【涼宮ハルヒ】谷川流 the 16章【学校を出よう!】
あぼーん
あぼーん
あぼーん
>>1 乙!
しかし、これじゃミスまんの評判まで下がるじゃんか。
流れも気にせず投下させて頂きます。
非エロだしツマランでしょうが、スレ汚し失礼いたします。
涼宮ハルヒの評価
二年になりクラス替えが行われても、ハルヒが俺の後ろから居なくなるという事はなく、
やはり同じクラスになった谷口と国木田などに特に感慨を覚えるわけでもなかった。
今年の自己紹介でもハルヒは去年のようにぶっ飛んだ事を言い出すのだろうか? など
心配とも期待とも取れないどっちつかずな思惑は見事に空転し、涼宮ハルヒが発言してお
きながらも比較的平和に午前が終わった。
「ねぇねぇ、ちょっといい?」
昼休み。ハルヒが学食へ向かい俺も鞄から弁当を取り出し蓋を開け、いざ昼飯をと箸を
取り出したところで新クラスメイトの女子に話しかけられた。珍しい事もあるもんだ。
「えっと…涼宮さんの事で聞きたいんだけど」
ますます珍しい。ハルヒのことで話しかけてくる女子なんざ朝倉以来だ。
近頃はハルヒも入学当初の刺々しさは既になりを潜め、今はクラスの女子達とも普通に
会話が出来るまでに成長した…というより、元に戻ったと言う方が正しいだろうか?
とにかくわざわざ俺に聞くよりハルヒに直接聞いた方が早いだろうに。
「うーん、そういうんじゃなくて、…あなたってSOS団に入ってるんだよね?」
確かにそうだがそれこそ今更だ。
俺がSOS団という不条理集団の最初の被害者であることは学年を問わず、周知の事実
となっているはずだろう。そんな俺にハルヒの何を聞きたいというのだろう?
愚痴でも聞いてくれるのだろうか?
「そのSOS団ってさ…その、美人が多いじゃない?」
何を言いたいのかが全て分かった気がした。聞き難そうな理由もな。
つまり北高のアイドルや無口な万能読書少女、黙って座れば悪い虫も集るだろう団長に、
ついでに去年の文化祭でやっぱり女子にモテているのが妙に新鮮だったスマイル野郎等と
いう、北高のカオスゾーンでありながら美の楽園たるSOS団に、何故俺のようなどこを
切っても平凡な男子高校生があの中にいるのか不思議で仕方ないという事だろう。
余計なお世話だ。
「でもさ、やっぱり気になるって言うか…。もしかしたら涼宮さんってあなたの事」
それはありえん。断言できる。アイツは恋愛なんて一時の気の迷いと言い切った女だ。
生まれてくる時に性別を間違えてしまったんじゃないかと思うね。
恋をするなら大志を抱け。そんなヤツだよ涼宮ハルヒは。
その後もハルヒやSOS団について妙に聞き出していたが、
「ありがとう。よく分かったわ」
と簡単な礼を言い、友人であろう女子達の方へ向かうと早速さっきの事を話し始めた。
おいおい、せめて俺に聞こえない位には喋ってくれよな。
「ねぇねぇ、どうだった?」
「どこか変なところあった?」
「うーん…大して何処が変ってのはなかった。でも普通過ぎるところが逆に怪しかったわ」
………
……
…
その日の放課後。
新クラスメイト女子に論われ深く傷ついた俺は、朝比奈さんのお姿を見て一刻も早くこ
の傷を癒すために文芸部室へと駆け込んだ。こんな時でもノックは忘れずに。
「どうぞ」
優しく出迎えてくれたのは、心のエンジェル朝比奈さんを含み団長涼宮ハルヒを除いた
SOS団メンバー達だった。実に都合がいい。
長門がいつも通り分厚いハードカバーに目を落としているのを確認してから自席に座り、
朝比奈さんの淹れてくれた心まで温かく潤うお茶を頂きつつ、俺に下された残酷な顛末を
話した。
「それはそれは、災難でしたね」
いつもの人畜無害なスマイルを無料配布しつつ吐き出すセリフがムカつく古泉。黙れ。
ハルヒに引っ張り回される前までの俺の人生目標は目立たない事だったというのに。
あの時ハルヒに話しかけたがために、俺は新しいクラスメイトに怪しい等と批評される
奇怪な凡人、今一つよく分からないから取りあえず怪しい人という実に不名誉極まりない
レッテルを貼られたのだ。引き篭もってもいいだろうか?
「でも、わたしも涼宮さんに連れて来られなかったら美味しいお茶を淹れられなかったと
思いますし、悪いことばっかりじゃないですよ」
恐らくもう誰が見ても本職と疑わないだろうまでにすっかり馴染んでしまったメイド姿
で微笑む朝比奈さん。俺もあなたのそのお姿が見れることには何の異存もありませんよ。
「僕も涼宮さんには感謝していますよ。確かに厳しい批判かもしれませんが、それも嫉妬
だと聞き流せるくらい、充実した一年を過ごしたと自負していますからね」
俺は自分への評価は真摯に受け止めるんだよ。
古泉は肩をすくめるとオセロを持ち出してきた。いいだろう真っ白に染めてやる。
黒を譲って一つの白も譲らない決意を潜めて古泉の相手をしているとふと思った。
こいつらは俺をどう見ているのだろう?
まあ、悪いようには思われてはいないはずだ。
これまでの厄介事で俺の力だけで役に立ったことはほぼない。
そりゃ何度か世界を救っちゃいるが、良識ある人間なら誰だって同じ判断を下すだろう。
俺はいつも最終的な判断を下すだけで、その他の面倒なことは全て長門達に任せっ切りだ。
何で俺にそんな大役が回ってくるのかは分からんが、それこそ信頼されているんだろう。
ただなんで俺がそこまで信頼を受けられるのかが不思議ではある。
俺は至って平凡なはずなんだがなぁ…。
「どうしたんですか? 何か浮かない表情ですが」
いつもの微笑みの仮面に若干心配の色が混ざった面を向ける古泉。
「もしかして、クラスメイトの人に言われた事がそんなにショックだったの?」
今にも泣きそうな小さい子を相手にするように訊ねる朝比奈さん。
「…………」
無表情だが、決して無感情ではない眼差しをくれる長門。
どうでもよくなったね。それこそクラスメイトに怪しいとまで言われたこともな。
下らない事で悩んでも本気で心配してくれる仲間が目の前に3人もいるんだぜ?
他人に何て言われようが関係ない。こいつらを仲間に持つことが一体どれだけ誇れるか。
今更誰に言われなくてもとっくに分かってるからな。
「いえ、もう大丈夫ですよ。心配かけてすいません」
朝比奈さんと長門に笑顔で応じ、古泉には黒を4枚裏返して応えた。
あぼーん
そして見計らったようにドアを開ける音が轟く。
「いやーごめんごめん。ちょーっと野暮用でさあ、遅くなっちゃったわ!」
そう言って入ってくるのは我らがSOS団団長殿。何だか笑顔がいやに眩しい。また何
か思いついてしまったのだろうか。
俺の懸念も知らずハルヒは団長席に就くと、朝比奈さんの淹れたお茶を一気に飲み干し、
湯飲みを片手に団長机に飛び乗ると高らかに宣言した。
「皆さん新学年です。とくれば新入生、そして新入団員です。SOS団も新入団員を迎え
たいと思います。しかし、当然ながら普通の人間ではダメです。何かしら特殊な属性等を
備えた人物を選んでください。それじゃあ全員、新入団員を捕まえに行くわよ!」
勧誘からあっさり捕獲に変更して意気揚々と部室を出ようとするハルヒ。
…一応聞いておくか。
「ハルヒ、お前的に俺はどういう属性なんだ?」
するとハルヒは満面の笑みでこう答えた。
「全てをひっくり返すツッコミキャラよ」
目眩がした。
あぼーん
以上です。
なにやら途中でわざわざ暇人にかまう奇特な方がいたようですが、
お付き合い頂けたら幸いです。
では、失礼いたしました。
乙。楽しませて貰いました。
乙ッ!!
だけど、沈静化するまで
しばらく投下とかしないほうがいいかもね。
21禁なのにエロ無しばかり投下するから
荒らしに粘着される
やっぱりキョン=フーミンっていうポジションは確定なのかね。
>>16 過去ログと
>>1見れば解ると思うけど、
このスレはエロ無しOKだよ。
>>15 荒らしは反応すると喜ぶので、
いちいち相手せず、
(「沈静化」云々も言わずに無視して)
SSを投下し続けるのがいいと思いますよ。
気になるならNGワード登録なり、
削除以来なりするのがよろしいかと。
×削除以来
○削除依頼
そうかね。
そんじゃそういうことで。
J( 'ー`)し さんねんまえのわたしへ。げんきですか。いま同期してます
(`Д) うるさい死ね へんなエラーデータ送んな殺すぞ
J( 'ー`)し ごめんね。有希はじめて同期したから、ごめんね
(`Д) うるさいくたばれ、エラーデータ送んな
J( 'ー`)し キョン♥くんに頼まれたのでメガネはずしておきます
さんねんまえのわたしもはずしてあげてね♪
( Д)
>>13 久々にセクシーコマンドー外伝を読みたくなったよ。
荒らしに粘着されずに済ましたいなら、htmlで文章を編集してうpするってのはどうよ
スレの容量を節約できる、文体を調節できる、行間を設定できると良いこと尽くめじゃないか
タグ打ちがめんどくさいならフリーの編集ソフトを使えば良いし、実際俺もそうしてる
>>24 >荒らしに粘着されずに済ましたい
そのように何らかの形で反応するのが
荒らしにとっての喜びとなるかと思われます。
反応せず無視して
NGワード登録なり、削除依頼なりで対処し、
淡々とスレにSSを投下し続けるのが良いかと思われます。
『気軽に書ける』のがここの意義だから、書く人に余計に負担が掛かるようだと、多分投稿が減ると思うよ。
>>前スレ778の続きをいつまでも待ってる
んじゃ空気を読まずに馬鹿ネタ
復活した赤ブルマ姿の朝倉がグルカナイフ両手にキョンに襲いかかる!
「……させない」
そこに立ちはだかる青ブルマ姿の長門
いつのまにやらレズ合戦へ
前スレで似たようなの書いたじゃねえか。却下
「第二次スーパーブルマ大戦ε 青ブルマ編」
謎の敵に襲われるキョン。一人孤軍奮闘する長門。
しかし、今その体力もつきようとしていた。
「そこまでよ!長門さん待たせたわね!」
颯爽と登場する朝倉涼子。(当然高いところにいる)
ものすごい情報操作で敵を蹴散らす朝倉。キョンと長門の運命やいかに?
どうやってエロくするつもりだ。却下
さて、どんなブルマ物にするか思案中。
朝比奈さんのメイド衣装の下にブルマ、
というのは、
>>30氏にとってフェアかファールかちと気になった。
長門にはスク水の上からブルマが最強
ブルマは紺がいいな…
>>30 オシリスキー大佐、やはり尻に関わる展開ですか?
この板って行数制限58行ですか?
>>33 同感(・∀・)イイ!!
SSの方はまだ制作中です・・・。
>>35 BBS_LINE_NUMBER=30
BBS_MESSAGE_COUNT=4096
どなたか、まずハルヒがキョンを連れて映画帰りに繁華街を散策中、
やおら力ずくでキョンをホテルに引きずり込むところからお願いします。
映画第二段と称してハメ撮りを画策するハルヒ・・・
>>38 そこまで具体的ならば、自分で書いたほうが良い物が出来るぜw
>>41 >>38は不可抗力でなく積極的に引きずり込むハルヒがお好みだそうだ。
ま、例のあれはプリントアウトしてあるがな。
>>42 自分は、txtファイルにまとめてあるがな・・・
流れが落ち着いたかな
嫁ハルヒの続きキボン
喜緑さんの愚痴
「ええ、本当、困ってしまいます。
まずユキちゃん。あの負けず嫌いな性格は何とかならないのでしょうか。
軽はずみに情報操作を行ってはいけないと毎度厳しくお説教しているのに
今日もまた生徒会室で派手にやらかしてしまいそうになりました。
それに涼子。何でも自分が中心で無いと気が済まない子でした。
そもそもの性格設定に問題があったように思います。
弓状列島に降りてからは刃物なんていう危ない趣味に迎合しちゃって……。
だいたいユキと二人して大変な目立ちたがり屋なので困ってしまいます。
かたや学級委員でクラスを仕切り、近いうちに学年をも仕切る予定だったようです。
そしてもう一方は今となっては隠れたアイドルとして君臨中。
ユキは表向き大人しそうにしているだけにたちがわるい、言えると思います。
え、私ですか?
私はちゃんと任務を最優先にと思って頑張っていますから。
不用意に目立ったりとかそんな事は全然ないですよ。本当に。
目立ちたい、とか全然思ってないですから。
思ってないですから」
喜緑さんの愚痴「もっと出番ください」 了
ネタが思い浮かばないので、小ネタに逃避。
そしてその小ネタでネタ切れ
なにやってんだ。
十分目立ってますよ<生徒会書記
面白ければおk
喜緑さんは和む
憂鬱読んでて思ったんだけど、「この中に宇ちゅ(ry」のくだりの中に異世界人あるのに、いまだSOS団にいないのは禁則?
>>46 パソコン部の部長にもちょっと言及して欲しかったかな。
でも今のままでも充分萌和む。GJ!
>>52 このスレじゃ禁則だな。スレ違いだ
谷川スレ行って来い
ついでに言うと15498回既出のネタ
>>52 古泉をつれてきたときに宣言したSOS団の活動目的には
「異世界人」は入ってなかったからいいんじゃないの?
長門にジャージを貸し与えたい
涼宮ハルヒの期待で思い出したんだが、なんでSS保管庫には5スレ目以前の作品が無いんだ?
小ネタ
彼の視線が向かう先を調べてみた。
朝比奈みくるの胸と顔を交互に見ていることが多い。胸のほうがやや比率が高いようだ。
彼がわたしを見る時は、わたしの目を見ている。胸に視線を移すことはほぼ無い。
さらにわたしと彼女を見ている時間の比率でも、彼女のほうが圧倒的に多い。
その差は、胸の大きさなのだろうか。
このインターフェイスの外観を変化させれば、彼がわたしを見る時間が増えるかもしれない。
……。
情報統合思念体に外観の変更を申請したが、却下された。
当然かもしれない。身体的特徴が、短時間の間に変化することはありえないからだ。
わたしは手元の本に溜め息を落とした。
A「いやだからな、長門有希の乳はちっちゃいほうがいいんだって」
B「そうだそうだ! そもそも俺はメガネを外すのだって嫌だったんだ」
C「ちょい待て。メガネは無いほうがいいだろ」
D「なんでやねん、メガネがあったほうがええて」
A「落ち着けお前ら。とりあえず、俺たちは貧乳好きってことで一致してるだろうが。喜緑だって小さいしな」
B「ああ、あれはいい子だ。ちゃんと言うこと聞いてくれるし」
C「朝倉なんか酷かったもんな……。胸をちっちゃく設定しようとしたら、怒るし」
D「ほんまに。なんかあの子だけ性格も明るくさせられよったしな。俺らはもっと大人しい子が好みやのに」
A「そう言うなよ。まぁとりあえず、長門の申請は却下でいいな」
B・C・D「異議無し!」
>>58 ちょ!まて!
すっげー俗物な情報統合思念体だなw
少々聞きたいのだが、やっぱり作風は原作と同じ(一人称)じゃないとウケが悪いだろうか?
書いてみたいんだけど三人称でしか書いたことないしどうしたものかと。
まだ子どもだと思っていた娘に彼氏を紹介された父親のように頼む。
>>60 そんなコトはないと思うが。
むしろ、キョンの1人称で原作に似てないほうが叩かれると思われ。
>>57 予備保管庫ができたのが5スレ進行中の時で、
それ以前については、(掲載しても良いか)予備じゃないほうからの「返事待ち」だったと
思うんだけど・・・。結果どうなったのかな?
>>57 >>64 あくまでメーンはエロパロ保管庫でSS保管庫は所詮はバックアップだからな。
透過本編をどうするか思いつかないので小ネタを書いていたら、結構な量になったので投下。
実際長門がこんなヘマをするかは置いといて、朝倉がやけに親切に説明してくれるのも置いといて、あれ、何も残らない…
さ〜て、どうしようか・・・
IF すとーりぃ ケース1
『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室に来て』
そんな意味深な手紙(といってもノートの切れ端だが)を下駄箱経由でもらい受け、差出人をいろいろと思い浮かべてみる。
長門、朝比奈さん、ハルヒ… 出しそうな人物を思い浮かべたが誰も違うようなので、とりあえず谷口と国木田のとびっきりジョークと判断した。
部室で時間を潰し、5時半を回ろうとしたので教室に行ってみたところ、そこで待ってたのは意外な人物だった。
「遅いよ」
朝倉涼子が笑顔で待っていたのだ。 これには意表を突かれた。
「入ったら?」
朝倉が、こっちにむかっておいでおいでをしている。
その動きに、まるでトラクタービームが出てるかのごとく、俺は引き寄せられる。
「お前か……」
「そ。意外でしょ」
くったく無く笑う朝倉。 すまん、もう俺には朝比奈さんという心に決めた人がいるんだ。
「そういう話じゃないのよ」
ちょっと意地悪めいた顔になる。 …ってことはやっぱりドッキリか。 で、谷口はどこでビデオ回してるんだ?
「そうでもなくって… あなたは涼宮さんの事をどう思ってるの?」
またハルヒか… どうやらこの思いが無意識のうちに態度に出てしまったようで、
「そんな反応をするってことは、もう色々情報を入手したみたいね。」
そりゃあ長門から、朝比奈さんから、古泉から、各方面から話は聞いてるがどうも信用ならん。
そんな話を振ってくるって事は、朝倉も謎の属性があるってことか。 やれやれ、これ以上雑草のように増えないでもらいたいな。 そのうち谷口や国木田までもが「俺たち超能力者なんだ」なんて言い出しかねんぞ。
「朝倉、じゃあお前は何者だ? まさか異世界人とか言わないでくれよな。」
朝倉がクスリと笑った。 何か馬鹿にされてる感じだ。
「期待に添えなくてごめんなさい。 さすがに異世界人ではないわ。 長門さんと同じ… って言えば分かるかな?」
あぁ、あの対有機生命体人型最終決戦兵器か。
「もう、ぜんぜん違うじゃない。 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースよ。」
そういやそんな感じだったな。 で、なんでその宇宙人が俺を呼び出すわけだ?
「実は私と長門さん、確かに同じ情報統合思念体のインターフェースなんだけど、派閥が違うのよ。 彼女が主流派で、私が急進派。」
俺は適当に相づちを打つ。 ふーん、宇宙人にもいろいろあるんだな…
「急進派では、あなたに何かすれば、涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こすと考えてるの。 多分大きな情報爆発が起きるはず。」
「つまりどういうことだ? 俺に何をして欲しいんだ?」
いつの間にか俺は後ずさっていた。 警戒態勢をとりながら少しずつ後ろに。
「そうねぇ、あなたを殺せば、一番手っ取り早いんだけどなぁ…」
ナイフを手にあっけらかんととんでもない事を言いやがった。 ってかそのナイフはどこから出してきた。
「あぁこれ? そこら辺の椅子を情報変換して作ったの。 いい出来でしょ。」
そんなものを振り回すな。 俺が切れたらどうするんだ?
「あら、それもいいかもね。」
そう言って俺にナイフの切っ先を向けてくる。
その時。
天井をぶち破るような音とともに瓦礫の山が降ってきた。コンクリートの破片が俺の頭にぶつかって痛えなこの野郎!
降り注ぐ白い石の雨が俺の身体を粉まみれにして、このぶんじゃ朝倉も粉だらけだろう。
「けほっ、けほっ」
うん、朝倉も見事に真っ白だ。 しかし、それほど驚いてる様子は無い。 そのまま視線を横に向けると… なんと長門だ。
「一つ一つのプログラムが甘い」
長門は平素と変わらない無感動な声で、
「天井部分の空間閉鎖も、情報封鎖も甘い。」
その後も長門が何か言おうとしていたが、朝倉がそれを遮った。
「長門さん、まだ私何もしてないんだけど…」
「え…」
こりゃ珍しい表情を見れた。 あの長門が目を大きく見開いて、あたりを見渡している。 当然いつも通りの教室で周りにあるのは椅子と机と窓くらいだぞ。
「わざわざ天井から入ってくることも無かったんじゃないの?」
「…」
俺は天井を見上げた。 おー、まるでここだけ発破解体されたようだ。 これを長門がやったのか。
ふつ視線を戻すと、長門がこちらを見ていた。
「フライング」
え、それはどういうことだ?
長門は落ちてきた穴から上の階に戻る。 床破壊といい、お前は宇宙人じゃなくて忍者の末裔じゃないのか?
最後に上の穴から顔を出して、
「続けて」
そう言い残して、穴から顔を引っ込める。 その直後、天井がビデオの巻き戻しのごとく元に戻っていく。 これが忍術… じゃ無くて宇宙人の力か…
「とりあえず朝倉、そのナイフをしまってくれないか?」
「そうね、なんだか調子狂っちゃったし。」
そう言ってナイフを椅子の形にしていく。 というか質量的に無理が無いか?
「ま、、細かいことは気にしないで帰りましょ。」
「お、おい。 長門はいいのか?」
「いいのいいの、早く行きましょ。」
教室を出ようとした瞬間に、こんな空耳が聞こえた。 というか空耳であって欲しい。
「いじわる…」
やれやれ、後で長門のマンションにでも行って謝っとくか。
そんな俺の思いを知ってか知らずか、朝倉は、
「あ、そうだ。 私の住んでる所、長門さんと同じマンションなのよ。」
…朝倉。 俺にどうしろと。
続かない
頭に浮かんだまま書いた。
多少公開している。
OKベニーボーイ、そのまま朝倉の家に行こうか
うん、公開しちゃってるな
OK.GJBoy.
多少じゃなくて、大いに公開しようぜ。
この先も公開し続けちゃってくださいな
74 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 00:25:16 ID:+zVnck6k
ガンガレーーーー朝倉ハァハァ
というかこの投げっぱなしのネタをひろえる職人さんはいるのか…
やっぱり自分でエロ分は供給できない(´・ω・`)
拾えるなら拾って欲しいが、それについて後悔(ry
>「フライング」
に萌え死んだwww
>>75 過去ログと
>>1見れば解ると思うけど、
このスレはエロ無しOKだよ。
>>78 同感
だれが、うまいことを(ry
とおもったが、いい言葉だ・・・
>>67.68.75
続けられそうなネタなんだけど、ここからは完全に原作無視の俺ストーリーになってしまうな…
>>80 そのまま朝倉とマンションに。
部屋になだれ込んで行為に至ろうとしたまさにその瞬間に
天井をぶち破るような音とともに瓦礫の山が降ってきた。
でテンドンかなあ。
>>80 朝倉生存フラフたってる以上、もとのストーリーに戻すのは至難だしなぁ…
というかもともと生存フラグのために書いたSSだったり
あくまでIFだから
長門有希の狼狽は前回で終了。次行きます。
>>83 ほらアレだよ。六階には黄緑さんが住んでいるんだよ。
長門有希の姦計
さて、有希のリアクションは少々予想外だったものの、とにかく俺はハルヒ邸へと連行された。
まずはそのあたりから話しておくべきだろう。
なに、簡単なことだ。ハルヒはおふくろを前にして出し抜けにこういった。
「彼がどうしても勉強を見て欲しいと言うので、十日間ほど泊りがけで教えようと思うんです」
当然おふくろは渋ったね。当たり前だ。若い男女が一つ屋根の下二人きり、なんて許すはずが無いだろ。
さすがにハルヒでもダメなものはダメか……
と思いきや。ハルヒはさらに説得を続けた。自分の成績のよさ。日頃の俺との友達づきあい(大幅にマイルドにされていたが)。
家庭教師の実績。親が不在である事は故意に伏せた。さすがにハルヒもそこは理解しているようだ。
なんと、おふくろがだんだん乗り気になってきやがった。しっかりしてくれ。ハルヒとかかわると皆常識をなくしちまうのか?
それとも俺の普段の成績が悪いからいかんのか?
「うちの子の為にそんなにしてくれるなんて……本当にありがとうね」
素直に感動してくれるな我が母よ。こいつはいまどき奴隷の主人なんだぞ。
「はい! 必ずみっちり教え込んで見せます!」
その後、本当に俺の部屋から勉強道具一式を運び出させて、ハルヒの家に向かったのだった。
本当に勉強もさせるらしいな。恐ろしいことに。
「ブツブツうるさいわよ、キョン! とっととそれ置いて来なさい!」
すでに俺はハルヒの家の中にいる。こんな状況でなければ家の調度品とかを眺めているところなんだが。
そんな気も起こらんね。せっかくハルヒの家に来たってのに。
「この状況じゃ独り言も言いたくなるさ。ついでに溜息もつかせてくれ」
「不許可よ。まずは勉強からね。言った以上は本気で教えるから」
荒野に水一滴もなしってな心境だよ、俺は。
ぼやきつつも思うが、これはこれで案外楽なのかもしれない。こうしている間は、奴隷云々とは無関係だからな。
ハルヒと二人きりのまま、刻々と時は過ぎてゆく。あたりが真っ暗になって俺の腹の虫が通算三度目くらいに鳴いた頃、
「そろそろご飯にしましょう。キョン、あんた作って」
まじですか。俺はもう今までのしごきでヘトヘトなんだが。
「あたしだっておなかは減ってるわよ」
くぅ。至極まっとうな意見だ。しょうがない、俺が作るか……と言っても、料理なんて出来んのだが。
とにかく台所に立ってみたが、もう全く分からない。自分の家ですら把握していないのに、他人の家の台所など
異世界も同然だ。なべを取り出すのにもたつき、包丁を見つけるのにもたつき、食材を探すのにもたつき、
「ああもう! まだ出来ないの!?」
言ってくれるなハルヒ。俺の手には余る事態なんだよ。
腰に手を当てて眉を逆立てるハルヒは、すでに私服だった。シャツとGパンなんてラフな、今の季節にはちょっと寒い格好だ。
なかなか大胆に開いている胸元から目をそらした。
「もう、しょうがないわね。あたしがやるから、あんた手伝いなさい」
最初からそうしてくれ……なんて口に出せるわけが無い。飯が食えるってだけでも十分にありがたいぜ。
それからは、さながら集中治療室の中の出来事のように進行した。
「味噌」
はい。
「ネギ」
ハイ。
「鶏肉」
はい。
終始この調子だ。ハルヒは手際よく調理を終えていく。どうやらご飯と味噌汁と焼いた鳥とレタスのサラダというごくありふれた夕食
のようだ。はじめてみるそんな姿に素直に感心して、手際を良く見ようと肩越しに覗き込むと、
シャツの襟元からブラが丸見えになっている。ハルヒの形のいい胸の曲線がはっきりと見て取れた。やっぱりその服は
ちょっと胸を出しすぎだろ。と思いつつも視線が離れてくれない。オレンジと白のチェック柄のブラが、ハルヒの胸の、頂上を
絶妙な陰を以って隠している。なぜ見えていないのか不思議なほどだ。恐らくあと二、三ミリブラが浮けばポッチが、
今何考えてた?
ハルヒの乳なんかに興味は……ある、が、この状況でそんなエロ根性を出してどうする。俺ってそんな人間だったっけか?
ハルヒが、ほんの少し視線を動かして、俺を見た。
「そんなにお腹減ってたの? 後ちょっとで出来るから、お皿だしといて」
どうやら奴隷生活一日目にしてゲームオーバーという事態は避けられたようだ。
短いがここまで。
さ〜て、ここから長門がどう絡んでくるか…
後7分ではじまるハルヒを待ちながらwktk
90 :
15-341:2006/06/28(水) 01:29:13 ID:xDZCRAV6
■4■
「俺は……寝ていたのか」
いちいちドラマチックに目覚めずにはいられないお年頃なのだ。
青がすっぽりと抜け落ちた薄暮が網膜を貫く。
「いやあ、年甲斐もなくスイミングに精を出してしまった」
「寝てた」
「そう、睡眠を実践すること。これすなわちスイミング」
我ながら苦しい言い逃れだ。
舟をこぐ、という水つながりでかけて……無理か。
「おはようさん」
仰向けに横たわる俺の真上にいて、膝をお借りしている人物に挨拶。
「……………」
そこに長門がいた。
「…………ぅぉ」
吃驚したあ……。
胴体はアップダウンを極限まで抑え、オートレーサーが快速でバイクをころがせそうな平坦な先に顔があって、上空から鎌首をもたげてこちらをまじまじと見つめている。
空疎な眼差し。
その本意はいずこに?
「……痛」
首をチョップされる。
心が犯された。
「ひでぶーー」
俺はしなしなと吼えた。
「これが……古より伝わる、長門流一子相伝の究極奥義……空中元彌チョップ……。
むぅ? おお、なんてこったいケーシー。なんだか長年の肩のこりが取れた気分さ。このユキックス社開発の低反発ナノマットレス膝枕さえあれば、寝像の悪いわんぱく坊やもあまりの寝心地のよさに寝返りを忘れて床ずれを起こすに違いないねえ。
収納はいたってシンプル。この乳房の突起部であるチューブを抜くと…ほうら見て、3日天日干ししたおじいちゃんみたいに空気が抜けてしおしおになるから持ち運びもらくらく。
旅行でもポンプで空気を入れるだけだし、形状記憶微粒子を100%使用してるからいつでもどこでも君の体型にジャストフィット。
即席のオーダー・ニー・ベッドの完成だ! オナニーって読めそうで、なんだかバリエロだよね!
オーケー、オーケー。注文のお電話はコチラ。フリーダイヤル、ゼロイチニーゼロ、ながとーペチャパイノスキー。深夜ですのでおかけ間違えのございませぬように」
「……………」
長門からの、かつてない殺意の衝動に脳髄が焙られた。
91 :
15-341:2006/06/28(水) 01:31:23 ID:xDZCRAV6
「あ、あの、もひや夕方でしたか?」
びびりまくって、謝る用件を誤る、というオヤジジョークしか思いつかないほど自己の生命をこれほど希薄なものだと実感したことが今まであっただろうか。
俺はこれから自分の心身に降りかかるであろう行く末を予測してみることにした。
バチバチバチ。
あついーあついよー。
はっ!?
俺火葬されてる!
「あー、古来より日本では、このような話がある」
速やかなる安全地帯への撤退を目指す兵隊さんな面持ちで、俺は見渡す限り地雷原だらけの戦地を奔走する。
勝利の道筋は一本限り。慎重に……この場は時間稼ぎが有効だ。
「昔々、おじいさんとおばあさんが」
「死亡した」
「強制終了っ!?」
どうやら延命を目論んだ申し入れは、考慮の余地なく、あっさりと長門裁判第一審で棄却されたらしい。
しっかりと『おまえが第二のおじいさんとおばあさんだ』と死刑宣告の役割も兼ねている台詞は敬聴に値するが、こちらとしてもむざむざ犬死はごめんなので、さて穏便に語らい合おうじゃないか。
「ホールドアップ」
冷ややかな肌触り。
テーザー銃、ポジトロン、宇宙兵器。
萎縮し恐怖の念に打ち震える俺の額につきつけられた銃身を見た。
コンビニの割り箸だった。
「………………」
長考。
見なかったことにした。
大人の対応。
「大人しくして」
ナイスゴール。
いや、違うだろ。
従う。
「あなたは黙秘の権利がある」
「はい?」
素っ頓狂な声を上げてしまう。
「ミランダ警告」
法廷。
国選。
なんだか小難しい言葉の宝箱のような警告文を機械的に説明され。
「質問は?」
「質問て……全部に於いてさっぱりなんですが」
「1966年アメリカ合衆国にてアリゾナに在住していたエルネスト・ミランダが強姦および誘拐の容疑で収監。ミランダは取調べで罪を認めた。しかしミランダは逮捕時に警察官によって黙秘権についての説明がなかったと、無罪を主張し勝訴。
このアメリカ法制度を根幹から揺るがす事件によって、逮捕前に先ほど述べた台詞を告げる現在のスタイルが確立。これが有名なミランダ警告」
演説はどうやら60年代のアメリカの歴史的背景の説明に移行したらしい。
92 :
15-341:2006/06/28(水) 01:33:08 ID:xDZCRAV6
長門はマージナルレベルにやさぐれている。
なんたって、マッキーペンで黙々とヒエログリフを俺の腹部に刻みはじめているのが何よりの証拠。
「かきかき」
ハッ! なんか(宇宙的なもの)呼ばれてる!?
「待つのだー、長門よー」
1分稼ぐ、その間にみんな逃げろ! 俺が止めているうちに!
「ふ〜」
耳に息を。
「ああん、ダメェ♪」
オレ陥落(2秒)。
ホントに駄目人間な俺だった。
引き続いて、何かが長門のポケットから取り出される。
やはりコンビニの割り箸だった。
安堵から俺は破顔する。
「へへ……所詮はまだ乳臭い小娘か、驚かせやがって」(死亡フラグ)
ラベルを読んだ。
ちきゅーはかい……。
「!?」
「ぽいっ」
「ヒイィィィ!?」
落下寸前で滑り込みキャッチ。
あんた、そんなライトなノリで!
地球がドッカンドッカンですよ! 洒落にならない方の意味で。
「らーるーらー」
よくよく観察すると瞳の色や口調だとか諸々ひっくるめて変だ。
制止をかけないと地球が大ピンチな気がして、俺は慌てふためきながら長門の膝からおいとますると、ふかぶかと頭を下げて謝罪した。
「ごめんなさい」
大地に身を投げ出す。
TO GE THER !(土下座英語表記)
技っぽいの出た。
「長門様の怒りもごもっともであると我々社員一同猛省しております。今後このような粗相がございませぬよう、充分この発声器官の方に言い聞かせておきますので」
面を上げると、そこにはいつもの長門がいた。
「冗談」
うそつけ。
スズメ蜂の巣はむやみにつつくものじゃないよ、と毎度夏休み間近に配布される黄ばんだプリントの規約の意味を実体験を持って知ったことで、俺は今日また一つ賢くなった。
93 :
15-341:2006/06/28(水) 01:34:13 ID:xDZCRAV6
「ところで長門よ。他の奴ら来なかったか」
「来ていない」
質問に対する答えを前もって用意していたとしか思えない絶妙なタイミングで、長門は即答した。
まるで、その話題は訊いてくれるなという長門の訴えるような眼差し、と勝手に解釈。
「そうか」
「緊急なら連絡を取る」
「む……」
少し悩んだが、特に用事もないのに、それもどうかと思い直す。
「いや、やっぱいいや」
「そう」
「朝からここにいたのか」
「そう」
でも俺が来たときはいなかった。
「いたかったから」
「ん」
気になった。
「そうか」
「そう」
会話はそこで打ち切られる。
ミーンミーン。
俺の腹の虫。
すごいけど季節はずれもいいところだ。
「んじゃ、帰るか」
小さく頷く長門。
俺は先に廊下に出ててもらうように頼み、部屋の隅に置かれた備品に歩み寄る。
「…………」
「…………」
目があった。
(いつから?)
(2時間前。)
(見てたのか?)
(ばっちりと。)
アイコンタクトのみで語らいあう二人。
客観的に現在の光景を思い浮かべてみると、なんとも言語で表すことを躊躇われる並々ならぬ気色の悪さに、憤怒のやくざキックをロッカーにかますと、キイ、と金属音を鳴り響かせ、私服を身に纏った古泉が中から出てきた。
「…………」
「…………」
「帰るか」
「ええ」
帰宅した。
94 :
15-341:2006/06/28(水) 01:37:54 ID:xDZCRAV6
前スレのつづきでした
やっぱ会話文は苦手。書けば書くほどいろんなものが内部崩壊した。
>>94 大丈夫だ。みんなそんなもんさ
そして人がいない今投下させてもらう
>>38氏案
>>38の考えていた構成とは違うと思うが致し方ない
『部長と部員』
「デートじゃないわ!これは視察よ!」
昨日、ある女王様の携帯から電話が掛かってきていた。その時はコンビニでエロ・・自動車雑誌の立ち読みをしていたわけで・・・。
俺の電話番号は教えた覚えは無いのに、どこから調べたんだよ一体。女の力に恐怖を覚えた夏の一夜―――
ああ、今回のおとぎ話はホラーじゃないんだよ。
気付いたのは深夜で、出るか定かではないがその場で連絡し返した。
プルガチャ!
「遅ーーーーーーい!!!!」
「まだワンコールも経ってないだろう・・・」
「ずっと待ってたのよ!?」
これだから女の力は・・・
「申し訳ない。それで、何の用だ?」
「明日、すぐに支度しなさい!日曜日なのに家でゴロゴロしてるのはよくないわ!あんたのためでもあるの。目的は新築建築物の視察!あそこ一帯に続々建てられたみたい。きっと何かあるわ!待ち合わせはハチ公前に10時!お金は沢山持ってくること!以上!」
「あーいっぺんに言わないでくれ。何だ?俺がゴロゴロしてるだと?そんなわけあるか!最近の日曜日は長門の家で勉強しているんだ。悪いが明日も予定が―」
「え・・・?」
「だから長門と―」
「う、うるさいわねっ!二度言わなくても分かるわっ・・・1日くらいいいでしょ?ね?じゃっ・・遅刻したら許さないから・・・・」
「ああ?まあ分かった。」
って勝手に切るな・・・。
―当日
スタバにライオンズマンションにコスモ石油にセブンイレブンか。独特というかあまりデートコースとは言えないよな・・・。
その新築物件とやらはあと何個あるんだろう?ふぅ!ハルヒも楽しそうだし、そんなこと考えるだけ無駄か。
「次は映画館ねっ」
「シネマムービーか・・・」
「バカキョン!英語じゃないわよ!映画!」
外装は簡単だが、中にはいると絨毯が堅く灰色模様。壁も防音と反響のあるものになっている。意外と本格的な映画館と変わらない。
「キョン、チケット買ってきて。はいお金」
ポンと千円と硬貨を手渡されて・・・もう俺が行くことに決まってるのか。
上映時間の確認出来るボードを見ると、大抵上映時間にしか目が行かないが俺はタイトルに釘付けになった。
【僕の妹達】
【無理やりやられちゃって・・・】
【夏祭り×浴衣×変態】
【部長と部員】
「ゲッ!ポルノ映画しかねぇ!」
タイトルでポルノと分かる俺も俺だが映画館も映画館だ。
仕方なく俺は販売員のオススメで【部長と部員】を見ることに。ハルヒにチケットを渡し席に着く。
こんなことなら長門の家に行っていれば良かった。とりあえずこのことをハルヒに伝えねば。
「ハルヒ、上映前に注意点がある。」
「知ってるわよ!上映内では静かに。携帯電話の電源は切る。席を立ったりしない。とかでしょ?」
いやそうじゃなくてだな・・・
ババーーーーン!!!ジャンジャンジャーン!!
始まってしまったのか・・・。もう手遅れだっ!
部長「ああ・・ダメよキョン・・・」
部員「ハルヒさん・・!」
登場人物がよりによって『キョン』と『ハルヒ』か。
しかもキョンがさん付けをしていやがる・・・。
「キョン」
なんだ!?どうしたハルヒ!?
「ちょっと・・・トイレ行ってくるわ・・・。」
「?」
訳も分からずハルヒがトイレから帰ってきたのは上映終了後だった。
ちなみに映画の内容はこうだ。
*
「キョン!また失敗したの!?」
「でも俺は・・・」
「だからこのコードの指はこうでしょう!私達ENOZの名を汚すつもり!?」
「わ・・分かりません・・・」
「だからこうするの!」
「あ・・・ハルヒさんの手、暖かい・・」
「キョン・・」
「ハルヒさん・・・」
「あっ!そ、そうだ!いいフレーズがあったんだわ・・・!」
「ハルヒさん・・・?」
「早速試しましょう!ほらキョン立って!」
「ハルヒさん!」
「・・わかってる。でも私には彼氏の古泉君。あなたには彼女のみくるちゃんがいるでしょ。」
「俺は巨乳のみくるより!貧乳のハルヒさんの方が好みなんだ!」
「キョン・・・私、ずっと愛してた。ずっと見てた」
「はい」
「それくらい愛してるから・・・抱いて頂戴?」
「勿論ですよ・・・」
*
その後延々とセックスして最後に顔射でフィニッシュをしていた。最高につまらない映画だったとも言えるな。
上映が終了し、席を立ったら椅子が勝手に戻るという配慮。新築なんだと思い出させてくれてありがとう。お陰で先の長いデートを想像し、憂鬱になるよ。
前方よりハルヒが顔を真っ赤に染めて息を切らして走ってきたんだが、どう考えても直撃コース。避ければいいのか?
だがちゃんと目の前で止まった。
「ハァハァ・・・これはね!走ってきたから顔も赤いし息が切れてるの!別になんもしてないわよ!」
「?」
そんなことなぞ聞いていない。俺は先のことが心配でそれが聞きたい。
「あと何件回るんだ?」
「あの!予定変更!今日は・・・あと一件だけだから。絶対来なさい!約束よ!?」
「ああ!約束だ!」
これで帰れる!
ハルヒにこれ以上がんじがらめにされたくない。ましてや変態扱いされたからな、もう二度とお前とデートはしない!断じて!
「キョン。そこの場所が分からないから、繁華街散策しながら見つけるわ。いいわねっ!?」
一件のくせにそんな大問題を抱えやがって。
「はいはい分かりましたよ」
くくく・・・思わず笑ってしまう。自分の不甲斐なさに。ハルヒの傲慢さに。くっくっく・・・
「ねぇキョン、街っていろいろあるのねぇ。知らなかったわ。」
「くっくっく・・・」
「ちょっと聞いてるのキョン!?こうやって男性と連ねて歩くのもあんまり無いし。まあキョンほど惹かれる男性もいないっていうか・・・キョンになら・・・」
「俺になら?」
「うわっ急に正気に戻らないでよっ。ん?」
「どうしたんだハルヒ?」
一体何を見てる―――
こいつの目線の先を追ってみた。えっと・・・
「ラ・ブラ・ド・ホテル」
「La bra da Hotel・・・別名ラブホ・・」
「えっとその・・・こういうのが興味対象か?」
「ねぇ・・・入ろ」
目つきが怪しい・・・これはヤバい!獣を狙う女狐の眼だ!
「ねぇ、入ろっ」
「入ろう!」
「入ってよ!!!」
「キョン、入るわよ!!!」
「無理やり入れるわよ!?キョン!!」
「キョン!!!!!私と性行為しなさい!!!」
「我慢出来ないのーーー!!!」
さっきからグイグイ引っ張られて袖が肉を挟み痛い。
「あと一件は・・・」
「分かりなさいバカッ。ラブホを探してたの!さっきの映画でもうグチョグチョ!オナニーだけじゃ足りないわ!!!」
開き直りやがった。これも女の力か?
「お前ってどんなオナニーするんだ?」
「あれれ〜?みたいのぉ?」
「見たくない」
当たり前だな。誰一人として見たがるバカは存在しない。
「!?キョン!!!!入るわよ!!!!!!!!!」
グイッ!!!!
うわっ!?何て力だおい。そんな筋肉質には見えないが・・・。
「ちょっと勘弁してくれ」
「私じゃ・・・ダメなの・・?」
ズキンと胸打たれ即ノックダウン。それでも理性は保たれた。
「ああ・・・ううん違うな・・・だけどダメだ。」
「そう。ところでこれ、クロロホルムっていうのよ」
気を失う寸前にハルヒの笑い顔だけが見えた。薄くなる記憶の中で―
俺は意識を失い、気付いた時はベッドの上。側に笑顔のハルヒが横たわっていた。
「終わったのか?」
ハルヒはにやけ顔を更ににやけさせて顔を斜めに上げた。
「楽しかったわ☆」
女が悪魔に近いのか。ハルヒが悪魔なのか。夏の夜は笑い顔さえも一段と怖く見えた。これが女の力・・・か。
その後
「キョン様お支払いで43000円となります。」
「・・・!?!?」
オスマイ
ちゃんちゃん。寝る
もう少し小説の書き方学んでからまた書いてくれ
小さい頃からの賢(さか)しさで損ばかりしている。
幼稚園の頃から一年に一度しか現れない出不精な赤と白の衣装の爺さんの存在を疑っていた。自作自演で盛り上げる両親に対して心のそこで冷ややかに思いつつ敢えて何も言わなかったのもその賢しさの現れだったのだろう。
しかし、そんな小賢しい俺も理解不能な何か──例えば、宇宙人や未来人や超能力者がいてくれればいいな、と思う自分がいることを否定できなかった。いないと分かっていながらも期待するぐらいは許されるだろうさ。
後に実際に遭遇することになるとは思ってもいなかったのだが。
そんなこんなで今までの常識を根底から覆されながらもしっかり学習した俺は、もう滅多なことでは驚かない。むしろ驚けないと言ってもいい。
谷口に彼女ができたと言われても何を驚くことがあろう。ハルヒというほどの女が存在するくらいだ。谷口を気に入る女だって世界中探せば何人かはいるだろうよ。
もうクラスメイトに命を狙われようが、でかいバッタでもカマドウマでもイナゴでも(ゴキブリは勘弁してもらいたいが)現れようが驚くに値しない。
驚くとしたら長門がとびきりの笑顔で小難しくない話をしたり(俺の願望が混ざっているが気にしない)することか──あるいは今俺が直面しているこの状況くらいだ。
「あたしにキスしなさい!」
雑多な物に溢れて薄汚れた部室によく通る声が響いた。
手の届く範囲に鏡が無くて良かった。今の俺はおそらく見たら自ら頭を撃ち抜きたくなるほど間抜け面をしていることだろう。
対して奇っ怪な命令を告げたこの女はいつものように偉そうに腕を組み、不機嫌なのか怒っているのか判り難い顔で仁王立ちしている。
「……いつの間に酒を飲んだんだ?」
「飲んでないわようるさいわね!」
念の為確認してみたが、つまりなんだ、さっきの言葉は自分の意思で発したということか。にしても薮から棒にキスとは一体どういう魂胆なんだか。
「……なによ?文句あるの?団長命令よおとなしく従いなさい!」
黙ったままの俺の態度に業を煮やしたのか、ハルヒが急き立てる。
ハルヒにキス、という行為事態に自分はあまり抵抗をもっていないことに気付き、複雑な気分になりながらも一瞬横切った「面倒だからさっさとしちまうか」という考えを打ち消す。
なにしろ俺の一挙手一投足に世界の命運がかかっている、らしいからな。
場所はいつのように文芸部室。常識外れの三人組は何故か「用事」だそうで、今現在この空間にいるのは俺と、この涼宮ハルヒだけだ。
古泉と朝比奈さんはともかく、あの長門までいないとは普通じゃあない。古泉のやつの説明を借りるなら「ハルヒが二人きりになることを望んだからそうなった」というところか。
で、そのハルヒ自ら望んだ舞台に上って挨拶も早々にキスしなさい、と。
頼りの長門は事前に特に警告も発してないし、世界の平和の為にはやかましく騒がれる前にキスの一つくらいしてしまうべきなんだろうな。
しかし俺も一介の男子高校生だ。夢(のようなもの)の中で既に体験済みとはいえそう軽々とキスなんてのもいかがなものか。
いや、ハルヒが嫌いかと言われればそれは間違い無くNOと言えるが好きかと訊かれれば……
いや、とにかくなんでそんなことをしようとするのかくらい知る権利はあるだろう。
「……別になんとなくよ」
じゃあ俺もなんとなく嫌だから拒否するとしよう。
「…………夢で見たのよ」
なにを。
「あんたと二人で閉じ込められた……ん、なんか違うわね……まぁいいわ。とにかくこの学校に二人だけしかいなかったのよ」
「…………」
「そんで、あんたにキスされたの」
「……それで?」
「それだけ」
まったく理由になってない、というか理論的でない理由だな。たぶんあの時のこと……なんだろうな。大分省略されているが。
「ハルヒ」
心の中で大きく溜め息を吐きながら、真っ直ぐ見上げてくるハルヒの肩を抱き寄せる。
唇が触れる直前、ハルヒが目を閉じるのが強く印象に残った。
「我らが団長殿の眠り姫振りに困ったものですね」
という声と共にニヤケ面が視界に入ったときには本気で殴り飛ばしてやろうかと思った。この野郎盗撮でもしてやがるのか。
「なに、少しカマをかけてみただけなんですが、あながち間違いでもなさそうですね」
聞いてみれば久々に現れた閉鎖空間は俺が以前に話したときのものと状況が瓜二つだったと、それだけの推理だった。
「しかし眠り姫程度ならまだたいしたことではないでしょう」
どういう意味だ。
「そのままの意味ですよ。あ、それから僕は今日も用事ができましたから部室へは行けません。朝比奈さん、長門さんも理由までは聞いてませんが同じく。では」
俺はこの時まだこの日の放課後古泉の言葉の意味を理解し、同時に十数年間守ってきた貞操をやぶることになることを知る由もなかった。
(省略されました。続きを見るにはめがっさにょろにょろと書き込んでください)
めがっさにょろにょろ
めがっさにょろにょろ
めがっさにょろにょろ
めがっさにょろにょろ
で、結局続き書く気あるの?
「め・・・・・・めがっさにょろにょろ」
「みくる、なんだいそれっ? めがっさとにょろは別々に使うんだよっ!」
「ふぇぇ。そうなんですか? てっきり一緒に繋げるのかと思ってましたぁ」
「むー、ひっどいなぁ。それじゃまるであたしが変な子みたいじゃないかっ!」
「たとえ別でも十分変だと思うんだが・・・・・・なあ、古泉よ」
「すみませんが、僕はノーコメントとさせていただきます」
「にょろ」
「!?」
わしも投下。
微妙に非えろ。5分割で送ります。
ある体育の時間
今は5月。だけどけっこう暑い日が続いてる。
今日の5時間目は、女子はあたしの好きなバレーボール。
急に雨が降ってきたから、外でサッカーしていた男子も体育館にきちゃったけど。
男子はコート半分のバスケをやってる。3on3って言うんだっけ?
そんな中でもいつも元気で目立っている涼宮さんが元気がない。
今は私達のチームは試合じゃないから座って休憩してるんだけど、どうしたんだろう?
涼宮さんは私より小柄だけど、ジャンプ力は私以上にあるすごい人。
いつもは次々アタックを決めるんだけど、今日はほとんど動いてないの。
そういえばジャンプもしてないかもしれない。
4時間目までは体調が悪そうな感じはしなかったから、お昼休みに悪くなったのかな?
すごく疲れてる感じがするし、歩くのも辛そう。
…生理、始まっちゃったのかな?
体育の時間もギリギリになってキョンくんとやってきた。
SOS団の文化祭の出し物の準備をもう始めてるみたい。
ライブと映画両方やるってすごいな。
キョンくんはベースの練習と映画の雑用全部だって言ってたからすごく大変そう。
それでも2人はいつも楽しそう。
でも、最近2人とも5時間目は疲れた顔してる。なんでだろう?
「…涼宮さん、体調悪いの?」
試合の休憩時間中、思い切って声をかけてみた。
同じチームだったし、今日の涼宮さんは本当に元気がない。
みんなも「変だね。」って言ってる。
でも、涼宮さんに話し掛けるのはまだちょっと緊張する。
「……………」
どうしたんだろう?気づいてないのかな?……無視されちゃってるのかな?
元気をなくしちゃった時のルソーを思い出しちゃうから、無視はイヤだな…
「………あ、阪中さん。…どうしたの?」
涼宮さんはだいぶ遅れて私に気がついた。
……やっぱり今日の涼宮さんはちょっと変だと思う。心ここにあらずって感じ。
「涼宮さん、体調悪いの?」
もう一度聞いてみる。
風邪かな?それとも生理かな?
「ううん、体調は平気。」
ブルマを直しながら涼宮さんは言う。
たぶん嘘だと思う。歩くの辛そうにしてるの見たもん。
……遠慮してるのかな?
「……でも辛そうだよ?……もしかして、来ちゃったのかな?」
涼宮さんは今日は足元を特に気にしてる感じがする。
体育の時間中に来る生理は本当に憂鬱。
お家の時みたいにルソーが慰めてもくれないし…
なによりお腹痛くなるし、ダルくなるし、一気に気持ちが落ち込んじゃう。
中には寝込むくらい重い娘もいるっていうし。心配だな。
「ううん。心配してくれてありがと。でも、生理じゃないわ。」
涼宮さんはキョンくんに見せるのとは違った、ちょっぴり遠慮するような笑顔で答えた。
まだあんまり仲良くなれてないみたい。ちょっと残念。
「でも、今日の涼宮さん、ちょっと辛そうだよね?足挫いちゃったりしたのかな?」
それならもっと心配。
バレーはアタックの時に着地に失敗して捻挫ってことは結構あるから。
でも、今日はジャンプしてないよね?
「…体調悪いわけでも、ケガしたわけでもないんだけどね。」
小声で言っていたので私にはなんて言っていたか聞き取れなかった。
ただ、涼宮さんは苦笑いを私に返してくれた。
なんだろう?
苦笑いなんだけど、幸せそうな感じもする。
「でも、今日は見学してたほうが良いんじゃないかな?」
もうすぐ私達のチームが呼ばれる。
涼宮さんはしばらく考え込んでいたけど
「……そうね。無理しちゃよくないよね。ありがと、阪中さん。」
そう言って涼宮さんは先生に足が痛いから見学するって伝えにいった。
ほっとする。よかった。
ひねっちゃったのかな?捻挫じゃなければいいな。
捻挫は早めに処置しないとどんどんひどくなるからね。
見学することを決めても、涼宮さんはちょっぴり浮かない顔。
バレー、やっぱり好きだったのかな?
私はもうすぐ試合始まっちゃうからそこで涼宮さんと別れた。
涼宮さんは一人で体育館の端っこで男子のバスケを見つめている。
視線の先はきっとキョンくんだ。
まだ他のみんなとは仲良くなれてないし、涼宮さんが苦手な娘も多いからひとりはしょうがないのかな。
今年はもっと友達が増えると良いね。
試合中、涼宮さんとキョンくんが話してるのが見えた。
あれ?男子こっちにきても平気なのかな?
二人で何か話してる。
キョンくんはすまなそうな顔だけど、何故か楽しそう。
涼宮さんは、……わぁ、めずらしいな、頬を赤く染めて怒った顔してる。
恋する女の子みたい。ううん、そのものだよね。
……やっぱり付き合ってるんだ。
猫さん飼ってるし、お兄ちゃんみたいで優しそうな人だもんね。
私もいつか「キョンくん。」って言ってみたかったな。
…………ちょっと残念。
遠くへ飛んだボールを拾いにいく時、たまたま2人の会話が少し聞こえてきた。
「…………出しすぎ………ジャージにもかけるし…」
「…ルマに……こぼれてないか………よかっ…」
「うるさい!………昼休みに………もうさせない……」
「………悪かった、すまん……」
キョンくんが謝ってるみたい。
何したんだろう?
以上っす。
最後いらんかもなw
122 :
105:2006/06/28(水) 02:52:41 ID:z4SRVBZa
>>114 スマン……ヘタレだからどうせ誰も見向きしないだろうなと思いつつ冗談半分で(省略されました)にしたんだが……今書きかけだからまとめてからまた来る。
>>46 「迎合」って辞書で引いた方がいいと思う。
ここでなら笑い話ですむが外で恥かくと可哀想だから言っておくよ。
傾倒って言いたかったのかなァ
>>121 乙。こーいうの結構萌えるなw
第三者視点での話もいいね。他人にはこう見えるってのが。
復旧したようなので初投下です。エロあり、ソフトSM?注意。
時空跳躍による目眩と悪寒はすでにひいていた。底冷えのする寒気の中、肩に置かれた
朝比奈さん(大)の手の暖かみがこの上もなく頼もしい。影になった北高校舎を見上げ、
星明かりに目をならす。
冬の星座ばかりが無言劇を見下ろす観客だった。役者は3人。俺と朝比奈さん(大)、
そして全ての元凶となったそいつだ。
コツコツと靴音をたて、時空改変者が暗がりから姿をあらわす。
すべて彼女から聞いていた通りだった。涼宮ハルヒの力を奪い、SOS団をバラバラに
したそいつが、北高の制服を風に揺らして街灯の下へ歩みでる。
「すごい‥‥こんなにも強力な時空震なんて‥‥」
朝比奈さん(大)が感嘆を洩らす。
それがどれほどの行為であれ、夜空に手をかざしたそいつはあっさりと手を下ろした。
これで時空改変が終了したのだろう。ふと不思議そうな顔になり、ついで淡くほほえんだ
そいつの様子を、憂鬱を胸に抱いたまま俺は見つめつづけていた。
「キョン君。今度は私たちの出番です」
朝比奈さんの硬い声が合図だ。短針銃を握りなおして校門へと踏みだす。
「よう」
久しぶりに会う友人にあいさつするかのように声をかける。
漠然と感づいてはいた。考えてもみろ。あの日以降、秘密のプロフィールを奪われたS
OS団のなかでただ1人だけ、今までにない仕草や行動をみせる奴がいたのだ。
「お前なのか‥‥やはり」
‥‥やはり?
声をかけた瞬間、ずきりと、こめかみが鈍く痛んだ。デジャブとも、長患いが本復した
あとの気怠さともつかぬ、とらえどころのない決定的な違和感が脳裏に刺さる。だがその
原因を暴くまえに頭痛は消えさり、俺は一瞬の妙な感触をふりはらった。
ここで止まるわけにはいかない。
「あ、あれ‥‥どうして、あなた、が」
目覚めたばかりの夢遊病者のように立ちすくみ、それでも俺の姿に安堵しかけた彼女に、
いっさいの力を失った時空改変者に、現実をつきつける。
「すべて、お前のしわざだったんだな‥‥朝倉」
朝倉は腰まで届くストレートヘアだった。これはあの朝倉だ。18日以降の、世話焼きな
委員長の朝倉涼子。宇宙人でもなんでもない、溌剌とした彼女だ。こちらの世界で始めて
知った、ハルヒに気兼ねなく浮かべる本当の笑顔を前にして、ひどく無機質な冷気が腹の
あたりから広がっていった‥‥
俺がハルヒという名の災厄に遭遇し、トルネードじみた傍若無人な蛮行に巻き込まれる
形でSOS団が結成され、朝倉の正体を知ってから8ヶ月あまり。思いおこせば朝倉涼子
はいつだって委員長的な笑顔の裏に豊かな感情を伏せていた。
同じ笑みでも古泉一樹のポーカーフェイスとは違う、感情を秘めるための優等生の仮面
だと気づいたのは、たしかそう、野球大会での会話が初めてだったはずだ。
「そういや朝倉、お前最近ポニーテールやめたんだな」
「え?」
北高のジャージ姿で球場前にあらわれた朝倉は、春先の腰まで届くストレートロングを
止め、肩より長いくらいに切りそろえていた。その姿を見ておやと思ったのだ。たしか、
体育の時間はつねにポニーテールでまとめていたはずなのだが。
「あっちの方が動きやすいんじゃないか?」
「‥‥そんなこと言わないで。涼宮さんに聞かれたら大変だもの」
思ったままを告げたのに、朝倉は申し訳なさそうにうつむく。それが不可解で、本部テ
ント前でなにやらごねているハルヒを確認した俺は語気を強めた。
「なぜだよ。あいつは関係ない。似合ってるんだしポニーテールにすればいいじゃないか。
その方が動きやすいんだろ? 髪型ごときでハルヒに文句は」
「だめ、それ以上は」
にべもない反射的な拒絶だった。残像も見せずに朝倉の手が伸び、口をつかまれて球場
の壁に背を打ちつける。痛みはなかった。怪我しないよう加減してくれたらしい‥‥が、
いきなりどうしたというのか。唖然とした俺を鋭い目で朝倉が睨む。
「‥‥もう、どうしてそんな鈍感なの、あなたは」
手を離した朝倉の笑みに俺は息を呑んだ。なぜだろう。見慣れた笑顔なのに、まるで、
叱られているような妙な罪悪感を覚える。一体なぜ?
「あっちの世界であなたが涼宮さんに何を告げたか、もう忘れたの?」
「あ‥‥」
「女の子はね、小さな一言でも喜んだり傷ついたりするの。もっと気を配ってあげて‥‥
涼宮さんのためにも、私のためにも」
だから駄目よ、そう告げて背を向けた彼女に、そのときの俺は言葉をかけられなかった。
涼宮ハルヒの観測のみを目的とする対有機なんとか用ヒューマノイドだと、感情は偽りの
ものだとあの日マンションで語ってくれた朝倉涼子の、その『彼女らしからぬ』人間的な
激情が仄見えた意味を、俺は、もっと深く考えておくべきだったのだ。
いや‥‥
彼女の感情はそれより前から芽生えだしていたのだろう。
なにせ、俺と朝倉が知り合ったのは時間軸上で言うところの3年前。ハルヒによる情報
フレアが観測されたあの当時から、朝倉の方は俺を知っていたのだから。
「入れてもらっていいか?」
「‥‥そんなすがるような顔をされて、手を差し伸べないわけに行かないじゃない」
最後の希望をつないで505号室のドアを叩いた俺と朝比奈さん(小)を出迎えたのは、
困ったように呟く朝倉の笑顔。それがあまりに暖かみのあるものだったせいか、3年の間
待機するのだと聞かされて、絶句したことを思いだす。
「待機って、まるきり機械じゃないか。ゲーム機のスリープモードじゃあるまいし」
「ううん、そんなに心配しなくていいのよ? これが私の役目だもの」
「朝倉‥‥」
「それに、3年たてば、あなたに会えるから」
ふふっと手を打ち合わせる仕草は相変わらず無邪気なままで。
ああ。たしかに俺は鈍感だ。たとえただの友人同士だとしても、3年もの間1人を思い
つづける重さになんて、最後の最後まで、世界がこうなるまで、気づけなかったんだから。
「そうだろう。朝倉」
語りながら足を踏みだし、月下の校庭を近づいていく。
手には、朝倉自身の手による再修正プログラム。無骨な銃のグリップが気分を沈ませる。
一歩ごとに全身から血がにじみ、生命力が失われていくような気分になる。
それでも朝倉は冷静だった。
いや、冷静だったからこそ‥‥か。自分の中に溜まっていく想定外の感情に対処できな
かったのだ。情報思念体が朝倉に分け与えた感情なんてたかが知れている。当然だ。駒と
して動くためには、涼宮ハルヒの観察という目的遂行のためには、不必要な共感や友愛は
バランスを崩す要員でしかないからだ。
朝倉は実際、自分のなかだけでバランスを取り、バグを処理しようとしていた。
観測対象に従属するだけではない、涼宮ハルヒと対等の関係をめざしていたはずなのだ。
あの時だってそうだ。
「私たちには負ける以外の選択肢がなかったのよ」
パソコンを賭けたコンピュータ研との対決のさなか。
聞いたことないほどの冷たい声音は憎しみどころか殺意とさえ呼べるレベルで、委員長
らしからぬ激情の暴発に思わず後ずさりつつ俺は朝倉に反論する。
「でもな、朝倉。ここで宇宙的なパワーを使ったら、ズルをした連中と同じに」
「あなたの指示には違反しないわ。そう誓ったもの」
即答だった。朝倉の。
「既知空間の情報結合状態には手をつけないと約束する。あくまで人類レベルの能力で、
コンピューター研究部には対抗するから。だからね」
俺に言ってるのか。
問い返されて、心外だとばかりに朝倉の目が見開かれた気がした。瞳が潤む。何を言っ
ているの、と。
「‥‥わたしの情報操作能力に枷を嵌めたのは、あなたなのよ」
決意を秘めて真剣に懇願する瞳は、まるで主の許しを求める忠実な猟犬のようで――
「よし、やっちまえ、朝倉」
「うん!」
これ以上ない、薔薇色の笑み。
そうしていうまでもない圧倒的な勝利を収め、高揚していたのだろう。部長氏のお誘い
を受けた朝倉はなぜか嬉しそうな顔で真っ先に俺にお伺いをたてていた。
「‥‥あーんなこと、言ってますけど? ねえ、どうしたらいいかな? 私」
いや、俺に振られても。
とたん、笑みを浮かべたまま朝倉の唇が拗ねたようにつんと上向いた。あっと思うもな
い。マズい反応だったと反省する。これだけ長く朝倉ウォッチャーをしていれば、谷口や
国木田ごときには見抜けないモナリザの笑みの微細な変化だって、瞬時に肌で感じ取れる
ようになる。
‥‥つまるところ、朝倉は俺に反対して欲しいらしいのだ。
しかもコンピュータ研には参加したい癖に、俺の反対を望んでいる。どういうこっちゃ。
後押ししたらいいのやら、ハルヒと共に反対すべきやら。
朝倉と見つめあって百面相することしばし。
「ちょっとちょっと、何やってんのよ。勝手に涼子をレンタルしちゃ駄目よ」
ハルヒが俺たちの視線を断ち切って割りこんだ。
「いい? この娘はSOS団に不可欠な委員長キャラなの。あたしが最初に目をつけたん
だからね。涼子込みでこの部室をもらったんだから、この部屋にあるものは、たとえ気の
抜けたコーラでもあげたり貸し出したりしないわよ!」
部室だって? ハルヒの言いたいことが分からない。こいつは突然何を言いだすのか。
「まあ、待て」
暴走しだすハルヒの演説をさえぎって考えをめぐらす。
結局、どれだけ表情豊かに楽しげに振舞ったところで、ハルヒのお膝元にいるかぎり、
朝倉は情報思念体の目的に縛られ、自由に感情を表すことができない。なら、たまには気
晴らしする機会があってもいいのではないか。
「ふぅん、あなたはそれでいいんだ」
「ハルヒの『貸しだす』っつー表現は気にいらないがな。朝倉が自由に決めていいと思う」
「じゃあ、条件付でなら、私もOKするわ」
涼子が条件つけるなんて珍しいわねと目を輝かすハルヒの前で、朝倉はいきなり俺の右
手をぎゅっと抱きかかえた。胸の谷間に肘が沈む――って、え?
この、にむっと溶けるような柔らかく完璧なるシンメトリーの感触は、まさか!?
「2人一緒でいいなら、コンピュータ研に参加‥‥」
「な、何言ってんのよ涼子! やっぱ不許可、ってかキョンみたいなパソコン音痴連れて
行っていいわけあるかぁ!」
瞬時に口をアヒルの形に曲げたハルヒが俺の左手をむんずと抱えこみ、左右から引っぱ
られたときはさすがに死を覚悟したものだ。
けれど、あの時、ほんのひと時だけ、朝倉は心から楽しそうに笑っていなかったか。
130 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 14:46:15 ID:fOv349NB
時空跳躍による目眩と悪寒はすでにひいていた。底冷えのする寒気の中、肩に置かれた
朝比奈さん(大)の手の暖かみがこの上もなく頼もしい。影になった北高校舎を見上げ、
星明かりに目をならす。
冬の星座ばかりが無言劇を見下ろす観客だった。役者は3人。俺と朝比奈さん(大)、
そして全ての元凶となったそいつだ。
コツコツと靴音をたて、時空改変者が暗がりから姿をあらわす。
すべて彼女から聞いていた通りだった。涼宮ハルヒの力を奪い、SOS団をバラバラに
したそいつが、北高の制服を風に揺らして街灯の下へ歩みでる。
「すごい‥‥こんなにも強力な時空震なんて‥‥」
朝比奈さん(大)が感嘆を洩らす。
それがどれほどの行為であれ、夜空に手をかざしたそいつはあっさりと手を下ろした。
これで時空改変が終了したのだろう。ふと不思議そうな顔になり、ついで淡くほほえんだ
そいつの様子を、憂鬱を胸に抱いたまま俺は見つめつづけていた。
「キョン君。今度は私たちの出番です」
朝比奈さんの硬い声が合図だ。短針銃を握りなおして校門へと踏みだす。
「よう」
久しぶりに会う友人にあいさつするかのように声をかける。
漠然と感づいてはいた。考えてもみろ。あの日以降、秘密のプロフィールを奪われたS
OS団のなかでただ1人だけ、今までにない仕草や行動をみせる奴がいたのだ。
「お前なのか‥‥やはり」
‥‥やはり?
声をかけた瞬間、ずきりと、こめかみが鈍く痛んだ。デジャブとも、長患いが本復した
あとの気怠さともつかぬ、とらえどころのない決定的な違和感が脳裏に刺さる。だがその
原因を暴くまえに頭痛は消えさり、俺は一瞬の妙な感触をふりはらった。
ここで止まるわけにはいかない。
「あ、あれ‥‥どうして、あなた、が」
目覚めたばかりの夢遊病者のように立ちすくみ、それでも俺の姿に安堵しかけた彼女に、
いっさいの力を失った時空改変者に、現実をつきつける。
「すべて、お前のしわざだったんだな‥‥朝倉」
朝倉は腰まで届くストレートヘアだった。これはあの朝倉だ。18日以降の、世話焼きな
委員長の朝倉涼子。宇宙人でもなんでもない、溌剌とした彼女だ。こちらの世界で始めて
知った、ハルヒに気兼ねなく浮かべる本当の笑顔を前にして、ひどく無機質な冷気が腹の
あたりから広がっていった‥‥
131 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 14:46:47 ID:fOv349NB
俺がハルヒという名の災厄に遭遇し、トルネードじみた傍若無人な蛮行に巻き込まれる
形でSOS団が結成され、朝倉の正体を知ってから8ヶ月あまり。思いおこせば朝倉涼子
はいつだって委員長的な笑顔の裏に豊かな感情を伏せていた。
同じ笑みでも古泉一樹のポーカーフェイスとは違う、感情を秘めるための優等生の仮面
だと気づいたのは、たしかそう、野球大会での会話が初めてだったはずだ。
「そういや朝倉、お前最近ポニーテールやめたんだな」
「え?」
北高のジャージ姿で球場前にあらわれた朝倉は、春先の腰まで届くストレートロングを
止め、肩より長いくらいに切りそろえていた。その姿を見ておやと思ったのだ。たしか、
体育の時間はつねにポニーテールでまとめていたはずなのだが。
「あっちの方が動きやすいんじゃないか?」
「‥‥そんなこと言わないで。涼宮さんに聞かれたら大変だもの」
思ったままを告げたのに、朝倉は申し訳なさそうにうつむく。それが不可解で、本部テ
ント前でなにやらごねているハルヒを確認した俺は語気を強めた。
「なぜだよ。あいつは関係ない。似合ってるんだしポニーテールにすればいいじゃないか。
その方が動きやすいんだろ? 髪型ごときでハルヒに文句は」
「だめ、それ以上は」
にべもない反射的な拒絶だった。残像も見せずに朝倉の手が伸び、口をつかまれて球場
の壁に背を打ちつける。痛みはなかった。怪我しないよう加減してくれたらしい‥‥が、
いきなりどうしたというのか。唖然とした俺を鋭い目で朝倉が睨む。
「‥‥もう、どうしてそんな鈍感なの、あなたは」
手を離した朝倉の笑みに俺は息を呑んだ。なぜだろう。見慣れた笑顔なのに、まるで、
叱られているような妙な罪悪感を覚える。一体なぜ?
「あっちの世界であなたが涼宮さんに何を告げたか、もう忘れたの?」
「あ‥‥」
「女の子はね、小さな一言でも喜んだり傷ついたりするの。もっと気を配ってあげて‥‥
涼宮さんのためにも、私のためにも」
だから駄目よ、そう告げて背を向けた彼女に、そのときの俺は言葉をかけられなかった。
涼宮ハルヒの観測のみを目的とする対有機なんとか用ヒューマノイドだと、感情は偽りの
ものだとあの日マンションで語ってくれた朝倉涼子の、その『彼女らしからぬ』人間的な
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
それでも‥‥俺は、朝倉の声を聞き届けるわけにはいかない。そりゃ、朝倉が改変した
結果、俺は宇宙人や超能力者や未来人、はた迷惑で独善的な神様の横暴から逃れることが
できるだろう。それこそ、朝倉の好意によるものかもしれない。
けれど、だとしても。
朝倉涼子が望んだ世界には‥‥『あの』涼宮ハルヒが、いないんだから。
だから、俺の腹は、最初から決まっていたのだ。
「すまん」
独占欲なんて誰にでもある、ありきたりな感情だ。
朝倉の不幸はそれを知らず‥‥折り合うすべを持たなかったこと。
手を伸ばしてピストル型装置を構えた。信頼しきっていた朝倉の笑顔が凍りつき、その
反応にかなりの罪悪感を強いられる。しかし、躊躇できる段階はとっくに終わっていた。
「え、え‥‥なんで、どうして、私‥‥?」
「すぐ元に戻るはずだ。また一緒にあちこち出歩こう。クリパで鍋食って、それから冬の
山荘だ。今度はお前が名探偵をやって、ハルヒの鼻を明かしてやれ。それが――」
「キョンくん! 危な‥‥! きゃあッ!!」
朝比奈さんの叫びと同時に、どん、という衝撃が体を揺らし、黒い鞠のような、いや、
砲弾のような勢いで誰かが俺の背中にぶつかってきた。なんだ、何者だ?
「朝倉涼子を傷つけることは許さない」
肩越しに首をねじって振りむいた。おかっぱの女が眼鏡の奥でこちらを見上げる。
――恐怖で背筋が逆立った。
長門有希。
「な‥‥」
まごうこともない戦慄の具現。忌まわしい記憶がフラッシュバックする。
統合思念体の急進派である長門は朝倉よりはるかに力を有していた。そのバックアップ
にすぎなかった朝倉は、俺を助けるため文字通り瀕死に追い込まれたのだ。
言葉が出なかった。
わき腹に冷たいものが刺さっている。平べったく鋭利な鉄の感触を、体内で傷ついた肉
が噛みしめる。やけに冷たい。激痛よりも異物感が意識を遠のかせる。
「‥‥」
能面のような顔が俺を見下ろしていた。長門はじわじわ後ずさり、俺を貫いた血まみれ
の長い刃物を引き抜いた。支えを失い、転倒する目の端で腰を抜かした朝倉が尻餅をつく。
「長門‥‥さん」
ミリ単位で小さく髪の毛がゆれ、それが長門の挨拶らしかった。
「朝倉涼子‥‥私は、いつでもあなたのそばにいる。あなたを脅かすものは私が排除する。
それが私の役目。だから心配しないで」
ポツリポツリと、機械のように言葉をつむぐ。
朝倉に命を助けられた春先と同じ、ターミネーターそのものの無表情で長門が傷の深さ
を推し量る。あのとき身を挺して庇ってくれた朝倉は戦いのさなかバッサリ黒髪を切られ、
以降、腰まで届いていたストレートを惜しげもなく肩先あたりで切り揃えていた。その、
長門と渡りあったあの時の朝倉はここには存在しない。
「これがあなたの望み。私はそれを実現する」
へたりこむ朝倉に長門が告げる。一切の感情がそこにはない。
長門の言葉は嘘だ。コイツは異常動作を起こした朝倉が誤って再生させた朝倉の影だ。
朝倉が望むはずがない。思い通りに鳴かない鳥はいっそ殺してしまえなんて、そんな残酷
な殺人鬼のようなことを‥‥
――本当に?
朝倉がそう望むことはありえない‥‥‥‥そう、思うのか?
またしても違和感が、ひどく冷たい笑みを浮かべる髪の長い女のビジョンが頭をよぎる。
鈍痛がこめかみで波打った。なんだ、今のは――
途切れ途切れの思索と、煌々と輝く欠けた月を遮って、長門が俺の視界に姿を見せる。
「次でトドメ。あなたは朝倉を苦しめる。死ねばいい。その痛みと絶望を噛みしめて死ね」
今度こそ、長門有希がゴツいナイフを片手で振りかぶり‥‥
俺の記憶は、あっけなく粉々になった。
「追いついた‥‥ようやく、あなたの意識に、追いついた」
混濁の色彩のなかから声が響いてくる。朝倉が‥‥泣いて、いる?
強く、きつく抱きしめられ、柔らかな女性の体に全身を支えられて、ふたたびぐるんと
視界が裏返った。頬に暖かいものが落ちてくる。朝倉の涙だな、わけもなく悟った。
まぶたを開けると、泣き笑いをする朝倉の先に、彼女のマンションの天井が見えていた。
こんなにも取り乱し、感情を露わにする朝倉涼子ははじめて見た気がする。そんな姿は
いつも頼れる委員長キャラとは正反対で、反射的にかわいいと思った。
北高の制服姿のまま抱き寄せる俺の頬を、長い黒髪の先がくすぐっている。
「傷は癒えたのにずっと眠っていたから‥‥うなされていたわ」
「うなされた? 俺が?」
「ええ。度重なる時空跳躍と致命傷のせいで、あなたという意識がひどく不安定なものに
なっていたの。治療はすんだけど、無理に覚醒させるのはためらわれて」
「そうか。じゃ今のは」
違和感があったのは、あれが走馬灯だったからかもしれない。だとすれば本気で俺は死
の淵に面していたのだろう。わき腹に手をやるが、傷痕も血の痕跡も見当たらなかった。
「すまん。また、お前に助けられたんだな、朝倉」
「いいの。かわいかったもの‥‥あなたの寝顔」
真上からにっこりと顔をのぞきこまれ、女性的な体のラインを下からぼんやり見上げる。
後頭部には何やら弾力ある暖かい感触。最初枕だと思ってたそれが朝倉涼子の太ももだと
悟り、超特急で気恥ずかしさこみあげ、俺はむずがるシャミセンのように跳ね起きかけた。
その体を朝倉の細い手がやすやすと押さえ込む。
「駄目。傷が完全にふさがるまであと数分かかるから。もう少しだけ寝ていて」
ぎゅっと上から押さえつけられ、やむなく暴れるのをやめる。気を失っている間じゅう
膝枕で治療されていたってことか。さぞ谷口が羨むだろうな。
四肢に力の入らないだるさを感じつつ、横たえられた室内を見わたした。
リビングにはカーテンが引かれ、外の情景は見えない。煌々とした灯りが眩しく、記憶
のはざまが目詰まりしたような、妙なもどかしい感覚を覚える。
刺されてから相当経っているような気がするにもかかわらず、朝倉の部屋は時間の流れ
を感じさせなかった。なにもかもが停滞し、あたかも澱みの底に沈んでいるかのようだ。
「ふふ。駄目ね‥‥隠せないか」
くすくすと軽やかなソプラノの声を奏でて朝倉が笑った。
「お察しの通り、ここは時間と時間のはざま。より正確に言えば、壊れてしまった私と修
正する私、その両者が重なるまでの、ほんのわずかな時間の谷間。さしずめ不連続面の間
に滑りこませた無関係なノイズね」
「朝比奈さん言うところのパラパラマンガがどうとかいう、あれか」
「そう。だから、ここでの出来事は本来の時間軸になんら影響を及ぼさないわ。次の瞬間
にも動きだした世界は時空震の歪みを修正し、すべては元に戻る。あなたも、私も」
そうか。俺は気を失ったが、最後の瞬間、人の入り乱れる音を耳にしている。おそらく
朝倉は再修正プログラムを受け入れ、元に戻るのだろう。
――本当なら、ここで聞くべきだったのだ。
何のためにこんな空間を作ったのかを。
「だから‥‥ね。この一瞬は夢のようなもの。ここでの行為は涼宮ハルヒに影響を及ぼさ
ないし、あなたに恋をしてしまった私も、じきに消えるわ」
「お、おい!!」
びっくりして思わず跳ね起きる。
膝枕のぬくもりとあいまって、あけすけな告白に顔がじんじんと熱をおびていた。社交
辞令でも揶揄でもない、本気の証拠に上気した朝倉は片膝を立てふらりと立ち上がり――
腰に手をやると、パチンと音をたててスカートのホックを外した。
しゅるる、という絹ずれの音。
悲しむべきは男のサガか、いやむしろ瞬時に理性を蹴散らした俗っぽい煩悩を喜ぶべき
か、俺はまばたきさえできずに朝倉涼子に魅入っていた。
痛いほどに秘めやかな響きをたてて、目を魅きつける健康的で蠱惑的な太ももの表面を
スカートが疾走し、あっというまもなく足首にからみつく。くしゃっとしわの寄ったスカ
ートから眩しい白のソックスに、そしてネメシスの輝きに吸い寄せられるかの如く視線が
這いあがり、
「もう‥‥えっち」
くすくすと笑う声にも淫らな期待が秘められている。
俺はただ呆けたきり、愛らしくレースで縁取られたピンクのショーツに釘付けだった。
肉付きのよい太もものつけねからデルタ地帯へくびれていく、そのはざまを悩ましく覆う
布地は、秘めた翳りをいっそうきわだてる。
カーディガンをはおったセーラー服と無防備な下半身のアンバランスがたまらない。
――楽園だ。断言しよう、男のロマンがここにある。
なんどか唾をのみ、ようやく俺は声を出す。情けないほどに欲望のにじんだ掠れ声で。
「あ、朝倉‥‥おまえ、何で、本当に‥‥いや」
「見ていいのよ。ううん、見てほしい。それが、私の望みだから」
女の子に恥をかかせないで?
そうやって若干拗ねた風で呟かれると、俺はもう本気でどうしたらいいか分からない。
朝比奈さんの見目麗しい下着姿をアクシデントにより堪能させていただいたことは何度か
あるが、ありゃ、あくまで偶然の産物。朝倉涼子は本気で俺を思ってくれているのだ。
「本当に、冗談抜きでいいんだな‥‥朝倉」
多分、男だし、はじめたら止められないぞ。いや、朝倉が本気で情報操作を行えば俺が
襲えるわけもないだろうが。
と、朝倉が奇妙なことを口にした。
「どうして私が暴走を起こしたか、聞かないのね。それでも私を受け入れてくれるんだ」
「おまえの口から直接聞くまでは、無理に訊ねたいとは思わないさ」
時空跳躍する前に聞きそびれた、時空改変の理由。今ではもうある程度の推測はついて
いるんだと言うと、そう、と答えて朝倉はうっすら笑った。
ふうと吐息をもらし、悩ましく色づいた唇がゆるゆると‥‥衝撃をつむぐ。
「でもきっと違うわ。だって、私は」
統合思念体に、あなたの消滅を命じられていたんだから。
「な!?」
ぎょっとして後ろに飛びのいていた。だがそれきり足が動かない。なんだ、これは?
朝倉が、一歩ずつ迫ってくる。ゆるい動作で肩からカーディガンを滑りおとし、婉然と
ほほえみながら、上にセーラー服をまとっただけの半裸でにじりよってくる。
「長門さんの遺言を覚えている?」
『朝倉涼子の操り主が意見をひるがえすかもしれない‥‥そうならない保証はない』
たしかに‥‥頭痛と共に思いだす。だが、なぜ今さら、俺を?
「文化祭以降、涼宮さんは少しづつ力の抑制を学びだしたのね。統合思念体は、このまま
彼女からの情報流出が途絶えてしまうことを懸念し、その原因が1人にあると断じたの」
ぴたり。
初めからそこがチェックメイトであったかのように壁を背にした俺の正面に朝倉が立つ。
笑みをうしなった顔で。停止させられた俺に彼女を止める力はない。殺されるのか。
蛇蝎のごとき速度で、残像をけぶらせた朝倉が迫り――
「‥‥!!」
「‥‥‥‥‥‥」
ねっとりと暖かく、ねばねばした液体があふれだしていく。
ぐ、という俺の呻きをさらに奪いつくして朝倉の動きが激しくなり、こじあけるように
侵入したそれがどろりと内側を攪拌して泡立てさせ、流れだす熱のことごとくが吸い出さ
れていく。体液がこぼれていく。
ひどくうつろな、放心した俺をえぐるように、探るようにぐるりと体内をなぞりながら。
「んっ、は‥‥ぁ」
――喉を鳴らし、舌を絡めたままの姿勢で、朝倉涼子は俺の唾液を飲み下していった。
熱く甘く、そして昏く、爛れきった刺激が、ぞろりと味蕾を通じて神経を灼きつくす。
朝倉の言葉を封じ、震えを吸いとり、大胆でいながらどこか躊躇した彼女の舌を俺自身の
舌ですくいとるように誘導してねっとりと堪能し、むしばんでいく。
手足が自由になっていることにも気づかず、ただやみくもに彼女を引き寄せる。
うふっ、といたずらな微笑が大きな瞳孔に浮かび、けれどそれ以上の感情表現を俺は許
さなかった。
かぐわしい匂い、どこか卑猥な涎のしずく、彼女の唇からあふれそうな情欲を深々と吸
い取って喉をならす。旨いというよりは喉を灼く甘美で黒い刺激。こんなもの、誰にも渡
せない。攪拌した粘液をお返しにそそぎかえし、朝倉の歯の裏をくすぐりながら、ガード
しようとする喉奥へ、まじわりあう2人のしずくをそそぎこむ。
片手であごを軽くつまみ、爪先だつ彼女の喉がコクンと音立てるのを見届けた。
いつも意志を感じさせる刷毛で引いたような太い眉が、少しづつ快楽に負けてハの字に
たわんでいく。そうさせているのが俺なのだと知り、さらに欲望が加速した。
離さない。離れない。片時も彼女の唇を離さない。
深くやみくもなディープキスをかわしつつ、朝倉はこぼれんばかりの瞳を潤ませていた。
気が遠くなるほどの時間の果て。
つぷんと‥‥
ワインのコルクを抜いたときのようにみだらな擦過音をたて、濡れた唇がはなれていく。
くらくらするのは酸欠のせいばかりではなかった。途中から我を忘れて朝倉をむさぼって
いた。ずるりという甘美な感触が、まだ生々しく口腔に残っている。
自分の大胆さが信じられず、けれど後悔はなかった。
少なくともキスの途中からは俺の意思だ。俺が、朝倉涼子を求めたのだ。
「あ、あは‥‥まただ、感情制御サーキットがどっか、破損、しちゃってるみたい」
あとじさり、信じられないと言いたげに呆然としてほほえむ朝倉の頬を、ふたすじの雫
が流れていた。
「人でもないのにヒトの感情に流されて、莫迦よね。マザーPCに叛逆する端末なんてモ
チーフ、今時チープなSFにもありえない設定なのに、私、私は」
造物主に逆らってでも、俺を救うためにと世界を組み替えた――不安げにそう語る朝倉
は、まるで、情報思念体を裏切った自分が俺に拒絶されることを怖れているみたいだった。
言葉が出ない。
今まで、朝倉の異常動作が単なる感情のショートだと考えていた読みの甘さを恥じた。
俺のためだけに、彼女は、文字通り全世界を敵に回して立ち向かったのだ。
「ねえ‥‥私となんて、したくない?」
なのに、こいつはそんなことを口にして、人間じゃないものね私は、なんて寂しく言う。
ぶつんと――理性と羞恥と欲望が、レッドゾーンの右端まで振りきれた。
「バッ、バカぁ言え! おまえは人間だよ、それも飛びっきりの美少女だよ。朝倉を拒絶
する男なんかこの世にいるものか! 俺が許さん!!」
思考が上滑りして羞恥全開のたわ言を口走る。ああもう俺の頭は豆腐か。腐れ落ちたか。
だってのに。
「私は、他の男なんかどうでもいい‥‥あなただけが、欲しいんだから」
胸の前で指を絡めあわすいつものポーズで微笑み、吐息がまじりあう距離でしなやかな
指先がつつっと俺の制服をなぞる。膝同士がひたと密着して石のように硬くなる。どこが
って? すべてがさ。ほんのわずかに膝を割りこませれば、大胆で挑発的な太ももの間に
秘めやかな下着の神秘があるんだから。
「涼宮さんのことは忘れて。さっきも言ったでしょ。ここは存在しない世界なの」
「朝倉‥‥」
谷口ランクにいわくAA+の屈指の美少女に迫られて、拒める奴がいるならぜひ教えて
いただきたい。もっともどれだけ金を積まれたってこの立場を入れ替わってやるつもりは
ないのだが。
旦那を見上げる新妻さながら、しゅるしゅるネクタイがほどかれていくのを感じつつ、
今度は意識して彼女の腰に手をまわす。セーラー服と汗ばむ裸身の境にひたりと指が吸い
つき、あ‥‥とこぼれた艶めく声にドクンと腕が震えた。こんな、抱き寄せただけで敏感
に反応してしまうものなのか。
「でも意外。すごい積極的で激しいんだ。野獣みたいでびっくりした」
野獣ですか‥‥いや、突っこむべきはそこではなく。
「さっきみたいに情報操作の力を使うのはやめてくれ。俺は、俺の意志で朝倉を」
「‥‥涼子」
ぶすっとして訂正されたので慌てて言い直す。
「俺は俺の意志で涼子が欲しいんだ。お前が好きなんだから」
「そっか、そうだね。じゃあ」
一度ぎゅっと体を押しつけた朝倉が身をひるがえし、リビングの端から箱を出してきた。
犬でも飼っているのか、丈夫なハーネスのついた首輪に、束ねた荒縄に、金属の光沢を放つ
ワッカに、あとなんだ、蓋をあけたこぼれだしたのは、あれよとあれというまに‥‥
「これで‥‥私を、自由にして?」
いや、してって。全部大人のおもちゃなんですが。
幸か不幸か、気まずい沈黙などという停滞は生じなかった。
朝倉涼子はきびきびとした委員長気質をここでも発揮して、凍った俺を尻目に物色を始
める。床にあふれだす玩具の数々。手錠、バイブ、ローション、ムチ‥‥どう考えても元
の箱には入りきらない。いかな変換をほどこしたのか解凍展開されたグッズに埋もれて俺
の足元はアダルティな露店さながらだ。
いくら事象への介入が得意だからって、夜の生活に興味持ちすぎだろう、これは。
「にゃん?」
うん。俺、猫属性ないから。ネコミミのカチューシャはそりゃ大層かわいいけれど――
ピンポイントな破壊力も抜群だけど――彼女の髪型ではナチュラルに埋もれて目立たない
のだ。
「そんなに呆れないでよ。途中で私の意識が飛んだりしたら、無意識にあなたを操ってし
まうかもしれないわ。だから、そうできないように枷を嵌めるの」
カチン、カチリと施錠の音が響いて、気づけば彼女はネコミミとおそろいの首輪を嵌め、
背中にまわした両手にチキチキ音をたてて手錠をかけようというところだった。
「ちょっ、ちょっと待て。何も手錠なんて」
「あら。臆したの?」
遅かった。というか逆効果。俺の声に誘われたのか、すでに手錠の輪がはまった右手で
背中の左手をまさぐり、ジジジッと金属を鳴らして両手首に手錠を嵌めてしまう。カギが
どこかも知らず、後ろ手のまま――なんか、すげー不便じゃないか?
手錠を嵌めたままどうやってセーラー服を脱がせるのか。知恵の輪を連想してしまう。
「はい。これでできあがり‥‥据え膳だよ?」
「男のロマンだな」
反射的に答える。答えざるを得まい。ちょっとやりすぎに思えたが、媚びてくる朝倉に
抵抗するには理性度9レベルのセービングロールでも足りないだろう。
アンバランスなパーツの数々が、たとえようもない淫蕩な空気をかもしだす。
とんと踏みこんだ朝倉は俺の両足を割って太ももを密着させてきた。明らかに挑発的だ。
俺の北高のズボンが情けないぐらい膨張しているのを見て、わざとそこに腰を寄せてくる
のだから。
「本当に俺を野獣にさせたいのか、朝倉は」
「ふふっ」
満面の笑み。心なしか目がきらめいていて、こんなにも無防備な姿なのに「手負いの牝
豹」なんてぞっとしない形容を思いついてしまう。
俺の胸にピタリと上体を寄せ、ことんと預けた頭を傾けて上目づかいの瞳が俺を見た。
探るかのように。
‥‥ああ、限界だとも。これ以上焦らされてたまるかってんだ。
片手でしっかりと細い腰を抱き寄せ――不自由な後ろ手の指が、きゅっと俺の手に絡み
つく――おとがいをもう少し上向けて、
「舌を出して」
「‥‥いやらしいの」
ぬらりと紅く濡れた彼女の舌先を見やり、舌と舌同士の先端をつつきまわしてみだらな
キスを再開した。敏感な粘膜をくすぐり、上唇をなぞり、迫ってくる舌先を払うように巻
きこんで彼女をくすぐる。ひどくもどかしい焦らしあいが続くうち、粘っこい銀糸が幾筋
も尾を引いて上から下へ‥‥つまり朝倉の口内へとしたたりはじめ、俺の腕にしがみつく
後ろ手にぎしりと力がこもった。
「はっ、はっ、はぁぁ」
短く荒い喘ぎがいやらしくのぼせて俺の頬をくすぐる。悩ましいまじわりが見えるせい
だろう。朝倉の顔は朱を散らしたように耳まで真っ赤だ。
「ん‥‥んぁっ、な、何よこれ、どうしてこんなに上手なのよぉ」
「秘密だ」
――ぶっちゃけて言えば谷口から借りたAVで勉強したのだが、そんな恥ずかしい練習
を得々と語るような自爆行為は行わない。簡単に俺を堕とせると思ってたらしく、朝倉は
どこか悔しそうにはぁはぁと乱れ、せいいっぱい舌を伸ばして俺をとらえようとしていた。
頃合だな。
「う、うひゃぁっ、あん待っ‥‥ン」
すっとんきょうな声を出した朝倉があわてて舌を引き戻そうとする。だが遅い。
俺は自分の舌を引っこめ、ぱくっと朝倉に噛みついた。ずるずると濡れた舌をしごくよ
うに甘噛みした歯で梳き、たっぷり唾液でまぶしていく。
「ぅあ、あひゃ、ひっ、うぅぅ‥‥ぐ、」
狂ったように儚い嬌声がこぼれおち、それがなによりの媚薬となって俺をたぎらせた。
にゅるんと舌先が抜け、バウンドして朝倉の口に戻っていく。
「あ、あは、ひゃぁぁぁ‥‥」
ビリビリと電流のように痺れているのだろう。舌ったらずな嬌声をまきちらし、朝倉は
あやうく床にへたりこみかけた。俺の左肩に額を押しつけ、なにやら不平を呟く。ネコミ
ミが鼻をくすぐり、ストレートの黒髪がふわりと清潔な香りをただよわせた。
「なんだ、洗い髪なんだな」
「んー」
今になって恥ずかしくなったのだろうか。顔をあげようとしない。こんなかわいらしい
有機インターフェイスを造るたぁ、親玉の情報思念体もなかなか世の中分かってるという
ものだ。
と‥‥そこで俺は朝倉の変化を知った。
いつのまにか、モジモジと朝倉が足をくねらせている。俺の右足を深々と膝で抱えこみ、
まるで太ももの最奥をこすりつけずにはいられないような仕草だ。無意識に浅ましく動く
彼女の下半身に気づいて、鼓動が早鐘のように波打った。
じっとり湿った感触が制服のズボン越しに浸透してくる。ものすごい感じているのだ。
今こそ言おう――
「これなんてエロゲ?」
「うぅぅ」
‥‥返事がかえってきたよ。「うぅぅ」だと。斬新なタイトルだ。
まあなんだ、お預けしっぱなしも男がすたる。求められた以上は彼女にも気持ちよくな
ってもらにゃ‥‥なんてのは男のエゴか? それこそAV的な発想か? どうせ自分から
手錠なんてマニアなプレイを選んだんだ、いやらしく体を弄られたって、逆らえないのは
当然のことなわけで、両手を遊ばせておくのはもったいない。
左手で朝倉の背中を支えたまま、空いた右手を彼女の下腹部にのばす。
俺が気づいてないと思っているのだろうか、小さな動きで熱心に朝倉が股をすりつける。
その邪魔な膝に苦労しつつ、やや強引に右手を割りこませると、淫靡に湿ったショーツの
正面に広げた掌をあてがう。
「!!」
「‥‥あンッ!!」
明瞭な悲鳴が甘く耳朶をふるわせた。
俺の掌に気づかず腰をすりあげた瞬間、むにっと5本の指が柔らかな下腹部の弾力を捉
えて沈み、中指がショーツごと深く彼女の奥へもぐりこんだのだ。最後に一瞬、たしかな
尖った感触が指の腹を抉り、朝倉が大きくのけぞった。
意味もなく震えと感動にとらわれる。
ひときわ高かった最後の嬌声。こりこりした指の感触‥‥あれが、女性のもっとも敏感
な充血したクリトリスの感触だったのか。
びくんと跳ねた朝倉が足を引いて逃れようともがく。かまわずくびれた腰に力をこめて
捕らえて、
「あぁっ、ちょっとぉ、だめェ」
「ごめんよ、朝倉」
一言謝って、窮屈なレースのショーツの下へ指をもぐりこませた。
ねっとりと手に暖かいものが絡みつき、指先から発火しそうな興奮が脳に突き抜ける。
――朝倉は、下腹部の指同士を擦るだけでニチャニチャ水音を零すほど、どろどろの蜜を
はいて濡れそぼっていた。
カァッと頭が真っ白に眩み、あとは夢中で指をもぞつかせる。正直どうやったら朝倉が
悦んでくれるか分からない。ただ、みっちり掌に収まった彼女の秘めやかな肉のフィット
感とべっとり張りついた陰毛の翳りが、触れるだけで見て取れるように感じられた。女性
の部分‥‥ワレメに指を這わすとひくつき、吸い込まれそうな気分になる。
そのとき唐突な痛みが走った。
「痛ッ、あさ、朝倉‥‥」
驚くのも当然、こみあげる情感をこらえきれなかったか、朝倉は吸血鬼のように俺の肩
に噛みつき、制服の生地に歯をたてて喘ぎを殺していた。あごをつまんでこちらを向かせ
ようとするものの、懸命に声を殺して視線を合わせようとしない。
さぞや溺れた表情をみせることだろう‥‥
自分で誘ったくせに、いざ快楽に飲まれたら、そんな姿を見られたくないのだ‥‥
卑猥な上下動が朝倉のクレヴァスを捉えてつつっとなぞりあげ、発情した裸身を縦横に
もてあそぶ――等とフラ○ス書院ぽく言えばいかにも手馴れて聞こえるだろう。
その実、はなはだ拙い指先とテクニックによる独演会なのだが。
自分の体も支えていられない朝倉を膝立ちにさせてこちらに寄りかからせ、空いた両手
で本格的にペッティング――愛撫って表現はオヤジ臭いからな――をはじめる。
ようやく感触が分かってきた右手の指をカギ状に曲げておそるおそる彼女の奥へと突き進
め、一方で左手を下からセーラー服の中に滑りこませる。みっしりと汗ばんだ肌は快楽の
残滓を感じさせ、なおも熱を帯びてしっとり指を吸いつかせる。
本当はバーッと制服を脱がせたいが、構造がよく分からない。
ハルヒが脱いでいたときは大雑把に首から引っこ抜いていたが、普通サイドファスナー
とかあるもんだよな。とはいえ、そんなことでおたついているのがバレたら、せっかくの
優位がパーになってしまう。
「いいから、声を出して」
あ、OKだ。ようやく、声も普通っぽく落ち着いてきた。
相変わらず猛り狂うマイ・ジュニアはジャイアントなままだが、この興奮を飲みこんで
朝倉を責めていくことに途方もない愉悦をおぼえてしまう。わりかしSだ。
「‥‥っ、ィ‥‥ン」
「朝倉の‥‥じゃなかった、涼子の感じている声を聞きたいんだよ」
右手ではほころびたクレヴァスのとば口をぐりぐりいじり、ぬるぬるの指の腹でチュプ
チュプ肉芽を転がす。顔を伏せても能弁に快楽濃度を語る朝倉の肩が、どこを虐めて欲し
がっているか的確に伝えてくるのだ。
ブラを外そうとして‥‥外せない。
なんだこりゃ、どうなってんだ、バックホックか?
外す方法をあきらめ、半ば力まかせにブラをずりあげると、今度こそひっと嗚咽があふ
れた。ぷるんとたわわな肉感が手の甲に弾け、危うく歓喜の声を洩らしかける。
すごい弾力だ、こんなに女性のおっぱいって、柔らかいのか‥‥?
むにむにっと掌底で半球を揉み、触れるか触れないかのタッチでつうと爪をたてる。
てきめんだった。
「んっ、そこ、‥‥イイっ」
思わずくぅんと喉を鳴らしてのけぞり、朝倉が白い首をさらけだす。間近に迫った唇を
軽くついばんでやると一転、狂おしくディープキスを求めてすがりついてきた。
どろりと濁った瞳に股間が暴発しかける‥‥いや、恥ずかしい話、先走りはとっくにトラ
ンクスを汚しているが。
快楽と焦らしぜめに濁り、どっぷりと首まで愉悦につかった、溺れた瞳。
その目が俺を捕え、愛情よりも情欲よりの衝動にせきたてられてか、ひっきりなしの口
づけと息継ぎでむさぼるように俺の口を犯しながら、あは、とも、ン、ともつかぬ喘ぎで
声を震わす。
「ね、ねえ‥‥もう、すごいから‥‥」
「なんだい、涼子」
「お願い、来て‥‥来てェ」
はしたない乱れ加減は律儀な委員長キャラの裏返しだった。がくんと上半身を崩すなり、
むしゃぶりつくように制服のズボンに噛みついてベルトやジッパーを外しだす。まるで手
を封じた分、インランな地が目覚めたとでも言わんばかりに‥‥
「待った、手錠のカギを外すから、ちょっと」
「うふ。待たない」
どれだけ器用なのか、またたくまにバックルが引き抜かれ、ジッパーに歯をかける。
「涼子はそんなに‥‥本当に、感じてるの?」
「ええ。そうよ」
ほんのつかのま、とろんと溶けた瞳に焦点があった。
「最初のキスのとき、少しだけ快楽因子を唾液中に生成したの。だからあなただって‥‥
ほーら、すごく、ない?」
ブルンと。
自分のジュニアだというのに、最初に連想したのは不運なマタドールを突き上げる闘牛
の角だった。それぐらい‥‥猛々しく充血し、天にそびえている。ぬらりと鈴口は透明な
樹液を吐き、朝倉を笑うことなどできはしない。
「ね‥‥だから、私を、満たして?」
「はいはい、分かったよ‥‥案外、傲慢なお姫様気質だな。どこぞの誰かのように」
「他の女(ひと)なんか忘れなさい。失礼よ、そんなの」
口をとがらせつつ、待ちきれないとばかりにもじもじ腰を蠢かす朝倉の下半身に手をか
けると、濡れそぼってねじくれたショーツを引き剥がす。にぱぁと無数の銀糸がアーチを
描き、乱れた委員長は快感の予兆に身を震わせた。
純粋なサーモンピンクの、穢れ一つない女の器官がむきだしに甘く目を射る。
下になり、彼女が上から腰を下ろすようにして、ズズ‥‥と下腹部を沈めていく。朝倉
は後ろ手錠で不自由な体、リードすべき俺はこれがはじめてということもあって、お互い
昂ぶったままなかなか繋がらなかった。どっちの器官もベタベタのぐちゃぐちゃ、しかも
ジュニアに垂れてくる愛液のしたたりさえもが敏感な刺激となり、左右にぬるぬるとター
ゲットを外してしまうのだ。
「もう、何よ、なんで焦らすの」
「焦らしてない、そっちこそ、腰を弾ませすぎだっての」
連綿と続くもどかしい仕打ちの果て、とうとう彼女のワレメをくぱっと指で開かせ強引
にねじこんでいく。
「熱っ‥‥!!!」
朝倉の喘ぎ声と同時ぐらいに、ちりちりと激しすぎる感触がむきだしの器官を咥えこみ、
俺はぐぅっと呻いた。にゅるりにゅるりと自重によって腰を沈めながら、圧倒的な充足感
に喉を鳴らして朝倉が呆けている。
その、まじりあう男女の粘りのなかに一筋の血を認め、思わずドキリとした。
それはそうだ。いかな有機インターフェイスとはいえ彼女はまだ誕生から3年ほど。と
なれば、俺が始めてであってもおかしくはない‥‥
同時にこみ上げたのは、所有の、独占の歓びだ。
「あ‥‥痛くないか」
「ふふ、全然。刺激がすごすぎて、痛みなんて‥‥うん、ふっとんじゃった」
めじり。
ひどく猥褻に粘液を跳ね散らかして、朝倉が、底の底まで、俺と、つながった。
べったりと根元まで卑猥なそこが俺を包みこんでいる。
朝倉の尾てい骨のあたる感触だけで逝きかけた。
ぽわーんとだらしない表情で、それでも笑みをこぼす朝倉が嬉しげに報告する。
「子宮の底まで、埋まっちゃったみたいな感じ。すごい感じるよ、私は」
「俺も‥‥さ」
精一杯クールをよそおって歯の間から言葉をきしらせる。そんな下半身を、いや、俺と
いう神経網のすべてを、食らいつくすかのように‥‥ただ挿入しただけで、朝倉のそこは
ぞるぞると渦巻き、蠕動で雄器官を食い締めていた。
今すぐ果ててしまわぬように‥‥きつく爪を立てて両手に握り、快感にあらがう。少し
づつ‥‥2桁を数えたあたりからは徐々にペースをあげ、腹筋を弾ませる要領で彼女の中
へストロークをつきこんでいく。
一息ごとに頭の中が千切れていくような快楽が襲い、意識がバラバラになった。
俺の上で騎乗位の裸体を弾ませ、わき腹をきつく膝で締めつけるのが本当の朝倉涼子な
のだ。セーラー服が波打って、その度にずりあげたブラからこぼれたオッパイが揺すられ、
制服に卑猥な陰影をつけていく。
「すご、すごいよっ、ンァ‥‥あはぁァン」
「俺もっ‥‥ぐっ」
壊れたように快楽に溺れて激しく朝倉が腰を使っていく。ジャラジャラ手錠が鳴り、首
輪の下で汗みずくのうなじが色気を誘う。もうダメだ、俺の方が先に屈服するかと思った
その時、彼女がガクリと身を突っ張らせ、ついで大きく弓なりにのけぞった。
「イクよぉ‥‥こんな‥‥あ、はぁァ!!」
反則的にかわいらしく媚態にみちた顔。そんな蕩けた姿を見せつけられて限界だった。
最後の力でガタンと大きなストロークを打ちこんで、ありったけの精を放つ。
「あ、くぅぅ‥‥‥‥ぅぅンッ!!!」
悦楽の極限にまみれ、がっくりと絶息した彼女が身を震わせて俺の上に倒れこできた。
べったりと汗ではりつくブラウスはさっき半ばはだけられ、そこに繋がったままの朝倉
が器用に体を倒して寄り添っている。
びゅる、びゅるっと未だに余震のごとく射精はつづき、そのたびにブル、と震えて嬉し
そうな顔をした朝倉が、煽るように俺の胸に舌を這わすのだ。
しばらくは言葉もなく。
ややあって、ようやく冷静さが戻ってきてから、朝倉が最初に声を発した。
「もう一回‥‥しよ」
マジッすか?
「安産型だよな、朝倉って」
「‥‥涼子。もう」
しまった、また間違えた。なにもそんなに眉をひくつかせて睨まなくても。
「それに安産型って、どういう意味よ。お尻が大きい子は嫌いなんだ。ふーん。へえ」
「逆さ。触りがいがあって、すごくいやらしいよ」
会話が途切れ、キスとキスの合間に朝倉の頬がまたも上気していく。
「だ‥‥だいたいひどいわ、断りもなくこんな出して」
あーあ‥‥なんて声を上げ、腰をよじって2人の接合部をのぞきこむ。
俺のモノに押し拡げられた彼女のワレメからは、明らかに雄くさい白濁があふれだして
いて、そんな確認の仕草に股間がぎりと力を取りもどし、彼女のなかできつく膨張する。
繋がったまま普通に言葉を交わすこと自体が倒錯的で、2人をおかしくさせた。
「あっ‥‥ン、‥‥‥‥えっち」
「仕方ないだろ。そっちが挑発するんだから、男はこういう体なんだよ」
ちりちり硬度を取りもどすジュニアで彼女に仕返ししながら、首輪のリードを引き寄せ
唇を重ねた。ばさりと黒髪が羅紗の幕となって視界をさえぎり、熱っぽいおでこをくっつ
けたり鼻をくすぐらせたりする。
ついばむ舌は桃源郷で、飲みくだす体液は仙界の甘露だ。
「こんなえっちな人だって知ってたら、色仕掛けで迫ったほうがよかったかしらね」
うん? なんのことだ?
「改変前の世界では涼宮さんにとられちゃったけど、私、1人文芸部で本を読みつづけた
あの頃から、あなたが気になってたのよ」
ああ、なるほど。それは随分とロマンティックな――
待て。
ズキンと、鏡の割れるような痛みがこめかみを貫く。世界の偽りを暴きだす。
決定的な矛盾。『文芸部で待ち続けた』のは、彼女ではないもう1人の誰かだったはず。
あの部室で俺を待ち受けていたのは、凶刃を抱いた急進派だったはずなのだ。
なら、記憶がおかしいじゃないか。
「涼子込みでこの部室をもらった」なんて台詞が、どうしてハルヒの口から洩れるんだ?
「ふふっ」
ただ笑っただけなのに、見たこともない禍々しさがその笑みに宿っていた。
顔を伏せている。
伏せたままで朝倉がにやつく。
その視線が怖くて、カラダを重ねた彼女をまともに見ることができない‥‥!
「残念。気づかれた。じゃあ、ここから先は――犯して上げる」
あ、げ、る。と。
3音節に区切って朝倉が発音した次の瞬間、いつぞやの蜃気楼が渦を巻いて俺のカラダ
を朝倉から引き剥がし、巨人の手のように身動きもさせず俺を圧し拉いだ。
どういうことだ。身動きができない。手も足も自由にならない。
「ずいぶん乱暴してくれたわね」
忍び笑いを洩らす朝倉が宙に浮きあがる。ネコミミも首輪も手錠も嵌めたまま、なのに
強烈なプレッシャーが心身ともに俺を圧している。
「あら、おちんちんだけどんどん大きくなってる。死に瀕してせめて子孫を残そうとする
本能かしらねえ」
「なにを莫迦な‥‥朝倉、お前は俺を救ってくれた、SOS団の一員じゃないか!」
「本気で言ってるの?」
朝倉は心底おどろいたように目を見開き、
「私は長門さんの修正プログラムのすきまに一枚のノイズを滑り込ませただけ。あなたは
やすやすと信じてくれたけど‥‥随分都合のいい夢ばかり見るのね。おかげでたっぷりと
中だしされちゃった」
ころころと邪気なく笑うソプラノのさざめきがいっそう肌をあわ立てる。
「まだ射精したりないの?‥‥いいわ、さっきのお礼、屈辱的な方法でお返ししてあげる」
「涼子、頼むから正気に、グハッ」
「朝倉でいいわ」
激痛がじぃーんと頭頂までつきぬけ、瞳孔がすぼまってしまう。
無造作に降りたった朝倉が、むきだしの分身を爪先で蹴ったのだ。痛みはしかしみるま
に痛がゆい奇妙な衝撃へ、やがてひりひりした疼痛へと添加し、ついにはじんじんと腫れ
ぼったく疼きだす。
「あはは、最低。あなたマゾなの? おちんちん虐められてイきそうな顔してる」
「朝倉、お前‥‥俺を」
「さっきの快楽因子がまだ残っているんでしょ。私と同じ。ほらぁ」
俺の頭をまたいで朝倉が立ちはだかる。
ぬらぬらと輝きを溜めた女の帳が頭上にのぞいていた。とろりと白濁まじりの淫液がひ
とすじ糸を引き、獲物を狙うクモのようにまっすぐ、固定された俺の口へ注がれていく。
「ん、が‥‥ング」
「強情なあなたのために、情報因子を飲ませてあげる」
無理やりにしずくを飲まされ、同時にカッと下腹部が燃え上がった。
腹にくっつきそうなほどに反り返った俺のジュニアを、朝倉が蔑むように脚を伸ばし、
裸足のかかとでぐりぐりっとこねくりまわす。狂ったようにビュクビュクッと快感が尾を
引き、瞬間的に暴発する寸前まで追い込まれた。
「うふふ、歯を食いしばったってダーメ。惨めな顔のまま、私の足でイっちゃいなさい」
「うぁ、あ」
つかのま踏みにじる踵が遠のいたと思う間もなく、今度はもぞもぞ蠢く足の指が迫って
くる。必死になって避けようとカラダを右に左にゆすりたて、けれど股間がぶるぶると跳
ねるばかりで、ついに親指と人差し指が充血したカリの直下、エラのはったカサとわずか
に余った皮との間をしっかりと摘み‥‥
「うぁ‥‥」
なんだ、これは!?
信じられない。彼女と繋がっていたときと同じくらいジュニアが痙攣している。優しく
もなく気持ちよくもなく、ただただ残忍に虐めるだけの遠慮のない摩擦と刺激が、屈辱と
共に異様な興奮をもたらしている。
溶けた鉛を肉棒の芯に注ぎこまれたような感触だった。
滑らかな足が、快楽の余韻で朝倉自身火照ったままの上気した足が、容赦なく俺を擦り
あげている。腰をふって逃げようにももう一方の足が逆側から緊めつけていく。
「あはは、すごい顔。そんな怖い顔で私を睨むんだ。あんなに尽くしてあげたのに」
「頼むからよせ。朝倉‥‥」
「さっきまでの奴隷に虐め返されるのって、きっと耐え難い経験だよね。分かるなあ」
朝倉はほらほらと後ろ手をよじって食いこむ手錠をちゃらつかせ、ネコミミのカチュー
シャの嵌まる頭をかわいらしく傾げ、みずからも快楽の吐息をふうふうこぼして気持ち良
さそうに喉を鳴らし目を瞑る。
天使ではない。路傍の蟻を踏み潰す子供の残酷さで、無邪気に微笑みつつ俺をしごく。
腰から下が快楽のあまり千切れそうだ。
冗談じゃない、ありえないが、本当にイかされてしまう。そのイメージが脳裏にまざま
ざと描かれた途端‥‥俺は、とうとう決壊した。
腰から下をすべて搾り出されたかのように、やむことなく間歇的に白濁を吹き上げる。
ビシュッ、ビシュッと撒き散らされたそれは俺自身の制服にひどく沁みこんでいく。
「キャ、うそぉ‥‥噴水みたいなんだね」
その一部始終を、薄ら笑いを浮かべて朝倉は愉しそうに鑑賞していた。
止まらない快楽につきあげられて、2度・3度、宙に向かって腰をつきだし射精する。
さらに奇怪なのは、これだけ放出してなお俺のジュニアが仁王のごとく天を睨んでいる
ことだった。
「すごい、私はほんの少しあなたの快楽を弄っただけなのに。AV男優になれるわ」
「ほっとけ」
ぶすっと突っこみをいれかけ、体の自由が戻っていることを知る。射精と共に情報因子
とやらも外に抜けたらしい。だが、俺は全身をこわばらせ、動けないフリを続けた。朝倉
はまだ気づいてない。彼女に気取られたらそこで終わりだ。
「じゃ、もう少しだけ遊んであげるね」
いまや、偽りの仮面を粉々に砕き、冷ややかな笑みを朝倉がたたえている。ほれぼれと
見惚れてしまうような歪な笑み。逆光で影になった顔の中、毒の笑みばかりが裂けている。
なぜ首輪やカチューシャを消去しないのか、性の刺激に酔いしれたまま朝倉は拘束された
手首をひねってそれを取り出した。
‥‥物騒なギザギザが刻まれたランボーナイフのきらめきが、脳裏を照らしだす。
――朝倉に救われたと信じていた夕陽の教室のなか、本当に待ち受けていたのは誰で。
――この凶刃を代わりに受け止めてくれたのは、誰だったのか。
「口でしゃぶってあげる。できるだけ長く我慢して。出しちゃった時、首を刎ねるから」
「‥‥!!」
陶然と欲情した朝倉が俺のものに舌を伸ばして口に含む。体がバネのようにはじける。
――そうして。
気づいたとき、思いきり体をひねった俺は、カーペットの上に馬乗りで朝倉涼子を押し
倒していた。情報操作も反撃もなく組み敷き、ナイフさえも奪うことができた。なぜ?
答えは1つきりだった。
「おまえは‥‥俺に、思いだして欲しかったのか?」
「そうよ。今の私こそが、あなた本来の記憶に残された朝倉涼子なんだから。せめて悪夢
らしく、最後にうなされる時間をあげたの‥‥それと、自力で目覚める最後の可能性をね」
しゅるっと音をたてて、黒髪が俺の喉を締めあげる。
「一度だけチャンスをあげる。どう? 私を殺さないと、出られないわよ」
「くっ」
笑っている。
この期に及んで、体内を駆けめぐる快楽因子にむせびつつ笑っている。黒髪をみだし鬼
女のように笑う。朝倉は情報生命体の急進派、反乱分子、殺し屋だ。迫る死におびえ全身
の細胞が訴えかける。許すなと。逃すなと。自然と腕が上がり、大きくふりかぶられる。
ためらいなく両手を振り下ろした。
ぞぶりと重たい刃先が深々とめりこみ、時間が止まる。
「‥‥どうして」
それはこっちの台詞だよ、涼子。
ランボーナイフを彼女のわきに突きたてて、俺は朝倉の上半身を抱き起こした。自分を
殺し屋だといい、急進派だといい、死にたくなければ記憶のなかで私を殺してと懇願する。
ならば、なぜ。
どうして笑っていられるんだ‥‥前髪に顔を隠したまま、顔をくしゃくしゃに歪めて。
「違う、私は‥‥」
はっと顔をあげる朝倉の唇に、もう一度強引に侵入する。すっかりかじかんでしまった
舌先をこねまわし、誘惑し、ちろちろと甘くくすぐってやる。
「あっ、は――」
朝倉は逆らわなかった。まるで長門の性格が乗り移ってしまったかのように、困惑した
瞳を俺にゆだね、黙って舌を重ねてきた。彼女のためらいを押し流そうと右手を這わせ、
AA+ランクの非の打ち所のないバストを揉みしだく。
さっきまでこらえていた感情が、ようやく流れ始めたのだろうか。
ん、あ――、と、鼻声で喘ぎつつ、朝倉はしだいに火照り始めた裸身をきりきりとよじ
らせ、俺のなすがまま、全身を預けてきた。ひしと指に吸いつく人肌のぬくもり。朝倉が
それを望むなら、稚拙な俺にできることなんて一つきりだ。
唇と唇が名残惜しくも離れていく。
銀糸のアーチがねっとりと水分をはらんで重たくたわみ、俺と朝倉を‥‥涼子をつなぐ。
「気持ちイイ?」
俺の言葉に、ン、と幼児のように頷いて。
堰を切ったように、朝倉涼子は俺の唇を奪いに来た。
「どうして、こんなにしてくれるの?」
どうしてもこうしてもあるか。これはただの夢のようなものだろう?
ぴちゃ、ぴちゃという淫らがましい響き。
朝倉が一心不乱に顔を埋め、あぐらをかいた俺の股間にしゃぶりついている。ひくひく
と生き物のように跳ねるジュニアを愛おしそうに舐め、時々、俺のいたぶりによろめいて
感極まった喜悦をこぼす。
「そうよ。だからって‥‥ン‥‥ここで死ねば現実のあなたもショック死しないとは断言
できない。怖く‥‥ン、あン‥‥‥‥ないの?」
ああそうさ。恐怖はたしかにあった。けれど、ここが偽りの時間だと知っているからか、
偽りの記憶にあった頼れる朝倉の姿は、俺の心を許すには十分なだけの重みを持っていた。
あそこで涼子を殺したら、寝覚めが悪すぎる。
どうせ夢ならそれこそ自分の思うがまま、死のうがなんだろうが好きにしたいんだよ。
こんな風に、好きな子にめいっぱいいやらしいことをさせてさ。男のロマンじゃないか。
「バカね」
「莫迦はお前だ、あんな形で、悪夢の具現で俺の心に記憶を残そうとするなんて」
「しょうがないじゃない。本当のあなたの心には、もう、長門さ――ンァ!?」
それ以上言わせたくなかった。
無理やりに彼女の後頭部をつかみ、ぐいとジュニアを咥えさせる。
一瞬だけ太い眉がハの字に折れ、ちろりと非難がましい視線を投げたが、それでも彼女
はふたたび唇をすぼめて唾液をまぶし、不自由な拘束姿で奉仕を始めた。やわやわと頭を
なでつつ、しこった彼女の乳首を弄りまわす。
ああそうだ、朝倉は正しい。
俺の心のほとんどはあの暴風をまきちらす団長殿に裂かれ、残りの大半は長門と朝比奈
さんに注がれている。傍観者として表れ、ただの記号として情報思念体に使い捨てられた
お前に裂く部分なんてどこにもない。あちらの世界ではな。
でも、ここは、朝倉涼子が俺の友人だったパラレルな夢なんだろう?
なら、行き場のない涼子の思いを俺が背負ってやらなきゃ。SOS団の仲間を信じろよ。
朝倉の瞳孔がさらに大きく広がる。さっきから潤みっぱなしの瞳がたまらなく愛おしい。
「SOS団って、だって私は」
「涼子が紡いでくれたじゃないか、ここでのお前は、ハルヒにとっても俺にとってもかけ
がえのない友人で、マメな委員長属性のキャラなんだから」
ときどき腹黒くて邪悪なあたりも、底を見せずにハルヒを翻弄してくれそうだしな。
「なら、そのキャラを大事にしろよ。俺はそんなお前と知り合えて良かった」
「‥‥」
何を思ったか、涼子は返事もせずに顔を沈めてさらに熱心にしゃぶりだす。
口腔奉仕の波打つような快楽にひきつった下腹部に、ぽたり、ぽたりと熱い滴が垂れて
くるのを、俺は気づかないフリをしてやりすごした。
倒錯したエナジーが、彼女だけを汚すために一気に駆け上がってくる。
舌さばきは繊細で、卑猥な水音が情欲をそそり、これ以上ない支配の構図が征服欲を存
分に満たしてくれる。時々前髪からちろっと顔を伺う瞳がまた、直球で心をぶち抜くのだ。
すっかりあふれた先走りの汁を嫌がりもせずとろとろと飲み干していく涼子に。
フェラチオの快感を抑えきれず、俺は、滾った情欲をすべて彼女の喉にぶちまけていた。
「もういいぞ、涼子」
「あ、うん」
優しく声をかけると、ジャラリと手錠を弾ませて朝倉のしなやかな体がはなれた。
彼女をうつぶせにし、食べごろの白桃めいた艶やかな尻を高く掲げさせる。心細いのか
手錠で括られた後ろ手がはたはたと支えを求めて宙を泳いでいた。そこに手を重ねてやり、
息のほぐれたところを見計らって‥‥
爛れ、充血しきり、最善の白濁さえまだ滴らせたワレメを変形させる勢いで突き崩す。
バックから獣の姿勢で、俺はのしかかるように朝倉涼子を貫いた。
きつい一撃。じゅるりと、かすんだ視界の奥で、ねばっこく爛れて腫れた肉ヒダが待ち
わびたように俺にからみつき、すすりあげ、神経を麻痺させてぞぶぞぶと飲みつくす。
すでに一度目の交合でほぐれきった体と体だ。
やすやすと俺の形を朝倉のクレヴァスが飲みこみ、しっくりなじんだかのようにぎゅう
っといやらしく食い締める。その圧力と愉悦に自然口が歪にゆがみ、勝手に腰が動きだす。
止まるわけがなかった。狂ったように腰は弾み、ガクガクと、朝倉の都合にさえ応じて
やれずに、ただひたすらエクスタシーの頂点めざし追い込んでいく。
多少は技巧も使ってみた。カリがひっかかるとば口をぐりぐりこね回したり。
ランダムで、腰骨がぶつかり合うまで深く突いてみたり。
ずるるっと抜きながら、クリトリスを自由な指で揉みつぶしてみたり‥‥
性のエデンがここなら、俺は原始のアダムを蹴散らす絶倫ぶりを見せただろう。ひくひ
くっと裸身が痙攣し、ざああと床にこぼれた黒髪がうねりながら愉悦をことほぐ。
「キョン君、私‥‥あなたを‥‥」
「朝倉っ‥‥!」
思いがけぬ呼びかけにえっと驚き、でも、その声にまともな返事など返せる余裕もなく。
それ以上言葉など思いつかぬまま。
獣のような交わりの果てに、彼女のいやらしい緊縮によってねこそぎ神経を灼きつくす
快感に背筋をむしばまれ、一秒先のゴールめざし駆け上がっていく。
まるでマンガのように溜まった精子で砲身がたわみ、快楽のほとばしりに全てを委ねる
幻視を覚えながら、むっちりした朝倉のヒップラインからくびれた腰をぐいと引きよせ、
長々と、とめどなく俺自身を彼女の中に解き放っていた‥‥
「ヒトとして愛されてみたかった」
俺は、朝倉涼子の独白に耳を傾けていた。
ここから先はただのピロートーク。彼女の思いを満たしたことでひとときのこのノイズ
も終わりを告げ、俺はじきにもとの世界に回帰する‥‥のだと言う。
「あの時あなたを殺そうとした私が自分の意志か、なんて分からない。私は、ただ、情報
思念体に従っただけ‥‥信じなくていいわ、ただの独り言だから」
まあそうだ。そんな言い訳、誰にとっても都合がよすぎる。
「でもあの子は違う。今では人と同じように自分の意志を持っている。分かるでしょ?」
「ああ。長門は変化しつづけている」
「ただのインターフェイスでもね、不完全な有機生命体である――あ、ごめん、悪口じゃ
ないの――人の形に造られた以上、人としての体に意識を引きずられるわ。それはある種
の劣化だけど、同時に進化の原段階でもある。ただの端末でいたければ、私のように情報
思念体とのコネクトを最小限に制限するか、長門さんのように感情を削るしかない。でも、
それじゃ‥‥かわいそうだもの」
いつかと同じことの繰り返しになるわね、そう呟くと、
「だから。この先何が起きるにせよ、言えることは1つだけ。私からの、最後のお願い」
「‥‥言ってみろ」
「そのときまで、長門さんとお幸せに。じゃあ」
照明が、きらめきがしだいに満ち、朝倉涼子の世界が白んでいく。天井の一角から粒子
になって朝倉の部屋が崩れだす。彼女自身の体も密度を失い、透明になりつつあった。
「待てよ」
最後に1つお前に聞かなきゃいけないことがある。
お前は、俺を殺そうとしたのが自分の意志ではないと言った。たしかにあの夕陽の教室
で出会ったときはそうだったのだろう。なら‥‥同じ偽りの時間を一緒にすごした、今の
この記憶の中でのお前はどっちなんだ。
お前にも、インターフェースを離れて1人の朝倉涼子になりうる可能性があったのか。
「なんて顔をしてるの。よしてよ」
朝倉は透けた手を伸ばし、ガラスのような指で、俺の頬を静かにぬぐった。
ひとすじこぼれた滴が彼女の頬にはじける。
「これは夢なの。決して現実にはなりえないものだから。次に会うときはまた敵同士かも
知れないわ。あなたを殺すかもしれないのに、私。それでも聞きたいの?」
「‥‥」
「でも、そうね」
真剣に見つめる俺をごまかせないと感じたか、ちろっと舌を出して降参したように‥‥
「こういう夢も、悪くなかったわ」
幸せそうに、淡い笑みを浮かべたまま、朝倉涼子は消失した。
そうして、それからは周知のとおりだ。
病室のベッドで意識を取りもどした俺は、古泉に揶揄され、ハルヒにさんざんどやされ、
朝比奈さんのわんわん泣き伏す顔に見とれて――ようやく今しがた、SOS団の最後の1
人との深夜の語らいを終えたところだった。
「伝える――ありがとう」
平坦な声で呟き、部屋を出て行こうとする長門の手をもう一度強く引き止める。
「長門‥‥これは蛇足なんだが、その」
「知っている。朝倉のこと」
「ああ」
18歳以下お断りな部分には多分にモザイクをかぶせつつ、朝倉が俺に見せた夢を語って
聞かせる。吸い込まれそうな黒々とした瞳が、俺を見た。
「‥‥彼女も私も、所詮は統合思念体の一端末に過ぎない。端末である以上バックアップ
はいくらでも存在し、必要に応じてこの世界に送り込まれる。私は――」
少しだけ言いにくそうに言葉を切って、
「私という構成因子ではなく、より人として親和性が高い朝倉涼子があなたのフォローに
回った場合に生じえたであろう変化の可能性を探ってみたかった。だから、一時的な制限
下において、朝倉涼子の残存因子に主導権を明け渡した。これは私の望みでもある。彼女
の活動的な性格と明快な行動が、あなたをどう変化させるか、知りたかった。私はただ、
モニターしただけ」
「モニター‥‥‥‥それって」
口をつぐんだ長戸の頬には驚くべきことに紅がさしていた。
俺は長門を見る。長門は上気したまま、それでも俺から目を離さない。今の彼女の言葉
を反芻する。
――すると、どうなる?
頭が真っ白になる。
つまり、ええと、朝倉が強引に迫ってきたのも、あんなにも大胆だったあれやこれや、
眼球にやきついた一部始終が実は長門本人によってモニタリングされていて、彼女自身が
許可したことに‥‥?
「最後に、彼女からの伝言がある」
「お、おおう!?」
唐突に話しかけられて飛びあがる。びくっとした俺を見つめる長戸の瞳が――
ほんの一瞬だけ、朝倉のそれとダブって歪んだように見えた。
「あなたは、えっち――すぎる。女をいたわった方がいい」
放心から醒めたとき、握っていた手は消え、静かに病室のドアが閉じるところだった。
さて。
この言葉‥‥どっちからの、メッセージなのかね?
以上です。長文スマソ。
>>37氏のアドバイスを参考にギリまで詰めてみました。
ネタは前スレ
>>175氏のアイデアにインスパイヤされたものです。反省は(ry
サイト持ちなのでいずれ自分の処にも掲載すると思います。
147 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 15:45:18 ID:OYcGiWzT
Gj…長文気にするなよ
前スレが埋まってない件…
149 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 16:01:22 ID:fOv349NB
サイト晒せよ
ただの入れ替えものかと思いきや、そんな展開を持ってくるなんて・・・
昼間からいいもの読ませてもらったぜ、GJ!
>>146 URLに見覚えがあると思ったらブックマークに入っていた件についてw
いつもお世話になっております
94氏の適応係数80%超えてそうなキョンが大好きなんだがまとまるのかこれ
求めない!
( ゚Д゚ノノ"☆パチパチパチパチ
>>146 乙
>>157 お前はいいかげんSSうpしろよ
でなければ、いいかげんコテ外せ
これを機にNGワード使ってみるのをお勧めするよ
君も大人ならスルーを覚えるんだ
透明あぼーんで超すっきり快適さ!
コテを外すなんてとんでもない
あぼーんしずらくなっちゃうじゃないか
これだけじゃ何なので区切りのいいところまで投下
今回も酷評大歓迎。でもどこが悪いのかは教えてね
その日は朝から変だった。
何がだって? 決まっているだろう。涼宮ハルヒだ。
今日のハルヒは心ここにあらず、といった感じだ。
俺が話しかけても返事ひとつせず上の空。何かを考えるような顔をしたかと思うと、今度は溜息を吐く。
そうかと思えば俺の顔をじっと睨んでくる。あの無駄に大きくて鋭い目で見つめられると、ハルヒ慣れした俺でさえ萎縮しちゃうね。
俺に朝の挨拶をしに来ただけなのに、この目で睨まれた谷口に同情するぜ。
ともあれ、何か言いたそうな感じはしているのだが、奇妙なハルヒの雰囲気に気圧されて、俺は何も聞けずに居た。
日頃ハルヒに振り回されてきた俺としては、こんな状態のハルヒを見るのは初めてであり、故に得体の知れない不安を感じる。
こいつが普段通りじゃなかった時に、何も起こらなかった試しがないからな。
背中に視線が突き刺さったり、やっと視線がそれたかと思えば不穏な空気を背後から感じたり。
俺の午前中は全く授業に身が入るはずもない状態だった。普段からそうだとは言わないでくれよ。
無駄に俺が神経を使っただけの午前が終わり、昼食の時間だ。
この時間ばかりはハルヒは学食にでも行くのだろう、今日はじめての落ち着いた時間だね。
なんて考えは脆くも崩れさった。
いつもなら、暴走機関車のごとき勢いで教室を飛び出るハルヒなのだが、今日は一向に動く気配がない。
かといって弁当を持参してきてるわけでもないらしい。
当然ながら、朝から続く奇妙なオーラは絶賛放射中である。
いつもなら集まって弁当を食べる谷口と国木田も、危険を察知した野生動物のように教室から姿を消していた。
一瞬、俺も部室あたりで食べようか。と頭をよぎったが、今ここから動くのは何かとんでもないことになりそうな気がしたのでやめておく。
俺は渋々、背後にハルヒオーラを浴びつつ昼食をとることにした。
普段より60%減の箸の速度で、弁当を半分くらいまで片付けたところで、ついにハルヒが動いた。
がたっ。椅子のずれる音がしたので、後ろを振り返るとハルヒが立ち上がっている。
「やっと昼飯を食う気になったか?」
と言う俺の問いには答えず、一瞬目配せをしてハルヒは無言で出て行った。
やはり何か言いたそうな目をしていたような気がする。
何だってんだ一体。不気味なハルヒの行動に、俺の本能は警告を鳴らし続ける。うるせーよ。
「ふう・・・・・・」
溜息をつくと、食べかけの弁当を片付け、俺は部室に向かうことにした。
あそこでゆっくりしよう、半日もハルヒの不穏なオーラを浴びた俺の精神汚染を浄化するには、休息が必要だからな。
午後の分も続くことを考えると、ここで回復するしかあるまい。
俺は部室へ向かって歩き出した。
ん?今見えたのはハルヒか?
俺は部室に向かう途中、新館と旧館を繋ぐ渡り廊下で、中庭を突っ切って歩くハルヒの後姿を見た。
どこに行こうってんだか。あいつの奇行は俺たちが出会った頃と比べると、随分大人しくなったもんなんだが。
まあ俺には関係ないね。さっさと部室に行って午後に備えて休息しよう。
・・・・・・気になってなんていないぞ? 心配なんてとんでもない。違うって言ってるだろ?
俺は誰に向かってこれを思ってるんだろうね?
旧館に入り部室までの道を行く。階段を上がったところで何の気なしに窓の外を見てみた。
ハルヒが居た。俺の知らない男子生徒と一緒に。
・・・・・・・・・・・・
なんだろうか。この変な引っかかりは。
いけない事だとは思いつつも、俺は声が聞こえるようにそっと窓を開けた。
「すまないな、呼び出したのに。」
どうやら、まだ話ははじまってないようだ。男子生徒の口ぶりはそんな感じだ。
「そんなこといいから早く用件を言いなさいよ。さっきからずっとだんまりじゃない。用がないなら帰るわよ。」
「あ、いや!待ってくれ!やっと心の準備ができたんだ!」
俺はここでわかった。ハルヒの告白するつもりのようだ。
誰だか知らないが物好きも居たもんだ。まあ結果は火を見るよりあきら・・・・・・。
俺はここで谷口の話を思い出した。
「なんでか知らねえけど、告られて断るってことをしねえんだよ、あいつは。」
・・・・・・
まただ、何だこの感じ。なんだって言うんだ。
俺の状態を他所に話を進める2人。俺は変な感じを受けつつも続きを聞く。
「涼宮、お前は奇人変人だとほとんどの奴に思われてる」
「うっさいわね。あんたには関係ないでしょ。」
「でも俺はそれでもいいと思ってるんだ。」
ハルヒは何も言わない。なんでだハルヒ。言い返してやれよ。
少し間をおいて男子生徒は続ける。
「文化祭のライブのときの涼宮、俺にはすげー輝いて見えた。」
「・・・・・・あっそ。」
「涼宮が好きだ。付き合って欲しい。いや、付き合ってください。」
「・・・・・・」
ハルヒ、なにやってんだ。何で黙ってるんだ。まさか付き合う気じゃないだろうな?
SOS団はどうするんだ。なぁハルヒ、なんで何も言わないんだよ。
ってなんだこれ。まるで俺はハルヒが付き合って欲しくないみたいじゃないか。
まただ。これは、この感じは・・・
俺は居た堪れなくなって、盗み聞きをやめて部室に向かった。
「よっ」
部室の長門に挨拶して、俺は椅子に腰掛ける。
長門は頷いただけだが、これがこいつの挨拶だ。
にしてもハルヒに告白ね。ハルヒの態度もおかしかったな。
谷口の話の通りなら速OK、そして速破局。ではなかったのか?
何も言わないなんてあいつらしくない。
・・・・・・
ああわかったよ。認めるよ。俺は面白くない。
出会ったばかりの俺は、ハルヒが普通の高校生らしい生活をしてくれることを望んでいたが、今は違うんだろう。
ハルヒ消失事件のときに俺は気づいちまったからな。
SOS団を取り巻く今が楽しい。
ハルヒを中心に形成するこの輪の中に、俺たち以外の誰かが介入するのが嫌なんだ。
「ハルヒ・・・」
気付けば俺はその名を呟いていた。自分の口を切り落としたい衝動に駆られたが
「涼宮ハルヒの精神が朝から不安定になっている。」
長門の話で口を切り落とさずにすんだようだ。
「やっぱりか、朝からあいつ変なんだ。」
「私にはどうすることもできない。また、する必要もない。」
「なんだって。」
長門はゆっくり俺を指差すと
「あなたの気持ちも不安定。」
そう言うと、ハードカバーを閉じて立ち上がった。
どういうことか詳しく聞きたかったが、予鈴がなる。
放課後詳しく聞くか。そう考えて俺は教室に向かって歩き出した。
教室にハルヒは居なかった。
また妙な感じだ。嫌な予感がする。授業開始のチャイムが鳴っても姿を現さない。
考えるより先に体が勝手に動いた。
教室を出て、旧館に向かって走り出す。
と、そこに居るのは古泉か?
階段の踊り場で古泉と会った。
「どうしたんですか? もう授業ははじまってますよ。」
それはお互い様だろ。
「閉鎖空間です。朝から不安定な状態でしたが、ついに発生しました。」
いつものにやけスマイルを作りながら
「あなたは?」
俺はな、教室にハルヒが居ないからな。心配はしてないが、授業をサボるのはよくないだろ。
くくっ。と嫌な含み笑いをして
「なるほど。らしくないようで、あなたらしい。」
いちいちむかつく野郎だ。
「すいません。僕はこれで失礼しますよ。仲間の手伝いに行かなければ。では。」
さっさと行っちまえ。
俺も旧館に行くとしよう。
旧館裏には居なかった。どこ行ったんだ。まだここに居るような気がしたんだが。
俺は新館へ道を引き返す。
途中思いついて、SOS団発足の際、俺が最初に連れてこられて協力をせまられた、屋上前の踊り場へ足を向ける。
ここにも居なかった。だが・・・
俺は屋上へ続く扉へ手をかける。
開いた。
「ここに居たか。」
そこにハルヒの姿を見つけ、俺は思わず安堵の息を漏らす。
なんでだろうね?
腰掛けているハルヒは顔を向けることなく
「何しにきたのよ。」
なんて言う。こいつらしいな。
別に、用なんてないさ。意味もないぜ。
「あっそ。」
そう言うとハルヒはだんまりだ。
俺も沈黙し、ハルヒの横に座った。
俺は横目にハルヒの横顔を見る。
物憂げなその顔は、いつものこいつの顔じゃない。
だがなんだろうな。そこには年相応の脆さがあり、いつものハルヒからは想像できない希薄さに満ちている。
不覚にも鼓動が少し早い気がする。ハルヒの意外な一面を見て、俺の心はステータス異常にかかったようだ。
「なあ、ハルヒ。」
俺の口は勝手に話しはじめた。
「なに。」
俺に対する態度もおかしいな。こんなそっけない状態は、SOS団発足前くらいに感じる。
寂しい。そうだろう? いつものように接して欲しいんだ、俺は。
「どうしたんだ。朝から元気ないぞ。様子もおかしい。」
「別に。なんでもないわよ。」
なんでもなくはないだろ。ハルヒのそんな顔はあまり見たくない。
「どういう意味よ。」
「いつものお前がいいって言ってるんだ。」
ハルヒはこっちへ向き直った。その瞳からなんとも言えない色が覗く。俺も見つめ返してやる。
そこには俺の見たことないハルヒの顔があった。
告白を見たときに感じた嫌な感じ。ハルヒの態度から受ける感じ。
それの原因はわかってるだろ? どんな感情かも俺は知っている。
認めてしまえば簡単なことだ。
「ハルヒ、俺はハルヒの色んな顔を見てきた。」
返事はない、俺は続ける。
「けど、今日のお前の顔は見たことないな。」
ハルヒは少し悲しげな顔をした。これは俺の知ってる顔だ。
「新たな一面を見るのも悪くないぜ。」
「キョン・・・」
今日はじめて俺の名前を呼ばれたな。
「でもな、俺はやっぱりいつものお前がいい。」
じゃないと物足りないって言うか、少し寂しいからな。と心の中で付け加える。
ややあって
「あんた、見てたでしょ。」
バレタ。何をだ? と、一応シラをきる。
「私が告白されるところよ。」
あっさり言い切った。俺は頭をフル回転させていい訳を探しながら
「ああ」
とだけ言った。
「前ならこんな気持ちになることもなかったんだろうけどね。」
言いながら俺から目線を離す。
「なんでかしら、朝手紙を見たときから、なんか落ち着かないのよね。」
キッと俺を鋭い目で睨むと
「って、なんであんたにこんなこと言わなきゃいけないわけ!」
お前が勝手に話はじめたんだろうが
「ふんっ!」
怒った顔をして立ち上がると階段に向かって歩き出す。
「ハルヒ!」
「なによ。」
振り向いたハルヒに向かって俺は言ってやった。
「そのほうがお前らしいぜ。いつものようにしてたほうが、俺も嬉しいってもんだ。」
怒ってるようなよくわからない顔をして
「う、うるさいわね! べーだ!」
思いっきりあかんべーをして走って行った。
完全にいつも通りとは行かないが、それでも朝よりはマシになりそうだったな。
これで俺も午後の授業に集中できるってもんだ。
ん? 別に嘘なんかついてないぞ。俺は本心からそう思ってるんだ。
別に心配になって探したわけじゃない。俺はただ午後の授業を平穏に・・・
って俺は誰に向かって言ってるんだろうね?
やれやれ。
目を閉じると、そこには先ほどの物憂げな横顔のハルヒが居た。
気の迷いを振り払うと、俺も教室に向かって歩き出した。
とりあえずここまで
タイトルからわかると思うけど
メインはハルヒじゃなくてキョン
ハルヒよりキョンに萌える俺は異端児
次回はエロあると思うのね
>>165 やれやれじゃねぇ。抱きしめてやれよキョン!
乙ですた。光よりも早く続きをキボンですw
俺もキョン好きだからそこは無問題。
問題なのはキョンがちょっとキョンらしくないことくらいかな。頑張って。
168 :
15-341:2006/06/28(水) 19:08:07 ID:xDZCRAV6
■5■
古泉×俺=悪夢。
「ノ、ノーモアアメリカ!」
アスタリスクの明日を守る、不可侵条約締結を!
一般人にとっては寝るのは早い8時。
悪意で満ちた夢、略して悪夢にうなされて跳ね起きると、けたたましくインターホンが鳴らされていた。
眠気が一気に濾され、感覚器の加速が一気に促された。
予知夢?
「こんにちはー」
よかった、古泉ではない。
アニメにでも出てきそうな丸っこい声。
まったく誰だこんな夜間に阿呆みたいに声を張り上げて、聞き苦しいったらない。
礼儀作法のなってない新興宗教の勧誘かなにかだろう。
居留守確定。
「朝比奈ですぅ、誰かいませんかー」
階段→シャワー→玄関。
「お困りですかな、お嬢さん?」
朝比奈さんは数歩たじろいだ。
「おっと失敬、少し曲がっていたかな」
白蝶タイを直す。
「あの、どうして燕尾服なんですか? しかも薔薇の花束を携えて」
「いやだなあ、これは某の普段着ではありませんか」
「一人称まで変わってますよ」
「戯画めいた現行のロマン主義国家におけます風間のような世態に関しましては、手始めに10年後を担う若者たちの服装・言葉遣い、またはニートのための職業安定所のようなモラルハザードに歯止めをかけるために抜本的改革が必要であると、
某は前々より陰ながら訴えてきたのでありますが、そのためにまず自身にスポットライトを当て、自我にルールを科すことにし、悟りの境地を今日日見出した………と、まあ、そんなところです」
不思議な高揚感に捕らわれていた俺は、機関銃のようにいかにもな知識人の仮面をかぶり、饒舌にまくし立てた。
「わー、わー」
朝比奈さんは尊敬のきらきらした眼差しで俺を見ていた。
嘘も積もれば、やがて恋となる。
容易く知性をひけらかす人間がいかに薄っぺらいか。
少女は気付くまい。
169 :
15-341:2006/06/28(水) 19:09:38 ID:xDZCRAV6
「どーぞ」
「ありがとございますー、お邪魔します」
なんて甲斐甲斐しい。眩暈がする。
そんな大当たり出されたら、毎夜毎夜の妄想パチンコ玉のバーゲンセールも今夜限りで打ち止めだ。
「ここですかあ」
部屋到着。
「煎餅座布団で恐縮ですが、どうぞそちらに。あまりベッドの下とかのデッドゾーンは見ないほうがいいですよ。ルパンの末裔から秘密の書を守る地底人の番人が出現して八つ裂きにされちゃいますから」
ジェンダーの解剖学的相違点を局所的見地から研究する学術書のことである。
朝比奈さんをチラ見。
「……す、すごい格好」
エロ本見てた。
「ロマーーーーーリオ!!」
俺はその本を、思い切り窓の外にシュートした。
このお嬢さん、いきなり忠告無視ざますか!!
対面では朝比奈さんが顔を朱色に染めあげて身を小さくしている。
「朝比奈さん」
「はい……」
「キスしましょうか」
「なぜそうなりましゅか!?」
ろれつが回っていない。
「この瀕死した空気を蘇生するには何かないかと考えて、一番マシ……ではなく最善の策を」
まぐわい、という提案が頭をかすめたが瞬時に葬った。そんな案を出しやがった脳細胞と共に。
「考えてごらんあそばせ。白雪姫、眠れる森の美女、オーロラ姫……。ディズニー三大キス女です。つまり、いつの時代でも蘇えりの儀式はチッスと決まってるわけです。
く、苦しい、早く憧れのベーゼ……別の名を、2個体の収縮状態にある口周括約筋の解剖学的並置をワタクシに」
「だ、だいじょうぶですか?」
「もうアタクシ辛抱ならんのです。どこまでもディープでハチミツのように濃厚な女汁率150%のフレンチキッスをご所望だ。Hey キッスミー、チッスミー」
迫った。
「でも白雪姫って王子様のキッスじゃなくて召使いのキック一発で蘇えった筈じゃあ?」
「USO」
「まるで未確認な飛行物体と間違えそうですね」
「UNKO」
「こら」
低い声で叱られた。怖い。
つうか、もう気まずい空気霧散してるし。
まあ、それでも完全な可逆とはいかなかったようで。
170 :
15-341:2006/06/28(水) 19:11:06 ID:xDZCRAV6
【朝比奈、迫る、キスされた】
以上、サザエさんチックな断片的ダイジェスト3本立てでした。
ディレクターズカット版をお楽しみください。
『んんっ、キョン君、ああ!』
『あ、朝比奈サーーーン』
『ああ、キョン君っ、らめぇ! 膣内にィィ!』
………間違えた。
なんだ、今のは?
俺の妄想の翼は、どこの太平洋の大空を飛び回っているやら。
では今度こそどうぞ。
「それじゃあしましょうか」
「はい?」
「キス」
朝比奈さんはいたずらっぽっく笑った。
「………?」
現在状況を処理中。
「そうだ!」
寿司を食べよう。
俺は立ち上がろうとする。
「たりゃ」
腰にタックルされて押し倒された。
四つんばいでよじのぼってきた朝比奈さんと頭の位置が平行になる。
「む」
口を口で閉鎖された。
しまった侵略行為を許した、息ができない、と思ったが呼吸器はもう一つあったぞ。
「ん…、ちゅ、れろ」
いきなり舌挿入。唾液を流し込まれる。
バリエロ!!
妖艶な。
芸術だ。
爆発だ。
やばいぞ、これ。
この間隔の感覚は。
直後。
胸が、疼いた。
171 :
15-341:2006/06/28(水) 19:12:13 ID:xDZCRAV6
「………!」
逆に押し倒し、下腹部をつかんだ。
「いっ!」
ソレは顔をしかめる。
でも濡れていた。
びちょびちょ。
ハハハハハ。
向かいの人物を冷酷に見下す。
盲目かつ純潔な朝比奈みくる。
その清廉潔白の身も心も、研ぎ澄まされた悪意のままに簒奪してみたい。
飴玉みたいに、擬態した慈しみで、転がして融かすのだ。
印を刻め。
略奪せよ。
胸が痛い。
命令。
「朝比奈さん」
やなこった。
「好きだよ、みくるを誤ってみるくと読んじゃいそうなところが」
身体を離す。
壁側に転がって、眠った。
「んじゃ、おやすみなさい」
「キョン君?」
「ぐーすかーぴー」
豪快ないびき。
「…………」
寝返りを打つ。
朝比奈さんは消えていた。
足音も、ドアの音も、すべてをかき消して。
「なんだかなー」
そして俺はホントに寝た。
172 :
15-341:2006/06/28(水) 19:13:24 ID:xDZCRAV6
とりあえずここまで。
面白いんだが、ハルヒの必要がないというw
それもまたよしだが。
>>172 GJ!
キョン君、みさくら本の読み過ぎですよw
GJ
長門の話を投下させていただきます。
微妙に長いです。
エロくないです。甘くもないかもしれません。
正直、前スレの705氏の凄く良い話を見て、反射的に書いてしまいました。
それでも長門なら、という方、しばらくお付き合いいただけたら幸いです。
おじいさんは言いました
おお娘よ わが娘 お前はいっとう美しい
真珠の瞳に 絹の髪 ジノリの肌に 銀のドレス
お前が一度微笑めば 皆がお前に恋をする
綺麗な娘は言いました
ああ だけども お父様
私には 微笑むことすら 叶いません
娘は知っていたのです
自分が 人形だということを
冬の寒さが、まだ少しばかり残っていた頃の事だ。
週末の休み、俺たちSOS団は、唐突な(こいつは常に唐突なので、もはや予定調和的でもある)ハルヒの思い付きにより、長門の部屋に集まっていた。
ちなみに理由は「有希の家って、ご両親いらっしゃらなかったわよね?じゃあ皆で夜中までパーっと騒ぎましょう!」との事だ。
お前の頭が年中パーっとしているのは勝手だが長門に迷惑をかけるのは俺としては賛成できないね、という俺の提案は、長門の頷きによって政治家の過去のスキャンダル並に無かった事にされ、結局長門家にSOS団全員集合と相成ったわけである。
「で、何して夜中までパーっと騒ぐんだよ?」
長門の部屋には、相変わらず殆ど必要最低限のものしか存在していない。
まさか、しりとりでもしようって言うんじゃないだろうな。多分俺は途中で寝るぞ。
「キョン、あんたってばそんなんだから、いつまでたっても雑用係なのよ。私こと団長が、ばっちり夜中まで盛り上がれるものを用意してるに決まってるじゃない!」
無駄に大きな胸を張って、自信満々に言い切ったハルヒは、先ほど買い物してきたコンビニの袋の中から、大きな箱を取り出した。
「じゃーん!黒髭危機一髪よ!」
どちらと言えばこいつの大脳の方が大分危機一髪なのだが、その箱の中身は、紛れも無く剣を刺したら黒髭のオヤジが飛び出してくるあれであった。
「いやあ、なかなか楽しそうですね」
いかにもうわあ楽しそう、て感じの笑顔でそんな事を言い出す古泉。お前は常にハルヒ完全肯定派だな。権力の犬だよ。
「あのー、これ、何なんですかぁ?」
奏でる声は美しい風の運びとなって千里をかける、でお馴染みの朝比奈さんがそんな声をあげる。未来にはこんなもん無かったんだろうな。
「…………」
これは長門である。はじめて見るわけのわからないオモチャに視線が釘付けになっているようだ。意外と食いついてるな。
しかし、このままスルーさせるわけにはいかない。ここで唯一の常識人である俺の出番である。
「おい、ハルヒ。そんなもんで夜中まで遊べるわけ無いだろう」
ハルヒは俺に対して、何言っちゃってんのよこのベンジョコオロギみたいな顔を向けながらため息をついた。
「はぁ、本当にあんたは雑用係よね。雑用係オブフォーエバーだわ」
よく意味はわからないが、凄く嫌な響きだった。
「いい、よく聞きなさい。剣を刺して、黒髭が飛び出したら一抜け。最後まで飛び出さなかった人はビリ。一抜けはビリに、何でも言う事を聞かせられるの」
王様ゲームじゃねえか。というか、普通飛び出させた奴が罰ゲームだろ。
「こんだけ穴が開いてるのに、当たりは一つなのよ。それを引き当てた人が、勝者でなくてなんだというの!」
こいつの思考回路が常に停車駅を無視して突き進んでいることは、俺もいい加減気付いていたので、それ以上はもう何も言わなかった。
人の手から人の手へ 人形の娘は 旅をします
可憐な少女や村娘 貴族の花嫁や修道女
娘は少しも 笑いません
美しい屋敷も 貧しい小屋も 広い草原も 冷たい街も
真珠の瞳で 見つめるばかり
そして誰もが言うのです
こんな人形 いらないわ
やがて娘は 小さな丘へ
小さな畑と 少しの動物
そして カナリヤ色の髪の少年の待つ
小さな丘へ やってきました
そんな風に始まった黒髭危機一髪大会だったが、いざやってみると、これがかなりの盛り上がりを見せていた。
俺が鯉のぼりの真似をさせられたり、朝比奈さんが今週のCDシングルトップ10を全曲熱唱させられたり、古泉が長門に向けて情熱的な告白をさせられたりしている内に、本当に夜中になっていた程だ。
そうして、もうすぐ日付が変わろうとする頃、そろそろ帰らないといくらなんでもまずいだろうという事で、次が最後のゲームとなった。
これまで一度もビリになっていないハルヒか長門を、何とかして負かせてやりたいところだったのだが、終わってみると、長門が一抜け、次にハルヒ、朝比奈さん、古泉、そして俺が栄えあるビリである。
「さあ有希、ガツンと言ってやんなさい!何なら四国まで遠泳とかでもいいわよ!」
金メダリストでもインポッシブルだ。あとお前二位だろ。なんでそんなに偉そうなんだよ。
当の長門は、そんなハルヒの声もどこ吹く風で、嬉しくもなんともなさそうな目で俺を見つめていた。
そういえば、長門が一位になるのって、これが始めてだよな。
どんな命令されるんだろうか。全く想像がつかん。
死ねとか言われたらどうしよう。長門にそんなこと言われたら、普通に悲しみで死んでしまいそうだ。まるでウサギのようだ。
まあ、こいつならそんなに無茶な事は言いそうにないよな。
長門は、瞬き二回分ぐらい考える様子を見せ、俺が少し不安になってきた頃、薄い唇を、小さく開いた。
「明日、一緒に出かけて欲しい」
さて、俺は長門の言葉に対して「それはダメ!」と何故か俺の胸倉を掴みながら抗議しだしたハルヒを取り押さえ、とりあえず話を聞くことにする。
長門の話によると、新年度に入るにあたり、図書館の貸し出しカードの更新手続きを行なわなくてはならないらしい。
だが、一人ではどうすればいいかわからないかもしれないので、どうせなら俺について来て欲しい、との事だった。
滅多に聞くことのできない長門のお願いだ。
いつも世話になっている身としては、それぐらいの事なら喜んでやらなくては罰があたるってもんだろう。
俺は、何故か不機嫌そうにしているハルヒに対し、長門が一位で俺がビリという動かしようの無い事実関係を武器にしながら、十分間に渡って説得を続けた。
そうして、長きに渡る交渉の結果、何とかハルヒの了承を取り付けることが出来たのだ。歴史的勝訴である。
「来週一杯、私の昼食はあんたの奢りよ」
俺の財布の中身を引き換えにして。
あれ?何で?
人形の娘に 少年は笑いかけました
とってもかわいいお嬢さん 僕の話を聞いておくれ
物も言えない人形の娘に 少年は毎日話しかけます
今年の葡萄は大きくて そしてとっても甘いんだ
今夜の空は晴れていて 星がとっても綺麗だよ
そうしてその日も 少年は娘に話しかけました
翌日。俺はマンションまで長門を迎えに行き、そのまま二人で市立図書館に向かった。
更新の手続きは、簡単な書類を書くだけだったので、割とすんなり終わらせることができた。
俺ってついてきた意味あるのか?と自分のレーゾンデートルに関わる考察を深めている俺に構わず、長門はそのまま本を物色しに行ってしまったようだ。
どうやら今日は、このまま図書館で過ごすつもりらしい。
俺は、この後どうすればいいんだろうか。
……まあ、偶には読書も悪くないか。エアコンが効いてて過ごしやすいし。
適当な小説を手に取った俺は、近くの椅子に座り込む。
休日とあって、いつもより少しだけ人が多いようだが、それでも十分すぎるほど静かだ。
特に、いつも騒がしい奴が近くにいる俺にとってはな。
俺は、僅かな話し声と、本をめくる音が奏でる、小さな静けさに包まれながら、小説の主人公が初恋の人に告白するのを見届けたあたりで、ゆっくりと眠りに落ちていった。
何か夢を、見ていた気がする。
僅かに肩が揺さぶられるのを感じて、俺は目を開けた。
いつの間にか横の椅子に長門が座っている。
膝の上の本は、珍しく閉じられたままだ。
「もうすぐ、閉館」
ああ、休みの日はいつもより早く閉館するんだったな。
俺は大きく背伸びをして体中の骨を鳴らし、結局三分の一も読めなかった本を元の棚に戻した後、長門をつれて図書館を出た。
「本、今日は何も借りなかったのか?」
まだ夕暮れには早い時間。横を歩く長門の小さなトートバックは、来た時と同じ大きさだった。
「……あまり見る事が出来なかった」
長門は前を向いたまま答える。
見ることが出来なかったって、結構長い時間いたと思ったんだけどな。読書に気が乗らなかったのか?
まあ、長門にもそんな日があるのかも知れん。
しかし、考えてみたら、今日の俺って本当について来た意味無かったよな。
せっかく長門が俺を頼ってきたのに、結局寝てただけだったし。
俺が再び自己の存在に疑問を持ち始めた時、小さな看板が目に留まった。
ふと、必要最低限の物しかない、一時間もあれば引越しができそうな長門の部屋のことを思い出す。
「長門」
長門は、真珠のような瞳で俺を見つめてくる。
「ちょっと、寄って行かないか?」
とってもかわいいお嬢さん 君はとっても素敵なのに
いつもちっとも 笑わない
その言葉を聞いて 娘は悲しくなりました
ああ あなたも私を 捨てるのね
だけど少年は 言いました
それでもちっとも 構わない
君はとっても 素敵だからね
そう言う少年の顔は とっても優しかったので
人形の娘は 恋をしました
狭い店内には、店員らしき小柄な女性が一人いるだけで、他に客はいないようだった。
周りには、鮮やかな色合いのソーサーセットや、小さな指輪、古そうな時計に、西洋風の人形やぬいぐるみが綺麗に並べられていた。
長門は、いつもより少しだけ振り幅を大きくして、目線を動かしているようだった。
……おかしいな。看板には「お部屋の飾り付けに こだわりの小物を」と書かれていたから、てっきり雑貨屋か何かかと思ったんだが。
どう考えても高級アンティークショップっぽい感じだった。いまだかつて経験した事の無いブルジョア感である。
くそ、日ごろの感謝を込めて、何か部屋に置けそうなものを買ってやろうと思ったのに。
小さなカップを手にとってみる。値札はついていないが、俺の小遣いでは買えないということは、考えるまでもなく理解できた。
はあ、参ったね。本当にいいとこ無しだな今日は。
まあ、長門も少しは珍しそうにしてくれてるしな。それだけでもここに来た意味があったってもんさ。
そんな事を思いながら自分を慰めつつ前に目を向けると、何故か長門が隅のほうに置いてある人形とにらめっこをしていた。
長門と見つめ合っている人形は、まあ率直に言うと、古臭い上に薄汚れた感じのするもので、古びていてもどこか清潔さのある物ばかり置かれた店内では、少しばかり浮いている存在だった。
所々ほつれた、わけのわからない柄の服に、金の中に、煤けたように黒が混じる髪、かつては白かったであろう、薄く色褪せた肌。
それでも、美しい造形の顔の中で生き生きと輝く、黒い真珠のような瞳だけが、高貴な雰囲気を漂わせている。
生きているようなのに、気味の悪さを感じさせない、不思議な人形だった。
……何となく、長門に似ているような気もするな。
「それ、気に入ったのか?」
人形を見つめている長門に聞いてみる。
「…………中に」
なかに?
「……何でもない」
それだけ言うと、長門は視線を人形から外し、この店に対する興味を無くしてしまったかの様に、出口に向かって歩きだした。
なかに?なかにってなんだ?凄い気になるじゃないか。中西さんっていう人の作品とか、そういうことか?
しかし、とうとう俺の疑問には答えずに、長門は店から出て行ってしまった。
長門を追って店を出る前、念のため人形の値段を聞いてみたのだが、俺の全財産よりもゼロが二つほど多かった。
恋する人形の娘は 幸せでした
優しい少年が話してくれる とっても素敵なお話があったからです
やがて少年は青年になり 綺麗な花嫁を貰います
恋する人形の娘は 幸せでした
優しい青年にそっくりな とっても素敵な家族ができたからです
いつの間にか 青年のカナリヤ色だった髪は 象牙の色に変わっています
恋する人形の娘は 幸せでした
優しい老人は 最後まで笑っていたからです
次の日の学校で、俺は、私今日は不機嫌ですよオーラを背後からビシバシ浴びせられながら、昨日の長門のことを思い返していた。
結局あの後、俺と長門はそのままマンションの前で別れたのだが、その時の長門と言えば、これが全くいつも通りの様子だったのだ。
だからこそ、俺は余計に気になっている。
どうして長門はあの人形を見つめていたんだ?やっぱり、欲しかったんじゃないか?
いつもは、本以外は興味ありません、みたいな長門だが、ひょっとしたら密かに少女趣味的な部分を持っていたりしてな。
だけどあいつは賢いから、俺の経済力を察知して、ああ、これを欲しいなんて言ったら彼のプライドを傷つけてしまうわ、という感じで俺に気を遣ったのかも知れん。
長門、その気遣いがかえって俺を傷つけているぞ、といった所まで考えて、俺は一度だけ頭を振った。
いやいや、流石にそれは無いだろう。自分の想像力に少し引いてしまったぞ。
けれど、あの人形を見る長門の顔が頭から離れないのは、本当のことだった。
休み時間、俺は後ろを振り返り、昨日はさぞ楽しかったんでしょうね?この豚野郎が、みたいな目で俺を睨んでいるハルヒに声をかけた。
「なあ、ハルヒ」
「……何よ?」
「昨日、長門と一緒にアンティークショップに行ったんだがなぐぉっ!」
セリフの途中でネクタイを締め上げられた。こないだ妹と見たサスペンス劇場と同じ構図だ。
「あんたねぇ、昨日は図書館に行くんじゃなかったの?何?二人でデートのつもりなわけ?夜景の綺麗なレストランでディナー?部屋の鍵はもう取ってあるんだ、みたいな事?」
その想像力を少しでも世界のために役立ててくれ、と言いたかったが、俺の口からは穴の開いた紙風船から空気が漏れているような音しか出てこない。
視界が白く染まる。教室の中に雪が降っていた。あれ?今は春なのに。サンタさんが卒塔婆で俺の尻を叩いているよ。
もうすぐ白目を向きそうな俺の様子にようやく気付いたのか、ハルヒは俺のネクタイから手を離すと、椅子に座り込んでそっぽを向く。
「ごほっ……お前な、偶には人の話を最後まで聞け」
ネクタイを緩めながら、酸欠気味の頭を左右に振った。サンタはもういないようだ。
「他人のデートの話なんか聞いても、面白くも何とも無いわよ」
「いや、だから……」
俺は、険しい顔で窓の向こうを睨みつけているハルヒに、昨日あった事を話しはじめた。
そして、俺が授業中ずっと考えていた事を。
やがて 大きな とても大きな戦争が始まりました
それでも 人形の娘は 幸せでした
優しい少年にそっくりな少女達が 別れ際にキスをしてくれたからです
きっと 迎えに来るからね
人形の娘は 家に一人ぼっち
だけどちっとも 寂しくありません
もう何度も布を継ぎ足され 元の銀色は殆ど無くなっていたドレスの中には いくつもの家族の写真が入っていたからです
そしてそこでは 娘が恋する少年が いつものように笑っていたからです
ノックもせずに部室の扉を開けると、いつものように窓際で本を読んでいる長門の姿があった。
「長門」
長門は膝の上の本から目を離すと、俺の方に視線を向けてきた。
「今週一杯は、SOS団の活動は休みだとさ。何でもハルヒの奴が、放課後に用事があるらしくてな」
黒く澄んだ瞳に、俺の顔を映している。
「だから今週は、朝比奈さんも古泉も、この部屋には来ないってさ」
その表情は、いつもと全く変わらない。
「多分、俺も、今週一杯は来れないと思う」
長門はいつも無表情だ。
ロボットのようだ、と知らない誰かが言っていた。それもそのはず、こいつは宇宙人特注のアンドロイドだからな。
だけどな、そんな事を言う奴は、何も分かっちゃいないのさ。
こいつは、別に俺たちと変わらない、どこにでもいる女子高生だっていうことぐらい、成績が常に学年平均を下回る俺だって気付いてるんだぜ。
まあ、一般の女子高生よりも、少しだけ変な力を持っていて、少しだけ強情なんだがな。
さらに言うと、俺たちの世代は、俗に言う思春期って奴だ。
身体も心も、成長真っ盛り。朝比奈さんなんて、着々とその悩ましいお姿を、より悩ましく変貌させており、男たちはみな彼女の足元に跪くであろう、みたいな感じだ。
長門だって、例外じゃないぞ。ひょっとしたら、その内朝比奈さんもビックリの、ナイスバディーになるかもしれん。
特に、身近にあのアホのような、周りを巻き込んだあげく、そのまま勢いで空まで飛んでいきそうな奴がいる場合は、嫌でも影響されちまうってもんさ。
だから、ひょっとしたら、と俺は思う。
いつでもないどこか、あのハルヒのいない世界で、俺に見せてくれた微笑みを、俺はずっと覚えているのだから。
そして、その微笑みを、俺だけじゃなくて、他の誰かにも見せてくれるなら。
皆がお前を、きっと、もっと好きになる。
そんな夢を、見た気がしたんだ。
「……そう」
それだけ言うと、長門は本に目を戻した。
「お前は、皆が来なくても、ここで本を読んでるのか?」
長門は頷いた。いつものように、とても小さく。
「……そっか。じゃあ、俺ももう帰るから。来週には、ちゃんと皆来るからな」
ページをめくる音が聞こえる。
「絶対、来るからな」
最後にそれだけ言って、俺は扉を閉めた。
さあ、労働は人を気高くする、ってな。
長い時間が過ぎた後 誰かが家にやってきました
彼の家族ではありません 娘は怖くなりました
けれど彼らは 優しい手つきで 人形の娘を手に取ります
娘は気付きました 自分がまた 旅に出なければならない事を
さようなら
作り物の真珠の瞳では 涙を流す事は出来ませんでした
人の手から人の手へ 恋する人形の娘は 旅をします
ドレスの中に 宝物を隠したままで
そしてようやく、次の週になった。
長門を除いた俺たちSOS団の面々は、自分たちの部室の前で泥棒のように声を潜めて話し合っている。正直通報されてもおかしくはない。
「だから、ここは団長であるあたしから進呈した方が、有希も喜ぶに決まってるわ!」
「で、でも、提案したのはキョン君ですし、やっぱりキョン君が渡した方がいいんじゃないですかぁ?」
「まあまあ。皆でがんばったのですし、皆からの日頃の感謝の気持ち、という事でいいじゃないですか」
俺はそんな事を言い合う三人を横目に、もはやお馴染みとなった冷たいドアノブをひねって、一息に扉を開けた。
窓際では、長門が先週と全く同じ格好で本を読んでいた。
「よお、長門。久しぶり」
俺が片手を上げると、長門も俺たちの方を見て、右手を肩のところまで上げる。
「長門、実はな、渡したい物が……」
「有希!喜びなさい!いつもSOS団の活動で優秀な成績を残してるあんたに、あたしからプレゼントを進呈するわ!」
ハルヒはそう言って、俺からもぎ取った人形を、大袈裟に両手で掲げてみせた。
そう、あの店の隅にあった、古臭くて薄汚れた人形だ。
俺たちが一週間バイトをして貯めた金で、何とか購入する事ができた。
いや、実は微妙に足りなかったのを、ハルヒが無理矢理値切り倒して何とかしたのだが。
しかし、その人形を見ても、長門は全く動かない。視線が少し上に向いただけだ。
俗に言う、ノーリアクションだった。
ハルヒが、油を三年間注していない自転車のサドルのような動きで首をまわし、俺を睨みつけてくる。
「あんたねえ……有希が珍しく何か欲しがってるっていうから、私もみくるちゃんも身を粉にして働いたってのに……」
たしかに、この二人の客の呼び込みっぷりは凄かったらしい。スーパーの鮮魚コーナーがアイドルの出張ステージのようになっていたという話は、谷口から耳にしていた。
ちなみに俺は、古泉がどこからか見つけてきた、やけに時給の高い交通整理をやっていた。もちろん、古泉も一緒に。
その間、古泉が綺麗なお姉さんたちに声をかけられた回数は24回に及び、俺が怖いお兄さんにガンつけられたのは13回程度だ。
あらゆる意味で、俺は男を上げたといえるだろう。
「全然嬉しそうじゃないじゃない!もうあんたは雑用係ですらないわ!草むしり専用員よ!大人しく校庭の草でも……」
いつの間にか、ハルヒの目の前に、長門が立っていた。
長門はそのまま手を伸ばし、キョトンとしているハルヒの手から、そっと、解けていく雪を抱きしめるような手つきで人形を受け取ると、俺たちに向かって、一言だけ呟いた。
いつもどおりいの無表情。
だけど、いつもより、少しだけ大きな声で。
「ありがとう」
その日、膝の上に人形を置いたまま本を読んでいる長門を、俺たちはそれぞれの席で何となく眺めていた。
週末の休み、俺たちSOS団は、唐突な(こいつは常に唐突なので以下略)ハルヒの思い付きにより、長門の部屋に集まっていた。
ちなみに理由は「こないだは結構おもしろかったわね!だからまたパーっと夜中まで騒ぎましょう!」という事だ。
お前の頭は確かに年中パーっとしているがそろそろ長門も迷惑だろうから俺としては賛成できないね、という俺の提案は、長門の頷きによって多摩川のアザラシ並に無かった事にされ、結局長門家にSOS団全員集合と相成ったわけである。
「で、何して夜中までパーっと騒ぐんだよ?」
長門の部屋には、相変わらず殆ど必要最低限のものしか存在していない。
余計なものと言えば、タンスの上で、古臭い人形が無愛想な顔でこちらを眺めているぐらいのもんだ。
俺は、少しだけ違和感を感じた。
あの人形って、あんな顔だったっけ?
確かに無愛想だったが、もうちょっとなんというか、親しみのある顔をしていたような気がする。
俺は「ちょっと待ってなさいよ!」とか言いながらコンビニの袋を漁りだしたハルヒを横目に、長門にひっそりと声をかけた。
「なあ、長門。あの人形って、何か前と違わないか?」
長門は俺の目を見つめ返してくる。少しだけ、驚いているようだった。
「……確かに、あの人形はあなた達から受け取った人形ではない。あれは私が、構成物質を模倣して作り出したレプリカ」
「え、そうなのか?」
何でそんな事を?ひょっとして、あれって何かやばい人形だったのか?
長門は静かに首を横に振る。
「そうではない。あの人形は、持ち主のもとから無断で持ち出された物。私が所有していていい物ではなかった」
盗品か何かだった、って事か?
ああ、長門はそれに気付いていたから、あの時人形をみつめていたのかもな。
「オリジナルは、私が本来の持ち主の元に送り届けた。あなた達に、私が人形を破棄したと誤解されないように、代わりのレプリカを用意した」
「……そうか」
古臭い人形が着ていた、継ぎはぎだらけの服を思い出す。
ぼろぼろになっても、直してくれる誰かがいるのなら、それは何より幸せなことなのではないだろうか。
綺麗なままの、お人形よりも。
「まあ、長門がそれでいいんなら、それでいいさ」
人形が本物だろうと偽者だろうと、俺にとってそんなことはどうでもいい事だ。
俺たちを気遣って、レプリカまで用意してくれる長門の気持ちに、きっと嘘は無いだろうからな。
それに、人形が元の持ち主のもとに帰る事が出来たってのも、まあ、悪くはない話さ。
だったら、それで十分だろう?
「どうして」
長門は、少しだけ訝しそうな目で、俺を見つめてくる。
「どうして、あの人形が本物で無いと気付いたの?」
黒真珠のような、その瞳。
「材質も設計も状態も、全くオリジナルと変わらない筈」
どうして、と呟く、無表情なその唇。
ああ、それは。
とっても簡単な事さ、お嬢さん。
「前の人形の方が、お前によく似ていたからだよ」
そして 人形の娘は 自分にそっくりな少女に出会いました
真珠の瞳に 絹の髪 ジノリの肌に 不思議なドレス
少女は そっと つぎはぎだらけのドレスを開くと 娘の宝物を見つけます
ああ どうか
それは私の宝物 私の家族 私の恋
どうか私から 奪わないで
少女は 人形の娘を見つめると そっとドレスを閉じました
宝物は そのままで
人形は 澄んだ真珠の瞳で 少女を見つめ返します
ああ この子も ひょっとしたら
恋する人形の娘は そっと微笑みました
キャラ今一掴み切れてない気ガス。
セリフに違和感。
>>176 良い出来だと思いますよ。
谷川っぽい。
なんとなく締めが中途半端な気がする。
きれいな話でした。
あえて深くは語らない物語構成なのかな?
まあともかく、面白かったです。
「おい古泉」
「なんでしょうか」
「前から思ってたんだがTFEIってのは何の略なんだ」
「ふむ、英語は得意ですか?」
わかってて聞くな。
「では簡潔に日本語で」
ちょっと ふしぎな エロスもこなせる インターフェース
「です」
「……そう」
長門、いつからそこに……。
アニメしかみてないが
よろしいか
>>191 アニメは演出、テンポ等で原作とはまた違った魅力があると思うが、
基本的に話は原作と大差ないからいいんじゃないか?
歓迎する。
締めはこれで十分だと思うけどな。語りすぎるよりはいい。
若干の想像の余地を残しつつも、投げっぱなしってわけじゃないし。
多少セリフに違和感があるところもあったけど、上手くまとまってると思います。
3の図書館のシーンとかいいね。
歓迎歓迎
いっしょに妄想ぶちまけようぜ
ハルヒとキョンの同棲(決して結婚はしてないよ)話って需要あるか
>>195 どうして同棲になったのか納得できる説明があれば十分ある
まだ書いてなかったのかよっ
起動しちゃった股間はどうしてくれるんだ
>>201 股間を敵性と判断。情報連結解除を(ry
投下します。SOS団の日常。
エロなし、カップリングなし、ヤマなしオチなし意味なしですが
「……雨、止まないわねー」
ハルヒが本から顔を上げぽつりと呟いたが、反応を返したのは窓に貼りついて黒々とした空を眺めていた朝比奈さんだけだった。
長門の部屋は文芸部室、駅前の喫茶店に次いでSOS団員の溜まり場である。
本日は本来なら恒例のパトロールの日なのだが、昼過ぎから雨の予報だったために午前で切り上げ、
今はこうして長門の部屋で無為にだらだらしている暇な高校生が5人いるばかりである。
長門の部屋は高校生に似つかわしくなく、また一人暮らしにも不適切と言えるほどの広さを誇り、
さらに家具や長門自身の私物の少なさが部屋の広さを際立たせている。
その数少ない家具であるコタツ机の上には、トランプが散乱している。古泉が持ち込んだもので、
先ほどまでババ抜きやらポーカーやらで全員で遊んでいたのだが、流石に2時間も3時間もやり続けられるものでもなく、
ハルヒが「飽きた」と言った瞬間に全員で同意を示したものだった。
(その後、ハルヒは長門と二人で「スピード」で対決をしていたが、惜しいところまで競るものの長門には勝てず、
無駄にフラストレーションを溜めたハルヒがまたしても「飽きた」と言うだけなのであった)
現在、時刻は午後4時をまわった。団員はもうグダグダモードに切り替わっており、俺とハルヒは長門に借りた本を読み、
朝比奈さんは窓の外をぼんやり眺めているし、古泉はなにやら携帯をカチカチやっている。
予報では夕方には晴れるという話だったが、外の雨は弱まるどころかバタバタと音を立てて窓ガラスにぶつかってくるほどの勢いに
なってきており、時折大きな音を立てて窓際にいる朝比奈さんをびくつかせたりしている。
「……予報では、夕方に晴れるって話だったのよね? キョン」
「ああ」
「どうも今夜中には止まないようですよ」
携帯端末を弄っていた古泉が、ディスプレイをこちらに向けながら言った。手を伸ばしてそれを受け取ると、
ネットの天気予報が表示されていて、青い傘のマークが連なっていた。
「……マジか」
沈黙。
机の前で正座して本を読んでいる長門の、ページをめくる音だけが響く時間がしばらく続き、
「あーもう! 気が滅入るわね!」
突如声を上げたハルヒに、朝比奈さんがまたびくりとした。
長門に借りた本を投げ捨て、ゴロゴロと床を転がるハルヒ。お前、ひとの借り物をなんて扱いしやがる。
「キョンが悪いのよ! 夕方には晴れるって言うから傘は持ってこなかったのにっ」
はぁー、と溜息。
昨夜、天気予報を見て今日の午後から雨であることを知った俺は、気を利かせてハルヒに午後どうするかを電話で注進したのだが、
中途半端なことはやめとけば良かった。どうせなら午後には解散しようぜと提案するべきだったぜ。
俺の注進を受け入れたハルヒは長門の部屋かアーケード街をパトロールすることを提案、パトロールは正直飽きが来ていたため、
ほぼ全員一致で長門の部屋に決定された。ほぼ、の理由はハルヒがパトロールをやりたがってたからである。
「有希、傘ってある?」
「一本だけなら」
玄関に置いてあるな。安物のビニール傘が。
そして、ここに傘を必要としている人間は4人である。
また溜息。嬉しくもないことに俺とハルヒでユニゾン。
「タクシーでも呼びましょうか?」
「……いや、いいわ。お金が勿体無いじゃない」
古泉が呼ぶタクシーと言えば、まぁ運転手の怪しいタダで乗れるタクシーだと推測できるが、あえて黙っておく。
古泉も失敗した、って顔してるしな。タクシーと言わずに「迎えをよこしましょうか」とか言って、
何食わぬ顔で荒川さんを呼べばよかったのに。……いや、どのみちハルヒに「機関」の存在を匂わせたら駄目か。
「……仕方ないわね。有希、今日泊まっていってもいい?」
「別に構わない」
長門は本を読みながら即答した後、ハルヒのほうに向きなおし、
「でも、布団はない」
「別にいいわ。一晩中起きてるつもりだから」
マジか。
まぁ、明日は休みだからいいけどな……
ただ、そうなると、問題が発生する。
「長門」
俺の呼びかけに、本に戻した視線をこちらに向ける。
「食い物ってあるか?」
長門は思い出そうとする素振りすらせずに、
「ないことはない。カレーの缶が2つ保存してあり、冷蔵庫にはキャベツひと玉、炊飯器には白米が10合炊いてある」
米も備蓄が充分にある、と加えて言った。
うーん、量としては、5人が朝まで食いつなぐには充分だろうが、夜食がカレーっていうのもなんだかなぁ。
多分追加で米を炊き直さなければならんし。一人暮らしで10合も炊いている長門がツワモノ過ぎる。
「お菓子かなんか無いの?」
「ない」
長門は即答し、ハルヒはしばらくうーん、と唸って、
「よし、鍋をしましょう」
「はぁ?」
カレー雑炊しか作れないと思うんだが。
「無論、買出しにいくのよ。幸い一本だけ傘はあるんだし」
「誰が行くんだ?」
ハルヒはニッカリと笑い、テーブルの上のトランプを指差したのだった。
まぁ予想通りの結果になったんだけどな。
いつもは大抵の場合朝比奈さんと古泉が俺と最下位を争うんだが、今日はどういったことか前述の二人が最初に上がったために
珍しくハルヒと俺が最下位を争い、結果俺がこうして安物の小さいビニル傘をさしてスーパーに向かっているというわけだ。
しかし、鍋か……。クリパでハルヒ特製鍋を食べて以来のような気がする。
そのときの味を思い出しながら、俺の気分は少し軽くなったはずだった。雨さえ降ってなければな。
スーパーに到着した俺は、ジャンパーにかかった水滴を払い落とし、買い物を開始する。
豆腐、水菜、にんじん、ごぼう、大根、しめじ、しらたき、白菜、肉はどうしようかな。鶏肉が安い。よし。
味付けは……そういえば長門の部屋に調味料ってあったか?
電話してみる。
ぷるる。かちゃ。
『……』
「あ、長門か? 鍋の味付けなんだけどさ、お前の部屋に味噌とか醤油とかってあったっけ?」
『ない』
「そうか、じゃあ買ってくな。あとなんか希望のものとかあるか?」
『特に無い』
『有希、その電話キョンから?』
ハルヒのバカでかい声が聞こえた。
『そう』
『代わって! ……もしもし?』
「おう、どうした」
『言い忘れたんだけど、あたし凍み豆腐好きなのよね。買ってきてくんない?』
「わかった」
『あと、お菓子とジュースね。忘れないでよ。あ、そうそう、カセットコンロのガスが無かったから、1本買ってきて』
「へーい」
さて、そろそろ一人で持って帰るには怪しい量に突入してるではないだろうか。
長門の部屋には食器すら充分な数が無いので、スチロールの椀と紙コップ、割り箸も買っていく。
ハルヒ希望の凍み豆腐は、豆腐コーナーではなく乾燥食品コーナーにあった。盲点。
調味料は悩んだ挙句、最初から鍋に使う用に売られている合わせ出汁(醤油ベース)を使うことにした。一番確実だろ。
お菓子を適当に選び、2リットルのジュースを2本。オレンジとお茶。
ガスも忘れず購入。わはは、カゴ2つに収まりきらないわけだが。
そういや傘もあるんだよな。
5千円札と涙のお別れを果たし、ビニル袋に詰めているときは両手に2つずつ持てば何とかなるなとか思っていたが、
出口に立って外を眺めて、濡れずに帰るには傘を差す必要があることにようやく気づいたのであった。
っていうか、今思えば野菜が多すぎる気がする。
片手に袋4つ……無理だな。
仕方ない、傘を脇に挟んで、濡れながら帰るとするか。
果たして長門のマンションに到着した頃、俺は濡れ鼠などという表現もおこがましい、何かの妖怪ではないかと言うほどに
全身ずぶ濡れだった。髪も顔に貼りつき、顔色は悪く、寒さで小刻みに震えている。
エントランスのカーペットの色が変わっていたように見えたのは気のせいではあるまい。
エレベーターも順当に濡らしまくり、さて、妖怪湿気男を出迎えたのはたまたまトイレに廊下に出ていた朝比奈さんの悲鳴であった。
「みくるちゃんどうしたのっ!? うわっ、何よこいつ。妖怪変化めっ!」
その言い草はひどすぎる。いやまぁ、自分でもひどいナリとは思うが。
朝比奈さんじゃなくても悲鳴くらいは上げるかもしれない。往来を歩いていたら即通報モノだな。
事情を説明すると、ハルヒは意外にもねぎらいの言葉をかけ、シャワーを浴びろと言った。
てっきりバカにされるかと思ったが、この雨の中わざわざ買い物に行った俺に鞭打つようなことはためらわれたらしい。
「しかし、着替えが無いぞ」
「……有希ー、フリーサイズのTシャツか何か持ってない?」
長門が別室に動く気配がして、5秒ほど待つと、
「……」
玄関に現れた長門の手には、見慣れたジャージ。学校の指定ジャージだ。
「サンキュ」
「気にしなくて良い」
シャワーから上がって長門のジャージを着ている俺だが、うーむ、いいのかこれ。
はっきり言って俺と長門では体格が違うので、ジャージのサイズも当然小さい。
そして、現在俺の衣服は下着を含めて乾燥機の中で回転中である。
上下共に寸足らずで、袖もズボンの裾も大分手前で終点を迎えている。
が、そんなことより、重要なことは、一言で表すと、こうだ。長門のジャージと俺の股間が直接触れ合っている。
そしてこのざらざらとした感触が……なんとも。
しかもこの生地に、普段長門が下着を押し付けてるんだよなー、なんて考えると、……こう。
そこ、笑ってもいいし、変態と罵ってくれてもいいぞ。自覚はしてる。
極力平静を装ってリビングに戻ると、ハルヒの大爆笑が俺を迎えた。俺は憮然とするしかない。
「……」
「すまん、長門。洗って返すから」
「……別に良い」
「いや、俺の気がすまないんだ」
しぶしぶといった感じで引き下がる長門。
俺がシャワーを浴びている間にだいぶ準備は進んでいたようだ。まぁ鍋なんて材料切って煮るだけだしな。
「キョンあんた買い過ぎよ。10人前くらいあるわよ」
「お前は7人分くらい食うかと思ってな」
そんなに食うかっ、とハルヒは憤慨の様子だ。あれ、ちょっとデリカシーに欠けてたかな、俺。いやまぁ、ハルヒだしな。
実際余ったとしても材料を冷蔵庫に入れておいて、明日の朝にでも食べれば良いのだし、問題は無いだろう。
しかし今更だが、この季節に鍋ってどうなんだろう。
「え? お鍋って季節とか関係あるんですかぁ?」
普通は冬とか寒い日に食べるものだと思いますが。
「私の家では季節に関係なく食べてるわよ。なによ、イヤ? イヤなら食べなくてもいいんだからねっ」
嫌なわけが無い。俺の家でも季節に関係なく出るし、ハルヒ鍋の味は保証済みだ。
「じゃあ文句言うんじゃないわよ。丁度いいじゃない。身体が温まって」
「冷えた原因もこの鍋のためなんだがな……」
「男の癖にぐちぐち言ってんじゃないのっ」
……確かに皮肉が過ぎたかもしれない。反省。
夜通し起きてるつもりらしいので、腹八分目にしておいた。満腹になると眠くなっちまうしな。
ハルヒと長門はいつもの調子で食い続け、俺の皮肉を実現しそうになったので、
夜中に腹減ったときにお菓子だけじゃ足りないかもしれないと注進し、適当なところで留めさせた。
「はぁー、食った食った」
腹をぽんぽんと叩くハルヒ。意図的に目をそらす。見ちゃおれん。
そこからの俺たちは、特に細かな描写が必要なほどの活動を行わなかったので、ダイジェスト版でお送りしよう。
鍋を一旦片付け、お菓子をつまみながらしばらく雑談。内容は、SOS団の今後の活動予定から昨晩のテレビの話、
教師の悪口など多岐にわたったが、特に実のある内容ではなかった。
そうこうしてるうちに、午前2時ごろかな、朝比奈さんがうつらうつらしてるところをハルヒが叩き起こす、
というやりとりがしばらく続き、ついに朝比奈さんがリタイア。長門に頼んで隣の和室に布団を敷いてもらい、
暇な高校生は4人組にグレードダウンしたというわけだ。
そうやってぐだぐだしているうちに小腹が空いてきたので、余った材料で鍋会セカンドシーズン。
あとは朝まで雑談とトランプをしていた。
外からチュンチュンというベタな鳥の鳴き声が聞こえてきたあたりで朝比奈さんが起き出し、
寝てしまったことを全員にぺこぺこと(特に、長門に対しては念入りに)謝罪し、
全員揃ったということで、朝食を兼ねて鍋会ファイナルシーズンだ。
残りの材料を全て投入、炊飯器の米も投入して雑炊にしたりして朝っぱらから満腹になった。
最終的にはカレーを突っ込んだせいでカレーの味しかしなかったが。
乾燥機に入れっぱなしだった服に着替え、袋を貰って長門のジャージを詰めた。洗って返すからな。
窓の外はこれでもかと言うほどの快晴。もし晴れなかったら晴れるまでこのまま長門の部屋に居ただろう。
「じゃ、そろそろ帰るわね。ごめんねー有希、朝までいちゃって」
「別に構わない」
片付けもそこそこに、ハルヒのいまさらすぎる謝罪の言葉。長門はいつもどおり。
ハルヒは徹夜明けだってのにいつもどおりのテンションだし、
しっかり寝た朝比奈さんも元気だ。長門が寝不足による体調不良を起こすとは考えづらく、
したがって古泉と二人で憔悴した面持ちで団長と書記(お茶組係兼任)を見つめるばかりである。
あくびを噛み殺しながら、エントランスホールに出るところで、手ぶらな事に気づいた。
「長門のジャージを玄関に忘れちまった」
「いいんじゃない? 別に。洗濯するでしょ」
「俺の気が済まないんだよ」
ハルヒのここで待ってるからさっさと行ってきなさいという言葉を背に受けつつ、長門の部屋に戻る。
俺は寝ぼけていたのかもしれない。チャイムを押すことも忘れ、いきなり扉を開けてしまった。
がちゃん。
「長門ー、すまん、ジャージを忘れて……」
長門は、玄関に正座をして、ジャージに顔を押し付けていた。
…………。
しばらく空白の時間が流れた。
「……ジャ、ジャージを……」
「必要ない」
ぴしゃりと言い切られた。
「特に汚れや悪臭などの発生は検知されていない。洗濯の必要は無い」
そ、そうか、汚れとかのチェックをしてたんだよな? いや、でも、俺の気分としてだな、
「必要ない」
2回目。俺は黙り込むしかない。
「どうしてもというなら、こちらで洗濯しておく」
「そ、そうか、すまんな」
「いい」
「じゃ、じゃあな」
と口ごもりつつもその場を退散した。
が、ちょっと気になったので足音を忍ばせて戻り、そっと扉を開ける。
長門は、またしても、玄関に正座をしたまま、ジャージに顔を押し付けていた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………再チェックをしていた」
「長門。やっぱり俺が持って帰って洗ってくる」
「必要ない」
「頼む、俺に洗わせてくれ」
「駄目」
その後数分間の押し問答の末、俺の帰りが遅いことを訝しんだハルヒがエントランスからインターホンを鳴らし、
それに長門が応対した隙をついてジャージを引っつかんで逃げてきた。
「あれ、出てきた。何してたの?」
「いや、なんでもない。長門がジャージを洗おうとしてたから、なんとか俺に洗わせる様に説き伏せてたんだ」
「別に有希だって、気にしてないと思うけど。そう神経質なのも、かえって相手に失礼じゃない?」
なんと言われようと、こればっかりは譲れないぜ。
後日洗濯して長門に渡したとき、長門の視線が若干恨めしいものに見えたのは、気のせいだよな?
終わり
スレ汚しスマソ
ぶっちゃけジャージの匂いを嗅ぐ長門を書きたかっただけ。
ほのぼの日常から、いきなりそっちにシフトかw
不意打ちだよな。
これはヤバい、悶える
ふぇち…w
>>210 これはキタww
壊れてる様子が一切なかった長門だけに笑いがwww
小ネタを考えがてら、本編を進めて、ようやく透過の続き完成
ねる間も惜しんで(それはアニメのせいだが)ネタを考えたかいがあった
ただ、半分寝ながら書いたから、面白いかはわかんない。
まえの話がどこら辺にあるか、実は自分でも分からなかったりする。
たのしんでもらえれば幸いです。
外角低め、ギリギリ一杯にズバッと決めてきたなこりゃ。
もうお手上げだね。萌え死ぬ。
219 :
211:2006/06/28(水) 22:34:17 ID:IuDMM+c1
最後の投下でいきなり逆転しようと思って文の量を最後調整した。反省はしていない
ところで、改行の具合と会話文、地の分の割合を意識的に調整してみたんだが、どうだろうか
ここが読みにくい、読みやすいなどの感想をくれると嬉しい
8章
いつの間にか古泉も来て、暇つぶしにオセロをやってるんだが、待てど暮らせどハルヒがこない。 いや、待ってるわけじゃないんだがな。
「どうしました? 涼宮さんが気になりますか?」
古泉、8連敗したくなければ黙ってろ。 表情が読めないなんて言い訳は聞かんぞ。
「なぁ、長門。 ハルヒがどこにいるかわかるか?」
「分かる」
「いったいどこにいるんだ?」
「家」
家? まさか俺の家に行ったとかはないよな。
「違う。 涼宮ハルヒ本人の家」
なるほど、帰ったということか。 素直に帰ったと言えばいいのに。
それにしても早いとこ元に戻らないと、俺の単位と家での安息が常温にさらしたドライアイスのごとく消えていってしまう。
そんな危機的状況にいよいよ俺は行動を起こした。
「よし、決めた。 手紙を書くぞ。」
っと声高らかに宣言して紙とペンを持ったがいいが、ペンも透明になって書きづれぇ。 仕方無しに、長門に代わりに書いてもらうことにした。
「よし、言うぞ。」
「分かった」
軽くうなずく長門を確認し、俺は言い始める。 小恥ずかしいが、背に腹はかえられん。
「ハルヒへ」
「ハルヒへ」
長門が俺の言った後を追って復唱する。 決して俺が二回言ったわけじゃないからな。
「この前のは俺が悪かった」
「子の舞えは折れが悪かった」
一旦俺は手を止めさせた。
長門、文字を打ち続けて自動変換された訳じゃないんだから、ちゃんと書いてくれ。
「じゃあ続きを言うぞ。」
「パシリでも何でもするから、許して欲しい。」
「pasiridemonandemosurukara、yurusitehosii。」
「長門…」
俺は再度手を止めさせた。 見事なまでにローマ字だ。読みにくいことこの上ない。
「何でちゃんと書いてくれないんだ?」
「…禁則事項」
長門は少しうつむき加減(俺にしか分からなかったみたいだが)に答えた。
うむ、久々の長門のジョークを聞いた俺は、書き手を変更する決断を下した。
朝比奈さんは…… ダメだな。 字が丸っこすぎる。
「キョン君ひどいですよー。 私だってしっかりとした字くらい書けますよ。」
では少し書いていただこう。
「ハルヒへ」
「涼宮さんへ」
よし、次は古泉だな。 不服だが、お前にしか任せられん。
「仕方ありませんね。 僕はこういうのは苦手なんですが…」
お前が最後の砦なんだ。 つべこべ言うな。
「じゃあ言うぞ。 ハルヒへ」
「ハルヒへ」
お、俺は期待できそうだ。 俺は言葉を続けた。
「パシリでも何でもするから、許して欲しい。」
「今後はお前の奴隷になるから、許して欲しい。」
おい! 誰が奴隷になると言った。
「こっちの方が反省してる感じが出てると思いますが… それに奴隷といってもアッチの方のじゃないですよ。」
古泉がこっちを向いて悪意1000%で笑っている。 アッチってどういう意味だよ。
まぁ、そんな訳で、自分で書くしかなくなったわけで…
元々なんて書くかは決めてたんだが、これはひどい。 というか俺でもギリギリ読めるレベルだぞ。 こんなのハルヒに見せて、不幸の手紙と間違えれられないか?
さて、書けたはいいが、どうやって渡すか… ハルヒはもう帰ってるし。
「直接家に出しに行けばいい」
へ?
「見つからない。」
そうか、今俺は透明だったんだ。 そんな肝心なことをすっかり忘れてた。 ありがとう長門。
長門はいつもより2テンポ遅れて、
「別にいい」
まさかこの時の俺があんなことになるなんて、誰だって予想はできなかったはずである。
いや、長門ならできてたかもな。
続く
>>176 他の人間には分からなかったがキョンは人形が違うのもだと見抜いて
かつその理由が「古い人形の方がよりおまえに似ていたから」というところ、
そして人形と長門とがモーフィングして微笑む映像に萌えが走りました。
良い仕事乙。
長門有紀と雛鳥
その日、ハルヒは掃除当番で、朝比奈さんは気の早い事に二年の進路相談であり、
ついでにいってやると、小泉はバイト・・・おそらく例の閉鎖空間なんだろうが、
とにかく俺は一人で部室へと向かっていた。部屋をノックするが、当然誰からも
返事は無い。いや、正確には、返事を返すような奴はこの部屋にいないってことだ。
ドアを開けると、いつも椅子に座り本を読んでいる、SOS団の
無口美少女キャラ、つまり情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・
インターフェイスである長門有紀が、やはりいつもの場所で椅子に座っていた。
しかしだ。今日は何かがおかしい。そう、長門は分厚いハードカバーの本を手にしているの
ではなく、何やら茶色の丸いかたまりを両の手のひらの上に乗せて、
それを黒真珠のような、深い瞳で見つめているのだ。
「それはなんだ長門」
俺の質問に一言。いつもの調子で長門は答えた。
「スズメ。ハタオリドリ科に属する小型の鳥類」
まぁ、そりゃ見たら分かる。雀だろうな。俺が聞きたいのはなんでお前がその雀を
持っているってことか、って事だ。
「・・・」
それも何かしらの実験なのか?それともまたハルヒと関係があるのだろうか?
「違う。涼宮ハルヒの観測任務とは関係の無い固体」
それから職務質問をする点数稼ぎの警察官のように俺は、いつどこでだれかどのように・・・と、
5W1Hの形式に沿って、長門から事情聴取をしたわけだ。
で、とどのつまり、中庭の樹の根元でぴぃぴぃと鳴いていたのを保護したって事らしい。
それにしても、何でそんなところに落ちてたんだ?見たところまた小さく、
雛鳥かもしれない。巣からおっこちたんだろうか。
しかし長門よ。お前にもそういう優しいところがあるんだな。放っておいたら、
校内に居座ってる野良猫の餌になる所だったぞ。
「そう」
長門は、ただ雛鳥の雀を掌に載せたまま、首一つ動かさず、じぃっと見つめている。
しかし、この雀は怪我をしているんじゃないだろうか。どちらにせよ
長時間親鳥から餌を与えられてないんじゃないのか?
雛鳥は確か、数時間に餌をあげないといけなかった・・・ような気がする。それに水もだ。
とにかく弱っているのかもしれない。どうも泣き声に元気が無い。
決して俺は動物博士ってわけじゃないんだが。
わぁ〜かわいいですね〜」
驚かせないよう、少し遠巻きから長門の手の上に乗った雀を見て、まるで子供のような
愛らしい笑顔を見せる朝比奈さん。
いえいえ、あなたのかわいさに比べたら、このラブリー光線を振りまいている
雀でさえ、月とスッポンです。
「雀の雛ですか・・・懐かしいですね。僕も昔、怪我をしていたのを拾って育てた事がありますよ。
もっとも、僕のときは立派な大人の雀でしたが」
相変わらずのスマイルを浮かべる小泉。こいつの場合、これもこの場に合わせた
作り物の思い出話なんじゃないかと疑ってしまう俺がいる。ああ、俺も立派な大人になったもんだ。
っていうかお前、バイトはどうした。
「キョン!それじゃあ、あなたが餌を買ってくるのよ!それと、鳥篭もね。
あぁそうだ。ついでにメロンパンも一緒にお願い。もちろん人数分ね!」
そして、ハルヒ。ここまでは予想通りの展開だ。ああ、そうだな。
俺が部屋に入ってから、SOS団のメンツが揃う今の今まで、長門はずっと、まるで
森の大樹のように動かず、掌に雀を乗せているのだから。
鳥篭を買ってやらないと、多分一生ここに座ったままだろうな。
それに何よりも餌を与えないといけない。それも早急に、だ。
俺は財布の中の漱石先生の人数を確認すると、次の小遣い日までの日数を数え、
その次にあの糞長い坂道の往復を想像した。慣れたものとはいえ、やはりキツイ。
とはいえ、部室を出る際の、長門のじっと俺を見つめる顔を思い出すと、
これはもう急がんといかん、という、メロスのような心持になる。
それから、この間のSOS団、いや俺の人生の恥部でもある例の文化祭の自主制作映画の
撮影現場である商店街へ赴き、まさに閉店をしようとシャッターを閉めていた店主に無理を言って
籠、餌、その他諸々の飼育セットを売ってもらい、いつもより倍の早足で、
いやどちらかといえばダッシュで坂道を駆け上がり、自己最速記録を更新しつつ、
俺は部室へと舞い戻った。本当、何やってんだろうね。このSOS団、もとい俺は。
そもそ校内でペットの飼育はOKなのかね?
と、思ったところで重大な事実を思い出した・・・ああ、メロンパン買ってねぇ。
「ねぇキョン。この注射器みたいなのは何?」
ハルヒは俺が買ってきた小鳥用の餌やりマシーン、またの名を給餌機。
その名も”育ての親”を興味深々にむ〜〜っと見つめている。
ペットショップの店長によると、こいつにお湯でふかした餌をつめて、
くちばしにもっていってやると、親鳥のくちばしと勘違いしてばくばく喰らい付くそうだ。
どうみてもただのプラスチック容器です。本当にありがとうございました。
「ふむ、これくらいでいいでしょうね」
「温度は・・・えぇっと、あ、調度いいですね」
俺とハルヒが袋の中身をごそごそとやっている間に、小泉と朝比奈さんが
早速餌用のお湯を沸かしていた。小鳥用の餌はお湯で混ぜて食べやすくして与えるものらしい。
ま、一種のベビーフードだろうな。
「いやぁ、最近のは便利になっているんですね。僕のときはその辺の虫をすり潰して」
いいからとっととこっち持って来い。っていうかお前の保護したのは何の鳥だよ。始祖鳥か何かか?
「はは、冗談ですよ」
相変わらずのスマイルをしているが、こいつの場合は本当にやってそうだから怖い。
おそらく、聖人のような笑顔で、とてもじゃないが映像でお見せできない事をしていたのだろう。
皿の上に盛られた、お世辞にも美味そうには見えない肌色と黄色のおからを混ぜた
ような異形の粘着物体。なんだか嫌な匂いもするぞ。大丈夫か。
本当にこの雀が食うというのだろうか。しかしまぁ、野生の雀なんて
例えばよっぱらった親父が吐いた○○に群がっていたりするわけだ。あの愛らしい雀が!
そういえば俺雀の丸焼きを食った事あるな・・・いや、この話はもう無しにしておこう。
さて、この餌に給餌機をぶちゅっと差し込む。なるほど、筒状のこいつに、
ストローでジュースを吸い上げるように餌が装填されていく。
上方のハサミと似た形状の輪に指をいれ、これで注射器のように餌を押し出すのか。
準備は整った。ここで、ある疑問が沸き起こる。この貴重な体験である、餌やり
一発目を俺が投入する事を、あのハルヒが許すだろうかって事だ。
もう考えるまでもないだろう?ほら、まるで初めてファミコンを買ってもらった子供の
ようにキラキラした目でこっちを見てるんだ。
「キョ〜ン〜?まさかあなた、このまま何食わぬ顔で”一番に”餌をあげようとしてるんじゃ
ないでしょうね〜?」
もう、小学生のウサギ当番を取り合いをする年齢でもないだろう。ハルヒよ。
ここで意地を張って閉鎖空間を発生させるのも大人気ない。ってことで、俺は
穏便にハルヒに餌が詰まりに詰まった給餌機を渡した。
本当は少しあげてみたかったんだがね。・・・少しだけだぞ。
「あら?いいの?えー?そう。仕方ないなぁ。キョンがそこまで言うのなら
私が直々にチュン太に餌をあげてもいいわ」
命名。この雀の雛は只今をもって、チュン太と呼称するように。ほら、ここは拍手する所だぞ。
が、しかし。
「あら?食べないわ、この子。お腹が空いてないのかしら?ほら、チュン太。餌よ。餌」
ハルヒがくちばしをツンツンとつつくが反応は無い。
「近すぎるのかもしれません。もしよかったら、僕に貸してもらえませんか?」
「ん〜。じゃ、小泉君やってみて」
ハルヒはしぶしぶと小泉に給餌機を渡す。いつになく小泉がアグレッシブじゃないか。
どうも、過去に鳥を保護したってのは本当なのかもしれない。どうでもいいけど。
「ふむ・・・おかしいですね。食べません。餌が合わないのでしょうか」
自称、プロの小泉でもアウトだ。もっと親鳥のくちばしっぽく与える必要があるのかね。
「あ、あのぅ・・・私もあげてみていいですか?」
おずおずと申し出る朝比奈さん。・・・がしかし、これもアウト。となると、次は俺の番だが、
平々凡々な一般人の俺に鳥と心を通わせる特殊能力があるわけもなく、
チュン太は給餌機の先からねじりださせた餌を見てもきょろきょろしてはぴぃぴぃ鳴くばかり。
「変ね…ひょっとしてお湯で薄めすぎたとか?ほら、香りも大事じゃない?
餌と認識できないんじゃないかしら?」
ハルヒは少し困った風に、餌の説明書をじっと見ている。こうやって困っている顔は
滅多にお目にかかる事がないが、やはり性格を除けば美少女というだけあって、
困り顔はこれはこれでいいのかもしれない。
「ふみぃ〜分量は大丈夫ですよぅ」
自分が責められたのかと勘違いした朝比奈さんはチュン太みたくぴぃぴぃと怯えだした。
「そうだな、とりあえず作り直してみるか?ひょっとしたら、お湯の量間違えたのかもな」
朝比奈さんを疑っていいるわけじゃないんだが、ひょっとしたらって事もありえる。
・・・そんな悲しそうな目で俺を見ないでください。朝比奈さん。俺はいつだって味方ですから。
鉛の様に重い罪の十字架を背負いつつ、俺は給餌機を持って立ち上がった時だった。
「待って」
えぇと、確か俺が餌の買出しから帰ったのが5時過ぎ。そして今は6時過ぎ。
つまり約一時間ぶりに、椅子の上でヒューマノイド型有機体鳥巣と化していた長門が
口を開いたわけだ。ひょっとしたら出かけてる間中、ずっと黙ってた可能性も十二分に有り得る。
「分量は適正と思われる」
長門の目がじっと俺を見つめる。わずかに、何かの感情を込めているように思えた。
俺は無言で長門に給餌機を渡すと、長門はそれを受け取り、チュン太の口元へと運んだ。
「うそ・・・食べた・・・なんで!?」
驚いたのはハルヒだけじゃない。俺も朝比奈さんも、そして小泉も、長門以外の全員が
驚愕していた。チュン太は、今までの拒否っぷりが信じられないくらいに、
ガッツガッツと餌を食いだした。よっぽど腹が減っていたんだろうな。
「分からない。この場合はあくまで確率論」
その確率論が何と何を割ってどうやって導き出したのかは知らんが、
少なくとも、チュン太は給餌機に装填した餌を軽く平らげ、おかわりまでし、
それから水をガバガバ飲んだところで、目に見える通り腹が膨らんできたので、
それ以上餌をやろうとする長門を止め、鳥篭内部に設置した巣の上にそっと置くと
すやすやと至福の寝顔で眠りに付いた。
「あ、そういえば」
心温まる空間を切り裂くハルヒの一言。
「キョン。頼んでおいたメロンパンは?なんだか今日はやけにメロンパンが
食べたいのよね〜」
―ああ、スマン。正直に言おう。忘れたんだ。
続くかもしれん
長門有希と古泉な、次からは頼むぜ!
保管庫にあるなかでこれは凄い!というものはありますか
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。
Q見たいキャラのSSが無いんだけど。
A無ければ自分で作ればいいのよ!
Q俺、文才無いんだけど…
A文才なんて関係ない。必要なのは妄想の力だけ… あとは思うままに書いて…
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aあうう… 読み飛ばしてください。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
>>228 面倒くさいから全部引っ張ってきた
Q保管庫のどれがオススメ?
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろよ。
Q自分で作れないから手っ取り早く書いてくれ。
Aうん、それ無理。 職人さんにも色々あるのよ。
変なところでレスアンカーしてるのは気にしないでくれ
まったく確認せずに書き込んでしまった
鬱だ
小泉はどうでもいい、だが長戸や有紀やみるくはいやだ
ついでに「漱石さん」懐かしい
あーハルヒとセックスしたい
Aそれは自分できめるっさ! 良いも悪いも読まないと分からないにょろよ。
なるほど。このスレの空気が一発でわかるFAQ、GJ。
>>232 ( ゚∀゚)<み、み、みらるく、みっるくんくん
( ゚∀゚)<…みっるくんくん
( ゚∀゚)<…くんくん……
( ゚д゚)<………
(゚д゚)
朝比奈さんならむしろこっちみろ。
>>238 この保管庫って、どこのスレのやつなんですか?
>>244 突 然 の 暗 転
長 門 瞬 間 移 動
ア イ ア ン ク ロ ー
koneta
今日もいろいろ疲れたなあ、さて寝る前に今日のキョンの発言、確認させてもらうわよ。
昼休みあたしがいないからって油断は禁物、あたしの机の中のテープレコーダーがしっかり起動してんだから。
悪口ひとつでも言ってたらただじゃおかないんだから
谷口「お前、涼宮とどうなんだよ?落とせそうか?w」
キョン「だからハルヒとはそんなんじゃねえ」
国木田「そっかあもう下の名で呼ぶ仲なのかあw」
キョン「違うつってんだろ!」
谷口「ほらそろそろ白状したらどうだ」
キョン「そもそも事実無根だ!」
国木田「でもかわいいとは思うだろ」
キョン「そりゃあな」
国木田「どういうところが好きなの?」
キョン「そうだないつでも元気で・・って好きじゃねえって!」
谷口「はっはっは思わぬボロをだしましたなあw」
キョン「違う〜これはわなだ!」
・・・・リピートってどうやるのかしら
247 :
13-73:2006/06/29(木) 01:05:28 ID:0HBLu/nw
前スレ、嫁ハルヒの続き
今回のメインは古泉だけどなw
さて、我が家──立地的にもなかなか良い物件のようだ。一介のサラリーマンとおぼしき俺の給料でどう手に入れたのだろう──から歩き出すこと少し、少なくともハルヒに聞こえない距離であることを確認して、俺はポケットの中の携帯を取り出した。
何か無駄な進歩でもあったんであろうそれは俺が今使っているものより少し重く、それでいて薄くなっていた。
折畳み式の携帯電話を開いて見えたものはハルヒの笑顔、壁紙までハルヒか…愛妻家だな、『俺』よ。
携帯のメーカーは幸いにして今使っているものと同じ会社で、電話帳を開くのは造作も無かった。
俺は電話帳のナ〜ノ行を開くと、一番頼りになる奴のナンバーを選択し通話ボタンを押した。
頼む。いてくれよ…長門
『ただいま電波の届かないところにいるか、電源をお切りに…』
聞こえてきたのは無情な女性の声だった。
くそっ。俺はこの一日で何度目か分からない悪態をついた。
…そもそも長門はこの世界に存在すのか?
あるいは、ここは本当は未来じゃないのか?ひょっとすると、ハルヒの生み出した閉鎖空間なのかもしれない。
だとしたらさっき口付けしたら問題は解決してくれたのか。
いやいや、それはまずい。何故なら俺が前回とは違った意味で悶々としてしまうことになるからだ。
疑問は山積みだ。何一つ解決の糸口が見えない。
閉鎖空間…閉鎖空間ね…
ハルヒの力がもしなくなってしまったら朝比奈さんは未来に、長門は親玉の元に帰ってしまうのかもしれない。
そんなの俺はイヤだけど、あいつらにだって都合があるだろう。
しかしだ、こいつは言っていたはずだ。ある日突然超能力が身についたと…そう、もし力が消えようがこいつはこの地球上のどこかに存在するはずなのだ。
最もそれは、ここがあの閉鎖空間ではなく、『今』から地続きの未来であることが前提なのだが。
頼むぜ…こんなにもあのイヤミったらしい声が聞きたくなる日が来るとは思わなかった。
俺は祈るようにカ〜コ行の下から2番目のナンバーをコールする。
「もしもし」
聞きなれた古泉の声からさえ如才ない雰囲気の漂う古泉ボイスとは少し違う気がした。
しかし、それは紛うこと無き古泉一樹の声だった。
「古泉か?聞け。なんだか知らないがのっぴきならない状況になってやがる。原因はハルヒなのかどうかはまだ不明だ」
俺は今の状況をありのまま手っ取り早く伝える。
すると古泉は信じられない事をのたまいやがった。
「ちょっと待ってください。ひょっとすると僕に掛けてきているのは『高校生のあなた』でしょうか?」
さて、場面変わって俺は今電車に揺られている。
「北口駅から少し離れた場所に僕のマンションがあります。よろしければ会って話しませんか?」
その言葉がこの場所に居る理由だった。
古泉の発言にしばし絶句していた俺は、すぐにでも問い詰めてやりたい気持ちを抑えると最寄の駅へと向かったのだった。
30分程迷ったがな。
切符を買う為に財布を取り出す。凄く軽い。
中身を覗きこむと野口英世が数枚そこに列居していたが、どこを探してやっても諭吉の姿は見つけられなかった。
貧乏しているんだな『俺』…
昨日、コンビニで飲み物買ったときの俺の財布の中身と殆ど変わらないじゃないか。
まさか、事あるたびに罰金でも取られてるんじゃないよな?笑えない冗談だ。
人がごった返すホームに滑り込んできた電車に飛び乗る。
ラッキーなことに朝の通勤時の貴重な座席にありつくことが出来た俺の目に飛び込んできたのは、『俺』の鞄だった。
少し興味を抱いた俺はガサガサと中身をあさる。
いいのか?人のモノだぞ…いや『俺』のモノなんだが。
見つかったのはファイルに包まれた書類。ひょっとするとこれは『俺』の作った企画書だろうか。
『ジャスタウェイについて』
…なんだこれ?ジャスタウェイって何だよ、工場長!
更に読んでみると下の方に注意書きがあった。
※尚、これは本編と全く関係ないお遊びの小ネタなので読み飛ばしてかまわない
本当に何だよこれは。だいたい俺は記憶喪失じゃないだろ。
北口駅。家──この場合は実家というべきか──からの最寄の駅にして我々SOS団不思議探検の集合場所。
そこには、少し遠い学校に向かう学生や、これから出勤するであろうサラリーマン、まるで遠いところから会いに来た想い人を待っているような女性なんかの姿が、あるいは歩き、あるいは走り、あるいは立ち止まってきょろきょろしたりしていた。
しかし、朝からの変化してしまった世界や、古泉の衝撃発言でいっぱいいっぱいの俺の目に止まったのは、せいぜい俺達御用達の喫茶店が『今』も営業していることくらいだった。
黒塗りのタクシーのようにシックな造りのドアに誂えられた呼び鈴を俺は鳴らす。
「どうぞ、お入りください」
耳慣れたあの如才ない声が聞こえる。
それは、つい昨日部室のドアをノックした時と全く同じ台詞で、俺は不覚にも少し懐かしいと思ってしまった。
「お久しぶりです、もっとも、あなたは昨日も部室で僕に会っているのでしょうが」
開いたドアから顔を覗かせた古泉は、俺の知っている古泉と殆ど変わらなかった。
…いや、少しだけ違った。この古泉は髪が長かった。
「ええ、ポニーテールにするためですよ」
…………
お前が泣くまで…俺は殴るのを止めない
「冗談です、冗談。軽いジョークですよ」
古泉は肩をすくめて、見慣れたスマイルで笑った。
いや、違うな。
その『古泉』スマイルには、見慣れたスマイルに年下の従兄弟をからかようなスパイスがブレンドされている。そんな気がした。
「忙しさに感けてしまいましてね。本当は、今日も無理言って休診にさせてもらったんですよ」
古泉は両手を大げさに上げると軽く溜息をついた。
まるでハイド氏からジキル博士に変化したようなハルヒと比べると、古泉は俺の見慣れた古泉と殆ど変わりが無かった。
「ところでだ、お前はまだ『俺』にそんな口調で話してるのか?」
一つ疑問に思ったことを聞いてやる。
「『あなた』や昔の友人にはもっと普通に話しかけてますよ。最も商業柄こちらの方が心象が良いらしいので、仕事の際はこの口調を使っていますが」
一区切り置くと古泉は更に言葉をつなげた。
「それにいきなり『今の口調』を使っても、あなたを混乱させるかと思いまして」
まさにその通りだ。今のこの状況はなんなんだろうな、俺は混乱の真っ只中にいる。
確かに、ここで古泉がいきなりフランクに話し掛けてきたりしたら発狂するかもしれない。
「本題に移ろう、この状況は何だ?」
「もしもこれが夢だでしたら、“気になる異性”というのは必ずしも自身をあらわすわけではなく…」
御託はいらん。お前は俺が高校生だと知っていた、何故だ?
「何故でしょうね?」
こいつ絶対楽しんでやがるな。古泉のニヤケ顔は普段のニ割増(当団比)だった。
「ご安心ください。あなたは元の時代に戻れるはずですよ」
「どうやってだ?長門の…そうだ、ここは未来だ。ひょっとすると朝比奈さんの力を借りるのか?」
「残念ながら、方法については僕は何も聞いていません」
くそっ、どうすればいい?何か…何かヒントはないのか?
「残念ですが」
肩をすくめてニヤケる古泉
しかし、そんなものに目を向ける暇は無かった。
俺は途方にくれていた。やっと見つけたと思った元の世界へ戻るためのヒントは再び消えてしまったのだ。
再び古泉の方を向くと、こらえ切れないといった表情で俺を見てる。
本気でむかついてきた。
人事だと思いやがって。何発か殴ってやろうか。
「僕はあなたが戻る方法は確かに知りません。何故ならあなたの異時間同位体から聞いたのは『一日で戻ってくるから心配ない』ということだけですから。」
異時間同位体…だと?その言葉には聞き覚えがあった。
そう、長門が言っていた朝比奈さん(小)に対する朝比奈さん(大)の事だ。
そうか、そのことには全く考えが及んでいなかった。
よくよく考えれば歴史が飛び飛びになるはずがない。高校生活、大学生活を経た『俺』が、『この時代』には存在するんだ。
ということはだ。ひょっとすると『俺』は今、俺の代わりにあの坂を登って、下らん授業を受けて、SOS団の活動に参加しているんじゃないだろうか。
「ええ、その通りです」
なるほど、それなら古泉が全てを知っていたのも合点がいく、おそらく『俺』に話の全貌を聞いたのだろう。
「全くもってその通り、あなたはある一点においての感性を除くと、とても鋭いですね」
ある一点って何だよ。
「そのうち分かりますよ。僕いえ、僕等はその一点でかなり苦労させられましたが」
古泉は苦笑した。
ということは、あれか。タイムマシンに乗ったり、世界の情報の改変だのという大げさなことは何もなしか?
「そういうことです。SF的なオチを期待してここまで来たとしたら残念かも知れませんが、この話には大掛かりなSF的オチというものはありません」
古泉は役者が観客に解説をするように語った。どこを向いてるんだ、お前は。
しかし、よくよく考えてみれば当然の話だ。
いくら朝比奈さんが未来人であろうと俺をタイムマシンに乗せて時間移動事したり、長門が情報生命体とやらの手下だからといって俺をまきこんで世界を改変するなんてありえない話だ。
だよな……?
「チェックメイト」
詰めを宣言したのは、あろうことか俺ではなかった。
久しぶり──最も俺は昨日こいつとやったばっかりだったがな──にチェスでもやらないかと言ってきた古泉の勝負を受けてやることにしたのだ。
盤上で激戦を繰り広げながら──古泉はかなり強くなっていた──、俺達はいろいろな問答を交わした。
「なんで、俺がハルヒと結婚してるんだ?」
一番の疑問をぶつける。
俺は確かに涼宮ハルヒのことが嫌いじゃない、でもそれはもっぱら友人としてであって、恋愛感情なんて持つはずがないのだ。
そう、その感情はlikeであって、間違ってもloveではないつもりだ。
俺はSOS団団長のことを、そして朝俺を送り出してくれた『ハルヒ』を思い出す。
俺はあいつが好きなのか…?いやいやいや、そんなわけない。
「それは、あなたが人生を歩むに連れ、ゆくゆく分かっていくことですよ」
俺は未来の出来事をを知りたいんだよ。
「そうですね、結婚を決意されたのは…あなた方の友人──谷口さんでしたっけ?──に関係あるようですよ」
思いがけない名前が出てきた、谷口、お前俺に何をしやがった?
「『あなた』は『谷口には足を向けて寝れねえな』とおっしゃってましたしね」
なんということだ、あの谷口に昨日以上に感謝する日がやって来るらしい、世の中分からないものだな、おい。
「そろそろ昼食ですが、あなたはどうされます?」
俺が敵軍のクイーンをどう討ち取ろうか思いを巡らせていた時、古泉は声をかけてきた。
ああ、そういえばハルヒが弁当を作ってくれたっけ…
鞄の中から金属性の弁当箱を取り出して、蓋を開けてやる。
俺は光の速さですぐに蓋を閉めた。
「どうかしました?」
ニヤニヤと笑みを見せる古泉、お前本当は中身について知ってるんじゃないのか。
弁当箱の半分を彩るのは、唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダにキンピラ。見るからに美味そうなおかず達が所狭しとひしめき合っていた。
朝飯の味から想像するに味も申し分無いことが期待できる。
そう、おかずには何も問題無い。
問題があるのは残り半分、味も申し分無く、腹持ちも悪くない我々日本人の主食、米だ。
そう白米のキャンバスに描かれていたのは、田麩で出来た「LOVE」という文字とハートだった。
「愛妻弁当ですか、うらやましい限りですね」
古泉はからかいを含んでいるであろうニヤケスマイルを浮かべ、こちらを見ていた。
うるせーよ
「長門と朝比奈さんはどうしてるんだ?」
「禁則事項です」
ウインクしながら微笑む古泉。軽く殴ってやった。
「お前は何の仕事をしてるんだ?」
「会話の流れで想像してみてください」
何だろうな?俺には分からん。このSOS団の心理分析担当がどんな仕事をやってるかなんてね
そして長きに渡った激戦は、古泉のチェックで片がついたのだった。
夕闇が迫る古泉の部屋で、試合を終えた古泉が取り出したのは、俺にとっては見慣れた勝敗表だった。
少し日焼けしたぼろぼろのその紙に古泉は丸を書き込む。
「そんなもの残してるのか?」
「ええ。僕にとって大切な思い出ですからね、白星は殆どないですが、今日は加えることが出来ましたよ。」
夕日が古泉の顔を照らす。その顔にはあのニヤケスマイルを浮かべてない。
「思えば色々なゲームをしましたよ、軍人将棋にTRPG、一度だけ大局将棋もやりましたっけ」
ひょっとするとジャングルをテーマにした現実に影響するボードゲームとかもやったのかもな。
「今日はあなたと話ができて良かったですよ。まるで高校時代に戻ったように楽しめました」
古泉は遠くを見ていた。俺達との日々を懐かしんでるのかも知れない。
「そろそろ帰られてはいかがです?愛しの奥さんがお待ちでしょう?」
「そうだな。ハルヒが待ってる」
「またお会いしましょう」
古泉は笑った、全く含みの無い笑顔で
…ああ、これがこいつの本当の笑顔なんだろうな。
それはイヤミなしに好意が持てるもので、こいつとなら親友にさえなれるかも知れないと思うことが出来た。
最後にひとつだけ…
「なあ、古泉。ジャスタウェイってなんだ?」
「ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何物でもない。それ以上でもそれ以下でもないですよ」
爆弾じゃなきいと良いんだがな
世界をもうすっかり包み込んだ夜、駅への道の途中にある建物の姿が見えた。
先日──といっても『今』からするとだいぶ前かもしれない──長門と訪れた図書館だった。
外から覗いてみるが、ここはあの時と全く変化を遂げていない。
“図書館では携帯電話の電源を切るか、マナーモードにする”と書かれた紙を司書とおぼしき女性が指差していた。
どうやら、館内で携帯を使っていた若者に対して注意しているらしい。
髪を結った司書の後姿が可愛らしくて、俺は「今日はポニーテール日和だな」なんてことを漠然と考えていた。
「帰るか」
気がつくとつぶやいていた。
司書の姿に何か感じさせるものあった。
でも、今の俺はそれ以上にハルヒに会いたかった。
俺好みの髪型にしてくれた『ハルヒ』に、そして見慣れたあのカチューシャをつけたハルヒにも。
俺は、駅へと歩き始めた。
「今日じゃないのかな。力になろうと思ったのに、わたしまたうっかりドジしちゃったのかなあ?」
そんなことをつぶやいている女性とすれ違った。
ひょっとしたら朝に駅前で視界の隅に入った女性だったかも知れないなんて何故か思ったが、その顔はもう既に世界を覆っていた闇に隠れて見ることは出来なかった。
「罰金よ。罰金!!」
さて、場面変わって駅前のいつもの集合場所。今日も今日とて遅れてきた俺は……
ではなくてだ、その台詞を聞かされたのは帰りついた『家』の玄関だった。
家についた俺を迎えたハルヒが開口一番開いたのはその言葉だった。
ただいまを言う暇もなかったね。
慣れ親しんだ怒り顔はいつも俺に見せているものと相違なくて、俺は「『ハルヒ』はハルヒなんだな」と再認識させられた。
しかしだ、いくら俺とていわれのない罰金を受けるわけにはいかん。それとも何か、この家には門限でもあるのか?
そもそもだ。前述したのはあくまで冗談であってだな、本当に罰金を接収されてるなんて思いもよらなかったぞ。
「しらばっくれる気?あんたの上司から電話があったわよ」
携帯を取り出してみると、全ての着信履歴を“会社”の表記がうめ尽くしていた。
途中までは必死だったのと、途中からは夢中だったので、携帯の存在を忘れていたらしい。
うわっ、困ったな…しかし、なんて説明したら良いんだ?
「すまん。どうしても急用で古泉の所に行かないといけなかったんだ。連絡するのを忘れた」
嘘は言ってない。そもそも、会社に行ったとしても何ができるんだ?何をしていいのか分からんぞ。
「古泉君?元気だった?」
「ああ」
「そっか、懐かしいわね」
ハルヒは目をつぶって、腕を組んでいる。
俺が既に知っているSOS団との日々、あるいは俺がまだ知らないSOS団との日々をこいつは思い返しているのだろう。
俺は、高校を卒業したらオサラバなんて行ったことを後悔した。可能ならSOS団の仲間と、それからハルヒとずっと一緒に居たいと今では考えていた。
さて、どうやら俺は罰金から関心を移すことに成功したらしい。
すっかりハルヒは上機嫌で、鼻歌交じりにキッチンへと入っていった。
しばらく古泉についてたわいない話しをしてると、ハルヒは急に切り出してきた。
「あ、そうそう。駅前に新しいレストランが出来たのよ。そこに行きましょ」
…えーっと、ひょっとして罰金のことでしょうか?
「あったりまえじゃない!SOS団団訓にして我が家の家訓。“間違いをおかした奴は罰金”を忘れたとは言わせないわよ」
やれやれだ。俺はそんな家訓は知らんし、団訓は俺の知る限りでは“一番遅れてきた奴”だった気がするぞ。
「しかしだ、ハルヒ。罰金を払おうにも俺の財布にはレストランに行けそうな金なんて入ってないぞ」
せいぜい行けるのは高校生の俺でも通いなれたファミレスか、ファストフード店くらいだろ。
「まっかせなさい。キョンのへそくりの場所なら知ってるから」
ハルヒは悪戯っぽく笑った。
その笑みは金色に輝く向日葵のように綺麗で、再び俺の頭をくらくらさせるには充分過ぎるほど素敵だった。
というか、もっと頑張って隠せよ。『俺』
261 :
260:2006/06/29(木) 01:23:46 ID:0HBLu/nw
とりあえず今回は以上。
最初に述べたように、自己満足全開でございます。
ハルヒの出番も殆どないしな…
えーっと次回分はハルヒの出番多いと思われますが、期待しないで待ってて下さい
>>176 前スレ705です。
感動しました。長門カワユス。
おいらの拙作がきっかけになったのなら蝶ウレシイであります。
リアルタイムGJ
今のキョンと未来のキョンが入れ替わったってことだよな?
>>261 銀魂GJ
じゃなくってへそくりうまく隠せないキョンとうっかりドジった彼女にGJ
>>261 ごとじょぶ。
ドジっ子未来グラマーはいらんからポニテの司書をくれ.
>>261 GJ
ところでキョン(大)は高校時代に戻ってるの?
キョンをみてると、グルグルの「勇者の拳」を思い出すんだよな。
この世の不条理にツッコミを入れる凡人。
コネタ? 長門有希のハイテンションな夜。
うぁぁーもう、ハルにゃン、ハルにゃン、ハルにゃン、にゃンにゃン
今日もやっぱり現状維持だったよ〜〜。
つまんないよぉッ〜〜。
今日も意地になって何ページ捲れるのかってハードカバーいっぱい捲ってたら
それで終わっちゃった。。。。
私ってなに? 無口キャラって喋ったら反則物で失笑ものじゃんッ。
うえぇぇん、そんなのつまんなよぉ。
もっともっとなんていうかさ、なに? そうあれ、らぶとかラブとかラブラブとか!
そりゃー、アタシの役目なんて目立ちもしない監視役さっ!
それは認める。
映画の主人公にはなれなくて、
ストーリーに飲み込まれて最後あのひとなんだったのとか言われちゃう可愛そうで意味なしガールだー。
うわー改めて凹めるかも…ひどっ。
くっそーぅ。
この苦しみをこのキョンキョンの匂いつきカーディガンを優美に着こなした枕キョンキュン1号にぶつけてやるぅッ。
このばかキョンめぇー。
うわ、すごいすごい。私、いとしのキョンキュンを中心に床をごろごろ転がってる。
やっほー、明日も一番に部室にいってあなたの最初の笑顔を盗難しちゃうんだからッ!
あさっての方向に向かって敬礼だってしちゃうもん、だってば!!
あッ!…ったた。
ごんっ!て言ったぞ、今。これ絶対。
はー、家って結構せまかったんだ。
……気がすんだからからもう寝よ。
世界改変へのカウントダウンが進んでますねw
>>261 GJ!!
あー、古泉の友情話を読みたくなってきた。
嫁ハルヒとの夜の営みは・・・期待していいのかな?
ある月曜日。朝からハルヒは何やらメランコリックだった。
珍しく何かを考え込んでいるような表情で、話しかけてもそっけない返事しか返ってこない。
おとといの市内探索ではいつどおりのテンションで団員たちを一日連れまわし、
いつもどおり結局何も見つかりはしなかったが、解散する時のハルヒはそれなりに満足げに見えた。
あれから何かあったのだろうか? などと一瞬思索を巡らせたが、こいつが何も言わないことには始まらない。
とりあえずは様子見だ。
できれば勝手に自己解決して、放課後にはいつもどおりのアホ団長に戻って欲しいもんだ。
だがその日のハルヒは本格的におかしかった。
部室でも何かを悩んでいるような様子で黙り込んだままで、さらに妙によそよそしい。
お茶を運んできた朝比奈さんにかしこまった様子で控えめながらお礼まで言っている。
いつもはファミレスで出されるお冷のごとく当然のことのようにお茶汲みさせているあいつがだ。
今までにも不機嫌な時は幾度となくあったが、そういう時はむしろ周りに当り散らすのがあいつの性分で、
こんなことは機嫌の良し悪しに関わらず過去に一度も無かったことだ。
団員の40%がひたすら無言に徹する室内はいつもに増して謎の集まりだった。
朝比奈さんは様子のおかしいハルヒに視線を向けては背けを繰り返し、
古泉は俺とすごろくをしながら例によって不気味なアイコンタクトを送ってくる。
いい加減俺がおまえの目配せには応答しないということを学習してほしいもんだ。
長門はいつものように読書に励んでいて何かを言いたげな素振りは無い。
傍から見たら何を思って放課後にわざわざたむろしているのか理解に苦しむであろう光景はこの日延々と続いた。
心做しか普段よりも早く長門が読書を終えて帰り支度を始めたので、SOS団の本日の営業はこれにて終了。
しかしハルヒが一言「じゃあね」と言い残してさっさと部屋を出て行ったので、その場で自動的に残業に移行する。
まずは今日ずっと不快な視線を送り続けている古泉の話を聞いてやることにする。
「あなたが何かご存知なんじゃないですか? 涼宮さん、今日はただならぬ様子でしたが」
ずっと何かを言いたげだったから何かと思えば、俺に話を振ってきやがるとは。俺がそんなこと知るわけ無いだろ。
「えっ、そうなんですか? 私もキョンくんなら知ってる思ったんですけど…」
朝比奈さんまで俺を疑ってるんですか。
というか俺とあいつは断じてそういう仲では無いと言う事を声を大にして断っておきたい。
休日に2人で会ったことすら無いのも知っているだろうに、どうしてそういう話になるのかまったく理解に苦しむ。
「そうですか、心当たりはありませんか。困りましたねえ、涼宮さんがあれほど精神を乱す理由が他にあるとも思えないんですが」
まだ言うか。大体俺よりお前の方があいつの精神には詳しいんじゃなかったのか?
「はい。しかしそれはあくまで大まかな精神状態が分かるだけで、具体的な思考などはほとんど伝わってはきません。
例えば涼宮さんが食事をして大変満足しているという感情は感じ取れても、
その際のメニューが何だったのかという情報は僕たちには全く分からないんです。
ですから今も、ナーバスな心理状態だということは分かってもその原因が何なのかは残念ながら不明なんです」
まあここで自分はハルヒの心の声まで聴こえてると言われた日にはこいつとの付き合い方も考え直さなければいけないわな。
「でも、おとといの夕方には変わった様子はありませんでしたよね?」
「はい、僕が涼宮さんの精神に異常を感じ取ったのは昨日の午後3時ごろです」
そういう重要情報はまず最初に言えよ。古泉の情報出し惜しみには毎回イライラさせられる。
「それはすみません。出し惜しみをしているつもりはないんですけどね」
つまり昨日の午後3時ごろに、あいつをドン底に落ち込ませるようなイベントがあいつの身に起きたということか。
俺はふと親父にこっぴどく叱られて俯いているハルヒの姿を思い浮かべた。
「『落ち込む』というのはちょっと違うと思いますね。感情を言葉で正確に表現するのは難しいんですが、
今の状態は『緊張』と言うのが最も適していると思います。
感覚としては…そうですね、出来の悪かったテストを親に見せずに黙っていて、
いつ見せろと言われるかとおっかなびっくりしている、あの感じです」
優等生のお前にそんな経験があるのか実に疑わしい。皮肉のつもりか?
「それってつまり涼宮さんが何か隠し事をしてるってことですか?」
「それは確定的ではありませんが、ただ何かを恐れている、ということは間違いないと思います」
ハルヒが何かを怖がって他人の前で沈み込んでるなんて俄かには信じがたい話だ。
一体どうしたらそんな風になるというのか。やっぱり家族内のゴタゴタの線が濃厚な気がするんだが。
「それが昨日の午後3時ごろ、涼宮さんは自宅にはおられず、ご家族ともご一緒ではなかったんです。
機関の者の報告では1時ごろに1人で自宅を出て駅周辺の書店や洋服店を巡り、特に何も買わず3時半ごろに帰宅しています。
その間知人に会うことも無く、変わった所は見て取れなかったそうです。
もちろん暴漢やひったくりのような犯罪にも遭遇していません」
休日にまでハルヒの行動観察とは、機関の方々にはまったく恐れ入る。
しかしそれが本当ならいよいよ何が何だか分からないじゃないか。
「そうなんですよ。しかし観察員の報告は信用に値するものです」
すると買い物をしていたら突然何かに不安になり、一晩寝てからもずっとその状態だっていうのか?
そんなことがあるものだろうか。いや、この場合疑った方がいいのは…
「僕もそう考えます。観察員には認識できない現象が起きていた、もしくは観察員の記憶を改竄された可能性です。
外出中何度かケータイを操作する様子が見られたということで、あるいはと思ってあなたには確認したんですが、
どうやら面倒な方の事態のようですね」
俺がどんなメールを送ったらあんな風になるというのか問いただしたいところだが、今はスルーしておこう。
だが自分も考えていたこととはいえ、改めて他人の口から聞くとやはり突拍子も無い説に聞こえてくる。
本当に常識的な原因だとは考えられないのだろうか?
自分のことを思い返してみれば、突然の不安に襲われることなんてそんなに珍しいことではない。
ふと自分の将来の事なんて考え出してしまえば思考は大抵ネガティブな方に行ってしまうし、
じいさんやばあさんの事を思い出せば、あと何回会えるだろうと要らぬ事を考えてしまう。
しかしそんな状態を学校や部活(部ではないが)にまで持ち込むだろうか?
現実に立脚しない、思い付いたような悩みなんて解決しようもないものだ。
恋愛を精神病と言い切るドライな感覚の持ち主ならそんなことは俺よりも分かってるだろう。
なんてことをあれこれ考えていたのだが、異空間や情報操作ときたらまず確認しなければいらない相手がいるのを思い出す。
一度カバンにしまった本を再び取り出して、事も無げにいつもの姿勢を維持している長門に俺は尋ねた。
「なぁ長門。お前は何か知ってるのか?」
「……」
意外に長い間だ。長門が今までのやり取りを聞いていない筈はないんだが。
「涼宮ハルヒ、及びその周辺に対する外部からの干渉は観測されていない」
この回答に虚を衝かれたのか、古泉が少々アップトーンの声を上げる。
「本当ですか!?」
「本当」
自分の推理が空振ったのが悔しかったのか、古泉は長門に食い下がる。
「あなたの観測に妨害が行われていた可能性はありませんか? 雪山の時のようにあなたに負荷を加えたりして」
しかし長門と事実の正確性を争っても無駄なのは言うまでもない。
「おかしいですねぇ…」
なんでこいつは残念そうなんだ? 意外とハルヒの非日常願望に毒されてるのかもな。
「もう4年近く涼宮さんの精神と繋がっていますからね。全く影響を受けていないということは無いと思います。
いえ、でも今の場合は残念とかそういうことではありませんよ。
長門さんの言うとおり何も無かったとすると、涼宮さんの今の状態の説明がつかないものですから」
室内を沈黙が包む。確かに不可解ではあるが、長門が違うと言うのだからやはりハルヒの内面の問題なのだろう。
「まぁひとまず帰ろうぜ。そろそろ時間やばいし」
帰り道、古泉は長門にまだ何か突っかかっている。意外にしつこい性格なのかもな。
俺はそんな2人の後ろで朝比奈さんと並んで歩いている。
「私、明日はちゃんと涼宮さんに話を聞いてみます」
彼女が時折見せるこの上級生らしい凛とした表情は朝比奈さん(大)を髣髴とさせる。
ああやっぱり同じ人だなあ、などとちょっとした感慨に耽ってしまう。
「キョンくん…、本当に何も知らない…んですよね?」
あれあれまたそれですか。さっきの話、聞いてなかったわけでは無いですよね? 朝比奈さん?
俺は朝比奈さんと同じく一昨日の夕方以来、週末あいつとは会ってませんし、
メールも電話もFAXもテレパシーも交わしてません、と何度言ったら分かってもらえるんだろうか。
「あ、うん、ごめんなさい。でもやっぱり気になるの…」
どうして朝比奈さんと古泉は2人してそんなに事件性のものにしたがるのだろうねえ。
家庭のことを思い出して悩みこむことだってあるだろうに。むしろそっちの方が自然だ。
現に俺も進級が近くなって最近ますます進路のことにうるさい母親のことを考えると、家に帰るのも少々躊躇われるくらいなのだ。
ハルヒの悩みも酷く現実的なものに違いない。そのうち時間が解決してくれるさ。
朝比奈さんも相談に乗ってくれるというのだから心強い限りだろう?ハルヒ。
宇宙人や未来人の悪戯では無いことが分かった以上、俺たちがやることは何も無い。今日のところは解散だ。
俺も明日はもうちょっとまともに話を聞いてみるかな。憂鬱なハルヒなんて見ている方まで憂鬱になる。
3人と別れて俺は家へと歩を進める。まあいろいろあるんだろ、ハルヒにも。
家で夕食を済ませた俺は自分の部屋に引き上げた。
特に何かすることがあるわけでもないが、リビングにいると母親のボヤキが飛んでくるので避難している次第だ。
こんな時に動物は実に重宝する。特に変わったことをするわけでもないのに毎日見ていても飽きることがない。
俺はカーペットの上に寝転んで、同じく丸くなったシャミセンンを眺めて食後のひと時を過ごしていた。
「何でもかんでも超常現象のせいにすればいいってもんじゃないよなぁ?シャミ?」
などと今は普通の猫となった愛猫に話しかけるほどに俺はリラックスしていた。
しかし、ふとシャミセンは何かの気配を感じ取ったように顔を上げ、両耳を立ててドアの方を見ている。
そして部屋のドアがノックされる。
この家で俺の部屋のドアをノックする習慣があるのは母親だけだが、ノックだけで無言ということは無い。
何だ? 階段を上がってくる音は聞こえなかったし、妹はまだ下にいるはずだが。
「はい?」と俺が応えてもドアが開く気配は無い。
俺は妹のピンポンダッシュかと思い、妹の部屋に行こうと立ち上がり、ドアを開けたのだが、
そこで俺は言葉が出ないほどの驚きを味わうことなった。
「なっ…」
そこにはなんと長門有希が立っていた。
いつもとなんら変わらぬ表情の長門なのだが、見慣れた風景の中にいるせいでものすごい違和感がある。
「あなたに話がある」
何の話か知らないが、どうして突然わざわざ家まで来るんだよ。
夜中に女子(比較的可愛い)が1人でやってきたという状況は俺としては家の中でかなり体裁が悪い。
不愉快な笑みを投げかける両親の映像が不意に頭をよぎって、焦る。
「あなたの家族には秘密。私がいることは知らない」
なんでそんな回りくどいことをするのかよく分からないが、とりあえず俺にはうれしい配慮だ。
そうと分かればさっさと部屋に入っていただくことにする。誰かに気づかれたら終わりだ。
「何か飲むか? お茶は怪しまれるだろうからあれだが、ジュースみたいなもんなら持って来るぞ?」
長門には座布団を宛がい、俺はベッドに腰掛ける。
「いい」
ようやく落ち着いてきたが、よく考えたら家族に内緒で女の子を連れ込んでいるという状況も十分マズイ。
正直いつ妹が長門の脇で丸くなってるシャミセンと遊びに部屋に飛び込んでくるんじゃないかと気が気じゃなかった。
「心配ない。この部屋から音は漏れない。誰か来たら私は身を隠す」
そういえばこいつは透明人間にもなれるんだったな。
「そうか。それで話って何なんだ?」
わざわざ俺の部屋まで来るような用事だ、何か良からぬ事なのは間違いあるまい。
「涼宮ハルヒに私の正体を感付かれた可能性が高い」
まさか!? ハルヒは勘の鋭いやつではあるが、
殊に自分の引き起こした超常的な出来事に大しては何故か異常なまでに鈍感なのだ。
最近の事では雪山で迷い込んだおかしな館が、集団催眠によって起きた幻だったとあっさり信じてたしな。
いつも本を読んでいるだけの長門を見てどうしてそんな疑いを持つというのか。
「今日彼女の精神が不安定だった理由もおそらくそのため。私の方を見る時、心拍に若干の乱れがあった」
「どうしてそんなことになったんだ?」
「私が自動車と衝突する寸前だった女性を回避さたのを、涼宮ハルヒに目撃された」
長門が見ず知らずの人間を助ける様子を想像して多少の違和感を覚えたが、
少し考えてみればやはり長門ならそんな時は何とかしてくれそうな気がしてくる。
「いつ?」
「昨日の午後3時ごろ」
どういうこった。昨日は人間から見てもお前から見ても何も無かったと夕方は言ってたじゃないか。
「古泉一樹の組織の人間を含む、目撃したと思われる周囲の全ての人間の記憶に修正を加えた」
犯人はお前かよ! しかしそれならどうして夕方言わなかったんだ? いや、そういう事は無かったと否定までしたじゃないか。
「だから“外部からの”干渉は無かったと言った」
長門の目からイタズラを成功させた悪ガキのような雰囲気が感じられたような気がした。
しかしそれは屁理屈だろ長門…。
「私の軽率な行動は古泉一樹、朝比奈みくるのどちらの組織からも警戒される。だから言わなかった」
「どういう意味だ?」
「涼宮ハルヒに関心を持ついくつもの勢力はそれぞれ思惑は異なるが、
彼女の保全というただ1点においては現時点で目的を同じくしている。
その一環として、彼女に自分たちの存在や能力を察知されるこを最も瑕疵とする。
故に彼らが積極的に涼宮ハルヒにコンタクトを仕掛ける事はほとんどない」
古泉が以前言っていた事を思い出す。
ハルヒが超常現象を当たり前のものだと認識してしまうと世界がグチャグチャになってしまうとかいうあれか。
正体を隠すのが至上命令だなんて、いかにも宇宙人・未来人・超能力者らしいな。
それも実はハルヒが望んでいることなんじゃないのか?
「つまりお前は相当にまずいミスをやっちまったというわけか。
でもそれならハルヒの記憶も修正しちまえばいいじゃないか」
我ながらとんでもないことを言っているとは思うがね。まあ仕方ない。
「事故後すぐに情報統合思念体に涼宮ハルヒの記憶の修正の許可を申請したが許可されなかった。
ごくわずかな可能性ではあるが、彼らは涼宮ハルヒの脳への干渉によって、
彼女の能力に良からぬ影響が出ることを恐れている」
統合思念体っていうのは人間よりも高度な存在ならしいが、やってる事は随分お役所的なんだな。
正体がバレるのは困るけど自分で何かをして悪い方に転ぶのも嫌。だからとりあえず放置してみる、なんてな。
そんなはっきりしない態度だといつか本当に朝倉みたいのに寝首を掻かれるぞ。
「それで俺に何をしろと?」
「彼女が見たものを彼女の勘違いだと思い込むように仕向けてほしい。過去の例から考えてそれは可能なはず」
そういうのは俺よりも古泉の得意分野なんだが、この場合は俺がやるしかないのか。
だがどうやって話を切り出そう。まずはハルヒの口から説明を受けないといけないわけだよな?
「ハルヒのやつが俺にそんな話してくると思うか?」
「今日はまだ思考の整理がついていなかったが、近いうちに誰かに相談したい心理状態になると予想される。
そしてその相手にはあなたが選ばれる可能性が高い」
まあハルヒと長門の共通の友人って言ったらかなり限られるしな。俺、朝比奈さん、古泉、それに鶴屋さんぐらいか。
しかしどうだろう。ハルヒはああ見えて結構友達思いなやつだ。
特に長門に対しては自分の妹のように労わっている節がある。
そんなやつが親しいからといって、いやむしろ親しい相手にこそ「あの子おかしいのよ」などとは言わないのではないだろうか。
「その可能性も否定できない。しかしそうならば逆に友人が不可解な存在であることを信じたくないという心理も働くはず。
あなたに話し、あなたに否定されることで自身の中での決着をはかろうとするとも考えられる。」
そう来るか。でもそれなら話が速くて助かるな。
「分かったよ。とりあえず明日ハルヒに話を聞いてみるわ。それでいいんだろ?」
「いい」
そういうと長門はシャミセンをひと撫でして立ち上がった。
「もう帰るのか?」
「帰る」
用が済めば即帰宅か。なんとなく寂しい気がしないでもない。
「送って行こうか?」
「……いい。今日あなたに会ったことを誰にも知られたくない」
「そうか。じゃあまた明日な」
ドアを開け、一度俺の方を振り向いてから長門は部屋を出て行った。
部屋のドアが閉まった後階段を降りる音も玄関のドアが開く音もしなかったが、さして驚く事でもない。
さて、結局また面倒な事になってしまったわけだ。
長門がハルヒの前で非人間的な動作を見せてしまい、ハルヒはそれ以来長門のことでおっかなびっくりしている、と。
確かに前説無しにあの魔法を見せられたらビビらない人間はいるまい。
ましてそれがか弱い(と思っている)女友達だったりしたらなおさらだ。
しかしどうやって誤魔化してやろう?
長門は車に轢かれそうな女性を助けたと言っていたが、そういえばどんなシチュエーションだったのか聞いていない。
まあ詳しいシチュエーションなんて知らない方が自然な振る舞いができるだろうから別にいいんだけどな。
俺は長門ほどポーカーフェイスではないし、古泉ほど人を煙に巻くのがうまいわけでもないから。
こういう場合自分であれこれ考えても仕方が無い。
とりあえず明日、ハルヒにさりげなく話を聞き出す。文字通り話はそれからだ。
次の日、ハルヒは昨日と同じ物憂げな顔だった。声をかけても昨日と似たような反応だ。
頬杖をつき、視線は窓の外に固定。これは骨が折れそうだ。
「やれやれ」と心の中で呟きながら、話をするなら昼休みがいいかなぁなどと考えていた。
しかし少し意外な展開が昼休みには起きた。
「あんたヒマでしょ? ちょっと来て」
長くない昼休み中に飯を喰わなければならないのだから決してヒマではないのだが、当然ここは言われた通りにする。
谷口の生暖かい視線を背中に感じながら、俺はハルヒと2人で教室を出た。
2人とも笑顔のかけらも無いこの状況が楽しい青春の1ページに見えるのだとしたら、相当病んでるぞ、谷口。
ハルヒが俺をどこかへ連行するときは必ずどこか体の一部を掴まれているような気がするが、
今日は俺の前を振り向くことなくただ歩いている。ちょっと調子が狂うな。
着いた場所は屋上だった。誰もいないのを確認したハルヒは端まで進み出て手すりに前向きに寄りかかった。
俺もその横で同じ姿勢を取る。
どうでもいいが屋上に出る扉は普通は鍵がかかってるんだけどなあ。
「どうしたんだ? 昨日から元気ないみたいだが」
ここにきてまた黙ってしまったハルヒを俺は促す。
ハルヒは俺の顔を一瞬見た後、前に向き直りようやく話を始めたのだが、
俺は予期せぬその内容にフリーズしてする。
「…ごめんなさい…」
「(!?)」
「妹ちゃん、変わった様子とか無い?」
なんだ? 何故俺に謝る? どうしてここで妹が出てくる?
「ん? 何の話だ?」
当然俺はこう答える。それを聞いたハルヒは驚いた顔で振り向き語調を荒げた。
「聞いてないの!?」
「だから何をだよ? 俺は何も聞いてないぞ」
ハルヒは目を丸くしている。本気で驚いているようだ。
「そうなの…」
そう言うとハルヒは何か考え込んでしまった。
俺の方もそうだ。長門の話が来ると思っていたのに肩透かしを食らった格好だ。
どのくらいだろうか、1分近く沈黙が続いたような気がするが、実際にはもっと短かったかもしれない。
平静を取り戻したハルヒがようやく口を開いた。
「このあいだの日曜日、一昨日ね、あんたの妹さんに会ったのよ。駅前の本屋のあたりで。
通りの向かい側を1人で歩いてるのを見かけて、声をかけたの。
そしてたら妹ちゃん、止まってた車の前を通って道を渡ろうとして、
そしたらその…、走ってきた車に轢かれそうになって…」
なんと! 長門の言ってた女性っていうのがうちの妹だったのか!?
「それで有希に助けて貰ったって話は聞いてる?」
「…いいや、知らん」
ここは素の反応だ。
「そう…。道に飛び出した時、偶然妹ちゃんの近くに買い物に来てた有希がいて、
道に飛び出した妹ちゃんを歩道に引き戻してくれたみたいで…。有希がいなかったら…」
「そんな事があったのか」
歳のわりに幼くて、外で何か危ない目に遭ってないかと時々不安になることはあったが、
まさか車に轢かれかけていたとはね。
「だからごめんなさい…。私が声かけたりしたから…」
ハルヒはいつになく神妙な面持ちだ。だが話を聞く限りハルヒが気に病むことじゃないのは明らかだ。
「おまえのせいじゃないだろそれ。道路に飛び出す方が悪いに決まってる。
そのくらい幼稚園児でも弁えてるべき事柄さ」
「…」
ハルヒは俯く。慰めでも何でもなくこの場合うちの妹が一方的にマヌケなのだ。
そのせいでこんな風に思い詰めさせてしまっているのは、兄として実に心苦しい。
「おまえのせいじゃないよ…」
「…」
ハルヒは応えなかった。
再び沈黙が訪れる。実に空気が悪い。
俺もこれ以上何を言えばいいかよく分からないし、ハルヒもだんまりだ。
一万歩譲っておまえ過失があったとしても、結局は何も無かったんだ。
妹は怪我もしなかったし、今日も元気に学校に行ってる。
そりゃ一言謝るのは筋かもしれないが、そんなに気にされても俺は困るばかりだ。
勝手な言い方かもしれないが、そんな風に落ち込んでるおまえを見せられる俺のことも考えてくれ。
どうにもならない事をうだうだ悩みこむなんで、おまえらしくないんだよ。
「何よあたしらしくないって。それよりあんた、あの子のお兄さんなんでしょ!?」
全然似てないとよく言われるが、まぁそうだ。
「しっかり見ててよね。妹ちゃんまだ子供なんだから。一人で遠くに買い物なんて行かせちゃだめよ?」
自分が小学5年生の時はもうなんでも出来たような気がして、妹の動向に気をつかってなかったのは確かだ。
今度のことを聞けばその認識が甘かったのは否定しようがない。
「ああ。すまなかった」
「頼んだわよ?」
「ああ」
ハルヒの顔から緊張の色が引いていった気がした。
「今度あんたの家に行くわ。妹ちゃんにも謝らなきゃ」
家に来るのか!?
「何か都合悪い事でもあるの?」
ハルヒの顔がぐっと近づいてくる。
何か悪いことをした訳でもないのに咎められてるような気がするのは何故だろう。
「いや、別に無いが…」
「じゃあ決まりね。今日の帰りに寄らせてよ。早い方がいいから」
よりによって今日かよ! まさか長居はしないだろうな? 今日は親父も普通にいる日なんだが。
いや侮れない。妹は妙にハルヒに懐いてるし、下手したら晩飯を食べて行くように薦めるやもしれん。
しかしハルヒもいくらなんでも空気を読むか…?
「何ブツブツ言ってるのよ。さっ、もう戻りましょ!」
そう言うとハルヒは屋上のドアの方へズカズカ歩き出した。
まったく、こっちの事情なんてホントはどの程度考えてるのかねぇ? この娘は。
しかし俺は内心ホッとしていた。
ハルヒはこうでないければハルヒじゃないよな。
これで一件落着だろう。
話を聞く限りハルヒは長門があらぬ動きをしてうちの妹を助けたのには気づいていないようだし。
「長門には後でお礼を言っとかなきゃなぁ」
階段を下りながら俺は独り言のつもりで言ったのだが、ハルヒから応答があった。
「私も。妹ちゃんの様子も確認せずにあそこから逃げ出しちゃったから…。
あの時有希と目が合って、あの子に責められてるような気がして居たたまれなって…」
それで長門は自分の正体がバレたと思い込んだのか。
方々に迷惑かけまくりの妹で益々申し訳ない。
「ところでおまえ、これから学食行くのか?」
「行くわよ? 何で?」
昼休みはあともう20分ちょいしか無いのに行くのか。
まあ実はその答えを期待してたんだがな。
俺たちは校舎内に戻り、階段を下りたところで別れた。
軽快な足取りで駆けていくハルヒを見て俺はようやく肩の荷が下りた気がした。
普段は大体こっちが迷惑を被る側なのだが、今回ばかりすまなかったと思う。
帰ったら妹にはきっちり言い聞かせておかないと。
おそらく長門に記憶を消されているのだろうが、だからこそ言っておかねばなるまい。
そして俺も早足で部室にやってきた。
全て杞憂であったと報告する意味合いもあったが、
それよりもあいつに言っとかねばならない事と聞いておきたい事があったからだ。
ドアを開けると長門はいつもの場所でいつもの読書に励んでいた。
「ハルヒに話聞いてきたぞ。おまえのした事には気づいてなかったみたいだ」
「聞いていた」
どうやって聞いていたのか知らないが、話の速い限りだ。
「それより妹のことだけど、ありがとうな」
本来はもっと丁重に礼を述べるべきなのだが、すまん、こんなので一杯一杯だ。
事故の現場に居合わせていたらばちょっとは違うんだろうけどな。
「いい」
今頃妹が病院で管を繋がれて眠っていたり、あるいは棺桶に入っている様子を思い浮かべ、
今になって俺は事の重大さを認識し始めていた。
長門がいてくれて本当に良かった。
「それで、何でうちの妹だってこと言わなかったんだ? 隠してた理由が分からないんだが」
聞きたかったのはこれだ。ハルヒと話せばどの道分かる事なのに、何故昨日言わなかったのか。
俺は何か深い理由があるのだろうと思っていたのだが、長門の返答は今日2番目の驚きだった。
「…特に理由は無い」
理由が無い? 長門のすることに限ってそんなはずは無い気がするんだが。
「本当に何も無い」
疑念は残ったが、長門にまっすぐ見据えられてこう言われては納得する他無い。
家族の命の恩人の言うことを疑うのは大変に気が引けるしさ。
それにもう済んだ事だ。細かいことを気にしてもしょうがない。
ハルヒはあの様子なら放課後にはいつもどおりの傍若無人ぶりを見せてくれそうだし、
長門の大失態は取り越し苦労だったわけだし。
あとは俺がうちのバカな妹に交通安全についての集中講義を開けばいいだけだ。
ついでに街の悪いお兄さん対策の補講もやるべきかもしれん。
「悪かったな。うちの妹のせいで余計な面倒かけて」
「いい。あなたの妹が無事で私もうれしい」
放課後。部室には俺と朝比奈さんと古泉の3人だけしかいない。
俺は朝比奈さんが入れて下さったお茶をいただきながら、居残りの2人に今回の事の顛末を説明していた。
結果的にハルヒには長門の能力は全く知れてはいなかったので、話しても問題ないとの長門のお達しだ。
元はといえばうちの妹のせいでこの2人にも心配をかけたのだから、俺が誠意を尽くさないとな。
古泉は心配というより難しいパズルを預けられて喜んでいるような雰囲気ではあったが。
「そういうことでしたか。それであなたや長門さんにに責められるのではないかと不安を感じいた、と。
確かに、僕の感じていた涼宮さんの精神の感覚を過不足無く説明できるシチュエーションです。
それで今、お二人はどこに?」
ハルヒは長門を連れてどこかへ外出中だ。昼の言の通り長門に礼を言いに行ってるのだろう。
あいつが悪いわけではないのだから、当然俺としては複雑な心境だ。
「それにしても、あなたの妹もうっかり者ですが、長門さんも迂闊でしたね。
涼宮さんの位置も行動も常に把握してるんですから、彼女に見られることは予測できたはずです」
確かにそうだ。長門でも「ミス」なんてものをするのかな。
「やはり『あなたの』妹だったから危険を覚悟で助けたのでしょうか?」
長門は俺たちよりもよほど人間の出来たイイ奴だ。
目の前で人が傷つきそうになっていたら、赤ん坊だってヤクザだって助けたに違いない。
別に知ってる奴だったからじゃない、俺はそう信じてる。
「ずいぶん彼女を買ってるんですね」
「悪いか?」
「いえ、とんでもない」
古泉は両手を上げて「撃たないで」のポーズ。なんだかからかわれた気がする。
「キョンくんは妹さんが事故に遭いかけたことは知らなかったんですか?」
今まで聴きに徹していた朝比奈さんがようやく声を発する。
「はい。妹の記憶も消したと言ってましたから。あぁ、ハルヒと話が合うようにまた修正するみたいですけど」
おかしな友達だらけの兄を持ったばかりに頭の中を何度も弄られる羽目になって真に申し訳ない。
しかしそんなに簡単に記憶を書いたり消したりできるなら、
俺も長門に頼んで英和辞書の1冊や2冊書き込んでもらえないものかと真剣に考えていた。
そこでふと俺の中にまた、長門が妹のことを隠避していた疑問がぶり返す。
長門は理由は無いと言っていたが、妹の記憶を消していたことと関係があるのかな?
「キョンくん……本当に分からないんですか?」
朝比奈さんが呆れたような、というか奇特なヤツを心配するような表情で俺を見ている。
何か俺はおかしいことを言っているのだろうか? 全く心当たりが無い。
横では古泉がいつもの透かした笑みを浮かべて「ヤレヤレ」のジェスチャーをかましてやがる。
「あなたはそういう事には疎いですからね。まあそれが魅力ともいえるのですが。ふふふ」
2人で顔を見合わせて笑ってないで、俺にも分かるように説明してくれ。
「あの〜、朝比奈さんには分かるんですか?」
「えっ? あ、あの、その…、本気で言ってるんですか?」
そんなこと言われても、俺は朝比奈さんと話すときはいつも程々に真面目のつもりなんですが。
「はあ…。キョンくんって、ちょっとアレですよねぇ…」
朝比奈さんの視線がいつに無く冷たく感じた
2人の心配事 -完-
文体がキョンらしくてよかった。
話の筋もしっかりしてるし、ちょっと関心してしまったよ。
やべ、内容に引き込まれて最後まで読んだのに
長門が妹の事を秘密にしてた理由が理解できなかった…
もう寝よう(ノД`)
亀過ぎるかもしれないが前スレの802おもろかったよ。
>>275 テーマがよくわからんかったので、
久しぶりに心に残らない作品だった。
まぁ、上手いと思うけど。
>>287 ありがとうございます
>>290 一行目は正しい評価だと思ういますね。自分でもそう思うし。
ホントはもっと長門寄りのつもりで始めたんだけど、
自然さや整合性にこだわったせいで必然的に他のキャラも動き出しちゃって、
短い文なのに焦点が分散してしまい、全体に希薄になってしまったと思う
>>288 「ハルヒのせいで妹が事故に遭いそうになったのを、自分が人外の力で救いました」
とキョンに直接言うのが、(ハルヒに対して)アンフェアだと感じたから
というつもりで書きました
続き物、投下します。
〜ユメ、ゆめ、夢〜 2話
「うわぁぁっ」
俺は、ベットから情けなくも跳ね起き、周りの景色を見た。いつもの俺の部屋だ、暗いが。
そりゃそうだよな、しかし、なんだ今の夢は、俺と有希、いやいや長門が夫婦って設定の夢……
しかも非常にリアルな、それでいてほぼ全ての出来事が記憶に残ってる。こんなことってあるのか?
少なくとも、この15年間では一度も無いタイプの夢だ。
俺は一度下に降りて時間を見る、夜中の2時、三時間しか経ってないのか。
ジュースをコップ一杯飲み、また布団に戻る。
睡魔はすぐに襲ってきた、願わくばさっきのような生々しい夢は勘弁したいもんだね……
〜第二夜〜
「……ョン君」
誰かに呼ばれている。重い瞼を開けると、上には病室のような天井。
「キョン君」
そして、傍らには、心配そうに見つめる、スーツ姿の一人の女性
「あぁ、おはよう、みくる」
大人の朝比奈みくるがそこに居た。
涼宮ハルヒが原因であろう次元の歪みは、無事解決した。ここでの解決の経緯は
言葉で伝えられないので、割愛する。要するにもうハルヒは普通の人間になった。
それに伴い、朝比奈さん、いや、みくると「俺」は未来に帰る事にした。
いままで、記憶改変されて気付きようがなかったが、俺も未来人だ。
俺が未来人である事、涼宮ハルヒの鍵となる存在という事、問題解決のために未来の情報を消したこと、
戻ってから、こちらの頃の記憶を思い出させてもらって、納得した、俺はここの時代の人間だと。
それらすべては未来の、今ここに居るみくるのおかげなので確証は無い。
だけど、そんなことは些細なことで、俺とみくるは元の……夫婦という関係に戻ったわけだ。
「キョン君?どうしたの?」
「いやっ、いつ見てもみくるが、可愛いんで」
「そんな……キョン君ったら……」
「いや、もう美しいというべきかな?」
「うふっ、好きにしなさい。このっ」
指で額をちょこんと押された、懐かしさが込み上げて来る感じだ。
二人で食事を取る、ぎこちないものの、その雰囲気は悪い気はしなかった。
「そういえばさ」
「何?今日はお砂糖とお塩は間違えてないよ」
「いや、料理には何も問題ない。みくるの衣装だ」
「私の、衣装?」
「俺はてっきり、裸エプロンと思ったら」
「!!!、、、キョン君の、すけべ」
「男としては自然だ。いいかげん、みくるも慣れてくれ」
いや、今のスーツにエプロンという組み合わせも、似合っているけどな。
やっぱり、この、何と言うか。普遍の男の夢ってのを感じてるのさ
「ふふふっ、何それ?」
「ただの妄言さ」
「変なの」
あははっふふふっと笑いあう二人。こうやってなんの制限も無く接していたんだな、昔は。
食後のお茶を貰いくつろぐ二人、相変わらずみくるのお茶は格別だな。
「さて、これからどうする?みくる」
「そうねぇ、今日は、ここでのんびり過ごすってのは?」
「そうだな、記憶は補填してもらったとはいえ、まだ実感がわかないからな」
「うふっ、じゃあさ……楽しいことでも、する?」
…………
「あっ、そこ、キョン君、ずるいよぉ」
「ずるいもんか、ほら、こっちからも」
「あっ、そこは。ダメだって……」
「そろそろいくぞ、みくる」
「ダメェェェ、待って、ねぇ、お願いだから待って……」
「だぁめ、俺、もう我慢できないもん」
「そ、そんなぁぁ」
コトッ
「はい、チェック」
「キョン君強すぎだよ」
「みくるが弱いんだ」
「ふみゅぅん」
チェスで5連勝を飾った俺はご褒美とばかりの膝枕でみくるの耳掻きを堪能していた。
「なあ」
「何?痛かった?」
「いや、俺たちはこっちではこんなフランクな関係だったなって思ってさ」
「正直、過去の時代での私達は、いえ、私は辛かった」
「俺がハルヒの鍵だったこと?」
「それも、それに解っていても、未来をあるべき姿にするために……距離を置くことにも」
「……もう、すべて解決したんだ。これからの事を考えよう。みくる」
「そう、よね……」
「たとえ、今が俺の夢の中でもな」
「!!!気付いてたの!」
「こういったのに散々巻き込まれたんだ。耐性はついてる」
「ごめんなさい」
「みくるが謝る事は無い」
また、夢み心地になってきた。本当はもう少し話したかったんだけどなあ。
夢の中なのに夢み心地っての不思議な感覚だな、おい。
「でもね、過去の朝比奈みくるはこの夢を見ているわ」
「お互いにか」
「ええ、本当は・・・をしてまで、貴方を・・・したかった・・」
聞き取れなくなってきた。そろそろ限界か。
「もし、未来で私達がこういった関係になったら」
「ああ、そのときは思い切りべたべたしてやるさ」
「ありがとう、キョン君」
「ああ……」
俺の意識が静かに閉じていく。
「願わくば、よい夢を……」
「ふぅぅっ」
今度はあまり驚かずに起きれた。が、心にやるせなさが残ってる。
なるほど、さきほどの二つの夢は、もしも「IF」の世界なんだな。
俺と長門、俺と朝比奈さんと結ばれたあとの世界か。
となると、と思い携帯の時計画面をみる、朝の4時、もう一眠り……しないといけないだろうな。
しかも、これも恐らくだが、そこには未来のハルヒがいるはず。
今度は、何をすればいいんだ?またキスなのか?あれはもう御免したいのだが。
「やれやれ」
俺は布団を被って、睡魔に三度身を委ねた……
……
…………
「って朝になったぞ、おい!」
現在時刻、朝の7時前、妹が起こしに来るくらいの時間だ。
ハルヒとの夢はどうした?俺が聞きたい。……いや、けっして見たかった訳ではない。断言しておく。
しかし不自然じゃないか?長門、朝比奈さんときてハルヒが来ないのは……
「キョンくんってあれ?もう、起きてる」
いつも寝起きの良くない俺を起こす役を果たせなく、少々残念そうな妹はこの際放置しておく。
俺は手早く朝食を終えて、事の真相を確かめるべく足早に家を出た。
きっと部室には長門がいるだろう、ま百歩譲って古泉でもいい。
誰か納得のいく説明を、などといつもの坂を久々の早足で駆け上がった。
結論から言おう。部室には長門はおろか、古泉、朝比奈さん、ハルヒはもちろんだが居なかった。
だが、昨日誰かが忘れて帰ったのであろう、女性向け雑誌がそこにあり、
ご丁寧に付箋紙まで貼ってあった、部分を読んで。俺は、絶句した。
そこには、フォローともいい訳ともつかない文章で。
『なお、このおまじないで夢が見れなかった人は、もともと占いを信じていないか、両思いの場合のみです』
おい、これは雑誌の出版元に抗議してもいいよな。
それとハルヒ。お前はもちろんここで言う前者なんだよな、な?
完
以上、また書き終わったら投下します。
>>291 唐突に「アンフェア」って言われても、ハルヒと有希が『そういう関係』だと臭わせる描写が欠片もないのに、
読者にそんなこと伝わるわきゃーないって。
書いてる人の頭の中には理由なんて一杯あるから気付かないで書ききってしまう時があるのは分かるけど。
読む方はなんの情報も無い状態から始まるということをもう少しだけ意識して描写すると良いと思った。
文章も上手いし、話の組立も悪くなかっただけに非常に勿体なかったです。
ところでちょっと言いたいんだが
いや文句ってわけじゃないんだけど
作品の投下があったら、他の作者さんは次の投下を少し待って欲しい
前の作品の感想のレスを書こうとしている間に次の投下がはじまっちゃうと、感想のレスをつけにくいから
最低10分から30分くらいの間隔は欲しいと思うんだが、どうかな
それか保管庫に感想用の掲示板か作品ごとのコメント欄を設置して欲しい
みんながみんな常時スレに張り付いているわけではないのだし、時間制限みたいな物を設けても意味無かろう。
一日に一回、特定の時間にまとめて読む人だっているだろうし。
感想付けてあげたいのなら亀レスでもいいからアンカー付けてレスしてあげれば良い。
作者はちゃんとそういうの見てるし、嬉しいものだよ。
保管庫に感想用掲示板がどうとかは、
@管理人さんの負担を考えましょう
Aこのスレいらなくなるね
の二点から、どうでもいい。
まあはっきり言っちゃうと、我が侭だねあなた。
301 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 07:22:51 ID:vMGVFZJK
とにかくgj
我侭ってのは、言いすぎな気が…
俺もSS書いたすぐ後に他のSSがきて、スルーっぽくされたことあるし。
まぁ、別に良いんだけど(力量の無さってのもあるしね)。
でも、書き手としては、地味にでも感想貰えるのは嬉しいよ、やっぱ。
スレだとなんか流れに合わなかったら、そのままスルーだし。
わざわざ遡ってまで感想付ける人なんてそれこそ稀有じゃない?
まぁ、管理人の負担ってのは確かにあるけどね。
ホムペの仕様変えるなんて手間だからなー。
SSの数もあることだし。
>>302 いや、内容が良ければいくらでも遡ってレス付けてるパターンのほうが多いよ
レスが貰えないのは住民に受けなかった、という事だ
冷静に受け止めよう
まぁ受けてるんだかよくわからないSSを延々投稿する俺みたいなのもいるし。
話を終わらせるってのは物凄い大変だな。
なによりも投下ラッシュが起きた場合、書き手はみんな待ってなきゃいけないとなると、正直きついでしょう。
仕事行く前とか寝る前とか、やっと空いた時間等にせっかく書き溜めた作品を投下できないのは可哀想だし、俺も勘弁して欲しい。
書き手だって常時ヒマヒマしてるとは限らないのだから。
>>302 仕様を変えるだけで済めばいいが、掲示板でもコメント欄でもイタズラする人間が必ず出る。
その管理までやってくれとは流石に言えないからねえ。
多少なりとも作者に負担をかけるルールは作らない方がいいな
自由に投下できるからこその、作品量だと思う。
レスは遡ってでも気にせずガンガン付けよう、ってテンプレにでも入れとけばいいんじゃね?
「遡ってでも付けよう」ではなく「遠投レスでも気にせずレスしてかまいません」くらいの気持ちでいいんじゃね?
>>298 古泉やみくるが気がついてキョンが気がつかないという部分に
なんというかおかしみを感じるシチュで
一人称である時点で、長門の行動原理に対する具体的記述は困難なのだから
書かないことで長門の不思議さとか可愛さを想像して広げて楽しめばよいのでは?
きっかけはいつものバカ騒ぎだった。
ハルヒが強引に主催したどうでもいいイベントの打ち上げが部室で行われたときだ。
禁酒すると言ってたくせにハルヒのやつは酒なんか買ってきやがった。
どうやら飲み物をてきとうに選んだらしく酒とジュースを間違えたらしい。
あいつがグビグビ飲んでいた缶を見て気付いたときにはもう遅かった。
そしていつもの3倍バカでハイテンションになったハルヒは俺に言ってきた。
「そんなんだからあんたは童貞なのよ!」
それまでまがりなりにも盛り上がっていた場の空気は一瞬で凍りついた。
俺を含め4人全員がハルヒを見たまま硬直した。
4人が同じリアクションをとったのは初めてかもしれない。
「もう童貞のオーラに満ちてるのよあんたは。見るからに童貞」
そして空気を読むということを知らないハルヒは俺を童貞童貞と罵倒し続ける。
俺は確かに動揺していたのだろう。なんとか硬直を解いてもくだらない返ししか出来なかった。
「…………じゃあおまえはどうなんだ」
「あたし?あたしはとっくの昔に経験ずみよ」
それから打ち上げはあっという間に終わった。どう終わったか俺はあまり覚えていない。
朝比奈さんは逃げるように部室を去ったし、長門もなにやら「準備がある」と珍しく自分から発言して帰った。
残っているのは俺と古泉だけだ。ハルヒもご機嫌の千鳥足でとっとと帰りやがった。
あの発言のあとハルヒは頼みもしないのに自分のロストバージン体験談を語ってくれた。
中2のとき一度だけ男とやったことがあるらしい。
思ったより痛くなかっただの感想を延々語ったが、相手が誰かは決して言わなかった。
「……涼宮さんの話は事実である可能性が充分にあります」
そして今度は古泉が語り始めた。
「彼女が中学2年の夏季に一度だけ閉鎖空間の発生が極端に減少した時期がありました。
そしてそののちに今度は以前に増して発生するようになったのです。
涼宮さんは中学時代は言い寄る男子生徒との交際をこばまなかったことは周知のことですが
その時期と同じくして彼女の男子生徒への対応は益々冷たく変化した観察報告があります。
……今の彼女の話とつじつまは、合っていますね。そのときに、ま、経験をしてそして別れたのでしょう。
お相手が誰だったのかまではわかりませんが」
この古泉の話の間俺はずっとノーリアクションだ。
そして古泉も俺の無反応に構わずに、
「一般的に、女性の価値に処女性は無関係ですが、拘る気持ちも男性にはありえることです。
ま、それは自分にとって意中の女性についての話でしょうがね」
と残して帰っていった。
いつもニヤニヤ微笑んでいるが今はとくに面白がっていたような気もしたがよくわからん。
そんなところまで見ている余裕がなかったから。
なんで俺はこんなにイライラしているんだ。
確かに俺は童貞だが、それをハルヒにからかわれたから怒っているのか。
あいつはすでに経験ずみで先を越されてくやしいのか。
内心であいつは中坊時代に男とそんな付き合い方をするやつじゃないと思い込んでて、
その思い込みが外れたことに勝手に失望しているからか。
それともまさか嫉妬でもしているのか。
わからんわからんわからん。
自分でもなにがなんだか分からずに、この俺が閉鎖空間生み出すんじゃないか、
という気分にまでなったちょうどそのときに、俺一人残った部室をノックするやつがいた。
鍵なんかかかってない。俺はそれを無視していたが、しばらくするとオズオズとドアが開いた。
そこに立っていたのは、いつも不意に現れるあの女性だった。
「あの、久しぶり。えと、つ、ついにこの日がきてしまいましたね……」
グラマーな大人の朝比奈さんがなぜか顔を真っ赤にさせながらたどたどしく言った。
「また、キョン君に過去にいってもらわなくてはならなくなりました……」
保管庫の作品について語り合えるような空気があると尚いいかも
「既定事項なんですっ!」
朝比奈(大)さんは半泣きで俺に懇願してきた。彼女は俺にこう言ってきたのだ。
今度は今から2年前の七夕の夜にいって、中2のハルヒとやってこいと。
俺の精神的混乱は最高潮に達した。
ハルヒの処女を奪ったのは実はこの俺だったと知らされたことや、
またジョン・スミスとなって昔のあいつにとっては一年ぶりの秘密の再会をせねばならなくなったこと。
そんなことをこれからやれとよりによって朝比奈さんに頼まれたことがもうショックでたまらない。
混乱のあまり判断力ももうゼロになってしまったんだろう。俺は。
「……わ、わかりました」
承諾してしまった。
混乱は頂点を極め、そのおかげともいえるのか他の感情が俺の中から消えていく。
さっきまでのイライラはいつの間にか消失霧散していた。
そしてその間も朝比奈さんはイッパイイッパイになりながらも時間超越セックスツアーの説明を続ける。
あなたも大変ですね。とか他人事のように思う余裕が少し生まれたときに彼女が言ってきた。
「……ですがひとつ問題があります」
「な、なんでしょう」
「そ、その、ですね、えっと……」
「はい」
「涼宮さんは、そ、そのときにですね、相手は手馴れていて、かなりスムーズだったと記憶しているんです……。
で、でも、あの、キョン君は、いま……童…ううっ、その……まだ……なんですよね?」
ぬおぉ。
少し落ち着いたと思ったらまた動揺させることを言ってきれくれる。
朝比奈さんもしどろもどろだ。
だが次の瞬間彼女はいきなり強く言ってきた。
「で!ですから!」
「ですから、キョン君には、その……、練習して、上達していただかなくては、なりません!」
練習?
「は、はい……あ、あたしと」
「え、ええ!?」
朝比奈さんと、練習?セックスの?
「は、はしたない女だと思われてもいいわ。
でもね、あたしもこんなことをあなたに頼みにくるのに、いろいろと決心してきたの。
これもあたしの決心のひとつ……。だからお願いキョン君、あ、あたしと、練習しましょう……」
朝比奈さんは泣きながら訴えてくる。
相変わらずおどおどとして泣き虫なようだったが、その視線は大人の女性のものだった。
頭の混乱はついに限界を超え、俺は頭が真っ白になった、と思う。
朝比奈さんは部室の鍵を閉めた。
つづく
313 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 09:56:23 ID:8y5MQLXn
続かなくていいよ。ウザいから
>>261 嫁ハルヒの出番がなくて残念。
次回はありそうでそれに期待!
>>312 GJ!
次回のエロに期待してます。
>>307 書き手ですが、さかのぼってでもですくれるとうれしいですよ
遅レスでもかまわないのでお願いします
>312
続きを書かないとお前を取って食う。
超期待
>312
タイトルはエンディミオンの覚醒とかじゃろうか……(w
このスレ、もうだめだな
エロ無しばっかりだw
アニメ放映開始後から流れが変になったなぁ
アニメの出来が良いのはいいんだけど、なんだか微妙な気分
そんなにエロがほしけりゃ自分で書けと
大体エロが少ないと言うが、こことほかのスレを比べてみろ
確かにエロの割合は少なく感じるかもしれないが数は十分多いぞ
このスレには尻の人とかもいるだろ? クレクレ言ってないでおとなしく待とうぜ
いつもの粘着にマジレスするなと…。
またネタ詰まりしたので小ネタをまた投下します。
長門の中の人も大変だな…
IFすとーりぃ ケース2
『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室に来て』
朝下駄箱を開けると、このような文面の手紙が入っていたわけだが、心当たりが全くなおい。 おそらく谷口と国木田のタチの悪いイタズラだろう。
よし、谷口とずっと教室で語り合うか。 そうすりゃ谷口もドッキリを仕掛けられないし、苛立ってきたところで「わかってんだぞ」とでも言ってやれば、逆ドッキリも可能だろう。 我ながらよく考えたな。
今日最後の授業終了を告げるチャイムを聞き、さっそく俺は行動を移した。
「なぁ、谷口。」
「どうした? 俺のラブストーリー伝説でも聞きたいのか?」
あぁ、そうだな。 俺は適当に受け答えをした。 てかそのネーミングセンスを疑うね。 俺でももうすこしマシなことを言うぞ。
「それがさぁ、キョン…」
クラスメイトが次々帰っていく中、俺と谷口は延々としゃべり続けた。 ホント忍耐強いよ。 普通なら4分でも聞きたくない話に延々と食らいついて、ついには5時半を回った。
もう教室には俺と谷口しか… え、朝倉?
朝倉がナイフでも持ってたら刺しそうな勢いで谷口を睨みつけてる。
「ちょっと、いつまで喋ってるつもり? いい加減帰ったら?」
その言葉に谷口は教室の時計を見て、自分のブレザーのポケットから携帯を出して再度時刻を確認する。
「いけね、調子に乗って喋りすぎた。 キョン、早いとこ帰ろうぜ。」
お前がずっと喋ってたんだろうが。 まぁ、引き伸ばしたのは俺だがな。
「すまん、朝倉。 俺らのせいで閉めれなかったんだな。 さっさと出るから。」
「え?」
朝倉はスゴロクの最後のマスでふりだしに戻るに止まってしまったような顔をしている。 一体どうしたんだ?
まぁいいか、谷口の野望は封じれたんだし。 その割には谷口は残念がってないな。 むしろ話し疲れたというかんじだ。 ネコジャラシを与えた猫のように非常に満足そうだ。
教室を出てじばらくした後に、教室から何かが崩れるような轟音が聞こえたが、明日にでも見てみるか。
やれやれ、またハルヒの興味の惹きそうな事じゃなけりゃいいが…
続かない
まあ、誤字発見。
我ながら情けない…
>>323 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ・∀・)< 朝倉さんかわいそう。
( つ旦) \_______________
___と__)__)______________
⊂ ) )(__()’;.o:°
( つ O. / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( 。A。)< キョンの鈍感さに喝。
∨ ̄∨ \_______________
あとで朝倉に記憶消されるな
最近朝倉が好きになってきた件
着替えを道行く人に見られた件
>尻の人
>>320さん、あなたも俺をその名で呼ぶのですか。
とは言わんけどね……。
( ゚∀゚)ァハハ八八ノヽノヽノヽノ \ノ \ / \ / \
そうかそうか「尻の人」か。
よーしパパ、次はブルマの人になっちゃうぞー。
……orz
ただし俺エロいの書くと非エロ分が溜まり、非エロ書くとエロ分が溜まるので
次はどっになるかわからん。
エロ期待してる人待っててくれ。
がんばれ尻の人。
俺はエロは陵辱系が好きなんだけど、他の人はどうなのかな。キャラがひどい目にあうのはやっぱいやか?
キャラを崩さない程度の陵辱ならむしろ好きだけど、全然関係ない人間によるレイプは個人的にダメ。
そしてキョンや古泉の場合、マインドコントロールでもしない限り陵辱しそうなキャラじゃないから
キャラを崩せない→無理のコンボ。
一番陵辱キャラとして使いやすいのは、朝倉さんになってしまう。
そうそう男からめられねえから百合でやることになっちゃう。
みくるハルヒ、長門朝倉って感じで。
悲惨な話はどうにも受け付けないな
陵辱系のどこがいいのか教えてくれ
正統派にハルヒ×キョンがほしいです・・・
萌えるのは好きだけどエロなら陵辱系ってこと。
なんかふつーに甘いセックスされてもって感じなんだが
書いてると何故か純愛になってる不思議
どうやら自分には陵辱は書けないっぽい
無理して書くと男役がclub54の同人みたいな
身も蓋もないキャラになってしまう
自分の性癖・趣味を語るスレはここですか?
エロのジャンルは個人の趣味なんじゃないか?
どこがいいとか理由はあんまなくて、合う合わないがすべてだろう。
>>334 陵辱される系を読んでみたい。
朝倉さんにグサリ、鶴屋さんに嬲られ、ボソボソ長門に言葉責めされるようなの。
俺も純愛とエロはすっぱり割り切るのがいいなあ。
純愛、涙、友情
微エロ、萌え、ギャグ
エロ、陵辱、精神操作、ストーリー性あまりなし
大体この3パターンぐらいに分けてる
>>339 そうか、あんたは普通なセックスはいやか・・・
もしかしてハルヒも普通はいやだとか言って
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
凌辱ものなら保管庫の涼宮ハルヒの告白ってのを見たらいいと思うよ。
レイプ萌えの心をがっつりわしづかみしてくれる良作。ただししばらく罪悪感的なもので身動きが取れなくなる。
告白は名作だな。
でもレイプ萌えはねーよw
347 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 19:18:01 ID:8y5MQLXn
∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ・∀・)< レイプとか嫌い
( つ旦) \_______________
___と__)__)______________
⊂ ) )(__()’;.o:°
( つ O. / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( 。A。)< でもSSは過激じゃないとね
∨ ̄∨ \_______________
>>317まさか同じことを思ったやつがいようとは
となると主犯格はその本を読んでいたに違いない長門だな
>>334 ただの小説のキャラ、しかも二次創作だが
それでも俺には女が嫌な思いをしてるのを見て興奮する性癖はない
まだキョンがSOS団女性陣に襲われる方がありえそうだし嫌な気分もしない
>>334 涼宮ハルヒの後悔をみることをお勧めする・・・
badendじゃないし・・・。
>>349と同意見
寝取られて興奮する とか、痛めつけて興奮する とか 無理矢理して興奮する
とか言ってるのみると、自分とは何か根本的なところで違うんだろうなぁ……。と思う
Q読んでたら苦手なジャンルだったんだけど…
Aあうう… 読み飛ばしてください。 作者さんも怪しいジャンルの場合は前もって宣言お願いしまぁす。
自分が好きなキャラが凌辱されたり寝取られたりするのはいやだけど
あまり思い入れのないキャラが凌辱されたり寝取られたりするのは興奮する
俺はこうなんだが、みんなはどう思う?
>>353 俺は時と場合によりけり。
基本的には陵辱イヤスだけど、たまにならいいかなって程度かな。
>>353 俺は女が犯されるのは完全アウトだが男が襲われても特に何も思わない
おそらく男なら逃げようと思えば逃げれるだろと思うからだと考えている
て め え ら の 趣 味 な ん か ど う で も い い ん だ よ
357 :
ジョン・スミス:2006/06/29(木) 20:09:04 ID:zqCVL4Fw
>>357 おいおい、それは
ないっショ!
人の趣味は個性であり、
個性がないと世界は
退屈の一色に染まってしまう。
そう、閉鎖空間のように・・・。
さすがジョンスミス
会話を自己完結させるような人に言われたくないな
まさに閉鎖空間
お前らの趣味なんかどうでもいいよ
アニメしか見ない未成年に来てほしくない
趣味って表現が厨
もっと高尚かつ知的に性癖と言え
キョンの趣味 ハルヒにへつらうこと
ハルヒの趣味 不思議(人体の)を探すこと
長門の趣味 読書(官能)
みくるの趣味 けなげな自分を演じること
古泉の趣味 たかが小娘一人の精神が不安定になるたびに死ぬ気で戦わなければならないみじめさに興奮すること
●カワイソス
純情なやつが多いな
>286
会話で「はい、〜」が気になるね。
ええ、とかああ、とか色々あると思うがハイハイ繰り返されるとちょっと。
小ネタでネタを構築しながらようやく透過
>>221の続き書けました。
流れを無視した無エロです。(エロ分は他者に任せます。)
あとはエピローグか…
便乗質問で、なぜ古泉は●なんだ?
9章
「長門、ハルヒは家にいるんだな。」
「いる。」
「でも家の人とかは…」
「今は一人。」
「俺、ハルヒの家知らないんだが…」
「これ」
前もって用意してたかのように、メモ用紙に地図を書いたものを取り出す。 これくらい手紙の時にもちゃんとしてくれ。
「あのぉ、私の代筆はどこが悪かったんでしょうか…」
朝比奈さん、もう一度自分で書いたのを見てください。
さて、そんなわけでハルヒの家の前まで来たわけだが、パッと見は俺の家と同じくらいか。
あのハルヒの事だ。 ポストを見ずにいる可能性がある。 ここは侵入するしかないな。 背に腹は代えられん。
そして俺はドアノブに手をかけて、開けようとした。 当たり前だが普通の家ならば鍵はかかっている。
ハルヒの家もその例にもれず、見事に鍵がかかっていた訳だ。 仕方無しに開いてる窓でも探そうとドアを離れた直後、
「誰!?」
ハルヒの声だ。 どうやら玄関の前にいたようだな。
鍵の開く音とともにゆっくりとドアが開いて、中からハルヒが顔を出した。 風呂に入ってたらしくぬれた髪が何ともいえない…、ってバスタオル一枚かよ。 誰かがいるかもしれないだろ。 あ、俺がいるか。
「変ねぇ。 確かに誰かがドアを開けようとしたんだけど。」
そりゃ俺だ。 とは言えずハルヒがドアから引っ込むのを待つ。
その後あたりを見渡していたが、誰もいない(正確には見えないだが)のを確認してドアを閉めた。 ってカギ閉めてないし。
とりあえず俺は、ハルヒの足音が遠ざかるのを確認して、ゆっくりとドアを開けた。
えーっとハルヒの部屋は… と思ったところで足元を見ると、足の形をした水が点々と続いていた。 これくらい拭いていけよハルヒ。
とにかくこの目印のおかげで簡単にハルヒの部屋は分かったわけだ。
この部屋か… 半開きになったドアに水滴が続いている。 俺は何も考えずに覗き込んだわけだ。
で、ハルヒは風呂上りな訳だから着替えるわけで。 ちょうど下着姿になった所だった。 湯上りの女性は4割ほど綺麗に見えるって言うが、情けないながらもその姿に見とれてしまった。
やばい! そう直感したね。 何がヤバイって? まぁ、いろいろな方面がだ。 言及はしないでくれ。 俺にはそんな度胸はない。
ハルヒが着替え終わったのを確認して、俺はドアの隙間からハルヒの部屋に侵入した。 こちらキョン、まだ発見されていない。
軽くあたりを見渡した。 普通の女の子の部屋って感じだな。 妹の部屋もこんな感じだ。
多分普通の部屋と違うのは、本棚に【時間軸における各個体の存在状況】や【超能力を使うには 中扱編】などがあることだな。 おい、初級はどうした。
日記もあるな。 気になるが、さすがにこの状況じゃ見れないな。
手紙をどうやって置こうかと考えてると、インターホンの音が聞こえた。
「涼宮さーん、宅急便です。」
その声にハルヒは体育の50M走のようなスピードで駆けていった。 はえぇ…
しばらくして戻ってきたハルヒは、服のようなものを持っていた。 あぁ、この前頼んでたペンギンのコスプレ衣装か。
ハルヒは鏡に向きを変え、コスプレ衣装を着だした。 ってお前が着るのかよ。
「よし、これなら…」
ハルヒが何かつぶやいている。 気にせず部屋を物色するか。
「これならキョンも許してくれるかな…」
え? 今何て言った。 さすがにハルヒを見たね。
再度聞き直したかったが、ハルヒがハバネロを一気食いをしたような顔で鏡を見つめていた。 うん、鏡に俺が映ってるな。
「な、ななな、何でアンタがここにいるのよーっ!」
振り返り、探偵が犯人を示すように俺を指差している。 やれやれ、どうやら最悪のタイミングで戻ってしまったらしいな。
とっさに理由を考えたが、それが頭の中で全員一致で可決されるよりも早く、俺は次の言葉を紡いでいた。
「いや、この手紙をお前に渡したくてな。」
まったく、何言ってんだ俺。
「え、手紙? じゃなくっていつの間に家に入ったのよ。 これって不法侵入よ!」
完熟トマトのように顔を赤くし、もっともなことを言ってきた。 ついでに覗きもしてたなんて知ったら閉鎖空間5年分じゃすまないな。 閉鎖空間1年分ってどれくらいだ?
「何も言わずコレを読んでくれ。 ほらっ。」
少し前、長門の代筆で失敗し、朝比奈さんの代筆で失敗し、古泉の代筆で失敗したあの手紙である。
やはり読みにくいのか、ハルヒは牛乳を飲んだ後消費期限が10日前としらされたような表情をして手紙を読んでいる。
5分くらい何度も読み返し、ハルヒは無造作に手紙を捨てた。 汚い字とはいえ、ひでぇ
「アンタの言いたいことは分かったわ。 じゃあ特別に来週の不思議探しのオゴリで許してあげるわ。」
いつの間にかハルヒはいつもの晴れハレな笑顔に戻っている。 まぁなんとも安心する笑顔だ。
「じゃあ、俺はそういうわけだから…」 俺はそそくさと退散する。
「う、うん… じゃなくっていつの間に家に上がったのよー!」
ハルヒが追いかけてくる。 しかもペンギンコスプレのままでだぜ。
ある程度離れたところで振り返り、ハルヒに向かって、
「ハルヒ、そのコスプレ可愛いぞ!」
と最後に言い放つ。 はっ、俺は無意識に何言ってんだ… ハルヒは口を酸欠の金魚みたいに動かしてるし。
さて、今のうちに逃げるか。 明日にする言い訳も考えないとならんし。
続く
さて、エピローグの前に、またIF朝倉ネタでも考えてくるか…
しかしまぁ、見事にエロ分がないな…
>>370 キョンとの対戦表に古泉は黒星ばかりついているから
と思うよぅ
●←これって対神人のときの赤玉変化
377 :
ジョン・スミス:2006/06/29(木) 22:18:27 ID:zqCVL4Fw
>>376 あっ!なるほど!
良くきずきましたね!
尊敬モノッス!!
>>377 気付くは「きづく」。
細かいことだが、気をつけよう。
>>370 こゆこと
_
. / \ 〜 〜
|(´ヮ`)| 〜 〜
←至梅田方向 \_../ 〜 〜
(゚听;) ……
380 :
ジョン・スミス:2006/06/29(木) 22:35:05 ID:zqCVL4Fw
>>378 どうもスイマセンッス!
ごめんなさいッス!
捏ねた
SOS団マゾ三人衆特別会議、理想のご主人様は長門?ハルヒ?
みくる「わたしは涼宮さん派ですぅ、何したらいいのか分かりやすいし、行動でいじめてくれるから・・
キョン君も涼宮さんですよね?」
キョン「いや俺はハルヒとみせかけて長門なんだ」
みくる「ええ!そうなんですかあ?あたし長門さんはちょっと怖すぎます。なんか言葉責めとか多そうで・・
精神的にいたぶられるのはイヤなんです。」
古泉「それは朝比奈さんがか弱い女性だからですよ、われわれ男子は暴力では女子に勝ってしまいますからね
体力で劣る女子に精神的な屈辱を与えられるのが非常に興奮するんですよ」
キョン「そうそう、俺はハルヒにペコペコしてる時に脇でみている長門は心底俺をへたれだと思ってんだろうな
って考えて興奮するね」
古泉「僕もそれに似てますね。 長門さんは僕の能力のなんたるかを把握しています。
閉鎖空間でいちいち命をかけている僕を彼女は何と哀れな生き物だろうと思っていることでしょう」
キョン「・・・なんていうかお前マゾの鏡だよな」
みくる「死が隣り合わせにあることまで快楽にしちゃうなんてスゴイです」
古泉「いやいや恐れ入ります。」
>>377 いや前にラノベ板の本スレで教えてもらった
尊敬するならそこの住人へよろ
>>381 GJ!
多分、残り二人もマゾだと思う。
>>380 いやいや、俺も「気よつけよう」とか書いて誰かにツッコミ入れてもらうつもりだったんだが、ついそのまま書き込んでしまった(W
>>381 うぉ漏れの長門観が引っくり返ったw
長門が判断を求めてくるのはキョンを責める為だったのか!
キョンとハルヒの話?を投下します
小ネタ、ってほどではないですが、あっさりした話です。
エロくないです。ほのぼのです。ご注意ください。
387 :
日曜家族 1:2006/06/29(木) 22:59:42 ID:pAPtwPWu
「キョン!いつまで寝てんの!」
朝。今日は日曜日。ママがパパを起こしている。
「……おい、ハルヒ。お前は知らんかもしれないが、今日は日曜だぞ」
パパはなかなか起きない。いつもお仕事してるから、疲れてるんだと思う。
「そんな事知ってるわよ。だから、さっさと起きて支度しなさい。今日は市外パトロールよ」
でもママはそんなの気にしない。本当は優しいけど、パパにはすごく強引だから。
「あの子だってもう起きてるのよ!たまには父親らしいところ見せなさい!」
「いや、割と毎週どっか出かけてるじゃないか。お前こそたまには母親らしく、寝転がって昼ドラでも見てたらどうだ」
今日はいつもより長目に抵抗しているみたい。
「……いい加減にしないと、あんたのお小遣い20パーセントカットするわ」
「待て。わかった。起きるから、それはやめてくれ」
やっと起きた。何だかんだ言って、パパはママにすごく甘い。
「おう、おはよう」
しばらくして、パパが下に降りてきた。私の横に座って、用意されていたご飯を食べ始める。
「なあ、あいつ今日はどこに行くって言ってたっけ?」
知らないよ。でも、パパとママと出かけるのは楽しいから、どこでもいい。
「そうか」
パパは笑った。
「さあ、キョン。車を出して。いざ出発よ!」
おー、と私とママが言うと、パパはいつもみたいにため息をつきながら、車を動かし始める。
「で、今日はどこまで行くんだ?」
「この山よ。何か最近、正体不明の土器が出土したらしいわ。怪しいにおいがぷんぷんするわよね」
ママはそういいながら、書き込みだらけの地図を指差している。これまでに行った場所は、全部チェックが付いているのだ。
「昔の人かなんかが、適当に作ったのを埋めただけじゃないのか?」
パパはあきれたように言う。いつものことだった。
「わかんないわよ。宇宙人の遺跡とかがあるかもしれないじゃない」
ねー、と後ろを向きながら私に聞いてくるママの目は、いつもみたいにキラキラしてた。
だから、私も、ねーって言った。
パパは、またため息をついていた。それも、いつものこと。
388 :
日曜家族 2:2006/06/29(木) 23:00:29 ID:pAPtwPWu
「おい、お前ら、もうちょっと、ゆっくり、歩いてくれ……」
後ろからパパの声がする。振り向いてみると、少し下の坂で、パパはお腹のところを押さえていた。
「このぐらいでバテるなんて、運動不足よ、キョン。その内お腹がでてくるかもかもしれないわね」
お腹が出ているパパを想像してみる。ちょっと嫌だった。
私は、ママと繋いでいた手を離して、パパの下に駆け寄った。
そのままパパの手を引いて、坂を駆け上がる。お腹が出るといけないから。
「ちょ、ちょっと待てって、おい!こら!止まりなさい!」
ママはそんな私たちを見て、お腹を抱えて笑っていた。
坂の上には、大きな公園があった。草の匂いがする。
「んー!いい天気ね!お弁当、この辺で食べましょうか」
ママはそう言うと、大きな木のテーブルの横にある、小さな木の椅子に腰掛けた。
私はその横に、パパはその向かいに座って、お弁当を広げる。
好物のから揚げがたくさん入っていたので、私は思わず「おー」と声をあげた。
ママのご飯は、いつも美味しい。外で食べると、もっと美味しい。
パパとママは、一生懸命食べる私を見ながら、何か楽しそうに喋っている。
389 :
日曜家族 3:2006/06/29(木) 23:01:15 ID:pAPtwPWu
お弁当を食べ終わった後は、3人で色々なことをして遊んだ。
ぐるぐるまわるやつとか、ぶらぶらするやつとかが特に楽しかった。
パパは疲れたような顔をして座り込んでいたけど、その度にママが手を掴んで立ち上がらせていた。
少しかわいそうだったから、座っててもいいよ、と言ったら
「大丈夫さ。慣れてるからな」
と、ちょっと恥ずかしそうに笑いながら、私の頭を撫でてくれた。パパは私にもすごく甘い。
「なあ、ハルヒ。さっき言ってた、土器とか何とかって調べないでいいのか?」
しばらく遊んだ後、お弁当を食べたテーブルでジュースを飲んでいたら、パパがママに声をかけた。
ママはしばらくぼーっとした後
「ああ、そう言えばそうだったわね」
と言いながら、苦笑いしている。パパはおねしょした私を見る時の顔で、そんなママを見ていた。
「じゃあ、ちょっと下の売店に行って話しを聞いてくるわ」
ママは立ち上がる。私も立ち上がる。
「あんたはパパとお留守番してなさい。少し難しい話をするから、ついて来てもつまんないわよ」
ママはそう言って、私を抱き上げて椅子の上に座らせた。
「じゃあ、キョン。ちゃんとこの子を見てるのよ」
「ああ、わかってるさ」
ママは公園の出口まで歩いていってしまった。
パパは、そんなママの背中を、少しだけ寂しそうに眺めている。
パパが仕事に行く時のママの顔に似ていた。
390 :
日曜家族 4:2006/06/29(木) 23:02:02 ID:pAPtwPWu
ママが帰ってくるまでの間、パパに遊んでもらった。
それぞれ草を抜いて、その草同士で引っ張り合う遊び。
パパの見つけてきた草は強くて、私の草は何本も千切れた。
くやしかったので、木の枝を持っていくと、「ママみたいな真似はやめなさい」と言われて、取り上げられた。
ちょっと悲しい。
パパは、そんな私の顔を見て、少しだけ慌てたようにしながら、お話を始めた。
それは、宇宙人とか未来人とか超能力者がでてくる話で、その話を聞くのが、私は昔から大好きだった。
しばらく話に聞き入っていると、すごくいい所で、ママが戻ってきた。
ママには、この話は内緒にしておかなくてはならないのだ。
どうしてかは分からないけど、内緒にしないと、もう聞かせてやらん、とパパが言っていたので、内緒にしているのだ。
今日寝る前に、続きを聞かせてもらおうと思った。
「調べてみたら、ほんの何年か前に作られたものだったんですって、誰かが悪戯で埋めたみたいね。ホント、がっかりだわ」
ママはアヒルみたいな口をしながら、ストローのついたジュースをごくごく飲んでいる。
私も真似しようとしたら、パパに怒られた。
そんな私を見ると、ママは急に笑顔になった。
「そうそう、さっき、すごい場所見つけたのよ!二人で行きましょう!今度はキョンが一人で留守番してなさい!」
そう言うと、ママは私の手を掴んで、いつもみたいに駆け出した。
「あんまし危ない所に行くんじゃないぞ!」
パパの声が、だんだん遠ざかっていく。
私はそれが面白くて、もっと早く走って行った。
391 :
日曜家族 5:2006/06/29(木) 23:03:04 ID:pAPtwPWu
緑のトンネルを抜けて、変な形の木を潜り、さっきまでとは、匂いの違う場所に出た。
「ほら、見てみなさい!」
ママは私を抱き上げて、片手で指をさす。
そっちの方を見ると、少し開いた木の並びの間から、大きな景色が見えていた。
沈みかけた太陽が、ずっと遠くの海まで照らしている。
私たちの家は、どっちなのかな。
「うーん、こっからじゃさすがに見えないわね」
ママは、目を半分閉じて、遠くを見ようとしているようだ。
私も真似をして、遠くを見ようとしてみる。でも、やっぱりよくわからなかった。
「ねえ」
気付いたら、ママが私の方を見つめていた。悲しそうな、嬉しそうな、よくわからない顔だった。
「今日、楽しかった?」
うん。
「毎日、楽しい?」
うん。
「そう、良かったわ。……でも、ほら見て」
ママはもう一度、緑と青と、そして色々な色の混じった景色を指差した。
「すごく広いでしょう?ここからじゃ、人もあんまり見えないわね」
本当だ。何かが動いているのは見えるけど、それが何なのかはよくわからない。
「でも、この景色の中には、たくさんの人がいるのよ。私たちみたいな家族が、何人も何人もいるの」
友達の事を思い出した。みんな、私みたいに、パパとママがいる。
「それでも、この景色は、日本の中ではほんの一部。とってもとっても小さいの」
車の中の地図を思い出した。色んな場所に行ったけど、まだ一ページも埋まってない。
「日本だって、世界から見れば、ほんの一欠けら。すごくすごく小さいのよ」
世界は、よく知らないや。
「その中では、あなたと同じように、毎日を楽しいと思ってる人や、あなたよりもっと楽しい毎日を過ごしている人も、たくさんいるの」
楽しい毎日。毎晩から揚げパーティーなのかも。
「あなたは、きっと、どこにでもいるような、普通の子供なの」
ママはもう一度私を見つめてくる。私もママを見つめた。
「それでも」
ひょっとしたら、ママは悲しいのかもしれない。
「それでも、いいの?」
だから、私は教えてあげることにした。
まだ見たことのない人や、まだ行ったことの無い場所。
いくら書き込んでも埋まらない地図や、どこを見ても違った景色。
それを、一つずつ見つけていくのは
「すごく、楽しいよ」
ママは、少しびっくりしたような顔をした後、私に向かって、いつもみたいに笑ってくれた。
ママの瞳は、いつか見たお星様みたいにキラキラと輝いている。
私の瞳も、きっと。
帰りの車の中、私は後ろの席で、ママの膝を枕にしながらうとうとしていた。
「この子、きっと私より大物になるわ」
「そうか。大至急育て方を改める必要があるな」
「どういう意味よ!」
パパとママの、楽しそうな声が聞こえる。
「このままでいいわよ。この子も楽しんでくれてるみたいだしね」
「……ま、それもそうか。しかしハルヒ、もう少し遊ぶペースを緩めてもいいんじゃないか?正直俺の体が持たんぞ」
「遊びじゃないわ、パトロールよ!世界の不思議を、全部私とこの子のものにするの!」
「世界って、お前な。この車を何キロ走らせる気だ?ただでさえもうボロボロなんだぞ」
「あんたがもっと稼ぎまくって、ジェット機でも買えばいいのよ」
「……無茶言うな」
ママの手が、そっと私の髪を撫でる。
「……ねえ」
「ん?」
「この子、かわいいわよね」
「ああ、最高だ。俺とお前の子とは思えないな」
「……じゃあさ」
「え?」
「もう一人ぐらい増えても、別にいいわよね」
「…………マジか?」
「マジよ」
車が揺れる。私も揺れる。
ふわふわしてる。もう、眠ろう。
「……ああ、ますます最高だね」
明日もきっと、楽しい一日。
「じゃ、あんたのお小遣いは40パーセントカットね」
「おい!」
GJ。
こういうほのぼのもいい。
難をいえば子作りの描写をかいてほしかったけど蛇足になりそうかな。
あのハルヒもずいぶん大人になったもんだ
いいねぇこういうの。
話もテンポがいいし、うまくまとまってて面白かったです。
仲睦まじい親子が想像できて萌えた。
(*´д`*)
397 :
小泉 一樹の日常:2006/06/29(木) 23:39:20 ID:OrRmboIK
よう! みんな元気かい? オレは元気だぜ。
え、オレがだれかって? ニヤケヅラで有名(?)な小泉 一樹だよ
本当はこんなもんなんだよオレの正体なんてさ。
機関の命令で変った奴を演じているのさ。
さーて今日も今日とて涼宮ハルヒが作り出したSOS団にいくとしますか。
ドアを三回ノックすると「はぁい」と間の抜けた返事と同時に天然ボケ未来人がドアを開けてくれる
いつものことだ。知りつくしたことだからいまさら言うのもなんだがドアを開けてオレだと分かった瞬間残念そうな顔をすんねやめてくんねぇかな?
でもさ、俺だってわかるよ。オレもキョン吉好きだよ? いやもちろん普通の好きね。
もっと仲良くなってもいいんじゃねぇのかなぁ。とか思ってんだけど今のままじゃ無理、普通のオレにならないと、でもそれは涼宮の好みじゃねぇからな
しかたがないからいまも黙ってる、大体ずっと笑ってるってめちゃくちゃ顔の筋肉痛くなるんだぜ?
終始笑ってられるやつの顔が見てみたい。おれだっていつも風呂で顔の筋肉毎日ほぐしてるくらいだぜ
指定席に座る前に適当に挨拶をして・・・キョン吉以外はみんな来てるね、俺が言うのもなんだがいくら仕事でも毎日ここ来てるなんて暇だよな〜特に最近は、まあいいけど。
さて、今日は何をしようかね?
オセロは飽きたしチェスは昨日やったろ〜将棋も最近はマンネリだしな〜
ああ、そうそう。オレがいつもボードゲームやってんのは役作りの一環なんだよ。
こんなつまらんアナログゲーム好きの高校生なんているわけないんだからな。
まあ何もしないよりはましだろ、と思って持ってきているんだよ、経費で落ちるしな。
この前経費でP○P買ったことは内緒だが。
なんにしようかな〜と思いながらふと窓を見ると中庭にキョン吉を発見、何やってんだあいつ?
ここ来る前の俺だったら大声で「お〜いキョン吉」とか呼んでるんだろうけど今のオレの性格上それはない
「どうしたんですか〜?」
窓を見てる俺が気になったのか朝比奈が聞いてくる、手にはお盆とお茶。本当にこの人はただのお茶汲みになってけどいいのかねぇ? キョン吉目当てで来てるんじぁないのかとオレは思う。
「いえ、外に彼がいるのが少々気になりましてね。ああ、ありがとうございます」
面倒な敬語で返事をしながらお茶を受け取る、
「キョンが? どこにいるの?」
涼宮が反応した、まったくこの女は。
「そこにいますよ」
窓の外を指してやると外を見つめる、「まったくキョンは・・・」とかぶつぶつ言っていた
好きなら好きって言えばいいのにね、そうすればオレの仕事も楽になるだろうに。
オレも窓をみるとキョン吉のそばに見知らぬ女子が。ああ、告白されてんのか
キョン吉裏で結構もてるんだよな、自分は知らないみたいだが。
「何話してるのかしら・・・」
分かってるくせに、告白されてんだよ。
「告白・・・とか」
わざとためてから言ってやった、いやぁ〜ほんの小さないたずらのつもりだったんだがね。
な〜んか大きな音がして後ろを振り返るとキョン吉の湯のみが割れてるよ。
朝比奈の手に中でって握り潰したのか!? どんな握力だよ。やっぱこいつ天然じゃなくて計算してたのか・・・?
ふと気がつけば部室の空気がめちゃくちゃ淀んでいる
朝比奈は握り潰したままうごかねぇし・・・血、でてますよ?
涼宮は窓の外を見たまま動かない・・・手握りすぎて真っ白になってるんですが
あと、なんかぶつぶつと言ってるのが怖いですよ。気のせいかギロチンとか言いませんでしたか今?
長門は本を読むのをやめて何か集中しているようだ、オレはキョン吉とは違い長門の表情を読み取ることは出来ないがそんなオレでもわかる。怒ってる。
どうすれば・・・いい。元はといえばキョン吉がはっきりしないのもそうなんだがオレがいたずら半分で余計なことを言ったからだよなぁー失敗した
とりあえずオレが動かなければ誰も動かない。キョン吉に「危険だ、来るな!」とかメールを送る余裕もなさそうだし。
そーだな、まずは割れた湯飲みを片付けよう。
そんなオレのささやかな動きに反応してくれたようだ、涼宮は「みくるちゃん、いらっしゃい」
と救急箱片手に言って朝比奈は「・・・はい」と言って治療を受けている。
長門は湯飲みを入れる袋と雑巾をもって来てくれた、助かる。
掃除をしているとドアをノックする音、キョン吉がきたらしい。
ほんわかほんわか
>>385三年前同期して、朝倉がキョンを襲うこと知っていながら直前まで放置する
サドでなくて何というのだ
399 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:41:01 ID:44BTf9ol
>パパは、そんな私の顔を見て、少しだけ慌てたようにしながら、お話を始めた。
>それは、宇宙人とか未来人とか超能力者がでてくる話で、その話を聞くのが、私は昔から大好きだった。
いいなー、こういうの。
400 :
小泉 一樹の日常:2006/06/29(木) 23:41:18 ID:OrRmboIK
誰も反応しない、仕方がないのでオレが「どうぞ」とさわやかに言うと仏頂面でキョン吉が入ってきた
部室にはオレしかいないと思っていたのかオレ以外を見つけると驚いたようだ、まあ長門だけはいてもいなくても同じだが。
「あれ? 朝比奈さん、どうしたんですか」
「あ・・・すいませんキョン君。うっかりキョン君の湯のみを落としちゃって」
うっかり!? うっかりって言ったこの人!?
「いえ、そんなの気にしないでください。それより手の怪我は大丈夫ですか?」
やさしいねキョン吉、でもその計算未来人にはあまり近づかないほうがいいよ
「大丈夫ですよ、ちょっと切っちゃっただけですから・・・」
「そうですか、それならいいんですが」
涼宮は治療に専念している振りをしているようだ、キョン吉には見向きもしない。と、ここで掃除終了。
割れた湯飲みが入った袋を持って・・・どこに捨てればいい?
それよりこのままだと閉鎖空間が発生する恐れがあるな。なんとかしないと・・・とりあえず
「遅かったですね」もちろん超さわやかに
「ん、ああ。知らない奴に呼び出されてな」
その瞬間、世界が凍った。だが、オレはそれでも進まなければならない
「おや、大丈夫でしたか?」
「別に不良に絡まれたわけじゃない」
「では何を?」
「お前に言うことじゃない」
そういうな、言え。お前の命に関わることだ。もちろんオレも。
「別にいいじゃない、減るもんじゃないし」
と、そこで涼宮が横槍を入れてくる。告白の結果が知りたいようだ。それならそうと言えばいい、てゆーか言ってくれ。
「なんだよ、知りたいのか?」
「別にー・・・暇だからよ」
キョン吉は涼宮に不信感を抱いてるようだ。頼む、答えてくれ。
「まあいいけどな、三組の子に告白されただけだよ」
温度がさらに下がった、キョン吉、その続きをたのむ。
「どう返事をしたんですか?」
「だからお前に答える義理はない」
確かに無い。義理はな。
「まあ断ったさ、やりたいことがあるからってな」
断った、と聞いて温度が上がった。よし。いい感じだ。
「もったいないわねぇ〜あんたに告白する娘なんてなかなかいないんじゃない?」
いや、結構いるよ、ここにも三人しるし。キョン吉は「かもな」とか笑っている、それがまた三人娘の温度を下げる
いかん、なにかを言わなければ。
「やりたいことですか、それはいったいなんです? 差し支えなければ教えていただけますか?」
あ〜これ失敗だったかも。キョン吉のことだから変なことをいうに違いない・・・
「SOS団全員でここにいることだよ、これ以上望むものはないね」
あ〜やっぱり失敗だったぁ・・・え?
今の発言の意味に気づいてキョン吉は顔をしかめた、小さく「しまった」とかいったのをオレが聞き逃すはずがない。
み・ろ・よ、涼宮のあのうれしそうな顔。お前をまっすぐ見つめているぜ、朝比奈と長門もうれしそうだ、よかったよかった。
オレがニヤニヤ見てるのに涼宮が気づいたようだ、すぐに不機嫌そうな顔をして
「ふん、やっとあんたもSOS団の団員として自覚が芽生えたようね」
などと言っている、これだからオレの仕事はいつまでたっても終わらない。でも、まあ。今日は閉鎖空間は無さそうだし。今日の所はよかったってことでいいのかな。
全員が低位置について思い思いの行動に移る、まあいつもと変わんねぇけどな。
幸せな気分に浸っていると、
「あの、キョン君」
「なんです?」
「キョン君の湯飲み私が割っちゃったし、責任を持って新しいのを買いに行きたいんですが。
どうせならキョン君に好きなのを選んでほしいの。今度の日曜一緒に買いに行きませんか?」
自分の胸をキョン吉に腕に押し付けながら言った、唇の端がつりあがったのをオレが見逃すはずが無い。
キョン吉はのんきに「もちろんです」とか言ってるし。
やっぱ閉鎖空間発生するかもな・・・
401 :
坊っちゃん:2006/06/29(木) 23:53:21 ID:99tXSkpH
翌日なんの気もなく教室に入ると、黒板いっぱいくらいの大きな字で、変態涼宮とかいてある。あたしと目が合うとみんな目をそらした。
馬鹿馬鹿しいから宇宙人を探しちゃ可笑しいかと聞いた。するとクラスメイトの一人がしかし髪型七変化は普通ではないだろ、なあ、と言った。三編みにしようが四編みにしようがあたしの髪をあたしが結うのに文句があるもんか、とさっさといつもの校内巡回に戻った。
十分経って教室に戻ってみるとひとつ金曜は四編み也。但し笑うべからず。と黒板に書いてある。
さっきは別に腹も立たなかったが、今度は癪に触った。冗談も度を過ごせばいたずらだ。全裸のみくるちゃん(反語は脱ぎかけのみくるちゃん)のようなもので誰も褒め手はない。
ただの人間にはこの辺りの加減がわからないからとりあえず全部脱がせばいいや、という了見だろう。
休み時間の間に見回れるようなつまらない学校に通って、他に芸もないから、有希が一言喋ったくらいで中庭落書き事件のように騒ぎ立てるのだろう。つまらない凡人どもだ。
子供のうちから、下らない義務教育を受けているからこんな日教組の信者みたいなつまらない人間に育つのだ。
世の中の不思議探しなら付き合ってやってもいいが、こりゃなんだ。そのくせうちのオモチャと備品(みくるちゃんと有希)を狙っている。
あたしはだまって、黒板の七変化を消して、こんなことをして宇宙人が見付かるのか。無駄な努力だ。あんたたちは無駄という言葉を知っているのかと言ったら、おまえのしてることこそ無駄というものだろ、と答えたヤツがいる。腹の立つヤツだ。
わざわざこんなバカどもと顔を合わせに東中からやってきたかと思うと情けなくなった。
>>386 てらっさGJ!
ほのぼの感が文面からあふれ出てますよ、イイ話だ!
新しい視点で好感が持てる。
だが、誤字、誤変換が気になる。
406 :
404:2006/06/30(金) 00:00:17 ID:COV1kfmP
>>400 ところどころある誤字が気になるけど良作ですね。
古泉→小泉 はわざとなのかな?
裏の人格、ってことで。
小泉というとどうしても総理大臣の顔が出てきて困る
409 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:11:57 ID:64HbHO3v
わざとに決まってるだろwwww
ポスト古泉最有力候補にメイドの森氏
最近SOS団における古泉氏の働きに不満を抱いていた機関本部は先日午後6時に古泉氏に対する
不信任案の草稿の考案と、後継者調整に明け暮れている。ある有力幹部によると組織末端部は
最大派閥森派に支配されており、不信任案が可決されれば、森氏が後継として北高に送られる
可能性が高いという。森氏は孤島の屋敷においてメイド役を好演、その容貌から派閥外からの支持も厚い。
「キョンちょっと聞いてよ。また転校生よこの時期に! しかも謎だらけ」
「転校生っていうだけで謎扱いするのはやめなさい」
「ちなみにあんたも知ってる人。ほら、あのメイドの森さん」
「……そりゃ謎だな。年齢とかが特に」
「でも、団には無口キャラもメイドさんも有能な助手もいるし、扱いに困るわね」
「俺はお前の扱いに困ってる」
>>410 女教師キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!
>>311 いや、ハルヒのはっちゃけぶりは最高。ひきこまれた
こっからのどう持っていくかだな
>>透明ハルヒ
GJ!GJ!なんだがなぁ。こう、もっと、戻ってしまう前に不機嫌なハルヒの
描写が欲しかった。すまん…単なる個人的な意見だ。続き期待だ
>>400古泉一樹の日常
古泉苦労してるんだな。古泉メイン少ないだけにおもしろい。
続くんだよね?待ってます
森氏出馬に意欲十分
今朝、機関の幹部会において森派会長の森氏が涼宮ハルヒ最近接監察官選挙への出馬意欲を表明した。
同氏は会議中北高内の状況に触れる場面でメイド服だけでなくセーラーまで着れるとは女冥利につきる。
出馬は前向きに考えたいとコメントした。機関側は森氏は学生としてでなく教師としての派遣となるだろうが
北高に入れることには変わりなく彼女の意欲に差し障りはないだろうとしている
>>414 おまいさんが政治に強いのは分かった。安部さn(ry
このところの職人さんたちの投下ラッシュに感謝
森氏とか森派とか言われると、メイド服姿のアレを想像してしまう……
荒らしじゃないと思うんだが一応言っとく
頼むからsageてくれ、今日多すぎる
ハルヒ髪伸ばせばいいのに
一年生の間にだんだん伸びていく描写とかあったらな
キョン吉って呼び方俺結構好きだなぁ。
>>420 のいぢ画のバレンタイン絵だと、それなりにポニテっぽくなってるから
案外伸ばしてるのかもしれんよ?
>>421 何かシャツに張り付きそうなイメージしか沸かないのは、ど根性ハルヒの影響かな…
>>425 髪型七変化をキョンに指摘されてからじゃなかったけ?
何で切ったかはわからん
>>392 面白かったけど、あなたkeyのエロゲーに毒されすぎかも。
>>400 文章ガタガタだけど面白い。センスある。
>>392の何処がKeyに毒されすぎてるのか判らなかった私ガイル
430 :
105:2006/06/30(金) 01:44:39 ID://Z3v5mw
>>401で坊っちゃんの改編書いて見たがあまりうまくできんかった。
とりあえず
>>105の続き書いたがまだエロには至ってないので、興味ない方はスルー願う。
とりあえずまた小ネタ完成
問答無用で投下します。
朝倉さんセリフ長門に奪われて出番少なす(´・ω・`)
432 :
105:2006/06/30(金) 01:45:46 ID://Z3v5mw
今日一番の失敗だった。
ハルヒの絨毯爆撃のごとき絶え間ない攻撃に攻めたてられた俺は、某いじめられっこが万能ネコ型ロボに助けを求めるようにこう呟いてしまった。
「な、長門……」
ことの発端は十数分前に遡る。
IFすとーりぃ ケース3
朝、行き掛けに星占いを見てみた。 いつもは見ないんだが、ちょうど俺の星座だったので少し見てみた。
『今日の運勢は△ 思いがけない人から意外なことをされるかも。 刃物に注意ー。 今日のラッキーアイテムはボブカット!』
うん、このラッキーアイテムは俺の周りだとかなりピンポイントになるな。
もはや日課となっている強制ハイキングコースを歩き、体中の水分をだしてそうな汗を流しながら学校に着いた。
もしここにエスカレーターでもできたら俺は100円払っても乗るね。 200円なら歩くがな。
そんなことを考えながら、下駄箱まで来ると、手紙が入ってた。
『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室に来て』
これを何回も読んだ気もするが、たぶん気のせいだろう。
その手紙をポケットに入れ、誰が出したかを思い浮かべる。 長門、朝比奈さん、ハルヒと思い浮かべたが、この書き方じゃ誰も違うだろうな。
大方谷口たちの趣味の悪いイタズラだろう。
放課後部室で他愛もない話で時間を潰し、時計を見てみた。
5時半か… そろそろ誰もいないだろうと長門に声をかける。
「長門、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ。 一緒に教室まで来てくれないか?」
「分かった」
人差し指でメガネのブリッジを軽く上げ、席を立つ。 今日のラッキーアイテムらしいし、もし谷口の冗談だったら、一緒に懲らしめてもらおう。
夕日のさす教室で待っていたのは、かなり意外な人物だった。 占いよく当たるなぁ…
「遅いよ」
朝倉涼子が西日を身体に受けながら笑顔で教壇に座っていた。 夕日の赤と朝倉の白い顔が、やけに目立っていた。
教壇を降り教室の中程まで進んで、朝倉は笑顔をそのままに、誘うように手を振った。
「入ったら?」
引き戸に手をかけたままの俺は、その動きに引き寄せられていった。 そして引き戸の影になっていた長門も、紐でくくられた風船のようについてきた。
朝倉は長門を見て笑顔を消し、スナイパーが10センチ先の的をはずしたときのような顔をしている。
「………」
長門は朝倉を凝視し、三点リーダーを出している。
「な、何で長門さんが…」
その直後、いきなり長門が早口になった。 かろうじて、
「パーソナルネーム朝倉涼子を敵性と判定。 当該対象の有機情報連結を解除する。」
とだけは聞こえた。
「そんな… いくらなんでも早すぎ…」
朝倉の台詞を遮って長門は、
「情報連結解除、開始」
いきなりだ。
その瞬間、朝倉がどんどん砂のようになっていく。 これは一体どういうことだ。
「情報結合を解除した。」
いや、そう言われても俺には分からんのだが…
そんな疑問符を浮かべてる俺を放置し、長門は朝倉に向き直る。
「あなたはとても優秀。 だけど彼が私を連れてくる事を想定してなかった。 それが敗因。」
敗因も何もまだ勝負すらしてなかったと思うんだが…
そんなことを思ってると、いつの間にか朝倉が完全に消えていた。
再度メガネのブリッジを人差し指で上げ、再度こっちを見つめてきた。
「終わった」
何がだ? 俺の15年弱の人生がか?
「違う、彼女は急進派。」
その後の長門の説明によると、情報なんとかも決して一枚岩ではなく、さまざまな派閥があるという。 で、今回は急進派の朝倉が俺に対して行動を起こしたわけだ。
「なぁ、朝倉は俺に何をしようとしてたんだ?」
「あなたを殺そうとしてた。」
あっけらかんと物騒なことを答えるな。
「じ、じゃあ長門。 何で朝倉はハルヒじゃなく俺を狙ったんだ?」
「あなたが死ねば、涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こす。 恐らく、大きな情報爆発を観測できる。」
「簡単に言うと、ハルヒに力を使わせようとしたわけか?」
「そう」
長門は、ほんの少しうなずいた。 …気がする。
「じゃあ長門もいつか俺を殺そうとするのか?」
長門は少しうつむいた後再度俺の目を見て、
「そんなことはしない。 それにさせない。 何があってもあなたは絶対に守る。」
あの、それはむしろ俺が言った方がいいような台詞じゃないのか?
「まぁ、とにかく今後もよろしく頼むよ、長門。」
「分かった。」
この時、まさか谷口が引き戸の影でこのセリフを聞いているとは夢にも思わなかったわけで。
ホント、星占いがよく当たるよ。
やれやれ。
続かない
ラッシュ過ぎて噴いた
この板は勢いがあって良い
俺もエロSS投稿してしまうところだったw
>>436 ばっちこーい!!
あと435の人、おつ!
あなたの連作すきだす。まいど報われない朝倉もえ。
438 :
105:2006/06/30(金) 01:53:34 ID://Z3v5mw
うい、投下邪魔してすみません。
続き期待してます
440 :
105:2006/06/30(金) 01:56:24 ID://Z3v5mw
今日一番の失敗だった。
ハルヒの絨毯爆撃のごとき絶え間ない攻撃に攻めたてられた俺は、某いじめられっこが万能ネコ型ロボに助けを求めるようにこう呟いてしまった。
「な、長門……」
ことの発端は十数分前に遡る。
「あたしとセックスしなさい!」
これが既視感というやつだろうか。俺はつい昨日あたりに同じ光景を目にした気がする。
「なによそれ。同じことを繰り返しても面白い事は見付からないわよ、同じなんだから。我々SOS団は常に新しいことに挑戦しているのよ。二度はないわ」
なるほど確かに二度はない。場所は部室、三人は不在で俺とハルヒはいつもの定位置。しかしそのハルヒの口から飛び出した言葉は確かに昨日のものとは違った。
せめて顔を赤らめ下から見上げるように哀願されれば少しは……ふむ。いや、結構悪くない……じゃなくて……
「なんでまた突然そんなことを」
「……別になんでもいいでしょう」
じゃあ断る。
「じゃあ夢で見たのよ」
昨日ので味をしめたか、『夢で見た』はいつの間にかジョーカーになっているようだ。が、もちろんそんなハルヒトランプは知ったことではない。
夢で見たことが実現するなら俺はとっくに一夫多妻制の下、我が麗しの朝比奈さんと宇宙人な長門と人間な長門とともに穏やかにも幸せに暮らしている。
というか、我が校のアイドル朝比奈さんは確実に重婚になる。そんなものは却下だ。甲斐がいしい朝比奈さんのお姿に心を癒される野郎は俺一人で十分だからな。
441 :
105:2006/06/30(金) 01:59:18 ID://Z3v5mw
「とにかく却下だ」
閑話休題。俺とてこんな訳のわからん命令で貞操を失うほど落ちぶれてはいないさ。
「なに?団長のあたしに歯向かう気?そもそも昨日と同じことを要求したのに今日はダメなんて許されないわよ。時価なら時価って書いときなさいよ」
二度はないんじゃなかったのか。しかも同じ要求じゃない。俺に時価って書いた札を首から下げていろとでも言うのか。
突っ込みどころは満載だが、そもそも俺は件の夢(みたいなもの)で涼宮を襲ってなどいない。いくら証拠は残らなくてもそんな強姦まがいのことをするほどまだ俺の中の常識は壊れてはいない。
「仮にその理屈が有効としてもだ、お前が本当に夢で見たかどうか証拠は何もない」
「そんなのは昨日の時点で言わないほうが悪いのよ。昨日だって証拠がないのは同じなんだから。ううん、そんなの関係ないわ。そもそもあんたはSOS団の団員であたしは団長、それだけで十分なのよ。大体あんたは団員の癖に……」
忘れていたが、世界は俺の手にかかっているんだったな。
……じゃあ今烈火の如く撒くし立ててるのはマズイんじゃないか?今頃閉鎖空間の一つや二つは発生しているんじゃなかろうか。
厄介な空間の後始末は古泉がしてくれるが、今この場をなんとかしないとその「後」すらない。
今もなお口角泡飛ばし組織の構成員のあり方について演説するハルヒを止める……そんな恐れ多いことが果たして俺にできるのだろうか。
戦艦ハルヒに対してこちらは三八式歩兵銃……いや、竹槍での武装(非戦闘員ともいう)では心許ない。
しかしそんな哀れな一般人の頭に一人の救世主の姿がよぎった。
結果、それはなおさら事態を悪化させるだけになるとは誰も予想できなかった……と思いたい。
442 :
105:2006/06/30(金) 02:01:03 ID://Z3v5mw
以上、回想終り。
俺は「もし少しだけ時間を戻せたら」と後悔していた。朝比奈さんに頼んでもきっと許可は降りないのだろうなぁ……
俺は一体どうすりゃ良かったんだ。
人生は絶え間無く連続した問題集や。
揃って複雑、選択肢は酷薄、加えて制限時間まである。
えらばなアカンねや!!
ワシら神様と違うねん。万能でないだけ鬼にもならなアカン……
俺は尊敬するある人の言葉を思い浮かべていた。カッコいいね、もう俺はあの人みたいに生きることにするよ。
……あの人も死んじゃったけどな。
まぁ、こんな無駄なことを考えていられるのもハルヒが一言も喋らないせいなんだが、居心地が悪すぎる。
さっき俺が呟いたHELPコールを耳聡く聞き付けた団長様は、鬼と睨み合いでもするかのような顔をして黙りこんだ。
と思ったら、今度は途端に仏頂面になって携帯で誰かを呼び出した。有希、という言葉が聞こえたからおそらく長門だろう。
そして今に至る。
仁王立ちで外を眺め……もとい睨み付けていると思われるハルヒは生憎後ろ姿しか確認できない。
俺は音を立てることも憚られる重い空気の中、お茶をいれることもできず縮こまって援軍の到来を待っていた。
443 :
105:2006/06/30(金) 02:03:11 ID://Z3v5mw
不機嫌オーラを惜しみ無く増量サービスするハルヒの勢力下である部室の沈黙が聞き慣れた音で破られる。
その音は蛇の前で縛り上げられた上に睨みつけられた蛙の俺にとってはまさに福音だった。この際「用事はどうした?」などと無粋なことは聞くまい。
その音の主、我等が頼れる最終兵器長門は扉を開けたままの姿勢で俺と、冬眠から覚めて振り向いたハルヒの顔を交互に見比べ言った。
「……想定の範囲外」
この長門の言葉こそ俺の想定の範囲外と言っていい。つまりこれは……ピンチだったりするのか?
頭を抱えそうになる俺に硝子のような瞳が向けられている。状況の説明を、ということか?しかしなんと説明したものか……
「あ〜……これはだな……」
「有希!これからこのマヌケな優柔不断男を弾劾・断罪・粉砕するのよ!」
浮気現場をおさえられた不甲斐ない夫のように何かを弁解しようとする俺を遮ってハルヒが高らかに宣言する。
どうやらこのままだと俺はこれから(根拠のない)弾劾を受け、(ハルヒの気分で)断罪され、粉砕されることになるらしい。
ゆっくり扉を閉めた長門が音もなく歩き近くの椅子に腰を下ろした。
444 :
105:2006/06/30(金) 02:05:52 ID://Z3v5mw
長門が席に落ち着くなりハルヒ宣伝相は勇ましく立ち上がり吠える。
「いい有希?このバカキョンはこともあろうに団長の命令を拒否したのよ!組織として許しがたいことだわ。断固糾弾されるべきよ!これが戦場なら死人が出てるところよ」
見振り手振り、拳を握り絞めて決して嘘ではないものの正確ではない意図的な演説でアジるハルヒ。
テロリスト諸君は今すぐこいつをスカウトするといい。ものの見事に扇動してくれることだろうよ。
しかし幸運なことにここにいるのは武装蜂起したテロリストではなく理論武装した宇宙人なのだ。さぁ何か言い返してくれ、と目でサインを送る俺。
「……そう」
淡白だった。
「具体的にいうと、あたしとセックスしなさいって誘いを断ったのよ。据え膳よ据え膳!」
どうやらハルヒにとって命令と誘いは同義語らしい。なおも演説は続く。しかし、外に聞こえてないだろうな……谷口にでも聞かれようものなら一両日中を首をくくらねばなるまい。
「しかもこいつ、なんて言ったと思う?据え膳を前にして『長門……』とか言い出したのよ!?これを優柔不断と言わずになにを優柔不断と呼ぶの!?」
どうやら怒りに燃えているらしいハルヒは机を叩きながら憤る。ちなみに『長門……』の部分はわざとらしいモノマネである。
しかしこのハルヒの演説を聞いてると俺が長門を「そういう目」で見ているかのような口ぶりだ。もちろん長門なら誤解であることは分かっているだろうが、それでも無表情に俺の顔を見る長門の目が痛い。
445 :
105:2006/06/30(金) 02:08:12 ID://Z3v5mw
長門の視線に晒され続けじっとりと嫌な汗をかき始めたころ、ようやく無口な宇宙人は口を開いた。
「……どうすればいい?」
俺に向かって。いや、俺に訊かれても……と視線を怒れるハルヒに向けると続けてつつー、と長門の視線も移る。
「……」
「どうすりゃいいんだ」
視線だけの長門に俺が付け足す。
「……ふんっなによ二人して見つめ合っちゃって……ったく……」
今度はいつかのように唇を突き出して不満そうにブツクサ言っている。
「……そうね。こうしましょう」
名案、とばかりに真面目な顔で言うハルヒ。今日はまた一段とコロコロ態度が変わって忙しいことで。
「キョン!あたしか、有希か……どっちか選びなさい!」
突然の二択だった。
流石はハルヒ。俺には理解が及ばん。
確かに俺はどうすりゃいいのかを訊いたが、これこれこうだからこうしよう……ではなく、いきなり解決策だけを提示されても俺にはハルヒの意図を掴めるようなイカレた思考回路は搭載されていないのだからどうしようもない。
「……すまん。どういうことだ?」
頼りの長門も硬直したままだからここはハルヒ本人の説明を待たねばならん。
「まったくそんなんだからいつまでも雑用なのよ。いい?今この場にあたしと有希がいてセックスしようって言ってんのよ。なにを説明する必要があるのよ」
セックスしようとかぬかしたのはお前だけだろ。まぁこいつの意向を曲げさせるには多大な労力が必要なことは学習済みだからな。この際些細というには大きすぎる事実誤認には目を瞑って話を進めてしまおう。
446 :
105:2006/06/30(金) 02:10:03 ID://Z3v5mw
「つまり俺に……お前か、長門のどっちかを選んで、その……しろというのか」
「そうよ。わかってるじゃないの」
さすがに俺の思考も限界を迎えそうだ。こいつの意味不明なのは今に始まってないが、今回は格別の感がある。
ハルヒが本当に俺と、その、まぁ……したい、というなら何故長門を呼んだんだ?
長門の前で俺にハルヒを選ばせる……見せ付ける為、とか?それじゃハルヒは俺のことを……まさかな。
ハルヒのいう「セックス」は、好きだの嫌いだのの意味はなくて、ただの興味として、してみたいだけなのだと思っていた。
もしかしてそれは間違いなのか?
もし……万が一、間違っているのなら。
適当にYESと答えることだけはすべきではない筈だ。それは相手がハルヒだろうが長門だろうが同じだ。
いつのまにか二人の視線に晒されている。
「……選べねぇよそんなもん」
精神を激しく疲弊された質問に俺がようやく絞り出した。
暫くの沈黙の後、俺の答えを聞いたハルヒは勢い良く立ち上がり、あの極上のスマイル……災害の前触れである……を浮かべて言った。
「選べないなら、選ばなきゃいいのよ!」
447 :
105:2006/06/30(金) 02:14:13 ID://Z3v5mw
とりあえずここまで……鈍筆ヘタレです。
もっとここをこうした方がいい、とか具体的な指摘を貰えると嬉しい。
他の投下待ちの方、お待たせしました。
以下続けてください
>>433 朝倉不遇すぎるw
冒険スタート直後、レベル1の勇者の前に大魔王が現れたかのようだ。
3Pかぁ、それもいいなあ
ちょい自分の誤字いっぱいあったので修正してます
今日も今日とて長門萌え
投下致します。
『長門有希の命名』
布団の中で裸で抱き合いながら長門の頭を撫でる。猫っ毛の髪が掌に心地いい。
なんとも言いようが無い、安らぎの時間だ。
学校でも、文芸部室でも、家でも。こんなに穏やかな気分になれることはない。
教室やSOS団だとハルヒがいるし、家でも妹がキャンキャンうるさい。まあハルヒは
ともかく妹ならなんとかあしらえるけれど、でもこんなに静かで落ち着けてなおかつ
あったかい気持ちに浸れるのは、ここ長門のマンションの部屋でえっちの心地よい疲れに
包まれながら動物が毛づくろいをするようにただ長門を撫でたり触ったり可愛がったりする
この時間だけだ。
もちろん長門とのえっちは凄い気持ちがいい。脳が痺れそうなほどの締め付けや
溢れる甘い喘ぎ声。滅多に見せない長門の紅潮した顔。そういう視覚聴覚触覚情報は全部、
俺を死にそうなほど昂ぶらせ、長門の全身を貪り長門に全身で奉仕する、そんな気持ちの
原動力に変換される。
でも口を縛ったゴムの袋が片手の指の数を超えるくらいになると、いくらなんでも
少々疲れてくる。長門も息が切れてくるのか、少しくったりとなって俺の胸の上に
額を押し付けるように脱力している。
そうなった時には俺はタオルで長門の汗を拭い(と、いってもほとんどが俺の汗なんだが)
コイツの髪の毛を整えるフリをして髪の毛をくしゃくしゃに撫で回したりする。
一瞬だけ驚いたような瞳の色を見せる長門だが、非難するわけでもなくわしゃわしゃという
俺の撫で回しを受け入れている。どことなく嬉しそうな色が目に溢れてる、というのは
俺の気のせいだけではないと思う。
キューティクルの輝きが最高にキュートだぜ長門。
あ、いや、今のは別に韻を踏んでみたわけじゃないぞ。偶然だ。
言い訳がましい俺の心の中の声が聞こえたのか、すこしだけ首をかしげる長門。
ああ、もう、可愛いったらありゃしねえ!!!
わしゃわしゃわしゃわしゃ……
そして長門の頭に顔を埋め、息を深く吸い込む。
腕の中の長門の表情をうかがう。
ほんの少し、いつも観察している俺だからわかるほどかすかに
嬉しそうな色が含まれている。
「へへへ」
なんだか嬉しくなった俺は長門の頭を自分の胸に押し当てる。
鼓動が聞きたいのか、耳を押しつけてくる長門。
たまらなく可愛い。
そんな長門の頭の丸みを掌で感じながら、俺は何気なく枕元の本の山を眺めた。
いつもながら驚くな、こいつの読書量には。
なんとなくそばにあった二三冊の題名を読み取ってみる。
『スポック博士の育児書』
『かしこいママの育児の本―0歳から5歳まで、毎週の知育遊び260 』
『新宇宙大作戦―ヴァルカン大使スポック』
『赤ちゃん語がわかる魔法の育児書』
ぬなっ!?
首を反対側に向けてみる。
ぬなっ!?
首を反対側に向けてみる。
『桶谷式 母乳で育てる本』
『安斎流 赤ちゃんの名づけ』
『全有機化合物名称のつけ方』
『赤ちゃんに最高の名前をつける本―名づけ本の決定版』
ふがっ。
おそるおそる首を上に向けて別の本の題名を読む。
『クライ・ムキの子供服―Simple+one 別冊家庭画報』
『ドイツ武装親衛隊軍装ガイド ミリタリー・ユニフォーム』
『小さくてもきちんとした服―ニューヨークの子ども服6か月から3歳まで』
「……長門」
「なに」
「……お前、子供欲しいのか?」
そう尋ねると、長門は丸々一分近く考えた挙句、こう答えた。
「………あなたの子供が欲しい」
ぶっ。
なんじゃそりゃ。
「いけない?」
「いや、その、いけなかないが順番……っていうかまだ早いだろ。俺たちまだ高校生なんだし」
「あなたに迷惑はかけない」
「……お前まさか、超常的な方法で作ろうとか考えてるんじゃないだろうな」
長門のことだ。例の魔法みたいななんかでちょちょいとなんかやっちまうんじゃなかろうか。
「……生命はデリケート。非自然的方法で懐妊するのは推奨できない行為」
「……そうか」
「妊娠の方法はあなたの精液を子宮に流し込むだけ。行為自体はそう難しくは無い」
「……いや、それは俺も知っているのだが」
視線をさまよわせている長門。いったい何を考えてるんだろう?
「なあ長門――」
「……私の任務である涼宮ハルヒの観察を果たしながらあなたの子供を妊娠する方法は
二種類ある」
珍しく俺の言葉を遮って長門が言う。
「一つは、あなたの子供を妊娠した後に私の擬似人格投射体を生成し任務を肩代わりさせる方法」
「擬似人格投射体?」
「私の人格を模した擬似生命体」
コピーロボットみたいなもんか。
「そう」
説明する長門の瞳からは何も読み取れない。
この長門の表情解析専門家の俺がだ。
「もう一つは、私の擬似人格投射体とあなたを性交させ、妊娠させる方法」
なんじゃそりゃ。……お前まさか!? もう?
「違う。どちらの方法も最終的に実行は出来ない」
「なんでだ」
「第一の方法では、あなたが妊娠を了承しない限り、妊娠した私はあなたに会うことができない」
真摯な瞳が俺の目を射抜いてくる。
「半年以上あなたに会わないでいることは今の私にとっては不可能」
そしてそうキッパリ断言する長門。
なんじゃそりゃ。
長門お前………そこまでハッキリ言われるとなんか嬉しいぞ。
「さらにその間、私の擬似人格投射体は現在と同じような関係をあなたと結ぶと考えられる。
私が擬似人格投射体にそれを禁止したとしても、私と同じ記憶と思考パターンを持つ私の
擬似人格投射体は早晩あなたと肉体関係を結ぶであろうことは明白。私は私以外の女性が
あなたと性的接触を果たす事態に耐えられない」
ああ。長門、それは卑怯だぞ。まっすぐ無表情な瞳で俺を見ながらこう言ってるが、
そのほっぺたがかすかに赤らみ、目じりにはかすかに涙のような潤みが感じられる。
その表情、可愛すぎ。
ところで長門、二番目の方法が不可能な理由は?
「第一の方法が不可能な理由と同じ。私は私のコピーであっても、私以外の女性とあなたが
性交することに強い嫌悪を覚える」
「だから私はあなたが私自身に妊娠して欲しいと願わない限り、子供を作る事ができない」
そこまで言うと、長台詞に疲れたのかとすんと俺の胸に額を落として長門は言った。
「あなたがそうしたいと思えるまで私は待つ」
その声の響きが俺の肋骨の間から染み透り、俺の胸の中心を甘く疼かせていく。
しかし……この宇宙人のアンドロイドはなんでこんなにも俺を破壊するような事ばかり
言ってくれるのかね。長門を抱きしめる俺の腕の骨の芯までもが甘く蕩けていきそうだ。
「長門」
腕の中から俺を見上げてくる、どことなく硬い表情を含んだ瞳。
おれはその瞳を覗き込みながら言った。
「さっきお前『あなたに迷惑はかけない』って言ったよな」
「……」
目の前で長門がちいさく肯く。
「逆だ。もし長門が俺の子供を産んでくれるのなら、俺はその子をお前と一緒に育てたい。
一緒に育てるんだから迷惑だなんてことは無い。むしろ迷惑を大いに掛けられたいくらいだ」
長門の瞳が少しだけ大きく開かれる。
「まあ、そういうのはまだしばらく……てーか当分は無理っぽいけどな。俺が卒業して就職して
稼げるようになるまで、待っててくれるか?」
「……」
長門は俺の首に細い腕を回すと、きゅっと抱きついてくる。
そして俺の頭の横でこくこくと何度も首を縦に振っている長門。顔は見えないけど、
こんなに嬉しそうな長門は初めて見たね。いや見えないんだけど。
「ところで長門、子供の名前はなんにしたいんだ?」
名づけ方の本の山を眺めながら胸の上の長門に尋ねる。
「……案は3621通りある。あなたの意見を聞かせて欲しい」
……一晩中子供の命名案をどことなくうっとりとした口調の長門に聞かされたなんてのは
この幸せの前にはどうでもいいことさ。
終わり
以上です。駄文失礼。感想くれたらいい気になってまた書きます。
>>454 スタートレック吹いたw
だが残念なことに俺はピカード派なんだ…
それはそうと、長門かわいいよ長門。
GJ!
キョンの幸せ者め
>>447 指摘希望と言うことで…なんというか、冗長な感じ。
引っ張りすぎるとだれるからもうちょっとテンポ良くなるようにまとめてみた方がいいかも。
>>447 荒唐無稽な話でもかまわないから、クリープ一杯分くらいのリアリティを。
具体的には、
ハルヒがセックスしろと言い出すのは、ぶっ飛んでるけどOK
その理由に「夢で見たから」とハルヒに言わせるのはNG。荒唐無稽で笑えたりする以前に、話の流れが成り立たなくなる。
「夢で見たから」「証拠が無い」「昨日の時点で言わない方が悪い」のやり取りがただの気違いとヤク中の会話になってしまった。
壊れた世界には、それがどうでもよくなる程の勢いか、説得力か、どちらかを用意しましょう。
用意できない人は、肝心の部分だけ書けばよろしい。
459 :
105:2006/06/30(金) 03:20:28 ID://Z3v5mw
>>458 たしかに、思い付きで
>>105を書き始めて、その時点からすでに無理矢理な感じでした。それを更に続けたのも相まって……
>>457 そしてそのままズルズルと……
次はもうちょっとマシになるように精進します。
>>457>>458ご指摘ありがとうございました
460 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 03:44:47 ID:aQe2uK5Q
>>454 GJ!萌えたw
だが、前スレのはあれで完結が一番よい形と思う
今回のは全く別の話として扱ったほうが俺の中では受け入れやすい
sage忘れスマソ
自分このスレ、途中参加組みだから保管庫で参加前の作品を読ませてもらってるんだけど、
『脱線事故乗り越え 硬く結ばれる部活の絆』
この作品はすごいね、読んでいて涙が止まらなかった。
小説とか読んでしゃくり上げるほど泣いたのなんて初めてだったよ。
リアルタイムで見たかったなこれは。
>>462 キャラの口調・行動が全然違って、ただ「涼宮ハルヒの憂鬱」のキャラクターの名を借りただけの作品にしか見えないけど。
個人的にはちょっと・・・ネタにしていいことと悪いことがあるよなと思った
俺も微妙だった ネタにしていい事としちゃいけない事があると思うし
ただ単にキャラの名前がSOS団員なだけだったと思う
そもそもハルヒがそんな事望まないだろうから設定にも無理がある
そういえばキョンにだけはあんまハルヒの力は通じてないのかな?
もし効いてたらとっくにハルヒと付き合ってそうなんだけどな
いやー、別にいいんじゃね?
と、オレは思う。
エロパロでモラルを求められてもいかがなものか。
読んで嫌悪感を抱く人もいるのは承知してるけど、
そんな感じ。
まあ冗談で言ってみただけなんだけどね。
あまりの酷さにここの住人がどう思っていたのか確認したくなっただけ。ご〜めんねw
不謹慎不謹慎言ってる人多いけど、このSSの悪いところはそんなことじゃないだろう。
事故をネタにしたことなんかじゃなくて、事故をネタにしたのにまったく活かされてなくて、終始寒いこと。
それに、面白かったらどんなネタでも不謹慎じゃなくなる。ネタっていうのはそういうもんだ。
不謹慎だから嫌悪感が沸くんじゃない。嫌悪感を抱かされてしまうような糞SSだったから、不謹慎な話とレッテル貼られるわけさ。
>>469 まぁその通りなんだろうが、お前性格悪いな。
>>462>>469 もっと自分の意見に自信を持ったら?
そうやってころころと意見を変えてたら世の中渡っていけんよ。
>>469 ( ゚д゚)
(゚д゚ )
( ゚д゚ )
久しぶりにAAばりの釣り宣言を見た気がする
>>454 イイヨーイイヨー
ホントに長門好きってのが
読んでてよくわかるよー
「卒業式の後で」は泣けたな。高校時代を思い出したよ。
まだ番外編がありそうだ
>>462>>468 たしかその作者は事故から何年目っていうのを記念して書いてたはずだった
アニメしか見たことないとかかれてた気がする。
逆に俺はそういう否定的な意見を見ると気分が悪くなるよ
おまいらおちつけ〜
時間が時間なので、これが貼れる
「お前の言いたいことは分かった。 場合によってはヨロコビを分かち合ってもいい。 ただ、今は落ち着け」
「何のこと?」
「授業中だ」
なぜ自分は書き込んでるかというと、夜の学校な訳で
希少な喜緑さん登場SSのタイトルを教えて親切な人
保存庫巡りに時間が掛るので。前スレのはGJでした
>>480 授業中な人間はルール上では少ないと思うが。
( ゚∀゚)
( ゚д゚)
(゚д゚ )
(゚д゚)
>>454「われわれは情報統合生命体、あなたを同化する、抵抗は無意味」
とかいってキョンに迫る長門
「わたし、わたし、わたし、わたし…そして、わたし」
とりあえず小ネタシリーズがまたできたので投下します。
ついに朝倉のセリフがなくなった…
じつは透過シリーズの最後もできてたり。
IFすとーりぃ ケース4
古泉から超能力者の説明を受けた帰り、下駄箱にこんな内容の手紙が入っていた
「明日の朝、誰も来る前に一年五組の教室に来て」
何か意味深な手紙だな。 放課後じゃダメなのか?
まぁ、誰もいない時間となると6時くらいか。 まあ、イタズラにしても行く価値はあるな。
妹のダイブではなく、目覚ましで目を覚ました俺は、時間を確認する。 えーと5時半か…
あまりに急ぎすぎたため、弁当を忘れたが、まぁたまには学食もいいだろう。
とはいえ、早朝からあの坂道を登るのはさすがにキツい。 誰かバイクで引っ張ってくれ。
あまりの眠さでいつもより遅れたが、それでも6時10分。 うん、こんな時間に学校で何をするんだろう。
手紙に書かれたとおり一年五組の教室に来たのだが、何か中でバタバタしている。 何やってんだ、こんな時間に。
引き戸を開けて中に入ろうとしたが、なぜか開かない。 窓から中を覗こうとしたが、灰色の壁みたいなもので中が見えなかった。
「仕方ない、誰か来るまでコンビニで時間を潰すか…」
校舎の外から見たときになぜか教室が光ってたが、気にすることでもないだろう。
しばらくコンビニで時間を潰し、ぽつぽつ北高の生徒が通り始めたので、その流れに乗って俺も再登校する。
今度は一年五組の教室は元通り引き戸も開いたし、窓から覗いても中庭側の窓までしっかりと見えた。
しかし、結局あの手紙の差出人が分からずじまいだな。
その日のホームルームで、岡部が朝倉が外国に引越した。 ということを伝えた。
いきなりだな、などと思っているとハルヒがごん、と俺の背中をこぶしで突いてきた。
「キョン、これは事件だわ」
さっきまで疲れた表情だった涼宮ハルヒが目を輝かせていた。
「謎の転校生が来たと思ったら、今度は理由も告げずに転校していく女子までいたのよ。 何かあるはずよ」
何でも勘ぐってくるな。 まぁ、古泉の時は当たりらしいが。
「親の仕事の都合なんだろ。」
「そんなベタな理由は認めらんない」
しばらく朝倉の転校の件で話は盛り上がってたが、どうもハルヒは本気で調べに行くらしい。
また振り回されるのか。 やれやれ。
放課後部室に行くと、長門が話しかけてきた。 向こうから話しかけてくるなんて意外だな。
「朝倉涼子は転校したことにした。」
おまえの仕業か。
「一体どういうことなんだ?」
俺は長門に問い詰めた。
メガネのブリッジを上げ、長門は淡々と説明してくれた。
朝倉が長門と同じ情報なんとかのインターフェースだったこと。
あと情報なんとかにもいろいろあって、長門と朝倉じゃあ派閥が違うこと。
そのほかにも朝倉が俺を殺してハルヒにアクションを起こさせようとしたこと。 ってか何で俺なんだろ。
これであの手紙の謎が解けた。 あれは朝倉の手紙だったのか。
「そう」
長門は軽くうなずいた。
「で、朝倉はどうなったんだ?」
「有機情報結合を解除した。 つまり消した。」
分かりやすい説明をありがとう。
うーん、俺はあくまで平々凡々な日常を望んでたんだが、最近どんどんおかしくなるな…
これからどうなることやら…
続かない
どう見てもIFすとーりぃ系が朝倉不遇物になってます。(4にいたっては朝倉の存在意義もない)
ほん(ry
本当は朝倉ネタ意外も考えてるけど、まぁその内
二時間で書き上げたショボエロが出来たので投下します。
リアルもなにもなく、そんなにエロくもないですがお許しを。
( ゚д゚ )
レイパーハルヒ
目が覚めると俺は縛られていた。
まあ、縛られているといっても縄でグルグル巻きにされている訳でもなく。
部室の椅子にくくりつけられていて、腕は後ろで、足は椅子の前足で縛られている。
言葉にしてみるなら、なんだこりゃ。
「やっと目が覚めたようね」
何やら聞き覚えのある声。
その声の主は俺の前で腰に手を当て勝ち誇ったような表情を浮かべている。
「おい、ハルヒ。一体なんのつもりだよ?」
「なんのつもりって、そうねえ。人体実験かしら?」
なんて、さらっと言い放つハルヒ。
なんだかハルヒの腕についている団長の腕章がまぶしい。
って、人体実験だなんて、一体なにをしようってんだよ?
「それは秘密よ。キョン、あんたは黙ってあたしに犯されればいいの」
はい? 今なんておっしゃいましたかハルヒさん?
俺を犯す? ホワイ? 俺犯されちゃうの? そんなのごめんだよ?
「あんたに拒否権はないの。どうしてもって言うなら、今この場で死刑よ!」
びしぃっ、なんて効果音が付きそうな勢いで指を指す。
いや、いっそのこと死刑にしてもらった方がいいのだろうか。
「死刑って、冗談はそれぐらいにしてこの縄をほどいてくれよ。朝比奈さんたちが来ちまうぞ」
「大丈夫、今日は来ないわ」
にやりとした表情を浮かべながら言い切った。
「なんでそんなこと言い切れるんだよ」
「そんな気がするのよ。だから今日は誰も来ないわ」
そんな気がするって、なに言ってんだよこいつ。
今この瞬間に誰か入ってきたら、
朝比奈さんだったら、九割の確率で悲鳴をあげてどこかへ行ってしまうだろう。
長門だったら、無言で本を読んでそうで怖いな。あいつのことだ。助けてくれないだろう。
古泉だったら、とびきりのスマイルでお邪魔でしたね、とか言って退室してしまいそうだ。
チクショウ、誰が入ってきたにしろ駄目じゃないか! 誰か俺を助けてくれ!
「って、こら、ハルヒっ!」
そんな誰にも届かない助けの言葉を叫んでいる間に、ハルヒが俺のズボンのホックに手をかけていた。
多分、俺の脳みそは危険を感じてパトランプと大音量の警告音を発信しているであろう。
だが、手と足は縄で縛られていて自由がきかない。その間にもハルヒはズボンのホックを外してしまう。
そして、おもむろにトランクスから俺のモノを取り出すと、
「なによ、キョン。嫌がりながらこんなにカチカチじゃない」
「ばっ、これは違うんだ! こいつは俺の意思に反して勝手に……」
必死に弁明する俺。そうだ、俺に罪はないんだ。悪いのはこいつな訳で!
「所詮キョンも変態ね。縛られて触られただけでこんなに大きくしちゃうなんね。このドM!」
「う、うるさい! お前がこんなことするのが悪いんだろうが!」
普通の男の子ならこんな展開は誰もが願ってない程に素敵なことだろう。
だが、相手が悪い。涼宮ハルヒさんだぞ。ましてや犯されるなんて本気で勘弁だ。
でも悲しいもんだね。男の子の体ってのは正直なのさ。ほら、こんなに元気いっぱい。
「へえ、これがキョンの……ちょっと、あんた。もしかしてホーケイ?」
俺のモノを覆っている皮をつまんで引っ張るハルヒ。ああ、なんて屈辱的。
「ちょ、う、うるさい!」
「なによぉ? キョンのこれ被ってるじゃない? これって仮性ホーケイってやつ?」
にやにやと上目遣いで俺の見上げるハルヒ。くそう、そんな目で俺を見ないでくれ!
「キョンは仮性ホーケイ。これは大スクープね! 早速観察よ!」
そう言って、右手で携帯電話を握るように俺のモノを握るハルヒ。
その手は少し冷たく、熱くなっている俺のモノには妙に心地よい。
「ところでキョン、あんたのは大きい方なの?」
知るか、そんなもん。
俺は他の男と自分の大事なモノを見せ合う趣味もなければ、比べたこともないわい。
「なあ、ハルヒ。そろそろ勘弁してくれないか」
恥ずかしさも気まずさも限界だ。
「ダメよ。もっと観察しなきゃ。精液も採取しなきゃだしね」
採取って、俺は一体なにをされるんだ。あといい加減に観察もやめてほしいんだが。
「ここにキョンの精子が詰まってるのね」
とか言いながら俺の玉をいじりまわすハルヒ。
やばい、なんかちょっと気持ちいいかも。って、なに考えてんだ、俺。
ああ、なんか死にたい気分。誰かこのまま俺をナイフで……なんて考えたところでいつかの教室を思い出した。
ごめん、やっぱ今のなしね。
「なにブツブツ言ってんのよ」
ハルヒは細い指を俺の玉からモノへと這わせる。
「ちょっ!」
「え、なによ?」
裏筋をそのように触るではない。
こらこら、そんなにまじまじと見つめるでない。
俺のモノを見つめるハルヒの目は、まるで珍しいものを見つけたかのような、冒険に満ちている。
まあ、今はその目が非常に怖い訳だが。
「ふうん」
「なに納得してんだよ」
「雑誌で見た通りだな、ってね。あ、でもホーケイなのは違ったわ」
雑誌かよ! ていうか、もうホーケイについては触れんな! 恥ずかしいだろうが!
「よし、観察は終わり。次いくわよ」
俺のモノをぴんっとデコピンで弾くハルヒ。
次ってなんだよ、とか思っていたがすぐに解ってしまった。
だってなんか、ハルヒのやつ。自分の唇を舐めて湿らせてるんだもん。
そして、おもむろに被っている俺の皮をぐいっと引きおろす。やばいやばいやばい。
「ちょっとタンマ! ハルヒ、それはまずい! 今なら引き返せる! だから、っつぁあ!」
必死の抵抗も虚しく、ハルヒは俺のモノを咥え込んでしまった。
予想はしていたものの、あまりに唐突すぎて俺は超がつくほどマヌケな声を出してしまった。
「はひはぬへなほえだひへんほよ」
俺のモノをくわえながら喋っているせいで何を言っているのかわからない。
そして、俺は俺で初めて味わう、下半身への刺激に半ば意識が飛びそうになる。
ハルヒの口の中はぬめぬめと湿っていて生温かい。言葉に出来ない快感が込み上げる。
こんなのコンニャクとかカップヌードルとか比にならんぞ!
「……っくぁ!」
しまった。
出しちゃった。
「んんんんっ!?」
ハルヒは俺の突然の射精に驚いたのか、俺のモノを口に含みながらもがいている。
目には涙が浮かんでいるようにも見える。ああ、なんか罪悪感。でもまだ止まらない。
苦しそうに咳き込みながらハルヒは精液を床に吐き出す。
「このバカキョン! あんたがいきなり出すからちょっと飲んじゃったじゃない!」
「し、知るかよ! お前が勝手にしてきたんだろ!?」
「だからっていきなり出すことないじゃない! この早漏バカ!」
うわ、早漏って言われた。
言っておくが俺は断じて早漏なんかじゃないんだぞ?
エロ本とかエロビデオで抜く時は一時間なんて軽いもんさ。言ってみりゃ遅漏の分類なんだぞ?
脳内でそんな言い訳をしてみるが、咥えられて次の瞬間にイッてしまうようじゃあ早漏と言われても仕方ないか……。
「だいたい元はお前から勝手に始めたことだろ? もう終わったんだからこの縄ほどいてくれよ」
正直なところ、かなり気持ちよかった。
出る瞬間は天にも昇る快感だったと言っても過言ではない。
だが、もう嫌だ。この相手が朝比奈さんだったらどれだけよかったことやら。
今はとにかく快感よりも、ハルヒにM男とか罵倒されたりホーケイをバカにされたり、早漏野郎と言われたショックの方が大きい。
「ダメよ。まだ帰してあげない。そうね、あと五回は頑張ってもらわなきゃね」
にやにやして言うハルヒ。背筋に冷たい汗が流れた。
結局このあと、予定より一回多い、六回発射させられた。
一度暴発してハルヒの顔に、また暴発してハルヒの制服に。
予想はしていたが、やっぱりグーで殴られた。俺は悪くないのにね。
六度目の射精と同時に俺は布団の中で目を覚ました。
「はあ、なんか夢だったか……」
思わず独り言を呟く俺。でもなにかおかしい。なんていうかな、下半身が気持ち悪い。
嫌な予感がして俺は恐る恐る手を伸ばす……。
「いい歳こいてなあ……」
洗面所で自分の精液でべとべとになったトランクスを洗う俺がいる。
おしまい。
なにこのレイプw
夕方の教室でナイフ持った女子生徒に襲われることよりトラウマになるぜ・・・
と思ったら夢オチか
なかなか面白かった。GJ!
夢オチワロスwwwwwwwwww
面白く読めた、GJ!!
>>489 「ハルヒも同じ夢を見ていた」だとすれば・・・・・・
6回連続で夢精したキョン
「……次は対象を朝比奈みくるに変更して回数を確認したい」
>>492 GJ!
そしてSS完成!
≡≡≡≡≡( ゚Д゚)⊃[SS原稿]
これを投下・・・と言いたいとこだが
あんまり仕事で忙しいので、
投下できるかどうか・・・。
でも、怒らないでくれ!
必ず投下するから!
長文スマソ
仕事で忙しいって何だ。
投下なんかすぐだろ。
SS書く時間あるのに投下する時間が無いてどういう事だ。
ii
あたたか〜い目で見守ってることにするよ
>>495 それは「キョンにしてほしかったけど、夢の中でもそこまで認められなくて
夢の中なのに攻めの形を取ってのみ願望が投射されてしまった」という意味でOK?
>>499の投下はまだか。
あ!
散々引っ張っといてアレか!
糞コテはNGしとけ
しかもage厨だしな
みんな、荒らしはスルーだ
とりあえず、包茎なキョンに萌えようぜ!
>>490 >こんなのコンニャクとかカップヌードルとか比にならんぞ!
コンニャクやカップヌードルの経験はあるのか、キョン
>また暴発してハルヒの制服に。
ハルヒの服の説明が無かったが(腕章つけてるとはあったけど)、
制服でしかも最後まで着衣のままだったってことでおK?
萌えるシチュエーションだ。
>>511 公式サイトできてたのか
どれどれキャラクター紹介h
/' ! ━━┓┃┃
-‐'―ニ二二二二ニ>ヽ、 ┃ ━━━━━━━━
ァ /,,ィ=-;;,,, , ,,_ ト-、 ) ┃ ┃┃┃
' Y ー==j 〈,,二,゙ ! ) 。 ┛
ゝ. {、 - ,. ヾ "^ } } ゚ 。
) ,. ‘-,,' ≦ 三
ゞ, ∧ヾ ゝ'゚ ≦ 三 ゚。 ゚
'=-/ ヽ゚ 。≧ 三 ==-
/ |ヽ \-ァ, ≧=- 。
! \ イレ,、 >三 。゚ ・ ゚
| >≦`Vヾ ヾ ≧
〉 ,く 。゚ /。・イハ 、、 `ミ 。 ゚ 。 ・
>>511 ハルヒの顔でコレは駄目だと思って
キョンの顔で特別悪いシーンのだろうと思い直して
みくるの顔で購入を検討して
長門の顔で絶対買わないと思い
古泉の顔でアサルトライフルがあったらモニターに連射していた
Ctrl+A
※全部ウソです
ジャンル 非日常系学園コメディーAVG
発売日 来春予定
価格 未定
音声 主要キャラのみフルボイス
※全部ウソです
>全部嘘
げっ!俺のwktkを返せってweb拍手送っちゃったよ○| ̄|_
絵柄とFC2の時点で気づけよw
>>518 2流3流のエロゲメーカーかなんかがぱにぽにスタッフかき集めて作るのかとオモタww
520 :
こねた。:2006/06/30(金) 20:39:44 ID:cdmGkB2J
子ネタにインスピされて手が滑った。
「キョン!大変よ!」
どうした。お前の買った株の会社の社長でも捕まったのか?
「違うわよ!凛々が・・・・彼氏連れてきたの!」
「なんだって?!」
「しかも・・・・・・見たところね・・・・」
なんだよ、怪しい職業の人間の子供か?
「古泉君の・・・・子供みたい・・・・」
涼宮ハルヒの結婚
大学を卒業し、手近な雑誌の編集社で生計を立てることに決めた俺は
ゲーム会社に就職して生き生きしている同棲中のハルヒにプロポーズした。
谷口や国木田、鶴屋さんなど結構な人数を招きいれた結婚式の後、
一時的にこちらへ戻ってきた朝比奈さんを含めたSOS団五人で
二次会を行い、家に帰ってきた俺たちは小さなアパートで結婚初夜を迎え、
翌日からもハルヒの名字が変わった以外は何事もなく仕事に勤しみ
夜はハルヒの手料理で腹を膨らませテレビの話題や今日の仕事のことなどで
楽しく談笑しつつ深夜にはベッドの上で食後の運動に燃える。
そんな生活が一年半ほど続いたある日、ハルヒが妊娠した。
二人で喜びいささみ、俺は前以上に仕事に精を出した。
8ヶ月目にもなるとハルヒは産休を取り、出産直前の入院後は毎日仕事帰りに
見舞いに行き、そして元気な女の子を産んだ。
二人で相談した結果名前は「凛々(りり)」になった。
愛情を込めて大切に育てた凛々も中二になった。時がたつのは早いものだ。
昨年建てた念願のマイホームはまだまだ綺麗だが。
幸いにも俺のことをキョン君などと呼ぶことはなかったし、
ハルヒに似て容姿端麗に育った。俺に似て理屈っぽくなってしまったのが難だが
まぁ身長面を引き継いでいるので文句を言うのはやめよう。
さて、ここで冒頭に戻るが何故此処に古泉の名前が出てくるかというと
俺たちに遅れること一ヶ月、大学でできた彼女と結婚した古泉のところは
俺たちより一ヶ月早く男の子供が産まれたらしい。
その時の俺たちは自分たちのことで精一杯だったからな。葉書をもらって
電話でおめでとさん、こっちも産まれそうだと言ったきりだった。
「古泉、どういうことだ」
ハルヒに二人をリビングに上げてお菓子でも出し、さりげなくいろいろ聞くように言った後
俺は自室で古泉に電話をした。
『どういうこと、といわれましても・・・・凛々さんが勇樹にとって魅力的だった。としか
言い様がないですねぇ』
ちなみに勇樹というのは言わずもがな古泉の子供の名前だ。
というか同じ校区にいたということのほうに俺は驚いたね。
『知らなかったんですか?涼宮さんとうちの家内が保護者会で会ったことがあると聞いていますが。』
ハルヒは特に何も言ってなかったから覚えてなかったんじゃないのか?
「最近あいつ随分社交的になってな、母親友達と面をつき合わせて晩御飯を食べた事が記憶に新しいよ。」
だから知ってても声をかけなかったってヤツではなさそうだぞ。
『そうですか・・・・。 それより、今夜久々にお会いしませんか?あなたと一杯お酒を交わしてみたいですね。』
この非常時にこいつは何を言っている。自分の娘が取られかけているというのにそんな呑気なことはしてられないんだ。
「最後に一つ聞いておこう。『機関』の手回しじゃないだろうな。いくらハルヒが落ち着いたからといっても
お前の能力や『機関』の消失については聞いていないぞ。」
『ご安心ください、それはないです。確かに緊急用に僕の力や『機関』は残存していますが
あなた方が夫婦喧嘩で物の投げ合いでもしない限り出番はなさそうですから。』
そうか、まぁ酒については考えといてやるよ。じゃあな。
俺は電話を切り、ハルヒたちのいるリビングへ足を運んだ。
「そのときは、父がお世話になりました」
「いいのよいいのよ。 古泉君がいなかったら孤島にも雪山にもいけなかったんだから」
「じゃあパパとママは勇樹のお父さんがキューピットになって結婚したって事?」
キューピットとは違うがまぁ切り口は古泉だったなぁ
「パパ!」
幸いにもハルヒがキれるようなことはまだ言っていないようだ。
ハルヒたち3人はお中元にもらったクッキーを齧りカ○ピス(ギフト用高級版)を飲んでいた。
俺は食卓のハルヒの隣の席に座り、テーブル中央のクッキーに手を伸ばした。うん、うまい。
「はじめまして、古泉勇樹です。過去に父がお世話になったようで、ありがとうございます」
この丁寧口調に俺はさほど驚かなかった。むしろちゃんとした血縁なんだな『機関』じゃなくて良かったと安堵した。
ぎゅむむむ
「痛っ!」
ハルヒが俺の脚を踏んでいた。足許を見ると小さな紙切れを渡そうとしていたので
「ハルヒ痛い痛い痛い痛い(エンドレス)」
などといいつつメモを高速で読みきった。
俺はその指示に従い
「ちょっと部屋で手当てしてくる。ハルヒ、限度を考えろ、意味のないことをするな」
などと芝居をしつつトイレに向かった。
「あったあった」
過保護もいいとこだな俺たち、とつぶやきながらトイレにあった防犯カメラの箱とその上に乗ったメモを
手に取った。
次は凛々の部屋か・・
勘の良い方ならお気づきであろう。そう、俺たちが今からすることは凛々の部屋にカメラを仕掛け
年齢にそぐわないあんなことやこんなことやそんなことが起これば即乱入、というなんとも短絡的親バカ的行為だ。
食事の呼び出しなどでよく入っているから取り付けにジャストミートな場所は理解している。
俺はカメラを本棚の上のぬいぐるみとぬいぐるみの間の目立たないところに取り付けた。
情けないとか言わんでくれ。可愛い可愛い第一子なんだから。
「ハルヒ、俺たちはお邪魔だ。凛々、古泉君を部屋に案内してあげろ」
「はぁい」
「失礼します」
さて、どうなるかな。
俺たちは居間のTVを外部入力2にして様子を見た。
「お邪魔しました」
「また明日ねぇ」
結局特にコレといった事は起こらなかった。
キスをしようとしたところで立ち上がりかけた俺をハルヒが無言で制止したことを除けばだが。
「ねぇパパ」
古泉ジュニアが帰り際開けたドアが閉まったとき、凛々が声をかけてきた。
「ママは高校生のときすっごくわがままだったんだってね」
あのアホ親子め。
とりあえず子ネタ。
古泉ってお酒強いのかな。
真っ赤っかになるまで飲んでもヘラヘラ笑ってそう。
涼宮ハルヒの独占欲続きないのかよ
書かかないまま逃亡なのか?随分前のスレのようだし
>>524 名前は「勇気凛々」から?
大学でできた彼女、だから勇樹の母は有希ではないよね
>>525 前スレか前々スレにあったような……たしか
10レス位を投下します。
それは俺が2年の三学期を迎えたときのことだった。
憂鬱な試験も終わり、最近はめっきりおとなしくなったハルヒの面倒も見る事も、
いわゆる「敵」の動向も収まった頃。
端的に言えば俺がすっかり油断していた頃のことだった。
衰えてきたとはいえ、未だ健在なハルヒのバカパワーにより、1年と変わらず後ろにハルヒ、
その他に谷口、国木田、そしておそらくハルヒにとってクラスの友人として目されたのだろう、阪本が居る。
このクラスで、谷口、国木田と3年のクセに暇を持て余していた鶴屋さんで集まって、
短縮授業の放課後、大貧民をしてだべっていた時にそれは起こった。
と言うより廊下の窓ガラス越しで目撃した。
中庭で朝比奈さんが何者かに告白されている。
……まああの人だからな。海岸に舞い降りた天女のごとく、
あるいはヨーロッパの教会における聖母マリアのように
崇拝対象としての地位を確立している朝比奈さんが告白されることなど、
サーカスに行ったときに象が芸をするのを見るくらいにはありふれた事だ。
しかし問題なのはそんなことではない。
相手がどう見ても「俺」にしか見えなかったことだ。
「なっ………っ!?」
俺は廊下の方にナナメに傾けた椅子をひっくり返す勢いで、その光景が広がっている
中庭に向けて広がっている窓へと一気に駆け寄った。
「おい、キョン、どうした?!」
うるさい谷口。今はそれどころではない。
俺は某訓練された不可能を可能にする女王様付きのスパイではないので、
読唇術の心得は無い。故に喋っていることはここから見ているだけでは解読不可能だ。
だが、あれはどう見ても告白シーンだ。しかも相手はなぜかここに居るはずの俺。
…落ち着け。同時刻に二つの自我が存在できないことを証明した哲学者のことを
思い返しながら、俺は考えた。
あれはおそらく「異時間なんたら体」とかの俺に違いない。
おそらく何らかの事件があって、その演技をしているだけなんだろう。
そうに違いない。今の俺にそんな事件の心当たりが無いので、未来にそんな時間を遡ることを
必要とする時が来るのだろう。…我ながら羨ましい。くそう、あんなにくっ付きやがって。
……いや前言撤回。こんなシーンを見つけたら、地球上で最も混沌を引き起こすであろう者が、
選りにもよって、こんなタイミングで中庭へと続く渡り廊下へとやってきた。
至高存在たる我らがSOS団団長、涼宮ハルヒである。
……ああ、未来の俺よ、俺の寿命はそれまでだったか。いつの俺だか知らないが、
せめて今の自分の人生を楽しく生きようと思う…
って、何だハルヒ?!なぜ柱の陰に隠れる?
「団内恋愛禁止!みくるちゃんから離れなさい!」
などとドロップキックを俺にかますのがお前のキャラだろ!
なぜそこで某ACTゲームの特務兵のように身を隠す?!
ヤバイ。なぜだか分からんが、非常にヤバイ気がしてきた。
とりあえず俺は、後ろから声を掛けて来る谷口らの声を無視して、
SOS団のアジトの方へと一目散に駆け出した。
それでも長門なら…長門ならきっと何とかしてくれる…
そう考えたかどうかまでは分からんが。
しかし、ノック抜きでドアを開けた俺の目の前に現れたのは、ある意味
限りなく予想外の人物だった。
…朝比奈みくるさんがここにも居る。
しかも半裸。
…あー、そうだった、確か今は3年は自由登校期間で、みくるさんは大学も推薦で決まったため、
わざわざ教室で自習なんかはしてないんだよなあ、お陰で長門と並んで
今やSOS団付きの常備品となっているんだ…ってなんだこの説明文は。
元々色白の顔を真っ赤に染めた朝比奈さんは、少し凍りついた後叫んだ。
「出…出て行ってくださいっ!」
も、もちろん出て行きますともっ!俺は後ろ手でバタンとドアを閉めた。
…もうそろそろ卒業なんだし、いいかげんで学習してくれないのか、あの人は。
鍵だってついているのに…
「どうぞ、入って良いですよ。」
そこにはメイド服の朝比奈さんと、思った通り長門が居た。
…まて、なぜさっき中庭に居た朝比奈さんがここにも居るんだ?
俺は少なくとも中庭からよりは近い、俺のクラスから一直線にここに向かった。
俺よりはるかにとろい朝比奈さんが俺より遠いところから早くこの部屋に到着しつつ、
メイド服に着替えるサービスシーンを提供する…それなんてプリンセステンコー?
…そうか、「あの」朝比奈さんも未来からやって来たのか…しかし何のお使いなんだ?
「それは無い。」
いつの間にか声になっていた俺の思考に、長門は容赦ないツッコミを入れてきた。
「ちょっと待て。何が無いんだ?」
「あなたと朝比奈みくるの異時間同位体が過去280時間の内の時空に現れたと言う記録は無い。」
こいつと話してると説明が省けて非常に助かる。
「…タイムトラベルした俺じゃないなら、あれは何だ?俺は確かに見たぞ。
朝比奈さんがなぜだか知らんが、俺の告白を受けていたシーンを。」
「えええっ!私キョン君に告白されたんですかあ!?それはその…困りますっ!禁則事項ですっ!」
いやちがいます朝比奈さん、俺はその情景を見ていた純然たる傍観者だったわけで、告白した覚えも、
とりあえずはする予定もありません…って何でそんな目で見るんですか。
「いいですっ!」
朝比奈さんがむくれた姿は確かに可愛いが、今はそれ所ではない。
「長門、一体俺が見たのはなんだったんだ?」
「大気中の水分等の小滴、および塵芥による、光学的映像。」
「…?」
「通俗的な言い方をするなら、幻。」
でも俺だけではなく、ハルヒにも見えていたぞ?
…というか見ていたというリアクションを取っていた。
「涼宮ハルヒが現出させたものだから。」
考えているときに頭からクエスチョンマークが発生するものならば、
それによって首が折れる位に理解が不能だった。
ハルヒはそんなものを見て何をしたいと言うのだ。
「…正確には見たいというわけではない。
涼宮ハルヒがその情景を本当に心から見たいなら、
朝比奈みくるとあなたそのもので現出する。」
これは残念がる所かね?どっちにしても理解不能なのは変わりないぞ。
説明好きの超能力者、ドアの後ろに隠れて居ないでとっとと出て来い。
「いやあ、あなたに指名されるとは光栄ですねえ〜。」
どこから聞いていた?
「割とそもそもの初めからですよ。」
なら話が早い。お前はハルヒの精神についてはプロフェッショナルだろ。
長門の説明も含めて、俺にもわかるように解説してくれ。
「あなたは少女マンガなどを読まれたことはありますか?」
無い。妹が何冊か貸してくれたが、セリフが読みにくくて断念した。
「それは残念。あれはあれで、結構名作もあるのですよ。」
持って回った話はどーでもいい。それより、少女マンガと今回のことと、何の関係がある?
「少女マンガに良くあるパターンとして、
『憧れの先輩に、卒業式間際に秘めていた思いに気がつき、告白する』
というものがあるんですよ。」
つまり、ハルヒはその系統のものを読んで、こうあったらなあって思ったってことか?
「半分だけ正解ですね。ここは前提で、『かつてその様なものを読んだ』という所です。」
残りの半分は?
「あなたの所為ですよ。
みくるさんが着ているメイドコスチュームにしても、巫女コスチュームにしても、最近
朝比奈さんのなかで流行っているらしい新人OL風コスチュームにしても、
とにかく、SOS団の部室では隙あればあなたはそればかり見ている。」
まあ、最後のはなんとなく朝比奈さん(大)を思い返してみている感が強いがな。
「これは普通、少女マンガ的には憧れの先輩に対する態度ですよ。
…この場合男女は逆ですが。」
それは違うだろ。普通の美的センスを持っていたならば、あれほど似合っているものを見ないのは逆におかしいだろう。
ってなんでまた睨むんですか朝比奈さん、俺は褒めているのに。
「ええ、私もそう思います。実は私も結構眼福に与っているんですがねえ。」
…おまえ、やっぱりムッツリだったか。
「ま、この際それは置いておきます。」
置くな。
「重要なのは、そこで涼宮さんがその所為でそれを連想してしまったこと。
そして、今、朝比奈さんが卒業するタイミングであったことです。
涼宮さんは、あなたはその様に見ていないであろうことは承知している。
だがもし万が一、その様な思いで朝比奈さんを見ていたらどうしよう。
それが光学的錯覚として、涼宮さんの目の前に現出した。
…こんな感じでよろしいでしょうか?」
古泉は長門に流し目をくれると、長門は5ミリほど顎を下げた。
「およそ間違ってない。」
…なんてややこしい事をしやがるんだ、アイツは。
最近おとなしいと思ったらこう来るとは。
…でだ。アイツの勘違いを修正するにはどうしたら良い?
「おや、あなたのことですから、これを既成事実とでもするつもりなのかと思いましたよ。」
冗談を言うな。しかも笑えない。俺はアイツが勝手に妄想で人をくっつけようとするのが気に入らないだけだ。
「はあ〜あ、やっぱり私じゃいやなんですね…」
えーと、朝比奈さん、そっちも変な勘違いしないで下さいね?
ただ間違いを何とかしたいだけなんですから、ね?
「そうですねえ…正直涼宮さんの精神状態は閉鎖空間を作る一歩手前です。
即座に作らない所、成長したって言うところでしょうか。これは迅速に何とかするべきでしょう。」
なんとかってどうしたら良いんだ。
「そうですね、とりあえずあなたは涼宮さんを呼んできてください
ああ分かった。
…って無理言うな!今のアイツを俺が連れてこれるとでも思うのか?!
「むしろあなただからこそですよ。
長門さん。涼宮さんはいま学校のどこに居ますか?」
「新館の屋上…中庭から移動してから、現在のところ28分19秒移動していない。
しばらく移動することはないと予想される。」
それを聞くと、古泉は片手で俺の肩を叩いた。
「だ、そうです。行ってきてください。」
俺はまるで東部戦線からドイツ本国へ撤退するドイツ兵のように戦線に絶望していた。
状況を考えるに、ハルヒは「俺が朝比奈さんとくっついた」と思っていることだろう。
しかも、あの中庭での反応を見るに絶対怒っては来ない。
…むしろ…
考えていても人間は足が動くもので、いつの間にか俺は屋上へのドアの前に立っていた。
ええい、ままよ!
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「行きましたね。では長門さん、あの時一緒に居た、キョン君の友人を連れてきてください。」
「もう既に場所は捕捉した。あとは捕らえるだけ…」
「まあ任意同行で頼みます。それと朝比奈さん。」
「は、はいっ!」
「あなたは私とちょっとこの場所を外しましょう。やることがありますし、
その後適切なタイミングで戻ってくる必要があります。」
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長門の言うように、ハルヒは屋上の柵の段になっているところに座っていた。
「おいハルヒ!」
「何よ。どうしてここに居るなんてアンタに分かったのよ。」
光の関係で逆光になって、表情が見えない。クソっ。
「あー、あれだ。今日は団活は無いのか?」
「…今日は休み。」
クソ、もっと良いセリフは出てこないのか、俺!
「休みでも良いから、少し部室に来てくれないか?」
「なんでアンタにそんなに部室に来い来い言われなきゃならないのよ。」
だー、ここで引いたらダメだ。何がダメだかわからんが、絶対ダメだ!
俺は無理やりハルヒの手を引っつかんだ。
「良いから来い!」
「!!なによ!痛いじゃない!行けば良いんでしょ、行けば!分かったわよ!」
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「来て。」
「おー長門っち!なになに、何の用にょろ?」
「部室。」
「ひょっとしてそれはめがっさキョン君がらみにょろね?」
「…そう。それと。」
「それと何だ?」
「涼宮ハルヒ。」
「…分かった。俺はこう見えて友達思いだからな。全く、キョンも良い友人を持ったもんだぜ。なあ?」
「ははっ、そう思うよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、部室に来たはいいが、俺はどうすれば良いんだ?
ハルヒはおとなしく手首を捕まれてはいるものの、こっちを見ないから相変わらず表情が見えないし、
どうも部室には人気そのものが無い。
やり場無く手をポケットに入れたら、何か紙があった。
古泉の字だ。…アイツ、スリの技まで仕込まれてるのか。肩を叩いたときに仕込みやがったな。
『長門さんが来たら、『全部お前の仕業だろ、出て来い、お見通しだ』と叫んでください。』
?意味が分からん。まあいい。お陰で指針が出来た。
いつもは古泉が座ってる席に、力が抜けているハルヒを座らせた。
「おい、ハルヒ、ちょっとそこで座ってろ。」
「分かったわよ…」
…しおらしいハルヒは何か調子が狂う。
だが、古泉の伝言に拠れば、まず長門が来るらしい。
…待つ時間はカタツムリの歩く速度のようにゆっくりに感じる。
いや、これはダウナーな精神的状況であるハルヒの所為か?
そして、何の前触れも無くドアが開いた。
「…。」
「おー、キョン、俺たちに用事だって?」
「長門っちに頼まれたんだけどー、一体何の用にょろ?」
「キョンが僕達に頼みごとなんて珍しいよね?」
連れて来た三人を見て、瞬間的に俺は古泉の意図を悟った。成るほど。
「あー、すまないな、長門。伝言を頼んだりして。」
いつものように、長門は5ミリほど頭を揺らした。
「いい。」
あー、まずはこれからだな。
来て貰ったのは他でもない。今日、俺は皆と放課後、大貧民をしてたよな?
「ほへぇ?」
鶴屋さん、まあそう意外そうな顔をしないでください。
うん、確かに俺もいきなり記憶喪失に陥ったピアノマンのような
持ち掛け方で聞かれたら普通はそういう反応をするのでしょうが。
「うん、してたよ。キョンは4連敗だよね。あとできちんと掛け金払ってね?」
「なんだ、呼んでおいて何かと思えばそんな話か。
涼宮、こいつは放課後、えーと4:30位までか?チャイム聞いたしな。
俺たちとだべった後、突然部室棟のほうへ走って行ったぞ。スコア表もあるから間違いない。」
よし、アリバイ証明完了。良くやった長門。オマケに古泉。
ハルヒの顔が、少しずつ上がっていった。ようやく表情が見えた。
ハルヒはなにやらキツネにつままれた上に、河童に川に引きずり込まれたような顔をしている。
よし、次の幕を開かないとな。
「と、いうわけだ。『全部お前の仕業だろ、出て来い、お見通しだ』!!」
俺は台本通り…というか、鬱憤晴らしを若干こめて大きな声で叫んだ。
すると、案の定ドアのかげから古泉と朝比奈さんと…だれだこいつ?
「いやあ、ばれてしまいましたか。ばれては仕方ありませんねえ。」
いつものこととはいえ、お前はオーバーアクション気味なんだよ。
「どこまで分かってたんですか?」
クソ、三文芝居に俺をつき合わせるつもりか。
いいだろう、乗ってやるよ。
「あれだ、そこにいる俺のそっくりさん、そいつを使ってハルヒに悪戯を仕掛けたんだろ。
生憎だがな、その光景は俺の教室からも見えたんだよ。」
横にいる男をじろじろ見てみた。おいこらなぜ目を逸らす。
しかもなぜ照れる。わけが分からん奴だ。
しかし古泉がどっから調達してきたんだか知らないが、そいつはウルトラマンと偽ウルトラマン以上に
俺に良く似ていた。本当によく似てるな…さすが機関とやら。底知れないな。
「あなたに見えないような場所を考えていたんですけどねえ、
いやはや、あなたに見られてしまったのは失策でした。」
古泉はやれやれ、という風情で手を肩にまで上げる。わざとらしい野郎だ。
「朝比奈さんにも協力してもらったのに、台無しです。」
だが今回は助けてもらった恩があるし、その辺は見逃してやる。
そう、今の俺は寛容なのだ。…その後が無ければだったが。
…しかしこいつはそれ以上のことをやりやがった。
「実はですね、僕たちは少しイライラしてたんですよ。ねえ、朝比奈さん。」
「そ、そうですっ!涼宮さんとキョン君、いいかげんはっきりしてほしかったんですっ!」
…はあ?何を言い出すこの二人組は。
「ちょ、ちょっと、私が何をはっきりさせないって言うのよ!
私は常に太陽のように公明正大よ!隠し事なんて微塵もないわ!
キョンはどうだかしらないけど。」
…まあ暑苦しいって意味では太陽みたいなもんだな。
「好意。」
まるで固体化した二酸化炭素のような声で長門はのたまった。
一瞬にしてマイナス196℃になった空気に巻き込まれ、固まった俺とハルヒを見ると、
長門は顔を上げ、二人の顔をゆっくりと見、再び口を開いた。
「互いが互いに向けて持つ好意。」
いや、説明はしなくていい。
「なーるほどねえ、たしかにムカつくからなあ、こいつら。バレバレなのにさ。」
「そうそう、今この学校でそれに気づいていない人なんていないのに。」
「え、まーだ付き合ってなかったの?キョン君って、めがっさ鈍いにょろねぇ。」
こら、お前らまで何を悪乗りしてやがる。
いいか、俺はこいつが何をするのか分からんから目を離さないだけだ。
だから自然一緒に居る機会が多いのは仕方が無い。何しろ離れられないか
「きゃー、『離れられない』ってめがっさ凄いにょろ!女の子が一度は言われたいセリフナンバーワンにょろ!」
「お前らなあ、少しは周りに気を使っていちゃつけよ…俺はマジでへこむぞ。」
「まあまあ谷口、気持ちは分かるけど妬かない妬かない。」
「あとは若いもの二人で…ねえ?」
「そうですねぇ、さあ長門さん、行きましょう?」
「…じゃあ。」
おい待てお前ら、この状況で置いてくな…ああああああ!
「…えーとだな、ハルヒ。」「えーと、キョン?」
やべ、被った。
「そっちから言ってくれ」「そっちから言って」
…また被った。
………………
やばい。ここはやっぱり男の俺から言うべきなんだろう。
「その…そういう取り扱いが嫌だったら言ってくれ。あいつらのあの調子だと、次の日には
公認カップルにさせられているだろうから。」
…いや、そういうセリフじゃない。こういう時、もっと良いセリフがあるだろ俺!
「…嫌じゃない。」
………………
「俺で良いのか?」「私でいいの?」
被った…もう三度目か。
くそ、なんだかこいつが元気がないと、俺までへこんで来る。
よし、行くぞ俺!ここはテンション一つが勝負だ!
「悪いわけがないだろ!ああそうさ、最初からお前が良かったさ!
最初からお前に決めていた!付き合ってくれ!」
ハルヒは呆然としていたし、それはそれでレアで可愛いなあと思っていたのだが。
…変に勢いをつけた俺がバカだったとしか言いようが無い。
「…ふっふーん、とーぜんね。私のような超絶的美少女に言い寄られて、
ぐらっと来ない男なんてこの世に存在しないもんね!
ガチのゲイだってノンケに立ち戻るわ!
いいわ、こうなったら学校一といわず、世界一のバカップルを目指そうじゃないの!」
…もう100wの笑顔が復活しやがった。まあその方がいいや。
このハルヒじゃないと正直調子が出ないのも確かだしな。
「さし当たって、家族計画を考えないといけないわね。
やっぱり一姫二太郎三茄子っていうくらいだから、まずは女の子ね!
次は年子で男の子!最終的には野球とまでは行かなくても、フットサル出来る位は必要よ!
何しろワールドカップイヤーだし!」
おーいハルヒ、その慣用句は最後間違っているし、そもそも順番が違うだろ。
「そう?だってこういう両思いのときってすぐするんでしょ?セック」
だー!女の子の口からそんなこと言うんじゃありません!
だからだ、こういう時は、親に挨拶してだ、「お付き合いしています」とか言ってだな。
「あんたふっるいわねえー、まあキョンがそうしたいって言うんならそうしても良いわよ。
じゃあ、行きましょうか!」
行くってどこへだ。
「あたしんちに決まってるじゃない!」
まて、俺は用意が出来てない。つーかお前の家族構成すらよく理解してないぞ俺は。
「そんなの行きながら教えるわよ!」
まあそんなわけで、高校の間、ほんのひと時のものだったはずの俺のお守り義務は、
この日から一生モノになってしまったわけだ。
まあそれでもいいか、と思う俺が居るのは否定しない。
つーかいまさら否定したところではじまらんだろ。
終
オマケ1
「そうそう、挨拶したら次は結納?披露宴?まあキョンの家族は全員連れてくること!妹さんは確実にね!
私の方は絶対に全員来るわよ!」
ああ…まあお前がそう確信してるならそうなんだろう。
っていうかそこまでもう決定済みなのか。
あの一時のテンションで俺はとんでもない決断までしてしまったなおい。
「あとSOS団には特別席を用意しなくちゃいけないわね。
そういえば古泉君やみくるや有希の家族ってどうなってるのかしら。
こちらも全員連れてくることを要求しなくちゃね!」
まあ古泉は家族居るんだろうな、超能力者だとは言っても、一応この世界の住人だしな。
だが朝比奈さんの場合、未来からつれてくるのか?絶対禁則事項だろうな。
でもハルヒなら時空を超越しかねない。
…長門は…モノリスかシリコニイでも持って来たらいいんだろうか?
USBメモリや外付けHDを持って来たらどこに座らせれば良いのだろう。
「あとねえ、谷口と国木田、鶴屋さんも今回のこともあるから必要だし、
SOS団配下たるコンピ研も呼んだ方が良いかしら。
仲人は岡部先生で良いわね。」
いや、むしろ朝比奈さん(大)の方が仲人としては適任だと思うが…
まあハルヒはその辺知らないしな。
「つーかそんなにどこに入れるんだ。ウチは中流家庭だ。そんなに入る場所なんて安くないだろう。」
「なーに言ってるのよ、古泉君でも鶴屋さんでも身近にそういうの持ってる人いるでしょ!
友達なんだから当然唯で貸してくれるに違いないわ!」
…正に『立ってるものは親でも使う』唯我独尊振りだなこいつは。
オマケ2
「なあ古泉、あの男、どっから連れて来たんだ?嫌になる位俺にそっくりだったんだが。」
実際似ていた。正直俺の家族ですら簡単に誤魔化せるんじゃないかって位には。
「何かと思えはそんなことですか。あれはあなたですよ。」
…なんだと?
「ちょっと朝比奈さんに頼んで、連れてきてもらいました。
なんでも『規定事項』だそうで、案外あっけなく通りましたよ。
まあこっちはこっちで、いざという時のためのそっくりさんはダース単位で用意していましたが…」
何の「いざというとき」だ。俺はレアCDやレンタルビデオや羊のドリーじゃない。
「やっぱり本物にはかないませんねえ。」
つーと俺はもう一回あのこっぱずかしい風景を見なきゃならんのか…
未来の俺、がんばれ。つーか俺か…
道理で目を合わさない上、目のやり場に困っていた訳だ。
オマケ3
「あーあ、やっぱりかないませんでしたねえ…
『規定事項』にはかなわないのかなあ…」
「…そんな事は無い。」
「へ?」
「あなたがたが言う『規定事項』は最も確率の高い事象に過ぎない。」
「じゃあ望みは有るって事ですかぁ?!」
「1.68×10のマイナス68乗%の確率であの二人は破局し、その場合の事象の内99%以上の確率で。」
「でぇ?」
「…新しいパートナーが選ばれる。
その場合最も有利なのは近くに居る異性。特に私と…朝比奈みくる。
故に私は離れる道理が無い。」
「と、いうことは…でも負けませんよっ!」
「現状を基にした計算では私のほうが15%程有利。」
「うぐぅ…」
「…あのー、僕には何か無いんでしょうか?」
「古泉一樹には99%以上の確率で10年以内に適切なパートナーが見つかる。
ただし『適切なパートナー』には私たちは含まれない。」
「へえ〜、いい話じゃないですか〜」
「…複雑な気分ですねえ…いや、別にあなたたちが何かというわけじゃないんですが。」
以上。
案外原作の文体って難しいな。
ムッツリ古泉ハァハァ
-予告編「鶴屋さんはポン刀がお好き」-
突然天井を突き破って現れたのは鶴屋さんだった。
朝倉のナイフをがっちりと野太刀で受け止めている。
「グリップが甘い、踏み込みも甘いよ!だから私に気づかれる、侵入を許すのさっ!」
>>540 鶴屋さんの「めがっさ、にょろ」を不必要に使いすぎかな。
それ以外は文体もしっかりしていて、良作だと思うよ。
546 :
ジョン・スミス:2006/06/30(金) 22:31:50 ID:XP3wh4sx
>>545 オレッチも同意見でッス!
結構スキッすよ、この小説。
その他の方々もこれからも
よろしくッス!
548 :
ジョン・スミス:2006/06/30(金) 23:02:34 ID:XP3wh4sx
>>547 黙れ糞が。
貴様のようなクズが
そう言う発言(書きこみ)を
するから、しらけちまうんだろうが。
貴様なんざ、この場所に
くる価値さえないんだ。
貴様は二度とこのような
発言(書きこみ)をするんじゃねぇ。
癒しや、娯楽を求めている
人々に謝罪しろ。
それも出来ないなら、
貴様は三歳児以下だ。
まぁみんな良識ある大人がから分かると思うが、もう一度張っておく
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。
作者でもないのに名有りで意味無くキャラ付けしてるやつはロクなのがいないから困る
誰とは言わんが
>451
>凄い気持ちがいい
凄く、な
筋立てと呼称などの違和感がちょっと。しかし、作文技術は高いなぁと思った。
話をぶった切るようで悪いが、前スレの最後のSSって続編ないのかな?
個人的に続きが見たいのだが。
やっぱり文章は公の場所に出して批評してもらってナンボですね。
。」が禁則だったってことは正直初めて知りました。
次何かに投稿する時には参考にさせていただきます。
鶴屋さんは…当初出る予定が無かったんです。
でも悪友二人組が出るなら出そうかと。
しかし原文の鶴屋さん口調って書いてみると案外難しくて、鶴屋さんの偽者にしかならない。
んで出来るだけ出番減らした上で、鶴屋さんだと分かる要素だけ残したんですが、
違和感バリバリでした。
では、また何か思いついたら投下します。
>>554 まだないんじゃないかな。
とかいいつつ投下のタイミングを計る俺ガイル
>>557 おk
じゃあ透過のラストを投下します
さて、ウケはいいんだろうか…
エピローグ
家に帰った俺は、母親にこっぴどくしかられた。 岡部が今日の無断欠席に疑問を持ち、家に連絡を入れたそうだ。
しかも昨日の欠席の件もばれた様で、「このままじゃ進学するにしても…」などと説教された。
さすがに透明人間になってた…なんて言えやしないからな。 言ったところで精神科のドアをノックされそうだし。
妹は妹で、
「キョンくーん、誰とデートだったのー?」
などと聞いてくる。 本当にデートだったらどんなによかったか。
次の日、学校に行くと谷口がポーションでも飲んだかのように元気に復活していた。
国木田とセットで俺の机に集まる。
「よう、キョン。 何で2日も休んでたんだ?」
「あぁ、それはな…」
「嘘だな。」
いきなり否定かよ。 少しくらい話させろ。 まぁ、嘘を言うしかないんだがな。
「あ、そうそう例のアレ持ってきたんだけどな…」
と自分の鞄をあさり始める。 すまない、もう回収して使用済みだ。
「……スマン、キョン! 無くしたみたいだ」
そんな本気で謝るなよ。 俺が困るだろ。
「いや、別にいいって」
国木田は小動物のような目で谷口を見て、
「でも谷口も何で昨日休んでたの? 高熱とか言ってたけど」
それは俺も聞きたいな。
「あぁ、言うのも恥ずかしいんだがな… キョン、お前が長門と一緒に寝てる夢にうなされちまってな…」
「ははは、谷口らしいといえば谷口らしいね」
やっぱりか。 コイツも実は超能力者じゃねぇのか? やけにカンが鋭すぎる。 そのうち赤い球体になって古泉と出てくるとか…
そこで岡部が入ってきて談話は終了。 ホームルームの時に、俺は岡部から昼休みに職員室行きを義務付けられた。
授業が始まり、俺は訳の分からない数式をノートに写すのに躍起になってると、
「ねぇ、キョン」
シャーペンの先で背中を刺してくるな。 やめてくれ、地味に痛いんだぞ。
「昨日の事、きちんと説明してもらいたいんだけど…」
あぁ、あの事か。 とりあえず俺は昨日の晩のうちに考えておいた言い訳を実践することにした。
「あぁ、あの事はな…」
「嘘ね」
お前も言う前から否定しないでくれ。
「だってキョンが嘘をつく時、鼻の穴が広がるのよ」
思わず鼻を押さえたね。 失敗だったよ。
「本当か?」
「嘘よ。 でも馬鹿は見つかったわ。 さぁキョン、本当のことを言いなさい!」
俺の顔を持って180度まで曲げさせようとする。 痛い痛い、骨がきしむ。
「ま、前にも言ったが、今は落ち着け」
「何よ」
「授業中だ」
ハルヒは辺りを軽く見て、メガネの教師の視線を感じると、すぐさま授業を受ける体制に戻った。
わり
放課後になって俺は部室棟に走った。 いや逃げた。 後ろからはハルヒが、
「待ちなさーい! 団長命令よ!」
などと追ってくる。 俺も本気で久々に走ったね。
文芸部室まで逃げ切ったところでハルヒにつかまり、チョークスリーパーで締め上げられる。
「ひえぇ、涼宮さん怖いですよぉ…」
朝比奈さんが部室の端でハムスターのように丸くなっておびえてる。
「さぁ、理由をいいなさい。 理由によっては丸焼きから焼き土下座にしてあげるわよ!」
首を絞められてるせいで喋れない。 まず手を離してくれ。 というかどっちにしても焼くのか。
「…」
長門も本を読んでないで助けてくれ。
「涼宮さん、ここは僕が説明しましょう。」
古泉がニヤケ面でドアから入ってきた。 ここはお前に任せよう。
「実は涼宮さんとケンカしたことで、学校に来辛くなってたんですよ。 そこで僕たちが便宜を図って、仲直りのチャンスを与えた。 という訳です。」
相変わらず口先三寸のうまい奴だ。 将来は討論家か、それともセールスマンか?
「でもそれじゃあ家に入ってきたことの理由にはならないわよ。」
古泉はこちらを見た。 さすがに予想外だったらしい。 そして苦笑を交えながら、
「それほど涼宮さんに会いたかったんでしょう。」
長門が本から目を離し、古泉を見ている。 心なしか睨んでる気がしなくもないがどうしたんだ?
「そ、そうなの?」
「そうです。」
古泉なんてこと言いやがる。 ってかハルヒも納得するな。
「ユニーク」
使いどころが違うだろ、長門。
「そ、それなら許してあげなくもないかな…」
顔を真っ赤にして言っても説得力がないぞ。
「うるさいわね、とにかく明日はアンタのオゴリよ。 分かった?」
分かったも何も、毎回俺が奢ってる気がするが。
「言い訳無用! 明日はまた9時に集合ね。 来なかったらアンタの家まで押しかけるからね!」
「はいはい、分かった分かった」
「ちょっと、ちゃんと聞いてるの? アンタが来ないと始まんないんだから」
ん、どういう事だ? あぁ、そりゃ俺のおごりだからな。 まったく、俺には平穏というものがないのか? 少しでも持ってるなら分けて欲しいが…
俺は財布の諭吉と野口の数を確認して、諭吉スープレックスでもされたかのようなショックを受けるのだった。
やれやれ、俺の小遣いは無限じゃないんだからな。 勘弁して欲しいよ…
終わり
以上です。
いままでお付き合いいただいてありがとうございました。
今のところ次のネタはある程度できてきてますが、ハルヒの扱いが異常に難しいネタになってしまった。他は大体決まってるのに…
色々模索して、ある程度形になりましたらまた投下します。
それまで小ネタで勘弁してください。
>>550 了解した。
>>524 いいこねたでした。古泉は酒で醜態をさらすことはないだろうな。
ハルヒはひどそうだが。
>>540 >長門の家族がUSBメモリや外付けHD
これ思わず笑った。次回作期待。
>>561 ようやく完結でほっとした。
また投下してください
変なの沸いたな。
>>554 気にしている人がいたとは驚きだ。一応、書いてるよ。
機会があれば投下する。そんときはよろしく。
Junebrideの続きくるかな・・・?
ソワソワ
>>561 ほどよいツンデレぶりの良くできた長編ですね。
谷川風味満載です。また書いて下さいね。
>530
阪本って誰?
異世界人
んで、バター犬使い
阪中だよな。
>>510 キョンも男の子です。
そりゃコンニャクもカップヌードルも試したことあるはずです。
制服に関しては、仰る通りで最初から最後まで制服着たままです。
キョン萌え。
>>564 何年か前、官能小説家数人のトークショーでオナニーをテーマにしたのを見に行ったことがあるが、ものすごかった……
ネタといい方法といい、プロは違う……
『朝比奈みくるの憎悪』・『〜絶望』の作者さんは、もう居ないのだろうか。
「つづく」ってあるんだもん、気になるってよ。
>>575 確かに。
あと、わたしゃあ『長門有希の役割』も気になるよ。
作者氏は戻ってこないかね…
>>544>>555 。」 は禁則でもなんでもないわけだが。なぜか2ちゃんにおいては鬼の首を取ったようにこれを論うやつが多くて笑える。
578 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 04:19:38 ID:Jy5a06sk
『透過』の作者の言動からnacって馬鹿と同質の臭いがしねえ?
今回のこの話にもGJ連発されてたらどうしようかと思った
概ねスルーしてるようで、このスレも随分とマトモになったものだとしみじみしたぜ
>>577 ここ二十年くらいに刊行された中で 。」を使ってる“小説”があったら教えてくれ。うちには一冊も見あたらない。
ハルヒって化粧はしてるのかな?
高校生なら化粧したり香水つかったりしてると思う
長門はしてなさそうだがキョンもワックスとか使ってなさそう
>>579 まあ落ち着こう。
習うのは小学校時代だし、時が経ちすぎてド忘れてる事もある。
実際長文を書くようなもので、会話分として「」使うものなんて
小中学の作文以来で、俺もあやうく最後につけそうになったりした。
孤島前半でキョンが家を出る支度してるときに
髪の毛をネジネジしてる描写があったような気がする
純文学だと。」なんてそれなりに転がってるけどなあ
俺はおかしいと思ったことねえな
うちの教授も「好きにすればいいだろ、馬鹿馬鹿しい」って言ってやがったし
男衆もその辺ズボラなのはいなさそうだなあ。
美男美女だ。
ハルヒは出がけに「おかーさんあたしのマスカラなーいー!」とか大騒ぎしてるんだろうか。
>>544のリンクにも「これが絶対正解ってわけじゃない」って書いてある
それがまさに正解だと思う
これでこの話は終了としたい
でもちゃんとスレの流れを読んで自分では使わない
>>584萌え
あとsageを入れ直してるところも萌え
手元にある「校正ハンドブック」でも「好きずき」とは書いてある。
だが、今現在、ほぼ全てのジャンルの小説では 。」は使わないのが慣例化してるし、なにより谷川が使ってないんだから、二次を書くなら意識した方がいい。
終了としたいと書いたはずだが
マリーセレスト号
1872年に大西洋上で帆船マリーセレスト号が無人で漂流しているのが発見された。
発見者が船内を調べるとどこも異常がなく、まるでつい直前まで乗員乗客がいたかのような状態だったという。
航海日誌は書きかけの文章で唐突に終わり、テーブル上に残されたコーヒーからは湯気があがっていた。
乗員乗客はなぜいつどのようにして消えたのが全く謎のミステリー。
というのは、でっちあげ。
ただしマリーセレスト号が無人で漂流していたのは事実。
だが、のちのちの伝聞でミステリー性を演出するために航海日誌やコーヒーの逸話が捏造脚色されて、
そして逆に「救命ボート」がしっかりなくなっていたことが隠蔽されるようになった。
つまり、マリーセレスト号は航海中、急な悪天候かなんらかの事故が発生し乗員乗客は船を捨て救命ボードに移っただけ。
そして不幸にもボードは行方不明になってしまったが、マリーセレスト号のほうが沈没せずに残ってしまったという話。
なぜ船を捨てボートに移ったのが謎っちゃあ謎ではある。
そういう趣味だったんだろう
前から言いたかったんだが、確かにnacとか自己主張強かったけどSSはそんな悪くなかった。
ここはSS投下して、それ読んで、悪いとこあったら指摘する場所だろ。
GJ連発はどうかと思うが、ちょっと調子に乗ってもスルーするのが大人の対応。
もしくは幼馴染が(ry、でないと離れちまうだろ。
まだ見てるかわからんがnacも気を付けよう、ここは2chだから下手なこと言うとすぐ叩かれる。
あんたのSS自体はそこそこ楽しみにしてるから。
あの汚いコテはずして汚い自己主張も捨てれば応援してあげてもいいよ
名無しのまま何作品も投下してる人居るだろ(文体に特徴があるから通し読みするとすぐわかる)
そういう人を見習えってこったな
>>594 >>595 俺もそう思う。
でも汚いってのは言いすぎ。
誰だってあれだけGJ連発されればちょっとは調子に乗るよなぁ。
でも、あくまでここは2chだって事を忘れないで欲しい。
コテはおおいに歓迎だが
いちいちレスの最後に nac ってつけるのはちょっと遠慮してほしい
それさえなければ投下してくれる神の一員には違いないよ
俺は名無しで投下してる子だけど
>>595の言うとおり、わかる人にはわかるからまぁいいかなって感じ
でもコテつけてるからって叩くのはやめないか?
作品管理の面から見れば、保管庫の人は助かってると思うし
多少気に入らなくてもスルーして行こう
スレの空気をよくするのに、一番貢献するのはスルーなんだからさ
599 :
ジョン・スミス:2006/07/01(土) 09:46:41 ID:XgRE16fN
投下してくれる人=神
ということデスか?
それでいいと思う
で、投下もしないのに名有りでキャラづけしてるやつはイラネ
>>600 あれは単なる荒らし、他スレでも暴れてる
ところで亀レスだが、
感想批評用の掲示板が欲しいって言ってる人がいたけど、
元祖の保管庫の掲示板があるじゃないか?
投下ラッシュがあってすっかりレスし忘れてた作品とかに感想書くときは専用掲示板欲しいね
でも元祖の方は更新頻度低いから……
長いから4回ぐらいに分けて投下
『涼宮ハルヒの黒日』注:なんとなく『涼宮ハルヒの白日』の続き
好物のハンバーグが焼きあがるのを椅子に座って待つ妹より素直なハルヒがいたホワイトデーは過ぎ
週が明けると、あのハルヒはなんだったのかと笑ってしまうぐらい、ハルヒはハルヒに戻っていた。
ま、一年間の俺をねぎらうような言葉をかけたと思ったら、週明けに阪中が部室にやってきて
最後とばかりに幽霊騒動を持ち込んできたから、立つ瀬がなかったのかもしれんな。
もっとも俺の勘繰りすぎという可能性が一番高いのであって、ハルヒはおかまいなしに
退屈しのぎになる、と暴走し、見事な空振りをシュークリームで埋め、金曜日の意外な展開に動揺し
ワンコロの不調に憂鬱を覚え、溜息でもついたんじゃないかと思うぐらい意気消沈していた。
長門とシャミセン、おまけで古泉の活躍によって、翌日にあっさり消沈ムードは消失したんだが
ハルヒがただ元に戻るだけで我慢するはずはなく、実際はいるはずもない幽霊を探して
夜中に集合をかけ、まだ肌寒さが残る中を散々歩きまわって写真をとりまくり、結果に嘘の憤慨を見せていた。
幽霊なんぞいるわけがないとわかっていた俺は、現像した写真を部室で眺め、文句を楽しそうにこぼすハルヒを
横目で見ながら、ハルヒが次に当たらずとも遠からずな宇宙人陰謀説を唱え始めないか心配してたわけさ。
なんにせよ、あさっての修了式でいよいよ一年は終わりだ。
そんな感じがしないのは、春休みの間もSOS団はずっと活動予定だからだろうな。
今のところ春休み用の予定はないが、さて。ハルヒのことだから、何かするに決まってる。
俺の懸念は、それがただ楽しいことなのか、苦労した上で楽しいことなのか、どっちなのかだ。
「あっという間でしたね」
長門の本を閉じる音はもはやSOS団にとって欠かせないものとなっており、これがなければ
一日の終わりは来ないのではないかとさえ思える。そして朝比奈さんの着替えを待って
集団下校することも、毎日ではないにせよ、最近はよくあった。男子二人は当然部室の外で待機だが。
「なんだ急に。感慨深い声を出しやがって」
俺は衣擦れの音を楽しみつつも、窓の外に視線を向けている古泉に言葉を返した。
「いえ、ふとそう思いまして」
窓から俺に視線を移し変え、古泉はニ割ぐらい憂いを含んだ笑みを漏らした。
今のコイツの表情なら、十人に七人ぐらいの女子は心を動かされるんじゃないかな。
「まだ二日ある。振り返るのはそれからだ」
俺が言えた義理でもないのだが、とりあえずそう答えておいた。
だが、答えながらも、俺は理不尽さを感じていた。なぜ修了式が水曜日なんだ。
少しは融通を利かせて、先週の金曜で終わりにしてくれないかと思うんだが、そこは公立高の悲しさ。
きっちり日程に沿うんだとさ。短縮授業期間は取り上げるくせによ。
「ですが、僕にとっての一年は、ホワイトデーで終わったように思えるんですよ」
案として生徒会長氏に直談判しに行くことを思いついたとき、古泉が口を開いた。
俺も古泉を否定しない。ハルヒが終わりと言ったら終わりなんだろう、ある意味。
「そういや、お前のテーマはなんだったんだ?」
いい加減、時効も成立していると思われるので、問いかけてみた。
古泉は憂いをあっさり引っ込め、苦笑をこぼした。
「同じですよ、おそらく。涼宮さんの考えそうなことです」
「ってことは、感想と抱負か」
「ええ」
やれやれ。テーマを教え合うなと監視してた理由は、自分のたくらみがバレないためだったのか。
いかにもハルヒらしい、回りくどいやり方だ。素直に言えばいいものを。
「素直じゃないのは、あなたもでしょう?」
「古泉、何が言いた――」
からかうような声を出す古泉に、思わず反応してしまった時だ。
「お待たせしましたあ」
部室の扉が開いて、声の持ち主の朝比奈さんではなくハルヒがまず出てきた。
次いで長門、最後に扉を引いていた朝比奈さんがしずしずと廊下に出る。
「さあ、帰るわよ!」
鍵を確認して、ハルヒが元気よく声を張り上げ、俺の反応はうやむやになった。
わざわざ再確認して問い詰めるほどのことでもないと俺は判断し、古泉もそれ以上何も言わなかった。
そもそも、ハルヒがいる前でする話なのかどうかも、怪しいからな。
そういうわけで、俺は普通に集団下校を楽しんでいたのさ。
いつも古泉と話してばかりではなんなので、朝比奈さんの隣に並びかける。
「朝比奈さん、春休みどうします?」
天気の話から切り出さなかっただけ、マシだと思ってもらいたい。
いや、もしかすると天気の話のほうが意味があったかもしれないが。
朝比奈さんは、頬に手を当てて首を傾げ、困ったフリをした。
「まだ考えてないんです。キョンくんは何か予定入ってますか?」
まるで、考えてないのではなく、考える必要もない、と言いたげだった。
「ありません」
俺は正直に答えつつも、なぜか自分の言葉が白々しく思えた。
なぜなら、
「春休みの予定なんて、もう埋まってるじゃない!」
先頭を進んでいたハルヒの耳に入っているに決まってるからだ。
振り返ったハルヒは、喜色満面の顔で俺の鼓膜を揺さぶった。
「春休みは短いんだから、一日一日を全力で行くわよ。あたしの中にはプランが山積みなんだから」
わかっていたことではあるが、実際宣言されると、また格別の思いがあるな。
どうでもいいが後向きに坂を下ると、こけるぞ。
ハルヒは器用にもこけることなく、ずっと俺たちのほうを向いたままプランを披露してくれた。
朝比奈さんが青くなったり赤くなったり目を白黒させていることから、内容は推測してもらいたい。
俺には横の朝比奈さんしか表情を窺えなかったが、すぐ後ろにいるはずの長門は無表情だろうし
シンガリをつとめている古泉は、笑みを浮かべたままだろうと容易に想像がついた。
「ま、全部予定だから、実際は全然違うものになるでしょうけど、楽しみに待ってなさい」
坂を下り終わる頃に、ハルヒはそう締めくくりやがった。
それじゃ今までのプランはなんだったんだ、と文句は言わないわけである。
いくら俺の成績が芳しくないとはいえ、一年も付き合ってれば学習するさ。
「それじゃ、明日もちゃんと来なさいよ」
「お先に失礼します」
長門のマンション付近で、俺たちは示し合わせたように別れた。
ハルヒは言うだけ言うと駆け足で、古泉はゆったりと歩いていく。
「キョンくん、また明日部室で」
こちらを見ながら手を振り振り去っていく朝比奈さんに、俺も手の左右で応えた。
ハルヒに対抗してるのか、後向きに歩いてますけど、危ないですよ朝比奈さん。あ、転んだ。
駆けていって手を差し伸べたくなったが、お尻をさすりながら立ち上がった朝比奈さんは
恥ずかしかったのか俺に顔を合わせることなく、背を向けると、早足で歩いていった。
大丈夫そうだからいいか。
「じゃあな」
傍らの長門に声をかけ、俺も帰ることにする。今日は自転車通学だ。
長門はじっと俺を見つめ、首を縦に振ってから、マンションの中へ入っていった。
チャリをこいで家路につく。なんのことはない一日だった。
もっとも、楽しい一日だったんだがな。ハルヒがいる限り、大して何も起こらなかった日でも
退屈に感じることだけはないだろうよ。いや、ハルヒだけじゃないな。SOS団という存在そのも――
「っと」
石でも置いてあったか、チャリが跳ねる。ふらつくチャリを制御して、転倒は免れた。
「ったく、危ねえな」
考え込んでた俺の前方不注意にも責任はあるのだが、悪態をついてしまう。後ろを無意識に振り返る。
何を考えてたか忘れちまった。いい気分をつまらんことで害されると、一日全体にケチがついた気になるな。
こんな日はさっさと風呂に入って寝るに限る。俺はチャリをこぐ速度を上げ、家を目指した。
明けて火曜である。
昨日は有言実行ということで、メシ食ってから風呂に入ってさっさと寝た。
おかげで目覚めはこの上なく爽快だ。窓を開けて深呼吸するぐらい余裕があった。
目覚まし時計も妹の乱入も必要なしに、はっきりと目を覚ますことができたのは、久しぶりかもしれん。
それにしても、妹も四月から最高学年なんだから、そろそろ遠慮を覚えてくれてもいいんじゃないのか。
なんの目的か知らんが、いつまで俺の部屋に入り浸るつもりだ、あいつは。
「よっ、キョン」
「よう」
教室に入ると、谷口が声をかけてきた。
どうでもいい返事をして、ああこれも明日でいったん終わりか、などと思ってしまう。
ううむ、どうも変な感情が俺にまとわりついて離れてくれない。なんだこれは。まさか感傷か?
いつから俺はセンチメンタルな人間になってしまったんだ。旅にでも出るか。
どうやらこの感情は俺だけに巣食っていたわけではないらしい。
谷口も人並みに感傷というものを持ち合わせているらしく、またお前と同じクラスだといいなと
気味の悪くなるようなことを言い、すぐに合流してきた国木田にも同様のことを言っていた。
クラスのそこかしこから同じような声が漏れ出て、まるで幽霊が集会でもやってるような有り様である。
今生の別れでもあるまいし、これはちょっと大げさなんじゃないのか。
「僕だってキョンと同じクラスだったらいいと思うよ。キョンは違うの?」
そんなわけはない。国木田、お前や谷口とはできれば四月からも一緒がいい。
そのような趣旨の返事をすると、谷口がにやにや笑いながらツッコミを入れてきた。
「俺たちだけか? 誰か忘れてるんじゃないのか」
「なんのことだ?」
「いい加減、素直になれよ、キョン」
いい加減も何も、俺は素直に生きてるつもりだ。
「僕にでもわかるあからさまな嘘をついてもしょうがないって」
国木田の追随に、俺は言葉に詰まってしまった。
俺はいつからオオカミ少年になったんだ。
いつまでも話していてはチャイムが鳴ってしまうので、そこそこで俺たちは席に戻った。
俺の場合、教室に入ったとたん谷口に捕まってしまったため、戻るんじゃなく着くんだけどな。
俺の席の後ろにいる女子生徒は、めずらしく別の女子生徒と談笑していた。
そんな光景をクラスで見たことの無かった俺は、不思議な表情をしていたらしい。
「なによ、キョン」
座っているほうの女子生徒が口を尖らせてきた。
触らぬ神にたたりなしの精神で、俺はかばんを机の横にかけ、着席しつつはぐらかす。
「いや、何も」
答えながら、奇妙な違和感を覚えた。だがそれがなんなのか、掴み切れずにすり抜けていった。
俺をよそに立っているほうの女子生徒、たしかクラスメイトの阪中だ、が言葉を継ぐ。
「それでね、昨日、ルソーを散歩に連れて行ったら、いつものコースを通ってくれたのね」
「J・J、もう散歩大丈夫なんだ?」
「うん、お医者さんもお墨付き。涼宮さんたちにはほんと感謝してるのね」
阪中は涼宮ハルヒと俺を交互に見ながら、感謝の言葉を述べた。
なんとなくそうせにゃならん気がしたため、振り返って阪中と涼宮ハルヒを視界に入れる。
「幽霊がいなかったのは残念だけど、J・Jが元気そうでなによりだわ」
阪中に答えた涼宮ハルヒは、照れ隠しなのか、ぶっきらぼうな口調だったが、顔は笑っていた。
その表情に、俺は驚いていた。コイツ、こんなキャラだっけ?
思わずまじまじと見つめてしまう。それを見逃してくれるほど、甘くはなかった。
「さっきからなんなのよ、キョン。あたしの顔になんか文句あんの?」
笑い顔から不機嫌へ急降下を遂げた涼宮ハルヒは、俺に突っかかってきた。
俺ぐらいなら簡単に壁に押し付けそうな剣幕に耐え切れず、俺は素直に白状した。
「涼宮が笑うところなんて、初めて見たから、つい」
「は?」
涼宮は、俺の言った意味がわからないとばかりに、俺を見たまま口を半開きにした。
阪中も怪訝な顔で俺を見てくる。なんだ? そんなに俺は変なことを口走ったのか?
自分の言葉を反芻して、もしかしてセクハラ発言だったのかと思い始めたとき、涼宮が口を開いた。
「キョン、あんた頭大丈夫?」
どういう意味なんだそれは。とりあえず文字通りに解釈しておくか。
だが俺は至って正常だ。違和感の正体に気付くぐらいにな。
「涼宮、そっちこそなんの心境の変化だ? 俺のことをキョン、なんてあだ名で呼んで」
さっきの違和感はこれだった。
明日で一年は終わりになるが、それまで一度たりともあだ名で呼ばれたことなんざなかったぞ。
そもそも、席こそずっと近くだったが、そんなに親しい間柄でもなかったしな。
質問に質問を返した俺に、涼宮は答えもせずに、また俺のあだ名を呼んだ。
「キョン?」
なんだよ、その宇宙人でも見たような不安げな顔は。
ああ、涼宮にとっては不適切な比喩だったか。涼宮なら不安どころか喜ぶもんな。
宇宙人のほかに、超能力者と未来人だっけ。なんかまだいたような気がするが、忘れた。
涼宮と阪中の視線に晒されながら、さてなんと答えればいいのやらと思っていると
担任の岡部が入ってきて、ホームルームと相成った。慌てて自分の席に戻る阪中を横目に
俺も返事をうやむやにして、前を向く。岡部があと一日でどうたらこうたら言いだしたのを
聞き流しながら、俺は後方から押し寄せる形容不可能なプレッシャーを背中に感じていた。
修了式を明日に控えて授業があるわけもなく、本日の予定は大掃除だけである。
酸素を求めて水面に上がってくる金魚の気持ちがわかるほど、息苦しさがピークに達していた俺は
率先して教室の外に出て行き、あちこち掃除しまくった。掃除って、気持ちいいものだったんだなあ。
俺は今なら、掃除好きの心情を理解してやってもいい気がした。
掃除が終わり教室に戻った俺は、できるだけ谷口や国木田と話すことに時間を割いて
じっとこっちを見てくる涼宮に気付かないフリをした。
勘弁してくれ。
俺が何をしたと言うのだ。
やっと終わった。なんつう一日だ、今日は。
「谷口、国木田、ゲーセンにでも繰り出すか?」
居心地の悪い一日をなんとかやり過ごした俺は、かばんを提げ二人に声をかけた。
本来なら校則違反だが、あいにく俺はそこまで校則を遵守する人間ではなかった。
だからといって、わざと校則を破ってやる、などとも思っちゃいないけどな。
俺の提案に、二人は変な顔を見せてくる。またこの表情か。阪中と同じだ。
谷口が、口を開いた。
「今日は例の活動はないのか?」
「なんだそれは?」
今日は、妙なことを言ってくる人間ばっかだ。
活動ってなんのだ。俺にそんな情熱があるわけないだろうに。
俺の疑問に答えたのは、谷口でも国木田でもなかった。
「いいっ加減にしなさいよ!」
その声とともに、俺の体が浮きかける。
背後から制服の襟首をつかんで、俺を引っ張ったのは、
「キョン、笑えない冗談を続けられても、こっちは全然面白くないの!」
涼宮だった。
「それに何? あんたSOS団をサボる気? あたしの目の黒いうちは、そんなことさせないわよ!」
俺に抗議する間も与えないほど一気にまくしたて、制服ごと俺を引きずりだす。
あっけに取られる谷口と国木田を見ながら、俺は抵抗しても無駄だと悟った。
やれやれ、今日は厄日だ。
制服が破れてはかなわないので、引きずられながら涼宮を説得し、立たせてもらう。
手を離した涼宮は、重心を前に置いて歩き出す。肩を怒らせて、ずんずんと早足でだ。
有無を言わせぬその背中に、俺もしぶしぶついていく。
目的地? そんなのは俺が知りたいね。
渡り廊下を越えたところで、俺にも目的地がわかった。
足を運んだことはないが、たしかここは文化部の部室棟だな。
涼宮は、立ち並ぶ扉のひとつで足を止めると、ノックもなしに開け放った。
「あっ、涼宮さん。こんにちは」
すると部室の中から、甘い声が聞こえてきた。俺も扉の前まで進み部室を覗く。
そして目を疑った。
「キョンくんも一緒だったんですか。いま、お茶の用意をしますね」
メイド姿のかわいい女の子が、俺に微笑みかけてきたのだ。
いや、女の子と呼ぶのは失礼か。小柄だが、小学生というわけではない。
なにより、ゆったりしたメイド服の上からでもわかるふくらみが、それを否定していた。
それに、彼女も俺のあだ名を呼ばなかったか? おい俺、いつ知り合ったんだ。
ぼけっとしてると、涼宮が振り返って眉をひそめた。
「そんなとこで突っ立ってないで、さっさと入りなさいよ」
「あ、ああ」
部室の中へ入る。メイド服姿の美少女にばかり気を取られていたが、中にはさらに二人いた。
黙々と分厚い本を読んでいるショートカットの女子と、ぺらぺらの微笑を浮かべている男子である。
二人ともパイプ椅子に座っている。そのうち薄いほうが声をかけてきた。
「どうしたんですか? まるで今日、初めて知り合ったような顔をして」
その通りなんだよ、と返事をしようとして、そうじゃないことに気付いた。記憶を探る。
たしか、この優男は、
「九組の古泉だったか?」
先日の球技大会で、司令塔の位置に居座ってキラーパスを出しまくってた奴だ。
名前を覚えていたのは、俺と同じディフェンス役だった谷口が悔しそうに何度も言ってたからである。
谷口からの連想で、美少女の名前も思い出す。北高の女神こと、朝比奈みくるさんだった。
メイド服姿なので、一瞬わからなかった。不覚。
残り一名の女子生徒の名前は浮かばなかったが、いかにも影が薄そうだから仕方あるまい。
影が薄くても同じクラスならわかるんだが、そうじゃないとこからすると、別のクラスだな。
「たしかに僕は九組の古泉ですが……」
古泉は安物の笑みを少し困ったように歪め、
「涼宮さん、何かあったんですか?」
正面向かって奥、いちばん偉そうな席に腰を下ろした涼宮に話を振った。
「知らない」
明らかに不機嫌とわかる表情で、涼宮は机に備え付けてあったパソコンをつけた。
不機嫌になりたいのはこっちのほうだぜ。だから俺は言ってやったのである。
「で、涼宮。なんで俺をここに連れてきたんだ?」
さっき涼宮が言った名称を添えて。
「SOS団だったか。宇宙人にテレパシーでも送るのが目的なのか?」
部屋を沈黙が覆った。
古泉は笑みを消し、俺を見たまま動かない。
文学少女も本を読む手を止めて、俺に視線を注いでいる。
朝比奈さんも、急須を傾けたまま、俺を見て固まっておられた。湯のみからお茶がこぼれる。
そして涼宮はというと、席を立ち、無言で俺に歩み寄ってきた。
身構える俺より早く、ネクタイをつかんで猛然と手前に引く。顔近いぞ。
「それ本気で言ってんの、キョン」
そう言った涼宮の顔はやや口元がひきつってはいるが、笑っているように見えた。
しかし笑っているのではない証拠に、俺を覗き込む瞳は怒りに揺らめき、声も低かった。
馬鹿力でネクタイをつかまれ苦しかったが、俺は声を振り絞って肯定の意を示す。
「ああ」
次の瞬間、ネクタイに加えられていた力が抜けた。踏ん張っていた俺は支えきれず後ろによろめく。
体勢を立て直し、涼宮を再び窺うと、そこに浮かんでいた表情は、呆然だった。
目を見開き、手はネクタイをつかんでいた姿勢のまま、中空にさまよわせている。
そんな涼宮を見たのは、初めてだった。
何か声をかけるべきなのか、言葉を探していると、不意に涼宮が動き出した。
向かった先は本棚だ。そこから一冊、分厚い装丁本を抜き出し、俺に向き直った。
何をするつもりだ、って、まさか。
そのまさかだった。
涼宮は、手に持った本を振りかぶると、俺の頭を目掛けて、振り下ろした。
「うわっ!?」
目測が誤っていたのか、それともわざとか、俺の前方を通過する。
体を反らして回避しなくても、当たっていない距離ではあったが、俺は肝を冷やした。
「どう、下手な芝居は止める気になった? 次は当てるわよ」
涼宮の目はマジだった。思わず俺は声を張り上げる。
「よせ、やめろ涼宮、死ぬって!」
「涼宮さん、やめてください!」
緊迫感のある声とともに、古泉が席を蹴った。パイプ椅子が倒れこみ、金属質の音を立てる。
そのまま古泉は、再び本を振りかぶっていた涼宮を後ろから羽交い絞めにした。
「放しなさい! 放せ!」
抵抗する涼宮に、古泉はあくまで放す手を止めない。
「いいえ、放しません。落ち着いてください、涼宮さん」
「うるさい! これだけは、この悪質な冗談だけはあたしは許せない!」
「彼がそんなことをする人でないのは、涼宮さんがよくご存知のはずでしょう!?」
古泉の声も切迫していた。
「つまり、彼はなんらかの事情によって、SOS団のことを覚えてないんですよ!」
涼宮の動きが止まる。手から本が滑り落ちた。鈍い音があがる。
「覚えて、ない?」
古泉の言葉を反復した涼宮は、その言葉すらも信じられないように、俺を見てくる。
「そうとしか思えません」
諭すような古泉に、涼宮は顔を動かし、文学少女を見た。わずかな動きで首肯する文学少女。
次に朝比奈さんに動かす。半泣きでおろおろしている。そして背後の古泉を見て、また俺に視線を移した。
しばらく押し黙っていた涼宮は、急に明るい声を出してきた。
「まさかそんなわけないわよね。昨日まで普通だったじゃない」
無理をして作ったような笑顔で話しかけてくる。
「ね? キョン、何か言いなさいよ。ほら」
痛々しささえ垣間見える涼宮に、俺は応えてやりたかったが、嘘で繕うわけにもいかなかった。
「すまん」
俺の一言に、顔を硬直させる涼宮。口を動かすが、声をなさない。
涼宮の瞳が揺れる。目がそっと閉じられ、糸が切れたように涼宮は古泉の腕の中へ、崩れ落ちた。
「長門さん、これは一体、どういうことなんですか?」
涼宮を保健室に連れて行った後。
再び部室へ戻ってきた俺たちは、椅子にそれぞれ腰掛けていた。
俺がおとなしく席に着いている理由は、どう考えても俺に関係することだからである。
顔見知り程度の人間が、旧知の間柄のような態度を取ってきたら変だろ、普通。
それに、知り合いも朝から俺を見る目がおかしい。これで変だと思わないほうがどうかしてる。
さらに言えば、涼宮が気絶するなんて、天地がひっくり返ってもありえないと思っていた。
疑問を処分する当てもない在庫のように抱えたまま家に帰っても、ひたすら寝つきが悪いだけだ。
冒頭の発言は、古泉のだ。呼びかけた相手は、文学少女。長門さんと言うらしいな。
名前を聞いて、なんとなく思い出したのは、文化祭のとき黒ずくめでギターを弾いていた姿だ。
ボーカルが涼宮だったことで、しばらくクラスの話題を集めていた。たしか隣のクラスだ。
同学年だから、呼び捨てにしておく。長門は古泉の問いかけに、口を開いた。
「当該メモリがこの人の記憶領域から抜き取られている。この場合、当該メモリとはSOS団を指す」
なんのこっちゃ。俺にはさっぱりだが、古泉にはわかったらしい。
「単なる記憶障害とは違うということですか?」
「そう」
長門がうなずく。
「いわゆる記憶障害は、物理的な働きかけないし加齢により、当該メモリにアクセスする能力が
減退することを言う。アクセス先の情報が存在しなくなるわけではない」
古泉を見たまま、話を続ける。
「そしてこの人は、アクセス能力に問題は認められない」
「なるほど。文字通り、記憶喪失というわけですか」
なるほどなのは古泉、お前と長門だけだ。朝比奈さんも首をひねってらっしゃるぞ。
と、俺は思ったんだが、朝比奈さんも話が理解できているらしく、神妙な態度で二人を見ていた。
俺だけが部外者か。仕方ない、ここは我慢の一手だ。
「ところで、このような手段を取ることができる存在というとやはり……」
古泉の言いよどみに、長門が言葉を継ぎ足した。
「情報統合思念体」
規制入ったからここまで
えーーーーーーッ!?
ちょっと待て、俺のこのやり場のない気持ちをどうしてくれる。
続きが気になるじゃねェか。
刊行しろよ谷川
つC
マジで続きが気になる
ここが谷川さんが頻繁にやってくるスレですね
めっちゃいいところで切りやがってこのヤロウ、というほめ言葉を送りたくなるぜ
キョンが記憶を失うという状況は思いつかなかったぜ
果たして谷川はこれを超えられるのか
記憶喪失したキョンの反応が『らしい』。それに対するSOS団のメンバーも。
すごくおもしろい。非常に続きを読むのが楽しみです。
本当に谷川じゃないよな。ってくらい続きが気になる。
何か実際来てそうだし。(ネタ被り防止)
ここにSS落としても不思議じゃない。
谷川仕事しろ、はここでは最大級の褒め言葉。
なんというか、転んで頭打って忘れた とか、そういう安直な理由じゃない事が余計
良い感じな雰囲気を醸しだしてる。
ふと何気ない事が事件の発端だったり、それまで気づかない感じが原作っぽいな。
やべwwwwwwww
気になってバイト行けねwwwwwwww
早めに投下してくだせぇ
おねげーしませう
ここまで確認したところで、古泉は俺に向き直った。
「昨日の、そうですね、午後四時以降のあなたの行動を教えていただけませんか?」
馬鹿丁寧な奴だな。タメに敬語を使わんでもいいだろうに。
だが、その前にだ。
「なんでもいいから、俺がSOS団とやらにこの一年いたという証拠を見せてくれ」
いくら俺でもはっきりさせておきたいことはある。
百聞は一見にしかず。涼宮が気絶しようと、この目で見るまで確信はできなかった。
俺の質問に反応したのは、朝比奈さんだった。
「えっと、あの福笑いはキョンくんが昨年末に自分でやったものですけど」
指差した先に貼ってあるのは、たしかに俺の特徴をよく捉えている福笑いだった。
ですけど朝比奈さん、顔がぐちゃぐちゃで、これだけじゃ確証にはなりませんよ。
「それじゃ、ええと……あ、写真がたくさんあるのを忘れてました」
と言って、朝比奈さんは黒板に俺を誘導する。
たしかにそこに貼ってある写真のうちの何枚かには、俺が写っていた。
俺の寝顔、古泉と水着姿で並んでる俺、得意満面の涼宮と敷かれてる俺。
ハイタッチしてる俺と谷口に微笑みかけているチア姿の朝比奈さんと、ダグアウトにいる長門。
打ち上げと銘打って、ウェイトレス姿の朝比奈さんを囲んでいる俺たち。妹まで写っている。
「それと、こんなのもあります」
朝比奈さんがおずおずと差し出してきたのは、冊子だった。文芸部の機関誌か。
「文芸部と書いてありますが、実際に作業を行ったのはわたしたちSOS団です」
たしかに編集長涼宮ハルヒとあった。中身を見てみると、俺の名前が執筆者の一人として記載されてある。
該当ページを読んでみた。三ページ目ぐらいで俺が書いたものだと確信して閉じる。
というか、どういう経緯で俺はこの恥ずかしいエピソードを披露することになったんだ。誰か教えろ。
「ありがとうございます。朝比奈さん」
俺がSOS団にいたことは疑いようもなかった。おかしいのは俺で間違っていないようだ。
記憶がなかったとは言え、涼宮には悪いことをしたな。あとで謝ろう。
全面的に協力する気になった俺は、椅子に座りなおすと、古泉に話しかけた。
「昨日の午後四時以降だな、わかった」
そうだな、昨日も短縮授業だったから、谷口や国木田と昼メシを食った後、ぶらぶらして
別れたのが四時ぐらいだったはずだ。チャリをこいで帰ったのが四時半前。見覚えのない
ネコが家にいて、妹がシャミセンとか呼んでたのが記憶によく残ってるな。
その後、メシを食って風呂に入って、さっさと寝た。九時過ぎには寝てたな。
「こんなもんだが、どうだ?」
我ながら中身のない説明を終えた俺に、間髪入れず古泉は問い返してきた。
「なぜ、そんな早くに就寝したんですか?」
「なぜって、それはだな」
なんだったか。思い出したくない部類だった気がする。ああ、そうだ。
「チャリが石を踏んで、一日にケチがついた気がしたからだ」
それを聞いて、古泉は長門に目配せを送る。古泉を見つめる長門。
「その場所へ僕たちを案内できますか?」
「アバウトな位置でいいなら」
通学路だから、アバウトと言っても、かなり正確だとは思うけどな。
だが、石を踏んだことぐらいがなぜ問題になるんだ。
「世の中は、意外となんでもないことが重要だったりするんですよ」
古泉はまったく説明になってないことを言うと、
「ああ、そうでした。あと少々、言っておかなければならないことがあります」
気持ちの悪いことにウインクをしながら人差し指を立て、自分の唇に当てて、ポーズをとった。
「涼宮さんと僕たちの秘密について、です」
「……それを、信じろと?」
数分にわたる説明のあと、俺が最初に発した言葉がこれだった。
「できれば。最低でも、涼宮さんの部分だけは信じてもらわなければなりません」
答えた古泉ではなく、朝比奈さんを見る。真面目な顔をしていた。
長門はどこを見ているかわからない。自己紹介も辛辣だったしな。
「わかったよ」
記憶喪失を自覚している俺がいるぐらいだ。超能力者や未来人や宇宙人がいても不思議じゃないさ。
「それでは、まず涼宮さんを起こしにいきましょう」
俺たちを引っ張る役は、どうやら古泉がするようだ。
「涼宮さんを必要以上に刺激しないためにも、あなたは先に帰ったことにします」
「それで大丈夫なのか?」
俺のことはどう説明付けるつもりなんだ。
「大丈夫です。僕たちがフォローしますから。それに一両日中には解決してみせます」
右手で自分を、左手で朝比奈さんと長門を紹介しながら、古泉は自信を持って言った。
さらに付け加えてくる。
「念のため、携帯電話の電源は切っておいてください。合流するまで自宅にも帰らないように」
「わかった。どこで何時に待ち合わせだ?」
「四時に光陽園駅前でどうでしょう」
古泉の提案に、俺は即答しかねる。
「四時まで時間潰せるかな」
駅前で暇つぶしに使える場所はコンビニぐらいしかなく、昼過ぎの今から四時まで
居座れる根性は、俺にはなかった。涼宮と遭遇する可能性が消せないのもマイナスだ。
仕方ないか。少し足を伸ばして、北口で時間を潰そう。そう思ったときだった。
「わたしの家で待てばいい」
口を開いたのは長門だった。俺に視線を合わせず、そのままつぶやく。
「集合場所にもなる。合理的」
古泉に俺は無言の視線を向ける。どういう意図なんだ、この発言は。
肩をすくめる古泉。朝比奈さんは口に手を当て、顔を赤く染め驚いてらっしゃるようだ。
「お前は俺を嫌ってるんじゃないのか?」
自己紹介といい、決して目を合わせない態度といい、そうとしか思えん。
長門はあさっての方向を見たまま答える。
「嫌悪感を抱いているわけではない。無関心」
自分を宇宙人と紹介した女子生徒は、無表情で俺の心を再度えぐってきた。
「あの人と情報を共有していないこの人は、わたしにとっては他人に等しい」
末期ガン告知をする医者でも、もう少し温かみを持って話しかけてくると思うぐらいの淡々さだ。
「この人には、わたしはいかなる葛藤も生じない。提案はそれが最も妥当であると判断したため」
「谷川みたい!」
「谷川だと言われても納得」
「谷川を超えた」
馬鹿みたい。
作者にも谷川にも失礼だ。
明らかに俺に対する返答なのにこの人この人、って繰り返されると、辛いものがあるな。
俺の沈黙を肯定と受け取ったのか、長門はかばんから鍵を取り出すと、古泉に手渡した。
古泉経由で俺に渡ってくる。マンションの場所と部屋番、暗証番号も教えて、いやつぶやいたのが耳に入った。
「あとひとつだけ。あなたの涼宮さんに対する呼称は涼宮ではなくハルヒです」
部室から廊下に出ながら、古泉が声を差し伸べてきた。
「その点だけ留意してもらえれば、不意に遭遇してもやり過ごせると思います」
安い笑顔でも、面を向かって話してくれただけで救われた気になるから不思議だ。
では、と手をひらひらさせて背を向けた古泉とそれに従う二人を見て、疑問が湧いた。
「待った。俺からもひとつ質問させてくれ」
足を止める三人。うち二人が俺に向き直った。
「なぜ涼宮、いやハルヒは気絶したんだ?」
例えば谷口が俺と同じ状態になったとして、俺が気絶するかと言ったら、断言してもいいが、しない。
ましてあの涼宮だ。朝比奈さんが気絶するならともかく、俺には理解できない。
「涼宮さんにとって、SOS団とともにあったこの一年間はかけがえのない、大切なものだったんですよ」
と、古泉。
「それを反古にされたときの衝撃は、察するに余りあるものがあります」
そこでいったん間を切って、可笑しそうに言葉を付け加えた。
「ということにしておきましょう」
「なんだよ、それ」
ただの作り話か、今のは。
「いえ、作り話ではありませんよ。ただ、全てではないだけです」
「じゃあ、全部教えてくれてもいいじゃないか」
問いただす俺に、古泉は含みを持たせた笑顔を見せてくる。
「今のあなたに全てを教えるのはフェアではありません。それで納得してください」
そう言うと、古泉は、朝比奈さんに目配せをした。
目配せに目配せを返すと、朝比奈さんはこちらをとろけさせるような微笑みを向けてきた。
「ごめんなさい。あとのことは」
人差し指を立てて、唇に当てる。茶目っ気とわかる表情で、そっと吐息を音に変えた。
「禁則事項です」
普通の人間ならパンクしてもおかしくないぐらい、奇怪な状況に立たされているはずだが
釈然としない部分を抱えつつも冷静さを保っている俺は、やっぱりあっち側なのかもしれんな。
実は俺も何か特殊能力的なものを抱えた人間だったりして。なわけねえか。
でも朝比奈さん可愛かったなあ。さっさと記憶を取り戻したい。
きっと今、俺の記憶にある一年より、数千倍も魅力があるにちがいないからな。
しかし腹減った。弁当はあるから、コンビニで飲み物買ってから行くか。
坂を下りながら考えてたのは、こんな支離滅裂なことだったのさ。
708号室。それが長門の部屋だった。鍵を差し込み、ドアを開ける。
「おじゃまします」
慣習が口を突いて出た。靴を脱いで上がる。突き当たりに殺風景なリビングがあった。
カーテンは掛かっているが、見事にテーブル以外何もない。いや、それは不適当か。
テーブルの上に三毛猫のぬいぐるみが置いてあったのと、壁に何かが丸めて立てかけてあった。
興味が湧いた俺は、かばんをテーブルのそばに置いて、丸められてるものを広げてみた。
「ツイスターゲーム?」
なぜ唯一あるものがこれなんだ。一瞬、長門がひとりで黙々と体を動かしている図を想像してしまう。
無表情のまま、指示に従って、手足をあちこちに付く長門。きわどい姿勢になって――
「ありえん」
シュールすぎる。とにかく、長門が持ち込んだものではないな。それはわかった。
丸めて、元の位置に立てかける。メシ食うか。
メシを食ったあと、手持ち無沙汰になった俺は、かばんから冊子を取り出した。
朝比奈さんに頼んで貸してもらった文芸部、もといSOS団製作の機関誌である。
俺が何を書きやがったのか不安だったのと、書いたものを読むことで
少しでもSOS団メンバーの性格や、俺の立場が理解できるんじゃないかと思ったから持ってきた。
まずは、俺の作品から読むか。どこまで書いてあるか気になって仕方がない。
機関誌と呼ぶには分厚すぎるその冊子に手を掛けると、俺はページをめくり、読み始めた。
俺の恋愛小説とやらは、無難な出来だった。
ただ、ミヨキチの本名やあだ名、学年や年齢までそのまま書いてある点が気になった。
この俺は何を考えていたのだろうか。プライバシーを侵害しまくりな気がするんだが。
それに口コミでミヨキチの両親まで伝わったら、ミヨキチが叱られることになるぞ、これだと。
まあ、たかが高校で出した機関誌にそこまで心配する必要はないか。
勝手に納得した薄情な俺は、ほかの作品も読み進めていった。
朝比奈さんの絵本は、絶対誰かの手が加わってるな、こりゃ、と思えるシロモノだった。
微笑ましい作風に戦記物っぽい要素をぶち込んだのは誰だ。出て来い。台無しだ。
長門は意味不明なポエム、古泉は笑顔同様、安っぽいミステリだった。
涼宮に至っては、文字どころか数学の公式みたいな記号の羅列だからどうしようもない。
驚きだったのは谷口や国木田まで寄稿してあったことだ。ま、どうせ書かされたんだろうな、きっと。
一番楽しめたのは、鶴屋さんなる二年生による、冒険小説だった。
他人の家にいながら、思いっきり笑い声を上げてしまった。この人はいったい、どんな人なんだろう。
あまりにも面白くて、鶴屋さんの小説を何度も読み返している最中だった。
インターホンが客の到来を知らせる。部屋に何もないからか、澄み渡るような音がこだました。
「はい」
受話器を取って普通の応対をしてから、思わずしまったと舌打ちしたくなった。
古泉たち以外なら、どうすりゃいいんだ。女子生徒の家に一人でいる男子生徒。怪しすぎる。
だが、それは杞憂だったようだ。
『古泉です。降りてきてもらえませんか』
受話器越しに聞こえてきた声は、安普請の家の壁ぐらいの薄さだった。
「わかった」
返事もそこそこに、かばんに機関誌をしまって長門の部屋をあとにする。
いつの間にか、時間は四時過ぎになっていた。
マンションの外へ出た俺は、真っ先に長門に部屋の鍵を返した。
「ありがとよ」
長門が手を差し出す。その上に鍵を置こうとしたら、指の間をすり抜けて鍵は地面に落ちた。
それを拾う長門、って待て。今、わざと落とさなかったか? 俺から直接受け取りたくないってわけか。
さすがに温厚な俺も、顔がひきつるのを感じた。というか、どこが無関心なんだ。
言ってることとやってることが全然違うじゃないか。
「それでは、案内してもらえますか?」
俺の内心をよそに、古泉が声を出した。気持ちをなんとか静め、飲み込む。
「とりあえず、自転車置き場に行こう」
ほかの三人はチャリ通ではないらしく、手押しで通学路を進んでいく。
「涼宮の容態はどうだったんですか?」
古泉と会話するより、朝比奈さんと話したほうがいいに決まってる。
そう思う俺に同意する男子は、九割以上に違いない。
「キョンくん、涼宮じゃなくてハルヒです」
朝比奈さんは俺の言葉尻をとらえて訂正したあと、
「目覚めた当初はぼーっとしてましたが、突然『あたしどうして保健室なんかにいるの?』って」
愁いを帯びた表情を見せる。
古泉が横から会話に割り込んできた。
「どうやら、涼宮さんも記憶障害に陥っているようでした。もっとも」
ちらっと長門に視線を送って、
「記憶障害ではなく、長門さんの言葉を借りると、自覚的なアクセス拒否だそうですが」
視線を送られた側は淡々と、
「いつまでもアクセス拒否を先延ばしにはできない。先延ばしにすればするほど、反動がくる」
「反動とはなんだ?」
物騒な言葉の説明を求める。端的に長門は答えを導いた。
「原因となるデータの記憶領域からの消失」
長門は前方を見ながら、言葉を足す。
「つまり、早急にこの人の記憶を取り戻し、対処しなければ」
少し間を置いて、ぽつりと言った。
「涼宮ハルヒはあの人の記憶まで忘れてしまうことになる」
古泉は大げさに両手を広げ、天を仰ぐ。
「そうなっては、世界の終わりです」
言ってる内容の割には、深刻そうではなかった。
「もっとも、そうならないように僕たちがいるんです」
「この辺だ、たしか」
会話している間に、目的地に着いていた。
アスファルトで舗装されてはいるが、歩道もない、車がギリギリ二台通ることのできる道だ。
近くにあった自販機にチャリを横付けする。
「なんか見つかったか?」
古泉に問いかける。古泉は俺の視線を反射して長門に送る。
長門は地面の一点を、見つめていた。
「な、何があるんですか?」
朝比奈さんが俺の後ろに隠れつつ、凝視して動かない長門に声をかける。
「位相空間へ移行する」
長門はそれだけ言うと、とてもじゃないが聞き取れない速度で、何かをささやいた。
視界が歪んだと思うと、突如として澄み渡る。
次の瞬間、俺たちは見渡す限りの草原にいた。
「ひええっ!」
朝比奈さんが俺の腕にしがみついてきた。当たってますよ、朝比奈さん。
しがみつかれたまま、周囲を見回す。くるぶしぐらいまでの長さの草が広がっているだけだ。
「また、この空間ですか」
古泉は手に赤い球体を出現させ、それを眺めていた。
疑うつもりはなかったが、古泉と長門って本当に超人だったんだな。
「今度は、何が出てくるんですか?」
古泉に答える代わりに、長門は指を前方に向ける。
空間に亀裂が走り、割れたように思えた。
徐々に実体化する物体を見て、俺は声を上げる。
「ショウリョウバッタ?」
「どうやら、そのようですね」
実体化したのは、平べったくて細長いバッタだった。大きさは比じゃないが。
「あれは任意の情報を管理、保全する情報生命体の亜種。本来であれば無害」
「今は有害なのですか?」
赤い球体をもてあそびながら、古泉が質問する。
「馴致可能なため、飼い主である情報統合思念体の思惑次第。今回の場合、有害だと思われる」
と言った長門は、視線をバッタからあさっての方向へそらす。
俺も、つられてそっちを見る。
さっきまで何もいなかったところに、北高の制服を着た女子生徒が立っていた。
当然、俺に見覚えなどあるはずがない。
ふんわりした髪を中分けしてヘアピンで留めている女子は、これまた
ふんわりした笑顔とともに、俺たちに挨拶をした。
「こんにちは、みなさん」
「喜緑さん……?」
俺にしがみついたままの朝比奈さんが、疑いを含んだ声を漏らした。
朝比奈さんは知っているらしい。古泉もそのようだ。長門が口を開く。
「喜緑江美里、状況の説明を求める」
「状況の説明だなんて、そんな」
長門の追及を、喜緑江美里と呼ばれた女子は軽くいなした。
「わたしは、上の指示通りにやっているだけです」
罪悪感の欠片も感じられない、無垢な笑みだった。
長門は動じず、追及の手を緩めない。
「あなたの派閥の?」
「いいえ、長門さん。主流派のです」
喜緑さん、と呼んでおく、のその言葉に、長門は動きを止めた。
古泉が眉根を寄せて、考え込む仕草をする。
朝比奈さんは、首を傾けた。
また規制が
支援〜〜〜
合間を縫って横レス
次スレ立てないと容量やばくね?
残りどんくらいまで行った?
いま、448KB。
まだ慌てるような時間じゃない。
がんばれ!!!
バイトまであと2時間
wktkしてきました
スレ立てしてくる ノシ
>>629 谷川作品に敬意を抱いているのはわかりました。
だが、感じ方は人それぞれですから他人のレスに逐一反応しなくても良いかと。
マンセーされてる雰囲気が嫌なら保管庫へ行くという手段もありますよ。
……私がスルーできていないですね。それでは
>>550氏のを再掲します。
Q批評とか感想とか書きたいんだけど?
A自由だが、叩きは幼馴染が照れ隠しで怒るように頼む。
Q煽られたんだけど?
Aそこは閉鎖空間です。 普通の人なら気にしません。
>>636 続きを…禁断症状が…
次スレ早すぎ。まだ50kもあるじゃないか。
立ててしまったものは仕方ないか。
まぁ、このスレを使い切った後移動しよう。
あのぅ・・・
続きはまだでしょうか・・・
今までで一番wktkしてるかも
俺も俺も
続きマダー
オブジェと化したバッタを横目に、長門の口だけが再び動き出した。
「……このような指示はわたしの関知するところではない」
心なしか、声のトーンが落ちている。
喜緑さんは、笑いをこらえるように、そっと口に手を添えた。
「長門さんの観測も目的のうちですので、今回の件はあなたに知らされていません」
「なぜ?」
長門の疑問に、つま先でそっと地面を撫でる喜緑さん。
「わたしには把握しきれません、上の方の思惑なんて」
「……」
「でも、いいデータが取れたようです。喜んでいました」
「……」
喜緑さんの返答に、長門は黙り込んだ。喜緑さんを見る視線が氷より冷たい。
「つまり、これは情報統合思念体による芝居ということですか?」
いつの間にか、赤い球体を消していた古泉が会話に割り込む。
「端的に申し上げると、そうです。あなたが会長さんを使用した先の件と同じです」
微笑んでいる喜緑さんは、ただの可憐な女子生徒にしか見えない。
「しかし、結果的に涼宮さんに危害が加わった」
古泉の声に、不穏な色が見え隠れしていた。
喜緑さんは、ぺこりと頭を下げ、
「すみません。涼宮さんは事態解明に乗り出すものと断定して、今回の件を上は立案したそうなんです」
申し訳なさそうに、両手を前で組んで、古泉の足元に視線を送った。
「長門さんを経ずに立案することの難しさを学んだ、と上は申しております」
「ずいぶんと勝手な上司ですね、あなたたちのは」
まだ気持ちの整理ができていないらしく、毒づく古泉。
「おっしゃるとおりです。末端はいつも苦労させられます」
しみじみと言った喜緑さんの言葉に、いっぺんに古泉から毒気が失せた。
「そ、そうですよね。下って大変ですよね!」
朝比奈さんが同意する。長門も軽く首肯した。
なんか放っておくと、下っ端の苦労話でも始まりそうな予感がしたため、肝心なことを質問した。
「あの、俺の記憶は?」
「そうでした」
と俺に答え、傍らにいたバッタを見上げる喜緑さん。
口から長門がさっき発したのと同じような、高速の音声が発せられる。
共鳴するように、バッタが光りだした。
「お疲れさまです」
最後に一言、通常の速度でバッタに話しかけると、バッタは縮んで消え失せた。
「これで通常空間に戻れば、あなたの記憶は戻っています」
喜緑さんの言葉に俺はほっとする。
あとは涼宮だ。涼宮が元に戻れば、全ては丸く収まる。
「それで涼宮さんの処遇についてですが」
喜緑さんはその涼宮に関して、言葉を紡いだ。
「今回の責は明らかに情報統合思念体に帰するため、一定の干渉を許可されました」
「それは心強い」
古泉が迎合する。本心からかどうかはわからんが。
かすかに香ってきそうな柔らかい視線を古泉に送りつつ、
「ただし、わたしたちがするのは、現状維持だけです」
喜緑さんは、やんわりと釘を刺した。俺にも微笑みかけてくれる。
「涼宮さんの記憶領域からあなたのことが失われる心配はありません」
朝比奈さんを視線を移したあと、最後に長門をじっと見つめる。
「でもその記憶をつなぐ糸を手繰り寄せるのは、あなたがたの役目です」
喜緑さんの姿が薄れていく。
「がんばってください。また春にお会いしましょう」
その声とともに、世界が元に戻った。
狭い舗道、自販機の横に置いてあるチャリ、長門、朝比奈さん、古泉、そして俺。
戻ってきたことを確認すると、俺はまず三人に礼を言った。
「古泉、解説役志望のお前に主導させてすまん」
「いえ、たまにはこういう苦労もしておくべきでしょう」
古泉は苦笑を漏らした。
「朝比奈さん、ありがとうございます」
俺の感謝の意に、朝比奈さんは少し表情を曇らせる。
「あまりお役に立てなくてすみません」
そんなことありません。あの俺の一番の支えになってくれたのは、朝比奈さんの笑顔です。
「ありがとう。そう言ってもらえると、助かります」
華やかな笑顔を見せてくれた。
「長門」
長門にも礼を言おうとしたが、さえぎられる。
「いい。上の思慮不足」
そのまま長門は、自販機を見ながら、言葉を足す。
「それに、わたしもあなたに不快感を与えてしまった」
「長門には長門なりの価値観があったんだろ。しょうがない」
情報というものの捉え方に差があっても不思議じゃない。
俺だって、例えば、知り合いが整形して別人になってたらよそよそしくもなる。
長門にとって情報のなかった俺は、言ってたように他人にしか思えなかったのだろう。
「それより、こっちを見て話してくれ。済んだことは済んだことだ」
その態度を続けられると、俺は悲しいぞ。
俺の言葉に、長門はゆっくりと俺に向き直る。
無色透明だが、どこか和らぎを持った瞳が俺を覗いてくる。
「ありがとよ」
俺の感謝に、長門は大きくひとつうなずいた。
記憶が戻った俺は、やや気が急いていた。
「さて、あとはハルヒだ。もう一回、どんな状態だったか教えてくれ」
気がはやっていた俺に待ったをかけたのは古泉だった。
「こんなところで立ち話もなんですし、移動しませんか?」
その声と重なって、乗用車が通り過ぎる。
たしかに、そうしたほうが良さそうだ。井戸端会議ができるような場所でもない。
「実はこのあたりは、よく知っているんです。なじみの喫茶店が――」
「なじみじゃない店に連れて行け」
にべもなく却下した俺に、古泉は肩をすくめた。
古泉は結局、ファミレスに俺たちを案内した。俺も何度か来たことがある店だ。
時間もまだ夕食時までしばらくあったし、俺たちの格好も格好だ。
ウェイトレスも心得たもので、注文する前にドリンクバーですかと尋ねてきた。
そのとおりだったので、四つ注文して、適当に飲み物をセルフサーブする。
落ち着いたところで、古泉が切り出した。
「涼宮さんですが、可能性は三つ考えられると思います」
オレンジジュースの入ったグラスを置いて、指を一つ立てる古泉。
「まず、今日のあなたと同じレベルの記憶障害です。SOS団員としてのあなたの忘却」
「クラスメイトとしては、覚えてるってことか」
もっとも、SOS団を抜きにすると、なんとか会話を成立させていたぐらいの親しさだろうが。
「ええ。二つ目は、あなたに関する記憶すべての忘却」
二本目を立てた古泉は、すぐに三本目も立てた。
「そして最後は、あなたという存在の拒絶」
「忘却と拒絶は何が違うんだ?」
俺の疑問に答えてくれたのは、めずらしくも朝比奈さんだった。
「キョンくんがそうだったように、忘却は忘れてもまた記憶を積むことができます」
グラスに差してあるストローを手で遊びながら、憂鬱な顔をする。
「でも、拒絶はダメなの。認識した情報が記憶に入らないんです」
氷がグラスに当たって、カラン、と音を立てた。
「最悪、キョンくんの姿が視界に入っていても、声を耳が聞いても、それを認知しない可能性があります」
事態の深刻さに沈黙した場をすくい上げたのは、長門だった。
「涼宮ハルヒとあなたの関係を考慮すると、拒絶は非現実的」
俺をじっと見つめながら、話を続ける。
「それに拒絶であれば、喜緑江美里はわたしたちに事を委ねない」
「なるほど。それもそうですね」
古泉があっさり納得する。
「それでは、忘却のセンで行きましょう」
気を取り直して、俺は言葉を発した。
「で、どうやればハルヒは元に戻るんだ?」
グラスを傾け、喉を潤した古泉は、ナプキンで口元を拭ってから、返答した。
「原因はあなたが記憶を失ったショックですから、あなたの無事を確認すれば治るはずです」
「それは答えになってないぞ。具体的にどう行動すればいいかわからん」
「涼宮ハルヒの深層意識に最も強く残っている行動を取ればいい」
俺のツッコミに長門がフォローを入れたが、俺にはそれがなんなのか、見当がつかない。
なので、ハルヒの精神的専門家である古泉一樹の意見を聞くことにした。
「古泉、心当たりはあるか?」
古泉に質問したつもりだったのだが、古泉は長門や朝比奈さんとお互いに目配せを交わす。
「ええと、それはその……」
「……」
言いよどむ朝比奈さんと、無言で俺を見つめてくる長門。
嫌な予感がした。そしてその予感は、次の古泉の言葉で裏付けされてしまった。
「それはもちろん、白雪姫です」
古泉の言葉に、俺は即座に拒絶反応を示した。
「あれをもう一度だと?」
「ええ、できないんですか?」
しれっと言ってくる。
「勘弁してくれ。だいたい、今度は夢の中じゃ済まされないんだぞ」
「それはそうですが、それしか方法がないのですから仕方ありません」
「マジかよ」
俺はうめいた。拒否したい感情と現実とが心の中でせめぎあう。
数秒か数分か、どれくらい時が経ったかわからないぐらいの葛藤を続けたあと、俺は顔を上げた。
「わかった、やろう。だが条件がある」
そして俺は、その条件を三人の前で発表した。
水曜日、修了式。
春休みという期間があるものの、一年五組の教室をくぐるのは、たぶん今日で最後だ。
記憶をなくしていた昨日とはまた違う、寂しさがあるな。
普通であれば、真っ先に谷口や国木田のとこへ行って語らうべきなのだろうが
今日の俺にはそれより先にすべきことがあった。
向かう先は、俺の席だ。
今日も今日で、阪中がそばに立って、何やら話をしている。
「阪中、おはよう」
軽く声をかけてから、席に着く。
「お、おはよ」
阪中は戸惑い気味に、挨拶を返してきた。
「昨日はすまん。変なこと言ってただろ、俺。ルソーは元気か?」
「え? ううん、じゃなかった。うん、今日も散歩に連れて行ったのね」
阪中は目をパチパチしつつ、返事をした。
そんな阪中に、俺は頼みごとをする。
「そりゃよかった。ところで、少しハルヒと話したいことがあるんだが、席を外してもらえないか?」
「いいけど……仲直りするのね?」
昨日の俺たちの様子を、ケンカ中か何かと思っていたらしい。
俺が割り込んでから不機嫌そうな顔を見せるハルヒをうかがいながら、阪中はそう言った。
「ま、そんなもんだ」
積極的に否定することでもなかったので、適当に応じる。
「よかった。心配してたのね。それじゃ涼宮さん、またあとで」
阪中は心底から喜んでくれているようで、すぐに離れてくれた。
さて、腹をくくらないとな。
「ハルヒ」
俺は椅子をずらし、ハルヒに向き直った。
ハルヒは俺にそう呼ばれたことで、一瞬、記憶を探るように両眼が中空をさまよった。
しかし首を振ると、不機嫌さを隠しもせず、俺に返事してきた。
「なんであんたにいきなり呼び捨てにされなきゃいけないわけ?」
その言葉を聞いて、俺を知らないことに衝撃を受けるよりも、懐かしさが先行した。
そういや、いたよな、こんなハルヒがよ。あのときは、古泉が横にいたっけ。
だが懐かしむのはあとだ。俺は質問に質問を返す。
「俺のことは知ってるんだな?」
ハルヒは俺の頭の中身を疑うように怪訝な顔をする。
「アホ谷口とよくしゃべってる、キョンとかいう、間抜けなあだ名の男子でしょ」
指を一本立てた古泉の姿が重なった。
「ああ、そのキョンだ」
自分であだ名を言うのはどうかとは思ったが、ここは真面目にするところである。
そして、これだけで十分だった。あまり刺激してもまずいのだそうだ。
「で?」
「いや、何も」
「は?」
ハルヒがあっけに取られている間に、俺はさっさと席を立った。
谷口や国木田と合流するか。
修了式で全校生徒が集まった際に、俺は古泉や長門、朝比奈さんに結果を報告した。
三人とも笑ったり、うなずいたり、ほっとしてくれたりしたが、俺は内心複雑だった。
なぜなら俺はこっそり、ハルヒと呼んだだけで記憶が戻ってくれないかと期待していたからである。
しかし、期待はあっさり打ち砕かれ、残ったのは、昨日話し合った計画通り遂行しなければならないという
俺にとっては、非常に憂鬱な事実だけだった。
阪中もハルヒから顛末を聞いたのか、恨めしそうに俺を見てくるし、踏んだり蹴ったりだ。
卒業式でもないのに涙して別れを惜しむ岡部に
これまた団結力など朝倉以来無いに等しかった一年五組の心ある生徒から花束が贈られて
一年五組はフィナーレを迎えた。実は俺も花束には出資をしていた。
生徒指導やらなんやらで、岡部には世話になったからな。騒がせ料も込みだ。
そして放課後、こんな日に部活をする部など普通はないのだが、普通だったら
SOS団など存在しないわけであり、つまるところSOS団は活動日だった。
ハルヒにこのクラスへの思い入れなどあるわけもなく、阪中としばらく会話を交わしただけで
かばんを持って、教室を出て行った。
俺の出番はしばらくあとになっているので、谷口や国木田とだべる。
「キョン、今日はどうすんだ?」
「SOS団だ」
谷口にわかりきったこと聞いてくんな、とばかりに投げやりに答える。
「春休みは?」
「SOS団だよ、毎日」
国木田にも答えて、思わず溜息をついてしまう。
そんな俺に二人は顔を見合わせる。うち、谷口がにやにやしながらほざいてきた。
「やっぱそうでなくっちゃな」
「どういう意味なんだよそれは」
発作的にツッコミを入れる俺。
「そういう意味なんじゃないの?」
国木田がわけのわからない連携を見せ、それで俺も納得してしまったから不思議だ。
ああ不思議だ。
ほどなくして二人とも別れ、俺が向かった先は、文化部の部室棟であった。
これで最後だ。さすがに緊張が走る。俺は扉の前で深呼吸を何度かした。
そして、元文芸部で今はSOS団の部屋となっている部室の扉を、ノックした。
「はあい」
扉を開けてくれた朝比奈さんは、ハルヒからは表情が見えないことをいいことに
俺にエールを送るように下手なウインクをした。千人力です、朝比奈さん。
「誰かと思えば、あんた?」
パソコンのモニター越しにこちらを見てきたハルヒの反応は、それだった。
腕を組んで、団長席にふんぞり返ったハルヒは、俺をにらんできた。
「なんか用あんの?」
高圧的な態度も慣れっこなのでなんとも思わん。
俺はいかにも初めて来たように装い、部屋の中を見渡す。
古泉と長門はそれぞれ自分の席に座って、俺に視線を注いでいた。
少し間を置いて、返事をした。
「いや、朝のときに言うつもりだったんだが、踏ん切りがつかなくて」
大嘘である。
「ここって、変わったことの相談に乗ってくれるんだろ?」
「普通の不思議さじゃダメよ。最近なんて、幽霊と遭遇したんだから」
お前も嘘つけ。だが、少しは興味を引かれたらしいな。目の色が変わっている。
「幽霊よりもっとすごいことなんだ。俺も信じられなくて」
「えっ、ホント?」
目を輝かせたハルヒは、視線をずらして、声を発した。
「今の聞いた? キョン」
ハルヒの視線の先は、俺ではなく、いつも俺が座っていた席だった。当然空席である。
俺に顔を向けていた古泉の表情が少し歪む。朝比奈さんも笑みを一瞬硬直させた。
長門だけは、ただ俺をじっと見つめてくるのみだった。
「あれ……キョンって、あんたのことよね……?」
ハルヒは自分の発言に戸惑いを見せていた。
まずいな。さっさと話を進めよう。
「それより、俺の話を聞かないのか?」
これは効いたらしく、ハルヒは戸惑いをあっさり捨てた。
「いえ、是非聞かせてちょうだい。修了式記念に特別にタダでいいわ! みくるちゃんお茶!」
「それで、幽霊よりすごいことって、なんなの?」
確実にハルヒの心は躍っているに違いない。胸が少し痛む。
しかしこれからすることはお前のためなんだ、ハルヒ。
いや、それは嘘か。俺のためでもある。俺だって、お前に忘れてなんかもらいたくない。
ホワイトデーのとき、言ったじゃないか。ここで終わらせていいのか、って。
俺はまだ終わらせたくない。二年になってもSOS団の団員でありたい。
「ああ、ちょっとこれを見てくれないか」
お茶を味わい、意を決した俺は、かばんの中から薄っぺらい用紙を取り出した。
席を立って、ハルヒに近寄る。
「なに? それ」
ハルヒも立ち上がって、こっちに歩いてくる。
俺は床に小道具が置いてあるのを確認した。今だ。
「うわっ!?」
置いてあった本に足を引っ掛けた振りをして、俺は前のめりにバランスを崩す。
接近しつつあったハルヒを巻き込むように倒れ込んだ。
「きゃ――」
ハルヒの悲鳴は途中で途切れた。
それはなぜなら、俺の口が、ハルヒの口をふさいでいたからだ。
目を閉じるのも変なので、開けたままにする。ハルヒの目は見開いていた。
時間が止まる。ハルヒは何を思っているのだろうか。
できれば、俺のことを思っていてほしい。
頼むぜ、ハルヒ。
どれくらいの時が経ったか、突然俺の体が押しのけられた。
と思うと、思いっきり突き飛ばされる。
「っこの、バカキョン!」
「ぐあっ!」
ものすごい力で後方に吹っ飛ばされた俺は、頭と背中を本棚にしたたかに打ちつけた。
目に星が浮かぶとはこのことだ。痛ぇ。
「な、なっ、なな」
ハルヒはわなわなと体を震わせ、憤怒の色をあらわにしていた。
「バカっ! 何すんのよ!」
「すっ、涼宮さん、落ち着いてください!」
朝比奈さんが声をかける。
「落ち着けるわけないでしょ!? だって、このエロキョンが――」
わめき散らかすハルヒの動きがひたり、と止まった。
「キョン?」
俺の名前を呼ぶ。
頭と背中をさすりながら、俺は答えた。
「なんだ?」
「あんた、キョン、よね?」
ハルヒがおそるおそる聞いてくる。
喜びを隠して、俺は、答えた。
「ああ、SOS団団員その一の、キョンだ」
「記憶喪失になったりしてないわよね?」
「記憶喪失? 記憶にないな。今、頭をぶつけてなるかと思ったが」
頭にこぶができているのは、確実だった。
「あ……」
ハルヒは口をぱくぱくさせ、怒っているような、笑っているような、複雑な表情をとった。
間を空けて、怒鳴ってくる。
「なんで昨日早退したのよ!」
「すまん、急用が入って」
謝る俺に、まるで怒鳴ることが楽しいように、満面の笑みを見せた。
「さっきの件といい、許せるわけないでしょ! 罰ゲーム決定! そうでしょ? みんな!」
勢いよく立ち上がって、残りのSOS団員を見回すと、全員ハルヒにうなずいた。
その表情は、俺を含め、ほっとしていた。
キスの件は事故であることを強調し、床に落ちてあった本を見せた。
ハルヒも事故であってほしいのか、それ以上、何も言わずに済んだ。
言うまでもなく、ファミレスで俺が出した条件は、キスを事故に見せかけること、だった。
そうじゃないと、これからのSOS団の活動に支障をきたすような気がしてな。
たとえハルヒがそうじゃなかったとしても、俺が気にする。
そういうわけで、俺の中でも、さっきのことは、事故ということになったのさ。
「明日からの春休み、死ぬほど楽しむわよ!」
一昨日より数倍勢いを増したハルヒが、団長席から俺たちを見据えた。
その様子に、古泉が微苦笑を込めて、俺を見てくる。
すまん、古泉。どうやらお前の苦労が増えそうな気がしてやまない。
「みくるちゃん、次の衣装もちゃんと考えてあるわよ。期待して待っててね」
「えっ? あ、あはは、うれしいなあ」
棒読みで喜びを表現しながら、朝比奈さんもちょっと困り気味だ。
朝比奈さんも、ごめんなさい。この埋め合わせは必ず。
「有希」
「なに」
「なんにも」
大丈夫なのか、コイツは。近づく春の陽気を先取りしたんじゃないだろうな。
「あ、そういえばキョン」
「なんだ?」
手拍子で答える。
「あんたさっき、幽霊よりすごいことに遭遇したって言ったわよね?」
「へ?」
なんで、そのことを覚えてるんだ?
「わたしがそんな面白そうなこと忘れるわけないじゃない! で、なんだったの?」
そこで、笑顔に凄みを加えてくる。
「まさか、ただの冗談でした、なんて言わないわよね?」
「いや、その……」
素早く、芝居の脚本家である古泉に視線を送る。おい、肩すくめんな。
「もしも冗談だったら、どうなるかわかってるでしょうね?」
わからん、わかりたくない。
それから、ハルヒが言ったことは、まさに悪夢だった。
こういう記憶こそ、消してくれるべきなんじゃないのか? 喜緑さん。
こうして、修了式で終わらない俺の一年は、春休みという延長戦に突入したのだった。
(おわり)
ハルヒまで記憶飛んじゃうのと、取り戻し方がちょっと苦しいな。
ハルヒなら保健室で目を覚ました瞬間から自分でなんとかしようと行動しそうだし。
でも面白かった。上手いね、レベルがいっこ違う。
激しくGJ
これで心置きなくバイトにいける
今日はいい一日になりそうだw
おもすれー
続きも期待!投下ありがとう。
>>662 俺も少し強引だと思う。
まあそれでも面白いというところも同意だが。
凄く面白かった
けど阪中の口調だけが別作品からとってつけたようで違和感強かった
登場させなくても良かったんじゃないかとも思えたくらいの完成度なので
実にもったいない
作者乙
土曜日のバイトも乙
阪中さんは原作でも取って付けたような喋り方しかしない子だと思ったが。
いいアクセントになってたと思う。
670 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 13:38:37 ID:30UBKD+7
谷川仕事しろwww
671 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 13:39:49 ID:VtEDjkSG
最高です GJ
素晴らしい。感謝感謝。
GJ いいもの読ませてもらいました
流れが止まったようなので俺も初投下
「ポッギーゲームやりましょうっ!」
さて、今日も今日とてSOS団アジト、つまり文芸室に集まった拉致被害者たる我々であったが、
本日の涼宮ハルヒ将軍様は何やらゲームをやりたいご様子。して、ポッギーゲームとな。
ハルヒはカバンからコンビニの袋を取り出すと、その袋の中から更にお菓子の箱を取り出した。
現代日本人なら誰もが一度は食べた事があるであろうお菓子、つまりポッギーそれである。
普段ハルヒは俺より早く学校に来ている。が、今日に限って遅刻ギリギリだった。
察するにアレを登校中に買って来たのだろうが、しかしハルヒの行動力は知っての通りである。
それだけなら遅刻するはずもない。コンビニでひとつの商品を買うだけなら1分どころか30秒だ。
「ポッギーゲームですか?」とは朝比奈さん。今日もメイド服が麗しい。
俺はそれを見ながら一日分のエネルギーを補充しつつ、説明はいつもの奴に任せておく。
「なるほど、面白そうですね。朝比奈さん、ポッギーは分かりますね?
ポッギーゲームというのは2人でそれを両端から咥え、少しずつ食べていくゲームです。
当然2人の距離、つまり唇は近づいていきます。心にせよポッギーにせよ、
先に折れた方が負けとなる…そういうゲームです」はい古泉君100点。誰が上手い事を言えと。
相変わらず胡散臭さ全開の古泉の声をBGMに俺の推察は進む。
ハルヒは登校中、それも学校に着く寸前にこれを思いついたんだと考える。
そしてそのままUターン&ダッシュ買出し。あの坂道をそれだけの為に往復したのだろう、あいつは。
これは推察である。しかし根拠もある。チャイムが鳴る直前に教室へ飛び込んで来たハルヒは息も荒く、
しかし楽しそうに目を輝かせていた。決まってハルヒが楽しそうな時、俺は楽しくない事態に陥る。
故にその時俺は視線を合わせなかった。母から習ったのだ、危ない人とは目を合わせちゃいけないと。
「そういう事! という訳で有希、くじ引き作ってちょうだい」
「……」
この推察に少なからず確信を持てるのは、不本意ながらハルヒと俺の付き合いが長いからだろう。
嫌なら何故ハルヒとの付き合いを絶たないのかって? そりゃお前、台風は避けられるもんじゃない。
凡人たる俺に出来ることは、ただ早く通り過ぎるかその被害が少ない事を黙って祈るだけなのだ。
しかし更に性質の悪い事に、その竜巻一歩手前の超怒級宇宙規模大災害の被害を抑える要員さえ
俺、あるいは俺達に任命されていると来た。素直に祈らせる事すら許しちゃくれない。
「こぉらキョンっ!アンタも参加するのよ!」
そう、いつだって涼宮ハリケーンはSOS団直撃コースである。
そして直撃コースじゃなければ今度はそのハリケーンに飛び込んでいかなければならない。
こいつとの縁が切れる頃には、俺は救助隊か自衛隊にでもなれるんじゃないかとしみじみ思った。
長門がノートを取り出して、白紙のページを切り取る。そのまた切り取ったページを更に細く裂き、
今度はラインマーカーで色分けしていく。くじを引き、色が一致した人同士が相手になる訳だ。
「……」
ふと、長門と俺の視線が合った。言外に「どうするの?」と尋ねられている。
どうするもこうするも、どうしようもないだろう。細工は施しようがないし、施す理由もない。
別に誰かとポッギーゲームがしたいという訳でもないし、好きにすれば良いんじゃないか。
いや、強いて言うなら朝比奈さんとやりたいが。
古泉のように軽く肩をすくめてやると、どうやら長門はこちらの意図を理解してくれたらしい。
同じように軽く頷くと、何事もなかったかのように視線を戻してくじ引き作りを再開させた。
然る後完成したくじ引きを各々が引き、そして出た結果は以下の通りである。
長門×キョン
みくる×キョン
古泉×キョン
ハルヒ×キョン
いや、待ってくれ長門。ちょっと待ってくれ長門。頼むから考え直してくれ長門。
全然意図が伝わっていない。いや、伝わっていないだけならまだいい。一体どう解釈したんだこれは。
さっき頷いたのは何だったんだ。違うんだ。好きにしろってそういう意味じゃないんだ。
引きつった顔で再び長門を見る。睨むと言っても良い。すると長門は3mmほど首を傾げてみせた。
いや、こいつは分かっている。分かっていてやってるのだ。つまりすっとぼけられた。
本当に分かっていないなら視線が合った直後に首を傾げたりしない。暫く考えてからやるはずだ。
冗談が言えるようになったのは真に良い事ではあるが、頼むから空気読んでくれ。
このジョークがマイブームな宇宙人の成長を祝う為に頬をつねってやろうとにじり寄り、
そしてハルヒの「何やってるの?」の一声で我に返った。止めないでくれ、これは教育なんだ。
「お前はこのくじ引きを見て何か思う所はないのか」
「何かって? 面白いじゃない、アンタだけハズレくじって。私は好きよ、こういう冗談」
どこが面白いんだ。朝比奈さんはいい。長門もまぁいい。ハルヒ、お前も100歩譲って良しとしよう。
だが古泉、お前だけは無視できん。ある意味楽かも知れんがそれもマトモな男子の間柄だけの話だ。
これが谷口なら軽口を叩き合いながら何だかんだふざけてやる事も出来る。国木田でも同じだ。
だが古泉、お前だけは無視できん。レッドアラートだ。その薄気味悪い微笑みオブラートを近づけるな。
俺の言いたい事を察したのか、古泉は「おやおや」と小さく笑って肩をすくめた。
「確かに、あなたが不愉快に思うのも致し方ないでしょう。しかし一つ失念してはいませんか?」
何をだ、と聞くと、古泉は「そのくじ引きを見せてください」と言って手を出して来た。
ラインマーカーで色分けされたくじ引きの中、こいつだけが異彩を放っている。
そのくじ引きは本来1本につき1色のはずが、何故か4色ものラインが引かれていた。
これを引いた奴は該当する色を持つ人の相手になる、というか全員の相手となる寸法だ。
それを受け取り一しきり眺めると、古泉は再び言葉を継いだ。
「これが長門さんの手によって作られたのは疑いようがありません。実際目の前にしてた訳ですからね」
そんな事はどうでもいい。聞きたいのは、俺が何を失念しているかだ。
「そうですか。では、あえてもう一度言いましょう。これを作ったのは長門さん。そうですね?」
しつこい。ああ、そうだともさ。そうだってばよ。
「その通りです。しかし、これを誰が引くかまでは長門さんは操作しようがありません。
何らかの呪文を使ったとして、この短時間では呪文がどれほど短くても、気付かれずには不可能です」
「呪文は口を動かして行うものですからね」と付け加える古泉。確かに長門の口は動いてなかった。
単に俺が見ていなかっただけだとしても、他の人まで見ていないというのは不自然過ぎる話だ。
勘の鋭いハルヒ、呪文に関してある程度の知識がある朝比奈さん、あるいは古泉。
気付いたなら誰にせよ何かしらのリアクションは起こすだろう。が、何も起きはしなかった。
「つまり古泉。俺がこのくじを引いたのは長門のせいではない。で、じゃあ誰のせいかって言うと…」
「お察しの通りです。例によって『涼宮さんがそう望んだから』という事になりますね」
もう「偶然引いたのが俺だった」という希望的観測すら持てやしない。
SOS団に、ひいてはハルヒに偶然はないのだ。あるのは未来人と宇宙人と超能力者と変態パワーだけだ。
それだけあれば十分なのに、まだ足りんとばかりにハルヒは厄介ごとを持って来る。それも無自覚だ。
例え持って来なくても向こうからやって来るのだから始末に終えない。平和って何だ。自由って何だ。
ようするに、ハルヒが俺の相手となるにはそのくじしかなかった訳である。
それ以外の組み合わせはないし、そもそも俺の持つ色しか誰かの相手になる事は有り得ない。
これが古泉なら古泉は皆とポッギーゲームだし、朝比奈さんでもまた同じ事だ。
だが俺が選ばれた。そして、あろう事か長門のイタズラが便乗されてしまった。
だがなハルヒ。それならどうしてお前がこの奇天烈奇妙なカラフル外れくじを引かなかったんだ。
朝比奈さんとだぞ。長門だぞ。ついでに古泉…はいいとしよう。
とにかく、俺じゃなくてお前でも良かった。それを何故俺が、と問い詰めたいがそこで思考を打ち切る。
それを聞いたらSOS団の山ほどある秘密もおじゃんだ。それに、何よりもっと決定的な確信があった。
こいつは「その方が面白いから」と答えるに決まってる。
取り合えずここまで。
GJ!!
長門のイタズラに吹いたw
鶴屋さん語は難しい… といってみるテスト
楽しい雰囲気で申し分ないのだが、どうして完成してからまとめて投下しないんだろう。
ログ食うからじゃね?
投稿規制もあるし
686 :
古泉 一樹の日常:2006/07/01(土) 15:53:37 ID:DauIUoc2
元気か〜い。今日も頭を抱えている古泉 一樹だよ。
キョン吉と涼宮をなんとかくっつけようとしているがどうにも成功しない。
これもそれもやっぱりキョン吉のアレがいけないんだろうな。
どうにかして二人をくっつけたいんだけどなんとかならないかねぇ?
誰かいい方法教えてくれ。
そんなことを考えながら部室に到着、三回ノック。
計算未来人が扉を開けてくれる。どうやら今回はオレが一番遅かったらしい。朝比奈の顔が普通だったから・・・泣きそうだ
「遅れてすみませんね」とかいいながら入る。
椅子に座る前にボードゲームを取り出す、今日は気分的にチェスだな。
チェス盤置いてどうしようかな〜と考えていると朝比奈が茶をくれる
「ありがとうございます」と言って受け取る、熱い。
ちなみ前回キョン吉の湯のみを壊した朝比奈は日曜キョン吉と出かけることに成功したようだ。
そのためキョン吉の湯のみが別物なっているのはいいんだが・・・なぜか朝比奈のも変っていた。
しかもキョン吉の湯飲みを少し小さくした湯のみ、夫婦用ってやつだろ。
これを最初に使った日に一悶着あったのだがそれは別のお話。
「たいくつね〜何か面白いことないかしら」
オレとしてはないほうがいい、多分キョン吉も同じことを考えているだろう。
まあこういうときは大抵朝比奈とキョン吉が大変な目にあう、オレは関係ない。
とりあえず「はい、そうですね」っていっときゃいいだろ。
「あ、そうだみくるちゃん・・・」
「おい、ハルヒ・・・」
ほらな。
まあこんなのは適当な報告で本番はこの後だ
具体的には長門の終了時刻を知らせる音が響いた後だ。
最近は集団下校しているのだが長門が一人で先に帰ったので涼宮もとっとと帰った。
じゃあオレも帰るか、と思い部室をでて帰ろうとするとキョン吉が扉に背中を預けてたっていたので
何をしているんだと聞いた所「朝比奈さんに用があるんだ」とのこと。
すこーし気になったので『機関』の監視員を使い様子を見といてもらった。
オレのカンも捨てたものじゃない。
キョン吉があろうことか朝比奈にデートを申し込んだのだ。
なんでもキョン吉の友人A谷口が映画のチケットをくれたそうだ。それでなぜ涼宮を誘わない?
理由はこの前湯飲みを買ってもらったために、お礼をしたいとの事。
あの湯飲みは朝比奈がうっかり落としてしまった(本人談、事実はかなり捻じ曲がっている)ものであり、
お詫びの品であるためそれにお礼をするうのもおかしな話だがキョン吉らしい。
朝比奈の返事はもちろんOKだ。隙あらば押し倒そうとするんじゃないかと思う。涎がでてたように見えるのはきっと気のせいだろう。
まあデートぐらいならともかく、朝比奈が何かしようとしたら阻止しなければならない。
それどころかキョン吉のことだ、「自分は朝比奈さんが好きなんだ」と思ってなにかしないとも限らない
あいつも素直じゃないからね、素直になる薬を誰か作ってくれ、二つほど。
機関に連絡、とりあえずその映画のチケットを確保しなくては。
その映画だが、なんというか恋愛ものだ。
あまり有名じゃない映画監督が作ったらしいがその映画で大ヒットしたようだ。
何度かテレビで宣伝を見たことがある。
内容はしらん。
涼宮か長門に応援をたのもうかと思ったがやめた。
涼宮がデートを見て何をするかまったくわからん。最近は力もなくなってきたが逆に一気に来そうで怖い
長門は朝比奈同様キョン吉信者の一人だ。世界改変なんかされた日にはたまらん。
もうしないと言ってはいるが長門的バグデータがすぐにたまるかもしれん。
といわけで二人とも却下、オレ一人で行くことにしよう.
何かあったときのために『機関』の何人かにすぐに出れるように準備しといてもらおう。
687 :
古泉 一樹の日常:2006/07/01(土) 15:54:28 ID:DauIUoc2
オレは今、駅前の広場で隠れている。十一時に駅前で待ち合わせとのことなのでその一時間前から張っている。朝比奈はすでに到着済みで、先ほどからわくわくしながら待っているのが遠くから見てもわかる
ただ・・・さっきからナンパしてくる奴に大して本場の方々でもビビル様なにらみをしなければ誰がみても微笑ましい光景だったろうに。
朝比奈の格好はなんというか大人っぽいものである、普段は(なぜか)できないポニーテールにしてるのは狙いか偶然か・・・
待ち合わせ三十分前にキョン吉が現れる、キョン吉もなかなか大人っぽい。普段は絶対にしないであろう服装で現れた。朝比奈は朝比奈でさっきまでにらみで人を殺しかねん勢いだった目をやめて満面の笑みだ
何度も言うがここだけだったら微笑ましい光景だったろうに。
ここからオレの尾行がスタートする。
電車に乗って移動、この電車というのが実はなかなかのむずかしい。密閉された空間は尾行で気づかれやすいところだ、オレはなんでもない風を装って隣の車両に乗る。
何を話しているんだ? 変な事を話して朝比奈を欲情させるなよキョン吉。
お前の身、そして世界が危ないんだからな。
あの未来人も宇宙人も何をかんがえてるんだろうねぇ? ばれなきゃいいと思ってんのか?
絶対にバレる、なぜかはキョン吉だから。
首尾よく電車内で気づかれることはなかった。周りの人間にはどう見えたんだろうね、オレ。
駅をでると映画館とは反対の方向に歩き出す、どうやら少し時間を潰してからいくようだ。
人ごみの中の尾行は比較的楽で二人を監視しながら歩いてる。
二人は露天をひやかしたり服を見立てたりどっからどうみても幸せカップルだ。
涼宮をつれてこなくてよかった。
二人が公園に入りのんびり散歩をしている、いい加減会話が聞きたい・・・
いいことを思いついたので『機関』に報告をした。
公園にクレープ屋の店が現れる、そいつこそ『機関』の構成員の一人だ。
店には「カップル限定三割引」との宣伝をしてもらう。
二人はちょうどいいと思ったのか店に近づく。
少し話した後クレープ屋をやっている構成員がキョン吉の肩をたたく、これは盗聴器をつけるために指定した、ちなみにこの時。
「よう、兄ちゃん。かわいい彼女だなぁ。うらやましいねぇ」
と朝比奈にも聞こえるように言えとと指定しといた。
朝比奈が顔を赤くしているので首尾よくやっているようだ。
二人が遠ざかるのを確認した俺はクレープ屋に近づく。
「これを」
渡されたのは盗聴器の本体。鞄の中に隠してあるので見つかりはしないだろう。
「そんなに問題なんですか? あの冴えない男が」
「お前には関係ないよ、俺にもね。恋愛沙汰で世界がなくなろうって言うんだからとんでもない茶番だよ」
「その茶番を守っている俺らは道化以下だな」
「なぁ〜に、神様の気分一つでどうにかなる世界だ、これくらいのほうがちょうどいいんだろ」
「そうかもな・・・」
「涼宮は?」
「いまの所は特に、ガキに勉強を教えてますぜ」
ガキ・・・いつかのハカセっぽい子か? 朝比奈と話だと未来に必要な人物らしいが。
「そうかい、ありがとよ・・・あと」
「なんだ」
「おれにも、クレープくれ。腹減った・・・」
「・・・あいよ」
688 :
小泉 一樹:2006/07/01(土) 15:55:43 ID:DauIUoc2
今回はここまで
>>クレープ屋の屋台
機 関 な に し て ん の w
このシリーズおもしろいw
前回に比べて語りにキョン成分が混じってきちゃってるのが惜しいね。
古泉の個性が薄くなってきてる。作者頑張れっ。
現代人の組織の機関なら確かに普段から副業やってそうだなw
>>686-687 乙。
続くとも書いてなかったし前のが短編として完結してる形だったから続きがあったのは嬉しい誤算。
先を楽しみにしとります。
>>涼宮ハルヒの黒日
キョンの記憶喪失ネタって多分本編であるよなと思ってた
「(俺が)記憶を失いでもしない限り」とか言ってたし
一足先にいいもの読ませていただきました
695 :
古泉日記:2006/07/01(土) 17:05:06 ID:owLzjDnf
古泉です。
機関に命じられて、僕はこの「ハルヒ」を監視しに来ました。
どうやら「ハルヒ」は機嫌が悪くなると閉鎖空間を発生させるようです。
そしてその鍵を握る少年がいます。「キョン」です。
彼はどうやら「ハルヒ」の思い人なのですがどうも鈍感のようで
気がついてません。このぐらいの年齢の男なら彼女を作りたいと思うわけで
近くにいる女性についつい告白してしまうと思うんです。
しかし彼はしません。何故なのでしょうか。
傍には朝比奈さんや長門さんがいるからでしょうか。
もしかしてこっちのほうが好きということでしょうか?
しかし僕は最近気がついたのです。
僕が彼「キョン」を好きだということを!!
続く
696 :
キョンの日記:2006/07/01(土) 17:39:55 ID:IT1xHhhz
どれだけ俺がハルヒの横暴に付き合ってきただろうか??
うっとうしい呼び出しにも俺たちはひたすら耐え抜き、朝比奈さんのお姿を拝むためだけに 行っているだけだと思ってほしいね。
見て正直衝撃を受けたの、あの長門の能力とついでで古泉の力だ。ああ、勿論朝比奈さんも時間遡行も加わってますよ心配なく。
てんで最近はハルヒのダウナーな状態は見られなく、いつもと変わらずハイテンションだ。
もうあいつのせいで刺されたり、過去へ行ったするのはこりごりだからな。
精々これ以上の異常現象は起こらないよう、俺たちSOS団は影で色々と頑張るさ。
子供のようなハルヒの機嫌を取るために古泉がまた企画でも考えてくれそうだしな。
でもあいつのやつことは毎度毎度手が込みすぎて、正直なところ少々頭を悩ませてくれる。
すっきりした、こう、なんというか単純明快な企画にしてほしいもんだよまったく。
本当はなんだかんだ言って、楽しんではいるんだがな。俺。
当然ハルヒも楽しんでいることはよくわかる。お陰であの空間も出ないらしいしな。
あさひなさん(大)も最近見かけない。ということは今は平和ってことだ。今はな。
りかいできんことがまた起きる気がするようでしないが、今度は何があるのやら。
がんばってその時は俺たちSOS団がまた奔走すんだろうなぁ。
とうぶんこういったことはナシでただただ、馬鹿やってられたらいいんだがな・・・。
うーむ、そろそろ書くことが無くなってきた。
ごろごろしながらこういうの書いてるとあまりネタが浮かんでこんからな。
ざらっと書いて寝るつもりだったが、そうも行きそうにないな・・・。
いまさらだが、俺が何をしているのかって?
まぁ、あれだ、手日記ってやつだ。
しかし、どうも見直すたびに遺憾を感じる。何だろうな。まぁいい、この辺で終わろう。
ただそう思いながら俺は、日記を投げ出して、ベットに寝そべった。
改行ミス。死んでくる・・・・ネタ文失敗した・・・・
それ以前の問題
バイバイ
これ縦読みだろ。「に」が抜けてしまった訳で。
>>697 いや、なかなか見事。
なんで精子なのかわからんが(W
>>633 記憶の有無にかかわらず、
長門にとってキョンは大事な人だから
冷たい態度はとらないと思う。
記憶を取り戻したあとでも、
キョンは記憶喪失中にあったことを覚えている可能性はあるし、
長門がそのことを考慮していないとは思えないし。
というわけで、冷たい態度じゃなくて、
長門もショックと悲しさで、キョンの顔を直視できなかったり
キョンの「ありがとよ」という言葉にフリーズしてしまったのかな?
鈍いキョンは誤解してしまった、ということで。
そんなわけで上記の点が気になりましたが、全体としては良作でした。
また書いて下さいね。
>>679 長門は、呪文使わなくてもクジの操作程度は出来そう(物質情報を読みとる)な気もしますが。(例:陰謀p.280)
それでも面白そうです。続きに期待してます。
前スレ412です。続きまた少し書きます。
駄文すいませんが。
コンコン
突然ノックする音が聞こえ、
「おーい、お客だよ〜。入っていいかい?」
と大声が聞こえる。声の主は鶴屋さんらしい。
「キョン、開けなさい」
命令口調で言われ、少々気に入らんが仕方なくドアを開けた。
そこにはやはり鶴屋さんがいて、隣には伊藤がいた。
どうやら校内で迷っていたところを鶴屋さんに保護されたらしい。
「じゃ、迷子ちゃんは届けたし、あたしは帰るから。」
「あの・・・・・」
伊藤が呼び止める。
「ん、なんにょろ?」
「・・・ありがとうございました」
「ああ、いいのいいの。これくらいなんでもないっさ。じゃ、またね〜」
そういうと、鶴屋さんは帰っていった。相変わらず明るい人だ。
「・・・・・・・・にょろ?」
伊藤が微かに呟いた。
「どこ行ってたのよ!」
「・・・・・すまん。ついていけばよかった」
伊藤はハルヒの逆鱗を受け、しばしまいっている。
朝比奈さんはハルヒの怒声に怯えつつ、伊藤に茶を渡す。
長門は本から目を放さない。
古泉はいつもの微笑みのまま、伊藤とハルヒのやりくりを眺めている。
「彼がうわさの転校生ですか?」
「ああ。伊藤徹というらしい」
俺が名前を口にした途端、古泉の表情が変わった。
いや、古泉だけじゃない。朝比奈さんも、愕然としている。
長門も、少しばかり驚いているようだ。ほんとに僅かだが。
しかし、すぐに三人とも元の表情に戻った。戻したのだろうか?
「おい、どうしたんだ?」
「い、いえ。少し思い当たる名前でして。もしかしたら、彼が・・・・」
古泉が動揺している。顔はいつものニヤケ面だが、声が少し震えている。
こんな古泉ははじめて見る。いったいなんなんだ。
「ふう」
ハルヒの怒鳴り声がしなくなった。説教終わりみたいだ。
「次から気をつけなさいよ」
「ああ。もう覚えたから間違えん」
「あ〜、もう、イライラする!」
ハルヒは湯飲みのお茶を一気に飲み干し、
「みくるちゃん、お茶」
と湯飲みを机にたたきつけた。ていうか、それは伊藤のお茶だろ。
「いいのよこの際!」
まあ本人がいいのなら別に俺はなんとも言わん。
「・・・・・いいか?」
「なによ」
「・・・・・だめか」
「何も言ってないわよ。ほら、言ってみなさい」
「わかった」
伊藤よ、もう少し自信を持って話したらどうだ?
しかもさっきから点の数が多すぎる。長門でもそこまで多くない。
いや、長門はもっと簡潔すぎるんだな。もう少し喋れ、長門。
「ここは何をするところなんだ?メイドいるし、読書してるし、
微笑んでるし」
きたか、この質問が。朝比奈さんも古泉もしたこの質問。
まあ確かに、傍から見れば俺たちは目的もなしにただ何気なくここに集まる
涼宮ハルヒご一行様だ。
できればして欲しくないんだよなぁ、この質問。
なぜなら、毎回ハルヒのぶっ飛んだ回答には呆れさせられ、うんざりするからだ。
「そうね、あなたにも教えておかないといけないわ」
ハルヒは立ち上がり、堂々と宣言した。
「今一度言うわ。SOS団の活動内容、それは、
宇宙人や未来人、超能力者などを探し出して一緒に遊ぶことよ!」
などとは何だ、などとは。
しかし、俺はこの発言で毎回世界のどこかで時間が止まってしまっているのでは
ないのかと思ってしまう。
だが伊藤はもっと衝撃的な言葉を言い放つ。
「それは都合が良かったな」
「え?」
ハルヒが聞き返す。いや、俺も聞き返したい。
なぜ都合がいいんだ?普通驚いたり呆れたりするだろ、こういうのは。
だが、呆れない理由がすぐに分かった。
「俺は異世界人だ」
全世界は再び停止した。
勿論、嘘である。が、そう思えたからしょうがない。
俺はともかく、朝比奈さんは石化呪文でもかけられたかのごとく固まっている。
古泉はもう微笑んでおらず、これまた朝比奈さんのような状態に。
そしてあの長門でさえ、(ほんの少し)表情を変えて驚嘆していた。
「・・・・・」
ハルヒも黙り込んでいる。そりゃそうだ。
勢いで連れてきた男が、まさか本当にそんなファンタスティックなやつだとは思うまい。
しかし実際は朝比奈さんも、長門も、古泉も、超非科学的な顔ぶれなんだが。
「信じられないか・・・ま、当たり前だけどな」
伊藤は一人話を続ける。
「そりゃ確かに俺はこの世界の人間となんら変わりない姿をしている。
だがそれは単に同じような人間社会が成り立っているだけであって、
本当は違う部分があるか分からん。まあそんなことはどうでもいいが」
まったくだ。
「この世界の人と違うところねぇ、そうだな。
俺は魔法が使える。妥当なところだろ?」
「本当に?」
ハルヒが食いついた。
こいつにとって伊藤は長年待ち続けた存在になるかもしれんからな。
もうすでに近くにいて、気付かないだけでもあるのだが。
「あなた、本当に異世界人?嘘じゃないのよね?」
「ああ。俺は嘘は滅多につかん。それと、俺は徹だ。
名前で呼んでくれ」
「・・・あなたみたいな人を待っていたのよ!」
ハルヒは今までで一番嬉しそうな顔をしている。
そうかー、ついに見つかったかー。おめでとうハルヒ。
ここは素直に称えてやる。俺の負担も軽減するからな。
しかしな、伊藤が本当にそうだとは限らんぞ。
「だから名前で呼んでくれ」
そうか。じゃあ徹。
早速魔法とやらを見せてくれ。いんちきくさいマジックはだめだ。
「そうね、ぜひ見たいわ!」
ハルヒは非常に興奮している。横で朝比奈さんが少しビクついている。
「そうだな・・・・」
さあどうする徹。お前がもし嘘800であんなこと言っていたら、明日にはさめの餌だ。いや、今日中かもな。
「今は何月だ?」
「ん?」
何を言う。今は7月、夏真っ盛りだ。確かめる必要はない。
「プールの水をすべて氷に変える」
「・・・・もしできるとしても迷惑だからやめろ」
「大気を急激に、しかも限られた範囲で変えるのは危険」
長門も反論。珍しい。
「それより、分かりやすい何か身近なものでお願いします」
「そ、それがいいですね」
古泉や朝比奈さんも。何かあせっているのか?
「そうか・・・・じゃあ、何かリクエストでも」
リクエストだそうだ、ハルヒ。
「そうね、じゃ、みくるちゃんの服を手を使わずに脱がしてみて」
「ひぇっ!?」
おい待て、なぜそうなる。
お前は朝比奈さんを実験台に使うつもりか?それは断じて許せん。
見ろ、今にも泣きそうになっている朝比奈さんを。
「・・・・・・・・」
恐怖で声も出なくなったではないか!
「止めておこう。彼女がトラウマにでもなったら大変だ」
「そう?残念」
よく止めた真司。あー良かった。
少し残念な気もするが、朝比奈さんが泣き止んだからいい。
「それに」
まだ何か?
「俺はエロが苦手だ。好きでもない」
ここまでです。
また今度続きを。
709 :
707:2006/07/01(土) 18:57:15 ID:n+ivMfBv
ミスった・・・・・
最後から5行目の名前は仮の名前です。徹でお願いします。
次から気をつけます。
伊藤キター!
あと2kB
次スレは?
∩___∩
| ノ ヽ
/ ● ● | いつも通りやれクマ──
| ( _●_) ミ
彡、 |∪| 、`\
/ __ ヽノ /´> )
(___) / (_/
| /
| /\ \
| / ) )
∪ ( \
\_)
埋め
「んんっ……」
押し殺した知紗の声に、見ている男たちのため息が重なる。
(見られてる。知らない人たちに見られてるのに、セックス、しちゃってる……)
視線を肌に感じる。
身体中の神経が鋭敏になっている。
目を開けた知紗の視野に、何か明るい光が踊った。
大光量の懐中電灯だった。
通路にしゃがみこんだ男の1人が、それを手に持ち、丸見えの結合部を明々と照らし出す。
「だめ……」
知紗の身体が持ち上げられ、また下ろされる。
ゆっくりと、何度も。
「ああぁ……」
敏感な粘膜が熱い肉にこすられる。
真っ赤に充血した襞が巻き込まれ、そしてずるりと引き出される。
快楽の信号が一突きごとに打ち込まれ、腰の奥で耐え難い熱を持ちはじめる。
知紗は潤んだ目で男たちを見る。
ぎらついた視線を彼女の痴態に向ける男たちを。
「見て……見て……エッチな、私を、見て……」
恥ずかしい欲求を言葉にするたび、気持ちよさが増していく。
いつしか知紗の手は陰核の包皮をずらし、赤く尖った小さな芽をむきだしにしていた。
両手の指で、見せつけるように細かくさする。
刺激がうずくような快感をもたらし、懐中電灯の光に照らされて、それがいっそう強まる。
もう手を止められない。
知紗は喘ぎながら、腰をせり出し、男たちの視線を浴びて身体を震わせる。
気持ちよくて、でももっともっと欲しくてたまらない自分がいた。
「だけど、裸になっちゃって、いい度胸」
車内の静寂を乱さないようなささやき声を、その女性は知紗に向ける。
気づかれた、見られたための恐怖と、それが女性であったことによる多少の安堵を覚えつつ、
知紗は手首をつかまれたままどうしていいかわからずにいた。
暗くてわかりづらいが女性はおそらく30歳ほど。
この事態をおもしろがっているかのように笑みを浮かべて、知紗を見つめている。
「離してください」
知紗の言葉にも、女性は反応せず笑みを浮かべたまま。
そして、唐突な台詞を口にする。
「ここで、オナニーしなさい」
知紗は絶句する。まじまじと相手の顔を見る。
「離してください。そんなこと、できません」
拒絶し、つかまれた手首を引っ張る。
「しないのなら、大きな声出しちゃおうか。
きゃー、あなたなんで裸なの、って。きっとみんな起きちゃうね」
知紗は身体を強張らせる。
そんなこと、絶対に、させてはいけない。
まわりの乗客がみんな起きてしまったら、この車内には、身を隠す場所さえなくなってしまう。
「こんなところでのオナニー、きっと気持ちいいよ。
まわりに気づかれちゃうより、そのほうが、はるかにいいと思うな」
気持ちいい。そのひとことが知紗の心をぐらつかせる。
どちらにせよ、選択肢はないも同然なのだ。
「……します」
その答えに、屈辱と不安と、少しの期待をにじませた。