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貧乏姉妹―哀奴被虐篇ー:
『あっ、もう撮影してるんですか?…………山田きょう、ピー歳です。今日は新人アイドルのビデオオーディションに参加しています』
山田あすは、テレビに映る姉の顔を見ながら必死に手の震えを押さえていた。
事の起こりは三日前、姉が突然失踪しポストに一本のビデオテープと大金の入った封筒が投函されたことから始まる。
警察に届ける事も考えたが、このビデオには他人に見せれない姉の尊厳があると直感で悟った為まずは確認することにした。
仲の良い隣りの作家の居間を借りビデオをセットする。
映像がただのビデオレターであることを信じて…
映し出されたのは、打ちっぱなしのコンクリート壁、パイプ椅子に座る自分の姉だった。
十分程のインタビューの後、カメラ側の人物が少女の前に札束を置く。
いくらだろうか、一桁以上の諭吉を見たことのないあすには、その金額の見当も付かない。
「どうでしょう。ここにある契約金であなたのプロモーションビデオを撮影する権利をいただけないでしょうか?」
銀行員のような誠実な口調で男はきょうに契約を持ち掛ける。
―ブブブ―
急に場面が変わり数人の日焼けした男達に押さえ込まれる裸体のきょうの映像が現れる。
口にはギャグを噛まされ涙を流しながら必死に逃れようとしている
―ブブブ―
また映像が変わり交渉の場面へと戻る。
きょうは笑顔でアイドルになったら妹を沢山甘やかしてあげたいなど未来への展望を語っていた。
あすは涙が止まらなかった
「妹が生まれた時にお母さん死んじゃったから、妹にとってのお母さんにもなりたいんです。」
―ブブブ―
「オラ!子宮に出してやるよ!孕めよ!これで念願のママになれるぜ!」
「ウゥーッ!」
―ブブブ―
その後何度となく笑顔のインタビューと泣いている絡みを交互に見せられ、最後にバスタオル姿のきょうが画面に向かって話し始めた。
「あす、お姉ちゃんはまだ帰れないけど大丈夫だから…。きっと帰るから…だから待っててね…
あす…ごめんね」
そこでビデオは途切れ、砂嵐となった。
あすはただ札束を握り締め、むせび泣くことしか出来なかった。
終