>>666 まさにそれ。ミドナに聞いても「ダブルクローか!重宝だなぁ」としか言ってくれない。
わかってる、わかってるんだ・・・ただ、もう少し的確なアドバイスをさ・・・
>>669 ありがとう、必ずミドナと幸せになります!
>>640 「大人になったら」という伏線はそのため。ただショタ嗜好を残しておく理由も実はあります。
ゴロンについては、あの姿形では萌えられないという個人的嗜好が理由。
大妖精は予定あり。
ダルニア編その1、投下します。
注意書き必須と思われるので、最初に自分でネタをバラします。
「女体化」
苦手な方は、どうかスルーしてください。のっぴきならない理由があるんです・・・
読んでもらえるのなら、もう本編の映像は忘れて、別キャラとして見ていただくしか・・・
エロは極少です。
↓
「だめだな」
打ち上げたばかりの剣を吟味していたダルニアは、吐き捨てるように独り言を漏らした。
刀鍛冶の道を究めようと、これまで一心不乱に努力してきたが、まだ及びもつかない。あの
伝説の剣には。
『俺には、迷いがある』
ダルニアは自覚していた。最近、ゴロン族にふりかかった災厄。それがダルニアから、刀を打つ
ことに専念する集中力を奪っているのだ。
実際、刀鍛冶どころではない、とダルニアはため息をついた。ドドンゴの洞窟に入れないという
ことは、ゴロン族にとって死を待つにも等しい。
ドドンゴの洞窟からは、良質の鉱石が無尽蔵に産出される。それは、ハイラル中で珍重され、
ゴロン族の重要な収入源となっているゴロン刀を生産するのに、絶対に必要な原料だった。それに、
洞窟に住みついている動物、ドドンゴは、ゴロン族にとって貴重な蛋白源だ。財と食。その二つの
供給場所に入れなくなってしまったいま、自分たちはどうやって生き延びていけばいいのか。
『ガノンドロフめ!』
ダルニアは思い出す。『炎の精霊石』を渡せと言ってきた、あのゲルド野郎。
ハイラル王家の依頼に応じて、代々の族長が守ってきた『炎の精霊石』……『ゴロンのルビー』を、
ゲルド族なんかに渡せるわけがない。そう突っぱねてやったら、こんな形で報復がやってきた。
どんな細工をしたのか知らないが、突然、洞窟のドドンゴたちが凶暴化した。捕まえて食料にする
どころか、近づくことすら難しくなった。他にも得体の知れない魔物が洞窟に住みつき、とどめは
……あいつだ。身体の大きさも凶暴さも、通常の奴の何倍もある、化け物のようなドドンゴ。
去り際に、キングドドンゴという名を、ガノンドロフは仄めかしていたが……
『族長の俺が、何とかしなければならない』
ダルニアはひしひしと責任を感じていた。仲間たちもそれを期待しているはずだ。勇敢なはずの
ゴロン族の間に、いまでは諦めと恐怖の色がじわじわと広がってきている。だが……いったい
どうすればいいのか。
ガノンドロフに『ゴロンのルビー』を渡してしまうか……いや、それは絶対にできない。
ゴロン族は信義を重んずる。王家との約束を破るわけにはいかない。
ではキングドドンゴを倒して、自分たち自身の手で道を開くか……しかしそれが簡単にできるなら、
何も悩んだりはしない。これまで状況打開のために洞窟に入っていった仲間は十人を下らないが、
戻ってきた者はいない。キングドドンゴは自分も一度だけ見たことがあるが、まともに戦える
ような相手ではないのだ。
それに……
ダルニアの脳裏に、ガノンドロフの姿が浮かぶ。
俺を見る、あいつの目。そこには……あの感情があった。俺が絶対に受け入れられない、あの感情が。
「兄貴」
部屋の入口から声をかける者があった。ダルニアはそれを無視した。いまは誰にも邪魔されたくない。
「兄貴」
「うるせえ」
去ろうとしない闖入者に、ダルニアは短く、しかし自分の心情が正確に伝わるように返答した。
だが闖入者は、あくまでダルニアとの会話にこだわった。
「すんません、取り込み中なのは承知なんですが……兄貴に客人ですぜ」
しかたなく、ダルニアは入口の方に目を向けた。シティの門番の男が立っていた。
「客人?」
「ええ……なんでも、王家の使いだとか」
ダルニアは大きく目を剥いた。それで萎縮したのか、門番の男は一歩退いた。
「……通せ」
しばしの沈黙のあと、ダルニアは視線をそらし、やはり短い言葉で命じた。門番の男は、ほっと
したように息をつくと、早足で去っていった。自分が剣を手に持ったままでいることに、
ダルニアは気づいた。が、その吟味を続ける気には、もはやなれなかった。
この時期にハイラル王家の使者が来るとは……災厄はゴロン族だけのものではないのだろうか……
ゴロンシティへのリンクの旅は、楽なものではなかった。カカリコ村の登山口にいた兵士は、
リンクが見せたゼルダの手紙を、奇妙そうな顔つきで眺めはしたが、特に何も言わずに道をあけて
くれた。だが順調なのはそこまでで、子供が一人で行く所ではない、というアンジュの言葉を、
リンクは早々に実感することとなった。
道は細く、曲がりくねり、足もとの凹凸は激しかった。崖沿いの所には手を添えるものすらなく、
ちょっと間違えれば谷底に真っ逆さまだった。ひっきりなしに落石があり、時には巨大な岩石が
リンクの前後を転がり落ちていった。デスマウンテンの小噴火によって、火山弾が降ってくる
ことも稀ではなかった。日が暮れると周囲が全く見えなくなり、リンクはやっと見つけた横穴に
こもって夜を明かした。
陽が昇って先に進んで行くと、しかしそれでも少しずつ人の住む気配が感じられるようになった。
カカリコ村を出てから、まる一日ほどで、リンクはゴロンシティに到達した。
デスマウンテンの横っ腹に大きな洞穴が口を開けており、その入口に一人の若い男が立っていた。
初めて目にするゴロン族の男を、リンクはしげしげと眺めた。背が高く、上半身は裸で、逞しい
筋肉が張りつめている。毛深く、髪は肩まで伸び、見るからに勇壮なその表情を際だたせていた。
むき出しの下腿は、やはり隆起した筋肉でおおわれ、足には何も履いていない。見た目は他の
ハイリア人と同様だが、これほどまでに精悍な人間を、リンクはこれまで、城下町でもカカリコ村でも、
他のどの場所でも見たことがなかった。
リンクが近づくと、男は鋭い視線を送ってきた。それに怖じることなく、リンクは男に向かい、
ハイラル王家の使いとしてゴロン族の代表者に会いに来た、と告げた。『炎の精霊石』がゴロン族に
託されたというのなら、まずはその代表者に会うのが筋だ、と思っていたからだった。門番であろう、
その男は、なおもリンクをうさんくさそうに眺めていたが、
「待ってろ」
と、ぶっきらぼうに言うと、洞穴の中に消えた。男はしばらくすると戻ってきて、同じ口調で、
「ついて来い」
と言い、リンクの先に立った。リンクは男に従って、洞穴へと歩を進めた。
洞穴の中は思った以上に広かった。縦に四階層となった巨大な空間で、中央は吹き抜けとなっていた。
二人がまず入っていった所は、その最上階にあたっていた。意外に明るいその空間のあちこちに、
鉱石を積んだ大きな箱が積み上げられている。別の所からは鋭い金属音が規則的に響いていた。
そこが刀鍛冶の仕事場なのか、とリンクは推測した。
案内の男と同じような風貌の男たちが、あちこちにたむろしていた。妙だな、とリンクは思った。
男たちの見かけは実に勇ましげなのだが、どうも態度に活気が感じられないのだ。
案内の男は空間の最深部まで降り、ある一室の入口まで来て、リンクをふり返った。
「族長のダルニアが会うそうだ」
男は顎でしゃくって入口の奥を示した。リンクは黙って奥に進んだ。
その部屋は、先の空間に比べると格段に狭いものだったが、人が数人落ち着くには充分なほどの
広さがあった。その中央に、悠々とひとりすわっている人物がいた。
部屋に入ってきた「使者」を見て、ダルニアは驚いた。
こいつはガキじゃねえか!
そのガキは、こっちを見つめたまま、口をぽかんと開けて、凝固したように立ちつくしている。
ダルニアは無性にいらいらした。
「てめえが王家の使者だと?」
ダルニアの声に、はっとした様子が窺われたが、すぐに続けて、その口からは、
「ぼくの名はリンク。ハイラル王国の王女、ゼルダの頼みでここへ来たんだ」
と、ガキらしくもない、堂々とした口上が述べられた。
いくら自分側の主人とはいえ、王女を呼び捨てにするとは、どういう奴だ?
ダルニアは疑問を持ったが、問題はそこではない、と思い直した。
「てめえのようなガキが、王女の使者とは思えねえ。そうだというなら証拠を見せな」
リンクは少し考えているようだったが、すぐにオカリナを取り出すと、一つのメロディを奏した。
間違いない。『ゼルダの子守歌』だ。王家にかかわる者の身の証。
「……わかった。一応、認めてやる。用件は?」
「『炎の精霊石』を探しているんだ。ダルニア、それがどこにあるか、もし知っていたら、教えて
欲しい」
俺までも呼び捨てか、とダルニアは苦々しく思ったが、それにこだわっている暇はなかった。
やはり、ハイラルに切迫した状況が訪れていることは確かなようだ。
「……最近、『炎の精霊石』は、引っ張りだこだな……」
独り言のように、ダルニアは言った。リンクはその言葉に不審そうな表情を見せたが、突然、
目を見開くと、大きな声を出した。
「ひょっとして……他にも精霊石を探している奴が……ガノンドロフがここへ来たの?」
「ガノンドロフを知ってるのか?」
再びダルニアは驚き、問い返した。それを無視して、
「来たんだね? 精霊石は? あいつはそれを手に入れたの?」
リンクがさらに問いを放つ。その切迫した調子に、ダルニアは押された。
「心配すんな。渡しちゃいねえよ」
リンクは大きく息をついた。見るからに安堵したふうだった。が、たちまちその表情には緊張の
色が走った。
「ということは、『炎の精霊石』はダルニアが持っているんだね? どうかそれをぼくに渡して
欲しい。ゼルダが待っているんだ!」
「落ち着け」
ダルニアは冷ややかに言った。周囲を顧みず一人で焦っているリンクが鬱陶しかった。しかし
一方では、そのまっすぐな態度が興味深くもあった。
「理由を訊こうじゃねえか。ゼルダ姫が精霊石を欲しがっているのはなぜだ?」
ダルニアの言葉で我に返ったのか、リンクは恥ずかしげにうつむいていたが、すぐに真剣な顔に
戻ると、熱心な声で話し始めた。
世界を支配するという野望に燃えたガノンドロフが、トライフォースを手に入れようと、三つの
精霊石を探していること。自分はその野望を打ち砕き、さらにガノンドロフを倒すために、
ゼルダの依頼で精霊石を探していること。
『こんなガキが、たいそうなこった』
そう心の中で毒づきながらも、災厄の影が、ここデスマウンテンのみならず、ハイラル全体を
覆いつつある状況を実感し、ダルニアは緊張で身がこわばる思いがした。
「話はだいたいわかった。だが精霊石は渡せねえな」
ダルニアの返事に、リンクは露骨にがっかりした表情を見せた。それがあまりにも正直な感情の
吐露であったので、ダルニアは、言葉を足してやらねば、という気になった。
「ゴロン族の族長は、昔から代々『炎の精霊石』を預かってきた。誰にも渡しはしねえ。それが
王家との約束だ。ただ、その王家の方がそれを必要とするっていうんなら、返してやるのが筋って
もんだ。本来ならな。だがいまは、そう簡単にくれてやるわけにはいかねえんだよ」
「どうしてだめなの?」
リンクの問いは率直だ。ダルニアは、さっきまで自分を思い悩ませていたジレンマを、ざっと
話して聞かせた。
「……そういうわけでな。精霊石をてめえに渡しても、俺たちの暮らしがよくなるわけじゃねえし、
むしろそうやってガノンドロフに逆らったりしたら、事態はもっと悪くなるだろうってことなのさ」
「でも世界を救うためなら……」
リンクは食い下がってきたが、ダルニアは動かされなかった。
「その世界云々以前に、俺はゴロン族を救わなきゃならねえんだ。それとも……」
嘲るように言葉を続ける。
「てめえがドドンゴの洞窟へ行って、キングドドンゴを始末してくれる、とでも言うのか?
それなら話は別だがな」
リンクは黙ってしまった。当然だ。
「だからとっととお姫様の所へ戻って、もっとましな使いをよこすように言え。てめえのような
ガキには用なしなんだよ!」
そう吐き出すように言い、ダルニアはそっぽを向いた。
場に沈黙がわだかまった。
「わかったよ」
しばらくして、リンクがぽつりと言った。妙に力の入ったその口ぶりをダルニアは不審に感じ、
リンクの方に視線を戻した。リンクはすでに背を向けて、部屋から出て行こうとしていた。が、
そこでリンクの足が止まり、顔がこちらをふり返った。
「全然、関係ないことだけど……」
さも不可解そうな表情だった。
「どうしてダルニアは、男のような話し方をするの?」
瞬間、頭に血が上った。
「やかましい!」
いきなり突きつけられた事実。忘れていなければならなかった、その事実。
「出て行け! 二度とそのツラ見せるな!」
ダルニアは叫び、急いで後ろを向いた。そうするしかなかった。リンクの視線から逃れるためには。
部屋の入口で、案内の男が待っていた。
「早くそのガキを追い出せ!」
後ろからダルニアの大声が聞こえてきた。男はリンクと部屋の中とを交互に見ながら、
「兄貴を怒らせたのかよ」
と、馬鹿にしたように言い、再び先に立って、リンクを誘導した。
リンクはそのあとに従いながら、いままで眼前にあったダルニアの姿を思い出していた。
部屋にすわっているダルニアを最初に見た時、リンクは驚きのあまり、言葉が出なかった。
仲間のゴロン族よりもひとまわり大きく、筋肉の発達も著明な、頑健きわまりない肉体ではあったが、
そこここに宿る丸みは見逃しようがなかった。頭髪を除く体毛は薄く、そのあとに聞いた声は
不自然に高かった。そして、あの胸……
他の者たちと同様に露出された胸は、筋肉のためだけではない、やわらかい隆起を形作っていた。
それはアンジュの胸のように、みごとな質感を持った優美な姿ではなく、有るか無きかの、
かすかなものだったが、男としては明らかに異質な隆起だった。
「ちょっと訊くけど……」
リンクは先を行く男に、おずおずと声をかけた。
「ダルニアって……女……だよね」
突然、男がふり返った。感情で破裂しそうな顔だった。
「おい」
男は低く、しかし凄みのある声で言い、リンクの胸ぐらをつかんだ。そのまま片手で身体を
持ち上げる。リンクの足は地面から離れ、男の手による圧迫で息がつまった。
「二度と兄貴のことを女だなんて言ってみろ」
目が憤怒に燃えていた。
「カカリコ村までぶっ飛ばしてやるからな!」
男はそう言うと、リンクの身体を乱暴に地面へと戻した。
「わ……わかった」
リンクはやっとそれだけ言った。男はなおもリンクを睨みつけていたが、ぷいと背を向け、
また前を歩き始めた。
『どういうことなんだ』
リンクの疑問は増すばかりだった。ゴロン族は男ばかりだとアンジュは言った。なのに実際には
女がいる。しかも族長という地位に。ところがこの男は、ダルニアが女だとは認めない。のみならず
ダルニア本人も、自分が女であることを否定するかのような態度だった。ダルニアが女でありながら
男として行動することが、ここでは暗黙の了解事項となっているようだ。
何か事情があるに違いない、とリンクは思ったが、どんな事情なのかは想像もつかなかった。
『それはともかくとして……』
リンクは頭を切り換える。
当面の目的である『炎の精霊石』をどうするか。
このままハイラル城へ戻る気など、さらさらなかった。なすべきことはただ一つなのだ。
リンクは再び、案内の男に声をかけた。
「ドドンゴの洞窟の場所を教えてよ」
『どうしてダルニアは、男のような話し方をするの?』
リンクの言葉が耳から離れなかった。
女でありながら男として行動すること。
ふだんは考えもしない、いや、考えてはならないと無意識に抑えてきた、自分の生き方の奇妙さを、
リンクに真っ向から指摘されたような気がして、ダルニアは動揺した。
心が自然に、これまでの数奇な人生をたどってゆく。
ハイラルの片隅の村で、ダルニアは生まれた。生まれた時から身体の大きさは並みはずれていた。
女の子はもちろん、男の子の中にも、ダルニアほど逞しい肉体を持つ者はいなかった。そのため
同年代の子供たちからは煙たがられ、馬鹿にされて、友達はただの一人もできなかった。子供たち
ばかりではない。大人たちもダルニアを白い目で見た。家族ですらダルニアの存在を持てあまして
いることを、ダルニア本人はよくわかっていた。
「あれは女じゃないよ」
その一言が、ダルニアへの評価のすべてだった。
腕力に訴えて周囲を黙らせることは簡単だっただろう。しかしダルニアはそうしなかった。
そうしたところで自分への評価が好転することはなく、むしろよけいに悪くなるだろうということが、
容易に想像できたからだった。
ダルニアは常にひとりだった。
思春期を迎えると、女でありながら女と見られない苦しみはさらに強まった。ただ、家業の
刀鍛冶の手伝いを続けるうち、その方面の才能が自分にあることを知ったのが救いだった。
ダルニアは刀を打つ作業に専念し、年を経るごとに孤独にも慣れ、女を捨てて生きることへの
覚悟が自然に養われていったのだった。
刀鍛冶を生業とする以上、デスマウンテンに住むゴロン族のことはよく知っていた。ゴロン族は、
鉱山労働と刀鍛冶の後継者を、ハイラル全土に求めていた。ダルニアはそれに応じる決心をした。
女人禁制の世界であることは承知だったが、自分は男であるという意識が、その頃にはもう
固まっていたからだ。家族も内心では、厄介払いできると喜んでいるふしがあった。
当然ながらゴロン族は、ダルニアを相手にしなかった。いくら刀鍛冶の才能があろうと、本人が
男だと主張しようと、実際には女であるという事実は変えようがなかったからだ。
ダルニアは機会を待った。そしてその機会は、ほどなくしてやってきた。
ゴロンシティ近くの鉱山で大規模な落盤事故が起こり、当時の族長を含む数人が生き埋めに
なった。いつ落盤が続発するかもしれない状況で、誰もが救助に向かうのを躊躇していた時、
ダルニアは単身で危地に乗りこみ、みごとに全員を救出したのだった。
この行為が、行動力を重視する種族であるゴロン族の、ダルニアへの評価を一変させた。
生物学的には女であっても、生き様は男そのものである、と認められたのだ。族長は、自らが
救われたこともあって、積極的にダルニアを受け入れる態度を示した。こうしてダルニアは
ゴロン族の一員となった。
いったんそうなると、刀鍛冶の腕前によって、また仲間たちを上回る体格と体力によって、
ダルニアの評価はさらに高まることとなった。他にも仲間うちの種々の問題を解決するのに功績が
あり、部族内でのダルニアの存在感と発言力は、しだいに大きくなっていった。ついには族長に
推され、すでに数年間にわたって、ダルニアはゴロン族のトップの地位を保っているのであった。
ゴロン族の性生活にも、ダルニアはうまく順応していた。
『兄弟の契り』と称されるゴロン族の性的習慣は、男同士という点で、他のハイラル世界のそれと
大きく異なるものであった。しかし相違点はそれだけではない。『兄弟の契り』は、あくまでも
部族内の上下関係を明らかにし、確認するための儀式であり、単なる欲望や愛情が介在することは
なかった。その点、ゴロン族はきわめて理性的な種族だった。
族長の養子という形でゴロン族に迎えられたダルニアは、しきたりによって、まず族長と、
そしてさらに他の有力者と契りを結んだ。その契りとは、彼らの陰茎を肛門に受け入れることで
あった。ダルニアが女性器や──貧弱とはいえ──乳房を有していることは問題にされなかった。
ゴロン族は女には興味のない種族であったから、男と認められて仲間となった以上、それらの
器官の存在が部族内に混乱を招くことはなかったのだ。
ダルニアの地位が向上し、逆に目下の仲間に契りを施す立場になっても、混乱は起きなかった。
女にしては異常に肥大した陰核を用いることもあれば、男根を象った器具を装着して行為に及ぶ
こともあったが、仲間たちはみな、ダルニアとはそういう「男」なのだと認識し、迷うことなく
ダルニアを「兄貴」と呼んだ。
だが……
ダルニアの思いは、最近の災厄の記憶に重なってゆく。
男として生きてきた俺に、自分が女であることを思い出させる事態が起きた。
ガノンドロフだ。
『炎の精霊石』を奪うのがあいつの主目的であることは間違いない。が、会見の際、あいつが俺を
見ていた目には……それとは異なる色調があった。男が女に抱く、欲望の色調が。
女と見られるのは、いまのダルニアにとって、絶対に受け入れられないことであった。しかも
そこに欲望という、ゴロン族には無縁の邪な要素が介在していることもあって、ダルニアは
ガノンドロフに対し、吐き気を催すような嫌悪感を覚えた。
しかし、実はそればかりではないことを、ダルニアは内心では気づいていた。これまで女と
見られたことのなかった自分が、初めて女として見られたという、ひそかな喜び。理性では
とうてい容認できないことだったが、感情では……ダルニアはそれを容認しないではいられなかった。
そして今日、リンクが現れた。
『どうしてダルニアは、男のような話し方をするの?』
ゴロン族の内情を知らぬ、無責任な発言に過ぎない。しかしそこには、物事をあるがままに見る
素直さがこめられていた。ガノンドロフの欲望とは全く異なる心情だった。ゆえにダルニアは
リンクに対して、一時的に怒りを爆発させてはみたものの、嫌悪感は抱かなかった。むしろ、女で
あれと暗に勧められたようで、女と見られる喜びが、より大きく刺激されるような気がした。
この感情は、この先の俺に、どういう影響を及ぼすだろうか。
ゴロン族の族長として、ダルニアの心は大きく揺らいでいた。
シティ内の大食堂で供される夕食には、手の空いている者、全員が集合することになっていた。
ダルニアは料理を平らげながらも、
『やはりドドンゴの肉がないと、もの足りないな』
と、心の中で正直な感想を漏らさずにはいられなかった。いつもは賑やかな仲間たちも黙りがちで、
意気が上がらないこと甚だしい。
居並ぶ面々の中に、昼間リンクを案内してきた門番の男を見つけて、ダルニアは声をかけた。
「あのガキはどうした?」
男はダルニアに向き直った。
「あいつですかい? そのまま出て行っちまいましたよ」
「そうか……」
ダルニアは視線を落とした。リンクに『二度とそのツラ見せるな!』とは言ったものの、災厄の
ことを考えると、あのまま別れてしまってよかったのか、という後悔にも似た思いが湧いてくる。
男は調子づいたように言葉を続けた。
「あのガキ、兄貴に何を言ったんです? ずいぶん兄貴を怒らせたみたいですが。ドドンゴの
洞窟のことで、何か無礼でも?」
「何だと」
ダルニアは男の言葉を聞きとがめた。
「ドドンゴの洞窟がどうした。あいつ、お前に何か言ったのか?」
問い返す声が思わず大きくなる。圧倒されたように、返答する男の声は先細りとなった。
「いえ……ただ……ドドンゴの洞窟の場所を教えろって言うもんで……」
「教えたのか?」
「ええ……まずかった……ですか?」
それには答えず、ダルニアはリンクとの会話を記憶から引き出した。
リンクは最後に『わかったよ』と言った。俺はそれを、『だからとっととお姫様の所へ戻って、
もっとましな使いをよこすように言え』という発言に対する答だと思っていた。ところが実際には
そうではなく……その前の、『てめえがドドンゴの洞窟へ行って、キングドドンゴを始末してくれる、
とでも言うのか?』との問い──というよりも揶揄──への答だったとしたら……そういえば
リンクの声には、妙に力が入っていた……
あの馬鹿! 真に受けやがって!
ダルニアはいきなり立ち上がり、驚く仲間たちを尻目に、ひとり走り出した。シティの門を出、
ドドンゴの洞窟へと急いだ。
あんなガキ一人に何ができる。死にに行くのと同じだ。
放っておきゃいい、俺が行っても何も変わらない……そんな意識も心の片隅に湧いたが、
ダルニアの心は断固としてそれを拒否した。
仮にも王家の使者を見殺しにできるか! ゴロン族の名折れだ!
だが、理由はそれだけだろうか?
その答が見つかる前に、ダルニアはドドンゴの洞窟の入口に到着していた。
入口に焚かれた火を移した松明を持って、ダルニアは洞窟の中を奥へと進んだ。
物音はしない。リンクはどこにいるのか。それともすでに、物音をたてられない状態になって
しまっているのか。自身の危険も警戒しながら、ダルニアはリンクのいた痕跡を探した。それは
ほどなく明らかになった。
暗い洞窟の途上に、蝙蝠のキースが多数、死体となって残されていた。その先には、自爆が
やっかいなドドンゴの幼生──ベビードドンゴの残骸が散乱していた。さらにその奥には、成獣の
ドドンゴの死体が三つ横たわっていた。
『あいつが……一人でこいつらを……?』
ダルニアはドドンゴの死体を観察し、その弱点である尻尾に、はっきりと剣の跡が刻まれている
ことに驚いた。凶暴になったドドンゴは、ゴロン族ですら近寄りがたい。接近する者には容赦なく
口から炎を吐きつけてくる。しかしリンクはその炎を避け、尻尾が弱点と察知して、そこを正確に
攻撃しているのだ。
ダルニアは先へ進んだ。煮えたぎる熔岩の中に足場が点在する場所では、ダルニアが知らない
魔物の死体が見つかった。武装した大きな蜥蜴のような魔物で、これには正面と横に剣で切り
裂いた跡が残っていた。
『子供のくせに、何てやつだ……』
ダルニアはリンクの奮闘ぶりに驚嘆した。だがリンクも苦戦したようだ。地面には、明らかに
人間のものとわかる血痕が点々と散らばり、先へと続くリンクの足跡は大きく乱れていた。
ダルニアは歩調を速めて奥を目指した。そろそろ最深部が近づこうかと思われた頃、突然、耳を
つんざくような吠え声が聞こえた。
キングドドンゴだ!
もはや警戒心も忘れて、ダルニアは奥へと走った。最深部は意外に大きな空間で、地面の中央は
熔岩の溜まった不可侵地帯となっていた。その周囲の狭い領域で、リンクとキングドドンゴが
向かい合っていた。
身体の大きさには何十倍という差があった。空間の高さの半分は占めようかというキングドドンゴの
巨体に対し、リンクの身体は吹けば飛ぶような矮小な存在だった。にもかかわらずリンクは、
左手に剣を、右手に盾を持ち、真っ向からキングドドンゴを睨みつけていた。
キングドドンゴが口から炎を吐く。リンクはバック転でそれを避ける。続けてキングドドンゴが
リンクに突進する。リンクは横っ飛びでまたもこれをかわす。なかなか素早い。が、攻撃方法は
見つからないようだ。リンクはすでにダメージを負っている。このままでは体力を消耗し尽くして
しまうだろう。
見守るダルニアの目に、キングドドンゴの突進を避ける際、リンクが平衡を失って倒れる姿が
見えた。行き過ぎたキングドドンゴが向きを変え、リンクに狙いをつけた。
『まずい!』
ダルニアは手近にあった石塊をキングドドンゴに投げつけ、リンクとは離れた場所に飛び降りた。
「こっちだ!」
ダルニアはキングドドンゴに向かって叫び、心の中でリンクにも叫びを送った。
囮になってやる! その間に体勢を整えろ!
キングドドンゴはダルニアの方に向きを変え、間もおかず突進してきた。
まだ……まだだ……
壁際に立ち、ぎりぎりまで引きつけて、突進をかわす。そうすれば奴は壁に激突して、隙が
できるだろう。
狙いは当たった。ダルニアは髪ひと筋の差で横に飛びすさり、キングドドンゴは轟音をたてて
壁にめりこんだ。
だがダルニアの予想しなかったことが起こった。
激突の衝撃で、上から無数の石が降り注ぎ、その一つがダルニアの頭を直撃したのだ。
薄れてゆく意識を懸命に鞭打ちながら、ダルニアはその場から離れた。しかし足がもつれ、
遠くまでは逃げられない。
キングドドンゴがこちらを向いた。突進の構えだ。
大きく吠えるキングドドンゴ。来た。来た。だが俺は……動けない……もう動けない……
その時、ダルニアの前に一つの影が立ちはだかった。
『リンク!』
剣と盾は持ったままだ。が、その両腕は大きく左右に広げられている。攻撃の態勢ではない。
ただダルニアを守ろうとする意思だけだ。
「馬鹿野郎!」
眼前にキングドドンゴが迫った瞬間、最後の力をふりしぼって、ダルニアはリンクの身体を抱え、
横方向へと回転した。飛び過ぎるキングドドンゴの甲皮が、ダルニアの右脚の皮膚を切り裂いた。
ダルニアはそのまま熔岩の縁まで転がった。リンクはダルニアの腕から離れ、キングドドンゴの
前に投げ出された。リンクが立ち上がる。だが動きが鈍い。もうリンクも限界が近い。
リンクが目の前にいるので、キングドドンゴは攻撃方法を変えたようだ。突進をやめ、ゆっくりと
リンクに近づいてくる。炎を吐くつもりだ。
どうする? どうする?
熔岩の縁に咲くバクダン花が、ダルニアの目を捕らえた。ドドンゴの洞窟に自生する珍種の植物。
引き抜くと爆発する奇妙な花。
これしかない!
「リンク……」
初めて口にするこいつの名前。リンクがふり向く。
「こいつは……引き抜いて数秒後に爆発する……あいつに……食わしてやれ……」
頷くリンク。しかしタイミングが重要だ。早すぎても遅すぎても、近すぎても遠すぎてもいけない。
キングドドンゴがリンクに迫る。まだ遠い。だがもう口を開けた。炎が来る!
「受け取れ!」
ダルニアはバクダン花を引き抜き、リンクに向かって投げた。実の中に仕込まれた火花が弾ける音。
リンクが受け止める。キングドドンゴに向き直る。その口の奥に溜まってゆく炎の渦。
『もっと近づけ!』
叫ぼうとした。が、声が出ない。もう……意識が……
しかしリンクはそのとおりにした。いまにも火焔が自らを焼き尽くそうかという、その瀬戸際で、
リンクは自身の観察と意思をもって、臆することなく敵に近づき、手の中のものを、燃え盛る
口中へと投げこんだ。
いきなりキングドドンゴが口を閉じる。リンクはバック転でいったん下がる。腹の中の鈍い
爆発音とともに、がっくりとキングドドンゴの前脚が崩れ、地面に顔が投げ出される。
『やれ……』
「やぁッ!!」
気合いをこめて、リンクがジャンプ斬りを繰り出す。キングドドンゴの顔面に赤い裂隙が走り、
血液が噴出する。
『そうじゃねえ……』
いや……お前には……もう……わかっていたな……
リンクがキングドドンゴの背後に回り、その尻尾に最後の一太刀を浴びせるのを、遠ざかる
意識の片隅で、ダルニアは見た。
ぼやけた視界に、リンクの顔が映った。
傷だらけだ。火傷も負っている。しかしその目は優しく、口元には笑みが浮かんでいた。
「大丈夫?」
リンクが言う。それには答えず、横たわっていた身を起こし、ダルニアは周囲を見回した。頭の
傷が痛んだが、意識は急速に明瞭となっていく。
さっきの場所だ。洞窟の最深部。中央の熔岩はいつの間にか冷えて固まり、そこには巨大な
骨格の残骸が黒くうずくまっていた。
「俺は……どれくらい眠っていた?」
ゴロン族の族長ともあろう俺が、こんな子供の前で意識をなくして、「大丈夫?」などと
気遣われるとは……
「十分くらいかな」
ダルニアの忸怩たる心をよそに、リンクは明るく答えた。
その程度なら……まあいいか……
「やるじゃねえか」
ダルニアはリンクに向かって言った。ぶっきらぼうだが、ダルニアにすれば最大級の賛辞だった。
対してリンクは、
「ぼくは……勇気だけは忘れないんだ」
臆面もなく、そんな台詞を吐く。ダルニアは自分の方が照れ臭くなった。
「けっ!」
顔をしかめて見せ、わざと乱暴な口調で、ダルニアは言った。
「あれは勇気なんてもんじゃねえ。無茶っていうもんだぜ」
その「あれ」が何を指すのか、ダルニアは敢えて言及しなかった。が、リンクは理解している
ようで、何の説明も求めなかった。
「お前、なぜ俺を庇った?」
耐えきれず、ダルニアは自分の方から訊いた。いつの間にか「てめえ」が「お前」になっていた。
リンクはダルニアから視線をはずし、ゆっくりと、しかし明確に、こう言った。
「だって……女の人は……守らないと……」
まだ言うか!
だが口には出さなかった。不思議に腹は立たなかった。
「その女に助けられてちゃ、世話ぁねえや」
冗談めかして混ぜ返し、ダルニアは立ち上がった。少しふらつくが、歩くことはできる。
「戻ろうぜ。仲間が待ってる」
ダルニアはリンクの頭に手を置いた。
お前となら……と、ダルニアは心の中でリンクに語りかけた。
喜んで『兄弟の契り』を結んでやるところだが……お前のその歳じゃあな……
リンクが下からダルニアの顔を見上げ、にっこりと笑った。ダルニアの胸はどきりとした。
ほんの子供に過ぎないリンクが、身を挺して俺を守ろうとしてくれた。実効性はともかくとして、
その心根はまさに、かつての落盤事故の際の俺と同じく、「男」のそれだった。そして……
俺……は……
さっきの自分の言葉が脳内によみがえる。
──その女に助けられてちゃ、世話ぁねえや。
『自分で女と認めちまったか……』
やはり腹は立たない。それどころか……そう、こうやって……リンクと顔を見合わせて微笑みを
交わす、この状況が……どうしてこんなに快いのか……
『リンクの前なら、それでもいいや』
絶対に口には出せないことを承知の上で、ダルニアはその思いを自分に許した。
>>682 ナンバーミス ×10/12 ○11/12
ゴロンシティは歓喜に包まれた。リンクとダルニアを英雄として称揚するため、大がかりな
祝宴の計画が立てられた。しかしリンクは先を急ぐと言って、その栄誉を辞退した。ダルニアは
何も言わずにそれを認めた。ただ『炎の精霊石』を渡すことは忘れなかった。
鮮紅色の美しい光を放つその石をリンクに手渡しながら、ダルニアは言った。
「この精霊石は、世界を救うという言葉を信じて、王家の使者としてのお前に渡すものだ。だが、
それだけじゃあ、俺の気がすまねえ」
不思議そうな顔をするリンクに、ダルニアは問いかけた。
「マスターソードを知ってるか?」
リンクは知らないと言った。
「ハイラルのどこかに眠っているという伝説の剣だ。魔を退けるという意味で、退魔の剣とも
言われている。心悪しき者は触れることのできない聖剣ともな。なんでも、床の台座に刺されて
いて、勇者としての資格ある者だけが、台座から抜き放つことができる、そんな代物らしいや。
もちろん俺は見たことはないし、どこにあるのかも知らねえが……」
ダルニアは力をこめて続けた。
「俺の夢は、そんなマスターソードに劣らぬ優れた剣を打ち上げることだ。まだできちゃあいねえが、
それができたら、お前にやるよ。それが俺から、個人としてのお前に渡すものだ」
しばしの間をはさんで、リンクが気遣わしげに口を開いた。
「ダルニア……いいの?……ダルニアにとっては、とても大事な……」
「いいんだよ! それが男と……」
男の──と言いそうになり、ダルニアはあわてて言葉を切った。
「……いや……とにかく……信義の問題だからな」
「……ありがとう」
「まだできてもいねえんだぞ」
「それでも……」
リンクがダルニアの手を握る。厚く硬くこわばったダルニアの手の皮膚に、確かな暖かみが
伝わってくる。その暖かみと、いまのリンクの呟きに呼応した記憶が、これまでに抱いたことの
なかった、ある感情を呼び起こしそうになり、ダルニアの身体は小さく震えた。しかし手を離す
気にはなれなかった。
『……それでも……いいや……』
To be continued.
おのれの想像力の限界に挑んだ話になりました。
でもやっぱり暴挙だったかな、これは・・・
次はマロン再登場。
毎度GJ!
>読んでもらえるのなら、もう本編の映像は忘れて、別キャラとして見ていただくしか・・・
アッシュとナボールを足して2で割ったようなキャラに脳内変換されたからおk
GJ!
初めてドドンゴの洞窟クリアした時のことを思い出した。リンクと一緒に悲鳴あげたもんだ…
なんだか俺も書いてみたくなってきた。
しかしどうしてもこどもリンクたんが犯されるわけだが。
>>687 801じゃなければリンク受けでもガノン受けでもバッチ来い!
今が旬のカップルは?
相変わらず人気の高い王道 リンクゼルダ
まさに旬 リンクミドナ
対抗 村長リンク
どう頑張っても801になってしまう可能性ががが。orz
モンスターに犯されるリンクたんなわけだが。
801は801でスレがありそうに思うけど
そして>670は幸せになれたんだろか?
まあ、ミドナは渡せないけどな!
>>691 801なら「任天堂の男キャラはセクシーだ」みたいなスレがどっかにあった筈。
まあ、今もあるかどうか分からないが。
個人的には遠慮したいなぁ、ヤオイネタ。
リンク女体化?
695 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 02:29:35 ID:H7+PT5AN
>>672 〜 683
GJですた。
もうエロなくてもいいなコレと思って読んでた。
あと「女体化」という強烈な3文字を見た瞬間笑ってしまったw
どうも俺は脳内変換ができないorz
今旬な組みあわせで思いついたんですが、
トワプリの城下町のリンクのファン3人使えば
リンクとで4Pプレイできません?
できませんね。ごめんなさい。
いやーんトリオか
>>650、
>>661の続き投下します。
リンク×ミドナ(大)、EDまでのネタバレ注意。…今更すぎるが
「…なんでだよ」
永遠に続きそうな沈黙を破ったのは、俯いたままのミドナだった。
「え…?」
「なんで、こんな所まで来てんだよ…」
彼女にとって、彼がどうやって来たのかより、そちらの方が大きな疑問となっていた。
自分の記憶が正しければ、たしか彼は、故郷の村の時期村長だった筈だ。
……きっと今頃は、あの幼馴染の女性と、仲睦まじくしてるのだろう。そう、思っていた。
だが、リンクの服装はミドナと別れた時の、あの深緑の衣のままだ。
よく見るといくつかのほつれや、繕ったような後が見える。
それこそが、彼がその後も旅を続けてきた証明だった。…まさか、ここに来る為に?
「だってミドナ、言っただろ。『またな』って」
「あ、あれは……!」
―――あれは、別れを言い出せなかった、己の弱さだ。
すでに心は決まってたくせに、最後の最後ですら言えなかった本当の言葉を覆い隠す為の。
だから、彼女にとってあの台詞は、永久の別れを意味するものだった。
だが、この男は
「『また』はお別れの挨拶じゃない。…いつか会うための約束の言葉、だろ?」
そう言って、晴れやかな笑顔を浮かべた。
「…馬鹿。そんな言葉、とっとと忘れろよ……」
胸が熱い。鼻の奥がツンとなる。
今にも泣きそうになるのをぐっと堪え、無理やり笑みを作る。
「そんな、してもいない約束の為に来たってのか、オマエは……」
「……いや、多分『さよなら』って言われても来たと思う。
あのまま別れるなんて、絶対嫌だったし」
その言葉に、どくん、とミドナの鼓動が跳ね上がる。
「…何でだよ。引っ付いてたバケモノが消えるのが、どうして嫌なんだよ」
笑みを消し、問う。―――わずかに浮かんだ期待を、必死で押し込んで。
「化け物なんて言うなよ……俺は、ミドナのこと好きだったぞ?」
何気ない口調の中に、込められた彼の心。
『好き』。
その言葉が、ミドナの胸の中に強く響いた。その瞬間、喜びが感動となって全身に巡る。
…今なら、素直に想いを言えるかもしれない。
「わ、ワタシも―――」
「だって、ずっと一緒に旅してきた大事な相棒だからな」
………は?
今、こいつは何て言った?
「………相…棒?」
「ああ、いちばん大切な、相棒だ」
その言葉に、喜びやらときめきやらがピシッ、と凍りつくのをミドナは感じた。
考えたくはない。でも、まさかコイツは
「…つまり何だ。オマエは『相棒』のワタシに会う為に、わざわざ光の世界からこっちまで
来たってのか?」
「もちろん」
躊躇いもなく、晴れやかな笑顔のままで返される。
そのはっきりきっぱりとした口調に、ミドナは肩の力が一気に抜けていくのを感じた。
…ああそうだよな。解ってたさ。オマエはそういうヤツだったよ。
もう少しロマンチックな理由で来てくれたものだとこっちが勝手に勘違いしていただけだ。
ハァ、と重い溜息をつき、キッと正面からリンクの顔を鋭く睨みつける。
「え、な、何?」
突然の様子にたじろぐリンクの頭を両手でガシっと掴んで固定し、
「ワタシはこういうつもりで聞いたんだ! いいかげん気づけこの朴念仁!!」
―――強引に、己と彼の唇を重ねた。
いきなり落ち込んだと思ったら、睨まれて、怒鳴られて―――キスされている。
突然のミドナの行動と、柔らかい唇の感触に、リンクの頭は真っ白になった。
なぜ? とかどうして? といった疑問すら浮かばない。
ただ呆然と、ごく近くにいる、青白い頬を真っ赤に染めた彼女の顔を見ることしか出来なかった。
「………ぷはっ」
どれくらいそうしていたのだろう。
ミドナが突然ぱっと手と唇を離し、苦しげに息をはいた。どうやらずっと呼吸を止めていたらしい。
そこでやっと、固まってたリンクの思考が正常に廻りだした。
「あ、あのさミドナ、今のって、その、えっと…」
…正常というには大分混乱しているようだが。
「……オマエな。これ以上を女の方から言わせる気か?」
赤い頬のまま憮然として言う彼女に、ぶんぶんと首を横に振って否定する。
「そうじゃない! そうじゃなくて、だからその、これってつまり、ミドナが…」
一旦言葉を切って、緊張で乾いた喉をゴクリと鳴らし、もう一度息をつき
「俺の事、好きだって事? …そ、その、友達とか仲間って事じゃなくて…」
「…初めからそう言ってんだよ。この馬鹿」
悪態をつきながらも、気恥ずかしげに視線をそらす。
それは、素直でない彼女らしい、肯定の言葉。
「………」
その意味をゆっくりと噛み締め、そして―――あっという間に赤面した。
「え、えっと…あの、ゴメン、気づかなくて…」
「……フン。そりゃどうせ、オマエと旅してたのはバケモノの方の『ミドナ』だったしな」
気付かない、というより、そもそもそんな目で見れないだろう。
ひょっとしてリンクからすれば、『ミドナ』は今の彼女ではなく、あの子鬼の姿のままなのだろうか。
そう思った瞬間、ちくり、と胸がわずかな痛みに疼いた。
……ああ、なんて馬鹿げているのだろう。
あんなにも嫌っていたあの醜い姿に、まさか自分が嫉妬することになるなんて…
「…で、どうなんだよ」
「………へ?」
いきなりの問いかけに、間の抜けた声を返すリンク。
「ワタシはオマエに告白したんだぞ? なら、オマエはその答えを言わなきゃいけない。
…今更友達から、なんて言ったら城の屋上から放り投げるからな」
すいと細めた目で怖い事を言うミドナ。
「そ、そんな事急に言われても…」
「馬鹿、簡単な2択だろうが。やっぱり相棒としか見られないなら、ノーだ。
で、もしも…」
わずかに躊躇い、じっと目を見据えてから、言葉を続ける。
「もしも、少しでもワタシを女として意識しているなら……イエス、だ」
リンクが自分を好いているのは、先程、本人の口から聞いた。
…ならば、後はもう、この二つしかない。
期待と不安が入り混じる心境で、それでも、ミドナはその瞳を逸らそうとはしなかった。
紅い瞳にまっすぐに見つめられながら、リンクは必死に答えを探していた。
今までは、いちばん大切な相棒としか考えてなかった。それで十分だと思っていた。
聞かれるまでもなくミドナは女の子だ。意識なんてとっくにしている。
…でもそれは、きっと、彼女が言うような意味じゃないのだろう。
ミドナ。
小憎ったらしくて、ずる賢くて、いじわるで……でも、実はけっこう優しくて。
言うことも考えも厳しいくせに、あんまり非情にはなりきれてなくて。
こっちが何も言わなくたって、思ってる事なんてすぐに読まれてて。
虫が嫌いで、民思いのお姫様で―――
…本当に、それだけなのか?
俺が知っている彼女は、本当に、それしかないのか?
唐突に、だが鮮明に、あの日の光景が脳裏を過ぎった。
夜明け前の黄昏の空の下、夕日色の髪を靡かせる、黒衣を纏った女性。
理知的な瞳。高貴な雰囲気。…でも、はすっぱな口調はそのままで。
ああ、やっぱりミドナだ、って安心したけど、でもそれ以上に………
「―――見惚れてた」
「…え?」
「あの時、初めて今のミドナを見たとき。
…こんな綺麗だったなんて、思ってなかったから」
なにげに失礼なことを言われているが、それを指摘する余裕が今のミドナには無い。
リンクの紡ぐ言葉を、ひとつも溢さないように、黙って耳を傾けている。
「…うん。そうだ。俺は、ちゃんとミドナを『女の子』として見てた」
それなのに―――いままで自分は、それをはっきり意識したことはなかった。
まるで、消えてしまった彼女の思い出を穢さない為のように。
でも……今は違う。目の前に、触れられる距離に彼女がいる。
思い出の中だけでない場所で、自分の言葉を待っている。
―――ならば、自分の答えはひとつだ。
「俺も、ミドナが好きだ。女の子として好きなんだ」
3年も待ち続けた言葉が、ゆっくりと、彼女の中に浸透していく。
期待と不安は、いつの間にか驚きと喜びに変わり、全身を震わせる。
いつまでも見ていたいはずの彼の笑顔が、ぼんやりと歪んでいき―――
「…ミ、ミドナ?」
「うっ……うわあぁぁぁぁぁん!!」
恥も外聞もかなぐり捨て、大声でしゃくり上げながら、ぎゅっとリンクの胸元にしがみついた。
ミドナ自身もなぜ自分がここまで泣いているのか解らない。それでも、この爆発した感情を
止めることはしばらくできそうもなかった。
予想もしなかった反応に驚きながら、それでも子供のように泣きじゃくる彼女をリンクは出来るだけ
優しく抱きしめた。
彼女が被っていたフードを外し、夕日色の髪をそっと撫でてみる。
びくっ、とミドナの肩が強張るが、お構いなしにそのまま頭を撫で続けた。
サラサラとした感触に、さすがお姫様、と変な感心をしていると
「な、なあ……リンク」
いつの間に泣き止んだのか、ミドナが困ったように胸の中から顔を上げた。
…何となく息が荒い気がするのは、自分の気のせいだろうか。
「ど、どうしたんだ?」
何故か扇情的な様子の彼女に、つい言葉をどもらせる。
ミドナもどう言ったものか解らずしばらく眉根を寄せていたが、やがて
「あ、あんまり、髪、触るな…」
「…え、何で?」
こんなに綺麗なのに、と続けるリンクにミドナはふるふると首を横に振る。
「違う……この髪は、ワタシの身体の一部なんだ。…動かしてるのは見た事あるだろ?
だから、その、そうやって撫でられると…」
顔を真っ赤にし、最後のほうはゴニョゴニョと尻すぼみでよく聞き取れない。
…そういえば以前、彼女はまるで手足のように自在に髪を動かしていた。
ということは、当然髪にも神経が通っているということだろう。
つまり、自分は単にあやすつもりだった事が、彼女にとっては愛撫も同然だったというわけで。
「…! ご、ごめん!!」
慌てて手を離し、頭を下げた。
想いを伝え合ったとは言え、そんな事をするにはまだ早すぎる。
田舎育ちの為か、意外と貞操観念が強かったリンクは、知らなかった事を差し引いても猛烈に反省した。
そんな彼の様子に、今度はミドナが慌てることとなった。
リンクが純粋な厚意で撫でてくれていたのは解っていた。だから、余計に言い出し辛かったのだ。
それに何より―――
「……べ、別に触られるのが嫌なんじゃない」
撫ぜる手への嫌悪感は一切無かった。ただ、あれ以上は耐えられそうになかったから止めたのだ。
「…オマエが、ちゃんと『そういうこと』って自覚して、それで触るんだったら……」
それならば、ワタシは構わない。―――消え入りそうな声で、彼女はそう言った。
「ミドナ、それって…」
「………」
これ以上は言葉に出来ない。ただ一度だけ頷いて、肯定する。
その意味を汲み取り、リンクはごくり、と唾を飲み込む。
抱いてほしい―――そう、彼女は言っているのだ。
だが、先にも言った通り、彼はそういった面において真面目だった。
いいのか? 俺たちはまだ、告白したばかりじゃないか?
理性と欲望がごっちゃになった思考で悩んでいると、不安になってきたのか、ミドナがおずおずと
「その……嫌、なのか?」
―――なんて、上目遣いで聞いてきた。
ぴしり、と理性にヒビが入るのを、リンクはたしかに自覚した。
突然ミドナを抱きしめて、強引に引き寄せる。
「うわっ…!」
「……本当に、俺で、いいの?」
吐息が触れる距離で、耳元に口を寄せて囁く。
…きっと、これが最後の境界線。
踏み越えたら、きっともう戻れない。付き返すなら今しかない。
でも、それでも
「だからそう言ってんだろ……この朴念仁」
今の彼女にとっては精一杯の軽口で、その言葉に同意した。
願わくば―――この期待と同じぐらいに膨らんだ不安に気づかれない様に。
休み返上で書いたのにまだ完結しないという現実に絶望した!
次こそ終わりです。と言うか強引でも終わらせる。
あと、女体化リンクっつーと以前見たコスプレ外人のおねーさんを思い出すのは自分だけか。
超GJ 萌殺す気か
うおぉおマジGJ!!次が凄い愉しみ
つーか話の流れとか上手なぁ感心した
703 :
670です:2007/01/23(火) 13:51:31 ID:SXvvRunZ
>>692 おかげさまでクリアまで一直線でした(つか、攻略サイトへの頼り癖がついてしまった・・・)
んで、エンディング見て、こんなんじゃ幸せになれねーよと。
そしたら
>>697様のGodJobが!幸せになりました。
エンディングで、緑の服でエポナに乗って駆けていくリンクはきっと
またミドナに会うための手掛かりを探す旅に出たのだと信じてます。
続き期待してます。
何というほのぼの萌え
見ただけで萌え死んでしまいそうになった
これは間違いなく名作になる
705 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 02:54:48 ID:jTNeumus
>コスプレ外人
VIPの板で見た気がする。
でもそれは多分別物。
ミドナったら本当は甘えんぼさんなのね。
その事実だけで妄想が膨らんでご飯3杯はいける。
ア〜ア〜〜 ワワワワワ ワ〜〜(ジャーン)
時オカ/マロン編その2、投下します。
エロはほんのり程度。ゾーラ族の設定を変更。
↓
カカリコ村から南へ二日行くと、ゾーラ川がハイラル平原に流れ出る地点に着く。リンクは
ダルニアにそう聞いていた。多少の起伏はあるものの、川に沿う歩きやすい道だったので、急いだ
リンクは半日ほど早くそこに着くことができた。
『炎の精霊石』を入手したあと、一度ハイラル城へ戻ってゼルダに会っておこうか、とも
思ったのだが、三つの精霊石すべてを集めない限り、ゼルダは喜ばないだろう、と思い直し、
残る一つである『水の精霊石』を求めて、リンクはまっすぐここまで来たのだった。
ドドンゴの洞窟での戦いで負った傷は、まだ癒えてはいなかったが、旅を続けるのに支障となる
ほどではなかった。この程度の傷ですんだのは、ダルニアの助けとともに、インパの指導の
おかげだと、リンクは実感していた。顧みても、自分の戦いぶりは満更でもなかったと思う。
しかし、その先の行程は容易ではなかった。ゾーラ川は、急峻な山並みの間の深い渓谷を奔馬の
ように流れ下っており、道らしい道はなかった。岸の岩にすがり、激流に耐えて水際を進みつつ、
リンクは上流を目指した。正確な目的地はわかっていなかったが、どこかに人の住む場所がある
はずだった。
ゾーラ川の最上流は、大きな滝となって山頂近くから流れ落ちており、そこから先へは進み
ようがなかった。困惑したリンクだったが、しばしの探索ののち、滝の裏側に洞穴を見つけ、
苦労の末にそこまでたどり着いた。
しばらく洞穴を進むと、中は大きく開けた空間となっていた。リンクは思わず立ち止まった。
リンクは壁に沿った崖の上に立っていた。眼下に広がる空間の底は、一面に豊かな水を湛え、
洞内にはその薄青い反射光が清らかに満ちていた。奥の壁の高い所からは一条の滝が落ちかかり、
重厚な音を響かせつつ、底面の水に飛沫をほとばしらせていた。空気は涼しく澄みわたり、
呼吸する肺までが洗われてゆくようであった。
幻想的な光景に目を奪われ、立ちつくしていたリンクの背後から、声をかける者があった。
「お客さんとは珍しいな」
人がいた!
驚きと喜びに胸を弾ませて、リンクは後ろをふり返り、そこに驚くべきものを見た。
にこやかな笑みを浮かべた、ひとりの青年が立っていた。
これがゾーラ族……だが、この格好は……
リンクは言葉もなく、目の前の青年を見つめていた。
青年の表情は友好的だった。その態度とともに、体型も先のゴロン族とは対照的で、筋肉の
発達が異常に目立つことはなく、一般のハイリア人と同様──いや、より均整がとれ、洗練されて
いた。ゴロン族との共通点は、肌の露出が目立つことくらいだった。ただ露出の程度はゴロン族をも
上回っていた。
青年は全裸だった。
「ゾーラの里にようこそ。どういうご用件かな」
友好的ではあるが、見張りという役割を帯びていることは確かなようだ。リンクはここでも、
自分はハイラル王家の使者であると告げ、ゾーラ族の代表者との会見を申し入れた。そうしながらも、
リンクの視線は、ともすれば青年の股間に注がれた。
両脚の間にぶら下がっているそれが、自分のものより大きいのは、まあわかる。相手は大人
だから。でもそのまわりに密生している毛は……大人になると、こうなるものなのだろうか?
リンクの視線に気づいたのか、青年はくすりと笑い、
「よその人には刺激が強すぎるかな。だが、これが我々の生活スタイルなんでね」
と、どこか気取った調子で言ったあと、さらに言葉を続けた。
「ハイラル王家の使者とあらば、こちらも王族がご相手しないとな。来たまえ。ゾーラ族の王、
キングゾーラにお引き合わせしよう」
青年は手招きをすると、壁沿いの崖道を下って行った。リンクはそのあとに従った。
底の水面に近づくにつれ、他のゾーラ族の姿が目につくようになった。彼らの多くは水中を魚の
ように泳ぎ、一部は岸辺に寝そべったり、あたりをぶらぶらと歩いたりしていた。みんな一糸
まとわぬ姿だった。
「我々ゾーラ族は、ハイリア人の中でも、特に水に適応した種族でね。ほとんどはこうやって、
水の中で暮らしている。だからみんな裸なわけさ。水から上がるとしても、遠くまでは行けない。
当然、ハイラルの他の地方に出て行くこともない。もっとも、こんな格好でよそへ出て行ったら、
大騒ぎになるだろうがね」
青年の説明は、しかしリンクの耳にはろくに残らなかった。彼らの裸体に大きな興味が湧く
一方で、目のやり場に困るような恥ずかしさもあり、リンクの視線は右往左往した。ゴロン族とは
違って、ここには男性だけでなく女性もおり、その全裸姿が特にリンクをどぎまぎさせた。
盛り上がった両の乳房を堂々とさらし、男性と同様、各々の髪の色に似た種々の彩りの毛で
覆われる股間を隠そうともしない。リンクは勃起しどおしで、歩くのに困難を覚えるほどだった。
最近知ったあの感覚を痛いほど味わいながら、リンクはそんな彼らの態度に驚きを感じていた。
男も女も全く恥ずかしがっていない。お互いを見ても、自分のような反応を示す者はいない
ようだ。アンジュは胸を見せてくれたが、それが秘めた行為であるという雰囲気は感じられた。
なのにここではみな、さも当然のように全身の肌をさらしている。そういう社会だから、といえば
それまでだが……
一人だけ服を着ている自分の方が、ここでは珍妙な存在なのだと、リンクは認めずにはいられ
なかった。あの感覚が「いけない」ものだという意識が麻痺してしまいそうだった。
そんなリンクの心の乱れを知ってか知らずか、青年はリンクに背を向けたまま歩みを進めた。
空間の奥の端まで来ると、登り階段が壁に穿たれており、衛兵らしいゾーラ族の男が一人、そこに
立っていた。青年は男と小声で会話を交わすと、リンクに向き直り、
「ここから先は、彼が案内する」
と言って、男を指さした。リンクは青年に礼を言い、男の前に立った。男は無言で階段を登り、
リンクも黙ってそのあとについて行った。
「余がキングゾーラ・ド・ボン16世である」
玉座に身を沈めた、これも全裸の、太った壮年の男が口を開き、重々しい声で言った。ゴロン
シティとは異なった、いかにも王の間らしい荘重な雰囲気に、その声はよく合っていた。直答を
許されていたリンクは、しかし萎縮することなく、いつものようにぞんざいとも取れる率直な
口調で、ガノンドロフの脅威と『水の精霊石』の必要性を訴えた。オカリナで『ゼルダの子守歌』を
奏でて、身の証を立てることも忘れなかった。
キングゾーラはしばらく黙考していたが、やがてため息をつくと、深刻げな口調でリンクに
話しかけてきた。
「ハイラル王家の使者殿よ、そなたの話はあいわかった。そなたのいう世界の危機については、
余にも思い当たる点がある。実はこれは、ゾーラの里でも、まだ一部の者しか知らぬことじゃが……」
キングゾーラは小声になった。
「ゾーラ川の水源であるゾーラの泉、そこにはわれらゾーラ族の守り神である、ジャブジャブ様と
いう大きな魚が住まわれておるのじゃが、そのジャブジャブ様の様子が、最近おかしいのじゃ。
たちの悪い病にでもかかったようでの」
そう言うと、キングゾーラは再びため息をついた。
「そのせいか、このところゾーラ川の水質が悪くなっておるようじゃ。まだ人に害を与える
ほどではないが、ジャブジャブ様に万一のことでもあれば、水に生きるわれらゾーラ族にとっては
死活問題じゃ。のみならず、川が流れてゆく先のハイラルの諸地方にも、影響が出よう」
知りたいのは『水の精霊石』のことなのだが、前置きが長い。リンクはじりじりしたが、王様の
面前であり、焦る態度をダルニアにたしなめられた経験もあるので、黙って話を聞いていた。
「わが娘であるルトは、ジャブジャブ様のお世話をするうちに、いち早く異変を知り、いたく
心配しておった。で、『水の精霊石』じゃが……」
いきなり話が本題に入ってきた。
「ハイラル王家の依頼でわれらが預かってきたものゆえ、同じ王家の依頼でお返しすることは、
やぶさかではない。じゃが……」
じゃが? ここでもただでは渡してもらえないのか?
「その『水の精霊石』を持っておるルトが、いま行方不明での」
行方不明? この王様の言いたいことは、ひょっとして……
「ゾーラの里やこの近辺を探しても、どこにも見つからぬ。どうもハイリア湖まで行ったやに
思われる。日頃の娘の話から察するに、時々そこへ行っているようでな。今回も、ジャブジャブ様の
ことを案ずるあまり、何か思惑があってのことであろうが……」
行き先の見当がついているなら、行って連れ戻せばいいだろうに。あ、だけどゾーラ族は……
「われらゾーラ族は、ゾーラの里からは離れられぬ。そこで使者殿よ……」
やっぱりそうくるか。
「そなたがハイリア湖まで赴き、ルトを見つけてきてくれれば、『水の精霊石』をお渡ししても
よいが……いかがであろうかの?」
それがなすべきことならば……
「わかった。ハイリア湖へ行くよ」
リンクは腹を決め、キングゾーラに向かって力強く言った。
ゾーラの里から離れられないはずのルトが、どうやってハイリア湖まで行ったのか?
リンクの当然の疑問に、キングゾーラは答えることができなかった。
ハイリア湖は、ハイラル平原を巡るゾーラ川が最後に流れ着く場所であり、川をずっと泳いで
いけば、自然にそこへ到達することができる。しかし川を遡らねばばらない帰路のことを考えると、
その行程をとったとは思えない。ゾーラ族の言い伝えでは、ゾーラの里とハイリア湖を結ぶ秘密の
水路があるらしいのだが、誰もそれがどこにあるかを知らない。が、ルトだけは、それを知って
いるのかも……といった、あやふやな話だけであった。
となると、ハイリア湖までは歩いて行かなければならない。ではハイリア湖の場所は……
それを聞いて、リンクはげんなりした。ハイリア湖はハイラルの南西の端に位置し、ゾーラの
里からは、ちょうどハイラル平原の最も幅の広い地帯を横切って行くことになる。急いでも
一週間はかかるだろう、とのことだった。
けれどそれも、この広い『外の世界』を知るにはいい機会だ。
精霊石の入手に時間がかかるのは気がかりだが、リンクはそう思い直し、急ぎつつも、この旅を
できるだけ楽しむことにした。
リンクはゾーラ川を下って、それがハイラル平原に流れ出る地点に再び立ち、そこから真西に
道をとった。ハイラル平原はなだらかな起伏の連続だが、それでも中心近くには最高地点にあたる
場所があるようだ。それが真西の方角だった。その最高地点に立って、ハイラルの四方を見渡して
みたい。リンクはそう思ったのだ。
三日目には、最高地点らしい地形が目に入ってきた。そして四日目の昼前、リンクはその場所に
到達した。単なる野原ではなく、そこには人工の建築物が立っていた。リンクはその門の前にある
看板を読んだ。
「タロン&マロンのロンロン牧場」
マロン。その名前はリンクの記憶にはっきりと残っていた。
城下町で出会った少女。開けっぴろげで、マイペースで、それでいて憎めない明るさに満ちた、
年下の女の子。
タロンというのがその父親の名前であることも、リンクは覚えていた。
そういえば、自分のうち──ロンロン牧場に遊びに来いと、マロンは言っていたっけ。そのくせ
場所を教えてもくれなかったが……そうか、ここがそうだったのか。
平原の最高地点を目指すはずの旅が、思わぬ遭遇を生んだ。その偶然に、リンクの心は弾んだ。
この感情は、マロンの、あの明るさの記憶に影響されているのかもしれない。リンクはそう思い、
もう一度マロンに会いたいという衝動に駆られた。
門をくぐると、細い道はすぐ左に折れ、木造の建物に両側をはさまれて、さらに奥へと続いて
いた。あたりは静かで、人の気配はない。母屋とおぼしき左側の建物に戸を見つけ、リンクは
そこから、そっと中をうかがってみた。多くのコッコが群がる中に、見覚えのある中年男が
すわっていた。タロンだ。
「あの……」
リンクはおずおずと声をかけたが、タロンは身動きもしない。よく見ると、目を閉じて眠って
いるようだ。
「なんだ、おめえ」
突然、声をかけられ、リンクは驚いて後ろをふり返った。粗末な身なりをし、それだけは立派な
口ひげを生やした、タロンと同年配の男が立っていた。
「あ……マロンに会いに来たんだけれど……」
男の硬い表情に少し気後れしながら、リンクは言った。男はうさんくさそうにリンクを見ていたが、
「お嬢さんなら、向こうの牧場にいるぜ。会いに行きたきゃ、勝手に行きな」
と、言葉は乱暴ながら、意外にあっさりと教えてくれた。
リンクは軽く礼をし、男の指す道の奥の方へ向かった。
「タロンの旦那は、また居眠りかよ」
後ろから男の声が聞こえた。ふり向くと、男は戸の所から、母屋の中を覗いている。
「まったく、グータラもいいところだぜ。おかげでここの仕事は、いっつもぜーんぶ俺がやる
ハメになるんだ。雇われ人はつらいよな……」
男はなおもぶつくさ言いながら、向かいにある別の建物の中へと入っていった。
こっちに話していたわけではない。独り言だ。
リンクはそう判断すると、すぐにそのことを心から追い出し、改めて奥の牧場の方へと足を
進めた。歩調が少しずつ早くなっていった。
牧場はリンクが予想していたよりもはるかに広かった。周囲をめぐる壁にやっと目が届く
くらいだった。三々五々、栗毛の馬が散見される。すでに旅の途中で馬という動物は見知って
いたが、一面を覆う緑の牧草の上に点在するその姿は、牧場という世界に実にしっくりとなじむ、
穏やかで美しい要素だった。
牧場の真ん中あたりに、人が見えた。近づくにつれ、その姿が明らかになってくる。小柄な体格。
白っぽい服。裾には複雑な模様。マロンに間違いない。
マロンは子馬の横に立って、その世話をしているようだ。鼻歌を歌っているのが聞こえる。
その楽しげな様子に、リンクの心も浮き立った。
「マロン!」
大きな声で呼びかける。マロンがこちらを向く。その顔には……しかし驚きや喜びはなく……
「きみ、誰?」
警戒するような声。
「リンクだよ。ほら、何日か前、城下町で……」
そう言いながらも、マロンの思わぬ反応に、浮き立っていた気持ちが急速にしぼんでゆく。
マロンはなおも思い出せない様子で、不審げにこちらを見つめている。リンクの出現に驚いたのか、
子馬は向こうへ駆け去っていった。
会いたいと思ったのは、ぼくの方だけだったのか。
リンクの足はそのまま止まり、言葉も気まずく滞ってしまった。
マロンは気づいていた。母屋の方から早足で歩いてくる、緑色の服を着た少年が、数日前に
城下町で会ったリンクであることを。
『来てくれたんだわ!』
ロンロン牧場という小さな世界から、ほとんど足を踏み出すことのない生活。たまに父親に
ついて城下町に行くくらいだ。そんな乏しい機会に、ふと興味を覚えて話しかけてみたリンク。
いろいろと変わったところのある男の子だったが、同年代の友達がいないマロンにとっては、
短い時間ではあったものの、リンクとの会話は楽しかった。退屈だから遊びに来てと誘ったのも、
あながち単なる気まぐれではなかった。
こちらから呼びかけようとして、マロンは思いとどまった。リンクの顔にあふれる喜びの色。
それを見て、マロンの心にいたずらな気持ちが生まれたのだ。
あたしから声をかけることはないわ。リンクの方があたしに会いに来たんだから。あたしは
リンクのことなんて、別に何とも思っちゃいないんだから。
だから忘れたふりをしてやった。そしたらリンクったら……落胆したのがまるわかりだった。
そう? あたしが覚えていないんで、そんなにがっかりした?
マロンは心の中でほくそ笑んだ。ただ同時に、胸に小さな痛みも生じた。リンクがあまりに
素直なので。
いいわ、もう許してあげる。
「ああ、思い出したわ!」
わざとらしかったかしら。でもリンクの顔がみるみる嬉しそうに輝いて……ほんとに単純な人。
「キスを知らなかったリンクでしょ」
リンクの顔が引きつった。気にしてたのね。かーわいい!
「どうしてもっと早く来なかったの?」
そうよ、あたしが誘ってあげたのに。さっさと来ないものだから、意地悪したくなっちゃったのよ。
「どうして、って……ロンロン牧場がどこにあるのか、君は教えてくれなかったじゃないか」
「え? そうだっけ?」
うーん、そうだったかも。でも……
「それなら、誰かに訊けばよかったじゃないの」
「そりゃそうだけど、ぼくもいろいろと忙しかったんだよ」
「ふーん……でもいいわ。結局は会えたんだから。ねえ、お父さんに紹介するから、一緒に来て!」
なんだかうきうきするわ。今日は楽しい一日になりそう!
リンクの手をとって、マロンは小走りに母屋の方へと進んでゆく。相変わらず一方的だな……と、
リンクはあきれたが、その無頓着な態度が微笑ましくもあった。
マロンは母屋のタロンを叩き起こしてリンクを紹介し、さらに向かいの馬小屋で働いていた、
さっきの男──インゴーという馬の世話係──にも、改めてリンクを引き合わせた。
「そろそろ昼飯だぞ」
タロンの声に、マロンは台所から大きな袋を抱えて現れ、
「あたし外で食べるわ、リンクと一緒に!」
と弾んだ声で言い、リンクの手を引っぱって、再び牧場へと向かった。
「おいマロン、何をそんなに浮かれてるんだ」
後ろから呼びかけるタロンに見向きもしない。いいのかな、とリンクは思ったが、敢えて
マロンの行動に異議は差しはさまなかった。
牧場の真ん中の草の上に並んですわり、二人は昼食をとった。リンクは食料を携えていたが、
マロンはその何倍もの量の食べ物を袋から取り出し、リンクに勧めた。満腹になったリンクの前に、
さらに飲み物が置かれた。
「ロンロン牧場に来たら、これを飲んでもらわなくちゃ。うちの一押し、ロンロン牛乳よ」
マロンが自慢げに言う。ハイラル城侵入時のタロンと衛兵の話を覚えていたリンクは、興味を
抱いてそれを飲んでみた。牛乳を飲むのは初めてではなかったが、その独特の味と風味はリンクを
驚かせ、満足させた。
「おいしいよ。なんだか元気が出てくるみたいだ」
「でしょ? でしょ? ロンロン牛乳を飲んだ人は、みんなそう言うのよ。嬉しいわ、リンクにも
わかってもらえて」
マロンは笑う。咲きほこる花のようなまぶしさ。
さらにロンロン牛乳の効用を力説するマロンを眺めながら、リンクは深いくつろぎを感じていた。
深刻な使命を帯びた旅を続けるリンクにとって、いまのマロンは、張りつめた気を休める一服の
清涼剤だった。
ふとまわりに目をやったリンクは、離れた所に立ってこちらを見ている一頭の子馬に気がついた。
さっきマロンが世話をしていた子馬だ。マロンはリンクの視線を追い、
「あ、あれはエポナっていうの。あたしの友達よ。リンクにも紹介してあげる」
と言うと、子馬のところへ駆け寄った。首を軽く叩いて、リンクの方を指さす。だが子馬は
動こうとしない。リンクも立ち上がり、近づいてみる。子馬は後ずさりする。リンクを見るその
目には、警戒の色が感じられた。
「だめだわ。リンクのこと、恐がってるみたい。あたしにはよくなついてるのに……いい子
なんだけど……」
マロンは残念そうに言い、エポナの背をなでていたが、突然、
「そうだわ!」
と、大きな声をあげ、リンクの方に駆け戻った。
「エポナの好きな歌があるの。これならエポナも安心するわ。他の人には教えないけど、リンクに
だけは教えてあげる」
マロンは歌詞のない歌を歌った。さっきマロンが鼻歌で歌っていた曲だ、とリンクは気づいた。
のどかで心が安らぐ曲だった。リンクは歌うかわりにオカリナを取り出し、マロンのあとについて
その曲を演奏した。
「これ、お母さんが作った歌なの。お母さん、あたしが小さい頃に死んじゃったけど、この歌は
ずっと覚えてるんだ。エポナもこの歌が好きだから、『エポナの歌』って題にしたのよ」
マロンが話す間にも、エポナの様子には変化が生じていた。その場から動きはしなかったものの、
目からは警戒心が徐々に薄らいでいくようだった。そして演奏を続けるうちに、エポナは
ゆっくりとリンクに近づき、やがて顔をすり寄せさえするようになった。リンクの人間性を理解し、
心を許したのだ。それからリンクとエポナが戯れ合うほど仲良くなるまでに、さほど時間は
かからなかった。
自分の友達であるエポナが、新しく友達になったリンクと仲良くなってくれたのは、マロンに
とっても喜ばしいことだった。だが自分を抜きにして二人がじゃれ合うのは、何となく面白くない
気もした。
「来て、リンク。あっちの方を見せてあげる」
マロンは再びリンクの手を引き、牧場のあちこちを案内した。馬の給水場、牧草をしまっておく
建物、そして牛小屋。
牛小屋はリンクの興味を惹いたようだった。
「ここ、上に登れるの?」
牛小屋には四階建ての塔が備わっている。リンクはそれを指して、マロンに訊いた。
「登れるけど……登ってどうするの?」
「平原を見渡してみたいんだ」
「ふーん……」
断る理由もないので、マロンはリンクを連れて塔を登った。
平原なんか見て、どうするんだろう。どこを見ても同じような、つまらない景色なのに。
リンクの考えていることが、マロンには理解できなかった。しかし塔の上に立ったリンクは、
「うわぁ……」
と、いかにも感極まったような声を漏らすと、あとは夢中になって四方を見回している。
あたしにとっては、毎日見慣れた、当たり前の風景に過ぎない。だけどリンクには……あたしには
見えない、遠くにある何かが見えるのかしら……
リンクの横顔。そこに浮かぶ純粋な感動の色。理解できないまでも、マロンはなぜか、リンクの
表情に惹かれるものを感じた。
「おもしろい?」
そっと訊いてみる。リンクはマロンの方を向き、熱のこもった声で言った。
「おもしろいさ。世界はこんなに広いんだって、あっちには何があるんだろうかって、そう考えると
わくわくするよ。ほら──」
リンクはあちこち指さしながら、とめどなく言葉を連ねていった。
たぶんあっちがハイリア湖だね。ここからは見えないけれど。あの丘の向こうに広がる森は、
きっとコキリの森につながっているんだ。平原の端で光る帯のように見えるのは、ゾーラ川だよ。
それはあの西の山脈から流れてきていて。ほら、デスマウンテンが見えるだろ。頂上から煙を
上げているから、間違いないよ。
かろうじて聞いたことがあるだけの地名が、次々にリンクの口からあふれ出る。マロンは圧倒され、
黙ってそれを聞いているばかりだった。それでも……
まだリンクが気づいていない、あれなら、あたしにもわかるわ。
「あっちにハイラル城が見えるわよ」
マロンは北の方を指さした。
「ほんと?」
リンクが身を乗り出す。目を細めて一心にその方向を見ている。
「ほんとだ。かすかだけど、城の塔が見えるね。案外近いんだなあ……」
「ここからだと、馬車で半日くらいよ」
「へえ……まっすぐだと、そんなに……」
リンクは顔を輝かせて、じっと城の方を見つめていた。何か嬉しい思い出がある、そんな
感じだと、マロンは思った。
「ねえ、リンク、いま、『まっすぐだと』……って言ったけど、ここへはお城の方から来たんじゃ
ないの?」
リンクはふり返って言った。
「東の方から来たんだよ。城下町を出てから、ずっと旅をしていたんだ」
「どこを?」
「カカリコ村からデスマウンテン、それからゾーラの里へさ」
「へえ……」
あたしはこの牧場と城下町のことしか知らない。なのに、さほど歳の違わないリンクが、この
何日かの間だけで、そんな遠い所を旅していたなんて……
リンクは旅の経験を語り始めた。その風土のこと。そこに住む人々のこと。マロンにとっては
全く未知の内容だった。いつものマイペースな饒舌さも忘れて、マロンはリンクの話に聞き入った。
あたしよりも、ずっと広い世界を知っているリンク。熱心に、楽しそうに、世界を語るリンク。
その生き生きとした表情。どうしてかしら……そんなリンクの顔を見ていると、なんだかあたし……
でもリンクはキスさえ知らなかったんだわ。
優越感を取り戻そうして、脈絡もなく記憶を掘り起こす。
だけどその記憶は……あたし自身の言葉もまた、掘り起こしてしまう……
『あたし、前から誰かとキスしてみたかったんだ。リンクなら……わりとハンサムだから……』
ふとマロンは我に返った。太陽が西に傾き始め、空は東の方から徐々に明るみを減じつつあった。
「たいへん、晩ご飯の用意をしなきゃ」
昼食の給仕をさぼってしまった。夕食はどうしてもあたしが準備しないと。
「リンクも食べるでしょ。今夜は泊まっていってね」
かぶせるように、マロンはリンクに言った。
自分のペースに巻きこむ。いつものように。
ただ、いまはそこに、いつもとは違う一つの意図があった。
先を急ぐはずの旅だったが、リンクはマロンの頼みを断れなかった。
一晩くらい、いいじゃないか。ここはこんなに居心地がいい。それにマロンも……
夕食は母屋で、他の三人と一緒にとった。客が少ないロンロン牧場で、リンクはまず歓迎されたと
言ってもよかった。マロンはもちろんのこと、タロンも──怠け者ではあったかもしれないが──
気のいい男で、リンクに親しく話しかけ、マロンとの仲を冷やかしさえした。リンクは返事に
困ったが、マロンはそれを聞いていなかった。あるいは聞こえないふりをしていた。インゴーは
無愛想で、リンクと進んで話そうとはしなかったが、あとでマロンが語ったところによると、
仕事ぶりは真面目で信頼できる男なのだそうだ。
夕食のあと、マロンはリンクを夜の散歩に誘った。
「もう寝る時間だぞ」
タロンは釘を刺したが、マロンが、
「ちょっとだけ、いいでしょ、お父さん」
と、おねだり口調で言うと、それ以上、止めようとはしなかった。
リンクとマロンは牧場に出た。ちょうど新月で、さえぎるものもなく、空には無数の星が輝いていた。
二人は牧場の真ん中にすわった。
リンクは満天の星の饗宴に心を奪われていた。ハイラル平原の最高地点であるここからは、他の
地方よりもずっと星が多く、美しく見えるのかもしれなかった。
昼間とはうってかわり、マロンもまた、黙って空を見つめていた。あんなに賑やかな女の子でも、
この静かな夜のとばりのもとでは、声を忘れてしまうのだろうか、とリンクは思った。
マロンが声を忘れた理由。
その意外な真実を、リンクはやがて知らされることになった。
「ねえ、リンク……」
胸の高鳴りを抑えて、マロンはやっと、言葉を口にのぼらせた。
「なに?」
リンクが答える。何のわだかまりもない、素直な声。
「あたしが城下町で言ったこと、覚えてる?」
今度はリンクは答えない。何のことなのか、わかっていない。真面目に考えているようだ。
「あたしと、キスしてみない?」
思い切って、口に出す。相変わらず無言のリンク。だがそこには、隠しようのない緊張が感じられた。
「リンクは経験あるんでしょ」
もう後戻りはできない。手を伸ばして、リンクの手に重ねる。
「あたしにも……教えてくれないかな……」
口ぶりだけは下手に出たが、行動はあくまで積極的に通さないと。
「キスしてくれたら……」
マロンはリンクに顔を寄せる。
「……もっといいこと、させてあげてもいいわ……」
もっといいこと。
自分の言葉に、マロンの身体は震える。
経験があるわけじゃない。でも、あたしは知ってる。
男と女のひそかな営み。
牧場にいれば、いやでも動物の交尾は目に入る。それがどういう意味を持つのかを、あたしは
自然に知ってしまった。そして、それにどんな悦びが隠されているのかも。
牡と牝とが接触する、その場所。自分のそこに手を触れ、快感を得るようになったのは、
いつ頃からだっただろう。思い出せないくらい、ずっと幼い頃からだったような気がする。
いまではもう習慣になってしまった、指での戯れ。
それが自分の指ではなく、他の誰かの指だったら、そして他の誰かのあれだったら、いったい
どんな気持ちがするのだろう。
これまでのあたしは、そんな思いだけが先走っていた。でもいまは……いまは……あたしの隣に
リンクがいて……
リンクの指だったら……リンクの……あれ……だったら……