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493AMERIA -1-
 再度、口付けを交わす。
 彼女にはもう嫌がる素振りは微塵も無い。
「っ、……はぁ、んむぅ……!」
 それよりも最初とは比べ物にならないくらいに、欲の世界に深く埋もれてしまっている。柔らかい唇の繰り返される応酬に呼吸することすら忘れていた。
 この時ばかりは、誰もが熱に侵されたひとりの男と女でしかない。繋がることで快楽を得、ひたすらにその感度を高めるだけ。生殖の儀式など知らず、満足の領域をじわじわと満たす。
―――官能の世界だけが、舟の上にあった。
 ひんやりと、胸板の上に彼女の手が踊っている。必死にしがみ付いて、抑えきれない感情に従う。ひとたび腰を振れば、押し寄せる波が。再び腰を振れば、波は高さを増す。徐々に増していく波が、自分を呑み込むまでひたすらに行為を繰り返すのだろう。
 目の前に熱で惚けた顔。涙の跡が生々しく、痛ましい。だけど、今はもう扇情の小道具でしかなかった。不意に優しく彼女の顔を引き寄せながら下から腰を突き上げる。
「ひゃうっ!」
 吐息と共に細い声が流れるのを聞きながら、涙の跡を丁寧に舐める。少しだけ、塩の味がした。
 上を見れば、夜闇を纏う昏い月。その周りを星達が賢明に支えている。闇に呑み込まれそうなのは錯覚などではない。まるで、自分の心の内を晒しているのか。
 依然として、舟は何処かを漂っている。そんな不安定な舟と同じ俺達は、
「あっ、あぁ、は、ひっ……いっ、やあっ」
 貪るようにお互いを求め続けた。
 舟の先を照らすぶら下がったランタンの光。小屋舟の上での情事を隠すために下りた厚い布越しに映る、微かな影を見る。
 アイツは、今何を考えて舟を漕いでいるのか。出発前に思い浮かんだ、そんなつまらない事なんて―――もう、どうでも良くなっていた。
「水無さん」
 首を振る彼女。口付けが降りてくる。
「いやぁ……灯里、って、呼んでぇ」
 快楽を隠し切れない艶を帯びた震える声。舟謳には無いモノが、心を揺さ振る。
 舌を絡め、灯里の味を感じる。いとおしいその名前を呼べば、カラダは応えてくれた。