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562AMARIA -22-
 それは一時の愛欲。
 しかし、ひとたび扉を開けてしまうともう引き返せない。
「おっ、おい……」
 流石に今度は不味いのではないかと、異議を唱えようとして指で口を制された。言わずと知れた、黙って、の合図。
「あんまり大きな声出しちゃダメ。こっちは大きくてもいいけど、ね」
 擦り合わせた身体を更に密着させ、耳元で喋る。手を這わせ、下腹から下降し、最後は股間の上で停止する。
 どういうことだと訊こうとして、目が合った。出そうとした言葉を押し止め、大人しく口を噤んだ。
「ここ、幽霊小道(ゴースト・カッレ)って呼ばれてるのよ」
 膨らみかけのソコを優しく、手の平で擦る。
「道の暗さと、夜な夜な聞こえてくる小さな声。それは冥界へ誘おうとする死霊たちの誘いに他ならない……って、ガイドしようと思ったんだけどね」
「夜な夜なって」
 吐息が耳に触れ、身体の体温が上がっていく。股間は完全に膨張しきっていた。
「あ、今変な想像したでしょ? 違うわよ、私じゃない。原因は知らないけど―――」
 頃合いとみたのか、言葉を続けながら焦らすように、ゆるやかに俺のモノを取り出した。
 外気に触れ、思わず身震いする。それをどうとったのかは知らない。
 にやりと、妖しい笑みを彼女は浮かべて満足そうに見下ろしている。
「―――外でするには良い場所だと思わない?」
 頭の中に、セカイの開幕の音が鳴り響く。
「これって結構邪魔ね」
 そう言って、変装用らしい眼鏡を取り、俺のズボンに押し込んだ。
「あと、これも」
 ベルトを素早く抜き、ズボンと下着を下ろす。そうして、どんどん足枷を取り去っていく。
 身軽になっていく俺は、枷を外されて開放され、気がつけばその開放感が興奮へと直結していた。
 体験したことの無い屋外での情事。夜気は肌を撫で、人を冷静にさせる。しかし、今は火照った身体を一時的に冷やすだけでしかなかった。
 それでも、まだ何かあるのか、と彼女は自分のセーターに手を掛ける。
「よ、っと」
「……!」
 声が出なかった。いきなり服を捲り上げたことではない。
「ふふ……どう? 興奮する?」
 捲り上げられたセーターの下には、白い柔肌が広がっていた。その、誰の足跡も見えない処女雪を連想させる白さに、興奮する。
 そして、驚いたのは、それが下着に包まれてはいなかったということ。
「ちくちくして、少し痒かったんだけど―――逆に、興奮しちゃったかも」
 柔らかい巨乳を自ら揉み上げ、挑発するように下腹部辺りに押し付けてくる。
 目が合った。
「うわ……」
 ずるずると身体を下にずらして、ぴったりと谷間に挟み込まれる。柔らかい肉の間で硬く反り立つ。
「あはっ、入っちゃった」
 絶対に、わざとだ。
 当然だが、本人に悪びれた様子はまるで無く、それどころか楽しそうに胸を弾ませていた。……いや、実際に弾ませているんだけど。
「熱いし、硬い……」
 熱に浮かされたように、ただ目の前の剛直だけを見て言った。
 柔らかくて弾力があり、挟まれただけで、例えようのない快感が襲ってくる。
 今までに味わったことの無い特殊な感触に身体は打ち震え、興奮の度合いは増した。
563AMARIA -23-:2006/03/28(火) 23:48:45 ID:28y4tED3
「どう、かな?」
 僅かに身体を、両手を添えた胸を、動かせば、その圧迫感が快感へ変わる。胸を上下させると、その谷間で肉棒が脈動し、弾む。
「どうって……」
 顔が熱い。この状態だと、顔を隠せない。顔が赤いのが自分でもわかった。
 完全に受身での行為。顔すらまともに見られない。
 手持ち無沙汰の両手で、とりあえず目の前にあったアマリアの頭を撫でる。
「ふふっ、くすぐったい。でも、好きかも」
 すると、嬉しそうに目を細めた。
 闇に属さない濡れ羽色の黒髪を梳く。指通りは滑らかで、艶を感じた。
 梳かれるのが好きなのか、首を擡げて顔を俯かせる。
 次の瞬間、見覚えのあるざらつきが、降りてきた。
「あっ、それは」
 反則だ。
 傾けた頭。真下に頭を垂れたかと思ったら、アマリアは舌を伸ばして、先を舐めてきたのだ。ただでさえ、胸だけでマズイというのに―――。
「れろぉ……んっ、むぁ……、れろれろっ」
 舌の先端を使って、尿道口を抉るように舐める。この口撃は、以前にも食らったことがる強烈なものだ。すかさず、鋭い快感が走り抜ける。
「あむぅ、ちゅっ……ん、ぷはぁ……ねぇ、ひもちいい?」
 先端を咥えながら喋る。それだけで僅かな口内の動きが、胸での圧迫したまま行われる上下運動に刺激を重ねた。
「ちゅるっ……れろ、……ちゃんと答えてよ」
 声を出すたびに微妙な振動が伝わってくる。口を離しても、胸は忘れない。
「……声、出すなよ」
 正直、気持ちよすぎて何から言っていいのかわからない。一気にふたつの快感を受けたことなんて生まれて初めてだった。
「あ〜、気持ち良いんだ?」
 依然としてはっきりと言わない俺に、痺れを切らしたのか。乳房を操っている両手を更に内側に押し込んだ。胸が変形して、圧迫が強くなる。
 先走りが流れ、唾液も混ざったのか、若干ぬるりとした感触も感じられた。
「んっ、んっ……ちゅ、ぷあっ」
 口を離すと、熱い吐息がかかる。豊満な乳房が、目の前で震えていた。その目に映る光景だけで、十分に効果があった。
 間違いようも無く、興奮している。それは確かだ。
 再び、目が交わる。
 濡れた瞳と唇。動く舌。肌蹴た服装とその下の似つかわしい豊潤を持つ、白いしなやかな肢体。
「最高だ」
 俺の渇望を体現したモノを満たすには、足りすぎるくらいだ。
「ありがと」
 片手で玉袋を優しく掴み、少しだけ力をこめて握る。
 それだけで、俺のモノはより一層パンパンに張り詰めてしまう。
 何度も脈を打ち、彼女の口の中で暴れた。
 少し眉根を寄せながらも、楽しそうなその表情は崩れず、再びモノを咥え込んだ。
「じゅっ、ちゅ……ちゅうぅ……」
 唾液が絡まり、段々と大きくなる卑猥な音が周囲の闇へ消えていく。
 舌は焼けたように熱を持ち、敏感になった俺は舐められる度に大きく反応を繰り返す。
「うっ……あ、くぅ」
「ふぅ……我慢しなくてもいいよ」
 見上げる目に向かって、視線をやった。
564AMARIA -24-:2006/03/28(火) 23:50:23 ID:28y4tED3
「別に、我慢なんて……」
「あ、そう。―――なら、我慢できないまでしてあげる」
 また先端を口に入れ、胸と共に動かし始めた。
 口で舐め、弄ぶ。
「ふ、ちゅぅ、んっ……あむぅ、ちゅうう……れろっ」
 舌使いに迷いは無く、ひたすら快楽を増させるために愛撫を続けた。
 頬を紅潮させ、恍惚とした顔で俺を楽しませてくれる。
 本当に、このまま天国へ誘われてしまうのか。
「んくっ、れろ、れろ……ぷはぁ……ちゅ、んん」
 時折、苦しそうに唇を離し、息継ぎをする。たったそれだけのことなのに、切なそうに行為を行う表情が胸を締め付ける。
 同時に途切れる快感の波が軽い焦らしを受けているようにも思えて、彼女の意地の悪い面を垣間見た気もした。
「れろぉ、んぷ、んっ……ぢゅ、ちゅう」
 それに今までと動きが異なり、少し深く、自分から求めるように竿まで口を沈めていく。
 口の端から唾液が零れ、胸へと落ちていった。
「ずっ、……んぷ、ちゅう、っぷぁ……」
 その唾液を啜るように、舌の動きよりも更に吸い込みが激しさを増す。胸も唾液などを潤滑油代わりにし、肉棒を扱き上げた。
 見下ろすと、アマリアは目を閉じ、行為そのものに集中していた。
 何度も吸い上げられ、俺はその度に反応を繰り返す。それを頼りに、集中していた彼女は的確に舌を遣ってツボを突き、吸い上げていく。
 瞬間、快感が倍増した。
「もう、イク……」
 思わず、声が漏れる。尿道から溢れる先走り汁が込み上げ、大きく脈を打つ。
「じゅる、んはっ……ちゅう、ちゅ、っん、ちゅうううっ」
 最後の強い吸い込みで、俺は今まで堪え、溜めていたものを一気に吐き出した。
 口の中に、大量の精が勢いよく放たれ、そこを満たしていく感覚。同時に俺は射精によって快感を奪われていく感覚を感じていた。
「はぁ……濃い」
 尿道に残っていたものまで丁寧に吸い尽くすと、味を確かめるように舌を反芻させているのがわかった。そう思ったのも束の間、
「ん、んぅ……くっ、んく……ちょっと、飲みにくいかも」
 口内の精液を舌で掻き集め、その全部を残さずに飲み下そうとする。
「でも、随分たくさん出したのねぇ……そんなによかった?」
 不意に、飲み残したものが開いた口から糸を引き、胸に垂れ落ちた。
 その白い胸の上を流れていく白濁の液体は、緩慢な時間の中で重力に従い、一直線に彼女を汚していく。
 汚れても尚、微笑んだままで俺を見ている。純粋な瞳の中に、どうしてこんなにも、強烈な性欲を秘めるのか。いや、純粋故の強さなのか。
「あ、それより、まだ満足してないみたい」
 出したばっかりのくせに、俺のはまだ硬さを保っていた。
 幕間間奏。
 滾った性を放出したお陰で、冷静を一時取り戻す。
 夜の静寂を感じた。
 寝静まった街の、誰も踏み込もうとはしない小道。その奥で、何処かから歌が聞えてくる錯覚。
 熱い情事の中、微かに混ざる間奏が耳へと届いてきた。
 それは星の瞬きでも、月の月光でもない。そもそも、彼らに奏でる音なんて有りはしない。
 ならば、奏でられる音の主は1人しかいない。
 目の前の、彼女。言葉は、詩のように紡がれ、夜を満たす。
「―――」
 また、何かを言った。それでも俺には聞こえない領域。
 俺は、そこにはもういない。同じ場所に、立っていないんだ。
―――そうだ。これは、一夜の夢。
 たとえ、千回の夜を重ねても同じ。夢であることに変わりは無い。
 忘れないように、何度も刻む。でも、今、心は無い。
 空虚な身体だけを引きずって、愛欲の限りを行為によって尽くす。
 だとしたら、何を考えても無駄ということ―――。