素直クールでエロパロPART1

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202名無しさん@ピンキー
ちょっとした小品を書いてみた。
このスレにふさわしいのかちょっと曖昧だけど投下してみる。
203名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:07:27 ID:QOrXLiUP
昼休み。
がやがやとした喧騒。
「なあ宇治よぉ、このクラスで一番可愛いのは、誰だと思う?」
にやけた顔で友人の江川が問う。
はて――
僕は躊躇した。
考えたことがない。
わがB組、女子生徒は18人、その中で最も可愛いのは誰か――。
天井を眺める。

客観的に、あくまでも一歩離れて見るならば、それは矢代舞であろう。
くりくりとした大きな瞳に小さな口。
童顔とも言える顔立ちでありながら女の色気を内に秘め、
誰に対しても愛想よく振舞う。
悪く言えば八方美人。
しかし男は往々にして騙される。

あるいは、可愛いとは少し違うかもしれないが、藤崎智美の人気も高い。
すらりと整った顔立ちと体型。
お嬢様然とした落ち着いた佇まい。
しかし時として他者を小馬鹿にしたような態度を垣間見せることがあり、
それが僕には気に入らなかった。
204名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:07:59 ID:QOrXLiUP
ふと思う。
僕にとってのベスト。
それはきっと彼女であろう、と。
白石有希子。
今現在はいないが、僕の左隣、窓側に席がある。
静かな人だった。
授業中も、休み時間も、放課後も、
いつも誰とつるむでもなく一人で時を過ごしていた。
何気なく窓の外を見ようとした時、
いつも彼女の横顔が目に入った。
瞳が、まつげが、鼻が、唇が、あごが、髪が、
僕の網膜に貼りついて、
ああ、綺麗だな、と、
歯の裏でつぶやいた。
それだけのことだ。

「白石さん、かな」
「ええっ? お前趣味変わってんなー!」
なにがそんなに面白いのか、江川は目を細めてへらへらと笑う。
そうか、変わっているのか。
「っていうかお前もしかしてあれ? 
 白石のこと好きなん?」
随分な発想の飛躍だった。
そんなことは聞かれていないし、言っていない。
恋、愛、交際、セックス。
僕にはとても遠い世界の話のように思えた。
言葉としては知っていても、
まるで高等数学のように現実感がない。
もちろん高等数学が非現実的だという意味ではなく、
僕の知力ではまだ、そのリアリティを認識できないという意味だ。
205名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:08:40 ID:QOrXLiUP
だけど。
だけどやっぱり、
僕が白石さんを見る目は、
他の女の子を見る目とは違うのではないだろうか?
僕はあらゆる女の子の中で、
白石さんだけを違う存在として見ているんじゃないだろうか?

ふと白石さんとの会話を思い出してみた。
通算でせいぜい10往復かそこらだが、全て覚えていた。
「ありがとう」
そう言って微笑んだのが、僕の知る白石さんの唯一の笑顔だ。
一コマ一コマが妙に鮮明だった。
脳の裏の真ん中あたりにはっきりと焼きついていた。
「君は優しいね」
そんな言葉もあった。
まいったな、これは可愛い。

「好きかもしれない」
江川は口をすぼめて ひゅう と息を鳴らした。
「こりゃビッグニュースだ」
江川が僕の肩を叩く。
「ま、がんばれよ、応援してるぜ」
その前に――と江川は付け足した。
これ異常ないというほど口の端を歪めて。
「宇治、うしろ、うしろ」
206名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:09:22 ID:QOrXLiUP
振り向く。
景色が回る。
止まる。
いた。
立っている。
こちらを見ている。
立っている。
見下ろされている。
白石有希子。さん。
「えっと、どこから聞いてた?」
「白石さんかな、のあたりから」
淡々とした受け答えだった。
――ああそうか、ほとんど聞かれていたんだ。
それは仕方ないな。

立ち上がる。
これはどうしたことだろう。
好きかもしれない、そう認識したとたん、
彼女はまったく別の生き物に見えた。
それは今まで想像したこともないほど、
きらきらと輝いていた。

お洒落に気を使っているとは言い難い。
無表情も相変わらずだった。
冷静に、射抜くように僕を見ていた。
射抜かれた。
207名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:10:11 ID:QOrXLiUP
彼女の右手を両手で握った。
ああ、見られてる。
僕は思う。
教室中の人達、ざっと20人ぐらいが僕らを見ている。
きっと口をぽかんと開けて、驚きと好奇の目で。
不思議だった。
それがわかっているのに、
僕の目には白石有希子しか映らない。

まっすぐと前を見たまま、
「あなたが好きです」
そう言った。
「そう」
彼女が言った。
「私もよ」
少しだけ、ほんの少しだけ彼女が目を細めた。
僕の全身が一瞬震えた。
足から、手から、頭から震えが来て、
最後に心臓がきゅっと締まった。
「私もあなたが好き」

そんな始まり。
208名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:13:00 ID:QOrXLiUP

完。
もし男も女も素直クールだったらどうなるか?
という思考実験の結果生まれた一発ネタです。
ヒロインが実質ラストにしか登場しないという意味でも実験作でした。