「サトシとハルカのドキドキデートでGO!」
「ごめんね、サトシ!待った?」
「いや。俺も今さっき来たばっかりだから、気にしないでいいぜ」
今日は日曜日。先日の豪雨でこの先の橋が崩れて。橋の復旧までの間
このイザヨイタウンで足止めを食らっていたサトシ一行。
余った時間を理由してサトシとハルカは二人だけで街に遊びに行くことに・・・
サトシとハルカはイザヨイタウンの広場で朝の十時に待ち合わせをしていた。
サトシが既にそこにいるのを確認し、ハルカは慌てて駆け寄ってきた。
「ハルカ。今日はどこか行きたいところあるか?」
「うーん…、特に考えてないかも……」
「だったらさ、向こうに新しくできた遊園地に行こうぜ」
「遊園地?そんなのこの街にあるの?」
「へぇ〜ハルカ知らなかったか?ハルカならこう言うの真っ先に調べると思っていたけど」
「……悪かったわね。たまには私も調べ忘れる事もあるわよ」
「え、あ…わりっ」
ちょっと不機嫌になったハルカの機嫌をとるようにサトシは話す。
「んーー……、それじゃ今日は全部サトシのおごりね!」
「えぇっ!?全部おごり……って、待てよハルカ!」
さっさと走っていくハルカの後をサトシは追いかけた。
「ほらほら。早く来ないと置いてっちゃうかも」
「こら、待てって」
「……遊園地、か」
その様子を、タケシはちょうど二人からは見えない位置で観察していた。
自分がどうして今日付き合わされているか、その理由は昨日マサトから聞いていた。
(しかし本気で二人の後をつけるなんて…漢として虚しい)
聞かされた時は半信半疑、いや、はっきり言って嘘だと思っていた。
しかし十時五分前にサトシが到着した時、マサトが言ったことが本気だったと思った。
そして今、タケシはマサトを待っているのだが…、
(…遅いぞ…マサト…なんで、俺が…周りには綺麗なお姉さん沢山居るのに!!!)
約束の時刻は九時半。そして現在十時三分。
時間きっかりについたタケシは三十分以上待たされていた。
「ごめん〜待ったよね」
ようやくマサトがやって来た。
「…遅すぎるぞ!!(こんなに時間があるならナンパすればよかった!!)」
「えっと〜怒っているよね?」
「当たり前だ!!(お姉さん〜〜〜〜カンバっーーーク!!)」
「タケシごめん、途中で道に迷っちゃって」
「そうかなら仕方が無いか・・・(ポケナビは使えよ!)」
「それよりお姉ちゃん達は……?」
目頭を押さえ、ナンパ出来なかった無念の思いを噛み締めている
という感じのタケシを無視してマサトは続けた。
「ふう……。二人なら、向こうに新しくできた遊園地に行ったぞ」
二人が向かった先を指差しながらそう言った。
「あー!あそこって昨日TVで取り上げられたテーマパークだ!
やったぁ、行ってみたかったんだ」
目を輝かせながらウキウキと喋るマサト。
「……二人をつけるんじゃないのか?」
「もちろんそのつもり。でもどうせなんだし、遊びたい〜」
「……はぁ」
マサトに聞こえないように小さくため息を吐いた。
「だから、今日はタケシがお金出して!それじゃ行こう!」
「な、ちょ、ちょっと待ってくれ!なんで俺がそこまで……(今月厳しいのに!)」
既にマサトは脱兎の如く駆け出し、
タケシだけがその場に残されていた。ひゅ〜と一陣の風が吹く
妙に背中が寂しく見える…
「…なんで俺が…俺が…おっ…おっーー姉さんーーーーーーーーー」
タケシの絶叫に周りの人達は目を背けている。あっ警察がやってきた
「ハルカ、どうかしたか?」
さっきから少しだけ難しい顔をしているハルカに尋ねた。
「んーー……何か、妙な感じがしちゃって…」
「体調でも悪いのか?」
「ううん、そういうのじゃなくて…なんて言うのかなあ」
妙な感じ、後ろから刺されるような痛みがちくちくと感じられた。
ぷいっと後ろを振り返ってみるが、何も変わったところなどなかった。
「ハルカ?」
「……ううん、何でもない。私の気のせいだと思うから。さ、いこ」
サトシもそんなハルカの様子を少し疑問に思ったが、頷いて二人並んで歩き出した。
ハルカが振り返った通りの、その一角から、二つの顔がぬぬーっと出現した。
「――見つかってないみたい」
「ああ、そうだな。だが………」
タケシは周囲を見回した。二人には、
通行人からの奇異の視線が突き刺さるように向けられていた。
「ママァー、あのお兄ちゃんたち何やってるの?」
「しっ!目を合わせちゃいけません」
「ひそひそ…絶対怪しいわね、あの二人……」
「ごにょごにょ…ストーキング、ってやつ?」
「………なあ、マサト」
「え、何?」
「あの、だな…。もう少し周囲の目というものを気にしたほうがいいと思うんだが……」
(タケシこそ周囲の目を気にしないでナンパしているじゃない)
「周りのことを気にしてたら尾行なんてできるわけないよ」
「いや、どうせなら周りにもばれない様にしたほうが…」
「あ、ああぁ!二人が先に言っちゃう!ほら、急ごうタケシ」
しゅたたたた、とマサトが駆けて行く。
「…………」
一人置いていかれるタケシ。
また、溜め息が漏れた。とぼとぼとマサトの後を追いかけて行った。
人でごった返していた入場ゲートをくぐると、
そこは騒々しいほど賑やかなところだった。
「すっごいかも…。人がいっぱい…」
「できたばっかりだから。それにアトラクションとか、いろいろ楽しいイベントがあるんだぜ」
「サトシ詳しいね」
「今日のためにいろいろと調べてたんだ」
「じゃあ、今日はサトシがリードしてくれるんだ」
「ああ、俺に任せろ!」
自信満々に答えるサトシは今日のために頑張ってデートコースを考えてきていた。
「うーー、人多すぎぃ…」
「ああ」
人ごみに揉まれながら、マサトとタケシは入場できないでいた。
「もー、お姉ちゃんとサトシ見失っちゃったよ」
「ああ」
「っイタ!今足踏まれたぁ」
「すまん。俺だ」
「全っ然進まないよ!」
「しょうがないだろ。人の流れに乗り損ねたんだから」
「どーして?」
「どうもこうも無いと思うが」
「うーーっ、……あ、進みだしたよ。急ご、タケシ」
「ああ」
ゲートをくぐると一気に人ごみは散っていった。それでも辺りには人が大勢いる。
「二人はどこ行っちゃったんだろ……。タケシ、何とかならない?」
「ふう…。今は十一時か」
腕時計を見ながら呟いた。
「ここの敷地面積は約30万平方メートル。アトラクション数20。
閉園時間の夜十時までに全て回るのは不可能だ!」
・・・先程入場ゲートで貰ったパンフレットを見ながらタケシは言い放つ
タケシの話をマサトはうんうんと頷いて聞いている。
「さらに今は開園記念として期間限定の特別イベントも多数行われている」
「じゃあ二人を探し出すのは無理ってこと?」
「普通ならまず無理。捜索するポイントを絞る必要がある」
タケシはポケットからゲート付近に置いてあった案内図を取り出し、それを拡げた。
「二人の好みからどこに行きそうかを推理しないと
ハルカが好むアトラクションは分かるか?」
「お姉ちゃん……。可愛いポケモンとか結構好きだから、そういうところ行くんじゃないかな」
「なるほどな。ここから近いポケモン系のアトラクションは……、
『ヒメグマのプーさん危機一発』と『ピチューとコータスの大レース』だな」
「……微妙なタイトルだね」
「………ああ」
「と、とにかく、行ってみようよ!」
「わかった。じゃあそっちから捜査するとしよう」
「な、な、な、なにこのアトラクション!?」
「ひ、ひひひ、『ヒメグマのプーさん危機一発』だよぉっ!!」
サトシとハルカは廃屋をイメージしたセットを全速力で駆けていた。
二人の後方からはグロテスク?な姿をしたヒメグマのような
何なのかよくわからない物が追いかけていた。
「なんでこんなアトラクション選んじゃったの!」
「だって、ハルカ、可愛いポケモン好きだろっ!」
「あんな可愛くないヒメグマなんて好きになれないかもぉぉっ!!」
「すっすまん!!」
「……ねえタケシ」
「なんだ?」
「ここってさ、どう見てもホラーハウスじゃないかな……」
「……だな」
ぼろぼろに施された外装にべったりと塗りたくられた血糊。
入り口から時折聞こえる悲鳴のような叫び声が
そのアトラクションの不気味な雰囲気をさらに引き立てていた。
タケシは手にしていたパンフレットを開いた。
『可愛いヒメグマたちと触れ合おう。癒し系の新境地を切り開いた超未来型アトラクション!!』
総監督(超脚本家○上)制作OmL!
それを覗き込むように見ていたマサトは呟いた。
「詐欺じゃない……」
タケシもそれに同意してパンフレットを閉じた。
「それじゃあ出口を見張っておこうか」
「入らないの?」
「入る必要は無いだろ」
「えーっ!せっかくきたんだから遊びたかったのにぃ…」
「……サトシとハルカを尾行するのが目的じゃないのか」
「わかってるよぉ…」
「それじゃああそこのベンチで見張っていよう。あそこからなら出口がよく見えるぞ」
タケシが示したベンチの周りにはそばに飲食店があるため大勢の人で溢れていた。
自分たちはそれにまぎれて姿を隠せるので見張るには最適の場所だった。
「行こう」
「あ、待ってよ」
一人でさっさと行くタケシの後をマサトは追いかけた。
「っっっぃいいやああぁあぁぁぁ!!!」
走って角を曲がった瞬間、ハルカの目の前にヒメグマのプーさんがそのおぞましい姿で現れた。
ハルカの右腕が唸る。
っぐぽぁ、という奇妙な音を発しながら、
熊のプーさんはハルカのストレートパンチの餌食となりその場に倒れた。
当たり所か悪かったのかプーさんの顔が歪な形になってしまった。
「っ――――」
プーさんが小さく呻いた。。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
サトシとハルカは倒れたプーさんに駆け寄った。
倒れたまま、プーさんは右手を挙げて大丈夫という意思を二人に伝え、そして通路の奥を指差した。
「先に行けってことか?」
「でも、この人をこのままここに放っておくなんてできないかも」
二人が言い合っていると、プーさんは二人が来た道、
つまり二人の背後を指差したので、同時に振り返った。
『っっひいいいぃぃぃぃいぃ!!!』
その瞬間、二人は悲鳴をあげた。大量のヒメグマのプーさんが
わらわらと二人めがけて突進していたからだ。
倒れているプーさんはまた奥を指差した。
そのまま手を二人に向け親指をぐっと立て、そして事切れた。
「プーさん……」
「行こう、ハルカ!プーさんの死を無駄にしちゃダメだ!」
「……うん」
はっきりと頷き、そして二人はプーさんの団体から逃げるように駆け出した。
プーさんがドタドタと足音を立てて二人の後を追って行った。
「………オレまだ死んでないんだけどな」
一人取り残されたプーさんは小さく呟いた。
「っはぁ、はぁ、はぁ………」
「も、もうプーさんなんて大っ嫌い……」
息を切らし、サトシとハルカは出口に姿を現した。
「あ、あんなアトラクションだったなんて……。
もっと、触れ合いがあるみたいにパンフレットに書いてあったのに」
「うぅ〜。疲れたぁ……」
全力で駆け抜けてきたために汗も滲んでいる。
「ごめん。俺がもっとちゃんと調べてたら…」
「ううん、気にしないでいいよ。ねえ、次はどこ行くの?」
「休まなくて平気?」
「だいじょうぶ!さ、しっかりエスコートしてね」
「動き出した」
「ああ…」
二人をしっかりマークするようにタケシとマサトは尾行を開始した。
といってもパーク内は人がかなりいるおかげで
来るときの様なあからさまに怪しい行動はしなくてすんでいた。
「次はどこに行くのかな」
タケシはパンフレットを取り出した。
「こっちのほうなら、きっと人気があるこのジェットコースター式のアトラクションだろう」
「へー、そんなのあったんだ」
「見てみろ」
タケシが指差したほうにはここで一番大きな造形を誇る山があった。
その周りをジェットコースターのレールが幾重に取り巻いて走っている。
「すごーい!あんなのあったんだ。早く行こう」
「急ぎすぎると尾行にはならないぞ」
「いいからいいから。僕は遊びたいんだから」
「全く…。マサト…二人にバレたらどうするんだ……」
ぐだぐだ愚痴を言いながら、タケシはマサトに連れられていった。
「うっわぁー……、結構人並んでる」
「一時間待ちだって。昼前だからもう少し空いてると思ったんだけど」
順番待ちの列の最後尾に二人は付いた。
「終ったらちょうど一時くらいになるから、それからお昼にするか?」
「いいよ。今日は全部サトシに任せてるんだから、美味しいお店お願いね」
「ああ。それでな、ここが結構お薦めの店らしいんだけど」
「へー、どれどれ…」
「なっがぁーーい……、どうしてこんなに並んでるのぉ?」
「人気があるからだろ」
サトシとハルカの、後ろ数十メートルのところにタケシとマサトは並んでいた。
「一時間以上待たなきゃダメなんだ…」
「というかオレ達は並ばずに出口のほうで二人を待ち伏せていればいいんじゃないのか?」
「でもせっかく来たんだし、いろいろ楽しみたいよ」
「それはそうかもしれないが……」
「だったら決まり!並んでいよう!」
結局はマサトに丸め込められてしまった。
ようやくサトシとハルカの順番が回ってきた。
二人は座席、しかも最前列に座り、
がっちょんとコースターのセーフティガードを下ろした。
「うぅ〜、緊張してきたぁ」
「うん、緊張するね」
「でも何だかサトシって妙に落ち着いてるね。もう少し怖がってもいいかも?」
「ん、ああ…そうだね」
リザードンの背に乗り何度か空を翔ける体感しているサトシにとって、
しっかりと安全に固定されているのは別段怖いと思えなかった。
…ピジョットに乗ってオニドリルと戦った時は、生身でマッハ2を体験しているしな……
「サトシって絶叫モノとか強いんだ?」
「んー、強いって程じゃないけど、これくらいなら怖くないかなって」
「サトシ、かっこいいね」
「そ、そうかな。へへ……」
思わず笑いが漏れてしまった。
それからすぐしてジェットコースターががとんと音を立てて進み始めた。
「あうぅ、どきどきする……」
「大丈夫大丈夫。もっとリラックスしたほうが」
「でも最前列だし…。ね、手ぇ握っててもいい?」
サトシがそれに答えるより早くハルカの手がぎゅっとサトシの手を握ってきた。
それに応じるように、サトシも強く、優しく握り返した。
「きたきたよぉっ!僕たちの番だよ、タケシ」
「ああ」
二人から送れること十数分。
マサトとタケシもようやくジェットコースターに乗ることができた。
「かなり二人から遅れてしまっているな」
「いいのいいの気にしない」
「…マサト…それでいいのか…」
「それにしても最後尾になるなんて、ついてないなぁ」
「前のほうがよかったのか?」
「だって一番前のほうが興奮するじゃない」
「俺は…興奮しない…………」
タケシの口数が少ない、そして顔色も徐々に青白くなっていく
「タケシ顔色悪いけど…もしかして絶叫マシーン苦手」
「・・・・・・・・・・」
「えっそうだったら早く言ってよタケシ」
それからすぐしてジェットコースターががとんと音を立てて進み始めた。
「・・・・・・・・・」
「大丈夫だってタケシ!直ぐに終わるから!僕も怖いし」
加速していくコースター。前面から押し寄せる空気の壁。
「うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーーお姉さんーーー助けてーーーーー」
程なくしてタケシは恐怖のあまり気絶してしまった。
ここからは綺麗な映像とタケシのパラダイスをお送りします・・・
そうさ ラーラーラー なんて素敵な
ラララ ラーラーラー 言葉の響き!
ラーラーラー なんて素敵な ラララ
ラララー 僕のパラダイス!
ラララー それは ラララー
それは…
《お》《ね》《え》《さ》《ん》!
「っごちそうさまぁ〜!本当、ここの料理美味しかった」
ジェットコースターを下り、二人は既に昼食を摂り終えていた。
「そうか。喜んでもらえてよかった」
テーブルの上には空になった皿が重ねられていた。
「この遊園地って広いかも。朝の間中動いても二つしか回れなかったし」
「ごめん。俺の計画がもっとスムーズだったらよかったんだけど」
「ううん、そんなことないよ。とっても楽しかったんだから」
自分の計画の拙さを悔いて調子を落としたサトシに、
ハルカは元気をあげるように強くそう言った。
実際ハルカは、言葉どおり朝だけでとても楽しく過ごせていた。
「ありがと。うん、元気出てきた」
サトシはぱしぱしと顔を叩いて気合を入れた。
「じゃあ次行こうか」
「あ、でもあんまり激しいのはちょっと…」
ハルカが腹を擦っていた。食後ということもあり、
さっきのような激しいものは避けておきたかった。
サトシはさっきとうって変わって自信に満ち溢れた顔をしている。
「そのこともちゃんと考えてあるから大丈夫。次はあれだよ」
ハルカに見るように促がした先には、
パーク内のどこにいても見えるほどよく目立つ巨大な観覧車があった。
その頃タケシ達は・・・
「うぷっ・・・」
「タケシ大丈夫!!」
「気持ち悪い・・・また吐きそう・・・」
タケシはベンチでグロッキーとなっていた。
「ダメだよ!!吐いたら放送禁止になるから」
「もう限界だ」
「CM、CM入れて!!」
サトシとハルカを乗せたゴンドラは既に四分の一ほど回っていた。
「うっわー、絶景かも。ほらほら見て。みんなあんなに小っちゃい」
ゴンドラの中から見える風景にハルカははしゃぎ、
向かい側に座っているサトシはそんなハルカを笑いながら見ていた。
サトシが何も言わないことが気になったのか、窓から外を見ていたハルカがサトシに聞いた。
「あ、もしかしてつまんない?」
「へ?どうして?」
「だって何も言わないから…。私一人楽しくっても、サトシも一緒じゃないと」
「そんなことないよ。俺はハルカが楽しそうにしてるのを見てるだけで十分だよ」
ぽっとハルカの顔が朱に染まった。
「あ……ははは」
照れ笑いを浮かべながら再び窓の外へ視線を移した。
サトシとハルカが乗るゴンドラから数えて三つ後方のゴンドラにタケシとマサトが乗っていた。
「んんー……、間にあるゴンドラが邪魔すぎぃ」
二人がサトシ達を見つけたのは観覧車前に着いたとき、ちょうど乗り込む姿を目撃した。
正に偶然。その偶然を味方につけ、マサトは双眼鏡を覗きながら二人を観察していた。
(尾行の次は覗きか……)
タケシはマサトの行動力に呆れつつ感心しつつ、
向かいの席でぐったりとしていた。まだ調子がよくなっていなかった。
「あー、全然見えないよ」
「まだ下のほうだからな…。もう少しすれば見やすくなるだろう」
「んんー……、しょうがないか」
ハルカは未だに窓から見える風景に見入っている。
二人の乗るゴンドラは頂上に差し掛かろうとしていた。
外の風景に心奪われるハルカの横顔を見ているだけで、
サトシは観覧車に乗った価値があったと思った。
「サトシも外見たほうがいいよ。今しか見れないんだから」
ハルカにそう言われ、サトシは頷いて首を廻らせた。
頂上に達したところから見る景色は確かに見応えがあるものだった。
「へぇー。すごいぜ」
「でしょ。絶対見てたほうがいいかも」
サトシはさらに視線を動かした。ふと、先のほうにある隣のゴンドラが目に入った。
「――っ!」
思わず息を呑んだ。そんな光景が目に飛び込んできたからだ。
それを見たサトシはどぎまぎと、明らかに不自然な様子になった。
「どうしたのサトシ?」
サトシの様子が少し変化したことにハルカはすぐ気付いた。
「い、いや、何でもないよ。はは……」
とは言っても様子が普通でないことはばればれである。
証拠にハルカの猜疑に満ちた目がサトシを捉えている。
サトシ自身もあんなところを目撃したせいで気が気でなかった。動転していた。
そしてその視線がちらちらと自分の背後の窓に無意識に向けていた。
「あー、そっちに何かあるんでしょ?隠さないで教えてよー」
ハルカが身を乗り出し、サトシの背後の窓を覗こうとする。
「わーっ!だ、ダメだ!よくないから覗きは!」
「サトシ、隣覗いてたの?やらしぃー」
しまった、と思った。口を滑らせて余計なことを言ったことに気付いた。
ハルカが半眼で責めるように言ってくる。
「いや、違うって!覗きとかそんなんじゃあ……」
尻すぼみに声が小さくなった。故意でないにしろ覗いてしまったのは事実で、
弁解するのが言い訳じみていることが分かっていたからだ。
「――隙ありぃっ」
「って、あわわあぁっ!!」
そんなサトシの一瞬の隙をついてハルカが窓を覗いた。
覗いて、サトシと同じように息を呑み、顔を真赤にして引っ込めた。
「あ……うぅ」
言葉が出なくなった。途端に狭いゴンドラ内の空気が暗くなった。
少しの間、沈黙だけが訪れた。
「……や、やっぱり、覗きはよくないよね!」
「う、うん、そうよね!」
ははは、と乾いた笑いが響き、そしてまた沈黙。非常に気まずい空気が流れている。
その中で、ハルカが動いた。
「っり、ハルカ!?」
向かい合って座っていたハルカがそっとサトシの横に腰掛けて、その腕に絡み付いてきた。
「サトシ……しよ」
そっと、耳に届くかどうかという小声でそう囁いた。
もちろん何をするつもりかはいくら鈍いサトシでも分かっていた。
さっき偶然見てしまったゴンドラの中で行われていた行為と同じことをするつもりだ、と。
「し、しようって言われても……ほら、もう半分過ぎちゃったし」
「でも十分くらい余裕あるでしょ?」
「う……だからって、ここじゃあ……」
「私とするの、いや?」
いきなりしゅんとした声を出されてサトシは慌てた。
「ぜ、全然そんなことないよ!」
「だったら」
ハルカがぎゅっと腕に力を込める。柔らかな胸がサトシの腕にふにっと触れる。
サトシの下半身が疼く。
「いいでしょ?」
甘い誘いにとうとうサトシも折れた。絡みつくハルカの顔をそっと上げ、唇を重ね合わせた。
サトシの舌がハルカの口内へと挿し込まれ、ハルカもそれを受け容れる。
舌と舌が、別の生き物のようにねちょねちょと音を立てて絡み合う。
「ん……んふぅ…」
糸を引きながら舌が離れる。
手が優しくハルカの胸に触れると、身体をぴくっとさせて小さく喘いだ。
服の上からも伝わってくる柔らかさ、暖かさ……。
それらを全て感じ取るようにそっと手を這わせる。
乳首が次第に硬くなっていくのが分かり、
やがてはっきりとそのしこりが分かるようになった。
「気持ちいい?」
サトシの囁きに微かに頷いた。服の中に手を潜り込ませ、下着の上から胸を触る。
ぴっちりとしたスポーツブラが、胸の張りを際立たせている。
「んん…、ん、見られちゃうかもしれないね」
「じゃあやめる?」
「うぅ…意地悪ぅ」
マサトとタケシの乗ったゴンドラが観覧車の最も高い位置に達した。
「いい眺めー。乗ってよかった」
外を双眼鏡で眺めながらマサトは映る景色に酔いしれた。
「外を見るのはいいが、二人を見ていなくていいのか?」
本来の目的から少しずれていたところをタケシは注意しようとした。
「えーっ、タケシ、覗きが趣味だったの?」
タケシは二の句が出ずに固まったが、マサトは冗談、
とだけ言ってサトシたちの乗るゴンドラへと視線を戻した。
見下ろすかたちになっているのでしっかりと様子が見てとれる。
「でもこうやって覗くのってなんか悪い事、しているように…………」
「ん、どうした?」
急に黙ってしまったマサトを怪訝に思い声をかけたが返事がない。
まるでとんでもないものを見てしまい、驚きのあまり声が詰まった、そんな感じだ。
「おい、二人に何かあったのか?」
タケシがマサトの横へ歩み寄った。マサトが今も覗き込んでいる双眼鏡を手に取った。
サトシたちに何か起きたに違いない。そう思い双眼鏡を覗き込んだ。瞬間、
「みっ、見ちゃダメぇぇぇぇッ!!」
マサトがタケシの覗き込む双眼鏡のレンズに思いきり掌底を繰り出した。
音を立てて砕け散る眼鏡。
「へぁぁぁーー、はぁぁ、目がぁー!目がぁーーぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悶絶して床を転げ回る憐れなタケシ。
「み、見ちゃダメだめだ……ああ、やっぱり見たい!」
再度双眼鏡を手に覗きを敢行するマサト。少なからず興奮を覚えている。
倒れこんだままぴくぴく痙攣して叫び続けるタケシ。かなり哀愁を感じさせる。
潜り込んだ手の指が僅かに食い込む程度、微妙な力加減で刺激していく、
「うん……ん…」
すぐにハルカの口からは艶の混じった声が漏れだす。
「胸、敏感だね」
きゅっと抓るように力を込めると、初々しく彼女の体がぴくっと反り返る。
彼の指が、彼女の乳首の周りをなぞるように這い動く。
「ぁん…焦らさないで…」
実際二人に残された時間は観覧車が下につくまでの、せいぜい数分間だった。
「はは、ゴメンゴメン」
悪びれた様子もなくケロッとした口調でそう言うと、
その指が乳首を押すようにぷっと先端にあてがわれた。
さらに身体をくねらせてハルカが身悶える。
指先で勃起しかけている乳首をこりこりと弄り回す。
艶やかな声がその唇から漏れだす。
「ハルカ…」
座ったまま、後ろから抱きしめるように態勢を変えて胸に触れ続ける。
ハルカのお尻にサトシの充血しきったペニスが服を隔てて密着し、その熱が伝わってくる。
耳にはサトシの吐息がくすぐるように撫でるように吹きかかる。
ぞくぞくと背筋を駆け上がる感覚が襲っていく。
上着の中でサトシの手がもぞもぞ動くと、スポーツブラを上へずらした。
健康的な張りのある胸を、その形が変わるほど強く指を動かしだした。
「っふぅん!ん、は、あぁ」
肌に粘膜のように汗が張りつき、熱く火照ってきた。
サトシの右手はハルカの腹の上を滑るように這い、そのままショーツの中へと潜り込んでいった。
ハルカが嬌声とも溜め息ともとれぬ甘い声を漏らす。
恥毛のまったく生えていない恥丘を通り、僅かに充血した襞がのぞく秘裂へとその指がのびる。
「もうぐしょぐしょだ」
「言わないで…」
少し触れただけでくちゅくちゅと粘液が指に絡みつく。
「もう、いいか?」
そう囁くとハルカ、と頷き、サトシへ向き直った。
サトシがズボンに手を掛けて脱ごうとした時、ハルカがそれを制止した。
「待って。私が、脱がせてもいいかな?」
「え…」
驚いて声を上げたが、すぐに微笑んでいいよ、と答えた。
ハルカの指がズボンの止め具を外し、チャックを下ろしていく。
ズボンを下ろすと、トランクスが頂部にしみを作った意外と大きなテントを張っていた。
トランクス越しに形がはっきりと分かるほどハルカがペニスを握り締める。
敏感な亀頭に擦れる布の感触にんっと声を漏らす。
「気持ちいい?」
ペニスに息がかかるほどに顔を寄せ、先ほどサトシに言われた言葉をそのまま返す。
「はあ……あぁッ…」
返事を返す前にハルカが熱い吐息を亀頭へ吹きかける。
布越しに伝わる熱気がぞくぞくと刺激する。
「ハルカ、はやく…しよう」
直接刺激が伝わらないことにサトシは焦れてそう急かしたが、
ハルカはそれを聞こうとしなかった。
ペニスの形をしたトランクスを口に含み、ん、ん、と口内を蠢かせる。
吐息では伝わらなかった口内の熱が薄い布を隔てて伝わってくる。
トランクスがあるせいでサトシのペニスが濡れることはない。
潤滑油となるものがないためにハルカの舌の動きがはっきりと感じ取れる。
裏筋をなぞり、亀頭を円を描くように這い、尿道をぐにぐにと圧迫する。
いつも以上にはっきりと分かる舌の動きに
サトシは今まで感じたことがない新たな感覚を味わっていた。
しかし、ああなんということか。湿った布がペニスを覆っているせいで
いつもの痺れるような快楽が与えられてこない。
ハルカの巧みな焦らしの術中にサトシははまっていた。
「もう、我慢できない…」
ハルカのほうから行為を誘ってきていたはずだが、
いつの間にかサトシのほうがやりたくてたまらなくなっていた。
トランクスから口を離すと、
「したい?」
意地悪な声で、表情でそう言った。
口を離した後でもその手でペニスを弄るのは忘れない。頷くしかなかった。
「サトシのえっちぃ」
唾液とカウパー液で濡れたトランクスにその手を掛けて脱がし始めた。
引っかかっていたペニスが再び天に向かってピンッとそそり立った。
血管が浮き上がり、びくびくと脈打つそれは、凶悪な様相を呈していた。
次はハルカがスパッツを脱ぐ番だった。
観覧車の、その密室の中でハルカのストリップ染みた行為が行われる。
スパッツを脱ぎ終えると、次は同じようにショーツを脱いだ。
目の前で、下半身に一糸纏わぬハルカの姿に、ペニスはさらに硬さを増した。
座席に膝を立て、肩に手を掛けてハルカがサトシの上に跨ってきた。
期待に満ちた目で、恍惚とした視線を互いに交わした。
サトシはペニスをハルカの秘裂に擦りつけた。
粘り気のある液体が亀頭を濡らし、ペニスを伝う。
薄く熱い肉襞が、亀頭の先端に吸い付くように絡み付いてくる。
「きて……」
膣の入り口へ先端部をあてがい、少しだけくっと突き出す。
「ん…」
少しだけハルカが鼻から息を漏らした。
サトシの両手がハルカのお尻を撫で、そして腰へ回した。
「はあッ、く……ああ…」
「んうぅ…は、はあぁ……」
ハルカの膝が左右へ開き、少しずつ腰が沈み亀頭を呑み込んでいく。
薄い襞はピンと張り詰め、亀頭と共に内部へ巻き込まれる。
腰に回した腕を引き寄せると、すぐに亀頭は中に埋まってしまい姿を隠した。
「っはあぁ……ッ」
膣の浅い部分が押し広げられる感触に悦びの声を上げる。
サトシも腰を突き上げ、さらに膣壁を押し広げていく。
「くぅ…」
窮屈な中の肉がぎちぎちとペニスを締めつける。快感のあまり声を漏らす。
ペニスが全て埋没し、内臓を押し上げるような感覚がハルカを満たした。
入れたときと同じくらいゆっくりとペニスを引いていく。
それに合わせて二人の口からも息が抜けていく。
今度は一気に腰を突き上げる。急な刺激にハルカは声なき悲鳴、いや嬌声を響かせた。
そしてまたじっくりと、肉の感触を味わうように腰を送っていく。
「うん……あッ、はうぅ……」
ペニスが膣を擦り、そのたびに二人の頭の中は次第に白く、何も考えられなくなっていく。
本能のまま、二人の腰は合わせて動き続ける。
繋がっているところからは粘液と粘液が絡み合う卑猥な音が響いている。
泡立った白い液が次々と生み出され、
二人の内腿には飛び散る愛汁がべっとりと貼りつき、てらてらと光っている。
ぐちょぐちょという粘液同士が擦れあう音、肉と肉がぶつかりあう音、
二人の荒い息遣いだけが密室に響き渡っている。
じわじわと絶頂という限界が近づいている。果ててしまうのは時間の問題だった。
「は、っはあ…いいよ、ハルカ……」
「ああ、私もっ…いい、イッちゃうかも」
ハルカがいつの間にか積極的に腰を振っていた。
サトシは両手でハルカの腰を掴み、さらに激しくハルカの腰を振らせた。
「っひはあぁぁぁッ!あ、いいッ!ダメ、イきそう…!」
ハルカの腕がサトシの首に強く巻きついた。胸が顔に押し当てられ、呼吸が苦しくなる。
ちょっと顔をずらして深く息を吸い込んだ。
そこで、窓の外へと移った視線が今の状況を伝えてきた。
「まずいっ!」
快楽に酔っていたサトシの頭は一気に冷めてしまった。
もう既に観覧車は六分の一を残すほどのところまで来ていた。
慌ててハルカからペニスを引き抜き、ズボンを上げて衣服の乱れを正した。
「ハルカも早くスパッツ穿いて!」
未だに火照った身体と赤みを帯びた顔をして状況を把握できていないハルカに急いで説明した。
すぐにハルカも理解し、慌てふためいて行為の痕跡を消し始めた。
「うわわっ!床に水溜りが!」
二人でハンカチを取り出しささっと拭いていく。
「ああっ!ちょっと臭い気がする!?」
「匂い消し匂い消し……ってそんなことできないよ今!」
窓を開けることはできず、かといってスプレー類など持ち合わせてはいなかった。
「と、とりあえず落ち着こう。慌ててるとかえって怪しまれるし」
「そ、そうね…。ここは大人しく座ってたほうがいいわよね」
二人並んで腰掛け、深く深呼吸をして気分を落ち着かせた。降りる時が近づいてくる。
扉を開けられ、ありがとうございました、と言われただけで、
特におかしな顔をされはしなかった。
幸いにも待っている客もいず、何とかその場をしのぎきった。
「危なかったあー。ばれたりしたら結構やばいことになるし」
「サトシが気付いてくれて本当に助かったかも。……でも…」
ハルカが俯き、もじもじと股を擦り合わせていた。
途中で行為を中断し、まだ身体が疼いてるのだ。
サトシもそうだった。すっかり萎縮しているが、
寸前で止めてしまったために溜まってしまっている。
「続き…しようね」
「うん…」
サトシの誘いに、ハルカは恥ずかしそうに頷いた。
『ダンジョンオブラビリンス』
洞窟を模したそこは、薄暗く、ひんやりとした空気が漂っている。
ラビリンスと名付けられているが、それほど入り組んでいるわけではない。
雰囲気を楽しむための、それが一番の目的のアトラクションであり、二人に都合がよかった。
本筋から分岐した小さなルートの、その奥の奥。
背筋が寒くなるような冷たい中で、二人は強く、熱く抱き合った。
岩肌が剥きだしになっている壁にハルカを押し付けるように強く抱きしめ、口付け、舌を絡める。
観覧車でおあずけを喰らうかたちになった二人は、それを埋め合わせるように互いを求め合った。
もう興奮が高まって、顔は赤みを帯び、上気した身体が熱い。
唾液の絡む音が、周囲の静けさを破るように響き渡る。
舌を離すと、すぐにハルカはしゃがみ込み、サトシの股間からその怒張を引っ張り出した。
いきなり咥えようとせず、舌と突き出して尿道付近をちろちろと舐め上げる。
「……っ」
たまらず目の前の壁に手を付き、腰が砕けそうになるのを堪える。
先ほどまでハルカと繋がっていたそれの限界は近い。
激しくやられればすぐにでも精を放出してしまうのだが、
身体の欲求をわざと焦らすように、ハルカはゆっくりと攻めたてる。
陰嚢を弄り、付け根を唇で挟み込み、亀頭へゆっくりと這い上がっていく。
ハルカの薄い唇の動きに合わせるようにサトシの射精欲も高まるが、決定的な刺激を与えてこない。
白い熱が腰に集まり、溜まり続けるばかりで開放できない苦悶がサトシを襲う。
舌が裏筋を這い、ようやく唇がサトシの先端を包み込む。
思わず、溜め息が漏れる。
艶やかな唇がすぼめられ、ペニスをしごき始める。
すぐにでも出してしまいたいという快楽に、その身を振るわせた。
堪えること叶わず、一瞬にしてハルカの口内でびくびくと脈打ち、暴れだした。
口奥に白い塊がへばり付き、苦味を含んだ匂いが粘膜を刺激するが、構わずにこくりと飲み込んだ。
鼻へ突き抜ける刺激臭が、興奮を加速させていく。
言葉を発することなく、そっとハルカを立たせ、壁に手を付くように促した。
サトシが、お尻を突き出すような格好をとらせたハルカの背後から覆いかぶさった。
隙間なく密着した二人の身体。ハルカのお尻を、
サトシの萎えたそれがくすぶるような熱さでくすぐってくる。
「ぁんっ…」
胸に触れるだけで押し殺した声が漏れる。
胸のほうは感度を確かめる程度でさっと流し、先を急いだ。
早く欲望を満たしたいという思いがそうさせている。
ハルカのスパッツもをショーツも一緒に一気に脱がし、
あっという間に突き出されたお尻が露わになった。
サトシは膝を折ると、貪るようにハルカの薄い陰唇にしゃぶりついた。
「んん……」
そこから湧き出るように絶え間なく汁が出てきては床を汚していく。
充血して大きくなっている蕾を舌で転がす。
「ッ……」
ハルカの背中が仰け反るように激しく痙攣する。軽い絶頂が襲ってきた。
全身の力が抜けるように感じられ、壁に上体を預けるように寄りかかった。
舐めていただけで、果ててしまっていたサトシの肉茎が再びその硬度を取り戻した。
まだ突き出されているハルカのお尻を掴むと、
さっきまでしゃぶりついていたところに擦りつけて先端を濡らす。
止まることのないと思えるほど溢れている露は、
先端だけでなく全体を濡らすほど滴っている。
十分に濡れたことを確認すると、サトシは一息間を置いて、
そして腰をぐぐぐっと前に押し出していく。
肉を割って進む感触は少なく、思った以上にすんなりと呑み込んでいく。
それが入ってくると、ハルカの身体も芯に棒を入れられたように硬く緊張していった。
腰の抽迭は意外なほどスムーズだ。多量に分泌された愛汁のおかげだ。
さっきイッたとは思えないほど中の肉はくねり、揉みたてるように吸い付いてくる。
淫らな水音を立てて二人の腰が何度もぶつかり合う。
声を出さないように堪えながら、腰を絡ませる。
一度出してしまったために次の射精までまだ持ちこたえることができる。
腰を送るスピードを上げ、ハルカをイかせようとする。
ハルカの身体がサトシに押し潰されるようにぺったりと壁に張り付いた。
動きに合わせて切なげに息が漏れる。
「ひぐッ、んぅ…うぅぅ」
ペニスをもぎ取るような動きで肉壁が波打ち、ハルカはきゅんきゅんと蠢動を繰り返した。
「ん…」
ハルカの絶頂に合わせるように、サトシも盛大に中に出した。
ハルカの子宮の中がサトシの精子で満たされていく。
「温かいかも〜」
二人は砕けるように膝を折り、そのまましばらく動けなかった。
ぱっくりと開いたハルカの秘穴と抜き取られたサトシの肉茎を繋ぐように、一筋の糸が引いていた。
時刻は六時を回っていた。満足した様子で二人は退場ゲートをくぐった。
「今日はありがとサトシ。とっても楽しかった」
にっこりと笑いかけるハルカの笑顔が、傾きかけた西日に照らされて眩しかった。
「本当?そう言ってもらえると嬉しいぜ。頑張った甲斐があったな」
「うん。タケシ達が心配する前に一緒に戻ろう」
「ああそうだな」
その頃…タケシ達は
「ああ、ああ、目が、あああぁぁぁぁあーー!・・・あ゛あ゛あ゛あ゛・・・!!」
「タケシ・・・あっ!あんな所に美人のお姉さんが!!」
「うぉぉぉーーーーお姉さんーーーーー」
目頭を抑えながらタケシは本能の赴くままにマサトの示した方角へと走り去っていった
後日、タケシの目の傷は完治した。元々細目の関係で大した傷では無かったのだ