お姫様でエロなスレ2

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508面談 1
光が散乱する水晶の円蓋の下で、皇女アグレイアは身じろぎもせず立ちつくしていた。
ここに来るまでに通り抜けた、数え切れぬほどの柱の続く身廊におそれをなしたのではない。
王の宮殿を訪れた…いや、この場合不作法にも正確には『呼びつけられた』…のは初めてだったが、今さら荘厳ぶりに驚く身ではない。
石材そのものにしみいったがごとく淀む貴重な香の匂い、その濃厚さが雄弁に語るこの国の歴史の重みに気圧されたのでもない。

生まれてこのかた斎姫として育てられた彼女はその手の空気を吸い慣れていた。
彼女の護る神殿は、たたずまいは簡素ながらも格式は国中で最も高く重々しい。
否、国内ばかりではない。
今を盛りに他国にまで延伸している神々の大元はみなかの祖宮の故地に伝わったもの、そしてそれを司る彼女は主神の血をひく“皇家”の女である。
怯む道理があろうはずもない。
しかし目の前でしきりに汗を流している小男はそんな彼女をさも世間知らずのおろか者を言いくるめるような脂こい舌先で話しかけてくる。
皇女アグレイアは腕輪をさやかに鳴らしつつ、抑えるのを忘れてずり落ちかけていた薄裳を引き上げた。
宰相の補佐官だと名乗るその小男の口臭が気になったからだ。

***

「……というわけなのでございます。畏れ多くも皇女様とも在られる方にこのような事をお頼み申し上げずにおられませぬ事、誠に…我々一同、降りかかりましたこの災難には胆汁煮えたぎる思いでございまして…」
「つまり有り体に申せば」
小男の揮う長広舌を涼やかな声で押しとどめ、アグレイアはじっとその目を見据えた。
「そのほうらは、民を救い、この災厄を防げなんだ責めに私にその流血将軍とやらと同衾して国を購えと」
「いえ……はい…いえ」
小男は顔を隠して腕をあげ、動揺を抑えるような奇妙なそぶりをみせた。
だがその視線は落ち着き無くちらちらと、アグレイアの目の付近に注がれている。
斎姫であるこの皇女の傍近く寄る事など、かほどの緊急事態でもなければどのような高位高官だろうがまずないことなのでもちろん小男がアグレイアをこのような距離で見るのは初めてなのだ。
俗人の男で身近の目通りが叶うのは“王家”の王のみ。
しかしその王は三日前に戦死した。

「このようなご覚悟を皇女様に強いますのは不逞の極みではありますが。王様は討ち死にされ、ご一族や高官の方々も虜となり、すがるはもはや皇女様のみの有様にて……」
盗み見る小男の視線は相変わらず落ち着きなく、裳を透して肌の輪郭を這っていたが、アグレイアは拘泥する気にならなかった。
それより今現在気になるのは、昼下がりの干潮時の汚泥の臭いにも似たこの男の息である。
小男の周りでは積年焚かれた香木の深い匂すら色を失っている。踏みにじられたこの国の現状のように。

アグレイアは、赦しを乞いながらにじり寄ってきた小男を避けて一・二歩横に歩んだ。
小男は引き寄せられるようにふらついたが、斎姫の後ろからずいと進み出てきた黒瞳の女に大喝された。
「皇女様に心やすげに近づくでない」
「リュリュや」
アグレイアは眼光鋭い女神官に疑問の視線を投げた。
「この話、腑に落ちぬ。将軍の要望というのはまことの話であろうかの」
「無論信用なりませぬ、アグレイア様。あなた様が斎姫だということは諸国に知れ渡っておりますものを、誰がそのような不届きな要求を。馬鹿げておりまする」
リュリュはじろりと小男と、その後ろに控えている男たちを睨み付けた。
アグレイアの説得を『命じられた』この国の廷臣たちである。
「ですがたった一つだけ真実がございましょう。こたびの会戦では王様もろとも宰相様そのほか相当数の方々が討ち死になされたと聞き及んでおります。今となっては主神を奉じるアグレイア様のみがこの国の行く末を定めるお方」
「だが」
アグレイアはリュリュに囁いた。
「私は生まれついての斎姫じゃ。人も知らねば世も知らぬであろう。政治のほうはからきしの不得手じゃの」
「ですが、かといって逃げる事は叶いませぬ。これまでに無き事態なれど、皇女様は御自身にこの者らのような責任逃れは赦されますまい」
509面談 2:2006/03/12(日) 04:50:30 ID:cAa7qPHS

「豪胆じゃの。リュリュ、将軍と交渉せよと申すのか…?」
アグレイアは指先をしならせて裳を離した。
女神官の軽蔑の眼に気圧された小男が引っ込んだので口臭地獄から脱したのだ。
裳がふわりと離れると、控えている男達から声にならないどよめきが漏れた。

乳色の肌には化粧気はみじんも窺えなかったが、唇は艶めいた珊瑚色をしていた。
腰まで流れ落ちるのは空気に溶けそうな、波打つ淡い金色の髪。
すっきりとのびた眉の下の目は深い灰色、やわらかく通った鼻筋、それらの配置が抜き差しかなわぬほどにぴたりと決まっている。
佇まいに満ちた品格といい、姿の優美さといい、非の打ち所のない美貌だった。
背中に羽があってもおかしくないようで、どことなく浮世離れしている。
ただ、神々しいというにはほんのわずか疲れたような表情をしていて、そこだけ人の匂いがした。

「皇女様、はしたのうございます」
リュリュが顔をしかめて咎めた。
「はしたないのなんのとこだわる場合とも思えぬ。祖宮から出ねばならぬのではな」
空気をはらみおえた喪が緩やかに皇女の細腰を覆う頃には気を呑まれたような沈黙が円蓋の下を埋め尽くしていた。

***

流血のローラン。
簡潔にして直裁的な通り名を持つその男は、アグレイアの奉じる主神を同じく崇める北の隣国で頭角を現した。
もとはどこの馬の骨ともしれぬ傭兵隊長だったという。
年老いた国王の信任を得て権力を壟し、その死後当然のごとくたちおこった陰謀を逆手にとって、有力な排斥派を一掃した。
その方法がほとんど一族皆殺しという極端なもので、ついた名前が『流血将軍』。
伝わってくる噂はまがまがしいものばかりだったから、国内を制圧したその男がさほどの小競り合いを経ずしてアグレイアの国と三日前の会戦で大勝し、首都の防衛網も突破して宮殿に乗り込んで来ると残された支配者層はパニックを引き起こした。
“王家”に連なる有力者たちはみな逮捕された。
即座に処刑されるかと思いきや、流血将軍が出してきた要求は“皇家”の斎姫アグレイアとの『面談』である。

年に数度、祖宮の建つ海岸で行われる儀式でのみ人前に現れる斎姫を信者は遠目に拝顔できる。
芳紀17。
アグレイアは“皇家”始まって以来の美姫と噂に高かった。
510名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 04:51:30 ID:cAa7qPHS
あと何回かで終わる予定です
511絹姫折檻の書き手:2006/03/12(日) 09:52:01 ID:bHcwyC60
……まずいなぁ、ネタがまるで浮かばないw

とりあえず新手の職人さんもいらっしゃるようだし、もうしばらく頭をひねりまつ。
512名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 21:14:54 ID:TiDlUR4e
肉体の時を止める魔法って?
513名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 22:01:14 ID:au/bjMd+
>>512
前スレで一時盛り上がったが
どんな美女でも年をとれば老いて醜くなる。それは嫌ということで、

悪い魔法使いが美しいお姫様を捕らえる。
美しさを永続させるため、お姫様には肉体の時を止める魔法がかけられる。
お姫様は魔法がかけられた時点が永続する。
加齢、死、疲労、空腹、排泄等はすべて無いが、感覚や意識は明らかなまま。
魔法がとかれない限り、お姫様は一切の体の自由を奪われ、
魔法使いの好みのポーズで固まったまま、永遠の時を生かされ続ける。

生きながらにして固められたお姫様に対し、魔法使いは、
愛撫したり、くすぐったり、時には触手責めなどのいたぶりを加える。
514名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 19:43:11 ID:C5QlepsZ
>>510
乙!
凄く楽しみ!!
515面談 3:2006/03/14(火) 15:40:21 ID:j8TOeL8Z

国を購う…。

小男達から引き離され、案内された宮殿の一室で、斎姫は祖宮からここまでの短い旅を思い返した。
首都と祖宮との距離は馬で急げば半日程度といったところ。街道で輿は使えないから生まれて初めて馬車に乗った。
窓越しの立派な首都の風景は祖宮の周辺と同じく穏やかで、要所要所に立つ異国の兵士の姿がなければ戦に敗れた国とは見えなかった。
建物を焼き払う煙もあがらず、略奪に逃げ惑う民の姿もない。少なくとも彼女が見た限りはそうだった。
もっとも街道沿いしか見ていないから現状を判じる材料には足りないだろうが。
「リュリュ」
アグレイアは忠実に付き添っている、友人でもある女神官に呼びかけた。
「かの将軍が真っ先に我が国を狙ったのは何故であろうか。さきほどあの補佐官がほのめかしておった、『私』がいるゆえ、という与太話は無しじゃ」
「制海権と貿易中継都市の独占」
リュリュは黒い強い視線を部屋中の装飾に辿らせながら即答した。
「長らく隣とはそれで揉めておりましたゆえ。ここは、もしや王の居室ではありませぬか」
「そのようじゃの」
格子天井の下、贅をこらして整えられた調度品の数々を仔細に見るまでもなく、奥まった場所のこのように心地よい部屋といえばそれ以外に考えられぬ。
「それに、アグレイア様」
リュリュはアグレイアに向き直った。
「あれは補佐官殿の与太話というわけではありませぬ。この国には祖宮があり故地があり、あなた様という斎姫がそこをお護りしているのでございます。充分盗むに足りる価値です」
「その通り」

ふいに割り込んだ声に、アグレイアは灰色の目をあげた。
リュリュの頭越しに、壁際を覆って垂れていた布がそよいでいる。隠れた扉があるようだ。
布を背に男が立っていた。マントも甲冑もつけておらず、腰には短剣だけの軽装である。
ありふれた茶色の髪に茶色の目。だがその目の光は離れていてもまことに印象的だった。
「御付きの侍女が一人とは質素な事ですな」
その男が歩き始めるとアグレイアにはやっと、彼が中肉中背であることがわかった。
目のほうの印象が強すぎてほかの特徴にとっさに注意を行き渡らせることが難しかったのだ。
「侍女ではない。私は神官です」
リュリュは冷ややかに男の発言を訂正した。31にもなるのに『嬢』扱いされて気を悪くした様子だったが、不機嫌をあからさまには出さないよう気を付けているのがアグレイアにはわかった。
アグレイアは椅子から立ち上がった。
これが問題の流血将軍に違いない。

男は斎姫の傍まで来ると立ち止まり、目をすがめ頭を傾けた。
視線はアグレイアの顔を滑り、喉もとまで覆った白い衣と裳をかすめて胸に一瞬とまり、それからするするとおりて腰に辿り着いた。
腰から腹部を眺めていた男はアグレイアの周りを刻んで足を置きなおし、首を伸ばした。口元がほんの少しほころんだように見えた。
尻を眺めているのだと直感的に悟って、アグレイアは頬が赤らむのを感じた。
たまりかねたリュリュが椅子を回って押し寄せて来た。
「挨拶もせぬばかりか名乗りもせずにぶしつけな。斎姫様に無礼でありましょう」
「これはご無礼を」
男はうやうやしげに身をひき、かといって跪くわけでもなく後ろに下がると、彼女らに相対するように置かれていた椅子に腰を下ろした。
「さあ、姫君もお座りください。まともに話を聞いてくださるようなら挨拶をいたします」

アグレイアとリュリュは目を見交わした。
無礼にも関わらずどこかぬけぬけとした男の言葉に、咎めるに必要なためを外されたのである。
アグレイアが椅子に戻る間、男は肘掛けに置いた両手の指先を合わせてじっと彼女を眺めていた。
斎姫の衣装を整えたリュリュが後ろに立つと、彼はやっと口を開いた。
「お聞き及びでしょうが、私がローランです。現在主神の思し召しによりこの国は我が軍の支配下にあります。無論、お目にかかるのは初めてですな」
516面談 4:2006/03/14(火) 15:40:52 ID:j8TOeL8Z
「本当に『そなたの軍』ですか?」
リュリュが口を出した。思し召しを持ち出されたのが神官の癇に触ったらしい。
「先年病没なさった王のものをそなたがお預かりしているだけと耳にしておりますが」
「そう、私は故王の将軍にすぎません。…神官殿のような頑迷な方々のおかげでね」
ローランは肩を竦め、リュリュを無視してアグレイアに向き直った。
「即位しようにも我が国の神官たちが拒むのですよ。主神の祝福を。祖宮とあなたの名前を持ち出して、です」
「まさか、それで」
リュリュが呻いた。
「そう。それでここにやってきた」
ローランはアグレイアの顔を覗き込んだ。
顔を背けずアグレイアは男の視線を迎えうった。平凡な色ながら、たぶん一度みたらそうそう忘れられないだろうと思わせる、個性的な光を持つ目だと思った。
リュリュは苛立たしげに声を高めた。ローラン将軍が、彼女の大事な斎姫をじろじろと眺め回しているのが気に入らないのだ。
「使いを寄越せば済むことではありませぬか」
男は面白くもなげに笑った。
「それであっさりと簒奪の許可をもらえると? そうだとすると楽ではあるが、のし上がる価値もない」
「口実です」
リュリュは決めつけた。
「即位せずともそなたの名にはとうに冠がついておりましょう。その名の通りのやり方で祝福を無理強いするなど容易かろうに、他国に攻め入って祖宮の斎姫を煩わせる必要があるとは思えぬわ」
「やれやれ…」
ローランはアグレイアから視線を離し、ゆっくりとリュリュに向き直った。
「祖宮というのは普段よほどに退屈なところらしい。頭がいいのはわかったが、少し黙っていられないのか」

「…リュリュ」
アグレイアが口を開いた。男の目の光の変化に気付いていた。
「席をお外し」
顔を真っ赤にし、リュリュは囁いた。
「ですがアグレイア様」
「よいからお外し」
リュリュは唇を噛み、きつい黒瞳でローランを一瞥すると裾を腕に巻いた。泡が弾けるような低い声でアグレイアの耳元に「お気をつけて」と囁いて身を翻させた。
扉が閉まると、アグレイアはローランを見た。
「腑に落ちない事がいくつかあります。訊いてもかまわぬでしょうね」
「答えずともよろしければ」
男は椅子に身を落ち着けてじっと彼女の顔を見返した。
アグレイアは構わず続けた。
「あってほしくはないが、戦に略奪はつきものです。なのにここに来るまでそのような気配はありませんでした。リュリュの申した通り、そなたの経歴と通り名には相応しくありませぬ」
男は指先を合わせて格子天井にちらと目をやった。
「そうですな」
「それに高官たちを捕虜にしたと聞いたが、まだ生かしておるそうじゃ。その使い道は?」
「ふむ」
ローランは一言言っただけだった。
アグレイアは口を噤んだ。
広大な部屋には沈黙がたちこめた。
517面談 5:2006/03/14(火) 15:41:25 ID:j8TOeL8Z

「もう訊きたい事はありませんか?」
男が口を開いた。
「言わずともお判りの筈です」
アグレイアが呟くと、ローランは頷いた。
「ではまず反対にお尋ねしよう。あの通り名を私は気に入っていると思いますか?」
アグレイアは少し考え、頷いた。
ローランの口元が歪んだ。アグレイアには微笑に思えたが気のせいかもしれない。
「その通り。あの名は私の思惑を助長し、また逆に隠してくれる──それさえ理解されているようなら問題はない。質問にお答えしよう」
ローランは椅子から立ち上がり、華麗な部屋に手を振ってみせた。
「利用価値のあるものは一気に刈り取るよりも搾りあげたほうが役にたつ事はおわかりですね。いつまでも傭兵隊長のままではありません。簡単に言えばそういうことです」
「……では私は?」
アグレイアは涼やかな声で言った。
「私には何の意味があるのですか。斎姫を手に入れたとて、その瞬間に価値も権威もなくなることは充分承知のはず」
「斎姫であり続ける事に価値があるのではない。あなたを手に入れるという事実に価値があるのだ。“皇家”の直系のあなたをね」
ローランはじっとアグレイアを見た。
「か弱気な見た目に騙されていた。思っていたよりもしっかりしておられるようだから有り体に言いますが、私は『あなたの血』が欲しいのですよ」
アグレイアは灰色の瞳をあげた。もともとあまり色のない頬が一層白かった。
「ただ同衾するだけでは満足せぬという事ですか」
男は頷いた。
「私の子の体内に“皇家”の血を入れたいのです」

リュリュを追い出したのは正解だった、とアグレイアはまだ冷静に保っている頭の隅で考えた。
怒り狂い、この男に掴み掛かって腰の短剣で返り討ちにあうのが目に見えるようだ。

「“皇家”には他にも多少の人材がおられるそうですな」
気がつけばローランがまだ喋っていた。
「あなたの亡くなった叔父御の娘が二人…もっとも五歳と三歳では心もとなかろうが。祖宮の斎姫は御譲りになることもできると聞きました」
「随分詳しいのですね」
ローランははっきりと微笑した。
「調べました。思いつきだけで動くには出世しすぎたし時間も惜しいのでね。世話になった我が国の先の王から得た教訓ですが、しっかりした跡継ぎは元気なうちに得ておかねば」
「調べたのならばご存知でしょうが…」
アグレイアは椅子から立ち上がり、ローランと向かい合った。拳を二つ重ねたほどローランの方が背が高かった。
「自らの咎のない者が斎姫を退く事は許されておりませぬ。遠い昔に王に犯された斎姫がありましたが──」
「その斎姫は特例として退位せず年を経るまでその位にあった、と仰りたいのでしょう。襲った王は天罰てきめん、叛乱にあって廃位の憂き目にあったそうですな」
ローランは動じなかった。
「私はそれが欲しいのです。王にも勝るその権威が」
アグレイアはローランの図々しく輝く強い瞳を見上げた。
「多くを望むものは多くを失います」
「もともと何も持っては居なかったのだから怖れる事はない。それにあなたは咎なくして私に身を任せるのではないのです」
ローランは身を屈めるようにしてアグレイアに囁いた。
「頭は良いようだが心は弱い。私を拒絶すれば国と民、それにあの女神官がどうなるかご存知で、しかも見捨てるには優しすぎる…さきほど質問をしたのは過ちでしたな」
「それが咎だというのですか?」
「いいや」
首筋に気配を感じ、躯を廻そうとしてアグレイアはがっしりと抱きとめられた。
顔を戻すと、ローランが目を細めて笑っていた。
「女に生まれた事──それがあなたの咎ですよ」
518名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 15:42:02 ID:j8TOeL8Z
あと二回…たぶん。
519名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 23:14:36 ID:g6ws4we6
>>518
すげえ楽しみww
520面談 6:2006/03/15(水) 13:15:37 ID:nE+H0iSk

アグレイアはこめかみに熱を感じた。
口づけをされたのだと知った時には男の顔は離れている。
膝の後ろに腕が差し込まれ、防ぐ暇もなくローランに抱き上げられた彼女は深い灰色の目を見張った。
「今?」
男はちらと彼女を見ると頷いた。
「そう」
彼はアグレイアを揺すり上げ、布に覆われた扉に向かった。
重い布をくぐり抜けた先は、彼女にも予測はついていたのだが、陰鬱なほど重厚な色調の木材で彫られた柱と天蓋に覆われた寝台のある部屋となっていた。
部屋の窓は鎧戸が全て開けられており、まだ明るい陽光が燦々と磨き抜かれた床に反射している。
寝台にアグレイアを放り出すと、ローランは彼女の顔を眺めながら腰帯から短剣を外した。鞘から抜き取り、寝台の柱めがけて床に平行に突き立てる。
胸に楔を打ち込まれるような重い響きに、アグレイアは思わず肘をたてて身を起こし、後ずさりした。
「一応ご忠告を。あなたの力では抜けませんよ」
男は呟いた。
「泣き喚くと予想していましたが、存外に意気地がおありのようなのでね。念には念を、だ」
アグレイアは唇をひき結んだ。男の手がドレスの裾をまくりあげてきたからだ。
彼女はのしかかろうとする男の胸に両腕をあげて、無言のまま強く押し返した。
圧迫される重みが増し、あがく脚に熱が這った。掌が腿を撫で回している。
さらに裾をおしあげた掌が腰の後ろにまわった。腰布越しに両の指先で柔媚な尻の肉を包み込まれた。
上半身を思い切りのけぞらせて男から離れ、アグレイアは嫌悪に眉を顰めた。
「そのような触れようは好まぬ。余計な事はせず、そなたは『目的』だけをお果たし」
ローランはちらりと目の光を踊らせた。
「意味がわかっておられるか?」
「わかります」
アグレイアは傲然と言い放った。
「私はそなたの夢のための道具になるのであろう。避け得ぬなら耐えます。だが、それ以外の事を期待される筋合いは一切ありませぬ」
「……なるほど」
ローランは数瞬考え込んだ。
「つまり初めての苦痛を和らげるための準備は要らぬとの仰せだ」
「くどい。このような事、早く済ませたいのじゃ」
アグレイアは尻に張り付いていた男の掌をはがし、細い両肩を揺らせてまた少しずり上がった。
灰色の目はぎらぎらと輝き、整った顔は緊張で青ざめている。
「ふむ」
斎姫を眺めているローランの表情は反対にひどく興味深そうだった。
アグレイアは声を押し殺した。腰布の下に指が潜り込んできたのだ。眉を寄せ、アグレイアは顔を背けた。
ぴっちりと閉じた両脚の間の滑らかな茂みの流れを梳きながらローランが囁く。
「…では、そのように」
521面談 7:2006/03/15(水) 13:16:11 ID:nE+H0iSk

男は身を離した。
思わず閉じていた目をまた開き、差し出された腕をアグレイアは見た。
「さっさと済ませましょう」
ローランが事務的な口調で言うのに頷き、彼女は手助けされて起き上がった。
「こちらに」
肘を捉えて膝立ちに導かれると目の前に寝台の柱があった。わずかに見上げる場所に短剣が刺さっている。
「犬の交尾を見た御経験は?」
アグレイアは無言のまま頷いた。犬は神殿だろうがどこだろうが関係なくはいりこんでくるので、その生殖行為は見慣れている。
「私の顔を見ながらではお嫌のようですから、彼らのように交わるのはどうでしょう?」
声はやや悪意のある笑いを含んでいた。アグレイアは無視した。
「構いませぬ」
「よいお覚悟です」
ローランはアグレイアの腕をとり、柱に絡ませて交差させた。
腰にまだからみついていた細い薄裳が抜き取られた。
「お借りする」
手首を巻かれ、緩く戒められた。
「柱にしがみつき、目を閉じて。舌を噛まぬよう」
男はそれだけ言うと、アグレイアの腰を引き寄せた。
白いドレスを跳ね上げて細いくびれに巻き付ける。腰布をひきあげ、まるい尻をさらけ出された。
反射的に退こうとした腰に腕が廻る。
腿の前面を掴まれ、膝の位置を開かれた。濡れた感触がぐにゅりと股間を覆う。
ローランが掌に唾を吐き出して塗り付けたらしかった。手慣れている。
背後の男の経歴を改めて思い出し、アグレイアは嫌悪が胸を染めるのを感じたがそれも一瞬だった。

殴られるような衝撃が腰の奥に突き込まれた。ふわりと膝が浮き、躯の芯から脳天が一直線に緋に染まった。
灰色の瞳を張り、アグレイアは思わず肺の空気を全て吐き出した。
男が与えたささやかな湿り気はほんの先端がめりこむ時点であっさりと消え失せた。残りの挿入はニチニチときしむような摩擦に変わっていくが、力の強さは衰えなかった。
苦痛にアグレイアは身悶えしかけ、辛うじて柱に掌を這わせて堪えた。
掌の内側に汗が噴き出し、ずるりと滑った。何度も柱を掴み直し、拘束された手首を互い違いにしならせる。
背後からローランの腕が伸びて重なった手首をつかみあげた。
突き立った短剣の皮巻きの堅い柄に導かれ、何も考えずアグレイアは細い指を絡ませて取りすがった。
柄を握り直し、アグレイアは喉をぐいと仰向けた。かすみそうな視界に、柱越しにぶるぶると震えている短剣の刃が映った。
掌だけではなく、躯中からどっと汗が噴き出している。灼けつくような肉が躯の芯を割いていた。
一体、どこまで入り込むのか。彼女は挿入の長さと苦痛を持て余し、歯を食いしばった。
「力をお抜きになる事だ。深く息をなさい。そのように躯中で拒んでいては痛みが増すだけです」
ローランが忠告した。斎姫の白いドレスの背に溶けるように広がった淡い金髪の合間に覗いた耳朶が、茹でたような濃い桃色に染まっている。

アグレイアは親切げな言葉の奥に男が巧みに隠している興奮を感じ取った。
感じ取った以上、一言たりとも弱音を漏らす気はない。
「拒んでは…おらぬではないか」
唇をかんで呼吸を整え、彼女は可能な限り静かに言った。膝が揺れ、脈のたびに鈍痛と強烈な違和感が腹の底に響く。
男に押さえ込まれ、その肉を深々と受け入れている状態で心を落ち着けるのは並大抵の努力ではきかなかった。
「私は、そなたと交わりました。…あとははやく終えて貰いたいだけじゃ」
「けなげですな、皇女様」
ローランが躯を屈め、ひどく優しい口調で囁いた。
「だが、すぐに終わりではない。始まったばかりですよ」
ぴしゃりと尻に打撃が走り、アグレイアは咄嗟に時分の腕を咬んだ。悲鳴はくぐもって消えた。
「いい尻だ」
躯を起こし、ローランは斎姫の背を見下ろした。
平手で打たれたのだとやっと理解したアグレイアは柳眉を逆立て、指が白むほどに短剣の柄を握りしめた。深々と柱に食い込んだ刃は揺れるばかりでびくともしなかった。
「腰は細いが肉は柔らかい。誇りも高ければ気も強い」
染まった耳朶にローランが呟いた。
「ここまで愉しめるとは思わなかった。稀に見る美姫との噂もおそらく話半分だろうと、お目にかかるまではさして期待もしていなかったが」
ぐいと後ろから顎の下に掌をかけられてアグレイアはのけぞった。く、と喉の奥で呻きを堪えて瞼を閉じる。
わずかな動きにつれてつややかに流れ落ちた淡い金髪を背後からもう一方の指先で梳きながらローランは続けた。
「この際です。私のほうは心ゆくまで愉しませていただこう」
正体のわからない虫が這い出すのを見ている時のような嫌悪感がアグレイアの心に広がった。
522名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 13:17:08 ID:nE+H0iSk
うん。あと一回投下で終われそう。
523名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 17:52:58 ID:NHKgHxCZ
は、はやく続きを…
524名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 17:56:24 ID:GHOiE++T
>>522
おまいはネ申!!
525名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:45:23 ID:4iOyLZKd
肉体の時を止める話はまだかな〜。
526502:2006/03/15(水) 22:47:25 ID:gcoO+UIb
>>525
許可が出たので構想中なんです。
皆様によいアイデアがあればお願いします。

例えば、一切の体の自由を奪わたお姫様は話すことも出来ません。
しかし、魔法使いですからお姫様の感情や心の叫びは分かってしまいます。
魔法使いは、お姫様の反応を楽しみながら、愛撫したりくすぐったり。

あと、魔法をかけられた時点が永続するわけですから、
夜、魔法使いが眠っている間も、お姫様の意識は常に明らかなまま、
魔法使いはお姫様に眠ることすら許さない、
というのはどうでしょうか。
527名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 00:42:45 ID:UV2GZZs5
自分の好みで突っ走っちゃっていいよ。
アドバイスを求めるのはどうしても行き詰った時くらいのほうが
感情のこもったいい話がかけると思う。
528名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 17:27:18 ID:pd9u20Q5
>>526
お姫様一人称語りがシチュ的に合うと思うけど、>>526氏が男だったら、たぶんものすごくそれは書きにくいはずw
まあ、>>527の言うとおり。
人の意見に流されすぎちゃうと自分の文の良さまで消えちゃうことがあるから。
529名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 20:53:19 ID:OF/yBHhi
お姫様を魔法で固めて美しさを永遠に・・・というのはいいですね!!
しかもお人形にするのではなく、生きたまま肉体の時を止めるというのは。
530名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 21:00:10 ID:cJCt4lRZ
>>529
お人形にしたのでは、肌の弾力や体温が無くなってしまう。
愛撫したりくすぐったりする楽しみも無くなるし。
何より、お姫様が生きているという状態が最高なんです。
531名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 21:09:50 ID:ssbiQt3j
指一本動かすことや、表情を変えることすら許されず、永遠の時を生かされ続けるお姫様。
しかも意識や感覚がはっきりしているとすれば・・・・

死以上の苦しみですね。
可哀想なお姫様・・・・
萌えです・・・・
532名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 21:41:02 ID:z/KZ5EfU
やっぱ、恥ずかしいポーズで公共の場所に飾ってほしい。
感覚は生きてるから、多くの国民からなで回されてイキまくるとか。
533名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 21:42:00 ID:/dFLEjKP
苦しみに耐え続けてくれているお姫様のために、重いドレスは脱がせてあげなければいけませんねw
534名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 22:00:53 ID:68I+XqJ5
>>526
何人のお姫様が捕らえられているんでしょうか?
魔法使いの欲望が1人で終わることはないでしょうから、
お眼鏡にかなう本当に美しいお姫様を見つけたら、ハントするでしょう。
大きな部屋に美しいお姫様がずらりと並べられているのも圧巻ですが、
一人一人にこざっぱりとした部屋を与えて1人でいさせる方が、お姫様に絶望感を与えてよいかもしれません。
出来ればいろんな性格のお姫様を登場させて欲しいです。
535名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 22:27:05 ID:w9POfXNm
魔法使いにとってみれば、人間なんて愚かな生き物。
人間がハントした動物を剥製にするように、
魔法使いは捕らえた美しい獲物であるお姫様に、肉体の時を止める魔法をかけ、
自分の所有物として、永遠に美しさを保ったまま保持する。
捕らえられたお姫様は、苦しみに耐え続ける運命が待っているが、
それは魔法使いにとっては、全く意に介することではない。
536名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 22:31:41 ID:5pzLzx+z
>>535
恐ろしい魔法使いだな
537526:2006/03/16(木) 22:48:20 ID:0LCxo+3Z
皆さんありがとう

>>534
何人ものお姫様を捕らえて、一人一人にこざっぱりとした部屋を与えるというのは、
いいアイデアですね。
魔法使いは、一人ひとりの部屋を訪れては、お姫様と過ごして楽しむのでしょう。
その日の気分で、特に可愛がる(いたぶる)お姫様を決めたりしてw
逆にお姫様の立場に立つと、部屋の扉が開かれ魔法使いがやってきたら、恐怖の時間が始まると。

>いろんな性格のお姫様
気の強いお姫様は魔法使いに対して強い反感を持ってしまうが、
魔法使いはお姫様の心の動きが分かりますから、徹底的にお仕置きされてしまうとか。
538名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:12:37 ID:TaS9pHyH
>>537
魔法使いがお姫様の感情や心の動きが分かるということから一つ進めて、
お姫様の脳が魔法使いに対して言葉を発する、というのはどうでしょうか。
つまり、魔法で固められ一切の体の自由を奪われたお姫様と、魔法使いとの間で会話が成立するんですよ。
539名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:31:57 ID:LiN7Kkgb
ルパンでそんな話なかったっけ?
確か結婚相手を剥製にする性癖の男が出てくる話。
540名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 00:18:29 ID:0/uWGEZw
>>535
確かに
541名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 00:59:41 ID:ZVM/dG/q
>>539
江戸川乱歩なら若い男を捕まえて剥製にする女の話があった気が。
542名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 02:09:18 ID:844Itwav
そういえば“石化フェチ”という趣味も世の中にはあるみたいだな。
フェチ板にスレあるし、調べるとサイトがいくつもある(w
543名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 05:39:54 ID:udjoPRaK
>542
世の中は広いんだな…

投下完了。
544面談 8:2006/03/17(金) 05:40:23 ID:udjoPRaK

強い力で胴を引かれて均衡を失った。
手首の裳で柱に引き留められ、腰は男の腿の上にふらついた。入り込んだ肉が奥に進み、否応無しに圧迫感が高まる。
彼女は低く呻いた。
「珍しい香りだ」
ローランの声が耳のすぐ後ろにした。髪に顔を埋めたらしかった。
「花に似ているが動物のようでもある。さすが東方と交流が盛んな国だけの事はある」
答える気も余裕もないまま、アグレイアは肩で息をついた。
ふいに男が大きく身を寄せ、押し上げられて彼女はまた声を堪えた。
柱にしがみつくようにのけぞった視界の端を黒い袖が横切った。皇女の指ごと掴んだ柄を握って軽く捻り、彼は短剣を柱から抜いた。

その刃で薄裳を引ききり、ローランは皇女の手首をひねって背に廻すとそのまま前へと押してくる。
無言の強制に、アグレイアは喘ぎながらシーツに左肩と頬を沈めた。
そこだけ高く張り出した柔らかな白い尻に男が覆い被さる。
「ふっ…!」
アグレイアは鋭い息を吐き出した。どんな目に遭おうと、この成り上がり者に心底から屈服する気はない。
伏した長い睫の影で、白い頬が怒りで赤らんだ。

「ご要望通り、まずは『目的』を果たすことにしよう」
躰の芯をゆっくりと引き抜かれるような感触にアグレイアは強く眉を寄せ、目を閉じた。
脈打つ鈍痛を別にしても、はらわたを掻き出されるような、なまなましく不愉快な動きである。
「ふむ」
男が吐息をついた。
「こちらも上物…」
ローランは退くのと同じ速度でまたじりじりと突き入れた。
アグレイアは息を潜めた。今度は奥までいかず、半ばで男が止まった事に気付いた。
それでも躰が辛いが、動きが妙に遅いのが不安だった。小さな声で彼女は言った。
「何を…」
「馴染ませております。存分に動けなければ終われぬ」
男は打てば響く早さで答えた。
「どうも潤いに乏しいのが残念だが、それが要望では仕方ない。このあたりにいるのがわかりますか」
ぐにゅりと内側で男の先端が捏ねつけられ、反射的に「あ」とアグレイアは背を震わせた。
一瞬膀胱を内側から圧されたようなあやふやな感覚が走り、堪えようと膝に力が入る。
「ほう…」
ローランが囁いた。興奮を隠すのはやめたようだった。
「締め付けておいでとは。それも、初めてで」
斎姫は激しい口調で言い募った。
「嬲ってはならぬと申したはず。さきほど、そなた…」
「忘れていただくとしましょうか。どうせやる事は同じだし、抱き甲斐のある女は別だ」

細くくびれた胴を抱え込まれたアグレイアは怒りの声をあげた。
「嫌!」
まだ喉元を覆っていた衣裳の前立てに指をつっこんでローランが笑った。
「そうそう。随分我慢していたようだが、元気なうちに思う存分叫んでおけ」
「嫌!嫌!」
強く引っ張られ、息がつまりかけたがボタンが弾け飛んで一気に楽になった。
アグレイアは躰を捻り、ローランの顔に爪をたてようと腕をのばした。
もう少しのところで肘を掴まれた。
「しかしまあ。人形のような手弱女だと思っていたら」
腰を退いて、男が呟いた。
薄らいだ痛みにほっとする間もなく肩を掴まれ、向かい合わせに引き寄せられる。
「顔を見ながらがいい。激しい女は大好きです」
たじろぐほどに上機嫌の光を目に宿したローランが囁いた。
「泣くところが見たい」
「誰が泣くものか!」
アグレイアは叫び、男を突きとばそうとした。
ローランはびくともしなかったが目をまたたき、その隙にアグレイアは躰をひねって寝台の端に飛びついた。
手の戒めを解いた時に、男が短剣をそのあたりに投げたのを覚えている。
シーツの皺に隠れかけていた重みのある輝きを目が捉えた瞬間、胴を掴まれた。
545面談 9:2006/03/17(金) 05:40:59 ID:udjoPRaK

「これか、小娘」
アグレイアを寝台の反対側に叩きつけ、ローランは短剣を掬い上げた。
「私を殺すか?それとも自害か?あいにくだがお前にはどちらも無理だ」
振りかぶった短剣を、ローランは斎姫の顔の横にほとんど柄しか見えなくなるまで突き立てた。
金色の髪が幾筋か宙を舞い、両の手首を血の気が失せるほど握りしめられてアグレイアはようやくおとなしくなった。
深い灰色の目に己の顔が映り込むまで顔を近づけ、ローランは皇女を凝視した。
この男の目の光がこうまで強烈なのは、おそらく生来他人を支配する技能に長けているからだと彼女は気付いた。

「自分がここに来た理由は覚えているだろう」
「……」
アグレイアはその茶色の目に負けぬよう、にらみ返した。
「二度は言わぬぞ。脚を開け」
「……」
珊瑚色の唇を噛みしめ、彼女はわずかに腿の力を緩めた。ローランは膝をねじこんできた。
「もっとだ」
アグレイアは頬を紅潮させ、すんなりとした脚を開いた。覆っていたドレスを膝で蹴り、ローランは腿の裏を抱え上げた。
二度目の挿入に、斎姫はかすかに呻いた。脚をさらに抱え込み、彼は低い声で言った。
「実によい覚悟だ」
腰を進められ、アグレイアは喉の奥でまた声をかみ殺す。

彼が動き始めると、斎姫は頬にかかった髪を振りおとして顔を背けた。
茶色の髪の先が目の端に揺れ、そのたびに強く押し上げられる。
容赦のない動きを和らげようと押さえ込まれた腰をくねらせ、効果がない事を知ってアグレイアは喘いだ。
男の動きが浅くなり、腰を打ち付けてくる角度が変わった。またあの感覚がこみ上げてきた。
さっきのような単発的なものではなく、連続した執拗な刺激だった。
(嫌)
せっぱつまったものではなかったが、言うに言えない不快。アグレイアは握られた手首をしならせたが、ローランは無視している。
(そこは嫌…)
アグレイアの女の場所は自分ではわからなかったが強引な摩擦で充血し、腫れていた。
隘路も無理矢理押し広げられたまま擦られ捏ね廻されている。
(…こんな、男に)
ローランは眉をひそめ、ひたすら乱暴な往復運動を繰り返している。
いつ終わるのかもわからず、ただただ耐えているうちに頭の中がぼんやりし始めた。
抉られている躰の芯が痛みで熱く、動かなくなった頭の中も鈍く熱く、目の縁まで熱い。
アグレイアはにじみはじめた視界に気付いた。
「…よし…」
荒い息とともに、ローランがそう吐き出した。
揺すりあげられながら喘ぐ。
一段と深く押し入られてそのごつごつとした感触に躰を強ばらせると、ローランが呻いた。

ぐいと金髪を鷲掴みにし、引き寄せた美姫の頬に男は顔を寄せた。
「……わかるか?」
アグレイアは背をのけぞらせて逃れようとしたが重みは退かず、男の視線は外れなかった。
ローランは息を荒げつつ、薄い笑いを浮かべている。
汗の浮いたその首筋に噛み付きたい衝動を堪え、アグレイアは男の背が小さく痙攣している事に気付いた。
強い動きと痛みに麻痺したような躯は何も感じなかった。だが、彼が『目的』を果たしている事だけはわかった。
滲み出る暗い絶望感を押さえ込み、アグレイアは反応を探っている男の目の光を跳ね返す。
それが終わり、解放される瞬間だけを心待ちにしていると、男は片手をあげて頬に触れた。
目の縁を指先でこすられ、彼女は首を巡らせた。
「泣いたな」
「泣いて、おらぬ」
「ふん」
ローランは最後にぶるりと身を震わせると、アグレイアの顔の横の短剣を引き抜き、起き上がった。
すっと重みが失せた。
546面談 10:2006/03/17(金) 05:41:30 ID:udjoPRaK

アグレイアはのろのろと、浮き上がった躯を起こした。ついた肘が震えていて、身を支えるのが難しかった。
ローランは彼女を眺めながらズボンの前を整え、帯を巻いている。彼が最低必要限の範囲でしか服を乱していなかった事にアグレイアは初めて気付いた。
「皇女様」
鞘に戻した短剣を帯につけ、男はとってつけたような丁寧な口調に戻った。
「無礼の数々、どうぞご容赦を願います。非常に稔りある面談でした。私は多忙で次回は明後日にしかお逢いできませぬが、部屋を用意させています。どうぞその間ゆるりと御過ごしになられるよう」
アグレイアはあられもなくはだけた裾を忘れて起き直った。
鈍く響いた腰の痛みに眉をひそめたがそれより男の言葉に衝撃を受けていた。
「次回?」
「明後日です」
ローランは目を細めた。視線が、露になっている彼女の伸びやかな腿に這った。
あちこちに指の痕が、散らしたように赤く色づいている。
「一度で必ず孕むというものならば手間はいらないのですが。『確実』になるまで、数は撃っておきませんとね」
「そのような事」
アグレイアは呻いた。
「聞いて…おらぬ」
「ふたりで話し合ったではありませんか」
ローランは薄い笑いをまた浮かべた。
「あなたに関しては、抱くだけでは満足しないと。ああ、そのまま」
彼は手をふり、視線に気付いて裾を引き寄せたアグレイアを制した。
「あの生意気な女を身繕いの手伝いに呼んでさしあげよう。大切な斎姫様のこの有様を見れば、私たちの関係が有意義な方向に深まったという事実の良い証人になってくれるはずだ」
「リュリュは呼ばないで!」
血の気がひき、アグレイアは思わず叫んだ。
「では明後日」
ローランは声をあげて笑いながら背中を向けた。
「この際ですから正直に言いますがね。愉しみです」

広い床を歩いていく男の背に純粋な憎悪の視線を突き刺し、アグレイアは抜け殻のような躯を持て余した。
リュリュが来るまでに、せめて惨めでない姿にならねばならない、そう思うのになぜか指一本も動かなかった



おわり