【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ6

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1名無しさん@ピンキー
このスレは藤木俊先生によりサンデーで連載されていた漫画
『こわしや我聞』および、きっとすぐに始まるに違いない次回作や読みきりなど、
藤木俊作品のエロパロスレです。

あくまで藤木作品のエロパレスレですので、
他作品とのクロスオーバーはご遠慮ください。

・950レス、もしくは450KBを越えたら流れを見ながら新スレについて検討を。
・新職人は常時募集中。
・酷評受けても泣かない、荒らし煽りは放置。
・ちなみにこのスレで言われる「低能」とは「GJ」の意。褒め言葉なので怒らないでね。
・801は禁止。専用スレにてどうぞ。
・陵辱、ダーク、鬼畜、百合は不快に感じる人もいるので、ちゃんと予告しましょう。
・投下し終わった場合、その旨を書きましょう。

前スレ
【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1135389789/

2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.arings2.com/

関連スレ
【こわしや我聞】藤木俊作品 女性キャラ萌えスレ9【劇団SAKURA】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1141140625/
こわしや我聞の桃子・A・ラインフォードに萌えるスレ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1122707581/
☆こわしや我聞の我聞&斗馬に萌えるスレ☆
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1116491861/
2名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 00:05:41 ID:O3MbPmnN
保守っておく
3名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 01:17:33 ID:Jma0o0sb
4名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 01:59:01 ID:x0loK0nv
保守
5名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 03:45:09 ID:0/HqYlwl
ようやく確定申告を終わらせたオレがきましたよ。
優秀な経理部長(兼秘書)がいれば、毎年苦労はないんだけどねぇ。

6名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 06:08:39 ID:E6x4Zh0J
hosyu
7名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 06:14:13 ID:wf34Xm/E
ちょっと上げます
84スレ131:2006/03/13(月) 06:23:19 ID:wf34Xm/E
131です
今から投下します
94スレ131:2006/03/13(月) 06:27:12 ID:wf34Xm/E

------------------------------------------------------
その夜、佐々木は頼まれたとおりに天野を抱いた。
それは、佐々木にも天野にも初めてな行為。
やり方が解らなくて多少ぎこちなくなったが、それなりに上手くいったかなと彼は、上りつつある太陽を眺めながら思う。
そして、天野のことを考える。

『好きなんだよ』
“それ”が終わって互いに余韻に浸っていたとき、不意に天野が言った。
『あたしは、ささやんが』
ゆっくりと噛みしめるような言い方で繰り返す。
『好きなんだよ』
『・・・』
佐々木は答えない。それっきり天野も沈黙する。
『・・・』
『・・・』
『・・・ねえ』
『・・・なあ』
言葉が被ってしまう二人。
『・・あ、先に言っていいよ・・・』
『わりぃ・・・その、何だ・・・何で俺なんか好きになったんだ?』
佐々木は気になっていた。なぜ目の前の少女が自分を好きになったのかを。
『へ?そ、それは・・・・・』
少女は考える。
そして、出た答えは・・・
『・・・なんでだろ?』
『はぁ!?』
『・・・しかたないじゃん!
いつの間にか好きになってたんだから・・・』
その返答に何となく気まずくなる佐々木。
『・・・わりぃ
・・・ところで、お前は何言おうとしたんだ?』
『あ・・・あたしさ、さっきあんたに・・・その・・・告白、したじゃん・・・』
天野は恥ずかしそうに、途切れ途切れに言う。
『あ、あぁ』
『けど、あんたからまだ返事貰ってないじゃん』
『・・・』
『で・・・この合宿終わったら、イエスでもノーでも、はっきりとした返事、くれない?』
『・・・』
『じゃないとあたし、前に進めないから・・・』
『・・・・・・わかった』
かなりの間を空けてから答える。
『絶対だからね?』
『ああ・・・じゃ、みんなが戻ってくる前に部屋に戻るか』
『うん・・・』
------------------------------------------------------
佐々木は考える。
自分が、本当は誰が好きなのか。
國生陽菜が好きなのか。
それはこれまでそうだったからという理由で、意地になってそう言っているのではないか。
天野恵が好きなのか。
それは報われない好意に諦めを抱き、寄せられる好意に甘えようとしているのではないか。
佐々木はそんなことを考えながら、皆が起きるのを静かに待つのだった・・・

104スレ131:2006/03/13(月) 06:28:27 ID:wf34Xm/E
>>>その夜・INTERMISSION・忘れかけてたGHK<<<
「デルタ1、サブターゲットS予想通りに部屋から出ました」
「うん。正に彼女との計画通りだね。サブターゲットAもちゃあんと定位置にいるし」
「しかし、盲点でしたね〜。あの邪魔物の排除にこんな方法があったなんて」
「そうだね〜。あの子----住ちゃんに言われなきゃ、力に任せて排斥してたかもしれないもんね〜
ま、はるるんが我聞君LOVEってのも解ったし順調、かな?」
「全くです・・・ところで、少し気になることが・・・」
「ん〜?どしたの?」
「さっきですね、中村さんがお兄ちゃんをロビー呼び出したんですよ、こんな夜中に・・・因みにその後すぐ陽菜さんもジュース買いに部屋を出てます」
「なっ・・・それは本当!?」
「え、はい・・・どうしたんですか優さん?」
「果歩ちゃん、急いで先回りして、陽菜ちゃんが買いに行った自販機にこれ貼って来て!GHK最大の危機かもよ!!」
「『この自販機は只今故障中です。お手数ですが、ロビーまでお越し下さい』この紙とGHKの危機にどう関係が?」
「さすがのあたしもまさかこんな危機がくるなんて、予想してなかった・・・住ちゃんと中村君は付き合ってるって言ってたし・・・」
「だから優さん、どうしたんですか?」
「いい、果歩ちゃん。落ち着いて聞いて?
今我聞君は、男としての瀬戸際に立たされてるの・・・」
「はぁ」
「それは許されることはない・・・禁断の愛・・・」
「『禁断の愛』?」
「そう。その名も、『ボーイズ・ラブ』」
「?『ボーイズ・ラブ』?『男の子達の愛』??中村さんとお兄ちゃん???・・・・・え?え、え、えええぇぇぇぇぇ!!!!!????」
「お、落ち着いて果歩ちゃん。ショックなのは解るけど」
「でも」
「いい?だからさっきの張り紙で陽菜ちゃんを誘導するの」
「へ?」
「中村君が我聞君に想いを伝えたとする。でも我聞君にその気はないはずだから、少なからず戸惑う」
「はい」
「でも少しぬけてるとこのある我聞君だから、友情と恋愛感情を取り違えてその道に連れ込まれるかもしれない」
「それがマズいんじゃないですか!」
「まぁ最後まで話を聞いて。そこで、我聞君が好きとはっきりした陽菜ちゃんを送り込む」
114スレ131:2006/03/13(月) 06:29:56 ID:wf34Xm/E
「・・・」
「その状態で、中村君が我聞君に告白。はるるんは我聞君がそっちに行っちゃうと困るから軌道修正を、あわよくば告白をーっ!てな訳だよ」
「な、成る程・・・わかりました、コレ急いで貼ってきます!
・・・ところで優さん、」
「ん?」
「この事、住さんに教えた方がいいと思いますか?」
「うーん、こういうことは当事者が自分で解決するべきだし、言わない方がいいと思うよ・・・」
「そうですね・・・それじゃ、今度こそ貼りに行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい・・・」


・・・・INTERMISSION・OUT......


>>>その夜・中村孝博と工具楽屋社長、工具楽屋秘書<<<

それは、佐々木亮吾が目覚めるほんの少し前のこと。
中村は、我聞のことをロビーに呼び出していた。
自分が浴室で見た、西遠寺が離れた所から木の枝を動かしていた不思議な現象。
それが何なのかハッキリさせる為。
初めは、西遠寺に直接尋ねようかと思ったが、西遠寺と静馬の話を盗み聞きしたところ、どうやら部外者には秘密らしい。
そこで、関係者らしい我聞を問いつめようと思っていたのだった・・・
数分後、目的の人物である我聞が姿を現す。
「おーい中村。
何だ?こんな時間にこんな所に呼び出して『話がある』って?部屋じゃ駄目なのか?」
「あ、ああ・・・(あの部屋だと静馬に聞かれるかもしれないからな・・・)
出来れば他人に聞かれたくないんだ」
「そうか」
中村は、自分の未知への好奇心を満たすために問いかけを始めた。
「・・・とりあえず、俺たちは親友だよな?」



(喉、渇いたなジュース買ってこよう・・・)
國生陽菜はふと喉の渇きを覚え、部屋を出た。
「?。天野さん?」
と、何故かそこには天野が立っていた
「あれ?るなっち〜、どしたのこんな時間に?」
「いえ、喉が渇いたので飲み物を・・・天野さんは何故?」
「あ、あたし?あたしは、女子部屋に侵入しようとする不審者がいないかの見張り」
本当は陽菜目当てで佐々木が入ってこないかの見張りなのだが、さすがに当人には言えない。
124スレ131:2006/03/13(月) 06:36:11 ID:wf34Xm/E
「そうですか・・・あ、でしたら戻ってきたら代わりますよ。天野さんも睡眠をとらないと大変だと思いますし」
「え?あー、だいじょーぶだいじょーぶ。あたし夜更かし慣れてるし、それにるなっちだとむしろ危ないっていうかー・・・」
「あ、私でしたらバインダーさえあれば、たいていの人には後れをとらないので大丈夫ですよ?
残業で夜遅いのも慣れてますし」
「(な、何故にバインダー?)ううん、あたしがやるからるなっちは気にしなくてもいいよ」
「そうですか、ではくれぐれも気をつけてくださいね」
「うん。ありがとう」


(どれを買おうかな・・・ってあれ?
何だろうこの張り紙・・・?)
『この自販機は只今故障中です。お手数ですが、ロビーまでお越し下さい』
浴室近くの自販機に来た陽菜は、自販機に少し斜めに張られている上に、文字も雑な張り紙を目にする。
(どうしよう?ロビーに行こうか?
・・・けど、なんだかこの筆跡に見覚えがあるような気が・・・)
何故か張り紙の文字に感じた既視感を気のせいと思いこみ、陽菜はロビーに向かう。
すると、前の方から誰かが走ってくる。
(あれは・・・天野さん?)
「天野さん?どうしたんですかそんなに・・・」
急いで、と言いきらないうちに、天野は終始俯き加減で走り去ってしまった。
そんな天野を不思議に思いながらも、歩き続ける。すると、
「あっ國生さーんっあぁお美しいですってこんな事してる場合じゃないか。
すいません、天野見ませんでした?」
今度は佐々木に出会った。
「え?天野さんでしたら、さっき浴室のほうに走って行かれましたよ。
俯いてて表情が解らなかったのですが、何かあったのですか?」
「いえ、何でもありません。教えてくれて有り難う御座いましたっ!」
天野に何があったのか気になったが、何か、何か自分が関わってはいけないような気がし、走り去る佐々木をただ見送った。

そうこうしている内にロビーについた。が、そのロビーからなにやら話し声が聞こえる。
「俺たちは、親友だよな」
「ん?おう!そうだな。それで?」
どうやら、我聞と中村のようだ。
自分でも趣味が悪いかと思いながらも、身を潜めて盗み聞きする。
134スレ131:2006/03/13(月) 06:43:34 ID:wf34Xm/E

4スレ131です。
まず、佐々木×天野の和姦期待してた方、ご免なさい。色々あって全面カットしました。
それはそれで今度書こうと思います。
後もう一つ。
このさき、801な流れに行くことは100%ありません。ご安心下さい。

またある程度書けたら来ます。
最後に期待レスくれた方有り難うございました〜
14名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 07:35:02 ID:HOL6VHl6
乙&GJ!!
15名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 14:06:08 ID:hQL6/08f
>>13
心配せずとも100パー優さんの先走りだと思っていたよ
ともあれ乙!
16名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 22:58:13 ID:O3MbPmnN
GJですよ!
過疎化が進んでるだけに書き手さんが来てくれるのがものすごい有難いです・・・
続き楽しみにしてますよ〜!
17名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 11:55:23 ID:XF6N4suT
正直俺は、131さんのファンだ。
うpされるたびに嬉しい。
ともあれ乙!!
18名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 00:22:46 ID:gaChTEmV
131さん、GJ!

ついでに保守。

……保守ついでに、今書いているもの投下しようかとも考えたのですが、
まだ途中までしか出来ていないんです。

一気に投下したいのですが、まだ少しかかりそうで……
みなさんは一気に読みたい方ですかね?
それとも、小出しでもいいのか?
ちょいと意見聞かせてください。


なんか、誘いうけみたいなレスだな・・・
19名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:19:26 ID:tYX5Ww0g
>>18
思うようにしちゃっていいんじゃないか?
小出しっても量によるだろうし、
個人的には投下しちゃっていいんじゃないかと思うけど。
20松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/03/16(木) 00:25:28 ID:6JFMI55A
>>19
了解。
それでは、保守ついでに少しづつ投下します。


かなり久しぶりな上に、やっぱりエロなし。
才蔵×千紘。

『キミ ノ テ』

第一部って事で、どうぞ。
21『キミ ノ テ』第一部 1/10:2006/03/16(木) 00:27:15 ID:6JFMI55A

某月某日 天気:雨

やっと、この日が来ました。
思えば、若様が家を出てから、もう4年が過ぎているのですね。
長いような、短いような、この4年間。
嫌な事や、辛い事も沢山ありました。
だけどその日々も、今日のためだと思えば無駄ではなかったのだと思います。
繊維工業の老舗、十曲家。
今日ここに、再出発することになりました。

そして、今日から――
22『キミ ノ テ』第一部 2/10:2006/03/16(木) 00:28:01 ID:6JFMI55A
「今日から……」

私はそこで筆を止めました。
せっかくの晴れの日……いえ、天気は雨なんですけど……と、とにかく、何か、カッコいい言葉で締めたいのですけど……
……
…………
………………思い浮かばないです。

「はぁ……」

自分の語彙の少なさに、ちょっとだけ落ち込みます。
こんな私が、これから若様のお役に立てるのでしょうか……

「私ってバカだしなぁ……」

呟きと共に、私は窓の外へと視線を移しました。
季節は夏から秋へ変わろうとしている時期。
少し前までうだる様な暑さと騒々しい蝉の声が包んでいた青い空は、秋を誘い連れる雨によって、どんよりと覆われています。
……まるで、今の私の心のようです。

「千紘くーん、そろそろ準備しないかー」
「あ、は、はい! 今行きます」

ドアの外からかけられた声に、私は買ったばかりの日記を閉じました。
最初の1ページ目は、まだ書きかけですけど……いいや、後で考えます。
役に立つか、立たないかって事も、今さら考えてもしょうがない事。
私は、若様についていくと決めたんです。
バカはバカなりに、一生懸命頑張るだけです!

「うん、頑張ろう!」

心の中で再確認。言葉に出して再決意。
そして私は立ち上がると、クローゼットを開けました。
そこにあるのは、この日のためにずっとしまっていた一着の服。

「……ふふ」

思わず、笑みが漏れます。
これを見たら、若様はどんな反応をするのでしょうか?
ちょっと、楽しみです。
23『キミ ノ テ』第一部 3/10:2006/03/16(木) 00:28:35 ID:6JFMI55A
私は着替えながら、ここまでの道のりに思いを馳せていました。

十曲家の買収騒ぎから始まり、真芝への所属、こわしやとの戦い、そして――真芝の壊滅。
そう、真芝が壊滅してから、もう半年以上が過ぎました。
あの場にいた真芝関係者の大半は、こわしやと内閣調査室によって捕まったと聞いています。
真芝関係者……それは若様も例外ではありません。
最後は真芝を裏切ったとはいえ、真芝に所属していたのは変えようの無い事実。
「逃げましょう」と、私と山岡さんは言いました。
若様が真芝に所属したのは、あくまで十曲家の再興が目的。
真芝に付き合って、若様まで捕まる必要はないのですから。
混乱の隙を突けば、天才の若様が逃げる事など簡単なはずです。
だけど、若様は首を縦には振りませんでした。

「どんな理由があろうとも、ボクが真芝にいたことは事実。ならば、その償いはするべきだ」
「で、でも……」
「君達はこなくていい。ボクのわがままに付き合っただけだからね」

そして若様は、自ら内閣調査室の男のもとへと歩いていきました。

「お前も真芝か?」

かけられた、不躾な言葉。
その言葉を真正面から受け止め、若様は言葉を放とうとしました。
だけど――

「そ――」
「そいつは違います」

放たれた言葉は若様のものではありませんでした。
視線を移した先。そこにいたのは、さっきまで若様と戦っていた相手でした。

「我聞くん……」

天才の若様がライバルと認め、倒す事を目標としていたこわしや。
彼が、若様と内閣調査室の間に割って入っていたのです。

「彼は俺たちの協力者なんだ。だから捕まえる必要はないです」
「……そうでしたか。ご協力感謝します」

男は頭を下げてそう言うと、背中を向けて去っていきました。
その後ろ姿を、無言で見送る二人。
24『キミ ノ テ』第一部 4/10:2006/03/16(木) 00:29:24 ID:6JFMI55A
「……なぜ、ボクを助けたんだい?」

気まずい沈黙を破ったのは、若様の方でした。
我聞さんの背中に向かって、言葉を放つ若様。

「お前はもう、真芝じゃないからな」

背中を向けたまま、答える我聞さん。

「だが、真芝だったのは事実だ」
「ああ。それは償うべきだ」
「ならば……」
「捕まるだけが、償う方法ではないだろう」

そして、我聞さんは若様へと振り向きました。

「お前なら、別の方法で償う事ができる。そう思ったんだ」

身体には無数の傷があり、身に着けたシャツは血と埃でボロボロでした。
その傷のいくつかは、若様との戦いでついたもの。
それでも、我聞さんは屈託の無い笑顔を若様へと向けて、そう言ったのです。

――できるだろう? 

その笑顔と共に放たれる、無言の問いかけ。
さっきまで戦っていた相手だと言うのに、我聞さんは若様の事を信じきっていました。
……若様はその笑顔を正面から見つめかえし、そして――

「ふ、ふふふ……ふははははは!」

嬉しそうに笑いだしました。

「ふははははは……当たり前だろう! ボクを誰だと思ってるんだ! この天才、十曲才蔵に不可能など無いのだよ!
 この程度、利子とノシつけて、綺麗さっぱりお返しするさ!」

いつもの自信満々な表情を浮かべ、高らかに宣言する若様。

「そうと決まれば、善は急げだ。さあ、行こうか、千紘くん、山岡くん!」

自信満々で、それでいて楽しそうな表情を浮かべたまま、若様は我聞さんに背を向けました。
そして、堂々とした足取りで歩き始めたのです。
若様は一度も振り返りませんでした。我聞さんも声をかけませんでした。
だけど。
この二人には、別れの挨拶なんて必要ないのでしょう。
お二人は……親友なのですから。

「まったく、我聞くんにはやられてばっかりだな」

歩きながら、かすかな声で漏らした、その言葉。
口調とは裏腹に、その表情は今まで私が見た事もないほど輝いていて……
そんな表情をさせた我聞さんに、ちょっとだけ嫉妬して。
そんな表情をさせてあげられなかった自分に、とてもがっかりして。

いつか、私もこんな表情をさせてみせる。と、心に誓ったのです。
25『キミ ノ テ』第一部 5/10:2006/03/16(木) 00:29:57 ID:6JFMI55A

その後、若様は独力で十曲家の再興へと動き出しました。
だけど、その道のりはとても辛く……いえ、そもそも道なんてなかったのかもしれません。
真芝が壊滅したとはいえ、一度吸収された十曲家を買い戻すには莫大なお金が必要でした。
……お金はあったのです。
真芝から研究費用として渡されていたお金は、十曲家を買い戻すには足りないまでも、十分な足しになるだけはありました。
だけど、若様はそのお金を使おうとはしませんでした。

「ボクはもう、真芝じゃない」

そして、その全てを戦争によって親を失った子供たちへの支援として寄付したのです。
それでも、まだお金のアテはありました。
研究の成果として若様が開発した、兵装防護服。
その技術を買い取りたいと、いくつもの組織が接触してきたのです。
提示された額は、十曲家を買い戻すのに十分なものでした。
十分なものでしたが……若様はその全てを断わりました。
それどころか、貴重な研究資料を全て、地雷処理の慈善団体へと提供したのです。
我聞さんの爆砕に対抗するために作られた防護服は、地雷処理においても効果を発揮しました。
人を殺すために作った兵器が、人を殺す兵器を壊すために使われる。

「我聞くんに教えられたからね」

――こわすものは間違えない。
そう言った若様の表情は、とても晴れやかなものでした。
後で知ったのですが、その戦争自体、真芝によって引き起こされたものだったようです。
……きっと、これが若様なりのケジメの付け方だったのでしょう。
結局、若様の手元に残ったものは何もありませんでした。
だけど、それでよかったんだと思います。
私も、山岡さんも、何も言いませんでした。
言う必要なんてありませんでした。
私達は若様を信じていますから。
26『キミ ノ テ』第一部 6/10:2006/03/16(木) 00:30:50 ID:6JFMI55A
とはいえ、やはり先立つものがないとどうしようもありません。
その問題を解決する為に若様がとった行動は、過去に十曲家と親交のあった会社や資産家に、融資をしてくれるようにお願いするというものでした。
人に頭を下げた事の無い若様が、地面に頭を擦り付けんばかりに、必死で頼み回ったのです。
一度断わられても諦めず、若様は何度も足を運びました。
しかし、過去に親交があったとはいえ、それだけで融資をしてくれるような会社や人なんてそうそういるわけがありません。
何より、一度真芝に吸収された事によって、十曲のブランドは地に堕ちたも同然でした。
そんなブランドに対して融資をしようとする者は、誰一人として……

「……話を聞かせてもらおうかね」

……一人だけ、いました。
その年の割りに鋭い雰囲気を纏ったお婆さんは、過去に十曲家から着物を購入していたという縁で若様にコンタクトを取ってきたのです。

「十曲の服には、ちょいと思い入れがあってね。なんなら、全額融資してやってもいい」
「本当ですか!」
「ああ、利子もいらない。返済期限も特に決めない、返せる時に返してくれたらいいさ。ただし……」

次の瞬間、お婆さんの纏う雰囲気が、一気に強いプレッシャーとなって若様へと向けられました。

「私が気に入らなかった場合、融資した金はすぐに返してもらう……それでもよければ、融資しよう」

プレッシャーと共に放たれた、言葉。
それは、少し離れた場所にいた私でさえも思わず立ちすくんでしまうほど、強く、厳しい言葉でした。
だけど、若様はそのプレッシャーを正面から受け止めると、

「了解しました。その条件でお願いします」

考える素振りすら見せずに、その条件をあっさりと受け入れたのです。

「ほう……いい返事だ。よっぽど自信があるのか、それとも何も考えていないのか……どっちだい?」
「十分考えた末に出した結論です。勿論、自信もあります」
「……その自信はどこからくるんだい?」
「それは……」

そして若様はゆっくりとこちらに視線を移しました。
私と山岡さんを見つめ、そして優しい笑顔を浮かべて言ったのです。

「ボクを信じてくれる人がいる限り……ボクは、ボク自身を信じていこうと決めたんです」
「……なるほどね」

お婆さんは満足げに頷きながら、座っていた椅子から立ち上がりました。

「金は出してやる。満足できる着物ができたら送って寄越しな……勿論、私が生きているうちにな」
「そこまでお待たせしません……一年以内に送りますよ」
「期待しないで待ってるよ」

心なしか嬉しそうな表情を浮かべながら、お婆さんは立ち去りました。
若さまの講座にお金が振り込まれたのは、その次の日でした。

「せっかちなお婆さんだね……それだけ期待されていると思っておこうか」

そう言った若様の表情も……とても、嬉しそうでした。
27『キミ ノ テ』第一部 7/10:2006/03/16(木) 00:31:25 ID:6JFMI55A
その後、若様はそのお金を元に、買収された十曲家を買い戻しました。
言葉にすると簡単に聞こえますが、現実はそう甘くはありません。
何度も交渉を重ね、時には騙され、時には裏切られ、だけど時には助けられながら、少しづつ奪われたものを取り戻していったのです。
そして、真芝が壊滅してから4ヶ月後。預かったお金が無くなった頃、ようやく全てを取り戻したのです。
しかし、これで終りではありません。
今は、真芝に買収される前に戻っただけ……いえ、ブランド力が落ちている今の状況では、前よりも悪くなっていると言えるでしょう。
真に十曲家の再興と言うには、ここから這い上がっていくしかないのです。

「大丈夫。ちゃんと考えはあるさ」

若様の考えとは、前までのように繊維、そしてその繊維を使った生地を売るだけでは無く、
その生地を使用して独自の服飾ブランドを立ち上げるというものでした。
自社ブランドを利用して生地のクオリティの高さをアピールしていけば、自ずと契約してくれるメーカーも増えてくれる。
それが若様の言い分でした。
ですが、これには一つ大きな問題があります。
生地は元々自信があるからいいとしても、肝心の自社ブランドを手がけてくれるデザイナーがいないのです。
お金も無くなった今、有名デザイナーを起用する余裕なんてありません。
だからといって、今後の十曲家を担うプロジェクトに無名のデザイナーを起用するのはリスクが高すぎます。
何かアテでもあるんでしょうか? ……と、私が思っていたその矢先。

「で、そのデザイナーなんだが……千紘君、やってくれないか?」

……きっと、この時の私の顔はすごく間抜けな顔をしていたに違いありません。

「デザインの勉強をしていると山岡君から聞いたのだが……」

とっさに山岡さんに視線を移すと、山岡さんは素知らぬ顔で視線を外しました。
……秘密にしといてくださいって言っていたのに……
確かに、少しでも若様のお役に立とうとデザインの勉強とかしてましたけど……
だけど、それはあくまでお手伝いとしての話です。
勿論、私は無理ですと断りました。
しかし、若様も譲りませんでした。

「できないのなら、できるまで頑張ればいい。実際、そうやってここまできたんだ。大丈夫。千紘くんにもできるさ」
28『キミ ノ テ』第一部 8/10:2006/03/16(木) 00:33:29 ID:6JFMI55A

……正直に言うと、私には自信がありませんでした。
デザインの事だけではありません。
私自身に、自信が持てないでいたのです。
何をやっても失敗ばかりで、何をやっても上手くいかなくて。
そんな私を最後まで見捨てないでいてくれたのが若さまでした。
だけど、今回も見捨てないでいてくれるとは限りません。
このプロジェクトは、今後の十曲家にとって凄く大事なものです。
それがもし、私のせいで失敗したら……
だから、やっぱり……

「一人で無理なら、手伝ってもらえばいい。勿論、ボクも精一杯手伝う。だから……一緒にやってくれないか?」

断りの言葉を入れようと顔をあげた私の目に映ったのは、優しげに微笑む若様の顔と、差し出された若様の手。
……私には自信がありません。
だから……だから……だけど――
私だけでは無理でも、若様と一緒なら……この人と一緒なら、何でもできる。
それだけは、自信を持って断言できます。
なにより、若様が私を必要としてくれるのなら、私はそれに答えたい。
そして、私は若様の手に自分の手をそっと重ねました。

ふ、ふつつかものですが、よろしくお願いします!
「……千紘くん、それは使い方を間違えてないかい?」

……そうかも。
29『キミ ノ テ』第一部 9/10:2006/03/16(木) 00:34:28 ID:6JFMI55A

それからの日々は、試行錯誤の連続でした。
生地の材質をチェックして、それにあうデザインを作っていく。
生地にあわせてデザインを変え、デザインにあわせて生地を変え。
そして、やっと納得できるものが出来たののは、夏も盛りを過ぎた辺りでした。

「うん、これならあのお婆さんも納得するだろう」

そう若様は言いましたが、私は不安で、気が気ではありませんでした。
これでダメなら、残るのは多額の借金だけなのです。

「こらこら、千紘くん、おどおどしない。あれだけ頑張ったんだ。自信を持とう」

笑顔と共にかけられた、若様の言葉。
……そうだ。私だけじゃない、若様もあれだけ一生懸命がんばったんだ。
これで、ダメなわけが無いです!
……それが、空元気だというのは自分でも分かっていましたけど、それでも私は笑顔で頷きました。
作った自分がこんな調子では、皆さんにいらない心配をかけてしまいます。
ダメだったときは、そのときに考えればいいんです。

「大丈夫。きっと気に入ってもらえるさ」

着物を送ってから返事が来るまでの一週間は、みなさん平静にしている様に見えて、やっぱり緊張していたみたいです。
あの山岡さんですら、ドアが開く音がするたびにビクリと背中を震わせていましたから。
そして、一週間後。
一通の手紙が届いたのです。
それにはただ一言。

『これからも精進しな』

一応、気に入ってくれたみたいです……気に入ってくれたんですよね、これ?

「やれやれ、あのお婆さんも素直じゃないね」

そう言う若様も、嬉しそうに顔が綻んでいました。
本当は、飛び上がって喜びたいのでしょうけど……ふふ、素直じゃないのは、お互い様のようです。
30『キミ ノ テ』第一部 10/10:2006/03/16(木) 00:35:56 ID:6JFMI55A

「おばあ様、荷物が届いていますけど」

山深くに立てられた神社の一室。
静馬かなえは襖を開けながら、部屋の主へと声をかけた。

「おや、届いたのかい。そこにおいといてくれ」

部屋の主であるかなえの祖母、静馬さなえは部屋の中央でお茶を飲みながら、かなえへと言葉を返す。

「これ、何なんです?」

さなえに荷物が届くのは年に何度も無い。
ふと気になったかなえは、返事を期待せずに問いかけた。

「ああ、ちょっと馴染みの所が久しぶりに着物を作ると聞いてね。ちょっとお金を出してやったのさ」
「お金、ですか?」
「はした金さね。どうせ使い道も無い金だ」
「ふーん……ちょっと、見てもいいですか?」

お世辞にも気前がいいとは言えないさなえがお金を出したという事は、そんなにいい着物なのだろうか?
そんな好奇心がわいてきて、かなえはさなえの返事も聞かずに小包みを開けた。

「わあ……確かにいいですね」

その着物はさなえが着るにはちょっと若すぎる気がしないでもなかったが、それでもいい着物というには変わりが無かった。
なにより、感心したのはその生地だ。
薄く、軽いが、安っぽい感じは全然しない。
色ムラもなく、綺麗に染められたその生地に、かなえは思わずため息をもらす。
そして、ふと気付く。
さきほど、さなえが着るには若すぎると思ったが、この生地の良さを生かす為とかんがえれば、あのデザインも納得できる。
デザインだけでなく、生地だけでなく、両方の良さを生かしたこの着物。

「……私も欲しいかも」

思わず、声に出すかなえ。
そんなかなえを横目で見ながら、さなえは口元に薄い笑いを浮かべながら言う。

「そんなに欲しいなら、私が買ってやるよ」
「え、いいんですか!?」
「ああ……それと同じのでよければ、いくらでも買ってやる」
「……同じ?」
「つまり……」

手にしていた湯のみをちゃぶ台において、さなえは先ほどまでの薄い笑みではなく、
はっきりとした意地悪な笑みを浮かべてかなえへと向き合う。
そして、やっとかなえは気付いた。
自分が手にしている着物。それが留袖だという事に。

「早く、相手を見つけろって事さ」
31松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/03/16(木) 00:37:23 ID:6JFMI55A

今日は以上です。

多分3部ほどで終わります。
できるだけ早く続きを投下できるように頑張ります。

では。
32名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 11:28:25 ID:qhR4LzdC
はぁ〜っ。なんかええ話やなぁ…。
このスレやっぱ居心地いいわ。ともあれ乙!
33名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 20:49:17 ID:YI7r4JOp
うお、松雪さん久々に登場ですな!
読みやすくてなんとなく温かい感じの文章が相変わらずいい感じです。
続き期待させてください!
えらい間が空いてしまってどんな話か忘れられてしまってるかと思いますが、
続きが書きあがりましたので投下させて頂きます。

今回で一連のお話は終了で、とりあえず我聞×國生さんのえっち場面からです。
35499 1/15:2006/03/19(日) 00:05:59 ID:1Yc258CN

マットに倒れ込んだ二人は、再び唇を重ねる。

「あ・・・ん・・・っ、ちゅ・・・っ・・・んふ・・・ぅ」
「っぷ・・・ふ・・・む・・・っ」

互いに貪るように唇で唇を塞ぎ、吸い、舌を絡めあう。
抱きあったままモゾモゾと動いて少しずつ身体をずらし、
陽菜の背中の下になっていた両腕を引き抜くと、我聞は自由になった手で彼女の身体に触れる。
左手はブレザーのボタンを外してブラウスの上から控えめな胸を揉みしだき、
右手は健康的に引き締まった太腿を愛でるようにさすりながらスカートの中へと伸びる。

「んむ・・・!」

潤んだ目を薄く開いて恍惚とした表情を浮かべていた陽菜が、ぴくんと震えてその目を見開く。
反射的に思わず膝を閉じそうになるが、
既に我聞の膝が両足の間に入っているので、その脚に脚を摺り寄せるだけの結果に終わる。
そんな陽菜の仕草が可愛くて、今はどんな声を出してくれるのか気になって、
右手を陽菜の敏感な内腿に這わせながら唇を離してみると・・・

「んぷ・・・あ! ひ・・・ぅぅ・・・あ・・・ぅ、ふぁ・・・しゃちょ・・・」

甘い吐息を洩らしながらも、陽菜は少しだけ不満そうな顔を見せる。
キスを中断したことがお気に召さなかったかな、と感付いて、
今度は陽菜の首筋に唇と舌を這わせ、優しく吸い、舐め上げる。

「ん・・・! あ・・・あ、ひぅ・・・ふぁ・・・」

塞ぐもののなくなった口からは控えめな、だが明らかに感じているとわかる喘ぎ声が漏れ出し、
彼女に触れる手指や唇から、白くきめ細かな肌がぞくぞくと震えているのが伝わってくる。
陽菜の身体が愛撫を受け入れてくれていることが分かると、
我聞は更なる刺激を注ぎ込むべくブラウスのボタンを外しにかかる。
だが、その手は陽菜の手に掴まれて・・・

「だめ、です・・・ここ、カギ、かかってないですから・・・服は・・・ダメ」
「あ・・・」

ここは学校の体育倉庫であり、用途上、内側から施錠できる造りにはなっていない。
従って、抱き合う二人と “放課後の学校” という外界とを隔てるのは、
大して重くもない扉一枚に立ち入りを禁じる旨を記した掛札一枚のみ。
そんな状況に少しだけ躊躇を覚えるが・・・昂ぶりつつある欲求を抑えるまでには及ばなかった。
何より―――この状況を認識していながら、陽菜は自分から我聞と身体を重ねることを求めてきたのだ。

「じゃあ、こっちを・・・」
「え・・っふ・・・ぁあ・・・あ!」

ボタンに掛けた手を陽菜の胸に戻すと、ブラウス越しになだらかな膨らみを手のひら全体で揉み捏ねつつ、
今度はスカートの奥で滑らかな太腿を撫でていた右手を・・・

「あ、や・・・あ! ひ・・・ぅ・・・だ、め・・・」

内腿に当てた指を脚の付け根に向けて這い登らせて、
ショーツの上から陽菜の最も敏感な部分に触れる。

「―――っ!」

声にならない声をあげて、陽菜の身体がびくん! と揺れる。
そのままショーツの布地ごと指を秘裂にぐいっと押し付けると、
再びびくんと身体が揺れて、指から逃げるかのように腰がもぞもぞ動く。
36499 2/15:2006/03/19(日) 00:06:57 ID:8ysJdRQW

陽菜の反応に手応えを感じながら、ぐりぐりと押し付ける指に少しずつ力を加えてゆくと―――

「あ・・・國生さん、ちょっとだけ下着、濡れてきたよ・・・」
「や・・・そんな! ・・・だって、そこ・・・社長がそんな、指で、するから・・・」
「指をこんな風に押し付けられただけで感じちゃったんだ・・・じゃあ、こうしたらどうかな?」
「え、や、ひぁ! だめ、あ、ふぁ・・・!」

僅かに湿った薄い布地越しに秘裂に指を沿わせると、最初は軽く・・・徐々に押し付けるように、
割れ目に沿って上下に擦りあげる。

「や! しゃ、ちょ・・・あ、ふ・・・! っひぅう・・・」

緩慢だった陽菜の腰の動きが徐々に速く、大きくなり、びくびくと不規則な震えが混じる。
漏れ出す声のトーンも高まり、普段の陽菜からは想像もつかない艶かしさを帯びる。
ショーツ越しに陽菜の秘部を愛撫する指は初めこそ乾いた音を立ててスムーズに動いていたが、
指が動く度にじとり、と布地が潤いを増し、やがて“じゅっ、じゅっ”と湿った音に変わる。

「すごいな、どんどん濡れてきてるよ・・・感じてくれてるんだ・・・」
「ふ・・・っ、あぁ・・・だって・・・そんな、弄られたら・・・ぁ・・・」
「じゃあ、ここもこうしたら、もっと気持ちよくなっちゃうかな・・・?」
「っ・・・え、な、なんです・・・・・・っ!? い! や、あ! ぁあっ!?」

人差し指と中指でショーツの上から秘裂を擦りあげながら、親指でその少し上をまさぐり、
布地越しにでもそれとわかる小さな突起を探り出す。

「だめ! しゃちょっ! そこ、っひ! び、んかんすぎてっ! あ、ひゃあ!? だめ、やぁあっ!」
「でも、下着越しだと・・・丁度いいんじゃないかな? ・・・どう?」
「あ、あ―――っ!? だめ、そんなぁ! ふぁ・・・あ・・・っくぅ・・・!」

びくびくと激しく身体を揺らしながら、それでも声にかかる甘い霞みは晴れるどころかますます蕩けるよう。
それを確かめると、秘裂に押し当てる指はより強く速く、突起を弄る指も少しだけ強く、
右手で陽菜の敏感なところを責め立てて、官能の蕾を徐々に開花させてゆく。

「は―――っ、あ・・・ふ・・・っ、ひぁあ! しゃちょ、だめ・・・そんな・・・ぁ、わたし・・・」
「國生さん・・・そんな声出されちゃうと・・・俺、もっと君を・・・苛めたくなる・・・」
「あぅ・・・ふ・・・っ、そんな・・・ あ、その・・・でも・・・っふぁ! ・・・あの・・・」

頬を真っ赤に染めながら、潤みきった目で我聞に向けられた視線には、
恥ずかしくて言葉に出来ない彼女の思いが、我聞にすら読み取れるくらいに込められていた。
―――もっと、苛めて欲しい、と。
だから、我聞は躊躇なく手を動かす。
親指で下着越しに肉の突起をやや強めに押し捏ねて陽菜の身体を一際大きく震えさせておいて、
その間に薄い布地の内側に手を滑り込ませる。
その一帯は漏れ出した蜜でぬるぬるに湿っていて、生温かい。

「あ、や・・・しゃちょ・・・あ、あ・・・」

秘裂に直接指をあてがうと、それまで我聞の愛撫に踊らされていた腰の動きがぴたりと止まる。
震える声は、期待と不安・・・両方の気持ちが篭っているかのようだ。
だが、首筋から顔を上げて陽菜の表情を見ると―――赤く火照って潤んだ目や、物欲しげに開いた口から・・・

「はやく弄って欲しい・・・?」
「え!? あ、そんな! べ、べつに・・・その・・・」
「でも國生さん・・・すごく、欲しそうな顔してるよ・・・」
「そ、そん―――っふぁあ!? あ、いひっ! んぁああ!」

陽菜の言葉を遮るように、つぷぷ・・・と、中指を彼女の中に侵入させる。
既に濡れそぼっているそこは、指程度のものならほとんど抵抗なく入り、
それでいて咥え込んでしまうと今度はきゅうっ、と締め付けてくる。
37499 3/16 総数間違ってましたスミマセン:2006/03/19(日) 00:09:06 ID:8ysJdRQW

「あ・・・ひ・・・ぅく―――っ!」

陽菜の感極まったような声を聴きながら、指を第一関節、第二関節・・・と、ゆっくりと沈めてゆく。
奥へ進むにつれて指を包み込む秘肉は熱を増し、
そこに己自身を埋め込んだ時の感触を如実に思い出して、我聞の身体が一気に疼き出す。
だが今は・・・自ら求めてくれた陽菜を悦ばせることを何よりも最優先にしたかったし、
こんなにも感じ、喘ぎ悶えてくれる陽菜をもっと乱れさせたいという欲求にも駆られていた。
だから我聞は指先を動かし手首を動かして、狭いままの洞穴の肉壁を優しく、時に激しく擦り、抉り、捏ねる。

「い、あ・・・! っふぁん! こん・・・な・・・っ! あ、あ・・・っあ―――!」

我聞の指に秘所を掻き回されて、陽菜はびくびくと身体全体で震えながら艶やかな声を上げ続ける。
切なげに眉をひそめ、目尻には涙すら浮かべて身体に刻み込まれる快楽に翻弄される姿は、
普段の陽菜に比べてあまりにも・・・

「國生さん・・・本当に・・・えっちな顔・・・」
「いやぁ・・・あ、っふぁ! そんなこと、言わないで・・・見ちゃ、ひぅ・・・! ダメです・・・見ないでぇ」
「すまん・・・無理だ・・・今の國生さん、可愛いすぎるよ・・・」
「っくひ・・・そんな・・・ぁ・・・あぁあ! あひ、ひむ・・・っ!? んむ! んん―――!」

目の前で乱れる陽菜が余りにも可愛くて、思わず・・・嬌声を上げ続けるその唇を奪う。
愛しい少女をただひたすら愛したくて、一心にその唇を吸い、舌を入れると、
陽菜も応えるように、懸命に我聞の舌に舌を絡ませてくる。
左手で愛撫していた彼女の胸は、ブラウスの上からでもその敏感な突起が硬く尖っているのがわかり、
指先でそこをぐりぐりと抉り、撫でまわす。
右手は休むことなく陽菜の濡れそぼったショーツの下でもぞもぞと動き、
膣内に沈められた指先を曲げたり捻ったりしながら、陽菜の身体に官能の悦びを刻んでゆく。

「・・・んんっ! んむ・・・っぷ、あ! うぁあ! っん、む―――っ! んぶ・・・ぅ・・・」

上下の口を内側から執拗に愛撫され、注ぎ込まれる強烈な悦楽に身体を激しく震わせながら、
陽菜はくぐもった呻き声をあげる。
だが、その両腕はあくまで我聞の背に回したまま、ぎゅっと抱き締めて離そうとしない。
陽菜が我聞の愛撫を、上下の口から与えられる喜悦の刺激を受け入れているという、証。

―――じゃあ、もっと気持ちよくさせてあげなくては。

悪戯心でもサドっ気でもなく、あくまで純粋に彼女を悦ばせたい―――
どこまでも裏のない陽菜への想いが、我聞の指を更に動かす。
・・・まだそこへ挿れられていない、もう一本目の指を。
38499 4/16 総数間違ってましたスミマセン:2006/03/19(日) 00:10:27 ID:8ysJdRQW

「んん・・・っ、ん・・・んむ!? ん! んんん! ん―――っ、んむ、んぶ、んんん―――!」

ずぷぷ・・・
垂れ流される蜜を絡めながら、二本目の指が秘唇を掻き分けて陽菜の中に侵入する。
二本に増えた指はそこにあるだけでも陽菜の媚肉を圧迫し、
しかもそれぞれが別々に動き、届く範囲の膣内を余すところなく責めたてる。
その指が生み出す快楽に陽菜の意識は振り回され、
溢れ出た官能の喜悦が彼女の身体をガクガクと揺らし、快楽の炎となって脳髄を焦がしだす。

「んむっ! っぷぁ、あ! うぁああ! しゃちょおっ、ゆびぃ、すご、あ、ひゃああ!」

強烈な快楽に陽菜の意識は甘く煮えたぎり、羞恥によるリミッターが外れはじめる。
頭を振り乱して悶え、弾みで解放された口から漏れる卑猥な声は、
彼女の秘所と我聞の指が立てる水音と相まって、二人の行為を淫らに彩る。
陽菜の中で指がうねうねと蠢くのに合わせて、スカートの奥、ショーツの下から、
ぢゅぷ、ぢゅく・・・と、響く低く湿った音は、
つい先程まではショーツとスカートに阻まれてほとんど聞こえなかった。
だが今は、二人の耳にはっきりと届いている。
音を奏でる指が二本に増えたせいもあるだろうが、
何より陽菜の秘所がそれだけ濡れそぼり、溢れんばかりに滴る淫蜜が指に弾かれて音を立てているから。

「聞こえる・・・? 國生さんのここ、えっちな音がしてる・・・」
「や、そんなぁ! はずかし・・・っ、こと、あふ! い、いひゃ、いわないでぇ・・・」
「恥ずかしがらないで・・・もっと、気持ちよくなって・・・」
「っふ・・・ぁ、あ・・・でも、っひぅう! ゆ、び・・・っ、や、あ、ひゃあ!」

びくびくと腰を、身体を揺らして悶え、きゅ、きゅっと、自分の中に埋め込まれた二本の指を締め付ける。
その膣の動きに物欲しげな雰囲気を感じて、
我慢はさらに陽菜を悦ばせようと・・・

「ひう! あ、っく! っ、え・・・あ!? や! やだ! だめ! ダメです!
 そんな、もう、ゆび、だ・・・あ! や! っひあぁあ!」

二本の指で既に埋まってている陽菜の中に、更にもう一本、新たな指を侵入させる。
先に埋め込まれている指だけでも、中から膣を押し拡げる感覚で頭が快楽に痺れてしまいそうなのに、
そこに新たな異物を秘肉を掻き分けるように押し込まれ、
陽菜の許容量を越える強烈な快感が身体の芯にえぐり込まれる。
抵抗しようと思わなければ一瞬で意識が溶けて流れてしまいそうな、
激しく、容赦無く、そして甘美すぎる愛撫に晒されて―――

「や! あ・・・っく、ひう! らめ、だめぇ! ゆび、やだ、や、ヤです! ゆびじゃ、や、やあぁああっ!」

がくがくと身体を震わせながら、泣き叫ぶように訴える。
だが、その声はすでに官能の炎で蕩けきり、喘ぎよがっているような、淫蕩な響きに満ちている。
この指で陽菜の中をもう少し激しく掻き混ぜてやれば、
難なく彼女を淫らに狂わせることができることが我聞にも分かる。
乱し狂わせ、堕ちきった陽菜を思うままに嬲り尽くしたいという欲求だって、無いとは言えない。
だが、今は・・・
39499 5/16:2006/03/19(日) 00:11:30 ID:8ysJdRQW

「あ、あああ―――っ! あ! ・・・ぁ・・・あ、ふぁ・・・っ・・・はぁ・・・っ、はぁっ、あ・・・」

陽菜の訴えを素直に受け入れて、ぴた、と動きを止め、熱く蕩ける秘所からすぐに全ての指を引き抜く。
ぬぷ、と音を立てて栓を失った蜜壷からはとぷとぷと蜜が流れ出して、
既に湿りきってしまっているショーツをさらにびしょびしょに濡らす。
身体を震わせて荒い息を吐きながら薄く開いた目で我聞を見つめる陽菜の顔に浮かぶのは、
安堵でもなく、非難でもなく―――期待の色。
我聞は陽菜の視線に応えるように、す―――と、耳元に顔を寄せて・・・

「國生さん・・・俺、そろそろ我慢できない・・・いい、かな・・・」
「は・・・い・・・ きて・・・ください・・・私も、社長の・・・ほしい・・・」
「ん・・・」

一旦身体を離すと、我聞は邪魔な制服の上着を脱いで、ベルトを外しファスナーを下ろす。
すっかり“テントの張った”状態のトランクスからちょっと手間取りながら、
中身を取り出す様子を目の当たりにして、陽菜は恥ずかしくて顔を背ける。

「・・・國生さん」

我聞に呼びかけられて、背けた顔を少しだけ彼の方に向ける。
陽菜の傍で膝立ちになった彼と、その腰で反り返っているモノがどうしても目に入ってしまい、
恥ずかしくてすぐにまた目を逸らしてしまうが・・・
それでされることを思うと、既に火照り切った身体が疼くのを認めない訳にはいかない。

「下着だけ、脱がすよ・・・? スカートがあるから、いいよね」
「・・・は、い・・・」

恥ずかしさのせいか消え入るような声で答えながらも、脱がせやすいように脚を揃えて、軽く腰を浮かす。
我聞の両手がスカートの中に伸び、陽菜のショーツの両脇を掴むとするすると下ろす。
やがて脱がし終えたショーツをマットの上に置くと、じわ、と陽菜の淫蜜でできた染みが広がる。
だが、今の二人にはそんなことはどうでもいい・・・

「・・・國生さん・・・今度は、脚、開いて・・・」

妨げるものがなくなって、我聞の両手が陽菜の膝に被せられる。
陽菜は全く抵抗せず、おずおずと脚を開き我聞を招き入れる。
陽菜の両膝の間で膝立ちになった我聞の手が陽菜のスカートにかかり、最後の障壁を捲りあげると・・・
じっとりと濡れそぼった彼女の秘所が、露わになる。
我聞は自らの手でそうしたことだと分かっていても、その淫猥な光景にごくり、と喉を鳴らしてしまう。
陽菜は身体が期待に昂ぶっているのを感じながらも、
同時に人の―――愛する男性の目の前で脚を開いて秘所を晒すという恥ずかしすぎる格好に、
泣きそうな気持ちになって身体の両脇に投げ出した手を思わずきゅっと握り締める。
二人とも既に何度も身体を重ねてきているのに、どうしてもこの瞬間には慣れない。
それぞれが緊張と期待で過度に胸を高鳴らせてしまう。
―――だが、その先を知ってしまっている以上、いつまでも抑えられるものではなく・・・

「じゃあ、國生さん・・・するよ・・・」
「・・・はい・・・社長・・・・・・」

我聞が覆い被さってくるのを感じて、陽菜は逸らしていた顔を正面に向けると彼と目を合わせる。
硬く握っていた手に我聞の手が優しく重ねられたのを感じて、彼の大きく頼もしい手を握り返す。
恥ずかしいのは変わらないが、自分を見つめる我聞の顔にも明らかに、
緊張や照れといった種類の表情が浮かんでいるのを見てとって、
緊張がほぐれてゆくのを感じる。
二人の距離はすぐに縮まって、やがて屹立した我聞の尖端が陽菜の秘所に触れる。
40499 6/16:2006/03/19(日) 00:12:23 ID:8ysJdRQW

「ん・・・っ」

びく、と陽菜の身体が一瞬だけ震えるが、火照った顔を我聞から逸らしたりはしない。
むしろ、我聞をじっと見つめる潤んだ瞳は、待ち焦がれているようにすら見える。
そんな熱の篭った視線と、尖端をぢゅくっと濡らす感触に吸い込まれるように、
我聞は腰を押し進め・・・

「っ・・・ふぁあ、あ、熱・・・っ、あ、あ! あ!」

ずぶ、ぷ、ぷぷ・・・
熱く固い肉の槍と化した我聞のモノが、秘唇を割り拡げてゆっくりと陽菜を貫いてゆく。
陽菜の中は淫蜜で濡れそぼり、キツく締め付けながらも我聞の肉茎をスムーズに呑み込んでゆくが、
既に絶頂寸前まで焚き付けられていた陽菜の身体にとっては、どれだけ潤滑液にまみれていようとも・・・

「あ・・・は・・・っ! しゃちょ・・・のっ、こすれ・・・うぁああっ!」

埋め込まれてくる我聞のモノが膣壁を擦り抉る刺激はどうしようもなく強烈で、
陽菜は上擦った嬌声を上げて悶え、淫らに乱れた姿を我聞に晒す。
やがて指では届かなかった奥深いところに我聞の穂先が侵入すると、

「や! あ、深・・・ぃ、あぁ・・・お、奥までぇ・・・あ、っく! あ! ひぁあ・・・」

敏感すぎる膣内を押し広げながら我聞の肉茎はずぶぶ・・・と、より深く沈み込み、
蕩けそうなほどに甘美な刺激が陽菜の身体の芯から頭の先まで響き渡る。
感極まったように身体の奥から搾り出されたような切なげな喘ぎ声を絶え間なく洩らしはするが、
そこには苦痛や拒絶の響きは無い。
赤く上気した表情・・・はしたなく開き涎で穢れた唇や、涙が滲む薄く開いた目にも、
羞恥や恐怖の色は無い。
ただ、あるのは―――

「っ・・・ぁあ! おく・・・届く・・・しゃちょ・・・っ! あ、っふぁあ! あ、あ・・・ぁああ!」

激しく燃える官能の炎と、悦び震える身体と、それを完全に受け入れる心。
場所のことも何もかもどうでもよく、ただ今は我聞と交わることが気持ちよくて、
彼を身体の一番深いところで感じられることが嬉しくて、
間近に迫った最初の頂きに向かって、喜悦で蕩けた心はただただ突き上げられてゆく。
故に、その瞬間は本当に呆気なく訪れる。
我聞のモノは快楽でがくがくと震える陽菜の中により深く沈み込み、
やがて根元まで埋め込まれ、二人の腰と腰が触れた瞬間に・・・

「あ! ぁあっ! しゃちょ・・・っく! おく、きちゃ・・・あ、ああ! っぁあああ―――!」

陽菜の中で快感が決壊して、意識が真っ白に塗りつぶされる。
ゆっくりと突き込まれたはずなのに、その衝撃は背骨を走って脳髄まで駆け上がり、
一際高い声をあげながら、陽菜は身体を弓なりに反らせてびくびくと痙攣する。
そんな声や身体の動き、更に握り合う手と自分を包み込む陽菜の中がきゅっと締まる感触で、
我聞も彼女が絶頂を迎えたことを知る。

「國生さん・・・挿れただけで、イっちゃったんだね・・・」
「っはぁ・・・は・・・だ、だって・・・しゃちょ・・・あんな・・・、ゆびで・・・する、から・・・ぁ」

気持ちで受け入れていたことでも、改めて言葉にされると恥ずかしくて、
今更ながらに羞恥の表情を浮かべながら息も絶え絶えに答える。
そんな陽菜が可愛くて仕様がなくて、もっと、すぐにでも彼女を貪りたい、悦ばせたいとは思うのだが、
こんなときの陽菜を知っている―――敏感になりすぎてしまう―――だけに、少し躊躇ってしまう。
だが、陽菜だって同じように我聞のことは分かりきっている。
例え溢れ出した快楽で頭が上手く働いてくれなくても。
だから・・・
41499 7/16:2006/03/19(日) 00:13:36 ID:8ysJdRQW

「あの・・・社長・・・いい、ですよ・・・」
「え?」
「社長の・・・わたしの中で、まだ・・・かたい、ままですから・・・続けて、ください・・・」
「で、でも國生さん・・・イったばかりだと、感じすぎちゃうから辛いんじゃ・・・」
「・・・いつもそうと分かってて・・・それでもするじゃないですか・・・」
「う・・・だ、だけど、今日は・・・」

いつもだって悪気はないのだが、特に今日は彼女のことを大事にしてあげたい、と思う。

「大丈夫です・・・いえ、その・・・辛いかもしれませんが、苦しそうにしてしまうかもしれませんが・・・」

陽菜の表情は切なげで艶やかで、見つめられるだけで我聞の情欲は理性の壁を乗り越えそうになる。
それを知ってか知らずか・・・いや、どちらであろうとも構うことなく・・・

「まだ、足りないんです・・・もっと、感じたいです・・・もっと社長が、欲しい・・・」

甘えるような、媚るような―――陽菜の淫らに蕩けた声で求められて、
自分のモノを包み込んだままの熱く濡れた秘肉に、
まるでおねだりされるかのようにきゅうきゅうと締め付けられて、
我聞は自分の意思がどうせ長持ちしないことを悟る。
そもそも今日の我聞の気遣いはことごとく的を外していることもあり、
これ以上頭を働かせることを放棄して、陽菜の、そして自分の求めるままに―――
身体の芯から沸きあがる疼きに、身を任せることにする。

「・・・っふあっ!? あ・・・んっ! んん・・・んふぅ・・・ぁ・・・っ」

達したばかりで過敏になっている陽菜の膣肉は、
自分の身体の奥深くに埋め込まれた熱い塊がびくん、と脈動しただけでも敏感に反応してしまう。
だから我聞が本格的に動き出すために多少体勢を変えただけでも、
陽菜にとっては強烈な愛撫を加えられているようなもので、自ずと淫らに喘いでしまう。

「よし・・・それじゃあ國生さん、動くよ?」
「は・・・い、動いて・・・もっと、感じさせて・・・ください」
「ん・・・俺もその、久々だしちょっと我慢してたから、
 動き出しちゃうと、どんどん激しくしちゃうかもだけど・・・」
「大丈夫です・・・社長の、したいようになさって下さい・・・その方が、うれしいですから・・・」
「わかった。 じゃあ、いくよ―――」
「はい、きて・・・あ、あふ、ふぁああ! あ・・・んぁあっ!」

会話を終えると同時に、我聞の肉杭が陽菜の中から引き抜かれ、
雁首のあたりまで抜いたところで反転、速度を緩めることなく再び沈み込む。
先程のようなゆっくりした挿入とはかけ離れた速度で肉杭は陽菜の中に打ち込まれ、
全て埋まってしまうと二人の腰が衝突して、接合部からぴちゃ、と溢れた蜜の弾ける音が響く。
陽菜の腰がガクンと揺れるが、それに構うことなく一瞬の静止後に再び肉杭は引き抜かれ、
そして同じように打ち込まれる。

「あ・・・ぁあ・・・ひぁ、あ、あああ! っく、ふぁ、しゃ、は、しゃちょ・・・ふわぁああ!」

陽菜の細身は肉杭が引き抜かれるとぞくぞくと震え、打ち込まれるとガクガクと揺れる。
口からは絶えず喘ぎ声が漏れ我聞の動きに合わせてトーンの高低が変わるが、
その声からは常に悦びの響きが滲み出ている。
我聞は腰のピストン運動を何度も繰り返しながら、
時に捻るように、時により深くと微妙な変化をつけて、抽送のペースも徐々に上げてゆく。
応じて陽菜の身体の揺れは激しくなり、彼女の声は・・・

「っふぁあっ! は、わ・・・んあぁあ! ひぁ、しゃちょ、しゃちょおっ! はげしっ、あ、ひゃあああ!」

トーンが上がりこそすれ下がることはなくなり、甲高い声で喘ぎ悶えるばかりになる。
42499 8/16:2006/03/19(日) 00:15:07 ID:8ysJdRQW

「っ、國生・・・さんっ! なか、凄い・・・柔らかいのに、キツくて、熱くて・・・気持ち、よすぎる・・・」
「あふ! ひゃ、うれし・・・っ! わたし、も・・・きもち、い、あ、っふぁああ! んぁ、いいですっ!」

互いにここが学校であることも忘れ、胸に浮かんだことを躊躇いもなく口にする。
自分が相手を感じていること、悦んでいることを伝えずにいられない。
好きな人と抱き合い交わることが気持よくてたまらない。
気持いいから、もっとしたい。
気持いいから、もっと欲しい。
そんな気持に駆り立てられるように我聞は陽菜の唇を塞ぎ、
陽菜は貪る様に我聞の唇を吸う。
我聞のモノが陽菜の中を掻き混ぜる、ぐちゅ、ずちゅ、という濁った音と、
二人の唇が貪りあう、ぴちゃ、ちゅぱ、という軽い音が絶え間無く響き、
そこに二人の荒い息遣いと喜悦の呻きが重なる。

陽菜の秘所に肉の杭を何度も何度も突き込みながら、
我聞はいつもより遥かに早く最初の限界が近付いているのを感じる。
陽菜の中はどう角度を変えて突こうとも、浅かろうと深かろうとも、
我聞のモノに絡み付くような締めつけで、しかもぐずぐずに蕩けそうなほどに熱い。
第一研以降、肌を重ねる機会を得られないままだった我聞にとっては、
そんな悦楽に浸りながら自分を抑えることは難しい・・・いや、仙術を使ってまで抑えたくなかった。

「ん・・・むぅ・・・っ、ぷはっ・・・くぅ・・・國生・・・さん・・・っ」
「っぷぁ・・・っ、はぁ・・・ぁ、あ! ひゃ、しゃちょ・・・? あ、っふぁ!」
「俺、もう・・・いつもより、気持ちよすぎて、ダメだ・・・そろそろ・・・」
「え・・・っはぅ! じゃあ・・・あ、ひぅ・・・っ、い、いっしょ・・・にぁあ! しゃちょおっ!」
「ああ・・・! 一気に、するから・・・それまで我慢して・・・」
「は、はい・・・ぃ!? あく! ・・・っぅあぁああっ! は、はげしっ! あ、や、ふぁあ!」

限界近くまで昂ぶったモノを開放させるために、我聞の腰の動きが格段に激しくなる。
抽送の速度は更に増し、腰を陽菜の腰にぶつけるような勢いで肉槍を突き立てる。
動きは単調になった変わりに勢いが増し、その分だけより深くまで抉り込まれることになり、

「ひぁあ! おく、にぃ! とどいて、あ、あぁあっ! 当たって、あ、あああ―――っ!」

陽菜の意識が真っ白に弾けそうになる。
我聞の穂先は子宮口に達し、そこをコツ、コツと叩かれる度に身体の一番深いところがビリビリと痺れて、
そこで生まれた喜悦の電流は背筋を通って脳髄まで駆け上がる。
突き込まれる度に達してしまいそうな激しすぎる悦感を繰り返し繰り返し注ぎ込まれ、
あられもなく喘ぎ悶えながらも、陽菜は必死で耐える。
耐えれば耐えるほど、絶頂に達したときの反動が大きいのは分かっているが、
怖くもあるが、それでも・・・目の前の愛しい人から、我聞から与えられるなら、
それは嫌なことではない・・・むしろ嬉しいこと。
だから、彼の手を一層強く握って崩れかけの意識をどうにか保ち続けて―――

「うぁあっ! しゃちょ、はやく、はやくっ! わた、も、あぁあっ! ダメ、もう、あ、ひぁあああ!」
「っく、もうすぐ、すぐだからっ! もう、ちょっと・・・耐えて・・・!」

性の喜悦に蹂躙されて、あられもなく乱れる陽菜の声や表情、
それに突き込み抉る我聞のモノをきゅ、きゅっ、と小刻みに締め付ける感触から、
陽菜の限界が間近なこと、そして必死で耐えていることもわかる。
そんな健気な彼女に応えるべく、寸前までたかぶったモノを彼女の中で達させるべく―――
大きく一度突き、

「いひゃああっ! も・・・っ!」

強くもう一度突き、

「っひうぅ! もう、わた―――」
43499 9/16:2006/03/19(日) 00:16:32 ID:8ysJdRQW

一度引いたところで僅かに止まって、

「國生さん・・・っ、イくよ・・・出すよっ!」
「しゃ、あ、きて! わたしも、いっしょに・・・いっしょにイきま―――」

最後に思いきり深く突き込んで―――

「ひ! お、あ! ふか・・・っあぁあああ――――――!」

腰をぶつけるように押し付けらて、肉杭を陽菜の一番深いところまで突き立てられて、
先端で子宮口を圧迫されて―――

「おく、あ、あた・・・っ、ひ、イ・・・っ、イっちゃ・・・っぁああああああ!」

背を弓のようにぴん! と反らせ、甲高く絶叫のような喘ぎ声を上げて―――
陽菜は絶頂に達する。
その反動で陽菜の膣は咥え込んだ我聞のモノをきゅうううっ、と締め付け、

「俺も・・・オレも、だすよ・・・っくうっ―――出るっ!」

それが最後のトドメとなって、我聞は滾りつづけていた熱い精を陽菜の中へ解き放つ。
我聞のモノが脈打つように何度も跳ね、その度に先端から熱い粘液がほとしばり、
びゅくっ、びゅるっ、びゅぷぷ・・・・・・と、陽菜の膣に注ぎ込まれてゆく・・・

「―――っ! しゃちょ・・・のっ! でて・・・るっ! なかでっ、でてま・・・っあぁああああ!」

絶頂に達した直後の敏感すぎる膣内で我聞のモノが何度も跳ね、繰り返し射精されて、
その刺激が陽菜に絶頂から下りることを許さない。
我聞のモノが弾ける度に、陽菜はガクンと大きく震え、

「っあぁああっ! まだっ、でてる・・・すご、こんなっ・・・あ! また、イく、イっちゃ、ぁあ、あああっ!」

快感で煮えたぎり朦朧とする意識では声を抑えることなど出来ず、
我聞の射精が済むまで、陽菜はあられもない声を上げながら絶頂の高みで悶え続けた。

・・・やがて我聞が完全に射精を終えると、
陽菜は絶え間なく続いた絶頂からやっと解放されて、荒い息を吐きながら身体全体をぐったりと弛緩させる。
我聞も射精を終えた後の独特の気だるさを感じながら、
身体を陽菜の上に被せて密着すると少しだけ体を預けて目を閉じる。
苦しいほどの重さはなく、服越しに相手の体温を感じられることが心地よくて、
陽菜もまた目を瞑ると身体の外と内から感じられる我聞の温もりに浸る。

こうしてしばらく二人は無言のまま、蕩けあうような交わりの余韻に浸っていたが、
どちらともなく開いた目が合うと戻ってきた羞恥心で頬を染めて、だが目を逸らすことはなく・・・

「・・・しゃちょ・・・すごい・・・いつもより・・・いっぱい、でてました・・・」
「ああ・・・一週間以上してなかったから・・・それに、國生さんのなか、すごく、気持ちよかったから・・・」
「わたしも・・・いつもより敏感になってたみたいで・・・すごく、その・・・」
「その・・・?」
「・・・きもち、よかった・・・です・・・」
「そうか、ならよかった・・・」
「それに、嬉しかったですし・・・一緒に・・・」
「・・・一緒にイけて?」
「・・・・・・・・・はい」
44499 10/16:2006/03/19(日) 00:17:52 ID:8ysJdRQW

顔を真っ赤にしながら、それでも素直に答える陽菜があんまり愛おしくて、そして魅惑的で、
我聞の胸は思わず高鳴り、背筋をぞくり、と震えが走る。
そして、一度は鎮まった欲求の塊が再びむくり、と鎌首をもたげ・・・

「・・・きゃっ!?」

羞恥で真っ赤になって、蚊の鳴くような声で話していた陽菜が急に高い声を上げて、身体をびくんと揺らす。

「や・・・社長の、また・・・硬く・・・」

陽菜の中で存分に射精して、そのまま引き抜かれずにいた我聞のモノが、
むくむくと勃ちあがり陽菜の秘肉を再び圧迫する。
陽菜は眉をひそめて困ったように我聞に目を向けるが、
紅潮したままのその顔に浮かぶ羞恥や困惑の表情もまた嗜虐欲をそそり、
ソレはより一層、硬さを増すばかり。

「わ、悪い、その・・・國生さんが、あんまり可愛かったものだから、つい・・・」
「え・・・! そ、そんな、こと・・・」

我聞はさもきまりが悪そうに陽菜から目を逸らすが、
それでも中に入りっぱなしにしているソレを引き抜こうとはしないあたりに、
彼の欲求は言葉にせずとも陽菜に伝わっている。
だが、陽菜は陽菜で眉をひそめてこそいるが、隠し切れない期待の表情や、
服越しに伝わる高鳴る胸の鼓動が、彼女の気持ちを我聞に教えてしまう。

「ね・・・國生さん・・・まだ、時間あるかな?」
「あ、はい、少々お待ちください、確認しますから・・・」

我聞と握り合っていた手を離すと、制服を探って携帯を取り出し、時間を確認する。
16時20分・・・あまり時間がある、とは言えないが・・・

「少々でしたら・・・帰途を少し急ぐことになりますが、それでもよろしければ、その・・・もう少しは・・・」
「そうか・・・じゃあ、手早く終わらせなくっちゃね・・・ちょっと、激しくするよ・・・」
「は・・・い」

二人とも敢えて“何を”とは言わないが、今更言うまでも無く互いに分かりきっている。
我聞が既に硬くなっている自分のモノを一旦引き抜くと陽菜の身体がびくんと震える。

「んうっ! ・・・ぁ・・・あ、垂れ・・・ちゃう・・・」

栓がなくなった陽菜の秘所から、彼女自身の蜜と我聞の白濁とが混ざり泡だった液体がこぼれ出し、
彼女の太腿やスカート、そしてマットを汚す。
我聞がもう一方の握り合っていた手も離して体勢を変える間、
陽菜は彼の“激しく”という言葉に期待してしまっていることを隠そうと黙って身体を預けるが、
いきなり片足を高々と抱えあげられて、仰向けだった身体を横にされて、
更に下になった脚を我聞にまたがれて、
要するに彼の前で思い切り脚を開いた体勢を取らされて・・・

「や・・・! しゃちょっ、こんな格好、はずかし・・・ぃひぁあっ!?」

思わず陽菜は恥ずかしさのあまりに思わず声を上げるが、
言おうとした言葉を全て口にする前に彼女の発する声は無理矢理に、嬌声に変えられてしまう。
―――再び陽菜の中に侵入してきた、我聞の肉槍によって。

「や、しゃ・・・まって・・・やぁあ! こんな、脚、ひらいちゃ、恥ずか・・・っひぁあ! しゃちょおっ!」

陽菜の大きく開かれた脚の間に互い違いになるように我聞の脚が割り込んで、
深く腰を密着させて交わる形―――側位、もしくは松葉崩しの体位。
45499 11/16:2006/03/19(日) 00:20:15 ID:8ysJdRQW

「恥ずかしい、かな・・・?
 でも、これなら奥まで届くから、あまり時間無くても國生さん、気持ちよくなれると思う・・・」
「そ・・・んなっ! さっきまででも、っくぁあ! ちゃんとっ! おく・・・まで、とどいてぇ・・・
 あ! や、ふぁあああ! だめぇ! これっ! ふか・・・っ、すぎ、て、あ! らめ! んぁああああ!」

二人分の体液でどろどろに濡れた陽菜の蜜壷は酷く滑らかに我聞の肉茎を呑み込み、絡みつく。
互いの脚を割り開いて性器を交えているので、
我聞が思う様に腰を動かしても脚がつっかえたりせず、いきり立ったモノは根元まで陽菜の中に突き刺さり、
それだけ深く強く、彼女を責め立てる。

「っひゃああ! だめ、おくっ! とどいてぇ、あた・・・ってぇえ!
 ぁああっ、だめ、つよっ! はげしっ・・・すぎますっ! こんなの、だめ・・・えぐれちゃ・・・あぁああっ!」

我聞のモノがコツ、コツと子宮口をノックするように当たるだけでも、
身体の芯から痺れさせる刺激に陽菜は悶え乱れていた。
それが今の体位だと腰を突き込まれる度に肉槍の穂先が一番奥にごつ、ごつと叩きつけられるようで、
身体の燻りが治まりきっていなかった陽菜がこの刺激に耐えられるはずも無く・・・

「っひくっ! もう、もうらめ、ひぁああ! しゃちょ・・・おくっ、ごつごつって・・・! あたってっ!
 こんな、わた・・・しっ、こわれちゃああっ! らめ、しゃちょ、すぐ、イっちゃ・・・! イっ、ああああっ!」

陽菜に三度目の絶頂を迎えさせながら、
相変わらず絡みつくような中の感触とびくびくと震え締め付けてくる刺激に我聞も射精感を高めてゆく。
だが、官能の炎で身体が燻り出すと何度でも繰り返し達してしまう陽菜と違って、
我聞は―――というより男性は一度達してしまうと、充填無しに連続で、という訳には行かない。
そんな男女の生理機能の違いというか、我聞と陽菜のイきやすさの違いというか・・・
そんな二人が交わりあう以上、結局はいつも通りの構図に落ち着いてしまう。
・・・陽菜が繰り返し絶頂を迎えさせられながら、我聞に責め続けられる展開に。

「國・・・生さん・・・っ! スマン、俺・・・まだっ!」
「ひう・・・っ! あ、また! らめ、しゃちょ・・・っ、またイく! すぐっ、またイっちゃいますっ!
 こわれ・・・ちゃいます・・・っ! しゃちょおおっ!」

悲鳴にも泣き声にも聞こえるような、それでいて明らかに喜悦の響きが混ざった声で、
陽菜はあられもなく喘ぎ、乱れ、悶え続ける。
強烈すぎる快楽は身体中をめちゃくちゃに痙攣させ呼吸すらままならなくなって、
酷く消耗するし辛くないと言えば嘘になる。
だが、それでも我聞にされていると思うと・・・陽菜の心は蕩けてしまう。
我聞に身体を貪られ、奥の奥まで突き貫かれ、何度も何度も絶頂させられてしまうことに、
被虐的な悦びを感じてしまう自分が居ることを知っていた。

「ひゃあぁ・・・だめ、・・・っはぁああっ! ああっ! しゃちょおっ、はげし・・・ふわぁああっ!」

涙をぽろぽろ流して泣き喚くように悶えながら、
我聞から与えられる強烈な快楽と、彼に身体を蹂躙されているという事実に、陽菜は酔い痴れる。

「しゃちょっ、ひゃ、あふ! わた・・・とけちゃ・・・っ! もう、こわれちゃっぁああ! しゃちょおっ!」

我聞の名を何度も叫びながら、陽菜は再び絶頂の高みへと登り詰める。
達する度に呂律は乱れ、涙ぐんで快楽で虚ろに濁った目は時にきつく閉じられ、時に大きく見開かれ、
陽菜がいかに悦楽に翻弄されているかを如実に示している。
その姿が我聞の嗜虐欲を逆撫でして、更に陽菜を突いて突いて突き上げて、
身も心もぐずぐずに蕩けさせてしまいたくなる。
だが、それ以上に・・・こうして自分の手によって乱れ悶え、涙を流して悦び喘ぐ陽菜は、
どうしようもなく可愛くて、愛しくて・・・我聞は思わず・・・

「んぁあああっ! もうらめ、だめぇええっ! え、えぁあ!? しゃちょ、な、え!? わ・・・きゃあ!」
46499 12/16:2006/03/19(日) 00:21:41 ID:8ysJdRQW

ずん! と腰を突き入れておいて、がくがくと揺れる陽菜の腰に腕を回すと、
繋がったままの彼女の細身を抱え込んで立ち上がる。
ただでさえ絶頂に次ぐ絶頂で平衡感覚が欠落気味なところに、更に不安定な体勢を取らされたものだから、
陽菜は必死に手を伸ばして我聞の身体にしがみつく。
その体勢で我聞は一歩、二歩と歩き出し、
振動が我聞のモノを通して先程とは違う刺激となって陽菜を責め苛む。

「や! しゃちょ!? んぁああっ! やあっ! こんな、格好・・・あるいちゃっ! ひびい・・・てぇえっ!」

陽菜を抱えたまま、俗に言う“駅弁”のような体勢で我聞は倉庫の中を歩く。
スカートに隠れた二人の結合部から、蜜と精の混合液が滴り落ちて床に点々と跡を残すが、
二人ともそんなことを気にはしない・・・いや、そもそも気付きもしない。

「っやぁあ! こんなの、やですっ! だめ・・・っひぅ! はずか・・・し・・・っ、しゃちょ、やぁあああ!」

我聞が歩く間、陽菜は奥まで突き上げられることこそなかったものの、
一歩踏み出される度に響いてくる振動だけで過敏になった身体はびくびくと震え、
今までで一番恥ずかしい格好をさせられていることに混乱し、それ以上に興奮してしまう。
やがて我聞の歩が止まり振動が来なくなると、陽菜は意識にかかった甘ったるい靄が僅かに晴れるのを感じる。
そして自分の身体が再び降りてゆくのを感じ、
思ったよりずっと高い位置で背中に何かが触れるのを感じる。

「っふぁ・・・ぅ・・・しゃ・・・ちょお・・・?」
「國生さん・・・」

陽菜をマットから抱え上げて数歩移動すると、彼女を低く重ねられた跳び箱の上に降ろし、仰向けに横たえる。
我聞自身は中腰で立ったまま、繋がったまま、跳び箱の上の陽菜に覆い被さり、ぎゅ、と抱き締める。
自然と二人の顔は間近で向き合うようになり、更に顔を寄せると陽菜に小声で囁く。

「すまん、國生さん・・・もうちょっとだから、あと少しだから・・・辛いかもしれないが・・・」

申し訳無さそうに話しながら、我聞の表情には隠し切れない、抑えきれない興奮の色が見え隠れする。
陽菜にもそれは分かるが、それでも・・・

「平気、です・・・社長・・・思うように・・・したいように、なさってください・・・」

多少乱暴でも強引でも、我聞の思うままにされることが気持ちよくてたまらないから。
こうして思いやってくれるだけで、嬉しいから。
それに、今は・・・顔を見合わせて、抱き合っていられるから。

「じゃあ・・・続き、するよ・・・」
「はい・・・きて、くださ・・・んん・・・っ、む・・・んんん!」

そのまま陽菜と唇を重ね、舌を絡めながら、再び腰を動かし始める。
この体位では先程のように陽菜の奥深くまで突き入れることは出来ないが、
その分速く、激しく・・・陽菜の中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜる。

「んむ・・・っ! っふ、んぅ! んんん! ん・・・ふはっ! あは・・・あぁあっ! っんぶ!」

ちゅ・・・ぷちゅ、んちゅ・・・むぷ、ちゅく・・・
密室の二人は誰憚ること無く卑猥な音を立てて唇を吸い合い、執拗に舌を絡めあう。
その間も我聞の腰は片時も休むこと無く、浅ましいくらいに激しく動き、
陽菜を載せた跳び箱がゴトゴトと音を立てて揺れる。
半端な高さの跳び箱に横たえられた陽菜の脚は床に届かず、はじめ不安げに宙をさ迷ったが、
今はしっかりと我聞の腰に絡み付いて、決して離すまいとするかのように締め付ける。
身体の外ではきつく抱き合い唇を貪り、内からは激しく突き上げられ、身体中で我聞を感じすぎて、
陽菜はもう自分が今イっているのかそうでないのか、よくわからなかった。
ただひたすらに突かれ、擦られ、掻き回されて、陽菜の身も心も淫悦の淵に溶け堕ちてゆく。
47499 13/16:2006/03/19(日) 00:23:01 ID:8ysJdRQW

そしてそれは我聞も同じ。
陽菜の秘肉はとろとろに熱く、激しく出入りを繰り返す肉の杭を絡めとるかのように包み込み、
彼女の身体と同じでびくびくと震えるように、埋め込まれたモノを小刻に締め付ける。
そんな感触を貪るように、ひたすらに陽菜の身体に肉杭を打ち込み続け、
我聞は再び弾ける寸前まで昂ってゆく。

「っふ・・・國生さん・・・もう・・・出そうだ・・・っ」

顔を上げてそれだけ言うと、これで最後とばかりに腰の動きを加速させる。
唇を塞ぐものが失われ、陽菜の口からは蕩けきった喘ぎが漏れ出す。

「あ・・・っふぁ! しゃちょ・・・わたし・・・もうっ・・・! とけちゃう・・・ぅ」

何度も絶頂を迎え、陽菜の意識は靄がかかったように朦朧として、声を上げることすらままならない。
先程までのような甲高い喘ぎ声を上げることは無く、
ただ途切れ途切れに、感極まったようなかすれた声を洩らすだけ。
そんな弱々しくて、それでいて熱に浮かされたように火照りきった表情を浮かべる陽菜と、
もう一度共に果てるべく我聞は更に激しく彼女の中に破裂寸前のモノをえぐり込み、掻き回し・・・

「っく! 國・・・生さんっ! イくよ・・・!」
「は・・・ひ・・・っ、きて・・・くださ・・・いっ・・・きて・・・だして・・・ぇ」

やがて限界を迎えた我聞は、陽菜の奥深くまで熱しきった砲身を突き込み、
強く抱き締めてくる愛しい少女を自分からも力いっぱいに抱き締めて――――――

「國生さんっ! 出る・・・っく! 陽菜・・・陽菜あっ!」
「ふ・・・ぁ・・・しゃちょ・・・がも・・・ん・・・さん・・・がもん・・・さぁ・・・んんん―――っ!」

陽菜の身体の中で脈動する我聞のノズルからびゅく! どくん! と熱い精が放たれ、
射精した我聞と射精された陽菜は、同時に絶頂を迎える。

「――――――っ!」
「んっ! んぁああ! あぁあああ―――――っ!」

そして、我聞が射精を終えるまで二人はびくんびくんと震えながら、
終わらない快楽の荒波の中で固く抱きあっていた。

やがて、我聞が射精の余韻から醒めて改めて陽菜に顔を向けたとき、
陽菜は憔悴しきっていたが、それでもひと目でわかるくらいに―――
嬉しそうに微笑んで、我聞を見つめていた。
彼女の前で無防備な姿を晒していたことに気付いてきまり悪そうに照れ笑いを浮かべ、
最後にもう一度、陽菜の唇に軽く唇を重ねた。




48499 14/16:2006/03/19(日) 00:24:39 ID:8ysJdRQW


「お疲れ様ですっ!」
「遅くなりました!」

階段を駆け上がり、がらりと扉を開けて、我聞と陽菜が事務所に飛び込んでくる。
同時に事務所の時計が17時を指し、まさに遅刻ギリギリ、間一髪というタイミング。
そのまま後ろ手に扉を閉めて二人がはぁはぁと息を整えていると、

「おう、どうしたそんなに慌てて? まあいい、落ち着いたらこっちに座れ、また話がある」

すぐに呼吸を整えた我聞が声の方を見やると、
昨夕と同様、接待用のソファーに声の主である我也と、その隣に武文が腰掛け、
周囲を仲之井、辻原、優の三名が囲んで立っている。
昨日と違うのは、陽菜がこちらに・・・我聞の傍にいることだけ。
状況からして話とは恐らく昨日の続き、具体的な話が固まったといったところだろうか。
我聞はそのことで悩み苦しんでいた陽菜を支えると誓い、彼女に作り物でない笑顔を取り戻させた。
しかし、再びこの場面を迎えてしまうとやはり心配せずにはいられなくなり、
やっと息の整ってきた陽菜に気遣うような視線を送る。
我聞だけではない。
優達も同じように、陽菜を気にかけている。
そしてやっと落ち着いて顔を上げた陽菜は・・・

「すみません、お待たせしました。 さ、社長、先代がお待ちかねです、参りましょう」

普段どおりの口調で―――演技の気配を感じさせない、本当に普通の態度でそう言って、
我聞にだけ聞こえる声で

「社長と一緒なら、平気ですから」

短く付け加えて、頷いて見せた。
優や仲之井の少し意外そうな視線を受けながら二人は皆の輪に加わり、それぞれの父の対面に腰を下ろす。

「よし、では始めるぞ。
 まずは、昨日話した真芝潰しの旅のことだが、あれの正式な日付が決まったのでな・・・タケ、頼む」
「うむ。 私と我也による真芝残党壊滅作戦についてだが・・・
 出立は本日より丁度一週間後の早朝と決定した。
 帰還時期はやはり未定・・・情報収集および索敵と潜入、破壊もしくは捕縛の繰り返しになるので、
 詳しいことは現時点では何も言えないが・・・資料からの推測では2、3年を要するだろうと考えられる」

相変わらず事務的な口調で話す武文に、我聞も陽菜も口を挟むことなく、ただ頷いて聞いている。

「・・・この件については不確定要因が多すぎるのでな、今言えることは以上だ。 何か、質問は?」
「はい」

手を上げたのは、陽菜。
その表情も声も、父親同様にあくまで事務的なもの。
だが、娘が父へどんな質問をするのか・・・声にこそ出さないが、誰もが気を引かれているのは明らかだった。

「出立の日程についてはわかりました。
 それまでの一週間についてなのですが、お二人のスケジュールはどのようになっていますでしょうか?」
「ふむ・・・」

少しだけ質問の意味を考えるように首をかしげてから、
僅かに表情を緩めて、武文は答える。
49499 15/16:2006/03/19(日) 00:25:39 ID:8ysJdRQW

「内調との打ち合わせは本日で終了したので、私も我也も出張することは無い。
 あとは出立の準備と多少の引継ぎ事項の確認だな。
 それに個人的なことではあるが、肩の傷も出来るだけ治癒させておきたいのでな、
 残りの一週間は事務所か部屋にいることになると思うが・・・それでよいかな?」
「・・・はい!」

陽菜は、武文以上に感情を露わにして―――表情に喜色をうかべて、了解の意を示す。

―――旅立ちが避けられないことなら、せめてそれまでの一週間、一緒にいられる時間を大切に使いたい。

駆け足で学校から事務所へ向かう途上で、
息を切らせながら陽菜は我聞にそう言った。
昨日とは違う陽菜の態度―――現実を受け入れて、その上で前を見ようとする陽菜の気持ちの変化は、
それ以上言葉にせずとも武文に、そして皆にも伝わる。
皆がそれぞれに表情の片隅に浮かべていた心配そうな気配が消えてゆくのを感じて、
我聞はひとり、大きく頷いた。

その様子を黙って眺めていた我也が、隣にちら、と視線を送る。
武文が頷いて応えるのを確かめると、さて―――と口を開いて再び場を引き締める。

「・・・ま、そーいうワケでだ、今度の旅に出ちまうと、
 まず間違いなく前よりも長く社を空けちまうことになる。
 そこでもう一つの件なんだが、我聞、いいか? よ―――く聞いとけよ?」

ずい、と挑むように我也がテーブルに乗り出して、対面の我聞は思わず身構える。
周囲も、緊迫した雰囲気を感じ取って二人を見守る。

「こういつまでも代理が社長の椅子に座ってたんじゃ、工具楽屋も格好がつかん。
 そこで我聞・・・今日、今からお前を正式な工具楽屋社長に任命する」

我也がまだ緊張を解かないので誰も声を上げこそしないが、雰囲気がざわつく。
我聞や陽菜こそ我也を“先代”と呼んではいたが、
無言で工具楽屋を去った我也の代わりということで形式的に後継ぎに据えられた我聞と、戻ってきた我也と、
どちらを正式な社長とすべきか、皆がそれぞれに悩んでいたのだ。

「親父・・・」
「これでお前は正式に、第二十五代目工具楽屋社長ってワケだが・・・
 どうだ、仕事と社員と、全部まとめて引き受けられるか?」

にやり、と不敵に笑い、挑むような口調で我聞の顔を覗き込む。
だが、当の我也を含め、誰にとってもその答えは聞くまでもないもの。

「当然だ! 第二十五代目工具楽屋社長・工具楽我聞! この役目、見事果たしてみせる!」

間髪入れず、胸のすくような声で、皆が期待した通りの言葉を放つ。
その瞬間に、緊迫していた空気はついに弾け―――

「社長! おめでとうございます!」
「さすが我聞くんじゃああ!」
「お〜っ! 我聞くんカッコイイ〜!」
「ん、即答とはいい態度です。 期待してますよ?」

社員に好かれ、こうして素直に祝福される我聞の姿は、父として、先代として、
我也から見ても充分に社長の資質があると確信できるものだった。
更に・・・
50499 16/16 (了):2006/03/19(日) 00:28:20 ID:8ysJdRQW

「騒ぐのもいいが、しっかりやれよ? まあ、本当は出発まで様子を見るか、
 帰ってきてから引き継ごうかとも思っていたんだがな、
 生意気にきっちり社員のケアまでこなしてやがるようだからな、たった今決めさせてもらった。
 引き受けたからには、腹括って会社を守れよ?」

そう言って、陽菜の方をみてニヤリと笑う。
我也が何を指しているか理解して、陽菜は照れたように顔を赤くするが、
それが我也も意図しなかった別のトリガーを引いてしまい―――

「そういやはるるん、すっかり元気になっちゃってー!
 おねーさん心配してたんだからね!? でも二人とも、ほーんと信頼しあってるって感じだね!」
「うむ。 陽菜のことを我聞くんに頼んで正解だったようだな。 これからも娘を頼む」
「はっはっは、任せてください!」
「でも、学校でいったい何があったのかな〜? ちょーっと気になったりして〜♪」
「「え!?」」

流せばいいものを二人同時に固まるものだから、楽しげに盛り上がっていた雰囲気は突然、
妙な方向へ流れ出し・・・

「おや・・・ひょっとして、“何か”特別なコトでも、あったのかにゃ〜?」
「い、いやべつに何も!」
「そうですよ! ただ社長とお話しただけで・・・!」
「お話し、ねぇ・・・例えば、薄暗い体育倉庫とかで二人っきりで、しっぽりと、な〜んて・・・」
「な、なんでそれを!?」
「・・・え? ほ、ほんとにナニかあったり・・・?」
「しゃ、社長――――――!?」
「ほう・・・なァ我聞、そこんところ・・・ちょっと詳しく聞かせて貰おうか?」
「い、いやちがう! 倉庫の整理の当番で、そこで國生さんと話しながら―――って、痛ぇ! ひっぱるな!」
「・・・しっぽりと?」
「優さん! だからそれ違いますから! そんなことないですから―――!」
「ふむ・・・・・・」
「お父さんも変に本気そうな顔してないで、先代を止めて―――!」

当然ながら、そのあと仕事ができる状況に戻るはずも無く、
優の笑い声や陽菜の悲鳴や、我聞の狼狽した声や我也の怒号やらが響き渡り、
最終的に武文が我也を止めるまで、この混乱は続くのだった・・・


「・・・なぁ辻原くん・・・止めには入らんのかね?」
「はっはっは、私も重度の怪我人ですからね。
 社長と先代の争いに割って入ったら命が幾つあってもたりませんよ」
「うむ・・・一瞬、我聞くんがやけに頼り甲斐のある男に見えたのじゃが・・・錯覚じゃったのかのう」
「まあ、相変わらずまだまだ未熟ですが・・・それでこその我聞くんで、
 それでこその工具楽屋ってことで、いいんじゃないですか?」
「・・・まぁ、相変わらずということじゃな」


やれやれ、とため息を吐く仲之井の視線の先で、
我聞は陽菜と共に優にさんざんにおちょくられているのであった。
もちろん、このあと我也と武文の出立の日に更なる波乱が待ち受けていることを、
我聞も陽菜も、まだ知らない・・・





51499:2006/03/19(日) 00:35:16 ID:8ysJdRQW
以上で一連のお話は終了です。
投下間隔が非常に長くなってしまい、どんな話か忘れられていたらすみません。
それでも読んで下さった方、どうもありがとうございます。
また次に書くことがありましたら、どうか宜しくお願いします。

では、これにて失礼。
52名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 04:09:23 ID:nSDHEl7t
オッケイオッケイ低脳低脳!こんな深夜に俺の愚息がMAX膨脹いたしやがりましたよ。

あなたのドエロスでかつラブラブなSSはマジ好きだ。
53名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 10:14:15 ID:KVoje42e
はうぅ
甘いなぁ、暖かいなぁ、正直言って羨ましいなぁ
次も期待してます!
54名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 11:01:33 ID:idlrMFUl
499氏のSSにはお世話になりっぱなしです。
これからもよろしくお願いします。
55名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 06:39:50 ID:+uDf/lyP
GJ!低能あげぇっ!!
56名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 00:10:04 ID:dYSnoruY
いつもながら超低脳!
従順な國生さんもイイですなぁ。
汁多目な描写もステキ!
松葉崩しに駅弁…華奢な身体にあんなことを!

…興奮したんで、ころがってきます。



57松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/03/21(火) 10:19:36 ID:6mxeSNw0
『キミ ノ テ』、第二部です。
58 『キミ ノ テ』第ニ部 1/9 :2006/03/21(火) 10:20:35 ID:6mxeSNw0

お婆さまの手紙が届いてから、2週間が過ぎました。
あれから、試作品を元にいくつかのバリエーションを作り、一応ブランドとしての体裁を整える事は出来たと思います。
そして、今日という日がやってきました。
今日――それは、新しい十曲家の出発の日。
繊維工場の敷地内に構えた小さな店。ここが始まりの場所となるのです。
記念すべき日が雨なのはちょっと残念ですけど……それでも、今日が晴れの日なのは変わりありません。
さあ、頑張って行きましょう!

「……って、きゃっ!」

回想に没頭しすぎて、足元がおろそかになっていたようです。
うっかり裾を踏んでしまい、私はバランスを崩して転んでしまいました。

「いたた……」

久しぶりに着るとはいえ、こんなお約束な事をするなんて……
うう、なんてドジなんだろう、私。
バカで、しかもドジなんて、存在理由あるんでしょうか……
……っと、いけないいけない。暗くなっちゃダメです。
せっかくの晴れの日。辛気臭い顔をしていたら、台無しですから。

「千紘くーん、まだかーい?」
「あ、はい、今いきます!」

ドアの外からかけられる、催促の言葉。
私は急いで着替えると、最後の仕上げとして鏡の前で確認作業。
……よし。久しぶりですけど、上手く着れたようです。

「……うふふ」

なんとなく、鏡の前で一回転してみたり。
……って、こんな事している場合ではないのです。
早く店の準備をしないと。
慌ててドアを開けると、私は勢いよく廊下に飛び出しました。
……一応、弁解しておきますけど、ここって一番奥の部屋なんです。
私しか使っていない、というか、私の部屋なので当たり前なんですけど、私以外の人が来る事はほとんど無いのです。
なので、まさか人がいるなんて全くの想定外でして……

「ふみゅ!」

ドアの前に立っていた人物に、顔面から突っ込んでしまったのです。
……うう、思いっきり鼻ぶつけちゃいました……

「いたたた……」

け、けど、これは私のせいじゃないですよね……多分。
まあ、確認もしないで飛び出した私もちょっとは悪いかなって思いますけど……不可抗力です、うん。
というか……私は誰にぶつかったんでしょう?
そして私は痛む鼻を押さえながら、ゆっくりと視線を上げました。
そこに見えたのは、大柄な男性の姿。

「……大丈夫か、高瀬くん?」

そこにはスーツ姿の山岡さんが、いつものように無表情で立っていました。
59 『キミ ノ テ』第ニ部 2/9 :2006/03/21(火) 10:21:25 ID:6mxeSNw0

「山岡さん……? どうしたんですか、こんな所で?」

ちょっと赤くなった鼻をさすりながら、私は山岡さんへと問いかけました。
山岡さんの部屋はまったく逆の方向にあるので、ここに来たって事は何か用事があるんでしょうか?

「ああ、若様に高瀬くんを呼んできてくれと頼まれてな」

って、私の為ですか。
……すいません、とろくて……

「い、いや、別に高瀬くんが落ち込む必要はない。私も高瀬くんに用があったしな」
「用……ですか?」

はて? 私、何かしましたっけ?
最近はお皿も割ってませんし、塩と砂糖も間違えていませんし……

「用というか……これは私の興味なんだが……」

そう言いいながら、山岡さんは言い辛そうに私から視線を外しました。
表情は先ほどと変わりなく無表情なのですが、どこか躊躇っている雰囲気もします。
何なんでしょう? そんなに聞きにくい事なんでしょうか?

「あー、その、なんだ……高瀬くんは……若さまの事をどう思っているのかね?」
「……はい?」

どう思っている……えーと、どういう意味なんでしょう?

「若様の事は……天才だと思ってますけど?」

若様自身はご自分の事を天才と言わなくなりましたけど、それでも私は若様は本当の天才だと信じています。
……って、これが山岡さんの聞きたいことなんでしょうか?

「いや、そうではなくて……」

山岡さんは困ったように頭を抱えました。
……こんなリアクションを取る山岡さんを初めて見ました。

「えーと、その、つまりだ……使用人としてではなく……高瀬千紘という一人の女として、
十曲才蔵という一人の男をどう思っているか、という事なんだが……どう思っているのかね?」
60 『キミ ノ テ』第ニ部 3/9 :2006/03/21(火) 10:23:34 ID:6mxeSNw0
一人の女として。一人の男を。
高瀬千紘として。十曲才蔵を。

「な、何を言ってるんですか、山岡さん……」

そ、そんな事、考えた事も無いです。考えられないです。
私は若様にお仕えできれば、それでいいんです。
側にいられるだけで、十分なんです。

「わ、私は……」

そう、今のままでいいんです。
それ以上を望んじゃいけないんです。
私は……若様の使用人なんですから。

「わたし、は……」

――だけど、そう思う心とは裏腹に、私の口から言葉が紡がれる事はありませんでした。
いいはずなのに……十分なはずなのに……

「……高瀬くん?」

心配そうな山岡さんの声。
そして私は、ふと我に帰りました。
や、やだ、私は何を真面目に考えているんでしょう。
きっとこれは、山岡さんなりのジョークなんです。
だから、笑わないと……笑って、軽く受け流さないと……

「い、いやですよ、山岡さん……そ、そんな冗談をいきなり……」

震える唇から声を絞り出して、引きつる頬を吊り上げて、私は山岡さんに笑いかけました。
うまく笑えてないのは自分でも分かります。
それでも、私は笑わないといけないんです。
だって、私は……私は――

「……すまない。君を困らせるつもりはなかった」

ポン、と山岡さんは私の頭に手をおくと、優しい声音でそう呟きました。
その顔はいつもの様に無表情でしたけど……よく見ると、ちょっとだけ笑っているようにも見えました。

「時間を取らせてしまったな。早くいかないと若様が待ちくたびれてしまう」
「は、はい……じゃあ、山岡さんも一緒に……」
「それが、店の蛍光灯が切れてしまって……今から買いに行くから、店の準備は任せる」

そして山岡さんは、私の返事も聞かずにさっさと歩き出しました。
店とは反対方向に歩く山岡さん。
その後姿を見送る私。
……一体、山岡さんは何を言いたかったのでしょうか……
いまだにざわめく胸を押さえて、そう思ったその時。
山岡さんが急に立ち止まったのです。

「ああ、そうだ。これは言い忘れてたが……」

思わず、緊張する私。
そんな私には気付かずに、山岡さんは背中を見せたまま言葉を続けます。

「君は、君が思っている以上に魅力的な女性だ……もっと自信を持っていい」

そして山岡さんは、今度こそ立ち止まらずに、歩き去って行きました。
私の心に、新たなざわめきだけを残して……
61 『キミ ノ テ』第ニ部 4/9 :2006/03/21(火) 10:24:20 ID:6mxeSNw0

「すいません、遅れました!」

山岡さんと別れた後、しばらくその場に立ち竦んでいた私ですが、さすがにいつまでもそのままというわけにはいきません。
我に返った私は、急いで若様の下へと向かいました。
正直な話、あんな会話の後で若様と会うのは少しだけ躊躇いました。
今までのように若様に接する自信が無かったからです。
それでも、今日は新しい十曲家の出発の日。
こんな大事に日に、そんな事は言ってられません。
そして私は、若様が待つ部屋へ慌てて駆け込んだのです。

「遅れすぎだよ、千紘くん。もう、ほとんど準備は終わってしまったよ」
「す、すいません……」

若様はこちらに背中を向けたまま、お店の準備を続けながら私に言いました。
責めるような若様の台詞でしたが、その口調にそんな気配は無く、むしろ楽しんでいるような雰囲気さえありました。
実際、自分の店を持つことができて、すごく楽しいのでしょう。
チリ一つ落ちていない床に、くもり一つ無いガラス。そして、綺麗に並べられたディスプレイ。
これら全てを、お一人でしてしまわれる位なのですから。

「さて、これで全部かな……おや、その服は……」

手をパンパンと払いながら、若様はこちらへと振り向きました。
そして、私が着ている服に気付いたようです。
私が着ている服、それは……

「懐かしいな……あの時の着物だね」

若様は覚えてくれていました。
そう、これは若様が家を出た時に私が着ていた着物。
若様についていくと決めた時の、若様にずっとお仕えすると決めた時の着物です。
そう。私はあの時、若様にお仕えすると決めたのです。
だから……これ以上を望む事はありません。
若様の側で、若様が幸せになる事をお手伝いできれば、もう、これ以上は……

「千紘くん、ちょっといいかな」

若様の声に顔をあげると、目の前には若様の顔がありました。

「え、な、何ですか!?」

至近距離にある若様の顔に驚く私。
しかし若様は、そんな私にはお構いなく、どんどんと顔を近づけてきます。

『高瀬千紘という一人の女として、十曲才蔵という一人の男をどう思っているのか?』

ふと、山岡さんの言葉が私の脳裏に浮かびました。
な、なんで急に思い出すんですか、私!?
わ、私は若様の使用人です。そう決めたんです!
――だけど、そう思う私の心とは逆に、若様の顔はどんどんと近づいてきて、そして――
62 『キミ ノ テ』第ニ部 5/9 :2006/03/21(火) 10:25:06 ID:6mxeSNw0

「うん、これでいい」

……若様は私の襟元へと手を伸ばすと、裏返っていた襟を元へと戻しました。
多分、急いでここに来るために走った時に、裏返ってしまったのでしょう。
なんだ、そういう事だったんですね……

「ん、どうかしたかい? 顔が赤いけど……」
「な、なんでもないです!」

な、なんでがっかりしてるんですか、私は!
これ以上は望まないと思ったばかりなのに……

「それなら、いいが……そういえば、山岡くんはどうしたんだい? 姿が見えないが?」
「山岡さんなら、先ほど蛍光灯を買いに行くと出かけましたけど……」
「蛍光灯?」
「ええ、店の蛍光灯が切れたと言っていましたけど」
「? 変だな。その蛍光灯ならさっき、山岡くん自身が変えていたのだが」
「え……」

ど、どういう事なんでしょう。
つ、つまり、買いに行くというのは嘘だったんでしょうか?
だとしたら、なんで……
そ、それより、今更気付いたのですけど、この状況って、つまり……若様と二人っきりって事ですよね……

『君は、君が思っている以上に魅力的な女性だ……もっと自信を持っていい』

って、なんで、また思い出すんですか、私は!
き、きっとこれは、山岡さんがうっかりしていただけです! そうに決まってます!
だから……私が何か期待するような事はないんです。
あってはいけないんです。
私は使用人として若様にお仕えしているんです。
私は――使用人としてしか、若様のお側にいられないんです――
――若様と呼び続けることだけが、私がここにいていい理由なんです――
63 『キミ ノ テ』第ニ部 6/9 :2006/03/21(火) 10:28:15 ID:6mxeSNw0
「千紘くん?」

いきなりかけられた、若様の声。
私はびくりと身を震わせて、恐る恐る顔をあげました。

「どうかしたのかい? さっきから様子がおかしいが?」
「い、いえ、大丈夫です! ……そ、それより、お店の方はどうします? もう開けますか?」

内心の動揺を悟られぬように、私はできるだけ明るく若様へと問いかけました。
せっかくの晴れの日。こんな辛気臭い顔をしていたら台無しですから。

「ふむ……できれば山岡くんも一緒にいるときに開けたいな……それに……」
「……それに?」
「その前に、千紘くんに言っておきたい事もあるからね」
「私に?」

若様は急に真面目な顔になって、私をじっと見つめました。
な、なんでしょう? 私、なにかやっちゃったんでしょうか?
い、いえ、最近はお皿も割ってませんし、塩と砂糖も間違えていませんし……

「大事な事だからね、二人だけで話したいんだ」
「え……」

だ、大事な話って……も、もしかして……って、な、何期待してるんですか、私は!
そ、そんな訳ないじゃないですか……所詮、私は使用人なんです……
……だけど、もしかしたら――
深い諦めの感情と、淡い期待を胸に、私は若様の言葉を待ちました。

「まず、最初にお礼を言わせて貰うよ……今まで、ボクについて来てくれてありがとう」

いきなり、若様は私に向かって頭を下げたのです。

「君には本当に感謝している。復讐というボクの身勝手な行動に付き合ってくれたんだからね」
「や、やめてください! 頭を下げる必要なんてありません! 私が勝手についてきただけなんですから!」

私は驚いて、手をあたふたと振りながら、若様へと言いました。
だけど若様はその姿勢のまま、頭を上げようとはしませんでした。

「それでも、君の大切な時間をボクが無駄にしてしまった事には変わりは無い」
「む、無駄だなんて思ってません! 私は……私は、若様と一緒にいることが出来て、嬉しかったんですから!」

思わず叫んだ、その言葉。
そして若様はやっと頭を上げてくれました。

「……ありがとう、千紘くん。ボクも君といられて嬉しかった」

優しい笑顔と共に発せられた、その言葉。
……何故でしょう。
いつもなら、その笑顔を見るだけで幸せになれるのに、今はそんな気分になれません。
漠然とした、不安。
それが、私の心をかき乱すのです。

「しかし、いつまでも今のままというわけにもいかない。そこはきちんとケジメをつけるべきだ。
 君にだってやりたい事はあるはずだからね。だから……これからは君の好きなように生きるといい」
「好きな……ように……」
「そう。だから……」

そして若様は、言葉を選ぶように、ゆっくりと時間をかけて、一言、こう言いました。

「もう、『若様』と呼ばなくていい」
64 『キミ ノ テ』第ニ部 7/9 :2006/03/21(火) 10:29:04 ID:6mxeSNw0

『もう、『若様』と呼ばなくていい』

私は心の中で、その台詞を反芻しました。
その意味を理解するために……いえ、理解はしていたのです。
ただ、理解したくなかっただけ。
漠然としていた不安が、今、形を持って私の心に影を落としました。
私が今まで若様のお側にいれたのは、あくまで使用人として若様に雇っていて貰えたからです。
「若様」と呼び続ける事で、私は私の居場所を守り続けていたのです。
それなのに。

若様と呼ぶのをやめる。

それは、つまり、私がここにいる理由の全否定。
私の居場所がなくなる事を意味しているのです。

「え、あ、その……」

私は何かを言おうと、口を動かしました。
だけど、何も言葉が出てきません。
むしろ、私は何を言おうとしていたのでしょうか。
……分かっています……所詮、私は雇われの身。
雇い主に口答えをする権利など、あるはずも無いのです。

「……そ、そうですよね。これからの十曲家に私なんかがいても邪魔なだけですよね」

むしろ、こんな私を今まで使ってくれた事を嬉しく思います。
バカで、とりえも無く、可愛くもない私を使ってくれて、何より短い間だったとはいえ、若様のお手伝いが出来ました。
辛い事もあったけど、楽しい事もいっぱいありました。
少し泣いたりもしましたけど、それ以上に笑う事が出来ました。
十分じゃないですか。
使用人なのに、若様は私を大事に扱ってくれました。
使用人なのに、こんなに幸せでした。
まるで、使用人じゃない位に……十分幸せでした。
だから……せめて最後くらいは、使用人らしく終わらせます。

「今まで、ありがとうございました」

私は、若様に向かって頭を下げました。
今までの感謝を込めて、深く、しっかりと頭を下げました。
……そうしないと、零れた涙が若様に気付かれてしまうから。

「これからも頑張って下さいね、若様。私は……」

きっと、もう若様と合う事は無いでしょう。
私はこれ以上、若様の重荷にはなりたくないんです。
……だけど……これだけは許してください。
私は顔をあげると、自分ができる精一杯の笑顔と共に、言葉を紡ぎました。
従者としての、最後の言葉を。従者としての、最後の願いを。

「私は、若様の幸せをずっと祈っておりますから……」
65 『キミ ノ テ』第ニ部 8/9 :2006/03/21(火) 10:30:09 ID:6mxeSNw0

そして私は若様に背を向けると、一目散に走り出しました。

「千紘くん!」

背中にかけられる若様の声。
私はそれを無視して部屋を飛び出し、自分の部屋へと走りました。
……いえ、もうそこは私の部屋ではありません。
辞めてしまった以上、もうここに住む事は出来ないのです。
部屋に駆け込むと、私はそのままベッドへと倒れこみました。
枕に顔を埋めて、ため息を一つ。

「はぁ……」

……いつか、こうなる事は分かっていました。
私と若さまでは、生きていく場所が違うのです。
天才である若様は、常に上を目指して進んでいける人です。
どんな困難があっても、必ず乗り越えていける人です。
それに比べて私は、どんくさくて、にぶくて、どうしようもないバカです。
一人では何も出来なくて、誰かの側にいないと生きていけない、ダメな女です。
……そんな私が、若様と一緒にいられるわけが無いじゃないですか。
元々、私が無理を言って若様に付いてきたのです。
いつクビになっても、おかしくなかったのです。
それが、たまたま今日だっただけのことなんです。
……十曲家は、これからどんどん大きくなっていくでしょう。
若様の周りにも、沢山の人が集まってくるでしょう。
きっとその中に、若様にとって理想のパートナーがいるに違いありません。
私のように若様の足を引っ張ることの無い、完璧な女性が現れて、若様を支えてくれるでしょう。
いい事じゃないですか。
十曲家は繁栄し、若様も幸せになる。
それが五年後なのか、十年後なのかは分かりませんが、私以外の誰かが必ず若様を幸せにしてくれるでしょう。
私はそれを遠くからでも見る事が出来れば、十分です。
若様の幸せが、私の幸せなんですから。

「……ぅ」

それに、短い間とはいえ若様のお側にいれて、十曲家復興のお手伝いが出来た。
この思い出は、決して消える事はありません。
この思い出だけで、私はすでに……幸せなんです。

「……うぅ」

……幸せ……なんです……
……幸せな……はずなのに……

「うぅ、うぁ……ぐすっ……うわぁぁぁぁぁぁ!」

なのに……なんで……涙が止まらないの……
66 『キミ ノ テ』第ニ部 9/9 :2006/03/21(火) 10:32:31 ID:6mxeSNw0

若様と一緒にいた日々は。
楽しくて。
嬉しくて。
幸せでした。
若様の側にいれて、楽しくて。
若様と一緒にいれて、嬉しくて。
とても、とても幸せでした。
だから。
ずっと、側にいれたらいいと。
ずっと、こんな時が続けばいいと。
願っていました。
それがかなわぬ事だと分かっていても。
ずっと、願っていたんです。
それなのに。

『もう、『若様』と呼ばなくていい』

分かっていたのに。
かなわぬ事だと分かっていたはずなのに。

「いやだ……いやです……若様……若様ぁ……」

辞めたくない。
離れたくない。
一緒にいたい。
ずっと、一緒にいたい。
邪魔だと言われても。
いらないと言われても。
お側にいさせてください。
ずっと、お側にいたいんです。
だって。
私は。
若様の事が。
あなたの事が――


「……千紘くん……ちょっと、いいかい?」
67松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/03/21(火) 10:34:58 ID:6mxeSNw0
以上です。
次回で最後になります。

では。
68名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 20:24:03 ID:Tv8iYtJp
亀レスですが499氏、GJです!
いや〜居心地いいですね、このスレは。
本スレ=女性キャラ萌えスレや懐漫板、果てや先生のブログにしつこく
蔓延る池沼ホモ基地外のキモいホモ妄想なんか比べもんにならんくらい
このスレのSSは読後の満足感がある。
69名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:26:54 ID:hddIj+5i
>松雪氏
GJです!
若様が千尋くんにどんな言葉をかけるのか・・・続き楽しみにしてます!
70名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 06:43:13 ID:xvjxeK8a
GJ
GJGJ
GJGJGJ
71名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 10:27:59 ID:QVsLmTBL
おつ
72名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 21:50:56 ID:2gwdebta
>松雪氏
もう今から涙が出てきたぜ…!
切ないのにあったかくて、いいなあ本当。
GJ! 続き楽しみにしてます!
73名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 23:11:21 ID:Cgbw0Fy7
ほっす
74名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 20:05:12 ID:obdI//r3
更に保守

てか前スレまだ生きてるのね
75名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 00:37:47 ID:qnMEWXhw
32日記念パピコ
76名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 02:52:18 ID:I0Y7TfCW
ついでにあげ
77松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:13:53 ID:s6SjunVF
『キミ ノ テ』、ラストの第三部です。
78松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:14:44 ID:s6SjunVF
***

「私は、若様の幸せをずっと祈っておりますから……」

零れる涙を気にする素振りも見せずに、千紘は見とれるほど素敵な笑顔を浮かべ、言葉を紡ぐ。
そして、くるりと背を向けると、駆け足で部屋を出て行く。

「千紘くん!」

走り去っていく千紘に向けて、思わず才蔵は手を伸ばす。
だが、その動きが果たされる事はなく、中途半端に伸ばされた腕の先、ギュッと拳が作られただけだった。

「……何をしているんだ、ボクは」

――元々、自分から言い出したことじゃないか。
心の中で呟く、才蔵。
3年前、十曲家を出たあの日からずっと、千紘は側にいた。
時にはその要領の悪さから疎ましく感じることもあったが、何事にも真面目に取り組むその姿勢を才蔵は好いていた。
最初は、頑張ってくれているな、としか思わなかった。
やがて、何故そこまで頑張るのか、という疑問に変わった。
一度、才蔵は聞いてみたことがある。

『私はバカですから、頑張ることしかできないんです』

笑いながら、そう言ったのを覚えている。
自分の事をバカと言い張る千紘だが、そうではないと才蔵は分かっていた。
周りがよく見えている、と言うのだろうか。
ふと漏らす言葉は物事の核心を突いていることが多く、研究に行き詰った時など、千紘の何気ない一言で解決した事も少なくない。
何より――

『ダメです若様… そんな若様イヤです…
 若様はもっといつも自信たっぷりで、明るくて…』

涙に濡れた瞳を向けて、才蔵に言ったあの一言。
あれで、才蔵は大切な何かを思い出すことが出来た。
あの一言がなければ、才蔵はここにいなかっただろう。
感謝してもし足りないほどの借りが出来た。
才蔵はそう思った。
――そしてそれが、才蔵を苦しめる事になる。
自分が感謝しているのは、部下としての千紘なのか、それとも一人の女性としての千紘なのか。
真芝が壊滅してからしばらくたった頃に、才蔵は気付いてしまう。
部下として今までついてきてくれた千紘だが、いつの間にか自分が部下以上の存在として千紘を見ているという事に。
最初、それは漠然とした想いであった。
しかし、一緒にいるうちにその想いは大きくなり、そして才蔵は自覚する。

『自分は彼女の事を――』
79松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:15:42 ID:s6SjunVF

だが、自分の想いはそうだとしても、千紘の方はどうなのだろうか?
彼女が自分の側にいてくれるのは、自分に仕えているというそのことだけではないのか?
いつか、部下であることをやめて、自分の前からいなくなってしまうのではないか?

疑問は不安となり、才蔵の心に影を落とす。
しかし、それを表に出すことは無く、才蔵は十曲家の再興に力を注いでいく。
まるで、その想いをまぎらわせようとするかのように。
そして、十曲家を買い戻したその日。
元々、十曲家を奪い返すのが目的であり、千紘はその為についてきたのだ。
その目的がかなった今、千紘を縛るものは何も無い。
だから、千紘がもし部下を辞めたいと言うのであれば、才蔵はそれを受け入れるつもりだった。
……つもりだったのだが――

『で、そのデザイナーなんだが……千紘くん、やってくれないか?』

出た言葉は、彼女を縛る新たな鎖。
理由はあった。
彼女がデザインの勉強をしていたのは本当であり、人数が足りないのも本当だった。
しかし、本音は一つ。
彼女ともっと一緒にいたい。
そして、千紘はそれを受け入れ、その関係は続く事となる。
続く事にはなったが。
結局、部下とその主人という関係は変わっていない。
才蔵のジレンマは終わる事無く、むしろ彼女を縛る事を選択した自分を責める棘となる。
だから。
才蔵は決心する。
十曲家が完全に再興する日が来たら、彼女を縛るのはやめよう、と。
自分のわがままだというのは分かっていた。
自己満足だというのは分かっていた。
彼女がついてくる事を認めたのは自分。
ついてきて欲しいと願ったのも自分。
分かったいた。
彼女がそういう判断をするにせよ、自分は苦しむだろうと。
……それでいい。
これは罰なのだ。
彼女を縛り付けた罪と、自分の想いを偽った罪。
その罰なのだ。
どういう結果になるにせよ、自分はそれを受け入れよう――

『私は、若様の幸せをずっと祈っておりますから……』

かくして。
千紘は才蔵の元から去っていった。
――これでいいんだ。
才蔵は思う。
分かっていた。
分かっていたじゃないか。
こうなる事は。
こうなって苦しむ事は。
分かっていたんだ。
分かっていた――はずなのに。
なぜ、自分は――

「……泣いているのですか?」
80松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:16:43 ID:s6SjunVF

慌てて振り向いた、視線の先。

「泣いているのですか?」

店の入り口に、山岡がいつもの様に無表情で立っていた。

「……いや、目にゴミが入っただけさ」

才蔵は目を拳で拭うと、才蔵へと向き直る。
きっと、情けない顔をしているんだろうな。
そう思いながらも、それを気にする素振りも見せずに、気丈に言う。

「そうですか」

山岡も深く詮索するような事はせず、会話はそこで途切れた。

「……」
「……」

先に静寂を破ったのは山岡の方だった。

「若様」
「なんだい、山岡くん」

そして山岡は、世間話でもするかの様な気軽さで言葉を続ける。

「いきなりですが、この仕事を辞めようと思います」

その台詞を聞き、才蔵は目を見開いて山岡を見つめる。
山岡は無表情のまま、無感情に才蔵を見つめ返すのみ。

「……そうか」

しばらく山岡を見つめていた才蔵がぽつりと言葉を漏らす。

「千紘くんも、そして君もいなくなる、か……まあ、仕方ないか。
 元々、十曲家を復興するのが目的だったしね」

才蔵は視線を山岡から外すと、店内を見回すように首を巡らす。
先ほど、自分で行ったディスプレイがそこにあった。

「……なんでだろう。あれほど願っていた十曲家の復興なのに、今は全然嬉しくないんだ」

自嘲気味に呟く才蔵。

「何か、急にどうでもよくなってきたよ。
 あれほど願っていた十曲家の再興の日だというのに、もう何もかもどうでもよくなってきた」
81松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:17:35 ID:s6SjunVF

深いため息を吐くと、才蔵はゆっくりと目を閉じた。
まぶたの裏に見えるのは、今までの苦労の日々。
苦労ではあったが、幸せだったあの日々。
そしてその日々を一緒にすごした山岡の顔と……千紘の顔。
もう戻る事の無いあの日々と、あの笑顔。
本当に、自分は十曲家を再興したかったのか。
……最初はそのはずだった。
ならば、いつからなのか。
彼女と一緒にいたいと願いはじめたのは。
だが、その願いがかなう事はない。
これは自分が、そして彼女が決めた事なのだから。
後悔はない、とは言えない。
それでも、これが彼女にとっていいことなのだと思う。
それだけは、間違いない。
間違いないと……思いたかった。

「辞めてもよろしいでしょうか?」

目を開けると、そこにはやはり無表情な山岡の顔。
それはいつもと変わらない表情のはずだったが……なぜかその時は怒っているようにも見えた。

「ああ。君を縛るものは何も無い。好きなように生きるといい」

しかし才蔵はそれについて気にする素振りも無く、投げやりな口調で言葉を返す。
どうでもよくなっていた、というのは本当だった。
だがそれよりも、見られたくなかった。
情けない自分の姿を、もうこれ以上見られたくなかったのだ。
自分の想いを伝える勇気すらなく、信頼していた部下にも見捨てられた。
惨めだった。もうこれ以上、ここにいたくなかった。
いっそ、このまま消えてしまいたい。
そう思っていた。

「それでは、今ここから私はあなたの部下ではありません。
 ……一人の男として行動させていただきます」

念を押すかのように確認する山岡。
才蔵は怪訝に思い、視線をもう一度山岡へと向ける。

――それは、山岡の拳が才蔵の顔面にめり込むのと同じタイミングだった。
82松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:18:31 ID:s6SjunVF

綺麗にディスプレイされた内装を巻き込みながら、才蔵は地面を転がる。

「こんなものなのか! 私が仕えていた男は、こんなものだったのか!」

地面に這いつくばったまま、驚愕の表情で山岡を見上げる才蔵。
山岡は、今度ははっきりと分かるほど怒りのこもった目で才蔵を見下ろしながら、言葉を続ける。

「違うだろう! こんなものじゃないだろう! あなたは、十曲才蔵は、こんな男じゃないだろう!」

そして山岡は、倒れている才蔵の胸倉をつかむと、顔を覗きこむようにぐっと顔を近づける。

「私の知っている十曲才蔵という男は、自信家で、能天気で、そしてもっと強い男だった!
 どんな苦境でも決して諦めず、笑いながら乗り越える男だった!
 それがどうだ! 今のあなたはの姿はまるで屍だ!
 彼女の為と偽って自分の想いを伝える事もせずに諦め、あげくの果てには『どうでもいい』だと!
 私は、私と千紘くんはそんな『どうでもいい』事の為にあなたについてきたわけではない!」
「……山岡くん……」

掴んだ胸倉により一層の力を込めて、山岡は叫ぶ。

「私はあなただから、十曲才蔵だから今までついてきたんだ!
 あなたの部下としてではなく、一人の人間としてあなたについてきたんだ!」
 あなたの側にいたいと私が願って、ついてきたんだ!
 そしてそれは千紘くんも同じだ!
彼女は、彼女の意思で一緒にいたいと願い、あなたの側にいたんだ! そんな事も分からないのか!」
「千紘くんがボクと……一緒にいたい……」
「彼女はあなたの側でずっと答えを出していた! それにあなたが気付かなかっただけだ!  
 ……いや、あなたは気付いていたはずだ。だけどそれを認めるのが恐かった。そうだろう!」

投げかけられた、言葉。
それは先ほど殴られた以上の衝撃を持って、才蔵の心に叩きつけられる。
その通りだ、と才蔵は思う。
彼女の願いを、自分は気付いていた。
だけど、それを認めるのが恐かった。
それを認めてしまえば、自分の弱さに気付いてしまうから。
彼女を守っていると思っていた。
だけどそれは違った。
今ならはっきり分かる。

『守られていたのは、ボクだった』

認めたくなかった。
そんな弱さを、気付きたくなかった。
千紘くんに、そんな弱さを見せたくなかった。
頼れる上司でありたかった。
だから――
弱さを見せる前に、彼女を遠ざけた。
彼女を遠ざければ、弱さを見せる事も無い。
彼女の上司であり続ける事が出来る、と。
――それなのに。
彼女に、そんな事は関係なかったんだ。
彼女は、ずっと守ってくれていた。
部下としてではなく。高瀬千紘として。
上司ではなく。十曲才蔵を。
守ってくれていたんだ。
83松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:19:33 ID:s6SjunVF

だが――

「遅すぎた、か……」

悲しい笑みと共に、自嘲気味に呟く。
彼女はもう去ってしまった。自分が遠ざけてしまった。
もう、彼女の笑顔は戻ってこない――

「遅いわけがあるか!」

才蔵の呟きに答えたのは、もう一人の部下だった。
掴んだ胸倉に力を入れて、才蔵を立ち上がらせる。

「彼女はまだここにいる!
 少し走れば、少し手を伸ばせば、まだ捕まえられる距離にいる!
 だとしたら! あなたのやる事は決まっているだろう!」
 本当に彼女の事を想っているのなら! 本当に彼女の事を好きなのなら! 本当に彼女の事を愛しているのなら!」

そして山岡は才蔵から手を離した。
優しい笑みを浮かべ、そっと才蔵の胸を押す。

「……行きなさい。まだ、間に合うのだから」

呆然とした表情で山岡を見詰める、才蔵。
しかし、それは一瞬の事。
才蔵の目に力が戻り、きっと口元を引き締める。
そして、ドアめがけて走り出す。
ドアノブに手をかけて――そこで才蔵の動きが止まる。

「山岡くん」

背中を向けたまま、才蔵は山岡へと問いかける。

「なんです?」
「先ほど、この仕事を辞めるといったが……今もその気持ちは変わらないかい?」
「……はい。しばらく、ゆっくりしてから、次の仕事を探すつもりです」
「……もし、戻ってほしいと僕が言ったら?」
「……そうですね……」

そこで山岡は、考えるように言葉を止める。
だが、これは演技。
才蔵がこの質問をした瞬間、答えはすでにあった。

「十曲家が世界的企業になったら考えます」

その言葉を聴いて、才蔵が振り返る。
振り返った才蔵の表情。それは、いつも山岡が見ていた表情だった。
どんな苦境でも絶やす事の無い、自信満々のその笑顔。

「ならば、次の仕事は見つける必要は無いね……すぐにそうなるのだから」

そして才蔵はドアを開けた。
前だけを見つめ、二度と振り返ることなく、走り出す。

――もう迷わない。

背中が語っていた。
84松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:20:23 ID:s6SjunVF
***

才蔵が出て行ったドアの先を見つめ、山岡は小さなため息を吐く。
そして、先ほど才蔵を殴った自分の拳に視線を落とし、じっと見つめる。
すでに部下では無かったとはいえ、それまで上司だった男を殴ったのだ。
どんな謗りでも受け入れるつもりだった。
それがどうだ。

『……もし、戻ってほしいと僕が言ったら?』

自分を殴った部下に対して、戻ってほしいと言ったのだ。
――もう大丈夫だ。
山岡は思う。
――それでこそ私が仕えていた男だ。
山岡は思う。
――あの二人は、もう大丈夫だ。
山岡は確信する。
そして山岡は胸ポケットから、古びたロケットを取り出す。
ぼろぼろになった蓋をあけると、そこにはやはりぼろぼろになった写真。
それは、笑みを浮かべた女性の写真だった。
ボロボロでも、色あせる事の無い、優しい笑みを浮かべた、女性の写真。
それは、才蔵にも、千紘にも見せた事の無い、山岡の過去だった。

「大丈夫だ」

写真に向かって呟く山岡。

「私達は一緒になれなかったが……あの二人なら、きっと幸せになれる」

写真の女性と同じ笑みを浮かべながら、山岡はもう一度呟く。
しばらくそうしていた山岡だったが、ふとある事を思い出す。

――そういえば、しばらく帰ってなかったな。

山岡が十曲家に使えるまで住んでいた、彼女と一緒に住んでいた、あの家。
住む人がいなくなってボロボロになっているだろうが、雨露がしのげればそれでいい。
きっと、すぐにあの二人が迎えに来るのだから。
そして山岡は歩き出す。

――しばらくは、過去に浸るのも悪くないだろう。

握ったロケットを握り締めて、山岡は歩き出す。


山岡が、二人と再会するのは、それから二年後の事。
正確には、二人との再会と、二人に似た小さな一人との初対面となる。
85松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:21:23 ID:s6SjunVF
***

「……千紘くん……ちょっと、いいかな?」

控えめなノックと共に聞こえてきたのは、聞きなれた声でした。
それは、私が一番聞きたかった声。
でも、一番聞きたくなかった声。

「……っ」

思わず、泣いていた事がばれないように涙を手の甲で拭いました。
……よく考えてみたら、ドアで見えないので意味は無いのですけど。

「な、なんでしょう?」

震える声で、私は問いかけます。
そして一つの事実を思い出します。

「あ、す、すいません! すぐに荷物まとめますから!」

そうです。ここはもう、私の部屋ではないのです。
早く出て行かないと、迷惑ですよね……

「別に、早く出て行けと言いに来たわけじゃないよ」
「へ?」

だけど、苦笑と共に返ってきた言葉は、私の予想とは違いました。

「……最後に、話をしたいと思ってね」

最後に、という部分にアクセントを置いて、若様は私の返事も待たずに話し始めます。

「早いものだね、あれからもう3年もたつのだから」

3年前……それは、若様が十曲家を出た日。
私が若様に付いて行くと決めた、あの日。

「……今だから言えるけど、あの時は恐かったんだよ」
「真芝に乗り込む事が、ですか?」

その告白に、私は驚いて聞き返しました。
真芝にいた時に、そんな素振りを見せた事は無かったのですから。

「いや、そうじゃない……恐かったのは、君たちの事だ」
「わ、私達がですか!?」

そ、そんな若様を恐がらせるような事は……

「も、もしかして、料理に入れる砂糖と塩を間違えた事ですか!?
 それとも、食器洗い機を爆発させて、お皿を全滅させた事とか!?」
「……調味料を間違えただけで、料理が兵器になるのをあの時、初めて知ったよ。
 食器洗い機の事件にしても、はじけた食器が部屋を一つ壊滅させたしね。
 みんな無事だったのが今でも信じられない……って、それは違う……いや、違わなくも無いけど、それとは別のことさ」
「別の事、ですか?」
「そう……君たちを……千尋くんを守る事ができるのか? それが恐かった」
86松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:22:20 ID:s6SjunVF

若様はそこで、ドア越しに聞こえるほどのため息をつきました。
少しだけ間を取り、躊躇いがちに言葉を紡ぎます。

「ボクだけなら、何とかする自信はあった。
 だけど、君たちも一緒に守れるかと考えた時、ボクにはその自信がなかったんだ。
 ……本当はあの時、迷っていたんだ。君たちを連れてきてもいいのかどうか」
「……お邪魔でしたか?」

胸の前でギュッと手を組み、私は若様へと問いかけました。
まったく、知りませんでした。
若様がそんな事を思っていたなんて……

「……そう思った事が無いと言えば、嘘になる。でも、それも最初の頃に少し思った位さ。
 一緒にいるうちに、君がいてくれて良かったと思う事のほうが多くなっていった。
 ……だけど、そう思えばそう思うほど、恐さも大きくなっていった」
「若様……」
「当たり前だと思っていたものが失われる恐さは、よく分かっていたからね。
 思えば、あの頃は必死だったよ。十曲家の再興の事だけでなく、君たちの事でも頭がいっぱいだった。
 部下を守るのは上司の務めだと、ずっと思っていたんだ。
 君たちを守れるのはボクしかいない、と本気で思っていたんだ。
 ……なんて傲慢なんだろう。そんな訳は無いのに。ボクだけが君たちを守っていたわけでは無いのに……」
「ご、傲慢だなんて、そんな! 実際、若様は私たちの事を守ってくれていたじゃないですか!」

そうです。若様は何度も私を助けてくれました。
失敗したら、すぐにフォローしてくれました。
ドジをしたら、笑いながら手伝ってくれました。
転んだら、手を差し出してくれました。
そんな若様が傲慢だなんて、あるわけが無いです!!

「……ありがとう。そう言ってもらえると、少しは救われる……いや、ボクは今まで何度も救われてきたね」
「え……」

ドアの向こうで、若様が苦笑しているのが気配で分かりました。
私、若様を救うような事なんて、何も……

「君のその何気ない一言で、ボクは何度も救われてきたんだ……ボクの方こそ君に守られていたんだ。
 ……それに気付いたのは、ついさっきだけどね」
「私が若様を……守っていた……」
「そう。ボクが守っているだけじゃなかった。ボクだって守られていた。
 ……そんな当たり前の事に、やっと気付いたんだ。
 完璧な人間なんていない。弱いのはあたりまえなんだ。
 そして、弱いからこそ、人は支えあって生きていける……」

若様の台詞はそこで途切れました。
次の台詞が出てくるまでの逡巡の時を、私は静かに待ちます。
きっとこれは、すごく大事な事なのです。
若様が自らの弱さを認めてまで、私に何かを伝えようとしているのですから。

「ボクはさっき、君に自由に生きろと言った。その言葉を撤回するつもりは無い。
 君にやりたい事があるのなら、ボクはそれを応援するつもりだ。
 ……だけど……もし……君にその意思があるのならば……」

そして若様は、ドア越しでもはっきりと聞こえる声で言葉を紡ぎました。
私に向けて。その想いを絞り出すかのように。

「ボクの側にいて欲しい」
87松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:23:11 ID:s6SjunVF

「ボクの側にいて欲しい。
 部下とか上司とかではなく、一人の人間として、ボクの側にいて欲しいんだ。
 ボクは全力で君を守ると誓う。
 だから……これからもボクを守ってくれないか?」

ドアの外からかけられたその言葉。
それは、私が願っていた言葉。
願いつつも、叶わないと諦めていた、その言葉。
出来るのならば、今すぐにドアを開けて、若様に会いたい。
会って、その胸に飛び込みたい。
……だけど――

「わ、私なんかでいいんですか?」

嬉しくないわけじゃないんです。
嬉しくないわけがありません。
だけど、込みあがってくる嬉しさと同時に、不安も大きくなっていくのです。

『自分なんかが若様の側にいていいのか』

その想いが、私の心にブレーキをかけるのです。
……きっと私よりもお似合いの人が――

「君じゃなきゃダメなんだ。君じゃなきゃイヤなんだ」

そんな私の葛藤を吹き飛ばすかの様に、若様は言い切りました。
真面目な声で、本気の声で、言い切ったのです。

「で、でも、私ドジですから、絶対に若様にご迷惑おかけしますよ」
「そんな事を気にする必要は無いよ。ボクだって君に迷惑かける気満々だから」

―― ――

「ま、また塩と砂糖を間違えたりしますよ」
「あれはあれで味わいがあっていいじゃないか……いや、狙ってやられるのは勘弁してもらいたいけど」

――いつの間にか――

「お、お皿とか、もうすごい数割っちゃいますよ」
「だったら、割れないお皿を買えばいい。あ、食器洗い機は使わない方向で」

――私の心の中にあった――

「わ、私、可愛くないですよ」
「千紘君は可愛いよ。可愛くないわけが無いじゃないか」

――不安は消えていき――

「え、えーと、私……私……」

――そして残るのは――

「私……若様のお側にいていいんですか」
88松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:24:01 ID:s6SjunVF

震える手でドアを開けました。
涙に濡れた瞳で若様を見ました。
ぼやけた視界の中でも、若様の笑顔ははっきりと私に向けられていて――

「勿論さ」

そして、私へと差し出された手。
私はその手を――

「と、その前に」
「……はい?」
「さっき言ったよね……もう若様と呼ばなくていい、と」
「あ……」

若様の言わんとしている事に、私は気付きました。
だけど、その……いいんでしょうか?
ちらりと若様に視線を移すと、若様はやっぱり笑顔で……

「さ、才蔵……さん」
「はい、千紘くん」

そして、私へと差し出された手。
私は差し出されたその手を、今度こそしっかりと掴みました。
今まで私を守ってくれた、その強い手を。
今まで私が守ってきた、その優しい手を。
もう二度と離れないように。
もう二度と離さないように。

「ふ、ふつつかものですが、よろしくお願いします!」
「うん、今度は間違えなかったね、千紘くん」

幸せそうに輝くその笑顔と共に……私は生きていきます。
89松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:24:47 ID:s6SjunVF
***

某月某日 天気:雨……じゃなくて、晴れ。きっと、ずっと、晴れ

やっと、この日が来ました。
思えば、若様が家を出てから、もう4年が過ぎているのですね。
長いような、短いような、この4年間。
嫌な事や、辛い事も沢山ありました。
だけどその日々も、今日のためだと思えば無駄ではなかったのだと思います。
繊維工業の老舗、十曲家。
今日ここに、再出発することになりました。

残念な事に山岡さんは辞めてしまったけれど、きっとすぐに戻って来る事でしょう……絶対に戻らせてみせます。

これから、沢山の辛い事があるでしょう。
泣きたくなる様な、逃げ出したくなる様な事もあるでしょう。

でも、大丈夫。
才蔵さんと一緒なら、絶対に大丈夫。
才蔵さんは必ず私を守ってくれます。
私も才蔵さんを守ります。
私は才蔵さんと共に生きていきます。

今日から――十曲千紘として、私は生きていきます。
90松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:26:10 ID:s6SjunVF
***

――ニ年後

日課となっていた畑仕事から帰ってきた山岡は、ポストに何かが入っている事に気付いた。
朝に見たときには何も入っていなかった。という事は、届いたのはついさっきということになる。
元々、この場所は山深い所にあり、郵便物が届いた時など無かった。
それどころか、郵便局がここの住所を知っているかどうかすらも怪しい。
……それでも、毎日チェックする事を忘れ無い所が山岡らしいのだが。

「……ふむ」

訝しげに思いながら……それでもある種の確信めいた予感を持ちながら、山岡はポストの中へと手を伸ばす。
それは絵葉書だった。
表面に書かれた名前を見て、山岡は自分の確信が当たっていた事に満足げに頷く。
そして、裏返して写真へと視線を移す。
そこに移っていたのは、一組の男女の……いや、一組の男女と小さな新しい一人の姿。
病院のベッドの上だろうか。よく見知った女性がその赤子を抱いている。
女性は最後に見たときよりも、ずっと綺麗になっていた。髪を伸ばし、幸せそうに微笑んでいる。
そしてその隣で佇む、これまたよく見知った男性も幸せそうに微笑んでいる。こちらは髪を切り、前よりも精悍な印象だ。
二人は赤子を真ん中にして、仲睦まじく手を握りながらこちらに視線を向けている。
そして、その写真の下には男性の字で一言。

『迎えにいく』

先日、十曲ブランドの一つ『CHIHIRO』が世界的なデザイナーコンテストで大賞を取ったというのを聞いた。
今では、世界中から注目される会社になっているらしい。
……彼は約束を忘れていなかった。そして、それを実現させたのだ。

「……さすがです」

山岡は満足そうな笑顔で小さく呟くと、家へと足を向けた。
しばらく掃除らしい掃除をしていなかったので、庭も家の中も荒れ放題だ。
こんな状態で二人を……いや、三人を招き入れるのは失礼だろう。

「早く片付けないとな」

袖を捲くりながら、山岡は嬉しそうに呟く。
あの人は、一度決めた事は必ずやる人だ。そしてやる時の行動はかなり素早い。
山岡は、これからまたあの騒々しい日々が戻ってくる事を心の底から喜びながら、庭の手入れへと手を付け始めるのだった。
91松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/04/04(火) 01:27:42 ID:s6SjunVF
以上です。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。


……名前欄をずっと間違えて投下してたの今気付いたよ……orz
92名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 07:49:48 ID:CmbfpRJO
!!!!!
GJ。・゚・(ノД`)・゚・。
93名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 23:04:09 ID:BiZxPMna
いいなぁ・・・GJですよ・・・
この二人も後日談とかなかったですからね、どうなっていくのか色々想像してましたけど、
やっぱり文章で読めると嬉しいものですわ〜。
大作お疲れ様でした、また書いて頂けるとありがたいです。
94名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 11:25:24 ID:qmslCDOs
…感無量。よくぞやってくれました。背筋ゾワゾワしてます。
ありがとう、松雪さん。
95名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 21:20:52 ID:wc4mtkIQ
すげえ・・・・・本出したら大ヒットしてもおかしくないぐらいすげえ・・・低脳な自分にゃあ言葉が出てこないほどすげえGJですね〜
96名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 02:04:24 ID:FqWke/zE
語彙が貧困な自分にはただ一言、こう言うしかない…

G J ! ! !
97名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 12:17:48 ID:O7wNPUF2
GJ!
もうこれしか言う事ない。

また何か書いてくれる事を願ってます。
98名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 12:41:14 ID:HmxELX6y
99名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:30:03 ID:BunTntlx
↑で、これは何?
100名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 09:05:33 ID:XvbX+bDp
>>99
次のスクールランブルのコミックの表紙
101名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 15:21:16 ID:3+ix8JBL
>99は何故これが貼られたのかを聞いているのでは?

…今は劇団さくら待ちか…
102名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 15:22:12 ID:3+ix8JBL
>99は何故これが貼られたのかを聞いているのでは?

…今は劇団さくら待ちか…
103名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 15:41:29 ID:hEBtX0ep
松雪さん、GJ!
このカップルの行く末が気になってた自分としては嬉しい限り。
…といいつつ二人の初夜を書いて欲しいとか思う自分に自己嫌悪。
104名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 16:10:54 ID:PbfLDmuh
花見で桜を見飽きたアナタにはコレ↓
あんちやふーで新しい刺激を探そう!
www.unti-yahoo.com/
105名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 21:19:50 ID:7eCmWy/V
「我聞君、はるるん、コーヒー入ったよ〜。
えーと、ミルクいる?」
「あ、ありがとうございます。
じゃあ私はミルク入りでお願いします」
「俺はミルク無し甘めで〜」
「りょーかいー」

『入れようかー?』でなく『入ったよー』と言うのがミソだ。
基本的にお人好しな我聞君と、経理として出来る限り無駄を減らしたい陽菜ちゃんはこう言えば断れない。
そして、二人がある程度コーヒーを飲んだのを確認すると私はさりげなく帰宅することを口にする。

「よし。粗方やったし、あたしそろそろ上がるね〜」
「ご苦労様ー」
「ご苦労様でした」
「うん。じゃーねー」

ぱたんと扉を閉め、誰も自分を見ていないことを確認すると私は一人ほくそ笑む。
巧く行った。
後は二人が大人の階段を上るのを部屋のモニターで眺めているだけだ。
そんな感じで自分の部屋に戻ろうとしていたところ、
♪〜
私の携帯が電話の受信を告げた。
辻原君からのようだ。

「はいもしもし〜?何かご用〜?」
「はい。実は早急に用意してほしい薬品がありまして」
「ん〜?辻原君は何をご所望かな〜?」
「ニトログリセリンを10sほど」

それを効いて私は吹き出しそうになってしまった。
ニトログリセリン、通称ニトロは大抵の人は名前を知っている割とポピュラーな薬品だ。
しかしその反面、試験管半分で軽く人の手を爆破できるほどの威力と、少しの衝撃でも発火すると言う厄介な性質を持ち合わせている。

「なんでそんな物を10sも・・・」
「いやー、本業入れれそうなんですけどどうしてもそれが必要なんですよー。
明日、朝一で一度取りに戻るので宜しくお願いします」
「はー。仕方ない。やったるか〜」

幸い、材料は部屋にあるから二人の様子を見ながら作ろ・・・

「頼みましたよ。
但し、危険な物ですから扱うときは集中してくださいよ?」
「わ、わかってるよ。何を言うかな辻原君はー」

しっかり釘を刺されてしまった。
仕方ない、後で録画したのを果歩りんと見るとして今日は作成に集中するとしよう。
106名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 21:24:48 ID:7eCmWy/V
5スレの最後辺りで書いてた物の続きにあたる物です。
脈絡無くてすいません。
話の内容は、5スレをご確認ください。
107名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 21:40:06 ID:0X5uCqqa
>>105-106
おー、待ってました!
この焦らされている感じがなんとも・・・

・・・早く続きを!
108名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 10:33:47 ID:SlETAs2p
|д`*)ハァハァ
109名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 13:18:57 ID:5FJmAZTu
>>101
こわしや我聞とスクールランブルは昔から縁がある漫画だから
110名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 08:01:34 ID:R2ZO7Lko
保守
111名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 14:16:43 ID:QoPkidXv
GJ
112名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 09:08:27 ID:oCI6foWN
・・・早く続きを!
1134スレ131:2006/04/14(金) 20:58:39 ID:kxptxJ+D
一ヶ月ぶりです
131です。
やっと纏まったので、続きを行きます。
1144スレ131:2006/04/14(金) 21:00:31 ID:kxptxJ+D
「・・・そうか。
ところで、お前や静馬の知り合いだって言うあの・・・」
「?。西遠寺さんか?いい人だろーあの人」
我聞は、中村が何について話そうとしているか全く気付いていない様子だった。
「佐々木がさ」
「?」
「佐々木が・・・今日風呂で二回、木から手滑らせて落ちただろ?」
「あーそうだったな〜。
佐々木も不注意だよな、二回も手滑らせるなんて」
――コイツは本当に知っているのだろうか?――
そんな疑問が頭をよぎる。
「・・・お前、気付かなかったのか?」
「何が?」
「俺は、見たんだよ」
「だから何を?」
「――あの人・・・西遠寺って人が、佐々木の掴んでいた枝を、手を触れずに動かすのを」
「なっ!?西遠寺さんがせんっっ」
そこで我聞は何かを言いかけ、慌てて口を噤む。
中村は確信する。
――我聞は、アレが何かを知っている――
「『せん』?
お前、アレが何か知ってるんだな?
教えてくれ、アレは何なんだ?あの人はどうやって木を動かしたんだ?」
厳しい追及に、我聞はたじろぎながらも、
「わ、悪いが、企業秘密だ・・・」
と、言葉を濁す。
しかし、その返答を受けても尚中村の問いは続く。
いや、むしろその言葉少ない返答の中から手がかりを見つけ、厳しくなる。
「企業秘密?企業秘密って事はおまえの仕事に関係あるんだな?
解体業とあの奇妙なことと。
・・・ひょっとして、お前もああ言うことが出来るのか?」
我聞は、どう答えるべきか解らず沈黙するのみだ。
「・・・だいたい、おかしいとは思っていたんだ。
お前は皇先輩ほど筋肉は付いていないのに下手すればあの人より筋力が高い。
それにこれは静馬もだが、お前等の体力も高すぎる。
・・・いくら働いてると言っても常軌を逸脱しているとしか思えない。
・・・なあ我聞、お前何を隠してるんだ?
お前は、いったい何者なんだ?」
今にも掴みかからん勢いで問い詰める。
しかし・・・
「・・・悪い。どうしても、言えないんだ」
苦虫を潰したような顔で断られる。
「・・・俺たちは、親友なんだろ?それでも教えられないって言うのか?」
「それはっ・・・」
その時、中村には我聞の答えまいと言う決意が揺らぐのが解った。
1154スレ131:2006/04/14(金) 21:01:43 ID:kxptxJ+D
――もう一押しだな――
中村が内心そう思ったその瞬間、自分でも我聞でもない第三者の声が発せられた。
「申し訳有りませんが、その問いにはお答えできません、させることも出来ません」
「あんたは・・・」
「國生、さん・・・?」
國生陽菜だった。


國生陽菜は多大に混乱する。
何せ中村と我聞の会話は、一般人には存在すら知り得るはずのない仙術についてだったのだ。
どうやら、男子浴室でトラブルがありその際に西遠寺が使ったのを目撃した。
西遠寺とて仙術の機密の重要性を十分理解しているだろうに、ミスを犯してしまったらしい。
しかし、問題は我聞が問い詰められている現状の方だ。
今のところは、何とか沈黙を保っている我聞。
正直、我聞がいつ喋ってしまうのか気が気でなかった。
そこに中村が『親友』と言う言葉を使って尋ねた時、陽菜にも我聞が逡巡するのが見えた。
そして、もう彼一人では隠し通せないだろうと判断し、身を現したのだった。


「・・・あんた、何でここにいる?
いや、そんな事よりなんであんたが止める?」
いきなり現れた陽菜にも質問をぶつける中村。
彼はこの状況を良く思っていない。
相手が我聞一人なら、容易に聞き出すことも可能だっただろう。実際さっきの反応は、もう少しで聞き出せそうなソレだった。
しかし予期せぬ第三者の乱入。これで聞き出すことはより困難になっただろうからだ。
対して陽菜も的確に大勢を見る。
・・・この状況なら、中村が何を訊いてきても自分が答えさえしなければいいだろう。
しかし、一つだけどうしても言わなくてはならないことがあった。
「社長、申し訳ありませんが中村さんにお話したいことがありますので、先に部屋に戻っていていただけませんか?」
「え?別にいいけど、中村に話しって・・・?」
「すいませんが・・・」
「そっか、じゃあ俺は先に戻ってるよ・・・」
陽菜が言えないと言うのだから大事なことなんだろう、そう思い我聞はあっさりとロビーを後にした。
我聞が見えなくなったのを確認すると、陽菜は話し出した。
「・・・中村さん、他のことは口外できませんが、一つだけ。
あなたは先ほど、社長の身体能力について仰いましたね、人間離れしている、と」
中村は少しばつの悪そうな顔で「ああ」とだけ答える。
1164スレ131:2006/04/14(金) 21:04:19 ID:kxptxJ+D
「・・・確かに、社長の身体能力はとても高いです。
一般の方からご覧になれば、少し異常に見えるのも仕方ないのかもしれません」
中村は、黙って陽菜の話を聞いている。
「ですが、それは全て社長のそれこそ血の滲むような努力の結果なのです。
・・・社長は、とても責任感が強い方です。
ですが、とても不器用な方でもあります」
陽菜は一度、天を仰ぐような仕草をしてから再び言葉を紡ぐ。
「社長は、幼い頃にお母さまを亡くされました。
そして、我が社の先代の社長、社長のお父さまにもあたる我也社長の負担をへらし、妹さんたちを守るためと、体を鍛え始めたそうです。
それが7年前の事です」
中村ははっとする。
我聞が小さな頃に母親を亡くしたのは聞いていた。
そのときは、そんな辛いことがあったにも関わらず明るい我聞を見て『強い奴なんだな』、と軽く思った程度だった。
しかし、そんなものではなかったのだ。我聞の責任感の強さは中村自身もよく知っている。
あれは天性のものだろう。
しかし、あんなに責任感の強い奴が、七年前――まだ年が二桁になるかならないかの頃――にそんな重い決意をしていたのならばどうなるのか、想像もできなかった。
陽菜は続ける。
「更に半年前、先代が行方不明になられ、社長になられてからは、ご家族だけでなく私たち社員も守るため、と元々無茶な量だったトレーニング量を増やして・・・
正直に言って、いつ体を壊してもおかしくなかったんです。
現在、社長が健康な体であられるのは、奇跡にも近い幸運なんです。

確かに、私たちには人には言えない秘密があります。
ですが、社長について特別な何かのように言うのは、やめて下さい・・・
学校での社長は、特別なことは何もない普通の、一般の方変わりはないんです。だから・・・」
本当は、我聞について言いたいことはまだ沢山あった。
けれど、沢山ありすぎて言葉にすることができなかった。
ふーっと中村が一つ溜息をつく。
「わかった。アイツのことを人間離れしているって言ったことを謝る」
1174スレ131:2006/04/14(金) 21:05:33 ID:kxptxJ+D
「 ! ありがとうございます!」
まるで自分のことのように反応する陽菜を見ながら、中村は続ける。
「俺が見た物についての質問についても、もうしない。
見なかったことにして口外しない。
・・・これでいいだろ?」
え、と陽菜は驚きの声を上げる。
我聞に対する誤解、偏見を解くことは出来ても、肝心の質問の方は先延ばしにすることしかできないだろうと思っていたのだ。
「よろしいんですか!?」
「ああ。なんだか込み入った事情があるみたいだし、これ以上問い詰めても俺が悪者になるだけだしな」
「ありがとうございます!」
礼を言った陽菜だったが、中村が
「その代わり、」
と続けたので身構える。
「その代わり一つ、別の質問をさせてくれ」
質問
その言葉を聞いて、陽菜は心の準備をする。
我聞のこと、工具楽屋のこと、仙術のこと、etc.etc.・・・
何を問われてもいいように。
何しろ相手は極秘である仙術の存在に気付きかけたのだ。
用心に越したことはない。
「・・・何でしょう?」
「なあ」
陽菜は覚悟を決める。
はたして、鬼が出るか蛇が出るか・・・
「・・・あんたと我聞って、付き合ってんのか?」
「は?」
完全に予想外の問いに、間抜けな声が出てしまう。
それを見て中村は聞こえなかったのかと思い、もう一度繰り返す。
「だから、あんたと我聞は「い、いえっ結構ですっ。聞こえました、理解しましたからっ!」
しかし、顔を真っ赤にした陽菜に遮られてしまう。
その様子を見て中村はぽつりと漏らす。
「やっぱり、付き合ってなかったんだな」
それを聞いて、陽菜は顔を朱に染めながら、言う。
「そ、それ以前に何故そのようなことを尋ねるのですか!?」
「いや、端から見ていてそう言うようにしか見えなかったからな」
陽菜を完全に信用し、あっさりと従った我聞。
我聞が言われた暴言を撤回させる為、熱弁を振るった陽菜。
或いは、我聞は素だったのかも知れないが、あんなに饒舌な陽菜の言葉を聞いたのは、文化祭の時以来・・・いや、あの時は『冷静に自分の側の主張を述べていた』という感じだったが、今回は『自分がどうしても許せなくて』、という感じ。
どちらにせよ、ここまで感情的な陽菜を中村は初めて見たのだ。
1184スレ131:2006/04/14(金) 21:08:42 ID:kxptxJ+D
「私と、社長が・・・?
い、いえっ、兎に角っ私たちはそう言う関係ではありません!誤解をしないでください!」
陽菜にしてみれば、好いている男性とその様に見られるのは嬉しい。
だが、肝心の我聞が自分をどう思っているのかが分からず、素直に喜ぶことができなかったのだ。
「そうか・・・なら、構わないんだが」
どこか腑に落ちないような表情の中村。
「質問というのは、その事ですか?
でしたら私はこれで失礼させていただきます」
そんな中村を後目に話を切り上げきびすを返す陽菜。


一人残された中村は思う。
人と人との関係は実に不思議で複雑だと。
我聞と陽菜はあそこまで信頼関係を持ちながらも付き合ってはいない。
それがあくまで『信頼』であり、恋愛感情ではないと言われればそこまでだが、さっきのやり取りで陽菜の方は満更でもないようだった。
我聞の方は・・・解らない。
しかし、信頼の陰に隠れてしまっているものが少なからずあるような気はする。
一方で、自分と住はもう文化祭の頃から付き合っているのに、誰も気付いている様子はない。
勿論、自分たちが誰にも言わないからと言うのもあるだろう。
が、客観的に見て自分たちは『仲はいいが、そう言う関係になっているとは思えない』と思われているのだろう。
そんな事を考え中村は、ふと自分がもうロビーにいる必要がないことに気付き、ふらりと立ち去った。


陽菜はロビーから帰る途中喉の渇きを感じ、元々自分はジュースを買いに出たことを思い出した。
このまま部屋に戻るべきか、買ってから戻るべきか。
仮に買うとしても、ロビー以外で。
今中村に再び会うのは、気まずかったし、ロビーに戻ればまた顔を合わせることになるかも知れないから。
色々考え、結局更に別の自販機を探すことに。

自販機は案外簡単に見つかった。
何のことはない、部屋のすぐ側にあったのだ。
何で気付かなかったのかと僅かに後悔するが、結果として仙術が明るみにでることを防げたので、まあいいかと思い直す。
そして、同時にロビーで最後に問われたことを思い出してしまった。
『あんたと我聞って、付き合ってんのか?』
1194スレ131:2006/04/14(金) 21:10:52 ID:kxptxJ+D
自分と我聞の交際について。
それについて問われ、混乱してしまった。
自分と我聞が、間違われるほど中が良く見られていたのは、正直とても嬉しいし、いずれはそうなりたいとも思う。
しかし、我聞の心情が解らない今それを望むのは早いと思うし、今は『社長』と『秘書』或いは、『仲の良い異性の友人』で自分は十分満足している。
・・・実際は、相手の気持ちが解らない上で付き合いたいと思うのは普通だし、陽菜自身も本当は出来るならばそうしたい。
しかし、このままだと思考が止まらなくなってしまうので、そう結論付けたのである。
そう、今は互いに信頼し合っている関係で満足なのだ。
もう一度だけ自分にそう言い聞かせ、自販機にコインを数枚入れる。

ふと、『信頼』と言う言葉が頭をよぎる。

青いパッケージの清涼飲料水のボタンを押す。

ふと、さっきのやり取りの情景を思い出す。

ガコンッと落ちてきた缶に手を伸ばす。

ふと、自分が割り込んで行った所が頭に浮かぶ。


自分は、何故割って入っていった?

それは、仙術という機密が世間に広がるのを防ぐため。

何故、広がる恐れがあった?

それは、我聞が中村に問い詰められていたから。

何故、我聞が中村に問い詰められている所に、自分は、割って入っていった?

それは・・・


陽菜が手にしたアルミニウム製の缶は、僅かな痛みを感じるほどに、冷たかった。




一日目、了
1204スレ131:2006/04/14(金) 21:19:08 ID:kxptxJ+D
お久しぶりです。
なんだかんだで一ヶ月ぶりです。
やっと一日目が終わりました。
後二日分あります。
頑張ろうと思います。

>>松雪さん。あの二人のSSはあまり読まなかった自分ですが、いい話でした!
まさにグッジョブです。感動です。次回作も期待させて下さい!
>>105さん。面白いです!続き気になります、頑張ってください。


それでは、また。
121名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 00:45:26 ID:NDAGzK8z
GJ・・・かなぁ。

なんとなく思ったのですが、読ませたい方向性が見えにくい気がします。
誰の話がメインなのか分かりづらく、本当にこの会話がいるのか・・・とか思ってしまうので・・・

しかし、まだ三分の一という事なので、これからの展開に期待します。

GJ!
122名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 12:41:44 ID:akV4Rh7S
123名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 16:27:24 ID:D1dttHj2
>>120
GJ!
俺的には話が膨らんでゆくのは読んでて楽しいです。
続き、楽しみにしてますよ〜
124名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 18:08:21 ID:6V5XF7I7
hosyu
125名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 22:07:24 ID:BC+rPUJV
俺は正直微妙だと思うね
126名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:17:31 ID:JhPMqnos
評価は人それぞれだろうけど、続きが気になります・・・
保守りながら気長に待たせていただきますよー
127名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 04:26:30 ID:bNg63OZX
低脳GJ
128名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 01:23:01 ID:qLGaZc5B
保守
129名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 19:14:17 ID:0NbFeEa5
hosyu
130名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 21:09:32 ID:4XHzlyt7
平井君はブルマ好き
131名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:24:09 ID:eHUy9fhZ
ブルマの上から擦りつけないでぇ・・・
132名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:42:21 ID:P0PuiLgO
むしろさくら先輩はブルマでされるのが好き・・・
133名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 00:30:27 ID:DgJ27KZk
さくら先輩のシャツの「キミキス」の文字・・・
アレか? アレなのか?

つかさくら先輩、意外に乳あったなぁ。
134名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 03:44:14 ID:iEB2RA9n
さくら先輩と平井君でのエロキボン。
誰か、神よ書いて下さい…
135名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 12:23:48 ID:zf1nFyRt
アンケート送ったら正式連載にならんかな?
136名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 16:18:52 ID:5FGztv+q
あの時の声が学校中に響き渡るのをキボン
137名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:02:55 ID:hsmvIxZL
さくら先輩が優さんに似てると申したか
138名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 03:41:38 ID:AOi+gNyc
急に過疎って来たなぁ
139名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 16:07:58 ID:nxM+Qi5a
>>138
みんな萌え転がっているのだ。

>>136
ソレダ!
学校中とまでは行かなくても、隣の部屋ぐらいでも萌え。
140名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 21:07:03 ID:j0mh6OfG
劇団SAKURAが出たら誰かそのネタで書いてくれるかと期待してたんだが、
短編だと書きにくいのか、
考えたくないが書き手自体がもういないのかorz
141名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 21:52:21 ID:QLIO4GeP
そんなときは読み手が書き手に昇華すればいい。
142名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 19:48:07 ID:voUJhmVM
それができればはじめから苦労はないさ・・・・
143名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 22:03:06 ID:sS5iTT+Q
暇なのでネタ振り

こんなこわしや我聞はこわせない。

アニメ化したはいいが、OPがブレイク工業の社歌だ。
144名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 21:15:22 ID:yFo5784I
暇なのはわかるがいくらなんでも本スレ向けじゃねーか?w
145名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 07:27:12 ID:DsCJMssL
過疎だなぁ
1464スレ131:2006/05/04(木) 08:45:43 ID:PjLyLpxn
〜小ネタ〜

「ねえ中村君」
「何だ?」
「中村君ってブルマ好き?」
「は?」
「だから、中村君ってブルマ好きかな〜って」
「何をいきなり・・・」
「平井君がブルマ好きらしいから〜」
「・・・平井って誰だよ」
「さあー?」
「さあって、お前なあ・・・」
「で、どうなの?中村君はブルマ好き?私のブルマ姿見たい?」
「う・・・それは、その・・・」
「『その』何?」
「嫌では、ないが・・・」
「『嫌ではない』〜?じゃあ、今度やるときはブルマでやろっか?」
「う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頼む」
「あはは、じゃあ楽しみにしててねー」
「あ、ああ・・・」
1474スレ131:2006/05/04(木) 08:49:21 ID:PjLyLpxn
131です。
これってクロスオーバーだからダメなのでしょうか?
あ、でも藤木さんの同士だからいいのかな・・・?

と言うかそれ以前に合宿のを書かずに何をやってんだ俺は・・・
148名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 11:02:12 ID:MxgX2ibO
>>147
職人さんが命綱。
自由に書いてくださいませ。
149名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:03:13 ID:u9CVxeyw
>>147
学校の名前って出てたっけ?
150名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:53:44 ID:PjLyLpxn
>>149
えっと、出てなかったような・・・
いや、今出張中で現物無いんで調べようがないんですが・・・
151名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 22:25:04 ID:TJf//i2h
「こわしや我聞」 : 神奈川県立御川高校
「劇団SAKURA」 : 都立水本高校
ですな。
あの川が多摩川だとするなら、
水本高校から見て対岸を恵と友子が歩いてるってのも充分有り得る立地かもしれないですな。

>>147
節操の無いクロスオーバーは個人的には好ましくないですが、
SAKURAにも友子が出ていましたし、自分は全く違和感なかったですよー

合宿の続きも楽しみにしています!
・・・ってか、連休中なのに出張お疲れ様です・・・
152名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 00:27:21 ID:NTCJnnHe
>>151
なるほど、両校の名前に川や水の文字が入ってるあたり十分考えられるな>多摩川挟んで対岸

で、同じ川沿いにラクロス部の有名な高校もあると・・・
153名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 10:49:18 ID:Xuh1+dh8
琴音さんが監督をしているサッカー部があるのか。
154松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/05/07(日) 02:29:25 ID:dqjv7jlu
SAKURAネタ。
エロ無しですが、投下します。

155Live Alone:その1:2006/05/07(日) 02:31:33 ID:dqjv7jlu

「終わっちゃったね」

斜めに傾いた陽光が赤く染める、校舎の屋上。
その校舎に隣接する体育館を見下ろしながら、さくらは後ろに立つ平井へと声をかけた。

「終わっちゃいましたね」

平井も体育館を見下ろしながら、同じ口調でさくらへと言葉を返す。
先程まで、自分達が芝居をしていたその体育館。

――本当に終わっちゃったんだな。

心の中で、平井はもう一度呟く。
入学してきた時は、まさかそこで自分が芝居をするとは思ってもいなかった。
いや、終わった今でも信じられない。
目立つ事があれだけ苦手だった自分が、大勢の人の前で芝居をしたなんて。
あれだけ気にしていたトラウマも、もうなんとも無い。

――そう、それは全てこの人のおかげ。

いつの間にか平井の視線は、目の前に立つ小柄な先輩へと向いていた。
さくらは体育館を見下ろしたまま、動く気配が無い。
その視線が悲しい色を帯びているように見えるのは、きっと気のせいではないだろう。

「きゃっ!」

突然、夕方特有の湿り気を帯びた風が吹き、さくらの髪が空へと舞った。
綺麗な黒髪が赤い陽光に照らされたさくらの姿はとても神秘的で、平井は思わず息を呑む。
髪を片手で抑えようと身をよじったさくらは、そんな平井の視線に気付いた。

「ん、どうしたの、平井くん?」
「い、いえ、なんでもないです!」

さくら先輩に見とれてました、とは言えるはずも無く、平井は慌てて視線を外す。
明らかにおかしい平井の反応を見て、訝しげに首をかしげるさくらだったが、ふとある可能性に思い至る。

「……ははーん、さては私に見とれてた?」
「そ、そんな事は……」

先ほどまでのもの悲しい表情とはうって変わり、意地悪そうな笑みを平井へと向けるさくら。
実際その通りなのだが、勿論これも言えるはずは無く、平井は言葉を濁してごまかす。
156Live Alone:その2:2006/05/07(日) 02:32:20 ID:dqjv7jlu

「そ、それより、いきなり何なんですか? こんな所に呼び出して」

話題を変えるために、平井はふと疑問に思っていた事を口にする。
それは、自分がここにいる理由。
公演が終わった後、真面目な顔をしたさくらに、ここに来て欲しいと呼び出されたのだ。
芝居の途中で台詞を忘れた事に対するダメ出しかと思い、急いで着替えて来てみると、
そこには制服姿のさくらが夕焼けをバックに体育館を見つめていたというわけだ。

「んー、まあ、今日の芝居の事なんだけど……」

さくらの台詞に、やっぱりか、と身構える平井。
だが。

「お疲れ様。初めての舞台にしては凄くよかったよ」
「へ?」

予想していたものとは違う台詞の続きに、平井は思わず間抜けな返事をしてしまう。

「へ? って何よ。平井くんが豆鉄砲食らったような顔して」
「いや、豆鉄砲よりも意外なもの食らったような気がして……」
「何よ、私が褒めるのはそんなに以外なの?」
「い、いえ、てっきり台詞ど忘れした事を怒られるのかと……」
「あー、あれね」

さくらはふむふむと頷きながら、

「台詞忘れるなんて、よくあるわよ。大事なのはその後のフォローができるかどうか。
 その点、平井くんは初心者なのによくできた方よ。
 まあ、もっと早くフォローできていたら完璧だったんだけどね」

と、苦笑交じりで言葉を返す。

「……すいません」
「謝らなくていいって。私は褒めてるんだから」
「でも……」

素直に謝る平井。
さくらはそう言うが、芝居の流れを止めてしまった事は本当に申し訳ないと思っていた。
なんとかアドリブでフォローしたものの、本当にあれでよかったのかははだはだ疑問だった。
演劇部として最初で最後の舞台。
大成功で終わらせたかったのは、なによりもさくらの方だっただろう。
157松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/05/07(日) 02:33:01 ID:dqjv7jlu

「ほらほら、そんな暗い顔しない。さっきまでの堂々としていた平井くんはどこいったの?
 あんな集団監視の中で愛の告白までしたくせに」
「ちょっと待て」
「まさかあんな所で告白するなんて……平井くんたら、大胆なのね♪」
「……気持ち悪い演技しないで下さい」

顔を赤らめて身をくねらせるさくらを、うさんくさげに見つめる平井。

――そういえば、こういう人だった。

いい女は演技が上手いと言うが、さくらのそれは筋金入りだ。
ところどころ捻くれてる筋金だから、なお性質が悪い。

――これさえなければ、可愛い人なのに。

「それで、オレをここに呼び出した理由ってのはからかう為なんですか?」
「そうだといったら?」
「実家に帰らせてもらいます」
「あなたの実家、すぐそこじゃん」
「ええ、おかげで家族にまで『ブルマ好きなの?』と聞かれる始末です。本当にありがとうございました」
「えへへ、そう言われると照れるね」
「褒めてない!」

――ああ、もう本当にこの人は。

大げさにため息をつく平井。
しかし、このやり取りも今日までだと思うと、少し寂しい気もするから不思議だ。

「あはは、まあそんなに怒らないで。ここに呼び出したのはお礼する為なんだから」

そんな平井を楽しそうに見つめながら、さくらはすっと姿勢を正す。

「お礼?」
「そう、私のわがままに付き合ってくれたお礼」

そう言うが早いか。
さくらは音も立てずに平井との間合いを詰めると、

「えい」

平井の唇に自分の唇を無遠慮に押し付けた。
158Live Alone:その4:2006/05/07(日) 02:33:52 ID:dqjv7jlu

「……」
「……」

柔らかい唇の感触と、その温かさ。
髪から漂う清涼なリンスの香りと、身体から立ち上るデオドラントと汗の混ざった甘い匂い。
さくらが唇を離した後も、平井の思考はしばらく止まったままだった。

「……」
「……もしもーし?」
「……おおう」
「第一声がそれかい」

目が点になったまま、呆然とつぶやく平井。
そして突っ込むさくら。

「え、ちょ、な、なんですかこれ。いきなりキ、キ、キ……」
「はいはい、たかがキス位でキョドらない」
「そ、そんな事言っても……」

唇を押さえてうろたえる平井と、腰に手を当てながらそれを見ているさくら。
男女の立場が逆なような気もするが、当の平井はそれどころじゃなかった。

「は、初めてだったのに……」
「私だって初めてよ。いいじゃない、減るもんじゃないし」
「じょ、女性はもっと慎ましく、おしとやかにですね……」
「で、私の唇はどうだった?」
「柔らかくて温かくてもう最高……って、何言わせるんですか!」
「やーい、平井くんのむっつりスケベー」

けらけらと笑うさくら。
だが心なしか赤く染まった顔を見るに、さくらも初めてというのは本当のようだ。

「ほら、平井くんキスシーン入れて欲しいって熱望してたじゃない」
「言ってないし、熱望もしてません!」
「本当に?」
「……」
「……分かりやすいね、君」

無言で目を逸らす平井に、さくらは冷たい視線を送る。
だが次の瞬間には微かな笑みを浮かべ、平井の横顔を愛しそうに見つめながら、言葉を続ける。

「……これでも、ちょっとは気にしてるんだよ。
 いきなり入部させて、無理矢理付き合わせた挙句、廃部でしょ。
 本当、平井くんには悪い事したなー、って」

微笑のまま、あっけらかんと言うさくら。
彼女の言っている事は本心だろう。
だが、その態度は演技だと平井は気付いていた。
159Live Alone:その5:2006/05/07(日) 02:34:36 ID:dqjv7jlu

『やだなあたし……ホント、バカで……』

部室で一人泣いていたさくら。
今もよく見ると、さくらの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
だがそんなものは無いかのように、さくらの演技は続いていく。

「でも、私の我侭も今日でおしまい。よかったね、平井くん。
 明日からは普通の高校生活が送れるよ」
「さくら先輩……」
「この二ヶ月間、君には迷惑だった思うけど……私は楽しかったよ……本当に楽しかった。
 ……でもね、楽しい舞台には、必ず終りがあるんだよ。
 ……だから……これが私の最後の台詞」

そしてさくらは平井へと背を向けた。
これでフィナーレだとでも言うように、ゆっくりと、優雅な動作で、夕焼けの空へと向き直る。

「……ありがとう、平井くん」

沈み行く太陽を見つめ、さくらはポツリと呟いた。
先ほどまで赤く染まっていた空は、すでに半分ほどが夜の闇に彩られていた。
赤から黒へといたるグラデーションのそれは、まるで幕引のカーテンの様。
その中にひっそりと佇む薄蒼の月明かりを照明として、さくらの舞台は幕を閉じようとしていた。
だが。

――忘れてますよ、先輩。

そう。
観客が帰らない限り、舞台が終わる事は無いのだ。

「っ!」

背中を向けていたさくらを、平井は後ろから優しく抱きしめる。
びくりと震えたさくらの背中が予想以上に小さい事に驚きながらも、壊れ物を扱うかのようにそっと腕を回す。
目の前には、夜空に融けるかの様な、さらさらの黒髪。
まるで、昔見た恋愛映画の1シーンみたいだ、と平井は思う。
だが、胸元をくすぐる髪の感触とそこから漂うリンスの香りが、これが現実だと告げていた。

「演技する必要はありませんよ」

緊張から、声が震えているのが分かった。
やっぱり自分には演技は向いてないな、と苦笑しながらも、平井は言葉を続ける。

「オレの前では演技しなくてもいいんです」
「え、演技なんて……」
「二ヶ月も一緒にいたんですよ。さくら先輩の演技はもう飽きるほど見ているんです。
 ……先輩、演技する時、小指の先をピンと伸ばすんです。知ってました?」

はっ、と自分の指先を見つめるさくら。
その行動が、平井の言葉を肯定したという事に気付かぬままに。
160Live Alone:その6:2006/05/07(日) 02:35:32 ID:dqjv7jlu

「大体、先輩は一つ勘違いをしています。
 さっき悪い事をした、って言いましたよね。平井くんには迷惑をかけた、と。
 まったくその通りです。なんて人だと思いましたよ……最初はね」

くすり、と平井は苦笑を漏らす。

「最初は絶対に無理だと思っていました。
 オレが芝居なんて出来るわけがない。そんな目立つ事できるわけがないって。
 だけど……結局、オレは今、ここにいるわけで」

ここにいる、という台詞の部分で、平井は腕に力を込めた。
さくらはいやがる様子も無く、平井にされるまま、じっとしている。
これはこのままでいいって事だよな、と平井は自分を納得させつつ、言葉を続ける。

「芝居中に言ったアドリブですけど……咄嗟に言った事とはいえ、あれは偽らざる本心です。
 楽しかった……本当に楽しかったんです。
 今まで知らない世界が、そこにはあったから。
 ……そして嬉しかった。
 今まで忘れていた世界が、そこにはあったから」

そして平井は少しだけ間を取る。
さくらは無言。平井の腕の中で、彼の言葉に耳を傾けている。

「あなたと練習できて楽しかった。あなたと練習できて嬉しかった。
 あなたと芝居ができて楽しかった。あなたと芝居ができて嬉しかった。
 あなたと話せて楽しかった。あなたと話せて嬉しかった。
 あなたの側にいれて楽しかった。あなたの側にいれて嬉しかった。
 だって、オレは――」

それは今まで隠していた、想い。
校門で最初に会った時から持ち続けていた、想い。
一緒にいるうちに少しずつ育んできた、想い。
そして、自分が本当に伝えたかった、想い。

「――さくら先輩の事が好きだから」
161Live Alone:その7:2006/05/07(日) 02:36:21 ID:dqjv7jlu

平井の腕の中で、さくらの背中が震えた。
それを押さえ込むかのように、平井は腕に力を入れてさくらを抱きしめる。

「だから、演技する必要なんて無いんです。
 寂しいのなら呼んでください。すぐに駆けつけますから。
 辛いのなら言ってください。側にいますから。
 悲しいのなら泣いてください。胸くらい貸しますから」

気付くと、先ほどまであった茜色の空は地平線の隅に追いやられていた。
空は夜の闇へと染められて、その中でひっそりと輝く月と星たち。
舞台の幕は落ちていた。
だけど――

「本当に……いいの?」

今まで平井の腕の中で動かなかったさくらが、動いた。
首だけを平井の顔へと向けて、小さな声で呟く。

「本当に……演技しなくていいの?」

目に浮かんだ涙を隠そうともせず、さくらは平井を見上げて呟く。

「勿論です」

平井はそんなさくらの頭を優しく撫でる。
さくらはくすぐったそうに身をよじり、平井の腕の中で身体の向きを変えた。
平井へと向き直り、その背中におずおずと手を回す。

「うっ……うぅ……ぐすっ……」

平井の胸に顔を埋めるさくら。そこから微かに聞こえてくる嗚咽。
やがて、嗚咽は言葉となり、さくらの想いとなって現れる。

「いやだ……いやだよ……もっと演劇したいよ……もっと舞台に立ちたいよ……
 もっと練習して、もっと芝居して、もっと話して、もっと一緒にいたいよ……」

――だって、私は――
162Live Alone:その8:2006/05/07(日) 02:37:36 ID:dqjv7jlu

最初に会った時は、彼で大丈夫か、と不安だった。
他の人のように逃げてしまうんじゃないか、と不安だった。
だけど、彼は最後まで付き合ってくれた。そして今、私の側にいてくれる。
……昔から芝居の練習をするのは楽しかった。
でも、いつからだろう。
芝居の練習よりも、平井くんに会えるのが嬉しいと感じるようになったのは。

――そう、私も――

そして、さくらは顔を上げた。
涙に濡れた目で平井の顔を見つめ、演技ではない、さくら自身の言葉で、想いを返す。

「私も平井くんの事が好きなんだもん……」

月明かりの中、二人の唇がそっと重なる。
先ほどの様な触れるだけのキスではなく、お互いの想いを伝え合うように、しっかりと唇を重ね合わせる。
空は夜の闇へと染められて、その中でひっそりと輝く月と星たち。
舞台の幕は落ちていた。
だけど――二人にはもう関係の無い事だった。
観客も、照明もいらない。
二人だけの物語がこれから始まるのだから――


Happy End? No, Happiness is Never End.
163松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/05/07(日) 02:39:10 ID:dqjv7jlu
以上です。
これで終わってますが、もしかしたら続くかも。
根性あればエロシーンに繋げたいと思います。

では。
164名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 05:13:57 ID:DT2lk0mT
うおおおお!?
GJな!
低脳な!
最高ですよ!
終わっても、エロシーンに続いても違和感なさそうだし!

さくら先輩と平井君に幸あれ!
165名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 11:32:39 ID:8M90wasT
ついに劇団SAKURA降臨!!
低脳!低脳!GJ!続きの投下期待してます!
しかしこの二人だとエロシーン難しいんじゃないでしょうか?
いや、もちろん自分はエロなしでも十分萌え転がれますが
166名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 22:03:55 ID:85COjVrP
らぶらぶだねー!
すごいらぶらぶだねー!!

短編ネタでここまで書けちゃうってすごいです・・・
やー、マジ低脳ですよ、素晴らしすぎる!
167名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 22:07:52 ID:tUXjG89J
やっぱ松雪さんの作品は最高です。
保管庫の過去作品をまた拝読させて頂きましたが温かい。
是非エロもお願いします。
168名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 23:27:36 ID:zqtPJ92N
GJ!

凄い、凄くいいです!
続き、エロ有りでもエロ無しでも期待しています!
169名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 03:57:00 ID:IWTyWg88
同好会の新入会員と(素ボケで)意味深な会話をして、先輩をヤキモキさせるですよー
170名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 00:51:20 ID:PTwS1GZq
gj
171名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 14:58:15 ID:OsGYyPMW
>>169
ソレダ!お前天才。
投下ワクテカして待ってるぞ
172名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 22:32:51 ID:1PJF0am9
サンデー超変えなかったから劇団SAKURA話が素直に見られない。

いずれ単行本(短編集)とか出てくれるかな( ´・ω・)
173499:2006/05/09(火) 23:33:44 ID:zAyFRAFa
えー、>>172氏には申し訳ないのですが、
自分も劇団SAKURAネタで書いてみましたので、一つ投下させて頂きます。
松雪氏の素敵にらぶらぶなお話の後でかなり恥ずかしいのですが、
こちらはえろえろメインな感じで・・・

長くなってしまったので、前後編にして、今晩は前編のみ投下させて頂きます。
174499 1/12:2006/05/09(火) 23:35:05 ID:zAyFRAFa

それは入学式から一週間ほど経ったある日の放課後のこと。

「あめんぼあかいなあいうえおっ!」

毎日のように繰り返される、少年の絶叫と、

「んー、まだまだだねぇ、ブルマ分が足りないのかなー?」

よく通るけどなんだかとんでもないことばかり言っている、少女の声。
演劇部の部活動だとかいうこの恒例行事に在学生も新入生もすっかり慣れてきてしまった今日この頃である。
その当事者の片割れが今、部室で頭を抱えていた。

「うむむ・・・」
「どうしたさくら、やっぱり良くないのか?」
「はい・・・良くはなってきているんですけどね、まーだ照れが抜けきれてないのと、
 なかなかコツを掴んでくれなくて・・・うーん」
「ま、お前の無茶なメニューにもちゃんとついて行ってるし、
 どうやらウチにも居着いてくれそうだしな、気長に面倒見てやれよ」
「勿論そのつもりですが、折角入部してくれたんだから、公演だってやってみたいし・・・
 そうなると、やはり・・・あの手しか・・・」

さくらにしては珍しくちょっと思いつめたような顔になり、
それからすぐに、にやーっとした邪悪っぽい笑みを浮かべる。

「あの手とは何だ?」
「あ、いえ! 別に敢えて言うほどのものでもないです!
 ・・・ところで先生、明日は確か職員会議でしたよね?」
「? あ、ああ、そうだな、多分こっちには顔を出せないだろうから、平井と二人でよろしくやってくれ」
「は〜い、それはもう♪」
「?」

なんでもない冗談が既にさくらの中で冗談でなくなりつつあるとは、
流石の尾形先生にもわからなかったそうな。

そして翌日。
今日も今日とて平井は可愛いけれど子悪魔のような先輩の指導のもと、
声出しと腹筋強化のトレーニングに精を出す。
騙されて拉致されてついでに弱みまで握られて、
この先輩には逆らうことすらままならず渋々入部することになった演劇部。
最初の2、3日は彼にとって悪夢のような日々であった。
入学早々、人生初の不登校という選択肢すら考えもしたが、
自分がいない間にあの先輩が何を吹聴するかと思うと、落ち着いて家になんぞ居られる訳が無い。
そんな訳で諦めと自棄とでなんとかこの一週間を乗り切った訳だが、
人間うまく出来ているもので、こんな有り得ないと思っていた生活にもしっかり慣れてしまうものである。

「お〜、声量はまだまだだけど、ちゃんと通る声の出し方が身についてきているみたいだね、
 こうして目の前で恥ずかしいブルマ姿をちらつかせていた甲斐があるってものだ、うんうん!」
「だからその恥ずかしいことを通る声で言わないでくださいっ!」

慣れ、というより開き直りかもしれない。
だが、当人も気付かぬ間に彼の中の何かが変わり始めているのかもしれない。
過去のトラウマさえ払拭できれば、案外に舞台慣れも早いかもしれないね―――
などとかわいい悪魔のような先輩は改めて思い、
―――ならば、やはり・・・決して逃れられないようにもう一手、
―――トレーニングもかねてやっておきますか♪
と、不穏なことを考えていた。
175499 2/12:2006/05/09(火) 23:36:51 ID:zAyFRAFa

「さ、それじゃー部室に戻ろうか!」
「あれ・・・今日はちょっと早めですね?」
「うん、今日はこれから、部室で秘密の特訓なのだよ!」
「秘密の特訓、ですか?」
「うむ! では平井二等兵、すぐに部室に来ること! 遅れたらキミが如何にブルマ好きかを皆の前でとうとうと・・・」
「行きますっ! すぐ行きますからっ!」

何気ない会話のようでいて、実はさくらは校庭に、平井は屋上にいたりする。
さくらを待たせないようにと彼は全速力で階段を駆け下りて、
そのままの勢いで部室まで一気に走りきって、ぴた、とその足が止まる。
何故か窓に暗幕が。
外からの光を遮断した屋内で一体何をやらかそうというのか、
どうにもよろしくない想像ばかり掻き立てられて、そのまま中に入るのが著しく躊躇われるのだが・・・

―――まぁ、いいか。

彼女のすることにいちいち尻込みしていては、演劇部員は務まらない。
務めたくて務めている訳でもないのだが、どうせ逃げることもできないのだ。
それに、暗幕で外から見えないのなら、少なくとも目立つことはない。
・・・などとしばし逡巡の後に、

「戻りましたー!」
「うむ、ご苦労!」

入ってみれば、窓に暗幕がかけられている意外は別に何の変哲も無い、
いつも通りの部室である。
強いて違いを上げるならば、顧問の尾形先生がいないのと、机の上がきれいに片付いているくらい、だろうか。

「さ、じゃあ平井くん、そこに座って」
「あ、はい」

さくらに勧められるままに椅子に腰掛けると、彼女は歩きながら・・・

「どう、平井くん、演劇部には慣れたかな?」
「え・・・あ、まぁ・・・とりあえず、先輩がどういう人かはわかりましたよ、あはは」
「ふむふむ、やっと私の偉大さが理解できたってことだね!」

等ととりとめの無い会話をしつつ、さくらは部室内を歩き回る。

「・・・でも、やっぱり悪いことしちゃったかな」
「え?」
「んー、ほら、平井くんが入部する経緯ね・・・ちょっと強引だったかなって」
「ま、まぁ・・・ちょっとどころじゃない、っていうか・・・」
「そのこと、怒ってる?」
「い、いえ、べ、別に・・・もう、なんていうか、その・・・」
「? どうしたのかな?」
「あ、いえ・・・あー」

近い。
さくら先輩が近い。
話している間にだんだんと近づいてくる、それはいい。
だが、それにしても、ちょっと・・・

「もしかして・・・やっぱり、怒ってるかな・・・」
「い、い、いいえ! けけ決して、そんなことは・・・」
「そう? よかったー!」

嬉しそうに声を上げる彼女の息が、顔にかかるんじゃないかと思うくらいに彼女が近い。
176499 3/12:2006/05/09(火) 23:38:05 ID:zAyFRAFa

黙っていればキレイで、地が出ると可愛い顔が、
小柄な割に大きな胸が、
高校に入るまで意識したこともなかったブルマと、そこから覗くすらりとした白い太腿が・・・
なんというか、身体の一部が健康な青少年的に正常な反応を示してしまわないかと危惧するくらいに、近い。
なので、とりあえず身体を仰け反らせて少しでも距離を取ろうと試みるが、

「どうしたの、平井くん?」
「い、いえ・・・あの、ちょっと・・・」

不思議そうに身体を乗り出してくるものだから、余計にその顔と胸が近づいてくる。

―――や、やばい、なんていうか、これはやばい・・・

「ふぅん? まあいいや・・・」

―――わざとだ、この人は絶対にわざとやってる!

入部してからの一週間で、平井はこの先輩のことはある程度わかってきていた。
彼女がこういうことを気付かずにしてしまうような天然さん等では断じてないこと。
今のような場合、間違いなく何かを企んでいるであろうこと。
だが、はっきり言って今はそれどころではない。
性格がどうであろうがどんな恐ろしいことを考えていようが、
彼女は美人でスタイルが良くて、しかも露出の高い服装で恐ろしく至近距離にいるということの方が、
何よりも今の平井にとっては重大である。

「ねぇ、平井くん・・・」
「は、はははい!?」

あからさまな平井の動揺っぷりに、さくらはくすり、と笑みを洩らす。

「でもね、勧誘が強引だったことには変わりないし・・・だからね、お詫びの印に―――」

ただでさえ近い顔を、更に寄せて・・・

「私のこと、好きにして、いいよ」
「―――――――――!?」

がたたん!
と、椅子を倒しそうになりながら、平井は腰掛けたままで思い切り後退する。
あまりと言えばあまりな発言に、真っ白になりそうな意識をなんとか踏みとどまらせて、
必死に頭を働かせる。

好きにして、いい・・・って、それって、ええとつまり、そういうことなのか!?
いやまて! 相手はあのさくら先輩だぞ!
ヘタなことしたらそれこそ弱みを握られるようなものだし、
なによりそもそも本気にしちゃいかん!
何か絶対裏がある罠がある!
とにかく気をつけるんだオレ!

・・・だが、彼に意識をクリアに保とうとするだけの隙を与えるさくらではない。
椅子ごと後退した分だけの距離を詰められてしまえば、結局はさっきと同じ状況になる訳で・・・

「平井くん、そんなに慌てないで。 それとも、私に近づかれるの、イヤなのかな・・・?」
「い、いえ、そ、そういう、わけじゃ・・・」
177499 4/12:2006/05/09(火) 23:39:16 ID:zAyFRAFa

少し恥ずかしそうに、そして悲しそうにしながら、そんな声をかけてくる彼女は、
間違いなく演技をしている。
それは平井にも充分に分かるのだが、問題が一つ。
・・・とにかく、彼女の演技は上手いのだ。
だから、それが演技とわかっていても、罠があるとわかっていても、それでも尚、引き込まれてしまう。

「じゃあ・・・いいんだよ、私のこと・・・平井くんの好きなようにして・・・」
「そ、それは、でも、ちょ、ちょっとマズいんじゃないかな、とか、あは、あはは・・・」

ガタガタと音を立てながら、椅子ごと後退する平井と、
ゆっくりと歩いて後を追うさくら。
それでほんのしばらくはギリギリの距離を保てこそしたが、場所は何せ狭い部室。
そんなことをしていれば当然ながら・・・

ごん。

「・・・あ・・・」

椅子は壁にぶつかり、それ以上は後退できない。
そこへ、ゆっくりと近づくさくら。
さっきのように・・・否、さっき以上に身体を、顔を寄せてきて、錯覚でなく吐息を肌で感じてしまう。
色々な意味でこれ以上はマズい―――そう察知した平井は必死で、

「さささささくら先輩! こ、ここ、これ以上は、マズいですからっ! いやマジで!」
「どうして?」
「ど、どど・・・」
「言ったでしょ? 好きにしていいって。
 平井くんも、なったばかりとは言え高校生のオトコノコだし、ちゃんと意味は、わかるでしょう・・・?」

いつも元気な表情の彼女が、今は優しそうに微笑んで、少し顔を赤らめて、
くすぐったいくらいに吐息のかかるところにいて、
そんなとんでもないことを言う。
これが演技だとわかっていても、位置的にもはや逃げるのは不可能、
ならばなんとか言葉で・・・

「だだだ、だけどっ! こ、こういうのは、ホラ、ちゃんと、その、好きな人同士じゃないと・・・」
「じゃあ、平井くんはやっぱり、私のこと・・・嫌い?」
「い・・・いえ・・・」
「うむ♪ なら、問題ないよねー?」
「い、いやでも! まだ、オレ、先輩と会って一週間しか経ってないし!」
「うん・・・でも、一週間で好きになるのって、そんな変なことかな?」
「――――――っ!」

話せば話すほど、余計に深みにはまっていく気がしてならない。
いや、気のせいでなく、自分の心が削られて行くのがわかる。
このままでは・・・本当に、目の前の先輩を押し倒してしまいかねない・・・

「それにね・・・入学式でキミとぶつかって、そのまま拉致しちゃったこと・・・偶然だと、思う?」
「え・・・」

何気に不穏な言葉が混ざっていたが、それどころではない。
平井自身が疑問に思っていたところでもあったのだから。
が、

「ま、押しに弱そうで、かつああいうシチュエーションに弱そうってことで目をつけたダケ、なんだけどね〜」
「・・・・・・は?」
178499 5/12:2006/05/09(火) 23:40:08 ID:zAyFRAFa

一転、楽しそうに笑うさくらと、唖然とする平井。
唖然としてから、ちょっと残念に思い、そんなふうに思っている自分に気付いて、苦笑する。

―――なんだ、なんだかんだ言いながら、やっぱり期待してたのか、オレ。

そして、この悪ふざけもいい加減終わりだろうと警戒を解きかけるが―――

「・・・でもね、キミが入部してくれてからの一週間は、ずっとキミを見ていたんだよ?」
「え―――」
「私があんなにずるい手を使って、いいようにからかって、引っ張りまわしたのに、
 キミは嫌な顔しながら、泣き言を言いながらでも、ちゃんとついてきてくれたよね」
「そ・・・れは・・・」

そうしないと、余計にマズいことになりそうだったから、
仕方なく・・・だったハズだ。
だが、こんな風に言われると何故かそれ以外の理由がありそうに思えてしまう。

「わたし、こんな性格だからね・・・なかなかついてきてくれる人、いないんだ」
「・・・・・・」
「だからね、平井くんが一週間、ちゃんと続けてくれて、すごく嬉しかった」

またそろそろオチがくるハズだ。
それ以前に、どうしてオレはすぐにこう引き込まれてしまうんだ。
・・・と、思う部分もあるのだが、それでも彼の基本的なスタンスは、その先を期待してしまっている。
要するに、自分は彼女の・・・さくら先輩の術中にはまっているのだ。

「・・・だからね、キミとなら・・・キミになら、いいかな・・・って、思ったんだ・・・」
「は・・・」
「ねぇ、平井くん・・・キミは、どうなのかな?
 もし、ちょっとでもわたしのこと、かわいいな、とか・・・
 ブルマがいいな、でもいいから・・・そんな風に思ってくれてるなら・・・」

一瞬、ひっかかる単語が聞こえた気がしたが、もう、どうでもよくなりつつあった。
さっきのように、最終的には冗談だったってオチがついても、別にそれでいい。
ただ、もし最後までそんなオチがつかなかったら、その時は、もう・・・

「今日はね、尾形先生も会議でこっちには来られないし、暗幕だってちゃんと張ったから、外からも見えないよ。
 声も・・・頑張って抑えるから、だから・・・ね・・・」

だから・・・何なのか・・・
オチをつけるなら早くしないと、このままじゃ、本当に・・・

「わたしのこと、平井くんの好きなようにして、いいよ・・・」

かちん、と頭の中でスイッチが切り替わった音がしたような、気がした。
もう、平井の頭のなかから、騙されてるとか罠があるとか、そういう認識は全て消えた。
興味は全て、目の前のきれいで可愛くて、小さいけど何気にスタイルの良い先輩そのものに移る。
だが・・・その先輩に、したいことは幾らでも浮かぶのに、どうしたらいいか、わからない。
心の準備もなしにいきなり迎えた状況に、身体が動いてくれないのだ。

「平井くん・・・?」

未だに手を出そうとしない平井に、すこし戸惑うような声をかけてから、

「あ、そうか・・・こういうのって、順序があるよね・・・じゃあ、平井くん・・・いくよ」

何を、と疑問を口に出す前に、もともと目の前にあったさくらの顔がもうちょっとだけ近づいて、
柔らかい感触が、
平井の唇に、触れた。
179499 6/12:2006/05/09(火) 23:41:37 ID:zAyFRAFa

何が起きているのかは、一応、わかる。
さくら先輩の柔らかな唇が、自分の唇に優しく押し付けられている。
要するに・・・さくら先輩に、キスをされた・・・いや、されている。 

心臓が、バクバクとうるさいくらいに高鳴っている。
先輩の鼻から洩れる息がこそばゆい。
罠だとか冗談だとかいう認識は既に消えた。
有り得ないという思いも、唇を塞ぐ柔らかな感触に溶けて、消えた。
残ったのは、今ある現実。
さくら先輩がキスしてくれたこと。
そして・・・彼女を、好きにしていい、と言ったということ。

「ん・・・っ」

鼻の奥から甘い吐息を洩らしながら、さくらが唇を離す。
その赤く上気した顔に、平井の意思のこもった視線が向けられる。
そこにあるのは先ほどまでのような戸惑いやおののき等ではなく、
男として、その視線の先にあるものを求める、物欲しげな、欲のこもった視線。
そんな平井の無言の訴えに、さくらは顔を赤らめたまま、頷いて返す。

―――いいよ、と。

平井はゆっくりと両腕を伸ばすとさくらの腰のあたりに触れる。
その手を少しずつ上に滑らせて、体操服の上から彼女の身体の輪郭をなぞる。
ゆったりした体操服の下にある肢体は思った通りに細く、
それでいて服の上からでもわかるくらいに柔らかい。

「あ・・・ん、おなか・・・腹筋ついちゃってて、かたくて・・・女の子らしく、ないから・・・
 あまり、さわっちゃ・・・ダメ」

そんな恥ずかしげな声も、普段なら“そうやってどう騙そうとしているのか”としか思わないところだが、
実際に触れながらとなると、“あの”さくら先輩も本当はか弱い女の子なんだ、としか思えなくなってしまう。
それに・・・

「そんなこと、ないですよ・・・先輩のおなか、柔らかいです・・・」

あれだけの声を出せるのだから、力めばかなり引き締まった腹筋が露になるのかも知れない。
だが、今、平井の手が服越しに触れるさくらのお腹は、
彼が想像していたとおりの、柔らかな女の子の感触だった。

「ん・・・うれしいな・・・ね、ほかの、ところも・・・いいんだよ?」

さくらの言葉に後押しされるように、平井の両手は再び動きだし、彼女の服を這い、登る。
彼女の身体は小さく、故にその胴を這い上がる手が胸の膨らみに達するまでにさしたる時間はかからなかった。

「あ・・・っ、ん・・・ぅ」

身長の割に豊かなさくらの胸を下から掬い上げるように触り、掴む。
少しずつ心のタガが外れてきているのか、その動作に躊躇は感じられない。

「ん・・・あ、っう・・・ん」
「先輩の胸、結構大きいですよね・・・それに、柔らかい・・・」
「そ、うかな・・・ん・・・は・・・っあ」

彼女が痛がったりしないよう、優しく、ゆっくりと手中の乳房を揉み、その柔らかな弾力を楽しむ。

「ん・・・ふっ・・・平井、くん・・・ブルマだけじゃなくて、あ、っく・・・ん、
 おっぱいも、好き、なんだね・・・ぁん・・・」
「・・・・・・」
180499 7/12:2006/05/09(火) 23:43:02 ID:zAyFRAFa

平井としては色々と言いたいところもあるのだが、
今はそういう議論をする気はないし、完全に否定出来ないのもまた事実であるだけに、何も言えない。
それよりも、今はもっと・・・

「先輩、あの・・・」
「ん・・・ふ? なぁに?」
「先輩の胸・・・直に触りたい・・・」
「んふ・・・平井、くん、だんだん調子に、っう・・・乗って、きたね・・・」

そう言われてちょっと困った顔をする平井に、艶を帯びた笑みを向けて、

「私の許可なんか、取らなくていいよ・・・あ、ん・・・全部、平井くんの好きにして、いい、から・・・」

何度も言われてきたことを、また繰り返される。
始めは半信半疑だったその言葉から、もはや疑いの余地は失われていた。
彼女から望み通りの答えを得て、今はただ望むがままに手を動かす。
さくらの胸を離すと、邪魔になる体操服の裾に手をかけようとして・・・
めくり上げようとした服は、勝手に上に上がってしまう。
勿論、そんな舞台装置が準備されていた訳などなく、

「はい、こうしたら平井くんもしやすいでしょ・・・
 あ、でもブラは自分で外すんだよ? 女の子のブラを外すのって、自分でやる方がドキドキするでしょ〜?」

見透かされているような恥ずかしさを覚えつつも、
目の前で服をめくり上げて、下着に包まれているとはいえ胸を晒すという挑発じみた行為をされては、
手が動いてしまうのを止めることは不可能だったし、止めるつもりもなかった。
平井の手は躊躇なくさくらの胸に伸び、その柔らかな双丘を先程のように包みこみ、揉みしだく。
覆うものが薄い下着だけとなったそこは、掌に遥かに生々しい感触を味わわせてくれる。
だが、今の平井にはこれでは物足りない。
さくらの胸を一旦解放して、ブラに沿って彼女の背中に手を伸ばし・・・

「ん、そう、よくわかったね、ホックが背中にあるの・・・もしかして、慣れてる?」
「ち、違いますよ! ほら、前に何もついてないし!」
「あ、そっか。 ふむふむ、つまりそれだけ私のおっぱいを凝視していた、と」
「もう・・・否定はしません・・・よっ」
「え・・・あっ!?」

あっけなくブラのホックは外されてしまい、緩んだ下着は胸の上にずらされて・・・

「さくら先輩の胸・・・キレイですね・・・」
「あ、え、あ〜、うん・・・その・・・あ、ありがと・・・」
「? なんだか随分恥ずかしそうですね、今更」
「あ・・・うん、その、ね・・・平井くん、きっとてこずるだろうって思ってて、
 心の準備が、いまいち・・・んっ!」

これまで羞恥に頬を染めることはあっても先輩としての余裕だけは常に保っていたさくらが、
初めて平井の前で動揺を見せる。
それは僅かな心の揺れに過ぎなかったが、それでも彼にとっては十分に驚くべきことであり、
新鮮で、嬉しくもあった。
自分の手が、演技で守りを固めた彼女の“素”の部分を引き出したのだと直感したから。
ブラをあっけなく外せたのは単なる偶然。
だがそんな偶然のお陰で、今なら彼女の“素”を露わにできるかもしれない―――
・・・そう思うが早いか、彼の手はこれまでと段違いの積極さで動きだす。

「っふぁ!? 平井、くん・・・!? あ! ぅんっ! ちょ、そんな、急に・・・ぃっ!」
「・・・先輩の胸、マシュマロみたいな手触りで・・・でも、ちゃんと弾力もあるんですね・・・
 触ってて、凄く気持いいです・・・」

さくらの訴えに答えず、一方的に言いたいことを言い、したいようにする。
181499 8/12:2006/05/09(火) 23:44:12 ID:zAyFRAFa

「それに先輩のここ、とがってますね・・・感じてくれてるの、演技じゃないんですね・・・」
「あく・・・! や! ん・・・っ! そん、なっ! そこ、や・・・あまり、弄っちゃ、ダメ・・・ぇ」

当然ながら母親以外の女性の乳房や乳首に触れたことなど初めてで、
故に慎重に、痛がらせないようにと意識して、二つの頂を丁寧に愛撫する。
そんないじらしい、焦らすような指づかいがさくらの身体を燻らせ、悩ましい声を上げさせる。

「は・・・うんっ、あ・・・くぅ! ひ、ぅ・・・なんで、ひらい・・・くんっ! そんな、上手なの・・・!?」
「いや・・・上手いとか、よくわかりませんが・・・
 でも、オレが上手いってより・・・先輩が、感じやすいんじゃないんですか?」
「な、なー! そんな、ことっ! ないよっ!」

さくらの慌てぶりに勢いを得て、平井の行為はエスカレートしてゆく。
椅子から僅かに腰を浮かせ、目の前で小刻みに揺れる半裸の肢体に顔を寄せて・・・

「ひゃうっ!? ちょ、平井くんっ!? やめ、あ! そんな! あ! んぁあ!」

ちゅ、ぴちゃ、ちゅぷ・・・と、
湿った音を立ててさくらの乳房を舐め、唇を押し付ける。

「ふ・・・んぁ! は、ひぁ! ひ、らい・・・く・・・ンぁあ! やめ・・・!
 ソコは、あ! 舐めちゃ! や、だめぇ!」

平井の舌が双丘の頂点に達するとさくらの声は更に上擦り、
敏感な器官に加えられるねっとりとした愛撫に、切なげな呻き声を上げる。

「は・・・ふっ! ひぁ、ひ、らい、くんっ! いくら、おっぱい好きだから、って、うぅ・・・
 そんな、ネチネチするのは、ダメだよぅ・・・っ」

あくまでさくらはいつもの調子を演じようとするが、
顔を真っ赤に染めながら余裕を見せようとする様はいじらしく、
そんなさくらをもっと苛めてみたい、もっと責めたててやりたいという、
嗜虐的な欲求が平井の中で鎌首をもたげる。

「先輩こそダメですよ・・・そんな声を出されると、もっと意地悪したくなっちゃうじゃないですか・・・」
「や、平井くん!? え、あ! ひう! ぁん! あ、ぁあ・・・んんん―――!」

一方の乳首を三本の指で執拗にこねくり回しながら、もう一方には唇でちゅぅう―――と、吸い付く。
そのまま乳房を限界まで引っ張ると、やがて“ちゅぽんっ”と弾けてさくらの乳房が揺れる。

「んあぁあ! ダメだよっ! そんな、乱暴にっ! しちゃ、あぁあっ!」

そんな責めを何度か繰り返してから、す―――、と顔を離し椅子に座り直す。
あられもなく乱れた声を垂れ流し身体をがくがくと揺らす先輩が、どんな表情をしているのか見たくなったのだ。
後輩の唇に胸を弄ばれ、今なお片方の胸を指で弄られ続けている彼女の顔からは、
いつもの勝気な表情は消えていた。
八の字に歪んだ眉根に、切なげに薄く閉じられ潤みきった瞳。
頬は朱に染まり、汗の浮き出た額には彼女の美しい黒髪が貼りついている。
本人の意思を無視して勝手に喘ぎを奏でる唇の端からはかすかに涎が垂れ落ち、
それら全てがさくらという少女の現状―――
後輩の愛撫にされるがままに乱されて、与えられる快楽に翻弄されている、ということを如実に示していた。

「さくら先輩、本当に気持ちいいんですね・・・すごく、いやらしい顔ですよ・・・」
「・・・! や、ダメぇ・・・ あ、っく! そんな、恥ずかしいこと、言っちゃ・・・やだよ・・・」

羞恥で泣きそうな声をあげる彼女に満足しながらも、更に彼女を責めたてよう、いや、悦ばそうと思う。
その前に、ふと悶える彼女の全身を見たいと思い官能に蕩けつつあるさくらの顔から目線を離し、
上から下へと視野を下げて行って・・・
平井の目は彼女の腰から少し下がった所で止まる―――いや、釘付けになる。
182499 9/12:2006/05/09(火) 23:45:37 ID:zAyFRAFa

そこにあるのは、あまりに毎日毎日言われ続けるから、
いつか本当に気になってしまいそうな彼女の濃紺のブルマとそこからすらりと伸びる白い太腿が、
切なげにもぞもぞと擦り合わされている光景だった。
平井の視線に気付いていないのか、それとも無意識に身体が動いてしまっているのか、
さくらの両足の悩ましげな動きは一向に収まる気配はない。
その動作から、さくらが―――本人が意識しているかどうかはともかく、
彼女の身体が何を求めているかは経験の無い平井にもよくわかった。
そのことを指摘してやってさらに彼女の羞恥を煽ろうかとも考えたが、
これ以上追い詰めることもないと思い―――と言うより、
目の前で切なげに、もどかしそうに、物欲しげに蠢く白い太股の付け根・・・
彼女がやたら強調したがるブルマの中身がどうしようもなく気になって、
言葉より先に、手が伸びた。

「ひぁうっ!? い、ぁあ! っんぐ! や! ちょ・・・っ! ひらいくんっ!?」

さくらの声が半オクターブ跳ね上がる。
自身の体操服を捲り上げていた手を離し、慌てて急所を弄る彼の指を妨げようとするが、
平井の指が“そこ”に押し付けられる度にさくらの身体はがくんと揺れ、
背筋を通って脳天へと駆け上がる鮮烈な快楽に全ての動作は封じられてしまうのか、
平井の手に両手を添えることは出来ても力が入らず、自分の秘所から引き剥がすことは出来なかった。

「あ、あ! ひら、い、うく―――っ! あん! ぁう! んぁあ!」

ブルマ越しにさくらの秘所に指を押し付けると、
彼女はまるでそういう仕組みのおもちゃのように、敏感に、そして過剰なほどに激しく反応を示す。
それは平井がまるで彼女を・・・いつも自分をからかってばかりいる先輩を支配しているかのように錯覚させ、
彼の中の嗜虐欲、征服欲を膨張させる。
これまで感じたことのなかった淫靡な悦びは、
服越しとはいえ初めて女性のそこに触れているという緊張を平井から忘れさせる。
今の彼は、ひたすらにさくらの声や揺れる身体、それに秘所の感触を楽しんでいる。
そしてそれ故に、指先に伝わる感触の変化を敏感に察知することもできた。

「さくら先輩・・・ここ、じっとりとして・・・濡れてきました・・・」
「あっ! うく・・・! え、えぇえ!? そん、な、っひう!」
「よく見ると、ブルマーにちょっとだけ染みが出来てて、ほら、こうすると少しずつ広がってく・・・」

言いながら、指をブルマー越しにさくらの秘所にぐりぐりと擦り付ける。

「うっ・・・んぁあっ!? や、ひ! やはっ! や、め―――!」

平井の指の動きに合わせて浮き出た染みは確実に広がり、
微かに絹ずれの音を立てるのみだった“そこ”からは少しずつ湿った響きが生じる。

「先輩のここ、ブルマ越しなのにこんなになるなんて・・・この中、すごく濡れてるんですね」
「ん・・・あ、やぁ・・・しらな、いぁあ! そんなのっ! 知らな、いっ、よぉおっ!」

羞恥と快楽に翻弄されながらも、さくらは必死で先輩らしく、強がろうとする。
身体は依然、平井の愛撫に震え悶えるばかりだが、
それでも少しはこの刺激に耐性ができたか、呂律は先程よりしっかりしてきている。
だが、平井は別に気にしない。
何故なら―――すぐにまた、動転させられることがわかっているから。

「じゃあ、見せて貰いますね・・・先輩のブルマの中身」
「え・・・ちょっ! まって! や――――――!」

ブルマごと下着をずり下げようとして僅かに逡巡し、
秘所を覆う部分に指をひっかけると、横にずらして隠されたところを剥き出しにする。
あれだけ彼女が強調し続けたモノだし、敢えて脱がさずにおくのもいいだろうと思ったのだ。
183499 10/12:2006/05/09(火) 23:46:54 ID:zAyFRAFa

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

平井の愛撫によってじっとりと濡れ、熱を帯びた秘所を冷えた外気に晒されて、
もぞもぞと動いていた太腿がぴたりと止まる。
本来、特別な相手にしか決して見せることの無い秘めたる器官を異性の、後輩の目前に晒し、
じっくりと凝視される恥ずかしさからか・・・
さくらは声を出すことも手で平井の視線を遮ることもせず、ただ息を呑んで静止している。
彼女の秘所から分泌される蜜は下着とその上に重ねられた服を濡らすほどで、
受け止める布地が取り去られた今、重力に従って“つ―――ぅ”と太腿を伝い、垂れ落ちてゆく。

自ら暴き出した目の前の薄桃色の狭い裂目から、平井は目を離せない。
年齢的に本来は許されない雑誌やインターネットを介して、
女性の“そこ”がどういうものかは知識として知ってはいた。
だが、眼前にある“それ”は余りにリアルで、それまでの勢いも忘れてただ見入ってしまう。
そこは僅かにひくひくと震え、透明な液体が湧き出ているのがわかる。
溢れ出た液体が雫となって“つぅ”と太腿を垂れ落ちてゆくのを見て、
平井は半ば無意識にそれを舌で掬い取る。

「ひゃうっ!?」

陰部にごく近い太腿を直に舐められた刺激に、そしてその甲高い悲鳴のようなさくらの声に、
二人はそれぞれ忘我に近かった状況から目を醒ます。
さくらは慌てて自分の秘所を両手で覆い隠すが、

「あひ・・・! や、あ、うぁあっ! やめ、ひら、あ、ひぁあっ!」

足の間から差し込まれた手は簡単にそのガードの下を掻い潜り、さくらの蜜が溢れる秘裂へと指を這わせる。
片方の手でブルマと下着を脇に寄せておいて、
もう一方の手が秘裂に溜まった蜜を描き出すかのように上下に動き、
くちゅり、くちゃ、ちゅく・・・と卑猥な音を奏でる。

「あ、んぁ・・・! や! ひらい、く・・・んぁあ! あふ、ん! ひあ! んなぁあ!」

敏感すぎる秘部を直に触り撫でられる感触にさくらの声のトーンがまた少し上がり、
がくがくと揺れる両足を伝う彼女の蜜は、僅かだが確実に、その量を増している。

「すご・・・さくら先輩の、ここ・・・どんどん、溢れてくる・・・」
「ひん・・・っ! あ、ふ! ん、くぁあ! あは・・・恥ずかしい、こと・・・あん! 言っちゃ、だめ・・・」
「でも、ホント・・・すごい・・・ぬるぬるして、温かくて・・・」
「だか、らぁ・・・っ! あん・・・あ! ふぁ! っう・・・や、つよ・・・んぁあ!」

さくらの悶える様と、拙いはずの自分の愛撫に敏感に反応してくれる彼女の秘所の蕩け具合に、
平井の興奮はイヤがおうにも昂ぶり、指使いは徐々に強く、荒くなる。

「ひ・・・っく! ぅあ! あ、ふ・・・んっ!」

耐えかねたのは快楽か、痛みか・・・さくらは更に高い声で呻きながら、よろめくように一歩、二歩と後退する。
距離を置いて秘所を責め立てる後輩の指から一度は解放されるが、
その間合いも平井が椅子から腰を上げてしまえば一歩で詰められてしまう距離に過ぎない。

「あ・・・ぅうっ! あん・・・っ! や、つよ・・・ぅく! だめ、あ、ひぅっ!」

立ち上がった彼の腕は呆気なくさくらの秘所を捕捉して、より強い愛撫を加える。
あとは、先程と逆の光景が展開されるのみだった。
椅子に座った平井をさくらが壁際に追い詰めたように、今度は平井の指がさくらを追い立てる。

「ひぅ・・・! ん、ふ・・・っ! あふ! あ、んぁああ! やめ・・・っ! 押し付けちゃ・・・あ、あぁあ!」
184499 11/12:2006/05/09(火) 23:48:51 ID:zAyFRAFa

ガクガクとよろめく脚でさくらは半歩、一歩、また半歩・・・と、よろよろとあとずさり、
彼女が後退した分だけ平井は歩を進め、決して愛撫の手を緩めない。
ちゅく、ちゅぷ、という卑猥な水音と、拒絶と陶酔がない交ぜになったさくらの喘ぎ声をBGMに、
二人はゆっくりと部室を横断する。
秘所からはとどまることなく蜜がこぼれ、さくらの太腿を幾筋もの流れとなって伝い落ちる。
また、秘裂に食い込む平井の指にも生温かい蜜は絡みつき、
ぽた、ぽた、と雫となって床に跡を残す。
壁際の椅子の傍から始まった淫蜜の道標は部屋の中央へと続き、やがて・・・

「・・・あっ!?」

どん、と鈍い音がしてさくらの身体が大きく揺れる。
彼女の背後にはいつの間にか部屋中央のテーブルがあった。

「や・・・ひら、い、く・・・あ、や! まって! ひぁ! ひゃぅ! あ、んく・・・ん! んぁあ!」

これ以上後退できないさくらの秘所に平井の指が食い込み、秘裂の浅いところに指を擦りつける。
さくらの上げる嬌声はいまだ限界を迎えることなく高く大きくなり、悲鳴のように響くことさえある。
だが・・・

「先輩・・・本当は、嫌がってないでしょう・・・っていうか、悦んでません?」
「ひ・・・っく! んぁ・・・な、なぁ・・・っ!? あふ! そ、んな、ことっ! な、あ、ふわぁあ!」
「だってほら、濡れてるのは言うに及ばずとしても、手で押さえる訳で無し、脚だって閉じないし・・・」
「あふ・・・! む、むー! だ、って、んく! っは・・・ほ、ら・・・あ、んぅっ!」

さくらが頬を真っ赤に染めているのは変わらないのだが、
それまでは眉根を寄せて、薄く閉じた目尻に涙すら浮かべて泣き出しそうな表情だったのが、
平井に指摘されてからは見開いた目をぱちくりさせて、隠し事がバレて恥ずかしくてたまらない、
といった感じに慌てふためいているように見える。
そして、甲高い嬌声の合間にぼそぼそと弁解するような小さな声で・・・

「だ・・・って、あ、ふぁ! ん・・・平井、くん・・・その、んく! あぅ・・・、上手、なんだもん・・・」
「じょ、上手、ですか?」
「っひぅ! そ、そうだよー! こ、れま、で・・・っ、あん!
 いったい、何人のコに、ふぁ! あ、いひ! っ、ブルマ穿かせて、・・・んぁあ! 泣かせてきたのかなっ!」
「穿かせてないし泣かせてないですよっ!」

思わずさくらを責める指に力が入り、

「!? んぁあああっ!」

いきなりの強烈な刺激にさくらは背中を仰け反らせてガクガクと身体を揺らすが、
それが苦痛や羞恥ではなく快楽によるものだとは、もはや疑い様も無かった。

「せ、先輩こそ! こうやって何人騙してきたんですかっ!」
「なー! だ、騙してなんか、あぅ! いな、あんっ! いない、よおっ!
 それに・・・ぃあ! あふ、っく・・・ぅ、こんな、こと、するの・・・
 ひらい、くんが・・・はじめて、だよ・・・っ」
「え・・・いや、そんなまたまた・・・だって、初めてで、好きにしていいだなんて、普通は・・・」
「んく・・・じゃあ・・・確かめて、みる・・・?」

さくらの言葉に、思わず平井の指が止まる。
“はじめて”であることを、“確かめる”ということ。
確かめるのは、理屈としては簡単―――すれば、わかる・・・はず。
だが・・・

「いいん、ですか・・・本当に?」
185499 12/12 (前編 了):2006/05/09(火) 23:50:46 ID:zAyFRAFa

ごくり、と唾を飲み込んで、彼女の真意を問う。
何処までが演技で何処までが本気か、そもそも本気というものが有るのかすら謎である先輩に、
こんなことを問うこと自体、無意味だとわかっているのだが、それでも問わずにいられない。
その何度も繰り返された問いに対し、
さくらは朱の差した表情に笑みを浮かべることで、答える。

―――きみの好きなようにしていいよ、と。

言葉もなしに平井がそれを理解できてしまったのは、彼女の表現力の故だろうか。
こうして、最後の心のタガが外れようとしている彼を後押しするように、
さくらは腰を浮かせてテーブルの縁に座ると平井の前で脚を開き、
自らの指で秘所を覆うブルマとショーツを横にずらして見せて・・・

「ほら、ここ・・・平井くんがあんなに弄ったから、もう、こんななの・・・
 このまま・・・平井くんの大好きなブルマ、穿いたままでいてあげるから・・・ね?」
「い、や・・・ぶ、ブルマは・・・」

どうでもいい、とすら言葉が続かない。
さっきまで散々に弄りたおして、例え彼女の演技だったとしてもあれだけの嬌声を上げさせていたはずなのに、
今は完全に彼女に圧倒されている・・・というより、頭が真っ白になってしまっている。
目の前で挑発するかのような態度を取る先輩を抱きたい、彼女の中に入りたい、と思うのだが、
その為の手順が全く浮かんでこないのだ。

「平井くん・・・ブルマが好きで眺めていたいのかも知れないけど・・・
 わたしだけ、こんな風に見せてるのって・・・恥ずかしいから、平井くんのも・・・見せて・・・ね?」
「あ、は、はい!」

もはやブルマのことを突っ込むことすら放棄して、慌ててジャージの紐を解きにかかる。
覚束ない手つきではあっても、作業はジャージとトランクスを下ろすだけのこと、
呆気なくことは済み、平井も先輩に倣って己の性器を露出させる。

「わ・・・すご・・・い、そんなに、なるんだ・・・」
「それは・・・先輩が、あんな声出して、そんな格好するから・・・」
「そうなの? 嬉しいな・・・でも、こんな格好でそんな風になるなんて、やっぱり平井くんってブルマ好」
「ちがいますって!」

流石に連続でスルーすることは出来ず、思わず身を乗り出して抗議して、
それから・・・

「・・・あ」
「もう・・・平井くん、焦っちゃダメだよー? 逃げたりしないから、ね・・・」

勢いでテーブルに横たわるさくらに覆い被さるような体勢になってしまったことに気付く。

「じゃ、じゃあ・・・先輩・・・」
「うん、いいよ・・・きて」

結局、さくらに導かれるままにここまで来てしまったようなものだが、最早そんなことを気にはしない。
ただ、求めるままに己の腰を彼女の腰に寄せて、
そそり立った肉茎の先端を、彼女の濡れた裂目に狙いをつけて・・・

「先輩・・・いきます」
「ん・・・優しくして・・・ね?」


186499:2006/05/09(火) 23:51:57 ID:zAyFRAFa
今回の投下分は以上です。
後編は多分明日か明後日に投下させて頂きますね。
では、読んで下さった方、どうもありがとうございました。
187名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 00:57:36 ID:YMpKJl13
みなの者、神が!!
低脳神が光臨なされたぞ!!!!
188名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:27:20 ID:coXqq2Yj
GJ!

エロいっすね!
続き楽しみにしています!


……こっちはイマイチやる気でていないので……エロ書くの久しぶりなんで難しい……
189名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:39:51 ID:BA1FAprY
GJ〜GJ〜ナイス帝能ネ申
190名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 03:49:48 ID:aYVu3tpy
て い の う
て い の う
191名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 17:10:58 ID:Iu7t8M8R
低脳っ!

「背が低くて乳が大きめ、黒髪ロング」のコに
ブルマとジャージ(コレ重要)着せて○クロスしたく
なってきたっ!

…そんな「わたしの○クロス部」w
192499:2006/05/10(水) 22:25:54 ID:t+LvMKyo
どもです、レス下さった方々ありがとうございます。
では、>>174-185の続きってことで、後編を投下させて頂きます。
193499 1/11:2006/05/10(水) 22:27:16 ID:t+LvMKyo

さくらの顔は恥ずかしげに朱に染まり、僅かに緊張している様にも見える。
どこまでが演技で何処までが本気なのか、そもそもこの人に本気なんてあるのか・・・等と思いつつも、
自分に身体を開き、受け入れてくれようとしている彼女が愛しく思えて、
不意に軽く唇を重ね―――

「―――! あん・・・平井くんったら・・・あ、ああ! んっ! うぁ・・・あぁぁ!」

ちゅく、と微かな音を立てて先端を秘裂にあてがうと、
そこはぬるぬるに濡れて柔らかく温かくい感触で平井のモノを迎える。
その感触に導かれるようにゆっくりと腰を沈めていこうとして、だが、肉槍の穂先はすぐに障壁に阻まれる。
それが何なのか、経験はなくとも知識でわかる。

「せん、ぱい・・・本当に・・・」
「むー、信じてなかったなー? ・・・うん、そういうことだから、ね・・・優しく・・・お願いだよ・・・?」

やはり、さくらの顔は少しだけ引き攣っている。
“余裕”を演じようとして、演じきれていない・・・そんな表情を見せる彼女にこくんと一つ頷いて、
少しずつ、僅かずつ腰に力を加え、肉の楔で未通の証に、穴を穿つ。

「あ、あぁ・・・うく! ん、う・・・! ・・・っ!」

みりみり、と無理矢理に引き裂くような感触と共に・・・平井の肉槍は、さくらの処女を貫く。
貫き・・・破ってしまった生々しい感触に罪悪感のようなものを感じながらも、
初めて体験する交わりの興奮とさくらの中の蕩けそうな感触に誘われ、己を膣内へと沈めてゆく。

「んっ! あ、うぁあ・・・! い・・・っ! ひらい、く・・・っ! もっと、ゆっくり・・・!」

テーブルに垂れる透明だったさくらの蜜に、赤い筋が混じる。
キツく閉じた目尻に涙を浮かべ、弱々しい悲鳴のような声を上げる彼女は、
これまでにさくらが見せたどの演技にも比べ様も無い程に、痛々しく、辛そうであった。
だが・・・平井は、止まれない。
寸前まで未通であったさくらの膣は狭く、更に鍛えられた腹筋のせいもあり、
侵入した平井のモノを容赦なく締め付ける。
にも関わらず、先ほどの愛撫で漏れ出した愛液は今なお止まる事を知らず、
さくらを貫かんとする肉茎はぬるぬるとぬめる蜜まみれの秘肉の感触に呑まれ、
抵抗も引っかかりも感じることなくずぶずぶと沈み込んでゆく。

「いひ・・・! あ、んぁあっ! あ・・・ぐ! ひぎ・・・っうぁあ! いつ・・・いた・・・ぁあ!」

だが、例え摩擦の痛みがさくら自身の潤滑油でいくら緩和されようとも、
狭く細い未通の膣を硬い肉茎が押し広げる、引き裂くような痛みが消えはしないことは、
さくらの声と表情から、平井にもよくわかる。
だが、それでも・・・止まれなかった。

「先輩・・・ごめん、でも、オレ・・・先輩のなか、気持ちよすぎて・・・ごめん・・・!」

痛いくらいに締め付けて、まるで異物を排除しようとするかのような無数の襞の蠢きも、
ぬめりをもった大量の蜜にまみれてしまえば呑み込んだ肉茎に対する緻密な愛撫にしか成り得ない。

「ひぅ・・・! ん・・・く、ぅ・・・! いい・・・よ・・・、その、まま・・・あぐ!」

己のモノを包み込み、溶かされてしまいそうな程に甘美なさくらの中の感触に、
平井の本能は抵抗することなど出来ない。
せめてゆっくりと・・・という思いも虚しく、ずぷずぷと彼女の膣内に肉槍を突き込んで―――
やがて、全てをさくらの中に埋め込んだ。
194499 2/11:2006/05/10(水) 22:28:32 ID:t+LvMKyo

「っはぁ・・・全部、はいった・・・さくら、先輩・・・大丈夫・・・?」
「っく・・・う・・・っ、は・・・ぁ・・・ぅ」

ぎゅっと目を瞑ったまま涙を流し、明らかに痛みに耐えているその表情からは、
少しも“大丈夫”な要素の欠片など見つけられはしない。
なのに、そんなさくらの表情を目の当たりにしたというのに、
彼女の膣内のもたらす快楽があまりにも甘美すぎて全く萎えることのない己自身の有り様に、
平井は軽い自己嫌悪に陥る。

「ひらい・・・くん・・・」
「せ、先輩!? 大、丈夫、ですか?」
「うふ、ふ・・・平井くん、たら・・・本当に、ブルマ、穿いたままで、しちゃうんだ、から・・・
 全くもって・・・っく・・・ブルマ好き、だねぇ・・・」
「え、いや、その・・・それは先輩が! って・・・」

この人はこんなときでも、軽口を叩いて、余裕ぶろうとして・・・
でも、今回ばかりはその表情が余りにも痛々しすぎて、正視に堪えなかった。
それなのに・・・

「どうしたの・・・? そのままじゃ、全然満足できないでしょ? 動いて・・・いいんだよ?」
「んな・・・」
「それとも、ちょっとでも、んく・・・動くと、でちゃい、そう、だったり・・・?
 平井くんって、実は・・・っは・・・早ろ」
「ちがいますよっ!」

心配、というか罪悪感すら抱いているはずなのに、どうしてこう突っ込まされてしまうのか。
すこし頭を抱えたい気分になりながらも、今は彼女を気遣うことを優先して、

「だって、先輩、すごく痛そうで、辛そうで・・・そんなんで動かれたら、いくら先輩だって・・・」
「あは・・・わたしのこと、心配してくれてるんだね・・・優しいなぁ、平井くんは・・・」

痛みで歪んだ顔に痛みを浮かべたまま、さくらは嬉しそうに笑う。
彼女の儚げな笑顔に思わず見入ってしまう平井に、彼女は言葉を続ける。

「でも、いいんだよ・・・動いてくれて・・・
 平井くん、気持ちよくなってくれたほうが、わたしも、嬉しいから・・・」
「え・・・な、でも!」
「ふふ、先輩で、部長を・・・みくびっちゃ、ダメ、だよ?
 演技っていうのは、ね・・・っ、その、役柄に、なりきる、ことなの・・・」
「・・・は?」
「プロの役者さんなんかほら、泣いたり、笑ったり、自由自在、でしょ・・・?
 その場面にいる、人物になりきって・・・その場面に即した感情を、自分のものにしちゃうから、
 演技の中で、場面ごとに悲しくなって泣いて、嬉しくなって笑えるの。
 だから、ね・・・これから、わたし・・・平井くんにされて、気持ちよくなるって、演技をするの。
 平井くんに思い切り動かれて、それで、私は感じちゃって・・・悦んじゃうの・・・」

身体の芯がぞくりと震えるような、淫らな言葉。
だが、同時に・・・

「で、でも、そんな・・・演技だなんて、そこまでして、無理させるのは・・・
 なんていうか、さくら先輩の中、凄く、気持ちよくて・・・続き、したいけど、でも・・・!
 そんなに、先輩に負担掛けるくらいなら・・・これで、もう、終わりに・・・」

さくらに彼女自身を欺かせてまで自分ひとりが気持ちよくなることへの抵抗から来る、
平井の偽り無き本音であった。
195499 3/11:2006/05/10(水) 22:29:36 ID:t+LvMKyo

「あの、もしオレを騙して入部させたことに引け目とかあるんだったら、
 そんなのもう気にしてませんから! だから先輩、自分を騙してまで、こんなこと・・・!」
「んー、それは・・・違うんだよね・・・
 私が騙そうとしてるのは・・・って、騙すなんて人聞きの悪いこと、言っちゃだめー!
 っつう! ん、ええと、ね・・・わたし・・・本当に、平井くんと・・・気持ちよく、なりたいんだよ・・・?」
「え・・・で、でも・・・」
「・・・無理矢理入部させちゃったのに、ちゃんとついて来てくれるきみと、
 気持ちよく、なりたいなって・・・おかしいことじゃ、ないよね?
 わたし、初めてだから・・・痛いけど、でも・・・気持ちいいって演技をすれば、
 平井くんだって、気を使わないですむだろうし、だから・・・わたしの身体を、誤魔化しちゃおうって」

それまで痛みに耐えるようにテーブルの縁をぎゅっと握っていた手を離し、
さくらは彼女に覆い被さるようにしている後輩の背に手を回す。

「だから・・・平井くんが、わたしとするの、イヤじゃなかったら・・・
 このまま、してくれると・・・嬉しいな」

元々、既にさくらの中に入っているモノはその感触に酔い痴れていて、
もっと彼女の膣内を楽しみたくてたまらないのを、どうにか抑えているようなもの。
そこにこんな台詞を持ってこられて、それでも慎ましく辞退できるほど、
平井は我慢強くは出来ていない。
もう、改めて確認を取ろうとも思わない。
今日だけで何度“好きにしていい”と言われたことか。
だからもう、彼女が求めるように、己自身が望むままに・・・

「・・・んっ! あ、く・・・ぅ・・・んん! い、ひ・・・ぃ、よぉ・・・! あ、うん・・・っ」

何も言わず、ゆっくりとさくらの中のモノを、引き抜くように動かし始める。

「あ、か・・・! あ、っふ・・・! い、くぁ・・・ん! あ、あ・・・ん・・・っ」

恐らくまだ苦痛しか感じないであろうさくらの、喘ぎに模した悲鳴とも嗚咽とも取れる声を聞きながら、
カリを残して引き抜いた肉竿を、今度は同じ速度で彼女の中に埋め戻す。
彼女が彼女自身を欺いてまで、自分と交わること、悦びを分かつことを求めてくれているのなら、
平井に出来ることは求められるままに身体を動かすこと、そして感じたままの感想を、口にすることだけ。

「先輩の、なか・・・すごい・・・気持ち、よすぎる・・・腰が、勝手に、動いちゃいますよ・・・」
「っ、ふぁ・・・ほ、んとう・・・に? あ、うく! うれし、いな・・・わたし、も・・・っう!」

彼女がまだ無理をしていることは、その声から明らかだった。
それでも、さくらは痛みに耐えて平井のモノを受け入れ、
平井は彼女の身体でより深い快楽を得たいという欲求を抑えて、ゆっくり、ゆっくりと抽送を続ける。

「あぅ・・・んく・・・ぅ、あ、う! ん・・・っ、くぅ・・・ふぁ・・・い、い・・・っ、よ・・・ぉ」

“いい”と言われても、言葉どおりに彼女が感じてなどいないことは明白。
それでも苦しげに、切なげに顔を歪めながらもそんな言葉を紡ぐさくらはあまりにいじらしくて、
もっと彼女を愛したい、もっと激しく彼女の中に突き込んで、掻き乱してしまいたい、と思ってしまう。
そうでなくともさくらのソコはますます蜜にまみれ、
ぬるぬるに濡れた襞の一つ一つが肉茎に絡み、締め付ける感触は平井が知る他のどんな感覚よりも甘美で、
気を抜けば理性など簡単に溶かされてしまいそうに思える。
そんなさくらの秘所に、じゅぷ、ぬぷ、と卑猥な水音を響かせながら肉茎を抜き差ししつつ、

「せんぱ・・・いっ、ぅく・・・、先輩の、なか・・・ほんとに、気持ちよくて・・・
 オレ・・・ダメです、先輩がまだ、痛いってわかってるのに、腰が・・・止まらないです・・・!」
「ひう! ん・・・あ、ふ・・・そんなに、気持ち、いっ! いいんだね、んふ・・・嬉しい、な」

さくらの身体が初めて受け入れた肉茎に慣れるのを待たずに、抽送のペースは少しずつ上がってしまう。
彼女に対する罪悪感に苛まれながらも、一度上げてしまったペースを元に戻すことは不可能だった。
196499 4/11:2006/05/10(水) 22:30:42 ID:t+LvMKyo

「うく・・・ぅ、あ・・・ん! ね、ひら、い、くん・・・っ、わたしの、おっぱい、さわって・・・ぇ」
「え・・・え?」
「ね・・・あぐ! っう・・・さっき、みたく・・・気持ちよく、して欲しい、な・・・っん・・・」
「あ、は、はいっ!」

さくらに求められるままに身体を片手で支え、空いた手を彼女の身体の割に豊かな胸に被せる。
平井の手にやや余る乳房全体を優しく揉み解し、薄桃色の乳輪に添って指を滑らせると、
さくらは苦痛の表情のままに、ぴくんと身体を小さく揺らす。
指先で先端の突起を擦ると身体の揺れがやや大きくなり、
その突起を痛みを与えない程度にきゅっとつまむと、僅かに背を反らして敏感に反応する。

「は・・・んっ! あく・・・ぅ・・・、ひら、い・・・くん・・・っ! あん・・・それ・・・い、い・・・」

腰の動きを止めることなく敏感な胸を優しく責め立てると、
それまでほとんど苦痛しか伝わってこなかったさくらの声に、僅かに艶が戻った気がする。
挿入の直後には引き攣り血の気の引いた表情しか見せなかったさくらの顔にも、
恥ずかしげな、悩ましげな、赤みの差した顔色が僅かに戻ったように見える。

「ひぁ・・・! あ、んく! や、ん、そこ・・・ぉ、いつ・・・! あ、んん! っく・・・う!」

まだまだ辛そうなのに変わりはないのだが、それでも少しずつ、少しずつ・・・
さくらの声は甘い響きを帯びてくる。
恐らく、それは演技なのだろう。
だが、少なくとも今のさくらには演技をする余裕が出来たということ。

「は・・・っ、さくら、先輩・・・、ちょっと、声が・・・えっちっぽく、なってきましたよ」
「あ、ぅん・・・っ、もう・・・平井くんの、指が、えっちなせい、なんだから・・・っ」
「じゃあ、ちゃんと、感じてくれているんですね・・・」
「うん、でも・・・あん・・・もうちょっと、強くしても、んぅ・・・いいよ」

強くして欲しいんですね、とは敢えて口に出さず、
それまで優しくマッサージでもするかのようだった愛撫に、少しずつ力を加える。
はっきりと弾力を感じるくらいに乳房を揉み捏ねて、
既に尖っている乳首を指で挟むとコリコリとした感触が得られるくらいに強めに摘み上げる。

「あ、そ、そう・・・あふ! ん・・・あく、ひぅ! あ・・・あぁ・・・ん! っく・・・、ひぁ、あ!」

そんな平井の指戯にさくらは敏感に反応して、
胸を弄る手指に力を込める度に、彼女の身体はびくんと跳ねて甲高い声を上げる。
彼女は演技をする、と言った。
だから、これはきっと演技のはず。
だが、彼女自身が己の身体を欺くための演技であると聞いているにも関わらず、
びくびくと震える肢体や艶やかさを増す声に、平井の劣情はいやがおうにもそそられてしまう。
昂ぶる劣情は更なる快楽を求め、さくらと交わり合う感触をもっと強く味わおうとして、
彼女に突き立てる肉槍の勢いを加速させる。

「ふ・・・あ! あ、んぁあ! やめ・・・ひら、い、くんっ! そっちを、強くしちゃ、だめぇ!」

当然、さくらは突然の蛮行とも言うべき行為に非難の声を上げる。
だが、彼女に痛みを与えてしまったハズの行為に対して、
彼女があげる声には思ったよりも苦痛の響きが感じられない。
否、むしろ・・・

「あれ・・・さくら先輩・・・もしかして、もう、あまり痛く、ない・・・?」
「そ、そんなこと、あ、ぅうっ! ない、ないよっ! まだ、ジンジンするんだか・・・ら、あ、ふぁあ!」

痛みを隠しても隠し切れない、痛切としか言えなかった彼女の声は、明らかにその質を変えている。
今、平井の耳に届くのは、身体の奥から響いてくる快楽の疼きを必死で否定しようとする、
悩ましげに喘ぐ少女の声。
197499 5/11:2006/05/10(水) 22:31:48 ID:t+LvMKyo

「先輩・・・声が変わってます・・・胸だけじゃなくて、あそこでも、感じてるみたい・・・」
「なー! ちが、うぁあ! い、言ったでしょ! え、演技だよっ! こんな・・・あ、ふぁ!
 はじめて、なのにっ! こんなに、されてぇ! いた、痛いに、ひぅ! きまって、あ、んぁあ!」

もしこれが本当に演技だというなら、それは本当に大したものだと思う。
少なくとも彼女自身の身体は騙せているようだし、何より・・・
平井には、彼女が感じているようにしか思えないのだから。

「先輩・・・本当は、気持ちよくなってきてるんでしょ?」
「ち、違うよっ! あ、ひぁあ! い、っく! まだ、痛いんだ、からぁ! そんな、激しくしちゃ、だめぇ!」
「でも、先輩の中・・・さっきまでと、なんかこう、絡みつき方が、違ってきてて・・・」
「ひ、平井くんの、え、あ、あぅ! えっちっ! そんな、あん! ことっ、言っちゃ、いやぁ!」

実際に平井が感じるさくらの中の感触は、さっきまでとは違うものになっていた。
キツい締め付けは相変わらずだし、無数の襞は今も平井のモノを包み込んで絡み付いてくる。
だが、さくらが痛がっていたときは、侵入した異物を排除しようとするかのような動き方だったのが、
今はもっと深く受け容れよう、咥え込もうとして蠢いているかのようだ。
その感触に誘われるように、平井は腰の動きを更に加速させ・・・

「あ・・・やだ! だめ、だよぉっ! あ、んく・・・ふぁあ! ひぁ、やめ、はげしっ! あ、ふぁ!」

ずちゅ、ぬちゅ、ぐぷ、ぢゅぷ・・・
二人の交わる場所から規則的に響く水音は次第に大きくなり、
同じタイミングで上がるさくらの悲鳴・・・いや、嬌声も、突き入れられる度に高く大きくなっていく。
こうして彼女に覆い被さって秘所に肉茎を何度も突き入れて、切なげな嬌声を上げさせていると、
改めて自分がこの子悪魔じみた先輩を支配しているかのような気がしてくる。
愛撫の際にも何度かそう思い、その度に彼女の演技であったことを思い知らされてきた。
だが、今回ばかりは違う―――間違いなくさくらは自分のモノで乱れている―――
という思いは次第に強まり、やがて確信に変わる。
そしてその思いは、
“さくら先輩をもっと気持ちよくさせてあげたい”というポジティブな欲求と、
“感じているのを必死に隠そうとしている先輩をめちゃくちゃに乱れさせたい”というネガティブな欲求を生み、
二つの欲を同時に満たすべく、さくらの身体に更なる快楽を注ぎ込む。

「ふ・・・ぁあ!? あ、や、な、んぁあ! やだ、なにっ!? ふぁ! ひらい、くんっ! ちょ、あぁあ!」

初めはただ真っ直ぐに出し入れするだけだった肉茎を、
さくらの膣壁の一部に擦りつけるようにしたり、
突き込む角度を一突きごとに変えてみたり、
何度か浅く突いてからいきなり深く突き込んでみたり、
突き込むペースを不規則にしてみたり・・・

「や! うぁあっ! あ、だめぇ! ひらいくっ、あ、ひぁ! なんか、ヘンだよおっ! や、あ! あぁあ!?」

突然の、まるで自分を責め苛むモノが別のモノになってしまったかのような変化にさくらは困惑し、翻弄される。
それまでも一突きごとに勢いを増す抽送に掻き立てられる快感を押し留めるのに必死だったが、
すっかり痛みに慣れて敏感になってしまった膣内を不規則に、めちゃくちゃに掻き回す平井のモノは、
快楽という名の甘美な毒をさくらの身体に染み込ませ、脊髄を伝い脳に至り、その心まで犯す。

「ぃあ! あふ・・・っくう! ん、だめ、やめ・・・あ、うぁあ! もう、やぁ、だめだよおっ!」
「っふ・・・でも先輩、ダメって言いながら、すごい・・・感じまくってるようにしか、見えないですよ」
「んなぁあっ! ちが、違うーっ! あ、うくぅ! えんぎっ、演技なんだからっ! 感じて、なんか、んぁあ!」
「ほ、本当ですか・・・? だとしたら、そろそろ声は、抑えて貰わないと・・・
 先輩の声、よく通る、から・・・、はっ・・・っ、外まで、洩れちゃいます・・・よっ!」
「え、あ・・・あ! だめ、それ・・・だめっ! ね、よわく、もっと、あふ! よわく、してぇ!」
「それは、無理、ですよっ! だって、さくら先輩のなか、もう、凄くて・・・止められないです・・・っ」
「な、なーっ! だめ、声、でちゃうのっ! 抑えられないよおっ! だから、あふ・・・ダメだよお!」
198499 6/11:2006/05/10(水) 22:32:57 ID:t+LvMKyo

快楽に心を犯されているのはさくらだけではない。
キツく締まり絡みつく膣内に何度も何度も抜き差しされているモノは、
さくらにとっては初めに痛みを、そして今は逆らい難い快楽を容赦なく注ぎ込む肉の凶器であるが、
平井にとっては全身で最も敏感な器官なのだ。
それを先輩の少女の肉襞に延々と擦りつけることで味わい続けた快楽で、彼の心も既に溶けかけている。
さくらの中に突き込む度に射精感は確実に高まり、それを早く解放したくてたまらない。
だから彼女の声が外に洩れるのがまずいとわかっていても、抽送を止めることなど不可能だった。

「っく、この際、それも・・・いいかなっ、先輩には、あることないこと、たくさん大音量で広言されたしっ!
 お返しに、先輩のえっちな声、学校中に聞いてもらうのも・・・」
「や・・・だめ、ひぅ、うぁあっ! あんっ! いひ・・・! そんなの、だめ、だめだよー!」
「は・・・っ、でも、オレ、加減なんてできないし、先輩も、声、抑えられないんだから、どうせ、すぐ・・・っ」
「なー! そんな、ずるい、あ、やぁあ! あぅ、だめ、声、でちゃう! 止まらないよぉ!」

もし本当にそんな声が学校中に響き渡ったら、
恥ずかしいどころかさくらも平井も先生も含めて非常にまずいことになるのだが、
そんなところまで考えを回す余裕は既にない。

「くっ、は・・・っ、もう、隣の部室くらいには聞こえてますよっ! さあ、いつもの声で、喘いでくださいっ!」
「あ、ふぁああ! もう、もう・・・っ! いいもんっ! いっちゃう、言っちゃうもんっ! あふ、うく! 」

喘ぎ悶えながら、すぅ、と息を吸って―――

「ひ、ひ・・・っ、ひらいくんはっ! ぶしつでっ、せんぱいにっ! ブルマをはかせたままっ、えっちし」
「うわああああああ!」
「んんん――――――――――――――――――!?」

まさに学校中に響きかねないさくらの大音声は、
際どいのか手遅れなのかギリギリのところでどうにか遮られる。
・・・平井の唇にその口を塞がれることによって。

「――――――っぷあ! ななな、なんてこと言ってくれてんですかっ!」
「だって本当の」
「本当だったらいいってモンじゃないでしょーが!」
「でも、あぅ! ひらいくんが言ったんだよっ! 学校中に、ひらいくんとしてるときの声」
「だぁあああああああ!」
「んむ―――――――――!」

もう、唇は外せない。
既に手遅れな気がかなりしているが、それでもこれ以上の暴言を吐かせる訳には行かない。
とりあえず、明日からどんな目で見られるかとか、知り合いから何を聞かれるかとか、
考えれば考えただけ凹んでしまいそうだったので、
今は八つ当たり・・・否、正当な?意趣返しの意を込めて、
唇を塞がれてもがいている先輩に、己の欲求を余すことなく突き立てることにする。

「ん、んんん―――! んむ、んむっ!? んん―――! ん、んんん! んんんん――――――!」

通る声を封じられて、くぐもった低い呻き声しかあげられなくなったさくらの膣内を、
この状況でも萎えることの無い肉槍で遠慮も容赦もなくめちゃくちゃに突きまわす。
さくらはまだ何か言いたいのか、唇をもごもごと動かそうとしたり首を振って唇を自由にしようともがくが、
彼女の胸を弄っていた手を後頭部にあてがい下から頭を押さえて逃れられないようにしてしまい、
あとはただひたすらに快楽を貪る行為に集中する。

部室中に甲高く響いていたさくらの嬌声が封じられたあとは、
ぐちゅっ、じゅぷっ、ずちゅっ、ぬぷ・・・っ、ずぷぷ、ぢゅくっ、ぐぷ――――――と、
絡み合う性器が奏でる淫猥な水音が二人の耳にはっきりと届き、
互いの意識から徐々に今のこの行為のこと、互いの身体を貪ること以外の全てを、忘れさせていった。
199499 7/11:2006/05/10(水) 22:33:52 ID:t+LvMKyo

しばらくは逃れようと暴れていたさくらの唇も抵抗を止め、
抗議するかのように苦しげだった呻き声も甘く、蕩けるような響きに覆われてゆく。
ついに快楽に抗うことを諦めた彼女から更なる悦楽を引き出そうと、
重ねあった唇から舌を突き出し、彼女の舌を探し当て、絡め取る。
さくらは全く抵抗することなく平井のキスを受け入れて、自分からも舌を絡め返す。

「んぷ・・・んん・・・! んちゅ・・・っぷ・・・あ、うん! んぷ・・・ちゅぱ、ぴちゅ・・・んむ・・・!」

既に下半身で激しく交わりあっているにも関わらず、
まるでそれでは物足りないかのような熱烈さで二人は舌を絡め、唇を求め合う。
平井はひたすら激しく腰を打ち付け、さくらは自分の上で暴れる身体に脚を絡め、
上と下の、二箇所の敏感な粘膜で互いのソコを貪りあいながら、
二人が初めて体験する性の悦楽は、身体と心を絡ませながら何処までも昂ぶり続ける。

「んちゅ、ちゅぱ・・・あむ、んむ―――! んぷ、あふ、あ、ん! ちゅ、ちゅぷ・・・ぴちゅ・・・ん!」

押し寄せる悦楽の波に呑まれ、唇が自由であったなら共に言葉にならない喘ぎ声を洩らしつづけていただろう。
だが、今や二つの唇は“塞ぐ”のではなく“貪る”為に重ねられ、
声を出す間もあらば、ただひたすらに相手の舌を絡めとり、こぼれる涎を啜りあう。
もちろんその間も、二人の腰は交わりあうことをひと時だって止めはしない。
平井はさくらの膣壁が己のモノに絡み付いてきゅうぅ、と締め付ける感触に、
さくらは平井の肉茎に身体の内側の敏感な粘膜をぐりぐりと擦り抉られる感触に、
背筋が粟立つような快楽を注ぎ込まれ悦びに打ち震える。

互いに初めて感じる未知の快楽に圧倒され、本能の赴くままに貪りあいながら、
二人は加速度的に身体を、心を、昂ぶらせてゆく。
この悦楽を永久に感じつづけたいと思いつつ、同時に一刻も早く、果ててしまいたいとも思う。
だが、どちらにせよ・・・昂ぶり続ける限り、望むと望まざると頂きは近づいてくる。
やがて、それをはっきりと自覚した平井は―――

「っく、ぷぁ・・・さ・・・くら、先輩っ、オレ、もう、もう・・・っ」

昂りきった己自身の限界を悟り、ラストスパートとばかりに全力でさくらの中を荒々しく突き回しながら、
彼女にそれを伝える。

「んあ・・・あ、うぁあああっ! あむ! んぅう! ん―――! んぁあぅう―――!」

平井の激しすぎる責めに乱れ狂わされ、さくらもまた喜悦の頂きに登りつめようとしていた。
そんな時に唇を自由にされてしまえば、彼女の悲鳴のような嬌声は堰を切ったように溢れ出し、
部室中、いや、下手をすれば学校中に響きかねない。
実際、嬌声の一部は間違いなく響いてしまっただろうが、それが“嬌声”として認識されるほど長く響く前に、
さくらは平井の胸に顔を押し付けて、自らの声を押し殺す。
それは完全ではないが、少なくとも全校に響かない程度には声を抑える効果はあるだろう。

「くぅ・・・! せんぱい・・・先輩っ! さくらせんぱいっ!」
「あん・・・ぅうう! ひぁ! あふ! ひらい、くんっ! ひらいくんっ!」

間違いなく隣の部室には声が通ってしまっているだろう。
幸いに運動部なので、この時間はまだ練習に出ているハズだが、近くを人が通れば聴かれてしまうに違いない。
だが・・・既に二人には、そこまでの気は回らない。
今はもう、ただひたすらに・・・

「もう、オレ・・・でる、もう、っく・・・ぅう・・・っ」
「わたし、もぉ! きちゃう、ひらいくんのでっ! きちゃうよおっ!」
「っう! せんぱ・・・あ、せ、せんぱいっ!? やめ、ちょ・・・!」
200499 8/11:2006/05/10(水) 22:35:15 ID:t+LvMKyo

もう、限界だ―――そう感じた平井が、さくらの中から臨界に達したソレを引き抜こうとした矢先、
彼の腰に絡めていたさくらの脚がぎゅうう、と絞まり、逆にさくらの中へ深く沈み込ませてしまう。

「きてぇ・・・っ! ひらいくんの、ほしいのっ、だから、だから! 中でいいからっ、ぜんぶだしてぇっ!」

それがマズいことだと分かっていても・・・もはや、どうにも出来なかった。
既にこみ上げてきていた衝動に逆らうことなど出来る筈も無く―――

「う、く―――さくら、せんぱ・・・っ、出る、で・・・っくぁああ!」
「あ、ひぁ、あ! でて、ぁ、い、あ・・・い、く、イ、ぁ、あぁ! あぁああぁああ―――――――――!」

平井はそのまま・・・さくらの中にありったけの精を、ぶちまける。
目眩がするような強烈な絶頂感と共に、
自慰行為の時とは比べ物にならないくらいの大量の精液を、何度も何度もさくらの膣内に注ぎ込む。
あまりに射精が続きすぎて、本当に彼女に吸い取られているのではないかとちらりと思ったりもしたが、
どうしようもない開放感と、絶頂の快楽の前では、どうでもいいことだった。

「あふ・・・ぅく・・・ぅ・・・すご、い、よぉ・・・いっぱい、でてる・・・」

きゅっと締め付けた脚の間で、彼の身体がびくびくと震えている。
同じタイミングで彼女の中に突き立てられた肉の槍の穂先からは熱い粘液がほとしばり、
膣内を彼の精液が満たしてゆく。
平井が絶頂に達して彼女の中で果てたその刹那、
彼のモノが激しく脈動し、彼女の中へ最初の精を放ったその瞬間に、さくらもまた絶頂を迎えていた。
身体の内側で平井の猛ったモノが何度も跳ね、その度に強烈な勢いで熱い精液を注ぎ込まれる。
膣の最奥、子宮口に叩きつけられる濃密な粘液は液体とは思えないほどに硬く、
その感触は敏感になりすぎているさくらを官能の喜悦で突き上げて、絶頂を与え続ける。
イかされ続ける身体はがくがくと震え全身に力は全く入らず、
くわえ込んだモノを逃すまいと絡み付いていた脚が解ける。

平井の身体もまた射精による圧倒的な快楽と解放感、そして虚脱感にガクガクと震え、
拘束が解かれた拍子に肉槍はさくらの膣内から外れてしまう。
締め付けを解かれたソレはびくんびくんと跳ねてはその度に虚空に向けて精を放ち、
白濁は放物線を描いてさくらの前髪から顔、胸、腹、そしてブルマにまで降り注ぐ。
己が放った白濁の粘液が彼女の身体中を白く汚してゆく様を平井はとどめることも出来ず、
体内の精を全て吐き出すまでさくらの身体に白濁を浴びせ、ドロドロに染め上げていった。



201499 9/11:2006/05/10(水) 22:36:40 ID:t+LvMKyo

「うー・・・平井くん・・・出しすぎだよー」
「す、スミマセン・・・」

さくらは身体にべったりとこびり付いた平井の精液をティッシュで拭いながら、口を尖らせて文句を言う。
それは平井が意図してやったことではないのだが、どちらが責められるべきかと問われれば、
やはり彼が文句を言われる立場なのは仕方なかった。

「それにしても・・・穿いたままするだけじゃ飽き足らず、かけて〆るなんて・・・
 平井くんって、私が見立てた以上のブルマ好き・・・もはやハイエンドクラスだねー!」
「・・・もう、何とでも言って下さい・・・」

二人は今、並んで部室の床に腰を下ろし、壁にもたれかかっていた。
さくらはすっかりいつもの調子に戻り、後始末をしながら平井を弄って楽しんでいる。
平井は汚れたモノを簡単に拭って先に始末を済ませ、先ほどまでのさくらとの行為の余韻に浸っている。
今になって思えば、いきなりあんなことをしてしまって、
その前後で二人の関係がぎこちなくなってしまってもおかしくないハズなのだが、
さくらにはそんな雰囲気は微塵も無く、いつも通りに平井は完全にペースを握られたままなので、
彼女の調子に合わせるほかは無い。
実際、誘ったのも彼女からだし、そういうものなのかな・・・などと彼女をあしらう合間にぼんやりと考える。

―――そういえば先輩、特訓って言ってたっけ・・・あれは、方言だったのかな・・・

ふと思い出してみるが、まあどうでもいいことだろう、と頭に浮かんだ言葉を霧散させたとき、

「ね、平井くん、ここ、みて・・・」
「ん、なんです? 先輩・・・って・・・」

さくらが指し示したところは、さっきからさんざん強調している、彼女のブルマ。
それは彼女自身の蜜でしとどに濡れそぼっていた上に、
平井のモノが抜かれたあとは自然と元の位置に戻るので、中から溢れ出た精液まで染み込んでしまっている。
そして最後に外からかけられた分がべっとりとこびり付いて、濃紺の布地に白濁した粘液が目立って仕方ない。

「すごいでしょ・・・でもね、これ・・・ここを押すと・・・んぅっ!」
「う・・・わ・・・」

さくらの手が下腹部・・・秘所よりやや上のあたりをぎゅっと押すと、
身体がびくんと震えたあと、こぽぽ・・・とブルマの下から泡が湧き立ち、どろりとした白い粘液が滲み出る。
言うまでも無く・・・さくらの愛液と、平井の精液が彼女の中で混ざり合ったものだった。
その、あまりに淫猥な光景に、平井は息を呑む。
あれだけ激しく達して、全て吐き出したと思っていた性欲が身体のどこかでむくり、と起き上がる気配がする。

「ほら・・・わたしのブルマね・・・平井くんの精液で、もうべちょべちょなんだ。
 もう、洗濯しても、平井くんのにおい・・・とれないかもしれない・・・
 きっと、これを穿いてるだけで、身体中に平井くんのを浴びてるみたいな気になって、
 あそこの中も、今みたいに平井くんのでいっぱいにされちゃってるようにしか思えなくなっちゃうんだ・・・」

ついさっきまで身体を拭きながら、あれだけいつも通りの態度を取っていたさくらが、
今は行為の最中に戻ってしまったかのような、淫蕩な表情で平井に語りかけてくる。

「今だって、ね・・・これ穿いてると・・・平井くんに、されてた時のこと思い出しちゃって・・・
 すごくね、疼いちゃってるんだよ・・・? ほら、とろとろで・・・熱いでしょう?」
「せん・・・ぱ・・・」

唐突過ぎる展開に理解が追いつかず、身体だけが再び熱を持ち始めつつある平井の手を取ると、
さくらは再びブルマを横にずらし、蕩けきっている秘所に彼の手を導く。

「ひぅ・・・! ね、あつい、でしょ・・・平井くんの、欲しがってるんだよ・・・
 ねぇ・・・平井くん・・・また・・・いいよね・・・?」
202499 10/11:2006/05/10(水) 22:37:48 ID:t+LvMKyo

そう言ってさくらが手を離すと、平井は何も言わず、自由になった手でジャージの紐を解き始める。
出し尽くしたハズの欲求すら瞬時に満たし、唐突過ぎる展開に疑問すら抱かせない。
―――それが、山咲さくらの、演技力なのだ。

「平井くん、今度は私が上になって、いいかな・・・?」
「はい・・・上?」
「うん、ちょっと硬いけど、ここに仰向けになって?」

平井はジャージとトランクスを下ろすと、言われるままに床に寝そべる。
だが彼の肉茎だけは既にそそり立ち、重力に逆らって天を衝いている。
さくらはそれを跨ぐように立つと、ブルマを片手でずらしたまま、ゆっくりと腰を下ろし・・・

「ん・・・! んぅ、あ、ぅあ! うく――――――!」
「う、く! っ、せんぱ・・・う、ぐ―――」

じゅぶぶぶぶ・・・と、
さくらの膣中を満たしていた蜜と精液を溢れさせながら、再び平井のモノがそこへ飲み込まれてゆく。
相変わらずの締め付けを維持しながら、平井の精液で更にぬめりと滑らかさを増した彼女の膣壁は、
この時点で脳髄が溶けるかと思うくらいの感触で、

「せんぱ・・・っく、これ、ヤバいです・・・っ、すぐ、出ちゃいそうで・・・」
「うふふー、ダメだよ、我慢しないと意味、ないんだから、ね」
「で、でも・・・さっきより、これ・・・」
「弱音は聞かないよー!? さ、腹筋とお尻に力を入れて・・・いつもやってるでしょー?」
「は、はい・・・って・・・え?」

違和感がある。
なにか、どうしようもなく手遅れなような、
致命的に騙されてしまったような。

「じゃあ、動くから、ね・・・ん! んく・・・ぅ、あは・・・いい、よぉ・・・」
「う、わ、っく! やば、せんぱいっ! ほんと、これじゃあ、すぐ・・・!」
「ダメダメ! すぐに出しちゃったら特訓にならないんだからー!」
「・・・とっ、くん?」
「んふ・・・っ、そう、だよー、最初に言ったでしょ、秘密の特訓だ、って、ぇ・・・」
「・・・・・・」
「だから、出さないように腹筋とお尻に力を入れて、さーきばって!」

そして平井は、悟る。
ハメられた。
ハメてるけど、ハメられた。
203499 11/11 (後編 了):2006/05/10(水) 22:39:23 ID:t+LvMKyo

「さあ! 気合だよー? どんどん動くから、しっかりお腹に力入れてねー!」
「うう・・・結局、そういうオチなんですね・・・」
「ふっふっふ、そういうこと! じゃあ、しっかり声出していこうかー!」
「・・・ちょっとまて、声・・・?」
「当たり前でしょ、通る声を出すためにお腹に力を込める特訓なんだから!」

何がどう当たり前なのか突っ込みたくてたまらないが、
既に突っ込んでいるし改めて突っ込みを入れる余裕など平井にはもはや無い。

「じゃあ、“先輩、僕もう我慢できない!”って大きな声で、ハイ!」
「そ、それは却下・・・って、っぐ―――!?」
「んんっ! あん、もう、それじゃあ・・・
 “哀れなこの僕にどうかお情けをお与え下さい”で、せーの!」
「・・・い、いつもの、とおりに・・・あ、あめんぼあかいなあいうぇあぁああ!?」
「あふ・・・ぷぷっ! ダメだよー、もっとお腹に力いれないと、あく・・・、いつまでも、終わらない、よっ!」

だが、いくら腹筋に力を込めようが、尻を締めようが、
身体の上で上下するさくらの中の感触は、その努力を一動作で打ち消してしまう。
発声練習のはずの声は甘美な感覚に負けて・・・男としては非常に情けない、嬌声に変えられてしまうのだ。

「せ、せんぱ・・・あぅう! 無理、これ、むりで・・・っぁあ! く、さくら、せんぱ―――っ!」
「コラー! 平井二等兵! 特訓に逃げ道は、あぅ、ん! ない、んだからっ!
 きっちり、声を出しながら、わたしがイくまで、終わらないんだからねー!」

それはもう、平井にとってはほとんど死の宣告。
さっきは同時にイったものの、今は明らかにさくらの方に余裕がある。
思えば、そもそも彼女は“演技をする”と自分で言っていたのだ。
あの時が演技なのか、それとも今、 “後輩に特訓を施す先輩の余裕”を演じているのかはわからないが、
このまま行けば間違いなく彼は・・・

「あーちなみに、さっきあれだけ出しちゃったから、もうあんな勢いでは出ないだろうからね!
 平井くんがイったと同時にわたしもイくなんて、期待しちゃダメだよっ!
 じゃあ、干からびちゃう前にがんばろー!」
「うう・・・あーもう! どうにでもなれだっ! あめんぼあかいなあいうっくぅう! や、やっぱ、う、うぁあ!」
「あーでもその前に、そんなにいっぱい出されたら、わたしが妊娠しちゃうかもしれないねー♪
 んふー、それもイイかな〜?」
「ぶっ! あ、あ・・・あめんぼあかいなあいうえおッ!」
「おーそうそう、その調子だよっ! さ、それじゃあ、んくっ、ガンガンいくよー!」

・・・
・・・・・・

こうして、二人だけの甘ーい日々が続いたのでした。


「甘くないっ! 甘いけど甘くないっ!」
「えー、身体を張った愛の特訓なのにー」
「えーじゃないっ!」




・・・ちゃんちゃん。



204499:2006/05/10(水) 22:41:16 ID:t+LvMKyo
以上で今回の投下分は終了です。

まあ、なんといいますか・・・手取り足取り教えた二人の日々というか・・・

はい、お後が宜しいようで。
オソマツサマデシタ
205名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 00:49:55 ID:8DSHvo25
エロい、エロすぎる!
Hシーンがメチャメチャ濃密で満腹ですよもう。
原作の明るい雰囲気まできっかり入れてるし。

神の神たる所以が分かった気がします。
GJ!
206名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 01:19:33 ID:MjdrhOv6
 _   ∩
( ゚∀゚)彡 低脳!低脳!
 ⊂彡

しかし。
>>172
漏れもSAKURA読めてないよ……(´・ω・`)
207名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 01:55:41 ID:hzcYoc17
サンデー超って、店によってはまだ置いてる所もあるよ。
例えばTUTAYA京都○倉店とかw
208名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 21:05:44 ID:DZYf27HL
大きな本屋だとあるよな。
まあ頑張って探してくれや。
209名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 23:29:24 ID:8DSHvo25
勇気を出して店員に聞いてみるのも吉。
210名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 00:51:17 ID:DGDY49s7
エロパロにつられてサンデー超買ったはいいけど
さくらしか見るもの無くてビミョーにがっかり
まぁさくら読めただけいいかな
211名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 08:23:00 ID:ADyn7eQg
212名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 18:19:50 ID:PuUdNaFn
おつ亭農

  >201 方言→方便  かにゃー?
213名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:36:26 ID:l6qAKjjK
>>212
ぎゃーその通りです(汗
普通に混同してた・・・キヲツケマス
214名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 00:24:51 ID:zpZUwiE2
>213
 ドンマーイスよ。面白かったしぢゃんぢゃん書いてみてうp    クレー
215名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 18:49:19 ID:xSR1jPW1
保守
216名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 23:34:56 ID:vouegW7q
合宿の方や前スレラストから書かれてる方の続きが待ち遠しい今日この頃です・・・
217名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 19:35:47 ID:32N+nzh3
ほしゅ
218名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 20:02:01 ID:KpH9LXyy
まだかな〜
219名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 00:28:43 ID:a1Gfr1kt
さて久々だが、

成長した桃子たんゲットォォォォ!!!
220名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 14:37:12 ID:7T5z2ZSX
死守します
221名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 18:51:41 ID:1F8/5LCU
>>219
最近桃子こないね…
222名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 18:10:03 ID:37upGI9F
保守
223名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 20:36:05 ID:BKPrHDnw
あまりに低脳すぎておっきしたおにんにんでスキップしてしまった。
ていうか精液逆流は反則だ。
224名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 01:21:36 ID:A33ftIUZ
>>223
一体どこから誤爆したんだ!
とてもとても気になるぞ。
225名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 09:13:04 ID:SdZgP7lJ
ほちゅ
226名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 18:47:17 ID:BRhTbpFQ
保守
227名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 20:45:42 ID:EizTEmX6
補修
228名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 02:38:08 ID:an6jNdik
ほす
229名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 21:51:48 ID:p9fdlSHq
防・樹障壁はえろいと思います!
230松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/06/06(火) 21:43:54 ID:KHEHc93W
ふ、ふふふふふ……
できた……できたわ!
控えめ胸と言われ続けて、早5年。そんな辛く、厳しい時もありました。
だけど、そんな日々も今日でお終い!
この強制豊乳薬「モミデカ君」があれば、あんな薄胸など私の敵ではないわ!
みよ、この力を!

グビッ! ……ばぼーーーーん!!

見よ、このEカップサイズの虚乳……じゃなかった、巨乳!
圧倒的じゃない! これさえあれば、あんな薄胸如き、簡単に捻り潰せるわ!
そしてヤツを潰した後は……が、我聞を……って、私は何を考えてるのよ!
我聞にはもうハルナがいるんだから、そんな事しちゃ駄目よ!
既婚者に手を出すってのはつまり、その、『不倫』って言って、しちゃ駄目な事で……

『不倫は文化』

はっ! 何か今、天のお告げが!
一昔前の流行語に選ばれたようなお告げだったけど、気にしない!
わかったわ、神様! つまりは「やってもオッケー♪」という事なのね!
そうと決まれば、突撃あるのみ! 目指すは我聞ただ一人!
……って、『不倫』ってこんなのだったかしら?
昼にやってたドラマだと、もっとこう、ひっそりと隠れてするものだと……
……んー、難しいわね。たしかあのドラマだと……

『奥さん、僕は前からあなたの事を……』
『や、やめて、お米屋さん! まだ昼なのよ!』
『それはつまり夜ならOKと?』
『そ、それは……』
『大丈夫、誰も見ていませんよ』
『あ、や、やめて、こんな所で……』

なるほど! つまりはお米屋さんになればいいのね!
これを私と我聞に当てはめると……

『我聞〜、お米届けに着たわよ〜』
『お、悪いな、桃子。で、お金はいくらだ?』
『お金なんていらないわ……欲しいのは、ア・ナ・タ♪』
『え、な、何を!』
『我聞は何もしなくていいわ。私が全部シテあげるから……この大きな胸で、ね♪」

完璧じゃない!
全然隠れてないような気もするけど、それは些細な事よ!
ふふふ……見てなさいよー、我聞!
昼下がりのお米屋さんの魅力で、メロメロにしてあげる!
あの薄胸に『お姉ちゃん』と呼ばせる日も近いわね!
231松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/06/06(火) 21:44:37 ID:KHEHc93W

「ふふふ、薄胸〜、待ってなさいよ〜……むにゃむにゃ」
「桃子の奴、キノピー分解したまま寝てる……しかしまあ、なんと幸せそうな寝顔……
 ん、どうした果歩? 包丁なんて持ち出して」
「お兄ちゃんどいて。そいつ殺せない」



以上、保守代わりの先生のBlog絵ネタでした。
232名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 22:00:52 ID:Z2H4j/Sx

ちょwwwwwwwS県月宮wwwwwwww
233名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 22:07:08 ID:J9WtlIHi
うはwwwwww
でもGJ!
234名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 02:11:13 ID:mY9L5rcH
>231

そして「Wカップ」というオチが
235名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:06:24 ID:nrSqjX2g
待った甲斐あったぜありがとう
236名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 21:31:48 ID:WRJzAF/k
ハゲワラタwww
これだから我聞スレは油断できねぇ
237名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 22:12:53 ID:wwuvcvHr
ほしゅ
238名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 08:55:30 ID:fWsAte7h
保守
239名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 17:56:40 ID:eCcAhQhb
保守
240名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 08:20:37 ID:GMMw/+cS
やっと、つながった
241名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 20:02:06 ID:Hx0J/nOZ
hosyu
242131:2006/06/21(水) 22:43:14 ID:cGq+SX+P
だめだ。
ぜんぜん合宿の続きが書けない。
だからそのうち一回別のを投下します。
こう言っとけば自分も逃げられないんで。
243名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 23:05:46 ID:kAvvXYyH
>>242
楽しみにしているよー!
244名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 19:26:40 ID:7htPTfom
>>242
おお!ひさびさの予告が!
245名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 21:03:43 ID:yrgB6Zyp
hosyu
246名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 17:45:26 ID:GDD7vd3T
ほしゅ
247131:2006/06/29(木) 06:59:38 ID:RNAid38l
書いたけど、結局小ネタになってしまったorz
続けようと思っても巧く纏まらないから、コレだけで終わりです多分。

しがない作品ですがどうぞ


『桃退治』

昔々、あるところに社長と秘書が暮らしていました。
社長は名前をガナリ、秘書はタケフミと言います。
そして、二人にはそれぞれ子供がおり、ガナリの子は兄妹で上の子はガモン、四歳離れた下の子はカホ。
タケフミの子は一人っ子でハルナと言う名前。三人はすごく仲良しでした。
特にカホはハルナのことを実の姉のように慕い、いつか自分の本当の姉、つまりはガモンの奥さんにしようとこっそり画策するほどでした。

ある時のこと、ガモンは遠く離れた鬼ヶ島に住んでいる友人の鬼娘、トウコに呼ばれ一人で遊びに行ってしまいます。
それを聞いたカホはそれはもう怒りました。
「お兄ちゃんにはハルナさんというお嫁さん(候補)がいるのに、外の女の所へ行くなんて!
いいわ。お兄ちゃんにつく悪い虫は、ハルナさんに変わってこの私が退治してあげる!!」
こうして、カホは鬼退治もとい桃退治に行くことにしました。

カホはガナリに言いました。
「お父さん、私、桃退治に鬼ヶ島へ行ってきます」
ガナリはそれを『トウコの所へ遊びに行くこと』と思ったので、
「わかった。あんまり遅くなるなよ。あと、土産にこれ持ってけ」
そう言って、カホに黍団子を持たせました。
「解りました。行ってきます」
そう挨拶して、カホは桃退治の旅へと赴きました。

248131:2006/06/29(木) 07:00:55 ID:RNAid38l

カホが道を歩いていると、前から犬・・・の格好をした女性が歩いてきました。
「って!ユウさん!なんて格好してるんですか!!」
詳しく言うと、水着のような服に犬耳と犬の尻尾を付いている―そんな服装です。
「いやねカホりん、今回、私犬役っぽいからさ、思い切ってやってみようと。
どう?似合う?セクシー?」
犬――ユウはカホの前でポージングします。
「え?ええ、似合ってますけど・・・って違う!
ユウさん、私たちがコレから何処に何をしに行くか解ってます!?
それに、役とか言っちゃ駄目です」
カホはユウに怒鳴るように言いました。
「えーっと、鬼っ娘のトウコちゃん退治とガモン君の奪還」
「解ってるなら大丈夫なんですか、その格好で」
「う〜ん、大丈夫なんじゃない?
ガモン君含めても、私が会う男役少ないみたいだし」
ユウは台本をぺらぺらとめくって言いました。
「だからそう言うことしちゃ駄目ですって・・・本当にそのままでいいんですね?」
カホが諦めたように確かめ
「うん全然オッケー。途中海も通るみたいだしね〜」
ユウは手をひらひらさせながら答えます。
「はぁ。じゃあコレどーぞ。黍団子です」
カホは懐の袋から、黍団子を一つ取り出して渡します。
「サンキューカホりん。
よし、いざ行かん鬼ヶ島〜!」
「はぁ・・・」
カホは再び溜息をつくと、もらったお団子を頬張って上機嫌に前を歩くユウに続きます。
旅の不安を、ひしひしと感じながら――


249131:2006/06/29(木) 07:02:37 ID:RNAid38l
中途半端ですね・・・
でも今の自分の才ではコレが限界。
勘が鈍ってるんですかね・・・?
250名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 12:02:10 ID:1XNnO6JO
131氏キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
久々の作品投下お疲れさまでした
我聞、さくらが終わって大分経ってるので感が鈍るのは致し方ないかと思います
実力があるのは今までの実績から言って明らかなので焦らず頑張ってください
251名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 12:32:55 ID:ey/tXYkA
GJ!
・・・だがここで止めるのは余りにご無体な・・・
のんびりと続きを待たせて頂きますよ・・・
252名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 10:19:08 ID:qktCL6fT
ほちゅ
253名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 23:18:14 ID:wE1Y19ZL
ホッシュホッシュ
254名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 22:41:08 ID:qjiY1wu+
圧縮が近くて怖いのでほしゅ

・・・てーか誰か作品を・・・orz
255名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:41:45 ID:1emoan0a
耐えるのだ・・・このスレを桃子スレの二の舞にするわけには・・・
256名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 03:16:50 ID:fw+437ab
藤木俊氏の新連載まだかなあ?
257名無しさん@ピンキー:2006/07/09(日) 23:50:49 ID:CUvY5xHx
もっかい保守代わりのネタを・・・書く時間すらないですorz

ネタは、ネタはあるんです・・・時間が・・・

258名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 22:21:17 ID:g0r4KbbY
どうやら今回の圧縮は乗り切れたらしいが・・・
んー、気が付いたら我聞の誕生日&七夕も過ぎちまったし今更そのネタも使えん・・・
259名無しさん@ピンキー:2006/07/11(火) 14:10:44 ID:ZxPT/bip
>258
なーに、多少日付がズレたところで文句を言うやつなんか
このスレにはいないさ
思い切ってGO!
260名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 17:23:36 ID:PiGELLrb
久し振りに来たんだがすっごい過疎っぷりだな。
499氏とかどこ行っちゃったの?
261名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 00:25:54 ID:BQzUZXUf
番司と果歩の話を読みたい。果歩はちょっとしたツンデレだと思う。
262名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 00:36:43 ID:WJ6vrP5F
まぁ連載が終わってしまうと勢いがなくなるのは仕方ないな。
作品もまだ二つだし。(だよね?読みきりとか他にあるんかな)

blogを見てるとなんか連載の準備はしてるっぽい気がするので
wktkして待つことにします。
263名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 00:52:31 ID:vgTvNPjU
499氏の作品を読んだ次の日にこわしや我聞全巻読破したよ
264名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 23:41:37 ID:5TvkQdq7
こわしや我聞続編は……ねえよなぁ。見たいなぁ。主人公は珠で。
265名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:09:19 ID:wFARVJRF
>>264
我聞に負けず劣らずの努力でメキメキと実力をつける珠だけど
我聞、我也をこえる才能を持つ斗馬にちょっと嫉妬してしまうみたいな・・・
266名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 19:39:07 ID:f1QGPf0p
保守
2673355:2006/07/18(火) 00:14:14 ID:Hv2r2X8K
えー、いつも、楽しく読ませていただいています。
3355と言います。
我聞、いろいろ作品の完成度としては足りない部分もありましたが、私は好きでした。
で、本編最終話から、おまけで、我聞と陽菜が婚約している状態まで、少しでも埋めるような話が読みたくなったので、
自分で書いてみました。
まだ途中までですが、投稿してみます。
楽しく読んでいただければ幸いです。(ただし、エロなし)
2683355:2006/07/18(火) 00:14:59 ID:Hv2r2X8K
二人の道のり1

それは、鬼怒間会長が皇前卓球部部長に告白し、目出たく付き合うことになった日の出来事である。
「お前達のおかげだ。礼をいう」
 部長に対する気持ちをどうするか、何かとリンは天野と住と陽菜に(と、いっても、陽菜はほとんど聞いているだけであったが)相談していたことから、うまくいった首尾を彼女は真っ先に報告に来た。それでなくても、幸せな出来事というのは誰かにしゃべりたくなるものだ。
 そんなリンに対しておそらく、最も役に立つアドバイスをしたであろう住は、
「いえいえ」
 にこにこと笑いながら、祝福した。
「おめでとうございます」
 陽菜が、謹厳実直に祝詞を述べる一方、おそらく、単に面白がって、二人の仲をつっついていただけであろう、まるで自分が彼女の恋にさも貢献したかのように天野は言った。
「まー、断られるハズもないっスよ!」
 さらに彼女は偉そうに、
「筋肉苦手っていう弱点あるけど、それも愛の力で乗り越えられるハズ!! そのまま結婚までいっちゃってください!」
 ご機嫌であった。特に、具体的付き合った経験がないから、どうすればよいかリンに聞かれたときに、言葉に詰まってしまって何も有効なことをいえなかったことから、天野はリンがうまくいったことにほっとしていた。それで、つい、調子のいいことが口に上ったのだ。
その天野の様子から、意地悪なのか、天然なのか、住はにこにこと、
「じゃあ、次は恵と佐々木くんだねー」
「だからカンケーないって!!」
 天野は、顔を真っ赤にして怒鳴る。住にしてみれば、天野が佐々木を好きなのは本当に見え透いている。天野の方も、住が気がついていることをほとんどわかっていながらも、話題をごまかすために、あわてて陽菜を持ち出す。
「だいたいあたしだけじゃないっしょー?! るなっちだってまだ―――」
 彼女くらいの美少女でも、付き合う相手はいないと言おうとしたが、
「あ、天野さんそのことで相談が・・・」
 陽菜は天野の言葉を遮った。
「実は私の父が、私と社長の結婚をすすめているのですが、私はどうしたらよいのでしょうか?」
2693355:2006/07/18(火) 00:16:39 ID:Hv2r2X8K

(告白とか付き合うとかを一気に超えて、いきなり、結婚話?)
その話に、住とリンは顔を赤らめ、一方天野は、
「なー、もうっ!! どいつもこいつもラブリやがって―――!! どうせあたしは一人ですよーだ!!」
 目元をうっすらと赤らめて、相談と言いつつも、実は満更でもないような陽菜の表情に、まるで、
「私はあなたとはちがって、相手がいるのよ」と、言われたような気がして、天野はひがんでしまったようだ。泣きながら走り去っていってしまった。あまつさえ、遠くで「ばーか、ばーか!!」と捨て台詞まで叫んでいるようだ。
「あ、天野さん・・・?」
 仕事では有能だが、それ以外には天然で抜けたところがある陽菜は、天野の反応が理解できず、呆然と彼女を見送った。
「それで? その話はどういう経緯で持ち上がって、どこまで進んでるの? 工具楽くんも了解してるの?」
「うむ、参考までに、聞かせてくれるとありがたい」
 住も、リンもすでに天野のことなど忘れ去って、興味津々だ。
「あの・・・天野さんを追わなくていいのでしょうか?」
 自分のせいで、彼女に不愉快な思いをさせたのかと、陽菜は少々見当違いの心配をしていた。
「大丈夫、大丈夫、本気で傷ついてる訳じゃないから。十分もすれば、ケロッとしていつもの恵にもどってるよ」
 何のかんの言いつつ、天野とつきあいの長い住はあっさりしている。で、実際に、その通りになるだろう。その件については、陽菜は住の意見を尊重した。
「そんなことよりも、さっきの続きだけど・・・」
「あ、はい。実は・・・」
 ずっと、仕事で海外に行ってきた陽菜の父と、我聞の父が帰国したこと、そのときに、我聞と陽菜の仕事ぶりをみて、陽菜の父が二人が付き合っていると勘違いしたこと、
さらに、また二人の父が海外に出張するにあたり、我聞に陽菜を嫁にもらってくれるようにと頼んだことなどを語った。
2703355:2006/07/18(火) 00:18:24 ID:Hv2r2X8K

「それで、どうするの?」
「わかりません。社長も困っているようです」
 結婚なんて、最初は冗談だとしか思えなかったが、陽菜の表情は困惑しながらも真剣で、からかったりするのは気が引けた。
元々、まじめの上に生がつくぐらいの陽菜である。しかも、話が人生の一大事に関わることである。
自分たちには当分先だと思っていたことが、彼女には目の前の現実として迫っていると見て取れた。そこで、住は質問を少し変える。
「じゃあさ、國生さんは、どうなるといいとおもっているの?」
「そうだ、どうしたいのだ?」
 リンも同調する。
「私は・・・・」
 今まで通り、工具楽屋の一員として、仕事ができればいいこと、工具楽家の人たちも、
家族同様にしてくれて、そのことが自分は嬉しくて、
ずっと、この状態が続けばいいと思っていることなどを語った。
(そういうことを聞いているんじゃないんだけどな)
 住は思った。きっとリンも同様だろう。だが、陽菜がここまで自分の思いを自分たちに語るのは今までなかったことである。
信用してくれているようになったんだな、と嬉しく思った。だからこそ、不用意なことは言えないし、また、いい加減にごまかしたくもない。何か、本人にとって有効な意見を言えれば、と思う。
「そうじゃなくて、國生さんは、工具楽くんをどう思っているの?」
271名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 01:57:34 ID:UIcVQQat
えっと…今日はここまでですかね?続きワクテカして待ってます!超GJっす!
272名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 02:05:19 ID:ipWJtMYD
いい感じだ、続き楽しみです。
273名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 07:33:20 ID:IQqG0Awq
3355氏
GJ
274名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:06:13 ID:c9wWhT4G
ワクテカ
2753355:2006/07/19(水) 22:36:17 ID:gGNgIXwT
えー、3355です。
続きを投下します。(今回もエロなしです)
2763355:2006/07/19(水) 22:37:14 ID:gGNgIXwT

「どう思っているか、ですか」
 工具楽我聞・・・。
 いつも一生懸命で、人が困っているとお節介なまでに世話を焼く人。
少々考えが足りないところもあるが、根本的に優しいことは間違いない。
そして、工具楽屋や、自分の家族を大事に思っていて、そのための努力を惜しむようなことはしない。
ただ、努力の方向がよくずれていることが玉に瑕だが、それでも最近はかなりよくなってきていた。そういう人だ。
 陽菜は素直に我聞について考えていることを答えた。
「いや、そうじゃなくてだな」
「國生さんは彼のことが好きなの? 嫌いなの?」
 意図が伝わらないことから、住は単刀直入に聞いた。そこがわからなければ話が先に進まない。
 やきもきする住とリンに、陽菜はあっさり、
「好きですよ」
 その言葉に、おおおっ、と思わず声を上げそうな二人に、陽菜はさらに続けた。
「頼りになる方ですし、尊敬しています」
 がっくり。そういう意味か!
「特に困っている人に、気持ちだけで動けてしまうところが社長のいいところです」
 あーあ・・・。
 恋愛の方向からそれてしまった。
脈なし・・・か。そうすると、陽菜は、結婚はきっぱりと断るという意志を明確にした方がいい。住が、そう忠告しようとしたところに、陽菜は続けた。
「それと・・・そうですね、後先考えずに安請け合いしてしまうところは困りものですが、足りない部分は私がフォローすれば良いことですし・・・・私は社長について行くって決めていますから」
2773355:2006/07/19(水) 22:38:06 ID:gGNgIXwT

 いつぞや桃子にも言ったようなセリフだが、初めて聞いた住とリンは思わず顔を見合わせた。
(なんか、すでに一生共に歩く覚悟って感じだな)
(うんうん、もう、何年も連れ添った奥さんが旦那さんにあきれてるんだけど、全部許しちゃってるくらい彼が好き、みたいな?)
(それだ、それが近いな)
(恵がすねるのもこれじゃ、しょうがないよね。本人が、どう思っているかわからないけど、これじゃのろけてるみたいなものですよねー)
陽菜に背を向けて二人でひそひそと話した。
「何を話しているんですか?」
「い、いや、それで、いったい、どこが困っているんだ? それなら、結婚してしまえばいいではないか? 好きなのだろう?」
「いえ、結婚とか、そういうつもりではありません。私は工具楽屋のために働いているのです」
 だめだ、この娘は頭がいいはずなのに、経験のないことにはからっきしだ。自分の気持ちもよくわかっていないらしい。
「工具楽の方は何と言っているのだ?」
「社長も家族同然と言ってくださっていますし、私が工具楽屋でずっと働かせていただけるという点は問題ありません」
「そうじゃなくて、結婚について!!」
「社長も困っているようです」
 話が元に戻ってしまった。堂々巡りだ。
(國生さんって、実は天然ボケ?)
(意外な一面だな)
 たいしたやりとりでもないのに、陽菜との会話にだんだん疲労感が漂ってきた。
「要するに、まとめると、結婚話は早すぎるってことか?」
 リンは、我聞と陽菜が困惑していることについて、ごくごくありきたりの理由を出した。それに対し、
「私は、そもそも誰かと結婚することを考えたことはありませんでした」
 十二歳のときに、父を亡くして(実は生きていたが、そう思いこんでいた)、天涯孤独になったことから、もう、自分には人並みの幸せはないものだと思っていた。
それが、先代に拾われて、工具楽屋で働かせてもらって、それだけで満足だった。だから、それ以上を望むのは、分不相応だ。
2783355:2006/07/19(水) 22:39:10 ID:gGNgIXwT

 その話を聞いて、二人はまたひそひそと、
(ようするに、本当は結婚して本当の家族になりたいけど、遠慮があって、できないってことかな)
(それとも、まだ、本当の恋愛になれていなくて、自分の気持ちに気付いてないとか?)
(ありがちですねー)
「本当に、どうしたんですか?」
「い、いや、それじゃあ、これからもずっと、その会社の秘書とやらを続けるつもりなのか? 一生?」
「社長が許可してくだされば、ですが」
 陽菜の返事にはためらいがない。
「たとえば、工具楽くんが他の女の人と結婚しても? 國生さんはずっと一人で秘書をしているの? それでいいの?」
「社長はきっと、私を置いてくれると思います。私はその信頼に応えるだけです」
 確かに、我聞が陽菜に出て行けなどということはあり得ないだろう。だが、
「しかしな、もし、仮にあいつが他の女と結婚していてだな、その奥さんは、おまえのような女が亭主の周りをうろうろしていたら、やっぱり不愉快になると思うぞ」
 リンは皇の仕事のパートナーに、常に自分より美人の女が付き添っていたら、不安であるし、嫌だ。たとえどんなにきれいな関係でも、だ。
 リンはそう言った。
「國生さんの方はどうなの? もし、会長さんの言うとおりになったら、工具楽くんが他の女の人と一緒にいるのをずっと、何十年も間近で見ているんだよ? それでもいいの?」
「私は社長の信頼に応えるだけです」
 そう答えた陽菜には、少なくとも表面上は全くふつうの様子だった。
2793355:2006/07/19(水) 22:40:40 ID:gGNgIXwT
今回は以上です。
すみません、まだ続きます。
280名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 05:59:58 ID:Sgug4zeT
>>3355
イイネイイネ!
続き楽しみにしていまっす!
281名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 16:30:05 ID:B6tAmCaz
おおぅ、いつのまに!
GJそして続きを待ってます。
282名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 00:58:51 ID:5bZnqdco
SS投下キターまじありがとう。
そしてこれは・・・イイ。俺の好物の
「パッと見クールだが内心乙女心全開の國生さん」
へのフラグだとみていいのか!?
2833355:2006/07/22(土) 00:12:11 ID:a38zYyoy
3355です。
皆様、駄文におつきあい、ありがとうございます。
エロスレッドのハズなのに、こんなんで、いいのかと思いますが、
エロは難しいので、今後もあまり入らない予定です。
申し訳ありません。
で、続きを投下します。
2843355:2006/07/22(土) 00:13:31 ID:a38zYyoy
7「なんだか、私たちに相談って言ってたけど、本人が気がついてないだけで、とっくに答えが出てるみたいだったねー」
 何とはなしに、住とリンは恵も交えて下校の道を歩いていた。話題はやっぱり先ほどの陽菜の態度だった。
「何それ? 何の話?」
 その場にいなかった恵がその話を聞きたがる。
「だからね・・・・・・」
 住はかいつまんで恵が走り去った後のことについて語った。
「うーん、るなっちって、実は純情乙女? まったく、いつの時代の人よ。NOKの朝のドラマのヒロインかっての」
 佐々木に対して素直になれない恵がまた偉そうに言う。立ち直りが早い。ちっとも懲りていない。まるで誰かのようだ。
「でも、微笑ましいよね。あの二人。なんのかんのいっても結構お似合いだし」
「さっさとくっついちゃえばいいのに、じれったい」
「恵は佐々木くんに國生さんをあきらめてほしいだけじゃないの?」
「さ、ささやんはカンケーないって!!」
「いいかげんに素直にならないと、誰か他の人にとられちゃうよー」
「だれが、あんなおちょーしモンの彼女になるってーの? そんな女の顔が見たいわ」
 あくまで強がる恵に、やれやれ、と住もそれ以上は言わない。
「しかし、なんだな。國生の気持ちが本人の中で整理されてないなら、我々がどうこうすることはできんだろう」
 三人で一番背が低いものの、さすがにリンが年長者らしい意見を述べた。
「そうですねえ、慎重に見守って、壊さないようにさり気なく手助けするくらいですかねえ」
「えー? なーんだ、つまらない」
「恵も、気をつけてよ」
「わかったわよ」
2853355:2006/07/22(土) 00:15:42 ID:a38zYyoy

 一方、陽菜は我聞の教室を訪ねていた。
「お疲れ様です。本日の業務ですが、山川ビルの解体です。現地には、保科さんが既に行っているはずですから彼女の指示に従ってください」
「わかった。ありがとう」
 放課後、授業が終わると、陽菜はいつもの通り我聞に仕事のスケジュールの確認を行う。とは、言いながらも、学校が終わってからの短い時間ではたいした額の仕事にはならない。
しかし、本業が激減したので、小さい仕事といえども疎かにできない。しかも、いつもはどこをどうしているのかわからないが、おいしい仕事をとってくる辻原がまだ入院中である。
(辻原さんが復帰するまで、何とか仕事をつながないと・・・・)
 辻原が休職届を出して我也を探しに以来、陽菜は中野井とともに営業にも出ていた。今は辻原も帰ってきてはいたが、真芝の第一研に進入したときの重傷が完治しないのだ。
「それじゃ、行ってくるよ。國生さんの営業の方も、うまくいくといいね」
「はい。社長もお気をつけて。それでは」
 陽菜は我聞と校門で別れた。我聞は山川ビルに、陽菜はこれから営業に行くのである。
営業まですることになって、当然、陽菜の仕事は増えたし、慣れないことに戸惑うことも多い。
 それでも、工具屋のためと思えば、今の彼女はそのこと自体には、それほど負担には感じていなかった。負担ではないのだがしかし、ここのところ、営業に出かけていると、何となく気が晴れない。
 本業のように、人目をはばからなければならないわけでもないし、やりがいはあるし、何よりも、仕事があれば我聞が張り切る。
彼は、仕事がなければないで、トレーニングは欠かさないのだが、仕事しながら元気よく生き生きとしている姿を見ていると、彼女自身も元気がわいてくるような気がする。
 そんなことを考えながら辻原にもらった営業先のメモを見ていると、ふと、ついさっき、住やリンに言われたことが心に浮かんだ。
(國生さんの方はどうなの? 工具楽くんが他の女の人と一緒にいるのをずっと、何十年も間近で見ていなきゃならないんだよ? それでもいいの?)
(私は、彼の仕事仲間に女がいたら嫌だ)
 確かに、もし、我聞に彼女ができたら、いくら秘書でも、今みたいにずっと一緒というのは不自然だ。そこまで考えたとき、
(負けないわよ! ハルナ!)
 何の脈絡もなく(少なくとも陽菜自身は理由がわからなかった)、九州の静馬家に預けられる桃子の威勢の良い姿が頭の中に出てきた。
(どうして、桃子さんのことを思い出すんだろ?)
2863355:2006/07/22(土) 00:16:48 ID:a38zYyoy
今回は以上です。
おそらく当分続きます。
287名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:56:40 ID:PAZ6zSIw
おおう、連続投下。
なんだかじらされるな〜。続きが気になるぜ!
きっと次回か次々回にはツンデレな國生さんが(ry
288名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 18:46:33 ID:rpAaeM7l
キテタコレGJ
私はいつまでも続きを待ちますル。
289名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:18:25 ID:KX+6OIOP
桃子ネタはここに光臨するのかね〜
2903355:2006/07/24(月) 00:02:30 ID:D6HJYgxq
3355です。
誤字脱字がありました。
8で
『辻原が休職届を出して我也を探しに以来、陽菜は中野井とともに営業にも出ていた。』
を、
『辻原が休職届を出して我也を探しに工具楽屋を出奔して以来、陽菜は中野井とともに営業にも出ていた。』
に修正をお願いします。
で、続きを投下します。
2913355:2006/07/24(月) 00:03:33 ID:D6HJYgxq

 真芝が壊滅して以来、桃子は工具楽屋の寮に移り住み、果歩と同じ普通の中学校に通い始めていた。それで、時間があると何かと工具楽屋に顔を出し、頼んでもいない仕事を引き受けていた。
 やっている仕事は主に、優の手伝いだが、優の趣味丸出しの仕事ぶりとは違い、ひたすら工具楽屋のためにまじめに技術開発をしていた。
 さらに、時間があると、陽菜の経理の手伝いもしてくれていた。当然、我聞のような丹治純な計算ミスなどするものではない(笑)。
 現在の桃子と同じ十四歳の時、自分はどうだっただろうか?
 そのころの自分は、工具楽屋で働き始めて、二年弱。ようやく努力の甲斐あって、仕事の失敗も減ってきて、実際に少しはみんなの役に立てるようになり始めたばかりだった。
 元々、陽菜は、実は、それほど器用な方ではない。それが、工具楽屋でも一目置かれるようになったのは、ひとえに早くから「仕事」というプロの世界に身を置いて、そのために一心不乱に自分を磨いてきたからだ。
 そんな一方、桃子は十四歳の身で、既に真芝の研究所の所長。少し、場数を踏めば、今陽菜ができている程度の仕事はあっさりとクリアするようになるかもしれない。
2923355:2006/07/24(月) 00:04:18 ID:D6HJYgxq
10
 桃子が我聞を慕っているのは間違いない。
 それが、単に命の恩人だからなのか、それとも、男性として、我聞を見ているのか。
 そもそも陽菜はその方面に関しては、今まで興味を持ったことがなかったことから全くわからない。
 だが、もし、桃子と我聞が結婚したら、自分はどうなるんだろう?
 先代に拾ってもらった当時、陽菜は我也に対して、父親を慕うような気持ちで仕事をしていた。
 実際、仕事をしている時は、我也は陽菜の父親と言ってもよかったのだ。
 しかし、たまに、仕事場に工具楽屋兄姉妹弟が現れると、我也はやはり彼らの父親で、自分は単なる一社員だということを思い知らされて、
疎外感から、我聞を始め、工具楽屋兄姉妹弟のことはあまり好きにはなれなかった。
 いまは、もう本当に家族同然と言ってもらっていることから、工具楽屋兄姉妹弟に感じた嫉妬にも似た疎外感を感じることはない。
 だが、もし、桃子と我聞が将来結婚し、自分は秘書、という立場だったら・・・・。
 そのときは、我聞は、桃子とその子たちのものとなっているはずだ。そして、果歩、珠、斗馬は家を出ているだろうから、また、あのときの疎外感を感じるような生活に戻るのだろうか?
 もし、そうなったら自分は・・・・・。

 住に聞かれたときは即答で、それでも良いと返答したものの、今、深く彼女の言葉を具体的に吟味してみると、そのときの自分の考えの浅さに愕然とする。
2933355:2006/07/24(月) 00:05:15 ID:D6HJYgxq
11
 陽菜が、そこまで考えたときに、ふと、時計に目をやる。
(いけない! アポを取っていた時間!)
 ついつい、物思いに沈んでいる間に、予定の時間を過ぎてしまっていた。
 慌てて、スーツに着替えて得意先まわりに出かけた。

 しかし、その日の営業の成果は、やはりというか、散々であった。特に、最初に予定していた相手先の指定時刻に遅刻したのは痛かった。
「約束した時間を守れないような相手とは仕事することはできん」
 たいした時間の遅刻ではなかったものの、中小企業の主で、謹厳実直、頑固を地でゆくような相手だったことも運が悪かった。
 こんなとき、辻原であれば、調子のいい嘘を並べ立てて、自分のペースに巻き込み、何とかしたことであろうが、陽菜にそのような真似ができようはずもなかった。
 特に、常日頃から約束を破るのは最大のタブーとしている彼女は、相手の正しさにただただ平謝りに謝ることしかできなかった。

 ぼんやりしていて、時間に遅れて、言い訳できるようなこともない・・・・・。
2943355:2006/07/24(月) 00:07:45 ID:D6HJYgxq
12
 ただでさえ、相手は高校生の自分を小娘と思って、信用しない傾向があるのだ。
 結局、五件ほどまわった先は、得意先である二件は何とか許してもらえたが、あとの三件はほとんど門前払いも同然であった。
(社長の信頼に応えられなかった。こんなことじゃ・・・)
 仕事に集中できないなど、陽菜らしくなかった。
 しかも、特に体調が悪いわけでもなく、基本的なことである、約束の時間を守るということを凡ミスで失敗するなど、自分が信じられなかった。
(どうしよう、みんなに合わせる顔がない)
 ここで、深刻になってしまうところが、陽菜の欠点であった。
 優だったら、
「あー、ごめんごめん、失敗しちゃったー。次がんばるねー」
 とか言って、ケロッとしているところだ。
 仕事に対して、プライドが高く、まじめなところはいいのだが、自分に厳しすぎる傾向があるのだ。
 陽菜は、工具楽屋に帰りにくくなってしまい、今日最後の相手先の近くの公園で落ち込んでしまっていた。
 そこで、ふと、思い出して、辻原にもらったメモを取り出す。
 メモには、今日出かけた相手先の他に、三件ほど、会社の住所が書いてあったが、その上に打ち消しの二重線が引いてあった。
「その三件は、行く必要がないです。陽菜くんに行ってもらうようなところじゃないんですよ」
 メモをもらったときの辻原の言葉を思い出す。
(でも、失敗した分は取り返さないと)
 陽菜は三つのうちで、その場所から一番近い会社から訪ねることにして、公園を後にした。
2953355:2006/07/24(月) 00:12:19 ID:D6HJYgxq
今回は以上です。
基本的に書いてすぐに投下するものなので、
あまり誤字脱字チェックをしていないので、
今後もたくさんあると思います。
ご指摘くだされば幸いです。

またもエロなしで申し訳ありません。
もしかすると最後までないかも・・・
ただ、落ちが付くまでは投下させていただくつもりですので、
もしよろしければ感想等お願いします。
296名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 00:45:01 ID:pGpbSHNa
エロ無しでも俺はOKさ。とにかくGJさ。
感想……ってもこの時点ではなんとも。ああ、自分の語彙の無さが恨めしい。
297名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 02:13:51 ID:vXWa81lN
丁寧な文章に好感が持てて、いい感じっすよ。
続きが早く読みたいです。

あと、エロに関してはそれほど考えなくてもいいかも。
ここはエロ無しでも、面白ければいいって雰囲気が出来てるからね。
松雪氏のとか、その典型だし。


……松雪氏、こわしやの新刊は出さないみたいね・・・ちょっと期待してたんだが。
298名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 08:55:25 ID:u9D/epgI
3355氏、GJ
続き期待してるよ
299名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 00:48:56 ID:3O+4xZ+E
大変読みやすい文章でした。GJ!


3003355:2006/07/25(火) 23:36:31 ID:BUwAa/bW
風邪を引いてしまいました。
続きの投下は3から5日後になります。
ご了承ください。
301名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 15:06:01 ID:dt+N3sQu
作品投下はありがたいがメル欄にsageっていれるの推奨 >作者氏 

広告とか余計なの入って連番投稿できなくなりますよ。
ageるならまとめて投稿したる最後にドゾー
302名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 20:24:46 ID:Evxx6F0a
おまえら、夏コミに藤木俊氏が参加するらしいぞ。
303名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 22:58:13 ID:+nHFFVmN
>>302
それ言うたら、ここで書いてた職人も参加してるぞ。
304名無しさん@ピンキー:2006/07/27(木) 05:09:29 ID:jBSMOI4/
な…なんですと
305名無しさん@ピンキー:2006/07/27(木) 12:31:27 ID:mI2IIMH8
松雪氏だね。
前回に引き続き参加するみたい。

一日目だから行けないけどな・・・残念。
306名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 00:29:30 ID:gJR4Y4g8
つか、こわしや本は再販するのかな?
前回は完売だったらしいが。
307名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 19:29:39 ID:xKnAHFz3
>>306
再販はするつもりでいますが……平日と言う事もあり数は出さないと思います。
多くても10部ほどかと。
308名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 21:24:55 ID:gJR4Y4g8
》307
了解です。
休み取れたら絶対買いにいきます!


前回、買えなかったので…orz
309名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 00:13:59 ID:4Jz1DQgU
>>307
本人降臨!?
俺は運良く買えたよー
3103355:2006/07/29(土) 02:27:41 ID:t0PrMZ8X
3355です。
続きができましたので、投下します。
3113355:2006/07/29(土) 02:29:13 ID:t0PrMZ8X
13
「ちくしょう、人使いが荒すぎるぞ、あの女」
 我聞と一緒に山川ビルの解体に来ていた番司は、仕事が上がるなり保科に対し、ぶーたれていた。
 もっとも、彼も仕事がなくて、我聞と一緒に保科に仕事をまわしてもらっている立場であるから、面と向かってはあまり強いことは言えない。
「それにしたって、安すぎるぜ。土方のバイトと大差なねえ」
「おい、それくらいに・・・・」
「おめーだって、パシらされてるじゃねえか、なんで・・」
「使ってやってるってのに、だれが人使いが荒いって?」
 その言葉と同時に、保科の正拳突きが番司と我聞に突き刺さる。
「なんでオレまで・・・?」
 悶絶しながら我聞が抗議する。
「うるせー、お前の監督不行届だ! 後輩の教育はしっかりやっとけ!!」
 仙術使いの後ろを取るとは保科も侮れない。
 あるいは番司と我聞が未だに未熟者なのか・・・・。
 言いたいことと、やりたいことをやると保科は引き上げていった。

「あーあ、ちぇっ! この程度のビル、仙術さえ使えりゃ、あんな女にでかい顔をさせるこたねえのに」
 保科が消えると、頭から水をかぶりながら番司はまた少し不満を漏らす。
「まあ、そういうな。あの人だって、普段から努力しているんだ」
 保科のユンボに対する思いと努力を知っている我聞が取りなす。
「おめーだって、殴られてんじゃねえか。それともなにか? ああいう女がいいのか?」
「いや、保科さんに手を出すのはいろんな意味で問題があると思うが・・・(気性は荒いし、見た目は中学生みたいだし)」
 その答えに、番司はフン! と不満そうに鼻を鳴らす。
「ところで、今日はもう上がりなんだよな。少しつきあえよ」
「そうだが、遅くなると果歩が心配する」
「あの生意気な妹か」
「む?! 良くできた自慢の妹だぞ。訂正しろ」
 こわしの仕事でなければ、いつも温厚で、どこか天然ボケがはいっている我聞が珍しく険しい声で返す。大事な家族に関して、彼は少しムキになる傾向がある。
 それを見て取った番司は素直に謝る。
「わりい。だが、まじめな話だ。少しつきあってくれや」
「む、いいだろう」
3123355:2006/07/29(土) 02:29:57 ID:t0PrMZ8X
14
 人気のない空き地で、番司は切り出す。
「このあいだ、陽菜さんのおやじさんとおめーの親父さんが、出かけるときの騒動は覚えてるよな」
「ああ・・・、それがどうした?」
 例の武文が我聞に娘を嫁にもらってくれと頼んだことから、我聞は、我也と工具楽弟妹と番司まで巻き込んで大乱闘を演じたときのことである。
「あの話をおめーはどう思っているんだ?」
「い、いや、家族同然といったが、結婚とかは・・・・」
 そもそも、陽菜の気持ちはどうなのかわからない。それに、陽菜はともかく、高校二年の我聞はまだ結婚できる年齢に達してさえいない。
「おめーは陽菜さんを家族同様と言ったが、オレは陽菜さんに一人の男として、交際を申し込むつもりだ」
 真剣な番司の様子に我聞は、心が動揺するのを感じた。思わず大声を出す。
「そんなこと、國生さんが受けるはずがない! 國生さんは工具楽屋の家族だ」
「別に、家族だろうが、他人と付き合って悪いことはねえだろ。とにかく、オレは陽菜さんが好きだ」
 その宣言に我聞は精神的にやや圧倒される。
「もし、おめーも陽菜さんが好きなら、正々堂々とオレと勝負しろ。単に仕事の上での関係なら、保護者でもないおめーに文句を言われる筋合いはねえぞ」
「し、しかし、國生さんの気持ちも考えなければ・・・」
「だから、アタックするんじゃねえか。何にもしなかったらどう思っているかもわからねえ」
 きっぱりと言い切る。
「で、おめーはどうなんだ? 陽菜さんをどう思っているんだ?」
 奇しくも、陽菜が昼間、住に聞かれたこととおなじ問いを番司は我聞に発した。
3133355:2006/07/29(土) 02:30:47 ID:t0PrMZ8X
15
 國生陽菜・・・。
 工具楽屋社長秘書。
 同じ学校の卓球部で一緒の女生徒。
 いつも冷静で、常に工具楽屋のためを思って仕事をしている人。
 少々きついところもあるが、最終的にはうっかり自分を何のかんの言いながらもフォローしてくれる。
 きっと根本的には情に厚いからだろう。
 そして工具楽屋の業務を大事にして、そのための努力を惜しむようなことはしない。
 ただ、失敗に厳しすぎてとっつきにくいところがあるのが玉に瑕だが、それでも最近はずっと柔らかく、融通がきくようになってきていた。そういう人だ。

 我也が行方不明になって社長を継いで間もない頃は、陽菜は仕事第一でそれ以外のことを切り捨てる傾向があって、ことさら我聞には厳しかったことから、正直、彼女のことが苦手であった。
 それが、様々な仕事を通じて、だんだん信頼されていくようになってくると、無表情で冷たい印象の強かった彼女も、いろいろな表情を見せてくれるようになっていった。
 卓球部の活動にしても、学校の行事にしてもそうだ。
 卓球の勝負にムキになってみたり、喫茶店のメイドの衣装を着て会長に食い下がったり、笑顔を見せることも格段に多くなった。

 自分は彼女のことが好きなのか?

 自問する我聞は、すぐに彼女が好きであるという答えが出るが、それが、いわゆる女性に対してのものであるかというと、ピンと来ない。
 だが、たとえば、自他共に友人という認識がはっきりしている、同じ卓球部の天野や住に対するものと同じかというと、それは明らかに異なる。どちらかというと、絶対的な信頼を置いているという意味で、果歩や珠に感じる感情に近いような気がする。
3143355:2006/07/29(土) 02:31:25 ID:t0PrMZ8X
16
 結局、陽菜をどう思っているかという番司の問いには「わからない」と答えるしかなかった。その答えに、白黒はっきり着くことだけを考えていた番司は拍子抜けをする。
 もし、我聞が陽菜を何とも思っていなければ、たとえ玉砕するにしても大手を振って陽菜にアタックできたし、我聞が陽菜のことが好きならば堂々の勝負というわかりやすい形になっていたはずだ。
「真芝壊滅の立役者もだらしねーなー。そんなことなら陽菜さんはオレがもらうからな」
 番司は宣言して引き上げていった。

 悶々と悩みつつ、我聞は、工具楽屋に帰り着いた。そこでは、中野井と優が不安げな様子で我聞が戻ってくるのを待っていた。
「あ、社長、陽菜くんと一緒じゃなかったのですか?」
「え? 國生さんは今日は営業の方に出ていたはずじゃ・・・・?」
 中野井の心配そうな問いに、我聞は怪訝な顔で答える。
「それがまだ戻ってないのじゃよ。予定していた相手先は全部確認したのじゃが、最後に行った会社を出てからも、もう二時間以上も経っているんじゃ」
「それで、もしかしたら、我聞くんの方に行ってないかと思って・・・」
 携帯に電話しても電源が切られているらしく繋がらない。陽菜に限って、途中で寄り道して遊んでいるということは考えられない。
「いったい、どうしたんだ・・・」
3153355:2006/07/29(土) 02:33:51 ID:t0PrMZ8X
今回は以上です。
一応、次回は少しエロが入る予定です。
(ただ、予定は未定、決定にあらず)
あまり期待なさらずお願いします。
316名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 18:03:29 ID:pDTFNkFt
噛ませ犬番司カワイソス
317名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 12:31:49 ID:u0BHoW8m
次回はエロ。いろいろ大変でしょうががんばって下さい。
318名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 15:44:55 ID:fz+G34FF
この展開でエロとなると、なかなか悩ましい話になりそうですな・・・
ちょっと怖いけど続き期待です〜
3193355:2006/07/30(日) 18:24:04 ID:rVMbeGbL
3355です。
続きを投下します。
今回、「陵辱、ダーク、鬼畜」の入り口前くらいには来ていますので、
純粋な國生ファンの方お気をつけ下さい。
(一線は越えていないつもりですが)
3203355:2006/07/30(日) 18:25:03 ID:rVMbeGbL
17
(ここは・・・・?)
 陽菜が目を覚ますと、あたりはすっかり暗くなっていた。少し頭がぼんやりしている。
 陽菜は順番に思い出そうと頭を振った。そう、新たな取引先を得ようと、辻原のメモを元に、飛び込みの営業を行っていたはずだった。
 それなのに、なんだか口の中に違和感を感じるし、両手が不自由だ。それに寒い。彼女は寒さに思わず身震いをした。そこで、はっと気がつく。
(な?! どうして裸に?! それに、この革のベルトは?!)
 そう、陽菜は両手をがっちりと革製のベルトで拘束されて、全裸で万歳の状態でかろうじて足が着く高さにつり下げられていたのだ。身につけていたはずのスーツと下着は、ごちゃごちゃに床に散乱していた。
 それだけではなく、さるぐつわまで噛まされ、声を出すこともままならない。よく見れば、暗いのも当たり前、上方に明かり取りの小さな窓があるものの、今いるこの部屋は半地下のようである。
 明かりといえば、足下にある卓上用の電気スタンドだけである。
(どうしてこんなことに?! 社長・・・・!)
 さるぐつわを噛まされているので、叫んで助けを呼ぼうにも呻り声にしかならない。
 そして、少しでも両手を拘束しているベルトを弛めようと懸命にあがく。
 と、そこへ、
「おや、お目覚めのようだねえ」
「へっへっへ・・・・」
 初老の女の声と、下卑な複数の男の含み笑いが聞こえた。
3213355:2006/07/30(日) 18:25:57 ID:rVMbeGbL
18
 時間は少し遡る。
「このように、ビル・建物の解体を安全にかつ確実にお客様のニーズに合わせて行っております」
 辻原のメモに書かれ、打ち消し線がしてあった三件のうち、今日予定していた最後の営業先から最も近かった会社で、陽菜は五十代らしき女社長に、工具楽屋の業務を説明していた。
 この会社は、不動産関係を扱っていて、時間がなかったため簡単にだが、調べたところ当然古いビルの解体の機会も熟知しているとの情報であった。
「安いのはいいとこだが、仕事ぶりが信用できるのかねえ?」
 女社長はうさんくさそうに陽菜を横目で眺める。
 営業するようになった最初のうちは、陽菜に対してそういう風に接する顧客の態度に内心腹を立てたが、最近は当たり前のこととして受け入れるようになっていた。
 なにしろ、陽菜はまだ高校生なのである。いくらスーツを着ていても、世間一般の常識からすれば、こんな歳の若い女の子が一人で飛び込みの営業を任せる会社など信用できるものではない。
「仕事の質ですが、お気に召さなければ最初の支払いは結果を見て下さった後で結構です」
 陽菜は食い下がった。
「ふーん。ところで、あんた、ずいぶん若いねえ。なんで解体業なんかやってんの? 学校とかに行かなくていいの?」
 陽菜は、お世話になった工具楽家のためにも、学業と兼業で働いていることを説明した。
 すると、女社長は感心したようだった。
「いいだろう。今時感心な娘さんだ。なかなかしっかりしているようだし、あんたに免じて試しに一度頼んでみようか」
「ほんとうですか?! ありがとうございます!」
 陽菜の顔がパッと、晴れる。
「まあ、とにかく、長々としゃべってのどが渇いただろう? コーヒーを入れ直すから飲んで行きな。わたしゃ、コーヒーにはうるさくてね。自信があるんだ」
3223355:2006/07/30(日) 18:27:36 ID:rVMbeGbL
19
 そう、そのまま女社長が淹れてくれたコーヒーを飲んで、それから気がついたら裸で吊されていたのだ。
「上玉じゃねえか。歳はいくつだ?」
 三人いる中の一人の男が陽菜のあごに手をかけ、顔を上に向かせて品定めする。陽菜は辛うじて自由な両足をばたつかせて抵抗しようとするが、そもそも腰が伸びきった状態であるので、蹴れたとしても力が入らない。
「十七歳の女子高生だとさ。さっき所持品を確かめたのさ」
 女社長がにやにや笑った。さらに、陽菜に対して、ここは、不動産関係と言っても、いわゆる非合法な取引、有り体に言えば地上げのような土地転がし、不法占拠などを行うところだと告げた。
(暴力団の事務所だったんだ・・・)
 だから、辻原は陽菜に行くなと言っていたのだ。せっかくの彼の心遣いを、陽菜は拉致されたことで台無しにしてしまった。
「さて、裏モノを撮って、後はヤク漬けにしてウリに出すんだろ。とりあえず、味見をしようか」
 本番を裏ビデオに撮って、ボロもうけした後、麻薬漬けにされて、売春婦として稼がせようと言うのだ。
 陽菜はその、あまりにも生々しくもおぞましい未来に恐怖でがたがたと震え出す。真芝第一研で我聞と我也が倒れ、追いつめられたときもこのような種類の恐怖は感じなかった。
 あのとき、自分はどうなっても我聞を助けてほしいと思ったが、どうなっても、というなかに、具体的に自らの身体が陵辱されることまで考えていたわけではない。
 陽菜の価値観は潔癖で、しかも、工具楽屋の本業に関わっているとはいえど、俗世の欲望に関しては未だ年齢相応に世間知らずであった。
3233355:2006/07/30(日) 18:29:04 ID:rVMbeGbL
20
「待ちな」
 女社長が手下たち三人が服を脱いで陽菜を陵辱しようとするのを制止した。
「なんでだよ? いまさら仏心か?」
 男達は不満そうな声を上げる。
「お前達を呼んだのは、写真を撮らせるためだよ」
 女社長は地上げ屋以外にも、副業として、売春や裏ビデオの撮影販売をやっていて、それには家出娘などを使っていた。つまり、そのためには身元が割れにくく無防備な少女が必要だったのだ。
 そこに、陽菜が営業の際に漏らした、父親が遠くに出張に行っていて、知り合いの会社に世話になっているという情報から、この娘をどうこうしても、すぐには発覚しないと踏んだのだ。
 話しているうちに、陽菜を拉致すると決めた女社長は、契約すると言って、陽菜を油断させて、コーヒーに睡眠薬を盛った。陽菜が意識を失うと、この部屋に運んで売り物になるかどうか身体を確認した。
 そうすると、この娘はまだ生娘なことがわかった。処女は価値が高い。処女を抱けるのならと、金に糸目をつけない輩は大勢いる。しかも陽菜は美少女だ。どのくらいの値が付くか、考えただけでもよだれが出る。
「いいかい! あんたらがやるのは、この娘の処女を売った後だ。商品価値を下げるようなことをするんじゃないよ!」
「・・・へーい」
 明らかに不満そうだが、手下達は女ボスに従った。
 その後、陽菜はポラロイドであらゆる角度から裸体を撮られてしまった。その写真を得意先ばらまくことで、陽菜の処女を競りにかけるのだ。
 写真を撮られている間中、陽菜はあまりのことに、怖くて、恥ずかしくて、涙が止まらなかった。
(お父さん、お母さん、社長・・・・・)
「でもよー、何だって、ポラロイドなんだよ、今時? 画像もわりィし、デジカメで撮って、ネットでばらまけば簡単じゃねーか?」
「ばかだねえ。ネットで配信すればログが残るだろうが。メールでも、サーバーの管理人の目に触れるだろう?」
 顧客は大金持ちで、いわゆる社会的地位ってのが高い奴らが多い。そういう輩と安全に信用関係を結ぶには、アナログの方が都合がよく、また、あまりはっきりした画像よりも、本物を手に取りたくなるような微妙に不鮮明なものの方が購買意欲をかき立てるのだ。
 そう、ボスは自らの売春哲学を語った。
 後になると、陽菜が処女であったこと、女ボスが用心深かったことが、陽菜達にとって最後のところで幸運だったということがわかることになる。
3243355:2006/07/30(日) 18:31:24 ID:rVMbeGbL
今回は以上です。
いや、予定ではこんなにやばくなるつもりはなかったのですが、
書いているうちに危険度が・・・・
(國生ファンの方、石を投げないでください)
やはり、現実の裏仕事の記事とかを参考にしたので、少々生々しくなってしまったようです。
だいぶその生臭さを消すように努力はしたのですが・・・。
楽しんでいただければ幸いです。
325名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 20:30:09 ID:B4KU+Xuw
>>3355氏乙
なるほど、こういう展開か…
「辻原がこんな危険な連中の連絡先を國生さんに渡すメモに書くか?」というツッコミは野暮ですね

アドバイスとしては地の文をもう少しこまめに改行すればもっと読みやすくなると思います
続編にも期待してます
326名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 01:56:38 ID:2Y5qX7su
今回もGJ!
しかしこれ非エロ・・・ですよね?
まあこの展開で一線越えたらそれはそれでアレですけど。
エロは書くの勇気いるし書かない(書けない)でも全然OKですが・・・


3273355:2006/08/01(火) 21:53:10 ID:q6wuIjOi
3355です。
続きを投下します。
3283355:2006/08/01(火) 21:53:51 ID:q6wuIjOi
21
(國生さん、どこに行ったんだ・・・)
「とにかく、手分けして捜そう」
 陽菜が行方不明と聞いた我聞は、いてもたってもいられず、
多少大げさになっても、みんなで捜しに行こうと主張した。
仮に、陽菜が何かの都合で連絡が取れないだけだとしてもいい。
 それならせいぜい、陽菜はあきれた目で自分を見るだろう
が、後で笑い話になるだけだ。
 だが、下手をすると、「本業」関係のトラブルである可能性
がある。
「最近、本業はなかったけど、真芝の残党とかが復讐を狙っていたのかも・・・」
 優も不安げだ。中之井の顔にも緊張感がみてとれた。
「人手が要りますな。しかも、『本業』をある程度理解してくれている人間が」
「じゃあ、とりあえず番司くんにも来てもらおうよ。彼なら力
になってくれるだろうし、仙術関係者だし」
 我聞は、ついさっきあのような陽菜に対するアタック宣言を
されたばかりだったので、複雑な気持ちだったが、背に腹は代
えられない。
 電話で事情を話すと、番司はタクシーですぐに飛んできた。
「陽菜さんが行方不明だと?! てめー、家族を守るとかいっときながら、なにやってんだ?!」
 そのセリフは我聞の心にグサリと突き刺さった。番司に言われる
までもない。本人がそれは一番気にしていることだ。もっとも、
今回のことで我聞をどうこう言うのは筋違いだろう。
(陽菜さん、絶対オレが助け出して見せます)
 まだ、陽菜がどこその敵に捕まったとも限らないのに、番司は
もうすっかり姫君を救出に赴くナイトのつもりだ。
3293355:2006/08/01(火) 21:54:38 ID:q6wuIjOi
22
 とにかく、探す場所と手順を決めなければならない。
 優は、もし、陽菜が帰ってきてもいいように、工具楽屋で待機し、
中之井は内閣調査室の西に連絡を取ることにした。
 そこで、我聞と番司は手分けして、陽菜が最後に廻った営業先
から工具楽屋への道を何度も往復して陽菜を捜したが、手がかり
すら見つからない。
(本当に、真芝の残党に掠われたのかも・・・・)
 ついつい、悪いことばかり考える。
「ええい、他に陽菜さんが行きそうな場所をどこかしらねえのか?! おめーは?! 行きつけの店とか、何か?!」
 番司は、苛立ちから、我聞を責める。それに対して、我聞は確信を持った口調で答える。
「いや、國生さんが連絡をしないまま、こんなに遅くなって、オレ達に心配をかけることはあり得ない。絶対に何かあったんだ」
 第一研に潜入した辻原からの連絡があって、その電話が切れて、
頭に血が上ったあの日。
「約束してください。必ずみんなで帰ってくること」
 我聞は陽菜に約束した。自分にその約束をさせた彼女が、
自分達に心配をかけるようなことをするわけがない。
 我聞の確信を持ったその言葉で、番司は自分が我聞に比べて、
陽菜のことを全く知らないことに気がつく。
 そして思わず、我聞の顔を見直す。我聞は普段のにこやかな彼に似合わず、
表情が強張り、陽菜を失うことへの恐怖にも近い心持ちで、彼女を心配して
いることが見て取れた。
(やっぱりこいつも・・・・)
 その表情で、番司は我聞の気持ちを読み取った。
 そんな番司の様子には気がつかず、なおも考える我聞は、そこで、ハッと思いつく。
「もしかしたら、辻原さんのところへお見舞いによっているかもしれない」
 営業のノウハウを教えてもらいがてら、お見舞いに行っているということは
十分考えられそうだ。それに、もしそうなら、携帯の使用が御法度の病院で
陽菜の携帯の電源が切られている理由もわかる。
 もっとも、いつもの陽菜であれば、仮にお見舞いに行くにしても、
工具楽屋の方にも一言連絡をいれてから行くだろう。
 とにかく、思いついた可能性にすがって、二人は辻原が入院している病院に向かった。
3303355:2006/08/01(火) 21:55:15 ID:q6wuIjOi
23
「辻原さん、予定の時間をとっくに過ぎているのに國生さんが社の方に戻ってこないんです。今日は、こっちに来てませんでしたか?」
 辻原の病室を訪ねるなり我聞は切り出した。対する辻原は、
病院の早い夕食をとっくに終えて、のんびりと雑誌を眺めて
いたところだった。
「いいえ、今日は来てませんよ。昨日営業先のメモを渡したばかりですから特に来なきゃならない予定はないはずですが」
「寮の方にも帰ってないようなんです。今、社の方には優さんに待機してもらっていますけど、何の連絡もないんです」
「それは妙ですねえ」
 辻原も考え込んだ。
「何か心あたりはないですか? どんな些細なことでもいいんです」
 我聞はわらにもすがる思いだった。
 その必死の様子に辻原は何か思うところがあったようだが、それはさておき、陽菜がたち廻った先については思い出したことがあった。
「もしかすると、行かなくていいと言っておいたはずの、あそこに行ったのかもしれません」
「なんだそりゃあ?! どういうことだ?!」
 番司が病院だというのに大きな声を出す。
「やめろ、番司。どういうことです?」
 我聞が辻原に聞く。それを受けて、辻原は話し出した。
3313355:2006/08/01(火) 21:55:45 ID:q6wuIjOi
24
 元々、陽菜に渡した営業先のメモは、辻原が自分用に作成したものだった。
辻原自身であれば、元は裏の人間。暴力団関係の多少やばい相手でも、
相手の後ろ暗いところをつついて、交渉を優位に運ぶこともできし、
腕力沙汰になっても排除できる。いままで、工具楽屋に取ってきた
おいしい仕事の何割かは実はそういう相手だったのだ。
 ところが、陽菜にそんなことを説明するのは、まだ時期尚早と判断した。
なぜなら彼女は未だ高校生であって、会社を経営する上で、大人のそういう
汚いところに関して免疫がないからだ。
また、彼女自身が優等生であり、ルールを破ることに対する抵抗があり、
蛇の道は蛇的な感覚もない。
 だから、営業先を書いたメモを渡すとき、今の潔癖な彼女が行っても
差し支えのないところ以外は、打ち消し線を引いて、また、その場所は
廻らなくていいと言っておいたのだ。
「ですが、きっと、陽菜くん自身が気を利かせたつもりだったのでしょう。完全に塗りつぶすか、はっきり理由を説明して行くなと言った方が良かったかもしれません」
 裏の仕事に精通する辻原といえども、やはり、やくざと取引しているなどとは、
工具屋の面々にはあまりあまり知られたくはないことでもあった。
 我聞が成長すれば、社長である彼には、いずれは言わざるを得ないことであったが、
今回は自分が復帰するまでの短い間であったし、しばらくは汚れ仕事は
全部自分が引き受けるつもりだったのだ。
3323355:2006/08/01(火) 22:01:09 ID:q6wuIjOi
今回は以上です。
13で我聞の心情を出す手助けのために番司を出したのですが、
いや、使いにくいこと、使いにくいこと
(番司ファンの方すみません。「こんなの番司じゃない!」と言われそうです)
あまり、自分の持ちキャラにないタイプなので、動かし方がわかりません。
ついでに、今気がつきましたが、國生さんも今回出てません。
國生ファンの方にもすみません。
やたらと長くなってしまいましたが、一応もう、二、三回で落ちをつけられれば、と思っています。
333名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 22:03:59 ID:yUuZstLR
GJ!國生さんを助け出せるのは番司か、我門か。
・・・あれ?なんか番司がすごくかわいそうに思えてきたぞ?
3343355:2006/08/03(木) 23:58:24 ID:8vpjUOWe
えー、3355です。
続きを投下します。
3353355:2006/08/03(木) 23:59:46 ID:8vpjUOWe
25
「てめーのミスが原因か?!」
「やめろ、番司! そんなことより、その三カ所というのは?」
「ええ、こちらです」
 地図を広げて場所を示す。現在三人がいる病院からはどれも同じくらい離れていて、
しかも相互にも結構離れている。
 その三件に、試しに電話をかけたが、どこも工具楽屋の者は行ってないという。
 だが、おそらくどこかが嘘をついている。何となくだが、我聞はそう思った。
そうすると、三件の中で、國生が最初に訪問したところが最も怪しい。訪問した後、
無事にそこを出たなら、嘘をつく必要がないからだ。
 もっとも、本当に陽菜がその三件の内のどこかを訪問していれば、だが。
「やっぱり、直接探りに行くべきだぜ。どこから廻る?」
「とりあえず、我々も三手に分かれましょう。一刻も早く救出に行った方がいいです」
 辻原は着替えながら病院を抜け出す準備を始めた。それに対し、番司が地図を睨みながら聞く。
「どこが一番可能性が高い? 誰がどこに行く?」
「多分、ここが一番怪しいと思う」
 三カ所の内の一つを指し、我聞がきっぱりと言った。
「その根拠は?」
「國生さんが、今日最後に廻った先から一番近い。その三件を廻るなら、そこから廻るのが一番効率がいい。國生さんならそうする」
(ちっ! そうかよ・・・)
 内心で番司はため息をついた。結局、陽菜を理解して心が繋がっているのは、
我聞であって、自分は所詮、彼女にとって「商売敵」でしかない。せいぜい、「同業者」、か?
 確信を持って言う我聞に番司は、
「わかったよ、おめーはそこへ行け。他の二件はオレ達に任せろ。その代わり、絶対助けろよ」
「もちろんだ」
3363355:2006/08/04(金) 00:01:09 ID:6hBmKc1b
26
 陽菜の全裸写真を撮り終えた女ボスと手下達は、吊されたままの
陽菜を残して部屋を出ると、きっちりとドアを施錠した。
これでは万が一拘束から逃れたとしても、逃げ出せるものではない。
 もっとも、女ボスにしてみれば、手下が勝手に陽菜を味見すること
を防止する意味もあったようである。
(辻原さんが行かなくていいって言ってたのは、こういうことだったんだ・・・・全部見られちゃった・・・・見られちゃった・・・私・・・・社長・・・!)
 既に自らの身体を汚されたように感じて、陽菜は絶望感からまた泣いた。
今度こそ、もう恥ずかしくて工具楽屋のみんなにも会わせる顔がない。
 だが、そのとき、

 あきら・・・める・・・な・・・

 洗脳された父に追いつめられて、絶望したあのときの我聞の声が、
陽菜の記憶の底から聞こえた。

 あきらめちゃだめだ・・・國生さん・・・・

(そうだ、しっかりしなきゃ・・・)
 まだ、現実に犯されたわけではない。少しでも逆転の可能性を高くする
ように努めなければ・・・。
 このまま泣いていても、売られてしまうのを待つだけだ。
 それに、我聞は絶対に心配して今頃陽菜を捜してくれているはずだ。

(そう、社長は絶対に助けに来てくれる。だから、まず、泣くのをやめて、呼吸を整えて・・・それから・・・・)

 よく考えなければ・・・。陽菜はまず、拘束にゆるみができないか確かめてみた。
だが、幅広の革のベルトはラバーを挟んで陽菜の両手にしっかりフィットしていて
抜けられるものではない。
3373355:2006/08/04(金) 00:02:20 ID:6hBmKc1b
27
(だめ、私の力じゃとても無理・・・。他になにか使えるものは・・・)
 冷静にもう一度いろいろと考えてみる。連中は陽菜にさるぐつわを噛ませている。
それは、騒がれると困るからである。なぜ困るかというと、騒がれると人に知られる
からだ。

 そう、騒げば声が届く距離に助けてくれそうな人がいるということだ!!

 きっとこの部屋は半地下と言っても、それほど防音性のいい建物でもないのだろう。
大声を出せば通りにいる人が気づいてくれる可能性が高い。
 何か大きな音が出せるものはないだろうか? そうでなかったら、光か、煙か・・・・。
 陽菜は改めて部屋の中を見回す。だが、そこはやはりガランとした殺風景な部屋であり、
あるものと言えば、床に散乱する陽菜の服と、点いたままの卓上用の電気スタンドだけだった。
 その電気スタンドも、陽菜が辛うじて自由になる足の届く範囲からわずかに遠かった。

 あのスタンドの光を明かり取りの窓に当てられれば・・・・。

 外部に向かってSOSを発することができるかもしれない。しかし、必死で足を伸ばすが、
どうやってもスタンドには届かない。心が折れそうになるのを必死でこらえて、
さらに方法を考える。
 そこで、とりあえず足が届く範囲にあった服を引き寄せる。
だが、手を使わなければ、服を着ることはおろか下着を身につけることもできない。
 それに、服にはライトの類は入れていなかったし、武器になりそうなものも、
大きな音を出せそうなものもなかった。
 しかし、ある事件以降、肌身離さず大事にしていたものスラックスのポケットに入っていた。
 陽菜はわずかな望みをかけてそれを取りだした。
3383355:2006/08/04(金) 00:03:21 ID:6hBmKc1b
28
『東和建設』
 我聞は、目的の会社の前に着いた。
 本当に陽菜はここを訪れたのか?
 さらに、別の場所に移されず、まだここに捕らわれているのか?
 それだけではなく・・・陽菜は無事でいるだろうか?

「社長、行く前に、一言だけ」
 病院を出発する時に辻原に呼び止められた。
 辻原は、我聞が行こうとしている会社は、単に地上げ屋なだけでなく、売春の斡旋も行っているらしいことを告げた。
 つまり、陽菜は既に辱めを受けている可能性がある点を覚悟しておいた方がいいというのだ。
「そんな!!」
「とにかく、なにかをされてしまっていても、彼女を包んであげられますか?」
「当たり前です! そんなの陽菜さんのせいじゃない!」
「では、行きなさい。気をつけて」

 陽菜が行方不明になってから既に三時間以上経つ。「何か」をされるには十分な時間だ。
 だが、どんなことになっていても陽菜は自分たちの家族だ。
(とにかく、突貫だ! なんとしても國生さんの居場所を問いつめてみせる)
 我聞は門をくぐった。

「ほうほう、それは関心だねえ。その若さで会社を切り盛りしているとは」
「いえ、社長ですから」
「いやいや、しっかりなさっているこった。将来が楽しみだねえ」
「それほどでも・・・」
 意を決して『東和建設』の扉を叩いたものの、応対した初老の女性は穏やかそうな人物で、我聞はすっかりほのぼのとした相手のペースに、ドップリはまってしまっていた。
 契約を取り付けようと焦ったとはいえ、陽菜でも見破れなかった女社長の本性を、お人好しで単純バカの我聞があしらわれるのは無理もない。
(こ、これはなにかの間違いだったか?)
3393355:2006/08/04(金) 00:05:03 ID:6hBmKc1b
今回は以上です。
ずるずると長くなってしまいましたが、
もうしばらくおつきあい下されば幸いです。
340名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 00:39:40 ID:Af2a+zOi
がんがれー
ここの住人は本スレもチェックしてるから分かってると思うけど
T・O・Fのサークル本の仮表紙来てますよー
341名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 22:57:56 ID:CuPbm+E/
まさか我聞のエロパロをこんなにハラハラしながら読むことになるとは思わなかった・・・
続きが気になります、是非おつきあいさせて下さい!
342名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:54:43 ID:bu9CgKzE
もりあがってまいりますた
343名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 18:46:51 ID:9fl0y/UW
>>342
そうかぁ?
344名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:06:58 ID:iQg4W5Nk
俺は楽しみにしてるよ、話も佳境って感じだし先が気になる

というワケで頑張ってくれ〜
3453355:2006/08/06(日) 23:18:09 ID:3vFzUCMM
3355です。
間違いがいろいろありまして、この際ですので、まとめておきます。
9で、

『当然、我聞のような丹治純な計算ミスなどするものではない(笑)。』

『当然、我聞のような単純な計算ミスなどするものではない(笑)。』

24で、

『相手の後ろ暗いところをつついて、交渉を優位に運ぶこともできし、』

『相手の後ろ暗いところをつついて、交渉を優位に運ぶこともできたし、』

あと20まで
『中之井』が『中野井』となっていました。

まだ他にもあったかもしれませんが、とりあえず以上訂正まで。
で、続きを投下します。
3463355:2006/08/06(日) 23:18:43 ID:3vFzUCMM
29
 あまりに穏やかそうで品の良さそうな初老の女性が、
応対する者であったことから、我聞には迷いが生じていた。
 元々、あまり人を疑うということがないところが我聞の長所だ。
最初、陽菜がここを訪ねたはずだと相手に詰め寄ったものの、
あっさりかわされてしまった。
 しかも、相手の老婦人は我聞のいささか非礼とも言える訪問と目的にも、
穏和な態度を崩さず、我聞の必死さに同情の言葉さえかけてくれたのである。
 だが、ここは、ある程度確信をもって来たのだ。どう考えても、
効率を重視する陽菜は、順番からして他の二件よりも先にここを訪ねたはずだ。
(しかし・・・この人が悪党とはどうしても思えない・・・・)
 辻原にも、この会社の人間が売春を斡旋しているらしいことも聞いている。
 内心悶々としながらも、何とか話をつないで建物内を調べる許可を取ろうとするが、
相手はにこやかな態度を崩さずに言う。
「早く社員の人が見つかるといいねえ」
 老婦人は言外に「話は終わったよ。うちは関係ないよ、よそを捜しな」と言っているのである。
 ここで、はいそうですかと、引き下がりたくはなかったが、かといって、
礼儀から言っても「家捜しさせてください」などと強引に言える雰囲気ではない。
 元々は、問いつめれば、相手はすぐに物騒な力づくで自分を排除しようとするだろうと考えていた。
そうなれば、思う存分仙術を駆使して陽菜を捜すことができたのだが、
こう、紳士的にこられると・・・・。
 改めて忍び込むことも考えたが、自分の技は隠密に向いていない。
もう、これ以上は話をつなぐのが不可能な状態であったが、我聞は苦し紛れに、
「すみません。全く今までの話とは関係がないんですが、実は、オレ、庭の植木に
興味をもってまして、最後にここのお庭を拝見してもいいですか?」
 実は我聞の庭いじりは家庭菜園オンリーで、植木などとんとわからないが、
少しでも時間を稼いで、せめてこの建物の外観なりとも把握しておきたかった。
3473355:2006/08/06(日) 23:19:16 ID:3vFzUCMM
30
(しつこい小僧だねえ。いっそのこと小娘と一緒に処分しちまおうか)
 女ボスはしかし、その考えを頭から追い出す。
 せっかくここまで穏便に運んできたのだ。
 わざわざ新たなリスクを背負うのはばかばかしい。
 そう、我聞まで処分するとなると死体の始末まで考えなければならない。
 だから、とりあえず、敷地を一回りだけさせたらさすがに帰ってもらおう。
 それでも、なお粘るなら、警察を呼ぶと言って追い払おう。そう決めると、
「ええ、かまいませんよ」
 とにこやかな表情を崩さずに我聞の頼みを許可した。

 表に出て、庭木を見るふりをして何か手がかりになるものがないかと目をこらしたが、何も発見できない。
 既に夜十時になろうとしているのだ。建物から漏れる明かりはあるとはいえ、足下は相当暗い。
 仙術で鍛えているとはいえ、もし仮に陽菜の遺留品が落ちていたとしても、発見できるかは微妙なところだ。
(ここは、違うのか? それとも、改めて忍び込んだ方がいいのか? 陽菜さん・・・)
 建物を一回りして、いよいよ、もうこれ以上ここにいる時間を引き延ばすことができないところまで来てしまった。
 女社長は口を開いた。さすがにうんざりした気持ちが口調に混じる。
「そろそろ、いいですか?」
 だが、そのとき、我聞は建物の下の方、ほとんど足下ぎりぎりにある、
小さな窓の色が、微妙に黒から紫に点滅していることに気がついた。
(なんだ? あの窓、色が変わっている?)
 しかも、その点滅は一定の周期で点滅しているようである。

 短く、短く、短く。長く、長く、長く。また、短く、短く、短く・・・・・。

(モールス信号?! 助けを求めているんだ!! やっぱり陽菜さんはここにいるんだ!!)
3483355:2006/08/06(日) 23:20:41 ID:3vFzUCMM
31
 陽菜は必死で足を使い、手鏡で電気スタンドの光を明かり取りの窓に反射させていた。
 手鏡は、足の指を使って、ふくらはぎが攣りそうになりながら、スラックスのポケットから取り出した、
 手鏡と言っても、化粧直しのコンパクトだから、大きさ自体は小さい。
 足先でうまく明かり取りの窓に反射光を当てても、その光は弱く、果たして外から見えるかどうかは心許なかった。
(お願い! だれか気づいて! 社長!)
 そのとき、鍵が開く音がした。陽菜は慌てて、手鏡を散乱する服の下に隠した。
「でもよ、いいんですかい? ボスに止められたでしょう?」
「なあに、処女だけ残しとけばいいんだよ。オレ達だっておいしい思いをしねえとな」
 二人の手下は、ボスの意に反して、陽菜を嬲るつもりなのだ。
「んーー!! むーー!!」
 今度こそ、絶体絶命だ。陽菜は恐怖に目を閉じた。
 しかし、そのとき

 どがーーん!!!

「な、なんだあ?!」
 うろたえる手下どもの声が上がる中、明かり取りの窓が丸ごと吹き飛んだ。建物自体にも大穴が空いている。

 あれは!! 収束爆砕!!

 間髪入れず、建物に空いた大穴から黒い影が飛び込んできた。そしてその影はたちまちのうちに手下どもを残らず叩き伏せた。
 さらに、爆砕の音を聞いて駆けつけてきた増援も全く寄せ付けない。
 強い。一言で言って、それだけだ。通常の人間相手であれば、おそらく百人や二百人が武装して束になっても我聞を倒すことは不可能だ。

(社長!! やっぱり来てくれた!!)

 陽菜は声を伝えようと身をよじって声を出そうとしたが、さるぐつわのせいで言葉にならない。
 だが、我聞は、すぐに陽菜の戒めを引きちぎり、さるぐつわも解いてくれた。そして、上着を掛けてくれた。
「陽菜さん!! 助けに来た!!」
「社長!! ありがとうございます!」
 陽菜が劇的な救出劇に感動して我聞に感謝の言葉をかけたが、我聞はほとんどその言葉を聞いておらず、自分が空けた大穴の方を振り返った。
「おまえら・・・・陽菜さんに何をした・・・?」
3493355:2006/08/06(日) 23:21:27 ID:3vFzUCMM
32
「ひ、ひいいいい!!」
 我聞は眼光鋭く、建物に空いた大穴から、外の庭にいる女社長に、押し殺した声をかけた。彼女は、常識外の仙術の威力を目の前にして庭にへたり込んでいる
 その声は、普段の些かずれていたり、緊張感が乏しい我聞とは打って変わっていて、彼が本気で怒っていることを示していた。
 元々我聞はあまり自分のために怒るということがない。彼が他人に対して怒るのは、自分の親しい人間が危険にさらされたときだけである。
「ま、まだ何もしていません!!」
 女社長は腰を抜かしてしまっていたので、逃げることも抵抗することもできないことから、早口にいいわけをまくし立てた。
 まだ、陽菜の処女を売りに出そうとしたことから、まだ、彼女には、何もしていないこと、
裸にしたのは単に身体の状態を確認しただけであることなどを叫ぶように弁解した。
 我聞は無表情にその言葉を聞いていたが、無言のまま、ひらりと半地下から女ボスのところまで駆け上がると、その襟首をつかむ。
「本当か? もし嘘だったら・・・」
 ボスは、我聞の迫力に襟首を捕まれた瞬間に失神した。
「社長!!」

 陽菜の呼ぶ声で、我聞は慌てて陽菜のところに戻ってきた。
「社長、ありがとうござい・・・・あっ!」
3503355:2006/08/06(日) 23:26:05 ID:3vFzUCMM
私の駄文に対して、たくさんの皆様に励ましていただきありがとうございます。

今回は以上です。
一応、次回で最終回の予定です。
ただ、予定より長くなると、次回の投下まで少々長めの時間をいただくかもしれません。
351名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 12:22:45 ID:f1KAmj6X
3355氏、GJ!
続きを期待してるよん
352名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 23:20:07 ID:6hdeuTK+
とりあえず國生さんが無事で救出されてひと安心。
続き楽しみにしてますよ〜!
353名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:22:00 ID:hIppt1By
ほちゅ
354499:2006/08/11(金) 22:03:22 ID:45VspIJc
完全に時期を逸しているのですが、
7月7日の我聞の誕生日ネタで書いたものを投下させて頂きます。

とりあえず前後編の前編だけということで、
今回はえっちなしです。
355499 1/15:2006/08/11(金) 22:05:36 ID:45VspIJc

工具楽我聞は、混乱していた。

今日は7月7日・金曜日、そして時刻は午後6時半を少し過ぎたあたり。
本日は七夕にして同時に彼の誕生日でもあり、
家では家族や同僚が彼の為にささやかなパーティーを開いてくれるとのことは事前に聞かされていた。
だから、現場が長引いて帰社の遅くなった彼を待たず、
パーティーの準備の為に先に戻った彼女が家の玄関で彼を迎えてくれること自体は、何の不思議も無い。
だが・・・

「お、おかえりなさいませ社ちょ・・・ご、御主人様!」
「・・・え、ええと・・・國生、さん?」
「は、はい、その・・・お、おた、お誕生日、おめでとうございますっ!」
「あ、ああ・・・ありがと・・・」

そこに居るのは間違いなく工具楽屋の社長秘書であり経理部長であり、
同じ高校の同級生で部活仲間でもある彼女―――國生陽菜に間違いは無い。
間違いは無いのだが・・・

「それよりも國生さん、その格好は、一体」
「え、ええと・・・その、果歩さんと、優さんが・・・この格好だと社長が喜ばれるから、と・・・」
「喜ぶ、って・・・果歩と優さんが・・・な、何考えてんだあの二人は・・・」
「あの・・・お気に召しませんか?」
「い、いや!? う、うん、に、似合ってる! 似合ってるよ、すごく!」

だが、似合っていようがいまいが・・・

「あ、ありがとうございます・・・」
「・・・でも、何でその格好なんだ? ええと、それってあれだよな、去年の学園祭のときの、ええと」
「はい、あの時の、メイド喫茶のときに作った衣装を頂いていまして、それを・・・」

まさか彼女がエプロンドレス着用で出迎えてくれるだろうなど、誰が想像できようかというものだ。
和風の家にメイドが似合わないとか、そういう細かいことを気にする我聞ではないが、
そもそもそれ以前の問題である。

「今日は社長の誕生日で、今夜はそれを祝う会ですから、
 秘書としてはいつもお世話になっている感謝の意を込めて、ということで、その、あと、ええと・・・
 しっかりと、その・・・ご、ご・・・ご奉仕、させて頂こうと・・・格好から、入ってみたらどうか、って、
 優さん達が言われまして・・・その方が、社長もお喜びになる、と・・・」
「ご奉仕・・・って・・・」

妹と同僚の意味不明すぎるアイデアと、
それに素直に従ってしまう秘書の意図がどうにもわからない我聞であったが、とりあえず・・・

「それはともかく國生さん、その・・・御主人様、ってのは勘弁してくれ・・・」
「お気に・・・召しませんか?」
「んー、なんつーか・・・國生さんに呼ばれてる気がしなくてな・・・いつも通りでいいよ、そこは・・・」
「は、はい、では、社長、と・・・」
「ん、そうだな、その方がしっくりくるよ、ははは・・・」

どうしても気になったところだけ直してもらって、あとはもう成り行きに任せることにする。
考えたところで、果歩や優の考えていることがわかるとも思えないし、
ここは当人達に直接聞くほうがよっぽど早いだろう。

「では社長、皆様お待ちかねです、そろそろ中へ・・・」
「ああ、そうだな・・・じゃあ、行くとしようか!」

実際に我聞がいくら頭を捻ったところでこの状況の裏に仕組まれた企みに気付けるハズもなく、
故にこの時点で、我聞が既に陽菜もろともGHKの魔の手にかかりつつあることなど、
想像できるハズも無かった。
356499 2/15:2006/08/11(金) 22:07:08 ID:45VspIJc

「ただいま! すまんみんな、待たせたな」
「兄ちゃんおかえりー!」
「ウム、お勤めご苦労!」
「お帰りなさいお兄ちゃん、遅かったじゃない!」
「あ、ああスマン、現場が長引いてだな・・・って、それより」

工具楽家の居間は普段に比べれば遥かに豪華に飾り付けられ、
果歩が腕を振るったのであろう沢山のご馳走がお膳の上にところ狭しと並んでいる。
普段とは様相を異にする景色ではあるが、それはまだ我聞の想像の範囲内のことである。
それよりも、やはり我聞にとって気になって仕方がないのは―――

「工具楽ぁあ! テメェ唯でさえ普段から秘書だ何だって陽菜さんをはべらせておいて、
 その上で誕生日にかこつけてそんな、は、は、恥ずかしい服まで着せるなんざ・・・
 今日という今日は許さんぞ―――!」
「ちょ! 待て番司! 別に侍らせてなんか・・・」
「番司さん」

場の雰囲気など完全無視、例によって直情で我聞に掴みかからんばかりの剣幕の番司だが、
二人の間に陽菜がするり、と割り込んで、

「は、陽菜さん!?」
「この服装は社長のご意思とは全く無関係に、私の意思で着用しています。
 それに、会の主賓をもてなすという意味では全くの場違いとも言えないと思いますが
 それを恥ずかしいとおっしゃるのでしたら、その理由を是非ともお聞かせ願いたいのですが」

ヒュゥゥゥウ―――と、冷房程度では済まされない寒風が吹き付ける。
主に番司の胸の奥に。

「い、いや、そ、それは・・・」
「気に入らないなら帰れば〜?」

凍りついたように固まった番司に、
彼曰く“恥ずかしい格好”を陽菜に勧めた張本人の一人がすかさず追い撃ちをかける。
ちなみに先程の陽菜の台詞の後半は果歩の受け売りだったりもする。

「い、いや! は、陽菜さん・・・よ、よくお似合い・・・デス・・・」

凍結一歩手前の声でなんとかそれだけ言うと、すごすごと引き下がるしかない番司であった。

「ん〜、以前はこれで泣いて逃げ帰ってたのに、
 番司くん、はるるんの極寒視線にも随分耐性が付いてきたねぇ」
「・・・チッ、邪魔者の排除が出来たと思ったのに・・・」

黒幕二人の好き勝手な台詞に殺意に近い感情を抱くものの、

「まあまあ番司、オレは全然気にしてないから」
「お前なんかどうでもいいんだ―――!」

結局は我聞に八つ当たりするしかない哀れな番司なのであった。

「さあさあ、そんなのどうでもいいからそろそろはじめましょ! みんなお腹空いてるでしょう?」
「「空いてる〜!」」

そして完全にスルーされる番司の叫び。

「っく、あんのガキャあ・・・」

番司と果歩、この二人が惹かれあうようになるのは、まだまだ遠い先の話らしい・・・
357499 3/15:2006/08/11(金) 22:08:48 ID:45VspIJc

ともかくそんな感じで始まった我聞の誕生祝いは、
皆でハッピーバースディを歌ったり、我聞がケーキの上の18本のろうそくを吹き消したりと、
基本的なところを押さえつつ、無難な感じで進んでゆく。
ありきたりといえばその通りだが、
主役の我聞としては家族や友人、同僚にこうして祝って貰えるだけで十分に嬉しかったし、
彼の嬉しそうな姿は場に居合わせた皆を、それぞれの思惑を超えて楽しい気分にさせてくれた。
我聞の素朴な人柄故の人徳、なのだろう。
だが・・・例えどんなに和やかな雰囲気であろうとも、
既に始まっている計画・・・現在進行形の企みが止まることはないのだ。

「社長、どうぞ」
「あぁ、サンキュ」

番司とのごたごたで果歩や優に話を聞くタイミングこそ逃してしまったが、
理由はどうあれその衣装に恥じぬ献身っぷりで我聞の為に働く陽菜の姿は、
生真面目な彼女らしいと言えば彼女らしかった。
何より今の我聞は態度にこそ滅多に出しはしないが、陽菜のことを憎からず思っているのだ。
そんな彼女に寄り添われて甲斐甲斐しく尽くされては悪い気がするハズも無く、
やや恥ずかしそうで、それでも健気な陽菜と、やはり恥ずかしそうで、だが満更でもなさそうな我聞は、
端から見れば初々しく微笑ましい、お似合いのカップルといった様相 であった。
だが・・・

「むぅぅ・・・やられたわ・・・まさかハルナがメイドのコスプレで勝負をかけてくるなんて・・・!
  カホ! ユウ! これもあんたたちの差し金なの!?」
「さ〜あ、なんのことかしら〜?
 さっきも陽菜さんが自分で言ってたじゃない、“私の意思で着ている”って〜♪」
「くっ、怪しいもんだわ・・・こ、こうなったら今度は私だってメイドさんになってやるんだから!
 ふふふ、メイドの本場、欧州の血の流れる私のメイド姿、ひと目見て惚れ直しても知らないからねっ!」
「まぁ、既に二番煎じだがな・・・それに、桃子はどう考えても奉仕って性格じゃねーだろ・・・」
「う、うるさいキノピー! そこで私の愛溢れる奉仕の姿を見てなさい!
 さ、ガモーン、私も取って、いや、食べさせてあげる〜♪」

桃子が鳥の唐揚げを箸で摘むと、それを直に我聞に向けて差し出そうとした―――その瞬間。

「ダメです」

ぴしっ、と。
陽菜が抑揚の無い、ある意味冷たい、とすら思える声で即座に言い放ち、
桃子の差し出した箸に向けて“それ以上近づけるな”と言わんばかりに掌を突きつける。

「ハ、ハルナ・・・?」

あまりに唐突で一方的な拒絶の態度に、桃子は怒るよりも唖然としてしまい、
二の句を継ぐことすら出来ずにいる。

「社長のお世話をするのは本日は私の役目です。
 桃子さんは気にせず、皆さんとご談笑なさっていてください」
「あ、う・・・うん・・・」

後に続く陽菜の言葉には、普段どおりの丁寧で落ち着いた響きしかなかったが、
直前に見せた彼女の過敏な反応にただならぬものを感じたのは桃子だけでは無かった。
・・・もっとも、それを“計画通り”とほくそ笑む者も約2名程居た訳だが。

「ええと、國生さん・・・こうしてくれるのは凄くありがたいんだが、
 俺にばっか構ってないで、もっと食べたり皆と話したりしたら?
 國生さんには俺の方もいつも世話になってるんだ、なんかこう気を使われてばかりだと、申し訳ないし・・・」
358499 4/15:2006/08/11(金) 22:10:00 ID:45VspIJc

他人の感情の機微に激しく鈍感な我聞ですら違和感を抱く程に、
今の陽菜の反応にはただならぬ雰囲気があった。
・・・とはいえ、そこは朴念仁を地で行く男である。
陽菜の様子を“不機嫌”の故と認識し、
それは即ち自分の世話にかかりきりで今日の会を楽しめていないからではないか、と早合点したのである。
だが、彼の予想は当然ながら的外れも甚だしく、これを聞いた陽菜は途端に表情を曇らせて―――

「そうですか・・・すみません、却ってお邪魔だったでしょうか・・・」
「え!? いやいやいや! 別にそんなことは全く! むしろ結構うれし・・・
 い、いや、その、と、とにかく、全然邪魔とかじゃないから!」
「本当ですか!?」

またしても一転、今度は表情をぱあっと明るくさせて、

「よかった・・・ではご主人様・・・はい、どうぞ♪」
「え・・・こ、國、生・・・さん・・・?」

ついさっき桃子がやろうとしたこと―――食べ物を取り皿に取ってあげるのではなく、
お箸で直接食べさせようとする―――をしようとしているのだ。

「あ―――! ハルナずるい―――っ! それ私が先にやろうとしたのにぃ!」
「済みません桃子さん、でも折角ですから、私が代わりにということで・・・さ、社長?」

いくら鈍い我聞とて、これがどれだけ恥ずかしい行為なのかは充分にわかっている。
だが、一方の陽菜は顔を赤らめながらもその表情は真剣そのもので、
威圧感すら感じさせる上目遣いに・・・拒否することなど、出来なかった。

「じゃ、じゃあ・・・」
「はい・・・」

ぱくっ、と。
情けないくらいに顔を真っ赤にして、
やや大きめに口を開いて陽菜から差し出された唐揚げを一口で口に収める。

「きゃ〜! お兄ちゃんったら陽菜さんに食べさせてもらっちゃった!
 ね! 見ました優さん!? きゃーきゃー!」
「ふはは! 見たなんてモンじゃないわよ〜?
 ちゃーんと携帯で証拠画像までバッチリ収めておるわ! ほらほら!」

等とすっかり興奮して盛り上がり最高潮な二人もいれば、

「ぬぉおおおおおお! 工具楽ぁ・・・許さん、絶対に許さんぞぉおおお!」

拳を握り締めながらも陽菜がつきっきりではそれを振り上げることも出来ず、
血涙を流し男泣きする学ランがいたり、

「く・・・ふ、不覚! だが、だがまだまだよ! 今度は私が、く、口移しでガモンに・・・」

心底悔しそうにしながらも、新たなアイデアまで使われてはなるまいとあくまで小声で呟く少女がいたり、
“きっとそれも実現することないんだろうな”と悟ったような目で少女を眺めるキノコがいたりと、
もはやその場は完全なカオスと化していた。

「しゃ、社長・・・おいしかった、ですか・・・?」
「あ、ああ、うん・・・サンキュ」
「では、もうひとつ・・・」
「え!?」
359499 5/15:2006/08/11(金) 22:11:15 ID:45VspIJc

既に気分的には致命傷に近いダメージを負っている我聞に、更なる追撃が襲い掛かる。
本来なら、恥ずかしくとも決して嫌なことではない筈の彼女の“奉仕”も、
このような場においては、初心な我聞にはもはや公開処刑に近いキツさしか感じられない。
だがそれでも・・・やはり恥ずかしそうにしながらも頑張っている陽菜の心を無下にすることなど出来ず、
我聞は仙術使いならではの精神力を総動員して笑顔を作り、
差し出された卵焼きをぱくり、と、さも美味しそうに口にするのであった・・・

「あ、お兄ちゃん、それ陽菜さんが作ってくれたんだよ? どう、美味しいでしょ〜!」
「あ・・・? あ、ああ、す、凄く美味いよ!」
「本当ですか!? よかった・・・では、もう一つ」

心底嬉しそうに笑顔を浮かべながら、再度卵焼きを差し出してくる陽菜。
対して我聞はやはり笑顔で応じながらも微妙に目が泳いでいたりするのだが・・・

何気なく並んでいた卵焼きの出自を知った男がせめてもの腹いせに―――
とばかりに残った卵焼きを一気にかっ込んでいたり、
触発された子供二人が彼と争うように卵焼きを奪い合っていたり、
そんな彼らに声援やら野次やらをかけている黒幕がいたり、
騒がしい周囲など完全眼中外で陽菜の手元と我聞の口元しか見ていないハーフの少女がいたりするばかりで、
誰も我聞の挙動不審な素振になど気付きはしないのだった。

「社長のお口に合うか、ちょっと心配だったのですが・・・喜んで頂けて本当によかったです!」
「はは、は・・・國生さんにここまでして貰えて、俺も嬉しいよ、はは・・・」

―――でも、ごめん國生さん・・・本当は味なんてわからないんだ・・・

極度の羞恥と緊張でもはや味覚がまともに働いてくれず、
陽菜の手料理へのせめてもの礼儀とばかりに、念入りに念入りに咀嚼する我聞であった。



360499 6/15:2006/08/11(金) 22:12:46 ID:45VspIJc

そんな感じで表向きは主役優遇かつ大注目、
だが実のところ完全に置いてけぼりな混沌とした展開のまま、
大量の料理もケーキもキレイに片付いて、皆からのプレゼントも我聞へと手渡され、
簡単なゲームなどに興じ(やはりそれぞれの思惑が交錯しすぎて酷く混沌とした展開になったのだが)、
誕生祝いの会として、やるべきことはあらかた終えたところで―――

「じゃあ、時間も時間だしそろそろお開きってことにしよっか、
 珠、斗馬、お皿運ぶの手伝って」
「「りょうか〜い!」」
「あ、果歩さん、私も・・・」

それまでずっと我聞につきっきりだった陽菜が、果歩に習って席を立とうとするが、

「ううん、陽菜さんには準備の方で手伝ってもらっちゃったし、いいですよ〜。
 それに・・・」

当り障りの無い遠慮の言葉の後になにやら酷く思わせぶりな台詞を言いかけて、
言葉を続ける代わりに陽菜へと目配せしてから、果歩は台所へと消えてゆく。
そんな彼女を酷く真剣に見送る陽菜の様子は、一部の参加者には気になって仕方の無いものであったが・・・

「そうね〜、はるるんも我聞くんにつきっきりで、疲れちゃったでしょー?
 今日も遅いし、部屋に帰ってゆっくり休んだら〜?」
「は、はい、そ・・・そうですね、では・・・」

内容的にはごく自然なやりとりのハズなのに、何故か陽菜の反応が酷くぎこちない。
ゆっくりと席を立ち、そしていかにも何か言いたそうに、座っている我聞の方にちら、ちら、と視線を送っている。
だが、当の我聞は我聞で、ある意味幸せではあったが酷く心労のたたる誕生祝いが終わり、
陽菜の献身からも解放されてぼんやりとしていたせいか、
普段なら自ら率先して行う筈の行動に出ようとしない。
その様子をじれったげに見ていた優だが、仕方なく―――

「ほらほら我聞くん!」
「・・・はい?」
「はい? じゃなくて!
 あーんなに陽菜ちゃんにお世話になっておいて、このまま一人で帰しちゃうつもり〜?」
「・・・あ! そ、そうか、すまん國生さん! 送っていくよ!」
「あ、い、いえ・・・その・・・」
「・・・却って迷惑、かな?」
「い、いえ! よ、よろこんで・・・」
「な、ならば俺も陽菜さんを送ります!」
「じゃあ私もガモンに送ってもらう〜!」

これまでの展開からして、これ以上我聞と陽菜を二人きりにしてはいけない―――
と、同じ危機感を抱いた二人がそれぞれの思惑を胸に立ち上がる。
番司はそのまま我聞の前に立ち塞がるように迫り、

「いいか工具楽! これ以上テメェの好きにはさせねぇからな!
 夜道で暗がりにかこつけて陽菜さんに指一本でも触れてみろ!
 そんときゃ俺の超大水弾がテメェの顔面を・・・」
「「空―――愛―――」」
「なんだウルセェな! 文句あっ・・・」

いきりたつ番司が振り返ったその先には―――

「「―――台風っ!」」

珠の両足をカタパルトに、斗馬の全身をロケットに見立て、
姉弟の足腰のバネを推進力として放たれたカミカゼ的破壊兵器が既に目前に迫っており・・・
361499 7/15:2006/08/11(金) 22:14:42 ID:45VspIJc

「おごぉぉぉぉおっ!?」

回避どころかガードする余裕も与えず、哀れな番司の顔面を粉砕していた。

「な・・・ちょっ・・・! お、おまえら!?」
「ば・・・っ、バンジ―――!?」
「は・・・るな、さ・・・ん・・・すみ、ま・・・せ・・・ん」

ガク、と。
場の雰囲気的に間違いなく当人には届いていないであろう台詞を残し、
静馬番司―――暁に散る。


仙術使いすら一撃で粉砕する姉弟奥義の超弩級の威力と、
哀れな犠牲者を生み出した目の前の惨劇に我聞と桃子は度肝をぬかれ、言葉が続かない。
だが、その隙に素早く行動に移った影が一つ。

「さ! 社長、今のうちです!」
「あ、ああ・・・って、えぇえ!?」

一体何が今のうちで、これから何がどうなるのか・・・
何一つ状況が掴めないまま唖然としている我聞の腕を取ると、
陽菜はおよそ彼女らしからぬ強引さで居間から駆け出そうとしている。
同じく唖然としていた桃子だが、事ここに至って正気に返り、

「ま、待ちなさいハルナっ! これ以上の抜け駆けは―――」

と、二人を追って駆け出そうとして、
ふっ、と背後から漂う殺気に思わず振り返ると、そこには・・・
早くも発射態勢に入り、次弾をぶっぱなしたくて仕方ないっぽいオーラ出しまくりな珠と、
同じく発射態勢に入りつつも既に頭に一つコブをこさえていて、
出来れば発射されたくなさそうな感じが表情からありありと覗える斗馬が控えているのだった。

「うく・・・っ!」

先程の威力、惨劇を目の当たりにしたばかりの桃子にとって、
これほどのプレッシャーは無い。
だが、そこは桃子、即座に頭を巡らせて―――

「き、キノピー! プリズムシェル展開よ!」

収束爆砕すら完全に跳ね返す桃子自慢の無敵の盾で、状況を五分に戻そうとするが・・・

「・・・キノピー!? 何やってるのよ・・・って、えぇえええ!?」
「スマン桃子・・・」

切り札であり、頼みの綱でもあった彼女お手製の友人は、

「あ、ごめ〜ん桃子ちゃん、ちょーっとメンテ始めちゃって〜、あはは〜♪」
「勝手にキノピーをバラしてるんじゃないわよっ!」

いつから始めていたのか、優によって胴体部を開けられて、なにやら色々弄られつつあるのだった。

「てーかキノピー! あんたもなに呆気なくバラされてんのよ!」
「いや、このヒトが俺の出力を3倍にしてくれるって言うもんだから、つい・・・」
「ふっふっふ、なんなら5倍でもいいわよ〜?」
「いや―――! ユウがやると小型核融合炉とか積んでついでに火器とか付けそうだからやめて―――!」
「・・・・・・ちッ」
362499 8/15:2006/08/11(金) 22:16:23 ID:45VspIJc

結局、こうして桃子も二人を追うことはままならず、
その間にも陽菜と我聞は早足で玄関へと移動している。

「果歩さん、お世話になりました!」
「ちょ、ちょっと國生さんを送ってくる!」

二人が台所の前を通ったところで果歩に声をかけると、
既に食器と格闘を始めていた果歩はその声にひょい、と振り返り、

「陽菜さん、しっかり!」

泡にまみれた右手を突き出してびしっと親指を突き立てる。
陽菜もそれに応えて無言ではあるが、こくん、と力強く頷く。

「ええと・・・何?」

そして一人、完全に蚊帳の外の我聞も事ここに至り、
流石にこの二人・・・いや、恐らく優も含めた三人の間に、
何らかの企てがあるのだろうとは理解していた。
だが、その中身となると全くもって見当がつかない。
ただ・・・ “國生さんが果歩と優さんに騙されている”ということだけは、
なんとなくわかっていた。

「では社長! 行きましょう!」
「ちょ、ちょっと、こ、國生さん!?」

だが、我聞が制止する余裕も与えず、勢いを得た陽菜は彼を引きずるようにして玄関を出て行くのであった。




363499 9/15:2006/08/11(金) 22:18:19 ID:45VspIJc

ここで時間を戻して、話は前日―――7月6日の午後に遡る。

授業が終ると、陽菜は最近では珍しく仕事を理由に部活を休み、事務所に顔を出していた。
確かにこの時期は四半期の締めも近づいていて、その気になれば仕事はいくらでもあるのだが・・・
この日の陽菜はなんとなくソワソワと落ち着かない様子で、あまり仕事も手についていない様子だった。
やがて・・・

「では、そろそろ会合に行ってくるわい」
「はい、暑いですから、お気を付けて」
「はっは! まだまだ暑さなんぞには負けんわ―――!」
「行ってらっしゃ〜い!」

事前に知らされていたスケジュール通りに、中之井が所用で出掛けてから間もなく・・・

「あの、優さん、ちょっとよろしいでしょうか・・・」
「んぁ・・・む? あ、な、なんだね陽菜ちゃん!?」

お目付け役の中之井がいなくなって早くも午睡モードだった優に、
二人分のコーヒーを手にした陽菜が声をかける。

「実は、優さんに相談がありまして・・・」
「相談? ふっふっふ、まかせにゃさ〜い! 優さんにかかればどんな悩みも一撃必殺!
 さ〜あ、泥舟に乗ったつもりで悩みごとカモ〜ン!」

乗り気なのか寝ているのかかなり怪しげな発言に今更ながらに気後れしかけるが、
ここで“やっぱりいいです”とも言い出せず、陽菜はそのまま相談を持ち掛けることにする。

―――そこで踏み止まってさえいれば、運命は変わっていたであろうに・・・

「実は、明日の社長の誕生日のことなのですが・・・」

ギラリ、と優の眼鏡が妖しく輝く。

「ほうほう! 我聞くんがどうしたって!?」

急にいきいきとしてきた優にちょっとだけ違和感と、それ以上の期待感を得て、陽菜は先を続ける。

「はい、折角ですから何かプレゼントを用意しようかと思うのですが、
 優さんは社長が欲しがっている物とか、ご存知ないかな、と思いまして・・・」
「成程・・・誕生日にプレゼント・・・これはいけるかも!」
「は、はあ・・・いける、ですか・・・?」
「あ、あははは〜! こっちの話、こっちの話!」

改めて“相談を持ち掛ける相手を間違えただろうか・・・”的な不安な表情を浮かべる陽菜だったが、
今更逃してくれる優ではない。

「そうだ! こういうことならもっと便りになるアドバイザーがいたわね〜!
 今から呼ぶから、ちょいと待っててね〜♪」
「え、あの、優さん?」

当然のように依頼人無視で受話器に手を伸ばし、ぴっ、と短縮ボタンを一押し。
呼び出し音が2回と半分ほど鳴ったところで・・・

『はい、工具楽ですが』

受話器から漏れ聞こえる声は、果歩のものであった。
364499 10/15:2006/08/11(金) 22:20:01 ID:45VspIJc

「もしもし、果歩ちゃん? わたし〜、優ねえさんだよ〜」
『あれ優さん、どうしたんですか?』
「実はね〜」

確かに我聞のことについて聞くなら、同じ家に住んでいる果歩はうってつけの相手と言える。
“それを即座に思い付いて、電話までかけて下さるなんて・・・”と、
優に向けて心の中で感謝と、ちょっと怪しんだ事を謝罪していた陽菜には、
微妙に顔を背けている優が言うまでもなく満面の“悪そうな笑み”を浮かべている事など、知る由も無かった。

「・・・うん、うん、じゃあよろしくっ!
 このチャンスに一気に本丸を攻略よ―――!」

相変わらず陽菜には意味不明な単語の多い会話ではあったが、
ある意味それもいつも通りのことなので今更突っ込もうともしない。
ともかく優は受話器を置くと、

「というわけで果歩ちゃんも来てくれるって〜」
「はい! わざわざありがとうございます! では今のうちにお茶の用意を―――」

ガンガンガンガンガンガンガンガンガラララ―――っ!

「お、お待たせしましたあっ!」
「あ、い、いらっしゃい・・・お早いお着きで・・・」

今さっき優が受話器を置いてから、果たして何秒経過したろうか・・・
と陽菜が本気で考えてしまう程の速さでスチールの階段を踏み鳴らし、果歩が事務所に駆け込んでくる。
当然ながら汗だくでぜいぜい息を切らしている彼女の為に、
陽菜は用意しかけていたティーカップを片付けるとグラスに冷えた麦茶を注ぐのであった。

その後、とりあえず果歩が落ち着くまではそれぞれにのんびりとお茶を飲み、適当な雑談に興じていたが―――

「・・・して陽菜さん」
「は、はい」

やはりこの機会を絶対に逃すまいと全力疾走してきた果歩である。
呼吸が整って頭がクリアになったところで、早速本題を切り出す。

「お兄ちゃんに誕生日のプレゼントを贈って頂ける、とのことですが」
「あ、でも、そんな高価なものとかはムリですし、何か社長のお役に立つ物があれば、と思いまして・・・」

ふむふむ、と頷く果歩の表情は真剣そのもので、陽菜は向かい合っているだけで威圧感すら感じてしまう。

「ちなみに・・・陽菜さんは何か、こんなものがいいかな、とか考えていたものはありますか?」
「ええ、そうですね・・・とりあえず、新しい作業着とか・・・」
「・・・甘い」

遠慮がちに自分の考えを口にした陽菜に対して、果歩の辛辣な一言が降りかかる。

「あ、甘い、ですか・・・」
「確かに、作業着はお兄ちゃんが日常的に使うモノですし、今使ってるものもちょっと綻んできています。
 その点を見抜いているあたり・・・流石は陽菜さんだと思います!」
「あ、ありがとうございます・・・」
「だがしかしっ!」
365499 11/15:2006/08/11(金) 22:21:33 ID:45VspIJc

果歩のいやに真剣な表情と気迫に、陽菜は既に圧倒されている。

「ですがプレゼントに真心を込めるなら、
 やはり・・・相手の一番欲しがっているものを選ぶのが王道!
 “とりあえず”とかで妥協したプレゼントなど喜ばれはしないのですっ!」
「な・・・そ、そうなんですか・・・」

がーん、と音が聞こえそうなほどに衝撃を受ける陽菜。
はっきり言って極論もいいところだが、すっかり果歩に気圧されてそこを突っ込むだけの余裕は無い。

「ですが果歩さん、一番欲しがっているもの、といわれましても・・・予算もありますし・・・」
「まぁそうですね〜、では陽菜さん」
「は、はい?」
「もしも・・・予算的に全く問題が無くて、
 陽菜さんさえその気になれば簡単に贈れる物をお兄ちゃんが欲しがっている、としたらどうします?」
「そんなものがあるのですか!? もしあるのでしたら、それを是非!」

思わず身体を乗り出すようにして答える陽菜に、
果歩と優は互いに目配せしてニヤリと笑みを浮かべる。

「・・・あの、何か・・・」
「いや〜? ただ陽菜ちゃん、我聞くんのこと本当に想っているんだなぁって、ね〜♪」
「ですよね〜! お兄ちゃんったら、幸せ者なんだから〜!」
「え、あ、あの、いえ、そんな! わ、私はあくまで秘書として・・・日頃お世話になってますから・・・」

もし、本当に“それだけ”なら、プレゼントの内容をわざわざ他人に相談したりする陽菜ではないことは、
果歩にも優にも(多大な先入観があるにせよ)よく分かっている。
だが、彼女にせよ我聞にせよ、互いに頑なにそれを表に出そうとしないのが、
GHKとしてはじれったい限りなのだ。
故に、降って湧いたこのチャンスを最大限に利用して、一気にケリをつけてしまおう、という魂胆なのである。
そして、その為の策は・・・

「うーん、それだと少し厳しいかな〜」
「え、厳しい・・・ですか」
「はい、お兄ちゃん、実は凄く欲しがっているものがあるんですが、
 それをお兄ちゃんに上げられるかどうかは、陽菜さん次第なんです」
「私、次第・・・ですか、あの、一体何を・・・」
「それはですね・・・」

じいっ・・・と見つめられて、陽菜はややたじろぎつつもしっかりと果歩の目を見つめ返す。
その視線に果歩は改めて手応えを感じ、
最後に改めてちらりと優に視線を送り彼女の表情を確かめると、
身体をずい、と乗り出して、じっと陽菜を見つめて・・・

「それはずばり・・・陽菜さん、あなた自身です」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

言いたいことはこれで全て、と言わんばかりにずずっと麦茶をすする果歩と、
完全に様子見モードの優。
そしてまずは呆然として、それから徐々に顔が赤らんでくる陽菜。
しばらくは誰も何も言わず、いやに緊張を孕んだ静寂が漂っていた、が・・・

「か、かかか果歩さんっ!」

その沈黙に耐えきれず、陽菜が大声を上げる。
366499 12/15:2006/08/11(金) 22:23:02 ID:45VspIJc

「なんですか?」
「な、なんですかじゃありませんっ! プレゼントがわ、わたっ、私自身・・・って!
 い、一体どういう意味なんですかっ!」

怒っているのと恥ずかしいのとで真っ赤になった陽菜の叫ぶような声を、
果歩はあくまでクールにやり過ごす。

「どうも何も、文字通りそのまんまですよ?」
「で、ですからそれは、具体的に・・・」
「身も心も我聞くんに捧げるってことじゃないかにゃ〜?」
「そんな・・・・・・な、何を言ってるんですかっ!
 もう・・・そういう冗談はやめてください!」

武文が去り際に残していった爆弾発言以来、折を見ては“我聞×陽菜ネタ”で二人をチクチクとからかって、
その度に陽菜や我聞を赤面させてきた二人であったが、それにしても今回の陽菜の照れ具合はただ事ではなく、
“どういう意味か”等と聞きつつも、陽菜がしっかりと想像できてしまっているのはもはや疑う余地も無い。
そこを突いて、更に彼女を悶えさせるのも楽しそうだ、と優は思うのだが、
残念ながらGHKの目的はそこには無い。

「陽菜さん、一つ・・・聞いていいですか?」
「え、ええと・・・なんでしょう?」

妙に冷静な調子で年下の果歩に話し掛けられると、陽菜は一人取り乱している自分が別の意味で恥ずかしくなって、
せめて表面上だけでも落ち着いた振りをしてコーヒーなど啜ってみるが・・・

「陽菜さんは、お兄ちゃんのこと好きですか?」
「・・・げほごほごほっ!?」

あんまりなくらいに直球の問いかけに、コーヒーは意図に反して気管へと導かれ、
陽菜らしからぬ無様さで咳き込んでしまう。

「・・・はぁ、はぁ・・・な、何をいきなりおっしゃるんですかっ!」

いろんな意味で照れ隠しに思わず大声を出してしまうが、
対して果歩の表情は真剣そのもの。
実は笑いを堪えてプルプル震えているが、完全に動揺しきっている陽菜がそんなことに気付けるハズも無く、
落ち着いている(ように見える)果歩の様子に気圧されてしまい、健気にも真面目な返答をひねり出し・・・

「そ、その・・・き、嫌いではありませんが・・・でも、好きって言いましても、
 人物として、であって、その、ええと・・・恋愛とか、そういう意味では、まだ、べ、別に・・・」

しどろもどろになりながら、なんとか返答する。
その予想通りの答えに、果歩は内心でシナリオ通りの展開にニヤリとしながらも、
あくまで表情は真剣さを保ったまま・・・この策の核心へと陽菜を引きずり込むための、
切り札となる台詞を口にする。

「お兄ちゃんは、陽菜さんのこと・・・好きですよ?」
「・・・・・・・・・え・・・」

ごにょごにょと返答を続けていた陽菜は、その果歩の一言で再び絶句する。

「もちろん、秘書としてとか、友人として、というのもありますが・・・
 間違いなく、お兄ちゃんは陽菜さんのことを異性として、女性として好きになっています」
「・・・・・・・・・」

陽菜は唖然としたまま、何も言えずただただ果歩の言葉を聞くのみ。
それも、端から見たら人の声が耳に入っているかすら怪しいくらいに、真っ赤になって、硬直しながら。
367499 13/15:2006/08/11(金) 22:23:53 ID:45VspIJc

「私、聞いちゃったんです・・・お兄ちゃんの寝言」
「ね・・・ねご・・・と?」
「はい・・・“國生さん、國生さん”って、何度も繰り返してるんです、ここ最近、いつも・・・」
「う・・・ぁ・・・ぅ・・・」

それはつまり、夢に見るほどに、我聞が自分のことを想っている、ということで・・・
そう思うと、ただでさえ真っ赤な陽菜の頬が、更に赤く染まってゆく。
・・・ちなみに、この話自体がそもそも、というか当然というか―――完全に果歩の捏造なのだが、
陽菜は既にそんなことを見抜けるような精神状態ではない。

「でも、お兄ちゃんはあの性格ですから・・・
 お兄ちゃんが社長で陽菜さんが秘書である限り、
 そのことを陽菜さんには伝えようとしないと思うんです」

陽菜の茹った頭でも、それはなんとなく想像できる。
確かに“俺は社長だから”“社長が社員に手を出すなんて”等と、いかにも我聞が言いそうな台詞である。

「そんな訳で陽菜さん! ここはひとつ、陽菜さんからお兄ちゃんに一発、びしっと!」
「え、ええと・・・それは、つまり・・・」
「サクっとコクっちゃってくださいっ!」
「おことわりしますっ!」

ここぞとばかりに身を乗り出してきた果歩に対し、
ここは流石に陽菜もカウンター気味に身を乗り出して即答する。

「・・・陽菜さん、お兄ちゃんのこと・・・嫌いなんですか?」
「そ、そういう訳じゃありません!
 た、ただ、その、す、好きとか、嫌いとか、そういう以前に、その・・・そういうことは、やっぱり・・・
 ひ、人に言われたからするものじゃ、ないですし・・・
 ちゃんと、もっと時間をかけて、自分で考えてから・・・」

真っ赤な顔でごにょごにょと、本来の彼女らしからぬ歯切れの悪さで言い逃れするように理由を述べる陽菜だが、
GHKの二悪人がここまで感情を露わにした陽菜をみすみす逃す訳が無い。

「時間・・・ねぇ・・・陽菜ちゃん、そんな時間があると、思ってるの?」
「ど・・・どういう、ことですか?」
「確かに時間をかけても、陽菜ちゃんは心変わりしないかもしれないけど、
 我聞くんは・・・果たしてどうかにゃ〜?」
「え・・・・・・」
「我聞くんのことを意識している女の子は、はるるんだけじゃない、ってことさ〜♪」

さも楽しそうに話す優とは逆に、陽菜の真っ赤な顔はひくっと引き攣り少しだけ色を失う。

「あ・・・い、いえ、べ、べつに! 私は、そんな社長のことを、意識なんて・・・」
「あ、そうだったっけ、あはは〜♪
 まぁでも一応最後まで言っておくと、何せ我聞くんは意中のはるるんに告白できなくて悶々としてるからね〜、
 そんな状態が長く続いて、そのときに別の女の子から執拗にアタックされちゃったら、
 どう転ぶかわからないにゃ〜♪ っと、そういうコ・ト!」
「そ、それは・・・で・・・ですが、それは・・・あ、あくまで・・・社長の意思の問題ですから・・・」

真っ赤だった顔色はすっかり醒めて、ぼそぼそと喋る口調は羞恥からではなく、
明らかに不安に苛まれている陽菜の内面を浮き彫りにしている。

「ん〜、そうだね〜、あくまで我聞くんと、それと陽菜ちゃんの意思の問題だからね、
 まぁあとは陽菜ちゃんの気持ち次第だけど、もし―――」

と、その時。
368499 14/15:2006/08/11(金) 22:25:12 ID:45VspIJc

がらららっ。

「お疲れ様でーす! お、果歩も来てるのか」
「おじゃましまーすっ! あ、ほんとだ、こんなとこで何してんのよ、カホ」
「む! あんたこそなんでお兄ちゃんと一緒なのよ!」

いつの間にか時刻は午後5時に迫っていて、部活を切り上げた我聞が出社してきたのだが、
何故か桃子も一緒にやってきたのだ。
・・・GHKとしては、嬉しい誤算と言える訳だが。

「べつに〜? たまたまそこで一緒になっただけよ、ね、ガモン?」
「ああ、丁度そこで会ってな。
 國生さん、部活休まなきゃならないくらい仕事あったみたいだし、
 何か桃子に手伝ってもらえることがあればと思ったんだが、どうだろう?」
「お〜! 流石お兄ちゃん、陽菜さんのことにはよく気が回るわね〜♪」
「な、べ、別に俺は社長として國生さんの仕事が大変だなと思ってだな! ・・・って、國生さん?」

自分を名指しされているにも関わらず、陽菜の反応が無い。
―――何せ、自分のことを夜な夜な夢に見ている(と吹き込まれただけなのだが)我聞が現れ、
そして・・・

“我聞くんのことを意識している女の子は、はるるんだけじゃない”

という言葉と、今、彼の横にいる整った顔立ちの、酷く彼に懐いた少女。
そういう状況が一度に押し寄せて、陽菜は完全に混乱してほとんどフリーズ状態だったのだ。
だが、そんな事情など知る由もなく、空気を読むことが致命的に苦手な朴念仁は当然ながら・・・

「なぁ國生さん、大丈夫か?」
「へ・・・あ、ひゃ!? しゃ、社長!?」
「うぉ!?」

声をかけられたな、と気付いたときには顔を覗き込まれていて、
陽菜は思わず奇声を上げて椅子を倒しながら後ずさってしまう。

「だ、大丈夫か國生さん・・・体調とか、悪いんなら休んだ方が・・・」
「い、いいいいいえ! だいじょうぶです! へいきですっ!
 あ、と、桃子さんのお仕事ですね、はい、大丈夫です、探しますから!」
「あ、ああ・・・」

あまりにあからさまに様子がおかしいのだが、
ここまででは無いにせよ最近は時々こういうことがあり、
こういう時にあまり突っ込むとひっくり返されてしまうことは経験則として我聞も身をもって知っているので、
これ以上の口出しはしないのであった。

「で、では・・・」

倒してしまった椅子を直し、お茶をしていたテーブルから自分のデスクへ戻ろうとした陽菜に向けて、

「あくまで陽菜ちゃんの気持ち次第だけど・・・」

先程の続きなのか、優が陽菜にだけ聞こえるような小声で呟く。

「もし、我聞くんを他の子に取られたくない、すぐにでも自分のモノにしたいって思うなら、
 今夜私の部屋に来るといいよ〜? お姉さんが我聞くんを虜にする方法、教えてあ・げ・る♪」
「・・・・・・」

やや俯き加減で何も言わずデスクに戻る陽菜を、優はニヤニヤと笑みを浮かべて見送るのだった。
369499 15/15 (前編 了):2006/08/11(金) 22:27:01 ID:45VspIJc

「ガモーン!」
「おう、なんだ桃子・・・」

「ガモン、ちょっとこれねー」
「ん―――?」

桃子の高い、よく通る声が何度も我聞のことを呼ぶ。
それは彼女が工具楽屋に手伝いに、もしくは遊びに来ているときには別段珍しいことではない。
桃子はなんだかんだで果歩や他の我聞の弟妹達とも仲良くやっているし、
我聞としては新しい妹くらいの感じで接しているんだとばかり思っていたから、
陽菜もそんな気持ちで彼女と接していた。

「ガーモーンっ! これちょっと!」
「なんだ、おかしいか?」

だから、桃子も我聞のことをきっと兄のように慕っているのだろう、と思っていた。
いや、本当にそのとおりなのかもしれない。
優の言葉さえ真に受けなければ、あんな先入観さえ無ければ、そう見る方が普通だろう、と陽菜も思う。
なのに・・・

「ねぇガモン、ちょっとー」
「あー、今行く!」


「・・・もー、相変わらず桃子は口を開けば“ガモンガモン”なんだから・・・」
「まぁ、今に始まったことじゃないしね〜
 ・・・それよりも果歩ちゃん、気付いてるかね?」

そんな我聞と桃子とも、そして陽菜とも離れたところで、
GHKの二悪人は相変わらず頭を付き合わせたまま小声で会話を続けている。
状況が状況だけに陽菜からも仕事しろ、等と言われず、野放しの優はやりたい放題なのだ。

「うふふふふ・・・勿論ですよ優さん!
 あの、いつもいつもいつも! ジェラシーのジェの字も感じさせなかったのほほーんな陽菜さんが!」
「うんうんうん! 纏ってるねぇ・・・ジェラシーオーラを纏いまくりだねぇ!」

と、その時。
がたんっ! っと。
唐突に・・・その場に居合わせた皆がびくっとするくらいに大きな音を立てて、陽菜が席を立つ。

「・・・ゆ、優さん・・・もしかして、今の聞こえちゃったでしょうか!?」
「い、いや、いくらはるるんでも、流石にこの小声でこの距離なら聞こえないと思うけど・・・!」
「で、でもこっち来てますよ! 負のオーラ纏ったままで!」
「い、いやとにかく、ここは知らない素振で!」

何を喋っているかは聞き取れなくとも、あからさまに怪しげな密談をしているのは丸わかりなのはともかくとして、
無害な雑談を装う二人に向かい、陽菜はつかつかと歩み寄り・・・

「・・・優さん」
「は、はい!? な、なにかにゃー!?」
「今夜・・・お部屋にお伺いさせて頂きますね」

それだけ、立ち止まることなくぼそりと小声で言うと、陽菜は二人の脇を抜けてそのまま洗面所へと入っていった。

「優さん・・・これは・・・!」
「ふ、ふふふふふ・・・陽菜ちゃん・・・目覚めた様ね・・・ならば!
 この優姉さんの全力をもって! オトコをモノにするノウハウを叩き込んであげようじゃないか、ふははははっ!」

この瞬間、陽菜はGHKの網に完全に絡め取られたのであった。
370499:2006/08/11(金) 22:28:53 ID:45VspIJc
今回の投下分は以上です。
次回は場面を7月7日に戻して、陽菜×我聞でえっちぃ展開になる予定です。
来週末に投下できればいいのですが・・・

ということで、読んで下さった方、ありがとうございました。
3713355:2006/08/11(金) 22:41:04 ID:+CVdme9S
499様
復帰おめでとうございます。
いつも楽しく読ませていただいています。
続きも期待しております。

GJ!
372名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 00:49:39 ID:obRLu8Wd
( ゚Д゚)

(゚Д゚)

( ゚Д゚)





(゚∀゚)⌒(。A。)⌒(゚∀゚)⌒(。A。)⌒(゚∀゚)⌒(。A。)
373名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 03:12:42 ID:J3gLC8M4
499氏・・・
うおおおおお!!久々に萌え転がっちまったぜぇぇぇ!!!
そして久々にこの言葉を贈りたい・・・このド低脳がッ!

3355氏
読んでいて情景がリアルに浮かんでくる文章、流石です。
最終回をどうまとめてくるか楽しみに待ってます
374名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 22:54:30 ID:w3MYXPii
本当に久々に書く。

ごぉろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろごろ!!!
375名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 02:20:36 ID:pLFmWtBW
:;l:l:l:l:l;
376名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 14:26:37 ID:DJrBiPjN
>>354-370
GJ!
陽菜さんが優さんにどんなノウハウを教わったのか、
そのノウハウは実践でどう活かされるのか
楽しみにしてます
3773355:2006/08/13(日) 22:40:37 ID:barj50ky
3355です。
最終回が書き上がりましたので、投下します。
今回、いつもに比べて文章量が二倍になってしまいました。
おつきあい下されば幸いです。
3783355:2006/08/13(日) 22:41:46 ID:barj50ky
33
 我聞は陽菜を抱きしめていた。
「大丈夫だ、國生さん。ずっと・・・ずっと工具楽屋にいればいいから・・・・」
 いきなり抱き寄せられて、驚きに目を見張ったが、その言葉に目を丸くした陽菜であったが、ただ何も言わずに、素直にコクリと頷いた。
 それは決して不快な気分ではなかった。むしろ、今日の失敗で落ち込んでいた気持ちがすっかり楽になるような気がした。
「それに・・・あいつらにどんなことをされていても、國生さんは國生さんだし・・・・オレは全然気にしない!」

 ぴくっ!

「ちょっと待ってください? 何ですか? それは?」
 我聞とすれば、真剣に言っているのだが、微妙に不用意なセリフに、たった今まで、心が満たされて、あたたかな気持ちでいた陽菜の声のトーンが急降下する。
 南極のペンギンでも凍り付きそうな冷たい声である。
「もしかして、もう、私が彼らに淫らなことをされたとでも思ってたんですか?」
「え?」
 実は最悪の状況を考えていた我聞は、冷たくて怖い時の陽菜に戻ったことで、自分の早とちりに気がつく。
 それで、よせばいいのについ弁解する。
「いや、その、あの女社長は、ああは言ってたけど、國生さんこんな格好だし、てっきり、その・・・・」
 
 その言葉に、我に返った陽菜は、自分の格好をハタと見直し、そして・・・・・・。
3793355:2006/08/13(日) 22:42:31 ID:barj50ky
34
 建物中に陽菜の悲鳴が谺した。
 彼女はまだ、我聞の上着を引っかけただけのほぼ全裸だったのである。

「み、見ました?」
 陽菜は思わず我聞を突き飛ばし、慌てて床に散らばった服をかき集めて身体を隠した。
「い、いや、その・・・」
 陽菜に背中を向けて、しどろもどろに何か言い訳しようとする。
「見ましたね?」
 その冷たい迫力の陽菜の声に、我聞は思わず正直に答えてしまった。
「・・・・・はい」
「・・・・・・」

 沈黙が怖い。

「・・・・忘れてください」
 世界が凍り付いたかと思えるような寒くて、重い沈黙の後、陽菜はうめくように言葉を絞り出した。
「あ、あの・・・」
 思わず振り返ろうとする我聞に、さっきまで陽菜を拘束していた拘束具がヒットする。
「こっちを向かないでください!! 忘れてと言っているんです!!」
「あ、はい! 忘れます!! 今、忘れました!!」
 その返事に、陽菜はようやく、少しだけ落ち着きを取り戻して、服を身に着けていく。
 ようやく、服を着ると、そこで、重大なことを思い出した。
「写真!! あんな写真、誰かに見られたら・・・・!!」
 ポラロイドの全裸写真。どこかに流出したらと真っ青になった。
「よし!! 写真を取り返せばいいんだな? 待ってて!!」
 我聞が深く考えもせずに、陽菜の役に立とうと、いきなり走り出す。
「ああっ!! ちょっと待ってください!!」
 陽菜は、名誉挽回しようと焦って走り出した我聞を追いかけようとするが・・・・・立てなかった。
 度重なるショックで腰が抜けてしまっていたのだ。

 そして、半殺し状態の手下どもを締め上げて写真を全部取り戻した我聞は・・・・・写真を見て泡を吹いてしまった。
3803355:2006/08/13(日) 22:44:42 ID:barj50ky
35
 陽菜は腰を抜かしたままだったので、工具楽屋への帰りの道のりを、我聞におぶってもらっていた。
 本当は、陽菜は立てるようになるまで待ってもらいたかったのだが、何しろ我聞が派手にやりすぎた。
 一応、辻原や番司に陽菜を見つけた旨の連絡をすると、秘密である仙術がばれないうちに、速やかに撤収しなければならなかった。
 だが、我聞が取り返した写真を陽菜に渡したときから、二人の雰囲気は気まずくて仕方がなかった。
「あのー、國生さん、怒ってる?」
 沈黙に耐えかねた我聞は、背中の陽菜におそるおそる聞いた。それに対して陽菜は思わず早口で答える。
「怒ってません」
「ほんとうに?」
「もう、怒ってませんから、思い出させないでください」
 陽菜は耳まで真っ赤になっていた。
 我聞が取り返してきた写真は、陽菜の顔と身体が同時に写っている写真こそ
なかったので、ヌードが陽菜のものだとわかるものはない。
 しかし、陽菜のまだ若干未発達な部分の残る華奢な身体、小ぶりな胸、意外に深いヘアが写っているものは何枚もあった。
 また、陽菜の顔を写した写真も、胸の頂点がぎりぎりで見えないものであったり、
さるぐつわを噛まされて泣いているものであったりと、かなり、いや、相当過激な
ものばかりだった。
 そんな写真を見てしまって、我聞は正直どうしていいかわからなかった。
3813355:2006/08/13(日) 22:46:08 ID:barj50ky
36
 一方、陽菜の方は確かに気まずかったが、一時の動揺が収まると、自分でも意外なほど落ち着いていた。
 確かに恥ずかしい思いはしているが、やくざどもに写真を撮られた時の身も世もないような
絶望感に比べれば、恥ずかしいのになんだかそれほど不快な気分ではなかった。
(どうしてなんだろう?)
 陽菜は自問したが、自分の気持ちがよくわからなかった。
 わからないと言えば、そもそも、今日は全体的に自分らしくなかった。
 ぼんやりして、約束の時間に遅れたり、予定を変更して、無理に新たな取引先を
開拓しようと売り込みに向かったことを、工具楽屋に連絡しなかったり、
普段の自分の行動ではない。

 どうして?

 陽菜は一つ一つ今日の出来事を思い出して検討してみた。
 まず、そもそも、ぼんやりして約束の時間に遅れたことだ。
 あのとき、何を考えていたかというと、住たちに
「我聞が誰かと結婚した後も國生さんは秘書を続けるの?」
 と言われて、具体的に桃子と我聞が結婚したときのことを考えて動揺して時間を忘れたのだ。

 そう、あのとき・・・・桃子と自分を比べてみて、桃子であれば、近い将来
自分よりも工具楽屋の役に立つかもしれないと思い、そうすると、我聞にふさ
わしいのは桃子ということになるのではないかと考えてしまった。
 だから、陽菜は、自分はそれ以上に有能でなければ工具楽屋にいられなくなるかと、ミスしたことに焦ったのだ。
 つまり、彼女は、無意識のうちに桃子と張り合っていたのである。
 もちろん、その原因は、我聞が桃子のものになるのがなんとなく気がふさぐことだったから・・・・陽菜はようやくそのことに気がついた。
(私・・・社長のことが・・・好き・・・? なのかな?)
 今、我聞におぶわれて、広くてたくましい背中にいると、安心して心が満たされる気がする。
 そういえば、最近は営業に出ることが多くなったので、我聞といる時間も一時期に比べて減っている。
 もしかすると、営業に出ると気が晴れないことも、単に慣れないからということではなくて・・・・。
3823355:2006/08/13(日) 22:47:49 ID:barj50ky
37
 陽菜は、そこまで考えて、身体の芯がカーッと熱くなるのを感じて、それ以上
自分の気持ちを分析することができなくなってしまった。

 そして、気がつけば、陽菜が監禁されていた東和建設からは完全に遠ざかり、だいぶ遅い時間になってはいたけれども、たまに誰かが通りそうな場所に来ていた。
 誰かに見られたら、その人が見知らぬ他人とはいえど、同い年の男の子におぶってもらっている姿を見られるのは恥ずかしい。
「あの、社長。もう、大丈夫ですから、おろしてください。一人で歩けます」
「いや・・・もう少しこのまま・・・その、少しはオレ、國生さんにお詫びになることを・・・國生さんが行方不明って聞いて、慌てちまって・・・」
 我聞は真剣に謝ってくれていた。そこで、初めて陽菜はまだ、我聞に助けてもらったお礼をきちんと言ってなかったことに気がついた。
「社長、いえ、我聞さん。あの、助けていただいて、ありがとうございました。私・・・動転してしまって、あなたはちっとも悪くないのに、失礼な態度を・・・・」
 無理矢理我聞の背中から降りると、陽菜は姿勢を正して、我聞に対してお礼と謝罪を行った。
 実際、我聞が駆けつけてくれなければ、陽菜は彼女の『女』を売りに出されてしまったところであった。
「そんなこと! オレの方こそ、気がつかなくて・・・・」
 二人して、しばらく押し問答的にお互いがお互いに謝る。そして、不意に、二人とも、そんな自分たちがおかしくなり、吹き出してしまった。
3833355:2006/08/13(日) 22:48:51 ID:barj50ky
38
「じゃあ、これで、お互いに謝るのは終わりにしよう」
「そうですね。それにしても、よく、私が捕まっていた場所がわかりましたね」
「辻原さんに、もしかしたら、國生さんが行っているかもしれない、危ない場所を教えてもらって・・・・」
 それで、陽菜なら、効率よく三カ所を廻るだろうからと、東和建設が一番怪しいと思ったのだ。
 陽菜は、意外に思った。我聞は道徳的な正しさや感覚は優れていたが、論理性や推測推理は
苦手だと思っていたのに、まさに、陽菜はそう考えて、東和建設を最初に訪ねたのだ。
「それで、何か、窓が微妙に点滅していて、助けを求めているのがわかったんだ。あれはどうやって・・・?」
 陽菜は、以前にもらってから、ずっと身につけている我聞の母親の形見の手鏡を取り出して、
それで明かりを窓の方に反射させたことを説明した。
「この手鏡のおかげで、命拾いさせていただいたことになりますね。先代や、社長のお母様にも感謝しないと・・・」
「國生さんが、その手鏡をもらってくれてて、何とか間に合ってよかった・・・。
もし、どこかに連れ去られて二度と会えなくなったら、ずっと工具楽屋にいてくれ
なかったら、オレ・・・・」
「え?」
 いつにない雰囲気で、我聞は陽菜をじっと見つめて、そのまなざしに、陽菜の方も吸い込まれるように、二人の距離が近づいていき・・・・。



3843355:2006/08/13(日) 22:49:28 ID:barj50ky
39
「あー!! こんなところにいた! 連絡をくれてから、遅いから、みんな心配して捜してたんだよ?」
「わあっ!?」
「きゃっ!?」
 遠くから呼ぶ優の大きな声で、二人は思わずどきりとした。
「陽菜ちゃん、無事だった?」
「あ、はい。ご心配をおかけしました」
「みんなも待っているよ、早く帰ろ?」
「はい」
「我聞くんもお疲れさん」
「は、はい。社長ですから、社員を守るのは当然です」
 先ほどの我聞の謎めいた妖しい雰囲気は、優の明るい声に一掃され、いつものきまじめで健全な工具楽我聞の雰囲気に戻っていた。
(気のせいだったのかな?)
 陽菜はなんだか、少しもったいないような気がしたが、いつもの、安心できる調子に戻ったことで、やっぱりそれはそれで喜ばしく思った。

 結局その夜、工具楽屋は陽菜の帰還に興奮状態となり、皆遅くまで残業してしまうことになった。
 もちろん、東和建設は摘発するように手を回し、証拠の類も警察にわたるように匿名で電話した。
 すべての処理を終えて、陽菜が寮に帰ったのは、日付が変わって三時間ほど後のことだった。
 そして、シャワーを浴びると、陽菜はベッドに倒れ込んだ。
 瞳を閉じると、昨日の衝撃的な一日の情景、主に、我聞が助けに飛び込んできてくれたところ、困ったように言い訳するところ、自分を背負って、工具楽屋に連れ戻してくれた時のことが思い出された。
(おやすみなさい、社長)
 陽菜は、それらを心に浮かべながら、穏やかな気持ちで眠りについた。

FIN.
3853355:2006/08/13(日) 22:54:54 ID:barj50ky
おしまいでございます。
駄文、長文、乱文におつきあい下された方々、どうもありがとうございました。

二人の関係に完全決着とは行きませんでしたが、一応、落ちはつけたつもりです。
楽しんでいただけたら幸いです。

できるだけ、藤木氏の描いた本編と矛盾がないように努力したのですが、
うまくいかなかった点はご容赦下さい。

ついでに、最近だされた同人誌の内容とは完全に矛盾します。
うーん、残念。
3863355:2006/08/13(日) 23:08:16 ID:barj50ky
少々、解説、いいわけめいたことを少し。
今回、書きたかったのは、社長対秘書、あるいは仲間めいた関係から
二人がお互いを、異性として意識し始めるまで、です。

単行本終了時の二人の関係は、まだ、信頼できる仕事仲間、にとどまるような気がしたので、
無意識的ではなく、はっきり異性の肉体を意識する、というプロセスを表現してみたかったのです。

本来、こんなことは、作品中で、読者に伝わるようにすべきなのですが、
非才の身、このような補足をすることをご容赦下さい。

それにしても、連載形式はつらかったです。
いつも、私が文章を書くときは、完結させてから発表する方式をとるのですが、
今回は、過疎化が進んでいましたので、なるべく早く投下しました。
読みにくい部分、わかりにくい部分があった点、申し訳ありませんでした。

さて、499氏も復帰されたことですので、またここも盛り上がると思われます。
次回作、いつになるか、いや、そもそも、次回作があるのかも、明言できませんが、
できましたら、また、投下させていただきますので、そのときは、読んでいただければ幸いです。

最後のご挨拶でした。
387名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 23:48:36 ID:Nm94byYw
age
388名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 00:08:31 ID:0bShs1A4
>>3355
GJです!
途中、物凄くハラハラしながら読ませて頂いたりもしましたが、楽しませて頂きました。

藤木先生の同人誌のオチの陽菜は物凄くツボだったんですが、
作者の書かれたお話とエロ“パロ”では、ある程度の矛盾が生じるのは仕方ないと割り切って、
自分はいつものノリで今回もえちぃ部分を書こうかと思ってます・・・

ともかく長編お疲れ様でした、次回作も期待させて頂きます。
389名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 00:46:36 ID:Aby2Iw6x
>3355氏
良かったです〜!
原作のイメージそのままの二人で読ませていただきました。
次回作も大変楽しみにしてますv
390名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 07:19:13 ID:AmsK3fR7
gj!
391名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 11:15:29 ID:rXx4DLZE
最後にビッグウェイブキター
思わず転がってしまいましたよ。そして予想以上に健全なラスト。
ともあれ、お疲れ様でした。
気が向いたらまた来てください。
392名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 17:15:36 ID:4JRJw8vB
>>3355
君には素質がある・・。GJです。
伝えたいことは十分に伝わりましたよ。

もし可能であれば、今回投下された分の続きもまた
読んでみたいものです。
お疲れ様でした。
393名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 20:41:21 ID:t8NV9bGo
またしばらく閑古鳥か…
394名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 23:01:11 ID:7Pq/x4pA
3355氏は凄く良いし、499氏も勿論最高で有るのは言うまでもない

・・・けれど、過去に去ってしまった他の作家さんたちはどこ行ってしまったのだろう?
あの黄金期はもう帰ってこないのだろうか?
ふと、シンミリ思った
395名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 23:21:47 ID:Jrm1NrTN
去年のクリスマスとか、作品ラッシュが凄かったよな・・・
396名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 23:38:29 ID:6lyU5vZV
そう言われて久し振りに顔を見せる保管庫No.4-272です
というか、ずっとここを覗いているんですがね
時間と意欲はあるんだけど、肝心のネタがないのです
果歩と番司絡みのネタなら、ちょっとあるけど……エロでもないし本格的にまとめるのにも時間がかかりそう
この間手に入れた藤木先生の同人誌からのネタは控える必要があるし、で

うーん、リクやシチュなどのネタふりがちょいと欲しいと思うのはまだ未熟だからでしょうか
そもそもそれに頼ってちゃ、いい作品は書けんか……
新作出来たら必ず投下しに来ます。約束。ゆびきりします。
では、失礼します。
397名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 15:11:29 ID:yRcxz/bB
松雪氏はもう来ないのかな……夏コミではキミキス書いてたし。
398499:2006/08/20(日) 17:58:01 ID:DE3EQ4Tm
>>355-369の続きを投下させて頂きます。
えーと、まだ完結まで辿り着けませんでしたので、
今回は中編ということで・・・
ライトなえっちありの、本番ナシです。
399499 1/15:2006/08/20(日) 17:59:02 ID:DE3EQ4Tm

「社長、どうぞ」
「あ、ああ・・・ありがとう」

再び場面は7月7日。
陽菜と、半ば強引に彼女を送らされることになった我聞は、
とっくに工具楽屋の寮であるアパートへと辿り着き、今は二人、陽菜の部屋でお茶などしていた。
陽菜の積極的すぎる“ご奉仕”に多少気疲れしていた我聞は内心早めに帰りたかったのだが、
どうしても―――と迫る陽菜の誘いを断ることが出来なかったのだ。
とは言え、ここなら少なくとも友人や妹達の視線がない分、我聞としても多少はリラックスすることが出来る。

「なんだか今日は色々驚いたけど、國生さんにはすっかり世話になっちまったな。
 この借りはいずれ・・・そうだな、國生さんの誕生日にでも、しっかり返させてもらうとするよ」

陽菜の淹れてくれた紅茶を飲みながら、さっきまでよりは随分落ち着いた口調で話す彼に、

「はい、それは楽しみですね・・・期待してますよ?」
「うむ、まかせておくがいい!」

我聞の自信あり気な態度が、その実、何の根拠も無いものであるのは陽菜にはよくわかっているが、
それもまた彼らしいと思うとそれはそれで微笑ましく・・・

「國生・・・さん?」

頬を微かに緩ませて微笑む陽菜に、何故か妖しげな・・・ドキリとするような艶を感じ、
我聞は思わずまじまじと彼女を見つめてしまう。

「社長・・・どうかしましたか?」
「い、いや! なんでもない!」

慌てて目を逸らす我聞の様子に再びくすり、と微笑する。

「そ、そうだ、プレゼントといえば!」
「はい?」
「國生さん、新しい作業服、ありがとうな! 今のヤツ、結構傷んできてたから、すごく助かるよ!
 有難く大切に使わせてもらうからな!」

動揺を誤魔化そうというのも勿論あるのだが、
我聞が丁度欲しいと思っていたものを選んでくれた陽菜にちゃんと感謝の気持ちを伝えねば、とも思っていたのだ。

「ふふ、よかった・・・喜んで頂けて何よりです」

陽菜も嬉しそうに答えると、ふっと俯いてしまう。
面と向かって礼を言われて恥ずかしがっているのだろうか―――くらいに我聞は思うが、
顔を伏せた陽菜の表情は緊張したように微かに強張っていて、そして、すぐに意を決したように顔を上げ―――

「ですが社長」
「ん?」

我聞から見れば、普段と変わらない表情の片隅に、僅かに決意と覚悟の色を浮かべ・・・

「実は・・・もうひとつ、社長にプレゼントがあるんです・・・」
「え、そうなの? いや、別にそんな気を使ってくれなくてもいいのに」

先に貰ったプレゼントも十分に嬉しかったし、
更にはメイドの格好までして行き過ぎな位に世話を焼いて貰っているのだ。
我聞は形だけの遠慮ではなく、本心からそう言うのだが、
陽菜にはその申し出を受け入れる気は毛頭無い。
何故なら・・・その、もうひとつのプレゼントこそが、
陽菜が何よりも我聞に渡したい・・・捧げたいものなのだから。
400499 2/15:2006/08/20(日) 17:59:47 ID:DE3EQ4Tm

我聞の言葉に答えることなく陽菜はすっ、と立ち上がると、
テーブルを回り込んで我聞の横を通り過ぎ・・・ることなく、
エプロンドレスの裾をふわりと揺らしながら、彼の傍に腰を下ろす。

「こ、こ、國生さん!?」

ほとんど身体が触れそうなくらい近くに寄り添われ、我聞は思わず後ずさってしまうが、
我聞が離れれば陽菜はその分だけ身体を乗り出して、恥ずかしさで真っ赤な顔を上目遣いにじっと見つめてくる。

「社長・・・」

それだけにとどまらず、陽菜の手が我聞の脚に触れて・・・

「もうひとつのプレゼントは・・・わたし・・・です」
「・・・・・・え・・・?」

取り乱しつつあった我聞の思考が、今度は停止する。
しばらく唖然として、それから“冗談だよな?”と引きつった笑みを彼女に向けてみるが、
陽菜は全くその表情を変えることなく、じっ、と我聞を見つめたまま。

「あ、あーと・・・ど、どういうことかな、は、はは・・・」
「文字通り、そのままです」
「そのまま・・・って、すまん、その・・・具体的には・・・」
「身も心も・・・私の全てを、社長に捧げる・・・ということです」

それは昨夕、陽菜が優と果歩の二人と交わした問答の焼き直しに近かったが、違うところがあるとすれば、
問いかける我聞だけでなく答える陽菜もまた、真っ赤に頬を染めているところか。
だが、それだけ恥ずかしいことを口にしていると自覚しながらも尚、
陽菜は視線を逸らすことなく我聞の目を見つめている。

「社長が望むことでしら、どんなことでも・・・どんな・・・恥ずかしいこだって・・・」

我聞の脚・・・太股の、付け根に近いところに置いた手にぎゅっと力をかけて、
陽菜は我聞に更に身体を寄せる。
それで、もともと触れる寸前まで迫っていた陽菜の身体は・・・

「こ、こく・・・っ! か、身体が、あたっ・・・」
「お嫌ですか・・・?」
「い、いや、その・・・!」

陽菜の豊かとは言えない胸が我聞の腕に押し付けられ、
自然と彼女の顔も、その吐息を直に感じてしまうほどに我聞の顔の側に迫っている。

「う・・・ちょ、ちょっと、こ、こく・・・っ」

仕事においては無類の勇敢さを発揮する我聞が、
今は真っ赤な顔で呂律すら怪しくなるほどに恥ずかしがり、緊張しきっている。
陽菜とて顔から火が出そうなくらいに恥ずかしいのを懸命に堪えているのだが、
我聞の―――特別な想いを自覚してしまった相手の彼らしからぬ姿が、
彼女に少しだけ余裕と、同じく少しだけ・・・意地悪な気分を呼び起こす。

「なんですか? 社長・・・?」
「うく・・・! い、いや・・・」

ごくり、と唾を飲み込む我聞の仕草を紅い、そして微かに妖しい笑顔で見つめ、
更に・・・ちょっとした拍子に唇が触れてしまうのではないかと我聞が危惧してしまうくらいに、
陽菜の顔が、唇が迫ってくる。
401499 3/15:2006/08/20(日) 18:00:46 ID:DE3EQ4Tm

―――こ、こ、國生さん・・・な、なんのつもりなんだ・・・

我聞は確かに陽菜を異性として意識しているし、彼女に対して好意と呼べる感情を抱いてもいる。
だが、それはまだ恋や、ましてや愛などといった明確なものではない。
・・・少なくとも、そういった自覚はまだ無い。
しかし今の状況は、そんな我聞の自覚とか、意思とか、理性とか・・・
そんなものを完全にさしおいて、陽菜の存在そのものが彼の“男性”に訴えかけてくる。

陽菜の整った顔が、ツヤのある唇が・・・
頬にかかる、温かくこそばゆい吐息が・・・
薄いながらもエプロンドレスの生地越しに確かな存在を感じさせる乳房が・・・
陽菜の“女性”と、己の“男性”を、かつて無い強さで意識させられてしまう。
そんな状況で、18才になったばかりの健康な少年に男性特有の生理現象が起きてしまったとしても、
それはまさに不可抗力という他は無く、そのことで誰も我聞を責めることは出来ないだろう。

・・・だが、どんな理由が有ろうが無かろうが、今の彼にはのっぴきならぬ事情がある。
彼の、主の意思などお構い無しに存在を主張する男性そのもののすぐ側に・・・陽菜の手が置かれたままなのだ。

―――やばい。
―――これだけは、絶対に気付かれてはならない・・・社長として、いや、男として!

・・・と、決意だけは固いのだが、今の我聞は後ずされるだけ後ずさりきって、
既に壁際に追い詰められているのだった。
そして彼の焦燥などお構いなしに、陽菜は密着させた身体をさらに押し付けてきている。

「こ・・・國生さん・・・そ、その・・・」
「なんでしょう・・・なんなりと・・・」

陽菜が言葉を紡ぐと彼女の吐息が頬をくすぐる様に不規則に揺れ、
それだけで我聞の身体はゾクゾクと震え・・・

「あ・・・社長」

その拍子に陽菜が反応したものだから、我聞は

“気付かれてしまったか―――!?”

と、心臓が止まる思いだったが・・・

「社長、すごい汗・・・」
「・・・え!? あ、ああ! 暑いからな、はははつ!」

今は既に午後9時を過ぎ、当然、陽菜の部屋には冷房が効いている。
それは我聞程では無いにせよ恥ずかしいのを懸命に隠している陽菜にも簡単に気付ける程の、
ある意味我聞らしい芸のない誤魔化しであったが・・・

「ふふ、そうですね・・・では社長、シャワーでも浴びて来られては如何ですか?」
「そ、そうだな! そうさせてもらうよ!」

今はただ陽菜から距離を置くことだけを考えていた我聞は、好機とばかりに弾けるように立ち上がり・・・

「浴室はお手洗いの奥ですから・・・タオルは置いてあるものをお使い下さいね」
「ああ、わかった! サンキュ!」

答えながら逃げるようにして、ほとんど駆け足で浴室へと突っ込んでいくのだった。
その様子を陽菜は微笑みながら見送り、そのまま軽くうつむいて・・・
悩ましげな、なにかを決意しかねるような、逡巡の表情を浮かべていたが―――
やがて浴室からシャワーの水音が聞こえてくると、
先程の我聞のように喉を鳴らして唾を飲み込み・・・意を決したようにゆっくりと立ち上がった。
402499 4/15:2006/08/20(日) 18:01:45 ID:DE3EQ4Tm

「・・・俺はいったい、何をやっているんだ・・・?」

茹だった頭と熱を持ってしまった一部の器官を冷やすべく冷水のシャワーを浴びながら、
我聞は声に出して自問する。
その言葉は自責でも自虐でもなく、純粋に戸惑いからのものだった。

陽菜がメイドの格好をして出迎えてくれて、
誕生日だということで彼女に並々ならぬ世話を焼いてもらい、
その礼に彼女を部屋まで送り、
そのまま部屋に招かれてお茶をご馳走になって・・・

そこまではいい。
普段からすればかなりの非日常っぷりではあるが、まだ容認出来る範囲内の出来事だ。
だが、そのあと・・・

陽菜から彼女自身をプレゼントすると言われ、
身体をぴったりと押し付けられ、
息がかかるほどに顔と唇を寄せられて、
それで自分のモノは浅ましく膨らんで固くなって・・・

そこまで考えて、我聞は頭をぶんぶんと振って思考を止める。
この状況がいかに異常であるかを認識するだけなら、そこまでで十分だった。

「・・・帰ろう」

陽菜の様子がおかしいのは気にかかるが、自分まで巻き込まれるのは非常にまずい。
それに、自分がいなくなれば陽菜だってこれ以上おかしく成りようが無いハズだ。

「よし・・・!」

そう、決意したまさにその時。

がらららっ

蛇口を捻ってシャワーと止めようとしていた手が、ぴたりと止まる。
水音に混じって、有り得ない音が聞こえた気がした。

ぴちゃ・・・ぴちゃっ・・・

今度は、気のせいなどではなく・・・確実に聞こえた。
水音に混じって、一歩、二歩と“誰か”が歩み寄ってくるような・・・
そんな、絶対にありえないはずの音がして・・・

「社長・・・」

絶対にありえない、あってはならないはずの事態が起きていた。
もはや確かめるまでも無く、その声は陽菜のもの。
そしてここは浴室で、背を向けているとは言え・・・我聞は全裸だった。
背後にいる彼女がどんな格好なのかはわからないが、
自分を隠すものを何一つ持たない我聞は振り返って確かめることは出来ないし、
それに・・・振り返ってはいけない、見てはいけないと・・・ほぼ確信に近い予感があった。

「こ、國生さんっ! 何してるのかわかってるのか!?
 いくらなんでもこんなこと、おかしいと―――」

強い口調で、叱るように話す言葉は、だが・・・
ぴと、と彼女の手が背中に触れる感触で、敢え無く立ち消えてしまう。
403499 5/15:2006/08/20(日) 18:02:46 ID:DE3EQ4Tm

「社長・・・お背中、お流し致します・・・」
「こ・・・こ・・・っ」

声が、近い。
あくまで一般的なアパートの浴室が、もともとそんなに広い訳が無い。
その洗い場に人が二人も入れば・・・そして、二人目が一人目に二歩も近寄れば・・・
当然ながら、二人の距離は限りなくゼロに近づく。

こんなこと、すぐに止めさせなくてはならない―――
そう思いつつも、我聞は声を出せないでいる。
それくらい緊張している自分が情けないとは思うのだが、
真後ろにいる陽菜がどんな姿をしているのかと想像すると・・・

「―――――――――っ!」

冷たいシャワーを浴びている甲斐もなく頭は茹だち、腰のモノがもそり、と自己主張の兆しを見せる。
そんな持ち主の意思に従ってくれない身体の一部をなんとか従わせようと焦っていると、
すっ、と陽菜の手が背中から離れる。
彼女の気配そのものは背後から消えることはなく、なにやらもぞもぞと動いている様子だが、
少なくとも触れられることで情けないくらいにバクバクと跳ねる鼓動を気どられる心配は消えて、
我聞は内心、少しだけ安心する。
だが、それはそのまま心の隙となり、後に続く衝撃を完全に無防備な状態で受け入れる羽目になる。

・・・ぬるり、と。
不意に我聞の両肩より少し下がった背中に、陽菜の両手が触れる。

―――石鹸?

先程より滑らかな肌触りは、石鹸か、ボディーソープを手に取ったのか・・・
等と、状況を忘れ気を取られたその直後―――

「っぅわぁあああっ!?」

にゅる、と。
我聞の背中から腰、尻の辺りまでの一帯に、柔らかく、温かく、ぬるぬるした感触が押し当てられる。

「こ、ここっ! こ・・・こここ・・・!?」

背中に密着する生々し過ぎる感触と、当たっているモノの起伏、そして背中越しに伝わってくる鼓動・・・
見えなくとも、動転していても、ナニをされているのかは一瞬で理解できた。
理解はできたが・・・

「こっ! こくっ! こ、國生さんっ!? お、おおお、おっ・・・」

理解できたところで・・・いや、むしろ理解してしまったからこそ、どうにもならなかった。
己の裸の背中に、陽菜の裸の身体が・・・胸が・・・おっぱいが、押し当てられている・・・!
その事実に、我聞の理性はぐらぐらと揺れ、
さっきまで必死に抑えようと念じていた下半身のモノは、呆気なく手のつけられない様相を呈している。
だというのに―――

「しゃ・・・社長、お背中・・・お、お洗い・・・します・・・」
「え・・・・・・っうわぁあっ! ちょ、ちょっと、ちょ、ま、國生さ、ちょ―――っ!」

にゅる、むにゅ、と・・・
あろうことか、陽菜はボディーソープを塗りつけたのであろう彼女の身体を我聞の背中に擦りつけてくる。
陽菜のきめ細かい、そして柔らかい肌の感触が、
小ぶりながら適度な柔らかさと適度な弾力を兼ね備えた二つの膨らみが、
そしてその頂点でつん、と尖っている二つの蕾が・・・
背中に押し付けられ、泡立ちぬめるボディーソープを塗りたくるように我聞の素肌を這い回る。
404499 6/15:2006/08/20(日) 18:04:06 ID:DE3EQ4Tm

―――こ、國生さんの、胸が・・・お、おっぱいが、それに、これは・・・ち、ち・・・ちく・・・!

それだけでも、我聞の決意や理性の類は既に亀裂が入っているというのに、更に―――

「っふぁ・・・はぁ・・・しゃ・・・ちょお・・・っ、いかが、でしょうか・・・はぁ・・・っ、あ・・・
 きもち、いい・・・ですか・・・ぁ・・・は・・・っ、はぁ・・・あは・・・ぁ・・・」

背後から聞こえてくる陽菜の声も、言葉の合間に洩れる荒い吐息も、蕩けたように艶がかかり、
その響きはまるで・・・

―――國生さん・・・すご、い・・・えっちな、声・・・國生さんも、もしかして・・・感じて、いるのか・・・?

ぞくり、と・・・我聞の身体の奥で、新しい衝動が鎌首をもたげる。
陽菜の意図はわからない。
彼女の言う通り、あくまでも誕生日プレゼントの一環として、
少し大胆に奉仕して、自分を気持ちよくさせたい・・・というだけなのかもしれない。
だが・・・陽菜自身が感じているなら・・・
誕生日とかプレゼントとか関係無く、もしも、彼女が、自分を求めているというなら―――!

そう思うと、既に陽菜の肉体の感触でギチギチに硬くそそり立ってしまっていたモノが、
更にぎゅっと硬さを増すが・・・

「あ・・・ふっ・・・しゃ・・・社長・・・っ、あの・・・気持ち、よく・・・ありませんか・・・?」
「え・・・え!? あ、いや! いや、すごく! 物凄く気持ちいいよ! うん!」

陽菜の声が纏う淫らな響きにばかり気を取られて、問い掛けられた内容など完全に意識の外だった我聞は、
ほとんど条件反射で答えてしまう。

「本当ですか・・・よかった・・・では、あの・・・ま、前の、方も・・・」
「ま、前・・・って・・・」

背中に触れていた陽菜の両手が腕を回りこんで我聞の鎖骨に触れ、そこから胸、腹、と、
泡を塗りたくりながら少しずつ下方へ滑ってゆく。

「あの・・・もし、その・・・お恥ずかしく、ないようでしたら・・・こちらに、向いて頂ければ・・・
 背中と同じように、社長のお身体も、私の、その・・・身体で、お綺麗に致しますが・・・」

ぞくり、と。
またしても、我聞の奥深くで先程の衝動が膨れ上がるのを感じる。
身体の前面も、背中と同じように陽菜の“身体”で綺麗にする、ということは、
つまり裸の自分と裸の彼女が向き合って、触れ合って・・・身体を押し付けあって・・・
それはもう、抱き合うのと同じ・・・いや、抱き合う、どころではない。
ほとんど性行為そのモノであり、そう考えると我聞のモノは自分でも唖然とするくらいに、
膨張し、硬く充血し・・・
そして、それを意識した次の刹那にハッとして―――

「こここ國生さんストップ!」
「あ・・・」

陽菜の泡にまみれた手が、腹から下腹部へ、
そして今まさに、ギチギチに硬く天を衝くそれに触れようとしたその直前に、
我聞は彼女の手を掴んでいた。

「ま、ま、前は自分で洗えるから! ってーかもう洗ったから!
 だ、だから、こ、こ、國生さんはっ! さ、先に、あがっていてくれ!」
「あ・・・はい・・・」

搾り出すように言う我聞に対し、表情が見えなくてもわかる残念そうな声を残すと、
陽菜は手を離し・・・素直に、がらら・・・と戸を開けて出て行くのだった。
405499 7/15:2006/08/20(日) 18:05:24 ID:DE3EQ4Tm

背後で戸が閉まる音を聞いた後も、我聞は冷たいシャワーの下で呆然と立ち尽くしている。

「あ・・・危なかった・・・」

もしもあのまま陽菜の手が己のソレに触れていたら、一体どうなっていたかと思うと、
何はともあれ今はただ、事なきを得たことに安堵と・・・そして、少しだけ残念だとも思いかけて、
慌てて頭を振ってその考えを消す。
結局理由は不明のままだが、今夜の陽菜は我聞の考えの及びもつかぬ執着というか、何か強い思いの元に、
我聞との接触・・・スキンシップを求めてきているのだけはわかる。
しかも、彼女らしからぬ強引さで。
ここで引き下がった以上、それも終わりなんじゃないかとは思うのだが、
何せ我聞の理解を完全に超えた出来事である、我聞の予想など、彼自身が全く当てにしていない。
だから・・・

「これは・・・何とかせんといかんよな・・・」

シャワーを浴びながら、俯いた我聞の目に入るのは、
未だに全く衰える気配を見せない、彼自身のいきり立った“モノ”。
何せ陽菜の肌、胸・・・そして乳首の感触まではっきりわかるくらいに、
直に背中に押し当てられ、擦り付けられたのだ。
事ある毎に朴念仁扱いされる純朴な少年には刺激が強すぎて、
その感触は今も全く劣化することなく、その気になればいつでも頭の中で再現できる程で・・・

「い、いかんっ! お、おちっ、おちつけ俺!」

ちょっと思い出すだけでソレは敏感に反応して更に硬くなり、慌てて他のことを考える。
だが、どれだけ冷水を浴びようがソレは一向に衰えず、

「・・・この際・・・ここで、一度出しちまった方がいいんだろうか・・・」

かなり本気で“最終手段”について考える。
他人の家、しかも女の子の部屋でそれをするのにはかなりの抵抗があるが、
このままでは服を着ても、自分の下半身がどんな状態かはひと目で看破されてしまうのは明らかだ。
それなら、幸いにもシャワーを浴びている今のうちに、一度処理を・・・

「い、いや! 馬鹿なことを考えるな! こ、ここは國生さんちだぞ・・・」

だが結局、こんな状況においても社長として、男としての矜持が、その行為を否定する。
そのまま数分間冷水を浴びつづけてみたが・・・状況は変わらない。
それで、我聞は仙術使いとしての未熟さ等を感じたりしながら、もはや己の一部を抑え込むことを諦めて・・・

「帰ろう・・・今度こそ・・・」

陽菜にコレのことを気取られるより前に、とにかくこの部屋を出ようと決める。
服を着たら一声かけて、速攻で部屋を出るのだ。
言うことを聞かないコレの始末は、家でゆっくりとつければいい。
・・・どうせ、今夜は陽菜のあの感触を忘れられそうにないのだ、始末する材料には事欠かないだろう。

そうと心を決めて蛇口を締めて浴室から出ると、
洗面を兼ねた脱衣室には一目でわかるように新しいタオルが置かれていた。
色々悩ましいのは相変わらずだが、一応の行動指針を立てたことで吹っ切れたのか、
さっぱりした表情の我聞は陽菜の言葉通りにそれを借りて身体を拭い・・・
その表情が、再びこわばる。

服が・・・ない。
そして・・・自分が浴室に入る前は確実に止まっていたはずの洗濯機が、
今はごうん、ごうん・・・と音を立てているのであった。
406499 8/15:2006/08/20(日) 18:06:39 ID:DE3EQ4Tm

「あの・・・國生さん?」
「なんでしょう、社長」

扉越しにも届く様にと大きめの声で呼び掛けると、
返事は扉のすぐ反対側から聞こえてくる。
声をかけられることを予想して、そこにいたのだろう。

「ああ、あのさ・・・俺の服なんだが・・・」
「はい、すっかり汗が染みていましたので、洗濯させて頂きました」
「んな―――!?」

さも当然、とばかりにさらり、と言い放つ。
だが、我聞にとっては一難去った後のまた一難というか、
また一歩、確実に追い詰められているとしか思えない状況。

「え、ええと、じゃあ・・・代わりの服なんかは・・・」
「申し訳ありませんが、流石に社長に合う服はうちにはありません・・・」
「じゃ、じゃあ、どうしろと・・・」
「そちらにタオルがありますので、取り敢えずはそれを腰に・・・」
「い、いや! その格好で帰るのはさすがにマズイって!」

いくらすぐ近くだからって、たまたま巡回中の警官と出くわす可能性だって無くは無い。
法律上はまだ少年と言えども、流石に18才の男が夜中にタオル一つで歩いていたら、
いくらなんでも問題だろう。

「あ、その点でしたら心配ありません、果歩さんには私から連絡を入れさせて頂きましたから」
「お、そ、そうか・・・いや、気が効いてるな、助かるよ!」

今までの流れからすれば、やや不自然な気がしなくもないが、
こんな風に細かいところまで気が届くところこそ、普段の陽菜らしいと言えばその通りでもある。
きっと、気の迷いから目を醒ましてくれたのだろう、と思うことにして、
さて、果歩が着替えを持ってくるまではこのままここに―――

「はい、社長は今夜はうちにお泊まりになられますから、ご心配なさらずに、と」
「なんですと―――――――――!?」

今更ながら、自分は既に陽菜の掌の上だったということ、
そして逃げ道は断たれていることを認識させられる我聞であった。



407499 9/15:2006/08/20(日) 18:08:21 ID:DE3EQ4Tm

「・・・社長、いつまでそちらに篭っていらっしゃるおつもりですか?」
「ああ・・・洗濯が済むまで待つよ」
「待ってどうされるのです?」
「着て、帰るよ」
「干さないと生乾きですよ?」
「大丈夫、家に帰る間だけだ、我慢できるさ」
「そうですか・・・ところで、その洗濯機、私の下着も一緒に入っているのですが・・・お開けになりますか?」
「ぶっ!」

我聞のささやかな抵抗は、またしても本当にささやかなまま幕を閉じる。

「さあ、ずっと水のシャワーを浴びられて、その格好のままではいくら社長でも風邪を引いてしまいます
 温かいお茶を用意しましたから、どうか出てきてください」
「い、いやだが! 出ても結局、この格好しかできないワケだし・・・」

この格好の何が不味いかと言えば、今の陽菜の前にタオル一丁という姿が無防備過ぎるというのもあるが、
やはり一番の懸念は腰のモノなのだ。
想像を絶する成り行きに唖然としていたせいか、今はやっとそれなりに落ち着いてはくれているのだが、
下手に陽菜に近づけば、それだけで簡単に膨れ上がりタオルなど呆気なくはね除けてしまう可能性すらある。
・・・という以前に、陽菜のことを考えただけでまたしても我聞のモノはムクムクと勃ち上がってしまい、

「う・・・こりゃ、ますます出られん―――」

がちゃ。

「社長、そろそろ・・・って・・・」

モノが硬くなってしまうとタオルが途端に窮屈になり、一旦外したところで不意に扉が開き・・・
陽菜は、男の象徴を反り返らせて立ち尽くす全裸の我聞と正面から向かい合う。

「え・・・あ・・・うわぁああっ!?」

完全に動転した我聞は、辛うじて股間をタオルで隠し、あとは後ろを向くことすら忘れ、
がたんと背中に浴室の扉が当たるまで後退し、それ以上動けずにいる。

「こ、こここ、こくっ・・・」

対する陽菜は息を飲んで顔を真っ赤に染めながらも決して目を逸らさず、
我聞がタオルで覆った後も彼の腰に視線を注いだままで、やがて微かに妖しく笑みを浮かべ・・・

「社長・・・もう、いいですよね?」
「え・・・な、何を・・・」
「もう私・・・社長のこと、前も後ろも・・・全部、見ちゃいました・・・」
「っく・・・!」
「ですから、今更恥ずかしがられることなんて、ありませんよね?」
「い、いや、だがそれは・・・!」
「どうしたんですか? 社長らしくも無い・・・怖気つかれましたか?」
「んな・・・!?」

陽菜の妖しい、艶交じりの笑みはいつの間にか顔中に広がり、蕩けるような瞳で我聞を見据えている。
その表情は、ぞくりとする程に美しく・・・混乱しきった我聞の心に、簡単に浸食してくる。

「そ、そんな馬鹿な! 俺が怖気づくなど!」
「ふふ・・・では、居間にお茶を用意していますから・・・おいでください、ね?」

くるり、とスカートの裾を舞わせて踵を返すと、陽菜はつかつかと歩いて行ってしまう。
我聞は、彼女に挑発されたからか・・・それとも、彼女らしからぬ妖しい笑みに魅了されてしまったのか・・・
反り返ったままの腰のモノをそのままに、大雑把にタオルを腰に巻きつけると、
逡巡することなく陽菜の後を追い、洗面所を後にした。
408499 10/15:2006/08/20(日) 18:09:29 ID:DE3EQ4Tm

「どうぞ」

居間に戻り、先程と同じクッションに我聞が腰を下ろすと、
陽菜はポットを手にテーブルを回り込み、
こぽぽ・・・と、彼の前に置かれたカップに熱い紅茶を注ぐ。
だが、我聞はそれに手をつけようとせず、陽菜もまた注いでしまった後は興味がないとばかりに、
ポットをテーブルに置くとそのまま我聞の隣に座り、じっと彼の顔を見つめる。

「國生さん・・・」
「はい、社長」

我聞も開き直ったのか、照れこそ残るものの後ずさったりはせず、彼女の目を見て・・・

「どうして、こんなことを・・・?」
「・・・わかりませんか?」

くす、と小さく笑って、少しだけ寂しそうな顔を見せる。

「社長・・・」

す、と陽菜の顔が近寄って来るが、我聞は動かない。

「私のこと・・・嫌いですか?」

我聞を試すような、からかうような・・・
それでいて、隠しきれない不安の色を帯びた表情で、陽菜が問いかける。

「そんなことない! そんなワケ、ない・・・」

我聞の即答に、陽菜は無言のまま心底嬉しそうに顔を綻ばせ・・・

「では、もう一つ・・・」

口許は綻ばせたまま・・・だが更に迫ってきた目は、何処までも真剣に―――

「社長は・・・私のこと・・・好き、ですか?」

今度は、即答できなかった。
秘書として、同級生として、家族として・・・
陽菜に対する“好き”の気持ちなら、幾らでも挙げられる。
だが・・・今、彼女に求められているのは・・・

「わ・・・わからない・・・スマン」

誤魔化しでもはぐらかしでもなく、正直に・・・自分の気持ちが、まだわからない。
陽菜は我聞にとって、妹を除けば最も身近な異性であり、しかも間違いなく魅力的な異性である。
だが、・・・

「國生さんとは、その・・・一緒にいると、なんていうか・・・落ち着くし、楽しいし・・・
 ずっと、一緒に居られたらいいと思ってる・・・だが・・・いや、だから・・・むぅ・・・」

その感情は陽菜自身が昨日まで抱いていたものと同じ。
同年代の少年少女が口にする“恋”なんかより、余程強い信頼と、絆。
横から誰が口出ししようが、手出ししようが、何もされなかろうが・・・
いつかその感情は昇華して、“愛”という二人の共通認識になるであろう、そんな想いの、卵。

だが二人とも、まだそんな想いの意味に気付く事は出来ない。
だから我聞は“わからない”としか答えられないし、
陽菜はもっとはっきりとした行為で、それを確かめたい、確かにしたい・・・という思いに駆られるのだ。
409499 11/15:2006/08/20(日) 18:10:28 ID:DE3EQ4Tm

「すまん・・・今はまだ、わからん・・・」

済まなそうに言う我聞に、陽菜は微笑みながら、

「そうですか」

と言い、そしてうっすらと目を細め・・・

「私は社長のこと・・・好き、ですよ?」

顔を赤らめこそしながらも、さらりと言い、我聞に身体を寄せる。

「そ、そうか、その・・・あ、ありがとう・・・・・・だが・・・」

面と向かって、憎からず思っている少女から告白された以上、
男として露骨に後ずさる訳には行かない。
避けているとか、拒絶している等とは思われたくない、というのもある。
そうやって逃れることの出来ない我聞は、陽菜にされるがままに迫られ・・・抱きつかれて・・・

「ちょ、ちょっ・・・! こ、國生さん!?」

陽菜はシャワーから出た後もエプロンドレス姿だが、我聞は腰にタオル一枚だけのほとんど全裸みたいなもの。
そんな素肌に腕を絡められ、すがりついて来る陽菜の身体の感触を身体の前面で受け止めて・・・

「や、やばいって! 國生さんっ! は、離れ・・・!」

むくり、と鎌首をもたげた我聞のソレは、隠すことも誤魔化すこともままならず、
スカートの生地に包まれた陽菜の太腿に自らを擦り付ける形となり・・・

「あ・・・ふふ・・・社長、私の身体で・・・興奮して下さってるんですね・・・?」
「い、いや、これはその! お、男として、不可抗力というかだな! ええと、だから・・・!」
「・・・嬉しい・・・」
「え、こ、こく・・・って!? ちょ、ちょっと待て! 國生さんっ!? や、やめ・・・!」

するり、と。
我聞の背中に絡めていた腕が外れ、彼の肌を滑り降りて・・・
解けかけたタオルを押し上げるように自己を主張して止まない我聞のモノを、
両手で包み込む様にして触れる。

「っく!? や、やめっ! ちょ、ちょっと國生さんっ! そ、それは、ヤバいから! いやマジでっ!」

我聞の切羽詰った声をうっとりした表情で聞き流しながら、

「凄い・・・社長の、こんなに熱くて・・・かたい・・・です・・・」

する・・・しゅる、と・・・
固くそそり立ったモノを愛でるように、
陽菜はソレを柔らかな手付きでタオル越しに撫で、摩る。

「ぅあ・・・あく・・・っ!」

手の中でびく、びくん、と脈打つ感触や、
これまでに聞いたことも無いような我聞の切なげな声が陽菜をゾクゾクと奮い立たせ、
すっかり紅潮し情欲に蕩けかけた顔を、我聞のやはり紅潮した切なげな顔に近付けて・・・

「ね・・・社長・・・?」
「っく、國しょ・・・え? こく―――」
410499 12/15:2006/08/20(日) 18:12:30 ID:DE3EQ4Tm

初めて他人の・・・それも、陽菜の手に己のモノを触られ、
優しく弄られる凶悪な快感に耐えるのに必死なあまりに、
我聞は彼女の顔が迫っていることにすら気付いていなかった。
故に声をかけられて初めてその近すぎる唇に驚き、
そのまま、何の反応もできないままに・・・唇を奪われていた。

「ん・・・ちゅ・・・っ」

驚きで目を見開いた我聞の唇を、陽菜の唇が塞ぐ。
表面が触れるだけの軽い、乾いた感触のキスから始まり、
徐々に唇を強く押し付けるようにして、唇の内側の粘膜と粘膜を触れ合わせ、擦り合わせ、
そして少しずつ滑り込ませた舌で舐め、唇に這わせる。

「んぷ・・・んんぅ・・・」

陽菜が少しずつ積極的に、貪欲に我聞の唇を貪る一方で、
我聞はただ呆然と、彼女にされるがままになっている。
性器への愛撫、次いでキス・・・と、不意打ちの連続で、
このまま頭から煙を噴いて倒れてしまいそうな程の混乱具合なのだが、
そんな乱れきった頭にも、
肉茎を擦る陽菜の指や、唇に吸い付く彼女の唇、そして舌の感触の温かさ、そして生々しさは余りにも鮮烈すぎて、
意識を飛ばすことなど出来ようハズもなかった。
そして彼の意思では何一つ出来なくとも、陽菜の感触に身体は正直に、自動的に反応を示し・・・

「ん・・・ぷ・・・ぁ、っふぁ・・・や、ん・・・しゃちょお・・・の、これ、凄い・・・また、硬く・・・」

ちゅっ、と湿った音を立てて唇を離すと、手の中でますます硬くそそり立つソレの感触を嬉しそうに確かめて、
する、とタオルの下に手を滑らせて・・・熱く脈打つ男性の象徴に直接、触れる。

「ぅく・・・あ・・・っ!」

タオル越しでも過剰なくらいに刺激的だった陽菜の愛撫・・・
なのに、今度はその白い手が、細い指が・・・己の敏感なモノを直に触り・・・撫でている。
その優しく、遠慮がちな刺激だけでも肌が粟立つ程の快感で、
神経が侵されているかのような錯覚すら抱いてしまう。

―――國生さんの指が・・・俺のを、触って、撫でて・・・握ってる・・・

それが・・・その凶悪なまでに甘美な感覚が、
いつも生真面目で厳しい陽菜によって与えられているのだと思うと、
快感は電流となって脊髄を遡り、脳髄を焼き焦がす。

「うぁ・・・! こ、國生さんっ! ダメだ、これ以上は・・・!」

我聞の切実な訴えは、だが全く聞き入れられることはなく・・・

「社長・・・こんなに硬くして・・・辛そう・・・待って下さいね、今すぐ・・・楽にして差し上げますから・・・」

そう言って一旦身体を離すと陽菜は屈み込むようにして身を縮め、
四つん這いのような格好で我聞の腰に顔を近づける。

「うく・・・っな!? な、何をする気だ、國生さん!?」
「楽にして・・・力を抜いてください・・・
 不慣れではありますが、社長に気持ちよくなって頂けるように・・・頑張りますから・・・」

そう言って、既に眼前に迫った我聞の肉茎を羞恥と、緊張と、怯えと、
そして淫蕩さの入り混じった眼差しで見つめ・・・
411499 13/15:2006/08/20(日) 18:13:37 ID:DE3EQ4Tm

「い、いや、待て! こ、こ、國生さんっ! そ、そんなことしなくても――――――」

我聞の切羽詰った声が却って陽菜を興奮させ、積極的にさせていることなど彼が知る由も無い。
ただ、既に限界間近のモノと、それに息がかかるほどに接近した陽菜の顔の組み合わせに、
彼女が次にやろうとしていることを嫌でも予想させられてしまう。
そして・・・そんなことをされたら、程無く自分が決壊してしまうこともわかっている。
だが、わかっていようがいまいが、もはや彼女を跳ね除ける訳にも行かず、
我聞が焦燥と、そして僅かな期待を滲ませた目を向けるその先で、
陽菜は先程のキスで濡らした唇と、その間から覗く舌を、はちきれそうな肉茎に近づけて・・・

「では・・・失礼します」
「や、やめ――――――」

ぴちゃ。

「――――――っくぅ!」

背筋に電流が流れたように、我聞はびくっと背を仰け反らせる。
反り返った肉茎の根元付近に、生温かくねっとりと湿った、柔らかなもの・・・陽菜の舌が触れて、
ゆっくりと、触れたままの舌先を微妙に震わせながら、それが先端の方へと這い上がってくる。

「っあ・・・やめ・・・っく、こくしょ・・・さんっ!」

その動きにつられて下腹部に溜まり、滾り続けている熱い衝動が先端へと遡りそうになるのを、
我聞は必死で堪えるが・・・

「んむ・・・あ・・・ふぁ・・・社長・・・我慢、しないで・・・」

舌に絡ませた唾液を我聞のモノに擦り込むようにしながら、
そそり立つ我聞の肉茎の裏筋を根元から先端まで舐め上げる。
その間も上目遣いで彼の表情から目を離さず、
必死で耐える辛そうな様子と、
そうまでして耐えねばならないくらいに“感じて”しまっているのを見て取ると、
もう一度・・・いや、繰り返し何度も何度も、下から上へと・・・まるでアイスでも舐めるかのように、
執拗に愛撫を加える。

初めこそ恥ずかしくて真っ赤だった陽菜だが、
我聞の必死で耐える表情を見ているうちに自分の完全な優位を認識し、やがて嗜虐的な衝動が生まれ、
彼を早く気持ちよくさせてやりたい、という想いと、
耐えつづける彼を決壊させてしまいたい、という欲求が入り混じり・・・

「んぷ・・・むぁ・・・っふ・・・しゃちょ・・・まだ、我慢・・・されるのですね・・・」
「っく! そ、それは・・・この、ままじゃ・・・國生さんに、オレ・・・っ!」
「お気に、なさらないで・・・ください・・・はむ・・・ん・・・ぅ
 社長に、気持ちよくなって・・・欲しいのですから・・・」
「うぁ・・・だ、だが・・・!」
「ふふ・・・ん・・・っ、では・・・これなら・・・」
「え・・・ちょ、ちょ・・・っ! やめ、うぁ――――――」

一旦舌を離し、愛撫を始めたときより更にギチギチに硬く、赤黒く膨れ上がったソレを見て密かに息を呑み、
だがすぐに覚悟を決めて、

「社長・・・本当に・・・我慢、しないで・・・そのまま、私に・・・出して下さって・・・構いませんから・・・」

それだけ言うと涎でべとべとになった唇を大きく開き・・・

「あ・・・む・・・ん・・・っ」
「―――――――――っ!」
412499 14/15:2006/08/20(日) 18:14:36 ID:DE3EQ4Tm

決して大きくない口を精一杯に開いて、我聞の肉茎の先端―――亀頭を口に含む。
それだけで、はちきれんばかりの肉茎の脈動が、鈴口から漏れる先走りの苦味が口中に広がり、伝わり、
呼び起こされる淫らな感覚が陽菜の心を覆い尽くす。
我聞のように明確な決壊の恐れこそなかったが、陽菜の身体もまた既に熱く蕩けかけ、
スカートに隠れたふとももは切なげに擦り合わされ、奥から滲み出た蜜でじっとりと濡れていた。

―――社長・・・お願いです・・・もう、我慢しないで・・・早く・・・出して・・・
―――そうしたら、今度は私自身で・・・私の、身体で・・・

陽菜の想いが、そして想いの故に生まれてしまった渇望が、
生まれて初めての、昨晩までは想像すらしたことのなかった淫らな行為へと、彼女を駆り立てる。

「あむ・・・んっ、んふ・・・んぅう・・・んぷ・・・っぷぁ、は・・・ぅ・・・ん」

ちゅ、ぷ・・・っ、ちゅぱ、くちゅっ・・・ちゅぷ・・・ちゃぷ・・・

陽菜の荒い息遣いと彼女の口から漏れ出す水音が、部屋を酷く淫靡な雰囲気で満たしてゆく。
だが当の我聞には、既にそんな音は聞こえていない。
陽菜が自分の、決して綺麗とは言えないモノを咥え・・・頬張って、愛撫してくれているという事実と、
己のモノに絡みつき、這い回る熱い舌の感触に、彼の耐えようとする意思は刻々と削られ続け・・・

「う・・・ぐっ! やめ、っくうう! こく、しょう・・・さんっ! やめ・・・!」

陽菜に咥えられた亀頭と彼女の舌の粘膜同士が唾液という潤滑液を介して擦れ合う感触は、
初めて体験する我聞には余りにも生々しく、そして甘く・・・耐えるには鮮烈過ぎた。

「だ、ダメだ! もう、こく、國生さんっ! 離してくれ! でないと、本当に・・・っくぁあ!」

一方の陽菜は、口中を満たす我聞の感覚に酔い痴れながらも、目も、耳も、その機能を失っていない。
むしろ、我聞の必死に耐える表情や呻き声すら愛おしい―――とばかりに、全ての意識を彼に注いでいた。
だからこそ、我聞の限界が間近であることを彼自身と同じくらい理解していたし、
キツく目を瞑って必死に耐える彼を早く楽にさせたくて、その顔をじっと見上げながら、ひたすら舌を蠢かせる。

「やめ、やめてくれ! 離して・・・くれっ! もう、もうダメだっ、だから―――」

今や我聞の腰はガクガクと震え、限界を迎えようとしていた。
だが、せめてこのまま陽菜の口の中で果てるのだけは避けねばと、
半ば力づくで彼女を引き剥がすつもりで、目を開けてその姿を確認しようとして―――

「―――――――――っ!」

上目遣いで―――いつかの合宿の時とは違う、背筋がぞくりと震えるくらいに魅惑的な目で自分を見つめる、
そんな陽菜と目が合ってしまい―――

「――――――っく! うぁ! だ・・・で、出るっ! っく! ぅううううぅうっ!」

びゅる―――っ

「んむ!? んんんっ!? んぶっ! んんんんんんんんんっ!」

びゅくっ! びゅるっ! びゅぶぶっ! びゅくびゅるびゅるびゅくびゅぶ―――――――!

陽菜の目に魅入られてしまった我聞は、その一瞬、耐えることを放棄してしまい、
蕩け、切なげな表情の彼女へと・・・その口腔へと、滾りに滾った熱い衝動を吐き出した。
413499 15/15 (中編 了):2006/08/20(日) 18:15:30 ID:DE3EQ4Tm

「んんんっ! んく・・・んぐっ! んぶ、んっ! んんんっ! んぶ、ぷぁっ!?」

抑えつづけた反動で激しく口腔へと注ぎ込まれる精液は、陽菜の口をすぐに満たしてしまう。
それでも我聞のものを全て受け止めたい一心で、注ぎ込まれるものを苦い、生臭いと思いながらも、
必死で嚥下しようとする。
だが、それを飲み込んでいるさなかも我聞の射精は全く治まることなく、開いた喉にも精は注ぎ込まれ―――

「んぶぅ!? っげほっ!? げほごほっ! かはっ! けほ、ごほごほっ! かふっ! かはぁ! あ、あ・・・」

喉に直接、精液を注ぎ込まれ、陽菜は思わずむせ返り我聞のモノを離してしまう。
受け止める器を失った肉茎はそれでも精を放ち続け、
陽菜の髪に、顔に、エプロンドレスに白濁した粘液が降り注ぎ、苦しげにせき込む彼女を汚してゆくのだった。

「―――っはぁ・・・はーっ、はぁ・・・っ、は・・・ぁ・・・っ」

やがて射精を終えた我聞は、半ば呆然としながら己の精液でどろどろに穢れた陽菜を眺める。
口の中へ精液を注ぎ込み、飲み込ませ・・・それだけでは飽き足らず、
陽菜の美しい黒髪や、整った顔までべっとりと汚してしまったというのに・・・何故か罪悪感が湧いてこない。
一度始まってしまった射精は自分の意志で止められるような勢いではなかったし、
そこへ導いたのは陽菜だ。
それに、何より・・・己のもので穢れた陽菜の姿に、我聞は心を奪われていた。

「か・・・はっ、社長、すみません・・・こんなに、出して頂いたのに、ほとんど・・・こぼしてしまいました・・・」

涙目で咳き込みながら、陽菜はやはり上目遣いで我聞に謝罪する。
そして、せめてものお詫びとばかりに、口中に残った粘液を懸命に飲み下そうとしているようだった。

「あ・・・ああ・・・」

そんないじらしい仕草や、彼女の顔や髪を垂れ流れる白濁液が黒い髪や紅潮した頬に映えて、
ぞくりとする程の淫靡な魅力を醸し出す。
これだけは避けねば―――と思っていたはずの事態なのに、
陽菜の姿は余りにも扇情的で、淫らに過ぎて―――

「はぁ・・・っ、あ、社長・・・こんなに、出したのに・・・まだ・・・」

たった今、大量に精を放ち陽菜を汚したばかりだというのに、
我聞のソレは先程と遜色無いくらいに硬く反り返っていた。

「ああ・・・國生さんの・・・顔、みていたら・・・また・・・」

陽菜の口を、顔を己の精液で汚したことを詫びることすら忘れ、
我聞は自制を失いつつある声で答える。

「社長・・・」

先程までとは明らかに違う彼の声の調子に、陽菜は一瞬だけ怯んだように眉をひそめ、
そして再び蕩けたような淫らな笑みを浮かべると―――

「では、今度はちゃんと・・・こぼさないところで、社長のもの・・・受け止めてあげますね・・・」

そう言って、陽菜はスカートの裾をつまむと、我聞の眼前でゆっくりと引き上げるのだった。




414499:2006/08/20(日) 18:20:42 ID:DE3EQ4Tm
以上で今回の投下分は終了です。
次回投下分でちょっと昨晩の出来事に戻って、あとは本番で終了、の予定です。
一応、次の週末あたりに投下できればと考えておりますが、どうなることやら・・・

ともかく、読んで下さった方、どうもありがとうございました。
415名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 19:37:54 ID:ki+d8LRx
久々に転がってしまった。
てかもう階段から転げ落ちましたよこのド低脳!!
そして一番乗りGJ
416名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 20:14:24 ID:f8ecyi4M
GJ
積極的な國生さんが艶っぽいですね。
後編も期待しております。
4174スレ131:2006/08/20(日) 22:11:47 ID:ki+d8LRx
お久しぶりです131です。
名無しとしても感想書きましたが、499さんグッジョブです。
ジリジリと迫る國生さんも、迫られてあたふたする我聞も良かったですw
で、自分も書きましたんで投下させてもらいます。
短いしエロ皆無ですが。
タイトルは『おはかまいり』でお願いします。
4184スレ131:2006/08/20(日) 22:15:12 ID:ki+d8LRx

「あ、國生さん」
「陽菜さん。奇遇ですね〜」
「社長、それに皆さんおはようございます。
お揃いでどちらへ向かわれるのですか?」

八月の某日、コンビニで買い物をしてきた私は偶然社長そしてご家族の方々と社員寮の前で鉢合わせしました。

「ああ、これから母さんに会いに行くんだよ。せっかくのお盆だし、ね」
「あ・・・」

社長は少し苦笑するように言われます。
社長のお母さんも、六年近く前にお亡くなりになられていましたね・・・

「・・・社長、私もご一緒して構わないでしょうか?」

そのとき、ふと私はそう口にしていました。

「え、全然構わないけど・・・なんで?」
「いえ、私も普段社長にお世話になっているのでそのお礼をさせていただこうかと思いまして・・・」
「そんな、お礼だなんて・・・むしろ不甲斐無いお兄ちゃんへの愚痴言ちゃってもいいんですよ?普段沢山迷惑かけてるだろうし」
「果歩・・・俺だって最近はそこまで迷惑はかけていないぞ・・・たぶん」
「ねー斗馬ー、フガイナイってなにー?」
「今の兄上のことですよ姉上」
「なっ、お前等まで・・・」
「ふふふ・・・」

社長のご家族はいつも仲がよくて、見ているだけでも無意識に笑みがこぼれてしまいます。

「ん、どうかした?國生さん」
「いえ・・・何でもありません」
「そう?じゃ、行こうか」


******************

それから十数分後、私たちは目的の霊園に到着。

「よし。んじゃ俺は水汲んでくるから、珠と斗馬は周りの雑草抜いといてくれ。果歩と國生さんは古い花捨ててきて持ってきた奴と取り替えるのを頼む」

ちょっとした事情でその前だけ側の道の色が変わってしまっているお墓。社長のお母さんの眠っているそのお墓の前まで来ると社長は私たちに指示を残して、自分はバケツを片手に少し離れたところにある水道へと向かいました。

「よし、やりましょう姉上」
「おー!」

斗馬さんと珠さんは張り切って除草を始めています。
では、私も・・・

「それでは私がこちらをやるので、果歩さんはそちら側のお花をお願いします」
「わかりました」

少し枯れ始めているでも綺麗な花。
社長は『お盆だから』と言っていましたが、きっとこまめに着てお手入れをしているのでしょう。
4194スレ131:2006/08/20(日) 22:19:27 ID:ki+d8LRx

「すみません陽菜さん、家のお墓参り手伝ってもらっちゃって」

不意に、果歩さんがそう言われました。

「いえ、私が頼んでお供させてもらったのですから気にしないでください」

それに、家族団欒の中で一緒に居させてもらえるのは嬉しいですし。

「そう言えば、お墓参り陽菜さんはもう行ったんですか?」

新しいお花を差しながら、果歩さんに訊かれました。
私も同じように新しいお花を飾ります。

「はい。私は昨日の内に・・・果歩さん」
「これでよし、と。
なんですか陽菜さん?」
「社長や果歩さんたちのお母さんは、どのような方だったのですか?」

私は手を止めて果歩さんに訊ねました。
果歩さんはそうですねえ、と一度考え込む素振りを見せてから答えてくれました。

「私たちのお母さんは――明るくて、勝ち気で、お父さんといっつも仲が良くて、怒るとすぐ手が飛んできて、それでもとっても優しくて――」

懐かしそうに、そしてとても嬉しそうに果歩さんはお話してくれます。

「――良いお母さんかだったかどうかは解らないけれど、私はとっても大好きなお母さんでした」

明るく笑って果歩さんが締めくくったその直後、「おーい」と聴きなれた声がして社長が戻ってこられました。


社長が戻ってきて、私たちは簡単に墓石のお手入れをしましす。

「社長、ここにはよくいらっしゃるのですか?」
「まあ、ね。母さんの眠る大切な場所だし、ここに来るとなんだか落ち着くんだよ」

どこか、遠くを見るような目をしながら社長は言いました。
或いは、お母さんの思い出をいるのでしょう。
私も、お母さんと物心つく前に死別しました。
だから私には、お母さんとの思い出が殆どありません。その顔だって、お父さんが残していった写真を見てやっとはっきり思い出せたくらいです。
だから、そんな思い出を持っている社長を、少し羨ましく感じました。

「よし。じゃあみんなで拝むか」

社長から小さな小さな灯りを先端に灯したお線香が配られました。
それを斗馬さん、珠さん、果歩さん、社長、そして私の順にお供えして、揃って手を合わせます。

恐らく皆さん、思い思いのお言葉を心の中でかけているのでしょう。それでは、私も――

4204スレ131:2006/08/20(日) 22:22:30 ID:ki+d8LRx
――社長に紹介してもらって以来ですね、お久しぶりです。

貴女のご子息である社長は、とても優しい方です。
私は社長から色々なことを教えていただきました。
社長が居なかったら、今の私は無かったと言っても過言ではないと思います。

貴女のおかげで私は社長と出会えて、そのおかげで私は今とっても幸せです。
だから、お礼を言わせてください。
私と社長を出会わせていただいて、本当に有り難う御座いました。

あと、先代、そして社長からいただいた貴女の手鏡は、大切に使わせていただいています。

そして差し出がましいかもしれませんが、最後に一つお願いを。
社長は優しい人ですが無茶をする人でもあります。
だから、社長をいつまでも見守っていてあげてください――

私は拝み終えそっと目を開けて見ると、社長は熱心にお祈りし続けていました。
何を伝えているのでしょう?
そして、果歩さんたちは――あれ?

「よし。じゃみんな帰るか・・・ってどうしたの國生さん?」
「社長、果歩さんたちの姿が見えなくなってまして代わりにこんな物が・・・」
こんな物、とは足下に残された置き手紙。

『用事があるので斗馬と珠と先に帰ってます。
お兄ちゃんは陽菜さんと二人で帰ってきてください。
PS.一人で帰ってきたら怒るからそのつもりで。
その代わり二人でいたならお昼に遅れても大目に見ます』

「・・・・・・」
「・・・・・・」

その内容に、私も社長もちょっと言葉がありませんでした。
と言うか果歩さんいつの間にこんな物を・・・

「・・・じゃあ帰ろうか國生さん」
「・・・そうですね」

いつまでもここにいても仕方がないのでやはり帰ることにします。
私が、霊園の外に出ようと社長に続いて一歩踏み出そうとしたその時。

――我聞を、よろしくね――

風に乗って、そんな優しい声がしたような、そんな気がしました。

「國生さん、どうかした?」
「・・・いえ、何でもありません。帰りましょう社長」

――また、来ます。
私は墓石に向かってそっと呟いてから、隣の大切な人の手を取って歩き出しました。

「そう言えば社長、結構長い時間手を合わせていましたが、何を伝えていたのですか?」
「え?俺は――」



Fin
4214スレ131:2006/08/20(日) 22:26:22 ID:ki+d8LRx
と、いうことで以上です。
時間軸的には9巻おまけの後と言うことで。
お読みの方はおわかりの通り、単にお墓参りするだけのお話です。
いや、皆さんあまりふれなかった母親ネタやってみたかったってのもありますが・・・

またなんかネタできたら来ます。
422名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 22:29:17 ID:TNo6Xeus
4スレ131氏、GJですよ!エロ無しでもいいものはいいですな。
423名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 23:34:10 ID:DE3EQ4Tm
>>4スレ131氏
GJです!
爽やかな読後感が凄くステキな感じです。
今後も是非またお願いしますよ〜!
424名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:44:31 ID:empZIPtw
131氏
GJ!
4253355:2006/08/21(月) 23:16:43 ID:empZIPtw
えー3355です。
あまり間が空いてしまうと、書けなくなりそうですので、
少しづつですが投下します。
4263355:2006/08/21(月) 23:21:08 ID:empZIPtw
二人の目覚め


「國生さんが、その手鏡をもらってくれてて、何とか間に合ってよかった・・・。
もし、どこかに連れ去られて二度と会えなくなったら、ずっと工具楽屋にいてくれ
なかったら、オレ・・・・」
「社長・・・・」
 いつにない雰囲気で、我聞に見つめられた陽菜は、吸い込まれるように正面から我聞の腕に抱かれた。

 それは激しい抱擁ではなく、ごく自然に身体を寄せ合ったという感覚だ。
(ああ・・社長・・・こんな道ばたで・・・でも・・・・・何も考えられない・・)
 陽菜は抵抗もできず、する気もなく、声を出すことも、名前を呼ぶことも、
思考すらも頭のどこかが霞がかかったように機能しない。

 だから、陽菜はほとんど流れに身を任すまま目を閉じた。

 ごくわずかな逡巡による間。陽菜の中にじれったさと、ほんの少しの不安。

 でも、その感情の動きの直後、陽菜の唇に柔らかい感触。
 彼女はその感触に安心し、そして、彼女はまるでそれが当然であるかのように、
侵入してきた我聞の舌を受け入れて、自らも積極的に舌を絡める。

 普通ならあまり気持ちがいいとは思えない、生暖かい、ぬるぬるした感触であるのに、
陽菜は、背筋にぞくぞくした感触を覚え、自らの「女」としての欲望が持ち上がるのを
感じた。
(社長・・・私を・・・・)
4273355:2006/08/21(月) 23:41:57 ID:empZIPtw

 次の瞬間、陽菜は自らが、自分の部屋の自分のベッドの上にいることに気がついた。
 そして、たった今まで見ていた夢に思わず真っ赤になった。
(わ、私、いったい何をしようと???!!・・・・しゃ、社長と!! 社長と!!)

 夢の中とはいえ、陽菜は自分の行動が信じられなかった。
(あ、あんなに私、社長と、キ、キ、キ、キスを・・・・・?!)
 陽菜は軽くパニックに陥った。確かに、昨日は、大変なことがあって、監禁されたところを我聞に間一髪で助けてもらったのだ。

 それで、遅くなったので、あまり寝ていない。それにしても、あんな夢を見るとは・・・。

 陽菜は寝不足の頭のまま、呆然とした。
 そして、だんだん、目が覚めてきて、頭がはっきりしてくると、彼女の両手は・・・・。

 左の掌で、自らの右の胸を揉みしだいており、右手の指はあろうことか、茂みをかき分けて、まだ未熟な陽菜の女の穴を慰めていたのだ。
(な、何をやっているの?! 私・・・・!! こ、こんな・・・はしたない・・・!!)
 そう、気がつけば、陽菜のヒダはまるで、漏らしたように下着はおろか、その上の寝間着にまで恥ずかしい液を染み出させていた。

(こ、こ、こんな・・・。シャワーを浴びて、着替えないと。。。。)
 今日の陽菜は、こうして一日が始まった。
4283355:2006/08/21(月) 23:45:05 ID:empZIPtw
今回は以上です。
一応、前回の続きという時間軸で書いていきます。
ただ、はっきり言って今回は全く、全体の流れを考えていない状態で見切り発車
しましたので、落ちが付くかすら本人にもわかりません。(爆)
そんなわけで、投下も、不定期、しかも、長さもまちまちということになると思います。
楽しんでもらえましたら、幸いです。
429名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 06:59:57 ID:zd8waLUj
>>3355
GJ!
続き期待してます、じっくり書いて下さい〜
430名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 13:17:05 ID:GaVJUxFo
何だ何だこの投下ラッシュは!?
まるで全盛期の頃の様じゃないか。
>> 499氏
>> 4スレ131氏
>> 3355氏
皆さんGJ!
昼休み残り短いのにどうしようw
431名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 00:39:59 ID:8XIfXoje
499氏いいいいぃぃいいい!!!
やりやがったな貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
ごおろごろごろごろごろごろごろごろ!!ごろごろごろ!!ごろ!ごろ!

4スレ131氏
じんわりきました。転がる感覚でなくこう、じんわりと。
季節的にもナイスタイミン。
499氏の読んだ後だったから涼しげなデザートってかんじでした。
432431:2006/08/23(水) 00:46:07 ID:8XIfXoje
リロードし忘れたorz

3355氏
コレだけでも十分GJなのに・・・続くんすか!?
こりゃあwktkがとまらないぜ
4333355:2006/08/25(金) 22:51:29 ID:fyi1FrTb
二人の目覚め
続きができましたので投下します。
我聞サイドです。
4343355:2006/08/25(金) 22:52:14 ID:fyi1FrTb

「社長・・・・」
(こ、國生さん! な、なんて姿に・・・・!!)
 我聞は、目の前の陽菜の一糸まとわぬ姿に、声をかけることも、目を逸らすこともできなかった。
 いや、正確に言えば、見てはならないものであるのだが、全裸の美少女を前にして、
特に他から邪魔も入らないうちに自分からそれを棒に振るのは、思春期の男の性として
不可能であった。
(い、いかんいかん!! っこ、國生さんは社員。社長たるもの社員に淫らな気持ちを抱いては・・・・)
 きまじめな我聞は、しかし、社長としての自覚から、驚異的な自制心で、
彼女への視線を引きはがそうとした。

 ところが・・・・・

「社長・・・・」
 陽菜の、その、我聞を呼ぶ声は、しっとりとした色気を醸しだし、いつもの清純で、
透明感のある、有り体に言えばあまり色気のない口調とは打って変わっていた。
「い、いかんぞ、國生さん!! っこれは・・・」
 などと、慌てる我聞だが・・・・

 ぴと。

 気がつくと、陽菜は裸のまま、我聞に正面から抱きついていた。
 いつの間に、そんなに近づいていたのか、なんと、仙術使いの我聞が全く反応できない。

 そこで、張りつめた我聞の理性の糸は限界であった。
4353355:2006/08/25(金) 22:53:27 ID:fyi1FrTb

 我聞は、陽菜の裸の背中を強く引き寄せると、目を閉じて、むしゃぶりつくように彼女の唇を奪った。
 こんなことを許す陽菜ではないはずなのだが、彼女は何の抵抗もなくその行為を受け入れている。
 嫌がったり、抵抗するそぶりのない陽菜に、我聞はもう、たまらずに、正面からだと、
辛うじてふくらみの陰影が確認できる程度の彼女の小さな乳房をもみしだく。

 さすがに、これは、ひっくり返されることも覚悟したが、陽菜の吐息が荒くなるだけで、何事も起こらない。

 そうなると、もう、我聞も止まらない。小さくて清楚な蕾の頂点をつまみまわし、それが固く、しこってくるまで責め続ける。
 そして、我聞は陽菜を押し倒し、半ば強引に両脚を割る。
 すると、繁みのなかには、まだ、誰にも荒らされていないはずの割れ目が・・・・・・。

 我聞は自らを取り出すと、前戯も何もなく、いきなり陽菜のそこを奪った。
 そして、間髪入れずに夢中で腰を振る。

 なにか、感触はわからないが、とにかく興奮した我聞はその行為に夢中になって、
陽菜が、何を言っているのか、何を言っていないのかも全くわからなかった。

(陽菜さん、陽菜さん!!)

 我聞はもう、陽菜を抱いているという事実だけで、頭の中は一杯になっていた。
4363355:2006/08/25(金) 22:54:19 ID:fyi1FrTb

 次の瞬間、目覚めると、我聞はいつもの自分の布団の上であった。昨日は、陽菜があわや、というところで、助け出して、その後も事後処理で遅くなったので、あまり寝ていない。
(おおお、オレはいったい何をしていたんだ!! 社長ともあろうものが、こ、國生さんを、ご、強姦・・・・・!!)
 夢の中とはいえ、理性は負けて、欲望のままに振る舞ってしまったことに深い自己嫌悪に陥った。

 別に、寝ぼけ頭の夢の中の出来事で、普段の彼の行動とは一切関係がないものであるし、
誰に迷惑をかけるわけでもないのに、きまじめな我聞は実際にやってしまったかのような
気持ちになった。

(まずい、まずいぞ。國生さんと顔を合わせたら、どんな風に話をしたらいいんだ・・・)

 混乱したままの我聞は、そんな夢を見ていたことを自分から言わなければ、
他人に知られるはずもないことにも気づかなかった。

 だが、やはり、下着に残った我聞の欲望のなれの果ては、自分で洗って始末した。

 その日の我聞の一日はこうして始まった。
4373355:2006/08/25(金) 22:56:22 ID:fyi1FrTb
今回は以上です。
楽しんでいただけたら幸いです。
438名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 01:17:33 ID:+/Hb0LgB
迅速な投下GJです。
今回は我聞が暴走気味か・・・
439名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 01:59:35 ID:gvKUx4nt
>>3355
GJ!
なんだか目覚めちゃった二人がどうなるのか、今後に期待です
4404-272:2006/08/27(日) 14:40:27 ID:sWBPRdN5
どうも、お久し振りです。
新作がようやくまとまったんで、投下します。
少し時系列が変なのですが、まぁその辺は流してくれると嬉しいです。
相変わらずのエロ無し、それと久し振りなので書き方が変わってるやもしれません。
それではいきます。
4414-272:2006/08/27(日) 14:41:13 ID:sWBPRdN5

 それは、高校3年の春のこと

 「では、今配ったプリントは今週中に提出すること。以上、今日のHRは終了。日直」
 「はい。起立。気をつけ、礼」
 きびきびとした担任に合わせ、日直が今日の授業を締めくくる
 私はその先生が出て行くのと同時にざわざわと騒がしくなる教室を見ながら、ふぅとため息を吐きつつ席に着いた
 「あら、カホ、いつもの威勢はどうしたの?」
 『鬼の霍乱てやつか?』
 「キノピー、それ喧嘩売ってるの?」
 私こと、果歩が立ち上がり金髪碧眼の桃子とお供の自立型ロボット・キノピーを睨み付けた
 いつもなら軽い言い争いになるところが、私はまたため息を吐いて席に座りなおした
 ここで退いてきた私に少しだけ目を見張り、桃子が更に突っ込んできた
 「……本当にどうしたってわけ?」
 「別に」
 私は鞄に教科書を詰め、帰り支度を整え始めた
 「あ、わかった。あの鉢巻男と喧嘩したんでしょ」
 「なんでアイツが出てくるのよ……」
 物静かな言い方から、それが原因ではないのに桃子はまた驚いている
 ロボットとは思えないキノピーが、首をかしげるような動作をしつつ私に問いかけた
 『もしかして、さっき配られたプリントが原因か?』
 「さっきのプリントって……ああ」
 桃子も得心がいったようで、手に持っていたプリントをひらりと私に見せた
4424-272:2006/08/27(日) 14:41:50 ID:sWBPRdN5

 そこには、『進路希望』と簡潔に書かれた題字があった

 「なーるほどねぇ、これが原因なわけ」
 「……ま、ね」
 そう、今、私はこれで悩みっ放しなのだ
 「カホは大学に行く気なの?」
 だから、それで悩んでるんだってば
 「そういうあんたは、大学行くの?」
 「行くわけないじゃない。この天才美女・桃子様が」
 ふーん、行かないんだ
 まぁ、もう既に大学を出ているとか何とか言っていたから当然かもしれない
 「私くらいの技術者ともなれば就職先も選び放題だし、自分で事業を起こすだけの個人資産もあるわ」
 流石、元真芝の第八研所長ってとこか
 「でも、カホ、迷うくらいなら大学行くのやめたら? 勉強したいものがないのなら、時間の浪費になるだけじゃない。
 やりたいことがあるなら、そっちを優先。だから、ハルナだって進学しなかったんじゃない」
 それは正論だ
 「……勉強したいことならあるにはあるのよ。でもさ、家庭の事情というか、家計の事情というか」
 桃子とキノピーがああと声をそろえた
 そう、ウチ……工具楽家は相変わらず貧乏なのだ
 解体業は大手に客を取られ、本業はご無沙汰……とこれは世間的には喜ばしいことなんだけどウチとしては素直に喜べない
 更に食べ盛り真っ盛りとなった下の2人が食費で圧迫、家計は大炎上で車が消し炭になりかけている……
4434-272:2006/08/27(日) 14:42:24 ID:sWBPRdN5
 
 でも、それでも家族の皆は大学に行けと後押ししてくれているのだ

 長いこと時間がかかったものの、晴れて夫婦になったお兄ちゃんこと我聞と少しお腹の大きくなった陽菜の2人
 そして、最近になってようやく家に落ち着いてきたものの、まだ性別も判別していない孫にメロメロなお父さんこと我也が後押ししてくれている

 「だったら、素直に甘えればいいじゃない」
 「そういうわけにもいかないのよ」
 陽菜さんが家計をいかに切り詰め、私の分の学費を捻出しようとしてくれているか
 我聞と我也、辻原さんが中心に工具楽屋(株)が必死になって仕事を見つけ、遅くまで頑張ってきているのも皆知っているのだ
 『学費援助ってのはどうだ?』
 「……それでなんとかいければ、そう苦労はしないんだけど」
 だから、というのはおかしいけれど・・・だからこそ私は迷っている
 このまま、皆の頑張りに甘えて、大学に行かせてもらっても良いのかどうか
 まだ下に2人も控えているし、陽菜さんのお腹の子のことだってある
 でも……してみたい勉強や、行ってみたい希望の大学もある(多分、浪人の心配無く入れる)
 でも……経営の苦しい工具楽屋(株)に入って、皆(特に陽菜さん)の負担を減らしてあげたい気持ちも同じくらいに強い
 
 私は、迷っている……

 『……これはもう、赤の他人が口出すことじゃねぇな』
 「そういうこと。だから、黙っててくれる?」
 私は素っ気無くそう言うと、さっさと鞄を持って教室を出た
 
 ・・・・・・
4444-272:2006/08/27(日) 14:43:11 ID:sWBPRdN5

 「ただいまー」
 私が玄関を開けてそう言っても、誰からの返事もしなかった
 靴を脱いで、居間の方に向かってみて……テーブルの上の置手紙を見て合点がいった
 そこには久々の本業がいきなり入ったこと、それが北海道という遠方だということ、工具楽屋(株)総出で行くこと、2日程かかること、何かあった時の連絡先などが簡潔に明記されていた
 「……ふーん、そっか」
 それから置手紙を再びテーブルに戻したことを見計らったかのように、電話のコール音がした
 ぱたぱたと小走りでそれを取ると、電話は珠と斗馬からで、今夜は2人共通の友達の家に泊まるというものだった
 向こうの家に失礼の無いようにと釘を刺し、受話器を置いた

 今夜は、私1人か

 タイミングが良いのか悪いのか
 しかし、1人で悩み考え抜くには丁度良いことかもしれなかった
 「よし、まずは食事の準備だ」
 私は誰に言うことでもなく、そう言った
 今日は1人分の食事を作るだけでいいのだから、楽といえば楽だった
 いや、もう冷凍物や残り物で済ませてしまおうか
 そう思案しつつ、台所に赴いたら、今度はドアベルの音が聞こえた
 「あ、はーい」
 宅配便か、それとも桃子だろうか
 私はスコープに目をやり、怪しい人でないか確認……

 「……」
 私は、ドアを開けた
 「何の用件?」
 トゲのある、ぶすっとした声で訪問者にそう応えた
 「……とりあえず、ドアを開けてくれただけでもマシか」
 そこにいたのは時代錯誤な鉢巻男、静馬番司だった
4454-272:2006/08/27(日) 14:44:44 ID:sWBPRdN5

 「で、何の用件?」
 私は番司を居間に通し、淹れた茶を差し出した
 「別に。工具楽のヤローに前の仕事の書類を届けに来ただけだ。本社には誰もいなくてよ」
 番司がくいっと親指を立てて、本社屋のある方を示した
 「ああ、そりゃそうよ。いきなり本業が入ったとかで、皆で北海道行っちゃったらしいから」
 私の言葉に、番司が「マジか」とぼやいた
 そういえば、いつもなら本業ともなれば合同で番司も手伝うのがパターンだったはずだが……
 「置いてかれたってわけね。実力が足らなかったんじゃない?」
 「何だとっ!?」
 「だって、それ以外ないんじゃないの」
 私が一口お茶をすすると、番司がうんうんとうなった
 「……あっ! そういや、昨日、携帯ぶっ壊れたんだった」
 「要するに、連絡が取れなかったから置いてかれたってことね。似たようなもんじゃない」
 「違ぇ! 断じて違ぇ!」
 「はいはい」
 憤慨し立ち上がる番司を適当になだめ、とりあえず書類は預かっておくと言った
 「あー、一応重要書類扱いだからなー」
 何それ、私を信用してないっていうの?
 「違うっつーの。この書類を狙う奴らに、お前が襲われたらどうすんだって話だ」
 まさか、そんな話があるわけない
 真芝が壊滅して数年が経過した今、そんな暇な奴らがどこにいるというのか
 「わっかんねーぞ。最近、また本業が増えてきた気がしてきたしよ。今回だって、かなり急な話だったんだろ」
 「前フリがある本業も珍しいけどね」
 何を言うかと思ったら、馬鹿馬鹿しい
 「とにかく、だ。今日のところは書類は持って帰るからな」
 はいはい、もう好きにして下さい
 私は学校でのとは違うため息を吐き、お茶を飲み干した
 「じゃ、用件は終わりでしょ。さっさと帰った帰った」
 ぐいぐいと番司の背を押し、玄関へ押し出す
 なんだなんだと後ろを振り向こうとする番司の意思を無視し、とにかく押し続けた
4464-272:2006/08/27(日) 14:45:27 ID:sWBPRdN5
 「ちょ、ちょっと待て、お前!」
 「待たない! さっさと帰る!」
 これ以上は聞けない、聞きたくない
 「……お、お前、まだ怒ってんのか!?」
 聞こえませーん
 「悪かったって。何度も謝ってるじゃねーか!」
 記憶に御座いません、と言いますか何の話をしてるんですか?
 「ダーッ、もうっ、離せ!」
 ぶんっと力任せに私の押す手を振りほどくと、足が滑ったのかそのまま体勢を崩したようだ
 ぐらりと倒れてくる身体に、私はそのまま床へと押し潰された
 「……たたたた」
 私が起き上がろうとすると、上になっている番司とばちっと目が合った
 「ケダモノ」
 「なっ……!」
 番司ががばっと起き上がり、「んなんじゃねー! 事故だ、事故!!」と叫んだ
 私は平静を保っているように見せかけ、むくりと起き上がる
 「……」
 「ぐ……そんな目で俺を睨むなー!」
 番司がそうわめくのを確認すると、私は110番をかけに電話のある所へと向かった
 が、いつの間に気づいたのか先に番司が回りこみ、受話器を持つ手を押さえ込まれた
 「と、とりあえず通報だけは勘弁してくれ……」
 「そ。手、痛いから放して」
 私がそう言うと、番司はぱっと手を放した
 ふーん、とりあえず通報はしないと見て手は放してくれるんだ
 「……」
 「……」
 「……」
 「……」
 「……玄関は向こうよ?」
 「いや……今日、お前1人なのか?」
 また唐突に、何を言うかと思えば
 「1人で危なくねーのか? 本社の人もいねーんだろ?」
 「少なくとも、アンタと2人でいるよりずっと安全だと思うんだけど」
 「……やっぱ、まだ怒ってんのか……」
 番司は頭をがしがしとかいた

 ええ、そうですとも

 ・・・・・・
4474-272:2006/08/27(日) 14:46:46 ID:sWBPRdN5

 今年の春、私の進級前のこと
 お父さん達無事帰還&お兄ちゃんがお父さんを倒して陽菜さんを手にした記念パーティの夜のこと
 今思えば、あの時、私は優さんに少し酒を飲まされていたのもアレだった……

   私はゴールインした2人を祝福した
   2人共、凄く嬉しそうにしてた
   でも、心のどこかでお兄ちゃんが取られてしまうのが悲しかった

 私はコタツに入り、ぶつぶつと文句を垂れていた
 なんて幼稚なんだろうと、自分で悲しくなった
 そこに、鉢巻男が現れて……それから……それから……

 ・・・・・・
4484-272:2006/08/27(日) 14:48:01 ID:sWBPRdN5

 「だ、大体よ、あん時はお前の方から絡んできたんじゃねーか」
 「ふーん、責任転嫁するんだ? 男のクセに」
 「オイ待て、それは男女差別じゃねーか?」
 「ふーんだ」
 全く、よりにもよって・・・こ、こいつと・・・ききキスするなんて!
 しかも、ファーストっ!
 「だから、あれは不慮の事故だってーの!」
 「あのね、そういう問題なわけ? 乙女の唇奪ったっていう自覚無し?」
 「だから、何度も謝ってるじゃねーか!」
 「謝る謝らないじゃなくてね、なんていうか、こう……誠意というか……」
 「ふざけんな! 俺の謝り方に誠意が無いっつーのか!」
 ……ああ、もう腹が立つ!
4494-272:2006/08/27(日) 14:48:46 ID:sWBPRdN5

 客観的に、映像的に見るとこういうことだ
 少し酔いの回った果歩が番司に絡み、陽菜のことでからかい続けた
 番司はそれを我慢し、見事に何とか耐え抜いた
 果歩がぱたんと倒れ、寝てしまったようなので、番司はあくまで風邪を引かないようにと善意で布団をかけてやった
 その時、ふっと果歩の寝顔に目がいき、「寝てりゃ可愛いのに」とでも何でも思ったのかもしれない
 そんな覗き込むような位置に番司の顔があり、気配に気づいたのか急に果歩が振り向きつつ起きたのがまずかった

 そう、2人はそのまま唇が触れ合ってしまった
 ただ、それだけのこと……本当に事故のようなもの……
 誰にも見られていない、誰にも気づかれていない2人だけが知っていること

 それを、果歩はずっと根に持ち続けているわけだ
 極力、番司との接触を避け、会えばこうして埒の明かない押し問答……不毛である

 ・・・・・・
4504-272:2006/08/27(日) 14:49:25 ID:sWBPRdN5

 言い争いに疲れたのか、番司がふと目をやると時刻はもう7時過ぎだった
 「げ。もうこんな時間かよ」
 「……! もう、あんたの所為だからね!」
 「また俺の所為か!」
 もはや、言いがかりなのは自分でもわかっている
 でも、何故だか私の中で納得言っていないのだからしょうがないではないか
 「とにかく、今日は帰って! 用件無いんでしょ!?」
 「……いや、ある! あるッ!」
 この返答には果歩も驚き、そのまま番司が続けた
 「帰んのは、お前が寝る前だ」
 「はぁ?」
 「こんな広い家に女1人は危険だって言ってんだ! 俺達の本業が完全に無くならねぇ限り、お前が襲われない可能性は無くならねぇんだよ!」
 「何言うかと思ったら、どんな理屈よ、それ!」
 「うっせぇっ! とにかく、俺は俺が安全だと納得するまで帰らねーぞ。どうせ1人暮らしだ、遅くなったって誰も気にかけねぇ」
 「私の方はどうなのよ! むしろ、あんたがいる方が危ないって言ってるじゃない!」
 これは正論のはず、返せるものなら返してみなさい
 「襲う気があんなら、とっくに襲ってるだろ!」
 ……そう来たか! ていうか、ありなの!!? 
 「万が一、工具楽のヤローの留守中にお前の身に何かあったら、陽菜さん達がどれだけ悲しむと思ってんだ!」
 「そ、それは……で、でも」
 「あー、もううっせぇな! 何も泊まるだの何だのは言ってねーだろ! お前が寝た後、戸締り確認したら帰る! 最初からそう言ってるだろ!」
 ……これはどちらかが折れるしかない
 そして、折れるべきなのがどちらなのかもわかってる
 もの凄く悔しいけどね
4514-272:2006/08/27(日) 14:51:06 ID:sWBPRdN5

 「……わかったわよ。好きにすれば。ただし、私に手を出すようなことしたら」
 「するかよ」
 番司はそう言うと、その場にどすんとあぐらで座り込んだ
 私もふぅと息をつき、それから小さくくぅとお腹が鳴る音がした
 時間も時間だが、あれだけ派手に言い争ったのだから、そりゃお腹もすくというものだ
 「……」
 私はちらっと番司の方を見た
 やっぱりこいつも、お腹をすかせてたりするんだろうか
 ……た、ったく、仕方ないわね!
 「いつまでも座ってんじゃないわよ! 夕飯作るから、手伝いなさい!」
 「……あ?」
 「あ?じゃない! とにかく、台所へ来なさいってぇーの! 働かざる者食うべからずよっ!」
 私は番司の鉢巻をつかみ、ずるずると引きずるように台所へと向かったのだった

 ・・・・・・
4524-272:2006/08/27(日) 14:51:46 ID:sWBPRdN5

 「ちょっと、皮むきすぎ! ほとんど身が残ってないじゃない!」
 「こんなちまちましたの出来っか!」
 「なに威張って・・・あ―――っ! ふきこぼれてるっふきこぼれてる!」
 「オイ、炊飯器のスイッチ入れたのか!?」

 ・・・・・・
4534-272:2006/08/27(日) 14:52:28 ID:sWBPRdN5

 「……いろいろあったけど、うめーな」
 「そりゃどうも」
 やっぱり、コイツを台所に入れるんじゃなかった
 そう後悔した時には既に遅く、現在時刻は9時を回る
 1人で作った方が、断然早かっただろうに……私はため息を吐いた
 「(いや、そもそもコイツと差し向かいで夕食食べてる時点でおかしいか)」
 どうも調子が狂う、流されっ放しだ
そうだ、私、進路で悩んでなかったっけ?
こんなんじゃ、1人で悩む暇も無い
 「……とりあえず、さっさと食べちゃってくれる? 片付かないから」
 「あ、ああ……」
 なに、その反応
 「コンビニ飯以外の食うの、久し振りだったからな」
 「は? あんた、自炊してないの!?」
 「おう。いつも適当に、外食かコンビニですませてる」
 「バッカじゃないの!? 栄養が偏るじゃない!」
 がたんと机を叩き、私は憤った
 今時の外食やコンビニは割とよく出来ているが、それでも栄養バランスの偏りは否めない
 そもそも個人個人で必要な栄養素が毎日違うのだから、画一化された工場生産の弁当やパンで充分なわけがない
 「いや、だって」
 「だっても何も無い! とにかく、最初は一食からでもいいから自炊しなさいっ」
 まったく、こんなのでも1人暮らしが出来るのだから今の世の中は皮肉なまでに便利になったもんだ
 私が息を荒くしていると、番司が言った
 「……まさかお前にまで言われるとはな」
 「? ……ああ、かなえさんにも言われてるんだ。じゃあ、尚更じゃない」
 すぐにピンときた
 そんな注意をしてくれる人、コイツの周りではそのくらいしか思いつかない
 どうやら当たったようで、番司は頭をがしがしとかいた
4544-272:2006/08/27(日) 14:53:13 ID:sWBPRdN5
 「ったく、やりづれぇなぁ……」
 「フン。悔しかったら、自炊して見返してみなさい」
 私は茶碗に一口分残っていたご飯を口に入れ、自分の食器を手早くまとめて流しへと持っていく
 そのついでに食後のお茶も準備とお湯を沸かし、一応……番司の分もいれておくことにする
 「あー、食った食った」
 「だーかーらー、早く食器を片せっての」
 私はお盆にお茶を2つ乗せ、テーブルの所へ戻りながらそう言った
 番司は「ワリィワリィ」と言いつつ、持っていく気配ややる気が見られない
 さっさと自分の分だと思われる湯飲みを取って、勝手に飲み始めている
 「ったく、さっさと帰りなさいよ」
 「……ん? これ何だ」
 番司が畳の上に置いてあったプリントを手に取った
 私があっという前に番司はそれを見た
 「ああ、進路のか。早ぇーな、もうお前もそんな歳か」
 「返しなさいよ!」
 バッと番司からプリントをひったくり、さっさと折り畳んでしまってしまう
 「何だよ、減るもんじゃねーだろ。大体、まだ白紙で見られて困るわけでもねーだろ」
 「ぅ……」
 それでも、番司は少しやりすぎたと反省したのか、ちょっとだけ黙った
 無言の居間は、時計の音がもの凄く大きく聞こえる
 「意外だな」
 「何がよ」
 「頭のいいお前が、まだ進路決めてねーなんて。悩みでもあるのか?」
 「……」
4554-272:2006/08/27(日) 14:53:48 ID:sWBPRdN5
 いきなり核心突いてきた
 ……私は、思い切って番司に「なんで、あんたはこわしやになったのか?」と訊いた
 向こうも唐突な問いにいぶかしんでいたようだが、ぽつりとぽつりと語ってくれた
 「……最初は、祖母ちゃんや姉ちゃんがこわしやだったから、俺もそうなるもんだって思ってた。
 先祖代々仙術使いの家系に生まれてきてよ、当然のように素質も持ってた。気に入らない奴は、それでちょっと脅してやれば一発だった。
 まぁ、そんな俺を変えたのが工具楽のヤローだ。同い歳なのに、こわしやの資格を持った男。どうせ、親の七光りだろうって思ってた。
 だが、違った。あいつはこわしやとしての信念を持ってた。絶対に間違っちゃいけないもんを、あいつは知ってた。
 正直、かなわねぇと思ったよ。俺は、あのヤローと俺自身を未熟と認めざるを得なかった。だから、俺は一からやり直した。
 あのヤローと肩を並べるくらいに、こわしやとして、人間として強くなりてぇ!……ってな。
仙術使いとしてとびきりの素質を持ってても、心が未熟ではぐれ者になる奴だっている。俺ももしかしたら、そんな奴らになりかけてたのかもしんねぇ……」
 番司は拳をぎゅっと強く、強く握り締めた
 「俺は感謝してる。こうして、今の俺がいられんのはここ、工具楽の皆やこわしや協会のおかげだってな。
だから、早くその想いを返してやりてぇ。工具楽のヤローみてぇに、人の道も正せるこわしやになりてぇ。今度は俺の番だ、ってな。
 始めはさ、底辺でも大学には行っとけって姉ちゃんに言われてたんだわ。でも、行かなかった。学費の心配はするなとか、再三言われてたけどな。
ま、俺はバカだったし、大学行くよりもっと沢山の人と関わっていきたかったからな。そっちの方が、俺にとっては重大だっただけだ。
 んで、なんとかこわしや協会会長である姉ちゃんの試練を突破して、こわしやの称号を貰って……こうして今に至るわけだ」
 番司が食器を持って、流しの方へ運んでいく
 がちゃがちゃと音がしているようだから、洗ってくれているのかもしれない
4564-272:2006/08/27(日) 14:54:24 ID:sWBPRdN5

 ……そっか……

 番司は番司なりに、ちゃんとしたいことや自分の道を自分で考えて、今を選んだんだ
 人のことなんて何の参考にもならない、自分自身が決めなきゃどうしようもならないこと
 
 番司が手を拭きながら居間の方に戻ってくると、ぎょっと驚いた顔をしていた
 なんでだろうって思ったら、頬を熱い何かがつたってた
 それが涙だってことに気づくのに、時間がかかったのがなんかおかしかった
 「お、おおおお俺が泣かせたのかっ!!?」
 番司がうろたえてる
違う、そうじゃない……そんなんじゃない

   決まらない進路 白紙のプリント

 番司は泣いている私にうろたえ、慌てている
 が、いきなりがしっと私の両肩をつかみ、その真っ直ぐな目で私を見据えた
 「なに泣いてんだよ、お前は!」
 「……泣いてないっ!」
 「泣いてんじゃねぇか!?」
 「泣いてないっ!」
 番司がつかんでいる両肩が痛い、か弱い女の子相手にどれだけの力を込めているんだろう
 「……ろが……」
 「ろ?」
 「進路が決まらないのっ!」
 急に大声を出したのにまた驚いたのか、番司は目をぱちくりとしている
 「自分で、何をしたいのかわかんないのっ! 大学に行きたいのかも、ここで働きたいのかもっ!」

   私は逃げてたんだ 自分が選ぶべき道をはずれて
   皆が優しくしてくれて 好きなようにしていいと言われて
   甘えてたんだ 気づきたくなかったんだ
 
   私の中身が こんなにもカラッポだったなんて
4574-272:2006/08/27(日) 14:55:49 ID:sWBPRdN5

 「お前、ふざけんなよっ!!!?」
 番司の怒声に、私の身体がびくっと震えた
 私のことをつかむ両手の力が、また強くなった気がする
 「それ、本気で言ってんのかっ! なにトチ狂ってんだ、バカヤロウ!」
 「だって……」
 「だってもくそもねー! いいか、お前はここんちの中で一番頭が良いんだぞ!?
 仙術使いの素質は無くたって、こんなに料理が上手に出来るじゃねぇか! 今まで、工具楽の家族を支えてこれたじゃねぇか!」
 それがなんだって言うのよ……っ!
 「まだわかんねーのか! お前はカラッポなんかじゃねぇ! 今はただ、ちょっと混乱してるだけでしっかり中身の詰まった人間なんだよっ!
 俺なんかよりずっとしっかりした、立派に自分の道を歩んできた人間なんだよっ!!」
 だから、両肩が痛いってば……
 「甘えて何が悪いっ!? 皆は、お前がしたいように出来るよう頑張ってくれてる!
 お前は、それに甘えればいいんだ。大学に行きたきゃ、行きたいって素直に言えばいい。ここで働きたいって言うなら、そう言えばいい話だろ」
 だから、それが決まらないから……
 「そんなの、すぐに決まんなくて当然だろ。もう一度、頭冷やしてよく考えろ。
 お前は本当に勉強したいのかしたくないのか。そんでもって、もし本当に勉強がしたくて大学に行きたいならもう他の事を考えるのやめろ」
 ……え、えぇっ!!?
 「本当にしたいもんが大学にあんなら、これから4年間、学費では甘えて、甘えた分をしっかりやりたいことを大学で勉強さしてもらってそいつを無駄にしなきゃいいんだ。
 わかるか? お前が心配する程、あのヤローや陽菜さん達は弱くねぇ。お前は、お前のしたいことをさせてもらえばいいんだ。したいことだけ考えてりゃいいんだ。
簡単なことじゃねぇか。しかも、わざわざ選ばせてくれてんだぞ。
 もしお前が、勉強よりここの皆と一緒に働きたいなら、そうはっきり言えばきっと誰も反対しねーよ。もし我聞のヤローや他の皆が反対するようなら、俺も説得してやるから」
 説得って……
 番司がふんと息を吐き、私の目をずっと見据えている
 真っ直ぐ過ぎて、怖いくらいだった
 でも、何故か逃れられなかった
4584-272:2006/08/27(日) 14:57:26 ID:sWBPRdN5

 どのくらい、こうしていたんだろうか
 「……肩、痛いんだけど」
 私がふいに、そうぽつりと言うと、番司はようやく私の両肩を強くつかんでいたことに気づいたらしい
 わたわたとまたみっともないくらいに慌てて、その手を離した
 そっと私は両肩に触れるように、私自身を抱きしめた
 「……」
 「ぅ……お、怒ってるか……? わ、わるい。力の加減が……」
 ああ、もう腹が立つ
 私は、いつもの声で番司を怒鳴りつけた
 「全く、なんでそう謝るのよっ!」
 「なっ……そりゃお前が……」
 「夕食も食べた。食器も洗った。じゃあ、もういいでしょ! 帰りなさい!」
 ズビシッと番司の方を指差し、そう言った
 もう、涙は頬をつたっていない
 「お、おい!」
 「それともなに? 私が風呂入って、寝るまで本当に待つつもりなの?
 今度こそ、それこそ通報ものよ」
 「う……」
 背景、効果音としてゴゴゴゴゴゴと聞こえてきそうな程の迫力に番司は圧されている
 よしよし、いつもの私が戻ってきた
 番司はまだ何か言いたげだったが、がしがしと頭をかき、ひとつ息を吐いた
 「……そんだけ元気があれば、もう大丈夫か」
 「ん? なに、それ……」
 「あ、いや。わーった。帰る、帰るって」
 番司はどかどかと音を立て、玄関の方に向かう
 私はここの家の者として、それを見送るべく同じく玄関へと足を運ぶ
 「んじゃ、工具楽のヤローや皆に宜しくな」
 「こっちこそ、宜しく言っておいて」
 番司が「な、なんのことだっ!?」とうろたえているが、既にお見通しだっつーの
 そそくさと玄関の扉を開けて帰る番司を見送った後、私はお風呂を沸かしにいった

 ・・・・・・
4594-272:2006/08/27(日) 14:59:56 ID:sWBPRdN5

 「グッモーニン、カホ」
 「おはよう、桃子」
 翌日の学校にて、私は桃子を見つけるとすぐさま彼女本人の頭とその肩に乗っているキノピーをわしづかみにした
 「な、何すんのよ!」
 「それはこっちのセリフよ。あんたらね、昨日、鉢巻男をウチにけしかけたの」
 桃子とキノピーが思い切りバレた!!!!?って顔をしてる、大当たりだったようだ

 北海道の本業情報のリークは元真芝の情報網を駆使して、でっち上げたもの
 珠と斗馬の共通のお友達の正体……招待は、桃子の家
 番司へは大方、「カホが悩んでるみたいだから、聞いてあげたら?」とかそれとなくそそのかしてみたんだろう……

 「何を考えてんの、あんたらは〜〜〜!」
 桃子がはわわわわわと怯える顔を見せるのは珍しい、それほどまでに私の顔は修羅のようなのだろうか
 同じく平静を保てないキノピーが、震えた声で弁明した
 『あ、赤の他人が口出すようなことじゃねぇって思って……』
 「ほう、それで鉢巻男を? Why?」
 『い、いや、だって……その……なぁ』
 あのキノピーがどもるのを見て、私は女の直感が一瞬で目覚めた
 「まさか、あれを見てたっていうの……?」
 あれとはすなわち、あの時の番司とのきキスのこと
 人は見ていなかったが、機械は見ていたのか
 ということは、必然的に桃子も知っていると言うことに……
 そうか、それであいつと私がなんとなく避けあってることを利用して、思惑通りに家に行かせたのか
 番司の性格を知っていれば、さっさと仲直りするなり誤解をときたいと考えていると思うに違いないからだ
 「……あんたら、今日、生きて帰れると思わないでね……!」
 「な、ちょ……それより、あんたの悩みは解決したの!!?」
 桃子の必死の抗いに、その問いで私はぱっと両手を離した
 解放された2人はふーと安堵の息を吐くと、私は自分の席についた
 「…………ま、ちょっとはね」
 『そ、そりゃ良かったー』
 「でも、あれのことは今すぐ忘れなさい。さもなくば奥義を……」
 と言い終わらない内に、キノピーが急に片言で『エイゾウ・メモリーノショウキョシマス。ショウキョカンリョウシマシタ』と言い出した
 桃子は折角の何とか〜とよくわからないことを言っていたが、製造者の命より自分の身の安全を優先したようだ
 私はふぅとため息を吐き、鞄の中から白紙のプリントを取り出した
 「……ったく、どうしてくれんのよ」

    私がしたいことだけ考えて、あとはそれ以外の他の事は考えるな?

    どうしてくれんのよ

    昨日から、あんたのことが頭から離れないんですけど

    なんで大学と就職の横並びに、あんたがいるわけ?

 「ああ、もう腹が立つ」

 私が腹を立てていたのは、キスじゃなくてその後のこと
 なんでか知らないけど、そのことで番司が謝ってきたのが気に食わなかったみたい

    進路希望のプリントは 相変わらず白紙のまま

    でも 私の中は何故かあいつで埋まってる

 それに気づくのは、もう少し後の話……
4604-272:2006/08/27(日) 15:03:51 ID:sWBPRdN5
以上で、投下を終わります。ここまで読んでくださった方、有り難う御座います。
やはり書き続けてないとキャラの書き方を忘れてしまいますね……。
そこも精進したいと思います。次回があるのか、わかりませんが。

では、また他の職人さんの作品投下を楽しみに待ち続ける一読者に戻ります。
失礼しました。
461名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 17:50:49 ID:of+ItFX6
この……ド低能がァ―――ッ
GJ!!!!!!!!!!!!
462名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 22:29:29 ID:1PtrrO44
>>440-460
GJ!
番司いいやつだと素直に思った
4633355:2006/08/27(日) 22:36:36 ID:VjlDZmo9
4スレ272様
GJ!
番司の魅力たっぷり
464名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 23:43:55 ID:392GBRp4
4スレ272様氏GJ!このド低能がぁぁぁ〜〜!!
こんないい作品読んだらオレもまた書いてみたくなるじゃねぇか!
465名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 00:58:05 ID:NAqL1WKD
このスレを見つけて多分一年くらい。ついに単行本を揃えてしまった……。
この作品に出会えた事に感謝して、藤木氏と職人さま方にこの言葉を贈ろう。

低脳!低脳!
466名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 01:49:12 ID:YshnJaOl
4スレ272様、低脳すぎっ!掛け合いが非常に巧みですね。
果歩好きには溜まらん作品でした。
番司もいい味出してますね。
467名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 02:15:06 ID:0FpoDQTI
こんな深夜にゴロゴロゴロゴロゴロオオオ!!
うおおっ、目が冴えて眠れない!
468名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 21:06:40 ID:xOkE1ZVk
アヒャヒャヒャ・・・これは・・・これは・・・
GJ!すんごくGJ!!
469名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 01:12:23 ID:e3uEHyW7
なんかスレ止まってる・・・
4703355:2006/09/01(金) 23:34:14 ID:j+nslHov
3355です。
続きができましたので投下します。
あまり話が進んでませんが。
4713355:2006/09/01(金) 23:35:10 ID:j+nslHov

 陽菜は、シャワーを浴びて、身支度を調えると少しは気分が落ち着いてきた。
 しかし、ふと、開いた手鏡をのぞき込むと、そこには、不安げで、自信のなさそうな女の顔が映っていた。
(どうしちゃったの? 私・・・・)
 まるで、自分の居場所を探して焦っていた工具楽屋に働き始めた頃に戻ってしまったような、はかなげで頼りない表情をしていた。
(しっかりしなくちゃ・・・。でも・・・)

 我聞に会ったら、どんな顔をすればいいのだろうか?

 今更ながら、自分が彼に全部見られてしまったことを思い出して赤くなった。
 そして、今朝の夢・・・。
 もし二人きりになったりしたら、夢の中の自分と同じように、彼と抱擁を交わし、唇を重ねようとするのだろうか?

(いけない! そんなことをしたら・・・・)

 いやらしい娘だと思われてしまうかもしれない。軽蔑されてしまう、嫌われてしまうかもしれない。
 たとえ、我聞が他の女の子のものになっても、それだけは避けたかった。

(と、とにかく、今日はあまり社長とは会わないように、会っても他に誰かいるところで・・・)

 だが、それは、想像しただけでも、何とも言えない寂しさを感じてしまうものだった。
 とはいっても、陽菜は他に何もいい方法を考えもつかなかったので、気持ちを押し殺して学校に出かけた。

4723355:2006/09/01(金) 23:36:45 ID:j+nslHov

 一方、我聞は、日課の早朝トレーニングで汗を流していた。
 とにかく、煩悩を追い払わなければならなかった。
 それには、頭が空っぽになるまで身体を動かすことしか考えつかなかった。

「くーー!!! 今日は全然だったーーー!!」
 珠が悔しがる。ハンデがついた我聞にマラソンで完敗したのだ。
「はっはっは。まだまだだな」
 我聞は余裕のある態度を見せたが、実のところ、珠のことなど眼中になかった。

(とにかく、一応、落ち着いたぞ。後は國生さんに会ったとき、別に普通に接すれば・・・)
 そこで、はた、と気がつく。

 普通に接するって、どういう態度だったっけ?

 もともと、あまり考えるのが得意でないので、感じるままに自然に振る舞えば良いのであるが、
一度意識して、考え込んでしまうと、どういう態度が正解なのか、全くわからなくなってしまった。

 しかも、昨日は裸の陽菜を思わず抱きしめてもいたのだ。そのときは、決してやましい気持ちではなかったのだが。
 思い返してみると、あれはかなりまずかったのではないかと思えてきた。
(い、いかん! これでは、エロ社長と言われても仕方がない!)

 と、とにかく、もう二人きりにでもなったら、自分の行動に自信が持てなくなってきてしまった。
(今日は、國生さんとはあまり顔を合わせないようにした方がいいか。もう少し、おちついてから・・・)
 我聞は、一応、そう決意して、学校に向かった。

4733355:2006/09/01(金) 23:38:08 ID:j+nslHov
今回は以上です。
なんだか、ぐだぐだな文章でメリハリがありませんが、
楽しんでいただけたら幸いです。
474名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 14:41:47 ID:LpFBKC1L
GJ!
今回は繋ぎな感じですね。
この先の展開に期待!
4752nd-251:2006/09/02(土) 21:37:06 ID:Zutbe1wa
ちょうど1年前、誕生日をスレに住人に祝ってもらったのが
キッカケで投稿したんだよなぁ…と、しみじみ回想。

ずっと忙しかったんで何も書けずにいたけど、
また何か書いてみたいっす。
ほんの僅かな時間だったけど、夏コミで藤木先生の
気さくな人柄に触れる事が出来たのも刺激になったし。
まずはネタを考えておくかっ。
476名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 00:29:09 ID:ftJVCiKo
3355氏が成長している件

あと珠カワイソス
477名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 21:29:54 ID:/UT5+8ll
>>476
それは俺も思った
投下する度に上手くなっている

そろそろ佐々次郎の続きが見たい人ノシ

478名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 01:00:34 ID:psxkunrM
ほしゅ
479499:2006/09/06(水) 05:53:29 ID:YcH6GDLT
予告した時期から一週間以上遅れてしまって内容を忘れられてそうですが、
>>355-369
>>399-413
の続きを投下させて頂きます。

こんな時間にアレですが・・・
480499 1/21:2006/09/06(水) 05:55:22 ID:YcH6GDLT

ここで時間を一日巻き戻し、舞台を隣の部屋へと移して・・・

7月6日午後9時頃、森永優の部屋にて。

「・・・では、衣装はやはり・・・エプロンドレスでなくてはいけないのでしょうか・・・」
「そのとーりっ! いい、陽菜ちゃん!?
 相手ははるるん程のスペックをもってしてもあの調子の、最強の朴念仁の我聞くんなのよ!
 彼を誘惑するのに、もはや“やり過ぎ”なんて概念は存在しなーいっ!」
「は、はぁ・・・」
「そうそう! それに陽菜さん、衣装を持ってるだけじゃなくて実際にメイドさんを演じたこともあるし、
 メイドさんプレイにはうってつけですよ!」
「あの・・・プレイ・・・って・・・」

ちょっとした動揺に偶然が重なった結果、GHKの策に見事なまでに嵌められてしまった陽菜は、
仕事を終えた後、優の誘いに従って彼女の部屋を訪れていた。
そこで陽菜は翌日の、我聞の誕生パーティーでの立ち居振舞いについて、
それはもう細かく指導されていたのだが・・・

「い〜い、陽菜ちゃん? 男ってのはね、可愛い女の子にご奉仕されたら喜ばずにはいられない生き物なの。
 学園祭で陽菜ちゃん達の冥土喫茶が流行ったのがいい証拠! どう、わかるでしょう?」
「は、はい・・・確かに・・・それなら、社長にも意識して頂けるかも・・・」

真剣な顔で我聞のことを気にしている陽菜を見て、優と果歩はニンマリと顔を見合わせるが、
それはまだ彼女等の計画のほんの一部に過ぎない。

「じゃあ陽菜ちゃん、次の段階へ進むとしようか」
「え・・・まだ、あるんですか?」
「ふはは! 甘い! 甘いよはるるん! ここまでは、あくまで事前準備よ!」
「そうですよ陽菜さん! 勝負は彼奴めをホームグラウンド、陽菜さんのお部屋に連れ込んでからなのです!」
「え・・・つ、連れ込む・・・です、か・・・」
「そう! そこからが本当の勝負よ! そして勝利の鍵は・・・コ・レ♪」

そう言って、心底楽しそうに優が取り出したモノは・・・

「あ、あの・・・それ・・・」
「そう・・・うふふふふ・・・コレの中身のとおりにやれば、どんなオトコだって一撃必殺間違いなしよ!」
「いえ、その・・・明らかにいかがわしいと言いますか・・・それの中身って、その・・・」

DVDと思われるパッケージに描かれた、裸の男女。
下品な色の文字で散りばめられた卑猥な単語。
極めつけに、“18禁”の文字。
それはつまり、要するに・・・

「あ、あ、アダルトなモノじゃないですかっ!」
「そうよはるるん! オトコをモノにする一番の方法! それは至極単純明快!
 身体を使ってトリコにしちゃえばオッケーなのよ!」
「馬鹿なこと言わないで下さいっ!」

恥ずかしいのもあるが、それ以上に自分がからかわれていると思い込み、陽菜は声を張り上げる。
だが、そんな反応は優も果歩も折込済み。
陽菜の激しい剣幕にも、怯むことなく真っ向から立ち向かい、

「あーら陽菜ちゃん、馬鹿なことなんて心外だわね〜?
 親しい仲の男女が愛を確かめ合うのに、これ以上確実なことは無いと思わない?」
「そうですよ陽菜さん! 桃子みたいなお子様には真似できないことですよ!?」
「そ、それは、なんていうか! その・・・本当に親しくなった後にすること、ですし・・・
 それに、まだ・・・わ、私達・・・いえ、私には早すぎます!」

逆に優と果歩から“ずいっ”と迫られて、やや後ずさりながらも反論を試みる陽菜だったが・・・
481499 2/21:2006/09/06(水) 05:56:27 ID:YcH6GDLT

「ふっふっふ・・・陽菜ちゃん、早すぎるなんて、本当にそうかにゃ〜?」
「そ、そうですよ! 私だって、社長だってまだ高校生です! それなのに、そんなこと・・・」
「じゃあはるるん、ここにある“18禁”の意味、知ってるかな?」
「そ、それくらいは・・・18歳未満は見ちゃいけないっていう・・・私、まだ17ですよ!?」
「ふふ〜ん♪ じゃあ陽菜ちゃん、我聞くんは明日で幾つになるでしょ〜か?」

そう聞かれて、陽菜ははっとしたように目を見開いてから、俯いて言い難そうにぼそぼそと・・・

「じゅ・・・18歳、です・・・」

それを聞いて二悪人はいかにも悪そうな笑みを浮かべると、ここぞとばかりに陽菜を取り囲むように近づいて、

「そういうこと! つまり我聞くん的には全然オッケーな訳よ!
 そして見るのがオッケーなら、当然するのもオッケー!」
「そうですよ! そしてお兄ちゃんは夢に見るほど陽菜さんのことが気になって仕方がないんです!
 もしかしたら、もう既にお兄ちゃん、夢の中で陽菜さんを裸にして、
 あんなことや、こんなこと・・・果てはなんと、あんなことまで!」
「キャー! 果歩ちゃんと我聞くんのエッチー!」
「か、かか、果歩さんっ!? 優さんもっ! な、何を言うんですか! しゃ、社長に限って、そんなこと!」

暴走を始めた二人の話が聞くに堪えず陽菜は真っ赤な顔で止めに入るが、
それで止まるようなこの二人ではない。

「いーやはるるん、それは認識が甘いというものだよ」
「お兄ちゃんに限ってとは言いますけど、お兄ちゃんだって中身は健全な青少年、
 そーいうことしたい真っ盛りなオトコなんですよ?」
「そ、そういうことって・・・で、ですが社長は、その・・・しっかり自制できる方ですし・・・」
「そう、そこよ! 自制できるってことは、つまり我慢しているってこと。 違う?」
「それは・・・」
「だけど発散させない限りそういう欲求は溜まる一方・・・
 満たされない心と身体を抱えたままでは情緒は不安定になるし、集中力だって散漫になる訳よね。
 そうなる前に、我聞くんが抱え込んでいる欲求を満たして、発散させてあげること・・・
 それって、秘書としての役目でもあるんじゃないかにゃ〜?」
「そうそう! 社長と秘書は一心同体! お兄ちゃんの欲求は陽菜さんが解消してあげるのが、
 自然なんじゃないですか!?」

自然どころか暴論もいいところだが、ここに来るまでに散々動揺させられ、
今また更に混乱している陽菜には真っ当な判断力は失われている。
そうでなければ、本来なら凍りつくような視線で二人を沈黙させることなど訳も無いのだが・・・

「ですが・・・本当に、社長は・・・私のことを・・・望まれて、いるのでしょうか・・・」
「もちろんですよ陽菜さん! 家で陽菜さんのことを話してるとき、
 結構本気で楽しそうなんですから! 今までからすればかなり脈ありになってきてるんですから!」
「は、はぁ・・・」
「それに陽菜ちゃん、これは陽菜ちゃんにとってもチャンスなのよ?」
「わ、私に・・・?」
「んむ! 何せ我聞くんはあの性格、不言実行とか何とか言って、
 恥ずかしいことはなかなか口にしなそうだけど、何せ責任感だけは人一倍強い!」
「それは、そうですが・・・それが一体・・・?」
「つまり既成事実さえ作ってしまえば、間違いなく責任をとってくれるってことですよ!」
「ええと・・・既成事実って、その・・・つまり・・・」
「陽菜ちゃんの初めてを我聞くんに捧げさえすれば!」
「お兄ちゃんは間違いなく陽菜さんのモノってことです!」
「――――――っ!」

その言葉の露骨すぎる意味に、真っ赤になった陽菜はただただ絶句するのみ。
だが・・・彼が、我聞が間違いなく自分のモノとなる、という言葉・・・
それは、前提から何から何まで疑わしいことだらけの二人の話の中にあって、
珍しく陽菜にも違和感なく理解できるものであった。
482499 3/21:2006/09/06(水) 05:57:22 ID:YcH6GDLT

彼の性格から考えて、きっとそれは間違いない。
だから、本当に彼が・・・我聞のことが好きならば・・・彼のことが欲しいのなら・・・
それは確かに有効な手段なのかもしれない。
・・・等と考えている間にも・・・

「じゃーそういうことで、始めちゃおうか〜」
「はいっ! さ、陽菜さん、しっかり見て覚えてくださいね〜!」
「え・・・あ、は、はい? ・・・て、えぇえ!?」

果歩と優に左右から挟まれて逃げられないようにされた上で、
目の前のディスプレイでは例のDVDの上映が始まってしまっていた。

「え・・・ええ!? えええっ!? ちょ、ちょっと、優さん!? これ、こんな・・・や・・・」
「・・・・・・わ・・・」
「どう? 折角メイドさんモノを選んできたんだからね〜、しっかりお勉強して、実践に役立てるんだよ〜?」
「じ、実践って、こんな・・・こと・・・」
「・・・・・・・・・」

画面の中では、エプロンドレス姿の女優が、そのご主人という設定らしい男優のズボンを下ろし、
そこから現れた男性のモノを唇と舌で愛撫するという、
こういうモノを見た経験のない陽菜(と果歩)にはある意味刺激の強すぎる展開が繰り広げられていて、
見ているだけでも恥ずかしいのだが・・・陽菜(と果歩)は目が、離せない。

―――やだ・・・うそ・・・男の人の、ものを・・・口で、なんて・・・こんな、こと・・・

「ねぇ陽菜ちゃん、この男優の人、すっごい気持ちよさそうでしょ〜?」
「え・・・あ・・・」
「こんなことされたらね、我聞くんもきっと、気持ちよくってこんな顔、してくれるんじゃないかな〜?」
「しゃ、社長が・・・こんな・・・」

その男優の表情は確かに気持ちよさそうで、そして余りに無防備で・・・

―――社長が、こんな顔を・・・私が、こういうことをしたら・・・本当に・・・?

「だから、しっかり見て、やり方を覚えること! い〜い?」
「あ・・・は、はい・・・」

反論することすら忘れ、陽菜は画面の中の男女にいつの間にか自分と我聞を投影し・・・その姿に、没頭してゆく。
それがどれだけ異常な行為かは充分に認識できているハズなのに、
それで我聞が悦んで・・・気持ちよくなってくれるのかと思うと、目が離せないのだ。
やがて、画面の中で男優が果てて、口の中で放たれたモノを女優が飲み込む場面に至り・・・

「ね、陽菜ちゃん・・・凄いでしょう・・・?」
「は、い・・・でも、こんな・・・こと・・・」
「これがね、男性の喜ぶ本当の“ご奉仕”なのよ?」
「これ、が・・・?」
「そう、普通だったら嫌がって絶対にやらないようなことを、進んでしてあげるの。
 だって、ここまでされて・・・悦ばないオトコはいないんだから・・・ね?」
「は、はい・・・」
「陽菜ちゃん・・・できる? 我聞くんのモノに、ご奉仕できるかしら?」

恥ずかしくて堪らなくて、鼓動はやたら激しくなるし、下腹部はじくじくと妙な疼きに襲われて落ち着かない。
だが・・・既に陽菜は・・・

「できます・・・社長に・・・気持ちよくなって頂けるなら・・・」

優の思惑通りにすっかりその気にさせられたしまったことを自ら告白し、潤んだ目を優に向ける。
その目に微かに宿る淫らな色とある種の決意を見て取って、
優はにやりと微笑むと、陽菜の後ろに回りこんで背中からその身体を包み込むように抱き締める。
483499 4/21:2006/09/06(水) 05:58:11 ID:YcH6GDLT

「えらいわ陽菜ちゃん、じゃあ・・・次は本番だから・・・ちゃーんと、見ていなさい?」
「は・・・い・・・」

やがて優の言葉どおり、女優は四つん這いにされてスカートをめくり上げられ、下着をずり下ろされて、
露わになった秘所に先程口で愛撫していたモノをあてがわれ・・・

「・・・っきゃぁあ!?」

それがじゅぶぶっ、と女優の中に突き込まれると同時に、陽菜が悲鳴のような声を上げる。
はっとして、それまで画面に釘付けだった果歩が真っ赤な顔で振り向いたその先で、
優の手が陽菜の胸と秘所を服の上からまさぐっていた。

「やぁ! ひぁ・・・っ、ゆ、ゆう・・・さんっ! やめ・・・てぇ・・・!」
「んふふー、いいから陽菜ちゃんは画面を見る!」
「そん、な・・・ぁ! だめ、やめて・・・くださ・・・っ!」
「あの女優さんは最初から気持ちよさそうだけど、女の子は初めてのときってすごく痛い思いをするのって、
 陽菜ちゃんも知ってるよね?」
「は・・・ひぁ! で、でもっ、それが・・・これと、なんの・・・関係、がぁ・・・」
「我聞くんは優しいからね、あんまり痛がると途中で止めちゃうかもしれないでしょ〜?
 だ・か・ら♪ こうやってお姉さんがじっくりとほぐしておいてあげるからね〜!
 陽菜ちゃんは画面を見て、どんな風にするのか、しっかり覚えなさ〜い?」
「あん・・・っ、は、ひ・・・っ」

その言葉で納得してしまったのか、疼く身体と心が抑えられないのか、
陽菜はそれ以上反論したりせず、びくびくと身体を震わせながらも言われた通りに画面に目を向ける。
その先で行われている男女の営みや、そして自分の身体をまさぐる優の手にも先程のように我聞の姿を投影し、

「あぁ・・・んく・・・ふぁ・・・あっ! ひ・・・ぁ・・・ん・・・ぅ」

上擦った喘ぎ声を洩らしながら、陽菜はその空想に没頭してゆく・・・

―――社長・・・社長・・・っ、しゃ・・・ちょお・・・!

服の上からの緩慢な愛撫と、想像だけで決して実感することの出来ない画面の中の交わり。
どちらも陽菜の情欲を掻き立てこそすれど、決して満たしてはくれない。
陽菜はただただ喘ぎ、悶え続け・・・彼女の中で芽生えたばかりの淫らな劣情は、際限無く膨らみつづける。

「ひ・・・んっ、あく・・・・・・ぅ・・・っふ・・・ぁ・・・あ・・・」
「陽菜・・・さん・・・」

初めて見るアダルトDVDに思わず釘付けになっていた果歩も、
陽菜の洩らす彼女のものとは思えない艶のかかった喘ぎ声や真っ赤に染まった切なげな顔、
潤みきった瞳に目を奪われて・・・
いつしか画面そっちのけで、陽菜の痴態から目が離せなくなっていた。
それくらいに、その姿は淫らで、そして魅力的だったのだ。
やがて・・・


484499 5/21:2006/09/06(水) 05:59:38 ID:YcH6GDLT

「さーて、じゃあDVDも終わったことだし、そろそろお開きにしよっか〜! ね、陽菜ちゃん?」
「あ・・・は、はい・・・」

そう言って優が身体を離しても、陽菜はしばらくその場で座り込んだままだった。
じっとりと汗をかいた全身をふるふると震わせて、喘ぐような呼吸を整えて・・・
やがてふらり、と立ち上がると覚束なげな足取りでドアへ向かって歩いて行く。
そんな陽菜の背中に・・・

「ねぇはるるん、今日は満足できたかにゃ〜?」
「・・・参考には、なりました・・・ですが・・・満足は・・・その・・・」
「じゃあ、明日はちゃーんと我聞くんを捕まえて、満足させてもらわなきゃ、だね〜♪」

どこまでも楽しげな優の声に、しばらく黙って立ちすくむ陽菜だったが、やがて・・・

「はい・・・」

とだけ答えると靴を履き、

「今日は、ありがとうございました・・・では、失礼します」
「んむ、苦しゅうない! ちゃーんと家でおさらいするのだよ〜!」

そんな優の言葉を背中に受けながら、彼女の部屋を後にした。

「優さん・・・これは・・・」
「んー、どうやら成功のようだね!」
「はい! 陽菜さんのあんなえっちな顔・・・あんな顔で迫られたら、いくらお兄ちゃんだってイチコロですよね!」
「ふっふっふ、それは明日のお楽しみ、だね!
 じゃー明日は集音機でも用意して、二人の記念の声でも永久保存しちゃおうかね♪」
「あ、いいですねそれ! 今度私にも聞かせてください!」
「ふふー、そう言えば果歩りんもDVDにかな〜り興味津々だったみたいだけど、
 なんなら陽菜ちゃんみたく、教育してあげようか〜?」
「え、い、いや! それは結構です! じゃ、じゃあ明日も学校ありますのでこれで! どうもお邪魔しましたっ!」

なんとなく怪しい雰囲気を漂わせ、両手をわきわきとさせながら迫ってくる優から逃げ出すように、
果歩も陽菜に続いて部屋を後にするのだった。


「は・・・ぁ・・・っ」

部屋に戻った陽菜は、火照りきった身体を冷ますべく、温めのシャワーを浴びていた。
身体全体にじっとりと纏わりつく汗を流すのは心地よかったが、
それでも・・・身体の内から滲み出てくる火照りと疼きは、少しも治まってはくれない。

「ん・・・ぅ・・・ぅ」

自分が、この身体が何を欲しているのか・・・もはや悩む余地も無い。
優がしてくれた愛撫よりも、もっとずっと激しいことを・・・あの映像のような行為を・・・あの人に・・・
自分の、秘すべき場所に、あの人のモノを・・・

「あ・・・くぅ・・・んっ・・・ひぁ・・・ぅ・・・しゃ、ちょ・・・お・・・っ」

そう思っただけで身体の疼きはより一層激しくなり、手が自然と、“そこ”へと向かってしまう。
それが不毛なことだとわかっていても、却って切なくなるだけだとわかっていても、指は・・・止まらない。

「あ、あんっ! んぅ・・・っく、あ・・・はぁ・・・! ひぁ・・・しゃちょ・・・っ、しゃちょおっ!」

ざーっ、というシャワーの音とは異質な、くちゅ、ぬちゅ・・・と粘つく水音を響かせながら、陽菜は自らを慰める。
蕩けきった、だがどこまでも物欲しげな、満たされぬ瞳に情欲の色を露わにして、
陽菜は疲れ果てるまで、そこにはいない我聞を求め続けるのだった。
485499 6/21:2006/09/06(水) 06:00:51 ID:YcH6GDLT

そして――――――時間を戻して、今。


陽菜は、求め続けた彼と・・・我聞と一つになろうとしている。
はしたなくも彼の目の前でめくり上げたスカートの下には下着をつけておらず、
じっとりと太腿まで濡れそぼった彼女の秘所を、我聞の目に晒し・・・

「國生さん・・・凄い・・・濡れてる・・・」
「はい・・・社長と、一つになれると思うと・・・私、もう・・・」

スカートの裾を持ち上げたまま、座り込んだ我聞に歩み寄り、彼の腰を跨ぐようにして立ち、
ゆっくりと膝を曲げて、腰を下ろし・・・

「社長・・・私のこと、受け入れてくれますか・・・?」
「こ・・・こく・・・」

これから起こる事を想像してうまく言葉を紡げない我聞に全く遠慮することなく、
濡れそぼった彼女の入り口を、硬くそそり立った彼のモノの先端に近づけて、

「くぅっ!」
「・・・んっ・・・」

ちゅくっ、と。
我聞の先端が陽菜の秘裂に触れたところで、二人は互いに身体をびくんと震わせて、そこで動きは止まり、

「しゃ・・・ちょう・・・っ、私の、はじめて・・・もらって、くれますか・・・?」

蕩けきった陽菜の顔と声。
今夜これまでに体験した、彼女の痴態の数々。
そして今、己の先端に触れる、彼女の秘所の感触。
もはや我聞には、己の情欲を抑えることなど出来なかった。

「ああ・・・國生さんが、そこまで・・・言うなら・・・俺で、よければ・・・」
「・・・はい・・・!」

言葉とは裏腹に期待を隠せない我聞の、そんな表情まで含めて彼の返答と受け取ると、
満面に喜色を浮かべ、陽菜は膝の力を抜いて己の身体を重力に任せて―――

「あ・・・ああ! っく、あ、しゃちょ・・・っ! 入って・・・! んぁああぁあ!」
「うく・・・! こくしょ・・・っ、さ・・・っくぅう!」

陽菜はがくがく震える膝で必死に身体を支えながら、
そそり立つ肉の槍に己を預け、その穂先に少しずつ自分自身を貫かせてゆく。

「ん、ぁ・・・ぁく・・・んぁあ!」

自分の中に我聞のモノが侵入してくる・・・秘裂を押し広げる感触が、
甘過ぎる痺れとなって陽菜の下腹部から全身に広がって行く。
そんな快感に膝が砕けそうになるのをなんとか堪えながら、ゆっくりと腰を下ろし・・・
すぐに我聞の穂先が自分の中の何かに触れるのを感じ、
思わずびくっと身体を震わせて、動きを止める。
それが何なのか、我聞にも想像がついたし、もちろん陽菜にもわかりきっている。
・・・わかりきっているからこそ、陽菜は躊躇うことなく身体の重みをその薄い膜に預け・・・

「っあ・・・あぁあ!? んあ・・・ぁああああっ!」
「く! う、ぐ・・・!?」

めりめりと引き裂かれるような感触を残し自らの意思で純潔を散らした陽菜は、
その勢いを砕けかけの膝で受け止めることが出来ず・・・
486499 7/21:2006/09/06(水) 06:02:24 ID:YcH6GDLT

じゅぶぶぶぶっ!

「や、あぁあ! う、あ―――――――――」
「くぁあっ! こ、國生さ・・・うぅっ!」

我聞の天を衝く肉槍に全体重を預けてしまった陽菜は、その穂先で未通の秘所を最奥まで一気に貫かれてしまう。

「・・・・・・・・・!」

いくらほぐしたと言えど、それはあくまで入り口だけのこと。
そんな、未通の狭すぎる膣の奥の奥まで、明らかにサイズの合わないモノで一気に貫かれる衝撃は、
両足の間から身体を左右に引き裂かれるかと思う程で・・・

「ぁ・・・・・・か・・・は・・・っ」
「こ、國生さん!?」

だが・・・それでも・・・

「は・・・っくぅ! ぅう・・・しゃ、ちょう・・・」
「だ、大丈夫か國生さんっ!」

痛みと衝撃でのけぞらせていた背中をゆっくりと戻すと、心配そうに陽菜の顔を見上げる我聞と目が合う。

「こ、國生さん、無茶するな! とにかく、一旦離れて!」

本当に心配そうに声をかけてくれる我聞の優しさは嬉しかったが、
ここで“一旦”止めてしまったら、少なくとも今夜のうちに“次”があるとは思えなかった。
そして―――息が止まるほど、涙が止まらなくなるほど痛いのに・・・
それでも陽菜は、我聞と離れたくなかった。
だから・・・

「社長・・・私たち・・・今、一つになってるんですよね・・・?」
「え・・・? え、あ、ああ! そ、そうだな、うん・・・って、そんなことより!」
「社長は、私と一つになれて・・・嬉しくありませんか?」
「な!? いや、そんなことは! どっちかっていうと凄く嬉しいけど! って、でもそれよりも・・・」
「私と・・・っ、一つになれて・・・気持ちよく、ありませんか・・・?」
「そ、それも、國生さんの中、こうしているだけで凄い気持ちいいんだが、だが・・・っくぅ!?」

我聞のモノを根元から咥え込んでぎゅっと締め付けてきたり、
陽菜の体温が直に己のモノに伝わってくる感覚は確かに酔い痴れてしまうほどの・・・
先ほどの口と舌を使っての愛撫よりも、更に刺激的なものであった。
だが、明らかに辛そうな陽菜を前にしながら快楽に浸るようなことは出来なかった。
我聞にとってこの現状は、己の凶器が自分を好きだと言ってくれた人を傷つけているとしか思えないからだ。
が・・・

「ちょ、ちょっと、國生さ・・・んっ!?」
「あ・・・っくぅ・・・んん! ん・・・しゃ・・・ちょお・・・っ、こうしたら、いかが・・・ですか・・・?」
「うぁ! ちょ、待って・・・くれ! そんな・・・っう!」

ただ咥えこまれていただけだったモノに、それまでとは明らかに異なる刺激が加えられる。
我聞の腹に置いた手と、ガクガクと揺れる膝で身体を支え直した陽菜が、
少しずつ、ゆっくりと・・・身体を揺らしはじめていた。
その動きに合わせて、きゅううっと締め付ける膣壁が我聞のモノを擦り、
肉襞が絡みつくように蠢きだす。

「ん・・・あくっ! ふ・・・っ、ぁ・・・しゃちょ・・・っ、きもちよく、ありません・・・か・・・ぁ?」
「う・・・っ、く、いや、気持ち、いい、けど・・・! 國生さん、痛く、ないのか・・・?」
「痛い・・・です、でも・・・んぅ! 社長と、繋がってるのが・・・嬉しくて・・・
 ずっと・・・こうなりたかったから・・・だから! もっと、もっと・・・」
487499 8/21:2006/09/06(水) 06:03:49 ID:YcH6GDLT

見下ろすように我聞に向けられた陽菜の表情は、
彼女が動く度に引き攣り、眉をひそめて痛みに耐えている様がありありと見て取れる。
だが・・・それでも紅潮した顔色や、表情全体に漂う蕩けきった淫靡な雰囲気が、
一度は素に戻りかけた我聞の心を再び劣情によって覆いつくしてゆく。

「なぁ、國生さん・・・」
「ふぁ・・・あ、は、い・・・?」
「気持ち、いいのか・・・?」

問い掛ける我聞の表情に、気を使うだけではない・・・興味と、そして欲情の色を見て取って、
陽菜もまた蕩けた笑みを返し、

「ひりひりする・・・んですが、あ・・・っ、なんだか・・・むずむず、してぇ・・・
 まだ、よく・・・わからない、ですが・・・でも、きっとこれ・・・もっと、気持ちよく、なれそうで・・・」

陽菜には、まだその感覚が快感なのかどうか、自覚できていない。
だが、何より彼女は我聞と繋がれたことが嬉しくて、もっと強く、深く交わりたいと、ただそう思っている。
その思いが痛みを凌駕して彼女の身体を動かし、身体もまた反応して・・・

「ね、聞こえる? 國生さんと俺の繋がってるところ・・・すごく、いやらしい音がしてる・・・」
「え・・・あ、は、はい・・・それは・・・」

羞恥など忘れたかのように表情を蕩けさせていた陽菜だったが、
そう言われて今更ながらに恥ずかしそうに眉をひそめる。
我聞の言うように、陽菜が腰を捻るたびに二人の繋がったところから漏れ出してくる
“にゅちっ、ぬちゅっ、ぐちゅ・・・っ”という響きは、
陽菜の膣内から溢れ出した蜜が擦れ合う二人の性器によって掻き混ぜられ、泡立てられる音に違いないのだ。
そんなに、音が立つくらいに蜜を垂れ流していることが我聞に気取られてしまったと思うと、
忘れかけていた羞恥心が急に思い出されてきてしまう。

「國生さん・・・感じてるんだね」
「そ・・・れは、その・・・」

あれだけ積極的に我聞に迫り、身体を動かしていた陽菜が、
我聞にそう言われただけで一気にしおらしくなってしまう。
ただただ我聞が欲しくて、彼に見てもらいたくて必死だった陽菜だが、
いざ、彼女の望む通りに我聞が自分を見てくれた時に、自身でも己が姿を顧みて・・・
そのあまりのはしたなさに、麻痺しかけていた羞恥心が目を醒ましてしまったのだ。

「ん? やっぱり痛いのか?」
「あ、いえ・・・!」

急に動くことを止めてしまった陽菜を気遣うように見上げ、
彼女の表情がすっかり変わってしまったのを見て、我聞もまた陽菜が今更ながらに羞恥に悶えているのを察知する。
だが我聞にはその理由はわからないし、何より・・・
彼女が積極的であろうが消極的であろうが、彼女によって目覚めさせられてしまった情欲は、
今更収まるものではないのだ。

「なぁ、國生さん」
「は、はい・・・?」
「國生さんの中、キツくて、熱くて・・・気持ちいいよ」
「え!? あ、あの・・・私も・・・しゃ・・・社長のが、凄く、熱くて・・・固くて・・・ぇ」

顔が赤いのは相変わらず、だがその表情には受け身な色が少しずつ滲んできて、
その分だけ我聞の嗜虐心が沸き立ってくる。
488499 9/21:2006/09/06(水) 06:05:19 ID:YcH6GDLT

「國生さん・・・俺、もっと國生さんのこと、感じたい・・・」
「あ・・・! は・・・はい・・・」

さっきまでの、我聞を貪るかのような淫らに乱れた笑みからは完全にかけ離れた照れきった顔で答えると、
陽菜は遠慮がちに腰を動かし始める。
初めはゆっくりと、我聞の腰の上で円を描く様に・・・
そして少しずつ、腰を浮かし、下ろし・・・上下の動きを加えて、
くわえ込んだ我聞のモノを擦り、しごきあげる。

「っうぅ! それ・・・すご・・・気持ち、いいよっ!」
「あん! あ・・・ふ、ぅあぁ・・・! わたしもっ! 社長のが、擦れて・・・ぇ・・・っ!
 きもち・・・いい・・・です・・・んぅう!」

長いスカートの裾に隠れているとは言え、我聞の腰に跨って淫らに腰を振るなど、
今の陽菜には顔を覆ってしまいたいくらい恥ずかしい行為なのだが、
例え羞恥心が戻ろうとも、彼女の我聞に対する想いが損なわれたりするような事はない。
どんなに恥ずかしかろうとも・・・そんな気持ちを簡単に覆せるくらいに、
我聞に求められることは陽菜にとって嬉しくて仕方がないことなのだ。
だから陽菜は、未だに消えぬ痛みをまるで感じないかのように動き、
彼女の望み通りに我聞を快楽に酔わせてゆく。

「くぅ・・・こくしょ・・・さんっ! う・・・っく! は・・・あ、く・・・!」

余りに我聞らしからぬ喘ぎ声に、
羞恥で一度は押さえ込まれていた情欲が再び湧き立って、陽菜の動きを加速させる。

「あは・・・しゃちょお・・・っ、そんな、声・・・出されては・・・ぁ、
 あ、んぅ! っく・・・わたし・・・なんだか・・・ぞくぞく、しちゃいます・・・っ!」

上気した顔でそう言いながら、陽菜は腰の上下動をだんだん大きく、激しくして、
我聞の腰の上で跳ねるように身体を躍らせる。

「うく・・・すご・・・っ! 國生さんの、なか・・・キツいのに、めちゃくちゃぬるぬるして・・・
 なんだか、絡み付いてくるみたいで・・・それに、熱くて、気持ち・・・よすぎる・・・!」
「あ、んく! ひ、ぁ・・・っ! そんな、細かく、言わないで・・・くださいっ!」
「でも、ホント・・・っく! こんな・・・気持ちいい、なんて・・・」

挿入直後からのキツい締め付けはそのままに、だがとめどなく溢れる愛蜜のお陰でその感触は滑らかで、
陽菜の身体が上下する度に無数の肉襞に肉茎全体を舐め上げられるような快感に襲われる。

「は・・・ひっ、い・・・ひゃあっ! あ・・・はぁ、ふぁ、んく・・・ぅ! あんっ! ひぅう!」

それは陽菜にしても同じ。
はじめて男性を受け入れたソコは我聞のモノの圧倒的な存在感に支配され、
それがそこにあるだけで息が詰まりそうなくらいだった。
だが、それでも懸命に手足に力を込めて身体を捻り上下に揺さぶると、
くわえ込んだ彼のモノと敏感すぎる膣壁がずるずると擦れあい・・・

「ひゃ・・・ぅあぁ! あう・・・んっ! しゃちょっ! しゃちょぉっ!
 んぅ、あぅう! わた・・・っ! ひあ・・・うぁ・・・!」

そこから生じる甘美な電流が陽菜を痺れさせ、蕩けさせ・・・
二人の交わる音を掻き消す程に上擦り、乱れた喘ぎ声が止まらなくなる。
そんな声や艶に満ちた表情から、
陽菜がもはや痛みを感じていない、もしくは痛みを打ち消す程の快楽に溺れているということは、
我聞にもはっきりとわかる。
何より陽菜の動きは徐々に大きくなり、その分だけ二人の交わりはより一層激しさを増し、
己のモノを包み込み、絡み付いて撫で上げる感触が我聞の射精感を一気に膨れ上がらせる。
489499 10/21:2006/09/06(水) 06:06:47 ID:YcH6GDLT

「っく・・・! こくしょ・・・さん・・・っ!」

だが、いくら射精感が高まろうとも、限界が迫っているとわかっていても、もう一つの欲求が、収まらない。
―――もっと陽菜を貪りたい・・・もっと彼女を味わいたいという、劣情が。

「っくう・・・っ、は・・・あぁ! ひぁ・・・あ、ぅ・・・? え!? っひぁあ!?」

のぼせたように蕩けていた陽菜のあえぎ声が不意に跳ね上がり、
我聞の上で揺れていた身体のリズムが乱れる。

「あ・・・んっ! や、社長っ! あ、うんっ! うぅ、動い・・・て・・・るっ!」
「す、すまん! その、気持ち、よすぎて・・・腰が、勝手に・・・!」

我聞はそう言いながら陽菜を乗せた腰を、彼女が身体下ろすタイミングに合わせて、ぐっと突き上げる。

「んぁあああっ! や、しゃちょ・・・っ! こん、なぁあ!」

硬く張り詰めた肉茎を膣の一番奥まで迎え入れようとする、そのタイミングで“それ”自体がせり上がってきて、
今までとは段違いの荒々しい快感が子宮を貫いて弾け、全身を快楽で痺れさせる。

「ひゃあっ! うぁ、しゃちょ・・・っあぁああ!? すご・・・っ! おく、ひびい、てぇえええ!」

陽菜自身の動きと我聞の突き上げが相乗したような激しすぎる快感に、
膝も腰も、上半身も・・・身体中が悦楽の電流で感電したように震えてしまう。
それでもガクガクと揺れる身体を両手と両膝で支え、我聞の身体に倒れ込みそうなのを必死で堪えながら、
陽菜は一心不乱に腰を揺する。
もはや痛みを感じなくなってしまった身体は更なる快楽を欲したし、
何より我聞と交われているということ、彼も気持ち良いと感じてくれていることが嬉しくて堪らない。

「しゃちょっ! ひぁ! あんっ! ああん! しゃちょっ! しゃちょおっ!」
「っく! 國生さんっ! こく、しょう・・・さんっ!」

じゅぶっ! じゅぶぶっ! ずぶぶっ!
タイミングを合わせてリズム良く二人の身体が動く度に、
スカートで隠れた二人の接合部から蜜の泡立つ卑猥な音が響く。
我聞に跳ね上げられる度に膣を貫く衝撃が脳天まで響いてくるようで、
陽菜はいつ意識が飛んでしまってもおかしくないくらいの快感に晒されていた。
だが、そんな朦朧としかけた陽菜の意識を我聞の声が繋ぎ止める。

「くぁあっ! や、ば・・・こくしょ・・・さんっ! もう、俺・・・また!
 ヤバいから、どいて・・・くれっ! このままじゃ、っく! 中に出しちまう・・・!
 って、ちょ、う、うわぁっ!? こ、國生さんっ!?」

その訴えと逆に、陽菜の腰がより一層激しく跳ね、捻れ、我聞の限界間近のモノを徹底的に弄り上げる。
我聞の身体は目に見えてガクガクと震え、それが肉茎を通じて陽菜にも伝わって、

「ひぁあああ!? しゃちょっ! こんなぁ! すご、わたしっ! おかしくなっちゃぁあ!」
「お、おお俺もっ! やば、っくあああ! ヤバいって、こんな、締め付けられたら・・・っくう!」

そう言いながらも我聞の腰はもう一つの欲求―――陽菜の中に放ちたい、注ぎ込みたい、という衝動に突き動かされ、
もはや彼女の動きも無視してただひたすらに肉槍で陽菜の秘所を突き貫く。
陽菜の身体は貫かれたそこを支点に、台風に煽られる立ち木のごとくグラグラと揺り動かされ、

「っひぁあああっ! もうだめ、もうだめですっ! わた・・・っ、ほんと、だめ、ひぁ、んぁああぁあ!」

髪を振り乱しほとんど泣き声のような嬌声を上げながら、それでも両膝で我聞の腰を挟み込み、
身体の中に芯のように埋め込まれたモノが抜けないようにして・・・
490499 11/21:2006/09/06(水) 06:08:31 ID:YcH6GDLT

「っくうう! も、やば・・・出る! 國生さん・・・っ! 離して、くれないと・・・ほんと、出ちまうっ!」
「は・・・ひっ、わた、し・・・もぉっ! も、ぉ・・・すぐ、だから・・・っふぁああ!
 おねが・・・ですっ! しゃちょ・・・おっ、そのまま、っあぁあ! そのまま、わたしのっ! 中にぃ!」

陽菜の懇願を跳ね除けるにも逆らうにも、
彼女の膣の感触と・・・普段とはかけ離れた声や表情は、余りに淫靡に過ぎて―――

「―――っ! だ、めだ・・・! も・・・うぁ! で・・・る・・・・・・っくぅううう!」

決壊の間際に、限界まで張り詰めた肉茎で思い切り陽菜を突き上げる。

「ひぁあっ! あ、ふぁあ! しゃちょっ! わたし、もぉ! も、ぁ・・・ぁああ!? っひぁああああ!?」

その衝撃が子宮を貫いて脊髄を電撃のように駆け上り、陽菜の意識が真っ白く染まりかけたその刹那――――――

どぶぶっ! びゅくっ! びゅるるるるっ!

「っひ!? あ―――――――――」

陽菜の奥の奥まで突き込まれたモノが爆ぜて、噴火した火山の如く灼熱した濁液を噴き上げる。
まさに達しようとしたその瞬間に、次々と噴き出す熱い粘液の塊に子宮口を叩かれて―――

「―――――――――っあぁああああぁあ!」

強烈過ぎる快感が稲妻の如く全神経を駆け巡り、脳髄まで焼き焦がし・・・
陽菜は雷に打たれたように身体を仰け反らせて硬直させ、甲高い、悲鳴のような嬌声を上げながら、
初めての絶頂に達していた。

「っふ・・・・・・あ・・・は・・・・・・ぁ・・・く・・・ぅ・・・」

やがて、ぴんっと弓のようにしなり突っ張っていた身体がふらり、と揺れたかと思うと、
糸の切れた人形のように崩れ落ち、我聞の胸の上に倒れ込む。

「ひ・・・ぁ・・・あ・・・しゃ、ちょお・・・」
「は・・・ぁ・・・・は・・・っ、はぁ・・・っ、國生・・・さん・・・っ」

荒い息をつきながら呼び合って、互いの顔を確かめ合うように見つめ合い、
そのまま息が整うまで、抱き合ったまま互いの体温を感じあっていた。

「・・・國生さん、その・・・大丈夫か?」
「はい・・・痛くは、ありません・・・」
「そうか、よかった・・・」

やがて、未だ熱に浮かされたような表情で我聞が問い掛ける。
答える陽菜はやはり頬の赤みはそのままだが、満ち足りた表情で彼に身体を預けたまま・・・

「ですが・・・」
「うん?」
「社長の・・・中に、いっぱい・・・出されてしまいました・・・」
「う、す・・・スマン・・・つい・・・」

悪戯っぽく告げる陽菜に、我聞はやや焦った声で答えるが、
陽菜も我聞も、それが事実上の同意の元であることは十分にわかっている。
だからこそ、

「社長・・・この責任・・・取って、下さいますよね?」

と問われれば、
491499 12/21:2006/09/06(水) 06:10:06 ID:YcH6GDLT

「あ、ああ! 当然だ! 男としてきっちり責任は取らせて貰う!」

と、即答する。
その瞬間、望みを叶えた陽菜の心は満たされていたのだった。
だが・・・

「だから・・・國生さん」
「・・・え、は、はい?」
「責任は、取るから・・・今度は俺が―――」
「―――っきゃぁあ!?」

そこまで言って、我聞は陽菜を胸に乗せたまま唐突に身体を起こし、
彼女を床に仰向けに横たえると、そのまま上から組み敷くように覆い被さる。

「しゃ、社長!? な、なにを・・・」
「悪い・・・あんなにえっちな國生さんを見せつけられて・・・一度や二度じゃ、全然治まらないんだ・・・」
「え・・・う、ぁ・・・」

そう言われて、初めて気付く。
我聞に注ぎ込まれて、そのまま中に入ったままのソレは、その時から全く衰えることなく硬いままなのだ。

「や、ま、待ってください! 社長、今、そんな、されたら・・・!」

絶頂を知って、更に敏感になった身体で充分な休みも挟まずに“されて”しまったら、
自分がどれだけ乱れてしまうか、見当もつかない。

「今夜のこと・・・さっきのことも、これからのことも、ちゃんと責任は取るから・・・
 だから國生さんも、俺をこんなに焚き付けた責任・・・取ってくれるよ、な」
「ちょ、ちょっと、だめ、ダメです! あの、せめて、もう少し、休ませ――――――っひゃあ!?」

我聞が腰を引いて、ずるる・・・と硬いままの肉茎を引き抜く、その感覚が陽菜の声を上擦らせる。
満ち足りてしまった陽菜からはさっきまでの貪欲さは消え失せて、
ろくに抵抗すら出来ない、か弱い少女に他ならない。
対する我聞はそんな彼女の痴態を前にして、ずっと抑えていた劣情を解き放ってしまった今、
もはやそれを抑える術をもたなかったし、抑えようとも思わなかった。

こうして、二人の立場は完全に逆転して―――

「っひ! ぁ、やぁあああぁっ!? な、こんな、ふか・・・あぁぁあっ! だめ、しゃちょっ! これだめぇえ!」
「っく・・・は・・・っ、く・・・でも、國生さん・・・凄く、気持ちよさそうな・・・
 えっちな顔、してるよ?」
「ふぁ、んぁあ! そんな、ちが、あぁあ! うそですっ! そんな、ことぉ!」

今度は我聞が陽菜の上になって腰を動かし、彼女自身の淫蜜と我聞の精液とでぐずぐずに蕩けた膣を責め立てる。
勢いこそ今はまだ緩やかだが、陽菜がしていたときよりも腰を大きく動かし、
肉茎の長さを最大限に使って敏感な膣壁を擦り抉る感触に、
陽菜は早くも捕らえられ・・・ただただ喘ぎ悶えるばかりだった。

「しゃちょ・・・っ! だめ、ゆるして、くださ・・・っあぁあ! こんな、はげし、過ぎてぇ!」
「だめ、だよ・・・っ! もう、止まれないし、それに・・・
 こんなもんじゃ、っく・・・! ないから・・・まだまだ、もっと激しくするから・・・!」
「っひぅう!? や! だめ、ほんとダメぇ! こんな、あぁあ!
 はげし、すぎて・・・わたっ、こわれちゃ・・・うぁあっ!」

我聞の言葉通りに抽送は少しずつ勢いを増し、
陽菜の敏感になりすぎている膣を容赦なく掻き回し、溢れる蜜を泡立たせる。
492499 13/21:2006/09/06(水) 06:11:31 ID:YcH6GDLT

「ほら、國生さん・・・見えるだろ?
 俺たちの繋がってるところ、こんなにびしょびしょで・・・
 國生さんが凄く感じてくれてるの、よくわかるよ」
「やぁあっ! そんな、言わないでくださいぃっ! わた、そんなぁあ! ひぅ、んぁあ!」
「それにほら、音だってこんなに」
「そんな・・・そんなの、うくぅ! しらな・・・っひぅ! 知りませんっ!」

さっきまであれだけ自分から積極的に淫らな振る舞いをしていたのが嘘のように、
陽菜は我聞の指摘を必死で否定しようと声を上げる。
だが、その声の合間に彼女自身の口から洩れだすはしたない嬌声こそが、
いかに陽菜が昂ぶり蕩けているのかを雄弁に物語っている。

「は・・・はっ、そんな、恥ずかしがらなくても・・・
 國生さん、さっきまで、あんなにいやらしいこと、自分からしてたのに・・・な?」
「ひゃうっ!? そ、それはぁ! その、あ、ふぁああぁ! や、あぁあ! また、つよ・・・くぅう!」

じゅぶじゅぶと音を立てて我聞の肉茎が秘所を出入りする度に、
蕩けそうな甘美な疼きが子宮を襲い、それが全身に伝わって行く。
このまま、この感覚に溺れ、流されてしまいたい・・・
我聞にもっと気持ちよくしてもらいたい、もっと激しくして欲しい・・・もっと、滅茶苦茶にして欲しい・・・
そんな浅ましい情欲が身体中から湧きあがってくるのを、残された理性が必死で抑えている。
彼に抱かれるのは構わない・・・むしろ嬉しくさえある。
でも、その行為に溺れてしまったら、もうそのことしか考えられなくなってしまうのではないか・・・
そう危惧してしまうくらいに、我聞にされるのは心地よくて・・・甘美だった。

「ひぁあああ! しゃちょ、だめ、やぁああっ! もう、やぁあ!
 わたっ・・・! っふゃああぁ! こわれちゃ・・・っ、おかしく、なっちゃあぁあ!」
「っふ・・・っ、さっきは、あんなに・・・十分、おかしかったのに、なっ!
 裸で、身体を洗ってくれたり、口で・・・してくれたり・・・っ、
 は・・・ぁ・・・っ、あれ、國生さん・・・自分で、考えたの、か?」
「っくぅう! ひぁ! ち、ちがぁ! 違いますっ! あれは、ゆ、優さん、がぁ! おしえて、くださってぇ・・・」

それに興味を引かれたのか、我聞は抽送を心持ち緩めて、

「へ、ぇ・・・優さんが、か・・・そういや、そのメイドさんの格好も、優さんのアイデアなんだっけ?」
「は、はひ・・・っ、そ、うです・・・ぅ、あ、く・・・ぅああ!」
「じゃあ、優さんは俺たちが今、こんなことしてるのも、すっかりお見通し、なのかな・・・?」
「はい・・・ぃ、きっと、そうだと・・・あ、ふぁあ!? 思いま・・・ぁあぁぁあ!?」

そこまで聞いたところで、今度は一気に抽送のペースを上げて・・・

「・・・っふ、そっか・・・優さんに全部バレてると思うと、ちょっと・・・恥ずかしいよな」
「うぁ、んぁああぁ! や、ひゃああ! すみません、ふぁ、あぅう! もうし、わけぇ! ありま、せ、ぇえ!
 おねが、おねがいっ、ですから・・・ぁあ! ゆるし・・・ひ、ゃああぁあ!」

二人の秘め事を優に教えてしまったことを咎めるかのように、
陽菜の謝罪の言葉に耳を傾けることなく、我聞の責めはひたすらに激しくなり―――

「だめ、も、や・・・っうぁあぁあ! やめ、も、だめ、ダメですっ!
 おねが、もぉ・・・ゆるして、くださ・・・ぁあああっ! だめ、いぁ、や・・・あぁあああぁあ!」

我聞のモノを抜き差しされる度に身を捩じらせ、行き過ぎた喜悦に泣き喚くように悶え、
やがて一際甲高い、悲鳴じみた喘ぎ声と共に仰向けに組み敷かれた身体をブリッヂするように仰け反らせて・・・

「うぁ、やぁあぁああ! もうだめ、だめ、しゃちょ、も、うぁ、あぁぁあ! しゃちょおっ!
 おねが、も、ゆるし・・・ぃあぁぁあ! や、だめ、きちゃ・・・あ!? うぁ、あ・・・
 ―――――――――っあぁぁぁぁぁぁぁぁああ!」
493499 14/21:2006/09/06(水) 06:14:44 ID:YcH6GDLT

こうして陽菜は、我聞によって一方的に二度目の絶頂を迎えさせられる。
最初の時に比べれば陽菜自身は全く動いておらず、肉体的な負担は遥かに少ないはずであったが、
激しい抽送と、そこから湧き出した甘い電流のような刺激が彼女の神経を焼き切ってしまったかのようで、
ことを終えた陽菜はひくひくと震えるばかりで動くことも、喘ぎ以外の声を出すことも出来そうにない。

「國生さん、派手にイっちゃったね・・・感じてる時の國生さんも、
 今の・・・ぐったりしてる國生さんも、凄く・・・可愛いよ・・・」
「あ・・・は・・・ひ・・・っ、や・・・ぁ、はずか・・・しい、です・・・」
「ふふ・・・じゃあ國生さん、次は・・・そうだな、どうせ優さんに知られてるなら、
 こっちから報告しちゃおうか」
「・・・え? しゃ、ちょ・・・なに、を・・・っあ、え・・・?」

未だ身体も頭もふらふらと覚束ない陽菜を、我聞は抱え上げるようにして立たせると、
部屋の壁際に彼女を連れてゆき・・・

「優さんの部屋って、確かこっちの隣だったよな?」
「は・・・はい、ですが・・・何を・・・?」
「いやぁ、折角だから優さんに、俺たちがどんな風になったか、実際に聞いてもらおうかな、ってね。
 じゃあ、そこに手をついて・・・そう」

これから何をされるのか、朦朧とした意識では未だに想像もつかず、ただ漠然とした不安を感じつつ・・・
それでも我聞に逆らうことが出来ず、言われるままに壁に手をついて、
不安げに振り返って我聞の様子を窺う。
そんな態度が我聞の嗜虐欲を掻き立てることなど陽菜には想像もつかない。
だが、背後からスカートをめくり上げられ、濡れそぼった秘所を露わにされたところで陽菜もやっと・・・

「や、やだ! 社長! こんな、こんな格好はイヤですっ! や、やめ・・・」

昨晩、優に見せられたDVDの中で、こんな体位でしている場面があり、
陽菜はそれを見て“まるで獣みたい・・・”と感じたのを、思い出す。
その、獣のような体位で、自分がこれから・・・我聞に・・・

「しゃ、社長! お願い、おねがいですっ! 他の、格好でしたら、構いませんから!
 これは、こんな格好は、やめ・・・っや、ひぁ! やぁあ! いやぁあぁああぁあ!」

じゅぶぶぶぶっ、と。
陽菜の懇願を楽しみ、そして嘲笑うようなタイミングで、
我聞は敢えてゆっくりと肉茎を彼女の中へと埋め込んでゆく。

「・・・っひ・・・ぁ・・・かは・・・ぁ・・・ぁあ・・・っ」
「國生さん、もうこんなに震えちゃって・・・挿れられただけでイきそうになっちゃった?」
「ひ・・・っく、ち、ちが・・・ぁぅう・・・そんな、こと・・・ありません・・・っ」
「そう? じゃあ遠慮なく動くとしようかな・・・
 この格好だと、さっきより深くは入らないかもしれないけど、立ってる分だけずっと激しくできるから、な」
「え・・・!? や、ちょ、そんな! 激しくなんて・・・だめ、こわれちゃ・・・ぁあぁあああっ!?」

ずるるっ、と蜜を掻き出しながら肉茎を引き抜いて、
雁首のところまで抜いたところで今度は腰を勢いよく押し進め、
腰と陽菜の尻がぱんっ、とぶつかるまで一気に膣の奥まで突き入れる。

「ひあぁああ! や、だめ、うぁ! んぁああぁあ! しゃちょ、こんな、あぁああ! はげし、や、ふぁあああ!」
「っは・・・っく、國生さんっ、すご・・・さっきより、締まって・・・気持ちいいよっ!」
「そんなぁあっ! しらな、ふぁ、ひゃあああ! これ、これだめぇ! さっきと、ちが、ふぁああ!
 ちがうところがぁ! こすれ、てぇえ! だめ、わた、わたしっ! こんな、やぁああああ!」

前からと後ろからでは当たるところも擦れるところも、絡みつき方も締め付け方も違い、
先程とはまた別の刺激に酔い痴れて、我聞は抑えることも忘れて腰を動かし、陽菜はただただ喘ぎ、悶える。
本来なら尻の肉が邪魔になって深く挿入できないハズの体位も、
全体的に肉付きの薄く華奢な陽菜ゆえに、二人にとっては十分な深さまで突き、擦り、抉ることが出来るのだった。
494499 15/21:2006/09/06(水) 06:20:38 ID:YcH6GDLT

「ふぁ、うあぁああ! しゃちょ、も、だめ、んぁあああっ!」
「は・・・っ、國生さん、すごい、えっちな声・・・それだけ大きければ、ちゃんと優さんにも聞こえてる、かな」
「え、や・・・!? ―――――――――っ! ・・・っ、く・・・ぅ、んぅ・・・! ―――っ!」

身体の内側から激しく責め立ててくる我聞のモノに完全に意識を引き付けられていた陽菜は、
彼の言葉で今の状況を思い出し、慌てて声を抑えようとする。
昨晩も、優から“ほぐす”と言われて散々愛撫され、恥ずかしい声は既に聞かれているのだが、
今の行為は陽菜と我聞の“秘め事”なのだ。
その声を・・・昨晩のそれとは比較にならないくらい激しく、恥ずかしい声を我聞以外の人に聞かれるのは、
いくらなんでも、恥ずかしすぎる。

「ふふ、まだ我慢できるんだね・・・じゃあ、こうしたら・・・どうかな?」
「っひ・・・っ! あく・・・ぅ、あ・・・っ!? ひっ! や、あ―――――――――っあぁああぁあ!」

俯いて必死で声を抑えていた陽菜の背中がガクンと震え、首筋を仰け反らせて甲高い嬌声を放つ。

「ひぁあ! うぁ、んぁあああっ! やめ、しゃちょっ! そこ、そこだめぇええ! いひゃぁああ!」

肉茎がしきりに出入りして蜜を垂れ流す裂け目の、そこから僅かに上の部分にある、
小さな、だが充血してしっかりと存在を示している肉の突起に、我聞の指が触れたのだ。

「うく・・・っ! う、わ・・ここ、本当に感じるんだな・・・一気に、締まりが、強く・・・!」
「だめ、ダメですっ! そこ、はぁああっ! ほんと、ダメ、やめ、てぇええぇ! しゃちょ、や、ひぁあああ!」

指先で軽く、充血したそれをほぐしてやるように優しく押し、撫でるだけで、
陽菜の身体はがくんがくんと揺れ、膣もきゅ、きゅううっ、っと咥え込んだモノを絞りたてるかのように収縮する。
肉襞のひとつひとつがより強く絡みつき、
抽送を激しくすればするほど我聞の射精感は三段飛ばしで高まってくる。
だが、締め付けがキツくなれば締め付けられる方は当然だが、
締め付ける方も、それだけ “締め付けているモノ”をより強く感じずにはいられないのが道理であり・・・

「ひぁああ! ひゃちょっ、しゃちょおっ! そこだめぇ! そんな、弄っちゃ、だめですっ!
 もうっ! もうだめっ! わたっ、ふぁあ! こえっ、おさえられな、あぁあっ! ひぁああっ!」

蜜壷に突き込まれる度に、秘芽を捏ねられ、弄られる度に・・・
際限無く沸いてくる悦楽に陽菜はぐずぐずに煮溶かされて、もはや声を抑えることなど出来ない。
我聞に抽送される度に身も心も絶頂に向けて突き上げられ、陰核を弄ばれて自我は削り取られ、
やがて陽菜は―――

「んぁあ! もうやぁ! しゃちょっ、わたしっ! また、イっちゃ、うぁあ!
 も、だめ、イっちゃ、ひぁ、んぁああぁ! っく、うぁあ! ・・・んぁああぁああぁあああぁっ!」

先ほどと同じように身体を仰け反らせ、一際甲高い声で鳴いて、絶頂を迎えさせられてしまう。
その瞬間に陽菜の膣はきゅううっ、と締まり、我聞も射精寸前まで一気に導かれるが・・・

「っ・・・あ、ぁ・・・・・・ぅ・・・ぁあ・・・・・・ぁ・・・」
「っく・・・おっと・・・國生さん?」

立て続けの絶頂の反動で陽菜は身体を支えられなくなり、
がくがくと膝を揺らして床に崩れ落ちそうになるのを我聞が慌てて抱え上げる。

「大丈夫?」

倒れかけた拍子に陽菜を貫いていたモノは抜けてしまったが、
それよりも彼女の様子が気になって、抱き上げた陽菜の顔をこちらに向けさせて・・・

「うぁ・・・・・・は、い・・・・・・もう、からだ・・・ちから、はいらなくて・・・ぇ・・・」
495499:2006/09/06(水) 06:44:51 ID:N1a4rDT6
携帯から・・・
すみません、連投規制にひっかかりました。
容量的に新スレも立てなきゃなので、
誰も投下などされる方がいないようでしたら今晩帰宅してからスレ立てして、
続きはそちらに投下させて頂こうかと思います。
もし投下される方がいらっしゃいましたら、
お手数ですがスレ立てお願い致します。
では、半端なところで途切れて申し訳ありませんが一旦失礼します。
496499:2006/09/06(水) 20:59:46 ID:YcH6GDLT
新スレ立てました。

【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ7
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157543897/

バタバタですみませんが、続きは新スレの方に投下させて頂きます。
497名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 00:17:55 ID:JCZSmycL
スレたて乙
498名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 17:51:14 ID:kuFxEUH9
埋め
499名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 23:56:12 ID:vZcIzuHX
もう埋めの時期?ならば言おう。
俺は、珠たんのエロSS読みたい―――!!!!
500名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 10:33:52 ID:yLPYwd/C
埋める時期か……本スレは落ちちゃったのか?
501499:2006/09/10(日) 11:18:47 ID:ZPj+IYab
502名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 11:22:16 ID:ZPj+IYab
すみません上のミスです(汗

>>500
週漫板の本スレは連載終了後にスレ住人で相談して、
スレが埋まった後は女性キャラ萌えスレに移行してますねー
ちなみにこちらです。

【こわしや我聞】藤木俊作品 女性キャラ萌えスレ9【劇団SAKURA】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1141140625/
503名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 15:30:23 ID:Za0GSoMl
>>502
感謝。いや、週漫板から移行してたのは知ってたんだ
でもいつもやってる2ちゃんねる検索の一覧に出なかったもんだから、そっちもてっきり落ちたのかと
「我聞」で検索してたんだがなー・・・・・・
504499 1/5:2006/09/10(日) 20:49:17 ID:ZPj+IYab
埋めネタということで、
>>499のリクエストに沿っているのかいないのか・・・
ともかく珠でエロです




「はぁ・・・はぁ・・・ん・・・っ、く・・・、ん・・・く・・・・・・っ」

いつもの元気な表情とは打って変わって、切なげに眉をひそめながら、
少女はは机の縁にぐりぐりと腰を押し付けて上擦った声を上げていた。
何故かは知らないが、ここをこうするととても気持ちがいいのだ。
そのことを知ってしまってから、彼女は毎日、家族の目を盗んでこの行為に耽っていた。
・・・なんとなく、これは人に見られてはいけないような気がしていたから。

だが、夢中になっている少女は気付かない。
扉の影で、その行為を見てしまった者がいたことに。


そして、その晩。

「・・・・・・と言うワケなんだが・・・もしかして珠のやつ、病気か何かなんだろうか?」
「あー・・・・・・・・・」

夕飯の後片付けをしている最中に兄からそんな相談を持ちかけられて、果歩は非常に悩ましい思いをしていた。
我聞は何がなんだか全く理解できていないようだが、果歩は珠が何をしていたのか聞いてすぐに理解できた。
あの珠も女の子らしいところが出てきたんだな、とちょっと嬉しくも思うし、
家族とは言え異性である兄に何をしていたか悟られていなかったのは珠にとって幸いだったとも思える。
が、この朴念仁はホントにそんなことにも気付けないのか、とちょっと呆れてみたり、
GHKとしてのこれからの苦労を思うとうんざりしたりもするのだが、
それはともかくとして・・・

「わ、わかった、珠のことは私に心当たりもあるし、なんとかするから!
 だからいい? お兄ちゃんはこのこと、絶対に誰にも言っちゃダメ! いい、絶対だからね!」
「お、おお、わかった。 じゃあ頼んだぞ!」

女性としてのデリケートな部分を妹に教えるのは姉としての責務だし、
それ以上に・・・あの腕白な珠が一体どんな表情で、どんな声で“そんなコト”をしていたのか・・・
正直、ちょっとだけ興味もあった・・・

そして夜も更けて、小学生はそろそろお休みの時間・・・

「ねぇ、なぁに?」

いつもは斗馬と居間で寝ている珠だったが、今夜は果歩に部屋へと呼ばれ、パジャマ姿でやってきたのである。

「ん〜、ちょっと話があってね、まぁいいからこっちに来なさい」

果歩にそう言われて、ちょっとだけ不思議そうにしながらも言われるままに布団の上に腰を降ろす。

「話ってなにー?」
「うん、今日の昼間なんだけど・・・珠、机のところでナニしてた?」
「え・・・!」

ちょっと眠そうにとろんとしていた珠の目が一気に見開かれて、頬がかぁっと赤くなる。
505499 2/5:2006/09/10(日) 20:50:50 ID:ZPj+IYab

「べ、別に・・・何もしてないよ・・・」
「あら、恥ずかしがらなくてもいいわよ? 女の子がああいうことするの、別におかしいことじゃないんだから」
「え、そうなの?」

意外そうに、だけど少し安心したように聞き返してくる珠につぃ、と身体を寄せて・・・

「でも、そういうのはあまり人に見られちゃイケナイことだからね・・・
 そこんとこ、今夜はみっちり教えてあげるから、ね・・・」
「あ・・・う、うん」

耳元でそう囁かれて、珠は思わず身を硬くしながら絡み付いてくる果歩の腕に為す術もなく身を任せる。

「ね、珠・・・どうしてあんなこと、思いついたの?」
「え、あ、うん・・・この前、木登りしてて・・・枝に跨ってたら、なんだか、足の間が、
 ちょっと・・・ジンジンして・・・ちょっとだけ、気持ち、よくって・・・」
「ふぅん・・・それでアソコを机の縁にぐりぐりしてたのねー」
「う・・・うん・・・」

恥ずかしげに俯く珠を抱いていると、自分まで“そんな”気分になってしまいそうなのを抑えながら、

「でも、それじゃあすぐに物足りなくなっちゃうと思うから・・・ちゃんとしたやり方、教えてあげるわ」
「ん・・・うん」
「まずは、綺麗に手を洗うこと・・・珠はお風呂から上がったばかりよね?」
「うん」
「じゃあいいわ、でも・・・最初だから、私がしてあげるわね」
「え、う、うん・・・んぁっ!?」

果歩の手がするり、とパジャマの中にもぐりこむと、頷くばかりだった珠の声が上擦ってぴくんと身体が揺れる。
侵入してきた手は真っ直ぐに珠の股間にあてがわれ・・・

「ひゃ、ん・・・! ねえ、ちゃ・・・!」
「んふ・・・気持ちいいでしょー?」
「ん・・・く・・・ぅ」

しゅ・・・しゅる、と・・・下着の上から秘裂に指を擦りつける。
初めて体験する他人の手による愛撫に、珠は普段の腕白さからは想像もつかないような切なげな声を洩らし、
そんな声を聞いて果歩は自分までゾクゾクと昂ぶってくるのを感じながら・・・

「ね、珠・・・気持ちいい・・・?」
「ん、ぁ・・・ひぁ・・・う、ぅん・・・」
「あら、まだちょっと物足りなさそうな感じかしら」
「え・・・、や、そんなこと、ない、よぉ・・・」
「そうよねぇ、机の縁にぐりぐり押し付けてたくらいだから、こんなんじゃ足りないわよね〜?」
「ち、ちがうよぉ、ぐりぐり、なんて・・・っふわぁ!?」
「こうしたら足りるかしら?」
「ひゃ、ぁあっ! ねえ、ちゃ・・・あ、んぅうう!」

果歩の指が触れていた下着の生地をずらし、幼い秘唇を直に撫ではじめると珠の声は一気に跳ね上がり・・・

「んふ・・・珠のココ、まだぴっちり閉じてるわね・・・まだ生えてなくてツルツルしてるし・・・
 ね、どう? 直に触られると、気持ちいいでしょ?」
「ん、んんっ! うん、きもち、い、ひぁあっ! ねえちゃ、あ、ふゃあっ!」
「さっきも言ったけど、指で触るときはちゃーんと手を綺麗にしてからね?
 ここはデリケートで大事なところだからね〜?」
「う、うん、んん! んぁ、ひぅ・・・んんんっ」
「こうやって・・・筋の回りを撫でてみたり、筋を優しくなぞってあげたり・・・やさしく、ね?
 それで、解れてきたら少しだけ指を中に入れるともっとイイんだけど・・・
 気持ち良いからって乱暴にしちゃダメよ〜?」
「んぁ、あ、ふわぁ! わ、わかった、から・・・ぁ、ねえちゃ・・・も、いい、から、あとは、自分、で・・・ぇ」
506499 3/5:2006/09/10(日) 20:53:05 ID:ZPj+IYab

びくびくと震える程に感じだした珠は、そんな自分を見られるのが恥ずかしくなったのか、
果歩の手を逃れようとモゾモゾともがき始める。
だが、そんな仕草に悪戯心をくすぐられて、果歩の意図は次第に当初の目的からかけ離れ・・・

「あら、まだよ? もーっと教えなくちゃいけないこコト、あるんだからね〜♪」

珠の肩を抱くようにしていた左手でパジャマのボタンを外すと、まだほとんど膨らんでいない胸に指を這わせ・・・

「っあ! ひぁ・・・や、そこ・・・ひりひり、して・・・んあっ」
「うふふ・・・でも、おっぱいの先っぽ・・・ちょっと気持ちいいでしょう?
 こうやって指先で撫でたり、優しく摘んで・・・くりくりしたり・・・」
「ひゃっ! ふぁ、あ・・・やめ、ねえちゃ・・・ぁあん!」

珠の声は上擦る一方で、すっかり上気した表情は幼いながらも少しずつ艶を帯びているように見える。
そして、変化を見せたのは表情だけでなく・・・

「・・・あら、珠・・・あんた、濡れてきてるわね・・・」
「へ・・・? 濡れて・・・って、ひゃ、ふぁ・・・」
「ほら、ここ・・・わかる? だんだん濡れて・・・ぬるぬるして来てるの」
「や、ふぁ・・・お、おしっこ・・・でちゃ・・・った、の?」
「ふふ、大丈夫・・・違うわよ」

お漏らししてしまったと勘違いしたのか、恥ずかしくて泣きそうな珠の目の前にソコを弄っていた指を掲げると、
指先でその液体を捏ねて、糸を引かせて見せる。

「ほら、おしっこじゃないわ。 もっとぬるぬるして、ねとねとしてるの・・・ね?」
「う、うん・・・ホントだ」
「これはね、愛液って言って・・・女の子がえっちな気持ちになると、アソコから染み出してくるものなの。
 お漏らしじゃないし、女の子はこういう事するとみんなこうなるものなんだから、気にしなくてもいいわよ?」
「ホント? ねえちゃんも、なるの・・・?」
「え、あ・・・そ、そうね・・・た、たまには、ね・・・」

思わぬところで恥ずかしいことを言わされて、一瞬たじろいでしまうが、
すぐに当初から逸れてしまった目的を思い出し、

「じゃ、じゃあそういうことで、折角えっちな気分になってきたんだし、
 もっと気持ちのいいトコロ、教えてあげるわ♪」
「ふぇ、もっと、って・・・あ、ひゃっ! は・・・んく・・・ぅ」

じわじわと濡れてきた珠の秘所に再び指をあてがい、指先に蜜に絡めながら割れ目をほぐすように撫で擦る。
くにゅ、くちゅ、と二本の指を躍らせて、珠に切なげな声を上げさせつつ、
親指で割れ目よりやや上のところにある、小さな膨らみに狙いをつけて、そこをちょんっ、と突付くと・・・

「ひゃわあっ!」

びくんっ、と珠の身体が跳ねる。
507499 4/5

「ね、ねえちゃっ! そこ、や、ひぁあっ! やめ、ぅあ、ふわぁっ!」
「ほら、ここ、凄く感じるでしょ〜? ここはクリトリスって言ってね、
 えっちな気分になると膨らんでくるんだけど・・・物凄い敏感だから、触るときは優しく、ね?」
「ひゃっ! わかっ! わかったからぁ! ねえちゃ、もっと、やさし・・・くっ! ふぁ、んぁああ!」

言葉とは裏腹に珠の小さいながらもしっかりと膨らんだソレをちょん、ちょんっ、と立て続けに容赦なく突付き、
妹をひたすら追い詰めて・・・

「じゃあ珠、もう限界みたいだから・・・これで許してあげるわ」
「ひゃ、あ・・・・・・ふ、ぁ・・・ぅう・・・もう、ねえちゃんの、ばかぁ・・・」

果歩の指が止まり、珠はふるふると震えながら意地悪な姉に抗議の声を上げるが、
それに答えるかのように・・・

「えいっ♪」
「っひゃあああっ!?」

さんざん苛め抜かれた秘芽をきゅっと摘まれて、
珠は甲高い叫び声と共に一瞬だけ意識を飛ばされてしまうのであった。


「ふふふ、どう? 気持ちよかったでしょ〜? これがね、イくってことなのよ?
 ・・・って、聞こえてる? あれ? 珠・・・?」

ガクガクと痙攣するように身体を揺らし、自分の身体に寄りかかるようにして倒れ込んだ妹の反応が無く、
心配になってうろたえかけた果歩は、次の瞬間―――

「っきゃあっ!? な、た、珠!? ちょっとなにすんの―――って、や、ちょっとー!?」
「ふっふっふー! 今度はわたしの番だからねー!」

一方的にやられてしまったのが気に入らなかったのか、
珠は姉の隙を突いて布団の上にひっくり返すとおもむろにのしかかり、
覚えたばかりの知識を総動員して反撃に出る。

「ちょ、待ちなさい珠! わ、私は自分でできるから、ちょ、や、ひぁあ!?」

年上ではあるものの、修行三昧の珠に対して果歩は体力的に余りにも無力で、
のしかかる妹を押し返すこともままならず・・・

「あ、ホントだー! ねえちゃんのここも濡れてるー! ねえちゃんもえっちな気分になってたんだね〜」
「や、ちが、違うから、ちょ、ひぅう! やめ! あ、んぁああぁっ! そこ、ダメ――――――!」

こうして姉妹は甲高い声を上げながら、夜更けまで揉み合っているのだった。








すみません、これで多分埋まっちゃいますんで、ラストは次すれに・・・(汗