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588AMARIA -34-
「その人のこと、好きなんじゃない?」
 橋の欄干に腰掛けて、話を聞いていた。ただの暇潰しの予定でもあった。
 あの日―――地球からやってきた彼が、観光案内を受けている姿を偶然遠くから目撃して、その彼女の顔を覚えていた。
 そして、偶然にもその彼女―――水無さんを見つけて、話しかけただけだった。
 別にそれだけの動機。だが、あまりにも悩みを顔に出して浮かべていたので、つい悪い癖が発動してしまった。
「……同じことを言われました」
 彼女が語る話。知らず湧き出した想い。想いを寄せる相手の話は、私にとって本当に驚きを経て、直結させ、途中から確信に変えていった。
―――彼だ。
「ふーん。でも、その人、もう地球に帰っちゃうんでしょう? なら、早くしないと」
 何故か、苦しい胸の内。それを無視して、無理矢理言葉を繋げる。
「そうですけど……私、どうしたらいいのか……」
 これは重症だ。踏み切れていない。
 ただのプールだと思って飛び込もうとしたら、直前でそこは水深5メートルだったようなもの。
 計り知れない深さを感じ取れず、恐怖に震えて、足を踏み出せない。そうなると失敗した時のことしか頭には浮かばなくなるものだ。
 人間、誰だって失敗が怖い。本質である恐怖を一抹でも感じてしまえば、即座に脳裏を埋めつけるのは恐怖によるビジョン。
 例え、成功の道筋が既に完成していても、連理する行動の枝分かれには、成功と失敗が存在しているのだ。つまり、失敗は必ず付き纏う。
 あとは、可能性の問題だが、支配されてしまえば大抵は失敗する。鍛錬された技であっても万が一、という場合もあり、それが確立論であるなら尚更だ。
 しかし、逆の意味で1つ。相手が自分で成す技ではなく、他人という人間であるということ。ほとんどが、確立という話ではない。確証を探る話だ。
 要は、確証を植えつけてしまえば良いだけのこと。
「大切な人を得るには、行動あるのみ、よ」
 依然として表情が暗いままの彼女に向かって、耳元に小声で呟いた。何故か、声が締め付けられる胸のせいで上手く出せなかった。
 そんなはず、ない。
 自分で自分を叱咤する。バカなこと言わないで。私は、ただ、
「―――良い方法があるの」
 誰かのために、生きているわけじゃないけれど、
「あまり大きな声じゃ言えないんだけど、私実は―――」
 今だけは、誰かのために生きてみたいと思っただけなのだ。
 そんな一時の気の迷いなんて、偶然にやってくるもの。