【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ5

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1名無しさん@ピンキー
このスレは藤木俊先生によりサンデー連載中の漫画
『こわしや我聞』および、きっとすぐに始まるに違いない藤木先生の次回作のエロパロスレです。

あくまで藤木作品のエロパレスレですので、
他作品とのクロスオーバーはご遠慮ください。

・950レスこえる、もしくは450KBを越えたら新スレを立てて下さい。
・新職人は常時募集中。
・酷評受けても泣かない、荒らし煽りは放置。
・ちなみにこのスレで言われる「低能」とは「GJ」の意。褒め言葉なので怒らないでね。
・801は禁止。専用スレにてどうぞ。
・陵辱、ダーク、鬼畜、百合は不快に感じる人もいるので、ちゃんと予告しましょう。
・投下しおわった場合、その旨を書きましょう。

前スレ
【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ4
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2chエロパロ板SS保管庫
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関連スレ
こわしや我聞 女性キャラ萌え総合スレ8
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1128816904/
『工具楽屋』こわしや我聞ブレイク11弾目!
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☆こわしや我聞の我聞&斗馬に萌えるスレ☆
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1116491861/
2前々々499 12/14:2005/12/24(土) 11:11:26 ID:L2h6c5Gf
「・・・社長だけじゃないです・・・わたし・・・部の人にも・・・社のみんなにも・・・心配ばかりかけて・・・」

もっと、もっと言いたい事が・・・社長に伝えたいことがあるのに・・・

「もういいよ、気にしないで、國生さん。 部の奴らや会社のみんなは、君が悪いなんて思ってないよ。
 それに、実際、國生さんが言った通り・・・ちょっと回りくどかったのがいけなかったんだし、ね」
「でも・・・でも・・・」

そう言って顔を上げる私に、社長は微笑んで語りかけてくれます。

「部も会社も、今度顔を出すとき俺と國生さんが仲良くしていれば、それで安心してもらえるからさ・・・
 大丈夫、気にしなくても平気だよ、それに俺も、君を責めたりなんかしないからさ、気にしないでいいよ。
 だって・・・俺は・・・まあ、ほら・・・・・・君に、惚れてるわけだから、さ・・・」

もう一度告白してくれた社長の顔が、今度はとても照れくさそうでした。
でも・・・とても、優しい顔。
社長の体温と優しい表情、そして言葉は、私に元気と・・・勇気をくれます。
だから・・・私も応えようと思います・・・社長の伝えてくれた想いに、私の想いで。

「社長・・・どうして、こちらに・・・?」
「ん? ああ・・・昨日さ、國生さん言ってたでしょ、ライトアップされたツリーを見たい、って・・・」
「それで・・・ずっとここに・・・」
「まあ、ずっとったって、そんなずーっと居た訳じゃないからさ、あはは」

嘘。
肩と頭に白く積もった雪・・・きっと、何時間もずっと、ここにいたんだ・・・待っててくれた・・・

「私・・・確かに、夜のツリーを見たいって言いました・・・でも、ただ見たかった訳じゃないんです・・・」

社長は何も言いませんでした。

「一人で見たかった訳じゃない・・・かといって、部の皆さんとか、社の方々と、って訳でもなくて・・・」
 ある方と・・・二人きりで、見たかったんです・・・」

社長の顔を、目を、見つめながら。
社長も、微笑を薄く残して・・・真剣な目で、私のことを見てくれています。

「あなたと・・・二人で、こうして・・・見たかったんです・・・」

あなたが勇気をくれるから・・・言葉を紡ぐことができます・・・

「あなたのことが・・・私も、あなたのことが・・・好きだから・・・」


・・・社長は何も言わずに・・・私の肩を、抱いて、軽く私を引き寄せて・・・

「君に会えて、よかった・・・」
「はい・・・」

それが今日のことなのか、最初の出会いのことなのか、わかりません。
でも・・・どちらでもいいです・・・どちらだったとしても・・・私も、同じ気持ちですから。

さっき一人で見上げたツリーは、陳腐な印象しかありませんでした。
でも今、社長の腕の中の私の目に映るそれは―――涙で滲むイルミネーションが白い雪に映えて・・・

「本当に・・・本当に、綺麗」
「・・・ああ・・・」

でも、あまり長くは見ていられませんでした。
涙が・・・今度は嬉し涙が止まらなくて・・・また、社長の胸に顔を埋めてしまったから。
3前々々499 13/14:2005/12/24(土) 11:12:24 ID:L2h6c5Gf

「ずっとここに居ても冷えるな・・・そろそろ戻ろうか」
「はい・・・社長」

泣き止んでしばらく経ってから、社長に促されて私たちは駅前のクリスマスツリーを後にしました。
そんなに長くは見られなかったけど、でもきっと・・・生涯忘れない光景・・・
歩きながら、すっかり冷えてしまった手を少しでも温めようと息を吐きかけていると、
いきなり片手を社長に握られて・・・握ったまま、社長のコートのポケットに突っ込まれてしまいました。
少しだけ驚いて社長の顔を見ると・・・照れを隠すように、真っ直ぐ前ばっかり見ていました。

「くすっ」
「・・・ん?」

あくまで、当然のことだっていうフリを通すつもりのようです。
でも・・・握ってくれた社長の手がとても温かかったので・・・それに、嬉しかったので・・・
そのまま社長にぴったりと寄り添って、多分私も社長も赤い顔をしながら、帰途につきました。

帰り道、私たちは、あまり喋りませんでした。
たくさん悩んで、苦しんで、泣いて・・・でも、想いは同じだったってわかって・・・
そして、こうして手を繋いで、寄り添って、隣を歩いてくれている・・・
それだけで胸が一杯で、口を開いたら、幸せが溢れちゃいそうで・・・
時々、繋いだ手をぎゅっと握ってみると、ぎゅっと握り返してくれるような、
そんな子供じみた無言のやり取りが、ただただ、幸せでした。

週末でクリスマスの夜でもあり、駅からの道すがら、家々の窓はどこもまだ明るく、
門や生垣に飾られたイルミネーションが雪化粧に映えて楽しげな雰囲気を醸し出していましたが、
工具楽屋は駅から随分と離れた所ですので、景色は徐々に寂しげなものに変わってきます。
この辺りまで来ると車通りもほとんどなく、私たちの足音以外はほとんど何も聞こえません。
やがて、灯りは街灯だけになりましたが、その灯りを雪が照り返し―――
しん、と静まり返って、そしてほの明るい―――雪の晩特有の、幻想的な雰囲気を作り上げていました。

工具楽屋の前まで来ました。
隣は社長の家ですが、出来ればもう少し・・・一緒に居たいな、と思って彼の顔を見上げると・・・

「ね、國生さん・・・すこし、事務所にでも寄っていかない?」
「あ、はい!」

思いが通じたのか、社長もそう思ってくれていたのか・・・
手を繋いだまま、私たちは工具楽屋の階段を上り・・・ふと、私は足を止めます。
社長も一歩進んでから気付いて、

「どうしたの?」
「はい・・・その・・・丁度、この辺でしたよね・・・」
「え・・・・・・あ・・・! ・・・ああ、そうだったね・・・」

そこは、いつか社長と二人、並んで座ったところ。
社長が私に、弱さを晒してくれたところ。
社長とゆびきりしたところ。
そして・・・

「懐かしい、って言うにはまだ大した時間は経っていないハズなんだよな」
「そうですね・・・でも、短い間に随分いろんなことが、ありましたから・・・」
「ああ・・・第一研に突貫したあの日だけで、本当にいろいろあった・・・
 あの日を境に、いろんなことが随分変わったしな」
「はい・・・それに、お父さんや先代のこともありましたし」
「あの発言も、その一つだよな、あはは・・・」
「ふふ・・・社長のせいで嫌な思い出になりかけちゃいましたけど、ね」
「むぅ、悪かったよ・・・でもまあ・・・今日また一つ、大きなことがあったしな・・・」
「はい・・・とても・・・嬉しいこと・・・」
4前々々499 14/14(中編 了):2005/12/24(土) 11:14:23 ID:L2h6c5Gf

そう言って、私たちはしばし、黙って顔を見つめ合っていました。
雪が舞う夜は相変わらず静寂に満ちていて、自分の鼓動の音が嫌に大きく聞こえます。

「ここで話したときに・・・あの時から、社長は・・・」
「ん・・・さっきも言った通りだよ。 俺はさ、いろんな人に支えられてやってこれてるって、
 それは分かっていた・・・まあ、これも國生さんに気付かされたことだけどさ、はは・・・
 それでも、いや、だからこそ、かな・・・社長として、せめて強気の姿勢だけは絶対に崩さないって、
 決めてたんだ。 上に立つ者が弱気じゃ、格好がつかないからね」

はは、と少し照れたように社長は笑い、それからまた、私の目を優しく見つめて、語り出しました。

「でも、あのとき・・・君がああ言ってくれた時にさ・・・それが出来なかった。
 こらえようとする間もなく涙が出ちゃって・・・泣きながら、情けないって思ったけど・・・
 でも、そんな俺を赦してくれる・・・受け入れてくれる君・・・本当に・・・嬉しかった・・・」

・・・それは、あなたが私を受け入れてくれたから。
だから、私も、あなたを受け入れたかったから・・・
それだけじゃないけど・・・でも、その前に、少し意地悪な質問。

「じゃあ、もし私じゃない人が同じ事を言ったら・・・社長は、その人に惚れてたかもしれないんですか?」
「む・・・実はね、それは俺も考えたんだ。
 ・・・でも、あんな風に言ってくれるのは、君だけだと思った。
 それに、君じゃない人が同じ事を言ってくれたとしても、多分・・・そこまで、心に響かなかったと思う。
 仕事に部活に修行に・・・なんだかんだで、一緒にやってきて・・・なんだろう・・・絆、なのかな・・・
 俺と國生さんとの間には・・・他の人との間には無い、特別なものが、あると思ったんだ」
「・・・すみません・・・失礼なことを聞きました・・・」
「いや、別にいいさ、気にしないよ」
「・・・私は、ずっと迷ってました」
「うん?」
「あの、お父さんの発言よりも前から、ちょっとした出来事がありまして・・・社長のこと、その・・・
 異性として・・・気には、なっていたんです・・・」

桃子さんの、あの発言以来・・・です。

「それ以来、ずっと・・・今日まで、私の心・・・決められませんでしたけど、でも・・・
 あの時・・・辛そうな社長を見て、無理に明るく振舞うあなたを見て、思わず感情的になっちゃったのは・・・
 多分、その時すでに、あなたのこと・・・
 ・・・好き、だったのかな、って・・・今更だけど、思います・・・」

それだけ言って、私は口をつぐみました。
またしばらく、私たちは黙って、互いに見つめ合っていました。
雪はしんしんと降り続き、相変わらず、世界は静寂に満ちていました。

「静か・・・だね・・・」
「はい・・・世界に・・・私たち二人しか、いないみたい・・・」

私にはあなたしか・・・あなたには私しかいない・・・そんな世界。
二人が音を立てない限り、そこは永遠の静寂。
す・・・と、かすかに衣擦れの音がして、社長の手が、私の肩にかかりました。
ざ・・・と、すこしだけ足をずらす音をたてて、私は社長に身体を寄せました。
私たちは見詰め合ったまま、少しずつ距離を縮めて、
互いの吐く白い息が顔にかかるくらいまで近寄って、
その温かさを感じながらさらに距離を縮めて、
どちらとも無く目を閉じて・・・

私たちは雪に照らされたほの明るい静寂に包まれて、
互いの最愛の人と・・・唇を重ねました。

5前々々499:2005/12/24(土) 11:17:12 ID:L2h6c5Gf
以上で今回投下分は終了です。

新スレ移行がゴタゴタしてしまって申し訳ありません。
次で終了予定で、間に合えば明日中に投下する予定です。
であ、読んで下さった方、どうもありがとうございました。
6名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 12:32:01 ID:+e2DL5Yd
1番乗りキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
GJです。今日・明日は祭りになるヨカーン。
7名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 12:32:19 ID:ils29/ZM
(*´Д
ハァハァ
な、なんて低脳な・・・・
8名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 13:04:52 ID:yTkGBMQr
あぁ…今日がクリスマスイブと再認識してしまいヘコンダ
低脳でした
9名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 13:18:35 ID:kEbMJtgR
読んでいて涙が流れてきました。
國生さんのせつない気持ちが丁寧に描写されていて
かつ、2人を見守る卓球部や工具楽屋の社員達…。

とてもよい低脳でした。

…さて、仕事に行くか。
10名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 14:41:17 ID:i3g7Im88
仕事中ですが果てしない低脳を堪能させていただきました。
転がるのは帰ってからにします。
11名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 15:37:18 ID:Fgg+lhEl
クリスマスイブにこの低脳さ。
そこにしびれるッ!あこがれるぅッ!!
12名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 15:56:38 ID:G4hrhJUX
この……ド低能がァ――ッ
13前スレ272:2005/12/24(土) 16:22:41 ID:gn1M1iE1
お久し振りです。
早速ですが新作小説の投下です。
此処に来ている皆様へのささやかなクリスマスプレゼントということで。
そして相変わらずエロ無しです。すみません。
今回のは短い方ですがお気に召してくれれば嬉しい限りです。
14前スレ272:2005/12/24(土) 16:23:13 ID:gn1M1iE1

 「・・・あいつら、もう寝たかな?」
 「多分、平気だと思いますけど・・・」
暗がりの中、ぼそぼそと会話する怪しげな人影が2つ
 よく見ればそれは赤いサンタ服を着て、白い袋をかついだ我聞と陽菜だった
 
 ・・・・・・
15前スレ272:2005/12/24(土) 16:23:42 ID:gn1M1iE1

 工具楽屋(株)の今年のクリスマスイヴは、本当に社や関係者を挙げての盛大なパーティが行われた
 真芝の壊滅、我也も、死んでいたと思っていた陽菜の父の生還と喜ばしいことが多かったこともあるだろう
 今日に限っては誰もが仕事を休み、社屋で朝から晩まで無礼講と言わんばかりに盛り上がった
 本来なら忙しい年末年始にそんなことはやってられないのだが、結構皆乗り気で楽しそうに参加してくれた
 招待したのはかなえを始めとしたこわしや協会の面々、内閣調査室の西さんや真芝から転身した十曲や桃子達だ
 このパーティの発案者は優さんだが、主催者は現社長の我聞で、なんか頼りないという理由でそのサポート役として陽菜があてがわれた
 勿論、そう仕向けたのはGHKや優さんだが、適材適所なのは否めない
 この2人は明日のクリスマス当日に行われるという卓球部のパーティにも誘われており、冬休みに入ってからは学校と社屋と現場の間を忙しそうに駆け回っていた

 ・・・・・・
16前スレ272:2005/12/24(土) 16:24:19 ID:gn1M1iE1

 そして夜中の11時を回る頃、そろそろお開きにしようかと1人ずつ工具楽屋(株)の事務所、パーティ会場を出ていった
 優さんは「まだ飲み足りないぞー!」と酔っぱらい叫んでいたが、中之井に引っ張られ寮へと退場させられた
 辻原は素面だが、招待客であるかなえや理来達を送ることを申し出、会場を後にした
 桃子は優さんに無理矢理飲まされたワインで顔を赤くし「ここに残りたい、ガモンの家に泊まりたい」とごねたが、キノピーに説得され、引きずられるように退場していた
 番司も似たようなものだったが、ワインに酔ったのか目が据わっているかなえに水糸でふんじばられたのは言うまでもない
 十曲は千紘に「飲みすぎです、若様」と背を押されながら、「大丈夫! 僕は天才だからね」とわけのわからないことを言いつつ帰っていった
 そして、一番最後に我聞は果歩やもう眠そうな珠、斗馬に一足先に自宅の方へと帰って寝ているように言った
 「お兄ちゃんや陽菜さんは?」
 「オレは主催者として、一通り片付けをしてからな」
 「私はそのお手伝いです。そう時間はかからないと思いますので」
 「・・・ふーん、じゃあよろしくお願いします」
 果歩は眠たげな珠や斗馬の背中を押してから、ぺこりとお辞儀した
 2人がそう言うのなら別に構わないしと、果歩はそれぞれの耳元でこっそり囁いた
 「お兄ちゃん、頑張りなさいよ!」
 「陽菜さん、お兄ちゃんのことよろしくお願いします!」
 2人は「えっ!?」と果歩の顔を凝視すると、その本人は笑って珠と斗馬の後を追いかけていった
 「・・・・・・」
 お互いが何と言ったらいいのか判らず、とりあえず2人は会場の後片付けに取りかかることにした
 机の上に散乱した空のワイン瓶や料理の乗っていた皿、床にはケーキの生クリームのようなものがこびりついている
 それらを1つ1つ拾い上げ、丁寧にぞうきんで拭いていく
 2人だけしか残っていないがらんとした静かな事務所で、本当に黙々と作業をこなしていく

 「あ、あのさ、國生さん」
 「・・・え、あ、はい。何でしょうか?」
 突然声をかけられ、声が思わずうわずってしまった
 「あ、うん、ごめんな、こんな時間まで付き合わせちゃって」
 「い、いえ、別に・・・楽しかったですし」
 「明日は卓球部のパーティもあるし、早めに帰っても良かったんだよ?」
 「そんな、社長を置いて帰るわけにはいきません!」
 と言ったところで陽菜は我に返った、こんな事を言ったら・・・
 そう思ったのだが、朴念仁というか鈍い我聞は気づかず、「気遣ってくれてありがとう」と言った
 ほっとするやら悲しいやら、ちょっと複雑な気持ちだ
 
 ・・・・・・
17前スレ272:2005/12/24(土) 16:25:47 ID:gn1M1iE1

 片付けを一通り終えると、もう時刻は0時をとっくに過ぎていた
 陽菜は我聞に「帰りましょうか」と言おうとした時、その当の本人が部屋の隅でガサガサとやっている
 「何をやっているんですか?」
 と覗き込むと、我聞はわっと慌てた
 見れば白い袋の中に、赤いサンタの衣装や何かの包みが詰められていた
 「・・・これは、もしかすると・・・」
 「う、うん。果歩達のクリスマスプレゼント」
 何でも、プレゼントの方はこっそりと貯めてきたなけなしの貯金で買ったものだという
 加えて、サンタの衣装があるとなると、変装した上でこっそり枕元に置いてくるつもりなのだろう
 「・・・なるほど。それで果歩さん達を先に帰したんですね?」
 「やっぱりさ、こういうのってそういう風に渡された方が嬉しいのかなって」
 我聞が言うに、これを思いついたのは我也が行方不明になってからだという
 もう悲しませたくない、笑ってほしいという想いから、内緒で進めてきた計画だという
 今では我也は見つかったし、もうそういうこともないだろうとは思ったが、折角準備してきたのだから決行するべきだろうと思ったのだ
 「どうかな? サンタからのプレゼントなんて今時、あいつら、喜んでくれるかな?」
 「はい。きっと喜ぶと思いますよ」
 陽菜にそう言われたのが後押しとなったか、「よしっ」と我聞は気合いを入れた
 「・・・社長、これもう一着余ってませんか?」
 「え?」
 白い袋から赤いサンタ服を引っ張り出しつつ、陽菜が訊いた
 「・・・い、いや、確かこれとは別に優さんが借りてきたのがあったと思うけど。まさか國生さん・・・」
 「はい。是非参加させてください」
 いきなりの申し出だったが、我聞は断らなかった
 早速、陽菜は部屋で我聞は外で着替えた
 着替え終わり、陽菜が外で待っている我聞の所へ行くと、我聞は目を剥いた
 何故か、優さんが借りてきたのはミニスカのサンタ衣装だったのだ
 サイズも陽菜に合わせたかのようで、まるでこういうことを予測していたかのようだ
 「・・・短すぎませんか?」 
 「大丈夫だと思うけど・・・」
 返答になっていないと思うが、陽菜は「そうですか」と返した
 我聞はあまりじろじろ見てはいけないと顔を逸らした、それにしてもその格好は寒そうだ
 白い袋をかつぎ、我聞と陽菜は忍び足で工具楽家を目指した

 ・・・・・・
18前スレ272:2005/12/24(土) 16:27:45 ID:gn1M1iE1

 そこまでの道のりは暗く、何も見えなかった
 シンと静まりかえり、頼りになるのは細々とした電灯の明かりだけ
 無意識に、陽菜は我聞の服のすそをつかんで歩いていた
 それに我聞は気づいたのか気づいていないのかはわからなかった
 「・・・うん、電気は消えてるな」
 「社長の言いつけ通り、寝ていてくれてると良いんですが・・・」
 玄関の前で、一旦我聞と陽菜は止まった
 もしかしたら、珠や斗馬を寝かしつけたら、果歩は我聞が帰ってくるまで起きているかもしれない
 それが一番ありえそうで、この計画の一番の不安所だった
 ちなみにパーティが無ければ、その不安も無かったと思うのだが・・・それは無粋というものだ
 「仕方ない。玄関以外の所から突撃するぞ」
 「え、大丈夫なんですか?」
 我聞が「大丈夫」と言うが、陽菜はどうにも不安を隠しきれない
 第一、あのしっかり者の果歩が窓も含めた戸締まりを忘れるなどは考えられない
 それに、もし誰かに見られたら強盗と取られてしまう
 陽菜は我聞を説得し、こっそり音も無く玄関から入ることにさせた
 「・・・よし、いくぞ」
 「はい」
 すっと鍵を差し込み、ゆっくりと回した
 ほんの少しかちゃんと音が鳴り、2人は飛び上がりそうだったが、それからゆっくりとドアを開けた
 「・・・・・・」
 「・・・・・・大丈夫みたいですね」
 玄関から居間まで、総ての明かりが消えている
 細く開けたドアの隙間からそれを確認すると、素速く我聞と陽菜は家の中に入り込んだ
 「・・・よし、作戦決行だ」
 「はい」
 こそこそとゴキブリのように這って進み、2人は3人の寝ている所へ向かった

 ・・・・・・
19前スレ272:2005/12/24(土) 16:28:15 ID:gn1M1iE1

 「・・・うん、よく眠ってる」
 流石に12時間以上もパーティに出席していたので疲れたのだろう、果歩もぐっすりと眠っている
 3人の寝顔は穏やかで、家長として思わず頬が緩んだ
 「社長、そろそろ」
 「お、おう」
 我聞はごそごそと袋から、それぞれの枕元へプレゼントを置いた
 果歩へのプレゼントは「服」だ
 家計を気にし、欲しかったが買う気になれなかった服があるというのを優さんから聞き、我聞はそれを買い求めた
 優さんは「それ着て誰かとデートに行きたかったのかもね〜」と言っていたのが兄として気になるが、とにかく欲しいものがみつかって良かった
 普段から果歩はそういうことで遠慮しがちだから、我聞はほっとしていた
 珠へのプレゼントは「新品の野球グローブ」だ
 もう少し女の子らしいのが良かったかなと思ったのだが、今持っている奴は大分古く、もうボロボロだったのでこれにした
 いつも元気に遊び回る珠だが、案外もの持ちが良い
 それだけものを大切に扱ってくれるのは、実に嬉しいことだった
 斗馬へのプレゼントは「工具楽屋の株券1枚」だ
 おおよそ子供らしくないプレゼント内容だが、本人が欲しがっているものをあげるのが一番だろう
 ちなみに本当ならヤフー株を買ってやろうとしたが、株券の買い方もわからず値段も高いので断念した
 枚数が1枚なのは、斗馬の歳的な問題もあるし、そう多くはあげられないのが現実だ

 「・・・うん、よし撤退するぞ、國生さん」
 「了解です」
 小声でそう言い合うと、またこそこそと玄関の方へ戻っていった

 ・・・2人が去っていくのを感じると、果歩は片目を開けた
 「(んもぅ、何やってんのよ、お兄ちゃんたら)」
 しかも、何故か陽菜さんまで一緒になって・・・
 「(・・・ま、嬉しかったけどさ)」
 プレゼントの中は今は見ない、そして明日の朝に思い切り喜ぶ姿を見せてあげよう
 きっと、それが良いに違いない・・・だから黙って寝ていたのだ
 「(それに、形はともかく、2人っきりてのは変わらないし)」
 まだ2人やGHKにとってはチャンスはある、今日はクリスマスなのだから
 「おやすみなさい、2人共」
 そう小声で言って、果歩は目を閉じた

 ・・・・・・
20前スレ272:2005/12/24(土) 16:28:49 ID:gn1M1iE1

 「ふー、終わったぁ」
 「お疲れ様でした」
 玄関へ到達し、またそっとドアを開け、寒く暗い外へと出た
 我聞は無事終えたことに安堵のため息を吐くと、陽菜が言った
 「では、私も帰らせてもらいます。この衣装は洗って返しますので」
 それだけきびきび言い帰ろうとするのを、我聞は慌てて止めた
 「ちょ、ちょっと待って!」
 「? 何か?」
 陽菜は少しドキッとした、今日という日もあって心が躍るようだ
 「こ、國生さんは何か欲しいものはある?」
 「・・・いえ、そのお気持ちだけで充分です」
 陽菜はその言葉が本当に嬉しくもあり、まだ用意していないと言うことなのかちょっと残念に思った
 それは空になった白い袋からもわかることだが、やはりどことなく寂しい気持ちはあった
 我聞は「んー」と悩んでいる様子を見せ、それからサンタ服のポケットに手を入れた
 「・・・えっと、喜んで貰えるかはわかんないけど・・・」
 我聞はかじかみつつある陽菜の手を取り、そっとそれを落とした
 「これは・・・」
 それは、真珠のような白色の指輪だった
 「果歩達のプレゼントであんまりお金が残ってなかったから、こんな安物しか買えなかったけど・・・どうかな?」
 「え、えと・・・これはどういう・・・」
 陽菜は激しく動揺したが、我聞はきょとんとしている
 恐らく、この男は指輪=女性の装飾品程度しか頭にないのだろう
 つまり、こちらが動揺するだけ無駄なのだ
 自分を落ち着かせるように陽菜がこほんと言うと、素直に「ありがとうございます。大事にします」と言った 
 「良かった。・・・あのさ、付けてみてくれる?」
 「あ、あぁ、はいっ」
 贈った側としては、やはり見てみたいものだからだろう
 陽菜はそれを自分の右手の中指にあてがってみるが・・・・・・
 「・・・入りませんね」
 「あ、あれ? む、むぅ、やはり怪しげな露天商から買ったからか?」
 「え? い、いえ、多分、他の指なら・・・」 
 陽菜は指を変えて試みるが、どれも第一関節のところで止まってしまう
 入りそうな指を総て試してみても駄目で、諦めかけた時、我聞がその指輪を取って陽菜の左腕を小脇に挟んだ
 「! あ、あのっ!?」
 「いや、まだ両手の親指以外ではめてないところがあるでしょ?」
 陽菜はかっと赤くなった、そこはあえて避けていたのに
 しかも左腕を小脇に挟まれているので、止めようにも体勢的にも無理だった
21前スレ272:2005/12/24(土) 16:29:21 ID:gn1M1iE1

 我聞は左手の、薬指に指輪をはめこんだ 
 ものの見事に、その指輪はぴったり入ってくれた

 満足そうに我聞がそれを見るが、陽菜の顔は真っ赤だった
 「?」
 「え、その・・・ですから・・・」
 ごにょごにょと言葉にならない言葉を言いつつ、今度はぐいぐいと指輪を外そうと試みた
 しかし、我聞の力で入れた所為もあるのか、それは全く抜ける気配はしなかった
 決して血行が悪くなりそうなぐらいきついわけではないのに、どうしても抜けないのだ
 流石に外れなくなるとは予想もしていなかったので、我聞も慌てだした
 「ご、ごめん、國生さん! た、多分、石鹸で滑りを良くすれば抜けるから!」
 「・・・・・・」
 陽菜はため息を吐き、確か消防署に行けば取ってくれるとか聞いたことがあるなと脳裏をよぎった
 でも、多分、そんなことはしない
 きらきらとその指で輝く白い指輪を見て、陽菜はそう思った
 しかし、当面の問題は、これをどこまでごまかし、隠し通せるかなのだが・・・・・・
 卓球部のパーティもあるし、会社の方にも出なくてはいけないのだ
 「社長」
 「は、はい」
 思わずビシッと背筋を伸ばし気をつけ、敬礼のポースを我聞は取ってしまった
 まるでさなえに怯える中之井のようで、陽菜はくすりと笑った
 「・・・私からもクリスマスプレゼントがあるのですが、よろしいでしょうか?」
 「え? あ、うん・・・」
 我聞はなんだと言ったような、ほっとした様子だ
 だが、陽菜の顔は相変わらず厳しい
 「では、目をつむってください」
 「?」
 首を傾げ、それでも我聞は陽菜の言うことを聞き、両眼をギュッとつむった
 それを陽菜は確認すると、ほんの少しだけ背伸びをした

 我聞の頬に、何か柔らかい感触がした

 「? あ、あれ? こ、國生さん!?」
 「では、おやすみなさい。社長」
 目を開けた我聞は呆然と、走り去るサンタ服の陽菜を見つめていた
 それから、ゆっくりと空から白い結晶が舞い降りてきた
 しんしんと積もりゆくそれを払うことなく、我聞は明け方までその体勢で固まっていた

 ・・・いくら意図的ではないからとはいえ、私だけ、今度顔を合わせる時、恥ずかしい思いをするのはずるいですよ、社長
 
 だから、お返しです

 メリークリスマス
22前スレ272:2005/12/24(土) 16:31:50 ID:gn1M1iE1
以上で書き込みを終わります。
続編やパーティ中や他の人達にもスポットを当てたいのですが時間の方が・・・。
また折を見てそんなものも書いてみたいと思います。
短いながらも読んで下さった方々へ感謝をしつつ、また一読者に戻ります。
23名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 17:13:24 ID:ils29/ZM
グッジョブ
低脳過ぎるほど低脳だぁー!!
立て続けに落とされていくSS・・・
既に>>6の言う祭りの火蓋は斬って落とされているのか!?
投下していく神神にあやかりたいと言う思いもありつつ、更に転がりつつ、今日落とされたのをもっかい読んできます
24名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 17:28:11 ID:yTkGBMQr
俺もこのSSから元気をもらい今から戦闘にいってまいります
出費が痛いぜこんちきしょ〜
25名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 18:57:57 ID:L2h6c5Gf
>>13
GJ!
ほのぼのしていて幸せそう、すごい素敵です

>>24
がんばれw
26名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 20:34:26 ID:388qXyU2
ぐおおお!!低脳すぎて、転がるどころか体が痙攣してきたぞ。
27前スレ246:2005/12/24(土) 21:16:52 ID:glkckcpg
どうも、お久しぶりです。
>>前々々スレ499様、毎度毎度ご苦労様です。
もう、とろけそうなSS、いつも楽しませて貰ってます。
その他職人の皆様も相変わらずの低脳っぷりに鼻血の嵐です。
今年の聖夜はマット不足で大変ですねw

さて、自分も投下しちゃおうと思います。
すっかりクリスマスの時期を忘れていたので、実はさきほど一時間で仕上げました。
本当に短い+エロ抜きですが、相変わらずの我聞×桃子ものです。
楽しんで頂けたら幸いです。では投下します。
28前スレ246:2005/12/24(土) 21:18:09 ID:glkckcpg
ちいさな、ちいさなゆきのこは。
おそらのおほしさまにあこがれる。

たいようとなかよし、おほしさま。
きえちゃうゆきのこは、みあげておもう。

いつかわたしも、そこへ・・・



「クリスマス・・・か。」

街が昼よりも明るみを増す、聖夜。恋人たちが愛を唄い、共に過ごす夜。

「キノピーも置いて来ちゃったし・・・本格的に一人よね・・・」

その恋人たちの渦の中に、桃子がいた。

「流石にクリスマスにガモンをとっちゃうのも、気が引けちゃうし・・・」

一人で過ごす、聖夜。

「・・・ちょっと、寂しいかな。」

その傍らには我聞はいない。いつもの家族のところにいる。
その家族に、陽菜はいる。
そして、私は"存在(い)"ない。


しゃん、しゃん、しゃん、しゃん


心地いいはずの鈴の音がうるさい。
自分の居場所がない、と悟るこの時期が、なにより桃子は嫌いだった。

「本当に、低脳。」

いない、我聞を想う。
あの笑顔は、たとえ陽菜のものでも私にもくれる。
でも、それが今日は向けられることはない。いや、自分から、避けた。

「本当に、バカみたい。」

それは、私のことだ。
あきらめないと誓ったのはどこの誰だ。

「わかってるくせに、さ・・・」
29前スレ246:2005/12/24(土) 21:18:43 ID:glkckcpg
街を歩く。
色とりどりに着飾られた木々は、夏の青い衣装の代わりに。
光り輝く小さな雪を纏う。

私があの小さな雪の一つなら。
我聞はみんなをてらす太陽で。
陽菜はそのてっぺんに輝く綺麗なお星様。

みんな、お星様を取り囲む。
そして、太陽の下でみんなで笑いあう。

雪の私は、地面でそれを、見上げてみんなを想う。

「ばっか、みたい・・・」

雪の私は、そこにいることが出来るわけがなかったんだから。


でもゆきのこは、しっていた。
わたしはそらへはいけないと。
だってわたしはゆきだから
たいようのもとへはいけないんだから。


しゃん、しゃん、しゃん
So happy X'mas ... War is Over....



「桃子〜!」

そんな時。身体が、震える。
あの、低脳の声が聞こえてしまったんだ。

「ガ、ガモン!?」
「こんなところにいたのか・・・探したぞ?」

・・・なにしにきたのよ。

「桃子?」
「なんで、来たのよ・・・」

本当に、低脳なんだから・・・

「私の事なんてどうでもいいじゃない!仮にも家長なら家にいなさいよ!」
「な、なに怒ってるんだ桃子?」

雪のわたしに、希望を持たせないで。
30前スレ246:2005/12/24(土) 21:19:36 ID:glkckcpg
「ばかっ!ばかばかばかぁ!!」

周りの目なんか気にならない。うれしいのに、腹が立つ。
こんなにうれしいのに腹が立つ。
こんなに嬉しいのに・・・

私は消えゆく雪だから。
いつもいてくれる、お星様じゃないんだから・・・

「ばかぁ・・・ぐす、ひ、う・・・」
「桃子・・・お前は本当に子供だな・・・」
「なっ・・・!なによぅ・・・!!」


「お前も、家族だろ?桃子。」


「・・・っ・・・」

本当に、この低脳は、あったかい。
雪のわたしは、溶けて消えちゃうんじゃないかな。そんな不安も、ふっとんじゃうくらい、あったかい。

「本当に、低脳・・・」

隣にいる、我聞を想う。
あの笑顔は、たとえ陽菜のものでも私にもくれる。
それが今日も向けられる。我聞から、くれる。

「本当に、バカみたい・・・。」

それは、私のことだ。
家族だと言ってくれたのはどこの誰だ。

「・・・ばか・・・本当に低脳なんだから・・・」
「な、なにを言うかっ!これでも頑張ってだな・・・」
「そういう意味じゃないわよ、まったく・・・」


さっきまでないてたゆきのこは。
たいようにさそわれ、おそらへいきました。

とてもまぶしくてつらいけど。
なかまはずれはいやだから。

とてもあつくてつらいけど。
たいようのそばにいたいから。

たいようが、すきだから。
31前スレ246:2005/12/24(土) 21:20:26 ID:glkckcpg

「桃子。」
「なに?・・・きゃっ」

不意に手を握られる。そのすっかり冷え切った雪の子の手に。
太陽はすっぽりと覆う手袋をプレゼントした。

「メリークリスマス。桃子。こんなのしか買えなくて、ごめんな。」
「・・・ううん、ありがとう。ガモン。」


その手袋より。ぎゅ、と握ってくれたその我聞の手が、なにより温かかった。


「ガモン。」
「ん?なんだ桃子。」
「ちょーっと、かがんでくれる?」
「こうか?」

我聞がかがんだ瞬間。
ふっ、と。やわらかいものが我聞の頬をかすめた。

ただ、あてるだけの雪の子のキス。あったかかった、雪のキス。


「なっ!?こ、こら桃子!?」
「ごちそうさまっ!ガモーン!」
「ま、待てって桃子!!」

タッ、と駆けだした桃子。それを追いかける我聞。
少しだけの二人の時間。今までポッカリ空いていた、クリスマスの時間。

ほんの十分たらずだけど、それだけで満たされてしまった。

私も低脳なのかなーっと、ちょっとだけ思ってみる。


さあ、帰ろう。私たちの家へ。


「メリークリスマス、ガモン。大好きだよ。」
32前スレ246:2005/12/24(土) 21:24:05 ID:glkckcpg
以上で終了です。クリスマス祭りにギリギリ参加できて良かったです。
マイナーな組み合わせで、原作に沿う形になると、こうなってしまいますが。
前スレの続きとして書かせて頂きました。

これからもこのカプ中心で参加させて頂きます。
よろしくお願いします。皆さんメリークリスマス。
33名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 21:53:35 ID:AhEHg9ew
GJ!
独り身の寂しさを、少しだけ桃子が癒してくれました。

ありがとう。そしてメリークリスマス!
34名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 22:10:00 ID:9ucyuwd4
GJ!!!
最高です!メリークリスマス!!
35名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 22:15:59 ID:ils29/ZM
おぉぉおぉおぉおおおおおぉっ!!
グウゥッジョーッヴッ!!
36名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 22:17:18 ID:ils29/ZM
言い忘れたっ!!
メリー・クリスマス
37名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 22:45:36 ID:L2h6c5Gf
>>246
GJ! 桃子分補充させて頂きました!
原作からの逸脱無しで我聞×桃子が書けるのは凄い・・・

奇しくもブログにも藤木先生から桃子のプレゼントが来てますし、
なんか素敵なタイミングですw
38名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 01:22:01 ID:okfxwNsW
神作品の連続コンボで転がりまくってますよ!
まったく、低脳なサンタさん達めw
39131:2005/12/25(日) 08:53:38 ID:Ry1Cvfm7
続き書きました〜
前回とてもいたらないことばかりでした。
もう一度、謝罪を
スミマセンデシタ
でも、これからもっと頑張るんでよろしくお願いします。

・・・
クリスマス祭は終わってしまってますが、クリスマスネタじゃないから問題ないっすよね。

前置きが少し長くなりました。
それでは投下します。
40131:2005/12/25(日) 08:54:58 ID:Ry1Cvfm7

幾分か冷静さを取り戻した陽菜。
そんな陽菜が布団を敷くのを手伝いながら、我聞は先刻の口論について考えを巡らしていた。
始めはいつも通りの果歩の話。陽菜の方も普段通りの台詞だったと思う。なのに陽菜も果歩も、いつの間にか熱くなっていて、勢いがついていて、止まらなくなっていた。
彼自身には何ら責任はないのにいつもの『家長として』の責任感から、何故こうなったのか、ただただ頭を抱えるばかりだった。
一方陽菜は、
(・・・大人げなかった・・・相手は年下なのに・・・でも・・・)
約束は破るわけにはいかない。負けを認めるのも絶対に嫌だ。だから、
勝たなくてはならない。
陽菜の決意は相当堅くなっていた。

そして、飛び出していった果歩はというと、駆け込んだ番司の家で、
「ふっふっふ・・・上手くいったわ・・・」
にやついていた。
全く状況が理解できないという顔の番司の側で。
「・・・なあ果歩、そろそろこんな遅い時間に家きた理由教えてくれねーか?」
嬉しそうな果歩に問う。
「あ、ごめんね番司、やっぱり迷惑だった?」
今度はどこか繊細さのある微笑みを浮かべ問い返す。
41131:2005/12/25(日) 08:55:49 ID:Ry1Cvfm7
「いやいや!!全然!!
嬉しいくらいだ!!・・・けど、ほんとにどうしたんだ?」
心配そうな番司。
そんな番司に実は・・・と説明を始める果歩。

「なるほど、つまり、陽菜さんと我聞に子供が全然できないことにじれたお前が試しに少し挑発してみた、と。
んで、案外簡単に陽菜さんがのってきたのは良かったけど、成り行きで俺たちもつくらなきゃなんなくなって家に来た訳か・・・凄いことになってるな」
果歩から説明されたことをまとめる番司。
説明をしたことで、果歩も自分が何をやったのか、言ったのか段々と分かってきて少し以上にテンションが落ちていた。
「ゴメンね番司・・・お姉ちゃんにあんなこと言ったけど、私たちに子供なんてまだ早いよね。結婚もまだなのに・・・
でも!番司と私がお兄ちゃんとお姉ちゃんに負けるなんて絶対嫌なの!!
だから・・・お願い番司!私にあなたの子供を産ませてっ!!」
流石にこの台詞は恥ずかしかったのであろう、俯いてしまう。
そんな果歩を番司は優しく抱き寄せる。
42131:2005/12/25(日) 08:56:33 ID:Ry1Cvfm7
「そういうことなら、喜んで協力するさ。
それに、俺は俺とお前の子供ならいつでも・・・むしろ早くほしかったんだよ・・・」
「番司・・・ありがとう」
そして二人は静かに唇を寄せる。
そして、どちらからともなく舌を絡める。
「んふぅばん、じぃ」
「んんっか、かほっ」
二人は唇を重ねたまま無意識に互いを呼び合う。
二人とも唇を離したときには既に衣服が乱れ、露わになった番司のソレは反り立ち、果歩からは液が滴っていた。
「わぁっ・・・舐めて、あげようか?」頬を上気させた果歩が訊く。
「あ、ああ頼む・・・」
「・・・じゃあ私のも、その」
「解ってるって」
顔に喜びの色を浮かべる果歩を見て、つられたように番司も笑みを浮かべる。
そして二人は、互いの秘所に顔を当てる。
そして、互いに――果歩は頬張り、番司は舌を入れ込む――舐める。
「番司の、こんなに大きく・・・」
「果歩だってすっごい濡れて・・・」
二人の間の音は、二人の話し声と喘ぎ声、そしてピチャピチャ、ペロペロと言う卑猥な音だけだった。
43131:2005/12/25(日) 08:57:45 ID:Ry1Cvfm7

「はあはあ、凄いぜ果歩っ、どんどん溢れてくる」
番司は顔を白濁の液まみれにしながら声に笑みを込めて言う。
「番司のだってこんなに硬く・・・」
果歩も言葉に妖艶な響きを込めて、
「いいよ、もう我慢できないでしょ・・・」
優しく言う。
「う・・・けどそれはお前もおんなじだろ」
「ばれた?」
今度は一転少し舌を出しおどけたような感じで。
「当たり前だろ、こんなに濡れてりゃ・・・とにかく、入れるぞ?」
体勢を直し、顔を向き合わせて訊く。
「うん」
番司は自分の男根を果歩の秘部に当て、そっと沈めていく。
「んんっ」
果歩から声が漏れる。
番司は更に深く入れていく。
「うっ閉まるっ」
今度は番司の声が漏れる。
「ばんじぃ、もっとぉ・・・」
快感により動きが緩んだ番司を果歩が急かす。
「あ、ああ」
はっとした番司は慌てたように、それでも優しく突く。
「んあっ」
何度も
「あぁんっ」
何度も
「あぁっいい」
何度も。
しかし、いきなりペースを上げた事で番司は既に限界が近かった。
44131:2005/12/25(日) 08:59:49 ID:Ry1Cvfm7
「くっわりぃ、俺、もう限界・・・」
「へっ?」
「だから、もう、出して、いいか?」
切羽詰まったような番司に果歩もぎりぎりの理性で答える。
「うん、いい、おねがい、きてっ!」
番司は今までで一番深く、強く突いた。
先に果てたのは果歩の方だった。
「ぁああぁぁあぁああっっ!わたしいってる!!いっちゃってるよぉぉぉ!!」
それによる快感により番司も、
「うおおおおっ!でっ出るっ!!」
「へぁっ?ふわあああああっ!!いいっ気持ちよすぎて壊れちゃうぅぅっ!!」
いった直後で敏感になっている果歩の膣内にたっぷりと注ぎ込む。
二人はしばし余韻に浸る。
そして番司が口を開く。
「なあ、俺、いっぱい出しちゃったし、今日はこれくらいにしとくか?」
まだ息切れしている果歩が答える。
「はあっはあっ、何、言ってんの?これからが本番じゃない」
果歩は番司に抱きつくと舌を絡める。そして第2Rに突入していった。
45131:2005/12/25(日) 09:01:16 ID:Ry1Cvfm7

翌朝。
果歩が目を覚ますと体中が痛かった。
昨晩は何度も交わり、そのまま床で寝てしまったのだから当然だろう。
果歩はふと時計を見る。8時30分。
これから荷物を取りに帰ってから、学校に行っては遅刻は避けられないだろう。
ならいっそのこと病欠をとってしまうのもいいかも知れない。
どのみちこんな精液の匂いをプンプンさせては学校に行けないし。
そう考えると、果歩は匂いを落とすためシャワーを浴びに向かっていった。
シャワーはとても熱く、昨夜のことを思い出してまた少し秘部が濡れてきてしまう。
これじゃ意味無いかな、と苦笑しつつ体を洗い直し、浴室を後にする。
番司はまだ寝ている。疲れているのだろう。
果歩は無邪気に眠る愛しい男の頬にそっと唇を当てると、
「さて、おいしい朝ご飯作らなきゃねー」
そう言ってキッチンに立つ。
今、特別にそれができる幸せと、いつか遠くない未来この事が当たり前になる幸せを想いながら・・・
46名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 09:01:34 ID:zKQ/DJ0z
GJ!!!!!!!
47前スレ131:2005/12/25(日) 09:07:23 ID:Ry1Cvfm7
投下前謝ったばっかなのにまたミスしてました。orz
俺、「前スレ131」でした・・・

とにかく、次は國生さんのほう書きます。
それではまた。
ノシ
48前スレ272:2005/12/25(日) 12:05:59 ID:aDQ0/oPf
 こんにちは、クリスマスですね。
 コメントをくれた読者の皆さん、ありがとうございました。
 昨日の番外編を書き上げたので、また贈らせてもらいます。
 またエロ無しです。
 自分はシチュエーションは出来ても、そこまで書けないようです。orz 
49前スレ272:2005/12/25(日) 12:07:10 ID:aDQ0/oPf

 辻原は缶コーヒーを飲みながら、空を見上げていた
 今にも降り出しそうな曇り空、冬の張り詰めた空気は心地よかった
 「・・・いい夜ですねぇ」
 その横を並んで歩くのは理来や勇次郎におぶされたかなえなどの、こわしや協会の面々だった

 ・・・・・・
50前スレ272:2005/12/25(日) 12:07:45 ID:aDQ0/oPf

 今日は朝から工具楽屋(株)でクリスマスパーティをやり、面々はその招待客だ
 それから夜も更け、お開きになったので、営業担当として辻原は招待客を送っているのだった
 「いやぁ、楽しかったな〜、おい」
 「そうですか。それは何よりです」
 理来は上機嫌で鼻歌を歌っている、辻原は読めない表情でそう返した
 それにしても、と理来はひょいっとかなえを見た
 「あんまり飲んでないと思ったんだけどな、かなえちゃん」
 「んー、お酒に弱いんじゃないですか?」
 実際、かなえはワイングラス2杯ぐらいしか飲んでいない
 しかし、まさか帰る間際に足下がおぼつかなくなっていようとは誰も思わなかった
 仕方なしに、必然的に、誰かにおぶってもらうこととなった
 「酔い潰れているかなえさんもかわいいのぅ」
 勿論、その役を買って出たのは・・・密かかどうかはわからないが、かなえに想いを寄せている勇次郎だった
 先程の言葉も本当は心の中で思っていたことなのかもしれないが、勇次郎の場合はしっかりと声に出ている
 酔っているくせにぐちゃぐちゃ文句を言う番司を水糸で縛り上げるという行為が出来る厄介さ、扱いに困っていた辻原達は誰も反対しなかった
 「ところで、皆さんはどちらにお泊まりになるんですか?」
 「駅前のホテルに人数分の予約は取ってあるそうだ」
 「俺ぁ旅館みてぇのが良かったんだがな」
 雷の仙術使い・阿部雪見がそう教えてくれると炎の仙術使い・奥津太一はそう愚痴った
 仙術の媒介ともなるきせるをふかす彼の、昔ながらの職人気質を思わせる格好は冬場でも健在だ
 「駅前のですか。いやぁ、皆さん豪勢ですねぇ」
 辻原は笑って言う、確かこの辺りで一番豪華で立派なホテルだった
 「どうもかなえさんが予約してくれていたみたですよ。こうして遅くなることを見越して」
 木の仙術使い・西園寺進が言うと、勇次郎は「さすがかなえさんじゃ」とえらく感心していた
 辻原はそれを聞くと安心し、その豪華で立派なホテルが遠目でも見える位置まできたこともあった
 「じゃあ、そろそろこの辺で・・・」
 「おぅ! また何かイベントがあったら呼んでくれ!」
 理来も子供じゃないから、もう送ってくれなくても大丈夫だと意思表示を見せてくれる
 辻原はくるりとUターンして、工具楽屋(株)へ戻ろうとした
51前スレ272:2005/12/25(日) 12:08:16 ID:aDQ0/oPf
 「・・・っと」
 辻原の足が止まると同時に、「やれやれ」とため息を吐いた
 またきびすを返し、理来達の方を向いた
 「・・・やっぱり、もう少しだけ送らせてもらいますよ。この辺は入り組んでいますし」
 「そうか? ま、いいけどよ」
 辻原はははっと笑い、飲み終えた缶コーヒーを傍の自販機のゴミ箱に捨てた
 その手には、その手の小指にはひゅるりと細い糸がからみついていた

 ・・・全く、何の冗談ですかねぇ

 この糸は紛れもなく、水糸だ
 そして、こんなことが出来るのはこの場にかなえしかいない
 「・・・・・・」
 辻原はついでに自販機でまた缶コーヒーを買った、飲まずとも持っているだけでも温かいからだ
 思えば、かなえが酔い潰れた時から怪しいとは思っていた
 仙術は究極の肉体コントロール、グラス2杯程度のアルコールならあっという間に分解して排出することぐらい出来るだろう
 仙術使いは濃縮された催眠ガスさえ効かない身体を持っている時点で、「酔う」という行為自体がそもそも怪しい
 となれば、わざと分解速度を遅らせて、酔いの状態を保ち続けているに違いない
 「(あなたって人は・・・)」
 呆れてものも言えない、かなえは此方を誘っているつもりだったのだ
 しかし、その自尊心からそう自己主張するわけにもいかず、こうして勇次郎におぶされることとなった
 多分、計算外だったに違いない・・・酔い潰れれば、辻原の方が動いてくれると思ったから 
 この水糸はかなえが意図的に出したのか、それとも思わず出してしまったのだろうか
 辻原は小指に繋がっている水糸をたどってみると、それはやはりかなえの小指に繋がっていた
 「(全く、子供みたいですね)」
 しかし、こうでしか自己主張出来なかったのだろう
 だから、辻原もとりあえずそれに応えてあげることにしたのだ
 「(・・・それにしても・・・)」
 辻原は皆の後をついて歩きながら、首を傾げ思った

 この水糸はいつほどいてくれるんでしょう

 ホテルの前まで彼女を送ったら? 部屋で彼女を寝かしつけるまで? それとも・・・・・・?

 大人のクリスマスイヴはまだ続くようだ
52前スレ272:2005/12/25(日) 12:13:16 ID:aDQ0/oPf
以上で投下を終わります。短っ!

とりあえずご報告ですが、以前書いた見合いの話が保管庫以外の別所で公開されました。
ここで書いたものの訂正版という形ですので、また良かったら読んでみて下さい。
直せるだけ直してつもりですが、誤字脱字が見つかりましたらごめんなさい。orz

では、また・・・一読者に戻ります。
53名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 12:28:59 ID:Ry1Cvfm7
272さんGJ!
妄想が駆り立てられます!!
54名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 13:23:31 ID:I9dDzKIS
かなちんをずっと待っていた!!GJ
55名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 13:30:28 ID:QAbW8qRL
続きかいてほしいよう
つじ〜×かなちん
はいくらでも
バッチコ〜イですよ〜
56前々々499:2005/12/25(日) 19:52:24 ID:/szTwLd4
>>272
ひさびさのかなちんキタァ!
すごい続きが気になります・・・GJ!


んで、こっちは相変わらず我聞×國生さんな訳ですが、
なんとか25日中に間に合いましたので、クリスマスネタの続きを投下させて頂きます。

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1131896118/555-561
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1131896118/571-582>>2-4

の続きということで、後編となる25日分+エピローグ、えっちあり、になります。
・・・とりあえず、長くてすみません(汗
57前々々499 1/19 マジ長くてすみません(汗:2005/12/25(日) 19:53:31 ID:/szTwLd4

時間にしてどれくらいかはわかりませんが・・・しばらくそうしていて・・・
それから、お互いに唇を離して、目を開けて・・・

今更ながらに、恥ずかしくて顔が火照ってきました。
社長も真っ赤です。

「と、とにかく、冷えるし、会社に入ろうか」
「そ、そ・・・そうですね!」

会社の中はしばらく前まで人がいたのか、ほのかに暖房の名残のような暖かさが残っていました。
とは言え寒いことには変わりませんので暖房をつけて、深夜ですので灯りを一つだけつけます。
ふと時計を見ると、丁度、午前零時を過ぎたところでした。

「もうこんな時間だったのか・・・」
「25日になっちゃいましたね・・・あの、社長」
「ん?」
「今日が本当の・・・メリークリスマス、ですね!」
「あはは、そうだな、メリークリスマス!」
「あ、そうだ! ・・・ちょっと待っててください」

クリスマスで、思い出したものがありました。
急いでロッカーを開くと、丸一日入れっぱなしでしたがどうやら元気でいてくれた“それ”が、
昨日のままの姿で入っていました。
それを抱えて戻ると、社長は応接用のソファーに座られていました。
・・・あそこなら、並んで座れます。

「社長・・・」
「ん? それは・・・」
「あ、あの・・・クリスマス・・・プレゼント、です・・・社長に・・・」

鉢植えを少し飾っただけの、簡素なものですが・・・

「幸福の木・・・、あの日、社長が花屋さんで見ていたものですが・・・
 うちでも育ててまして、社長なら、ちゃんと育てて頂けるかと思いまして・・・」
「貰っちゃっていいのかな・・・でも、ありがとう! 大切に育てるよ!」

社長は、本当に嬉しそうに笑って、受け取ってくれました。
でも、それから少し苦笑するように、

「ん〜む、しかし、なんというか・・・」
「・・・あの、あまり気に入りませんでしたか・・・?」
「いや! 違う、全然違うから! ただ、まあ、その・・・いや、とにかく俺からも!」

と言って、いつの間に用意されていたのか、社長は足元から袋を取り出して・・・

「これ、俺から國生さんに、クリスマスプレゼント・・・受け取ってくれ」
「あ、はい! ありがとうございます! ・・・・・・って・・・」
「まあ、その・・・なんていうか・・・ははは」
「あは・・・ふふふっ・・・なんて言うんでしょうね、こういうの・・・ふふふ・・・」

偶然・・・で済ますのはちょっと惜しい気もします。
きっと、私と社長の気持ちが、どこかで通じ合った・・・ということに・・・。
何故ならそこにあったのは、私が社長に贈ったものと同じ―――幸福の木。

「いやさ、名前が良いなって昨日見たときから思っててさ、それに決めたんだけど・・・
 國生さんの家にもあるって可能性は考えてなかったなぁ・・・
 プレゼントして貰えるとも思ってなかったけどさ、あはは」
「私だって、まさか社長から頂けるなんて思っていませんでしたよ!
 ・・・でも、すごく、すごく嬉しいです! 私も大事に育てますね!」
58前々々499 2/19:2005/12/25(日) 19:54:26 ID:/szTwLd4

お互いに交換することになってしまった二鉢の幸福の木を応接用のテーブルに仲良く並べて、
私と社長は並んでソファーに腰掛けました。
どちらとも無く身体を寄り添わせて、私が社長の膝に手を置くと、その上から手を重ねてくれました。
手に、身体に、社長の温もりを感じます・・・
今までにも、社長に触れたことは何度もありました。
仕事の時に抱きかかえられた事だってあります。
でも・・・こんなに温かいと感じたのは、ついさっきから・・・好きだって、わかった時から。
ずっと外で、寒い中で、ツリーの下で私を待っていてくれたときも、そして今も・・・
社長の手は温かくて、優しく、私を包んでくれます。
・・・でも私は・・・社長に何をしてあげられるのかな・・・

そう思って、唐突に思い出してしまいました。
あの、花屋で遭遇したお二人のこと・・・保科さんの、台詞・・・
私が、してあげられること・・・といいますか、私があげられるもの・・・といいますか・・・
で、でもそれは・・・た、確かに・・・好き合ってるのはわかっちゃったし、
思えばあの日、お父さんも期待しているようなこと言ってたけど・・・でも・・・でも・・・

自分の思いつきが恥ずかしくてたまりませんが、それでも・・・つい、
社長の表情を横目に覗うと・・・

「――――――!!」

社長は真っ直ぐこっちを見ていて、
・・・思わず、飛び退いてしまいました・・・

「こ、國生さん!?」
「あ・・・す、す、すみません!」

社長に嫌がってると思われたくなくて、慌てて元の位置に戻ってぴとっ、と社長の横に寄り添いますが・・・
は・・・・・・恥ずかしい・・・

「國生さん、顔が真っ赤だけど・・・いや、俺も赤いとは思うんだが・・・なんか、もの凄いというか・・・」
「い、いえ、別に、へ、平気ですから!」

まさか、顔を見られただけで私がどんなことを考えていたか、まではわからないでしょうけど・・・

「ま、まあいいけど・・・ところでこれって、やっぱり木って言うくらいだから、
 ずっと育ててたらいつかは大木になったりするのかな?」
「え・・・? あ、どうでしょう・・・それはちょっとわかりませんが・・・
 でも、寒さに弱いですから、外に植えられませんからね、大木にするのは無理かと・・・」
「ちぇ、そうか、残念・・・庭に植えていつか巨大に育ったら、いい記念になると思ったのにな・・・」
「・・・記念?」
「・・・あ! いや、別になんでもないぞ!?」

今度は社長が真っ赤になってそっぽを向かれてしまいました。
でも、さっきの私よりは・・・なんと言いますか、意味がわかります。
だって、今日贈ったもの・・・それを、記念にしようと言って下さったのですから・・・

「社長」
「ん、な、なんだ國生さん!?」
「今の、お庭に植えるお話ですが・・・」
「え、ああ、別に気にしなくていいから!」
「・・・そこに植えるはずだった、その幸福の木・・・
 それは、一本ですか・・・それとも・・・二本でしたか・・・?」
59前々々499 3/19:2005/12/25(日) 19:55:07 ID:/szTwLd4

社長が、驚いたようにこちらを向かれました。
私は、本当は恥ずかしくてたまりませんが・・・社長の回答を促すように、
微笑んで(多分顔は赤いのですが)社長を見つめました。
社長は真っ赤になって困ったような顔をされて、
正面に向き直られてしまいましたが・・・

「・・・・・・まずは、一本」
「まず・・・?」
「ああ・・・それで・・・・・・もうしばらくして・・・俺たちが、高校を出て、それから・・・
 二本になる予定だった・・・」

そう言いながら社長が見られているのは・・・
きっと、いつか社長の家の庭で並んで植えられるはずだった、二鉢の木・・・。

「ね・・・社長・・・」
「ん? どうした?」
「幸福の木の花言葉、ご存知ですか?」
「花言葉・・・って、木なのに花言葉なんてあるの?」
「ふふ・・・ちゃんと、花も咲くんですよ?」
「ぬぅ、朝のうちに慌てて買いに行ったものだから、そこまで説明聞いたりしなかったよ」
「そうだったんですか、でも、わざわざ・・・」
「え、なに?」
「いえ・・・」

わざわざ、朝のうちに買いに行って下さったんですね・・・それを、こちらに置いていかれた・・・

「幸福の木の花言葉、いくつかあるんですが、一つは――――――名もない寂寥」
「・・・寂寥」

この鉢を・・・目の前のこれを、ロッカーに押し込んだ時の、私。
社長から逃げて、もう一度社長に会うまでの、私。

「今夜、社長に会えるまで・・・本当に寂しかった・・・もう二度とあんな思い・・・したくない・・・
 社長・・・私のこと・・・離さないでいてくれますか・・・?
 もう、寂しい思いなんてしないで済むように・・・ずっと一緒にいてくれますか・・・?」
「・・・ああ・・・俺も、そうしたいと思う・・・いや、そうする・・・離さないよ」

じっと見詰めていたテーブルの鉢植えから目線を外してこちらを向いて、
静かに、ですが力強く・・・仰って下さいました。
私も身体を社長に向けて、社長の膝の上に少し乗り出すようにして、その顔を見つめます・・・
そして、少し照れたように笑って・・・

「でしたら・・・もう一つの花言葉――――――幸せな恋・・・これが、今の私の気持ち・・・です」

あなたが、待っていてくれたから。
私を好きだって・・・言ってくれたから。
これから先も・・・ずっと一緒だって・・・言ってくれたから・・・。

「そしてあと一つ・・・名前の通り、ですが・・・」

私が今、夢みてること・・・そうありたいって、思うこと。
あなたと、育みたいもの・・・あなたと、分かち合いたいもの・・・

「――――――幸福・・・です」

願わくば・・・私と、あなたとの・・・未来。
60前々々499 4/19:2005/12/25(日) 19:56:15 ID:/szTwLd4

「社長・・・私のこと・・・幸せに、して下さいますか・・・?」

社長の顔に、吐息がかかるくらいに顔を寄せて、私は問い掛けます。
私は・・・どんな顔をしているのでしょう。
恥ずかしいです・・・だから、きっと真っ赤だと思います・・・けど、
それだけじゃない・・・悲しいわけじゃないのに、涙が出そうで・・・
嬉しいはずなのに・・・今だって幸せなはずなのに・・・切なくて・・・

そんな私の顔から・・・目から、ずっと視線を逸らさなかった社長が、
視線はそのままで・・・少し、微笑んでくれて・・・
すっ・・・と、私に重ねてくれていた社長の手の温もりが消えました。
でも、それを寂しいと思う前に・・・

私のことを、ぎゅっと・・・抱き締めてくれました。

「幸せにするよ」

短く、そう言いました。
あと少しで、唇が触れてしまいそうな程に私を抱き寄せて。

「必ず」

真剣な、でも優しい目で。
・・・また、涙が出てしまいました。
今日は、泣いてばかりです・・・でも、我慢できません・・・嬉しくて。
そして、私の心も、決まりました。

「でしたら・・・私はどこまでも・・・どこまででも・・・あなたについていきます・・・」

私も両腕を社長の背中に回して、力いっぱいに抱き締めて・・・

「私の全て・・・あなたに、捧げます・・・」

そして、最後の距離を縮めました。
唇を開いたまま、私の方から顔を寄せて・・・私から、社長の唇を奪いました。

「――――――!」

二回目のキスは、さっきより遥かに積極的で、そして・・・情熱的でした。
私がぎゅっと、社長の唇に唇を押し付けると、社長は最初戸惑って、
それから、私と同じ熱烈さで、応えてくれました。
将来を誓う言葉に互いの全てを委ねたのか、
それとも、刹那的な感情の奔流に酔っただけなのか・・・
私たちは、ただひたすらに・・・求め合いました。
強く押し付け合っていただけの唇を、どちらとも無く吸い合い、舌が触れると、それを絡めました。
社長の舌が私の舌に絡みつき、私の唇を舐めまわす感触に、ぞくぞくするような・・・
嫌じゃない、すこし・・・気持ちいいような・・・そんな感覚に捕われて・・・
気付いたら、私は・・・私から求めたはずなのに・・・社長のされるがままになっていました。
そうやって唇を貪りあって、やがて離れた二人の間には銀色の糸が引き、
それが切れてしまっても、私たちは、ずっと見つめ合っていました。

“私の全てを捧げる”
・・・たった今、私が社長に言った言葉です。
勢いもありましたが、決して考えなしに言った訳ではありません。
ちゃんと、捧げるもの・・・求められるもの・・・それについても、考えています・・・
でも、今・・・社長から唇を解放されて、じっと見つめられて・・・
恥ずかしさのあまり、私は顔を背けてしまいました。
61前々々499 5/19:2005/12/25(日) 19:57:04 ID:/szTwLd4

「國生さん・・・」
「は、はい・・・」
「その・・・なんだ・・・」

見つめられた時、社長は紅潮した顔で、まっすぐに、私の目を見ていました。
必死で抑えようとしているものが、でも身体の奥から沸々と煮え立って、
抑えられなくなりそうで、でもまだ抑えている・・・そんな印象でした。
・・・多分、私を、求めてくれています・・・さっきより、もっと深く・・・もっと、激しく。
でも、それを口にするのが躊躇われる・・・そんなところでしょうか。
ならば、私がすべきことは・・・

「社長・・・いいですよ?」
「え・・・國生さん?」
「・・・社長のなさりたいように、なさって下さい・・・それが私の望みですから」

怖いけど・・・でも、今日なら・・・今なら、勇気が出せるから。

「だ、だが・・・俺のしたいようにって・・・俺は、君のこと」
「多分ですが・・・わかっています。 その上で、です」
「でも・・・國生さん・・・震えてる」
「え・・・」

気付いていませんでしたが・・・私は・・・思っていた以上に・・・・・・怯えていたみたいでした。
必死で平静な、冷静なフリをしていて自分では気付かず、
抱き合ったままの社長にはしっかり伝わってしまっていたようで・・・間の抜けたお話です。
社長がはっきりと言わなかったのは、しり込みしたからではなく、
どうやら、私を気遣ってくれたから・・・だったようです。
・・・・・・でも!

「気付きませんでした・・・確かに、本当は・・・怖いです・・・怯えてます・・・でも・・・
 私は今、言いました・・・あなたに全てを捧げるって。
 ・・・痛いって、聞きます・・・失ってしまうものも、あります・・・でも、全部わかっています。
 その上で、なんです・・・多少辛い思いをしたとしても、それでもいいから・・・
 今なら、勇気が出せるんです・・・あなたと、一つに・・・・・・」

それ以上は、喋らせて貰えませんでした。
唇を、塞がれてしまいましたから・・・。
今度は、優しい、軽めのキス。
私の口を塞ぐための、言葉を遮るための行為。
そして、すぐに口を離して・・・

「・・・いいんだね?」
「・・・はい」
「わかった・・・・・・ありがとう」

そう言って、社長は私の身体を離しました。
そして、改めて両手を私の肩に置いて・・・仰いました。

「國生さん・・・君を、抱くよ」
「・・・はい」

もう・・・後には退けません。
・・・いえ、退きません。
怖くても・・・恥ずかしくても・・・
62前々々499 6/19:2005/12/25(日) 19:58:06 ID:/szTwLd4

私が改めて覚悟を決めた時・・・まるでそれを待ってくれていたかのように、社長の手が動き始めました。
肩にかかった手が、する・・・と滑り、

「あ・・・」

制服の上から私の胸に触れました。
少しだけ、撫でるように触れられただけなのに、身体がぞくりと震えます・・・
いやらしいことをされている、という、実感が沸いてきますが・・・でも、社長になら・・・

「服、脱がすよ」
「え・・・は、はい」

社長の手が、ブレザーのボタンをぎこちない手つきで外していきます。
社長に服を脱がされる・・・会社で、ということも相まって、もの凄い恥ずかしいのですが、
少しだけ、背徳的な胸の高鳴りを覚えていました・・・
ブレザーの前がはだけると、続いてネクタイが解かれ、
ブラウスのボタンも上からひとつ、ふたつ・・・と、外されてゆきました。
程なくして私の肌を隠すための戒めは全て解かれ、社長は緊張で強ばった面持ちで、
ブレザーもろともに、ブラウスの前を割り開きました。
素肌も・・・下着も、社長の目に露になってしまいました・・・は・・・恥ずかし過ぎます・・・

「ええと、これって、背中、かな・・・?」
「え・・・? あ、は・・・はい・・・」

社長も一瞬、わたしの・・・その、下着姿に見入られたようですが・・・
すぐに行動を再開され、当然、その下着も、同じ運命を辿ります。
さっき覚悟を決めたはずの心が今、ものすごい脆さを発揮しています・・・恥ずかしすぎて泣きそうです・・・

「む・・・す、すまん、すぐ外すから・・・!」
「いえ、別に、焦らなくて平気ですから・・・」

ある意味予想通り・・・外すのにてこずっています。
本当は私が手を出してしまった方がスムーズだったと思いますが、
気持ちにそんな余裕はありませんでした。
それに、心のどこかで社長に脱がされたい、とも思っていたのかも知れません・・・
結局、長かったのか短かったのかもわからない間をおいて、
ぱら、
・・・と、胸を緩く締め付けていた感覚が失われました。

「あ・・・」
「外れたけど・・・腕を抜かないと脱げないのか・・・じゃあ、ずらすよ・・・」
「あ、は・・・あ・・・はい・・・ぃ・・・」

ホックを外されて肩紐で引っ掛かっているだけになったブラは、簡単に手でずり上げられて、
・・・社長に、その、中身を・・・見られてしまいました。

「・・・・・・・・・」
「・・・あ・・・あの・・・」

無言で、じぃ・・・っと見つめられて・・・
背中にソファーの背もたれが当たっていなかったら、逃げ出しそうなくらいに恥ずかしいです・・・

「國生さんの肌・・・白くて、綺麗だよ・・・」

敢えて胸のことを言わないのは、恥ずかしいからでしょうか・・・それとも・・・

「そ、そんな見ないでください・・・こんな、小さい胸なんて・・・見たって楽しくないでしょう・・・?」
63前々々499 7/19:2005/12/25(日) 19:59:10 ID:/szTwLd4

コンプレックスという程のものではありませんが、
身近にいる優さんや高校の同級生達と比べたら、サイズの違いは明白です・・・
以前は、体術をはじめ仕事での動きやすさを考えて、この方が身軽でいい、と思っていました。
髪だって、行動の邪魔にならないようにと仕事優先で考えた上でのカットです。
でも、今こうして・・・女性として・・・男性の・・・想いを寄せる人の前で身体を晒すに至って・・・
少しだけ、残念な気持ちになってしまいます・・・

「いや、なんていうか・・・ものすごく、ドキドキする・・・
 ドキドキしすぎて・・・ごめん、見ていられない・・・」
「え・・・っきゃあ!」

言うが早いか、社長の手は私の小さい胸を、鷲掴みにしていました・・・。
今度は、さっきみたいに触れるだけじゃなく、
掴んで・・・少し乱暴に・・・揉んでます・・・私の・・・胸・・・揉まれてます・・・

「ひぁ・・・や、やぁ・・・社長、ちょ・・・ふぁ・・・」
「大きさなんて、気にしなくていいのに・・・國生さんのおっぱい・・・綺麗な形だし、
 手が吸い付くみたいな感触で・・・温かくって、柔らかくて、でも弾力もあって
 ・・・すごい・・・心地いいよ」
「はぅ・・・ほ、本当・・・ですか・・・ぁ・・・っ」
「ああ・・・可愛いよ・・・すごい・・・國生さん・・・」

そう仰いながら・・・私の首筋に顔を埋めると、そこに舌を這わせ・・・キスして下さいました・・・

「ふぁ・・・! あ、ぁ・・・ん・・・はっ・・・」

ちゅう・・・っ、と、少し強く吸われて・・・もしかすると跡がついてしまうかもしれませんが・・・
でも、いいです・・・恥ずかしいのは相変わらずですが・・・
社長に求められているという実感があって・・・嬉しいです。
それに、胸を弄る手も、キスも・・・ちょっとだけ、気持ちいい・・・です・・・
そのように社長の愛撫に酔いつつあった私は、
胸から離れた社長の片手が私の膝に触れても、その手がスカートの中へ滑り込んでも、
特に抵抗しませんでした・・・正直、一瞬だけ怖かったですが・・・すぐにそれは期待に変わりました。

「は・・・ぁ・・・ひぅ・・・あ! あ、あ・・・っ」

内腿をゆっくりと撫で上げられる感触に、背筋がぞくぞくと震えます。
そして、程なくその指がショーツに触れ・・・私の、大事なところに、下着越しに触れて・・・

「・・・っぁあ!」

思わず、これまでよりトーンの高い声を上げてしまい、その拍子に社長の動きが止まりました。
しばし、私の反応を待ったのでしょうか・・・ですが私はそれ以上、何も言いませんでしたので、
社長の手は再び動き出します・・・首筋へキスを繰り返し、片手で胸を弄り・・・
もう一方の手で、下着越しに・・・秘裂を指で、撫で上げられます・・・

「ふぁ! あ・・・あっ! ひぅ・・・っ」

今度は、高い声を上げても止まってはくれません。
いえ、むしろ、少しずつ・・・指の動きが速くなっています・・・

「・・・國生さんのここ・・・湿ってきてる・・・」
「・・・え!? そ、そんな! ・・・っあ! は・・・ふぁ! ひゃ・・・うそ・・・」
「嘘じゃないよ・・・俺ので、感じてくれてるのかな・・・?」

言われてみれば・・・わかります・・・自分のそこが、濡れはじめていることが・・・
恥ずかしくてたまりませんが・・・でも、それで余計に意識してしまいます・・・
64前々々499 8/19:2005/12/25(日) 20:01:07 ID:/szTwLd4

一旦意識してしまうと、私のそこはいきなり敏感になったみたいに社長の指に反応して、
何度もそこを擦りあげる社長の指の刺激を甘い電流に変えて私の頭に送り込んできます。
つられて、首筋を這う舌や、胸を・・・揉みしだきながら、乳首を指の腹で優しく撫でる感触まで、
一気に鮮烈になって・・・私の頭を・・・焦がします。

「っや、ひゃああ! だめ・・・っ、ふぁあ・・・っ」
「國生さん・・・ここ、どんどん濡れてくる・・・」
「そ・・・んなっ・・・しゃ、ふぁ! 社長が・・・弄るから・・・あ・・・あ、や!」

不意に耳に息を吹きかけられて、耳たぶを甘噛みされて・・・こんなところまで敏感になってしまって、
びくびくっと身体が震えてしまいます。

「國生さん、今まで聞いたこと無いような声・・・すごく・・・なんていうか・・・そそるっていうか・・・」
「っは・・・へ、ヘンなこと・・・いわないで・・・ください・・・っ」
「ね・・・気持ち、いい?」
「・・・! し、知りませんっ!」

・・・本当は・・・気持ち、いいです・・・
こんな風に身体を触られるのも、キスされるのも、当然、初めてですが・・・
社長の指から・・・舌から・・・敏感なところに甘い刺激を擦り込まれているようで・・・
身体が・・・こころが・・・蕩けそうです・・・
でも・・・恥ずかしくて絶対に口に出せないけど・・・できれば、もうちょっと・・・強く・・・

・・・という、私のはしたない願いが、通じてしまったのか、
それとも、顔に出てしまっていたのか・・・
下着の上からそこを弄っていた指が、ショーツの中に潜り込んで来て・・・

「っひ!?」

緩衝する媒介無しに直接そこを触られる感触に、思わず悲鳴みたいな声を出してしまいました。
社長の指が・・・わたしの・・・その・・・割れ目に、当てられてて・・・
やがて、ゆっくりと、その割れ目に沿って指が上下に動き出します。
ほんの軽く、割れ目に指を押し付けながら・・・

「っあ、あ! ふぁ! あ! ひゃ!」

蕩けそう・・・なんて生易しいものじゃ・・・ないです・・・
社長の指、軽く押し付けられただけなのに・・・ちょっとひりひりするけど・・・身体の奥まで響いて・・・!
私・・・焼けちゃう・・・焦げちゃう・・・!

「すごい・・・温かくて、柔らかくて・・・触ってるだけで、気持ち良いよ・・・指が、溶けちゃいそうだ・・・」
「ひぁあ・・・、や、そんな・・・っふぁあ! 私が・・・私のほうが・・・溶けちゃう・・・っ」
「ふふ、そうだね・・・ここ、もうこんなにとろとろに濡れて・・・溢れてくるみたい・・・」
「や、やだ・・・! そんなの、だめ・・・言っちゃ・・・イヤです・・・っ!」

そんなことを言っている間にも、社長の指は少しずつ深く私の中に埋まり、
少しずつ速く、そして緩急までつけて動いて・・・私のそこを・・・苛めます。
それでも、ほとんど痛みを感じさせずに、にゅる、にゅちゅ、と社長の指が滑らかに動くのは、
社長の言う通り・・・私のそこが、その・・・えっちな、蜜を・・・絶え間なく、垂らしているから・・・
社長の・・・指で・・・キスで・・・気持ちよく・・・なっちゃってるから・・・・・・

「ああ・・・しゃちょ・・・ゆび・・・だめぇ・・・っ そこ・・・、そんな・・・ひぅう・・・」
「本当に、可愛い声・・・それに顔も・・・すごく、可愛いよ・・・」
「ひぁ・・・や! だめ、見ないでぇ・・・恥ずかしいです・・・やぁ・・・」

首筋へのキスの雨は降り止んで、今度は私の顔を正面から見られてしまいます。
きっと、恥ずかしさで紅潮して、気持ちよすぎて蕩けてしまっている、情けない、私の顔・・・
65前々々499 9/19:2005/12/25(日) 20:02:43 ID:/szTwLd4

「だめ・・・見ないで・・・おねがい、しゃちょ・・・ふぁ・・・っ」
「・・・無理だよ、國生さん・・・だって・・・こんなに、可愛い顔・・・見たことないもの・・・」

そう言って、頬にキスをしてくれて・・・
そんなことされたら・・・どうしよう・・・本当に、溶けちゃいますよぉ・・・

「でも、本当に気持ちよさそう・・・不安だったんだけど、俺ので、ちゃんと感じてくれてるんだね・・・」
「ひぅ・・・や・・・し、しらない・・・知らないですっ・・・!」

確かに、気持ち良いです・・・けど、そんな質問・・・恥ずかしすぎて・・・

「む、強情な・・・じゃあ、これを見てもそう言える?」
「え・・・あ・・・っ!? や、やだ・・・・・・」

そう言って、社長は私の・・・そこを愛撫していた手をショーツから抜くと、
その、私の・・・えっちな蜜で濡れそぼった指を・・・よりによって、私の目の前に・・・
社長の右手の中指・・・私ので、べっとりと濡れていて・・・え・・・!?
そ、それを・・・私の、目の前で・・・ぺろって・・・舐めて・・・

「國生さんのここのお汁・・・えっちな味がするよ・・・」
「やあ! そ、そんなこと! そんなの舐めちゃだめえ! ・・・え・・・ええ? ちょ、や・・・ひむぅっ!?」

それだけでも、泣きたくなるくらいに恥ずかしいのに・・・今度は、その指を・・・
私の口にまで突きこんで・・・

「んんん!? んむ・・・っ、ちゅ・・・んぷっ、ぷぁ・・・はむ・・・ぢゅっ・・・」

恥ずかしいのに・・・私・・・社長の指を・・・舐めしゃぶってる・・・
舌を絡めて・・・卑しく・・・いやらしく・・・赤ちゃんみたいに・・・しゃぶってる・・・
私の味・・・苦くて・・・ちょっとだけ、すっぱくて・・・こんなこと、おかしいのに・・・だめなのに・・・

「ぷぁ・・・しゃちょお・・・わたし・・・その・・・」
「な、なんか、こっちまでドキドキしちゃったよ・・・おいしかった?」
「はぅ・・・はい・・・おいしかった・・・気持ちよかった・・・です・・・・・・んん!?」

今度は・・・キス、されました。
さっきの社長の指の変わりに、今度は舌が私の口に入ってきて・・・
さっきと同じように、舌を絡めて・・・絡め合って、口をお互いに、吸い合います。
もう・・・恥ずかしさとか・・・よく、わからないです・・・
互いの唾液を送り合って、混ぜ合わせて・・・呑みこんで・・・
口の端から垂れて互いの制服やソファーを汚すのも気にせずに、ただひたすら、貪りあいました。

その最中にも、社長の指は再び私のショーツに潜り込んで、
さっき以上の激しさで濡れそぼった秘所への愛撫を再開します。
胸を揉みしだき、乳首を優しく撫でるもう一方の手も、休まることはありません。
・・・もう、身体中が甘い刺激で痺れてしまったようです・・・
今、社長に気持ちいいかって聞かれたら・・・虚勢を張って強がることなんて、できません・・・
でも・・・これはこれで、いいかもしれません・・・
身も心も、社長に捧げてしまった感じ・・・私が、望んだこと・・・
・・・このまま、快楽に流されるまま終われたら、どんなにいいでしょう・・・

でも、忘れてはいません・・・いえ、忘れられませんでした・・・
身体が疼けば疼くほど・・・昂ぶれば昂ぶるほど、それが迫っていることに。
だからこそ、社長も・・・こんなに手を尽くして、私のことを愛してくれたのだと思います。
長いディープキスを終えて唇を離したとき、社長は気遣うように、そして少し不安げに、私の顔を見ました。
わたしは、そんな色を出さないように意識して・・・社長にただ、うなずきました。
66前々々499 10/19:2005/12/25(日) 20:04:01 ID:/szTwLd4

「國生さん・・・ほんとうに・・・いいの・・・?」
「はい・・・だって、社長が・・・こんなに・・・感じさせて・・・くれたから・・・」

敢えて何が、とは言われませんでしたが、唇だけでなく、両手も私から離して改まって問われたら、
もう、そのことしかありません・・・。

「じゃあ・・・下着、脱がすよ・・・」
「・・・はい」

ショーツを穿いたままで愛撫され続けたせいですっかり濡れてしまったそれを、社長が下ろしていきます。
私は・・・やっぱり、恥ずかしいですが・・・せめて脱がしやすいようにと腰を浮かせていました。
スカートは捲れたままなので、私のそこは外気に触れて・・・思わず、ぞくりと震えてしまいます。

「ここ・・・こんな風になっているんだ・・・綺麗なピンク色・・・」
「そ、そんなじぃっと見ないでください・・・」
「あ、す、すまん」

社長以外の人には絶対に見せられないところ・・・社長にだって・・・イヤ、とは言いませんが・・・
恥ずかしいのはどうにもなりません・・・

「じゃあ、その・・・俺も・・・」
「あ、は・・・はい・・・」

そう言って、カチャカチャとベルトを外す社長を見て、初めて・・・
社長のそこが、もの凄く膨らんでいるのに、気付きました。
まるで、何か入っているみたい・・・も、勿論・・・それが男性特有の生理現象で、
何がそうなっているのか・・・知識では・・・知っていますが・・・私を、弄って、あんなになったんだ・・・

・・・私のそこを見られるのと同じくらい、
社長のものとはいえ・・・男の人のそれを見るのも恥ずかしくてたまりませんが、
でも、これからのことを思うと、気にせずにはいられません・・・
社長がベルトを外し、ファスナーを下ろし、そして下着を少しずらすと・・・

「――――――!?」

む・・・昔、お父さんのは見た記憶がありますが・・・と、当然ながら・・・その、普通の状態だったわけで・・・
あ、あんな・・・あれが・・・本当に・・・・・・わ、私の、中に・・・・・・?
・・・標準的な大きさがどんなものかはわかりません・・・けど、
私の中に、入るなんて・・・信じられないくらい・・・大きい・・・太い・・・です・・・
それに、形・・・こわい・・・

「・・・國生さん・・・やっぱり、今度にしようか・・・?」
「え・・・」

顔に、出てしまっていたのでしょうか・・・
さっきまで、ちょっと意地悪なくらいに私を昂ぶらせてくれていたのに、
わたしにばっかりえっちとか言ってたけど、社長の方が絶対にえっちなことしてたのに、
多分、社長の・・・それが、そんなになっているということは、
社長は・・・その・・・したい、はずなのに・・・
気遣ってくれるのが、嬉しいです・・・でも、だから・・・そんなあなただからこそ・・・!

「平気です・・・最後まで、して下さい」
「だが・・・」
「今度にしたって、何も変わりませんから・・・それに・・・」

多分、顔色は・・・赤くは無くなっているでしょう、もしかすると蒼ざめているかもしれません。
でも、せめて笑顔は絶やさずに、そして・・・恥ずかしいけど・・・演じます。
社長のそれに、両手を添えて・・・
67前々々499 11/19:2005/12/25(日) 20:05:38 ID:/szTwLd4

「それに・・・私の望みは・・・社長と、一つになること・・・ですから・・・」
「國生さん・・・」

私の虚勢が、どこまで通じたかはわかりません・・・そもそも、笑顔が作れていたかどうかさえ、怪しいです。
ですが、社長は私の方へ身体を寄せました。
その表情は・・・私を安心させようと、微笑を浮かべようとして・・・でも、上手くいっていない、
そんな感じでした。
私が不安なのと同じくらい、社長も不安なんだと思います・・・私を、傷つけてしまうことが・・・

「・・・國生さんは強いな」
「え・・・?」
「俺よりも、よっぽど辛いはずなのに・・・
 そうやって、微笑んで・・・俺をリラックスさせようとしてくれてる・・・」

上手く、いっていたようです、でも、上手くいっていたけど・・・

「見抜かれちゃってましたか・・・でも・・・怖いけど・・・私の望みは、本当です・・・」
「だが・・・しかし・・・!」
「今夜じゃないと、ダメかもしれないんです・・・」
「え・・・?」
「今夜は、特別な夜だから・・・
 今夜なら、いつもより、今までのどんな時よりも、勇気が出せるから・・・
 私が好きな人が、私のことを好きだって、言ってくれた夜だから・・・」

今夜、あなたと・・・結ばれたいから・・・

「本当に・・・いいんだね?」
「はい・・・」

そう言って、社長は私の前に立ちました。
そして、ソファーにもたれかかる私に、被さるように近寄って、
腰のものを・・・わたしの、そこに・・・あてがおうとします。
私は、それに添えた両手で目指すところへ導きます。
そして・・・

「・・・じゃあ・・・いくよ・・・」
「はい・・・来て、下さい・・・
 私の身体に・・・社長のしるし・・・刻んで、下さい・・・」

そして、互いに覚悟を決めた上での微笑を浮かべて、軽く、おまじないのようなキスをして、
私たちは最後の一歩を、踏み出しました。
68前々々499 11/19:2005/12/25(日) 20:07:14 ID:/szTwLd4

社長のものが、私の中に埋まる感覚に・・・最初は・・・最初だけだとわかっていますが、
先程の甘い疼きが蘇ります。
指より遥かに太いものが、私の最も敏感なところを、押し広げる感覚・・・
あとに続くものが予想できるのに、それでも期待してしまう感覚に、身体がふるふると震えます・・・が、
その先端は、すぐに薄い膜にぶつかります。
社長は、そこでまた私を見て・・・私は、軽くうなずいて・・・下を向きます。
・・・これからの表情を、見られたくなかったから。

薄い膜に力がかかって、ぴりっと破れる感覚が、続きました。
そして・・・狭い釘穴に、明らかに太すぎる杭を打ち込むような・・・
身体を貫く・・・いえ、裂く、よう、な――――――

「――――――――――――っ!!」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い―――――――――――――!!
ずぶずぶ・・・と、社長のものが私の中に埋まりゆく間、私は、ただ歯を食いしばっていました。
ぼろぼろ涙を流しながら・・・絶対に声は上げないって決めて・・・
社長の背中に手を回して、力の限りに抱き締めて、その胸に顔を押し付けて、
目をぎゅっと瞑って歯を食いしばって・・・
社長のものが、全部私の中に埋まるのを、待ちました。

「國生さん・・・無理、しないで・・・」

腰を静めながら、優しく・・・そう言ってくれます。
でも、そんなこと言われても・・・無理しないことが、無理です・・・もう、どうにもならないです・・・

「君が止めてって言わない限り・・・止めようって言わないから・・・止めないから・・・だから、
 せめて・・・声を上げてもいいから・・・泣いたっていいから・・・そこまで、無理しないでくれ・・・」

そんなこと言ったって・・・本当に痛いんですよ・・・?
これで声出しちゃったら・・・社長、私・・・泣き叫びますよ・・・?

「・・・っふ・・・あ・・・うぁ・・・しゃちょ・・・あ、あ、ああ・・・わああああああああっ!!」
「・・・國生さん・・・っ」
「痛いです、痛い、痛いですっ! しゃちょお、しゃちょおぉっ! うぇ・・・うぁあああああ!」

だから言ったのに・・・
一度、声が漏れた後は、もう、抑えられませんでした。
“痛い”と“社長”という言葉を何度も繰り返しながら、あとはただただ嗚咽を、漏らしつづけました。
私が号泣している間、社長は私の背中に回した片腕でぎゅっと抱き締めて、
もう片方の腕で頭を抱いて、優しく・・・髪を撫で続けてくれていました・・・

やがて、慣れたのか、麻痺したのか・・・少しだけ痛みが退いて、私が泣き止んだとき、
既に社長のものは、私の中に全て埋まっていました。

「社長・・・ごめんなさい・・・わたし・・・」
「國生さんが謝ることない・・・俺が、君に痛い思いをさせたんだ・・・謝るなら、俺の方だよ」
「・・・社長」

確かに、そうかもしれない・・・社長がこうしたから、私が痛い思いをしているのは、その通りだけど・・・
でも、それでも・・・あなたのことが憎いとか、欠片ほどだって思っていないんですよ・・・?
だって、私は、それくらい、あなたのことが・・・

「社長・・・好き・・・好きです・・・大好きです・・・しゃちょお・・・」
「俺もだよ・・・好きだ・・・國生さん・・・愛してる」

痛いけど・・・辛いけど・・・でも。
その言葉だけで・・・その気持ちだけで・・・私は、大丈夫です。
身体は傷ついても・・・心は、嬉しさで・・・愛しさで・・・いっぱいですから・・・
69前々々499 13/19 ↑は12/19の間違いっす:2005/12/25(日) 20:09:11 ID:/szTwLd4

お互いの言葉を確かめ合うように、どちらとも無く唇を寄せて、もう一度、キスを交わしました。
交わしたと言っても・・・刹那的なものではなく・・・舌を絡めあうような、濃厚な、ディープキス。
飽く事なく、執拗に・・・私たちは、繋がったまま・・・互いの唇を、吸い続けました。
そして、いつしか・・・先程の感覚が、蘇ってきます。
痛みは痛みのままあって、でもそれとは別に、あの、蕩けそうな昂ぶりが・・・
社長のものを納めたそこも・・・多少、馴染んできたとはいえ未だに痛みははっきりとありますが、
微かに・・・ジンジンと、疼くものがあります・・・
あんなに・・・号泣するほど痛かったはずなのに・・・今だって、痛いのに・・・
やっぱり、私・・・えっちなのかもしれません・・・でも、それでもいいです。
それで、社長と、一緒に気持ちよくなれるなら・・・えっちで、いいです・・・

「あの・・・社長・・・」

長い長いキスを終えて、溶けて小さくなってしまったんじゃないかと思う舌を離して、
わたしは彼に、一つの提案をします。

「・・・動いて、いいですよ」
「動いて・・・って、でも、それは・・・」
「さっきまで・・・わんわん泣いてた時よりも、ずっと痛くなくなりました・・・それに・・・」

懸命に抑えられてるけど・・・ちゃんと、わかります。

「社長だって・・・このままだと、辛いでしょう?」
「だ、だが・・・動いたら、また・・・」
「でしたら、少しずつ、ゆっくりと・・・大丈夫です・・・あなたと結ばれて、私の身体が・・・
 悦ばない訳がないですから・・・」
「・・・國生さん」

我ながら、無茶苦茶な事を言っていますが・・・でも、ちょっと本気ですよ?
そして、社長は、本当に僅かずつ・・・腰を、動かし始めました。

「っく! ・・・ぅ」
「・・・國生さん・・・辛かったら、言ってくれ・・・すぐ、止めるから・・・」
「はい・・・でも、平気・・・痛いけど・・・痛いだけじゃ、ないから・・・」

勿論、痛いです・・・びりびりと、剥き出しの肉が抉られる感覚は、消えません。
ですが、破瓜の時ほどではないですし・・・僅かに、疼く感覚もありますから・・・

「っふ・・・あ・・・! あ・・・ぎ・・・はぅ・・・うぐ・・・っ ひぅ・・・」

じゅぷ・・・ずちゅ・・・と、ゆっくりと社長のものが私の中を出入りする度に、
控えめな湿った音が社屋に響きます。
動かれる度に鋭い痛みに襲われますが・・・でも、少しだけ・・・気持ちいいです・・・
そんな私の表情が読めるのか、社長は僅かずつ腰の動きを大きくしながら、
私が少し大きな悲鳴をあげても、決して緩めたりはしませんでした。
その代わり、私の額に、頬に、髪に、耳に鼻に瞼に唇に・・・何度も、キスをしてくれました・・・

そしていつしか、私の身体は・・・痛みを抱えたまま、同じくらいの官能の疼きに囚われていました・・・

「うぁ・・・ひぅ・・・社長・・・しゃちょお・・・」
「國生さん・・・大丈夫か・・・?」
「大丈夫じゃないです・・・ヘンです・・・痛いのに・・・まだ痛いのに・・・社長ので突かれて・・・
 私・・・わたしぃ・・・っ」

それ以上は・・・恥ずかしくて言えなかったけど・・・上擦った声と、表情で、
多分、伝わったと思います・・・
そして、思った通り、伝わってくれたみたいで・・・社長の腰使いのペースが、いきなり上がりました。
70前々々499 14/19:2005/12/25(日) 20:10:27 ID:/szTwLd4

「ひ・・・痛っ・・・ふぁ、あ、ひぁ! あ、や、ふぁああ!」
「國生さん・・・ごめん! 痛いかもだけど・・・俺も・・・もう・・・」
「い、いいの・・・いいですっ、社長の、思うままに・・・大丈夫だから・・・っ!」

だって、ずっと・・・私が泣き叫んでる間も、そのあと、延々とキスしている間も、
社長は私の中で全く動かずにいてくれた・・・きっと、すごく辛かったはずなのに・・・
私が痛みに泣き叫んでいる間、社長は疼く快楽にずっと耐えていてくれたのですから・・・
だから、今度は・・・一緒に、気持ちよく・・・なりましょう・・・

ずちゅ、ぢゅぷっ・・・じゅぶ・・・っ
いきなり激しくなった抽送に、私の身体は苦痛と快楽・・・相反する二種の声をあげて応え、
私は社長と、自分自身の身体に翻弄されます・・・
でも、私が欲しいのは、そのうち片方だけだから・・・私の心は、そっちだけを強く感受して、
いつしか・・・

「ふぁ・・・あ! ひぅ・・・い、ひゃああ! 社長、しゃちょおっ! わた、わたしっ! ふあああ!」
「國生、さん・・・?」
「どうしよう・・・っ、痛いのに・・・気持ちいいのっ・・・社長の・・・わたし・・・感じてるっ!」
「俺も・・・國生さんの中・・・気持ちよすぎて・・・すごい・・・絡み付いて・・・気持ちいいよ・・・っ」
「ひ・・・っ、つぅ・・・あ、本当、ですか・・・嬉しい・・・んぅ・・・!」

ぐちゅっ、ぎちゅっ、ずちゅっ・・・っ
痛みを和らげるためか、それとも私がまた感じ初めてしまったからか・・・
社長のものを咥え込んだ私のそこは新たに垂れ流される愛液でぐずぐずに濡れて、
そこを社長にかき回されて、卑猥な水音をあげています。
社長の抽送のペースはますます速く、打ちつける勢いは一層強くなって、
肉の楔は私の身体のより内奥へと、ずぶずぶと打ち込まれます。
それは当然ながら激しい痛みを伴いますが・・・でも・・・
今は、もっと激しい・・・甘い、刺激が一緒になって襲ってきて・・・

「い、いた、ふぁあ! や、あ! くひ・・・っ! いた、痛い、でも、なんで・・・ふぁ、ひゃあっ!」
「國生さん・・・っ、なか・・・すごい・・・きゅうきゅうって、締め付けてくるよ・・・!」
「は、はい・・・っ! だって・・・しゃちょおの・・・痛いけど、きもちいいからぁっ!」

社長が顔を上げて、さらに抽送のペースを上げます。
私は、目の前で露わになった首筋に、今度は私のほうからキスを繰り返します。
跡が残ってしまえっていうくらいに強く・・・この人は、私のもの・・・私だけのものだって、
そんな印を幾つも、幾つも付けてしまおう、というくらいに、繰り返し。
その間にも、社長の腰使いはますます激しくなって、私を乗せたソファーがギシギシ、ゴトゴトと音を立てます。
当然、社長の腰とソファーの間に挟まれた私は、ソファーが揺れるほどの抽送に曝されるわけで・・・

「んぁあ! ふぁ! しゃちょ・・・はげしっ! おくっ! 奥までぇ・・・! ・・・ひぁ・・・あぁあ!」
「ごめん、もう、止まらない・・・っ! このまま・・・このまま最後まで・・・!」
「こわれ・・・っ! らめ・・・すごすぎてぇっ・・・こあれちゃうう! わたし、らめ、しゃちょ・・・お!」

痛みもあるけど・・・痛いからじゃ、ないです・・・気持ちよすぎて・・・私が・・・弾けてしまいそうで・・・
なのに、私の身体は、貪欲で・・・腕だけじゃなく、脚も社長の腰に巻きつけて・・・
少しでも、社長の身体に触れようと、貪ろうと、身体中で絡み付こうとしています。
・・・ですから・・・社長がこう言った時も・・・

「っく・・・國生さん・・・ダメだ、もう・・・もうすぐ、俺・・・脚、離して・・・!」
「ひぅ! っく! ひゃああ! らめ・・・だめです・・・はぅ・・・ふぁあ! だめ、はなさない・・・」
「だ、だが、このままじゃ・・・っ、俺、もう、本当に・・・出しちまう・・・!」
「いいです・・・社長のなら・・・っ! だからっ・・・っふ・・・あ! このままっ・・・もっと・・・!」

もう、恥も外聞も、何もありませんでした・・・
ただ、ただひたすら・・・社長を、求めていました。
71前々々499 15/19:2005/12/25(日) 20:12:14 ID:/szTwLd4

私のおねだり・・・私の願いを、受け入れてくれたのでしょうか。
社長はそれ以上何も言わず、その代わり・・・腰の動きが、更に・・・乱暴なくらいに、激しくなりました。
ソファーごと倒されてしまうのではないかというくらいに、激しく腰を打ち付けられて、
社長のものは、私の秘肉の奥の奥まで達し、何度も何度もそこを突き上げます。
その度に、私の身体はガクガクと震え、全身が粟立つような、甘すぎる快楽に押し流されるようで・・・

「っあ、ふぁ、あああ! らめ、へんになるっ! わたし、しゃちょおっ、こんなっ、ふぁあああ!?」

ずちゅ!ずぷ!ぐちゅ!ぎちゅ!じゅぶ!ぐぷっ!ぢゅぶ!・・・・・・
ソファーの軋む音、私のそこが立てるいやらしい水音・・・そして、私があげる、上擦った喘ぎ声・・・
真夜中の工具楽屋に、そんな音が鳴り響いていました。

「國生さんっ! もう、俺、もうすぐっ、國生さんっ! 國生さんっ!」

社長が切羽詰った声を上げて、これで最後とばかりに腰を使い、二度、三度と、私の中を抉るように突いて、
最後に、本当に最後に、私をソファーに釘付けにするみたいに深く、突き込みました。

「もう・・・出る、出る! 出すよっ、中に・・・國生さんの中に全部・・・っ!」

そしてぎゅううっと、私を強く、痛いほど強く抱き締めて・・・
私も、力いっぱい社長の方を抱いて、腰に絡めた足を思い切り締め付けて・・・

「ぅあっ! きて、きてぇ! しゃちょお、中に、私の中に出してぇ、しゃちょ・・・ふぁ、あ、うぁああああっ!!」

そして、私の中で社長が弾けて・・・熱い迸りが私の身体の一番奥に、断続的に何度も何度も注ぎ込まれて・・・
その感触がトドメになったみたいに、私の身体を快楽の電撃が駆け巡り、そして・・・
私の意識はホワイトアウトするような、どこかに上り詰めてしまうような・・・
脱力した社長の体重がかかるのを感じながら、私はそんな感覚に呑み込まれました。

それから、どれだけ時間が経ったかわかりませんが・・・
生まれて初めて知った、甘美過ぎる感覚の余韻から醒めたとき、目の前に社長の顔がありました。

「しゃ・・ちょぉ・・・」
「國生さん・・・大丈夫?」
「は・・・はい・・・すごかった・・・です・・・社長の・・・いっぱい・・・注がれちゃいました・・・」
「あ、ああ・・・でも、俺も・・・すごい、気持ちよかった・・・國生さんの中・・・」
「よかった・・・嬉しいです・・・」

私たちは微笑みあって、軽く、ちゅ、とキスをします。
そして・・・
72前々々499 16/19:2005/12/25(日) 20:14:22 ID:/szTwLd4

「でも、正直、すごく心配だったんだけど・・・よかった、ちゃんと國生さんも気持ちよくなってくれて・・・」
「え・・・?」
「だって・・・聞いた話だと、初めてのときって、痛いだけとかいうから・・・」
「そ、それは・・・でも、今だって、い、痛いは痛いんですよ・・・?」

まるで言外に私のことをえっちだって言われてるような気がして、思わず・・・

「な、そ、そうなの? すまん、じゃあ、すぐ・・・」
「あ、だめ!」

でも、今度は社長が私の中にまだ入っていたそれを抜こうとするのに、またしても思わず・・・

「へ?」
「そ、その・・・痛いですけど、でも・・・折角、繋がってるから・・・もう、ちょっとだけ、このまま・・・」

言ってから、恥ずかしくて思わず顔を逸らしてしまいますが・・・

「そか・・・じゃあ、こうしよう」
「え? ええ!?」

ソファーにもたれかかったままだった私を、社長は・・・繋がったまま、ひょいと抱き上げて、
社長が今度はソファーに座り、私はその腰の上に座る形になって、
社長の身体に、身体をもたせかけるようになりました。

「これなら、重くないだろう?」
「はい・・・」

別に、さっきのまま・・・社長の重さを感じる位置も、悪くはなかったのですが・・・
でも、社長の膝の上ならぬ腰の上・・・ですが、そこでぎゅっと抱かれるのも、
とても気持ちよく感じました・・・

「社長・・・温かくて・・・気持ちいい・・・です・・・」
「そう? いくらでもこのままでいていいよ・・・朝までなら、だけどね」
「じゃあ・・・もう、しばらく・・・この、まま・・・」
「・・・ああ」

そう言って・・・優しく・・・私の、髪を・・・撫でて・・・くれます・・・
そこは、あんまり、心地よくて・・・つい、うとうととして・・・
だから・・・まだ口が動くうちに・・・もう一回・・・伝えて、おこうかな・・・

「ね・・・社長・・・」
「ん?」
「・・・好き・・・」
「ああ・・・俺も・・・好きだよ」

そして、頬に軽く・・・キスを・・・してくれました・・・まるで・・・お休みの、キス・・・
あ・・・おやすみって・・・言ってない・・・すみません・・・しゃちょ・・・
・・・そんな、薄れ行く、意識のなかで・・・

「お疲れ様・・・おやすみ、陽菜」

え・・・いま・・・あれ・・・いいや・・・おやすみなさい・・・・・・我聞さん・・・
73前々々499 17/19:2005/12/25(日) 20:15:27 ID:/szTwLd4

12月25日 時刻は午前4時頃。
場所は、工具楽屋前の道。

「うはー! 呑んだ呑んだあ〜! くそー! クリスマスがなんだってんだ〜!」
「はっはっは、優さんは元気ですね」
「なぬぅ・・・わ、ワシもまだまだ・・・若い者には負けんわい・・・うぃっ・・・」
「はっはっは、仲之井さんもお若い」

工具楽屋の大人三人組は、我聞が飛び出した後に会社で半端に呑んだ酒で勢いがついてしまったらしく、
街まで呑みに繰り出して、そのまま閉店まで飲み明かしていたのだった。
帰る前に、会社でコーヒーでも一杯、ということになって社屋の前まで雪道を歩いてきたのだが・・・

「むむっ!」
「どうしました・・・って、おや」
「この時間の会社に、灯り?」

こんな夜更けに本来、人がいるはずもないわけで、そうなると考えられる可能性は二つ。
一つは・・・

「賊かっ!?」
「まあ、あんなところに入る賊は・・・余程に見る目がないか、もしくは情報狙いの真芝関係・・・ですが」

真芝、と聞いて二人が少し緊張・・・したつもりなのだろうが、酔ってとてもそうは見えない。

「仮にも真芝関係のものが、盗みに入った先で灯りをつけるなんて真似は間違ってもありえないでしょう」

はっはっは、と勝手に不安を煽って勝手にオチをつけている辻原。
酔っているのか素なのか、誰にもわからない男。
だが、その結論に至り、今度は優がにやーっとした笑みを浮かべ・・・

「と、なると・・・ふふ・・・ふふふふ・・・それでは不肖、森永優! 偵察へ行って参ります!」
「おう、頼むぞ優くん!」

びしっと敬礼を決められ、事態を把握できないままに敬礼を返す仲之井。
優は優で、それまでの千鳥足が嘘だったかのような確かな足取りで、音も無く工具楽屋の階段を登り、
扉の窓の隅からこそっと中を覗き、ついで堂々と正面に立って、携帯をかざして・・・
それが済むと、下の二人へVサインを送ってから音も無くするすると階段を降りて戻ってきた。

「どうじゃった?」

仲之井の問いに、無言でにやーっとした笑みを返すと、携帯に撮った画像を二人へ見せる。
それを見た二人、いや、優も含めて三人とも、ほっとしたような笑顔を浮かべ・・・

「おお・・・! 会社でとは、どうかと思うが・・・でも、よかった、よかったのう・・・!
 さすが我らが社長じゃああ!」
「どうやらケリをつけたようですね、まあ終わりよければってことで、合格です。
 ・・・が、これでは社には入れませんねぇ」

どうこう言いながらも、未熟な人生の後輩が、一つの試練を乗り越えたことを祝福しているようだった。
が。

「まーったく、心配ばーっかりかけさせてくれちゃって! でも、これで・・・ふふ・・・ふふふふふ・・・」
「ゆ・・・優くん? ど、どうしたのじゃ・・・」
「いやぁ、こうして掴むものも掴んだし、心配かけさせてくれたお返し、どうしてあげようかなぁと・・・
 うふ、うふふふふふ・・・・・・」

最初は優しげだったはずの笑顔は、いつの間にか黒いオーラを纏う悪い笑いに。
残る二人はどうしようもなく、ただただ見守るしかなかったとか。
74前々々499 18/19:2005/12/25(日) 20:17:43 ID:/szTwLd4

日は変わって、12月26日、月曜日。

既に学校は冬休みですが、年末年始以外は学校は開放されているので、当然、卓球部だって活動します。
とはいえ長期休暇中は平日でも一日中仕事が入れられるので、
基本的には仕事優先な訳ですが、本日は・・・

「・・・というわけで、解体の仕事は午後からしか入っていませんので、午前中は部の方に参加できますね」
「そうか、サンキュ! じゃあまた、國生さんの挑戦を受けるとしようかな?」
「余裕ですね? そんな風に油断してると、ひっくり返しちゃいますよ?」
「ふっふ、いいだろう、年季の違い、見せてやろう!」

とまあ、そんな感じで・・・なんだかんだで相変わらずの会話をしております。
ただ、以前と違うのは、学校に向かう道すがら・・・手を繋いで歩いていること。
最初は、やっぱり恥ずかしかったですが、人通りの少ない道を通りますし、
知り合いに合うまでは、ということで・・・
でも、これもそろそろ離さないといけません、何故なら・・・

「お、るなっち! くぐっちも、おっはよ〜!」
「あ、皆さん、おはようございます!」

結構危ないタイミングでしたが、どうやら見られずには済んだようで・・・
まあ、その・・・隠すことではないかもしれませんが、やはり、少し恥ずかしいものですから、
社長と話した結果、当面は二人だけの秘密ということに・・・

「この前のとき急に帰っちゃったけど、仕事とか平気だったの?」
「あ、あの時は本当にすみません、でも、お陰さまでもう問題は片付きましたから!」
「そっか、ならいい、許す! ・・・けど、どう片付いたのか、お姉さん方に教えてくれるよね〜?」

にや〜っと、天野さんと住さんに詰め寄られてしまいまして・・・ええと・・・どうしよう・・・
しゃ、社長は・・・社長で、佐々木さんになんだか詰め寄られています・・・

「な、何か誤解されていませんか!? べ、別に、といいますか、仕事のことですから!」
「ほほ〜、それにしては、くぐっちも探しに行く前、結構な慌て方してたけど、ねぇ、友子?」
「だよね〜? それに、さっきの工具楽くんと國生さん・・・ちょっと、いつもより近くなかった?」
「ね〜? そこんとこ、じっくりと、聞かせて頂こうかしら、ねぇ?」

ああ・・・どうしよう・・・仕事のこととか予算のこととかで強く出ることが出来ない分、
もしかすると優さん達よりタチがよろしくないかもです・・・

ちゃららら―――♪ ちゃーちゃちゃちゃちゃらちゃららら―――♪

「あ、ど、同僚からのメールです! 仕事関係かもですので、しばしお待ちを!」

優さんから? ・・・こんな朝から起きていられるなんて珍しいですが、何にせよ助かります!
あ、でもそれってもしかすると本当に仕事・・・?
まあでもこの際、社長には悪いですが、それでもいいです・・・この危険な状況を抜け出せますから・・・
うん?・・・ええと、“この画像をちょっと見て欲しいんだけど”?
なんでしょう、仕事関係でしょうか・・・
ぴ。

・・・・・・・・・

「・・・え」

そこに写っていたのは・・・
あの晩の・・・私と、社長・・・
私が、眠ったあと・・・社長がロッカーから毛布を出してくれて、それに包まって二人、
ソファーで朝まで寄り添って眠っていた訳ですが・・・何故、この写真を優さんが・・・
・・・っていうか、何のために!?
75前々々499 19/19(了):2005/12/25(日) 20:19:41 ID:/szTwLd4

・・・そして、気付きました・・・周囲からの、視線に。
私は、なるべく冷静を装いつつ可及的速やかに携帯を閉じて、

「どうした國生さん、仕事?」
「い、いえ、優さんから・・・ちょっとしたことで・・・大丈夫です、問題ありません!
 ただ、社長、ちょっと別件で、あとでお話が・・・」
「む? わかった、じゃあ、行こうか!」
「ぬぅう我聞、貴様、本当に國生さんと何もなかったんだろうな!? なんだか仲良くしやがって!」
「ば、馬鹿な! 前からこんなだろうが!」

・・・どうやら、事なきを得たようです・・・
優さんに現場を抑えられていたのは由々しき事態ですが・・・
まずは、それが何処まで広がっているか調べないと・・・社の皆さんはわかりませんが・・・
果歩さん達は・・・優さんと仲がいいから、既に手遅れかも・・・
あ、でもそうしたら、ちょっと恥ずかしいけど社長の家に出入り自由になったり・・・って、ヘンな期待しない!
とにかく、後で社長と相談を・・・

と、一息ついたところで、ぽん、と左右から肩を叩かれまして、
いつの間にかぴったり真横に並ばれていた天野さんと住さんが・・・

「ね、るなっち」
「は、はい? なんでしょう?」
「今の写真のことだけどさ〜?」
「――――――!! え、え、えええ!?」

み・・・・・・見られてました・・・!?

「随分と御親密になられたようですが、ちょっと心配しちゃった身としては、その場面に至った経緯、
 教えて欲しいかな〜、なんて?」
「あんな展開の末にこんな場面なんて、さぞかしドラマがあったんだよね〜?
 友達として気になっちゃうな〜♪」
「あ、あ・・・あの、その・・・」
「「教えてくれるよね〜?」」

すいません社長・・・無理です・・・はぐらかせません・・・

「で、では・・・その・・・あとで、ロッカーででも・・・」
「お! さすがるなっち! 安心して、絶対に漏らしたりしないから!」
「そうそう! ちゃーんと秘密にしておくから、ね!」

社長・・・私たちのこと、きっと・・・いろんな人にばれちゃうと思います・・・すぐに・・・
よく考えたら、マフラーで隠してるけど、キスマークとか・・・多分、ありますし・・・
あ、でも・・・恥ずかしいけど・・・逆にそうしたら私たち、公然と付き合える訳でもあるのかな。
人目を気にせずに手を繋いだり、腕を組んだり、互いの部屋に通ったりとか・・・

例えば今、社長と腕を組んだら・・・さぞかしいろんな事を言われるでしょうけど、
でも、明日からは手を繋いだまま皆さんと会っても、気にすることは無いわけですよね。
どうせいつかは通る道ですから・・・すこし早まっても、問題ないですよね?
勝手にやったら、怒るかな?
ううん・・・きっと、ちょっとだけ苦笑して、でも許してくれる・・・
だから・・・ごめんなさい!

「―――社長!」

大きな声で呼んで、少し驚いたように振り返る彼に駆け寄って――――――



                              Merry Christmas! ―――Fin―――
76前々々499:2005/12/25(日) 20:23:51 ID:/szTwLd4
以上でクリスマスネタ、全て投下終了でございます。

・・・長いっすね、読みにくかったら申し訳ありません(汗
読んで下さった方、長々とお付き合い頂き、どうもありがとうございました。

ではでは、またネタが浮かびましたら宜しくお願い致します。
77名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 20:26:27 ID:Ry1Cvfm7
一番乗りかな?

うぉぉぉっ!!
誰彼かまわず地獄車かけて、無理にでも一緒に転がってほしいほど499氏GJ、低脳、最高です!
可愛いよぉー!!
こくしょぉーさぁーん!!
・・・少し頭冷やしてきます
78名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 21:37:29 ID:G1UHcjaj
499さん、
いつも超低能な作品をありがと。
次も期待してます。
79名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 22:43:54 ID:QAbW8qRL
相変わらず文の組み立てがうまいですね
凄い読みやすかったです
低脳!!!
80名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 23:00:19 ID:p2Oi9FeE
>>76
GJです
遅ればせながらコミケのカタログを買ってきたのですが
我聞本が3つしか見つかりません。
あと1冊はどこに…
81名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 23:48:26 ID:WGv2sGdv
>>76
GJ!
次も期待しています!

>>80
あれ、一日目のサンデー系の所に4つ固まってなかった?
もしかして他にも我聞本あったの? 教えてplz
8280:2005/12/26(月) 11:38:33 ID:9YMOTZdz
>>81
俺の勘違いでした。ちゃんと4つ並んでいました
前のレスは忘れてください
我聞本は4冊でいいはずです
83名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 22:51:30 ID:eOZyOwr6
うおおっ!速い!速いゾォー!
ゴロゴロゴロゴロォー
84名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 23:49:04 ID:HHb+Mif1
今日になってクリスマス祭りの分を一気に読んだ。
あまりの低能さにものすごい勢いで転がり回った。
勢い余って成層圏を突破した。

……低能すぎるだけなので考える事を止めた。
85名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 00:54:46 ID:pM7asnOI
やっと規制解けたよ!皆すごい、どれもこれも良作ばかりで本当に乙でした!
とりあえず、舞空術覚えていない悟空なみにぐるぐる回転してビル5階まで上昇、
そこから急速に落下して五点着地法でごろごろ転がりながら受身とったよ!!

低脳すぎ、皆低脳すぎや〜〜!!
86名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 06:45:23 ID:QeuQ9Lc+
gjフォォォオオオー!!! 
87名無しさん@ピンキー:2005/12/28(水) 15:37:34 ID:fm8CmvJ9
低脳過ぎて「このスレの住民のみんな、オラにちょっとづつ低脳さを分けてくれー」
って言って低脳玉撃ったら太陽に直撃したから、
後数分で世界が暗闇に覆われても俺は知らん。
88名無しさん@ピンキー:2005/12/28(水) 22:32:59 ID:hLXnABUT
>87
暗闇をこわしてだっすつするです
89名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 07:32:10 ID:WN3j0wTO
499さん乙です。
ちなみに499さんのブログにこの前、
ハヤテネタの下書きが載ってましたが
ハヤテのエロパロにでも投稿してるんですか?
9087:2005/12/29(木) 11:18:06 ID:TezgDGsI
>>88
お、お前は・・・・天才だ!!
そんな発想俺にはなかったぜ・・・俺の負けだ。
91名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 13:32:20 ID:kM9sYn/e
>499氏
あんまりにも低脳過ぎて思考が止まっちゃったじゃないですか。


こういう展開、現実にあったらスゲェだろうなぁ・・・・
92名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 18:26:56 ID:ShPHHBHJ
かんちん分が不足気味……
93名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 20:00:01 ID:VwbIW4Kc
>>92
・・・かんちん?
94名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 20:35:25 ID:ShPHHBHJ
かん→かな
スマン orz
95名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 22:56:17 ID:M9lSP1mi
たしかにかなちんつじ〜は見たいね
96前スレ131:2005/12/30(金) 13:09:33 ID:/Mouu8DP
お久しぶりです
131です
滅茶苦茶時間かかりましたが、やっと書き終えれました。
・・・何でこんなに時間かかってしまったんだろ・・・
それでは投下しま〜す
97前スレ131:2005/12/30(金) 13:11:04 ID:/Mouu8DP

某日、深夜。

工具楽家では我聞と陽菜が寝間着姿、布団の中で向き合っていた。
男女が二人で布団の中と言ったらやることは一つである。
しかし、なぜか陽菜はぎゅっと口を一文字に結び、顔を引き締めていた。
「そんなピリピリしなくても・・・」
鈍感な我聞でも痛いほどの空気に耐えかね、口を開いた。
「・・・ピリピリなんてしていません」
普段と全く同じ冷静な口調。
しかしそれが逆に場の雰囲気を強調している。
いったいなぜこんなに空気が重いのか?

それは約三ヶ月前。
果歩の「勝負」の一言で始まった、果歩と陽菜の子作り対決。
内容は期間内に先に妊娠した方の勝ちと言うもの。
もし陽菜が負ければ、陽菜が我聞を想う気持ちが、果歩が番司を想う気持ちより下だと認めなくてはならない。

そして、今夜はその勝負期間三ヶ月の中の陽菜の最後の受精可能な日。
今日まで妊娠検査薬に反応はなく、もし今日も受精できなければ、負けを認めなければならなくなるかも知れない。
その緊張が、陽菜をピリピリさせ、空気を重くしている原因だった。
そんな陽菜を見かねた我聞が話し出す。「ねえ、陽菜」
「・・・何でしょう」
「親父が、行方不明になった頃のこと覚えてる?」
我聞は優しく言い聞かせるように問う。
「え?ええ、まぁ・・・」
勿論覚えている。この人と自分の関係はその頃始まったのだから。
しかし、なぜ今その話をするのだろう。
そう思い陽菜は少し訝しげに返事をする。
「あの頃はまだ未熟な新人社長とその秘書って言うだけの関係で、こんなに親密になれるなんて全然考えてもいなかった」
「・・・そう、でしたね・・・」
我聞は一つ一つ思い出を語っていく。
陽菜もそれに合わせて色々思い出していく。
あの頃の我聞は、頑張ろうとし過ぎて気持ちが空回りしてしまいで失敗や暴走したりする事も度々あったが、向上心と責任感、そして優しさに溢れていた。
陽菜は、今と変わらず冷静で有能で完璧な秘書だったが、とても孤独だった。
そんな二人が関わっていって、我聞は社長として、男として成長していき、陽菜は心を開いていった。
陽菜にとってその記憶は、辛いこと大変なことも沢山あったが、とても幸せな日々だった。
98前スレ131:2005/12/30(金) 13:12:09 ID:/Mouu8DP
真芝の第3研を襲撃したとき、家族に対する優しさの強さを感じさせられた。
静馬での修行のとき、責任感が強すぎて一人で頑張ろうとしていたのを自分が諫めることができて、嬉しかった。
桃子が来たときは、我聞の嫁候補なんて言われて焦ってしまったこともあった・・・
等々陽菜が思いに耽っていると、我聞の方が、少し声のトーンを変えた。
「で、親父と武文さん無事に助け出して、その後君を『嫁に貰ってほしい』なんて言われて、凄く焦ったけど、たぶんそのときにはもう、君を好きになってたんだと想う」
しんみりと言う我聞に陽菜も肯定する。
「それは、私もでした・・・」
ひょっとしたらそれより少し前からかも知れないな、と思いながら。
我聞が少し嬉しそうに微笑んで続ける。
「その後、また色々あって、俺は、俺たちは、どんどんお互いを好きになっていって、今こうしていられる。それはとても幸せなことだと思う」
陽菜は静かに聞く。
「俺たちが、その、愛し合ってるのは、互いが互いが好きだからでさ、果歩や番司と・・・他の人と比べる為じゃあないよ、ね」
陽菜は最近のことを思い出す。
確かに、我聞の言うとおりである。
最近は、果歩に負けたくないという気持ちばかりが強かった。
でも、そうではないのだ。
自分と我聞がただ互いを好きでさえあれば、人と比べる必要なんて、ましてや勝負する必要なんて無かったのだ。なのに、自分は・・・
「確かに、その通り、ですね・・・」
陽菜は、小さく、しかしはっきりと言った。
我聞は優しく微笑んでいる。
「・・・すいませんでした。私、一人で勝手に・・・」
謝る陽菜をあわてて我聞が慰める。
「まっまぁ、俺もよく一人で突っ走っちゃうし、その度に陽菜に止めて貰ってきたし、気にすることないよ!俺も子供は欲しかったし・・・」
最後の言葉に陽菜が反応する。
「へっ?子供、欲しかったんですか?」「え、そりゃぁ、ね・・・」
陽菜は少し驚いていた。
「最近、あんまり気乗りしていないようだから、てっきり子供が苦手なのかと・・・」
「いやいやいや!!珠の時も、斗馬の時も小さいときの子守は俺の役目だったから、子供は好きなんだよ」
99前スレ131:2005/12/30(金) 13:13:08 ID:/Mouu8DP
ふふっと陽菜は笑い我聞に聞く。
「じゃあ、その、せっかくですし、今から、作りませんか?」
今度は我聞が少し驚いたようだが、
「嫌、ですか?」
「いや、いいよ」
そう答えて抱きしめ、
「好きだよ、陽菜」
そっと囁く。
「私も、好きですよ」
陽菜も優しく答える。
そして、とても甘いキスを交わす。
自然と我聞の手は陽菜の胸を揉み解す。
「ここは、昔とちっとも変わらないね」
ちょっとしたいたずらのつもりで言ってみる我聞。
「・・・少しは成長しましたよ・・・」
思いの外ショックを受けている陽菜。
我聞は笑って謝る。
「ゴメンゴメン、冗談だよ。それに俺、胸の大きさなんてあんま気にしてなかったし」
「それはそれで少し傷つきます・・・」
「ご免なさい」
今度は真面目にで頭を垂れる我聞。
そんな我聞を見て、陽菜は、
「冗談です。これで、おあいこです」
笑ってそう言う。
我聞もつられたように笑う。
「へ?な、なんだ、冗談だったの?は、はははは」
一頻り笑った後、我聞は手のスピードを上げていく。
「んっ」とか「あっ」と言うくぐもった快楽の声が陽菜から漏れる。
と、我聞が急にペースを緩める。
物足りない。そう言わんばかりの目で陽菜が我聞を見つめる。
対して我聞は、また微笑むと今度はそっと陽菜の女性の象徴に手を伸ばす。
そして、人差し指と中指で秘部を弄び、親指でクリトリスを転がすように、また、弾くように、なぶる。
そんな巧みな攻めに、陽菜の体はビクンビクンと大きく反応する。
「あぁっんん、はああっあぁ、はぷっ!?」
陽菜がかなり大きな喘ぎ声をあげていると、我聞がその唇をふさぐ。
すると陽菜は、声を出せないかわりと言わんばかりに下を貪る。
我聞は手の方が疎かにならないよう注意しながら、それに応じる。
そのまましばし時が流れる。
我慢できなくなった陽菜が唇を離し、
「はあっはあっ、あのっ、そろそろ・・・」
そう、哀願する。
「わかった」
我聞は一言言うと、なぶっていた手を離す。
「じゃあ・・・」
「はい・・・」
恍惚とした表情でうなずく陽菜を見て、我聞はそっと挿入する。
100前スレ131:2005/12/30(金) 13:14:17 ID:/Mouu8DP
つぷっと音を立てて我聞の亀頭が入っていく。
「あっ・・・」
それは陽菜に快楽を与える前兆。
我聞は、少し抜き、深く突くと言うピストン運動を何回か繰り返す。
そしてだんだん左右の動きを足していく。
その動き一つ一つに悦びを得、体の感度が増し、陽菜の理性を削っていく。
既に我聞の方は欲望に身を任せ、陽菜の体を貪るように激しく突く。
全力疾走のような性交渉。
「うっ、はっ陽菜っでるっ!」
どうしても、短距離走の如くすぐに終わってしまう。
「はっ、あっ、きっ来てっ、来てくださいっ!」
「うっ!!」
「あっあっあっああっ、来てるっ!私にっ流れてくるっ!あっああああああっ!!」
しかし、
「はあっはあっはあっ・・・すごい、いっぱい・・・」
「はあはあ・・ねえ陽菜」
「はい?」
それ故に、
「もう一回、いいかな?」
「・・・はい。もちろんですよ」
より多く、回数をこなすことができるのだった。



我聞は陽光の眩しさで目を覚ました。
ふと隣を見ると、ちょうど陽菜も目覚めたところのようで、日光に目を細めていた。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
いつものように挨拶を交わす。
「・・・ねえ、陽菜」
我聞はあえて陽菜を見ず、訊く。
「子供、できるといいね」
陽菜は一瞬遠くを見るような目をする。
「そうですね・・・でも」
でも?と聞き返す我聞。
「あなたと、こういう時間をすごせるのなら、もう少し後でも良いかもしれませんね、ふふふ・・・」
「・・・そうだね、はははっ・・・好きだよ、陽菜」
「私も、好きですよ」
そしてまた暖かく笑いあう。


更に一ヶ月後
で、結局、勝負の方はと言うと。
「どうだった?」
苦笑しながら首を横に振る陽菜。
「そう・・・まだ時間はたっぷりあるし、次頑張ろう」
笑って慰める我聞。
「はい」
陽菜も笑って頷く。

一方、果歩の方も授かることはできず、勝負は引き分けという形で幕を引いた・・・・・かに思えたのだが、
「引き分けなんて納得いかない!決着が付くまで続けるわよ!!」
と言う言葉に、番司は喜んで、我聞と陽菜は渋々、従う形になって、勝負は今もまだ続いているらしい・・・・
101前スレ131:2005/12/30(金) 13:24:52 ID:/Mouu8DP
以上です。
投下前時間かかったと言いましたが、前の投下から五日しかたってませんね・・・
クリスマス投下の量と、その後の間で錯覚してました・・・orz
兎に角、また早い内に書きにくるんでその時はまたよろしくお願いします。
それでは
ノシ
102名無しさん@ピンキー:2005/12/30(金) 14:04:10 ID:uwEHsgeQ
>>101
ノシ
イイっす。やはり職人の洗練されたエロパロは素晴らしいものですな
( ゚∀゚)ノよぅ!
103前スレ246:2005/12/30(金) 22:14:20 ID:SVKHGLGd
30日→31日にかけて、短編を落としたいと思います。
相変わらず我聞×桃子(エチ有)です。
このカプは確かに酷評も多いかもしれない。マイナーかもしれない。
ただ、愛をぶつけるだけ。それでは落とします。
104前スレ246:2005/12/30(金) 22:15:20 ID:SVKHGLGd
2005年が、終わりを迎えようとしている。
そんな中の、許されない恋の物語。

「はぁ・・・あったかい・・・」
「そうだなぁ・・・」

ぬくぬくと、こたつに入り暖をとる。
時期は12月、大晦日。時刻は既に23時を過ぎている。

「ハルナは〜?」
「ん〜・・・仕事で辻原さんと西さんところだって・・・」

年の瀬は事務、経理の仕事が多い。
更に年始の仕事を入れるために様々な場所へ泊まりがけで足を運ぶことが多い。
今年は赤字続きで特に仕事を入れなければいけない。年末とはいえ休んではいられないのだ。
実務担当兼社長の我聞はというと。

「で、俺は休んでくれ。だそうだ。・・・頼れる社長にはまだまだかかるか・・・」
「ははは、ガモン悟っちゃったわけ・・・」

このようにやっかい払いされてしまっている。
陽菜が我聞にに休んでくれということは、邪魔するなという意味合いもある。
営業は元々辻原の仕事だが、どうも頼られないというのは気分が悪い。

まぁ、それはともかく。

「あと他のみんなは?うす胸・・・カホとか。」
「優さんのところで過ごすってさ。また会議云々とか。よくわからん。」

GHKの面々は、前回の桃子キス事件(首謀者は優さん)の事に危機感を感じ、
新たなる計画。「だまして子供をつくらせる」作戦を計画していた。

「もうこうなったら全部のゴムに穴あけますか!」
「んや、あの二人は元々ゴムなんかつけてないよ〜。」
「な、なんでそんな事しってるんですか!?」
「ん〜んふふふふぅ〜」

「「すぴー・・・♪」」

全く進展がないのも事実である。
まぁ、それもともかく。

今、この時間。この空間には、我聞と桃子しかいない。
ただ、ドキドキするこの時間。お互いをちょっと意識しあえる、ちょっと心地よい時間。
105前スレ246:2005/12/30(金) 22:16:13 ID:SVKHGLGd
「じゃあ・・・その・・・」
「ああ、二人きり、だな・・・」

何をするわけじゃなく、二人はこたつの中ただ寄り添う。
陽菜とも公認のこの時間。誰もいない、偶然での二人きりの時間は桃子のものという陽菜からの妥協案だった。

「よっこいしょ・・・っと。」
「ぉ・・・桃子・・・」
「ここでも、いいよね?」
「ん・・・わかった。」
「えへへ・・・ガモン・・・」

我聞の膝の上に、ちょこんと座る。
鍛えられた身体はごつごつして、座り心地がいいわけではないが。
桃子にとってはなによりの場所であった。

「ガモン・・・あったかい・・・」
「桃子も、やわらかいな・・・髪、撫でていいか?」
「ん、いいわよ・・・」

ウェーブのかかった金髪に、我聞は手ぐしを通す。
さらさらと決して引っかかりを起こさない綺麗な髪。陽菜の髪とはまた別の感触。
とても、いいかおりがする。

「ふにゃ・・・ガモン・・・」
「ん・・・桃子・・・」

何をするわけじゃなく、二人はこたつの中ただ寄り添う。
背徳の、この時間。許されない、この時間を噛みしめる。

「テレビ、うるさいな。消すか・・・」
「あ・・・うん。」

テレビを消し、気づけば遠くで除夜の音。
情緒ある、日本の年末。もうすぐ新年が始まろうとしていた。

「・・・ガモン・・・?」
「・・・なんだ?」

「えっち、したい。」
「・・・ああ・・・俺も、したい。」

二人は向き合い、少しだけお互いを確かめるように見つめ合う。
桃子はすっ、と。我聞の口まで顔をのばした。
106前スレ246:2005/12/30(金) 22:18:09 ID:SVKHGLGd
今日は以上になります。エチは明日にまとめて更新します。
これからもお付き合いお願いします。それでは。
107名無しさん@ピンキー:2005/12/30(金) 23:14:59 ID:tDnfFtw0
生殺し〜(゜Д゜;)
108前スレ272:2005/12/31(土) 02:11:52 ID:vz2xzY+E
夜分遅くにこんばんは
こんな時間にまた投下させて貰います。
多分、またエロ無しです。
109前スレ272:2005/12/31(土) 02:13:06 ID:vz2xzY+E

 「・・・えっと、うん・・・こうかな國生さん?」
 「あ、違います。そこをこう・・・そうです。そのまま・・・」
 「ほんとだ。流石國生さん。えっと、じゃあ・・・このまま入れて良いんだね?」
 「はい」
 我聞と陽菜はいつになく真剣な表情で、そう受け答えした
 「むぅ・・・・・・すごい、入れたらあっという間だ」
 「社長の呑み込みも早くて助かります」
 陽菜は「あとちょっとですね」と言うと、我聞は「ガンバリマス」と返した
 「えぇと、ここで・・・引いて・・・」
 我聞は戸惑いながらも、必死で手を動かしている
 陽菜は黙って、それを見守っている
 「あ、あれ? なんか合わない」
 「・・・ですから、ここに先程求めた数字を入れるんです」
 「おぉ〜」
 「公式にピッタリ当て嵌まるでしょう。やっぱりまだまだですね」
 陽菜にそう言われ、我聞は恐縮し「面目ない」と言った
 「精が出ますね〜、差し入れでぇ〜す」
 果歩がお茶とお菓子を部屋に持ってくると、陽菜は「ちょっと休憩を入れましょうか、社長」と秘書直々のお許しが出た
 我聞は電池切れだと言わんばかりに、机の上に突っ伏した

 そう、陽菜は我聞の自宅で勉強を教えているのだ
110前スレ272:2005/12/31(土) 02:13:51 ID:vz2xzY+E

 ただでさえ、出席日数が危ういのに、成績もこの上なく低空飛行な我聞
 このままでは単位が、進学が危ういと事情を知る我聞の担任から何故か相談を受けてしまった
 それを聞いた陽菜はその先生に冬休み中、我聞の家庭教師役をすると言ったのだ 
 本来なら塾の冬期講習などに通わせた方がいいのだろうが、我聞は高校生であると同時に工具楽屋(株)の社長でもある
 故に、冬期講習のある時は社長業を、仕事のある時は冬期講習を休まなくてはならなくなる
 どちらも休んだら不都合が出るし、言っては悪い気もするが工具楽家の経済面としてもきつい
 だから陽菜は、2人の仕事の合間の時間を有効に使うことの出来る立場の自分が代わりに我聞に勉強を教えれば良い、そう判断したわけだ

 陽菜の提案に最初に乗ってくれたのは我聞ではなく、その家族の果歩の方だった
 その次に賛同してくれたのは会社の同僚の優さんだった
 この2人はGHKのメンバーであり、実は密かに裏で繋がってる
 と同時に、我聞と陽菜が急接近するかもというまたとないチャンスを見逃すはずがない
 ある意味、陽菜は自分から罠にはまっていたといえよう
 だが、そのおかげで、陽菜は家族と会社の両者からそれぞれ味方を得て、こうして決行に踏み切ることが出来た
 勿論、教え上手と名高い陽菜が冬休みの宿題や勉強を見てくれると言うのだから、我聞も断るはずがない

 これが今の状況のおおまかな説明であり、卓球部などのクリスマス行事が終わってからというもの、ほぼ毎日陽菜は我聞の勉強を見てやっている
 陽菜も我聞が問題を解いている間に自らの宿題や勉強をその3倍の速度でやるので、陽菜自身の勉強時間が減り、怠るということはなかった  
 むしろ、陽菜の終わった宿題が「答案」であり、わかりやすいノートは我聞の「教科書」ともなるのだった
111前スレ272:2005/12/31(土) 02:16:02 ID:vz2xzY+E
 我聞が今まで解いてきた問題集をぱらぱらとめくって、感嘆した
 「しっかし、やっぱり國生さんは凄いよなぁ・・・。ほら、もうこんなところまで進んでる」
 「お兄ちゃんがだらしないだけじゃないの、もう・・・」
 「いえ、そんな・・・社長は本当によくやっています」
 実際、呑み込みは早い方だった
 それでも、ここまで成績が悪いのは・・・工具楽屋(株)の仕事や本業で勉強にあまり時間を割けないからだろう
 それと、我聞が予習復習の要点をまとめるのが苦手な「勉強下手」だという点もある

 つまり、勉強の要領が悪い・・・それに尽きると陽菜は思うのだ

 陽菜とて、最初から頭が良いわけではない
 仕事の合間に単語帳を持ち歩き、それを刻み込むようにして憶えたから、今の自分がある
 だが、我聞はそこまでやっていない
 決して怠けているわけではないのに、やれることに気づかないのだ
 いつも別のことに気を取られてしまい、勉強の方は必然とおろそかになってしまう
 これでは、いくら呑み込みが良くても、いい結果を成績に残すことには繋がらないだろう
 「・・・こうなったら、徹底的に勉強の仕方を教えますので、覚悟してください」
 「え、あ・・・はい」
 我聞はむぅと困ったような顔をするが、陽菜は厳しい
 約7分間の休憩後、すぐに先程の公式についてお勉強を再開した
 果歩は「じゃ、頑張って下さい〜」と言い残して、その部屋を後にした

 ・・・・・・
112前スレ272:2005/12/31(土) 02:17:59 ID:vz2xzY+E

 「・・・こちらデルタ2、デルタ1応答せよ」
 「状況を報告せよ」
 2人のいる部屋から出た後、果歩はさっと壁に寄りかかり、髪留め型トランシーバーで会話し始めた
 勿論、この髪留め型のトランシーバーは優さんのお手製だ
 陽菜や中之井が知れば、この情熱をもっと仕事に注いでほしいとため息を吐くことだろう・・・
 「駄目です。あやつら、本当に『お勉強』してます」
 『何ですと? 年頃の男女2人が狭い部屋、ふとももや足がもつれ合うコタツの中にいるのにですか!?』
 「はい」
 『とても信じられません。こう、お互いの横顔とか、勉強を教えてくれる唇とか指にむらむらっとくるものはないんでしょうか?』
 「多分、私のような家族の目があるから・・・とも考えましたが、どうも違うようです。
 陽菜さんは元々そういう下心はないし、お兄ちゃんは陽菜さんが折角勉強を教えてくれるというのだからと、それに応えようと必死になってます。
 もう今の2人の間に、そういった邪なことが割り込む余地はないかと・・・」
 『・・・デルタ2、諦めたらそこで終わりです』
 「で、では、何か考えがあると?」
 『勿論。今から、その作戦の概要を説明するのでよく聞くように』
 「お願いします」
 総てはGHKの悲願のため、2人の幸せのため・・・・・・・なのだろうか、本当に・・・

 ・・・・・・
113前スレ272:2005/12/31(土) 02:23:39 ID:vz2xzY+E

 「・・・えーと、ここが?」
 「あっ、そうです。・・・はい、ええ、いい感じです」
 「ほんと?」
 「ええ。そこは重要な所なので、しっかり憶えて今後も活用して下さい」
 2人は相変わらずお勉強に励んでいる様子、果歩はため息を吐いた
 こういう会話だけ聞いていれば、ちょびっとエッチなのだが・・・実際はその要素はゼロだ
 果歩の横には珠や斗馬がいて、何やらひそひそと囁き合っている
 「・・・では、これより、『気づいたら・・・!?作戦』を開始する」
 「「ラジャー」」
 ビッと珠と斗馬が敬礼のポーズを取ると、果歩は肯きつつ再び2人のいる部屋に入っていった
 「お勉強失礼しまーす」
 「む、果歩、また何か持ってきてくれたのか?」
 「違うわよ。・・・ね、國生さん、今日はウチで晩ご飯食べていきません?」
 果歩の突然の提案に、陽菜はきょとんとした
 「この後、本業なんかの仕事も入ってないって言うし。ウチ、今日はお鍋を予定してるんです。こういうのって大勢で食べた方が美味しいに決まってます」
 「ええ!? で、でも・・・ご迷惑になるんじゃ・・・」
 果歩は心の中でガッツポーズを取った、やはり優さんの読み通り、陽菜はこういうお誘いには弱い
 それも親しい、家族同然に思われている工具楽家のお誘いなら尚更のこと
 それを確認した果歩の合図で仕込みの珠や斗馬が部屋の中に入ってきて、わざとらしいぐらいに陽菜を夕食に誘う
 案の定、陽菜の心は震度8以上に揺れ動いている
 「ええと・・・」
 陽菜はちらっと我聞の方を見ると、我聞は肯いた
 「果歩もこう言ってることだしさ、いいんじゃないかな? 勉強見てくれてるお礼も兼ねて、俺からも是非」
 「そーですよー。なんなら、ここに今携帯コンロ持って来ちゃいますし」
 果歩の言葉に、我聞は「それはちょっと早すぎじゃないか?」と言った
 「何言ってんのよ、お兄ちゃん。ちゃんと時計見てる?」
 見れば確かに、もう夕食を食べても差し支えないだろう時刻にはなっていた
 陽菜が時間を計ってやっていないわけがないから、今日の所はそろそろ切り上げようと考えていたに違いない
 それは先程の『今後も〜〜〜』の辺りのひきでもわかることだった
 「・・・本当に宜しいんですか?」
 我聞や果歩は満面の笑みを浮かべつつ、うんうんと肯いて見せた
 陽菜は大分迷っていたようだが、結局、果歩や工具楽家からのお言葉に甘えるような形となった
 「じゃ、早速準備しますね」
 果歩は珠と斗馬を連れて、どたばたと台所へと向かった
 陽菜は我聞に「すみません。でも、ありがとうございます」なんてお礼を言っている
 「いや、ウチは全然構わないから。珠や斗馬も嬉しそうだし」と我聞も返す

 そして、台所へ果歩は・・・何やら先程とはうってかわった邪な笑みを浮かべていた
 「(先ずは第一段階成功ね・・・)」
 思惑通りに事を進めようとする果歩や優さんの心の中の高笑いは、我聞と陽菜に聞こえるわけがなかった・・・ 

 ・・・・・・
114前スレ272:2005/12/31(土) 02:27:40 ID:vz2xzY+E
今回の投下分は以上です。
話の続きはまだ書き終えていないのですがおおまかな筋は決まっています。
な の で す が 次の投下は来年になってしまいそうです。
2年越しの小説とは・・・いやはやすみません。

では、皆様、よいお年をお迎え下さい。
・・・・・・ってこうして気を持たせ生殺しにするような者が言う台詞じゃないかorz
115名無しさん@ピンキー:2005/12/31(土) 04:10:24 ID:tTdPv6k0
二年参り・・・!!
116名無しさん@ピンキー:2005/12/31(土) 15:26:22 ID:IZIze/U6
>>104
246氏がんばれ!
俺は応援してるぞ。

そして良いお年を
117前スレ246:2005/12/31(土) 21:26:22 ID:bKozAe6g
どうも、続きを投下させて頂きます。
ちょっと変な終わり方をしますが、これも仕様です。
それではどうぞ。
118前スレ246:2005/12/31(土) 21:27:05 ID:bKozAe6g
「ん、ふ・・・ちゅ・・・んむ・・・」
「ん・・・とぉこ・・・ちゅ・・・」

唇をかさね、お互いの唇をむさぼる。
舌を這わせ、唾液を舐め合い、お互いがお互いを犯し合う。

「ん・・・がもん・・・一ヶ月ぶり、くらいだよね・・・」
「ちゅ・・・そうだな・・・はじめてしてから、それくらい経つか・・・」
「いつも、みんなと一緒だもんね、ガモンは・・・」
「そ、それは仕方ないだろ・・・」
「わかってるわよ・・・ガモン。いいの・・・こうして今一緒だし・・・」
「ああ、ありがとう。桃子。」

我聞は桃子の胸に手を伸ばし、まだふくらみかけの胸をやわらかくもみしだく。
服の上からとはいえ、柔らかい感触が我聞の手に伝わった。

「あ・・・ん・・・がもん・・・」
「ん・・・やわらかい・・・とうこ・・・」

吐息が漏れる。まだ幼いにもかかわらず艶のある声は、我聞の性欲をかき立てた。
服の中に手をさしいれ。少しだけ、強く。桃子の乳首をつまむ。

「きゃ、ふっ・・・あっ・・・やん・・・」
「桃子・・・可愛い・・・ちゅ・・・ん・・・」
「や、らめ、くすぐったい・・・」

首筋にキスをし、丹念に胸をもむ。
徐々に興奮が高まる。桃子は、自分から着ていたセーターをあげ、我聞に哀願した。

「ガモン・・・みながら、して?」
「ぁ・・・ああ、桃子・・・」

ぷっくりとふくれ、バージンピンクに染まった乳首を、我聞は優しく口に含んだ。

「にゃ、がもっふぁ・・・っ!きゃふっ・・・」
「ん、ちゅうぅ、ちゅぱ、ん。・・・やわらかい・・・すごく、えっちだ・・・」
「えっちなのはガモンよ、ふぁ、すっちゃ、らめぇっ・・・」

吸っちゃダメ、といっても一切抵抗しない。それだけ、我聞の愛撫は気持ちがいいのだ。
桃子は愛する人に、胸を吸われるという行為に激しい羞恥心と喜びを感じた。
自分の胸に、愛する人の顔を押しつけて・・・

恥ずかしいけど、すごくうれしい・・・

「ちょ・・・きゃ・・・にゃう、がも、んっ・・・」
「ん・・・とぉこのへそ・・・ちゅ、ん・・・」
「やだ、きたないよぉ、はぁ、っ・・・ん・・・へんたいぃ・・・」

やわらかく、雪のように白い桃子のおなか。それを我聞は丹念に舐め、さする。
こしまわりをひときしり触り、その感触に酔いしれた。
くん、と鼻をつつむ甘いかおり。女の子独特のかおり。
そして・・・
119前スレ246:2005/12/31(土) 21:28:58 ID:bKozAe6g
「ん・・・桃子・・・」
「きゃふ、はぁ・・・ん・・・」

ふとももをさわると、我聞はしっとりと濡れていることに気づいた。
独特の粘りけがあり、これは汗ではない。少し上の方から、したたるようにたれていた。
これは。

「ん・・・なんだ、桃子の方がえっちじゃないか・・・」
「ふぁ・・・だって、だってぇ・・・」

我聞がそういった瞬間に、桃子は瞬時に耳まで顔を赤くした。

愛液。ショーツが吸いきれずにこぼれ落ちた愛液だった。
汗からも、少しずつ淫らな香りがするようになっている。焦らされると濡れてしまう性癖があるようだ。

「桃子・・・よっと・・・」
「きゃ、あ・・・」

こたつから桃子を持ち上げ、全身が見えるまでに引っ張り出した。
紅潮しきっている顔。白い身体には朱が差し、胸は我聞の唾液でぬめっている。
瞳は涙ですこしにじんでいて、ふとももはじっとりと濡れていた。

我聞は、桃子の両足をぐい、と持ち上げ。膝を胸の方まで押しつけた。

「きゃっ!?がもんっ、や、恥ずかしいよぉ・・・」
「こうした方が、よく見えるだろ・・・桃子のアソコ・・・」

まんぐり返し、と呼ばれる格好を桃子にした我聞は、黒のハイソックスを履いた
桃子の太ももを舐めた。

「ひっ、はぁ、んっ・・・にゃあ・・・がもぉん・・・」
「とぉこ・・・かわいい・・・ん・・・」

塩っぽい味。生物のかおりが一番する。そんな味。
かぐだけで性欲は高揚する。我聞はそのままショーツをずらし、あらわとなった
桃子のあそこを、そっと舐めあげた。

「あっ、ふぁ・・・やらしい、がもんぅ・・・っ!」
「すごい・・・もうとろとろだ・・桃子・・・」

ひだひだを、左右にひっぱり、膣が露出するまでひっぱると、
それに呼応するかのように、桃子のあそこは、とろ、と愛液を分泌した。
それを丹念に舐めあげる。舌を膣内にねじこみ、奥の奥まで陵辱する。

「あ、あ・・・がもん・・・っ・・・はいってくるよぉ・・・」
「んん・・・ぢゅう、ぢゅうぅ〜・・・ぷは、桃子・・・」

飲んでも飲んでも愛液はとまらない。
加速していく二人の性欲はとまらない。

求め、愛し合うたびに、胸が苦しくなる。
120前スレ246:2005/12/31(土) 21:29:38 ID:bKozAe6g
「ガモン・・・いまだけ、今だけわたしをみて・・・」
「うん、約束だ・・・今俺の頭には桃子しか見えてない・・・」

そのまま我聞は、いきりたった自分の肉茎を取り出した。
桃子にみえるようにそれを桃子のあそこへと、あてがう。

「は、ぁ・・・あ・・・がもぉん・・・」
「いれるぞ、ゆっくり、ゆっくりな・・・まだ、時間はあるんだから・・・」
「うん・・・我聞・・・大好き・・・」
「ああ。俺もだ・・・いくぞ・・・」

我聞はゆっくりと腰をおとし、その肉茎が桃子の膣内へと進入していく。
肉と肉がこすれ合うたびに、淫らな水音を立てながら進んでいく。

「あ、ふあ、はぁ・・・ガモン・・・・がも、ふにゃああっ・・・!」
「ぐ、ぅ・・・!桃子・・・・っ!」

根本まで達した瞬間、桃子はびくん、と痙攣し。

「ん・・・?桃子・・・イっちゃったか・・・?」
「はぅ・・・はぁ・・・っ・・・はぁ・・・う、うん・・・」

どうやらイってしまったようだ。散々焦らされ、恥ずかしい行為もたくさんした
桃子にとって、この性交はイくには十分すぎるようだった。

「久しぶり、だったし・・・」
「だな・・・じゃあ・・・動くぞ・・・」
「うん・・・いっぱいしてね?ガモン・・・」

我聞は無言で頷いて、深くキスを交わした。キスをした状態のまま、我聞は
落としていた腰を浮かせ、膣から肉茎を引き抜き、そのまま重力に逆らわず腰をたたきつけた。

「んんぅうっ!ぷあ、はぁー、はぁー・・・」
「ぷは、痛くないか?桃子・・・?」
「ん・・・気持ちいい・・・から・・・続けて、とめないで・・・」
「ああ、わかった・・・ちゅ、む・・・」

そのピストン運動を幾度も幾度も繰り返す。
そのたびに愛液とカウパー液は混じり合い、ぱちゅ、ぱちゅ、と激しく水音を立てる。
ずっとお互いに抱き合いながら、キスを交わし、ただただ舌を交わらせた。
121前スレ246:2005/12/31(土) 21:30:22 ID:bKozAe6g
「あっ、あ、あ、あ、にゃあ、がも、んぅ!!」
「とぉこ、とぅこぉ!!、あ・・・っ!」

加速は、とまらない。
お互いをむさぼり、快楽の限りをつくす。
我聞は、桃子の小さなからだが壊れてしまうのではないかというくらいに
自分の肉茎をたたきつけた。膣肉をかき分け、子宮をえぐり、クリトリスを擦りあげた。
我聞も徐々に絶頂が近くなっていく。桃子も、既に二度絶頂を迎え、また三度目を迎えようとしていた。

「ふあ、あ〜っ!あ〜っ!きもひ、いい、にゃああ!!」
「あ、ぐ、あ・・・っ!桃子、だすぞ、桃子・・・っ!!」
「あ、あ、だめ、でちゃ、ああっまって、まって、でちゃう、にゃああっ!!」

どくん。

我聞は最期の一突きをえぐるように桃子の子宮にたたき込むと、二人は絶頂に達した。
亀頭から白濁の精液を、どくん、どくんと注ぎ込む。
桃子はきゅう、と膣肉を締め上げる、そして、愛液の他に暖かい液体が奥から飛び出てしまった。

「と、桃子・・・その、・・・は、・・あ・・・」
「ふあぁ〜・・・はぁ〜・・・みちゃ、だめ、え・・・」

繋がったまま、桃子はおしっこを漏らしてしまった。
快楽に耐えきれず、全身の筋肉が緩和してしまった桃子は、そのまま
ずっとこらえていた尿意をはき出してしまったのだ。

「仕方ないな、桃子は・・・」
「うぅ・・・ごめんなさい・・・でも・・・う〜・・・」
「大丈夫、ちゃんと洗濯するから・・・な?」
「そういう意味じゃなくてぇ・・・う〜・・・低脳〜・・・」

恥ずかしさに耐えきれず、桃子は我聞の胸に顔をうずめてしまった。
それを我聞は優しく抱きしめ、桃子を自分の上に移動させた。

「あ・・・ガモン・・・その・・・まだまだたくさん、してね?」
「ああ、このまま、するぞ。桃子・・・」
「うん、ガモン・・・」

そして、そのまま動こうとした、その時。

「おにいちゃーんっ!まだ起きてる!?忘れ物取りに来たんだけ・・・ど・・・」
「な・・・か、ほ・・・?」
「へ・・・あ・・・う、す・・・胸・・・?」

ふすまが勢いよく開いて、果歩が帰ってきてしまった。
最期の除夜の鐘。・・・そして、時は新年を迎えた。

to be continues....
122前スレ246:2005/12/31(土) 21:33:42 ID:bKozAe6g
以上で終了になります。
この短編はこれで終わりになりますが、来年から
一番最初のくらいの長編小説を作りたいと思っています。
来年もよろしくお願いします。

みなさん良いお年を!
123前スレ246:2005/12/31(土) 21:55:39 ID:bKozAe6g
言い忘れますた・・・
>>116氏応援ありがとうございます!めげずにガンバリマスw
124名無しさん@ピンキー:2005/12/31(土) 22:45:36 ID:H5TNBN5F
246氏GJ
長編のも期待してます
漏れも来年長いの書いてみようかな。
125名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 00:06:41 ID:408GoTiG
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126前スレ246:2006/01/01(日) 00:10:13 ID:V/S2bz2Q
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします〜
127松雪 ◆EBmiO0Ld5. :2006/01/01(日) 00:24:37 ID:ESGtGJTA
あけましておめでとうございます。

スレのますますの繁栄を願って、お祝いの言葉を。

職人の皆様、今年も頑張って盛り上げていきましょう!
128前々々499:2006/01/01(日) 02:31:50 ID:WNQxTC8T
明けましておめでとうございます!
原作の連載が終了しても尚、勢いが持続してるこのスレの今後も変わらぬ発展を祈ってということで、
書き手の皆様も読み手の皆様も、今年もどうぞ宜しくお願いします〜
129前スレ272:2006/01/01(日) 03:17:07 ID:aT9iwR2V
あけましておめでとうございます。
書き手としても読み手としても、今年も宜しくお願いします。

では、昨日の続きの投下です。正月に投下するから、以前のクリスマスプレゼントに対してお年玉?
ああ、でも皆さんはお年玉を貰う歳じゃないでしょうし、そんな大層な内容ではないかもしれませんしね。
・・・・・・ん? それって・・・・・・・・・どこかで聞いたような・・・?





あ、福袋か。
130前スレ272:2006/01/01(日) 03:18:28 ID:aT9iwR2V

 果歩が卓上コンロを持ってくると、その後ろから出汁の入った鍋と具材ののったざるを珠と斗馬がそれぞれ頭の上に乗っけて持ってきた
 我聞と陽菜も見てるだけではと手伝おうとしたが、「いいからいいから」とやっぱり止められた
 正方形のコタツの真ん中にコンロ、席順は我聞の向かいが果歩で、我聞の左隣が陽菜、その向かいが珠と斗馬だ
 先ずコンロに火を付け、鍋の出汁を再び温め直す
 この時、予め下ゆでしておいた大根を沈めておくのを忘れない
 その間に、既に炊けているご飯を炊飯器ごと持ってきた
 「・・・よし、準備完了!」
 「おぉ〜」
 我聞達の視線は鍋よりもざるにのった具材の方だった
 いつもは白菜と豆腐がメインをはっているのに対し、今日は肉団子のようなものや海鮮物がざるの半分程ものっていた
 「今日はやけに豪勢だな」
 「ま、たまにはね〜」
 果歩はいかにもやりくりしたんですという顔だが、実はこの具材の代金の半分は優さんから出資してもらったもの 
 いつもの白菜や豆腐がメインでは折角のチャンスを、場の雰囲気が盛り上がらないとまずい
 そういう理由で、渋がる優さんに適当に白菜と豆腐以外の豪華めな具をスーパーで買ってきてもらったのだ
 ・・・・・・勿論、果歩自身、GHK抜きでも食べたかったのは否めないのだが

 「そろそろ・・・煮えてきたかな」
 果歩が鍋の様子を見ながら、ぽつりとそう呟いた
 その瞬間、珠と斗馬の目の色が変わった
 2人はまだ幼いが、その身には仙術使いとしての溢れる才覚を持っている
 それをフルに発揮し、高速を越えた箸捌きで次々に豪華めな具をかすめ取っていく
 「あ、ちょっと!」
 仙術使いの才覚ゼロの果歩は全く追いつけない、同じ理由で陽菜も箸を出せない
 ・・・とてもじゃないが、水入らずの団らんにはなりそうにない
 迂闊だった、甘く見ていた・・・・・・いや、わかっていたはずなのに・・・
 果歩はがくっと項垂れた時、すっと温かい椀が差し出された
 「ほら」
 椀を差し出したのは我聞で、同じ様に陽菜にも豪華と質素を均等に入れられた椀が置かれている
 それと同時に、我聞は暴走状態の2人をたしなめた
 「・・・お、お兄ちゃん・・・!」
 果歩は我聞に対して、今までにない立派な『家長』としての威厳を感じられた
 「あ、ありがとうございます」
 「いや、こんな鍋久々だし、ちょっと殺気立っちゃっただけだから」
 陽菜の言葉に我聞は大人の返答をする、果歩は益々感動した
 そのやりとりの後、陽菜は我聞の手に持っているご飯茶碗の中身が空になっているのに気づいた
 周りに気配りするだけでなく、しっかりと自分も食べていたらしい・・・口元にご飯粒が付いているのですぐわかった
 「社長、おかわりします?」
 「え、あ・・・うん、じゃあお願い」
 我聞が陽菜にご飯茶碗を渡すと、陽菜は炊飯器からご飯をよそい、「はい、どうぞ」と手渡した
 それから、我聞の口元にご飯粒が付いていると自身の唇で指し示してやり、我聞はそれをつまんだ
 珠が我聞に負けじとご飯のおかわりを陽菜に頼むと、それを受け取り同じ様によそう
 「(・・・ああ、なんて理想的な光景・・・!)」
 2人はいつものごとく無意識なんだろうが、果歩の目に映る光景はまさに一家団らんといったもの
 陽菜はしっかり女房役を務め、我聞は鍋奉行・・・もとい家長としての威厳を何となく漂わせている
 「(・・・いい! これならいける!)」
 果歩は食べるのを忘れ、妄想に浸るが、それでも悔しいことがあった
 そう、何故、ここまで自然にいく2人が、なかなか進展しなかったのか
 それが歯痒くて、果歩やGHKはいつもじたばたとしていたものだ
 ・・・実際のところ、詰めの甘い果歩とうっかりしすぎの優さんが組織の中核にいる時点で、常に作戦が空回りに終わることの方が多い
 だが、それにいつまでも気づかないということこそが何よりの証明だろう
 「(でも、今日の作戦で・・・それも終わるはず)」
 この雰囲気を保ったまま、一気に畳みかける
 明日の朝には、本当の夫婦が誕生しているはずだ
 そう、優さんが立てたこの計画に狂いはない

 果歩はご飯や椀の中身が冷めることも気にせず、1人妄想に浸り続けていた
 
 ・・・・・・
131前スレ272:2006/01/01(日) 03:19:42 ID:aT9iwR2V

 「ふー、食べた食べた」
 「ごちそうさまでした」
 鍋の中身が総て空になり、もう汁一滴すら残っていない
 我に返った果歩が後片付けを始めると、陽菜はまたお手伝いに立とうとしたが、同じ様に止められる
 「まぁまぁ、陽菜さんは今日はお客さんなんですから」
 「ですが・・・」
 「なんでしたら、またお兄ちゃんの勉強でも見ててあげてください。なんせ、成績低空飛行なヤツですから」
 果歩はそう言うと、鍋の道具を全部持って行ってしまった
 陽菜が手持ちぶさたになってしまうと、我聞が声をかけた
 「・・・えっと、もし良かったら、さっきの続き・・・いい?」
 「あ、はい。わかりました」
 陽菜がまた元の位置に座り直すと、我聞も先程までやっていた問題集で詰まった所を示した
 簡単に、そこの要点をまとめて伝えると、成果があったのか我聞はすぐに要領を呑み込んだ
 「・・・ええと、でしたら、ここの練習問題を解いてみてください。今の公式が理解出来ていれば、難なく出来るはずですから」
 「うん、わかった」
 我聞が集中してそれをやり始めると、陽菜もその間において自身の勉強を進めることにした
132前スレ272:2006/01/01(日) 03:21:26 ID:aT9iwR2V

 「・・・で、ここをこうして・・・こうなる、と」
 最後の答えを丁寧に、かりかりと書き込んだ
 我聞が誇らしげに「出来た!」と叫んだ、昨日までわからなかった問題がここまで自信持って解けるようになるとは自分でも思ってもみなかった 
 「國生さん、採点お願いしたいんだけ・・・」
 どと、途中で我聞の言葉が止まった
 左隣の辺に座っていた彼女は、机に突っ伏した状態で眠っていたからだ
 「・・・」
 我聞は陽菜が実は相当疲れていたのではないかと思い至った
 いや、確かにお腹が一杯になったから、眠くなってしまったということもあるだろう
 だが、冬休みが終わってからというもの、陽菜はまともに休んでいなかったように思える
 卓球部のクリスマスイベントの手伝いや、工具楽屋(株)の仕事納めなどに奔走したり残業したり、更に自分の休み時間を削ってまで我聞の勉強まで見てくれていた
 これでは陽菜でなくともいつかは倒れてしまう
 それに、普段から陽菜はさぼったり怠けることがない性格なので、どんどん疲れを溜め込んでこうして倒れるまで働こうとするのは周知だ
 「・・・いつの間にか苦労させてたんだなぁ」
 総ては自分が社長としてふがいないせいか、我聞は自責の念にかられた 
 それから傍に置いてあった上着を、我聞は立ち上がって陽菜の背中に掛けてあげた
 「よし、じゃあオレはもう一踏ん張り」
 と、問題集の先をやろうとしたのだが、ふっとその視線はどうしても別の方へ逸れてしまう
 すやすやと無防備に眠る陽菜の顔に、どうしても・・・・・・
 「(あ、あまり見ないからかな)」
 そもそも異性の寝顔を見るなんて、兄妹である果歩や珠を除けばそう機会があるわけでもない
 だから、余計に意識してしまうのだろう・・・そう我聞は思った
 同時に、同級生の、しかも異性の寝顔を見るということに妙な背徳感や罪悪感が感じられた

 触れてみたい、その黒髪に、その頬に・・・

 「(い、いかん! オレはな、何を考えているんだ!?)」
 これでは本当にセクハラ社長だ、ましてや相手は同僚であり同級生なのだ・・・シャレにならない
 しかし、我聞の右手はそれに反して陽菜の方へ伸びてしまう
 やけに我聞自身の心音が大きく聞こえ、それ以上に部屋の時計の音が気になってしょうがなかった

 ・・・我聞が陽菜の前髪に触れる寸前に、陽菜はぱちっと目が覚めた

 ぴたっと2人の時が止まった
133前スレ272:2006/01/01(日) 03:22:47 ID:aT9iwR2V
 「・・・・・・」
 「・・・・・・あの」
 我聞はもう終わったと悟った、が・・・肝心の陽菜は全くそれに気づかない
 「・・・もしかして、私、寝てました?」
 「・・・・・・うん」
 我聞は左手で自身の顔を隠し、思わず陽菜から目を逸らして言ってしまう
 きょとんとしていた陽菜だが、急に我に返ったように言った
 「あ、あ、すみません! つい寝てしまって・・・!」
 「い、いや、いいから・・・つ、疲れてたんでしょ?」
 なんとかそれだけ言うと、陽菜は我聞の目の前に開かれている問題集に気づいた
 「あ、終わったんですね。すみません、見せてもらいますよ?」
 「・・・わ、ちょっと待って!」
 伸ばした陽菜の手を、我聞はしかっと手に取ってしまった
 別に止める必要はなかったのだが、状況的に、反射的に止めてしまったことを後悔した 「あ、あの・・・何か?」
 「や、別に・・・その・・・」
 我聞がすっと陽菜の手を離し、問題集を渡した
 陽菜はその行動に驚き、また意識してしまった
 それを隠すかのように、一心不乱に我聞が解いた問題集の答え合わせに集中しようとする
 「(・・・そうだ。別に、社長は私を起こそうとしただけのことで・・・)」
 今、上着が掛かっていたのにも気づいたし、これは単に寒そうだったから掛けてくれたのだろう
 そう、総ては善意の上での行為のはずなのに・・・・・・陽菜の動悸は収まらない

 そこに、果歩が部屋に入ってきたのは救いだったのか不運だったのか・・・・・・
いや、それは陽菜にとってすれば、両方の意味合いを持っていた
 「・・・もしかして、お邪魔でした?」
 「い、いえ、何ですか?」
 陽菜がさっと時刻を見れば、もう大分遅い
 採点も終えたことだし、今日のところは・・・本当に、早々に退散した方が良さそうだ
 果歩も帰りの時刻について言いに来たのだろうと、陽菜は思ったのだが・・・違った
 「陽菜さん、今日、ウチのお風呂入っていきません?」
 「・・・え?」

 ・・・・・・
134前スレ272:2006/01/01(日) 03:23:22 ID:aT9iwR2V
  
 果歩の突然の提案に、我聞も目をぱちくりとさせていた
 「おい、何言って・・・」
 「そうですよ。流石にそこまで・・・」
 2人の言葉が重なるが、果歩は気にしなかった
 「いや、だって、寮のお風呂、壊れちゃったって話なんですけど」
 「!」
 いったいどういうことだろうか、陽菜はそれを果歩に聞こうとした時、その横からひょいっと優さんが姿を見せた
 「や、はるるん」
 「優さん!?」
 優さんの鼻の頭には何かべったりとした茶色の染みが出来ている
 その汚れが機械油やさびによるものだと気づいたのは、優さんがことのあらましを説明した時だった
 「や〜、ほんと参っちゃったよ」
   
 話によると、優さんが寮の部屋のお風呂に入っていた最中に、急にお湯が出なくなった
 これは何かボイラーがいかれた所為だろうと思った優さんは、ばたばたと作業服に着替え、湯冷めしそうだったが早速点検しに行った
 優さんの技術なら、この程度の修理は朝飯前なのだが・・・あいにく、壊れている箇所の部品の買い置きが無かったのだという

 「・・・つーわけで、かほちんに頼んで、ここのお風呂をもらいにきたわけ。銭湯は遠いし」
 「大変ですね」
 我聞がそう言うと、優さんは「まぁ少しの辛抱よ。明日、部品の発注か買いに行くから」と言った
 陽菜はとりあえず納得したが、このまま優さんのようにお風呂までもらうべきか悩んだ
 「な〜に遠慮してんの、はるるん。年頃の乙女がお風呂に入らないなんて、不衛生すぎますよ〜?」
 確かにそれはそうなのだが、陽菜はなかなか煮え切らない
 それを見た優さんが「あ、そっか」と何か1人で納得した様子を見せた
 「はるるん、着替えの心配してたんだ。ふふん、でも安心して、ほら」
 ぴらっと優さんが可愛らしいパジャマと下着類を広げて、コタツの中にいる陽菜に見せた
 最初は誰のものかわからなかったが、それもすぐに陽菜自身のものだとわかると、慌てて立ち上がり、優さんの手から奪い取り、自身の腕の中に隠した
 「ななな、なんで優さんが持ってるんですか!」
 「いや〜、不法侵入は悪いと思ったんだけど、さ。はるるんがこっち来てんの思い出してね。必要になるだろうと」
 「な、なら、せめて紙袋に入れるとかしてくださいっ!」
 陽菜がちらっと我聞の方を見ると、案の定我聞は目を点にして固まっていた
 優さんは悪びれもなく、「そっか。我聞くんもいたんだっけ」と笑って言った 
 うらみがましそうな目で陽菜は我聞のことを睨むが、それには全く意味がない
 「・・・わ、わかりました。今日のところは・・・」
 「さっすがはるるん、話がわかるぅ。さっ、一緒に入ろ♪」
 「え、一緒なんですか?」
 「バラバラに入ったらお湯がもったいないじゃん」
 優さんにぐいぐいと背中を押され、陽菜はお風呂場の方へ押しやられていく
 果歩はにこやか笑顔でそれを見送った
 我聞だけが、見てしまったものの衝撃の為、未だ固まっていた・・・

 勿論、このボイラーの故障は優さんの嘘だ
 正確に言えば、今まで正常だったボイラーを優さんが手を加えて部品を壊したということ
 優さんの顔の汚れはボイラーを直すためについたのではなく、ボイラーを壊した時についたものというわけだ
 それを知っているのはGHKのメンバー、果歩だけだ
 つまり、これが『気づいたら・・・!?作戦・第二段階』なのだった

 ちなみにそんな事情を知らず、また社長の家のお風呂を借りるという大それたことが出来ない中之井は哀れ、遠くの銭湯に行くハメとなった 

 ・・・・・・
135前スレ272:2006/01/01(日) 03:25:02 ID:aT9iwR2V

 「・・・あ〜、もう、こーいう汚れは落ちにくくて仕方ないわぁ」
 「そうなんですか」
 優さんが機械油やさびの染みをごしごしを石鹸で洗い落とそうとしているのを、陽菜はなんとなくじっと見ていた

 我聞の家のお風呂は確かに寮のものより大きく、2〜3人は同時に入れそうだった
 銭湯以外で足を伸ばせる風呂桶に、家長である我聞より先に入ったことに悪いとは思いながらも陽菜は満喫していた
 
 陽菜の視線に気づいた優さんはいやんと笑って言った
 「ナニ、はるるん、これ気になる?」
 優さんが自身の豊かに膨らんだ胸を示して言うのに、陽菜は首を振った
 「えぇい、隠すな隠すな。女の子同士とはいえ、そりゃ、やっぱ気になるものよ」
 「いえ、別にそういうわけじゃ・・・」
 陽菜の声が次第に小さくなっていく、完全に否定は出来ないからだ
 他人と比べる気もないし劣等感があるわけではないが、これだけ差を示されるとやはり気にはなる
 「別にねぇ、大きけりゃ良いってもんじゃないのよ。肩凝るし、動きにくい時もあるし。ま、お姉さんは人それぞれ、好きずきだと思うわ」
 「はぁ・・・まぁ、そんなもんですよね」
 優さんが上機嫌で陽菜と同じ風呂桶に足を突っ込みながら、「そうそう♪ 人は人」と言った
 完全に肩までつかると、優さんのそれはぷかりと湯船に浮いた
 「・・・あー、でも、我聞くんみたいな男の子はやっぱ大きい方が好きなのかも」
 陽菜はぶっと湯船に思い切り顔を突っ込んでしまった
 「な、そこで、なんでいきなり社長の前が出るんですか!」
 「え〜? だって、はるるんにとっては一番身近な『男の子』でしょ?」
 うっと陽菜が詰まった
 「ちょっと気にならない?」
 「・・・いえ、別に・・・」
 2人入った所為で湯の量が増え、へりにかけておいたちゃぽんとタオルが湯船に浸ってしまう  
 優さんは「なーんだ、つまんないの」と冗談と本気半々で言うと、すぐにざばっと湯船からあがった
 「あ、もう出るんですか?」
 「んー、やり残した実験があるの。じゃ、お先に」
 優さんがさばさばと風呂場から出ていくのを見届けると、陽菜は頭まで湯にどぷんと沈んだ

 ・・・・・・そうだ、社長も男の子なんだ
136前スレ272:2006/01/01(日) 03:27:51 ID:aT9iwR2V

 今更ながら、陽菜はそれに思い至った
 確かに桃子や父・武文の言葉で以前、陽菜はそれを強烈に意識したことがある
 それまで、ただの社長と秘書という関係だったのが、急に世界が変わってしまったかのような衝撃を憶えたものだ
 だから、陽菜はそれから・・・なるべくそのことを意識しないように努めた
 我聞と1対1になる家庭教師も、それにだけ関して言えば・・・実はかなり負担がかかった
 その為、より一層に仕事や勉強に集中することで、そんなことが入り込む余地がないまでに自分を追いつめたのだ
 逆に、先程はそれが裏目に出てしまったようだが・・・
 「(・・・でも、いつまでもそれじゃ・・・駄目なんだろうな)」
 こうして我聞を想うのは、もしかしたら俗に言う恋愛感情というものなのかもしれない
 しかし、同時に我聞は陽菜のことを『家族』と言ってくれた人でもある
 故に、これは親兄弟に感じるような親愛の情であり、恋愛感情とは全く違うものの可能性もある
 どちらかはっきりと自覚出来ない以上、どちらにも傾けずにいるのだ
 「(それに、社長が自分のことをどう思っているのかもわからないし・・・)」
 はっきり言えば、これは卑怯な「逃げ」の口上だというのは自覚している
 しかし、我聞は自分に対して、そうはっきり言ってくれたことは『家族』以外にはない
 父・武文の言葉の時は何か反応があったように思えるが、それでも、それ以来・・・特に2人の間には何の進展もない
 あくまで、我聞は以前と同じ様に、単なる社長と秘書の関係を護り抜いているようにも思える 
 これはどういうことなのか、今の関係が壊れたくないからそうしているのか・・・陽菜を異性とは全く感じていないからなのか
 「(それでも、社長は社長である以前に・・・男の子なんだ)」
 いつまでもこの関係を保っておけるとは思えないが、ありえない話でもない
 現に恋人同士とかではない、単なる異性同士の社長と秘書という関係を保っている者は大勢いる
 が、もしかしたら、どちらかが爆発してしまうかもしれない
 互いの同意がない時の爆発は、それはいわずもがな・・・最悪な関係の崩壊だ

 いつかはっきりさせなくてはいけないことなのに、つい先延ばしにしてしまう
 それは当然のことのようで、実は向こうからそれを切りだしてくれるのを待っているからに過ぎない
 相手の方から言いだしてくれれば、自分は傷つかないし恥をかかなくても済むかもしれないから・・・・・・

 流石に息が苦しくなってきたのか、陽菜はばしゃんと湯船から顔を出した
 それからすぅーっと大きく息を吸い込み、もう一度頭まで沈んだ   
 「(・・・)」
 どうしようもなく、自分がいやになった
 こんな自分なんかお湯の中に溶けて、消えて、無くなってしまったら良いのに

 すっかりのぼせた陽菜が風呂から出たのは、それから20分も経った後のことだった

 ・・・・・・
137前スレ272:2006/01/01(日) 03:34:43 ID:aT9iwR2V
今回の投下分は以上です。改行が多くなってしまった為、少々文章の分け方が変になってしまいました。
次回の投下は多分、数日後になります。

それと、今書いている小説の内容が、ここの職人さんの作風やネタと被ってきてしまっているかもしれません。
その辺には充分注意しているつもりですが、不快に思った場合は遠慮無く言ってくださいますようお願いします。
138名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 03:40:09 ID:QKyZQIl8
初のリアルタイムを元旦早々体験。お年玉〜
良い低脳作品で転がりながら初詣に行くですよ。
139名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 14:31:13 ID:a/7vaBrA
あけおめ低脳職人GJの嵐。
140名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 19:34:37 ID:CF7lxZbQ
ありがたや、ありがたや。
こりゃ、とんでもなく低脳なお年玉ですね。
新年早々良い物見せてもらいましたよ。
141前々々499:2006/01/01(日) 23:46:58 ID:WNQxTC8T
246氏、272氏、GJですよ〜
正月早々、低脳な雰囲気に触れられて、今年もよい一年になりそうです。
続きに期待させて頂きますね!

自分も年越しの小ネタを、と思っていたのですが、
なんだかだらだらと長くなって収拾がつかなくなってしまいまして、
とりあえず書けてるところだけ投下させて頂きます。

背景は以前、自分が書いていた優さん×國生さんのお話からの延長線上ということで、
GHKが今夜こそ我聞と國生さんをくっつけてしまおうと画策している感じです。
(ちなみにGHKが知らないだけで二人は既にくっついてる感じで)

では、24時間遅れな感じですが、年越し前後から始まる工具楽家でのお話、
今回投下分はえっちなしです。
142前々々499 1/10:2006/01/01(日) 23:48:23 ID:WNQxTC8T

ここは工具楽家、時は大晦日の夕暮れ頃。

おなじみGHKのツートップたる工具楽果歩と森永優は例によって例の如く、
兄と兄嫁候補、社長と秘書をいかにくっつけるかについて、悩んでいた。

「さて、そんな訳で今年も暮れようとしてるわけですが!
 あんなに・・・あんなにいい感じに舞台が整った二人がこのまんまって・・・ありえるでしょーかっ!」
「気持ちはわかる、痛いほどわかるよ果歩りん!
 ・・・けど、これほどまでにボクネンジンな二人、どうにか出来るの?」
「優さん、私たちには・・・覚悟が足りませんでした!」
「・・・覚悟?」
「はい! 我ら工具楽三姉弟、もはや迷いはありません!
 そして優さん! あなたこそ我らの最大の戦力です! どうかご覚悟を!」

ちなみに、覚悟が決まる以前に何がどうなる予定かは果歩しか知らないわけだが、
まあそこは、いつも通りのノリで。

「ま、まあ・・・とりあえず、えーと、どうするの?」

ナンバーこそ優にトップの座を譲っているとは言え、
事実上のGHK発起人かつ統括者たる果歩の発言には絶対に近い強制力がある。
その果歩をしてここまで言わせる策とは・・・

「もう二人の気持ちはわかってるんです!
 だったら、ええ、我々と彼奴らとどちらの理性が先に飛ぶか、
 真っ向勝負ですよ!」

具体的な話が無いままに進行する話に不安よりも興味をひかれてしまう優に、
抑制とか制止という年長者らしい行為など当然、浮かぼうはずもなかった・・・
143前々々499 2/10:2006/01/01(日) 23:49:54 ID:WNQxTC8T

「お蕎麦、茹であがりましたよ〜」

そう言って人数分の椀を盆に載せて工具楽家の居間に運ぶのは、
普段なら工具楽家の炊事番である果歩の仕事だったが、
この大晦日、本日に限っては違っていた。

「おお、國生さんご苦労様、なんか悪いね、お客さんを働かせているようで・・・」
「構いませんよ、お客様扱いされるには、私も随分お世話になっていますから」

近くに寺でもあれば除夜の鐘が聞こえてくる頃、
工具楽家で年越し蕎麦の給仕をしているのは、國生陽菜であった。
何故、果歩の代わりに陽菜がこんな役目を果たしているかというと、

“私は優さんと工具楽家の新年恒例行事の準備をするので、陽菜さん、年越し蕎麦の方をお願いできますか?”

等と頼まれたのだ。
どんな行事があるのか少々気になるが、果歩から炊事修行を受けた陽菜が断ろうはずも無く・・・

「お蕎麦だ〜!」
「いい香りですのう」
「や、やるわねハルナ、私も料理の練習、しようかしら・・・」
「うむ! さすが國生さん、もう果歩と比べても遜色ないかな!?」
「そ、そんな・・・まだまだ、その域には・・・それに食べて見ないことには」

陽菜は謙遜しているが、それでも工具楽家の誰もが認めるほどに、
彼女の炊事の腕はこの数ヶ月で確実に上達していた。
果歩について工具楽家の戦場のような夕飯時の台所で格闘したり、
我聞を部屋に招いて料理を振舞ったりと、陽菜なりに努力を重ねた成果である。
それでも、例え夜食であろうとも、工具楽家の食事を果歩から全て任されたのは今回がはじめてであり、
陽菜としてはそれなりに緊張していた。
だが、まだ実際に賞味こそしていないが、少なくとも見た目や匂いは問題ないようで、
ほっと胸を撫で下ろすと我聞の隣に陣取ってコタツに落ち着くことにした。
ちなみに、我聞の反対側の隣には桃子がしっかりと陣取っている。

以前、我聞に誘われて工具楽家の食事に混ざった時から、陽菜の席は我聞の隣と決まって(決められて)いて、
最初は恥ずかしくて(でも、正直嬉しくもあって)ことあるごとに顔を赤く染めたものだが、
最近は陽菜も工具楽家の面々もすっかり慣れてしまい、
その配置に誰もがなんの違和感も感じていなかった。

しかし裏を返せば、その親密そうでありながらそれ以上の進展が認められない(と思い込んでいる)現状に、
GHK、特に果歩と優は業を煮やしていた訳で、
故にこの年の瀬に果歩はある決意を秘め、旧年最後であり新年最初の策を発動させたのであった。
そして、その仕込を終えて今、
笑顔の裏に決意を秘めて優と共に彼女たちの戦場へ乗り込んでくる。

「あ、いい匂〜い! 陽菜さん、もう料理の腕もすっかり上達しましたね!
 これなら愛情の手料理も愛妻弁当も充分期待できるわよ、ね、お兄ちゃん?」
「んな・・・! まて、ま、まだそれはちょっと・・・」
「そ、そうですよ! まだそんな、私たち・・・」
「そうよカホ! 料理くらいで先走ったこと言ってるんじゃないわよ!?」
「・・・それは料理“くらい”出来るようになってから言いなさい、控えめ胸?」
「う、うるさいわねうす胸! すぐよ! すぐに出来るようになってやるから!」
「それにしても、二人して“まだ”とはねぇ・・・ではいずれは期待しても良いってことかな〜♪」
「え・・・! い、いや、それは、また・・・その! べ、別のお話で・・・!」
「そ、そうですよ優さん! ま、まだ俺らは・・・そんな、別に・・・と、とにかく!
 折角國生さんが茹でてくれたんだ、延びないうちに蕎麦を頂こう!」
「ふうん? ま、いいけどね〜?」
144前々々499 3/10:2006/01/01(日) 23:51:35 ID:WNQxTC8T

ちなみに陽菜お手製の年越し蕎麦を囲むは当家の住人たる我聞、果歩、珠、斗馬。
そこに、一人で年越しは寂しかろうとの招きに応えた客人三名―――陽菜、優、そして桃子。
表面的には順当な面子だが、
一部の、否・・・一部を除いた参加者の内心には穏やかならぬものがあったりなかったり。

まず、我聞と陽菜を今宵こそゴールインさせてしまおうと企むGHKの面々、
最近は我聞とセットでいることにすっかり違和感がなくなってしまった陽菜をなんとか出し抜きたい桃子、
そしてGHKの障害になりうる桃子を抑えておきたい果歩。
だがそんな渦巻く思惑の渦中にあって、肝心の我聞と陽菜は違和感の欠片も感じていない、
筋金入りの朴念仁っぷりであった。
朴念仁ついでに我聞が桃子ばかりか番司にまで声をかけたときは、
後頭部に果歩の蹴りが炸裂寸前であったのだが、
流石に実家のある番司ゆえに帰省せざるを得ず、GHKは胸を撫で下ろしたものだった。

そんな各人の内心とは裏腹に、
工具楽家の兄妹達と客人達は“行く年来る年”などを尻目に雑談に興じつつ、年越し蕎麦を啜る。
口々にお褒めの言葉を頂いて、陽菜はいつにも増して嬉しそうであった。
GHKとしての行動はあくまで新年を迎えてからの予定であったし、
桃子としても果歩達の目がある手前、いきなり大胆な行動を起こせるはずもなく、
今のところは至って平和な年の瀬を過ごしていた。
皆が食事を終えたところで、

「では片付けてきますので、お碗をお盆に載せてください」
「おお、すまんね國生さん、手伝うよ」
「いえ、折角任せて頂きましたし、片づけまでが炊事ですから、今日は私が」
「ああ、なんて素敵な心構え・・・陽菜さんなら今すぐにでも立派なお嫁さんになれますよ!」
「んな! か、カホ? 何を先走ったことを!」
「お、お嫁・・・!? そ、そんな、そうですよ! からかわないで下さい果歩さん!」
「あれ〜? どうしたのかなはるるん、そんな真っ赤になっちゃって♪」
「べ、別になんでもないです! と、とにかく片付けてきますので!」
「ハルナ、私も手伝う!」
「あんたは座ってなさい、食器を割られると困るから」
「ちょ・・・そ、そこまで不器用じゃないわよ、見くびるんじゃないわよ小娘!」
「いやぁ、相変わらず仲がいいな、見ていて微笑ましいぞ、はっはっは」
「・・・兄上・・・」

そんなやり取りをしている間に、テレビが新年の到来を伝える。

「お、12時か! あけましておめでとう、だな! みんな、今年も宜しく!」

我聞の挨拶を皮切りに、各人が口々に新年の挨拶をする。
工具楽家では、というか一般的な家庭の例年の風景であるが、陽菜や桃子にとってはそんなことも新鮮で、
この兄妹達に混じって食卓を囲む楽しさを改めて、しみじみと実感していた。

「ん? どうした國生さん? 桃子?」
「いえ、別に・・・あ、あの、今年も・・・その、宜しくお願いします・・・ね」
「わ、私もよ、ガモン、それにみんなも、まあ、その・・・宜しくね!」
「おう、こちらこそ、宜しくな!」

ここで我聞が陽菜だけとやり取りしてくれたら、絡みようもあるんだけどな、等と果歩は内心で思うのだが、
桃子の事情も知っているだけに、流石にそれを口に出したりはしない。
ナマイキだし厄介な相手ではあるが、我聞と陽菜が無事にくっついて、
桃子がその傷心から立ち直るか、新しい恋など見つけたなら、
案外いい友達になれるかもしれない、とか思ったりもする。
もっとも、事あるごとに邪魔をしまくる自分のことを桃子が許すかどうかはわからないし、それに・・・

(ま、今日も後で、あんたはちゃーんと潰すんだけど、ね♪)

なんて、しっかりターゲットしている訳だが。
145前々々499 4/10:2006/01/01(日) 23:52:47 ID:WNQxTC8T

「では、片付けてきますね」
「おう、頼んだ!」

挨拶も一通り済んだところで、改めて陽菜は台所へと片付けに向かう。
そんな陽菜と、彼女を見送って声をかける我聞の何気ないやり取りは工具楽家の者としては既に見慣れてしまって、
今更突っ込む気にもならない自然な風景なのだが・・・

「むー・・・」
「ん? どうした桃子、腹痛か?」
「ち、違うわよ低脳! 別になんでもないわよ!」
「そうか? ならいいが」
「う〜ん、我聞くんと陽菜ちゃんの息の合い方に感心しちゃったかな〜?」
「な、別に普通じゃない! あれくらいなんでもないわよ!」
「そ、そうですよ優さん! いつもあんなですって!」
「ふぅん、いつもこうなんだ?」
「そうなんですよ優さん、いつもこんなだから、もう見てるこっちが・・・ねぇ?」

そう言って果歩と優にじーっと顔を覗き込まれてしまう。
珠と斗馬も二人に倣ってとりあえず我聞を見るし、
桃子も桃子で、別の意味でじとーっと我聞の顔を睨んでくるものだから、

「ちょ・・・お、お茶入れてくる!」

敢え無くわたわたと退散してしまう家長であった。

「あら、社長・・・どうされました?」
「うん、ちょっとお茶でも入れに、ね」
「そんなこと、言って下されば私がしますのに」
「いや、そのね・・・実は向こうがちょっと居たたまれなくて」
「あー、そういうことでし・・・って、社長、それってむしろまずいのでは・・・」
「ん、何が?」
「いえ、それで社長が、その、私のところへ来られてしまいますと・・・」
「・・・あ」

鈍い我聞でも、これで戻ったらどういう展開になるかくらいは、流石に想像がつく。

「す、すまん國生さん! ちと浅はかだった!」
「いえ、まあ、来られてしまったものは仕方ないですし・・・
 そ、それにしても、今日はちょっと、なんと言いますか・・・激しい、ですよね」
「だよな、優さんが来てるからだろうか、なんかいつもよりキツいよな」

お互い顔を見合わせてため息を吐くと、どちらとも無くくすっと笑い、少しだけ顔を赤らめる。
今更ながら、とは当人達ですら思っているのだが、
どうも顔を見合わせてしまうと、未だに照れてしまう。
そうなってしまうとどちらからも視線を外すことが出来ず、
いつものようにそっと互いに顔を近づけて目を瞑ろうとして――――――
だがここで、我聞の目が視界の片隅にあらぬものを見つけ出し、

「―――ってなんだお前らみんなして何してる! って優さんそのカメラは何ですか!」
「え・・・あ、あわ、な、なんですか皆さん!」
「それははこっちの台詞よハルナ! ちょーっと目を離したら油断も隙もない!」
「べ、別に何でもないですよ! 特別なことは何もしてないですっ!」
「いや〜こっちだって別に何でもないよ?
 ただちょっと工具楽家の年末年始の風景を記録に残してるだけで」
「そうよお兄ちゃん、陽菜さん。 それとも、何か見られて都合の悪いことでも?」
「い、いえ別に! ですから、すぐに片付けてお茶を入れたら戻りますから、皆さんも戻っていてくださいっ」
「じゃ、じゃあ・・・俺も戻るから・・・お茶、頼むわ・・・」
「あ、はい・・・お気をつけて」
146前々々499 5/10:2006/01/01(日) 23:54:09 ID:WNQxTC8T

流石にこの状況で二人で残る訳にも行かず、
二人は引き攣った顔で、しばしの別れを告げる。

居間に戻ると、予想通りニヤニヤした視線が2つ、睨みつけるような視線が1つ、ただ楽しそうなのが2つ。
特に何を言われる訳ではないのだが、とりあえず無言のプレッシャーが我聞を苛んでくる。

(く・・・何も言って来ない・・・國生さんが戻るまでこのままか・・・だが、やられっぱなしではないぞ!)

そのまま我聞は懐に秘めたあるものを確かめると、台所の気配を覗う。
陽菜がこちらへ戻ってくる足音が聞こえ出して、そろそろ居間に入ろうかというところで、おもむろに・・・

「そうだ、果歩、珠、斗馬! これを渡さなきゃならなかったな!」

大袈裟に喋りだすと、懐から3つのポチ袋を取り出して、

「わぁ! お年玉だ!」
「兄上! ありがとうございます〜!」
「ほら、果歩も」

丁度陽菜が居間に入ってくるタイミングで渡されて、してやられたとも思うのだが、
兄の懐事情を知っている妹としては、流石にここは感謝しない訳にも行かない。

「あ、ありがとう・・・でも、無理しなくてもいいのに」
「はっはっは、これでも家長だからな、これくらい当然のことだ!」
「おお〜! 流石ガモン!」
「・・・という割にはちょっと顔が引き攣ってるよーにも見えるけどね〜?」
「ゆ、優さん! そ、そんなことはないですよ!?」
「・・・お年玉くらい当然の如く振舞えるように、社長にはもっと仕事を頑張って頂かないといけませんね」
「んな、國生さんまで!」
「ふふふ・・・でも社長として当然のことですよ?」
「むぅ・・・精進シマス」
(でも、そんな懐具合でもちゃんとお年玉を用意されてるのは、家長としてはご立派ですよ、社長)

口に出して言ったら、また周りから何を言われるかわかったものではないので、
心の中でそっとフォローを入れてみる。
が、そうすると今度は別の角度から・・・

「しかし今の会話聞いてると、まるでお兄ちゃんと陽菜さん、
 なんかもう夫婦みたいですよね、ねぇ優さん?」
「な!?」「えええ!?」「なんですと!?」
「そうねぇ、な〜んか早くも我聞くん、陽菜ちゃんの尻に敷かれてる感じ?」
「そうそう、ですよね〜♪」
「ちょ、ちょっとさっきからあんたたち! なにその気にさせるようなことばっかり言ってんのよ!」
「果歩! 優さんも! もうとか、早くもとか、決まったことみたいに言わないでくださいっ!」
「だって、ねぇ果歩ちゃん?」
「そう見えちゃうんだから仕方ありませんよね〜?」
「だから違うって!」
「そ、それよりも果歩さん! そろそろ工具楽家の新年恒例行事というものを始めませんか!?」

このままではジリ貧確定と判断した陽菜が、なんとか話題を逸らそうと提案する。

「そ、そうだな、さすが國生さん! 果歩、恒例行事って、一体なんなんだ?」
「・・・・・・え?」「は!?」
147前スレ246:2006/01/01(日) 23:54:19 ID:V/S2bz2Q
実況支援!>>499氏GJ!
低脳過ぎてまいっちまいます!がんばれ〜!
148前々々499 6/10:2006/01/01(日) 23:55:20 ID:WNQxTC8T

明らかにおかしな展開に、陽菜と桃子が同時に首をかしげる。

「む、どうした?」
「いえ、恒例なのに・・・社長、ご存知ないのですか?」
「うむ・・・言われてみれば、恒例なのに俺が知らないのは変な話だな」

なんとなくがくっと肩が落ちるような脱力感に襲われる二人。

(ううん・・・社長らしいといえばそうだけど・・・)
(・・・ガモン、そこはちゃんと押さえておこうよ)

少々複雑な気分であった。

「で、果歩?」
「ふふふふふ、ついに禁断の恒例行事の全貌を明らかにするときが来たようですね!」
「・・・禁断でもあるのですか」
「そうです! 特に私たち兄妹や陽菜さんやついでに控えめ胸には禁断も禁断!」
「ついでとか言うな!」
「お正月でもなければ許されないキケンな体験! 何故なら、ずばりこれですから!」

妙に高いテンションで、果歩は背後に置いておいたダンボール箱から、
中身をどん! どん! とコタツに並べていった。

「こ・・・これは・・・」

そこに並んだものは、日本酒の一升瓶にビールからサワーから・・・
とにかく、それはそれは大量のアルコール類であった。
陽菜はその様子を半ば呆然と見ながら・・・

「ええと・・・果歩さん?」
「見ての通りです! 工具楽家の禁断の年越し行事、それはこれ! 酒なのです!」
「・・・果歩、ちょっといいか?」
「なあにお兄ちゃん!?」
「いや、どう考えても恒例じゃないし、色々まずいだろう、これは・・・」
「ふっ・・・それはお兄ちゃんが無知なだけよ!」
「何ぃ!?」
「実はね、お父さんから言われたのよ!
 “我聞も17になったことだし、工具楽家の恒例行事を復活させる、果歩、お前が仕切れ!”
 と!」

もちろん、嘘。

「んな・・・オヤジが?」
「そうよ! そしてその内容が、年齢なんて関係無し、めでたい新年に家族も客も浴びるように酒を呑め、って!」
「ほ、本当にそんなこと、先代が・・・?」
「む! 陽菜さん、私のことを疑うんですか!?」
「い、いえ、そんな・・・まあ、確かに先代でしたら、それくらいの無茶は言うかもしれませんが・・・」
(あはは・・・我也さん、去り際にあんなことするから印象が・・・)

以前は先代の影ばかり追っていたはずの陽菜が、呆れたようにこう言うのを聞いて、
優は思わず苦笑してしまう。
実の父親までも利用して、果歩は得意の口八丁でどうやら皆に信じ込ませることに成功したようだった。
149前々々499 7/10:2006/01/01(日) 23:56:28 ID:WNQxTC8T

「だ、だが、いくらオヤジの言うことでも、未成年として酒は・・・」
「あ〜らお兄ちゃん、怖気づいた?」
「ば、馬鹿な、そんなことは決して!」
「お父さん、こうも言ってたわよ?
 “ま、未熟者の我聞はびびって手が出ないかもしれんがな、ガハハハハ!”
 って」
「ぬう! 良いだろう、そこまで言われては引き下がれん! 俺はやるぞ!」
「さすがお兄ちゃん、よ! 家長!」
「しゃ、社長!?」

確かにこう言えば我聞が引き下がる訳がない。
実のところ、作戦的には標的は我聞よりもむしろ陽菜なのだが、我聞が呑まねば肝心の陽菜も呑まないだろうし、
将を得んと欲すれば何とやら、である。

「あら、はるるんだって当然、呑むんだよ〜?」
「え、で、でもお酒は・・・」
「桃子、あんただって呑むわよね?」
「う・・・だけど・・・」
「じゃあ帰る?」
「わ、わかったわよ! 呑んでやるわよこれくらい!」
「桃子さんまで!?」
「珠だって斗馬だって呑むんですよ? ね、あんたたち」
「「お〜!」」
「それは余計に問題が・・・」
「細かいことは言っちゃだめです!
 陽菜さんも工具楽家の一員になるんでしたら、避けては通れませんよ!?」
「はぁ・・・わかりました・・・」
「・・・なるんだ?」
「え・・・あ! い、いえ、ほら、私は社長から、家族同然って認めていただけてる身ですから、
 別に他意は・・・!」
「さあさあ、細かいことはもういいから、まず一杯目はこれを呑んで、後は勝手に好きなものを選んでくださいね!」

そんな感じで果歩は、
有無を言わさぬオーラを発しながら人数分の杯になみなみと日本酒を満たしていった。

(うーむ、さすが果歩りん・・・すっかり場を支配してるわねぇ・・・)

そんな果歩の姿に、優は半ば感心して、半ば呆れていたが、
作戦の内容的に、ハイテンションになるのも仕方ないか、とも思えてしまう。
いや、無理にでもテンションを上げなきゃやっていられない、と言うべきか。
その作戦、であるが――――――
150前々々499 8/10:2006/01/01(日) 23:57:58 ID:WNQxTC8T

少し時間を戻して大晦日の夕方頃。
密談する2悪人。

「ねぇ果歩ちゃん、覚悟はいいんだけど・・・具体的にはどうするの?」
「・・・これです」

そう言って果歩が示したものは、日本酒の一升瓶。

「これを呑ませようって事? でも覚悟って・・・実は我聞くん、もの凄い酒癖悪い、とか?」
「いえ・・・ただ呑ませようとしても、お兄ちゃんは変に頭が固いところがあるし、
 陽菜さんも簡単には呑んでくれそうもないですから、
 ここは一つ、全員で呑んでしまおうと思うのですよ!」
「全員・・・ってことは、果歩ちゃんも・・・それに桃子ちゃんに、珠ちゃんに斗馬くんも!?」
「はい! それでお兄ちゃんを挑発する言葉は既に考えてありますし、
 さすがに皆が呑んだら陽菜さんだって呑まないわけには行かないはずです!」
「でも・・・それって、仙術で復活の早そうな我聞くんや呑み慣れた私以外、共倒れの可能性が・・・」
「だから覚悟なんです!
 正直、珠や斗馬には期待できませんが、
 陽菜さんだってお酒を呑んだ経験なんてほとんどないに違いありません!
 ですから、まず第一の目的・・・私と優さんで、陽菜さんと桃子を何とかして潰します!」
「つ、潰しちゃうんだ・・・」

わかり易すぎるくらいにわかりやすい説明に、少々退いてしまう優であった。

「はい、潰します! それで桃子はどこか押し入れにでも仕舞っておきます」
「そ、そう、それで?」

少々どころではなくなってくる。

「それで肝心かなめの陽菜さんですが、介抱するフリをしてお兄ちゃんの部屋に連れ込んで、
 裸にひん剥いてお兄ちゃんの布団に押し込んでおきます」
「んな・・・」

もはやドン退き。

「お兄ちゃんだって寝るまでにはほろ酔いでいい気分くらいにはなってくれるでしょう!
 それで、いざ布団を捲ったときに裸の陽菜さんがいれば!
 いくら筋金入りの朴念仁の馬鹿兄だって、食いつかずにはいられないはずです!
 そして一度でも手をつけてしまったら、あの性格ですから絶対に責任とろうとしますから!
 そんな訳で、陽菜さんには少し悪いですが、二人には若さゆえの過ちを犯してもらいます!」

この場合、一番の過ちを犯すことになるのは自分たちではないかという思いに苛まれてみる。

「それでですね! 私は最大の障害になりうる桃子を、刺し違えてでも潰しますから!
 優さんはなんとか陽菜さんを、お願いします!」
「う・・・うん、わかった、やれるだけのことはやるよ・・・」
「お願いします! 今夜は決戦ですから! 珠と斗馬にも陽菜さんを狙うように言っておきましたけど、
 一番の頼りは唯一の成人である優さんですからね! 宜しくおねがいします!」

手を組んだ相手が、どれだけ性質の悪い人物なのか、
優は自分のことを差し置いて改めて実感していた。

(果歩ちゃん・・・恐ろしい子・・・!)
151前々々499 9/10:2006/01/01(日) 23:58:59 ID:WNQxTC8T

果歩曰くの“恒例行事”が、まさかそんな恐るべき謀略の元に仕組まれたものだとは、
哀れな生贄達は知る由もなく―――

「みんな杯を持った? じゃあいきますよ! かんぱーい!」

果歩の仕切りの下、ついに禁断の宴は始まってしまった。

「・・・ぷはぁっ! あ〜ら、お兄ちゃんな〜にちびちび呑んでるのかしら!?
 杯を乾すと書いて乾杯なのよ!?」
「お、おい果歩? お前こそ、そんな無茶な呑み方・・・」
「そうですよ果歩さん、まだ中学生なんですから・・・」

開幕早々、果歩はいきなりトップギアである。
とにかくテンションを下げてはならぬという気持ちの現れなのだが、
そんな姿に優は果歩の並々ならぬ覚悟を感じて、改めて寒気がしていた。

(な、なんていうか・・・陽菜ちゃんごめんね・・・私は逆らえないから・・・怨んじゃだめよ?)

「何言ってるんですか陽菜さん!
 陽菜さんこそ高校生なんですから、もっと景気良くいきましょーよ!」
「い、いえ・・・高校生でも非常に問題があるのですが・・・」
「細かいことは気にしない! あ、あとお兄ちゃんへのお酌はお任せしますからね!
 杯が空いたら間髪入れず次を注ぐ、基本ですよ!」
「あ、ガモンのお酌は私がやるー!」
「あんたはいいから私と呑むの!」
「か、カホ!? なんでそうなるのよ!」
「あーら、私と呑み比べはできないかしら? やっぱりお子様ね〜♪」
「むっ! 言ってくれるじゃないの、このうす胸!
 いいわ、その対決、受けてあげる!
 この機会にどっちがオトナか思い知らせてやるんだから!」
「桃子さん! 果歩さんも、あまり無茶な呑みかたは・・・!」
「止めてくれるなハルナ! この小娘を潰したら次はあんたなんだからね! ガモンを賭けて勝負よ!」
「え、えええ!?」

唐突な申し出に陽菜が驚いている間に、早くも果歩と桃子の仁義無き戦いは幕を開ける。
斗馬が審判よろしく腕をクロスさせたのを合図に、二人はぐびぐびっと缶入りのサワーを呷りだしていた。

(果歩ちゃん・・・健闘を祈る・・・!)

心の中で果歩に声援を送ると、優も己の仕事にとりかかることにした。
152前々々499 10/10(前編 了):2006/01/02(月) 00:00:36 ID:CSX3+g6C
「さあ、我聞くんもとっとと呑む! でないと我也さんどころかあの二人にも負けちゃうわよ?
 それに折角お酌してくれる陽菜ちゃんを待たせるんじゃないの!」
「ぬ、ぬぅ・・・ええい、やってやる!」
「社長! 無理は・・・!」

言っている傍から先程の果歩よろしく、一息で杯を乾してしまい、
陽菜は不安そうな顔で我聞の杯に新しい酒を満たしていく。
果歩や優が何らかの意図で我聞を挑発しているのは目に見えて明らかなのだが、
例えそれを言ったところで我聞は止まらないこともまた明らかであり、
せめて自分は酔わないようにして、いざとなったら我聞を止めようと思うのだが・・・

「陽菜ねーちゃん、かんぱーい!」
「義姉上さま、かんぱいです!」
「え、あ、義姉ではないですが、はい、乾杯です!」

如何にも無邪気そうに日本酒を飲み干していく小学生二人に一抹の不安を覚えつつも、
ついつい勢いに流されて自分も呑み進めてしまう。
しかも困ったことに、はじめて呑んだアルコールは思ったより口に馴染んでしまった。

(い、いけない、まだ未成年だし、社長のお酌もしなきゃ・・・じゃなくて! とにかく、酔わないように!)

そうやってひたすら自分に言い聞かせてはいるのだが、かといって杯を止めるのも許される状況ではなく、
ついに一杯目は乾してしまった。

「陽菜ちゃん、なかなかいい呑みっぷりだね! じゃあ次はこれにしよっか、甘いから呑みやすいよ〜♪」

そのタイミングを見逃さず、今度はサワーの入ったグラスを陽菜に突きつける。
最初こそ罪悪感を抱いていた優だったが、面白いか面白くないかで言えば確実に面白くなる筋書きではあるし、
何より優の良心回路自体、早くもアルコールでショートしつつあった。

「あ、本当ですね・・・これはこれで甘くて、呑みやすいです」
「よっしゃ、じゃあガンガンいこうか!」
「あ、そんな優さん! そんなに注がないで!」

まだ乾してもいないグラスに、優は容赦なく酌をしてくる。
ひょっとして、と優の周りを見ると、既に空になっているらしいビールの缶がころころと。

「いいからいいから! ほら、我聞くんも陽菜ちゃんに負けちゃ男が廃るぞ!」
「む! よし、呑んだぞ! 國生さん、次を頼む!」
「社長も、そんな無理に呑まないでください!」
「何が無理なもんか、これくらい余裕だ!」
「ほら我聞くんも、注いで貰ってばかりじゃなくて、ちゃんとはるるんに注いであげる!」
「おお、すまん、気付かなかった。 さ、國生さん、空けて空けて!」
「そんな社長まで・・・ああ、そんなに注がないで!」

とかなんとか、口では言いながらも注がれてしまうとついつい呑んでしまう陽菜に、
優は内心でガッツポーズをしながら、既に顔が真っ赤になっている果歩に目を向けて、

(果歩ちゃん、どうやら流れは我々にあるようだよ! 私がちゃーんと記録までしといてあげるから、
 キミはキミの戦いに全力を尽くしてくれたまえ!)

心の中で敬礼などしていた。
153前々々499:2006/01/02(月) 00:04:30 ID:CSX3+g6C
>>147
支援ありがとうございます〜

以上で今回投下分は終了です。
次で終了予定、酔いどれた面々をちょこっとと、えっちをちょこっと。
できれば長くしない予定っす。

では、読んで下さった方、どうもありがとうございました!
154前スレ272:2006/01/02(月) 01:10:11 ID:Inc+p+Q0
こんばんは、またこんな時間ですが投下です。
コメントをくださった皆さん、ありがとうございました。励みになります。
昨夜は数日後になると書きましたが都合していた予定に空きが出来たのでつい書き上げてしまいました。
やはりエロ無しとなりました、もう自分のパターンですね。
155前スレ272:2006/01/02(月) 01:11:37 ID:Inc+p+Q0

 風呂に長く入りすぎたせいか、風呂からあがった陽菜は少々ふらついていた
 首には借りたタオルを巻き、手には果歩から貰った紙袋に入れた着替えがあった
 着替えの方は流石にパジャマ姿はまずいので下着だけにし、服は先程着ていたものをまた着ることにした
 「(・・・遅くなってしまった)」
 そろそろ寮の方に帰らなければなるまい、そういつまでもいるわけにはいかないのだから
 陽菜がとりあえず先程のコタツのある部屋へ、我聞にひと言声を掛け、持ってきた勉強道具を取りに行った
 だが、それには少々の勇気が必要かもしれない
 あの時のことが思い出され、我聞に挨拶する時、どんな顔をすればいいのか・・・・・・
 「あの・・・」
 それでも、陽菜はおずおずとその部屋に顔を出した
 「お、國生さんもう出たの?」
 「・・・はい。お先に失礼しました」
 「じゃ、おれも入ってこようかな」
 そこには衝撃から立ち直った我聞が、コタツの中でぬくぬくとみかんを食べていた
 陽菜は普通に我聞と受け答え出来たのに安堵し、そろそろ帰ることを告げようとした
 と、我聞がコタツの中から出て、陽菜の方に近づいた
 「あ、あの・・・わっ」
 「果歩からドライヤー借りれば良かったのに。こんな髪が濡れたままだと風邪引くって」
 我聞は陽菜の首のタオルを取ると、わしゃわしゃと彼女の濡れた髪を拭き始めた
 力強く大きな我聞の手にされるがまま、陽菜は固まってしまった
 「・・・ぁ、あの、自分で拭けます。大丈夫ですから」
 「え。あ、ああゴメン! つい珠と同じ様にやってしまって」
 我聞はそれだけ言うと、ふっと湯上がりで頬が上気した陽菜に意識を奪われた
 触れた黒髪からはシャンプーの香りが、まだほんのり濡れた黒髪が艶めいている
 「えっと・・・社長?」
 「・・・あ、ああ。うん、とりあえずコタツでのんびりしてなよ、湯冷めしないようにさ」
 我聞の言葉に、陽菜が「いえ、もう帰ります」と言おうとした時、新しくお茶を入れ直した果歩が顔を部屋に覗かせた
 まるでタイミングを見計らったような登場の仕方に、陽菜の言葉と行動が止まってしまった
 「そうですよ〜。もう少し、のんびりしていってください。見たところ、ちょっとのぼせてるみたいですし」
 「い、いえ、そんな・・・」
 陽菜が何か言う前に、我聞は早々に風呂場の方へ向かったようだ
 果歩は「まぁまぁ」とふらつく陽菜をコタツに座らせ、机の上に自分のも含めた2人分のお茶を置いた
 「珠と斗馬はもう寝かしつけたんで、遠慮はいらないですよ」
 「えぇと・・・」
 どうも今日は周りに流されっぱなしだ、溜まった疲れで調子が狂っているのだろうか
 果歩の他愛ない世間話に、曖昧に肯き返しながら、陽菜は帰ることを告げる機会をうかがっていた
 だが、なかなかその隙が見つからないし、果歩も途切れなく色々な話を続ける
 割と話し上手で陽菜も聞いていて飽きないのだが、少なくとも我聞が風呂からあがってくる前に帰る旨を言い出したかった
156前スレ272:2006/01/02(月) 01:12:35 ID:Inc+p+Q0

 そんな矢先、何か花火が炸裂するかのような音が耳に聞こえた
 「・・・? 陽菜さん、さっき花火っぽい爆発音か何か聞こえませんでした?」
 「ええ。季節でもありませんよね」
 ・・・・・・何か嫌な予感がする、2人はそう思った
 部屋の戸を開け、寝かせたはずの斗馬が顔を覗かせた
 「お、大姉上!」
 「何、どうかしたの?」
 「寮の方から煙のようなものが・・・」
 「!」
 すくっと2人が立ち上がった、いったい寮で何が起こったというのだ
 火事か事件か、果歩と陽菜が顔を見合わせ、すぐさま向かおうとした
 「何だ、何があったんだ!?」
 斗馬の後ろを滑るように、我聞が現れた
 全身も髪もびしょ濡れでぽたぽたと落ちる水滴で廊下まで濡れ、腰にタオル一枚巻き付けただけのあられもない格好で・・・
 女性陣が何か叫ぶ前に、我聞は自分の失態に気づき、慌てて風呂場の方に戻っていた
 「・・・・・・」
 「・・・何やってんのよ、もう」
 果歩が手を額に当て、はぁと大きくため息を吐いた
 兄の見苦しい格好見せてすみません、そう陽菜に弁明しようとそちらの方を振り返り見た
 「・・・・・・あ、あれ? 陽菜さん!?」
 あの時の我聞以上に衝撃を受けたらしい陽菜が、ぴきんと固まり真っ白になっていた
 刺激が強すぎたのか、「大丈夫ですか、しっかりしてください!」と果歩が陽菜を必死にがくがくと揺らし何度も呼びかけたという・・・
 
 ・・・・・・
157前スレ272:2006/01/02(月) 01:13:33 ID:Inc+p+Q0

 果歩が斗馬を再び寝かしつけ、陽菜を衝撃から立ち直らせ、我聞が再び服に着替え終えてから、3人揃って寮へと向かった
 遠目から見てみても、斗馬の言うような、火事のような煙はもう出ていない
 それでも3人は急いで寮に行ってみれば、その前で中之井と優さんの姿が見えた
 優さんはその場に正座を強いられ、中之井はガミガミと叱っているようだ
 「中之井さん、優さん!」
 「おお、社長に陽菜くん、果歩くんまで」
 「いったい、何があったんですか!?」
 中之井が眉をひそめ、優さんの方をぎらっと見た
 「・・・う〜、ごめん、皆!」
 優さんが正座姿のまま、ぱんと手を合わせ謝って見せた
 「うん、なんか実験で薬品の調合間違えたみたい。
 で、軽い爆発の後、物凄い勢いでガスみたいのが発生しちゃって・・・」 
 「可燃性、人体に害毒があるわけではないらしいが、念のため、優くんの部屋だけでなく寮総ての部屋を今夜一晩換気することになったんじゃ」
 「えぇっ!!?」
 3人は驚いた、まさかそんなことになろうとは・・・
 優さんは「ほんとごめん、次から気をつけるからっ!」と再び手を合わせて見せた
 中之井はそれでも叱り続け、以後こんなことを起こさぬようと強く注意を続けた
 「え、じゃあ、今夜は・・・?」
 「優くんは当然、徹夜で寮とガスの見張りをしてもらう。こうなった以上、ワシも付き合うがの」 
 「えと、では・・・」
 陽菜が慌てて、優さんに説教を続けていた中之井に声をかけた
 と、この隙に・・・果歩と優さんの間で強烈なアイコンタクトがあった
 その瞬間、果歩は総てを悟った
 この事件は、優さんの総てを懸けた・・・『気づいたら・・・!?作戦・第三段階』の為のものなのだ
 自分がいくら叱られようが、GHK悲願の為なら・・・つまりはそういうことだったのだ
 「(ありがとうございます、優さん! この行為、決して無駄にはしません!)」
 陽菜が中之井に「では、私も(徹夜に)お付き合いします」と問答をしているところに、果歩は声をかけた 
 「あの、もし良かったら、陽菜さん、ウチに今夜だけ泊まりません?」
 果歩のごく当たり前のような提案に、陽菜は意外にも強い拒否を示した
 流石にここまでくると、果歩の押しにも厳しいものがある 
 だが、味方は優さんだけではなかった
 「おお、では、ワシからも陽菜くんのことをお願いして宜しいですかな?」
 「中之井さん!?」
 陽菜が「どうして」と詰め寄ったが、中之井はあくまで冷静に言った
 「最近、陽菜くんは何か思い詰めているようじゃからの。普段の仕事ぶりを見てれば、すぐにわかる」
 「しかし、私だけそんな・・・」
 中之井はぽんと陽菜の肩に手を置いた
 「悪いことはいわんから、今日ばかりは果歩くんの厚意に甘えなさい。寮から離れ、少しばかり気分を変えると良い」
 「そうですよ。ウチは全然平気ですから!」
 「社長も宜しいですかな?」と中之井が聞くと、我聞は「はい」と答えた
 それらの中之井や果歩の言葉に、陽菜は相当迷い悩んだようだ
 どうしても、陽菜は周りに逃げようのない袋小路に追いつめられ誘導されているような気がしてならないのだった
 しかし、ここで折れるべきなのはどちらの方か・・・・・・陽菜にわからないはずがない
 「・・・わかりました。では、すみませんが、ここはお願いします」
 「ウム。優くんやワシに任せなさい」
 中之井が睨むと、優さんは手製のガスマスクを付け、そそくさと再び寮の中へ入り、ガス濃度を調べに行った
 実際にこの作戦の為だけにこれだけの量のガスを使ったとは周りは知る由もないが、それにしても恐ろしい・・・
158前スレ272:2006/01/02(月) 01:14:27 ID:Inc+p+Q0

 「では、今夜一晩だけお世話になります」
 陽菜は深々とお辞儀をすると、果歩は上機嫌で「いえいえ〜」と応対した
 それから中之井と別れ、寮から工具楽家に戻る途中で、我聞が果歩に訊いた
 「なぁ、ところで國生さんはどこで寝るんだ?」
 「え、それは・・・」
 「なんでしたら、私の寝るところはコタツでも構いません」
 「駄目だよ、國生さん。それじゃ本当に風邪を引くって」
 陽菜や我聞がそう言うので、果歩は慌てて「布団はちゃんとありますから!」と言った
 「(・・・ぐ、しまった)」
 肝心なことを忘れていた
 この作戦の肝、要の第四段階である『堅物2人を1つの部屋に押し込める』にはどうしたらいいのか、考えていなかったのだ
 大体、2人が堅物でなくとも、これは普通に躊躇われることだ
 「きゃ、客間があるじゃない」
 「あ、そっか。普通に考えれば、客間だよな」
 言葉の通りだ、さなえや今回のような客人を泊める時はいつも1階の客間を使用している
 だが、我聞は普段自室で寝ている為、他の部屋で寝ることは・・・ましてや客間で寝ることは普通はない
 「(・・・・・・こうなったら、多少、強引でも・・・!)」
 果歩は「あ、そうだ!」と思い出したように、慌てた様子を見せつつ振り返り我聞達に言った
 「今日はお兄ちゃんも客間で寝てもらう予定だったんだ!」
 「は?」
 我聞と陽菜の目が点になる、果歩は続けた
 「えっとですね、今日・・・お兄ちゃんの部屋を大掃除しまして、しかもまだ終わってないんです」
 「おいおい、聞いてないぞ」
 当たり前だ、本当はやっていないのだから
 だが、そんなことはおくびにも出さない辺り、果歩は心得ている
 「別に年末年始じゃ大掃除は当たり前だし、隠すようなことはないでしょ?」
 果歩の言葉に、我聞はむぅと唸るしかない
 確かに今朝、仕事に向かい午後帰ってきて陽菜に勉強を見てもらっている間、我聞は自分の部屋に足を踏み入れていない
 勉強道具は昨日からコタツのある部屋に置きっぱなしだったし、特に戻る理由も無かったのだ
 果歩もそれを知っていたから、こんな大胆な嘘がつけたのだった
 「じゃ、じゃあ國生さんは?」
 「やっぱり、私は寮に戻った方が・・・」
 「と、とにかく、先に家に帰って、急いでお兄ちゃんの部屋を寝られるだけのスペース空けるように頑張ってみるから!」
 そう取り繕うふりをして果歩は猛ダッシュで工具楽家に戻っていくのを、2人は呆然と見送った
 勿論、果歩が急いで戻ったのは、これから我聞の部屋を寝られるスペースもない程に荒らしてくるからだ
 取り残された2人だが、果歩の必死な言葉も虚しく無視されたようで陽菜は踵を返し、寮へ戻ろうとした
 それを、我聞が陽菜の腕を取って止めた
 「・・・果歩もああいってることだし、とりあえず家に行こう」
 「でも、やっぱりご迷惑にしか・・・」
 「大丈夫。アイツはいざって時は凄いから」
 我聞は笑って言うのに、陽菜は戸惑いながら、また・・・歩く方向を工具楽家に戻した
 ちなみにその頃、果歩はそのいざという力で散々に我聞の部屋を荒らしまくっていた・・・
 「それに、もしオレの部屋が片付かなかった時は、廊下に布団でも敷くよ。國生さんはそのまま客間で寝ればいい」
 陽菜が「客間というと、以前さなえ様が寝ていたあの?」と念を押すように聞いた
 「うん、そうだけど」
 「・・・・・・。・・・そうですか。でも、それこそ社長が風邪を引かれます」
 「いや、大丈夫! なんせ鍛えてますから」
 我聞はぐっと腕に力を込めて見せ、陽菜を納得させようとした
 が、次に出た言葉は意外を通り過ぎて、耳を疑った
159前スレ272:2006/01/02(月) 01:15:38 ID:Inc+p+Q0

 「別に、私は同じ部屋で構いませんよ?」
 我聞の目がまた点になり、口は半開きになった
 「・・・え? それはどういう・・・」
 「社長秘書としては、社長に風邪を引かれたら困ります。ましてや、この季節に廊下で寝るなど・・・。それなら、私と同じ客室で寝てもらいますので」
 陽菜の冷静な言葉に、我聞は慌てた
 「な、な何言ってるんだよ、國生さん!」
 「別に、あの客室は広いですし、同じ部屋と言っても、離れて寝ることは可能なはずですが?」
 「で、でも・・・!」
 陽菜は「万が一、果歩さんが寝るまでに社長の部屋の片付けが間に合わなかった時の話ですし」と言い、更に自分の胸元に手を当て言った
 「それとも、社長はただ同じ部屋にいるだけの私に、何かする気なんですか?」
 陽菜の目は、本気そのものだった
 我聞ははっきりと、強く言った
 「・・・そんなことはしない。國生さんの信頼を裏切るような真似だけは、絶対にしない」
 「なら、大丈夫ですよね」
 売り言葉に買い言葉、2人の目の中には異様で強固な意志が輝いていた

 ・・・・・・
160前スレ272:2006/01/02(月) 01:16:33 ID:Inc+p+Q0

 我聞の部屋を一通り荒らし終えた果歩はぜいぜいと肩で息をしつつ、帰ってきた2人を出迎えた
 しかし、どうも様子がおかしいことに気づいた
 「果歩、オレの部屋の片付けは終わった?」
 「う、ううん。まだかかるかも」
 「そうか。じゃ、夜も遅いし、片付けはもういいから、布団だけ運ぶぞ」
 果歩は「いいけど・・・どこに?」と我聞に訊いたが、何も答えず部屋に行ってしまう
 陽菜に「何かあったんですか?」と聞けば、「いえ、ちょっと」と言った
 同時に、陽菜は玄関先で果歩に再度深々とお辞儀した
 「改めて、お世話になります」
 「い、いえ、こちらも不準備なのにすみません」
 何か変だ、そう思った時、我聞が「凄いな、どういう片付けをしたんだ?」と言いながら、布団を持ってきた
 果歩はしまったと思った、部屋から布団さえ持ち出せば、居間でもどこでも眠れるではないか
 これでは優さんがあそこまでやり、押し進めてきた計画が肝心なところで駄目になってしまう 
 「? 何してんだ、冬休みだからって、夜更かしはいかんぞ」
 我聞は果歩に早く寝るように言うと、自分の布団を廊下に置いた
 どうやらここで寝る気らしいと判断した果歩は、必死に「ここじゃ風邪引くって」と言った
 「・・・・・・。心配するな。ちゃんと別の部屋で寝るから」
 「へ? あ、そうなの・・・」
 となると、やはり居間か・・・・・・果歩はがっくりと項垂れた  
 「あ、國生さんに布団の場所教えてあげて」
 「・・・えーと、もう敷いてありま〜す」
 項垂れたまま、果歩はそう教えた
 折角、先の先まで準備・・・客間に布団を1組だけ敷いておいたのに、と悔しがった
 どうせ、2組の布団を敷いたって、今夜使われるのは1組なんだから・・・と思ったからだ
 陽菜が客間を覗き、「あ、敷いてありますね」と我聞に言った
 「そっか」と我聞は答え、布団をまた持ち上げ、陽菜がいる客間の中へ入れた
 ・・・その何の不自然さもない行為に、危うく果歩はそれを流しそうになった
 「・・・・・・へ?」
 「社長、では寝間着に着替えてきます」
 「うん。あ、洗面台の下に歯ブラシの買い置きがあるから、好きなの使って」
 陽菜が「はい」と言うと、優さんが持ってきたパジャマを腕に抱え、洗面所に行った
 果歩は目を疑い、いったい何の幻を見ているのかと幾度も目を擦った
 客間の戸が閉まってしまい、果歩は戸越しに会話することとなった
 「・・・えっと、お兄ちゃん・・・?」
 「何してんだ、早く歯磨いて寝ないと、明日がきついぞ」
 「そ、そうじゃなくて・・・・・・えと、陽菜さんと一緒に寝るの?」
 「部屋が同じだけだ。布団も別々、離して寝るから、何の問題もない」
 我聞はそう言うが何の問題がないわけがない、いったいどういうわけだろうか
 しかも、話や2人の行動から、お互いが同意の上でのことらしい
 果歩は計画が無事に進行していることの喜びよりも、2人の変化の速さにただ唖然と驚いているばかりだった
 「社長、お待たせしました」
 陽菜がすっかり着替えた状態で言うと、客間の戸が開き、此方も着替え終わった我聞が見えた
 そして、陽菜は普通にその中にするりと入っていった
 果歩が「待って」と言う前に、ぴしゃんと客間の戸が閉まった
 「・・・・・・えぇ・・・」
 果歩はその展開についていくことが出来ず、1人廊下に取り残されて・・・・・・ただ呆然としていた

 ・・・・・・
161前スレ272:2006/01/02(月) 01:17:07 ID:Inc+p+Q0

 果歩には布団を離して寝ると言ったが、実際は2人の布団は10cmと離れていなかった
 どちらかがそうしたのではなく、ただ自然とそうなってしまった
 広い客間に2人が離れて寝ることが、非常に物悲しく、寂しすぎたから・・・かもしれなかった

 2人は電気を消し、それぞれの布団の中に、互いに背中を向けて潜り込んだ
 互いに「おやすみなさい」と言い、それからギュッと目を瞑った
 それでも、決して心地よい眠りは訪れることなく、意識は完全に覚醒したままでの沈黙が続いた

 ・・・・・・そんな状態から、30分は経った時、我聞がむくりと布団の中から起き上がった
 陽菜もまだ眠ることが出来なかった為、それにすぐ気づいた
 「・・・駄目だ。やっぱりオレは廊下で寝る」
 我聞は隣の陽菜に呟いた
 「國生さん、起きてるんだろ? やっぱり、オレには無理だ。
 何もしない、オレは絶対に國生さんに何もしないけど、周りはそう思わない。そんな風に思われるの、嫌だろ?」
 「・・・周りは周りです。本人達は本当に何もなかったと主張すれば良いんです。たとえ、そう信じてもらえなくとも・・・私は構いません」
 陽菜は静かにそう返した
 「でも、やっぱり駄目だ」
 「どうしてですか? やっぱり、私に何かしてしまう・・・そんな気がするからですか?」
 陽菜の言葉をゆっくりと頭の中で反芻させながら、我聞はゆっくりとはっきりと言った

 「・・・國生さん、オレのこと試してない? こんなの、絶対におかしいよ」
 「試してなんかいません。それにおかしいって、何がおかしいんですか?」
 あくまでも陽菜の声は冷静でおだやかなものだが、言っていることは無茶苦茶に近い
 売り言葉に買い言葉、流され流されここまできてしまったが、ようやく我聞の頭は冷えてきた
 「なんで、こういうことをしたの?」
 「・・・・・・」
 「答えたくないなら、答えなくて良い。とにかく、今日の、今の國生さんはおかしいんだ」
 我聞は布団から出ていこうと、やっと温まってきたそれから足を引き抜こうとした時だった
 陽菜が、ゆっくりと言った
 「じゃあ、社長に訊きます。なんで、社長は私に手を出さないんですか?」
 我聞は天井を仰いだ、これはいったい何なんだ・・・
 遠回しに誘っているのだろうか、朴念仁の我聞にははかりかねた
 それでも、そう問いかけた陽菜の方を、我聞は見て言った

 「國生さんがオレにとって大事な人だから」
 陽菜は答えない、我聞は続けた
 「社長としても人間としても頼りないオレを励ましたり、傍で支えてくれた。
 間違った道を進もうとした時はそれを正してくれた。いつも、その身を挺して、オレについてきてくれた。いくら感謝しても、足りないくらいだ。
 ・・・・・・でも、正直言って、今の國生さんは好きになれない。
 こんな、人を試すようなやり方、はっきり言って間違ってる。もっと、何をやるにしても別の方法があったんじゃないかとオレは思う」
 我聞の言葉に陽菜は何も言わず、ただ布団の中でじっとしている
 「・・・オレは、國生さんが本当に大事な人だから・・・こんな形で手は出さない。
 そりゃ男の子だし、ふっと触れてみたくなることだってある。今日だって、本当に危なかった。
 だけど、こんな・・・自分を棄てるようなやり方は、絶対に違う。悪いけど、そんな國生さんは見たくないんだ・・・」
 我聞はここまで言うと、何か小さな声が聞こえるのに気づいた
 そっと、陽菜の布団を覗き見た
162前スレ272:2006/01/02(月) 01:18:06 ID:Inc+p+Q0

 陽菜は泣いていた

 陽菜は最悪の形で、爆発してしまったのだ

 そして、我聞の言葉で・・・・・・目が覚めたのかもしれない
 小さくぽろぽろと涙を流す陽菜の頭に、我聞はそっと手をのせた
 優しく、赤子をあやすように、いつかの珠や斗馬にしたように
 と、その手がのった瞬間、陽菜は布団から上体を起こし、我聞の胸元にしがみつくように飛びついた
 その勢いに我聞はどさっと布団の上にまた倒れ、わわっと慌てた
 起き上がろうとあがいた時、陽菜が小さく何か言い続けているのに気づいた
 「・・・んなさい、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
 ゆっくりと、譫言のようにそれを何度も何度も繰り返して言っていた
 それを聞いた我聞は驚くと同時に安堵した
 「(・・・良かった、いつもの國生さんだ)」
 他人のことを優しく思いやってくれる、いつもの陽菜がそこにいた
 ぽんぽんと優しく陽菜の頭の撫でてやると、我聞は陽菜が落ち着くのを待った

 しかし、先程までに陽菜を追いつめたのは・・・・・・他ならぬ我聞なのだ

 ・・・・・・
163前スレ272:2006/01/02(月) 01:18:40 ID:Inc+p+Q0

 陽菜の父・武文の言葉に、我聞は動揺を示した
 そして、同時に怖くなった
 自分はこうして陽菜のことを想ってはいるが、向こうはどうなのだろうと
 もし、自分のことをどうとも思っていなかったら?
 それだけに我聞は囚われ、今まで陽菜への感情を抑え続けてきた
 無意識に、それが溢れることはあっても、それをいつも別の形で正当化していたのかもしれない
 陽菜にはそれが出来なかった、いつまでも溜め込み続け・・・今、一気に爆発してしまった

 互いが親愛とも恋愛とも傾けず、また言えば今までの関係までもが崩れてしまいそうで・・・・・・
 相手のことを気遣っているつもりだった、そしてそれは陽菜も同様にそう考えていた
 しかし、それは間違っていたのだ

 陽菜が落ち着いてきたのか、少しずつ声が小さくなっていった
 それから、もう一度しっかりした声で陽菜は「すみませんでした」と告げた
 「・・・いや、オレの方こそ、本当にごめん」
 「そんな・・・社長が謝ることなんて・・・」
 陽菜の言葉に、我聞はううんと首を振った
 「・・・相手のことを本当に思いやるなら、自分のその気持ちから逃げずに本気でそれに、相手にぶつかっていくべきだったんだ。
 ・・・・・・だから、オレ達は多分、2人共間違ってたんだと思う」
 そして、そうやって相手にぶつかってこられたら、同様に逃げずに、答えはどうであれ必ず相手に応えてあげなければならない

 「オレは、1人の人間として、國生さんのことを・・・異性として、本当に好きだよ」
 我聞の優しい声に、陽菜は声が出なくなった
 それを感じたのか、我聞は続けて言った
 「今答えてくれなくても良い。オレは、いつだって、どんな答えでも受けとめるから」
 「・・・・・・」
 こんな爆発をしてしまった自分を、こんなにまで・・・・・・好きでいてくれる
 陽菜はまた涙が出そうになった、でもそれだけじゃなかった
 我聞の言葉で気づいたわけでもない、もっと前から言いたかった言葉が、今なら自然に出せる気がした
 ぎゅっと我聞の服を強く掴み、我聞の顔を見上げるように互いの目と目を合わせ、はっきりと言った
 「・・・私も、しゃちょ・・・工具楽くんを、・・・・・・」
 今ならまだ引き返せる、親愛の情を持ったお友達でいればいい・・・そんな声が陽菜の頭のどこかで響いた気がした
 しかし、陽菜はもう恐れなかった
 たとえ、今の関係が壊れてしまおうとも、その先に何が待っていようとも、決して後悔しない
 今、この気持ちを伝えなくて、いつ伝えるというのだ

 「ずっと傍にいたいです。こうして、ずっと・・・離れたくありません。誰よりもあなたが好きだから」
 とうとう言ってしまった、同時に陽菜の胸の奥の何かが崩れ落ちていった気がした
 グッと陽菜は我聞の胸元を引き寄せそのまま顔を隠してしまうと、我聞はそっと彼女の背中に手を伸ばし・・・・・・かけたがやめた
 「(2人共間違って、そしてようやく始まったばかりなんだ)」
 急ぐことは何もなかった
 もっとお互いのことを知ってから、改めて少しずつ進んでいこう
 正直言えば、このまま目の前の相手のことを抱き締めたい衝動にかられている
 だからこそ、慌てる必要はないのだと、我聞は思う
 改めて少しずつ進んでいけば良い、急ぐ必要は何もないのだから
 「(それに・・・・・・)」
 我聞はちらりとその相手を見た
 安らかにすぅすぅと眠りに就いた彼女の寝顔を見れば、そんな邪な考えも何も総て吹き飛んでしまった
 ぎゅっと握られたその手は我聞から離れることなく、お互いの身体の温もりを感じ合っていた
 我聞は掛け布団を自分の方に寄せ、陽菜の顔にかからず苦しくないようにかけてあげた

 そして、2人は1つの布団で眠りに就いた
 穏やかで温かい眠りに

 ・・・・・・
164前スレ272:2006/01/02(月) 01:19:39 ID:Inc+p+Q0

 陽菜は毎朝の習慣で、早朝に目が覚めた
 すっと顔を上げると、そこにはまだ眠っている我聞の顔があった
 そこでようやく、ここが我聞の家の客間であること、あの後すぐに眠ってしまったことを思い出した
 総てが夢ではないかと思えるぐらいに幸せな気分に浸るが、ふっと我に返った
 すぐ隣には自分が入っているべき布団があり、昨夜果歩へ向けた言葉を思い出した
 「(・・・隣の布団に移って、2組の布団を引き離さないと・・・・・・)」
 陽菜は我聞の傍を離れようと、隣の布団に手足を入れてみた
 が、そのあまりの冷たさにすぐ引っ込めてしまった
 それから、陽菜はまた我聞の胸元をつかんだ
 「(もう少しだけ、この幸せの温度に触れていよう・・・)」
 我聞の吐息が聞こえる、心音が聞こえる

 その心地よさに、陽菜は再び我聞の胸の中で眠りに就いた

 ・・・・・・
165前スレ272:2006/01/02(月) 01:20:43 ID:Inc+p+Q0

 「・・・というわけなんです」
 果歩がもじもじそわそわと、髪留め型トランシーバーで徹夜明けの優さんに報告した
 『納得イカーーーーーン!!!』
 ビリビリと響き渡る怒声は殺気に満ち溢れていた
 『私があそこまでお膳立てしてあげたのに、しかも2人で1組の布団に入ったにもかかわらず、何もなかったなんて有り得ない!!!』
 思い切り叫んだ後の、優さんのはぁはぁという荒い息づかいが果歩の耳に届く
 「で、でも・・・わからなくもないんですよ。こう、なんていうか・・・好きな人と一緒にいるだけで満ち足りちゃうって気持ちが・・・」
 身内である我聞と陽菜がやったことなのだが、あんまりにも純で初々しいその行為はまるで良き少女漫画の世界のようだった
 それで、思わずGHKメンバーである果歩でさえも、もじもじそわそわしてしまうというわけだった
 が、優さんは「甘すぎるぞ、デルタ2!」と叫んだ
 「確かにそれは大事なことだけど、それだけではまだまだ子供の領域!
 そして、子供はいつか大人になっていくもの! 2人が大人になってこそ、わかることや想いもあるのよ!!」
 「は、はい!」
 「引き続き、我々は2人を導き、そして大人の階段を上らせることに全力を尽くすのよっ!」
 徹夜明けに加え一晩中の中之井の説教攻撃というタネもあってか、優さんはやけに好戦的だ
 しかし、優さんの言うことにも一理ある
 少しずつ進むだけでは生温い、もっと一気に進んでもらわねば・・・あの朴念仁の妹としてはいつまで経っても安心出来ない
 「・・・目が覚めましたよ、優さん! 2人をとっとと大人の階段を上らせる為、これからも頑張りましょう!」
 「ウム、その意気だっ!」   

 決意を新たにしたGHKの活動はまだまだ続く・・・らしい
166前スレ272:2006/01/02(月) 01:29:51 ID:Inc+p+Q0
以上で書き込みを終わります。

書いていて思いましたが、今までの小説の中で一番書きにくかったです。
正直、ラストの方はかなり迷いました。
國生さんが我聞に想いを打ち明けられなかったり、自分初のエロが最後に入るような話しもありました。
が、結局、こういう形になりました。
それと最後の優さんと果歩の会話はおまけです。保管庫に載せてくれる際は、おまけとして本編と切り離して下さい。

しかし、優さん以上のうっかり者です。自分は。
以前の誤字脱字がありましたので、脳内修正願います。
>>135の陽菜の台詞
 「な、そこで、なんでいきなり社長の前が出るんですか!」

 「な、そこで、なんでいきなり社長の名前が出るんですか!」
に。
多分、もう読んでいる内に、勝手に修正が入ったと思うのですが、念のため。
目立つ修正はもうないかと思いますが、文法表現は言い回しが微妙だったりするので放置願います。

少々長くなりましたが、以上です。
それでは、また一読者に戻ります。ここまで読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。
167名無しさん@ピンキー:2006/01/02(月) 02:46:27 ID:EpENwBox
つ…次々と転ばし屋がー(゜Д゜;)

頭痛いよぅ
168名無しさん@ピンキー:2006/01/03(火) 03:55:08 ID:nVS1jQcD
いてて…低脳過ぎて手術の傷痕が拡がってしまうっ!

>499さん

やたらハイテンションで強引、かつ無謀な果歩りんに
ニヤニヤしてしまいました。
読んでいて「それ、無理だろ?」とツッコまずにはいられないですw

>何より優の良心回路自体、早くもアルコールでショートしつつあった。

優さんの良心回路は不完全なんで、服従回路の方が勝っちゃいそう
ですね?

>272さん

もじもじそわそわしてしまいました!

作戦の為には兄の部屋をも荒らす果歩りんに笑ってしまいました。
荒らす際には、奥義でも繰り出していそうですね。
169前々々499:2006/01/03(火) 20:06:10 ID:SrEI6HaM
>>272氏GJ!
純愛な感じがいいですな〜!


では、自分も先日の年越しネタの続き、投下させて頂きます。
>>142-146,148-152の後編ということで、
酒に乱れた感じのお話、短いけどえっちありです。
170前々々499 1/11:2006/01/03(火) 20:07:45 ID:SrEI6HaM

「も・・・・・・もう、らめ・・・」

宴が始まって一時間ほど経ったろうか。
ついに、最初の犠牲者が出てしまった。

「桃子ねーちゃんの、かちー!」
「ふ・・・ふはははは! 残念らったわね小娘! この、桃子・A・ラインフォーろ様に盾突こうなんて、
 10年早かったようね!」

珠に勝ち名乗りを上げてもらいながら斗馬に片腕を高く突き上げられて、
桃子は呂律の回らない口で勝利を宣言していた。
その視線の先では、この宴の黒幕であるはずの果歩がコタツに並んだ空き缶の林に突っ伏して、
早くも完全に寝込んでしまったようであった。

「あ、あらあら、果歩りんたら、気合十分っぽかったけど、ちょーっとまだ、お酒は早かったかしら・・・ねぇ?」
「あははは・・・そ、そうすね、それにしても、しっかり者の果歩があんなになっちゃうんだから、
 やっぱり酒って、怖いですねぇ、優さん?」
「そうだねぇ、あはははは・・・」

と、果歩の散り様を見て話す我聞と優だったが、心なしかアルコールで赤らんだ顔が引き攣っている。
特に優は果歩が倒れた今、今夜の策を実行できる唯一の人員として倒れる訳には行かないのだが、
正直、それどころではなくなりつつあるのだった。

「うぃぃ・・・さあ、邪魔者はいなくなったわ〜 ガモーン! お酌してあげう〜!」

そんな雰囲気に気付くには既に酔いどれすぎて、ただひたすら上機嫌な桃子が、
酒瓶片手に我聞に擦り寄ろうと幅を詰めたところで―――

がががんっ!

「っうわあっ! な、なになに!?」

まるで降ってきたかのように突然、大量の酒が荒っぽく置かれ、
それに桃子が怯んだ隙に、二人の間に無理やり一人の少女が割り込んで座る。

「な、なんなのよハルナ! あんたの席はガモンの反対側の隣れしょ・・・」

普段の強気にプラスして酔いもあって、ずいっと陽菜の顔に迫るも、

「・・・桃子さん、先程仰いましたよね・・・果歩さんとの勝負の後は、私と社長を賭けて勝負だと・・・」
「え・・・あ、そ、そうらっけ、あ、あはは・・・」

そんな桃子の気迫など一蹴してしまうほどに・・・陽菜の目は、据わっていた。
ただならぬ気配に、助けを求めるように我聞と優に視線を送るが、
二人とも引き攣った笑顔のままで、哀れむような視線を桃子に送るばかりであった。

(え、ええと・・・これって、ひょっとして・・・ハルナって、酒乱?)

徐々に事態が把握できるにつれ、実はとんでもない相手に勝負を挑んでしまったような気がしてきた頃には、
陽菜は目の前でぐいぐいと自分のグラスを乾し、それから桃子のグラスになみなみと酒を満たしていた。

「ぷはっ・・・さ! 次は桃子さんの番ですよ?」
「え、あ、あはは、えーと、ほらさ、私、今まれ果歩と結構呑んじゃったからさ、
 勝負はまたこんろってことにしない?」
171前々々499 2/11:2006/01/03(火) 20:08:48 ID:SrEI6HaM

陽菜の視線にただならぬ気配、というよりむしろ身の危険を感じ、何とか有耶無耶にしようとする桃子だが、

ばん!

「っひ!?」

おもむろにコタツの一画を叩く陽菜。
桃子ばかりか我聞も優も本気で怯えつつある。

「私はこれだけ呑みましたっ! 桃子さんが今まで呑んだ分といい勝負じゃないですかっ!?」

陽菜が叩いたその傍には、サワー等の空き缶が林立しており、
その量は桃子と果歩が二人で築いた分に匹敵していた。

「え、あ、ああ、そうね・・・・・・・・・マジ?」

気持ちはわかる、とばかりに優がうなずく。
それはつまり肯定であり、桃子が果歩に打ち勝つ間に陽菜は一人でその倍近い量を・・・

(いや、待って・・・それはつまり!)

ここで桃子の頭は突如、覚醒する。
いきなりアルコールが抜けるわけではないが、天才を自負する頭脳は思考材料を得て、猛烈に回転を始めた。
酒が入って妙な迫力を帯びてしまってこそいるが、陽菜の呑んだ量は桃子の倍。
そして、普段と雰囲気が違うということは、酔っている、つまりアルコールは効いている訳である。
つまり・・・

(そうよ桃子、これはチャンスなのよ! こんな良い条件で逃げるなんて低脳のすること!)

その結論に至り、怯え引き攣っていた顔に普段の自信に満ちた表情を取り戻すと、
陽菜によって満たされたグラスを引っ掴み、一気に呷ってしまった。
おお〜! と、珠と斗馬が歓声を上げる。

「と、桃子!? お前も無茶するんじゃない!」
「ふっふっふ! いくらガモンだってこの天才に意見するなんて10年早いわよ!?
 見てなさい、今こそハルナを倒して、あんたを私のモノにしてあげるんだから!
 そんな訳でハルナ、勝負よ!」

そう言って陽菜のグラスになみなみと酒を注ぎ返す。
陽菜は無言でグラスを取ると、ほとんど間を置かずにきゅーっと呷り、
瞬く間に空になったグラスを、ごっ、とコタツに置く。

「わ〜! 陽菜ねーちゃんもすごい!」
「や・・・やるじゃないハルナ、でも、そんなペースで続けてたら、潰れるのは時間の問題よ?」

勿論、今の陽菜になら効果的だと考えた桃子の挑発なのだが、
まるで意に介さないかのように新しい缶を開けると、とぽぽぽぽ・・・っと桃子のグラスに注いで、
ただ一言、

「・・・社長は渡しませんよ?」

とだけ答える。

「んく・・・! い、言ったわね!? すぐにカホと同じ目にあわせてあげるんだから、覚悟なさいっ!」

相変わらず目が据わりっぱなしの陽菜の顔にびしっと指を突きつけると、
陽菜同様に一気にグラスを呷り、アルコールを飲み干していった。
172前々々499 3/11:2006/01/03(火) 20:10:35 ID:SrEI6HaM

「ねぇ我聞くん」
「なんでしょう、優さん」
「・・・愛されてるねぇ」
「・・・行き過ぎると怖いです・・・」

二人の少女の壮絶な勝負を目の当たりにして、その景品たる少年は、
彼女たち、とくに陽菜に聞こえないようにごくごく小声で答えた。

「とりあえず・・・今のうちにお茶でものんで、落ち着いておこうか」
「そ、そうですね・・・多分、このままじゃ済まないでしょうし・・・」

陽菜が淹れてくれたはいいものの、直後に宴が始まってしまい誰も飲むことなく冷めてしまったお茶に、
気付かれないようにこそこそと手を伸ばすが、

「・・・社長、優さん」
「「はははいっ!?」」
「グラスが空いているようですが?」
「お、そ、そうだった、気付かなかったよ、あははっ!」
「呑む、呑むからっ!」

それはもう大慌てで我聞は優のグラスにビールを注ぎ、
優は日本酒を我聞の椀に注ごうとするが、

「ひっ!」

いきなり優の手から一升瓶はひったくられて、

「社長へのお酌は私の仕事ですから・・・さ、社長♪」
「あ、あああ、ありがとう、いつもスマンね國生さん、あはは・・・」

我聞に酌をするときだけはイヤににこやかで、
ビンを置いて桃子に振り返った時には、再びすっかり目が据わっている。
そして・・・

「よ・・・余裕かましてくれるじゃない! さあ、次はハルナの番・・・」

と桃子が言い終える前に、既にグラスを乾してしまっていた。
そんな、早くもワンサイドゲームの様相を呈してきた二人の勝負を眺めながら、
我聞も優も桃子の勇気に心の中でエールを贈るばかりであった。

だが、それから10分と経たずして―――

「うぷ・・・ちょ、ちょっとたんま・・・と、といれいってくりゅ・・・
 まらよ、まらまけたわけりゃないんりゃからね・・・」

と、コタツから這い出そうとするも、それが最後の力だったらしく、
桃子はそのまま畳に崩れ落ちてしまった。
そんな桃子の顔を斗馬が覗き込むようにして確認して、首を横に振ると陽菜の片手を高々と掲げ・・・

「義姉上様、WIN!」
「お〜! 陽菜ねーちゃんつよい!」
「ありがとうございます!」

一転して笑顔で斗馬からの勝ち名乗りを受け、元の位置―――我聞と優の間へ戻る陽菜を、
二人は相変わらず引き攣った笑顔で迎える。
173前々々499 4/11:2006/01/03(火) 20:11:51 ID:SrEI6HaM

「や、やあおかえり國生さん・・・なんか、お酒、強いんだね・・・」
「いいえ、それ程でも♪」
「いや、驚いちゃったよ、あはは・・・
 ま、まあ、でもこれで我聞くんも勝ち取った訳だし、あとはのんびりやろっか!」
「・・・いえ、その前にもう一つ、やることが」
「え、そ、そうなの?」
「はい、社長、しばしお待ちくださいね」
「・・・ああ、わ、わかった」

あくまで笑顔で我聞に答えて、自らのグラスを握ると反対側に座る優に向かって振り返る。
その顔は笑顔のままであったが・・・明らかに、凄惨な雰囲気を醸し出していた。

「え、え・・・ええと、はるるん、わ、私、なにかしたっけ・・・?」
「いえ、別に・・・」

陽菜の纏う雰囲気が全くそうは言っていない。
あくまで表面的には笑顔のままで優のグラスを取ると、ビールをなみなみと満たし、

「ただ、ちょっと思い出してしまいまして」
「へ、な、何かな〜?」
「以前、優さんが私の部屋に遊びに来たときのこと・・・あの時、自家製のどぶろくでしたっけ・・・
 今日のお酒とは感じが違いましたよね・・・あれのせいで少々酷い目に合ったものですから・・・・・・ね!」

言葉尻に合わせて、グラスを“ごっ”、とコタツに置く。

「あ・・・・・・」

優の顔から血の気が一気に引いた。
普段はおくびにも出さないものだから、すっかり気にしていないものだと思っていたし、
優自身、ほとんど忘れていたのだが・・・どうやらそう都合よくは行かないらしい。

「じ、実ははるるん・・・結構、根にもっていたり・・・?」
「いえ? それ程でも・・・ただ、お酒を呑んだら思い出してしまいまして」

桃子の時と違って、あくまで笑顔なのが余計に怖い。
思わず後ずさりしてしまう優に、グラスを押し付けるように迫り、

「それでですね・・・いつまでもこういうことを引きずるのはお互いによくないですから、
 改めて一緒に飲んで、水に流したいと思ったのですが・・・イヤですか?」
「そ、そんなイヤだなんて滅相もない!」
「そうですか、よかったぁ! では乾杯しましょう! もちろん、杯を乾すの乾杯ですからね!?」
「そ、そうだよね、もちろん! じゃ、じゃあ・・・」
「はい! では、二人の友情に!」

そしてハイスピードで繰り返される“杯を乾す”乾杯と、
目に見えて顔が危険な感じに赤くなってゆく優を眺めながら、我聞は優の冥福を祈るばかりであった。
174前々々499 5/11:2006/01/03(火) 20:13:00 ID:SrEI6HaM

「・・・ところで珠、斗馬」
「ん? なーに兄ちゃん?」
「お前ら、ずっと呑んでる割には元気だな・・・」

この二人、審判やら観客やらを気取って遊んでるようで、結構しっかりと呑んでいたりするのだが、
その割には顔こそ赤らんでいるものの、呂律は普通だし眠そうな素振も見せない。
今もワクワクしながら陽菜と優の勝負を見つつ、二人を真似して乾杯したりしていた。

「ふふふ・・・兄上、折角堂々と酒が呑める機会に、早々とダウンするような勿体無い真似はしませぬよ!」
「斗馬には負けないぞ!」
「・・・まあ、時間も時間だしな、國生さんと優さんの勝負を見届けたらそろそろ寝るんだぞ」
「「は〜い」」

我聞自身、かなり意識して代謝を活性化させてアルコールを分解しつつ、
それでもかなりの酔いを自覚しているのだが、
この幼い妹と弟はどうやら無意識にそれを行っているらしい。
父親から果歩には仙術の素養がないらしいと聞かされていたが、

(こいつら・・・修行したら俺よかよっぽど気の操作、上手くなるんじゃないだろうか・・・)

などと少々複雑な思いを抱いていた。

そんな間にも、二人の勝負は進んでいて、
結果が明らかにも関わらずどちらかが倒れるまで終わらせてもらえない戦いの行方を、
我聞は哀れむように眺める。
参加者の中で唯一の成人であり、それ故に呑めてしまうのが果たして幸か不幸か、
二人の勝負は思ったよりも長引いたものの―――

「も、もうらめ・・・はるるん・・・ゆるして・・・」
「だーめーでーす! 優さんが私にしたことを思えば、これくらい何でもないはずです!」
「う・・・ご、ごめん・・・もう・・・ムリ・・・」

一度は口に運んだグラスをコタツに置いて、そのまま突っ伏したきり、優はぴくりとも動かなかった。
そんな優にささっと近づいて、珠と斗馬は3カウントを取って、

「義姉上様の勝利!」
「わぁ、陽菜ねーちゃんすごい! 二人目勝ち抜きだ!」
「はい! ありがとうございます!」

とまあ、誰もが予想した通りの結果に終わり、我聞も引きつった笑顔のまま拍手を送りつつ、
きっと次に回ってくるであろう順番を思い、早くも覚悟を決めつつあった。

「・・・さて」

本人を含めて誰もが今度は我聞が餌食になると確信していたのだが、
陽菜の口から出た言葉は意外にも・・・

「では、珠さん、斗馬さんも、時間も時間ですから、そろそろお休みになられてはいかがでしょうか」
「え〜!」
「このまま兄上とも勝負を決してグランドチャンプを目指さないのですか!?」
「こ、こら、挑発するんじゃない!」

慌てる我聞を尻目にふふふ、と笑うと、

「私もそろそろキツくなってきましたし・・・それに、社長と勝負する理由もありませんからね」
「そ、そうだぞ二人とも! とにかく、今日はもう寝るんだ!」
「「は〜い」」
175前々々499 6/11:2006/01/03(火) 20:14:08 ID:SrEI6HaM

仙術の資質の片鱗なのか、アルコールにはかなりの強さを見せた二人だったが、やはりまだ小学生。
興味の対象が終わると知ると、途端に眠気が押し寄せてくるようで、すごすごと寝室へと引き下がるのだった。
そして、居間に残されたのは我聞と陽菜、それに物言わぬ三体の酔死体。
酔いどれているせいもあって、我聞にはこの状況から何がどう展開していくのか想像もつかないが、
とりあえず当面の危機だけは回避できたようで我聞は胸を撫で下ろしていた。

「社長・・・」
「ん、な、なんだ?」
「・・・二人っきりに、なっちゃいましたね・・・」
「え、あ、そうだね・・・」

そう言って、陽菜は我聞に身体を寄り添わせる。
言葉にも行為にも親密な雰囲気が溢れているのだが、何せ視界内に三人も酔いつぶれているので、
我聞としてはイマイチ浸ることができない。
しかも三人のうち二人は当の陽菜の手にかかった訳であるから、余計にそう思ってしまう。
だがまあ、我聞に寄り添って幸せそうにグラスを傾ける陽菜を見ていると、
先程までの恐ろしさは徐々に消え失せて(でも、まだ呑むのか、とは正直思うわけだが)、
ため息を一つ吐くと自分もちびちびと杯を舐めることにした。

(ま、何はともあれ・・・正月くらい、こんな風に二人で酒を呑んで見るのもアリかなぁ・・・)

我聞も陽菜も基本的には少々頭の固めな人間なので、
こっそりお酒でも呑んでみようか、なんていう話はこれまで、出たことも無かった。
そんなものに頼らなくても二人っきりでいられるときはそれだけで幸せだっが、
こうして寄り添ってゆっくりと杯を傾けるのも、ちょっと大人っぽくていい雰囲気かもしれない、
とか思ったりもするのであった。

「ね、國生さん」
「なんですか?」
「いや、いい呑みっぷりだったけど、ほんと、酒強いんだねぇ」
「そんなことないですよ! ただ、これ、美味しかったものですから、つい・・・」
「は、はは、そうなんだ・・・」

色々と言いたいこともあったが、とりあえず黙っておくことにする。
流石に陽菜だって限界も近いだろうし、自分だってそうなので、
それまで静かに呑むのもいいだろう、とか思ったりする。
・・・と、

「社長もこれ、呑んで見ますか?」
「お、そうだね、俺は日本酒ばっかりだったからな」

そう言って陽菜のグラスに手を伸ばすと、掴む寸前にひょいっと取られてしまい、
陽菜は楽しそうにきゅーっと呷ってしまう。

「ちぇ、やってくれる」

我聞もつられて楽しそうに笑うが、まさにその隙を突いたように―――

「んむ!?」

不意打ちで、陽菜に唇を奪われる。
一瞬だけ混乱するが、陽菜の唇から口腔内に流し込まれる液体の温かさや甘さを認識して、

(ああ・・・そういうことね・・・)

抵抗することなく、それを全て受け入れる。
176前々々499 7/11:2006/01/03(火) 20:15:24 ID:SrEI6HaM

唇を触れ合わせたまま、流し込まれる酒精を全て嚥下すると、二人は唇を離し、

「・・・ね、甘くて、おいしいですよね」
「ん・・・すごく、呑みやすい・・・」
「もうひとくち、呑みますか?」
「そうだね・・・貰おうか」

普段、我聞と抱き合うときよりも、一層艶やかな笑みを浮かべてから、
陽菜はグラスに残る薄く色づけされた液体を口に含むと、
今度はゆっくりとその唇を我聞のそれに押し付けた。
さっきよりもゆっくりと流し込まれる甘い液体をこく、こく・・・と飲み下し、
全て呑んでしまうと、互いの口腔に残った甘味を貪るように、互いに舌を絡め合わせる。
やがて、互いの舌の間に糸を引きながら顔を離したとき、
陽菜の顔は、これまで我聞が見たこともないくらいに、淫らに蕩けていた。
いつもなら、陽菜から少しねだるような素振を見せることはあっても、
キスで“身体を”その気にさせるのは我聞の役割だった。
だが、陽菜のほうから迫った二度のキスと、見たこともない程の淫蕩な笑みに、
我聞の方がはちきれんばかりに疼かされてしまっていた。

「ね、社長・・・」
「・・・ん?」
「今度は・・・社長の呑んでたの、呑ませてください」
「ああ、これ・・・わ、わかった・・・」
「ちゃんと、呑みやすくして、くださいね・・・」

もしこれが寝室で、二人きりであったなら、既に陽菜を押し倒していただろう。
無理やりにでも組み伏せて、唇でも酒でもなく、その身体を存分に貪りたかった。
そこまで昂ぶらされていても、それが出来ない辺り、我聞はまだ酔いが浅かったのだろう。
そして、例え起きる気配が無いとはいえ、三人の知人のいる部屋で大胆にキスを重ねる陽菜には、
もはや遠慮も羞恥も無かった。
ただ、思う様に、貪るだけ・・・

我聞は口に酒を含み、すこしだけ間を置いて口に馴染ませてから、陽菜に唇を重ねる。
そして、少しずつ、少しずつ、自分の唾液と混ざったそれを、陽菜の口腔へ流し込む。
んく・・・んく・・・と、陽菜の喉がそれを飲み下す音が聞こえる。
だが、全てを送り込まないうちに、陽菜の舌が酒に浸った我聞の口腔内へと割り込んでくる。

「・・・んん!?」

酒と唾液に濡れた舌を執拗に絡めてくる陽菜に、応じないわけには行かなかった。
より強く結びつこうと唇の位置をずらす度に、僅かな隙間が開いてぴちゃぴちゃと音が響き、
唇の端から酒と唾液が垂れ落ちる。
我聞の口から酒が全て無くなると、陽菜は舌を解放して、そのまま唇を我聞の口の端から下へと滑らせる。

「こ・・・くしょう、さん・・・?」

顎から首筋、そして襟元まで・・・
酒の垂れた道筋に沿って、唇を、舌を、ねっとりと這わせていった。

「ふふ・・・社長・・・服まで、びしょびしょ・・・」
「あ、ああ・・・」

陽菜のキスに、愛撫に、我聞は自分の理性が着実にすり減らされているのを感じる。
このまま続けられたら、この居間で・・・家族と、友人と、同僚のいるこの場で、
抑え切れなくなって、陽菜を抱いてしまうのではないか、と、
そう思わずにいられない。
そして、この淫らに微笑む小悪魔のような少女は、それがわかっていて誘っているとしか・・・
我聞の理性が焼き切れて、自分を組み伏せるのを待っているとしか思えなかった。
177前々々499 8/11:2006/01/03(火) 20:16:45 ID:SrEI6HaM

「ねぇ、社長・・・」

そう言って、今度はグラスではなく、我聞の手を取る。

「私も、たくさん、濡れちゃいました・・・」

その手を自らの唇に導き、指を軽く舐めしゃぶると、
口の端から酒と唾液の垂れた道筋にそって我聞の指をなぞらせていく。
指は陽菜の顎を撫で、首筋を触り、濡れた上着をなぞり、そのまま胸のふくらみに押し当てられた。

「ね・・・ここも、こんなにびっしょり・・・」
「あ、ああ・・・」

我聞の手が、わなわなと震えている。
このまま、揉みしだいてしまいたい、そんな衝動が、怒涛のように押し寄せてくる。
誘っているのは、明らか。
こうして俺を焦らしに焦らして、俺が切れるのを待っているのか・・・と、我聞は思わずにいられない。
だが、それは半分当たりで、半分は外れ。

「でも社長・・・もっと、濡れちゃってるところが、あるんです・・・」
「・・・え」

そして我聞の手を取って、陽菜が導いた先は、コタツの中。
いつの間に、ベルトもファスナーも外していたのだろうか・・・
陽菜によって導かれた先は・・・彼女のショーツの中だった。
そこは、今日はまだ直接触れていない、ということが信じられないくらいに、濡れそぼっていた。

「こ・・・こく・・・しょう・・・」
「社長、わたし・・・もう、こんななんです・・・ね、お願い・・・ください・・・」
「じゃ、じゃあ、部屋に」
「だめ! 今、ここでください・・・もう、我慢できないんです・・・」

そう言って、コタツの中の我聞のベルトを解き始める。
陽菜は我聞を誘っていたが、我聞から手出しするのを待つつもりも、無い様だった。
我聞は抵抗も制止もできないままに己自身を陽菜によって解放されると、
その冷えた手できゅうっ、と優しく握られる。

「っうあ!?」
「社長・・・こんなに固くなってる・・・ね・・・今すぐ、欲しいです・・・私の、中に・・・これぇ・・・」
「だ、だけどここじゃ・・・っ!?」

アルコールと陽菜の手ですり減らされる一方の理性で、それでもなんとか己を保とうとするが、
己のモノを柔らかく冷たい手で少しだけ強く握られ、足腰を陽菜の足に絡め取られ、
そして、己の先端に濡れそぼったそこをあてがわれて・・・

「うふ・・・社長のこれ・・・いつもより、固いです・・・感じてくれてるんですね・・・嬉しい」
「ちょ、待ってくれ、ここには果歩も桃子もゆう・・・っ!?」
「だめです、もう、私・・・我慢、できな・・・い、ふ、あ、熱・・・っ! ・・・っふぁあああっ!」

我聞の制止に耳を貸すことなく、陽菜は自ら腰を進め、我聞のモノを己の中に埋め込んでいった。
そして、根元まで埋め込んだところで背筋を仰け反らせ、上擦った声で官能の喘ぎを漏らした。

「國生さん・・・入れただけで・・・イっちゃったの・・・?」
「っふぁ・・・だって・・・ぇ、しゃちょおの・・・固くて・・・熱くて・・・ぇ・・・」

目尻に涙を浮かべながら、それでも蕩けきった笑みはますます艶やかに、
我聞の顔に熱い吐息を浴びせながら媚びたように答える。
178前々々499 9/11:2006/01/03(火) 20:18:35 ID:SrEI6HaM

「でも・・・もっと・・・イきたいです・・・しゃちょおの、もっと・・・欲しいです・・・っふ・・・ぁ」
「こ・・・こくしょう・・・さん・・・」

今にも瓦解寸前の我聞の理性を知ってのことか、それとも単に己の欲求に任せているだけなのか・・・
陽菜はそのまま、更に貪るように、自ら腰を動かしはじめる。

「あ・・・ひ・・・いいっ、いいのぉ・・・っ、しゃちょ・・・もっと、もっと欲しいのぉ・・・」

陽菜の淫ら過ぎる声や表情、それに行為と、熱く蕩けるような中の感触に、
我聞もついに、理性を保つことを放棄した。

「ふぁ! あ、ひぁあ! いいっ、すごいっ! ひゃぁあ!? しゃちょ、しゃちょおっ!」
「國生さんっ! もう、するよ・・・めちゃくちゃにしてあげる・・・イかせてあげるっ!」
「はっ、はいぃっ! してぇ! いっぱいイかせ・・・・・・んむぅ!?」

二人は互いに腰を打ち付けるように振りたくり、コタツの中に淫らな水音が響く。
コタツの外でも、強く抱き合ったまま畳に倒れ込み、貪るように唇を吸い合った。
陽菜は何度か身体をびくびくと震わせて、その拍子に唇が外れると高い喘ぎ声を上げてしまったが、
同室で酔いつぶれたままの三人がそれに気付くことは無く、
陽菜の唇もすぐに我聞によって塞がれた。

自ら望んだだけあって、何度絶頂を迎えようとも陽菜の腰使いが衰えることは無く、
その貪欲な行為は我聞の射精感を抵抗しがたい感触で高めていった。
我聞自身、それに抵抗しようという意図はなく、陽菜がそうしたようにただただ己の欲求を満たすために腰を振り、
時が来たら腰を強く押し付けて、彼女に何も伝えることなく、その中に己の欲望の塊を存分に注ぎ込んだ。

「――――――――――――ひゃああああっ!!?」

既に何度も絶頂を迎えさせられていた陽菜だったが、
身体の奥底に熱い粘液を注ぎ込まれ、再び、そしてこれまででもっとも激しい絶頂へと、叩き上げられる。

「熱! 熱いのっ! 出てる! なかに、いっぱいぃ! しゃちょおの、せいえきがぁ! 出されてますううっ!」

思い切り身体を反らせて我聞の唇の束縛を振り解くと、
がくがくと身体を震わせながら、あられもない叫び声を上げて身体を切なげにくねらせた。
そのまま陽菜は動かず、射精した我聞もしばらくはその余韻を味わっていたが・・・

「ね、國生さん・・・」
「ふぁ・・・はい・・・」
「これで終わり、なんて、言わないよね?」

ここまで昂ぶらされて、一度や二度で済ませるつもりは無い、
イヤだといっても続けるから・・・君が誘ったんだからね・・・?
と、我聞の目がそう語っていた。
そして、陽菜も・・・

「はい・・・もっと、ください・・・もっとイかせて・・・もっと、しゃちょおの精液・・・のませて・・・ぇ」

見ているだけで襲ってしまいたくなるような、淫蕩に蕩けた笑みで、続きをねだるのだった。

酒精に爛れ肉欲に溺れた二人に、もはや羞恥も遠慮も、周囲への配慮もなかった。
再び唇を重ねながら腰を使い、互いの舌と性器を貪欲に貪り続け、
我聞は何度も陽菜の中に射精して、陽菜はそれ以上に何度も何度も絶頂を迎えた。
どんなに高い声をあげようとも、どんなにはしたない言葉を紡ごうとも、
潰れたままの三人が目を覚ますことは無く、
二人は欲望の赴くままに、絡み合い、貪りあい、昂ぶり続けた。

そしてやがて、酔いと疲労に侵された二人はどちらともなく意識を遠のかせ、
絡み合ったまま同室の三人よろしく、夢も見ない眠りの淵に沈んで行った。
179前々々499 10/11:2006/01/03(火) 20:20:12 ID:SrEI6HaM

そして翌朝―――


「果歩ねーちゃん、おなかすいた〜!」
「大姉上、朝ご飯はまだですか!」

ばたばたと居間に駆け込んできた工具楽家の次男次女が見たものは、
―――昨晩と大して変わらぬ光景であった。
強いてあげるなら、軽く抱き合った感じでこそあるが、酔死体には変わらない物体が二つ、増えているくらいか。
だが、珠や斗馬にとってそんなことはどうでもいい。
育ち盛りの二人にとって今、最優先されるべき事項はただ一つ。

「果歩ねーちゃーん!」

コタツに突っ伏したままの姉をゆさゆさと揺すり、なんとか起こそうとする。

「う゛・・・み、水・・・」

顔を上げることなく、なんとか果歩が声をあげる。

「斗馬! 水!」
「いえっさー!」

バタバタと廊下を駆け、コップ一杯の水を手に戻ってくると姉に渡し、

「大姉上、水にございます!」

それをぷるぷると震える手で掴み、ようやく顔を上げるとぐびぐびと呷る。

「も、もう一杯・・・いや、二杯くらい・・・」

無味の冷たい液体を立て続けに呷り、なんとか動く気力が湧いてくる。

「ありがと・・・あぁ、頭がガンガンする・・・気持ち、悪・・・っ」
「ねーちゃん、ごはんー!」
「姉上! 急いでくだされ!」
「大声ださないで・・・頭に響く・・・と、とにかく、わかったから・・・お餅、焼いてあげるから・・・」

よれよれとコタツから抜け出すとなんとか立ち上り、改めて部屋の惨状を確認する。
見事に大半が空となった空きカン、空きビンなど見ているだけで頭痛が酷くなりそうだ。
部屋に立ち込める酒の臭いにも閉口する。
だが、それでも人員を確認して・・・

(作戦は、失敗か・・・折角、身体張ったのに・・・まあ、せめてこの二人・・・写真にでも収めておこうかしら・・・)

優も桃子も、そして陽菜も我聞も同じ部屋で倒れ伏している以上、
果歩のシナリオ通りに話が運ばなかったのは明白であったが、
何の拍子か抱き合うように倒れ込んだ兄と兄嫁候補の幸せそうな寝姿に、
少しだけ溜飲を下した果歩であった。

「おねーちゃん、早くー!」
「わ、わかったから、大声はやめてぇ! それと、酒臭くて敵わないから窓開けて空気入れ替えておいて・・・」
「は〜い!」
180前々々499 11/11 (了):2006/01/03(火) 20:22:05 ID:SrEI6HaM
最初にダウンした果歩ですらこのダメージなので、残りの4人たるや、推して知るべし、である。
しばらくして我聞が目を覚まし、しばらくぼんやりとしてから、
慌てたようにコタツの中でごそごそと手を動かす様はしっかりと果歩に見届けられてしまったが、
果歩は果歩で二日酔いの渦中にあり、とても普段のキレを発揮できる状態には無く、
抱き合って眠る様子を撮影できなかったことを悔やむばかりで、特にその行為を追求することはなかった。

結局、仙術使いの我聞ですら二日酔いを抜くのには昼近くまで時間を要し、
その前後で目覚めた桃子や優は言わずもがな、陽菜においては昼過ぎまで目覚めることは無く、
しかも目覚めた時には昨晩の記憶の大半を飛ばしている始末であった。
だが・・・

「では・・・そろそろ夕飯の時間ですし、宜しければまた、私が作りますが・・・」
「「餅以外ならなんでも〜!」」
「お、お願いしていいですか・・・わ、私はお粥とかがいいかな・・・」
「わ、私も・・・」
「同じく・・・」

結局あまりの二日酔いの酷さに優も桃子も身動きできず、そのまま工具楽家で元日を過ごしてしまった。
過ごして、と言っても一日中寝てただけだが。

「俺はなんでもいいけど・・・ってか、國生さん、もう平気なの?」
「はい? ええ、まあ・・・遅くまで眠らせて頂きましたし、流石にお酒も抜けたようですから、
 折角なので働かせて頂きますね!」
「そ、そう? た、助かるよ、ははは・・・」

昨晩の凶悪さなど微塵も感じさせない、普段どおりの振る舞いにある意味安心するも、

(二度とハルナに/はるるんに酒を呑ませるものか・・・)

という切実な決意と、

(仙術無しで俺より強そう・・・だけど、たまには乱れた國生さんもいいかも・・・)

という不埒な思いを抱かれているなど、当の陽菜が知る由もなく、
珠や斗馬のリクエストを聞きながら楽しそうに包丁を振るっていた。
そしてそんな様子を背後から眺めつつ・・・

(嫁は夫に酒を勧めて、勧められたら断らず、そして夫より酔ってはならないもの・・・
 陽菜さん・・・やっぱりお兄ちゃんのお嫁さんはあなたしかいません!
 待っていてくださいね! 必ずや我らの、いえ、私の手で、あなたを立派な兄嫁に仕立て上げて見せますから!)

陽菜の酔いっぷりを見ることなく撃沈した果歩は一人、新年早々、決意を新たにするのであった。




181名無しさん@ピンキー:2006/01/03(火) 20:24:06 ID:wHWPWwZ/
GJです!!
初めて生で読めて光栄です。
182前々々499:2006/01/03(火) 20:25:48 ID:SrEI6HaM
以上で今回の投下分は終了です。

勝手に酒に強い弱いを設定しちゃいましたけど、ホントのところはどうなんだか。
では、また何か書けたら投下させて頂きます。
読んで下さった方、どうもありがとうございました〜
18389:2006/01/03(火) 21:38:29 ID:B7P0C927
499さんいつも超低能な作品
関心するばかりです。
これからも期待してます。
184名無しさん@ピンキー:2006/01/03(火) 22:01:58 ID:l6mm0elR
499氏アナタは國生さんより転ばすのが巧い。
そんな天才ネ申に
敬礼
(`・ω・´)ゞビシィ
185名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 19:01:36 ID:lX4ejN4G
アカン、脳が焼き切れそう。
眼福ご馳走様です。
186前スレ131:2006/01/04(水) 21:38:12 ID:8U6BsPCN
どうも131です。
また書いてきました。
結局全部序文ですけども・・・
投下します
187前スレ131:2006/01/04(水) 21:40:17 ID:8U6BsPCN
その日、佐々木亮吾はお正月という事もあり、家でコタツに入ってのんびり週刊誌を見ていた。
「ハァ、暇だ・・・國生さんは今、何をしてるのだろう・・・
まさか我聞に無理矢理働かさせ・・・いや、むしろ我聞の方が働かさせられてそうだな・・・」
冷たい眼差しで我聞に厳しく仕事の指示を出す。そんな様子の陽菜を思い浮かべ、本気で羨ましがる彼の目に、ある広告が飛び込んできた。
『美しい雪山の趣ある露天風呂で、ゆったりと疲れを癒しませんか?
スキー、スノーボード用具の貸し出しもあります。
お一人様一泊二日御食事付き4000円から、二泊三日6000円、三泊四日8000円・・・・・
尚、10人以上の団体のお客様は三割引となっております。
ご連絡先は、電話番号△△△-○○○○、住所・・・・・・・・・雪蓑旅館』
「こ、これは・・・」
佐々木の脳が即座に妄想を組み立てる。
スキー、スノボする國生さん
浴衣姿の國生さん
そして、舞い散る雪の中、露天風呂で一糸纏わぬ・・・
妄想がそこまで達した瞬間、佐々木は卓球部冬期合宿をする事を決意したのだった。

188前スレ131:2006/01/04(水) 21:43:33 ID:8U6BsPCN

卓球部員は、部長佐々木の緊急の会議があると言う呼び出しにより、正月だというのに学校の部室に集められていた。
しかし、忙しいということもあり来れたのは、
「お正月の真っ最中に会議なんて、何があったんだろうね〜。恵、何か聞いてる?」
住友子、
「ううん。あたしも何も。一体、ささやん何あったんだろ・・・」
天野恵、
「へっぷしっ!!」
「どうした我聞。風邪か?」
中村孝博、
「ん?ああ、何だか昨日からそんな感じだ・・・
全く、せんじゅつへぶっ!!」
工具楽我聞、
(社長!仙術についてはくれぐれも、企業秘密です。おわかりですよね?)
國生陽菜という、いつものメンバーである。
(う、は、はい、ご免なさい)
「どしたの、るなっち?」
「いえ、何でもありません。それにしても、遅いですね佐々木部長」
「そうだね〜」
「全くだよ。人を呼び出しといて、待たせるなんて・・・」
これ以上遅れたら、お仕置きしてやる。そう天野が続けようとしたところに、がらっと戸が開いて佐々木が入ってきた。
「やあやあ、部員の諸君!こんな忙しい時期にすまなって、なんだ、これしか居ねえのかよ・・・」
見るからにガッカリした様子の佐々木に、天野が文句を言う。
「なに言ってんの、遅れてきて。
だいたい、普通んな急に呼び出されて人が集まるわけがないじゃん。このメンバー揃っただけでも奇跡だよ」
言われて渋い表情になる佐々木。
「う、まあ仕方ないか・・・じゃあここのメンバーだけで良いや、なあ、冬期合宿しないか!!」
ポカンとする卓球部一同
対して、得意げな笑みを浮かべる佐々木。
「ふっふっふ、流石に事情が飲み込めていないようだな。
まあ、これを見てくれ」
そして、懐からさっと取り出した何かに、全員の目線がいく。
それは、一枚の切り抜き。
そこには、雄大な雪山を背にする和風の旅館らしき建物と、それについての色々な説明が書かれていた。
「つまり、冬期合宿として、二泊三日でこの旅館に行こうと思うんだ」
更に一瞬の静寂、そして部屋がざわつき始める。
「冬期合宿?」
「ささやんもたまには面白いこと考えるじゃん」
「温泉かぁ」
「・・・卓球と関係あるのか?」
等々、反応はおおむね良好。佐々木も満足そうな表情をしている。
しかし何故か陽菜だけは思案げな表情だった。
それに最初に気付いた我聞が話しかける。
「どうしたの、國生さん何かまずいことでもあった?」
189前スレ131:2006/01/04(水) 21:47:20 ID:8U6BsPCN
対して、一つだけですが、と前置きして、佐々木に質問する。
「あの、仮にここにいるメンバーだけで行くとしても、単純計算6000×6=36000。
急に、しかもお正月の真っ最中に、臨時の活動費を36000円も出してもらうのは難しいと思うのですが・・・」
もっともな陽菜の心配。しかし、佐々木は不敵に笑って答える。
「心配無用です國生さん!
事前に元部長こと皇先輩に交渉してもらい、生徒会長から、皇先輩と会長を参加させると言う条件で、臨時活動費20000円出して貰えることになりました!!」
感心する中村と我聞、國生。
(知らないでだろうけど、ささやんもえげつないな〜。皇先輩に頼ませるなんて・・・)
(2万円も・・・会長さん大変だったろうな〜、しかも元部長に頼まれて・・・)
鬼怒間に同情する天野、住。
そんな部員たちに、佐々木は続ける。
「と言うことで、現在ここにいるメンバーと、皇先輩、鬼怒間先輩の二人を足して8人。
あと2人で10人になって団体として申し込めるのだが、お前らあてない?」
それなら、と住が声を上げる。
「女子少ないからさー、一年の長部ちゃん誘いたいんだけど・・・」
「わかった。じゃあ、あと一人。
誰か思い当たる奴いるか〜?」
190前スレ131:2006/01/04(水) 21:49:57 ID:8U6BsPCN
そこに今度は、天野が助けに入る。
「まーまーるなっち、そんな虐めない虐めない。くぐっち拗ねちゃうよ〜」
「へ?私は虐めてなんていませんし、それに何故社長が拗ねるんですか?」
全くわからないと言うように言う陽菜。
(この子やっぱり天然だよ・・・)
天野ががっくりうなだれる。それを見て笑いながら、住が番司に名前を尋ねる。
「えっと、君、名字は?」
「はっはい!自分は静馬番司と言います!!」
いきなり女性に話しかけられ、つい緊張して姿勢を正す番司。
「入部希望なのね?」
「はっはいっ!!」最後のチャンスとでも言わんばかりに、必死になる番司。
「佐々木君、この人で良いんじゃない?だらだら時間かけるのもあれだし、」
佐々木は少し考えて、
「・・・うん、そうだな特に思い当たる奴もいないし。
よし、次は日程決めるか」
そして、卓球部+番司での会議は続き、結局日程は、3日後の1月7日から3日間と言うことになった。

その日の夜。
〜工具楽家〜
揺らめく蝋燭の明かりの元、工具楽家の実質的支配者・果歩を筆頭にする秘密?組織GHKの超緊急会議が行われていた。
「み、皆さん!!なんと言うことでしょう!!
今まで、にっくき敵でしかなかった、卓球部の・・・たしか、佐々木という人物により、我々は大きなチャンスを手にしました!」
「「おぉーっ!!」」
合いの手として、雄叫びをあげる斗馬と珠。しかし、夜中なのでなるだけ小さく。
「その名も冬期合宿!!
ここで巧くやれば、我々は名実共に伊豆での失態を返上できます!!」
「はい!ヘンジョーって何ですか!?」
「おーっ!」
一人が好奇心にとらわれてしまった為、雄叫びが斗馬だけになる。
と、ここで果歩が声を低くする。
「しかし、問題が一つだけあります」
今にも泣かんばかりの悲しげな声を装って。
「我らが兄・・・は置いとくとして、あの未来の兄嫁陽菜さんでさえ、行き先の詳しい住所を知らないのです!!」
「「えぇーーっ!!」」
ノリでショックを受ける珠、斗馬。
しかし斗馬はすぐに冷静な表情になる。
「でもしかし、大姉上のことです、既に手を打ってあるのでしょう・・・そう言えば、デルタ1の姿が見えませんが・・・」
191前スレ131:2006/01/04(水) 21:52:13 ID:8U6BsPCN
今度はニヤリと笑う果歩。
「ほう、なかなか良いところに気付くわね、斗馬。そう、優さんには今冬期合宿の運転手をかってでてもらいました!
今いないのは、そのための残業」
「成る程。その優さんの運転する車に隠れ同行すると言うわけですな」
目の端を光らせ斗馬が言う。
「そう言う事。それでは、我々も冬期合宿に向けて準備に取りかかるわよ!」
「「おおーー!!」」
我聞はグッスリ眠っていたのだった。

そして、ほかの参加者はというと、

〜佐々木家〜
佐々木亮吾はデジカメを磨きつつニヤついている。
「ふふふふふ上手く行った・・・
これで今度こそ國生さんを激写できるふふ・・・」

〜鬼怒間家〜
鬼怒間リンは
「あいつと、旅行・・・いやっ卓球部連中も一緒だ、それに私はあいつと旅行に行きたい訳ではないわけで無くなくもなく・・・」
一人悶えていた。

〜國生家〜
「冬期合宿・・・うん。夏の時も楽しかったけど、あの時は社長とギクシャクしてたり、かなえさんと出会ったりしたから、大変だったな・・・
今度はもっと楽しめるといいな・・・」
この合宿で何か起こりそうな気がする・・・陽菜はそんな予感めいたものを感じながら、祈るように窓から夜空を眺めていた。

〜天野家〜
「雪山かぁ、ささやんなかなか良いとこ目付けるな〜・・・これでるなっち追いかけなきゃいんだけどな〜
けど、露天風呂か・・・ささやんの魔の手からるなっちしっかり守らなきゃ・・・」
そう決意する彼女は、それが佐々木に他の女性をみていて欲しくない、と言う気持ちの現れだと気付いていない。

192前スレ131:2006/01/04(水) 21:54:44 ID:8U6BsPCN
〜住家〜
『・・はい、わかりました。その日取りなら、全然OKです』
「本当?よかった〜。じゃあ当日、学校集合だから。またね」
『はい』
住は手にしていた子機を床に置いた。
(よかった、長部ちゃん都合がついて・・・それにしても工具楽君の会社の人が旅館まで送ってってくれるらしいけど、大丈夫かな・・・)
当日は、学校に集合した後、送ってってくれる人のいる、我聞と陽菜の勤める会社・工具楽屋に向かう。

なんでも、普段会社で使っている車で送ってってくれるらしい。
いったい、どんな人がどんな車で送ってくれるのだろう。そもそも、工具楽屋とはどんなところなのだろう。
何となく目的地より、工具楽屋の方が気になってしまった彼女は、そのまま床についた。

〜番司のアパート〜
どうにかこうにか参加できることになった番司は、
「陽菜さん、見ていて下さい。格好いいとこをきっとお見せします・・・!!」
陽菜と行けるという事で、燃えに燃えていたのだった。


佐々木の思いつきがきっかけとなり実行される、それぞれがそれぞれの思いを抱く冬期合宿
そこで、いったい誰に何が起こるのかそれはまだ誰にもわからない・・・
193前スレ131:2006/01/04(水) 21:58:19 ID:8U6BsPCN
>>189ミスってました・・・
すいません
訂正は下の通りです

対して、一つだけですが、と前置きして、佐々木に質問する。
「あの、仮にここにいるメンバーだけで行くとしても、単純計算6000×6=36000。
急に、しかもお正月の真っ最中に、臨時の活動費を36000円も出してもらうのは難しいと思うのですが・・・」
もっともな陽菜の心配。しかし、佐々木は不敵に笑って答える。
「心配無用です國生さん!
事前に元部長こと皇先輩に交渉してもらい、生徒会長から、皇先輩と会長を参加させると言う条件で、臨時活動費20000円出して貰えることになりました!!」
感心する中村と我聞、國生。
(知らないでだろうけど、ささやんもえげつないな〜。皇先輩に頼ませるなんて・・・)
(2万円も・・・会長さん大変だったろうな〜、しかも元部長に頼まれて・・・)
鬼怒間に同情する天野、住。
そんな部員たちに、佐々木は続ける。
「と言うことで、現在ここにいるメンバーと、皇先輩、鬼怒間先輩の二人を足して8人。
あと2人で10人になって団体として申し込めるのだが、お前らあてない?」
それなら、と住が声を上げる。
「女子少ないからさー、一年の長部ちゃん誘いたいんだけど・・・」
「わかった。じゃあ、あと一人。
誰か思い当たる奴いるか〜?」
皆がうーんと唸る。
そこに
「それなら俺を連れてってくれっ!!」
戸がまたガラッとあいて、入ってきたのは長ラン、長鉢巻の男。
「おお、番司。ってお前何でここにいるんだ!?」
「い、いや実はたまたま通りかかって・・・」
少し赤くなって言い訳する番司。
(コイツ、國生さんにつられて来たな・・・)
的確に心中を察知する佐々木。
「どうしたんですか番司さん。確か、卓球部じゃあないですよね?」
今の陽菜は至って普通の表情、いや眼差しだが、番司と佐々木には、
「え、いやっそのっ・・・」
「國生さんの冷たい視線を受けられるなんて・・・なんて羨ましい・・・」
そう、感じられるのだった。
見かねた中村が助け船を出す。
「・・・お前、入部希望か?」
その一言にばっと顔を上げる番司。
「そ、そう!!俺は入部希望でここに・・・」
蜘蛛の糸にしがみつくように、中村の言葉にすがりつく番司。
しかし陽菜は、自覚のない冷たい言葉で蹴落とす。
「しかし、こんな急に行われた会議を誰に聞いてきたのです?」
言葉もない番司。
まさか、つけてきたとも言えまい。
194前スレ131:2006/01/04(水) 22:03:04 ID:8U6BsPCN
と、ミスもしてしまいましたが、ここまでです。
まだ具体的なカップリングも決まってせん。
すんません・・・
次は、7日前後に投下できるようにしたいです。
あと、酷評でもいいんで良ければ感想下さい
それでは
195名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 07:51:38 ID:8BIvK48l
131氏、乙です。
続きを期待してます。
196名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 09:11:13 ID:snDEv73Z
131氏あんたはホントに低能ですね。よくもまあこんな低能なこと考えますね。
ようするにGJですよ!
佐々木と恵の話を希望です!
197名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 19:33:38 ID:oNB44yth
低脳職人の皆様、いつも楽しませて頂いてます。


エロではないのですが、「辻原×かなえ」を投下させて頂きます。

保管庫管理人様、支援をされていらっしゃる皆様へ。
事情により、保管庫への収納は辞退させて頂きます。
恐縮ですが、ご理解のほどを宜しくお願い申し上げます。


198真昼の弁明 1/4:2006/01/06(金) 19:35:18 ID:oNB44yth
第一研に程近い軍用滑走路を政府専用機で日本に向けて飛び立ってから、既に二時間が過ぎていた。
明かりと日除けを落とした空間は、夜を徹した者達の為に用意されていたが、
工具楽屋を始めとする『こわしや』の面々は、内閣調査室付の西氏を巻き込んで宴会の真っ最中だった。
それでも少し席を離れれば、その騒ぎは機内特有の音に掻き消されてしまう事もあり、そこには私以外に誰もいなかった。

「姉ちゃん? 寝てんのか?」

場合によっては、寝た振りを決め込もうとしていたが、頭上から降って来たその声に、私はゆっくりと目を開けた。

「起きてるわよ。何?」
「いや、なかなか戻ってこねーからさ」
「あぁ、ちょっと疲れただけよ」

ふーんと気のない呟きを返した後、弟は私の足を跨いで隣の席に腰を下ろした。
そして、左腕を間にある肘掛けに乗せると、それを軽く叩いた。

「ほら」
「あら。それじゃ、遠慮なく」

照れたような横顔に微笑みながら、静かにその腕にもたれる。
時折、驚くほどの気遣いを見せるようになった弟は、まだまだ未熟には違いないが、頼もしく成長していく。

「やっと……、終わったんだな」
「えぇ……、そうね」
「きっと、オヤジ達も喜んでんだろ。ばーちゃんもだけど」
「喜んでくれてるだろうし、喜んでるわよ」
「んじゃ、これを機に、弟の腕ばっか借りてねーで、男ぐらい探せよ。ばーちゃんも心配してたぜ?」
「あら、初耳」
「まあ、姉ちゃんじゃ、男が寄ってこねーってのもあるだろうけ……」

私は投げ出されていた弟の足を踏み潰して、その言葉を遮った。体の逆の方へと重心を移し、頬杖でそれを支える。

「何だよ、いてーなっ」
「もういいわ、早く行きなさい。本当は私じゃなくて、陽菜ちゃんが気になって来たんでしょ?」
「なっ、ちげーよっ。せっかくの親子水入らずを邪魔するほど、俺は野暮な男じゃねーぞ」
「男なんて野暮とエゴの塊じゃない、あんたを含めて」
「あーあー、それじゃ、何年経ったって恋人なんか……」

向けられた指先を見て、弟が言葉を飲み込んだ。この場に『水糸』となり得る物はないが、その仕草だけでも効果はあると分かっていた。
逃げるように反対側の通路へと歩き出す弟の背中を、私はため息と共に呼び止めた。

「番司」
「何だよ?」
「……ありがと」
「いや。もうちょっと休んでろよ、人払いしてやるから」
「そうね」
「……ありがとな、姉ちゃん」
「え?」

驚いて顔を上げたが、そこにもう弟の姿はなかった。両親と祖母の顔が脳裏を過ぎり、そして、消えていく。
しかし、焼き付いていたのは、それだけではなかった。
199真昼の弁明 2/4:2006/01/06(金) 19:36:42 ID:oNB44yth

機内を前方へと進むと、國生親子がいるはずの会議室の扉が見えた。
滑走路までのヘリに乗り込んだ國生氏は気力も限界だったのか、すぐに蹲って動かなくなった。
それでも、待機していた医師からの鎮痛剤投与を断ったのは、それ以上の思いを妨げる可能性があったからだろうと思う。
そして、その先にある個室に、もう一台のストレッチャーが運び込まれている。
彼もまた、深手を負った一人だったが、その飄々とした態度で体中の銃創を治療した医師を驚かせ、呆れさせていた。
ドアの前で立ち止まり、握った拳を振り上げたが、その可能性を考えて思い止まった。躊躇いながらも、私はゆっくりとノブを回した。
薄暗い部屋に細長い光が差し込むと、徐々に横たわった人物の影が明らかになったが、
それは目の位置に右腕を置いたままで動こうとはしなかった。

「何かご用ですか? かなちん」

部屋の中へと踏み出した途端、彼の声がした。視線を向けると、既にメガネを掛け、起き上がろうとしている。

「あなたに寝込みを襲われる覚えはありませんが」
「……私にもそんな覚えはありません」
「じゃあ、夜這いですか? 外は明るいですが」
「くだらない冗談はやめて下さい」

私の言葉に声を上げて笑いながら、彼は窓の日除けに手を掛けた。私が顔を逸らすのを待って、それは僅かに開かれた。
直接的ではないが、強烈な光が入り込んで来る。

「体は……、だいじょうぶなんですか?」
「えぇ、ちょっとした傷に過ぎませんよ。それより、座りませんか?
 コーヒーでよければ、ご馳走しますよ? まあ、私が買ったわけじゃありませんが」

彼は両足を床に下ろし、窓の前へと体をずらした。壁に映る彼の影を睨み倒してから、私はその空いた場所に浅く腰を掛けた。
手放したドアが、音も立てずに閉まった。

「で、何を怒ってるんです?」
「え?」
「ここ、シワが寄ってますよ?」

自分の眉間を指差して、再び彼が笑った。確かに、それは太陽のせいだけではなく、先程の言葉のせいだけではない。
抑えるように俯いても、それを助長しただけだった。

「かなえさん?」
「……どうして、何も言ってくれなかったんですか?」
「はい?」
「どうして、一人で乗り込むような真似をしたのかと聞いてるんです」
「あー、なるほど。それで怒ってらっしゃるわけですか」
「当たり前ですっ」

その影よりも強く、私は彼を見た。しかし、彼はそれを横目で受け流し、ゆっくりと立ち上がった。
作り付けられた棚から缶コーヒーを手に取り、右手だけでそれを開ける。

「言えなかったんですよ、あなたには」
「え?」
「あなたを、泣かせたくなかったんです」

そう言って缶に口を付けた後、彼は私を振り返ったが、私はその目を呆然と見つめ返す事しか出来なかった。
指先がメガネの中央へと動き、僅かに押し上げられる。
200真昼の弁明 3/4:2006/01/06(金) 19:37:47 ID:oNB44yth

「確かに、前々から第一研の見当はついていました。ですが、それは私の遠い過去の記憶が元だったんです。
そんな不確かな物に、あなたや『こわしや』の皆さんを巻き込むわけにはいかなかったんですよ。
それに、誰よりも先に、我也さんの真意を確かめないと気が済まなかったんです」

その説明を聞いても、私の状況に変わりはなかった。元の場所へと腰を下ろすと、彼は一つ小さな息を吐く。

「私は、あの国の貧しい街で生まれました。その日食べる物も儘ならない所に、ある日大勢の子供達を買いに来た企業がありました。
そして、私はそこに売られました。生きる為だったと思います、私自身が生き延びる為だったとも言えますかね。
まあ、今ではその親の顔すら思い出せないんですが」

淡々と続けられたその内容に、身構えていたはずの自分が大きく揺さぶられた。
堪える間もなく、涙が頬を流れ落ちる。大きく顔を背けて、私はその視線から逃れた。

「ち、違います……」
「かなえさん」
「違います、泣いてませんっ」
「いいですよ、泣いても」

当たり前のように響いた声に、再び呆然と彼を見た。押し返すように合わされたその目は、僅かに細められている。

「本人の前でなら、気持ちのぶつけようもあるってもんですが、私がいない所では、あなたが辛いだけでしょう?」
「あなたは……、辛くないんですか」
「過ぎた事です。開き直るつもりはありませんが、いろいろあってこその今の私ですからね」
「でも、ご家族とは……」
「えぇ、その後は一度も会っていません。生きていてくれればいいとは思いますが」

そんな彼の前で、泣き続けるわけにはいかなかった。制御に意識を移すと、徐々にその全てが平常に戻っていく。

「というわけで、その企業に連れて行かれた場所が、あの山奥の施設でした。
そこでも、まあ、いろいろありましたが、残った者だけがその後の第二研に移されました。
そして、おそらくは、当時も最重要とされるプロジェクトを受け持っていたその後の第一研が、あの場所に納まったと考えたわけです。
存在を隠蔽するには、何より持って来いな場所ですからね」
「なるほど、お話はよく分かりました。ですが、『こわしや』の会長として言わせて頂くなら、やはりあなたの行動は褒められたものではありません。
事実、あなたの救出の為に、私達は準備も不完全なままで……」

彼の大きなため息で、私の言葉は遮られた。新たに湧き上がる感情を抑えて視線を移すと、既に彼は笑っている。

「やっぱり、本当に知らなかったわけですか」
「え?」
「あなたのおばあ様はご存知でしたよ?」
「えぇっ?」
「黙っていた方が、あなたの闘争心にはプラスになると考えたんでしょう。さすがはさなえ様です」
「あ、あなたが口止めしたからでしょう?」
「確かに。ですが、それを守る理由はないはずですよ?」

それには答えずに、私は今回の作戦を思い起こした。
大成功を収めたものの、不可解な点が多かったのは事実で、祖母が先に動いていたのであればそれも納得出来たが、
彼にも見抜かれたとなれば、もうため息しか出なかった。
201真昼の弁明 4/4:2006/01/06(金) 19:38:53 ID:oNB44yth

「どうしました?」
「ちょっと……、疲れただけです」

視線の片隅で、上昇していた缶が止まった。消えたと理解した次の瞬間、私はその手で彼の胸へと引き寄せられた。

「お疲れ様でした」

声を上げる間もなく、それは耳に響いた。全身の力が抜けていくようで、溢れ出す言葉も止める事は出来ない。

「……辻原さん」
「何ですか?」
「もう……、黙っていなくならないで下さい。私は……、そんなに強い人間じゃありません」
「私の知る限りでは、あなたは最強の部類に入りますが?」
「それは……」
「仙術の力は精神力。つまり、あなたの精神力は最強という事になります。ですが、あなたが言いたいのは、もっと別の意味のようですね」

力が抜け切った気はしたが、そんな男も良いかもしれないと思えた。そして、彼は、それだけではなかった。

「分かりました。約束しますよ、かなちん」

202名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 19:39:49 ID:oNB44yth
以上です。ありがとうございました。

今後とも、職人の皆様のご活躍を期待しております。
203名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 22:42:44 ID:YxlLYN1Q
>>131
プロローグって感じですな、続き期待させてください。
形にすれば感想は自然とついてくるものと思いますよ。

>>197
なにやら事情がありそうですが、設定を活かしたお話が素敵でした。
導入のかなちんと番司のやり取りが素敵すぎてかなちん×番司かと思ってしまったのは秘密です。
204名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 00:09:27 ID:VQR61i7I
いや〜かなちんいいなぁ
205前スレ272:2006/01/07(土) 02:02:18 ID:+/rVNuf6
こんばんは、また投下します。
どこにそんなヒマがあるんだとかは聞かないでください。守秘事項になります故。
・・・どうせなら、『リアルタイム』で投下したかったのですが、無理そうなので。
またエロ無しですが、楽しんでいただければ幸いです。
206前スレ272:2006/01/07(土) 02:02:49 ID:+/rVNuf6

 それは1月7日の早朝のことだった、時刻は7時半過ぎ
 今年は工具楽家で過ごさせてもらった年末年始は去ったものの学校の冬休みの方はまだ終わらず、しかし工具楽屋(株)はとっくに仕事始めを迎えていた
 そんなどこか中途半端な日だったが、陽菜は関係無く毎朝の習慣で早く起きていた
 既に着替え、そろそろ朝食にしようかと準備を始めた頃に玄関の呼び鈴が鳴った
 「・・・?」
 こんな朝早く、いったい誰だろうか
 隣に住む優さんかと思ったが、彼女は朝早く起きられる人ではない
 陽菜は首を傾げながらも、部屋の中でも肌寒い今日の気温の最中にいつまでも玄関先で待たせておくのも悪いと思い、ぱたぱたと玄関口に立った
 「どちら様ですか?」
 「あ、おれ、我聞だけどー」
 「社長!?」
 陽菜はがちゃりとドアを開けると、上着を着た我聞が白い息を吐きながらも確かにそこにいた
 「おはようございます、社長」
 「うん、國生さんおはよう。ごめん、寝てた?」
 「いえ、とっくに着替えも終わっていました」
 我聞は陽菜の姿を見て、「あ、本当だ」と勤勉で真面目で厳しくも優しい社長秘書には愚問だったことに気づいた
 しかし、早朝の訪問者が我聞だということはわかったが、訪問の理由は何だろうか
 「・・・えっと、國生さん、朝食はもうすんだ?」
 「今、準備をしているところですが、食べていかれますか?」
 少しばかり大胆な陽菜の申し込みに我聞は慌てて首と手を振った
 「や、それはまた今度で。それより、ウチに七草粥を食べに来ない?」
 「七草粥ですか・・・」
 そういえば今日はそんな日だったか、陽菜は気づかずパン食にしてしまうところだった
 「そう。國生さんも一緒にどう?」
 「・・・しかし、よろしいんですか?」
 「うん。だから、こうして呼びに来たんじゃないか」
 我聞の言うことも尤もだ、呼びたくもない相手をわざわざ早朝に出かけて誘いに来るわけがない
 陽菜はそれから「すぐ行きます」と二つ返事で答えた
207前スレ272:2006/01/07(土) 02:05:15 ID:+/rVNuf6

 2人ははぁと白い息を吐きながら、霜をさくさくと踏みながら並んで歩いた
 「・・・社長、七草粥に入る野菜を全部言えますか?」
 「おう! 芹(せり)・薺(なずな)・御形(ごぎよう)・(はこべ)・仏座(ほとけのざ)・菘(すずな)・蘿蔔(すずしろ)だろ?」
 「流石社長、正解です」
 我聞が胸を張り、誇らしげに「全部、ウチの菜園や庭で採れるからな」と言った
 今朝早く摘み取ったそれらは果歩が調理をして待っていると、我聞は付け加えた
 「では、秋の七草は言えますか?」
 「あ、秋の七草!?」
 ここで我聞の顔が曇り、うんうんと唸りだした
 陽菜はふっとため息を吐いた、どうやら我聞は食い意地だけで憶えていたらしい
 確かに春の七草は野菜、秋の七草は花だからといって・・・せめて1種類でも良いから名前くらいは憶えていてほしいものだった
 最も果歩や斗馬なら同じ質問をしても答えられただろうが、珠は我聞と同じ様な結果になったことだろうが
 「萩(はぎ)・尾花(おばな/ススキのこと)・葛(くず)・撫子(なでしこ)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・桔梗(ききょう)です。
 ちなみに花言葉は順に想い(内気・思案)・心が通じる(憂い・なびく心)・恋の溜め息・思慕・永久(美人)・あの日を思い出す(躊躇)・変わらぬ愛です」
 ここまで一息に言ったところで、陽菜ははっとした
 ついすらすらと挙げたそれらの花言葉はまるで・・・・・・自分達のことを示唆しているようなものではないか
 思わずチラッと我聞の方を見たが、当の本人は「流石國生さん、よく知ってるなぁ」とただただ感心しているだけだった
 その反応にほっとする反面、陽菜は何だかもやもやしたものが胸の中で残った
 ・・・そんな話している内に我聞と陽菜は工具楽家に到着した
208前スレ272:2006/01/07(土) 02:08:19 ID:+/rVNuf6

 玄関に入ってから果歩のお出迎えがあり、さっと2人は居間の方に通された
 その時、陽菜は少し玄関に靴が多いような気がした
 そして、その通された居間には案の定優さんや中之井が座って待っていた
 「やー、おはよう、はるるん」
 「おはよう、陽菜くん」
 「え・・・優さん、中之井さんも呼ばれてここに?」
 陽菜が我聞の顔を見ると、「うん、寮の皆も呼んだんだ」と言った
 我聞の性格上、こういうことは皆でやった方が良いと思っての行動だろう
 それに独身寮とも言える彼処では、こういった七草粥を食べる機会が無いと思ってだろうか
 そのどちらでも、陽菜は少しがっかりした
 「(そうですよね。やはりこういう時は皆さんと一緒ですよね)」
 少し気落ちしたように見受けられる陽菜に、GHK・デルタ2として果歩が台所から熱々の鍋を持ってきながら言った
 「お兄ちゃんが言いだしたんですよ、寮の皆と一緒に食べようって、今朝早く。
 それで珠と斗馬で、手分けして寮の皆を呼びに行ったんです。朝早くからすみません」
 「い、いえ、私の方はもう起きてましたから、別に・・・。それに呼ばれて嬉しかったです」
 「あ、そうなんですか。良かったわね〜、お兄ちゃん。朝早くから怒られなくて。
 ・・・ま、お兄ちゃんの方から陽菜さん起こしに行くって言ってたし、その覚悟はあったのかしら?」 
 陽菜は「え」と我聞の方を覗き見た
 「そ、それはだな。朝も早いし、珠や斗馬じゃばたばたとうるさいだろうからと思って・・・」
 「え〜、そうなの〜? それにしては遅かったじゃない、7時には家出たのに、往復で15分もかからないでしょ?」
 「む」と我聞が詰まるのをいいことに、斗馬は話の間に割って入った
 「兄上はドアの前で10分程なんて言おうかとずっと迷っていましたぞ」
 「あ、それ私も見た〜」
 優さんがにやにやと心の中で笑いながら、表向きはのほほんと間延びしたような声で言った
 それで同時に呼ばれたはずの優さんや中之井と道で鉢合わせなかったのだ
 我聞が何も返せずにいるのを、陽菜はぼけっと見ていた
 「(え? つまり・・・)」
 ・・・もしかして、他の寮の皆を招待したのは、私を呼び出す為の口実?
 陽菜はぶんぶんと顔を振り、その考えを振り払った
 「(まさか・・・考えすぎですよね)」 
 「あ、國生さん、座って座って」
 我聞に促され、陽菜はちょこんとコタツに足を入れて座った
 ここの家はコタツが2つあり、今は隣り合わせて置いてあるので中之井や優さんも同じ様にぬくぬくと座っていられるのだ
 だが、流石に7人座るには狭いところがあり、後から来た陽菜と我聞は誘導されたかのように横に並んで座ることとなった
 そして、皆の目の前には、そのコタツ机の真ん中にはどでんと2つの熱々の大きな土鍋が置かれていた
 中身は勿論、工具楽家特製の七草粥だ(生米から弱火でじっくり、途中でかき混ぜたりすると粘りが出て美味しくない/果歩談)
 「はい、開けますよ〜」
 かぱっと果歩が同時に2つの土鍋のフタを開けると、それは見事な出来映えの七草粥がたっぷりとなみなみ入っていた
 粥は通常のご飯の何倍にも膨れ上がるので、これで実質7人前のはずだ
 「おぉ〜」
 「見事ですな」
 「食べるぞー!」
 予め持ってきていた木の椀を全員に行き渡らせ、各々がおたまで土鍋から直接掬う
 我聞は自分のを入れる前に、陽菜の椀を先に取り、半分程入れて本人に手渡した
 「はい、熱いから気をつけて」
 「ありがとうございます」
 そして、れんげで冷ましながら皆は食べ始めた
209前スレ272:2006/01/07(土) 02:09:18 ID:+/rVNuf6
 「おお、うまいな」
 「味が足りなかったら、ごま塩みたいのもありますからね〜」
「あ〜、この味この味・・・二日酔いに効くわぁ、これ」
 優さんはしみじみとそう言う、どうやら昨晩も浴びる程呑んだらしい
 しかし、あまりにも粥が熱々なので、皆は冷ますのに夢中になり何となく会話の方が途切れてしまう 
 「おかわりっ!」
 だが、食べ盛りの珠は止まらない
 元々粥は見た目よりも量が少ないので、沢山食べないと満腹感が出ないからだろう
 「おかわりはいいが、ちゃんとと冷ましてから食わんと舌を火傷するぞ」
 我聞がそうたしなめるのを、珠は「はいっ!」と盛られたばかりの熱々の粥を流し込むように食べながら返事をした
 陽菜はその光景を何となく見ていた、それから・・・・・・
  『陽菜、あーんして』
  我聞が粥をのせたれんげを陽菜の目の前に差し出した
  『え!?』
  『ほら、ちゃんと冷ましたから』
  『そ、そういう問題じゃなくて・・・』
  『じゃ、どういう問題?』
  『う・・・
  我聞の屈託のない、それでいて意地悪な問いに陽菜は詰まってしまった
  『はい、あーん』
  『あ、あーん・・・』
  陽菜は観念したのか、我聞の言われるままに口を開けて差し出された粥を食べた
  椀を持った我聞がにこにこ笑うのに、陽菜は同じ様に我聞にしてあげようと・・・・・・
 「・・・あのー、もしかしてお口に合いませんでした?」
 果歩がそう言うと、陽菜ははっと我に返った
 「(や、やだ、私ったら・・・!!?)」
 なんてことを想像していたんだろう、思わず顔を伏せてしまう
 そこに我聞が「食欲無いの?」と顔を覗き込まれたのだから、今の陽菜にはたまらない
 思わず手つかずの椀から粥を掬い、口に放り入れた
 「あ・・・」
 「〜〜〜〜〜ッ!!」
 陽菜はその熱々の衝撃に立ち上がりそうになった
 冷めていない粥は口内を焼くように動き回り、慌てている所為かのどをなかなか通過してくれない
 陽菜は口を両手で覆うように押さえ、必死になってそれを飲み込んだ
 「うわ、大丈夫、國生さん!? て、み、水だ」
 中之井と果歩が立ち上がり、台所へ走った  
 ようやく飲み込んだ陽菜に対し、我聞は「大丈夫?」と繰り返した
 「・・・は、はひ、何とか・・・」
 「よ、良かった。舌、火傷してない?」
 うまく舌の回らない陽菜に対し、我聞がそう訊くのでとりあえず頷いてみせた
 「ん、ちょっと見せて」
 「・・・へ?」
 我聞は陽菜のあごに自らの右手の親指と人差し指をやり、そっと上を向かせ、口を開かせた
 その状態から、我聞は陽菜の口内を覗き込むように顔を近づけた
 「どうかな? 見た感じ平気そうだけど・・・あ、ちょっとだけ舌出して」
 「は、はのしゃちょ・・・ま、ま・・・」
 「ま、まがどうしたの?」
 と、ここで陽菜がびっと『周り』を指差した
 「あ」と漸くその周りの目に気づいた我聞の目が点となり、ついでに周りの目も点になっていた
 優さんはきゃーっとどこか嬉しそうで、珠は何故かわけもわからずはしゃいでいる
 台所へ走り、そして水を持ってきた果歩や中之井は固まっている
 「・・・えーと」
 我聞の右手が離れるのと同時に、果歩はそっと無言で陽菜の前に水を置いた
 陽菜は誰とも目を合わせないように、それを受け取るとごくんと一気に飲んだのだった・・・

 ・・・・・・
210前スレ272:2006/01/07(土) 02:10:12 ID:+/rVNuf6

 「ふー、(色々と)御馳走様でしたぁ」
 優さんがたらふく食べたお腹を撫でながら、そう言った
 他の皆も同様のようで、コタツ机の上の大きな土鍋2つはきれいに空になっていた
 「大変ご馳走になりました。・・・さて、お邪魔しましたな」
 と、中之井は早々とコタツから立ち上がった
 果歩が「あ、今お茶いれますから」と立ち上がりながら言ったが、中之井はそれを制した
 「いや、お気遣いは無用。ワシはこれから用があるので」
 「えー、何なのさ」
 優さんの問いに、中之井はふっとニヒルに答えた
 「なに、今上の皆が集まっての新春ゲートボール大会じゃ」
 「(中之井さんにそんな趣味あったっけ・・・?)」
 ・・・・・・何か決まり損ねた気がするが、そういう理由ならば仕方ないと優さんは寝転がりながら手を振った
 「これ、食べてすぐに寝ると牛になると言いますぞ」
 「だ〜いじょうぶ、も〜既に一部は牛並だから〜」
 帰る間際の中之井の言葉に優さんはのほほんと答えるのを聞き、同時にさっと果歩が横に寝転んだ
 陽菜はきょとんとしていたが、珠の「はい、どこが牛並なんですか!」と無邪気な問いでようやく気づき、自分も少しだけ寝転びたい衝動に駆られた
 その横の我聞はとっくに寝転んでいるので、今陽菜が横になれば色々とおいしいのだが・・・・・・
 しかし、流石に行儀が悪く他人の家でやるのもはばかられたので、ふうと小さくため息を吐いた
211前スレ272:2006/01/07(土) 02:10:45 ID:+/rVNuf6
 
 中之井が本当に帰ってしまうと、ここに残るのは我聞と陽菜、そしてGHKの面子だけだ
 この好機を逃すわけがない
 今まで寝転んでいた優さんがむくりと起き上がり、元気にコタツの周りではしゃぎ回る珠を横目で見ながら言った
 「ね〜、折角だから、正月らしい遊びをしよ〜よ〜」
 「あ、いいですね」
 果歩がむくりと起き上がりながら、それに賛同した
 最も、正月や何やらはとうに過ぎてしまっているのだが・・・
 珠や斗馬が「たこ揚げー!」「はねつきー!」と道具を見せながら主張するが、優さんは即座に却下と言った
 「だって外は寒いし、それじゃこの人数で遊べないもん」
 「それもそうですね」 
 「じゃ、カルタとか?」
 「百人一首も手ですが」
 我聞と陽菜も意見を出すが、それも優さんが即座に却下を申し渡した
 「幾ら何でも仙術使い相手に瞬間的な速さが勝負のカルタはかなわないし、百人一首ははるるんに有利すぎだし〜」
 それなら読み手になれば良いと言うが、ここは全員が遊べるものが良いと優さんは主張し続ける
 「・・・じゃあ、何があるんです?」
 「そりゃモチロン、『すごろく』でしょ」
 果歩は「名案です。体力も知識もいらない、運の勝負ですしね」とぱんと両の手を打ちつつ言った
 我聞と陽菜、珠や斗馬も反対せず、それをすることに決めた
 「・・・んで、一番負けの人は一番上がりの人の言うことを1つだけ聞くのよ〜」
 「流石です、優さん。それは面白そうですね!」
 「「えぇっ!!?」」
 そのルールに陽菜は反対したが、優さんは「こういうゲーム性がなくちゃつまらない」と主張し、結果的には多数決でそのルール案も採用に決まった
 勿論、賛成したのはGHKとして繋がっている4人であり、反対的な意見を持つのは我聞と陽菜2人だけで・・・太刀打ち出来るはずがない
 果歩が押し入れの奥の方から古いすごろくを見つけだし、駒やサイコロも適当に揃えたところで始まった
 そう、我聞と陽菜のどちらかをビリにしようと目論むGHKの思惑も知らずに・・・

 ・・・・・・
212前スレ272:2006/01/07(土) 02:11:15 ID:+/rVNuf6

 「・・・2、3、4! 上がりです、やった!」
 果歩がとんとんと自分の駒を進め、ついにアガリの最終マスに止まった
 周りがおぉ〜〜〜と歓声を上げると同時に、ビリも決定した
 「・・・國生さん、惜しかったな」
 「はい・・・」
 そう、GHKの思惑通り、陽菜がビリとなった
 運悪く序盤から1の目が連続し、逆にトップとなった優さんは5や6の目が連続した
 イカサマサイコロではないはずなので、これは単純に陽菜の方が運が無かった・・・いや、優さんに運気を吸い取られたのかもしれない
 「いっえ〜い! これではるるんの罰ゲーム決定〜!」
 「あ、あの、本当にやるんですか?」
 「とおっぜん! それとも、折角盛り上がった場に水を差す気なのかな〜?」
 優さんの言葉がどすどすっと陽菜の胸を突き刺し、もう逃れようもないことを悟らせる
 ふっふふふ〜んと鼻歌を歌いながら、優さんは立ち上がり部屋の中をグルグル歩きながら楽しそうに思案している
 「う、う〜ん、ここで貴重な機会を逃すわけにもいかないからな〜、何してもらおうかな〜〜〜♪」
 「あ、なるべくお手柔らかに・・・」
 段々と小さくなる陽菜の声なぞ届くはずもない、優さんは「お、そうだ!」と何か閃いたようだ
 そして、陽菜に囁きかけるように、それでいて皆に聞こえるように言った
 「ねぇねぇ、はるるんさぁ、我聞くん誘惑して、今年度の開発費を300万円程上乗せしてくれるように頼んでくれない?」
 「な・・・」
 おおぉっと、これには果歩も驚いたようだが、優さんにとってすれば一石二鳥な命令だった
 陽菜が我聞のことを誘惑し成功すればGHKにとっては大成功だし、加えて以前は失敗した開発費の大幅アップにも繋がる
 もし誘惑に失敗しても、これからの2人・・・我聞と陽菜の間に少なからず影響が出るに違いない    
 というか、これは見ているだけでも酒の肴になるぐらい面白そうな提案だと優さんは自負した
 「それとこれとは話が違います」
 陽菜がそう言ってくるのも計算の内、優さんはん〜っと迫った
 「あ、そお? そっか〜、はるるんはそれぐらいのことも出来ないのか〜」
 「・・・・・・いえ、出来ないとは言ってませんが・・・」
 「あ、じゃあやってくれるよね? はるるんはたとえゲームとはいえ、約束は破らないよね!?」
 とどめの一言と合わせて陽菜の手をガシッと優さんは握った、これで陽菜の性格上、逆らうことなく落ちたはずだ・・・
 その間、その話題に上がっているはずの人物、我聞は置いていかれている
 女性2人で盛り上がり、周りはそれをはやし立て・・・・・・我聞自身はどうしたらいいのかわからない
 「(う、うーむ、國生さんが本気でそんなことするわけないし、第一、工具楽屋〔株〕の財政の厳しさは誰よりも國生さんが知ってるはずだ・・・)」
 つまり、この命令は優さんの失敗に終わる
 そう睨んだ我聞だったのだが・・・・・・
213前スレ272:2006/01/07(土) 02:12:29 ID:+/rVNuf6

 「・・・社長、お願いがあるんですけど・・・」
 ぎょっとするような優しい声でそう言われ、我聞は隣に座っている陽菜を見た
 顔は真っ赤だが、じっと我聞を見る目は真剣そのものだから物凄く恐い
 それでも、今までにない異様な雰囲気に我聞は呑み込まれてしまいそうだった
 「あ、あの國生さん・・・?」
 「そんな呼び方をしないで下さい」
 「え? え、えっと・・・?」
 「陽菜、でお願いします、社長」
 口調は今までと同じなのだが、言葉の1つ1つがどこか色っぽい気がする
 それは我聞の幻覚なのか、それともこれが陽菜の持つ魅力か何かなのだろうか
 我聞は思わずずずっと後ずさりをするが、それに合わせるかのように陽菜は身体を動かし我聞に近づく
 「(え? え? えぇっ!??)」
 コタツを出る以外、もはや逃げ場のない我聞だったが、足が何かに絡め取られているのか抜けない
 それが陽菜の足の所為だと気づくのに、相当の時間を我聞は費やした
 「あ、あの・・・・・・こ、國生さん? だ、大丈夫?」
 「ですから、陽菜、と呼んで下さい」
 我聞がのけぞると、陽菜は更に近づく
 この尋常じゃない状態と状況に陽菜は何かに酔っているのではないかと我聞は思った
 が、陽菜は一切のアルコール分を口にしてはいないし、七草粥は当然ノンアルコールだ
 つまり、陽菜は素面で正気のはずなのだ
 なのに今の彼女は、どこか頭のネジがはずれてしまっているかのようだ
 我聞は必死に抗おうとするが、何故か身体が金縛りにあったように動かない
 「・・・社長、お願いがあるんですけど・・・良いですか?」
 
 陽菜は今まで得てきた『誘惑』と呼べそうなドラマや小説のシーンを必死で思いだし、総動員して行動に移していた
 あくまでこの行動は罰ゲームなのであり、優さんに約束と言われて渋々やっているのだと自分自身に言い聞かせながら
 それでも何故か、いつもなら出来そうにないことを今の自分は平気でやってのける
 ・・・・・・何だか自分自身が恐かった、それでも止まらないのは本当に何故だろう

 「お、お願い・・・?」
 「はい、お願いです」
 甘く優しくとろけそうな陽菜の声に、我聞は本当に呑み込まれてしまうのを必死でこらえていた
 普段の彼女では有り得ない、そんないつもの陽菜とのギャップがここまで我聞を追いつめているのかもしれない
 我聞はもはや寝転んでいるに近く、陽菜はそれに覆い被さるような形でいる
 周りにいた果歩と優さんは歓声を上げることなくただごくりと息を呑み、最後の良心で珠と斗馬の目を手で覆った  
 「お、お願いをき、聞く前に、う・・・上からどいてくれないかな?」
 「どいたら、聞いてくれますか?」
 我聞の背筋がぞくぞくっと震え上がった、おかしいのは頭でわかっているのに・・・もう雰囲気で呑まれてしまっているのだ
 「あ、あれでしょ・・・? 優さんの開発費を300万円程増やしてほしい、って」
 「・・・・・・。そうですね」
 「じゃ、じゃあ本人の口から言わなきゃ。ほ、ほら、ねぇ・・・?」
 我聞が助けを求めるかのように優さんの方を見たが、その本人は素知らぬ顔でいる
 と、横に逸れた我聞の顔を、陽菜はぐいっと真っ正面に向けさせ、更に迫った
 「・・・私の方からお願いしているんですよ? 今は、優さんは関係無いでしょう?」
 それは陽菜の嫉妬心からきていたのかもしれない、我聞は声を失った
 「社長、私のこと、一度で良いですから、名前で呼んで下さい」
 「・・・・・・名前?」
 「はい」
 「・・・・・・」
 陽菜の目は真剣そのものだが、我聞は何も言わない
 それどころか、我聞は無理矢理起き上がり、覆い被さっている陽菜と身体がどれだけ密着しようが構いもしなかった
 完全に上体を起こし、陽菜は我聞の腹筋の辺りに座り、ほぼ全身を密着させている形になった
214前スレ272:2006/01/07(土) 02:13:41 ID:+/rVNuf6

 それから、我聞は空いた両手で目の前の陽菜の両頬をぱしんとはさんだ
 周りはあっけにとられ、今度は陽菜の方が呆然としている
 「大丈夫、『國生さん』?」 
 「・・・・・・はい、すみませんでした」
 どうやら正気に返ってくれたようだ、我聞は安堵した
 それから陽菜の細い腰を持って、ゆっくりと自分の腹筋から隣に降ろした
 「・・・はい。これで終わりで良いですね、優さん?」
 「あ、あ・・・うん」
 我聞はうんうんと深く頷き、陽菜の方を見た
 「・・・えっと、社長・・・」
 「いや、いいよ。そろそろ寮の方に帰ろう、送ってくから」
 我聞はまだ呆けている陽菜の手を取り、コタツから立ち上がらせた
 そして、陽菜が着てきた上着を取り、ぱさりと両肩に掛けてあげた
 周りは口出すことも出来ず、そのまま玄関に向かう2人を追いかけることさえ忘れていた

 ・・・・・・
215前スレ272:2006/01/07(土) 02:14:37 ID:+/rVNuf6

 2人は何も言わず、陽菜の部屋がある寮の方へと戻っていた
 工具楽家を出てから、2人は本当に何も言わなかった
 
 我聞と陽菜が寮の2階への階段の前まで来ると、ようやく陽菜の方が口を開いた
 「社長、先程は本当にすみませんでした」 
 深々と頭を下げ、陽菜はそう謝罪した
 「いや、本当にいいって」
 我聞は頭を上げるように言うと、陽菜は素直に頭を上げた
 ふっと2人の目が合い、陽菜は背筋が伸びきっていない状態で固まった
 ・・・どちらもその目を逸らすことなく、ただお互いの目の中を覗き合っていた
 「・・・・・・やっぱり、おれは今の國生さんの目の方が好きだな」
 「・・・え?」
 「さっきはさ、こう・・・色っぽいって言うより、何かに飢えてるみたいな目だったんだ」
 「飢えてる、ですか?」
 「うん、言葉は悪いかもしれないけど、そんな感じだった。なんかこのままだと食べられちゃいそうな・・・」
 陽菜はまた呆然としていた、自分が・・・飢えてる? 何に?
 「・・・なんか、朝から迷惑かけちゃったみたいだね」
 「い、いえ、本当に呼ばれて楽しかったんですよ!?」
 「うん、ありがと」
 我聞は笑うが、陽菜は叫びたかった
 違う。本当に、本当に楽しかった。だけど、・・・・・・
 「じゃ、また」
 我聞がくるりと踵を返し、自宅の方へ戻っていく

 どんと背中から何かにぶつかった
 振り返るまでもなかった、陽菜だった
 「・・・社長、本当に楽しかったんです」
 「うん」
 「朝早くても、社長に呼ばれたことが、本当に嬉しかったんですよ」
 「うん」
 「嘘じゃないんです」
 「うん、知ってる」
 くるりと我聞は陽菜の方を向いた
 「だって、こんなことで國生さんが嘘なんかつくはずないだろ?」
 「・・・社長・・・」   
 陽菜はぎゅっと我聞に、今度は正面から抱きついた
 我聞は少々驚き、ぽりぽりと自分のあごをかいていたが、それからそっと背中の方に両腕を回した
 
 もし私が本当に飢えているとしたら、それはきっと・・・・・・

 我聞は自身の腕の中の陽菜を見てから、ふと灰色の空を見上げた
 空気がいつもよりも張り詰めている、きっと雪が降るのだろう
 そう思って間もなく、上空から何かが降ってくる気配を感じた
 「・・・ほら、陽菜、雪」
 ふっと陽菜が我聞と同じ様に顔を上げると、ふわりふわりと羽毛のような氷が降りてきた
 
 ・・・・・・私の名前を呼んでくれる愛しい人

 陽菜はまた顔を伏せ、更にぎゅっと我聞を抱き締めた
 我聞はそれに、嫌がることなく応えてくれた

 ・・・今だけでも良いから、もう一度名前で呼んで下さい・・・

 「陽菜」
 
 我聞の声は灰色の空に溶けて消えた
216前スレ272:2006/01/07(土) 02:18:51 ID:+/rVNuf6
以上で投下を終わります。
割と短い話の方が書きやすいようで、同時にこういう展開は何度目だろう。
相変わらず各キャラの性格はこれで大丈夫だったかと不安になります。
何しろ、最終話を除いた9巻分を丸々読んでいないものですから、どうにも気になります。
また何かそういったご指摘や誤字脱字がありましたら、どんどんお願いします。
では、読んでくれた皆さん、ありがとうございました。また一読者に戻ります。
217名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 11:20:42 ID:kUJKikVo
GJ
218前スレ272:2006/01/07(土) 11:48:24 ID:6UTXHLJr
恒例のミスを幾つか見つけてしまったので脳内修正願いますorz
>>207
最も果歩や斗馬なら〜〜の上の空白(改行)は余計でした。すみません。
>>209
陽菜の妄想内の台詞
『う・・・

『う・・・』
に。
>>211
中之井の台詞
「なに、今上の皆が集まっての新春ゲートボール大会じゃ」

「なに、近所の皆が集まっての新春ゲートボール大会じゃ」
に。

お恥ずかしい限りです。他にありましたらご指摘願います。
219名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 01:19:12 ID:6oezoLhO
いいなぁ
藤木さんのブログで番外編今3Pまでアップされてます
俺たちの壊し屋はまだ壊れてないぜ!!!
220名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 10:45:24 ID:9g9KwXNk
そのブログどこにありますか?
221名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 10:54:17 ID:5bbwr+rf
>>220
「藤木屋」で検索汁!
222名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 11:43:22 ID:vYwVYS/a
つーじぃ×かなちんで一本抱えてるものの、
ROM歴4ヶ月でうPを迷う漏れが来ましたよ。
ブログ読んだら、最終巻のおまけを読む迄
待った方が良さ気な予感。

…これはやっぱり半年ROMれと言うお告げか。
223名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 13:38:32 ID:PKz1JFFA
>222
ここは一つ投下してしまおうぜ!!
224名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 20:10:29 ID:QNUyPUJ6
ほしゅ
225名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 20:12:20 ID:QNUyPUJ6
浮上しとく
226前スレ131:2006/01/09(月) 22:25:17 ID:OuYlIhlX
どうも131です
予告より2日遅れました。スミマセン
これから投下します。
227前スレ131:2006/01/09(月) 22:27:05 ID:OuYlIhlX

〜合宿1日目〜
佐々木の思いつきにより冬期合宿に行くこととなった、卓球部一行+番司+鬼怒間。
彼らは集合場所である、学校に集まることになっており、今は住、天野、鬼怒間、長部、、番司、中村、の7名が集まっていた。
そして、佐々木がやってくる。
「おーす、みんなおはよ。そして國生さ・・・あれ?國生さんは何処に!?まさかまだ来てないなのか!?」
本気で狼狽える佐々木に天野がいつもの調子で答える。
「あ、るなっちなら、くぐっちと一緒に工具楽屋で待ってるってさ。朝、電話があったよ」
「な、なな、なあぁぁにいぃぃぃっっ!!!」
相当ショックを受けたらしく、絶叫する佐々木に、
「うるさいっ!!」
「ぐはっ!!」
上段回し蹴りという形で天野のツッコミが入る。
「あんたねえ、まだ朝の8:30なんだよっ!
近所迷惑でしょ!!
だいたいねぇ・・・」
倒れ伏す佐々木を指さしながら、まくしたてる天野を、
「そのくらいにしときなよ」
と、住が止める。
「まったく・・・」
未だ怒り足りないようだが、仕方なくおさめる天野。
怒っていたせいだろうか、顔が赤くなっている。
そんな天野を見て、意味深にクスクス笑う、住、鬼怒間。
「な、何で笑うのよっ!!」
「ううん。別に、何でもないけど?ね、会長さん」
ニヤニヤしながら鬼怒間に振る。
笑い続けながら鬼怒間もそれに合わせる
「ああ、全くもってそのと」
「おーい!!」
つもりで言いかけた言葉を遮られる。
「すっ皇!?」
驚きで裏返る声。
「おお、なんだワシは最後か。皆早いのう」
そう言って何気なく、鬼怒間の隣に立つ。
ぬっと現れた、たくましく鍛えられた二の腕の筋肉にビクッと跳び退く鬼怒間。
「うわっ!!」
「す、すまん鬼怒間」
それに気付いた皇は急いで謝る。
「き、気にするな・・・」
辛そうに、残念そうに言う鬼怒間に、お返しとばかりに天野が言う。
「カイチョーさんも大変ですなー」
「筋肉嫌いなんてねー」
なにげに便乗する住。
そんな女性陣のからかい合戦を前に黙してきた中村が口を開く。
「・・・そろそろ行かないか?」
「そうだな。ところで誰か工具楽屋の場所知ってんのか?」
復活した佐々木が誰とも無く訊く。
はい、と番司が手を挙げる。
「俺、何度か行ったことあるんでわかります」
「よし!じゃあくぐっちとるなっちの待つ工具楽屋へしゅっぱーつ!!」
天野が景気良くそう言って、一行は工具楽屋へと向かう。
228前スレ131:2006/01/09(月) 22:29:35 ID:OuYlIhlX

一方、工具楽屋では。
「すんません優さん、中之井さん。いくら仕事が減ったからってこんなこと頼んじゃって・・・」
「気にしないで下さい社長。道具は使うためにあるもの。
仕事用で使えないからと言って、しまっておくよりはこういう事に使ってやる方がこいつも喜びますわい」
そう言って愛車のトラックをパンと叩く中之井。
「そうそう。中之井さん最近本業で運転する機会無かったから、いざって時に腕落ちてたら困るし、調度良かったくらいだよ〜」
流石に、優一人で合宿参加者(とGHK)全員を車で運ぶのは無理なので、中之井のトラックで男子を、優の借りてきたレンタカーのワゴン車で女子を運ぶ手筈になっていた。
「優君!ワシの『イギリスの狂犬』とまで言われたテクニックはそう簡単には錆びたりはせん!!」
ムキになって言い返す中之井。
「あれ?前言ってたのと違うような・・・まあいっか。
それより我聞君、風邪、大丈夫?」
「ハイ!もう完璧に治りました」
自分の胸を左拳で叩いて自信たっぷり言う我聞。
「なら良し。それにしても、陽菜ちゃん遅いなー」
「確かに。あの子なら必要最低限の準備ですぐ終わりそうなんですが」
ぬっと現れた辻原。
「うわっ!」
「あ、辻原さん。お早うございます。どうしたんですか?」
「お早うございます。私も仕事に余裕ができたので見送りにと思って。」
辻原の職務は営業。
仕事不足の時こそ忙しくなるはずなのに、何となく胡散臭い。が、胡散臭いのはいつものことなので置いておく。
そして我聞は何気なく空を見上げて一言
「それにしても國生さん遅いな・・・」

そんなとき陽菜は、あせあせと準備した物の確認をしていた。・・・果歩と一緒に。
なぜ果歩がここにいるのかというと、勿論GHKの作戦の一環。
出掛ける直前の陽菜に少しカマを掛けてみようと言うことである。
ちなみに、我聞は今陽菜の部屋に果歩が居ることを知らない。
さあ、どんな事を言ってやろうかという心情の果歩に、逆に陽菜が話しかける。
「果歩さん」
「ふぇっ!?な、何ですか!?」
完全に自分から話しかけるシチュエーションを予定していた果歩は少し焦る。
「もう準備も完璧ですし、下で社長たちも待っているようなのでそろそろ出ようと思うのですが・・・」
「そ、そうですか?まだ少し足りない物が・・・」
まだ目的を果たしていない果歩は引き下がる。
「そうですか?私の必要な物は全て用意できたと思うのですが」
229前スレ131:2006/01/09(月) 22:32:49 ID:OuYlIhlX
引き延ばすのは無理、早期決戦が望ましいと決めた果歩は無理矢理、話をそっちに持っていく。
「あ、そーだ陽菜さん、武文さんにも言われてたみたいですけどお兄ちゃんの事、どう思います?」
「え?社長、ですか?」
突然の質問に戸惑う陽菜。
「そうです、お兄ちゃんですよ。
武文さんに陽菜さんをお嫁に貰ってほしいって言われて、きっとお兄ちゃんの方は陽菜さんのこと結構気にかけてると思うんですよ」
無論、果歩はそれはないと思っている。
いずれはそうさせるつもりだが、今はまだ無いだろうと言うのが彼女の客観的意見だが、それでは話が進まない。
「社長が、私を・・・ですか?」
「そうですよ、でも陽菜さんはどう思ってるんですか?」
「え、その、私は・・・社長は、少しだけ・・・少しだけですよ、その、頼りになるかなと、でしょうか・・・」
そんな陽菜の反応に満足して引きの一手を放つ果歩。
「そうですか、じゃ今回の合宿、楽しんできて下さいね」
そう言って果歩を見送る。
陽菜は玄関先で笑って手を振る果歩に、どこか違和感を感じながらも、笑い返して下へ向かっていった。


そして約30分後、区具楽屋脇の道にはワゴン車一台、トラック一台、そして卓球部一同+αが揃っていた。
陽菜が運転役の中之井と優を紹介する。
「こちらが、男子の乗るトラックの運転してくれる、専務の中之井千住さんです」
「中之井です」
微笑みながらそう言って一礼する中之井。
「で、こちらが女子の乗るワゴン車の運転を担当する・・・」
「森永優でーす。あ、私のことは『森永さん』じゃなく、『優さん』て呼んでいいからね〜」
軽く挨拶する優。
「じゃあ乗りましょうか」
中之井の一言で、ぞろぞろと乗り込む一同。
そして何気に乗り込むGHK(ワゴン車:果歩 トラック:珠、斗馬)
二台の車は発車した。

車内にて〜ワゴン車・女子編〜
合宿先である雪蓑旅館へと向かうワゴン車。
勿論、旅の道中車の中、この人数いればそれなりに話も進む。
そして行き着く先は色恋沙汰。
「結局、会長さんは皇先輩と、どこまでいったんですか?」
そう訊くのは一年長部。
「あ、私も気になる〜
キスとかしたんすか?」
天野が続ける。
「な!キッ、キスだと!?
そ、そんな不埒な事など・・・それにまだ・・・」
「告白もまだみたいですね。ところで陽菜さん、すめらぎさんってあの、筋肉の凄い人ですか?」
一番後ろの座席のさらに後ろにいた果歩が訊く。
230前スレ131:2006/01/09(月) 22:36:13 ID:OuYlIhlX
「はい。以前は卓球部の部長を務めていた方で・・・って、か、果歩さん!?
何でこの車に!?」
助手席で驚きを隠せない陽菜。
「え、るなっちこの子誰?」
「あ!ひょっとして工具楽君の・・・」
「・・・はい、社長の妹さんで・・・」
「工具楽果歩、中学2年生です。初めまして!」
陽菜の言葉を途中から引き継いで挨拶する果歩。
「かわいい〜。ねえ、何でこの車に乗ってるの?」
住が陽菜と同じ事を訊く。
「え?あ、それはですね、せっかくだからお兄ちゃんと、家族同然の陽菜さんをお見送りにですよ!」
家族同然と言う言葉を強調して喋る。
すると、
「ほほーぅるなっち〜面白そーな話だね〜。
詳しく聞かせてもらお〜かな〜」
ニヤニヤと天野が問いつめる。
「そ、それは・・・」
答えに詰まっていると、優が追いつめる。
「それだけじゃないよね、陽菜ちゃん。
陽菜ちゃんのお父さんね〜」
「ゆ、優さん!?」
優の言わんとしているある事件がわかった陽菜は焦る。
「なになに?何があったんですか!?」
何かとても興味をそそりそうな話題がでそうだと予感した天野は深く聞こうとする。
そんな様子を視認した果歩は、ニヤリと笑みを浮かべると、住に話しかける。
「あの〜確か住さんででしたよね」
果歩の計画はこうだ。
まず、女子の車に乗り込む。
そして、陽菜に少しでも我聞を意識させるためのちょっとした悪戯を仕掛ける。
そしてその間に、部内の恋愛模様に詳しい人物に接触、GHKの協力者になってもらおうと言うもの。
そして白羽の矢が立ったのが、住友子だった。
果歩は手短にいくつかの質問。
そして、彼女が役に立つと判断すると、簡単にGHKについて説明。
すると、
「おもしろいこと考えてるね〜
いいよ、私も手伝ってあげる。
その代わりにさ、・・・・・」
との返答。
住は小声で自分の考えを果歩に告げる。
それを聞いた果歩は、計算を開始する。
(それをすれば、少なからずGHKの得になる。行動すべき事も今までと殆ど変わらない。
なら、これはOKしておいた方が得かな・・・)
結論は了承。その旨を住に伝える。
今住は、GHKの心強い協力者となったのだった。
231前スレ131:2006/01/09(月) 22:39:34 ID:OuYlIhlX
以上です
ああ、投下も進行も遅れまくりです。
まさか、到着もしないとは・・・
次回はもっと早く指が進められるよう頑張ってきます。
(仕事始まったんで結局遅れるかもしれませんが・・・)
232名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 00:35:59 ID:ROzXhNVj
>>131
GJ! 焦る國生さんがいい感じです、続き期待してますよ。
233名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 08:23:13 ID:OQKq7TVN
そろそろ、499さんこないかな〜
234名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 10:51:57 ID:FrAe3SW+
だから請求するような書き込みをするなと小一時k(ry
235名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 13:24:37 ID:4Gp8GQ+s
>>233
気になる人は499さんの自サイトいきなさい
ちなみに今499氏はハ〇テのほう書いてるみたいやからこっちの投下はしばらくないと思われる

もう催促はやめよう
236名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 11:41:10 ID:oHZJfCtl
131氏
GJです。
237名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 11:41:26 ID:dB83Ht7F
499氏の自サイトってどういくの?
238名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 20:04:06 ID:l0NebSkx
自力で探せ。
239名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 21:06:26 ID:+eJgOCFT
前スレのログがあれば探せると思う
240名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 11:50:32 ID:Ps42zlAC
携帯だから過去ログみれなかった・・・
241名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 00:07:31 ID:sIspeSnE
しかし投下が途切れていてちょっと寂しいね
242名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 01:29:58 ID:uz/29aaW
水曜発売の9巻にネタになる巻末オマケとか来るかもだし、とりあえずそこに期待ですかねぇ・・・
243名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 21:58:21 ID:3pwbqx32
唐突に過疎ったな
244名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 22:35:50 ID:iNq+zEaX
なんだかなぁ…
さびしぃのお

とりあえずブログで我慢
245名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 22:44:07 ID:MBPpdyra
確かに最近寂しいですね

少し前の爆撃のようなss投下の嵐が懐かしいですね

まあ自分も投下してたけどね
246名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 23:22:19 ID:sIspeSnE
499氏がハ〇テ投下し終わったらまた書いてくれるんじゃないですかね
まぁマッタリといきましょ
247名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 18:15:47 ID:MDp5YL4y
つ「嵐の前の静けさ」
248名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 01:07:11 ID:P1ANNUgo
つ津波の前の引き潮
249名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 01:21:27 ID:PiUJRA6H
ヒント:もうすぐ9巻発売
250名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 02:08:49 ID:eAdavRIE
もうすぐってか、今日発売だけどな。みんな一緒に萌え転がろうぜ。
251名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 14:44:44 ID:9ghY5yGF
朝一に最新刊を買って職場で隠れて四だオレが来ましたよ
おまけが最高でした!
252名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 16:54:51 ID:RNyJZ/KD
>251
かなちんがおまけで出ないと言うのはマジ?
俺が最終巻を買う意味の8割が消えて無くなる訳だが……
253名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 17:36:02 ID:9ghY5yGF
確かにかなちん出てなかったね
けどおまけには四コマの他に、短いながらも三年後の話があったから買ったほうがいいかも?
254名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 22:45:05 ID:bRrc4Yf+
サブキャラのSS見たい…
255名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 23:49:38 ID:47LM3OhU
おまけ漫画のラスト見て、なんか満たされてしまった気がする
いろんな書き手の人が書いてくれたその続きにあるような、
やっぱり誰の書いたものとも違うオリジナルの結末があるような

すげー萌える(この言葉を使うの恥ずかしいけど他に言葉がない)んだけど、
エロに繋げるのは苦しい話な気がするわ

それでも期待するけどな、SS書きの人、カモーン!
256名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 01:13:57 ID:sjEmT8nJ
津波待ち
257名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 07:30:19 ID:ZdMGi0SC
桃子はまだ我聞を狙っているのかしら
258名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 23:06:35 ID:9AjVb3mR
なんか寂しいな…
壊し屋最終巻がでたことだし、カップルリクエストしつつ簡単に語り合いませんかね

自分的には辻×かなちんがラストに出なかったのが非常に残念ですが。逆に職人さんがどう料理してくれるか楽しみでもありますね
259名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 00:45:28 ID:KcjU8d28
最終巻のおまけは凄かったな、一面ラブ展開w もうね、藤木先生は神すぎです。
ただやっぱりかなちんが出なかったのは寂しいな。あとその他こわしやの面面とか。
雪見さんかむばっく。
260名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 19:41:46 ID:trTZ7Qbr
どうも、>>222です。
最終巻を読んで改めて全巻読み返し、何だかエロ無関係に
同人一冊出来そうな中身に身悶えてます。ああっアレもコレも
出来たに違いないのに!…連載読んでた時も強く思いましたが
打ち切りって無情ですね。おまけが良かっただけに尚更残念です。
さて、此処の過疎っぷりが寂しいので、お目汚しではありますが、
職人さん達がお出で下さる迄の場つなぎに、以前言ってた
つーじぃ×かなちんをささやかに投下します。
2611/4:2006/01/20(金) 19:42:37 ID:trTZ7Qbr
 「おや、珍しいですね」
 包帯塗れで、辻原蛍司は笑みを浮かべた。
 それをきり、と睨み付ける、スーツ姿の静間かなえ。
 「今日はこわしやの会合があって出てきた、そのついでです。別に、
  貴方なんかの見舞の為に、わざわざ来た訳ではありませんから」
 「照れなくても良いですよ、かなちん☆」
 「なっ!」
 怒りかけるかなえをいなす様に微笑して、辻原は伊達眼鏡のブリッジを
 押し上げた。
 「見舞時間のとうに過ぎた、こんな夜遅くに権限使って来るなんて、
  わざわざで無くて何なんですか?」
 「…っ」
 「私は嬉しいですけどね」
 「!」
 顔を赤くするかなえに、軽く目配せして。
 「こんな処で、何もお構い出来ませんが」
 「…怪我人に構って貰おうとは思ってません」
 ごにょごにょした小声の返事にそうですか、と辻原は軽く相槌を打って、
 動く方の手で近くのサイドチェストを漁り、林檎とナイフを取り出した。
 そのままベッドに付いたテーブルを引き寄せて、ギプスで固められた手で
 林檎を押さえる。
 ぎょっとなったかなえの目の前で、辻原のナイフがさくり、と林檎に入った。
 「ちょ…!何する気?!」
 「御覧の通りです」
 「ま、待ちなさいよ!」
 「折角お出で頂いたのに、もてなせないのもあれですから」
 言葉が続く間もナイフは林檎を四つ割りにしていく。
 「と…!」
 しゅるる、と水の糸が伸びて林檎を奪い取り、宙で皮が剥かれ、更に
 チェストに置かれていた皿にとととん!と並んだ。
 「…もう」
 かなえの手から伸びていた水糸が、空に消える。
 空気内の水分を抽出した、高度な水使いならではの、仙術。
 「相変わらず、お見事ですね」
 微笑する辻原を、かなえはむっとした顔で見返した。
 「あてつけがましいのもいい加減にして下さい。剥いてくれと言えば剥きます」
 「いえいえそんな。有難うございます、かなちん☆」
 「なっ…!貴方ってひ…」
 激高しかけて、目を逸らし、彷徨わせ、それから、
 −俯く。
 「…?」
 薄暗がりの中、心持ち、頬が赤いような気が−
 そんな事を辻原が思った時だった。

 「…ってひとは…っ」

 絞り出す様に、小さな、声。
 「どうしたんです、かなちん?」
 「馬鹿…っ」
 かなえの肩が、小さく震えてるのに気付く。
 「?!」
 その頬から、しずくが、一つ、二つ−
 かなえは、泣いていた。
2622/4:2006/01/20(金) 19:43:16 ID:trTZ7Qbr
 「かなえさ…」
 「…馬鹿よ…っ…馬鹿っ…」
 上げた顔が涙に濡れて。
 「貴方が消息を絶った、と聞いた時、信じられない位、苦しかった…貴方が、
  この世に居ないかもしれない…そう、考えるだけで、息がつまりそう
  だった…そんな自分に、自分で驚く程」
 「…」
 「気が狂いそうな位、貴方を恋しく思う自分が悔しくて、準備に没頭し、
  壊滅作戦立案に没入したわ…でも、気が緩めば考えるのは、貴方の絶望的な
  迄の安否」
 「…」
 「何時の間に、こんなに貴方が…っ」
 かなえは、両の手で己の顔を覆った。
 後は、全て嗚咽。

 「かなえさん…」
 「嫌!」

 辻原の、伸ばした手が、振り払おうとした、かなえの腕を掴む。
 「!」
 そっと、引き寄せる力に、抗う事無くかなえは従った。
 二人の身体が、間近くなって。
 「…そんなに心配させて、すみませんでした」
 「…っ」
 「こうやって、生きて帰ってきた事で、許して貰えませんか?」
 静かに笑う、辻原。
 「…」
 ふい、と目を逸らすかなえ。
 「それでは、貴女の流してくれた、綺麗な涙のお詫びに」
 す、と男の唇が、かなえの唇を塞いだ。
 「!」
 かなえの身体が一瞬堅くなり、そして−受け入れた。


 「…これで、許して貰えますか?」
 「…駄目、です」
 消え入りそうな声が、返る。

 「もっと…謝って下さい」
 「…はい。かなえさん」

2633/4:2006/01/20(金) 19:44:04 ID:trTZ7Qbr
 「…っ」
 舐る様に舌を絡め合い、互いを貪るような、長い長い、キス。
 「…っはぁ…」
 息を付いて離れた唇の間を、つ…と糸が引いて落ちた。
 だらしなく、小さく開かれた、かなえの唇を、もう一度だけ吸ってから、
 辻原はその手をブラウスごしの乳房に這わせた。
 「!」
 びくり、と小さく動く肩を、ギプスの腕でかい込む様に抱いて。
 「…ひょっとしなくても、初めてですか?」
 言いながら、乳房に這わせた手指を、探るように、その頂点に動かしていく。
 「…っあ」
 こり、と固い部分に中指が触れた瞬間、かなえの身体が震えた。
 そのまま、辻原の指が、そこを摘まむ。
 「あ…っ…!」
 爪の先に込めた力に合わせて、かなえの身体がびく、びく、びく、と
 しなった。
 呼気に近い声が、強くあがるのも構わず、辻原は己の唇を、かなえの
 耳たぶから、首筋へと這わせる。
 「あ…は…あ…ああ…」
 ふるふると小さく震える身体を抱く様にしながら、ブラウスの隙間に手を
 さし入れて。
 「あ…っ、や…っ」
 つ、と簡単にさし入れた処のボタンだけが外れて。
 「…っやっ」
 入れた手でくい、とブラを下ろす。
 「…っ」
 大きな手が、乳房を掴み、
 その指の隙間が、乳首を挟んで、
 ぎゅ、と揉みしだき−
 「…ああ!」
 指先が、尖り切って固い乳首を弄び、
 「…あ…は…あ!」
 くい、ときつく摘まみ上げた。
 「…ん?」
 己の腕に触れる手を感じて、辻原はかなえを見た。

 乳首を弄ぶ手を、押し留めるようにしながら、
 顔を真っ赤にして、目を潤ませ、彼女はこちらを見つめていた。
 噛み締められた唇で、必死に首を振っているのは−

 「…本当に止めて欲しいなら、言葉でどうぞ。或いは」

 言いながら、再び乳首を捻る。
 「あ!」
 ぐい、と仰け反り、そのまま辻原の腕にしがみつく、かなえ。
 「お得意の、仙術で」
2644/4:2006/01/20(金) 19:44:46 ID:trTZ7Qbr
 「…っ」
 ぐりぐりと捻られていく、固い肉粒の先から伝わる痺れに、がく、がく、と
 身体が動く。
 「は…っあ!あああ」
 ぶるぶると震え出す、腰。
 「ああああ…っ」
 「どうしました?」
 「あああ…っあ…ああああっ」
 ぎゅ、と固く閉じられた内股が、がくがくと動き。
 「は…ああ…あああ…ああああ…っ」
 辻原の指は止まらない。
 「…どうしたんです?」
 「あ…」
 頭を震わせて、かなえは辻原を見た。
 「は…早…く…っあ…ああ…っあああ」
 全身を震わせて。
 腰を擦り付ける様に蠢かして。
 「ああっ」
 辻原は、小さく笑った。
 「…私は怪我人ですよ?」
 「…っ」

 かなえはそのまま、
 がば、と男に抱きついて、
 噛み付く様に口付ける。

 「んむ…んん…」
 縋り付く様な、ねっとりとした、媚びたキス。
 辻原は、目だけで笑うと、乳房を弄んでいた手をスカートに滑り込ませた。
265名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 21:02:09 ID:Jc9xb03H
ヤター
辻かなちんだ〜
GJです
266名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 22:22:19 ID:x79e4B6i
低脳キタ―――(・∀・)―――!!
267名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 23:22:26 ID:VuITHRtJ
GJ!
本編でツジ×カナ分が無かったからこそ、こうして読めるのがあり難いですな、
続きも期待します!
268重ね当て:2006/01/21(土) 01:12:26 ID:IP8IIsAt
おう!!辻×かな
来たか!GJ
首を長くして待っていたよ!
269前スレ131:2006/01/21(土) 08:55:58 ID:Iw5tTW4o
昨日やっと9巻読めました。
ホントにおまけ凄い良かった。本当に・・・
それで、これまで書いてたのの続き書くべきか悩んだんですけど、ケジメはきっちりつけたいので書こうと思います。
読んでくれる人は、ストーリーの後の話だけど、9巻のおまけと違うifの話として読んでいただけたら幸いです。
それでは>>230の続きをどうぞ。
270前スレ131:2006/01/21(土) 08:57:59 ID:Iw5tTW4o

車内にて〜中之井さん愛用トラック・男子編〜
中之井さんのトラックで運ばれる男子一同。
こちらの車内での会話は、卓球関係か、皇、佐々木、番司が、陽菜を賛美することの二つに、と言うより二組に絞られる。
我聞と次のインターハイについて普通に話していた中村。
そんな彼はふと我聞の後ろの机に目をやる。
するとその下には、小さな人影が二つ屈んでいる。
ぎょっとした中村は、一度眼鏡を取り、目を擦り、もう一度眼鏡をかけて、同じところを見てみる。
やっぱり居る。
そんな中村の挙動を不審に思った我聞が声をかける。
「どうした中村、何かあったか?」
「なあ我聞」
未だ声に困惑の色が混じっている中村。
「後ろの、誰だ?」
言われ、後ろを振り向く我聞。
そこに居たのは、
「なっ、珠!斗馬!何で!?」
「兄ちゃんの見送りに。珠姉ちゃん、見つかったよ、起きて」
斗馬が答え、隣で寝息をたてている珠を揺さぶる。
「まさか、果歩も来てるのか?」
「ううん、果歩姉ちゃんは陽菜姉ちゃんたちの車」
陽菜姉ちゃんと言う言葉に、ピクリと佐々木と皇が反応し、少し離れたところで『國生さんについて・何が可愛いか』の談義を放り出して我聞に問いつめる。
「おい我聞!!國生さんのことを」
「姉と呼ぶこいつ等は何者だ!?」
息ピッタリな二人を見て、自分もさっき似た質問をしたことを思い出す中村。
「そうだった、この子等誰だ?」
さっきの会話で大体の予想はつくのだが。
「あ、この二人は俺の兄弟。寝てるのが妹の珠。小四で、小さい方が弟の斗馬。小二」
と説明を終えた我聞を問い続ける佐々木、皇。
「そんなことはどうでもいい!」
「俺達が聞きたいのは、何故國生さんを姉と呼ぶかだ!」
「え、何でだろ・・・強いて言うなら、いつの間にか、だったような気が・・・」
自分も疑問符を浮かべながら答える我聞。
「いつの間にかだとぅ!!」
「つまり、自然に!?・・・ぁぁワシも國生さんを姉と呼び慕ってみたい・・・!!」
「俺もだ・・・」
最後には番司まで混じってテンションをあげる三人。
「佐々木と先輩は年下じゃないだろう」
そこに冷静に突っ込みを入れる中村。

男子の車はとても賑やかに進んでいくのだった。

271前スレ131:2006/01/21(土) 08:59:55 ID:Iw5tTW4o


午後5:30旅館に到着。
かなり長い距離だったので、初めは楽しくやっていた部員も運転手もGHKも皆、かなり消耗していた。
「よし、着いたっ!うおぉっ寒いっ!雪が積もってる・・・!」
「陽菜さーん!大丈夫ですかー!!」
「雪が沢山!!斗馬、雪合戦だー!」
「受けてたちましょう姉上!」
仙術使いと小学生は別だが。
「うう、何であいつ等あんな元気なんだ?」
「俺が、しるか・・・」
へろへろな佐々木が、中村に聞くが、勿論明確な答えは返ってこないのだった。

話し合いの結果、受付へは、体力のあり余っている我聞が行くことに。
しかし我聞一人だと心配なので、陽菜がついていくことになり、佐々木がついて行くと言いだし、更にお目付け役として天野の4名で行くことになった。
4人が受付に行くと、カウンターの反対側では受付らしい人物が本を読んでいた。
顔は本に隠れて見えないが、どうやら二十歳くらいの青年のようだ。
「すいません、予約を入れてた佐々木ですけど・・・」
佐々木が声をかけると受付の青年は、
「はい」
と返事をし、本を閉じ、顔を上げた。
「あっ!?」
陽菜、番司が声を上げる。
「お?」
カウンター越しに青年も目を丸くする。
「何?二人ともこの人と知り合い?」
「バカ!工具楽、忘れたのか!?」
「えっ!?俺の知ってる人!?」
「そうです!失礼ですよ!!」
ボケる我聞に叱る番司と陽菜、
「ま、俺って地味だしね〜」
などとにやつく青年、そして完全に蚊帳の外な佐々木と天野。
青年は、ボサボサな髪、どちらかと言うと柔和そうで綺麗な顔をしていた。
我聞は必死に自分の記憶をたどる。
番司と陽菜、そして自分の接点は高校と、壊し屋。
・・・おそらく後者だろう。
番司と陽菜と自分の、壊し屋関係での知り合いを思い出していく。
暴走してた船の人・・・違う。
では三研襲撃したときの・・・
「あっ!!」
記憶の中に青年の姿を見つけた我聞は声を上げる。
やっと思い出したのか、と言う表情の陽菜、番司。
にやけた顔のままの青年。
「西音寺進さん!!木の仙っっっ!!?」
仙術について口走りそうになり、ぎゅっと足を踏まれる。
「せいかーい。で、何で君らはここに?」
「高校の部活の合宿で・・・」
陽菜が簡潔に答える。
「で、くぐっちたちはこの人とどういう関係?」
会話からあぶれていた天野が尋ねる。
「ええと、仕事関係の知り合いです」
我聞ではなく陽菜が答える。
272前スレ131:2006/01/21(土) 09:02:21 ID:Iw5tTW4o
「ふーん、じゃあ静馬君だっけ?彼も工具楽屋の社員なの?」
「いえ寧ろ商売敵です」
脇で聞いていた番司の表情があからさまに暗くなる。
「そう言えば、西音寺さんは何で?」
「ここさ、俺の親戚がやってるからバイトに。最近めっきり仕事減ったしね〜」「そうですね。真芝が無くなったのは良かったんですが、仕事がないと辛いです」
陽菜が真顔でそう言う。
「はははそうだね。じゃあ部屋に案内するから、ついといで」
そう言われ、四人は後に従う。

それから数十分後。男子女子ともに部屋でくつろいでいた。
「よし、お風呂入ろう!」
女子部屋で天野が提案。
他のメンバーも賛成し、入浴と言うことに。
しかし、天野の提案が両隣の部屋の人物たちに聞かれていた事を彼女たちは知らない。
右隣、男子の部屋では。
佐々木が壁に耳をつけ、さっきの会話を盗み聞きしていた。
「佐々木、お前何やってんだ?」
「うるさい!今良いとこなんだ!」
(何?風呂?國生さんも入るのか?これは・・・)
「どうした?」
壁に顔を押しつけたまま、表情を変える佐々木を不審に思った中村が声をかける。
「何でもない。それより長旅でみんな疲れただろ、俺たちも風呂行かないか?」
「それは別に構わないが、俺たち『も』ってなんだ?」
訝しがる中村。
「い、いや、女子も疲れてるだろうから温泉に入るだろうな〜と」
「・・・それでか」
納得する中村。
「ま、まあとにかく行こうぜ、ここの温泉疲労回復に良いってチラシに書いてあったし、先輩はもう行っちゃってるし」
言われて部屋を見回すと確かに皇の姿がない。しかし、それより中村の目に付いたのは部屋の隅で顔を真っ赤にして腕相撲をしている、我聞と番司だった。
なぜそんなに元気なのだろう。
疑問に思いながらも佐々木に対しての返事を返す。
「まあ良いか。すぐ行くのか?」
「あたりまえだ!!」
「じゃ、行くか・・・我聞・・と静馬!温泉行ってるからな〜!」
膠着状態から一気に勝ちを収めたらしい我聞が返事をする。
「お〜行く行く!!」
「くそう・・・あ、俺も行きます!」
かなり悔しそうな番司も続く。
273前スレ131:2006/01/21(土) 09:03:01 ID:Iw5tTW4o
左隣、ちゃっかり泊まっているGHKの部屋では。
斗馬が、紙コップのような形のスピーカーに耳を当てていた。
それは、果歩が陽菜の荷物に仕込んだ盗聴機の受信機だった。
そこから、少しくぐもっているが、はっきりと『お風呂入ろう』と言う声が流れてくる。
「姉上、優さん!チャンスです!!・・・ってあれ?」
要であるデルタ1、2は、長旅の疲れからか寝込んでいる。
この二人が動かなければおもしろくならないので、斗馬も寝ることにしたのだった。

〜女風呂〜
「うわっ!広ーっ!!」
25メートルプールより、少し狭いくらいの誰もいない特大の浴槽を見て裸体の天野が声を上げる。
「ホントだ〜!」
鳩尾のあたりでタオルを垂らし持ち、軽く恥部を隠している住も驚く。
がらららら・・・
戸が開き、体にしっかりとタオルを巻き付けている鬼怒間と陽菜が入ってくる。
274前スレ131:2006/01/21(土) 09:09:44 ID:Iw5tTW4o
今回はこれくらいです。
例によって中途半端ですみません。
>>222さん、辻かな良かったす。
大人な二人って良いですね〜
GJですよ
読んでたらなぜか足つるくらいww

ではまた続きかけたら来ます。
それでは〜
275名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 11:23:13 ID:eDoA7JQE
GJです!
最終巻ではっきりした組み合わせもあるし、この後どう展開するか期待してまっす!
276名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 16:14:13 ID:uDAXgzQX
最新刊の9巻は既に手に入れてましたが、おまけやら何やらで色々と自己完結してしまいました。
もう書くべきこともないかとは思ったのですが、それより前から書こうとは思っていたものを投下します。
この程度の妄想ならまだいけるかな・・・
277前スレ272:2006/01/21(土) 16:15:17 ID:uDAXgzQX

 キーンコーンカーンコーンとお決まりの学校のチャイムが鳴り響く
 「起立、礼」の号令と共に挨拶を終え、教室の皆がざわざわと帰り支度を始める
 「帰りどこ寄る?」「掃除サボっちまえ」といつもと変わらないやりとりがあちこちから聞こえる
 そんな中で一段とそわそわと慌ただしく帰り支度をする女の子がいた
 「かぁーほっ、今日帰りミスド寄らない?」
 「知り合いがバイトしてるから、奢ってもらえるんだって」
 「・・・・・・。ごめんっ、先帰るから」
 友達に肩を叩かれ振り向きながらそう言う果歩は鞄のふたをぱちんと止め、ばたばたと教室から出ていった
 「・・・?」
 「まー、元々付き合いの悪い子だけど・・・」
 果歩は工具楽家の財政上、あまりこういう誘いには乗ってこない
 それでも、途中まで一緒に帰るなどはするのだが・・・まさか奢りの誘いを断るとは・・・
 「・・・さては・・・」
278前スレ272:2006/01/21(土) 16:15:49 ID:uDAXgzQX

 「あ? 何ガンくれてんだ、コラ」
 校門に寄りかかりつつ、じろじろとこちらを見てくる下校中の生徒に睨みを利かせている男
 いつの時代の不良だ、何でこんなヤツがここに、ガラ悪そう、などと見る者総てがそう思うだろう
 そんな不良男がぴくりと寄りかかるのをやめ、身体を起こす
 それだけで善良な生徒は殴りかかってくるんじゃないかとびくっと過剰な反応を示したり、そそくさと早足で逃げていく
 不良男が身体を起こしたのと同時に、何か校門に向かってどどどどどっと物凄い勢いで走ってくるのが見えた
 その姿を確認すると、不良男が「よぉ、早かっ」と手を挙げた
 瞬間、バッシィィィンと不良男の顔面にもろに鞄が命中した
 ズルッボトッと鞄が落ち、赤くなった鼻を押さえながら不良男がそれを投げた張本人に怒声を上げた
 「ってーな、何しやがるっ!」
 「うるさいパンツマン! その格好で学校に来るなっつったでしょ!」
 鞄を投げたのは勿論果歩、不良男は番司だった
 しかし不良男が「パンツマン」とは、周りが小さくプッと笑った
 耳ざとく聞いた番司が周りを睨むと、果歩が周りに見えないように番司の腹に蹴りを入れる
 それでまたぎゃあぎゃあと言い争う2人を前に、皆が訝しげ首を傾げた
 学校で五指に入る程の才女とどこからどう見ても不良の青年、一見繋がりが無さそうなこの2人を繋ぐものは何だろうか
 皆が妥当な線で考えをまとめようとした時、周囲の視線と考えに気づいたのか、果歩は番司の耳を思い切りつねり身体を引きずり走り去った
 残された生徒はただぽかんとしていた

 「ッたたた! 離せ、コラ!」
 果歩はずるずると番司を引きずり、同校の生徒がいないことを確認するとその手を離した
 引きずられちぎれてしまったのではないかと、番司は耳をさすった
 「・・・お前なぁ、いきなり何しやがるんだよっ」
 「うるさいパンツマン!」
 「その呼び名はやめろっつってんだろ!」
 2人は言い争いながらも、並んで歩き始めた
 番司の方も学校帰りらしく、よく見ると鞄を肩に担いでいる
279前スレ272:2006/01/21(土) 16:17:08 ID:uDAXgzQX

 それにしても何故、この2人が一緒に下校しているのか
 つきあい始めたのかと聞けば、2人は完全否定することだろうし、これには一応わけがあった
 こわしや協会による真芝第一研壊滅、真芝会長の逮捕と工具楽屋(株)は連続して快挙を成し遂げた
 しかし、世界有数でも真芝を潰したからといって、仙術使いを狙う組織や死の商人がなくなったわけではない
 むしろ真芝が潰れたことにより、今までなりを潜めていた者達がこの機を逃すなと勢力を伸ばそうと動き始めた 
 その時に真っ先に狙われると判断されたのが、ご存じの通り社員数10名にも満たない零細企業・工具楽屋(株)だった
 何しろ真芝壊滅時の主力ともなった我聞、反仙術の使い手である秘書の陽菜の両名が存在するのだ、脅威に思わないのがおかしい
 そして、工具楽屋(株)を狙う組織達も直接その2人を襲う程間抜けでも馬鹿でもない
 マガツのようなものがあれば別だが、真っ向から勝負するにはかなり不利だ
 狙うとすれば、今はまだ仙術の使えない我聞の家族・・・人質と将来性を見越した上で浚う
 それをエサに我聞達の身柄を拘束する
 我聞と陽菜の性格上、決して見捨てたりすることは出来ない・・・いわゆる弱点だ
 その考えを先読みしたこわしや協会会長であるかなえと工具楽屋(株)の営業部長である辻原は以下の対策を立てた
 要するに、我聞と陽菜は常に2人で行動すること、果歩・珠・斗馬の3人には登下校中に護衛を付けること
 同じ小学校に通う珠や斗馬の護衛は中之井や優さんが交代で車で送り迎えた、とりあえず2人じゃないのは社屋を空けておくわけにはいかないからだ
 果歩の方は本来なら辻原がつくべきなのだが、あいにく彼は入院した後も通院し、怪我の治療に専念している
 そういうわけで、代わりに果歩は登校の時は同じ道を通る我聞と陽菜と行動することとなった
 下校の際は、我聞と陽菜は部活や仕事があるので一緒には帰れないことが多い
 その時はどうするか、社に人がいなくなることを覚悟の上で中之井か優さんに来てもらうのか・・・
 そこで白羽の矢が立ち、かなえから欽命同然の通告を出された番司が毎日ではないが果歩の下校に付き合うこととなったわけだ
 勿論、番司は最初の内は反論したが、かなえの脅しに近い欽命と我聞と陽菜からもお願いされ、渋々従うことにした
 とりあえず毎日ではないが、辻原が復帰し護衛が出来るようになるまで、または他の組織からの狙われなくなったとの判断が付くまでの間、番司は授業終了と同時に果歩の通う中学校へ行くこととなった
 高校と中学では時間割が合わないところもあるので、日によっては番司は早退まで強いられるそうで・・・正直、かなり厳しいとか
 その辺りは果歩も知っているので、実はこうして対等に口喧嘩出来る立場ではないことは自覚はしている
 こうして無事に安心して工具楽家へ帰れるのは、番司や皆のおかげだと感謝している
 だが、あんな格好で毎回学校に来られたら、それはそれで文句の1つや2つは言いたくはなる・・・
280前スレ272:2006/01/21(土) 16:19:30 ID:uDAXgzQX
 
 「・・・大体、その格好で寒くないの?」
 「おう、鍛えてるからな」
 ドンと胸を張る番司だが、見ているだけでその格好は色んな意味で寒かった
 果歩ははぁと白いため息を吐いた 
 「今夜は雪が降るって言うのに、馬鹿じゃないの?」
 「なっ・・・! 馬鹿じゃねぇ、俺は馬鹿じゃねぇぞ! 赤点は取ったことねぇし!!」
 「そこが馬鹿だって言ってんのよ! 大体、赤点は平均点の半分未満のことでしょ。大方、どれも平均点の2/3ぐらいを取ってるんじゃないの」
 果歩の鋭い指摘はドスッと番司の胸を貫いた、どうやら図星だったようだ
 少し言い過ぎたかなと思ったが、実際上着やコートを着てくれれば少しは迎えとしては少々マシなのだ
 「(んー、そう思うのは甘いかな)」
 やはりハチマキを取り、胸のボタンを全部留めさせるまで徹底しなければ駄目だろうか ・・・いや、そもそもこうして下校を共にすること自体、周りからそういう誤解を招きやすい
 先程の校門での騒動で、更にそれを強めてしまったかもしれない
 しかし、その辺りは果歩はどうでもいいと思っている
 周りがどう思おうが、本人が気にせず放っておけばいい
 だけど、番司の方はどう思っているのだろうか
 本来なら欽命も聞かなくても良く、断ることも出来たはずの期間限定の果歩の護衛のことを・・・・・・
 「・・・あのさ」
 果歩が何か言いかけた時、番司がピクッと歩くのを止めた
 「? どうしたの?」
 「いや・・・」
 番司が「わりいわりい」とまた歩き始めるが、何かを聞きつけ再びその足が止まってしまう
 「・・・やっぱ聞こえんな」
 「え、何が?」
 まさか敵方の襲来だろうか、果歩はぎゅっと両手を握りしめ、身を縮めた
 番司の方は更にそれの確信を深め、「間違いねぇ・・・!」と呟いた
 果歩の方は不安でしょうがない、もしかしたら我聞達も同じ様なことが起きているのかもしれない
 「ちょっと持っててくんねぇか」
 ぽいっと番司が自分の鞄を果歩に向け放ると、それを受け取った
 それから「すぐ戻るから、動くんじゃねぇぞ」と言ってから、猛ダッシュしていった
 「ちょっと・・・!?」
 護衛がこんな勝手な行動して良いのか、あっという間に置いてきぼりにされる果歩
 どんどん行ってしまう背に、果歩は堪らなく不安を覚えた
 番司の鞄をぎゅっと抱き締め、ただこの持ち主と他の皆の無事を願った・・・・・・・
281前スレ272:2006/01/21(土) 16:20:41 ID:uDAXgzQX

 「・・・・・・は?」
 番司が息を切らし、帰ってきた時、果歩は目を真ん丸にした
 もし血まみれで帰ってきたらどうしよう、もしくは負けたらどうしようと不安と恐怖に押し潰されそうだった
 それなのに、番司は・・・・・・
 「やっぱ間違いなかった。ほらよ」
 抱えた新聞紙の包みを取り出し果歩に差し出す、その手には大きな焼き芋が1つ握られていた
 「・・・・・・は?」
 「ん? どうした?」
 「いや、え・・・刺客が襲ってきたとかじゃないの?」
 番司が「は?」と素っ頓狂な声を出した、どちらかというとそんな声を出したいのは果歩の方だった
 「何言ってんだ、お前。そんなことひと言も言ってねーだろ。『い〜しやぁ〜きいも〜』って聞こえたから買ってきたんだっつの」
 ゆらりと闘気が昇りぷつんと果歩の頭の中で何かが切れた、が・・・番司は気づかず焼き芋を差し出している
 客観的に見ればまたもや奥義炸裂かと思ったのだが、ここは抑えて果歩は番司からそれを受け取った
 番司は焼き芋と引き替えに自分の鞄を果歩から受け取り、皮を剥かずにそのままかじりついた
 「っちち・・・」
 「・・・はぁ。どうでも良いけど皮ぐらい剥けば・・・?」
 「あ? いちいち剥いてたらめんどくせーって」
 すっかり毒気を抜かれてしまった果歩は、受け取った焼き芋をじっと見た
 よりにもよって、焼き芋とは・・・・・・果歩はまた白いため息を吐いた
282前スレ272:2006/01/21(土) 16:21:51 ID:uDAXgzQX

 ここで勘違いしてはいけないのが、果歩は焼き芋が嫌いなのではない
 焼き芋はビタミンCや食物繊維がたっぷり、熱くてほっくりと甘くて、こう寒い日にはたまらなく美味しい
 しかし、皮を剥くと手が汚れるし、剥いた皮はゴミだが捨てる場所がない
 更に焼き芋は異性の前では食べたくない、理由は言わずともわかるだろう
 「ん? どした、焼き芋嫌いか?」
 そんな人の気も知らない番司は果歩にそう言う、またかちんとくる
 「(・・・せめて肉まんとか、熱いお茶とかならなぁ)」
 せっかく買ってきてくれたのに、食べたくても食べられない
 しかも横でもぐもぐと熱い湯気を出しながら食べる姿を見ていると、果歩は思わずごくっとつばを飲み込んだ
 「・・・・・・」
 「・・・ああ、皮を気にしてんのか?」
 番司が眉をひそめながら聞くと、果歩の手から焼き芋を取り上げた
 「あっ」と声を出すのも束の間、番司は手早く焼き芋の尻尾から乱雑に皮をむしり、持ち手に当たる部分の皮だけを残して果歩に返した
 ちなみにむしった皮は自分の学ランのポケットへ突っ込み、汚れた手は果歩に皮を剥いた焼き芋を渡した後にごしごしと自分のズボンでぬぐった
 「ほれ」
 「・・・・・・あ、ありがと」
 そう言うしか果歩には出来なかった、他にどう反応しろというのだ
 これで皮は無くなった・・・わざわざ剥いてくれたのだから、食べる分には問題ない
 だが、異性の前でこれを食べるとなると・・・・・・やはりまだ躊躇う気持ちがある
 それ以上に薄汚れた皮の中から出てきた黄金色には、たまらない魅力と湯気で溢れていた
 果歩は思い切ってぱくっと焼き芋の先を一口かじった、思ったより熱くて甘くて、目を白黒させた
 「おいおい、そんなにがっつくなよ」
 「ッ・・・がっついてない!」
 焼き芋を呑み込んで果歩はそう反論しつつ、空いている手で口元を隠しながらまた一口かじった
 番司は手に持っていた新聞紙の包みからもう1つ焼き芋を取り出し、また皮を剥かずに丸かじりした
 もぐもぐもぐもぐ・・・としばし食べることに集中し、2人の間に沈黙が続いた
 工具楽家まであと少し、そんな時、果歩が喋った
283前スレ272:2006/01/21(土) 16:22:22 ID:uDAXgzQX

 「・・・あのさ、別に無理して護衛しなくても良いから。わたしのことなら1人でも大丈夫だし、ほっほら、パンツマンにもきちんと学校があるし・・・さ」
 果歩はぼそぼそとそう言うと、番司がごくん口の中に入っていた焼き芋を呑み込んだ
 それから何かを言う前に、どさっと焼き芋の入った新聞紙の包みごと果歩に渡した   「・・・別に無理なんかしてねーよ。第一、そんなこと言ってお前の身に何かあったらどーすんだ」
 「それは・・・で、でもパンツマンが付き合う必要は・・・」
 「そのパンツマンはやめろ。・・・いいか? お前の身に何かあったら、皆が悲しむ。工具楽のヤローも陽菜さんも、皆だ」
 ざっざっざっざと2人は話している間も歩き続け、やがて工具楽家が見えてきた
 「忘れんなよ、お前は1人じゃねぇ。そんな抱え込まずに、もっと他のヤツに甘えたらどーなんだ。ま、その辺、工具楽のヤローとはそっくりだけどな」 
 「・・・・・・」
 果歩は何か言いかけ、のどの辺りまで来た言葉を呑み込みうつむいた
 番司は仏頂面だったが、内心では「ちっと言い過ぎたか?」と思ってはいる
 また2人は沈黙し、何も喋らなかった
 歩けばその分だけ家との距離が縮まる、気づいたらもう玄関の前まで来ていた
 「んじゃな」
 「・・・うん」
 番司がくるりと向きを変え、すたすたと今度は自分の帰路についた
 果歩も玄関のドアを開けようと手を伸ばそうとしたが、温かな新聞紙の包みと鞄で両手が塞がりいつものように開けられなかった
 「・・・あんたは・・・?」
 果歩が番司の背にそう問いかけた
 「あんたはわたしに何かあったら悲しい・・・?」
 一瞬、自分は何を訊いているのだろうと思った
 番司は振り向かず、小さくそれでもはっきりと言った
 「あたりめーだろ。こう口喧嘩出来るやつがいなくなったら、静かすぎて嫌ンなる」
 「・・・・・・何よ、それ」
 ひらひらと後ろ向きで手を振りつつ番司が角を曲がり、その姿が見えなくなった
 「・・・・・・何よ、それ」
 果歩はぶぅとむくれながら、もう一度そう呟いた
 それから焼き芋の入った新聞紙の包みがやけに重いのに気づき、中を覗いてみた
 そこには標準サイズから丸々太った芋など5,6個は入っていて、重量としては1kgはゆうにいっているだろう
 「・・・幾ら買ったのよ、これ」
 果歩はあきれながら、また白いため息を吐いた
 それから意を決したように、果歩は声を上げた
 「よしっ」
 ・・・決めた、これからもずっとパンツマンって呼び続けてやる
 お望み通り、口喧嘩の種をまき続けてやろうではないか
 「ただいまーっ」
 果歩は鞄を下に置き、玄関のドアを思い切り開けた
 それから既に帰ってきている珠や斗馬を呼び、焼き芋の入った新聞紙の包みをかかげ、「お茶にしよ」と言った

 今夜は雪が降るだろうか
284名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 16:34:50 ID:Iw5tTW4o
・・・これで終わり?それとも続きが?

しかし、どちらでもグッジョブ!!
285前スレ272:2006/01/21(土) 16:36:01 ID:uDAXgzQX
以上で投下を終わります。先程の>>276には名前を入れ忘れました。

色々とおまけで補完され、ファンとしては嬉しく、しかし妄想の隙間がないなぁと贅沢なことを思ってます。
果歩と番司が意外にも仲が進んでいるのには驚きましたけど・・・我聞達も出来ていない呼びすての仲まで。
でも付き合っていなさそうなので、女性キャラ総合スレの>>609さんの想像みたいなことが実際にありそうです。
出来たら小説に書き起こしてみたいものですが・・・許可以前に自分にそんな話が書けるかどうかorz
辻原やかなちんの仲を優さんが引っかき回すのも面白そうですけどね

では、読んで下さった皆さん、ありがとうございました。また一閲覧者に戻ります。
286名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 19:50:37 ID:tnbEu4IT
いいよ〜GJです
職人さんにはまだあの空白の三年間をこねくり回してほしいですね
287名無しさん@ピンキー:2006/01/23(月) 18:57:29 ID:ttCGEV5Q
だれか〜
中村と住のSS書いてくれー

難しいのは分かるけど挑戦してみてー
288名無しさん@ピンキー:2006/01/23(月) 20:40:07 ID:Hww0CKFq
>286
まづ6年生のマラソンで珠ちゃんが1着をとるまでの特訓から・・・
289名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 01:29:55 ID:ADJvtNTx
保守
290名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 17:36:08 ID:HCsN8jfJ
hosyu
291六商健一 ◆50IBoxcPsA :2006/01/24(火) 20:53:03 ID:WEpfKxH0
女性キャラスレで「一度、エロパロでSS書いてみないか?」と
勧められたので、今度、小学5年生になった斗馬とクラスメイトの
女子の絡みを書いてみようと思う。
今、ネタを温めているところだ。期待しておくれ!
292名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 20:55:30 ID:c+oSyvA8
カエレ
293名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 21:01:05 ID:vEIj5yKl
書いてくれるのはいいんだが、
「書こうと思う」「書くつもり」なんて予告だけされても
期待なんて出来ません。

書き上げてから来てくれ。
294六商健一うざい:2006/01/24(火) 21:21:49 ID:Z0MVgtOL
>>291
書かなくていいよ、失せろ。消えろ。帰れ。去れ。
295名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 22:50:06 ID:C541LM2I
つうか落ち着こうぜ皆。つまらんヤツに釣られるな。
296名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 23:58:55 ID:tudQxIsf
>>1をよく読め。801禁止だ。
書いても即削除だ。つーか書くな。
297初投下1:2006/01/25(水) 03:23:07 ID:IgbKDUiw
「ね、どう?この服,似合うと思う中村君。」
「え、別に…。いいんじゃない?」
「もー中村君たらいつもそうなんだから。」
「…」
卓球部の同級生でもともとは同じ中学校のクラス委員同士だったこの二人、
告白したのは中村のほうだった。夏の合宿のころあたりから意識するようになっていた
のだが、大成功に終わった文化祭の後、ふだんは冷静な中村もなんとなく浮ついた
気分だった打ち上げの帰り、二人っきりで帰宅することになった中村は思い切って住に
告白したのだった。住は堅物だと思っていた中村に突然告白されて驚いた様子だったが、
一週間後、了承をくれたのだった。
あまり女子とは話すことさえなかった中村には、付き合うといってもどうしたらいいものか
さっぱり検討がつかなかったが、ときどきデートに行って、くるくる変わる彼女の表情を見て
いるだけでもなにか心の底が暖かくなって、満足だった。
 卓球部の友人には、住と付き合っていることは、隠すというほどではないが、
あえて話すことはなかった。同じ卓球部の女子たちと楽しそうにおしゃべりをしている住を見ていると、
二人が付き合っていることがばれてしまうと今の部活の関係を壊してしまうような気がしたのである。
それであえて部活の時に住と話をするとか、一緒にいるということをなんとなく避けるようになっていた。
だが、中村は友達と楽しそうにしている住を見ているだけで楽しかったのである。
298初投下2:2006/01/25(水) 03:25:46 ID:IgbKDUiw
「ねえ中村くん、恵ちゃんのことで相談があるんだけど。」
ある日、いつものように他愛もない噂話を聞くとでもなく聞いていると、住は突然真剣な口ぶりになりこうたずねてきた。
「あのね、佐々っちに彼女ができたでしょ。」
「ああ。浮かれてたな。」
「そのことなんだけどさ、実は、恵は佐々っちのこと好きらしいの。」
「えっ本当?」
天野恵と佐々木亮吾は小学校の時からの長い付き合いらしく、佐々木いわく、「腐れ縁」だとか。
ふたりは確かに仲がよくて、馬鹿なことをやらかす佐々木に天野が突っ込みを入れたり、イベントとなると
二人とも燃える性格なので、一緒になって部活を引っ張っていったりと、なんだかんだでいつも一緒にいる。
しかし中村には、それがケンカ友だち以上のものには見えなかったし、男勝りな性格の天野があの
ちゃらんぽらんな佐々木に恋愛感情を持っているとは想像できなかった。
ましてや佐々木は普段から國生さんファンを自認しているのである。
299名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 07:11:15 ID:vSTHEd9H
萌えた(*´∀`)
300名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 08:37:26 ID:gZKc5PGB
続き期待してます(´∀`)
301名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 09:38:21 ID:SuGcOVkS
>297-298

お、これはまた面白そうですな。

一応ツッコミ。
友子たんは佐々やんを「佐々木くん」と呼んでなかったかな?

それと
×検討がつかなかったが
○見当がつかなかったが

続きを期待してるんで、頑張ってくだされ。
ところで、天野恵…「天の恵み」が由来なのかなぁ…と、
今更思いました。
302初投下3:2006/01/26(木) 03:00:46 ID:bzSQGBP8
>>297-298の続き

「どうしよう…わたしったら恵のこと考えないで調子に乗って言いふらしたりなんかしちゃって…。」
「いずればれることなんだし、しょうがないだろ。」
「でも…恵…泣いてたよ…」
そう言う住も泣き出しそうだった。
 小柄な住は身長が180センチある中村の肩にやっと頭が届くくらいの背丈である。
「中村君と話してると首が痛くなっちゃうよ」と住はいつも笑って言う。
目の前にうつむいて震える住のつややかな黒髪があって、ほのかに甘い香りがただよってくる。
急に中村は住がいとおしくなって、思わず抱き寄せたくなったが、なんとか思いとどまった。
 (それにしても天野が佐々木に恋愛感情を持っているなんて信じがたいな。確かにいつもつるんでるが…。
 でも、天野のことだしきっとすぐ元気になるだろ。)中村はそう思っていた。
303名無しさん@ピンキー:2006/01/26(木) 03:03:21 ID:bzSQGBP8
とりあえずここまでで、あとは藤木先生の更新待ちです。妄想を蓄えておかねば。
しかし恋愛ものなのにどうしても堅苦しい文章になってしまうなあ。
304名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 01:58:10 ID:FmSQ0GMG
続き楽しみー

だけど、できればある程度纏まった量が書けてから一気に投下の方が、嬉しいかもです
短文で断片的な投下だと、次を書かれた頃にはそれ以前の文章の印象が希薄になっちゃうかも

個人的な意見なんで鵜呑みにされることもないですが、感想がてら私的な意見ということでひとつ
305名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 02:33:01 ID:So5GLf9K
>>304
いやほんとに処女作なんでアドバイスはうれしいです。
そんな長くなることはないと思いますけど
とりあえず藤木屋さんの話に平行させてって趣向ですけどどうなることやら
306前スレ272:2006/01/28(土) 13:12:34 ID:7yLw/G67

 「・・・そういやさ、陽菜さんは大学行きたかった?」
 ぱたぱたと洗濯籠を持って通り過ぎようとした陽菜を、あぐらをかいて新聞を読む我聞が訊いた
 「いきなり何ですか」
 「え、いや・・・・・・何となく」
 我聞の持っている新聞記事にはセンター入試などの受験に関する記事が掲載されており、恐らくこれを読んだからだろうと陽菜は推測した
 「・・・・・・・・・」
 「ごめん、変なこと訊いちゃったかな」
 忙しそうな陽菜を見てばさりと新聞をたたみ、手伝おうかと訊いた。
 陽菜は首を横に振りつつ籠を置き、立ち上がろうとした我聞を制止した
 それから陽菜はすとんと我聞の横に座った 
 「経済的な理由もありましたが、私には秘書業や工具楽屋(株)があるので、元々行く気はありませんでした」
 「・・・それじゃやっぱり悪いことしたかな。陽菜さん、おれなんかよりずっと頭良いし、きっと良い大学に入れたよ。
 そしたら、秘書業以外の別の道もあったかもしれない」
 我聞は少し申し訳なさそうな顔をするのを見て、陽菜は首を横にゆっくりと振った
 「良い大学に入ったからと言って、必ずしも幸せな人生を歩めるとは限りません。
 逆も然りです。現に今の私は大学に行かなくても、充分幸せですから、気にしないで下さい」
 「でも・・・・・・」
 卓球部の皆とはたまに飲みに行ったりと交流があり、彼らの殆どは大学へ進学した
 いつも楽しそうに気ままな大学生活を話し、時にはあの課題がどうのとか学業の話で盛り上がった
 我聞と陽菜の知らない世界がそこにはあり、それを少しでも羨ましく思ったりはしないのだろうか
 少なくとも、我聞はそんな風に思ったことがある・・・思っただけで口には出せなかったが
 ふっと我聞はそんなことを思い出し、わずかだが意識がとんでいたようだ
 陽菜に名を呼ばれ、はっと我に返った
 「・・・・・・すまん、少し考え込んでた」
 我聞の物言いに陽菜はくすっと笑い、小首を傾げそっと我聞の肩に頭を乗せた
 「・・・陽菜さん?」
 「それに何より、大学に行っていたら、我聞さんと一緒になるのがあと2年は先になってしまいます」
 そう言われ、我聞はむぅと照れ臭そうにあごの下をぽりぽりとかいた
 「うん、そうだった」
 それから我聞は、きゅっと陽菜の身体を抱き寄せた
307前スレ272:2006/01/28(土) 13:17:09 ID:7yLw/G67
いきなり投下失礼します。
小ネタというにはちょっと長いし、小説にしては短いなぁ・・・。
季節は今頃です。我也とはもう戦った後でしょうか。
では、短いながらも読んで下さった皆さん有り難うございました。また一閲覧者に戻ります。
308名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 14:51:11 ID:EAHGZtpH
GJ!
萌えさせていただきました
309名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 15:40:36 ID:bjDBnbX1
よい低脳です。
和んでしまいました。
310名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 16:20:07 ID:IPP+VJCR
>>272氏
gj!
なんだか、とってもほんわかした気分になっちゃっいますた。
こういうのっていいっすね。
311名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 18:02:44 ID:XvmRAjtT
捕手
312名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 22:13:01 ID:E0+3B9eg
GJ!
幸せが滲み出てて素敵すぎる・・・
313名無しさん@ピンキー:2006/01/29(日) 21:55:19 ID:Rvgo3yQv
うーと…雑談でもしとく?
というかカップルは先生が綺麗にまとめてしまったので語るとこが少ないな…
桃子があるいみないがしろにされた結末だったね
314名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 00:26:32 ID:GgJd/wtZ
保守
315名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 02:12:53 ID:9hB76ZEb
>>313
桃子の場合、残ってる男キャラは斗馬とか他のこわしや達ぐらいだからなあ…。
イマイチカラミが想像できない。
こうなったら珠と濃密な夜のお付き合いとか…。
316名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 02:28:29 ID:Zt/Ch+Y4
いーじゃん。出番があったし若いだけ。
かなちんなんか一コマも出番がなかった上、20代後半になってしまった……orz
317名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 02:37:38 ID:z4+WwUpk
オレの妄想としてはかなちんは優さんと辻との3Pしてるね。
そのせいで三人とも結婚してないとみた
318名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 10:45:44 ID:oeuNDqPR
私的には辻×かなちんで優さんがちゃちゃを入れるみたいな?
319六商健一 ◆50IBoxcPsA :2006/01/30(月) 11:17:39 ID:RRDLWOoF
>>315
今度、桃子と斗馬の絡みの話を書こうと思っているから期待してくれ!
320名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 21:57:47 ID:9hB76ZEb
>>317-318
ちょっと脚色

優さんはかなちんに色々相談を受けて、二人が結ばれるように協力するのだが、
やっぱり自分もツジーが好きだったりして
そのうちフッ切れて、二人がラブラブエチーしてるとこに乱入3P
とか。
321名無しさん@ピンキー:2006/01/31(火) 01:08:50 ID:z1b5WAay
保守
322名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 01:40:05 ID:oEWGLLi6
保守
323名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 17:26:37 ID:aO0oTnQG
確認だが、保守するのに上げる必要は無いぞ。
分かってるんなら良いが。
324名無しさん@ピンキー:2006/02/02(木) 16:19:25 ID:W+dbWTNl
しかし、ここもついに保守らなければならなくなった訳か……
325名無しさん@ピンキー:2006/02/02(木) 16:37:25 ID:u741LBIK
大丈夫だ、もうすぐ読みきりが。
326名無しさん@ピンキー:2006/02/02(木) 18:49:17 ID:L+6LWoAH
保守
327222:2006/02/02(木) 19:13:00 ID:s295KmKe
お久しぶりです。>>260-264@続き鋭意執筆中です。
皆様の発言につい、中友や辻優や辻珠を考え始めては
脱線しておりましたすんません。

友子と中やんは萌えますよねえ…
「…ごめんな、住。俺が、悪かった」
「ううん、良いよ私…中村君なら」
「良いのか…住」
「…うん。あ☆」
とか、台詞脳内駄々漏れてました。いかん。

それはさておき、此処の過疎り具合が切ないので、
何か出そうと思ったのですが、件の辻かなの続きはまだ
出せる状態になっておりませんので、今のを出す前に
試し書きした寸止めかなちんネタを放出します。
又微妙に本番無しでごめんなさい。
3281/2:2006/02/02(木) 19:14:12 ID:s295KmKe
 …チャポン。

 静間かなえは、その白い肢体を湯舟に沈め、俯いていた。
 小さくさざめく水面に、その、虚ろな視線を、彷徨わせて。

 …チャポン。

 湯舟の縁に当たって弾ける湯が、不規則に音を立てる。
 その揺れと、不確かさが、気持ち悪い。
 とても−不愉快で。

 …チャポン。
 「!」

 突然水面が、有り得ない形−そう、例えて言うなら糸の様に、姿を変えた。
 頭に来て、かなえ自身が、お湯の『形』を変えたのだ。
 静間流水仙術をもってすれば、手易い事。
 水は、有り得ない姿を保ちながら宙に浮き続ける。

 有り得ない−そう、有り得ない。

 数時間前の、あの電話。
 『辻原さんが、第一研の場所を知らせてきて』
 『そのまま消息を絶ったんです』
 −サイゴノシゴト、トイッテ。
 冷静を装おうとしつつも、動揺が見え隠れしていた、連絡者の口調。
 どうやら、とてもまずい状況らしい−それが、解った途端。

 周囲の音が、何も聞こえなくなった。

 祖母の問いに、電話の中身を伝え。
 電話の主に、色々と指示を出し。
 乗り込みに行く準備を整えるべく、
 こうやって、沐浴して。

 急がなければならないのは、解っている。

 だから。
 それなのに。
 何で、こんな。

 有り得ない−有り得ない。

 何が?

 動揺して居る自分が?
 何も考えられない自分が?
 それとも−有り得ない。
3292/2:2006/02/02(木) 19:14:53 ID:s295KmKe

 初めてあった時から何処か胡乱で胡散臭いひとだった。
 隙の無い身のこなしは見れば判る。
 それなのに、気軽にかなちん、と呼んだ。
 簡単に、間合いに入られた−そんな気がして。
 それが嫌だったから、事更に、突き放した、
 つもりだったのに。

 『それを…信じろと言うんですか?』
 『…私を信じる必要はありませんよ』

 かなちん、と呼ぶ声が、嫌だった。
 真剣味に欠ける、緊張感の無い声音が、
 こちらをちゃんと見て無い気がして。
 それなのに、あんな、きちんとした声も、出せた。
 それが更に、悔しくて。


 でも、それももう−聞けない。


 飛沫を上げて、水の糸が、形を変えた。
 もう少し太く、短く、まるで、人の腕の様に。
 その先に、握り拳大の、水塊。

 確か、缶コーヒーを握っていた手は、この位。

 塊に、五本の指が生えて。
 それが、己の肌に触れ−

 「…っ!」

 びり、と身体中に何かが走り、
 水塊が、砕けて落ちる。

 「はぁ…はぁ…はぁ…」

 かなえは大きく喘いで、目を泳がせる。
 水の指が、触れようとした場所は、まだ、熱かった。
 激しい動悸は、おさまる気配も無く。

 「…」

 自分が何をしようとしていたのか、判らなかった。
 そして、何故、こんなに−

 かなえは頭を振った。


 ソウイエバ、マダ、フレラレタコトハ、ナカッタ。
 フレタコトモ、ナカッタ。


 「…馬鹿馬鹿しい」

 下腹に篭る、不可解な熱を振り払う様に、かなえは風呂を上がった。
330名無しさん@ピンキー:2006/02/02(木) 20:29:29 ID:KsA5D4Ds
うおおぅ!
寂れてきたとこに職人さんがぁっ!
一研突入前のかなちんですね
寂しげだけど
もえます
草冠に明るいで
萌えます!
住と中村の物語の続きも期待させていただきます!!
331名無しさん@ピンキー:2006/02/02(木) 20:54:32 ID:KsA5D4Ds
あっ!上のレスのしたから二行目のはじめに『俺も』入れ忘れてましたorz
すんません
332名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 01:05:22 ID:bMTYRaXZ
記念上ゲ
333名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 21:10:54 ID:RUWJaQrV
あげ
334前スレ131:2006/02/03(金) 21:16:48 ID:ollaiptp
ども、凄くお久しぶり、>>131です。
やっと、やっと続き出来たので、『・if・冬期合宿』の続き落としますね。
335前スレ131:2006/02/03(金) 21:19:37 ID:ollaiptp
「これは・・・広すぎないか?」
「・・・維持費、高そうです・・・」
二人も口々にその広さに驚く。
そこに長部も入って来、「わ、広いっすね〜」と驚嘆の声を上げる。
何となく、皆暫し沈黙する。
そして再び口を開いたのは長部だった。「・・・あ、そーだ!先輩方〜ぁ背中の流しっこしません!?私、小学校の頃から友達とかと一緒にお風呂入る時いっつもやってたんですよ〜」
と、提案。
「あ、良いねぇ」とか、「私は小学校以来だな」など賛成の方向に。

ごしごしごしごし
5人は、輪を作るように並び互いの背中を流しあっていた。
「そういえば國生先輩は、卒業したらすぐ工具楽先輩との結婚なんですか〜?」
何気なくそんなことを訊く長部。
「な、なんでいきなりそんなことを!?」
「え?だって車の中でそんな話してたじゃないですか・・・違うんですか?」
「で、ですから私は社長にそう言う意識を持っていませんから・・・その・・・」
口ごもる陽菜。
そこに
「あーっもーっ!るなっち?いつまでもそんなこと言ってたら、くぐっちが誰か別の娘に取られちゃうよ?
いいの、それでも!?」
そんな陽菜の言葉にしびれを切らした天野がきつい口調で言う。
336前スレ131:2006/02/03(金) 21:21:38 ID:ollaiptp
「え・・・?」
言葉に詰まる陽菜。
「くぐっち誰にでも優しくて、顔もそんなに悪くないから、今こうしてる間にもるなっちの知ってる娘がくぐっちのこと狙ってるかもしれないんだよ!?」
「恵、そんなきつく言わなくても・・・」
「ダメ!るなっちは側に居すぎて心のどこかで安心しきってる。
だから話が進みそうなところでも『秘書である自分』と『社長であるくぐっち』で考えてて、だから平然と違うっていえるんだよ。
今はそれで良いかもしれない。けど、『國生陽菜』と『工具楽我聞』で考えてないと、いつかほかの娘に奪われちゃうよ。
るなっちはそういう娘の心当たりないの?」
そう言われ陽菜は自分の記憶を振り返る
「あ・・・」
と、そう言えば桃子とそんな会話をした覚えがある。
「・・・あるでしょ?
その娘とくぐっちが付き合って、結婚して、幸せそうにしてるとこ、想像してみて?それでもるなっちは幸せ?寂しくない?」
想像してみる。
我聞が桃子と手を繋いで町を歩くところ、見つめ合うところ、口付けを交わすところ、我聞が自分を見なくなり、桃子だけを見ているところ・・・・
「それは・・・」
「・・・寂しかったでしょ、だったら認めて。るなっちは、くぐっちのことが、男性として好きだって」
337前スレ131:2006/02/03(金) 21:23:41 ID:ollaiptp
自分は我聞が恋愛対象として好きなのか?
陽菜は自問自答する。
確かに、今、自分に一番近い男性で、優しいとか、頼りになるとかは何度か思った。桃子に、『我聞の嫁候補』と言われたり、父に結婚を勧められたときはとても焦ってしまったと自覚している。
しかし、何故今まで意識しなかったのか。
天野の言うように距離が近すぎた?
確かにそれもあるだろう。
しかしそれより、母が死に、父が飛行機事故に遭い、先代が行方不明になってしまい、自分が大切に思う人は皆居なくなってしまう。
ならばいっそのこと大切に思わなければいいと無意識に考え、我聞に客観的にあたっていた気もする。
つまり、やはり、自分は・・・
「・・・そう、みたいです・・・」
「そうってどう?はっきり言って!」
厳しく言う天野。
「わ、私は、社長が、いえ、工具楽我聞さんのことが、好きです」
自分でもその言葉の意味を確かめるように、ゆっくりと答えた陽菜に、天野は満足げに言う。
「よく言ったっ!うんうん。私も手伝ってあげるから頑張ろう!」
「あ、有り難うございます」
そんな所にに住が言う。
「・・ねぇ恵、」
「ん〜何?」
「そろそろ、体流さない?」
「あ・・・」
338前スレ131:2006/02/03(金) 21:25:51 ID:ollaiptp
シャーッ
熱いシャワーが女子部員たちの体の泡を流していく。
と、
「うわっ!!」
「佐々木っ!」
バッシャーン!
佐々木の叫び声と、我聞の声。
そして水中に何かが落ちる音が浴室に響く。
「な、なんだ!?」
驚く鬼怒間。
ほかの皆も同様のようだ。
皆、音のしたほう、露天風呂へ向かう。
そして、露天風呂の、男子風呂との柵と思われるものを見て
「!!」
皆一瞬絶句する。
高さ五メートルほどの二本の木がある。
その二本の木は、互いに互いの方向へ隙間なく枝を伸ばしている。
それは、まるでお互いに愛し合ってるかの様だった。
そして、それがそのまま男子風呂との仕切になっている。
「すごいな・・・」
ぽつりと鬼怒間が感想を漏らす。
「・・自然にできたのかな、コレ・・・」
「おそらくは・・・」
「あ、ここに説明が・・・」
そういった長部に皆の視線が移る。
「読みますね、えーっと・・・
『この木の名前は、相愛の木。
その昔、それはそれは仲睦まじい夫婦がいたと言う。
ある冬の日、夫が、女房の病を治す薬草を採るため山ヘ登った。
しかし、男はいつまでたっても帰ってこない。
そんな夫を心配して、皆が止めるのも聞かず、女房も病の体をひきずって、山へ向かったという。
339前スレ131:2006/02/03(金) 21:50:31 ID:ollaiptp
ところが、二晩たっても二人は帰ってこない。
そんな二人を心配した村の住民は、村で一番屈強な男に二人を探しに行かせたという。
男は、一晩中二人を捜した。
そして男は二人を見つける。
二人は抱き合っていた。
そして、とても幸せそうな顔をして息絶えていた・・・。
それを見た男は、その二人を抱き合っているまま運ぼうとした。
しかしいかんせん二人同時は重く、仕方なく一人づつ運ぼうとしたが、二人はしっかり抱き合って離れない。
仕方なく、男は一度村に戻り人を呼んでくることにした。
そして男が人を連れて戻ってきたとき、そこに二人の姿はなく、代わりに二本の木が生えていた。
村人たちはそれを二人の成れの果てと思い、大切に大切に育てた。
その後、その木の脇から二つの温泉が湧き、この旅館の元になったと言われている。』
・・・だそうです」
「・・へぇー」
「なんだか、悲しい、けど、どこか暖かいお話ですね・・・」
「そう、だな・・・」
「・・・」
天野は一人黙っている。
「どしたの恵?あ、ひょっとして今の話、『自分と佐々木君に置き換えて』なんて考えてた?」
「へ?!いやっ、そんなっ、てか私はささやんなんて・・・」
口ごもる天野。
そこに
340前スレ131:2006/02/03(金) 21:51:47 ID:ollaiptp
「天野さん、ずるいです!!」
陽菜がきつい口調で言う。
「る、るなっち・・・?」
「さっきはあんな風に私に言ったのに、自分ではそうやって逃げるんですか!?」
「え!?あ、いやぁその・・・」
「天野さんも、佐々木さんのこと、ちゃんとはっきり言ってください!!」
じりじりと詰め寄る陽菜。
「さあ!!」
観念した天野は顔を染めながら言おうとする。
「わ、私は、ささやんが・・・」
その時、
「またかよっ!?」
「佐々木!?」
パーンッ!!
再び、佐々木、我聞の声が響き、今度は水面に何かを叩きつけるなんとも痛そうな音が、二本の木の反対側から聞こえてくる。
「・・・」
「・・何があったんだろ・・・」
「・・・ど、どーせささやんあたりが覗きしようとして、この木の枝登って、手ぇ滑らして落ちたんでしょ!!」
「何でそんな怒ってんの恵?」
意を決して
「別に!ただささやんがあまりにも不慨無いから、イライラしてるだけ!!」
意を決して、大切なことを言おうとしたとき、それを阻害されると、人は、たとえそれが自分にとって得になりえない発言でも、なんだかもやもやしてしまうのである。
341前スレ131:2006/02/03(金) 21:52:41 ID:ollaiptp

〜男子風呂〜
所変わって男子露天風呂。
色素の薄い髪の毛をした人物が、浴槽の脇でピクピクと悶絶している。
何故こんなことになっているのか?
少し時を遡ってみる。

約三十分前。
佐々木の、どちらかと言えば不純な提案から、男子部員たちも浴室にやってきていた。
「・・・広いな」
「・・・ああ」
そして、女子浴室と同程度の広さの浴槽にとりあえずおどろいとく中村と佐々木。
バシャバシャバシャッ!!
そこに、二つの物が盛大に水飛沫を上げて二人の前を通り過ぎる。
「うわっ!」
「・・・我聞、静馬、広いからって浴槽で泳ぐなよ・・・てか、おい!我聞、静馬っ!体、ちゃんと洗ったのか!?」
水飛沫を上げていた二つの物が少し離れた所で止まり、それぞれから、
「おう!当然だ!!」
「洗いましたっ!!」
との声がする。
早いな・・・中村がそう感心していると、佐々木が何故かきょろきょろしている。
「どうした?」
「いや、なんとなく皇先輩の姿が見えないなと思って・・・」
そう言えば、浴槽はさっきの二人だけだし、体を洗っているようでもない。
ふとそこに、外につながっているらしい扉が目に付く。
「・・・たぶん、露天風呂だろ」
342名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 22:07:06 ID:CXTTLsKi
きてたー
支援になるかな?
343前スレ131:2006/02/03(金) 23:08:32 ID:ollaiptp
「なに?露天風呂?・・・はっ!そうだっ、こっくしょーぅさっはーん!!」
そう言うと、佐々木は目にも留まらぬ早さで体を洗い、露天風呂へと向かった。
「佐々木も早いな・・・」
そう言って中村は、佐々木に犯罪的行為をさせるわけにもいかないので、自分も少し急いで体を洗い、露天風呂に向かう。
カラカラカラ・・・
どこか乾いた音を立てる引き戸を開けると、佐々木、皇は青年と湯船の中でなにやら談笑している。
「佐々木、その人は?」
「ああ、なんでも我聞たちの仕事関係の知り合いで、西音寺さんだそうだ」
西音寺は人当たりのいい笑みを浮かべて、『どーも』と一言挨拶した。
「でさ、我聞と静馬呼んできてくれないか?」
「あ?ああ、別に構わないが・・・」
言われて中村は我聞番司を呼んでくる。
そして、中村も混じって5人で和む。
と、中村は佐々木の姿が見えないのが気になった。
そして見回すと、奥の方でなにやら妙な木の枝を登っている。
(いきなり覗きか・・・)
呆れていると、一番上の枝に手が届いているではないか。
さすがにこれ以上はまずいので、止めるために声を掛けようとしたとき、何やら西音寺の右手が佐々木のほうへ向けられた。
344前スレ131:2006/02/03(金) 23:12:49 ID:ollaiptp
と言うことで、ここまでです。
>>342さん支援有り難う御座います。
・・・てか俺と、なによりこの物語、覚えてる人居ました?
まあ、書くの遅いわ、毎回毎回中途半端に途切れるわ、挙げ句の果てには本編ともずれていると言う文忘れられて仕方ないかもしれませんが、読んでくれる人はマジで有り難うございます
取りあえず、重症な遅筆を治して、次こそなるべく早くかけるといいです。
それでは、また。
345名無しさん@ピンキー:2006/02/04(土) 01:27:17 ID:/1WtvmIv
記念上ゲ
346425:2006/02/04(土) 01:48:39 ID:Psw2ENtu
どうも、ハジメマシテ・・・
今までこのスレでは読者でしたが今回、SSを投稿させて頂きます。

勿論初心者なのでよろしくお願いします。

内容は恐らくダーク系だと思いますので(自分で書いといて何言ってんだろ?)
嫌な人はスルーしてください。
347425:2006/02/04(土) 01:49:19 ID:Psw2ENtu
「どうもありがとうございました、工具楽先輩!!」
「いや、そんなことないよ君も大丈夫だった?」

社長と知らない女子生徒が話をしている
その光景を見た私の胸の中は何か・・・色に例えるならどす黒いモノが湧き上がるように思えた



「へー不良に絡まれてた女の子を助けたんだね我聞君は、さすがだねぇ〜」
「それでこそ社長じゃ!」

「そんな、男として当たり前ですよ」

社長と私は学校が終わり現場での仕事も無いので会社にいます
今日の仕事は粗方終わったので社長と中之井さんと優さんが談笑していました

そして話題は社長が今日助けた女子生徒のことになっていました

私はそんな中ずっと社長を見ていました

私達が真芝第一研から帰還してお父さんの『爆弾発言』のときから
何故かいつも私は社長のことを目で追っていました



「でも我聞君はいいのかな?他の女の子を助けていい気になっちゃって・・・」
「へ?」
「はるるんがヤキモチ焼いちゃうよ〜」

私と社長は顔を真っ赤にした
そんな私達を見て中之井さんと優さんは笑っていた
348425:2006/02/04(土) 01:51:21 ID:Psw2ENtu
会社が終わり私は自分の家へと帰り、早々にその身をベッドに沈めた

「ふぅ・・・」

すこしため息をついた

なんなんだろう?
いつの間にか社長を目で追っている自分
社長が知らない女の子と話をしていると暗くなってしまう自分
社長のことでからかわれ、顔を赤くしてしまう自分


そして頭の中にあることが思い出された

それは卓球部の天野さんと住さんとの何気ない部室での会話
私は廊下にでその会話の一部を聞いていた

『へ〜、くぐっちてそんなにモテるんだ?』
『うん工具楽君って性格いいし、困ってる人見るとすぐ助けちゃうじゃない、そういうところに惹かれてる子が多いらしいよ』
『そうだね、ぐっちって黙ってれば結構いい顔してるしね〜』


この会話を聞いたとき私は焦った
知らなかったのだ、社長がモテるということを


お父さんの爆弾発言以来・・・いやもしかしたら桃子さんに『嫁候補』と言われた時からか
やはり自分は社長に恋をしているのだろうか

ふと、枕元にある文庫本をとってみる
それはいわゆる恋愛小説
今まで興味がなかったのだが何故か買ってしまった

何気なくパラパラとページをめくりながらあるページの一節に目が留まった


『恋や愛情とは独占欲と同義なのかもしれない』

そして少し目をずらすと


『一人占めしたいんでしょ、彼を?』
という台詞にも目が留まった

私は社長に恋をしているのだろうか
そして社長を一人占めしたいのだろうか
「もし、社長が私のものになったら・・・・?」

そう言って想像してみる
自分だけに特別な笑顔を向けてくれる社長
様々な危難から自分を守ってくれる社長
自分を優しく抱きしめている社長
そして唇を重ねてくれる・・・

そこまで考えると私の心の中はものすごい幸福な気持ちに包まれた

「そっか・・・やっぱり私、社長に恋をしてるんだ・・・・」
349425:2006/02/04(土) 01:53:41 ID:Psw2ENtu
次の日の朝

私は社長と一緒に通学路を歩いていた
昨日の夜に自分が社長に恋をしていると確信したせいか、緊張している
別に今までも一緒に通学をしたことがあったのにも関わらず緊張している

「國生さん、どうしたの?」
「へ?なななな、何ですか、社長?」

いきなり話しかけられたせいかひどく動揺してしまった

「いや、何かさっきから俺のことを見てたし・・・」
「え・・・そ、そう・・・・ですか?」

(どうしよう、社長に変なふうに見られちゃたかな・・・)

そんな時、前方から声がした

「あ、あの、工具楽先輩・・・」
そこには少し赤い顔をした女子生徒が居た
「やぁ、君はあの時の・・・」

社長と女子生徒が楽しそうに話している
昨日とは違う女子生徒
どうやら社長が何らかの事情で助けたのであろう

「本当にありがとうございました!!」

何だろう、昨日と違う


ふと、昨日読んだ小説を思い出した

『恋や愛情とは独占欲と同義なのかもしれない』
『一人占めしたいんでしょ、彼を?』

もし・・・もし、社長が別の女性のものになったら・・・・?

苦しい!!胸が苦しい
いや、苦しいなんてものじゃない、何かに心を支配されるみたい

不安、不満、焦燥、嫉妬・・・
色んな嫌な言葉が頭の中に入ってくる

嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌
社長が私の知らない女の子と、私じゃない女性と・・・・


そして最後に私の心の中には『恐怖』という二文字が残った

怖い!!!どうすればいいの!?


『恋や愛情とは独占欲と同義なのかもしれない』
『一人占めしたいんでしょ、彼を?』


私は・・・社長が、工具楽我聞が・・・・・欲しい
350425:2006/02/04(土) 01:57:32 ID:Psw2ENtu
本日投下はこれにて終了です。
来週には続きを投下しようと考えています。

それでは皆様の評価をお待ちしています。(できれば優しく・・・)

351名無しさん@ピンキー:2006/02/04(土) 02:54:48 ID:JwCdgqO5
とりあえず、出来るだけ下げような。

こういう黒めの國生さんも、たまには良いな。次に期待。
352名無しさん@ピンキー:2006/02/04(土) 10:02:48 ID:lp6AkTNG
今までに無い展開ですな、國生さんのダークサイドに期待しますよ〜
353名無しさん@ピンキー:2006/02/04(土) 22:01:22 ID:yUKMDMQ5
俺すっげー好みだ
黒陽菜
354名無しさん@ピンキー:2006/02/04(土) 22:05:35 ID:2NphAO2Y
監禁プレイ?
355名無しさん@ピンキー:2006/02/04(土) 22:49:56 ID:C0RBzvXC
ミザリー。
356名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 03:50:04 ID:E4TP7Ow8
もしかして逆レイプか?
wktk
357名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 13:07:57 ID:CZAusy2o
>346-350氏
がんがれ。チョト怖いけど、いつものらぶらぶワカーンだけじゃなくて
新ジャンル開拓のこういうのも楽しみですじゃよ

真面目に考えたらコワいよな。アンチ仙術マスターのはるるんに
拘束され搾り取られるがもん。・。。p@


>355

ジャックニコルソン化したGHKの面々が・・・  じゃねえや拉致南京されるのは社長じゃねーか

358名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 01:45:14 ID:wDxV7Nu2
アゲ
359名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 07:41:59 ID:FtgftXIW
sage
360名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 16:53:13 ID:9g1cZQ+8
六商のSSマ━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━ダ????
361名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 21:33:44 ID:ZBt+y+gS
マーダー?あんなの読んだら死にそうになるってことか。
362前々々499:2006/02/06(月) 22:28:20 ID:DfuBdDO/
ども、久々に投下させて頂こうと思います。
以前に書いた、優さん×國生さんからの話の流れで、
我也と國生パパが帰ってきてから旅立つまでの間のお話です。

最終的には例によって例の如く我聞×國生さんになる予定ですが、
今回投下分は序ってことで、えっちなしです。

ちなみに、ブログの方に載せたものからほぼ手を加えていませんので、
そっちを見られた方は読むまでも無いかもです。
363前々々499 1/6:2006/02/06(月) 22:30:02 ID:DfuBdDO/

「お父さん・・・」
「なんだ、陽菜・・・まだ起きていたのか?」
「・・・ごめんなさい、真っ暗になると、今日のことが、夢だったんじゃないかって、思って・・・
 目が覚めたら、お父さん・・・いなくなってたらどうしようって・・・」
「・・・済まなかったな・・・5年もお前を一人にして・・・あまつさえ、真芝に・・・」
「それは言っちゃだめ、だって、お父さんの方が辛かっただろうから・・・
 私は・・・社長が、みんなが・・・いてくれたから・・・」

真芝第一研から帰還して、長かった今日が終わりました。
あの夜・・・たった一晩の出来事でしたが、あまりにもいろいろなことがありました。
厳しい戦いでしたが、嬉しかったことは、沢山ありました。

先代が戻ってきてくれました。
先代が家に戻ったときの、果歩さん達の喜ぶ顔は・・・一生、忘れないと思います。
辻原さんも無事でいてくれました。
あのときの社長・・・本当に、嬉しそうでした。
何より、お父さんが生きていてくれたこと・・・一緒に、ここに帰ってきてくれたこと。
消息不明だった先代と違い、事故で亡くなったと・・・もしかすると、は無いと思っていました。
でも今、ここで・・・私の隣で横になって、私とお話ししてくれているのです・・・!

「そうか・・・我聞くん達は、お前に良くしてくれたようだな」
「うん、お父さんがいなくなった後、先代が私を工具楽屋に迎えてくれて、
 工具楽屋のみんなが仕事を教えてくれたの・・・でも、先代も出張先で行方不明になっちゃって・・・」
「誰にも言わずに出て行ったそうだな、全く我也は・・・だがまあ、それも私のせいか」
「・・・お父さん」

辛いことも、怖いことも、ありました。
お父さんに言葉が届かなかったとき、全てを諦めそうになりました。
社長が倒れ、意識を失ったとき・・・大切な人を失う怖さに、心が折れかけました。
でも、私たちは誰一人欠けることなく、工具楽屋へ帰ってきました。

「・・・それでね、先代の長男だった今の社長が、代理という形で入社、就任ってなったんだけど・・・」
「我聞くんか」
「うん・・・でも、最初は・・・未熟だし、余計なことはするしで・・・ついつい先代と比べてしまって・・・」
「ふむ、まあ我也とてはじめは似たようなものだったがな」
「でも、本当に酷くて、今にして思うと、あの頃は皮肉ばっかり言っていた気がする・・・」
「はは・・・それにしては、今は随分信頼しているようだが?」
「えっ・・・あ、その・・・うん・・・社長は、未熟だったけど・・・
 私たちを・・・社員や家族を守ろうっていう気持ちは本当に強かったし・・・」
「ふむ」
「・・・私のことを、家族と言ってくれて・・・お父さんも先代もいなくなって、
 仕事しかないって思い込んでいた私に、いろんなことを見せて、教えてくれたの・・・」
「なるほど」
「相変わらずヘンに思い込みが激しかったり、何でも一人で抱え込んじゃうところはあるけど、
 そこはお互いにカバーして・・・」
「お互いに?」
「え・・・あ、うん! わ、私も秘書として未熟だし、社長と、上手くやっていければなあって!
 あ、あくまで社長と秘書として、だから!」
「む・・・? うむ、確かに第一研で見せた態度は社長として十分、立派なものだったな・・・
 私が自分を取り戻せたのも、我聞くんのお陰とも言えるしな」
「うん・・・社長が諦めないで約束を守ろうとしてくれたから」
「最後に見せた二人の合体技も見事だった。
 初めての試みだったそうだが、我聞くんの気の容量を見極め出力を絞り過ぎることなく制御するとはな・・・
 余程息が合ってなくては出来るものではないぞ」
「そ、そうかな・・・ほら、社長とは仕事でも部活でも一緒だし、お互いのこと、よくわかるから・・・」
「・・・なるほど」
364前々々499 2/6:2006/02/06(月) 22:31:02 ID:DfuBdDO/

お父さんにはいろんなことを話したいのですが・・・やっぱり、社長とのことは、ちょっと・・・
・・・お付き合いしてる、って言ったら、なんて言うでしょう・・・許して、くれるでしょうか?
社長としては認めてくれているようなのですが・・・

「しかし、我也とそっくりだな、彼は」
「ふふふ、本当に・・・さっきも・・・」

私たちが帰還して果歩さん達に迎えられてすぐ、
社長の家で“お父さんお帰りなさい”ということで、工具楽屋の面々に番司さん、桃子さんも加えて、
恒例のすきやきパーティーが開かれたのですが・・・

「・・・と言うより、我也の子はみんな、奴の血を引いているだけのことはある、と言うべきか・・・」
「あ、あはは・・・」

例によって、社長と珠さん、斗馬さん、それに優さんが入り乱れたお肉の奪い合いになるのですが、
今日はそこに先代まで加わった訳ですから、それはもう凄まじく・・・

『お前ら! 折角帰ってきた父親に少しは遠慮しねーか!』
『ボクは育ち盛りです故!』
『ですゆえ!』
『ええい! ならば我聞、おめーは長男なんだからちっとは自重しろ!』
『俺は第一研で流した血の分だけ肉を補給せねばならんのだ!
 例え親父の言うことでもそれは聞けん!』
『ぬうう、いいだろう! ならば俺も本気を出させて貰うからな!』
『望むところだ! かかってこい!』
『リミッター解除!』『バーサーク!』『二刀流!』

・・・・・・・・・
とまあ、そんな感じでして・・・

「ま、まあ・・・私は、賑やかで好きだけど・・・大分慣れてきたし」
「そういえば、よくご一緒させて貰っていたそうだな」
「うん、社長が、私がいつも一人で食事しているのは寂しいだろうって声をかけてくれて・・・
 嬉しかったな・・・最初は面食らったけど、本当に楽しい食事で」
「・・・そうだな、私もだ・・・あんなに楽しい食事は何年ぶりだったろう・・・」
「お父さん・・・」

感情をロックされていたお父さんが食事に喜びを、いえ、あらゆることに対して、喜びを感じることなど、
この5年の間、無かったのでしょうね・・・
社長たちの家族が繰り広げる壮絶な争いに番司さんや桃子さんは半ば唖然としていましたが、
お父さんはその様子を本当に楽しそうに眺めていました。

「しかし、毎晩あんななのか?」
「そ、そうかな、大体あんなかな・・・いつも最後は果歩さんが治めてくれて・・・」
「あの子は少し冷静かと思っていたが、最後に手が出る辺り、やはり我也の子だな、ははは」
「そ、そうだね・・・」

工具楽一家によって、すっかりお鍋の周囲には触れるだけで弾かれる制空圏が造られてしまい、
他の人が手出しできない状況に業を煮やしたのか、

『あんたたちいい加減にしときなさい! お父さんも!』

と、やはりいつものように手、とついでに脚も出て、
瞬く間に社長をはじめ先代、珠さん、斗馬さんを薙ぎ倒してしまいまして・・・

「あの子には仙術の素養はない、と我也から聞いてはいたが、やはり我也の娘であることには変わりないな」
「うん・・・多分、先代よりも、というか、社長の一家の中で一番良識のある方ではあるんだけど・・・」
「むしろ我也に良識など期待するほうが間違っているからな」
「あ、やっぱり・・・」
365前々々499 3/6:2006/02/06(月) 22:31:44 ID:DfuBdDO/

それは社長も同じ・・・と言いますか、やはり社長は先代そっくり、なのでしょうね。
社長も先代くらいの歳になったら、子供たちに囲まれてやっぱりお肉の奪い合いなどしているのでしょうか・・・
もしそうだとしたら、私は・・・ええと、その子供たちの・・・お母さん、とかになってて、
果歩さんが徒手でやったことを、私の場合はバインダー、じゃなくて、
この場合はお盆でも使って、社長をひっくり返したりして・・・・・・
って! 折角お父さんと水入らずなのに、何妄想してるの私!

「・・・どうした陽菜、平気か?」
「あ、うん! なんでもないから!」
「そ、そうか・・・?」

慌てて妄想をかき消すように頭をぶんぶんと振っていたところを、思い切り目撃されてしまいました・・・

「下が眠り難いようなら代わるぞ?」
「ううん、平気、社長のところでは普通のお布団も使わせてもらってたし・・・」
「そうか、ならいいのだが」

食事が終わると(果歩さんのお陰で皆さん無事に食べ終えることができました)、
皆さん、長旅や戦闘の疲労が出たようで、すぐにそれぞれの家へ、部屋へと帰ってゆくのですが、
お父さんは当然ながら宿がありませんので、

『陽菜さんも、陽菜さんのお父さんもウチに泊っていってはどうですか?
 ウチなら布団も部屋もありますし』
『ん・・・お言葉はありがたいのですが、一応私の部屋でも二人分のスペースはありますから』
『えー、でも折角ですし・・・』
『果歩、まあいいだろ、折角5年ぶりに再開した父娘なんだぜ、
 一晩くらい水入らずと行きたいところなんだろう、なぁ、陽菜、タケ』
『は、はい・・・』
『気遣いすまんな、我也。 また後日、改めて世話になるとしよう』
『あぁ、いつでも来な、なにせ陽菜は俺の娘でもあるんだからな!』
『だったら、布団とかは大丈夫かな? 足りなかったらウチの予備を國生さんの部屋まで運ぶけど?』
『あ、はい、ちゃんとお客様用のお布団がありますから・・・』
『・・・あれ?』
『む、どうした、果歩?』
『いや・・・なんでお兄ちゃんが、それを知らないのかな〜? って・・・』
『・・・あ』

まず、私の顔が引き攣って・・・

『ん? どういうことだ、果歩?』
『いや〜、お兄ちゃん、たまに陽菜さんのところに泊りに行ってたはずなのに、ね〜? ど〜してかな〜?』
『・・・う!』

ここでやっと社長も失言に気が付いたようで・・・

『・・・ほう』
『あ、お、お父さん!? あのね、社長が料理をおしえてくれたり、味見してくれたりで、その、ね!
 あくまでついでなの! ついで! だからね、別にヘンな意味じゃないから!』
『・・・なァ我聞よ、そこんとこ、あとで詳しく、俺に聞かせてくれるよ・・・な?』
『だ、だから、國生さんが言ったまんまで! 別にやましい事は何も!』
『そ、そうですよ! 社長は暑がりでいつも布団ほとんどかけないから、
 それでウチにあるかどうか心配してくれたんですよ! ね? 社長!?』
『そ、そうそう、あははははっ、さすが國生さん、よくわかってる!』
『ほう・・・』
『で、では、今日はこれで失礼しますね! 皆さん、今日はごちそうさまでしたっ!』
『では私も失礼する、我也、我聞くん、疲れているところに済まなかったな。 果歩君も、ご馳走になった』
『いいえ、お粗末様でした! またいつでもいらしてくださいね!』
『あ、ああ、じゃあ國生さん、また明日学校で・・・』
『おーう、陽菜、タケ、またな! ・・・さて、我聞・・・・・・・・・』
366前々々499 4/6:2006/02/06(月) 22:33:29 ID:DfuBdDO/

そんな感じで、私は半ば逃げるように社長の家を後にしてきまして・・・
明日、社長が学校に出て来られるとよいのですが、ちょっと・・・心配です。
私の方はと言いますと、特に追及らしい追及はありませんでしたが、

『あ、お父さん、パジャマはこれ使って』
『おお、すまない・・・これは我聞くんが使っているのか?』
『え!? あ、う、うん・・・そ、そのつもりで買ったんだけど・・・』
『ふむ、それにしては新品同様だな』
『あ、ほ、ほら、そんなにいつも泊りに来てる訳じゃないし、社長も着替えもってきてくれてるから!』
『ふむ・・・』

言えません・・・毎回、パジャマも、ついでに客用の布団も必要ないような夜を過ごしてるなんて・・・
とても言えません・・・
と、とにかく、そんな訳でお父さんにベッドに寝てもらって、
私は客用の布団で床に寝ています。

「それより・・・お父さん、肩は痛まない?」
「ああ、帰りのヘリで応急処置はしたしな、痛み止めも貰ったから問題ない。すぐに回復しよう」
「そう・・・よかった」
「こういう時、気の操作で簡単に傷の治癒が出来る仙術使いは羨ましいがな、はは・・・」
「本当に・・・」

50人分もの氣を抜かれたという先代も、銃で撃たれ、出血で倒れてしまった社長も、
マガツの停止と共に、当然のように復活されてしまいました。
仙術使いは体力が尽きても、氣が残っていれば精神力で身体を動かせるとのことですが、
目の当たりにして、改めて驚愕したものです・・・本当に、心の底から嬉しい驚き、でしたが。
特に社長は、最後の暴走時にほとんどの傷を治癒させてしまったようでして、
撃たれた傷も、“傷跡はまだ残っているが、再び開くことはまずないだろう”、
と、駆けつけていた医療チームの方に保証される程でした。
まだ若いから傷跡もすぐに消える、とのことです。
もっとも、先代が失った氣や、社長が流した血そのものを補うことが出来るわけではなく、
先代も社長も帰途のヘリの中では、それぞれ点滴と輸血を受けながら、ずっと眠っていましたが。

「まあ、しばらく左腕は不自由だろうが、利き腕ではないからな、多少行儀は悪いが食事も問題ない」
「うん・・・そうだ、お父さん、明日は私がご飯つくってあげるね」
「おお、そうか・・・陽菜の作る食事も本当に久々だな、楽しみにしてるぞ」
「うん! 果歩さんに教えて貰ったお陰で、かなり上達したからね、楽しみにしてて」
「あと、我聞くんにも、か?」
「え! ・・・う、うん・・・社長も、美味しいって・・・言ってくれてるから・・・」

や、やっぱり・・・気にしますよね・・・一応、私も年頃の女の子で、
そんな年頃の娘が、同い年の男の子を部屋に招いて、泊らせていたなんて知ったら・・・
お父さん、ベッドの上で表情は見えないけど、社長の氣を吸い取るようなことが無ければいいのですが・・・

「そうか・・・・・・我聞くんには本当に感謝しないとな」
「・・・え?」
「第一研でのこともだが、陽菜を家族のように、大事にしてくれていたのだな・・・」
「あ、うん・・・本当に・・・」

お父さん・・・怒っていないの、かな?

「ふ・・・これなら、将来のことも安心か・・・」
「将来・・・? うん、工具楽屋はきっと、ううん、必ず、社長が黒字にしてくれるから・・・」
「む・・・? んむ、まあいい。 では、そろそろ休むとしようか・・・疲れただろう」
「うん・・・」
367前々々499 5/6:2006/02/06(月) 22:34:13 ID:DfuBdDO/

・・・・・・

静かになると、急に寂しくなります。
少しだけ、怖くなります。
さっきと同じ・・・目が覚めたら、夢だったら、どうしようって・・・

「ねぇ、お父さん・・・」
「む、寝付けないのか?」
「ううん・・・あの・・・」
「どうした?」
「今日だけでいいから・・・一緒に、寝てもいいかな・・・?」
「・・・では、こっちに来るか?」
「・・・・・・うん」

私は枕だけ持って、いつも使っているベッドの、父の隣に並んで横になりました。
もう、すっかり忘れてしまっていた、お父さんの感覚・・・
社長とはまた違う温かさと、安らぎ・・・

「陽菜・・・大きくなったな」
「うん・・・」

お父さんの手が、私の頭を撫でてくれます。
本当に小さな頃のように。

「お父・・・さん・・・」
「陽菜・・・」

本当に小さな頃に戻ってしまったみたいに・・・涙が出てきてしまいました。
お父さんは厳しい人だったから、小さい頃だってこんな風にいつも撫でてくれた訳ではないのですが・・・
でも、ちゃんと私の記憶の中にある感触の通り・・・
間違いない、本当に私の・・・お父さん。

そうして、お父さんの感触に包まれて、懐かしい夢を見ながら、とても安らかな眠りにつきました。



368前々々499 6/6(了):2006/02/06(月) 22:35:05 ID:DfuBdDO/

そして、翌朝。

私は父と連れ立って、社長といつも待ち合わせるところへ行きますと・・・

「おはよう、國生さん! それにおっちゃんも!」
「おはようございます! 社長! ・・・昨日は大丈夫でした?」
「ま、まぁなんとか・・・」

ちょっと微妙な表情をされています・・・
とりあえず大事には至らなかったようですが・・・お疲れ様です。

「それよりおっちゃんはどうしてここに?」
「おはよう、我聞くん。 うむ、真芝の件で正式に報告せねばならんのでな、
 我也と内調に行く約束なのだが・・・もしや奴はまだ寝ているのか?」
「あー、果歩に起こされてはいたけど、のんびりしてたなぁ・・・忘れてるのかも、それ」
「全く、仕方のない・・・では、私は我也の家へ行って来るので、また後で」
「うん、お父さんも気をつけて」
「ああ、それと我聞くん」

一度は振り返って別方向に歩き始めたかと思ったら、急に声をかけてきました。
表情がちょっと真剣っぽくて・・・

「は、はい?」
「・・・陽菜のこと、宜しく頼む」
「へ? あ、ああ、任せてください! 何せ社長ですから!」
「ふむ・・・ありがとう、では」
「あ、はい・・・」

なにやら満足げにうなずいて、お父さんは社長の家へと歩いてゆきました。

「・・・なんだったんだ?」
「さ、さあ・・・とりあえず、社長が私の部屋で泊ったこととか、怒ってはいないようなのですが・・・」
「そ、そうか・・・よくわからないけど、それは一安心、かな、ははは・・・」
「そ、そうですね・・・では、行きましょうか!」
「ああ、久しぶりの学校だ!」

こうして、再び日常が始まります。
社長と私は、いつものように並んで、周りを、今日は特に後ろを注意深く確認すると、手を繋いで・・・
短時間ではありますが、久しぶりに二人の時間を過ごせます。
お父さんと朝を共にして、社長と手を繋いで学校へ行って・・・
今日は、いい日になりそうです。



369前々々499:2006/02/06(月) 22:41:38 ID:DfuBdDO/
以上で今回の投下分は終了です。

次は劇中時間で一週間後くらいに飛んで、どうも親父連中がたくさん出てきそうな感じです・・・
最終的にはえっちくなる予定ですが、ちょっと先になりそうです。

ところで、前から自分で勝手に組み立てた設定を元に話を作っていますけど、
本編で(おまけですが)我聞と國生さんが正式にくっついた現状で、
この設定を引っ張って話を続けるのって、どう思われるでしょう?
抵抗があるとか、違和感があるようでしたら、そろそろ控えようかとは思います。

問題ないようでしたら、週末までには続きを投下させて頂く予定です。
では、読んで下さった方、ありがとうございました。
370名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 23:06:52 ID:ZBt+y+gS
>>369
GJ!和みました。

元々本編はくっ付いてなかった場合なんで、
くっ付いてた場合も新鮮で良いんじゃないでしょうか。
371名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 02:20:49 ID:KQ4ObokX
gjあげ
372名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 16:20:26 ID:XDP6t7kh
>362-369
GJ!
親父sが帰ってきてからの2週間、我聞たちがどう過ごしてるのか気になってたので、
楽しませていただきました。

本編と設定が違う点については、二次創作なんだし構わないのでは、と思います。
本編と違う!なんて叫んでたらエロパロは読めませんし。
続き期待してます。
373名無しさん@ピンキー:2006/02/08(水) 01:34:33 ID:THK0G4ew
アゲ
374名無しさん@ピンキー:2006/02/08(水) 23:57:56 ID:qlFPc+uY
499氏、GJです!
個人的には今のままの氏のオリジナル設定ので続きを読みたいです。
次回も、楽しみに待ってます!
375名無しさん@ピンキー:2006/02/09(木) 03:10:42 ID:NdwItLer
アゲアゲ
376名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 02:30:28 ID:bbbAzHP8
アゲ
377名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 15:18:43 ID:NoLPuzoy
油揚げ
378名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 19:13:26 ID:CHLXco6z
最近やたら上げられるが、一体どうした?
携帯ピンク移転の影響か?
379名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 20:08:33 ID:F1rUPg1N
検索出来ないからねー
まぁあげてくれたほうが便利だね
380名無しさん@ピンキー:2006/02/10(金) 20:26:34 ID:V3KkmpTp
499氏の続編を心から待ちながらageてみる。
 
もちろん他の職人さんの作品もウェルカムですよ〜
381名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 06:35:45 ID:p4kCPr2f
age
382前々々499:2006/02/11(土) 17:54:52 ID:MaXqDWgM
どもです、週末になってしまいましたが、
>>363-368の続きを投下させて頂きます。
前回から劇中時間で一週間後くらいのお話になります。

今回投下分もえっちなしな上に、國生さんもあまり出てきません。
それでもよろしかったらどうぞ、ということで。
383前々々499 1/13:2006/02/11(土) 17:55:46 ID:MaXqDWgM

第一研より帰還して、一週間程経ったある日の朝のこと。

「・・・で、ですね、社長に教えて頂いた肉じゃがを作ったんですけど、父も喜んでくれて、
 “以前より格段に料理が上手くなったな”って誉めてもらえたんです。
 これも社長のお陰です!」
「そうか、よかったなー! おっちゃんもさぞかし喜んでたろ?」
「はい!」

父親が戻って以来、陽菜の話題には父親のことが多くなり、
この朝も、通学中の二人の会話はそのことに終止していた。
些細なことでも本当に嬉しそうに話す陽菜に、我聞も笑顔で応える。
特に今日の陽菜のはしゃぎ様は、我聞も驚くくらいで、
料理を誉められたのがそんなに嬉しかったのかな―――などと思いながら、
隣を歩く彼女を微笑ましく見るのだった。

我聞にしても父が生きて戻ったのは嬉しかったし、
父を連れて第一研から帰還したときの果歩達の喜びようを見た時は、目頭が熱くなったほどだ。
だから、家族同様の陽菜が5年ぶりに自分の元に帰ってきてくれた父との生活を満ち足りた表情で語るのも、
聞いているだけで自分まで幸せな気分になるようだった。

「お、るなっち! くぐっち! おっはよー!」
「こっくしょうさっはーん! おはようございまっす!」
「あ! 皆さん、おはようございます!」
「おーっす!」

途上で卓球部の面々と合流すると、我聞は男子同士、陽菜は女子同士で、
それぞれ取り留めの無い会話をしながら学校を目指す。

「なぁ我聞、この前の出張からこっち、國生の雰囲気が変わったな」
「國生さん、明るくなったよな・・・我聞! 休んでる間に何があった!」
「あれ、言わなかったっけ? 國生さん、親父さんが久しぶりに帰ってきたんだ」
「それは聞いたんだが、それにしてもあそこまで喜ぶとは・・・随分長いこと離れていたんだな」
「あ―――そうだな、何せ長期の出張だったからな・・・」

陽菜の家族のことについては、天野や住が話題を振ったことはあるのだが、
本人があまり語りたがらないのを見て誰もそれ以上追及しなかった。
その為、“父が長期出張から戻った”と言えば誰もがそう思ったし、
流石に“父は飛行機事故で死亡したと思ったら実は生きていて、その上記憶まで奪われて連絡も取れなかった”、
等と言った所で誰も信じないどころか正気を疑われかねない。
それに、一応は隠密である本業に触れる部分でもあるので、
陽菜と我聞で“そういうことにしよう”と示し合わせた訳である。

「それにしても、お前のところだって親父さん、帰ってきたんだろ?」
「ん、ああ、全く心配かけやがってな〜!」

こちらの方は我聞が社長を継ぐ経緯を皆に説明したときに、
父親が行方不明になったと言ってしまったので(当時の陽菜の表現を借りるなら“口を滑らせた”訳だが)、
そのまま答えるしか無い訳だが、我聞のことを良く知る者としては、
“この息子にしてそんな親もアリか”という感じでそういう突飛な状況を飲み込んでくれたらしい。

「・・・それで、それがどうかしたのか?」
「いや、お前はあまり変わらんな、と思ってな」
「そうか? まあ、どうせすぐ帰ってくると思ってたからな」
「そういうもんか・・・まあいいが」

実際、しばらく以前から生きていることは分かっていたし、
第一研ではある意味憧れてもいた父と肩を並べて仕事をすることも出来た。
それに、父の帰還を喜ぶ妹や弟を見ているとそれだけで嬉しくて、気持ちが満たされるのだった。
384前々々499 2/13:2006/02/11(土) 17:56:31 ID:MaXqDWgM

その後は、本当に取り留めの無い話題に戻り、
予鈴を聞いて少し急ぎ足になって玄関に向かう。
生徒たちでごった返す階段を上り、2年5組の教室の前で

「では社長、また昼休みにスケジュールの確認にお伺いしますね!」
「ああ、宜しく頼むよ! じゃあまた後で!」

ひとりクラスの違う陽菜とここで別れて、我聞達は教室へと入る。
慌しくクラスメイト達と挨拶を交わしながら自分の席について、周囲を見回していると、
思わず小さなため息が漏れてしまう。

「平和、だな・・・」
「ん、我聞、何か言ったか?」
「え? あ、いや、何でもないぞ!?」

普段どおりの笑顔で応えて、普段どおりにホームルームを待つ。
待ちながら、しみじみと思う―――帰って来たんだな、と。
あの、文字通り命がけの戦いが現実にあったものとは思えない程の、平和な日々。
父親と、陽菜の父と、そして辻原が生きて帰って来た。
真芝は会長が逮捕され、事実上壊滅と言って良い。
今回の仕事は依頼を受注したものではなかったが、それでも大変な成果をあげたということで、
内調から破格の報酬が出て、トラックの修理代まで含めてもなんとか黒字になるそうだ。
とにかく、そんな訳で文句無しに全てが上手くまとまってしまった感じだった。

(これで、國生さんとの時間が取れれば、本当に言うことないんだけど、な・・・)

ついつい本音が浮かんでしまい、苦笑が漏れる。
これまでは陽菜が家に来たり、自分から陽菜の部屋へ行ったりと、周囲の気遣い(というより企み)もあり、
二人の時間はいくらでも作ることができた。
だが、流石に互いの父親が帰ってきてしまうと、そうも行かない訳で・・・

(ま、おっちゃんが帰って来てから國生さんは本当に嬉しそうだし、しばらくはこのままでもいいか・・・)

自分とのことで時間を割かせるよりも、
今は5年もの間、失われてしまっていた父娘の時間を過ごす方が陽菜としても幸せかもしれないしな、
と自分に言い聞かせるのだった。

そして、時間は進んで昼休み。
2年5組の面々が弁当を食べたり雑談に興じているところに、

「失礼します、2年6組、國生です。 工具楽はいますか?」

と、いつものように陽菜が入ってくる。
流石に毎日のように続いていることなので、クラスの女子が

『そんなに堅苦しい挨拶なんかしないでもいいのにー』

なんて声をかけてくれたりもしたのだが、最初の頃は

『いえ、これも礼儀ですから』

と愛想の欠片もなく返すものだから、彼女のことをあまり良く思わない者も居たようだった。
だが、二学期になってみると陽菜は格段に愛想が良くなっていて、
卓球部の連中と楽しそうに挨拶、談笑までするようになっていた。
それはちょっとした驚きだったが、親しみやすくなった彼女をクラスとしても受け入れる雰囲気になり、
今ではすっかり昼休みの恒例行事といった感じだ。
ちなみに、そのあまりの変わりように“あの國生に夏休み中、何があったのか”について、
しばらくの間、2年5組で密かに話題になったものであった。
それはともかく・・・
385前々々499 3/13:2006/02/11(土) 17:57:18 ID:MaXqDWgM

「こっくしょうさっはーん! ようこそいらっしゃいました!」
「よう」
「失礼します、ところで社長は・・・?」
「ああ、体育かなんかの委員ってことで呼び出されてたぞ?」
「委員、ですか・・・」

そういえばそんな仕事も引き受けられていましたっけ、と少し呆れたような苦笑を浮かべていると―――

「ただいまー、っておお、國生さん! 悪い、待たせちゃったかな?」
「あ、社長、丁度今来たところすが・・・また委員のお仕事ですか?」
「ああ、先週の出張中に体育倉庫の備品チェックをする当番が当たってたらしくてな、
 急いでやってくれって・・・とりあえず今日も仕事は入ってないだろうし、放課後にでもやってくるよ」
「あ、はい、そうですね・・・恐らく今週中は仕事は入らないと思いますから・・・」

なにせ第一研に行くに当たり、どれだけの期間を要するかは全くの未知数であった為、
予定が組めないということでしばらくの間、解体の仕事は全く入れておらず、
本業の方もトラックが修理中のせいで引き受けられる依頼はかなり限られてしまう。
従って現在の工具楽屋は開店休業状態、週が明ければ解体業は再開だが、
今週中は第一研関連の残務処理がそこそこに残っている程度だった。

「そんな訳で、俺は今日は部活休むからさ、部長に宜しく伝えといてくれないか?」
「あ、はい・・・あの、よかったら私も手伝いましょうか?」
「なにぃ! 國生さんが手伝うなら俺だって!」
「あ、あの、佐々木さんは・・・」
「ああ、いや、いいよ、俺ひとりで十分な仕事だからな」
「そうですか・・・では、また放課後に社の方と連絡を取って、事務処理の方に問題がないようでしたら、
 私は部活の方に参加させて頂きますが・・・
 社長、手間がかかるようでしたら、遠慮なさらずに仰ってくださいね?」
「ああ、その時はそうさせて貰うよ、サンキュ!」

そう言って残り僅かとなった昼休みでなんとか腹を満たすべく弁当をがっつき始める我聞に対し、
陽菜は微笑を浮かべながら、失礼します、とぺこりと頭を下げて退室して行った。


気だるい午後の授業を午睡に費やして、6限目の終了を告げるチャイムを目覚まし代わりに席を立つと、
我聞は部活に向かうクラスメイト達と途中で別れ、職員室で鍵を借りて体育倉庫へと向かう。
本来なら気兼ねなく部活に参加できる時間をこのような雑務で消費されることは残念でならないが、

「まあ、引き受けてしまったことだ、仕方あるまい・・・!」

相変わらず、頼られた以上は絶対に投げ出さない男である。
そんな訳でチェックリストを片手に片っ端から数を数えて行く訳だが・・・
とりあえず一時間程経過したのだが、数えても数えても全然進んだ気がしない。

「・・・そーいや、前の時は佐々木と部長と三人でやったんだっけ、コレ」

そして結局は國生さんが気を利かせて既に終わらせてくれていたんだっけ、
と、思い出して苦笑する。
あの頃の國生さんは今以上にキツかったよなぁ、とかついつい思い出しているうちに、
我聞の背後から、がらららら・・・、と扉の開く音がする。

「あー悪い、今、備品のチェック中だから貸し出しできな・・・って、國生さん!?」
「お疲れ様です社長、一息入れませんか?」

やってきたのは、二本の缶コーヒーを手にした陽菜だった。
そんな陽菜を、思わずまじまじと見つめてしまう我聞に、

「社長、どうされました? 私の顔に何か・・・?」
「あーいや、丁度さ、國生さんのこと考えてたときに現れたものだから」
386前々々499 4/13:2006/02/11(土) 17:58:13 ID:MaXqDWgM

「・・・え」

途端、陽菜の顔が赤く染まる。
それから一呼吸遅れて我聞も自分の発言について理解が追いついて、陽菜同様に赤くなってしまうが・・・

「あ、いや別に! そ、そういう訳じゃ・・・と、とにかく、折角来てくれたんだし、その辺に座ろうか!」

我聞があたふたしながら丸められたマットに腰を降ろすと、
陽菜もそれにならって隣に腰掛けて、

「・・・どうぞ」
「ああ、ありがと・・・」

しばらく互いに沈黙したまま・・・かきょっ、と少し間の抜けた音だけが狭い室内に二度、響く。

「・・・あの、社長」
「ん、なんだ國生さん?」

まだうっすら頬の赤い陽菜に顔を向けられて、
我聞は動揺を隠しています、と言わんばかりの表情で応じる。

「さっき、私のことを考えていたって、
 一体どんなことを考えていらしたんですか?」
「あ、いやその、別に・・・前にこの仕事した時は、
 國生さんが片付けてくれちゃってたんだよなぁ、って・・・それだけなんだけどね」

それを聞いて陽菜は、なぁんだ、といった風に笑う。

「よく考えると、そんな慌てるようなことじゃないんだよなぁ」

あはは、と我聞もつられて笑い、陽菜のくれたコーヒーを口にする。
冷えきった倉庫での作業だったので、温もりの有難さに思わずため息がこぼれる。

「ふうっ・・・ いや、助かったよ。
 仕事は進まないわ、寒いわで、ちょっと参ってたところなんだ」

陽菜は微笑んで自らもコーヒーをすすり、同じようにため息を吐いてから、

「そんなことだろうと思って、覗きに来た次第ですよ」

言って、くすっと笑う。

「第一研の疲れだって完全には癒えて無いでしょうし、社長に風邪などひかれては困りますからね」
「なるほど、さすが國生さん、秘書業務にぬかりなし、かな」

あはは、と笑う我聞に陽菜も調子を揃えるようにくすくすと笑うが、少し間を置いて、

「・・・まあ、それはここへ来た理由の半分だけ、なんですけどね」
「ふむ・・・? じゃあ、残り半分は一体・・・」

本当に分からない、といった表情を向けてくる我聞に、ちょっとだけ呆れたように頬を膨らませてから、
気を取り直したように苦笑して、

「こうしたかったから、ではいけませんか?」

と、我聞にぴたっと寄り添って、身体を預けるようにもたれかかる。
我聞は一瞬だけ驚いたように身体を硬直させるが、すぐに力を抜くとそのまま無言で陽菜の行為を受け入れた。
思えば、こうして二人きりの時間を過ごすのは第一研前夜以来のことで、
半身に感じる互いの体温がたまらなく温かい。
387前々々499 5/13:2006/02/11(土) 17:59:01 ID:MaXqDWgM

「なんだか・・・こうして二人になるの、久々だな・・・」
「はい・・・」

そしてまた、しばし沈黙―――言葉のいらない、親密な空気。
すっ・・・と、陽菜の手が我聞の身体に触れる。
右肩より少し下の、そこは・・・

「・・・國生さん?」
「傷は、もう平気ですか?」
「ん? ああ、撃たれたところか、それなら最後の暴走の時にほとんど治っちゃったみたいでね、
 傷跡はまだ残ってるけど痛みはないし、もう開いたりもしないんじゃないかな」
「そうですか・・・」

本当に何でも無さそうに笑って答える我聞だが、

「・・・どうした國生さん、本当に心配いらないぞ?」
「社長がこの傷を負われたとき・・・血が流れて止まらないのを見たとき・・・怖かったです」
「國生・・・さん?」
「お父さんを助けてくれたあと、倒れられて・・・いくら呼びかけても、答えてくれなくて・・・
 震えが、止まらなかった・・・」
「・・・・・・」
「もう、二度と目覚めてくれなかったら・・・動いてくれなかったら・・・
 話し掛けてくれなかったら・・・笑いかけてくれなかったら・・・どうしようって・・・!」

陽菜の声は、震えていた。
傷の位置に手を置いたまま頭を我聞の胸に押し当てて、
縋りつくようにしているその身体もまた、小さく震えていた。
二人になれなくて言いたくても言えなかった事が、今になって当時の感情と共に溢れ出したのか、
それとも何か理由があるのか・・・
陽菜のあまりに突然の変わり様に、我聞はしばしの間、言葉も無かったが、
気を取り直すと

「すまなかったな、國生さん・・・だけどほら!
 心配かけたのは本当に悪かったと思うけど、こうして無事に帰って来れて、今はぴんぴんしてる訳だしさ!
 親父だっておっちゃんだって無事に帰ってこれたんだ!
 だから結果オーライってことで、國生さんも元気だしてよ、その方がおっちゃんだって喜ぶって!」

陽菜を元気付けようと、明るい話題に摩り替えようと声をかける。
それに応じたかのように、我聞の胸に埋めていた顔をゆっくりと上げる―――
が、その表情は・・・不安に、満ちていた。

「國生さん・・・一体、本当にどうしたんだ・・・?」

流石に、我聞も本格的に気にかかってくる。

「社長は・・・」

かすかに震える声で・・・不安を宿した瞳で・・・陽菜は、語りかけてくる。

「社長は・・・何処にも、行かないで・・・いてくれますよね・・・?」
「・・・え・・・?」

唐突な問いかけに、言葉が続かない。
しばらく困惑した後に、せめて真意を聞こうと―――

「國生さん・・・?」

何を―――と、言いかけたところで、ふぃと身体に感じていた温かみが消える。
陽菜は音も無く我聞から離れ、立ち上がっていた。
388前々々499 6/13:2006/02/11(土) 17:59:43 ID:MaXqDWgM

「・・・すみません、社長、その・・・社長とこうして落ち着いてお話するのが久しぶりでしたもので・・・
 少々取り乱してしまいました・・・今のことは、お気になさらないで下さい。
 では、少し仕事を残していますので、先に社の方に向かいます。
 社長も定時までにはいらして下さいね、会社でお待ちしています、失礼しました!」

一転して笑顔を見せると、我聞が何も答えないうちに一礼して、サッと体育倉庫から出て行ってしまった。
残された我聞には、何がなんだかわからないままであったが、ただ・・・
陽菜の不安に満ちた瞳と、帰り際に見せた作り物の笑顔だけは、しばらく忘れられそうにない。
何か不安があることは、どうやら間違い無いようだが、その理由となると全く見当がつかない。

「何だろう・・・俺には、力になれないこと、なのかな・・・」

打ち明けてくれなかったことが、少し悔しかった。

陽菜が去った以上、ただ呆けている訳にも行かず、
気を取り直して・・・と言うより気分を切り替えるように、作業に戻る。
だが、どうにも先程の陽菜のことが気になって全く手に付かず・・・

「仕方ないな、続きは明日だ」

外に出て時間を確認すると出社にはまだ少し早かったが、はかどらない作業に戻る気にもなれず、
そのまま会社に向かうことにした。


事務所の階段を上がり、扉を開くと・・・ちょっといつもと風景が違っている。

「お疲れさまです! ってあれ、親父におっちゃんも・・・今日は早かったんだな」
「おう我聞、お前もこっちに来い、話がある」

我也と武文が接客用のソファーに座り、
陽菜・優・仲之井の三人が二人と向き合って立っている。
我也も武文も真芝の件で連日の内調通いが続いており、
戻るのは工具楽屋が仕事を終える頃だったので、いつもと事務所の面子が違っているというのもあるが、
それ以上になんとなく―――場が、緊迫しているように感じる。

「なんだ、話って?」

我聞としては陽菜のことも気になるのだが、俯いていて表情が分からない。
かといって我也を無視して話し掛けられる雰囲気でも無く、
一体どんな話になるのか見当もつかないままに、父に促されて対面に腰掛ける。

「まぁ今、皆にはさわりだけ話したところではあるんだが、もう一度始めから説明するか。
 陽菜、お前にも関わることだからな、座ってよく聞いておけ」
「・・・はい」

その返事を聞いて、我聞は思わず陽菜の方を振り返る。
またしても、彼女の声は震えていた。
そして、その表情は・・・仕事時の彼女らしい冷静な顔つき、というより、表情が・・・無かった。

「さて、では始めようか。 まずはこの一週間ほどの内調でのことから報告しておこう。 タケ、頼む」
「わかった。 皆も想像はついていると思うが、我也と私が内調に通い詰めだったのは、
 真芝に関する情報提供のためだ」

それは我聞にも想像がついていた、というより、夕飯時など妹達から理由を聞かれた我也が自ら語っていた。
もっとも、詳しい説明は当然ながら何もなかったが。
389前々々499 7/13:2006/02/11(土) 18:00:17 ID:MaXqDWgM

「第一研での戦闘で、会長および主だった研究所長が逮捕拘束されたことで真芝の頭は潰したと言っていい。
 彼らの自供や私の証言で、他の研究所や関連機関についても次々と捜査の手が入りつつある。
 意識を支配されていた頃の記憶も鮮明に残っているのでね、
 会長秘書という立場故に真芝のほぼ全てを理解していたと言っても過言ではないからな」

少し、辛そうだ―――そんな気配が伝わってくる。
武文からも、隣の陽菜からも。

「だが、何せ枝葉の多い企業なのでな、末端まで手が回るには時間がかかり、
 その分だけ奴らに時間を与えることになってしまった」
「じゃあ、そいつらは・・・」
「うむ、少なからぬ者が兵器や情報を抱えたまま網を掻い潜り、行方をくらましている」
「じゃあまだ、真芝関連の仕事は続くってことか・・・!」

自然と、我聞の拳に力が籠もる。
たが・・・

「いや、頭を潰した現在、末端にはバックアップが存在しない。
 新たな基盤を作る、もしくはバックを探し当てるまでは、
 可能な限り息を潜めていると見て間違いは無いだろう。
 それに、真芝の秘密主義が幸いしたと言うべきかな、
 所長連中でも解明が困難であった新理論を現時点で理解できる者はほぼ皆無と断言できるし、
 必須となる仙核作成の秘密を知るものは第一研所属のごく一部で、
 その者達は先日すべて身柄を拘束されている」

それに、私がいなくてはこれ以上新たな仙核を作ることも出来ないしな・・・
と言って、武文は顔を歪めるように笑う。

(なんて、笑顔・・・)

それは、我聞にすらわかるほどの、自虐と自嘲、そして罪悪感に満ちた、凄惨な笑いだった。

「おい、タケ・・・」
「ああ、済まない。 話を続けよう」

我也に促されて、武文はすぐに表情を戻す。
だが、陽菜はうつむいてそれっきり、顔を上げようとしなかった。
一瞬、そんな娘を気遣うように視線を向けて、そしてすぐ正面に向き直ると話を再開する。

「そんな訳で、奴ら残党に新兵器を開発したり表立って行動を起こす意図は、当面は無いだろう」
「それなら、俺たちに出来ることは何も・・・」
「うむ。 こわしやとして対応に追われることはほぼあるまい・・・あったとしても稀なケースだろう。
 だが、奴らが持ち去ったものの中には新理論を用いた兵器や、
 それらに関する情報が含まれている。
 それが裏の世界に出回れば、いつ誰が新理論の解析を再開してもおかしくはないのだ。
 理論が失われていても、現物があればそこから解析を行える者がいないとは限らんからな」

武文の言葉には口を挟むことをを許さない凄味があった。
まるで、真芝に対する彼の思い・・・怒りが、滲みだしているかのように。

「・・・だが、真芝という巨大な幹を排除した今なら、
 例え地下深くに潜った根といえど、各個掘り起こして潰すことが出来る。
 そしてその役目は、真芝の会長秘書として片棒を担いできた私が適任であり・・・私の義務だ」

誰も、何も言わなかった。
顔を伏せたままの陽菜は・・・震えていた。
390前々々499 8/13:2006/02/11(土) 18:00:59 ID:MaXqDWgM

「内調との打ち合わせも済んだ。 あとは情報が揃い次第―――おそらく一週間程かかると思うが、
 その時点で当面の目的地を決定して、旅立つことになるだろう」
「旅・・・立つ? おっちゃん、いったいどれくらい時間がかかるんだ・・・」
「そうだな、一度動き始めたら敵に察知される前に全て片をつけたいところだが・・・
 恐らく、2〜3年、といったところだろうな」
「な・・・! ちょ、ちょっと待ってくれよ! それじゃあ國生さんは・・・!」

一瞬―――真芝に対する静かな怒りに満ちていた武文の表情に、辛そうな陰が射す。
だが、それはすぐに無表情という表情によって上塗りされて隠される。

「我聞、言いたいことは分かる、そう思っているのはお前だけじゃないだろう。
 だが、タケが陽菜のことを考えないワケがないだろーが。
 その上で自ら決めた事なんだ、今更お前が口出しすべきことじゃねぇ」
「だが・・・!」

さっき学校ですがり付いてきた陽菜のことを思い出す。
あの時から、何か予感があったのかもしれない―――
そして今、話を聞いて彼女は隣でうつむいたまま震えている。
確かに、真芝の件は何よりも優先すべきだとは分かっている。
武文の説明から、我聞にも早いほど良いということは理解できた。
だが、陽菜を・・・折角、生きて再会できた娘を再び置き去りにしてまで・・・

「・・・じゃが武文君、一人では危険ではないのか?」
「ああ、その点は安心してくれ、俺が一緒に行ってやるから、まず問題ねーよ」
「な!? お、親父まで!?」
「・・・頼んではいないがな」
「ま、新理論の解析が一気に進んじまったのは俺が上辺だけとはいえ協力したせいもあるからな。
 それに・・・こいつに義務があるのなら、こいつの親友たる俺には手伝う権利がある・・・だろ?」
「うーん・・・確かに、我也さんが手伝うなら、安心は安心かもだけど・・・」

今度は、優と仲之井が我聞を見る。
我聞は目を伏せたりはしなかった・・・が、平静、という訳にもいかない。
父親の理由はわかるし、状況として武文に同行した方が結果として良い方向へ進むだろうことも分かる。
だが・・・

「親父はいいのかよ・・・いや、おっちゃんだってそうだ! 折角帰って来たんだぞ!? 
 理屈はわかるけど・・・國生さんや果歩達のことだってもうちょっとは考えてやったって・・・!」
「理屈がわかるなら納得しろ。
 それに、もしお前が同じ立場ならどうするか、考えてみろ」
「んな・・・」

真芝のことが急を要するのはわかる、あの兵器を再び世に広めるようなことがあっては絶対にならない。
だが、それでも・・・折角、再会できたばかりの家族から離れてまで・・・
そんなこと、決断出来るわけ・・・

「お前も同じ事をするさ・・・手前で播いた種は手前で刈り取らなきゃならんからな」
「だ、だけど・・・」

認められない、認めたくない・・・
あからさまに苦悩の表情を浮かべる我聞に微かに苦笑すると、

「果歩達には俺がちゃんと話すから、お前は心配しなくていい。
 それより俺達が帰るまでの間、家族と工具楽屋を頼むぞ」
 
それだけ言うと、話はこれで終わりとばかりに立ち上がる。

「では、邪魔したな、皆は仕事に戻ってくれ。 俺は家に戻るが、タケ、お前はどうする」
「我々が居ては仕事もしにくいだろう。 私も先に戻るとするよ」
「そうか、まあそーいうわけで、また明日な」
391前々々499 9/13:2006/02/11(土) 18:01:59 ID:MaXqDWgM

事務所を出て行く二人に優と仲之井が挨拶を送るが、我聞にはそんな余裕は無かった。
この一週間、父親との生活をあんなに楽しそうに語っていた陽菜に、突然、別離の予告が押し付けられたのだ。
そして今、それを聞いた彼女はうつむいたまま小さく身体を震わせている。

「・・・國生さん」

なんとか、少しでも彼女の力になってやりたい、励ましてやりたい。
そんな思いに突き動かされるように名前を呼んではみるが・・・それ以上の言葉が続かない。
何と声をかけてやればよいか・・・我聞だけでなく、優も、仲之井も・・・
口にすべき言葉を見つけることは出来なかった。

そして、しばし流れた沈黙を破ったのは―――他でもない、陽菜だった。

「・・・さあ! いつまでもこうしていても仕方ありません! 仕事しましょう!」
「こ、國生さん!?」「陽菜ちゃん・・・?」「陽菜くん・・・平気なのか?」

意外なほどに張りのある声に、彼女を囲む三人が三人とも驚きの声を上げる。
そんな周囲の反応を気にかけていないかのようにすくっと立ち上がった陽菜は、笑顔だった。
誰もがすぐに見抜けてしまう、無理やり貼り付けたような、辛い笑顔。
だが、一番辛いはずの陽菜がそうまでして平静を装うのなら、周りからはもう何も言えない。
陽菜がそれ以上何も言わず、席に戻って仕事に取りかかるのを見て、
仲之井も優もそれぞれ自分の席に戻る。
我聞はというと、席に戻ったところで仕事もない。
それでも社長席に座っていることも “仕事のうち”とは、陽菜や仲之井の言葉ではあったが・・・

「じゃあ、俺は外で溝でも攫ってくるよ」

そう言って事務所からいそいそと出てしまった。
本当は、陽菜の傍に居てあげたかった。
だが、傍に居ても何も言ってあげられないということが、嫌という程に分かっていて・・・
だから、逃げるように事務所から離れた。
無力感に苛まれながら、階段を少し降りたところで、立ち止まる。

―――第一研に行く前に國生さんと話したの、この辺だったな。
あの時は俺が無理して明るく振舞おうとしたのを、國生さん、涙ながらに責めてくれたっけ・・・
泣き言を言っていいって、弱さを見せていいって・・・言ってくれた。
あの時、俺はどれだけ救われたか・・・
だが、今はどうだ・・・國生さんがあんなに辛そうに笑っているのに・・・俺は・・・

ただ拳を握ることしか出来ず、他にどうしようもなく、再び階段を降りる。
気を散らすためにも身体を動かしたくて、倉庫へ道具を取りに行こうとする我聞の背中に―――

「我聞君」
「・・・おっちゃん?」

声をかけたのは、階段の陰に控えていた武文だった。

「ふふ、寒いのに外作業とは大変だな」
「おっちゃんこそこんな寒いところで・・・國生さんを待つのなら、事務所の中に居ればよかったのに」
「いや、人待ちなのは事実だが、相手は陽菜ではないのでね」
「へ?」
「我也も仕事が無いときは外で作業が多かったからな、君もきっとすぐに出てくるだろうと踏んで待っていた。
 我聞君、少し話がしたいのだが、いいだろうか?」
「俺?」

意外な言葉に多少、戸惑いはあるものの―――

「いいですよ、俺からも話したいことがありましたから・・・」
392前々々499 10/13:2006/02/11(土) 18:02:46 ID:MaXqDWgM

「そうか、では先に我聞君から話してくれ、恐らくその方がスムーズだ」
「そうですか、じゃあ・・・さっきおっちゃんが言ってた真芝の残党潰しの旅だけど・・・
 あれ、せめて1ヶ月、いや、半月でも出発を延ばせませんか!?」

解決にはならなくても、例え僅かでも、父親と一緒にいられる時間を延ばしてやりたい・・・
慰めの言葉一つかけられない自分にできることと言えば、これくらいしか思い浮かばなかった。

「・・・それは、陽菜の為、かね?」
「! ・・・はい」

別に隠すつもりもなかったのだが、何せ相手は陽菜の・・・想いの人の父親な訳で、
言い当てられてしまうと、妙に緊張を感じてしまう。
だが、今はそんなことを気にしている時ではない。

「第一研から戻って、おっちゃんが帰ってから・・・國生さん、いつもおっちゃんのことばかり話してるんだ。
 それも、すごく楽しそうに・・・
 おっちゃんが生きていてくれて、当たり前だけど、本当に嬉しそうなんだ」

―――見当違いと分かっていても、思わず軽く嫉妬してしまうくらいに。

「真芝のことがどれだけ大事かは分かってるつもりだ!
 けど、家族だって! 娘だって・・・國生さんだっておっちゃんにとっては大切だろう!?
 折角・・・5年ぶりに生きて再会できたばかりなのに!」

自分でも説得力に欠けることは十分過ぎるくらいに分かっている。
先程、目の前の相手が詳しい理由と共に述べた旅立ちの理由とは、比べるべくもない。
直情的に、我聞の心情を吐露しただけだ。
だが、その相手・・・武文が我聞に向ける視線には、心なしか温かいものが含まれていた。

「そうか・・・私の話ばかり、か・・・ふふ・・・」
「おっちゃん・・・?」

今の武文の顔には、先のような怒りでもなく、無表情でもなく―――
きっと、部屋で陽菜に向けているに違いない、父としての温かな情が滲み出ていた。

「だが我聞君、陽菜は部屋にいるときは、君のことばかり話しているぞ? それも楽しそうに、な」
「・・・へ?」
「学校のこと、部活や友人のこと、仕事のこと・・・話題は様々なハズなのだが、
 どうも最終的には君の話になってしまうらしい」
「んな・・・!?」

流石に今度は動揺を隠せない。
まさかこんな場面でそんな・・・よりにもよって意中の人の父親から、
こんな発言が飛び出すとはさすがに夢にも思っていなかったものだから、
先の苦悩も勢いも完全に削がれて、あたふたとするばかりであった。
武文は武文で、すっかり顔を赤くした娘の話題の主の様子をうっすらと笑みを浮かべて眺めている。

「・・・君のことを本当に信頼している様だ。 いや、もしかすると・・・」

そこで言葉を切り、一つ息を吐くと表情を厳しくして、未だ絶句中の我聞を見る。
我聞は一瞬、武文が娘のことで自分を怒り出すんじゃないかと思わず身を固める、が・・・

「まあ、今はまだいい・・・だが、そんな君だからこそ、聞いて欲しい」

怒っている訳ではない、ただ、真剣なだけ。
そんな雰囲気を感じ取り、我聞は動転していた心を慌てて静める。
動揺がすっかり顔に出てしまっていた我聞が平静を取り戻すまで武文は黙して待ち、
そして、再び語り出す。
393前々々499 11/13:2006/02/11(土) 18:03:40 ID:MaXqDWgM

「娘を・・・また一人、残すことになる。
 我也を連れ出し、ただでさえ君には負担をかけていて、こんなことを頼める義理ではないと分かっているが、
 それでもどうか・・・私が戻るまでの間・・・陽菜のことを、頼みたい」
「お、おっちゃん!?」

はるかに年下の自分に向かって深く頭を下げられて、思わず声をあげる。

「ちょ、ちょっとおっちゃん、そんな、顔をあげてよ!」

武文は同じ体勢を保ったまま、微動だにしない。
その意図は我聞にもよく分かる。
陽菜のことで頼られるのは全く苦にならないし、
いつかは、自分から武文に言わねばならない、くらいのことまで考えたこともある。
だが、ここで武文の頼みに応じてしまったら、一週間後、彼が父と共に旅立ってしまうことは間違いない。

「俺は・・・社長としてなら、いくらでも頼ってくれて構わないけど・・・でも!
 俺じゃおっちゃんの代わりにはなれない! 今、國生さんが求めてるのは、父親としてのおっちゃんなんだ!」
「父親か・・・」

そう、呟いて顔を上げると、静かに答えた。

「ならば、やはり今の私には、陽菜の傍にいる資格はない」
「・・・え」

この人は何を言っている? ・・・資格?

「お、おっちゃん・・・? 何、言ってるんだ? 意味が、わからない・・・資格? なんだそれ・・・」

意味がわからない、けど、少なくとも彼には重大な意味があることだけは、伝わる。
武文の真剣な、鋭い目つきから・・・先ほど事務所で見せた、真芝への怒りとはまた違う・・・
何か凄絶な色を帯びた、正視するのが辛い目だった。

「私の手は、父として娘に触れるには・・・あまりに血で汚れすぎているのだよ」
「血・・・」

血に汚れた手・・・字面以上の、凄惨な意味。

「我聞君は、仙核がどのように作られていたか、聞いているかね?」
「いや・・・」
「そうか、我也は何も言わないか・・・まあいい。
 仙核は、新理論による兵器を稼動させるエネルギーの供給コアだということはわかるかね?」
「ああ、それは・・・」

十曲のスーツや桃子の携帯、それにグラサンが片目に仕込んでいた、あれ・・・
それが輝くと兵器は強力な機能を発動させ、
装着者は普通の人間でありながら仙術使い並みの身体能力を発揮させていたのを、何度も見ている。

「新理論は仙術の力を制御して兵器に超常の力を与えるためのものだ。
 そして仙術の力を用いる以上、そのエネルギー源は人の“氣”でなくてはならない。
 つまり仙核とは、人体から抽出した“氣”を込めた動力源なのだ」
「人から・・・抽出・・・」

先日、目の前の相手の能力を模した、という攻撃を受けたのはまだ記憶に新しい。
身体から氣を、生命力を抜き取られる感覚・・・
先の武文の言葉と、気を抽出するという行為が、頭の中で嫌な絡み方をする。
できれば、否定したい連想。
394前々々499 12/13:2006/02/11(土) 18:04:25 ID:MaXqDWgM

「マガツを完成させるにあたり、我也から50人分の氣を吸い取ったことは、対面したときに語ったな。
 それが何を目的にしていたか・・・今までの話から、我聞君にも想像はつくだろう」
「親父から・・・親父の氣で、仙核を・・・」
「我也の氣から、50の仙核を作り出した・・・だが、それは一部に過ぎん。
 マガツだけで数百、他の兵器に使用した物も含めれば、千を下らぬ仙核を作り出したのは、全て私だ。
 そして、我也のような例外中の例外でもない限り、
 仙核を作り出す為には健常な人間一人が持つ氣の全量を要する」

つまり・・・それだけの数の仙核を作り出すために・・・
この人は感情を封じられて、その手で、その能力で・・・

「私は、この手で・・・仙核の数だけ・・・人の命を奪ってきたのだ」

あくまで淡々と、武文は語った。
あらゆる感情を殺さなくては語れないから、全ての感情に自ら封をして、
結果的に淡々とした語りになった。
・・・我聞には、武文が血を吐くように語っているように見えた。

「だ・・・だけど・・・おっちゃんは、感情を、封じられて・・・意識だって、操られて・・・」

今の武文を見て、その言葉が欠片ほどにも彼を救いはしないと分かっていて、
それでも声をかけずにいられない。

「それでもここへ戻ってきた時は、解放と再会の喜びが大きくてね、安らぎを感じることが出来たのだ。
 だが、2、3日も経つと・・・夢に出てくるのだよ・・・
 人の命を奪ってしまった、この手の感触が・・・その相手の顔が・・・
 そして、その手を親友や、その息子である君や・・・娘に、陽菜にまで向けていたことが・・・!」

何も、言えない。

「・・・改めて認めざるを得なかったのだ。
 今の私に人として・・・父として、安穏と過ごす資格はない、と・・・」

言える訳が、ない。

「仙核作成に関する事実を伝えても、内調は私の罪を問いはしなかった。
 だが、私の罪の意識は・・・いくら時が流れても、消えはしないだろう。
 私が人の命を代償に作り上げた仙核の数々・・・これを全て破壊しても、
 その意識が消えてくれるかは分からない。
 だが、それだけが今の私にできる・・・唯一の贖罪なのだ・・・」

そして我聞に顔を向けると、少し“しまった”というような顔をしてから、
僅かに笑みを浮かべた・・・浮かべようとしていた。
それほどに、我聞は顔を歪めていた。
・・・目の前にある深い苦しみに、悲しみに、何の手も差し伸べることのできない、自分の無力さに。

「すまんな・・・君にこの気持ちを背負ってもらおうという意図は無かったのだ、許してくれ」

だが、その言葉が我聞の表情を少しも和らげることはなく、それを見て取ると、

「・・・いや、それは嘘だな。
 このことを聞いたら、きっと君は私の頼みを断らない、そんな打算があったことは否定しない。
 そして、君は娘の・・・陽菜の、一番の理解者だ。 だから・・・改めて頼みたい」
395前々々499 13/13 (了):2006/02/11(土) 18:05:22 ID:MaXqDWgM

再び、武文は我聞に向けて頭を下げる。

「陽菜のことを、頼む・・・
 私の罪に、人を殺めた父の存在に、陽菜は苛まれるかもしれない。
 私が陽菜の元を去ったことに対して、自らを責めるかもしれない。
 そのとき、どうか・・・その重荷を、陽菜と分かち合ってくれないだろうか・・・
 陽菜を、支えてやってはくれないだろうか・・・
 身勝手な頼みだとは重々承知している、だが・・・我聞くん、どうか、頼む・・・!」

5年。
死んだものと思われて、しかし彼は、生きて娘の前に帰ることが出来た。
その空白を経ても尚、彼は娘を愛していた。
だが、彼はその娘を置いて、旅に出ようとしている。
それは己の為の贖罪であり、そして・・・父として在る為の―――娘の為の、贖罪。

「・・・わかりました」

断れる訳が無かった。
武文と陽菜が、共に心から父娘として穏やかに暮らせる為には、避けては通れないことだと、
理解してしまったから。

「約束します・・・國生さんは、俺が支えます。
 社長として、男として・・・おっちゃんが帰ってくるまで、絶対に辛い思いはさせない・・・
 おっちゃんが帰って来たときに、かならず笑顔で迎えさせて見せます・・・」

それは、特別なことではない。
常日頃から思っていたこと。
自分にとって一番大切な人に対する、当然の想い。

「・・・そうか・・・ありがとう・・・」

顔を上げて、そう答えた武文の声にも顔にも、やっと少しだけ、温かみが戻ったようだった。

「だから、約束してください」
「・・・なんだね?」
「必ず・・・全ての片をつけて、戻ってきてください。
 おっちゃんは悪くないんだ・・・操られていただけなんだ!
 だから・・・片をつけて、ちゃんと・・・國生さんの父親として、帰って来てください。
 國生さんは、父親を・・・おっちゃんを、愛してますから!
 折角、戻ってきたんだ、また会えたんだ!
 ずっと、きっと、父と娘として、一緒に暮らせるのを待ってますから・・・
 だから、必ず! 國生さんの父親として、ここへ帰って来てください!」

それは残酷な願いかもしれない。
贖罪の旅の果てに、武文が救いを見出せるのか、それは本人にも分からないのだから。

武文は思う。
“父親として”帰って来いと言う、それは彼が陽菜を想うが故の言葉だろう。
彼は娘のことを支えると言い切り、そう言葉にした以上、必ず娘を支え続けてくれるだろう。
娘を預けるに足る人物を見出した時点で、父としての務めは終えたような気もする。
だが同時に、父として思う・・・娘が彼と共に歩む姿を、見てみたいと。

その思いは、贖罪の果てにまだ迷いを抱えていたとしても、
自分をきっと良い方向へ導いてくれるだろう、と。

だから武文は、やっと表情を柔らかく崩し、一言、はっきりと言った。

「約束しよう」
396前々々499:2006/02/11(土) 18:09:05 ID:MaXqDWgM
今回投下分は以上です。

あとは今回放置になってしまった國生さんと我聞のお話ということで、
最終的にはえっちい展開になる予定なんですが、
短くまとめられたら次の投下分で終了、延びてしまったらあと二回、になるかもです。

では、読んで下さった方、ありがとうございました。
397名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 19:45:57 ID:EGRRWLjL
・・・
凄いです。
武文さんが
我聞が
そしてこれを書いた499さんが

自分の持つボキャブラリーでは
どう表現すればいいのか解らないから
凄いとしか言えません
Good・Job
398名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 19:47:49 ID:+nlYTi0l
この、ド低能がぁぁぁっ!!!!!
次回を楽しみに待ってるぞ畜生!GJ乙!!
399名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 19:48:46 ID:EGRRWLjL
・・・
凄いです。
武文さんが
我聞が
そしてこれを書いた499さんが

自分の持つボキャブラリーでは
どう表現すればいいのか解らないから
凄いとしか言えません
Good・Job
400名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 19:50:05 ID:EGRRWLjL
すんません
二重レスしてました
401425:2006/02/11(土) 23:18:45 ID:ycBOvS7N
ドウモ、425です。
>>347-349の続きを投下させて頂きます。
今回もエロはナシです(スミマセン)
402425 1/4:2006/02/11(土) 23:20:14 ID:ycBOvS7N
「へぇ〜國生さん反仙術を修行しているんだ?」
「はい、少しでも本業で・・社長のお役に立てるようにと」
「でもどうやって・・・」
「はい、お父さんや静馬様にもメールなどで助言を頂いているんですよ」
「そうなんだ・・・」

(おっちゃんはともかく静馬のばーちゃんがメール・・・想像できないな)

二人で何気ない会話をしながら歩く通学路・・・社長と一緒に、二人きりで居られる数少ない時間

「ところで社長、今日のスケジュールのことですが・・・」
私は会話を仕事に関するものに切り替えました
仕事に関する話は重要な事、社長も少しまじめな顔をしてこちらを向いてくれます
「ん?」
「本日は解体等の仕事がありません、中之井さんから社に特に顔を出さなくても良いと言われています」

そう、仕事に関するスケジュールは重要・・・

「それじゃあ今日は思う存分部活に参加できるな!」
「はい、今日こそは勝たせて貰いますよ、社長?」

重要なんだけど・・・

「いい覚悟だ、手加減しないぞ!」
「望むところです」

今日のは特別なんです

今日は仕事が無い
社長と卓球ができる・・・私の計画が実行できる
403425 2/4:2006/02/11(土) 23:20:58 ID:ycBOvS7N
「いや〜すっかり遅くなったな、國生さん」
「申し訳ございません、私が少し熱くなり過ぎてしまって・・・」

今日は仕事も無いので部活の終了時間まで部の皆さんと、社長と卓球を楽しめました

「はっはっはっはっはっは・・・國生さんの負けず嫌いには本当に驚いたよ」
「ムッ、そんなに笑わなくても///」

(うっ・・・國生さんの笑顔・・・可愛い、でも何だろう?少し違和感が・・・・)

「ふぅ、久しぶりにこんな時間まで卓球できたからかな?何かすごい疲れちゃったな」
「ほ、本当に申し訳ございません」
「い、いや!!そういうことじゃ・・・」

ふふっ・・社長ったら、慌てちゃって
でも社長、だいぶ疲れてらっしゃる・・・今のところは計画どうり

次は

「本当に申し訳ございません・・・あの、疲れてらしゃているようなので、それでよろしければ・・・私の部屋で休まれませんか?」
「えぇ!!////」
「驚かれましたか?///」
「そりゃあ驚くよ///」

やっぱり驚かれていますね、当たり前かな?
でもこれくらいは予想の範疇

「秘書として社長の健康管理は当然ですし・・・その・・」
「ん?」
「実は最近料理の勉強をしていて、一度社長に味見をして頂きたいと思いまして」

ちゃんと返し文句を考えていた私

「そ、そうか、そういうことならいくらでも引き受けるぞ!///」
「ありがとうございます・・・ところで社長は先ほど如何して驚いていたんですか?」

ちょっと意地悪をしてみる

「・・・何かする気だったんですか?」
「お、俺は社長だ、断じて如何わしいことは!!」

如何わしいことって・・・誰もそんなこと言ってませんけど
まぁ意地悪もこのくらいにしましょうか

「それでは行きましょうか、社長///」
「こ、國生さん!?」
そう言って私は社長の手を取り少し強引に引っ張った
これから向かうのは私の部屋・・・そう、私のテリトリー
404425 3/4:2006/02/11(土) 23:22:02 ID:ycBOvS7N
「狭いところですがどうぞあがってください」
「お、お邪魔します!!」

社長ったら緊張してますね
やっぱり一人暮らしの女性の部屋に入るわけですからね
それにしても社長ったら落ち着きがなさ過ぎです
さっきから辺りを見渡してます

「そんなにジロジロ見回さないで下さい。恥ずかしいです///」
「す、すまん///!!」

私はドアを背に向けながら言い、そして
ガチャ
ドアの鍵とチェーンロックを掛けました

「もう出してあげません」

「ん、何か言った?」
「い、いえ、何も・・・」

いけない・・・うっかり口が滑ってしまいました
気をつけないと、あと少しだから

「それでは食事の準備をしますので其方のほうで腰掛けて待っていてください」
「わ、わかった」

(うう・・やっぱり緊張するな、一つの部屋に國生さんと俺の二人っきり・・・・・い、いかん!!何を考えているんだ、俺は社長だぞ!?・・・・しかし本当に疲れたな、久しぶりに部活をしたとはいえ、まるで“本業”を終えた時みたいだ)
405425 4/4:2006/02/11(土) 23:22:52 ID:ycBOvS7N
「できた・・・」

キッチンに入って数十分後、社長の好物の肉じゃがも出来上がりました

「さてと、社長はどうしてるでしょうか?」

そう言いながら私は社長のほうへと足を運ぶ

ふふ・・社長、大分お疲れのようです
それもそうですね、私の反仙術で“気”をすこしずつ吸い取ったんですから、部活動のときから・・・

「社長、大丈夫ですか?」

「こ、國生・・・・さ・・ん」

ドクン

どうしよう・・・思った以上に効いてみたいなんですけど・・・
なんだろう・・・こんなにも弱っている社長を見て・・・無性に・・・



「國生さ・・・んん!!?」


我慢できずに私は社長にキスをしてしまいました
唇と唇を重ねるだけのソフトなキス
唇を離してみるとそこには顔を『これでもか!』といわんばかりに真っ赤に染めた社長の顔があった、でも私の顔も真っ赤でしょうけど・・・

それにしても、本当は夕食を頂いてからゆっくり実行に移そうと考えていたのに・・・普段は見られない社長の弱った顔を見たら我慢ができなくなってしまいました

「こ、國生・・・さん?///」

「私、社長が大好きですvvv」
406425:2006/02/11(土) 23:26:12 ID:ycBOvS7N
今回の投下分は以上です。
次回からエロ突入&ラストです。
来週中には最終回投下を考えています、ソレデハ・・・
407名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 01:02:03 ID:ppDcyJ5n
GJ
408名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 02:00:37 ID:QlDrhtOn
今BSで放映してる「完全なる飼育」がかぶってくるようだ。ゾクゾク・・・
409名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 03:40:46 ID:3GNPBVRw
>401-406某スレ425氏
これから仙術の暗黒麺(じゃなくて反仙術ですがな)に目覚める國生さんが拝めるのですね
ンマー楽しみですわ。 で、

個人的な意見になっちまうがセリフ文末の記号はちょっと使い方工夫したほうがいんでね?
410名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 05:24:53 ID:/hkrf/GA
我聞は国生さんの尻に引かれるのがお似合いだね
411名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 09:10:50 ID:+Ye59Uba
425氏低能乙。
けど、>>409と同じく文末の記号はイラナスだと思う。
正直、何か変な感じがする。
412名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 17:04:08 ID:p+t08v3e
age
413425:2006/02/12(日) 17:50:28 ID:3jDFhurF
>>409 >>411
ご指摘ありがとうございます。
次回からはご指摘を活かし精進させて頂きマス。
414名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 00:35:33 ID:/DipkIE1
>>前々々499氏
素晴らしい…続きも楽しみです!

>>425
黒國生さん(´Д`)ハァハァ。
415名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 02:30:52 ID:e3XJZ/4w
>>409
あんたは神だ。間違いない。

>>425
新たなる低能爆誕の予感!!
是非、続きの投下を!
お待ちしてます
416名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 02:36:44 ID:e3XJZ/4w
すんません
>>409じゃなくて前々スレ>>499氏でした。
ハズカシ
417名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 20:10:48 ID:QvXsDcut
バレンタインネタで投下無いかなー…
418名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 23:18:32 ID:zlN1UBd2
クリスマスの時の様なお祭になったら素敵だねぇ・・・
419名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 00:26:34 ID:kP7n/lE2
大量投下こないかなー
420名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 16:25:51 ID:2CtKgsGa
信じてる…夢の大量投下を…バレンタインの奇跡を… 
あげ
421前スレ272:2006/02/14(火) 23:08:01 ID:7Whrs7F9

2月14日。早朝。
「ふははははははーっ」
無人の教室内で意味もなく笑い、無駄にテンションの高い男が1人いた
そして、男が笑い出した瞬間にその教室の扉が開いた
「……なんだ、いきなりテンションが高いな」
「おう、中村か。今日は何の日か知っているか!?」
テンションMAXでそう言うのは佐々木、慣れている中村でも少しひいてしまうぐらいの勢いがあった
「何の日……バレンタインのことか?」
「そう! バレンタインだ!」
成る程、それでこれ程テンションが上がっているのか
いや、わかってはいたのだが、ここまで上がるには何かあるに違いない
「……もう貰える予定でもあるのか」
それしかあるまい……ふぅとため息を吐きながら、中村は佐々木に訊いた
それ以外、佐々木のテンションが上がる理由はない
「いや、まだ無い」
中村が次の言葉を発するのを遮り、佐々木は続けて宣言した
「今年こそっ、國生さんからチョコを貰うのだっ!」
佐々木の背後からゴウッと炎が燃え上がった、中村は既に呆れてものも言えない状態だ
「……去年も似たようなことを言ってなかったか?」
「去年は去年。今年は今年っ!」
ずびしっと佐々木が中村を指差しそう言うが、中村はもう話を聞いていない
ただ一言「まぁ頑張れ」と言うと、佐々木は「おう」と返し、更にテンションを上げていく
望みは無いに等しいというのに、ここまで確信的に燃え上がる佐々木に漢を見た
それから次々にクラスメイトが、天野や住が登校してきて、中村と同じ様に佐々木のテンションの高さにひいた
「なに? 何なの、あいつ」
「國生さんから今年こそチョコを貰うんだと」
「へー、まだ諦めてなかったんだ」
住がポンッと天野の肩を叩き、「頑張りなよ」と言った
「なっ、あたしは別にあいつにチョコなんて……!」
「はいはい。あ、中村くん、これ」
住が鞄から小さな箱を取り出し、中村に手渡した
「お、サンキュな」
「えへへへ、今更かもしれないけど」
住と中村の仲は既に校内でも公認であり、その為、今年は義理チョコを持ってきていないそうだ
去年はちゃっかりと貰っていた佐々木だが、2人が公認の仲になった時点で今年は既に諦めている
「そういや、我聞くん達遅いねー」
佐々木と時計を見ながら、住がそう言った
もうすぐ始業のチャイムが鳴るが、我聞と陽菜はまだ登校してきていないようだ
「また急ぎの仕事でも入ったんだろ」
「なにぃ!?」
佐々木ががたんばたんと椅子や机を押し退け、中村を問いつめるが、あくまで想像のことだ
しかし、2人が揃って遅れるとなれば、それぐらいしか考えられない
「ぬぬ〜」
「残念だったわね」
天野はどこか嬉しそうに佐々木に声をかけるが、彼のテンションはまだ下がってはいなかった
「いやっ、まだ昼休みが! 放課後がある! 下駄箱だって確認してない!」
「おいおい……」
もはや佐々木には誰の声も届かないであろう
3人は諦めて、始業のチャイムと同時に先生に叱られる前に席に着いたのだった

・・・・・・
422前スレ272:2006/02/14(火) 23:10:05 ID:7Whrs7F9

我聞と陽菜の2人はやはりその日の授業には出てこなかった
いや、正確に言えば6時間目が始まる頃に我聞はようやく自教室に顔を出した
とりあえず出席日数の為というより、部活動の為に登校してきたとしか思えない
我聞の姿を確認し、佐々木のテンションは更に上がった
もう授業が始まるというのに、佐々木は席を立って我聞を問いつめた
「おいっ、仕事は!? 國生さんは!?」
「え、あ……今日の分は終わったから、多分、部活には来ると思うけど」
「多分!? 多分じゃ駄目なんだ!」
いつもより凄みを増した佐々木の剣幕に押され、我聞は困惑している
中村達は遠巻きに、巻き添えを食っている我聞に同情した

そして迎えた放課後
佐々木は光速を越え、卓球部室へと向かった
終業と共に飛び込んだのだから、まだ誰もいない
そわそわと落ち着かず、熊のように部室内をうろうろと歩き回っている
やがて中村達が顔を出し、その後に我聞と陽菜が現れた
「こっくしょうさぁ〜〜〜んっ!!」
早速行動に出た佐々木が、陽菜の前に立ち、手を差しだした
「……あの、何か?」
「今日が何の日か知っていますよね?」
あくまで紳士を装い、佐々木はそう訊ねた
陽菜はいつもと変わらぬ表情のまま、戸惑いすら見せなかった
「おい、佐々木……」
中村がいい加減にその目に余る行為を止めようとした時だった
「ああ。良かったら、これ……」
そう言って、陽菜ががさごそと鞄の中を探っている
佐々木も、止めようとした中村も、部室内にいる皆の動きが止まった
その行動に、いやに胸の鼓動が……佐々木のテンションとボルテージが底無しに上がってしまう
「どうぞ」
陽菜がスッと佐々木の眼前にそれを差しだした
佐々木の視界が涙で曇る、とうとう……ついに……ようやく……
ごしごしと感涙を袖で拭い、陽菜からそれを受け取ろうとつかみかかった

そして、佐々木の動きが止まった
423前スレ272:2006/02/14(火) 23:10:41 ID:7Whrs7F9

感涙を拭った目で見えたそれは確かにチョコだった
しかし、大箱入りの粒チョコ。
更にその上には熨斗紙が、達筆な筆文字で『卓球部の皆様へ』と書かれていた

佐々木は崩れ落ちた

「お、國生さんそれは?」
「いえ、折角ですので、皆さんでと思ったのですが……」
「はるるん、あたし達も貰って良い?」
天野の言葉に陽菜がどうぞと言い、わいわいと皆が端からチョコをつまんでいく
佐々木は未だにショックから立ち直れないようで、燃え尽きたそれは灰へと変化しつつあった
「(違う、違うんだ……)」
確かに國生さんからのチョコレートには変わりはない
しかし、そんなお歳暮みたいなひとくくりのチョコじゃなくて……チロルでもいいから個別に……
「(……終わった)」
佐々木次郎17歳、去年に続き今年もあえなく撃沈

・・・・・・
424前スレ272:2006/02/14(火) 23:12:56 ID:7Whrs7F9

ようやく佐々木が灰から人へ戻った頃には、陽菜からのチョコは全て皆の胃の中に消えていた
二重にショックだった、その事実を知った瞬間の彼は廃人に等しかった
「……ああ、俺は明日から何を希望に生きていけば……」
とぼとぼと下駄箱へ向かう、もう夕闇が辺りを包んでいる
チョコを1つも残してはくれなかった薄情な皆は、佐々木を置いてとっくに帰宅したようだ
1人ぼっちの校内、佐々木は自嘲気味に笑った
かたんと下駄箱の扉を開け、靴を取り出そうとした時だった
何か靴以外の、変な感触があった
もしやと思い、暗い下駄箱の中を覗いて見た
「…………」
もう一度手を入れ、それを取り出した
雑なラッピングをされた、小さな箱が1つだけ入っていた
佐々木は堪らず中を開けてみると、紛れもない手作りチョコが入っていた
何故すぐに手作りとわかったのかといえば、あまりにも形状が崩れていたからだ
こんな状態の商品はまず売っていない、『手作り風チョコ』としては売れそうではあるが
「だ、誰だ……?」
辺りを思わず見渡してみるが、周りには誰もいる気配がない
箱にもラッピングにもチョコにも、どこにもメッセージも名前も残されていない
「……なんかやばそーだな」
もしかしたら毒入りかもしれない、一瞬食べるのをやめようかと佐々木は迷った
しかし、これを食べずに漢を語れようか
否。
詳細不明のチョコを、佐々木は勇気を持ってそれをひとつ口に入れた
もぐもぐごっくんと飲み込んでみたが、なんてことはなかった
ただのチョコレートだ、しかもなかなかいけるではないか
もうひとつ口に入れてみた、1粒食べるごとに身体中に元気が満ちてくるようだ
佐々木はがつがつとそれを食べ、あっという間に空になった箱をもう一度見つめた
「…………」
結局、誰からの贈り物だったのだろう
佐々木は首を傾げた、心当たりのある人物がいないのだ
本当なら國生さんからのものだと思いたいのだが、彼女はこんなに不器用ではないと勝手に決め込んでいる
「……。まぁいいか」
名前もメッセージも残していないのだ、きっと何か事情があるに違いない
それにもしかしたら、ホワイトデーまでに名乗り出てくれるかもしれないではないか
佐々木は上機嫌で玄関を、校内を出た
「ありがとな」
空になった箱を夜空にかざし見て、佐々木はそう呟いた
きっと相手に届くに違いない、そう思いながら
425前スレ272:2006/02/14(火) 23:16:05 ID:7Whrs7F9
以上で書き込みを終わります。
>>423の投下はこの後すぐにそれの訂正版を投下しますorz
426前スレ272:2006/02/14(火) 23:17:41 ID:7Whrs7F9

感涙を拭った目で見えたそれは確かにチョコだった
しかし、大箱入りの粒チョコ。
更にその上には熨斗紙が、達筆な筆文字で『卓球部の皆様へ』と書かれていた

佐々木は崩れ落ちた

「お、國生さんそれは?」
我聞の言葉に、崩れ落ちた佐々木を見ながら陽菜が言った
「いえ、折角ですので、皆さんでと思ったのですが……」
「はるるん、あたし達も貰って良い?」
天野の言葉に陽菜がどうぞと言い、わいわいと皆が端からチョコをつまんでいく
佐々木は未だにショックから立ち直れないようで、燃え尽きたそれは灰へと変化しつつあった
「(違う、違うんだ……)」
確かに國生さんからのチョコレートには変わりはない、貰えなかった去年とは大違いだ
しかし、そんなお歳暮みたいなひとくくりのチョコじゃなくて……チロルでもいいから個別に……
「(……終わった)」
佐々木次郎17歳、去年に続き今年もあえなく撃沈

・・・・・・
427前スレ272:2006/02/14(火) 23:24:21 ID:7Whrs7F9
これで本当に投下を終わります。
実はもう少し長い、陽菜視点の作品を書いていたのですが、ネタをまとめきれませんでしたorz
多分、投下はしないと思うので、代わりにこれを投下です。ホワイトデーは期待しないで下さい。
では、読んで下さった皆さんに感謝しつつ、また一読者に戻ります
428名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 00:07:04 ID:pf7WPbqp
信じて待ったかいがあった…GーJー!!
429名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 01:05:31 ID:Bu5h6q8p
ふふふ。よきかなよきかな
恵やんがソワソワしてる3/14が今から目に浮かぶようじゃよー >420-427(前スレ272氏)
430前スレ272:2006/02/16(木) 09:41:47 ID:ax3aN6q5
>>428-429
レス感謝です。本当に嬉しい限りです。

>>426にまた訂正
「はるるん、あたし達も貰って良い?」

「るなっち、あたし達も貰って良い?」
に……orz
431前スレ131:2006/02/19(日) 13:36:27 ID:90D6NBZW
272さん
よかったす。
佐々木がネタがなかったから今書いてるやつの(だらだら時間かけて、2月下旬の今頃なのに、未だ一月はじめの設定の)で書こうと思ってたら先越されましたw
と言うことで今更ながら続き投下しますよ。
始めは中村、後は佐々木天野メインな展開です。
432前スレ131:2006/02/19(日) 13:38:37 ID:90D6NBZW
その手につられて自分も佐々木を見る。
そのとき、瞬間的に湯気の幕が目の前にかかる。そして、
「うわっ!!」
佐々木が、手を滑らせて木から落ちるのが見えた。
「佐々木っ!」
同じ光景を見ていたらしい我聞が声を張り上げる。
バッシャーン!
盛大な音を立てて佐々木はすぐ下の浴槽にダイブする。
「なっ!」
あれでは浅い浴槽の底面に頭部を強打、下手をすれば死にかねない。
あわてる中村、我聞。
そんな二人に西音寺はのんきな口調で言う。
「大丈夫。最近あーいうお客さんが多くてね〜、あそこの浴槽だけ少し深くて、床もゴム素材になってんだよ」
「・・・ぷはっ、畜生、後少しだったのに・・・ん、皆、何話してんだ〜?」
まるでタイミングを計ったかのごとく、説明の終わりと共に浮き上がってきてこちらに向かってくる佐々木を見て皆安堵する。
しかし、中村には一抹の疑問が残る。
(さっき・・・あの人が手を伸ばしたとき・・・佐々木の掴んでいた枝・・・僅かに動かなかったか?
しかし、湯気でよく見えなかった・・・見間違いだったのか・・・?)
「どうした中村?難しい顔して」
「・・・いや、何でもない。それより佐々木、犯罪も対外にしとけよ」
「なっ、犯罪だとぅ!?
そんなものではないっ!!
國生さんの神々しい肢体が、不埒な輩に狙われぬように影からそっと見守る正義の行為だっ!!」
「要は覗きだろ・・・」
などと騒いでいるうちに、中村の疑問は流れてしまったが・・・
数分後
また佐々木の姿が見えなくなり、案の定また木に登っていた。
すると、西音寺が再び右手を水平に持ち上げる。
中村の他、そのことを気にかけている者はいないようだ。
中村は何気なく西音寺と佐々木、両方が確認できるところに移動する。
そして、西音寺の指が僅かに、普通なら見逃してしまいそうなほど僅かに動いたのを見た。
その瞬間
「またかよっ!?」
「佐々木っ!?」
佐々木が再び落ち、その際に出した叫び声に反応して我聞が振り向く。
中村は、さっきのリプレイを見ているような感覚になった。
だが、その先はさっきと違った。
パーンッ!!
水面に何かを叩きつけるような音が浴室いっぱいに景気よく響きわたる。
佐々木が体を水面に叩きつけてしまったのである。
「大丈夫か!?」
我聞を筆頭に皆が駆けよる。
433前スレ131:2006/02/19(日) 13:43:18 ID:90D6NBZW
「こりゃ、完全に気絶してるぞ・・・」
佐々木を引き上げた番司が言う。
「じゃあ、ここにこのままだと風邪ひくだろうし、ワシが脱衣所まで運ぼう。我聞、手伝ってくれ」
「あ、はい」
「俺も行くか・・・静馬、お前は?」
「俺は・・・西遠寺さんに少し話しがあるんで、こっちで待ってます」
「そうか」
そう言って皇、我聞に続く中村の頭の中にはさっき確かに見た、ある映像が繰り返されていた。

・・・西遠寺の指が動くのにあわせて動く、木の枝が・・・

脱衣所には、何故か誰も居なかった。
不思議に思った中村が見回すと、ふと時計が目に付いた。
「7時5分か。夕飯も近いしこのままあがらないか?」
中村がそう提案すると、二人も賛成。
二人は佐々木を部屋まで運ぶので、中村は番司を呼びに行くことになった。

中村が再び浴室へ行くと、二人の姿がない。どうやらまだ露天風呂のようだ。
中村は露天風呂に続く引き戸の前に来た。
するとなにやら話し声が聞こえる。
中村はそっと聞き耳を立てる。
『・・・つ、使いましたよね、さっき』
『あ、やっぱばれたか?』
『当然ですよ。俺も同じ力持ってるんだから・・・工具楽だって気付いてると思いますよ』
工具楽-----我聞の名前が出たことに中村は、眉をひそめる。
『だろうねぇ』
『・・・俺らだってしっかり気を付けてるのに、あんなとこで使って誰かにバレてたらどうなってたことか!?』
『んー?だって仕方ないだろう?覗き黙認は出来ないし、かといってあそこででかい声出すのも性に合わないし』
自分の見た光景が正しかったことに、この言葉で確信を持った。
『だからって・・・』
『まあ今更狼狽えたって仕方ないだろ。
このままじゃのぼせるし、俺は上がってるから』
『・・・』
このままでは盗み聞きがバレてしまうかもしれない。そう思って焦った中村は、
カラカラカラカラ・・・
目の前の戸を開けて、
「お、いたいた。
おい静馬、飯近いから上がるぞ」
精一杯とぼけた。
「え、あ解りましたっ!」
「・・・ねぇ君、」
西遠寺に話しかけられ、内心ビクリとする。
「さっきの話、聞いてた?」
「?。何のことですか?」
「・・・なら、別にいいんだけどね」
ほっとしたのも束の間、脱衣所に行くと時計は7時20分を指している。
夕食は7時30分から。
つまり後10分もない。
「まずい。静馬、急ぐぞ!」
「はいっ!」
434前スレ131:2006/02/19(日) 13:47:03 ID:90D6NBZW
何とか夕飯に間に合った二人は、ほかのメンバーと一緒に郷土料理を食べることが出来た。佐々木は気絶から睡眠に入ってしまい、ずっと寝ていたのだが・・・

>>>その夜・佐々木亮吾と天野恵<<<
「う、う〜ん」
佐々木亮吾は暗闇の中目を覚ます。
「?」
何故自分がこんな暗闇の中にいるのだろう?
佐々木はそんな疑問を抱いたが、記憶がはっきりしてくると答えも自ずと出てきた。
そう、確か自分は覗きをしようとして、それで手を滑らせ浴槽に落ち、気絶したのだ。
視界もはっきりして来、ここが男子の部屋の布団の上だと解った。
自分の荷物から携帯を取り出し、時刻を確認すると草木も眠る丑三つ時、午前二時だった。
どうりで皆、眠っているはずである。
と、佐々木は自分の他に二つの布団が空になっているのに気付く。
我聞と中村がいない。
この不自然な事実に佐々木の脳は、間違った方向に回転する。
(中村と我聞がいない、つまり二人でどこかへ。詰まるところ、こんな時間に行くところは・・・ハッ)
佐々木の思考は、『二人は、國生さんの寝姿を写真に収めに行った』と言うことにまとまった。
「くそう、あの二人で抜け駆けして國生さんの美しい寝姿、安らかな寝顔を・・・っ俺も行ってやる!!」
いてもたってもいられなくなった佐々木は、部屋をサッと飛び出して隣の部屋に忍び込もうと・・・して部屋の前に誰かがいたので、すぐそばの鉢植えの陰に身を隠した。


「ふぁ〜ぁ。しっかし、ささやんホントにくんのかなぁ・・・」
天野恵は、一人部屋の前の壁により掛かっていた。
何故そんな事をしているかというと、佐々木が眠っている陽菜に誘われて、部屋に忍び込んでこないように。
用は見張りである。
そして実は部屋の中に陽菜はいない。ついさっき、喉が渇いてしまったから、とジュースを買いに行ったのである。
それでも天野は、佐々木が来てがっかりして帰らせるよりは、自分がしっかりおっぱらってやった方が、佐々木の気も楽だろうと思い、立っている。
そんなとき、天野はふと、浴室での皆との会話を思い出していた。そして、
『・・・天野さん、卑怯です・・・』
そこまで来て、その言葉にエコーがかかり、何度も何度も繰り返される。

435前スレ131:2006/02/19(日) 13:50:51 ID:90D6NBZW
「・・・本当に、その通りなんだよね・・・」
ポツリと、天野は言う。
「るなっちには言わせといて自分は言わないで・・・」
本当は、自分の気持ちを自分が一番わかってるのに。
それでも、恥ずかしいから、それだけ、たったそれだけで人前で認めることが出来ない。人には無理矢理させたのに、自分はどうしても出来ない。
天野は、無理矢理言わせた形だが、自分に素直になれた陽菜が凄く羨ましかった。
「・・・はぁ。何でささやんなんか好きになっちゃったんだろ・・・
あんな、バカで、浮き沈みが激しくて、るなっちしか見えてないような奴・・・」
でも、嘘はつかない誠実さと、驚くほどの行動力はある。
そんな、良いところも見えていながら、いや、見えているからこそ天野は辛かった。
報われない恋とわかっているから。
今こうして思っていることも、破れたときにすっきり忘れられないと思うから。
「はぁ〜ぁ」

再び天野が溜息をついたとき、
がさっ
「誰っ!?」
そばにあった鉢植えが揺れ、音を立てる。
そして、そこから自分の思い人である一人の少年が、なんとも形容しがたい表情をして現れた。

佐々木は今、天野の言葉にひどく驚いていた。
天野恵は佐々木亮吾、つまり隠れて話を聞いている自分のことが、好きだと言っているのだった。
佐々木はどうすべきか、ここから姿を現すか、それとも黙ってすべて忘れて立ち去るか、迷っていた。
男としては聞いてしまった以上、出ていってはっきり答えるべきなのかも知れない。
しかし、そうすれば、確実に部内の何かが壊れて、今の楽しい雰囲気が変わってしまう・・・かも知れない。
佐々木はそれが嫌だった。
今の、自分が國生さんを追っかけたり、それを天野に突っ込まれたり、たまに我聞と本気で卓球をやったり・・・そんな普通なことが、とても居心地よく好きだったのだ。
そしてそれを作っている歯車を壊すような事は、したくなかった。
佐々木は、立ち去るべく一歩を踏み出したその時、
がさっ
「誰っ!?」
後ろの鉢植えが動いて、天野に見つかってしまった。
こうなった以上、逃げることに意味はないだろう。佐々木は観念して一人、自覚のない告白をしてしまった少女の前に、姿を現した。

436前スレ131:2006/02/19(日) 13:56:49 ID:90D6NBZW

そして、そんな二人の様子を遠くから一人眺めている青年がいた。
「ふふふ、青春だねぇ・・・けど、逃げるのは良くない。
男ならしっかり立ち向かわなきゃ・・・
結果、どうなろうともね・・・」
青年は誰にともなくそう言うと、ふらりとどこかへ立ち去った。


「ささ、やん・・・?」
「よ、よう」
天野恵の目の前に立った少年は、気まずそうにそう言った。
「き、奇遇だな、なんて・・・」
「・・・どこから、聞いてたの?」
場を、取り繕おうとする少年にポツリと訊ねる。
「い、いやその・・・」
「答えて!!」
口ごもる様子に語調が荒くなってしまう。
「・・・・・・『ホントにくんのかなー』ってとこから・・・」
少年は、言いづらそうに、本当に言いづらそうに答えた。
「全部・・・きいてたんだ・・・」
「いや、聞く気は全くなかったんだが、その・・・」
天野は目の前が真っ暗になった。
それは目を瞑ったからだと数秒経ってから気付いた。
心が、重い。
佐々木の言い訳を聞いている余裕もない。
「そうだよ。アタシはあんたのことが好きだったの。
あんたが、るなっち・・・國生ちゃんを好きなのは誰の目にも明らかだったのに、ね」
佐々木は、聞いてしまった事への言い訳を止め、目の前の少女の話に耳を傾ける。
「ゴメン、迷惑だったよね、あんたあんなにるなっち好きなのに、こんな話聞かせちゃって」
そう言って佐々木の方を向いた少女の顔は、いつものような、明るい、強気な笑みではなく、この上ないほどに歪んでいたそれがあった。
佐々木にはその顔が、悲哀から泣いているのか、自虐から笑っているのか解らなかった。
ただただ自分が、無自覚だからといって許されない程酷いことをしてしまったのだと思った。
「うん、今の話忘れちゃっていいから。
あーぁ。こんなに話したらなんだか疲れちゃった。あたしもっかいお風呂入ってこよーっと。
ささやんもそろそろ寝たら?じゃーね」
そう言うと天野はパタパタと走り去っていった。
そして、自分がどうすればいいのか解らなかった佐々木は、ただ固まっていて、動くことさえ出来なかった。
或いは、見たことのなかった天野のか弱い表情に、見とれていたためかも知れなかった。

437前スレ131:2006/02/19(日) 13:59:36 ID:90D6NBZW
佐々木が動いたのは、走り去った天野を追いかけたのは、少し経ってからだった。
しかし、その間に天野を見失ってしまい、探し回って走っていると、陽菜に出会った。
「あっ國生さーんっあぁお美しいですってこんな事してる場合じゃないか。
すいません、天野見ませんでした?」
「え?天野さんでしたら、さっき浴室のほうに走って行かれましたよ。
俯いてて表情が解らなかったのですが、何かあったのですか?」
「いえ、何でもありません。教えてくれて有り難う御座いましたっ!」
心配そうな天野に別れを告げ、佐々木は浴室へと向かう。


天野は湯船につかりながら、先刻のことを考えていた。
(何やってんだろ、あたし・・・)
聞かれたことに焦って、しっかりと言いたいことが言えなかった。
(せめて、自分の意思で伝えたかったな・・・)
「よし」
もう一度、今度は自分の意思でしっかり伝えよう。
そしてしっかり振られてこよう。
天野がそう決めて、実行に移そうと立ち上がったその時、
からからから
戸が開いて浴衣姿の人物が入ってくる。
(誰だろ、他のお客さんかな・・・)
そう思ってその顔を見て、
「えっ!?な、なんで!?」
驚愕する。

天野を追いかけ走ってきた佐々木は、目の前に広がる光景に、硬直してしまう。
それは、一糸纏わぬ姿で立ちつくしている天野がいるからである。
そして、佐々木は自分が女子の浴室に入ったのだと、一瞬遅れて気付いた。
じゃぶんっ。
天野は自分の体を湯船に沈め、顔だけが出るようにする。
「な、何しに来たのよ」
精一杯の強い語調で言う天野。
しかし、佐々木はいつものように気圧されない。
何故なら、それがもう、強がりとしか見えなかったから。
哀しかった。
今まで、強かった、強く周りに見せていた少女が。
それを信じ込んでいた、そしてそんな彼女を傷つけた、自分が許せなかった。
佐々木は膝を着き、手を地面に押しつけ、頭を表情が見えなくなるほど垂れる。
それはいわゆる、
「・・・なんで、土下座なんかしてんの・・・?」
佐々木のとった行動に、天野の方が気圧される。
「・・・済まなかった・・・」
佐々木が、浴室に入って初めて発した言葉だった。
「な、に?・・・何謝ってんのささやんてば、ガラじゃないよ?
あ、やっぱりさっきの気にしてた?だから忘れてっていったじゃん」
438前スレ131:2006/02/19(日) 14:06:06 ID:90D6NBZW
天野は自分で言いながら悲しくなってきた。
さっきもう一回言って振られようと思ったのに、これではそんな事できないではないか。
そして・・・
「あたしはもう気にしてないし、」
嘘ばかりだ。
「こんな早く諦めつくなんて自分でも思わなかったなー」
これも、
「きっと本気じゃなかったんだよ」
これも、これも、
「たぶんさぁ、るなっち一本だったささやん、からかいたかっただけだったんだなーって自分でも思うし」
嘘。
「あーあ、新しい恋探さなきゃねー」
何が、何が悲しくて自分はこんな嘘ばかりついているのだろう。
「ささやんもガンバりなよー?ま、あたしはるなっちとくぐっちを・・・」
「やめろよ・・・」
「え?」
「もう、強がんのやめろよ・・・
頼むから・・・
・・・俺でさえわかる強がりなんて、意味、ねえよ・・・」
いつの間にか、頭を上げていた佐々木の顔は、辛そうで、悲しげで、それでも何故か微笑んでいた。
「な、何言ってんの?
あたしは強がってなんかんぷっ!?」
「・・・ん、・・・俺に、俺にできることなら何でもするから、頼むから、そんな強がりやめろよ、やめてくれよ・・・
そんなお前を、見たくないんだよ・・・」
天野は、自分に口付けした少年が、自分を追いかけてきた少年が、泣いているのを見た。
「・・・あんたは、るなっち好きなんでしょ?」
佐々木は答えない。「るなっちは、くぐっちのコト好きだとしても」
佐々木はまた答えない。
「・・・じゃあさ、なんで、キスなんかするの?
同情とか、お情けとかだったならさ、むしろ迷惑」
「っ・・わるかっ」
「ま、いいや。終わったことだし」
佐々木の言葉を遮って続ける。
「さっきあんた、できることなら何でもするって言ったよね」
「・・・ああ」
「で、お願いがあるんだけど、あたしのこと・・・」
佐々木は次の言葉を待つ。
しかし、次に天野の口からでた『お願い』は、佐々木の予想と少し、と言うより遙かにずれていた。


少し笑みを浮かべながら、少女は少年に言う。
「あたしのコト、抱いてくんない?」
439前スレ131:2006/02/19(日) 14:13:39 ID:90D6NBZW
、半端に始まって半端に途切れます。
さらに読み辛い。
その上意味わかんないとこが多い・・・と思います。
なので、職人さん待ちの暇な間にでも読んで下さい。
それでは、また。
440名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 15:09:29 ID:56oCJ6pI
>>前スレ131氏
GJです、お待ちしてました!
恵の切なげな雰囲気が素敵です。
他のカプも入れるとかなりの大作になりそうですが、続き期待してますよ〜
441名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 15:32:04 ID:7kGoxzU3
キタキタキタ──(゚∀゚)──────(∀゜)──────(゜ )──────(  ゚)──────( ゚∀)──────(゚∀゚)──!!
442名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 23:26:43 ID:LQ8PGzpj
期待してます
443名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 20:05:30 ID:whvpJf4t
保守あげ
444名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 01:35:27 ID:RE2UUDKf
GJ
445名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 08:41:53 ID:V3k9M/hh
乙〜
446名無しさん@ピンキー:2006/02/23(木) 10:50:19 ID:UffDCIUB
保守あげ〜
447名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 11:05:31 ID:4/6r5Y7n
他スレで陽菜のSS発見す
448名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 11:25:17 ID:wtrO/S//
>>447
間違ってもそこに、ここの住民を誘導しちゃいかん。
たぶん。
449名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 11:49:09 ID:4/6r5Y7n
>>448
する気はないが、報告はまずかったか
450名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 12:05:04 ID:wtrO/S//
早とちりだったらスマン。

いや、報告はいいんだが、
もし>>447のいうスレが俺の知ってるスレと同じならば、
あそこはヒロインが他の男とエッチするのを推奨しているスレなので、
ラブラブ好きが多いこのスレ住人に、わざわざ教える必要は無いかな、と思ったまで。
451名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 13:38:08 ID:eyDkjD1o
とりあえず気になるから俺を誘導してくれないか?
初めに『注意、寝取られ系』と一文入れてくれれば読みたくない人は誘導されないだろうし。
452450:2006/02/24(金) 13:47:24 ID:wtrO/S//
>>451
『売春』でスレ検索。
向こうに迷惑をかけない範囲で。
453450:2006/02/24(金) 13:49:43 ID:wtrO/S//
>>448>>450が結局誘導してたら、アホじゃないか。
>>447えらそーなことゆうてゴメン。
454名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 21:24:47 ID:+xk/Z2QI
何この流れ('A`)
455名無しさん@ピンキー:2006/02/25(土) 01:44:26 ID:hMiH+TMj
とつりあえず保守あげ
456前々々499:2006/02/25(土) 23:50:36 ID:repUNqOr
前回の投下から二週間経ってしまったので忘れられてそうですが、
遅ればせながら続きを書きましたので、
投下させて頂きます。

>>363-368
>>383-395
の続きで、今度は我聞と國生さんのお話です。
今回もえち無しですみませんが・・・(汗
457前々々499 1/9:2006/02/25(土) 23:51:30 ID:repUNqOr

結局―――我聞は武文を止めることは出来なかった。
止めるべきではない、彼と陽菜の為にも止めてはいけないのだと、理解せざるを得なかった。
そして、武文は必ずここへ、陽菜の父親として帰ってくることを約束した。
その約束は、きっと守られる。
陽菜をして約束事に厳しいと言われる彼が、そう言い切ったのだ、守られないはずが無い。

我聞も武文に約束した。
彼が戻るまで、陽菜を支えると。
それは、武文の願いでもあったが、それ以上に我聞の望むことでもあった。
彼女の支えになりたい、支えあいたいと、いつも思っていた。
だが・・・
武文の旅立ちを受け入れてしまった自分は、彼と・・・父と再び別れねばならない彼女を、
支えることができるのだろうか。
彼の分まで、彼女の心を満たすことは出来るのだろうか。

そんな苦悩は、帰宅しても床に就いても、日が変わっても、我聞を苛み続けた。

そして翌朝。
睡眠不足気味なところをいつもの様に珠に叩き起こされて、
いつも通りに早朝トレーニングへと出かける。
悩みは全く解決されてはいないが、それでも身体を動かしたことで多少は気が晴れて、
当面の腹を決めて帰宅した我聞に果歩から声がかかる。

「おかえりお兄ちゃん、陽菜さんから電話あったわよー」
「國生さんから?」
「うん、今朝は用があって先に学校行きますって」
「そうか・・・わかった、サンキュ」

表情にこそ出さなかったが、我聞としてはいきなり出鼻を挫かれた気分になる。
とにかく当たって砕けろの精神で、まずは会いたいと思っていたから。
会ったところで何を言えばいいかは分からないが、それでも会いたかった。
武文の語った重すぎる事実・・・陽菜も、恐らく部屋で聞いたことだろう。
それを、彼女の細い身体ひとつで背負わせるのは、辛かったから。

「お兄ちゃん! ご飯出来てるわよ!」
「おう、わかった、今行く!」
(・・・まあ、学校で会えるか)

我聞の胸中になど当然ながらおかまいなしで、工具楽家の朝は普段通りである。
昨晩、我聞が帰宅した時には既に、我也が旅立ちについて果歩達に話を終えていたのだが、
家族の反応は我聞が予想したよりは、過敏なものではなかったらしい。
毎週必ず連絡を入れて所在地と行き先を明かしておくとか、
自分と武文と組んだら危険など有り得ないとか、
お土産がどうとか、
兎にも角にも三人を納得させてしまったらしい。
もっとも、果歩達が納得出来た一番の理由は、
目的をはっきりさせて、きちんと断って出かけるから、というところだろう。
我聞自身にしても、家族や会社をこれからも支えて行かねばならないという気負いのせいは有るにせよ、
陽菜と同じような状況でこれだけ落ち着いている自分を顧みて、
なんだかんだで父親のことを信頼しているのだな、とつくづく思う。

(俺もそれくらい信頼されるようにならなくちゃな・・・)

家族や社員を安心させる為にも、大切な人を支える為にも。
458前々々499 2/9:2006/02/25(土) 23:52:31 ID:repUNqOr

食事を終えて、一人学校への道を歩く。
最近はいつも、隣を歩く陽菜が父親のことを楽しそうに話していたものだから、
今日はやけに味気無い道のりだ。

「おーっす我聞! ・・・ってあれ、國生さんはどうした!」
「おっす! いや、どうしたって・・・今日は用事があって先に学校に行ってるらしい」

さも残念そうに落胆する佐々木を天野達と笑いながら、
なんとなく、今の陽菜はこの雰囲気は避けたがるかもしれないな、と思う。
あくまで我聞の想像でしか無いが、
今の陽菜は、この明るいノリは辛いんじゃないかと、思えた。

そんな我聞の考えを裏付けるかのように、
陽菜は昼休みにも我聞のクラスには現れなかった。

「おい我聞、なんで朝だけじゃなくて昼休みまで國生さんは来ないんだ!?
 さてはお前、またなにかやらかしたな!」
「また、ってなんだ! 國生さんにだって用事くらいあるだろ!」

思い当たる節はあるが、それがあくまで陽菜の個人的な事情である以上、
我聞の口から説明するわけには行かない。

「まぁ、あんまり人のことに口出しするのも難だが・・・問題があるなら早めに解決しとけよ」
「ああ・・・でもホント、そういうんじゃないんだ。
 それより、昨日の仕事が終わってないから、今日も部活はパスするわ」

佐々木や中村も彼らなりに陽菜や自分のことを心配してくれているのだとは思うが
(正直、佐々木は微妙だが)、
今回ばかりは、自分ひとりで背負わねばならないと決めていた。

陽菜に会いたいのなら、自分から隣のクラスへ彼女を訪ねればよい。
それが正論だし、事実休み時間の度にそうしようとも思ったのだが、
いつも通りに姿を表さなかったということは、やはり会いたくないのかもしれない、
そこにこちらから押しかけていいものだろうか悩むところだし、
そもそも話をするなら二人きりで会わないと意味が無い。
・・・等と葛藤してしまい、気がついたら放課後になっていた。

(仕方ないな・・・流石に仕事は休まないだろうし、仕事中の様子を見て、終わったら声をかけてみよう)

昨日と同様、部活へ向かう友人と途中で別れ、職員室へ体育倉庫の鍵を借りに行くが、
今日は既に貸し出し中になっていた。
我聞の仕事が進んでいなかったので、別の委員が代わりにやり始めてしまったのかもしれない。
寒い中の作業なので、申し訳ないと思って急いで体育倉庫へ向かい、
“備品チェック中、使用不可”の札が下げてある扉を開くと・・・

「あ、すみません、今は・・・あら、社長でしたか、お疲れ様です」
「・・・國生さん!?」

そこにいたのは、バインダー片手に備品チェックを行っている國生陽菜だった。
459前々々499 3/9:2006/02/25(土) 23:53:21 ID:repUNqOr

その、あまりにも不意の遭遇に、我聞は思わず立ち尽くしてしまう。

「・・・社長? あの、風が入るので、扉を閉めて頂けると有難いのですが・・・」
「え、あ、ああ! すまん國生さん!」

言われるままに後ろ手に扉を閉めて、それから思い出したように

「・・・って! そうだ國生さん! なんで君がこの仕事を!? だいたい・・・」

大丈夫なのか、と彼女の表情を覗う。
灯りをつけても薄暗い倉庫では、離れていると表情の細かなところまでは読み取れないが、
声にしろ顔にしろ、思っていたよりはずっと・・・普段どおりだった。

「はい、昨日の作業の進捗具合を見るに、社長お一人では本日一杯かけても終了しそうに無いと判断しまして、
 勝手ながら始めさせて頂きました」
「むぅ・・・まあ、それはその通りなんだが・・・」

このあたりのソツの無さはいかにも相変わらずの陽菜らしさではあるのだが、
やっぱり、違和感は拭えない。

「と、とにかく、俺も手伝うよ・・・ってか、そもそも俺が引き受けちゃった仕事だし!」
「それなんですが・・・」

陽菜は微妙な笑みを浮かべて、我聞の目の前にバインダーを差し出す。
そこに挟まれたチェック表には・・・

「え・・・お、終わってる・・・? 國生さん、まさか・・・」

いくら陽菜の手際がずば抜けて良いとはいえ、授業終了から今までの僅かな時間で終えられる作業量ではない。
つまり・・・

「朝、先に学校に行ったってのも、昼休みに来なかったのも・・・」
「はい・・・勝手なのは承知していますが、
 今日の放課後は社長に予定を空けて頂きたかったものですから・・・」
「それならそれで言ってくれれば、俺も一緒に働いたのに!」
「でも、そうしたら社長は部活に出られてしまうでしょう?」
「いや、でも仕事なら当然そっちを優先・・・」
「仕事じゃありません」

キッパリと言い切ると軽く溜め息を吐いて、
正面から我聞を見据える。
怒っている、と言うほどではないが、じっと我聞の目を見て・・・

「昨日も言ったじゃないですか・・・
 社長と・・・あなたと二人きりになりたいから・・・では、いけませんか?」

昨日、陽菜が同じことを口にした時よりも、
うっすらと、だけど確かに、深刻な響きがあった。
理由は・・・多分、我聞が予想した通りのものだろう。

「いや・・・俺も丁度、國生さんに話したいことがあったんだ」

二人は昨日のように丸められたマットに並んで座り、
しばらくは互いに無言のままでいた。
話したいことがある―――とは言ったものの、遭遇の仕方があまりに不意だったものだから、
どう切り出すべきか考えてしまう。
が、もともと考えることが得意な男ではなく、結局そのまま・・・
460前々々499 4/9:2006/02/25(土) 23:53:59 ID:repUNqOr

「おっちゃんが旅立つと、寂しくなるな・・・」
「・・・はい・・・でも、平気です・・・これまでの5年間が戻ってくるだけですから」

平気、と言うには、あまりにも平坦な、起伏の無い声で話す。
まるで、用意していた台詞を棒読みしているかのように。

「國生さん・・・」
「大丈夫です、すぐに慣れますから。
 それに、先代だって同行されるのですから、社長だって状況は同じでしょう?」
「ああ・・・だけど、おっちゃんは・・・」
「むしろ、父の背負った理由に先代まで付き合わせる形になってしまったようで・・・
 社長や果歩さん達には、本当に申し訳ありません」
「い、いや! そこは國生さんが謝るところじゃない!
 それに、果歩達もちゃんと納得してくれてるみたいだからな」

だからうちの方は別に心配ないんだ、と言葉を続けながら、陽菜の表情を見る。
陽菜は・・・少しずつ、表情が薄れてきているかのような・・・

「・・・私の方も、心配して頂く必要はありません。 父の理由は十分に納得の行くものでしたから」
「納得って・・・確かにおっちゃんの理由はわかったけど、でもそれで國生さんは・・・
 その、理屈じゃなくて、気持ちで・・・本当に納得できたのか?」

ぴく、と陽菜の肩が揺れる。
表情に一瞬だけ感情の色が宿り、すぐに消える。

「納得・・・出来ても出来なくても、父は旅立ちます・・・それが父の望みです。
 社長も聞かれたはずです・・・父の旅立つ、本当の理由を」
「ああ、聞いた・・・けど・・・すまん、俺も止められなかったけど・・・」
「社長が謝る必要はありません・・・父には、必要なことなんです。
 ですから・・・仕方のないことですから・・・」

そう言って昨晩のように、無理に作り上げたような痛々しい笑みを浮かべて・・・

「・・・そんな顔、しないで下さい・・・」

言われて、初めて気付く。
俺はそんな酷い顔をしていたのか・・・
父の為に己を殺して健気に振る舞う目の前の陽菜に、
何もしてやれない自分への無力感に苛まれていた我聞は、気付かぬうちにその顔を歪めていた。

「悪い・・・」
「いえ、私こそ、申し訳ありません・・・社長にまでご心配をおかけして・・・」

陽菜はあくまで笑顔のまま。
・・・昨夜のような・・・見てて辛くなるような、笑顔。

「・・・社長?」

陽菜に余計な心配をさせる訳にはいかない、とはわかっているのだが、
そんな痛々しい笑顔を前にして、陽菜のように笑うことはできない。

「國生さんこそ・・・」
「はい・・・?」
「そんな・・・無理に笑おうとしないでくれ」
461前々々499 5/9:2006/02/25(土) 23:55:25 ID:repUNqOr

ぴく、と陽菜の身体が小さく揺れる。

「そんな、別に無理は・・・」
「おっちゃんに心配かけたくない、ってのはわかるよ・・・
 でも、俺の前でまで、そんなに無理すること無いじゃないか」

陽菜の口が何か言おうとして、しかし何も言葉を紡げない。
作っていた笑顔が、少しずつ綻んでゆく。

「朝から俺の仕事を片付けてまで二人になろうとしたのは、
 俺にそんな強がりを見せる為だった訳じゃないだろう・・・?」
「それは・・・」
「あの時・・・弱音を言ってもいいって、支えあうのが家族だって・・・言ってくれたのは君じゃないか。
 ・・・國生さんがおっちゃんのことを想ってそうしてるのはわかるよ。
 そうやって、おっちゃんが國生さんのことを気にせずに旅立てるようにしてるのは、俺でもわかる・・・
 だけど、俺と國生さんだって家族みたいなものだろう!?
 俺の前でくらい、そんな風に辛そうに笑わないで、言いたいこと言ったっていいじゃないか!
 俺に君を支えさせてくれたっていいじゃないか!」

それは、陽菜を支えたいという、自分の一方的なエゴなのかもしれないとも、思う。
陽菜は我聞にも、誰にも甘えたくないと心から思っているのかもしれない。
ここへ来たのも、本当に自分の前で“普通である”ことを示したかったのかもしれない。
でも・・・例えエゴでも・・・そんな辛そうな陽菜を、そのままにはしておけなかった。

「下手な励ましくらいしか出来ないかもしれない、
 ただ聞いてあげることしか出来ないかもしれない、けど・・・
 それでも・・・君の辛さを少しでも、俺にも背負わせてくれたって・・・いいじゃないか・・・」

言葉が尽きて、後はただ陽菜を・・・彼女の目を、じっと見つめる。
陽菜の顔からは作り物の笑顔は失われ、
その目は驚いたように見開かれ、
やがて、じわり、と潤み、瞬く間に目尻に雫が溜まり・・・
なにかを堪えるようにきゅっと結んでいた口を、小さく開き・・・

「だって・・・だって・・・一度、辛いって、嫌だって認めてしまったら・・・もう、父の前でも、
 普通に出来ないかもしれないって・・・お父さん、心配させちゃうかもしれないって・・・」

支えてやらないと折れてしまいそうなほどの、震える声。
目尻から一筋、涙が頬を伝って落ちる。

「私がちゃんとしてないと・・・お父さん、安心して旅にでられないかもしれないって!」

言葉にすればするほど心は激しく揺れて、涙と声になって溢れ出す。

「だから・・・だから、わたし・・・お父さんが出発するまで、ちゃんと・・・でも、でも・・・!」

一度溢れてしまった涙は最早とどめることは出来ず、それでも陽菜は我聞から目を背けない。
誰にも助けを求めることが出来なかった、その細い身体に抱え込んでいた辛さ・・・
それを声にして・・・救いを乞うように、涙に濡れた目をまっすぐに向けられて・・・
我聞には、ただ陽菜を抱きしめることしか出来なかった。

陽菜はそのまま我聞の胸に顔を埋め、制服を涙で濡らす。

「う・・・あ・・・あぅ・・・うえぇ、うああぁ・・・」

洩れる声は、やがてすぐに嗚咽に変わる。
胸の奥の錠は外れ、内に閉じ込めていた感情は奔流となって溢れ出す。
その全てを我聞の胸に出し尽くすまで、陽菜はそこで、涙を流し続けた。
462前々々499 6/9:2006/02/25(土) 23:56:16 ID:repUNqOr



やがて・・・静かになって、しばしの間を置いて―――

「ごめんなさい」

顔を我聞の胸に埋めたまま、ぽつりと言った。
とても小さな声だったが―――静まり返った狭い倉庫では、意思を伝えるには充分だった。

「気にしないで・・・俺も、偉そうな事言っておいて、
 結局何もしてあげられないことには、変わりないからな・・・俺の方こそ、すまん」
「いえ・・・すこし・・・楽になれました」
「そうか・・・なら、よかった・・・」

そう言って少し、陽菜を抱く腕に力を込める。
応えるように陽菜は掴んでいた我聞の制服の裾を放すと、その手を彼の背に回して、きゅ・・・と、抱き返す。
そのまま二人はしばしの間、互いの身体を預け合った。

「・・・お父さんは・・・父は、数日前から夜中にうなされていたんです」

抱き合ったまま、我聞の胸に顔を埋めたまま、陽菜は小声で話し始める。

「“すまない”、“許してくれ”って・・・
 本当に苦しそうに・・・辛そうに・・・うわ言のように呟くんです。
 ですから、なんとなく父が本当の意味で真芝から帰って来てはいないんじゃないかとは、感じていたんです。
 それで、社長に聞いて貰いたくてここに来たはずだったのですが・・・
 いざ話そうとすると、やっぱり不安になってしまって・・・」
「そうか・・・やっぱり、なんとなく気付いてはいたんだな・・・」
「はい・・・」

ここ最近、毎朝の登校の度に父親のことを楽しそうに話していたのは、
その不安を忘れるためでもあったのだろう。

「ですから昨日、事務所で先代と父の話を聞いた後、部屋で、父を苛む悪夢のことを聞かされて・・・
 父にとって、それに私にとっても、5年前のように本当の父と娘として暮らすには、
 必要なことだとはちゃんと理解しました・・・」

我聞の腕の中で、陽菜の肩が小刻みに震える。

「でも・・・やっぱり・・・辛いです・・・折角、帰って来てくれたのに・・・離れたくないです・・・
 もしも、また行方不明になってしまったら・・・二度と会えなくなってしまったらって・・・
 そんな嫌な考えが消えてくれなくて・・・」

時折、ぐす、と音を洩らしながら、涙声でゆっくり、ゆっくりと、陽菜はその胸のうちを言葉にする。
自分を抱いてくれる人の胸の中に直接言葉を送ることで、
一人で抱えるには辛い思いも、その人が一緒に支えてくれるかもしれないから。

「國生さん・・・」

儚げな、壊れそうな・・・そんな陽菜の心の内に触れて、我聞はただ、彼女を守りたいと、
武文との約束があろうとなかろうと、支えてやりたいと、改めて強く思う。
具体的に何が出来るかなんてわからないけど、それでも・・・
出来ることなら、何でもしてやろうと、思う。
そして、とりあえず今は腕の中ですすり泣く想い人をすこしでも慰めてあげられれば―――と思ったのだろうか。
半ば無意識に彼女の頭に触れて、その黒髪を優しく撫でていた。
陽菜は何も言わず、嫌がる素振も見せず、ただ我聞の行為を、受け入れた。
やがて―――
463前々々499 7/9:2006/02/25(土) 23:57:11 ID:repUNqOr

「・・・父も、そうやって私の頭を撫でてくれたことがありました」
「そうか・・・」

陽菜の声は相変わらず小さかったが、心なしか元気を取り戻したように聞こえた。
今の我聞がしてあげられることはこれくらいしかないが、
それでも、少しでも彼女が元気を取り戻してくれたなら、それほど嬉しいことはない。

「こんなことをしても、俺じゃおっちゃんの代わりにはならないかも知れないけど・・・」

それでも、彼女が少しでも寂しいと、辛いと思った時には、いつでも傍にいてあげたいと思う。
彼女が自分を支えてくれたように、自分も彼女を支えてあげたい。

「おっちゃんが帰ってくるまで・・・
 いや、帰ってきても、それから先もずっと・・・俺が君を支えるよ・・・
 親父やおっちゃんに比べたらまだ頼り無いかもしれないけど、それでも、必ず・・・」

静かに、だが強い思いを込めて、腕の中の陽菜に決意を伝える。
陽菜はしばらく何も言わず、やがて小さく・・・だがはっきりと、
はい、と答えた。
そして我聞の胸からゆっくりと顔をあげると、
自分を抱いてくれている、支えてくれると言う男の顔を、真っ直ぐに見上げる。
その目は泣き腫らして真っ赤だったし、笑顔を取り戻せてもいなかったが、それでも・・・
さっきまでの偽りの表情とは違う・・・陽菜の気持ちを映した、素直な表情だった。

「でも、父の代わりに、なんて考えないでください・・・父は父で、社長は社長ですから・・・
 今のままの、いつもの社長がこうして傍にいてくださるなら、
 それだけで私は充分・・・嬉しいですから・・・」
「そうか・・・じゃあ、おっちゃんの分まで、俺が君の傍にいるよ」

陽菜の表情にうっすらと笑みが混じる。
嬉しそうで、恥ずかしそうで、そして少し悪戯っぽく―――

「でも、また一人で抱え込んだりしちゃ、ダメですよ・・・?」
「む! それは今日の國生さんには言われたくないなぁ」

あくまで冗談っぽく、笑いながらそうやりかえす。
陽菜は、今度は表情を崩して楽しそうに笑い、

「大丈夫です。 これからは、ちゃんと二人で抱え込みますから」

そう言って、少し顔を赤らめて・・・黙って我聞を見上げる。

「そうか・・・そうだな・・・」

我聞も同じように顔を赤くして、それ以上は何も言わず陽菜の顔を真っ直ぐに見る。
そのまま、沈黙が狭い倉庫を覆う。
抱き合った互いの鼓動が、強く感じられる。
我聞の顔が僅かずつ近づいているように思えて、
陽菜は目を瞑る。
本当は自分からもっと顔を寄せたかったが、既に目一杯に上を向いてしまっていたから、
あとはただ待つしかなかった。
音もなく、光もなく、ただ愛しい人の鼓動だけを感じ、ふっと顔に息がかかるのを感じ、そして・・・
唇が、触れた。


464前々々499 8/9:2006/02/25(土) 23:58:23 ID:repUNqOr

優しく被せられた柔らかい唇から、温かな想いが流れ込んで来るような・・・
そんな幸せな気持ちが消えないように、二人は微動だにせずに、
ただ相手のことだけを感じつづけた。


長いのか、短かったのか・・・多分長かったのだろう、呼吸が辛くなって名残惜しげに唇を離し、
再びお互いを見つめあうと、照れたように顔を赤らめて微笑む。
久しぶりの固い抱擁とキスは、二人の周りを・・・この狭い倉庫を、温かく甘い恋人同士の空気で満たす。
時には陽菜の部屋で、時には我聞の部屋で、そしてごく稀に会社の事務所で・・・
二人を包んでいた空気が、今はこの薄暗く静かな倉庫に濃密に漂っている。

そんな雰囲気の中、何度も“その先”を経験している我聞としては、
身中に湧き上がる欲求を意識しないわけには行かない。
強く抱き合い、キスまでして・・・
身体が腕の中の少女を求めて、抑えがたい疼きを感じている。
だが、仮にもここは学校で、しかもたった今、当の彼女を支えると誓ったばかりなのだ。
本能的な欲求と後ろめたさと生真面目な使命感の間で我聞はしばし悩むが、結局、彼は・・・

「・・・じっとしてるとちょっと冷えるね、昨日のお返しってことでコーヒーでも買ってくるから、
 國生さんはここで待っててよ、すぐ戻るから」

求めれば応じてくれたかもしれない―――とは思いつつも、今は陽菜を大事にしたかった。
冷える倉庫に一人で待たせるのも少し気が引けるが、このまま無理やり押し倒すよりはマシだと思い、
腕を解いて立ち上がる・・・立ち上がろうと、した。
だが・・・

「・・・國生さん?」

陽菜は、我聞の背に回した腕を解こうとしなかった。
むしろ、その腕は抱くというよりしがみつくように強く我聞を締め付け、
キスを交わして照れたような微笑を浮かべていたはずの顔は、瞳は・・・不安の色に染まっていた。

「社長も・・・私を置いて行くんですか・・・?」
「・・・へ?」
「お父さんみたいに・・・先代みたいに、社長も私を、一人にするんですか・・・?」
「ちょ、ちょっと・・・國生さん、なにを・・・」

余りに突然の・・・突飛な発言に、我聞の理解が追いつかない。
ただ、陽菜の目が冗談でなく、本気で恐れている・・・怯えていることだけはわかる

「何、言ってるんだ、別にすぐ戻ってくるし・・・」
「置いて・・・いかないでください・・・今は、一緒に・・・いてください・・・」

まるで、ここで離してしまったら二度と戻って来ないのではないか、
とでも本気で思っているかのように・・・
そんなことある訳が無いが、今の陽菜にとって何が一番必要なのかは理解できた。
胸の中で自分の浅はかさに舌打ちしながら、もう一度陽菜の背に腕を回し、きつく抱き締める。

「すまん、國生さん・・・何処にも行かないから・・・ここにいるから・・・」

また、陽菜のことを第一に考えているつもりで、自分の都合を優先しそうになっていた。
今の陽菜に一番必要なのは、誰かが傍にいてあげること。
傍に居るべき人が居なくなる・・・そこにぽっかりと開く心の隙間を、
例えごまかしであっても、代用品であっても・・・少しでも埋められるように、きつく抱き締めてあげること。
強く抱き締める程、身体の奥底に湧き上がる疼きは抑えがたいものになるが、
それを抑えるのが、彼女の気持ちに気付かなかった自分への罰。
465前々々499 9/9(了):2006/02/25(土) 23:59:34 ID:repUNqOr

「わたしこそ・・・すみません、社長・・・折角のお気遣いだったのに・・・」
「いや、まあ・・・気にしないで、それにほら、こうしていたらそれはそれで、温かいし」

本当の理由は流石にこの場面で言うに言えず、照れ隠しに“はは”と軽く笑って済ませる。

「はい・・・社長の身体・・・温かい・・・でも・・・」
「ん? どうした?」

逆接で言葉を切って自分を見上げる陽菜の表情が、さっきとまた違っている。
我聞に抱き締められて寂しさや怯えはだいぶ色を潜めたが、
代わりに・・・少し、顔を赤らめて、

「もっと・・・感じたいです・・・」
「へ?」

間の抜けた顔で聞き返す我聞の視線を避けるように、そして勘の悪い彼を少しだけ非難するように、
どん、と強めに彼の胸に頭を押し付けて―――

「もっと・・・社長を・・・あなたを、感じさせてください・・・」
「そ、それは―――」

いくら鈍い我聞といえど、流石に何を求められているかわかる・・・のだが、
自分で懸命に押し留めようとしていたことでもあり、ついその先に進むのを躊躇ってしまう。
そんな我聞に懇願するように、陽菜は言葉を続ける。

「・・・支えてくれるって言って頂けて・・・すごく、嬉しかったです・・・
 もう大丈夫かなって、お父―――父のことも、社長が居てくれれば耐えられるって、思えました・・・
 でも、社長が腕を解いたら、また元に・・・さっきの私に、戻ってしまうかもって、怖くなって・・・
 不安が完全に消えないのはわかります、だから・・・こんなこと、逃避だってわかってます、
 けど、少しの間だけでもいいですから・・・忘れさせてください・・・
 今だけでもいいですから・・・他のこと、考えられなくしてください・・・
 社長のことしか・・・わからなくしてください・・・」

どうやって、とは言わない。
言わなくてもわかる。
自分が望んでいたことでもあったが、それ以上に愛しい少女のために、そうしてあげたいと思った。
だから、己の心の欲するままに、彼女の求めるままに―――
陽菜をマットに押し倒した。



466前々々499:2006/02/26(日) 00:03:22 ID:repUNqOr
今回の投下分は以上です。

結局えっちまで行き着かず・・・
次でえっち突入&終了の予定ですので、どうかもうしばしお待ちください。
では、読んで下さった方々、どうもありがとうございました。
467名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 00:10:45 ID:UUVhHQrZ
GJ!
499氏相変らずの名文です。
468名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 03:00:58 ID:V7ZYGclI
>々々499氏

...。
.........。
.............................................。
....................................................................................................................................................................................。
469名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 10:12:40 ID:UA9VsZWI
GJ!!!。
最高
470名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 13:29:33 ID:tExQ9w4A
低脳!!低脳!!
471名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 07:57:32 ID:PPknmjPj
ぐはッ…萌え殺されそう!
ピュアなのがまた良い!エロがなくても超低脳っ!

マットに押し倒された國生さん…マット!マット!
…とりあえず転がってきます。
472名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 20:39:03 ID:6lQ5wRkN
499氏、君の低能さにはもはや呆れを越えて尊敬の念すら覚えるよ。
まぁ何だ。つまり私が言いたい事はただ一つ。
早く続きをば下さい。
頼んます…
473名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 22:09:39 ID:Vmm98TiN
やばい、胸がきゅーんっていってる。
大草原を転がり回りたい気分。
誤字発見
1/9で「自分と武文と組んだら」とあるんですが、
「自分と武文とが組んだら」もしくは「自分が武文と組んだら」ではないでしょうか?
474名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 22:52:02 ID:8qFngyT+
>>473
ぎゃーほんとだスミマセン(汗
ご指摘ありがとうございます、まさにその通りです。
脳内変換してやって下さると有難いです。
475名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 21:34:25 ID:95gHnGuc
過疎ってるね・・・ブログも荒廃してるし・・・
黒國生さんや温泉旅行の続き、そろそろこないかな・・・
476425:2006/03/02(木) 00:49:36 ID:q6eoRyOS
>>475
申し訳ございません。
プライベートでトラブルが起きて執筆が滞っていました。
日曜日には投下するつもりデス。
477名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 09:10:42 ID:f/vrl8p2
hosyu
478名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 23:40:06 ID:ZpVXUI48
密かに前スレ131さんのファンだったりして。
479425:2006/03/06(月) 00:18:14 ID:WPGASfbt
遅くなってすみません。
>>347-349
>>402-405
の続きです。

今回で最終デス。
480425 1/4:2006/03/06(月) 00:19:18 ID:WPGASfbt
「國生さん、一体何を・・・」
「言いましたよ、私は社長のことが大好きなんです!」

そういうと私は力が抜けている社長を引っ張り上げ、すぐ傍にあるベッドへと寝かした

「こ、國・・・生さん、一体・・・如何したんだ?」

社長は私に顔を赤くしながら問いかけてきます
でも、ろくに身体を動かせない状態でそんなことを言われても説得力があるわけがありません
むしろ、この健気な抵抗(?)は私の嗜虐心を擽ってしまう

そして私はベッドの上で仰向けになっている社長に覆いかぶさり、そのまま二度目のキスをする

「んんっ・・・・」

それは唇を合わせるだけではなく、口を開き、舌を絡ませる

「ぅぅうんん・・・んん」

初めてのディープキスのはずなのに私の口は、舌は、積極的に動く
社長を貪るように

しばらくして唇を離すと私達は長い時間をキスに費やしたためか、息が乱れていた
481425 2/4:2006/03/06(月) 00:20:36 ID:WPGASfbt
「はぁ・・はぁ・・こ、國生さん、教えてくれ!こんなのおかしい、如何したんだ!」

深いキスの余韻冷めやまないうちに、キスの最中に反仙術で唇から気を吸い取ったにも関わらず社長は私を問いただしました

「私、気づいたんです・・・あなたのことが好きだってことが・・・」

「・・・」

「社長は私のことをどう思っていますか、私のこと好きですか?」

(俺も・・・國生さんのことが好きだ、だけど、今、こんな状況で言っていいのか!?)

私は何も言わない社長に最後通告をした
私は我慢ができなくなった

「大丈夫です、例え社長がどう思っていてもこれから社長を無理にでも振り向かせますから!!」

この時の私はどんな顔をしていたのでしょう
社長の顔は引き攣っていて、冷や汗のようなものも出していました

「今夜は私の我侭に付き合ってください」

「こ、國生さ・・ん!!」

そして私は再び社長の唇を貪り始め口内を犯し始めた
2度目のディープキスは前よりも唇と舌を激しく動かした濃厚なものだった
始めのうちは抵抗のようなものしていた社長も今では舌を動かし私を求めてくれていました

「ん・・・んふ・・・んぅぅ・・・むふぅ・・・・」

社長が私を受け入れ始めてくれた・・・嬉しい

「んむぅ・・・ん・・・んぅぅ・・・」


ふと、私は自分の足に当たる先程までなかった妙な物体に気づきました
少し考えた後、確信した私は腕を伸ばしそれを掌で少しだけ、少しだけ、強く・・・掴んだ

「!!!」

「社長の・・・こんなに大きく、硬くなっています」

「な!!・・・」
(こ、國生さん、何て事を!!!)

「嬉しいです、社長が私に興奮してくれてるなんて」
482425 3/4:2006/03/06(月) 00:21:16 ID:WPGASfbt
さて、時計に目を移すと6時半を過ぎていた
本来なら社長はとっくに帰宅している時分、果歩さんもきっと心配していることでしょう
だからといって社長を帰すなんて事はしない
私はベットの枕元に置いていた携帯電話を手に取り、片手で操作する


『もしもし、工具楽ですが?』
「あ、果歩さんですか、國生です」

(國生さん、こんな状況で果歩と電話してどういうつもりなんだ!?)

「・・・・はい、実は今社長が私の部屋にいるのですが・・・」
『ええ!!お、お兄ちゃんが陽菜さんの部屋に!!!』
(ってことは2人きり!!)

「っ・・・・」

果歩さんと電話中にわたしは空いた手で社長のモノを愛撫し、電話は社長の声が届きやすいようにする

「・・・はい、そういうことで今社長が眠っておりまして・・・」

ふふ・・・社長ったらすごく焦っている
分かったみたいですね、ここで変に声を上げたりすれば大変なことになることが・・・


話している間も愛撫は続く、ですがズボン越しに触るだけではもう満足できなくなりファスナー下ろしてその中に手をいれました

「なぁ!!!」

社長のバカ・・・

『あれ?今お兄ちゃんの声が・・・』
「え・・・えぇ、たぶん寝言だと思うのですが・・・」

「社長、ちゃんと我慢してくれませんとバレちゃいますよ?」

携帯から少し口を離し小声で社長に耳打ちしたら、また果歩さんと電話をする


そして会話はどんどん脱線し、何気ない世間話へと変わっていくなか私の社長への責めは休まったりはしません
反仙術で抵抗する力を失くしている社長は電話の向こうにいる果歩さんに気づかれないように歯を食いしばりながら、残された微々たる力でシーツを握り締めながら耐えています

「それでは果歩さん、今日は社長を私の部屋にお泊めするということでよろしいでしょうか?」
『はい!もちろんです!!いやぁ〜本当に申し訳ございません』
(これで二人の仲も急接近!!!)

果歩さんは以前から私と社長のことには寛容ですのでとてもありがたいです
483425 4/4:2006/03/06(月) 00:22:04 ID:WPGASfbt
「それでは失礼いたします」

ピッ

「社長、大丈夫ですか?」
「ハァ・・ハァ・・・ハァ・・・」
「大分、我慢されたんですね?でも、さっきの大声で喘いだのを誤魔化すのは大変でしたよ?」

私は笑顔で答える

「こ、國生さん・・・お、おれ・・・もう、本当に・・・」
「まだ、まだ、ですよ?」

そう言うと私は顔を社長の股間へと移動する
社長のモノはすでに露出し、猛々しく聳え立っていてる
私はそれを愛おしく舐めはじめる

「こ、國生さん!!!駄目だ、こんなこと・・・」

ちゅ・・・ぴちゃ・・・ちゅぱ・・・

(だ、駄目だ・・・気持ちいい・・・も、もう・・いい・・や・・・・)

社長・・・観念したのかな?
今度は口を大きく開けて社長のを咥えてみる

ちゅぷ・・・ちゅぱ・・・ちゅば・・・くちゃ・・・ぴちゃ・・・くぷ・・・

くわえちゃった・・・なんだろう、先っぽから・・何か苦い、でも・・・社長のだから・・・いい
私は歯を立てないように丁寧に奉仕した
社長も気持ちよさそうにしてるし、いつも間にか社長の両手が私の頭に在った

「で、でる・・・」
「うう!?」
社長がそう呟いたとき私の口の中にとても苦い味が広まった
吐き出しそうだったけどそれを何とか飲み込みました、口から白濁色の液体が垂れ落ちる

「社長、社長の精液、苦かったですけど・・・おいしかったですよ、今度はここに社長の精液を注いでください・・・」

私は社長への反仙術を解き、満面の笑顔で私は社長に求めた

「もう・・・我慢できない・・・」

そういうと回復した社長は私を押し倒してくれました
乱雑に私の服が剥ぎ取られて、社長自身もズボンを脱いでいく・・・
これから私は社長に犯されていく、それは今の私にとって、とてもとても嬉しいこと

社長、いえ、我聞さん・・・愛しています
484425:2006/03/06(月) 00:24:57 ID:WPGASfbt
以上、投下終了です。

もしかしたらこれの後日談のようなものを執筆するかもしれません。

それでは失礼しマス。
485名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 00:26:10 ID:q3nNw/6t
連投支援sage しかし最後にageるだけでいいとおもうよ?
486名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 03:42:38 ID:yT9zdEpU
>425氏
こ…こっ、の……





ド低脳がぁぁぁぁっ!!!!
黒陽菜さん、新鮮でとてもよろしゅうございました。後日談にも期待しとります
487名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 21:03:28 ID:R8XgfG0s
後日談を物凄く所望いたします
488名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 22:00:54 ID:yh+pCrPN
待ってました、GJっす!
黒い國生さんは迫力があるなぁ・・・
489名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 23:23:56 ID:yh+pCrPN
そして気が付けば479KBまで来てるんですね。
次に投下される方、もしくは490KB突破したくらいで新スレ立てですかね?
490名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 09:55:03 ID:/QcLOMRE
GJ!!!
491名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 18:01:54 ID:cUpO+Hp3
GJです
後日談読みたいです


俺も早く続き書かなきゃ・・
492名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 19:30:44 ID:jSpxgJAj
俺も早く続き書かないとなあ
493名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 09:23:21 ID:+gvbkOpm
ほす上げ
494名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 09:24:04 ID:+gvbkOpm
ほす上げ
495名無しさん@ピンキー:2006/03/10(金) 08:36:36 ID:riG7FcfJ
過疎ってる・・・
誰も居ないのかな?
496名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 00:40:22 ID:8cpqLSmX
確かに過疎ってる
497名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 01:10:47 ID:SsssjyFV
3月14日を待つんだ
きっとホワイトデーネタが投下されるに違いない
498前スレ改め4スレ131:2006/03/12(日) 18:27:25 ID:99FBgPyL
131です。
続き書けたんで投下したいんですが、途中でオーバーするのが怖いんです。
が、困ったことにスレ立ての仕方を知らないんです。
ので、申し訳ありませんが誰か立てて貰えませんか?
499名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 20:50:57 ID:y0WZ60v8
オーバーったってまだ500もいってないし大丈夫なんじゃ?
500名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 20:51:56 ID:y0WZ60v8
と思ったらもう482kか。
500が限界だっけ?

ちと立てられるか試してくるよ。
501名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 20:55:18 ID:y0WZ60v8
ダメですたorz
後は頼んだ。
502名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 21:14:07 ID:99FBgPyL
>>499->>501
ナイスチャレンジ
503名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:32:28 ID:Ryo5I8w9
>>131
見てるかな?
とりあえずスレ立て挑戦してみますわー
504名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:41:26 ID:Ryo5I8w9
立ちましたー

【こわしや我聞】藤木俊作品全般でエロパロ6
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142174405/

しかし131氏が見てなかったら速攻で落ちる可能性がありますな(汗
5054スレ131:2006/03/13(月) 06:21:10 ID:wf34Xm/E
>>504さんどうもです。
6の方に投下させてもらいますね。
506名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 00:41:40 ID:Ykmougv6
梅ついでに
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/96/2d576c3594ca692e8907b3020dd41489.jpg

24時間以内に消します・・・
507名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 08:11:38 ID:Zc5eFAZO
>>506
保存しました。
ナイス低能!

……実は俺も残り容量が気になって投下できなかったのは内緒。
すでに、50KB越えているので……
508名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 12:15:01 ID:UdLsad3w
>>507
ちょww落ち着けwww
もう50KBは超えてるぞ。今482KB。
ただ500KBと言いたかったのは分かった。
509名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 12:18:50 ID:Slz+oTEu
507は書いてるSSの容量が50kbを越えたってことじゃマイカ?
510名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:40:38 ID:fnUwj7i+
>>509
そういうことか
俺文脈読めねえ_| ̄|○
国語勉強しなおすわ
511名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 16:20:42 ID:PuEe/DL3
フム、残り16KBどう埋めますか。
512名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:12:14 ID:YI7r4JOp
埋めがてらに妄想してみる。

果歩がぶるまー姿ということはだ。
あの地区の中学校の女子はぶるまーということだ。
つまり中学時代のおさげ國生さんはぶるまーだったということだ。
ちょっと髪が大人しくなった三年後の珠は現在進行形でぶるまーということだ。

いや、それだけなんだが。
513名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:25:05 ID:RuFbdw+K
ume
514名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 23:11:50 ID:uW14TgCn
一日一梅
515名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 00:00:47 ID:8ysJdRQW
一日一梅
516名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 11:28:09 ID:KVoje42e
今、目の前で一人の少年と一人の少女が、交わっている。
二人の普段の様子からは、このような構図は想像できない。
少女は全裸で床に這いつくばり、一心不乱に少年のモノをしゃぶっている。
少年は衣服を上半身は普通に身につけて、自分のモノを舐める少女を、どこか冷たい笑みを浮かべて眺めている。


こんな事になるなんて、思わなかった。
私のちょっとした好奇心が原因で彼等を歪ませるなんて、思ってもみなかった。

少年は体をビクッ、ビクッ、と震わせる。
少年の体がひときわ大きく震え、それから少し経って少年の下半身に宛てられていた少女の顔が離れる。
そしてそれと共に、離れた部位から白濁した液が飛び散る。
それは、少女の体を汚していく。
すべてが出終わった後、少年は少女に何かを耳打ちする。・・・どうやら、何かを命じたようだ。
少女は少し躊躇っている。少年はそんな少女の耳元で何かをぼそぼそと囁いた。
すると、少女は顔を青ざめさせ、少年がさっき放った液体の床に飛び散った分に舌をはわせ、舐めとり始める。
その様子に満足そうな笑みを浮かべ、再び何かを命じる。
少女はやはり躊躇いながらも、今度は素直に動く。
自分の秘部に指をあてがい、少年の目前で自慰を始める。
その表情は恥辱に頬を染めながらも、恍惚とした表情を浮かべ、普段の優しくも厳しい、そして強さを秘めた瞳は、暗く淀んでいる。
一方少年も、冷たい笑みを浮かべ、普段の明るい、生命力に満ち溢れた瞳は、少女以上に淀み、計り知れないほど暗い何かを秘めていた。


彼らの目は何故こんなに淀んだのか?
いや、何故こんなに淀ませてしまったのか。


元はと言えば、自分の些細な好奇心。
『仙術使いに、毒は効かない。新陳代謝を意識的に高め、分解を早めてしまうから。
ならば気づかれないように薬を仕込むのはどうなのか?』
そんな些細な好奇心から、自分は彼に薬ーーー俗に媚薬と呼ばれるモノを飲ませてしまった。
それが、侵してはいけないタブーだとも知らずに・・・
517名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 11:30:53 ID:KVoje42e
何となく考えてみた。
けど、ここまでしか思いつかなかったので誰か続きをキボン
518名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 00:39:51 ID:hddIj+5i
>>517
そんなこと言わずに続きを!
519名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 12:35:19 ID:kQBtj+SP
>>518
わかった。
やってみるが、だめなとこあったら遠慮なく叩いてくれ!!
520名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 15:23:30 ID:kQBtj+SP
始まりは、数日前。
中の井さんが辻原君と、内調に訳あって一週間の泊まり込みに行った日のことだ。会社には、我聞君と陽菜ちゃん、そして私だけ。
当時GHKだなんだって暢気なことを言っていた私は、陽菜ちゃんが我聞君に何か包みを渡しているのを見つける。
「はるる〜ん、何それ〜?ひよっとして、手作りのお弁当〜?」
私が少し茶化して言うと、彼女は赤くなりながら違いますと否定してから教えてくれた。
「栄養ドリンクです。やはり我が社は社長の体が重要なポイントですから、体調を崩されないようにと思って」
「ふーん。でもさ、我聞君は気の操作すれば必要ないんじゃない?」
我聞君は仙術使いだから、意識的に新陳代謝を高めたりして、体内の毒素を分解したりウィルスに対する抵抗力を強めたりできる。
「私もそう思って、最初は気休め程度にと思ったんですが、先日、辻原さんが『社長の気の操作はまだ少し雑で、偶に風邪ひいたりするんですよ。それに、仙術自体は意識して『使う』もので、無意識に術者を守ってくれる物ではないんです。
例えば、毒を飲まされてそれに気づかなきゃ、普通にその毒の症状が出るんです』と言っていましたので・・・」
「へ〜」
その話を聞いて、私の頭脳は一つの計画を立てる。
計画と言っても、媚薬入りのお茶を二人に飲ませて二人っきりにしてから、隠しカメラでその様子をとって眺めるという簡単なもの。
そして、翌日私はその計画を実行する。
521名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 16:27:50 ID:kQBtj+SP
直書きだから今日はこれだけで。
522名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 00:34:44 ID:gHlyFo8h
>>521
いいね〜
続きも楽しみにしてるよ!
523名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 06:41:27 ID:xvjxeK8a
宇目
524名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 13:34:23 ID:pQYRtCcK

翌日ーーーーー計画実行の日。
私は、我聞君と陽菜ちゃんが二人とも学校に行ったのを窓から確認すると、準備を始める。
部屋の中全てが見えるように天井にカメラを、そして陽菜ちゃんの椅子の裏に盗聴機を、一つづつ設置した。
後はある程度デスクワークを片付けて、出前で軽い昼食をとる。
そこで、私は大切な物を忘れていたことを思い出す。
二人に仕込む媚薬を忘れていたのである。
ーーー全く、何をやっているのだろう、私は。種を蒔かなければ実は手に入らないではないかーーー
そんなことを考えながら、気持ちだけ足早に部屋に取りに行く。もっとも、そのときまだ時間は昼前で急ぐ必要なんてなかったのだけれど。

薬を取ってきて準備を終えた私は、計画が成功した後のことを考える。
まず、撮ったビデオを果歩ちゃんに見せよう。そして、ある程度果歩ちゃんと二人してからかったら、二人にも直接ビデオを見せよう。
そのとき二人がどんな反応するのかとても楽しみだ。
私は、そんな風に軽く考えていた。
「ただいま戻りました」
そして帰ってきた陽菜ちゃんが出社してきた。
「あ、お帰りー。
あれ?我聞君は?」
一人で戻ってきた陽菜ちゃんにに我聞君の行方を尋ねる。
「社長でしたら、今日は現場に直接行くそうです」
「え!?」
私は思わず声を上げてしまった。
「じゃあ今日はこっちに来ないの?」
「一応、終わり次第時間があればこちらにも顔を出すとのことですが、何か不都合でもありましたか?」
「え?う、ううん!別にそうじゃないけど」
これは困った。
ひょっとしたら計画を変更しなければならなくなるかもしれないな。
そう考えたものの、とりあえず私はまだ少し残っていたデスクワークを片付けることにした。
525名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 13:35:54 ID:pQYRtCcK
また少し書いた。
ところで、これの存在に気付いてる人は、どれだけ居るんだろ?
526名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 13:51:58 ID:xpmj3biW
527名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:46:55 ID:0sBMqYt9
すごいイイです、ぜひともがんばって書いてください。
528名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 02:02:57 ID:QqM/pINI
壁|ノシ
529名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 15:26:09 ID:0dY38IsI
ノ ここにもいますよ
530名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 22:01:48 ID:oRY/9h6r
ノシ
531名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 15:43:26 ID:W6zoE2Xo
私が、その日のノルマを終え、やることもないので帰ろうかなんて考えていたとき、
バンッ!!
「工具楽我聞、只今戻りましたっ!
二人ともご苦労さまっ!!」
我聞君が戻ってきた。
それにしても、妙にテンションが高い。それに、僅かだが頬も上気しているみたいだ。

「社長もご苦労様でした。ですが、扉はもう少し静かにお願いします」
「むぅ。すまん國生さん、その代わり残ってる仕事をどんどん手伝おう!」
やっぱりテンションが高い。
「どしたの我聞君、なんか機嫌良いね?」
「いやー、保科さんに貰ったこのジュース飲んだら妙に気分が良くなってきて、今なら何でもできそうな気がするんですよ〜」
そう言って、私の前に一本の缶を見せる。
「んー?れもんちゅーはいってコレ・・・」
「社長、お酒ですよ!!
社長は今酔ってるんです、早く酔いを醒ましてください!」
陽菜ちゃんに言われて、むぅと唸る我聞君。
「そうかー、俺は酔ってるのかー。
よし、酔いを醒まそう!うーん・・・」
腕を組んで黙り込む。
新陳代謝、アルコールの分解速度を高めて酔いを醒ましている、のだろうか?
我聞君は暫くして顔を上げ、陽菜ちゃんに質問する。
「國生さん、酔いって、どう醒ますっけ?」
・・・醒ますと言うより、悪化している気がする。
「新陳代謝を高めて、アルコールの分解を早めるんです」
律儀に教えてあげる陽菜ちゃん。
それに素直に従ってまた、黙り込む我聞君。
うん、やっぱり二人は良いコンビだ。
そして、良く解った。
バレさえしなければ、仙術使いに我聞君に薬は効く、と・・・
「よし、これで大丈夫。國生さん俺に何かできること、ある?」
頬の赤みも引いているし、どうやらほんとに醒めたようだ。
「では、社長はこの書類に目を通して、判をお願いします。」
陽菜ちゃんが我聞君に書類の束を渡す。
そろそろ、潮時かもしれない・・・
そう思った私は、コーヒーを二人分煎れて中に白い粉末、私の調合した媚薬を適量・・・より少し多めに入れた。
532名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 15:45:54 ID:W6zoE2Xo
案外読んでる人居たな〜
嬉しい限りです。
でも、書き終える前でもこのスレ終わったら、た方が良いんですかね?
533名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 20:27:10 ID:K3CsALXL
>>531-532
イイヨイイヨー
早く続きが読みたいですよ。
・・・そして>>532が解読できません(汗

とりあえず、このスレで終わらないようだったら、
新スレにこれまでの分を貼り直して、続きを書いていいんじゃないかな?
最近過疎ってるしね。
534名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 03:17:48 ID:9uvsXGAl
キター。そろそろ本番ですね、それでは続き楽しみにしてます。
このスレが終わったら新スレに投稿、お願いします。
535名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 14:40:15 ID:nfbCI9xz
3/32記念
536名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 20:43:06 ID:whF7wATk
保守る
てか書いてた人は何処へ?
537名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 22:48:48 ID:xZBADFAj
538名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 03:45:56 ID:+dPEc0sN



























































539名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 03:48:44 ID:+dPEc0sN



























































540名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 00:12:51 ID:0X5uCqqa
>>516の人の続きが気になるけど、
板全体で圧縮の気配も濃厚だし、我聞スレを二つ活かしておくのはどうかと思うので埋めちまおうと思います。
516氏は是非とも次スレ(>>537)で続きをお願いしまっす!
541名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 00:14:56 ID:0X5uCqqa
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542名無しさん@ピンキー
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