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ブラクラが
>>2ゲット 全員フリーズさせてやる!
>1 セキュリティ上げたって無駄だ!
>3 パソコン壊して親に怒られるなよ(ゲラ
>4 ウンコ踏むより俺を踏め!
>5 ブラクラチェッカー?なんだそれ?食えるのか?
>6 おまえのパソコンもBrowserCrash!
>7 ブラクラに勝てるのは高橋名人だけなんだよ!
>8 ドライブがカタカタいうだと・・・・・グッジョブ!
>9 ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!
>10 必殺!ブラゥウザァァァクラァァァァァァァァァァァァァァッシュ!
>11-1000 (ここに自分の好きなブラクラを貼りましょう)
このスレッド、戴く。
「あら、北本さん?」
それは夏の暑い盛りのこと。
住宅地を歩いていた雄二は、突然の涼しげな声に立ち止まった。
「ん?……あ、こんにちは」
振り向いた視線の先には、優雅な和服姿の美女が立っていた。夏の日差しに乾ききったアスファルトに柄杓で打ち水を打っている最中だったらしい。
年は二十代の後半くらいだろうか。日本人の女性にしては結構背が高く、メリハリのある、じつに女性的な体型をしている。
微かに笑みを浮かべた顔だちは彫りが深く、それでいて繊細だった。それが品のいい柄の着物とあいまって、しっとりと落ち着いた大人の雰囲気を醸し出している。
ほどけばおそらく腰にまで達するだろう長い髪は、着物に合わせるようにして後頭部で編み上げられている。
「こんにちは。今日も暑いですね」
その女性、萩月麗子はそう言って雄二に微笑みかけた。
萩月家と言えば、日本でも有数の華道の流派である抄華流宗家の家柄だ。彼女はその本家の人間だという。
(……確かに美人は美人なんだけど、この人の場合、ただ美人っていうだけで終わらないところがすごいんだよな)
さりげない立ち振る舞いからにじみでる気品とでも言うべきものが、彼女の生まれと育ちの良さをものがたっている。華道だけでなく、茶道や舞踊を一通り修めているという彼女は、一つひとつの動作がじつにたおやかだった。
「今日も寄っていかれます?」
「えっと、いいんですか?」
遠慮がちに言うと、麗子は小さくうなずいた。
「ええ、一人で暇を持てあましていたところですから」
「だったらすいませんけど、お邪魔していきます」
「どうぞ」
麗子に先導され、広大な萩月家の敷地に足を踏み入れる。
質実なつくりの門をくぐり、途中きれいに手入れの行き届いた日本庭園を歩くと、純和風建築の屋敷が見えてきた。
雄二は優雅に歩く麗子のうしろ姿にときおり視線を奪われながらも、四季の移り変わりを忠実にあらわす庭園の風景を観察していた。
このあきれるほどの大邸宅に母屋と離れがあるのは当然としても、庭の奥のほうに蔵まであるのにはさすがに驚く。ここが本宅でなく、いくつかある別宅の一つだとは何度来ても信じられない。あまりにも世界が違いすぎて、うらやむ気にもなれなかった。
居間につくと、麗子は「少々お待ちください」と言い残して、台所よりむしろ厨房という言葉がふさわしい場所に去った。
床の間には、華道大家の家柄らしく花が生けてあった。
「……萩月さんが生けたのかな」
ちりん、ちりん。
雄二の独り言に応えるように、風鈴が涼しげな音をたてる。
このような広い屋敷に一人暮らしではやはりさびしくなるときもあるのだろうと、本格的な庭園を眺めながら雄二は思った。
(ま、だから、俺みたいな平凡な大学生にも構ってくれるんだろうけどな……)
この家に住んでいるのは彼女ただ一人だ。使用人はいるが、住み込みではなく、週に何度かお手伝いさんが来るという程度らしい。
夫と一緒に暮らしていないのは、彼の仕事のせいだということだった。「夫は宗家として、いつも全国を飛びまわっているものですから」と、麗子がさびしそうな顔で言っていたのを雄二は思い出す。
「北本さん、お茶が入りましたけれど……」
声をかけられて、初めて麗子が戻っていたことに気づいた。
「あ、どうもすみません」
「どうかされたのですか、ぼうっとされていたようですけど」
「いえ、なんでも」
まさか、あなたのことを考えていましたとは言えず、雄二は言葉を濁した。麗子はにこにこと微笑みながら軽く首をかしげている。
「どうぞ。粗茶ですが」
「いただきます」
差し出された湯飲みを受け取ると、お茶がじつに適度な温度で入れられているのが、こういうことにまったくの素人である雄二にも分かる。これに限らず、彼女のもてなしはいつも細かいところまで行き届き、相手を安心させずにはおかないのだった。
香ばしいお茶をすすると、夏の暑さに乾いた喉が潤されていく。
その後しばらくは、ほのぼのとした夏の午後が二人のあいだを流れていった。
「お茶のお代わり、お入れしましょうか?」
「はい、お願いします」
「それにしても、今年の夏は本当に暑いですわね」
「そのせいでエアコンがすごく売れているそうですよ」
そんなやり取りの合間に、雄二は彼女と初めて出会ったときのことを考えていた。
……そもそも、平凡な大学生の雄二が麗子のような女性と知り合うことになったのは、友人に紹介されたアルバイトがきっかけだった。
二週間前、運送会社の臨時アルバイトとして萩月邸を訪れた折りに、着物姿の美女が応対をしてくれた。
それが、この萩月麗子だった。
同行した社員とともにもてなされた雄二は、その美しさと、大人の女性らしい優しさに心を打たれたものだった。
だからその数日後、偶然萩月邸の前を通りがかったさいに、顔を覚えていてくれた麗子に声をかけられたときは、ひどく嬉しかったのを覚えている。
これも一つの縁と言うべきか、じつは、雄二が一人暮らしをしている安アパートと彼が通う大学のあいだにこの萩月邸があったのである。
それ以来、雄二の顔を見かけるたびに麗子が声をかけてくれるようになり、その場で立ち話をしたり、また今日のように二人でお茶を飲んだりということが続いていた。
雄二としては、主人が不在の家に上がり込み、しかも人妻と会うなどという行為にうしろめたさがないでもなかったが、今どきめずらしい大和撫子の鏡と言うべき彼女の心配りに、つい楽しい時間を過ごしてしまうことが多かった。
(好きになっちゃいけない人だってのは分かってるんだけど)
雄二は、会うたびに惹かれていく自分を感じていた。
いつものように大学での話を聞きたがる麗子に、おもに失敗が多いさまざまな体験談を話して聞かせていると、いつのまにか時計の針が午後の四時を指していた。
「あ、もうこんな時間だ。それじゃあ、俺、そろそろ帰りますね」
「そうですか?……あら、本当。北本さんとお話していると、ずいぶん時間がたつのが早い気がしますわ」
裏のない笑顔に、雄二の心がちくりと痛む。
「またいらしてくださいね」
美人の麗子が微笑むと、どことなく少女のような風情があった。
玄関まで見送ってもらうと、麗子に会釈をして、雄二は家のほうに向かって歩き出した。
(あーあ、また一人さびしくコンビニ弁当か。麗子さんみたいな彼女がいればなー。いろいろ作ってくれるんだろうけど)
そんなことを考えながら振り返ると、玄関先に立った麗子はまだこちらを見ていた。
何気なく手を上げると、彼女もそでを振って応えてくれた。
「っく、いらっしゃい、雄二さん」
「こ、こんにちは……」
五日後、玄関で出迎えてくれた麗子はいつもと少し様子が違っていた。
表情がどこかぼんやりしていて、話すスピードも普段よりやや遅く感じる。つねに凛としている和服の着こなしも、気のせいかわずかに着崩れているようだった。
内心首をかしげていた雄二は、案内された居間の惨状を見て原因を知った。
「……麗子さん、お酒飲んでたんですか?」
食卓は言うまでもなく、果ては畳の上にまで酒びんが転がっていた。ぜんぶ合わせると、十以上はある。この様子を見ると、かなり前から飲んでいたようだ。
「ふふ、私がお酒を飲んでいると何か変ですか?」
「い、いや、べつに変ってことはないですけど……」
妖しく微笑む麗子にとまどって、雄二は目をそらす。
(だからって昼間からこんなに飲むなんて、ちょっと普通じゃないだろ。……麗子さん、何かあったのかな)
「私だって、ときにはお酒を飲みたい気分になることもあります」
「………」
雄二はこのとき何も言えなかった。彼は麗子が抱えているものが何であるか知らなかったし、それを知ることができるともこのときは思っていなかった。
「雄二さんもお飲みになりますか?」
日本酒の入ったコップを揺らして麗子が訊く。
「い、いえ、俺はお茶でいいです」
「そうですか?」
まだ面食らったままの雄二が答えると、彼女はふらふらと部屋を出ていった。
(……あれ? 今、麗子さん、俺のことを名前で呼ばなかったか?)
雄二がそう思い返していると、遠くから、がちゃん、という音が聞こえた。大急ぎで音がしたほうへ向かうと、厨房の床にへたり込んだ麗子の姿があった。
「れ、麗子さん?」
横にはきゅうすと湯飲みが落ちている。どうやらお茶を入れようとして転んだらしい。
「だ、だいじょうぶですか? 」
「……転んじゃいました」
「あんなに飲んだら当然ですよ」
と、麗子が右手を差し出した。
「……?」
一瞬の間の後で、起こしてくれという意味だと気がついた雄二が手を取ると、彼女の手はやけに冷たかった。そのまま腕を引いて立たせるが、ふらふらして、どうやらもう一人ではちゃんと立っていられないようだった。
「もう横になったほうがいいですよ。どこか布団のある部屋ありますか?」
「それなら……あちらです」
ひっく、と可愛らしいしゃっくりを繰り返す麗子に肩を貸して歩く。手は冷たいのに、彼女の体はじんわりと暖かかった。
「えーと、布団は……この押し入れかな……」
どうにか布団を敷いて麗子を寝かせると、雄二はようやく一息ついた。
「あの……それじゃ、俺、今日のところはこれで失礼しますね」
「雄二さん……」
「はい」
名前を呼ばれて、帰ろうとしていた雄二は振り返った。見ると、上半身を起こした麗子が胸を押さえている。
「帯を緩めていただけませんか?」
「あ、そうか。……あ、いや、でも」
「お願いします。先ほどから苦しくて」
どんどん危険な状況に踏み込んでいる気もするが、そう言われれば雄二としても断りきれない。帯をほどいてあげることにした。
「こうでいいんですか?」
「いえ、こちらに手を回して……」
麗子の手に導かれながら着物の上をまさぐっていると、案の定、雄二は妙な気分になってきた。
彼女は、服の上からでもすぐに分かるほどの抜群のスタイルをしている。その柳腰を小さく揺らして歩く彼女のうしろ姿に、思わずおかしな気持ちになったことも一度や二度ではない。
(今はそれどころじゃないってのに。えーい、静まれっ、俺)
懸命に念じるものの、麗子のやわらかな感触に、雄二は自分の鼓動がどんどんと鼓動が早くなってくるのが分かった。
「……よっと。これでいいですか?」
「はい、楽になりました」
帯がほどけると、襟元から魅惑的な胸の谷間がのぞく。
「……うっ」
動揺する雄二とは逆に、麗子は穏やかな表情で横になった。
「あの……」
「は、はいっ」
「少しだけ、お話を聞いていただけますか?」
そう言うと、麗子は横になったままで話し始めた。
「私が萩月本家の人間だということは、以前お話しいたしましたね。……私は、生まれたときから将来の宗家の妻として育てられました。幼い頃から習い事はひと通りさせられ、友達も自由に作れず、会ったこともない許嫁との結婚が決められていました」
目をつぶって溜め息をつく。
「でも、それでも自分が不幸だとは思ったことはありませんでした。毎日の暮らしに不自由はありませんでしたし、まだ、結婚がどういうものなのか、まったく分かっていませんでしたから」
彼女の告白を、雄二はただ黙って聞くしかなかった。
「夫は悪い人間ではありませんでしたし、何人もの中から宗家に選ばれただけあって、その道では素晴らしい人です。でも二人の生活は上手く行きませんでした。
私が子供を産めない体質だと分かってからは、あの人がこの家に帰ってくることもほとんどなくなりました。
……夫に、私のほかの女性がいると気がついたのは、その後のことです」
「麗子さん、あの……」
「あの人は私と離婚する気はないでしょう。宗家という地位を手に入れたとはいえ、あの人はあくまで入り婿ですから、離婚すれば一族の中での立場が弱くなってしまいます。ですから……」
「麗子さん、もういいからっ!」
雄二は自分でも驚くくらいの大声を出していた。麗子を抱き起こすと、それまでは泣いていなかった彼女が、そのとき初めてひと筋の涙を流した。
雄二はそのままの勢いで麗子にキスをした。彼女は抵抗らしい抵抗はしない。ただ、悲しげな表情でつぶやいただけだ。
「……ごめんなさい」
「麗子さんが謝ることないよ」
言って、雄二は目をそむけた。少し冷静になって恥ずかしさが戻ってきたこともあるが、麗子の服が乱れ、白いふとももや豊かな胸の膨らみが見えかかっていたからだ。気がついていないのか、彼女にそれを直す様子はない。
今、勢いで麗子さんに迫ったら、この気持ちが本当かどうか、きっと自分でも信じられなくなる。
ほとんど必死の努力で衝動を押え込んだ雄二が、彼女の代わりに服の乱れを直すために手を伸ばすと、その手を麗子の冷たい手がそっと押さえた。
その瞬間、雄二の努力も空しく、我慢していたものがはじけ飛んだ。
「麗子さんっ!」
抱き締めると、雄二は麗子の唇に吸いついた。今度は舌を入れ、彼女の口内を思うさま蹂躪していく。最初はただ無抵抗だったが、しばらくすると麗子も遠慮がちな動きで応えてきた。
微かに甘い口の中を舐め回し、舌を吸ってやると、彼女もすぐに同じことを返してくる。
雄二は深いキスを続けながら、ほとんど脱げかけていた彼女の服を取り去った。その下には、シンプルなデザインのショーツだけで、ブラはしていない。
あらためて麗子の全身を見ると、それは希代の名工が彫り上げた彫像のように美しかった。
しかも美しいばかりでなく、肉感的な魅力をも同時に備えている。色香が匂うとは、こういうのを言うのだろうかと、雄二はくらくらする頭で考えていた。
ウエストや足首はまるで少女のように細かったが、つくべきところにはしっかりと肉がついている。まるで成熟した女性の美点をよりあわせて作ったような体だった。
雄二はもはや我慢できずに、その美と淫猥さが同居する肉体におおいかぶさっていく。
「あっ……」
横になっているにもかかわらずかたち良く盛り上がった胸の先端を吸われて、麗子が小さな声を出した。その声に調子づいた雄二が、もう一方の胸を激しく揉みしだく。
「んんっ、やっ」
熱をもったやわらかい肉塊をもてあそんでいると、すぐに乳首が固くとがってくるのが分かった。それを摘まんだり押し潰したり、雄二はその本能の赴くままに責めたてる。
「んふっ……ああ……」
同時にふとももを撫でまわしていた手を上に持ってくると、控えめな割れ目は、すでに蜜をあふれさせていた。そこはあくまできれいなピンク色で、そのまわりを囲む茂みは、もうしわけ程度に薄い。
雄二は彼女の中に躊躇なく指を差し込んだ。そうすると、おそらく体のどこよりも熱くなっているその部分が雄二の指を優しく受け入れ、次に噛みつくようにして締めつけてくる。
「ああっ、雄二さん、だめっ」
あまり経験がないのだろうか。彼女の中は、指二本で一杯になるくらいきつい。雄二は自分の物が入るときことを考え、念入りにほぐしていく。
「ふっ、んくっ、やぁ……」
だが麗子の悩ましい声を聞きながら指で責めているうちに、雄二はどうにも我慢しきれなくなった。自由にならない手でつっかえながらもチャックを下ろすと、限界まで固くなったペニスを取り出す。
そしてそれを麗子の入り口に添えると、はっと息を飲む気配があった。
だがすでに限界だった雄二はそれに構わず、彼女の奥目がけ一気に腰を叩きつけた。
「ああああっ!」
「……くっ、熱い」
ペニスが麗子の一番奥まで届いたのを確認すると、雄二は間を置かず腰を動かし始める。テクニックも何もない。ただ突くだけ。欲望を満足させるだけの動きだった。
事実、麗子の中はたとえようもないほどの快感を与えてくれた。やけどするのではないかと思うほど熱をもった膣が雄二のペニスを咥え込み、愛液で充分に潤った粘膜で全体を優しく愛撫する。
雄二はその膣をこすり上げるようにして腰を動かした。
「れ、麗子さん、麗子さんっ!」
「あっ、あっ、あっ、ああああぁーっ!」
蜜をあふれさせた女の器官が、じゅぷっ、じゅぷっ、と卑猥な音をたてている。
乱れたシーツを固く握り、ときおり唇を噛んで激しくあえぐ彼女の様子からは、普段の楚々とした姿はまったく想像できない。
しかし髪を振り乱し、突かれるままに嬌声を上げても、不思議に彼女の気品の最後のひとかけらだけは失われていなかった。
「んくっ、ふあっ、ああっ、ゆ、雄二さん、雄二さんっ……!」
華奢な腰を抱えて突きまくると、麗子のたわわな胸が激しく揺れた。
彼女のまるで男を誘うような乳房の動きと陶然とした表情に、雄二の腰の動きが力強くなる。
「麗子さんっ、くっ」
うめく雄二の下腹が麗子の腰を叩く音も早大きくなっていく。憧れの女性、それも美しい人妻を犯しているという興奮が加わり、雄二はいつもよりかなり早い最期を迎える。
「くっ」
胸の谷間に顔をうずめながら、雄二は腰を押しつけて射精を開始した。麗子の中で、ペニスが暴れながら大量の精子を吐き出していく。
「ああああぁーっ!」
ぎゅっと、両手で雄二を抱き締めた麗子が叫ぶ。びくびくというペニスの脈動に合わせて、彼女の膣と全身が小さく痙攣を繰り返した。
「……うっ……はあ、はあ、はあ……」
ようやく射精を終えて、雄二は息を整えた。だが、あれだけの量を麗子の中に注ぎ込んだくせに、まだ彼の性器は狂暴な状態を保っていた。
目の前では、ようやく陵辱から解放された麗子が汗まみれで荒い息をつき、胸の二つの丘を大きく上下させている。
(だめだ、まだこんなものじゃ……)
「麗子さん!」
「えっ?」
言うなり、雄二はふたたび腰を動かし始めた。不意をつかれて慌てる麗子に構わず、固いままのペニスで、彼女のもっとも深いところをふたたび蹂躪していく。
「だ、だめっ。雄二さんっ、あっ、ああっ!」
その後、すすり泣く彼女の子宮に三度目の射精を叩きつけて、ようやく雄二は動きを止めた。
「……はあー」
期せずして憂うつな溜め息が出た。
あの日から五日が過ぎ、雄二はようやく萩月邸に行く覚悟を決めた。
しかし当然のことながら気は進まない。あんなことがあった後でノコノコ顔を出すのは、いくらなんでも気が引けた。
「……はあー」
今日何度目の溜め息か、もはや自分でも覚えていない。
あの後、我に帰った雄二は眠ってしまった麗子に服を着せて布団を掛けると、そそくさと逃げるように屋敷を後にした。
その後のことは、あまり覚えていない。よほど動転していたのだろう。
仕方のないことだと分かっていたが、もう彼女と気軽に会って話をすることができなくなるのかと思うと、雄二の心は後悔で一杯だった。
こんなことだったら、衝動のままに行動するのではなかったとも思う。しかし今まで幾度も思い知らされたことだが、やはり「後悔は先に立たない」のだ。
立っているだけでもうだるような暑さの中を、雄二は歩いて萩月邸に向かう。まるでこれから刑を執行される死刑囚のような気分だった。
屋敷の前まで来たが、門の所に麗子の姿はない。
少しだけ寿命が延びた気がして、雄二はなるべくゆっくりと玄関に向かった。
ここまで来ておきながら、まだ未練たらしくのたのたと歩く自分をかえりみて、ふと昔の国会で見た牛歩戦術思い出す。
玄関の前につくと、雄二は大きく深呼吸をした。気を落ち着けてからでないと扉を開ける勇気が湧かない。
だが彼が心の準備を終える前に、運命の扉は開いた。
「……あら、雄二さん」
「あ」
「いらっしゃいませ」
からからと開いた引き戸の向こうの麗子は、ちょっと驚いた顔をしてから、にっこりと微笑んだ。
突然の目の前にあらわれ、なんの屈託もなく微笑む彼女に雄二はとまどった。
麗子にしてみれば、突然現われたのは雄二のほうに違いないのだが、雄二にとってはやはり突然としか言いようがない。
「どうかしました?」
「あ、いや、あの……」
「どうぞ、そんな所にいつまでも立っていらっしゃらないで、お上がりになっていってください」
「はあ……」
雄二の返事は、当然のことながら歯切れが悪い。
このあいだの出来事などまったく気にしていない様子で、着物を着込んだ麗子は先に歩いていく。
実際、忘れていてくれればどんなにいいかと思った。しかしそんなことはありえない。たとえ酒のせいで記憶があいまいだったとしても、部屋と自分のありさまを考えれば容易に分かることだ。
居間に上がり込んだ雄二は、勧められるままに座布団に腰を下ろした。
「少し待っていてくださいね。お茶を入れて来ますから」
音をたてずに去っていく麗子を見ながら、雄二はどうも納得がいかない様子で首をひねっていた。
(覚えてないはずはないのに。どうして何も言わないんだろう)
ぐるぐると思考の迷路を虚しくさまよっていると、いつものようにお盆を持った麗子が帰ってきた。
「今日はお茶請けがあるんですよ。知り合いの方に、おいしいお羊羹をいただきまして」
「あ、はい、いただきます」
気を落ち着けるために、ひとまず話は後回しにして、彼女が入れてくれたお茶をすすりながら羊羹を摘まむ。
なんの気なしに口に放り込んだ羊羹は、今まで食べたことがないほどおいしかった。
「へえー、この羊羹おいしいですね」
「そうでしょう?」
素直な感想に、麗子は嬉しそうに微笑んだ。
「有名なお店の物ですから。その分、お値段もそれなりにしますけど」
「いくらくらいするんですか?」
適当な値段だったら、後で自分も買いに行こう。そんな考えは、次の麗子の台詞であっさりと吹き飛ばされた。
「そうですね……一竿で、三千円ほどでしょうか」
「さ、三千円?」
雄二は慌てて今食べていた羊羹の欠片に目を戻した。もう食べた分を入れると、今皿に切り分けた分だけで五、六百円はする計算だ。普通の家庭であれば、ふらっと訪れた客に何気なく出すという代物では絶対にない。
実は私もよく買うんですよ、と言う麗子を見て、雄二はいまさらながらに彼女が違う世界の人間だということを実感した。
それはそうだ、歴史ある旧家で華道家元の家柄もとなれば、相当な財産があるはずだ。にわか成り金とはわけが違うだろう。
一方、雄二の実家は実に平凡な家庭だ。彼自身も、この先資産家になるとは自分でも思えなかった。
「どうかされたんですか、今日はずいぶん無口でいらっしゃるみたいですけれど」
「それは……」
そうはっきりと問われたら、答えるしかない。雄二は覚悟を決めた。
「あの、このあいだのことですけど……」
途端に麗子の顔が、かーっと朱に染まった。やはりちゃんと覚えてはいたらしい。
「いえ、その、あっと……」
見ていて気の毒なくらい狼狽する彼女に、雄二は頭を下げた。
「ほんとにすみませんでした。あのときは、俺……」
「どうして謝るんですか?」
「えっ」
予想外の言葉に頭を上げると、顔を紅潮させた麗子がきっと鋭い表情で彼をにらんでいた。
いつも穏やかな彼女のこんな表情を見たのは初めてだが、怒っている彼女もやはり美しいと、こんなときではあるが雄二は思わざるをえない。
しかし、非難されるのは当然だとしても、雄二は彼女の言葉がよく理解できなかった。
「あのとき、雄二さんは私に謝るなっておっしゃったじゃありませんか。私が謝るのはいけなくて、あなたが謝るのはいいと言うんですか?」
(思い出した。彼女が「ごめんなさい」と言ったとき、俺は……)
「そんなの不公平じゃありませんか!」
「そうですね……。すみません。あ、いや、今のは違うんですよ?」
慌てて訂正すると、涙を浮かべた麗子が泣き笑いの顔でくすくす笑っていた。
「あれは……あなたが悪いわけではありません。ですからもうそんな風におっしゃらないでください」
「……はい」
本当は完全に納得したわけではなかったが、とりあえず雄二はうなずいた。彼女はあのときひどく酔っていたし、何より彼女は他人の妻だ。
だが、これ以上言っても彼女を傷つけるだけだと思った雄二は、そのことには目をつぶることにした。
「私のほうこそ、先日は見苦しいところをお見せいたしまして」
「あ、いえ、とんでもありません。……で、何が原因だったんですか?」
訊くと、麗子の顔がふっと曇った。
「……あの人に、子供ができたそうです」
その子供が、彼女とのあいだの子供でないことは明らかだった。
「お気になさらないでください。もう、吹っ切れましたから」
無理をしているのが分かるだけに、見ていて痛々しい。
「あ、そういえば、どこかに行くところだったんじゃないんですか」
暗くなった空気を変えるために、無理矢理話題を変える。
動転していたので忘れていたが、玄関で鉢合わせしたとき、麗子はこれから外出するような格好をしていたはずだ。
「いいえ、たいした用事ではありませんでしたから」
「それならいいんですけど。じゃあ、今日はこの後だいじょうぶですか?」
「え……? これからですか?」
ちょっと大袈裟なくらい驚いて、麗子が胸に手を当てる。だが少し視線をさまよわせると、目を合わせてしっかりとうなずいた。
「……分かりました、あの、雄二さんがお望みでしたら。それでは準備をいたしますから、このあいだの部屋で待っていてくださいますか?」
「は……?」
事情が飲み込めない雄二を置いてけぼりにして、妙に真剣な顔で麗子は姿を消した。
しばらく待ったが、彼女は帰ってこない。仕方なく、あの部屋に行ってみることにした。
この屋敷には十五以上も部屋があるので不安だったが、迷うこともなくあの部屋につくことができた。
十畳ほどのその部屋は、基本的に何もないだった。普段は使っていないのだろうが、手入れだけはしてあるらしく、清潔に保たれていた。
とりあえずやることもないので、障子越しのやわらかい光を浴びつつ、ぽつねんと待っていると、麗子が入ってきた。
だがその格好見て、雄二は座ったまま飛び上がりそうになった。
「れ、麗子さんっ!?」
彼女はバスタオルを巻いただけで、そのほかには何も着けていなかった。長い髪はゴムか何かで留めてあるのか、無造作にまとめられ、肩を通って前に垂らされていた。
ただでさえ白く滑らかなその肌が、湯上がりにほてっているのを見て、雄二は思わず生唾を飲み込んだ。
恥ずかしそうに体を自分の抱いていた麗子が、部屋の中を見て顔を曇らせた。
「あら……」
雄二の目の前であっというまに布団を敷くと、麗子はその横にひざまづいた。そして両手を突き、深くゆっくりと頭を下げる。
「ふつつか者ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします」
緊張をほぐすためか、頭を上げた麗子はそう言って少し笑った。
「こ、こちらこそ」
思わず応えながら、雄二は彼女がかなり突拍子もない誤解をしたことにやっと気がついた。彼はこの後も時間があるのかと訊いたつもりだっが、彼女はどうやら違う風に取ったらしい。
だがこれはこれで、彼女なりに覚悟を決めた結果ということか。
貞操観念の強い麗子が、夫のことを気にしていないわけがなかった。たとえ相手が先に浮気をしたのだとはいえ、そして夫婦という絆が、もはやかたちだけのものになったとはいえ、彼女が平気でいるとは雄二には思えなかった。
しかし雄二の前では、ついぞそんなそぶりを見せない。
であれば、雄二は何も知らないふりをしよう。彼女が言わない限り夫とのことは口に出さず、ただ彼女を愛そうと心に決めた。
「………」
「………」
奇妙な沈黙があって、そのあいだ二人はじっと目を合わせていた。
(……あ、そうか)
雄二は自分が麗子を好きになった理由の一つに、不意に思いいたった気がした。
麗子は平凡な、それも社会人ですらない彼に、まるで一人前の男であるかのようにして接してくれる。
大学生というある意味、中途半端な立場にいる雄二にとって、彼女のような成熟した大人の女性にそうやって扱われることはこの上ない喜びだった。彼女といると、自分がひとかどの人物にでもなった気がする。もちろんそれが錯覚でしかないことは彼も自覚していたが。
「あの……」
「は、はいっ」
声をかけられて、雄二はぴんっと背筋を伸ばした。
「その……なさらないんですか?」
「い、いえ」
やる気は満々だったが、見つめられるとどうもやりにくい。
「あの、それじゃ、横になってもらえますか?」
「……分かりました」
麗子は恥ずかしそうにしながら、ゆっくりと布団に体を横たえた。
「目を閉じてください」
素直に瞼を下ろすが、肩が微かに震えている。
雄二は麗子の薄いピンクの唇に、自分の唇をそっと重ねた。その瞬間彼女の体がぴくっと動いたが、それ以上の反応はない。
「……んんっ……」
舌を入れると、麗子の舌が少しとまどうように揺れた後に近づいてくる。雄二はそれを逃がさないように吸うと、口の中を荒々しくかき回した。
二人の舌が音をたてて絡みあう。
「んふぅ……」
雄二は一度口を離すと、麗子の体を隠しているバスタオルをずらしていった。羞恥に弱々しい声を漏らす彼女の顔を眺めながら、へその辺りまでゆっくりと下げる。
大きくてかたちのいい胸があらわになると、麗子は両手で顔をおおった。
恥ずかしそうにしながら、胸を隠さないのがなんとなく彼女らしいと雄二は思う。
「大きいですね」
「いや……言わないでください……」
ふと気になって、顔を隠したままの彼女に訊いてみた。この間はとにかく夢中だったので、そんなことを気にしている余裕はなかったのだ。
「バストのサイズは何センチなんですか?」
驚いて思わずこちらを見た麗子に重ねて訊くと、諦めたように小さくつぶやく。
「……87センチです」
予想より小さかったのでやや拍子抜けした雄二は、そのこんもりと盛り上がった胸の上に手を置いた。
「あ……」
「カップは?」
ゆっくりと揉みながら訊く。
「あん……え、Fカップです……」
「……なるほど」
うなずいて、雄二は胸を揉む力を少しだけ強めた。Fカップの胸が、彼の手の動きにしたがって自在にそのかたちを変える。
大きく見えたのは、サイズよりもカップのせいだったのだ。彼女はくびれるべき箇所が基本的にほっそりしているから、サイズ的にそう大きくないのは当然かもしれない。
「麗子さんの胸、大きくて好きですよ」
「本当ですか?……あっ」
麗子が、先端に吸いついた雄二の頭に手を乗せた。
「そう言っていただけると私も嬉しいですけれど……」
「あと大きいおしりも」
「……ま」
そう言って胸と同じくボリュームのある腰を撫でると、微笑んでいた麗子の表情が曇った。実は密かに気にしていたのかもしれない。
雄二はそれに気がつかず、大きな乳房の中心にぽつんと控えめに立つ乳首を舐め回していた。
「ああっ、あっ、雄二さん」
大きくなった声にどうやらここが弱点と当たりをつけて、小さなその桜色の突起を集中的に責める。乳首を軽く噛まれた麗子が、すすり泣くような声を漏らした。
「ああ……もうっ……」
そろそろ下半身に移ろうとした雄二の手を、苦しそうな表情をした麗子が止める。
「雄二さんも、服を……」
「あ、そうか」
自分だけまだ服を着ていたことを思い出し、急いで脱ぐ。
トランクスを脱ぐと、すでに急角度でそそり立つペニスが跳ねるようにあらわになった。
麗子は慌てた様子で顔をそむけたが、固く突き出した肉の杭をしっかりと視界の端でとらえていた。
雄二はすっかりはだかになると、麗子の下半身を隠しているタオルを取り去る。
「恥ずかしい、です」
隠そうとする手を強引にどけると、雄二の前に麗子のすべてがさらされた。
頼りなく震えるその様子にはいつもの落ち着いた大人の女性の面影はなく、今の彼女はまるで幼い少女のようだった。そんな彼女を、雄二は安心させるように抱き締める。
やわらかいふとももを撫でると、それは吸いつくような肌触りだった。
「麗子さん、じゃ、しますね」
声をかけると、雄二は固く閉じた麗子の両足を開き、とろとろと蜜を湛えた割れ目をじっと見つめた。
そこは、淫らで美しい肉体の泉だった。
諦めたように溜め息をつく彼女の足のあいだに体を入れると、その部分に顔を近づけた。そのままさらに顔を近づけて、そっと触れるか触れないかというキスをする。
「……んっ」
押し殺した声に顔を上げると、麗子は指を噛んでいた。
「声を出してもいいのに」
このあいだの嬌声を思い出して言ったが、彼女は激しく首を振った。よほど恥ずかしいらしい。
それを見た雄二はちょっと笑い、持ち上げたふとももを両手で抱え込んで動きを封じると、彼女の入り口を本格的に責め始めた。
「やっ、ああっ」
割れ目を押し開くように舐め上げる。そのたびに、入り口が、ひくっ、ひくっと妖しい動きをする。
「ひっ……んっ、あっ」
舌を入れようとすると、強烈な締めつけがそれを阻む。
雄二は諦めてその上にある突起に目をつけた。ひだをかき分けてそれをむき出しにすると、口に含んで思い切り吸いたてる。
「ああっ!」
麗子が大きな声を上げたかと思うと、ふっと全身から力が抜けた。
「麗子さん?」
「……はっ……はい……」
「もしかして、いったの?」
口を開くのも苦しいのか、麗子はこくんとうなずいて応えた。
「このあいだはいってなかったみたいだったけど……」
「は……初めてです……」
「え? 麗子さん、いったの初めてなの?」
「……は、はい」
自分が初めて彼女をいかせたという事実を知り、ますます興奮は高まった。
雄二は猛るペニスを握り締めると、まだ息が荒い彼女の割れ目に押し当てた。彼女の両足を自分の肩に掛け、きつい抵抗に負けないよう体重をかけて押し込んでいく。
「くっ……ああっ」
先端が飲み込まれると、彼女の入り口が雄二自身をしごくように締めつける。
構わずそのまま奥まで突き入れた。
敏感な部分が熱い粘膜で包まれる感覚に、思わず腰が震える。
「いきますね」
そう言って、雄二は彼女にのしかかるようにして腰を使い始めた。みずからのふとももに潰され、麗子の大きな乳房がひしゃげる。
前屈の体勢になった彼女のあそこから、ちゅくちゅく、と激しい摩擦によって愛液の泡立つ音が聞こえた。
「あっ、ああっ、あああぁーっ!」
一度絶頂に達した体を貫かれて、不自由な体勢のまま麗子がのけぞる。
恥じらいを圧倒するほどの快感に、彼女はもはや我を失っていた。
(まるで俺専用に作ったみたいだ……)
膣の中をこすり上げながら、雄二は自分のペニスと麗子の膣のあまりの相性の良さに驚いていた。
初めからお互いのためにだけに作られたかのように、二人の性器はぴったりとフィットしている。
「ゆ、雄二さっ……」
苦しい呼吸の中で、懸命に自分の名前を呼ぶ甘い声に限界を感じた雄二が、一旦その動きを止めた。
「あ、すみません。つらかった?」
「す、少しだけ……」
しばしのあいだ休むと、まるで聖女のような表情をした麗子の白い体をそっとうつ伏せにする。
「ゆ、雄二さん?」
そして彼女の腰を撫で回すと、やわらかい中にも弾力を残したまるいおしりを両手で揉みこむ。
「あっ、あん……」
うっすら汗をかいた麗子の下半身は、男なら誰でも虜するだろう妖艶さをただよわせていた。
もちろん雄二も例外ではなく、撫で、さすり、舌を這わせ、歯を立てて、そのすべてを味わいつくそうとする。
「はあっ……」
あまりの恥辱に耐えられないといった風情の麗子が、布団に顔をうずめた。それでもときおり、愛撫に反応して腰が震え、声が漏れる。
人妻のおしりをたっぷりと堪能すると、雄二は彼女の腰を抱え、四つん這いの格好をとらせた。
「やっ……うしろからなんて……あっ」
涙を浮かべて懇願する麗子の背中にキスをして、雄二はゆっくりと中に侵入していく。
「ああ……」
先端が子宮の入り口に届くと、麗子はがっくりと頭を垂れる。そうすると、ほどけた髪がさらりと流れた。
すぐに雄二は長いストロークで腰を使い始める。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
雄二の腰が、ぱんぱんっと乾いた音をたてて麗子のおしりを叩く。反射的に逃げようとする彼女の両肩を掴むと、雄二は一段と強く突き込んでいった。
「ぅあっ、やあ、あああーっ!」
いつも淑やかな麗子を獣の体位で犯すことで、雄二は今までで一番の興奮を覚えていた。激しく揺れる大きな胸が、さらに彼自身を固くしているのが分かる。
「だめっだめっ!」
「麗子さんてやっぱり感じやすいんだね。いきそうなの?」
泣きそうな麗子に声をかけると、悲鳴の合間に肯定の返事があった。
「ひっ……は、はいっ」
「だったら、いくときは『いく』って言わなくちゃだめだよ」
「あっ、雄二さんもっ、な、名前で呼んでくださいっ」
「えっ?」
「麗子って、呼んでくださいっ」
淫らにあえぐ彼女の美しいその言葉に、雄二はたちまち限界を迎えた。
「う、うん、いくよっ」
最後に大きく打ちつけると、二人は同時に達した。
「ああっ、いくっ! いっちゃいますっ!」
「くっ、麗子さんっ……麗子っ」
「あああああーっ!」
可愛らしい口調で絶頂を告げる麗子の中に、雄二は遠慮なく白濁を注ぎ込んでいく。
「うっ……俺のが入っていくのが分かる?」
「あ……はい……あっ」
びゅくびゅくと音をたてそうな勢いで吐き出される精子を女の器官で受け止めながら、麗子はうっとりとうなずいていた。
「えっと、あの……一緒にお風呂に入りませんか?」
絶頂の余韻が残る気だるい空気の中、雄二の誘いに麗子はもう一度うなずいた。
「……え? 麗子さんて、結婚するまで男と付き合ったことなかったんですか?」
「ええ、大学までずっと女子校でしたし……」
お湯を張った湯船の中、対面座位の体位でつながったまま、二人はそんな会話を交していた。
「ふーん、じゃあ俺が最初の男だね。初めて麗子さんをいかせたんだし」
「もう、雄二さんたら……」
先ほどからずっと剛直で中心を貫かれているにもかかわらず、雄二の上に乗った格好の麗子は穏やかに微笑んでいた。
「でもほんとに大きいなー」
体位の関係で目の前にあるたわわな胸を見て、雄二がつぶやく。
「そんな、しみじみとおっしゃらなくても……」
それを聞いた麗子は、苦笑としか言いようのない笑いを漏らした。
「こんなに大きくてきれいなおっぱいなんて、今まで見たことなかったから」
「いやだ……雄二さん、赤ちゃんみたいですよ……んっ……」
つんと立った乳首を吸われて、麗子の息が止まった。
「ね、今度は麗子さんが動いてよ」
「えっ?」
そう言うと、軽い快感にふるふると身を震わせていた麗子を大きく突き上げる。
「あうっ」
「ね、ほら、こうやって腰を動かしてみて」
「そんな……」
「じゃないと」
雄二は、胸の中心にあるピンク色の突起をかりっと噛んだ。
「あくっ!」
痛みとともにしびれるような快感があり、麗子は身をすくませた。
「ね?」
「わ、分かりました」
はあ、と複雑な表情で溜め息をつくと、麗子は雄二の両肩に手を置き、腰を揺らし始めた。それによって一杯に張られたお湯の表面に、大きな波紋ができる。
「んんっ、あ、ああ……」
波紋はいくつも重なりあい、次第に複雑な文様を作り出していく。
「麗子さん、今日はたくさんしようね」
「んっ……は、はい」
まんざらでもない顔で麗子がうなずく。そうすると、膣の粘膜が雄二をきゅっと締めつけた。
「あん、あん……ああっ……」
その日、萩月邸には、暗くなるまでとぎれなく嬌声が流れていた。
(あれって、麗子さんだよな)
町で麗子によく似た女性を見かけた雄二は、ぐっと目をこらした。
ほかの女性よりも、頭一つ分は大きい背の高さ。美しい光沢を持つ長い髪。そして魅惑的なそのボディーライン。
洋服を着ている点を除けば、やはりどう見ても彼女だった。
声をかけようとして、雄二は、まわりの男たちもまた麗子に注目していることに気がついた。
(まあ、あれだけの美人だし無理もないか)
その美女と自分が特別な関係であるということに優越感を覚えながら、雄二は八百屋で果物を品定めする麗子に近づいていく。
「こんにちは、麗子さん」
「あっ、雄二さん」
雄二の顔を認めて、麗子の顔がぱっと華やいだ。いつもはほんの少しさびしげな印象のある彼女が微笑むと、その美貌は一層きわだつ。
そしてそれができるのは自分だけなのだと思うと、思わず笑みがこぼれた。
「学校からお帰りですか?」
「ええ、今日の分はもう終わったんで、これからは自由の身です」
男たちの視線の圧力も、今はむしろ心地よく感じられる。
雄二は笑顔で答えた。
「最近、すっかりお見限りでしたね」
ちっょと恨めしそうな麗子の視線に、雄二は苦笑いした。ほとんど毎日のように通っていたのが急にぱったりと来なくなったのだから、そう言われても仕方ない。
「すみません。実はずっと大学の定期テストだったんですよ」
「えっ? そ、そうだったんですか……おかしなことを言ってしまって、すみません……」
途端に顔が赤く染まり、語尾が段々と小さくなっていく。
「いや、俺も言ってませんでしたから。あ、それと」
「はい?」
「そろそろ行きませんか。立ち話もなんだし」
「そ、そうですね」
八百屋の主人が、奇妙な取りあわせに怪訝な顔をしてこちらを見ているのに気がつき、二人はそそくさとその場を立ち去った。
「……でも、今日はちょっとびっくりしました」
屋敷に向かって歩きながら、雄二は口を開いた。
「何にですか?」
雄二はそれには答えず、あらためて並んで歩く麗子の頭のてっぺんから足の先までを、じっくりと眺めた。
「どうかしました?」
長い髪を編んで垂らした彼女の今日の髪型は、まさに彼の好みだった。
「うん、これはよし」
「?」
麗子はきょとんと雄二を見ていた。
次は上だ。
真っ白なブラウスは、清楚な雰囲気の彼女によく似合っていた。だが、その大きく張り出した胸の膨らみが着物のときよりも強調され、どうしても見る者の視線を引きつけてしまう。
まわりにいた男たちもきっとここを見ていたに違いないと思うと、かなり悔しい。
「うーん、ちょっと目立ちすぎるなあ」
「……いやだ、雄二さんたら」
さすがに視線に気がつき、胸元を押さえる麗子。
しかし、一番の問題はこのタイトスカートだった。
ひざ上10センチという長さはまだいいとしても、前後に入るスリットはいただけない。
足を動かすたびに白いふとももがちらりと見える気がして、どうにも気になって仕方がなかった。
さらにタイトという名の通り、ぴったりとした生地が体の線を浮き上がらせるため、雄二が大好きなおしりのかたちが、はっきりと分かってしまう。
早い話、この服装は彼女の肉体的魅力をより引き出してしまうようだった。
「麗子さんがこういう服を着るとは思いませんでした」
「あら、どこかおかしいですか?」
「い、いえ、とっても似合ってますよ」
でもこの格好はセクシーすぎます、と雄二が続きを口の中でつぶやく。
それを見て、麗子は口に手を当てて笑った。
「ふふ、ありがとうございます。私だっていつも着物というわけではないんですよ」
「それはそうですね。でも、麗子さんがああいう普通の店に行くのも、ちょっと不思議な感じがしますね」
「普通のお店?」
「だって、もっと高級な店に行ってる気がするから」
「高級な八百屋さんなんてあるんですか?」
「……それもそうですね」
おかしそうに笑う麗子と一緒に歩いていると、いつのまにか萩月邸の前まで来ていた。
「よろしかったらお夕食作りますけれど、いかがですか」
こんな訊き方をされて、断れるはずがなかった。
「もちろんいただいていきます」
「ごちそうさまでした」
「ふふ、お粗末でした」
手作りの夕食をほぼ一週間ぶりに堪能して、雄二はごろんとうしろに倒れた。
(あの料理が粗末だったら、普段俺が食ってる物は一体なんなんだろう)
思わず遠くを見てしまう雄二だった。
「……雄二さん」
「はい」
「これから映画があるんですけど、一緒に見ませんか?」
顔を上げると食事の後片付けをすませた麗子が戻ってきて、テレビの前に陣取っていた。
「何があるんですか?」
言いながら新聞のテレビ欄を見ると、「スーパーインパクト鬼猿4 犬地獄からの帰還」とあった。確か、映画館では一年前ほどに封切られた派手なアクション映画だ。
(元プロゴルファーの凄腕スパイが活躍する話だよな……)
なぜにゴルファーなのか。それはこの映画のスポンサーが、ゴルフクラブメーカーだからだというじつに分かりやすい理由だった。
「麗子さん、こういうの好きなんですか?」
「ええ。このシリーズはすべて見てますから」
楽しそうな麗子の顔を見ながら、雄二は、彼女の知らない一面をまた発見したことに気づいていた。
雄二は、テレビの前に腰を下ろした彼女をうしろから抱くようにして座る。
「私レンタルビデオ屋さんにもよく行くんですよ。……あ、始まりました」
一度見た映画なのであまり見る気はなかったが、雄二も仕方なくブラウン管に目をやった。
テレビの大画面には、スーツにゴルフバッグという怪しいいでたちの主人公が写し出されていた。
やがてストーリーは進み、主人公が敵の組織に捕まる。
『くそ、クラブを一つ残らず持っていかれちまった。一体どうすりゃいいんだ?』
「………」
麗子は息をするのも忘れたように画面に集中している。
後は毎度のお決まりで、首尾よく脱出した主人公が覆面をした敵のボスをゴルフのスーパーショットで倒せば終わりだ。
『食らえ、スーパーフラッグインパクト!』
主人公が叫ぶと、打ち出されたゴルフボールが激しく光りながら敵に突っ込んでいく。
銃を使えばいいのにと思うのは、この映画を知らない人間の考えで、なにしろ主人公のショットは並みの銃弾など比べものならないくらい強力だという設定なのだ。
(前作なんか、あれで完全武装の軍用ヘリ撃ち落としてたからなあ……)
主人公の必殺技で敵が吹っ飛ぶと、スタッフロールが流れ、映画は終わった。
「ふふ、楽しかったです」
「そうですね」
前に見たということは黙って、雄二はそう答えた。くだらないと言えば死ぬほどくだらない娯楽映画だが、彼も一度目は結構楽しんだ覚えがある。
何を隠そう、実は雄二もこの映画はシリーズを通して見ていた。
「麗子さん……」
腕の中の麗子を、雄二はぎゅっと抱き締めた。
雄二は少し前に見たAVの内容を思い出して、あることを思いついていた。
「なんですか?」
無邪気に微笑む彼女に、雄二は小さな声で言った。
「その……口でしてくれませんか?」
「口で……?」
よく分かっていない顔の麗子に、雄二はがっくりと肩を落とした。
「やっぱりいいです」
「あの、私なら構いませんけど」
予想外の言葉に、雄二は目を見開いた。
「ほ、ほんと?」
「ええ。で、何をすればいいんですか?」
(ほんとに分かってなかったのか)
こういうことに関して彼女が無知に等しいということを、あらためて見せられた気がした。
「えーと、その……」
あらためて口で説明するのは何やら気恥ずかしいものがあったが、雄二は、口でするとはどういうことかを彼女に説明した。
「そ、そんなことをするんですか?」
「別に嫌だったらいいですから」
「嫌ではないですけれど……」
彼女の場合、何をするにしても恥ずかしさが先に立つらしい。顔を赤くしていたが、結局はうなずいた。
「それじゃあ、お願いします」
雄二はさっそく立ち上がると、緊張気味の彼女の前でチャックを下ろし、少し固くなったそれを解放する。
「あっ……」
ひくひくと動く男の部分を間近で目にして、麗子はますます顔を赤くした。だが少なくとも嫌悪感はないようだ。
「手で握って」
「は、はい」
こわごわ手を伸ばすと、麗子は浅ましく青筋を立てるペニスに手を触れた。
「……う」
手の冷たい感触に、声が漏れる。
「ゆっくりでいいから、しごいてみてください」
「どうすればいいんですか?」
「握ったまま上下に動かして」
「あ……はい」
雄二が指示を出すと、麗子は素直にしたがった。彼女のやわらかく白い手で幹の部分をしごかれる甘美な刺激に、それは隆々とそそり立つ。
「すごく固い……」
小さなつぶやきは、だが、しっかりと雄二の耳に届いていた。その言葉に、ペニスはますます大きく固くなっていく。
「そろそろ舐めてくれませんか」
「はい……それじゃ、しますね……んっ……んん……」
初めは触れるだけ。
ほとんど味がしないと分かると、麗子の舌は少しずつ大胆に動き始める。
「んふう……」
まるで魅入られたかのように赤黒い肉の杭を見つめる麗子は、もはやおそれることなく濃厚な愛撫を加えていく。
「くっ……」
熱くぬるぬるした感触に、思わず腰が震えた。
亀頭をちろちろと舐めまわしたかと思うと、今度は下から大きく舐め上げる。ほとんど何も教えていないのに、彼女は一人でフェラチオの技術を習得していくようだった。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅうっ」
「ううっ」
執拗に先端を吸われて、雄二は腰が砕けそうになる。
「れ、麗子さんっ」
「んっ……はい」
「……ふう」
口のまわりを唾液とペニスの先から染み出した粘液で濡らした彼女を見て、雄二はにやりと笑った。
「麗子さん、そんなにこれが気に入ったの?」
そう言って剛直でぺちぺちと麗子の頬を叩くと、かあっと顔を赤くしてうつむいた。自分がやっていたことをいまさらながらに自覚したらしい。
「そ、そんなこと……」
「でもずいぶん熱心に舐めてたよね」
「よ、よく見ると結構可愛かったから……」
よく分からない言い訳をする彼女に、唾液で光るそれを突きつける。
「今度は咥えてみて」
「え……分かりました」
また痴態をさらすことを恐れているのか、少し躊躇してから、それでも素直にペニスに口をつけた。
「ぅむ……」
ぬぬぬっという感じで唇にしごかれながら、ペニスは麗子の口の中に入っていく。
「そう……上下に動かして……そのまま舌も使って……吸ったりして」
指示を出すと、すぐさまそれを実行してくる。
「う、気持ちいいよ……」
「……んふう」
目を細め雄二のようすを観察しながら、麗子はまた口での奉仕に没頭していく。
やわらかい唇に締めつけられ、舌で舐め回され、さらには口全体で吸引されて、雄二は限界に近づいていく。
じゅぷじゅぷ、というとびきり淫らな音をたて、麗子は懸命に男の性器を愛していた。
「ふっ……」
腹筋に力を入れてどうにか耐えようとするが、たおやかな麗子の唇をごつごつした自分のペニスが出入りする刺激的な光景に、ますます高まってしまう。
「だ、出していい?」
そう訊くと、麗子は何も言わずに頭の動きを速めた。
「……くっ」
咥えられたまま、雄二はついに達した。
先端からすごい勢いで精液が飛び出すと、彼自身に愛撫を加える麗子の舌に当たり、口の中一杯に広がっていく。
「んんっ、んふっ、んん」
麗子は頭の動きを止め、感極まった表情で雄二の生臭い体液を受け止めていた。
びゅ、と最後の一滴まで吐き出した雄二は、ようやく射精を終えたペニスを麗子の口からずるりと引き出した。
「ふー……麗子さん、吐き出していいんだよ」
そう言ったが、彼女はきょとんとして彼を見上げていた。
「吐き出すって、何をですか」
「何って……え、もしかして飲んじゃったの?」
どうやら麗子は彼が出した大量の精液を残らず飲んでしまったらしい。
「あの、もしかしていけませんでした?」
「いけないことはないけど……」
いけないどころか、むしろすごく嬉しいことだった。
「そんなに変な味ではなかったですよ」
味覚は人それぞれということだろうか。
「だったらこれからも飲んでもらおうかな」
雄二が言うと、麗子は小さな声で答えた。
「ゆ、雄二さんがそうしてほしいとおっしゃるなら……」
「とりあえず、もう一度舐めてもらえますか」
「えっ?」
「麗子さんとする準備ですよ」
麗子はそれを聞いて、恥ずかしそうに、しかしどこかうっとりした表情でふたたびペニスに舌を伸ばした。
(……今日は泊りかな)
情熱たっぷりにペニスに舌を這わせていく麗子を見ながら、雄二はそうひとりごちた。
ピンポーン。
「はいはい」
来客を告げる電子音に、雄二は玄関へ向かった。まあそう言ってもせまいアパートのこと、十歩も歩かないうちに玄関につく。
ピンポーン。
「はいはーい、今開けまーす」
ロックをはずしてドアを開けると、そこには洋服を着て買い物袋を下げた麗子が立っていた。
「いらっしゃい、麗子さん。ささ、上がってよ」
「おじゃまします」
律義な麗子は、丁寧にお辞儀をしてから靴を脱ぐ。
雄二は部屋に麗子を招き入れた。
「家の場所、すぐに分かりました?」
「ええ」
麗子はそう言うと、部屋の中を見回した。
「きれいに片付いてますね」
「そりゃもう、慌てて掃除しましたから」
「まあ……」
口に手を当てて笑う。次に麗子は、袋を持ったまま台所に向かった。
「じゃあ、さっそくお料理に掛かりますね」
「お願いします」
数日前に、二人はある約束をしていた。
それは、麗子が雄二の家に来て、手料理をご馳走するというものだった。雄二が言い出したことだったが、麗子も乗り気だったので、話はすぐにまとまった。
ちなみにメニューとともに、彼女の服装も雄二のリクエストだった。ぜひとも洋服で、と言われ、麗子はとっておきの服を着てきたらしい。
「その服、似合ってますね」
「ありがとうございます」
喜んでもらえたことに安心した顔をしていた麗子だったが、次の瞬間雄二がささやいた台詞に、しばらくのあいだ固まってしまう。
「……え?」
「だから、はだかにエプロンを着けて料理してほしいなー、と」
「じょ、冗談ですよね」
「本気も本気、大本気」
麗子が雄二の目を見ると、確かに本気の目だ。
しばし見つめ合った後で、根負けした麗子が溜め息をついた。
「はぁ……分かりました」
いろいろ言いながらも、こと性生活に関しては、彼女は雄二の言いなりだった。
「せめて脱ぐところは見ないでくださいね」
鶴の恩返しの鶴のようなことを言って、麗子が懇願する。
「はいはい、分かりましたとも」
要求がほぼ通った雄二は素直にうしろを向く。
しばらくして、ごそごそと音がした。せっかくめかしこんできた服を脱いでいるようだ。
「まだですか?」
「ま、まだですっ」
ひどく慌てた声に、雄二は苦笑いした。
本当は脱いでいるところも見たかったが、ここは我慢と自分に言い聞かせる。
「……まだですか?」
「あの、もう結構です」
その声に振り向くと、黒いレースの下着の上にエプロンを着けた麗子が恥ずかしそうに立ちすくんでいた。
「……下着」
「これで許していただけけませんか?」
「だめ」
「……はい」
大体予想はついていたのか、麗子は短い拒絶の返事に頭を垂れた。
「脱いで」
「あの、お願いですからうしろを向いていていただけませんか」
「だめ。約束破ったのは麗子さんだよ」
「ああ……」
哀れを誘う溜め息にも、雄二は動じなかった。
(こんなチャンス、逃がしてたまるか)
麗子が背中に手を回してブラを外すと、豊満な二つの胸がゆさっと重そうに揺れた。
次に、片方ずつ足を上げてショーツを脱ぐ。ひざを高く上げると、白くまぶしいふとももがあらわになる。
初めて見る麗子のストリップショーに、雄二はじっと見入っていた。
「……これでよろしいですか?」
「大変よろしいです」
満足そうにうなずく雄二を見ると、麗子は視線から逃げるようにして料理を始めた。
真うしろの椅子に座った雄二からは、ほとんどはだかと言っていい麗子のうしろ姿がまる見えだった。
「あ、あまり見ないでくださいね」
「手をどけて」
かろうじておしりを隠していた手を下ろすと、きゅっと上がってかたちのいいおしりがすべてさらされ、動くたびに揺れるバストも、横からはみ出した部分が見えてしまっていた。
麗子はちらちらとうしろをうかがいながら、どうやら和食らしい夕食の準備を続けた。
「あの……」
熱い視線を背中に感じた麗子が振り向いた。
「何?」
「……いえ、何でもありません」
雄二のそのあまりにも嬉しそうな顔に、なにかを言いかけた麗子もそう言うしかなかった。
そんな麗子の格好を見て我慢できるはずもなく、すでに固くなったペニスを露出した雄二は、彼女のうしろから忍び足で近寄ると、彼女のやわらかなおしりにそれを押しつけた。
「きゃっ」
「麗子さん、いいでしょ?」
人一倍恥ずかしがるくせに、結局最後は従順にしたがう彼女を見ていると、その恥じ入る顔が見たい雄二はついいろんな要求をしてしまう。
そして、今回もまた。
振り向いた麗子の肩を押して、ひざまづかせる。
期待に脈動するペニスを鼻先に突きつけられた麗子は、まぶしそうな表情で雄二を見上げていた。
「とりあえず口でしてくれませんか」
「……はい」
うなずくと、麗子は軽く紅潮した顔を巨大な性器に近づけていく。
「ちゅっ、ちゅっ……んむっ」
数度のキスの後ペニスを口内に受け入れた麗子は、さっそく頭を動かし始めた。
「んっ、んっ、んっ、んっ」
「う」
すっかり慣れた様子でフェラチオこなす麗子の肩に手を置いて、雄二は快感にうめく。
口の中では、舌がねっとりとペニスに絡んでいる。娼婦のようなテクニックを駆使しながらも、決して恥じらいを忘れていない彼女が雄二はたまらなく愛しかった。
「く……いいよ」
くぷっ、くぷっ、という音とともに、唾液で濡れたペニスが麗子の口を滑らかに出入りする。
口でしごかれるこの快感も、自分で一から仕込んだ成果だと思うと、何度味わってもたまらなく気持ちいい。
だがちょっと趣向を変えてみたくて、雄二は麗子のエプロンの肩紐をずらした。するとエプロンが滑り落ち、彼女の頭の動きに合わせて揺れる豊満な乳房があらわれる。
「麗子さん、胸ではさんでくれる?」
「ん……え?」
豊かな乳房を震わせて一心に奉仕していた麗子が、ちゅぱっとペニスから口をはなした。
唾液が、みずみずしい唇と竿の間に、ほんの一瞬糸をつくる。
「いい? 胸を寄せて……そう、俺のをはさんで」
麗子は指示にしたがって胸を寄せると、そうしてできた深い谷間に雄二のペニスをはさみこんだ。
かと思うと、すぐに乳房で茎の部分をこね回しながら、突き出した先端に舌の雨を降らせていく。
「うわっ……こ、こんなの、どこで覚えたの?」
まだ何も教えていないにもかかわらず、まるで当然のようにパイズリの技を披露する麗子に、雄二は快感にうめきながら尋ねた。
「……本で」
問われた麗子はそれだけ言うと、真っ赤な顔のまま、また舌を出し亀頭の愛撫を再開する。
彼女の絹のようにきめ細やかな胸の肌触りと、軟体動物のような舌の動きは、雄二に腰が浮き上がるほどの快感をもたらした。
大きな胸ならではの奉仕に、雄二はあっというまに達してしまう。
「い、いくよっ」
いつも通り口に出すものと思っていた麗子は、ペニスを突然引き抜かれてとまどった。
「今日はかけるからね」
雄二はそう宣言すると、唾液でてらてらと光る男根を麗子の顔に向ける。
「あっ」
すぐに、びゅくん、びゅくんと白濁がはじけ飛び、麗子の口元から胸までを白く汚していく。
「ううっ」
美しい人妻を汚す快感に、雄二はいつもより多くの精子を吐き出していた。
体を伝って流れ落ちた垂れた精液が、麗子の胸の谷間に白い池を作る。
「すごい……」
男の体液の洗礼を受けながら、麗子は茫然とつぶやいていた。
はだかになった麗子が湯船に体を沈めていく。
その腰が震えているのは、つい先ほどまでこの浴室でうしろから激しく責められていたせいだ。文字通り腰が抜けるほど犯しぬかれ、腕で体を支えていられなくなった麗子は、タイル張りの床に頬を押しつけるようにしてさかんに泣き声を上げていたのだった。
「はぁー……」
向かい合わせで座る雄二の上に腰を下ろすと、麗子は深い溜め息をついた。
雄二が見るところ、彼女は激しいセックスそのものよりも、このように穏やかなひとときのほうが好みらしい。
もちろん本人がいくら否定しようとも、彼女の淫蕩な肉体が男に犯されることで喜んでいることは確かだったが、心のほうは、他人のぬくもりと安らぎを求めていることに雄二は気がついていた。
だから最近は、愛しあった後には必ず一緒に風呂に入ることにしている。
抱きあうようにしてつかるのが彼女のお気に入りらしいと知ってからは、毎回そうしていた。ときには湯船の中でつながったまま、じっと動かずにいることもあった。
「麗子さんて、うしろからされるのあんまり好きじゃないの?」
「だってあんな格好でするなんて、恥ずかしくて……」
「でもうしろからすると、いつもすぐにいっちゃうよね」
「そんなこと……」
雄二の頭を撫でていた麗子は遠慮のない指摘に顔を赤らめたが、否定はしなかった。
(麗子さんて、恥ずかしいと余計感じるみたいだし……)
にやにやしていた雄二だったが、不意に何かを思い出したように真顔になった。
「そういえば、さっきは顔にかけちゃってごめん」
「少しびっくりはしましたけれど……」
「……嫌じゃなかった?」
自分の胸に顔をうずめて訊く雄二に、麗子は小さく微笑んだ。
「ええ。雄二さんのですから」
雄二はまるで母親のように優しげな表情の麗子に抱き締めらながら、彼女の入り口に中指を挿入すると、ゆっくりと抜き差ししつつ尋ねた。
そこはまださきほどの激しい行為の余韻が残っているのか、熱くぬめっていた。
「次はどの格好でしようか」
「あっ……ど、どんな格好って?」
「言わないんだったらまたうしろからするよ。もし麗子さんがほかにしたいのがあるんだったら、そっちでいいけど」
うしろから貫かれ、あられもない声を上げる自分の姿を思い浮かべたのだろうか。唇を噛み、麗子はささやくように言った。
「……このままで……」
それを聞いて、雄二はふたたび固くなった男根を女のやわらかいひだに添えた。
「いくよ」
「はい……ふっ、んんっ」
下から杭を打ち込まれた麗子は、芯が通ったようにぴんと背筋を伸ばした。
杭が根元まで収まると、雄二はすぐに腰を使い始めた。愛液に潤む膣をかき回され、白い裸身がなまめかしく悶える。
「ああっ、あっ、いいっ、いいですっ」
「麗子さんっ」
普段は恥ずかしがってめったに口に出さない彼女の台詞に、雄二はますますいきり立った。
「ああっ、雄二さんっ、ああっ、わ、わたしっ……」
ほとんど脂肪がついていないほっそりしたウエストを抱いて突き上げると、麗子の粘膜がひくひくと締めつけてきた。
「だめだめっ、ああっ、だめぇーっ!」
だめと言いながら、いつしか麗子は自分から腰を動かしていた。おそらく無意識の動きだろうが、おしりを雄二に押しつけ、小さく円を描くように回している。
「んむっ、んっ、んんっ」
(……最近の麗子さん、ほんとすごいな)
キスを求めてきた麗子と激しく舌を絡ませあいながら、雄二は彼女の変貌ぶりに驚いていた。
「昼は淑女、夜は娼婦」という女が男の理想だとも言われるが、麗子はある意味でその言葉を体現した女性だった。
普段はセックスにまるで興味のなさそうな顔をしているくせに、一旦火がつくと、普段は貞節そのものの精神も、貪欲な肉体に簡単に飲み込まれてしまう。
元々あった素質が雄二との行為で開花したのか。今の彼女には、さながら蜜を滴らせる淫らな食虫花の趣があった。
その蕾をペニスがこすり上げるたび、薄くルージュを引いた唇が嬌声を上げる。
「ひっ、あっ、あっ、いいっ」
雄二はその手に余る乳房を激しく揉みしだき、彼女の中をえぐるように腰を使った。
「い、いくっ、もうだめですっ。い、いって、いっていいですか?」
「いいよ。俺ももうっ……」
「ああっ、いっちゃいます! 雄二さんっ、ゆっ……あああーっ!」
しがみついてくる麗子の腰を指がめり込むほどの力で握り締めて、雄二は最後に一度、鋭く突き上げた。
「麗子っ」
「雄二さんっ、すっ、好きっ! 好きですっ! 雄二さんっ、ああああああぁーっ!!!!」
「くっ……」
ペニスを咥え込んだ膣が激しく蠕動し、雄二も間を置かず限界に追い込まれる。
もう何度目になるだろうか。雄二は何の遠慮もなく、麗子の中に精液を注ぎ込んだ。
「雄二さんの……熱いです……」
吹き出した白濁が子宮の入り口まで届き、麗子はその熱さに身を震わせる。
体の奥底から雄二で満たされる感覚に、彼女は深い女の喜びを感じているようだった。
(いつまでこうしていられるんだろう……)
自分の胸に寄り添いながら眠る麗子の顔に、雄二は心の中でつぶやいた。
麗子が「好きだ」と口に出したことがずっと気にかかっていた。
雄二は、今まで自分の気持ちを口に出すことを意識的に避けてきた。
もし体だけの関係ならば、何かあったとき、きれいに別れることができる。でも、もしも本気で好きだとしたら……。
気がついたときは、いつも手後れだ。
もうお互いに、引き返せないところまできてしまっていたのかもしれないと、ぼんやりと雄二は考えていた。
「……ううん……」
麗子が可愛らしい寝息を漏らす。
小さな身じろぎに、押しつけられた胸がやわらかくたわんだ。
この萩月麗子という女性は、その外見からは想像できないほど多くの面を持っていた。
貞淑な妻の顔。
淫蕩な女の顔。
そして、純粋で傷つきやすい少女の顔。
雄二はそのすべてが好きだった。
「麗子さん」
「……んふ」
髪を撫でると、眠ったままの麗子が幸せそうな顔で声を漏らした。
恋も経験せず、心は少女のまま体だけが成熟してしまったような彼女が雄二は不憫だった。
(せめて楽しい夢だといいな)
だからと言って、自分が彼女を幸せにできるとはとても思えない。彼女が人妻だということを差し引いても、二人の前にはあまりに高い壁があった。
二人が一緒になるなどというのはまさに夢のまた夢だろう。
「こんなアパートに住むような人じゃないもんな……」
女神を思わせる美貌と肢体とを眺めていると、自然とそんな言葉が口をついて出た。
「んむ、んっんっんっ……」
午後の萩月邸は、ぴちゃぴちゃという湿った音と控えめなあえぎ声で充満していた。
汗に濡れた白い裸身が、声に合わせて断続的に震える。
「あっ、あああっ!」
ずっとペニスを舐めしゃぶっていた麗子が、ついに耐えきれず顔を上げた。
「すごいね、麗子さんのここ」
雄二が麗子の秘部を指で押し開くと、彼の愛撫によってたっぷりと分泌された愛液が滴る。
「いやです……」
はじらう麗子にかまわず、雄二は中指を膣にねじ込んだ。
「ああっ、やあっ」
さきほどから二人は、横になった雄二の上に麗子が逆向きに乗り、お互いの性器を刺激しあっていたのだった。
「指一本だけでこんなにキツキツだよ。麗子さんのあそこって、どうしてこんなに締まりがいいのかな?」
「あうっ、し、知りませんっ!」
とくに感じやすい部分をこすり上げられ、麗子がぶるっと体を震わせる。
そのあいだにも雄二は指をピストンしながら、性器のすぐ上にちょこんとあるつつましいすぼまりを見つめていた。
「……」
ごくり、と喉が鳴る。
実は少し前に、雄二はうしろの穴にイタズラしようとして、麗子を泣かせてしまっていた。
雄二としては愛しい女のすべてを知りたいだけだったのだが、排泄のための器官を陵辱されることだけには耐えられなかったらしく、麗子は泣きながら許しを求めた。
さすがに本気で嫌がることをする気にはなれなかった雄二は、渋々諦めたのだった。
もっとも、その代わりにほかのことだったら何でもすると言わせることができたので、雄二にしてみればまんざら無駄とも言えなかったが。
ためしにその蕾をちょん、とつついてみると、あんのじょう麗子が恨めしそうな顔で振り返る。
(……やっぱりだめか)
苦笑して上半身を起こすと、麗子も正座してこちらに向き直る。
「麗子さん、立って」
「は、はい」
心なしかほっとした表情の麗子が立ち上がる。
(さて、どうしようかな)
じっくりと前戯をしたおかげで、二人ともすでに準備は万端だった。
今、雄二の目の前には、胸と腰を隠しただけで、ほかには一糸まとわぬ姿の麗子が立ちつくしている。長いストレートの髪は無造作に垂らしていた。
「麗子」
軽くにらんでやると、しかたなさそうに両手を下ろす。
誇らしげに突き出した胸と、濡れ光る薄い茂みがさらけだされた。
名前を呼び捨てにすることは、麗子のほうが望んだことだった。そうしてやると、たいていのことに素直にしたがうので、雄二はセックスのときこうして呼び捨てにすることがあった。
ひょっとしたら、麗子自身もそれによって自分が雄二のものだと思い込もうとしていたのかもしれない。二人でいるときには、確かに二人は恋人同士だった。
萩月邸で、雄二の家で、そしてときにはラブホテルで。この何ヶ月間かの二人は何かを忘れるように、ただひたすらセックスに溺れていた。
雄二にしても、べつに麗子が初めての相手というわけではない。同年齢の男と比べて経験が少ないわけでもない。だが彼女との行為は、ほかの人間とのそれとは明らかに違うと感じていた。
麗子とのセックスは、たんに肉体の結合ではなく、欲望を得るためだけの作業でもなかった。
もちろん、麗子とともに過ごす時間の中で感じられる説明しがたい感情を、一足飛びに「愛情」だなどというつもりはない。
だが、麗子が雄二に向かって微笑み、笑い、彼の愛撫にわななき、泣きながらついには絶頂に達するさまを見ていると、雄二は自分が彼女のために存在し、彼女もまた自分のために存在するのだと信じることができた。
まだ社会的には何者でもないはずの自分も、麗子にとってはかけがえのない人間なのだと思えた。
感慨から戻ると、透明な液体が麗子のふとももをつたっているのが見えた。
「……や」
見なくとも感触で分かったのだろう。麗子が、はじらいに頬をますます赤くする。
「麗子さん」
「あ、はい」
雄二はもう一度横になると、自分の腰のあたりを指差した。
「上に乗ってよ」
「? うえに乗るんですか?」
「そう」
「雄二さんのうえに?」
「そうだよ」
何度も確認する麗子に、辛抱強く答える。
「でも……あの……」
「嫌だったらいいよ。でもその代わり、おしりの……」
「いえっ、やります、やりますからっ!」
慌てた麗子が大きな胸を揺らしながらしゃがもうとする。
(そんなに嫌かなあ)
苦笑する雄二の上に、麗子はまたがるようにして腰を下ろしていく。
いつも少し冷たい彼女の体も今は興奮に熱くほてっていた。その熱とやわらかい感触に、男の本能がますます猛る。
「重くないですか?」
「ぜんぜん」
「……これからどうすれば」
「ここからは麗子さんがしてみて。どうすればいいかは分かるよね」
「え、でも……わ、分かりました」
悲壮な顔をした麗子がうなずく。
白い手が、男の杭に触れた。
固く屹立したペニスを握り締めた麗子は、そのかたちを確かめるようにひとしごきを加えると、しとどに潤った自分のそこに押し当てる。
それだけのことで、あふれた蜜が茎をつたって落ちた。
「………」
雄二が何も言わないのでしばし躊躇していた麗子だったが、やがて覚悟を決めたのか、ゆっくりと、肉づきのいい腰を沈め始めた。
くちゅり。
若干の抵抗を残しながらも、自重に後押しされた女体が男を包み込んでいく。
「んっ……あっ……あう……んんっ……あふぅー」
亀頭が子宮の入り口に届いたところで、麗子は深い息をついた。たっぷりと時間をかけて、雄二のものは根元まで中に収められた。
あつらえたひと振りの刀と鞘のように、二人の肉体は一つになった。
雄二は肌触りのいいふとももを撫でながら、落ち着こうと深呼吸をくりかえす麗子を見上げた。
美しい顔は言うまでもない。
長い足に、細い足首。
ほどよく引き締まり、絶頂が近くなるといつも雄二を捕らえて離さないふともも。
服の上からも色気を漂わせる豊満なヒップライン。
極端にくびれた腰。
そして、男を引きつけてやまない、たわわな両丘。
そのどれもが、たまらない魅力をもっていた。
「はぁ……ん」
黙っているだけで、きゅんきゅんと膣が締めつけてくる。すぐにでも彼女をめちゃくちゃにしたい衝動を押さえて、雄二は呼びかけた。
「麗子さん」
「は……い。ん、なんですか?」
剛直に貫かれている麗子もすでに相当の快感を覚えているようで、いつもは雄二を優しく見つめるその瞳は、潤みきった女のそれに変わっていた。
「自分の胸を揉んでみて」
「……はい……ああん」
雄二の言葉にもほとんど抵抗を見せず、大胆に張り出す二つの乳房を揉みしだく。
「あっ、やっ……気持ちいい」
さらには胸を揉みながら、指で固くしこった先端の突起をはさみ、こりこりと刺激することまでしていた。
麗子の指のあいだからはみ出す柔肉を見て、雄二はわざと言う。
「いやらしいね、麗子さんは」
「いや、いや、言わないでください」
「ふーん、だったら」
自分でも知らないうちに動き出していたらしい麗子の腰を、両手でがっちりと固定してやる。
「え……?」
「いやらしくない麗子さんは我慢できるよね」
「ん……ふう……んん」
焦らされた麗子はもどかしそうに腰を揺するが、雄二は許さなかった。
つつしみ深く、貞淑な心の持ち主でありながらセックスに貪欲な肉体に支配される麗子は、しあわせなのだろうか。それともふしあわせなのだろうか。
そんなことを考えながら、雄二はなおも言葉で麗子を嬲っていく。
「ねえ、麗子さん。何が気持ちいいの? それが言えたら腰を動かしていいよ」
「そんなっ」
「ほーら」
「んっ!」
一度腰を突き上げてやると、たまらない顔で人差し指を噛む。
「ふっ……んっ……んふっ……」
熱くぬめった膣で男の器官を締めつけながらも、襲いくる快楽の波に必死に耐えようとしている。だがこれまでの経験からいって、そう長くはもたないだろうと雄二は判断していた。
やがて欲望が羞恥心を打ち砕くときがきた。
「……が……んです」
麗子の細く震える声に、雄二は冷淡を装った。
「聞こえないよ」
麗子は、ちょうどペニスが収まっている下腹部のあたりを押さえた。
「……ここに入っている雄二さんの、オ、オチンチンが、すごく気持ちいいんです……」
言い終わると、ぽろぽろと涙をこぼしてすすり泣く。
清楚な美人が発する淫らな言葉に自分自身をさらに固くした雄二は、約束通り手を離した。
「よく言えました。ほら、動いていいよ」
「うっ……雄二さん、ひどいです……」
言いながら、すでに腰から下は別人のように動きだしている。
麗子が騎乗位で腰を振ると、重量感のある二つの乳房がゆさゆさと揺れた。それは「女」が快楽をむさぼるための動きだった。
「うくっ、はっ、はっ、はんっ……ううっ」
麗子は、泣きながらも確かに感じていた。涙ぐみ鼻を鳴らしているわりには、ペニスを奥まで目一杯に咥え込み、腰を縦横にくねらせている。
二人の結合部は白く泡立つほどに攪拌されていた。
雄二はそれを見ながらじっと黙っていた。麗子が彼を求めて乱れる姿は、何度見てもいいものだった。
気がつくと、潤んだ目で見つめられていた。
「ああっ……わたしの口も、胸も、おしりも……あぁ……ぜんぶ、雄二さんの物です……」
「それじゃ、うしろの穴は?」
「……そこも、ですっ……あうっ」
意地悪く訊くと、一瞬の間を置いてからそう答える。
前かがみになり雄二の胸に手を置いた麗子は、打ちつけるようにして腰を使う。
短いあいだに多くの経験を積んだ麗子は、今では弱点の子宮口を突かれるとすぐに達してしまうほどに開発されてしまっていた。
「やっ、あっ、あああぁーっ! お、おく、奥まで届いてますっ!」
暴れる二つの胸を、雄二は力任せに握り締めた。
「あっ、あっ、あっ、くうっ!」
そのまま乱暴に揉みしだく。
麗子が長い髪を振り乱して叫んだ。
「いい、いいっ! 感じちゃうっ! もう……雄二さんっ! ああっ、あああああああぁーっ!」
膣圧が急激に高まったかと思うと、汗だくになった麗子が倒れ込んでくる。
「あ……あぁ……」
「……いっちゃったか」
つぶやくと、雄二はまだ固いままのペニスを、絶頂に達した女の壷から抜き取った。
少しのあいだ考え込んでいたかと思うと、脱力した麗子をうつ伏せにする。そしてうしろにまわりこみ、やわらかいおしりの肉を割り開いた。中心に見える茶色のすぼまりに今度は迷わず手を伸ばす。
「そこはっ!」
「あれ? 麗子さんの体はぜんぶ俺の物なんでしょ?」
「……は、はい」
麗子は涙をこぼしてうなずくと、健気にも自分からおしりの肉を左右に開いた。
「……どうぞ……」
たっぷりと愛液をまぶした指の先で、その場所をくすぐるように撫でると、麗子は声もなく震えた。潤滑のために何度かなじませると、雄二は人差し指を不浄の穴にめり込ませていく。
「ううっ」
そのままきつい抵抗に逆らって押し込むと、指は根元近くまで飲み込まれる。
「……はっ……はっ……はっ」
麗子は背をそらし、口を大きく開けてなんとか汚辱感に耐えようとしていた。
(きついな……)
そのまま、ゆっくりとひねったり出し入れしたりして具合をみる。肛門の粘膜は思ったよりつるつるしていおり、締めつけこそきついが、指が引っかかるようなことはない。
「……やっ……こんなのって……」
排泄時に似た感覚を、無理矢理に掘り起こされているらしい麗子が首を振って悶える。未知の快感と極限の恥辱が混在する状況に、精神が混乱をきたしてきているようだった。
と、同時に、活約筋の締めつけが徐々にだが緩んでくる。
「……んっ!」
排泄のための器官がまるで膣のように雄二の指を咥え込み、うねうねと蠕動する。
ころあい良しと、雄二は指を引き抜いた。
異物がなくなった後も、その部分はうねうねと収縮と弛緩をくりかえしている。
「じゃあ、入れるよ」
「……はっ……はいっ」
そう言いながらガクガクと歯の根も合わないほど震えている。
肛姦性交の恐怖に必死に耐えようとする麗子に、雄二はあえて気がつかないふりをした。今は彼女を気遣うときではない。
いくらかほぐれたうしろの穴に、雄二は自分のペニスをあてがった。
麗子は固く目をつぶっている。
「……」
「いくよ」
ぐっと力を入れて、腰を前に押し出す。
「っ……!」
ついに、亀頭が排泄のための器官を広げながらめり込み始めた。すると穴の周囲に走る細かいシワがじわじわと広がり、受け入れるには巨大すぎる物をなんとか飲み込もうとする。
「くっ」
麗子の雄二を想う気持ちがそうさせているのか、その抵抗は思ったほどではない。それでも膣のゆうに数倍はある圧力がペニスの侵入を阻む。
「あああああっ……!」
「くっ、麗子さん、できるだけ力を入れないで。そのほうが少しは楽だから」
無理なことだとは分かっていたが、そう言わずにはいられない。
「はいっ……んぐ……はあっ、あうっ……」
麗子は苦悶の表情を浮かべながら、決して痛いとは口に出さなかった。
今の雄二にできるのは、できるだけ痛みがないように、だができるだけ早く終わらせるようにという矛盾した思いを抱えながら腰を進めることだけだった。
「半分まで入ったから。もうちょっとだけ我慢して」
「はい……ううっ、んんっ!」
ほんの少し押し込んでは休み、麗子のようすを見ながらまた少し腰を進める。そんな悪戦苦闘をくりかえすうち、とうとう赤黒い杭の全体が彼女の中に消えた。
「入ったよ」
「くっ……ほ、本当ですか?」
「うん、麗子さんの中に、俺のがぜんぶ入った」
「良かった……うあっ」
あんなに小さかった穴が、今はペニスの直径にまで広がっていた。こんなときだが妙に感心した雄二がその部分にじっと見入る。
そのままじっとしていると、やがて入り口がふっと緩んだ感触があった。
「ん?」
「あ……」
自分でも体の変化に気がついたのか、麗子が小さなつぶやきを漏らした。下半身に感じているらしい違和感に、もじもじとおしりを揺らしている。
トイレを我慢しているときのようなそのようすが雄二はなんだかおかしかった。とりあえず腰を掴んで動きを止める。
そのあいだにも彼女の門は脈動しながら締めつけてきた。
「あんっ」
「どう? まだつらい?」
笑いを含んだ問いに、麗子は顔を赤くして答える。
「い、いいえ……少し苦しいですけれど……さきほどよりは楽になりました」
とはいえ雄二自身ががっちりと咥え込まれてしまい、動くことまではできそうになかった。無理をすると麗子の体に傷をつけかねない。
「……さすがに動かすのは無理そうだな」
むしろ、まったく慣らしていないにもかかわらず、たいした被害もなく入ったことだけでも驚くべきことだろう。
「……おっと」
ふとした拍子に腰に力が入り、麗子の中のペニスがぴくりと動く。
「や、やだっ、悪戯しないでください」
「んー? ほらほら」
「いやぁ、やめてください」
体内の異物の感触にいちいち翻弄される彼女のようすが楽しくて、しばしのあいだ弄ぶ。
だがいつまでもこうしているわけにもいかない。できるだけ無理をせずかつ早く終わらせるために、雄二は一計を案じた。
「いい? 麗子さん、ちょっと動かすよ」
「何を……? きゃっ!?」
うしろから麗子を抱きかかえるようにして背面座位の姿勢をとる。麗子を背後から貫いたまま、雄二は布団の上にあぐらをかいた。
「ううっ……ふ、深いっ……」
結果的により深く犯されることになった麗子がのけぞる。足を大きく開き、卑猥な場所をさらけ出す格好になったが、そのようなことを気にする余裕はすでにないようだった。
「あと少し我慢して」
太い杭を埋め込まれ、ひくひくと痙攣する麗子に雄二は言った。
手を滑らせると、ふくよかな双乳にたどりついた。白い肌に赤く指の跡を残した麗子の乳房を、今度は下から持ち上げるようにして優しく揉んでやる。
Fカップの胸は揉みごたえ充分だが、大きさだけでなく、小さめの乳首も雄二の好みにぴったりだった。
「ああん……」
麗子が控えめにあえぐ。
彼女は、雄二に胸を愛撫されるのをとりわけ好んだ。
本来ならば母性の象徴である乳房も、麗子にとってはむしろセックスアピールとしての役割が大きい。子供を産めない体である彼女にとって、ずっと年下の雄二に胸を与えるこの行為は、一種の代償行為であるのかもしれなかった。
ボリュームのある胸を味わいながら、雄二はもう一つの敏感な部分に手を伸ばした。一度絶頂を極めさせられたその場所は、あきれるほど多くの蜜をあふれさせている。
指を二本差し込むと、麗子は簡単に奥まで受け入れた。優しく咥え込まれたそれを、雄二は彼女をいかせるために激しく出し入れさせてやる。
「ひっ、そんなにしたら、だめですっ、だめぇ!」
最近の荒淫によって、麗子の弱いところを知り尽くしていた雄二は容赦なく急所を責め続けた。
「……すごっ、すごいですっ! んあっ、ああっ!」
前後の孔を犯されながら快感をえる麗子は、これまでで一番美しいと妙に冷静な頭で雄二は思った。
「あうっ、いやっ! だめ、もっと、もっとぉ!」
雄二の限界を越えた快感に、麗子の言葉も要領をえなくなる。ぐちゅっぐちゅっ、という淫らな音もすでにその耳に届いていはいない。
彼女が声を上げるたびに、ペニスが痛いほど締めつけられた。
「雄二さんも一緒にっ……私の中にっ、中にくださいっ!」
雄二は萩月麗子という人間を今独占し、また彼女に独占されているという実感によって、文字通り目くるめく絶頂に達した。
「いっちゃう、もういっちゃう!」
「くうっ……」
その細い腰をしっかりと抱き締めて、雄二は女の腸内に精をしぶかせた。麗子も豊満な体を震わせ、背徳の恍惚に酔う。
「……ふう」
やがて射精を終えると、力を失った男根がにゅるりと押し出された。
うしろの穴から白い粘液をもらしながら、麗子はうっとりとつぶやいた。
「雄二さん……愛しています……」
「……俺もだよ、麗子さん」
破局は唐突だった。
ある日、雄二のアパートに一通の封書が届いた。差出人は十四代抄華流宗家。つまり麗子の夫からだった。さらに代理人として弁護士の名も記してある。
不吉な予感に駆られながら封を開けると、そこには、自分の妻である萩月麗子と今後一切の接触を絶ってもらいたい、と、かなり厳しい調子で書かれていた。それにしたがわない場合は、法的な手段をとることも辞さない、ともある。
自分は愛人に子供まで生ませておきながら、妻の不貞は許さないというのか。
雄二は激しい憤りを感じた。いっそスキャンダルとしてマスコミにぶちまけてやろうかとも思ったが、それによって傷つくのは誰よりも麗子自身だと分かっていた。子供ができない体だということが周囲に知られれば、心無い中傷をする者もあるだろう。
訴えられたところで雄二のほうはどうということはないが、麗子に影響が及ぶことは避けられないだろう。それに万が一、今回のことをきっかけにして夫婦関係がいいほうに向かっているのだったら、彼の出る幕はもはや存在しない。
(それに……麗子さんは結局、「家」には逆らえないだろう)
もちろん彼女の自分に対する気持ちを疑うつもりはまったくない。しかしそれとおなじくらい、彼女の弱さも雄二は知っていた。
麗子は何かに逆らって生きていくことができるほど強くはないのだ。だがその弱さを責める気持ちはなかった。雄二は彼女のそんなところも含めて好きだったのだから。
それでもどうにか連絡を取ろうとする雄二だったが、それらはことごとく無駄に終わった。
電話をかけても、萩月流の弟子らしき人間が出るために麗子につながらない。手紙にも返事はない。
業を煮やした雄二は直接屋敷に行くが、当然入れてもらえるわけはない。
だったら最後に一度だけ会わせてほしいという願いもすげなくあしらわれると、雄二に打つ手はもはや残されていなかった。
(……これ以上、麗子さんに迷惑をかけるわけにはいかない)
悔しさに唇を噛みながら、雄二は決心した。
雄二は、萩月邸に近寄ることをやめた。
もともと二人はとくに接点があったわけではなく、どちらかが会おうとしなければ顔を合わせることもなかった。
雄二はあらためて、二人のあいだにある絶望的な距離を実感していた。
一週間が過ぎた。
予想通り麗子からの連絡はない。
勉強も何も手につかず、大学にも出ない日が続いた。
広い屋敷の一室に一人さびしく座る麗子の夢を見て、夜半にはね起きることも何度かあった。
一ヶ月が過ぎた。
あいかわらず麗子のことを考えない日は一日もなかった。
ときおり、麗子が夫らしき男とむつまじく暮らしている光景が目に浮かんだ。まぼろしの中で麗子は、雄二のことなどまるで忘れたように楽しそうに笑っていた。
そのことに嫉妬している自分に気がつき、雄二は自己嫌悪に陥った。
半年が過ぎた。
だんだんと、だが確実に、麗子のことを考える時間は減っていった。
萩月邸のようすを見る機会があったが、今は誰も住んでいないらしく、屋敷は以前よりさらに閑散としていた。
驚くほどの早さでさびれていく広大な敷地を見ながら、雄二は長いこと立ち尽くしていた。
……そして、あれから一年がたとうとしていた。
雄二は無事大学の四年になっていた。
たいしたところではないが就職も決まり、アパートを引き払う期日も二ヶ月後に迫っている。
麗子のことを諦めてから一時期かなり無気力になり、そのせいで友人に心配をかけたりもしたが、ここ最近はずいぶんと元気を取り戻していた。
「……ふう」
それでもあの女性のことを思い出すたび、今でも小さい溜め息が出る。
(麗子さん、元気にしてるかな……)
記憶の中の彼女は、いつも美しいがどこかはかなげな微笑みを浮かべていた。
雄二は結局、麗子の屈託のない、心からの笑顔を見ることができなかった気がする。
ときおり、自分はさびしさを癒すためだけの存在だったのだろうか、と思うことがあった。
実際最初はそのはずだった。たとえ彼女を顧みない夫の代わりだとしても、麗子と一緒にいることさえできればそれで良かった。
だが次第にそれだけでは満足できなくなっていった。体は満足しても、心の渇きは癒されない。
麗子にとって、自分はどういう存在だったのだろうか。
あくまで夫の代替品でしかなかったのか、それとも、北本雄二という一人の人間を認めてくれていたのか。
今となっては永遠の謎だった。
アパートに帰ってきた雄二は鍵を取り出し、ドアのノブを掴んだところで不自然なものを感じた。
(鍵が開いてる……?)
ゆっくりとノブをまわすと、あっけなくドアが開く。
鍵をかけ忘れたのかと首をかしげた雄二の目の前にあったのは、もう見ることを諦めた懐かしいあの顔だった。
「れ、麗子さん!?」
「お帰りなさい、雄二さん」
「お帰りって……ど、どうしてここに……」
「……家を追い出されてしまいました」
そう言って小さく舌を出して笑う麗子を、雄二は茫然と眺めていた。
一年間忘れなかった顔が、今目の前にある。着物でなくこざっぱりしたスーツ姿ではあったが、それは見間違えようもなく、確かに彼女だった。
雄二は状況が理解できないままふらふらと部屋に上がり、テーブルの前に腰を下ろす。
「はい、どうぞ」
「あ、はい」
まだ動揺のおさまらない彼に麗子がお茶を勧めた。と同時に、見覚えのある鍵をテーブルに滑らせる。
「あの、すみません、勝手に上がり込んでしまって……。アパートの鍵をお借りしていたままでしたから」
「あ、それでか」
そう言ったきり、雄二は何を話していいのか分からず沈黙していた。
あれほど会いたかったはずなのに、いざ面と向かうと、照れくさくてまともに顔を見ることができない。
「あの人とは離婚、しました」
いつまでも黙ったままの雄二を見すえて、突然麗子が言った。
「離婚!?」
麗子は真顔でうなずく。
「あの人と夫婦としてやっていくのは、もう無理だと分かっていましたから。ふふ、生まれて初めて親に逆らってしまいました」
口を開けたまま、ただ驚く雄二の顔を見て笑う。
「おかげで勘当されてしまいましたけれど」
「か、勘当って……いいの、それで?」
「ええ。当座のあいだ、一人で暮らしていくだけの蓄えはありますし」
良く言えば古式ゆかしい伝統的な教育を受けた、悪く言えば古臭く時代錯誤的な環境で育った麗子にとって、家を出るという決断は並大抵のものではなかったはずだ。
しかし、彼女の中ではすでにふっきれたのだろう。麗子に迷いは見えなかった。
「私、分かったんです。何かに頼って生きるだけでは何も手に入らないって。そしてこれからは自分のしたいように生きてみようと決心したんです。
もっとも、離婚のための話し合いが長引いて、こんなに時間がたってしまいましたけれど」
事態が把握しきれずにいる雄二を、麗子がじっと見つめていた。
今の彼女からはもう前のようなひ弱さは感じられない。ここにいるのは、一人の人間として精神的にも成長した大人の女性だった。
いっそ清々しいくらいの笑顔で麗子が言った。
「私には、もうほかに行く所がなくなりました」
雄二は何度かまばたきをした。
「北本雄二さん、私はあなたを心の底から愛しています。……こんな私で良かったら、これからの時間を一緒に過ごしていただけませんか?」
彼女は、ついに自分の居場所を自分で決めたのだ。
だとしたら、次は雄二が選ぶ番のはずだ。自分の心を、どこに置くのか。
そしてそれは、とうの昔に決まっていたことだった。
不意に麗子の姿がぼやけた。
麗子と離れることを決めてから、雄二は一度も泣くことはなかった。なのに今になって、まるでこれまでの分を埋め合わせるように、とめどなく涙が流れた。
「雄二さん……?」
ぼんやりと見える麗子の顔が、少し驚いてから、ふっと微笑みを浮かべた。
「どうして泣いているんですか?」
「嬉しいから、かな」
「ふふ、雄二さんは嬉しいと涙が出るんですか?」
「……ときどきね」
そのとき、勢い良くドアが開く音がした。
「来てやったぞ、雄二ぃー!」
「おじゃましまーす」
「いただきまーす」
「いや、それはまだ早いだろ」
声がして、誰かがどやどやと上がり込んできた。
「あ、そういえばやつらと約束してたんだった」
無遠慮な足音とともに、四人の若い男があらわれた。
彼らは、みな雄二の大学の友人だった。多少ずうずうしいところはあるが、みんな気のいいやつらだ。ひどく落ち込んだ雄二をさりげなく励ましてくれたのも彼らだった。
「いよう、雄二……って、誰だよおい、この美人!」
「……誘拐?」
「ええい、すぐさま紹介しろ!」
「ふん、最近元気が出てきたと思ったら、この人のせいか」
「え、ええっと……」
突然のことにどうしたらいいのか分からない、といった顔の麗子が、雄二に目線で助けを求めた。すっかり変わったのかと思いきや、こんなところは前のままだ。
「まあ座れよ」
わめき散らす友人たちをうながすと、雄二は隣りの少し前まで他人の妻だった女性に目をやった。
その彼女はきょろきょろと頼りなげに見知らぬ男たちを見ている。
気づかれないように手の甲で涙を拭きながら、雄二は、さて、彼女を一体どう説明したものかと考えていた。
(……まあ、ゆっくりでいいか。時間はたっぷりあるんだから)
おわり
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誘導:2005/10/27(木) 13:27:45 ID:mTF/P90i
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ