一応、俺の中じゃ将棋がモチーフなんすけどねw
最初がト金で、次が香車w
三日待って。さらにもう一日待って。ミュラも結局、戻ってこなかった。
全てを砦を守る部将に報告した。怒鳴られた。
魔獣や魔女に対抗できる戦士は、この国にはそう多くはいない。
まず、この騎士の中では、竜の騎士と天馬の騎士。
次に王より特別な称号を与えられた金の騎士と白銀の騎士が、各々四人。
後はずっと数の多い下級兵士に、四、五人いるかいないか。それくらいだろう。
そうした優れた戦士を二人立て続けに失って、陣営の空気は暗く重い。
馬鹿共。
そう云いながら、硝子の瓶を逆さにして琥珀色の液体を真新しい石の墓標にかけた。
戻ってくるって云ったのに。
「レイニア」
背後から声がかけられる。気配は、三人。振り返る、と
そこには苦虫を潰したような上司の部将と女性騎士が二人、立っていた。
何のようですか?
我ながら、冷ややかな声だと思う。
エレーンを犬死させた無謀な作戦。それを思うと、とても愛想良くする気にはなれない。
勇名を馳せていても、所詮は下級の兵士。
無責任な上層部にとっては使いでのいい捨て駒だったのだろう。
部将が口を開く。
「この方達が、お前に話があるそうだ」
三人だけになって、背の高い方の騎士が口を開いた。
「わたしはニケ。こちらはカミーラ」
ニケとカミーラの名は聞いたことがある。
金と白銀の騎士の中でも、一、二を争う剣の達人として知られた二人組みだ。
背の低い金髪が、白銀の騎士カミーラ。背の高い銀髪が名高い金の騎士ニケだろう。
白銀のカミーラが、ぶしつけに言葉をぶつけてきた。
「あの二人とは、親しかったのか?」
「ええ。まぁ、あの二人は元々の友人で、わたしはそこに加わった形ですが」
「あの二人、間違いなく人間だったか?」
「……どういう意味です?」
質問の意味が分かりかねた。いい意味ではないのは、頭の悪い私にも分かる。
怪しい素振りは無かったか?」
「云ってる意味が分かりかねますがね……」
「カミーラ、もう少し言い方を……」
ニケの制止を無視して、カミーラが言葉を続けた。
「魔女が人間の振りをして、我が陣営の中に潜り込んで……」
それが限界だった。
こいつを殺す。そう決めた。
剣の柄に手を伸ばし……あたしの喉元に相手の切っ先が止まっていた。
喉がごくりと鳴った。何時抜いたのかも見えなかった。
背筋の震えが止まらなかった。手を上げて、後ずさる。
「カミーラ!剣を下げろ!」
ニケが怒鳴る。何事かと、周囲の耳目が集まった。
カミーラはすっと剣を鞘に納めた。冷や水を掛けられたかのような背中の悪寒はまだ止まらない。
「すまない。怒らせるつもりではなかった」
バツが悪そうに詫びた白銀の騎士の顔に、こちらを弄ったりするような色はない。
そこにはただ、焦ったような切羽詰った表情があるだけだった。
「魔女が現れた。五人目の魔女だ」
カミーラが早口で続けた。
「四人目の魔女と組んで、暴れまわっている。
西の戦線はズタズタだ。この一週間で、百人近い兵が食われた」
一週間で百人というのは、この国には大変な人数だ。
魔女とは言え連日同じ調子で暴れ続ける訳にもいかないだろうが、
単純計算で一月で四百人。三ヶ月もやられたら、一軍団なくなってしまう。
「……それで」
「生き残った兵士が、魔女達の会話を聞いた
槍を使う方がミュラカナス、剣の使い手がエレニュオス。そう互いを呼び合っていた。
どこかで聞いたような名だと、思わないか?」
「まさか……」
「もしかしたら、あの二人かもしれない」
馬鹿な、筋があわない。
こちらも落ち着きを取り戻す為に、深呼吸した。
「あの二人は、何人も魔女や魔獣を倒してきた。
潜り込んだスパイなら、そんなことをする必要がない」
「……」
「あの二人は間違いなく人間でしたよ。人を苦しめて喜ぶ魔族なんかじゃない」
泣き、笑い、焦り、照れ、怒り、嘆き、喜び、恐怖。
共に過ごした時間、見てきた顔と言葉の数々が嘘とだは、あたしにはとても思えなかった。
「たかが名前だけで、戦って死んだ人間を冒涜する気なら……」
「すまない。そんなつもりではなかった。ただ……」
あたしは大切な物を冒涜されたような気持ちになって、
目の前の騎士たちのふざけた戯言をこれ以上聞きたくかった
「話がそれだけなら、あたしは失礼させていただきます。」
会話を強引に打ち切って、あたしは踵を返した。
「……怒らせてちゃったか」
「当たり前だ。馬鹿。言い方を少し考えろ。馬鹿
友達を悪く言われて、怒らない方がおかしい。この馬鹿」
「そんなに馬鹿馬鹿云うな!」
「……少なくとも、あの娘は人間だな。」
ニケは去っていく弓兵の背中を見てそう呟き、相棒を睨んだ。
「名前の件。ただの偶然かもしれないし、倒した強敵の名を奪うという
何らかの様式かもしれない。慌てて、聞きに来るようなことでもないだろう。」
「かも知れない。だけど、なにか嫌な予感がするよ」
「馬鹿の予感なんて当てになるか」
「なんだとー」
金の章
んっ……むぅん……あ、あはっぁ……ぁ……ああぁん……ちゅっ、じゅるっ……
いったい何の音だ。いやに艶っぽい呻きに私は目を開けた。
どこか、粗末な森のきこり小屋の中にいるようだった。
目覚めてすぐに、手が縄で縛られている事に気づいた。
捕えられている?
相棒の馬鹿も、ぐるぐる捲きにされて、床に転がされている。
「あ、ニケ。起きた?良かったー」
カミーラが呑気な声を上げる。
「それより見なよ。凄いよ、あれ」
部屋の中央で絡み合う二人の魔女を首で指し示し、カミーラはごくりと喉を鳴らした。
私は頬を紅潮させて、顔を背けた。
全裸で乳繰り合ってた魔女達が、口を離して私達ににやりと笑いかけた。
「私たちを探していたんでしょう?騎士どの」
ズキズキと痛む頭を振って、わたしは意識を覚醒させた。
何故、私たちの目的を何故知っているのか。疑問を抱いた。
王都でも二、三名しか知らないはずだ。スパイが居るのか。
「すると、貴様らがミュラとエレーンか」
疑問を一時胸にしまい込んで睨み付けると
「エレニュオスよ」
魔女が強い口調で訂正した。もう一人の魔女も、名乗りを上げる。
「わたしはミュラカナス、そんな人間だったときの名で、呼んでほしくないな。騎士殿よ」
その時は、魔女たちの言葉を意味を、人間に化けていた時の名という程度に受け取った。
「ところで、何故、私たちは捕えられている?」
カミーラが沈痛な表情で呻いた。
「薬を盛られたのよ。」
「何処でだ?」
「覚えていない?森に入ってすぐの古井戸」
「あの妖しい井戸か」
舌打ちした。
「どうもあそこで飲んだ水に薬が入っていたみたい」
「なら、飲むな!」
「な、なによ。あんただって飲んだじゃない!」
疑問が浮かぶ。
「待てよ、私は飲んだ覚えが無いぞ?」
「わたしの水筒から……」
「こん……馬鹿っ!怪しいから止せととめただろう!」
「それは……悪く思ってるわよ。」
私は本気で、こいつを相棒に指名した騎士団長を呪いたくなった。
「何が思ってるだ、馬鹿」
わたしは冷たくカミーラに云った
「な、何よぅ、人の責ばっかりして」
「お前の責だろう。」
「もう、いい。あんたとなんか話したくない」
プイッとそっぽを向いて、カミーラは魔女達の痴態を見物し始めた。
カミーラの視線を感じて、やりにくいのか。二人の魔女が
「え……と、その混ざる?」
「え……」
云われて、カミーラはちょっと嬉しそうに悩んだ。
「さっさと断れ。馬鹿」
その言葉が逆に天邪鬼な奴の背中を押してしまったのか。
「うんうん。
混ざる。混ぜてぇ」
「カミーラ、止せ!」
「だって、ここの所ご無沙汰だしぃ、魔女って凄いって」
足をもじもじさせて
「馬鹿!下手したら下僕にされてしまうぞ!」
「どうせ馬鹿よ。馬鹿でいいですー。」
「縄を解くけど暴れないでね。どうせ素手じゃ魔女には勝てないんだから。」
魔女、エレニュオスといった方が近づいてきた。
「うん、暴れない。暴れない。」
「お前には貞操観念ないのか。本気で死ね。バカミーラ」
縛られたまま罵った。罵りが返ってくる。
「五月蝿い、あんたこそ死ね。冷血意地悪ニケ野郎。ニケの癖に」
「漫才は、そこまでにして、ね?」
魔女がカミーラの服を脱がせると、背中に唇を這わせた。
「あ……」
カミーラは本気で嬉しそうな声を上げ、顔を蕩けさせる。
私は、顔を背けた。
本気で馬鹿だ。こいつ。そう思った。
三人が本格的に性交を始めた。私は聞きたくなかった。
縛られていては耳を塞ぐことも出来ず、淫らな音が嫌でも耳に入ってくる。
聞いているうちに足をもじもじさせていることに気づかれてしまったのか。
魔女の一人が近づいてくる足音。
ズボンの上からすっと股のうちに触れてきた。
それだけで甘美な痺れが広がった。ひくん、と躰が慄いてしまった。
「ニケ様。混ざりませんか?」
「嫌だ。」
力強く応えるが……
「一応、聞いてみただけです。実は貴女に拒否権はありません。」
「あっ、よせ」
「やめて!」
カミーラがそう叫んだ。
「あたしが犠牲になるからニケには手を出さないで!」
そう云って、魔女を呼び戻すカミーラの顔を見上げた。
私とカミーラの顔を見比べて
「ふふ、いいでしょう。可愛がって差し上げます」
魔女が戻っていく。
カミーラ。もしかして、私を庇ったのだろうか。
「ああっ!凄いの二本刺しキタァァー!三本目、クルぅー!!」
違う、やはりこいつはただの馬鹿で色情狂だ。
一瞬でも期待した私が馬鹿だった。
深夜。わたしが悶々とする横で、
「アア、いいよ。またいく、またいっちゃうううん」
無邪気に快楽を貪り続けるカミーラ
私は本気で、こいつを殺したくなった。
早朝。隣から響いてくる嬌声で、目が覚めた。
いつの間にか、寝ていたようだった。
朝っぱらから、元気な事だ。もう起こる気力もなく、げんなりとする。
前と後ろを巨大な性器に塞がれて、躰を反らせる。
「カミーラ、可愛いわ。カミーラ」
比喩ではなく、床に体液の池が出来ていた。
こいつら、もしかして一晩中やっていたのか。
尋常じゃない。背筋がぞっとした。
魔女はともかく、カミーラはただの人間だ。
底なしだとしても、こんな調子で体力が続くはずがない。
なのに
「はぁ、くる。またくる、もういきたくないのにぃ」
カミーラは腰を震わせている。
「駄目よ、可愛いカミーラ。たっぷりと中に出してあげるから。」
「はぁぁ、エレニュオス姉さまぁ」
何が姉さまだ。そう毒づこうとして、奇妙な寂寥の感が胸を付いた。
目の前に居るカミーラが、まるで遠くの世界へいってしまったかのような奇妙な感覚。
「私のも受け止めなさい。すべて飲み込むのよ。カミーラ」
「はい。ミュラカナス姉さまぁ」
仕方ないかもしれない。この馬鹿は完全に魔女の毒牙に掛かっているように見えた。
性に溺れきって、従順になりきり、甘えた声で魔女達を姉さまなどと呼んでいる。
遊びの延長だと思いたいが、ヘタすると、性の快楽と引き換えに、
本当に騎士団を裏切りかねない所まで、調教されているかもしれない。
「くっ……」
わたしは、小さく舌打ちした。
やがて三人は、同時に達したのか。体を震わせて倒れこんだ。
荒い息を収めて、二人の魔女が立ち上がる。
「じゃあね。カミーラ。楽しめたわ」
「約束通り自由にしよう。そちらも約を違えずに。その時は、皆で楽しもう。」
「ええ。お姉さま方」
にこやかに手を振って別れを告げるカミーラ。
二人が居なくなると、むくりと立ち上がった。
「行ったかな?」
カミーラはしばらく聞き耳を立てて様子を伺い。
「ふふふ、やるだけやって情に溺れ、この私を倒す千載一遇にして唯一の機会を
無にするとはやはり愚かなり魔女共。山賊共と同レベル。
次にであったら弁護士わたし、裁判官わたしの簡易法廷にて即決死刑判決確定!
よろしいですか、弁護人。よろしいです。裁判長!」
カミーラは仁王立ちしてそう言い放ち、壁にある剣を手に取ると、近づいてわたしの縄を解いた。
「ほら、ここから逃げるよ。ニケ。」
長い間縛られて体が痺れているわたしを、片手で立ち上がらせた。
随分とタフな女だと、感心した。
「ニケは今日以降、わたしを命の恩人と伏して拝むように。」
「元々は、お前の信じられないほど間抜けなミスで二人とも捕まったのだ」
云って体を揉み解しながら、チラリとカミーラを見た。
さすがに疲労の色が濃く、辛そうであった。
「酷い目に……あったな」
云うと、まるで応えた様子も無くせせら笑った。
「なぁに、慣れてるし、それなりに楽しめたわ。あいつ等、下手じゃなかったし」
「ニケも濡れてたでしょ。楽しめば……」
「御免だね。好きな相手の方が気持ちいい」
云いながら、二人で小屋の扉をくぐり、
カミーラの耳元、いや頭の中で声が響いた。
魔女の王と交わした契約を破れると思ったか?
「……え?」
偽りの言葉で我等を上手く謀ったと思ったろう
愚かな。偽りの言で交わした契約も、血と精の刻印で真物となる。
魔女達の高らかな哄笑とともにカミーラの周囲で世界が揺れた。
ぐらりと、カミーラが地面に倒れた。
「カミーラ?!」
地面に手をつき、蒼白な表情でカミーラが呟いた。
「来ないで……ニケ、逃げて、早く。」
「何云ってる?」
「魔女に……」
「……お前をおいていけるか。」
「私は手遅れだから……ほっといて早く行きなさいよ!
わたしは半ば失神しかけているカミーラを、肩に担いだ。
熱い。それに凄い発汗をしている。触れただけで辛そうに呻いている。
「くっ、重い。もうちょっと、甘いもの控えろ」
「置いてって……ほんとに、甘く見すぎた」
「黙れ、馬鹿。じっとしてろ。」
私は、カミーラを背負うと森の出口へと向かって歩き始めた。
日が暮れた。夕闇が周囲を圧して迫ってくるように思える。不気味な森だ。
「ひ、ひああ……負けるものか」
カミーラは苦しげにびくびくと体を震わせ、うわ言を呻いていた。
どうでもいいが、酷く艶っぽいうわ言だった。
我らなどどうでもいい存在なのか。魔女達の追跡は無かった。
歩きとは言え、大分距離を稼いだはずだし、このままいけば逃げられるだろう。
だが、かすかな違和感も感じていた。
この森はこんなに広かっただろうか。
同じ所をぐるぐると廻り続けているかのような、まるで森を抜け出せる気配が無い。
ため息をつく。
抜け出せないでも、最悪二日ほど経てば、後発の騎士がもう一組ここに捜しに来るはずだ。
だが、それまでカミーラが持つのか。
難しい顔をして、甘く呻いている相棒を眺めた。
連れ帰ってどうする?元へ戻るのか。神殿へでも連れて行けばいいのか。
それとも、時間が経てば媚薬にも似た魔女達の精液の効果は消えうせるのだろうか。
分からない。とにかく、それまではわたしがカミーラを守り抜く。
剣さえ持てば、私たちは誰にも負けない。負けるはずが無い。
私たちは、最強のコンビなのだ。
一方、カミーラは、熱と悪寒に苦しめられながらニケを見ていた。
毒づきながらも、自分を見捨てることなど考えもしない。
いい奴だ。
糞みたいな人生だったけど、あんたと組めて最後は悪く無かった。
カミーラは震えながら剣を手に取ると、切っ先を自らの喉元に当てようとして
何している。
わたしは、カミーラの行為に気づいて、間一髪剣を奪い取った。
「手遅れに……なる前に……」
「足手まといとでも考えたか?どうしようもない時は、そりゃ見捨てる。
だが、今はまだお前の命は預かっておく」
「魔女が……もう、持たない」
「近くまで来ているのか?」
「ちが……負ける…わたしが……」
私は熱に浮かされているカミーラから剣を取り上げるとそれ以上相手にせず踵を返した。
カミーラが哀しげにすすり泣いた。
やがて……
樹の根元に横たわり、虚ろにぶつぶつ呟いていたカミーラがカッと目を見開いた。
夜魔の…王……ああ…永遠の……忠誠を…捧げ
ふらっと立ち上がる。
一方、私は懐から出した火打石で、何とか火を熾そうと悪戦苦闘していた。
くそ、こういうのはどうも苦手だ。
「寒い」
カミーラが背中から抱きついてきた。
「待ってろ。もう少しで、火を起こせる」
カミーラは抱きついてくる腕を服の中にいれ、私の地肌……胸に直接触れた。
「何をしている?!」
「寒いの……暖めて」
どうしてこいつの吐息は、こんなに甘い匂いをさせているんだ?
まるでさっきの魔女達のように……
匂いをかいで、背中を甘美な悪寒が走り抜けた。
カミーラは息を荒げ、股間を隆起させながら……?……股間を?
「やっぱり、だめだよぉ、逃げるなんて。ニケもね、気持ちよくしてあげたいよ」
そう云うカミーラの瞳は、彼女本来の茶ではなく、赤い虹彩。
ルビーのような魔女の瞳。
ゾッとして大声で叫び、腕を振り解こうと暴れた。
「止せ、止めろ。カミーラ」
「カミュルナイヤよ。そう呼んで」
私の体を抱きしめたカミーラが牙を剥き出しにして、ずぶりと首筋に埋め込んだ。
「ひっ……」
最初に痛みが走り、次いで快感にも良く似た甘い痺れが首筋からわたしの全身に広がっていく。
「かはぁ……」
動けなくなったわたしの体を地面に横たえると
カミーラは自分の着物を脱ぎ捨てていった。
一枚一枚カミーラの着衣が地面に落ちるたびに、私は恐れ戦いた。
「嫌だ、頼む……カミーラ。後生だから、それだけは……」
「ニケが、わたしに頼むなんてね。珍しいにゃ。これは明日は、雪でも降るね。」
全裸になったカミーラがへっへっと笑う。
その股に隆起している、子供の二の腕ほどもある極彩色のお化け茸のような物体を見て、
剣を習得した十の歳以来初めて、私は恐怖に身も蓋も無く泣き叫んだ。
「殺して……殺してぇ!カミーラ!後生だから!」
「カミュルナイヤだって。もう、そんなに嫌がられると興奮しちゃうな、ニケ。」
わたしを裸にしていく最中にも、お化け茸から甘い白い液体が、ぶびゅる、びゅるっと
音を立てて放出される。
「うん、突き殺してあげよう、ニケ」
目の前にいる女は外見はカミーラだが、中身は別の何かだった。
わたしもこうなってしまうのかもしれない。それが一番恐ろしかった。
「綺麗」
わたしの全裸を見下ろして、カミーラがうっとりと言った。
「処女…じゃないよね。さすがに。けど、経験は少ないよね。」
カミーラが淡い翳りに口を近づけた、唇から這い出た青色の蛇のような舌が踊る。
「やめっ……いああああああっ?!」
気持ちよすぎた。頭の中で火花が散った。わたしは顔を伏せて、すすり泣いた。
変幻自在に動く長い舌で秘所の回りを嘗め回しながら、力強い指が秘所の周りの
盛り上がった肉を押し上げていく。
「あああっ……はああっ」
痛いほどに勃起した赤い小さな宝珠が外気に露になった。
恥ずかしさの余り死を願うほどに絶望しながらも、私はただ快楽に呻くことしか出来なかった。
恐らくそれは分泌された私自身の体液と、カミーラの涎で、艶々と濡れ輝いているのだろう。
「エッチだなぁ、こんなに濡れて。可愛い」
そう云われ、私は恥ずかしさの余り死んでしまいたかった。
「う……ぐすっ……ひっく……」
「うふふ、ニケを泣かしちゃった」
云ってにんまり微笑むと、カミーラはわたしの赤い真珠に口づけした。
そのまま弱く優しいタッチで、唇を使い、舌で撫で回しながら転がし始める。
「ん……うん……ちゅ……ちゅっちゅう」
「ひあっ……あひ……ひぃっひっぃ」
私は、ただただ下半身に襲い掛かってくる電気のような快楽に、支離滅裂な叫びを上げるだけだった。
その電気は、油断すると下半身のみならず、腹から胸、背中、肩まで登りつめて、全身を支配しようとする。
「やめてぇ!カミーラ……馬鹿に……ばかになっちゃうぅよぉっ!んほおおおおっ!」
達して体が、腰が、臀部が、勝手に痙攣した。
逝ったのにカミーラはやめてくれない。
敏感な箇所を重点的に吸いながら、腕を伸ばしわたしの胸を鷲掴みにし
「ちっ……」
何か不満げに呟いてから、容赦なく揉みし抱き始めた。
「あひっ……ふひゃ……ひゃあん……やあ」
わたしの内で何かが壊れ始めた。強烈な水流が防波堤を徐々に破壊し、やがて一気に
濁流が流れ出すのと同じように、わたしはこの倒錯した快楽に溺れ始めていた。
「カミーラ……ダメェ」
息も絶え絶えに、甘い呻きで訴え掛けたその声に
「カミュルナイヤ、そう呼んで」
快楽に溺れる部分とは別に、頭の何処かで砦で出会った騎兵の言葉が甦った。
二人は間違いなく人間だった。
魔女達の云う人であった時の名、そうして今のカミーラの変貌と性格の変化。
それらが一つに繋がり、
「ん……ふぅ……負けるものか……負けない」
ここで負けたら、私は魔族にされてしまう。
魔女は、人をその同類に変える力を持っているのだ。
誰かが王都へ報告しなければ、王国は魔女の力の前に呑み込まれてしまいかねない。
そう直感して、
胸を吸っていたカミーラが、熱い男性のそれを、わたしの女性に押し付けてきた。
「いくよぉ、ニケ」
自分自身の肉は、クパァと口を開いてそれを受け入れたがっているのを自覚しながら、
わたしは痺れる体を必死に動かし、腰を後ろにずらして、
欲しい……あぁ、ほしいぃ……たましいをうってもいい……はぁぁん
この快楽を我が物に出来るなら、まじょになってもいい……まじょになりたぁい
頭で囁きかけてくる狂ったその声を否定して、涎を垂れ流しながらも
「カミ……負けないで。」
「ふふ、勝負じゃ、ニケ。」
カミーラが、それを突き入れてきた。
「きぃ……やあああああああああああ!」
壊れた。決壊が一撃で粉微塵に粉砕された。脳の中枢が痺れた。赤い火花が……
「あああァッ! あふぁっ! ひいぃ…いっくううんぅう!
あっはぁ……またまた…いッ…っくふッ……んんんぁっ!」
その一突き一突き毎に、意識は生と死を繰り返し、全身が踊るように跳ね飛んだ。
「はっ…はっ…はっ、ぁぁぁぁああんっ!……あっはあああん!
すごおい!……くうっくるっちゃう!……くるったたぁ!……あはあ……あははははあは!
わたし……こわれたぁ……あぁッ…んふあッ、ひぁッ……ァあぁッ!
ひぬ……ひんじゃうぅッ……わたし…カミィラにツキころされひゃうぅッ
ひっ……きた……なんかきた……やッ……やぁぁ!おッ、おおッ!おああああッ!!!」
カミーラの中出しを受けてわたしは溶けた。
子宮が溶けた。全身が蝋人形のように黒い炎に炙り溶かされてゆく。
「あっはああぁぁぁぁぁん……うふぅぅ」
わたしは長い余韻に身を任せる。全身の心地よい快楽に身を任せ、身も心も弛緩させながら
「あはぁ……あらひの中れ……あならのが……ドクドクいってるよぉ」
呂律の回らない調子で彼女の顔に手を伸ばし、片手は首の後ろに廻して口づけした。
「よかったでしょう、ニケ?」
「ええ………………」
わたしは手の届く距離の腰帯を手に取って……
「はぁっ!」
一瞬の隙を突き布を巻くと、渾身の力を振り絞って彼女の首を締め上げた。、
「死んで……カミーラ!死になさい!魔女!」
「ニケ……がっ、がはっ!」
暴れるカミーラ。物凄い力だ。わたしも必死になるが、中々力が入らない。
カミーラが泣き出した。
「ニケ……助けて、ニケ」
「人を無理やり犯しといて、何が助けてだ!」
「ちょ……たんま。実はさっきまでの私は魔女に操られていたのよ
今の私は正気、かつての美しい友情の日々を想いだ……ゲボハァ??」
憤怒が、わたしの腕に力を与えたようだ。
「やはり貴様は、まだ操られている!」
「降参、降参だってば……離し、苦し……」
ギリギリと絞まっていく腰帯、カミーラは本当に苦しそうな顔になっていく。
やはり心が痛む。
だけど今振り絞っているのは、まさしく最後の力。
ここで手を抜いたら、二度と森を脱出するチャンスはめぐってこない。
あれはただの性交ではない。射精された時に何か黒い闇が私の中に入ろうとした。
もう一度犯されてあれほどの快楽を受けた時、私は元の自分でいられる自信は無かった。
「ニケ……助けてぇ……ニケェ」
だけど、もしかしたらカミーラは本当に元に戻ったのかも知れない。
首を締め上げながらも、わたしは激しく苦悩する。
どうすればいい……なにが真実なのだ。
二人の騎士が、古株にしゃがみ込んで、焚火の跡を調べていた。
夜営の後だ。
「地図によると、この先に小さな小屋があります。其処へ行ってみましょう」
騎士たちが小屋に入ると、先客の二人の女性が茶を飲んでいた。
わたしとその相棒が座っている卓には茶菓子と、三人分の茶が用意されていた。
来客を待ち続けていると、そこに扉を開けて無粋な闖入者が現れた。
「あ、イリアとボーグじゃない。げんきぃ?」
御無事でしたか、二人とも。
イリアがほっとした顔をして
「魔女の力が強い不気味な森ですから、万が一のことでもあったのかと」
「なによぉ、それ。イリアの癖に生意気だぞー!」
「お二人の事だから、心配はしませんでしたけど、」
イリアが笑う。
「心配はいらん。この森に、我等に害をなせるような生き物なぞ存在しない。」
云って、わたしは茶に口をつけた。
「お茶飲むぅ?この森の水で入れた特製のお茶なんだけど、凄くおいしいよ」
相棒のはへらへらした様子に、心配して損をしたと巨漢の騎士が肩を怒らせた。
「連絡ぐらい入れろ。
貴様まで、何たるざまだ。ニケ」
ボーグの怒気を受けて、私は思わずふっと笑った。
「これからの行動について、つい半日前まで、意見が割れていてな」
「ほんとーにもー、こいつって頑固だったんだから」
「しかし、もう心配はいらない……
姫殿下に謁見する前に、手柄の一つも立てておこう。そう思ってな」
わたしは静かな視線で、同僚の金の騎士と白銀の騎士を見つめた。
「お前達を待っていた」
「すると、何かつかめたのか」
「ああ、大体のところはな。これから、もう少し詳しい事も分かるだろう」
「よし、聞かせろ」
ボーグが卓に座った。
「その前に、カミュルナイヤ」
私は、相棒に呼びかけた。
「よし、きたぁ相棒!」
カミーラが何かをした。
ボーグにも、『何かをした』のは分かった。『何をした』のかは分からなかった。
どん、と天上に何か重いものがぶつかった。
卓の上に落ちてくる。イリアの首だった。
目を見開き、何故と問う形に唇を動かして、動かなくなる。
数瞬して、やっと首を飛ばされた女騎士の体が床にくずれおちた。
「う……うわぁぁぁぁぁ?」
ボーグが仰け反って、立ち上がるよりも早く。
激しい衝撃が彼の心臓を襲った。
「がっ……」
卓に崩れ絶命した騎士をわたしは冷たい目で睥睨した。
カミュルナイヤが手にした剣でツンツンとその頭を突付いた。
「こいつ、相棒より先に、あんたの突きで自分が死んでいたことにも気づかなかったね」
「この程度で金と白銀を名乗るのだから、王国騎士の質も落ちたもの」
わたし……魔女ニケヤガルラは、刃に付着した血液を持っていた布でゆっくりと
拭い去ると、再び茶に口をつけた。
「真の金と白銀の力、彼奴らに教えてやろうではないか?カミュルナイヤ」
「それいいね、とってもかっこいいよ、ニケヤガルラ。」
「知らなかったのか、カミュルナイヤ」
銀色の髪を撫で、金の騎士は誇り高く微笑んだ。
「私は元々、格好いい。それより……」
わたしは塵を見るような視線で、床の上の二つの死体を眺めた。
「果たして、こんなもので夜魔の姫への手土産となるか、どうか。」
「お土産っていうのはね、気持ちが大切なのよ。気持ちが。」
室内の、闇が濃くなっていく。
影が伸びていくにつれ、その影に触れた二人の騎士の肌が不吉な蒼い色に染まっていく。
二人の魔女は、新たな主の来訪を部屋で待ち続けた。そう遠い時ではないだろう。
エロすくなーだけど、一応将棋の金銀ヒロイン悪落ちで終了させますた