しいおじいさんだ。
 追いつくとまずは挨拶する。今朝は機嫌がよろしいのか、ニコニコと返事をしてくれた。
 昨日のこと、謝っとかないと。
「あの……昨日はやかましくしてすみませんでした。有華にも言っときますんで」
「――? はて、特にうるさくはなかったが」
 きょとんと、首を傾げられた。
 まさかその動作がかえってくるとは思わず、俺も首を傾げ返したくなる。
「だって、あの、ドア蹴ったから、怒ってるなあって思ったんですけど」
「わしがドアを、蹴った?」
 すると前田さんは、はははとお年の割にはやたらと快活に笑って。
「そんなことしてないよ、わしは。なにせもうこの体――まともに歩くだけで精一杯でね、お恥ずかしいが」
「――あっ」
 そうだ。前田さんは、今年で七十八……。
 あんなに、力強くドアを蹴るなんて――そもそも無理だったんだよ。気付けなかった。
「そ、そうですよね。変なこと言って、すいません」
 袋を放り投げながら、笑う。
 誰だよ。
 じゃあ誰が――あの時、俺の家のドアを、蹴ったんだよ……?
 何度も携帯を鳴らす、誰か。
 昨日ドアを蹴った、誰か。
 俺にはどうしても、この二つが、繋がってしまう。
(けど……相変わらずわからない。なにが、目的なんだ?)
 そう、それだけは、謎と言う殻に閉じ篭って、直視できない。
 それ故に俺は不安だった。
 なにか――未知は、恐怖に直結するのだ、俺の場合。
「……学校行くか」
 まあ、日常の生活してれば、忘れるか。
 こんなことも今日までだろうし、うん――。
 今日までだと、俺は信じたかった。
42『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:40:55 ID:kzATXuys
 考え事をしながらだと、歩みは遅くなるらしく。
「エー兄っ! 歩くの遅いぞ――っ!」
 朝っぱらからの大音量と同時に、背中を叩かれる。
「おわっ。――なんだ、有華かよ」
「なんだとはなんだよぉ」
 中学校の制服姿で、有華が俺に並んだ。顔を膨らませるな、面白いから。
「途中まで道、一緒なんだよなあ……忘れてたよ」
「そ、そだねっ!」
 何故そこで俯く。
 まあ、いいか。とにかくこいつと会話しとけば、余計なことに思考を割かなくて済むし。
「だからさ、あの、その――」
「エースケくん」
 有華の言葉が、遮られる。
 この間延びした声と、『エースケくん』という呼び方。
 振り返る。
「いたり、先輩……?」
 そう――会うのは、二日ぶりか。
 小柄な彼女が、そこにいる。
43『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:41:27 ID:kzATXuys
「おはよう……ございます」
「――は、はい。あの、おはようございます、先輩」
「はい。……どうしましたか? なにか、慌ててるみたいですけど」
 そりゃ慌てますって。
 もう一生会わないかも……そこまで思ってたのだからな、俺は。
 迷惑ですって、あんな酷いことも、言ってしまったし。
「ねえエー兄……。――誰だっけ、その人」
 有華の質問に、ハッとする。
 そうだな、有華は知らないに決まっている。
「ああ……えっと、俺の高校の先輩で、瀬口至理さん」
「――ふうん」
 あからさまに興味なさそうな事を言うなっ! ふうんって。
「それで先輩。こいつは俺の幼馴染みで、谷川有華って言います」
「谷川……有華、さん」
 噛み締めるように、ゆっくりと先輩は言った。
「はじめまして――よろしくお願いしますね、有華さん」
「――至理さん、でした、よね?」
「はい?」
「なんか眠そうですけど、大丈夫ですか?」
 そうは言っても、有華。お前の口調に心配の成分は微塵も混じってなさそうだが。
 しかし指摘したことは真実で、体はなにかふらついているし――くまも少しあるか?
「寝不足ですか?」
「あははっ……ちょっと、やることがあったんですよ」
 宿題とかかな。先輩ぼんやりしてるから、寝ようとしたら思い出した――っ! とかね。ありそうだ。
「あふ」
「おわっ! アブねっ!」
 ついには倒れかける始末だった。
「――眠いです。あふ、あふ」
「いつまでやってたんですか、まったく……」
「四時くらい、です」
 全然寝てないなあ、それじゃあ。
 このまま単身で学校に到達できるとは思えない。
「危ないですから、俺と一緒に行きましょう。教室まで送ります」
「でも、悪いですよ」
「いいんですよ、これくらい」
 先日の振り払い方は、酷かったし。
 これくらいさせてもらっても、償えないかもしれないけど。
「じゃあ有華。お前ここ、左だろ」
「――ああ。……うん」
 なんか元気が磨り減ってるな。
「なんだよ、お前も寝不足か?」
「ち、違うよっ! あたしは健康的に生きてるからね、うん」
「そうかい。それじゃな」
 俺たちは真っ直ぐに。
 有華はその場に立ち止まって、しばらく手を振っていた。……恥ずかしいからやめてくれ。
44『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:41:59 ID:kzATXuys
 見えなくなるまで、ずっと背中を見ていた。
 ――考えるべきは色々ある。あの女についてだ。
 あたしが指摘したのだから、寝不足だったのは真実。
 ただしそれを利用して、エー兄のほうに倒れこんだのは――あれは多分、演技。
 エー兄に公然と抱きつくための手段として、自分の状態を上手く使ったのだ。
 奥歯が、ぎりぎりと唸って、仕方ない。
 あの行為は、あれはあたしだけの行為だと――特権だったのに。
 それを今日。あのとろそうな女に、汚されたっ……!
(ふざけんな……。ふざけんなっ!)
 畜生が。
 べたべたと、エー兄に、触れやがって。
 朝っぱらから、気分が悪い。
(エー兄は、あの人と……付き合ってるの、かな)
 ふと、そんな恐怖に至ってしまう。
 声をかけられたときも、エー兄、ちょっと様子がおかしかったし……。
 学校が違うから、あたしはそこまで把握できていない。
 これは――まずい。
(とにかく……確かめないと)
 確認することは、大事だから。
 目視での判断は意味がない。やっぱり、エー兄に直接聞いてみるしかないだろう。
 それに確認するのは、絶好の機会かもしれないし。
「こうやって、エー兄に女の子が近寄るだけでイラつくのは、もう嫌だし……」
 そうだ。言ってしまおう。
 エー兄なら、きっと、受け止めてくれる。
「すきだって……言っちゃうんだからね、エー兄」
 ぽつりと。誓うように、あたしは呟いた。
45『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:44:24 ID:kzATXuys
 六月ってのは蒸し暑いよなあ。体育の後なんて、死ねる……。
 授業を終えて教室に戻ってきた我ら男子は、早々に着替えを開始する。
 ああ……。汗で脱ぎにくい。イラつくなあ。
 登校してくるので、すでにシャツは汗まみれなのに――あれ?
「シャツがないぞ」
 声に出すと、周りの奴らが反応する。
「よく探してみろよ」
「いやいや……鞄をひっくり返しても、床を見回しても、ないんだけど」
「教室は授業中、鍵かかってるんだぞ?」
 そうなんだよなあ……。
「大体誰がお前のシャツ欲しがるんだよ、馬鹿」
「そうそうっ! お前の臭いなんか嗅いでも興奮しないって」
「――うるさいなあ。わかってるから変なこと言うなっ」
 その後数分探してみるが、見つからん。
 結局諦めた俺は、下のシャツは無視して、そのままワイシャツをひっかけた。
 多少涼しいが……いつもと違う感触に、そわそわしてしまう。
(それにしても――どこに言ったんだ、俺のシャツ)
 まあいいか……たかが、シャツの一枚。
 それよりも考えるべきことがあるだろうが。次の授業に当てられたらどうしよう、とかな。
46『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:45:02 ID:kzATXuys
 屋上。
 いつも私と、エースケくんだけの世界だった、場所。
 今朝会ったのが偶然と思われて、本当に幸いでした。
 だって本来なら、私は、校門までずっとエースケくんの背中を見ていたはずだったのですから。
 ――ここ数日で気付いたことですけど、私は、怒りっぽいみたいです。
 私を追い越して、エースケくんの背中を気軽に叩いた、あの女。
 エースケくんに……私の大好きなエースケくんに、あんな乱暴な挨拶を、して――っ!
 殺しますよ。
 内心だけで叫んだんですけど、それが正解でした、本当に……。口塞がなかったら、今頃どうだったでしょうか。
 谷川有華。
 料理が下手で、エースケくんの女性の価値観を崩壊させた――諸悪の、根源です。
 中学生の分際で……エースケくんの幼馴染み、なんて。
 生意気ですよ。その椅子は、私に譲るべきだと思います。
 幼馴染みのくせに料理が下手なのは――笑えますけど。狙ってやってるんでしょうか、それとも本当に駄目か。
 どちらにせよ、私にとっては、邪魔にしかなりえません。
「来ないだろうなあ」
 見上げると、綺麗なまでに蒼穹が広がっています。
 一瞬携帯で呼び出そうかと考えて……私は馬鹿だなあと、自覚します。
 あれは夜中。どうしてもエースケくんの声を聞きたいときに。そう決めたじゃないですか。
 昨日はちょっと、やり過ぎちゃいましたけど……ははは。
 そうです。今日は、いいものがあるのでした。
 鞄からそれを取り出して、両手で広げます。
 シャツです。
 エースケくんのクラスが今日体育があるのは事前に把握していましたから……。
 後は、授業中体調の悪いふりをして、教室を抜け出し――エースケくんの教室まで辿り着くだけでした。
 ああ――。彼のクラスは、廊下の側の窓、ほとんど閉め忘れるそうですから、侵入するのは容易いです。
 それよりも、です。
 また一つ、エースケくんのモノが――増えましたっ。
 エースケくんがどんどん、私のモノになっていきますね……あは、はははっ。
 早く彼の全部を抱き締めたいですが、今日はこれで我慢します。
 これだって……匂い、しますし。今はまだこれでも、構いません。
 丸めます。片手で持って、鼻に押し付けます。
「ふっ……あはっ……あふ」
 もう片方の手が……知らず、あそこに伸びてしまいます。
 指を――動かして。
「あうっ……ぅ……」
 エースケくんの匂い。
 指は濡れて……音が……ぁ。
「エースケ……くん……すきぃ……すき、なのぉ……っ!」
 この蠢いている指が、彼のだったら、いいのに。
 想像するだけで、また、濡れてきて。
「すきぃ……あうっ……いく、いくのぉ……っ」
 そうして私は、果ててしまいました。
 もう――駄目です。
 一秒でも時間が経過するたび、私は――エースケくんのことが、もっと好きになってしまっていて。
 エースケくんがもっと欲しいと、願ってしまっているのです。
 シャツを鞄にしまいます。
 ぬめる指先を――ぼうっと、見つめます。
 彼がしてくれたら……私はどうなってしまうのでしょうか。
 死んでしまうかもしれません。
47『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:45:41 ID:kzATXuys
 たまには真面目に勉強でもしていたら、有華が訪ねてきた。
 何故わざわざチャイムを押したのだろうか。
「どうした。――もうお前は台所には入れんぞ」
「はははっ。なに必死になってんだか」
「必死だよ俺はっ!」
 なにせ生命に関わるからな。
「あの、ちょっと勉強わかんないところあってさ」
「ほう」
「エー兄。だから教えろ――っ」
「じゃあね」
 ばたんと、ドアは閉じられたのである。
 どんどんっ。響く騒音。
「お前、前田さんに怒られるからやめれっ!」
「じゃあ教えてよぅ」
「……わかったよ。わかった。さっさと入れ」
 やった、と即行にくつを脱ぎ捨てて俺の部屋に直行する有華。
 あいつめ……。靴くらい揃えんか、仮にも女の子だろう。
 それにしても、なんだか無駄に元気だなあ……いやいや、無駄に、ではなくて。
「なんか、無理矢理か」
 無理に元気を出してる感じがするのは、俺の勘違いなのか。
48『疾走』 第三話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:46:13 ID:kzATXuys
 中学の数学、なんて楽勝だねなどと内心自信満々だった俺なのだが、見事に撃沈している。――数学嫌い。
 髪を掻き毟りながら、それでも教科書を凝視する。意地である。
「無理するなよぉ、エー兄。まあ――それくらいの問題はあたしにも解けるんだけど」
「お前はうるさいよさっさと別の問題解きなさいっ!」
 馬鹿にしやがって。
 ああ、でも今思い出したぞ……こいつ学校の成績、結構良かったような。
 じゃあ俺に教えを願うな。それとも本当に俺を馬鹿にするためにやってきたのかっ?
「お前……非通知で俺の携帯にかけまくったりしなかったろうな」
「はあっ?」
「――いや。すまん、忘れてくれ。冗談だ」
 あれは異常だからな。
 有華とあれを結びつけるのは、あまりにも有華に失礼って寸法だ。すまん。
「それよりもさ、エー兄」
「なんだ小娘。俺は今忙しいんだよっ」
 テメェの問題で。情けないなあ。
「今朝会ったじゃん、なんて言ったっけ……えっと」
「……いたり先輩」
「そうっ。その変な名前の先輩」
 変な名前って……。
「お前、もう少し言い方ってもんが――」
「付き合ってんの?」
 ――はあっ!?
 なにを質問するかと思いきや、壮絶な勘違いを……っ。
「付き合って、ない」
「本当に?」
 首を傾げて、上目で俺を見てくる有華。
「……嘘を吐く理由がないだろうが」
「まあね。――ふうん。あっそ」
 自分から聞いたくせに、やたらとそっけない。
 なんなんだ……? まあいい。あまりにこの事を深く問い質されたくないからな。
 正直屋上での告白は――あまり思い出したくない。
 俺は動転して随分と酷いことを言ってしまったし……。それでも、間違ったとは思わないけれど。
 などと思いながら、シャーペンを滑らせる。ようやくだが。
「じゃあ今ね……。エー兄って、誰とも付き合ったりとか、してないの?」
「そうだなあ」
 問題に集中しているため、生返事だ。
 厳密に言ってしまえば、今までの人生――誰とも付き合ったなんて、ないんだけど。
「じゃあ……あの、言うんだけど」
「なにを」
 うーん……また詰まったな。
 手の平でペンを回しながら思考する。なんだったかな、ここの公式……。
「――あたし、エー兄が好きなんだぁ」
「へえ……。そうか、エー兄が好きか……」
 そうかそうか。なるほど。
 ――ああっ!?
 教科書から、向かいに座っている有華に、視線を移動する。
 両目が……なんでお前、そんな潤ませて……?
「だからね……あたしと、付き合って、くれませんか……っ」
 そんな一言を。
 俺は予想できていなかったから、ただ、半口を開けて、正面を見据えるしかなかった。
49 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 01:47:11 ID:kzATXuys
長文ごめんなさい。
短くまとめる能力が欲しい……。
50名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 01:48:28 ID:2IqOZ/wY
GJ!
我らが行くは修羅の道よ!
51名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 01:52:46 ID:1VLx3Ndw
テンパイ カワイイよ テンパイ
52名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 02:00:18 ID:OF1sGAYy
有華 カワイイヨ 有華
53名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 02:37:43 ID:FfoG/StZ
>>48
GJ!
文章長いなんて思わなかったから、これからもこの調子でお願いします
54名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 03:14:17 ID:Ovhr7aBa
埋めるか


東大阪市の大学生ら2人が集団暴行を受け、行方不明になっている事件で、警察は、逮捕・送検
された主犯格の男の身柄を大阪から岡山に移し、27日、2人が生き埋めにされたとみられる現
場の捜索を行います。

暴力行為等処罰法違反の疑いで送検された小林竜司容疑者(21)は、調べに対して、「女性をめ
ぐりトラブルとなった大学生ら3人に集団で暴行を加え、2人を岡山県内に生きたまま埋めた」と供
述しています。事件の発端は、女性をめぐるトラブルでした。被害者の大学生の交際相手に手を
出したとして、大学生らが佐藤勇樹容疑者らを恐喝。その仕返しに小林容疑者らが、大学生らを
集団暴行したというものです。小林容疑者は、「大学生らにボコボコにされた。助けてくれ」と岡山
県にいた佐藤容疑者から報復行為を依頼されていました。小林容疑者と佐藤容疑者は岡山県玉
野市出身で、同じ小学校・中学校に通った同級生でした。

また、小林容疑者が、「相手が暴力団関係者を名乗ったので、このまま帰すと自分の身が危ない
と思ってやった」などと話していることから、警察は、このことが暴行をエスカレートさせたと見てい
ます。小林容疑者の母親は、「相手が組の名前出したので、身の危険を感じて、殺してしまわなあ
かんと思ったらしい。(小林容疑者は、2人を殺害したあとで)もう1人殺したら、自首すると言って
いました」と話しています。

一方、被害者と加害者の双方が通っていた大学では学生の間に動揺が広がっています。佐藤容
疑者の大学の友人は、「私たちは、佐藤さんはやっていないと信じてるんで、そういう人じゃないと
思っているんで。めっちゃいい人やし」と話しています。それに対し、被害者の知人は「(被害者は
恨まれるようなことは?)そんなんはないです・・・」と話しています。

大阪府警は、殺人事件として捜査本部を設置しました。警察は27日、小林容疑者立会いのもと、
2人が生き埋めになったとみられる岡山市の産廃処理場を捜索する方針です。
55名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 03:15:10 ID:Ovhr7aBa
間違えた・・・orz
56名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 03:44:28 ID:5W6jkCAA
>>49
GJ。バトルもいいがやっぱ修羅場は
こういうネチっこいものに限るぜ
57名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 03:52:06 ID:pGXR/+ez
もう>>55ったら、私のことばかり考えてたから間違えたのね。
姉さんうれしいわ。だからもうあの子のことは忘れなさい。
ウフフッ、大丈夫よ。
もうこんなことがないように私のことしか考えられなくしてあげるから・・・。





58名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 07:57:21 ID:NfdRzXZU
>>49
長文のほうが想像力をかきたてられて、読み応えがあるから漏れはそれでいいと思うけどなぁ。
疾走GJ!
59名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 12:54:37 ID:KesB37YF
>>55
( ´∀`)σ)∀´)プニッ
60『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/29(木) 14:11:34 ID:XGTEhIlf
「で?……今日は家に泊まるのか?」
店も閉まり、ロッカールームで着替えながらセレナに尋ねてみる。葵の事があったせいか、ヒドく疲れたような顔をしている。
「ううん。…やっぱりやめとく。また今度にするわ。」
そりゃそうか。幽霊の住む部屋になんか泊りたくはないだろう。本当にどうしたもんかな。
「……ごめんな。」
「んっ!」
そう言って優しくキスをする。どれぐらいだろうか。かなり長い時間、そのままでいた。
「ぷは……お、驚いたわ。まさかハルの方からキスしてくれるなんて……うれしい!」
そのまま抱き付かれる。そして次のステップへ……といきたいところだが、今日は本当に疲れたため、また今度だ。睡眠欲の方が強い。
「じゃ、また明日。」
「うん……は、ハル!」
裏口から出ようとして、呼び止められる。振り替えると、セレナがヒドく切なそうな顔をしている……そんなに葵の事がショックだったのか?
「私たち……恋人だよね?…愛し合ってるよね?」
「当たり前だろ。変な心配すんなって。」
「うん……ありがと。」
それを聞き、裏口が出ていった。
61『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/29(木) 14:12:19 ID:XGTEhIlf
薄暗いロッカールーム。もう時計の短針は11を指している。閉店は九時……それから二時間も経っているのに、まだ電気は点いている。
「うぅ……う…」
そのロッカールームに、セレナは一人、蹲っていた。泣きはらして赤くなった目、ぼろぼろに乱れた髪。
「なんで……なんでよ…せっかく、せっかくハルと恋人になれたのに。」
まるで呪いを呟くように、話し相手もいないのに、ぶつぶつと独り言をはいっている。その目には生気が宿っていない。
「あの女……もうやめてよ……死んでまでハルを取らないでよぉ。……消えて…よぉ。」
ガンッガンッ
激しくロッカーをたたく。それは一度も使われていないものなのだが、ボコボコにへこんでいた。
「でも…大丈夫よね。あの女も記憶が無いって言ってるし、ハルも私を好きだって言ってくれたし。」
それでも不安は積もるばかり。ここでキスしたあと、抱いてくれなかった。言葉だけでは安心できない。ましてやあの霊は、晴也の部屋に住み着いていると言うのだ。
「ハル…お願い。もうあの女を見ないで……私だけ……私だけをみてぇ……」
62『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/29(木) 14:13:06 ID:XGTEhIlf
春が終わるとは言え、まだ夜は少し肌寒い。スクーターで切る風は肌身に染みる。
「ふう…着いたっと。」
いつもの癖で前のアパートの道を走ってしまい、遠回りになってしまった。いつも帰りに道では、去年の記憶を思い出そうとするが、相変わらず無理である。
無理に思い出そうとすると、気分が悪くなり、頭痛がする。
「ただいまっと……」
人間。誰もいないのに部屋に帰るとただいまとぼやいてしまうのは何故なんだろうか。
「あ、おかえりなさーい。」
「………」
そうだ、こいつがいたんだった。まだ慣れてないな……それに………おかえりだなんて言葉、とても久し振りに聞いた。
「あれ?どうかしたんですか?ぼーっとして。」
「な、なんでもねえっつの!俺の周りに纏わりつくな!」
「うー。まだバイト先に行った事怒ってるんですか?そりゃあ、私が悪かったですよぉ。だから謝ったじゃないですか。」
「もう怒ってない。」
「本当?やったぁー!」
ただいまと言っておかえりて返してくれる。久々の家での会話………なんとなくこいつの存在を良く思ってしまった。
63『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/29(木) 14:14:09 ID:XGTEhIlf
「あ、そうそう、晴也さん、晴也さん。」
「ん?」
嬉しそうな声で呼ばれたため、振り向く……と。
バキッ
「がっ?」
一瞬何が起こったのかわからなかった。振り返ると同時に、右頬に強烈な一撃が食い込んでいた。それほど痛くは無かったのだが、不意打ちだったため、膝を突いてしまった。
「あははー。やっぱり成功です!見ました?見ました?こうやって頑張れば一時的にだけど体を具現化できるんです!」
「……ろす…」
「へ?」
「殺す!二度と化けて出れないように殺し切ってやる!!!おら!俺に殴られる瞬間に具現化しろ!」
「あああ!!こ、ごめんなさい!こうしないと証明できないかなぁって…ああん。だ、だから体に腕を突っ込まないでぇ。く、くすぐっいんだってぇ。」
前言撤回だ。こんな悪霊、一日でも……いや、一秒でも早く成仏しちまえばいいんだ!







ひとしきり騒いだあと、幽霊と戯れあう事が空しいと気付いたのは、帰宅してから一時間も経ってからの事だった。
「シャワー浴びるからな。絶対に覗くんじゃねえぞ!覗いたら本当に成仏するの手伝ってやんねぇからな!」
「うーん……それは、それでいいかもしれないけど……やっぱりイヤ、かな?うん、覗きません、絶対。」
本当に今日はくたびれた。たった一日だけだが、目茶苦茶長いようなきがした。さっさと寝よう……バイトも午後から出し、昼間で寝続けよう。
64『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/29(木) 14:15:03 ID:XGTEhIlf
以上です。
65『疾走』 第四話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 16:16:07 ID:kzATXuys
 ――言った。
 ははは……すごいなあ、人間の顔って、こんなに熱くなるんだ……っ。
 あたし、かまずにちゃんと言えたよね?
 すきだって。
 付き合って、くれませんか――うん、言えたはず。
 時間がどれだけ経過したのか、あたしの麻痺している脳味噌は伝えてくれない。
 ただ――告白を投げてからずっと、エー兄とあたしは、見詰め合っていた。
 やばい……泣きそうだよ。
 努めて表情が崩れないようにしているけど……。
「……はははっ」
 ――えっ。
 エー兄……なに、笑ってんの……っ?
 あたしは、何かしらの答えをエー兄は与えてくれるだろうと信じていた。
 なのに――。
 おかしくないかな……っ? だって普通、告白されたら――驚くのは理解できるけど、笑うってのは、ない。
「うは、はははっ……! し、神妙な顔してなにを言うのかと思えばお前――っ! わかった、俺の負けだっ」
「あう……っ? エ、エー兄……なに、言ってるの……っ?」
 負けって――なんの勝負なの。
「いやいや、遂にお前の冗談に爆笑する瞬間が到来するとは……。うむ、もうお前に教えることは何もないなっ!」
 冗談。
 ――だって?
 頭蓋に氷を詰め込まれたみたいに――思考も、火照る頬も、冷えていく。
 エー兄は、うんうんと、勝手に納得したように頷いていた。
「タイミングもばっちり。真顔ってのもポイントだったな。いやいや、お前のお笑いのセンスには正直脱帽し――」
 渾身の力を、両腕に込めて。
 あたしはテーブルを、叩いた。
66『疾走』 第四話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 16:20:09 ID:kzATXuys
 バン――っ!


 陽気にぺらぺらと喋っていた俺を、その耳障りな騒音が停止させる。
 今までさんざん一人で笑っていたから気付けなかったが――なんだろう、なんか、空気が重苦しい。
 有華は、両手をテーブルに叩き付けた姿勢のまま、硬直していた。
「ど、どうしたんだよ、有華」
 俺は面白かったから褒めたんだけど……。なんだ、評価する部分が違ったか?
「――冗談じゃ、ないもん」
「……えっ」
「なんだ、よぉ――っ」
 教科書を持ち上げると、それを――。
「うがっ」
 投擲しやがった。
 見事顔面に直撃した。――こいつ、物は大事にしろと何度言えばっ!
「お、お前、教科書は投げるもんじゃ……」
「――ねえっ! なにがおかしいのっ!?」
 有華が、俯かせていた表情を、真っ直ぐにした。
 ――っ!?
「お前……なに、泣いてるんだ、よ」
 笑顔が似合ってるんだから、お前には……。
 だから俺は、急に地面が消え失せたみたいに……焦ったんだ。
67『疾走』 第四話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 16:20:38 ID:kzATXuys
「泣くよ、あたしだってっ!」
 狼狽する俺を尻目に、有華の逆上はエスカレートする。
 おいおい……なんなんだよ、落ち着けって。
「と、とにかく落ち着けっ。座れって」
「なによぉ……っ! あたしがエー兄のこと好きなのが、なにがおかしいのよっ! 言ってよ、ちゃんとわかりやすくっ!」
 有華の四肢は、震えていた。
 そして――その泣き顔が……いつかの誰かと、重なる。
(いたり……先輩っ)
 そう。
 今の有華と、あの屋上での先輩が――ひどく重なって、網膜が捉える。
「すごいいっぱい、もともとからっきしな勇気振り絞って言ったのに――それがなによ、冗談の一言で、片付けられて……っ!」
「あ……っ」
 ――じゃあ、なんだ?
 さっきの告白は、有華の渾身の冗談などではなく――極めて真剣な、恋慕の告白だってっ?
 嘘だろう……でも、それが真実だとしたら、俺は。
(なんて……ひどいことを、言いやがったんだ……俺って、馬鹿はっ)
 有華の、勇気を。
 笑いながら踏みにじった……んだ、俺は。
「ひっ……えっ……うっく……」
 涙が、有華の顎を伝って、フローリングの床に落下しては弾ける。
 あの一つ一つが――俺の責任だ。
「ゆ、有華……。あの、その、俺は――」
「うるさい、黙ってよぉ――っ!」
 鼓動が早まる。
 馬鹿か……っ! 俺は、今にも壊れそうな、か弱い少女に怯えている。
「――もう何も、エー兄の口から、聞きたくない……っ」
 それを言うと、有華は自分の筆記用具と教科書を拾う。
 手伝おうと立ち上がりかけるが――今の俺は、気安くあいつに近付いてはいけない、と思う。
 だから黙って、有華が鼻をすする悲愴な音を聞いていることしかできなかった。
「あたし、帰る」
「あ、ああ……そ、その、有華」
 呼びかけは無視される。
 小さな背中は玄関に遠ざかっていく。歩みが停滞する様子は、微塵も、ない。
 ドアのノブに、有華の手が乗っかる。
「――エー兄の……っひぐ……うっ……あほぉっ……!」
「あっ……」


 ガン――っ!


 いつか、誰かにドアを蹴られたときのよう。
 有華はドアを思い切りに閉めて、俺の前から、消失した。
68名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:11:46 ID:2oEaAMm0
エー兄いつ死ぬの?GJ
69名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:13:49 ID:uU2y4VN1
>>64
GJです。続きが気になる・・・セレナ嬢は一体何をしたのやら。
70名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:35:47 ID:3UYq7rdu
>>68
死ぬ ×
引き込まれる ○

>>64
コメディの中にもキャラの黒さが出てるのがなんかもうGJ!
>>67
この展開からどうカタルシスを引き出すのか期待!
wktkしながら待ってます
全裸で
71名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:38:44 ID:IgHq4odr
エー兄の鈍感さは異常
72名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:41:25 ID:8jg1pztl
エー兄はひどいひどすぎる!!!
でもこれでヒロインが暴走すればスレ的にはGJ
73名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:44:45 ID:yoSd+l2y
>>19
君とは気が合いそうだ

怒濤の修羅場ラッシュ
作者さんGJです
74リボンの剣士 19話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/29(木) 21:24:19 ID:s2lFAU1e
はいどうも。ジャーナリストの卵、屋聞新一です。今度は初めに名乗っておきます。
ただいま、伊星先輩をめぐる三角関係についてもっぱら調査中です。
先日のお見舞いで、二人の優勢劣勢が大まかに見えました。
もっと盛り上げ……もとい、より厳正で公平な勝負をして頂くため、自分は木場先輩の支援に回ることにしま
す。
支援ということで、木場先輩が欲しいものを、手分けして集めなければなりません。
その欲しいものというのは、要するにデータですね。伊星先輩関連の。
もうすでに木場先輩からは、基礎的な情報は頂戴しています。それを自分なりに分析してまとめると、伊星先
輩の人格は、こうなります。

・友達、ほとんど居ない。親しいのは新城先輩くらいなもん。
・母子家庭。父親は離婚? あるいは死去?
・懐疑的で、警戒心が強い。つまり人見知り。
・喋り下手。ウケ狙いな返事はするが、自分から雑談を持ちかけてくることは稀。

……う〜ん。こうして見ると、全然良いトコ無いですねぇ。どうしてお二人は、こんな人好きになったのでし
ょうか。
まあいいでしょう。まだ判明していないだけで、実は良い所も沢山あるのかもしれませんし、自分のすべきこ
とは変わりません。

さて、情報収集が第一と考えがちな状況ですが、それより先に、やっておかなければならない事があります。
実はこの三角関係の図、伊星先輩の意思表示一つで、あっけなく崩れてしまうのです。
現在、伊星先輩の心は、だいぶ新城先輩に傾いているらしいので、焦って告白などしてしまえば、自滅の可能
性大です。
ですが、新城先輩が同じ事をしたら、コロッといってしまう事が有り得ます。新城先輩が、その決定的な一歩
を踏み出す前に……伊星先輩を揺さぶっておくのです。
伊星先輩には、これから平等主義の人になって貰いましょう。それじゃあただのいい人じゃないかって?
そうです。ただのいい人になって貰うのです。

「伊星先輩」
「……ん?」
授業が終わり、今日はアルバイトに行く伊星先輩を、廊下で呼び止められました。
新城先輩は部活、木場先輩は、こういう日は一緒に帰るのは難しいと、様子見です。
「身体の具合は、もう大丈夫ですか?」
「……ああ」
自分を見る目に、警戒の色が宿っています。
どうなんでしょう。話くらいはできるでしょうか。
「そう怖い顔をしないでください。今日は取材ではありませんよ」
「ウソつけ」
うわっ、一発で否定されてしまいました。厳しいですねこれは。
「いやホントですって。取材とは無縁の、かるーい雑談ですよ。少し、この後輩と話してみるのはどうですか
?」
「お前に話すことは何も無い」
ぷい、と背を向けて去ろうとする先輩。まずいです。逃げられては困ります。
「冷たいですねぇ。そんなノリの悪さじゃ、友達できませんよ?」
「五月蝿い」
「将来、引き篭もりになりますよ」
……。
伊星先輩、止まって振り向きました……が、さっきより怖い顔です。
75リボンの剣士 19話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/29(木) 21:25:18 ID:s2lFAU1e
いやわかってますよ。あんなこと言えば殴られたっておかしくありません。でも引き止めるためです。悪口を
言うのが目的ではないんです。
「自分に冷たいのは別にいいんです。それよりも、周りに対してです」
新城先輩に比べれば弱いですが、こちらもなかなかのプレッシャーです。
伊星先輩、こういう顔もできるんですね。
「最近、あれこれと親しくしてくれる人が居るとは思いませんか?」
「ん……?」
さっきの悪口効果でしょうか、先輩からは今まで見てきたような、ふざけた様子が微塵も感じられません。
むしろ、今の言葉を正面から受け止めています。
たとえ頭にきても、話し合いで何とかしようとするだけ理性的なのか、喧嘩を買う気力の無いヘタレなのか…
…。前者であることを願いましょう。
「この前のがそうです。お見舞いに来て、ご飯まで作ってくれるなんて、いい人”たち”じゃないですか」
「……」
「そんな人たちに対して、今の自分を相手にした時のような態度を取ってはいませんか?」
「知るか」
ん、今、目をそらしましたよこの人。心当たりがある可能性が高いです。
しかし不思議です。先輩お得意の、的外れはぐらかしが来ません。今までのインタビューのような、どこ見て
るのか何考えているのか、さっぱり読めない表情とは違います。
もしかして、こっちが地なんでしょうか。
「駄目ですよ。せめて、優しくしてくれる人くらいは大事にしないと」
「……」
いい感じにペースを掴めた気がします。そしてわかりましたよ。
この人、意外に真面目な人のようです。ある程度関わりのある人のことなら、それなりに真剣に考えられるみ
たいです。
「優しくしてくれる人だけではありません。関わりの薄い周りの人だって、わざわざ危害を加えてやろうと思
うほど汚くありませんよ」
「そうか……?」
「そうですよ。伊星先輩だって、見知らぬ人に攻撃なんてしないでしょう」
「……いや……」
あ、あれ? ここは「当たり前だ」と言うところですよ? もう次の自分の台詞、用意しておいたのに。
何か伊星先輩、悲しげな顔になってますね。視線が、がくっと下向きになってます。
そんなに不味い事を言ってしまったのでしょうか。妙な流れになってしまいました。
話はもうこのあたりで切り上げたほうが良いですかね。
「とにかく、他人に取った態度は自分に帰ってくるものです。ジェントルマリィにいきましょう」
「お前が言うな」
えぇっ!? ここで突っ込みを入れますか? 何でそんなに感情の起伏が激しいんですか?
「あー、その、これで失礼しますっ!」
うまい言葉が思いつかず、我ながら情けなく退散。ちょっと負けた気分です。
でも、目的のほうは概ね達成できたと見ていいでしょう。これで、木場先輩への態度が変わってくれればいい
のですが。


(20話に続く)
76名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 21:39:33 ID:yoSd+l2y
うはwwwwうぜwwwww
GJ 次が果てしなく楽しみです
77名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 21:43:02 ID:jxTeAuOk
この二人の会話なんか楽しいw
次も期待してるよ
78名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 22:09:39 ID:4EeWEzir
分かった!!これで伊星について調べ続けることで、新聞部は伊星を段々と意識し始め
怒涛の四核関係になっていくんだな!!!
79『疾走』 第五話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 22:20:38 ID:kzATXuys
 初めて交わした会話は、果たしてなんだったか……もう、憶えていない。
 あいつは昔、ちょっと人見知りだったからなあ。
 今でこそ活発な性格に変貌してしまったが――まあ、結構なことである。
 やっぱりあいつには、笑顔がとても似合っていると思うからな。
「はあ……っ」
 ソファに横たわりながら、天井を凝視する。
 自分の愚行を、あれから何度も思い出しては、溜め息ばかり吐き出していた。
 有華の視点からあれを再現してみろよ……。
 俺は、時間を逆行できるなら、真っ先に己を殴りに出発するな。
 ふざけるな。状況を考えろ――先輩からの告白には、あんな反応などしなかったくせに。
「だって、な……。あの有華が、俺を」
 すきなんて。
 お前……よっぽど中学にはときめく男子はいないのか?
 俺なんか、料理が趣味の……やわな、平凡高校生だぜ。
 それに――正直言うと、俺にとっての有華って存在は、今日まで……。
 やかましい幼馴染みだとか。
 妹みたいな、感じだったんだよ……正直な。
 そんなくだらない固定的な観念が、俺の脳裏にこびりついてたから。
 冗談だろって、思っちまった……っ。
「謝らないと……」
 そして言わないと。
 俺の、有華に対する――ちゃんとした返答を。
80『疾走』 第五話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 22:21:12 ID:kzATXuys
 夕焼けが眩しい。鬱陶しい。
 あれから公園まで疾走して、一時間くらいか。
 ベンチに座り込んだら、立てなくなってしまって、ずっとこのままでいる。
 時折遊歩道を歩く男女の組み合わせが――腹立たしい。
「なんで……っ」
 あんなふうに、エー兄と歩きたいのに。
 肝心の彼は受け止めてくれなかった。
 冗談だろうと――私の勇気を、その単語だけで、払い除けた。
「エー兄の……あほぉ……っ」
 思い出したら、また泣きそうになってしまう。
 誰かにこんな脆さを見咎められるのがひどく恐ろしくて、あたしは俯いた。
 地面を睨みながら……色々考える。
(もしかして……エー兄は……)
 そうだ。
 エー兄が嘘を吐いている可能性が――ある。
 あたしの、付き合ってんの? という問いかけに、エー兄は否定を返してくれたけど。
 あれはまさか――嘘だったんじゃ、ないのかな……。
(嫌だよっ……そんなの、絶対に……っ!)
 想像するだけで死にたくなるが、逃げてはいけない。立ち向かわないと……っ!
 あの女――瀬口至理。
 仮にあいつとエー兄が付き合っていたとして……エー兄が、それを否定する必然性は、あるのかな……?
 ……なんだ。あるじゃない。そんなの、簡単だった。
「優しいから……」
 声に出して、その真実を紡ぐ。
 ――優しいから。あたしを傷つけたくなかったから……嘘を、吐いたんだ、きっと。
 この恋慕は決して届かないから――遠ざけるように、冗談だって、思ってくれた……っ?
 エー兄は……何にも、悪くない……っ?
「そうだよね……。うん。悪いのは、全部」
 涙腺が引き締まってくる。泣いている暇は無い。
 排泄すべきふしだらな悪を――あたしは見定めた。
 あの糞女が――奪い取ったっ!
 あたしの、あたしだけのエー兄を……あたしがいない領域で、かすめとったっ!
 ――消してやる。
 こんなに悲惨な状況に陥ってしまったのは、全部あの、あの――。
「こんにちわ、有華さん……。奇遇ですね」
 ハッとする。
 膝の上で握り締めていた拳を解放して、即座に見上げると。
「瀬口……さん……っ」
 諸悪の、根源。
 あたしにとっての絶対の悪が――そこにいた。
81『疾走』 第五話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 22:21:43 ID:kzATXuys
 どうにかして、エースケくんの女性への価値観を矯正しなきゃいけません。
 例えば怪我をさせる……もちろん私は間接的にしか関われませんが。
 エースケくんの家族は、エースケくんとそのお父さんの二人だけ。
 そして今。お父さんは長期の出張で帰ってこない……まさに、天啓です。今こそ、という天啓。
 怪我をすれば不安になりますよね……。しかも家では独り。
 そこで私がさりげなく、電話するんです。大丈夫ですかって。
 なんで番号を知ってるんですかって聞かれたら、エースケくんのクラスの親しい友人に偶然聞いたとでも言えばいいのです。
 後は駆けつけて、色々と不自由なエースケくんのお世話をして――本当の女性という在りかたを、見せ付けます。
 そうすればきっと、エースケくんも気づいてくれます。……あたしの、ありのままの愛に。
 それはそうと、前田さんでしたか――あのお方には感謝してもしきれません。私がなにを聞いてもほいほい答えてくれて……っ。
 ボケてるんじゃないですか? まあそれを狙って、高齢なあの人に聞き込んだんですけど。あは、はははっ。
 とにかく今後を色々と思考しながら、私はエースケくんのマンションに向かっていました。
 別に押しかけようとはしませんよ……。今はまだ、エースケくんに近付くだけで、満足ですから。
 いつまで理性が保てるか、ちょっと自信はありませんけど……。
「あれ……っ?」
 ちょうど公園に入った時です。
 忌々しい小娘の姿が……見えたのは。
 最初は無視しようと思ったんですけど、なにか様子がおかしいんですね。
 近付くとすぐにわかりました。――泣いてるんですよ、彼女。
 そこで私の直感が脳裏を走りました。
 ひどく彼女に共感したのです――そう。私がエースケくんに拒絶されたときと、今の有華さんは酷似します。
 吹き出しそうですっ。……はは、はははっ! そうですか……振られたんですね、有華さんっ。
 所詮はガキです。調子に乗るから、そんな負わなくてもよかったきずあとを背負うんですっ。ああ、滑稽だなあ。
 私はきっと、三日月みたいに口を開けて、笑っていることでしょう。
 ここは止めを渡しておきましょう。幸運です。最大の障害が取り除けそうですから。
「こんにちわ、有華さん……。奇遇ですね」
 そうして私は、諸悪の根源に、引導を渡すのです。
82『疾走』 第五話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 22:22:15 ID:kzATXuys
「どうも……。本当に、その……奇遇ですよね」
 努めて冷静に……煮えたぎる殺意を心の奥底にしまいこみながら、言葉を返す。
 にこにこと無駄に笑顔を振りまきやがって……。
 皮膚を蟻の行列が闊歩するくらいに、不愉快なんだよ……っ!
 あたしにとっての、お前って存在は……っ。
「――どうかしたんですか? 泣いているみたいに、見えたんですけど……」
「……別に。あなたに話す必要は、ありませんから」
 視線を外して、言った。
 ――嫌な、眼球だ。
 全部見透かされてるみたいで……だからあたしは、こいつの視線から逃れてしまった。
「そうですかぁ……? だったらいいんですけど。すみません、余計な質問でしたねっ」
「……用件は、それだけですか?」
 なら……さっさと失せろ。
「泣いちゃうの、仕方ないですよねっ」
「はあ……っ?」
「私もそうでしたから。……必死にお願いしたんですけど、駄目だって……。それもこれも、全部誰かさんのせいなんですけどね」
「なにを、言ってるんで――」


「エースケくんに、振られちゃったんですよねっ……有華さん。あはは、はははっ!」


 哄笑しながら。
 このどうしようもないコソドロは……あたしに、そう断言した。
83『疾走』 第五話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/29(木) 22:22:57 ID:kzATXuys
 あはは、はははっ! はは……駄目です、おかしすぎますっ!
 だって……あまりにも、有華さんが、惨めでっ……ぷぷっ。
 一度爆笑したらなかなか止められませんね……自分の意志では、特に。
 体がくの字に曲がってしまいました。
「ははは、はは、はははっ! あはは、ははっ!」
「黙れ……っ」
 有華さんが立ち上がる気配。
 あはは……さっきまでは怯えたみたいに視線をそらしていたのに、今じゃすっごい睨んできてるって、わかっちゃいます。
「ご、ごめんなさいっ……。でも、あははっ……! だって、あまりにも私の直感が的中したもので、つい……っくく、あははっ」
「いいから、さっさと黙れっ……!」
「あはは、うは、ははっ! あははははははははははははっ!」
「この――黙れってっ!」
 ひぶっ。
 ……右のほっぺた、痛いですぅ。
 耳朶にこだまするのは、パンっ――という、皮膚が揺れる、綺麗な音。
 あはっ……ビンタ、されちゃいました……てへっ。
 ありがとう有華さん。この衝撃のおかげで、ようやく無限に連鎖する笑いが、ストップしてくれました。
「なに笑ってんのよ……っ!」
「あはは、ははっ。すみません……生来、こんな面なんです、私」
 そんな殺意メラメラの両目で睨まないでください……。
 私は抑えてるんですからね――有華さんへの、巨大な憎悪を。
「どうやってエー兄をたぶらかしたかは知らないけどね……っ! あたしは、絶対に諦めないっ!」
「ははあ……そうですか。あなたみたいな乱暴な、女の子らしくない人を……エースケくんが選ぶとは、思えませんけどね」
「――ぐうっ……!」
 手を出したのは、有華さん、あなたですから。
 乱暴って表現されても……どこもおかしくありませんよね?
「あたしは……絶対に、認めないからっ……! 覚悟、しときなさいよね……っ!」
「勝手にしてください。あなたがどう転んでも――私は、エースケくんと、幸せになりますから」
「……ほざけっ! 勝手に妄想してればいいのよ、馬鹿がっ!」
 言うが即座に、有華さんは反転して、走り出しました。
 あはは……まるで敗残兵ですよ。みっともないんだ……うふふっ。
「――あれ。落し物ですか」
 きらりと、何かが光を反射して、私にその存在をアピールします。
 有華さんが座っていた、ベンチの上ですか……。
 摘み上げます。
 銀色の――これは……。
84名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 22:44:24 ID:pGWWJu7Y
ひぶっ。に萌え
85名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 22:50:21 ID:m3ufRjMA
ねんがんの、エースケくんちの かぎを てにいれたぞ!!
86名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 22:52:56 ID:jxTeAuOk
rァ ころされてでもうばわれる
87血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 22:55:50 ID:8RktHMM9
投下します
88血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 22:56:25 ID:8RktHMM9

「――とりあえず、飯は食うようになった。だから死にはしないだろ」
「……怪我の方はどうでしょうか」
「綺麗に右腕が無くなってるからな。下手に繋がってるより治りは早いだろ。
 高熱は収まったみたいだから、悪化することはないと思うぞ」
「そうですか……」
 
 仕事を定時で上がり、そのまま夜の町へと繰り出して。
 アマツさんから、酒を交えた“真面目な話”を聞き出していた。
 僕の代わりに白の付き人となってくれた近衛騎士は、僕の知りたいことを教えてくれた。
 ――白は、とりあえずは、大丈夫らしい。
 ほっと安堵の溜息を吐く。
 その隙に串焼きを追加注文されてしまったが、代償としては安いものだ。
 
「しっかし、相変わらずユウキしか見えてないな、あのチビガキは」
「……僕はもう、いないのに、ですか?」
「ああ。ありゃあ帰ってくるのを待ってるぞ。
 ……ったく、真っ直ぐな娘だとは思ってたが、まさかここまで一途になるとはねえ」
 
 やれやれ、と溜息を吐かれた。
 僕はどう反応すればいいのかわからず、無言で水割りをちびりと含む。
 
「というかだな、そんなに心配なら、どうして直接会いに行ってやらない?
 アンタの顔を見れば、あいつすぐに元気になるぞ。
 仕事中は食人姫の世話で無理だとしても、上がってからならいくらでも会えるじゃないか。
 それこそ、今こうやってアタシに会う暇があったら、血塗れ竜の所に行ってやれよ」
「それは……そうなんですが。
 何と言いますか……顔を合わせ難くて……」
「マスター。このヘタレに一番強い酒な」
「…………」
「文句は無しか。お前の方も相当参ってるみたいだな」
 
 悪いのは自分だなんて分かり切っている。
 白に予め付き人を辞めることを伝えておけば、
 あるいは白に直接会いに行って謝っておけば、
 少なくとも白は、話に聞くほどのショックを受けなかったかもしれない。
 
 だけど。
 僕の目の前で、白の信頼と好意による、嬉しそうな微笑みが崩れてしまう――それが怖くて。
 僕は、何もできなかった。

89血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 22:57:01 ID:8RktHMM9

 俯いて黙り込む僕に対して、アマツさんはしばらく無言でいてくれた。
 やがて。
 
「まあ、しばらくしてからでいいから。
 そうだな……一月後くらいに会ってやれ。
 ひとりで行くのが怖ければ、私も立ち会ってやるから、さ」
 
 そう、言ってくれた。
「……はい。ありがとうございます。一月後に、必ず」
「ああ。――マスター、ちと早いが、お代だ」
 アマツさんは立ち上がり、カウンターの向こうへ金貨を手渡した。
 本当は僕払いだったはずだが、気遣ってくれたということだろうか。
 
 白の付き人を二つ返事で了承してくれたり、こうして色々気遣ってくれたりと、
 アマツさんには本当に世話になりっぱなしである。
 いつか、恩返しをしなければ――
 
「ほれ、行くぞ」
 
 ぐい、と襟首を掴まれた。
 
「え? え? 行くって?」
 今日はこれで終わりじゃなかったのだろうか。
 何というか、僕とアマツさんとの私的なやりとりで、はじめて感動的な終わり方ができると思ったのだが――
 
「ばっか、お前の恩返しが終わってないだろ。
 ここの奢りでもいいかと思ってたんだが、話を聞いてて気が変わった」
「うわ、ちょ、やめ、」
 流石は近衛騎士といったところか、力尽くでずるずると引きずられてしまう。
 というか、自分で歩くので離して欲しい。
 
 
 金髪美女に襟首を引っ張られる男という、情けない格好を晒しながら連れてこられたのは、
 ――裏通りにある、宿だった。
 旅の者がよく利用するような、素泊まりの宿とは目的を異にするもの。
 
 要は、男女の秘め事を行うための、宿である。


90血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 22:57:34 ID:8RktHMM9
 
 
 ――最近さ、いい男が見つからないんだよ。
 
 アマツさんは、そう言って、唇を合わせてきた。
 
 
“街の中”では、彼女は二つの顔を持つ。
 甲冑を身に纏っているときは、冷静沈着な騎士。
 私服を纏っているときは、気さくで大らかな美女。
 
 でも、更にもう一つ持っている顔は。
 きっと、僕を含めた一部の人しか知らない顔。
 
 
 彼女の体質を知った上で、
 受け入れられる男性は限られていた。
 だから、彼女は僕を“性欲処理の道具”として、時折身体を求めてくる。
 
 アマツさんとの情事は、何というか、通常のそれとは多少異なる形になるが。
 それでも、彼女の技術は熟達されていて、僕は何度も達してしまう。
 お互いがお互いの身体をよく知っているというのもあるのだろうが、
 何より、僕たちの身体の相性は抜群であった。
 白に会いにも行かず、こんなところで何をしているんだろう、という気持ちはある。
 でも。
 近衛騎士としての仕事を続けながらも、僕の無茶なお願いを聞いてくれて。
 白のことを気遣ってくれる、アマツさんには、どんな形でもいいから、恩返しをしたかった。
 僕は知ってる。
 この人は、自分の仕事と、こちらの無茶なお願いを両立させるために、自分の全ての時間を削り、
 睡眠時間すら大幅に削って、近衛騎士と王者の付き人という二つの大役をこなしているのだ。
 
 だから、せめて、ストレス解消くらいには、付き合わないと。
 
 顔見知り二人のために、己の身を削ってまで手助けしてくれる女性騎士。
 僕は、心の底から、アマツさんを尊敬していた。
 
 

91血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 22:58:06 ID:8RktHMM9
 
 
 
 
 隣で、ユウキが穏やかな寝息を立てている。
 可愛いなあ、と微笑みが零れてしまった。
 ――こいつは、いい奴だ。
 学院生時代からの付き合いだが、私はこいつ以上の“お人好し”を見たことがない。
 誰かを助けるのが何より好きで。
 そのくせ、現実を中途半端に受け入れている。
 だから、全員の幸せなんて願わずに、自分が助けたいと思った相手“だけ”を重視する。
 執政官を目指していた頃だって、競争相手を助けるために、自分の未来を捨ててしまったような奴だ。
 
 そんなユウキを、私――アマツ・コミナトは、好ましく思っている。
 
 私は体質のこともあり、周囲とは上辺だけの付き合いばかりになっていたが。
 ユウキとだけは、信じられないくらい、上手く付き合えていた。
 恥ずかしながら告白するが、学院生時代の私は、それはもう目を覆うような奥手だった。
 ユウキのことが凄く気になっていたのに、それを表に出すことができず、心を鎧で覆っていた。
 まあ、その影響か、甲冑を着たときの心の切り替えが、非常に上手くいってるわけだが。
 まあそれはそれとして。
 そんな奥手の私ですら、怖がることなく近づくことができたのは、ユウキの人柄としか言い様がない。
 表向きだけツンツンして、その内心ではビクビクしてたような小娘だった私だが。
 ユウキは何の抵抗もなく、私と対等に付き合ってくれた。
 他の生徒連中は、怖がるか敵対するか崇拝するかで、誰も隣に立ってくれなかったのに。
 このお人好しは、私を“ただの先輩”としか見てなくて、それがとても心地よかった。
 こいつのおかげで、私は強くなることができた。
 学院の執行部を二人で改革したときの達成感は、今でも鮮明に思い出せる。
 
 ユウキの人間性という一点において。
 長年じっくり見つめてきた私だからこそ、誰よりも理解してるつもりである。
 
 だから。
 
 学院生時代から、私の中で“一番いい奴”だったユウキだからこそ。
 ――血塗れ竜を、託すことができた。

92血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 22:58:47 ID:8RktHMM9

 血塗れ竜こと、ホワイト・ラビット。
 こいつはこいつで、私とは少なからず因縁がある。
 だからこそ、適当な処遇など許せるはずがなく、私自ら中央監獄に連れてきて、それなりの待遇を保証させた。
 
 戦い方を教えたのも私だし、囚人闘技場で戦うことを勧めたのも私だった。
 
 最初は、あまりにもひょろっちかったので、体力を付けさせるだけのつもりだった。
 しかし――教えれば教えるほど、スポンジが水を吸い込むかのように技を覚え、
 更には、とんでもない能力があることさえ、明らかになった。
 気付けば、私を凌ぐほどの腕前になっていて。
 これなら、闘技場でも生きていけると思い、出場を推薦した。
 
 
 最初は、気まぐれだったのだ。
 
 
 少女に戦う術を教えたのも。
 誰にも心を開かなかった少女の付き人として、学院生時代の後輩を推薦したのも。
 ただの、気まぐれだったのに。
 
 少女は囚人闘技場の王者となり、“私の”後輩を手に入れていた。
 
 担当を外れた後も、血塗れ竜のことを一番に想い、私に身体を売ってまで、彼女のことを気遣っている。
 私が欲しかったものを、少女は手に入れてしまったのだ。
 
 
「……もう、いいよな」
 
 ぽつり、と呟きが漏れた。
 
 ――血塗れ竜。
 もう、充分、楽しんだだろう?
 私もそろそろ、身体だけの関係じゃ、我慢できなくなってきたんだ。
 
 食人姫なんて予想外の手合いも現れたことだし。
 もう――遠慮するのは、止めにしよう。
 
 ベッドから抜け出て、服を着込む。
 穏やかに眠っているユウキの頭を優しく撫でて、私はそのまま、外へ出た。


93血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 22:59:23 ID:8RktHMM9
 
 
 
 ノックをして、部屋へと入る。
 血塗れ竜は、懲りることなく愛しい相手を期待し、また勝手に裏切られている。
 いい気味だ。
 
「……こんな夜中に、何の用?」
 
 血塗れ竜が、声をかけてくる。
 確かに、私が普段通っている時間とはかけ離れている。
 訝しく思うのも当然だろう。
 
「いえ。貴女に少し話がありまして」
「……その話し方、止めて」
「仕事上の話ですから」
 
 言いながら、一歩踏み出す。
 ――私は、これから、この少女から少なからず向けられている信頼を、壊そうとしている。
 今まで、ずっとできなかったこと。
 少女に対する罪悪感が、させてくれなかったこと。
 
「……え……?」
 血塗れ竜の表情が、困惑に歪んだ。
 
 私は、更に、一歩、踏み出す。
 何故だろう。お腹の下あたりから、熱い衝動がこみ上げてくる。
「どうして」
 血塗れ竜が、鼻をひくひくさせながら、呆然と。
 
 
「どうして……アマツから、ユウキの匂いが、するの?」
 
 
 そう、呟いた。
 
 
 
「ユウキ・メイラーは、もう来ません」
 
 だめ。耐えられない。でも、我慢しなくちゃ。
 
「貴女は、見捨てられたのです」
 
 ――笑いを堪えるのに、必死だった。


94血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/06/29(木) 23:00:05 ID:8RktHMM9
伏兵登場。
学院生時代も書いてみたいなあ、とか思いました。
きっとアマツさんが建物の陰から覗き込んでるんですよ。
それで、近づく泥棒猫を校舎の裏で……!
 
 
>>83
GJ!
有華さんに惚れました
95名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:05:24 ID:8jg1pztl
キターーーーー!!
ユウキは羨ましいがお前なら許せる!

しかしどんどん刺客がでてきてwktkが止まらないっ!!
96名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:07:32 ID:AtYAJ2JT
.hackスレ見に行ったらこんなの発見w向こうの人このスレ見てるんだろうか?
891 :名無したんはエロカワイイ:2006/06/27(火) 23:44:34 ID:aqPJ03wz
こんなアトリ様は嫌だその@
ttp://kjm.kir.jp/?p=27005

怒った時のセリフが「喰 い 殺 し ま す よ ! ?」
(((´・ω・)
97名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:07:37 ID:jxTeAuOk
GJ!!!
ついにアーマーバロンが動き出した!!!
98名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:13:56 ID:EXLw9mHX
やべぇ、思わぬ伏兵だ
こいつはどれが勝つかわからないぜ(*´д`*)
とりあえず体的にはアマツが一歩リードか
ユウキもいい奴なのに見事な受けっぷりで



羨ましい…(*´д`)
99名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:18:50 ID:A0r42CX5
ぎいいいやああああああああああああ!!!!!!!?
ヤベー、こんなヤベー修羅場だってのににやけるのを堪えるのに必死だぜ!!
100名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:25:30 ID:aDQvu2iC
え?俺?
いつもにやにやしてるけど?
101名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:26:15 ID:1VLx3Ndw
その、般若笑いがか?
102アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/29(木) 23:39:44 ID:teFZ9yeM
投下します
103名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:40:05 ID:IgHq4odr
血塗れの作者さんは何故主人公の性格に嫌味さを感じさせないままにここまでの修羅場を書くことが出来るのかと小一時間(ry

いやもう最高です、アマツさんにwktk
104アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/29(木) 23:40:25 ID:teFZ9yeM
投下します
105姉妹日記 11話  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/29(木) 23:41:36 ID:teFZ9yeM
「は!」
 気を失い僕が暗闇に捕らわれている間にもう夕方になっていた
 重い身体を包み込む柔らかく暖かな感触に僕は首をずらした
「秋乃さん?」
 僕は秋乃さんに抱きつき昨晩の恐怖を忘れようとすがった
「あ〜ん、涼くんったら、だ・い・た・ん・・・・もしかして姉妹丼狙ってる?」
 おかしい、おかしいよ・・・・・
 僕の秋乃さんはこんな反応しない!
 僕は抱きついた相手が春乃さんだと気づき慌てて離れた・・・・
 すぐに春乃さんの後ろからすごい殺気を感じ僕はゆっくりと視線が春乃さんから上に向かわせた
 ど、ど、どうしよう・・・・・
 目を引きつらせ僕を見つめる秋乃さんに軽い恐怖を感じながら僕は後ろに引いた
「涼さん!」
 覇気に満ちた声を上げて僕と春乃さんの間に割って入り僕の腕を力いっぱい抱きしめた
「春乃・・・・涼さんに手出したら・・・・どうなるかわかってるんでしょうね!」
 普段の落ち着きをなくし春乃さんを牽制するかのように睨み付け僕は自分の物なのとばかりに抱きつく
「え〜いいじゃん、姉妹丼・・・・ね?」
 同意を求めないでください、秋乃さんが物凄い形相で睨んでいるのがあなたには見えないんですか?

 まったく、まったく、まったく、まったく!
 涼さんは私のなの・・・・妹だからといって許すわけにはいかない
 少しはしたないとは思ったけど私は身体を涼さんに絡ませるように抱きつき春乃を牽制した
 それなのに春乃ったら、姉妹丼なんて言って・・・・ぜんぜん引かない
 いくら私もとはいっても涼さんが私以外と・・・・考えられない!
 あれ?涼さんが少し怯えてる?
 ごめんね、嫉妬深くて・・・・
 でも、私ワガママなの・・・・涼さんのことになると・・・・
 この同棲のことだってそう、理由は・・・・当然涼さんのご姉妹のこと
 荒らされた部屋・・・・あんなことするのは二人以外ありえない
 もちろん自立のためというのは嘘じゃない・・・・
 でも私は涼さんが取られるのが嫌だった
 だから・・・・
「あの、なにシリアスなの?ここはラブコメ展開じゃないの?」
 顔を強張らせる私に春乃がやや遠慮がちにそう言う
 私がニコッと笑むと春乃は全身を震わせて身を下げた
「あの〜、涼くん・・・・あとは・・・・よろ」
「あ〜!!!!逃げるなよ〜〜〜!!!!」
 何を仲良さそうにしてるのかな?
 身を乗り出す涼さんを私はグッと引きこちらに寄せた
「あぐ・・・・その・・・・ごめん」
「やましいこと・・・・考えてた」
 そう言うと涼さんは思い切り首を横に振ってそれを否定する
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと・・・・」
 なら・・・・いいか
「涼さん、荷物運ぶの手伝って・・・・」
 涼さんは頷き立ち上がると玄関に向かった
「あ、外のをお願いします」
 また頷くとドアを開き外に置いてあったダンボールを持ち上げた
 それと同時に涼さんの顔が強張りダンボールを地面に落とした
「こんにちは、今日から隣に引越ししました・・・・・神坂です」
 聞き覚えのある声に私が慌ててその場に向かうとそこには満面の笑みの涼さんのご姉妹の姿があった・・・・
「これから、よろしくね・・・・お兄ちゃん」
106姉妹日記 11話  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/29(木) 23:42:20 ID:teFZ9yeM
 ふふ、驚いてる驚いてる
 驚かせるだけじゃ足りない
 あの女には地獄の底よりも深い苦しみと絶望を味あわせてやる
 お兄ちゃんをたぶらかした罰、存分に味合わせてやるんだから!
 私とお姉ちゃんは挨拶もそこそこに呆然とする二人を素通りして部屋に入った
 そしてある一室に入る
 よしよし、お姉ちゃんとうなずきあって私は笑んだ
 モニターに映し出された隣の部屋・・・・
 お風呂場にお兄ちゃんの部屋・・・・それとあの女の部屋
 居間に台所・・・・ここに居て隣の部屋の全てが見える
 昨日の夜から録画してあったものを見た
 大丈夫、お兄ちゃんはあのあと気を失ったままだった
 でも、誰?あの女にそっくりな女が居た
 馴れ馴れしくお兄ちゃんの頭を膝に乗っけて
「この子も・・・・要注意ね・・・・冬香ちゃん」
 
 許さない、涼ちゃんは私のなのに・・・・
 それにしても、ふふ・・・・バカな子・・・・
 私は冬香を見て微笑した
 なにがバカかって?だって、涼ちゃんは二人のもの・・・・なんて言葉信じちゃってるのよ?
 バッカじゃないの!あんたなんかと涼ちゃんを共有なんてとんでもない
 涼ちゃんに近づく女はたとえ妹でも許さない
 でも、いまはまだ利用価値がある
 利用価値がなくなったら・・・・・ふふ
 どうしようかしら、これ以上周りをうろちょろされても困るのよね・・・・
 今はどうてもいいか・・・・・後で考えましょう・・・・・
 冬香もそうだけど・・・・あの女にも少し感謝しなくちゃね
 だってやっと踏ん切りがついた物
 姉弟の壁を越える踏ん切りが・・・・
 でもあなたの至福の時間もここまで・・・・・
 冬香も・・・・秋乃も・・・・・みんな私にとって踏み台でしかない
 あんたたちは私の踏み台になって初めて価値が出るの
 そう、届かない涼ちゃんの元へ私は二人を踏み台にして登るの
 見てなさい、気づいた時にもう届かないところで愛し合う私と涼ちゃんを・・・・
 指を咥えながらね・・・・ふふ
 あ、はははははは!!!!!!
107アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/29(木) 23:43:37 ID:teFZ9yeM
リアルが忙しくて投下できない日々がこれから続きます
忘れないでいてくださいね・・・・・
108名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:46:25 ID:FfoG/StZ
>>94
盛り上がってまいりましたね。GJ!

ところでなんとなく作者様に質問。アトリの異国風味ってどんな感じ?
舞台が恐らく中世西洋として、思いつく所だとエスニック系もしくは
アボリジニ系。はたまた中華とか倭国だったりして…
109名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:47:31 ID:EXLw9mHX
忘れるわけがないじゃないか
こんなに堪らない姉妹のことを!?
あぁ、こんな姉妹が欲しい(ノД`)シクシク
特に姉の方が(*´д`*)
監視とかに快感を覚えだした時点で俺はやばいのか?そうなのか?
110名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:11:11 ID:dC3xfD8B
>>94
GJ!!
アマツとユウキの学院生時代の話を外伝で是非!!
111名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:13:35 ID:biacP0/s
ここの住人は、監視や監禁に遭遇することで快感を感じることができる、唯一の動物である

>>94
むしろユウキが欲しいんですけど、どこいったらいますか?
112名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:19:28 ID:Oz4z1Egm
>>107
GJ!!涼はあの後気を失ってたのね。
無理せず頑張ってください。
113名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:28:05 ID:CnVEPubl
神が多すぎて我慢できない!!!
一つ一つの作品にレスはできないけど神々の皆様応援してます!!
114名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:28:35 ID:8IfDFxsy
>>111
血塗れ竜と食人姫、怪物姉妹にアマツさんに狙われるよ


無茶なことしやがって
115名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:53:09 ID:1Zl9Q/nm
>>108
エスニック系って東南アジアのこと?
アジアまで離れると、かなり顔の作りが違ってきちゃうからなあ。
アラブ、ペルシャくらい、一番遠くてインドあたりまでじゃない?
トルコとか東欧系の可能性もあるか。作中で美人と言われるからにはコーカソイドの範疇じゃないのかな。
名前は全体的に和のテイスト漂ってるけどね。
116名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 01:17:17 ID:+EkY00bl
>>107
この姉妹たちの嫉妬心は本当に素晴らしいな
それを作り出している神のことを忘れるはずがありません!
117名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 05:24:46 ID:7Q03i3e6
>>96
主人公のセリフに「食い殺すぞ!」ってのがある。
このスレとは関係ないだろ。

まあその主人公も修羅場突入が確定してるんだけどね。
118名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 11:20:55 ID:99jkKGOj
このスレに投下するためにネタをねりねりしています。
神々にどこまで食い下がれるかわかりませぬが、投下した際はよろしくお願いします。

今連載されているのだと、血塗れやブラマリいいですよね……
119名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 11:22:40 ID:kvnI4M+b
>>118
期待して待ってるっす

さてお昼休みは過去の作品を読み返すかな
藍子たんハァハァ
120『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/30(金) 13:51:12 ID:nFnvpR7V
「さてと、寝るか……」
布団を買う金がなかったので雑魚寝。まあ畳だから大丈夫だろ。
「あれ?もう寝ちゃうんですか?」
「ああ、疲れたから。」
「あー。バイトですか。お疲れ様です。」
「…それもあるが、第一にお前の存在に疲れた。ま、朝起きたら消えてるってこともあるかもな。」
それはそれで寂しいかもしれんが……って何考えてんだ、俺。こんな奴、百害あって一利なしだ。
「うぅ、ひどい…」
「いいから、お前もさっさとねれ。」
「はぁーい。」
そう言うと、なんの迷いもなく俺の隣りで横になる。………セレナとこういうことは何回かしたことあるが、何故かこいつがいると緊張する。
「お、おい。離れて寝ろよ。うっとおしいだろうが。」
「え?そうですか?別にいいじゃないですかぁ。」
そう言うと丸くなって寝る態勢になる。……もうめんどくさい。好きににさせればいいか。
それから数十分経ったが、まだ寝れないでいた。体は疲れているのだが、いかんせん、こいつが隣りに居るせいなのか、寝れない。
つーか、幽霊っ寝るのか?
121『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/30(金) 13:52:06 ID:nFnvpR7V
「晴也さん、起きてます?」
そんな考えを見透かされたように声を掛けられ、ギクリとしてしまった。
「ああ……寝れねぇ。」
「……ごめんなさい。私がいると、寝れないですね。……あ、夜の間は、外へ出てますから。朝になったら戻ってきていいですか?」
この馬鹿幽霊が。なに珍しく気を使ってんだ。らしくない。
「んな気の利いたことしたいなら、でてかねぇてここに居ろ。」
「え?」
「俺が眠くなるまで話し相手でもしてろってんだ。その方がよっぽど効率がいい。」
「…は、はい!」
それを聞いた途端、背中を向けていた体を、こっちへ向かせる。心なしか、その顔は嬉しそうだった。そんなに話事が嬉しいってのか?
「えっと、そうですね。何を話そう……えーと、えーーとぉ。」
「……お前。」
「へ?」
「今日、なんで俺のバイト先にこれたんだ?…教えてねぇはずだ。」
「あ、うーん。なんで、でしょう。誰か他に私を見れる人が居るかなぁ、と思って散歩してたんですけど、やっぱり誰も見れなくて………」
話していく度に、葵の声が悲しみを帯びていく。
122『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/30(金) 13:52:54 ID:nFnvpR7V
「それで……寂しかったから、晴也さんに会いたいなぁなんて思ってたら……あのレストランに着いちゃったんです。」
……そうか、こいつは今のところ俺とセレナ以外からは見られないし、存在にも気付いてもらえないんだ。もし、俺がこの部屋にこなかったら……
ずっと独りぼっち。周りに人は居ても、世界で一人っきりだというのと変わりは無いんだ。
「でも、本当に嬉しかったんですよ?あそこで晴也さんに会えて……私に声を掛けてもらって………」
そう言うとまた一段と声が明るくなり、笑顔になる。不覚にもその表情にドキドキしてしまった。
「ああ……そ、そういや、セレナの奴も、お前の事が見えてたな。やっぱり、俺以外にも見えるんだな。」
「そういえばそうでしたね………あのぉ、晴也さん。」
「あ?」
「…えと、その。……あんまり聞きたくないんですけどぉ………セレナさんと晴也さんて……つ、付き合ってるんですか?…恋人として。」
何を聞いて来るかと思ったら……突拍子も無い。
「ああ……そう、らしい。」
我ながら自信の無い答え方だ。セレナが聞いたら怒るだろうな。
123『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/30(金) 13:54:16 ID:nFnvpR7V
「らしいって……あはは、変な答え方ですね。」
「……俺に去年の記憶が無いって知ってるだろ?」
「ええ。大型記憶喪失。」
「その記憶の無い去年に、俺の方からセレナに告白した……って、セレナに教えられたんだ。」
「へぇー……それって、本当なんですかね?」
「そうなんじゃないか?確かにセレナは魅力的だし、告白したっつっても不思議じゃ無い………それに、セレナが嘘ついてたとしても、そこまで俺みたいなのと付き合いたい理由もないだろ。」
自分でも、このぶっきらぼうな性格は人に不快感を与えるぐらいだと思う。まあ、だからといって治すのも癪に障るわけだが。
「……そんなこと無いと思いますよ?……晴也さんは、自分で思ってるほど、きつい性格じゃないですよ。それは確かに……口は悪いですけど………
でも、やっぱり優しいと……ううん、初めて会った時より優しくなったと思います。」
こいつはいきなり何を………
「だって、最初の頃の晴也さんだったら、セレナさんが私を見れるってわかった途端、『こいつに成仏手伝ってもらえ!』って言ったはずですもん。」
124『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/30(金) 13:55:06 ID:nFnvpR7V
「……それって、俺の真似か?」
「ええ、自分でも似てると思いますよぉ。」
「ば、馬鹿にしてんのか!そんなんだったら本当にセレナに引き渡すぞ!」
「ああー。嘘、嘘ですよぅ。冗談ですって。」
そう言って胸をバシバシたたいて来る。こんにゃろ、適度に具現化しやがって。と、その時。
「………」
「どうかしました?…本当に怒っちゃったんですか?」
「お前……香水なんか、つけてない、よな?」
「え?…い、いぇ、それは無理だと思いますけど……」
「だよな。」
葵が胸を叩く度に香る、甘い香り。これはどこかで嗅いだことのある香水の匂いだった。……どこで…誰の匂いだったか。……ああ。これは、消えた記憶の中にある………
「……大丈夫ですか?辛そうな顔してますよ?」
「あ、ああ。大丈夫。」
またか。どうも思い出そうとすると心身ともに辛くなる。もうやめだ。寝よう。
「眠くなった。そろそろ寝る。」
「うん、私も。…ふぁーあ…眠いです。」
そう言ってまた丸くなって、眠りに入る。
「……おやすみ。」
「!……はい、おやすみなさい。」
125『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/06/30(金) 13:56:01 ID:nFnvpR7V
軽くキャラ達に感情移入してしまったorz
126名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 14:48:46 ID:5PCphG+m
葵さんが貞子化しますよーに(ポンポン
127『疾走』 第六話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/30(金) 15:35:05 ID:hu+i58my
 ああ……。気まずいだろうな、会ったら……っ。
 それにしても、俺はどうするべきだろうか。
 有華を、俺は好きなのか――どうかだ。これは、次に有華に会うまでに、決着しなければならない問題である。
(嫌いなわけは、ない)
 それだけはハッキリしている。
 ただ、じゃあ好きなのかと問われると……俺にとって、あいつは幼馴染みで、妹みたいな存在で……。
 長年の蓄積した関係が……明確な俺の気持ちの判断を、阻害してしまう。
「ああ、ああ……っ」
 などと悩んでいると、聞き慣れたメロディ。
 ポケットからそれを取り出す。……誰だよ、俺がめちゃくちゃ悩んでいる最中に、畜生――。
「……非、通知……っ?」
 数字の羅列を、思い出す。
 ――のどが、渇いている。……昨日かけまくってきたのと、同一の人物か……っ?
 とにかくまずは、応対するべきだろう。
「……もしもし?」
 別に怯えることはないんだ。
「あの……昨日もかけてきましたよね?」
 問いかけるが――返事が、ない。
 見事に雑音は捉えられないし……これは、昨日と同じだ。
「なんで、あんなにかけるんです……? なにか、俺に用事なんじゃ――っ」
 ぷつん。
 ……相手から、通話を、切った。
 耳から携帯を離して……見下ろす。
「なんなんだよ……っ。薄気味悪い……じゃないか」
 液晶には、十二時二十八分と、表示されている。
 もうこんな時間か……随分有華のことで思考に没頭してたな。
「もう……寝るか」
 というか……情けないが、なんだか孤独が怖かったんだ。その忘却の手段として……眠るってのは、手っ取り早かっただけだ。
 起きたままだとどうしても考えてしまう……昨日から続く、無言の電話。
 ……電源、切ろう。うん。目覚しの時計を用意しないと。


 繋がらない。
 ――この反応は、もう眠ったものだと、判断する。
 立ち上がる。
 ……会いに、行く。
128『疾走』 第六話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/30(金) 15:35:55 ID:hu+i58my
「ふぁ……っ。くそ、眠いっ……」
 ――うん?
 なんか唇に違和感があるような……ありゃっ? 変なもんなめたかな、昨日。
 昨日と言えば――しまった、飯のタイマーを予約するの忘れてた……そもそも米をとぐのすらやってないけど。
 時刻は、すでに七時の三十六分……。おかずの用意も、間に合わんな、こりゃ。
「コンビニ行かないと……」
 とにかくさっさと着替えて、ちょっと早めに家を出ないと……。
 制服姿に変身してから、リビングに。少しだけくつろぐ時間はあるし――っ。


 テーブルの上には。
 ラップに包まれた幾つかのおかず。
 そして――保温になっている、炊飯器が――っ?


「――はあっ……!?」
 待て、待て、待てよ……っ! 意味が、わからないぞっ!
 俺は昨日有華の一件で参って、明日の弁当の米をとぐのすら――忘れたっ! 忘れたんだよっ……!
 ――じゃあなんで……ちゃんとたけてるんだよ……飯がっ!
 そして最大の違和感は……。
「おかずが……なんで、あるんだ……っ? あは、はは……っ」
 何故か、笑みがこぼれる。……冗談だろう?
 ラップを剥がして……卵焼きを、一つ摘んだ。
 冷めているけど……美味しいな、うん……。いや……まず見た目があまりにも綺麗だったから、すぐに美味だってわかる。
「はははっ……。す、すごいなあ……有華の、やつ。こんなに上達した、なんて――っ」
 ――違うだろうっ……! 阿良川瑛丞っ!
 つい先日に味わった有華の腕前は……最悪だったじゃ、ないか……っ!
 一日やちょっとで、美味と変貌するほど、マシではなかったんだ――断じて。
「じゃあ……誰が、作ったんだよ……っ?」
 昨日俺が眠ってから……。
 その誰かは、俺の家のドアを開けて……台所で、調理をした……っ? ちゃんと炊飯器の予約も完了して。
 出来上がったおかずにはラップをする。
 決して、その誰かはここの鍵を持っている有華ではない……だって、あいつは、料理が下手だから。
 そして――誰かは、まだ、この家に……いるかも、しれない――っ!?
「ひっ……! うわ、ああああっ!」
 動転して、無意識にテーブルの上の皿を、全部投げ飛ばす。
 砕け散るおかず。そして皿……っ! 全部だ、全部投げろ、俺っ!
「ああああああああああっ! だ、誰だよ、誰が、勝手に作りやがったんだよっ!」
 思い出すのは無言の電話……。
 雑音すら入りえない、通話の奥に潜む人影――。
「ひぐぅ……っ! はあ……っ! ああ……っ!」
 他人からすれば……朝のリビングに、食べ物が並んでいるのは……至極当然の光景かも、しれない。
 だけど……俺の母親は、もう、とっくの昔に……死んでるんだよっ!
 この家での家事の担当はもっぱら俺であり、その俺が作った憶えのない、数々の料理……っ。
 俺からしてみれば――恐怖の、具現でしか、ない。
「誰だよ……っ。いるんだったら、出てきやがれ、畜生――っ!」
 頭を抱えて……俺は、しばらく壁を背中にしたまま、動けなかった。
 視線を辺りに走らせたまま……震えて、いた。
129『疾走』 第六話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/30(金) 15:36:35 ID:hu+i58my
 遅刻したのは……本当に、久しぶりだった。
 きちんと登校する事に関して中学の頃から非常に真面目だった俺は、昔からの付き合いのやつらからは、随分と驚かれた。
「おいおいどうしたエースケ。お前が遅れるなんて……なんだ、風邪でも引っ被ったかっ?」
「いや……ちょっと、な。寝坊って、ところだ」
 あんまり……俺の遅刻の理由を問い質さないで、くれよ……。
 嫌でも思い出すから……っ。
 あの――誰かが俺に用意してくれた……料理の数々をっ……。
 自分の部屋を含めて、家の全てを、俺は調べた。
 クローゼットに、ベッドの下……そんな暗闇を一つ覗くだけでも、心臓が爆発しそうに喚いた。
 ――結局。俺が調べている時間に限り……誰も存在していないことが、確認出来た。
 だが……確実に、誰かがいた。
 俺が眠った……多分一時くらいか。それ以降に侵入して、俺が目覚めるまでに、退出している。
 ベランダの窓は無傷だから、正面から――つまりドアの鍵を開けて、入ってきたのだろう。
 今朝のリビングの光景が……それを如実に物語っている。
(警察に……言ったほうが、いいよな……っ。これって)
 金銭や貴重品を盗られた訳ではないけど、誰かが確かに侵入したんだから……無許可でっ!。
 これはれっきとした、犯罪じゃないか……っ?
「日直は号令せんか――っ! 授業始めるぞ」
 二時限が始まろうとしている。
 俺だけが……教科書も取り出さず、ボケッと、座ったままだった。
130『疾走』 第六話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/30(金) 15:37:31 ID:hu+i58my
 昼休みを、そうやって迎えた。
 用意されていたあれを……持ってくる気分には、とてもなれなかった。そもそも、投げ飛ばしたからな……っ。
 つまり、俺には昼食がないのだ。
 食欲がなかったので、それは大した問題ではない……もっと他に、考えなければいけないことが……っ。
「阿良川――っ。お前にお客さんだぜ」
「……えっ?」
 窓際の席で、青空を見上げていた俺を、呼び出す声。
 ドアの傍で手招きしている。……なんだよ。誰だ、貴重な昼休みに俺を訪問しようなんて呆れたお人は……っ?
 渋々立ち上がり、近付く。
「お客さんって、誰だよ」
「美人の先輩だよ……畜生。羨ましいぜ、てめえ……っ!」
 などという台詞を残して立ち去りやがる。
 そいつが退いた先には――。
「……いたり先輩?」
「エースケくんっ。こんにちわっ」
 ぺこりと、嬉しそうにお辞儀する先輩。
 ……なんだ。屋上での一件は、完璧に振り払ったみたいだな……よかった、本当に。
 やっぱり先輩は、そうやって笑ってるほうが――周囲にも、自分にも幸いだと思える。
 ああ……なんだか少し和めた。ありがとう、先輩……っ。
「あの、それで今日はなんの用件ですか?」
「――えっと。エースケくんの、席って……どこでしたっけっ?」
「……っ? 窓際の、一番後ろですけど」
 人差し指で示してやる。
 先輩はそっちを数秒見つめてから――。


「なんで、お弁当、持ってきてくれなかったんですか……っ?」


 まばたきを、忘れてしまう。
 俺は……先輩を、静かに、見下ろした。
131『疾走』 第六話 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/30(金) 15:38:55 ID:hu+i58my
 エースケくんの机の上は……なにものっていません。綺麗さっぱりです。
 昼休みに入ってから十分。
 エースケくんとお昼を一緒にしていた時期に――彼から、自分はちゃんと昼休みに弁当を食べる主義……って、聞きました。
 だから早めに平らげている可能性はないでしょう。
 なら今の時間――あの机には、お弁当の箱がのっているはずです。
 ……持ってきて、いるなら……っ!
「ちゃんと炊飯器は予約してましたし……。おかずはラップしてましたよね……っ?」
 頬を膨らませて……ちょっと拗ねたふうに、私は言います。
 だって酷いです。せっかく私が、愛情込めて作ったのに……忘れちゃう、なんて。
「もうっ。エースケくん、酷いですっ! そんな、照れなくてもいいですのにっ」
 ――あれっ?
 どうしたんですかエースケくん……そんな、私をじっと睨んで……っ? て、照れちゃいますよぉ。
「先輩……だったん、ですか……今朝の、あれは……っ?」
「はいっ。どうですエースケくん、これが女の子の本分なのですっ」
 あのガサツそうな女と比べてください。どうです、女性への見方が変わるってもんでしょうっ!
 あふ……っ。駄目です、笑みが無限に溢れてしまいます。
「――せん、ぱい……っ。あの、その……今日の、放課後ですね……屋上に、来てくれませんか……っ? ちょっと、話が」
「ふえっ……!?」
 これは――早くも、矯正は完了したみたいですっ。
 もちろん私は頷きました。
「じゃあ……また、放課後に、会いましょう」
「わ、わかりました……っ。待ってますね、エースケくんっ!」
 本当は、お弁当のことで色々言いたかったんだけど……思わぬ収穫があったので、許してあげます。
 もう目前です。
 エースケくんが……私のものになるのは、もう……っ。


 あはは、はははっ。ははは、ははは……っ!
 迷惑ですって言ったことは、もう、全部許しちゃいますっ。
 だから――今度はエースケくんから、付き合ってって、お願いしてくださいよっ?
 先輩の、お姉ちゃんの私に……願ってください、エースケくん。
132 ◆/wR0eG5/sc :2006/06/30(金) 15:42:28 ID:hu+i58my
今までレスしてくれた方々、本当にありがとう。
話の展開になにか無理を感じてきましたが……もうちょっと頑張りますね。
133名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 16:21:03 ID:xpdjRXc3
こ、こえぇ・・・ある意味ホラーだな、俺たちにとってはご馳走だが
有華の(ふざけんな……。ふざけんなっ!) が大好きな俺は彼女の出番を楽しみに待ってるよ
ところで、文体で福本伸行を思い浮かべたのは俺だけだろうか?
134名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 16:28:22 ID:dC3xfD8B
俺も家帰ったらご飯が炊けてたことが・・・












































タイマーだけどな
135名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 16:35:41 ID:5PCphG+m
>>134
ははっこやつめwwwww
( ´∀`)σ)`∀´)プニッ
136名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:23:40 ID:zBP0ksWV
咳をしても一人
137名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:35:47 ID:qUKWrPw8
一人暮らしをしてた時の思い出
一度だけクシャミをした後に鼻水でモニターを汚してしまってティッシュで拭こうとしたら横から差し出された事がある
138名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:39:59 ID:d1O2JTNJ
( ´∀ `)σ)`∀´)`ε´)チュ

>>134君は絶対に渡さない!!!!
139名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:45:20 ID:pvgnb0nD
>>137
それなんてスピリチュアルメッセージ?
140名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:48:22 ID:pxwE/wS3
もう134君ったらぁ
141名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 18:29:20 ID:cQou1qeu
この先輩可愛すぎだろ・・wwwwwww
142名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 19:54:18 ID:dC3xfD8B
パロディだが、中々良い物を見つけた。
最後包丁出てくるし・・・
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/d/dokuro29-9.html
143アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/30(金) 20:03:49 ID:r8SGPlqk
投下します
144姉妹日記 最終話(仮)  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/30(金) 20:07:06 ID:r8SGPlqk
 人ごみと騒がしい声の波の中で私はそっと標的に近づいた
 そして電車が来るのを確認し私は静かに気づかれないように小さな背中を押した
 瞬間の絶望感に満ちた顔が私に向けられた
 軽い罪悪感とこれでお兄ちゃんが戻ってくるという嬉しさが交差した
 電車に轢かれ肢体がバラバラになるとき私はある違和感を覚えた
 でも、もう気にする必要もない・・・・
 私はむせたふりをしてその場を足早に去った
 その後ケータイを取り出しお姉ちゃんに電話する
「もしもし、やったよ・・・・・」
 
 ふふ、あははは・・・・・やっと
 とうとうあの女を地獄に叩き落とすことが出来た
 嬉しさを隠そうともせずに私は笑み声を上げた
 そしてドアを開き涼ちゃんの所へ・・・・
 え・・・・どうして?
 階段を登るあの女、秋乃を見て私は呆然とした・・・・
 近づいてくるだけを感じ私はとっさに身を隠した
 しばらくして見たのは仲睦まじく階段を降りる二人の姿だった・・・・
 どうして?あの女は冬香が・・・・
 まさか・・・・・・

「ただいま・・・・お姉ちゃん」
 私が帰るとお姉ちゃんは暗い部屋で一人ぽつんと膝を抱えていた
「どうしたの?明かりも付けないで」
 電気をつけてお姉ちゃんの顔を覗き込む
「あんた、間違えたでしょ・・・・」
「え・・・・?」
 お姉ちゃんらしくない声に私は驚いた
 すぐに両手が私の肩を掴み押し倒した
「あんたが殺したのはあの女の妹だって言ってるんだよ!」
 そ、そんな・・・・
「前々から思ってたけど・・・・あんたってほんとバカ・・・・信じらんない!」
 罵声が飛び私をなじり肩を思い切り掴まれる
 そのまま何度も床に叩きつけられた
「痛い・・・・痛いよ・・・・お姉ちゃん」
「もう、だめじゃない!あの女殺せないじゃない!涼ちゃん私の物になんないじゃない!」
 そのままナイフを取り出した・・・・そして・・・・
「やめて!」
 迫ってくるナイフをすんでのところでかわして私はお姉ちゃんを押し返した
 華奢な身体が倒れ視線が私を射抜く
「もうダメよ・・・・だから、あんた殺して・・・・涼ちゃん拉致して・・・・・」
 その目は狂気に狂い定まらない視点がさらに恐怖を感じさせた
「死ね・・・・もう誰も涼ちゃんに近づけさせない」
145姉妹日記 最終話(仮)  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/30(金) 20:08:02 ID:r8SGPlqk
 今日は秋乃さんと春乃さんと一緒に買い物に出かける予定だった
 いつまで経ってもこない春乃さんを迎えに行った秋乃さん
 一人で帰って着た秋乃さんに春乃さんは?と問うと行き違いになってしまったと言った
 こちらに来てないかと聞かれ僕が首をよこに振ると
『じゃあ、先に行こう・・・・待ち合わせ場所は・・・・メールで打って・・・・と』
 その後、つかの間の二人だけの時間を満喫するつもりだったけどいつまで経っても春乃さんは来ない
 突然春乃さんのケータイが鳴って彼女が出た
 すぐに彼女は慌てて駆け出して僕に何度か謝ると僕を置いてどこかへ行ってしまった
 何度か電話を掛けてみたけど返事はなかった・・・・
 しょうがないので僕はマンションまで戻ってきた・・・・
 ドアを開こうとした瞬間かすかな泣き声が隣の部屋から聞こえてきた・・・・
 ダメだと思いつつも僕は心配になり隣の部屋に入った
 すぐに真っ赤な鮮血が目に止まり僕は血の源を探した・・・・
「夏姉ちゃん!」
 駆け寄り血まみれの身体を抱きかかえるがもう息はなかった・・・・
「う・・・・うぅ」
 僕はようやく泣き声のことを思い出し声のする窓のほうに近づいた・・・・
「冬香・・・・・」
 僕の顔を見るや否や冬香は怯え身体を震わせた
「殺すつもりじゃなかったの・・・・もつれた拍子に・・・・」
「冬香・・・・おいで、一緒に・・・・」
「来ないで!」
 今にも飛び降りてしまいそうな冬香・・・・・
 僕は駆け寄ろうとしてやめて必死で冬香に呼びかけた
「大丈夫・・・・大丈夫・・・・だから」
「私・・・・ダメだよ・・・・お兄ちゃん・・・・お姉ちゃん殺しちゃったのに・・・・ぜんぜん悲しくないんだもの!!」
「冬香!」
「最後までお兄ちゃんのことしか考えられないのだもの・・・・だから、こうやって・・・・お兄ちゃんの心に刻むの・・・・私を・・・・一生」
 身を乗り出し冬香は飛び降りた
「冬香―――――!!!!!」
 冬香の小さな身体が地面に激突しぐちゃぐちゃになった
 冬香の最後の顔は笑みだった・・・・
 こうして、僕は大事な二人の姉妹を失った・・・・
146姉妹日記 最終話(仮)  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/30(金) 20:09:44 ID:r8SGPlqk
 10年後・・・・
 僕は秋乃さんと結婚した
 あのとき秋乃さんもまた不慮の事故で妹の春乃さんを失っていた
 僕たちはお互いを慰めあい支えあってここまでやってきた
 愛し合った結果子供ができて僕たちは結婚した
 ようやくあの出来事も過去になり始めている
「パパ〜、一緒に遊ぼうよ♪」
「あ〜、愛も〜♪」
 この二人は僕と秋乃さんの愛の結晶・・・・
 双子の姉妹で名前は静と愛
 なぜか二人とも秋乃さん似ではなく僕に似ている
「いいよ、なにがいいの?」
「じゃあね、オママゴト!」
 静と愛は女の子らしくおママ事が好きらしい
 いつもどっちが奥さんになるかで喧嘩するので今は二人とも奥さん役をやることになっている
 いつものように僕がビニールシートに腰掛けた
 そして、いつもの穏やかな時間が・・・・
「はい、涼ちゃん・・・・ご飯ですよ〜」
 え・・・・・
 一瞬あの光景が頭をよぎった
 あのときのあの顔・・・・僕は忘れない
 静があの時の夏姉ちゃんの顔とだぶった
「お兄ちゃん、私のご飯の方が美味しいよ〜」
 お兄ちゃん・・・・?
 愛の顔が冬香と重なった
「今度は殺さないでね・・・・愛ちゃん」
「だめよ、お兄ちゃんは私のなんだから・・・・」
 このメビウスの輪は永遠に終わらないのかもしれない・・・・・
「今度こそよ・・・・涼ちゃん」
「私のものになるの・・・・・・お兄ちゃん」














THE END『メビウスの輪』
147アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/30(金) 20:11:21 ID:r8SGPlqk
ここまで読んでくださったかた、お疲れ様です
唐突な終わり方ですいません、もっとゆっくりと書くつもりだったのですが・・・・
急いで書いたので質を落としまくってすません
少し落ち着いたら姉妹日記の完全版&姉妹救済ハーレムEND
それと他のブラッドと生きここにハピネスの続きを書きます
これからは本当に投下できない日々が続きます・・・・
いつ戻ってこれるか解りませんが必ずすべて完結させますので、忘れないでいて下さい
148名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 20:52:26 ID:dC3xfD8B
>>147
輪廻転生END GJです!!
149名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 21:38:31 ID:uuiXgewi
修羅場はついに因果すら曲げるか……
ぐっじょぶ!
春乃姉ぇ逆襲編をワクテカしてお待ちしてます〜
150名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 21:40:30 ID:iOvWQY//
そろそろ、このスレも倦怠期か
151名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 21:48:14 ID:+EkY00bl
輪廻さえ覆す修羅場と嫉妬心と独占欲(;´Д`)ハァハァ
152名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 21:56:58 ID:Quk3Eoak
>>147
GJです。
修羅場スレが続いている限り楽しみにしてますので、焦らず気長に仕上げて下さい

最近神が増えたから、スレの流れも速いしね・・・・まとめサイト復活して暮れないかねぇ
153名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 22:48:36 ID:omIeaUXe
アトリ] 攻撃:86 素早さ:60 防御:93 命中:60 運:51 HP:265
[白] 攻撃:11 素早さ:75 防御:36 命中:39 運:28 HP:108

アトリ vs 白戦闘開始!!
[白]の攻撃 MISS [アトリ]は攻撃を回避した。
[アトリ]の攻撃 HIT [白]は156のダメージを受けた。
[アトリ]が[白]を倒しました(ラウンド数:1)。
魔法のMD5 - MD5バトル ttp://www.newspace21.com/mix/btl.php

ちょwww白頑張れ
154名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 22:57:15 ID:5PCphG+m
>>144
あまりにも急な展開で少しアレッ?と思ってしまった。
完全版に期待してます。
155名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 23:23:13 ID:Tr4CQwiP
女の子は主人公に対する異常な独占欲を見せ始めてからが、
本当の魅力がわかってくる
156名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 23:50:41 ID:6qXWRimG
>>147
これだけでも結構楽しめたんですが…
完全版とか神ですか
157名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:05:33 ID:pPGFsifl
軽くツンツン嫉妬するようなのはみんな好きじゃないの?
158名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:08:20 ID:N+N2PTbX
そ、そんなの好きなわけないじゃない!
159Bloody Mary 2nd container 第十六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/01(土) 00:14:29 ID:ZUQdES2E
「来たか」
 その声にぞわりと全身の血液が泡立った。
――――――落ち着け。俺は姫様を助けたいだけだろ。
 ガタンガタン、と暴れだす火箱を押さえつける。

 小屋の中にいた五人の男。その中にヤツはいた。
木箱の上で足を組んでいる眼帯の男。旅団の皆を殺し、キャスを殺した男。そいつは俺を見て、にやりと口を歪めた。

「やっぱりな。お前、フォルン村のガキだろ?久しぶりだなぁ、おい」
 何が嬉しいのか、この男は。思わずその場で剣を抜きそうになった。
平静を装って眼帯の男の言葉を無視し、目だけで周囲を見渡す。
 小屋の隅に控えている賊の一人の側で、姫様が縛られたまま気を失っていた。

「姫様を返せ」
 なるべく感情が表に出ないようにそれだけ喉から搾り出す。
「おいおい。こっちは人質がいるんだぜ?そんな芸のない戯言が通ると思ってんのか?」
 目配せを受けた賊が姫様の首にナイフを押し付けた。
カッと来て飛び出しそうになるのを団長が手で制する。

「要求は何ですか」
 埃っぽい小屋の中を団長の透き通った声が響いた。
「何、簡単なことだよ。そのガキとタイマン勝負がしたい」
 眼帯野郎の出した要求は随分こちら側にリスクが少ないものだった。
俺が危険に晒される代わりに姫様が助かる。こっちから願い出たいくらい理想的な要求だ。
160Bloody Mary 2nd container 第十六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/01(土) 00:15:14 ID:ZUQdES2E

「なっ!?駄――――――」
「いいだろう。その要求を呑む」
 団長が拒否しそうになったので俺が遮って前に出た。

「ウィル!」
 団長の非難の声を背中に受けて、剣を抜く。
眼帯の男がくくっ、と哂い、他の賊は臨戦態勢の俺に警戒して一歩下がった。

「まぁそうがっつくなよ。じゃあ女は剣を置いて下がれ。一騎討ちの最中に邪魔されちゃあ叶わん」
 しっしっ、と団長に手を振る男。
「…くッ」
 団長は悔しそうに唇を噛んだ。
「団長」
 渋る彼女に声を掛け、下がらせる。
「ウィル……危険です。あなたとあの男は戦うべきじゃありません」
「大丈夫です、俺は問題ありません。それより他の奴らを頼みます。
向こうはああ言ってますが隙を見つけてこちらに襲い掛かってくるかもしれない」
 団長は暫く俺を説得しようとしていたが、俺の決意が固いことを解ってくれたのか俺の言うとおり剣を捨てて下がってくれた。


「まさかあのクソガキがオレに剣を向ける日が来るとはな」
 そう言いながら、幅広の剣を抜きつつ立ち上がる眼帯の男。

「………御託はいい。早く始めよう」

「……つまんねぇガキだな。…いいぜ、来な」

 かつて渇望した男が目の前にいる。キャスを殺した男が。
―――――いや。そんな私怨は今は関係ない。ここでやらなきゃ姫様が殺されるんだ。あの時みたいに。
だから。
 沸々湧き上がる殺意を。
今だけは鋭く。ヤツの心臓を射抜くように鋭く。
 俺は殺意を解放した。
161Bloody Mary 2nd container 第十六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/01(土) 00:16:18 ID:ZUQdES2E


 全速力で男との間合いを詰め、剣を振り下ろす。
男は一歩引いてその斬撃をかわし、詰め寄らせまいと剣を横に薙いだ。
それを避けるために後ろに下がると今度は向こうが攻撃を仕掛けてきた。

「けっ、田舎のガキがよくここまで鍛えられたもんだ!師匠は誰だ?
ん?今朝おっ死んだベイリンかぁ!?」
 ゲラゲラ笑いながらブロードソードを力任せに叩きつけてくる。

ギィィィィィン……!

 両手で剣を交差させて相手の剣を受け止めた。擦れあう刃から散る火花。
「ッ!!」
……重い。相手の剣圧に両腕が軋む。
 ギリギリと剣に力を込めてくる男は俺の目を見て眉を顰めた。

「嗚呼ッ!やっぱその眼ムカつくぜぇぇぇ!!!」

 怒声と共に腹に蹴りを打ち込まれ、俺は後ろに吹き飛んだ。

「……げほっ、けほっ…」
 蹴り飛ばされたことで相手との距離が広がり、もう一度仕切り直しになった。

「オラオラ。どうした?早く来いよ」
 挑発してくるのを尻目にゆっくり思考を巡らす。

 相手の持っているブロードソードは一般的なものより刀身が長い。さっき殺り合った感じだと三尺ほどか。
それに比べて俺の剣は二尺強。間合いの広さは圧倒的に相手の方に利がある。
 おまけにあの馬鹿力。そう何度も剣戟を受け止めていたら腕が痺れて隙を与えてしまいかねない。持久戦は不利だ。
勝つためには向こうの間合いより更に深いところまで肉薄する必要がある。
一度接近してまえば相手の剣の長さを逆手に取って勝機を見出すことも可能だ。
 それにはどうしてもあちらの剣を一度受け止めるか避けるかしなければならないが。

「あぁん?今頃足が竦んだのか?ガッカリさせんなよ。今朝みたいな勢いはどうした、おい?」

―――――相手の剣戟を切り崩してから自分の間合いに入るか、それとも賭けに出て一気に懐に飛び込むか。
前者なら長期戦になったときがまずい。後者なら―――――
162Bloody Mary 2nd container 第十六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/01(土) 00:17:02 ID:ZUQdES2E

「ったく……ビビッたんならオレが奮い立たせてやろうか?―――――そうだな…」
 俺が黙考しているのが気に食わないのか、にやにやしながら何事か考え始める。


「……そういやあの王女、似てると思わねぇか?」
 気絶している姫様にちらりと目をやりながら呟いた。

「…?」

「オレが犯してわんわん泣き喚いてたお前の女によ」
 俺を嘲るような、ふざけた笑み。

―――――火箱が知らない間に熱を持ち、鎖と錠を溶かしていく。

「顔が似てるってことは喚き声もあの女にそっくりなのかねぇ……」

―――――火箱の隙間から、荒れ狂う赤い炎が吹き上がる。

「あの王女も同じ鳴き声か試してみるのも面白いかもなァ? ははははははははは!!!!」

―――――炎の内圧に耐え切れなくなった火箱が粉々に爆発した。


「やってみろよォォォォォッッッッ!!!!!!」


 殺意の炎が全身の血液を沸騰させ、俺は前に飛び出した。
相手の剣がこちらを捉えるより早く、自分の間合いまで飛び込む。

「ぎゃははははっ!!キレやがった!キレやがった!」

 俺の剣を受けながら男は愉快そうに笑っていた。
163Bloody Mary 2nd container 第十六話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/01(土) 00:19:45 ID:ZUQdES2E
やってしまった…
野郎同士の戦闘で二話跨ぎorz
マローネの出番までもう少々お待ちください。
164名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:37:05 ID:lGMfe+c+
「教授と助手とロリコンの微笑み」の外伝1
投下します。
165望む未来捨てた過去 ◆n6LQPM.CMA :2006/07/01(土) 00:39:28 ID:lGMfe+c+
こんな言葉がある。
「恋と戦争においては、あらゆる戦術が許される。」
byフレッチャー
私の好きな言葉だ。
私の好きな人はちょっとお人好しなのだけれど、頭がよくてか
っこよくて優しくて…
でもそんな彼を狙う泥棒猫が居て、今まで何度も近づいて来て
はあの手この手で信用させ、その汚い毒牙に掛けようと
してきたわ。
今までは私が何とか撃退してきたけど、どうやら今回は本気で来るようね。
最後の戦いか…いいわ、もうあの顔も見飽きたし私も少し本
気を出して叩き潰しましょうか…うふふふ…





「晴香ちゃーん」
放課後、帰り支度をしていたらだれかが私を呼んだようなので振り返ってみると
見知った顔があった。
「麻奈美?どうしたの。」
この女の名前は広崎麻奈美。同じクラスということで普通に話
したりはしているが、向こうはどうやら私のことを親友と思って
いるようだ。
まあ私から見れば「お金持ち」ということで「表面上」仲良くして
いるけど、ただ私より(ちょっとだけ)巨乳ってのが気に入らないのよね。
…まあいいわ。「金の切れ目が縁の切れ目」、だから。
166望む未来捨てた過去 ◆n6LQPM.CMA :2006/07/01(土) 00:41:05 ID:lGMfe+c+
「晴香ちゃん、これ見てー。」
見ると雑誌の表紙の見出しを指差していた。
「あなたには見える?運命の赤い糸!」
これが何だというのか。
「聞いて聞いて、この本によるとねー、私の運命の赤い
糸はね、スポーツ選手と繋がっているんだってー。本当かなー?」
そんなの知らないわよ。しかし…運命の赤い糸…か…。
そんなことを考えながら窓の外を見ると、校庭で私の愛しの彼こと佐藤樹さんが
サッカーをしていた。
ねえ、樹さん?私と樹さんの間には運命の赤い糸じゃなくて赤い鎖で繋がってい
るから…もう離れられないわよ。…ん?あれは!
「ねえ、晴香ちゃんはどう思う?」
そう聞いてくる麻奈美に
「ねえ…なんで運命の赤い糸って赤いか知ってる?」
突然質問されて戸惑っているようだが、暫らく考えて首を横に振った。
「いい?運命の赤い糸の赤はね…泥棒猫や雌豚どもの返り血なのよ!」
そう言って私は教室を飛び出した。校庭にいた樹さんに近づく泥棒猫を見つけた
からだ。

「樹くん、この時期にサッカーなんて余裕じゃない?」
「英子?」
樹に近づいてきたこの女性は水無月英子。この高校の生徒会長で文武両道を体現
している人気ナンバー1の生徒である。
「志望の大学は十分合格圏内ですし、今更ジタバタしてもしょうがないですよ」
「ふふっ、すごい余裕じゃない。」
そういうと彼は当然というような顔をして笑った。ああ…
その笑顔に私は惚れたのね。

「ところで…そろそろバレンタインデーなんだけど、何か予定は入っている?」
「え!?」
それを聞いた彼はとても複雑な顔をした。?どうしたんだろ。
「あー…、予定は無いのですが…」
そこまで言った時、校舎から砂煙を巻き上げながら誰かが走ってきた!どうやら
何か叫びながらこっちに来るみたいだ。
「樹さんに近づくなー!!!」
そう聞こえたかと思ったらそのまま英子にドロップキックをかましたが、
あっさりとかわされた。
「また性懲りもなく邪魔しに来たわね!イノシシ女!!」

その邪魔しに来たイノシシ女こと五十嵐晴香は、英子を睨みつつ

「それはこっちのセリフよ!私の愛しい樹さんに近付くなって言ったでしょ!」
「私がどこで、何しようがあんたには関係無いでしょ!!」

二人の視線がバチバチと火花を散らしながら睨み合っている

(この泥棒猫、これだけ言ってもわからないなんて…。)
(前に進むことしか出来ない単細胞が…。)
167望む未来捨てた過去 ◆n6LQPM.CMA :2006/07/01(土) 00:43:21 ID:lGMfe+c+
暫らく睨み合っていた時、英子が口の端を上げて笑った。
「ふっ、野生生物の相手なんかしていられないわ。…樹くん。」
そう言って樹に近づいたかと思ったら
「バレンタインデーは楽しみにしててね…ちゅっ。」
なんといきなり唇に軽くキスをして去っていった。
突然の不意打ちに樹は呆気にとられ、晴香は口をパクパクさせていたが、
樹がふと気が付くと晴香の目が不気味に光っていたが、目と目が合った瞬間
「樹さん!唇の汚れを落とさないと!!」
そういって晴香は樹の唇を舐め回した。
「は、晴香ちゃん!お、落ち着いて…そ、そんなに舐め…、
え!なんで口の中まで、もが…はふぅ。」

その夜…
「あの泥棒猫、バレンタインデーに何するか知らないけど私がいるかぎり好き勝
手にはさせないわよ!」
私は月に向かいながら独り言をつぶやいていた。
昔から月光の下だと、考えがまとまるのよね。
「まあバレンタインデーだから、チョコ絡みだとは思うけど…」
あれこれ考えている内に、ふと放課後のキスを思い出した。
ぎりり…と歯軋りする音が聞こえた。
「くっ…思い出すだけで苛々するわ。そもそも樹さんの唇も顔も手も足も心も、
そして魂も私の物なんだからそれを横から掻っ攫おうって言うんだったら、やはり殺…」
そこまで言った時、慌てて手で口を塞いだ。
(危ない危ない、下手に流血沙汰にして足がついたら
私の明るい家族計画が終わっちゃうわ。)
暫く瞼を閉じて考えていた時、ふとある噂話を思い出した。
…これは使えるかも。
「悪いけど、決着をつけるわよ。」

翌日、放課後――――

「なーに?晴香ちゃん、どうしたの?」
ここは屋上、内密の話をするにはもってこいの場所。
周りにはだれもいないからちょうどいいわ。
「麻奈美にちょっと相談したいことがあるんだけど…いい?」
「うん、なんでも相談していいよ。私にできることなら協力するから。」
うんうん、持つべきものは「バカ」で「お金持ち」な親友ね。
「ありがとう…実は…」



「うん、わかった。御安いご用だよ。あまり時間も無いしすぐ聞いた方がいいね。」
「ありがとう。…それとこのことはだれにも…」
「わかってるって。」
168望む未来捨てた過去 ◆n6LQPM.CMA :2006/07/01(土) 00:44:56 ID:lGMfe+c+
そして迎えたバレンタインデー当日

「はい!晴香ちゃんに私からチョコレート。」
朝、教室に入るなりいきなりチョコレートを渡してきた。
女同士ってのもどうかとは思うけど、断ると泣かれるから受け取らなくちゃ。
「え!?本当に?ありがとう〜。すごいうれしい〜。」
ふと見るとこのチョコ、豪華な箱に入っている。
たしか、この箱テレビで見たような…
「えへへ、喜んでくれてうれしいな。なんでも一年中で
今日だけ売り出しの幻のチョコだって〜。」
あ!思い出した。確か毎年凄い行列を作って先頭の人は3,4日前から並ぶとか、
限定50個で5個入り1セットでウン万円とか…。
「で…どお?上手くいった?」
「うん、ばっちりだよ〜。」
それを聞いて安心した。
(泥棒猫さん、さようなら)

そして当日の放課後、だれもいない教室―――

「樹くんゴメンね、急に呼んで。」
「別にいいですけど…どうしたんですか?」
よし!あのイノシシ女が来る気配はないわね。
「うん、実は樹くんに渡したい物があって…」
そう言って鞄から可愛いラッピングがされたチョコを出そうとした時
1人の男子生徒が入ってきた。
「あ!いたいた。英子ちゃん、話ってなに?」
あ、あれは3年の伊藤くん!なんでここに?
すると樹の姿を見て訝しそうな顔して
「…で、誰?」
「いや〜俺も英子…先輩に呼ばれて…」
この人はなにいってるの?
私は樹くんしか呼んでいないのに…。
そんな英子の混乱をよそに廊下で話し声がしたかと思ったら
ドアから4人の男子が入ってきた。
(あれは!菊池くん、阿部くんに佐々木くん、え!数学の田中先生まで!!)

教室に集まった計7人のいずれもが事態の把握ができていなかったが、男子生徒の1人が
「なんかちょっと混乱しているようだからここで少し整理しようぜ。」
当然反対意見がでるわけはないので、その菊池という生徒は一息ついて
「たぶんここに集まった男子は手紙で呼ばれて、
ここに来たと思うんだけど、文面にはなんて書いてあった?」
すると
169望む未来捨てた過去 ◆n6LQPM.CMA :2006/07/01(土) 00:52:29 ID:lGMfe+c+
「えーと、愛しい愛しい佐々木くん、私の愛がた〜っぷり詰まったチョコ
あげるから3−1までき・て・ね。英子より。だったな」
「あ、名前以外は文面は同じだな。」
「おれも」「おれもだ」「うむ…右に同じく」
全員の視線が英子に向けられたが、動揺を隠すのが精一杯のようだ。すると口々に
「確か、俺1人だけよっていったのに…」
「えらい尻軽女だったんだ…」
そして
「二股どころじゃなくて五股かよ!!」



教室に女の子がいる。
顔は血の気が引き、死んだような目をし、茫然自失とし、
その周りには千切れた手紙が散乱していた。
そんな女の子を見ている男、佐藤樹もまた突然起きたこの事態を全く把握できなかった。
何分かした時、樹はゆっくりと英子に近づいた。
「英子…いえ水無月先輩。とりあえず帰ります。それじゃ…。」
「え!?な、何で敬語!呼び捨てで呼んでよ!ち、ちょっとまってよ!
樹、あなたのことだけは…本気で…」
全てを失った英子にはもはや泣くしかなかった。
(なんで…どうして…)
そんな自問自答をしていたらだれかが近づいてきた。
「フン、惨めなものね。」
「!」
見上げるとそこには、仁王立ちで腕組みをしている女こと晴香が立っていた。
「あんた…なんでここに…!ま、まさか!!」
「あら、意外に勘はいいのね。そう、あの手紙は私が仕組んだものよ。」
英子はあまりの怒りで頭が真っ白になって、顔は真っ赤になった。
170望む未来捨てた過去 ◆n6LQPM.CMA :2006/07/01(土) 00:53:24 ID:lGMfe+c+
「な、なんで…なんでよ!!。」
「なんでって?そんなこと聞くまでもないでしょう。私の樹さんに
手をだす泥棒猫をやっつけたかったから、それで「このネタ」を利用したというわけ。」
「あ!あんたってやつは――!!」
いきなり英子が飛び掛ってきたが晴香はひらりとかわしつつ足を引っ掛けて、勢いあまった英子は
見事に転んだ。
「誤解しないでよね。確かにあの手紙は私が出した物だけど、実際にアンタは五股して
あいつらに期待させるような言葉をいってきたんじゃないの?」
これは本当だ。なにしろ麻奈美が新聞部に行って聞いてきたネタだからだ。
麻奈美は男子生徒のウケが良いからか、新聞部にちょっと聞いただけでなんでも
教えてくれるんで情報収集は簡単だ。
さて、止めをさすか。…二度と悪さをしないように。
「まったく、ふざけた話だわ。そうやってあちこちの男に手を出して、
ちやほやされていい気になってたんでしょ!!」
「そ、そんなことは…」
すると晴香は口の端を上げて
「それで樹さんだけは本気で好きだったなんて…都合がよすぎるのよ。本当に好きならね…」
遠い、はるか遠い目をして言った
「私はね、樹さんが望むならなんだって出来るわ。そう、「死んでくれ」と言われたら喜んで、
笑顔で死ねるわ。あんたが本当に好きならそこまで出来る?出来るわけないわよねー。」
すると晴香は英子のバッグから樹に渡る予定だったチョコを出して
「ふん、泥棒猫の分際でチョコを渡そうだなんて…」
それを床に落として、高く足を上げた。
「や、やめてー!!」
「3回生まれ変わって出直しな!!」



「うっ、うっ、うっ…なんでよ…。」
必死にくっつけようとしていたが、涙でよく見えない。
「どうしてくっつかないのよ…。」
手には砕かれたチョコ。
「私は…かわいくて…頭がよくて…グスッ性格もよくて、もてて…
将来は約束されているはずなのに…なんであんなクズにここまで…」
醜いココロ。届かぬオモイ。
偶然にもそのチョコは6個に分かれていた。
171望む未来捨てた過去 ◆n6LQPM.CMA :2006/07/01(土) 00:55:54 ID:lGMfe+c+
エピローグ
「うん…うん…わかった。直接家に行くから。おいし〜いチョコ持っていくから、
楽しみに待っててね。それじゃ、ちゅっ。」
ふふ、泥棒猫は斃したし、樹さんとはこの後デートの約束をしたし完璧ね。
悪い女に騙されてショックを受けているから、私の体にリボンを
巻きつけて「甘〜い私をた・べ・て。」ってやれば元気百倍ね。あ〜楽しみだわ。
買い物をするために商店街を歩いていた時、
「もしもしそこのお嬢さん、ちょっといいかな?」
「?」
声を掛けられたのでふと見ると、なにやら「占い屋」
という看板をかけて地面に座っている老人がいた。
(なにこのじじい、話かけんなボケ)
無視して通りすぎようと歩いたその時、占い師が
「ふむ、恋の争奪戦に勝ったようじゃな。」
それを聞いた晴香は、目をカッと見開いた。
占い師は満面の笑みを、晴香はムスッとした顔をしていたが、
しばらくして晴香が占い師の前まできた。
「…なにを知っているの?」
すると占い師は手を差し出した。これ以上聞きたかったら見料を払え、ということらしい。
晴香は黙って払った。
「まいどあり。…では名前と生年月日を」
一通り聞いたら占い師はじっと晴香の顔を見て
「ふむ…おぬしの想い人はとても優しい人で、おぬしのことを友達以上には思っているようじゃな」
あら、なかなか占いの腕はいいじゃない。
「このまま順調にいけば、理想のカップルになるかもしれん…でも」
「でも?でも何よ」
そう言ったら占い師は難しい顔をして
「うむ…近い将来おぬしの前に何者かが立ちはだかってくるが…」
「え?」
(まさか、別の泥棒猫が?)
「この者たち、たいへん大きな運気を持っておるようだな…今のおぬしではその「気」も
「想い」もまったく勝ち目はないぞ。」
「なっ………!」
どういうこと?近い将来私の樹さんが取られちゃうってこと?
「ど、どうすればいいんですか?何かいい方法はないの?」
少し考えて、占い師は
「真正面からいって勝ち目がないのであれば、戦わなければよい。
つまり何者かが現れる前に確固たる絆を作っておいて、付け入る隙を作らなければいい。」
それを聞いた晴香は
「つまりもっとイチャつけばいいのね。わかったわ!ありがとう!」
「あ!これまだ終わりじゃ…行ってしまった。」
猛スピードで走っていった晴香の後姿を見ていて占い師は
(しかしあの女性、晴香といったかな。一瞬だけ顔が血で染まるのが
見えたのじゃが…道は平坦では無いということか)

そののち晴香の前に、相容れない存在こと
氷室弥生が現れるのはそれから数年後であった。

FIN
172名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 01:00:36 ID:lGMfe+c+
少しでも修羅場を出そうとしたけど、今はこれが限界ですね。このスレ的に薄いかも。
もっと腕を上げねば
ともかく外伝はこれで終わりですが、次は「ロリコン教授」の第2部にとりかかる
か、時間があれば外伝2でも…
173名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 01:21:17 ID:KA01dfWE
>>163>>172
乙です。
最近のように毎日何かしら投稿してもらえる状況だと生活に楽しみがあって良いですな
174名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 01:29:16 ID:bgnLJccz
>>173
ですな。
175名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 09:24:01 ID:PK651jAT
ウィルの戦いも静香さんと英子さんの修羅場もなかなかGJですよ
176名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 10:11:54 ID:F3JJ3KFj
>>172
GJ
晴香のハジけっぷりがツボだwww
177名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 14:06:06 ID:kz54mvhT
フレッチャー がブッチャーに見えたのは内緒
178名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 15:39:54 ID:x7nWx6Ns
>「運命の赤い糸の赤はね…泥棒猫や雌豚どもの返り血なのよ!」

ステキなセリフだ。第1部ではあまり登場しなかった晴香ですが、第2部では期待してますよ
179猫泥棒 ◆rAFXqjbZng :2006/07/01(土) 16:39:50 ID:lZub4ASY
投下します。
180お願い、愛して!4 ◆rAFXqjbZng :2006/07/01(土) 16:44:19 ID:lZub4ASY


 えへへ……。
「良かった……」
 本当に良かったな、嬉しいな。

 えへへへへ……。

 変わっちゃってたのはほんの少しだけ、形だけなんだ。
 キョータくんはキョータくんなんだ。
 わたし、嫌われてなんかなかったんだ!
「ふふふ……」
 思わず顔が綻んじゃう。

「なぁに瑞菜。朝から素敵笑顔の安売り?」
「あれ、理恵ちゃん。居たの?」
「あたしあんたの席の隣なんだけど」
「あ、そうだよね。ごめんね」

 危ない危ない。いつの間にか教室に入っちゃってたみたい。
 キョータくんのことになるとすぐに周りに目がいかなくなって駄目だなぁ。
 気を取り直して鞄の中から荷物を取り出すわたし。
「瑞菜さぁ」
 すると理恵ちゃんが私の机に身を乗り出してきた。
「ん……なに?」
 返事をしながらもあんまり理恵ちゃんとはお話したくなかった。
 夏休み前もそうだったけど、ベタベタと小汚く化粧を塗りたくったその顔を見る
と、キョータくんと登校した爽やかな朝を穢された気分になっちゃうから。
181お願い、愛して!5 ◆rAFXqjbZng :2006/07/01(土) 16:46:56 ID:lZub4ASY
「久しぶりだよね、元気にしてた」
「あ、うん……」
 何だかさっきから意味ありげな笑みを浮かべている。
 なんだろう? この子……。
 社交辞令みたいなことを言いながらも、そんなことより早く何かを言い出した
そうなのがわざとらしく伝わってくる。
 キョータくんに避けられるようになってからは、ずっと無視してきたのに、鈍
感なのか、自分が嫌われてるって気付いてないみたい。
 本当に困った子だよ。

「でさ。訊きたいことがあるんだけど」
 さぁ、本題。といった感じで更に身を乗り出す理恵ちゃん。
「なぁに?」
 教科書類を丁寧に机の中に押し込みながら、片手間に返事する。
「今日、君と一緒に登校してた彼、誰?」
 不意に、わたしの手が止まった。
182お願い、愛して!5 ◆rAFXqjbZng :2006/07/01(土) 16:48:58 ID:lZub4ASY
 ……また、この子はストーカーみたいに人が登校するのを見てたみたい。
 正直、凄く気味が悪い。
 でもそんなことより理恵ちゃんの言葉が気になった。

「誰って、理恵ちゃんも知ってるでしょ?」
 その事でキョータくんを悪く言うんだから。
「え! なに? あたしも知ってる人!?」
「うん」
「嘘でしょ? あたしリストに未加入よあんなカッコいい人! 名前は? クラスは?」

「え……?」

 カッコいい人……?
 聞き慣れない理恵ちゃんからのその言葉に、瞬間、わたしは呆けてしまった。
 カッコいい? キョータくんが?
 そんなこと思うのは、わたしだけだと思ってた。
 キョータくんの格好良さに気付けるのは、私だけなんだ。わたしだけ特別だって。
 現に理恵ちゃんはキョータくんを馬鹿にしてたし、それでなくてもキョータくんを格
好良いなんて言う子なんて知らなかった。
 その事に憤りを感じていたし、本当の魅力に気付かない可哀想な子達として哀れんで
もいた。少しでもキョータくんの『本当』を知ったら良いのにと思ってた。
 なのに……。

「京太君……雨倉、京太くんだよ」
「…………は?」
「だから京太くんだよ。わたしの幼馴染。わたしだけの大切な人」
「え? だって眼鏡も髪型も体型も違うじゃない」

 どうして、こんなに……。

「同じだよ。あなたが、みんなが嫌ってる、ブタちゃんのキョータくん」

 胸が……。

「ちょっと見た目が変わっちゃっただけで、キョータくんを格好良いとか言うの止め
てくれるかな?」

 苦しんじゃうの……?

183猫泥棒 ◆rAFXqjbZng :2006/07/01(土) 16:58:11 ID:lZub4ASY

 約一ヶ月ぶりの復帰……。
 こんなに長い事、筆を置いていて申し訳ありませんでした……


 早速訂正orz

 一レス目のタイトル
 お願い、愛して!4 → お願い、愛して!5

 三レス目の真ん中辺り
 私だけなんだ → わたしだけなんだ
 
184名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 16:59:36 ID:wJ0DKyzj
>>183
本当に待ってたぜーーーー
楽しみにしてる!!全裸で。
185名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 17:02:06 ID:lt/XJVDr
(;´Д`)ハァハァ
186名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 17:08:52 ID:N+N2PTbX
キョータ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

187名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 17:44:10 ID:rgcuQxjq
そうか、キョータイケメンになったのか……。


遠い世界に行っちまったな。
な、泣いてなんかいねぇかんな!(´Д⊂ヽ
188名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 18:16:35 ID:WqrxLkZu
ブラボー(*´Д`)ー!
189名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 18:45:07 ID:loLCZTSj
ま、まさか、キョータくんはリアルに一ヶ月ダイエットしていたのか・・・
190名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 18:48:44 ID:K0F6da0G
待ってましたー(*´Д`)
続きもwktkして待ってます!全裸で
191名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 18:54:14 ID:uVBMgfIA
こういうSSの男は美形に限るので、どんと来いです。
192名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 18:56:26 ID:4vWcMbeu
キョータ、オレと や ら な い か ?
193名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 19:21:57 ID:/m3vRnys
>>192
ダイエットをか
194名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 20:32:10 ID:FOWM+Ory
>>183
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!
ずっと待ってたよ!
195名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 20:50:06 ID:jg9TX9fe
>>183


.        / ;;;ii;;;;;;;;;;;;从;;i;;;;;从|||||iii|从从从|ii|"|iiノ  た 嫉 久 た
        リ ;|"jj'|'"|"|"||"从i |リ|| iii,,从从 从|i|ir''   ぎ 妬. し ぎ
        j ;;|从|;;;;;;;i| i |,j|从iiリリ|i||从从||;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ  る の ぶ る
        ||リ从;;;;;;;;;;i||;;ii;;|;|从!!!;;;||i|;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ  わ 血 り //
        Li|;;;;i;;;;;;;;;;;;;;i|ii|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;;;;;;;;、、-フ  // が に ・・
         ~''i''iiー-、、;;;;;;;;;;;;;;|i;;;;;;;;;;、-'- ー '"く、  :::ヽ・・
          ,」;;W;;ノ、,,_リ~'iヽ/"/"::''",,,、、-ー ''"  :::)__
          i、iヲiiミ、、;;_ミミt,i,("'jー彡;;;;;;;;ニ;;ヲ"  ::::}イ tヽー、 _,,r"
          ii从`'ー`='=)ミZマ::'ー-`='´''"    :::|〉ノリ,}  ノノ
.          iii从iiリ :::::〈.|:"彡::"レ、::::::...    :::i|-'' ,rt
           t i iiリ  ::::::」|   ,、;;  """""   :::/i,,,ノ::: t
          ,、'ヽii;;|、 ::::(、|" ''",, i:::    /::  / /彡 :: t
             ヽ从|:::: :~'-:'",,___   /:::   ii: /イ、彡:::::t、
 ,,、、、, ,、 -ー- 、,,、、 、-{入',};;<"ミ三;;;三z;ァ  〉" リ ノ:::::イ、彡:リ::~'''ー、
",,、-ー'''' ~~~~ ,,r- 、 ,,,rノ(};;t、(⌒ )''",、;ノ´  / ノ/ヽ::::::} ' 、,,::::: .....:::,> '"'~
"  彡彡彡;/::::;r'''  ~~~ ''''' '-、"  ヽ;;;",rー-、/彡::::}彡ヽ〈彡;;;;;/,,,、シ''"
~''''";;;;;;;;;;;;;;;/::::i", ,r'''' ー '''''''"~~ ~'''''ー-~(;;;; ;;;;;;~''、彡ノ:::彡|;;、-''"~´   ~ ''
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::::::::::: ,'`':/~'、::/" リ::: :::   、,,,    ::::::::: };;; :::  |~ヽ;;;;;;;;ソソ :::::リ::::::::::::::
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.  /ヽ, ' :::::::::t:::r'、 _  タrー、、;;;;;;;;、-'"、-ー''";;;;;;;;;;;;;;リ;;;;;;;iノ   :::::从   :::::
. ノヽ:/ ~'::::/ ~'''-、""~く;;;/ ::::::::::(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ;;;;;;jイi、 :::::从::::..  ,、-'"
.i ,ノ/、,:::: r'      ~'ー'" :::::::::::::::::);;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ;;;;;;;ソ;リ i  Wiiし;;;/;;;;;;;;
. ~'7 ノ ノ          :::::::::::::::::リ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ |   :::::/;;;;;;;;;;;;;;
196名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:12:39 ID:bxQ3Ix0H
痩せてるがモテない俺の立場は(´・ω・‘)?
197名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:21:06 ID:AC52HPSs
そうか!わかったぞ!
つまりBMIが17の俺でももっとやせればモテて
修羅場たっぷりの学園生活が送れるんだな?
198名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 22:43:51 ID:jg9TX9fe
>>197
都市を考えろ・・・
199名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 23:14:18 ID:AC52HPSs
学園は18歳にならないと入れないジャマイカ

200名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 23:20:52 ID:xp3M0kon
じゃあ俺血塗れ竜でユウキが通ってた学園にいくよ
201名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 23:34:53 ID:hjVcD43W
学園なんて、何歳になっても入学すればいいじゃないかー
キモ姉は、親が先に産んでくれないと手にはいらないよー
202名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 23:47:42 ID:9aX1A0d9
つ義姉
203名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 23:57:10 ID:9k8oIbmx
じゃあ俺は過労でSBNの森さんと同じ病院に入院してくる
☆ー(ノ゜Д゜)八(゜Д゜ )ノ イエーイ
204義姉 第21回 ◆AuUbGwIC0s :2006/07/02(日) 00:07:40 ID:oK4M8pLS
        *        *        *
『士郎』

 殆ど眠ってないが胃袋は無事食事を受け入れてくれた。
 ――何か違う。味噌汁の出汁の事もあるが、もっとこう何か別の――雰囲気、いや空気が違うとしか説明できない何かが。
 どうでもいい考えを頭に巡らしながら制服に袖を通す。少し窮屈に感じる。春にやった健康診断以来背は測っていないが、まだ背は伸びているようだ。
「シロウ行くよ」
 呼んでもなければ遅刻間際という訳でもないのに姉ちゃんは勝手に人の部屋に入ってきて、人の鞄をかってに掴んで歩き出していた。
「ちょ、姉ちゃん――」
 既に階段を下りていく足音を追いかけて自分も部屋から出て行った。

 ――眠い。気を抜けば立ったまま眠れそうな眠気の中、姉ちゃんと肩を並べて歩いている。
 また違和感――今度はもう少し具体的にわかる。姉ちゃんとこんな風に歩いたのは随分昔、確か姉ちゃんが中学が上がるぐらいまでだ。翌年自分が中学へ入ったが、何か気恥ずかしさがあり、部活の朝練があるわけでもないのに出る時間をずらして行くのが当たり前になっていた。
 短いサイクルで地面を叩く音が後ろから近づいてくる――ああ、モカさんだ。振り向かなくてもわかる。待ち合わせをしている訳ではないが、大体駅までに落ち合う事になっている。いつもならこのまま体当たりをかますようにぶつかって来る――筈だったが、
「――おはよう」先に姉ちゃんが振り返って先に挨拶するなり足音は止んだ。
「……お、おはよう」少しの間を置いてモカさんからの返事が来た。
 眠い目を擦りつつ振り返り自分も挨拶をする。いつも体当たりかまされつつ抱きつかれたりしているが、こんな風に改めて挨拶したのは久しぶりだ。
 ――ああ、姉ちゃんがいるからか。そんな考えが頭に浮かんだが、いつもはあんまり回りの目を気にしている様子はなかったが、よく知っている人間がいるというのはまた別なんだろ。

 また違和感――そういえばモカさんは昔から知っていたけど、ついこないだまで余り話したことなかった。そして姉ちゃんとモカさんが並んで歩いているのはよく見かけたが、三人一緒っては小学校の頃も殆どなかった。
 重い頭を体で引っ張りながら駅の改札を出て学校へと向かう。学校に行ったら机で眠ろう何も考えず。今日の朝一は熟睡してても何も行ってこない松木の授業だ、だから熟睡してやる。
 ただ右足、左足を交互に前に進めていると突然、襟首を掴まれた。
「あんた、ちゃんと前みなさいよ」
 ああ、赤だ。信号は赤だ。寝ぼけているオレをせせら笑うように目の前を車が横切った。
「ああ……うん」
「ホント始終見持っていてやらないとダメな子なんだから」
 生返事に対して、襟首を掴んでいた手は軽く頭を二回叩いていた。
「大丈夫大丈夫、私が――」
「ほら、行くよ」
 信号は青に変わり、モカさんが何か言おうとした時には姉ちゃんは人の肩を掴んで歩き――いや駆け出し始めていた。

205義姉 第21回 ◆AuUbGwIC0s :2006/07/02(日) 00:08:53 ID:oK4M8pLS
 教室に入るなり田中とイノが折っている鶴が目に入った。熟睡しようという決意が好奇心に少しだけ負けた。
「何かあったの?」
 少なくともクラスの友達では入院したり転校したりって話は聞いたことがない。
「中学の時の友達が入院したんで」イノはこちらに向かって挨拶が終ると手元に視線を戻していた。
「暇だったら手伝って」と田中。
 返事はしない代わりに折り紙を一つとって右手で鶴を折り始める。
 自然と欠伸が漏れた。
「随分眠そうにしてんのね」
「……まあ一応」
 動揺を悟れない様に極力落ち着けつつ、右手は鶴折りつつ左手で目を擦る。
 間違っても、この歳で姉ちゃんと一緒に寝て、パンツの中に手を突っ込まれて一晩中抱き枕にされてたからなんていう、本当の理由を誰かに話せる訳がない。
「ああ、今日は友達の家に泊っている――そうかそうか、そういう事か……」
「へ?」
「ハイハイ、無理して墓穴掘らなくていいから。ほら、私気配りできているいい子だからね」
 田中は何かに思い当たった大きく頷きながら何かに納得していた。
「何だよ、それ?」
 重い頭を頬杖で支えつつ、右手は鶴を折り続ける。
「それより、あんた不器用な生き方しか出来無そうな性格なのに変な所で器用なタイプね」
「だから何が?」
「俺、片手で鶴折る奴なんて始めてみたんだけど」
 イノの一言でようやく理解した。片手で鶴を折る――極めてその価値を発揮する機会のない特技の一つ。出来るようになったなったで、あまり凄いとは感じられなくなったので余り意識したことはなかった。
 父さん――今の義父に教えられた方法だ。小学校の頃、担任が結婚して辞めるって時際千羽鶴を折ろうという話になって、家でチマチマと折っていたところ父さんがこうやると直ぐ折れるって教えてくれた。「涼子はいくら教えても出来ない」って父さんはぼやいていたけど。
 ――やっぱり眠い。もう一羽折ったら二人に悪いがもう寝よう。
206義姉 第21回 ◆AuUbGwIC0s :2006/07/02(日) 00:10:01 ID:oK4M8pLS
        *        *        *
『モカ』

 四限終了。さってと、いつも通り士郎君とご飯ご飯。今朝はいちゃつけなかった分、昼にいちゃつくんだ。
 席から立った瞬間に後ろから右肩に手を置かれていた。
「――久しぶりに一緒にご飯食べようか」
「へ?」
 ……あの涼子、肩にのっかているだけの手が妙に重く感じるんですが。

 振り切る口実が浮かばないまま、結局士郎君の下へはいけず、久しぶりに涼子と昼を過ごすこととなった。
「あいつね、男の癖に滅茶苦茶神経細いのよね」今までの会話の流れを無視するように涼子が口を開けていた。
 あいつ――誰だろう。付き合っている人の事かな。涼子の顔は穏やかだ、観音様みたいな顔って表現したらいいのかな。そう思いながら黙って涼子の話に耳を傾ける。
「受験の時なんか十円ハゲ作ったりして、あいつ三十まで髪の毛持たないと思った」
 この話前に聞いたことある。士郎君のだ。
 ようやく今の涼子の顔を何と表現したらいいかわかった、お姉さんの顔なんだ。
「前々からアレだアレだって思ったけど、最近ハッキリした。あいつの事ちゃんと理解して、守ってやれる人間必要なんだって」
 こういうのを私に話すって事は――女将が若女将にこの店は任せたとかいうアレかな? 応援しますよってことでOK?

207義姉 第21回 ◆AuUbGwIC0s :2006/07/02(日) 00:12:23 ID:oK4M8pLS
<チラシの裏>
最近帰りに駅前の店でアイス・モカ・カフェ飲んで癒される日々
</チラシの裏>
208名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:14:02 ID:YjvmV6LJ
久しぶりのモカ分を補給させて、、、、
嘘だろ
モカ分が薄いっ

変わりにデレデレ姉分を補給させていただきました。
209名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:23:26 ID:zqZRrTr0
210名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:28:29 ID:c7msW3RY
SSを書こうと思っているけど、神々とネタが被ってる
少なくても

幼馴染


先輩
幽霊少女
泥棒猫キャラ

以外から考えないとさすがに被りすぎてしまっているのだが・・・

何かいいプロットでも落ちてないかな・・
211名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:29:40 ID:HvwrDfVr
委員長や部長ってのはどうかな?
212名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:30:54 ID:YjvmV6LJ
>>210
女教師とか義母とかサキュバスとか魔女とかアイドルとかあるじゃない
213名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:32:59 ID:C1jTa14I
っていうかこれだけ作品が投下されてるんだし、
ちょっとくらいかぶってもしょうがないんじゃない?
214名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:33:53 ID:i3CzAy6e
つ継母
215名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:34:26 ID:UciXAGel
キモウトなら何人いてもいいな
キモアネならなおいい
216名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:37:43 ID:+G6ar2Sf
多少の被りは問題無いと思う
例えば姉妹ネタなんか結構あるけどどれもとても面白いし
217名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:38:17 ID:KyGdyzcC
むしろ既存のものを使ってどれだけできるかが腕のみせどころかも
218名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:38:41 ID:OimZ3yv7
モ、モカさん、あんた解釈の仕方が・・・・
姉の心理を見抜くんだああぁぁぁ!!
219名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:41:18 ID:il5RsWCG
個人的意見だけど、大事なのはどんな○○(キモアネ、キモウト、キモ幼馴染、etc)なのか。
つーかかぶっても、作者の修羅場に対する愛情がドンだけこもってるかが大事だと思う。
220名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:44:49 ID:Dvlz0++U
つ二重人格

ひとつの体で二つの人格が一人の男を巡って…

みたいなネタ思いついたけど俺には形にするほどの文才が無い…無念…orz
221名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:49:06 ID:Wk62Bvxv
>>220
それなんてシャッフル・・ww
222名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 00:55:22 ID:v/ZAh+bY
>>220
性別逆(NTR)なら星新一が書いてる。
223名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:05:03 ID:zb3VKQqX
質問なんだが
ゲームキャラの修羅場SSはスレ違い?
224名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:11:21 ID:HXS7Faww
そういえば今まで二次創作もの無かったな。
原作知らなくても楽しめる物だと有り難い。
225名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:14:24 ID:Tmx+q1Yb
>>210
職場で女社長、上司、先輩、後輩とかは?
あと大企業の令嬢とか


もうあったらスマソ(´・ω・`)
226名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:15:31 ID:MrcsPouB
>>223
んー、どうだろ。
流石にそれは、それぞれの作品のスレでやるべきのような…。
スレの性質が変わってしまう気もするし……うーん、むずかしいなぁ。
227名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:16:43 ID:YjvmV6LJ
なんとなく俺も>>223に同意
228名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:25:26 ID:HXS7Faww
そのゲームのスレがあるならそっち推奨だけど、寝取られスレみたいに
免疫ない人が多い内容のSSはそれ用のスレに投下するって例もあるから
デッドエンドみたいな鬱展開ならこのスレに投下もアリな気がする。
229名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:27:49 ID:OimZ3yv7
>>223
馬鹿や労!もしもこのスレからエロゲができたら版権が関わってくるだろうが!!










































ま、妄想だけどな・・・・
230名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:34:05 ID:aqfGkLVl
>>223
その作品単独で楽しめるのであれば問題ないと思う。

ただ、二次創作を楽しめる条件の一つとして、書く方も読む方も「原作設定を知っている」ってことがあると思う。
どんなに素敵修羅場でも、全く知らない作品で、「設定を知ってて当たり前」的書き方をされると、
正直読む気も失せるし、楽しめない気がする。

でも、原作設定とかの説明がごちゃごちゃ入ったら、それはそれで書きにくく読みにくくなってしまうわけで。
ぶっちゃけ難しいと思われ

とりあえず、
「原作を知らない奴が悪い」てのは勘弁な
231猫泥棒 ◆rAFXqjbZng :2006/07/02(日) 01:41:25 ID:+3XgGS94
投下します。
232お願い、愛して!6 ◆rAFXqjbZng :2006/07/02(日) 01:44:32 ID:+3XgGS94

 学校では異常なまでの好奇の視線を受けた。
 クラスに入った時は、誰だとクラスメイトに訊かれたほどだ。
 名前を言った途端、様々な視線が返ってきた。
 驚嘆、羨望、嫉妬、侮蔑、嫌悪、興味。
 もともと瑞菜以外のクラスメイトの存在に無頓着だった俺は、クラスでもあまり
評判が良くなかったため、それは予想通りの反応だった。
 知った途端、男子は声もかけてこなくなった。
 だけど予想と違って、女子はそうじゃなかった。急に馴れ馴れしくなった気がする。
 それが好意からのものだと、気付くのにそう時間はかからなかった。
 まさに手のひらを返したようなその態度に、内心嘲笑しながらも、愛想良く振舞った。
 疎遠な男子にも積極的に話しかけた。
 だけど男子から一度もらった不評の烙印はなかなか消えず、戸惑いや不信感が露にされ
ていた。本当はそんな架空の烙印なんか俺自身はどうでも良かったのだが、その印が瑞菜
にも影響するとなると話は別だ。

 瑞菜は誰かに嫌われるのを恐れてる。

 別にクラスメイトと友達になる必要はないし、なりたくもない。ただ悪いイメージさえ
消えてしまえば、それで良かったんだ。 
233お願い、愛して!6 ◆rAFXqjbZng :2006/07/02(日) 01:46:48 ID:+3XgGS94


 ――予鈴が鳴り、黒板に図式を残したまま数学の教師が出て行く。
 午前中のほとんどは始業式で潰れたが、この学校ではそれで放課になるなどという
学生の立場に立った良心的なことはしてくれない。きっちり午後の授業まで挿入して
くれる。
 今はその繋ぎの時間。昼放課だった。
 席を立ち、思い思いの場所へ向かい始めるクラスメイト達。
 俺はクラスメイト達の流れに逆らって、席に座ったままだった。
『キョータくん』
 そう言って、俺を呼んでくれる瑞菜を待つために。

「雨倉先輩」

 来た!
 高揚した気持ちを抑えながら俺は机に置いていた弁当を掴んで……。
 …………。
 ………………え。
 …………雨倉先輩?
 弁当を掴みながら、視線をクラスの入り口へ寄せた。

「?」
 ……誰だ?
 急速に高揚した気持ちが萎えてしまった。
234お願い、愛して!6 ◆rAFXqjbZng :2006/07/02(日) 01:49:44 ID:+3XgGS94
 そこに居たのはツインテールが印象的な可愛らしい少女。
 胸につけた黄色のリボンからすると、どうやら一年生らしい。当然、面識はない。
 怪訝そうに眺めている俺に少女も気付いたようだ。
「……? ……え? ……せんぱい?」
 少女は誰だか分からないというように、一度首を傾げた後、驚いたように目を
見開いた。

「……雨倉は俺だけど、何か用?」
「あっ……あの、その……ですね」
 ……いけない。また無愛想に言ってしまった。萎縮した様子の少女を見て、反省する。
 どうも、家族や瑞菜以外の人間には、意識しないと無愛想に対応してしまうのだ。
俺は少し声を和らげながら言った。
「何か俺に用事があって呼んだんだよな?」
「え、あ……はい……」
「なに?」
「えっと……」
 口ごもる少女。随分大人しそうな娘だ。

 だけど、こうもしていられない。
 もうすぐ瑞菜が来るはずで、用事があるなら早く済ませて欲しいからだ。
 夏休み明けの、二学期最初の日の一緒の昼食。できる事なら瑞菜とゆっくり食べたい。
 それに、何故だかは分からないけど、女の子と話している姿を瑞菜には見られたくなかった。
 なのに……。

「キョータくん! ……ごは……ん?」
「あ……」
 夏休み前といい、俺って何だかいつもタイミング悪くないか?
235お願い、愛して!6 ◆rAFXqjbZng :2006/07/02(日) 01:52:42 ID:+3XgGS94




「一年の朝生凪です。その、よろしくお願いします」
「雨倉京太。こちらこそよろしくな」
「わたしは……知ってるよね?」
 瑞菜がクスッと可愛らしく笑う。
「あ、はい。それに……」
「ん?」
「雨倉先輩の事も、知ってます」
 まぁそれはそうだ。知らなかったら俺を呼ぶこともできない。
「そういえば前に会ったときからキョータくんのこと知ってたみたいだよね?」
「えと……はい。白河先輩の幼馴染で有名ですし」
「そうなのか……」
 だとしたら、俺が瑞菜の付き合いを狭めていたのかも知れない。
 俺の不人気のせいで。
「でも良かったよ。瑞菜に良い友達ができて」
 なにせ、瑞菜が自分から友達だと紹介してくれたのは朝生が始めてだ。

 瑞奈に友達はたくさんいるはずなのに、その境遇からやはりどこか一線を置いて
いるのを感じていた。だけど朝生に対してはその境界線を感じない。
 瑞菜が俺にこうして自己紹介を勧めたのも朝生が始めてだった。
236お願い、愛して!6 ◆rAFXqjbZng :2006/07/02(日) 01:55:35 ID:+3XgGS94


 サンサンと夏の太陽が照りつける屋上。
 無骨で大きな配線らしき管に腰掛けながら、俺たちは三人で昼をとっている。
 朝生と一緒に昼食を食べる事を提案したのは俺でも朝生自身でもなく、瑞菜だった。
 いつどうして友達になったのかは内緒らしいが、恐らくは夏休み中だろうという予想
はついた。
 そして朝生の持つ過去にも。

 俺たちは昔、自分を虐げてきた種類の人間たちに一線を置いている。
 それはとても根深いもので、今更どうする事もできない。
 そんな俺たちが自分から友達だと言える人物は同じような境遇を持った人間に限られる。
 つまり、朝生にもあるはずなのだ。

 ――――深い傷痕が。

 そうなれば、俺にとっても大事な同志だ。
 傷の舐めあいだろうとなんだろうと、俺と瑞菜はそういう生き方をしてきたのだから。
 そうして痛みを……欠けた家族の痛みを和らげてきたから。

「あの、先輩っ!」
「え……あぁごめん、なに?」
「わたしとも……その……」
 もじもじと言葉を濁す朝生。
 この控えめな性格には、きっと何か辛いことで裏づけされているのだろう。
 なら、
「明日も、三人で食べようか」
「えっ!?」
「友達……だからさ」
「! ……はいっ!」
 少しでも、辛いことが忘れられるように、舐めあっていよう。

「……………………」

 傷の舐めあいなんて、束の間のものだとしても。


237猫泥棒 ◆rAFXqjbZng :2006/07/02(日) 02:03:33 ID:+3XgGS94

 ふぅ、後はプロット通り進めるだけ……。
 あと一人登場させて全キャラです。
 その時にキョータにもカッコいいところを見せますのでどうか見てやってください。

 メル欄に、ありがたき感想達に対して返事を書かせていただきました。
238名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 02:40:02 ID:v/ZAh+bY
>>237
GJ がんがって下さい
239名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 03:14:44 ID:yi72v/rZ
果たして泥棒猫は凪タソなのか?それとも新キャラなのか?
続きに期待!
240名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 03:40:59 ID:JODrT1Fz
(゚∀゚=゚∀゚)
241名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 04:54:04 ID:Dvlz0++U
>>221
ちっ…違…!!たまたま入浴中にそういや二重人格ものってあったっけ…?とか思っただけなんだ…!!
>>222
性別逆かぁ…
ネタは多々思いついても形に出来ないどころかいつのまにかエロスに走る俺キモスorz

ホント神々には敬服します
いつもありがとうございます。
242名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 07:25:02 ID:cEqW0Yrb
「言問わぬ恋」

わたしの家には古い市松人形がある。

ふっくらした顔立ちの、おかっぱの女の子。
蔵の奥に仕舞われているのを子供の頃に見かけ、こっそり私物化したのだ。
何やら厳しい威容の箱に収められていて、そのうえ幾重もの封がされていたのは
不気味だったが、中身である可愛らしい本体に魅了されてどうでもよくなった。
赤の着物に金や緑の模様が咲き乱れ、いささかくすんで色褪せているものの、
幼い頃のわたしがほうっと心を奪われるような鮮やかさがそこにはあった。
切り揃えられた髪も艶やかで、その下にある凛々しい繭やつぶらな瞳、
少し膨らんだ頬も、いつまでも眺めていたくなる清らかな風情に満ちている。
男が人形遊びをするなんて馬鹿らしい、と当時のわたしは思っていたのだが。
そんな意識は根こそぎ吹っ飛んでしまった。
胸の奥を掴まれるような切ないほどの誘引に抗えず、気づけば蔵から勝手に
持ち出し、部屋の押入れのデッドスペースに隠していた。
一心不乱といっていい。誰にも教えたくない、誰にも知られたくない、幼くとも
心底で性質を理解していた背徳の所有感。そいつに背を押されていた。
あれが初めてわたしの抱え込んだ「秘密」であり。
そして。相手が人形とはいえ、どうにも否定しがたい激情の発露を鑑みれば。
――初恋、だったのだと思う。

で、成長した主人公が家に恋人を連れてくるとなぜか押入れに隠し込んでいた
市松たんが外に出ていたり、連れ込んできた恋人が振り向くと無機質な目で
睨みつけていたり、夜遅くに帰ろうとすると背後からひたひたと何かが追ってくる
気配があって、けれど振り向いても誰もいなくて、気のせいかとホッとした途端、
唐突に足に重みが加わって、咄嗟に見下ろすと市松たんがしがみついていて、
悲鳴を挙げて振り払い走って逃げるんだが、相変わらず追ってくる気配が
消えなかったり、帰宅するなり厳重に戸締りした恋人がガクブルして、不意に
喉が渇いて「水を飲のう」と台所に行ってコップを手に取り蛇口をひねったら、
水流に紛れて何か微かな音が聞こえてきて、思わず身を強張らせた少女が
恐る恐る振り向いたら、ガシャンッと通気孔の金網が落ちてきて、その奥から、
その奥からずるずると這うように忍び寄ってくるものが――

数秒後、悲鳴を聞きつけた少女の妹が現場に駆けつけると姉は既に息絶え、
足元には鉛筆を削ったりする小刀が落ちていて、切りつけられた頚動脈からは
まだ血が噴き出していて、流し台に飛び散った血液はじゃーっと開けっ放しに
なっている水道の水で洗い流され排水溝の向こうへ消えていくところだったり。

急報で恋人を失ったと知った主人公が呆然としている背後、
棚の上に佇む市松人形は気のせいか少しばかり髪の毛が伸びていて、
唇も以前より艶に満ち溢れて口紅でも刷いたみたいに赤く、
無機質な瞳が主人公の背中を映してぬらりと輝いた……

という妄想ネタが目覚めて急に湧いてきた。
243名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 07:41:46 ID:PiTkaE+b
GJ
244名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 07:49:16 ID:bk73BEID
>>243
GJ! ウッカリ萌えてしまいました。
245名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 07:49:56 ID:bk73BEID
ごめん、アンカー間違えた。。>>242
246『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 08:20:30 ID:0OI4QqRV
「ん……んあ…」
不意に目が覚める。目覚ましがまだ鳴っていないところをみると十二時前か。鳴る前に起きるなんて珍しい。
「…おお……?」
何か違和感があると思ったら、横では葵が幸せそうな顔をして爆睡していた。……本当に幽霊のくせに寝やがる。
「……生意気な……」
ちょっとムカついたので起こしてやろうかと思ったが、寝てる方が静かで助かる。起きないようにそっと着替え、コンビニへ出かける。ちょうどお昼だ。
「……お、これ……」
昼飯を買うだけのつもりが、つい興味のある本を立ち読みしてしまい、気付けば三十分も経っていた。店員からは怪しい目で見られまくりだ。
結局本は買わず、おにぎりだけ購入。しばらくはあの店にいけないな………
散歩がてらに歩いてあると、商店街へ。この道は遊園地へと続いており、商店街は一日中車の通りが多い。
……何故かこの商店街に入ろうとすると、悪寒が全身を襲い、気分が一気に悪くなる。多分この道に記憶の鍵があると思うのだが、この不快感を我慢してまで思い出したくねぇ。
踵を返し、アパートへと帰っていった…………
247『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 08:21:57 ID:0OI4QqRV
夢を見ていた。これは生きていた時の夢なのだろうか。よくわからなくて不思議だけど、悪い夢じゃなかった。
とても大切な人と、楽しい時間を過ごす、そんな夢……心が暖かくなる……でも、いつかは覚めてしまう。そう考えると怖くなり、一気に夢は覚めていく………
「んん……」
目が覚める。そうだ、隣りには晴也さんが………
「あれ?……晴也さん?…晴也さん?」
いなかった。脱ぎ捨てた服と、片付けていない布団を残したまま、いなくなっていた。靴も無い……どこかへ出かけたのだろうか………そう思い、しばらく待ってみる………







「帰ってこない……」
三十分ほど待ってみたが、帰ってこない。…もしかして私を捨てて逃げてしまったのだろうか……いや、でもここは晴也さんの部屋だし……
そんなとく、ふとセレナさんの顔を思い浮かべる。彼女家に行ったんじゃた………私に本当に愛想を尽かして………
「いや…そんなのいやだよ!!」
晴也さんがいなくなっちゃったら私、独りぼっちになっちゃう!………だめ、帰って来てよ…晴也さん……
「晴也さん……晴也さん…晴也……さん…」
248『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 08:23:23 ID:0OI4QqRV
「あー…久しぶりに歩いたな。」
あれから体調が良くなるまで歩いたら、部屋をでてから一時間は経っていた。まあバイトは三時からだから余裕だな。鍵を開けて部屋に入ると……
「おう?」
部屋中が目茶苦茶になっていた。テーブルはひっくり返り、布団や服はあちこちに乱れ飛んでいた。そしてその部屋の中央には葵が背中を向けてたたずんでいた。
「おい、なにやってやがんだ………」
またしょーもないことしやがってと怒鳴ってやろうとしたが……
「晴也…さぁん…」
振り向いた葵は俺が怒る前にすでに泣き崩れた顔になっていた。そして俺の姿を確認するやいなや駆け寄り………
ドン!
「うぉ!?」
思い切り押し倒された。その勢いでドアに背中をぶつけた。
「ってぇなぁ……いきなりなにしや…」
「晴也さん、ごめんなさい。ごめんなさい。」
「え?」
急に謝られ、困惑する。葵はまだ泣きながら俺に縋り寄ってくるのだ。
「今までしてきたこと、全部謝りますから……見捨てないで…私に愛想を尽かさないで……晴也さんしかいないんです…だから、戻ってきてぇ……」
249『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 08:25:23 ID:0OI4QqRV
なにがなんだかわからん。なにを言ってんだ。
「戻ってきてって……ちょっと帰るのに時間かかっただけじゃねぇか。」
「…え?……本当ですか?セレナさんの家に行ったんじゃないんですか?」
「どうしてセレナが出て来る……」
「……だって、朝起きたら晴也さんいなくて……待ってても帰ってこなくて……昨日一日だけで嫌われちゃって捨てられたかとおもったから……」
なにを大きな被害妄想を。本当に捨てるならとっくに捨ててる。
「わかった、わかった。俺が悪かったよ。だからもうグズグズ泣くなよ……幽霊のくせによ。」
「…ぐすっ……えへへ、はい。……それと、その……もう一つお願いがあるんですけど……」
「ん?下らない事なら即却下だ。」
「う…あのですね……今日もバイト先に行っていいですか?」
「………」
きっと一人になるのが寂しいのだろう。さっきの今だ。そう言うのも無理はねぇな。
「……迷惑にならないように、見てるだけでがまんできるってんならな……」
「は、はい!それだけで十分ですぅ!」
……俺もなんだか甘くなったな………
250『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 08:29:59 ID:0OI4QqRV
以上です。
251名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 09:58:27 ID:zyn/s0Bf
健気な中に危うさがチラホラと





最高だ!
 そう。一言で言えばムカつくヤツ。わたしの、騎士としてのプライドを一瞬で粉々にした憎き男。
あいつに持っているわたしの感情はそれに尽きる。

 わたしはこう見えて騎士の素質を十二分に持っていると自負している。素質だけじゃない。
トレイクネル家と対を成す騎士の名家、トリスタン家出身の地位に慢心せず、厳しい訓練もこなしてきた。
 おかげで女性としては異例の十五歳で騎士に叙任された。実際、わたしは同期の騎士の誰よりも優れているつもりだ。
ときおり、同じ女性騎士である戦姫、マリィ=トレイクネル卿と比べられることもあったけど。
わたしにはむしろ好都合だ。乗り越える壁は高ければ高いほど、越えたときの気分が清々しい。
 英雄と謳われる者ならライバルとして申し分ない。それがトレイクネルの人間なら尚更だ。
いつか。マリィ=トレイクネルを超える騎士になってやる。それが当座の目標だった。

 だというのに。新任の騎士が集う、訓練合宿で私の予定が大幅に狂ってしまった。

 新米騎士如きにわたしの相手が出来るわけがない。わたしには何の実りもない合宿なのに。
こんなことならすぐに戦場に出た方がずっといい。そう思っていた。
 でも、その合宿で手合わせしたあいつはあっさりわたしの鼻っ柱をへし折った。
合宿の前に飛び入りで突然騎士に叙任され、私と同期になった男。……それがわたしを負かした男の正体だった。
それからだ。打ち負かすべき相手がマリィ=トレイクネルからあいつに変わったのは。

 どれだけ努力してもあいつはいつもわたしを追い抜いている。
声を掛ければ、あっちはわたしのことを特に気にも留めてない。わたしはあいつを負かしてやろうと必死なのに。
その、まるで「俺はお前なんかメじゃないぜ」的な言い方がカンに障る。しかも朗らかな笑顔で。
だったら無視すればいいのにそれが出来ない。腹が立つほど気になる、あいつはそんな存在だった。

 だから。わたしはあいつを見つけると、いつもこう言ってしまうのだ。




「ウィリアム=ケノビラック!!わたしと勝負しろッ!!!」




「それは昨日したじゃないか、マリカ」

 城内の回廊。そこでわたしにびしっ、と指をさされ、げんなりした表情でこちらに顔を向ける一人の騎士。
ウィリアム=ケノビラック。腑抜けた顔をしているこの騎士の名だ。
わたしがマリィ=トレイクネルより先にまず越えなければいけない壁。

「城内で大きな声出すの、恥ずかしくない?」
 一部始終を見ていたまわりの人間が奇異の視線をわたしたちに向けていた。
……少し恥ずかしくなった。
「うるさいうるさいうるさい!!!それにわたしを馴れ馴れしくファーストネームで呼ぶなっ!!」
 わたしは怒っているのに、ケノビラックは「またか」といわんばかりに苦笑いを浮かべている。
田舎者丸出しの日和見な態度。ムカつく。
 こいつはどうやらどこかの田舎出身の傭兵だったらしい。
一月ほど前の戦――――――隣国を大きく退かせたフォルン平野の戦いで大きな武勲を立て騎士に抜擢されたそうだ。
 その戦いの戦果のおかげで現在戦争は暫しの休止状態になっている。
戦争中にも関わらず城内が平和なのはそのためだ。
 こいつのおかげで今の平和な生活があると思うと余計憎々しい。

「だいたい何で俺がそんな目の敵にされなきゃならないか解らないんだけど」
 性懲りもなくそんなことを抜かすか、この男は。
「だっ、だまれ!!我々が部隊に正式配属されて散り散りになる前に、わたしはお前を倒すと心に誓ったのだ!!」
「今日は何だか一段と怒りっぽいね……」
 わたしの言葉に何か気付いたように。
「あ、マリカって確か魚嫌いだったっけ。今日の昼食が焼き魚だったから機嫌が悪いんだ」
 見当違いの事を口にした。

…頭にきた。

「死にさらせぇぇぇ!!!」

 わたしは剣を抜き刺突を連続で突き出した。
まったくこの男は!この男は〜っ!!!うらうらうらうらぁぁぁ!!!

「うわっ、危なっ、危ないって!城内で抜剣する騎士がどこにいるんだよ!!」
 慌てた声を上げてはいるが、実際は私の剣をことごとくかわしている。
おのれぇ、何故当たらん!!

「いいから勝負しろ!!ケノビラック!!今日という今日はお前に引導を渡してやる!!」
「わ、わかった!勝負するからやめてくれーっ!」

 やっと色好い返事を聞くことができた。やれやれ。最初からそう言えば良いものを。
少しだけ気分が良くなってわたしは剣を鞘に収めた。

「では早速勝負だ!ウィリアム=ケノビラック!」
「えぇ!?ちょっと待ってよ。俺にも準備があるんだから」
 ケノビラックが不満そうに言った。情けないヤツめ。…まぁいいだろう。
「ならば半刻後、城の中庭に来い。そこで決着をつけてやる!」
 本心は少しでも早くケノビラックと手合わせしたかったが、仕方ない。
敵に情けをかけるのも騎士道のひとつだろう。
「わ、わかったよ…」
 はぁ、とため息を吐いてケノビラックはそう答えた。

「いいか!絶対に逃げるなよ!!」
 わたしは最後に釘を刺してその場を離れた。

――――――今日こそあいつを「参りました、マリカ様。どうか私めを奴隷にしてください」と言わせてやる。
        覚悟しろ、ケノビラック。…………にへら。

 回廊を歩きながらわたしは込み上げる笑みを堪え切れなかった。








「はぁ〜…」
 結局、彼女の勝負を引き受けてしまった。訓練合宿からこの二週間、もうこれで何回勝負したか。
嬉しそうにスキップなんてしながら立ち去るマリカの後ろ姿を眺めながら、俺はもう一度ため息をついた。

マリカ=トリスタン。俺と同期の女性騎士だ。現在は俺と同じ新米騎士の訓練部隊に所属している。
 最初見かけたときは口調も男っぽくて近寄りがたい、まさに武人といった感じの女性だと思っていたのだが。
最近の彼女を見て富みに感じるのは、本当は意外と愉快な子なんだなぁ、という親近感。
 とはいうものの。ことあるごとに勝負を持ちかけられてはこっちの身が保たない。勘弁してもらいたいものだ。
彼女がファーストネームで呼ばれることを嫌っていても呼び方を変えないのはそれに対する俺のささやかな抵抗だ。

…愚痴ったところで始まらない。とりあえず詰め所から刃を潰した剣を拝借しに行くか。
用意せずに行ったら真剣でやろうとか言い出しかねない。


 そう考えて詰め所に足を向けたところで厨房から誰かの引き止める声が聞こえた。


「ウィリアム様」
 俺に声をかけたのは厨房で何かしら料理をしていた侍女だった。
「あれ?シャロンちゃん?」
 その侍女は俺の良く見知った顔――――俺たちの部隊の雑事や世話をしてくれているシャロンちゃんだった。
「マリカ様の怒鳴り声が聞こえたのですが…“また”ですか?」
 それだけでシャロンちゃんの言っていることが通じたのが悲しすぎる。
「うん。“また”なんだ」
 げんなりしながら彼女の問いに頷く。
 あぁ。面倒臭いなぁ。でもやっぱり行かないとマズイよなぁ…。
「………」
 俺が三度目の嘆息をしている横でシャロンちゃんが顎に手を当て何か考えていた。
「シャロンちゃん?」
 変に思って彼女の顔をまじまじと見つめる。やがて彼女は顔を上げ、口を開いた。
「…ところでウィリアム様。以前おっしゃっていた、シーフードのポトフというものを作ってみたのですが、
試食をお願いできますか?」
 彼女の言葉で淀んでいた俺の心にぱぁっと光が差した。
「え!?ほんとに出来たの!?シャロンちゃん食べたことないって言ってたのに」
「えぇ。ですからウィリアム様にご賞味願いたいのですが」
 今日はツイてないとおもっていたけどそうでもないらしい。
「よし、それならすぐ食べたい!いや、食べさせてください!」
「ではこちらに」
 俺は上機嫌で厨房の中に案内された。




―――――――――・・・・・




「う〜ん。普通のより煮込みに時間をかけないってことは解ってるんだけどなぁ…」
「食材がよくないのでしょうか」
 あれから。俺たちは二人でポトフと格闘していた。
彼女の作ったシーフード・ポトフはそれはそれで美味しかったが、俺が食べたものとは違う味だった。
シャロンちゃんはそれに納得せず、どうすればあの味になるか何度も試行錯誤しながら料理している。

「別にそこまでやらなくても美味しいよ、シャロンちゃん」
 さすがにシャロンちゃんに苦労をかけているのに罪悪感を感じ、そう言ったのだが。

「いえ。どうしてもウィリアム様に文句なく『美味い』と言ってもらいたいので」
 決して彼女は諦めなかった。無言で鍋を見つめている。
あ、やば。ちょっとじ〜んときた。

「わかった!こうなったら俺も完成するまで付き合うよ!」
 俺は本格的にシーフード・ポトフの完成に向け、彼女の隣に立った。


――――――――何か忘れているような気もするけど…ま、いっか。


 結局、シーフード・ポトフに白身魚を霜降りにして使うと気付いたのはそれから一時間後だった。









 夕暮れ時。城の中庭で一人の女性が肩を震わせながら立っていた。

「おのれ……」

 夕日に照らされながら立ち竦むその姿は見るものに哀愁の念を与える。
中庭には人っ子一人いなかったため、そんな念に駆られる者など皆無だったが。

「に、逃げたな……ケノビラック…」

 彼女の目には涙。いい年こいて半ベソをかいていた。
約束の時間からどれほど経ったのか。間抜けにもウィリアム=ケノビラックにすっぽかされたと気付いたのはたった今だった。

「おのれーーーーーっ!!!!許すまじ!!!ウィリアム=ケノビラック!!!!」

 アリマテア城の中心で、彼女は呪詛を叫んだ。誰も聞いちゃいないが。


――――――――次の日、ウィリアムにこの顛末の皺寄せがきたのは言うまでもない。
最近はすっかりなくなってしまったギャグ要素を前面に押し出して書いてみました。
ギャグ系の方がなぜが書き易い…
こっちは気が向いたら更新していく予定なのでオムニバス形式で進めるつもりです。
タイトルに話数を敢えて書かなかったのもそのためです。
内容的には生首ゴロリとか血がドバーッとかは一切なしの方向で。

今回は新キャラの紹介に文量を割いてしまったので修羅場の雰囲気があまりありませんが
マリカ対シャロンでウィルを取り合ってもらおうと思っています。
259名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 12:09:09 ID:JODrT1Fz
kita-
260名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 14:02:01 ID:CBYLKiTo
>「うん。“また”なんだ」

一瞬バーボンかとおもったw
261名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 16:37:34 ID:oGTOTPMY
>>258
ツンデレ(;´Д`)ハァハァ

>>260
おまえは俺だww
262名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 17:17:57 ID:yi72v/rZ
本編が結構ハードになって来たから、こういう軽いノリはかなり変化があって良いな(*´Д`)ハァハァ
263『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 17:34:42 ID:0OI4QqRV
「ちーっす。」
結局葵はついてきた。スクーターと同じスピードで飛んでるのを見ると、なんだかリアルスーパーマンを見てるみたいだった。……うらやましいだなんて死んでも葵には言えねぇな。
調子乗りやがるから。着替えようとすると……視線が気になる。
「おい、葵。」
「!…え、え!?ええ!?」
声掛けられただけでなにそんなに慌ててやがる。
「……出てけ。」
「…え?あの、や、やっぱり私……邪魔者なんじゃ……ご、ごめんなさい!なにかしたんなら本当に謝りますから。」
「着替えるから出てけつってんだよ!!!」
「あ、はいい〜〜」
ようやくどやされてロッカールームからでていく。隣りのロッカーを見るともうセレナはいるみたいだ。
着替え終わり、ロッカールームを出ようとノブに手を掛けると、部屋の外から声が聞こえる。セレナと葵だ。やっぱりセレナも干渉できんだな。
「…ねえ、葵ちゃん?……昨日はハルの部屋に泊まったの?」
「はい、そうさせてもらいました。」
「そう……ね、ねえ。よかったら今日から私の部屋に泊まらない?私なら構わないから。」
264『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 17:35:22 ID:0OI4QqRV
「えっと…あの……い、いえ、大丈夫ですよ。セレナさんに迷惑かけたくないですし。」
俺なら良いのかよ、と心でつっこむ。散々部屋を荒らしておいて、本当にいい迷惑だ。「ううん。本当に大丈夫だから。それより、ハルに迷惑かかっちゃうじゃない。ほらー…ハルって、すぐ怒るから、居ずらくない?」
……別に見境なく怒ってるつもりはないが……基本的には葵の奴が怒らせてるんだからな。
「……それでもいいんですよ、セレナさん。」
「え?」
「たとえ怒られても……そうすることで、晴也さんにかまってもらえるんです……。晴也さんがいるだけで、独りぼっちだっていう悲しみも和らぎます。」
「……ねぇ、ハルの事好きなの?」
何を聞いてんだ……セレナのやつ。んなわけねぇって……
「うん……好き…なんだと思います。まだ一日しか経ってないけど……なんだか、初めて会った気がしなくて……」
なんなんだよ……あんなやつと…会ったことは無い、はずだ。
「…そんな……もう、やめてよ……やめて……」
セレナの声が心なしか震えている。見えはしないが、泣いているのだろう……
265『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 17:36:14 ID:0OI4QqRV
「もうやめてよ!……死んでまでハルを取らないでよぉ!!…そこまで…私の邪魔したいの?」
「え?…セレナさん?」
「ハルはね、私の恋人なの、愛し合ってるの。……死んだあなたが割り入っていいわけないじゃない!…ふざけないでよ!」
なにを…セレナは感情的になってんだ。いくらなんでも変な心配しすぎだろ。俺と葵が?ありえねぇっての。
「死んでまでって……セレナさん、私が生きていた時のこと知ってるんですか?」
「う……」
「ねえ、教えてくださいよ!私と晴也さん、前に会った事あるんですか!?」
「……ない!ないわよ!!……あなたの事なんて…知らないわよ……」
そう言ってセレナの立ち去る音が聞こえる。その気まずい雰囲気に、しばらくロッカールームから出られずにいた。
しばらくしてバイトが始まり、客が入る。今日はセレナが何度もミスをしていた。よっぽどさっきの会話で動揺したのか。終わった時には疲れ切っていた。
……恋人としてはこういうときは一緒に居てやるべきか。
「セレナ……」
「あ、ハル……ごめんね、今日はミスばっかりしちゃって……」
266『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/02(日) 17:37:05 ID:0OI4QqRV
「気にすんなって……そんな事より、今日家に泊まりにくっか?」
「え?…でも…」
「葵は…まあ、なんとかしてもらうさ。さすがに一緒に居るほど野暮でもないだろ。」
あいつの場合野暮というか天然で居座りそうだが。もう葵は先に帰っていた。仕方ない、帰って説明しなくちゃいけねぇな。スクーターの後ろにセレナを乗せて帰宅。
…違反?知ったことか。
「…えへへ、なんだか久しぶりだな。ハルの家に泊まるの……」
「…そうだな。」
鍵を開け、部屋を開けると案の定……
「あ、おかえりなさぁい!晴也…さん…」
「あ……」
やっぱりさっきの事があったせいか、二人の間に気まずい雰囲気がまた流れる。
「せ、セレナさん…今日、泊まるんですか?」
「まあね……」
「あはは…じゃ、じゃあ、私はお邪魔虫ですね。…今日はぶらぶらと過ごします。」
「ああ…ワリィな。」
「や、やだなぁ。謝らなくて良いんですよ。私が悪いんですから。」
そう寂しい声を出し、すっと壁を抜けて出ていってしまった。何故か悲しくて、その抜けていった壁を触っても葵の温もりは分からなかった……
267名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 22:45:56 ID:JCXTqaVK
萌え萌え
268名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 22:57:54 ID:5MhAVRl5
>>258
過去の話ktkr
269名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 22:58:44 ID:z+kL4nrt
家を追いだされた葵をぜひお預かりしたいですね
270名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:11:01 ID:MrcsPouB
まとめサイト、心配だなぁ。
もう十日以上更新がない。
ここで十日というと、波に乗ってる時ならまるまる一スレ分だ。

管理人さん、生活が激変されているからなぁ。
271名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:14:44 ID:OT5VrpVQ
まぁ無理してまで更新してくれとは言わないけどね
でも実際心配ではある
272名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:26:44 ID:z+kL4nrt
きっとこのスレと私どっちをとるのとかそういう修羅場中なんだろう
いやはやうらやましいねぇ
273名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:45:52 ID:uksAJVMU
流れをぶった切って言うが戦隊モノの嫉妬ってないな?
あったらすっごい面白そうw
274名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:50:21 ID:3aK6AAvi
足引っ張り合って戦いにならねぇwww
275名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:54:14 ID:JODrT1Fz
管理人さんなら俺の隣で寝てるよ
276名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:00:02 ID:0lqPtPZk
なんだ、
お約束に朴念仁なレッド、レッドにラヴラヴなピンク、自分の想いを押し殺し二人の仲を応援するグリーン
密かにブルー好意を寄せるカレー大好きイエローと、クールにやはりレッドへの好意を隠すブルー
そんな膠着状態に突如現れレッドに告白するブラック、愛する妹ブラックを応援するホワイト、しかし彼女もまた…
急展開にそれぞれの隠された思慕が今解き放たれる…!
最早肉体言語無しでは語れない愛憎飛び交うスペクタクル、あなたへの愛を貫くが為、私は正義を捨てました
な戦隊モノか
277名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:03:09 ID:IkGWM0LL
スクールバスに付き添いで乗ってる幼稚園の先生とか敵の女将軍もいるな。
278名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:08:54 ID:3PnGynZX
>>270
管理人さんがダメになるとSSを補完するサイトを臨時で作る必要性があるわけだが・・。
このペースだとまとめサイトがないと本当に辛い・・
知らない間に流れすぎ
279名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:10:22 ID:I/mAMPZ+
初代スレからすべてログ持ってる俺は勝ち組
280名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:24:05 ID:aU8gPkn1
妄想を書き殴ってたら中篇が一本できてしまった……。
電波依存娘とサイレントストーカーな後輩との三角関係なんですが
需要ありますかね?
281名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:24:50 ID:CKbMAkJD
全裸で待ってる。
282名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 00:25:51 ID:oUQA1+AZ
>>275
に、逃げろ!!いまそっちにうわなにするやめ(ry
283Bloody Mary 2nd container 第十七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/03(月) 00:42:58 ID:Vi90NYzb
 危惧していた通りの展開になってしまった。
ウィルはまんまと向こうの挑発に引っかかり、頭に血が上っている。
 あれでは眼帯の男――――モルドの思うツボだ。
どういうわけか、あの男は自分が勝つことよりもウィルの内心を掻き乱すことに執心している。
実際ウィルは既にモルドの術中に嵌っていた。その証拠に彼は戦争中の、一切の防御を捨てた戦法に戻っている。
アリマテアの頃の。そう、復讐に囚われていた頃の戦い方。
たとえあの状態でウィルが勝ったとしても後々の彼の心に大きな禍根を残すことになる。

「…っと!……危ねぇ。さっきより太刀筋が速くなったじゃねぇか!オラ!それで限界かッ!?」

「あああああぁぁぁッッッ……!!!!!」

――――なんとかしなければ。
だけど今の私に何ができる?剣は遥か向こう。
 今の私は武器を何一つ持っていない。…悔しい。ウィルが矢面に立っているというのに私は何もしていない。
ただ見ているしかできない自分が歯痒かった。

 不意に。
気絶していたはずの王女と目が合った。
 気が付いている…?

『上を見よ』

 口だけを動かして目線を上に向ける姫様。
……上?
賊たちに気取られないように姫様の上方に目をやる。そこには。

『………』

 天井の梁で息を潜めている一人の侍女がいた。姫様の側にいる男の命を刈り取らんとじっと下を凝視している。
驚いた。ウィルから気配を殺すのが上手いと聞いていたけれど。あれでは本業の暗殺者顔負けだ。
284Bloody Mary 2nd container 第十七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/03(月) 00:44:06 ID:Vi90NYzb

『一・二の三、でいきます』

 指を折りながら私に目配せするシャロンさん。私も彼女に微かに頷いて返答した。
彼女に合わせて私も飛び出そうと身構える前に、ちらりとウィルを見た。
 彼の眼には山道での戦いを思い起こさせる狂気。早く打開しないと。

―――壱。

 シャロンさんが手投げ用のナイフを二本取り出す。

―――――弐。

 姫様がじりじりと這いながら、男から距離を置く。

―――――――参!!

 合図と共に、姫様が縛られた無理な体勢のまま男から飛び退く。
同時に私も姫様のもとへ走り出した。

「なっ!?」

 姫様の近くにいた男の顔が驚愕に染まる。
姫様を連れ戻そうと腰に挿してある短剣の柄に手を掛けるが、彼に出来たのはそこまでだった。

「ふっ…!?」

 天井から飛び降りてきたシャロンさんが落下の勢いを利用して男の脳天にナイフを突き立てていた。
目がぐるんと後ろを向いて、誰に何をされたかも解らないまま絶命するその男。

「シャロンさん!」

 シャロンさんからナイフを一本受け取り、姫様の戒めを解く。その頃になってやっと他の賊たちがこちらの異変に気付いた。

「貴様らァァァ!!!!」
 さっき殺された男の次に近くにいた山賊の一人が剣を抜きながら襲い掛かってくる。
「近づかないでください」
 シャロンさんがさっき殺した男の頭蓋から投擲ナイフを引き抜き、その男に投げ付けた。
避ける間もなく額にもろに刺さり、どうっ、とその場に倒れ込む山賊。これであと二人。

 彼女が賊の相手をしている間に私は姫様の猿轡を外した。
口が開放された途端、姫様はぷはっ、と大きく息を吸い込む。

「ウィリアム!わらわはもう平気じゃっ!!」

 こちらの様子に目もくれず、ひたすらモルドに斬りかかっていたウィルに向かって。
姫様が叫び声を上げた。
285Bloody Mary 2nd container 第十七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/03(月) 00:44:59 ID:Vi90NYzb







「――――――!!!!!」
 姫様の声で真っ白になっていた思考がわずかに戻ってくる。
助け出された姫様が団長とシャロンちゃんの側で俺を見ていた。

「ちぃッ!!まだ仲間がいやがったのか!!」
 残っていた二人の山賊が団長を斬り伏せようと駆け出した。まずい。団長は今、丸腰だ。

「団長!!」
 俺は手に持っていた剣の一本を団長に投げ渡す。
――――――――剣さえあれば団長に叶う者はいない。側にはシャロンちゃんも控えている。
あの山賊二人には荷が重過ぎる相手だろう。
俺は安心してモルドに目を戻した。

「てめぇら、どこ見てやがったんだ!!」
 団長たちから完全に意識を外した俺に対して、モルドの方は手下に怒りをぶつけながら俺の剣を受け止めていた。
団長たちの方にチラチラ目をやりながら。
 それがモルドの敗因。
他のことに気を取られながら戦っていたことが俺に付け入られるチャンスを与えた。

「ッ…!!」

 その隙を突いて、モルドの死角―――――眼帯で視野が狭くなっている左側から剣を振りぬいた。

振りぬき様に何かを切断した手応え。

 剣を握っているモルドの右手首を切り飛ばしていた。
「がぁっ!!?」
 柄に手首がくっついたまま、剣が空中に舞う。

ダンッ…!

驚いた表情でそれを見上げる眼帯男の足を払って地面に倒した。

「くそがっ!」
 今の状況にやっと危険を感じたのか、慌てて立ち上がろうとする。
だけどもう遅い。

「ぐぇ…!」
 俺がモルドの胸を踏みつけ身動きを取れないようにすると、潰れた蛙のようなモルドの呻き声が聞こえてきた。
剣先をヤツの喉元に突きつけ。
「終わりだ」
 俺は冷ややかにそれだけ言った。モルドがぎり、と歯を食いしばっている。
 姫様の方を見ると団長たちも既に山賊を退けたらしい。後はもうこいつだけ。
286Bloody Mary 2nd container 第十七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/03(月) 00:46:31 ID:Vi90NYzb
ふと。殺す直前になって吹き荒れていた怒りが弱まった。

一瞬の逡巡。
 殺すのか。殺さないのか。

 キャスが死んだあの日の光景が頭の中で繰り返される。師匠や旅団の皆もこいつに殺された。
俺はこいつを殺すために剣の修練を積み、戦争で数え切れない程の人間を殺した。
ただ、こいつを殺すためだけに。
 だけど……その復讐はもう捨てたんじゃなかったのか……?
アリマテアで、あれほど後悔したんじゃなかったのか…?

「なんだ、てめぇ。人を殺すこともできねぇのか?」
 俺の様子を見て、モルドがふっ、鼻で嘲笑った。
……なんだ。こいつのこの余裕は。…気に入らない。気に入らない気に入らない!
俺の内心を覗き見て心底可笑しそうに。笑っていやがった。
 何が、何がそんなに可笑しいんだよッ!

―――――殺したい。
 そうだよ。どうせ此処で生かしておいてもきっとこいつはまた誰かを殺す。
なら、さっさと殺ってしまった方が世のためだ。

 剣を持つ手に力を込めた。



「ウィル!決着はもう付きました!剣を収めなさいっ!!」

 団長がやめろと言っている。その声が耳に入ったときには突き刺そうとしていた右手の動きが止まっていた。
くそ、どうするんだよ。どうしたいんだ、俺は。

「おら!どうした!?早く殺れよ!!腰抜けがッ!!」
 
「黙れッ!!」

 ヤツの声が耳障りだ。俺の心を掻き乱す。

「けけけっ!!!てめぇはやっぱり三年前と何も変わっちゃいねぇ!!
…自分の女も守れなかった、ただの弱っちぃガキだ!!!」

 うるさい。うるさい。こいつを黙らせたい。早く終わらせたい。

「そうそう!ひとつお前に礼を言わねぇとな!!
――――――――――お前の女、なかなか旨かったぜぇぇぇぇぇぇ!!!?」


 弱まっていた炎が、ボッと赤から蒼に変わった。
怒りが最頂点まで上り詰め。

 俺は――――――――。

「ウィル!!やめなさいッッ!!!」

 俺は――――――――。




      A. ――――――――死ね。

      B. ・・・・・・・・・。
287Bloody Mary 2nd container 第十七話 ◆XAsJoDwS3o :2006/07/03(月) 00:47:58 ID:Vi90NYzb
やっと選択肢まで書けた…
前回と同じくAから進めていきます。
288 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 00:59:44 ID:aU8gPkn1
それでは投下します
289『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 01:03:54 ID:aU8gPkn1

 「お父さん……もうきっとわたしのこと忘れちゃってるんだろうな……」
 自嘲的な響き。
 でも、泣き顔でないし、現実を受け入れつつある分、半月前よりマシだ。
 「あーー、その、大丈夫だろ」
 俺は悩めるクラスメイトを慰めるため、気恥ずかしさを押し殺す。
 「……竹沢みたいな可愛い娘のことを簡単に忘れられる親父なんていないって」

 とびっきりの甘言だ。
 脳が蕩けてそうな台詞を自分が吐いていると思うと眩暈がする。
 しかし、その効果は絶大。
 竹沢はびくりと全身を震わせると、鮮やかな朱色に染まった。

 「……こ〜ちゃんはやっぱり優しいなぁ。ありがとう。わたし頑張るよ」
 溢れる喜びを隠そうともせず、竹沢は嬉しそうに円らな瞳を俺に向ける。
 そんな純粋なリアクションをされたら、逆に俺のほうがその顔を直視できない。
 むずかゆい気持ちを紛らわせるように、竹沢のか細い肩をポンポンと叩いた。

 「撫でて」

 その手を取られ、両端で括られた髪の根元に導かれる。
 「……またか……。お前、ちょっと現金すぎないか?」
 「だって……」
 「あー落ち込むな、涙ぐむな、自分に自信を持て、…………わかったよ」

 竹沢を元気付けるには激甘の口説き文句まがいと、べたべたのスキンシップが有効。
 経験則でわかっているため、俺は文句を垂れるのを我慢する。
 機械的に手を動かすだけの俺の撫で方でも、竹沢は眼を閉じて恍惚そうにされるがまま。
 お互いに無言で時を過ごす。

290『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 01:06:09 ID:aU8gPkn1
 竹沢雫。
 その父親が蒸発したのは一ヶ月前のお盆。夏休みの真っ最中。
 俺が誰もいない教室で泣いている竹沢を見つけたのが半月前の始業式の日。
 天真爛漫で小柄、その上童顔ときてみんなに可愛がられている。
 そんなクラスのマスコットの素顔を俺は垣間見てしまった。知ってしまった。
 以来こうして放課後に竹沢を慰めるのが日課になっている。


 下校時間一時間前を知らせるチャイムが鳴り響き、俺は撫でるのを止めた。
 竹沢が上目遣いで帰り支度を始める俺の様子を窺っている。
 名残惜しそうな寂しそうな、簡単に言えば見る者の保護欲を駆り立てる目付き。
 まるで一人家に残されるのを嫌がる幼児が親に縋りつくように。

 これは正常な関係なんだろうか?

 ――愚にも付かない質問だ。

 「行っちゃうの?」
 「……そんなこと言っても俺は消えたりしないから。また明日だ、また明日」

 こいつを見捨ててはいけないという身勝手な義務感に俺は囚われている。
 仮面を外した儚い素顔を見てしまった者として。
 竹沢の支えになってやるだけだと、俺は自分に言い聞かせた。
291名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 01:08:24 ID:NEntcNHU
普通にaしかない!
292『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 01:08:38 ID:aU8gPkn1


 廊下を挟んで職員室の対面にある教室の半分くらいの部屋。
 印刷室は大型のコピー機が三台並べてあるので実際の広さより手狭に感じる。
 「いつもお勉強ご苦労様です」
 抑揚のない声は、しかし毎度毎度遅刻する委員長に対しても丁寧至極だ。
 長髪黒髪の見目麗しい後輩が俺の気配に振り返る。

 中央委員副委員長こと、椎名麻衣実ちゃんだ。

 「敬語なんか使わないでくれ。麻衣実ちゃんのほうが俺なんかよりよっぽど偉いさ」
 役職上なら委員長である俺の部下だが、実際の権限は彼女のほうが強い。
 生徒会の雑用係と揶揄され、俺も含めてやる気のない委員どもを纏め上げる手腕が、皮肉にも
その生徒会から評価されているからだ。
「先輩が嫌ってる生徒会の評価でそう言われても嬉しくないですね」
 淡々と言う。
 ……そこまでストレートだと責められてるみたいだな。
 「……印刷とか業務連絡とか単純労働ばかり押し付けられれば、嫌いにもなるだろ」
 「じゃあそんな先輩に、これどうぞ。50部丁度お願いします」
 すまし顔で、A4用紙を一枚手渡される。
 「50も? そんなに何に使うの」
 「先輩……? 明日の放課後の定例会議、忘れてるんですか?」
 感情の起伏に乏しい麻衣実ちゃんだが、語尾が微かに震えている。
 そのことに焦った俺の脳は、なんとかスケジュール表を海馬から引っ張り出した。
 「……思い出した。会議室でだったかな」
 「サボらないでくださいね?」

 月一で行なわれる定例会議担当の中央委員は何度注意しても欠席する。
 そのしわ寄せが来るのは責任者である俺と麻衣実ちゃんだ。
 俺がいないと麻衣実ちゃん一人がこき使われてしまいかねない。
 不安になる気持ちはよく理解できた。
293『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 01:09:39 ID:aU8gPkn1

 「心配しなくてもちゃんと出席するよ。今月は麻衣実ちゃんに迷惑かけっぱなしだし」
 「そう……ですか。……なら、いいんです」
 俺は竹沢の相手をするために、下校時間一時間前までを自由時間にしてもらっていた。
 受験勉強という名目で麻衣実ちゃんに無理にお願いしたのだ。
 彼女は文句一つ言わずに承諾してくれた。
 日頃のお礼も兼ねていつか恩返しをせねばなるまい。


 「久しぶり……本当に久しぶりに先輩とずっと一緒の放課後ですね……」


 「何?」
 俺の使う旧式の印刷機はガタガタと稼動音がうるさい。
 彼女の小さな科白は聞き取れなかった。
 「いえ、インクが切れそうなので取り替えようかと」
 赤く点灯したランプを指差して、麻衣実ちゃんは静かに微笑んだ。
294『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 01:14:26 ID:aU8gPkn1
短く纏める能力がないので続きは朝に。

あと、やたら散文的なのは仕様です。
妄想一直線なので、展開が繋がってないのも仕様です。

――こんな拙作ですが、どうぞよろしくお願いします。
295名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 01:18:32 ID:+we+xlD+
GJ!
これからどうなってくのかwktk
296名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 02:11:29 ID:2I7UgkE0
修羅場に愛があればそれで良いんです
297名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 04:35:41 ID:/gIYOvjm
ハァハァハァ

早く読みたいぃぃぃいいいひひひ
ウッ
298『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 07:42:16 ID:aU8gPkn1


 それから暫く世間話をした。
 稼動音に消されないように大き目の声で。
 廊下に漏れたかもしれないが、別に聞かれて困るような話でもない。
 ささやかな上層部への愚痴くらい許容範囲内だろう。

 麻衣実ちゃんは自分からどんどん話題を振っていくようなタイプじゃない。
 でも代わりに聞き上手なので俺達の会話はよく弾む。
 だが、俺は今日一つの失態を演じてしまった。
 麻衣実ちゃんの平淡な独特の話し方で大きな声を出すと間の抜けた棒読みになる。
 話の途中でそのことに気付いた俺は、ついそれをからかってしまったのだ。

 ――瞬間、

 麻衣実ちゃんの平生の無感動とその直前の上機嫌(彼女にしては)が嘘のように消え去った。
 不機嫌オーラ全快でそっぽを向いて
 「……いいです。どうせ私は台詞棒読みの大根女優のような鬱陶しさがお似合いですから」
 とボソッと呟いた。

 麻衣実ちゃんが拗ねた。

 それはもう見事な拗ねっぷり。
 麻衣実ちゃんのイメージと凄まじいギャップがあるその行為。
 めったに見られないそれが俺に向けられているのは喜ぶべきか否か。
 いそいそと帰られてしまって、孤独に下校する身としては難儀だと思う。

 もう一人考えられる下校相手、
 竹沢は教室まで行ってみたがいなかった。
 俺が委員に出ると早々に帰ってしまうらしい。
 何処までも現金なヤツだ。受験勉強をする気はないのか?
 同学年の大半の生徒は塾か予備校に行っているので他に人はいないし。
 まあ、そうでなければ放課後の教室とは言え頭を撫でるなんて無理だけどさ。
 あるいは、生徒会の面子も残っているが、この選択肢はノータイムで却下。
 「……結果、寂しい帰り道だな……」
 そんなことを考えながら俺はのん気に正門を出る。
299『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 07:46:36 ID:aU8gPkn1




 そして、凍り付いた。




 「……こ〜ちゃんはっ、わ、わたしをっ、みず、でだりっ、しないよ、っね?」


 鋭い息継ぎが何度も入り、途切れ途切れに言葉を放つ。
 二つに括られた栗色の髪は、上下する小さな体躯に合わせて揺れている。
 誰かは明確だ。
 高三にもなって誰も彼もをちゃん付けで呼ぶ女を俺は一人しか知らない。

 帰って……、なかったのか……。


 ――――それは間違いなくグズグズと脇目も振らずに涙を零す竹沢雫の姿だった。

 崩れたその可愛らしい顔が乱れた声で俺に訊く。

 「いんざつじつでっ、ずっと、ずっと、ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅと、はなじでだのっ、だれ?」


 印刷室? 話していた? ――――誰? ――――麻衣実ちゃんだ。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 俺達は廊下に漏れてもおかしくない大声で話していた。
300『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 07:48:30 ID:aU8gPkn1

 俺はそこで思考停止する。意味がわからない。だから何だ?
 竹沢は動かない俺に構わず全身で強く強く俺に抱きついてくる。
 いざ密着されると竹沢は本当に小柄だ。
 頭が俺の胸の辺りにある。
 腹に押し付けられた胸は薄いながらも竹沢が女の子である証拠であり――

 マズイ。俺は直感的にそう思った。
 こいつはヤバイと。判断した脳から伝令が全身に渡る。
 この錯乱振りは半月前の比じゃない。

 ――もっと異常な何か……。

 「……たっ、竹沢っ……、、、まずは落ち着こう、なっ? ホラ、離れないと話も出来ないし……」
 ゆっくりと回された腕を引き剥がしにかかる。
 対して、竹沢は俺の胸に埋めていた顔を引き上げ、搾り出すように――

 「だいずぎです」

 ――俺の制止は間に合わなかった。
 鼻声だろうとグシャグシャの泣き顔で言おうとそれは紛れもない告白。


 ―――そんな竹沢は、どうしてだかわからないが、酷く魅惑的に思えた。
301『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 07:51:44 ID:aU8gPkn1
以上です。

……点の位置が思いっきりずれてるのは気にしないで下さい。orz

ともかく、竹沢選手いきなりスパートで
椎名選手後れを取った―――みたいな感じです。
302名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 08:29:32 ID:qT/T1+Zq
GJ!これは良い依存っぷりですね(*゚∀゚)=3ハァハァ
303名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 08:30:58 ID:ZQA98Yyr
(*゚∀゚)ムハー
304名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 08:31:02 ID:xv8eSAYh
Bで。これからのウィル君に必要なのは殺さぬ強さかと
305名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 09:30:09 ID:/Tz09o17
A「から」って言ってるのだから
AとかBとか書きこまなくてのいいんじゃない?

でもBに期待。

>>301
しかし良い依存だ。
306名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 09:37:23 ID:NtPqt4Mm
竹沢がヤバイ
クッ、こうも泣き喋りでの告白が壷だとは・・・
このスレに来るたびに新しい自分に出会える
これもすべて作者様のおかげです、感謝
307名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 10:49:01 ID:I/mAMPZ+
>>301
竹沢(;´Д`)ハァハァ
しかしなんでここまで依存することになったか
きっかけが気になりますな



とりあえずA、Bよりも
C.ゲイバーに差し出す で
308名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 13:53:23 ID:yoIA/Qht
依存する女の子がストーカ化した場合って
周囲からは何とも思われないんだろうな

ただ、好きな人の後を追いかけたり、好きな人の趣味を調べたり
好きな人の家に忍び込んだり、好きな人の母親に彼女ですとか
唾液入りのお弁当を下駄箱に置いても

そんなことしても、誰も疑問に思わないんだろうね


女の子って得ですね


男なら犯罪ですよ(泣き)
309名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 14:23:12 ID:IkGWM0LL
>>308
女でも普通にストーカーとかメンヘラ扱いだろう。
容姿端麗なら男女問わず許されるのは世の常だが。

韓国なんて大韓航空機爆破事件の金賢姫が美人だった
からと言う理由で恩赦になった上に結婚の申込まで殺到
したとかしないとか。
310名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 14:57:30 ID:FV/jByst
>>307
のちのゲイバー"ナインテイル"のマスターである
311名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 14:59:57 ID:6OlodqPV
>>309
それは韓国ぐらいのもんだと思うww
312名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 15:06:25 ID:Y2wygxy/
                  ____
        |\       ,. ‐''":::::::::::::;::::`'-、      
        |ヘ|    /::::::::::::::;:/´ヾヘ;:::::::::ヽ    
        |ヘ|   /::::::::::((,/    `、::r、:::゙,   
         | ̄|   ,'::::::::::::i゙  \   / i::::i   
ピュー     (∃⊂ヽ !::::::::::::|  ●    ● l::::|  / 〉    
───   └┘\ !::::::::::::!          !:::!/\/
        \/  \::::::::!"" ____  ""!::| \/
────   ヽ    |::::::|   l,   /   ノ::i  /
            `、   i:::::l、ヽ.,_ `''''"  _,..イ:::::i  /
─────    ゙、  ヽ;i \ヽ,.l ̄_,l  |:::/ /
            ゙、     ヽ`、 | /  レ' /
──────    ゙、 /     `ヽ''"  i.  /
             /   NEVADA |/
───────  /              |
313名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:09:22 ID:R0+3iqeL
>>311
韓国に限ったことではないよ
海外で顔のいい連続殺人犯とかに求婚が殺到して獄中結婚したなんつー話は
たけしのアンビリーバボーで散々やってる
314名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:16:22 ID:GJL9cZ5U
日本でもそんなのあるのかな?
315名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:24:25 ID:wntPiwfo
このスレに韓国の名前出すなよ
荒れるぞ
316名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:24:58 ID:+u4PtX2M
逆に、例え二次元の修羅場でも、不細工なサイ娘には萌えられないのかもな。
SSのヒロインも全員、魅力的な容姿の持ち主なのが当たり前だし。
やっぱ世の中、顔がすべてかなぁ……。

鋸ふりかざして、しずちゃんに迫るジャイ子………
いや、少し変な萌えを感じるんだが。
317名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:33:37 ID:YsfsvewR
嫉妬・修羅場などかわいくなければ意味がない
318名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:34:34 ID:6Qx4bvv1
山本くんとお姉さん3
まだかな・・
319名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 18:46:14 ID:eSzSmvsq
>>316
それは、どんなssにも当てはまる気がするなあ。
むしろ、不細工な子がヒロインの作品なんてほとんどない気がする。
320名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 19:01:43 ID:/gIYOvjm
ブサが美女になるのなら可!
321名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 19:07:46 ID:W8dhVBeK
>>316
ジャイ子かわいくねえ?
322名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 19:08:42 ID:NtPqt4Mm
キョーくん女版か・・・
|ω・`) となるとやはり幼馴染・・・

とりあえずおいらはキョー君を貰っていきますね(*´д`*)
323名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 19:17:58 ID:2K2UCGrr
そうはい神崎
324名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 19:38:41 ID:/MRKsttr
最近、神たちの投稿ペースも落ちてきたな
325名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 20:10:28 ID:6C8khCsh
今でも十分速いし
むしろ今までが異常だった
326 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 20:25:04 ID:aU8gPkn1
投下します
327『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 20:31:16 ID:aU8gPkn1


 「歴史の授業中、け〜ちゃんと教科書見せあいっこしてた。机くっつけて肩よりそって。残暑が
キツイ一日ですって天気予報も言ってたのに、べったりと。貸して欲しいって言ってくれれば喜ん
でわたしのを貸してあげたのに。……わたしは教科書なんかなくたって構わなかったのに」

 「お弁当、み〜ちゃんと美味しそうに食べてた。たこさんウインナーおいしそうだねって。……わ
たしのお弁当のカニさんだっておいしかったのに。…………食べたいって言ってくれればあ〜ん
して食べさせてあげたのに」

 「掃除の時間、イスに乗って窓拭きしてたく〜ちゃんのスカート眼で追ってた。ジロジロ食い入る
ように見てた。………………見たいなら見たいって言ってくれれば、わたっ、わたしが――」

 「……そこは男のサガってことで無視してもらいたかったりな?」
 危ない気配を察知してなるべくさり気なく話題をずらす。
 「………………………ぐすっ」
 「……悪かった。もうしない、もうしないから。だから落ち着いてくれ……」
 弱りきった俺はただ曖昧な返事をするしかない。
 竹沢から告白された翌日。
 静まり返った二人きりの教室は何時もどおり。
 ただ、見るも無残な面持ちでいる竹沢の依存癖は、在りし日のそれより明らかに酷かった。

 ――完全無欠。完膚なきまでに俺の落ち度だ。

 依存だ、依存症だ。『症状』だ。
 ……片鱗ならいくらでもあったのに……。

 例えば、過剰なスキンシップ。
 例えば、蕩けるような囁き。
 例えば、常識外れの泣き虫。
328『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 20:32:31 ID:aU8gPkn1

 父親が失踪したとはいえ、そこまで安定しないメンタリティに異常がないはずがない。
 ……慰め続けていれば大丈夫だろうとタカを括っていた自分が情けない。
 いや……、敢えて見ないようにしていたのかもしれない。
 竹沢が悲しむのを恐れて。

 結果どうなったか?
 竹沢の依存の対象が一月経っても帰ってこない父親から俺へとシフトされただけだった。
 加えて、愛の告白をされた。


 神に訊こう。俺にどうしろと?


 受け入れて依存の受け皿にでもなってやるのか?
 拒絶してあのまま泣き叫ばれ続けるのか?

 ――昨日はあれから、近くの公園まで何とか竹沢を引っ張って行った。
 説得すること約一時間。
 『見捨てないで。置いていかないで。独りにしないで』
 そんな感じの言葉を壊れたように繰り返す竹沢。
 仕舞いには告白の返事を保留にしてくれるように頼み込んできた。
 俺が竹沢に好きじゃないと返せば、それで縁の切れ目と思ったのだろう。

 ……拒否しても損しかない。答えの引き伸ばしは双方にとって有用だ。
 俺は何とか断りの返事をしても竹沢が正気でいられるようにすればいいんだ。

 「って言ってもな……」
 俺が原因、自業自得にしても限度があると思う。
 これは少し、……いやかなり重い。重過ぎる。
329『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 20:34:29 ID:aU8gPkn1

 昨日で覚醒してしまった竹沢は、教室で二人きりになるやいなや問い詰めを開始した。
 同時に俺の隣の席に座る。
 羞恥心などかなぐり捨てているのか、机どころではなく本人が完全密着。
 もしかしたら、その席の本来の持ち主である、け〜ちゃんこと、本橋圭への嫉妬心を晴らしてい

るのかもしれない。

 俺はなるべく自然に肩にへばり付く竹沢の頭を押し退けようとする。
 「こ〜ちゃん……」
 首を捻って避けられた。

 「あのな……。大体お前今日一日中平気そうな顔してただろうよ。昨日の今日で心配になって
声かけてみれば『どうしたの? こ〜ちゃん。もしかして数学の宿題忘れたのかな? あはは、ご
めんね。わたしもやってないよ』――何だこれ。ギャグでやってんのか?」
 「教室でくっ付いたらこ〜ちゃん困るでしょ……?」
 「……確かにその通りだけどな」
 「だから我慢してたんだよ……。……みんなに怪しまれたらダメだから……」
 吐息が首筋にかかる。
 この行動が周りから奇異に映ることは理解してるのか。
 「変なところでしっかりしてるな……。じゃあその勢いで離れて――」
 「……お願いだから見捨てないで。――放課後だけっ、放課後だけでいいからぁ……」

 ――ゼロ距離で震えられたら、どんな鈍感だって気付くだろうさ。
 ……畜生。
 ただの自己中が俺に寄生してるだけだったら遠慮なく見捨ててやったんだっ……。

 「……なあ、お前の親父はどうやったらそんなに娘に慕われるようになったんだ?」
 やや皮肉を篭めた疑問に、しかし竹沢は無言で俺に絡みついた腕の力を強くしただけ。
330『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 20:36:00 ID:aU8gPkn1

 圧し掛かる重圧はそれほどでもない。
 でも、全身を預けられる感覚と、鬱陶しい泣き言が真綿で俺の首を絞めてくる。
 『依存されている』その事実が、心底重苦しい。
 逃れようとしても逃れられない重荷を背負っている。
 不可避の責任が俺と一体化しているような錯覚さえある。

 俺は――、もう何もかもを忘れてこうして竹沢をあやすしか術がない。
 それでも――、こうしていることに意味がある気もする。

 複雑に思考が交錯し、俺はその統合作業を中断する。



 無意識に堕ちていく頭の中で、唯一つ見えるシーンがある。
 滂沱で滅茶苦茶になった竹沢の顔。――昨日の告白の場面。

 あの瞬間が眼に焼き付いているのは何故なのか…………。



 疑問の答えを探す気力はもうない。

 聞き慣れたチャイムの音も、俺の意識を呼び覚ますには力不足。


 ――そんなこんなで、俺は麻衣実ちゃんとの約束を物の見事に忘れていた。
 さらに悪い事に、様子を見に来た彼女は教室の前に立ち尽くしていた―――。
 俺はそんなこと、夢にも思わず予測もできず、無論、妄想でも思い付けなかった。

331『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/03(月) 20:41:37 ID:aU8gPkn1
ここまでです。

竹沢の大攻勢。次回は覗き見してた麻衣身ちゃんサイドで。

それにしても依存っ娘好きの同士がこんなにいて嬉しい限り、
物語の大半は書き上げてあるので、なるべく早く投下します。
332名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:06:47 ID:hjQqxeH8
kitakoreeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!
GJです。
333名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:11:45 ID:W8dhVBeK
>>331
    _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 依存!依存!
  (  ⊂彡
   |   | 
   し ⌒J
    _ _
   ( ゚∀゚ )  
   し  J
   |   |   
   し ⌒J
334名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:22:22 ID:h0eXy1Cl
>>333
みっち見・・・いや俺も好きだけどさ
335名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:27:23 ID:YsfsvewR
 
   _ _
   ( ゚∀゚ ) <修羅場っていいですね 
   し  J
   |   |   
   し ⌒J
336名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:29:15 ID:/gIYOvjm
エロゲ板の依存スレも見ていた俺は

やっと神に巡り合えた気がする!
337名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:36:21 ID:I/mAMPZ+
>>331
いいなぁ…かわいいなぁ…
俺だったら喜んで依存されるよ(;゚∀゚)=3ハァハァ

>>335
私の七誌君にへんな顔向けないで!
338名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:36:46 ID:6C8khCsh
普段は天真爛漫だけど依存症
…いい、すごくいい
ギャップがたまらない
そうそのギャップがたまらないんだ!!
339名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:46:56 ID:Y2wygxy/
>>316
俺はこの手の話はリアリティ込みでブスであってもいいと思うけどなあ。
S県とか萌えこそしないが読み物としては十分面白いし
340名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:52:21 ID:CKbMAkJD
>>339
S県も俺の脳内では萌え美少女。
アコさんは勿論美人お姉さん系で。
一人脳内で激しく萌えてた。
今でも「お兄ちゃんどいて(r」は名言だと思う。
341名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 21:55:11 ID:k7OvTpwr
やはり、神って存在するんですねっ!!
342名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 22:00:44 ID:hBtqbkYb
>「久しぶり……本当に久しぶりに先輩とずっと一緒の放課後ですね……」

この一言に激しく萌えたw
343名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 22:02:41 ID:YsfsvewR
  _ _
   ( ゚∀゚ ) <わかるわかる君の言うとおりだ
   し  J
   |   |   
   し ⌒J
344名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 22:06:32 ID:IVLySyn3
う…うおおぉッ!!!!!

俺は今ッものすごくニヤニヤしているッ!!!!!!!

全裸で
345名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 22:42:53 ID:bwWA/07j
おれなんかオネイニーですヨ?
346名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 23:13:26 ID:hjQqxeH8
あ〜あ、早く血塗れ竜来ないかな・・・
347名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 23:28:42 ID:ZQA98Yyr
キモ姉分が足りない
冬まで待てないよ…


自家発電でもしろというのか
348名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 23:35:45 ID:oAWr4+Ys
しかし、社会人でSS書いてくれている人は本当に神だよな・・
残響で疲れた体に鞭を打って、いい作品を書いてくれる

本当に憩いの場所です
1日の終わりにここを読むと本当に癒されますね
349名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:05:20 ID:Q0x89ya7
まとめサイト更新きたね
管理人さん乙です
350名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:06:21 ID:1j0HPp8B
まとめサイト更新キ…(-_-)キ(_- )キ!(- )キッ!( )キタ(. ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━━
351名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:08:56 ID:NxdEzBch
阿修羅氏に敬礼!!
352名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:22:27 ID:+ojNx5P/
乙であります!!
353名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:24:41 ID:4gyNRCNc
管理人さん俺も大好きだ!!
354名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:25:02 ID:FHu/mjS1
阿修羅氏乙です!!
まじで現人神だな
355名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:30:41 ID:snmK9o27
俺も大好きだ!


俺たちの狂喜の叫びが、少しでも阿修羅氏の励みになることを祈ります
356名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:31:34 ID:AjJZ1uQp
阿修羅氏嫁「なにこれ……般若? 何であの人こんなのページ見てるんだろ……。
         !!! なんなのよ! これ! 『大好きだ』!? 許さない! こんなサイト……!!」






(((((((( ;゚Д゚))))))))ガクガクブルブルガタガタブルブル
357阿修羅:2006/07/04(火) 00:31:37 ID:lCLsEKQD
更新が滞り、申し訳ありません。
まとめサイト管理人です。
まさかこれほど更新を期待されているとは・・・・
労いのお言葉有難うございます。
当分は不定期更新になるかもしれませんが、これからも
可能な限り続けていこうと思います。

>◆tVzTTTyvm.様
埋めネタとして連載されていた作品に仮のタイトルを付けさせていただいています。
変更等のご要望がありましたら、お手数ですがお知らせいただければと思います。
358名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:33:36 ID:1j0HPp8B
>>357
マイペースで良いですよ。
359名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:40:25 ID:R1UV6jwS
阿修羅氏乙!!
360名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:45:23 ID:+ojNx5P/
更新・管理されてくれるだけで十分過ぎますぜ阿修羅氏
都合もあるでしょうし無理せず自分のペースでやってください
361118 ◆JfoDS60Gas :2006/07/04(火) 06:26:22 ID:ZJXo9HJ1
どもです。
お約束どおり投下させていただきます。
タイトルは、「永遠の願い」です。
362永遠の願い 第一話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/04(火) 06:28:37 ID:ZJXo9HJ1
朝の目覚めはいつも騒がしい。
寝ぼけ眼を擦らされる、やや不機嫌な目覚め。
それもこれも、別に頼んでやってもらっているわけではないんだが、いつもいつもそうしてくれるからなんとなくそれに乗っかってしまっているだけ、というのが本当のところだ。
と、何がどうしてどうなっているのかといえば、簡単に言えば「朝起こしに来るやつがいる」ということなんだが。
「おーい、孝人おきろーっ」
さっそく、俺の上から毛布を剥ぎ取るその幼なじみ。
寒さと遠くなる日々とはいえ、まだまだ朝は俺の肌に寒い空気を流した。
実際、勘弁して欲しいなどと願っていたりなんかすると、まじめに遅刻し、連帯責任でこいつまで迷惑をかけてしまう。
「ぅぅ、あとちょっとー」
「起きないと遅刻だぞー、今日もいい天気で、空気もすがすがしいよ」
「それはおまえだけだぁ……寝る」
「寝ちゃだめだってばっ、ほーらぁ」
俺の肩を揺する。
寝間着姿の俺、そのゆったりとした布地を押し上げるものに気を留める事も無く。
……無く、か。
「ん、ぁ……晴海、時間は?」
「8時10分前」
つまり7時50分。
いつまでも粘っているのも自分が情けないので、だまって体を起こすことにした。
時間からして、メシは昼までお預けだな。
と、思ったんだが。
「はい、制服。それと、食パンをトースターで焼いておいたから、マーガリン塗っておくね。準備ができたら取りにきて」
「ん、わかった」
まったく、そんなところまでしっかり手を回すんだから、こいつもよくやると思うよ。本当に。
制服を俺が受け取ったのを確認して、その黒光りするようなストレートヘアを翻しながら、幼なじみ……晴海は、部屋のドアノブに手をかける。
すんなり出るものと思っていたのだが。
「孝人、見せ付けないでよ、それ」
と、小声ではあるもののまるで俺に聞いて欲しいかのように、訴えをつぶやいた。
見せつける、という言葉自体は薄い。
だが、何をどう見せ付けているのかは、わかった。
「えろえろ」
ちょっとからかい半分にいってやった。
「それはどっちよーっ!」
もっとも、未だに収まらないそれを振りかざしたままじゃ仕方ない反論か。

晴海が部屋を出て、俺も着替えてかばんを手にとり、下に降りる。
彼女が言うとおりにマーガリンを塗った食パンを受け取った。
両親が同じ職場で共働き、いつもなら家にいついているのだが、こないだから出張で家を空けている。重要なこと以外は連絡を取り合わなくてもやっていけるが、時折電話をかけては俺のことを案じてる。
一人息子の安否を気遣う、どこにでもいるうっとおしいくらい愛情を注ぐ両親だ。
その両親に、一切の世話を任されているのが、目の前にいる村崎晴海である。
「はい、時間あまりないから、かじりながら行こう」
晴海はもちろんいつでも行かれる格好だ。
俺も、もっと早く起きればもっと念入りに準備できるんだが、どうも朝は苦手だ。
早起きの誓いを何度破ったことか。
結局、晴海が起こすからいいや、みたいな諦めムードになっている気がしなくもない。
髭も寝癖も、今は自分でなんとかやってるが、よく晴海にそういうとこの手入れを怠っているぐうたらを叱られた。
だからいつも30分くらい前から粘っているようなんだが……いつも30分は寝過ごす。
なにやってんだかと思うが、逆を言えばそれも晴海に感謝しなければいけないことか。
マーガリンが塗り終えたパンをかじりながら、二人で玄関を出て外に向かう。
晴海の言うとおり、雲ひとつ無い快晴だった。

363永遠の願い 第一話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/04(火) 06:30:27 ID:ZJXo9HJ1
足取りはいつもとさして変わらない。
時間からして、歩けば間に合うくらいだ。
「思えば、もう2年になるんだね」
「ああ」
両親の出張のことを言っているんだろう。
そういえばかなり長引いている。
連絡をとっても、あちらのほうにだいぶ気に入られたのか、うちに帰ってくるのは夏や冬の長期休暇のときくらいで、他はもうほとんどあちらの正社員のようなもの。
まったく、熱を入れるのも勝手だが、ちょっと長すぎないか?
ああ、転校とかの話も聞いたが、それは却下した。
もっと年下ならわからんでもないが、大学受験を控えているくらいの年齢なんだからと突っぱねた。
俺が断ったのはそういう理由ではあるんだが、あの両親は何を考えてか、あっさり承諾してしまった。
なにか裏があるのかと思ったが、あの二人、晴海と俺をもっと親密にしようとか考えているようなふしがあったから、きっとそれに違いない。
間違っても、晴海は幼なじみだ。
それ以上でもそれ以下でもない、そんな怪しい関係なんか考えたこともない。
そりゃ。
「?」
晴海の体を見て思う。
こんな抜群のスタイルと豊かな胸と、他に類のない美貌、おまけに勉強も運動も料理も出来るなんてできすぎた幼なじみだ。
親父はもちろんだが、おふくろも晴海と俺のことは大賛成のようだった。
まったくばかげてる。
はなから晴海はただの幼なじみ。人気はあるようだが、慣れきってしまって、そもそも近すぎる。
「もうちょっと早く起きてくれればいいんだけどね」
「仕方ないだろ、こればっかりは」
「ちゃんと努力すれば誰でもできることだよ? そうだ、夜寝る前に、明日何時に起きる、っていう誓いをきちんとたてるといいかも」
「なんだよそれ」
「早起きできるおまじない」
女の子が好きそうな話だよな。
ほとんど呆れ半分に俺はその話に耳を傾ける。
半端な気持ちで受け応えするものだから、晴海はあまりいい気がしていないようなのだが。
「もう、一緒に朝ご飯食べたいのに」
細くつぶやいた、晴海の一言がやけに引っかかる。
「そんなに朝チュンしたいのか?」
エロジョークで返す。
「な、っ。べ、べつに、孝人がそうしたいなら、考えてもいいけど」
「おいおい」
本当にジョークなんだぞ、これ。
「冗談なんだよね?」
そう疑うわりに、だいぶまじまじと考えていたようなんだけど、晴海ちゃん。
実際、晴海がその生の柔肌を俺の腕の中に預けて、いい朝ね、なんていう夢を見たことは、別に今日に始まったことじゃないんだが。
それはたんに、ヤリたい盛りの今の俺にとって、一番身近な女が晴海なんだから仕方ないだろう。
「まあな」
「もう、そんなにエッチなことばっかりいってるともてないぞ」
「別に、モテたって好きな人に好かれなきゃ意味ないし」
「はぁ、まったくそういうとこだけ現実的なんだから」
「それが俺なんだからいいだろ」
呆れてため息をついて。
その癖に、晴海はまったく俺に突っかからなかった。
なんというか、かゆいところに手が届くような、そんなカタルシスを与えてくれる晴海。
もう、何年幼なじみをやっているんだろう。
こうして通学路に、同じ学校の制服を見るようになっても、俺と晴海が連れ立って歩いているのは、その流れに完全に溶け込んでしまった毎日の1風景になっていた。
何人かクラスメイトを見かけて、俺たちは挨拶していく。
364永遠の願い 第一話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/04(火) 06:32:23 ID:ZJXo9HJ1
追い抜くとか追い越されるとかそういう歩く速度の差が如実に現れながらも、彼らの目に映る俺たちの姿は。
「おはよう、今日も朝チュンか?」
「まあな」
「ちょ、ちょっと、否定してよぉ」
と、ちょっと悪ノリのきいたやつにからかわれたりとか。
「おはよ〜っ、二人ともラブラブだね」
「うん、孝人とは毎日仲良くやってます」
「昨日の晩こいつはげしくってさ」
「な、な」
「ふふふ」
と、笑みを浮かべられたままどこぞの女生徒に勘違いされるとかは、もう日常の恒例行事。
別に付き合っているとかそういうんじゃないんだが、学内ではなんか、「ベストカップルランキング」の上位、どころか、首位に立ってるんじゃないか、とまで言われたことがある。
そういうつもりはないんだが、やはりそういうふうに見られるものなんだろうな。
そうして、通学路の道のりもあとは校門を踏み越えるのみ。
8時20分に、5分ほど前。
予鈴が鳴る頃には教室に入れていた。
「はぁ、もっとゆっくり学校に来たいよ」
「別に、今のままでもいいんじゃないか?」
「もう、そういう問題じゃないの。だって……」
「ん〜?」
「あんまり足早だと、朝の空気をちゃんと味わえないよ」
晴海は俺の隣に座って、カバンの中から教科書類を机に納めながら、一息ついて愚痴っていた。
なんというか、やはりというか。
こいつの幼なじみであることが、奇跡のように思える。
俺にはできすぎた人であり、もっと釣りあうやつがいてしかりなはずなんだが。
どうしてここまで良くしてくれるんだろうな。
そろそろ、俺じゃない、別の男に卒業して、そいつに尽くさないといけないんじゃないだろうか?
そう、考えてみたこともあったりしたが、なぜかそう踏み切って、彼女を送り出す勇気がなかった。
思えば、それだけがんばっている晴海に、ちゃんとしたお礼ができていない。
彼女に何か送ってからでも、遅くは無いんじゃないか。
と、晴海を俺から離れさせるべきか否か、そんなことを考える理由も、今俺が机の上に取り出した手紙が理由なんだが。
「さっきのラブレター?」
「ああ」
朝、俺の下駄箱にそっと忍ばせてあった、シンプルだが、けしていたずらなどではないといわんばかりの、やや厚みのある封書だった。
「見てもいい?」
「おいおい、それはいくらなんでも」
「ことと次第によっては相談に乗るよ?」
「あのな」
とんだおせっかいだ。
晴海は横目に俺を気遣っているが、シチュエーション的にラブレターだとしてもだ、これが本当にラブレターであるという保証はない。
それは開けばわかるが。
「おまえは、自分がラブレター出したのを、他の、しかもそいつが仲のいい女にも読まれていたらどんな気分だ?」
「あー、優しいな。でも、そういうところが孝人のいいところなんだけど。あ、私は大丈夫、それならそれでいい度胸よ、って突っ走っちゃうから」
「さいですか。じゃあ勝手にしろ」
「そうさせていただきます」
結局、晴海のチェック付きで、俺はその手紙を読むことになった。
封書の中から出てきた手紙は、きれいな手書きの便箋を2枚、折りたたませていた。
365永遠の願い 第一話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/04(火) 06:33:38 ID:ZJXo9HJ1
縦書きに、すらすらと綴られたそのテキストは。
「突然このようなお手紙を差し出して申し訳ありません。
私は1年の榊幸奈(さかきゆきな)と申します」
幸奈、という部分に丁寧に振り仮名していた。
几帳面というか、気配り上手というか。
まるで晴海のそれを投影しているかのようだった。いや、晴海のやつは気心しれた俺にここまで配慮することはない気がするのだが。
しかし、この名前は別にまったく読めないってわけでもないだろうに。

「暖かいあなたの心遣いの数々、私のためにいろいろ手を尽くしてくださったこと、本当に心から感謝しています。
あんなに優しくしてくれた先輩の手の厚みや、背中の広さや、首の太さが今でも心に残って離れません。
よもやこのようなところで、私の意中の人を見つけられるとは思っておりませんでしたので、本当に驚きました。
いつもお隣にいらっしゃる、村崎さんのことは存じております。IHHHというファンクラブがあることも知っています。
私なんか、村崎さんに比べたら、全然冴えない、草葉の陰からそっと見守っているようなささやかな女です。
でも、あなたのことを想うと胸が締め付けられるようで、でもいつも、あなたのことばかり考えてしまいます。
長々と、変なことばかりを書いてすみません。
できれば、単刀直入な気持ちはじかに伝えたいです。
今日の放課後、4時、屋上で1時間だけ待ちます。
ご迷惑であれば、来てくれなくてもかまいません。そのときは、バカな私が抱いた淡い想いはきっぱりあきらめます。
でもできればどうか、あなたのお返事を聞かせてください

桧木孝人様
                       榊幸奈」

おおまじめに、百歩譲っても、この内容をラブレターでないというやつはいない。というか、こんな手の込んだいたずら書きをするやつもいない。
いや、いたずら書きなんかしたって、俺は晴海とこの方長いこと寄り添って生きてきているようなもの、誰が俺なんかを罠に嵌めるものか。
つまり。
これは。
正真正銘のラブレターである。
「ふうん……孝人、一人虜にしちゃったんだ」
「虜って、いってもなぁ」
いつまでもその便箋を出しておくには忍びなくて、封書しなおして机にしまう。
晴海が、何かをいいかけて、俺がそれに受け応えするか否かのタイミングで、担任がホームルームに入ってきて、授業のタイミングになった。
366118 ◆JfoDS60Gas :2006/07/04(火) 06:35:13 ID:ZJXo9HJ1
とりあえず今日はココまでです。
367名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 08:06:29 ID:b0TR6wjx
(*^ー゚)b グッジョブ!!幼なじみイイヨイイヨ!
そして大和撫子な感じがするラブレターの書き手にも期待
368118 ◆JfoDS60Gas :2006/07/04(火) 09:05:25 ID:ZJXo9HJ1
やばい、あぷして気づいたが、親の出張が変だ。
>>362で、
> 親が同じ職場で共働き、いつもなら家にいついているのだが、こないだから出張で家を空けている。

とあるが、そのあとの>>363の晴海との会話で、

> 「思えば、もう2年になるんだね」
> 「ああ」
> 両親の出張のことを言っているんだろう。
> そういえばかなり長引いている。

と、つらつら長い出張のこと説明してるし。
孝人のこないだっていつからだorz

なので、まとめ時は上の部分をこう訂正してもらえると助かります。
×親が同じ職場で共働き、いつもなら家にいついているのだが、こないだから出張で家を空けている。
○親が同じ職場で共働き、普通なら今ごろ家にいついているのだが、今は出張で家を空けている。

すみません、次からはちゃんと見直します;;
369名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 10:19:30 ID:rMvMCX4k
GJです。
この鉄壁の幼馴染を突破するのは大変そうだけど榊さんガンバレ
370『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/04(火) 13:23:44 ID:rgzVZYwu
「じゃあ、シャワー浴びるから……」
「おう。」
葵がいなくなってから、しばらく世間話をしていた。なんだかセレナと久しぶりによく話したような気がする。というか、つい一昨日まで普通の暮らしをしていたのさえ疑えるぐらいだ。
「………」
セレナのシャワーを浴びる音だけが響き、葵のいない静かな部屋。……たった一日だけなのに、やたらと長い気がした。葵の心残りが消えない限り続くとなると、うっとおしいのだが……
「はぁ……」
少し期待している自分がいる。あれだけ馬鹿騒がしいのが、いまでは苦痛では無くなっているのだ。でも葵は幽霊……ある種、異端の存在。そしていつかは消えて………
「くそっ!」
ドンっと葵が消えていった壁を叩く。ここまで誰かに心を掻き回されるのは初めてだ。悔しいのか悲しいのか……中途半端な感情だ。
落ち着けずに、部屋をうろうろしていると、セレナがシャワーから出てきた。
「ハル…でたよ。」
「………」
セレナはバスタオルを巻いただけの姿だった。体はほんのり赤みを帯び、濡れた髪がまた扇情的だった。
371『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/04(火) 13:24:24 ID:rgzVZYwu
「ハル……悩むのは止めようよ。あの娘は……幽霊なんだから。もともと、私達とは関係なかったんだよ……」
「関係……ない?」
カチンときた。セレナの無責任な言葉に。普段からこういう事を言うが、今回ばかりは…
「っざけんなよ!関係なくないだろ?…あいつを助けてやれんのは、俺達しかいないんだよ!」
怒りを捲し立てながら、セレナに歩み寄る。セレナ曰く怒りやすい俺が、本気で怒っているのに、本人も動揺している。
「な、なにそんなに怒ってるの?本当の事じゃない!?」
「本当だろうがな、俺はもう見捨てられるようには思えないんだよ。せめて…せめて心残りを解消してやりたいんだよ!」
「なんで?…あの娘のためにそんなにまでしようとするの?死んでるんだよ?…恋人でもないのに、無意味な事しないでよ!!」
「無意味なもんかよ!」
「だからなんで!?」
「好きだからだよ!葵が!」
「っ!…そんな…だって、私はハルの…恋人だよ……」
「死んでたら関係ないんだっつっただろ?なら死んだ奴を好きになっても関係ないよな!?」
372『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/04(火) 13:25:13 ID:rgzVZYwu
「だめよ……」
セレナが俯き、肩を震わしながら、声を絞り出す。その表情は、ここからではうまく読み取れない。
「そんなのダメ!私がこんなにハルが好きなんだから、そんな死んだ娘の事を好きだなんて言って欲しくない!!」
そう叫ぶと、バスタオルを外し、その豊満な体が露になる。クォータによる物のせいか、やはり同い年の日本人とは格が違う。
「うっ……」
やはり男の性か、その体に釘付けになり、男としての反応もしてしまう。その裸のまま迫り寄られ、押し倒された。
「んふっ……ふぅ…」
そして熱い口づけ。よく考えると、最近はこういう行為はしていなかった。最後にしたのは何時だっただろう……
「ね、ハル。エッチしよ?最近してなかったから、溜まってるんだよね?ふふふ…あんな体のない幽霊となんかじゃできないもんね。私がたっぷりしてあげる。」
「うあ…」
そう言って堅くなったズボンの上から擦られるGパンの生地をも突き破りそうなほどに、痛々しく腫れ上がっていた。
「ほら、ね?気持ちいいでしょ?あんな幽霊なんかより、私の方がいいでしょ?」
373『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/04(火) 13:26:06 ID:rgzVZYwu
うまく抵抗できないまま、ジッパーに手が掛かる。すると……
「やめて!もうやめて下さい!!」
妖しい部屋の空気を、一人の声が切り裂いた。その声の主は玄関に立っていた……
「あ、葵!?」
「あなた……なんでここへ……あはは……まあいいわ、あなたと私が違うってこと……ハルに出来ないことを、私がしてあげるのをしっかり見てなさい……」
葵の叫び声が入ろうとも、セレナは行為を止めない。それどこれか見せつけるためか、激しさを増していく。
「やめてって……やめてっていってるんです!!!!!!もう見たくない!!!!」
ゴウッ!
鼓膜が突き破れるほどの大声が聞こえた瞬間、物凄い衝撃が襲ってきた。強風というより、もはや衝撃波といえるような物が、部屋に叩き付けられた。
「ぐあ!」
「きゃあ!?」
それに耐えられずに吹き飛ばされる俺とセレナ。家具や食器も部屋中に飛び散る。痛みを堪えて立ち上がると、葵が部屋を飛び出そうとしていた。
それを追いかけようと、俺も部屋を出ようとした。その時………
374『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/04(火) 13:27:27 ID:rgzVZYwu
ドスッ
なにか鈍い物が刺さるような、そう、まるで刃物にでも刺されたような音がした。
「え?」
自分の体を確認してみる。頭、首、胸、腹、足。どこも異常はない痛みも出血も……
「あは、あはははははは……ほら、ハル〜……」
振り替える。そこには血がたまっていた。大量の血。セレナから……セレナの腹から溢れていた。そのセレナの手には……真っ赤に染まった包丁が握られていた。
「あははは……ハル…痛いよぉ。私も死んじゃうよぅ…あは、私も死んじゃったら、ハルに愛してもらえるのかなぁ?…アッハハハ、ハハハハハハ……
だめ、だよ。あんな女じゃなくって、わたしのしんぱい、して、ね?……タ、ス、ケ、テ、ヨ。ハル?」
「あ、あ……ぐ、あ」
血、血、血、血。真っ赤な血。血の匂い、血の味、血の色。思い出される。たくさんの血。血の池。いけない、血はいけない。それは……それはっ!
「う、うああああああ!!!!!!あああああ!!!!」
その光景に全てを思い出した。去年の記憶を全て。そして……葵の事も。
375『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/04(火) 13:28:22 ID:rgzVZYwu
次回からは過去へんになります。セレナと葵はどうなったかは………引っ張りますw
376名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 15:01:13 ID:gr7cmozB
GJ
過去編に期待
葵スキーだったのにセレナスキーになりそう・・・
377名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 15:04:53 ID:vMk1GOZS
GJです。
セレナさん壊れた……やきもちこええ。
378『疾走』 第七話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/04(火) 16:36:44 ID:+mua6UC6
 疾走する――通学路を逆に、疾走する……っ!
 とうに昼休みは終わっているだろうが、構うもんか……っ。
 放課後の屋上に備えて、俺には家に戻って回収すべきモノがある。
「はあっ……! はあ、はあ……っ」
 膝に両手を当て……酸素を貪る。
 ――はにかんだ笑みが……素敵だった……っ。
 揺れるポニーテールは、とても似合っていると、思う。
 話していて――楽しかった。
 なのに。
「いたり……っ。先輩……」
 あの屋上で、俺が拒絶してから……おかしくなったのかっ?
 じゃあ、おかしくしたのは……俺かっ……?
 だけど俺は……ちゃんと断わったじゃないかっ! 無理ですって、言ったぞ……っ!
 確かに言い方は悪かったかもしれないけど……でも、普通わかってくれるだろ。
 不法な侵入。――鍵はどうしたんだよ、おい。
 無言の電話の奥底。ドアを蹴った、誰か……っ!
(まさか……俺のシャツを、盗ったのも……っ!?)
 ――全部、全部……先輩なのか……っ?
 俺にはもう、そうとしか思えないで、いる。
「――ガツンと……言ってやる」
 それで今後、二度と先輩とは話せなくなるとしても。
 今のまともじゃないいたり先輩を、正常に戻してやるには……俺が言うしか、ない。
 乱れた呼吸を整えると、俺は再び――疾走を開始した。
379『疾走』 第七話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/04(火) 16:37:28 ID:+mua6UC6
 覚悟しときなさいよ、とは言ってみたが……どうすれば、最善なんだろう。
 とぼとぼと、あたしは帰途を歩いていた。
 エー兄とあの女を――どうやって、別れさせるか。
 ……今すぐにでも殺してやりたいけど――問題は、その方法。


 なにが相応しいか――そうね。
 あらゆる血肉への道筋を、思索する。
 あいつとろそうだしね……案外どうとでもなるんじゃない?
 例えば……そう、例えば。
 圧殺や轢殺、刺殺や毒殺、駅のホームに突き落としたりも痛そうだよね、あはははははは――っ。


 ――あれっ? いや……あは、ははっ。
 いけないいけない……早まっちゃ駄目だよ、あたしってばっ……!
 今の、だいぶまともじゃなかった……危ないなあ、もう。
「だって……それって、犯罪じゃんっ……? あは、ははっ」
「――有華っ!」
 ……えっ?
 この声は……思いながら、振り返る。
「エ、エー兄……っ?」
「はあっ……! はあ、はあ……よかった、追いついたっ……!」
 薄く笑って言うと、エー兄は持っていた鞄を地面に置き、両手を膝に乗っけて、呼吸を整え始める。
 ――昨日を、思い出した。
 あたしの告白を笑って、冗談と言うことにして……あたしの悲しみを軽減してくれた、エー兄。
 そんなことするから……あたしは昨日より、もっと、エー兄が愛おしかった。
「……どうしたの。あたしに、なにか用事っ……?」
 直視できなくて、地面に視線を落とした。
 あんなとろそうな女のどこがいいのよ、とか……どうしても、そんな理不尽な非難を、エー兄にぶつけてしまいそうで、怖かったから。
 落ち着いたのか、エー兄はすっくと直立して、あたしを見てくる。
「聞きたいんだけどさ、お前……俺の家の鍵は、どうしたっ……?」
「――鍵っ?」
 言われて、急に答えられなくなった。
 あれ……っ? 確か昨日、エー兄の家に行った時に……開けてくれなかったときのために、持っていったよね、あたし……っ?
 その後――帰ってから、どこにしまったっけっ?
「多分……家にあると思うけど、どうしたのっ?」
「――多分、だって……っ?」
 ど、どうしたのエー兄……眼が、怖いよ。
 瞬時に切り替わった雰囲気に、あたしは動揺してしまう。
「お前……俺の親父に、それなりに信頼されたから、鍵貸してもらったんだろうがっ! だったらそれなりの責任を意識しろよっ!」
「あうっ……? エ、エー兄、どうしたの……怖いって」
「俺は――っ! お前よりもずっと怖いことに――っ」
 言いかけて、エー兄は口を塞いだ。
 明らかに……吐き出しかけた言葉を、噛み砕いている、そんな様子だった。
 斜めを向いているのが、何よりの証拠だと思える。
「エー兄っ……?」
「いや――すまん。言い過ぎた、ごめん」
 もうこの話題から逃れてしまいたい……そんな意思が滲んでいる、弱々しい声だ。
 エー兄は、忘却を願うように首を数回振ってから――。
「それよりも、有華……。お前に伝えたいことが、ある」
「――えっ」
 あたしを正面から見据えて、言ったのだった。
380『疾走』 第七話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/04(火) 16:38:19 ID:+mua6UC6
 階段を一つ越えるたびに、脳裏を過ぎることがある。
 ――あの、よ、よかったら、これからもお昼、い、一緒に食べませんかっ!?
 なんで俺なんかと食べたいかなあ、と最初は思った。
 けど特に断わる理由がなかったから――もちろん、いいですよ……って、言った。
 その選択が間違っていたなんて当然思わない。
 先輩の可愛いところとか……優しいところとか。話していて、楽しかったこととか。
 だが――俺の記憶の中で微笑む先輩は、それが真実か否か関係なく……もういない。
 怖かった。
 純粋に――はっきりと断わったのに、それを理解せず、あまつさえ勝手に家に入った先輩が……俺はっ……。
 おかしいと、変だと、普通じゃないと――思っている。
「ど、どこまで行くんだよぉ、エー兄のあほぉっ……!」
 有華の不満気に満ちた声が後頭部にかかる。
 俺は有華と繋いでいる手を強めに引っ張りつつ。
「いいから、黙ってついてこい。もうちょっとだから」
「話すだけならどこでもいいと思うよっ……?」
 滅茶苦茶行きたくなさそうにしている。
 高校の校門が見えてから、ずっとこんな感じだな……まあそりゃそうだろう。こいつはここの生徒じゃないし。
「……ごめんな。でも頼む……あそこで話さないと、駄目なんだ」
 言うと、有華は悩むように眉間に皺を寄せて……俯いた。
 ――俺は最低だと思う。
 この気持ちが本当はどうなのか……確信もしていないのに。
 前に向き直る。
 ドアが、待ち構えていた。
381 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/04(火) 16:42:11 ID:+mua6UC6
七話はここまでです。
展開が相変わらず遅く、四苦八苦しております。
382名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 19:46:47 ID:R1UV6jwS
高城 美羽
極端なお兄ちゃん子で、何かにつけて甘えてくる

林 黛玉
親に見捨てられ誰にも不必要とされてきたため、
初めて自分に優しくしてくれた異性である匠に心を奪われ、全面的に依存するようになる。

李 香蘭
物事への執着が薄く、意外なほどに適応力が高い。

林 紅玉
邦彦が涼子との結婚を機に奴隷としての調教を打ち切った事で、自分は邦彦に見捨てられたのだと思い込んでいる。
そのため、息子である匠に邦彦の面影を重ね、最終的には匠の奴隷としてもう一度調教して欲しいと願っている。



>奇妙な関係の中、

 匠の優しさは、
 次第に主従を越えた感情を少女との間にはぐくんでいく。

 だが――

 従属が愛情に変わったとき、
 愛は欲望となり、悲劇を引き起こす。

こりゃこのスレ的に来たな!
383猫泥棒 ◆rAFXqjbZng :2006/07/04(火) 20:06:09 ID:gfVs4wpj
投下します
384お願い、愛して!7 ◆rAFXqjbZng :2006/07/04(火) 20:10:03 ID:gfVs4wpj

 ――定刻。カーテンを覗いてみてもまだ淡く青白い光しか入ってこないような時間。
 枕元の目覚ましがまだ鳴っていないにも関わらず、俺はふと目を覚ました。
 だけど以前のように二度寝はしない。
 人間の慣れというものはなかなかに凄いものなんだなと思う。朝生と知り合って一週
間。この一週間で随分と早起きが身についてしまったのだ。
 俺は、身体を起こして、半開きのままのカーテンを一気に全開にした。
 そうして部屋を出て、キッチンに向かい、昨夜仕込んでおいたおかずをレンジに入れ
て、その間、寝癖直しついでに風呂場で軽くシャワーを浴びる。終えて戻った頃には温
まっている料理を皿に移し、その残りを弁当箱に粗雑に放り込んで、鞄に入れた。

 夏休み前なら考えられなかったな、こんな朝。

 シャワーが長かったのか、少し冷えてしまっている料理を口に運びながら、そんなこ
とを思った。


「お、おはよ〜。はぁ、はぁ……」
 軒先で待っていた俺に、瑞菜は汗を拭いながら微笑みかけてくれた。
「おはよう。息切れするほど急がなくても良かったのに」
「で、でも、はぁ……待たせちゃったら……いけないと思って」
 急かせちゃったか……。

「ごめんね? いつも迎えに来てもらって」
「いや、こっちこそ時間余ってるのに急かせちゃってごめんな」
「ううん、わたしは全然だいじょぶだよ!」
 そう言いながらも、瑞菜の髪にはぴょこんと軽い寝癖がついていた。少し無神経だった
かも知れない。
 次からは少し遅れてくるか。
 瑞菜に手間を掛けないために先に迎えに来ているのにこれじゃ本末転倒だ。
385お願い、愛して!7 ◆rAFXqjbZng :2006/07/04(火) 20:12:48 ID:gfVs4wpj
「ふぅ……」
 俺は瑞菜の息が落ち着いたのを確認して、
「そろそろ行こうか」
「うん!」
 瑞菜は返事すると、もう一度ふわりと柔らかく微笑んだ。

 道の脇を二人並んで、通学路に沿って歩き出すと、ゆっくりと風が頬を撫でていった。
 夏のまっ最中と言っても、他の学生が登校するより更に早い朝。もちろん、もうすぐ経て
ば、夏のあの開放的な熱でこの道路も燻されるのだろうが、この時間ならまだ夜の冷気が取
り残されていて、涼やかだった。
「キョータくん、朝早くなったよねぇ」
「そうか?」
 歩を休めず、首だけを瑞菜に向けながら言う。
「うん。だから今度はわたしが迎えに行くからね?」
 瑞菜の言葉に、俺は思わず苦笑した。
 そんな俺の様子を不思議に思ったのか、瑞菜が「え? え?」と、大きな目を丸くする。
「あ、いや。夏休み前とは立場が逆転したなって思ってさ」
「! あ……う、うん。そうだね……」
「……?」
「…………」
 不意に、瑞菜が俯いて口を噤んでしまった。
 な、何か悪いこと聞いたかな……。
 俺なんかと一緒にされた事に怒ったとか……?

「……キョータ……くんは――――……?」

「……え? 悪い、聞こえなかった。今なんて?」
「う、ううん! なんでもないっ!」
 俯いていた顔を上げ、強くそう言った瑞菜に、俺はそれ以上追及することができなかった。
386お願い、愛して!7 ◆rAFXqjbZng :2006/07/04(火) 20:15:23 ID:gfVs4wpj



「きりつっ、れいっ」

 ――――。

 終礼後、鞄に手をかけて帰ろうとした時、ふと思い出した。
(っと、彫刻刀、朝生に返しにいかないと)
 午後に芸術で彫刻が行われることを忘れていた俺は、昼放課に朝生から彫刻刀を
借りていたのだ。
 基本的に合同で行われる芸術の授業は当然、別のクラスに在籍する瑞菜も受ける
ため、瑞菜に借りる事はできない。だから学年の違う朝生に昼食を一緒にとったと
きにお願いし、放課後に屋上で返すことを約束して借りたのだった。

 屋上の扉を開けると、途端に少し蒸し暑い風と、夕焼けの紅い光が差し込んでき
た。
 その夕焼けを放つ太陽を手すりに身を任せ眺める少女が一人。
 ――朝生だ。
 姿を確認した俺はその影に向かって歩み寄って行った。
「危ないぞ」
 後ろから声を掛けると、瞬間、びくっと身体を震わせた。
 朝生がゆっくりとこちらを振り返る。
「……先輩」
387お願い、愛して!7 ◆rAFXqjbZng :2006/07/04(火) 20:17:45 ID:gfVs4wpj

 心臓が……高鳴った。
 夕焼けに髪を染めた少女の横顔が、瞳が、唇が、身体が……あまりにも儚げで。
「なにしてたんだ?」
 決まってる。彫刻刀を返してもらうために俺を待っていたんだ。
 そんなことは分かっているのに、普段と違う朝生の姿に動揺しているのか、そんな
事を訊いてしまった。
 だけど、返ってきた答えはあまりに予想外で――。


「夕暮れがあんまり綺麗だから、自殺……しようかなって、思ってました」

 全身が震えた。

 固唾を飲み込んだ。

 自殺……?
 光の加減かも知れないけれど、その時、俺には朝生が泣いているように見えた。
388猫泥棒 ◆rAFXqjbZng :2006/07/04(火) 20:25:38 ID:gfVs4wpj

 ……修羅場はどこ?
 いや、あの、すいません。展開遅すぎますね……。

 >>阿修羅様
 更新お疲れ様です! 本当に助かっております!
 どうぞ無理をなさらない程度に頑張ってください。
389名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 20:32:58 ID:R1UV6jwS
GJ death!!
この後輩は計算ずくの行動か素かわからん・・・
390リボンの剣士 20話 ◆YH6IINt2zM :2006/07/04(火) 21:08:56 ID:1tghH+cD
神に続け! というわけで投下します。
391リボンの剣士 20話 ◆YH6IINt2zM :2006/07/04(火) 21:09:43 ID:1tghH+cD
「二交代制、か」
「え、何が?」
「いや、何でもない」
風邪から回復して、ここ数日、今俺が言った言葉が連想されるようになった。
朝、明日香と一緒に学校に行って、中庭で別れると、木場が出てくる。
木場と朝のホームルームまで軽く喋って、授業に入る。
今、放課後のちょっとした時間に明日香と話をしているわけだが、明日香が部活に行けば、また木場が出てくるだろう。
明日香が、鞄と竹刀を担ぐ。
「じゃ。あたし部活行くから」
「ああ」
「だらだら居残ってないで、早く帰りなさいよ」
足早に明日香は教室を出て行った。

明日香より少し遅れて教室を出て、校門。
「待ってたよ、伊星くん」
木場は、今日は正面から普通に出てきた。校門前で、俺を待っていた、らしい。
同じクラスなのに、わざわざここで待つというのはどういうことなのだろうか。
「一緒に帰ろっ」
もはやパターン化した誘い。

初めて学食で一緒に飯を食ったときは、妙に馴れ馴れしい奴、と思った。
自分に不必要に干渉してくる。山ほどの疑問がわいた。
何の目的があって話し掛けてくるのか。あれこれと出て来るお誘いに、何の狙いがあるのか。
いきなり親しげに近づいてくる奴は、正直に言って信用できない。
別に木場の事が嫌いというわけではない。だが、人が行動するときは、意識無意識に関わらず、何らかの目的
があるはずなのだ。
木場の行動には、それが見えず、不気味に感じたというだけだ。
何を考えているのか見当も突かない相手とは、距離を置きたい。そう思っても、木場はずんずん近づいてくる

この人間は安全だろうか。自分を攻撃してくるのだろうか。
――――ああ駄目だ。そんな基準で判断するのが駄目だ。
明日香には、『話しかけてきた相手への態度が悪い』と言われ、屋聞には、『優しくしてくれる人にそんな態
度じゃ駄目』と言われ……。
「わかった」
「えっ?」
「一緒に帰る、だったな」
「う、うん……」
話を出してきた木場自身がうろたえている。俺が横を通り抜けてから、慌てて追いついてきた。
今までは何だかんだと理由をつけて断ってきたが……、木場に対して向けている”怪しい奴”と言う考えは、
今は他所に置いておく。
せめて、優しくしてくれる人くらいは大事に……な。


屋聞はこう言った。
『関わりの薄い周りの人だって、わざわざ危害を加えてやろうと思うほど汚くありませんよ』
だが、関係が薄くても、危害を与えてやる奴が居るという事を、俺は知っている。
392リボンの剣士 20話 ◆YH6IINt2zM :2006/07/04(火) 21:11:04 ID:1tghH+cD
「――――今日の体育、女子はバスケットボールだったんだけどね、シュートがリングと板の間に挟まっちゃ
って、試合が止まっちゃったんだよ〜」
「……諦めたらそこで試合終了ですよ」
木場と話しながら歩く帰り道。朝も思ったが、明日香といる時と比べ、どうも落ち着かない。
話す相手が違うだけだが、木場との場合、綱渡りのような緊張感があった。
明日香だと、好き勝手に喋っても深く突っ込まれない。
「伊星くん、漫画って読む?」
「読まないな」
「でも今の、漫画の名ゼリフだよ?」
「……別の所で、聞いたのかもしれない」
そういう事を突っ込まれても困る。クラスの誰かが物真似して言ってたかもしれないし、実際にその漫画を読
んだような気がしないでもない。
木場とはひと月くらい前からよく話をするようになったが……自分の話はぎこちないように思える。
この会話、傍で聞いてると異様じゃないか?
そんな俺の思いとは裏腹に、木場は楽しそうに、明るく振舞う。
何が楽しいのかわからないが、今の俺は、木場に不快を与えてはいないようだ。

「伊星くん、買い物に……付き合ってくれるかなぁ」
帰る途中、木場は不意に訪ねてきた。
……買い物に付き合うというのは、一緒に帰る、とはまた別のことだ。
俺は今は買いたいものは無い。しかしだ、ここで断るのも、何となく気が引ける。
それに早く帰ったって、特にすることも無いしな……。
「いいぞ」
「ホント!? ありがと〜。 じゃあ、こっちに……」
俺たちは進路を変え、商店街のほうへ向かった。

商店街から一つずれた一本道を歩いていたときだった。前方遠くに、五……いや、四人組の姿が見えた。
四人組は俺たちとは歩く方向が反対で、徐々に距離が縮まっていく。
顔がはっきりわかる距離まで来て、俺の足は止まった。
あの四人は……中学の時の……。
「伊星くん?」
……曲がり角もない。いきなり逆を向くのも不自然だ。逃げられない。
「――ん?」
「――お?」
「――おおっ!?」
四人組に気付かれた。あいつらの見ている男が俺じゃなかったら、そのまま目もくれずに、すれ違うだけだっ
たのに。
393リボンの剣士 20話 ◆YH6IINt2zM :2006/07/04(火) 21:12:04 ID:1tghH+cD
四人が近寄ってくる。
何をする気だ? また、以前と同じ事を……?
「よっ、久々だな。お前の顔見んのも」
端の男が片手を挙げる。こいつは、中学で、俺を一番最初に殴った奴……。
「その娘、すっげえ可愛いな。彼女か? うらやましいねぇ」
「……違う」
一人の言葉をきっかけに、木場は四人からじろじろ見られる。だが木場には動じた様子はない。
「なんだよ違うのか。まあお前にゃ明日香ちゃんがお似合いだもんな」
「ねえねえ、名前はなんていうの?」
別に奴に尋ねられ、木場は微笑んで答えた。
「私? 木場春奈。伊星くんの……クラスメイトだよ」
――――?
今……木場の笑顔に、違和感を覚えた。
いや、いつも見るニコニコ顔なんだが……何か、違う。うまく言えないが、出来過ぎたような……。
「春奈ちゃんかぁ。おい伊星、今ここで紹介しろよ」
「……」
「おい、黙るなって」
急かしてくるが、俺には簡単には答えられない。
心情的には、突っぱねてやりたい。木場の都合もあるだろうし、何よりこいつらと関わりたくない。
だが、文句の一つでも言えば、その返事として来るのは……暴力だ。
「何か言えよ」
「……」
「おい。わかってんのか? お前がその娘を連れて歩くのは生意気なんだよ!」
胸倉を掴まれた。
……こいつらは、そういう奴だ。俺とは関係が強いわけでもないのに、悪いことをした憶えもないのに、俺に
害を与えてくる。
「んだよその目……ウゼェよ」
奴の目が見開かれた。この目の動きだと、大抵その次には殴ってくる。
俺は反射的に目を閉じた。

――ぱんっ。

叩く音が聞こえた。叩かれたのは俺ではない。
胸倉を掴む手が、離れた。
目を開けてみれば、俺と掴んでいた奴の間に別の人がいる。

木場だった。

「ふざけないで」
腕を伸ばして俺を庇うように立ち、強くきっぱりと言い放っていた。
殴ろうとした奴が頬を押さえている。木場が、こいつを、叩いたのか……?
「あなた達の方こそ、うざいのよ」
……木場……?
普段の、俺が知っている範囲の様子ではなかった。さっきまでの笑い……そうだ、愛想笑いだ。
あの時の違和感は、作為的なものがあったからだ。
四人は、口を閉ざしている。俺もだ。木場の態度に、男五人は驚かされたのだ。
「……伊星くん、行こ」
木場は俺の腕を引っ張って、早いピッチで歩き出した。
呆然としている四人を置き去りにして、俺は商店街の方へと引きずられていった……。


(21話に続く)
394名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:14:43 ID:gr7cmozB
リボンの騎士キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
徐々に木場優勢に((;゚Д゚)ガクガクブルブル
そして主人公よりが木場かっこいい件
395リボンの剣士  ◆YH6IINt2zM :2006/07/04(火) 21:18:19 ID:1tghH+cD
阿修羅様、本当に乙です。
自分の文を読みやすく直して頂き、感謝の限りです。

396名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:22:39 ID:jANoe37m
いじめっ子うぜぇ(#・∀・)
そしてナイス木場
397名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:25:37 ID:awU4X4hv
なんか木場の好感度があがってきたな〜
なんて単純なんだ俺ってw
398名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:35:38 ID:6OuM/Tkq
実は自作自演・・・・まさかな
399名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:40:17 ID:6OuM/Tkq
おね愛の朝生がキタロー君の容姿だけにほれてたらはらがたつ
400名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:10:30 ID:3NdzCIaI
はらがたつのはいいが、sageろ
401名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:41:32 ID:8d3Nz6Pr
あんまりアガるとろくな事にならんしな……
402名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 23:03:32 ID:eNlf5xeF
今年の夏中には本スレを追い越しそうな件について
403名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 23:08:13 ID:rxSAADOH
本スレに嫉妬されるな。
404名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 23:09:59 ID:IGYzhNAP
投下しますよ
405『とらとらシスター』5虎:2006/07/04(火) 23:11:44 ID:IGYzhNAP
 いつもの如く痛々しい家族コントを終え、聖なる学び舎へと向かう。春の陽射しと朝の
爽やかな空気が快い、そんな日常を送るのが僕の数多い楽しみの一つであった。姉妹の喧
嘩は絶えないけれど、変わらぬ空気、代えられぬ世界が他の何より愛おしい。
 そんな筈だった。
 なのに、
「リムジンかよ」
 思わず突っ込んでしまった。
 細長くシャープではあるけれど、意外な無骨さも持ちあわせた魅力的な車体。滑らかに
下がっていくスモークガラスのウィンドウから顔を覗かせたのは、織濱さんだった。随分
と分かりやすい金持ち像をしているな、と感想を思い浮かべる。口には出さないけれど、
多分僕の左右で獲物と対峙しているような目付きの二人も同じことを思っているのだろう。
家は守崎の本家で取り敢えずは普通の家庭よりは裕福なのだろうけれども、さすが織濱さ
んは飛び抜けている。家の前に停車していたことにも気が付かなかったくらいだから、相
当ハイスペックな高級車なのだろう。こんな車は見たことがない。
 意見を言うのも忘れ、茫然と言うよりも静寂といった空気の中、それを破ったのはこと
の中心人物である織濱さんだった。彼女は不思議そうに小首を傾げると、僕と目を合わせ、
「どうした?」
 僕としては、織濱さんがどうしたのだろうという気分だけれど、敢えて口にはしないで
おく。そのような細やかな気遣いが我が家に伝わる伝統の一つ、殺虎さんの教えでも基本
的なものだから。御先祖様の努力は無駄にしてはいけない。
406『とらとらシスター』5虎:2006/07/04(火) 23:12:31 ID:IGYzhNAP
 沈黙。
 何を話そうかと考えていると、サクラが一歩前に出た。
「どうした?じゃないでしょう、常識をヒントにもう一度考えてみて下さい」
 こら、サクラったら何てことを。
 更に姉さんも一歩前に。デジャブを感じるのはきっと幻覚じゃない、普段の行動という
か、日々更新されているこんな行動が僕の脳細胞にしっかり刻み込まれているからだろう。
 姉さんは財布から十円玉を取り出すと、その艶やかな車体に向けて勢い良く振りかぶり、
「何なのよぅ!?」
 慌てて僕は姉さんの腕を押さえ付けた。サクラにあっさりと破壊された伝統は諦めると
しても、さすがに血筋が絶えるのは駄目すぎる。こんな車の車体に十円傷を付けるのはカ
タルシスに満ちているのは分かるけれど、その代償は大きすぎる。
「離して、虎徹ちゃん。お姉ちゃんはやらなきゃいけないことが出来たの」
「姉さん、良い娘だから我慢して」
 底冷えするような抑揚のない声に答えると、いつの間にかメイドさんが開いていたドア
の中へと引っ張り込んだ。凄い目付きで織濱さんを睨んでいるサクラに手招きをすると、
渋々といった様子ではあるけれど、きちんと乗り込んできた。
 役者が揃ったところで、僕は今のところの一番の目的を思い浮かべた。姉さんがさっき
必要以上に暴れたのも、きっとこのせいだろう。昨日の夜、寝る直前に姉さんには話して
ある。
407『とらとらシスター』5虎:2006/07/04(火) 23:17:06 ID:IGYzhNAP
「聞いてる?」
 改めて訊いてみると、その声でやっと現実に復帰出来たのだろうか、宇宙の真理を見つ
めていたとしか思えない織濱さんの瞳の焦点が合い始めた。
「あ、あぁ、すまない。子供は少し多くても良いが、避妊はきちんとしてくれ」
 一体どんな論理展開が彼女の頭の中で行われたのか、直球飛躍の答えが返ってきた。僕
がどんな人間として見られているのかは分からないけれど、現実と少しずれがあるらしい。
「一姫二太郎がベストだと思うんだが、虎徹君はどう思う?」
 轟音。
 先程の倍はある音量で、振脚の響きが耳に入ってきた。
「織濱さん、寝言はお家で一人きりになってから言いましょうね? 虎徹ちゃんは、そこ
までメルヘンなことを言ってないよ?」
「あまりふざけたことを言っていると、車の行き先が学校から地獄に変わりますよ?」
 左右からの強烈な圧力。
 そうか、この雰囲気は何かに良く似ていると思っていたけれど、中学の時の三者面談に
そっくりだ。あのときの状況は教師を眼前にして僕の左右を両親が固め、どんな効果があ
るのかは分からないが背後には殺虎さんの写真が飾ってあった。教師のポジションが織濱
さんに変わり、左右に控えているのが姉妹になったという違いはあるものの、恐ろしい程
に酷似している。言いたいことは当時とは違うものの、僕が心の中で殺虎さんに助けを求
めているのまで変わらない。
 しかし、今の僕と昔の僕は違う。
408『とらとらシスター』5虎:2006/07/04(火) 23:19:42 ID:IGYzhNAP
「姉さんも、サクラも、よく聞いて?」
 母さんから遺伝した綺麗な虎毛色の髪が逆立っているけれど、その恐怖も気にしない。
「これからは織濱さんと付き合うし、一緒に居る時間は少なくなるけど、二人とも大好き
だから。それは分かって」
 暫くの、沈黙。
 二人の雰囲気から納得していないのは丸分かりだが、何も喋らないのは言葉を探してい
るからなのだろうか。それとも、迷っているからなのだろうか。
 分からない。
 僕はさっきの言葉を後押しするように、
「いつまでも、家族、だから」
 付け加える。
「お義姉さんも義妹さんも、愛が深いんだな」
「あなたにお姉ちゃんと呼ばれる義理は無いわよぅ、この(SE:バキュンバキュン)!!」
「あら、この埃は何ですか?」
「こら、姉さん。女の人がそんなことを言っちゃいけません。サクラも、埃なんて無いで
しょ? 窓に指紋は付けちゃ駄目」
 織濱さんの言葉に、昨日のような小姑コントのような間抜けな流れになった。詰まって
いた重苦しい空気が流れたのはありがたいけれど、どこか不自然だ。まるで無理に空気を
押し退けているような、そんな空気。空元気にも近い雰囲気は、違和感を覚えさせる。
 言葉では表現出来ないけれど、どこかがおかしい。
「わたし、負けませんよ。秋茄子も食べてみせます」
 僕の思い過ごしなのだろうか、織濱さんは普通に流れに乗っている。そこから繋がって
いる会話には、不穏な空気は無い。本当に、思い過ごしなのだろうか。
 上手く行けば良いけれど。
 僕は誰にも聞こえないように、小さく溜息を吐き出した。
409ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/07/04(火) 23:20:22 ID:IGYzhNAP
今回はこれで終わりです

残業しまくりで疲れてたり、電車通勤をやめて疲れてたり、自転車で片道一時間で疲れて
たり帰りに中学生と間違えられて補導されかけたり、プロットにも無いしこれから出す予
定もないのにいつの間にか交渉開始という単語が入っていたり、歌わない雨の続きを書こ
うとしたら伸人が死んでて愕然としたり
410名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 23:23:41 ID:4gyNRCNc
>>409
GJ
>>中学生と間違えられて
ハァハァ

神の作品が私の生きがいですが無理をせずに頑張ってください
411ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/07/04(火) 23:27:06 ID:IGYzhNAP
うわ凡ミス
406と407の間に↓が入ります

 小さく短くという卑怯な言い方だったし、答えも返ってこなかったら聞いていなか
ったかもしれないと思っていたけれど、ちゃんと聞いていてくれたらしい。
 リムジンが発車したのを流れる景色で確認しながら、僕は織濱さんを見た。少し時期が
早い気もしたけれど、走り出したからもうじたばたなどは出来ない。
「織濱さん」
「何だ、虎徹君?」
 言うしかない。
「昨日の答えだけど」
 そう切り出した瞬間、僕の左右をがっちり固めていた姉さんとサクラから殺気が露骨に
伝わってきた。妙な言葉を出したら、間違い無く殺される。
 固唾を飲んで僕を見ている織濱さんと目を合わせ、
「こちらこそ、お願いします」
 鈍音。
 今にも床を踏み抜かんばかりの振脚の音が、左右からステレオで聞こえてきた。二人の
表情を見てみると、怒りのあまりまるで槃若の面を被ったように歪んでいた。いつもとは
逆で、普段から言葉豊かなサクラは舌打ちを一つ、舌を動かすよりも行動派の姉さんは体
を全く動かさずにうつむいて何かをブツブツと呟いている。辛うじて聞き取れる範囲で言
葉を拾うと何やら物騒な単語が聞こえてきたので、敢えて聞かなかったことにした。
 今は二人を意識から外して、織濱さんだけを見る。
「織濱さん?」
 笑顔のままおかしな方向を見て口元をもごもごと動かしている織濱さんは、正直あまり
見たくはなかった。だけれども、現実から目を反らしてはいけないのは家訓の一つ。
412アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/04(火) 23:31:33 ID:vaZ3cNGo
投下します
413姉妹日記 12話  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/04(火) 23:32:17 ID:vaZ3cNGo
 あれから、夏姉ちゃんも冬香もなんのモーションもかけてこない
 どうしたのだろうか?
 あれほど僕にすがりつき泣き喚き隣の部屋にまで乗り込んできた二人が・・・・
 安堵よりも不安が大きい・・・・
「もう、また余計なこと考えてたでしょ・・・・いまは・・・う・・・く」
 顔を赤く染め僕を受け入れる秋乃さん
 そうだよね、こんな時に他の女の子の考えるなんてマナー違反だよね
「愛してるよ・・・・・」
「あん!」
 耳元で囁くと秋乃さん背中を仰け反らせ快感に喘いだ
 あの日、最後まで僕を満足させられなかったことをずっと気にしていた秋乃さん
 まだ二度の経験しかないのに積極的に僕に奉仕してくれた
 こうやって愛を囁くと彼女はとても感じてしまうらしい
 だから僕は繰り返す・・・・愛の言葉を・・・・
「愛してるよ・・・・秋乃さん」
「あ・・・・あ・・・・涼・・・さん」
 瞳が揺らめいて僕を捉えながら快感を訴える
 そして僕に聞く・・・・気持ち良い?
「気持ち良いよ・・・・キミは心も身体も・・・・最高だよ」
「あ、涼さん・・・・・涼!」
 感極まり抱きつく彼女をしっかり抱きとめ僕は彼女を愛した、何度も愛の言葉を囁きながら
414姉妹日記 12話  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/04(火) 23:33:27 ID:vaZ3cNGo
 私とお姉ちゃんは二人の情事をただ唖然としながら見つめていた
 監視を始めてから三日・・・・初めて見た男と女の営みを見て私は恥ずかしさよりも苦しい思いを胸に抱いた
 お姉ちゃんもまるで夢の出来事を見ているかのように信じられないという風に見ている
 そして、激しく身体を合わせた二人はようやくそれを終えて後処理を始めた・・・・
 途中なんどかじゃれあったりしながら・・・・・
 そして・・・・私とお姉ちゃんの枷は外れた・・・・
 翌日、お兄ちゃんの部屋にこっそり忍び込みどちらかが帰ってくるのを待つ
 夕暮れ時・・・・ようやくドアが開いた
 お兄ちゃんだ・・・・
 私は神様がくれた最大のチャンスにこの身を歓喜で震わせた
 隠れていた場所から静かに身を出し着替えているお兄ちゃんに近づく
「誰だ!」
 気づかれてしまった、でももう遅いよ・・・・お兄ちゃん
 私は振り返るお兄ちゃんの唇に己の唇を押し付けた
 そしてお兄ちゃんが帰ってきたときこっそり口に含んだ物をお兄ちゃんの口の中に流し込む
「んぐ・・・・んむ」
 ファーストキスがこんな形なんていうのは悲しいけど・・・・でもこれもそれもあの女がいけないの・・・だから!
 首に腕を巻きつけ深く唇を重ねる
 息継ぎをさせないほど口付け流し込んだものがこぼれない様にした
 次第に兄ちゃんの顔が赤く染まり息遣いも荒くなる
「なに・・・・を・・・・」
「性欲増強剤・・・・・ふふ」
 私も少し飲んじゃった・・・・だからもう濡れている・・・あとは
「く・・・・」
 必死で性欲に絶えこの場を去ろうとするお兄ちゃん
 その前にお姉ちゃんがたちはだかる
「ダメよ・・・・涼ちゃん」
 一瞬私を睨んだかのように見えたけどお姉ちゃんはいつもの笑みでお兄ちゃんに口付けた
「ふ・・・く」
 絡み合う舌と舌・・・・
 私はその間にお兄ちゃんの手を縛っていく
「あ・・・や・・・め・・・・んく」
 拒絶の言葉をお姉ちゃんの唇が止める
 脚も縛り完全に身動きの取れないお兄ちゃんを私はベットに押し倒した
415姉妹日記 12話  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/04(火) 23:35:31 ID:vaZ3cNGo
 もう、今日も一緒に帰ろうと思ったのに・・・・こんな時に限ってお呼び出し
 また告白された・・・・
 でも、私は一生涼さんに付いて行く決めたの
 もう他の男性なんてアウトオブ眼中・・・・
 当然のことながら私は断った・・・・
 でも今日の人は少ししつこかった
 食い下がるその人に私がどれだけ涼さんを愛しているか伝えた
 涼さんだけだった、地味だった私に優しくしてくれた
 涼さんだけだった・・・・容姿が変わっても私を私として見てくれたのは
 中学までブス扱いしておいて今更なに?
 その言葉にその人はようやく諦めてくれた
 惚気話に近いことを言ってしまって私は速く涼さんに逢いたくて全速力で走った
 あと少しだ・・・・私がドアを開いた瞬間だった
 女の人の喘ぎ声と涼さんの拒絶の声・・・・・
 寝室に行くと私たちが愛し合ったベットで涼さんが縛られ冬香さんに犯されていた
 股間から血が滴り苦痛と喜びの声を上げる冬香さん・・・・
「ふふ、ついさっき・・・・私も涼ちゃんに処女をもらってもらったのよ」
 振り返る前に私の手はなにかに拘束されてしまった
 そして、後ろから押され寝室になだれ込んだ
「あ・・・・き・・・・の・・・・・」
 私が今まで聞いた中で一番悲しい声だった
「ふふ、見てなさい・・・私たちと涼ちゃんが愛し合う姿を・・・・」
 背後に立っていた夏美さんが私の横を通ってベットに乗った
 そして血のついた自らの股間に手を忍ばせ血を指に付けると涼さんの口に運んだ
「どう、お姉ちゃんの純潔の味は・・・・これはね、涼ちゃんと私の愛し合った証なのよ」
 あ・・・・あ・・・・・あ・・・・・涼さんが・・・・私の・・・・・
 そのまま深く口付ける
「あ・・・・くふ・・・・・お兄ちゃん・・・・お兄ちゃん!」
「んく・・・・ん・・・・・ん・・・・涼ちゃん」
 涼さんの上に乗った冬香さんが激しく身体をくねらせ夏美さんが舌を絡める
「やめて!やめて――――!!!!!!!」
「ふふ、ダメよ・・・・やめてなんてあげない・・・・・」
「あんたはそこで指を咥えて見てなさい、私と・・・・あ・・・くふ」
 喘ぎを漏らし満足げに冬香さんが私を見下した
「愛し合う様を・・・・あん・・・・ね・・・・くふ」
「ごめん・・・・ごめん・・・・」
 擦れて聞こえる涼さんの声に私は必死に呼びかけた
「涼さん!涼さん!!!!!!」
「あ、ははは・・・・・くふ・・・・あん、お兄ちゃん、気持ち良い?」
「もう、涼ちゃんは私たちの物よ・・・あんたは一生、涼ちゃんと私たちが愛し合うのをそこで見てなさい・・・・く、ふはははは!」
 やめて・・・お願い、これ以上・・・・私、私・・・・・
「あ、あぁぁぁぁぁ!!!!」
 私の絶望の声が部屋に響いた
416アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/04(火) 23:37:55 ID:vaZ3cNGo
なんかこのスレに投下しだしてから結構経つのに短編以外は全部未完結・・・・orz

今日はなぜか暇な時間が出来たので姉妹日記の続きを書けました
またもや時間がなく神々の作品を読めていません、かぶっていたらすいません
これからは不定期な投下になります


>>409
GJです!
同じ姉妹物なので勝手に親近感を抱いておりま
417名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 23:46:11 ID:gr7cmozB
恐ろしい、姉妹がセットで着ちゃった
両作品のあまりのGJ具合に言葉が思いつかない・・・
あぁ、こんな姉妹が欲しい・・・(;つД`)
418姉妹日記 12話  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/04(火) 23:58:41 ID:vaZ3cNGo
 もう、今日も涼さんと一緒に帰ろうと思ったのに・・・・こんな時に限ってお呼び出し
 また告白された・・・・
 でも、私は一生涼さんに付いて行くと決めたの
 もう他の男性なんてアウトオブ眼中・・・・
 当然のことながら私は断った・・・・
 でも、今日の人は少ししつこかった
 食い下がるその人に私がどれだけ涼さんを愛しているか伝えた
 涼さんだけだった、地味だった私に優しくしてくれたのは
 涼さんだけだった・・・・容姿が変わっても私を私として見てくれたのは
 中学までブス扱いしておいて今更なに?
 その言葉にその人はようやく諦めてくれた
 惚気話に近いことを言ってしまって私は速く涼さんに逢いたくて全速力で走った
 あと少しだ・・・・私がドアを開いた瞬間だった
 女の人の喘ぎ声と涼さんの拒絶の声・・・・・
「やめ・・・・ふ・・・・か・・・・・やめて・・・くれ」
「あ、あん・・・・痛いけど・・・・幸せ」
 寝室に行くと私たちが愛し合ったベットで涼さんが縛られ冬香さんに犯されていた
 股間から血が滴り苦痛と喜びの声を上げる冬香さん・・・・
「ふふ、ついさっき・・・・私も涼ちゃんに処女をもらってもらったのよ」
 振り返る前に私の手はなにかに拘束されてしまった
 そして、後ろから押され寝室になだれ込んだ
「あ・・・・き・・・・の・・・・・」
 私が今まで聞いた中で一番悲しい声だった
「ふふ、見てなさい・・・私たちと涼ちゃんが愛し合う姿を・・・・」
 背後に立っていた夏美さんが私の横を通ってベットに乗った
 そして血のついた自らの股間に手を忍ばせ血を指に付けると涼さんの口に運んだ
「どう、涼ちゃん・・・・お姉ちゃんの純潔の味は?これはね、涼ちゃんと私の愛し合った証なのよ」
 あ・・・・あ・・・・・あ・・・・・涼さんが・・・・私の・・・・・
 そのまま深く口付ける
「あ・・・・くふ・・・・・お兄ちゃん・・・・お兄ちゃん!」
「んく・・・・ん・・・・・ん・・・・涼ちゃん」
 涼さんの上に乗った冬香さんが激しく身体をくねらせ夏美さんが舌を絡める
「やめて!やめて――――!!!!!!!」
「ふふ、ダメよ・・・・やめてなんてあげない・・・・・」
「あんたはそこで指を咥えて見てなさい、私と・・・・あ・・・くふ」
 喘ぎを漏らし満足げに冬香さんが私を見下した
「お兄ちゃんが愛し合う様を・・・・あん・・・・ね・・・・くふ」
「ごめん・・・・ごめん・・・・」
 擦れて聞こえる涼さんの声に私は必死に呼びかけた
「涼さん!涼さん!!!!!!」
「あ、ははは・・・・・くふ・・・・あん、お兄ちゃん、気持ち良い?」
「もう、涼ちゃんは私たちの物よ・・・あんたは一生、涼ちゃんと私たちが愛し合うのをそこで見てなさい・・・・く、ふはははは!」
 やめて・・・お願い、これ以上・・・・私、私・・・・・
「あ、あぁぁぁぁぁ!!!!」
 私の絶望の声が部屋に響いた
419アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/04(火) 23:59:25 ID:vaZ3cNGo
最後のレス少し訂正します
420名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 00:13:07 ID:LBOAYVYS
a
421名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 00:44:45 ID:xDWF6u4I
というか年上系ヒロインって少ないな。
教師系とか母親系とか友達のお姉さんとか看護婦のお姉さんとかOLのお姉さんとか。
先輩やキモねえじゃなくこういうヒロインっていうのもよくね?
俺は大好きなんだけどな。別に先輩やキモねえに飽きたって言うわけじゃないんだけどさ。

>>419
乙&GJ!
422名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 01:14:33 ID:Hulf4TMz
高校の保健の先生が、ひょんなことから、ワルで有名だがほんとはやさしい系の
不良(主人公)と出会い、仲良くなる。主人公の人柄にひかれ、主人公に好意を寄せつつも、立場など、色々な問題もあって、想い
を口に出せず、悶々とする日々。ある日、卒業も近くなり、卒業後の進路の話になり、卒業したら、もう主人公と会えなくなると気づき、
焦りだす。そこに、追い討ちをかけるように、前に主人公が助けた後輩が、「卒業した後に後悔したくない」と、告白する。
それからというもの、もうすぐ来る主人公の卒業という不安と、主人公の後輩への嫉妬で、日常にヒビが入り・・・。


という妄想を展開する俺キモスwww
423名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 01:24:58 ID:goUZpGyf
>>409
とらとらシスターの続き待っておりました!
久々にキタキタキタキタ━━━って感じで!
日常の方もがんばってください!
とらシスの執筆優先でw!
424名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 01:36:21 ID:pYq/4NNk
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十二因縁
425名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 01:38:12 ID:lWGOh8St
年上で落ち着いた女性をKOOL化させるのは難しそうだからねぇ・・・
426トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/07/05(水) 01:43:13 ID:1GBFbf0i
お久しぶりです
又は初めての人は初めまして・・。

すでに忘れていると思いますが
とりあえず、投下します。

427雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/05(水) 01:47:38 ID:1GBFbf0i
プロローグ
 春の穏やかな陽気に包まれて、桜が散る通りを欠伸しながら歩いていた。
 学園に向かうために何度も桜を見続けているので、いい加減に飽きていた。
 綺麗な物は三日辺りで飽きるというが、その通りだった。

 散ってゆく桜に悪いが、毎日毎月毎年と同じ通学路を通っていたら、例えそれが日常とは違った光景だとしても人間は飽きてしまうのだ。常に変化を求めてしまう。
 新学期を迎え、進級して僅か二週間の月日が経っていた。
 新しい出会いと別れの季節なのに、俺こと桧山剛(ひやま つよし)は早くも飽きてしまっていた。

 クラスメイトは去年のクラスメイトが多いし、担任も昨年度から全く変わってはいない。
 新しくなった教科書もロッカーの中に置きっぱなしにして、家で見ようとは思わなかった。
 新しい季節がやってきても、俺の周囲はそう簡単に変わることなく、退屈な一日は今日も際限なく続いてゆく。
 友人とくだらない雑談。
 担当教科の長々と続く授業。
 昼休みは教室で自分の手作りのお弁当を餓えた猛者から死守したり。
 午後は眠たくなったら、そのままお休み。
 放課後になったら、友人とゲーセンで流行の格闘ゲームやカラオケに出掛けたり。
 俺の日常はそう簡単に変わることなく、退屈で価値がない物だと再認識すると暗澹な気分になってしまう。


 だから、だろうか。
 今日の放課後は友人の誘いを断り、何もない校舎を散歩しているといつもと違った光景が俺の目に移ってきた。
 人気のない校舎裏で多数の学園の生徒たちに囲まれている少女の姿があった。
 険悪な空気に俺は敏感に察知するとただその光景を眺めていた。リーダー格の女子生徒に、金魚のフンのようにまとわりついている男子生徒二人と女子生徒三人。
 計6人が女子生徒を囲んでいた。怯えている少女が怯えた視線でリーダー格の少女を向けるが、

 彼女たちはまるでゴミとして見るような見下した視線で少女が困った姿に嘲笑していた。
 さすがにこの現状が普段から鈍い俺でも頭が回る。
 これは虐めだ。

 彼女はこいつから苛められている。
 この学園にそんな悲惨な事があったのかは知らないが、
 退屈な日常を過ごしていた裏にはこうやって誰かが不幸な目に遭っている。
 世の中には弱い者に対して、牙を向ける強者が必ずとして存在する。
 弱者を踏み付けることで己れの中の優越感に酔う。
 それはクスリをやって快楽を得るよりもとても気持ち良くて、中毒に陥ってしまうこともしばしばだ。
 この少女を苛めているグループも同じ理由で世の中にある自分たちの思い通りにならない不満やストレスを彼女を苛める行為により発散しようとしている。
428雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/05(水) 01:50:57 ID:1GBFbf0i
 全く、この世界は淀んでいる。

 憂欝な気分になりがらも、少女は助けることはまず出来ない。
 俺は喧嘩もできなければ、人に対して暴力を振るう行為はあんまり好きじゃないから、弱すぎて相手にならない。
 更にこの手の厄介事は何の考えなしに突っ込むと後で俺自身に返ってくる。
 次の苛めのターゲットにされることだってある。弱者を躊躇なく苛める病んだ人間がまともな神経を持ち合わしているはずもないので、必ず報復を行なってくるだろ。
 だったら、その場から離れて見ないことにしてしまえばいい。

 簡単な事だ。

 でも、足は言うことを聞いてくれない。正にこの光景を目に焼き付けるように硬直している。
 苛めグループの男子生徒が少女に対して暴力を振るう。
 問答無用に少女の背中を踏み付けるように強烈な蹴りが何度も何度も炸裂する。
 彼女の悲鳴の声が出ると同時にいじめグループの少女たちはゲラガラとバカ笑いを浮かべる。
 更に男子生徒達が同時に踏み付ける。少女の瞳には涙目にして、必死に泣くことを堪えようとしている。
 確かにここで泣いてしまえば、いじめグループの子たちの苛めが更に過激化する。

 そんな淀んだ光景に俺は我慢ならなかった。
 こんな大勢で女の子を苛められたら、助けたくなる衝動に駆られてしまう。
 テンションに流されない事は大切だが、このまま傍観してしまうと俺自身が最悪な人間野郎になってしまうような気がした。
 だから、奮えている体に鞭を打って、声を張り上げた。

「何をやっているんだ!!」
 声の主である俺に皆の視線が集まった。少女に対しての暴力は一時中断されて、
 睨むような高圧的な男子生徒たちの圧されても、俺は更に高らかにで叫んだ。
「女の子を苛めて楽しいかのかよ!!」
「きゃはははは。今時、正義の味方気取りなんか流行らないし。なにこいつキモい」
「わたしたち、このクズを苛めているから邪魔しないでくれる」

 女子生徒たちがバカにしたように笑っていた。まあ、俺も柄じゃないことをやっているのは恥かしながらもわかっている。
 小さな頃は正義の味方に憧れてたりするわけだが、今の場においては苛められている少女を助けたいと必死になっていた。

「そんなことはどうでもいい。お前ら、その子に危害を加えるのはやめろよっ!!」
「あん? てめえ調子に乗ってんじゃねえぞ。おい、こいつもやっちまうか?」
「異議なし」
「ボコボコにしてやるぜ」
 男子生徒たちは完全に俺を獲物として鋭い目で怯えさせようと睨みつける。
 見た目は不良ではないのだが、それでも体格のいい奴ら三人に囲まれたら、俺は手出しすることもできずにやられてしまうだろう。
 覚悟はすでに決めていた。
429雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/05(水) 01:52:53 ID:1GBFbf0i
 俺は俺の信念を貫くことだけ。
 一度、決めたら最後までやり遂げようとすることだけが俺の唯一の取柄だった。
 我慢強いことに頑丈にできているから、ここでボコられても一週間ぐらいで怪我は完治しそうだ。
 歩み寄ってくる男子生徒たち。
 目を瞑って、歯を食い縛る。

「やめなさいっっ!!」

 リーダー格の少女は大声で叫んだ。男子生徒たちも驚いて、声を上げた主に振り返る。
「思い出したわ。こいつ、2ーB組の桧山。あの変人内山田のツレよ」
「なんだってっ!!」
「おいおい、内山田のツレなんかに手を出したら。本当に後が恐いぞ」
「いつ、偽りの退学届けが受理されるかわかんねえぞ」
「私たちなんか風俗に売り飛ばされるかもしれないわっ!!」
 内山田の名前が出た途端に傲慢な態度が見事に消え去り、いじめグループの人間誰もが青白い顔をして震えだしている。
 俺の親友は学園で有名な変人として知られているが、こんないじめグループが畏怖する事を平然とやってしまっているのであながち怯える理由はわからなくはない。
「皆、もう行きましょう。ゴミクズのせいで私たちが東京湾に浮かぶかもしれないし」
「ええ」
 いじめグループたちは逃げるようにこの場を立ち去ってくれた。
 残されたのは俺と酷く落ち込んだ彼女。

「大丈夫か?」
「はい、平気です」
 汚れた衣服を手で振り払って、彼女は俺を警戒するような怪訝な瞳で見つめている。
 確かに俺はいじめグループを追い払ったわけだが、俺自身が彼女に危害を加えないという保障はない。
 ましてや、見ず知らない赤の他人が関わってはいけない問題でもあった。
「あ、あのありがとうございました」
 視線を合わせずに大きな黄色のリボンで纏めている長い髪を何度も揺らす。
 その潤んだ瞳は今にも泣きそうになっている。それなりに整っている可愛らしい顔立ちだが、今は泥で汚れているのでその魅力が半減してしまっている。


「こんな薄汚れた私を助けてくれて本当にありがとう。でも、これ以上私と関わるのはやめた方がいいです」
「どうして?」
「私に関わるとあなたも苛められるから」
 少女は寂しそうに言った。
430雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/05(水) 01:54:58 ID:1GBFbf0i
 彼女は自分の立場をよく理解している。
 一回だけ追い払ってもあいつらの苛めがなくなるわけでもない。
 無為に反抗したせいでさらなる報復が待っていることであろう。このまま、彼女との距離を縮めてしまえば、今度は俺が様々な嫌がらせに遭う。

「私のせいで誰かが傷つくのはもう嫌なんです」
「でも、本当にそれでいいのか?」
「いいんです。いいから、私はもう放っておいてください」
 目蓋から大粒の涙の雫が零れだしていく。
 ただ、少女は声を殺して泣いていた。さっき、苛められている時には必死にその涙を堪えようと我慢していたが。
 だが、人に優しくしてもらったことで涙腺が緩んでしまったようだ。
 俺は珍しくズボンの中に入れておいたハンカチを彼女の頬に差し出す。彼女は受け取って、癇癪を起こしながら、溢れて止まらない涙を拭いていた。


 しばらくの時間が流れる。
 彼女はようやく落ち着いてくれた。
「あの、これ洗ってお返しますね」
 ぐしょぐしょに彼女の涙で濡れてしまったハンカチ。
 まあ、俺的には別に洗ってもらわなくていいわけだが、ここは彼女の心遣いに甘えてしまおう。

「で、あなたのお名前はなんていうんですか?」
「俺は2−B組の桧山剛。あんたは?」
「私は2−E組の雪桜志穂です。同学年の人だったんですね」
「そうみたいだな」
 正直、苛められている女の子が年上か年下だと思っていたが。まさか、同学年だったとは。これで苛めグループの人間が同学年の隣の隣の隣の生徒になるかもしれないが、今回の出来事があちこちに広まらないことを果てしなく祈る。
「じゃあ、一緒に帰ろうぜ。雪桜さん」
「えっ!? でも、私といると桧山君まで苛められちゃうよ」
「多分、大丈夫。俺が内山田のツレって知っていて、同学年なら絶対に手を出すってことはありえん。
逆にあの苛めグループの家族が東京湾に浮かんでしまう可能性が高い。
内山田のモットーは『悪人に人権はない』らしいな」
 信じられない話だが、内山田は常人を遥かに超えた能力を持っているらしく、
 彼自身の最大の武器はこの情報社会で最も大切な『情報』と何でも頼めば、どんな不正入学や不正雇用ができるあちこちに人脈を作りまくった『コネ』がある。
 それらを上手く使えば世の中に恐いものはないらしい。まあ、俺にはどうでもいいが。

「というわけで帰ろうぜ雪桜さん。どっかでおいしいモノでもおごってやるから」
「あ、あ、あのいいんですか?」
 叱られた子供のように怯えた表情を浮かべて、雪桜さんが上目遣いで尋ねた。

「いいに決まっているだろ。懐はちょっと寂しくなりそうだけど、今日は雪桜さんと出会えた記念日ということで」
「私、そんなにお金持ってないですよ」
「心配するな。割引券使うから」
「せこいですっっ!!」
431雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/05(水) 01:55:39 ID:1GBFbf0i

 二人はその後もつまらない雑談をして桜通りを歩く。
 いつもとは違った光景。新しい出会いに胸を焦がしながら、隣に雪桜さんがいる日々を夢想する。
 去年とは違う、退屈な日々の終わりをここで告げよう。



 でも、俺は全くわかってはいなかったんだ。
 雪桜さんが人を避ける理由。
 雪桜さんが苛められていた理由も。
 そして、俺に恋する少女の存在すらも。

 これから始まろうとする波乱に満ちた日々の事も。
432トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/07/05(水) 02:00:17 ID:1GBFbf0i
というわけで新作です。
いや、久しぶりにこのSSのために書いていたら驚く程に筆が進みました


とりあえず、神々の作品をまとめている阿修羅様にはいつも感謝しています。
これからも頑張ってこのスレを見守ってくださいね。



今回の作品は
虐められている女の子が主人公に依存してゆき、
主人公を慕っている女の子とガチンコの修羅場を書く予定です。

前回は鮮血すぎて、登場人物が血塗れになってしまったしw
なんとか、平和な嫉妬と修羅場を目指していきたいですね
433名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 02:08:20 ID:lWGOh8St
新作GJ

つまり内山田と依存少女が桧山をとりあうわなにをすrやm
434名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 02:12:21 ID:i9RUZKCn
新作キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
志穂タソの依存に期待!
435名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 02:15:57 ID:dkDdoUCu
残念!桧山君が作中で内山田を「彼」と呼んでいる
だから内山田と依存少女が桧山をとりあう展開は無いかも
でも別にあったらあったで構わなうわなにをすrやm
436名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 02:24:07 ID:/ncJZBM9
いじめリーダーといじめられっこの修羅場だと思っていたw
437118 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 02:56:16 ID:2pyUmwoa
なんかトライデント氏の桧山君とうちの桧木君で苗字が似てしまった。
まあそれはともかく、続きを投下。2話同時リリース。
438永遠の願い 第二話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 02:57:59 ID:2pyUmwoa
1年ということは、後輩に当たるのかな。
とっても丁寧な内容だった。
あんなにいろいろ詰め込み詰め込んだのは、それだけ気持ちがあるからだ。
孝人は全然知らないけど、彼は結構女子の間では好感度が高い。
確かに、彼氏にしたい男子のランキングをつけたら、けして上位になる、っていうわけじゃない。
そういう広い支持を得るというより、大切な人のためになら一途に頑張ってくれそうな、誠実そうなところを見ることのできた一部のこからの想いが、私も含めて熱烈なだけ。
実際付き合うと、こんなにシモネタ全開のジョークする人のどこが誠実なんだ、って突っ込みたくなるけれど、それはあくまで彼のユーモアで、みんなが思うその誠実そうなところは、正解なんだ。
朝だけはどうしてもだめなんだけど、時間という時間ちゃんと守ってくれるし、私のお願いは、本当に無理のないことならちゃんと受け止めてくれる。
掃除当番はきちんとこなしてくれるし、結構校則にもうるさい。
それは単なる真面目君だけど、ノートとかきちんと取ってるし、眠くなる先生の授業でもきちんと目を開けて聞いてる。
聞くと、「先生たちもみんながんばってるんだから、それに答えてやらないと失礼だ」っていって。
生真面目な彼は、成績こそすこぶるいいというわけではないけれど、先生方の評価はおおむね良好、私も含めて優良な模範生だと言っていたのを聞いたことがあった。
それに。
困ってる人がいると自分がいくら大変でも、しっかり聞いてくれるんだ。
いいところ、挙げるだけできりが無い。
本当に素敵な男性なのが、桧木孝人。
彼のいいところを知ってしまったら、彼を好きにならずにはいられない。
小さい頃から、ずっと、ずっと。
孝人のお嫁さんになりたかった。
小さい頃はいつも孝人と遊んでた。
おままごとは、もちろん孝人が旦那様で、私が奥様。
孝人の両親も、私の両親も仲が良かったから、本当にむつまじい家庭をロールプレイしていたっけ。
そんな子どもの頃のお遊びの延長線上にある、本当の意味で孝人に愛される生活を夢見ていた。
孝人はエッチなことばっかり言ってからかうけど、そういうこと言われると、たまに蜜が溢れそうになる。
恥ずかしいから、絶対ムキにならないように堪えているけれど、あんまりそういうこというと、ほんとに湿って、滲んでくる。
あんまりからかわないでほしいけれど、それはそういう言葉が嫌なんじゃなくて、そういう言葉で濁して欲しくないから。
夢の中で孝人に抱かれたことは1度や2度じゃない。
夢の中の孝人は私だけの孝人で、私だけを愛してくれてる。
誰かが入り込む余地がないくらい、熱く愛を交し合って。
濡れぼそった私の中でいっぱい暴れて、猛った液をためらいもなく放つの……まだちょっと早いよ、って、いったけど、そうして欲しいって願ったのは、私で、早いって断ったのは、孝人なんだ。
彼はそういう人だから、私がリードしないとエッチもちゃんとできないかもしれない。
だって、私……
初オナニー、小学校4年生、対象、自転車のサドル、なんだ。
それからひそかに、孝人のえっちな本隠れて読んで、インターネットでそんなサイトばかり見て、そのたびに、終わらないかもしれないくらいえんえんとオナニーしてた。
それから。孝人を受け入れてるのを夢見るようになったんだ。
そう、孝人より、絶対経験多いから。
だから、私ががんばらなくちゃ。

439永遠の願い 第二話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 02:58:55 ID:2pyUmwoa
孝人、今日もちゃんとノート、取ってるね。
孝人、って呼ぶようになったのは、学校上がってからかな。
それまでは、たかくんって呼んでいたけれど、たかくんがそれだと照れくさいって、名前を呼び捨ててくれっていってたんだ。
私はちょっと違和感あったけど、でも、呼び捨てするっていう意味の深さを知ってたから、すぐに呼び方変えたんだ。
呼び捨てはとても失礼なこと。
それを認めてくれるっていう意味は、確かに私と孝人は十数年の幼なじみだからっていうこともあるけれど、でもそれ以上に「お互い大人の入り口を踏んだ」っていう意味でもあるんだよ。
だから、孝人って呼んだら。
もう、嫁げる日も近いんだな、って実感したんだ。
孝人のお父さんもお母さんも、私がお嫁さんならきっと喜んでくれる。
私の両親も孝人をよく知ってて、孝人のご両親とも仲がいいから、親ぐるみできっと、賛成してくれる。祝福してくれる。
だから。
「さかきゆきな」
っていう女からのラブレターは、どうか無視してほしい。
できるなら、彼を拉致してそんなところにいかせたりしちゃいけないんだ。
でも、無理。
孝人は絶対、無視なんかしない。もし無視させたら、私きっと嫌われる。
そう。孝人は、断るなら、ちゃんと会って、話を聞いて、それから話す人だから。
ね、お願いだから。
必ず断って。

だって……私の未来の旦那様なんだよ、孝人は。

そんなふうに物思いにふけりながら、書いたノートはかなりあてずっぽうだった。
あとで孝人にノート借りて、合ってるか確認しなくちゃいけなかった。
そうなったのもみんな、あのラブレターのせいなのに。
孝人は私じゃないと、だめなの。
ラブレターを出しても無駄。
だって。
私じゃないと、孝人がだめになっちゃうから……
私が尽くしていないと、孝人はもっと素敵な男性になれないから……
ね、だから。
「孝人、お昼食べよ〜」
「ああ、いいぜ」
お昼休みの孝人の真正面は、私の特等席。
彼の前の男子生徒に机を借りて孝人の机とくっつける。
もちろん、今日も孝人のお弁当は、私の手作り。
朝4時半に起きて準備して、作ったんだから。
「うはぁ、今日もまた豪勢だな」
「うん、いっぱい食べてほしいから」
「じゃあいただきます」
作りたいものがいっぱいあるっていって重箱にするなんてしない。
孝人の胃の大きさにあわせて、今日はこれ、明日はこれって献立を組んだほうが、孝人のため。
孝人、そんな気遣いをちゃんと考慮してくれるかな?
いつも、それが当たり前になってて、全然確認できない。
特においしい、とは言わないけれど、孝人は視線で私にサムズアップしている。
それを微笑ましい目で見つめ返すのがいつもの日課。
もちろん、タコさんウインナーは基本です。
「なあ」
「何?」
「ウインナー、いつも作ったら舐めてるだろ」
「え、え、そんなわけないよっ」
う……
ほんのさらっといったジョークなのに、すごくどきどきしてしまう。
440永遠の願い 第二話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 02:59:40 ID:2pyUmwoa
「まるでフェラでもしてるみたいにさ、こう、ちゅばちゅばと」
「変な音たてないでよ〜いやらしい……」
それに平気でフェラなんて言わないでっ。
本当に恥ずかしいんだから。
「ふうん、別にいいんだけど」
と、タコさんウインナーを噛み千切って、少しずつ口に放り込んでいきます。
「良くないよ〜つやつやは火を通すときに使った油なんだからね」
「ふーん。まあそういうことにしておいてやろう」
「もーっ」
ここ最近、タコさんウインナー作ると、孝人ってこういうこと言うから。
だから、毎日毎日、どきどきして止まらない。
孝人にふさわしい人になろうって決めて、いろんな工夫を勉強にも運動にもして、みんなが私を完全無欠の幼なじみ系通い妻って認めるくらいまで力をつけられた。
体力もついて、頭も冴えて、お料理もできて。
ちゃんと食べるものもチョイスしてきたおかげだと思う。スタイルもすごく良くなってた。
孝人にも認めてもらえた。
おかげで孝人が、私に愛してもらえてることが幸せだ、ってみんながうらやむような人になることができた。
だから。
あとは孝人のハートをぎゅっと掴んで、私の胸の中に引き込むだけ。
だけど。
孝人のことを思うと、どうしても指が秘部をなぞるのを止められなくなってしまう。
いけない、絶対孝人はこんな私を嫌いになる。
そんな不安とのせめぎあいの中で、孝人にすまして接して、孝人といつまでも中むつまじくいられるようにしないと。
その時間がとても貴重で、とてもうれしかったから。
少なくとも、今のままでいけば、何もなければ、孝人ととんとん拍子で結ばれたと思う。
でも。
孝人、空になったお弁当箱を閉じて、入れ物に入れて私に返した。
「今日もうまかった、ごちそうさま」
「いえいえ。明日もまたがんばるね」
「別に無理しなくてもいいんだぞ? 朝いつも早いんだろ」
「その分早寝なんだから。それに、好きでやっていることだし」
「そうはいってもな……」
「ね。明日も腕を振るうから」
なんとなく遠慮がちなことをいう孝人。
いつもなら、普通にありがとうっていってくれるのに。
どうしてこんなやりとりをしないといけないんだろう。
やっぱり、あの手紙のせい?
かわいい後輩、だと思う、きっと容姿は悪くない人だと感じて、かなりの期待、寄せてるんだ。
孝人、結構女の子に好かれてるのに、そういう自覚ないから、ましてや、ラブレターなんて、貰ったことないから。
なんとなく浮かれ気分なのだと思う。
だから。
その人が気に入るかもしれないから。
私に覚悟を決めておけと、言っているんだ。
そんな中で、食べている自分のお弁当は、自分の味だからか、あまり味がしなかった。
441永遠の願い 第三話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 03:00:31 ID:2pyUmwoa
孝人さん。
心の中でそう呼んだ。
4月の青空はやや暖かかったけれど、まだまだ、その暖気は本気ではない。
桜の木は満開を過ぎたけれど、雨が降ればまた冷える。
寒いのは苦手。
体が冷えると、そのまま冷たくなってしまいそうだった。
孝人さんの側に、いつもいる村崎先輩とのこととか、孝人さん自身のこととか、私が知っておかなければならないたくさんのことを知りたかった。
でも、それ以上に。
孝人さんをお慕いする気持ちをはっきりと告白したかった。
好き。
こんなに心が焦がれる思いは初めて。
ずっと父に厳しく躾られてきた私は、普段は本ばかり読んでいる面白みの無い暗い女に見られてる。
だからといって、習い事とかそういうのをしているわけでもなく、そういうのはお金持ちのすることだといわれた。
実際、うちはそこまで裕福というわけではなかったし、一家の収入を支えた父は、5年前に他界した。
だから今は、ちょっと多めの借金に負われながら、細々生活をつないでる状態。
私は今、母と、姉との3人家族。
姉はすでに結婚して家を出ていて、今は母と私だけ。
母はもう40は過ぎているのに、まだまだ若い人には負けないぞとバイタリティ全開で頑張っているようだけれど、私目に見て、ちょっと勘弁して欲しいところは多い。
癖なのかもしれないけれど、お風呂上りに下だけ隠して上を隠さずにリビングをうろつくのはやめてほしい。
もし孝人さんを家に呼んだときにそれをやられたら、そんな中年太りしたぶよぶよの腹、孝人さんがヒイてしまう。
未亡人とはいえ、すでにもう独身も同じなんだから、もっときりっとして、適当に再婚相手とどこかに行って暮らしてくれるといい。
でないと。
きっと孝人さんとの生活に支障が出るから。

442永遠の願い 第三話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 03:01:13 ID:2pyUmwoa
孝人さんは私の恩人だった。
階段を上り下りするのは、体力のない私にはとても重労働だった。
そこを、たくさんの本を抱いた状態で降りていったことで、足元の注意などなどを配慮できなくて、あと数段のところで転げ落ちそうになってしまった。
我ながら、自分の分相応を省みない無謀極まりないそのときの行動を恥ずかしく思うけれど、でもそんな投身が、彼との出会いを生んだのだと思うと、けしてそれが不運だったとは考えにくい。
足をくじいて動けなくなっていた私に気を使い、押し広げた本のヤマをまとめてくれて、運ぶべき場所に運んで、私を保健室で手当てしてくれた。
ちょうど養護教師がいなかったので、彼が手当てをしてくれたんだけれど。
「きれいな足だね」
「そんなでもありませんよ」
「いや、数多く見てきた中でも相当上位ランクだな」
「かいかぶりです、そんなに誉められたら困ってしまいます」
湿布を当てて、包帯を巻いてくれる。
そういう器具、適当に使っていいのかと危惧したら、先輩は「役得、役得」といった。
普通そういうことはバカ正直にいうものじゃない。エロオヤジに見えてしまう。
きっと反射的に、口をついて出てしまった冗談だと思う。
でも、そんな自分の弱点すらも包み隠さずに開け広げる姿は、自分を抑えて隠してる私にとっては、太陽のような暖かさと、まぶしい輝きをもっているよう。
孝人さん。
私を助けてくれたとき、すぐそばにいたのは、彼にべったりの幼なじみさん。
村崎晴海さんと紹介された。
晴海さんは余裕の笑みで、よろしくといっていた。
もちろん余裕だとかそういうのは私の勝手な思い込み、でも、あの人の目は私に泥棒猫というレッテルを貼るにふさわしい、忌避のまなざしをしていた。
近寄るな、孝人さんは私のだ、おまえなんか付け入る隙間も無い。
そう、暗黙的に訴えているかのよう。
話をしていると、お二人と私は国語の担当が一緒で、その教師は自分の授業の最初の10分を読書をする時間に当てていた。朝に読書の時間を作ることができないうちの学校の制度に、一石を投じようとする試みらしい。
私は山の中から一冊ずつ、自分のオススメをお二人に渡した。
その本は図書館の蔵書だったが、10冊を一週間で読み終えてしまうから、いつもいつも両手に抱えて持ち運んでいたから。
あとで、それらの本の次借りる人を彼らに変えてもらおうと思った。
私の趣味は読書と生け花で、学校にいるときはほぼリーディングマシーンになっている。休み時間にはひまを見て本を読んでいる。
ライノベも純文学も目を通すし、推奨図書なるものも一通りチェックする。
推奨図書は押し付けがましい大人たちの理想でしかないところもあって、私のような聖人君子ではない人間にはほぼ無縁。
せいぜい夏休みの読書感想文の課題のためにちょっと目を通すくらい。
でも、昔の文学も捨てたものじゃないから、実際そっちで感想を書くほうが多い。
もちろん、今の文章もたくさんいいところあるけれど、そっちで感想文を書くほど非常識じゃない。
最近の純文学の感想を書くとどうしても、エロスのことを外せなくなってしまうから。
そんな破廉恥な内容を送るような真似は、未成年の身でやる愚かさをよくよく理解しこれを封じる。
実際そのエロスは、官能小説ぎりぎりのラインで、どこまでも表現性を追及するような、そういうテキストを見かけたから。
あんまり飾りすぎるとわけわからないとかそういうのあるけれど、指で自分のをなぞるようになったのは、自慰をするエロスを見てしまったから。
最初は、ただ弄ってるのが良かっただけ、だったのに、あのとき、あの人に出会ってからは、私の指先は彼の指先になっていた。
私があのとき、肌の温度を感じることができた、初めての父以外の男性。
443永遠の願い 第三話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 03:02:31 ID:2pyUmwoa
桧木孝人さん。
ささやかな優しさと、ささやかなエロスと、深く深く包み込む暖かさと、どこまでも誠実なあの人は。
虜になるまでの時間をどこまでも短縮していた。
それは、ほとんど一目ぼれに近いもの。
いけない、と、何度言い聞かせたことか。
彼には村崎晴海さんがいる。晴海さんとは毎日、とても仲の良さそうな風景を見ている。
本当はまだ、付き合っていないことはみんな知っているのだけれど、二人の仲をからかうのが好きな人たちの手で、たくさんゆがめられてしまっていて、
こんなぱっと出の知らない女が、突然孝人さんを好き、って名乗り出ようとしても、それは完全に無いものにされてしまいそう。。
私が二人の間に割ってはいる権限は、実際あるはずがない。
ないから、夢を見て、夢を叶えたくて。
お手紙をしたためた。
だから今こうして私は、ちょっと暖かい、まだ寒いかもしれない空の下で、彼が来るのを待っている。
4時からの約束。
まだ、20分も経っていないのに、彼は時間一杯まで待つことも無く、私の目の前に現れた。
あのときと変わらない、あのときお会いしたときと変わらない、お慕いするままの姿だった。
「こんにちは、はじめまして」
丁寧にお辞儀を心がけ実践する。
「あ、どうも、はじめまして」
ちょっと、応対にとまどうようにぼそっと応じる孝人さん。
「私は後輩なんですから、肩の力抜いてください」
「それも、そうか。ってか、一度会ったことあるよな」
「はい、どこで出会ったか、覚えていますか?」
「そうだな……中庭で一緒にメシ食ったけか。ああ、それとも、図書館でテスト勉強付き合ったこか、それとも……」
「足ひねったときに助けてくれたこですよ、先輩」
ジョークがジョークになってない。
それって、全部村崎さんとのことじゃないだろうか。
「足ひねった……ああ、あのときの」
すぐに先輩は思い出してくれた。
「はい、その節はお手数をおかけしました。ちゃんとしたお礼もできなくて申し訳ありません」
「ああいや、そんなに改まらなくても」
ちょっと堅苦しすぎるか。
私も、最敬礼の緊張を解くことにする。
「そうですね。じゃあ、私もすこし肩の力を抜かせていただきますね」
「そうしてくれ。先輩後輩ってだけでそれじゃあどっちも息詰まるだろ」
「はい」
「じゃあ、さっそく本題に入るか」
「は、はい」
本題、という単語にすぐ、ここに孝人さんを呼んだ理由が頭の中にリフレインする。
そう、告白という単語が。
はなから「ダメモト」である。
きっと、孝人さんは村崎さんのこと、好きだと思うから。
これでもしだめだったらいさぎよく身を退こう。
でも、もし猶予を与えてもらえたら……
「私、ずっと、先輩に出会ってから、先輩のことが頭の中から離れなくなってしまったんです。
先輩と付き合う日のことをずっと夢見るようになってしまったんです。
一目惚れって、実際にあるんだと、信じられませんけど、信じずにはいられませんでした。
だからその気持ちを、先輩にぶつけさせてください」
そう、この、あなたへの想いを。

「好きです。お付き合いはお友達からでもいいです。お返事は私のことを十分知ってからでかまいませんけれど、できれば恋人として、お付き合いしたいです」

きっと、捨てられないと思うから……
444118 ◆JfoDS60Gas :2006/07/05(水) 03:03:39 ID:2pyUmwoa
以上です。
さくっと両ヒロインの立場を描写してみました。

次はさすがにすぐリリースというわけにはいきませんが、できるだけ早めにアプできるようがんばります。
445名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 03:26:53 ID:1RrUlRPu
おおう、どうなる事やら楽しみですよ!
446名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 04:01:23 ID:/soJERW3
>>444
GJ!!wktkして待ってます。

しかしこのスレのヒロインは余裕で俺のスカウターを破壊してくれる…
447名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 07:03:00 ID:K3+v9t7S
>>444
ぜ、前半得ろ杉だぜ〜!
448名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 09:41:23 ID:yKDVasRY
作者様GJ

「孝人のお父さんもお母さんも、私がお嫁さんならきっと喜んでくれる。」
自己完結型ヒロインはやっぱり堪らないハァハァ
449名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 10:22:26 ID:K3+v9t7S
大学終わって見てみれば・・・GJです!!
450名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 11:01:42 ID:HtKSYtdi
晴海えろいよ晴海
451名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 11:28:25 ID:V4fSmkz8
21000
22000
23000
な、何まだあがるのか?
ボン!!!って感じです
452名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 11:49:56 ID:K3+v9t7S
あと3日くらいで埋まりますか。そうですか。
453『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/05(水) 12:01:06 ID:R9azXDeH
昨年、三月……
俺は高校を卒業した。特に将来の夢や希望もなく、大学へはじめっから行く気が無かったため、自由登校はほとんどバイトに費やし、気ままな日を送っていた。
親も特に何も言わず、一人暮らしを認めてくれた………。まあ、全部自分の金で済ませろ、というのが条件だったが。
その時借りたアパートはとにかくぼろかったが、寝て起きられればそれで満足だったため、安くて助かっていた。
そしてバイト先……それが今の『Fan』だった。面子も今と変わらず、セレナ、店長だけだ。
そこで俺は……葵と会ったんだ………









「お先。」
「あーあ。いいなぁ、ハルは。もう上がりかぁ。」
今日は早番で午前の開店から居たため、セレナは遅番で閉店までだ。待っててなんて言われたが四時間も待つ気力は無い。今日はやたらと疲れたのだ。
着替えてロッカールームを出て、裏口から店の外を一周し、ゴミのチェックをする。これは帰る時の決まりらしい。
そのまま正面の入口まできた時、一人の少女が財布を覗きながらうんうん唸っていた。
454『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/05(水) 12:01:47 ID:R9azXDeH
制服を見る限り、学生……それも俺と違う学校だ。財布、店、財布、店と、目を行き来させている。おそらく店の壁に張ってあるメニューでも見ているんだろう。
そっと近付き、ゴミを拾うふりをしながら少女の様子を伺う。すると何やら独り言をつぶやいているようだ。
「うーん…困ったなぁ………百円足り無い……あのチョコケーキ食べたいのに……はぁ、今食べたいんだけどなぁ。」
なるほど、金が足りないと悩んでいるのか。この少女の言うチョコケーキというのは意外に美味しく、隠れて好評となっているらしい。
……よほど悩んでいるし、あんなに食べたそうな目を見ているとなんとも可哀相に思えて来る、まあ客なんだしいいか。
ポケットにあった百円を握り、そっと後ろから近付く。真後ろな立っても気付かないとなると、相当悩んでいるみたいだ。
「お客さん、どうかなさいましたか?」
もうシフトから外れているのだが、一応接客モード。
「はい……チョコケーキ食べるのに百円足りなくて……って、ひゃあ!?」
一通り質問に答えてから驚く。なんだか面白い奴だ。
455『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/05(水) 12:02:35 ID:R9azXDeH
「え?え、えと…あのぉ……」
「俺、この店の店員。」
「あ、はぁ…や、やだ。聞かれ…ちゃた?」
可愛らしく小首をかしげる。しかしこれぐらいの年で一人でケーキをたべるだなんて珍しい。友達連れが多いんだが。
それによく見てみると可愛いいじゃないか。おそらく俺のクラスにいれれば一番だろう。そんな男の性か、はたまた店員としての客へのサービスか。
自分でもわからないまま、少女の手を取る。
「っ!?」
見てわかるぐらいに体をビクリと震わせる。どうやら行動の一つ一つが大袈裟らしい。見ている側としてはおかしくなる。
「ほら。」
その手を開き、百円玉を一枚握らせる。帰りにジュースでも買おうかと思っていたが、帰れば飲み物ぐらいあるし、大丈夫だろう。
「え?こ、これは?」
「百円。足らないで悩んでたんだろ?いいよ、別にそれぐらい。ウチのケーキ食べてくれんなら。儲るしな。」
「あ、あの。ありがとうございます!ほ、本当に…」
「いいって。その代わり、ちゃんと食えよ?」
「はい!」
パアッと笑顔になる。振り返った帰ろうとすると、店からはセレナのいらっしゃいませが聞こえた。
456名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 16:12:17 ID:i9RUZKCn
セレナ派だが、葵テラカワイス(*゚∀゚)=3ハァハァ
457過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/05(水) 19:05:06 ID:v7T/h8k3
「はあぁ…」
気が重い…足が重い…
いつもと何の変わりも無い通学路、だが僕には急な坂道に見えた。
通学する昇龍の生徒も、友人との話し声も、僕にはテレビのゴーストに見えた。
昨日、僕はとうとう黒崎先輩に別れを告げた。
別れを告げて…そのまま先輩が動き出す前に逃げた。
思っていたよりも先輩が僕の事を想っていなかったのか、それともただ単に放心していただけなのか…
たぶん後者だと思う。
僕は逃げた、紛れも無く逃げた。
あの悲しい眼をした先輩から背を向けた。
でも、こんな気持ちを…最上に惹かれる僕を抱えたまま先輩と付き合い続けるのはきっと間違っている。
先輩に未練を残しながら最上と新しく付き合い始めるのもきっと間違っている。
そしてきっと…僕が今までしてきた行動もこれからしようとしている行動も間違っている。
結局、二股なんてしている人間に正しい行動を要求するのは無理な話なのかもしれないな…
「お〜と〜この〜道は〜曲がっちゃい〜る〜が〜」
何故か、そんな歌声が聞こえた。
耳に入ったという意味ではない、頭に入ったという意味でだ。
「ま〜げ〜ちゃ〜いっけな〜い、ひ〜との道〜」
何故だろうか…
どこかで聞いた事のある声だったからか、それともこんなにも澄んだ綺麗な声でこんなにもコブシのきいた歌を歌っているからだろうか。
どちらにせよ、僕は声の聞こえた方向へ…僕のすぐ右隣へ振り向かずにはいられなかった。
そこには何故か僕とぴったりくっついて歩く…
「ごきげんよう、倉田先輩」
…赤ハチマキが居た。
「会長?」
「ごきげんよう」
しかも何故か機嫌が良さそうだ。
「ご…ごきげんよう…」
そう言うと、会長はクスクスと笑い出し…
「先輩、無理して相手に合わせる必要は無いのでは無くって」
「えっと…ごめん」
「謝る必要もありませんわ、先輩は先輩らしく胸を張っていればよろしくてよ」
「あっ…うん」
やっぱり、僕はちょっとこの子が苦手らしい。
でも何故か…何故か…僕の重い心が軽くなったような気がしていた。
「行きましょう、先輩」
「えっ!?」
不意に、会長が僕の手を掴んだ。
「ここは人の目が多くていけませんわ、場所を変えましょう」
「あっ、ちょっと…」
僕達はそのまま走り出していた。
小さな会長に手を引かれ…その手の温もりを感じながら…
458過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/05(水) 19:05:54 ID:v7T/h8k3
僕と会長が中に入った時、生徒会室に人は居なかった。
生徒会室と言っても、僕にはごく普通の会議室にしか見えなかった。
大きく広い机、それを囲むパイプ椅子、ホワイトボード…
強いて言うなら妙に大きい神棚が目を引く位だ。
どれも綺麗に磨いてある、もちろん壁や床も。
生徒会は名目だけの存在で、不良に目をつけられるからだれも生徒会長をやりたがらなかったって噂を耳にした事がある。
だけど噂には続きがある。
たった一人の少女がそんな生徒会を激変させたと。
ただの一人も役員がおらず、ただの一度も会議は開かれない。
実際、生徒会はそんな状況だったらしい。
その生徒会が…生徒会室が…ピカピカに磨かれていた。
いや、磨かれているだけじゃない。
なんと言うか…こう、支えあっているような感じがする。
ただそれだけで僕は、この小さな生徒会長の底知れぬ大きさを感じてしまっていた。
「先輩、どうかなさいまして?」
「いや…なんでもないよ」
いけないいけない、この子はけっこう洞察力がある。
迂闊な事は考えないようにしよう。
「では先輩、HRまで時間も無い事ですし、すぐに本題に入らせていただきます…よろしくて?」
「うん、僕に何か用なの?」
「簡単に言えば事情聴取ですわ」
「事情聴取…?」
「ええ、昨日白羊病院に足を運びましたの…黒崎先輩、泣いてましてよ」
「うっ…」
この子はまた…痛いところを。
「やはり倉田先輩が絡んでましたか」
「ううっ…」
「答えずともよろしくてよ、その顔で十分です」
駄目だ、前にも思ったけど僕はこの子に勝てない。
顔に出やすい僕と洞察力に優れた会長…はっきり言って勝てる訳が無い。
「先輩が何をなさったのかも、これから何をなさるつもりなのかも、知りませんし知ろうともしません。
それは先輩の判断にお任せしますわ」
「ごめん…」
「良くってよ。そうですね…今の私にできる事は…先輩、まだ少し時間があることですし、キャッチボールでもいたしません?」
「えっ!?」
459シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/05(水) 19:06:49 ID:v7T/h8k3
轟っく、さ〜けびっを、み〜みにしって〜…
はい、お久しぶりですシベリア!です。
昇龍の麒麟児再び登場。
どうするどうなる倉田健斗!

以下チラシの裏
不撓家も順調(?)に執筆中。
正直…ジェンティーレを…殺すのが…惜しくなってきたのですが…
まあ、あの人は後で殺すことを前提に作ったキャラなんですけど…
460siberia ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/05(水) 19:40:19 ID:v7T/h8k3
>457

461シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/05(水) 19:44:09 ID:v7T/h8k3
>457
にミスがありました。
「お〜と〜この〜道は〜曲がっちゃい〜る〜が〜」
「ま〜げ〜ちゃ〜いっけな〜い、ひ〜との道〜」
の台詞は、正しくは
「み〜ち〜は時に〜は〜曲がりっもす〜る〜が〜」
「ま〜げ〜ちゃ〜なっらな〜い、ひ〜との道〜」
でした。
それとすぐ上の書き込みも間違えて「書き込む」を押してしまったミスです。
本当にごめんなさい。
462名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 22:31:29 ID:sFIFu0oq
会長が何かやらかすのか、キャッチボールって何なのさ!?
とにかく、期待です。激しくGJ!!
以下チラシの裏
ジェンティーレが……
そうなんですか(;つД`)  せめて、兄貴と一晩(ry
463Bloody Mary 2nd container 第十八話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/05(水) 23:14:57 ID:eE5yOHYK
――――――――ズッ…

 呆気ない……ともすればさっき手首を切り落としたときの方が手応えがあろうかという、何の感慨も浮かばない感触だった。

 胸に深く潜り込む俺の剣。モルドは鬼気迫るほどの愉悦の表情を浮かべたまま息絶えていた。
「はぁ…はぁ…はぁ……はぁ――――――」
 仇を討った。三年前、気が狂うほど呪った男を殺した。
それなのに。

「なんだよ、これは」
……虚しい。達成感も、充足感も悦びも。何もない。ただ虚しいだけだった。
「何なんだよッ!!クソッ!!!」
 剣を荒々しく引き抜く。刀身にはべっとりとヤツの血が付着していた。
仇を討った証だ。だけど、それを見ても何も感じない。
「クソッ!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!」
 わけがわからない。ただひたすら、何度も何度もモルドの胸に剣を突き刺す。

ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ………

 こいつを殺したってキャスも師匠も帰ってこない。仇を討っても得るものなんて何もない。そんなことは最初から解っていた。
でも、それにしたって。
 なんでこんな気分になるんだ。モルドの屑野郎のせいで、なんで惨めな気分にならなきゃならないんだ!

「ちくしょうッ!キャスを返せッ!!師匠を返せッ!!皆を返せッ!!
――――――――俺の三年間を返せよッ!!!」

ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ………

 何度も。何度も。剣を突き立てる。
俺からあらゆるものを奪った男の着衣は、もう元の色が確認できないくらいに赤く染まっていた。
464Bloody Mary 2nd container 第十八話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/05(水) 23:15:35 ID:eE5yOHYK

「返せッ、返せッ、返せッ、返せッ、か――――――」
 急に腕が動かなくなった。茫然としたまま振り返ると、団長が俺の腕をきつく掴んでいた。
「ウィル、彼はもう死んでいます」
 静かに首を振る。
……なんで、そんな悲しそうな顔するんですか、団長。
 ははっ、俺、三年越しの悲願を達成したんですよ?むしろ喜ばしいことのはずです。
何も、悲しいこと、なんて――――――

「違う、俺が求めてたのはこんなんじゃ、ない…」
 なんて言い訳がましい。結局俺の悲願はこの程度のものだったんだ。
こんなつまらない虚無感のために、戦争に参加して、師匠たちを死なせ、団長やマローネをボロボロにして。

「間違ってた…」
 あの虐殺事件が茶番だったとかそんなのは関係ない。最初から。そう、師匠に教えを乞うた瞬間から俺は間違ってたんだ。
俺が仇を討つことを誓ったのがそもそもの間違いなんだ。今さらそんなことに気付いた。
何も残っちゃいない。復讐を遂げて、今の俺の中身はカラッポだ。俺にはもう、何も……

「……ウィリアム」
 誰かの涙声。昔よく聞いた声に似ているけど少し違う。
「あ……」
 俺から少し離れたところに。
姫様が目尻に涙を溜めて俺を見つめていた。

―――――まだ、あるじゃないか。空っぽなんかじゃない。
今度こそ守れたんだ。姫様を助けられたんだ。全部なくなったわけじゃない。
 つん、と鼻の奥が痛んだ。
「姫様…」
 あぁ、良かった、良かった。姫様は無事だ。本当に良かった。それだけが俺にとって唯一の救いだった。
少しずつ視界が滲んでいく。
 俺が師匠に教わったことは無駄じゃなかった。三年の苦労も少しは報われた。

「ウィリアムッ!!!」
 感極まったのか、顔をくしゃくしゃにしてこちらに向かって走り出した。
俺もそれを出迎えようと少し屈んで両手を広げる。

 良かった。姫様が無事で。これでやっと、俺も―――――――
465Bloody Mary 2nd container 第十八話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/05(水) 23:16:20 ID:eE5yOHYK



 タッタッタッ、と姫様の足音が小屋に響く。
俺が抱きとめるまで、その音だけが響くはずだった。なのに。



―――――ドンッ



 突然、姫様の足音をかき消す轟音。
それと同時に姫様の身体が何かに殴られたように真横に吹き飛んだ。
 よく見ると、姫様の腹部が爆ぜていた。



―――――――あ………え…?


 な、に…?なんなんだ。いったい。
なんでこっちに駆け寄っていた姫様が不自然に九十度違う方向に飛ばされるんだ…?
なんで、姫様は「転んでしまった」と照れながら起き上がってこないんだ…?

 状況が全く解らない。さっきの、音は、いったい、何…?
音源を辿って小屋の入り口に目を向けた。夕日の逆光に照らされ思わず目を細めたが、人影を確認することはできた。
顔をよく見ようと目を凝らすと。



 構えた長筒の先から黒煙を上げ。


 まるで顔に切れ込みを入れたかのような鋭い笑みを浮かべたマローネが。


 そこに立っていた。


466Bloody Mary 2nd container 第十八話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/05(水) 23:17:02 ID:eE5yOHYK

「ま、マローネ……?」
 どうして此処にいるんだ…?銃口から煙が出ているのはどういう意味だ…?
情報が全く整理できない。思考が固まったまま理解することを拒否している。

 ただ錯乱する俺に向かって、マローネが笑みを一層鋭くさせた。

「あはははははははははははははははははっっっ!!
やった!やったよ!お兄ちゃん!!!これで先ずは一人目ェッ♪」

 耳を劈くマローネの笑い声。何、言ってるんだ……?

「待っててね、お兄ちゃん。そこの二人もすぐだから。すぐ済むから。
悪いけど、もう少しだけ待ってて。えへへっ」

 濁った瞳で俺に微笑みながら逆光の中に消えていくマローネ。
……ちょっと待てよ。マローネ、ちゃんと説明して行けよ。これはいったい何のマネだ?
 そう言おうとしたが、声に出すことは出来なかった。


 え?あれ?えと…俺がモルドを殺して、すごく嫌な気分になって…でも姫様の無事が凄く嬉しくて……あれ?
なんで?
 いったいどこをどうすればマローネが姫様を撃つなんてことになるんだ?
嘘だろ。こんなことあるわけない。

 ああ、そうか。きっとこれは夢だ。こんな支離滅裂な話、夢以外あり得ない。
ほら、もうすぐ姫様が無理矢理起こしに来て、食堂に行けば朝から師匠が酒を飲んでて………
467Bloody Mary 2nd container 第十八話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/05(水) 23:17:45 ID:eE5yOHYK


「ウィ、リア……ム…」

 現実から乖離しそうになった俺の耳が姫様の声を拾った。

「姫様ッ!」
 まだ、まだ生きてる!
血相を変えて姫様に駆け寄った。まだ諦めちゃいけない。まだ諦め―――――

「――――――あ」
 駆け寄って姫様を見ると。
右上腹部がごっそり抉り取られていた。

「す、済まぬが手を、貸してくれ…ぬか?どういうわけか、う、動けないのじゃ…」
 少しだけ身じろぐ。
「…っ!動かないで下さい!!今、今止血しますから!」
 ハッとなって着ていた上着を姫様の傷口に当て、止血を試みる。
「は…ははっ。なんじゃ、動けぬと……思ったら、わらわは怪我をしていたのか……」
 姫様が可笑しそうに掠れた声で笑う。
「喋らないで!!……団長、姫様を街まで運びます!!手伝ってください!!」
 俺が必死で声を掛けているのに団長はあらぬ方向を向いたまま、唇を噛んでいるだけだった。
なんで!なんで動いてくれないんだよ!!
 早くしないと姫様が死んじゃうだろう!!なんで無視するんだよ!!

 ――――――お前も本当は分かっているだろう。その傷を見ろ。それで助かるわけが………

「認めるか!絶対認めないッ!!
大丈夫です、姫様。医者のところまでちゃんと運びますから」

 頭に響く声にかぶりを振りながら、傷に手を強く押し当てる。
傷口が広すぎて止血なんて出来やしない。俺の上着はもうグズグズだった。

「…………ちくしょうッ!止まれよッ、なんで止まらないんだよッ!クソッ!」

「な、何を泣いておる……しんぱい、するな。わらわは平気、じゃ。大して痛くない。……少し…寒い、がな」

「助けます。今、助けます!」
 意識を強く持つように何度も話しかける。
「これも……おぬしの仕事の、邪魔をした…バチが当たったのかも、知れぬな……」
 血が止まらない。血が止まらないんだ。誰か…誰か何とかしてくれ……
468Bloody Mary 2nd container 第十八話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/05(水) 23:18:50 ID:eE5yOHYK

「……そう、言えば……」
 何か思い出したらしく、俺の服を弱々しく掴んで。

「おぬしが来たら……ひとつ、言おうと思っておったのじゃが……」

「なんですか…?」
 傷口を強く押さえる。血は止まってくれない。

「帰ったら…また…わらわのポトフを……食べてくれぬ、か…?」

「勿論です。絶対、食べさせてください」
 傷口を強く、強く押さえる。血は―――止まってくれない。


「嗚呼……良かった…」
 安堵した笑みを浮かべる姫様。


「ふふっ……覚悟、しておけ。
次、こそは、ぜっ…たい、おぬ、しに………いと…………て………」


 そこで、彼女の言葉が途切れた。


「ひめ、さま……?」
 不思議に思って顔を覗き見る。彼女は俺の方に向かって笑いかけたまま。
だけど、焦点はもう定まっていなかった。

「え?…え……?」
 なんですか、最後まで言ってくださいよ。俺に、何なんですか?
お願いですから何か言ってください。お願い、ですから………

 姫様は虚空を見つめたまま、瞬きひとつしない。既に瞳から生の輝きは失われていた。

「あ、あ……ぁ…あぁ………」

 死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ。
さ、さっきまで攫われてたとは思えないくらい元気だったのに。
 助けられなかった。今度も。死んでいくのをただ見ているだけだった。


 脳裡に浮かぶ、姫様の笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。
笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。笑顔。


 そのひとつひとつが、俺の心を砕いていく。


「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!!!」



 喉から搾り出すように叫びながら。
今度こそ、本当にもう何も残っちゃいないんだな、と心の片隅で思った。
469Bloody Mary 2nd container 第十八話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/05(水) 23:20:25 ID:eE5yOHYK
Aルート第十八話終了。
そろそろ納涼血祭開催予定
470名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 23:38:28 ID:XjoTlPEz
GJです。マローネがついに登場でwktk。血祭たのしみにしてます。


でも姫様が……Bルートこそは!
471名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 23:58:16 ID:3TWul2mf
ああああああああああああああああああGJ
泣けるよ
472名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 00:08:25 ID:7/3eTuR6
ひぃいいめええぇさぁぁまあああぁヽ(`Д´)ノウワァァン
これからが本当の悲劇なのか
473名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 00:12:48 ID:Hf/Ddept
後にマローネの乱と呼ばれるこれが惨劇の始まりであった……
474名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 00:17:00 ID:eZ+fSfkI
  \         /_ /     ヽ /   } レ,'        / ̄ ̄ ̄ ̄\
  |`l`ヽ    /ヽ/ <´`ヽ u  ∨ u  i レ'          /
  └l> ̄    !i´-)     |\ `、 ヽ), />/        /  地  ほ  こ
   !´ヽ、   ヽ ( _ U   !、 ヽ。ヽ/,レ,。7´/-┬―┬―┬./  獄  ん  れ
  _|_/;:;:;7ヽ-ヽ、 '')  ""'''`` ‐'"='-'" /    !   !   /   だ.  と  か
   |  |;:;:;:{  U u ̄|| u u  ,..、_ -> /`i   !   !  \   :.  う  ら
   |  |;:;:;:;i\    iヽ、   i {++-`7, /|  i   !   !  <_      の  が
  __i ヽ;:;:;ヽ `、  i   ヽ、  ̄ ̄/ =、_i_  !   !   /
   ヽ ヽ;:;:;:\ `ヽ、i   /,ゝ_/|  i   ̄ヽヽ !  ! ,, -'\
    ヽ、\;:;:;:;:`ー、`ー'´ ̄/;:;ノ  ノ      ヽ| / ,、-''´ \/ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ̄ ̄ ̄            Y´/;:;:;\



>>469
GJ!!!!1111
ひめさっまぁあああああああああああ
475名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 01:20:58 ID:Y1jSYHFD
姫様がッ!?
……てかマローネ完全にKOOLになっちまったな
476名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 03:55:11 ID:QfSyb78y
みんな冷静にGJ&wktkしながら見守ろうぜ
be cool be cool
477名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 06:52:05 ID:mSgvuK66
良かった、姫様は無事だ。これで帰れる……
      ↓
マローネ? なんで姫様を……
      ↓
姫様死亡……
      ↓
マローネ種割れしてるギャー


こんな状態ですな。
でもマローネ、最初に姫様殺すべきじゃなかったな。
奇襲でもなければ殺せないやつが控えてらっしゃるからな……
そこは作者の狙いなんだろうけれどぐっじょぶっす。
478名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 07:02:14 ID:JuyAOEgc
ひめさまあぁあぁぁぁ。゚(゚´Д`゚)゜。
479『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/06(木) 10:25:33 ID:m9JvpIIZ
「ちーっす。」
今日も今日とてバイト漬け。今日はセレナが休みなため、一人でやることになる。まあ一人だろうが、客が少ないから楽なんだが。
あまりに暇なのに見兼ねたのか、店長が新作の試食をしてみないかと聞いてきた。見た感じへんてつのないショートケーキみたいだが………
「おお。」
なかに甘酸っぱいソースが入っていた。クリームの甘さと中和するようで、とてもうまい。
「うん、おいしい。」
素直な感想をいっていると………
カラン
客が来た合図の、ドアの鐘が鳴る。慌てて口の周りを拭き、接客に向かう。
「いらっしゃいま……あ。」
「あ、あの、どうもです。そのぉ…また来ちゃいました。」
その客は、昨日表で百円が足りないと悩んでいた少女だった。昨日の今日でくるなんて。そんなリピーターでもなかったきがしたが。
「それじゃ、御席へご案内します。」
適当なところへ座らせてメニューを渡す。
「…今日はちゃんとお金持ってきたか?」
「あ、あたりまえですよぅ。そこまでボケてませんって。」
なんだか天然に見えるのは俺だけか。
480『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/06(木) 10:26:52 ID:m9JvpIIZ
「あ、それより昨日のチョコケーキおいしかったですよ。噂になってるだけはあります。」
「へぇ、噂にまでなってるのか。……っと、ちょっと待っててくれ。」
そう言って厨房へ戻る。店長に話してさっきの試作品を食べさせていいかきいてみる。二つ返事でOKだった。
「はい、お待たせ。」
「え?これは…」
注文もしてないようなのがでたためか、少しこまっているようだ。
「これ、ウチの店の試作品なんだよ。今度メニューに加えるらしいんだけどさ、まあ、美味しいかどうか感想を聞きたいわけよ。」
「ほ、本当ですか!?あ、でも…」
「大丈夫、試食なんだから、タダ。」
それを聞いて、そっと胸を撫で下ろす。フォークを手に取り、ケーキに差し込む。……人が食べてるのを見てるってのも趣味が悪いな。
「じゃあ、俺厨房に戻ってるから、またなんか用があったらよんでくれ。」
そう言い残して振り返ると……
「あ、ま、待って!」
背中に声を掛けられる。
「はい?」
「そのー…良かったら、一緒に食べませんか?私だけ食べるのも気が引けるし………」
481『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/06(木) 10:27:50 ID:m9JvpIIZ
「いや、俺いまさっき食ったばっかなんだ。大丈夫だ。味の方は保証するから。」
そう言ってまた厨房へと向かう。
「あぅ……そうじゃなくって……一緒にいてほしかったんだけどなぁ。」
まだ何かつぶやいていたが、良く聞き取れなかった。
結局あの試作品とは別にケーキを食べ、帰るようになった。
「どうだった?あれ。旨かったか?」
「はい、私ああいう酸っぱいの好きなんですぅ。だからちょうど好みの味でした。」
「そら良かった。まずいだなんて言われたら店長ショックで寝こんじまうかもな。」
まあ、この娘の性格なら不味くても旨いと言いそうだが。
会計が終わり、帰る頃になると……
「あの、秋沢…さん?」
「?」
いきなり名前を呼ばれて驚いた。確かまだ自己紹介もしてなかったはずだが……ああ、ネームプレートを見たのか。
「なに?」
「えっと…えっと…わ、わた、わた……」
「綿?」
この娘は吃り症でもあるのか。
「私、葵っていいます!喜瀬葵です。」
「…はあ。」
それが彼女の名前なのか。
「そ、それじゃあ今日はありがとうございました!」
そう早口で言うと、カァーッと顔を赤くして、出ていってしまった。
喜瀬葵……面白いやつだ。
482名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 12:16:56 ID:Bai06C58
葵かわえぇ!!!!


住人から見た贔屓目もあるのかもしれんが、
そこらのラノベよりもレベルが高いのが多いから困る
483名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 12:55:12 ID:0S+EES81
みんなのツボをしっかり押さえた上に良質の作品なんだから
それはもう堪らないさ(*´д`*)

過去編での葵対セレナが楽しみで楽しみで(゚ー゚*)
484『疾走』 第八話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/06(木) 17:08:01 ID:QjDZlapW
 見上げれば曇天……一雨到来しそうな雰囲気である。
 そして。
 いつかの告白の光景と重なる――先輩は、同じ位置で立って、待っていた。
 ドアが開く物音に気付いて、ポニーテールを揺らしながらこちらを振り向く。
「あっ。エースケく……っ!?」
 ――そりゃ驚くだろうなあ。
 信じられないと言外に叫んでいるみたいに……いたり先輩の両目は、見開いていた。金魚みたいに、口をぱくぱくさせている。
 彼女の視線は……もちろん、俺の背後に。
「なん、で……っ? 有華さんが、いるんですか」
「――それよりも、いたり先輩。……まずは、返してくれませんか」
 有華にはしばらく動くなよと前もって言ってある。俺は、片手を差し出しながら、先輩に歩み寄った。
 質問したのに答えてくれない俺の強硬さに、いささか困惑しつつも。
「……返すって、なにをですか」
「――とぼけないでくださいよっ……! 俺の、家の鍵ですよっ!」
 息を呑む気配が、背中に響いてくる。
 有華は今どんな表情を浮かべているのか……考えながら、さらに近寄った。
「それとも、他にも返すものがありましたかっ……? 例えば、シャツとかっ!」
「――っ……うっ? エ、エースケくん……っ」
 口を塞いで、いかにも動揺した様子で後ずさる。
 今のは激情に任せたハッタリだったのだが――この反応だと、どうやら真実みたいだ。
 できればそれこそとぼけてもらいたかったです……っ。いたり先輩。
 それにしても、わからない……っ。
 何故シャツの一件に関しては明らかな動揺を滲み出すのに……鍵については、なんで持っていることに疑問を感じていないっ……?
 そのギャップがまた、異常とも捉えられるんだよ、俺には。
「わ、私、知りませんよっ!? シャツって、いきなり、なんなんです……っ?」
「……じゃあ、質問を変えます」
「あふっ……? エ、エースケくん……質問じゃなくて、もっとなにか、私に言うことがあったんじゃないんで――」
「いいから黙って聞けよ――ぉっ!」
 一喝する。
 びくっと、石化でもしたみたいに、先輩は喋るのをやめた。
485『疾走』 第八話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/06(木) 17:09:18 ID:QjDZlapW
 ……地面がこんにゃくみたいだ。不安定で……頭は馬鹿みたいに熱している。抑えが効かないっ……!
「俺は……俺の記憶違いじゃなければ、俺はっ……! 先輩には、一言も、携帯の番号教えてないですよね……っ?」
「――知らない、ですよ」
「俺の勝手な妄想かもしれませんけど……っ。先輩は……俺の携帯に、何度もかけてきてませんかっ!? その……む、無言のっ!」
 これは根拠のない発言だと思う。
 けれど……いたり先輩が不法に侵入してきた事実が在る以上……俺は、この二つを異常と言う共通点で、繋がっていると思い込んでしまうっ……!
「そんな――はははっ。証拠もないのに、勝手なこと、言わないで……くださいよ」
「……そうですか。わかりました。――じゃあ、次です」
 俺の特に親しい友人らに問い合わせても……いたり先輩からなにか聞かれたとか、そんなことはなかったし……っ。
 ただ誰かに聞く事だけが手段ではない。他にも方法があったのかもしれない。
 のどが渇くのを自覚しながら、言葉をなんとか紡ぐ。
「――先輩。俺の後ろを……歩いて追いかけたこと、ありますよねっ……?」
 やや声が震えてしまう。ちくしょうっ……情けない。
 これは……ある光景をきっかけに、至れた疑問だった。
 すなわち……今朝の、光景だ。
 たぶん鍵は有華が落とした――これはもう間違いが、ない。なんなら後で有華に聞いたらいい――俺の家から飛び出した後に、いたり先輩に会わなかったか、って……っ。
 落とした鍵が何故俺の家の鍵だとわかったのかは……可能性として、俺の家の鍵かもしれないとわかる手段は、幾つかある。
 有華が言ったのかもしれないし……確か親父は、前田さんにもそんな事を笑いながら言っていた――一応有華ちゃんに鍵渡してますけど、なにかあったら前田さんもよろしくお願いします……と。
 とにかく知れたのなら……試して見ようと思えたのだ、十分に。
 鍵は手に――残るのはその鍵穴の居所……俺の、住所だ。
 もちろんこれだって知りえる手段はたくさんあるのだが……ここで思い出すのは、いつかの帰り道、背中を這った違和感っ……。
 だから俺は……こんな質問を、再びはったりを、先輩にふっかけている。
「私が、エースケくんを……追いかけるっ? 後ろから……こっそり、ですかっ?」
「はい――先輩だったんですね、あれ」
 道の両側は植え込みと木々に囲まれていた。……そもそも最初から、その植え込みの向こうから歩いていたのなら……俺が振り返っても、容易に見つけられるはずがない。
 ただしこれも目視で確認したわけではない――状況だけの早急な断定だ。
「――あはっ。はははっ……そんな、まるでストーカーじゃないですかっ、それって。もうっ……エースケくんってば、酷いですよっ? 怒っちゃいますよ、私」
 その笑顔が……酷く脆そうに見えるのは、俺の錯覚かっ?
 ――そうだ。そうやってとぼけるのが……この状況を切り抜ける最善だからなっ……。
 あんたが昼休みに……あんなことを言わなけりゃ、完璧だった。
「そうやって、ドアを蹴ったことも……とぼけるんですね、きっと」
「……意味がわかりませんよ。エースケくん……それよりも、もっと、私に、言うべきことがあるんじゃないですかっ!?」
 最後のはったりにも、語気を荒げて予想の反応をしてくれる先輩だった。
 俺は……ただ、無感動に……すがるような視線を浴びていた。
「――わかりました。もういいです……なにを言ったって、無駄だってわかりました」
「む、無駄って……なんなんですかっ!?」
 もう距離は零にすら近い。
 俺は鞄から――ビニールの袋に入れた、今朝のおかずを取り出した。
486血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:24:16 ID:Ju9dNL2D
投下します。
疾走の作者様、途中だったらすみません
487血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:25:05 ID:Ju9dNL2D


 ホワイト・ラビットは、生まれて5年も経っていない。
 5年前までは、全く違う名前で、全く違う生活を送っていた。
 帝国民なら一度は聞いたことのある家系、その末梢の長女。
 貴族令嬢、という表現が相応しい、花とぬいぐるみの似合う少女であった。
 
 領地は大して広くなく、執政能力も中の下程度の田舎貴族。
 本家の栄光で何とか成り立っているような、そんな貴族の娘として、10年間過ごしてきた。
 
 ただひとつ。
 他の貴族達と違うところがあるとすれば。
 
 本家を初めとする一派は、剣術に優れた家系であり。
 少女の家族は、その中でも指折りの強者だった。
 
 
 父は本家をも凌ぐほどの使い手と詠われ。
 長兄は父に次ぐ力量の剣士と持て囃され。
 次兄は単独で盗賊団を壊滅させた経験がある。
 
 権力方面には疎いため、終ぞ帝国の要職に就くことはなかったが。
 少女の家族は、皆、一騎当千の剣士であった。
 
 
 ぬいぐるみを胸に抱えながら、
 兄たちの修業を眺めているのが好きだった。
 
 
 最初は、女が剣術修業に興味を持つなんてけしからん、と家族は見せるのを躊躇ったが。
 窓からこっそり伺い続ける娘に呆れ果て、見学を許可したなんてエピソードもあったりする。
 まあそれはそれとして。
 兄たちの修業風景を眺めるのは楽しかった。
 最初は速すぎて全く見えなかったが、
 歳も7つを過ぎる頃には、大抵の動きは見て取れるようになっていた。
 もっとも、そのことを家族に言ったことはなかったが。
 
 
 ――何故なら。
 少女は生まれつき、喋ることができなかったからである。

488血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:25:45 ID:Ju9dNL2D
 
 
 話すことができない娘を外に出すのは躊躇われたのか、
 少女は敷地の外へ出ることを許されなかった。
 ある時期までは、家族や使用人たちが幾度となく少女に話しかけていたが、
 何の言葉も返さない少女に対し、いつしか誰もが、少女に話しかけなくなっていた。
 
 誰とも会話することなく、少女はひとり、剣の修業を眺めるだけ。
 
 ぬいぐるみを抱きしめて、修練場の片隅にぼんやりと立っていた。
 端から見れば奇矯な小娘でしかなかったが、これはこれで、楽しいものだった。
 
 しかし。
 
 そんな生活も、齢が10を重ねる頃には、終わりを告げていた。
 中央での政権争いの折、失脚しかけた本家の尻尾として、少女の家族が選ばれた。
 父は忠誠を誓っていた皇帝陛下の前で斬首され。
 兄たちは追われる身として国外へと消えた。
 
 少女はひとり、寂れた屋敷の中でぬいぐるみを抱きしめていて。
 
 本家の使いとしてやって来た、
 アマツ・コミナトに保護された。
 
 
 名前は捨てられ、監獄で生きる白兎として囲い込まれて。
 もう、五年が経つ。
 
 
 
 
 
 監獄での生活は、特に何とも思わなかった。
“銀の甲冑”の取り計らいで、囚人生活はそれなりに満たされていたし、
 何より、欲しいと思えるものがなかったので、辛いと感じることもなかった。
 時折様子を見に訪れるアマツに、力が無くても相手を倒せる術を見せて貰い、
“見る”ことが得意だったとはいえ、それを覚えたのは、ただ単に退屈だったからだ。
 
 そして、言われるがままに、闘技場に出場することにして。
 
 ユウキと、出会った。
 
 
 
489血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:26:27 ID:Ju9dNL2D
 
 
 最初は、しつこく話しかけてくる五月蠅い人としか思わなかった。
 どうせこいつも、すぐに話しかけてこなくなる。
 そう思って、無視し続けた。
 
 でも。
 ユウキは、諦めることなく、ことあるたびに、話しかけてきて。
 しかも、その目は、しっかりと少女のことを捉えていた。
 ただ闇雲に話しかけてきているわけではなく。
 少女の反応をひとつひとつ丁寧に拾って、少女と“会話”し続けた。
 
 その言葉は、あくまで少女あってのもの。
 
 例えば食事の際、スプーンが手元になくて、視線や右手を彷徨わせたら、
「あ、食器が揃ってませんでしたね、すぐ準備します」と、言ってもいない要求を的確に把握したり。
 
 例えば着替えの際、服の肩幅が合わず、むずがゆそうに腕を動かしたりしたら、
「服のサイズが合ってませんね。身長が伸びたのでしょうか」と、服を換えたりしてくれた。
 
 ユウキは、こちらの状態を把握するのが上手かった。
 言葉がなくても、相手の欲しているものがわかるのだ。
 喋ることのできない少女が相手でも、それは変わらず。
 
「おはようございます。よく眠れたみたいですね」
「こんにちは。日差しが気になるんですか? ああ、散歩しに行きたいんですね」
「食事の時間ですよ。これ、好きなメニューでしたよね」
「おやすみなさい。今日は歩き回って疲れているでしょうし、早めに寝てくださいね」
 
 どうして、この人は。
 私の思ってることが、わかるんだろう。
 
 この人と、話してみたい。
 この人に、言葉を返してみたい。
 
 いつのまにか。
 そう、思っていた。


490血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:27:08 ID:Ju9dNL2D

 ユウキに世話してもらいながら、監獄の中で過ごす日が続いていた。
 今まで経験したことのない“会話”に戸惑う気持ちもあって、どう接すればいいかわからなかった。
 よって、今までと同じように、無視し続ける毎日だったが。
 
 初試合の日。
 
 はじめて、人を殺して。
 そのことに対しては何とも思わなくて。
 
 ただ、ユウキに嫌われちゃうのかなあ、と。
 
 ぼんやり思いながら、控え室にべたべたと戻ったら。
「頑張ったね」と、褒めてくれた。
 人を殺してしまったのに。
 喋ることもできないのに。
 こんな自分を、褒めてくれた。
 それどころか――
 
 
 優しく、頭を撫でてくれた。
 
 
 すごく、気持ちよかった。
 頭の中が真っ白になって。
 ユウキの顔を正面から見た。
 
 そして。
 彼の言葉に何かを返したい、と心の底から望んでいたら。
 
 ――うん。
 
 とてもとても小さな声が、喉を震わせていた。
 
 
 
 
 自分が喋れるようになったのは、ユウキのおかげ。
 少女はそう思い、彼と一緒にいれば、もっと話せるようになると信じて、
 いつしか、べったりとくっつくようになっていた。
 それがとても楽しくて。
 気付いた頃には、もう、離れられなくなっていた。
 
 今の自分――“白”はユウキのおかげで存在している。
 だから、“白”の全てはユウキだけのもの。
 
 そして、ユウキの全ては“白”だけのもの。

491血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:27:48 ID:Ju9dNL2D
 
 
 
 
 
 なのに。
 今、ユウキは近くにいない。
 どれだけ望んでも、会うことすらままならない。
 
 何故だろう。
 右腕をなくしちゃったのがいけないのかな。
 それなら大丈夫。もう、前と同じように戦える。
 苦戦しちゃったのがいけないのかな。
 それも大丈夫。もう、誰が相手でも簡単に殺してみせる。
 
 だから、ユウキは、絶対に、帰ってくる。
 
 
 
「――貴女は、捨てられたのです」
 
 
 
「――嘘だ!」
 
 目の前が真っ赤になった。
 ユウキは帰ってくるはずなのに。
 ユウキは帰ってこなくちゃいけないのに。
 
「右腕も失い、貴女に闘技場で見せ物になる価値はないとのことです。
 このまま大人しく、通常の女囚として、過ごしていなさい」
 
 嘘だ。
 だって、ユウキは褒めてくれるんだから。
 相手を殺せば、ユウキは褒めてくれるんだから。
 相手を殺せるうちは、ユウキはずっと一緒にいてくれるはずだ。
 
「ユウキは、そんなこと、言わない」
「いえ、言いました」
「言わない!」
「言ったんですよ。先程、私と一緒のベッドで、はっきりと」
 
「――血塗れ竜は、もう要らない、って」


492血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:28:45 ID:Ju9dNL2D

「私の身体から、彼の匂いがするでしょう?
 貴女が一度もしてもらってないことを、たっぷりと、私に、して頂きました」
 
 してもらってないこと?
 そういえば、あの女も、似たようなことを言っていた。
 
 ――だって貴女、ユウキさんに抱かれたことなんてないでしょう?
 
“抱かれた”っていうのが、どういうことなのかはよくわからない。
 でも、あいつやアマツの口ぶりから察するに、男女が愛し合うために行うことなのだろう。
 それを――ユウキと。
 頭の内側がふつふつと沸騰しそうになる。
 私は、してもらったことがないのに。
 
 ――否。きっと、頼めばユウキはしてくれる。
 私のことを、愛してくれる。
 ユウキが側にいれば、きっと、愛し合うのなんて簡単にできるはず。
 
 できないのは、怪物姉が、アマツが、ユウキと私を引き離したからだ。
 ユウキがこいつらと、愛し合ったのは、きっと無理矢理やらされたんだ!
 
 こいつらが――ユウキを、盗ったんだ!
 
 
493血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:29:53 ID:Ju9dNL2D

「ユウキを、返せ」
「返せ、とは? 彼は貴女のものじゃないでしょう」
 
 何を言う。
 ユウキは私のもの。
 だから、奪われたら、取り返さなきゃ。
 
「かえせ」
 
 一歩近づく。
 左手に力を込める。
 右手はないけど、構わない。
 もう、前と同じように動けるから。
 もう、前と同じように殺せるから。
 
「……私に暴力を振るうつもりですか?」
 
「ユウキは、私の」
 
 更に一歩。
 あと3歩で、こちらの手が届く距離。
 視線はアマツを真っ直ぐ刺す。
 ユウキはこいつに捕まってるんだ。
 だから、助けてあげないと。
 
 
「付き人に対し、害意を抱いたと認識しました。
 緊急措置として、囚人番号E4−274を制圧します。
 なお、対象の能力を考慮し、武装が妥当と判断。抜剣します。
 
 ――もう、後戻りはできないぞ?」
 
 言うなり、アマツは、腰に下げていた剣を抜いた。
 構わない。
 アマツの強さは知っている。右腕があった頃の自分ですら、勝てるかどうかわからない。
 
 でも。
 待ち望んでいたユウキのニオイ。
 それがアマツから漂っているのが腹立たしくて。
 ――血の臭いで紛らわせてやりたい、と。
 心の底から、思っていた。


494 ◆gPbPvQ478E :2006/07/06(木) 18:32:44 ID:Ju9dNL2D
それでは、本日の番外試合。
血塗れ竜 VS 銀の甲冑
を、開始させて頂きます!
 
間が空いてすみませんorz
次回投下ももう少し後になりそうです……
忘れられてないことを祈る今日この頃

>>108
遅レスですが
一大陸一帝国なんていうトンデモ設定ですので、人種についてはある種ごった煮と考えております。
イメージ的には、帝国民が中世東欧系と近代日本系を足して2で割った感じで、
アトリは中世北欧系(でも顔立ちは丸い)かなあ、と。
でもあくまで書くときのイメージですので、各人ぴったり来るのを想像して頂ければ幸いです。
というか、本文中に外見描写入れてない時点でかなり駄目駄目ですねorz
495名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 18:34:14 ID:VS61wgMm
>>494
待っていた、待っていたよ〜
GJGJGJGJGJGJGJ!!
496名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 18:42:07 ID:zqrYS7t9
>>494
やっと来た!!!
今まで血塗れ竜のためだけに禁欲していました!!
497名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 18:58:39 ID:L1GXlN+s
>>485
先輩がヤッテもいないのに
↓みたいな発言したら神すぎる件について


     うぐッ・・・   せ、責任は、取ってもらうわよ・・・!
  /               .l\::    |::            :::::::::ヽ::::i::
 /   /i         :.   | ヽ::.   |:::            :::::::::ヽ::::i::
. l   / l         ::::   |  ヽ::.  |、::         ::  ::ト、:::ヽ:::i::
. |  / | :        ::::::i  |  ヽ;;; ハ::::::   ::     :::: :::|ヽ:::ヽ:::l::   ::
. | /  | ::       ::::::ハ  |  / i::. i ヽ:::  :::::     ::::: :::|⌒ヽ|::::l::   :::::
. |. l   i:::::      :::::::| .|:::l_ノ-ニ l::l  ヽ:::::  :::::l:    :l:::::::|''''` |ヽ::l::  ::::/::::
 ! l   .i::i:::     ::::l:::l キ'| ,ir'''''''''|!ミ=,,,ヽ_:::: :::::|:::   :::| i ト、  |:::l:: :::::ハ:::::::
  ||   ヽヽ::   : :::||:::ト、|:i ' |! __   ヾ| i::::: ::::ハ:::   ::::l .l .l /丿/::::|:: ::::/-ヽ''' ̄
.  |.    ヽヾ:::  :::::::| |::ト、:|!ヽ.  ヽヽ    i::::::::::/ .i::::  :::::| i |/ ./i/-|::/
       ヽ\: :::::::l !| ヽ::::::\  ヽヽ  /i:::::::/  i:::: :::::|  ! /    !
          \::::::|  ! / :::::::::\ ´´ /  |::::/   i:::::::::/   .|   /
           \:|  / ::::::::::::::ヽ  li  |:/    |::::::/      /:
               i :::::::::::::::::/   |!. '     |:::/      .i:::::
               | :::::::::::::::::く r--ー''"l     |/       |::::::
               | :::/::::::::::::/ rーニー'' ̄l_      / ̄ .|:::::::::
               | ::| :::::::::ヽ /´ _,,,,--'''' /-,    /    .|:::::::::::
                !:| | ::::::::::::::y   /  ,,,-'ソ /  /::|     ヽ:::::::::
                i | i :::::::::::ハ、. '  /-/ /_/ヽ::::|     ヽ:::::::::
                | ヽ ::::::/ ヽ,,,,    /  ヾ.|:::|      |::
498 ◆JfoDS60Gas :2006/07/06(木) 19:05:41 ID:mSgvuK66
ビッグタイトルがんがんきてますねぃ。
血塗れの作家さん、疾走の作家さん、ぐっじょぶです。

はたしていたり先輩のしっぽは、彼女はこれからどうするのか?
白とアマツの勝負の行方はどうなることやら?

これは私も負けていられませぬ。
こちらも、お話の最初の線を引かせていただきます。
499永遠の願い 第四話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/06(木) 19:06:38 ID:mSgvuK66
生まれて初めて告白された。
ずっと、手紙の主に対しての返事をどうしようかと思い悩んだ。
正直、こういう形での申し出は、初めての経験でかなり戸惑っていた。
近くにいた晴海については、たしかに幼なじみ以上恋人未満の、まったりとした関係を続けている。
それがいつまでも続くとは思っていなかったが、今すぐにこれに幕を下ろしてしまうのも惜しかった。
この生活はなんだかんだいっても、近くに女っけを置いておける分、もしそういう都合が必要なときは代わりになってもらい、なけなしの財産をおごったりした。
あいつはそういうとき、まんざらでもないような顔で俺の話に付き合うもので。
中学のころにクラスで企画した劇とかでは、それこそ門出のきっかけになるような余計なおせっかいで、俺は晴海とキスシーンに挑まされたりした。
ファーストキスはそれこそそのときで、あいつも俺も照れくささのあまり真っ赤になって、まるで本当に好きあい結ばれてるようだったなどと、クラスメイトは75日と続く噂話を俺たち相手に持ちかけつづけた。
わりと俺たちが動じないことを知ったやつらは、あっさりそのからかいネタを引っ込めたりもしたんだが。
そのころから、名目上俺たちはカップル、ということになっている。
してもいないが毎晩激しくいたしていることにもなっている。
こればかりはなんとなく面倒だから周りに話を合わせているだけであり、結果的に晴海を守ることにもつながっていたんだよな。
だが、そろそろいいだろう。
晴海は俺を卒業する時期に近づいているんだろうし、俺も晴海をご都合主義にしつづける必要もない。
というか、それはあまりにも晴海に失礼だ。
もうそんな迷惑を、晴海にかけるわけにはいかないよな。
俺はいったんこの申し出に耳だけ傾けてみることにした。
よさそうなこであれば、多少懇意になってもいいんじゃないだろうか。
「孝人ーっ、一緒に帰ろ〜」
こいつは別に運動部とかやっているわけじゃない。俺が帰宅部だから、彼女も帰宅部なんだとか。
まったく、何でもいいからやればいいのに。
こいつが入学した当初、体験入部のとき、こぞって晴海の素質に惹かれた運動部員たちが、勧誘の手をさしのべたことを忘れていないんだが。
それに、この容姿に料理の腕、才気溢れるところなどから、マネージャーとしても引く手あまただったんだが。
それをいえば、まさに「帰宅部の俺専属マネージャー」になるとか言っていたような。
まあある意味冗談半分だよな。
「そうだな、でも今日はこれにまず付き合おうと思う」
その専属マネージャーに暇をやろう。
俺は、今朝受け取ったラブレターをちらつかせた。
「やっぱり、行くの?」
「話聞くだけさ。まさか浮気なんて勘違いされたら、IHHHに殺される」
IHHH、「いつでも晴海さんのほほえみ晴れやかに」、とかいうやたら気取った名前の、晴海のファンクラブの略称だ。
誰が作ったかは知らないが、小等部から大学まで一貫教育のうちの中で、中等部から高等部にかけてその組織を広げる団体だとかいう。
一応、俺はこいつらに公認の晴海の彼氏、になっているらしい。
さらに、俺はNo.Nothingとかいう形で名誉会員扱いになっているとか。
俺と晴海は一応中等部からこの学校に在席しているが、いつしか俺の耳にそういう言葉が飛び込んできた。
やつらが不可侵なのは、どこかの女生徒達が晴海と俺のことを支援していて、やつらに過分な干渉をしてくれたおかげのようなんだが。
まったく、余計なことをしてくれる。
いろいろとんでもない方向に話が進んで、実質は俺と晴海が付き合っていないことを知っている人間のほうが少なくなっているんじゃないのか?
IHHHの連中もそうして俺を立てているのは、上層部連中はそういう事実からいつか下げ渡してもらえる日のために、俺に媚びているだけだろう。
ばかばかしいにもほどがある。
「そうだよ。死んじゃったら私も悲しいし」
「そりゃ、俺が死ねば泣くだろうなおまえ。付き合い長いし」
「そういうこと。ちゃんと、けじめつけてね」
「まあな」
なんとなく曖昧に答えたつもりでいておいた。
IHHHの会員はこのクラスにも相当数いる。
普段なら、どうということはないんだが、俺の手にもっているこれのせいで、なんとなく空気が不穏だ。
やつらの上と下の温度差のせいか、やはり下の連中はこれがただごとではないと警戒しているんではないだろうか。
俺はやつらになんとなく手を振ったような気持ちになって、彼女の前に立ったんだ。
そうしたら、さっそくの告白だ。

500永遠の願い 第四話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/06(木) 19:07:21 ID:mSgvuK66
「好きです。お付き合いはお友達からでもいいです。お返事は私のことを十分知
ってからでかまいませんけれど、できれば恋人として、お付き合いしたいです」

本当にその視線は真っ直ぐだった。
表情はうっすらとしていたけれど、細身の体と、晴海に比べれば小柄が目に見えてはっきりしている彼女は、簡単に壊れてしまいそうな骨董品だった。
ショートカットを切りまとめているのは機能性を求めて、だと思う。
瞳がことのほか艶のある輝きを浮かばせている、印象深さがあった。
何より、意志の強さのようなものを感じた。
文章は丁寧で、知性を深く感じさせてくれるものだったから、イメージはおおかた崩れていない。
それよりなにより。
晴海のようにできすぎていない、とっつきやすさと安堵を感じられた。
「唐突にそういわれてもな……」
「先輩が晴海さんとのお付き合いがあることはよくわかってます。だから、無理なお願いをしているのは百も承知です。でも、好きで、好きでたまらなくて……」
とりあえず、彼女の思いの強さは痛いほど良く分かった。
実際のところ、よく知らない相手の告白を了承するなんてできない。
確かに、榊さんは悪いこではないだろう。
それはあの文面からして言えること。あんな配慮と生真面目さは俺としては非常に好印象だ。
だからといって、簡単な気持ちでは答えられない。
それに、まだ晴海のことだって解決のかの字すら進んでいないのだ。
あいつに百歩譲って俺を卒業することを申し出るにしても、答えを出すにはあせりすぎではないだろうか。
それに、卒業を言い渡す前提に、俺としては「今までのお礼」が必要不可欠だと思っていたから。
「あの、さ。俺ラブレターとか、女の子からの告白って、生まれて初めてなんだ。物心ついたころにはもうあいつがいたからな」
なんか、榊さんを見つめ返すのが照れくさくて、視線を遠くに向けながら答えた。
榊さんの申し出に、実際のところ、かなり嬉しい自分がいた。
何をどうほれ込んだかは知らないけれど、俺にも、こうやって告白してくれる人がいる、っていう事実が、喜ばしかった。
「榊さんの告白、すごく嬉しい。それについてはありがとうな」
「いえ……」
だから。
核心をはぐらかすのはまずいだろう。
今心から降って湧いた案を申し出ることにする。
「晴海とは、まだ付き合っているわけじゃないし、そろそろ俺から卒業する時期じゃないかと思っていたから、実はいいきっかけじゃないか、みたいなことを考えた。それで」
一息、飲み込むようにする。
榊さんは、じっと俺の返答を待つように、真っ直ぐ俺を見据えている。
緊張感いっぱいのその場面、告白という真剣勝負にいつものおちゃらけは許されない。
気を引き締めて、次の言葉を紡ぎだす。
「今すぐOKを出すわけにはいかないから、答えはまず保留でいいよな」
「……はい」
やや、間を置いたものの、榊さんは素直に、俺の申し出を承諾してくれた。
うれしいことである。
「それから」
さらに続きを申し出る。
「あくまで友人のひとりとしてなら、話に付き合ってやるくらいはできるつもりだから、気楽に話し掛けてくれていいから、な」
それを、俺の答えとして、結論づけるように思考をまとめた。
「それでいいよな」
向き直って、榊さんに発言権を譲った。
榊さん、そんな俺の返答に、じっと何かを考えるように、視線を少しだけ下に落としてから、すぐに俺に視線を向けなおす。
けして寒すぎないはずなのに、榊さんの唇はどこか血の気がひいているようだった。
「はい。それが、先輩の答えなら、私は厳粛に受け止めます。つまりは……先輩が、私に振り向いてくれるのを信じて、がんばっていいのですよね?」
榊さんの声が震えていた。
周りの空気は空気という役割のまま俺と榊さんに関せずにいてくれている。
陽射しは、西に傾いてうっすらと焼けていた。
501永遠の願い 第四話 ◆JfoDS60Gas :2006/07/06(木) 19:08:00 ID:mSgvuK66
「そのつもりだ。もっとも、振り向くかどうかはそちら次第だが」
「はいっ……」
榊さんの目に、力強さのようなものが宿ったような気がした。
答えとして成り立っているかは不安ではあるが、これでいいんだよな。
ある意味俺は、榊さんに期待していたから……
「私、絶対先輩を振り向かせてみせます!」
「ああ、まあせいぜいがんばりな」
俺は待ち構える門番、榊さんは攻め込む侵略者か。
はたして、彼女はこの牙城を落とすことができるだろうか?
俺は、果たした約束を終えた充足感と共に、その場を立ち去ろうとした。
「あの」
その俺を、呼び止める榊さん。
「何?」
振り返って、その要件を待つと。
「二つだけ、我が侭聞いてもらっていいですか?」
「ああ、俺にできることなら」
「ありがとうございます。ひとつめは……先輩のこと、孝人さんと呼んでいいですか?」
「ああ、好きにしてくれ」
「はい、それともうひとつは、携帯の番号とメアド、教えてもらっていいですか?」
「もちろん。俺のでいいならいくらでも」
「いくらでもって、いくつか持っているんですか?」
「いや、ひとつだけだ」
会話のノリがあらぬ方向に飛びかけたが、彼女の申し出はほとんど無理の無いささやかなものだった。
番号を教え、取り出した俺自身の携帯に自分のメアドを表示させ、彼女に写させた。
ひとつひとつの英数字を目でおい、間違いの無いことを確かめながら入力する榊さん。確認作業として、メールを送り、着信を残す。
どちらも差し障り無く事が終わった。
「ありがとうございます。さっそく今晩、メールしますね」
丁寧にお礼のお辞儀をする榊さんを置いてひとり、屋上を後にする。
榊さんがついてこずに俺を見送ったのは、何かの配慮なんだろうと思っていたのだが。
ふと振り向いて、屋上の出入り口のほうに視線を送ると。
そこには。
ずっと見知った幼なじみが、じっと息を潜めて俺たちの様子をうかがっていた。
別に、後ろめたいことなんか一切していない。
それなのに。
こいつの見つめる目はどこか、俺を悪人呼ばわりするようなじとっとしたきつさを含んでいた。
「見てたのか?」
あくまで、その意味を聞かずに、いつもどおりのつもりで聞く。
「気になったから」
「見たとおりのこだ」
まだ二人だけの話をするには、榊さんと距離が近すぎる。
俺は榊さんに手を振って、晴海の両肩を掴んで押しながら、その場を早々に立ち去った。
このことを突っ込まれる可能性はあるだろうが、それはまたおいおい、メールかなにかでやり取りすればいいだろう。
そのまま、俺は彼女の視線の訳を聞かないまま、結局はいつもどおり、他愛の無いやり取りをつづけながら、晴海と帰宅することになった。
今日の夕焼けは、やけに綺麗に見えた。

502 ◆JfoDS60Gas :2006/07/06(木) 19:09:39 ID:mSgvuK66
以上です。
まだまだ始まったばかりで、修羅場のしの字もちょっと指先だけくらいなんですが、
これから手の内の探りあいみたいな感じになっていく予定です。

ではこれにて。
503名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 19:40:51 ID:zqrYS7t9
先生、このスレのような女の子達と付き合うにはどうすればいいですか!!
504名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 19:46:30 ID:7/3eTuR6
先生!!
僕にもお教えください!!
505名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:11:13 ID:7RoC3zyq
>503-504
(誰にでも)優しく、決断力は弱め、状況判断能力は弱め
この三つは基本だ
506名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:20:38 ID:Hf/Ddept
先生!!神様の連発で顔面の筋肉が変なニヤケ顔をつくったまま戻りません!!
507名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:22:44 ID:8jt7EHuj
女難の相をお払いしてくれる神社はあるけど、
女難の相を憑けてくれる神社はないんだよなぁ。
そんな神社があったら、毎日お参りにいくのに。

参拝に行くたびに、巫女さんが修羅場るわけだけどね。
売店で、お守りと一緒に藁人形と五寸釘が売ってるし。
絵馬には、「あの女を殺す」「彼は私のもの」「妊娠しますように」とか、
そんな血文字ばっかり書いてあるし。
508名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:31:44 ID:YUt2/wEA
御神体は鉈な。
509名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:32:35 ID:eZ+fSfkI
>>502
キタキタ
告白じっと見つめてる晴海コワス((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

>>503>>504
>>505にくわえて、
美少年、成績優秀、スポーツ万能などの事が条件です。
510名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:38:59 ID:zqrYS7t9
先生、>>505はどうにかなりそうですが、>>509が絶対に無理っぽいです!!
511名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:41:59 ID:+LfqdF4N
そうでなければ幼馴染補正を受けるんだ
512名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:46:26 ID:7RoC3zyq
>510
ならばダメっ子属性を手に入れて相手の母性本能をくすぐるんだ!
513名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:54:54 ID:7/3eTuR6
先生!!
505のやさしさと509以外なら今の僕なら完璧です
514 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 20:58:04 ID:ns0aj0r6
投下します。
やや長め。かなりねちっこいです。
515名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:59:47 ID:ebLxFDrD
>>513
(無条件の)やさしさが無いのは致命的です!
516『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 21:03:35 ID:ns0aj0r6

 扉の向こう側、明り取りの小さなガラスの先の光景は悪夢より苦々しいです。

 私は体の奥からこみ上げる衝動を既のところで耐えています。
 張り裂けそうな胸の裡を惨めに晒すことがないようにしています。
 取り繕った無表情で、だけど眼球は二人の接触部に釘付けになっています。
 女の先輩が愚図っています。
 男の先輩が困惑の表情を浮かべています。

 それは、

 ―――――私の愛しい愛しい先輩に竹沢雫先輩が抱きついている。

 そんな光景。

 「こ〜ちゃん……」

 舌足らずな呼称がくぐもりながらも確かに私の鼓膜を貫きました。
 ――こ〜ちゃん――幸平――、先輩の名前、私が一度も呼んだことのない――

 「……っ!」

 取っ手にかけた手が動きそうになるのを、爪を掌に食い込ませて耐えます。
 もしこの扉を開いたら先輩に気付かれてしまうかもしれません。
 気付かれたら先輩に嫌われてしまう。――それは許されません。許せません。
 私は優秀で冷静で無感動な先輩の頼れるパートナー。
 先輩の最大の味方にして、縋りつける拠り所。
 その私が動揺して醜い姿を先輩に晒してしまうなんて、絶対に、絶対に許されないんです。

 けれど、

 噛み締めた歯がぎりりと鈍く擦れています。
 全ては先輩に愛してもらうため。
 そう思って悲嘆し憤る気持ちを固めて固めて閉じ込めてきました。
 だけどいくら硬い結晶にしても、先輩不在の時間の圧倒的な鋭利さは、いとも容易くその外壁を
削り取るんです。
 削り取られた残骸は、心の底で泥に塗れて輝きを失います。
 輝きを失えば、尚更先輩が愛しくて堪らないんです。欠落を補充してもらいたいんです。
 修復無しに傷付く期間が長引いているのも辛いんです。
517『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 21:06:29 ID:ns0aj0r6

    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 ――だってもう半月になります。こうして心を抉られるようになってから。

 一度も見咎められていないのは、受験教育のカリキュラムが等閑な県立高ならでは。
 誰も彼もが自主的に勉学に励んでいるようです。
 まあ、本校舎四階東側の全クラスが無人になっているのを確認し、扉と壁の凹凸で身を隠し、
さらに周囲の警戒には気を配ってますからそう簡単に下手は打ちませんが。

 ……それにしても仕方なしとは言え、先輩が誰か他の女の人とくっついているのは、避けられ
るならやはり避けたいのに変わりはありません。
 もしこれが天運でないのならば、あの月の始めの厄日を暦から消してくれないでしょうか。
 それができないならせめて呪いをかけさせて欲しいです。
 先輩と竹沢先輩の偶然の出会いを演出してくれた生徒会の冗長な反省会に。
 他人事のように言いたい放題やっていた役員の非難のお蔭で先輩は帰りが遅くなり、あの憐
れな羊を見つけてしまいました。
 先輩の性格上、一度関わってしまった以上はそのまま捨て置くなんてできないません。
 出会ってしまえば避けようがなかったのです。
 それが先輩の本質であり、長所なのですから。

 ――先輩、私はあなたのその類まれなる責任感を誰よりも評価していますから。

 悪態をつき、愚痴を零し、怠惰を熱望し、無気力を演じても、私にはわかります。
 照れ隠しや空気を和らげようとした振る舞いの裏に隠された先輩を、私だけがわかっています。

 文書作成やコピーのような味気ない雑用を、膨大に押し付けられる日々。
 職務怠慢な委員達を抱え、途方に暮れた委員長と副委員長。
 何だかんだ言っても先輩はその立場から決して逃げたりはしませんでした。
 責任を放り出したりはしませんでした。
 それは、前年度生徒会役員で、仕事のノウハウを知っていた私に教えを請うほどです。
 上級生が下級生に手取り足取りの指導をお願いしたんです。
 文章のレイアウトや印刷機の使い方のような単純な知識でしたが、先輩は進んでそれを学び、
頼れる後輩として私に多大な感謝と信頼を寄せてくれました。
 愚痴りながらも熱心にキーボードを叩き、同時に私を褒めてくれる。
 そんなどこか抜けているアンバランスさも先輩の魅力だと思います。
 そして、先輩のその姿勢はもうすぐ任期の終わるこの時期になっても変わりません。
518『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 21:11:19 ID:ns0aj0r6

 そうやって、私と先輩は、私が先輩をリードする形でひたすら二人三脚を頑張ってきたんです。
 だからわからないはずがないんです。

 無遅刻無欠席は最早義務、毎日放課後まで雑務に追われ、自宅でも持ち帰ったデータを検討
し、受験生なのに夏季休業の大部分を犠牲にしてまで身を粉にして働いている。
 そもそも三学年は勉強に専念していいことになっており、参加は個人の自由なんです。

 そこまでしていて、
 私が先輩のお粗末な欺瞞を見抜けないはずがないじゃないですか。
 先輩の真の姿に魅せられないはずがないじゃないですか。
 先輩が好きにならないはずがないじゃないですか。

 信頼しあった二人が恋に落ちるのは自然な流れです。
 職場結婚は常に婚姻理由のトップになっています。
 ……この間見たテレビでは二位に転落してましたがそれは何かの間違いです。
 そう、職場で頼れる上司に部下がころっといってしまうのは恋のお約束。
 立場が逆になってますが、私に先輩が転んでくれるのは決定事項。

 ――しかしそれだけに、先輩の責任感を悪用するような遣り方を承知できるはずもありません。


 騒々しく、まるで開戦を勧告するサイレンのように。
 合成音声のチャイムが学校中に木霊しました。


 ――先輩に約束を反故にされたのはこれが初めてです。
 定例会議はとっくに始まってしまっています。
 ……この合図でも無理なら、恐らく今日はもう先輩は私のことを思い出してはくれないでしょう。
 どうしようもありません。いくら先輩だって混乱状態では正常な判断は難しいに決まってます。
 全てはあの人の責任なのです。

 一抹の寂しさと未練さえも外面から覆い隠し、私は踵を返してこの場を離れます。


 ――――けれど、それは決して負けを意味するものじゃないですよ。

519『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 21:12:34 ID:ns0aj0r6

 先輩せんぱい幸平先輩。

 まずは名前で呼ばせてくださいな。

 あなたの優秀な部下は、あなたの唯一のパートナーは、あなたの親愛なる後輩は、

 あなたに依存するだけのあの人の存在を許容できません。

 先輩を悩ませるだけの人なんていなくなっちゃえばいいんです。

 先輩に負担をかけるだけの人なんて消えちゃえばいいんです。

 心からそう願います。他の誰でもない、私が先輩の隣で役に立ちたいんです。

 だけど私は沈黙します。沈黙してあなたを見守り続けます。

 先輩は苦しみの中で何時も私に助けを求めてくれました。信頼を置いてくれました。

 あなたに必要とされる事が、私の存在意義なんです。

 あなたが求めてくれるなら、例えこの身さえも喜んで投げ出すのが私なんです。

 依存は愛じゃありません。そんな愛は認めません。

 だから先輩があの人を見捨てようと、それは責任の放棄ではありません。

 世界の真理です。世間の常識です。社会の通念です。気にしてはいけません。

 私は待っています。

 先輩が、そんな枷を放り捨て、私を愛してくれるのを。求めてくれるのを。必要としてくれるのを。

520『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 21:13:29 ID:ns0aj0r6


 私は竹沢先輩と先輩、二人の役者の依存と憐憫が織り成す茶番劇のたった一人の観客です。

 開幕に心から震え上がり、成り行きを固唾を飲んで見守り、閉幕に大仰な拍手を捧げます。

 劇中から排除された、ただ沈黙するだけの外部の存在。

 しかし全てが終わったとき、疲労困憊の役者が駆け寄るのは私なんです。

 歪んだ関係の末路で、あなたを受け止めてあげるのは私なんです。


 ―――――それは、間違えないでくださいね。


 リノリウムを淡く照らす西日が、まるで天から降り注ぐ祝福に思えます。

 私との約束を忘れてしまうくらい竹沢先輩の依存は悪化しているようです。
 そろそろ先輩がそれに関して相談を持ちかけてきてくれることでしょう。
 先輩が私に堕ちてくれる第一歩です。
 ここまで半月もかかってしまいましたが、ようやく成果が出始めようとしているんです。
 覆い隠した感情を凌ぐほど、今にも小躍りを始めそうなほどにうきうきが溢れています。

 ――折角ですから、痛んだ心の空洞を塞いでくれる手段も合わせて探しておきましょう。

 私は無人の廊下で、初めて無表情を崩して微笑みを浮かべました。
521『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 21:22:37 ID:ns0aj0r6
こっそりと様子見。だからサイレントストーカー。
アクションがないから心理描写ばっかりだ……。

反響の大きさに恐くな――いや、驚いて大幅に加筆修正。
プロットを大急ぎで組み立てて長期連載にすることにしました。
投下速度は遅れますが、妄想の具現化だった以前の中篇よりは
まともになっているはず……。
引き続き読んでいただければ幸いです。
522名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 21:26:31 ID:VS61wgMm
>>521
サイレントストーカーはニュータイプな感じで新鮮ですね〜。
現場を目撃しても仕掛けないのが逆に恐い。
なにはともあれ竹沢の依存っぷりが一番
523名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 21:26:55 ID:+LfqdF4N
後輩キター!(゚∀゚)


サイレントストーカーって自分が誰かも明言せずひたすら白紙や無言電話、
ラヴェンダーを送るストーカーだって志摩さんが言ってた!
524名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 21:34:27 ID:7/3eTuR6
おまいらもちつけ!
KOOLになるんだKOOLに
525名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 21:45:42 ID:zqrYS7t9
KOOL → KILL こうですか?
526名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 21:49:06 ID:yfyP89LZ
CoolにKillでKOOLですか
527名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:01:27 ID:mSgvuK66
依存な竹沢さんをじっと耐え忍びながら排除の時を狙う。
GJっす。
本当に夜になると神々が集いますよねぇ><b
528 ◆eOod7XM/js :2006/07/06(木) 22:03:14 ID:ns0aj0r6
>>523
知らなかった……。
適当にネーミングするとロクなことないですね……。
529名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:04:59 ID:QA/GR3RU
このスレの住人的には今やってるウーマンウォーズってドラマどうよ
530名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:23:58 ID:0S+EES81
策士だけど電波っ娘GJ(*´д`*)
この主人公の周りは面白い娘が多くて羨ましいなぁ|ω・`)
531名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:28:09 ID:F2khwbCT
532名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:36:23 ID:zqrYS7t9
修羅場スレ住人専用 ↑
533『疾走』 第九話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/06(木) 22:44:51 ID:QjDZlapW
「そ、それは……っ」
「まずは俺から返します。――置きますから、あとで勝手に拾ってください」
 なんで、そんな……言外に、信じられないと叫んでいる表情を浮かべるんだ。
 一瞬叩きつけようかと考えたが……やめておく。屈んで、床にちゃんと置いた。
 ……錯乱して投げつけてしまったので、それらの原形はとどまっていない。それでも……持ってきた。
「次は俺の番ですよ……っ。鍵を……返して、くださいっ」
「――あ、あの、でも……返したら、エースケくんの朝ごはんとかお弁当とか、置いておけなくなっちゃいます、から」
 愕然とした。
 あんたは俺がついさっき置いたモノが……見えてないのかっ?
「誰がいつそんなこと頼んだんですかっ! おかしいですよ、いたり先輩はっ!」
 怒鳴ることを躊躇わない。
 例え先輩が泣きそうな表情を浮かべても……止まっては、いけない。
「なにしてるかわかってるんですかっ……? 不法に侵入したら犯罪ですよ、わかれよ、それくらい自分でっ!」
「ご、ごご、ごめんなさいっ! 返します、返しますから、だからっ……!」
 ポケットから即座に取り出してきたそれを、乱暴に奪い取る。
 手の平に銀色の硬い感触――それを握り締めながら、何度もぺこぺこお辞儀する先輩を、見下す。
「金輪際……俺には、話しかけるなっ……!」
「――えっ……!?」
「廊下で擦れ違っても無視するっ。家にも近付かないっ……わかり、ましたねっ!?」
 俺の言葉が……威力を伴って直撃したみたい。
 いたり先輩は冷や汗と一緒に……地面に、座り込んだ。俺を――見上げながら。
 視線をぶつけてはいけない。有華のほうへ体を反転させ、歩き出す。
「まっ……まって、まって、エースケくん、待ってっ……!」
「――本当に悪かった。ごめん……有華」
「……エー兄っ……?」
 ――止めを、さしてやる。
 背中から投げ飛ばされる悲哀の叫びは無視して――俺は、有華に頭を下げた。
534『疾走』 第九話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/06(木) 22:45:41 ID:QjDZlapW
 エー兄は……あの女とは、付き合って、いなかったっ……!
 次々と流れ出すエー兄の怒号に戸惑いながらも……あたしがそれを理解した瞬間、疑問は綺麗に砕けて散った。
 やった……っ! よかった、本当によかったっ! 嬉しすぎる誤算だよっ……!
 そして今――エー兄が、あたしに頭を下げてくれている。
「冗談なんて言葉で簡単に片付けようとして……悪かった。ごめん」
「――っ……ううんっ。それは……もう、いいの」
 本当はよくないけど……っ。ここは、きっとこんな反応を見せ付けて、あんなストーカー女とは違うって、アピールしないとっ……!
「あ、あたしこそ、その……散々暴れたり、あほって言って……ごめんなさい」
「い、いや……まあ、あほって言うのは、あながち間違ってないだろ、ははは……っ」
 そんなこと絶対にないよ。
 勝手に勘違いして……あんな女と付き合ってるなんて、あたしがエー兄を信じきれてなかったのが原因なんだし……。
 あははっ……あたしってば、ほんと、馬鹿じゃんっ……? 軽く、自己嫌悪してしまう。
「それに、お前は昔から俺にあほって言ってたからなあ……。もう慣れた、うん」
「なによそれっ……エー兄の、あほぉ」
「あははっ……。うん、でもお前に言われるのは……嫌いじゃないな」
 それって――いかん……顔が熱い。
 あれ……エー兄が、あたしに、近寄ってくるっ……?


 そのまま。
 抱き締められた。


「ごめんっ……有華。お前のこと、好きだ、俺」


 そんな一言が……っ。
 耳元で、囁かれた。
535『疾走』 第九話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/06(木) 22:47:22 ID:QjDZlapW
 良かれと……思って、やったんです。
 エースケくんの為にって、いつでも考えていたら……こうなったんです。
 なのに――私の愛は届きません。
「帰ろうか、有華」
 滲む目の前の光景。
 寄り添っている二人の人間が、います。
 エースケくんと――谷川、有華。
「……まって、まって……っ! エースケくん、駄目ですよっ! そんな女なんかと、行っちゃ駄目ですよっ……!?」」
 立ち上がることすら、今の私には辛いことでした。
 けれどここで座り込んだまま、エースケくんの背中を見送ってしまったら……終わりだと、思ったんです。
 エースケくんは、立ち止まって、ちゃんと振り向いてくれました。
「もうっ……! もう、勝手におうちに入ったり、しませんからっ……絶対にっ」
 あは、ははっ。
 そうです……悪い所は、全部、治しちゃうんですから、わたしっ……!
「何でも、エースケくんの言うこと、何でも聞いちゃいますよっ!?」
 ひ、ひひっ!
 胸に手を当てて……ゆっくりと、歩きます。
「それこそ、死ねと言われれば喜んで死にますしっ……お料理も、お洗濯もっ」
 あびゃ、びゃっ……。
 亀裂が……心臓に、亀裂が……。エースケくん、なんで、そんな蔑むみたいな視線なんですっ……?
「――っ! そ、そうですっ! そこの女なんかより、ずっとっ……エースケくんを気持ちよくできます、わたしっ」
 駆け出す。
 エースケくんの胸に飛び込んで、手を――エースケくんの、ズボンに。
 わたしが、今すぐ、出してあげます、うふ、ふふふっ……。
「いい加減にしなさいよっ!」
「――きゃうっ」
 鈍い、そして重い痛みが……頬から駆け抜ける。
 気付けば……わたしは倒れていました。
 ――あの害虫に、殴られた、みたいですね……っ?
「あぐぅっ……。邪魔しないで、くださいよっ」
「邪魔なのは、あんたじゃないのっ……! このストーカーっ!」
 さっきから、うるさいなあ。
「ストーカーだなんて……あははっ。私は、違いますよぉ……っ?」
「じゃあ……なんだって、言うの」
 頬が痛い、エースケくんに撫でてもらいたい。
 ……ゴムを外して、髪をばらします。
 この髪型やめます……普通のロングにしましょう、今日から。
「私は……エースケくんの、彼女になるべき存在です」
「はあっ……!?」
「――いたり、先輩っ……?」
「だから」
 ふらつきながら、立ち上がります。
 垂れた前髪で片目が隠れました……見にくいなあ、エースケくんが。害虫はどうでもいいですけど。
 あはっ……自然に、笑みが出ちゃいます。
「ずっと一緒です、エースケくん……っ。見てますから、私」
「――えっ」
「ずっと……見てますから。うふっ、はは、ははっ……あはは、ははっ!」
 あは、ははは、はははっ――!


 にやぁ――り。
 三日月に歪む、口元。
536『疾走』 第九話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/06(木) 22:47:54 ID:QjDZlapW
「これは断言……もしくは宣言。または予言、預言と思ってくださいねっ……?」


「私とエースケくんは幸せになれます」


「けれど――有華さんとは、なれませんよっ……絶対に」


 雨が――降出した。
 髪を濡らしながら、少女は告げる。


「だからエースケくん……私はいつでも見てますからっ……」


「幸せになりたかったら――いつでも、私の名前を、呼んでくださいねっ……?」


 雨足は、激しさを増していく。
 響くのは――哄笑でもない、嘲笑でもない……っ。
 何処にもゆかない……純粋な嗤いだけ。




 あははははははははははははははははははははははははははははははは
 はははははははははははははははははははははははははははははははは
 はははははははははははははははははははははははははははははははは
 ひゃははははははうははひゃはぐひゃははああはひゃひゃひゃっ――!
537『疾走』 第九話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/06(木) 22:48:45 ID:QjDZlapW
 幸せになりたかったら――いつでも、私の名前を、呼んでくださいねっ……?
 狂気を垣間見えさせる笑みを張り付かせ……雨に打たれながら、慟哭もしないで言った、先輩。
 ……振り返る。
 ドアは閉まっている。――僅かに響いて聞こえるのは……っ。
 笑い声……なのかっ……?
 なんでだよっ。有華を連れてきて、目の前で有華の気持ちに答えてまで、先輩の気持ちを否定したのに……っ!
 諦めるって言葉を……知らないのかよ、いたり先輩はっ……!?
「――エー兄ぃ……っ!」
「おわっ」
 有華に抱きつかれて、危うく転びかけた。
 見下ろすと、濡れた頭頂部。……震えている?
「ひっく……えぐぅ……っ。酷いこと、いっぱい……言っちゃって、ごめんねっ……」
「あ、えっと……っ」
 あほとか、うるさいとか、俺にしたら言われ慣れてるんだけどな……。
 こうやって改めて抱きつかれると、か弱いんだなって、再認識する。――こんな俺の言葉で、震えて。
「あははっ……。ら、らしくないぞ有華っ……?」
「ごめんなさい、ごめんなさいっ……ひぐっ」
「いいんだよ、俺が悪かったんだから」
 努めて微笑を浮かべながら、頭を撫でてやる。
「うん……っ。ありがとうエー兄……あたし、すごく嬉しいっ……」
 有華が――俺を見上げて、微笑んだ。
 ともかく……あそこまで言ったんだ。
 もうこれで終わりだ。そう信じよう……いや、きっとそうなるっ……。
 内心まだ青ざめながら……俺も、ゆっくり微笑みを返した。
538名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:50:13 ID:+LfqdF4N
言葉様2世クルー!?(;゚∀゚)
539名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:52:40 ID:zbzpk0td
いたり先輩マジすげー…
540名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:01:41 ID:zqrYS7t9
こ、これは久々の大物の悪寒!!
541名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:02:38 ID:8jt7EHuj
なんて可愛らしい先輩なんだ
542名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:06:03 ID:0LJKpBF6
いたり先輩こえー…
543名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:07:43 ID:M1cCgh5i
先輩の今後の行動がたのしみすぎる
544名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:07:52 ID:PN4chknC
疾走キテル━━(゚∀゚)━━!!!!!
エー兄の漢らしさに惚れた
そして先輩の今後のストーカー活動に期待
545名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:10:19 ID:5JfxUf0X
いたり先輩のような少女がいたら

不法侵入して、飯を作っている時点で俺はその行動に胸を打たれて
付き合ってしまうんだがな・・。

健気な少女が一生懸命頑張っているところを見ると惚れるだろう普通は・・。
546名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:13:05 ID:7/3eTuR6
よっしゃあぁぁあ言葉様だよ怖いよいたりせんぱあぁぁぁい(´∀`)

ハァハァ…落ち着け俺 KOOLにKOOLになるんだ
547名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:18:17 ID:Bai06C58
いたり先輩いぃィィッ!!!!!!

つまりKOOL吸ってる俺は勝ち組ですか?
いたり先輩と仲良くなれますか!?
548名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:19:08 ID:0LJKpBF6
次々と新しいタイプのヒロインが産み出されてる…本当に此所は、パラダイスだぜ!
549名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:32:53 ID:JuyAOEgc
いたり先輩の素晴らしさにwktkが収まらない!
550名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:43:58 ID:G282EZQc
いたり先輩も凄いが有華もエゲツない事しそう。
タイトル通り最後までぶっ飛ばしてください!GJ!
551名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:45:52 ID:VS61wgMm
いたり先輩自殺だけはやめてっ
猫がメザシをいたぶるかのごとく有華を・・・・
552名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 23:54:52 ID:IGxRpZUT
これほどのストーカーヒロインとは・・・

だがそれがいい
553 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/07(金) 00:00:00 ID:rW6YTJVP
伝奇物ってなかったきがするが…投下おk?
554名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 00:00:48 ID:gCAdHCZ4
いいんじゃね?
555名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 00:01:10 ID:8TT3Saty
OK
556名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 00:04:04 ID:OT9mqXM/
YCD!
557名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 00:34:43 ID:JZvUs0aO
無問題
558名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 00:37:09 ID:+jbGoLQr
THE CooL
559名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:06:00 ID:dD6bKhvZ
アゲルナ
560名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:10:02 ID:wqnDx/Hu
しかしこのスレレベル高くなったなあ・・・・
(元?)業界人の神とかもいるみたいだし
561名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:19:51 ID:WEU4/yyy
確かにプロの方がいる可能性は否定できないが
神たちの更新速度の方が恐ろしい

エロパロスレではトップクラスのとこまで上り詰めたんじゃないのか
このスレ・・。
ここを上回るエロパロスレとかあるんだろうか?
562名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:21:51 ID:OT9mqXM/
ほかの娘と比較するの!?
こんなに頑張ってるのに!?
私だけ見てよ!!
563名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:23:41 ID:mwTyNGc9
>>561
ハルヒスレがうわなにすrやめ>>562、そこは違う穴くぁwせdrftgyふじこlpアッー!
564名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:26:55 ID:IqIZWaLn
「嫉妬・修羅場・三角関係」たった三つのキーワードでここまでのヴァリエーションが作れる
神さま方が凄すぎる((;゚Д゚)ガクガクブルブル

>>563ちゃん浮気はメーッだよ!
565名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:27:07 ID:25WwtJ1Z
>>560
初期から結構レベル高かったと思うが
連載が始まったくらいからは特に

>>562
僕は君しか見てないさ
こないだのアレは誤解だよ
566名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 02:15:54 ID:wqnDx/Hu
>>565
まとめサイトで読んだだけだが嫉妬妻・道明寺静子あたりがよかった
作者戻ってくれるかな
567名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 03:07:21 ID:TUwgZQ+S
>>566
ゲーパロさんは今孕ませスレで連載されてるから厳しいかも。
ウィザードリィスレのまとめに氏の可愛い嫉妬系の魔女の話が
あるから行ってみては?
568名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 03:33:19 ID:kNjh1rMC
おれは常に幼馴染の勝利を願っている

今自分でも作品書いているがあとくされがあまり残らない修羅場はすごく難しいな…
569名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 03:43:29 ID:wqnDx/Hu
>>567
情報さんくす。
見つけたので読んでみる
570名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 03:51:54 ID:IkA4QIlo
<ぼくらの【嫉妬・三角関係・修羅場SSスレ】のれきし>

初代スレ
本スレから逃げ出した七誌を暖かく受け止め、監禁し、筆おろしをした女性。
七誌と一緒に初期名作群の愛を育むが、約一ヶ月であっさり捨てられる。七誌の女性遍歴はここに始まる。

二股目スレ
七誌を寝取った女。「不義理」「合鍵」「優柔」などなど、連載系を伸ばしたあげまん女性だった。
しかし、七誌は一月もせずに次の女に乗り換える。彼女は彼らを恨みつつ、その二日後に果てた。

三角関係スレ
七誌の三番目の女。驚愕の「沃野」「広き檻」「もし神」など、七誌の愛欲が徐々に激しくなっていく。
その激しい要求に彼女の身体は耐え切れず、わずか二週間で見捨てられる。絵の上手い女性だった。

四面楚歌スレ
三スレの死に乗じて、七誌の恋人になる。彼女も絵の上手い女性だ。妄想癖もあり、結果「義姉」を産む。
例によって一月で振られるが、それでも衰弱死するまでの八日の間、五スレへの怨念を胸に生き延びた。

五里夢中スレ
怨念なんのそので、パパである七誌を迎え入れた愛人。「リボンの騎士」がはじまる。また、死の間際まで
「小恋物語」を待っていたことでも有名。今でも小恋の話をすると、彼女の怨霊が現れるという。

泥棒猫六匹目スレ
数字入り熟語の限界を思い知らされた娘。弟の名前は「山本くん」だ。「ブラマリ」も開始される。
二週間でヤリ捨てされた娘だが、その後十日に渡って虎視眈々と復権を狙うという、強かさを見せ付けた。

監禁七日目スレ
監禁好きな娘だったが、十日で七誌に逃亡されている。俗に七誌の全盛期と言われている。
「たぬきなべ」「優柔プレ」の新作で七誌を繋ぎとめようとするが、彼はヤルだけヤッたら捨てるだけだ。

監禁八日目スレ
もっと監禁好きな娘。なのに七誌は九日で逃げ延びる。「血塗れ竜」「とらとら」が開始したのもこの女。
捨てられた後、二十日間の長期に渡って七誌を奪い返そうとする。泥棒猫よりも生き延びた、執念の女。

九死に一生スレ
その名の通りになった。この女のペースに嵌り、あと少しで七誌は一緒に埋まってしまうところだった。
七誌、九死に一生を得る。「紅蓮華」「SBN」「姉妹日記」「教授ロリ」など、妄想も盛んな娘だった。

十戒スレ
ファンタジー好きな娘だった。「疾走」「さよならを言えたら」など、新基軸も打ち出すアイデア女房。
どういう十戒だったのかは今となっては不明だが、七誌がしたのは十日で次の女を見つけることだった。


そして、墓標11基スレ
七誌「さぁて、そろそろ……」




……ただのネタなのに、書くのにすげー時間と労力だったw
ざっと過去スレを吟味したけど、間違ってるとこあったらごめん。
571名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 04:56:10 ID:pN6XoW6O
ククク…二股…三角関係…四面楚歌に五里霧中、泥棒猫に監禁姉妹…九死に一生や十戒だっけか…?

どいつもこいつもイイ女だったな、ホントに捨てるのが惜しかったさ。

ん…?バカだな…今はお前だけだよ、なんだ妬いてるのか?可愛いヤツ…墓標11基…愛してるよ…。


勢いだけで書いた、誰か俺を殴ってくれorz
572名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 05:31:11 ID:vYsc1aVB
なんか唐突に名前が浮かんだ。

それぞれ順に一子(いちご)、二葉(ふたば)、、三里(みさと)、四季(しき)、五深(いつみ)、六月(むつき)、七海(ななみ)、八重(やえ)、九美(くみ)、十乃(とうの)。

どう見ても「み」が多いです本当に(ry
573名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 07:27:54 ID:25WwtJ1Z
その後571の姿を見たものは誰もいない…
574名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 08:27:20 ID:3BVDv/AD
しゅ、修羅場スレ住人専用が落ちてる・・・・orz
575名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 17:34:26 ID:3BVDv/AD
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|       2008に出たKotonohaDays…
         |l、{   j} /,,ィ//|       『心がくれた飴をなめたと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにか生きてなかった』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    鋸だとか出刃包丁だとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんな金属なもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
576名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:07:07 ID:PeeQtpLi
今日は久しぶりに落ち着いてるなぁ。このスレ。
577名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:09:31 ID:3BVDv/AD
>>576
やっと、人が来た〜。寂しかったぜ。
578名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:09:34 ID:OT9mqXM/
今日は出演してる人達のオフの日なんだよ
もちろんそこでも修羅場
579名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:14:41 ID:PeeQtpLi
>>578
うわぁ、それは何ていうか


パライソ?
580名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:20:02 ID:sTDAUlnH
どうせ後1,2時間もすれば神様が作品を投下してくださるさ

……きっと
581名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:21:01 ID:N+ob4x/k
でも神の何人かは鉈で逝ったぜ?
582名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:25:34 ID:C18Zj7p5
今日は七夕だ。
つまり何がいいたいかわかるな?
583『疾走』 第十話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/07(金) 21:25:46 ID:0N35c/qQ


 幸せになりたかったら――いつでも、私の名前を、呼んでくださいねっ……?


 そんな台詞を吐いた先輩の眼球が、濁っているのは、俺の錯覚なんだろうか。


 起床は最悪の一言に尽きた。
 夢なんか時々見ても、『見た』という事実だけしか憶えていなくて、その内容はいつも明確に記憶していない。
 なのに今日の悪夢は――酷く現実味を帯びていて、はっきりと思い出せる。
 眼前には、いたり先輩がいた。
 そして何回も、理解を求めるのではなく強制を催促しているのではないかと疑ってしまうくらいに、繰り返し俺に言うのだ。


 私の名前を呼ばないと、幸せには、絶対になれませんよ……エースケくん。


「いたり……っ、先輩」
 ベッドの上。上半身だけを起こした姿勢で、試しに呟いた。
 これで――こんな名前を呼ぶだけの行為で幸福に至れるのなら、人間は苦労なんてしないんだよ……っ。
 まるで自分の名前だけは、神聖な魔法の言葉だとでも伝えているかのよう。
「ありえないって……わかってて言ってるんですよね、先輩」
 時計は六時の二十六分。
 寝汗が酷いので、今朝はシャワーの洗礼を受けなければ。
 今日から、有華と登校だからな。
584『疾走』 第十話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/07(金) 21:29:06 ID:0N35c/qQ
「どうもっ。エー兄の彼女のあたしです」
 チャイムに、ドアを開ければそんな第一声が飛んでくる。
 谷川有華はやたらと笑顔で、そこに立っていた。
「彼女っ……?」
 ぼんやりと、噛み締めるように呟く。
 俺は――そうだ。有華は、俺の彼女――なのだ。
(なんで俺は……いま、違和感なんか、感じて……っ?)
 ここ数日で、あまりにも周囲の状況が変化し過ぎてしまったから……疲れてるんだな、俺は。
「――エー兄。どうしたの、ボケッとしてさ」
 有華が上目に、俺の表情をうかがってきた。
「あ、ああ……っ。い、いやはや、実はちょっと悪夢見ちゃってさ、今朝は目覚めが悪かったんだよ」
「悪夢……っ? へえ……どんな悪夢だったのっ?」
 昨日の――とは続けられず。
「え、ええっと……っ」
「――あの女の妄言が、夢に出ちゃったりした……っ?」
 有華の表情から……その台詞と同時に、感情が消え失せる。
 俯いたまま、俺の返答を待っている様子だった。
「ち、違う、違うって。そんな悪夢じゃなくて、こう、その……っ」
「まさかとは思うけど、一応聞くね、エー兄」
 要領のまとまらない俺の言葉は無視して、有華はスキップするように、まずは一歩だけ後ずさる。
 そして――その、能面みたいな表情を持ち上げて、無機質の視線で俺を見据えた。
「あんな……頭のねじが十本くらいぶっ飛んでるストーカーの変態女の言葉を――欠片でも、信じてないよね……っ?」
「――っ」
 何故か……心臓が、爆ぜるように蠢いた。
585『疾走』 第十話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/07(金) 21:30:18 ID:0N35c/qQ
 有華に倣うように……俺も、後ずさった。
 なんだよ……っ。非難の意思をひしひしと感じるのは……俺の自意識が、過剰なだけなのか……っ?
 俺は――有華に叱られているっ……?
「し、信じるわけ……ないじゃんか、はははっ」
「うん。私とは絶対に、幸せにはなれないなんて……っ。ほんと、自分の行動顧みて発言しなさいよって、感じだよね」
 露骨なまでの、悪意……っ。
 俺には、有華の背後に――漆黒の、もやもやした空間が、見えた。
「エー兄は……あたしのこと、すきって、言ってくれたよね……っ?」
 今度は、昨日の確認か……っ? 今更言わせないでもらいたかった。
「言ったよ」
「じゃあ……絶対に、誓って」
 近付いて、有華は俺の両手を自分の両手で掴んだ。
 がっしりと――万力を想起する、ありったけの力で以て。
「――あたしの手と、エー兄の手はね、指先から溶けて手首まで混ざり合っちゃったの」
「は、はあ……っ?」
「仮定の、あくまでイメージでのあたしとエー兄だよっ?」
 それくらいわかるわっ。人間同士が溶けて混ざり合うなんて……っ。
「もう……ずっと、離れないで……っ」
「ゆ、有華っ?」
「ずっと、一緒に……手が、こうやって繋がる距離で……っ。いるって、誓って」
 有華が俺を見上げてくる。
 ――ここで、安易に頷くのは簡単だろう。けれど、それを実践するのは……果たして絶対にと言い切れるのか。
 などと高一の分際で生意気に悩んでいると。
「離れたら……繋がってる部分の肉が千切れて、血が出ちゃうの」
「――ゆ、か……っ?」
 有華の爪が、手の甲にめり込んでくる。……痛かった。
「いっぱい、いっぱい出ちゃうよ。出血で死ぬくらいには、確実に……離れて千切れた部分から、迸るの……どぴゅ、どぴゅどぴゅ、って、噴水みたいに」
「有華……っ。痛い、痛いって」
「――絶対に死ぬよ。どちらか片方でも、お互いから離れたらっ……!」
 ど、どうしたんだ……っ!?
 いい加減離してもらおうと腕に力を込めるが……そうすると、肉に爪がさらに食い込んできて、なお痛かった。
 ついには――赤い線が、手の甲に走ってしまう。
「だから――鮮血の海に沈みたくなかったら……っ。あたしから、離れたら駄目なんだよ、エー兄」
「わ、わかった、わかったから、離してっ……!」
 俺の了解をずっと待っていたのだろう、その一言を引き金に、有華から力が抜け落ちる。
 手の甲と、有華の人差し指の爪に……同じ色が、ある。
「うんっ。あたしだって死にたくないから、もう絶対にエー兄から離れないよ……だから、安心してね」
「あ、ああ……っ」
「じゃあ、行こうっ。ほらほら、さっさと鍵を閉めるっ!」
 ――何かが、おかしい。
 この、有華の一変した雰囲気は……なんだったんだろう。
 それに。
 有華の誓いは……つまり、離れるという表現は、別れるという意味で捉えるのだろう。


 もしもエー兄があたしと別れるようなことがあれば……エー兄を殺して、あたしも死ぬ。


 この意訳は……あまりにも、誇大に表現しているかもしれない。
 けれど――この手の甲の痛みが……まさにその通りだと、俺に訴えているようでならない。
 鍵を閉める俺の背後に、視線を感じる。
 振り返ると――有華は微笑んだ。


 誰かに酷似したような……三日月の、口元。
586 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/07(金) 21:32:15 ID:0N35c/qQ
十話ここまでです。
いつも感想をくれる皆様とまとめサイトの阿修羅氏に感謝っ!
587名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:34:44 ID:3BVDv/AD
妹覚醒キタワ*・゜゚・*(n‘∀‘)η*・゜゚・*ァ !!!!!
588名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:35:14 ID:HlVDJQGn
怖ッ!?
地雷を回避した先も地雷でした、みたいな
589名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:39:37 ID:OT9mqXM/
どっちに転んでもサイ娘w
590名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:50:53 ID:7k4EU/2J
。・゚・(ノД`)・゚・。 エーちゃん・・・
彼は何も悪くない
ただ運が悪いんだ
591名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:52:06 ID:OipZbojI
     _  ___
    7ィ =ミ´三`ミヽ     エースケくん 何を考えてるか知らないが・・・・・・
    1 ll f"゙''"1ヽミヾ`、   悪いことは言わない やるなら他の娘にすることだ・・・・・・!
    リ|ルリ  r‐ヾミヽミ、|
    lせ〉 せラ ||ヽll|     ダメです 「有華」もダメ・・・・・・
.    | く 、    リソ ll|     あれもアブノーマルです・・・・・・!
     lヾニニフ /ll|_l_|
-‐ '' "´ lヽ= /|l |l| ≡`" '' ‐-   サイ娘です・・・!
≡≡≡ |リ|`<./|ル′≡≡≡≡   これはゆるぎなきサイ娘・・・・・・!
≡≡≡≡レ〈 〉、|≡≡≡≡≡≡
592名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 21:57:58 ID:N+ob4x/k
サイ娘ホイホイかよ!
593名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 22:14:05 ID:uHh/jV1p
すごすぎ、サイ娘量産中ですか^−^;
どう転んでも幸せになれねえのかよエースケ……
594名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 22:14:57 ID:X0RsnK3w
まるでサイ娘のバーゲンセールだな
595トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/07/07(金) 22:18:43 ID:Zf+Wr3rp
では投下致します
596雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/07(金) 22:22:42 ID:Zf+Wr3rp
 第1話『彷徨う想い』

 雪桜さんに特製あんまんを奢って、久しぶりに一日一善を実行した俺は気持ち良く家の帰路に着こうとしていたが、
 家の前で鬼神のように待ち尽くしている少女の姿があった。
 当然、その姿には見覚えがある。4−5年前、隣に引っ越してきて、
 同じ高校、同じクラスの同級生。東大寺 瑠依(とうだいじ るい)である。
 肩まで伸ばした髪が揺れる。肌が白くて、可憐な容姿である。ただ、黙って佇んでいれば、男女ともその魅力に引き込まれてしまう雰囲気を漂わせている。
 だが、よく観察してみれば、その虚像が跡形もなく崩れてしまうだろう。特に毎朝顔を会わせて瑠依の本性を知っているような奴なら、尚更だ。

「ううっ。あんたねぇ、一体今までどこに行っていたのよっ!!」
「瑠依を怒らせるような真似なんかしたっけ?」
「今日、私のお母さんが仕事で夜勤するから、あんたのとこで晩飯を食べるように言ったわよねっ?」
「あぐぅっ!!」
 やべぇ。素で忘れていた。
 すでに時刻は夜の七時を過ぎている。家の前でずっと待っているってことは、瑠依はお腹を空かしたままってことか? 剛ピンチっ!!
「あのさ、瑠依が家に来るのはすっかりと忘れてたからさ。今日の夕食は何にも買ってきてないんだよ」
「なんだってっ!!」

 餓えた虎の腹を空かせたままだと、周囲に危害を与えられる可能性は100%。特に俺が。
「とりあえず、買い溜めしていたカップラーメンでも食べようぜ」
「ああ、こんなことだったら。外食でおいしいもん食べておけば良かったよ」
 鍵を取り出すと、俺は殺気に圧されながらもさっさと玄関を開けた。

 俺の家は親が長期の出張でこの2−3年間は遠い地で仕事を頑張っている。
 母も親父についていったので、基本的に俺は気軽の一人暮らしなわけだが。
 隣に住んでいる瑠依のおばさんが俺の母の友人であるため、何かとその世話を頼んでいるようだ。
 その監視役として、瑠依がしょちゅう家にあがってくる。こうやって、瑠依と晩飯を食べる事も実は珍しくはない。
 母子家庭であるせいか瑠依のおばさんは朝早く通勤して、夜遅くまで仕事をしている。
 そのためか、独りぼっちになっている瑠依を心配して、俺と一緒に晩飯を食べさせることが多い。

 俺は異論がないが、今日みたいに忘れてしまうことはたまにある。
 そんな時の瑠依は狂暴で暴力的の一面を見せるのであった。
 黙々と差し出されたカップラーメンを静かに瑠依は食べている。時々、潤んだ瞳が細く鈍い眼光へと変わっているが、俺は麺を啜って気にしないことにしていた。
 リビング全体が重い重圧と殺気に包まれている。
 その発生源は言うまでもなく、瑠依から出ているものである。

「今日はカップラーメンね。本当に剛が注いでくれたお湯はおいしいわ」

 棒読み口調で表情はおだやかだが、目は全く笑ってはいない。
 その笑みですら、俺の背中に悪寒が走る程、冷たく感じる。たった、5年程度の付き合いだが、
 女の子の事は理解できなくても、瑠依の事は少しだけ理解できたと思っていたわけだが。前言撤回。男の子から見れば、女の子は全て宇宙人です。
 とはいえ、本当に瑠依が今日の晩飯の事を忘れていただけで、こんなにも機嫌が悪くなるのだろうか。

「仕方ないだろ。今日は瑠依が晩飯を食べに来る日じゃないと思い込んでいたから何にも用意はしてなかったんだよ。
 そんなに餓えているなら、俺のカップラーメンのつゆでもやるよ」
「あほかぁぁぁぁっっっ!!」
 怒りにまかせた瑠依の蹴りが、俺の顔面にまともに直撃した。

「どこをどういう風に解釈したら、そういう話になるのよ。ホントにアンタって言う人は。女心というものを全くわかってないわ」
「いや、わかった。お前のために残していたえびやたまごの」
「えびもたまごもいらんわボケっ!! 剛君が他の女の子と下校しているところを見て、ちょっと気になったとかそういうんじゃないんだからねっ!」


 このアマ、今なんて言いましたか?

「ムッ。うるさいうるさいうるさいっ!! どうでもいいでしょう。そんなこと」
 乱暴にカップラーメンの上に置いてあった箸を投げ付けて、瑠依は顔を真っ赤にしていた。
597雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/07(金) 22:24:39 ID:Zf+Wr3rp
「別に俺が女の子と下校してもいいじゃん。どうして、そんなに怒るんだ?」
「ムッ」
「ムッじゃないだろう」
「う、う、うみゅう」
 どこぞの知れない動物の泣き声が愛しく聞こえた。
 顔を伏せて、赤面したまま瑠依は固まっていた。瑠依は見た目は可愛いらしくて、男子から人気があるけれど、
 交際関係は今までなかったと聞く。更に男の免疫がないのか、こういう男女のお話になると真っ先に知恵熱を出してしまう。
「と、と、と、とりあえず。私はお母さんとおばさんに剛君の事を頼まれているんだよ。
 変な女の子に誑かせられているなら、当然止めるのが私の役目じゃない。べつに、焼きもちを焼いているわけじゃないんだからねっ」
「ああ言えば、変な理屈をこねるし」

「うるさいうるさいうるさいっ!! もう、帰る。とりあえず、あの女の子と付き合ったらダメよ」
 そう忠告すると瑠依は首から上まで赤面しながら、慌ててこのリビングを去ろうとする。
 バタンと玄関のドアが閉まる音は強烈な勢いで閉まった。

「やはり、晩飯がカップラーメンだけってのがマズかったのかな」
 それに瑠依もおかしな事を言う。あの女の子と付き合ったらダメって言われても、
 雪桜さんは乱暴でがさつの瑠依よりも何百倍も清純で笑顔が似合う女性だ。
 苛められてさえいなければ、今頃は学園中の男子が憧れる程の美人である。
 だが、今はその魅力は沈んだ陰気な表情のおかげで失われてる。
 今は捨てられた子犬が誰かに助けて欲しいと訴えているのだ。誰かが助けてあげないと雪桜さんをずっと悲しみの世界に捕われることとなる。
 俺が雪桜さんを助けたいと思ったのは、俺自身から出た真摯な気持ちだ。
 たとえ、瑠依が関わりをやめろと言われても、絶対に俺は言うことを聞かないだろう。 下校の際に俺と雪桜さんと軽い自己紹介をして、雑談を楽しんだ。彼女は人と接するには臆病だったが、ほんの少しづつだが、俺に心を開いている。
 明日も時間があるなら、雪桜さんと話し合う機会があればいいのに。
 カップラーメンのつゆを最後まで飲み干して、俺は密かに誓いを立てるだった。
598雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/07(金) 22:28:43 ID:Zf+Wr3rp
 今日、剛君の家で晩ご飯を食べるって言ったのに。。
 剛君は見事に約束を忘れていた。いつもなら、私のためにその腕を存分に奮ってくれるのに、
 今日はそれがなかった。たった、一つのカップラーメンだけを差し出すって、どういう神経をしているのよ。
 ここまで存外に扱われたのは私がこの家に引っ越してからも記憶がない。一体、どうしたんだろうか。

 たしかに母子家庭である私がこの家の家事をしなくちゃいけないんだけど。私は料理だけは全くできない。
 剛君は男の子なのに器用に美味しい料理を作れるのだ。家に両親がいない事が多くて自然に覚えたと言うけれど、女の子が作る手料理も上手い。
 晩飯を食べに行く時にちゃんと私のために料理を作ってくれる。それも何も言わずにせっせと包丁で材料を刻む大きな背中に私の胸はときめかせる。
 料理ができる間に私は皿を用意するだけ。これだけで熱々の新婚生活見たく思えるのは私の自惚れでしょうか。

 これが私たちの日常。
 私と剛君のかけがえない日々だったはず。
 ところが……。
 私は目撃してしまう。あの女の事を。
 顔も知らない女の子と剛君が仲良く下校している光景を。
 男子にからかわれるからって、私が一緒に頼んでも帰ってくれなかったのに。
 どこぞの骨かわからないメス猫と帰っている。

 それだけで私は腹の中が煮えるような想いをしてしまう。激しい嫉妬に駆られる。
 当然、私は二人の後を追いかけましたよ。だって、他の女の子に剛君が取られるのは嫌だもん。
 でも、二人で楽しそうに会話をしていた。
 あちこち衣服がドロ水で汚れているメスの分際で剛君と関わらないでよ。
 不細工な女の子に私の剛君が寝取られるのは我慢できません。
 自分より劣っているモノが人様の物に手を出すってことは、それなりに覚悟しておかないといけませんよ。メス猫さん。

 それから、剛君とメス猫はコンビニに寄ると何かを買ってきたのでしょうか。メス猫は喜んで、何かを口に啣えます。
 パン? アンパン? 肉まん? メロンパン?
 何か白くて柔らかいモノを食べると大袈裟にリアクションをとります。
 遠くから偵察しているので、声は聞こえなかったけど。これだけは間違いなく聞こえた。


「これ、おいしいにゃーーーーー!! にゃにゃーー!!」


 男の本能を擽るような甘い声で剛君を誘惑している。
 ムッムッムッ……。メス猫っめっ!!
 和やかな雰囲気を作って、二人の世界へ。

 本当に今日一日を振り返ってみると不幸だったと思う。
 この街に引っ越してから、ずっと片思いの人を見ず知らずのメス猫に奪われそうになるとは。
 こう見えても、私は恥ずかしがり屋さんだから、真っ向に剛君と向き合うことができない。

 積極的にアプローチをとろうとすると、妄想するだけで顔から火が出そうになる。恋する少女にとっては致命的だよこれ。
 でも、ここで躊躇していたら、今日みたいにメス猫と接近を許してしまう。
 剛君を狙っているメス猫は思っている以上にいる。クラスだけで二−三人ぐらい、剛君に告白したメス猫もいるし。
 いつも傍にいる私にラブレターを渡してくるメス猫もいた。そんなもの、速攻で焼却場に捨てたよ。
 だって、性欲を持て余している男の子の剛君が勘違いしちゃうよ。

 この年頃は本当に発情期のメス猫が発情しまくって、本当に困る。
 恋愛と性欲の違いを全く理解していない。私なら剛君の右足左足右腕左腕胴体頭目玉顔がなくても、ずっと愛してあげられる。
 たとえ、お婆ちゃんになっても。
 それが私の永遠の愛。
599雪桜の舞う時に ◆mxSuEoo52c :2006/07/07(金) 22:29:24 ID:Zf+Wr3rp
 さてと、明日からの事を少し考えておかないといけない。
 剛君に近付くメス猫を追い払うためには、まず二人を遠ざけることが大切だ。
 一緒にしなければ、距離が縮まることがなくなるし。すれ違いは二人の仲を険悪するモノへと変化してゆくだろう。
 策はすでに考えてある。
 うまくゆけば、わたしと剛君が一緒にいる時間が増えて、逆にメス猫と接する時間が極端に減らすことができる。
 完璧な計画。
 高らかに叫びたくなるものの、すでに夜なので、せめて心の中で叫ぼう。
 きゃははははっはあっはははは。

 剛君、今日も明日も明後日も
 わたしのことだけを見てね。
600トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/07/07(金) 22:33:49 ID:Zf+Wr3rp
というわけで第一話は終了です。

虐められ依存少女VS隣に住んでいる少女の恋のバトルの幕開けです
プロットを作らずに考えた作品なのでノリで書いてます。思っている以上に筆が進むのが速いです。

では。第二話で遭いましょう。
601名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 22:41:56 ID:8JSFKvlh
GJ!そして

>右足左足右腕左腕胴体頭目玉顔がなくても

何も残らねぇーーーーーーーッッ!!!1111!!
602名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 22:53:25 ID:IqIZWaLn
作者様GJっす
瑠依タンの策に期待(*´д`*)
なんとなく策士策におぼれるの姿が見えそうで怖いが((;゚Д゚)
603名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 22:53:50 ID:mwTyNGc9
>>600
wktk
雪桜さんがどういうキャラなのか気になる
清純派と思ったが「にゃーにゃー」?

>>601
心♪
604名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 22:54:34 ID:r2gT9Asj
GJ!やはり依存っ子は最高だな

>>601
腰が残る!
605名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:10:09 ID:25WwtJ1Z
>>603
瑠衣たんの妄想だろうよ

純情そうに見えて案外策士でなんだか策に溺れそうな瑠衣たん萌え
606名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:13:06 ID:3BVDv/AD
そろそろ次のスレタイを 決 め な い か ?
607名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:14:04 ID:8qADcKZw
早漏野郎が
608名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:15:22 ID:5u8w186r
十二使徒に引っ掛けて

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十二嫉妬
609名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:19:18 ID:25WwtJ1Z
今更だがエータ君への数々の励ましのレスに吹いた
610名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:22:17 ID:25WwtJ1Z
あ、エースケ君な
何で間違えたんだ俺
611名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:28:11 ID:+tQsg1XO
キョータと間違えたに100shit
612名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:34:46 ID:wqnDx/Hu
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 嫉妬女子十二嶽謀
613名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:35:28 ID:wqnDx/Hu
すまんあげてしまったorz
614名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:42:00 ID:IqIZWaLn
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十二人の嫉妬姉妹


かなりこじつけぽ・・・依存姉妹が欲しい・・・
615 ◆QdqfzIJt7U :2006/07/07(金) 23:44:21 ID:E0Md3tTx
今日は七夕、果たして願いは叶うのか

プレイ時間:4〜5時間
サイズ:42MB
使用ソフト:吉里吉里2
pass:sage

時間のある人、遊んでみて下さい

http://upload.jerog.com/up/moe5280.zip.html
616名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:50:17 ID:HlVDJQGn
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 依存妹十二人目
617『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/07(金) 23:55:08 ID:rW6YTJVP
「ハル〜。明日デートしよーよ!」
「デートってなぁ…」
またいつものお誘いだ。セレナからよくこういった誘いが多いのだが、どうも気が引ける。正直俺とセレナなんて釣り合わない。セレナに失礼だ。
「おっと、バイトの時間だ。」
「あ、こら!誤魔化すなぁー!」
今日は日曜なため、午前から午後までセレナと二人でシフトに入っている。こんな店でも日曜はそれなりに人が来るのだ。
午前はランチタイムがはいっているため、あちこちで注文が多く、セレナも俺も休む暇もなく働き通しだった。
ちなみにこの前の甘酸っぱいソース入りのケーキは好評で、昼時だというのに何故かそれを頼む人が多い。俺には飯と甘いデザートを一緒に食べる感覚がわからん。
そんなこんなで2時を過ぎた辺りで、やっと客足が減る。ランチタイムは多くておやつの時間に減るとはおかしな話だが。
俺とセレナも暇を見ながら昼食を取っていると………
カランカラン
やっとといわんばかりに、客がきた。セレナは口いっぱいに頬張っていたため、俺が出る。
「いらっしゃいま……お、またきたんだな。」
618『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/07(金) 23:56:09 ID:rW6YTJVP
一瞬とまどったが、顔を良く見れば葵だった。さすがに今日なためか、今日は制服ではなくて、私服だった。暖かくなってきたというのに、長袖にカーディガンを羽織り、ロングスカートをはいていた。
「ええ、またまた来ちゃいました。」
そう言って腰まであるぐらいの長くて綺麗な黒髪をかき上げる。……その一連の仕草に、見とれてしまった。本当にこいつ学生かと聞きたくなるぐらいに大人びている。
同い年の、『今時』の女の子と並ばせたら、おそらくそいつが中学のガキにみえるぐらいだろう。古臭い言い方かもしれないが、大和撫子とでもいうのか。
「?…どうかしました?」
思わず見惚れてしまい、気付いてみれば葵が至近距離で俺の顔を覗いていた。その拍子に目が合ってしまい……
「うわ!ち、近つき過ぎだ!」
飛び退いてしまった。いっぽ近付けば触れ合うぐらいの距離だった、
「あ!ごご、ごめんなさい。……その…えと…うぅ…ぁぅ…」
つい口に出して言ってしまった。

葵も恥ずかしい事に気付いたのか、今になって顔を赤らめて俯いている。互いに気まずくなり、うまく切り出せずにモジモジしていると……
619『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/07(金) 23:56:57 ID:rW6YTJVP
「接客もしないで………な、に、を、し、て、る、の、かなぁ〜〜!!??」
プス!
「ぐっ!!」
突然、尻に激痛が走る。思わず叫んでしまいそうになるが、客は葵以外にもいるため、大声は出せない。絶叫を喉の奥に飲み込み、ゆっくり振り返ると、セレナが尻に待ち針を刺していた。
そのセレナの顔は、怒り一色とたとえていいだろう。それぐらい真っ赤になり、目が吊り上がっていた。
「い、いや、ごいづ、じょうれんざんなんだ。」
痛みの余り、うまく喋れない。今日の風呂は染みるだろうなぁ……
「ふーん、常連さんねぇ……いつから?」
「今週の始め辺りからか…だな。」
「へぇ、でも、私がシフトに入ってるときは来たことないわよねぇ。」
そう言ってまだ恥ずかしくて俯いていた葵の顔を覗き込むように見据える。……客にガン飛ばす店員て前代未聞だな。
「え、それはぁ…ぐ、偶然ですよぉ。私だって、学生ですから、毎日来られるわけじゃありませんし。」
「へぇ、偶然ねぇ…」
「なにそんなにこだわってるんだよ。葵は客だろ?」
ここまで食い入るセレナは初めてだ。
620『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/07(金) 23:57:53 ID:rW6YTJVP
「私にはわかるの!同じ女として、獲物を狙ってるーっていう匂いがするのぉ!」
獲物ってなんだよ、獲物って……あの新しいデザートか?
「そんなに怒るなよ、食いたけりゃ二人に奢ってやるから。」
「はぁ?奢ってってなによ?」
どうも意思疎通がはかれてない。そんなセレナとのやり取りをしていると、クイクイっと葵に袖を引っ張られる。置いてけぼりにされたのか、なにやら困った顔だ。
「あ、ああ。すまん。客をほったらかすなんて最悪だな。」
「そーそー。ハルは最悪ぅ〜。」
「いいから。ほら、あっちのテーブルで客が呼んでるぞ。行ってこい。…さ、葵はこっちだ。」
「あ、はい。ありがとうございます、晴也さん。」
「いやいや、ありがとうだなんて。当たり前のことだしな。」
そう言って葵を前と同じ席に座らせる。
(なによなによ。もうお互い名前で呼び合っちゃって。まだ会って数日しか経ってないのに……ハルが私を呼び捨てにするのだってもっとかかったのに……
ハルもハルよ。かわいいからって庇っちゃって。馬鹿みたい。これだから男ってのは……ああ、もう、イライラする!!)
「五番テーブルコーヒーお代わりでぇす!!」
なんか荒れてるなぁ、セレナのやつ。そんなに嫌な客だったのか?五番テーブル。
621名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:59:33 ID:AGSRFWDp
投下しますよ
622『とらとらシスター』6虎:2006/07/08(土) 00:01:07 ID:AGSRFWDp
 四時限目の終了を告げる電子音が、教室中に高々と響き渡る。
 と同時に、教室に快音が三つ響いた。音の原因は考えるまでもなく、虎姉妹と織濱さん
だろう。その内の二つはもう僕の日常に組み込まれているので諦めているが、最後の一つ
はいかがなものかと思う。殺虎さんの格言でもこうあった。
 曰く、『戦で大切なのは諦めることじゃない、何を諦めるのかを選ぶことだ』
 その言葉を実践すべく織濱さんを見ると、
「あれ? 手ぶら?」
 僕が不思議に思っている間にも、織濱さんは凄い勢いで近付いてくる。それに一歩遅れ
てやってくる姉さんとサクラ、その手にはきちんと重箱があるのを確認して僕は少し安心
した。それにしても織濱さんは家の弁当を食べるつもりなんだろうか、多分サクラは拒否
すると思うんだけど。
 そう思っている間に三人は到着、僕は織濱さんを見上げた。
「食事にしよう、虎徹君」
「うん、そのつもりだけど。織濱さん、弁当は?」
「私の作ったものだったら、汁の一滴すらあげませんよ。重箱の中の空気すら惜しい気分
なので…そうだ、食事の間に呼吸を止め続けて窒息なんてどうでしょう?」
「サクラ、そんなことを言うのは止めなさい」
 しかし気になるのは本当で、サクラをたしなめた後で再び織濱さんを見上げた。このお
嬢様も人間だから昼になれば腹も空くだろう。昼食抜きなんて無様なことは絶体に無いだ
ろうし、だからと言って愛や希望や霞で腹が膨れることもないだろう。現に昨日はえらく
豪勢な弁当を持ってきていたから間違いない。
623『とらとらシスター』6虎:2006/07/08(土) 00:01:59 ID:AGSRFWDp
「心配ない」
 どうするのかと思えば、答えは予想を遥かに超越したものだった。
 快音。
 指先一つで音を鳴らすと、大きな重箱を抱えたメイドさんが教室に入ってきた。よく見
てみれば、朝にリムジンのドアを開けたり運転をしていた人だ。僕たちとそれほど年の差
が無いように見えるのに、働いていたり、仕事をきちんとこなしていたりするのを見てい
ると素直に凄いと思えてくる。
 僕の視線に気が付いたのか、こちらに振り向いて微笑を浮かべながら会釈を一つ。僕は
じろじろと失礼な視線を送っていたことに気が付き慌てて会釈を返した。
「ついでと言っては失礼だが、紹介しておこう。虎徹君はこれから多分何度も会うことに
なるだろうしな。執事のユキだ」
「よろしくお願いします」
 笑顔でお辞儀をするユキさん。風鈴の音のように澄んだその声は、多分何度も人を癒し
てきたんだろう。珍しく、姉さんもサクラも敵意の無い視線を向けていた。
「あれ、でも女の人だったらメイドさんじゃないの?」
「姉さん、それは今は差別用語です。きちんと待女とか秘書と言うべきですよ」
 僕と同じことを二人も考えていたらしい。説明を視線で求めると、
「私は男ですよ?」
 ユキさんが答えてくれた。
 なるほど、男だったら執事でも間違っていない。それに、姉さんやサクラが敵意の視線
を向けなかったことにも納得がいった。多分、無意識の内に見破っていて、警戒を解いて
いたんだろう。これで全てに説明がついた。
 男だったらそうだよな。
624『とらとらシスター』6虎:2006/07/08(土) 00:05:12 ID:8Fx3+/ko
「ちょっと待て」
 僕の驚きを聞いて、織濱さんとユキさんは不思議そうな表情をして首を傾げていた。逆
にサクラや姉さんがどんな表情をしているかと思って見てみれば、何故か納得した表情で
ユキさんを見ていた。何の疑問も持たなかったのだろうか。
「男!? 大丈夫なのこの人!?」
「うむ。男で、しかも妻子持ちだ。わたしとは干支も一回り違うような年だというのに、
家族の写真を毎日周囲に見せびらかす妙な性癖を持っているのが問題と言えば問題だが、
有能なのは間違いない。わたしが保証する」
 人格は保証しないんですか!?
「そんな、照れますよ。あと家族を愛するのは若さの秘訣です」
「そんな問題じゃねぇ!?」
 若さの秘訣は納得するにしても、問題が有りすぎる。このユキさんの外見はどう見ても
美少女だし、しかもメイド服を着ている。とてもじゃないけれど、三十手前の男には見え
やしない。それなのに、何故皆は平然とこの事実を受け入れているのだろうか。普通なら
通報の一つや二つはしているんじゃ無いだろうか。
「何で良い年の男がそんな服装なんですか?」
 美少女的な外見は個人差と言うか、天文学的な確率で発生した遺伝子の産んだ奇跡だと
いうことにしても、その服装は明らかに人為的なものだ。言い訳のしようがない。
 しかし当然のように織濱さんは頷いて、
「似合っているだろう」
「そうだねぇ、羨ましい」
 この姉は…。
625名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 00:06:19 ID:3+kTx4eu
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十二人の怒れる女
626『とらとらシスター』6虎:2006/07/08(土) 00:07:31 ID:8Fx3+/ko
「普段の手入れが大事なんでしょうか? 特別な方法があるなら後で教えて下さい、これ
から熱さや紫外線が強くなりますが夏になると肌がどうもやられて」
 サクラまで…。
「ビタミンですかね、フルーツが好きでよく食べるので」
「あんたも普通に答えるな!!」
 何だろう、この気持ちは。言葉では上手く表現出来ない、不思議な気分になってきた。
今までに味わったことのない、混然一体となった複雑な感情。
「この気持は一体?」
「虎徹君」
 流石に失礼が過ぎたのか、少し睨むように織濱さんが僕の顔を見ていた。それもそうか、
いくら変態疑惑があるとはいえユキさんは織濱さんに結構信頼されているみたいだし、そ
の人を悪し様に言われたらあまり良い気分はしないだろう。僕だって家族や殺虎さんの悪
口を言われたら気分が悪くなるし、恨み言の一つも言いたくなる。それに、いくら外見が
美少女といってもこの人はずっと年上なのだから尊敬の念が足りなかったのも事実だ。
「すみません、ユキさん」
「気になさらないで下さい」
 だがそこはやはり大人、柔らかい笑みが返ってきた。
「そうじゃない」
 目を向けると、織濱さんは膨れた表情のまま。僕が他に何かをしたんだ
627『とらとらシスター』6虎:2006/07/08(土) 00:08:42 ID:8Fx3+/ko
「普段の手入れが大事なんでしょうか? 特別な方法があるなら後で教えて下さい、これ
から熱さや紫外線が強くなりますが夏になると肌がどうもやられて」
 サクラまで…。
「ビタミンですかね、フルーツが好きでよく食べるので」
「あんたも普通に答えるな!!」
 何だろう、この気持ちは。言葉では上手く表現出来ない、不思議な気分になってきた。
今までに味わったことのない、混然一体となった複雑な感情。
「この気持は一体?」
「虎徹君」
 流石に失礼が過ぎたのか、少し睨むように織濱さんが僕の顔を見ていた。それもそうか、
いくら変態疑惑があるとはいえユキさんは織濱さんに結構信頼されているみたいだし、そ
の人を悪し様に言われたらあまり良い気分はしないだろう。僕だって家族や殺虎さんの悪
口を言われたら気分が悪くなるし、恨み言の一つも言いたくなる。それに、いくら外見が
美少女といってもこの人はずっと年上なのだから尊敬の念が足りなかったのも事実だ。
「すみません、ユキさん」
「気になさらないで下さい」
 だがそこはやはり大人、柔らかい笑みが返ってきた。
「そうじゃない」
 目を向けると、織濱さんは膨れた表情のまま。僕が他に何かをしたんだろうか。
「せっかく付き合い始めたのに、君は彼女…」
 鈍音。
 『彼女』という単語に反応したのか、姉さんとサクラが織濱さんを睨みつけながら腕を
組んで仁王立ち、言葉の代わりに振脚の音を響かせていた。
628『とらとらシスター』6虎:2006/07/08(土) 00:10:39 ID:8Fx3+/ko
 織濱さんは一度途切れた言葉を咳払い一つで直し、改めて僕を見ると、
「彼女を無視して他の人に目を向けるなんて。そうか、分かった。いますぐ本場モロッコ
行きの飛行機を…いやタイの方が近いか。大丈夫、わたしは同性愛者を差別はしないし、
君がどんなに変態でもそれを受け入れるつもりだ。そしてまた一つ君の理想に近付いてみ
せる、楽しみにしていてくれ」
 この人は、本当は馬鹿なんじゃないだろうか。
「ごめん、織濱さん。突っ込むところが多すぎて」
「男の人なら、逆に少ないんじゃないのかな? 友達から借りた本で読んだもん」
「食事時に、そんなボケは止めてください。周りの人が、複雑そうな表情をしています。
あそこのカップルなんか、ウインナーを食べるのを止めました」
 この二人の会話は聞かなかったことにして、織濱さんを見た。確かに、少し不真面目だ
ったかもしれない。織濱さんは僕のことをずっと考えてくれていて、漸く付き合い始めた
っていうのに、僕ときたらそんなことは全然考えていなかった。それどころか、付き合い
始めた理由も姉妹を僕離れさせる為なんていう不誠実なものだ。一方的に利用するだけな
んて、人として完全に駄目だろう。
 だから、
「ごめん、織濱さん。お詫びに何か要求に答えるよ」
 人として付き合いたいと、改めて思った。
 やっと笑顔を見せると織濱さんは、
「なら二つ。まず一つ目、放課後デートというものをしてみたい」
 後ろから殺気がするけれど、気にしない。
「次に、わたしのことは青海と呼んでくれ。出来れば呼び捨てで。せっかく付き合ってい
るのに名字で呼ぶなんて味気無い」
「分かった、良いよ。これから宜しく、青海」
 そう呼ぶと、青海は嬉しそうに笑った。
629ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/07/08(土) 00:13:45 ID:8Fx3+/ko
今回はこれで終わりです

また凡ミス
その上話が全然進まねぇ
今のところ合計九話なのにプロットの4分の1とか
630名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 00:40:07 ID:jpG94/KU
>>625
いいねぇ
ダメカワイイ女教師の修羅場見たいわ
631名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 00:55:16 ID:feH0u7iw
さて、やっと「ロリコン教授」の第2部が出来ました。
前半は甘々な展開ですが後半からは、このスレ的なもの
にする予定です。では、投下します。
632教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏:2006/07/08(土) 00:57:02 ID:feH0u7iw
ちゅん、ちゅん…
雀の囀りによって一日が始まろうとしていた。
「さ〜て、夏真っ盛りの今日のラッキーさんは…魚座のあなたー!」
(あ…やったぁ…)
テレビでやっていた占いを、佐藤樹は微睡みの中で聞いていた。
(あれ?なんでテレビ点いてるんだ?まあいいや…)
そう考えていたら台所から耳慣れない音が聞こえてきた。
トントントン…
(…………?)
「うん、こんなもんだろ…しかし樹の奴、冷蔵庫に食材が入ってないなんて…。」
うん?どっかで聞いた声だな…
パタパタパタ
足音が近付いてきた
「全くいつまで寝てるんだか、おい樹、もう起きろ。」
「うーん…。」
うっすらと目を開けると、カワイイ女の子がエプロンを付けて顔を覗いていた。
「……どちらさんで?」
あ、なんかこめかみに青筋が浮かんでるな。
「寝呆けてんじゃないわよ!」
そう言って女の子は樹の頭に怒りのチョップをくりだした。

「おはよう樹、目覚めたか?」
「はい、おはようございます弥生さん。(イタタタ…)」
そうだった、四日前の事件で弥生さんはちっちゃくなるわ、
売り飛ばされそうになるわで大変な目にあったんだった。
それで行くアテが無くなったんで家に住むことにしたんだっけな…。
それにしても…
「弥生さん…料理出来るんだ…」
今まで病院で検査だなんだで入院して、昨日帰ってきたから知らなかったけ
ど、テーブルに上がっている料理を見て、つい呟いてしまった。
もちろん弥生さんの耳は聞き逃さなかった。
633教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏:2006/07/08(土) 00:59:11 ID:feH0u7iw
「…意外か?」
や、弥生さん、その目はやめて!
「あ、いや、…まあイメージと違ったんで…。」
「全く…料理くらい出来るわよ。さあ冷めないうちに食べましょ。」

ちょっとおっかなびっくりしつつも食べてみる…
「うん!この味噌汁といい浅漬けといい絶品だ。」
「そ、そうか?樹にそう言われると照れるな。」そう言った弥
生さんは顔を真っ赤にしていた。
「うん、うまい!こんなうまい朝飯食べたのは初めてですよ。」
「大袈裟だな。もしかして、あまり朝はたべないのか?」
そう聞いた弥生さんは少しだけ心配そうな顔をしていた。
「朝は晴香ちゃんが作りに来た時だけ食べますね。」
「晴香って…あの挙動不振者か?作れるのか?」
どうやら心底驚いているようだ。
「まあ…レンジでチンですけど…」
そう、晴香ちゃんは料理はまったく駄目なのだ。前に一度だけ
手作りを食べたことがあったけど、あれは…うぷ、
考えただけで食べたのが逆流しそうだ。
そういえばここ一連の出来事は心配させたくなかったから連絡
してなかったけど
、晴香ちゃんも提出作品の修理でずっと掛かりっきりなんだよ
な。電話でも後でかけようかな?

プロ級の朝飯を食べおわって一息付いたところで、今後のこと
を話し合った。
「病院内でも話ましたけど、やはり教授次第ですから、今日辺
り行ってみましょ。講義も無いことですし…。」
「たしかに樹の言うとおりだな。こうなったらケツひっぱた
いても作らせないと!」
634教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏:2006/07/08(土) 01:00:40 ID:feH0u7iw
実験棟3


「教授ー!居ますか!」ドアを激しく叩いても返事は無い。
「おかしいな…今の時間帯なら居るはずだけど…」
「どこかに出掛けたかな…うん?樹!ちょっと静かに!」
そう言った弥生さんはドアに耳をあてた。
俺も耳をあててみると中から音が聞こえる。
すると弥生さんがドアノブに手を掛けた。すると音も無く開い
た。
「入るぞ」
「そうですね」
中は前の実験部屋より広くて設備もかなり充実しているようだ。
「音は隣の準備室から聞こえるな。行ってみるか」
「はい」
半分ドアが開いている所から音が出ているようだ。

ゆっくりと部屋に入ると、誰かが座ってカチカチとノートパソコン
を操作していた。かなり夢中になっているからか二人が近付い
ても気付く様子はないようだ
(あれ?この後ろ姿は…まさか…)
嫌な予感を感じつつノートパソコンを覗いてみると…
「さあ〜お兄さんと一緒に体操しよう〜!ハイ!ハイ!」
それは近くの保育園の運動の時間を物陰からビデオカメラで撮った映像
だった。
「き、教授……。」
樹がどう話し掛ければいいか悩んでいたら、弥生の様子が変だ。
「あのー弥生…さん?」
「な……」
「な?」
「なに盜撮しとんじゃーーーー!!!」
そう叫びながらガラ空きの横腹に蹴りを入れた。
「ぐはっ!」
そのまま横にあった本棚に激突した。
635教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏:2006/07/08(土) 01:02:47 ID:feH0u7iw
「こんのロリコン教授が!!ついに盜撮までして!」
弥生さんの見事な蹴りが入ったロリコン教授こと、稲本炉利教
授は横腹を押さえつつ
「ご、誤解だ弥生くん。これは次の論文を作るための貴重な資料な
のであって、決してやましい目で見ていたわけでは…」
「へぇ…そのわりには随分息が荒かったわね…興奮していたのかしら?」
そう言いながら弥生さんは指をポキポキ鳴らしながら近付いて
いく。やばい!マジだ!
「弥生さん!ストップ!落ち着いて!今教授を再起不能にした
ら元に戻れなくなるかも知れませんよ!」
さすがちっちゃくなっても弥生さんだ。本気の目を見ると冷や汗が止
まらない。
「………くっ!」
なんとか思い止まった弥生さんだがノートパソコンを見て動きが止まった。
「教授、このYAYOIってファイルは何?」
「あ!?そ、それは!」
明らかな慌てぶりを怪しんだ弥生さんはそのファイルをダブルクリックした。
「だめだ!見るなー!!」
教授が飛び掛かって奪いとろうとしたが、弥生さんの突きが鳩尾
に入り吹き飛ばされた。
「樹、開けてみてくれ」
あのファイルはたしか教授が弥生さんの盗聴や盗撮したファイルだと思うけど…
開けたら間違いなく弥生さんの逆鱗に触れるな…まあ自業自得か

「動画データと音声データですが、開けてみますか。」
適当に動画ファイルを開いてみた。
モニターには、なにやら薄暗い建物の中をビデオカメラで撮っている映像が映った。
「あれ?ここ入院した病院ですね。え?AM3時?」
映像はそのまま二階のとある病室まで来た。
「たしかここ弥生さんが入っている病室ですね。」
「な………な…まさか!」
映像は病室へ入り静かに弥生さんに近付いていき…
「……寝顔だ」
「いやああああああああああ!!!」
爆睡している弥生さんの寝顔がどアップで映っているが、映像
の弥生さん…涎。

「い、樹!見るな!見るなー!!」

すると突然パソコンがプツンと切れた。
636教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏:2006/07/08(土) 01:05:04 ID:feH0u7iw
「えっ!」
見ると弥生さんが……!
「あいたたた…まったく弥生くん、本気で殴るんだからな。ま
あそんな所もカワイイんじゃが。ん?どうした弥生くん?そんな恐い顔して?え
?なんで手にメリケンサックつけているの?ち、ちょっと落ち着けって…ま、待
って…ギャー!!!」



「弥生さん、全データ消去しました。」
「ありがとう…で、教授、元に戻す薬は出来たの?」

すっかり顔が変形した教授に向かって弥生さんは言った。
「うむ…それなんだがな。」
教授はため息をついて
「まだ暫らく時間が掛かりそうだな」
それを聞いた弥生は思い切り机を叩いた!
「冗談じゃないわよ!!じゃあ何時くらいで出来そうなのよ!!」
う〜ん、と教授が考えて
「そうだな、秋頃かな?」
ブチッ
ん?前に聞いたことのある音がしたような。
「わかったわ…そんなに待つくらいなら…今すぐ殺すわ!!」
「わっ!お、落ち着いて弥生さん!」
教授に殴り掛かったので、後ろから羽交い絞めにした。
(またこのパターンか…)
「樹!止めるな!今すぐ殺す!殺す!!殺してやるー!!!」
「と、とにかく詳しく聞きましょう!で、教授なんで秋頃なんですか?」
すると教授は意味深な顔をして
「うむ、実はな薬を作るためにアメリカから偉い教授を呼んだ
のだ。で、来れるのが秋頃というわけじゃ。」
そ、そんな…それまで弥生さんはこのまま?
「教授!もう少し具体的に聞かせて下さい、このままではいく
らなんでも…」

「ああ…。」
そう言って教授は椅子に座り
「…元々この薬の理論はアメリカの研究論文を参考にし
て作ったもんでな…論文を作った教授なら、なんとか元に
戻す薬が出来るかもしれんと思ってな…それに下手に作ると
どんな副作用がでるか…。」
637教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏:2006/07/08(土) 01:07:39 ID:feH0u7iw
「教授!それは余りにも無責任ですよ!弥生さんがこうなった
せいでどれだけ酷い目にあったか分かってるんですか!!」
部屋はシーンとなり皆が沈痛な面持ちをしていた時、弥生が沈
黙を破った。
「…………たわよ。」
「え?」
「もうわかったわよ!!アメリカから教授が来たって必ず治る
保障は無い上に、下手に弄るくらいならもうこのままの方が良いわよ!!」
そう叫ぶと走って廊下に出て行った。
「弥生さん!待って!!」
樹も後を追おうと廊下に出ようとした時、急に肩を掴まれた。
「樹くん、ちょっと待ちたまえ!」
「教授!放して下さい!弥生さんを追わなきゃ!」
すると教授は真面目な顔をして
「追う前にちょっとだけ話を聞いてくれんか?…実はな………。」



ここは屋上。真っ赤に染まった夕日を弥生はぼんやりと見ていた
「だれもかれも私の外見しか見ない…ちょっと大きいだけで「男みたいな女」と
か「がさつでおおざっぱ」とか色々言われるし…。」
今弥生の目には、今日の夕日は歪んで見えた。
「かといって小さくなったらなったでこれだもんな…ふふっ、
急に涙脆くなったわね…グスッ。」

弥生が物思いに耽っている時、ドアが開いた。
「あ、やっと見つけた!良かったー探しましたよ。」

(そういえばこの男、樹だけは私を身を呈して守ってくれたっけな…)
ゆっくりと樹が近付き、すっ、と手を差し伸べてきた。
「さ、帰りましょ。」
弥生は手を取るかわりに樹のお腹に顔を埋めた。
「え?どうしたんですか?」
「ごめん…暫らくこのままでいて…グスッ。」
(樹…あなたさえいれば…私は…)
弥生はとても安心したのか、安らいだ顔になっていた。
「弥生さん…」
(やっぱり教授の話はショックだったんだな…なんとか
元気になってもらいたいけど…)
その時樹の頭に一つのアイディアが閃いた。
「そうだ!弥生さん、海に行きませんか?」
「え、海?」
すでに樹のお腹から顔を離した弥生に、樹は腰を落として目線を合わせた。
「あと一週間後に大学は夏休みに入りますが、俺毎年海の家にバイトに行ってる
んですよ。」
「あ、ああ…」
まだ事態が飲み込めない弥生はただ聞いていた。
「で、気分転換も兼ねて海でパーッとエンジョイして、
ちょっとの間だけ嫌なことを忘れてしまおうと…どうですか?」
「…………ぷっ、」
「?」
「あはははははははははっ……。」
「どうしたんですか?そんなにおかしいですか?」
弥生は笑いを止め、涙を拭いて
「ごめんごめん、あまりにも突拍子すぎたから…いいわ、行きましょ…海へ」

第一話「近付くココロ」完

次回第二話「出会ったフタリ」
638名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 01:11:13 ID:feH0u7iw
会社で仕事の合間にワード使って書いていますが、ファイル名もこのタイトル
なんで見つかったらなんて言い訳しよう。それはともかく晴香の出番が全然
ありませんが、次回はついに晴香対弥生になるかも?
639名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 01:39:53 ID:7vyU9HUl
>>615
とりあえず今DLして遊んでます。
ほんとにゲーム作ってしまうとは凄すぎです

>>629
GJです。焦らず仕上げて下さい
全三十話くらいになるわけですか。大作ですな

>>638
ワードもファイル履歴残るので気をつけて下さい
それはそうと次回楽しみにしてます
640名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 01:55:54 ID:AmPNRE/E
>>615
すげー
すげーーー!

このスレのためにわざわざゲーム作ったのか、すげー!
みたところ、製作に三ヶ月はかかっていると思うんだけど…
しかもかなりのボリューム……。

プレイ中ですが、とりあえずGJ!
641名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 01:56:56 ID:2W3mcy+F
>>637
一体誰と誰が出会うのかなぁ
642名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 01:59:29 ID:VW4Mc2s7
>>615
凄いの一言につきる。GJ杉
643名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 02:20:53 ID:wSj/Of1E
>>615
感動した
644名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 02:24:55 ID:tJqB0B2k
>>615
全米が泣いた
645名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 02:40:24 ID:13z0GU2J
 たとえばむかし、あるところにお城がありました。
 なに不自由なく育ったお姫様は幸せであることに飽き、
 実験と称しては塔の上から袋詰めの猫を落とし、
 その自由落下のなかに生命の意味を見出していたのでした。

 もちろん、これはたとえばなしです。

 けれども、落とせば落とすほど
 お姫様はわからなくなってしまったのです。
 「人生って、わからないなあ!」

 お姫様は家来に命じて、自分と似た年恰好の12人の娘をさらい、自分と同じ服を着せ、
 自分と同じ化粧をさせ、窓からおとしました。
 12人目を落とし終えたあと、お姫様は
 「人生って、わからないなあ!」
 と言いました。
 そしてお姫様は一生幸せに暮らしましたとさ。

 もちろん、これはたとえばなしです。
 けれどもたとえばそれが人生というものなら、
 私は……私は……私は……

 塔から落ちた12人の娘みたいに地面に深く埋まって、
 化石みたいにきれいな宝石になりたい。
646名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 02:55:47 ID:ryOEfffY
>>615
驚愕した!!
マアァベラス!!
647名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 04:25:26 ID:sw3ia17i
>>615
おそらく全部のENDを見終えた

とりあえず


                        !llllii,_
                     : lllllllli
       ,,,,,,,,,,,,,,,:              llllllllll:
       :゙!llllllllllliiiii,,,:         .lllllllll|:
        : ゙l!!!!lllllllll・           lllllllll|:
           : ゙゙゙゙′        llllllllll: : ,,.,,,:
                     : lllllllllliiilllllllllllli,:
        : ,,,,,、       : :,,,,iiilllllllllllllll!!!lllllllllll:
      : ,,,,iiilllllllllll:       .:゙!!!!!!!!lllllllll|: : ,lllllllll|:
    : _,,iiilllllllllllllll!l’          : lllllllll|...,llllllllll「
  : ,,,,iillllllll!lllllllllll!″        .,,,iiiillllllllllllilllllllllll°
 .:゙゙l!!!゙゙゙゙",iilllllllllll    : ll,    ::ll!!゙゙゚llllllllllllllllllll!″
     : ,lllllll!lllllll:    ::lll:       :,llllllllllllllllll!:
    ,,,lllllll゙`lllllll,,,,,i!:  .:llli,:     .,,,illlllllllllllllllll゛
    ,,lllllll゙: ._llllllll!゙°  .llllll|、  .:lllllllllllllllllllllll!:
   ..,lllllllll,iiiiillllllll:     .:llllll,,   .:llllllllllllllll!゙゙:
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  .,lllllllllll!!゙.,lllllllll:      .゙゙′     ;lllllll:
  .゙lllllll!゙` ::lllllllll|:            :;llllll|
   ゙゙゜  : illllllllll:            : llllll′
      .:lllllllllll_               :llllll:
      .llllllllllll゙            : lllll|
      .:lllllllll!″           : llll|:
       ゚゙゙゙゙°               lll゙
             様
             有
             難
             う
             ご
             ざ
             い
             ま
             す
648名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 04:39:56 ID:vdT0MZHL
>>615
そこらの1時間で終了するクソゲーに見習わせたい

神よありがとう!!!

>>619
何気にセレナの待ち針ぶっさしってヤバ過ぎ
サイ娘の片鱗が・・・
普通にスルーしてる主人公w
649名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 07:27:21 ID:7mrHKWks
>>638
ついに弥生と晴香の激突がくるのか!

しかし七夕の夜に連続投下してくれるなんてこのスレの神々はずいぶん粋な事をしてくれるな(*゚∀゚)=3ハァハァ
650名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 07:34:40 ID:HLOai8Zq
今週のすももももももが修羅場だった。
651名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 10:35:51 ID:35FMaUtN
今週の赤ずきんを見て修羅場展開を期待した俺は末期
652名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 12:01:37 ID:2W3mcy+F
>>615
仕事のパソコンで発見して帰ったら即効DLだと思ってたら流れてる
神よ再うpをどうか再うpをお願いします
653名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 12:18:47 ID:Kv7by0mZ
>>615
面白かったです。ネタバレしないために詳しい感想や意見を書けないけどGJです。
654名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 12:26:08 ID:62sSa6wr
>>615
凄いあなたも神の一員です


修羅場SSをサウンドノベル化しようとしたら
凄い容量になるんじゃないのか・・と一人で妄想してみる
プレイ時間で3−4時間ぐらいって感じ?
655名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 14:54:29 ID:8Fx3+/ko
俺も作りたいけど、
・前の仕事場の主任に貸しててパソコン無い
・音楽作れない
・絵を描けない
と、どん底の現状

ネタはあるのに……
656アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/08(土) 15:05:38 ID:opuapDrt
投下します
657姉妹日記 13話  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/08(土) 15:06:29 ID:opuapDrt
 なにこの状況?
 私が久しぶりに二人の部屋に遊びに来た時だった
 そこに居たのはベットに縛られ放心状態の涼くんと地べたに這い蹲る秋乃だった
「春乃・・・・?助けて!!!」
 揺らめく瞳が私を見つけ必死で訴えかける
 なにがどうなっているのか解らないけど・・・・これは私にとって好都合ば状況だった
 どうしてか・・・・それは・・・・
 実は私は幼い頃に涼くんと出会っていた
 それだけじゃない・・・・ファーストキスまでした
 幼い私たちは結婚の約束までしていた、けど・・・・それからしばらくしていつもの公 園に涼くんは姿を見せなくなった
 そして、そのとき気づいた・・・・私と涼くんを繋いでいたのはその公園だけどということに
 幼い私は深く絶望しその後私は私を殺した・・・・
 明るく振舞うようになり本当の私を隠した・・・・
 目立つようになれば小学校、そして中学で涼くんと再会できると思ったから
 願いは虚しく涼くんとは出会えなかった
 そして、ある日私は秋乃からある言葉を聞いた
 涼くんと同じ名前の人と付き合い始めたと
 秋乃は私と涼くんのことを知らない・・・・名前を聞いたときもしかしてと思った
 でも、涼なんて名前どこにでもあるから同姓同名だよね?
 それで片付けていた・・・・でも、それは誤算だった
 初めて見たとき彼があのときの涼くんだとすぐに解った
 そして、同時に秋乃に底知れぬ憎悪を抱いた
 秋乃は昔からそうだ・・・・秋乃はいい子・・・・私は落ち着きのない悪い子
 勉強もできて従順な秋乃を溺愛した
 中学二年の時だった、唯一勝っていると思っていた容姿も完全に追い抜かれた
 秋乃は毎日のように告白を受け困っているという自慢話を毎日聞かされた
658姉妹日記 13話  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/08(土) 15:08:24 ID:opuapDrt
 とどめが涼くんだ、想像できる?姉の恋人が長年恋焦がれた人だった私の気持ちが
 秋乃は私から全てを奪っていった
 親の愛情も、最愛の人も・・・・
 でも、天は私を見放さなかった
 これは絶好のチャンスだ・・・・
 ゆっくりと涼くんに近づき、微笑みかける
「あき・・・・の・・・さん?」
 その言葉が彼の口から発せられた時私の中の何かが弾けた
「私は春乃・・・・覚えていないの?」
「え・・・・は・・・・る・・・・」
 明らかに拒絶の表情を見せた涼くん
 私は怒りを通り越して何も感じなくなっていた
 でも、私は・・・・
 服を脱ぎ捨て彼の上に跨った
「ちょ・・・・なにやってるのよ!春乃!」
「前に話したよね・・・・初恋の話」
「え・・・・・」
「その人ね・・・・涼くんって言うの・・・・ふふ」
 希望のそれが絶望に変わる
 その表情で私は優越感を覚え笑んだ
「あんたがいつもそう、なにもせずに全部貰える・・・・私の気持ちを少しは思い知れ!」
 ああ、最高・・・・
 少し触れただけで彼の陰茎は大きくなった、ふふ・・・・私を求めてるのね?
 私は自らの恥部を指でぐちゃぐちゃにして陰茎をそこにあてがった
「あ・・・・く・・・・ふ」
 痛みが私を襲う
 初めては痛いと聞いていたけど・・・・
 けど、痛みも最愛の人との交わりと長年劣等感を抱いていた姉の悔しそうな顔ですべて吹っ飛んだ
 自らの腰を上下させながら痛みを快感に変わるのを必死で待つ
 何度も何度も腰を打ち付ける・・・・
659姉妹日記 13話  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/08(土) 15:09:00 ID:opuapDrt
「あ・・・・・あん・・・・あぁぁぁ」
 自分の意思とは関係なしに発せられる喘ぎが部屋に響く
「やめて・・・・やめろ、秋乃!」
 あらあら、なにその顔・・・・怖いな
 悔しい最愛の人を寝取られた気分は・・・・
 でもね、最初に寝取ったのはあんたなのよ?
 私は私の物を取り返しただけなの
 痛みと快感の狭間に押され私は彼との行為に集中をする
 彼は何度も私のナカに精液を吐き出して、二人で快感を舐りあった
「殺してやる、涼に・・・・これ以上触るな!!!!」
 秋乃の声に私は先ほどまで秋乃のいた場所を見下ろした
 縄が切られいる、近くに肩カッターの刃が落ちている
 あれで少しずつ縄を・・・・
 姿を探すとすぐに見つかった、顔は青ざめその手にはハサミが握られている
「殺してやる!!!!」
660アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/07/08(土) 15:12:10 ID:opuapDrt
春乃さんの急展開すいません

彼女は当初プロットにもなくノリでだしたキャラだったので・・・・

それと脱字発見

最初のレスの下から三行目

勉強もできて従順な秋乃を溺愛した
     ではなく
親は勉強も出来て従順な秋乃を溺愛した
      です

相変わらず誤字脱字多くてすいません
この先は二組の姉妹の涼くん争奪戦が繰り広げられます
661名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 16:09:24 ID:qaqOvSQj
>>615
ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!

もう消えてた…
662名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 17:33:55 ID:7mrHKWks
>>660
ついに秋乃も覚醒でW姉妹修羅場ktkr!
663名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 17:36:27 ID:PRd4RbCI
>>660
GJっす
姉妹日記ってそっちの姉妹のこともだったのか!!
春乃さんが幼馴染フラグを立てているとは・・・
流石神さま、俺の想像を超える展開を見せていただける(*´д`*)
幼馴染スキーとしては心惹かれる
664名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 17:39:40 ID:5JzIeawm
>>615
消えてる…
665名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 18:28:04 ID:xBzn9owi
朝一でDLした俺は勝ち組ww
666名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 18:31:45 ID:ksPpyyEY
どうせ再うpされるだろと焦らない俺も勝ち組
667名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 18:46:28 ID:D3osfvyd
DLしたけどやる時間がない俺は負け組
668名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 19:35:30 ID:oHotwfXw
>>615
DL出来たけど使用ソフトなどの知識が無い俺はやっぱり負け組orz
>>660
双子姉妹修羅場ktkr
669『疾走』 第十一話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/08(土) 19:48:44 ID:cFp6ooGa
 有華はしきりに、俺の手の甲の一件を登校中に謝った。
 俺は大丈夫を連呼していた。実際、さほど深く肉は抉れてはいなかったし……。出血も、すぐにおさまった。
 それよりも……俺には、こんな微量の出血なんかよりも、恐れていることがあったのだから。
 有華の――誓いだ。
 手と手が溶けて混ざり合ったイメージ。離れれば繋がった部分は千切れて、出血する。……噴水が如く、鮮血が舞う。
 あまりにも強制的な……言葉の羅列。極端が過ぎる。
 狂気さえ垣間見えた今朝の有華の様子に――いつかの、誰かの姿が……一瞬だけ重なった。
「……ははっ。違うさ、違うって」
 ちょっと独占したい欲が露呈してしまうのは……人間なら、おかしいことではないのだ、別に。
 むしろ、可愛いじゃないか……っ。ははっ……俺なんかとずっと一緒にって……っ?
「あ――らかわぁ――エ――スケくぅ――んっ!」
「ぶはっ」
 昼休みの教室に、突如俺を呼ぶ誰かの叫び。
 さて弁当を征服してやろうとまずはボトルから水分を補給していた俺は、それらを吸収する以前に吐き出してしまう。
 そんな漫画的リアクションを催すほどに、でっかい声だったのだ。
「呼んでるぞエースケ」
「言われなくてもわかるわっ」
 口元を拭いつつ、教室のドアに視線を投げる。
 見ると――見知らぬ女子がそこに立っていた。教室のあらゆる場所に視線を這わせながら、「お前はもう包囲されている――っ!」なんて叫んでいる。
 左右に結った髪が交互に揺れている。背丈は結構高い。
 全体的にほっそりとした印象であるが……うん、その、胸は大きかったりした。
 と、とにかくっ。落ち着きという要素が見るからに欠落していそうな感じの、そんな生徒である。
「包囲されたな、エースケ」
「ああ……っ。どうやらここまでのようだな」
 意味がわからんがな。
 喧しいその女子をさっさと追い出せというニュアンスが含まれる視線が、俺に集中する。……阿良川瑛丞に、逃げ場はないようだ。
「あの、俺が阿良川ですけど」
「おおうっ。ようやく現れたねっ! そっかそっか、君がエースケくんかいっ!」
 ひたすらに快活である。耳を塞ぎたいが失礼だろうか。
「それでなんの用事で……っ」
「ちょこっと君に聞きたいことがあったりするわけさっ! ちょっと、屋上まで行こうね、うんっ」
「ええっ……? あの、質問ならここでもいいじゃないです――っ」
「問答が無用なのさ――っ!」
 なにやら意味のわからん言葉を迸らせると、有無を言わせず、そのお方は俺の手を引っ掴んで走り出した。
 ――走っている最中も、何故か笑っている、不思議な女子である。
670『疾走』 第十一話 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/08(土) 19:51:35 ID:cFp6ooGa
 今日も今日とて、屋上である。
 嫌でも昨日のことを思い出してしまうので、正直来たくなかった。なかったのだが……っ。
「し、し、しんどっ……ぜぇ……っ……はあっ」
「体力無いのね少年っ! 駄目だよ、もっとタフネスに人生歩まないと」
 あんたはタフ過ぎる……っ!
 ようやく呼吸が落ち着いてきたところで、
「あの、ところで、あなたのお名前は……っ?」
「ああっ。名乗ってなかったね……ええっと、いたりの友達で、生方錯耶って言う者だよ」
 ――いたり先輩の、友達で、生方……っ?
 ああ、先輩から何度か聞いたな、その名前――ここ数日の出来事が過激過ぎて、すっかり忘れてしまっていた。
 しかしこうして会うのは初めてだった。
「呼ぶのは結構ですけど、もうちょっと静かにお願いしますよ、生方先輩っ……!」
「悪いね、ごめんごめん。一日一回はああやって叫ばないと、なんかこう、落ち着かなくてねっ! あははっ」
 言いながら、髪を揺らしてげらげら笑い出す。地面をばんばん足で叩きながらだ。
 ……全然落ち着いてませんよねって突っ込むところだろうか、ここは。
「それで……話ってのは、その」
「そそっ。いたりの事だよ」
 あの嗤いを、思い出してしまう。
 努めて無表情に……っ。この人は無関係なので、要らぬ心配はかけない。
「……今朝。登校して、後ろの席のいたりを見たとき、すっごい驚いたんだ」
「――何に、ですか」
「聞いてよっ! イメージ変えるためなのかよくわかんないけど、髪型変えてたんだよね、いたり」
 嬉しそうに……生方先輩は言った。
「これはあれだね……っ。わたしは直感しちゃったよ、エースケくん」
「ちょ、直感っ?」
「いたりの彼氏たる君の趣向に合わせたんだって、もうすぐに閃いたさっ!」
 ――はあ……っ!?
 ちょっと、生方先輩……いま、なんて、言った……っ?
「でえ、ちょこっと親友の彼氏を生で拝むのと、わたしの直感が正解なのか確かめるために、いたりに内緒で君を呼び出したって――っ」
「ま、まって、ください」
 うん――っ? などと、首を傾げられてしまう。
「俺が、いたり先輩の彼氏って……だ、誰が、そんなこと言ったんですか……っ?」
「ふい……っ? 誰って、そりゃ君ね」
 やだなあ、って、耳の裏を掻きながら。
「いたり本人に決まってるじゃんっ! もう、今朝だっていたりってば、君の話しかしなくてね――」


 一瞬地面が消失したみたいに……俺は愕然とした。
 昨日あれだけの否定を直撃させたにも、関わらず……っ。


 いたり先輩は……何も、諦めていなかった。




 瑛丞も生方も、気付いていない。
 きちんと閉めたはずの屋上へのドアが――僅かに開いていることを。
671名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:01:34 ID:xBzn9owi
ヤバイ、ヤバイゾ!!次スレはまだか!?
672名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:03:27 ID:2yFxr9Kx
いたり先輩かわいいよいたり先輩


それはそうと

>615の再うpマダー?
673名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:10:01 ID:BxRw2un0
久しぶりのスーパーサイ娘神ですね
674名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:13:40 ID:aoiyufoV
これはいいサイ娘スリラーですね
675名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:16:20 ID:bAAv0MNW
あれで諦めたと思ってるのがすげえ
676名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:20:10 ID:83mydhWp
いや普通は一応終わったとは思うんじゃね?

このスレでなければ
677名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:20:12 ID:qaqOvSQj
生方錯耶

「うぶかた さくや」で、いいのかな?
678名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:26:41 ID:zRlfh18U
とりあえず次スレは>>2ナシ推奨
679 ◆/wR0eG5/sc :2006/07/08(土) 20:30:10 ID:cFp6ooGa
>>677
うげっ。ややこしい名前ですみませんっ。
読み方はそれであってます。
680名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:47:23 ID:UsJ90kCi
すーぱーさい娘神の行動に期待。
681名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 20:48:15 ID:/p6JyBc9
>>679
いたり先輩GJ 最強です

いたり先輩の髪型がツインテールだったら笑う

このスレとは程遠い話になるんですが
某天国に涙がいらない8巻に出てくる自殺した幽霊が
OLでビシビシと働いている間に気が付いたら三十路。お局様と呼ばれ、
急いで結婚相手を見つけるが、その彼が新卒の若い女の子と取られる話を思い出しました

その人を取り返すために幽霊さんがとった手段は

必死に若作りして、新卒と張り合うためにツインテールにリボンを付けて
喋り方だって舌足らずの甘えた口調に変えたりなど

主人公いわく、想像するだにイタすぎる。ちょっとフォローがしようがない、
だそうです。

つい、そのいたり先輩と幽霊がちょっと被ってしまった(涙)
682名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 21:00:54 ID:LwH3QcUU
>>681
いたり先輩はポニテ。
683過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/08(土) 21:12:02 ID:8V4ceQgS
僕達が次に向かった場所は校庭。
そこでは野球部が早朝練習をしていた。
「貸してください」
「OK」
野球部のキャプテンらしき人へ交渉に向かった会長はものの一分もしない内に帰ってきた。
その手にはグローブとボール。
まるで今からキャッチボールでもするかのようだ。
会長の姿だけを見ると…であるが。
「…で、何で僕はこんなに重装備なの?」
「危ないからですわ」
会長は何を今更…とでも言いたげに答えた。
制服にグローブをつけただけの会長と違い、僕はその上にさらにプロテクターやらヘルメットやら面やら…
まるでキャッチャーのような…いや、キャッチャーそのものの姿になっていた。
「危ないって…キャッチボールだよね?」
「ええ、もちろん手加減はいたしますわ。ですが万一取り損ねれば大怪我しかねませんし、念のため…ですわ」
黒崎先輩…僕ももうすぐそっちに逝きそうです…
「そんな浮かない顔をせずとも、私の腕を信じてしっかりと構えて捕球すれば大丈夫ですわ」
本当に大丈夫かな…
僕のそんな心配をよそに、会長は少し離れた場所でボールを構えた。
僕も慌てて構える。
テレビとかでみたキャッチャーを思い出しながら、見よう見まねで…
「では先輩、行きますわよ」
そう言うと会長は第一球を大きく振りかぶって…
 シュッ…
「わっ!?」
 スパンッ!
会長が放ったボールは見事に僕の手の中に納まった。
手加減してくれたのだろうか、その球威は確かに女の子にしては驚異的な物であったが取れない球ではなかった。
ちょっと手がしびれたけどね…
軽く手を振って、会長に投げ返す。
ボールは今度は綺麗な放物線を描いて会長のグローブへと収まった。
「良いですか先輩、詰まる所ピッチャーの目的はストライクを取る事。これは良くって?」
僕はうなずいて答える。
「それは言葉ほど簡単な事ではなく。相手の妨害をすり抜け、かつ特定の範囲内にボールを届かせねばならない」
 シュッ…スパンッ!
会長の動きは素人とは思えなかった。
投球フォームはプロの選手と比べても劣らない物に見える。
それに僕がボールを受けているからなのだろうか、会長の放つ球は正確かつ鋭く僕の取りやすい位置に飛び込んでくる。
この子は本当に何者なんだろうか…
僕は再び会長にボールを投げ返した。
「ですが…そこにたどり着く手段は一つではありませんわ」
 シュッ…スパンッ!
今度は投球フォームをアンダースローに切り替え、地面スレスレから滑り込むようにボールが飛んできた。
しかし投げ方が変わってもその球威は全く衰えてはいなかったし、ぎこちなさも感じられなかった。
再び僕はボールを投げ返す。
684過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/08(土) 21:12:57 ID:8V4ceQgS
「フォーク」
 シュッ…スパンッ!
「カーブ」
 シュッ…スパンッ!
「シュート」
 シュッ…スパンッ!
「スライダーもあります」
 シュッ…スパンッ!
会長は次々と宣言通りの変化球を投げてくる。
そのどれもが空中で急旋回をして正確に僕の手の中に飛び込んできていた。
現に僕はさっきから手を殆ど動かさずに取っている。
本当にこの子は高校生なんだろうか?
「もちろん、意表を突いてスローボールでも」
 シュ……パンッ
「先輩、これは野球に限った話ではないわ。目標は一つでも手段は無数…どんな事でもこれは変わらない。そうではなくって?」
「そうだね」
会長に投げ返す。
「常に視界を広くしていてください。人間は思い悩めば思い悩むほど妙案が浮かばなくなるものですわ」
「うん、ありがとう」
「いいえ、私も良い肩慣らしができましたわ。感謝いたします」
気がつけば野球部員達は後片付けに入っていた。
もうすぐHRが始まる時間らしい。
「先輩、道具は私が返しておきますわ。先輩は遅刻をする前にお行きなさい」
「いや、それは僕がやっておくよ。たまには先輩らしい事もしなくちゃね」
HRが始まる時間はどの学年も一緒だった。
それに昇龍学園では一年が4階、二年は3階、だから遅刻という観点では会長の方が先に行くべきだ。
「いいえ、私は元々今日は早退する予定でしたの。ですから私の心配ならご無用ですわ」
「早退?」
「学校にも行かずに遊びほうけている方々にお灸を据えて、首に縄をつけてでも引っ張り出して来ますわ」
そう言うと会長は懐から十手を取り出して笑った。
ニコッと…いや、ニカッと言うか…ニヤリと言うか…とにかくそんな風に笑った。
「…って、会長もちゃんと授業には出ようよ」
「この学校が平和になったら、考えておきますわ」
「そっか…」
この学校は不良と呼ばれる生徒が異常に多い、最近では不良界の聖地などと言う異名が作られる程に。
けど…それでもこの小さな生徒会長ならやり遂げるかもしれない。
冷静に考えれば無理で、理屈で考えると不可能で、それでも…
それでもこの子は真っ直ぐに前だけを見つめていた。
「怪我…しないでね」
「もちろん私も相手も、このハチマキに賭けて決して」
会長なら…きっと大丈夫だろう。
僕は理由も無くそう感じていた。
「そしてもし機会があれば…その時は…」
「会長?」
「いえ、こちらの話ですわ。行ってまいります」
「うん、行ってらっしゃい」
会長は僕の言葉を聞き届けてからグラウンドを走り去って行った。
もうすぐチャイムが鳴る、僕も教室に向かおう。
そしてもう一度良く考えてみよう。
自分が何を目標としていて、そのためにどんな手段がとれるのかを…



ちなみに、後で数人の不良の首に本当に縄をつけて引っ張って行く会長の姿が目撃されたらしい。
685シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/07/08(土) 21:14:19 ID:8V4ceQgS
増える〜増える〜どんどん増える〜
出番が増える〜見せ場が増える〜
当初は出番無しだった筈の会長の出番がどんどん増えていく今日のこの頃でした。

次回は割と久しぶりに最上可奈が登場する…予定。
686名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 21:16:14 ID:aYA6NNVK
>>682そこから
>>535で普通のロングに
687名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 21:23:34 ID:sw3ia17i
野球好きの俺から言うとアンダーでフォークは無理

かなり投げずらい
688『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/08(土) 21:35:37 ID:b5M4p/AD
「えーとぉ……イチゴパフェとオレンジジュース一つずつください。」
「はい、かしこまりました。」
セレナの怒鳴りにおびえてしまったのか、他の客はほとんどいなくなってしまった。まったく、迷惑な店員もあったもんだ。
「パフェにオレンジジュースか………作りますか。」
客もいないので自分で作る。一見難しそうに見えるが、全部ぶち込んでクリームをかければ素人目にはわからないようになる。材料を出して作ろうとすると……
「あ、いいよハル。私が作るからさー。」
セレナが厨房に入るなり、そう言ってきた。
「いや、いいよ。俺が注文受けたんだし。」
「い、い、か、ら。ほら、葵ちゃんと楽しくお話してきなさいよ。」
グイグイと背中を押され、厨房から強制排除される。笑顔(不自然な)全開でやられると困る。というか、こんなこと言うのは初めてだな…なんか、怪しい。
「ん…じゃ、じゃあ、お言葉に甘える。」
言われたとおりに葵の席まで行き、声を掛ける。さて、何を話そうか………
「…暇できちまったよ。」
「うふふ、店員さんがそれでいいんですか?」
689『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/08(土) 21:36:28 ID:b5M4p/AD
「ふっふっふっ………小娘の分際で、私のハルに近付こうだなんて一万年早いのよ。」
セレナの作っているイチゴパフェ……なのだが、明らかなイチゴ以外の不自然な赤みが浮いている。
「あっはっはっはっ…このセレナ様特製、激辛パフェ。クリームの甘さをも吹き飛ばすほどの唐辛子にタバスコ。これを食らって無様に逆噴射するといいわ。」
真ん中に赤い辛味成分を入れ、それを隠すようにクリームで包む。タバスコが染み出してきても、イチゴクリームだと誤魔化せる範囲だ。
「見てなさい。恥ずかしい場面をハルにみられて、呆れられればいいのよ。ミルク臭い学生が、私に歯向かったことの愚かさを教えてあげるは…」
なにやらぶつぶつ呟き、怪しいオーラを放ちながらパフェを作っているその様子は、さすがに店長も止めるのをためらった。隣りに包丁があるからだ。
「ふへへへへへ……辛ずぎなの食べて死ぬっていう前例はないかしら。……事故死で済ませるわよね。……ふふふふふ…ふふ、あっはっはっはっ!ごほっ!ごほっ!……」
笑い過ぎだ、セレナよ。
690『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/08(土) 21:37:37 ID:b5M4p/AD
「おまたせー。」
五分ほど話しをしていたら、セレナがトレーにパフェとジュースをもってやってきた。相変わらず、セレナのパフェの彩りはすごい。
まるで店前に並ぶレプリカのようだ。
「うわぁー。おいしそぅ。」
葵の目が輝き、パフェに釘付けになる。俺は甘い物は苦手なのだが、どうして女ってのは甘い物が別腹とか言うんだろうか。不思議でたまらない。
「へえ……旨そうだな。」
こういうのは一口食べれば十分である。
「あ、たべます?」
「おいおい、俺は店員、あんたは客だぜ?」
「大丈夫ですよ。私がいいって言うんですから。それに………もにょもにょ…」
「それに?」
言葉がぼやけて、よく聞こえない。しばらくして、うん!と頷いた後、スプーンでパフェをすくい……
「あ、あーん。」
「………」
「………」
「………あ、あーん?」
ついつい口を出してしまう。すると………
「だ、だめだめだめぇ!!!!」
パクッ
横からセレナが飛び出し、パクッを食べてしまった。
「あっ」
「おっ?」
「あ、あんひゃねぇ、わらひのはるになにゃろうとひで、ぶっ!」
691『さよならを言えたなら』 ◆jSNxKO6uRM :2006/07/08(土) 21:38:40 ID:b5M4p/AD
「きゃあ!?」
「うお!?セレナきたねえよ!!」
食べたと思ったら急に逆噴射しやがった。他に客がいなくてよかった(?)。そのまま顔が真っ赤になり、何度も咳き込みながら失神してしまった。………後々店長から、大量の辛味を投下したことを聞いた。
てか止めろよ、店長。失神したままのセレナをロッカールームに放り投げ、再度パフェを作る。もちろん真面目にな。
「セレナさん、大丈夫でしょうか……」
「ん、ああ見えて丈夫だからな。しばらくすれば馬鹿みたいに元気に飛び出してくるだろ。それに自業自得さ。悪戯が過ぎたんだ。」
「そう、なんですか。………よく知ってるんですね、セレナさんのこと。」
「ああ…バイトで一緒になって長いし、店員も店長抜かせば二人だけだしな。」
「……いいなぁ、セレナさん。うらやましい……どうなのかな……二人の関係……」
またぶつぶつ世界に入ってしまった。独り言が多いみたいだな、この娘は。
「お、おーい。聞いてるか?」
「えと、晴也さん!」
「おわ!?」
「は、晴也さんとセレナさんて、お付き合いしてるんですか?」
692名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 21:55:08 ID:PRd4RbCI
GJです
自らの策にかかるとかなんて古典的なミスを・・・
セレナの見事な自爆にむしろ萌えた(*´д`*)
693名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 22:07:15 ID:o8WIMmGu
>>688

セレワロスww
694名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 22:45:51 ID:l3ppQiDi
>>688
ワロタw
695名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 22:52:55 ID:lpLXTDQl
もうそろそろ次スレ行っていいと思うよ
誰か立てられる人よろしくお願いします
696名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:00:49 ID:D15xHGGk
>>685
乙。
会長さん強ぇw

>>687
確かアンダーが得意なのってシンカーだっけ……?

>>688
GJ!
ちょwwwセレナwww
697名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:01:05 ID:sw3ia17i
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152367165/


じゅうに‐いんねん【十二因縁】

仏語。人間が過去(前世)・現在(現世)・未来(来世)の三界を流転する輪廻(りんね)のようすを説明した12の因果関係。
無明・行(ぎょう)の過去の二因、識・名色・六処・触・受の現在の五果、愛・取・有の現在の三因、生・老死の未来の二果の称。
698 ◆QdqfzIJt7U :2006/07/08(土) 23:05:56 ID:DqEcaL/4
落とせなかった人ごめん
>>615の再うp
pass:sage

http://hako2.tank.jp/hako/up3308.zip.html
699名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:12:34 ID:qaqOvSQj
おまいら次スレタイの話題はまだ早いぞ!
また前スレみたいに無駄にスレ浪費して投下の邪魔するなよ。

せめてスレタイ論議は480k超えてから始めて欲しい
700名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:14:14 ID:AmPNRE/E
>>698
楽しかったよ。
というか、おばあちゃんに萌えたw
おまけシナリオの没案で続き、読みたい気もします。
お疲れさまでした。

阿修羅さんがちゃんとゲットできるか、心配だ…
701名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:20:41 ID:2W3mcy+F
>>698
うわあぁああぁあつながらない
つながらないよおおぉっぉお
702名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:25:57 ID:sw3ia17i
>>699
ごめん……もう次スレ立てちゃった……
703名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:27:00 ID:tGt89wBy
セレナさん
あぁセレナさん
セレナさん
ちなみに僕は
葵ちゃん派
704Bloody Mary 2nd container 第十九話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/08(土) 23:32:01 ID:Hwfsl8CS
 おわりだ。おわり。はは……。
ひめさまをたすけられなかった。がんばったけど、だめだった。
モルドのいうとおりだ。あれから、なにもかわってない。ただのよわいこどもだ。

「ははは………」

 その場にへたり込んで乾いた笑いを漏らすとヒリヒリと喉が痛んだ。
俺の両手は姫様の血で真っ赤だった。
 何もやる気が起きない。もうどうだっていい。俺はカラッポなのだから。

「ウィル!しっかりしなさいッ!!」

 団長が俺の肩を揺すっている。彼女の呼びかけが随分遠くから聞こえた。
……もう放って置いてください。俺はずっと姫様の側に居たいんです。
嗚呼、でも。側に居ても彼女はもう笑いかけてくれない。俺に話しかけてくれない。
 あの酷い味のポトフも食べることは叶わない。彼女の眼が俺を見ることは二度とない。
姫様はキャスと同様、過去の人になってしまったんだ。
 ちらりと姫様を見ると、依然として彼女は虚ろな瞳で俺に微笑みかけていた。
その光景を目にする度、心が抉り取られそうになった。
 なのに、何度もチラチラと目を向けてしまう。そのうちひょっこり起き上がるんじゃないかと思って。
そんなの、あるわけないのに。
 生き地獄だ。耐えられない。もう嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
こんなところに居たくない。早く姫様に会わせてくれ。会って謝りたいんだ。
だから……誰か、俺を。

「おれを、おれをころしてくれ……」
 自分でも驚くくらい、か細い声だった。

―――――――ぱしんっ

 頬に鋭い痛みが走った。ぼうっ、としたまま現実に焦点を戻すと団長が俺の頬を張っていた。

「ふざけないでください」
 一筋の涙を流しながら、彼女は俺を睨みつけた。
705Bloody Mary 2nd container 第十九話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/08(土) 23:32:50 ID:Hwfsl8CS





 『殺してくれ』と聞いた途端、目の前が真っ赤になって気が付けば手を振り抜いていた。

「あなたが死んだら私はどうすればいいんですか」
 溢れてくる涙を拭うこともせず、私はウィルを睨んだ。

 私も、姫様が死んだことにそれなりのショックは受けている。
旅の仲間を一人失った寂しさと、私が近くに居ながら助けられなかった後悔も勿論ある。
 だけど、何より悔しかった。ウィルが私のことを無視して死にたいと言ったことに。
たとえ前後不覚の状態だったとしても、間違いなく今のウィルは姫様のことだけを考えていたのだから。
 彼女が羨ましい。王女自身としてはやり残したこともたくさんあっただろう。
だけどその死に方だけを見れば、私が望む最高の死に方だった。
 愛する者に看取られながら最期を迎える。
ウィルは。私が死んでもこれほど悲しんでくれるだろうか。不意に不安になった。
 その不安に追い討ちをかけるようにウィルが死を口にして私の感情が爆発した。

「私を独りにする気ですか」
 いろんな感情が混ざって頭の中が整理できない。

「だけど……もう、嫌なんです。誰かが死ぬのを見るのは、もう耐えられない」
 ぼんやりと言葉を紡ぐウィル。
彼もまた本当は弱い人間だったのだ。ただ硬い鎧で脆い生身を守っていただけだ。復讐という名の鎧を。
だから、彼が本当の意味で強くなるまで私が支えてあげないと。ウィルが私にそうしてくれたように。

「そう思うのなら、私にも同じを思いをさせないでください」
 小さな子供を安心させるつもりで、私はウィルを抱きしめた。
「あ……」
 小さく声を漏らすウィル。
「私がずっと側にいます。だから、死にたいなんて言わないでください」
 できるだけ優しく囁いた。

「団長は……俺を、置いていきませんか……?」
「えぇ。姫様が待ちくたびれるくらい、長生きしてやりましょう」


「うぅ……ぅ…えぅ……うぁ…あ…ぁ…」

 嗚咽を漏らす彼を抱きしめながら、姫様は私を恨むだろうか、とふと思った。
706Bloody Mary 2nd container 第十九話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/08(土) 23:33:44 ID:Hwfsl8CS







「すいません。もう大丈夫です」
 ひとしきり泣いた後、俺は気恥ずかしさを堪えながら立ち上がった。
まだ少し気分は優れなかったけど、これ以上迷惑をかけることはできない。
「これからどうしましょう」
 団長が落ちていた自分の剣を拾う。
「マローネを追います。彼女をこのまま放ってはおけない。……シャロンちゃん」
 脇に控えていたシャロンちゃんに声を掛けた。
「は、はい。なんでしょう?」
 少し俯いてた彼女がはっとして顔を上げる。
「姫様を街まで頼むよ」
 亡骸に目を向けるとチクリと胸が痛んだ。
「え……でも……」
 俺を心配そうに数瞬見つめるが、やがて「わかりました」と言って引き受けてくれた。

「とりあえず街まで戻りましょう。可能性は低いですが宿に戻っているかもしれない」
 俺の提案に団長も頷いた。

「じゃあ俺たちが山道の安全を確認しながら下山するから、
シャロンちゃんは暫く時間を置いてから来てくれ」
 ぶち破られた小屋の扉を踏み越えながら、夕暮れの陽に目を細めた。

 その夕日を見て、さっきのマローネとは思えない表情が頭の中をよぎる。


―――――――マローネ。いったいどうしたって言うんだ。
707Bloody Mary 2nd container 第十九話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/08(土) 23:34:36 ID:Hwfsl8CS








「えへっ。えへへ」
 お兄ちゃんが頭を撫でてくれている。
ごめんね、お兄ちゃん。苦しませて殺すつもりだったのに張り切りすぎて火薬の量を間違えちゃった。
肝臓に穴を開けるだけのはずが回りの肉ごと抉っちゃった。あれじゃあすぐ死んじゃうなぁ。

 嗚呼。ちょっと失敗したけど、お兄ちゃんはあたしに優しくキスをしてくれた。えへへ。
ありがとう、お兄ちゃん。次も頑張るから。
次は、あの女。お父さんを殺し、あまつさえお兄ちゃんを卑しい性の捌け口にした、醜い女。
 あいつは徹底的に殺してやる。苦しませるとかそんな小細工はしない。完膚なきまでに殺す。

――――――え?何?お兄ちゃん。
  あははっ。大丈夫だよ、いくらあの女が強いって言ってもあたしに勝てるわけないよ。
………だって、あたしにはお兄ちゃんが付いてるもん。そうでしょ?お兄ちゃん。
えへへっ。うん、任せて。お兄ちゃんが居てくれるなら、あたしどんなヤツにも負けないから。


 特別調合した火薬を二本の銃にありったけ詰めた。
今詰めた火薬はさっき王女に撃ったものと比べものにならない速度で弾丸を射出する。
何処に被弾しようが死は免れられない。あの女にはうってつけだ。
 あんまり威力が大きすぎて銃身がガタガタになるから修理しなきゃならなくなるけど。

 細い山道で身を潜め、獲物が来るのをじっと待つ。
そう、此処はあの女がお父さんを殺した場所だ。同じ場所であの女を殺してやる。
 あたしを追うにしても、一旦街まで戻るにしても必ずこの道を通らなければならない。
遅かれ早かれあの女はここに姿を現すはず。あたしに狙われてるとも知らずに。
 早く来い。その醜悪な顔をこちらに見せろ。直ぐに矯正してあげる。
708Bloody Mary 2nd container 第十九話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/08(土) 23:36:23 ID:Hwfsl8CS

 予備の銃を傍らに置き、もう一本を肩に当てて構えた。

宿で目が覚めてから時間が経つにつれて、少しずつ。少しずつ。
 お兄ちゃんがあたしだけを愛してくれている姿が鮮明に想像できる。
もうちょっと。もうちょっとでそれが現実になる。お兄ちゃん……えへへ。
 あっ、駄目。なんか気持ちいい……。
嬉しすぎて腿から悦楽の証がタラタラと流れて足元の土に染みていく。
えへ。えへへへへへっ。

―――――ダメダメ。ちゃんと気を引き締めないと。
頭から雑念を振り払って、銃床をぴったり身体に押し付けた。
反動が大きすぎて肩が砕けなきゃいいけど。
逆に言えばそれだけ向こうに打つ手がないってことだから痛いくらい我慢しなきゃ。
 これだけの威力があればどんな硬い鎧でも薄紙を貫くのと同義。
それにあたしは絶対に的を外さない。確実にあのアバズレを殺せる。

――――――え?どうしたの?あぁ。今は鎧着てないんだっけ。じゃあぐちゃぐちゃだなぁ。あはっ。

 あたしの笑い声に合わせてお兄ちゃんも可笑しそうにお腹を抱えた。
早く殺したいね、お兄ちゃん。人差し指がトリガーを引きたくてウズウズしてる。

――――――もう。酷いなぁ。ちゃんとあの女が来るまで我慢できるよ。
 いつまでも子供扱いするんだから。あ、でももう少ししたら、あたしがちゃんと大人になったって解るよ。
えへっ。お兄ちゃんのえっちぃ。
 ……うん。そろそろだね。あの女の匂いと足音がする。それじゃあ、見ててね。お兄ちゃん。

すっ、とお兄ちゃんが見えなくなったけど、あたしを後ろから抱きしめてくれているのが解った。


 風に乗ってあの女の匂いがあたしの鼻に、足音が耳に届いてくる。…もうすぐ此処に来る。
神経を標的に集中させようと、右手でしっかりと銃を握り、左手で銃身を支え直した。


――――――――――――さあ、狩りの時間だ。
709Bloody Mary 2nd container 第十九話A ◆XAsJoDwS3o :2006/07/08(土) 23:39:46 ID:Hwfsl8CS
ここまで。

>>615
驚きました。
以前NSをかじった身としては驚嘆の一言です。
710名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 23:43:41 ID:PRd4RbCI
マローネキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
見事なサイ娘さんに作者様の技量を見た(*´д`*)

今日の夜の作品大量投下はさながら世界嫉妬名作劇場のよう
711名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 00:10:10 ID:SyJQtgP5
お、オヤシロさまの祟りだーw
712名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 00:23:31 ID:81nUqge2
マローネサイ娘全開キタキタ━━━━━━(゚∀゚≡゚∀゚)━━━━━━!!!!!!!!
713名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 02:52:44 ID:+squiupN
脳内お兄ちゃん装備きたーw
714 ◆tVzTTTyvm. :2006/07/09(日) 06:04:19 ID:h4Z58lzq
>>357
阿修羅様毎回の収蔵と今回もタイトルありがとう御座いました
自分は題名考えるの苦手なので助かっております
ただ題を「メトロノーム」にされた由来、若し差し支えなければ教えていただけますか?
あと文中の区切りの話数の「3」が表示されてません
それと最後の一文の改行は

 何故ならそれを認識する頭は其の瞬間ダンプのタイヤによって
原形を留めぬほどに潰されてしまったのだから。

に変更願います どうぞヨロシクお頼み申し上げますm(_ _)m

>>2が賛否両論起きてましたが自分としては面白かったしイイ刺激になりました
あの様にピックアップされた事であえて逆を付くように書く

すなわち
あえて最後に勝つヒロインを真っ先に出し
幼馴染で姉的な本来不利な属性もちを後手に回らせながらも勝たせ
対抗馬は性交渉を先に制して
妊娠という最強カードを手に入れながらも
最後には敗れる
そうしてこの作品が出来たのですから
715名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 13:47:52 ID:eabtL87P
>>615
すごいですね!
俺にはこの修羅場を作り出す能力がないのかもしれないと
実感させられましたよ・・・
716山本くんとお姉さん2.5 ◆RiG2nuDSvM :2006/07/09(日) 19:02:02 ID:SyJQtgP5
ノシ おひさしぶりス。

「山本くんとお姉さん2」のおまけシナリオ、
「山本くんとお姉さん2.5 〜『ちぃちゃんのアルバム』」がマスターアップしたので投下します。
おまけシナリオと言いながら、妙に長かった「2」と同じ分量があります。
もうおまけになってません。なのでタイトルが「2.5」です。
なお「3」はやっぱり冬です。どのポケットをひっくり返しても冬です。ごめんなさい。


本作は「【第一部】→【インターバル】→【第二部】」という三部立てになっています。

【第一部:ちぃちゃんの片想い】<1>〜<4>
【インターバル:山本くんのアレ】
【第二部:ちぃちゃんのアルバム】<5>〜<9>

こんな構成です。
まずは【第一部】の<1>を投下します。ただのプロローグです。
<1>ここから2レスぶん↓
――――――――――――――――――――――――――――――
717山本くんとお姉さん2.5 ◆RiG2nuDSvM :2006/07/09(日) 19:03:03 ID:SyJQtgP5


山本くんとお姉さん2追加シナリオ


    山本くんとお姉さん2.5 〜『ちぃちゃんのアルバム』


※前作(「山本くんとお姉さん」「山本くんとお姉さん2」)をプレイしていなくても遊べますが、
 プレイしていないと、一部キャラの行動やオチが理解できない可能性があります。
※作中時は、「2」の数日後に設定しています。(五月下旬〜六月上旬)

>でてくるひと
比良坂千草…ちぃちゃん。「2」の<6>で登場した里香の友人。三つ編みのおさげっ娘で気が弱い。
      本編では、里香の内心で「私が引き立つ」と評されていた。誰かに片想い中らしいが……。
山本秋人…山本くん。姉と二人暮らしの主人公。基本的に姉萌えだが、空気を読むのが少しだけ苦手。
藤原里香…山本くんに恋する同級生。おとなしい系だが、本音と建前はしっかりと使い分ける。嫉妬深い。
飯田真琴…まー子。里香と千草の友人で、体育会系の世話焼き。やはり里香には引き立て役と評された。
矢島孝輔…名前だけ度々出ていた、山本くんの親友。バスケ部所属。
山本亜由美…弟を溺愛するキモ姉。今回は脇役お姉ちゃん。「2」のラストで告白された気もするが、
      弟の様子が全く変わらないので戸惑っているらしい。……でも、その辺のお話は「3」で。
山本梓…山本くんの従妹。見かけ上は冷静だが、キモ姉への激しい憎悪に身を焦がす。今回はチョイ役。


【第一部:ちぃちゃんの片想い】


――里香ちゃんたち、早く付き合わないかな……

――早くくっついちゃえばいいのにな……

――そうすれば……


<1>

………
……



 少女が写真を眺めている。


 飄々とした少年が、写真の中から微笑みかけてくる。
 少女は切なそうに、そっとかき抱いた。
 
「はぁ……」

 溜息。
 こみ上がる熱い吐息が、想い人の名を乗せて、呟きになる。

「こうすけ……くん……」

 その愛しい響きに、彼女は酔いしれる。
  
「すき……」
  
  
 ―――矢島孝輔は、少女に、恋い慕われていた。
718山本くんとお姉さん2.5 ◆RiG2nuDSvM :2006/07/09(日) 19:05:28 ID:SyJQtgP5
 …
 ……
 ………
 
 ぺた。
 ぺた。ぺた。
 
 少女は大きい方のアルバムに、写真を戻す。
 手元に残した何枚かのお気に入りは、定期入れの中へ。
 彼女にとってはこの革ケースだって、小さな小さな――アルバムだ。
 これがあるだけで、いつでもどこでも彼と一緒……写真の中で笑う彼、想い人の矢島孝輔と。
 
 
「ふぅ……」

 写真を仕舞い終えて、また溜息。
 ――でも。嗚呼、悲しい哉。
 今度の冷めた吐息は、なんか無関係な人名を乗せて、ぼやきになる。

「山本……くんの……」

 その甲斐性なしの響きに、彼女は目を吊り上げる。



「まぬけ」




 ―――山本くんは、主人公なのに、コキおろされていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――
<1>ここまで↑
こんなプロローグだけじゃ意味不明ですので、今日中に<2>を投下します。
ちょいと容量喰いそうだから、次スレの方に浮気。
分量7レス分あるので、12スレが混雑していない時を見計らいます。

なお、ちゃんと山本くんのお話なので、NTR嫌いの人もご安心を。
719名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 20:17:16 ID:drpzJ4Uo
wkwktktk
720名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 20:17:47 ID:REFPfF7B
>>山本くんとお姉さん
                         ○
                                   ○
            ○
                           ○
                   ○               ○         ○
   ○
          ○              ○       ○
                    ○ 、=ー-、     ○           ○
              ○        i台゙,.,iiヽv-..,,_
                i⊃へ_,,./'""",.ヽ iっ,_ _>-、      ○
  キタ━━━━━━━━━日、_//i;;;i:::::/-'C" 彡i.,,...二>○━━━━━━━!!!!
                 "'" ̄'-l;;:"Y'"  ちヽヲー-''"
      ___        _,........,J;';;::':-Z..>''"○               ○
     _ ┐  /     ,.-'"''' ,"i l   ̄二 ̄l    ○
    / 'rlご ┥     i,,. 〉-へ..,, ヽ__i";:=ミi          ○
    |  |゙ `jエ |〈゙',)   "ミ;,..⌒ケ ̄ |,.ヽ  ノ)
    ゙l,,,i´ /,/,ノ"r      ヽニ" L、  ト√,,"〈_○
   ,r_,ノ''こ!、,,┴.    _..ノミ ,,...」  ヽiミ彡/i
   |  ‘''く′ ,/ │    ヽ--'" ○   \="!、 ○           ○
  .r'ヘ,、  `'イ゙>'" ○             )三 <     ○
  .厂|,`'-,,  .|'ヽ、               ヽ---'"
  .〜へ-―‐^''ー○           ○
721名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 20:20:42 ID:81nUqge2
山本くん再臨キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
722名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 20:40:53 ID:JTvDRLKc
山本くんキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!!!
723名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 21:02:40 ID:AX+2Bhpm
山本君お久しぶりキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
724名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 21:15:49 ID:FpolQ4mD
ktkr
725『とらとらシスター』埋めネタ:2006/07/09(日) 23:27:11 ID:MWqs8Qam
Q.タイトルの由来は何ですか?
A.酔っぱらっているときに思い付きました。
泥棒猫→猫科で最強なのって虎じゃね?→それと対抗出来るのはやはり虎だ→なら皆虎に

Q.たらこスパとは関係ありますか?
A.気のせいです

Q.プロットに無いと書いたのにまた交渉の文字が?
A.すみません

Q.進みが遅くない?
A.予定通りです

Q.この企画、痛くない?
A.今は酔っぱらっているので平気です
726名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:49:08 ID:D20pQQGX
深酒すぎると幻覚を見ます。
言葉様とか黒楓とか神画廊の胡桃とか
727名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 09:06:21 ID:5yGdDc/z
>726
マジで!?
ちょっとアル中になってくる!! 言葉様ー!!
728名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 09:21:56 ID:spRsWhGL
次スレはどうすんだ?
729名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 09:50:20 ID:+x2bDeiZ
>>728
( ゚д゚)ポカーン
730名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 09:53:55 ID:spRsWhGL
もう立ってたのか
スマンかった
731名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 10:20:58 ID:PIPBuUGc
>>726
マジで!胡桃見てー!
>>725
とらとらシスターの作者様いつも楽しく見てます
姉のエロさが・・・溜まらない
732名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 16:53:49 ID:DtWD+Xtk
虎徹が意図しているのは交渉ではなく
もっと一方的な、折衝とか説教、または誘導や籠絡の部類に入ると思った。
意外なところで虎の血を露わにしたものだ。虎徹、恐ろしい虎…!
733名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 05:32:55 ID:4HmfDSUV
疾走の生方錯耶さんのイメージが某鶴屋さんなのは俺だけかい?
734名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 13:26:24 ID:bmOplEeP
          、  /  /   /
   ,>─-、  \/  /   /
   ,.ィ‐-,.、 \  \/   ′
     /rソ\ ヽ /    /
   ゝ ._¨´   }  /    /
      ` ‐-'′/    /
          /   /
         ∠ ,. -─ノ
‐- ._     /_/´
 /´    /´
´      /
.  _,. - ´

735名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 14:05:40 ID:HQx5vI4W
,
736名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 14:29:23 ID:eQcAtJ1k
>>735
七誌君、ほら私たちの子供よ
まだ小さいからわからないかもしれないけど
私たちの子供ならきっとかわいいしパパとママの愛情をしっかり注げるよ
もちろん、責任取ってくれるよね?

した覚えがないってひどいよ!
七誌君が無駄にしてたのを私が七誌君のことを思ってちゃんと入れるべき場所に入れてあげただけじゃない
本当だったら七誌君と一緒に子供を作りたかったけど恥かしがり屋の七誌君が手を出してこないから・・・

もう・・・逃がさないんだから・・・
他の女なんて見ちゃ駄目だよ?
3人で幸せな家庭を築こうね♪
737名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 15:18:51 ID:PcI6HSfm
>>736の想像力に脱帽
738名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 15:19:57 ID:aCPAcYpe
       _,;‐-、_   .______,
      /,. ..::.  'i∠三;;;:.:`‐、.  
      し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)  
        `"/ _C) . .:.:_.::;`ト-‐、
          i.;'"゛  . : :.::C)::::!:.:;;` `i
       ,,イヾ、  .: : . `;::;ノし;:.. 丿
       / `‐、`'ー、,,___,.ノ;(  し'゛  うめだよ……
      ,ゞ、 ,,イ`マニヽ-‐".}   
      ノ`''ミヽ!_ ‐く,、:.::).:.:.ノ  

  __,冖__ ,、  __冖__   / //  
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /  
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    /´        r'゚'=、
  __,冖__ ,、   ,へ    /        / ̄`''''"'x、
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//  ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /_,,/    i!        i, ̄\ ` 、
   n     「 |      /   |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
   ll     || .,ヘ   /    1  i・ ノ       く、ノ |    i  i,
   ll     ヽ二ノ__  {     {,      ニ  ,    .|    |  i,
   l|         _| ゙っ  ̄フ   }   人   ノヽ   |    {   {
   |l        (,・_,゙>  /    T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
   ll     __,冖__ ,、  >     },  `ー--ー'''" /       }   i,
   l|     `,-. -、'ヽ'  \.     `x,    _,,.x="       .|   ,}
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー       `ー'"          iiJi_,ノ
   ll     __,冖__ ,、 |
   ll     `,-. -、'ヽ' iヾ
. n. n. n  ヽ_'_ノ)_ノ  {
  |!  |!  |!     へ l 
  o  o  o   /
739名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 15:21:19 ID:7x8lKuf9
>>736
鬼才現る
740名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 17:07:42 ID:eQcAtJ1k
冷静に考えたら嫉妬でも三角関係でも修羅場でもなかった・・・
どちらかと言うとヤンデレ・・・

埋めネタぐらいしか書けない自分が憎い
作者様がたのような長編が書ける才能があれば・・・
741名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 00:30:30 ID:2fZxUnTz
ヤンデレスレが静か過ぎるから良かったよ。
短いの何度か書いてたら自然と長くなったりすることもあるさ。
742名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 00:18:01 ID:vjTBfBhE
743名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 06:16:20 ID:mlOhp/29
梅って誰?
744名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 08:24:50 ID:XXNz9Bhg
明治から昭和初期の修羅場のパイオニアだったが初めてメディアに乗った阿部定にその座を譲る
745名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 19:14:33 ID:FkdzuRuN
この頃このスレの作品見る時にBGMとして、阿修羅姫や中島みゆきを聴いている俺がいる
746名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 17:02:09 ID:+BURhBnm
小学校のとき、七誌君は私が梅って言う名前で馬鹿にされた時守ってくれたよね
「俺はその名前、可愛いと思うよ」そう言ってくれた時凄くうれしかった。
そしてその時から七誌君のことがずっと好きだったの
だから中学校、高校とずっと同じところにしてきたし、隣にいつも居るようにしたの
そうすれば七誌君に寄ってくる悪い虫が付かないと思って・・・
でも私が風邪で休んでる間に七誌君に寄ってきた子が居た。
今までずっと私の場所だった七誌君の隣に踏み込んできた
許せない、七誌君のその場所はずーっと私だけの場所。

一緒に居続ければ七誌君だって男の子だもんね
エッチなことしたくなった時に周りに女の子が居なければ私しか眼に映らなくて
手を出してくれると思う。そうしたら既成事実もできるし七誌君とずっと一緒に居られるよね
そう思ってずっと一緒に居たのに、少し風邪をひいて休んだだけで悪い虫が寄ってきた
七誌君のこと信じてるからそんなことはないと思うけど、向こうから無理やりってこともあるから
ものすごく不安になった

ものすごく不安になって、もう待ってられなかったの
だから、私のほうから襲う形になっちゃったの、ごめんね
七誌君にも私とのはじめてのエッチに計画があったかも知れなのに・・・
でもね、七誌君、責任はとってね♪
七誌君の苗字、七誌君が可愛いって言ってくれた私の名前にぴったりだと思うの
あと、馬鹿にされない可愛い名前も決めようね♪
誰のって決まってるじゃない


私たちの子供のね♪
747 ◆QdqfzIJt7U :2006/07/18(火) 21:22:40 ID:WpcYGqOl
埋めも兼ねて、>>615のゲームの良かった点や悪かった点など
評価を聞かせて下さい。
それがあれば次のゲームで大変参考になるので、
お願いしたいなぁなんて思ったりする次第です。
748名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 21:30:53 ID:OtnzSj7k
しぶとい子。さっさと死ねばいいのに
749名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:25:50 ID:cLZ0XQAh
>>747
音楽、SE、システムともにお見事です
シナリオも楽しませていただきました
個人的には小夜グッドエンドが欲しかった・・・
いい依存っ子だっただけに・・・(;つД`)
|ω・`) まぁスレ的にはかなりグッドエンドだったが
750名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 23:39:54 ID:Nd1cz30D
感想です。ネタバレ有りなので未プレイの人は注意のこと。

小夜子がお気に入りです。メインルートで最初から最後まで生き生きしてたので。
佐久間さんはいろんな意味で小夜子に喰われてたような。膜とか。
森を出る系のエンドでは、それぞれ小夜子がどんな気持ちでいたのか想像するとちょっとせつなくなります。
特に最初の選択肢で終わるやつ。あれ可哀想。
全体を通してみると電球が好きでした。ほんとにやっちゃうのか!? とあの辺が一番ドキドキしてました。
小夜子たんの拷問はスレと違う意味でド修羅場だぜ。もっと見てみたかった。獣姦破瓜とか。
素敵な能力設定なので、想像力の限界に迫るエロ&グロが見たかったなあ。具体例は思いつきませんごめんすみません。

初ENDは小夜子の誘惑に耐えて円満に森を出ました。
一度目は拒んで二度目に受け入れるという完璧な優柔不断計画が裏目に。
次が佐久間さんともやっちゃって森から放り出されました。
下半身の赴くまま突き進んで修羅場を呼ぶ完璧な優柔不断計画が裏目に。

贅沢な話ですけれど、やはり複数選択肢とフラグで分岐するような造りだったらよかったなと。
例えば、佐久間さんとやっちゃったときに、嫉妬フラグの有無で展開が分かれるとか。
選択肢を見ただけでは、どう話が進むかちょっと想像しにくかったというか、
思わせぶりな破滅フラグを一つ一つ積み重ねてみたかったです。
あの黄色文字のメッセージにはぞくっと来ました。ああいうプレイヤーへのメッセージは胸に来るものがあります。
特定ENDを見ると選択肢が増えるのはノベルゲーの醍醐味ですね。

プレイ時の細かな記憶を掘り起こしてみます。
車椅子は楽か? と瞬間思った。後ろから押してもらうこと前提だったんですね。
電話の選択肢を見て。病院に行くを選んだらこれ絶対殺される、となぜか思った。
電話を切ったあとの佐久間視点の内容にかなり意表を突かれた。ここから完全に没頭しました。
小夜子と家(または犬。低い声の主)との意識が別個に存在すると思っていた。例えば家の呪いに取り憑かれた依り代が小夜子、みたいな。
小夜子のヤンデレっぷりに惚れた。敬語なのがポイント。
佐久間さんが最後まで常識人なので対比効果で小夜子倍率アップ。佐久間さんごめん、君じゃ満足できない。
でも死に際の佐久間さんの姿にはちょっと胸を打たれる。
主人公の死については全然気付けなかった。あとなんとなく河原崎家2を思い出した。
犬もちゃんと居るものだと思っていた。ミスリード用に、ほんとに無関係な野良犬がちょろっと出てきてもよかったかなと。
おまけの飛ばしっぷりに、ちょっとついて行けない気持ちを味わう。ゴシカァンとかそんな無理に使わなくても。
コンプ後にwaldの訳を調べて余韻にひたる。

とりとめなく書いてみました。ちょっともう思いつかない。
ちなみに制作期間がどのくらいだったのか聞きたいっす。
751名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 11:20:02 ID:ZeVHVknT
       _,;‐-、_   .______,
      /,. ..::.  'i∠三;;;:.:`‐、.  
      し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)  
        `"/ _C) . .:.:_.::;`ト-‐、
          i.;'"゛  . : :.::C)::::!:.:;;` `i
       ,,イヾ、  .: : . `;::;ノし;:.. 丿
       / `‐、`'ー、,,___,.ノ;(  し'゛  もう埋めだよ……
      ,ゞ、 ,,イ`マニヽ-‐".}   
      ノ`''ミヽ!_ ‐く,、:.::).:.:.ノ  

  __,冖__ ,、  __冖__   / //  
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /  
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    /´        r'゚'=、
  __,冖__ ,、   ,へ    /        / ̄`''''"'x、
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//  ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /_,,/    i!        i, ̄\ ` 、
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  |!  |!  |!     へ l 
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752名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 14:11:44 ID:3RuwLIEN
GJでした。とてもぞくぞくしました。
ほのぼのとしたおまけもよかったです。
753名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 14:13:33 ID:jbk1MrgI
感想だけは言っておくぜ
面白かった!次も期待する!
754名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:36:47 ID:LmgImtdX
もう容量が残りわずか・・・
>>615の感想
小夜子&佐久間さんが最初に顔合わせしたとき、にらみ合うシーンがすぐ終わっちゃったからちょっと寂しかったけど、それ以外はGJ。
オマケのエロゲー風のぶっとんだお話も楽しませてもらいましたよ。
755名無しさん@ピンキー
修羅場や嫉妬に期待してたら普通にシナリオに感動してしまったw
最後の二人の会話いいなぁ。
修羅場や嫉妬成分が2割ホラー4割泣きゲ4割って感じ。
とにかくGJ!!

佐久間さんもロリにしかみえないとか(ry