男装少女萌え【7】

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6474:2006/10/08(日) 20:33:09 ID:eO+T9aR+

「よし。俺の部屋に来い。一人では腰に巻くのも一苦労だろ?」
一瞬、シトウェルの顔から全ての表情が消えたことに、アーレントは気付かなかった。
「――いい!」
「遠慮するな」
「してない! 慣れてるから自分で出来る!」
「そうか。だがマッサージは一人では出来ないだろう」

嫌がるシトウェル(『かどかわしだ!』『やめろ変態!』)を引きずり、部屋に連れ込んだ。
それでもまだ逃げようとするシトウェルを何とかなだめ、押さえつけ、部屋の電気を点けないという奇妙な妥協案の末、彼をベッドにうつぶせに寝かせる。

シトウェルは落ち着かないようである。
暗闇の中ぼんやりと、しきりに上半身をくねらせているのが見えた。

本人の強硬な希望で、最初は服の上からマッサージに励んだ。
服が厚めだったこともあるが、この時点でアーレントは、シトウェルの腰が細いこと、男にしては柔らかい肉付きだと思っていただけだった。
痛めているのだからほぐすように優しくしたつもりである。
「加減はどうだシトウェル」
その甲斐あってか。
返事はない。よくよく耳を澄ませば静かな寝息が聞こえる。
開始三十分のことだった。

アーレントはちょっとばかり気を大きくした。
あれだけ嫌がっていた子供が、こんなに気持ちよさそうに眠っている。
今日はこのままここで寝させてやっても良い。
朝起きて、驚く顔もまた見物である。

ひょいと、シトウェルの服の裾を摘んだ。
どうせ眠っているのだ。
じかにやった方が、効き目がある。
6485:2006/10/08(日) 20:33:49 ID:eO+T9aR+

裾から手を突っ込み、腰に触れたところでアーレントはやっといぶかしんだ。
服のごわごわした邪魔を削除した感触は、あんまりにも肌理が細かい。
すべすべと指が滑る。
温かいのも気持ちよく、手の平がうっかり意味のない往復をする。

「ん……」
シトウェルが身じろぎをした。
慌てて手に力を込めなおす。
今起きられたらそれこそ変態呼ばわりされそうだ。

わき腹を掴むような姿勢。
親指でごく軽く、骨の周りを押していく。

――ここで、気付いた。
手の平が追った腰の形。
くびれがある。

「…………いや」
もちろんすぐに否定した。そんなことがあってたまるか。
細い腰の男というのはいるものだし、シトウェルは子供、細くて当たり前だ。
だが、どうも……気になる。
「悪いシトウェル。ちょっと確かめさせてくれ」
小声で呟き、しばし手を宙で固め、迷う。
「……下、はまずいな」
平らな腹の下にゆっくり手を滑り込ませ、服を捲り上げながら頭の方向に滑らせる。
触れた腹があまりに温かかったので、シトウェルが自分の手を冷たく感じているのではないかと思ったがそれは杞憂に済んだ。
シトウェルは目を覚まさない。寝返りも打たない。

「……あれ」
手の甲に触れているはずのシーツなど感じなかった。
感覚は全て手のひらの上、柔らかいものにのみ集中した。

「嘘だろ?」


6496:2006/10/08(日) 20:34:23 ID:eO+T9aR+



「アーレント!」
「なん、なんだ」
「五回も無視したな」
「……悪い」
「いや…… あのさ、昨日のことなんだけど」

結局あれから一晩明け、どうしたかというと、どうもしていない。
悩んだだけである。
時々寝返りを打つシトウェルを前に一時間、とりあえず部屋から追い出そうと思いついてから十分。
彼女を抱え上げ、部屋で下ろし、自室に帰還するまで十分。
それから朝まで考えていた。一睡もできず。

「ああ、そのことだが俺からも話がある」
シトウェルは緊張した仕種で首を傾げた。
「何?」
「大事なことだ。今日の夕方、俺の部屋に来い」
彼女もやはり、確かめたかったのだろう。
何かを納得したように、小さな肩を落として頷いた。

一応の結論は出た。
たった今出た。
この綺麗な少女が剣など掴む様を、見て見ぬふりなどできない。
昨日までなんとも思わなかった腕の切り傷、大股歩きにすら痛々しさのようなものを感じてしまう。
間違っている。
女性には平和的な場所で笑っていて欲しいではないか。

6507:2006/10/08(日) 20:36:58 ID:eO+T9aR+

書類の散乱する木の机の上に腰掛け、シトウェルはどうも固い印象であくびをした。

「昨日は本当にしくじったよ。間抜けにもほどがある。すごい笑い話だまったく」
「いや、俺には笑えん」
閉めた扉を一旦開き、周囲に誰の気配もないことを確認して再び閉める。
今度は鍵をかけた。

「本名は? シトウェル・クライヴ」
「どうしてそんなことを?」
「しらばっくれるな。お前が女だからに決まっているだろう」
ひと睨みするとシトウェルは赤い舌を出した。
「ああ、やっぱばれてたか。一応確かめておかないとさ。シトウェルは本名。苗字は嘘っぱち」
彼女が座っている机の後ろに、大きな窓がある。
夕方から夜に移る直前の寂光が、あかがね色のカーテンを介して彼女を背中から照らしていた。
物は置いていないつもりだ。
狭い一人部屋には寝台とささやかな棚、机と椅子しかない。

「あんた紳士だったんだねアーレント。知らなかった」
昨日はな、と言おうか迷い、アーレントは口をつぐんだ。
今朝彼女は大いに慌て、後悔し、それから少しほっとしたことだろう。
男の前で寝こけても何もされなかったのだから。

「話すことは一つだ、シトウェル」
ぶらぶらと前後に揺れていた、シトウェルの足が止まった。
「ここを出るんだ。真っ当な、女の就く仕事に戻れ。それか男を見つけて子供を産め。お前のしていることは間違っている」
予想していたのだろう。シトウェルは聡い。
聡い、生意気な、可愛い子供だ。

「嫌だね」
頬を歪めただけのような笑顔で、少しもためらうことなくシトウェルは言い切った。
「どうしてそんなことお前に言われなくちゃならない。稼げる仕事を全部男にやるなんてうんざりだ」
「稼げる仕事じゃない。危ない仕事だ」
「何も危なくない。たまの諍いのどこが危ないんだ」
「人死にはある! こういう血なまぐさい事は――」
「剣の腕なら男にだって負けない!」
「そういう問題じゃない!」
「うるさい唐変木!」
シトウェルはいつのまにか机から降り、噛みつくような視線でアーレントを見上げていた。
確かに、可愛い子供のはずなのだが。
これは人の目だ。戦う人の。反抗する女の。

鍵をかけた。カーテンも引いてある。

相手はこちらの胸倉を掴んで唾を飛ばしている。
そっちがその気なら、多少手荒な真似になっても――脅かすだけなら。
彼女のためだ。
6518:2006/10/08(日) 20:38:07 ID:eO+T9aR+

アーレントは静かに襟ぐりを掴む小さな手を掴んだ。
華奢で白い。
これで男に混じっていたのだから正気の沙汰じゃない。
「こういう危険は考えたことないのか。命を奪わず、ころされる」
「……仲間にか?」
アーレントは固まった。
けれどそれは表面に出ないほど僅かな時間。
シトウェルの手首を片手でまとめる。
力を込めた。
抵抗はなかった。
「そうだ」
「俺は」
初めて、シトウェルの眉が歪んだ。
「男だからね。俺を抱く奴は、だから変態。腹の底から蔑んで、死ぬまでそいつのことを馬鹿にしてやる」

怯えを目の奥にちらつかせて、ここまで大口を叩けるとは。
さすが、試験と訓練を乗り越えてきただけのことはある。


「わ」
突き飛ばすには距離が遠かった。
心のどこかに可哀想という感情があったのも嘘ではない。
抱えて、すばやく投げるように寝台の上にシトウェルを降ろした。
落下の瞬間、青い目はアーレントの腕を見ていた。
「お前は女だ。だから俺は変態じゃない」
シトウェルの手が引っ掻くような仕種をした。足も暴れる。
「いい加減にしろ! アーレント、お前こんなことする奴なのか!」
「騒ぐと外に聞こえる。問答無用で追放だ」
「お前もな!」
「確かめていたと言えば済む。今なら」
体重をかけたら折れてしまうのではないかと思ったのは初めてのとき以来だ。
それほど力を込めた。
シトウェルの力は予想以上に強く、何発か殴られ引っかかれ、やっと四肢を取り押さえた。

「くそ! くそ! 力だけは強いんだよお前らは! 放せ!」 
「そうだシトウェル。お前は適わないんだよ。どんなに鍛えても」
「そんなのまだ分からない!」
「軍を止めると言え。神と王に誓って、これからは体に傷のつかない生活を送ると」
埃が舞う過程でめくれ上がった裾から、昨日は気付かなかった青あざが見えた。
槍か何かで突かれたのだろうか。
そこかしこに似たような跡がある。きっと全身に。

「……そうしたら俺は」
「止めるって? ゴーカンを? ふっざけんなよ、ちくしょう!」
シトウェルの膝関節が曲がろうとするのを足で押さえる。
「んなこと、言…るわけないだろ、馬鹿アーレント!」
6529:2006/10/08(日) 20:38:48 ID:eO+T9aR+


「降参したくなったら、いつでも言え。すぐに言え。そうじゃないと、俺が本気で困る」
傷つけることになる。
昨日の晩まで軽口を叩きあっていた仲間を。

後には引けないかと考えたが、それを能動で可能にする手段は見当たらなかった。
ここでやめてしまっても、シトウェルには裏切られたという認識で記憶が残るだろう。
それはなぜか、耐え難い。
最後まで、もしくは、彼女に止めてもらえば。
「……責任転嫁できるな」
自分はシトウェル自身のこれからを思って、と。
卑劣だ。
卑怯だ。
最低だ。
これでは抱きたくなったから押し倒してみましたの方が、まだかわいい。

「本気で恨むぞ。ものすごく、お前のこと嫌いになるぞ」
「おかしいな。お前は俺のことを既に嫌っていたものと思っていたが」
「今以上だ」
「……構わない」
脱がされる自分を見たくないのだろうか、ずっと睨みつけていたシトウェルの視線が脇に逸れた。
白いさらしの結び目を解きながら、アーレントは思った。
そういえば昨日、巻いてやらなかった。
右腕でシトウェルの両関節を押さえながらの作業だがそれは意外とすんなり済んだ。
シトウェルは時おり体を震わせる以外は抵抗なく、それでも必死でシトウェルを拘束する自分が滑稽である。
65310:2006/10/08(日) 20:39:35 ID:eO+T9aR+

「なあアーレント」
想像よりあざは少なかった。
そして、綺麗だった。
「止めときなよ。ほら、今ならまだごまかせそうだ。し、身体測定とかって」
「こっちの台詞だシトウェル。今なら、まだ……」
情けないことに、この早い段階でもう断言できなかった。
十六歳という年の女を抱いたことはないが、おそらくはその平均と思われる小ぶりの乳房。
薄暗い部屋の中で白く浮かび上がった気がして、目を細めた。
その頂点についているものはまるで小さい。
鼓動が激しいのか、不安げに揺れている。
思わず手をかぶせた。
「ちょっと、やめ……!」
アーレントと同じように、彼女にも言い切ることは出来ないようだ。
半ば恐喝のような条件を承諾しない限り。

それがどういうことか、ゆっくり考える余裕がもう、アーレントにはない。


昨晩も思ったことだが、シトウェルの肌は本当に手触りがいい。
色と見目だけなら確かに上がいるかもしれないが、絹と卵の中間のようなこんな女をアーレントは知らなかった。
色素と量で、こんなに薄く薄く透けた秘部も初めてみた。
「ん……っ、もう、あの、そこはだ、だめだ」
秘裂に指を滑らせる。
頑なではあったが、濡れた入り口に突き当たった。
なんどか往復してから、指を滑り込ませる。
「…………っ」
第二関節まですんなり入った。
温かく、柔らかく、時々慌てたように締まるのがシトウェルらしい。

優しい男ねと言われたことがある。
優しすぎて私には物足りないと。
以来、乱暴を試みたこともあったが、今はどうしても優しくなるしかなかった。
優しく犯すというのも変な話だが、可愛い部下の――そうだ、可愛い、シトウェル相手には。
65411:2006/10/08(日) 20:40:14 ID:eO+T9aR+

吐息の湿度が高い。
日の光はもう、最後の一片になっているのか、それに縋るようにアーレントはシトウェルを見た。
目を瞑っている。
まぶたを撫でて、開けさせる。
潤んだ明かりが小さく灯った。
短い髪が汗で頬に張り付いている様、困ったように眉を寄せて、傷ついたことを隠すみたいに唇を結んで。
「綺麗だ」
目が離せない。
嘘はどこにもない。
「女のお前の方が、俺は……」
だが、口にも出来ない。
行為は睦言の入る隙間のない種のもの、一方的なものなのだから。
青い目があまりに澄んでいて、どいうなりゆきでこれが始まったのか忘れそうになる。
「なんでもない」
「だったら」
シトウェルの瞳がいっそう濡れた気がした。
「……最初から何も言うな」

ぞくぞくした感覚が背筋を這うのを、もうずっと我慢している。
さっさと太ももをわしづかみにしたかったが、このまま挿れても彼女は処女、達するなんて到底出来ないに違いない。
痛い思いをさせ、彼女の望まぬ手段で初めてを奪うのだ。
せめて一度くらいは。


「は? アーレント!」
抗議の声はすぐに掻き消えた。
閉じようとする腿を押し返し、顔を寄せる。
独特の香りが好ましい程度に鼻を擽る。
そっと息を吹きかけると、入り口がぴくりと動いた。

「アーレント、何、する……」
触れるようなキスを丘の上にしてから、彼女をいじめにかかる。
65512:2006/10/08(日) 20:40:50 ID:eO+T9aR+

「あ、え、ああ、なに、これ、んんっ……アーレン、ト」
こんなときに幸福を感じてしまうのは、間違いのような気がする。
まだ早いという意味でも、犯罪行為の合間だという意味でも。

「ひっ、あ……っ」
どこもかしこも控えめだった。
招き入れる花びらも薄く、もちろん蕾もとても小さい。
舌先でないと扱えないような気になるほどだ。
シトウェルは自慰を知らないのだろうか。
漏れる声に驚いたように自分の口を手で塞ぐ姿は、感じているのと半々で途方にくれている感がある。
可愛いと思って見つめると気付かれた。
「こっち、見んな、ばか……」
彼女が意図した睨み方になっているか、甚だ怪しい。
蕾を絡み取るように舐めると、シトウェルは子犬のような声を上げて目を瞑った。

そろそろ追い詰めていいかもしれない。
でないと、こっちが先にどうにかなってしまう。
追い詰められているのだ。とっくの昔に。
「あ、あ、…レン、待っ……ああっ!」
口周りで舌が鳴ったのか、シトウェルの部分が鳴ったのか、卑猥な水音が大きな存在感を持って耳に届いた。

細い腰が浮いた。
シトウェルを見る。表情を。
半開きに綻んでいた唇がきゅっと閉じ、薄暗がりのなかで瞳が星のように輝いた。
荒い呼吸の、甘い香りが届いてくる気がする。

ああ、そうだ。
眉を寄せる表情というのをシトウェルは普段からよく見せていた。
その皺が寄ったのを何度も見ていて、なぜ彼女が女だと気付かなかったのだろう。
シトウェルが今度顔をしかめた時、今日を思い出さずにいられるか自信がない。

無駄な脂肪のない、引き締まった腹が一瞬しなり、すぐに落ちた。
65613:2006/10/08(日) 20:42:06 ID:eO+T9aR+


「……悪いが、シトウェル」
シトウェルはぼんやりと、何が起こったかわからないような顔をしていた。
「まだ終わらないんだ。いや、その……」
本当なら、ここで聞かなければならないことがある。
まだ軍を辞める気はないか。
そうしたら、ここで止めてやると。
シトウェルは何も言わなかった。
アーレントが何に躊躇したのか良く分かっているはずだ。
つくづくひどい、と口の中だけで呟いて、アーレントはシトウェルの足を掴んだ。

「…………ほん……に」
シトウェルが呟いたとき、よりによって先っぽだけ挿入されたという状況だった。
じりじり、冷や汗すら流している心地でアーレントは彼女を見下ろした。
「アーレント、本当に……」

――今さら。
答えの代わりに、腰を押し進めた。

「い……!」
泣かれたらという想像が一瞬頭を過ぎったが、シトウェルは痛いとすら言わなかった。
ひたすら歯をくいしばっているようだ。
この狭さで痛くないわけがないのに。
呼吸音だけが急激に高まった。

繋がった部分から頭に、感覚が総動員で走る。
だめだ。
理性がはじける。
そこから先は、快感を貪る動物だった。


65714:2006/10/08(日) 20:43:34 ID:eO+T9aR+



カーテンを引くと、赤みがかった大きな月が低いところで輝いていた。
雲が早い。

「あーあ」
アーレントが振り返ると、肩までシーツで隠したシトウェルが頭を掻いていた。
「俺が明日馬に乗れなかったらどうしてくれる」

なんと答えればよいやら。
迷って、ごく真っ当なことをアーレントは呟いた。
「辞めちまえばいい」
「どこで働くのさ」
「手配してやる」
「ここ以上のお給料で?」
「それは……何だ、できるだけだな」
「話にならない」
言葉を濁してしまうあたり、出世しないタイプだとアーレントは自分で思う。
「話にならないけど……頼んでやろうかな」
小声で吐き出されたシトウェルの言葉に、アーレントは顔を上げた。
どうして急に、あんなに拒んでいたものを。
「ああ……ああ、必ず、いいところを見つけてやる」
「どうだか」
「まかせろ。シトウェ……」

――これは多分、一生ものだ。
一生引きずる後悔に違いない。

「…………」
アーレントは足元を見た。
月明かりで伸びた影は寝台に、シーツの波の上で泣いているシトウェルに届きそうだ。
何度も口を開き、謝りかけ、言葉が見つからず途方に暮れた。

658628:2006/10/08(日) 20:44:39 ID:eO+T9aR+
次でおしまいのはずだ
659628:2006/10/08(日) 20:47:06 ID:eO+T9aR+
あ、話がね。
今回の投下は以上です。

1レスにどれくらい詰めればいいやら
660名無しさん@ピンキー:2006/10/08(日) 21:15:47 ID:GCAzefir
超GJ!今回のはかなり見易いから気にしなくていいと思うよ。
つーか、このくらい文章が上手いと改行の具合なんて気にならない。
シトウェルがどこまでも強いのがいいね。
アーレントの迷いもいい。すごくドキドキした。
続きも楽しみに待ってるよ。
661628:2006/10/08(日) 22:21:40 ID:eO+T9aR+
あー
>>647
×『かどかわしだ』
○『かどわかしだ』

お恥ずかしい。。
662名無しさん@ピンキー:2006/10/09(月) 01:20:26 ID:MFFcnGeJ
 +   ∧_∧      +      +  うわヤバイ萌え
    (0゚・∀・) ドキドキ    。
  oノ∧つ⊂)     +    
  ( (0゚・∀・) ワクワク     。 
  oノ∧つ⊂)     +   +    。    
  ( (0゚・∀・) テカテカ     。
  oノ∧つ⊂)        。    
  ( (0゚・∀・) ワクワク     +     
  oノ∧つ⊂)       。     
  ( (0゚・∀・) テカテカ      +  
  oノ∧つ⊂)              
  ( (0゚-∀-) ワクワク +           
  ∪( ∪ ∪            。   
    と__)__)             続きも期待しています
663名無しさん@ピンキー:2006/10/15(日) 23:41:23 ID:PbaHUtvP
なんか急に過疎?
664名無しさん@ピンキー:2006/10/16(月) 09:27:37 ID:7GGOrsNM
超GJ!!!!
何このエロ切なさ
665名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 09:18:51 ID:ESVaWxYO
うわーなにコレ
胸を鷲づかみにされた!
666名無しさん@ピンキー:2006/10/21(土) 21:03:36 ID:NXJPKBUw
捕手
667名無しさん@ピンキー:2006/10/23(月) 06:30:25 ID:2CFD6/sY
男装系の彼女がほしい…。実験屋さんは幸せなのかな?
668名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 01:13:33 ID:sc2+spvL
男装"系"って何だ?
669名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 03:19:22 ID:0cPFZYmW
アミノ式って事さ
67015:2006/10/24(火) 18:40:14 ID:MkLBr2bK

遠く垣根越し、アーレントはシトウェルを見つけた。
ベンチに腰掛けてなにやら手紙を読んでいる。
物憂げな表情だ。
眉に皺が寄っている。

腿の付け根を見た。
膝に広げた手紙を見つめる手から、緩やかな前屈姿勢を保つ腰、平らな腹と胸と、首筋まで見た。
高ぶるような感覚が蘇ってきたのか湧いて来たのか、出所は分からない。
シトウェルがもはや男になど見えないことへの自己嫌悪に陥いっているところを、彼女に見つけられた。

シトウェルは一瞬微笑みかけ、すぐに表情を強張らせた。

「……おはよう」
挨拶は曖昧で、唇のを持ち上げてやっとひねり出したような感じだ。
昨日の今日なのだから、当然だろう。
静かに部屋を出て行った足音も覚えているし、特有の爽快感もだるさも、身体に残っている。
おそらくはシトウェルにも、もしかしたら馬に乗れないほど。
「……ああ。そっちに」
行ってもいいか、と聞きかけて、さっきの想像を思い出した。
「いいよ」
軽く腰を浮かせてシトウェルが右隣に空間を空けた。
やましい気分が残っていたのに、座るしかなくなってしまう。

のろのろと常緑の垣根を回り込んで、腰をおろそうとしたときだ。
シトウェルがごく僅か、けれど確かにびくりと肩を震わせた。
一瞬のこと、もちろんあからさまな声など上がらなかったのだが、十分過ぎた。
一昨日までのシトウェル――アーレントに接する生意気な少年が頭をよぎる。
彼はたいてい、アーレントのすぐ隣か、すぐ後ろに居た。
67116:2006/10/24(火) 18:41:43 ID:MkLBr2bK

出来る限り距離を開けた。
シトウェルは何でもなさそうに手紙を握りなおし、袖をひっぱり、目を伏せた。

「就職のことだが。お前の希望を一応聞いておきたい」
「……それなんだけど」
ごく小さい声でシトウェルは続けた。
「俺さ、やっぱり辞めない。ここで働く」

「……何を」
「辞められないんだ。お金がいるんだよ。家族を食わしてやらないと。弟と妹が全部で七人居て」
「は?」
「今朝手紙が来たんだ。母さんが倒れたって。本当に。信じてくれ」
疑っているわけではない。
見上げてくるシトウェルの表情は必死だったし、嘘を吐くような人間では――思い切り吐いていたが、こういう場面でごまかすような人間ではないと知っている。

「……お前、どうしてそのことを昨日言わなかったんだ」
小さな唇がきゅっと閉じた。
答えはなかった。
「知ってたら俺はお前にあんな……ああ、違う、とにかく!」
シトウェルが事情を打ち明けて、相談してくれていたら。
いやそもそも、相談の機会すら与えずあんな状態にしたのは自分だ。
でももし、やっぱりきちんと話を聞いてさえ――
「だ、だってアーレントだったら絶対、こんな話したらさ、助けようとするだろ? あいつらには俺の稼いだ金で食わせてやりたいし、それに……」
そうだ。
そうなのだ。結果は変わらない。
シトウェルに貸せるだけの金を貸した後、やはり軍でないところで働けと言うだろう。

ほら見ろどっちにしろ抱いてたじゃないかと頭を抱えるアーレントの横で、シトウェルは手紙の端を折り曲げている。
「それにな、一生お前に頭が上がらないのは嫌だなって思ったんだ。お前なにかと偉そうだし、先でからかわれたら……」
喉の奥から搾り出すような声。

さすがのアーレントもようやく気がついた。
シトウェルは信じていたのだ。
あとでからかわれたり、普通に話したり、そういう日常のまま居れる事を。
つまりアーレントなら、ばれても『そんな事態』にはならないだろうと。
そして思い切り裏切られた。
67217:2006/10/24(火) 18:42:33 ID:MkLBr2bK

「アーレント、お前は……」
常々、声変わりが遅いと思っていた高い声が呟いた。
思わず奥歯を噛む。
罵詈暴言を覚悟したアーレントの耳に、かすれた言葉が届いた。

「俺がいなくなっても――」
少し待ったが、続きはなかった。
シトウェルは何か自分を責めるように揃えた膝を見ている。

「ごめん。なんでもない、わす……」
「別に困ることはないから、心配するな」

シトウェルが気に病むことは分かった。
実のところ彼女は良く働く。
新入りの中でも、腕はいまいちだが労を惜しまないことで好かれていた。
だが、こう言ってはなんだが、部下の代わりならいる。
男がいくらでも。

「……そう」
短い返事が返ってきた。

そうか、いなくなるのかと、考えてふと、アーレントは気づいた。
最初に出て行けと言ったとき、いつでも会いに行けるつもりでそう言った。
だが今は――今は。

「……お前は自分と家族のことだけ心配してりゃいい。そうだ」

なんとも表現しがたい喪失感のようなものが胸を衝いたのを感じながら、アーレントはシトウェルを見た。
色素の薄い肌が、いつもよりぼんやりとしている。
気丈な印象はそのままだが、幾段か冷たくなったようにも感じた。

「ほら」
こういうのは辞めるときに渡した方がいいのかもしれないが。

「何、これ」
「餞別だ。少ないが、足しにしろ」
アーレントが差し出した小袋を、中身が分かったのだろう、シトウェルは広げなかった。
金属のぶつかる音が、アーレントより二周りは小さい手のひらの中で控えめに鳴った。
67318:2006/10/24(火) 18:43:19 ID:MkLBr2bK

横目で様子を伺う。
シトウェルの瞳が揺れている。
喜ばないことは分かっていたが、怒られないことも予想していなかった。

「……質問していいかな」
「何だ」
「どうして、お金?」
質問の意味を考える暇も与えないほど、まっすぐな視線が刺さる。

「金が要るんだろ」
「その話をしたのはさっきだ」
「……昨日も金の話をしていた。覚えてないのか」
「じゃあどうして、手渡し?」

予定していた答えが返ってきたかのように、シトウェルは続けた。

答えられない。
その質問には、答えられない。

「お前の性格だったら、上から下りる金に適当に色つけんだろ。自分からだって言わずに。
それか、俺の田舎に直接送るか。どうしてこんな、わざとらしく俺に手渡しするんだ」
「何を深読みしてるか知らんが――」
「深読み?」
きっと釣り上がる眉。
シトウェルの全身が尖ったようにさえ感じる。
「浅すぎて反吐が出る。この金は餞別なんかじゃないね。言ってやろうか。
お前の良心に支払ったもんだ。俺にしたことへの侘びだよ」
「……それは」
「図星だろ」
「……それだけじゃない」
「ああ、じゃああれかな」
鼻を鳴らすシトウェルが、虚勢を張っているように見えるのはなぜだろうか。
問い詰められているのはアーレントなのに、追い詰められているのは彼女の方だ。

「気持ち良かったか? だろうな。全然余裕ない感じだったもん」
全くいつもどうりの、年齢も階級も完全無視の餓鬼の言葉遣い。
けれど表情はいつも通りでない。
今にも泣きそうなほど。
直視できない。
「……これは俺にくれたんじゃない」
胸に袋をつき返された。
殴られた気がした。
「俺にじゃない――初客を取った娼婦に払った金だ」
67419:2006/10/24(火) 18:44:02 ID:MkLBr2bK

「…………」
肩の筋肉が動かなかったことにほっとした。
シトウェルを怖がらせるのはもうこりごりだ。

「勝手なことを、言うな。誰がそんなつもりで――」
「じゃあ何だってんだ。あ、あんなのってない。ほら見ろ、こことか痣できてる!」
「見せんでいい!」
袖を捲って白い腕を晒したのを慌てて掴む。
唾を飛ばしながらも、アーレントは考えた。
シトウェルの言葉に、驚くよりも腹が立った理由。
手を上げそうになった自分に純粋に驚いてしまったわけ。

「お前なんかだいっ嫌いだ!」
疑問はすぐにかき消された。
シトウェルの長い睫毛が音を立てて瞬き、押しつぶされた涙がはじけた。

「痛かったんだ! 俺はすごく、理不尽な、びっくりして、痛かった!」
支離滅裂な言葉の連なりが、痛々しい。
「……悪かった」
「お前は全然、痛くないし怖くないし! ――俺が居なくても困らないだろうけど!」

語勢はここで一旦断たれた。
もう完全に感情を抑えきれなくなってしまったようだ。
際限なくこぼれる雫が伝う先をアーレントは目で追う。
自分の指の上に落ちて初めて、シトウェルの腕を掴んだままのことを意識した。

「……困らないだろうけど。お、俺は」
「シトウェル」
「俺は、困るんだ。すごく、困るんだ。だって、き、昨日からずっと、悲しくて。ずっとだ!」
「……とりあえず、その、泣くな」
「だったら、そんなに、出て行けばっかり言うな!」
二粒目が中指に落ちた。
指の間に浸み込み、白い方の腕に移った。
67520:2006/10/24(火) 18:44:41 ID:MkLBr2bK

それからしたことはごく簡単なことで、要するに、待った。
シトウェルが泣くこと、悪態を吐くこと――それを聞くのはもはや何の苦痛もなかった――や、その他色々、治まるまで。

「なあシトウェル」
泣いたことが恥ずかしいのか、シトウェルは気まずそうな怒り顔を持て余しているように目を合わさない。
時々、のどと肩がこくこく震えた。
目の淵が見事に赤くなっている。
もう数十分もすれば腫れてしまうだろう。

「すっかり忘れていたことがあるんだ」
「……なんだよ」
「怒るなよ」
「だからなんだ」

せっかくの顔が台無しになる前に、それはそれで可愛いとは思うが、とにかく早急に、冷やしてやらなければ。
早急に。

「退役金出るのな、二年目からなんだ」

シトウェルがやっとこちらを向いた。
「……何それ」
「そうなんだ。今辞めたらお前、文無しだな」
「それは……困る。無理、だ」
堪えているような、内側を見せまいとする表情。
アーレントは最初それを新鮮な気持ちでそれを見つめたが、瞬き一回するまでに気づいた。
生意気そうな無表情というのは、彼女の基本状態だった。
気づかないぐらい最初から。

「俺が貸してやりたいが、そんなに裕福でもない」
「貸さ――貸すな!」
アーレントの上着を掴んだ力とは裏腹に、シトウェルの短髪はふわふわと風に揺れている。
「貸さないでいい。俺に貸しを作るな。俺も、作らない。さっきお前が謝ったからあれは忘れる」
さっき、とは、あのどさくさ紛れの言葉をさしたのだろうか。
それではあまりに誠意がないと反論しかけて、だが、できなかった。

「駄目とか言うなよ。もう決めたから。……な?」
縋る瞳にやられる、とはよく聞く話だが、今は彼女の目はそれには当てはまらない。
しなだれかかるような女の特有の臭いが一切取り除かれた嘆願はさっぱりとまっすぐで、男として過ごしてきた彼女らしい。
わざと怒ったような眉の皺が、正確な言葉にされるよりも伝えてしまう。
雑多な事情をすっ飛ばして、そんな表情を浮かべる彼女が好ましいと強く思った。
67621:2006/10/24(火) 18:51:13 ID:MkLBr2bK

「……ああ、分かった」
その魅力的な表情から暗い色がはじき出された。
「本当?」
「いや、そういう意味では――まあいい。それもある。分かったから、あと二年はここに居ろ」
大輪の花には遠く及ばない。
ちょっと悪く言えば『儲けた』、または『助かった』といった様子で、シトウェルは微笑んだ。
「……了解!  あー、これでチャラに……」
「いいや。もう一つある」
「……あー…… ええと?」
思い当たらないらしい。
少しだけ間を置いて、ごく軽く、シトウェルを睨んだ。

「俺は娼婦なんか抱いた覚えはないが」
手に小袋を持っているままだったことに、シトウェルはやっと気づいたらしい。
あ、と短い声が漏れた。
あたふたとアーレントのほうに押しつけてきたが、無視した。

「あのな、よく聞け。俺にサドの気はない。暴れられたり泣かれたり、相手が心底嫌がってると思ったらできない」
「したくせに」
「そうだ。した。それを、感情なしに娼婦を抱いているのと一緒にされたら我慢ならない。 ……つまり、そういうことだ」
シトウェルが唇を尖らせた。
「そういうことってどういうことだ。意味がわからない」
俺もさっきまで分からなかった。
――とは、言わない方がいいだろう。
問題は『いつ』や『なぜ』ではない。
事実で充分だ。
67722:2006/10/24(火) 18:52:02 ID:MkLBr2bK

「なあ、お前頭悪いよ。分かるように説明しろって」
「心配するな。いくらお前の頭が悪くても十八になりゃ分かる」
むしろ、こっちが心配でしかたない。
あと一年と半分、この女のそばでどう過ごせばいいものか。
とりあえずと、アーレントはさりげなくシトウェルの手を取った。
三か月分の給料を入れた袋を回収する。
懐に入れなおす様子をシトウェルがにやにやと見ていた。

「お金持ちですね隊長」
「……まあな」
「あー、お腹すいたなぁ」
あどけない十六歳の顔が、ちらりとアーレントを覗き込んだ。

心配ごとはもう一つある。
どうやって、三年後も傍にいるか。
軍資金が必要だ。
もちろん、飯で釣るなどという馬鹿な話でない。
どうしても我慢できなかったときにだけ、宿代が必要になることは疑いない。

「次の休みまで待て。うまいもんでも奢ってやるから」
「まあそれくらいは当然……痛!」
舌の先まですっかり元気になったシトウェルを小突いて、立ち上がる。
確かに腹が減った。

「昼飯、行くぞ」
アーレントはちょっと足を止めた。
いつもなら絶対二言三言三言、減らず口を叩くはずのシトウェルが静かだ。
「どうした?」
「……なんでもない」
こういうのをまぶしいと言うのだろうか。
振り向いたアーレントの目に飛び込んできたのは、思わず目を細めるほどの代物だった。

「なんでもないよ。うん、ちょっとね、嬉しかっただけ」

関係ないとぞ、アーレントは思った。
次の休みに、早速金が要りようになる気がすることは、シトウェルのくすぐったそうな笑顔とは断じて何の関係もないのだ。





おしまい。
678628:2006/10/24(火) 18:52:35 ID:MkLBr2bK

( ゚д゚)



エロ、入らなかった。

お付き合いしてくださった方、まじでありがとうございました。
アドバイスとかくれた人もすげー嬉しかったです感動した!
679名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 01:21:30 ID:JvLE9OIH
GJ!
680名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 23:08:33 ID:SUtVv6Ea
うおおおおキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
628さんGJ!!
こういう強気でクソ生意気でイマイチ自分が女だって自覚が薄い女の子大好きだ。
そういう子が男装ばれて女さらけ出すのがツボなんだけど、
シトウェルはまだ女分を開発する余地が大いにありそうで楽しみ。
小隊長は気苦労で将来禿げそうw
681名無しさん@ピンキー:2006/10/28(土) 17:43:17 ID:G7nse9EW
いいね、このハッピーエンド。
まだ先のことは分からないけど、この終わり方ならきっと二人は幸せになれるって信じてる。
大作お疲れ様でした。
682名無しさん@ピンキー:2006/10/29(日) 14:45:06 ID:kjhFJW+1
>>678
とても幸せな気分になれました。
大変ありがとう。
また書いてくれると嬉しい。
683名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 18:57:42 ID:3+b8p8QZ
職人さまGJ
序盤、泣きそうになったりニヤニヤしたり
楽しましてもらいました!
気がむいたら是非また書いてください
684名無しさん@ピンキー:2006/10/31(火) 18:03:44 ID:3bz/nJda
>>609
かなり亀レス
川原なんとかいう漫画家のソルジャーボーイというのがある。
少年として歌手デビューして親を探すかなんかするヤツ。


今は妖奇士の宰蔵がめちゃくちゃ可愛い。
女と見破られ頬を染める所とか。
巫女の姿よりも男装が良い。

脳内に、オッサンの往壓が気になっているところを
そんなに気になるのなら引っ掛けてみろと
女の色仕掛けとはこういう風にするんだと
元閥に色々開発されてしまう宰蔵と言うのがあるんだが
文章に中々しづらい。
685628:2006/11/01(水) 01:24:19 ID:MTvUmjbY
レスくれた人ありがとう。
すみません、調子に乗った。
勢いで半分ぐらいできちゃったんだけど、投下していいだろうか…
ここんとこ一人で連続してるから、待ったほうがいいのか。

>>684
「今は妖奇士」でググったことは内緒だ。アニメなんだね。
面白そうだが時間的に見れないな…
いろはにほへとにも男装少女が出てると聞いた。見たいが時間ry

ここで教えてもらった本で菊千代抄がど真ん中だった。せつねぇぇぇ
686名無しさん@ピンキー:2006/11/01(水) 09:27:02 ID:CA3Dszwn
>>685
気にせずに投下してもいいと思うよ
687名無しさん@ピンキー:2006/11/01(水) 11:36:10 ID:RZ8Aetcv
>>685
いろはのはあんまり男装と言う感じはないよ。
現代の茶髪のショートカットの女の子が、大学卒業時に袴姿をしている。
そんな感じ。
688628:2006/11/01(水) 23:30:32 ID:yg1jHEMn
とりあえず、お言葉に甘えて投下します。

>>687
茶髪ショートは好きだが卒業の袴ってw
でもキャラデザ見た感じそんな感じだな
6891:2006/11/01(水) 23:31:33 ID:yg1jHEMn

シトウェルは悩んだ。
『おいしいもの』なんて、いいのだろうか。
アーレントとは一緒にご飯を食べに行ったこともあったけれど、それはもちろんワリカン、というか落とせた。
でも今回のは、それは自分がそう言ったからなのだけれど、彼はご馳走するつもりでいる。

昨夜、家に書いた手紙のことを思い出した。仕送りを二割増やすから、それでもどうにもならないなら言えと。
弟たちはきっと大変だろう。お腹一杯食べられていたらいいけれど、心配だ。
「アーレント」
「何だ。食いたいものでもあるか」
シトウェルは一瞬頬を引きつらせた。
満面の笑みだ。正直怖い。
「や、そうじゃなくて」
「何でもいい。好きなものを言え」
「……お前、今日なんか変」
「へ、変? いや俺は何も」
気持ち悪いアーレントは放っておいて、シトウェルは悩み始めた。
これは、やっぱり贅沢ではないだろうか。
お金を払わなくてもいいのはありがたいかもしれないけれど、弟たちが糊口を凌いでいるときに。
なんというか、うしろめたい。

アーレントの袖を引いて、シトウェルは立ち止まった。
「あのさ」
「久しぶりの休暇だからな、俺はその、お前がだな」
「そう、それで、悪いんだけど…… やっぱり……」
こちらから話をふった手前、さすがに言いにくい。もじもじと足元を見ながらの、歯切れの悪い言葉になった。
「こういうのって良くないと思うんだ」

アーレントの返事を待つが、一切の反応がない。
完全停止だ。
「……怒った?」
「い、いや。お前がそういうなら、無理強いはしない。絶対にな……」
「うん、やっぱりね、安いところでいいよ」
「安…… ……もしかして食事の話か?」
「他に何が?」
シトウェルは眉を顰めた。
アーレントは咳払いをした。
「まあ別に、お前がそういうなら構わんが」

そう言ってはいるものの、あからさまに残念そうだ。
6902:2006/11/01(水) 23:32:51 ID:yg1jHEMn

なんだか申し訳ない気持ちになる。
ここ数日、アーレントは確かにそわそわしていた。
昨日などとくにひどかった。
目を細めてシトウェルを見て、髪飾りがどうとか服もどうとか言っていたのだ。
まさかとは思ったが、女物の何かを着せたり買ったりするつもりじゃないかと問い詰めたら、あっさり首を縦に振る。
ばれたら終わりなんだから城下町でそんなことが出来るか以下罵りを並べた(だって、あんまりにも不注意だ)が、どうにも納得した風ではなかった。

『だがシトウェル。お前も女の端くれなんだから』
端くれ。
『……ちょっとぐらいそういう格好をしたいとは思わないのか。なんというか、今のお前は不自然だ」
不自然。
『見ていて痛々しい』
痛々しい。
……思い出すと、腹が立ってくるのはなぜだろう。
外見なんてどうでもいいとシトウェルは思う。
目的があって仕事をしていて、その中に男のふりが入っていただけなのに、アーレントはなぜそれを不自然というのだろうか。
どんな服を着ていても、中身は変わらないのだから――

『女のお前の方が、俺は……』

「――アーレント!」
シトウェルは前を無言で歩いていたアーレントの服を引っ張った。
「あのさ、男は嫌い?」

忘れるといったのに、二週間経っても忘れられないことをシトウェルは女々しいことだと感じていた。
最中の一言を思い出すだけで悲しくなる。
会話なんて無かったに等しいが、数少ない一言一言が堪えたから。
出会ってからずっと男だったのだ。これから二年近く、ずっと男だ。
どうしようもない。
6913:2006/11/01(水) 23:33:45 ID:yg1jHEMn

「変なこと言うなシトウェル! 今何人か振り返ったぞ……」
きょろきょろ首を振って、アーレントはあたりを窺う。
その様子がすべてを物語っている気がした。
「……そりゃ、誤解されただろうね」
「だろうねって、お前なあ…… 何が言いたい?」
「もし俺が普通の格好で歩いてても、あいつら振り返ったかな」

言って、シトウェルは後悔した。
急速に気分が沈んでいく。
アーレントの意味を図りかねたというような顔をしている。
それはそうだろう。
男の格好をしていたら好きじゃないかと聞く前に、女の格好をしたシトウェルを好きだとは誰も言っていない。
また、思い出してしまった。
あれは無理矢理な、『そういう性質』の行為だったと分かっているのだが。
口づけをするのも嫌だったのだろうか、と思うと。

「……ごめん、なんでもないよ。忘れろ」
「お前、何か言いたいことがあるならきちんと……」
「ないって。だから忘れろ。食うのと寝るのと忘れるの、得意だろ?」

昼日中に、こんな湿っぽい空気を出してどうするというのか。
せっかく仲直りして、やっと元通りだと思ったのに、全くならない。戻らない。

シトウェル自身、鬱々と溜め込んでばかりいる自分に嫌気がさしていた。らしくない。
無理矢理笑顔を作って高いところにある肩を小突いた。

「あのな、昼飯はいつもの店で割り勘にしよう。代わりにお菓子買ってほしいな。日持ちするやつ」
これならいいだろう。いつもの休暇のように一緒にいる口実が出来て、弟たちもきっと喜ぶ。
ちょうど右手に、焼き菓子の店を見つけた。指をさして先を歩く。
「男一人じゃこういう店入りにくいんだよな」
「二人だと余計にむさくるしいと思うが」
「じゃ、お前外で待ってろ。会計のときだけ呼んでやる」
アーレントは店の看板を眺めた。猫をあしらったクリーム色の可愛らしいものである。
「この下で待つのはなぁ……」
「だったら早く来い」
6924:2006/11/01(水) 23:34:44 ID:yg1jHEMn

目的のお菓子はなかなか買えなかった。あれもいいこれもいい、でもそんなにたくさんは悪いと、かれこれ一時間以上焼き菓子屋を梯子した。
シトウェルの目の前の卓には胡桃の入った大きなクッキーが入った紙袋が鎮座している。
この贈り物を見たときの家族の顔を想像して、シトウェルは頬をほころばせた。
「ありがとう。きっと喜ぶ。俺も嬉しい。ありがとう」
「……そうか」
クッキーだけではない。
もう一つのお菓子の、バターのいい香りが部屋中に広がる。
「食べていい?」
「食ってから聞くなよ」
「おいしい!」
宿屋で食え、とアーレントがマドレーヌを手渡してくれたのはもう空も茜に染まった頃だった。
おいしそうだと言ったのを聞いていたらしい。
物ほしそうな態度だったかと恥ずかしくなったが、単純に嬉しかった。
甘いものは好きだが、そう頻繁に食べられるものではない。
でもどうして宿屋、と聞いた彼女に、兵隊さんがマドレーヌ食ってるところを見られたら情けないと言われた。
そんなものかと納得した。
たしかに部屋の中のほうが落ち着いて食べられる。

最初に目に飛び込んできた寝台に引かなかったわけではないのだが、気にしているように振舞うのもアーレントに悪い。
彼は謝って、マドレーヌを買ってくれた。
それで十分だ。つまりおいしいのだ。

「隊長も一個、どうですか?」
アーレントは何をするでもなくこちらを見ている。
そういえば自分ばかり食べていたと思い、シトウェルは一応聞いてみた。
「いや、いい。全部食え」
「じゃあ半分食う」
「気を使うな」
「あー、違う、半分は帰ってからの分」
6935:2006/11/01(水) 23:35:46 ID:yg1jHEMn

きっちり三つ、お腹に入れたシトウェルは心底幸せだった。
結局アーレントは終始(五分だ)シトウェルを見ていただけで、暇そうだった。
もう帰ってもおかしくは無いがもったいない気もする。
足をぶらぶらさせて、窓の外を見ると、橙の空に紫の雲がたなびいていた。
鳩が飛んでいる。
平和だ。

「シトウェル」
久しく(五分だ)口を開いていなかったアーレントが名前を呼んだ。
間食中はともかく、マドレーヌをプレゼントしてからの彼は口数少ない。
「うん? マドレーヌはもうやらないよ」
帰ってすぐ一個、風呂の前に一個、風呂の後に一個。余分は無い。
「味見ぐらいは許せ」
「んー……」
ないが、一口ぐらいなら分けてやってもいいだろう。
今日はとても楽しかった。

「分かった、待っ……」
シトウェルは紙袋に手を突っ込んだ。
卓越しに、アーレントが身を乗り出した。
取り出そうとしたマドレーヌ達は、床に落ちてしまった。

「んっ……ちょ、っと、味見ってそれ違……ふ……っ……」
この――このやろう。
視界がなくなって、唇に柔らかいものが触れた瞬間の混乱といったらない。
それがキスだと分かって、あの時はしてもらえなかったものだと分かって、最初に思ったことが嬉しいだなんて。
絶対に言えない。
「……ん……っは……」
唇の裏をくすぐるように、舌が侵入してきた。何をしてるんだこの馬鹿と思う間もなく前歯の間から口腔に入り込む。
「マ……てな…っ……」
甘い、と囁かれた気がしたから、マドレーヌは残っていないと言ったのだが、これで伝わったら奇跡だ。
簡単にこちらの舌を篭絡された。
自分のものではない味がする。とても近く、アーレントの匂いがする。
6946:2006/11/01(水) 23:37:48 ID:yg1jHEMn

口の中、舌が逃げようとしても執拗に追いかけてくる。
生き物みたいに動くそれをアーレントの分身みたいだとシトウェルは思った。
おかしい。だんだんと――捕まえられるために逃げているような気分だ。
身体が熱い。
息も上がってきた。
いつの間にか、椅子は倒れてシトウェルは壁にもたれるように立たされている。
そうだ。立たされている。
ふわりと舐められた上あごから身体の中心へ、溶けるような感覚が走る。
頭を抱えられていなければ、腰から崩れ落ちそうだった。

「シトウェル……」
ようやくアーレントが離れた。
無意識にアーレントの背中を掴んでいた手を慌てて離し、大きな身体を押しのける。
だらしなくおとがいの脇を流れた唾液を拭った。
恥ずかしかった。

「い、いきなり。騙すなんて」
「俺らは騙していくらだと思っていたが。それに味見は嘘じゃない」
「今は非番だ!」
ずるずると落ちかけた身体を何とか持ち直し、シトウェルは出来る限り敵意を込めてアーレントを睨みつけた。
「……わかっていたことだが、我慢できん」

再び重なった唇は最初よりも濡れて、少し冷めていた。
「んふ…っ…あ、だ、駄目だって…!」
無骨な手が裾に侵入してきてやっと、これまで回らなかったことに考えが及んだ。
アーレントはいつから――いつからこういうことを企んでいたのだろう。
宿屋に案内するときに?
違う。

どこかで離れたくないと思うのを追いやって、頭を振った。
アーレントが離れた。
それだけは前のときと違ったが、それがなんだというのか。
695628:2006/11/01(水) 23:40:01 ID:yg1jHEMn
どうして鬱からしかはじまらないのか

見返したら割り込む形になってしまってたみたいだ…すみません。
続きはまだ先になると思うので、他の方の投下をwktkして待ってます。
696名無しさん@ピンキー
GJ!このもどかしくてじれったいところにすごく萌える。
続きも期待して待ってるよー。