ここは、小説家・乙一の一般書籍&ライトノベル作品について
二次創作物(エロ有り・無しどちらでも)を投下したり、エロ・萌え談義に花を咲かせたりするスレです
SSを投下してくれる作家さんは、文頭もしくは名前欄に
出典の作品名・カップリング・SSの傾向(和姦・強姦・暴行・放尿・スカトロ・百合・パラレルなど)を
明記してくれると嬉しいな(やおいは801板へ)
【乙一書籍化作品】
『夏と花火と私の死体』(「夏と花火と私の死体」「優子」)
『天帝妖狐』(「天帝妖狐」「A MASKED BALL ―及びトイレのタバコさんの出現と消失―」)
『石の目』(「石の目」「はじめ」「BLUE」「平面いぬ。」)
『失踪HOLIDAY』(「失踪HOLIDAY」「優しさは仔猫の形」)
『きみにしか聞こえない Calling You』(「Calling You」「傷 -KIZ/KIDS-」「華歌」)
『さみしさの周波数』(「未来予報 あした、晴れればいい。」「手を握る泥棒の話」「失われる物語」「フィルムの中の少女」)
『暗黒童話』
『死にぞこないの青』
『暗いところで待ち合わせ』
『GOTH リストカット事件』
『ZOO』(「カザリとヨーコ」「血液を探せ」「closet」「神の言葉」「SO-far」「陽だまりの詩」「SEVEN ROOMS」など)
『失はれる物語』(マリアの指輪)
2だ
3 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 19:12:55 ID:wGjgHe68
ミチルと森野のエロいのキボン!!
4 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 21:02:30 ID:iEAFFIaW
GOTHの主人公は冷静だけど危ない交わり方しそうだな。
手首の傷にキスしてみたり、首を絞めそうになってみたり。
森野さんはやられ体質で。
2
手フェチっぽいから、めちゃめちゃイヤらしく森野タソの指を舐めそうだ。>GOTH主人公
8 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 12:45:28 ID:AqaUZX3N
作風があれなだけにうまくまとまらない(´・ω・`)
>4みたくちょっと危ない系ですかね
9 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/18(金) 02:02:11 ID:lrq6O+0F
神マダー(チンチン
漫画版のGOTHの惨殺シーンは寅午に…… (;´Д`)
11 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 00:04:18 ID:mEkKxia/
失踪掘りデイの女の子だろ
12 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/20(日) 15:11:41 ID:BanlDVuP
age
こんなスレ立てて欲しくなかった
こんなスレ削除しろ
15 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 20:11:18 ID:5fa50ZwM
神山森野萌え
僕の上で、骸骨を思わせる森野の白い身体が跳ねている。
陰部同士が互いの隙間を埋めるように重なり、動きを滑らかにするための体液はいやらしい音を立てている。
興奮しているのが見て取れる森野に対して、僕は冷静にそれを観察していた。
身体は高ぶっているし、快感もある。
けれど、僕には森野のこの行為が不可解だった。
生命を紡ぐこの行為は、本来、僕ら引いては森野の嗜好とは真逆なものであるはずだ。
なのに、森野は息を乱し、身体を紅潮させて、夢中になっている。
瞳にはまだ僅かばかり冷静さが残っていて、時折哀しげな色を覗かせた。
それで、気がついた。
これは生命を紡ぐ行為ではなく、ましては愛情を確かめる儀式であるはずもない。
排泄にも似た虚しいだけの自慰であると。
「あなたも、動いて。
これじゃ、不公平だわ」
森野は感情のない口調なのに、どこか不機嫌そうに思えた。
仕方なしに腰を使って森野の身体を突き上げる。
鈍い快感は、絶頂には程遠かった。
50000点!
GJ!!
人いないんだな
21 :
神山×森野:2005/11/26(土) 15:45:54 ID:ucUk7C2t
序盤だけ書いてみた。
「…それで、何を作ってるんだっけ」
「トートバッグ」
珍しく悔しさを顔に滲ませた彼女の手の中にあるものは、敢えて言うならイソギンチャクに似ていた。
取り敢えずそうは見えないことを柔らかく伝えてみると、じろりと睨まれる。
「気付かないの?宿題になっていたじゃない」
もちろん、僕はとっくに提出済みだった。家庭科の教師は期限に宿題を出さない生徒に厳しいことで有名なのだ。
「……まあいいわ、私ももうすぐ仕上がるし」
トートバッグという名をつけられた布は完成に近いらしかった。まあ、実技教科で課題を提出したのなら、成績が「3」を下回ることはないだろう。
僕は肘をついて、炬燵越しに布と格闘する森野夜をぼんやりと眺めていた。
見慣れた部屋の見慣れた時計の針が、一定のリズムで動いている。
放課後に真直ぐ僕の家に来たので、彼女は黒い制服のままだった。
「あ」
黙々と作業をしていた彼女が唐突に声を上げる。
見ると、森野は指先を顔の前に出してどこか不思議そうに見つめている。
針で指を刺したらしいということは、細い指の先端で膨らむ紅い球で知れた。
「見せて」
大して痛くもないらしい。素直に手を差し出す森野の返事を待たずに、僕は今にも滴り落ちそうなその液体を口に含んだ。
自然と、人差し指の第二間接のあたりまでをくわえる形になる。
「ちょ、何……っ」
何か言いたそうな彼女を無視して、舌先で傷口をそっと舐める。鈍い、鉄の味が広がった。人形のような彼女でも血の味は普通らしい。
「……っ、」
呻く森野を上目遣いで見上げつつ指の腹を甘噛みする。
華奢でもしっかりと弾力を持った森野の皮膚の感触が心地よく、僕は舌を指の間に進めた。
きめの細かい皮膚をなぞり、指だけでなく掌全体をぬるりと舐めてゆく。
「ん……ッ、う」
透明な液体に塗れた森野の右手を解放した頃には彼女はすっかり大人しくなり、白い頬をうっすらと上気させて僕を見つめていた。
無言のまま僕は森野の唇を塞ぐ。
彼女は抵抗もしなければ、腕を僕の首に絡めることもしない。ただ、きつく目を閉じてじっとしている。
目元に影を落とす長い睫毛が見える。
僕は目を閉じずに、薄い唇の間に舌を入れた。
22 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/27(日) 01:00:43 ID:3RHX4XHN
保守
続きお願いします!!
24 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/30(水) 20:34:53 ID:SKq+ngpD
age
マジであなた神ですか…?
是非とも続きお願いします!!!
26 :
神山×森野:2005/12/04(日) 13:10:44 ID:SASFnmUi
>>21の続き
森野を床に倒した後、出しっぱなしの針の存在にふと気付いた。
針を針山に戻して、彼女がトートバッグと呼んでいたものを見る。ぺしゃりと潰れて糸の飛び出た布は、なんだか哀愁らしきものを漂わせていた。
「……絵だけじゃなくて、手作業が苦手なんだね」
正直な感想を口にすると、森野の眉間に皺が寄る。機嫌を損ねたようだった。
ーーーーそういえばペアになって似顔絵を描く美術の授業でも、彼女は彼女なりにモデルを再現しようと努力していたように見えた。
苦手でも嫌いではないということなのだろうか。
ただし、出来上がったものはどう見ても抽象画だったが。
誤魔化すために、浮いた鎖骨に口付けを落とす。セーラー服を捲り上げて下着を上にずらすと、森野の身体がこわばった。
「恐い?」
そう言うと、真下から睨まれる。
「そんな…わけ、ないじゃない」
顔を横に逸らして森野が言う。ならば遠慮なく、と僕は桃色の突起を舐めあげた。
「やっ、ぁ……っ!?」
突然の刺激に驚いた森野の二つのふくらみを、僕はやわやわと揉みほぐす。
丁度僕の手に納まるか納まらないかという大きさの白い胸が、心地よい弾力で指を跳ね返した。
「……ん、っ……」
暫くそうして胸を弄びながら耳を噛んだり、時折先端の突起を摘んだりして森野の反応を楽しんだ。
森野はあまり声を出さない。恥ずかしいのかいつも唇を噛んで、何かを堪えているような顔をしている。
上気した白い肌と荒くなった呼吸は、隠しようがないというのに。
27 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 13:12:00 ID:SASFnmUi
とりあえず書いてみました。
遅筆なので細々とですが、最後まで頑張ってみたいと思います。
うーわー、こんなスレあったんだ・・・。
びみょーに難しいお題だな。
でも、頑張ってる人いるんだ。
伝わらなくもないし、
GOTHとか、セブンルームズ、はじめ、暗いところで待ち合わせ
のエロとかは普通に読みたいから、ちょっと通わせて貰うかな。
>>27 乙!一!
我慢してる森野いいね。
次は声の手術台の上で頼むw
剣道場の裏側にある男子トイレ。人気のないそこでぼくは、心置きなくタバコを吸い、そして名前も顔も知らない連中との、奇妙な雑談に興じる。
(…現れなくなったな)
この個室のタイルに書かれた落書き…ぼくや名も知らぬ生徒たち、そして数々のぞっとする粛清を行った最も得体の知れない老婆との会話は最近活気をなくしていた。
ほんの2週間前、ぼくや宮下昌子を襲った老婆はその夜完全に姿を消し、他の者も受験やその他の理由であまりここに寄らなくなっている様だった。
「ここらが潮時、かな?」
といっても、タバコを吸い続ける限り、まだしばらくこのトイレにお世話になりそうではあるが。
使い道のなくなったサインペンをクルクル回す。バランスを失って指からペンが零れ落ちてカタカタと音を鳴らす。
それを拾おうとして、黒いソックスを履いた二つの足に気付く。
「上村、こんなとこで吸ってたのね」
宮下昌子だった。ドアのカギはかけてない上に、さっきの声で気付かれたようだ。
「なんだよ、別にチクろうってわけでもないだろう?」見上げるような形で答える。
「タバコはきらいだ、って前にも言ったでしょ。人気がないからってのうのうと吸ってるのは見過ごせないの」
「それで殺されかけたしな。ごもっともだ」
タバコを大便器に流す。水の音が空ろに響く。宮下は右眉を引きつらせ
「皮肉で返すなんていい度胸ね。あたしを怒らせてもいいのかしら?」
「なに?コンビニのときみたいにグーでなぐ・・!?」
そこで会話は中断された。宮下の唇がぼくの口を塞いだので。
本気で何がなんだかわからなくなってるぼくは、彼女のされるがままに壁のタイルのほうへと追いやられて、そのまま背中がタイルをこすった。
カチャ…。どうやらカギをかけたらしい。このいきなりの挙動に反論しようとするのだが、なにしろ口は塞がれていて、そこで
『なにするんだ』
と、ペンでタイルに書きなぐる。それを見た宮下は、ニイッと堕天使のように笑み、
『おしおきよ あなたの口、タバコくさいもの』
ぼくに倣ってそう書く。
この状態は、まずい。いまだ正常な思考を取り戻していないが、本能で危機を悟り、一歩足を踏み出す。力で宮下昌子に負けるわけはない。
しかし、宮下は手や足を艶かしく這わせてぼくに絡み付こうとしていたので、その一歩は二人のバランスを崩す引き金となってしまう。
「…ぷはぁっ!!」
あっけなく体は傾げ、自分の体重が宮下に襲い掛かる。彼女は唇と手と足の緊縛を解く形となって、そのまま大便器の中にお尻を突っ込む。
便器の水が跳ね、彼女の顔を水滴がアレンジする。
ぼくはさっきよりわずか数cm離れた彼女の顔を見つめ、事態を把握する。
「ぁ…みやした、」
不機嫌そうに睨む顔にぼくの影が降りて、それがとても綺麗だったので、言葉をなくす。
「抜いてよ」
一瞬何のことかわからず首をひねる。「お尻」と言われてやっと彼女の腕を引っ張って便器から彼女を引き上げる。
「濡れちゃったじゃない、どーしてくれんの?」
さっきまでの艶のある瞳ではなく、本気で攻め立てているらしい。
物足りない。そう思う。もっと、みたいな
「そうだな……下、寒いだろ?」
「?…」
ぼくは今度は自分から彼女に接近し、後ろに手を回すようにして、スカートのすそに手をかける。
「ぁっ!…なにして!?ッ」
立場は逆転した。彼女の口を塞ぐと、左手で抱きとめ、右手は不器用な手つきでスカートを脱がそうとする。
湿ったスカートと、急に上がった彼女の体温で、冷たいのか温かいのかよくわからなかった。
32 :
30:2005/12/09(金) 00:48:47 ID:V4oq1aT3
乙一エロパロ良いですね。
結構マイナー作品なんだが、もしや誰も知らないと言うことは・・・
一応続きあります。
A MASKED BALLか!好きですよ。
いいねー。つづき待ってます。
てかここ人少ないな…。
35 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/21(水) 14:52:32 ID:QONiQJug
age
乙一って絵本出してたんだね
>>32 A MASKED BALLの上村と宮下のコンビが大好きです。
続き楽しみにしてます。
乙一作品でエロパロってタイトルを見て、まず思い浮かんだのが
「君にしか聞こえない」で脳内テレフォンセクース?なんだけど…
39 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 01:10:13 ID:Y2/DBXk2
乙一のスレがあったなんて‥((д`;){ビックリ 乙一いいよねーグロさがたまらん。全作品読むまであと平面犬だけ。 私はやっぱりGOTHが1番好き。ZOOのカザリとヨーコもよかった。
失踪ホリデイとしあわせは仔猫のかたちが。
明けましておめでとうございます
期待を込めて保守
42 :
神山×森野:2006/01/07(土) 21:59:45 ID:pyd2Q2Lz
>>26の続き
森野は下着が濡れるのを嫌う。風邪を引きそうだし、気持ち悪くて嫌なのだそうだ。
だから僕は早々に彼女のスカートに手を入れて邪魔な布を取り払った。控えめなレースのついた黒い布は、既に湿り気を帯びている。
「濡れてる」
開いた細い脚の間に頭を入れ、端的に状況を報告してみた。森野が反論する前に、僕は肉襞に舌を差し込む。
「ーーーーっひ……」
割れ目を舌でなぞりながら、頬に触れる彼女の腿を撫でてやった。滑らかな肌が心地良い。
「っ、は、やっ」
ぎゅ、と頬の圧迫が強くなる。羞恥か快感か、あるいはその両方によるものか。
森野の身体で一番敏感で脆いその部分はたっぷりと蜜を湛え、蛍光灯の明かりを鈍く反射している。
指を差し込んで掻き回すようにすると、彼女の反応が強くなった。
反らした喉からもし真っ赤な血が吹きだしたとしたら、どれほど美しいだろうかとふと思った。
43 :
神山×森野:2006/01/07(土) 22:01:06 ID:pyd2Q2Lz
ーーーー初めて森野とこの行為をした時から、僕は何度頭の中で彼女を殺しただろうか。
少なくとも今の森野が、最も無防備な状態であることは間違いがない。
おそらく僕が何をしようとも、彼女は黙ってそれを受け入れるだろう。
あの時もーーーー初めて僕と身体を重ねたあの時も。
森野は身じろぎもせず、僕のものが入っていたそこから流れ出る血を舐めとっている僕を、ただ見ていたのだから。
「ーーーーんあぁっ!」
指を締め付けているが強くなり、脚の力が抜けていく。
「……いった、んだ」
白みがかった液体が指に絡み付いている。体を起こしてまだ少し痙攣している森野を見下ろすと、頬に透明な雫が一滴伝っていた。
当然ながら、鉄の味はしない。
「……入れるよ」
僕は避妊具を装着すると、森野の中にゆっくりと入っていった。
「っあ、は……んっ、ん……」
森野の胸が大きく上下し、僕は柔らかな肉の中に深く呑み込まれてゆく。
眉根を寄せた彼女の表情は、何処か苦しんでいるようにも見えた。
奥まで辿り着いたので、僕は腰を動かし始める。僕の先端が子宮に当たるたびに、森野は切なそうな息を漏らした。
44 :
神山×森野:2006/01/07(土) 22:03:48 ID:pyd2Q2Lz
ーーーーふと、森野が拾ってきたあの手帳のことが頭をよぎる。あの中には確か、子宮の色艶についての記述もあった筈だった。
今、僕が触れているこの臓器もそんな色をしているのだろう。
「や、っ……あ、はっ…は、ぁっ……!」
背中に森野の爪が立てられる。皮の剥ける、ひりついた感覚。
僕は想像する。
例えば、今僕が入っている場所にあのナイフを突き立てたなら。
例えば、今僕の目の前で白く脈打っている首筋を掻き切ったなら。
いや、そんな真似をする必要もないだろう。
僕はただ、この細い首に手を掛けて、ほんの少し力を込める、だけでーーーー
「……い、つき、君っ……!!」
僕の意識を現実に引き戻したのは、絶頂を迎えた森野の、おそらく無意識の呼び声だった。
「……っく、ぅあ……っ!!」
収縮する森野の内部に、僕も少し遅れて精を吐き出す。
惚けた瞳でこちらを見る彼女が、僕を初めて名前で呼んだことにふと気付く。
今のは正直危なかった。けれどまだ、その時ではない。
だから、僕は森野の耳元に口を寄せて嘘を吐いた。
「…………好きだよ、
夕」
頬に触れた手のひらに素直に従って、僕は森野と二度目の口付けを交わした。
きっと僕はこうしてずっと、森野を繋ぎ止めておくのだろう。
君を殺すのは、僕だけでいい。
了
45 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 22:05:45 ID:pyd2Q2Lz
投下終了です。
かなり遅れた上、長文+スレ汚しすいませんorz
ここまで読んで頂いて、本当にありがとうございました。
放棄されたとばかり思っていたがキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
背徳的なエロスに不覚にも_ト ̄|○した。このカップル大好きです。
もっと読みたいけど乙一作品のカップルってそう多くはないのが残念だ。
原作の二人の雰囲気がよく出ていますな。
殺す人間と殺される人間ってなんだかSMっぽいな
GJ!最高だ
ところで死にぞこないの青の最後に出てくる新任女性教師に萌えるんだが
良作多謝
51 :
45:2006/01/16(月) 01:34:57 ID:mf2B42Jy
感想ありがとうございます。
期待をこめて保守。
(´Д⊂グスン
保守します。
53 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 17:30:52 ID:MlsC5c0h
過疎ってるなー
保守
書けない自分はひたすら保守
55 :
小ねた:2006/02/05(日) 07:26:08 ID:f8On1GdY
わたしの隣りにいる同じクラスの女子生徒井上京子は、教室内では誰にも気付かれないよう息を詰め、
通行人の無遠慮な内履きに踏まれないよう影すらスカートの下にするするとひっこめて、
冬ごもりの小動物よろしく無害に小さく丸まっているのに、わたしとふたりだけでこのいつもの廃ビルにいる間だけは、
時折まるで自分が井上京子であることを忘れてしまったみたいに無闇と強引になったりする。
井上京子の癖に生意気だと思う。
「松田さん」
床に散らばったトランプごしに身を乗り出して、井上京子が声をかけてくる。
「なんだ」
「動かないでくださいよ」
「今日はやめよう。疲れた」
「そうはいきません。約束ですから」
井上京子は楽しそうに手を伸ばし、わたしの頬に触れる。ひんやりとした打ちっぱなしのコンクリート壁にもたれているわたしに、
井上京子はいかにもなにやら企みのあるような微笑を向ける。つづいてもう片方の頬も彼女の手のひらに包まれる。
「松田さんが賭け事に弱いとは思いませんでした」
「別に弱いわけじゃない。今日はたまたま負けただけだ」
「もっとずるい手口を使ってくるかなって」
「井上京子相手にそんなことをしたらわたしの名折れになる」
井上京子の笑みが深くなり、ついで吐息が感じられるほど顔を寄せてくる。
「うーん。でも負けは負けですよね?」
実はポーカーの腕がプロ級などというあまりにインチキくさい、あまりに井上京子的な隠し設定の存在を予想しなかったわたしが悪いのだろうか。
無理だ、そんなの。
「……ああ……一度だけだぞ」
もちろんですよ、と囁き、分厚い瓶底眼鏡をはずした井上京子の、リアリティ皆無な美貌がいよいよ間近に迫ってくる。
わたしが目を閉じるのを待ちかねたように、彼女の唇がわたしのそれと重なった。
やわらかい、と思った。弟の唇と同じくらいに、心地よい感触だった。
そのまま数秒が過ぎ、こちらがもうそろそろ息が苦しいかなと思い始めた辺りで、満足したのか、彼女はそっと離れた。
「もう一度勝負しましょうか」
「こんな悪趣味な賭けはもう願い下げだ」
わたしがそっけなく告げると、次は何を賭けるつもりだったのか知らないが、井上京子はひどく残念そうな顔をした。
勝負をしたら当然また勝つつもりでいるらしい。
――井上京子の癖に生意気な。
キタ━━━Σ(・д・ノ)ノ━━━?
来ないみたいだね
orz
保守。こんなスレがあったとは・・・
そういや漫画版GOTHの記憶<後編>で、森野あの変態に
ナイフでセーラー服切られてたけど、あの後どうしたんだろう?
あれじゃ帰れないよな。神山はコートでも掛けといてあげたんだろうか
保守
優子の話は切なくて好きだ
62 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/25(土) 23:29:18 ID:dTpT3dkL
暦上は春だというのに、朝から身を切るような風が吹いていた。僕は開けかけたドアを閉めるとマフラーと手袋をつけ、学校へと向かった。
通学路は決まっているわけではないが、暗黙の了解としてみなが通る道があった。でも僕はあえてそれを無視して、人通りの少ない森の中を歩いていく事にしていた。
その日もいつものように細い路地を抜け、数日前に降った雨でぬかるんだままの、剥き出しの小道に僕は入った。辺りはいつもと違って、木々のぶつかり合う音で騒々しかった。
しばらくそのまま足を進めていると、僕の前にそれは突然に現れた。
僕は近づいていってそれをよく見るためにしゃがみこんだ。森の中に放置されたからだろう、残念な事にそれには無数の虫が群がり、作品としての価値を損なわせていた。
僕はそれ自体には大して関心を持たなかった。少し紫の混じった手首。それは、白くなければいけなかった。
もとから学校の授業は真面目に聞いているわけではないが、今日は珍しく落ち着かなかった。駄目だと思っていても、授業中に彼女のほうを何度か見てしまった。
森野はいつものように、教室の外を眺めていた。窓の外に顔が向いているために、僕の座っている席からは、彼女の黒い髪しか見ることが出来なかった。途中、一回だけ彼女は黒板のほうへ目をやった。顔がこちらに向いた時、一瞬だけ目が合った。
案の定彼女は表情を変えずに、また窓の外へと顔を戻した。僕が彼女を意識している事がばれたんじゃないかと思って、妙な焦りが生まれた。
放課後、僕がゆっくりと鞄に教科書を入れていると、彼女のほうから声をかけてきた。
「何か、用かしら」
「どうして?」
「だってあなた、授業中に私のこと何度も見てたでしょう」
彼女は気づいていたのだ。こちらを確認するそぶりは見せなかったのに。
僕は彼女に用がある旨を伝えて、屋上へ来るようにと言った。
「ここで話せばいいじゃない」
「少し、言いにくい話なんだ。誰かが来たら困るし」
「……まあいいわ、行きましょう」
wktk
65 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 23:01:16 ID:z2ItrwoZ
屋上には幸い誰もいなかった。僕は貯水タンクの陰へと、彼女を促した。
僕の隣に、彼女も腰を下ろした。暫く何も言わないでいると、怪訝な顔でこちらを見てくる。
「話って、何?」
本当は話などなかった。呼び出す口実が、欲しかっただけなのだ。
「僕のインターネットの知り合いに、おかしな娘がいるんだ」
僕は適当な話をすることにした。
「彼女は、よく手首を切っては、その写真を取って、日記にのせるんだけど」
僕は少し間をおいた。彼女は特に反応もせず、じっと隅の水溜まりを眺めていた。
「おかしいと思わない? リストカットは、自己との対峙のはずだ。それを、第三者に公開している」
「きっとその娘は、寂しいんじゃないかしら」
森野は水溜まりから目を離さずに答えた。
「寂しい?」
「ええ、寂しいから……手首を切って、他人に見せるの」
「つまり、傷つけられた自分を見てほしいわけか。とんだ自作自演だ」
「しょうがないじゃない。そこでしか、自己を解くことが、出来ないの」
「君は、どうなんだ」
彼女は顔を上げてこちらを見ると、すぐに伏せた。
「……私も、同じよ」
66 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 23:13:04 ID:z2ItrwoZ
そう言った森野の声には、諦念のようなものが感じられた。
僕は彼女の腕を手に取ると、ブラウスの袖をめくって陶器のような手首を露出させた。
「……っ!何するの!」
「これ、最近の傷だろう」
彼女の手首には白い何本かの先に混じって、まだうっすらと赤い線がひかれていた。
「君も、見てほしいんだろう?」
彼女は少し困ったような顔をして、直ぐに向こうを向いた。
僕は顔を手首の辺りまで持っていき、その新しい傷に舌を這わせた。
「きゃっ!」
森野は驚いたような顔でこちらを見て、手首を離そううと手を引いた。
少し力を込めて手を引きもどすと、何度もその傷を舐めあげる。暫くそうしていると、彼女の抵抗がやんだ。
67 :
62:2006/02/26(日) 23:15:02 ID:z2ItrwoZ
駄目だ、エロシーンが書けません。
童貞の限界ってやつです。失礼しました。
あの、この話し、引き継ぎたいのですが…書かれた方、いかがでしょう?嫌なら諦めます。
もし、続きを書いて良いなら、エロに持って行きます。
69 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 07:42:41 ID:bi96kwaE
>>68 どうぞ、お願いします。自分も続き読みたいんでw
GJ!
めっさ、期待してます!
いや〜やっとキタ
72 :
神山×森野:2006/02/28(火) 02:00:28 ID:v+/cllRu
では 御言葉に甘えて少々駄文を載せさせていただきますが、文体や話し全体の雰囲気が変わってしまうのが嫌いな方はスルーして下さい。
真新しい傷口を舌先でなぞると彼女は眉根を寄せて小さく抗議の声をあげた。
「……くすぐったいわ。」
僕はくすりと笑って顔をあげる。
「ごめんね。…ねぇ、君も見て欲しいと思うのかな?この傷を」
「……そんなの、わからないわ。」
73 :
神山×森野:2006/02/28(火) 02:02:37 ID:v+/cllRu
彼女らしくない歯切れの悪い返答だった。
それは多分、彼女が抱える『狂気』だからだと推測する。僕の中に育ってる『狂気』とはとても似ていて 全く別のものだった。彼女の『狂気』があまりに似ていたから、僕の『狂気』とうまくやっていける気がしていたが、全くの別ものではどうしようもない。
74 :
神山×森野:2006/02/28(火) 02:16:28 ID:v+/cllRu
でも、生け贄ぐらいにはなるかな…と思い、作成変更を素早く計算する。
生け贄なんて言ったらあいつと一緒になってしまうな。
静かに僕は、自分で自分を嘲った。
彼女の耳元に口を寄せると、自然と抱きついてるような体制になった。
「…君は、サミシイノ?」
低く、響く声で囁くと、ピクリと彼女の肩が揺れた。彼女の高いプライドを傷つけたかと思い、顔を確認する。
眉をひそめて不機嫌そうな表情だったが、目に浮かんでいるのは困惑だった。
もう一度彼女の手をとり、舌を這わせたが 彼女は無抵抗のまま、不思議そうにこちらをながめている。
ちゅっと音を立てて口を放す。彼女の白い頬には赤みが差し、困惑の瞳が不安を混ぜている。
僕はそんな彼女を強く強く抱きしめてあげた。
「ボクハ、サミシイ。キミモ、サミシインダロ?」
75 :
神山×森野:2006/02/28(火) 02:32:37 ID:v+/cllRu
彼女の腕が恐る恐るといった感じで持ち上がり、僕の背中に回される。
触れ合っている頬に水気を感じた。彼女は泣いていた。
「淋しい…よ…」
彼女が小さくつぶやくのをしっかり聞いてから、体を離して唇を重ねた。
大きく見開いた彼女の瞳はやがて静かにとじていた。
彼女から溢れた体内水分がスッキリとした鼻筋を伝わって唇まで届いた。
ゆっくりと舌を彼女の口に差し入れると、彼女は薄く口を開き僕の舌を受け入れた。
淋しい者同士 傷の舐め合いでもしている気分なんだろう。彼女は比較的協力的だった。
比較的消極的でもあったが。
右手を制服の上に這わせ、柔らかい膨らみの上で手を止め優しく揉みしだく。
「…ふっ…んっ……。」
合わせた唇からくぐもった声が聞こえた。
刹那、『狂気』が薄く目を開けた。
---------今日はここまでです。
単発しちゃってすみませんでした。
あと森野と言ってるとこと彼女と言ってるとこがあったら好みに合わせて脳内変換して下さい。
76 :
神山×森野:2006/03/01(水) 02:53:02 ID:2VVgTj2H
--------続き
僕は彼女の体を勢いよく貯水タンクに押し付けた。ドンッと鈍い音を立てた彼女の体に僕の体をさらに密着させる。
「んっ!!!んんっ!!」
彼女が驚きと痛みにあげた悲鳴を口内に閉じ込め、更に激しく舌を絡める。
唾液が流れ彼女の白い喉を濡らす。足の間に強引に僕の足をねじ込んで開かせた。
引きちぎらんばかりに制服の上を脱がせようとすると、彼女の腕が背中を叩く。
腕の中で暴れる彼女を抑えつけながら、ぼんやりと性犯罪について考える僕は冷酷なのか。
暴れる彼女の白い喉に手を当てて思考の渦にしずんだ。
手に力をこめて…皮膚に指が食い込み…涙を湛える目が剥き出して…脳が酸欠を訴えるのが先か…首の骨が悲鳴をあげるのが先か…
突然ぱぁんっという音が近くではじけた。思考の渦から顔をあげると水分をぼろぼろと流しながら震える彼女がいた。
「な…んで…??なんでこんな…」
僕を凝視しながらくずおれる彼女をだきとめてやる。僕の『狂気』はずいぶん酷いことをしたようだ。
上半身はほとんど下着だけになった彼女を見て冷静に対処する。きゅっと抱きしめて頭を撫でて
「ごめん。ごめんね。」
耳元で囁くと正面から泣きそうな面を見せた。自分もつらいんだという誇示だ。普段強がってても根は優しい彼女なら、とゆうか女性ならば、罪悪感を感じる顔をする。
「嫌…だよね。僕なんかじゃ…」
普段絶対に見せない弱気なところと表情。優しくいたわるように服を着せる。
「ごめん…」
そう言って彼女をもう一度見た。
「……乱暴なのに、驚いた、だけよ」
睨みつけるようにして声を絞りだす。彼女の目から怒りは薄れていた。
「ありがとう森野。……好き、だよ?」
優しい声で言うと、コクリと彼女は人形のように頷いた。
77 :
神山×森野:2006/03/01(水) 03:26:28 ID:2VVgTj2H
ざぁぁっと木が音を立てる。生暖かい風が2人の間を埋めてくれる。朝通った森の道はもう目の前だ。
服を着せて、彼女と教室に戻るとそこには誰もいなかった。下校時刻をとっくに過ぎて日が落ちてきた空は、光源としての役割を止めようとしていた。
「薄暗い学校。誰もいない教室。時計の音。猟奇的でミステリアスで、好きだわ。」
彼女は立ち直りが早かった。トイレに行って帰って来るといつもの彼女なのだ。なんとなくつまらない。僕の行動にもっと大きなリアクションがあると良かった。
「あなた、今夜あいているかしら」
わけがわからない上強い女だ。
「まぁ…予定はないけど」
「泊めてね」
一方的に言って教室を出ようとする。……わけのわからないあたりが計画を進めてくれてありがたいが。殺された人間の服を着ていた時も思ったが、彼女は僕の理解が及ばないところに住んでいる。
そんな経緯を経て、僕たちは一緒に下校していた。
「真っ暗な森」
嬉しくてたまらないといった顔で呟くと、あの手帳のときの話をし出す。生返事を返しながら森に目をやった。
朝見たものの辺りは暗くて見えなかったが、ふと彼女があの手首を見たらなんと言うか考えてみた。
…じっと観察して帰る彼女と、袋にいれて持ち帰る彼女と、いろんな彼女が浮かんでは消えた。
もうすぐ家につく。彼女は次はなにをやらかしてくれるのか…手帳についてまだ話している彼女を見て、僕は考える。
GJ!
久々に来てみたら神が!!
超GJ!
わくてか(*´∀`*)
81 :
神山×森野:2006/03/04(土) 00:56:51 ID:TAr7TY8G
とりあえず終わりです。
GJありがとうございます。
大口叩いておきながら稚拙な文章ですみませんでした。
希望があれば自宅編も書こうと思ってます。
へ?終わっちゃ、悲しいよ!続き待ってます
GJジージェーgj
これは帰宅編も書いてもらわなければゲラウヒトア
85 :
神山×森野:2006/03/06(月) 04:55:02 ID:iKn+sqwC
------自宅偏
家の門の前で僕は説明した。
今日は両親も妹もいなくて自分1人だ、そしてそんなときに女の子を泊めるということが世間一般では良くない行為だ。彼女の返答は
「えぇ、それで?」
彼女らしい返答をして、勝手に門を開けて入ってしまった。仕方なく僕が鍵をあけていると、声に成らない悲鳴があがった。
振り返った僕に、彼女が抱きついて来た。
「なんで……あの…あの…生き物がいるのよ…あの…足が4本ある…忌々しい…」
ユカが彼女の後ろで尻尾を振りながら見上げていた。そういえば彼女は犬が嫌いだ。
「ユカ」
僕が呼ぶとユカは大人しく寄ってくる。世話などしなくても拾ってくれた恩ぐらいは覚えているみたいだ。
ユカが近づいでくると、彼女はますます身を堅くしてしまった。目を瞑って何かをしきりに呟いている彼女は、死刑執行を待つ死刑囚のようだ。キレイだ。
なんとなく、キスをした。
こんどは、彼女は抗わない。抗えないのか。
「夕」
呼びかけたら凄まじい形相で睨んで来た。
「あれを、どうにか、して。」
「あれ?夕、犬嫌いだっけ?」
「そんなわけないでしょう!!あんな生き物に、別に怯えてなんかないわ!!」
「とりあえず中に入らない?」
鍵を開けたドアを見ながらいうと、彼女は文字通り転がり込んだ。
「二階に僕の部屋があるから、先に行ってて」
そう言って彼女を玄関から追いやると、ユカを部屋に入れてやった。
86 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 18:37:40 ID:VKluQ7oU
ワクテカ
87 :
神山×森野:2006/03/06(月) 23:52:37 ID:iKn+sqwC
コーヒーを入れて部屋戻ると、彼女は本棚の前に座りこんでいた。
「このナイフ、喉が乾いているのね」
返答を期待していた訳ではないようなので無視して近づく。
彼女の前は赤く染まっていた。赤い糸はナイフ達を濡らし、彼女の手首に続いている。彼女の手からナイフを受けとり、付着した血を丹念に舐めとるとまだ血の流れる手首も舐めた。強く腕を引くとドッと溢れだす。
彼女が苦痛に顔をしかめていたが、止めはしない。
「夕」
短く呼んで、唇を合わせる。ゆっくり舌を入れて深く絡ませてゆく。唾液が溢れ彼女の白い喉を伝う。
「んっ…」
呼吸に甘い声が入ると、僕はなぜか満足感を得た。
ドキドキ
おおお自宅編きてる
続きwktk
wktk
こね〜
92 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 19:49:00 ID:mkZNfTHf
上げ
93 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 00:22:06 ID:E4SBAbkb
カムバックage
94 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 22:48:25 ID:X0Od4RGN
そう、それならいいの……おかしなことを言ってごめんなさい……。
彼女はこちらにに背を向けて去っていく。行きかう人々の流れに上手く乗り、僕も反対側へと歩き出した。
森野夕、僕も君を初めて見たときから感じていたんだよ。この僕を感じるのは、後にも先にも君だけだってこと。
続き北ーーー!
続きじゃないとオモ。でもGJ!まるで原作よんでるみたいだ
すまない。久しぶりに投降があったから、よく読まずに勘違いしてしまった。
間違えちゃって本当にすいません。
寝ながら保守
こないなあ・・・
保守
ほす
103 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 20:25:56 ID:ssZfBDzr
……ああ、本当はSSを投稿したいのだけど、宿題をやらないといけないから
宿題終わるまで待ってます!
むしろSS投稿が宿題
セックルの時だけ夕って呼ばれるのがエロイ
森野エロイフェロモン出しすぎ。
107 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 22:43:44 ID:bHAUk5AU
えろい
期待AGE
ほしゅ
hosu
ほしゅ
PHASE−01
「昨日、駅前であなたを見かけたわ。」
放課後、いつものように僕が帰り支度をしていると、背後から森野が話しかけてきた。
僕らの間には挨拶は無く、いつも必要最低限のことしか話さない。
僕は昨日一日のことを思い出してみるが、昨日は知人と街を歩き回っていたため、
どこへ行ったか細かく思い出すことができなかった。
そのことを森野にかいつまんで言うと、森野はわずかに眉を寄せ、不機嫌そうな顔をした。
僕は森野のこんな顔を見るのは久しぶりだな、と思いながらも、このまま不機嫌にさせて
おくと一緒にいる僕が困るので、とりあえず会話を続けることにした。
「昨日の何時頃?」
「お昼頃よ。駅前の喫茶店にあなたがいたわ。女の子と一緒にね。」
最後の部分の強調の仕方が少し気になったが、昼頃と言われて思い出した。
昨日の昼は知人と喫茶店で食事をしたはずだ。
森野が言っているのはその時のことだろう。
「あなた、とても楽しそうに話していたわ。」
確か僕はカレーを食べたはずだ。あそこのカレーは美味しかったな。
「一緒にいた女の子、可愛かったわね。パフェなんか食べちゃって。」
そう、彼女はパフェを食べていた。僕は甘いものはあまり好きではないので
デザートは注文しなかったのだけれど。
「歩くときも腕なんか組んじゃって。何よあれ。」
そうそう、その後も彼女は僕の腕を掴んで話さなかった。歩きにくいのでやめてくれと言うと、
泣きそうな顔をしてくるので仕方なくそのままにさせていた。
とここまで思い出して、先ほどの森野の発言がおかしいことに気づいた。
森野は僕を駅前の喫茶店で見かけたと言っていたのに、その後僕らが腕を組んで歩いていたことを指摘した。
ということはつまり……
「尾行したのかい?」
「尾行だなんて人聞き悪いわね。たまたま方向が同じだっただけよ。」
僕らは喫茶店に1時間以上いたので、喫茶店の外で待っていない限り僕らのその後を見ることは
できないはずだが、これ以上言うと森野がますます不機嫌になりそうなので、あえて黙っておく。
「それで?」
「それでって、なにが?」
「とぼけるつもり?一緒にいた女の子のことよ。あなたの彼女かしら。」
そこでようやく森野が僕に何を聞きたいのかがわかった。要するに彼女は、昨日僕と一緒にいた
女の子が誰なのか知りたいわけだ。僕一人でまた何かの事件を嗅ぎまわっていると思っているのだろう。
「ああ、別に事件を探っているわけじゃないから安心しなよ。
何かおもしろそうな事件があったらちゃんと君にも連絡する。」
これで森野の不機嫌も治るだろう。
そう思い、帰ろうと席を立つと、まだ森野がこちらをじっと見ているのに気づく。
まだ納得していないのだろうか。それとも僕が嘘をついて、一人で事件を探っていると思っているのか。
そう考えていると、森野がおずおずといった感じで切り出してきた。
「そういうことじゃないわよ。あなた、事件のことには鋭いのに、こういうときはほんと鈍いわね。
それともわざと……いえ、いいわ。」
そう言うと、プイといった感じで顔を背け、さっさと教室を出てしまった。
僕は何か間違えてしまったのだろうか?さっきまでの一連の会話を反芻してみるが、やはりわからない。
とりあえず森野の後を追うべく教室を飛び出した。
とりあえずここまで。
続きは週末あたりに。
ウボァーーーーーー
GJ。
久々の投下キタ!
期待して待ってるよ!
続きは週末…と思ったのですが、やっぱり今日でもいいですか?
まだエロには到達していないのですが…。
エロはPHASE−04くらいになる予定です。
どうでしょう?
119 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 23:53:47 ID:FHoDNXUt
むしろお願いしますよー
カムヒア。
ダイターン3!
PHASE−02
学校を出てから15分ほど経つが、その間僕らの間に会話は無い。
それは今日に限ったことではなく、僕と森野はいつもこうだ。
森野は口数が極端に少ない。そのおかげでクラスでは浮いた存在になっている。
僕もあまり人付き合いが得意ではないが、「明るい好青年」の仮面をつけることで
クラスで浮くこともなく、それなりに顔も広い。最近はそのせいでプライベートでも
面倒なことが増えてきているけれど。
そんなことを考えていたら、ふと、森野と一緒に歩くのは随分久しぶりだということに気づいた。
森野は僕がクラスの誰かと話している時は決して話しかけてこない。
話しかけてくるのは僕が一人でいるときだけだ。
一応お互いの携帯番号もアドレスも知っているけれど、僕も森野も滅多に連絡をしない。
最後に一緒に帰宅したのが2週間前だから、僕と森野は2週間接触が無かったことになる。
とここまで考えて、僕は自分が何を考えていたのかわからなくなった。
2週間接触が無かったからどうだというのだ。別に待ち遠しかったわけではない。
ないと思う。ないはずだ。
自分の中に浮かんできた考えを振り払うべく隣に歩いている森野に目をやると、彼女と目が合った。
どうやら僕が考え事をしている間、ずっと僕のことを見ていたらしい。
森野はしまった、というような表情をほんの一瞬した後、すぐに視線を前に戻した。
僕はそのまま森野を眺めた。すらっと細い脚、くびれた腰、綺麗な指、白い首筋。
そのどれもが異常なまでの魅力を放っている。今まで何度か事件に巻き込まれたことがある森野だが、
犯罪者を惹きつけるフェロモンが出ているのだろうか。
そして、森野に初めて話しかけられたあの日から、僕もそのフェロモンに惹きつけられた一人なのかもしれない。
「あまりじろじろ見ないでちょうだい。」
森野に言われて、僕は彼女の脚から顔までを(言い方は悪いが)舐め回すように見ていたことに気づいた。
普段は無表情の森野の顔が赤くなっている。どうやらまた不機嫌にさせてしまったらしい。
「ごめん。あんまり綺麗だったから。」
とりあえず謝っておく。これ以上不機嫌にさせてしまっては今後何かの事件が会った時に話し合える
唯一の知り合いを失うことにあってしまう。そう、あくまで彼女と僕はGOTHのことで話し合う関係だ。
そう自分に言い聞かせていると、森野が目を見開いて僕を見ていることに気づいた。
森野がこんな顔をするのはいつ以来だろうか。夏休みのあの時以来だろうか。
僕はかなりの衝撃を感じながら森野の顔を見つめた。森野はまだ驚いた顔をしている。
先ほどの自分の発言を思い返す。そこで自分の発言のまずさに気づいた。
森野の体をじろじろ見た後に「綺麗だ」なんて、年頃の女の子には気色悪いだろう。
これでは僕が体目当てで森野と一緒にいると誤解されかねない。
「誤解しないでほしいのだけれど、変な意味じゃないよ。」
とりあえず訂正しておく。僕は性的な意味ではなく、あくまで芸術的な意味で綺麗だと思った。
言ってから数十秒たち、森野からの反応が無いことを不審に思い彼女に目をやる。
森野は俯いて何事かをぶつぶつ呟きながら歩いていた。顔を覗き込むと、先程よりも真っ赤に染まっていた。
「な、なに?」
顔を覗き込んでいる僕に気づき、森野は吃驚したような声を出した。
先程の僕の発言は聞いていなかったらしい。もう一度言おうかと思ったが、視界の隅に「神山」と書かれた表札を見とめたので
やめることにした。僕の家は森野の家よりも近いところにある。森野の家は僕の家からさらに10分ほど歩かなければならない。
「いや、なんでもない。それじゃ。」
僕はそう言うと、自分の家に入るべく門を開けた。いつもなら別れの挨拶などしないのだが、今日は僕も森野もどこか変だ。
いつもなら無いはずの感情の揺らぎがあるような気がする。こういう日は早めに別れるべきだろう。
門を閉めようと振り返ると、森野が僕のすぐ後ろ―僕の家の敷地内にいることに気づいた。
森野の顔が予想外に近くにあることに内心驚きながらも、それを顔には出さずに
「どうしたの?」
なんとかこれだけは聞くことができた。相変わらず森野には気配が無い。気づいたら背後にいることが多いと思う。
「あなたの部屋に入れてくれないかしら。もう少し話がしたいの。」
やはり今日の森野は変だ。いつもなら絶対こんなこと言わないはずだ。
そしてその森野の申し出を即答してしまう僕も。
「いいよ。」
とりあえずここまでです。
今度こそ続きは週末に。
率直な感想を聞かせて下さい。今後の参考にします。
宜しくお願いします。
特殊な作品だから書きにくいだろうに、原作の雰囲気を壊さないでうまくかけてると思うよ。
続き期待してます
期待age
GJと言おうッ
久しぶりにきてよかった…
神GJ!!
PHASE-03
「お邪魔します。」
玄関で靴を脱ぐと、森野はそう言って僕の家に上がった。
「いらっしゃい。」
他に答える言葉が思いつかなかったので、そう言って森野の足元にスリッパを置いた。
突然のお客でろくな用意もできないが、とりあえずお茶くらいは出すつもりなので
先に僕の部屋に行っててほしいということを森野に(なるべく穏当に)言うと、
森野はわずかに頷き、
「次からは前もって言うわ。」
と言い残し二階の僕の部屋に向かった。
次からは、ということは森野は今後も僕の部屋に来るつもりなのだろうか。
そんなことを考えながら台所で二人分のお茶と茶菓子を用意し、自室に持って行った。
一応森野がいることを考慮し、控えめにノックをしてから部屋の扉を開けた。
森野は僕に背を向け窓から空を見上げていた。
「雨が降ってきたわ。」
外を見ると、確かに先程までの晴天と打って変わりどす黒い雲が一面に広がっている。
見る限り夕立のようなので森野が帰る頃には止むだろう。
僕はテーブルにお茶と茶菓子を置き、まだ空を見ている森野の傍に椅子を引き寄せ、座ったら?、と声を掛けた。
森野は僕の顔と椅子とを交互に見やり、それを三往復ほど繰り返した後、僕のベッドの端にちょこんと座った。
今のは一体どういう意味なのか考えたが、森野は偶に僕には理解できない奇行をするので、今回もそれだろう。
仕方ないので、森野に使われなかった椅子を引き寄せ、僕も腰を下ろした。
その時視界の端で森野の不機嫌そうな顔が映った気がするが、おそらく気のせいだろう。
不自然なほど端の方に座ったのも、きっと気のせいだろう。
「それで、話ってなんだい。」
「あ……その、そうね……。」
森野にしては珍しく逡巡している。いつもの彼女らしくない……と思ったが、今日一日の森野は
どこかおかしいということを思い出した。これでは森野が『普通の』女の子みたいだ。
「あ……そう、進路。進路は考えてるの?」
「進路?」
「この前進路調査の紙が配られたでしょう。あなた進学するの?」
そう言われて思い出した。確かに先週の金曜、HRに進路調査の紙が配られた。
担任は来週の金曜、つまり明日提出するようにと言っていた。
森野から進路の話を振られるとは思っていなかったが、彼女も一応人生設計とやらを考えているのだろうか。
「一応進学希望だけど。」
「そう。大学?」
「うん。A大。」
「あ、あらそう。き、奇遇ね。私もA大なの。」
A大は地元の私立大学で、僕の家からも近い所にある。レベルの方は二流といったところだが、
僕の今の成績では少し努力が必要だろう。しかし森野の成績ならもっと良い大学に行ける気がするが、
まあ今の高校を選んだ理由も「制服が気に入ったから」なんてふざけたものだった森野だから、おそらく
A大を選んだのも気まぐれだろう。
「でもA大ならあなた少し勉強しないといけないわね。……そうね。私が教えてあげるわ。」
僕の現状の成績を全て把握しているかのような口調で、森野は宣言した。そう、これは宣言だった。
僕が申し出を断ることを一切考えていない、否、断るわけが無い。そういう言い方だった。
しかし僕としても勉強しなければいけない立場で、教えてくれるのが僕よりも遥かに成績優秀な森野とくれば
断る余地は無かった。
「それじゃ明日から勉強始めましょう。場所はここで。」
そう言って森野は立ち上がった。帰るつもりだろう。僕としてはこれから先ずっと僕の部屋で勉強するのか
聞きたかったが、とりあえず今日は止める事にして森野を玄関まで見送るべく僕も立ち上がる。
とその時、森野の足がテーブルの淵に当たり、バランスを崩した。
冷静に考えれば森野の後ろにはベッドがあり、倒れたとしても柔らかいベッドの上なら怪我もしないだろうに、
何故か僕はその事に考えが及ばず咄嗟に森野に駆け寄り、僕が下になるように森野を抱えて倒れ込んだ。
神再降臨!!!!
G――――――――J!!!!
えっと、続きはできれば明日に。
もし明日できなければ、来週の週末あたりに投下します。
エロの表現は更に難しくなるだろうに・・・
期待してます、ガンガレ!
wktk
GJ!続き楽しみにしてるよ
激しく期待!!!
GJ!森野かわいいな
涎垂らして待ってます!
もうすぐ
すいませんやっぱり今日投下します。
PHASE-04
軽い衝撃の後、瞑っていた目を開けると、森野の白い首筋が目の前にあった。
今の自分の状態を確認してみると、僕は森野を抱き締めた状態でベッドに横たわっている。
鼻腔にわずかに甘い匂いが漂ってくる。森野は香水の匂いを嫌い付けていない。
これが女の子特有の匂いというやつか。僕はそんなことを考えながら自然と森野の首筋に口を近づけた。
森野の体が強張るのが伝わる。僕の吐息を感じているのだろうか。
僕はこのまま森野の首筋に口付けたい衝動を体中で感じながらも、それをやった後のことを想像し、止めることにした。
森野を抱き締めている手を解き、とりあえず謝ろうと森野と向かい合った瞬間、森野の顔が飛び込んできた。
閉じられた瞼。唇に感じる柔らかい感触。僕は森野とキスをしている。
正直に言ってしまえばこれは僕のファーストキスなのだが、森野はどうだろうか。
そんなことを考えながら、僕は意外と自分が冷静でいることに驚いた。
それとも驚きのあまり逆に冷静さを取り戻したのだろうか。ともかく、僕は森野とキスをしている。
状況からするに、森野からしてきたようだ。キスをしてから10秒ほど経つが、未だに森野の瞼は伏せられている。
頬に森野の微かな吐息を感じる。
「んっ……」
森野の唇の柔らかさを感じながら、僕はもっと森野の体に感じたいという欲求が湧き出てくるのを感じた。
森野の背中に手を回すと、森野は僅かに体を強張らせた後、ゆっくりと体の力を抜いた。
そのまま森野の背中を撫でる。
「あっ……ん……」森野の漏れ出た声が聞こえてくる。悦んでいるように聞こえるのは僕の自惚れだろうか。
そのまま円を描くように森野の背中を撫でていると、彼女の舌が僕の口内に侵入してきた。
舌と舌が絡み合い、ぴちゃぴちゃとした音が静寂な室内に響く。
僕は一心不乱に舌を絡ませてくる森野を受け止めながら、これがディープキスというやつか、なんてことを考えていた。
頭のどこかで酷く冷めた部分を感じながら、それとは正反対に僕の体は昂ぶっている。
こんな興奮は今までのどんな事件でも味わえなかった。
それはこれから行うであろう性交が初めての体験だからか、それとも相手があの森野夜だからだろうか。
今まで何度も頭の中で殺した相手、森野。その森野が今現実に、僕の手に入ろうとしている。
その考えに至った瞬間、堪えきれない衝動が体中を駆け巡る。
僕は絡ませていた舌をほどき、森野の制服を上に捲った。
森野の名残惜しそうな顔を一瞥し、頬に口付けた。
それだけで森野は恍惚の表情をする。彼女はずいぶんと感じやすいようだ。
そのままブラジャーに手をかける。森野の背中に手を回すが、ホックが見つからない。
女性の下着は妹のを見かけたくらいで、ほとんど知識が無いからはずし方がわからない。
背中に手を回したまま手探りで探していると、ふいに森野が微笑んだ。
「これ、フロントホックよ。」
僕の手を取り、ブラの金具に持っていく。よく見ると確かに谷間の辺りにホックが付いている。
そして僕の手を取ったまま、僕の手を使いホックをはずした。
どことなく気まずさを感じ森野の顔を見ると、森野はまだ微笑んでいる。
なんというか、今までに感じたことの無い感情だ。
今まで僕と森野の間にあった優劣性が一気に逆転してしまったかのような。
「その……こういうの初めて?」
森野が聞いてくる。具体的な言葉を使わないあたり、彼女も照れているらしい。
「まあ、その……そう。」
なんと答えたらいいのかわからず、もごもごと答えてしまう。
「そう。少し意外ね。あなた、学校では活発そうだから。」
「君は僕の本当の顔を知っているだろう。そんなことは無いよ。」
「そうね。私は本当の神山君を知っている。私だけが。」
森野の胸に手を伸ばす。柔らかい感触。ちょうど掌に収まるくらいの大きさだ。
なるべく丁寧に揉みながら、乳首を軽くつまむ。
「あっ」
森野が声を上げる。軽くつまんだだけでこれでは、この先どうなってしまうのだろうか。
乳首はすでに立っていた。僕は乳首を口に含み、甘噛みしながら吸い付いた。
「んっ……あぁ」
森野は病的なまでに肌が白く、それは胸も例外ではなかった。
僕はいま森野の体を文字通り味わっている。
普段はめったに高まることの無い胸の鼓動が凄まじい勢いで響いている。
もうここまできては止めることなど出来ない。するつもりもない。それは森野も同じはずだ。
僕は欲望のままスカートの下の下着に手をかけ、ゆっくりと下ろしていった。
そこにはじっとりと湿った後があり、それが粘着性の糸を引きながら森野の太股に続いていた。
「濡れてる。」
「言わないで。」
森野に羞恥の色が見えた。僕はそんな森野を純粋に綺麗だと思ってしまった。
謝罪の代わりに森野の目の下―ちょうど泣き黒子のあたりに口付ける。
そのまま軽く口付けを続ける。これはお互いに緊張をほぐす為だ。これから行うことに対して。
森野の性器は十分過ぎるほど濡れていたが、僕は指をゆっくり入れた。
「んっ」
指はすんなり入った。続けて指をもう一本増やし出し入れを続ける。
「あぁっ!」
指を引き抜くと、透明な液体が糸を引いてシーツに落ちた。
もう大丈夫だろう。僕は下着を脱ぎ捨てた。僕の方はもう万全だ。
森野の視線を股間に感じながら、膨張した性器を森野の秘所にあてがう。
「いくよ。」
森野が頷く。僕はゆっくりとペニスを侵入させていった。
「あっ……うぅ……ん」
苦しそうな森野の声が響く。半分ほど入れたところでとりあえず動きを止めた。
まだペニスの先端ほどしか入っていないが、森野の膣はかなりきつく、締め付けられてくる。
このままではすぐに達してしまいそうだ。最近自慰をしていなかったのも原因だろうか。
森野の顔には玉の汗が浮かんでいる。相当痛いようだ。
「大丈夫?」
「平気よ。続けて。」
気丈にも森野は口の端を吊り上げ、僕にそう言ってきた。
もしかして今のは笑顔のつもりだったのだろうか。先程の微笑みは非常に綺麗で自然だったが、
どうやら森野は意識して笑うことができないようだ。
僕としてもこのまま止めるつもりは毛頭無いので、そのままペニスを突き進めていく。
森野がシーツを力いっぱい握っているのが見える。ゆっくりやっては逆に悪いかもしれない。
僕は一気に腰を突き上げ、ペニスを森野の膣深くまで入れた。
根元まで入れたペニスは、膣の中で締め付けられてくる。
少し強すぎるくらいだ。これでは5分と持たない。
僕は森野の様子を窺う。先程までは尋常ではないほどの苦しみ方だったが、今はそうでもない。
これなら多少動いても平気だろうか。
そう思っていた矢先、森野から「動いて」との要請があった。
このまま達してしまいそうな僕としては、遠慮なくその言葉に従う。
ゆっくりと腰を動かす。これまでに無い快感が全身を駆け巡っていく。
「んっあっあっ……くふぅ…う」
森野はなんとか声をあげないように堪えているようだったが、その苦労も空しく室内には森野の嬌声と
ちゅぷちゅぷと淫らな音が響いている。
ふと結合している部分を見ると、ペニスが血で染まっていた。
そういえば先程のやり取りで僕が初めてだというのは明かしたが、森野からは聞いていなかった。
しかし、これではっきりしたというわけだ。考えてみれば聞くまでもないことだったが、
僕よりも遥かに人付き合いの下手な森野なのだから、経験があるわけが無い。
僕は森野も初めてだったというその事実を認識し、心のどこかでほっとしているのを感じた。
独占欲、というやつだろうか。
そういえばあの時も、森野が殺される場面を見る絶好の機会だったのに、何故か僕は森野を助けてしまった。
僕は森野をどうしたいのだろう。いつかはこの手で殺すと思う。だがそれはずっと先のことだ。
そう、僕は森野を殺すその時まで、ずっと彼女を見守らなければいけない。
森野を抱き締めながら、激しく腰を動かす。そろそろ限界だ。
「んっんっんあっ……神や…ま…君……!」
僕の名を呼ぶ声が聞こえる。それに合わせるように腰を強く突き上げていく。
「な、まえを……呼んで…!」
体を揺らしながら、森野が震える声で言った。
ああ、わかったよ。
「ぁあっ……夕……!」
僕は果てた。
次で終わりの予定です。
PHASE-05は多分週末あたりに。
率直な感想お願いします。今後の参考にします。
待ってます
キ、キタ━━(゜∀゜)━━!!!!GJGJGJGJGJ!!!!
149 :
率直な感想:2006/05/22(月) 23:13:54 ID:32Vx5F6L
神山と森野の性格等がすごくよく表せてると思う。エロもソフト感がバッチリでタマラン(#´Д`)
故にGJ!(偉そうにスマソ)
文章から情景がすぐに浮かんでくる
台詞とか行動なんかもすごくうまく表せてると思う。
続き期待してます。
混沌としたスレに救世主が!!!
週末の予定でしたが、ちょっと無理そうなので、ちょうど時間ができた今日に投下します。
PHASE-05
行為の後の気だるさを感じながら、僕は隣で寝ている森野の髪をそっと撫でた。
サラサラといい手触りがする。やはり森野でも手入れに気を使っているのだろうか。
目にした者が吸い込まれるかのような真っ黒な髪。
そして病的なまでの白い肌。このコントラストが森野の神秘的な美しさを形作っている。
森野の寝顔を眺める。間近で見ると、改めて端正な顔立ちをしていると感心してしまう。
森野は未だにクラスの誰とも喋らないし(僕は別だが)、他人を寄せ付けない雰囲気をこれでもかと醸し出し
学校では常に一人でいる。そんな彼女だが、実は隠れファンが多い。事実僕のクラスにもいわゆる「森野狙い」が
何人かいるし、学校中にその名は広まっているそうだ。
僕はそんな事実から、なるべく学校では森野と会話をしないようにしてきた。
するにしても放課後、誰もいない教室でが常だった。そこまで細心の注意を払っていたのだが、
どこかで僕らが話しているのを見た生徒がいたらしい。僕と森野が付き合っているという噂が流れ始めた。
そういう噂が流れているのは知っていたが、僕自身積極的にその噂を否定するようなことはしていなかった。
クラスの男子には冗談半分で聞かれたりもしたが、そのいずれも本気で噂を信じている類のものでは無かったし、
事実噂を信じている生徒もおそらくほとんどいなかっただろう。
要は何かと有名な森野に関する噂が欲しかっただけで、別にそれが恋愛の話である必要はなく、その相手が
僕である必要もなかったということだろう。偶々森野と会話をしている僕を見かけただけのことだ。
僕は表向きでは「成績は悪いが明るい高校生」を演じている。すると当然クラス内での交流にも
付き合わなければいけない。ここ最近はずっとそれに時間を割かれていた。勿論森野は呼ばれていない。
その中で、同じクラスのある女子生徒と話をする機会があった。話を聞けば、彼女には別の高校に
親友がいて、その親友とやらが僕に好意を持っているという。その女子生徒も彼女の親友にも今までに
面識は無かったが、中学の時バスケ部の県大会で僕を見かけたという。確かに僕は中学の時バスケ部に入っていた。
だがそれは名ばかりで、実際は幽霊部員も同然だった。その県大会も3年の最後の試合だから、せめて
最後くらいは手伝おうと荷物持ちのつもりで行ったものだ。当然試合にも出ていない。
にも関わらず、その子は僕を好きになってしまったらしい。
僕は一体その話のどこに僕に惚れる要素があったのか逆に聞いてみたくなった。
とにかくそういうわけで、今度その子とデートをしてくれということだった。
僕は少し困った表情を作りながらも、頭の中ではどう断ろうか考えていた。
別にその子に不満がある訳ではない(既に写真は見せてもらったが、整った顔立ちをしていた)が、
僕は今のところ誰とも付き合うつもりは無い。僕自身そういう他人との繋がりにさほど興味を持てない性分だし、
それに何より――とここで何故か頭の中に森野の顔が浮かんだ。
いつものあの無表情な顔。それがほんの少しだけ悲しそうに見えた。
間の悪いことに、丁度その時女子生徒が言った。「やっぱり森野さんと付き合ってるの?」
僕はその問いにほとんど脊髄反射で答えた。
なんと言ったかはよく覚えていないが、否定の意味の言葉をズラズラと並べていった気がする。
その結果、僕はその女子生徒の親友とデートをすることになってしまった。
それが昨日の出来事である。
彼女は、ほとんど初対面である僕に対して異常なまでに馴れ馴れしく、散々連れ回されることになった。
帰宅後、同じクラスの女子生徒から電話があり、デートの内容から今後の展開までを根掘り葉掘り聞かれたが、
僕は今後のお付き合いは遠慮したいという旨を、できるだけ波風立てないような言い回しで伝えた。
電話の向こうの彼女は僕の言葉を聞いて少し残念そうな声を出したが、すぐに元の声の大きさに戻り電話を切った。
通話が終わった後、メモリから 森野夜 を探し出し、電話を掛けようか逡巡したが、何を言ったらいいのか
思いつかず、止める事にした。
思えば、放課後森野に話しかけられたことからこうなったのか。
森野の頬に手を伸ばす。とふいに森野が目を開けた。
「起こしちゃったかい。」
「起きてたわ。」
頬に伸ばした僕の手に自分の手を重ね、指を絡ませてきた。
「一つ聞いていいかしら。」
「何だい。」
「あなたは私のことをどう思ってるの。」
痛い所を突いてきたな、と思った。それは僕自身が一番知りたいことだ。
瞬時に恋人、彼女、という単語が浮かんできたが、どれもしっくりこない気がする。
僕は森野と今までにいくつかの事件に遭遇してきた。きっとこれからも僕は森野と一緒にGOTHに関わっていくのだろう。
そう、僕達にはこの言葉が一番合うだろう。
「最高のパートナーだと思っているよ。」
終
エピローグ
その後、森野はたっぷり10秒は固まった後、顔を真っ赤にしてシーツに顔をうずめた。
ぶつぶつと何事かを呟いている。よく聞こえないので耳を近づけてみると、
「そんな」「まだ高校生」「でも」「どうせ」「両親に」「挨拶を」という言葉が断片的に聞こえてきた。
どうやら僕はまた何か間違えてしまったようだ。
森野の中では「GOTHのパートナー」ではなく「人生のパートナー」ということになっているらしい。
きちんと言い直そうかと思ったが、一概に間違いとも言えないということに気づいた。
どちらにしても僕らはこれからも一緒にいることになる。それに僕はもう森野から離れられないだろう。
彼女の白い肌にナイフを突き立てるその日までは。
その後妹が帰宅し、玄関で森野の靴を見た妹の「あれ、お客さん?」という声を聞きながら急いで
服を着て後始末をするはめになった。
ノックもせずに僕の部屋に入ってきた妹は、何故かベッドで正座している森野と僕を見た後、
ニヤリという音が聞こえてきそうな笑みを浮かべ「あっ森野さん。こんにちは。」と挨拶した。
森野はほんの僅かに会釈をした後、口の端を吊り上げ「こんにちは。」と言った。
森野なりに愛想よくしようと努力したようだ。
無駄かもしれないが一応妹に弁解しようと試みたが、「いいからいいから」「お母さんには黙っててあげる」と
一蹴された。僕は「絶対母親に言うだろうな」と確信しながらも、とりあえず「頼む」と言っておくことにした。。
妹が親指を立てて了承の合図を返してきた。これは駄目だ。
森野はそんな僕らのやり取りを見ながら「良い妹さんね。」と見当違いなことを言っていた。
このことから、後日僕は森野の家に招かれることになるのだが、それはまた別の話にしておく。
これで終了です。
このような駄作にマジレスをして下さった皆さん、ありがとうございました。
マジレスで、あなたはこのスレで神の軌跡を造りました。GJ!そして乙!!!!
グッジョーーッ!?
神GJ
面白かったし良かった!
これからも暇ができたら書いてください!
GJ!!
ところどころ物騒な文句が混ざっているのに素晴らしくほのぼのしていて良かったです
乙でした。
原作の雰囲気を壊さずにここまでエロくできるなんて・・・
とにかくGJ!そして乙です。
赤面する森野にモエス
すいません、調子に乗ってまた投下します。
第二話
PHASE-01
日曜日の午前10時、僕は駅前の喫茶店で森野と待ち合わせをした。
土曜日、つまり昨夜の晩に森野から「明日10時 駅前の喫茶店で」と用件のみを伝えるなんとも味気ないメールが
送られてきた。そこには僕の意思の介入は許されていない。
僕は森野の指示通りに休日の朝にもかかわらず早起きし、駅前の喫茶店に向かった。
家を出る時、妹と母親が僕を見ながらヒソヒソと何か話していたようだったが、無視しておくことにした。
9時30分に指定の喫茶店に着いたが、森野はまだ来ていないようだった。
僕は人と待ち合わせをしているということをウエイトレスに告げ、窓際の外の通りがよく見える席に着いた。
コーヒーを注文し、森野が来るまで文庫本を読んで時間を潰すことにした。
僕が今読んでいるのは、10年ほど前にとある地方で起きた連続殺人事件の被害者の手記だ。
この事件は地方の農村で起こった。近所の住民が数日置きに失踪していき、不審に思った住民たちが警察に通報し
山狩りを行ったところ、無残な惨殺死体がいくつも発見されたという。調べた結果、犯人は農村の住民の一人で、
犯行当時42歳の男性。警察の調べでは、意味不明な供述をしていたらしく、精神鑑定も行ったが結果は正常。単に
罪を逃れるための出鱈目を言っていたと結論付けられたそうだ。この手記には、被害者と遺族がどれほど深い
絆で結ばれていたか、そして犯人に対する怒りと憎しみで埋め尽くされていた。最後にほんの申し訳程度に
今後二度とこういう事件が起きないことを祈る、と付け加えられていた。
僕は被害者と遺族のエピソードは適当に読み飛ばしながら、犯人の供述の部分に興味を惹かれ読むことにした。
この犯人は、特に被害者に恨みがあったわけではなく、むしろ非常に良好な近所付き合いをしていたという。
ところが何故か、そのような付き合いをしているうちに、彼らをバラバラに切り刻みたい衝動が沸き起こったそうだ。
そして犯人はその衝動のままに殺害、死体を切り刻み山に捨てた。犯人はこれを7回も繰り返した。
僕にはわかる。この犯人がどのような気持ちを抱き殺人を犯したのか。
人間には殺す人間と殺される人間がいる。僕は前者だ。そしてこの犯人も。
彼らは常に獲物を探している。自分の欲を満たしてくれる存在を。
この犯人もそれを見つけたのだろう。だから殺したのだ。
そう、そして僕も見つけた。森野夜を。
入り口のベルが鳴り、そちらを見ると森野がやって来た。
森野は黒のハイネックと黒いロングスカートという、上も下も真っ黒な服装だった。
僕と向かい合う形で座ると、テーブルの上にある僕のコーヒーを一瞥した後、「私も同じものを」と注文した。
森野は僕が先程まで読んでいた本のタイトルを見ると、じっと僕の目を見つめてきた。
ほんの最近のことだが、僕は森野の微妙な表情の違いがわかるようになった。
以前はどれも同じ無表情にしか見えなかったが、どうやらその無表情の中にもバリエーションがあるらしい。
ちなみに今僕を見ているこの顔は、納得半分、呆れ半分といったような具合だろうか。
「あなたらしいわね」という言葉が聞こえてきそうな表情をしている。
僕が読んでいる本の内容が、いつも殺人事件の関連書物だということをいっているようだ。
本を鞄にしまい、コーヒーで唇を湿らせる。
森野が注文したコーヒーが運ばれてきた。二人して無言でコーヒーを飲む。
このままでいるわけにもいかないので、僕は先に用件を聞くことにした。
「今日の予定は?」
「そうね、いろいろあるわ。本屋にも寄りたいし、百貨店にも行きたいの。」
どうやら森野は買い物をするために僕を呼んだようだ。荷物持ちといったところだろうか。
具体的に何を買うのか聞こうかと思ったが、どうせ店で買う時に見れるだろうと思い、止めておいた。
森野がコーヒーを飲み終わったので、伝票を持って立ち上がる。
僕個人としては、こういう場合男が会計をするということを是としているわけではないが、今日の場合は
僕が支払うべきだろうと直感した。レジに向かう間、背後にいる森野の様子を窺うが、僕が支払うことに異論は無いようだ。
今回は間違えた選択はしなかったらしい。やはり今日の待ち合わせで森野がこの喫茶店を選んだのは偶然ではないようだ。
『あの日』のことはすべて説明したはずだが、まだ少し根に持っていたのかもしれない。
喫茶店を出た後、森野は先導して歩き出した。二、三歩歩いたところで僕の方を振り返り、まるで
「こっちよ」といっているかのような仕草で僕を手招きした。僕はそんな森野の姿にほんの少しだけ見惚れながらも
彼女の後を付いていった。
>>154 > 思えば、放課後森野に話しかけられたことからこうなったのか。
> 森野の頬に手を伸ばす。とふいに森野が目を開けた。
> 「起こしちゃったかい。」
> 「起きてたわ。」
> 頬に伸ばした僕の手に自分の手を重ね、指を絡ませてきた。
> 「一つ聞いていいかしら。」
> 「何だい。」
> 「あなたは私のことをどう思ってるの。」
> 痛い所を突いてきたな、と思った。それは僕自身が一番知りたいことだ。
> 瞬時に恋人、彼女、という単語が浮かんできたが、どれもしっくりこない気がする。
> 僕は森野と今までにいくつかの事件に遭遇してきた。きっとこれからも僕は森野と一緒にGOTHに関わっていくのだろう。
> そう、僕達にはこの言葉が一番合うだろう。
> 「最高のパートナーだと思っているよ。」
>
> 終
GJ!続き楽しみにしてます
続きキタ━━(゜∀゜)━━!!!!GJの舞いだぜ!!
神再降臨ktkr!!!!!
続き待ってます!
170 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 17:14:05 ID:U5MaFIVy
最高です。続き待ってます楽しみに
wktk!!!!!!
PHASE-02
森野に先導されながら歩いていく。僕は森野の一歩後ろを歩きながら、おそらくこの先の百貨店に向かっているのだろうと
あたりをつけた。その百貨店はこの地域で最も大きく、休日ともなると家族連れで賑わっている。
僕も森野も人混みが苦手で、長時間そういう場所にいると頭が痛くなってくる。
歩くこと15分、その間も僕らには会話は無かった。僕らが一緒に歩く時は常にこうだったが、今日は少しだけ
いつもと違った。会話は無かったが、歩いている間両手で数えて足りないほど、森野と目が合った。
目的地が分かってから、僕は森野の隣に並び歩いた。視線を感じる。ちらと横目で見ると、森野が僕を見ている。
何か用だろうかと思い森野の方に顔を向けると、数秒後何事も無かったかのようにまた前を向く。これの繰り返しだった。
僕は森野の真意がさっぱりわからなかったが、森野の奇行を気にしていたらきりが無いので、考えるのをやめた。
百貨店の入り口に着くと、そこには既に人混みが出来上がっていた。僕は正直、この光景を見た瞬間Uターンして
帰りたかったが、隣の森野は多少眉をひそめてはいるものの、帰る様子は無いので仕方なく彼女について行った。
エレベーターに乗り込むとすぐに定員ギリギリの人数が押し込まれ、僕と森野は隅に追いやられる形になった。
僕は腕をつっぱりなんとか人一人分のスペースを確保し、そこに森野をかくまった。
これは森野を守るとかそういうわけではなく、森野をこの状況で放置した場合ほぼ間違いなく不機嫌になり、そして
その被害を受けるのは一緒にいる僕だからだ。つまりは自分のためである。
僕は数十センチの距離にいる森野を見下ろす。森野は何かを言いたそうに唇を動かしたが、結局何も言わず俯いた。
べつに僕は感謝を求めていたわけではないので特に気にしなかったが、ふと胸に柔らかい感触を感じた。見ると
森野が僕に寄りかかるかたちで密着してきた。手を僕の胸に当て、そのまま頬もすり寄せてきた。
ふいに森野の首を絞めたいと思った。森野と一緒にいるとき、偶にこういう衝動に駆られることがあった。
僕はそういう時いつも自分の頭の中で森野を殺した。刺殺の時もあれば、撲殺、絞殺などあらゆる殺し方を試した。
しかし森野に撲殺は似合わない。殺すならやはり絞殺か刺殺だろう。だがどちらにしても森野の手首は切り取る。
森野の手首にある傷跡。行き場を無くした感情の捌け口。僕が森野に興味を持った切欠でもあった。
僕はそっと森野の手を握った。
周りの客の視線を痛いほど感じながらエレベーターが4Fに着き、森野は僕の手を引いて降りた。
4Fは雑貨売り場で、日用雑貨から工具まで揃っている。
森野の後をつき、売り場を見て回る。森野はふらふらと売り場を彷徨い、適当なものを手に取っては戻すを
繰り返していた。10分ほど徘徊した後工具売り場に辿り着き、ここから森野は品物を一つ一つゆっくり見始めた。
釘、トンカチ、スパナ、ノコギリ。いずれも凶器になり得るものばかりである。僕もそれらを手に取り眺めながら
人を殺す想像をして楽しんだ。森野に目をやると、ノコギリを手に取りうっすらと笑みを浮かべている。
おそらく自分がノコギリで殺された時のことを想像しているのだろう。以前紐を買いに行った時もそうだったが、
森野は常に受身の考え方をしていた。僕はその逆で、自分が加害者の場合を考えている。
結局このフロアで森野は何も買わなかった。僕は森野の考えがますますわからなくなったが、以前妹と買い物した際の
ことを思い出した。概して女性の買い物は非常に長い時間がかかるもので、それは森野といえど例外ではないのだろう
という結論に達した。
エレベーターに戻り、今度は6Fに向かう。僕は案内表示を見て衝撃を受けた。婦人服売り場と書いてある。
僕の困惑をよそに、6Fに着くと森野はさっさと一人で下り、歩き出した。数歩遅れて僕も歩き出す。
嫌な予感を感じながらも、必死にそれを押し殺しながら森野の後を着いていくと、ピタと森野が立ち止まった。
つられて僕も立ち止まる。目の前には少し派手な下着を着用したマネキンが数体並んでおり、さらのその奥の
売り場にはおびただしいまでの量の女性用下着が陳列していた。
流石にこれは逃げるしかないと思い、回れ右をしようとしたが、途中で森野に肩を掴まれた。
「逃げないで。」
「トイレだよ。」
「我慢しなさい。」
僕の巧妙な言い訳も一蹴されてしまった。がっちりと腕をつかまれ、僕は森野に引っ張られながら売り場に向かった。
続きは来週あたりに。
続きキテター!!!!
続き楽しみにしてます!
続き楽しみだ!
下着売り場で一体何が!(*´∀`*)
続きキテター!!
wktkwktk
銃チョコからロイズ×ママン、むしろドゥバイヨル×リンツ・・・
いや、なんでもない、後半は忘れてくれ
乙一の文体の雰囲気を損なってないのが凄い。違和感ない
激しく期待
182 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 10:39:13 ID:yKYtityw
神山君が原作のまんまだ!
184 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 17:17:55 ID:ujFVe3Nc
良スレハケーン! 通わせていただくことにする
>>179 銃チョコ後半に激しく反応
あの位置で美形て反則だろう
sage忘れorz
>>184 ミュゼが旅に同行して三角関係・・・かと思いきや。まったくやってくれるぜ
PHASE-03
時折、ちゃんと僕がついてきているか確認しながら、森野は下着を物色し始めた。
僕はさりげなく周囲を見回してみるが、案の定視界に入る客は全員女性だった。
森野に目をやると、彼女はブラジャーを手に取り吟味している最中のようだ。
これ以上無い居心地の悪さを感じ、ここから離れるべく森野に交渉することにした。
「僕は向こうに行っててもいいだろう?」
「あら、何か問題でもあるのかしら。」
「意地が悪い言い方をするね。」
「っ……。」
森野が沈黙する。俯いて何事かをぶつぶつと呟いている。
長い髪に隠れ、森野の表情は読み取れない。
僕は少し言い方が悪かったかな、と思いながらも、何にせよこれでこの場から離れられると思い、森野に背を向けた。
その時、背中にわずかな抵抗を感じた。振り向くと森野が俯いたまま僕の服をつまんでいるのが見えた。
今度こそ本当に怒らせてしまったかと思い様子を窺うと、森野が顔を上げた。
森野の顔は真っ赤に染まり、怒っているのか泣きそうなのかよくわからない表情をしていた。
「待って……、意地悪したつもりじゃなかったの…。」
僕の服をつまんでいる手が震えている。どうやら泣きそうな方だったらしい。
「じゃあ、なぜ?」
「あ、あなたに……その、選んでほしくて……。」
僕は頭をハンマーで殴られたような気分になった。
目の前の森野は先程より更に顔を赤くし、気のせいか眼が潤んでいるように見える。
森野はチラチラと僕の様子を窺いながら、僕の返事を待っているようだった。
ふと視線を感じ周囲を見回すと、フロアの客たちが僕と森野を見ている。
下着売り場で彼女と喧嘩し、泣かせてしまった彼氏―――おそらくこんなふうに見られているのだろう。
これ以上周囲の注目を集めるわけにはいかない。
僕は森野に向き直り、下着選びに付き合う旨を伝えた。
すると森野は一瞬にして普段の無表情に戻り、「じゃあこれからお願い」とブラジャーを僕に見せてきた。
あまりの変わり身の早さに少しとまどいながらも、僕は言われたとおりブラジャー選びから手伝うことにした。
森野は一つ一つブラジャーを手に取りながら、慎重に選んでいた。
僕は適当に手に取りながら、森野の下着のサイズを知らないことに気づいた。
森野と初めて性交をしたあの日から、僕らは週に2、3度は関係を持っていたが、今まで森野の胸が何カップかと
いうことに意識が及ばなかったのは僕が間抜けだったということだろう。
ともかくサイズを知らないことには選びようが無いので、森野に聞くことにした。
「君は何カップ?」
「それ、セクハラよ。」
冷たくあしらわれた。大きさを気にしているのだろうか。
僕個人の嗜好としては、あまり大きすぎてもいけない。ちょうど掌に収まるくらいがベストだ。
そう、ちょうど森野の胸のような。
「君のサイズがちょうどいいと思うよ。」
フォローを入れておく。森野は僕をじっと見た後、ブラジャーに向き直り「Bよ」と答えた。
僕の予想通りだ。棚からBカップで森野に似合いそうな下着を選んでいく。
ふと黒い下着が目に入った。
今までのことを思い出してみるが、森野は私服とは反対に下着はいつも白だった。
偶々僕との行為の時だけ白い下着を着用していた可能性も考えられたが、確率からいってそれは違うだろう。
森野が黒い下着を着用している様子を思い浮かべてみる。肌が病的なまでに白いせいだろうか、
森野には黒という色がよく似合う。というよりも、森野が今時の女の子のような、カラフルな格好をしているのが想像できない。
――いや、確か一度だけ森野のそういう姿を見たことがあった。淡いピンクのキャミソールを着て、
そう、あれは森野が手帳を拾ったときの――
そんなことを考えながら、僕はずっと黒い下着を握ったままだったらしい。森野が僕の顔を覗き込んできた。
僕は内心の動揺を悟られないようにしながら、僕の目をまっすぐ見つめてくる森野に握っていた下着を渡した。
「これなんか似合うと思うけど。」
「黒ね……、黒はまだ早いと思って持っていなかったのだけど、……あなたがそう言うなら。」
意外にも森野はあっさりと僕の勧めた下着を受け入れた。この様子だと、もう少しきわどいものでも大丈夫かもしれない。
続きは来週あたりです。
携帯からすまん
寝る前にきてよかった!!今日はいい夢が見れそうだよ…
GJ!エロが無くてもいいのかと思う程、普通に話が面白いよ!
俺達の為に書いてくれる善意にも激乙!!!!
神のSSの問題は森野がやばいくらいに可愛い事だな。
可愛い過ぎて俺のデザートイーグルが反応しない。
GJ!続き楽しみだ。
待ってます。
いつも楽しみにしてます!
モニタの前でニヤニヤしてる俺キモイ
あれ? 俺いつの間に書き込んだっけ
あれ?いつの間に(ry
ここはニヤニヤの多いインターネッツですね
ヤベ、ニヤニヤがとまらない
しかも自慢のコルトパイソンの火力がゼロだ
これが神×森SSクオリティなのか?
全くだ。おかげで俺のデリンジャーは未だにサイレンサーがついたままだぜ!!
だがそれがいい
PHASE-04
その後も僕は黒い下着を中心に森野に勧めていった。
僕が勧める度に森野は「なんかごわごわしてるわ」「ヒラヒラが邪魔よ」「いやらしい」など
顔を赤くして文句をつけながらも、満更ではない様子だった。
僕の頭の中では、森野がそれらの下着を少し恥ずかしそうに着用している姿が鮮明に描き出されていた。
そうしているうちにかれこれ30分経ち、結局最初に僕が選んだ黒の下着を買うことにした。
購入する時、レジの女性が代金を払おうとした森野とその後ろにいた僕を見比べ、怪訝な顔をした。
僕はその意味がわからず突っ立っていたが、森野はレジの女性に軽く頷き、僕に振り向いて微笑んだ。
「お願いね。」
どうやら僕に払わせるつもりのようだ。
「優しい彼氏さんですね。」
レジの女性が言った。森野はその言葉を特に否定もせず、財布を取り出した僕を見て微笑んでいた。
こういう状況では男性が払うのが暗黙の了解らしい。
財布から5千円札が1枚なくなり、これ以上森野が買い物しないことを願いながらエレベーターに向かう。
森野は荷物を全て僕に預け、一人身軽そうだ。顔にはうっすらと笑みが浮かび、鼻歌まで聞こえてきそうなほど
上機嫌に見える。そんなにこの下着が気に入ったのだろうか。それとも僕に奢らせたのがおもしろかったのか。
多分後者だな、と思いながら、また満員に近いエレベーターに乗り込んだ。
僕と森野は隅に追いやられ、定員オーバーのブザーが鳴らないのが不思議なほどだった。
僕は荷物で手が塞がれスペースを確保することができず、森野と正面から密着する形になった。
僕の方が少し背が高いので、僕からは森野の頭部が見える。
森野は僕の胸に体を預け、丁度心臓のあたりに頬をくっつけてきた。
鼓動を聞いているのだろうか。僕は自分の心拍数がいつも通りであることを確認した。
その時、下半身に違和感を感じた。見ると、僕の股の間に森野の左手が入り込んでいる。
森野の細い指がジーンズの上から僕の股間を円を描くように滑っていく。
また森野の奇行が始まったようだ。僕を動揺させるつもりだろう。
幸いにも、ジーンズの生地のおかげで刺激が少ない。
この程度なら耐えられる。
そう思っていた矢先、おかしな音が聞こえた。
これは、チャックを開ける音だ。
森野はジーンズのチャックを開け、下着の上から僕の性器を撫でている。
僕の反応が乏しかったのが悔しかったのだろうか。森野は変なところで負けず嫌いを発揮するようだ。
最初はソフトタッチだったが、段々と指の動きが激しくなってきた。
僕はここで反応したら森野を調子づかせるだけだと思い、なんとか勃起しないように堪えた。
それに僕にも一応、男としてのプライドがある。下着の上から触られただけで勃起してしまうのは避けたい。
ここで勃起してしまった場合、また僕と森野の間の優劣の差が開いてしまうような気がする。
森野の指の動きが止まる。諦めてくれたのだろうか。
「っ!!」
今度はダイレクトに刺激が伝わる。見ると、下着を乗り越えて森野の指が僕の性器に絡みついている。
さすがにこれはやりすぎだ。森野の目元は髪に隠れて見えないが、口の端がつり上がっている。
意地でも勃起させるつもりのようだ。森野の指は僕のペニスをゆっくりとしごき始めた。
すでに僕のペニスは半勃ちになっていた。森野の長い指が亀頭に辿り着き、尿道をなすりつけてくる。
僕は声を上げないように必死で食いしばっていたが、また新たな刺激が現れた。
左手だけだったのに今度は右手も加わり、袋を揉み始めている。
手は竿を上下にしごき、右手は袋。これで僕のペニスは完全に勃起状態になってしまった。
執拗な亀頭への攻撃により、尿道からはカウパー液――俗に言う我慢汁が漏れ出している。
森野の指がその液をすくい取り、指と指に付け糸を伸ばした。エレベーターの照明を受け、わずかに輝いている。
完全に僕の負けだ。不意打ちを食らったとはいえ、森野のテクニックを侮っていた。
だが、このままで終わるわけにはいかない。
エレベーターが地下1階に着いた。ここは食品売り場と軽食コーナーがあるフロアで、
メインのエレベーターの反対に位置する場所にひっそりと階段があり、そこの隣のトイレはほとんど人がいない。
よく家族で買い物に来た時、人混みにうんざりした僕が逃げ場所として使っていた。
森野の手を引き、そのトイレに向かう。そこなら人目につかないだろう。
森野は特に抵抗もせず、黙って僕に手を引かれている。僕が何をするつもりなのか、もうわかっているのだろう。
感想ありがとうございます。
うひょう唐突なエロ
森野に痴女属性が付加されました
また携帯からすまん…
エロいよ〜エロ過ぎるよ!!続き楽しみにしてます!!
次は神山君の番か!?
ぅ〜っGJ!!不意エロ森野タソに激萌!!これは続きが気になるぜ!!
wktkwktk(´Д`*)
森野やらしいな!!
続きわくてか
GJ
wktk
携帯からwktk
マジワクテカ
白乙一作品のも読んでみたいな
214 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 18:26:31 ID:fn9Asbtg
『失はれる物語』の中の『幸せは子猫のかたち』を読後、ある妄想が浮かんできました。
何故かエロ付きで。
正直な話、私は自分のサイトで小説(の名を借りただけの愚文)を書いています。
しかし、私はこの妄想を文にする力がない。女人が書けないのです。
なにせ、今まで女人と話した時間を全て合わせても一日に満たないであろう包茎童貞生きる価値無しな私。
そんな私が、どうやって女人なんて、しかもエロなんて綴ればいいのでしょうか。
頼むしかないのか?頑張るしかないのか?
どうすればよいのでしょうか。死ねばいいんですか。
どうか皆々様、私に蔑んだ目とアドバイスをくれないでしょうか。
>>214 Mですか?とりあえず死んじゃ駄目ですよ。
安心しろ、白乙一と聞いて真っ先にエロ妄想が浮かんだのが俺もそれだった。
神、来ないお・・・
これじゃ寸止めだよ orz
PHASE-05
僕の思った通り、賑やかなフロアとは反対にここのトイレはひっそりと静まり返り、誰もいなかった。
森野の手を引いて男子トイレに入ろうとすると、森野がそれを拒んだ。
さすがにこんな所でするのは嫌だったのだろうか。
「そっちは嫌よ。」
僕の手を取り、女子トイレに入った。男子トイレが生理的に嫌なだけだったらしい。
相変わらず森野は変なところに拘る。僕は思わず苦笑してしまった。
「何よ。」
「いや、べつに。」
森野に手を引かれて個室に入る。すると早速森野が僕に向かって目を瞑ってきた。
キスをしろということだろう。いつの間にか森野に主導権を握られている。
僕は森野と唇を重ねた。僕は森野の唇に舌をこじ入れた。
森野は抵抗せず、僕にされるがまま舌を絡ませている。
静かな個室の中で、ピチャピチャと唾液が混ざる音が響く。
やはりシチュエーションというものは重要な要素らしい。森野とこういう事をする時は僕の部屋か学校だったが、
今はその時よりも体が昂ぶっている。脈もいつもより速い。興奮しているのだ。僕も、森野も。
スカートを下にずらし、下着の上から森野の性器をさする。既に下着は濡れており、少し触っただけで指に愛液がついた。
「すごい濡れてるけど。」
「っ……、言わないで。」
少しさすっただけで森野は身をよじり、声を上げないように堪えている。
「僕のを弄っただけでこんなになったのかい?」
「だ、だから……っ言わないでって……!」
顔を真っ赤にしながら森野が答えた。図星のようだ。先程は一方的にやられたが、今度はそうはいかない。
下着をずらし、直に性器に指を入れる。
触れた瞬間、森野がわずかに体を揺らし反応した。
顔を見ると、口に手をあてて声を上げないように堪えている。
森野のこういう姿を見るのは何度目だろうか。その度に僕の中にある何かが疼く感じがする。
そうだ、これはあの時にも感じた。化学の教師に森野を襲わせた時、殺人犯に森野が拉致された時、そして――
ナイフの乾いた音が止まった時。今も僕の手に感触が残っている。刃先が肉にのめり込んでいく。
今わかった。僕はまたこの感覚が欲しくて森野といるのだろう。
そして、もしかしたら森野もまたそのために僕といるのかもしれない。
ズボンと下着を脱ぎ、ペニスを挿入する。
先程までの愛撫で森野の性器は十分に濡れており、挿入はすんなりいった。
「んっ……あっ」
森野の声が響く。トイレには僕たちの他に誰もおらず、店内のBGMが微かに聞こえてくる。
森野は未だに口に手を当てて堪えている。他の客がトイレに来た時のことを配慮しているのだろう。
ペニスをぎりぎりまで引き抜き、そこから一気に突き上げた。
「うっあっ…あっ!」
一段と大きい反応が返ってきた。今までの経験から、森野は非常に敏感で感じやすい体質のようだ。
以前学校で二人きりの時、少しうなじを触っただけで凄まじい反応が返ってきたこともあった。
腰を深く突き上げながら、左手でブラジャーを捲り乳首を口に含む。
世間一般の男性は女性の胸を好む傾向にある。それも大きければ大きいほど良いらしい。
僕個人の嗜好としては、大きすぎると逆に萎えてしまう。やはり森野ぐらいの大きさがベストだ。
軽く乳首を噛みながら吸いついた。
狭い個室に、僕と森野の性器が奏でる水音と、乳首を吸い立てる音が響く。
「んっ……あ…赤ちゃんみたいね……」
そんな森野の声を聞きながら、僕は森野の胸に顔を埋める。
ほどよい大きさの胸には、ほどよい大きさの谷間があり、そこは顔を埋めるにはほどよい弾力さとほどよい心地よさだ。
「今なにか失礼なこと考えてなかった?」
先程までの喘ぎ声とは一転、背筋が凍りそうなほど冷たい声で森野が睨み付けてきた。
森野は変なところで鋭い。
僕は左手で乳首をつまみながら、反対の乳房を口に含んだ。
「ちょっ……やぁ…」
僕はそれを無視し、胸を愛撫しながらも腰を深く突き上げる。
僕らは壁に寄りかかった状態でセックスしていたので、そろそろ限界のようだ。
特に森野は足に力が入らなくなってきている。
僕は便座に腰掛け、森野を僕と向かい合わせになるように僕の上に座らせた。
「ちょ……いゃよこんな……あっああっ」
この体勢だと、性器の結合部がよく見える。森野はそれを恥ずかしがっているようだ。
森野の腰に手を回し、ペニスを更に奥まで侵入させた。
今までよりもさらに強い快感が襲ってくる。僕も森野ももう限界だ。
「そろそろっ……いくよ」
「っ……い…いわ…っあっぅ」
ピストンを速める。
森野が顔を寄せてきた。森野の唇に自分の唇を重ねた。
舌を絡め、口内を嘗め回していく。
お互いの唾液が混ざり、もはやどちらのものかわからない。
唇を離し、また森野の胸に顔を埋める。
森野の鼓動に何故か安心感を感じる自分に僅かな苛立ちを抱きながら、僕は射精した。
すいぶん長く間を空けてしまい、すみませんでした。
次で終わりです。
>>214 大丈夫ですよ。人間やれば何とかなるもんです。
僕だって童貞なのに(ry
キターょ!!待ってました!!
相変わらず森野には萌え疲れてきました・・・
次で最後ですか・・・淋しい気もするが期待wktk!GJ!
飲み終わって家で一服してきてみれば…
頭痛がなくなるほど素敵だわ!!GJ!!
そして今回も携帯からすまん
とにかくGJ!
トイレの個室で…エロ過ぎです。
次でラストなのは寂しいですがwktkして待ってます!
超GJ!!神ssいつもありがとうございます!
226 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:56:36 ID:44sQja+F
森野がかわいくてたまらん。
神よいつも萌えをありがとう。
森野かわいいよ森野(*´Д`)
いつも中田氏で大丈夫なのかしらん
いつもGJ。
ところで映画版日だまりの詩は原作の何百年も後になって、
たまたま似た出来事をなぞった一組の話だったんじゃないか、とかいう妄想が浮かんだ。
あの世界、死に際にそーゆーことをした組はあったんだろうかなァ。
アキヒロ×ミチル、リョウ×シンヤとか妄想はできるんだが
何せ文才がないからなあ書けない
神を待ちつつ保守
神様待ちのところすみません。
このスレは初めてなのですが、GOTHのSSを投下しても良いでしょうか。
一応、謎解きあり、残酷な殺人あり、セクロスなし、SM系のエロあり、な感じで
けっこう長めです。
>>232 読み手はただ待つのみです。
乙一作品ならOK。
どうぞ、投下してください。上の
>>221氏がいつ投下するかわからないので・・・。
>>233 了解です。様子を見つつ、できている分から順に投下してみます。
タイトルは「D.O.A」です。
会社へ続く路上で立ちどまり、原田はため息をついた。この時期、営業は地獄だ。汗だくで
得意先を回り、戻れば戻ったで残業、夜は寝苦しい熱帯夜だ。つかれた肩を鳴らし、ビルの谷
間から暗くにごった空をみる。
その空の一角から、死体が降ってきた。
‥‥正確には、一秒後に死体となるべき犠牲者が、降ってきたのだ。
目があった。顔をそむけたが遅すぎた。少女と視線がからまりあい、原田は呪縛された。
原田を見とがめた少女の瞳孔が恐怖と絶望で裂けんばかりにみひらかれる。落ちゆく少女は
長い黒髪をさかしまに広げ、全身から呪詛と無念をまきちらした。
死にたくない‥‥。
死にたくないの‥‥助けて‥‥。
たすけて‥‥見てないで‥‥たすけてよ‥‥!!
少女のきゃしゃな全身は黒づくめの革で縛りあげられ、ほとばしる無音の絶叫は口枷に吸い
つくされている。
骨と肉のくだける音が、彼の鼓膜を打った。
2回ほどの高さで少女の体が首から跳ねあがり、バウンドする。首を吊っていた縄が切れ、
おぞましく音をひしゃげさせ、アスファルトの路上にそれはたたきつけられた。原田の立って
いた場所からほんの数メートルのところだ。縛めの一部が千切れ、茶色の汚物が狂ったように
ふきあげる。
病的に青白かった少女のうなじは衝撃でほとんど切断され、あざやかな真紅の噴水が汚物の
濁流とまざりあった。鉄分と排泄物の匂い、ぼろぼろになった肉の匂いが路上にたちこめる。
裂けた頭蓋は、原田につぶれたいちじくを連想させた。
無傷の顔に残る魔術的なほくろに目が吸いよせられ、彼は呆けていた。
遠くからサイレンが近づいてくる。
ようやく、ひとごとのように騒ぎを認識しながら彼はその場にしゃがみこみ、ゆっくりと、
はげしく嘔吐しはじめた。
夏休みをひかえた期末テストも終わり、天高くうだるばかりの炎天にさらされた教室から、
次々に生徒たちが飛び出していく。
遊びにいこうと誘うクラスメイトを無視して、僕は椅子に座っていた。といっても黙ってい
たわけではない。急に彼らが笑いだしたのを見ると、気づかずに冗談を口にしたらしかった。
何の話題かも分からない僕をあとに、彼らが帰っていく。この異様な光景が、いつも変わらぬ
僕の日常だった。
僕にとって、クラスメイトとの会話は、自動的な反射にすぎない。
長いことこの作業を続けてきたため、今では無意識のうちにジョークを言い、陽気な会話で
クラスにまじることができる。しかしそれは、僕が人として社会に溶け込むための擬態でしか
なかった。
たとえば、カマキリが草葉にまぎれて獲物を狙うように。
一人きりになってから、廊下へ出る。
予想どおりそこには、漆黒をまとう少女の背があった。袖の白い夏用のセーラー服にもかか
わらず、ゆっくりゆっくり歩を進める森野夜は、星明かりのない、ガラスのように平らな夜の
湖面を思わせる。
前を向いたままこちらをうかがっている気配があったので追いつくと、森野はちらりと視線
を流してよこした。僕を待っていたのだろう、足取りを普通に戻して歩きだす。
この猛暑のさなかにあって、そよともなびかぬ長いつややかな黒髪は冷気を発しているかの
ようだ。左目の下にある黒いほくろは、昏く無機質な彼女の印象に、さらに神秘性を付加して
いた。
「やっぱり変わっているわ、あなたは。全然興味もない話題に、あれだけ楽しそうな顔で参加
できるなんて。まるでペテン師よ」
さっきのクラスメイトとの会話を聞いていたのだろう、と僕は推測する。
「それにしても残酷な事件よね。本当、やりきれないわ」
森野の口調は、天気の話かなにかのように無感動だ。どちらの発言も僕に向けたものではな
い、と判断し、特に注意をはらわなかった。ややあって焦れたように森野が言う。
「持ってきたんでしょ。早く見せて」
「図書室に行ってからの方が良いな。人に見られないほうがいい」
「‥‥そうね」
おたがい無表情に用件を交わし、それきり会話はとぎれた。
この寡黙さゆえに、森野はクラスでもきわだって目立つ存在だ。僕と違って人と交わること
もなく、笑顔や愛想などの擬態を拒み、深海に沈む宝石のように沈黙を守りつづける。森野が
僕に話しかけてくるのは特定の話題のみで、それも僕のまわりにクラスメイトがいないときに
限られていた。
クラスメイトとの会話を演技だと見破ったのは、今までに森野ただ1人だ。
無表情に森野と会話をしている間だけ、僕は欺瞞的な表情づくりを破棄し、いっときの安ら
ぎを得る。それは森野と僕、どちらにとっても心地よいひややかな関係だった。
閑散とした図書室の一角で、急かされるまま携帯を取りだす。
近々と身を乗りだし、興味ぶかげに森野が数点のサムネイル画像をのぞきこんできた。スト
レートの髪がさらさらと音をたて、僕の頬をくすぐっている。
「それが事件の画像なの」
「違うよ」
イアフォンを携帯に差し、イアーピースの一方を彼女にさしだして、僕は告げる。
「2人目が死ぬまでを撮影した動画さ」
再生ボタンを押し、片手で携帯を操作しつつ森野を盗み見る。
長い髪をかきあげてイアフォンを装着した森野の瞳は、しずかな愉悦のきらめきに揺らいで
いた。僕と似通ったもの‥‥何も感じず、何にも動じない、±0℃の魂がそこにある。
流れだす映像は最初激しく手ブレし、けたたましい人々の声が入り乱れた。3階建ての校舎
を見あげる私服の生徒たちの黒々した頭が、視界を埋めつくしている。
「なんだ!」「原口先生が吊られて」「ひでぇ‥‥」「助けろよ!」
「119番が先だろ、俺らでどうやってさ!」
学生たちの怒号にまじって女子生徒の悲鳴、近所の住人らしき会話、ひきつった教師の声が
聞き取れる。
すぐにフォーカスが合い、幾多の目に視姦される女教師‥‥原口英里沙という名はニュース
で知っていた‥‥の姿があらわになった。それは誇張でもなんでもなく、視姦というほかない
凄惨さで、犯人のもくろみは明白だった。
原口英里沙は、校舎の壁に設置された丸時計の上に、爪先立ちで立っていた。
正確には立たされていた、というべきだろう。
スーツからストッキングにいたるまで着衣はズタズタに切り裂かれ、彼女はほぼ全裸だった。
その肢体を縄が搾りあげ、肘を抱くように胸を寄せあげるポーズで、手首から二の腕まで上半
身を縛りあげている。
棒のようにまっすぐ伸びきった下半身には、踵のないピンヒールが履かされていた。
開いた下肢は太ももからくるぶしまで金属のフレームで拘束されている。彼女は外壁に背を
おしつけ、丸みをおびて傾く10センチ足らずの時計のふちで懸命に爪先立ちのバランスを取り、
落下の恐怖におびえながら放置されていた。
じりじりとアップで移動するカメラが、彼女の苦悩を舐めるように映しこんでいた。
無数の瞳の前で晒しものにされた原口英里沙は、ぞっとするほど濃密な、死と背中あわせの
妖艶さをただよわせていた。息苦しいのか呼吸もせわしない。あやうい瀕死の獣をおもわせ、
肩で息をついている。
全身には汗がにじみ、肌はうっすら桜色に上気し、紅くなった頬をうつむけて必死になにか
堪えつつ口枷の嵌められた唇を噛みしめる。U字型の金具があごをこじあけ、クリップで固定
された舌は言葉を奪っていた。
ときおり甘くかぼそい悲鳴があふれだす。
女教師の絶叫は、口紅の剥げた小さな唇を割り裂く嵌口具のせいでくぐもった呻きになって
いたが、何を叫んでいるかは聞きとれた。
「いやあ‥‥やめへぇ‥‥壊れちゃ‥‥たすけ、助けて‥‥」
無常にもカメラは撮影をつづけ、ついに、ニュースでは伏せられていた核心に迫る猟奇性が
レンズの前にさらけだされる。
原口英里沙は、下腹部にバイブレーターを咥えこまされ、犯されつづけていた。
彼女は凌辱されつつ、転落死の恐怖と戦っていたのだ。
汗としずくで濡れそぼった下腹部へ、冷徹にカメラが寄っていく。太ももはパンパンに張り
つめ、痙攣さえみてとれた。あるいは媚薬の類を犯人に打たれたのか。いずれにせよ、深々と
沈みこんだバイブレーターに意識を削がれれば、待っているのは転落死だ。
運動部らしき生徒や教師が、3階の教室や屋上から手を伸ばすが届かない。取りつけられた
丸時計は窓から遠すぎ、屋上からも半階分低いデッドスペースにあるのだ。触れられた彼女が
バランスを崩す可能性もかなり高い。
ようやく、遠くから緊急車両のサイレンが近づいてくる。救助の到着を知り、ざわめきの輪
にほっと安堵が広がりだす‥‥。
異変が起きたのはそのときだった。
「だ、だ、ダメェェェ‥‥止めヘぇ‥‥!」
唐突にうめき声がうらがえり、女教師の体が震えだす。ぎょっとしたのか騒ぎがやみ、静寂
が校庭をつつむ。その場の誰もが食いいるように彼女を見ながら、彼女のためになに一つして
やれないのだ。
「しにはふない、ひにはくはい‥‥!!」
命乞いをするような絶望のまなざしで叫んだ次の瞬間、彼女は決壊した。
股間を責めるバイブレーターの後ろからドッと茶色の奔流が流れだす。どろどろの排泄物は
みるまに女教師の足場をベタベタに汚し、滑稽すぎるほど勢いよく爪先で踊った原口英里沙は
足を滑らせた。
一拍遅れて、見上げる人々から悲鳴がわきあがる。
足を裂かれつつ腰を落とした女教師は時計に股間を打ちつけ、反転して地べたまで落下した。
直後、ガクンと反動がかかり、地面から数センチのところで首から体が吊りあがる。
「死にた‥‥ぎひッッ!!」
それが、原口英里沙の最期の台詞だった。
時計から伸びきったワイヤーに縊られ、女教師は死んでいた。荒い映像では気づかぬほどの
細いロープが首に巻かれており、彼女を絞首刑に処したのだ。映像の流れはニュースで報じら
れた内容と一致していた。
ビデオの撮影者はたくみな技術を持っていたらしい。
携帯のカメラフレームからはみだすことなく、死の瞬間の絶叫と慟哭にゆがんだ女教師の顔
を最後までみとどけ、動画は彼女の死に顔で終わった。
このところ、県をまたいだ近隣のX市で、日本全国を震わす異常殺人が起きている。
これはその最初の衝撃的な瞬間を、目撃者の1人が携帯で撮影したものだ。テレビでの発表
のほかにも、この事件については様々な憶測や情報がみだれていた。
ほんの3分足らずの動画だ。
しかしここには、まぎれもない1つの死の結末が封印されている。
今月に入ってついに4件目が起きたばかりの連続猟奇殺人は、その独特な手口から、DOA
殺人と呼称されていた。
犯人に襲われるのは女性ばかりで、その場で殺されることはない。被害者は性的な暴行を受
け、特殊な状況下で放置される。そのさい犯人は必ず被害者の目につくところにD.O.Aと
書き残していた。それが『今からおまえを殺すぞ』という、犯人からの殺人予告のメッセージ
なのだ。
最初の被害者は主婦だった。
近くのオフィス街からくりだす人々で商店街が混雑しだす昼頃、山口真奈美はアーケードの
ドームを突き破り、10メートル下の路上へ墜ちてきた‥‥ボーリングのピンのように頭を下に
して。
現場は大混乱となり一時封鎖された。
死因は脳挫傷だが、縛られてバイブを挿入されていたことが後で分かった。被害者はドーム
上部の補修用足場に放置されていたらしい。目ざめた彼女は犯されていると知ってパニックに
陥り、不自由な体でもがきはじめ、足場から落ちたのだった。
DOAという謎のメッセージも公開され、その解釈をめぐって世間をにぎわせた。
2件目がこの女性教師、原口英里沙だった。
司法解剖によって、彼女は薬で眠らされ、夜中の3時ごろに放置されたらしいと判明した。
つまり、DOAの文字を見た原口英里沙は、すぐに自分が猟奇殺人の獲物にされたとさとり、
パニックを抑えてひたすら救援を待ちつづけていたのだ。
1件目と違い、朝になって教師や用務員に発見されるまで彼女が生きていられたのは、その
おかげなのだろう。たとえそれが犯人によって仕掛けられた、永遠にひとしい恐怖と凌辱の時
だとしても。
3件目の被害にあったのは帰宅途中のOLだった。
気絶させられた大野涼子は細くめだたない鋭利なワイヤーで縛りあげられ、何重にも猿轡を
噛まされて、道路わきの側溝に寝かされていた。ホームレスの多い一帯で、激しい豪雨だった
こともあり、その夜、汚れた服装で寝そべる彼女に注意をはらう者はわずかだった。
ふりそそぐ雨で目覚めた彼女は、道路からそそぎこむ濁流で溺れかけ、パニックにかられて
跳ね起きると駅へむかうサラリーマンの列へ飛びだしていった。
残念なことに、彼女は1歩も進めなかった‥‥。
立ちあがると同時に、腰から上が39の肉片に分割されていたからだ。
細切れになった大野涼子は10人ちかい通行人にぶちまけられ、痙攣する下半身だけがよろめ
きつつガードレールまで走っていって、そこで転倒した。永遠に取りもどしようのない、切断
された首は側溝に転がったままだった。
彼女の全身を縛っていたのは戦場でゲリラなどが使う首切りワイヤーで、不幸にもワイヤー
の端は側溝の蓋に結ばれていた。大野涼子はたちあがった勢いでワイヤーを引き絞り、自分自
身を輪切りにしたのだった。
さらについ先日、4件目が発覚している。
被害者、田辺ありさは女子高生だった。彼女が放置されたのは、繁華街の一画にある雑居ビ
ルの、屋上から張りだす看板の真裏だった。雑居ビルは入居者もテナントもごくわずかだった
ため、ビル屋上の、しかも死角になったそんな場所に人が監禁されているなどとは誰も気づか
なかったという。
今までの3人とは違い、彼女は濡れた革で全身を締めあげられ、棒のように固く拘束されて
いた。
折りしも梅雨明け宣言が出たばかりで、さえぎるものもない猛暑が、身動きできぬ田辺あり
さから水分を奪っていった。寝かされたビルの真下は大通りだが、水道栓のような口枷を噛ま
され、悲鳴はどこにも届かなかった。
脱水症状に苦しみつつ、それでも彼女は一日目は耐えぬいたらしい。
けれど翌日の夜明けまえ、彼女は不自由な身をよじり、ビルから飛び降りた。死を選んだ、
いや、選ばされたのだ。反動でロープを巻かれた首は折れ、死体はアスファルトに叩きつけら
れた。なぜ田辺ありさが死を選んだのか、そして詳しい死の理由などは、まだ公表されてはい
ない。
犯人は被害者を生かしてかえすつもりなどない。
それは何度となくマスコミが憤りをもって断じていた。たとえばOL殺人については、首を
ワイヤーにつながれた範囲でじっとしていたとしても、まず溺死しただろうというのが専門家
の判断だ。
したがって、DOAのメッセージは単純な「Dead or Alive」、生か死かを選べ、ではなく、
速やかに死ぬか緩慢に死ぬかを選ばせる二択だった。
どちらの選択が正しいかは、自分が犠牲者になるまで分からない。
ただし、その場、その瞬間、冷静に判断すれば、あるいは生き延びるチャンスが、この世で
生きていられる残りの時間がわずかながら伸びるかもしれない。そう思わせるのが犯人の目的
なのだ。
たしかに、これはやるせない事件だった。森野の言葉通りに。
4件の事件に共通するのは、殺人者が持ちうる飛びきりの残酷さの発露であり、そこには許
しも慰藉のかけらもない。指のなかでつぶれていく昆虫を観察している子供と同じだ。犯人は
人の死を形にして収集している。希望がじわじわ圧壊し、絶望が侵食していくありさまを熱望
するのだ。
そのありよう、死の運命をもたらすことでしか暖かみを得られない犯人の心のありように、
僕も森野もいやおうなく惹きつけられていた。かって僕が出会った殺人者も、ある瞬間、人と
してのフィルターが外れた瞳で僕を見た。無機質なその感覚は、僕にとっては、とても近しい
ものなのだ。
大多数の社会が目をそむけて関わるまいとする人の昏みに触れたがる僕らのような人間は、
ヴィクトリア朝で流行った退廃的な文化になぞらえてGOTHと呼ばれている。
森野も僕も、人の死にひきつけられてやまないGOTHだった。
冷房の効いた図書室にもかかわらず、窓越しのうだるような熱気が、僕と森野の背中におし
かぶさってくる。
額をくっつけるようにして画面に魅入っていた僕らは、ようやく顔をあげ、おたがいを見た。
森野の口元は呆けたまま、ただ瞳の色だけが失われていた。どうやらかなり気に入ってくれた
らしい。
「‥‥残酷だわ」
しばらくして、森野はようやく小声で呟いた。
発言とはうらはらに、声には陶酔とも賛嘆とも畏怖ともつかぬ余韻が残っている。
「ひどいわ。ひどい殺し方。あんなにも、いまわのきわに生を実感させて、絶望を舐めさせて
殺すなんて‥‥たまらない」
被害者を自分にだぶらせたのか、しみじみと反芻するように森野が呟く。
テレビ報道では、警察の要請もあるのだろう、ごく断片的な話題しかあがってはこなかった。
そのぶん週刊誌は大々的にDOA殺人を取りあげ、ネットではあまたの情報や画像が流れた。
実際、2件目の校庭に居合わせた者の多くが携帯で画像撮影などをしており、一部はインター
ネットでも出回っていた。ねばりづよい交渉のすえに匿名の撮影者から手に入れたこの映像も
その1つだった。
もしかしたら、犯人自身の撮影記録も、闇で流れたり取引されるのかもしれない。殺し方に
見世物的な要素が含まれていることからも、可能性は高いだろう。
「これ以上ないほど生を渇望させて、けど、決して許さない。犯人の手のひらでもてあそばれ、
転がされて、屈辱に震えながら死んでいかなきゃいけないなんて、みじめだわ」
「そうかもしれない」
「ねえ、あなたもそう思うでしょう? この連続殺人」
「どうだろう。犯人は手間をかけすぎだね」
簡潔に印象を述べると、森野からかすかに不機嫌な空気が発散された。
森野が浸るのは自由だが、僕はこの殺人に彼女ほどは没頭できない。僕が共感するのはより
シンプルな手段だ。例えばナイフの一閃であり、例えば生き埋めであり、例えば野獣のような
残忍な殺しの手口だ。
もちろん、異常な動機につき動かされる犯人を観察したり、犯行の痕跡を見いだすことを僕
は好んでいたし、そこに暗い悦びも見いだしていた。
けれど、被害者の葛藤や選択ばかりクローズアップするこの殺人は、手の込んだ複雑さに感
心するものの、妙なもどかしさを感じてしまう。犯人自身が被害者の気分でレンズをのぞいて
いるような戯劇性をおぼえるのだ。
森野と僕の決定的な違いでもあると言いかえてもいい。
すなわち、事件を目にしてどちら側に感情移入するか、の問題でもある。
イアフォンをしまい、携帯電話のスロットから動画を記録したデータ媒体を取りだし、約束
どおり森野にわたす。
「で、交換条件にきみが持ってきた情報というのは、どんな内容なの?」
「現場、見に行きましょう」
それきり黙ったので、さらに説明を求めて森野を見つめる。その僕に向け、森野がにぎった
拳をのばした。指を開くと、銀色の鍵が僕の手のひらの上に落ちる。
「立ち入り禁止になっている、4件目の雑居ビルの合鍵よ」
僕をのぞきこむような挑発的なまなざしで森野は呟き、小さく口元をほころばせた。
彼女には彼女で、特殊な情報源があるようだ。
とりあえずここまで。だいたいこんな感じでです。
長いので、毎回6レス位づつ区切って投下しようと思っています。
おつきあいいただければ幸いです。
乙!
おもしろい。ただ、人を選ぶね。
イイ(・∀・)!!
続き楽しみにしてます
おわあ、凄く良かった!!
自分はこういうの結構好きだな。ほんとの小説読んでるみたいだ。
245 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 21:24:57 ID:4kWaq8oZ
うお!
GOTHが今まさにここに!
駅前の待ち合わせ場所についたのは20分前だが、すでに森野はベンチに腰かけて待っていた。
まだ午前中だというのに、かんかん照りの夏日が広場のタイルを白く干上がらせ、噴水を虹色
に輝かせていた。
森野はうつむき加減で本を読んでいた。顔を傾けてざあと黒髪のヴェールを垂らし、陽射し
をさえぎってページをめくる。薄手の生地らしい黒いワンピースからほっそり伸びる手足は、
白亜の置物のようにつややかだった。
日焼けをした森野など想像もできないと思いながら声をかける。パタンと閉じたタイトルは、
数年前に発禁処分になった図解入りの殺人マニュアルだった。
「死んだ田辺ありさの通っていた予備校の講師が、割合近しい親戚の1人だったの。で、葬儀
の日に出られないから、代わりに献花をお願いできないかって‥‥その時に、奥井晃って人と
知り合って」
電車のなかで森野の情報源について話を聞き、少しだけ安心する。
森野に鍵をわたした奥井晃という人物は、雑居ビルに店舗を構えるテナントの一人らしい。
年は20代後半だと言う。
どういうわけか、森野夜は殺人者や異常者をひきつける特異性をもっていた。ひっそり影に
たたずむ容姿や、瞳の奥に秘めた意志の強さが、孤独にかがやく夜光石のように変質者をひき
つけてやまないのだ。
車内での会話は一度きりで、そのとき僕は被害者ごとに違う殺害方法についてどう思うかを
たずねていた。
「どこか変な感じがするわ。それぞれの殺され方がしっくりこないというか‥‥なにか欠けて
いる気がするの」
森野の感想は僕と同じだった。犯人の目で事件を追っていくと、どうも納得できない事件が
混ざっているのだ。
もう一人ぐらい殺されたら分かるかも、と森野が言い、そうだね、と僕は同意する。ひどい
ことだが、僕らは次の被害者が出る可能性を憂うどころか、早く早くと待ち望むような非人道
的なコンビだった。
「飛び降りとか、落下することにこだわっているのかしら‥‥」
森野夜はしばらく考えこんでいたが、やがて推理をあきらめ、本に顔をもどした。
寝る前に来てよかった!!まさにGOTHですね〜続き楽しみにしてます!!
灼けるような熱気に背をあぶられ、少女はゆっくりと目を覚ました。
時差ぼけめいた鈍い違和感が後頭部にあった。寝るときにはクーラーを凍えるくらいに設定
するのが習慣なのに、今朝はやけにカラダに熱がこもり、だるく汗ばんでいる。
狭苦しいスペースだった。
手も足も、首さえまるで動かすことができなかった。ベッドと壁のすきまに落ちて目覚めた
のだろうかといぶかり、もぞもぞ身じろぐ。
しだいに焦点がさだまり、そびえたつ鉄柵と看板に切りとられた抜けるような空だけが、見
あげたすべてだと気づいた。まるで、ひどく小さい棺の底からはるかな世界を見上げるように
空の青が切なく遠い。
こんなことが数日前にあったような気がして、混濁した記憶をまさぐりつつ瞳だけを動かす。
そうして少女は、作為的にたてかけられた鏡の表面に記された文字を見た。少女自身をうつし
だす鏡の表面に書きなぐられた「D.O.A」の3文字を。
‥‥かぁっと頬が熱くなっていく。
だがそれは、巷をさわがす殺人犯の署名におののいたからではなかった。より直接的な原因
で、少女は声もなく呻き、ぎしりぎしりと羞恥に身をよじらせた。
鏡に写りこむ、卑猥なみずからの裸体が理由だ。
彼女だけに見せつけようとして看板から伸びる鉄骨の一つに設置された鏡が、あさましくも
エロスにいろどられた少女の肢体を、犯人の技巧と審美眼とを、あますことなくさらけだして
いる。
少女はあおむけになり、背中に腕を束ねられて横たえられていた。
お気に入りのワンピースはずたずたで、丸裸よりも扇情的に剥かれていた。残骸になった衣
服の裂け目からなめらかな革ベルトが食いこみ、汗ばむ肌を犯して全身くまなく這いまわって
いる。
ぎっちりと硬い幅広の腕枷が、肩の下とひじのあたりに二箇所づつ嵌められ、左右の腕を胸
のわきに密着させていた。上半身はもうしわけ程度に背中とお尻だけをおおう革の奴隷装束を
着せられ、ほの白く輝きをはじく形の良い双の胸から、下腹部の淡い茂みにいたるまで、すべ
てが丸出しだった。
たわむ乳房も上下を革ベルトで絞りだされ、いびつに強調されて汗の玉を浮かべている。
ひごろ冷たく青ざめる顔もまた、無数の拘束で蹂躙されている。
肩甲骨の下までとどく長くつややかな黒髪を巻きこむように顔の下半分は革のマスクで覆わ
れている。後ろ手の手枷と首輪はベルトのどれかでつながっているらしく、暴れようとすると
首が絞まるようだった。
死の恐怖やパニックを抑えつけ、懸命に状況を把握する。
目覚めてからすでに10分近くたっていた。いますぐ殺される可能性は少ない、と判断できる。
即座に身に迫る危険はなく、かわりに、なにかしら陰湿に、緩慢な死を招くしかけが‥‥。
「‥‥!!」
ぞわりと産毛がさかだち、体がどくんと跳ねた。
ただれた感触がカラダの芯から疼きだす。下腹部から広がっていく悪寒と痙攣のさざなみが、
女ならば知らないはずもないこの感触の意味を少女に思い知らせる。ぞくぞくと震えたそれは
あらがいがたい快楽の前兆だった
これが犯人の狙いなのか。
どうやら、気を失っているあいだに、薬かなにかを塗りこめられたらしい。もっとも過敏な
部分がじくじく狂おしい焦燥感につきあげられている。うつろにみたされぬ惨めさが、さらに
刺激を生む。
「う‥‥あぐ‥‥」
下種ね‥‥そうつぶやきかけた少女の口腔には、あごが痛いほどの太さをもつ、水筒の栓の
ような形状の口枷がねじこまれていた。中央の穴にはゴム栓が詰まっている。
この器具が奴隷にフェラチオを強要するためのフェイスクラッチマスクという名称をもって
いることを、彼女はようやく思いだした‥‥それを選んで犯人に手わたしたのが、少女自身だ
ということも。
犯人との邂逅。気を失うまぎわ、少女に向かって彼女が言い放った不埒な言葉。すべて思い
だす。後ろ手に握らされた固い感触のもたらす意味も。
なんてことなの‥‥。
虚脱した敗北感におそわれ、全身から力が抜けていく。
鏡の向こうで悶える少女が、まぎれもなく悦びに身じろぐマゾ奴隷そのものだと、少女自身
認めざるをえないほど、拘束された全身が無力に甘く匂いたっている。
とほうもない屈辱と怯えが心にうずまいていた。こんな形で女の性をむきだされたことが。
抵抗もできぬまま、少女は無防備にこの境遇を受けいれてしまったのだ。
「んァ‥‥っ、ク」
急に甘い声がこぼれてしまい、少女は悔しげに自省のなさを恥じた。無防備な裸の胸をぬる
い風がなぶり、桜桃色の突起がつんとした痛みで締めつけられたのだ。
むきだしの少女の乳首は、凌辱者の手による金属のクリップで摘まれた上にチェーンで結び
あわされていた。じわりと刺激をもたらすクリップの締めつけを噛みしめていた紅蕾が、乾い
た夏の風に煽られて、はしなくも固くしこりだす。
一度意識してしまった以上、乳首を虐める鉄の感触をこらえようとすればするほど、少女は
疼痛に翻弄され、敏感な胸を充血させ、尖らせるばかりなのだ。
「なに怒ってるのよ。そうじゃないわね? 違うよね。嬉しいでしょう? もう探偵ごっこも
終わりにしていいの。だって、次の犠牲者はあなた自身なんだから‥‥さ、望みどおり快楽を
あたえて殺してあげるわ。最期のひととき、心行くまで味わいなさい」
じっくり楽しんでね‥‥死ぬまで‥‥。
にやにやと笑いかける逆光のなかの彼女をにらみつづけていた、それが最後の記憶だった。
どうしてD.O.A殺人の獲物に自分が選ばれてしまったのか。
遠くから人の喧騒や騒音がひびく。
一縷の希望を胸に、冷静に声を溜め、うわずることのないよう大きな声で助けを呼んでみる。
「ぁふ‥‥はぅへ‥‥え‥‥」
無駄だった。
ろれつのまわらない、赤子のようなみじめな喘ぎしか押しだせない。
絶望に圧されまいと身をよじり、歯が折れそうなほど力をこめて、割り裂かれた唇ふかく金
属のリングを咥えこんだまま、悲鳴のかわりに乱れた吐息をを押しだす。
もはや、うたがう余地はない。
みじめに屈服させられた少女は、あきらめとともに、なすすべのない現実を受けいれる。
森野夜‥‥彼女自身が、5人目の猟奇殺人の犠牲者だった。
例の映像が撮られた高校へは、すんなり入ることができた。今の時期は全国どこも期末後の
テスト休みだ。部活らしき私服通学の生徒にまじって守衛に頭を下げ、やすやすと校内に入り
こむ。
校舎の入り口前でたちどまり、時計を下からみあげる。
直径1メートル足らずの丸くたわんだ足場のうえで、女教師がどれほど必死だったか思いを
めぐらす。校舎の屋上からも時計をみおろした。気絶した被害者を吊り下げるのはかなりの重
労働だろう。
はためく髪を押さえ、森野は目を細めている。ときおり瞳が泳ぐのは、被害者がどのように
放置されたのか思いをめぐらせているからだ。収穫のないのは承知の上だった。森野も僕も、
死者の足跡を巡礼しているにすぎない。
汗がにじみだす熱気と湿気のなか、僕らは冷ややかな死の息吹にふれていた。
帰りぎわ、校門からすぐのところで携帯をかまえ、カメラモードで校舎の時計をみあげる。
「かなり遠くから撮られた映像みたいだね」
「遠くって、校門から?」
映像の中の前庭は近隣住民や生徒たちでごったがえしていた。そこに犯人もいたのだろうか。
詰所の守衛を気にしつつ携帯をのぞき、目測で校門の外から撮影されたらしいと見当をつけて、
僕らは高校をあとにした。
3件目の路上では、側溝に血痕めいた痕跡があると森野が主張したものの、僕は同意しなか
った。蓋を取りかえた可能性もあるし、雨で血痕は流れただろう。だが僕の話など聞かずに、
森野はしゃがみこんで熱心に路傍のしみに手を這わせ、通りすがりの会社員らの注目を集めて
いた。
森野夜は、自分という存在が周囲にあたえる影響を計算できない。少しばかり鈍感なのだ。
いくぶん不満げな森野をうながして調査を打ちきり、昼時の繁華街に向かい、オープンカフ
ェでパスタを注文した。店内には数組のカップルがおり、たいていの男は森野をちらちらと見
ていたが、やはり彼女は視線に気づいていなかった。
向かいあって食事をしつつ、森野が僕をどうみているかを考える。僕が森野をどう思うかも。
森野と僕はどういう関係なのだろうか。
思いのほかエロにてこずったので、今夜はここまでです。07〜10まで。
>>251 乙ですー。
既に全部書き上げているのではなく、書いた分を順次投下しているのかしら?
>>252 エロのとこだけ「ここでセクロス」みたいなぼんやり指定だったので、書き出したら
時間がかかってしまいました。
今回も神的に面白かったです!
GJ。
犯人の怖さはGOTHよりSAWとかに近いモンがあるな。
微妙に主人公が一歩引いてたのはそのせいだろうかとか妄想しつつ、
やっぱ面白いよ、アンタ。
今日も深夜投下してくれるのかな・・・wktk
初めてこのスレ覗いたが、ここの職人さんたちはすごいな
どの人の投下もwktkで待ってます
こういうの好きです。職人さん乙。
今夜は早め(?)に続き投下です。11〜16まで。
「本当ですか? その方とは会えますか‥‥ええ、今からでも」
携帯を切りつつ、森野は静かに興奮していた。目撃者が見つかり、会う手はずをととのえて
もらったのだ。明日の探索前に、彼をおどろかせてやれるかもしれない。
森野にとって少年は、無価値なクラスメイトのなかで唯一興味をひく対象だった。
少年はつねに明るくクラスに溶けこんでいる。学校での一日をほとんど沈黙のうちに過ごす
森野とは逆で、そんな2人の組みあわせは不思議に映るらしかった。光と影、あるいは太陽と
月。そう比較して陰口をたたく女子もいた。
けれどただ一人、森野だけが、冷え冷えとした真実を知っている。
少年の太陽はうわべだけであり、ひとたびペルソナを引き剥がせば、そこには森野さえ立ち
すくむような昏い日食の闇が広がっているのだ。そうと知りつつはなれられない。重力のよう
に惹かれていく。
少年のことをどう思っているのか、森野は自分の心をうまく言葉にできたことがなかった。
夕食はいらないからと親につげ、家を出る。
情報提供者と電話で約束したとおり、X市の待ち合わせ場所で彼女は待っていた。
「はじめまして。森野夜さんですね」
「わざわざお会いいただき、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ‥‥つらいお話になるかもしれませんが」
青ざめた顔を深々と下げると、目撃者は痛ましい顔になった。死んだ田辺ありさの友人だと
思ったらしい。いつものことだった。誰もが気の毒そうに森野を気づかい、進んで情報を提供
してくれるのだ。
同情といたわりを声に感じつつ、少しづつ打ち解けながら、とくに死のまぎわ被害者が着せ
られた拘束衣のことをつぶさに訊ねていく。
こうした相手の勘違いや想像は、つねに的外れだった。
犯人をつかまえようとは思わないし、犯人を推理しようとも思ったことさえない。
森野は、ただ、死者になりかわってみるのが好きなだけだった。
同じように拘束され、同じように放置され、死のまぎわになにを感じたのか知りたい。死に
ゆく被害者に同化したい。背徳的で後ろめたい衝動であればあるほど、甘美な誘惑をおぼえず
にはいられないのだ。
誘蛾灯に惹きよせられる羽虫のように、森野は、田辺ありさになりかわろうとしていた。
人気のない屋上にはすでに暗い空が広がり、ところどころに星がまたたいていた。
「で、今度は、これを着せて欲しいっていうの?」
「お願いします。どうしても‥‥彼女の気持ちが知りたいんです」
「本気なんだ」
森野の言葉を耳にしてふうとため息をつき、彼女は肩をすくめる。それでも出会ったばかり
のときに比べ、声には気安さと親しみが混じっていた。あるいは森野の執着に共感でも抱いた
のだろうか。
あのあと、森野は頼みこんで彼女とともにSMショップへ向かい、拘束具を買いあさった。
彼女の目で見てそろえた、すべて田口ありさが着せられたものと同じ‥‥寸分たがわぬ市販品
だ。
「風変わりだけど、買ったのはあなた。それはかまわないわ。でもね、脱ぐときはどうするの。
それに、こんなとこまで私をつれてきて‥‥ついてきた私もかなり酔狂かしら」
「それは、いいんです」
「え? ‥‥いいって、こんなもの着せられたままでうちに帰りたいの?」
鏡のような無表情で、森野はこくりとうなずく。
どのみち拘束衣だけを持って帰っても、知識のない彼女一人では身に着けようがない。親に
手伝わせるのは論外だ。となれば結論はひとつだった。
翌日、少年と会うときのことを想像する。
なにも知らない少年は、いつものようにベンチに座る森野に声をかけるだろう。彼女は立ち
上がり、肩にはおったジャケットをすべりおとす‥‥。
そのときの少年のおどろきの表情を、そしてそれ以上の感情をあばきだしたいのだ。
子供じみていると思う。けれど、彼を挑発したいという誘惑にあらがうことはできなかった。
ずっと昔、双子の妹と死体ごっこや悪質ないたずらをして遊んだことを思いだす。
「‥‥はあ」
なんだかな。そうぼやきつつも、彼女は協力してくれた。
「ンッ」
カチリと施錠された瞬間、かすかな呻きがもれる。
立ったまま両手を背中にそろえて組み、拘束された手枷の冷たさに感じ入る。
従順にからだを預け、森野は無数の皮具を装着されていった。
革ベルトがぎりぎり絞られていく。そのきつさに声をあふれさせつつ、皮具が引き締められ、
疼痛とともに柔肌がくびれ、次々バックルが留められていく。自由を奪われ、田辺ありさと一
体化していく自分のカラダを、どこか酔ったような瞳で森野は見下ろしていた。
無力にされていくことへの焦り。もはや自分ではほどけなくなったという恐怖。彼女のなす
がままであるという認識。同じことを田口ありさは感じていたのだろう。イメージにおぼれ、
カラダの芯が熱くなっていく。
急に下腹部をするりと指の腹でさわられ、森野は吐息とも声ともつかぬものを洩らした。
「あら‥‥湿ってきたかしら」
くすくす笑い。
そうした恥ずかしささえ屈辱と共に享受する‥‥田口ありさがそうであったように。
首輪をかっちり嵌められ、あごをつままれ、ひどく暴力的で複雑な口枷が唇にあてがわれる。
あごが外れそうなサイズのリングに、思わずたじろぐ。
「口をあけて」
ここまでは頼んでいなかった。ただ、拘束衣を着せてくれるよう頼んだだけだ。
けれど‥‥。
ぞくりとしたものをおぼえつつ、森野は懸命に小さな口をひらいて太い金属の筒を咥えだす。
歯の位置を調節し、リングの中央から森野の舌をつまんで引きだしながら、なにげなく彼女は
つぶやいた。
「田辺ありさを殺したときも、こんな風に最期に口枷を噛ませながら囁いてあげたのよね‥‥
私が真犯人だって」
「‥‥? ‥‥‥‥!?」
森野の瞳孔が大きくみひらかれる。
けれど、なにを告げるより早く、柔らかな唇をこじあけた無慈悲で固い金属の円筒が、深々
と森野の口腔にねじこまれていった。
「私たちは愛しあっていたから、あの子、最後まで涙目で訴えていたわ‥‥まさか、死体愛好
家のあなたが、女性同士の関係がおかしいなんて言わないわよね。あの子には屈辱をあたえて
殺してあげたから。愛おしい田辺ありさにはね」
暴れようともがきだし、戦慄する。
森野のカラダには、自由にできるところなど、何一つなかったからだ。袋詰めされたように
全身がのたうつばかりで彼女の腕から逃れられない。
必死になり言葉をつむごうとするが、喉のあたりまで咥えこまされた口枷がそれを許さない。
「さて、あなたはどうしましょうか‥‥森野夜」
きゃしゃな全身を揺すってにらみつける森野を、色のない瞳がみおろしている。
まばゆい光が目を射り‥‥。
「あっ、んぁ‥‥!!」
拘束をほどこされた全身を海老ぞりに弾ませ、森野夜は目覚めた。
どうやら、しばらく気を失って白昼夢をみていたらしい。微笑みつつ無抵抗のカラダをなで
まわす手の感触がまざまざと肌によみがえり、たまらず裸身を揉みねじる。それでも、微細な
刺激はやむどころか、さらに嬲るようにカラダをほてらせていく。
状況は朝からまったく変わってなかった。
ビル外壁のはざまに寝かされ、裸身を括りあげる革はゆるみもせず、完全に放置されたまま。
締めつけはきつくなるばかりで、這いずることさえ拘束衣のきしみと圧倒的な絶望がさらに
森野の心をひたす。どこか倒錯した、マゾめいて被虐的な気分を昂ぶらせていく。
犯人の獲物にされ、死を待つばかりのいけにえの少女。
これこそ、森野自身がもっとも強く願い、もっとも味わってみたかった展開ではなかったか。
確実な死とひきかえに、ただ一度きり堪能を許される被害者の目線。
いくどとなく‥‥。
くりかえしくりかえし、没入してきた空想の世界でのこと。
人をはばむ山林の奥で、だれもいない廃墟の校舎で、白々とした肌を無残にナイフで切り裂
かれ、痛みにむせびながら生きたまま解体されていくありようを‥‥
死んでなお安息を許されず、細切れにされ、芸術品のように自分の首が、腕が、乳房が、犯
人の手によってうやうやしく展示されていくところを‥‥
喉がかれるまで悲鳴をあげつづけ、ついに誰にも聞き届けられず、朦朧としたあたまで飛び
降りを選ばざるをえないその瞬間を‥‥
まさしく、彼女自身がいま、身を持って体験しているのだから。
「‥‥‥‥‥‥‥‥ッッ!?」
口枷の奥からぷすりと呼気が洩れ、青白い頬に微かな甘みがさす。
色とも艶ともみえぬそれは、しかし、顔の下半分をおおいつくす黒革のマスクとの対比で、
いやおう強調され、鏡うつしとなって森野を辱めた。
感じていない‥‥違う、だって‥‥これは、卑劣な薬をぬられただけで‥‥。
動くたびに、きつ‥‥く、ベルトにこすられて、真っ赤にただれて‥‥。
ひりひりして、灼けるようだから‥‥。こんな、太ももなんかこすってないで‥‥、指さえ
使えたら、思いきり‥‥。
思いきり‥‥‥なにを、思いきり‥‥‥!?
「‥‥!」
またしても、屈辱で頬が赤くなるのをとめられない。
堂々めぐりの思考は、身動きできない分だけ、過敏なカラダを意識させてしまう。薬の効果
だけではない、ぬらりとしたしずくが下腹部からあふれかけているのを、彼女はまだ気づいて
いない。
「ン‥‥ぅ、ぁあ‥‥。」
声をだすことで気をまぎわらすにも限度があった。
いやらしく皮具にくびりだされた股間が、緊めあげる拘束をちぎりそうなほどに熱く激しく
疼き、もどかしさで灼けつくようだった。
ぷっくりと充血したそこは3本の革ベルトで締め上げられている。
ひそやかな土手の両脇に食いこんだ革ベルトは、羞恥の源泉たる肉のふくらみにことさら血
を集めるとともに、左右から盛りあげて、はしたなく女の部分を誇示させている。
ひどくわいせつな形にゆがみ、左右のベルトに引っぱられてほころびだすいまだ無地の桜色
に染まったクレヴァスには、揺籃を剥かれた肉芽を痛々しくも快楽にまぶして革ベルトが食い
入り、じっとりとしみだす透明なしずくにまみれて、深々と肉の裂け目にもぐりこみ、消えて
いく。
しかも中央のベルトだけ裏地がケバだっており、この残酷な仕掛けは身じろぐたびに森野を
責めあげ、甘く擦りたてては苦しめるのだ。
意地悪くカラダをあおりたて、しだいに理性さえも愉悦の波に足を洗われだすようだ。
とろけかけていた意識に、少年のことが頭をよぎる。
どれほど忘我の境地であるとしても、死をうけいれるわけにはいかない。彼は必ず来るのだ。
根拠もなく、そう思う。できるなら、そのときは死体ではなく生きて言葉をかわしたい。
‥‥だから。
覚悟を決め、彼女は全身を揺すって残酷な革にあらがいはじめる。
とたんに吐息は鼻声となり、甘い呻きとなり、嬌声に堕ちて森野をなぶりだす。一息ごとに、
腰を揺するごとに、上気したむきだしの乳房を震わせるごとに、囚われのカラダを卑猥な衝撃
がつきぬけ、神経が溶かしていく。
これは自分との、くるおしい快楽とぎりぎりの理性の戦いなのだ。
「ンァ、あ‥‥ン、ク、ンク‥‥」
そうして。
敗北は、あっという間だった。
小さなアクメの波が森野をどろどろに突き崩し、わけもわからず濁流に押し流す。
喘ぎ声がリズミカルになり、裸身をふるわせるたび、痛みと圧迫感と疼痛のまじったグチャ
グチャの刺激が森野をこわしていく。
自由にならない。コントロール不能な官能が意識をむしばんでいく。たまらない。腰だけが
釣りあげられたようにひくひくとブリッジでもするように跳ねおどり、しかも、その滑稽さと
うらはらに子宮をむしばむ切羽詰った焦燥感は、いやされるどころかさらに渇きをましていく。
じわじわ被虐的になぶられ殺されていく。
無慈悲な現実にカラダを犯され、死と背中合わせの凌辱に感じきり、ふしだらにも、逃がれ
られぬ死の足先をしゃぶりながら、森野夜はますますあさましく発情させられていくのだ。
満たされない‥‥。
欲しい‥‥。
もっといじられたい。深くまで犯されて、ぐちゃぐちゃにされたい‥‥‥‥。
焦らすくらいなら、いっそ、一思いに殺して‥‥‥‥!
考えてみれば当然のこと。およそ自分で慰めることもまれな少女が、周到な犯人の責めに、
ただの決意であらがえるはずもないのだ。しかも、もっとも感じる状況に追いこまれて、意識
が高ぶらないわけがないのだ。
快楽の炎と炎天の双方に裸身をあぶり理性をけずられ、革拘束の下でとめどなく汗をながし
つつ、この数日のこと、いつも行動を共にする少年との事件めぐりを思いかえす。
それすら、胸の谷間にうちつけられたニップルチェーンのみだらな衝撃で霧散し、真っ白に
焼けきれて、森野はひたすらに身もだえ、不自由に蕩けだしていた‥‥。
午後の日ざしがいちだんときつくなったころ、巨大な清涼飲料水の広告がせりだす雑居ビル
にたどりついた。
ワンピースが汚れるのも気にせず森野は横の路地に入っていき、情報提供者からもらった鍵
で勝手口をあけた。人気のないビル内にも熱気がこもっており、閉口しつつ階段を上っていく。
靴音だけが鈍くこだました。
屋上の扉にも鍵がかかっていた。出られないじゃないかと文句をつけた僕に、森野は片頬で
うすく笑みを浮かべてみせ、勝手口で使った鍵をふたたび差しこんで回す。
錆の浮きあがった扉が、軋んで開いた。
「ここの屋上は、入居したテナントの共有スペースになっているらしいの」
説明しつつ、森野は思わぬまぶしさに顔をしかめた。
屋上に踏みだした僕たちは、直上からの日照りとビル風にまかれ、しばし言葉をうしなった。
そこは、色あせたコンクリートの墓地だった。
6階建ての雑居ビルは、通りに面した側を3メートルほどの看板で目隠しされ、残り三方を
のっぺりした建物の外壁で囲まれている。周囲から屋上を見おろせる窓は数えるほどで、繁華
街のなかここだけが孤立していた。
現場検証のあとだろう、血痕らしき黒ずみや足跡など屋上のいたるところがチョークで丸く
記されている。濃密な絶望と死の残滓が、いまだ強く匂っているようだ。
誘われるように森野が看板へと近寄っていく。
「なんてこと‥‥」
つぶやく彼女の横にならび、大通りを見おろして僕は納得した。
路上には人々が行きかい、たえず喧騒がとどく。だというのに、手すりの向こう、50センチ
ほどのはざまは、看板と鉄柵で視界をうばわれ、細長く切りとられた空と照りつける太陽しか
見えないのだ。
このせまく小さな棺に記されたチョークの人型に、僕らは魅入られていた。
田辺ありさは、ここで朦朧とした意識のまま助けを求めつづけたのだ。ひっきりなしに騒音
が耳に入り、人が行きかい、けれど誰もおとずれず、誰にも気づかれず、じわじわ死んでいく。
しだいに日が落ち、静寂の恐怖がにじりよってくるのを、田辺ありさはどんな思いで目にした
だろう。
あるいは、森野には、この気持ちが分かるのだろうか?
「‥‥そう。そこで被害者が放置されてたんだ。生きたまま、袋詰めにされてね」
静寂をやぶり、屋上の扉がきしんだ。
初めて耳にする声に、僕と森野はふりかえる。
「おーおー、今日も美人だねえ、森野さんは。その子が例の彼氏か。へえー」
「あ‥‥いえ、その、彼は友達で‥‥」
「おいおい、いいの? そりゃあ、彼氏いないほうが嬉しいけど」
二人の会話よりも、僕はむしろ珍しく狼狽をあらわにした森野の表情に気をとられていた。
あわてたような、けれど否定しかねる風情で言葉をさがしていた森野が、僕の視線に気づいて
むっと咎めだてる非難のまなざしをよこす。
「さっき話したテナントの、奥井晃さん。鍵をくれた人。こっちの彼は‥‥」
進みでてあいさつをかわす。奥井晃は笑いだし、可愛い子だねえ、と僕を評した。一瞬ぎょ
っとしたが、森野の顔から、僕が無意識に冗談を口にしたのだと気づく。森野以外の相手に本
当の僕を知られるのは好ましいことではない。ここは陽気な同級生としてふるまうことにしよ
うと決める。
まぶしそうに手をかざす奥井晃は背が高く、さばけた服装だった。衿を立てた格子柄のYシ
ャツの胸元をだるそうにくつろげ、あせたジーンズをはいている。遠慮のない目でじろじろと
僕らをながめ、愉快そうな笑みを作った。
動機についてどう思いますかと、あたりさわりなくたずねてみる。
そうだねえと奥井晃は首をひねっていたが、ひとくさり警察への文句をならべたてた。事情
聴取をうけたときの対応を快く思ってないようだ。
「話を聞いたら森野さんは猟奇犯罪にすごく詳しいし、被害者には悪いけど私だって異常者の
心理には興味あるんだ。これだけやってのけた真犯人がどんな奴か、想像すると胸がわくわく
するね。だろう?」
「テナントに入っているだけで事情聴取されたんですか。警察も本腰入れていますね」
とたんに奥井晃は不機嫌になった。
「そうじゃない‥‥うちがSMショップだったからさ。さいわい先月は商材の買付で海外だっ
たし、帰国も2人目が死んだあとだから、容疑者扱いはされずにすんだがね」
ああ、と納得する。
被害者間に接点はなく、怨恨などの動機もみあたらない。となればロープや猿轡、バイブ等、
遺留品に警察の目が向くのは当然だった。雑居ビルには奥井晃の経営するアダルトショップの
2号店が入っており、相当調べられたという。
もっとも、どの品も大量に出まわるものばかりで、犯人特定には結びつかなかったようだ。
森野は会話に参加していなかった。
手すりのあいだから手を伸ばし、残されたぬくもりでも探るようにチョークの人型を丹念に
指でなぞっている。黒髪のなびく背中を眺め、にやりと僕を肘でこづいた奥井晃は思わぬこと
を口にした。
「どうして田辺ありさがみずから死を選んだか、きみたちは知っていたっけ」
「いえ。もしかしてご存知なんですか?」
少しおどろきながら返事をする。初耳だった。規制がきびしいのか、彼女の死因については
ネットで知りえた情報も少なく、映像をくれた例の情報提供者もくわしくは知らない風だった
からだ。
森野もまた、全身で注意を傾け、こちらに聞き入っている。
大仰にちょっと間をおくと、目に嗜虐的な色をためて奥井晃は話しだした。
「スカトロって分かるかな。死んだ彼女な、動けなくされて、口とお尻をホースでつながれて
放置されていたんだ」
どういうことか分かるかい? とたずねてくる。
排泄器官と口を連結され、自由を奪われたまま丸二日放置される。その様子を頭で想像し、
そして唐突に僕は理解した。
‥‥だから、田辺ありさは二日目に飛び降りたのだ。
一日目は懸命に排泄欲求をこらえたのだろう。けれど、体から水分を奪われ、正常な理性を
うしなって、そういう状況下で排泄物が逆流してきたら、それは発作的な自殺へのトリガーに
なるかもしれない。
「そのとおり。背中は熱したコンクリート、革の拘束具は乾いてどんどん締まりだす。脱水症
状でもうろうとなって、さらに自分がひりだす汚物まで咀嚼しなきゃいけない。極限の恥辱だ
ね。普通はもたないさ」
口元をちいさくゆがめて被害者の死にざまを語る奥井晃も、ある種のGOTHだった。淡々
と死に触れたがる僕や森野とは違うが、奥井晃もまた、こわれた死に様にひかれているのだと
感じる。
「数日は汚物の匂いがビル前の路上にこもってね。閉口したよ」
「‥‥なるほど。ところで、奥井さんのお店を見せてもらっていいですか。僕はSMグッズを
見たことがないので、被害者がどういう目に遭わされたのか、どうもつかめないんです」
「かまわんよ。おいで」
階段をおりかけた僕は一度引きかえし、森野の腕をつかむと、手すりから指をひきはがして
こちらにひきよせた。森野はおとなしく僕についてきたが、視線は宙をただよっており、白く
あざやかな鉄柵のあとが、手のひらに残っていた。
あとから書き上げたSMエロスが本編から浮いている気もしますが、気にシナイ(・∀・)!!
これでだいたい半分くらい。次の次あたりで解決編です。
うおおおぉ!超GJ!!
GJGJGJGJ!!!!
エロいね〜良いね〜
GOTHらしさもすごく出てるし、これからにも期待!
キテター━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!すげえ!!GJ!
続きが楽しみだ!
GJ!!!
よくこんな酷い殺し方が思い浮かぶなあーと感心
原作に負けてないキガス
はっと気づいたとき、すでに太陽は中天にかかっていた。陽射しは強くなり、灼きつくす夏
日がじりじりと囚われの森野夜をあぶっていく。
マラソン直後のようにどくどくと動悸がみだれ、波打っている。
それが、とろ火で煮込むように長く断続的にイかされつづけたせいだと気づき、ぎりり、と
森野は、唇にねじこまれた金属の口枷をきつく噛みしめた。
まんまと犯人のわなにはめられて、惨めにも連続したアクメにまで追いこまれてしまった。
3時間ものあいだ被虐に溺れ、意識が混濁していたらしい。
この絶望的な革拘束から抜けだすどころか、いたずらに体力を消耗するだけで終わったのだ。
肌に食い入る革拘束のベルトは、どれも最初から水をかぶって重く濡れていた。
気絶しないよう、涼を取らせる目的だったのかしら‥‥。
けれど日が高くなったここにきて、森野は身をもって見込みの甘さを思い知る。水を吸った
革紐は乾きだし、獲物にまきついた大蛇のように収縮しはじめ、汗みずくの裸身はミリ単位で
締まっていく。
無残な革緊縛がもたらす圧迫としびれをこらえきれず、意に反して森野のカラダは強制的に
悶えさせられてしまうのだ。
またしてもこみ上げるマゾヒスティックな官能を、口枷に歯を立ててやりすごす。
刺激はとどまることを知らず、飽くこともなく、一波ごとに激しく狂おしく打ち寄せてくる。
そうして、溺れても、溺れまいとあがいても、森野を待つのは終わりのない色責めなのだ。
いまや、森野は犯人のねらいを正しく理解していた。
”快楽をあたえて殺す”‥‥その意味。
どれほど懸命に全身をのたうたせ、あらんかぎりに快楽をむさぼっても‥‥。
拘束された森野夜のカラダは、決して最後までイくことを許されず、エクスタシーの直前で
寸止めのまま、焦らされっぱなしなのだ。
ひりひり火照らされたまま、果てのない無間地獄。
瞳がうつろになり、欲望に突き動かされてぶざまに腰をふり、心まで本物の奴隷に堕とされ、
マゾになりきって何度も自失し‥‥けれど、その短いアクメはさらに森野の下半身を疼かせる
ばかりで、けっして届きえないのだ。
恥辱にまみれてイかされてゆく一瞬一瞬、意識は遠のく。
欲望をおさえきれず、屈辱を舐めながら犯人のあやつり人形となり、情欲に酔う。
縛りあげられた苦痛におぼれ、不自由な裸身を味わいつくす。
けれど、同じ女なればこそか、犯人の仕掛けはぎりぎりまで森野を追いあげていきながら、
最後の最後で快楽をきわめさせてくれない。頂上にとどかない。
目前に限界の悦びを見せつけられながら、どうやっても、とどかないのだ‥‥。
森野の瞳に小さな涙が浮かび、落ちていく。
「‥‥ン、ンク」
ちり‥‥ちゃり‥‥と澄んだ金属の響きが森野を震えさせる。
我慢できずに身じろぐたび、敏感に震えるなだらかな乳房のうえでチェーンが転げまわり、
その重量に引かれてニップルチェーンがきつい疼痛を乳首に加えてくるのだ。
一撃ごとに鈍く衝撃をともなう痛み。
快楽のほどを誇示するかのようにツンといやらしく尖りきった桜色の突起は、冷たい金属に
甘噛みされて、とほうもない悦びを少女の体内にそそぎこんでくる。あらがえばあらがうほど
チェーンは動きまわり、つながれた二つの乳首は少女自身の煩悶と連動して、こりこりきつく
揉みしだかれていく。
「ン‥‥ぁン、ひァ、ぁァァ‥‥ン」
焼けつく空気を押しだすようにもれるかぼそい呼吸は、大気よりなお熱く濡れていた。
快楽を反芻し、ためつすがめつ楽しむために、意識せずに鼻にかかったあえぎ声があふれて
しまう。
いつのまにか、玉のような汗が一面にふきだし、裸身を這っていた。
ちりちり焦がされていく柔肌を、小さな粒がつううと舐めるように転がりおちていく。触れ
るか触れないかのタッチで、そっと肌の輪郭を指でなぞられていく。思わぬくぼみをくすぐら
れ、乳房をあやすような意地の悪い刷毛のひとなで。
払いのけられないひとしずくひとしずくのペッティングが、森野を惑乱させ、狂わせていく。
開いた毛穴の奥までなぶられる感触に、かぁぁっと裸身が燃えあがるのだ。
お尻には重くだるい感触があった。
脂汗がでるほど太い異物が秘めたのすぼまりを抉りぬきすぽんと嵌りこんでいる感触。田辺
ありさがはめられた排泄用のチューブとは逆のしかけ。これは、そのごつごつした形状とエラ
の這ったカサで、後ろの穴を犯す忌まわしい擬似男根なのだ。
異物感は、尾てい骨のあたりまで、張りつめた背骨の下をみっちり埋めつくす。
本来激痛を覚えるはずのすぼまりは、薬のせいでほぐれていた。
たえまなく腸壁をこじる異物感のなまなましさが不快そのものなのに、無意識のうちに後ろ
の穴に力をかけたり抜いたり、きゅうきゅうと窄め、そのたびに揺れ動くバイブのいやらしい
ばかりの太さに目を潤ませてしまう。
凌辱のすべてが悩ましく、初めての苦悩で少女を圧倒し、打ちのめした。
しかもこれらすべては、おろかにも犯人の手中へ飛びこんだ森野自身が選び、犯人みずから
検分した、田口ありさとおそろいの奴隷装束なのだ。
捕らわれの屈辱と、快楽のジレンマが、彼女をさらに乱れさせていく。
快楽をあたえて殺す、そう告げた犯人を思いだす。
事実、この痒みとくるおしい火照りはすでに半日以上つづいており、悩ましい刺激を頭から
追いだそうと努めれば努めるほど、いっそうみだらに下腹部を充血させ、ただれきったクレヴ
ァス奥のぬめったひだをひくひく収縮させてしまう。
風にのって下から届く喧騒が遠く、森野をここちよい絶望でみたしていた。
きっとこんな風に感じていたのね。そう思う。
田辺ありさも喧騒を耳にし、必死に助けを求めた。そして、無残にも願いはとどかなかった。
希望は絶望に打ち砕かれ、失意のうちに田辺ありさは死を選んだ。
彼女も同じなのだ。
これだけ犯人の罠が周到である以上、森野夜も必ず田辺ありさと同じ運命をたどるだろう。
万が一はない。運よく通行人に発見され、助かる可能性は0に近い。
こうして凌辱の悦びに目覚め、奴隷の欲情に昂ぶらされたまま、あきらめを胸に抱いてじわ
じわと死んでいく。
それを嫌い、田辺ありさは、せめて自由意志で落下を選んだのか‥‥。
顔を傾ける。左側には外壁からはりだす看板があり、その隙間から落ちれば、一瞬でアスフ
ァルトに叩きつけられるだろう。
一応は転落防止なのか、首輪と足枷からのびた鎖が、小さい箱のような金具で、手すり側の
鎖とつながっている。ただ、鎖は意外に細い。どれほど森野がきゃしゃだといっても少女一人
の体重を支えきれるかどうか断言はできない。
死を選ぶのは簡単だった。
リモコンのスイッチは後ろ手に握らされ、ガムテープで巻かれた手の中にある。犯人は立ち
さりぎわ、堪えきれなくなったらそれを使えと、含み笑いとともに森野に教えた。
D.O.A‥‥速やかに死ぬか、緩やかに死ぬか。
死に方を選ばせるのが犯人の愉しみだ。ならば、このスイッチだけは押してはならない。
押した瞬間、彼女のカラダはエクスタシーの頂上をきわめるだろう。そして、どんな仕掛け
にせよ、そこで死ぬのだ。
死とひきかえにただ一度あたえられる極限の絶頂。どれだけ甘美なものかを思い、森野夜の
カラダはぶるりと震えた。間違ってスイッチを押しこまぬよう、汗でぬるぬるになった手から
意識をはなさないようにする。
口惜しいことに、いまの森野にはなんら反撃の手段も、逃れる手だてもなかった。
犯人の姦計どおりに、快楽に負けてすみやかな死をえらぶか。
全身を甘くただれさせ、最期まであらがいながら、衰弱しきって死んでいくか。
「んぁ‥‥ぅ、いぉ、ン‥‥」
大丈夫、大丈夫だから‥‥気が遠くなるたびに、少年のことを思いだす。
かならず彼が来てくれる。それは疑ってなどいない。
けれど‥‥。
少年の、闇一色にそまった本来の瞳の色を思いおこし、森野夜の背中がぞくりとあわだつ。
ほんのときおり、たとえば大地にばらまかれた被害者の残骸を目にしたときなど、少年は肉食
科の獣のような瞳をすることがあった。
獣欲に餓えた瞳とはちがう。冷静に獲物の力を計算するような、冷たい瞳だ。
めったにはないが、森野自身がその目で見られていることもあった。といっても、背中ごし
の気配で感じるだけだ。少年は森野のまえでその目を見せることはない。確実にしとめられる
時にしか殺気を見せない、孤高なサバンナの王のように。
森野をみつけ、犯人に打ち勝ったあとで、少年は森野を助けてくれるのだろうか。
それとも‥‥。
瞳を閉じ、森野は甘くやるせない物思いにふけった。
‥‥それでも、少なくとも、少年は死のまぎわまで、彼女の最期を看取ってくれるだろう。
雑居ビル4階の一室で、森野から鍵を返してもらった奥井晃がドアをあける。
「私はネットもパソコンも嫌いだが、従業員がくわしいのでね。最近はそちらの方が売れるし、
ほとんどネット専売に移行しているんだ」
店内の狭さをいいわけするように手をひろげ、手錠や革ムチやコスチュームなどの展示品を
さししめす。カウンターの店員がこちらに気づいてたちあがったが、奥井晃は手をふって下が
らせた。
いきいきと、ときに尊大な身ぶりでグッズを紹介する奥井晃にとって、この店舗は仕事と趣
味の両立のようだ。金属手錠の意外な重さにおどろき、ごわつく麻縄をさわり、被害者の自由
を奪っていく犯人をイメージしてみる。
自由を奪う、奪われることに快楽をおぼえるのがSMなら、あるいはこの手のマニアも僕や
森野と近い位置にいるのかもしれない。
奥井晃のレクチャーが終わったところで、バラバラの殺害方法についてどう思うかたずねて
みる。
「そういや、こいつは殺人犯のくせに刃物や凶器をつかわないな。そこがヒントかもしれない」
「面白い着眼点ですね。でも、たしか3件目が」
「あ‥‥首切りワイヤーか。ふむ、じゃあどうなるんだろう」
首をひねる奥井晃に礼をのべて、店の奥に入っていった森野を追いかける。
森野はカウンターの前に立っていた。
沁みるような病的な青白いうなじに革の首輪を食いこませ、店員の手を借りて、背中にねじ
あげた両手首を革の拘束具で締めあげられていくところだった。カチリと留め金がロックされ、
不自由な手枷を軋ませながら、感じいったようにまぶたを伏せている。
なにをしているのと問いかけると、うっすらとした死化粧のような笑みがむけられた。
「この締まる感触、悪くないわ。でも、紐のほうが好き」
「紐?」
「首吊り用の紐よ」
どうやら森野の中では首輪と首吊りの紐が同じカテゴリに入るらしい。あまり追求はせず、
一歩下がって彼女のできばえを眺める。森野もそれを望むかのように、拘束された腕をよじり、
黒いワンピースをひるがえしてみせた。
「これはこれは‥‥すばらしい。森野ちゃんには本当に拘束具が似合うね。商品モデルになっ
て欲しいぐらいだ」
いつのまにか瞳を輝かせた奥井晃が僕の後ろに立っていた。さん付けがちゃん付けに変わり、
サディストの目に変容している。奥井晃から視線をもどした僕は、そろそろ帰ろうかと森野を
うながした。
「え、もう帰るのかい? 残念だな」
本当に無念そうに奥井晃がつぶやき、寡黙な店員が首輪から垂れるリードを僕につきだす。
僕の困惑は二重の意味だった。革製のリードの先には、びっくりするぐらいの値札がついてい
たのだ。
「寺井君、野暮はやめたまえ。そのグッズは二つとも森野さんにプレゼントするんだ」
「‥‥」
オーナーにたしなめられて店員はうなだれ、僕はリードを取ろうか取るまいか迷っている。
つぶやくような森野の声が追い打ちをかけてきた。
「臆したのかしら?」
雑居ビルを後にするころ、夏の夜空はすっかりうすぐらくなっていた。
この町のどこかに猟奇殺人犯がひそんでいる。
そう思うと、周囲の視線が気になってしかたなかった。もちろん、それだけが理由ではない。
そろそろリードを離してもいいですかと丁重におうかがいをたてる。いや、とにべもない拒絶
がかえってきた。
ため息をつき、首輪を嵌められた森野にふりかえって目立ちすぎだと抗議する。
「いちいち通行人を気にする人なんかいないわよ。私はこの不自由な感触をもう少し味わって
いたいの」
森野は冷ややかに僕を睨んだ。背中でくくられた両手をきしりきしり弾ませ、首輪のリード
を引かれるがまま後からついてくるわりに、女王様のような尊大な態度だ。
「大丈夫。何かあったら、むりやり襲われたっていうから」
すでにこんなやりとりが数回はくりかえされている。警官に出会わず駅にたどりつけること
を僕は願った。この分だと、次の探索はさらに大変なことになりそうだ。奥井晃と森野のやり
とりのつづきを思いだす。
「このあたりには、他にSMショップはあります?」
「あるよ。駅をはさんだホテル街の方にね。うちの本店もそっちにある。けど気をつけた方が
いいねえ。暴力団がらみだったり無届で営業してるアダルトショップも多いから」
「そう‥‥」
森野はひどく残念そうだったが、奥井晃の言葉が他の店に客を逃がさないための方便である
可能性はまったく考慮していなかった
帰りぎわにふと思いたち、事件ごとの殺害方法がバラバラなことをどう思いますか、と店員
にたずねる。PCで作業中だった手を休め、彼は僕と目をあわせた。感情を浮かべずぼんやり
つぶやく。
「‥‥誰かに、見せつけたいのではないでしょうか」
寡黙な店員と熱心にしゃべる奥井晃のコンビは、森野と僕の関係を連想させた。奥井晃がサ
ドなら、あの店員はマゾなのだろうか。想像して少し気分が悪くなる。僕ら自身にそのイメー
ジを重ねることは、さらにお断りだった。
帰りの電車でも森野は首輪をはずさず、革の手枷をもてあそんでいた。
少しだけ彼女の汗を吸ってなじんだ器具を、不思議な思いでながめる。およそ殺人には使え
そうもない道具であえて被害者を死に至らしめる。それがまだ見ぬ殺人犯の行動原理なのかも
しれない。
森野は、SMショップで僕がみせた動揺がよほど楽しかったのか、二日後にまた探索しまし
ょうと一方的に約束を取り決め、その日は駅のホームで別れた。
二度目の探索にでかける日の朝早く、携帯へのメール着信を告げる音で、僕は起こされた。
『2・3日のあいだ、探索は中止しましょう』
眠たい目を何度かこすり、じゃあね**君、と僕の名が記されたメールを、僕は訝しみつつ
見た。彼女らしくないし、これではなんだかよく分からない。こちらから電話をかけなおすが
不通だった。
「おはよう、兄さん」
朝のリビングに下りていくと妹の桜が話しかけてきた。昼から塾に通うので、午前中は予習
するのだという。兄さんも出るの、と聞かれ、予定がキャンセルになったと言うと、桜の目に
好奇心がやどった。
「もしかして、森野さん?」
僕がおどろいた顔をしていたのだろう。桜がしてやったりという表情になる。桜には、以前
森野と買い物に出かけたところを見られていた。そういう関係ではないと否定する僕の反応が
面白いのか、桜はこの話題を好むのだ。
「昨日、森野さんを見かけたわ‥‥男の人と一緒だった」
桜の話によれば、昨日友達の家に遊びにいった帰り、森野夜が背の高いすらりとした男性と
一緒に繁華街の高級そうな喫茶店へ入っていくのを見かけたという。友達の家はDOA殺人の
起きているX市だった。桜の話を聞くかぎり、容姿や風体からも、もう一人は奥井晃の可能性
が高い。
彼女を放っておいていいの? と意地悪くせまる桜に、それは誤解だとわかりやすく説明し、
論破されてちょっとむくれた彼女をあしらいつつ朝食をすませた。
これはどういうことなのだろう。
普通に考えれば、森野は情報提供者である奥井晃に呼びだされたのだろう。それ以外でX市
まで電車をのりついで向かう理由はないし、かりに森野自身が新しい情報を手に入れたのなら、
教える側が隣の県まで出かけるはずがないからだ。しかし、そうだとすれば探索を止めようと
言いだすのは不可解だ。新たに仕入れた情報で僕をびっくりさせる機会を、森野が逃がすわけ
がない。
と、いうことは‥‥。
変質者を惹きつける森野夜の特質を思いだす。一昨日の探索で、森野のとった行動はかなり
人目をひいた。あの町にひそむ殺人犯が森野を見初めたとしてもおかしくはない。
適当な時間になるのをみはからって森野の自宅に電話をかける。
やはり、彼女は昨夜から帰っていなかった。
昼過ぎまでインターネットで調べたが、とりたてて次の殺人や新しい情報は出ていなかった。
例の映像提供者だけが田辺ありさの転落死について新たな事実を教えてくれたが、それも奥井
晃の話と同じ内容にすぎなかった。
今までの被害者は、襲われてから約一日のうちに死んでいる。
同じように計算するなら、生きている森野夜にあえるのは今夜がタイムリミットということ
になる。少なくとも、まだ死体は見つかっていない。万全の準備をととのえて部屋を後にし、
夕食はいらないと伝えておく。あれ、やっぱり出かけるんだという桜に、ちょっとX市まで見
物にね、と僕は答えた。
去年の夏を思いだす。あれ以上に動悸が早まっていくのを、僕ははっきり自覚していた。
森野夜の最期に、立ち会うことができるだろうか。
ホームに降り立つと、おとといにも増してひどい熱気が全身をつつんだ。
ねばりつく大気はどろりと水飴のように重く、それでいて水気を与えるどころか奪いとり、
さらに渇きを助長させる。DOA殺人の犯人も、この干照りにあてられ、気を昂ぶらせている
ことだろう。
事前に電話で連絡をいれておいた雑居ビルのSMショップにむかう。ドアをあけると、あの
おとなしい店員が僕を認めて頭を下げた。奥井晃さんに会えないでしょうかと訪ねると店員は
小さく首を左右に振った。今日は営業に出かけてしまったらしく、どこにいるかは分からない
らしい。
少し考え、おとといは気づかなかったことを思いだす。
この店員は、奥井晃がDOA殺人の情報を集めていることを知っている風だった。店員自身
はあまりGOTHのように見えないが、もしかしたら奥井晃がなにか情報をもらしているかも
と思い、質問してみる。
「はい‥‥うちの奥井は凝り性ですので、このごろは出張前と同じように私に仕事をまかせた
きり、森野様とよく会っていたようで‥‥あなた方が来られた日も、ちょうど2人目の映像を
手に入れて上機嫌でした。森野様が映像を持っていたので落胆ぎみでしたが‥‥4人目のこと
ですか‥‥ええ、お二人が帰られてから、私も聞かされましたが‥‥飛び降りた理由について
です」
店員が語った話は、どれも、森野や僕にとって目新しい情報ではなかった。
奥井晃がさらに新しい情報を手に入れたというふしもない。真犯人が分かったのではと期待
していたのだが、違っていた。結局、奥井晃と森野が喫茶店でなにをしていたのは分からない
ままだ。
「いろいろとありがとうございました」
店員に礼をのべ、最後に、森野が失踪したこと、僕の推測と犯人のもくろみについて要点を
話しておく。アラだらけだったが、店員の反応を聞かされてこの推理に自信をもち、雑居ビル
をあとにした。
じきに、日が沈もうとしている。
今夜はこれまで。情報もでそろって、次、解決編です。
最後にエロが入るかどうかは未定。
>>267-270 感想どうもです。森野のハードSMシーンは内心「やっちゃったかな」と
ひやひやしてたので、ほっと安心できました。
おおGJ!SMだろうがエロだろうがどんとこいです。
GOTH本編を読んでるみたいに、自分なりに色々推理?してみたりしてる。
解決編が楽しみww
おおーいよいよクライマックスですか。
wktkしてます!
沈黙の夜がビルのはざまにおとずれようとしていた。
沈んでなおオレンジに輝いていた残照がついに暗く失せていくのを、なめるような思いで森
野は見つめていた。
甘美な絶望がひりひりと心を侵食していく。
無数の革ベルトに蹂躙されて、コンクリートの棺の底から見上げる空が無常にもあせていく。
今にも暴れだしそうな焦りにむしばまれつつ、けれど、浅ましい火照りを抑えこむためには、
イくにイけない生殺しの凌辱をじっとして味わうほかないのだ。
手からこぼれていく時間は、残りの命そのものだ。
躯の芯を溶かされて、爛れきった疼きと焦燥から、森野は死のせとぎわに近づきつつあった。
強制的な発情によるたえまない体力の消耗に加えて、異常な熱気が彼女の生命力を奪いかけて
いるのだ。
実際、森野は軽い脱水症状におちいり、意識がもうろうと遠のきかかっていた。
少年は来なかった。
いや、まだ来ていなかった。そう表現した方がいいかもしれない。
彼女の寝かされた外壁は屋上から一段低くなっており、ドアからは陰になっている。手すり
まで来なければ、人が寝かされているなど知りようがない。犯人が階段を降りていく音は壁を
つたってはっきりこだましたし、ずっと聞き耳をたてていた。誰か来ていれば必ずわかるはず
なのだ。
けれど‥‥。
かろうじてつないできた最後の希望が崩れ、不穏なイメージが広がっていく。
ところどころ森野の記憶は飛んでいた。イかされつづけて絶息し、呆けているあいだ、ひょ
っとしたら少年は来たのかもしれない。森野を呼び、反応がないので立ち去ってしまう。その
可能性がゼロだとは断言できないではないか‥‥。
「うグ、ン‥‥んぁッ!!」
たまらずぎしりと身もだえ、とたん、全身に仕掛けられた無数の責め具に鳴かされて、瞬間
的にイッてしまう。
蠕動するクレヴァスの奥が、熱くただれた帳に埋もれた革ベルトを引きずりこもうと蠢き、
かえって半端にずるずると肉芽を擦りあげるだけの結果に終わってしまう。つきあげるもどか
しさは頂点に達し、欲望の鬱積で頭がまっしろにはじけ、どろどろとした唾液が、のどの奥に
からんでいた。
拘束のための口枷にさえ意味もなくしゃぶりつき、円筒状の筒の内側でねっとり舌を使って
しまう。
ぷるぷると乳房が震え、誘うように熟れた少女の匂いがひろがっていく。
あまりに長くむごすぎる焦らし責めは、イキたいという以外の理性や思考をすべてかき消し
てしまうのだ。
幾度となく、後ろ手に握らされたスイッチのことが頭をよぎる。
なんで押しちゃいけなかったのかは分からない。駄目だったはずなのだけど‥‥。
でも、このスイッチを押せば‥‥。
きっと、体がバラバラになるぐらい、最後までイけるはず‥‥。
意識が惚けていくにつれて、なぜ自分があれほど突っぱっていたのか、スイッチを押すこと
を拒んでいたのかさえ、分からなくなってくるのだ。
全身の肌という肌をびっしり蚊にさされ、腫れているようなものだ。
掻きたくて掻きたくてしかたない。ひりひりして、赤く膨らんで、触るだけで楽になれるは
ず。なのに、理由なんかとうに忘れてしまった理性のどこかが、絶対に掻いてはだめだと悲鳴
をあげるのだ。
誘惑と忍耐のジレンマは身も心も裂いていく。
懊悩の極地に追いこまれて、もはや、自分が何を待ちわびているかさえわからなくなる。
だから、彼女の屈服は時間の問題でしかない。
少女のからだは、汗と火照りで、いまではすっかりいやらしく出来上がっていた。
這いまわる革の拘束具は、白くとろけた柔肌と完全に一体化していた。
乾ききってぴっちりと身を締めあげ、肌をむしばむのだ。
まるで肌と融けあってひとつになったかのように縛めが呼吸し、ささいな煩悶や身じろぎで
さえ革ベルトが吸収して、いともたやすくこらえていた被虐の波濤を呼びおこす。そのたびに
記憶が飛び、全身がけだるいアクメで焦らされ渇いていく。
熱帯夜だった。そよぐ風さえねばっこく、だるい余熱をはらんでいた。
夜気さえゆらゆらと霞む余熱はサウナのようで、一分のすきもなく柔肌に食いいる無数の革
ベルトをさらにひとおし、ぎりりと絞りこんでいく。その拘束感が気持ちいい。圧迫されしび
れた裸身は、たえまなく這いまわる手できつく抱き寄せられているかのようだ。
五感のすべてが性的な意味を持ってせまってくる。
気丈だった森野夜の心をマゾにつくりかえ、奴隷のように屈服させ、隷属させていく。
1時間や2時間ではない。めざめてから12時間以上、いっときの休息もなく責められつづけ
て、普通の少女が堕ちないわけがないのだ。
「ん‥‥んふ、ンッ‥‥」
顔の下半分に密着したフェラチオ用の口枷から、苦しげに息が洩れている。汗でへばりつく
口枷から空気が入らず、なかばふさがれた鼻で懸命に呼吸する。
発情した、むせぶような自分自身の匂い、女の匂いに眩暈さえおこしつつ、周囲をみやる。
腰が跳ねてしまう。
このままではいけない‥‥。
彼が来るまで、耐えるんだから‥‥。
少年のことを思いだすと、わずかに残された正気が戻ってくる。
心のなかに力をため、森野は自分を呼びさました。ぐったりしてはいるが、瞳に意思が戻っ
てくる。
考えてみれば、森野は蹂躙される一方だった。
いま、どんな拘束をされているか‥‥。
それが分かれば、まだしもわずかな余力が残るうちなら抜けだせるかもしれないと一縷の望
みをいだいたのだ。実際に脱出可能どうかより、希望をもつ、ということが重要だった。犯人
に心まで売りわたしたくはない。
顔を背けたくなるのをこらえながら、鏡の自分に目を凝らす。
首を傾げ、前髪をふりはらい、赤面して自分自身をなめるように見つめていく。
革の首輪から鎖骨のくぼみ、乳房、さらにへそのあたりまで‥‥
うとましい呻きがあふれる。
全身を緊めあげる革拘束は、森野がどれだけ悶えてもけっして解くことができないよう処理
されていた。
幾重にも重なりあうベルトは、すべて南京錠で留められている。金属の閂で施錠されたカラ
ダは、どれだけ森野が煩悶したところで1ミリたりともゆるむことはない。これでは、屈強な
大の男でも脱出は不可能だろう。
一人の少女を生贄としてその細身のカラダに施すには、あまりに苛烈で無慈悲なものだった。
実用以上に見た目の残酷さで犠牲者の希望を奪いさる‥‥そういう目的だ。
さらに下へ。
辱められた女の部分へいやいや目を向け‥‥はっと息を呑む。
ベルトに埋もれた性感帯の中心部にも、乳首と同じピアス状のクリップが、ネジ止めの金具
できりきり留めつけられ、ベルトをくぐった下で強く肉芽に噛みついていた、
どれだけ我慢しても腰が跳ねていたのは、この小さな仕掛けがじかにほどこされていたから
なのだ。包皮をむきあげたまま、錐のような冷たく鋭い刺激で彼女をねぶりたてていく。今ま
で気づかずにいたのは、羞じらいから強調された自分のそこに目をやらないようにしていたせ
いだろう。
あらためて肉欲の疼きをおぼえさせられ、つんとつきあげる誘惑を意志の力でねじふせる。
少なくとも、これでは拘束を解くのは不可能だった。
だが‥‥背中側、体の下敷きにされた後ろ手はどうなっているのだろう。最低限腕だけでも
動けば、まだ、どうにかなるかもしれないのだ。
もしかしたら、私が抵抗することなど予想もしていないのでは、と思う。
それは森野自身にとって都合のいい考えであり、犯人の罠でしかない。普段の彼女ならそこ
まで考えたのだろう。けれど、そのときの森野はすでに天日にあぶられて消耗し、体の芯から
こみあげる女の疼きにたえかねていた。
幅50センチほどのスペースで、滑落しないように注意してごろりと体を反転させる。
ざりざり、と乳首がコンクリートにこすれてとてつもない痛みをもたらした。悲鳴がこぼれ、
それすら口枷が吸収してしまう。しばらく悶絶し、その場で硬直した。
涙目になり、胸をいたわるようにゆっくり、歯を食いしばってうつぶせになる。
そのまま首だけをねじり、頭上の鏡をのぞきこんだ。
せめて手首だけでも、ほどけそうなら‥‥。
だが、後ろ手を見やり、無残に期待を打ち砕かれて森野は呻いていた。
肘をそろえ、背中でコの字に腕を重ねた手首には、3連の革手錠が食い込んでいた。
両手の手のひらで自分のひじをつかんでいる姿勢のまま、肘から手首までを完全に太い革の
筒が包みこみ、その上から3箇所でベルトが絞られてバックルをかけられている。南京錠のか
かった中央のベルトを解かなければ腕は自由にならず、そして、肘のあたりに追いやられた手
首はどれほど柔軟でもバックルまで届きそうになかった。
最初から、絶望させるための、異常なまでの縛めが森野にはあたえられていたのだ‥‥。
周到さと残忍さをおもい、失意のあまり、くらりと意識がゆらぐ。
そのとき、張りつめてきた糸がゆるみ、森野の裸身はぐらっと大きく投げさされていた。
上下が回転し、危うく転落しかけ、必死で腰を浮かす。
頭上にひろがった夜空がぐるぐると回り、反転してはるか下の路上を見下ろしていた。左の
肩をコンクリートにこすり、不自由な足に力をこめてかろうじて停止する。
遠くの喧騒とはうらはらに、通りは人気がたえていた。向こうからくたびれた様子の会社員
が歩いてくる。泳ぐ視線のはじで彼が立ち止まるのが目に入り、しかしその直後、森野夜は戦
慄した。
何者かが、まっすぐに屋上への階段をあがってくる。
そんな、どうして‥‥。
ためらいもない靴音は犯人のものに違いない。来るはずのなかった犯人の登場に動揺し、そ
してそれが、凍りついた森野夜の明暗をわけた。
激しい音をたててドアが開く。
びくりと震えた森野のカラダが、今度こそ危険なまでのバランスで外壁のそとへと傾ぐ。
もはや、残された力では回復不能なことを森野はさとった。
屋上で誰かの声が響いている。
全身をかきみだす恐怖と死の愉悦が、森野のあえぎをほとばしらせる。
汗まみれの拘束衣がにちゃりと滑り、次の瞬間、傾いた森野の裸身は音もたてずに外壁から
消えていた。
ビルの外の遠い喧騒が、ざわざわと最上階の踊り場まで響いてくる。ひどく猥雑なBGMや
呼びこみは、ホテルの密集する歓楽街としての夜を演出していた。
屋上へつづく施錠されたドアにもたれ、階下を見下ろしてじっと待つ。
嵌め殺しになったドアのすりガラスからネオンがあふれ、ちかちかと僕の肩で踊っていた。
ハーフ丈のチノパンに手をつっこみ、いざというときにそなえて持ってきたナイフの柄をまさ
ぐる。とある殺人犯との出会いの記念にもらったナイフセットの一本だ。刃はかわいておらず、
かわりに、しびれるような冷気が死の気配を教えてくれた。
暗闇のなかから、コツコツと刻むような靴音があがってくる。階段をあがりつつ胸もとから
とりだしたタバコを口にくわえて、そこで、僕に気づいたようだった。残り数段をはさんで、
上と下から視線がぶつかりあう。
「こんばんは」
「あれ、きみは‥‥」
解せないといいたげに首をひねり、森野さんの彼氏だっけ、とけだるそうに奥井晃は答えた。
不審そうな色が瞳に浮かぶ。僕は、雑居ビルの2号店で本店の場所を聞き、ここに来たと説明
した。
「にしても、あまりよろしくないね。ビルのこんな暗がりにひそんで、空き巣ねらいと勘違い
されるよ。警察なり学校なりに通報されたらどうするんだい」
「そのときは背中の扉をこじあけますから」
急にけわしくなった奥井晃の視線に失望をおぼえつつ、それで、と問いかけた。
「もう決めましたか?‥‥森野夜をどうやって殺すかは」
肌にささるような無音のひとときが奥井晃と僕をつつみこむ。静寂はほんの数秒だろうか。
口にした煙草に火をつけず、不思議そうな目で奥井晃は僕を見た。質問の意味が分からない
な、とつぶやく。僕は、昨夜から森野夜が家にかえっておらず、最後に奥井晃と一緒のところ
を見られていると説明する。
奥井晃は小さく苦笑し、なだめるように言葉をつむいだ。
「だから私が犯人だと? きみが森野さんを心配するのは分かるけど、根拠としては薄くない
かな。探偵ごっこでももう少し確実な調査をするもんだ。私には真犯人でないというアリバイ
まであるのにね」
「ええ。だからこそ、です」
ここまでくれば、もう陽気な少年のペルソナをかぶりつづける必要もない。
いっさいの表情を消し、僕は平板に告げた。
「あなたは真犯人の手口に魅せられ、自分のビルで4人目の田辺ありさを殺した、ただのでき
そこないの模倣犯です。そうして、次の犠牲者に森野夜を選んだ」
ちがいますか、ひかるさん。そうたたみかける。
暗がりのなかで、奥井晃の‥‥彼女の瞳から色がうせていくのを、僕はじっと見つめていた。
僕が奥井晃を疑いだすきっかけになったのは、森野夜があずかった鍵だった。
最初の探索のとき、森野の持っていた鍵は勝手口と屋上のドア、さらに店舗のドアまで開け
ることができた。つまり、マスターキーだったのだ。通常そうした鍵を所有するのはビルオー
ナーにかぎられる。
なぜ奥井晃はビルオーナーだということを僕らに隠したのか。そもそも見ず知らずの人間に
マスターキーを貸すなど無謀きわまりない。
おそらく、そこまでして彼女は森野の注意をひきたかったのだ。
殺害現場のビルオーナーが都合よく猟奇事件に興味をもち、鍵まで貸すのはおかしいと考え
たのだろう。その点、SMマニアなら疑われにくいと計算したのかもしれない。さらに記憶を
たぐってみれば、被害者と一面識もないはずのビルオーナーが葬儀に参列していることじたい
不自然だった。
「もちろん、これだけでは犯人と断定できません。決定的なのは、田辺ありさの死因でした。
あとで週刊誌やネットを調べましたが、やはりそうだった。あれは犯人のみ知りえた事実なん
です」
「排泄物を口にそそぎこまれたって私の話かい? あれがなんだっていうんだ。現場検証の警
官も顔をしかめてたし、清掃車だって来たんだ。あの場にいた住人なら誰だって知っているだ
ろうよ」
「ですから逆なんです」
攻撃的で男性的な話しかたをする奥井晃をさえぎる。
「彼女は屋上から落ちて首の骨を折り、死にました。首吊り自殺と同じです。眼球が飛びだし、
糞尿をもらしたり失禁する。でも、それはただの結果であって、糞尿をもらしたから飛び降り
るわけじゃないんです」
そうなのだ。
首を吊ったから排泄物をもらすのであって、排泄物をもらしたショックで首吊りはしない。
現場には汚物がまきちらされただろうが、それが『いつ』排泄されたのかは、犯人以外の者が
知りえるはずがない。
そもそも、口とお尻をホースでつながれていたという情報自体、一般にはでまわっていない。
落下の衝撃で拘束具は壊れ、あちこちちぎれてしまったのだから。
奥井晃は、窮地においこまれた猫のように肩を怒らせ、歯をきしらせていた。
そのありように失望する。
僕がこれまで目にした猟奇殺人犯たちは、犯罪衝動そのものが人生だった。日常はうつろな
はりぼてで、退屈でかわいた日常のなか、人を殺すという行為の感触だけが彼らを現実に引き
よせる。
だが奥井晃は違う。帰国してDOA殺人を知り、心酔して犯人にあこがれた偽者にすぎない。
こちら側の人間にすぎず、日常のしがらみに縛られている。だから、警察の動向をさぐろうと
被害者の葬儀に顔をだし‥‥森野夜に出会ってしまった。
奥井晃は、森野夜に声をかけた瞬間から、彼女を次の獲物に選んでいたのだ。
「不思議なことですが、森野には異常者を招きよせるフェロモンがあるんです。あなたのよう
な二流まで釣りあげたのは意外でしたが」
肩をすくめ、狂おしいほどの怒りを放つ奥井晃の視線をやりすごす。
すでに糾弾そのものがどうでもよくなっていた。
奥井晃には異常者になりうる素質があった。だが、楽しみのために人を殺めながら、彼女は
みずからの人間性さえ殺しきれていない。異常者にもなりきれず、日常にしがみつくさまは滑
稽でしかない。
「森野夜はこのドアの向こうにいますね。生きているのなら、返してもらえませんか」
あれは‥‥僕のものなのだから。
僕の発言を耳にして、奥井晃の顔にわずかだが余裕が生じた。こちらをねめつけ、唇をねじ
まげて笑う。
「ふん。そこにいると思いこんでいるのか。思いこみだらけの探偵坊やだな。こんな会話をし
ているあいだにも、森野夜は一人でじわじわと死にかけているぞ。探しにいかなくていいのか、
うん?」
「いいえ。間違いなく森野はここにいます。理由は簡単‥‥あなたが模倣犯だからです」
二度つづけて自分の持ちビルで人を殺すのはかなりのリスクを負う。DOA殺人の他の被害
者のように、森野がよそへ連れさられた可能性はゼロではない。
しかし‥‥。
「あなたと真犯人は決定的に違う」
それこそが重要だった。
「あなたは、自分が見て愉しみたいがために犯行をおこした。他人に見せるため、わざわざ睡
眠薬をつかってまで死のタイミングを演出した真犯人とは動機が真逆なんです。犯行を人に見
せようなどとは思いもしない。人の死を独占したいだけなんだ、あなたは」
だから、田辺ありさは人気のない早朝に死んだ。その殺しかたも、オリジナリティの欠けた
1・2件目の醜悪なパロディだった。
「あなたのようにいぎたない殺人犯が、森野夜が死んでいく最高の瞬間をのがすわけがない。
今ここにあなたがいる以上、森野もこの屋上で死につつあるんです。違いますか?」
奥井晃の反論はなかった。
黙ったまま、彼女の返事を待ちつづける。
答えるかわり、奥井晃の顔からいっさいの表情が消えた。足を踏みだし、威圧的に一歩づつ
階段をのぼりだす。
「で? これから、どうするんだい」
「そうですね‥‥真犯人にならいざしらず、あなたのような変質者のなりそこないに森野夜を
わたすのはしのびないですね」
「そうじゃないだろ。違うだろう。鍵のかかったドアの前に追いつめられて、おまえはどうす
るつもりなんだと聞いているんだよ、私は」
階段をのぼりきった奥井晃がふところに手をいれ一閃させると、折りたたみの警棒が伸びた。
彼女は背も高く、負けるはずがないと信じきっているのだろう。内心でうんざりしつつ、僕は
動いた。
「なら、こうしましょうか」
後ろに手をまわしてノブを握り、屋上のドアを大きく開け放つ。
「なっ‥‥どうやってカギを開けた!」
彼女のためらいを逃さず、バックステップで屋上へ飛びだした。猥雑な喧騒と夜気がねばり
つき、ネオンが背中を照らす。奥井晃の所有する2つ目の雑居ビルにも、四方を閉ざされた屋
上が広がっていた。
かぼそい悲鳴が後ろであがった。みなくとも分かる。手すりの向こう側に寝かされた森野だ。
田辺ありさと同じように拘束され、口枷の下で呻いている。
すぐに怒声をあげて奥井晃が飛びだしてきた。
警棒をふるって突進してくるかわり、奥井晃はジーンズの尻ポケットから四角い器具をとり
だし、みせつけるようにかざす。
「そこまでだ。動けばこのリモコンを使うぞ。森野夜は‥‥死ぬ」
奥井晃がにんまりと笑う。森野を救いたければ言うとおりにしろと僕に語りかける。口封じ
したいらしい。こうくるだろうということは、奥井晃とは分かりあえないだろうということは
予想済みだ。
だから、僕の返事も決まっていた。
「どうぞ」
意味が分からなかったのだろう。とまどったように奥井晃の動きがとまった。森野から聞き
ませんでしたか、と問いかける。
「僕は人の死んだ場所をたずねあるくのが趣味なんです。そうすれば、こんな風に」
言葉を切り、チノパンからナイフを抜きだす。
ネオンを反射する輝きに目を射られ、つかのま無表情になり、彼女に告げた。
「殺人犯にさらわれた、僕にとってもっとも大切な人が殺される瞬間を、この目で見ることが
できるかもしれませんから。そうでしょう?」
ちらりと、奥井晃の瞳の底を、おびえめいた何かがかすめていく。
怒りにわめいて、彼女はリモコンを押しこんだ。壊れたような喜悦のよがり声がほとばしり、
ガチャンと鎖のはずれる音がする。
躯をはずませ、落下する森野のかすれた悲鳴に、僕はじっと耳をかたむけた。
解決その一、ここまで。謎解きがめっさ長くなってます。
あと2回、次の次で完結です。
超GJ!!
続きwktkwktk
おおあ!次も楽しみにしてます!
こ、ここでストップとは・・・ああああ続き待ち遠しい!
めじりと革がきしみ、不自由にはじけた森野夜のカラダが重力の束縛から解きはなたれる。
強烈な電気ショックが森野を悶絶さた。
目の裏から火花がでるような衝撃が花芯をゆさぶり、神経をつらぬいて少女をうちがわから
甘く灼きつくす。全身が浮きあがり、感覚が溶けていく。
たえられるはずがなかった。
どろりと爛れきって感覚さえ麻痺しかけていた双の乳首とクリトリスに、金属のクリップを
通じて断続的な電撃がほとばしったのだ。
一撃ごとに乳首が跳ねあがるような、くるおしい衝撃。
肉芽を揉みつぶすような力強い律動が、自分では触れることもまさぐることもできぬ性感帯
をビリビリと感電させ、しびれるほどの刺激と痛いばかりこりこり歯をたてる金属の甘噛みを
もたらす。ひとりでに腰はよじれ、首とつま先だけでブリッジのように裸身をのけぞらせ、完
全にバランスを崩す。
甘くわいせつな電気ショックとともに、森野を手すりにつなぐ金具がパージされていた。
リモコン操作ではずれた足枷と首輪の鎖が、勢いよく床に落ちる。
一度バウンドした鎖は外壁のかなたへすべりだし、無抵抗の森野夜を奈落へ引きずりこんだ。
あっと思う間もない。跳ねおどる下腹部を制御しきれず、縛めの鎖にたぐりよせられて、あら
がうまもなく汗ばんだ裸身が宙に放りだされる。
「‥‥ァ、ひ‥‥ひぁァァ!!」
転落の刹那、森野夜をとらえたのは噴きあげる絶頂だった。
かってないほどの、およそ普通の少女が知りうるはずもない、残酷で華美なエクスタシー。
イク。なんどとなくイく。瞬間的にイく。強制的にイかされる。
あれほど切羽つまって届くことのなかった絶頂の高みへと軽々とつきあげられ、さらに絶息
するような快楽の波濤にイかされ、イった余韻すらあじわうことを許されず拷問のように、ど
こまでも果てもなく延々とイキつづけていくのだ。
長時間にわたる調教をほどこされ、苦悩の果てになめつくす被虐の桃源郷だった。
ひときわ高くいやらしい嗚咽をこぼし、口枷をきりきり噛みしぼって発情した牝猫のように
むせび鳴く。焦がれつづけ、ひたすらに抑圧されてきた官能がマグマの奔流となって全身を溶
かす。上も下もなく、ほとんど気死したまま、一気に解放されたアクメの濁流が、死を自覚し
た森野夜をなだれのようにうずめつくし押し流す。
犯人の手で突き落とされ、重力をふりきった裸身が、ひどくいとおしく思えた。
これで死ぬ‥‥。
殺されて‥‥今度こそ、助からないのだ‥‥。
イきながら‥‥こんなにも気狂いのように悶えながら‥‥死ぬの‥‥?
彼に死に顔を‥‥見られ、て‥‥。
深々と錐のように心を刺しつらぬく悪寒。黒々とした絶望の眺め。
ぬりつぶされた森野の心は、くらく濁った疚しい恥辱に溺れきり、狂おしく小刻みな痙攣を
起こしていた。一秒か‥‥数秒か‥‥のたうつことも悶えることもできぬ革拘束に緊めあげら
れて憔悴したカラダに、なすすべもない奴隷としてできあがっていた受け身の裸身に、容赦な
い快楽の焔が灯されていく。
強烈な電気ショックが、ひきつる躯を外壁に打ちつけて‥‥。
タナトスの裏返しとなったエロスにみたされた森野夜は、永い永いアクメをむさぼりつづけ、
下半身からはとめどなく甘く匂いたつ透明なしずくを零し、深々とアナルに打ちこまれた太い
バイブをほぐれきった括約筋でしっかり噛みしめながら、上気したお尻を自動的にひくひくと
震わせていた。
「低周波‥‥パルス‥‥ですね。違いますか?」
「まさか、最初から知って‥‥」
「ええ‥‥ですから、僕は彼女が‥‥ないように‥‥」
呆けた森野の耳にはなにも聞こえてはいない。
ものすごい衝撃が、快楽の余波をともなって森野夜のきゃしゃな裸体を蹂躙していく。
森野は気づいていなかった。
死んだ自分のカラダが、実は少年が胴体にまきつけられたロープに引き戻されてかろうじて
宙吊りを保っていることを。
つい先刻、夕暮れ時の屋上にあらわれた少年は、落下しかけていた森野を介抱していたのだ。
複雑な束縛に手をやいた少年はとりあえず腰に命綱をまきつけ、それが彼女の転落死をふせい
だのだった。
ギィィン、ガキン、と、金属の調べが屋上になりひびく。
鋭いその音は容易に死を連想させた。
殺される側。
殺す側。
森野は被害者になりかわりたいのではない。そんなうわべだけのごっこ遊びでは、もはや、
我慢できなくなっていた。
森野は、被害者として、殺されてみたかったのだ。
嫌がる体に無理強いをされ、自由意志を剥奪され、切なく厭わしい残忍な方法で殺されてい
く。それが殺人犯の手でむきだしにされた彼女の昏い業、初めて情欲としてカラダに刻みこま
れた、やるせない被虐の悦びだった。
手枷をきしませ、上半身をうねらせて、汗ばむ肢体をつつみこむ革に身悶える。
とらわれの篭女だった。直接、肉芽の裏から快楽につながる神経を引きずりだされ、そこを
ライターで炙られているかのような衝撃、しかも無力な森野自身にはどうしようもない衝撃に
翻弄され、もっとも原始的な喘ぎを汲みだされていく。
つきせぬ蜜がこんこんとクレヴァスをぬらし、革ベルトをべたべたに湿らせ、太ももをじわ
じわ伝っていく。乳房は天をうがつようで、きりきりとそそりたつ乳首の頂点がとほうもなく
悦楽にしびれかえっている。
体の芯からつきあげる甘い叫び。喘いでも喘いでもわきあがる淫らな悲鳴。
とどまることなく嬌声を洩らし、肌を嬲りたてる痛みを懸命にむさぼっていく。啜りつくす
快感はとめどなく、押し流されるだけの奔騰する官能を身のうちに溜め、子宮であじわい、不
自由な裸体のすみずみまで味わいつくしていく。
そうして幾度となくイきつづけながら、奴隷の愉悦にうっとり酔いしれた森野は、無限の連
鎖でこわれた人形のように、ひくりと手足をきしませていた。
うつろな瞳に、目線すれすれの屋上であらそう二人の足が映っている。
なにをしているか認識はできず、ただ、飴のように引きのばされた快楽の海に溺れながら、
ぶつかりあうナイフとロッドの重みを聞いた。
少年は、森野を救うために戦っている。そんな気がする。それが嬉しい。
本当にそうなのかと疑念をいだくだけの思考力は、いまの森野には備わっていなかった。
だん、と重たく鈍い衝撃音が鉄柵を揺らす。
突然間近で起きた音は、気をやりつつ惚けて涎をこぼす森野の理性を、手荒に引きもどした。
果てしない電気的な凌辱に身を焼かれながら‥‥。
大きく目をみひらいた森野の目の前、手すりのすぐ向こう側で、奥井晃が少年を押し倒すと
馬乗りになり、警棒をふりあげた。
警棒の一撃をナイフでうけた衝撃で吹きとばされ、コンクリートの上を転がる。
もともとナイフは切り、裂き、突くものであり、鈍器として力まかせの殴打をおこなうもの
ではない。奥井晃のロッドを受けきれないのも当然のことだ。
なまぬるく汗のにじむ熱帯夜のなか、握るナイフだけが死の予感に冷めきっていた。
この争いにけりをつけるのは、さほどむずかしくはない。ナイフの思うとおりに動けばいい。
以前にも刃の輝きに導かれたことはあったし、ナイフの先が人のからだに埋まっていく感触も
僕は知っている。
ただの一閃、ただの一撃だ。だが、だがそうできない理由が僕にはあった。
‥‥森野が見つめている。
彼女のまえで人を殺している僕を見せる。それは、決定的にまずいという気がした。
倫理的によくないとか、目撃者を残すのがまずいとか、そういうことではない。森野も僕も
残忍な事件に心躍らせ、死を通じて世界とわかりあう。
僕らはある面で似ているし、とても近しい部分でつながっている。
だからこそ‥‥‥‥。
駄目なのだ。
むろん、それだけが理由ではない。けれど、攻めることができない以上、必然、防戦一方と
なり、追いこまれていく。よって、待ちうけるのは当然の結末だった。
「勝負あったな。え、そうだろう?」
奥井晃が馬乗りになる。振りおろされた一撃を、今度ばかりはしびれる両手でうけとめた。
利き手はナイフの柄を握り、逆の手で刃背をささえ、渾身の力でロッドを押しかえす。たがい
の武器がせりあい、膠着状態が生まれた。
くぐもった悲鳴があがる。
首をかたむけると、森野が噛まされた口枷の下から懸命になにかを叫んでいる。彼女の顔は
涙でぐしゃぐしゃだった。なぜ僕を見て泣いているのだろう。不思議に思う。僕が死ねば次は
自分の番だからだろうか。
奥井晃は馬乗りになり、完全に勝ちを確信して全体重をのせ、ロッドを首におしつけてくる。
ギロチンのように窒息させる気らしい。
苦しい息の下で、僕はつとめて普通に奥井晃に問いかけた。
「‥‥ところで、真犯人は誰に見せるために人を殺してきたと思いますか?」
「はぁ?」
なんだ、こんなときに。そんな顔を奥井晃がみせる。時間かせぎだと思ったのか返事はない。
かまわずにしゃべりつづける。
「分かりませんか。では質問を変えます。奥井さんは、真犯人を知っていますか」
「さぁね。すごい奴だとは思うが、ここでそんな話題は無意味だ。どっちみちお前は殺すよ?」
「そうですか」
ますますロッドの圧迫がきつくなる。あまり猶予はないようだ。
一度だけ深く息を吸い、すべてを吐きだした。
「こうは思いませんか‥‥」
DOA殺人の真犯人は殺しの美学をもっている。人に見せるため、メッセージをこめて死を
展示する。ならば模倣犯は、本物のプライドを傷つけはしないだろうか。偽者が誰かわかれば、
犯人は偽者を『清算』するために訪れるのではないだろうか。
「そいつぁいい。楽しみだな。私も、犯人とはぜひ語りあいと思っていたんだよ」
「なら、最後にあなたに告げておかなければなりませんね。でないと僕は後悔を残しますから」
「‥‥言ってみな」
にやり、と唇をゆがめた奥井晃に、僕はしごく真面目な顔で事実を告げた。
「あなたの後ろに真犯人がいるんです」
「は。下らん」
おそらくこの答えを予想していたのだろう。下らんと言いたげに舌打ちした奥井晃はナイフ
をにぎる僕の腕をひざでつぶし、ちゅうちょなく警棒を振りあげる。致命的なロッドをかわす
手段はもうなかった。
だから、いまにも頭部を叩き割るだろう一撃をみあげて言葉をつむぐ。
「屋上の鍵を、僕がどうやって開けたと思いますか」
「‥‥‥‥」
「そこにいる、彼から、預かったんですよ」
奥井晃の返事はなかった。
バチバチっと、奥井晃の首の後ろではげしい放電が火花をちらしている。衝撃にふりむく暇
もなかったのだろう。ふりあげた腕から警棒が落ち、白目をむき、ゆっくりと脱力した肉体が
倒れていく。
気絶した彼女をおしやり、ようやく上体を起こした。
呼吸はみだれ、しびれた利き手はろくにナイフも握れそうにない。
背後で、またしても森野が悲鳴をあげた。奥井晃のからだをまたぐようにして、4人目の登
場人物があらわれからだ。
スタンガンを手に、真犯人が無言で僕をみおろす。
僕は、彼を見つめかえした。
首すじに走る痛みに、奥井晃は意識を取りもどした。
バンジージャンプのあとに宙吊りになっているかのような浮遊感があり、全身がぴくりとも
動かない。無理に手足に力をこめると、ギシリギシリ不吉な音をたてて縄がきしみ、奥井晃は
完全に目を開け‥‥巨大なボールギャグを噛まされた口で絶叫した。
彼女は全裸に剥かれていた。
くもの巣のような縄目によって、小さな立方体の檻の天辺から吊られており、均整のとれた
モデルのような柔らかな肢体には異常な量の緊縛がほどこされている。腕は高手小手に厳しく
縛められ、カエルのように膝を折りたたんだ両足はぐるぐる巻きにされていた。
檻の床を暗い波が洗っている。
直前までの少年との諍いと、不気味な口調で彼がつぶやいたひとことを最期に、奥井晃の記
憶はブラックアウトしていた。
‥‥犯人は偽者を『清算』するために訪れるのではないでしょうか。
‥‥模倣犯は、本物のプライドを傷つけはしないでしょうか。
予言めいた科白が、くりかえし脳裏をリフレインする。
では、まさか。
おそるおそる周囲に目をやり、怜悧に吊りあがった彼女の瞳が裂けそうなほどみひらかれる。
うなだれている首をもたげた奥井晃の正面、皮肉にもそこには、彼女が森野夜にしかけたのと
同じ仕掛けが残されていた。
‥‥D.O.Aの血文字が書きなぐられた、全身を写しだす鏡が。
事態をつかみきれず、混乱と恐怖が心をかきむしる。
全身の毛穴が開き、しとどな汗とともに 全身が狂ったように熱をおびはじめる。
冗談ではない。こんな形で邂逅したくはなかった。違うのだ、私は真犯人を侮辱するつもり
なんてなかった、逆なのだ、あざやかに死を切取るその手口にあこがれただけなのだ‥‥。
パニックにおちいって全身がひきつり、暴れだしそうになる。
そこで思いだした。
この文字が記されたときには。すでに犯人と被害者の接触は終了したあとだということを。
奥井晃が殺す場合とことなり、犯人は二度と犠牲者に顔をあわせることはないのだ。
揺らぐ湖面に奥井晃自身が写りこんでいる。
丸出しにされた股間をひろげっぱなしのまま、後ろ手に縛り上げられ、敏感な3点にピアス
をうがたれて、チェーンで結びあわされた、本来の彼女と真逆の姿を。
自由気ままなSMの女王から、哀れをもよおす緊縛奴隷に貶められた自分自身を。
すでに、奥井晃は死を待つばかりの第五の犠牲者。
死をもって模倣犯の罪をつぐなう、屠られたあわれな供物だった。
今夜はここまで。日曜中にできれば更新して次で完結です。
サイト持ちなのでそっちで掲載もはじめてますが、こっちの方が早いので
完結編はスレの方を見てくださいw
あと、思いのほか長くなりすぎ、スレを占領してしまってすみません。
批判や意見などもありましたら、遠慮なくお願いいたします。
GJ
>>295 文句なしです。むしろたくさん投下してくれた方が
うれしいです。完結編wktkして待ってます。
>>297 ありがとうございます。
また何かよさげなミステリを思いついたら、投下してみたいと思います。
では、最後、34〜38までを投下。これにて幕です。
ブラックアウトしていくモニタを、5人目の殺害の一部始終を、僕らは熱心に魅入っていた。
檻にとりつけられた浮きが一つづつ潰れていき、湖面に没するまでを。
屋上を吹き抜ける生暖かい風が、肌をねぶっている。
あれから数時間がたち、コンビニで買ったスポーツ飲料を与えたことで、森野も多少は正気
をとりもどしているようだった。あまりそうは見えないにしても、だ。くたびれきってはいる
が、命には別状ないようだ。
いま目にした、奥井晃の殺害現場がどこかは知らされていなかった。
人里はなれた暗い湖に、生きたまま水葬された奥井晃の檻が沈んでいるのだと思うと、胸が
おどる気がする。目撃者は真犯人と、あとは檻にとりつけたカメラで中継してもらった画像を
みせてもらった僕たち2人きりなのだ。
当分、奥井晃の遺体は上がってこないだろう。もしかしたらずっとかもしれない。
こうして最後の事件をモニタで見せてくれたのは、奥井晃の注意をそらし、彼の仕事をやり
やすくした僕への感謝なのだろう。あるいは、最後の最後まで、人に見せるということに執着
した彼の方法論なのかもしれない。
彼の手を借りて立ち上がったときのことを思いだす。
「どうして私が真犯人だと分かったのですか。さきほどは時間がありませんでしたから」
「二人目の動画がありますよね。あれをネットで入手して森野に渡したのは、僕なんですよ」
「‥‥では、私たちはネットですでに顔を合わせていたんですね」
ええ、とうなずく。
つまるところ、僕がネットで映像を譲りうけた匿名の情報提供者こそ、この店員だった。
気づいたのは夕方、SMショップで店員の話を聞いてからだ。
そもそも、教師の死にざまを撮ったあの動画は、犯人が撮影したものだった。
それは早くから推測がついていたことだ。
時計の近くから撮れば、必ず映像は見上げる視点になる。だが、映像はほとんど真正面から、
つまり遠距離から撮影されていた。そうした極端なズーム撮影にもかかわらず、映っていない
細い首吊りロープのことまで計算して、一瞬たりとも教師が死ぬまでフレームから外さなかっ
たのだ。
「撮影者は、あの混乱した現場で、彼女がどのように死ぬかあらかじめ分かっていたんです‥
‥そんな人間は、犯人だけでしょう」
また、校舎の外から撮っていることから、学校関係者ではないと推測もつく。前庭に入れる
のなら、迷わず間近で撮影するだろうからだ。
「少なくとも僕ならそうしたい。でも、犯人は校庭に入るわけにはいかなかった。だから目立
たぬよう、人ごみにまぎれて遠くから撮影していたわけです」
「でも、それだけでは映像をわたしたのが私だと‥‥殺人犯だと分からないはずですが」
「簡単な消去法でした」
田辺ありさの情報は、4件目の模倣犯、奥井晃しか知らない事実だった。
口と尻をホースでつながれて死んだというあの発言だ。
パソコンやネットを嫌う奥井晃がわざわざインターネットで情報を流すはずがない。あまり
ネットを使わない森野も同じだ。にもかかわらず、今朝になってひとりだけ、田辺ありさの話
を知っている者がいた‥‥例の、匿名の情報提供者だ。
「昨夜の時点で奥井晃から話を聞かされたのは、僕、森野、そしてあなたです。3人のうち、
森野と僕はネットに情報を流さない。となれば奥井晃からじかに情報を聞き、それをネットに
流せたのは一人しかいない」
「私以外の従業員にも同じことを話したかもしれません」
「それはないでしょう。というのも、ネットを使えない奥井晃はあなたを通して‥‥皮肉にも
真犯人その人から、ということになるのですが‥‥ネットに流出した映像を手に入れていたか
らです」
ネット嫌いの奥井晃がどこで情報を仕入れ、森野に近づくことができたか。だれか、奥井の
かわりに、ネットから情報をひろいだす者がいたからにほかならない。
さらに別の協力者がいる可能性は低かった。
猟奇犯罪の情報さがしに手を貸す従業員が何人もいるとは考えにくい。
警察に疑われた経緯もある以上、奥井晃は注意ぶかく相手をえらぶだろう。店員自身の語っ
た話からも、それは明らかだ。
この寺井という店員が4人目の死に方を聞かされたということは、すくなくとも、彼は奥井
晃に信頼されていたことになる。おそらく、彼は手足としてネットで情報を集めるふりを続け、
なにも知らない奥井晃はそれを森野に提供したのだ。
そして‥‥このことは、必然的にひとつの結論をもたらす。
「でも本当は逆だった。あなたは森野に情報を流すためネットを使ったのではない」
そうですよね。
問いかけながら、店員の瞳に浮かんだ無表情を、興味深く観察する。
「あなたは、奥井晃に情報を渡したくて、ネットで拾ってきたふりをしたんです‥‥最初から、
奥井晃に被害者の死にざまをみせつけるのが、あなたの目的だった」
「どうしてそうしたと思いますか?」
「うん」
考えるまでもない。答えはすぐに出た。
「DOAのメッセージは、実は、被害者に出されていたわけじゃない。あなたは、最初の一件
目から、ただ奥井晃を殺したくて、彼女に死をイメージさせたくて、ずっと殺人予告を送りつ
けていたんです‥‥違いますか?」
マニッシュないでたちを好む奥井晃は、その気の強さが魅力的な女性だった。
ショップでの二人のやりとりを見て、SM的な関係をイメージしたことを思いだす。彼にと
って奥井晃こそが特別だったのだ。
店員の反応を見て、僕は深い満足をおぼえた。
「完璧な推理です。あなたと私は友達になれそうですね」
「かも、しれません」
にっこりと店員が笑い、僕に手をさしだす。
彼と僕はよく似ている。
もっとも身近なところに、もっとも魅力的な生贄が連れ添っていたいう、その一点において。
店員と僕の違いは、のどが渇いたから冷蔵庫を開けたか開けなかったか、その程度のささいな
差にすぎないのだ。
さいしょのころ、奥井晃と店員をコンビとして考え、森野と僕になぞらえたことがある。
あのとき気分が悪くなったのも当然だ。たしかにそれは、けっして僕が検討してはならない
禁忌のひとつだった。
彼はおそらく、僕にとって鏡写しの、ひとつの可能性だったのだ。
黒々と奈落の穴のように、太陽の黒点のように光にぬりこめられた瞳を深くのぞきこみ、僕
は、DOA殺人の真犯人と固い握手を交わした。
「ン、んンーーー!!」
どこやらともない抗議声明に回想を中断され、僕は本当に気まずい思いで腰かけた自分の足
元に目をやる。
それが器具で、フェイスクラッチギャグという名称なのは、奥井晃の店で聞いていた。
フェラチオ強制するため奴隷の調教用に噛ませる口枷だということも。
‥‥つまりは、この拘束具はこのように使うのだ。
「ンク、チュ‥‥っ、ッパ、ンム‥‥」
ひたすら粘性の高い、湿りぬめった音が、あろうことか響いているのが僕の股間だ。
手すりのふちに腰掛けた僕の足のあいだに、後ろ手拘束の白い裸身をくねらせ、森野が屈み
こんでいる。口枷に嵌められた太い金属のリングをつらぬいて、膨張しきった僕の股間を‥‥
森野が熱心にしゃぶってくれている。
ぴちゃぴちゃと、染みるような水音がまとわりつく。
なぜこうなったのかは分からない。外壁から屋上に引きあげたときの森野夜は被虐的な性欲
に呑まれたイきっぱなしの状態で、そんな彼女を慰めてどうにか鎮めようと努力するうち、気
づけばこうなっていたのだ。
すぐに拘束をほどけばよかったのだろう。
けれど、あの時はさすがに、なまなましい思春期の女性の裸を目にして、どころか触れるた
びにビクンビクン跳ねてはとろけそうな喘ぎを発し、汗だくのカラダをくねらせて擦り寄って
くる森野を前にして、僕は混乱していた。優先順位さえつけられなかった。
おまけに革ベルトはことごとく施錠されていてどの鍵がどれか分からず、切り裂こうとする
と森野がひどく嫌がるものだから‥‥。
全部もう無意味だろうな。ぼんやり頭で考え、残りの言い訳を放棄する。
仮にクラスメイトにでも見られたら言い訳など無駄だ。これはれっきとした性行為だし、し
かも相当アブノーマルなプレイにふけるカップルそのものだ。いずれにせよ、森野に迫られて、
拒めるほどのスキルなど僕は持ち合わせていなかった。
こういうのは、専門外なのだ。
「ング‥‥お、ぶ」
じゅる、じゅるりと唾液をたっぷりまぶして、森野がからみつく。
ひどく甘美な触診を濡れた舌で行われている気分だ。これ以上ない扇情的なクラスメイトの
口を、強制的に犯しているという事実。その実感。鈍器よりもナイフの一撃よりも鋭く、ひと
舐めごとに腰が砕けそうになる。
たぎりきった僕の股間でみっちり口腔をふさがれ、森野は鼻息でどうにか呼吸しながらフェ
ラチオに邁進している。普段とは違う。違うのだろう。こんなにも森野が情熱的だとは、両親
でさえ知らないはずだ。
むろん、おたがい昂ぶっているだけなのは分かっている。翌朝になれば、森野は必ず顔色に
出るだろうし、口を利いてもらえないかもしれない。薬と放置による色責めの後遺症であると
主張するかもしれない。
けれど。
僕は、こうして森野夜を独占していることに、当然のような充足した悦びをおぼえていた。
後頭部をつかんでわざと腰をふり、無理やりしゃぶらせる。あるいは、黒々とたれる長い髪を
指ですきあげてやる。そうするたび、こちらに流し目をくれる森野は、なぜか喜んでいるかの
ようだ。
「んァ‥‥ン?」
ギシリと革をたわませ、僕の股のあいだで森野が姿勢を変えた。
ちゅくちゅくと熱心に奉仕しながら、森野は上目づかいに僕をみやり、ついでもう画面の消
えたモニタに目を投げ、ふたたび問いかけてきた。言葉を使わずとも、不安そうな気配から、
察することはできる。森野は、真犯人がふたたび自分を狙に戻ってくるかもしれないと思って
いるのだ。
「それはないよ、森野」
「‥‥??」
どうして、と言いたげに首をかしげる森野。とたん、ねぶるような舌先が僕自身の一番弱い
部分をずるりとなぞりあげ、あやうく舌を噛みそうになって僕はこらえた。隷属の愉悦と怜悧
な色をまじらせた森野の瞳が、すっと刷毛をひいたように細まる。
それは、彼女がめったに見せない意地の悪い笑みだった。こういう表情を僕以外にみせてい
るところを、僕は知らない。家族にさえみせたことのない僕だけの森野の横顔だと断言できる
のだ。
「う、うわ‥‥っ」
森野のことを思った直後、なぜか、こらえ性がはじけ、僕は、びゅくっとたわんだ砲身から
ほとばしる精液をたっぷり森野の口唇にそそぎこんでしまっていた。なんともいえない気分で
おのれの失態を見下ろす。
これで3度目だった。そして、あっというまに力を取りもどす自分自身に、なぜか逆に惨め
さをおぼえる。自分をコントロールできていないのだ。
一瞬びっくりした顔で僕をみあげた森野だったが、なぜか優越感にみちた勝ち誇った表情に
なり、ずるりと僕を引き抜いた。たっぷり漏れた白濁が口腔のリングからこぼれ、彼女は見せ
つけるように舌先をリングからさしだしてみせる。
ねっとり汚濁のからんだ舌を指でつまむと、ン、ンン、とのど声をもらした。
指を離すと、真摯な瞳で僕をとらえたまま、舌を戻してコクコクとのどを鳴らしていく。
一滴残らずのみほした、ということを主張したいらしい。
もしかしたら、森野自身が目にした官能小説やビデオなどに、そうしたシーンがあったのか
もしれない。僕が喜ぶと思ったのだろう。
彼女のお尻に手をまわし、股間に埋もれたベルトをつかんでなかば無理やりに膝立ちさせる。
ひどく甘い嬌声をあげた森野の顔が、間近にあった。
誘うようにリング中央から紅い舌がのぞく。
かすかな躊躇をふりきり、森野のあごに手をかけ腰に手をまわして引きよせた。舌を伸ばし、
厳重な口枷のリングに差し入れる。すぐに熱狂的な返礼がかえってきて、僕たちはこれも何度
目かの、いびつな形のキスをかわした。
リングの中でまとわりつく舌と舌はひどくもどかしく、ひどく切ない口づけだった。
交わるようで交わりきらず、味わうようで味わいつくせず、未練たっぷりに糸を引いた唇が
離れていく。
一度きり、ちろりとリングのふちを舐めるように森野の舌が踊り、すぐに引っこんだ。再び、
どこか挑発的なまなざしで、裸体を僕の胸にすりよせてくる。
ふふんと言いたげな表情がまた憎らしく、お返しに指でチェーンをひっかけた。彼女の乳首
にほどこされた、残酷そうな外観の、金属の歯ではさみこむニップルクリップだ。小さな喘ぎ
がこぼれ、森野の瞳が自分の胸と鎖と僕を交互に見る。軽く引いてやるだけで、森野のカラダ
はピクンと反応し、切なそうに眉が下がった。
リズムをつけて刻んでやると、恍惚に呆けて、人魚のように森野は僕の腕のなかでカラダを
くねらせはじめる。しばらく彼女好みにゆすっておいて、うっとり瞳を閉ざしたタイミングを
みはからい、別の手でじかに乳首をつまみあげ、ひねった。
「ふぁぁン、ンァ、アァァ‥‥はぁン!」
びっくりするほどのよがりようだ。
猫のおなかを掻いてやったときの反応を連想する。嬉しげにまぶたを閉ざし、ひくつかせる
森野が面白くて、つい意地悪を口にしてみる。
「クラスのみんながみたら仰天するだろうね‥‥森野が、こんなに」
「‥‥‥‥」
硬質なガラスの瞳が僕を射抜いていた。冗談だよ、とあわてて釈明する。しばらくひえびえ
と魅入っていたまなざしが、拗ねたようにふいっとそらされた。気のせいだろうか、森野の耳
たぶが赤い。
それもつかのま、森野はさらににじり寄ってきた。不自由な口枷をあてがい、反り返った僕
のものを受け入れようとする。頬に手を添え、後頭部をつかんで腰の根元まで突き入れてやる
と、ふたたび蕩けるような舌での奉仕がはじまった。
乳首同士をつなぐチェーンをいじり、染みるような白い柔肌に両手を這わせ、熱をはらんで
ぴたりと手のひらにすいつく乳房の弾力にしびれながら、僕は森野を抱き寄せていた。ふんと
鼻を鳴らし、しなだれかかってくる森野夜を鳴かせながら、彼女のことをじっくりと凝視する。
ひどくなまめかしいと思う。
これが本来の森野ではないことはわかっていた。ただ、殺人犯に責められて消耗し、自制を
失っているだけだ。
それでもいい。そう思う。
僕のような人間が人を愛することができるかどうか、それは、分からない。
その質を問わず、愛情というものに僕は重きをおいたことがないし、価値をみいだすことも
できない。うわべだけのふりや欺瞞は簡単だろう。けれど、本質は何も変わらない。
僕は、死を惹きよせる側の人間なのだ。
森野だって本質的には分かっている。同じものを追い、同じものに惹かれながらも、僕たち
が光と闇の両端にたたずんでいるということに。
だから僕の行為に、感情に、意味があるかどうかは分からない。そういう価値判断の根本が
ごっそり欠けたまま、虚言の日常で闇をうずめてきたのが僕という人間だった。
森野夜が彼に狙われることはけっしてないだろう。あのとき、僕は真犯人にこう告げたのだ。
犯人はその意味をただしく理解し、森野を預けて去ったのだった。
僕はこう告げたのだ‥‥彼女は、僕のものだと。
「森野」
そっと呼びかけ、顔をなでる。頬をすぼめてきつく吸引していた森野が、さぐるようにこち
らを見入った。汗で額にはりつく髪を梳かしてやる。口枷がなければ、彼女は僕になにかしら
愛の言葉をささやくかもしれない。告白するかもしれない。けれど、それを許すつもりは僕に
はなかった。
言葉での確認など必要ない。おたがいのことは、おたがいの心の中で理解したと感じている。
口に出すことで歪んでしまう執着も存在するように思う。
‥‥あの店員のように、避けることのできなかった未来を避けるためにも。
そんな関係が、僕らにはふさわしいように思った。
(了)
陳腐な感想しか言えない自分が恥ずかしいけど、とりあえず・・・・・
GJJJJJJJJJ!!!!!!!!
神の降臨に立ち会えたことにただひたすら感謝します。
乙一作品を読み終わったあとに感じる充実感。それがまったくそっくり。
「実は乙一本人でした」と言われても信じてしまいそうです!
土下座してでもあなたの作品を読み続けたいと思いました!!!
夜寝る前にきてよかった!梅雨の欝陶しさも忘れるほど素晴らしい作品でした…
是非また書いてください!楽しみに待ってます!
それと最後に一言
GJ!!!!!!
GJ!!!
乙一さん自身が書きこんでるじゃないかと疑ってしまいました!
素晴らしい作品でした、本当にありがとう
とにかくGJ!!!
お疲れ様でした。
白乙一、黒乙一、そしてここにエロ乙一が。
エロ乙一いいなwwwwww
超GJでした!もし良かったら次回作お願いします!
おおお!!GJGJ!!
これは凄い
GJでした
ところでGOTHのなかに神山くんと森野の具体的な成績の優劣が書かれてたっけ?
上のSS見ると森野の方が成績いいの?
>>312 「犬」の家族団欒の場面で
「勉強はできないが人を笑わせるような明るい青年にむける視線と同じ」
ってあるね。
森野の方はたぶん記述はないけれど、彼以上に頭悪いのはなんか嫌だw
そうだったんか。サンクス。
シャープな思考力から成績もいい方なのかなと思ってた。
家では勉強とグロ画像集めぐらいしかやってなさそうだけどねー。
GJ!!また時間があれば書いていただきたいです!!
>314
というか突出しないために押さえてるんじゃないのか?
いつも読むときは吉良吉影を連想するんだけど。
ホシュ
318 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 09:37:46 ID:R6TuSP0+
>>220 は何処に行ったのか
途中じゃなかったっけ
きっと神は御忙しいのだ
ゴスシリーズ化してくれないだろうか。
その後の神森がみたい
シリーズ化もいいけど妹の話も見たいのは俺だけか
>>321 俺も読んでみたい!!
どんな話になるのかな?妹が死体を発見するとこまでしか想像できない…
死体を発見した所を犯人に発見されてまでしか想像できない…
つまり犯人が主人公で神山妹がヒロインなわけか。
ふとした表紙に森野に襲われるとか。とか。
森野は襲われる側でなくては
じゃあ妹が森野を襲えばいい。
あの純粋そうな妹さんが…?
裏で何を考えているか分からないのがGOTHだもの。
いや、もしかしたら妹さんも殺人者だったりして。
死体を度々見つけるのは殺しているからとか・・・。
そういう視点で行けば、森野を殺す前に云々も考えられなくは無い・・・か?
殺そうとして森野と百合るわけですね
神山が戮した死体を
妹が発見していくってのも面白そう
だけどね
やはり妹と森野の二人とも殺人鬼に捕まえられたりしてしまうんだろう
監禁大好き、目隠し大好き、お薬大好き、玩具大好きの変態とかですよ
そこで不可抗力的に陵辱とか百合とか
もちろん主人公が助けに来るんですが、そこで犯人に怒りを感じたりしないのがゴス
淫靡で美しいからとかいう理由で、二人に目隠ししたまま、犯人に成り代わって3P
妹もついでにいただいちゃう
これ最強
おお!結構それいいかも!
◆F6k6hz1X4c 氏、真剣に上手いな
ひょっとしてプロのくせに隠れて投稿してるんじゃ…
まさかな
一行42文字、段落前ヒトマス空けの体裁
エロ描写だけでなく、キャラの動機・内面にまで踏み込んでいる点
語彙の豊富さ、構成の巧みさ
… … あ や し い
神山×森野で1つ書いてみたいのですが、やはり読むときは神山視点のものが良いでしょうか?
原作はどの作品も第3者視点のものが無いみたいですし。
>>337 職人さんが書きやすいように書けばいいと思う。
原作が第三者視点だからといってそれを守らなければいけないなんてことはない。
同意!
340 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 00:42:20 ID:gzBS62mu
職人さんの作品投下に期待age
337です。
とりあえずGOTHのSSを書くのは初めてなんで、神山視点にして書いています。
書いている内にだんだんと長くなってきているので、気長に待ってくださると嬉しいです。
ところで、変なことアンケ(?)しちゃっていいですか?
神山の下着って、どんな色、柄だとすんなり想像できます?(トランクスで)
やっぱり無難に無地かな〜、とは思うのですが、男子高生は無地を履くんでしょうか。
私は女でちょっと分からないのでよろしければアドバイスお願いします。
スレ違いならすみません。
色は何となく黒って感じがする…でも派手な赤ってのも面白いかもw
応援することしか出来ませんが、頑張ってください!!楽しみに待ってます。
>>341 「深夜のコンビニ族」らしいのでw
コンビニで売ってるような地味で当たり障りのないようなやつでは
グレーか紺?
でも人に見えないところだから意外と素の自分を出しているかもしれない
黒なのか、神山……
345 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 16:58:52 ID:P8/Ixf3I
上げてみる
とりあえず、森野は黒だろう
コンビニって割りと色々売ってるよな?
柄物とか単色で黒、白、グレー……いっそ神山は、穿かないって設定はどうだ。
341です。
遅くなりましたが、皆さんご意見ありがとうございました!
もし誰にも反応が貰えなかったらいっそのこと苺柄にしようかと考えていました。
やっぱり地味目なものがしっくりきそうですね。
黒辺りにしておこうと思います。
そして森野も黒。やっぱりこの2人は黒のイメージですね。
本当にありがとうございました!
>>347 ありえなくもない気がしますww
>>348 頑張ってくださいな。まったりしながら待ってます。
>>348 苺wwwGOTH100%みたいな感じか!
ss楽しみに待ってますよ!
やはりというかGOTHが主流だが、
暗いところで待ち合わせ、の二人とかどうだろう。
舌を噛もうと思ってたことを思い出しながら初夜とか。
あの乙一ヒロインっぽい主人公のみょ〜な前向きさ加減が大好きなんだがなあ。
あの二人のssも読みたひ。
353 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 22:20:19 ID:aEwGvt2l
過疎。
僕が何度も最奥を突くと、森野はすぐに達した。
びくびくと痙攣し、荒い息を定期的に吐き出している。
目が潤んで今にも涙の粒が零れ落ちそうだ。
しかし僕の方は薬のせいかまだ満足しておらず、入れたままだった硬い自身でもう一度彼女を突いた。
「ん、はあぁっ……」
甘い声が漏れる。きゅう、と締め付けて離さない。
出口付近まで引き抜き、一気に奥まで貫くのを繰り返すと、先程の余韻も手伝って彼女は何度も何度も果てた。
こうして僕は何度も森野を殺した。
森野が薬を盛ったと勝手に想像した
GJ!!
森野のイメージが栗山千明なのは俺だけ?
いや俺もだ
エコエコの頃の佐伯日菜子は?
>>356 今見たら作者スレでもちょうど同じこと言ってたww
少女の頃の栗山だがな
神話少女はヤバかった
ねらわれた学園の佐伯日菜子。
363 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 08:05:14 ID:rUyeyNcE
森野のと同じような雰囲気の栗山千明とヤリタイであります
364 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 15:39:38 ID:oM5EtjAI
栗山千明って死国に出てた人だよね?
soudesu
退屈な日常、学校での授業。
今、僕は2時間目の化学の授業を受けている。
いつもなら先生の話を上の空で聞きながら、ノートに適当なラクガキでもしているか
教科書を読むフリをしながら人を殺す妄想で楽しむところなのだが、今日は少し様子が違う。
正確には、「ある人物の」様子が違う。彼女の席は僕の左後方3mほどに位置しており、
いつもは授業中は自分の手元をじっと見つめ、決して顔を上げない。以前そのことで先生に
注意されたこともあるが、それでも彼女は顔を上げようとはしなかった。結局先生は根負けし、今では
注意することもなくなっている。
そんな彼女が、何故か今日は1限目の授業から顔を上げ、1点をじっと見つめている。
なぜ今日にかぎってそんなにやる気をみせているのだろうか、と先生他クラスメイトは思っているだろう。
授業中の今現在でも、あちこちでコソコソ話をする生徒たちがいる。
教壇の先生も多少困惑気味のようだ。先程から誤字が目立つ。
まあそれでも、これで本当に彼女が真面目に授業を聞いているのなら僕としても何の問題もないのだが、
どうやらそうではないということがわかってきた。
初めは気のせいだと思っていた。だが10分20分と経つうちに、疑惑が確信へと変わった。
彼女の視線は黒板でも先生でも教科書でも窓の外を優雅に飛ぶ鳥でもなく、僕に向いている。
間違いない。この首筋がチリチリする感じ。視線が突き刺さるとは正にこのことを言うのだろう。
さて、何が原因だろうか。僕はここ1週間ほどの自分の言動を思い返すが、全く心当たりは無い。
そもそも彼女なら、何か不満があれば直接文句を言ってくるであろうし、こんな遠まわしなやり方は彼女らしくない。
では何だろうか。まさか視線で人が殺せるか、などという馬鹿らしい実験なんていうのではないか。
彼女ならやりかねない。真剣な顔をしてギャグとしか思えないことをやる人間だ。(そしてそれを笑うともの凄く怒る)
そうすると僕は彼女に対して何かリアクションをとるべきなのだろうか。
しかし今は授業中である。これみよがしに「うわぁ〜」なんてことはできない。否、したくない。
たしかに僕は学校では陽気な人間という設定だが、時と場所はわきまえているキャラだ。
さて、どうしたものか…。
とその時、背中に何かが当たる感触がした。後ろの席の人の手でも当たったか?
まあいいや、とやり過ごそうとしたその時、2回目の感触が。
3,4,5,6…これは手などではない。何か軽い玉のようなものが連発で当たってくる。
背中に当たった何かが跳ね返って僕の足元に落ちた。これは…消しゴムの切れ端?
なんでこんなものが…。一体誰が?…………心当たりは一人しかいない。
そう考えている間にも、立て続けに僕の背中には消しゴムの切れ端がヒットし続けている。
後頭部に当たった。これは今までのよりも大きい。消しゴム全体の1/3ほどはある。
ここまでされてはもう無視はできない。僕は意を決して振り向いた。
するとそこには、今まさに消しゴムのカスを投げようと振りかぶる彼女の姿が。
僕と彼女の目が合う。彼女は瞬時に投球モーションを解除し、手元のルーズリーフに何やら書き始めた。
おそらく僕の悪口だろうな、と思いながら彼女が書き終わるのを待つ。先生方の様子を見るが、板書の最中だ。
彼女が書き終わったようだ。ルーズリーフを僕の方に見せてきた。
そこには太い黒ペンでただ一言、
「暇」
とだけ書かれていた。
森野……。僕にどうしろというのさ……。
あと、どうでもいいことだけど、字下手だね……。
この後、休み時間ごとにクラスメイトに森野との関係を問い質されることになったのは言うまでも無い。
思いついたまま勢いで書きました。だが反省はしていな(ry
消しゴム投げる森野に和んだ
同じく森野に和んだwこういうのもいいな、GJ。
ほのぼのいいね。GJ!
371 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 20:07:53 ID:VfiYif9B
ほしゅ
◆F6k6hz1X4cさんのサイトが知りたい
ヒントだけでもいいからおしえてくれまいか
>>351 俺も読みたくなってきた。
なんたって盲目ヒロインだからな。
まだ気づかれてない時にオナニーを視姦したり…親友どうしで百合ったり…
シチュならいくらでも思いつくのに文才ないから書けない。orz
375 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 01:02:02 ID:rE3fgrfR
ほ
DOAを読んだ後にUDLa5tXd氏の作品読んでかなり和んだw
GOTHでギャグをするとこんな感じか・・・・?
ともあれお二方とも超GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ご無沙汰です。
>>321のカキコに心射抜かれて1ヶ月、妹をいじりつづけてやっと半分ぐらい
書けてきたので投下します。といっても中盤まで妹出ないですが。
あと、イチャラブなお話も好きなので、ほかの職人さんのお話や、なかでも
神×森のエロスな
>>220の続きなんかも読者として楽しみに待っています。
そんなわけで、タイトルは「靴」です。
更新頻度は「D.O.A」より遅くなると思いますがどうかおつきあいを。
昏い川面をざわつかせそうな微風が頬をくすぐり、蝉の声が夜の静寂に沁みていく。
居酒屋を何軒はしごしたのか、気づけばハルカは部長と2人、河川敷のようにちくちく草が
足をくすぐる斜面に腰かけていた。ひんやりした地べたが心地いい。
パンプスは履いたままが良いよと言われ、脱ぎかけていたことに気づく。えーと膨れるもの
の、細い足に映えるヒールが素敵だと言われれば悪い気はしない。川の淀みにも似たかすかな
腐臭から顔をそむけ、腰を抱き寄せられて広い肩にしなだれかかる。
「だーかーらぁ、部長は新人OLに甘すぎなんですっ」
酒くさい息で断言したハルカは、進んでいない缶ビールに自分のをかちんとぶつけてぬるい
中身を流しこんだ。今年入社した後輩OLのつきあいの悪さをあげて彼女らへの愚痴をこぼし
つつ、自分の献身もひけらかす。
「社会人は人同士の縁が大事だってのに、あの子たち分かってないんです」
「たしかに、人をつなぐのは偶然と出会い‥‥つまりは縁だ」
年相応の重みのある声は彼女の好むものだった。妻帯者だというのも、経験則上、彼女には
プラスの評価だ。
「意外なところで縁が生まれ、思いがけぬ関係が巡りめぐって人生を一変させる。これからも
君がいてくれると嬉しい‥‥今日は悪いことをしたね」
「まったくです。分かったら、会社でも少しは私のことを‥‥」
「いや、そういう意味じゃない」
どこか苦笑まじりにさえぎった男性は、ふと、奇妙なことを口にした。
「その部長さん‥‥名前は知らないが、彼から君という縁を断ち切ることになるんだから‥‥」
いつのまにか蝉の声がやんでいる。
彼の手はごく自然なことのように伸び、彼女の左胸のあたりをまさぐっていた。言っている
ことが理解できず、酔眼をこらし、今まで部長だと思ってた男性の顔をのぞく。
「あれ? あなたー、んーと‥‥誰?」
人殺しだよ‥‥。
親密な囁きを耳にすると同時に、ずずっと衝撃に胸を貫かれ、か、はっ、と声をこぼす。
胸乳の下に滑りこんだ冷たい刃が、搏動する心臓の表面を刃で抉りぬく。
きっかり1秒で、OLの息は止まった。
「人同士の縁、たしかにそれは重要だろうね。君が僕に選ばれたことも、ある種の必然だ」
だから、君についてきてもらうことにしたんだよ‥‥。
つぶやく片桐には衝動犯の熱っぽさも計画犯の狡猾さもない。OLの命を奪ったのはスティ
レットという刺突に特化した短剣で、サスペンス映画の小道具などに用いられる。肋骨の下端
から正確に胸板を通すことで、ほとんど血を流さず苦痛もあたえず一瞬で心臓を止めることが
できた。
儀式は儀式であり、そこに必要以上のスペクタクルを求めることはない。
すまないね‥‥。
君と私との縁は今日から始まるんだよ‥‥。
ほっそりした腰を支え、ずるりとスティレットを引き抜いていく感触は流れだす命の重さを
片桐に深く意識させる。いつものように、驚愕を浮かべてショック死したOLの顔をまぶたに
焼きつけ、忘れまいと誓った。
暖かな亡骸のぬくもりが、逝きまどうOLの困惑をあらわしている。
みずからが死んだことさえ実感できず、行き場を失った魂は片桐の背中にしがみつく。成仏
できない死者の怨嗟が、そのどろりとした血と魂の結びつきが、片桐の心を癒し、おだやかに
させた。
片桐にとって、殺人は喜びでも衝動でもない。
日常の一環であり、転勤のたびに行う地鎮祭のようなものだ。
仕事の都合上、片桐は3〜5年ごとに新たな街へ越していく。見知らぬ土地でのストレスや
重圧はくりかえし彼を苦しめた。
職業柄、一般的な人との交わりが希薄なのだ。
徹夜のあと熟睡するように、マラソンのあと深呼吸するように、転勤のあと女性を殺すこと
で、片桐は新たな地での確固たるつながりを得ることができ、とどこおりなく日々を過ごせる
のだった。
ごうごうと流れる音に耳を傾け、煙草をとりだす。
宵闇に小さな火が灯り かたわらに遺体を抱えた片桐はうまそうに煙をはきだした。
どれだけ大胆にふるまおうと、片桐が捕まることはない。
人殺しとは到底思えない、温和な笑みや印象に残りにくい風貌もある。だがそれ以上に、殺
人をおかすあいだの片桐は透明になり、人々をすりぬけることができるのだ。
今回もそうだった。
たまたま見初めた犠牲者との接点は、路ばたで会話をかわしたというそれだけだ。
ぐったりした彼女を運ぶ途中で会釈をかわした隣人の女性も、彼が小わきに抱えるOLには
気づきもしなかった。犠牲者の体温を腕に感じつつ、まわりには片桐しか見えていない。見え
ない力が働くのだ、そう彼は信じている。
名前が一文字であり、黒髪の女性で、片桐との面識がないこと。
みずからに課したこの条件を守るかぎり、不思議と、殺人犯の正体が悟られることはない。
今宵殺されるのが、OLの必然だったのだ。
さらさらと草がそよぎ、ゆるやかに流れゆく水音がここまで届いている。
真夜中の草の海に悠然と腰を下ろし、闇のなか火をつけた。音をたてて燃えていく何本目か
の煙草に目をやり、昏い川に視線を移す。
ぬるい風にあおられた川べりに人気はない。あたりには街灯もなく、人に見られるおそれは
ないだろう。もっとも、仮に片桐の姿が目撃されたところで、かたわらの死体に気づかれるこ
とは絶対にないのだが。
先に、なすべきことを片づけることに決める。
現世にくさびを打ちこんで死体から犠牲者の魂を切りはなし、片桐の手元につなぎとめる。
彼にとっては毎度ながらの慣れた手順だ。
無造作に腕をふるい、片桐は、OLの足首に刃を食いこませた。
勉強机のすみで携帯が鳴りだしたとき、僕はベッドのふちに腰かけて一本のナイフを真夏の
陽射しにかざし、ためつすがつ検分しているところだった。無機質な刃のきらめきは僕の目を
くらませ、なにごとか雄弁に話しかけてくるように思われる。
いつもではないのだが、ときおり、本棚の奥に隠したこのナイフセットから呼ばれるような
感覚をおぼえることがあった。
特に‥‥たとえば、今日のような暑い日などはそうだ。
取りだしたナイフに丹念に眺め、指を這わせていくと、ひんやり濡れた輝きを放つ刃が恋人
のように心を慰め、背中を押すのを感じる。しっとり手におさまったときの感触はまるで彼女
だ。
以前はもてあましたその輝きも、今の僕にとっては親密なものだった。
22本のナイフは、柄の形、刀身の反り、長さ、あるいは小さな瑕など一本一本微妙に異なる
フォルムをもち、人の苦痛や恐怖がなんであるかを優しく語りかけてくれる。
はっきりしているのは、これらすべてが鑑賞用ではなく実用本位であり、とある猟奇殺人の
凶器となったシロモノだということだった。
むろん、外向きの顔とはうらはらに良識ある市民とは言いがたい僕は、ナイフセットを警察
に提出するつもりなどなく、結果として去年から捜査がとどこおっていることにも、なに一つ
良心の呵責をおぼえない。
日常生活を円滑にこなすため、僕はクラスメイトや家族とも陽気に接し、冗談の好きな男子
生徒だと思われている。けれど本来の僕は他人とのかかわりになんの興味を持てず、殺人や人
の死という暗い沈黙に惹かれるタイプだった。
誰だって、心の中に闇のひとつやふたつ、抱えているものだ。
殺人現場を訪ね歩き、痕跡をたどり、ときには死体そのものを発見する。それは僕にとって、
心穏やかなひとときの慰藉なのだ。
ナイフを並べるラックには空席もある。運命に呼ばれ、あるいは偶然から、渇いたナイフは
人の手にわたり、本来の用途に使われたこともある。
携帯に電話がかかってきたのは、休憩しつつ、そうした思索にふけっているときだった。
ディスプレイの表示から妹の桜だと知り、ナイフを置いて携帯をとる。
「あの‥‥**さんですか?」
だが、意外にも、流れだしたのは低い少年の声だった。どこか緊張ぎみにお兄さんですよね、
と問われたので肯定すると、早口になった少年がいつもお世話になってますとか、桜さんとは
親しくさせていただいて、などと語りだす。
どうやら塾帰りの途中、桜は気分を悪くして倒れ、少年の家で休んでいるらしい。
こうした焦りまじりの言葉がどういうタイミングで使われるか、それが電話の相手方と僕の
関係性をどう位置づけるか、そのあたりは漫画やドラマの知識として知っている。考えてみれ
ば桜も高1だ。年頃だということなのだろう。
したがって、ああ、とか、うん、などと無感動に会話を流していた僕の注意をとらえたのは
少年の釈明ではなく、つづけて飛びだしたいくつかの混乱した説明だった。
俄然興味を引かれ、今からそっちへ向かうと告げる。
電話を切り、外出の支度をはじめつつカレンダーを前に思いをめぐらす。窓から見下ろすと、
庭先で犬がおとなしくこちらを見上げていた。犬を飼うことになったあの時からちょうど一年
なのだと思いだす。
つまり、前回からきっかり一年ということだ。
忘れかけていた桜の才能が(桜自身は呪いだと言い張っているが)またしても花開いたこと
に小さな感動をおぼえる。
‥‥桜は、しばしば、死体を発見してしまうのだ。
「ねえ‥‥」
不意に、つやめいた声音が陶酔をにじませ、印象深い去年の夏の記憶から僕を引きもどした。
ナイフを手元に引きよせ、ベッドの端に座りなおす。
「一緒に来るかい、森野?」
あられもない姿のまま、拘束されたクラスメイトの森野夜がベッドに横たえられていた。
刃先でくいとあごを上げさせ、熱をはらんだ漆黒の瞳をのぞく。
首肯も拒絶もせず、なにか小さく口の中でつぶやいた森野夜は顔を伏せ、不自由な躯をよじ
らせた。光沢を溜めた黒髪がシーツの上で長々とうねり、しらじら冴える肌とのコントラスト
は死斑さながらだ。
拗ねているようでもあり、楽しんでいるようでもあり、醒めているようでもある。
表情にとぼしい森野の横顔からは、内心はうかがいしれない。ただ、宝石のような孤独感と
気の強さが、僕のような種類の人間をひきつけてやまないのだ。
怜悧で物憂げな瞳がわずかに動き、やがて、ちろりと探るような流し目をよこす。
「‥‥。このままでいいわ」
「分かった」
それが、彼女にとってのおねだりだった。瞳が重なり、いくぶんか体感温度があがっていく。
どちらともなくスプリングをぎしりと軋ませ、肌と肌とを近づけあう。
「出かける前に、もう一度嬲ってあげるよ」
返事はない。
僕も、森野自身も、ふたしかな言葉のやりとりなど期待してはいなかった。
沈黙のまま、はだけられた森野の胸に五本の指を這わせていく。寒いほど冷房が効いている
にもかかわらずじっとり汗ばむ弾力ある丘をにぎりこむ。ぎゅっと目を閉じ、さらけだされた
喉をひくつかせて森野が身じろいだ。
バンザイの姿勢で伸ばした両手首は金属の手錠に噛まれ、森野はあおむけにつながれている。
手錠の鎖はベッドの桟をくぐり脱出をはばんでいた。裏返した手首の下には、悩ましいリスト
カット痕が残っている。白磁のように薄れつつあるその痕を指で淡くなぞっていくと、森野の
喉が上下する。喘ぎをこらえてあごを反らし、無防備にのけぞる。
この愛撫が、いつのまにか定められた暗黙の合図であり、ペッティングの導入部だった。
ぬば玉のような漆黒の瞳にも、抑圧された願望がにじみだす。
丸みをおびた肩もあらわな暗色系のノースリーブはずりあげられ、ぴっちり体の輪郭を浮き
たたせるシームレスのブラも引きおろされて、おわん型のカップから剥きだされた無垢な双の
乳房は、あてがった手のひらにおさまる程よいサイズの盛りあがりとなって悩ましく僕を駆り
たてていく。
きめ細かな肌は死人めいて温度が低く、それでも、汗ばみ吸いつく指と指のはざまからたわ
んで零れだす小さな乳輪は、隠しきれない快感の徴もあらわにツンと血色を集め、固く尖って
いた。
指の腹で転がし、掌底でぐりぐりと円を描く。
そのたびにン、ンッ、と声を殺しきれない甘色のきざしが波のように僕を押し流す。
こうされることを望むとき、森野夜は決して声を出さなかった。少なくとも、本人は出して
いないつもりで頑張っている。ときに自失するとしても、そのスタンスは変わらない。
瞳を閉じ、僕に身をゆだね、なされるがままに愛撫を受けいれる。
彼女は、死体なのだ。
死体はものをいわない。死体は逆らわない。死体は‥‥拒絶、できない。
ナイフの広い腹を、慎重に乳首の先に押しあてる。冷たい金属の感触に森野の腰はびくんと
跳ね、下半身にわりこんだ膝が痙攣する太ももにぶつかった。組み敷かれたまま抵抗はせず、
けれど、森野の躯はいじらしいほどに責められて感じている。
冷たい死の気配に反応してしまうのだ。
乳首の先がみるみる固さをまし、ツンといやらしく充血していくさまを僕は感動的な思いで
眺めていた。数センチ先の死をささげる刃が、森野にはこれ以上ない刺激をもたらすのだろう。
舌でちゅるっと先っぽを濡らしてやると、またも淡い悲鳴が耳朶を愉しませる。
こらえきれず、ナイフを彼女の頬にあてがう。
薄く閉ざされていたまつげが思わずひくりと震えるのを視野にとらえた。これは僕と森野、
どちらにとっても危うい行為だ。
ナイフでもてあそぶという愛撫は、もとは、ほんの気まぐれからはじまった。
けれど、ときおり僕の家に遊びに来るようになってからの森野は、このすれすれのプレイを
いたく好んだらしく、積極的にのぞんでくるのだ。
嬲られる、という実感が、女としての魂の核を震わせるのだろうか。
あまった手で乳房から腰のくびれ、さらに下腹部へと肌をなぞっていく。森野は裸身をひく
つかせ、シンプルな黒い下着の奥に息づく女の源泉まで僕の進入をたやすく許してしまう。男
性器はおろか指先でさえ破ったことのない深遠な処女地が、ひくつく帳を濡らして触られるの
を待ちわびている。
下肢は性の情欲におののき、上体は生への渇望でわななく。
アンビバレンツな緊張を強いられて、森野の体表面はみるみる悩ましい火照りにおおわれて
いく。どこもかしこもふるふるよじれ、柔肌をじんわりさすってやるだけで際限なくよがり声
を引きだすことができる。
僕自身、趣味以外でこんなにも熱中できることがあるという事実をいまだ頭で受け入れられ
ずにいた。森野を求めて下腹部がこわばり、反対に心はひどく冷えきっていく。一手先の死を
求めて躯が疼き、みだらに裸身が咲きほこる。
だからこそ、彼女をイかせるために、瀬戸際でのギリギリの集中力が求められた。
破滅のふちで愉悦に溺れるために‥‥。
掌のなかでくるんとナイフを反転させ、むきだしの刃を肌に沿わす。
手首をつうと滑らせ、頬からあごへ落として喉もとを刃先でくすぐり、すぐさま引き戻す。
「や、んぁ、ダメ‥‥‥‥ン、ぁンっ」
聞いている僕の耳たぶが熱をおびるくらいにあられもなく、恥ずかしいぐらいの溶けた嬌声
がまきちらされ、痛いぐらい興奮しきっている僕の手を吐息で汚した。呼気の暖かさが肌から
沁みこみ、下腹部をなぶる手をいっそう激しくさせる。
とほうもなく欲情しながら、けれど、必死になってそれ以上の衝動を殺す。
内心ではたっぷり余裕をとっているとはいえ、本来試すことさえ憚られるような禁忌を踏み
こえてペッテイングを施していくことはリスクをともなう。お互い、もどかしさと自制心の板
ばさみになり、ジレンマはさらなる危うさを欲望に転化してしまうのだ。
たとえば‥‥。
頬をなぶっていたナイフの刃先が、瞬間的に、ぎり、と停止していた。
遅れて、じわりと冷汗がにじみだす。
ほっそりした喉元に目を奪われかけた刹那、森野が唇を濡らしてナイフを咥えこんだのだ。
危なかった。気づくのがあと一秒遅ければ、僕はナイフごと手を動かしていただろう。
「‥‥ン、ふふ」
被虐的な光を目にたたえ、森野は僕を挑発していた。
何かをこらえるようにナイフの刃先へと自分から舌をからませ、愉悦まじりにぴちゃぴちゃ
しゃぶっていく。森野とて、このナイフの鋭さを知らないわけではない。すっとナイフを引き
抜くだけで、彼女の舌は根元から切れて落ちるだろう。
わかっていればこそ、森野は頬を上気させながらなおも熱心な口唇奉仕におぼれていくのだ。
反対に、僕は腕に力をこめて宙に固定する。一ミリも動かせない。
膝下までスカートを引き下ろされ、下着の中に指の進入を許して熱い蜜汁で僕の手をむかえ
いれながら、ヒダをいじる僕の手を引きこもうとキュウキュウ蠢きながら、おかえしとばかり
にナイフを舐めすすいでいく。
卑猥な汁音が跳ね、体液にまみれた刃先がじくりと疼きだす。
もう堪えつづけるのは限界だった。
渇きにも似た切実な情動にかられて僕は屈みこみ、ナイフを持つ手をしっかり固めたまま、
そりかえった細いあごからのどへの曲線に口づけた。
「ヒァ、ヒゥ、ンァ‥‥ッッ!」
悲鳴を漏らし、森野が小さな唇からナイフをはきだす。
死を誘う小道具をようやく手放した僕は、森野の唇を指でまさぐり、のどから鎖骨のくぼみ
にいたるまでキスの雨をふらせ、涎をためた舌を這わせていった。
異様な刺激に森野がひくひくと身悶え、気持ちよさそうに半裸の躯をのたうたせる。
もちろん、空いた手も彼女のぬくもりを弄り、繊細にまさぐっていく。
「アッ‥‥ぁ、い‥‥‥‥クッ‥‥!」
二度、三度、腰がクチュッと汁音をこぼして弾み、小さく、けれど鋭い喘ぎをもらした森野
の瞳は、視線をしっかり僕にからめとられて、切なそうにゆがんでいた。
羞じらうしぐさは僕にしか見せたことのない表情だ。
悔しそうな瞳孔がきゅうっと細まり、一部始終を観察される悦びに打ち震えている。
‥‥今ので、イッたらしい。
イク瞬間を見られて恥ずかしかったのだろう、朱をちらしたように頬に血色がさしていた。
神経をすりへらした僕もまた、荒い息を吐いて隣に横たわる。一度きり、おとがいをつまんで
やわらかく唇を重ね合わせ、舌をからめた。
痙攣のおさまらない利き手を何度もさすって緊張をときほぐす。
服を剥かれ、放心して寝そべる森野夜は、凌辱され空ろになった亡骸を思わせた。
しばらく沈黙を楽しみ、森野がきちんと満足できたかたしかめる。汚れた下着をはきかえた
僕は、今度こそ桜を迎えに行くためベッドから立ちあがった。
「出かけるのね‥‥」
「ああ。森野は、好きなだけいてくれていいよ」
矛盾を認識しつつ、いつ帰ってもいいからと言わんばかりに僕は語りかける。
今の森野にとって僕の言葉は絶対であり、命令だ。
強制的に手錠で戒められているのだから、囚われの森野夜に抜けだす機会はない。
彼女お気に入りの首輪をはめてやり、あごの真下のリングに手錠の鍵を吊るすと、もう森野
は自力では何もできなくなる。このようなひどい扱いをされることに、森野はやるせない悦び
を見いだすようなのだ。
こうしたとき、部屋の鍵は外から施錠するのがつねだった。
いつものように準備をすませ、冷房の温度を下げて本当にいいんだねと念押しする。森野は
ええ、と唇の揺らぎだけで応じた。普通ならば笑みに相当する表情の変化だ。
「だって、犯人が死体をどう扱おうが自由じゃない?」
僕は答えない。
そもそも、彼女の台詞は僕に向けられたものではなかった。
「死体には自我なんてないわ。好きなように、残酷にもてあそばれるだけ‥‥それが望みなの」
違うかしら‥‥。
宙に消えていく問いかけに背を向け、閉ざした扉に鍵をかける。
静かな機械音とともに戸口のすきまから墓穴めいた冷気が押しだされ、思わせぶりな森野の
睦言と一緒くたになって、階段を下りる背にぞわぞわとまとわりついてきた。
おとろえぬ午後の灼光にまいりつつ、自転車で少年の家に向かう。
道すがら、妹の運命について想像をめぐらす。
好むと好まざるとに関係なく、桜は子供のころから数年おきに死体を発見し、そのたび一週
間は熱でうなされてしまう。桜自身はこの才能を忌み嫌っていたが、発見の間隔は短くなって
おり、僕はずっと次を楽しみにしていた。
残念なことに、これまでは旅行や学校行事で死体を発見することが多く、僕自身は目撃する
機会にめぐまれなかった。だが、今回は違う。
電話をくれた少年‥‥涼一の話をまとめると、こういうことだった。
桜よりひとつ年下の涼一は塾の友人だという。つい数時間前、犬の散歩をしていた涼一は塾
帰りの桜に会った。たあいもない雑談のあと、桜は犬の散歩につきあうことになり、2人は川
沿いの土手を下流へ歩くことに決めたらしい。
巨大な鉄橋のたもとまで来たとき、草むらに転がった何かが涼一の目をひいた。
この炎天下、橋の下にある河川敷は草が伸び放題で人気もない。
なんだろうと手をゆるめたとき、リードを振りきって犬が草むらへ飛びこんだ。
まっさきにあとを追った桜が自転車にのったまま斜面を駆け下り、犬の飛びこんだ草むらに
飛びこんでいく。やがて短い叫びがあがり、ゆっくり自転車が倒れていき、ようやく追いつい
た涼一は犬がじゃれつく赤いものの正体を見た‥‥。
うだる熱波のなか、まぎれもない腐臭を鼻が嗅ぎつける。
最初は、例の穴から匂ってくる残滓かと思ったが、そうではないことが分かってきた。
土手に駐輪しておいて、橋の袂からコンクリートの階段を下りていく。
一面の草の海は太陽に照り映え、草いきれがたちこめていた。目の高さまである尖った草を
かきわけて進み、ぽっかり開けた円形の広場へ出て行く。
露出した土の上に、女性用の、一足の赤いハイヒールが並んでいた。玄関口のように丁寧に
つま先をそろえ、鋭いヒールの先は土に食いこんでいる。
照りつける陽射しの直下であぶられながら、言葉もなく無心に僕は魅入っていた。やがてデ
ジカメをとりだし、慎重に、角度を変えて何枚も写真をとる。森野夜に見せたくもあったし、
パソコンに取りこんでじっくり見返すためでもある。
‥‥うつろなはずの靴には、こぼれんばかりの中身が詰まっていた。
まだらになりつつある表面と、熟れた内側と、洗いざらしの白が、くっきり目にやきつく。
腐敗は目に見えて進行をはじめており、真新しい匂いに誘われたのか、小さな蠅が周囲を飛び
かいだしていた。
くるぶしの上あたりで断ち切られた細い足首はふちがギザギザに崩れていて、その足の先に
ついていただろう被害者の輪郭をイメージさせる。いずれにせよ犯行はあざやかだったらしい。
争った形跡はなく、ただ、転々とむきだしの土に血が跳ね返っているだけで、その痕跡もごく
わずかだ。
どのような女性だったのか、何を思って殺害されたのか‥‥。
足首に直接触れることはさけた。警察に発見されたときのこともあるし、コンクリートの橋
げたが陰となって腐敗を遅らせているとはいえ、この陽気でそれなりに状態は悪化しており、
指で突くだけでも崩れそうだったからだ。
顔を上げ、汗をぬぐって草の壁を見る。僕と桜にとって、ここはなじみのある場所だった。
ちょうど一年前、この広場のすみにある深い穴に動物の死骸がたまり、ちょっとしたトラブル
になったのだ。
当時、僕は何度か訪れたし、役所に手配されてそれらの残骸が清掃されるのも目の当たりに
していた。それら動物の死骸が一掃された後も腐臭だけはしつこく残り、近隣の住人がここを
訪れることはない。
あるいは、そうした事情を知って犯人は死体の一部を遺棄したのだろうか。
だとすれば、身近に犯人がひそんでいることになる。
頭上の橋から響く騒音をのぞけば、雑草に埋もれた広場は無人の死角だった。
乏しい血の跡をたどって川べりまで草むらを突き進み、たゆたう水量を眺める。この地点で
死体の残りを流した可能性は高い。昼はともかく夜ならば、誰も近寄らないこの場所は人殺し
には格好のロケーションだ。
さらに範囲を広げてあたりを調べるが、他に遺留品などはみあたらない。
先に殺害現場に寄ったのは、この橋の袂が家からの通りすがりだったことと、桜をつれての
帰りに訪れるわけにいかないという理由からだ。
妹である桜も、死体や殺人現場を好む僕の昏い嗜好については知らない。
桜にとっての僕は、勉強こそ苦手だが陽気で親身な兄であるらしい。母や桜のもちだす話に
興味をひかれることは皆無だったが、2人は頻繁に話しかけてきたし、長年の習性で無意識に
口が動き、僕もその会話に参加しているらしかった。
不思議とそれで齟齬は生じない。
僕自身はなにも覚えていないのだが、母も桜も、ときには父さえも愉快そうに笑うのだ‥‥
どうやら、僕自身が持ち出したらしい話題で。
だから涼一から「川べりの広場で死体の足首を見つけた」と聞かされた僕は、ひとりきりで
検分に行く必要があった。
汗だくの体をのろのろと動かして階段を引き返し、涼一という少年の家に向かう。
とりあえずここまで。
いきなりミスもありますが、その辺はさりげなく無視の方向で。
犯人の一人称は「私」です。>378の独白
>>385 この時間まで起きててよかった!!
相変わらず素晴らしいですね…続きが気になってしょうがないですよ!!
>>385 あっちもこっちも非常にそそられる内容で、嬉し涙が。
エロも猟奇もどちらも期待しております。
GJです!
神山と森野の絡みイイ!
神ktkr!!!!!!!!!
涼一の家は、河川敷のさらに下流だった。
高校受験の頃から桜が通いつづける塾は家から遠く、あいだに大きな川をはさんでいる。涼
一の住まいは、桜が塾通いに使う橋よりさらに一本下流の橋を渡った少し先にたたずむ、官舎
風のすっきりした建物だった。
エレベーターを上がっていくと、めざす部屋の前の外廊下で、長身の少年が息を乱していた。
こちらに気づかず、隠すように靴らしきものを持っている。声をかけると、気の毒なぐらいに、
びくっと青い顔でふりかえった。
やはり、この少年が携帯にかけてきた片桐涼一だった。あいさつをかわし、中へ通される。
玄関に入ると、涼一が靴箱を開けているあいだに毛玉のような子犬が奥から飛びだしてきて、
僕の足のあいだを走りまわった。
この犬が死体の第一発見者なのかと思いつつ、やけに人なつこい子犬の頭をなでてやる。
「こら、ジューシー。ちゃんと食事しなさい‥‥あら?」
出てきた母親に礼儀正しく声をかける。犬を褒めると母親はうれしそうにしたが、名前の由
来になった好物のウェットフードを食べようとしない子犬に手を焼いているようだった。
桜は、奥にある涼一の部屋のベッドに伏せっていた。
「兄さん‥‥。ごめんなさい、呼び出して」
いつものように、死体を発見したあとの症状で桜は青ざめていたが熱はなく、むしろ涼一と
比べても元気そうだ。僕の顔を見てたちまち体を起こす。
大丈夫かとたずねるとなぜか頬を赤くし、うんとうなずいて涼一をちらりと見た。
涼一はこのアイコンタクトにも気づかずに、どこかうわのそらだ。
少しの間、雑談をまじえて詳しく発見の状況を聞いたが、たいして成果はなかった。
桜は一瞬しか死体の足を見てないし、パニックになった涼一は桜を自転車にのせると猛烈に
土手を駆けあがったのだという。桜を休息させてから自分の荷物を忘れたことに気づいて戻り、
さきほど玄関で僕と鉢合わせしたらしい。
桜より一つ下の学年ながら、はきはきした物言いで陽気な少年だという印象をうける。
そのときノックがあり、涼一の父親が盆の上に飲み物をもってあらわれた。休日で家にいた
父親も、桜が倒れた事情は知っているようだ。
もっとも、涼一の母親はただの熱中症だと思いこんだようで、死体の話に興味をもったのは
父親だけらしい。もともと涼一にいたずら好きな少年らしく、桜の才能を知らない以上、そう
した反応も仕方ないと言えた。
「君はどう思う? これが涼一のいたずらか、本当に死体があったのか」
父親の問いかけを聞くかぎり、やはり、すぐには涼一の話を信用できないようだ。
少し考え、隠す必要もないと判断して、足首のまわりには血痕も飛び散っていましたと見て
きたままを告げると、父親の様子が変わった。
いや、父親だけではない。桜も涼一も、なぜか、いちように奇妙な顔つきになる。
だが、理由をたずねる前にゆっくりしていきなさいと言い残して父親が退出し、僕はひとり
首をかしげたまま取り残された。
妙な沈黙につつまれて、桜も涼一もとまどっているようだ。
それ以上は死体の話を聞き出せだせそうになかったので、あとは適当な話題に終始し、30分
ほどで片桐家にいとまを告げ、桜と出た。
「ねえ、兄さんはどう思う‥‥」
帰り道、傾いた夏の陽射しを浴びる土手を走りながら、桜が声をかけてきた。
はずみで死体の感想を口にしかけたが、すんでのところで目的語が不明だと思い直し、何の
ことだいと聞きかえす。
「‥‥涼一君のこと。あの子、塾じゃ女の子に人気あるんだよ」
どう思う、と桜がたたみかけてくる。
意外な返事に、どう答えるべきか一拍遅れた。そうだね、と言い、つづけて、陽気な子だね、
と言う。あたりさわりのない返事をどう受けとったのか、自転車をこぐ桜の横顔は少し夕日を
照りかえしていた。
桜が塾通いに使う巨大な橋の袂まで来たところで涼一の父親に出会う。どうも買い物に出て
いたらしく、肩がけのクーラーボックスについて質問すると、冷えたビールが飲みたくてね、
と手酌のジェスチャーで苦笑まじりに教えてくれた。
携帯電話風の灰皿でくわえた煙草を消し、桜にほほえみかけ、また遊びにおいでとうながす。
桜も、心なしか嬉しそうだ。
温和な父親に別れを告げ、涼一と桜の関係を思いながら、黙って自転車を走らせる。これと
いった感慨は特にわかなかった。桜だって日に日に成長しているし、彼氏を作りたいと思うの
かもしれない。それは、とても自然なことに思える。
一瞬、森野と僕とのかかわりが頭をよぎる。
世間的にどう見えるのであれ、僕と森野は、恋人同士と言うには少しひずんでいる。それを
思えば、桜はうらやましい境遇にあると言えるのだろうか。少なくとも、桜の彼氏候補は普通
の少年なのだから。
兄さん‥‥。
どうしたの、そんなに私の顔ばかり見つめて‥‥。
赤い顔をして、併走する桜が僕を見つめていた。去年の夏場は少年のように短くしていた髪
も、今はまた伸びてきて肩のあたりで風にはためいている。くるくるとよく動く目は愛らしく
素直な桜の性格をあらわしているようだ。
なんでもないよ、と桜に言い返し、夕日に伸びる影をふりきって自転車の速度をあげる。待
ってよーと追いすがる桜は、さっきまで寝込んでいた少女とは思えないほど生き生きしていた。
帰宅したとき、まだ親は出かけていて、桜はめざとく森野の靴に目を留めたようだった。
あ、森野さんが‥‥と口ごもるので、気を使わなくていいからと言い、もう少しリビングで
安静にするようにと指示してから部屋に戻っていく。
桜に、森野の姿や、写真を取りこむところを見られないようにするためだ。
そっと階段を上がり、音をたてずに自分の部屋にすべりこむ。
人の字に拘束されたまま、森野夜は身じろぎもせず、ひっそり死んでいた。ゆるやかに上下
する胸が目に入らなければ、血の気のうせた裸身は屍蝋と見分けがつかない。
律儀にくくられた両手の指を手錠の鎖にからめ、捕らわれの無力さを孤独に味わっている。
家を出てからすでに6時間、彼女はひたすら機械的になぶられ続けていた。
手錠と足枷で磔にされた森野からは、頭の先にあるドアなど見えず、僕が帰ってきたことも
気づいてはいない。ただ、受け身のままで快楽に興じている。
「ン、ンッ」
どこかかわいらしい、小さな呻きがこぼれた。
単調でしずかな振動は、彼女の下腹部から響いている。辱められ、半ばまでずり下げられて
お尻をむきだしにされた大事な谷間には、縄で固定されたバールローターが肉芽をむきあげる
形で固定されていた。
ローターのスイッチは森野の腹部に置かれている。
すぐ目の前に転がっていながら、自分では止めることも操作することもできない。
手錠の鍵と同じ仕掛けだ。そうした惨めさが、彼女を燃えたたせる。
ここからでも分かるほど少女の股間はじっとりと粘つき濡らしていた。シミの具合にぞくり
とする。いったい何度、強制的に追い上げられ、達したことだろう。今も発作的に太ももが痙
攣し、ひくひく跳ねている。
足をしのばせて近づき、死角から森野の乳房に指を這わせた。
こりこりにしこった二つの乳輪の頂を、力をこめてぎりりっと絞ってやる。
「あんっ」
それは、僕の方がびっくりしてしまうほどの悩ましい、艶めいた森野の吐息だった。
氷を握ったかのようなしびれと冷気が掌に残り、その手の中にすっぽり柔らかくおさまった
乳房が、バクバクと壊れそうな勢いで鼓動を刻みだす。
頬に朱がさし、生き返った森野が、水分をためた瞳で情緒的に僕を見上げている。
お互いにあいさつする習慣がない以上、森野が僕の不意打ちを責めることなどできないのだ。
一粒のしずくが水面に落ちるように、森野の声が耳を打つ。
ねえ、止めないでよ‥‥もっと‥‥痛くして‥‥。
こらえきれるはずがない。直截なおねだりは一瞬で僕をたぎらせた。
顔を傾け、彼女の前髪をすくって凍土のように冷たい肌にぬくもりを移してやり、そのまま
唇と唇をふれあわす。色を失って閉ざされていた唇がしだいに開き、凍てついた口腔をまさぐ
るように僕は舌を差し入れていった。
ぬちゃり、と雪解けにも似た水音がまじわりをつなぐ。
凍った体を熱心にあたため、歯並びのよい前歯の裏のくぼみを濡らしてやり、口移しで僕の
体液を嚥下させてやりながら口の中をなぞりまわす。ふっくらした歯茎をくすぐり、逃げ腰の
舌をからめとり、きつく吸引しながら歯で擦りたてる。
もちろん手は休めることなく、彼女のクレヴァスを苛烈に虐めたおす。
刺激の上に刺激を重ね、肉芽をさすり、ローターに緩急をつけ、あふれる蜜をすくいだして
むきだしのおなかに塗りつけ、痛みと喜びで交互に彼女を堕としていく。
股間をいじられ、悶えさせられ、閉じることのできない下肢が断末魔のように震えていた。
出かけ前に足枷でベッドの左右につないだ足首は、無防備な裸体を残酷に開脚し、割り裂いて
いる。力まかせにあらがったところで森野は数センチたりとも足を閉じられず、濡れそぼって
蠢く浅ましい女の羞恥をかえって見せつけることになるのだ。
ぷっくりと土手は充血し、ローターと縄をくわえ込んだ女の源泉をさらけだしている。
その下方、ぴくぴくしている不浄な穴に、つぷりと指先をめり込ませた。
ぎり、と強い怒りを溜めた瞳が燃えあがり、威圧して僕を睨みつける。だが抗議を発しよう
と開いた口はぐずりと蕩け、抵抗もむなしく森野の躯は瞬時に堕ちた。
「んぁ、は‥‥ぁンッ!」
刹那にアクメまで昇りつめ、楽器のような嬌声が悦びを奏でだす。
お尻の穴までいいようにこじられる屈辱。
今の森野はそれさえ喜びにすりかえてしまう。異常な愛撫をほどこされて反発しつつも体は
屈服してしまう。日に日に森野の感度は上がっていき、与えられた刺激をいじらしいほど熱心
にむさぼってくれる。
それはまさしく、未熟な躯を開発していくマゾの調教にも近しいものだった。
恋人同士というより、奴隷のように扱われていると知りつつ、その惨めさが彼女をとらえて
離さないのだ。
体内の疼きをとめられるまま、恥辱の焔は森野の瞳のなかでバターのように悦びへと溶けて
いき、第一関節まで埋もれさせた僕の指をきゅうきゅうと、疚しく食い締める。鉤のように、
くいと指を曲げてやると、反応がすさまじい。
女の部分はほとんど未開発のまま、倒錯した愛撫ばかりに馴らされていく。
それがどのような感覚なのか、ただ森野は瞳をうるませて刺激に溺れ、クリトリスとアナル
だけで何度もイかされることを切望してくるのだ。
「すご‥‥い、ソレ‥‥ん、ンッッ」
どろどろに糸を引く喘ぎは、甘いささやきとななって僕にねだりかける。
被虐の炎に灼かれ、濁った森野の瞳がさらにどろりとみだらに溶けていく。だが、頂上まで
登りつめようと怜悧な顔がゆがんだ最後の刹那、僕は耳元で意地悪くささやいた。
妹が帰ってきたから、それ以上声を上げてイクと気づかれるよ‥‥。
細まっていた瞳がぎくりと見開かれる。
切なげに、苦しげに森野が口を開き、閉じ‥‥声もなく、足をつっぱらせて弓なりに反った。
下半身がさらに熱をおび、悩ましくうねりだす。
声を出してはいけないという単純なこの命令だけで彼女の躯はさらに焦らされ、イきそこな
って逆に昂ぶってしまったのだ。
僕は、満足がいくまで何度も彼女をなぶり、喘がせ、愉悦の海におぼれさせた。
「バラバラ殺人かしら」
正気を取りもどして最初に森野の口をついたのがこれだった。身なりをととのえた森野は、
あつかましくも僕の椅子と占拠したまま、パソコンに取りこんだばかりの写真を食い入るよう
に眺め、拡大したりスクロールしていた。
「そんなに興味津々なら、一緒にくればよかったのに」
「いやよ。こんな真夏日の、それも一番暑い時間帯に外出なんて莫迦のすることだわ」
即答だった。
森野や僕のような人間は、やむをえない時をのぞき、体を動かしたり汗をかくといった健康
的な行為にほとんど逆ギレのような憤りをおぼえる。僕はどうも森野のカメラ役として良いよ
うに扱われたらしい。
ストローでアイスコーヒーを啜り、クッキーをつまみながら、森野は熱心に断面の色つやな
どを調べている。
ちなみにそのコーヒーと茶菓子を用意したのは僕だ。
廊下へ出たところで桜に出くわし、彼女がわたわたお茶を用意しだすので今日は休むように
いさめたのだ。当然、そうした僕の気くばりに気づく森野ではないし、桜は桜で人が良すぎる
ため、倒れたばかりの体で無理をしかねなかった。
「本当に、手首とか上半身とか、他の部分は残っていなかったのね?」
もう一度問われ、何もなかったよともう一度答える。
森野の問いは当然だった。今のところ足のない死体がこの近辺から見つかったという話題は
ない。となれば遺体は身元を隠すためバラバラに切り刻まれたと考えるのが普通だ。
ただし、僕自身は違う感想を持っている。
「これはバラバラ殺人とは違うよ。猟奇性を秘めている」
なぜ、と森野が瞳で問いかけてくる。返事をする代わり、僕は横から手を伸ばしてマウスを
奪いとり、デジタルで取りこんだ新聞記事のリストを表示させた。
長い黒髪からかすかな香りが鼻をくすぐり、頬を寄せるように密着してパソコンを操作する。
じきに目当ての記事は見つかった。
死体から足首だけを切り離し、別々に遺棄する‥‥。
こうした、犯人の意図がまったく分からぬ事件は、実はここ十数年で3件ほど発生していた。
事件の間隔は不規則で、殺害現場は日本中に点在している。被害者同士に接点がなく、目撃者
もいないのが特徴だ。そもそも、県ごとに縦割りの警察がこれを一連の事件として見ているか
どうかも疑わしい。
「いずれも足を切り離す必要のない事件なんだ。今回もその猟奇殺人犯ならば、真相は逆で、
足を切り落とす目的で殺したのかもしれない」
指摘してやると、森野の瞳がきらりと誘われるように光を増した。
「切り落とすところを見てみたいわ」
熱心に記事を読みながら ぶつぶつ呟く森野の横で、考えを進めていく。
体の一部を切断するという手口は、去年、世間を騒がせたリストカット事件を連想させた。
あの犯人もいまだ特定できていない。少なくとも公式にはそうなっている。だが、あれと対比
してアンクルカット事件とでも呼ぶべきこちらの猟奇殺人には、正反対の特色があった。
‥‥切り落とされた足首が、すぐに発見されているのだ。
つまり、殺人犯は足首を愛でるような倒錯したフェティシズムとは無縁だということになる。
むしろ僕は事務的な冷酷さを事件から感じとっていた。
いずれにせよ、事件の切り抜きと生々しい現場の写真は、森野をいたく刺激したらしい。
日の高くないあいだならという条件で、翌日の探索を彼女は了承してくれた。
蝉の声がひどくやかましく、林立する草の壁を揺らしている。
僕の隣には、黒いワンピースを身につけた森野が、同じように腰をかがめて露出した地面を
見つめている。
すでに今朝早く、この川が流れこむ湾内で足首のないOLの死体が発見されたとニュースが
報じていた。水に浸かっていたため損壊は激しいが、死後2日程度だという。間違いなく遺棄
された足首の持ち主だろう。
しかし、だからこそ納得がいかない。
「間違いないわ。ここと、ここ‥‥地面の血痕の位置は、写真とまったく同じだもの」
写真を手に森野が指さす先、昨日まで足首の置かれていた場所には、ヒールでえぐられた2
つの窪みが並ぶばかりだった。
‥‥赤いヒールもろとも、腐敗の進んだ足首は消えていたのだ。
血痕などはそのまま露出した土に残っていた。ただ、遺体だけが見あたらない。
「まさか、ドッキリ?」
あなたがやったんじゃないでしょうね‥‥。
ひややかに睨む森野の非難をほったらかして、地面に視線を這わせ、くまなく調べていく。
めったにないことだが、僕は動揺していた。それを森野に悟られたくなかった。
こんなはずがない。
この殺人犯は足首を切り落とすのが目的であって、足首を持ち運ぶことなど考えられない。
「じゃあ、待ち合わせに遅れたのはなぜ? 先回りしてここに来たんじゃないの?」
死んだOLのことを調べていた、と正直に答える。
家を出るぎりぎりまで、僕はネットでニュースを検索していた。いまの時代、事件の速報は
数時間で人々のあいだを駆けめぐる。死体が見つかったのは昨夜だが、すでにスティレットと
いう刺突専用の短剣が凶器らしいという話まで出ていた。
「消えた足とその話はどう関係あるの」
「足首が見つかったというニュースは、今朝の時点で、どこにも流れていない、ということさ。
だから、僕らはここにいられるんだ」
ようやく、意味することの重みを知ってか、森野の瞳が細くなっていく。
もしも、通りすがりの近隣住人が足首を見つけたならば、喜んで持ち去ったりするだろうか。
それはありえない。まず通報するだろうし、足首は検死にまわされ、この広場でも警察の検証
がはじまるはずなのだ。
そうした状況がまったくないにもかかわらず、足首だけが持ち去られ、消えてしまった。
これはどういうことなのか。
‥‥この丸い広場に安置されていた足を持ちさった者がいる。
少なくとも、その者は昨夜の時点で死体の一部が放置されていることを知っており、意図的
に足首を回収したのだ。そうしたことのできる人間は、犯人を含めて、ごく数名に限られる。
より正確に数えるなら、6人しかいない。
・僕。
・森野夜。ただし、森野は広場の位置を知らず、どこにあるか僕は教えていなかった。
・片桐涼一。その父親。母親。
・‥‥。そして、桜だ。
桜はいつも朝早く飼っている犬の散歩にでかける。今朝は特に長かった‥‥。
並んで地面を探りつつ、おたがい顔を見やることもない。
徐々に昇っていく真夏の陽射しの下で、鳴きやまない蝉の沈黙だけが僕と森野を包んでいた。
今日は早めに投下。
というわけで、今回はこんな感じのモチーフです。
ようやくラストまで破綻なく話が通りそうなので、あとはなるべくエッチシーンを混ぜられたらと思います。
タイトルからして(・∀・)イイ!!
この二人は何となく夏が似合う気がする。
犬が嫌いなのに神山の家でSMする健気な森野にテラモエス
この二人が将来結婚したらどうなるんだろうな。
どーでもよさげに籍入れて外面は普通の夫婦生活を営んで相変わらず暗い話題でネガティブに盛り上がって。
どういう間違いなのかごく普通の素直な子供が育ったりしたら笑える。
前シリーズもスゴイと思っていたけど、靴は更に腕がアップしている。。。
素晴しい!グッジョブ
>>397 そして犬を嗾けられる、と…w
>>398 籍も入れずに何となく同棲生活→周り(森野の祖父母とか)に言われて仕方なく入籍
とかも良くね? ってか森野が家事とかしたら、たぶん(ry
一人暮らしをしていた僕の家に森野がいつの間にか住み着いて、既に3年と少し経っていた。
高校2年生の出会いからは、もう7年の月日が流れている。僕も彼女も社会人になっていた。
社会に出ても僕は仮面を被り続けており、森野もまた、相変わらずのスタイルを静かに保っ
ている。
どこまで続くものかと思っていた僕達の縁も、ここまで来るとなると、あまり言葉にしたく
は無いが“運命”というやつなのかもしれない。学生のときとは違い、限りが見えない社会人
生活というものはずっと続く。このまま適度に干渉していく生活が続くのだろうか。
一応、森野は『寝る場所を借りている』という意識はあるようで、一通りの家事をやってく
れていた。しかし洗濯や掃除はなかなかの手付きでも、料理だけは何年経っても進歩しない。
本人は認めたがらないが、不器用なのだ。今では何とか少なくなってきたものの、両手の指
に切り傷は常備していたし、「ナポリタンが出来たわ」と言って差し出されたそれは明らかに
赤い皿うどんだった。味の方は言うまでもない。
初めの頃、1度だけ食べ残したことがあった。すると彼女は、いつの間にか僕のスーツのポ
ケット全部にごま塩を投入するという、地味な嫌がらせを行ったのだ。普通に怒り狂われるよ
りも恐ろしさを感じた僕は、それ以来食べ残していない。
外食に誘ったり、僕が料理しようとすると、今度は瞬間接着剤で携帯電話を開けないように
くっ付けられた。もう2度と外食へ誘わないし、僕が料理することは無いだろう。
しかしその行為は、彼女なりに僕へ感情を表現しているのだろうと考えると何も出来なくな
ってしまう。
―――――――――――――――――――――――――
なんとなく考えたけど微妙だな。
や、すごい面白かった!
>>401 社会人になった森野‥‥この駄目そうな健気さが良いですねw
得意分野とその他で能力に落差がありそうなので、とてもいい感じでした。
「靴」は分量的に「DOA」の2/3ぐらいになりそうです。
ということで続きを。
「妹さんが? そうなの」
一部始終を語りおえると、耳を傾けていた森野は吐息をついて思案にふけり、やがて素敵な
才能ねとコメントした。意思にかかわりなく死体を発見してしまうという桜の才能は、やはり
森野をうらやましがらせたようだ。
僕と森野は、電柱の影さえ干上がった陽炎のような住宅街を引き返すところだった。
ひとすじの滴が陶磁器のように白い森野のあごをしたたり、森野でも汗をかくのだなと変に
感心する。
広場の調査も近所での聞きこみも、ともに空ぶりに終わっていた。遺体の消失という悲しい
できごとをのぞけばとりたてて発見はなく、付近の住人もこの川べりには近づかないためか、
目撃者も見つけられずにいる。
そもそも、何も知らぬ者がコンクリートの土手の上から草の海を見下ろしても、天蓋のよう
に茂った背の高い草にうもれて広場は外から見えないのだ。やはり遺体を奪った者は、この一
帯の地理に詳しいのだろう。
桜については、他にも不可解な点があった。
涼一の部屋で死体の話をしたときの奇妙な表情はなんだったのだろう。
いつもなら死体を見つけて寝込む桜が、今回はあまり体調を崩していないのも不思議だった。
あれから熱があがったりひどくうなされる様子もない。帰宅した親との会話でも、死体の話は
いっさい口に出さず、今朝も普段どおりに犬の散歩へでかけている。
普通であることがどこか変だ、というのは逆説的だった。
考えこんで歩く僕を、まるで興味深い変化を示した計測グラフでも見るかのように、森野が
しげしげと観察している。
「あなたは、妹さんが死体を盗ったのではと疑っているのね」
「ただの可能性さ」
つとめて冷静に答える。死体が見つかったきっかけはむしろ片桐涼一にあった。桜と涼一が
出くわさなければ、桜が普段と逆方向の涼一の家へと散歩することもなく、鉄橋の下の広場で
死体を見つけることもなかったのだ。
だが、死体を持ちさったのは犯人ではない‥‥いや‥‥本当に、そうだろうか‥‥。
「‥‥。なんだ?」
なにか違和感が頭をよぎったが、答えはつかめなかった。かわりに、家族や身内がこうした
殺人者だったらどう感じるだろうと森野に聞いてみる。もやもやしたこの感覚は、それに近い
ように感じたからだ。
「‥‥。あなたがそれを聞くの?」
なんとも言えない光のない瞳で、森野は僕を見た。どういうわけか僕は森野をあきれさせて
しまったらしい。
黙って見つめ返すと、しばらくの無言ののち、私がどう思うか答えるつもりはないし今後も
そういう質問はしないで、とぴしゃりと拒絶された。森野の、思いがけぬ語気の強さにびっく
りする。
「でも、そうね‥‥。子供のころの私なら、もしかしたら殺人犯になっていたかもしれない」
「小さなころの森野夜だね」
ええ、とうなずく。
森野の子供時代は前に聞いたことがあった。彼女たち姉妹はいたずら好きで、死体ごっこや
残酷な実験をくりかえしたのだという。
「仮にそうなっていたら、家族はみな私を止めようとしたでしょうね。私の妹も含めて‥‥。
逆だとしても‥‥そうね、愛情はあるし、私も家族と同じ反応をすると思う」
あなたには悪いけど、そう前置きして、
「私とあなたは逆だから、あまり参考にはならないと思う。ごめんなさい」
気にしなくていいよと返答する。
彼女の発言は正鵠を射ていた。森野と僕の違いは決定的なものだ。仮面をかぶることでしか
人と交われない僕には、一般的な思いやりや愛情がなんであるか分からない。その冷たさを、
彼女は指摘したのだろう。
「妹さんのことはあなたの問題。それより、私は犯人のことが知りたいわ」
足首を切り落とすために人を殺すという僕の仮説に森野が食いついていたことを思いだす。
森野が興味をしめすのもむりはない。この殺人者は僕らのごく身近にひそんでいるのだ。知り
合いの可能性さえある。
また狙われるかもしれないよ、と言ってやると、間髪いれず返事が返ってきた。
「そうね。私が殺されたら、足首はあなたにあげるから」
思わずどきりとなり、まじまじと横顔を見つめてしまう。瞼を伏せたままの流し目が刺さる
のを肌で感じた。最近の森野夜はブラックジョークも口にするようになったらしい。しかも、
かなりの切れ味だ。
僕がどんな顔をしたのかは自分では分からないものの、森野はその反応に満足らしかった。
草の海を見下ろす土手をあとに、コンクリートの巨大な橋を渡っていく。
橋には、車道と別に歩行者用の区画が設けられている。桜はこの橋を通って塾へ向かうのだ。
今日もいまの時間帯、ちょうど夏期講習を受けているはずだ。
対岸での聞きこみを提案したのは森野だった。
雑草に埋もれたこちら側と違い、対岸の河川敷は雑草もきれいに刈りとられ、住人の憩いの
場になっている。OLが殺された二日前のことや、桜と涼一が死体を見つけたときの状況を目
撃した者がいるかもしれない。
土手を下流へと歩きながら、河川敷で遊ぶ子供や家族連れをみつけるたびに声をかけていく。
成果はすぐに得られた。
木陰で涼んでいたお年寄りの一団が「川べりの広場」という言葉に反応したのだ。なんでも
ゲートボールの最中、対岸の土手を駆け下りた女の子が自転車ごと転倒し、連れの少年が介抱
するところを目撃したらしい。
まちがいなく、その2人は片桐涼一と桜だろう。
そのときの女の子は僕の妹なんですと告げると、素直そうな良い子だ、こっちの別嬪さんと
同じくらい綺麗だ、いやいやこの子の彼女の方が美人だなどと褒め言葉が飛び交い、やがて、
今どきの若い者はええのうという良く分からない方向へ話が発展しはじめた。
明らかな脱線だ。会話の方向性をまちがったらしい。
愛想よく話の軌道修正をこころみる隣で森野は沈黙していたが、頬に赤みがさしているのは
僕にとっても新鮮だった。
「おんや待てよ。片桐さんたらあんた、朝早くにも来てなかったか」
「うむ。コンビニの袋を提げたまま、広場のはじっこに座って一人で川を眺めとった」
「女の子を連れて帰ったあとで、片桐さんちのはもう一度来ておったよ。小走りに広場まで降
りてきて、ごそごそと靴を拾っておったの。女の子の靴だったんかね?」
『靴』という言葉に、思わず森野と視線をかわす。
だが、時間的には、僕の方が遅れて広場を訪れているはずだ。涼一の家に着いたとき、彼は
すでに部屋の前に立っていた。歩けばそれなりの距離だ、抜け道があったとしても、自転車を
追い抜いて先まわりできるはずがない。
老人らがゲートボールをやめて帰宅したのは夕方だそうだが、対岸に人を目撃したのはその
3度きりだという話だった。感謝を口にすると、いやいやこちらこそ眼福眼福と老人らは嬉し
そうに土手を引き返していく。
「涼一という少年が、いまのところ一番あやしいわね」
ようやく二人きりになってほっとしたらしい森野が端的にまとめてくれた。目撃されたのは
死体発見のときだけではないし、彼が回収したという靴も気にかかる。
いずれにせよ、片桐涼一は、たまたま川べりを訪れたというわけではなさそうだ。
さらに聞き込みをつづけるうち、思わぬ収穫があった。
OLが死んだとされる日の深夜に、河川敷でサークルの友人たちとキャンプしていた大学生
が見つかったのだ。
「鉄橋の下の広場だろう。人ってもあの日はほとんど誰もいなかったよ。深夜をまわってすぐ、
中年男性が一人で煙草をふかしていたぐらいだね。川のあっち側は雑草だらけだから、煙草の
ポイ捨てで失火しないか心配で見ていたよ」
俺たちも花火で遊んでいたから人のことは言えないかな、と笑う。
大学生の話によれば、煙草を吸っていた中年男性は帰宅途中のサラリーマン風で、コンビニ
の袋から缶コーヒーを出して飲みながら、しばらく川面を眺めていたという。さらに質問する
が、男性の特徴までは彼も思い出せなかった。ただ、吸いかけの煙草を自分の携帯にはさんで
もみ消したのが妙に印象に残ったという。
男性が広場にいたのは30分程度。その夜は月明かりもはっきりしていて、明け方まで遊んで
いた彼らが見かけたのはその男性一人だという話だった。
ありがとうございましたと感謝するふりをして立ち去り、これ以上聞きこみは必要ないから
帰ろうと森野をうながす。長い黒髪を微風にそよがせていた森野は、おどろいたように抗議の
まなざしをこちらに向けた。
「帰るって‥‥。あれだけじゃはっきりしないじゃない。男性がだれなのか‥‥」
「間違いないさ。片桐の父親だよ」
昨日の夕方、橋の袂で彼に会ったときのことを話して聞かせる。煙草にはそう詳しくないが、
携帯電話の形をした携帯灰皿などそうはないだろう。
かなりの確率で、片桐の父親が犯人ではないか‥‥そう、僕の勘はつげていた。
問題は、目撃された父親が一人きりだということだ。
逆に言えば、まさに犯行を行ったとおぼしきその時刻、被害者のOLを誰も見かけていない
のが不自然なのだ。ニュースによれば、被害者はこの街に住んでいたわけではない。彼女の目
撃証言をさがすのは困難だと思われる。
いずれにせよ、そこから先は僕らのすべきことではなかった。
僕らはアリバイ崩しをもくろむ刑事でも探偵でもない。むしろその反対であり、犯人が逮捕
されようが逃げようが、どうでもいいのだ。消えた足首を探しだし、できれば犯人にも接触し、
事件について聞きだす
いつもながらの、森野と僕のささやかな目標だった。
そろそろ昼でもあり、日も高くなったので今日の捜査は打ち切りにする。
駅前の繁華街へと戻り、森野オススメのシーフードレストランとやらに向かう。例によって
彼女手描きの地図は殺人的トライアスロンを強いる‥‥国道の中央分離帯から川に飛びこんで
かなり泳いだ先にあるらしい‥‥ので、直接案内してもらう。
席に通され、ようやく水で喉をうるおした森野は、無表情なままおごってと言った。
「なぜ?」
「おごって欲しいからおごって」
なんだかわけの分からないことを言いだす。首をかしげつつ、店内を見た。たしかに客の大
半はデートとおぼしき若いカップルばかりだ。しかし、僕らはデートをしているわけではない。
そう口にしかけ、僕は、世にも珍しい光景をまのあたりにして絶句した。
‥‥森野の頬が、ほんの少し、不満そうにふくらんだのだ。
結局、いいでしょという強引な説得に流されて、昼食代は僕のふところから消えていった。
森野にも、桜の素直さと可愛げがあればいいのにと思うことがたまにある。
今日がまさにその日だった。
事件の進捗をあれこれ気にかけながらも、ようやく行動を再開したのは次の日の午後遅くに
なってからだった。僕も僕とて夏期休暇を満喫するばかりではなく、予備校に通ったりもして
いるのだ。
森野は都合が悪いそうで、おとといと同じ土手沿いの道を一人で向かう。
桜の塾へ通じるコンクリートの橋を横目に通過し、さらに下流の鉄橋のわきを走り抜けると、
片桐涼一のマンションは目と鼻の先だ。こうして距離を測ってみれば、死体が遺棄された広場
からも意外なほど近いことが分かる。
涼一の家付近の河川敷も、膝のあたりまで雑草が生えていて人をはばむが、例の広場よりは
草も短く、自転車でも入っていけそうだ。だからこそ、犯人は人目につかない場所を選んだの
だろう。
「あらいらっしゃい。桜ちゃんは元気?」
ドアをあけた涼一の母親に、おかげさまでと礼を述べる。このまえ食事を残した犬も、今日
は元気だそうだ。死体を見つけた犬も、人間のようにショックで食事がのどを通らなくなるの
だろうか。いずれ実験する価値はありそうだと思う。
呼ばれて出てきた涼一は、僕一人での訪問にとまどっていた。平日なので父親はまだ帰って
いないという。
むし暑い外廊下に出てから、君が見た死体のことが気になってね、と切りだす。とたんに、
涼一の顔色が青くなった。うろたえ、何も知らないとくりかえす。なるべく脅かさないように
ほほえんだ僕は、変だねと首をかしげた。
「あのあと広場に戻って女物の靴を持ちさった君は、多くの人に目撃されているんだけどね」
「えっ‥‥。そんな、なんで‥‥いつ」
「それだけじゃない。桜と会うより早い時間に、広場で座っていたという話もある」
でもおかしいだろう‥‥。
先に広場に来たのなら、足首があることに気づいていたはずなんだ‥‥。
あの足はすでに腐敗が進んでいた。広場まで土手を下りたなら、臭いに気づかぬはずがない。
ほかにも、死体を見たにもかかわらず、血痕が残っていたと聞いて急に動揺したり、不自然な
点が多いのだ。
返事がないので、もう一度ゆっくり質問をくりかえす。
気づけば、立ち位置が入れかわっていた。涼一は閉ざされたドアにぴったり背を押しつけ、
僕はその肩に手をかけ、おびえた瞳孔の動きを注視している。まぶしい陽射しのせいで逆光に
なり、こちらの顔は見えないはずだ。
彼のおびえは、僕にではなく、あきらかに殺人犯に対するものだった。
「知らないっ‥‥。血痕だって見てないよ‥‥。靴は、拾ったけど‥‥死体の足じゃないし、
先に広場に行ってなんかいない‥‥」
「へえ、嘘をつくんだ」
「嘘じゃないっ! だって、あの朝は行こうと思っても‥‥なかったんだ!」
必死になって声を搾りだし、はっとして涼一が口を閉ざす。
なかった、とはどういうことか。桜と顔を合わす前に一度広場に行くつもりが、必要なもの
がなかったので、行くのをあきらめた。最初から計算づくで行動するはずが、予定が狂った。
死体の足首がなかったせいで。そういうことか。
‥‥それでは話が通じない。涼一が犯人だということになる。
しかし当日の真夜中に目撃されているのは、涼一ではなく父親の方なのだ。それとも共犯な
のか。だとしたらもっと動揺を見せるだろう。こんな風に、犯人のことを何も知らず怯えたり
はしないはずだ。
さらに追求しようとしたとき、横から声がかけられた。
僕の注意がそれたその隙を逃さず、涼一が走って階段を駆けおりていく。しかたなく、僕は
声の主‥‥帰ってきたばかりの涼一の父親に向き直った。
「口論をしていたようだが、うちの息子が失礼なことでも口にしたかね?」
いえ、と言葉を濁した。
涼一のことについて追求しても、父親が自分の息子をかばう可能性は高いだろう。
それよりはと思いつき、少し土手を歩きませんかと父親を誘う。こうして一対一で話を聞く
機会などそうはないと思ったからだ。
ふむとおだやかな顔で僕をみやり、彼は良いアイデアだと同意するように笑顔を作った。
「では‥‥。そうだね」
‥‥死んだハルカの話でもしながら、散歩しようか。
片桐が、殺されたOLの名を口にする。
じっと目を凝らすが、暗黒の思考など、柔和な瞳のどこからも見いだすことはできなかった。
ひどく疲れきって家に帰ってくる。
結局、聞き込みの成果をぶつけたものの、一人で煙草を吸っていたのだという片桐の発言に
隙はなく、犯人かどうかも断定できなかった。
殺害時刻、彼はあきらかに広場にいた。彼自身それは認めた。だが、殺されたはずのOLが
どこにもいないのだ。
話している最中に土手で出会った近隣の女性が、さらに片桐の立場を補強した。
事件の夜11時半ごろ、彼女は鉄橋の手前で、下流の土手から歩いてきた片桐に出会っている。
彼はコンビニの袋をさげており、缶コーヒーと煙草を買ったとか、終電がギリギリだったとか、
2・3分ほど立ち話をしたらしい。2人に口裏をあわせた様子はなかった。
「仕事柄、私は裏づけの取れない噂は信用しないんだ。私を疑うなら、それなりの裏づけなり
根拠なりを出しなさい」
正論であり、僕は言い返すことができなかった。
玄関をあがると、お帰りなさいと桜が出迎える。淡いピンクのカットソーの上にエプロンを
かけた桜は実に家庭的で、一般的なほほえましい家庭そのものだった。母と父は仕事の関係で
会食のため、今夜は遅くなるらしい。
待っててね、今作るから、と台所へ戻っていく桜の背を眺め、僕は混乱した思考を整理した。
この事件をもう一度考えなおす。争点は大きく二つに分けられるように思えた。
殺人犯と、遺体を盗んだ者についてだ。
犯人についての最大の謎は、被害者の痕跡がないことだ。
どこで殺すにせよ、OLはあの草の海の中で足首を切断されたはずなのだ。にもかかわらず、
彼女の姿を見た者は一人もいない。見えない殺人鬼というフレーズが頭をよぎる。この場合は
その逆だ。
そしてもう一つ‥‥もっと分からないのが、足首が消えたことだった。
犯人については涼一の父親ではないかと憶測もできる。だが、足を盗んだ者のことは何一つ
分からないのだ。なぜ盗んだのか。どこに保管しているのか。そして‥‥森野と僕をのぞいた
4人のうち誰なのか。
「できたよー。今日はちょっと豪華に、鶏肉のポトフ風煮込みを作ってみました」
「ありがとう、桜」
‥‥こちらの容疑者の中には、僕の妹も含まれるのだ。
グラスで乾杯し、夕食の席につく。
嬉しそうに向きあって食事する桜は、死体を発見したショックも後遺症も残ってないようだ。
しきりとにこにこしながら、塾での出来事やちょっとした話題などをふってくる。
どうでもいい話なので無視し、死体のことを考えこむ。
僕や森野のように、人の暗黒面、闇に根ざした衝動を追い求める人々なら、あるいは足首を
欲しがるかもしれない。だが、あれだけ腐敗の進んだ遺体を保存し、手元に置きつづけようと
思う理由がみえてこない。僕でさえ写真が限界だった。
芯まで火の通った鶏肉をほぐし、スープとともに咀嚼しながら死体の形状を思いかえす。
死体というのは命の絶えた瞬間から、おそるべき速度で劣化していく。腐臭を隠し、形状を
保ちつづけるのは並大抵のことではないのだ。
そうまでして死体そのものに執着する理由とはなにか‥‥。
逆なのだろうか。『死体をあの場所から動かす』ことが大事だったのだろうか。
やだ、兄さん笑わせないで、と桜がのどを鳴らして笑い、食卓に引き戻された。無意識に面
白い話題でも振っていたのだろう。ころころと桜がおかしそうに笑いころげる。これが本来の
妹であり、素直で、家族を大事にする彼女の姿だ。
しかし、妹が僕と同種の人間である可能性は、本当はゼロではないのではないか。
昨日から、そのことを思うたび、ぞわりと心がざわめく。
実は桜も日常にうんざりしているのかもしれない。人知れぬ狂気に慰謝を見いだし、仮面劇
を演じるように毎日をこなしつつ、おぞましい事件や事象を熱心に調べているのかもしれない。
僕らは兄妹なのだ。血のつながりが同じ傾向を呼び覚まさないと誰に断言できるだろう。
もしも桜がこちら側の人間なら‥‥。もう一度思う。
死体を愛好し、残酷を好み、昏い行為に魅せられる僕や森野と同じ人間ならば‥‥。
桜は‥‥。もう、僕にとって、どうでもいい人間ではなくなるのだ。
「どうしたの、兄さん‥‥」
呼びかけてくる声が遠く、かすかに震えている。
気づくと、桜はなぜか真っ赤になっていた。知らず知らずきつい視線を向けていたらしい。
ごめんと謝ると、さらに前髪で顔を隠し、いいの、と彼女はつぶやいた。
やけに顔が赤いなと首をかしげ、二人ともワイングラスをもっていることに気づく。
そういえばさっき、飲む人がいないからって涼一君のお母さんに貰ったの、と桜がワインを
出していた。僕らは未成年だからほどほどにねと返事をした記憶もある‥‥なるほど、つまり
桜は酔っているのだ。
しきりとこちらを気にしながら、桜は小さな口にスプーンを運び、ふうふうとポトフを啜る。
視線を恥ずかしがっているのに、目があうたび、にへらっと笑うのだ。
あれから体調は大丈夫かいとたずねると、桜はちょっと不思議そうな顔をしたが、うん、と
こっくりうなずいた。
「怖いよね。本当に殺されたOLがいたんだもの」
かわいそうとつぶやく桜の声には実感がこもっていない。気づかうふりをしながら、遺体を
捨てた犯人は身近にいるかもしれない、気をつけるようにと言う。
ぼんやりとこちらに視線をむけ、またしても桜は、あのときと同じ奇妙な表情を浮かべた。
涼一の家で血痕の話をしたときのことを思いだす。涼一を問いつめたときもそうだった。桜も、
なにか知っているのではないだろうか。
そういえば、死体の発見を親に隠している理由も気になっていた。それとなく質問してみる。
「‥‥。教えない」
思いがけない返答がかえってきて僕はびっくりした。桜は、なぜか口を尖らせたまま、糾弾
するように僕をにらんでいる。
「事件のことばかり質問するのね。そんなに気になる?」
とくに考えることもなく、桜が心配だからという台詞が如才なく口から出た。本当にそう?
と疑う声はむくれ気味なものの、さっきよりは桜の表情もあたたかい。
少しして、桜はぽつりと呟く。
「心配しなくても大丈夫よ、兄さん。あれはただの偶然で、犯人は近くにいないと思う」
‥‥あれ、とは、遺体が放置されていたことだろうか。
逸る心を抑え、どうしてと聞きかえす。
すぐには答えず、遠くを見る目で桜はポトフを啜っていた。視線を追うが、その先には天井
があるきりだ。
ねえ、兄さん‥‥。
目を戻すと、桜が僕の顔に見入っていた。
ちろりといたずらっぽく舌を出し、愉快そうに目をくるくる動かす。
「もし、私が犯人だったら、兄さんはどうするかな‥‥」
つかまえて警察につきだしちゃうのかな‥‥。それとも、私を叱ってくれる‥‥?
酔いのせいか、濁ったような色がおどけた目の奥に薄くかかっていた。
返事を思いつかない僕の前でくすくす桜は笑い、ごちそうさまと手を合わせて立ち上がる。
桜のグラスには一滴も残されていなかった。
黒桜くるー?
すごい面白い!神最高!
うう、桜コエー!
でも面白ェー!
食後もぽーっとほろ酔いかげんの桜をソファーに休ませて部屋に戻る。
パソコンを起動させネットを巡回するが、目新しい情報はない。公式に死亡推定時刻が発表
されていたが、それも夜9時から12時前後と予想通りだ。
あらためて写真をチェックしていたとき、扉がノックされ、返事する前に開いた。
「あの‥‥兄さん、少しいい?」
椅子を回転させてシャットダウンしたパソコンを背後に隠し、ああ、と答える。まだ酔いが
さめていないのか、桜はほんのり目をうるませ、伸ばした両手を後ろで組むようにして左右に
揺れていた。
寝そべっていて乱れたのか、ヘアピンで髪をまとめている。服はさっきと同じ、カットソー
にデニムのミニスカートだ。
「ねえ、兄さんは事件のことが心配で、いろいろ調べているんでしょう?」
そうだよ、と答える。
「私も‥‥。ソファーで横になってね、少し考えていたの」
さっきはきつく言っちゃったけど、それで気まずいのも嫌だし‥‥うつむいてそんなことを
ごにょごにょ口にしながら、桜は、僕の反応をうかがっている。
「だからね‥‥。兄さんの質問に答える代わり、私のお願い、聞いてもらえない?」
お願いの内容にもよるねと言うと、桜は、おねだりしようか迷った子供のような顔をみせて
から、少し小声になって、その、デートの作法を教えて、と口にした。
よく分からないまま、とりあえずはベッドに腰かけさせる。
桜はいつになく落ち着かなげにきょろきょろ部屋を見渡したりしていたが、やがて、涼一の
家に運ばれたとき、男の子の部屋で寝るのが初めてで、どうしたらいいか分からなかった、と
告白をはじめた。
「そういう時、男の子って、どんなリアクションを期待するのかなって」
じっと寝っぱなしだったことを悔いているらしい。病人だったんだから仕方ないよと諭すが、
桜は納得のいかない様子だ。
「そうじゃなくて‥‥。私は、初めて2人きりで男の子の部屋にお呼ばれして、悪い雰囲気で
もないし、でも、女の子の方から迫るのって変かなって、だから‥‥その、うーん、なんて言
うんだろ」
肝心の言葉を言いだしかね、羞じらうように首をかしげる。
桜の逡巡を見やりつつ、ふと、涼一のどこを好きになっただろうと思う。
そもそも2人は付き合っているのだろうか。こういうことは恋人かどうかでも変わるはずだ。
質問をぶつけると、え、え、と桜がおどろいたように目をしばたたかせた。
「まだ、付き合ってはいない‥‥よ?」
しかし、涼一に惹かれているのは事実らしい。前も、涼一をどう思うか僕に質問していたの
を思いだす。
らちがあかないので、彼のどこが気に入ったの、と矛先を変えることにした。
「うん? その‥‥。ね。えっと」
またしても桜はごにょごにょと口ごもった。
困るような質問だったのか、なんともいえない微妙な笑顔を浮かべた桜の視線がすうっと僕
から離れていく。照れているような、嬉しそうな‥‥あと、多少はごまかしも含まれているの
だろうか。
成分分析を試みていると、桜の頬がまた少しつやを増した。
「話が面白くて、陽気で、ときどき頼れる男の子なの‥‥。すごく、似てるなぁって」
誰に? と問うと、桜の表情はいっそう分かりづらいものになった。
笑みが大きくなり、けれど視線は逸れている。
返事がないので重ねて問うと、ようやくぼそぼそ彼女は答えた。
「あのね‥‥。兄さん。涼一君と一緒だと、兄さんといるみたい。安心できるの」
「うん」
特になんの感想も浮かばないまま時が流れ、気づくと、桜のひかえめな両手がぎゅっと僕の
腕を握っていた。誘われるまま引っ張られ、もつれあってベッドへと倒れかかり、あやうく両
手で体を支える。
浮かせた上体の下で、ベッドに沈みこんだ桜はまっすぐ僕を見上げていた。聖母のように、
胸の前で手のひらを重ね、黒髪がシーツにあやを描きだす。
「好きな女の子に、こうしたいんでしょ、男の子って」
しなやかにのびる細い腕が、森野にも負けないほど白く透明な輝きをたもっていることに、
いまさらながら僕は気づいた。その腕が差し伸べられ、僕の首元にきゅうとからみつく。甘い
動きは、獲物を引きこむイソギンチャクを思わせた。
「だから、リードして。兄さんに教えてほしいの。どうやってキスして、どうやって、その」
‥‥その先に、進むのか。
声のつたなさとはうらはらに、まぎれもない意思を持って桜の言葉は室内にひびいた。
かすかに体を緊張させている桜に目を落とす。
いくらデートのシミュレートとはいえ、突発的な桜の行動はやりすぎではないだろうか。
落ち着かせようと思い、デートの手順は僕でも教えてあげられるけど、これは行きすぎだよ
と告げる。
顔を伏せ、静かになったのを見はからって体を起こそうとするが、果たせなかった。
首にかじりつくようにして、桜の両手が離れようとしない。
「なによ‥‥」
むーと唇をゆがめ、たまっていた息のありったけを桜は吐きだした。
「森野さんとは、してたじゃないの‥‥! いつも、ここで、遊びに来るたびに! 彼女には
できて、どうして自分の妹にはできないの!?」
酔った勢いで桜が爆発する。
何を言っているのとおどろいてオウム返しするが、桜はふいっとむくれてしまう。妹だから
駄目なんじゃないか、論理が破綻しているよと冷静に告げるが、彼女はさらに逆上するばかり
だ。
「あんなに声だして、聞こえないと思ってた? 兄さんは、森野さんを愛しているんでしょ。
妹の私と、どっちが大事なのよ‥‥?」
この調子ではこちらの冷静な意見など、とうてい聞いてもらえそうにない。
感情におぼれた酔眼を見やり、しばし計算した。
本来なら、兄貴という立場上からも、僕は桜の申し出を断固として拒否すべきなのだろう。
けれど拒絶は、酔った勢いで部屋を訪れた桜を情緒不安定にしかねない。
死体の話を聞きだすのはさらに遅れ、今なお腐敗の進行している足首が発見されるおそれも
高まるだろう。それはひどく不愉快な、避けたい未来だ。
「兄さん‥‥。」
気づけば、黙りこんだままの僕を見ていて不安になったらしい桜がなにか訴えかけていた。
離れないでというジェスチャーか、振り放すのはたやすい腕に力がこもる。
兄と妹としてあるべき家族の境界を考えた。
僕は、家族に対して、血のつながりがもたらす愛情を感じたことはない。
家族とは、社会が生みだす基本システムだ。人為的に線引きされたそれらの区分は、日々を
平穏にすごす上で重要な働きをになう。ルールにしたがう限り、僕は人々のなかに混ざりこみ、
目立たず生きてゆける。
けれど、そこから外れて客観視したとき、発展途上とはいえ桜がとても魅力的な女の子であ
るのもまた事実だった。
切実な桜の要求を飲むことで、こちらの目的も達成されるなら‥‥そう計算する。
「‥‥。分かったよ。でも、途中までだ。兄妹なんだから」
そんな類のことを口にしたように思い、後悔の色をにじませかけていた桜はぱぁっと表情を
ほころばせた。素直な反応を見せられ、かわいいな、柄にもなく思った。
腕の力を抜き、彼女の上に体重を預ける。
ん、とも、あ、ともつかぬはかない声をあげて桜は呻き、重いよ兄さん、とささやいてくる。
飲酒のせいばかりではないのだろう、彼女の体が親密に熱を帯びている。腰の下に腕をまわ
すと、目の色をくるくる変えながら、それでも従順によりそってきた。背中にしがみつく手が
いじらしい。
体をずらすように密着し、桜の顔をのぞきこむ。
鼻が触れ合うほどの距離で、子供のときみたいねと桜はくすくすと笑う。
‥‥桜との思い出は、あまり記憶に残っていない。
一度、桜お気に入りのぬいぐるみが角に引っかかり、お腹が裂けたときがあった。
泣きじゃくる桜に直そうと持ちかけ、僕は念入りに傷をえぐったのだ。
親には叱られ、桜は新しいぬいぐるみを買い与えられたが、それからしばらく、桜のぬいぐ
るみは僕の宝物になった。わたをすべて抜き取ったぬいぐるみが干からびた皮になってしまう
まで、僕は飽きずに破れた腹をかきだした。
そのときのことを思いだす。
すりよってきた拍子に、桜のカットソーがまくれあがっていた。
目にしみるほど白く滑らかな腹部がさらけだされ、フリルのついたデニム地のミニスカート
とのきわで、思わず触りたくなる腰つきをあらわにする。
少女特有の大胆なくびれに、少しづつ女性らしい肉づきがのっていく過程に目を奪われる。
視線に気づいて、エッチ、と桜が口をふくらます。
かわいいよ、と言い、さわりたくなるね、と告げて、じかに彼女の腹部に指をつけた。
ひぁ、と一瞬だけ声を漏らし、あわてて口を押さえるようにして、真っ赤になった顔が僕の
掌の動きを注視している。ぴたりと手のひらを密着させてすりすりさせると、ビクンビクンと
彼女の体が跳ねた。
思っている以上に桜の体は興奮し、人からの刺激を望んでいるらしい。
「気持ちよかったら、声をあげてくれないと」
「ん、んーー」
ぷるぷると桜が首を振っている。触れるかどうかのやわらかいタッチで掌を動かすと、その
首の動きがはげしく乱れ、くうくうと呻きが漏れた。意地らしいこらえかたに、イタズラ心を
刺激される。
「敏感なんだね、桜は。森野よりも反応がすごいよ」
「うっ、うぅぅ!」
「怒ることはないさ。それだけかわいいんだから、ほら、口を押さえていないで」
キスできないだろ?
問いかけながら、顔を寄せ、抱き寄せる手を肩へスイッチングさせ、2人の間にはさまった
掌をカットソーの内側にもぐりこませ、どんどん胸のほうへ這い進めていく。
「ひゃっ!? ‥‥まっ、待って兄さん、そんな駄目」
あわててカットソーを押さえつけるが、敏感な胸へとにじりよる指の感覚に悶えさせられ、
桜はキスをしようと迫る僕に集中できずにいた。裾をつかんだ両手のあいだをくぐって胸の谷
間まで指を進入させ、焦ってカットソーの生地越しに僕の手首をつかむ桜のおでこに、吐息を
ふきかけてやる。
「ほら、こっち向いてごらん」
「ひゃっ‥‥。いやぁ」
泣き声のようだが、拒絶の色はかけらもなく、迫られることへの優越感が声ににじんでいた。
僕のささやきがあまりに近かったのだろう。おずおずと顔が上がっていく。
鼻先をうずめるようにして前髪をかきわけ、額にキスをした。
わざと大きめにチュッと音をたてて、吸いつくように唇をつけてやる。上目づかいにこちら
を見やる桜は、瞳から煙でものぼりそうなほど沸騰し、湯気をあげんばかりだ。
「やぁん、なに‥‥。なに、コレ」
「キスだよ。こういうのは、きらい?」
親密に語りかけると、びくんと桜の体が跳ねた。ややあって、肩まで伸びる黒髪をうねらせ
ながら、左右に首が動く。
数センチをへだてた瞳がお互いの顔を映しこんでロックされた。背中を抱く手に力をこめて
やると、柔らかな体を押しあててくる桜のたしかな感触をおぼえる。胸のすぐ下で僕の手首を
はばんでいた細い両手がゆるみ、するりと自然にほどけていた。
大きな瞳をまたたかせ、桜が目を閉ざす。
伏せたまぶたを痙攣させながら、酔いしれた言葉がつむぎだされていく。
「すごい‥‥して。もっとして、兄さん」
「望みどおりに」
そのまま、鼻をかすめるようにして顔をかたむけ、僕は、妹の唇を奪った。
舌は差し入れず、ただ、強く唇を吸っていく。
かりにディープキスを強いたところで、ほのかに開いた桜の口腔はすべてを受け入れたこと
だろう。けれど、そこまでするにはさすがにためらいがあった。
唾液の交換ができない分、卑猥な音をたて、桜を満足させようとする。
ふわ、ふわ、と舌足らずな声を残して桜の顔が遠のき、酸素をもとめて何度も胸が上下した。
未知なる情欲に目ざめた瞳が僕を射抜く。
触れあった感覚を忘れまいとしてか、滑りだした舌が、とろんと自分の唇をなぞりまわす。
「あたたかいんだ‥‥」
初めての味が、兄さんのものなんだね‥‥。
ふふ、と熱い息を僕の口に送りこみ、鼻と鼻をくっつけたまま桜は口元をほころばせている。
抱きあう体勢は、すでに、言い訳のきかない状況へもつれこんでいた。
もつれたイタリアンパスタのように、下半身はぐちゃぐちゃに重なりあっている。
ひりひり熱をおびた桜の太ももの裏側は、幾重にもまきついてみっちり僕の下半身を圧迫し、
割りこませた足のつけ根に彼女の秘めたショーツが接着している。
膝からくるぶしにかけての肉づきが僕を甘く挑発し、解けるどころか、なおいっそう淫らに、
雫をしたたらせた若木のつるのように激しくきつく密着してくるのだ。
ひとときも止まっていられないのか、桜はたえまなく下半身をもぞもぞさせ、なまなましい
触感が僕を楽しませる。未熟ながらも‥‥いや、未熟でつたない動きだからこそ、桜の仕草に
僕は魅せられた。
のぼせている様子の桜の頬をなで、ブラジャーに手をかける。
バージスラインまで侵入した手のせいで、カットソーは、ほとんど鎖骨の下までまくり上げ
られていた。
桜色に火照った肌が外気になぶられ、淡く翳った胸の谷間がさらけだされている。
レース入りの愛らしいブラを鑑賞して、背中側の手でホックを外した。肩紐を脱がすかわり、
カットソーと一緒にずりあげていく。
異性に触れられたことのない瑞々しい下乳が、最初に目に飛びこんできた。
そのまま、ふるんと上下に弾みつつブラから解き放たれ、ふくらみかけのヴィーナスの頂で、
ほのかに色づく乳輪が僕のものになる。
想像どおり控えめな印象の中心で、ツンと乳首が愛らしく尖っていた。たまらず手を伸ばす。
「さ、触っちゃう‥‥の?」
寄り目になった桜の瞳は、今にも摘まれようとする自分の胸に釘づけだ。
親指と人差し指でひねるようにさすると、あん、と甘やかな喘ぎが桜の鼻先から抜けていく。
反応をみながら、じょじょに右の胸全体を掌ですっぽり覆い、指を這わせた。
「あ、痛っ‥‥。」
思春期特有の、しこりになった箇所を揉んでしまったらしい。謝って注意しつつ、ほどよい
優しさを探りながら乳房に愛撫を加えていく。じきに桜の目はうるみはじめ、感度もみるまに
昂ぶって、一撫でごとに間断なく鼻声が洩れるようになった。
火傷しそうなほど熱にまみれた乳房は血色を集め、灼りつくような敏感さでしっとりと掌の
なかに収まってくる。押せばたわみ、離せば吸いついてくる、甘い弾力が手の中にすっぽりと
おさまってしまうのだ。
「ひゃ‥‥っ!」
桜があわてたような悲鳴をあげた。
びっくりして飛びのきかける肩をぐっと押さえつけ、チノパンの生地ごしに輪郭がつかめる
ほどたぎった股間を彼女に押しつけた。えぐりつつ腰をずらし、ショーツごしに桜の下腹部へ
なすりつけていく。
「お、男の人のって‥‥。こんなになるんだ‥‥」
最初の悲鳴がおさまると、桜の手がそっと伸び、僕のそこを手でおずおずとさすった。びく
んと反応したのにむしろびっくりして、焦ったように手を離す。
けれどその直後、ひどく妖艶な色が、瞳孔の奥深くで濁ったようにうずまいた。
「ふふ、そうなんだ」
感じてるんだね‥‥兄さんも、私で‥‥。
うれしそうに微笑んで、僕の上半身を脱がせにかかる。Tシャツを脱ぎ捨ててしまうと、桜
の手は裸になった僕の胸からおなかにかけてを、いとおしむように手でなぞった。
兄さんばかり私を攻めて、ずるい‥‥。
だから、今度は私の番ね‥‥。
宣言するように口をとがらせつつ、僕のうえにまたがりだす。桜はいつのまにか、当初の目
的を忘れてしまったらしい。
わざとなのか、屹立した僕の下腹部に敏感な箇所をくっつけて馬乗りになる。
ショーツを通しても、妹の大事な場所がかすかに蜜を吐いているのがはっきりわかり、それ
はさらに僕を不安定にさせた。
「うふふ‥‥ね、兄さん。いいよね?」
許可を求めてこちらを見やり、すぐに大胆になった手がチノパンの中までもぐりこんできた。
細い5本の指が、螺旋を描くように僕自身をなぞっていく。森野の手とはまったく違っていた。
もっとうぶで、もっと親密で、たどたどしい。
卑猥でいやらしい無垢な献身が、理性を超えて僕を反応させ、ぞくぞくと脈打たせた。
「ダメ。私がしている間は、じっとしてて‥‥」
あまった両手で桜の体を抱きしめようとするが、断られてしまう。
体を倒すようにして、なかば脱ぎかけの桜がぴたりと僕の上体によりそってくる。片手は僕
のものをたどたどしく梳きながら、もう片手をゆるゆるもてあそび、男の人ってこんなに胸板
が厚いんだ、などと感心している。
桜は上体を起こし、なぞり、また密着してはしっとりとやわらかい2つの裸の胸をコリコリ
こすりつける。ほっそりと波打つラインは、まるで人魚だ。
天井のライトが逆光になり、存外平板な桜の裸身を黒々とうきたたせていた。
しっとり汗に濡れた肌が、悩ましく僕を捕らえて逃がそうとしない。
少しだけ、目を閉じていて‥‥。
請われるがまま、目を閉ざし、だらりと両手を横たえた。
はらりとくずれた髪がさらさらと体をくすぐり、ぴくりと腹部が弾んでしまう。
視覚情報をシャットダウンしたことで、ささいな刺激がいくえにも増幅され、おどろくほど
奇妙な快感をもたらすのだ。
あれこれ受身で弄られていくのは意外にも心地よく、次にどうなるか絶えず気になって桜を
意識してしまう。妹に愛撫されるのは、セーブが利かない与えられるだけの刺激である分より
感覚を昂ぶらせた。
唐突に、火照ったやわらかい重みがかぶさってきた。吐息が首筋を湿らせる。
桜が覆いかぶさり、耳たぶに口を寄せる。
「ねえ‥‥。さっきの話、おぼえてるかな? 私が犯人だったら‥‥って」
濡れた吐息が耳をくすぐり、たぎる僕をためす。
殺されたOLはね、正面から抱き合った状態で、胸を一突きだったんだって‥‥。
とうとうと言葉をつむぎながら、ほっそりした桜の腕が宙を動き、さわさわと踊るように刺
激をつむいで僕の胸の上をすべっていく。
妹の手が、妹自身のものではないかのようにくねり、うねり、僕の急所に探りを入れてくる。
「死んだOLの人、不倫していたんだって」
不実の愛にふけっていたんだよ。だから、天罰だったのかもね‥‥。
無邪気なようでいて、酔いのまじった一言一言はどろりどろりと粘ついていた。最初のメス
を切りこんでいく医者のように、少しづつ、呟きが重みをましていく。
「許されない愛でしょう? だから、やむにやまれず愛人を殺したのかも‥‥。兄さんはそう
思わない?」
どうだろうね。慎重に返事をした。
桜がさらに身を乗りだし、ふくらみかけの双丘が僕の胸板をくすぐっていく。
「禁忌を犯して、もうどうしようもなくなって‥‥愛するがゆえに、殺したのかもしれないね」
そういうの、純粋だよね‥‥。
子供だし、私にはまだ、遠すぎて分からないけど‥‥。
桜の手は、いつか僕の左胸にぴたりとあてがわれていた。弾むように動悸を早めていく心の
臓を、指で測るかのように押さえつけている。
私たちみたいだね‥‥。
タブーに触れて、心の闇を抑えきれなかったのかな‥‥。
酔いにまかせて耳ざわりな笑みをもらし、桜が僕の上半身を、筋肉のつき具合を調べていく。
その間も、たぎった下半身をなぞる手はゆるめない。
新鮮なおどろきにみちた指使いはさらに大胆にいやらしさをまし、好奇心のおもむくままに
エラの張った怒張の裏を人差し指の腹でくすぐり、先走りのぬめりを指にまぶしつつ、スジに
そってシャフトを下り、強く絞るようにうごいてゆく。
ときおり不器用にまじる痛みさえもが、僕を雄々しく昂ぶらせた。脈打つ鳴動が、上半身と
下半身で同調していく。桜の手がそれをもたらす。
丁寧に肌をまさぐる指の動きは、なにかを触診し、正確に割りだそうとしているかのようだ。
それでね、殺されたOLって、胸を一突きなんだって‥‥。
ここの、肋骨の下端‥‥。
ぴたりと指が止まり、肋骨の下、スティレットの刃を通す最適の位置をポインティングした。
なにか冷たい金属が、正しく一突きできる場所にあてがわれる。
桜は何をしようとしているのだろう。
目を開け、桜を押さえこむのはたやすいことだ。けれど何もせず、無防備に横たわって僕は
桜の決断を待っている。その刹那の間が、途方もない快楽で僕を押し流していく。
勝手に死体を見つけてしまうのは、桜のきわだった才能だ。
昔から、桜について、思うことがあった。
人の死をつきつける異能は、持ち主の心をじわじわ暗黒の衝動でむしばみはしないだろうか。
たとえば‥‥。
報われない愛情を抱きつづけるぐらいなら、いっそ殺せ、と。
十分にありえるのではないか。
それが、今の僕がいだく推論であり、おそれでもあり、最大の期待でもあった。
桜の吐息が、耳たぶから流れこんでくる。正常ではない、いつもの理性のたがが外れた声が、
僕を試すように問いかける。
「私には、殺せるのかな‥‥。兄さんはどう思う?」
僕は口を開き、とくに意識しないまま、なにかを答えたようだった。
黒桜怖ェ(((:゚Д゚)))
受身の神山がとても新鮮だ。
マジでこの先どうなっちゃうんだろ……?
黒桜に死ぬほど興奮している俺ガイル
最高だ!!桜最高だね!!
寝る前にきて本当によかったわ!!
始めの悶えてる桜もいい!
笛とか自殺同盟とは別物なんでしょうか、神よ。
全裸で待機します。
結婚おめでとう。
425 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/30(土) 21:36:39 ID:zcJAPzRo
何が?
426 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/01(日) 13:18:48 ID:77zHwuRG
ss期待age
>>423 同じシリーズです。というか、ギョッとするのでそのお話はその辺でw
というわけで投下。これ含めてあと2回か3回です。
桜は原作破壊率高めでやや後悔しています。あまり気になさらずに。
ラストの対決シーンを書いていて、すごく難産しています。
ぬるりと‥‥。
陵辱するかのような速度で、異物が体内めがけ侵入してくる。
熱く激しい感触が身を灼いた。
桜の爪がひときわ強く僕の胸に痕を残し、ぎしりと全身をたわませてショーツをなすりつけ
ながら、淫靡な指が下半身をぎじりと絞りきって絶頂をことほぐ。
痛みと快楽が、瞬間的に衝撃に転じて息が止まり、呼吸すべてを外へ叩きだす‥‥。
大きく腰をたわませ、びくびくっと背筋を律動させながら、馬乗りになる桜の下で、彼女が
からめる指先にすべてをほとばしらせ、真っ白にはじけていた。
「どきどきした?」
「‥‥。殺されるかと思ったね」
率直に告げると、赤みを帯びた大きな瞳をきらめかせ、桜の口がほころんだ。
息つぎを許されて、ようやく、長く甘いディープキスから解放される。
最後にもう一度、侵入してきた桜の舌がぬるぬると歯茎をいじり、重ねにいった僕の舌先を
なごりおしげになでて抜けていった。
どうしようもない銀糸のアーチが妹と僕の唇をつないでいる。
唾液のいくらかは僕の胸にあとを残し、桜のヘアピンがえぐった胸元にもしたたった。混じ
りあう粘液にそっと唇をつけた桜が、どろんと酔眼を蕩けさせて一心不乱に舐めとっていく。
そのせいでさらに唾液が肌に沁み、僕の体をふるわせた。
「ちゃんと私を見てくれないからだよ」
「なぜ、そう思ったの?」
「キスのときから‥‥。兄さんが本気じゃないのが、悔しかったの。だから脅かしたんだよ」
事件のことはあとでちゃんと教えてあげるから、今は私を見て‥‥。
淡く色づいた手が僕の顔に触れ、こつんと額をくっつける。ひりひりした熱の余韻が、桜を
通して僕にも伝わってきた。
やはり妹は、僕や森野とは違う、ということなのだろうか。ただ酔って自制をなくしている
だけで、もとから暗黒の思考など感じることもない、素直な少女だということなのか。
失望は、けれどなぜか喜びと半分半分だった、
自分でも感情の理由を分析できずにいるまま、桜に向かい、いつまで僕のものを握っている
の、と問いかける。今なおびくびくとたわむ屹立は、桜の手にあやされすぎてすっかり硬度を
取り戻してしまっているのだ。
あ、あ‥‥と見る間に紅潮した桜は、あわてたようにからまった指をほどき、トランクスの
中から手を引きずりだす。
にちゃあという淫蕩な粘つきと一緒に、情けない匂いがたちこめた。
目をぱちぱちさせ、桜は興味津々で僕が放出した精をためつすがめつ観察する。
だらりと白濁のしたたる手をかざし、つぅーっと粘っこく尾を引いたひとしずくを唇に運ん
でいく。舌先をのばし、そろりそろりと、見せつけるように飲み干した。
ん、コク、とのどが動き、じきに変な顔をして振りむく。
「分かんない。おいしいのかな、これって」
むろん、自分の精液がおいしいかどうかなど、僕が知るはずもない。
それ以前に、妹が、精液をなめるという性行為を知っていたことにおどろく。どこでそんな
知識を覚えたのだろう。
「内緒」
頬をつやつやさせた桜は、ね、と囁きながらぴたりと寄り添ってきた。
「の」の字を描くように僕の体に指を這わせ、今度は兄さんが‥‥と羞じらいながら、甘えも
媚も上手に含んでおねだりしてみせるのだ。
たずねるまでもなく、上気した桜の裸身はカタルシスを求めて焦れているのが一目で分かる。
ふくらみを見せる乳房は充分に熱をはらんで肌色をさらに艶めかしく彩り、触れられるその時
を待っている。
腕をまわして強く抱きしめ、裸の躯を重ねあわせた。密着した胸がちりちりしびれ、上目で
うかがう表情がたまらなく愛らしい。
上半身を引き起こした桜は、カットソーをまくったまま邪魔だった肩紐をたくみにすべり落
とした。ブラジャーを抜き取った色づく裸体が、輝くように僕を誘う。
逆光の蔭からでも、桜が慈愛にみちた笑みを淫靡にたたえているのが分かった。熱っぽい視
線に応えて手を伸ばし、下から乳房をふにっと押し包んでやる。
んァ、と本当に気持ちよさそうにのどを鳴らし、桜は僕の手のひらに自分の手を重ね、指を
上からからませてきた。
「兄さんに揉まれて、私、大きくなっちゃうかもよ」
「それは大変だな」
「うん、きっと大変だよ。クラスの友達にからかわれたりして」
睦まじく、愛情のこもった会話を交わし、ゆるゆると官能を高めていく。
ひくひくと切なそうに腰がうねる。
ゴク、と唾を飲む音が、妹の裸身をかけめぐるアクメの深さを教えてくれる、
笑みに溶けくずれた欲望がしだいしだいに焦れきっていた肌を加速させ、熱をもとめて躯を
蕩けさせていく。汗のにじむ乳房を優しく揉みしだくと、トクトクと狂おしい早鐘が掌をゆさ
ぶってきた。
どうしようもなく桜も求めている。
初めての躯に濃厚なペッティングを刻みこまれ、もう限界まで疼いているのだ。
まるで騎乗位のような体勢で、またがった腰がむずむずと跳ねている。どうしたらいいか桜
は分からぬまま、みたされなさを解消しようと、不器用に股間をなすりつけるばかりだ。
桜の火照りを煽るべく、片手で集中的に胸を虐めだす。
うっとりと与えられる刺激に酔いしれてきつくからめてくる指をつかみ、反応をたしかめて、
空いた手で胸全体を支えるように柔肌に這わせていく。
さらに乳房をなぶると見せかけ、わき腹からお尻へつっと一筆に撫でおろす。
「あ、ひぁ‥‥ァァ!!」
あまりの余波に、あげかけた甘い歓声はぶつりと途切れ、桜はひきつった調子で大きく息を
吸った。声にならない嬌声をまきちらし、ようやく、こじるように喘ぎ声をひりだして、ぷる
ぷると膝をつっぱらせて硬直してしまっている。
指で触られる箇所すべてが性感帯になってしまったかのように桜は乱れくるい、落馬寸前の
ロデオのようにガクガクと躯をたわませる。
汗ばむショーツの後ろから指を進入させ、今度は安産型のたわわな白桃に手を這わせていく。
だが、桜自身が右に左に腰をひねってのがれるため、なかなか足のあいだに息づく谷間までは
侵食できないのだ。
むちっとしたお尻のラインは乳房以上に敏感らしく、火照りも弾力もすばらしかった。
揉みこんでやるたび、電撃でも走ったかのように背筋が跳ねあがる。
瞳のふちまで卑猥にのぼせあがった桜は、僕が揉みごたえのある感触を堪能するよりも先に、
ふわぁ、と奇妙な声をあげ、へなへな上体を倒してしまう。つっぷした桜の顔が、よこたわる
僕の目と鼻の先にあった。
「桜」
「兄さん‥‥」
どちらからともなく舌を伸ばし、今度は躊躇せずに濡れた舌同士をからめあった。キスする
にはほんの少し遠い距離をうずめるように、首をそらし、熱心に顔をつきだして舌をさしだす。
いたいけな仕草にかきたてられた僕も唾液舌先をに集め、ぬるぬるとなすりあった。
粘膜と粘膜をからめあう卑猥さがたまらない。
真っ赤に濡れた舌は性器のまじわりをいやおうなく連想させ、トランクスとショーツの生地
のみをへだてて密着した互いの異性の部分をきつく狂おしく意識させた。
まるで擬似的なセックスだと思い、悩ましく舌をはずませる桜の表情に目を奪われ、先端が
こすれあう一瞬一瞬の衝撃がひびきあって、頭の芯が悦びに爛れきっていく。
それは桜も同じなのだろう。
盲いたように無我夢中になり、オーラルセックスに没頭してしまっているのだから。
キスを愉しみつつ乳首をコリコリひねって心ゆくまで啼かせてやり、桜の注意が逸れたすき
にお尻から引き抜いた手を一気に下腹部へ伸ばした。
あんのじょう、たっぷり湿っていたショーツをくびれさせるよう秘所におしあて、ぐりぐり
っと指全部をへばりつかせて股間をなぞりあげていく。
「あっ、ダメェ」
悩ましい苦悶の声ももはや手遅れ、僕の手は、桜のもっとも熱くなった熱と汁の源に食いつ
いていた。濡れそぼって縮れた柔毛の起伏までを指先が感じとり、充血したヴィーナスの土手
を丁寧に梳きあげていく。
ぷっくりとした盛りあがりに指をうずめ、上端のふくらみを包皮の上からこりこり探った。
「兄さ‥‥ッ‥‥。ン、ァンっ‥‥!」
桜の声がぷるぷるとわななき、いともたやすく乱れて言葉から喘ぎへと退化していく。
う、うくっと桜が腰をずりあげ、けれど僕は逃すことなく押さえつけてさらに指でなぞりま
わした。こみあげるものがすごいのだろう、桜は、ぎゅうっと僕にしがみつき、伏せた顔を胸
板にうずめている。
「顔を上げて‥‥。ほら‥‥」
ぷるぷると首を振るので、さらにひくひくと指を振動させ、嬲り、追いこんでいく。
我慢しきれず、ひゃあと桜が顔をあげた瞬間、その首筋に歯を立てず唇だけでかぷっと吸い
ついた。
唇を這わせ、頬をすりよせながら、うなじや鎖骨に舌を這わせていく。
ぬらぬらと唾液が尾を引くと桜は狂ったように全身をのけぞらせ、目のふちを赤らめたまま、
貪欲に跳ねまわった。のたうつ裸身を抱きよせて絶頂をきわめさせようと抵抗を封じ、キスの
雨を降らせていく。
「なにコレ、なにこれェ」
懊悩のあまり錯乱して瞳を丸くしている桜のおとがいをつまみ、耳たぶを甘噛みしながら、
そういうときはイクっていうんだよと教えてあげる。
「いやぁぁ、止めて‥‥。イク、イっちゃ‥‥」
涙目になってふうふう喘ぐその息つぎの余裕さえあたえず、僕はさらに桜を愛していった。
胸をあやし、下腹部をもてあそび、舌で跡をつけていく。
はじめての自失するようなエクスタシーが怖いのだろう。がくがくと桜が僕にしがみつく。
「いいんだよ、イって」
受けとめてあげるから。
そう囁くと、桜の瞳孔がすうっと内側へ吸いこまれるようにすぼまっていき‥‥。
あ、あ、あ‥‥。と声にならない声で訴えかけつつ、火照りと体液をにじませた裸身が鉄の
ようにこわばって、やがて、ぐんにゃりと糸の切れた人形となりもたれかかってきた。
焦点のあわない瞳をみやり、何度もひきつる痙攣の揺りもどしが沈んでいくまでそのままの
体勢で桜を抱きしめる。
胸をつつんみこむ手のひらを痛いほど尖った乳首が突いている。
股間は、ひどきわ濃い、粘り気のある愛液をとろとろと吐き、僕の掌からこぼれだしていた。
「もぉぉ、ひどいよ‥‥。止めてって、行ったのに‥‥」
兄さんに、イかされちゃった‥‥。
うなじまで桜色に茹だった彼女は、柔らかい粘膜に指をもぐらせた僕の手を逃すことなく、
余韻を楽しむようにくすくす笑った。笑いながら、さらにねだるように下腹部を指の腹にすり
つけ、のけぞるようにして白い喉元をひくつかせていた。
その視線がふらふら泳いだと思うと、あれ、あれ、などと言いながらベッドに倒れてしまう。
どうも、今の行為でさらに酔いがまわってしまったらしい。
濃密な唾液の交換で濡れてしまった桜の口を、親指でぬぐうようにこすってやる。
ン‥‥とまぶたを閉ざし、されるがままに身をゆだねていた桜は、歌うようにささやいた。
「あのね。私、死体がニセモノだって知っていたから」
‥‥思わず指が止まる。
記憶をたどるように、桜がぼつぼつと語りだす。
どうやら、涼一とその仲間が、女の子をびっくりさせる方法を予備校で話しているのを耳に
したらしい。マネキンの首でも用意したらという話に涼一が食いついていて、それで、死体を
見つけたときもすぐ、ドッキリの可能性に思い当たったという。
「いやだけど、死体は見なれているから。ニセモノだって、すぐに気づいたの」
血痕や独特の臭いなどもなかったのだと証言する。
僕の目撃談を聞いて涼一の部屋で怪訝そうにしたのは、そのせいなのだろう。
「いやな偶然だよね‥‥。涼一君がタチの悪いごっこ遊びをした直後に、本当の事件なんて」
ああ、そうだね、そう答える。
ぽーっとした瞳で、ベッドに横たわったまま桜は僕を見上げていた。手を伸ばして僕の服の
すそをつかんでいる。
「あのね。兄さんに教えなかったのは ウソをつく目的じゃないの。涼一君の印象が悪くなる
のがイヤだったからだよ」
彼、最近引っ越してきたばかりだし、兄さんたちに変なイメージ持たせたくなくて‥‥。
でももう、そんなに気にしなくてもいいのかな‥‥。
一人で呟き、もにょもにょと黙りこむ。だが、そんな羞じらいまじりの桜の様子は、もはや
頭に入っていなかった。桜の言葉を反芻し、すべてのピースがそろったと確信する。
兄さん‥‥?
桜が不思議そうな、どこかまぶしそうな顔をして僕を見上げる。
わしゃっと桜の髪をなで、額にキスをして抱きあげた。彼女の部屋まで運んでやり、風呂に
入って先に休むよう告げ、戻って身支度をととのえる。
今からどこかに出るの、と桜が訪ね、いつものように僕は口にした。
「コンビニだよ」
近づくにつれ、羽音を鳴らしてひどい量の蠅がとびまわっていることに気づく。
星明かりもない闇のなか、大気に漂うのはまぎれもない、川の淀みとは似ても似つかぬ人体
の腐った臭いだった。
かすかに、口元がつりあがる。
自分のうかつさを自嘲しつつ、僕は広場を見下ろした。すべては勘違いだった。最初から、
遺体はこの場にあった。森野にも、そして僕にも『見えていなかった』だけなのだ。
携帯をとりだし、森野の声を耳にして、最低限の要件を告げる。
電話を切った僕は、おだやかな沈黙に身をゆだねた。
ここには何もない。ただ、厳然たる人の死が形となって存在しているだけだ。
犯人を迎えに行く前に、もう一度視線を落とす。
腐乱の宴をくりひろげる二つの切り株めいた足首を、その末期的な光景を僕は凝視した。
gjgjgj!
ひっひっふー、ひっひっふー。
神の愛に感謝
∧∧∩
( ゚∀゚ )/
ハ_ハ ⊂ ノ ハ_ハ
('(゚∀゚ ∩ (つ ノ ∩ ゚∀゚)')
ハ_ハ ヽ 〈 (ノ 〉 / ハ_ハ
('(゚∀゚∩ ヽヽ_) (_ノ ノ .∩ ゚∀゚)')
O,_ 〈 〉 ,_O
`ヽ_) (_/ ´
ハ_ハ キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!! ハ_ハ
⊂(゚∀゚⊂⌒`⊃ ⊂´⌒⊃゚∀゚)⊃
あなたはこのスレに残る最後の神だ。グッジョブ(´・ω・)b
>>427 ありゃ、なんか地雷踏みましたか?申し訳ない。
むしろ黒桜さんは大好きです。
ということで最後です。エロなし、謎解きのみです。
長い間おつきあい下さりありがとうございました。他の神々の光臨もお待ちしています。
>>436 地雷というほどではないのですが、一応、ここでは私もただの名無しですので、
今このスレにある作品だけがすべてかなと思います。
黒桜、気に入ってもらえてなによりです。
ねっとりした熱帯夜を見上げて、大きく伸びをした片桐は一日の終わりを実感する。安堵と
幸福につつまれるこのひと時、しかし、片桐の心はざわついていた。
ここ数日、片桐は、はじめての波乱を経験している。
事の発端は、一人の少年が彼を訪れたことだった。少年は遺体の一部を見たのだと主張して
彼を糾弾した。
そのこと自体は大したことではない。少年の疑惑は不十分なもので、殺人の痕跡をつかまれ
ることはなかった。
不安はむしろ別のところにある。
あの日‥‥。
ほんの一瞬、少年の目が、日食の太陽のように塗りつぶされて見えたのだ。
その昏い視線にはおぼえがあったが、深く考えるべきではないように感じて、記憶のすみに
追いやっていた。だというのに、ふとした瞬間、少年の見せた瞳の色が片桐の頭をよぎってし
まうのだ。
神経質になったものだと、くたびれた笑いを洩らし、片桐は人の流れにまじって歩きだす。
ほんの数歩で、その足が止まった。
帰宅途上のサラリーマンらが迷惑そうに彼の体をよけて通り抜けていく。それでも、片桐は
動けない。
「分かりましたよ‥‥すべて」
刃のごとき微笑をたたえた少年が、前方に立っていた。
ひどく暗い夜だ。脈絡もなく、片桐は思った。夜空は曇り、星も月も見えない。街灯がなけ
れば、少年の口が動いたとは思えないほどの囁きだ。だが、片桐の聴覚は、少年の一言一句に
吸い寄せられていた。
一緒に、来ていただけますね‥‥。
あるいは、拒否してもよかったのだろう。しかし、あれほど少年との対面を嫌悪していたに
もかかわらず、片桐は自然とうなずいていた。
「話を、聞かせてもらおうか」
「ええ」
少年はきびすを返し、やがて、あたかも偶然同じ方角に向かう他人同士のように、肩を並べ
て歩きだす。
背広の内ポケットにおさまったスティレットが、にぶく疼いていた。
「この事件‥‥僕はアンクルカット事件と名づけています‥‥最大の謎は、一度は遺棄された
足首が消えたことでした」
考えをまとめるかのように、少年が語りだす。
一度も片桐に目を向けず、抑えた口調はまるでひとりごとだが、片桐には、少年がこちらの
反応をうかがいながら話していることが分かった。
「過去の事件では、犯人は足首そのものには執着していません。だから犯人以外の誰かが死体
を持ち去ったのだと、僕は当初そう推測しました。しかし、そうなると、どうしてもピースが
欠けてしまうのです」
誰が、なぜ、遺体を盗んだのか‥‥。
そして、盗まれた死体の足首は今、どこにあるのか‥‥。
「これは前のときもお話しましたね?」
軽くうなずく。ここまでは、最初に糾弾されたとき、片桐が聞かされた話と同じものだった。
家路に続く鉄橋にさしかかる。
行きかう車のライトに目を細めながら、少年はふっと、話の矛先を変えた。
「ところで‥‥。以前、この川べりの広場では動物の死骸が大量に見つかったことがあります。
当時は騒ぎにもなりました。ご存知ですか?」
いいや、と軽く驚きながら少年に答える。その話を聞くのは初めてだった。でしょうね、と
少年は、満足げに、意味深にうなずく。
「住人たちにとってはイヤな記憶ですから、進んで口にはしないでしょう。ですが、多くの住
人同様、川べりの広場で死体が見つかったと聞き、まっさきに僕がイメージしたのもその広場
だったのです。そうして僕は死体を見つけ、飛びちった血のりや腐臭も確認しました」
けれど、そんな跡は目撃していない‥‥そう、桜や涼一君は言っています‥‥。
僕と彼らの証言は、明らかに矛盾しているのです‥‥。
うなずきつつ、片桐は奇妙な胸騒ぎをおぼえる。だが、ここで少年の話をさえぎるわけには
いかなかった。
「この謎が解けたのは、『死体はニセモノ』だと桜に聞いてからでした。彼女は死体に慣れて
いて、冷静に血痕や腐敗のあとを確認していました。つまり、桜の見た遺体はニセモノだった
‥‥死体は2つあったのです。本物と、ニセモノです」
「どういうことかな」
思わず口をはさむと、少年がちらと視線を投げる。
「人が、ドッキリ目的で死体の一部を作ろうとする場合、どの部位が一番簡単だと思います?
生首は論外です。人の目は意外と精密ですぐ見抜かれてしまうし、そもそもマネキンの首はそ
う簡単には入手できません。手首や胴体なども同じです‥‥。お分かりですね?」
「涼一が足首を捨てた犯人だといいたいのか」
「桜が見た、ニセの足首の製作者という意味では、そのとおりです」
死体を目撃した日にマンションの外廊下で靴を手にした涼一に出会っていること、あの日に
限って飼い犬のジューシーが大好物のウェットフードを食べなかったこと、などを少年は片桐
に説明した。
「つまり、ジューシーは満腹だったのです‥‥。おそらくは、お母さんの靴にペットフードを
詰めこんで涼一君が作った即席の死体を、というより中身の好物を、川原で食べてしまったせ
いで」
血痕がなくて当然です。2人が見た死体の足首は、ペットフードのつまった靴ですから‥‥。
丁寧に解きあかす少年の肩はさざなみのように揺れていたが、その横顔をみるかぎり、笑みは
認められなかった。
「さて‥‥。これで、僕と涼一君に認識の齟齬があったことがお分かりいただけるでしょう。
あの日、涼一君は電話口で、『鉄橋の下の広場で死体を見つけた』と言いました。引っ越した
ばかりの彼は一年前におきた動物の死骸騒ぎを知らず、僕もまた、死体と聞いて早とちりして
しまった‥‥」
少年は肩をすくめ、鉄橋をわたりきった河川敷を指さした。
「彼らが目撃した広場はもうひとつありました。塾通いに桜が使うコンクリートの橋ではなく、
もっと下流‥‥いままさに僕らの足元にある、この鉄橋の下の広場です」
少年の指につられて、川面へと目が誘われる。
次に気づいたとき、横から少年が彼の顔をのぞきこんでいた。
色を欠いた少年の瞳が、細く夜を映して闇に浮かんでいる。それを見つめかえす自分の目が
どのような色を放っているか、彼自身には知りようもない。だというのに、少年の瞳に浮かぶ
何がしかの反応は、不安をかきたてた。
「考えてみればうかつでした。上流のあの広場は目の高さまで雑草が茂っています。土手や橋
からも見えないのに、対岸で証言が見つかるほうがおかしいのです。しかも、僕らは下流へと
歩きながら、目撃者を探していたのですから」
しかし、言葉をきって沈黙した少年に落胆の色はなく、むしろ自信をにじませている。心の
ざわつきを顔に出すまいとしつつ、魅せられたように、片桐は少年の顔を見すえていた。
そして、こうした僕の推測がすべて正しければですが‥‥。
幽鬼のように、少年の口が黒々と開く。
「ふたたび戻された足首が、いま、この草むらのどこかにあります。捨てたのは‥‥片桐さん、
あなたですよ。犯人その人です」
少年と片桐は、いまでは正面から向きあって対峙していた。
通過したばかりの車の騒音が遠ざかり、痛いぐらいの川べりの無音が二人をつつんでいた。
まるで、決定的なひとことを待ちのぞんでいるかのようだ。
ふっと苦笑いが片桐の面をかすめた。
一時はひやりとしたが、しょせん、少年の追及もここまでだったらしい。優位を感じつつ、
おもむろに反論をはじめる。
「ふむ。誤解が解けたのは結構だが、むしろその話では私は容疑者から外れるな」
「どういう意味ですか?」
少年が小さく首をかしげている。
論破すべく、片桐はさらに冷ややかな口調を保ちつづける。
「君はいままで勘違いしたまま聞き込みしていたわけだ。目撃証言は、この鉄橋下の広場のも
のだ。上流にある殺害現場に私がいた、そこでOLを殺した、そう君が決めつける証拠はどこ
にもないな」
「証拠をだす必要などないのです」
思いがけぬ確信にみちた声だった。その声に得体の知れぬ暗さを感じて、片桐はたちすくむ。
もしや‥‥。
自分は、勘違いをしていたのだろうか。
はじめ、少年は探偵きどりで犯人をつかまえたがっているのだと思っていた。刑事ドラマや
推理小説かぶれの正義感にみちていると。だから、丁寧に推理をつぶしてやればあきらめると、
そう思っていたのだ。
だが、その片桐の洞察は正しかったのだろうか。
記憶に残った昏い瞳孔を思いかえす。新月の夜のような、少年の、底なしの闇を。
「片桐さんのような仕事ならともかく、僕は、素人ですから。ただ推測しただけです‥‥もっ
とも、それなりの根拠はあります。ですから、ここにお呼びしたのです」
声は遠ざかりつつあり、気づけば、ゆるやかな土手の斜面を少年が下っていくところだった。
ややあって、硬直している片桐に、背中越しの声がかけられる。
「ついてこないんですか?」
そもそも、なぜ、犯人は足首を放置するのでしょう‥‥。
夜露にぬれた草をふみしめ、話をつづけながら、少年が土手を降りていく。
「はじめに第三者が死体を盗んだのだろうと考えていた理由は単純です。過去の事件を見ても、
この犯人は死体の露見をおそれていないのです。つかまらない自信があるのか、人に見せつけ
たいのか」
いずれにせよ、この犯罪の猟奇性をきわだたせる、重要な点でしょう‥‥。
遠ざかっていく少年の声を追いかけ、憮然として背中を見やるが、むろんそうした表情に少
年が気づくはずもない。
数メートル先の闇へ、みるまにシルエットが溶けていく。
「しかしです。犯人は本当に、上流の広場に足首を捨てたのでしょうか。土地勘にそう詳しく
なくても、あの広場に人が寄りつかないことは一目でわかります。草の海に埋もれ、周囲から
見えず、発見はおそろしく遅れるでしょう。そもそも、死体を切断する必要さえないと言って
いいぐらいです」
「ある種のフェチズムかもしれんぞ。世の中には足首を愛でる猟奇犯もいる」
「それこそ、死体の残りを川に流す理由がないのです。実際、流した死体の方はすぐに河口で
発見され、殺害が明るみに出てしまっています」
とうとうと語りつづける背中を追いかけながら、片桐の手は背広の内ポケットにのびていた。
OLを殺した日と違い、今夜は星明りもない。
河川敷に降りたった少年は一息入れ、あたりを見まわす。
気づかれぬよう動きを止めたが、少年からも、片桐の姿はぼんやりした輪郭しか見えてない
ようだ。片桐が秘めた殺意に気づきもせず、膝下にからみつく草をかきわけて、まっすぐある
方向へ進みだす。
「片桐さんが例をあげたように、犯人の心の中はさまざまに推測できます。そうした中から、
僕は、ひとつの推測に思いいたったのです」
「‥‥どのようなものだね」
足を止めさせようとして問いかけるが、少年は決して休むことなく、膝まで茂った草の海に
どんどん踏みこんでいく。
‥‥今では、なにかに導かれるような少年の足取りから、片桐も気づいていた。
少年の声が風に乗ってとどく。
ひどく、決定的に無視しがたいものと共にひびく声は、片桐自身もごまかしようがない。
犯人ははじめ、殺害現場からこの広場へと足を持ってきて、遺棄したのです‥‥。
しかし予期せざる理由から、もう一度、足を移動させざるを得なくなったのではないか‥‥。
片桐さん‥‥。僕は、そう推測したのですよ‥‥。
現在位置さえ分からない広い夜の川原で、少年の声は、一歩ごとに濃くなっていく腐臭の源
の方角から聞こえていた。
「もちろん、予期せざる理由とは、涼一君が桜にしかけた死体のドッキリです。人に見られる
のはかまわない犯人が、涼一君には本物の死体を見られたくなかった。ということは、犯人は
涼一君にごく近しい人物だと言えないでしょうか」
そもそも、涼一君の計画を知りえた時点で、犯人は彼の身近でなければならないわけです。
彼がニセモノを設置する前に、死体を隠さなければならなかったのですから‥‥。
少年の言葉に、片桐はさほど注意をはらってはいなかった。
じわじわと、ただれた匂いが鼻をつきはじめる。
もはや川のよどみなどと言って自分の五感をだますことはできない。間違いようのない、草
の海に沈んだ腐乱する肉が、この匂いを放っているのだ。
きつくなる腐臭にあらがうかのように、いま一度、片桐は声をはりあげる。
「君の推理は、最初から鉄橋の下に死体が捨てられたことを前提にしている。あまりに荒唐無
稽だ。涼一の悪質ないたずらは単なる偶然にすぎん」
「いいえ。かなりの確率で、偶然ではない、と言いきれるのですよ」
‥‥やはり、そして怖れていたように、少年の声は当然の疑念に対して揺るぎもしなかった。
少年は憶測を語っているにすぎない。分かっているにもかかわらず、片桐は、じわじわと追い
つめられていくのを感じていた。
スティレットの柄をきつく握りしめる。
殺しに慣れていることと、無用の殺しをすることは別だ。おそらく初めて、片桐は、自ら決
めたルールを破ることになる‥‥。
「いいですか。僕がはじめて片桐さんの家に向かったとき、涼一君はマンションの前で青ざめ
ていました。でも、この反応は変じゃないですか? 自分で作った死体におどろくはずはあり
ません。にもかかわらず、彼は現実に取り乱し、わざわざ僕にまで電話をかけてきました」
このことは一つの事実を示しています‥‥。
声が立ち止まり、そして、そこが終着点であることを片桐も思いだした。
草むらのなか、一箇所だけ、夜を泳ぐように羽虫が群れている。しゃがみこんだ少年の背後
からのぞくと、はっきり崩れた足首が見てとれた。
「証言でも、死体を見つけた日、涼一君は桜と並んで土手にあらわれるまで、一度も川べりに
は来ていません。かわりに目撃されているのは‥‥片桐さん、あなたです」
コンビニの袋を手にして、川を眺めていたそうですね‥‥。
答える必要はなかった。
そっとスティレットを抜き放つ。この暗がりで、刃は光をはじくこともなく、少年にも見と
がめられずにすんだ。あとは正しい位置に先端をあて、押しこんでやるだけだ。気の進まない
殺しとはいえ、いったん手順に入れば、あとは慣れたものだった。
少年は遺体を調べつつ、なおも滔々と語っている。
「涼一君は、死体のニセモノを自分で仕掛けていないのです。ほかの誰かが広場に用意したの
ですよ。だから、あるはずのない死体を見て、彼はあれほど驚いた。そして、そうしたことを
行えたのは犯人に他ならず、」
「犯人は、涼一の身近にいて、なおかつ目撃証言もあるこの私、というわけか」
‥‥台詞を引き取るようにして、片桐はしめくくった。
湿った羽音だけが耳を打ち、ねっとりした夜気が二人をひしひしと取りかこむ。あの晩の再
現のようだ‥‥わけもなく、殺したOLの顔を思いだす。
「君は、実に勘のいい少年のようだ。どうやら私の負けらしい‥‥」
観念した口調をよそおい、ぽんと少年の右肩に手をのせる。闇のなか、輪郭を正確に思いえ
がく。背後から一撃するには、このまま左手で斜め上から刃を押しこむだけだ。
次の瞬間、少年は左手をのばし、肩の手を押さえこんだ。
ありえない反応にぎょっとしかけ、ようやく飛びのかずに踏みとどまる。
「片桐さん‥‥あなたは以前、犯人を糾弾するなら、証拠が必要だといわれましたね」
地面に手をついてまさぐりながら、少年が言う。
どんな顔をしているのか、そんな些細なことがなぜかひどく気になった。しかし顔をのぞき
こむゆとりはない。スティレットを逆手に握りかえて‥‥。
「では、今スティレットを手にして僕を殺そうとしていることこそ、あなたが犯人だという証
拠になりませんか?」
少年の声に、じわりと、親密な黒い感情がにじむ。
片桐は迷わず刃を滑りこませ‥‥、交錯する銀色のかがやきを見た。
心臓の裏、背中の表面を、灼けるような熱がよぎっていく。
地面に這わせていた右手で背後を薙ぎ、全身の力でスティレットをはじく。腰をひねり、致
命傷こそかわしたが、かなりの長さにわたってざっくり浅く皮膚の表面が裂けたのを感じた。
そのまま前に身を投げ、死体を飛びこしながら前転して立ちあがる。
心臓は狂ったように跳ねていた。
この距離になれば斬りあいでスティレットに負けはしないだろう。だが最初の一撃、それを
かわせるかどうかにすべてがかかっていた。こんな、証拠も乏しい、ただ安いだけの挑発では、
片桐が乗ってこないおそれもあった。
なじんだナイフを胸の前にゆるくかまえ、対峙する。
片桐は、どこか呆けたような感情のない精密な瞳で僕を見つめていた。だらりと下げた手に、
僕の背を裂いたスティレットが握られている。
「そうか‥‥。では、君はこうなることを予期して、私をここへ誘いこんだんだな」
ええ、と謙虚にうなずく。
「というよりは、片桐さんの本心を聞くためにこうせざるを得なかった、と言った方が正しい
でしょう」
荒い息をととのえ、油断なく見やりながらも、つとめておだやかに答える。
片桐がどういった動機で人を殺すのか、そして、なぜ足首だけを残すのか、僕はそれを知り
たかった。さらに、この事件を調べていくうち、それ以上に知りたくなったこともあったのだ。
だからこそ、僕は危険をおかそうと決意したのだった。
宵闇のなか、死体をはさんで数メートルの距離をにらみあう。
片桐の動機やポリシーによっては、このまま有無を言わせず殺し合いになる可能性もある。
それだけは避けたいが、仮にそうなったら応じるしかない。
「‥‥いいナイフだ。使いこまれている」
ずいぶん長い沈黙をかみしめたように思ったころ、片桐はニヤリと、本当に唐突に口の端を
ゆがめた。
瞳の奥が、重力のない井戸のように濁っていく。
そのすばらしい変容に、僕は声もなく、ただ目を細めて見入っていた。
「‥‥それほどナイフを握りなれたご同類と、やりあう気分にはなれないね。聞きたいことが
あるのなら何でも答えよう‥‥人生の先輩として」
そう言ってスティレットの刃の側を握り、彼は僕にひとつの魅力的な提案をさしだした。
ためらうことなく提案を受けいれる。
あらがえるだけの強固な意思は、僕にはなかった。
‥‥しばらくののち、土手の斜面に腰かけて、片桐が会話を切りだす。
ときおり、鉄橋をわたる車のライトが黒々とした夜の川面を照らし、また闇に消えていく。
人気もない暗夜が沈黙を広げていた。
「せっかくだから、君にもう少し質問しておこうか」
ええ、どうぞと答える。
「なんの証拠もないまま、なぜ、推測だけでここまで自分を賭けることができたのかね。単に
私が犯人に思える‥‥それだけでは、こうはできないはずだ」
「死体を見つけた日、片桐さんの行動にひどく不自然な行動があったからですよ」
それこそが、彼に違いないと確信を抱かせる理由だった、
「実は今日の夕食時、桜がワインを出してきました。家で飲む人がいないからと涼一君のお母
さんに薦められた、そう言ってです」
だが、それではつじつまが通らない話がある。
あの日の夕方、あわてて涼一の部屋をあとにした片桐とは、帰りがけにコンクリートの橋の
たもとで出会っている。そのとき、彼は冷えたビールを飲みたいからとクーラーボックスを肩
に下げていたのだ。
「偶然あの場で出会ったタイミングが不自然すぎて、僕はずっと気にかかっていました‥‥」
それゆえ、広場が2つあると知り、足首が移動したことに気づいたとき、酒を飲まないはず
の片桐がビールを買いに出た理由を僕は理解したのだった。
「あのとき、クーラーボックスのなかに、回収したばかりの足首が入っていたのです。もとの
広場に戻すため、あなたは遠出して上流の橋まで出かけた‥‥。そうですね?」
「‥‥語るに落ちるとはこのことか」
闇のなかで、片桐は声もなく笑っているようだった。あるいは自嘲しているのかもしれない。
ひとしきり笑ってから、さて、と片桐はこちらを向き、質問するようにうながす。
こうまでして彼に問いただしたかったこと‥‥。
僕が唯一わからなかったこと‥‥。
それは、危険をおかしてまで遺棄した足首を回収し、ふたたび元の場所に戻した動機だった。
「それだけが僕には分かりませんでした。まるで‥‥」
家族に見せたくないから‥‥筋の通らない理不尽な話だが、そうとしか思えないのだ。
僕の質問を耳にして、片桐はうすく微笑んだ。
「なるほど。そういうことか」
視線を遠くに泳がせながらタバコを取りだし、しかし火はつけずに口にくわえる。
しばらく考えをまとめていたらしい彼は、しずかに語りだした。
「君は考えたことがないのかね。自分の親や兄弟が、もしも自分と同じように仮面をかぶった
殺人鬼だったら、と。あるいはある日、唐突にそういう傾向に目覚めてしまうのではないかと
‥‥それを恐怖に感じたりはしないかね」
「恐怖、ですか」
予想外の返答に僕は面食らった。片桐の語っていることの意味が理解できなかった。
桜が僕と同じ魂の持ち主なら‥‥。
暗黒の感情に手を伸ばす同じGOTHなら‥‥。
そう期待していたのは、つい数時間前のことなのだ。僕にとっては、それは恐怖ではない。
どうでも良い人間が、僕の側に入り、かけがえのない人間になる。それと同義なのだ。社会の
ルールや倫理観をおそれず、ありのままの自分をさらけだせる。そうした相手が増えるのは、
喜ばしいことではないだろうか。
「そうか。君は仲間を得たんだな。それはうらやましい‥‥あるいは、後戻りのできない‥‥
ことなのかもしれん」
かっては自分も孤立していたと、片桐はそう語った。そしてあるとき、世界と一定の妥協を
はかったのだという。昏い衝動を最低限に抑え、たがを嵌め、退屈な作業としてルーティン化
した。その形に自分を馴らし、社会の歯車として磨り減っていくことを選んだという。
‥‥めまいのするような話だった。
僕に、あるいは僕らのような人種に、そのようなことが可能だとは到底思えなかったからだ。
だが、まぎれもなく片桐の顔は安らいでいる。
「だというのに‥‥。私の犯行直後、涼一がまったく同じ殺人のレプリカをはじめたのだ。そ
の計画を知ったときの衝撃と恐怖たるや、おそらく、今の君に語ったところで理解してはもら
えまい」
今まで見てきたどんな猟奇犯罪者とも違う、穏やかな愛情まじりの虚無が、2つの黒い渦に
なって僕を凝視していた。おそらくは僕を通して、片桐は涼一の顔を、子供の顔を目にしてい
るのだ。
「私がこの広場に遺棄した理由は、おおむね君の推測どおりだ。しかし、涼一には死体を見せ
たくなかったし、君を通して知られたくもなかった。それが、涼一にとってどんなきっかけに
なるかも知れないからね」
片桐を見つめ返すうち、ひどく奇妙な感情が僕をかきみだす。
ただ、私は思ったのだよ‥‥。
つぶやきながら、彼は自分に納得するかのように深くうなずいた。
「あの影絵のような孤独の世界に、涼一を連れて行きたいとは、私には思えなかったのだよ」
僕と片桐の話はそこで終わった。
理解はできぬまま、ただ彼の苦悩を知り‥‥。
僕は、ゆっくりと首を振り、立ち上がって去っていく片桐の背を目で追いかけた。
土手の上で彼が足を止める。
「そうだな‥‥そこにいる君の彼女が、君を救うか、あるいは奈落につれていくのか、私には
知るべくもないだろう。とはいえ心配はいらん。自分に課したルールでね、この町では、もう
誰かを殺すことはない。渡したそれが、約束と謝罪の証だ」
暗い影が土手から消え、それでもしばらく見上げていると、背後から足音が近づいてきた。
闇にきわだつ白さを見せて、やわらかい手が僕の首にまきつく。
「ねえ‥‥私、気づかれていたわ」
「そうだね、森野」
でも、犯人に会いたかったんだろう?
たずねると、コクリとうなずく気配がし、ぎゅっと躯が押しつけられる。無言のアピールは、
森野が僕と同じように緊張し、そして、別の意味で高揚していたことを意味していた。こうし
た意味でも、森野と僕は対極のパートナーなのだろう。
大丈夫だよと告げるかわり、手を伸ばし、薄く血塗れた刃を宙にかざしてみせた。
森野がのぞきこむと、長い髪がさらさらと僕の肩で波打っている。
押しあてられた胸の感触に血をわきたたせ、僕は背中越しに語りかけた。
「本当に‥‥すばらしいナイフだ」
すぐに広場の足首は警察に発見され、足を失った被害者のものだと一致した。
川べりには黄色いテープが引かれ、数日はワイドショーが川べりに押しかけ、付近の住宅街
は騒然としたが、一週間も経つころには静けさを取りもどした。うんざりするほどの真夏日は、
あいかわらず連日の最高気温を更新している。
「どういう気の迷いかしら‥‥いきなり、人を呼びだして」
朝早く声をかけたにもかかわらず、森野は青ざめた、若干寝不足な表情で、家の前に立って
いた。黒のワンピースにも何種類のバリエーションがあるらしいということを、最近になって
僕は知ったばかりだ。
答えようとしたとき、庭をまわって桜がやってきた。こちらはすでにお出かけモードだ。
「兄さん、用意できたよ」
とたんに僕の脇で森野が氷づけの化石のように動きを止めた。桜の後ろから、首輪でつなが
れたうちの犬が鼻面をのぞかせ、利発そうな瞳で見上げたからだ。
ひしと僕の胴体を両手で抱えこむ森野の不自然さを無視して、困惑ぎみの桜に語りかける。
「先に行ってくれるかな。起き抜けの僕は、犬の匂いが苦手なんだ」
「えー、なにそれ」
こんなウソがすらすら出たことにもおどろきだが、不満そうにする桜にはもっとおどろいた。
どうやら、僕と、森野と、3人で歩くのが桜の希望だったらしい。
「頼むよ」
桜の肩に手を置き、前髪をすくっておでこにキスしてやる。
あ、あれ‥‥とうろたえ、目尻が赤くなっていく桜に、おはよう、とあらためて声をかけた。
家族のあいさつだよと言うと、少しおでこを撫でていたが、それで納得してくれたのか、笑顔
になり歩きだす。
たっぷり20メートルはおいてから、幽霊のような動きで森野が身をはなした。
僕は黙ったまま、まだ震える手に指をからめてやり、首をふって行こうかとうながす。
「‥‥努力なんかしていないわ」
何も言っていないにもかかわらず、凍えている人のようなぎこちなさで、しかも抗議の口調
だったが、それでも森野はぎゅっと手を握りかえしてきた。目のふちに淡く盛りあがった水分
を見ないようにして歩きだす。
ぶらぶらと時間をかけて歩いていくと、片桐父と涼一が、紐につないだジューシーを連れて、
橋のたもとで待っていた。僕の顔をみて涼一はこわばり、同時に森野もよく吠えるジューシー
を見て顔をこわばらせている。
片桐と僕は一度だけ視線をかわした。
特に口にすることはない。彼から貰ったスティレットは、交換で彼にあげたナイフセットの
空席に、奇妙なほどぴったりおさまっていた。今もスティレットは21本のナイフとともに、本
棚の奥で眠っているはずだ。
「前から思っていたのよ‥‥あなたって、日に日に嗜虐的になるわ」
あきらめとなげきに満ちた、心情の吐露だった。
返事を期待する風ではなかったので森野の独白を無視し、川原にかけおりていく桜と涼一に
目を戻す。
彼らと、それぞれのペットが土手の下の川原で走りまわり、その横で片桐が穏やかにそれを
眺めている。おそらくこれが片桐の望んだものなのだろうと思いつつ、息子に声をかける片桐
の横に立ち、元気に跳ねまわる桜をじっと見つめる。
結局、桜がGOTHなのかどうかは分からずじまいだった。ただ、今回は桜の才能は不発に
終わっている。ということは、近いうち、また桜は死体を見つけることになるのだろう。そう
思えば楽しみが先に伸びたのだとも言える。
唐突に腕をつねられ、おどろいて横を向くと、真正面に森野の冷たい瞳があった。
「額にキスしたり、妹さんとずいぶん仲がいいのね」
妬いてる? と質問してみたい衝動がこみあげたが、ときに森野がひどく行動派になること
を思いだし‥‥とくに今は気を高ぶらせているようだ‥‥挑発はひかえた。
森野と桜は違うタイプだ。
この2人を比較することなど、まるで無意味だった。
森野がGOTHでなくなったらという想像は到底容認しがたいものだが、桜がGOTHでは
ないとしても、僕の心は不思議と落胆をおぼえることはない。
兄さん、と桜が川原から叫び、楽しそうに大きく手を振ってみせる。
空いた手を振りかえし、森野と2人、手をつないだまま、並んで土手に腰を下ろした。
(了)
以上です。
終わってみれば四苦八苦、エロス挟んだせいで説明も二度手間、結局DOAと
大差ない分量でした。説明じみていてスミマセン。
また次があれば・・・といっても相当先でしょうが、書いてみたいと思います。
>>446 GJ! 乙でした。
身内がGOHTかも、というネタは乙一ぽいというか、かなりスリリングで面白かったです。
桜も好きだけど結局俺は森野が一番なんだなぁと自覚したお話でしたw
次も期待して待ってます。
GOHTって何だw
……orz
神に感謝します!
神乙
神様GJ!!今回も素晴らしい作品でした!!
乙でした!
本格ミステリ+エロって感じで面白かったです。
暗いところで待ち合わせのSS、
マジで切望
GJGJGJGJGJGJGJ!!!!神本当に乙!!
かなり面白かったが、個人的には桜と最後までして欲しかった………。
桜×森野×神山って組合せを誰か神が書いてくれないか…?
455 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/18(水) 16:25:30 ID:XB5Uj2go
職人さん待ちage
456 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/20(金) 23:24:30 ID:9tTnVhT2
...| ̄ ̄ |< デレはまだかね?
/:::| ___| ∧∧ ∧∧
/::::_|___|_ ( 。_。). ( 。_。)
||:::::::( ・∀・) /<▽> /<▽>
||::/ <ヽ∞/>\ |::::::;;;;::/ |::::::;;;;::/
||::| <ヽ/>.- | |:と),__」 |:と),__」
_..||::| o o ...|_ξ|:::::::::| .|::::::::|
\ \__(久)__/_\::::::| |:::::::|
.||.i\ 、__ノフ \| |:::::::|
.||ヽ .i\ _ __ ____ __ _.\ |::::::|
.|| ゙ヽ i ハ i ハ i ハ i ハ | し'_つ
.|| ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜|i
森野が僕を好きよりも僕が森野を好きだという作品が読んでみたい
ミチルからアキヒロに迫る話を読んでみたいが
459 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 17:46:33 ID:dNtFMGqk
ネ申でした
就活のすすまない
俺はどうしよう
>>459 まさかこんな所で就活仲間が見つかるとは…
お互いこのスレを励みに頑張ろーぜ…!!
俺も就活すすまない……親と学校の板挟み…orz
462 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 20:28:23 ID:FrFdsON0
ほしゅ
うわー、乙一好きなので書いてみたい。
別作品のSSはいくつか書いたけど…難しそう。。。
映画化記念で暗いところで〜期待
目が見えないミチルに気兼ねしながら明るいところでエロとか
逆にこれでおあいこだと真っ暗な中でのエロとか
初めまして。
>>401 のSSに影響受けてふと書いてみました。
構想5分、執筆一週間のエロ無し凡作短編ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
ではGOTH大学受験編、【瞳】どうぞ。
肌寒さを感じる11月某日。それは届いた。
多少の緊張を持って封を切る。
中にあるのは絶望か希望か。
中身を取り出し、開く。
軽い安堵のため息。
その紙は、一般推薦入試による僕の私立##大学薬学部合格を通知していた。
大学合格を知らされた翌日、教室前の扉の前で僕はたたずんでいた。
これを引かなければ教室には入れない。当然だ。
しかし、扉の前に来た時、非常に嫌な予感がしたのだ。
その予感を思い、しばらく逡巡する。しかし、ここまで来た以上、選べる選択肢は多くはない。嫌な予感だけで早退はできない。
早退の理由などいくらでも思いつくが、本質として、予感だけでそのようなことをしたというのは自分自身が納得いかない。
僕は意を決して扉を引いた。
予感は…当たった。
数日前から多くの人間の希望と絶望の声が入り混じる空間だったそこは、今一人の人間の意思に支配されていた。
中央から放射状に拡がる暗黒のオーラ。その爆心地である椅子の上に彼女、森野夜は座っていた。
机の上で指を絡め、見たことがないほどはっきりと見開いた目は深い濁りを見せており、全身から漂う虚脱感と共に結果を表していた。
もし、同じ境遇の人間が声をかけられれば そのまま手に手を取って屋上から地面へ向かう姿が見られるだろう。
頭が潰れてしまえば醜くなるが、この高さなら首がぽきりと折れるぐらいで済むだろう。
そうなった時の彼女の姿は中々魅力的な気もした。
ともかく、去年のように僕の席が彼女の前でないのは幸いした。さすがにあの死神の視線に背中を焦がされて1日耐えきれる自信はない。
左斜め後ろのこの席から森野の行動は観察させてもらおう。
しかし、不思議だ。森野は僕と同じく##大学薬学部志望のはずであり、一般推薦入試における試験科目の成績は僕よりいささかよかったと思ったのだが…
………………………
面接か。
いったい何を語ったんだ。森野は。
まあ、まだ一般試験もセンター試験も残っているので落ちるとは思わないが…
万が一に備えて、もはや必要なくなった授業時間を利用して彼女の殺害計画を練っておこう。
離れることになれば、僕が「あの手」を入手することなく、森野は自身の特技によって肉体が消え去ってしまうかもしれないのだから。
授業が全て終わると、彼女は夢遊病者のような足取りで帰宅の途についた。
12月初頭、天気は雪。灰色がかった窓の外とは裏腹に、それまで暗黒のオーラに支配されていた教室は、快晴を記録していた。森野は中央の席でうっすら笑みすら浮かべている。
ここまで判りやすいと、(僕のような人間が感じるにはいささか奇妙な心境だが)いっそすがすがしいとすらいえる。
放課後、二人きりの教室。そういえばあの日以来直接会話を交わしていない気がした。
「おめでとう」
「…よく、わかったわね。」
「そりゃもう。昨日までと顔つきからして違ったからね。」
「ふぅん、そう」
今まで見せたことのないほどの優しげな光を帯びた瞳が僕の眼前に近づく。
「ところで…あなたは独立するつもり?それともまだ同居?」
「独立…というか一人暮らしはするよ。部屋ももう見つけた。通学1時間超は中々厳しくてね」
瞳がさらに近づく。彼女の瞳の中に僕が写っているのがはっきり見てとれる。僕は言葉を続ける。
「近いところが見つかってね、徒歩五分少々。内装もよくて、人気も高くて、僕が申し込んだ時には空く予定の部屋はあと一つだった。」
…突然回りの空気が凍りつく。
森野の魂の温度は僕と同じくプラスマイナス0度と思ったのだが。
青白く光輝く彼女の瞳に漂う温度はそれを大きく下方に修正し周囲に拡がる。
慣れていない者が見つめられれば瞬時に心臓はその機能を停止するかもしれない。
周りに人がいないのがせめてもの救いだった。
しかし正直これは僕でもキツい。
なぜここまで周囲の温度が激変する。僕がなにか拙いことでもいっただろうか。
彼女は背筋を伸ばすと、無言で踵を返して去っていく。出口の扉を開くその直前、わずかに振り向いたその瞳は、複雑な感情の色が幾重にも重ねられたようにも見えた。
僕はいささか釈然としないまま、あの瞳は、彼女の死後に保存すべき部位に追加しようかという思いを胸に帰途についた。
12月24日
小包が届く。こんな日に、ご苦労なことだ。日付指定でもされていたのだろうか。
宛名は僕。
…なんというか、非常に重い。持ち上げるのも一苦労だ。
送り主の名は「伊多 木里」
こんな名前は身に覚えがないが、万が一のことを考えて家族の揃うリビングで開けるのは危険だ。
僕の本性を暴露するような品が入っていないとも限らない。
家族…特に妹の冷やかしの視線を受けながら、苦労して二階の自室へと運び、中を開ける。
重いはずだ。
箱詰めされた問題集。
奥の方には我が校の指定教科書、ノートも散見する。
受験の終わった高校生には邪魔にしかならない、非常に無意味な群体である。
わざわざ名指しで送りつけておいて、これである。これはもう、なんらかの非常に悪質な嫌がらせとしか考えようがない。
ノートの中身を見る。
持ち主の名前が書かれていたと思われる箇所は全て丁寧に消されているか、ホワイトを塗られていた。
涙ぐましい努力だ。しかし。
一度見たら忘れられないような特徴ある字が全面に渡って書かれているのだ。一度でも見たことがある人間なら間違いはしないだろう。
筆跡鑑定するまでもなく、犯人は判明した。
残る問題は動機だ。
ここまで意味不明な嫌がらせを受けることを僕は何かしただろうか。やはりあの日の事か。
しかし何がそれほど凍りつかせたのだろう。
電話を掛ける、という手もあるが今日はまだ早い。そろそろこれが届くということがわかっているだろうから無視される可能性が高い。休みが明けた後、直接問うのが一番だろう。
さて、家族には何といってごまかすか…そんなことを考えながら僕は一階へ降りていった…
つづく
…かもしれない
つづきwktk!
GJ!!そしてなにより早く続きktkr!!
471 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 15:24:25 ID:koTKufnP
wktk
イイヨイイヨー
っしゃキター!
474 :
401:2006/11/05(日) 18:57:53 ID:TXX1LvKi
まさか自分の書いたやつがきっかけ(?)で素敵SSが読めるだなんて!
GJです、続きwktkしております。
475 :
ぼく:2006/11/09(木) 18:02:06 ID:VVQEbjTr
僕の前で、彼女は無防備な姿を晒している。
僕はその日、何を思ったのか降車駅を乗り過ごした。明確な理由があるわけでなく、天啓にも似た直感があるわけでもない。ただ、目的の駅で降りなかっただけだ。
平日の朝、通勤ラッシュの過ぎれば、下り列車に乗る客もほとんどいなくなる。僕は疎らになった車両を何気なしに見回していると、彼女を見つけた。
森野夜。
僕のクラスメイト。そして、僕と同じ死に惹きつけられた人間。
偶然にも僕たちは同じ車両に乗り合わせていたようだ。しかし、故意に乗り過ごした僕と違い、彼女は瞼を閉じ、電車の揺れに身を任せている。
森野は度々不眠症に悩まされていることは、前に聞いたことがあった。しかし、こうも人前で無防備な姿を晒しているのを見たのは初めてだ。
昨日も眠れなかったのかと思ったが、少し前に僕が見つけてきたアレのおかげで不眠症は解消されたはずだ。単に昨日の夜が遅かったのか……。
そんなことを考えていると、森野は僅かに寝息を漏らし、寝返りを打った。
森野の長い髪が顔に被さり、首が少しだけ横に傾く。制服が少しだけずれ、彼女の病的なまでに白い肌が露になった。
何度見ても、森野は異質な存在だ。背景が出来の悪いモザイク画なのに対し、森野は精巧な浮き彫りのようだ。存在自体が、他とは違う。
ふと、思いつく。
森野の首筋に、ナイフを突き刺せばどうなるか、想像する。
僕の脳裏に、真紅の血で真っ赤に染まった彼女の肢体がイメージされる。
僅かに、脈が速くなる。
車内に客は疎らだ。一番近い乗客は、向こう側の優先席に座っており、スポーツ誌に目を落としている。反対側の車両も、似たり寄ったりだ。
今なら、誰も見ていない。
衝動が湧き上がる。
気がつくと、僕は森野の目の前にいた。
唇がカサカサに乾いている。喉が渇きを訴えているが、痺れた脳はそれを無視する。
僕の手はゆっくりと、森野の白い首に近づき………。
「………なに?」
数分後、森野は目を覚ました。
危なかった。後少し自制するのが遅ければ、僕は森野を殺していた。
彼女を殺すのは、まだ先だ。
いつかの教室での出来事。夕日に照らされた森野の顔が思い浮かぶ。
森野夕。自分をころしてしまった少女。
僕が殺すのは、夜じゃない………夕だ。
「ねえ、ここはどこ?」
自分が寝過ごしたことを、彼女は遅ればせながら気づいたようだ。僕はたまたま記憶していた路線図から、現在地を教えてやる。
「………良いの、学校は?」
「……そうだね、遅刻なんて初めてだ」
程なくして、列車が駅に到着した。周りは田園風景で、日頃暮らしている街からかなり離れてしまったことがわかる。
「行きましょう」
森野は優雅に立ち上がると、ごく自然に僕の手を取ると、搭乗口に向かった。
(了)
おーい!みんなぁー!新たなるwktk作品が来たぞぉ〜!集合〜!
wktk
478 :
ぼく:2006/11/14(火) 16:28:30 ID:U3dj/dg/
調子に乗って2作目です。前回できなかったエロ描写に挑戦です。
タイトルはありません。みんなで着けてください。
479 :
ぼく:2006/11/14(火) 16:32:20 ID:U3dj/dg/
夜の静寂を破るように、それは唐突に聞こえてきた。
ボーン…ボー……。
どこか取り繕った感のある、合成された鐘の音。
一週間ほど前に、妹がバザーで買ってきた時計の音だ。
柱時計を小さくしたようなもので、1時間ごとに時刻を知らせる鐘が鳴る。
しかし、中の機械が壊れているのか、4時と9時だけ鐘が鳴らない。
……ン…ボーン……。
鐘の数は3……午前3時だ。最初は少し煩わしかったが、
深夜にフッとこの音が聞こえると、中々に乙なものだ。
特に、今日のような夜には。
ガチャリ………。
僕はクローゼットの扉を開け、その中でうずくまっている少女に目を落とした。
生まれてから一度も日光を浴びたことがないような、青白い肌。
それとは対象に、闇をそのまま塗りこんだかのような黒くて長い髪。
枯れ枝と見間違うほど細く、それでいて絹のようにしなやかな肢体。
その細い体は荒縄で拘束され、口には猿轡を噛まされている。
学校の制服は閉じ込める際にナイフでズタズタに引き裂いたので、原型は留めていない。
ふと彼女の下腹部に目がいく。拘束するとき、わざわざ下着を取り去り――よく気絶させた人間の着せ替えをするのは難しいと言われているが、
脱がすだけが目的ならナイフ1本あれば事足りる――そこを荒縄が通るように縛り、
もがけば荒縄が下腹部を刺激する仕掛けを造った。
しかも、クローゼットの中は息苦しく、季節のせいもあって熱がこもりやすい。
猿轡を噛まされた状態では呼吸も困難であり、
時間と共に彼女の思考力は削がれていく。
酸欠の苦しみと被虐による悦び。苦痛を裏返した快楽は、
彼女の下腹部に大量の雫を生み出していた。
480 :
ぼく:2006/11/14(火) 16:33:51 ID:U3dj/dg/
彼女は長時間の拘束で衰弱しているのか、ぐったりとしている。
顔を上げてみると、目が半ば死んでいた。2日も放置すれば、
人間はほとんど人形と化すらしい。だが、僕は気づいていた。
今にも光を失おうとしている瞳の奥で、羨望するような輝きがか細く、
しかしはっきりと輝いていることに。
囚われることへの期待。虐められることへの期待。弄ばれることへの期待。その先に待つ……殺される快感、たった一度の絶頂感。
僕は逸る気持ちを抑え、隠してあったナイフを取り出した。
それに気づいたのか、彼女はモゾモゾと身をよじらせる。
その結果、自分の秘部が責められると知っていながら。
だから、僕はあえてナイフの先端を彼女の青白い肌に立たせ、
緩慢な動作で細い体をなぞった。くぐもった声がクローゼットの内壁に反響し、
彼女は身をよじる。刃先が通った後からは真っ赤な血がじんわりと滲み出てきた。
一度では終わらない。二度、三度、何度でも往復し、彼女を赤く染めていく。
そそり立つ2つの突起も、痩せ細った腹も……彼女の全てを蹂躙する。
それでも、彼女は願っていた。渇望していた、欲していた、求めていた。
自分に止めを差す、その一撃を。
愛しているよ…………。
名残惜しそうに彼女を見つめ、今日まで溜め込んだ思いの全てを込めて。
僕は、窓から差す月明かりで、鈍い銀色に輝くナイフを振り上げた。
「………それで?」
話を切った僕に、森野は先を促した。
「ここで終わりだけど」
続けようにも、その先はない。お話はここで終わっているのだ。
さっきまで話していたのは、僕が先日ネットで見つけた小説の件だ。
登場人物の立ち位置が僕たちと似ていたため、何となく覚えてしまったのだ。
「他に何かなかったの?」
「ないよ………」
電車を乗り過ごした僕たちは、偶然にも今いる場所が先日起こった高校生殺害事件の現場に近いことを知り、そこに行ってみることにした。
その途中、森野がバスの待合所で「待っている間…暇ね」と呟いたため、こんな話をしたのだ。だが、森野はこの話をお気に召さなかったようだ。
それからしばらくの間、森野は一言も喋らず、考えに没頭しているようだった。
話しかけて機嫌を損ねられるわけにもいかないので、僕は何をするでなく宙を見つめていた。
「ねえ………」
だから、何気なく言った森野の言葉が、研ぎ澄まされたナイフのように易々と僕の中に入り込んできた。
「あなたなら………もっと上手く殺してくれるでしょ」
そのときの森野の瞳は、狂おしいまでに欲望の光を宿した、とても美しい黒を帯びていた。
(了)
最近来てなかったが…神作がいっぱいだぁぁ!!
これからもwktkしながら待ってます!!
…てか就職決まらねぇ…
就活ガンガリ。
まぁ俺もだが
作者スレから始めて来た。なんだよこの神作の数々!!
読むの遅いから少しずつ味わっていこう。職人の皆様ホント乙&GJです。
>>437 文句だけの人はスルー推奨で。
久々の新作wktkです。みっちりした続きキボン
げぇ、誤爆。これだから携帯はきらいだ・・・
新作WKTKなのは本当何で、さらなる新作にも期待ッス。
神作来てるところで申し訳ないんですが、
「暗いところで待ち合わせ」の2人なんて需要あります?
久々に読んだらもどかしくて臆病なエロ書きたくなりました
読みたい人いたら誰かハッパかけてください
あんたみたいな人を待っていたんだ。
>>486 その二人、すんげー好きだ。
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
>>486 新しい神様にカンパーイ!!wktkしながらまってるよ!!
新たな神が!!投下wktk
493 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/22(水) 21:43:34 ID:As67RKQT
映画化記念ということで、是非!wktk
ごめん、sage忘れた
495 :
486:2006/11/22(水) 22:11:32 ID:/TaEMo4U
たくさんのwktkありがとうございます
まだ全然エロに辿り着いてないさわり部分ですが、投下します
こんな空気でいかがでしょうか?
496 :
486:2006/11/22(水) 22:13:00 ID:/TaEMo4U
一緒に暮らして、半年が過ぎようとしていた。
アキヒロは小さな町工場に勤めを得た。
一緒に働くのは普通の会社ならば定年といった風貌の男性ばかりで、だが彼等は生き生きと誇りをもって仕事をこなしていた。
彼等は無愛想ではあるが根は真面目で素直なアキヒロを息子のように可愛がった。アキヒロも工場の親父たちに随分心を開いて話ができるようになっていた。
何カ月か前までが嘘のように仕事をする事が楽しかった。
一日一日頑張れば頑張るだけ自分が仕事を覚えていくこと、仕事に関しては厳しい親父達がそれを時折褒めてくれることが嬉しかった。
ミチルは白杖を使って外へ出る事に大分慣れた。近くのコンビニならばもう問題無く1人でいく事ができる。
彼女はそこの店員さんと仲良くなったのだ、と嬉しそうにアキヒロに言った。アキヒロはまだ会った事がないが柔らかい声で丁寧な話し方をする女の人だとミチルは言った。
その人はコンビニがすいている時間を教えてくれ、その時間ならば買物を手伝えるから、と優しく言ってくれたのだという。
そして買ってきた菓子の類をやたらとアキヒロに勧めた。せっかく買ってきたのだから自分で食べればいい、と彼は言いかけたが思い直して「ありがとう」と返事をした。自分ひとりで外へ出られた事を自慢したいのだろう、と思ったからだ。
497 :
486:2006/11/22(水) 22:14:15 ID:/TaEMo4U
半年の時間はゆっくりと2人を近付けた。
初めのうち、並んでコタツに入り話をしていて、ふいに手が触れることがあっても2人はお互いにすぐに手を引っ込めてしまっていた。
そして気まずい空気に思わず少し体をずらして距離をとるのだ。でもしばらくすると2人は触れたその手をどちらからともなく握り合うようになった。
孤独の中で生きてきた2人にとってこうして身近に触れる事が許された存在は家族以外では初めてだった。恐る恐る触れれば相手も遠慮がちに、でもちゃんと手を差し出してくれる。そっと力を込めればその分だけ温かさが返ってくる。その感覚は幸せなものだった。
また、アキヒロが感じていた他人と自分との絶対的な距離感をミチルの存在は縮めてくれた。今までは笑いながら楽しそうに街を歩く人間達を嫉妬と羨望の目で眺めていた。その気持ちすら押し殺し、別の生き物だとすら思って生きてきた。
でも例えば、ミチルと買物へ行く時。
2人で一緒に歩幅を合わせて歩くだけ、導く為に繋いだ手の感触があるだけで、街の人々が自分と変わらないように見えた。
錯角だろう、そんなはずはないと思っていたある時、たまたま目をやった傍らの商店のガラスに映るものにアキヒロは驚いたものだった。手と手を携え、歩く自分たちはあんなに羨んだ街の彼等と同じように堂々として見え、そして彼等と同じ表情をしていたのだ。
その時思わず繋いだ手に力を込めてしまい、ミチルが疑問の声を上げた。アキヒロは自分が泣いているのを悟られぬようなるべく普通の声を装って答え、空いている方の手で涙をぬぐった。
お、なんかいい雰囲気
ぎこちないながらもほんわりしてるのがイイね!
期待して待ってるよー
欲を言えば投下分のどこが終わりなのかはっきりさせるために
ナンバリングしたり「今日はここまで」と入れたりして欲しいな
結構リロードしたんでw
ほんわりイイヨイイヨ-
500 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/25(土) 16:04:00 ID:iO9Jiy3P
あげていいかな?
改めて最初から見て見ると、なんだか途中放棄の作品が多いくて… 。未だ続きが気になってます
神々よ、再びこの地に降り立たれよ!
501 :
486:2006/11/25(土) 23:33:19 ID:Z+HAWovD
ただいまちまちま書き進めていますがなかなかエロまでいきません
どうやら自分が2人に感情移入しすぎのようで……
待っていてくださる方いましたらもう少し時間を下さい。
>>498 そうですよね、すいません
あんまり投下とかしなれてないので……
次からちゃんとナンバー入れますね
御指摘ありがとうございます
>>501 あまり時間は気にせずがんばってください
とてもいい雰囲気なんで、期待しながら待ってます
503 :
ぼく:2006/11/28(火) 11:38:30 ID:1qtqfOgK
えっと、486さんが書き終えるまで、
新作の投下は控えた方が良いですか?
いや、待たなくていいと思う。
投下してください
505 :
ぼく:2006/11/28(火) 15:03:09 ID:1qtqfOgK
わかりました。一気に投下しちゃいます。
GOTHのSSでエロあり、というより浣腸オンリーの監禁ものです。
タイトルは「殺心鬼」です。
506 :
殺心鬼1:2006/11/28(火) 15:05:30 ID:1qtqfOgK
8月※※日(月)
毎年、この時期はうだるような暑さが続き、外に出ただけで窒息する
ような感覚に襲われる。特に僕のような人種にとって、暑さは致命的だ。
外出の度に、太陽に殺されるのではないかと錯覚してしまう。
僕は2回も読み終えた漫画雑誌を閉じ、空を仰いだ。
今日も雲一つない快晴だ。額からタラタラと汗が垂れ、不快指数が増
していく。視線で殺すという表現があるが、さしずめ今の僕は視線で空
を殺そうとしているのかもしれない。
「お待たせ」
僕を呼び出した張本人は、約束の時間を2時間ほど遅れてやって来た。
いつもと変わらない涼やかな態度に、僕は珍しく怒りを覚える。
「遅刻だよ」
「そうね」
顔を上げると、見慣れた黒いワンピース姿の森野夜がそこにいた。病
的なまでに白い肌を汗が流れているが、僕と比較すると明らかに少ない。
「怒るなら私にじゃなく、私の家の前に居座った薄汚いケダモノにして
頂戴。あれが2匹も玄関口にいたせいで、私は家に閉じ込められたの」
ケダモノ、と言われ、一瞬何のことだかわからなかった。だが、視界
に入ったペットショップを見て、ケダモノの正体を思い出す。
「犬が怖くて外に出られなかったと?」
「まさか………そんなわけないでしょ」
言葉とは裏腹に、声が震えていた。図星のようだ。いつだったか、森
野は大型犬とすれ違っただけで硬直し、動けなかったことがあった。話
題に出しただけで不快を露にするほど、森野は犬が嫌いだ。
「理由なんてどうでも良いでしょ。行きましょう」
森野は僕の腕をぐいぐい引っ張る。僕は手にしていた漫画雑誌を手近
なゴミ箱に投げ捨てると、森野の歩調を合わせた。
ペットショップの前を通ると、中から店員らしき男性が水の入ったバ
ケツを持って出てきた。水撒きでもするのだろう。僕たちは邪魔になら
ないよう足早に店先を通り過ぎた。
507 :
殺心鬼2:2006/11/28(火) 15:06:29 ID:1qtqfOgK
「それで、今日はどこに行くんだい?」
歩きながら、森野に尋ねる。何も知らされずに呼び出されるのはもう
これで何度目だろうか? 夏休みに入ってからというもの、森野は度々
僕を呼び出し、あちこち連れまわすのだ。今年は受験だというのに、呑
気なものだ。
「そうね………今日は………」
森野は顎に指を置き、考えを巡らす。呼び出したくせに何も考えてい
ないのも、これで何度目だろうか?
僕はため息を一つつき、ふと考える。
周りの人間には、僕たちはデート中の恋人に見えるのだろうか?
恋人なのかと聞かれれば、僕も森野も「いいえ」と答えるだろう。な
ら、友達かと聞かれても答えるのは難しい。僕たちの関係は、たった一
つの意見の合意から成る、酷く不安定で危うい代物だ。
即ち、殺す者と殺される者。
僕はいつか、森野をこの手で殺すことを約束した。だが………
「どうしたの?」
森野に呼ばれ、意識が現実に戻る。
「いつになく無口だけど、調子でも悪いの?」
「いいや………」
森野は「そう」とだけ言うと、あれこれと今日のプランを話し始める。
僕は半分聞き流しながら、再び思考に戻った。
僕は森野を殺すと約束した。僕自身、森野が死ぬ瞬間、殺される場面
をこの目で見たいと渇望したこともある。しかし、その機会に恵まれる
度に、僕は森野の命を救ってきた。後一歩というところで、彼女を現世
に引き留めてきた。
こんな関係が、いつまで続くのだろうか?
僕たちは、いつまで一緒にいられるのだろうか?
その日は、特に何をするでなく、喫茶店で夕方まで話した後、僕達は
別れた。そして、僕が森野に疑問を投げかける機会は、とうとう訪れな
かった。
その夜、森野の母親から、彼女がまだ帰宅していないと電話がかかっ
てきたのだ。
森野夜は、その日から行方不明となった。
508 :
殺心鬼3:2006/11/28(火) 15:08:06 ID:1qtqfOgK
心地よいまどろみから、森野夜はゆっくりと目を覚ました。
車酔いをした時のような倦怠感がまどろみに取って変わってくる。意
識がはっきりしない上、地に足が着いていないような浮遊感もあって、
まだ夢の中なのかと錯覚する。
しかし、ふと感じた違和感が、彼女を現実に引き戻した。
普段と違って、自分の視線が明らかに高い。椅子に上った時よりも更
に上かもしれない。自分のものでないかのように体が重く、節々が痛い。
幾通りもの想像の中から、夜は最悪な答えを導き出し、それを肯定す
るように、恐る恐る頭を下げた。
地面が遠かった。
夜は一糸纏わない姿で拘束され、たった3本の縄で天井から吊られて
いたのだ。
本来地に着いていなければならない足は大きく大股を拡げられ、天井
のパイプから下げられた縄が両膝の下を通って持ち上げられている。形
の良い胸も縄で絞られ、歪に強調されており、両腕は動かせないように
腋で固定され、万が一股を閉じられないよう、臀部を縛る縄が背中で固
定した手首の縄を通って膝の縄と同じく天井に結ばれていた。
「気づきましたか?」
少し離れたところで、男が椅子に腰掛け、こちらを見上げていた。見
間違うはずもない。自分を気絶させ、拉致した男だ。
男の目は欲望でぎらついており、口は意地の悪くにやにやと歪んでい
る。それだけで、自分の近い未来が容易に想像できた。
「案外落ち着いていますね。前の娘はもっと取り乱していたのに」
慣れているから、とは言えなかった。こんな風に捕らえられるのは前
にもあった。あの時はここまで酷い辱めは受けなかったが、それでも命
の危険があったことに違いない。さすがに2度目となれば、周囲を観察
する余裕もあった。
ここは窓のない、非常に薄暗い空間だった。空気が籠もっているので、
地下室かもしれない。横の方で換気扇が回っていた。あった。叫べば
誰か助けてくれるかもしれない。そう思った矢先、換気扇の向こうから
電車が通過する音が聞こえた。
「近くに線路があってね。数分に一回はこいつが聞こえてきます。叫ん
だところで誰も気づきませんよ」
こちらの考えなどお見通しだと言わんばかりに、男はせせら笑った。
509 :
殺心鬼4:2006/11/28(火) 15:09:14 ID:1qtqfOgK
「私を………どうする気?」
「どうなると思います?」
男は立ち上がり、夜の股間に顔を近づける。まるで彼女が忌み嫌う犬
のように、音を立てて臭いを嗅ぐ。
嫌悪感から、夜は身を固まらせた。何とか逃げようと藻掻くが、体を
拘束する縄は緩むことはなく、空しく体が揺れるだけだった。このまま
処女を散らされるのか? だが、男が取った行動は彼女の予想を遙かに
上回るものだった。
男の太い指が、夜の肛門にメリメリと侵入してきた。予想だにしなか
った事態に、夜は瞬間的なパニックに陥る。
「ちょっ……そこは……い、いやぁぁ、ひぃぃっ!?」
身をよじると肛門がキュッと締まり、男の指をきつく食いしめた。そ
れに気を良くしたのか、男はゆっくりと指の前後運動を開始した。その
度に夜は悲鳴をあげて藻掻くが、宙に浮いた状態ではどうにもならない。
返って力が入り、肛門の締めつけを強くするだけだった。
「随分と敏感ですね……こちらでの経験があるのですか?」
「そ、それは………あ、あぁぁっ、いやぁぁっ!」
男が指の動きに変化をつけたため、言葉が途切れる。焦らすように入
り口を弄っていたのがどんどん速くなり、根本深くまで挿入してくる。
そうしながらも男は執拗に夜の性経験を問うが、容赦のない指責めを受
けている夜は答えることができない。
「言いなさい、ケツ穴でしたことがありますか?」
「ひぃぃ、ひぃいぇぇ、ないわっ。ひぁことなぃわぁ!」
「バージンですか………それでこれだけよがってるってことは、相当の
変態ですね。壊しがいがある」
2本目の指が挿入され、グイと肛門が拡げられる。
「クゥ……あぁぁぁいぃぃぃっ、うあぁぁぁ」
初めて経験する感覚に、夜は戸惑っていた。気持ちでは否定しても、
体は肛門抉られることで感じている。その証拠に、夜の股間からは洪
水のように愛液が噴き出ていた。
不意に男は指を引き抜き、夜から離れる。部屋の奥から大きな鏡を
持ってくると、夜に自分の体が見えるよう壁にかける。否応なく自分
の姿を見せつけられ、思わず夜は視線を反らした。
目を開けることができなかった。
排泄器官をなぶられた。その事実が受け入れられず、鏡に映る自分
を直視できない。自己嫌悪がこみ上げ、夜は静かに涙した。
510 :
殺心鬼5:2006/11/28(火) 15:09:51 ID:1qtqfOgK
だが、夜に自身を哀れむ時間は与えられなかった。
「目を開けなさい………まあ、そのままでも良いですけど」
再び、異物感が直腸を引き裂いた。指とは違う、冷たい無機質な感
覚。痛みで目を開くと、巨大な注射器を肛門に突き刺した自分が鏡に
映っていた。それだけで、男が何をしようとしているのかが理解でき
た。
「いやぁ、やめてぇぇ………あぁぁっ!」
間髪入れず、中の液体が直腸に送り込まれ、夜は息を飲んだ。得体
の知れない液体が生き物のように直腸を逆流し、粘膜は火で焼かれた
ように熱くなる。
液体が全て注入されると、新しい注射器が肛門にあてがわれた。今
度も一気に中の液体を押し込まれる。徐々に大きくなる圧迫感に、こ
のままでは腸が破裂するのではないかと恐怖する。
「やぁぁ………やめ………!?………」
不意に、下腹部が盛り上がるような錯覚を覚えた。昨晩から溜まり
に溜まった尿が膀胱の中で暴れ回り始める。漏らすまいと必死で力を
込めるが、逆に今度は腸内の液体を意識してしまう。もう、プライド
など保っていられない。切羽詰まった夜は叫んだ。
「降ろして……お願い降ろして!」
「駄目です。ちゃんと目を開けて下さい、今の自分の姿が良く見えます
よ」
「嫌よ! やめて………いやっ!」
空になった注射器を捨て、男は最初に自分が座っていた椅子に腰か
けた。そのまま、高みの見物としゃれ込む気のようだ。
息をするのも忘れて、夜は必死で耐えた。全身の毛穴が開き、玉の
ような汗が噴き出てくる。少しでも力を抜けば、爆ぜてしまう。しか
し、便意と尿意はどんどん大きくなっていく。
次の瞬間、夜は呆気なく決壊した。
まん丸と口を拡げた尿口から黄金水がしぶき、綺麗な放物線を描
く。
堪えていたものが抜けていく開放感から、下腹部に込められてい
た力が僅かに緩んでしまう。たちまち肛門が広がって裏返り、茶色
い奔流が壊れた水道のように流れ出す。
「ひぁぁっ、いやぁぁぁ、あぁ………」
内臓が飛び出るかのような感覚に、放尿が止まった。だが、すぐ
にまた激しい失禁が始まる。2つの肉管を擦られ、断続的に訪れる
悦楽が脳を刺激し、気絶することすら許されない。直接神経に電流
を流されたかのようなエクスタシーに、クレヴァスからも愛液が分
泌される。
いつの間にか、男は壁にかけていた鏡を夜の近くに掲げていた。
鏡の表面に尿がぶつかり、飛沫が弾く。3つの穴から飛沫を迸ら
せ、絶頂に酔いながら自分を汚す姿をまざまざと見せつけられ、
夜はとうとう気を失った。
511 :
殺心鬼6:2006/11/28(火) 15:10:59 ID:1qtqfOgK
8月※※日(火)
その日、妹の桜は体調を崩し、朝からずっと部屋に閉じこもって
いた。昨日まで元気に外を遊び回っていたことを考えると不思議な
気分だが、昨日の夜に帰宅した時も顔色が悪かったので、隠してい
た夏風邪が悪化したのかもしれない。
生憎両親は用事で出かけているため、面倒は僕が見なければなら
ない。相変わらず森野は行方不明のままで、携帯電話にも繋がらな
い。僕としては早く探しに行きたいのだが、病床の妹を放っておく
わけにもいかなかった。
「ごめんね………」
桜は弱々しく謝る。顔色はまだ青いが、昨日よりはましになって
いた。最初に見た時は、酷く憔悴していて、本当に生きているのか
疑わしかったほどだ。
「私は良いから、森野さんのところに行っても良いよ」
「そこで、どうして森野が出て来るんだ?」
桜は森野を僕の恋人か、それに近しい人物だと誤解している。何
度も理論立てて否定したのだが、一向に認識を改めず、こうしてよ
く話題に出してくる。
「そういえば………昨日、森野さんを見たよ」
「森野を? いつ?」
「昨日、家に帰る途中で」
桜が帰宅したのは午後8時を回るか回らないかという時刻だった。
僕が森野と別れたのは午後6時半。森野の母親から連絡があったの
はそれから桜が帰宅してから2時間後。つまり、桜は行方不明にな
る前の森野を目撃したことになる。
僕は問いつめたい衝動を抑え、務めて冷静に振る舞った。変な行
動に出れば、桜の誤解は一層に酷くなる。
「それで?」
「うん…………」
言いにくいことなのか、桜は僕から顔を逸らして言い淀む。しば
らく待つと、ポツリポツリと昨日のことを語りだした。
512 :
殺心鬼7:2006/11/28(火) 15:11:39 ID:1qtqfOgK
桜は昨日、友達と夏休みの宿題をするために出かけていた。と言
ってもそれは建前で、実際のところ宿題もせずに友達達と終始喋っ
ていたらしい。その帰り道、近道をしようといつもは通らない雑木
林に足を踏み入れた。そこは町中だというのに周囲の騒音も聞こえ
ず、世間から隔絶された異空間だった。夜は暗くて足下も危ない上、
何度か変質者も出たことがあるので、地元の人間はまず近づかない。
しかし、急いでいた桜は恐怖心を抑えてそこに入ったのだ。
「そこで………見つけちゃって」
死体を。
桜は死体を見つけるという特殊な才能を持っている。小学生の時
に死体を見つけて以来、度々見つけてはこのようにふさぎ込んで熱
にうなされる。しかも、その間隔は段々と短くなっていっているの
だ。
「私、夢中で走って……その時なの、森野さんを見たのは」
桜の話では、森野は桜がいたのとは反対の茂みから顔を出してい
たらしい。一瞬見ただけなので断定はできないが、森野にとても似
ていたらしい。
ふと気になって、僕はその雑木林の場所を聞いた。そこは、森野
の家からやや離れたことろにあり、彼女が帰宅するためにはその近
くを通らねばならない場所だった。桜が森野を見たとしても不思議
ではない。しかし、見過ごすことのできないものがそこにはあった。
桜の見た死体が誰かに殺された者なら、当然それを行った者がい
るはずだ。そして、森野は自分でも知らない内に異常者を惹きつけ
てしまう。この2人がどこかで交差したとしても、おかしくはなか
った。
気づくと、僕は立ち上がっていた。訝しげに、桜は僕を見上げる。
「少し、出てくる。そう……2時間くらいで戻るよ」
桜には悪いが、あまり時間がないかもしれない。既に森野がいな
くなって半日。時が経つにつれて、森野が生存している確率は低く
なる。
桜は心得たと言わんばかりに頷き、手を振った。部屋をでて行こ
うとする僕に、「森野さんのことが心配なんだ」と声をかける。反
論するのももどかしく、僕は足早に家を飛び出した。
今度こそ、森野が死ぬ場面をこの目で見られることを願って。
513 :
殺心鬼8:2006/11/28(火) 15:13:01 ID:1qtqfOgK
ここに監禁されてから、どれくらい過ぎたのだろうか?
ぐったりと体を横に寝かせ、夜は考えた。しかし、とっくの昔に
狂ってしまった体内時計では計ることもできず、すぐに考えるのを
止める。
今、この部屋には夜しかいなかった。気がつくと男はおらず、手
首以外の拘束が外されて床に寝かされていた。しかし、今度は首に
は犬用の首輪が巻かれ、鎖で壁に繋がれているため、状況的には吊
られていた時と大して変わっていない。
フッと、気を失う前のことを思い出し、屈辱感がこみ上げてくる。
あの後も男は何度も浣腸を繰り返し、夜の体を弄んだ。性交もまだ
したことがないのに、肛門を責められて喘いだ自分が堪らなく惨め
だった。
「起きていましたか」
ガチャリと奥の扉が開き、男が入ってくる。手にはお盆が握られ
ていて、乗せているものを落とさないよう慎重に近づいてくる。ま
た浣腸されるのかと身構えるが、男は夜の前にお盆を置いただけに
留まった。
「食べなさい」
お盆の上には、牛乳とシリアルが動物用のプレートに盛られてい
た。まるで自分の惨めさを突きつけられたような気がして、嫌悪感
が顔に表れる。思わず、夜は口走っていた。
「嫌よ」
「何故です?」
「嫌なものは嫌!」
手が使えない状態では、犬のように這いつくばって食事を取らねば
ならない。犬の真似をすることだけは、死んでも嫌だった。
514 :
殺心鬼9:2006/11/28(火) 15:13:34 ID:1qtqfOgK
「仕方ありませんね」
男は部屋を出ていき、大きな段ボール箱を抱えて戻ってくる。意
図がわからず、夜は身を固めたまま首を捻った。
段ボール箱を床に置くと、男はおもむろに夜の体を抱きかかえた。
背中を地面に押しつけ、両足を大きく持ち上げて秘部と肛門を頂点
に持ってくる。
「な、何をするの………?」
恐怖の余り、声を引きつらせてしまう。だが、意思に反して彼女
の秘部はジンワリと湿りだしていた。
男はどこからか銀色のクスコを取り出すと、浣腸責めでただれた
夜の肛門に突き刺した。
「ひぃっいやぁぁ」
ヒンヤリとした感触が伝わってくる。そのままグイとクスコが押
し込まれ、腸の中が丸見えになった。片手で夜の姿勢が崩れないよ
うに押さえ、もう片方の手は床に置かれた段ボール箱を引きずって
くる。夜の位置からは見えないが、そこには大量のシリアルが詰ま
った袋と、500リットルの牛乳瓶が何本も入っていた。
やがて、クスコに大量のシリアルがぶちまけられる。
「ひっ!? あぁぁぁぁつ!?」
ギザギザな表面が直腸をなぞり、夜は悲鳴を上げる。
今度は牛乳が注ぎ込まれた。先程まで冷蔵庫で冷やされていたた
め、直腸が爆発したような痛みを訴える。
「いやぁっ、やめぇ、やめてぇぇっ………」
夜の懇願を無視して、男は用意したシリアルと牛乳がなくなるま
で作業を続けた。最初と違って何一つ言葉を発しないため、余計に
恐怖感が煽られる。
「うぅぅ………ぐぅあぁぁぁ」
クスコが抜かれると、腸内で牛乳が逆流を始めた。牛乳に浸され
たシリアルはくっついて塊となり、異物感が膨れあがっていく。連
続浣腸によって疲弊しきった肛門は堪えることもできず、強制的に
造り出された便が駆け上る。
「いやぁぁあっ、あぁぁっ!」
噴水のように白い液体が噴き上げ、塊となったシリアルが落下し
てくる。常軌を逸した食事法に、秘部は更にじゅくじゅくと愛液を
迸らせ、牛乳と共に夜の顔を汚していく。
夜は子どものようにむせび泣き、ただ首を振って快楽に耐えるこ
としかできなかった。
515 :
殺心鬼10:2006/11/28(火) 15:15:16 ID:1qtqfOgK
8月※※日(火)
桜が見たという死体は、雑木林の真ん中辺りにある杉の木の下
に放置されていた。だが、それを死体と呼べるのかどうか、僕に
は判断がつかなかった。何故ならそれは、人として形はおろか、
身体の一部であると判別できないほど、乱暴に解体されていたの
だ。むしろ、破壊と表現した方が良いかもしれない。破壊された
パーツは広範囲にばらまかれており、目につくだけでも手、足、
二の腕、眼球、耳が土に汚れて転がっていた。それはまだ綺麗な
部類で、中には切断を途中で止めて皮一枚で繋がっている部位や、
鈍器で砕かれたようなものもあった。薄暗い中、よく桜はこれが
人間だと気づけたものだ。
ふと僕は去年の夏に遭遇した、バラバラ殺人事件を思い出した。
あの事件も被害者はこのように解体され、オブジェのように飾ら
れていた。
しかし、これはあの事件とは違う。死体の解体方法が雑だし、
飾られているわけでもない。僕にはそれが、意味のあることに
思えて仕方なかった。それに、どうして犯人は死体を埋めるの
ではなく地面の上に放置したのか………。
そこまで考えて、僕は一つの予想をうち立てた。
その突拍子もなさに、僕は我を疑った。
汗で濡れた顎を、拳で拭う。木々の隙間から照りつける陽光
を眩しいとも思わず、僕はただその場に立ちつくした。真夏だ
というのに背筋が凍りついているような気がした。何の裏付け
もない想像が、一番正しい気がしてならない。
調べる必要がある。
急がなければ、森野もこの死体と同じように、破壊されてし
まうかもしれない。
516 :
殺心鬼11:2006/11/28(火) 15:15:52 ID:1qtqfOgK
「うぐぅぅ、あぁぁぁっ、あ…………」
ゆっくりと抽送されるアナルバイブの刺激に、夜は堪らず嬌
声を上げた。とろけきった肛門の柔壁をこすられ、ねじられる
ように抉られていくうちに、肉の喜びが律動を始める。
おぞましいと思う気持ちとは裏腹に、体はマゾヒスティック
な快楽を求めていた。度重なる行為で夜は自我を保てなくなっ
ていた。彼女が未だ処女だと言われても、信じる者は誰もいな
いだろう。
「あぁっ、そ、そこ………だ、めぇぇ」
夜は鼻フックをかけられ、醜く顔を歪めていた。乳首とクリ
トリスでは張り付けられたピンクローターが振動しており、そ
れ一層強く便意を刺激する。既に夜は1リットル近い量の浣腸
を施されているのだが、アナルバイブで肛門を塞がれているた
め、出口を求めて腸内を暴れ回る浣腸液の苦しみに身を任せる
しかなかった。
「お、お願い………出させて……」
男は無言でバイブの抽送の速度を上げた。それが答えだと言
わんばかりに。腸璧を突き破るかのように深々とバイブが打ち
込まれ、更に男は夜の腹部を思い切り押し込んだ。悲鳴が室内
に木霊する。
「ふぐぃっ!? やめ………あ、あぁぁっ、で、出る……出る
ぅぅ!」
肛門を塞いでいたバイブが噴き出した浣腸液の勢いで吹き飛
ぶ。下品な音を立てて、夜は脱糞した。その顔は恍惚とした表
情を浮かべており、涙と涎で汚れていた。しかし、次の瞬間、
その顔は恐怖に凍りついた。
荒い息を吐き、ぱっくりと開いた口には白く光る牙。獰猛そ
うな瞳と黒い体毛。大型のドーベルマンが、そこにいた。
「い、いやぁっ………来ないで………」
ドーベルマンの股間には、太くて赤黒くペニスがそそり立っ
ていたケロイドでただれているようにも見えるペニスは既に先
端が少し濡れており、見る者に嫌悪感しか与えない。
男はドーベルマンの手綱を手近な突起に引っかけると、夜の
体を四つん這いに寝かせた。さっきの絶頂の余韻がまだ残って
おり、夜は抗うこともできない。
秘部が充分濡れていることを確認すると、満足そうに微笑む。
これならば、受け入れても痛みは少ないだろう。だが、暴れら
れても困るので、縄で念入りに拘束しておく。そして、お預け
を食らって不機嫌なドーベルマンを呼んだ。
「やめて……や、やぁぁっ、来ないでっ! いやぁっ!」
ドーベルマンの股間にそそり立つ性器を見て、夜は悲鳴を上
げて気絶した。
男は残念そうに肩を落とした。もう少し暴れてくれること
を期待したのだ。だが、これでやりやすくはなった。前の娘
はドーベルマンと交わったことで絶頂死した。この娘もそう
なるのか、それとも生き抜いて、より激しい責めを受けるの
か。どちらにしても、男にとって人が壊れていく様はこの上
ない楽しみだった。
「その辺に、しておいてくれませんか?」
ドーベルマンが、弾かれたように夜から離れる。まるで、
自分よりも格上の存在に怯えているかのように。
振り返ると、黒い衣装に身を包んだ少年が壁にもたれかか
っていた。その少年は、気が狂いそうなまでの虚無と死の匂
いを内包していた。
517 :
殺心鬼12:2006/11/28(火) 15:17:15 ID:1qtqfOgK
僕という侵入者が現れても、男は平然とした顔のまま、僕
の方を振り向いた。酷く特徴のない顔で、集団に紛れれば埋
没してしまうだろう。しかし、歪に歪んだその唇は、既に彼
が常識から逸脱してしまった存在であることを物語っていた。
「君は……この娘の恋人かい?」
何故、世間は僕と森野を恋人同士にしたがるのだろうか?
その疑問を振り払い、僕はズボンのポケットに手を突っ込
む。いつでも飛びかかれるよう、そこには去年の夏にある人
から譲って貰ったナイフが入っている。
「※※町の雑木林に死体を捨てたのは、あなたですね」
「ああ。あの娘はなかなか私の責めに耐えてくれた。出来れ
ばもう少し生きていて欲しかったのだけれどね」
壊れてしまったから捨てた、というような言葉に、僕は僅
かに違和感を覚える。
「だが、よく犯人が私だとわかったね」
「ええ、これは賭けです」
同じ時間、同じ場所に2人の人間がいて、森野は行方不明
となり、桜は無事に帰宅した。犯人が森野をさらった可能性
は高い。それなら、何故桜を狙わなかったのか。桜は死体を
目撃している。放っておけば警察に通報されるかもしれない。
それを承知で犯人は森野をさらわねばならない理由があった
のだ。警察に通報されることを覚悟でやらねばならないこと、
つまり…………。
「森野は、あなたを見た」
死体の存在を知られてまで守らねばならないもの、それは自
分自身だ。「雑木林に死体が捨てられている」と「雑木林に死
体を捨てた犯人を見た」ではどちらに天秤が傾くかは明白だ。
すぐにでもここを立ち去らなければ、警察がやって来るかも
しれない。しかし、目撃者を放っておくわけにもいかない。だ
が、2人の人間を捕まえることはできない。なら、せめて自分
の顔を見た方を。
「ええ、その通りです。まあ、次の獲物を探す手間が省けたと
いう点では、あれは最良の判断でしたけれど。ですが、それだ
けでは犯人を特定することはできませんよ」
「ここからは骨が折れました。何しろ手がかりが何一つない。
ですが、人間というものは必ず誰かに見られているものです。
あなたも例外ではない」
雑木林を立ち去った後、僕は丸一日かけて森野の足取りを
追った。そして、ペットショップのオーナーが森野らしき女
性を抱えて歩いているところを目撃した人物に出会ったのだ。
その人はホームレスで、捨てられた書籍を拾ってリサイクル
業者に売ることで生計を立てていた。月曜日は週刊漫画の販
売日であるため、ゴミ箱には読み終えたそれが捨ててあるこ
とが多く、店の前のゴミ箱を漁っているところ、偶然森野を
担いだ男を目撃したのだ。
そこで休業中だったペットショップに侵入し、この地下室
を発見したのだ。
518 :
殺心鬼13:2006/11/28(火) 15:17:58 ID:1qtqfOgK
「人が壊れるのを見るのは……好きなんですけどね」
不意に、男は語りだした。
「殺すつもりなんてなかったんですよ。ただ、どこまで人間
を壊すことができるのか、試してみたくなって。一応、餌づ
けはちゃんとしたんですけど」
その言葉に、僕はこの男に抱いた違和感が何なのか理解し
た。
今まで目にした猟奇殺人犯たちは、程度の違いはあれ、殺
人そのものが生き様だった。現実から剥離しているような孤
独と虚無感の中で、人を殺すことだけが自分自身の存在を
現実に繋ぎ止めていた。しかし、この男はそれらと同じで
ありながら、決定的に違う部分があった。
殺人を、望んでいないことだ。
行為の果てに殺してしまうのであって、殺すことを目的
とはしていない。この男の望みは、少しでも長く獲物が生
き長らえ、体と心を徹底的に蹂躙し、破壊すること。死体
を破壊したのは、その行為の果てに辿り着いた一つの結末
だったのだ。
この男は、いわば心を殺す殺心鬼だ。
「森野を返して貰えませんか?」
「悪いが、もう少しこの娘を壊したいんだ。それに、君と
いうつがいがいれば、もう少し保ちそうな気もするな」
男はポケットから果物ナイフを取り出した。
森野だけでなく、僕も捕らえて陵辱するというのか。
ポケットの中でナイフが渇きを訴える。導かれるままに、
僕はナイフを引き抜いた。捕まって、辱められ、破壊され
るのはごめんだ。
「……………」
勝負は一瞬で決まった。男が果物ナイフを振り下ろすよ
りも早く、僕のナイフが男の胸に吸い込まれるように突き
刺さった。生きた肉を貫く感触が、ナイフを通じて手に伝
わってくる。
「人は……いつか壊れます。このように………」
ドサリと、男は床に倒れ、動かなくなった。
破壊を望んだ殺心鬼は、呆気なく事切れた。
ドーベルマンもいつの間にかいなくなっている。動物の
本能で殺されることを恐れたのかもしれない。
地下室には僕と森野だけが残された。
森野は無様な姿を晒したまま、気を失っている。次に目
覚めた時、彼女は僕の知っている森野夜のままなのだろう
か? それは、誰にもわからない。
「森野は……壊れることなんて望んでいませんよ」
呟きは、闇の中に沈んでいった。
519 :
殺心鬼14:2006/11/28(火) 15:19:24 ID:1qtqfOgK
あの一件から一週間ほど経った。
僕も森野も、表向き何事もなかったかのように日々を
過ごしている。相変わらず、彼女は唐突に僕を呼びだし、
あちこち連れ回している。今日だって、隣県で起こった殺
人事件の現場を見たいと呼び出され、こうして行楽シー
ズンで賑わう電車に揺られているのだ。
森野は騒いでいる子ども達の声が不快なのか、不機嫌な
顔で文庫本に目を落としている。邪魔すれば怒られるので、
僕は黙って目的の駅に到着するのを待った。
ふと、あの殺心鬼のことを思い出す。
彼が破壊した死体は桜を通じて母さんが警察に通報し、
マスコミが「解体殺人事件」として連日のように報道し
ていた。しかし、その犯人であるペットショップのオー
ナーの死は、新聞の端の方に小さく載っただけだった。
きっと、この事件も迷宮入りになることだろう。
『人が壊れるのを見るのは……好きなんですけどね』
彼は人を壊すことを嗜好していた。その結果として、
死体をあれほどまでに破壊したのだ。では、心が壊れ
た人間とはなんだろうか?
僕達が心と呼んでいるものは、理性と本能が織りなす不
協和音のようなものだ。それが壊れるということは、自律
のためのたがを失うということである。残るのはその人自
身の願望であり、生きるための方向性。「 」を行いた
いという動詞しか残らない。いわば、その人自身の本性だ。
だが、森野の本性であるところの森野夕は、10年も前
に死んでいる。彼女は知らず知らずの内に、姉である森野
夜という仮面を被り、それ自体に心を塗りつぶされている。
彼女が望んでいるのは、森野夜として死ぬこと。それは、
森野夕として死なせてしまった姉への贖罪だ。
520 :
殺心鬼15:2006/11/28(火) 15:19:58 ID:1qtqfOgK
だけど、僕はそれを望まない。
あの殺心鬼との僅かなやり取りは、僕が常々抱いていた
疑問を解いてくれた。
僕は、森野夕を殺したいのだ。
姉を失い、自己を殺し、自分ではない者として生き、死
んでいかねばならない少女。僕は、彼女が森野夕として死
ぬ場面が見たいのだ。
それは叶わぬ夢だった。
「夜」として死にたい森野。
「夕」を殺したい僕。
ジレンマだ。2人の望みは決して交わらない。
僕には、森野夜を壊す術はない。或いはあの殺心鬼
なら、「夜」を破壊することが出来たかもしれないが、
今となってはどうすることも出来ない。僕に出来るの
は、いつか森野が「夕」に戻ってくれるのを待つこと
だけなのだろうか?
そっと、僕は森野のお尻に触れた。
「………!」
森野は顔を強張らせたが、拒絶はしなかった。その
まま僕は周りに気づかれないよう森野のお尻を撫で、
肛門の周りをなぞる。
「んぅ…………」
場所をはばかってか、森野は嬌声を押し殺した。小
さな声で「止めて」と囁くが、目はより強い刺激を求
めていた。
僕はスカートごしに中指を肛門に突き刺し、ゆっく
りこねくり回しながら言った。
「目的地とは違うけど、次の駅で降りようか」
「………………」
無言のまま、森野は肯定の意味で首を振る。これか
ら何をされるのか、期待と興奮で秘部は湿りだしたの
がスカートの生地ごしでもよくわかった。
「良い娘だね、夕」
僕には、森野夜を壊す術はない。
ならば、僕は僕なりに、「夕」を殺す方法を模索す
ることにしよう。焦らなくとも、時間は充分にある。
(ずっと一緒だ。森野夕…………)
(了)
521 :
ぼく:2006/11/28(火) 15:23:27 ID:1qtqfOgK
以上です。
頑張ってはみましたが、やっぱり先人の皆様には程遠いですね。
もっと精進しなければ。
神乙!!ものすごくGJです!!すごく良かったです。
駅で降りた後、どういう風に責めるのか…
523 :
ぼく:2006/11/29(水) 10:53:56 ID:CwA8F3Y4
その後の展開は皆さんの想像の中でお願いします。
僕の技量では「森野夜」というキャラクターが本当に崩壊しかねない。
524 :
522:2006/12/01(金) 07:03:45 ID:0he5lRuu
ぼくさんの技量だと、たとえ「森野夜」というキャラクターでも壊れることはありませんよ
今日、暗いところで待ち合わせ見てくるよ
このスレではマイナーかも知れませんが、「カザリとヨーコ」から、
ヨーコが援交する話を投下します。
短いSSです。タイトルは「名前」です。
まずすべきことはもうすまされていた。わたしのそこはもう濡れそぼっていて、目の前の男の人のものはかなり大きいけれどすんなり入るだろう。わたしは自分の服は自分で脱ごうと、ボタンに手をかけた。その手を男の人の手が制す。
「脱がなくていい。そのままがいいんだ」
男の人のズボンのジッパーはもう下ろされていて、大きなペニスがむき出しになっていた。はちきれんばかりのそれを薄いゴムが覆っている。わたしはこれを見つめ、これからされるであろうことを想像した。またわたしのパンティがしっとりと濡れていくのがわかった。
真っ白なわたしのパンティが脱がされていく。はりついたものが剥がされる感触がクリトリスを刺激して声を漏らしそうになった。せっかちなペニスがわたしに挿入、される。
「痛くないかい?」
荒い息が混じった声で、男がささやいた。
「痛くありません。とても気持ちいいです……」
わたしは正直に思ったことを口にした。わたしの胎内にある男の人のペニスが喜んだのが分かって、かわいいと思った。
「あ、あ、あ、……あぁっー」
男の人の腰がわたしを打つ。わたしは声を抑えようとせずに快感に身をあずける。カザリでも、ヨーコでもない、違うわたしが目覚めていく錯覚に陥った。途中遠くに繋いでいるアソと目が合った。アソは首をかしげていた。
時折男の人はわたしの服の中に手を入れ、乳房をやさしく愛撫した。
「あ、そ、それは駄目です」
男の人はわたしの両足を持ち上げて、そして両腕でわたしの足をがっちり固めてわたしの腰を浮かせながら胎内を突いた。
「あぁっ、あぁ! 駄目です! やめて下さい! ああっ! やめて下さい! んあっ」
快感のあまりわたしは我を忘れて叫んだ。痺れるように胎内が熱かった。
「気持ちいいのかい? 奥をこうされるのが好きなのかい?」
わたしはがむしゃらに首を縦に動かすので精一杯だった。じっとりとした液体がわたしを濡らして行き、湿っぽくさせた。いよいよ子宮が脈を打ち始め、臍の下辺りが締め付けられるような感触に、わたしはもうすぐいくのだと理解した。
「もう、駄目です……。すみません。いきます……」
弱弱しい声でわたしは言い、身体の力を抜いた。身体中が痙攣して、男の人のペニスを締めあげた。わたしは声にならない声と共に“いった”。
「僕のほうも……不味いね」
男の人がつぶやき、わたしの膣からペニスを抜いた。同時にコンドームの中に射精する。白っぽい液がゴムの袋にたまっていた。
「とてもよかったよ。久しぶりにセックスに夢中になれた」
男の人は清々しい顔をしていた。わたしの手には数枚の一万円札がにぎられている。わたしは腰を抜かしたまま立つことが出来ないので、座ったまま出来るだけ丁寧にお辞儀をした。
「じゃあね、“カザリ”ちゃん」
男の人は最後にあの日妹から奪った名前でわたしを呼んだ。そしてわたしの方を一度も振り返ることはなく、去って言った。わたしは繋がれていたアソの方に這っていき、紐をほどいた。
わたしはどうやってでも生きていける。
本当に短くてすみません。orz
家を出た後、こんな仕事をしてみるヨーコもありかと思いまして。
では失礼しました。
……あ。すみません、タイトル入れるの忘れてた。(゚д゚)
乙でした。
「カザリとヨーコ」はZOOの中では一番好きだったよ。
530 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 16:04:00 ID:srdMXAEH
あげ
531 :
☆:2006/12/09(土) 14:32:24 ID:v6p7oqPF
乙一本人がエロすぎてボツになった作品を投下するスレはここですか?
>>531 ☆さん、今日他スレで見たよ・・・××(ryスレで。
似たもの同士なのか、やっぱ好きなもの被るんかねい・・・
>>531 そう言いたくなるよなぁ・・・それくらいオモロイよ。
縛られて悶える森野とか、ここ以外の何処でみれるのかと!
534 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/10(日) 22:46:21 ID:gLqbjkeR
ええと、一応「あれ」なんですけどもう完璧
目もあてられんくらい原作も文章も殺してしまった
ような代物になってしまいました。ごめんなさい。
題名は八番部屋です。
手は尽きて状況は異なりすぎた。
「おーい、食事の時間だよモシモシ」
檻越し、少女の声。皆、少女に殺された。少女は鋭利を振るう。
逃げ切った一人ずつを殺し、僕を生かした。
理由は、「智慧として」の弟だからだそうだ。
今、七番目は「愚者として」の部屋と規定されている。
繰り上がった一番目の部屋は僕の部屋。「八番部屋」。
七番部屋の「あの男」は少女に犯されながら殺されたようだった。
少女は僕を食べる。そして決して殺さない。
それは確信ではなく彼女の断言だった。
「返事ぐらいしなさいって。まーしかたないか。お疲れ気味、ってね」
ちゃんと食べて精力つけるのよ、
少女は僕の部屋前で喋りつづける。お膳を置く音。
酷く、美味しそうな匂いがした。不意に涙が込み上げる。
僕は一体何なのだろう。
535 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 23:24:52 ID:aLBoYMCR
seven roomsなんだろうけどさっぱり意味分からん
536 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:35:19 ID:k7dPk+6q
GOTH ::::1::::
僕と森野の間で、一般的な感情は欠片も存在していない。
寧ろ在るのは、同じ人種だという希薄な意識と、それについて語らうという義務感だけだった。
それでも僕は森野が思っている以上に、森野の存在に義務を感じているのだろう。
例えば、森野の手首を切るなら、僕で
森野を殺すのも僕だ。
彼女と僕は同じ人種でありながら、常に逆の立場にいる。
これは彼女自身が言った言葉だが、彼女がこの言葉の意味をどこまで理解し、知っているのかは分からない。
或いは全て理解した上で、僕の冷淡な執着と義務感を目視しているのかもしれない。
「そこのジュースはどれも不味くは無いと思うよ」
僕は自動販売機からジュースの缶を取り出している森野を横目で見下ろした。
基本的に人の好みにとやかく言う趣味は無かったが、自販機にしゃがむ森野が取り出してくる
ジュースが頑なに蜜柑ジュースだったので、そろそろ手が黄色くならないかと心配だった。
森野は僕が話しかけたことで一瞬動きを止めたものの
自分の手に取ったジュースと自販機に並んでいるジュースの見本を交互に睨みつけただけて
僕の言葉は綺麗に無視した。
さして珍しい事でも無いので、僕もそれ以上何も言わず無言で差し出されたジュースの蓋を強く引いた。
プルトップに指が食い込む感じが好きじゃないと、森野は自分で自分のジュースを開け放つ事は無かった。
いつからか僕は森野のジュースを開ける役回りになっていたが、もしも森野の手首を切り落としたら
やはりジュースの蓋を開けなければならないので、あとにも先にも同じなのだろう。
既に歩き出して居た森野にジュースを手渡す時、僕は悟られない程度に森野の手を見つめた。
日が落ち始めて赤くなった周りの色から、ボンヤリと浮き立った白が目立つ。
誰にも触れられず、手首には自傷の痕だけが残されている。それは視覚的に、存在感さえも美しく
いつでも僕の内にある「義務」を強くさせた。
自傷の傷跡に血に飢えたナイフを突きたて、貫くのはどんな感触なのだろうか。
そして、森野を殺してみるのは、どんな光景なのだろう。
森野は元々整った容姿をして居たが、白と黒と赤でしかなくなった森野も、今以上に僕を惹きつけてくれるに違いない。
ゾクリと粟立つものを感じ、背筋が凍りつくように冷えたのが分かった。
森野を殺したい
僕は収拾のつかなくなった思いに少し動揺したが、最終的には
森野がジュースを自ら開けて、プルトップの先端で指先を挟み、苦痛に眉をしかめて怒り狂う様を想像することで
何とか気持ちを落ち着けた。
「手が黄色くならないかな」
僕がそう聞くと、森野は別に困らないと答え、着色料の塊を豪快に流し込んでいた。
衝動が僕を困らせているわけでは無い。
寧ろ衝動の中で森野を傷つけるのは楽しかったが、実際に殺すとなると話は別だ。
森野を殺し、犯罪者として生活を規制されるのはあまり良いとは言えなかった。
見知らぬ人間なら別だが、僕と森野は他人から見れば「付き合っている」らしいので
殊更人間関係の狭い森野が死ねば僕が真っ先に疑われる。
それどころか、いつか来るだろうジュースのプルトップで指先をはさみ、苦痛に眉をしかめて怒り狂う森野が見られる日を期待できなくなるのは、
それはそれで辛いことなのだ。
537 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:37:21 ID:k7dPk+6q
GOTH ::::2::::
強くなっていく衝動を抑えるために行動したのはそれから間も無くの事だった。
「途中で嫌になるわ、お互い。」
森野は僕の提案に複雑な表情を作った。森野の表情について大まかな違いは分かるようになったが
些細な違いは僕にはまだ分からない。
「そうかもしれない。」
僕は適当に答えながら、教室の扉という扉の鍵をチェックして回った。
しかし、頭の中では最終的な時間の割り当てと、もしも見付かった時にどんな表情でどう言い訳するかを何通りか考える事で忙しかった。
「それに、やり方が分からないじゃない。あなたは分かったの?凹凸が適当に被さっただけの絵で」
森野は文句を言い始めると、しばしば止まらないことがある。
適当に被さっただけの絵とは一体なんの事だろう。
僕が「何の?」と聞くと、彼女は以前保健の授業で説明を受けた時の事を語った。
何故そこで保健の授業を持ち出すのかと言えば、恐らくその知識が保健の授業でしか得られなかったからだろう。
そして森野は、僕がこれまで会ったことも無いような絵心の無い人間だった。
「写真が載ってしまっても問題だと思う。多分大丈夫だよ。嫌になったらやめてもかまわないし。」
僕は中学の頃何度か経験したが、今までその存在すら思い出さなかったのは、それ程印象に残らなかった行為だったからだ。
クラスメイトと無意識に会話している時に何か役立ったことがあったかもしれないが
実際の僕が欲しているものはいつも流れにさからっている。
今もその行為自体を欲しているわけでは無い。僕は森野が欲しいのだ。
女である森野を、僕は価値のある人形に近いものを見ていた。
それがもがき苦しみ、血を流す姿を想像し、渇望する。
それに近いものが何か無いかと考えたとき、僕はようやくセックスの存在を思い出した。
中学の頃目にした様は僕の理想とは違っていたが、森野は僕の欲している物を裏切ること無く満たしてくれるような気がした。
「一つ聞いておくけど、私の事が好きなの?」
森野はあまり腑に落ちない様子だったが、何か諦めた様子で机の上に腰掛けていた。
僕は何となく黒板に凹凸の文字を書きながら、少し考えて「いや、別に」と答えた。
間も無く、上靴が物凄い勢いで黒板にぶち当たって落ちたので、僕は拾って森野に渡さなければならなかった。
538 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:41:49 ID:k7dPk+6q
GOTH :::3:::
夕暮れが近いのもあったが、教室は暗幕に覆われて薄暗く、その中で僕達の制服は周りに同一化しつつあった。
森野と僕は広い教室の片隅で座り込み長い間キスをしていた。
森野の唇は思いの外温かく、一応血は通っているらしい。
口内は更に人間味のある暖かさと感触が交じり合っている。
僕は人と口をくっつける時、深追いするのがあまり好きでは無かったが、森野の口内に舌を入れる事は何かもっと別の行為のように感じられる。
森野自信もそう思っているのか、最初こそ何度も反らしては拭っていた口で今は大人しく僕を受け入れていた。
止ます事無く口付けを交わしながら、少し強張ったように僕の服を握る森野の手を取り
防音使用にいくつも穴の空いた壁に押し付けた。
白く細い森野の手は、僕が圧をかけて掴むと、その部分だけ少し赤く染まった。
指先で手首の傷跡をなぞると、むせ返るような欲が頭を満たした。
「殴ったり切ったりは興味あるかい」
僕は森野から唇を離して、思いついた事を思いついたまま言った。
森野は少し息を切らして「嫌よ。そんなの痛いじゃない」と呟いた。
自傷の痕とおおいに矛盾があったが、森野独特の言い方に僕は言い返すことを諦めた。
「あなたがサディストだったなんて知らなかったわ。」
「ふと思っただけだよ。気にしないで」
本当は殴ったり切ったりしてみたかったのを気づかれないよう
僕は軽快に嘘をついて、そのまま手首に口を寄せた。
目を閉じると、唇にふれた肌と傷跡の違いが鮮明に感じられる。
森野が手首を切ったときは、ここから真っ赤な血が流れ、白い肌を伝っていたのだ。
見たことすら無いフラッシュバックに僕は自分の想像力を褒め称えた。
傷跡を舌先でなぞると森野が声を噛み殺したように肩を震わせる。
僕はそれを知っていながら、もう片方の手で制服の間を探り、森野の胸に触れた。
森野の肩が再び振るえ、持っていた手首が抵抗するようにぐっと前に引っ張られた。
いちいち様子を聞くのも面倒だったので、少し強引に自分の体で森野を壁に押し付け、抱きかかえるように
背中に手を回した。
森野は驚いたように声をあげ、顔を盗み見ると不機嫌そうに眉をひそめていた。
「嫌ならやめてもいいけど。」
「あなたがいちいち確認するのならやめるわ。」
「僕も同じ事を思ったかもしれない。」
539 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:42:37 ID:k7dPk+6q
GOTH :::4:::
僕は森野の性格上、「やめてもいいけど」などと言われてやめることは無いだろうと分かって確認し、
予想通りのやりとりをしてから作業に戻った。
手探りで下着を外すのに数秒かかり、森野が納得行くやり方で下着を体から取り外すのに数分かかった。
下着を取り払い、地下に森野の肌に触れる。
制服を着ていてもわかることだが、森野は酷くやせている。触った感触もあばらのあたりと背骨のあたりは
まるで骨に直接触れているのとあまり変わらなかった。
しかし、そのピタリと骨に張り付いたような肌は悪くないつくりだ。
そして胸の辺りは僅かに肉付きが良くなり、手の平でおおえるほどの胸はしっとりと柔らかかった。
その下で控えめに大きくなりつつある鼓動は森野にも心臓があることをおざなりに主張している。
僕は一度手を抜き取り、正面からもう一度制服をたくしあげた。
闇が色濃く周りを埋め尽くす中、森野の体は白く発光しているかのようで、見れば見るほど不思議な肌質をしていた。
「白い」
僕は小さく呟いてひたりと胸をおおった。
どうにかあつかおうと思ってもすぐに肉が手から逃げてしまったが、手を滑らせるように撫でていると
先端にある突起が僅かながら浮きあがった。
僕はそれについて一言二言森野に話しかけたが、
森野は先ほど顔を横に逸らしたきり、固定されたかのように動かなかった。
仕方なく僕は無許可で突起に口を寄せ、手首の傷を舐めたように舌を使った。
「・・・っん」
小さな突起に舌を絡ませていくと森野は体に力を入れて、逃げるように背を九の字に曲げた。
長い黒髪が背中と壁の間で行き場を失い、森野が体を動かすと、やがて乱れて絡まっていく。
「ちょっと、足を広げてくれる」
僕は森野が逃げないように肩を壁に押さえつけて言った。
「そう。足」
森野は唇をかみ締めながら頭を振っていたが、僕は無視して足を広げてくれないかと頼んだ。
しかし、森野は顔をそらしたまま動かなかった。
やや呼吸を乱し、混乱しているようにも見える。
息をする度鎖骨が怖いくらい浮き出ていたのでこのまま呼吸困難で死んでもらっては元子も無いと、
僕は森野を助ける思いで足を広げてやった。
540 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:43:44 ID:k7dPk+6q
GOTH :::5:::
「痛い・・」
すると森野はもっと死にそうな顔で文句を言ったが
今から痛いと言っていたら、何も出来ないと説明すると森野は不愉快そうに床を睨み付けた。
よく考えたら、やる側がやられる側に「足を開け」というのは少し不躾だったかもしれない。
僕はどうでもいいことを考えながら控えめに開いた森のの足からスカートを巻くり上げ、下着の中に手を入れた。
薄い恥毛を沿うと、そこは僅かに湿っている。
割れ目を手で探って指を立てたが、濡れていると言っても森野の体に力が入っている所為かとても指を入れられるとは思えなかった。
少し考えてから森野の耳元で僕の好きなマザーグースを口ずさんでみたが、それもそんなに効果があるとは言えない。
最終的に、指をずらして行き当たった部分を控えめに摩った。
「ぁっ・・ん」
森野の体は更に強張ったが、強弱をつけてそこをさすり続けると、やがて割れ目はたっぷりとした体液でぬめりを帯びてきた。
一指し指を立ててもそれ程圧迫感は感じられない。
僕は指をゆっくり中に差し入れる。
「や、ぁ・・・ぁっ」
森野はうずくまるように背を丸めたが、僕は指が入りにくいと告げ、森野の答えを待つより先に
森野の体を床に押し倒しておいた。
足を床に立てさせると、森野は顔を真っ赤に染めて呻いた。
しかし、何か文句を言おうとした口からは僕の指の動きによる力ないあえぎ声しか出ない。
直立歩行大好きで、お辞儀すらまともにしない森野の卑猥な体制は世にも珍しかった。
「中は無感覚らしいから、切り刻んでも痛くないと思う」
僕は森野の機嫌をとるように魅力的な話をしたが、やはり今日の森野にはどれも効果が薄いようだった。
仕方なく、黙々と指を入れ、全て入ったところでゆっくりと動かしてみた。
でこぼこと生温かい肉壁は森野の一部でありながら、何か森野とはかけ離れたモノのようだ。
しかしそこは潤いを増し、森野の体は的確な反応を見せる。
痩せた太ももがピクリピクリと不定期に痙攣し、森野の吐く吐息が熱っぽく感じられた。
森野は声を我慢するのに相当な努力をしていたようだったが、時折こらえ切れなかった声が吐息と混じって聞こえた。
それは普段の森野の声からは想像できない程、高く、細い。
苦痛に耐える表情と振り乱れる髪は僕が求めていたものに少しづつ近づいていく。
541 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:44:28 ID:k7dPk+6q
GOTH :::6:::
「んっ・・んっ・・っ・・あっ・・いや・・」
乱れ始めた森野の姿に無心の欲を感じていた僕は、森野の様子にもかまわず指を動かしていた。
そこは既に音が出るほどぬめっていて内壁は太ももと繋がったように同じ様な痙攣を繰り返す。
森野は床で背をそらせ、「いや」という言葉を繰り返していた。
僕はやっと我に帰り、動かしていた指を止める。
森野は小さく声をあげてぐったりと息をついた。
「ぁ・・ぁ・・」
しかし、森野の体は熱を帯びたまま、割れ目はまだひくひくと痙攣している。
僕は自分の制服のボタンを外しながら「森野」と声をかけたが、返事は返ってこない。
上着を脱いでベルトを緩めた後、真っ白なゴム人形のような森野の体に覆いかぶさり、耳元でもう一度名前を呼んだ。
森野の顔は熟した桃のような色で口からは僅かな声が意味をなさないあえぎ声となって漏れている。
僕はその頬に長い口付けを落とし、力なく放り出された手首にもキスを落とした。
それから、森野の乾きが癒えないうちに自分のモノを取り出し
何かいう事も無く、森野の中に押し付けた。
「ぃっ・・あっ!・・あぁっ・・」
横たわっていた森野の体がびくりとはね、反射的に森野の手が僕の胸を押し返した。
僕はその小さな抵抗を程なく無視し、やや押し返される割れ目に強引に突き立てた。
「中は無感覚らしいから・・」
「切り刻んでも痛くないと思う」と続けようとしたが、森野の悲鳴ににた声にかき消されてしまった。
しかし、僕の自身は少しずつではあったが、森野の中に入りこむ。
僕の求めていたものが森野と重なりつつあった。
「やめ・・っ痛い、いた・・っぁ」
手首の傷にナイフをねじ込む瞬間を想像した。森野は同じ様に苦痛に泣いて、もがくだろう。
内側の肉がナイフの冷たさに固まり、血は噴き出し、森野が悲痛に叫ぶ。
それはもう一種の快楽だった。
予想以上に感動を覚えた僕は全てが森野の中におさまった時、森野の姿をしっかりと目に焼き付けた。
足の自由を奪われ、床に這う体と髪は、幼い頃興味のあるフリをして読んだ「人魚姫」の挿絵に似ていた。
僕は森野の中で一旦停止したまま、少し体を屈めて僕と森野の接触部分に手をやった。
するとそこは、ピタリと森野が僕を覆っていて、そこにあるべくしてあった、という感じが指から伝わってきた。
そして、森野からつたう僅かな液体は綺麗な赤に染まっている。
僕は指に付いたそれを浅い呼吸を繰り返す森野の唇にさすりつけた。
森野の瞳に僅かな軽蔑が混じり、それもまた心地良く思う。
その唇にキスを落としてから、僕はゆっくりと動き出し、床で苦痛を訴える森野を存分に楽しみ、
そして愛おしく感じていた。
542 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:45:43 ID:k7dPk+6q
GOTH :::E:::
僕は翌日、森野にジュースを奢る約束をしたが、森野が自販機から取り出したのはいつもの蜜柑ジュースでは無く
ミルクココアだった。
「冗談だよ。君の見てないところでつけた」
「ええ。そう。でも今日はココアが飲みたいの」
森野はそう言い放つとジュースを僕に渡さず、自分で蓋を開けようとした。
しかし、細い森野の指はプルトップの力に押し返され、パキッとプルトップが戻る音と共に
蓋と缶の間に挟まっていた。
「ぁ痛っ!」
森野は嫌いな感触と挟まれた痛みから、眉をしかめ1人怒り狂っていた。
本当のところ、僕は避妊をしていなかったが、森野の手が黄色くなる心配が減った上
期待していた森野を早々見ることが出来たので満足だった。
僕と森野の間で生命なるものが生まれるとは思えないが、
僕が子どもを得るなら、それはきっと森野の子どもであることは間違いない。
僕達の位置関係はいつだって逆、なのだから。
終
543 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 18:47:34 ID:k7dPk+6q
連投すいません。一気に書いたので誤字脱字
そして何より最後が中途半端で・・。
でも何か楽しかったです。
題名は〜僕は変態〜ですか
( ゚д゚ )←こんな顔になるぐらい感動した。GJです。
挿入≒ナイフねじ込み とは素晴らしき想像力
GJです
GJ!!面白かったです!!
GJ!!!レベルが高くて驚きました!
GJ!!!!!!!!
期待保守age
550 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/25(月) 11:35:29 ID:tVLMOMt0
ほぢゅ
書いてみたい…けどキャラ崩壊しそうで怖い…
552 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/30(土) 10:43:48 ID:ng1VuU9b
乙一本人だったり(´∀` ;)
ありえないか。スマソ
皆さん良いお年を!!
554 :
ななし:2007/01/01(月) 15:43:16 ID:PbLXoL66
あけましておめでとうございます
今年も作家さんにめぐまれるスレでありますように‥‥
おけおめー
今年も職人さんの作品が沢山読めますように。
天帝妖狐を読んで夜杏を読みたくなってしまったよ
切なすぎるよあれ夜木が救われないよ
保っ守
558 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 18:34:56 ID:cxZ7ZmvJ
あげ
ジャンプノベルと角川で展開が違うんだよな、妖狐。
ジャンプノベル版は割と救いがある。
数としてはやっぱりGOTHが多いな
エロに持っていきやすいメインキャラ二人のおかげか
誰かここのSSまとめたサイト作らないかな
>>536 遅ればせながら超GJ!!
また投下おながいしたいです!
563 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/10(水) 23:04:51 ID:hNqPueun
むしろ、角川版ってあんのか?
版権集英社で持ってるはずだろ?
ジャンプ j-BOOKS版と集英社文庫版しかないと思うんだけど…。
>>563 市販されているよ。
ライトノベルコーナーか新書コーナー(講談社ノベルスとか置いてあるあたり)に置かれているはず。
たしかにまとめサイトほしいな
567 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 02:05:54 ID:YBkRfl76
関係無いけど神山って酒鬼薔薇聖斗の様に首絞めながら勃起とかしてそうw
酒鬼薔薇って勃起してたんか
酒鬼薔薇で勃起した事ならある^^
571 :
563@SS投下街のチラ裏文:2007/01/15(月) 00:21:24 ID:SiBgDnjV
>>565 thx。今、読み終えた。キョウコがアンコになってんだね。
面白かったけど、無駄に設定ひっかき回し過ぎな気がした。
文体はやっぱ乙一版のが好きだな。
左下の絵をパラパラ漫画だと想い、パラパラやったのは俺だけでいい。
俺杏子のほうしか知らないんだ。どんな結末になってる?
てのは、ネタバレになるな、スマン
一応言っとくがどっちも杏子だよ。
読み方が、アンコかキョウコってだけ。
さ
576 :
名無しさん@ピンキー:2007/01/26(金) 23:39:47 ID:8MOkDFoV
職人さん待ちage
失踪HOLIDAYのドラマは来月10日からか…。
577 :
.:2007/01/31(水) 12:58:31 ID:Ld2kxgzx
捕手
486氏待ち。あの2人のじれったさがよく出ててイイ!
確かにゴスも良いけど、ノーマルなあの二人もかなりそそるよな
じゃあ俺はF先生のポケットから二人の百合SSを希望
もちろんのび太タチで
暗待ちの二人!
暗待ちの2人はノーマルかと思いきや違う。盲目って要素が入ってる!!
たしかに!片方が見えないってなかなかエロいシチュじゃないか
視覚が遮られるということは相手の手がどこにあるのか、どこが触られるのかわからないっていうシチュじゃない?
じれったさ+片方盲目っていう組み合わせは卑怯じゃないかと俺は思う!!w
純粋な二人なのに、常に目隠しプレイ状態(*´Д`*)ハァハァ
勝手に申し訳なく思ったアキヒロが電気消したりとか
デフォで言葉責めだったりとかでいいよなw
後なかなか襲ってくれないのに自信をなくしたけれど
どうやって誘えばいいのか分からないからやたら精のつくもの用意するミチルとか
個人的にミチルは子供っぽい体つきしてるイメージがあるんだけど皆はどうなんだろ
>>586 そんな2人最高じゃないか
ミチルは子供っぽいというより色白で華奢な印象。
>>586 それで作り方が分からなかった場合レシピ音読羞恥プレイとかもアリだよなあ
相手がカズエでもアキヒロでも美味しそうだ
二人は純粋でいたいんだけど、知らず知らずアブノーマルに・・・w
ミチルは白くて華奢というより幼児体型ってかんじかな?
夜になるとミチルがSになったりするのも面白いと思うんだが?
>>589 「あの……足に当たってるの、何ですか?」
とか?
失明するまで男と付き合った事なさそうだし
いちいち説明したり触らせたりするのが図らずもSになりそうだw
「この温かいの…なんですか?」
「舐めてくわえてみて」
「えっ…これってもしかして…」
みたいな流れが個人的に見てみたい
486氏を待ちながら自分も妄想してるのだが、
皆さんは、あの二人は処女とDTだと思う?
処女とDTでしょう!!!!
実は非処女
相手は?
パパ?
友達(名前忘れた)との百合で喪失
アキヒロは友達すらつくれないのに経験済みってことはないんじゃない?
素人童貞
592ですが、繊細な質問に様々なレスありがとうございます
自分もアキヒロは道程だと思うのだが、
あまり自信がなくて…そう、素人道程の可能性もあるよね
参考にしながら更なる妄想に励みます
>>590-591 なんだかいい感じだ〜