アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女

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352名無しさん@ピンキー
私は、おはようのキスがしたくて――その欲求が抑えきれずに――彼の口枷を外そうと手を伸ばした。
彼だってもう、私がどんな風に彼のことを思っているか理解してくれたはず。無闇に声を上げたりはしないと思う。
口枷に手が掛かる。なぜか彼の顔は怯えているように見えた。そんなわけないのに。
口枷が外れて、
「ライナ――」
「この変態女っ! 近寄るな、触るんじゃねえ!縄をほどいて俺を家に帰せよっ!」
ライナーは絶叫した。
「変態?」
無意識に、私はリンケージで殴っていた。無意識なのだから、加減なんかできるはずもない。
パンッ、という甲高い音が四、五回もしただろうか。気が付くと、両の頬を真っ赤に腫らしたライナーが倒れていた。
酷いことをしてしまったと思う。今の彼はあの女の影響を受けているから、私を受け入れてくれるに時間がかかるのはしかたがないのに。
私は謝ろうと口を開いて、
「ごめん――」
けれどそれは、ライナーのさっき以上の大音量の叫び声にかき消されてしまう。
「助けて! 助けてくれっ! ミシャ!」

一瞬、目の前が白くなったような気がした。
顔面をリンケージで蹴った。
なんで、私の気持ちを分かってくれないんだろう。こんなに大切に思っているのに。
馬乗りになって、リンケージを無茶苦茶に叩き付けた。
どうして、あの女の名前なんて呼ぶんだろう。よりによって、あの女の名前を。
叩くのをやめると、両手を拘束してあるせいで顔を庇うこともできないライナーは、
ぼろぼろになって鼻からは血を流していた。
「やめて……やめてくれよ……」
弱々しく呻く彼にまた口枷をはめて、手足の拘束を確認してからクローゼットに押し込める。
一緒に朝食を摂ろうと思ったのに――。

まあいい。私がプラティナにいってる間、ひとりでいれば頭を冷やしてくれるだろう。
そうすれば、誰が本当にライナーをかけがえなく思っているか理解してくれるはず。