「あのさぁ、俺っち変なの」
「へ、へんって、どんな」
大変だ、病院にいったほうがいいのかもしれない。信子は慌てた。
こんな屋上でのん気にアンパンとか食べてる場合じゃない。
いやアンパンは美味しかったし嬉しかったけれど。
彰は信子をじっと見ている。
ああ、そんなに見られたら穴が開くんじゃないだろうか。
「なんかさぁ、胸がむかむかするんだよねぇ」
「……はぁ」
アンパンと豆乳の食べあわせは悪かったのだろうかと、信子は思わず自分の腹を押さえた。
「でもってさぁー、この辺? が、もやもやぁっ、と、するんだよねぇ〜」
彰は自分の胸の周りをぐるぐる、とんぼを捕まえるときのようなジェスチャーで指し示した。
「んでぇ、それって野ブタにさすられてると、余計きゅううー、ってするのよ〜ん」
信子の顔は蒼白になった。
「そ、それってびょ、病気? わ、わわわ……わたしの、せい?」
本当に病気だったら大変だ。
しかもそれが信子のせいだったらもっと大変だ。
「びょっ、病院行く?」
「やぁーだ」
彰は子供のように唇を尖らせた。
「病気かぁ、病気って、うつるっちゃ?」
そう言って、彰は何か考え込んでいるようだった。
信子はどうしようどうしようと、そればかり考えた。
でも今すぐ病院に行く以外の方法が見つからない。
ぐるぐるマーブル模様の思考の渦に引きずり込まれそうになったとき、彰の声が信子を引っ張り上げた。