1 :
名無しさん@ピンキー:
2 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/28(金) 00:47:10 ID:TDbyFQAn
*スレ的お約束その1*
「実在する人物の姿態を必要としない作品のエロ妄想・パロディ専門板です。」
板のルールに従って中の人萌えは禁止。
あくまで対象は役柄であって、役者そのものにハァハァするのはダメ
*スレ的お約束その2*
原作の話は程々に。
原作にしか登場しないキャラやエピソードを組み込んだSSもOKですが控え目に。
投下前にはその旨を注記しましょう。
*スレ的お約束その3*
グロ・スカ・女体化など、読み手を選ぶような内容の場合は投下前に注記を厳守。
NGワード指定しやすいように名前欄に書くのもお勧め。
*スレ的お約束その4*
SS投下の際には元ネタ名・カップリング等を書くのが親切。
簡単な元ネタ解説もあれば嬉しい。
3 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/28(金) 01:55:25 ID:TDbyFQAn
age
4 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/28(金) 23:05:35 ID:TDbyFQAn
あげ
5 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/29(土) 23:45:05 ID:hIy41g4b
あげ
6 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 21:15:59 ID:u82tFJz9
あげ
ほっしゅ。
8 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/05(土) 00:53:55 ID:xaAEJayy
あげとく
9 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/06(日) 00:33:46 ID:Pq764UiJ
あげとく
10 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/06(日) 02:49:20 ID:cn0XAvWF
なら、私もあげておこう。
エロム街の人いなくなっちゃったのかな
12 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/06(日) 20:40:54 ID:5c3YZKAS
あげたる
#JMTJG54gjGP
14 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 22:26:58 ID:q2H63yii
アゲ
15 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/11(金) 02:03:08 ID:xbCAJl/S
アゲ
16 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 21:21:37 ID:iggytZcB
ほしゅ
17 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 00:39:57 ID:rzS04TfK
前にあったTRICKのスレ、いつの間にかなくなっちゃったんだね…
よかったら誰か立ててもらえないだろうか
自分は立てられなかった
18 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 00:41:16 ID:rzS04TfK
【貧乳】TRICK○トリック【巨根】
こんな感じで…
19 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 07:10:33 ID:XJiyp83Z
あげ
20 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 08:03:15 ID:W5dv/lQv
ブラザービートお願い!
あいのうたの菅野美穂×玉置浩二に
よくわからないエロスを感じる今日このごろ
22 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/28(月) 01:29:43 ID:1H/tOrHW
あげ
23 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/28(月) 02:10:40 ID:0M5cDtPC
オーソドックスに国仲×玉山読みたい
24 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/28(月) 22:16:14 ID:5oEneyaQ
いろいろ探し回ったけど無い無い無い。
B☆Bの知里×達也読みたい。
25 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/01(木) 04:41:16 ID:S4MrIieg
あげる
26 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 12:07:56 ID:tbF1vmPW
陸×アイもいいかも
千里が新店長に嫌々犯されるとかもいいね
27 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 23:49:35 ID:5TdfGnX8
あげ
28 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/07(水) 23:07:07 ID:QwZV8+aU
アゲ
29 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/12(月) 00:39:19 ID:V8odvSt5
アゲ
30 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/12(月) 16:19:41 ID:BjL6xOXD
神待ち
32 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/15(木) 22:29:19 ID:oYudC7wb
アゲ
33 :
エロム街の悪夢:2005/12/18(日) 16:17:26 ID:qYT6NE8F
−Yellow Machine−
ナンシーは椅子に座って、学習机の上で腕を組みながら、来るべき時を待っていた。
引き出しには日記帳が入っているが、いやらしいページを破り捨てたあの時からほっぽらかしたままだ。今では目にするのも憚られた。
机の右奥にはアレックスが五歳の誕生日の時にくれた写真立てが置かれていて、
中に差し込まれている写真には、ナンシー、グレン、ロッド、ティナ、ベンチに腰掛けた四人が並んで写っている。
ロッドからダブルデートをしないかと誘われた。エルムからスプリングウッドまで出て、遊園地に行き、写真はその時に撮られたものだ。
ナンシーは写真立てを手に取って、恥ずかしそうに微笑んでいる自分の姿を見つめた。
グレンが少し遠慮した様子で肩を抱いて、相変わらず完璧な笑顔を讃えている。
ロッドは口元だけへらへらさせて、両手でグッドポーズをつくっている。
ティナはロッドに抱きつくようにもたれかかって、彼の胸元へ寄せた顔を左半分だけ見せて、流し目で微笑んでいる。
思えばあの時からね、とナンシーは回想した。かっちりはまったことを、それぞれが気づいたのではないだろうか。
機能として無駄がなく、感情としても親密だった。それぞれが役割を持って、とにかく上手く回っていた。
だからナンシーはちょっぴり怖くなったのだ。誰かが欠けてしまえば、たちまち他にも歪が生まれるかもしれないと感じられて。
しかし、ずっと四人が一緒でいられるなんてありえない。ハイスクールを卒業すれば、皆がそれぞれの道を歩むことになる。
グレンとは一生もののつきあいを続けるつもりだが、ロッドやティナとはどうなるか分からない。
彼らにも自分の人生があるのだから、エルムを離れることになるかもしれない。
彼らなしで、自分とグレンは今まで通りにやっていけるだろうか?
ロッドとティナは自分の中でそれほど大きな位置を占めていたのだと確認して、それゆえ気後れした笑顔になっている。
その時は一生会えなくなるわけじゃないんだから、と思いなおして、やがて忘れた。だが、今は違う。
また、行きたいな――。ナンシーは心から思った。四人でスプリングウッドの遊園地へ。
スプリングウッドはここいらでは最も大きな街で、その周辺都市をエルムやロニーが担っている。
遊園地と言ってもアトラクション自体はそう大したものはないが、雰囲気はよかった。
幻想的で、よくできたとは言えないが別世界だった。
塗料が剥げて白とメッキのまだら模様になった回転木馬や、古めかしい音楽にのせてぐらぐら揺れながら回るティーカップ、
部屋が八つしかない黄色い観覧車は、夜空から降りてくる闇とまだらになって輝き、
女郎蜘蛛が死に際に足を伸ばしているように見えて、妖しくも美しかった。
しかし笑ってしまったのはお化け屋敷ファンハウス。いちばん怖がっていたのは意外にもグレンだったからだ。
ティナは怖がるよりも、きゃあきゃあ笑っていて、ロッドはアテが外れたのか、不満そうだったけれど。
ファンハウスは遊園地のど真ん中にあった。ここの花形なのだろう。真紅の屋根に、ダーク・グレイに塗られた壁。
古い大邸宅をイメージした造りで、ゴム製の異形の怪物達が、壁から抜け出そうと、鬼気迫る形相で動きを止めていた。
切符をもぎる入り口では、白と青の縞のオーバーオールに真っ赤なペンキでペニーワイフ、と記したピエロが、
禿頭からこれまた真っ赤な毛を垂らし、菱形に開いた猫のような黄色い眼を輝かせ、
子供を頭から貪り喰うような鋭い歯を尖らせながら、背中にくくりつけた風船を揺らせて叫んでいた。
さあよってらっしゃい、見てらっしゃい、この世のものとは思えない、セントルイスの森の中、
村人連中に襲われて、焼かれて死んだ猿と人間の合いの子が、闇の中からやってくる、早く逃げないと喰われちまうぞお!
グレンの顔は入る前から青ざめていた。
「別に大したことはないけど、こういうのあんまり好きじゃないんだよな」
眼が泳いでいた。本当に気分が悪いんじゃないかと心配してしまったほどだ。
なに、お化けが怖いの?と訊けば「怖いとは言ってないけど――」怖いんだ。
ロッドは既に入り口の暗幕からティナと一緒に姿を消そうとしていたところで、尻込みしているグレンに気づくと、
幕の隙間からひょっこり頭だけだして、寝惚けた顔で、言い放った。
「んだあ、おったまげたあ。こいつぁえれえ臆病もんだべさ。ママのところへ帰った方がよか、よか」
グレンが唇をぎゅっと締めた。めったに怒らないが、怒るとたいてい無表情になる。
「分かった。行こう」
そしてグレンの悲鳴を嫌と言うほど聞くことになった。二階、三階、四階と登り、それからまた一階へ降りていく構造で、
興冷めしてしまう子供だましの機械じかけは時折見られたものの、たいていは雇われ役者がきちんとメイクして楽しませてくれた。
なかでも宣伝に使われた猿と人間の間に産まれた化け物、悪趣味なピエロが言うには彼に名前はない。
名前をつけてもらえなかったのだ。彼は彼と呼ばれる。またそれとも呼ばれる――その「彼」は作り物とは思えず、
鷹をくくっていた自分ですら、はっと息を呑んで、すぐさまその場から離れたくなったほどだ。
暗闇の中、ぎろりと剥いた眼だけが光って浮いているように見えた。やがて全身を現せば、神に祈りたくなる。
そこには虐げられた怨念がこもり、まさに怪物、まさに狂人、奇形の悲哀を唸り声で訴えていた。
かつて遊園地では本物のフリークスを見世物に使っていた。せむし、小人、シャム双生児。
人権が意をなさぬ前近代的な時代ではない、まだ半世紀も経っていない、遠くない過去の話。
彼らは解放と同時に職を奪われたあと、どうやって生活していったのだろう、逃げる間に突拍子もなくそんなことを考えてしまった。
今遭った化け物は彼らの片割れなのかもしれない――つまり、そんな妄想すら頭に浮かんでくるほどよくできていたのだ。
しかしグレンはそれどころではなかったようだ。悲鳴の合間にいる……いない……いる?……いないとぶつぶつ言っていた。
他人の眼を気にする余裕なんか既になかったのだろう。自分がくすくす笑っていても、まるで気づいていなかった。
魑魅魍魎(ちみもうりょう)の接待が終わりを告げれば、待ってましたとばかりに、ティナとロッドの二人がグレンを冷やかした。
いつもはブレーキ役のティナがタッグを組むと、もう止まらない。グレンは理不尽なからかいを受けることになった。
「弁解の余地はないかもしれないけど、誰にだって苦手なもんくらい、あるんだ」
「にしてもねえ」ティナは口に手を当てて笑いをこらえていた。
「ありゃねえぜ、うわ、ああ、ふわああああああ!」ロッドが続けた。
本当にそんな感じだった。どうして苦手なのか訊いてみたのだが、いまいち言っていることがよく分からない。
「分かんないよ。血は平気なんだけどね。フットボールで慣れっこだから。
右足の骨が飛び出したやつも見たことある。平気だった。ぶつかって当たり方が悪けりゃ血は出るし骨は折れる。
当たり前だから。圧力や重力の問題、うん。ホラー映画だってなんてことない。スクリーンがある。隔てられてる。
でもこういうのは――同じかもしれないけど、どうしてだか怖い。心臓がばくばくして、理由が分からない。
分かったらなんとかできるんだけど――」
「おら、分かんねえ。なんも見えねえ分かんねえだあ。あれ、ここどこだっけ?もしもし、もしもし?20世紀1983年スプリングウッド!」
「ああ、もう、ちくしょう、そうやって馬鹿にしてりゃいいさ。とにかく怖いってのは――」
「恐怖についてこれから語っていただきますのはale(イギリス産ビール)大学卒、
現在は法律事務所で二足のわらじを履く新進気鋭のホラー作家、代表作『さやいんげんの逆襲』
さあお待ちかね、グレン・ランツ氏の登場です!」
ぷーぷー、露店で買ったおもちゃで効果音をつける芸の細かさに舌を巻いてしまった。
もっと別のところでそのエネルギーを使えばいいのに。
「やめなって」ティナは止めたが、顔は笑ったままだ。グレンは完全にやさぐれてしまった。
やさぐれたグレンをそうは見れないので、実のところ自分も楽しんでいたのだった。
グレンがおもむろに口を開いた。
「ジュース買ってくる。飲みたい人は哀れな臆病者に2ドルのご寄付を。お釣りは返さないからそのつもりで」
「じゃあ俺コーラ、ビッグサイズ」
「私メロンソーダのM」
グレンは猫が猫じゃらしを掴むようにロッドとティナから4ドルを奪い取った。なんだか、尻馬に乗るのは悪い気がした。
「えっと……いいわ。私も行く」
「いいよ。気を使ってくれなくても。一人でドリンクも買いに行けないって、こいつが言いふらすんだから」
ロッドが肩をすくめて、ジェームズ・ベルーシのようなすっとぼけた顔で見てきた。笑いを堪えて、財布から2ドルを取り出した。
「じゃあ、アイスティー、Mサイズ」
「君の分はご寄付を回す。気持ちのお礼ですから」
「ちょっと、それ不公平よ!不公平!」
ティナがけらけら笑って主張したが、グレンは無視した。ロッドはまだジェームズ・ベルーシから戻っていない。
「あいつとつきあうと特典がいっぱいついてくるんだな」
「そうみたいね」
「ナンシー、スーパー行ったらトイレットペーパーついてきたことないか?」
「ない」
「あんたはいらない特典が多いけどね」
さりげなくきついことを言ったティナを尻目に、とぼとぼ歩くグレンの後姿だけ見ていた。
見ながら、また笑ってしまった。なによ、もっとしっかりしてよね、普段はあんなに凄いんだから。
ロッドが大声で叫んだ。
「そして、グレン・ランツは旅立って行ったあ!」
その言葉でグレンがさっと振り返った。何を言い返すのかと思えば、顔いっぱいに笑みを浮かべて
「分かったぞ!分からないってのが肝心なんだ!」
みんなぽかんとするしかなかったのだ。
しかし――ナンシーはグレンの真理を見つけた科学者のような表情を思い出しながら、机の隅に写真立てを戻した。
分からない。
鉤爪の女についても名前だけで、あとは何も分からない。無味乾燥な記号が一つ増えただけだ。
何に突き動かされているのか。核となる部分が判明しない。
気が狂った性的倒錯者。夜毎他人の夢に入り込んでサバトを繰り広げる気狂い女。――ビッチ。
ふいに、何の役にも立たないかと思われる疑問が浮かび上がってきた。
性欲とはいったいなんだろう?
自分はなぜ、ふいにむらむらして、マスターベーションしたくなってしまうのだろう。生理現象?
では、鉤爪の女の変態的な暴虐も、話は簡単、私と同じように、むらむらして、
そうしたくてたまらなくなる、ただの生理的欲求なのかしら?
断じてそうは思えなかった。
エロスに関しては様々な人が様々な考え方を持っている。
またその持論を通して子孫を残す行為であるセックスに様々な付加価値をつけようとする。
愛のため、快楽主義を貫くため、支配欲を満たすため、生の確認、
リインカネーション的見地に立てば死の追体験、ただ興奮を転化させたもの、まことしやかに悪とされる経済的理由、
竪穴住居で火を起こしていた頃、風呂に入る習慣すらなかった女は食料と身体を等価交換した。
セックスはセックスであり、それだけだ、余計なものは省くべきだ、そういうこともよく言われている。
ようするに同じ行為をしても、人はそれぞれそこに違った感情を産み落とさざるをえないのだ。
肝心なのは自分がどういった価値を見出すかだろう。
今に至って、ナンシーははっきりと言える。私は、愛のためだと。
では愛とはなんだろう?愛するって具体的にどうすることを言うの?
胸のどきどき?きゅっと締めつけられるようになるあの気持ち?相手を大切に考え、またそのように行動すること?
分からない。
でも自分はグレンを愛しているって、他の誰がそれを否定しようとも、言える。信じる。こうなれば一種の狂信者だろうか?
考えるのをやめた。そういう風に考え続けるのは悪い癖だ。それで何も変わりはしないのだから。
現実にはもう四人が揃うことはない。あの素晴らしい日に戻ることはできないけれど――ティナを夢の世界から解き放つことができたら、
ティナは、さっき眺めていたこの写真と同じように、自分の中で、何の心残りもなく、ずっと生き続けることができるかもしれない。
もし本当に神様がいらっしゃって、主の国があるとするならば、そこで笑えるのかもしれない。ならば、命を賭ける価値はある。
逢えてよかったと言ってくれた親友(とも)のために。
ナンシーは机から離れて、腕時計をはめたままベッドにもぐりこんだ。念のため、目覚まし時計の針も一時にセットしてある。
ベッドに入ったのは十一時頃だったが、それでも、十一時半には眼を閉じていた。
特定の時刻に合わせて眠れと言われて人はなかなかできないものだ。ましてそれが、死と隣り合わせの眠りであるならば。
いざその時が迫ってくるとやはり恐ろしい。今までのこと全て夢であったならと思う。逃げ出したくなる。
グレンの笑顔を思い出す。何度もできる、と自分に言い聞かせる。
そして昼間訪れた牢獄を思い浮かべる。その中で一人で戦っていた男に会いたいと願う。
頭の中をロッドで満たせば――夢は自らの記憶と密接につながりあっている――きっと会える。
十一時五十分にはナンシーはもう眠りに落ちていた。
待人が既に殺されているとも知らずに。
十時三分。独房のベッドに寝かされたロッドはこれまで自分が一夜の関係を持った女達に抱かれている。
夢でも現実でもない、その間に存在するもう一つの世界。
彼女らはロッドから少しずつ奪っていく。心を電動の鉛筆削りでやるように削り取っていく。
奪われた分だけロッドは細く、鋭くなる。彼女らはロッドの削り粕を食す。なかでもジャクリーンはたらふく食っているだろう。
ロッドが童貞を捨てたのは十四歳の冬。相手は二十八歳で、彼女が本当の名前を言ったとするなら、ジストだった。
彼女の印象は黒に集約される。艶のある黒髪を首の後ろから胸の前まで垂らしていた。
太い黒眉、魔女のような鉤っぱな、ブラウンの口紅。
コンクリートの色のようなトレンチ・コートを着て、濃紺のセーターがほんのり盛り上がっている。
眼は細いが黒目がちで、北欧人のような真っ白い肌が余計に黒を印象づけている。
ホモが好んでつけるようなラベンダーのきつい香水。
友人の知り合いが働いているバーで、ロッドは時間を潰していた。なんてことない、汚らしい、犬の小便を飲ませるバーだ。
換気扇が小さすぎるのか煙草の煙でいつももうもうとしていて、霧がかかったようになっている。
そこでピンボールや玉突きに興じ、バカな話でくだを巻き、ネタが尽きればお開きだ。
しかし、その日は集まりが悪かった。結局来たのはロッドだけで、独りで飲むのも阿呆らしく、
ライトが壊れてちかちか点灯と消灯を繰り返すポンコツピンボールに勤しむものの飽きてきて、
早々に帰ろうと思ったところに、ジストがやって来たのだ。
ジストはロッドをちらりと見て、微笑んだ。この作られた微笑みが今になれば、最も正常に美しかった。
微笑み返すと、ヒールを小さく鳴らせて、彼女はゆっくり近づいてきた。
優雅だった。時間さえゆっくり流れているように感じられた。
「ジストよ。あなたは?」ロッドはそこで身構えてしまった。あんまり簡潔で味気ない挨拶。
歯牙にもかけぬとはこのことかい。「俺は、ロッド。ロッド・レーン」
わざとさりげなく答えた。さあ、ウブなガキなんて思わせないぞ。なんせ、見たところ相手は相当年上の女だ。
お眼鏡に適うとすれば――それにしてもジストと来た。
ロッドはゴールデン・レトリバー特有の茶色と白が混ざった柔らかい体毛を想像しながら言ってみた。
「つづりは?アメジストのジスト。ジステンバーのジスト」
言った後で、しまった、と思った。何をとっても三級の切り出しだ。
自称ジストは表情を変えなかった。聞こえているのか疑わしいくらい反応がなかった。
しばらくして、何も言わずに、ロッドの手の平を握り――冬とは言え、あまりに手が冷たいのでロッドは唾を飲み込んだ――
もう一方のつるつるしたマニュキュアの先で、生命線の上からD、I、S、Tとなぞった。
犬の病気。
こそばゆいのを我慢して「わん」ロッドが吠えるとジストは少し笑った。しかし、和むような笑いではなかった。
何時間もかけて造ったマッチ棒の城をぶち折って握りつぶしたいと感じた時のような笑いだった。
ロッドはたじろいだが、動揺をなるべく知らせまいと表情は変えないように努めた。
そして何か気の効いたことが言えないかと、記憶を探っていく内に、小さい頃よく遊んでいた、姉の友達、
ジャクリーンの笑顔がちらりよぎった。そう、ジャクリーンと喋っていたように、
もっと聞かせてと言われたように、巧い切り返しができればいいのだが。
一瞬考えた隙に、彼女の顔は少し伸ばせばキスができるところまで迫っていた。
「いくつに見える?」
ジストの眼は大きく開かれていた。それでも黒かった。顔の割りに低く濁った声だった。
「二十八」
ロッドは間髪入れず確信めいた顔で答えた。
何も理由があったわけじゃなく、どういうわけか、頭の中にその数字がぱっと湧いてきたのだ。
十九でも二十四でも二十九でも三十三でもなくて、二十八だった。啓示とするならそれは罰に等しかった。
ジストは驚いて、ロッドを今夜の贄にすることに決めた。
それからジストの奢りでロッドはいくらか酒を飲んだ。ビールくらいしか飲んだことがないものだが、彼女が世話してくれた。
緊張と高揚が犬の小便をカクテルまで引き上げた。
いったん酔いが回ると、持ち前のノーテンキな、いささか下品なジョークが口をついて出た。
男共に聞かせるのならなかなかのものだったが、彼女は心から笑わなかった。
ただじっとロッドの眼を覗いて、探し物を見つけたようにほくそ笑み、優しい相槌を打った。
上品な切り替えし――分かったような落ち着き。女を意識させる仕草。
ロッドにとってそういう態度は望ましいものではなく、したがって何とか腹から笑わせてやろうと、本来の目的を忘れて
色々とやってみたのだが、実のところ、ジストはそういう少年の裏の顔を見たがっていた。何もかも曝けださせたかった。
彼女は少年がそれを鬱屈した現実から逃れるためにするのだと察知していた。
それは今、ふらりと知らない酒場に入って、少年と時間を共にしている彼女にとっても同じことだった。
だから耳を傾けてあげる。今のところは。
周囲の人間にこっぴどくやられた二人はしばらく楽しい時を過ごした。負け犬が傷を好きなだけ舐めあっていた。
ロッドがトイレに行くために席を立ち、用を済ませたあと、扉の外にはジストが立っていた。
虚ろな眼、今にも吸いついてきそうなブラウンの唇。欲しがっている。俺の二倍の長さを生きている女が。
ロッドの全身を単純な欲望が襲った。吸いたい、きっと違う。遊びでジャクリーンとキスした時とは。
どんな味がするだろう。今すぐ抱きしめて、舌と舌を絡めあいたい。
まだ店の中はやいのやいのとうるさかった。大勢の消防隊員が仲間の退院を祝って、カウンターに列を作って飲み比べをしていた。
血が欲望に身を任せろと全身をかけ巡っている。どんどん太鼓を打っている。ジョッキをテーブルに打ちつける音より大きく感じられた。
さあ飲め!おっ!行け!もう少し、ああっ――
女子トイレへ引っ張り込まれた。手を引かれている時は、ろくでもないことを考えていた。
どこまで行けるのかな?口づけ?胸まで?終わりの終わりまで?バカ、やめろ、そんな風に考えるな。
しかしどういうわけだろうな?この年増女は俺のどこが気に入ったんだ?これからコトに至ろうってわけなんだろうが――バタン。
洋式便所のドアを閉める音が大きかった。怒ったような閉め方だった。そっと鍵をかけ終わると、ジストは本性を表した。
「座りなさい」
途端に命令口調になった。何を考えているか分からないところはあったが、物腰は柔らかかった。
今ではそれが消えうせていた。捕食者としての威厳が満ち満ちていた。
ロッドは反射的に座ってしまった。一瞬、殺されるのではないか?と不安をよぎらせながら。
「脱いで。口でしてあげる」
「……ここで?」
「もちろんあなたにも選ぶ権利はある。犬や猫じゃないんだから」
犬や猫、と言った時のジストの顔は幸福に満ちていた。ロッドはぞっとした。犬や猫とは――。
「これから何するかは分かるでしょ。ねえ、まさか、ね。
でも、ひっぱりこんで、ムードもなしに、フェアじゃない、そうよね?あなたが選べばいいの」
待てよ、と言おうとしたところで、ジストの眼が輝きを帯びた。
「自分で脱ぐか、私に脱がされるか」
完全に狂っていた。唇の端から涎が垂れている。眼はぎらついているが、同時に黒曜石のように無機質だ。
立ち上がろうとしたが、ヒールのかかとがブーツのつま先を踏んづけていた。
痛みが走って怒りが湧く前に、彼女は既に股間の中心へ顔と両手を寄せていた。
茶や黒の粕がこびりついた床のタイル。小さく区切られた正方形が、ロッドには歪んで見えた。
ジストはそんな汚らしい床にやすやすと両膝をつけて、
アンモニアと糞便と使用済生理用品と消毒液がごちゃまぜになった匂いをいっぱいに吸い込んで、息を吐いた。
白いもやがぱっとあがった。熱い吐息をジーンズの上から振りかけられて、その熱がトランクスを通して、ペニスまで少し伝わった。
これが女の息なのか。ロッドは驚いていた。ハードに感じている、俺じゃない。ペニスに会いたくてたまらなかったと叫んでいる。
真夏の川が干上がっちまうような暑い日に、チャットがよたよた歩きで水を欲しがって寄ってくる時の息とおんなじ――。
ジストが睾丸から陰茎にかけて、下から上へ、撫ぜ上げる。ジーンズ越しに指で愛撫を繰り返す。
十分に大きくなったのを確かめてから、ボタンを外して、ジッパーを降ろした。金具が下まで滑る少しの間に自問自答がすり抜けていく。
おい、セックスってのはこんな風にやるのか?違うだろう?おい、どうしてこんなことになってる?
いいのか?お前はそれで、いいのかよ。いいんだろう?望んでいたことじゃないか、童貞を捨てたいって。
だが、こんな風に、男としての面子などまるでない、好きにされて、いいのか?
くわえた。
さっと頭に入ってくる。人間の口の構造。断面図。思い浮かぶ、唇、歯、舌、喉。
ピンク色の亀頭が口の上のぬるぬるした部分に擦れていた。そうしている間にも舌は裏に沿った筋を上下している。
歯が時々触れるのも計算の内だったろうか。尖った前歯がまだ浅いカリに当たり、軽く噛まれるたび、ロッドは身体を震わせた。
ブチ切られたっておかしくない――。ブラウンの唇が血の色に染まるのが、はっきり浮かんだ。
しかし、それで萎えさせるような未熟な口技ではない。恐怖と快楽を同時に味わわせる術を彼女は知っていた。
恐怖と快楽は似ている。お互いが混ざり合い、掛け合わされるように効果を引き上げる。より高みへと導いてゆく。
気がつけば高くて、細い、女の子のような声を出していた。声変わりして間もない、知られたくなかった幼さを示している。
ジストは笑った。可愛らしいペニスの爆発を夢見ながら。必死に耐えている少年の顔を見ながら。
尿道を舌先でちろちろと刺激に入った。やばい、とロッドが感じた時には右手の人差し指がアナルに触れている。
滑り込むと、よりペニスが硬くなった。ケツの穴だぞ――ケツの穴なのに――そんな!
円をかくように中でゆっくり女の指が回っている。
出る!なんてこった!出ちまう!
ついにロッドは後悔した。今になって何をされているのかやっと分かったのだ。屈辱的だった。
マスをかいているところだって見られたことはないのに。
あんな臭い匂いのするものを、ただ強制的に、牛の乳を搾るようなやり方で、
姉貴より年上の、大人の女の口の中で、ぴゅっぴゅっぶちまけるなんて。
押しのけようと肩に手を伸ばした瞬間、ジストが強く亀頭を吸引した。
焼かれるような刺激が下腹部に走り、何もかも出し尽くしていた。声も。精液も。十四歳のプライドも。
美味しそうに飲み込んだあとで、ジストはもう一度問うた。
「選びなさい。もう一度口でイクか。それともアソコでイクか」
ロッドは後者を選んだ。半ば引きずりこまれるような朦朧とした意識の中で、息もたえだえに漏らした。
「……あそこ」
「あそこってどこ」
母親が悪さした息子を問い詰めるような響きだった。何も言えなかった。まだ視界が霞んでいる。
「おまんこでしょ!」
ジストが睾丸をひねった。射精の微かな余韻と、下っ腹の刺すような痛みが合わさって、ロッドはまた可愛い声で鳴いた。
「おまんこだよ!おまんこ、入れさせてくれよ!」
ジストのヴァギナは信じがたい悪臭がした。ヒールを脱いで、ストッキングとパンツを滑り降ろした時からもう臭った。
眼が痛くなるほどの汚臭。気づいていないはずがない。ラベンダーが枯れている。
腐った水面(みなも)に腹を晒して浮いているザリガニのような臭い。
ジストは指ですくった愛液を嬉しがって彼の鼻に押しつけた。露骨に嫌な顔をするのを見て、にやにや笑っていた。
「泣け」
言われずとも涙が溢れた。情けなかった。初めて味わった女のジュースのあまりの臭さにげえ、となってぽろぽろ泣いた。
指が口に突っ込まれる。しおっからい、ねばっこいもの。
ゲロを吐きそうになってなんとかこらえたが、汚臭が舌の上に広がって、鼻へと抜けていく。
「ほら、もっと、泣け!」
その通りにした。ヴァギナとペニスがこすれた。触れてる、とロッドは嗚咽を漏らしながら思った。
柔らかい、ねちょねちょしたものにペニスが触れている。穴、小さな穴がある。ひっかかっている。
穴に先っちょが。くせえ穴に入っていく。俺のモノ、ああ――。
しっかり奥までつながりあった時のジストの顔を、今でもロッドはたまに思い出す。
感情が一定でなかった。憎しみと歓びが皮膚の上で希釈したり濃縮したりしていた。その顔で射精した。
彼女はまさに犬の病気だった。脳をやられた牝犬だった。精巣に残った最後の一滴まで搾りとられ、
トイレのドアをくぐる頃には全てを奪われた気になっていた。女を抱いた、なんて仲間内の話の種にもなりゃしない。
犯されたのだ。帰り際、薄汚いシャツを着た腹がぷっくり出た男がにやにや笑って見てきた。父に似ていたが、ぶちのめす元気もなかった。
ペニスや陰毛に染みついたジストの愛液の匂いは三日ほど取れなかった。用を足すたびに思い出して、惨めな気持ちになる。
いったいなんだったんだあれは?あれが女か?犬が電柱に小便するように、男に印をつけて回るのが、女か?
しかし、臭いは同時にあの時の感触を如実に思い出させた。とろけそうになったペニス。自分の手では絶対に味わえない快感。
気がつけばジストの肉壷(そうとしか形容できないものだった)のうねりを反芻しマスをかいていた。終わったあとでさらに惨めになった。
いそいそとティッシュをくずかごに放り投げたところでふっと頭に浮かんだのは、体験済らしいパーカー先生のありがたいお言葉。
なあみんな、性病持ちはやめとけよ、なし、ゼロだ。やらせてくれたってノーだ。
悪いことは言わないから。もしどうしてもやるんならゴムは忘れずに。でないとちんぽこビヨンド状態だ、腐っちまう。
なんだって?どうやって見分けるって?バカだなお前、そんなの簡単さ、なに、お前医者かって言ったのか。
黙って聞けよ、そうだな、プッシーがびっくりするくらい臭え女はまず間違いなく言って、ビョーキ持ちだな。
たまにいるだろう、俺鼻が効くんだ、近寄っただけで、ぷんぷん臭ってきて、おええええ!ってなる奴がさ。
まんこの臭い振りまいてる奴がよ。おっきな声じゃ言えねえけど、ジョリーがそうだ。奴は臭い。ビョーキだな。間違いない。
おい、誰だ、お前が犬ならお袋は牝犬だってか?うるせえよ、ボケが。
まあいいや。お前らも十人もやりゃあ分かるだろうさ。十人に一人くらいはいるんだ、
天国への階段を登って扉を見つければ地獄の入り口って奴が。ジミー・ペイジもゲロ吐くぜ。
Whole Lotta Gonorrhea!(胸いっぱいの淋病を!)なに、お前何人とやったって?固いこと言うなよ。
それにしてもな、淋病ってのはちんぽが腐って落っこっちまうんだ。ははっ、粘土みたいにぽろん――
ちくしょう、人生最悪の日だ。
けれど、一月も経てば、それで終わり。幸い泌尿器科の女医(人生最悪の日、Part2)の話によれば、
やっかいなものを染された危険はないようだし、淋病でペニスを切らなければならなくなることもめったにないらしかった。
そもそも運が悪かったのだ、公園にグロテスクな食虫植物が生えているようなもので、そうそうあることではなく、
つまり考えようによっては貴重な体験だった、とロッドは思おうとしたのだが、
スクラップ工場で廃車寸前となっていたクリスティを友人から譲り受けてすぐに、その考えは間違いだと分かった。
行くところに行けばビッチはあふれかえっていた。ビッチ達の顔の全ては思い出せそうにない。
思い出せるのは匂い、アソコの具合、胸の弾力、腰を持ち上げた時の重み。彼女らはヤリたがっていた。犯されたがっていた。
しかし、誰とでもというわけではない。ロッドは彼女らの警戒心を解く方法を姉のシェリルや姉の友人達から学んだ。
まず身近にいる女から始めよ、我を振り返れ。そうは言ってもそこに至るまでにはそれなりの踏み込み台を要した。
ジャクリーンだ。父と母のことがあるので、シェリルは家に友人をあまり呼ばなかったが、
友人の一人、ジャクリーンがロッドをどういうわけか気に入っていて、彼女のリクエストで一緒に遊ぶこともあった。
もっともほんの幼い頃の話で、成長してからはたまに見かけるくらいの仲になってしまったのだが、二人目の相手はジャクリーンだった。
あのバーにはあれからずっと行かなかった。仲間に知られれば何を言われるか分かったものではないし、
何よりジストが徘徊しているかもしれない。ぞっとした。徘徊、ジスト、病原菌。かと言って家にいても面白いことなど何もない。
ただなんとなしに商店街をぶらぶらしたり、普段は見向きもしない真面目くさった映画を眺めたりした。
人生最悪の日から一月ほど経った日、ジャクリーンと映画館で出会った。
Movies Rainbow、縦割り住宅の一角かと思われる狭い小劇場、
暇を潰したくてたまらない奴らが来るようなスペイン映画や低予算の二本立てを5ドルで流していた。
彼女はそこで時給3ドル70セントと引き換えに、立ちっぱなしでポップコーンやフランクフルトやドリンクなど売っていた。
腹が減ったと席を立ち、奥の売店へ行けば、ジャクリーンが驚いて、七年前の名残を覗かせる仕草で、話しかけてきたのだ。
目で挨拶することはあったが、久しぶりに近くで見ると一層綺麗だった。
ブラウンのカーリー・ショートはロングヘアに変わっている。前髪とこめかみの辺りはすっと伸びて、
後ろはカールになって控えめにウェーブし、天井のブルーライトに照らされて、艶を際立たせている。
細い首に小さな丸い顔が乗っかっている。利発そうなグリーンの猫目、日焼けの赤みが消えた薄白いほっぺた。
厚くなった唇には、ピンクのベイビー・リップが塗られている。飄々としたイメージを与えても、一端笑顔がほころぶとがらりと変わる。
スタッフ用の黄色のシャツは胸の部分だけ極端に盛り上がって、中央にプリントされた虹のマークが大きく歪んでMの字を描いていた。
細身で小柄ゆえに余計に胸が強調されている。ねえ、ここ間違って入り込んじゃったみたい、窮屈なの、出して!と言わんばかりに。
あがりを見計らって、食事に誘った。記憶を探って最も小奇麗かつ安い店を選んで近況を語り合った。
ジャクリーンは実の姉よりも姉らしく振舞っていた。
ロッドを一人の人間と認めてくれているようだったし、下らないジョークだって、一応は聞いてくれた。
とっておきのネタをがつんとやれば綺麗な顔を崩して腹から笑ってくれたものだ。
「ねえねえ、色んなものが詰まってるのね、あなたの頭。そういうの、テレビや本から探してくるの?」
「むしろ清掃員に化けてテレビや本を探してる。粗大ゴミの日がクリスマス」
「もう、そんなことばっかり言って」
「この前行ったらびっくりしたぜ。清掃員がいつもより一人多かった。どっかで見た顔がいるなあ……
ああ、なんてこった、姉貴だ、姉貴、ああ、こうしちゃいられない、ねえ、誰でもいいからこれ、持ってってください!
飯はたくさん食いますが、よく動きますよ!あなたがリバー・フェニックスなら電池なしで動きます!」
「だめよ、そんな風に言っちゃ、だめ。シェリルのこと」
「なに?なんだって?コリー・フェルドマンはダメかって?『糞して寝ろ』と言ってます」
「だめだって」
「でも、笑ってる」
「そうね」
姉貴がジャクリーンだったらいいのに。ロッドは幼い頃少なからずそう思った。その当時、シェリルとは特に仲が悪かったわけではない。
それどころか時折父の暴虐から手際よく救出してくれたので、すぐに罪悪感でいっぱいになったが、思ったことは事実だった。
時々――勢いで手が触れ合うこともあった。キスした時、あれはジャクリーンが提案したのだ。いわく、男の子と女の子の遊び。
ロッドは七つで、ジャクリーンは十一だった。1974年、32番地のマイク夫妻が畑を売る前、州道の分離帯に沿ってつながる道はまだなく、
収穫前のとうもろこしが青々とした葉を風に揺らせて土と肥料の匂いを運んでいた。幸い、周りには誰もいなかった。
納屋の裏手で行われた姉も知らない彼とジャクリーンだけの秘密。ファニーなキス。少女の膨らみかけた胸や甘酸っぱい汗の匂い。
背の高さだって同じくらいだったから、唇と唇をお互い垂直にゆっくり近づけるのは簡単だった。きゅうっと潰しあった。
ジャクリーンは眼を閉じていた。自分だけ眼を開けているのが申し訳ない気がして、ロッドも瞼を下ろして唇の不思議な柔らかさに感じ入った。
離した時に、彼女は既に目を開けていた。寂しいような、嬉しいような顔をして、彼の肩を撫でたのだ。
「ね、遊びよ。いつもしてるのと同じ、これって。そうよね?」
ロッドは十八歳のジャクリーンにその話をしたくてたまらなかったが、あまりに恣意的でいやらしく感じられて、諦めた。
しばらくそういう関係が続いた。ロッドが映画館へ行く。映画を観るためではなくジャクリーンに会うために。
そして仕事が終われば二人で話す。今度いつ売店に立つかはその都度教えてくれた。
五回目に会った日、寝た。モーテルの薄暗い部屋で、二人は抱き合った。
ジャクリーンは処女じゃなかったが、ロッドはこれと言って感動も失望もしなかった。なあに、俺だって童貞じゃない。
もちろん彼女のヴァギナは清潔だった。キスして、と言われた時――顔をしかめたが、息をせずにやってみた。
まるで違う、甘く神秘的な味がした。同じものなのか、とロッドは驚いた。彼女のヴァギナは不思議な泉に感じられた。
いつまでも唇でなぶっていたくなる。愛撫を続ければピンクのエイが泳ぐようにゆらり形を変えた。
気がつけば普通に息を吸い、愛液を吸っていた。
これが、本物だ。
途端に全てを知りたくなった。成長したジャクリーンの身体の全てを。爆発しそうな心臓を抱えながら、ありとあらゆるところを舐めた。
濡れた唇、柔らかい耳たぶ、首筋のラインに赤く跡をつけてやる。尖った肩に這わせて、腋まで降ろした。躊躇する声を無視して続けた。
初めくすぐったがっていた彼女は次第に本気になって感じ始めたようだった。その顔を増やすように努力して唇で愛撫を続けた。
背中の筋を指で撫ぜ、後を追うように唇を這わせる。片方の乳首を親指でこすり、もう片方を舌で転がす。乳輪まで念入りにキスする。
くぼんだおへそは控えめに触れるだけにして、白いおなかをさすりながら、陰毛に向かう。森に唾液の雨を降らせてやる。
クリトリス、パーカー先生のありがたいお言葉、女が一番感じるところ。表情を確かめながら唇で念入りに色んな刺激を試してみる。
挟む、こする、はじく、転がす。十分に膨らんだのを確認したあと、今度はさすりながら、
膣穴へ舌を差し込めば、上の方から急かされて弱々しく同意したような切ない声が聞こえた。
後ろの穴、パーカー先生のありがたいお言葉、上級者向け。汚ねえからな。女だって恥ずかしがる――糞くらえ。
ジャクリーンのならなんだって、お尻の穴だって、綺麗だ。
この時、既にジャクリーンの足はいっぱいに開いていた。クリトリスを人差し指で回しながら、まずは軽く、一瞬のキス。
意表をつかれたか、全身がびくっと震える。少し間を置いて、もう一度、今度は長く唇を貼りつけて、舌を差し込んだ。
拒絶の声が細く、震えた。だが――顔は嫌だとは言っていない。続ける。強張っていた腿やふくらはぎが徐々に緩んでいくのが分かった。
低い声が立て続けに聞こえてくる。愛液がだらだらと鼻まで垂れて、鼻先で分かれて、シーツまでこぼれた。
足の指の一本一本まで、口に含んだ時、ジャクリーンがストップをかけた。ペニスにゴムをかぶせ挿入を要求した。
そこから先は、ぎこちない腰の動きを彼女が補った。そのため、すぐに精液溜まりは真っ白になった。
一瞬で終わってしまった性交だったが、ジャクリーンは不満そうな仕草も驚きも見せず、何も言わなかった。
その代わりにっこり笑って、昔したキスの後と同じように、ロッドの肩を撫でた。彼の頭の中にとうもろこし畑の風景が浮かんだ。
すうっと風が吹いている。背丈が同じだったジャクリーンが、まるで、あの時の続きをしてるみたいね、と言っているように思えた。
結果的に、ジャクリーンはまだぎこちないロッドをよくしつけた。女の身体をどう扱うかはもちろん、
女と会う時はどういう顔をしているべきか、服は乱れていないか、朝昼晩歯を磨いて髪を整えて精悍な顔つきで笑えるかどうか。
何より大切なこと、抱いた女の一部、思想、願望、悦び、感動、意志、時には二律背反する矛盾……或いは全てを感じ取ろうと努力し、
それらを自分なりに消化した上で、中に確かに生きているのを、示せるかどうか。
その通り、ロッドはやりなおそう、と思いさえしていた。まともになろう。ジャクリーンのために。ジャクリーンの笑顔がもっと見たい。
ジャクリーンとずっと笑いあえるなら、キスの続きができるなら、舞台に立てないチャップリンみたいな人生も乗り切っていける。
当面の問題は進級だった。彼は壊滅的な焼け野原に杭を打ちたて、ペンと消しゴムと教科書を持って、畑を耕し始めた。
元々理解力は低い方ではない。ただ退屈に過ぎるのと、諦めていただけのことだ。しばらくは剣を置いてペンの生活を続けた。
そうして年が明ける頃には、ジュニアハイスクールの最終年への進級もすんでのところでパスして、
このまま行けばリッキー・ヘンダーソンが二塁を無事盗むのと同じくらいの確率でプレイサーヴィルの就職クラスに滑り込めそうだった。
たった何ヶ月の内に、もうジャクリーンはなくてはならない人間になっていた。
同時にあんなに怖かったジストが遠い場所にいるように感じられた。
ひどく遠い、別の星で起こったような出来事。木星のわっかに含まれる小さな隕石、存在しても詮無きものだ。
だが、一つだけ。彼女がペニスを奥まで含んだときの名状し難き顔だけはまだ心の隅に残っていた。
いったい、どういう風に生きれば、何をすれば、或いはされれば――人はああいう顔をするんだろうな?
次からは会う時が寝る時だった。未熟なペニスは次第に肉の味を覚え始め、鍛えられた。
姉はもちろんのこと、周囲の友人にも自慢したくなる気持ちをぐっと抑えて、ジャクリーンとのことは秘密にしていた。
肩を撫でてくれたジャクリーン。あのキスだって二人だけの秘密だったのだ。あれは彼女の意志だ。彼女の気持ちを裏切りたくない。
それに、誰かに話してしまえば、感動がうすらいで途端に意味のないものになってしまう気がした。
だが、いつまでも我慢できるものではない。ロッドは次第に関係を公のものにしたいと思い始めた。
映画館にお邪魔して黄色いシャツを見るよりも、一度最高にめかした格好で朝から街を歩きたかった。
人目や年齢を気にしてモーテルで愛し合うより公認のカップルとして認められたい。
真面目とは言わずとも世間並みにやるようになった自分を
文明に触れた地底人アンダーテイカーを見るような眼差しでいぶかしんでいる姉や友人にその理由を教えてやりたかった。
それに――いささか宙ぶらりんだった。なにせ、好きだ、愛している、その一言さえまだ言えてない。
教示その四(彼女は様々な教示を言葉を使わずして実に巧みに語った)
「無闇に好きとか愛しているとかぺらぺら言うのは相手を縛る言葉ですよ!大切なのは行動で示すことです!」
抱き合っている時もそうだ。余計なおしゃべりはやめて、身体で示して、それが決まりだ。
十度目のセックスのあと、ロッドは想いを伝えようとした。切りがよい数字だ。しかしジャクリーンが機先を制した。これまでと同じように。
したがってロッドは休みの日、いやそれだけじゃなく、好きな時にいつでも会いたい、と言うことしかできなかった。
当然オーケーをもらえるものだと思っていたが、彼女は乗ってこなかった、卒業後の進路や様々なことを理由に態度を保留した。
「ごめんなさい」顔が固くなった。口では謝っていても感情を排した顔だった。頭の中では何か色々と考えているように見えた。
やがてジャクリーンはグリーンの猫目をすっと閉じて、耳の後の髪をひとさし指で撫で始めた。猫がゆっくり毛づくろいするように。
ロッドは申し訳ない気持ちになった。
一緒にいられる数少ない最高の時間を台無しにしてしまった。自分だけの都合で彼女を混乱させてしまった。
そう、何事にも段階と準備があるのだ。さすれば、寝るのだってあまりに早きに過ぎたかもしれない。
しかしロッドはジャクリーンの手際の良さを信じていた。年上だからそう感じる部分もあったろうが、昔から抜きん出ていた。
遊びにしろ何かやる時は上手いこと自分が楽しめる方へ持って行く。それでいてみんなに不満を感じさせない方法を考え出す。
今と同じように優雅に髪に触れて、眼をぱっちり開けた時には素晴らしい考えが手品のように生み出される寸法だ。
皆を巻き込んで、結果がつまらないものになったことは一度だってなかった。
「……とりあえず」ジャクリーンが眼を開いた。
「落ち着いたら家に呼ぶわ。ありがとう」
だから、今回もジャクリーンに任せることにした。彼女の言うことならばと。
信頼が崩れ始めたのは、冬の寒さが心持ち緩んできた頃だ。
長らくつきあいをさぼっていたパーカーの車に札つき連中と乗り込んでドライブインシアターに出かければ、
ダリオ・アルジェントの「サスペリア」が流れていた。仰々しい音響、原色を散りばめた照明。
大雨が降っているドイツの古都。空港から降り立ってタクシーに乗り込む少女。
彼女がバレエ学校の門を叩いて追い返されてからしばらく経って、パーカーが「やるぞ、おい、やった!」
黒手袋がナイフを握り締め、タクシーに乗っていたのとは違う女の胸や腹を突き刺した。一度、二度、三度。
赤い光がフロント・ウインドウに差し込んで、車内を血の色に染めている。
女はめった刺しにされたあげくにテラスを突き破り、宙釣りとなる。
首に縄が絡まって落下した時の顔があまりに毒々しく、ロッドは苦味潰したような顔を左に背けた。
目を開けると――ちょうど左斜め前だ。顔の大きさくらいに縮まっている薄赤い、おそらくは白の普通車。
その助手席にジャクリーンがいた。彼女は助手席の窓の下から映画同様の叫び声を挙げるような顔でふっと現れて、また下へ消えた。
ほんの数秒だったが、ロッドの目にはしっかり焼きついた。赤く彩られた彼女は初め目を閉じていたのだが、切なげに開いてから隠れた。
隠れる寸前、目があったように感じられたが、そこまでは自信がなかった。
反射的にスクリーンに目を戻してみれば、どういうわけか、また違う女の顔半分にガラスが深々と突き刺さっている。
ああ、割れたテラスか、納得したところで、ロッドは「あ」と声を挙げていた。「どうしたよ、びびってんのか」
「イタ公ってのは加減をしらねえな。何考えてんだ」「うるせえ、黙ってろ」「殺せ!殺っちまえ!」
もう一度、ちら、と眺めてみた。もちろん車を。
シーンが切り替わって強い照明が消えてしまい、肉の棒がもぞもぞと動いているようにしか見えない。
ゆっくり流れた時間。その時のロッドにとって、幽霊に見間違えてもおかしくない女はジャクリーンに似た誰かだった。
そう思おうとした。似ている人だ。世の中に似ている人はごまんといる。
一瞬見えただけだ、雛鳥が巣穴から顔を出すように一瞬、知らない男と女が――ことに及んでいるところを。
だが、映画の半分も行かないところで疑惑の車が出口へ向かって走り去り、ホワイトカラーを取り戻しても疑念は消えなかった。
観終わった帰り道で、ふと冷静になってみれば、やはりあれはジャクリーン以外の何者でもなかったのだ。
見間違えるはずがない。だいいち――美しかった。
ちなみに彼女は母子家庭ではあるが、一人っ子だし、クローン人間でももちろんなく、
地下牢で鉄仮面をかぶせられた双子の妹もいないはずだった。いやはや地下室はあるかもしれないが。
一縷の希望すら砕かれたかと思われたが、まだすがる藁は残っていた。
ロッドは彼女にその日友人と映画を観に行くと告げていたのだ。場所までご丁寧に。
その上彼女はアルバイト仲間のジニーとスプリングウッドに行くと告げている。
おしゃべりしながらショッピングにいそしみ、洒落たレストランで飯でもぱくついて、今頃は家のベッドで寝ているはずである。
素晴らしいことにジニーもそう言ったのだ。心強い証言だ。
それに服装も彼が見たことのないものだった。走り去る前、車が左へバックして、中が十分に見えるところまで出てきた。
見るな、見るな、と思いながら、目の端にひっかかった白いブラウス。
顔は運転席の方を向いていたので分からないが、髪形は(少々乱れていたものの!)彼女だった。
オーケー、落ち着け皆の衆、状況は悪くねえぞ、とロッドは思った。
なぜなら、白は似合わない。ブラウスは似合う、いや何を着たって似合うだろうが白じゃない。
彼女は黄色いシャツを着てる。いつも黄色なんだ。……映画館の売店で。
ロッドは頭を抱えた。
ならば、そう――最初の疑問に決着をつけるべきだ。
彼女が浮気――浮気?どっちが浮気なんだ?俺の方か?やめろ、汚らわしい――したとしても、
どうしてわざわざ危険を冒す必要がある?どこの世界に亭主の目の前で犬にアソコを舐めさせる主婦がいるだろう?
犬と亭主と主婦の間に三国同盟が成立していればあるいは3%くらいは確率があるかもしれない。
だが、三国同盟が上手く行った試しはないし、俺はそんなものを結んだ覚えはない。断じてない。
そもそも、ジャクリーンほど頭がよければ、そんな失態はありえない。その線はない。茹で過ぎたパスタより脆い。
しかしその日は眠れなかった。
48 :
エロム街の悪夢(ロッド×ジスト・ジャクリーン・その他)グロ:2005/12/22(木) 19:37:29 ID:rJGPakW1
約束の日、映画館が見えてからは早足になり、入り口の扉をくぐる頃には駆け足になっていた。売店についた時は、息が乱れていた。
「ちょっと、もう、ねえ、だいじょうぶ?はあはあ息切らしちゃって。はい、落ち着いて」
ピンクの唇の両端をきゅっと持ち上げたジャクリーンは何も知らないように見えた。いつもの彼女そのものだ。
黄色のシャツだって相変わらず盛り上がっていた。助手席からはあまり見えなかった胸。
ロッドの眼がシャツの上半分へ向いて止まった。そのまま動かない。
彼女は興味深げに視線の軌跡を辿っている。終着点が自分のバストだと気づくと、ふふ、とあやすように小さく笑った。
突然、ロッドはそれをひどいやり方で引き裂きたいと思った。
虹の真ん中から下、谷間の部分にぴんと伸ばした指を刺して左右にぐりぐりねじる。
小さな穴を空け、そこから一気に、生あたたかい水色のブラジャーごと両手で引きちぎる。肌の香りが飛び散る。
無限大の記号がその果てしない法則を保って具現化したような乳房がぼろんと飛び出て揺れる。
ピンク色の乳首、マジックのキャップを切り取ったみたいな乳首、ごく小さな細い糸虫が這うように、皺が走っている乳首。
高く短い悲鳴を挙げて胸を両手で隠し、心から怯える彼女の顔が見たかった。なぜだか分からないが。
「そうね、せっかく早く来てくれたんだし、何か食べる?うん、コーンとコークでいい?」
右の猫目をぱちくりウインクさせたジャクリーンに気づきもせず、ロッドは彼女の左肩の裾から直に二の腕を握っていた。
「やめて。仕事場よ。あ、どれにします?」
カーキのジャケットを着た髭を二日ばかり剃り忘れた風の男がすぐ傍に立っていた。
ロッドは静かに手を離し、いつものように彼女の仕事が終わるまで映画を観た。
その日、モーテルでは一切の会話がなくなった。奇しくも二人は身体で示し続けた。
ロッドは性獣の狂気を宿らせて、疑心暗鬼の劣情を力いっぱい叩きつけた。
疑うな、愛する女を疑うのは男のすることじゃない。疑うのは心の弱い人間がやることだぞ!
それに、教示その七だ。
「隅から隅まで詮索するのは停滞をもたらします。それよりも一人の時間を愛しましょう。
程よい孤独は強い男女を育てます。またあなた方のセックスの良い燃料となります。
さあ皆さん今からそれぞれそっぽを向いてください。一人の時間を――」
だが、もやもやが消えることはなかった。たった一言、訊くことすらできなかった。
先週、土曜の夜、どこにいた?
或いは、こんな切り出し方でもよかったかもしれない。
ジニー、あの子ジニーで合ってたよね?うん、彼女から聞いたんだ。
どうせ行くんだったら言ってくれればいいのに。ドライブインシアター。
だが、一言でも口に出せば疑っているのを認めることになる。こんなに綺麗なジャクリーンを。
とにもかくにも破滅の波は食い止められそうになかった。加速度的にセックスは激しくなった。
ロッドはいつまでもジャクリーンの身体を愛撫し続けた。何度も絶頂を強制した。ときに彼女は失神した。
彼女のオルガスムスは長く、激しく、連なって続く。まるで機械のモーターがうなるみたいに鳴くのだ。
最初は呻くような、低い「う」だ。うが連続して続き、むが混ざる。
そして彼の背中に爪を立てたり、シーツをマットごと握っている時には細い喉から独特の音を奏でている。
最初に会う時はいつも同じ服。同じ場所。肉体を保護する黄色いシャツ。
ポップコーンやフランクフルトの油の匂いが染みついている。その下には彼女の香りがある。
ロッドはそれを克明に想像し何度も引き裂く。彼女がイク時はことさら派手にやる。布切れ一片になるまでちぎり倒す。
だが、すぐに彼女はシャツを着る。ロッドはまた愛撫を開始する。彼女は乳房と同じ無限大のスペアを隠し持っている。
教示その十二「愛する人はフルネームで呼びましょう。ガキっぽいつきあいは御免です――」
くそくらえ!もうジャクリーンとは呼ばないぞ、ジェリーって呼んでやる、嫌がられても呼んでやる。
ええ、ジェリー?俺はぽんこつ人工衛星か?なんとかプーチンやらなんとかチョフが造ったロシア製のやつか?そうなのか?
教示その二十一「彼もしくは彼女の家に無断で行くのは下品な行為です。玄関のドアはあなたのドアではないのです。はっはっはっ」
そう、映画館を経由してモーテルに入って家に帰って、ずっとこのままぐるぐる回ってろっていうのか?
ほら、あなたは何と言ってもまだガキなんだから、ぴちぴちのシャツで満足でしょ?ってか?
やあ、これで35627周目だよ、そろそろ動かなくなってきた、油さしてよ、あるじゃないか、股から滴ってる、どろどろの。
普段はお姉さん面してて、何でも知ってるのよって顔してるくせに、まるで今の君は黄色い機械じゃないか。
もう知っているんだぞ、と心の中で言ってやった。教えられたんだ。何も知らない、遠い昔にキスした時とは違う。
ほら、涙目になって、呆けた面をして、うんとよく動くように、何処をいじくればいいのか、俺は知っているんだ。
臨界点突破寸前をもって、ジャクリーンはロッドを家に招待した。彼にはまだそれを嬉しく感じる気持ちが残っていた。
ちょうど七日の間があった。彼女が指定した適切な充電期間だ。
ついに先に進める、とロッドは思った。その日が楽しみで仕方なかった。どう広げていこう。二人で一緒に。
そしてここ最近心の中で彼女を罵った言葉を一から十まで思い出し、その全てを悔いた。逢う資格の有無について考えさえした。
当日には決心していた。本当のことを言おう。少しばかりか、最近ずっと俺は君のことを疑っていたんだ、
たった一瞬見えただけなのに、おぞましい考えがどうしても消えなかったんだ、と。もちろん大変に勇気がいることだ。
新たな溝を作りかねない。しかし、そんなことすら乗り切れなくてなんだろう?
それが終われば男らしくない弱い心を鋼になるまで鍛えなおそう。今度はジェリーを引っ張って、一人の女として安心させてやるんだ。
あまりにも青いが、同時に強い炎が彼の心の内に燃えていた。扉を開けて彼女が出てくるまでは。
聖女のように微笑む彼女を見て、ロッドは泣きそうになった。
いや、既に目の下には涙が溜まっていたかもしれない。それに彼が気づくことはなかったろうが。
「待ってたわ。さあ、入って。私の部屋、見せたいの」
確かに彼女はずっと待っていたのだろう。
十度目のセックスのあと、思案して目をぱっちり開いたその時から?それとも初めてキスした時から?
ジャクリーンは、あの日の助手席からタイムスリップでもしてきたように、白いブラウスを着て、超然と立っていた。
ロッドは目の前の光景が信じられなかった。と同時になにかやぶさかない感動で胸を震わせていた。
白い――あまりにも白い。夢にまで出た助手席のブラウス。お嬢様みたいなブラウス。
本当は自分とデートしている時に着て欲しかったブラウス。存外白がよく似合っているじゃないか。
離婚してから大分経った母子家庭、一人っ子の家らしく、男の匂いが失われていた。
しんとして、空気だけやけに澄んでいて、薄暗くって、散らかったところが微塵もない、人が一人死んだあとのような家だ。
いたるところに女の諦観と苦労と打算が息づいている。入って、入って?彼女はそう言ったのだ。
ロッドは焦点の合っていない目でただただ足を前に動かそうとする。しかしもう一人で歩けない。進みたくない。
ジャクリーンがカルロ・クリヴェッリ「マグダラのマリア」のような全てを見透かした目で、唇の端を釣りあげる。
さあ、歩きなさい、これからなのよ、と手を差し伸べる。
ロッドはいちばん奥の彼女の部屋まで、胸の痛みで血を吐きそうな想いで、手を引かれてよたよた歩いた。
さしずめゴルゴダの丘を登るキリストに相違ない。ああ、実に、あんまり心無いやり方じゃないか。
だが、弟子に裏切られるのとたった一人愛する女に裏切られるのとどちらが辛いだろう?
部屋に入ったのが開始の合図だった。
ジャクリーンは振り返り、少し間を置いて、またロッドの肩を優しく撫でた。三度目のキスの余韻。
しかし動転していた彼にとって、それは悲惨な現実へ呼び戻す悪魔の手に過ぎなかった。
撫でているのはジェリー。納屋の裏手でキスしてくれたジェリー。あんなに何回も抱き合ったジェリー。
俺のジョークを聞いて顔を崩して笑ってくれたジェリー。それなのに裏切った。どうして?
頬に一発張ってやるか、いやその必要はないと、彼女は優しい目で、口を開かずして語った。
ねえロッド、これでお別れよ。残念ね。でも、あなた、ずっと想像してたんでしょう?
ひどくしたい、めちゃくちゃにしたいって、あれでもまだ足りないんでしょう?
そうよ、今日は特別な日、私が教えたこと全部忘れて、あなたがしたいように、何でも自由にしていいのよ。
ロッドはもう涙をぼろぼろこぼしていた。全身が熱くて痛い。心臓が胸から飛び出して落っこちそうだ。
しかしそれでも彼女の意志の断片だけは読み取れた。いつもそうやって無駄な努力をしてきたのだ。気持ちを分かろうと。
彼はくたびれた奴隷のようにゆっくり頷いた。それを見て、頷き返したジャクリーンが下げていた眉をつり上げる。
眉間が峡谷に変わる。ぎゅんと猫目を限界まで開かせてグリーンの瞳の奥からどす黒い狂気の光をぶちまける。
眼はこう語っている。わかったらさっさと襲え!押し倒せ!
「ああ、ジェリー!」
ロッドは長袖のブラウスのボタンとボタンの間に両指をぐちゃぐちゃにねじ込んだ。
そのままいつも頭の中で黄色いシャツにしていたように渾身の力で引きちぎった。
黄色いシャツ?ああ、これがいつもの黄色いシャツならどんなに良かったろうか。
ボタンがはじけ飛びオレンジのカーペットの上に転がった。彼女はブラジャーをしていなかった。
無限大の胸と香りが勢いよく吐き出された。想像通りに揺れた。想像通りに香った。
部屋に息づくその人の匂いとは比較にならぬメスがオスを発情させる香りが彼の身体を包んだ。
驚くべきことに黒のパンツスーツの下にも何もなかった。
引き下ろした時に、股裾の部分に付着したねとねとの愛液が穴から糸を引いて垂れた。既に湿りきっていた。
やはり彼女は真実を告げていた。待っていたのだ。彼女はずっと。
お互いの服を奪い合うように脱がしあった。全裸になったジャクリーンが自動人形のようにくるんと背を向けた。
ロッドは後ろからもみくちゃにするように抱き締めた。そのまま二人はベッドに倒れこんだ。
「ジェリー!」叫んで彼女のうなじに何度も顔を押しつけた。
涙で濡れた鼻や唇で抵抗する後ろ髪を掻き分け、蚯蚓を探すモグラのように突き進み、
激しい息を振りかけながら、耳の後ろからうなじにかけての香りの中にうもれた。
隠された泉を手で探らず、膨らんだ尻に腰を押しつけただ強く動かした。
ペニスが卑猥な入り口をかすめて逸れた。時に薄紫の尻穴から尾骨にかけて。時にシーツとクリトリスの間に挟まるように。
しかし徐々に近づいていき、ジャクリーンがうつぶせの脚をばっと開いた。
寝後背位でいきなり挿入した。今までで最も硬く、最も長く、最も興奮した生のペニスを。
前戯なしで挿入したことなど一度たりともなかった。だから、したかった。
それも身体をぴったりくっつけた格好で殺気をみなぎらせ、後ろから脅迫するようにひどく犯したかった。
今に至って彼女は男の劣情を誘うための虚飾の声など使う気は毛頭なかった。
しかしそれでも大声が出た。「うぅううぁ!」
たっぷりお湯が張ったバスに飛び込んだように汁があふれ、飛び散った。
肉襞がペニスを歓迎している。彼女のヴァギナはいつもと同じで狭く温かかった。
ロッドはその温かみを心から憎んだ。
こんなに芳醇に包んでくれているのに、ジェリーの中には何もなかったのだ。
それはただ子種を導くために収縮を繰り返す肉体機能の一部分でしかない。
ならば、子宮の入り口から直接ぶちまけてやる。
今は彼女の肩から脚にかけての輪郭がはっきり感じられた。自分の身体とつながって一個の別の生き物になったようだ。
「うぅう」
届いた。奥、こつこつ、佳境に入ってからゆっくり叩かれるのが好きな場所。つまりまだだ。
しかし、分かっているなジェリー、ええ?届いているよ、もう、一丁前に呻きやがって、叩きのめしてやる。
ロッドは肩口に回していた腕を下ろして胸を揉みしだいた。あまりにも豊満だ。
ぐちゃぐちゃにしてやると力強く握っても負けずに跳ね返ってくる弾力、
雨に濡れれば水を弾いて露の玉を浮かび上がらせるだろう。指の間から肉がこぼれる。
「逃げるな!」
叫んで心に決めている。俺の流儀を通してやる。胸を握りつぶすようにして、おまんこが壊れるくらい動いてやる。
ロッドはピストン運動を開始した。上質の肉布団の上でやたらめったら腰を動かした。
気がつけば声を出していた。いつも思っていたこと。心の中で彼女を罵っていた言葉。
「何を知ってる?ええ、ジェリー、何を!」
耳元で大きな声を出されて、ジャクリーンの身体がびくっと震えた。ぎゅっとヴァギナが締まる。
肉襞が慌てふためいている。それがペニスに伝わる。ヴァギナがペニスに語りかける。
やめて、怒らないで。あなたのこと、大切な、弟みたいに思っていたのに……。
「黙れ!」
亀頭をこすりつけるようにして奥を叩いた。ふうっ、ふうっと苦しそうな声が聞こえてくる。
耳の穴に舌をぶちこんで、唾を垂らして汚した。性感以外の感覚を奪うために。
「もう着るな!絶対に着るなよ!いまいましい、あのくそ、くその色、ぶっ壊れろ、更地にしてやる!」
指の間から肉が飛び出している。全部を手の平に収めて陵辱したいのに。
人差し指と中指で乳首を強く締め上げる。圧縮ゴムのように硬かった。
ね、遊びよ、いつもしてるのと同じ。これって、そうよね?遊びよね?遊びだったのよ。
「う、う、う、う!」
こんなにひどくされているのに彼女はいつもより大きな声を出している。それがロッドをたまらなくいらだたせた。
ええ、おい、俺が今までやってきたことはなんだったんだ?決して彼女を傷つけないように、痛くしないようにって……。
何も知らなかったのだ。分かったつもりになっていて、何も。
自分への怒りを動力源にしてさらに速く鋭く腰を動かす。ナイフを突き刺すように。
「ううむうぅぅううむううぅぅぅうむ……」
ついに彼女は機械になった。すぐに激しい膣蠕動が訪れた。
ヴァギナが涙を流して震えている。どうして私を傷つけるの?あなたは……まるで……。
「ちがう!」
射精した。奥の奥で白い体液を吐き出した。どっぷり子宮に入ったろうか。
全身から力が抜けていく。波のようにうねっている肉がそうさせるのだ。
そして彼女に身体を預けた。ジャクリーンが左に首を回した。横顔、猫目が赤く腫れている。
口をOの字に開けて、視線が痴呆老人のように何もないところを漂っている。いつもの優雅さが消えうせている。
「……もう終わり?」
そこから先は簡単だった。ロッドは彼女を機械にするためだけに動いた。
二度と生意気な口がきけないように黙らせたかった。絶対服従させてやるぞと心に決めて、愛撫に切り替えた。
覚えている全てを使った。中に入れたまま、イキそうな瞬間に乳首を引っ張る。
ざらざらの部分をこすりながら、クリを愛液塗れの指でゆっくり回す。よくほぐれたアナルと膣を指で同時に責める。
もう心が折れていた。三度目に放出してからは、怒りも消え失せた。心の隅に戻って来て欲しいと感じさえしていた。
何度も絶頂を与えた。失神しても責め続けた。彼女は、ひはっ、ひはっ、と空気を漏らすような声を出し、舌を唇の端にもたれさせた。
睫毛が奮え、半開きの目を宙にさまよわせている。ぐったりしたヴァギナに何度も射精した。
何時間も一方的に犯して、離れた。驚くべきことに、そのあとも、二人はベッドで隣り合って寝ていた。
いや、髪をなでたり腕を絡めたりしないところを見れば、動く気力すらなかったのだ。
「ずいぶんね」ついにジャクリーンが始めた。
既にロッドも多少の冷静さを取り戻していた。今やったことはレイプと変わらない。本質的に何の違いもない。
恥ずべき行為だ。もう一つあった。自分は、間男だ。しかし同時に、お前は気づいていたんじゃないか、
認めるのが嫌で眼を閉じて、開いたら大事になっていた。分かりやすい摂理じゃないか、こんな思いも巡っていた。
「できちゃったらどうしようか?」
ロッドの顔が歪んだ。それを見て、ジャクリーンは小悪魔的な笑みを浮かべた。
「知ってたんでしょ、当然。もうすぐあの人と街を出る。結婚して子供産んで――あんたの子よ、
危ない日にこんなにいっぱいぶちまけたんだから、きっとできるわ。たぶん、男の子ね。
髪の色、眼の色、血液型までおんなじ、顔まで似てる何も知らない夫と三人で幸せに暮らしましたとさ。
あんたの知らないところで」
ロッドは何も言わなかった。無言の彼を見てジャクリーンは冷たい目をして黙ったが、彼には声が届いていなかっただけのことだ。
彼は深い記憶の底にいた。夕闇が降りている、ふてくされた顔をして、そよ風がするように静かにドアを押しくぐった遠い過去。
気づいた母が肘を擦りむいたゆえのざらざらした赤い皮膚や、泥にまみれた耳などを優しく拭いてくれた。
どうして相手を殴ったのか、喧嘩になったのか、相手の何が許せなかったかを分かってもらおうと話した。
母はこう言った。「暴力はやめなさい。よくないことよ、どんな理由があっても。悪いことしたなって思ってる?」
いいや、思っていない。同じ答えを心の中で返した。俺は悪くない。
ふいにジャクリーンが狂ったように笑い出した。タガがはずれたような笑い、ボリュームが壊れている。
記憶の世界に入り込んでいた彼を引きもどすには十分な行為だった。
ロッドはまじまじと目の前で笑い転げている女を見つめた。おい――いったい、これは誰だ?
胸をゆらせて、唾を撒き散らし、鼻の穴をさらす、ただの間抜けな肉の塊にしか見えない。
ジャクリーンは唖然としているロッドの肩を笑いながら叩いて、言った。
「ねえねえ、すっごくいいこと思いついちゃった。聞いて、子供できたらあなたのRとってレイプってつけるわ」
ロッドの身体を冷たい怒りが支配した。これは、肉の塊だ。人の皮をかぶった。生きている価値などない。
「ゆりかごの傍に立って毎日囁いてやるの。あなたのパパは別にいるのよ、それも田舎の不良、
女疑うこと知らないフェミニスト気取りのクズで、そのくせお前は逆上したそいつにむちゃくちゃにレイプされてできた子なのよって」
もう誰でもない。存在することが許されない。
「だからお前も大きくなったらパパと同じようにレイプなさいって。男でも女でもいいわ。そのためにレイプってつけたのよって。
レイプ!あは、レイプ!あはっ、あはっ、レイプ!レイプ!レイプ!レイプ!レ」
――殺してやる。ロッドは折れそうな首に両手を伸ばした。ジャクリーンは急に喋るのも笑うのもやめた。
何の怯えも戸惑いも見せず、大きな手の平が迫ってくるのを毅然とした態度で待ち受けていた。
振る舞いにある種の気高ささえ漂っていた。
震える指が頚動脈の辺りに触れた。
頭の中では機械が――ジャクリーンから離れてそれ自体意志を持ったような黄色い機械が唸って叫んでいる。
うぅぅむむむうぅぅむむむむぅううむむむううううむむ(殺せ!殺してしまえ!どうせそいつは肉の塊だ!)
指に力が入りかけた時、彼の頭に殴られた母の顔が浮かんだ。
折れて床に転がった歯、悲鳴をあげて逃げる母、涙と鼻水と血液でねばっこくなったタオル。
彼を呪いのように縛りつけている戒律、その手は?女を殴るのが男か?女を――。
そっと撫でることしかできなかった。奇妙な声は掻き消えていた。
その時、彼女の予想が初めて覆ったのだろうか、ジャクリーンの眉はぴくぴく震えていた。
しかしそれもすぐに終わった。表情から全ての感情が欠落した。無表情を超越した皮膚を貼りつけただけの顔だ。
口が微かに開いた。
「石女(うまずめ)」
うまずめ?ロッドの所有する語彙には見当たらない単語だ。うまずめ?
それに目の前で喋っているのがどうしても人間とは思えなかったのだ。ロッドは驚愕した。ジャクリーンは本当に機械になった。
「できないのよ。十四の時に一生できないって言われた。だから心配……ばかね、あなたは。だいいち――」
彼女はその先を言わなかった。電池が切れたかのように動きを止めた。
急に雨が降り出したのをきっかけに、ロッドは無言でベッドから這い出し、床に散らばった服を着た。
ジャクリーンはまだ全機能を停止していた。ベッドの上で死んだように腕を投げ出し、ばらけた髪すらぴくりとも揺れなかった。
彼はふらついた足取りで部屋の扉を開け、外に一歩を踏み出した。頭の中では同じ言葉が巡っている。
ジャクリーンは機械になった。ジャクリーンは機械になった。ジャクリーンは機械になった……。
彼の背中に低く震える声が届いた。
「どうして殺してくれなかったの?」
それきりで会うこともなかった。
56 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 11:39:04 ID:7MiXLwRw
ティナかな。♀がみんなエロくて強くていいっす。
あ、男です。シーンはティナ死と上のブラウスちぎるとこ。
58 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/28(水) 15:23:10 ID:I+mKq0D4
ジャクリーン怖え
それから一週間、ロッドは家を一歩も出なかった。
機械になってしまったジャクリーンの顔が浮かんで、彼の父がたまに使用する睡眠薬なしでは一睡たりともできなかった。
洗面台の鏡の裏にそれはある。単純極まる肉体労働に疲れ切った父が錠剤の瓶を握り締めているのを幼心に覚えていたのだ。
こっそり十粒ほど拝借して自分の部屋の小物入れに仕舞っておき、眠りに落ちれば夢を見た。
ジャクリーンが赤ん坊を抱いている夢だ。
薄暗いリビングには部屋の指標を図るソファやその人の趣味が表れる壁掛けや時計や雑貨入れなど一つもない。
靴を履いていてもどこか冷たく感じる板張りの床に、焦げ茶色のジゼルテーブルが一つ置かれ、
幾重にも積まれた小皿やティーカップなどが納められたガラス張りの戸棚が二つ、右隅にそびえている。
二人は結婚している。少なくとも、向かい合って座った彼はそう信じている。
中央の留め金をなくしたカーテンのように白いブラウスがめくれ、
細い両腕でしっかり抱きかかえられた赤ん坊は豊満な乳房に顔を埋めている。頭までタオルで隠されて何も見えない。
早く顔が見たい、と彼は思う。俺の子だ、正真正銘、俺の子。
彼女は悟りを開いた仏陀のような眼差しで、柔らかい舌と唇で乳首を吸われる刺激を受け止め、時折微笑む。
やがて授乳が終わり、クリーム色のタオルに包まれた蠢く者の伸縮が静まれば、
そこで初めて向かいの椅子に腰掛けている彼に気づき、嬉しそうな声で呼びかける。
「ロッド、ほら見て、あなたの子よ!あなたの!」
腕の中のそれがくるりと反転した時、ロッドは既に叫んでいる。
向けられた赤子の頭部には一本の毛髪すらなければ頭皮もなく、さらには頭骨もない。
耳の上辺りから赤白い切れ目が額に地平線を形作っている。
寒々しくむき出しになった小さな脳味噌は銀色に輝き、微かに形成された皺の間に緑色のマイクロチップが何枚も差し込まれ、
それらはアイスクリームに混入したピスタチオのように調和を保ち、硬質でありながら柔らかい奇妙な感動を内包している。
白眼も黒目も存在しないただの赤い丸が眼窩の中央にぽつんと存在し、風穴を空けてやるつもりなのか、
そこから伸びるレーザー状の赤い光線がロッドの高い鼻先にちょうど合うように交差して届く。
あなたの子よ。
彼女は一ミリたりとも口を動かさず、あの日同様感情が失われた顔で、脳に直接、何度も語りかけてくる。
あなたの子よ。あなたの、あなたの、あなたの子……。
頭の中の声がどんどん大きくなるにつれ、ロッドの悲鳴も大きくなる。
家族一同介した部屋は、幸せな母子の笑顔と父親の絶叫で包まれている。
利発な母親の遺伝子をうけついで、お母さんの味方ばかりしちゃ不味いと思ったろうか、
赤ん坊の口が腹話術師があやつる人形よろしく縦にかぱっと開き、けたけた笑い声を奏でた。
べたべたのシャツを胸にくっつけて飛び起きるのを七回繰り返した後に、彼が信じたことが一つある。
女には何もない。あるとするなら、おまんこだ。
二週間経てば不眠と悪夢のサンドウィッチから何とか逃れることができた。彼の脳が考えることを放棄したのかもしれない。
復帰後初日は悪童共と顔を突き合わせ、マリファナを吸いながら車を交替で乗り回し派手にやった。
あちこちこすって、道行く女を卑猥語交じりにナンパして(当然ラリッたガキ共と心中する気がある女はいなかった)
ゲラゲラ笑って家に帰ると、玄関でチャットにドッグフードを与えた。
セルフィッシュリバーの排水管で寒さを凌いでいたオスの野良犬、
見つけた時は小さなロッドの腕でも抱きかかえてすっぽり包み込めるくらい小さかった。
当然雑種だろうと思っていたら100%のゴールデン・レトリバーだったのだ。
つまりポイ捨てされて、あるいは飼い主とはぐれて、必死で生き延びて来たのだろう、浮いた肋骨がそれを証明していた。
あんまりきゃんきゃん吠えるのでチャット、と名づけ、三日後になってもうちょっとマシな名前にした方がよかったろうかと悩んで、
渋々ながらこっそり呼んでいる内に一ヶ月後にはその名前が実にしっくりきていた。
いつのまにか、洗濯物を干し終わったシェリルが冷たい眼で犬に餌を与える弟を見下ろしていた。
がつがつ餌をほうばる犬の息しか聞こえない。静寂に耐えられなくなって、ロッドはちらりと姉を見やった。
夕食を作るところなのだろう。今日はシェリルの番だった。
水色のエプロンにところどころシチューをこぼしてできた茶色い染みがこびりついている。
姉のエプロン姿を見るのは好きではなかった。ハイスクールの卒業を控えているのに、プロムに着ていく流行りの服も持っていない。
彼とて一張羅と言えば芝刈りのアルバイト(下のおけけを刈ったらどうだ、とパーカらにはからかわれた)
をして貯めた金で買ったぶかぶかの黒皮のジャンバーくらいのものだが、それにしても――と思わずにはいられないのだ。
なあ、姉貴、どうするんだよ、そんなんで。プロムはどうするんだ?
ビッキー叔母さんが譲ってくれたあのエメラルド・グリーンのドレスで行くのか?あれはやめた方がいいぜ、悪いことは言わないから。
ただでさえずん胴なのに、ババくせえったらねえよ。
シェリルがいつもと同じように何もかも諦めたようなため息をついた。
「はあ、疲れた。腕が回んない」
そう言って、軒先に入ってくる。ぶよぶよの垂れ下がった二の腕にかぶりつけばさぞかし脂味たっぷりのジューシーな味がするに違いない。
まだ男を知らないだろうに、いや男を知らずにこの家庭へ閉じ込められたからなのか、シェリルはすっかり所帯じみていた。
顔に若い女としての輝きがない。手から洗剤の匂いがする。髪は枝毛がひどく、針金のようにごわごわと乾いている。
目鼻立ちがはっきりしている以外には、だらしない風体で夕飯を用意する結婚五年目の主婦と言ったって誰も疑いはしない。
いつから姉貴はこんな風になってしまったのだろう。ロッドはうら寂しい気持ちになる。
ええ、お好きな昼メロは何でございましょう、奥様?家計簿に今月の収支をご記帳なさいますか?ああ、懐に入れておく分は忘れずに。
それに飽きたら間食、セールス、特売チラシ、絶対ばれない浮気の方法からご近所の不幸話まで、何でもござれでありますよ!
姉の変貌はやはり父と母に起因している。
二人の顛末を目に焼きつけて幸せな結婚のみならず、男女の関係についても見切りをつけたようだった。
いわく男とは威張りちらして拳を振り回し、女を小間使いか性処理の道具としか思っていない、
金を1ドル棚にへそくっておくことも知らない哀れな生き物であると考えるようになったのはきっとそのせいだ。
「肩揉んでやろうか」
いったん撫でるのをやめ、立ち上がって問いかけたがシェリルは無視した。あらまあ、ここには空気しかありませんよ、という風に。
「なあ、姉貴――」
もういいじゃないか、俺も悪かった、代わってやるからエプロンなんか脱いで、お化粧して、男と遊んでこいよ。
なんだったら太めが好きだって奴を紹介して――そこでシェリルがじっとロッドの顔をにらみつけた。
眼を見ただけで、ロッドは姉がジャクリーンとのことを知っているのだなと気づいた。面倒事を起こした時はいつもそうだ。
あの眼――私は違う、と意思表明している。私は違う。連中に属してたまるもんですか。
ここは糞が散らばった掃き溜め、自分のいるべき場所では、断じてない!違う!私は違う!
ロッドは息を呑んで、本当にジャクリーンは参ってしまったのだ、と思った。あの彼女が喋ったのだ。
本命馬の方はどうなったろうか、そもそもあの告白は本当だったのだろうか、間男が自分一人とは限らないし、
もしかしたらあの時は行きずりの男だった可能性もある、いったい何が真実だ?
一瞬の内に様々な考えが巡ったが、今は意味のないことに感じられた。
それよりも今はシェリルだ。姉とは揉めたくなかった。嫌いではない。少なくとも母が出て行く前までは尊敬していた。
二人で父親から身を守りもしたのだ。殴られたあと、濡れたタオルで傷を拭いて、頭をゆっくりさすってくれた姉は世界一優しい女に見えた。
問題は離婚後だ。母を殴れなくなった父は次なる標的として姉に手を出すのではないか、幼きロッドはそう予測して絶望したが、
どういうわけかそこまでイカレてなかったようで、安心するに至るところだったのだが、
母の分の被害をロッドが引き受けるはめになり、シェリルはただ自分に飛び火してこないように逃げ回るだけで、何も良いことはなかった。
結局殴る側と殴られる側がいて、殴られる奴はどうやっても殴られるし、そうでない奴は安全な場所にいられる。
それが真理だとロッドは学んだ。父と姉に関して言えば、姉は頭が良く、気を逸らす術を心得ていたし、父の居心地も悪くなかったのだろう。
それに家庭がまともだった頃を知っているのが大きい。
母や姉が言うには、あなたが二歳になるまではあの人は少なくとも本気の力で殴ることはなかった、のだそうだ。
時々、まともな親に戻ったように、昔を懐かしむような顔で姉を眺める父を見かけることもしばしばあった。
そういう時、ロッドはいつも父に憐れみを感じる。本当は家族の中で姉が最も父を軽蔑しているのを知っているからだ。
しかしそれも当然のなりゆきだ、と納得する気持ちもある。暖かい家庭を知っている分だけ姉の被害は甚大なるものに違いない。
初めっから何もかも存在しないなら諦めもつくが、あるものが壊れていくのは耐え難い。
その辺りの道理が分からないわけではないので、ぎくしゃくし始めてからはこう考えることにした。ようするに考え方も生き方も違うのだ、と。
だからそっぽを向いてもう一度中腰になり、ずっとチャットの背中を撫ぜたり、喉をさすったりしていた。
チャットは尻尾を振って茶色い犬用のビスケットにかぶりついている。ロッドが八歳の時に拾ってきた犬だ。あれからもう六年経った。
もうとっくに俺の歳を追い越しちまったな、ふいにロッドは感慨に耽った。
犬にとっちゃ、今が人生の中頃、現役真っ盛り、と言ったところだろうか。
だが、とロッドは心に決めている。例え耄碌してよたよた歩きになったって関係ない。去勢なんか絶対にしないからな。
お前は好きなだけやれ、かっこいい女つかまえて、道端だろうが公園だろうが好きなだけ。俺もそうする。
はあ、大げさな溜息をついて、ついにシェリルが切り出した。
「あんたが何しようと勝手だけどさ」
ゴミ箱の口へ投げたティッシュの屑が逸れて、拾いに行くのはめんどくさいけれど仕方ないという雰囲気だった。
「勝手なら放っておけよ」
そうしたくないのに、口が勝手に動いていた。何を知っているのだ。男とキスしたこともない女が何を。
「……もういっぺん言って。よく聞こえなかったわ。最近耳が遠いのよ。何て言ったの?」
シェリルがわざとらしくおどけた風でやり返す。
「うるせえよ」
「あら、そんな風に聞こえなかったけど――」
「勝手なら関係ないだろうが!」
「そうしたいわよ!あんたがそうさせないんでしょうが!」
唾がいっせいに飛び散った。ここぞとばかりの大盤振る舞いだ。
チャットが二人を交互に見上げ、くん、と一声鳴いてこそこそ家の裏へ逃げていった。
黙るしかなかった。これまでの行動を鑑みれば反論の権利はないに等しい。実に痛いところを突いてくる。
「姉弟(きょうだい)として一つだけ言わせてもらうけど」
くそくらえ。
「ジェリー、言ってたわ。お婆ちゃんみたいな顔して――」
その口調には間違いなく女の嫉妬と安心が滲んでいる。ロッドは舌打ちした。
ええ、姉貴、実のところそうなって嬉しいんじゃないのか、あなたも経験したのねって顔に書いてあるぞ!
だが、言葉にするまで我を忘れてはいなかった。
「やりきれないって感じで、泣きながら言ったのよ。あんたは悪くないんだって。そればっかり繰り返してた。恥ずかしくないの?」
恥ずかしくてたまらない。だからロッドはその日から女を狩りに夜の街に出た。
そうしてプレイサーヴィル・ハイスクールに入学するまで、彼は盛り場をうろつき、様々な女を抱いた。
最初はありつくまでに少々時間がかかったが、三人目になると慣れてきて、
十人目になれば当たり前のように学校と盛り場とモーテルと家を周回していた。
ことに至るまでにはいくつかのパターンがあり(彼はジャクリーンの教示を存分に活用した)、
大きく道を踏み外さぬようにそれらを遂行するのは彼が想像していたよりもずっと簡単だったのだ。
資金が入用になったのは初めだけで、なかにはチップとしてモーテル三回分と往復のガソリン代を弾んでくれる女もいた。
生来の道化師的な性分とジャクリーンとのセックスで鍛えられた性戯を存分に発揮すれば、
さあ、どれだけ楽しませてくれるのかしら?と斜に構えた高慢ちきな女ほど、予想を覆されたろう。
特に騙しの声を挙げる女には容赦しなかった。そういう時、彼の頭ではいつも黄色い機械が始動していた。
――欺く奴は殺せ。死ぬほどイカせて殺してやれ!てめえがどうしようもないビッチだってことを骨の髄まで分からせてやれ!
そして彼女らを包んでいる理性の殻を指と舌でぶち壊すことに執心した。
情念の強さと容赦のなさで、犠牲者はすぐに声色を変え、鼻の穴をひくつかせる醜い顔をさらすようになる。
口から荒い息を吐き、ヴァギナから白味がかった愛液を流し、ついには小ぶりなペニスにすがりついた。
二千年ぶりにコールドスリープから目覚めたような顔をして、信じられないほど良かった、と告げる女も中にはいた。
よりてロッドは壊れかけていた自尊心を多少補強したもの、それ以上に彼女らが憎々しくてたまらなかった。
自ら加担していながら、今この時も女は裏切り続けているからだ。何を?彼がかつて信じていた女性像を。
二つの概念がウロボロスの頭と尻尾のように常にファックしあっていた。女に対する憧憬と憎悪だ。
そもそも彼女らとて真剣な関係を望んではいないのだから当然なのだが、ロッドは情状酌量する気は一片たりともなかった。
女はおまんこだ。おまんこだから、おまんこをよくしてやれば、奴らは尻尾を振ってすがりつく。
服を脱ぐのと一緒に彼はファニーなピエロの顔を脱ぎ捨て、単純な理念を胸に抱いて動き、その正しさを確認し続けた。
お互い愛など求めていない。愛って言葉を囁こうものなら、くたびれた犬を見るような目つきで、やめてよ、と笑うような女達だ。
ほら、愛だって!それってどこで買えるの?あなたの家の芝刈り機は愛をエンジンにして動くの?ぶーぶー。
彼が信じた「女=おまんこ」に相当する「男=ペニス」であって、それ以外は望まない女達だった。
なかにはそうじゃない女もいる。そのグループに入る女は一回こっきりの情事を望んでいた。
一回、気持ちよくなるだけ。一回、寝てもいいかなと思う相手と激しくやりたいだけ。
既に正式につきあっている相手がいるとか、もっとひどいのになると亭主がいるとか、そういう女もいないではなかった。
どういうわけか、彼女らは聞いてもいないのに口にするのだ。私、つきあってる人がいるのよ、本当は結婚しているの、云々。
それはもちろんロッドが何も持たぬガキだということもあったろうし、彼は悪い人間ではない、
また眠り込んでいる間にハンドバッグの中に入っている免許証や名刺などを盗み見て、
突然自宅や勤め先を訪ねてきて、お小遣いをせびりに来たり、再度の性交渉を迫るような恥知らずではないだろうし、
決定的破壊へ引きずりこもうとするような破滅願望もない、頭が回る男ではないと彼女らが信じていたという証明にもなる。
しかし、どうしてだろう?ロッドは考え込んでしまう。あいつら、なんだってガキの俺なんかに告白するのかな?
罪の意識ってのを感じてるからだろうか?違うな――うん、違う。どうでもいいのさ、あいつらは。
ことによっちゃ喋る相手がお人形さんだっていい。
ねえ、聞いてテディ・ベア。私の家はちょっとした教会なのよ、父が神とみなされる教会だったの。
国の補助はおりないけどね、母は父の言いなりよ、子供の頃、見ちゃったの、笑っちゃった、後ろを使ってたのよ、
あれって滑稽よ、ダディ、お尻がむずむずするの、なんてこった、そりゃ大変だ、ちょっと下着を脱いで見せてごらん、
バカ、それじゃ見えないだろう、ほら、もっと高く上げて!って格好でやるのよ、うん、そう、こんな風に……。
大丈夫、きっちり洗ってるから、ローションだってもってるんだもの、ほら、塗ってあげる……どう?
私のお尻の穴、見える?入れたい?でも彼にはこんなこと言えないわ、どうしっ!て……ぇえ……こんな、こと、喋ってるのっ……、
す……すごっ……いっ……会ったッ……ばっ!、かりで……(でもサイズはぴったりね!)
ロッドはいらいらした。その表情を見て、彼女らは自分らも嫌なことがあったのよ、と語りたがり、ロッドはさらにいらついた。
何人かは行為の最中に、愛する男の名前を呼んだ。それでも女を女として扱うことに集中した。
ただ肌と肌を合わせていれば、その時だけ忘れることができた。
黄色い機械が唸る。耳を傾けてそのリズムに乗って腰を動かす。彼女らのニップのこりこりした硬みは真実らしかった。
亭主持ちと寝る時は流石に気分が悪かった。母親を犯しているような気になるからだ。
また、出て行った母親は同じように、もしかすると自分や姉貴や糞親父と一緒に住んでいた時から、
今ここで自分がしているみたいに、あの男とファックしていたのだろうかと疑ってしまい、嫌な気分になった。
彼にとって女とは自分勝手な生き物だった。なんと男らしくない、反吐が出るほど格好悪い、以前の彼なら自死すべき思想、
まったくもってフェアじゃないと彼自身も考えたが、磁石と磁石が引き合うように思考が深遠へ向かって吸い寄せられ、
気がつけば心の中で女を罵り、唾を飛ばしている。女は勝手だ。何を考えているのかさっぱり分からない。
お袋は自分を捨てて出て行った。認めたくないが、やはり邪魔だったのだな。
自分は逃げ出したいお袋をつないでいた鎖だった。だって見ろよ、思い出せば、今だって笑っている。おめでとう、お袋。
たまに寝る奴らは、俺に股を開いている癖に――(いや、やはりフェアじゃないな、これは。俺が突っ込まなきゃ始まらないんだから)
自分をまるで聖女のように思っているし、そうする権利があると何処かで考えている。あればいいな、と思っている。
そんなもの、誰だってないのに。今つきあっている男も愛しているってさらりと言えてしまう。
女性器、笑ってしまう。女性器!はは、カント!おまんこ!女として扱って、大事なところよ、女の……女の、
吐き気がする、口では神聖な風に言うが、ふいに誰かが入り込み、精液ぶちまけ、また出て行く、それでおしまい、ただの穴。
女に信念なんて存在しない。だから奴らはあんなに笑える。知らない男に抱かれて裏切りながらもあんなに楽しめるのだ。
女にあるのは神経だけだ。だから敏感なおまんこが女だ。奴らは神経の塊だ。面子なんて考えない。誇りもない。羨ましい。
腐敗しきったビッチのマンコが羨ましい。ちくしょう、何を分かったようなことを言っているんだ。
いらいらする、いらいら――機械が唸っている。そして、無性に人を殴りたくなる。下らない理由で。
「下らないこと聞いていい?怒らない?」
「昨日の晩飯はベーコンとサラダ。レーン家では最後にyで終わる曜日はベーコンとサラダが出ることになってる。
出なけりゃジャンクフード。頭にSがつく曜日にはシチューが出たりする。家訓にこう書いてあるからな。
よいか息子達よ、ベーコンが叔父さんでサラダが叔母さんと思え。彼らは困った時に助けてくれる優しい親類だ。
フィレミニョン・ステーキは三軒隣に住んでいる会計士の嫁さんだ。実に羨ましい――が食べてみるとそうでもないものだ」
「……今まで、何人としたの?」
「ティナは?」
「さっきので……三人目」
「違うぞ、主いわく三枚目だ」
「それどういう意味」
「ぺらぺらにされた男達、彼らは広大なる大地にどんどん敷きつめられてゆくのだ。そうして或る日、天上からティナ・マリアが降り立つ。
ああ、むべなるかな、大勢の男達が巨大な彼女の尻にしかれッて、おい、やめろ、やめ……あ……ああ!……あぁ……」
「次言ったら今の三倍にして返すから」
「信じられねえことするな、おい」
「……こっちの質問に答えて」
「忘れた」
「言えないくらい?」
「…………」
「ごめんなさい。あなたの知り合いから聞いたの。私達と会う前のあなた、どんな風だったかって。
こそこそ嗅ぎまわるつもりはなかったんだけど――言い訳ね、本当に、ごめん。でもあなたの口から、どうしても本当のこと知りたくて」
「五十人くらいかな。記憶が正しけりゃヘリ坊やもそう言ってる。別に、話たって減るもんじゃねえしいいけどよ」
「うん――でも」
「なんだ?」
「ちょっと不安になっただけ」
「どうして?」
「…………」
「おい」
「…………」
「なあ、どうした?」
「……どうした?どうしたどうしたどうした、どうしたって、どうして!?どうしてですって!」
「……?」
「どうしてって言ったさっき、その口、ああ言ったわよね。そう、どうして。ふうん」
「なにをそうかりかりしてんだよ」
「なんでそんなことも分かんないのよ!ああもうやんなったわ、ああもう終わりよ、終わり終わり。
帰るから。なによ、この皮ジャンジゴロヤンキーが。頭ん中かぼちゃの種つまってんじゃないの!?」
「待て、落ち着け、待てよ」
「待たないわよ。このパンプキンヘッド!」
「なあ、悪かった。気に障ったんなら……怒ってんだから障ってんだよな。悪かった」
「謝らなくていいから、証明して」
「…………」
「二度とあんな風にならないって。信じていい?なんて聞きたくないの。そんなの嫌。信じるか信じないか、私が決める」
「…………」
「……話したくない?」
「……いや、話す」
「…………」
「……どう言えばいいか、そうだな、まずは最低な気分だった。あれは、どうにもむかつく」
「どんな風に……ごめん」
「謝んな。むかつくのは終わったあとだ。終わったあと、この女と何をしてたんだって思う。
何も言うことがない。ただするためだけに会ってすれば何も残らない。ゼロだ。
自分の中で……ちくしょう、気取ってるな、こんな言い方は、でも、本音を言えば、色んなものがなくなり続ける」
「なんで続けたの?」
「……女が」
「…………」
「ああ、ちくしょう……くそ……女が、女が嫌いだったから」
「……今は?」
「分からない。でも」
「いいわよ、そんなの。本当のこと言ってくれた方が嬉しい。でも嫌いなのに、たくさんの人と寝たの?それって矛盾してるじゃない」
「してるな。結局、大事な点は気がつけばぐるぐる同じところを回ってるってことだ。
最低な気分なのに、よくしつけられた犬みたいに自分からその場所へ戻りたくなる。
それが好きな奴もいる。回ってない風に上手くやれる奴もいるだろうな。人それぞれってやつか。
でもな、俺は自分がどんどん情けない男になってる気がした。地獄があるとしたらきっとあんなところだろうな。今は戻りたくない」
「…………」
「もう、絶対、しねえ。心配すんな」
「……ありがとう」
「泣くなよ」
「……信じる。決めた、信じるからね。信じる!……ロッドは私を信じる?」
「信じる。わたくし、元皮ジャンジゴロヤンキーはティナ・グレイの手となり足となりお守りいたすことを誓います。
槍持ちは一人もおりませんが、犬は一匹ございます。老いてなお盛んなり、地球を三回周ってワンと吠え、
火山に飛び込みしーしー火を消し、インスマウスのケツにも噛みつくタフ・ドッグ。ああ見えても相当の手練でございますよ」
「もう、ほんとに!……あ、そうだ、思い出した」
「まだなんかあるのか?」
「ついでに言っとくわ。初めて会った時、ほんと、あんなこと急に言われてびっくりするでしょ。
会ったその日で急に手握ってきて軽いんだから。いっつも思うんだけど、普通ね、ムードとかいろいろ」
「好きだ」
66 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/30(金) 23:03:16 ID:Jdts6APw
ちょっと古いけど
HEROの 久利生(キムラ)×雨宮(松) が読みたい
そう、ティナは違った。ティナだけが女として与えてくれた。
ハイスクールの糞つまらない最低の入学式で、ロッドは最高の女を見つけたのだ。
我に返った瞬間からいてもたってもいられずに走っていた。馬鹿らしいことだが、遠くで談笑している女があまりに素晴らし過ぎて、
早く捕まえないと、いや触れてみないと実態かどうかも分からない、この機を逃すと一生会えないんじゃないかと感じたからだ。
撃ち落とされると分かっていても突撃するしかなかった。信じられない、いったいどこの世界から来たんだ、と訊いてみたかった。
ジョークを言っても気が定まらない。オチを忘れそうになって、必死に思い出しながら、彼女を楽しませた。
彼女の笑顔には誠実さが滲んでいた。笑顔だけではない。髪に手をやる、そっと振り向く、空を見つめる、ふてくされる、首をかしげる……
仕草の一つ一つに男を欺く汚らしい作為など微塵も感じられず、それなのに奇跡的に美しかった。
むりやり輪に入り込んで、しゃべり倒した。時期尚早なのは十分理解していた。しかし心と身体がシールをひっぺがすように剥離してゆく。
ダメだ、早い、バカ、突然すぎる、まだ勝負するには……嫌な顔をするに決まってる――ストップをかけても手が勝手に動いている。
ついに抑制の砦が木っ端微塵に崩れ落ち、彼が小さな手の平を両手でぎゅっと握ってありったけの心を込めて飛び込めば、
巡洋戦艦プリンセス・ロイヤルの343ミリ砲八門が一斉に火を噴いたのだった。
その日からロッドは盛り場へ行くのを止めた。
肉体的にも精神的にも手痛い洗礼を受けたものの、
最後の直線で驚異的な差し足を見せ、何とか二着、つまり友人の枠に滑り込めたからだ。
(彼は殴りあった相手に初めてアイリッシュ・ウイスキーを奢ってやりたい気持ちになった。よお、どうだい?元気でやってるか?)
上々とは言えないが悪くない。まずまず、しかし――ベッドで仰向けに寝そべりながら、こう考えた。
初めて女に好きだと言えた。自分は、もう一度、変われるかもしれない。
そして最初は信じなかったのだ。ティナが?いや、ロッドが。
話をするにつれて、本当に自分は女を愛せるのだと、ますます彼は驚いていたのだから、格好だってつけようというものだ。
彼は三人と過ごす内に男のなんたるかを徐々に思い出した。怒髪天をつくと抑えきれないのは相変わらずだったが、
破滅へと突き進ませる黄色い機械は心の奥底で静かに動きを止めていた。鳴り止んで久しくなり、二人は性交に至った。
ロッドはなんだか改まってしまう。あれだけ大勢の女を抱きながら、ティナにだけは簡単に手を出してはいけないと思ってしまう。
ティナがはにかみながら、服を全て脱ぎ捨てた時は、
高原の真ん中で白雪に囲まれながらそっと咲いているLeontopodium(エエデルワイス)を見つけたような気持ちになった。
折ったり枯らしたりなどできようはずがない。彼は蜜蜂が花粉を運ぶようにクリトリスに触れた。
そうしてというのならそうしてあげた。いいというのなら。彼女がそれで満足するのなら、自分も満足できる。
しかし、従順なセックスを重ねるほど、貪るように抱き合いたい欲望も湧いてこないではなかった。
ティナと出会う前、行きずりの女達にそうしていたように。股間のモノを突き立てて、快楽を与えることだけ考えて、
ティナを歓喜の声で鳴かせてみたい。三回生まれ変わっても十分なくらいやりつくしたい。
あの夜――彼女が切り刻まれた……白い精液をぶちまけて、白い――
精液。
今、ロッドは立っている。頬に熱を感じ、指でそっと触れてみるとじゅんと痛みが走った。
どういうわけか、少し腫れているようだが、問題ない。家に帰って冷やせばいい。
それにしても、ここはどこだろう?自分が知らない場所には違いない。
乳白いもやが膝の辺りまで立ち込めている。来ては行けない場所なのかもしれない。
一本道、洞窟だろうか。それにしては、足場が柔らかすぎる。ゴムの上に立っているようだ。
左右は合わせて10メートルほどの幅を残し、滑らかに膨らんだ桃色の壁に覆われている。
脚を振って、下のもやをはらってみる。もやには存在を確認できるほどの微かな重みがある。
薄暗く、不快な臭いがする。潮の香りに似ているが、それでもまだ適切ではない。
金属片、化学物質などが出す臭いではない。生きているもの、そしてどこか懐かしみを覚える臭い。
何度かつま先で地面を蹴ると、突いた場所がにゅうと伸びて跳ね返ってくる。
踏みしめるようにして立つとブーツのかかとが少し沈む。
顔を下向けると、自分の細い影がもやに紛れて歪曲しながら奥へと向かって伸びている。
交わるところへ目を下ろす。桃色の地面。もう足の甲まで沈もうとしていた。右足を横に動かしてみる。
さっきまで踏んでいた場所が、靴底の形に縁取られて、外へ向かい放射状の線を引いて、ほんのり赤く染まっている。
押しつけられた部分が盛り上がってゆく。赤色が徐々に中心へ向かって薄まり、また桃色に戻った。
なんなんだ、ここは?いったい――。
前後確認、ゆっくり振り向くと、小さな円が見える。そこから強い光が漏れている。光源に近い。
真昼の太陽が目の高さまで降りてきているような違和感。距離はずいぶんありそうだ。
光。
不思議なことに、ロッドはその光を見た瞬間、残酷だ、と思った。
汚らわしい。この光は何も与えはしない。きっと、ここから出て行った者の全てを奪いつくすのだ。
凝視すると、深遠に横たわる何者かから逆に覗き込まれているようであった。
言い知れない恐怖で唾を飲み込み、また前を向いた。
問題はどちらに進むかだ。前の暗闇か、後ろの光か。どちらを選んでもそう違いがあるとは思えない。
ロッドは前進を選択した。気まぐれだ。暗闇の奥深くまで歩いてみようと、右足から一歩を踏み出した。
途端に頭が痛んだ。目覚めさせられるような耳鳴りがする。いぃぃぃぃいいいぃぃぃぃぃぃ――。
思わず両手でこめかみを押さえる。記憶が荒波のように襲いかかってくる。
父親の拳、顔を打たれた母と自分、いけすかない母の恋人、ジストの艶笑、悪友達、
機械になったジャクリーン、姉との口論、一夜限りの女達の身体の感触、グレン、ナンシー、そしてティナ。
何とか静めようと、幾度も頭を左右に振って、最後に瞬きを大きく二回すれば、もうしっかり理解できていた。
家には帰れそうもない。それにデートの約束だってしている。そう、夢の中で。
もやを掃除するまで1メートル先すら定かでない。じっと見つめれば、もやは芋虫が這うような速さで奥へ向かって流れている。
唾を吐いたあと、ジャンバーの内ポケットに手を差し込む。
半信半疑でかきまわし、紫色のプラスチック製のデジタル腕時計を探り当て確認すると、画面には10:05と表示されている。
落ち合うにはまだ早い。だが、おあつらえ向きだろうぜ、と考え直す。何事も一対一でやるものだ。殺し合いだろうと。
念のためアラームの時刻を設定しなおし、時計を元のポケットに仕舞ってから、右手を伸ばして、もやをかきわける。
湿っている。横なぎした右腕のジャンバーに白い雫がいくらか付着して、すうと線を引いた。
指をこすり合わせると多少の粘り気がある。
やはり、夢だ。
ロッドは右上腕部の傷を服の上から左手でぎゅっと握った。
熱い、じぐじくした痛み。負けないように息を整える。ティナ、心の中で一度強く呼ぶ。当然、返事はない。
もういつ現れてもおかしくないのだ。いや、きっと来る。
奸智に長けた悪魔は、今この時も、鉤爪を一本一本舐めながら、殺戮の機を窺っているのだろう。
ロッドは前進する。20メートルほど歩いたところで、ほんの少し、黄色い機械の囁きを聴いた気がした。
(to be continued→)
69 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 15:58:21 ID:6FCeQXF/
GJ 続き期待してます。ティナかわいー。
ロッド女運悪すぎ。でも何か好きだー。
−Garbha Grha−
痛く、なかった?まさか……びっくりしたよ、バージンだなんて。
いや、すまない、そういう意味じゃないんだ。
……ありがとう。
だって、正直言って、君がこんなに綺麗だから。
あれは、もう五ヶ月前のこと。シェリルは思いだし笑いで眉を緩めながら、ファッション用の水色のシャワーチェアに腰掛け、
少し冷たいくらいの温度で、肩にヘッドを当てた。頭を冷やしなさい、と自分に言い聞かす。
こんなことで調子に乗ってたら、女はやっていけないんだから。
正面の大理石のタイルはよく磨かれていて、砂時計のようにくびれを有した胸から尻にかけてのラインが縦に圧縮されて映っている。
ちらと眺めてみて、もう少し痩せなきゃだめね、と気を引き締めた。まだ十分じゃない。もっと美しくなれる。
シカゴへ来て働くようになってから、そして――決定的な「あのこと」があってから、シェリルは変わったのだ。
在学中に取った経理の資格など何の役にも立たなかったが、
害虫駆除の会社を営んでいる叔父のツテをもらい、そこの事務職にありついた。
初めは右も左も分からない上に、醜女のハンデキャップをハイスクールにいる時よりも嫌と言うほど思い知らされたのだ。
容姿が不自由な女は生きている価値などない、そう言わんばかりの男達は、変わろうとした自分を変わるなと押さえつけ、
それでも変わってしまったのを認めれば、一斉に手のひらを返した。
シェリルは彼らの顔を思い出し、馬鹿らしくなって鼻で笑った。
だいたいろくな仕事なんか与えられちゃいないんだから。それに、私はできる方、悪くないし、今は――
心の中で囁きながら、ボディ・ソープをたっぷり含んだタオルで、二月前からおびただしい絶頂を味わっているヴァギナを掃除する。
生理が終わったばかりだから、念入りに洗っておかないといけない。
おりものの臭いはきつい方で、多い時は服の上からでも臭ってこないか心配になる。
デブで臭かったなんて、以前の自分は養豚場で飼われていたようなものだったから無理もないけれど、情けなくなる。
今丁寧に拭いて綺麗にしているけれど――シェリルはまた鼻で笑った。
職場のごろつき共には頼まれたって見せてやることはない、もちろん、それ相応の相手のためにここまでしたのだ。
中まで洗いたくなるのをこらえて、シェリルは広げた手にタオルを乗せて、ゆっくり、慰めるように、ヴァギナをなぞっていく。
実際、少し感じていた。初めて寝た時、念入りに形を調べた。そろそろ、もう一度確かめておきたい気持ちもある。
人差し指と中指で肉の境界線に沿って下から上へ辿ってみる。
びらびらは上半分からフードをかぶりそこねたようにやや非対称にはみ出している。まあ、仕方ない。
タオルごと、指を入れてみる。自分の部屋でも十分確認したので、分かっていたことだが、やはり広がっている。
相手のサイズに合いつつあるのだろうか。少し悔しい。だが、動かされても、無理をしている感覚がなくなったのは幸いだ。
一番大事なところ、変わっていてほしいところへ手をやる。
変わっていない。
包皮は初めっから剥けているどころか、小指の先ほどのクリトリスがすっかり顔を出している。
まさにピンクの豆、顔に見立てれば額のてっぺんに大きなほくろがあるようなものだ。
身体は自慢できるくらいスリムになった。痩せたおかげで顔も見違えるほどよくなった。
眼が大きく、鼻は高い。それはいいとしても、口まで大きくて悩みの種。腹が立つことだが弟に似て彫が深い。狼がかった男顔だ。
実年齢より上に見られるのもきっとこのせい、メイクはまだ練習中、眉と睫毛は無難にまとめて、薄化粧に止まっている。
しかし、前向きに考えれば、化粧映えしない顔でよかったのかもしれない。落とした瞬間に幻滅されるよりマシだ。
やはり、クリトリスだ。可愛らしくなって欲しかったのに、痩せてからさらに大きくなったように感じる。
相手がびっくりしないだろうかと、処女を散らせた時は不安だった。結局、問題はなかったのだけど。
シェリルはタオルを洗ってきつく絞ったあと、ホースをくるんと回して肩の後ろからかけた。
やや横に広がってはいるが豊満な胸に水圧を感じる。胸。まだジャクリーンには到底及びそうもない。
シェリルはここ最近思い浮かべているジャクリーンの顔を、今度もまたはっきり頭に描いて、たっぷり水を飲んだらくだのように笑った。
いつもなら身体を洗えばすぐに出るところだが、ケニーをじらしてみるのも悪くない。回想に浸りたい。
そう、ジェリーは仲間内では文句なしに最も美しかったのだが。
体育の授業が終わったあと、今みたいにシャワーを浴びて、更衣室で着替えていたのだ。
あがったばかりなのに腋の下から汗をだらだらかいていた自分。
それに比べてあの芸術的な胸!女蛇のようなエロスを備え、それでいて知的で上品な顔!見とれたことは一度や二度ではない。
幼い頃はそれほど差がついているとは思わなかったのに、
ハイスクールに入学した時、彼女は何万光年の彼方に到達し、見えなくなっていた。
腹が二つに分かれているのに何を言えというのだろう。肉がしたたり落ちそうな二の腕を晒して、対等になんかつきあえない。
「そんな顔してじぃ――と見ないで、恥ずかしいじゃない」
ジェリーはそんな自分を、何でも知っている風な目をして、少し距離を離して、どういうべきか困ったような口調で……
笑ったのだ。
もっとも、ジェリーはくたばった。
あんなに美しかった容姿をあろうことか自らだいなしにして、生命を絶ったと、ベティから連絡があった。
ジャクリーン、うつ病から拒食症を併発、その他もろもろを経て、最後には骨に皮が張りついたごぼう。
そう、ベティの話によれば、だが――夢の中でジェリーは健康な身体に戻り、身ごもっている。
ジェリーは一人ぼっちで分娩室にいる。室と言ってもどれだけの広さなのか分からない。
濃い闇に四方を囲まれている。たった一つ、自らが乗っかっている分娩台の周りだけが、蛍のように光っている。
医師どころか看護婦すらいない。声をかけてくれる夫もいない。夫?産まれて来る子の父親が誰かも分からない。
それでもジェリーはグリップを握り締め、あぶみに足をかけ、孤独な闘いを続ける。
あそこが裂けそうな痛みを我慢して、うんうんいきんで、やっと産まれた待望の赤ちゃんは、
流れて知らず胎内に留められていた、赤と白と黄色でできた内臓腐肉の塊だ。
頭から出てくるらしい。
つくりかけの臓腑を、おそらく絶望感でいっぱいになりながらひりだして、目が覚めれば脱糞している。
食が細くなりすぎて内臓がやられ、慢性的な下痢を伴っていたから、
シーツやパジャマには、黄色や茶色のみならず、ところどころ食べたものの色がついてしまう。
結局、ジェリーはおむつをつけて過ごすことになった。彼女自身が赤ん坊にそうしたくてたまらなかったろうに。
血塗れの死肉と糞便、異なる腐臭をかわりばんこに嗅がされるのはどんな気分なのか、想像もつかない。
ベティは言っていた。偶然よ、見に行ったんじゃなくて、偶然……。ジェリー……叫んでたの。
くさい!どうして!?私の赤ちゃんなのに、ぐちゃぐちゃで、くさい!
ジェリーが糞に向かって言ったのか、夢の中の残骸に向かって言ったのかは定かでない。
起きている時、ジェリーはずっと自分の身体を罵り続け、鎮静剤を打たれても、
幽霊のような顔で、夢の中で産まれてくる子につけるはずだった名前を、つぶやいていた、のだとか。
クリス、つづりは分からない、どうやら男の子らしい、とベティは言っていた。
ジェリーが死ぬ少し前に見ていた夢は聞くもおぞましいものだった。
ベティが、ジェリーの母親の愛人からその夢の話を聞いたのだが――愛人と見舞いに来ていた彼女を、
ベティは電話口であばずれの無神経女だと罵っていたが、そうは思えない。
一度戸籍に傷がついた者の身になれば、頭がおかしくなった娘がいるなどと、知られたくないのが普通じゃないかしら?
もっとも遊びの相手なら話は別だけど――始まりはいつもと同じく分娩室に寝かされている。
だが、今度は産ませてすらもらえない。できようはずもないのが夢の中でも理解できているのに、
鉤爪をはめたブロンドのおかっぱの女医に、麻酔なしで腹から性器まで真っ二つにされ、
これが子宮、これが卵巣、これが卵管と散々女の証明を弄繰り回されて、
五体全てをざっくり爪で刻まれながら症状を説明される。良いのか悪いのか痛みはないのだそうだ。
不幸なことに夢を鮮明に記憶していたジェリーは、治療と称して医師にその内容の告白を要求された。
鉤爪の女に言われたことは実にひどい。
低い背、手の平の一本線、やや未熟な骨格、早期閉経……、ターナー症候群についての説明を終えたあと、
その夢の中の女は、不妊治療の心構えについて、説き続ける。
不妊治療はただひたすら長い距離を歩き続けるようなもので、
強い忍耐と自分のみならず相手を信じる心を必要とするが、それは可能性がある者にとってのことだ、と。
お前は何をやっても無駄なのだ。排卵誘発剤を使おうが、人工授精をしようが、卵子が全くないのだから。
お前は図書館でこっそり医学書を読み漁り、溺れるものは何とやらで東洋医学に頼った。
美しい体型はその副産物でもある。漢方、針治療、ヨーガ?
無駄。何をやったってこれからもずっとできないのだから。
ターナーの割りに、胸が発育したこと、顔まで醜くならなかったことをよろこぶべきだ、と。
最後に、嬉しそうな声で、ジェリーは、そっと、繰り返し、耳元で、こう言われたらしい。
お前はできそこない。お前はできそこない。お前はできそこない。お前はできそこない。お前は……
腹が開いて、小腸がうようよしているのに、胸の内だけが破砕して、大声を挙げながら泣いている内に目が覚めるのだ。
ぞっとする。
ジェリーが不妊で悩んでいるのを知っていたのは、仲間内では一人もいなかったろう――
シャワーのヘッドがずり落ちて、水流がへそにあたった。
シェリルはしばし記憶巡りをストップして、眼を閉じ自分の赤ん坊の顔を想像してみた。上手くいかない。まだのっぺら坊だ。
いずれ欲しいのか、それとも一生欲しくないのか、自分自身に問うてみたが、それすらも判断がつかなかった。
今度は家庭という言葉を咀嚼してみる。ハロウインのお化けのように、現実的でない。なぜ?
こんなことじゃいけない。シェリルは気を引き締め、いわゆる「素晴らしい家庭と思われる場面」を頭の中でいくつかイメージしてみたが、
それだってどれもこれもしっくりこない。夫が今つきあっているケニーであるということだけだ。
何パターンか無理やりやってみたが、全てがホームドラマのようにありきたりで、嘘くさかった。
シェリルはめんどうくさくなり、再びジャクリーンへと想いをはせた。
どうやって死んだのか、それが重要だ。
そう、ジェリーは――美の神アフロディーテのような乳房はどこへやら、最後は州立病院内科へ転院の運びとなったが
(精神病院にまず入れるべきだったのだが、体力の消耗が著しかったらしい)、二週間と経たない内に点滴の針を抜き取って、
シーツをベッドの手すりの端に結んで、脚を投げ出すような格好で首をくくって死んだ。
シェリルはこれから何をするのかも忘れて想像した。赤ん坊や家庭よりずっと楽しい題材だ。
まず、顔――骸骨じみた眼窩から利巧ぶったグリーンの瞳がこぼれ落ちんばかりの勢いで飛び出している。
舌は暑さでへばったセントバーナードのようにだらんと垂れ下がっていたに違いない。
枯れ木のような身体、背丈が低いから、見つけたのが看護婦でなければ、見舞い客が持ってきた人形と思ったろうか。
まさか、そこまでは。
しかし、万が一見間違えたとしてもすぐに気づいたろう、アンモニアの匂いで、何が起こったかを。
白の下着が薄い黄色に染まり、骨だけの腿と腿の間に小さな溜まりができている。
男に媚びたピンクの唇(お化粧なんかしてなかったでしょうけど、屍が映えるからいいわ)の端から泡つきの涎が糸を引いている。
鬱血した肌は首から上だけさつまいも色?芋。かつては頬張っていたもの。
笑いがこみ上げてくる。我慢しろ、声は出しちゃだめ、と思うのに、
意外に大きな声が出て、なんとか口を塞いだが、にやけた顔が戻らない。
まだ気は抜けない。扉の向こうでは十歳上のケニーが待っているのに、はめを外したげらげら声が出てしまいそうだ。
シェリルは想像上の醜い屍体に、心の中で問いかける。
どうして死のうと思ったのかしら。子供ができないから?ご愁傷様だけど、それだって強く生きてる人はいる。
それとも鏡で見たの?自分の顔を。病院の薬臭いバスでお婆ちゃんみたいな身体を洗って、どんな風に絶望したの?
屍体は当然答えない。
いったい、ジャクリーンみたいになりたいと思ったことが何度あったろうか。
常に憧れであり、幼い頃から見知った仲であり、密かに軽蔑すべき対象であった彼女は、もうこの世にはいない。嬉しいことに。
つきあっていた男と別れたことは知っている。
旅立つ前、見送りに来なかった彼女は家に閉じこもりきりになっているのだと知り、その時はただ寂しかった。
嫌な予感は当然あった。ついにジャクリーンが死を選んだと聞いた瞬間、熱いものが胸にこみあげて、報われない彼女に涙を流した。
そしてろくでなしの弟が代わりに死ねばよかったのに、と思ったのだ。いったんああなれば、もう可愛くともなんともない。
あの大昔、犬を撫でている弟を見た時、どうせ野蛮な弟の方がひっかけてことに至ったのだから、
そう判断して、ついに正真正銘クズ中のクズに成り下がったと侮蔑を込めて、罵倒したのだった。
でも――同時にとても羨ましく感じたのだ。
正直に言えば。
そう、子供の頃から知っているジェリーを奪われた気持ち!
言ってやればよかったのだ、とシェリルは思う。今、口に出してみようかしら?
あんたは彼女の何を知っているの?私からジェリーを奪わないで!そして今は
「ありがとう」
言ったあとで、シェリルは溜息をついた。後悔の念が渦を巻いている。
どうして死に目を見なかったのだろう。ともかく、訃報を聞いたあとすぐに故郷に舞い戻るべきだった。それは疑いない。
当然、あのしみったれた家に寄るつもりはない。震度八の地震でも起きてぺしゃんこになればいい、父と弟つきで。
そんなことよりも、棺にすがりついて、涙を流しながらこっそり言うべきだったろう。お礼の言葉、死んでくれて、ありがとう。
しかし、今思い返しても、受話器を置いて五分後には、やけに落ち着いていたのだ。
自分はこんなに冷たい人間だったろうか、と薄ら寒くなったのがはっきり思い出せる。
そして次の日、目が覚めてみれば真っ青な空を見るように晴れやかで、職場の男共にいびられた悩みが嘘のように消えうせており、
社長室の棚にしまってある上物をこっそり持ち出して、乾杯!一人で祝杯をあげたい気持ちにすらなっていたのだ。
当然葬式にも出なかった。もっともここからエルムは遠い。そう簡単に休みは取れないし、事情が事情なので、
葬儀は親族とごく仲の良い関係の者だけでしめやかに行われたらしいが、
それでも後になって、今になっても、死に顔を見ておけばよかったとは思っている。
葬儀が終わったあと、これまたベティから聞いたのだが、別れた男は顔も出さなかったらしい。そんなものだろう。
その時だ。ベティが電話口で「ジェリーのお母さんはやっぱりあばずれ。娘の葬式の時、男の手握って頬染めてたのよ」
と言い終わった時、頭の中では別のこと、そう、ジャクリーンの死に化粧が塗られている痩せさらばえた顔を想像していて、
その時になって初めて気づいたのだ。
自分は全ての男と美しい女を憎んでいる。
認めたくない。だけど――。
知らずの内にシャワーのヘッドがヴァギナへ向かっていた。
回した肩口からするする降りて、陰毛を通り過ぎ、ちょうど股の間に滑り込んだ。
シェリルは驚いて、反射的に股をきゅっと締めた。ヘッドの先がシャワーチェアに押しつけられ、しっかり固定された。
放射された水の束が泡を一気に洗い流し、めくれかけた小陰部の上方を押し広げ、その勢いで、中の秘肉を微かに露にした。
もぞもぞした快感がびらびらを襲ってきた。さらに強く股を締めてしまった。
図らずも、最も敏感な部分に二本の強い線が当たった。深く鋭い。そして熱い。
「ぁん」
艶かしい声を出してしまった。すぐに前かがみになり、ホースを手で払ってヘッドを床まで落としたあと、
口に両手をしっかり当てて、その中で笑った。
くっ、くっ、声が漏れた。くはっ、くふっ、だめだと分かっているがどうしようもない。おかしくってたまらない。
……うんこも漏らしたんだわ、きっと。
もう一度、ホースを握り、ヘッドを引き寄せ、残った泡を洗い流してから、元栓をひねった。
シェリルはバスルームの扉を開き、外の網かごからタオルを引っ張り込んだ。
もう幾度繰り返したろう。その度に思うのだ。
そう、だけど、受け入れたのだ、と。受け入れて変わったのだ。
ジャクリーンの自縊、自分に突き刺さっていた理不尽な視線、それらは逆説的に真理を示しているではないか。
あれだけ完璧だったジャクリーンは、不妊という神がもたらしたつまづきによって美貌を失って落伍し、
自分も経路は違うがそうなるところだった。
女として正しい道を歩むために(母は阿呆だ)、掃き溜めの家政婦から年収8万ドルの恋人へ、自分は変わったのだ。
シェリルはタオルで身体の隅々まで念入りに拭いたあと、バスルームを出た。
使ったタオルを網かごに戻し、もう一つ余らせておいたタオルに身をくるんで、ケニーが待つ広いベッドへ向かった。
彼はと言えば、もう準備はできているようで、乾いてしまったブラウンの髪に短いタオルをかけて、毛布から上半身だけ出している。
「もう待てないってバスに押し入るところだった」と笑いながら、タオルを放り投げて言った。
「ごめんなさい。ちょっとね、昔のこと、思いだしてたのよ」
ケニーが毛布の端を手で掴んで広げ、そのまま床に落とした。いつも、何もかけないでしたがる。
顔は笑っているのに、股のものはひどく猛っていた。こんもり茂って茶色がかった秋の茂みから、
茸と表現してもいいくらいの大きな笠を持ったペニスが腹へと沿って伸びている。
「聞かせて欲しいな、その話」
「やあよ」
77 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 11:29:42 ID:T4QaoR1P
〉頭から出てくるらしい。 この一文だけで、ぞっとした。凄い。
シェリルは娼婦のように微笑み、ベッドへ近づいた。身体をくるんだタオルを、歩くに任せて下へとずり落とした。
乳房は横に広がっているが、肌の張りは保たれている。乳輪が大きくクレーターのように陥没しているのに、
中心のやや黒ずんだ乳首が、男なんかいらないわ、と言わんばかりに、そっぽを向いている。
「ねえ、見て」
戯れだ。
シェリルは拭いたばかりの髪を両手でかき乱し、脚を悩ましげにクロスさせ、胸をしゃぶれと命令するように突き出した。
襟足や横を巻き髪に、前髪は短くしている。彫の深い男顔を柔和に見せる黒のショート・レイヤーだ。
入浴により、形は多少崩れているが、それが返って、理性に縛られがちな男の欲情をそそるのだ。
「どう?」
目の前のケニーが唾を飲みこむ。シェリルは長い唇を中心にすぼめて、キスを飛ばした。
そこまでしたのは、ケニーの喉が持ちあがり沈んだ瞬間に、音が聞こえた気がしたからだ。
「凄いね」
「あなたも……ほら」
「待ってる間、考えてたからさ。昔のことじゃなくて、これからどうするか」
シェリルは肩をすくめて、ベッドに脚を崩して座り込み、ケニーと向き合った。
ふわふわの乳首が広い胸に触れ、硬いペニスが締まった腿に当たった。
抱き寄せるように腕が肩に回され、より、身体が近づいた。ぴったりくっつけて、はにかんだ笑みをこぼす。
凛とした狼女が見せる照れ笑いは、鬱蒼たる森に浮かぶ月のような妖しさを醸している。
「やっぱり、綺麗だ」
その言葉で、シェリルはがっつくように、男の唇に吸いついた。
「は、う、む……」
煙草くさい。いつかやめさせなきゃ、と思いつつ、開いた口に舌を差込み、相手の舌を持ち上げた。
初めての時、歯の裏まで執念深く舐められて、キスだけで信じられないほど濡らしてしまったのだ。
痴れ女だと一方的に決めつけられ、乱暴にかき回されたりしないだろうかと不安になったのだが、杞憂に終わった。
至近距離まで顔を近づけるのも恥ずかしかったが、今ではもっと見て欲しくなってさえいる。
「む……」
ケニーも積極的な彼女に応じた。シェリルは負けないように押し返し、舌を舌で操ろうと、目を挑戦的に輝かせた。
ダンスを楽しもう。
初めての時は何をすればいいのか分からず、相手に任せていたのだ。
慣れてからは先走っていた。女にならなければ、ジャクリーンのような女に――。それで、上手く達せなかった。
ただ熱くなった身体に任せればよいのかもしれない。今までそれで上手く行っているのだから。
「うむ……むぅ……ふぅ」
歯と歯が当たった。シェリルは目を閉じ、しなやかなペニスを想像した。
ズル剥けのクリをいじられて、つるんと入れられたらどんなにいいだろう。
火照ってきた。鼻息が頬に吹きつけられた。
「うぅ」
前のめりになる。舌を吸われたのだ。唾液が相手の口に流れていく。シェリルは心の中で訊ねている。
それ、私のつばよ。何にも変わらない。べとべとして、太ってた時と同じよ。美味しい?いくらだって飲ませてあげる。飲みたい?
決して言えない秘密を告白して、ほくそ笑む。
「ふぅん!」
吸われた舌を強引にねじって、歯肉まで嘗め回す。男の口内を味わいつくす。乳首が勃ってきた。
唾液で発情する女だなんて――ちがう。シェリルは否定する。しかし、股を閉じていても、汁がだらだら垂れている。
ふいに手が滑り込んで来た。「ん!」
預けた唇の中で呻き、一度撤退を試みた。だが、ケニーがそれを許さない。
舌を吸われながら、目をぎゅっと閉じて、呻く他ない。骨ばった指がヴァギナの下部からゆっくり、軽くえぐるように通過していく。
入り口に触れる。ぷちゅ、と卑猥な音と共に第二間接まで差し込まれ、やんわり中を押し広げるように持ち上げられた。
「ん!んぅぅ!」
唇が離れた。ケニーが身体を移動させ、シェリルを後ろから抱きかかえた。
広い男の胸で背中全部を包まれる安心感。しかし、怒張したペニスは腰にぴったり押しつけられ、切迫した興奮を訴えている。
抜かれた指はわざとクリトリスを避けて、シェリルの鼻の上で止まった。濃厚な、潮干狩りでみつける蟹の臭い。
「見て。いつもより……」
シェリルも分かっていた。いったんスイッチが入るととめどなく湧いてくるが、今日はその中でも特にひどい。
スープを飲み損ねた赤ん坊の口のように垂らしている。唇を合わせた瞬間に中がじゅんとして、クリがひくついたのだ。
ジェリーのせいだわ、とシェリルは思った。
自らの愛液がまとわりついた指に、シェリルは口を伸ばした。人差し指全部をぱっくり含んでべろべろ舐めた。
爪はしっかり切られているが、それでも指から引き剥がさんとする勢いで舌を押しつけ吸った。塩っからくて生臭い。
下品な味が性欲の深さを自覚させる。膣穴がさらに愛液を滴らせる。
ケニーは右手をシェリルの口に預け、今度は左手でヴァギナをさすった。
全体を包むように撫でまわすと、粘膜に付着した愛液が手の平の間で糸を引き、くちゅくちゅ音を立てた。
「凄く濡れてる」
耳元でそっと囁かれて、シェリルは頬を染めた。恥ずかしい。言われるがままに、あふれている。
ケニーが後ろから両脚を回し、膝にかけ、そのまま開き、うかんむりを書くような格好をとらせた。
秘肉への刺激がより強くなった。ペニスもより強く背中に押しつけられた。シェリルは羞恥心を押し隠すように指をしゃぶった。
そして、夏の暑い日、クーラーをかけず、シャワーも浴びず、この部屋で抱き合ったことを思い出した。
彼が望んだのだ。バスルームへ行こうとしたところを押し倒され、待ってというのに、だめだと拒否され、
肌に密着したシャツとパンティの上から指や舌で念入りに嬲られ、つんとすえた臭いを嗅がれ、だらだら汗をかきながらまぐわったのだ。
日曜の昼間、部屋に強い光が差込み、汗っかきの体質や深い絶頂を味わったこともあって、
身体中の水分を吐き出す勢いで、穴という穴から体液を流した。
ケニーはいつにもまして興奮し、女の汗は香ばしいとでも言わんばかりに、首筋から尻の谷間まで、舌で汗を舐めずり取っていった。
終わったあと、喉の渇きを唾液交換で補ったのだった。
「キス……もっと」
ケニーがもう一度、ヴァギナへの愛撫は続けながら、唇を塞いだ。また舌と舌が踊った。
シェリルは自分の胸へ手を伸ばした。寄せて揉みしだく。乳首を指でつねり、こねくり回す。
疲れて動きが落ちてきたところで、ケニーが唇を離した。
「顔、見せて」
顎に手をやられ、シェリルは目で犯された。力が入っていない、相手の目を意識しては、つくれない顔。
そんなにじっと見ないで、と言う元気もなかった。既にとろけていた。
強い女に見せるために、見下されないように、ずっと意識してきた。媚びる女を内心馬鹿にした。
そうやって形成された強張った顔が、目を潤ませて、唇を突き出した、いじめられた泣き虫顔になっている。
「可愛いな、シェリーは」
「……いや」
「本当に、いや?」
ケニーの左手が形を変えた。狙う場所は、指のすぼめ方で分かる。彼はいつもそのようにしてクリトリスをいじくる。
「うそ、いい、いいわ!」
またあの感覚が味わえる。ヴァギナが一度大きく震えた。その動きで汁がどろっとあふれた。
豆のどこを狙われると弱いのかが、既に分かられているのだ。必ずそうされるだろう。
「罰だ」
いつものように両側から挟まれる。これをされると極端に弱い。クリトリスと包皮がつながっている境目。
ケニーの人差し指と中指が、挟んでいる。一分ほどすりあわされただけで、ヴァギナが燃えるように熱くなった。
深い刺激が股の中心から染み入るように広がり身体を包む。ただでさえ大きいクリトリスがぷっくり膨らみ、三つ目の乳首に変わった。
「膨らんでる。シェリーの好きなとこ」
「こ、こえっ、出ちゃう、へんな……こへっ」
「出して」
ケニーの指がシェリルのためだけのリズムで、クリトリスを回した。
シェリルは恥ずかしがらずに声を出そうと思った。高く、激しい、女の子らしい声――それでイキたい。
「あッ、ひあ、あっ――」
なんてはしたない、媚びた声、だが、それがより快感を高めてくれる。身をよじらずにはいられない。腕の中で、背中を反らせる。
「いい?」
もはや愛液は濁流となっていた。穴が喋りだす。口を開き閉じる度に涎を流す。
「あっ、あっ、いいっ、いいっ!」
きゅっと挟んで引っ張られた。
「だめ、それ、だめえっ」
「どっち?」
「い、いやっ、あっ、あたまっ、おかひく、なるっ、あっ、あッ――」
「なって」
ケニーが背中に回していた腕を下ろして、余った方の人差し指で、回したままのクリトリスの先をノックした。
最近、覚えさせられた新しい刺激だ。眼を閉じて、シェリルは快楽だけ受け入れる。より深く、激しく迎えられるように集中する。
速さは変わらない。最初から最後まで好きなリズムだ。しかし、かかる力が微々たる幅で大きくなる。
もう少し――、もう少しで――。
「……えっ?」
達する寸前で刺激が止まった。波が急速に引いていく。なんで!シェリルは叫びそうになった。
恨みがましく目を開けると、いつのまにかベッドに仰向けになって寝かされていたのだった。
シェリルは唾をごくりと飲んだ。目の前に迫っている――ケニーの怒張したもの。
確認するや、大きな口をいっぱいに開いて、肉の茸を含んだ。分かっている。絶頂は、ペニスで。
独特の臭いが口の中に広がった。薄い皮を張ったゴム棒のような感触だ。
ぎこちない。自分でも分かっている。口を使って、放出させたことはあるが、同時に手を使い、激しく顔をグラインドさせたのだ。
まだ、どこをどう責めればいいのか分からない。ただペニスが欲しい。今までしゃぶっていたどんな食べ物よりも、愛らしい。
「がっつくね」
はうむ、うあむ、シェリルは骨を与えられた犬のように乱暴にペニスを嬲った。ただ、ほおばりたいのだ。
「美味しい?」
「はふっ、おひふい、おひい」
「シェリーのも――」
「お、おふっ」
余裕がなくなると出てしまう、男のように低く太い声。びらびらに舌が伸びていた。
ケニーの舌は丁寧に愛液を掬って、それからクリトリスへ向かう。シェリルは声を漏らしながらも、味わい続けた。
指が一本、差し込まれた。膣穴に近いところを、ほぐすようにやんわり上へ押したり、下へ押したりしている。
そのあと、奥まで差し込まれ、上のぶつぶつを同じようにほぐされた。にゅうと押されて回される。下半身に力が入らなくなる。
シェリルのぼんやりした視界に、男の尻穴が映った。中心に向かって線を引かれた赤黒い粘膜が、ひくひく動いている。
それで、もっとペニスをほうばり、さらには感じさせたくなった。尻穴を緩ませてやろう。
だって、もう自分の中はかなり柔らかく、受け入れられるようになっているのに、ずるい。
それを見越したようにケニーがもう一本挿入した。「二本」
「はめえっ、いほん、いほんはめっ―!」
無言でケニーが腰を落とした。舌が押されて、笠が喉に近いところまで迫る。シェリルは身体を強張らせた。
口を犯されている。脳髄がとろけるような高揚感が襲い掛かってくる。
あの、男と話すことも億劫だった自分、男なんかみんなクズだと思ってた自分が犯されてる――。
シェリルは心を強く保とうと鼻から息を大きく吸った。いいようにさせまいと舌を深いカリへ強くねじ込んだ。
果てるとしても、ケニーも果てさせてやる。右周り、左周りと交互に動かす。ケニーが男にしては高い声でうぅと呻いた。
シェリルは目に涙を溜めて、一心不乱に舐めた。その内に精液が飲みたくなってきた。
自分ばっかり愛液垂れ流して――いやだ。精液を飲みたい。
人間がしとどにぶちまける苦い子種で喉を潤したい。白い粘つきの中に棲息する六千万の精子を飲み下したい。
亀頭を横から巻き込むように責めた。舌がペニスと抱き合い、もみくちゃになって動いている。そう長い時間は残されていない。
自分だけイカされるなんて、と速度を上げ、なんとか相手を追いつかせようと必死になった。
限界が近づいた時、ペニスの震えが伝わった。出るわ、そう思ってシェリルは眉根を寄せた。――もうすぐ飲める。
「まだだよ」
じゅるっと音を立て、透明な糸を引いて、ペニスが引き抜かれた。
「いやっ、いやあっ」
物欲しそうな目で、シェリルは離れていくペニスを目で追い、「あっ……」と声を挙げた。
ケニーがすばやく身体を反転させたのだ。面長な顔が迫ってくる。美しいカーブの軌道を描き、唇が唇にはりついた。
ケニーは腰を弓のように後ろへ引いた。キスの勢いでそのままシェリルの頭をベッドに押しつける。唇を離して、言った。
「こっちだ」
シェリルの両の膝の裏へ手が入った。開いた脚を乱暴に持ち上げられ、膝が耳の近くで沈んだ。
あまりに性急で、粘膜にまとわりついた愛液がぴゅっと跳ねて、胸や顔に飛び散った。
シェリルは見た。情けなく震えるびらびら。欲しい欲しいと泣き叫ぶ穴。
矯めた牛の角のようになったクリトリス――なんて卑猥なの!と思った瞬間、一気に奥まで貫かれた。
「お、おぉぉぉぉぉぉぉ」
達しそうになった。巨大な快感の塊が迫ってくる。すうっと意識が遠のきそうになって、
アクメまでもう少しというところで、迫ってくるスピードがだんだん緩まり、刺激が止まり、波がやや後退した。
呻くことしかできなかった。奥まで届いている充実感が身体を支配した。脈打っているペニス。人間の肉の感触。
シェリルは朦朧とした意識で、想像し、震えた。
あの大きな笠でずぼり入り口までえぐられると、きっと、頭が飛んでいってしまう。何も考えられない馬鹿女になってしまう。
まだ、ペニスは一番奥にとどめられている。
お願い、このまま、ゆっくり――。
シェリルの呻きが止まったのを見計らい、ケニーが腰を勢いよくバックさせた。
「おぅおおおお!」
シェリルの白い腿が痙攣し、ヴァギナがきつく締まった。
イった。一回こすられただけで、イってしまった。
まだ蠕動を続けるヴァギナに二撃目が届けられた。アクメの波がより高く、長く彼女を捕まえに来た。
シェリルは力が入らない腕をなんとか持ち上げ、クロスさせて顔を隠した。
見られたくない。はしたない顔。しかし、あっさり引き剥がされた。
「ダメだよ、見せて」
シェリルは息を吐きながら馬鹿になった顔をさらした。鼻筋が伸びている。穴から生あたたかい二酸化炭素が噴出している。
眉が困ったような八の字を描く。赤く腫れた目周り、目尻は垂れ下がり、涙をせき止められない。
横に長い唇がふるふる震え、端から涎が顎まで垂れている。
「動かすよ」
また入り口までえぐられた。入り口、奥、入り口、奥。おなかの中のものを引きずりだされそうだ。
「おふっ、おっ、おっ、おぉぉ」
十往復目で、ぶつぶつを通過した時、一回目の波も引かぬのにまた達した。
頭をそらせて、シーツを握っていると、何の予告もなく、ペニスが震え、精が吐き出された。
走り去る車の音が聞こえるくらい静かだった。
窓から見える規則正しく並べられた街路樹の間、細長い電灯がひっそり立ち、先がぼんやり光っている。
お互いの愛液をティッシュで拭き取り、毛布をかぶってケニーの腕に抱かれ、
肌の暖かみがすっかり身体を満たした時、今日で振り切ろう、とシェリルは思った。
ジャクリーンに対する嫉妬や執着。いつまでも死者を弄んで浮かれるわけにもいかない。
悪趣味を通り越して、下卑た存在に堕ちてしまったことも自覚できている。しかし、それよりも、もっと――別の問題。
シェリルは顔を引き締め、もう一度自分自身に問うた。
何故、今まで一度も帰郷しなかったのだろう。帰れるチャンスはいくつもあったのに。
ジャクリーンのことにしたって、墓を掘り返すまでいかれてはないが、夢想の愉悦をより強いものにするならば、
帰省して家にお悔やみでも言ったついでに、がらんとした部屋で遺品探しでもしながら死の匂いをたくさん嗅いで、
ついでに彼女がどのように狂っていったのかを古い友人特有の厳粛な顔で聞き出し、家を出たあとでこっそりほくそ笑む手もあったのだ。
しかし、できなかった。何のかんのと言っても、幼き頃からのつきあいだ。罪悪感がそうさせたのだろうか?
シェリルは強く瞬きした。嘘をつくのはやめましょう、との気持ちを込めて。
エルムに帰らなかったのは、やはり、怖かったのだ。妄念がまとわりついて消えない。
はっきり頭に浮かぶのだ。あそこにはデブの家政婦がいる。彼女がまだ生きている気がする。
味なんてどうでもいいわとバッド・テイストのエイリアンよろしく並べられたものをほおばって、
全部たいらげれば聞かれもしないのに健康ですよとゲップをかかさなかった彼女が。
「バカらしい」
つぶやいて、シェリルは眼を閉じた。あいつはいない。だって、あいつは――あいつ?
新しい生活を手に入れて考えたことは、以前の自分はどうやって創造されたのか、ということだ。
女になることを望んでいなかったからだと簡単に片づけることもできる。だが、それだけではない。
何があのおぞましき彼女を創りあげた?暴君と化した父、奴隷の母、クズに成り果てた弟、つまり家、もちろんそうだ。
しかし、今になり、思えるのは、もっと広い範囲、そう街がもう一人の自分を作り出し、家はその下僕にしか過ぎず、
命令を遂行するように、お前は女の歓びを知らず一生ここで朽ち果てるのだ、と縛りつけたのではないか。
シェリルはあの感覚を思い出して、ベッドの中で身体を丸めた。例の――あの感覚。
エルム街、寂れても栄えてもいないただの街。観光客が来るようなところではないが、
外の人間から見れば、ひっそり落ち着いた雰囲気を漂わせる中規模の田舎町と言ったところか。
二、三日、ゆっくりして帰るならそれでもいいだろう。だが、住んでいる者にとっては、どうだろう?
裏で何かとんでもなく恐ろしいことが起こっているように思えるのは気のせいだろうか?
途方もなくどす黒い大きな渦が街全体を覆っていて、誰であろうと意志に関係なく取り込まれる。
流れはゆっくりして気づかない。しかし確実に間違った方向に進んでいるような錯覚――気のせいだろうか?
常に感じるわけではない。ふっと、日常の何かがずれた時、例えば皿洗いをしていてフォークの数が合わなかったり、
夜中に烏の鳴き声がどこからともなく聞こえてきたり……そういう時になって、
なにか……おかしい
と思うのだ。
この世界。この街。
シカゴで借りたアパート、都会に触れて生活していると、離れたゆえに、あの時のゆったりした狂気の正しさが信じられる。
しかし、もっと恐ろしいのは、皆がそう感じているくせに、他の人もそうなのかしら、いや、きっと自分だけね、
思い過ごしでした、そういうことにしましょう、不安を抱えながら、外に出れば薄気味悪い愛想笑いをしているのではないか、
途方もない妄想すら真実らしく思えてくることだ。
シェリルはもう一度瞬きして、ふいに鏡が見たいと思った。今の自分の裸が映っていて欲しい。
以前の自分なら鏡なんか見たいとは思わなかったろうから、それだけでも、しかし、映っている姿は、どっち?もし――
シェリルはふいに泣いた。涙が溢れて止まらなくなった。ケニーは隣でもう寝入っている。
想像してしまい、あまりに恐ろしくなって泣いたのだ。
自分にまともな家族はいない。自分も含めて全員歪んでいる。それは乗り越えた。
だが、万が一、家に寄ったとき、例えば父が脳溢血でも起こして倒れたならば、一度は戻らなければしょうがない。
玄関の扉を開ける。彼女は絶対にいるだろう。中からエプロン姿の巨体を晒した怪物がやってくる。
ほら、少しは手伝ったらどうなのよ!私一人じゃ、やってけないの!睨みつけてくる。きっと、頭がおかしくなってしまう。
バカな妄想なのは分かっている。しかし何故かその不安が頭から離れない。自分が二人いる。
そして、さらには、出会えばどうなるか?重大な命題が残されている。いったい、どうなってしまうの?
以前流行っていたバック・トゥ・ザ・なんとやらで、時空が歪んで世界が消滅してしまえばいっそ感動的なのだが、
あいにくデロリアンは御伽噺の中のことだ。過去に立ち戻ったわけでもない。
一般的迷信を辿れば、その現象はドッペルゲンガーと呼ばれる。
実体を死に至らしめる、精神の一部が肉体から遊離してできたもう一人の自分。
死ぬ。それはあるかもしれない、と考える。しかし、なぜ、の部分は分からず、論理としてはまだしっくりこない。
それよりも――。
シェリルは胸を隠しながら、身体を起こして、湿った瞳でベッドのシーツの皺を眺めた。
皺は二つあり、交わってはいない。中心が切断されたVの字の風に伸びている。
指ではじくと、二つの皺は歪んでつながり、干からびた蛇のような形に変わった。
もし出会えば――そう、これが正しい、二人は重なり合い、融合するだろう。自分が自分でなくなってしまう。
新たにまったく別な女として――どんな自分になるのだろう?だが、結末だけは分かる。
きっとジャクリーンと同じ道を辿り、死した後、両方の意味で顔が広いベティにお茶会のネタにされることだろう。
「調子乗ってたのよ。前は写真なんてアインシュタイン並みに撮られるの嫌がってたくせに、
痩せた途端に男つきで『私はこんなに幸せですよ。あなたはどう?』ってすました顔で写ってるでっかいの、
ご丁寧に送ってきたんだから。ほんと、葬式に来てた彼氏に卒業アルバム見せてやればよかった。
あんたがね、俺の女だぜ!って顔して肩抱いてる女は……ああっと、ここ、すみっ子でふてくされたフケ顔さらしてる、これ!
これよ、びっくりでしょ、デブで生理の匂いプンプンさせてた、ブラキオザウルス!
やってみたかったわあ。あれ見たら彼氏も死なれてよかったと絶対思うわね。どうせ結婚したら元に戻ってたんでしょうし」
ゲロを吐くほど嬉しくない結末だった。
シェリルは震える身体を毛布の中に収めた。眠りたくなかった。全ては夢から始まっている。
ケニーとつきあってから、もう一人の自分に遭遇しそうになる夢を頻繁に見るのだ。
今夜もまた、掃き溜めへ逆戻りするのかもしれない。考えるのを止めた。考えない者は怖れない。
乱れた脳をなんとか鎮めて、目を閉じた。疲労はお構いなしに肉体を蝕んでいる。
したあとはいつもへとへとになる。激しく突かれたせいか、まだ股の間になにか入っているような気がする。
シェリルは昔していたような溜息をつき、肉体の欲求に任せた。
そして、夢の世界へと招待された。
初めに目に入ってくるのはぼろぼろの白い木柱、3490の黒い文字。
立っているのは19番、ランベルト通り。そこに面する白アリだらけの中古品、小さな一戸建ての生家。
玄関には段差がある。顔を左向けると見える犬小屋に、家主はいない。
登って、建てつけの悪い扉に手をかけ、窓から中を覗き込んだ。橙色の光の中、リビングに置かれたブラウンのソファに、
弟が脇に犬を従えて、ジャクリーンともたれかかり、恋人同士のようにお喋りしている。
二人は時折、耳打ちしあって、くすくす笑う。シェリルは顔を逸らす。自分が笑われているような気がしたからだ。
しばらくすると、急にむかむかして、蹴っ飛ばしてやりたくなった。
と、突然、轟音が鳴り響いた。肌がびりびり震える。思わず耳を塞ぐ。地雷が爆発するような音が、短い間隔で何度も聞こえて来る。
家全体が微かに縦に揺れている。道路に停めてある車のボンネットが弾んでいる。
シェリルは気づいた。いつもここで理解し、一秒経って、なんで家に近づいたのかと後悔するのだ。
これは夢。音の発信源は……いや、やめて、いや!
顔をくしゃくしゃにして、前のめりになりながら、扉に背を向け走った。
「できた、メシ!」
窓という窓が一斉にぶち割れた。刺すような音が背中に浴びせられた。
走っている道路へ破片が落ちて、さらに砕けて、道を塞ぐ。よろめいて、走り続ける。
「メぇぇぇぇシ!」
ガラスで遮られない分、ダイレクトに伝わった。
声に背中を押されて、道路を飛んで横切り、真向かいの植え込みに胸から着地して、夜中の三時に目が覚めた。
涙が頬を伝っていた。のみならず鼻水まで垂れ流していた。悪寒の中で、シェリルは心底実感した。
ああ、自分は今まで誰も信じてこなかったのだ。子供の頃から、ずっと、一人ぼっちなのだ、と。
シェリルは傍のティッシュを掴み取り、顔をこすりつけるように拭いて、隣で寝ているケニーに抱きついた。
寝惚けまなこでよかったから、抱きしめ返してくれなくてもよかったから、
せめて震えている自分に気づいて欲しかったが、ケニーは軽いいびきを立てているだけだった。
そのあと、シェリルは色々と考えながら夜を明かした。内容は今の生活に対する疑問に終始した。
やがて空が白やむのに気づいて、ベッドから這い出した。バスルームへ移動し、下着を拾い集めて、あるべき場所へ収めた。
着終わると、寝室へ戻り、相変わらずいびきを立てているケニーを眺めた。毛布を剥いで萎んだペニスを引っこ抜いてやりたくなった。
シェリルは帰りじたくを始めた。休日でお互い仕事は入っていなかったから、
彼の目覚めに合わせてエッグトーストとコーヒーをこしらえてあげてもよかったのだが、
のうのうと惰眠を貪っているであろう幸せそうな寝顔を見ている内に阿呆らしくなって、
荷物をまとめて書置きも残さずに、さっさと家を出て、二十分ほど歩いて始発の電車に乗った。
二駅、離れている。都市圏の中では治安はよい方だが、ケニーが住む一戸建てとは比べ物にならぬ賃貸アパートだ。
しかし、そんなものだろう、とシェリルは思った。駅からだって近いのだし。だいいち向こうが異常なのだ。
まだ三十台、男の一人暮らしなのに、いくら収入が良く、転勤の可能性がないとは言え、別居中の妻でもいるのではないかと疑いたくなる。
ぼうっとした頭で駅から出て、アパートまで歩いた。
幅の狭い階段をヒールの音を鳴らして登り、三階の廊下を進んで、玄関のドアを開いたと同時に、けたたましい音が聞こえた。
シェリルは一瞬、入るのをためらった。その音に、怪物から追いかけられているような恐怖を感じたからだ。
部屋の奥にあるダイヤル式の赤い電話機が、カーテンの隙間から差した朝日を浴びて光っている。
おかしいな、とシェリルは思った。ネイビー・ブルーのレザー・ハンドバッグに手をやる。
チャックを開き、中に入っている腕時計を見ると、まだ六時にもなっていない。
はっとして、ケニーからかしら?と考えたが、すぐに、随分都合のいい頭してるわね、と自嘲した。
今までデート後にコールして、愛を囁いてきたことは一度もなかったのだ。
デートする日……寒々しい見方をすれば、寝る日が近づいてくると、必ず電話をくれるのだが。
まずはそっと中に入って、扉を閉めた。ヒールを脱ぎ、鞄を奥のベッドへ放り投げた。
もう十回ほどコールを繰り返しているのに、相手は諦めない。
無視するべきだわ、とシェリルは思った。だいいち、休日のこんな朝早くから失礼にもほどがある。
他に誰からかかってくるったって、父はめったにかけてこないし(たいてい酔っている)、ベティ以外は、どうせ、ろくな――。
シェリルはいらついた手つきで、受話器を持ち上げた。
「……あっ、ああ、朝早くにすいません。エルム市警のジョーイ・マクコランと申します」
「はい」
と条件反射で声が出たものの、電話口の軽薄そうな男の声は、シェリルが認識するより早く、風のように通り抜けていった。
ただ一語、エルムしけい、そこだけやけにひっかかって、頭の中心にその言葉が居座っている。
エルム?エルムですって?オーケー、あのくそったれエルムね。でもしけい?なに、しけい、って。市警?
しばし沈黙が流れた。しゅっと紙をめくるような音が聞こえてきた。シェリルは「……あの」と怯えた調子でもう一度訊ねた。
ちょうど相手も何か言おうとしていたのか、声を出すのと同時に、しつれ、と聞こえてきた。
お互いにもごもごしてから、受話器の中で音が止まった。
「あの、よく聞き取れなくて、もう一度お願いします。どちらさま?」
「ジョーイ・マクコランです。エルム市警、警察署の者です。失礼ですが、こちらの番号は昨日お父様から伺いました。
シェリル・レーンさんですね?弟さん、いらっしゃいますね。彼、ロッド・レーンのことで……」
シェリルはすかさず受話器をねじ伏せるように台に押し込んだ。受話器はバランスを失って喋り口の方に傾き、外れそうになった。
慌てて脇から両手でぎゅっと握って、平行に保ち、下に押し続ける。
シェリルは狂気じみた眼で、自分の手を見つめていた。もう一度持ち上げれば、永遠にかかってくる。
この赤い電話機には悪魔が封じ込められている。そう言わんばかりに、押さえつけたままで、
絶叫した。
隣の部屋からなにかどさりと落ちる音が鳴った。シェリルは自らの低い悲鳴でそれをかき消した。
やがて声がかすれて出なくなった。そっと手を離し、縦に歪んだ顔を押さえると、またベルが鳴った。
ここで一端切ります。どうも占領しているような気がするので
他に発表したい人いれば、別に途中で割り込んでもいいんでどんどんしちゃってください
感想くれた方、ありがとうございます ティナ人気高いな 半二次でも高かった なんでだろう
あと、誤字脱字、それからちょっとたるいとこありますが、
Yellow〜から500枚くらいあげたところで(やれればの話ですが)展開と合わせてまとめて改稿するんでご容赦下さい
あとナンシー以外キャラ大分変わってますが仕様です
ジャクリーンとシェリルはエロに困ったのでオリジナルで入れました それでは
西遊記モノキボン
♀ 好きグレン、嫌いはマージ。
十分、えろえろですよ。ムラムラきますw
情景描写と比喩が好きです。
90 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 22:01:49 ID:N+oRB7Vm
あげとく
91 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/23(月) 22:51:29 ID:lCnZTl2j
西遊記キボン!
設定上師匠は男かもしれないけど女でもイケル
ここ難しいよね
範囲が広すぎてリクエストに応じられる書き手はいないんじゃないかな
作品一つでまとまってれば書き様もあるんだろうが
リクエストが通った試しないし、だいたい書く方も
自分の好きなものでないと書けないだろうし
>>91 自分で書いてみたらどう?それで投下してみれ
上でレスがあった西遊記の悟空×お師匠様(三蔵法師)を試しに投下してみる。
あんまりエロくないかもしれん・・・。スマソ
「何をしているんです!悟空!置いていきますよ!」
「ちょ、ちょっと待ってお師匠様〜!」
俺の名前は孫悟空。お師匠様と共にありがたーいお経を持ち帰るため、こうして旅をしている。
はっきり言って俺はお師匠様の事が好きだ!だから一緒に旅が出来るのは嬉しい。
・・・・まぁその他にも使えないブタやカッパもいるわけだが。
「おいっ悟空!早くしないと置いていくぞ!」
あぁ河童がうるさい。
「全く、そんな所で用を足すなんて・・・」
あぁ豚がうるさい。
本当はチビノリダーのくせに
「今行くっての!・・・・・・・・・・よしっ」
用も足し終えた俺は皆の元に戻ろうとした。その時だった。
「・・・・!?地面にヒビがっ!あっ!」
なんとお師匠様の足の下に地割れが出来ていた。
地割れはどんどん大きくなり、たちまちお師匠様はその地割れた中に落ちそうになった。
「お師匠様!」
俺は落ちる寸前のところを捕まえようとした。
が・・・・
「うわぁぁぁぁっぁぁぁっぁ!!」
「あぁぁっぁあああぁぁぁ!!」
俺は勢いが良すぎたせいか誤って穴の中に2人で落ちてしまった。
「お、お師匠様ーー!!」
「悟空ーーーー!!」
沙悟浄と猪八戒が叫ぶ。本当に全く使えないな・・・奴らは。
どのくらい時間が経ったのだろうか?俺は生きていた。
「・・・・イテッ・・・。」
起き上がるとさすがに節々が痛かった。しかし、幸いにも大きな怪我はしていないようだ。
「どこだよ、ここ?」
周りを見渡すと森のような場所に俺はいた。周りは一面に木ばかりで他には何も見えない。
俺はどうやら木の上に落ちたから助かったようだ。
ふと周りの木を見渡すとひとつの白い布が横の木にひっかかっている。
(・・・あれはもしかしてお師匠様の・・・?)
「・・・!お師匠様!?」
その木のすぐ下にお師匠様は倒れていた。俺は急いで木を降り、駆け寄った。
「お師匠様!お師匠様!!」
「・・・・・・・・う・・・・悟空?」
お師匠様はただ気を失っていただけだったようだ。
「・・・紗悟浄と、猪八戒はどこに?」
「あいつらは落ちてないから、多分違う場所に。」
「・・・そうですか。こんなところでグズグズしている暇はありません。
早く猪八戒と紗悟浄を見つけに行きましょう。・・・っ!!」
お師匠様は立とうとしたが、右足に引きずられて座ってしまった。
「お師匠様!」
それもそのはず、お師匠様の右足には木の枝が刺さり、血が滲んでいた。
「・・・っ、このくらいの傷、なんてことありません。っつ・・・・!」
お師匠様は刺さった木の枝を無理矢理抜き、手早く白い布で結んだ。
白い布はみるみる血で赤く染まっていった。
「・・・・さあ、行きましょう。」
お師匠様はいつもの調子でそう言ったが、明らかに表情は硬く、顔色も悪かった。
「お師匠様ー無理すんなって!俺がお師匠様のことおんぶしてやるよ!」
「おっ、おんぶだなんて・・・・そんな・・・そんなことは出来ません!」
なぜかお師匠様は動揺し、すこし顔も赤くなっていた。
「そんな別に遠慮することじゃないーって!」
「で・・・ですが・・・。あ、歩けます!歩けますから!・・・つっ!」
またお師匠様はつまづいて倒れてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
森の中で長い沈黙が流れる。
「全く、最初からこうしてれば良かったんだって!」
「・・・・すいません。」
結局お師匠様は負けて、素直に俺の背中におぶさっていた。
「・・・重い、ですか?」お師匠様は恐る恐る聞いてきた。
「重い。すっげー重い!」俺はわざとこう言った。
「!!悟空っ!!」
お師匠様は少し怒ったが、自分はおんぶしてもらっているせいか
あまりいつものような調子では怒らなかった。
でも、本当に俺は初めてお師匠様をおぶった時、
今まで女性をおんぶしたりする事が無かったため、あまりの軽さに驚いた。
それに、さっきからお師匠様の息が耳にかかったりとか。
背中ごしに当たる胸の感触とか。
なんか漂ってくる良い匂いとか。
太股の柔らかいぷにぷに感とか。
(なんかムラムラしてきた・・・)
俺は初めてこういうシチュエーションでお師匠様と2人でいることに気付かされた。
今までブタとかカッパとかリンリンとかいう奴らが邪魔ばっかりしてきたからな。
まぁ今は2人きりだしそういう状況になってもいいというか・・・グヘヘ
と、俺がムラムラしている状況なんか気付かずお師匠様は言った。
「悟空・・・ここは何処なんでしょうか?」
「うーん多分落ちたから上に行けばいいんじゃ?」
「そういう問題なんでしょうか・・・・」
お師匠様は少し不安げな表情でいた。
しかしその後この不安は的中する事になる。
つづく
96 :
93:2006/02/03(金) 16:21:43 ID:9XP9mXPr
寸止めでごめんなさい。つづきはエロあります。
見てる人いるかな?とりあえず近いうちに投下します。
お師匠さんキタ!!
続き期待しております。
98 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 23:27:30 ID:i9bQYRBw
ドラマで「三蔵が女って設定だったら心おきなく萌えられるのに…!」と
歯噛みした身としては、激しく応援しております!
ageちまった…orz
あああああごめんなさいごめんなさいごめんなさい
100 :
sage:2006/02/20(月) 15:11:49 ID:6QnA04zD
おっしょさん!!私も今書いてるよ〜
おへぁ……ゴメン、あげちゃった…orz
凛凛カワユス
ふとふたなり三蔵と凛凛の絡みが浮かんだ
ワクテカワクテカ(・∀・)
106 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 21:43:24 ID:MWXe768j
まつ〜!
凛凛×三蔵か、悟空×三蔵かどっちが先になるかわからないけど
もうしばらくまってて下さいな
108 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 00:09:25 ID:mrAv0WR1
ほいよ!
個人的に悟浄×三蔵がいい
110 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 22:12:57 ID:CnbEy4G4
自分は悟空×凛凛
漏れは三蔵×凛凛を!
凛凛×ふたなり三蔵です、とりあえず出来たところまで…
苦手な方はスルーしてください。
*********************
「っ……………ぅ…はぁっ……!」
声を抑えるために布をかみ締めた唇から、甘さを含んだ吐息が部屋に響いた。
思わず大きな声が出てしまったことに激しい羞恥と自己嫌悪を
覚えながらも、自身を慰める手を止めることが出来ず、自己に対する嫌悪感は
ますますつのっていった。
その嫌悪感と共におし押せる快感に表情を歪めながら、より強い快感を得る為に薄い
法衣の上から柔らかな膨らみの上に実る突起を擽る。
「…ぁ……ッう……んぅ……はぁ……は…っ」
自信を擦りあげる手のスピードが増し、絶頂へと達しようとした…まさに
その時だった。
「三蔵さんってば、こんなことしちゃってていいの?お坊さんなのに〜」
あられもない姿で寝台に横たわり、夢中で自身を慰めていた三蔵法師に突然、凛凛が声を掛けた。
「り…凛凛さん!……いつからそこに……」
「いつって?ずっと居たわよ。三蔵さんの性別、疑問に思ってたんだ。
それを確かめよっかな〜って思って、部屋に忍び込んだの」
と、悪戯っぽい笑みを浮かべながら悪びれることなく答える凛凛。
三蔵はあられもない姿を見られてしまった羞恥と、行為に没頭し部屋に侵入された事を
気づくことができなかった自分に不甲斐なさを感じて泣き出してしまった。
「うぅっ……情けない………」
そんな三蔵を見つめながら、追い討ちをかけるように凛凛が言った。
「まさかこんなのが見られるだなんてね……ふふふ。まぁ、お坊さんだって欲求不満
にもなるわよねぇ」
「わっ……私は……そのような………」
「ねえ、手伝ってあげましょうか?」
「なっ、何を言うのです?!凛凛さんっ、お気は確かですか?」
全く予期せぬ凛凛の言葉に驚きを隠せず、思わず声をあらげた。
思えば生まれてこのかた、男性とも女性とも関係を持ったことが無かった。
いや、僧侶として生きていくのであればもっては、 いけない。
女性でも男性でもないこの体ならば、むしろ、それは都合の良いことであると
思って…否。そう言い聞かせて生きてきた三蔵法師にとって、それは信じられない
言葉だった。
(私は試されているのでしょうか……)
「一人でするよりずっとイイと思うわよ?」
そんな三蔵の心中を知ってかしらずか、三蔵の返事を待たずに、そっと三蔵自身を
手のひらに収め、やさしく擦りあげながら三蔵の耳元で囁いた。
自分で触れるのとはまた違う、柔らかな指の感触と絶妙な力加減にびくっと体を震わせながらも、
その快感を振り払うかのように首を振りながら言った。
「っ…!いけません、凛凛さん…このようなことをなさっては……」
「天竺にいけなくなるって言いたいの?関係ないわよ、ちょっとくらい」
「そ…そんな…ッ!」
三蔵の思いとは裏腹に、凛凛の手中に収められた三蔵自身が柔らかな手のひらの感触に
反応して、徐々に熱い血液が集まっていった。
「反応してるじゃない、どう?気持ちいい?」
「………汚い……ですから…ぁ、くぅ…っ」
「汚くなんか無いわよ。実はね、私も欲求不満だったのよ。一緒に楽しみましょう?」
で……でも、私なんかじゃなくて……こう言っては失礼かもしれませんが……
凛凛さんなら、もっと素敵なお相手が………」
「そりゃそうだけど、いくら欲求不満だからって見ず知らずの男なんかとはしたくないもの。
だからって河童はしっつこそうだし、猿は早そうだし、豚なんかは問題外だし!」
「た……確かに……って、いえ……なんでもありません………」
「だから、ね?ほら、気にしないの!」
「っ………!ん…………」
まだ何かを言おうとする三蔵の唇を、凛凛の唇が塞いだ。
そっと下唇を食み、舌を侵入させるとくちゅっと湿った音が部屋に響いた。
一回あたりの投稿もうちょっと長くてへいきだったんだ…orz
読みにくくてごめんなさい
118 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 18:08:26 ID:UuKFx+vo
イイ!!
>>117 GJ!
ふたなり三蔵ハァハァ(´Д`)
120 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/10(金) 18:43:56 ID:h+Tfo8M6
アゲ
121 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 09:04:24 ID:ITzbwhuH
最高〜〜〜〜
122 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 19:37:47 ID:FRa2TUB+
あげ
123 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 22:49:27 ID:GI8m6wtp
124 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 05:18:38 ID:6ks+o+yd
安芸
125 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 17:06:02 ID:hP1ZiRb2
凛凛×三蔵の続きマダー?
126 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 13:36:36 ID:Nr60EMdT
風のハルカきぼん
127 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 14:40:27 ID:pUIYkaWa
アンフェアとかないかなーと言ってみたり
何処にもナイんだよね
>>127 自分も探してた。刑事ものスレ落ちちゃったんだね
129 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 03:52:10 ID:jWVYzmwm
上げときます
三蔵法師は男だぞ・・・・・・
>>127 アンフェア確かにないよね
結構よみたい
133 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 17:26:30 ID:LAQ8mlel
アゲ
ほしゅ
地面がねとついている。どれだけもやを撫で払ったろう、服の上から白い汗をかいたようになっている。
ロッドは注意深く前進し続けた。光がだんだん薄くなってゆく。もう二時間は歩いたろうか、立ち止まって、時計を調べた。
10:20、PM。唾を吐いた。どうやら、夢の中では時間がゆっくり流れているらしかった。時間?
ロッドは、はたと立ち止まった。そもそも、どうして、時計を持ってこれたんだ?
なぜ、自分は寝る前と同じ格好でいる?少なくとも、この時計は現実の世界とリンクしている。そんなことが夢で起こりえるだろうか?
ナンシーは、ただ眼を覚ますための道具として、腕時計を渡したのだ。ロッドはもう一度、時計を眺めた。
心の中で六十を数えるまで見つめていたが、無機質な数字は変わらない。10:20、PM。
もちろん――。ロッドはナンシーの顔を思い出した。
たった一日前に犯された事実を告白した時の彼女の悲痛な表情、
だが、こちらを諭し、計画を語る時には、既に戦う女のそれへと変貌していた。
はっと見とれる気持ちがあったのは否定できない。腹を据えた女はかくも美しく、男よりずっとたくましく見えるのは気のせいだろうか?
だから、もちろん、自分も強くあらねばならない。同時に賢く。
夢に入った時より、足元が深く沈む。もうくるぶしを覆いつくしている。しかしロッドはお構いなしに記憶を辿っていた。
鉤爪の女に遭った時の状況、そして、牢の中で何度も反芻したフレッド・クルーガーという名。
鉤爪の女に殺されかけたのは三度、一度目は着ている服は確か、異なっていた。しかし、ナイフは夢に持っていけたのだ。
あの時はどこかで失くしたものとばかり考えたが、違う。二度目、ティナに会った時は、寝る前と頭のてっぺんからつま先まで同じ格好だった。
一つだけ、まだ薄っすら残っていた彼女の血の臭い……それだけが消えていた。悪魔の周到な罠に違いない。
三度目、つまり今だが、取調べを受けていた時と何ら変わっていない。
鉤爪の女が夢を操作して、時計を持って夢に入ることを許可したのだろうか?
そうは思えない。十字架がなければ、あの悪魔はもっと簡単に自分を殺せていたのだ。
考えても答えが出そうもないのは理解しているが、なぜかロッドはその点に拘った。
なぜだ?なぜ、この安っぽいデジタル時計は、時をもっともらしく刻んでいる?
思考を遮るように、上から透明の液体がつららのように伸びて、肩をかすめた。ロッドは歩きながら、考えることにした。
立ち止まっては危険な気がしたからだ。夢に時計を持ちこめた理由は分からない。
しかし、確かなことは、この夢に鉤爪の女が関わっているということだ。
つまり、悪魔が操る夢においては、通常の夢と差異がある。それが、突破口になりそうな気がした。
牢獄で、汚臭にまみれて考え続けたが、戦う術など何も思いつかなかったのだ。
自分が無残に殺される光景しか頭に浮かばなかった。気がつけば思い出を頼っていた。
出会った時の馬鹿なやりとり、初めてキスしたのはつきあうよりも前だった。別れていたことを彼女は隠していた。
初めてセックスした時の彼女のはにかみ。中に入った時の気が遠くなるような温かみ。やはり自死を選んでおくべきだったと悪魔が囁いた。
湿ったコンクリートの壁に頭をこすりつけ、糞の粕がこびりついた便器に顔を突っ込んで、汚水を飲み込んで溺死したくなった。
つい昨日の夜、決心したのにも関わらず、一日経った夜はめそめそ泣いて明かした。
何を挽回する?彼女を守れなかった、二度目はない。守るべき人は死んでいる。生き延びて何がある?彼女は自分の全てだった。
そして、思い出した。殴られた腹に力を入れて、名前を刻んだ右腕を握り、歯を食いしばって、心の中で繰り返した。
――必ず殺してやる。
そうは言っても夢は悪魔のテリトリーだ。冷静に考えれば勝ち目はない。
だが、本当にそうか?無駄だと分かっていても、寄る辺を見つけるべきではないか?
ロッドは時計をいじくり、ライトのスイッチを押した。心もとないが、画面が薄青い光をぼんやり燈した。気休めだ。
また歩き続けた。横の幅はほとんど変わらない。ただ、光が失われていくのと、地面が柔らかくなってきているのは確かだ。
ライトを上に照らしてみる。のっぺりした桃色の壁が、ドーム状に広がっている。
寄る辺。それを探るには、まずあの女が何者か思い出さなければならない。少なくとも奴らは知っていた。
フレッド・クルーガー。ロッドは心に決めた。ナンシーに会ったら、言いにくいことだが、伝えなければならない。
ナンシー、おめえの親父さんは奴を知っている、そう言おう。
しかし、今は推理しなければならない。なぜ、奴らは知っていた?二つの可能性がある。
一つめは奴らも夢の中で、鉤爪の女に遭って、自己紹介されている。
もう一つ、こちらの方が名前を聞いたあとの反応を鑑みるにしっくりくる、簡単だ。
鉤爪の女が現実に存在している、もしくはしていた人物で、かつ、エルムに深く関わっているのだ。
サツが知っているということは、現実で罪を犯した可能性が高い。ナンシーの父、自分の親父とそう歳は変わらないだろう。
四十台、自分達が知らなくて彼らが知っている、つまり、過去に何かあったのだろう。
自分がフレッド・クルーガーの名前を聞いたのもおそらく随分前のことだ。結局そこがキーポイントだった。
ロッドはおぼつかない足場をしっかり踏みしめ、考えている内に溜まってきたもやを両手で払いのけた。
思い出せ、何処で聞いたんだ。何処で――。
進む先は暗渠に等しくなっていた。ロッドはただ、フレッド・クルーガーの名を繰り返しながら歩いた。見つからなかった。
しかし、カッフェに濃いミルクを一滴垂らしたように、頭にある光景が広がった。クリスティを拾った廃車工場。
その裏手にあったスクラップ車を積み上げておく広場の光景がふっと記憶が甦った。そう、子供の頃から車が好きだったのだ。
エンジンオイルとガソリンの臭いに塗れてかくれんぼをしたり、積まれた車の頂上に登ってくすねた煙草で一服しながらポーカーに興じた。
そこは世間と隔離された自分達だけの砦のように思えた。だが、王国の繁栄はそう長く続かなかった。
排煙にあてられて顔を真っ黒にしたベイカーの親父が、悪ガキ共のささやかな遊び場所を取り上げたのだ。
パーカー、メリル、ベイカー、自分、みんな揃って一発ずつ殴られたのだった。かくれんぼ……。
知らずの内に歩みが止まり、また足が沈みかけている。慌てて前に一歩を踏み出す。
と、足が桃色の地面にめりこんだ瞬間、女の顔が浮かび上がった。
その女はいつも白いワンピースを着ている。髪を腰まで伸ばして、幽霊のように歩く。
きちがいへレン。旦那と娘を亡くして頭がおかしくなってしまった女。噂では、エルムの郊外にまだ一人で住んでいる。
彼女が食い殺さんばかりの顔で、そう言ったのだ。
糞ガキめが。そこに近づくな。そこは、フレッド・クルーガーの特等席だ。
特等席、そう、車でできた迷路を練り歩き、隠れ場所を探していると、彼女がいたのだ。
彼女はエルムにおいて知らぬものがないほどの有名人だった。
あの時、同じ場所に隠れるのが嫌だったから、いつも違うナンバー・プレートの車の後ろや、窓が割れていれば中に潜り込んで隠れたのだ。
フォード製の中古車、モスグリーンだ。
もっとも、埃をかぶっていて、濁ったヘドロのような色になっていたが。
その車の前で、どこに隠れようかと思案していると、彼女がいつのまにか後ろに立っていた。
振り返った瞬間、腰をしこたまバンパーにぶつけた。気配が感じられなかったのだ。何も言えなかった。
彼女はくたばった山羊のような目で、車の方をじっと見つめていた。
怖くなって、前後も分からず、廃車の迷路の中を走り回った。
振り返った時、それでも空間を転移してきたようにヘレンは背後に立っていた。さらに遠くへと駆けた。
もう一度振り返ると、ヘレンの姿は何処にもなかった。角を曲がったから当然なのだが、それでもずっと遠くへ走った。
仲間には言わなかった。あとで確かめようにもショックで場所を忘れていた。
なんと言っても彼女は存在しているが、生きているとは思えなかった。
あの当時、ヘレンはまだ四十代前半だったそうだが、六十を優に越えているかと思われるほど老けて見えた。
絵のお化けが抜け出て来たように思えたのだ。パーカーから年齢を聞いて驚いた。
四十台で唇は紫色、顔中皺塗れで、白髪の方が多いなんてどうかしている。
そこ――おそらく車のことだ。あの車は鉤爪の女が愛用していた車だったのだろうか。
特等席……もう一つすっきりこない解釈だが。
ともかく、これではっきりした。知っているのは警察の人間だけじゃない。
エルムに住んでいたもの、もしくは遠くからやってきて、エルムで派手に何かやらかしたか、どちらかだ。
きちがいヘレン、彼女はまだ生きているはずだ。
ここに来て、ロッドは時期尚早だったか、と思案した。
ナンシーに取り調べで知ったことを話して、ヘレンと接触するように頼み、情報を聞き出してからでも遅くはない。それが理屈だ。
しかし、胸が熱く猛っている。腕が震えている。忘れかけていたジャクリーンの喘ぎ声が聞こえる。
今殺せ、見つけたら叩き潰せと呻いている。
はやる気持ちを抑えようと、ロッドは呼吸を整えた。
殉じる相手はジェリーじゃない。ティナ、そしてナンシーのために俺はここにいる。
機械は動きを止めた。いずれにせよ、ナンシーには会わなければならない。
今夢の世界から逃げ出して、彼女一人を鉤爪の女の餌食にするわけにはいかない。
時計を確認する。10:28、PM。どうやら、逃がすどころかナンシーと会わせるつもりもないようだった。
ロッドは歩き続けた。既に残雪地帯を歩くのと変わらないほど、足が沈む。
泥沼を歩くのと変わらない。徐々に疲労が身体を捕らえていく。
ピンク色の洞窟、これは役立たず極まりない自分の脳味噌が作り出したものなのだろうか、と考えてみたが分からなかった。
できるのは怖れないことだけだった。怖れては何もできない。死を怖れるな。異質な世界を怖れるな。
復讐を果たせずに無為に死ぬかもしれない、自分が取るに足らない人間であることを怖れるな。
断じて、進め。
汗と白いもやがいっしょくたになって、異様な匂いを醸した。
ふくらはぎが突っ張ってきた。踵がもう歩くなと警告している。
足を取られ、前のめりになって倒れた。顔面がピンクの地面に埋もれた。
ばっと息を吐いて顔を上げ、下を見ると顔の形がついている。
もやで何も見えない。霧に囲まれた湖を泳いでいるような錯覚――身体を起こすと、先から灯りが漏れていた。
光は扉の隙間から漏れていた。木造りのボロボロになった扉が、桃色の収縮する壁に張り付くようにすえつけられている。
ロッドはそっと扉の端に手をかけた。間から中をちらと見る。
円形の広くも狭くもない木造の部屋――人がいる気配がしない、油断はできない。
だが、進むしか道はない。もちろん、罠だ。飛び込め!
意を決して、そっと入ってすばやく扉を閉めて、ぎょっとした。
部屋の中心に丸眼鏡をかけた老婆が安楽椅子に腰掛けていた。
白髪が暖炉の火で赤く光っている。黒目がかった眼で、本をじっと見据えている。
風体は痩せこけた猿を思わせた。ぴくりとも動かない。濃紺と白の縦じまの膝掛けを椅子の端から垂らしている。
たまに繰り返される瞬きが老婆の生を伝えていた。みすぼらしかった。老婆は入ってきたロッドを一瞥して、また本へ目を落とした。
円形の小さな部屋の中で存在するのは、壁と椅子と老婆と暖炉だけ。椅子は二つある。一つは空いている。
ロッドは向かいの椅子に座った。そうしなければならないような気がした。椅子が、さあ、座りなさい、と言っているように見えた。
腕の傷に手をやる。血はとっくに止まっているが、傷をさするとやはり痛む。その痛みが心地よい。
自分が今何をするためにここにいるのかを確認させてくれる。老婆がフレディならばそれでいい、とロッドは思った。願ったり叶ったりだ。
椅子がゆれ、しばらく二人は何も語らなかった。ロッドは老婆をじっと見つめた。老婆は誰かを待っているようだった。
いったい誰なのか――ロッドには分からなかったが、ともかく誰かを待っているのだとだけ分かった。
その直感はロッドの中で徐々に大きくなり、確信に変わった。老婆は膨大な時間の集積に溺れている。
広々とした空白を本を読んで紛らわせている。老婆がなぜるようにページをめくった。
しおりの紐がゆらゆら揺れた。紐がまた動きを止めたのを見計らって、ロッドが切り出した。
「会えたのか」
老婆は何も答えなかったが、文字を追うのを一時中断し、親指を間に挟んで、ゆっくり本を閉じた。
そして、空を見つめたまま、しわがれた唇を上下に動かした。
「まだね」
容貌からは想像もつかないほど艶がある声だった。
「会ってどうする?」
「そうねえ。もう一度会えた時に、私はこんなにも辛くて苦しかったって、あの人に言ってあげる。全部ぶちまけてやるの。
結婚して後悔したと思ったのよ、って。いなくなってしまったあなたを憎んだこともあるって。
とっても嫌な気持ちになって眠れなかったのって、喚いてやるわ。でも、あの人は、きっと、赦してくれる。哀れんでくれる。
さぞ辛かったろう、苦しかったろう、それが終われば、いつもみたいに、難しい顔して、今度こそ一緒にいてくれるはずよ」
「……また、会えるかな、何処かで」
「分からないわね。主は何も教えては下さらない」
「神様なんていない」
老婆は片方の眉をゆっくり持ち上げて笑った。「あの子もそう言った」
「……あんた」
「いい子よ。素直になれない子だけど、あの子はあなたのことを心の底から愛していたわ。私が彼を愛していたのと同じくらい。
あなたはあの子に世界で最高のキスをしたんだから。最高のキスで、女は一生だって、死んだって、その人をずっと好きでいられるの」
「ティナを……」
「残念!」
それは刹那の出来事だった。
テーブルの下からガラガラ蛇のように現れたフレディが右手を一直線に伸ばして、人差し指と中指の長爪で老婆の両の眼を刺した。
そのまま抉ると、視神経を引き連れて、串刺しになった眼球が飛びだしてきた。
右手を大きくなぎ払うと、ブチリ、視床下部に張りついていた神経が引き剥がされる音だろう。
老婆は力なく顎を下げただけだった。開いた口に抜かれたばかりの右手が眼球を引き連れたまま突っ込まれた。
口蓋、爪を無茶苦茶にかき回して、フレディは笑いながら最後に上に向かって爪を押し込んだ。
骨や歯などものともせず、さっくり入った爪をそのままひっぱりだすと、老婆の顔は口の上から三つに裂けてしまった。
吹きだした血は赤黒かった。ウスターソースのような色だ、とロッドは思った。
そして、振り返ったフレディの細い鼻っ柱に躊躇なくきついのをおみまいした。
悪魔はよろめき尻餅をついた。しかしすぐに立ち上がると、ロッドに背を向けてかかしのように大きく手を広げた。
笑いながら、腰に右手を、帽子に左手を。
S字にキメて、淫靡な犬舌を出して、振り向いた。
高い鼻から一筋、血がつらつら垂れて、小さく窪んだ鼻筋へ向かっている。舌端ですくい取った。
「ああん、待っててくれたのねえぇ――会いたかった!」
ロッドは既に暖炉へ走っていた。
フレディが言い終わった時には、先が赤く熱せられた火かき棒を手にして、それを大上段に振りかぶっていた。
帽子がぺっこり潰れた。頭蓋骨を割り、中に入った豆腐のごとき柔らかいものにめり込んだ感触を得た。
フレディが崩れ落ち、痙攣し始めた。それでもロッドは手を緩めなかった。同所に焼けた鉄を振り下ろした。何度も、何度も。
砕いた骨をより細かく分解してやる。切れ長の眼、気に入らない、突き刺してやる。この音を聴け――刻め。
赤い。景色が赤い。叩きつける。骨を砕く音が心地よく響いた。腐れビッチの耳の穴を犯しつくしてやるのだ。
鼓膜を破れ。脳に巣食う黄色い機械がけたたましく叫んでいる。
血で足りるのか。お前はそれで満足なのか。そうだよな、これで終わりってわけじゃないだろう、もっと苦しませてやらなきゃなあ。
痛いって言葉、産まれてから死ぬまでの間に世界中の誰だって口にする、
今まで一度も「痛い!」って言ったことのない奴なんか絶対にいない。
お前も言っただろう、らくだシャツ着たよぼくれ親父にケツ蹴っ飛ばされて床に這いつくばった時、
髪の毛ひっぱられて冷蔵庫に貼りつけた磁石にこめかみをしこたま打ちつけられた時、
恋人を殺されて牢獄で独り、殴られた腹を押さえて、ふっと彼女の顔を思い浮かべた時。
痛い、痛い、痛い、ありふれてる。だから、その言葉の本当の意味をとことん解らせてやれ。
ロッドはジストそっくりの顔で嗤(わら)った。その通りだ、糞ビッチ、すましやがった鼻の穴から血の混じった脳味噌を垂れろ。
全てをごちゃ混ぜにして――やがて、死体になったであろうモノを見るのも止めた。
ただ両腕をやたらめったら上下させ骨を砕いた。死んだな、と感づいてはいたが、まだ黄色い機械が唸っている。語りかけている。
おいおい、それがどうして問題なんだ?動かなくなったから、なんだってんだ?
呼吸は一度も乱れなかった。ただ上げて下ろせの命令を腕が遵守した。
何十回叩きつけたか、目を閉じて、腹の底から叫んだ。
やれた。意外にあっけなく、しかし、確実に、動かなくなるまで、ぐちゃぐちゃにしてやった。怖れなかった。殺せた!
「いやあ――」
ロッドは振り返った。火かき棒が手から落ちる。
「すごい!てめえの親父そっくりだ」
両手を頭の後ろに組んで、壁にもたれかかったフレディが、言い終わって欠伸した。
さっきまで殴りつけていたのは――ロッドの顔が歪む。呼吸が乱れる。
床に大股を開いて横たわっているのは、ポンコツ車のようにでこぼこになったティナ・グレイだった。
憎悪の塊を叩きつけられた彼女はしゅうしゅう息を吸いながら、生のみにすがりついている。
右眼――左眼は潰れてへこんでいる――それは彼が子供の頃見た母が父に向けた視線と同じだった。
哀願と軽蔑に満ちた眼だった。
訴えている。
ああどうして殴るの(クズ!)許して痛い許して(クズ!)あちこち痛いの(クズ!)それでもあちこちあなたは(嘘つき!)殴る――。
フレディのハスキーな笑い声とともに、全てが闇に包まれた。
(to be continued→)
141 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 15:21:58 ID:aOW00qIC
ほしゅage
142 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 23:34:26 ID:KM51MZzF
だれかーおいしいプロポーズの小出とハセキョーかいてくれー
富豪刑事が…みたいです…
女系家族の米倉涼子できぼん
ありゃエロかった
148 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 11:42:31 ID:RA2qTFKT
それじゃ漏は純情きらりお願い
>148
漏れもキボン
センセー×サクラ子で
150 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 17:59:15 ID:eDJ8g16n
age
151 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 17:09:21 ID:8MulI8I4
昼ドラの偽りの花園が見たいなー!
あきひこ×みわこで!
さっき見たエンド・オブ・デイズの
最後、シュワちゃんが助けにこなかったら・・・ってシチュのSSキボン
153 :
sage:2006/05/29(月) 21:59:19 ID:mMr+ytSh
ちょ、こんなスレあったんかい!
トップキャスターの取締役×椿とか見てみてー
156 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 13:04:57 ID:jkM4NYO2
ギャルサーのおまわりとレミ(=妹子)で!
レミはああ見えて処女だろ。
自分もおまわりレミ希望。
158 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 18:46:58 ID:68LefrWM
どなたか海猿で寝取られパロ書いて〜
お願いします神様
ドラマ、アテンションプリーズのエロパロスレありませんか?誰か誘導おながいします(´・ω・`)
もし、無ければどなたか立ててくれませんか?
仲間由紀恵キボン
161 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 21:02:42 ID:oGD2pr4a
海猿加藤あいタン寝取られでぜひ!
松尾スズキ監督と酒井若菜ちゃんでお願いします。
DVD記念にゾロを一発キボン…キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(*´Д`)ハァハァ
164 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 23:41:31 ID:JBJVm//n
海猿まだぁー
165 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 01:57:18 ID:rV7wJS5M
誰かHEROでくりゅう×雨宮お願いします
マイボス何とかヒーロー
みたいね。
167 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 12:35:05 ID:9Bt0vyId
サマータイムマシン・ブルースをなんとなくキボン…
アンフェアのスレある?安藤雪平がもうちょっとイチャイチャしてるところが見たい(´・ω・`)
アンフェアのスレはない
安藤雪平が読みたくて必死になってググった。
エロじゃないけど見つけた時は嬉しかったよ。
171 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 16:11:50 ID:LzDkxx8n
保守
ほしゅ