昂った心が、時間が経つにつれて静まっていく。
2人肩を寄せ合って、1つのシーツに包まっていた。
「落ち着いた?」
「……はひ」
こっちを見ないで、1人静かに水無さんが頷く。
表情は読めない。けれど、満ち足りたような顔つきに見える―――気がする。
気付かれる前に視線を逸らすと、まだ行為の残響がはっきりと窺えた。
髪は整えているものの、乱れた様を残していた。汗を浮かべた肌は拭われていても、匂いを空間に漂わせている。
触れ合ったままの肩。温もりが身体を未だ繋げている。それだけで、さっきまでのことを思い出す。
「身体、大丈夫?」
蘇ってきた快楽や音、そして彼女の声や柔らかさを頭の中から打ち消したかったこともあるが、何よりも身体のことが心配だった―――調子に乗ったことはおいといて。
「多分、大丈夫です。ちょっと、まだ―――」
そこまで言って、はっと口を噤む。
「まだ?」
だが、どちらかというとサドっ気の方が多い俺は、迷わず突っ込んでいた。
「あの、えっと、何か入ってるような感じが……」
そこまで言って、俺も彼女も同時に恥ずかしさが込み上げてくる。
―――訊くんじゃなかった、かな。
開けた天井から冷たい風が入り込んでくる。
行為のあとの熱をもった身体の表面を撫で、冷ましてくれた。
見上げると、漆黒の空が見えた。今日は雲が多く、月も遮られて輝きを十分に発揮することができない。星の助力も期待できそうに、ない。
「返事、待ってますから」
躊躇い無い言葉が聞こえた。きっと、彼女なら雲に遮られた空でも輝くことができるだろう。月のように表情を満ち欠けさせても、それぞれに魅力を秘めていて、いつもそれを十二分に発揮できる―――水の妖精なら。
「でも、ノーだったら、何も言わないでくださいね。何か言われたら、私、きっと、泣いちゃうと思いますから……」
目を隣の水無さんに戻すと、咄嗟にシーツを被って顔を隠される。
これ以上は、許されざる者が立ち入れない領域がそこにはあった。
踏み込むには、許されるための答えが必要だった。
―――俺は………。