幽遊白書でエロパロ

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789ミカヅキ 幽助×螢子 四:2006/03/06(月) 01:30:25 ID:IN1yXB24
「幽ちゃん、大事な奥さん労わってやんなよ」
「そうそう、いい子じゃないか」
すでに酔っ払っている常連の客たちが、からかうように笑う。柄は良くないかも知
れないがとにかく人はいい。たまに螢子が手伝っているのを見ると、いつも娘でも
見るように目を細めている。螢子も食堂の娘だから客たちの人の良さは見抜いて
いるのだろう、いつもにこにこと応対してくれている。
「ありがと、おじさん。今日はもう私ダメかも。幽助、水ちょうだい」
いつもより帰りが遅かっただけあって、疲れきっている螢子は遠慮がない。受け取
ったコップ一杯の水を一気に飲み干すと、どこかのオヤジのように開放感たっぷり
の大きな声を出した。
「あー!!生き返ったあ」
「おいおい、客の前でみっともねーぞ」
普段ならこんなことはしないのに、と少しだけ慌てながら宥めようとする。だが、元
気を取り戻した螢子は無敵だった。
「何よ、私だって普通のお客さんの前だったらこんなことしないって。今ここにいる
のがおじさんたちだから、くつろいでるのよ。ね♪」
抜け目なく常連客たちに目配せをする。
「そうそう、疲れてんならそれぐらいいいだろ」
「幽ちゃん、新婚早々亭主関白は嫌われるぜ」
「…ちぇっ」
ハイになって勢いづいている螢子には、もう勝てそうもなかった。早くも尻に敷かれ
ている気がしないでもない。

「お腹空いたねー」
常連客たちが帰った後、二人で早めの店仕舞いの支度をしているとぐうぐう鳴る腹
を抱えて螢子が情けない声を出した。
「…そうだな。今夜は何食べたい?」
「んー…明日も今日と同じタイトなスケジュールだから、しっかりスタミナつけときた
い。お肉がいいな」
幽助の頭の中で作り上げていた献立が、数時間振りに浮かび上がってくる。
「よし、任せときな。帰ったらうんと美味いの作ってやるからさ」
790ミカヅキ 幽助×螢子 五:2006/03/06(月) 01:31:29 ID:IN1yXB24
「うわあ、嬉しい。幽助の御飯ってすごく美味しいよね。私なんて料理の才能ない
のかなあ。子供の頃からお父さんに仕込まれていたのにさ」
暗がりに紛れて、抱き着きながら漏らす声が夜風に震えている。
そんなことを言っていても、螢子の料理だってかなりのものだ。それは時々食堂で
食べていた幽助が一番分かっている。出来れば世の中の亭主のようにデンと座っ
て上げ膳据え膳といきたいところだが、夫婦の形は複雑な現代の中にあれば人そ
れぞれ。亭主が女房の世話をするのだって構いやしない。
何よりも、一番大事な女が喜び満足しているのならそれでいい。
男ってのは因果だよなあ。
決して今の暮らしが不満な訳ではないが、溜息が漏れた。
そうだよなあ、親父。
今はもういない魔界の父親に向かって、心の中でこっそりと問い掛ける。
『男ってのは惚れた女をモノにする為なら、どんなに滑稽で情けないことでもしてみ
せるもんだ』
一度だけ、そんなことを言っていた。
その結果として、今の自分があるとなれば決して無視は出来ない。あの父親が何
百年も忘れられないほどの女がどれほどのものだったのかは、想像するしかない
が、多分容姿を含めて気概や生き様が良かったのだろう。
『あれは、白梅のような女だった。本当にいい女だったぞ』
長い年月を経ても、そうやって懐かしく思い出すような真摯な恋は少し羨ましい。だ
が、形は違ったとしても幽助にも今こうして大事な女がいるのだ。
「螢子」
「ん、何」
幽助は屋台を引きながら、隣を歩く恋女房に話し掛けた。
「手、繋いでいいかな」
途端に、暗がりでも螢子の頬がぱあっと染まったように見えた。信じられないものを
見たように、目が滑稽なまでに見開かれている。
「な、何よいきなり」
「そんな気分になっただけだ」
「…あんたっていつも突然よね」
791ミカヅキ 幽助×螢子 六:2006/03/06(月) 01:32:34 ID:IN1yXB24
顔を背けながらも、仕方なくだというように手がそうっと触れてきた。了承と解釈して
ぎゅっと握ってやる。
「サンキュ。飛びきり美味い飯作ってやるからな」
「…当たり前よ、バカ」
何だか幼稚園の頃に戻ったようだった。あの頃はいつも手を繋いで日暮れの道を歌
いながら帰ったものだ。もしかしたら、あの頃からこうなることが決まっていたのかも
知れないなどとセンチメンタルなことを考える。
白梅の女ではないけれど、無理やり例えるなら螢子は桜だ。
春になったらどこでも見られるし、どれも綺麗で迫力があるけれど、一輪一輪にして
みればひどく儚げで薄い花弁で出来ている。その癖、包み込むような優しさを絶や
さないのだ。
傷つけたり、壊したりは絶対に出来ない女に違いはない。
つくづく男は因果だ。
どんなに女が強くなったとはいっても、やっぱりそんな繊細なところが放ってはおけ
ないのだから。
「味噌汁の具は何がいい?」
「え、うーんとね、ジャガイモとワカメ」
繋いだ手を振りながら、子供に返ったように二人は暗くなった道を歩いていく。どこ
にでもあるような平凡な日常だけど、それが何よりも大事なものだと知っているから
些細な遣り取りでさえも心が躍るのだろう。

そんな二人を見下ろすように、空には三日月がぽっかりと浮かんでいた。もう少しす
れば満月に至る上弦の月となる。



79212:2006/03/06(月) 01:49:38 ID:IN1yXB24
てなことで、「幻夜」と対ではないけど、遺伝のなれの果てとなった息子夫婦の
話でした(笑)エロはどこかに忘れたようです。

ちなみに、「幻夜」での半月は上弦の月でした。
私は何故か月というものに対して異常なほどの思い入れがあるので、作中にも
よく登場します。
満月なら幸せな二人、半月なら上弦か下弦かで幸せに向かうか不幸に向かうか
決めたり。つまり、上弦の月の下で契った雷禅と食脱医師は幸せだったという
ことです。息子もいるしね。
で、今現在の息子夫婦も満月に向かう三日月の下、ということで幸せなのです。

蛇足ですが、まさに今夜が上弦の月。
弓張月とも呼ばれる風情のある形をしています。
では、おやすみなさい。
793名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 19:17:05 ID:TKTolPmW
GJ!幽助いい旦那さんだなあ。
普段しっかり者の螢子がこうやって寛げるのも幽助の前だからこそ。
立場が“幼馴染”から“夫婦”に変化しても、
ふたりの関係の根っこの部分は変わらないんでしょうね。
そして、彼ら仲間たちの関係も。

それから、月にこだわりがあるんですね。「幻夜」以前の作品では、
「藍色月夜」=“冬の月”くらいしか気付かなかった…もう一度読み直そう…
月もそうですが、「幻夜」の白梅に、本作品・「ミカヅキ」の紅梅
ちゃんと対になるようになってますね。さすが。
79412:2006/03/06(月) 23:45:52 ID:IN1yXB24
感想をありがとうございます。
二人には揺るがない信頼関係があると思うので、立場が変わってもそれが何より
確かなものなのでは、と思っています。

この作品で書くようになってからは、まだそれほど作品数がありませんので月
そのものは頻繁に出てきていませんが、以前から色々と手掛けていたジャンル
では月はかなり重要なものとなっています。
多分、今後はもっと登場すると思いますのでそこも注目して頂けると面白いかも
知れないですね。
795名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 00:17:03 ID:Fy5FFEMH
保守。戸愚呂(弟)×幻海読んでみたいなぁ。この二人の関係も好きだ。
職人さん、お願いします。
それから12さんの飛影×躯、躯はもうそろそろ妊娠後期?
最初から読んでいたら、なんだか情がわいてきて…
>>194で結末は解っているけれど、やっぱり気になる。
79612:2006/03/11(土) 20:56:13 ID:F3K1UZqp
こんばんわ。
明日は出かける予定があって、帰りが遅くなるので書けないかもです。
短いものでも何か書けるといいんだけど。
797名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 07:18:17 ID:791o+N9r
SSの投下はまた、12さんの都合の宜しい時にして下さい。
いつも良作投下して下さって有難うございます。
次回作も期待してますよー(´∀`)
798名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 08:10:24 ID:NbzIkdp6
>>786-791
久しぶりに来てみたら幽助×螢子キテタワァ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!!!
何気に他カプ萌えの人にも親切な文章になってるのが素敵です!!
普段はROM専だったのに、嬉しさのあまり初パピコしてしまいましたw
また気が向いたら書いてくださいねノシ
乙でした〜



 っ旦~ とりあえずお茶おいときますね 
799名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 17:40:47 ID:KdpZB5xr
次スレマダー
800名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 20:20:03 ID:tHAHs0G5
まだちょっとスレの容量残ってるし、スレ立てはもう少し後からでも
いいんじゃないかなと思ってたけど、やっぱそろそろ立てたほうがいいのかな?
何なら私が次スレ立てましょうか?
801800:2006/03/18(土) 22:58:02 ID:faKBIxT9
今度の月曜は12さん、小説投下してくれるかなあ?
ところで今すぐ立てるかはともかく、とりあえず次スレのテンプレ考えてみました。
802次スレテンプレ案1/2:2006/03/18(土) 23:03:17 ID:faKBIxT9
スレタイ:幽遊白書でエロパロ その2


こちらは冨樫義博原作「幽遊白書」のエロパロスレです。
幽助×螢子、桑原×雪菜、蔵馬×喜多嶋、飛影×躯、戸愚呂×幻海…
その他公式捏造なんでもござれ。ただし男×男は801板にてお願いします。

職人さんはいつでも・誰でも大歓迎!

前スレ
幽遊白書でエロパロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123579392/
803次スレテンプレ案2/2:2006/03/18(土) 23:07:07 ID:faKBIxT9
以下、>2


関連スレ(過去スレ)
ハンター×ハンター2 富樫義博総合スレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1071242182/

なお、総合スレのSSはこちらでも読むことが出来ます。

2chエロパロ板SS保管庫
ttp://adult.csx.jp/~database/index.html
804800:2006/03/18(土) 23:20:01 ID:faKBIxT9
ほとんどこのスレの>1と変わってないし…_| ̄|○
「女体化ネタは専用スレで」の言葉も入れておいたほうがいいかなあ?

他にも「この言葉を入れたほうがいい」「この言葉はいらない」ってのがあったら
案を出してください。
80512:2006/03/19(日) 22:59:18 ID:U8fmXUjg
こんばんわ。
今週は時間がそれほどないので、短いものになると思います。
エロなし、雛視点です。

ところで、しばらく来ない間に次スレの話題になっていたのですね。
>>800さん、テンプレ案のことですが、個人的にはほぼこの通りでいいと思い
ます。ただ、女性化ネタはスレ違いのように思いますので、その注釈は必要
ですよね。ここは公式捏造フリーですけれど、あくまでもノーマルカップリ
ングのみですから。

では、投下に向けて頑張ります。
二時過ぎぐらい…でしょうか。
806800:2006/03/20(月) 01:08:02 ID:KOCnYd+O
雛ちゃん登場って事は飛影×躯ですね。ワクテカ。
12さんの小説を読む事が、週のはじめの楽しみの一つになってますよー。

ところで、テンプレ案へのコメント有難うございます。
やっぱり「女体化ネタは専用スレで」の言葉も入れたほうがいいですかね。
12さんのアドバイスを踏まえまして、次スレテンプレ案の改正版を作ってみました。
>2部分はとりあえずは変更なしという事で、省略しています。
807次スレテンプレ案・改正版:2006/03/20(月) 01:12:38 ID:KOCnYd+O
スレタイ:幽遊白書でエロパロ その2


こちらは冨樫義博原作「幽遊白書」のエロパロスレです。
幽助×螢子、桑原×雪菜、蔵馬×喜多嶋、飛影×躯、戸愚呂×幻海…
その他公式捏造なんでもござれ。
ただし男×男は801板、女体化ネタは専用スレにてお願いします。

職人さんはいつでも・誰でも大歓迎!

前スレ
幽遊白書でエロパロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1123579392/
80812:2006/03/20(月) 01:29:04 ID:faJaSJDK
>>800さん、お疲れ様です。
それでとりあえずはいいと思います。
まだスレには余裕がありますので、何か不足点がありましたらその都度考慮
すればいいことですし。

ところで、エロなしなので今回飛影ほとんど出て来ないかもです。
期待をさせてごめんなさいです。
まだ時間が少しあるので、何とか補正をば。
809春の豊穣 飛影×躯+雛?:2006/03/20(月) 02:31:37 ID:faJaSJDK
魔界にも、春が来た。
手に触れる水が温くなったことが心から嬉しくて、雛はここ数日厨房の仕事に一層
力が入っている。冬の間はどうしても億劫で仕方がなかった床の拭き掃除も壁掃除
も時間をかけて丁寧にこなし、隅々まで清めていく。
そうして綺麗になった厨房の中で、二人の主の為に料理をするのが何よりの楽しみ
になっていたのだ。

「雛、水をくれないか」
眠りから覚めたのだろう。昼近くになってから主の一人である躯が声をかけてきた。
「はい、只今」
気に入りの居間の長椅子に、今日も気だるそうに躯は美しい体を横たえていた。寝
覚めは誰でもぼうっとしてしまうものだから気持ちは良く分かる。雛はグラスを片手
に薄暗い厨房奥の水瓶から冷たい水を汲み出すと、秘密の一滴を落とした。そして
銀の盆に載せていそいそと運んでいく。
「はい、躯様。お待たせ致しました」
長い指で額を軽く押さえていた躯は、薄い瞼をひらして少しだけ笑って見せた。ゆっ
たりとした服装だが、それでも大分腹の辺りが目立ってきていた。
「…悪いな、お前も忙しいだろう」
「いえ、全然」
雛が怖がることを危惧しているのだろうか。躯はいつも雛には焼け爛れた顔と体の
左側を極力見せない。そんなことを気にしなくてもいいのに、といつも思う。ただ普
通に美しい女性より、この女主人は何倍も綺麗で魅力的だ。それはこれまで辿って
きた複雑怪奇な人生が培ったとも言えるし、今最愛の相手を得て幸せに過ごしてい
るからとも言える。その意味では全てにおいて、躯は雛にとって理想であり、憧れの
女性でもあったのだ。
淡いブルーのグラスに口をつけて、一口水を飲んだ躯は、わずかに首を傾げた。
「…甘い、な」
810春の豊穣 飛影×躯+雛? 2:2006/03/20(月) 02:32:48 ID:faJaSJDK
思わず笑みが漏れた。大切な秘密を明かすように、悪戯っぽく肩を竦める。
「ウスベニカズラの花を煮詰めた汁を入れてみました。甘いから口当たりもいいし滋
養もあります。それにすっきりと目が覚めますよ」
「そうか、ありがとう」
「いいえ、実家は元々医者と言うほどでもありませんが草花の効能に詳しい家系
でしたので、これぐらいなら私も知っているんです」
自分の知っていることは大したことではないけれど、それで大事な主人が少しでも
元気になってくれればいい。
無垢な少女、雛の願いはそれだけだった。
「後ほど、庭園の薔薇を少し切ってこちらと執務室の方にお持ちしますが、他に欲し
いものはございませんでしょうか」
「…いや、特別ないが」
「…が、と言いますと?」
躯はわずかに眼差しを翳らせた。
「お前は働き過ぎる。昼間の間は俺だけしかここにはいないのだから、適度に手を
抜いていればいいだろう。その働き振りに対して、何もしてやれないのが心苦しい
のだ」
雛は心底驚いてしまった。この夫婦二人の主人が大好きだからこそ少しでも心地
良く過ごして欲しいから何もかも頑張っているだけなのに、それが負担だというの
だろうか。それならば、こちらこそ悪いことをしていると思った。
この美しい主人はこれから出産という大事を控えているのだから、余計な気を使わ
せたくないのに。
「躯様」
この思いが通じるだろうか。雛は言葉を選ぶように一度唾を飲み込んでから口を
開いた。
「私、私…躯様と飛影様にお仕えして以来、本当に夢みたいに幸せなんです。お
二人の為ならどんなことでも喜んで頑張れるぐらいです。躯様がお気に病むことは
何もありません。私が望んで、そうしたいと思ってやっていることですから」
通じているだろうか。
雛はただ二人が仲良く幸せであればそれでいいのだ。
811春の豊穣 飛影×躯+雛? 3:2006/03/20(月) 02:33:55 ID:faJaSJDK
「…雛」
ふっと表情を緩めた躯は、とても綺麗な笑顔を見せてくれた。今ここに飛影がいな
いのが勿体無いほどだ。
「済まんな。そこまで気遣ってくれるのは本当に嬉しく思っているぞ。だが」
途端に、それまで見たことがないぐらい悪戯っぽい顔になった。
「命令だ、この屋敷の中ではもっと自由にしてもいい」
急に、主人と使用人という境界を越えて、普通に女同士の友達のような間柄にな
った気がした。こんな風に接してくれるというのは何と幸せなことだろう。
胸の中に綺麗な風が吹いたような気がした。
「…はい、躯様。それでは咲きたての一番綺麗な薔薇をお持ちしますね」
「こら、言った先から」
「私はお二人が大好きですので」
満面の笑みで言い放った雛に、躯も言葉が続かないようだった。
自由にしていいと言ったのは躯なのだ。それなら、思う存分自由に振舞って二人
が何の不自由もないように取り計らっていこう。心からそう思っていた。
二人の喜びは雛の喜び。
二人の幸せはそのまま雛の幸せなのだから。

空がすっかり暗くなった頃、もう一人の主人である飛影が帰って来た。二人の間
では交わす言葉もそれほど多くない。見交わす視線も素っ気無いほどだ。だが、
それだからこそ実に多くの感情が入り混じっていることも雛は承知していた。大
人の男女とは何と複雑で難しいことか。それ故に面白いと思えた。いつか、こん
な真摯な恋愛を自分も出来るだろうか。
二人に対する思慕も込めて、雛は密かに願う。
この幸せな二人のように、いつか運命の人に出会えたらいいのにと。
812春の豊穣 飛影×躯+雛? 3:2006/03/20(月) 02:34:56 ID:faJaSJDK
普段は澱みがちな寝間の空気が、今日は豊穣この上なく香っている。
入ってすぐに敏感にもそれを察した飛影は、すぐに根源を探り当てた。奥の衣装
箪笥の上の花瓶に生けられた薔薇のせいだと。瑞々しい花弁を指先で弾くと、
決して悪くもない表情で言い放った。
「雛の仕業か」
「そうだ、いい匂いだろう。あの娘はここには決して入らなかったぞ」
「そんな野放図では困る」
ふふっと軽く笑った躯は、寝台の上で夫となった男を待った。こうすることに何の
ためらいもなくなったのはいつの頃からだろう。もうはっきりとは分からなくなって
いた。だが、それが幸せということなのだと思ってもいる。
以前、ずっと一人きりで生きてきたと思っていた。
だが、他者と関わり合う以上は常に気遣い、気遣われているのだろう。そんな何
でもないことを自覚したのも、ごく最近のことだ。本当に躯の芯は生まれたての
赤ん坊のように何も知らない部分がとても多くて、時折自分でもその物知らずさ
に戸惑うほどだ。
寝台に、ぎしりと心地良い重みが加わる。
「貴様も少しは自重しろ。いつまでも無自覚なら早いうちに医者たちにつきっきり
にさせるぞ」
「…それもつまらないな」
「貴様の体の為だ」
一体いつどこでそんなことを憶えたのかと思うほど、飛影の与えてくる仕草は優
しい。普段の無表情からは微塵も伺えないほどだ。だからこそ思いの深さも知れ
て、躯は暗がりの中で薔薇の香よりも豊穣で妖しい笑みを漏らす。
この男の為に子を生むのだと思えば、何でも耐えられそうだ。
抱き寄せてくる腕の力強さに酔い痴れながらも、陶酔一歩手前のあえかな声が
寝間に零れる。
「お前で…良かった」



81312:2006/03/20(月) 02:37:49 ID:faJaSJDK
あ。
投下時の間違いで、3が二回続きました。
本当は4だったんだけど。あああ。
明日も平常通り仕事がありますので、後悔しつつこれでもう寝ます。
おやすみなさい。
814名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 03:21:24 ID:Htc7ac78
GJ!
忙しいのにお疲れっす
あんま無理せんといてな?
815名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 12:30:47 ID:KOCnYd+O
GJ!12さん、いつも乙です。雛ちゃん、本当いい子ですね。
躯との主従を越えたちょっぴり同性の友達めいた雰囲気もいい感じです。
互いに強い絆で結ばれ信頼しあう両親や、心優しい世話係の少女に
囲まれて、生まれてくるであろう子供。幸せだろうなぁ。

もしかしたら、既にお腹の中から両親たちの様子を見ているかもしれませんね。
父親である飛影は「生まれる前から目も見え耳も聞こえていた」そうですし。

>>808
次スレテンプレ案、少し早めに出してしまいましたが、
まだ少しは容量残っているので出来ればギリギリまで使いたいと思っています。
勿体無いしね。
816名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 14:12:34 ID:yzcAO3PH
雛ちゃんは、そんじょそこらの男には勿体無い!
・・・・まるで、年頃の娘を持ったパパンな気持ち(*´д`*)

幸せそうで、良いなぁ(*´д`*)
817名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:27:12 ID:RdCTlqzZ
>>816禿同。
でも、こんな心根の優しい子だったら素敵な恋愛出来そう。
オリキャラだって事忘れちゃうぐらい違和感ないし、好感持てる。

回を重ねるごとに絆を深める飛影と躯の関係にも萌え。
なんかこの飛影、立会い出産しそうだなあ。
818名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 07:28:16 ID:333YmAOV
スレの容量的にはSS投下出来るのもあと1,2作品ぐらい?

明日は12さんのSS投下あるのかな?ワクテカ(0゚・∀・)+今回はどんな話かな?
あ、でも毎週仕事でお疲れかと思いますし、あんまり無理をなさらないで下さいね。
819名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 11:17:54 ID:3FRw4X9p
何でこのスレは荒らしがいないのですか?
820名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:47:41 ID:b6PayrWy
人が少ないから
82112:2006/03/26(日) 22:58:00 ID:Oxvs2cot
こんばんわ。
「予兆」の続きを書いているところです。
まだ初Hまでの道のりは遠そうだけど、何とかエピソードに違和感のないよう
に繋げていきたいところです。
今回もあまり長くないかも知れませんが、頑張ります。
822名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 23:53:47 ID:333YmAOV
飛影×躯、恋愛初期話の続編キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
少しずつ進展していく二人の関係に激しく期待してます。
12さん、無理のない程度に頑張って下さい。初H話まで見届けたいです。
82312:2006/03/27(月) 02:33:08 ID:i9SnnI2f
書きました。
ちょっと短いけど、その代わり来週はエロ書けそうです。
ようやく繋げられたー。
824黒い睡魔 飛影×躯 1:2006/03/27(月) 02:34:01 ID:i9SnnI2f
最近、眠りが浅くなったことを自覚している。
そのせいで疲れが取れにくくなっているのが躯の悩みとなっていた。
原因は言うまでもなく、あの男だ。
躯を眺めている時のあの物言いたげな昏いおぞましい瞳が、いずれ自分の何
もかもを暴きたててしまう気がして、それが少なからず怖いと思った。
別に何を望んでいる訳でもない。ただこのまま踏み込んで来さえしなければ、
まだ自分は平静でいられる筈なのだ。
だが、遠からずあの男は一番恐れていることを仕出かすに違いないことも分か
っている。そんな風に付け入る隙を与えたのは紛れもなく自分自身なのだ、と
いうことも。
ああ、面倒なことだ。
溜息をついて、眠れない苛立ちに任せてごろりと寝台の上で寝返りを打つ。
これまで女として過ごしてきた経験がないせいで、こういったある種の情が絡
んだものはどう対処していいのか分からない。かと言ってこのまま言うなりに
なるのも癪だ。
「…もっと簡単な女を相手にすればいいものを。お前も愚かだ、飛影」
薄暗い寝間にやるせない溜息だけが積もっていく。

早急に目を通さなければいけない業務報告書が、机の上にこれでもかと積み
上げられている。
数日前に直接管轄する部下に対して大幅な人事異動を試みてみたのだが、
まだ表立った結果は出ていない。ある程度満足する成果を得るまでは各人そ
れぞれの慣れぬ環境から様々なトラブルが発生することだろう。それまで個々
が頑張りを見せてくれると嬉しいのだが、と躯は考えている。
昼間はあくまでもこれまで通り、女の面など見せるべきではないと自戒してい
た。あの男、飛影にもそれが通用するかどうかは知れないのだが。
825黒い睡魔 飛影×躯 2:2006/03/27(月) 02:34:43 ID:i9SnnI2f
「疲れているのか」
ようやく報告書を全て処理し終えた頃には日が落ちかけていた。
影のように執務室に現れた飛影は、二つのカップを持っている。そのひとつを
机の上に置いた。
「飲め」
「…ああ、済まないな」
さすがに目が疲れきっている。目頭を押さえながらカップを手にした躯は、立ち
昇る異様な香気に首を傾げた。
「薬湯か」
「似たようなものだ。最近激務が続いているだろう」
「別に大したことじゃないさ」
何かの薬草を煎じたものなのだろう。ひどく強い香気があるが一口飲んでみれ
ばそれほどは苦くない。不思議と気分が落ち着いてたまっている疲れも取れる
ようだ。他者のことなど一切の無関心を装うこの男が一体どこからそんな知識
を、と急におかしくなった。
「躯」
そんな心の隙にするりと入り込むように、男の無骨な手がカップを持つ躯の指
に触れた。ひどくその指先が熱く感じて動悸が跳ねた。
「何を、する」
「一人で無闇に気を張るのは、もうやめろ」
「訳の分からないことを…」
そのまま両手首を強く捕まれた。まだ半分ほど中身が残っていたカップは無残
にも床に転がり落ちて派手な音を立てた。割れてなければいいがとこんな状況
に陥りながらもつい考えてしまう。
「…離せ」
「納得する答えを出せばいつでも離してやる」
「お前が納得する答え、だと?」
826黒い睡魔 飛影×躯 3:2006/03/27(月) 02:35:41 ID:i9SnnI2f
「そうだ。お前は元のお前になれ。何も身の丈に合わないものに必死でなる必
要はないだろう」
「…知った風な、ことをっ…」
薬湯の苦味が口の中に残っている。それ以上に、やたらと馴れ馴れしい飛影
の物言いには引っ掛かるものがあった。一体、この男はどこまで愚弄すれば
気が済むのだろうと苛立ちながら椅子を蹴って立ち上がる。まだ捕まれたまま
だった腕がぎりっと更に強く力を込められる。
「ならば、どうして貴様はあの時俺に思わせ振りなことを言ったんだ」
「それは」
忘れる筈がない。
過去に魔界整体師である時雨と対峙してこれを倒した時、飛影もまた瀕死の
重傷を負った。その並ならぬ気概、その潔さを快く感じて情けを施してやったこ
とがある。もしかしたらこの男が何かを変えてくれるかも知れない、と思ったの
は事実だからこそ命を繋げてもみたのだ。
『お前になら全てを見せられる』
そう言った言葉も嘘ではない。
だが、それが女としての言葉かどうかは自分でも曖昧だった。飛影は完全に
女としてだと認識しているようだが。
「…お前にわざわざ言う必要など」
苦し紛れに吐いた言葉は続かなかった。唇が塞がれたからだ。驚きで見開か
れた目がひどく静かに覗き込んでいる目とぶつかる。
「……何てことを」
ようやく開放された後、あまりにも突然のことに頭の中がぐるぐると混乱しきっ
ていて上手く物が言えなくなっていた。こんなことなど、以前は当たり前のよう
に繰り返されていた。自分の意思など全く関係なく男たちの望むように。だか
ら、別に何でもないのだ。そう思ってもどうした訳か飛影にだけは動揺するの
を隠せない。
「あ、あ…」
「躯」
「…さわ、るな…触るなっ…」
焦点の合わない目で、躯はうわ言のように繰り返すばかりだった。
827黒い睡魔 飛影×躯 4:2006/03/27(月) 02:37:02 ID:i9SnnI2f
唐突に短い時間のうちに色々なことがあり過ぎて、錯乱していたのだろう。
気がつくと執務室ではなく、寝間の寝台の上にいた。完全に回りきってはい
ない頭でどうしてここまで辿り着いたのか、と考えても答えは出せなかった。
隣で不躾にも寝そべっている男を見るまでは。
「…飛影か、俺はどうしてここに」
「日が暮れた。執務室からここは近い。貴様は倒れて動かないから運んでや
っただけだ」
不機嫌な声には同じだけの不機嫌な声。どうしてまだここにいるのか、と聞
こうにもそれを許さない雰囲気がある。やすやすと寝台まで侵入されてしま
ったことも驚愕だが、当然のように居座る飛影の心情も全く理解出来ない。
「お前、さっさと立ち去れ」
「どうしてだ」
「ここは俺の寝間だ。勝手は許さない」
「そうか」
軽く威嚇したつもりなのに、全く通じてはいないようだ。何とふてぶてしい男
なのだろう。思うようにならない事態に内心苛々しながらも、奇妙な安堵はあ
った。
こんな遣り取りはそれほど悪くない。
そう思った途端に、強烈な眠気が襲ってきた。
こんな状況では知らない間に襲われそうでとても眠れはしない。わずかに湧
き上がった不安も、髪を撫でてくる手が跡形もなく溶かしてしまってひどく気
持ちがいい。
「このところ、眠れなかっただろう。見ているからゆっくりと眠れ」
「何、を…」
何か反論をしなければ。そんなささやかな足掻きもすうっと真っ暗な意識の
中に紛れ込んでしまった。これまでの自分であれば考えられもしなかった。
誰かの目の前で眠りに落ちるなど。
だが、そんな強がりも綺麗に溶け崩れていく。



82812:2006/03/27(月) 02:41:06 ID:i9SnnI2f
がはり(吐血)
こんなところで終わるなんて…何だか乗ってきたところなのに、来週までエロ
書けないよー。
てか、飛影。そこまでいったら普通襲うだろ。

あ。
躯の『お前になら全てを見せられる』発言時、絶対飛影は聞いていたし見て
いたと思います。額の目も開いてたし。
829名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 11:45:11 ID:uLmbvdZw
そりゃ半身焼けただれとはいっても美しい女の全裸を
しっかり見せられてしまったわけですからな…>>12サン
しかも躯からすすんでw 躯は「その気」じゃなかったんだろうけども
飛影のそのときの心情考えてみたらそりゃ、なあ。
一瞬の驚愕の後、内心バクバクしまくってたんでは。じっくり観察。

あの水槽?から出た後、躯を見る目が俺の上に立つ野郎→女へと
変わったんでしょう。これまで意識してなかった躯の首の細さとか
気がつくようになってしまい、躯が無自覚な仕草にさえ色気を感じてしまう。
だがしかしそこで悶々としないのが飛影。さっさと行動に出る。

そんな感じかなーと予想してました。


830名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 22:05:05 ID:SH03Fgw/
12さん、グッジョブ!!
“彼女にとっては思いがけない”飛影の行動にうろたえる躯に萌え(*´д`*)
深層心理では意識しちゃっているんだろうなあ。本人は気づいてなさそうだけど。

一方の飛影はやる気満々ですね。もう一直線。
まぁあんな言葉かけられて、裸まで見せられちゃ誰だってそうなる罠。
でも、無理矢理実力行使には出ずに(チューまではしているが)
躯の不安感や混乱する感情を理解した上で、言葉でちゃんと諭したり、
寝間の寝室まで連れて行って寝かせてあげたりと、飛影はなかなか紳士的?ですね。

この後“送り狼”になるのかならないのか、今後の展開が激しく気になります。
来週も凄く楽しみです(;´Д`)ハァハァ 12さん、素敵な作品いつも有難うございます。
831名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 04:37:48 ID:3yENq6Au
うを〜やっぱすげぇw
>>12さんGJ!
しかも
>>829-830の見解を見て更に萌えた(*´Д`)
83212:2006/03/29(水) 22:35:32 ID:gIZwk8g8
はううーーー、>>829さんの後半の設定は激萌える。
ですよね、そうですよね。
あんなに綺麗なものを見ちゃったら、男として意識しない訳がないですよね。
その後結構すぐに寝室に普通に入るぐらいの仲になったっぽいし。
ああ、その設定で何か書いてみたいです。

そして>>830さん。
雪菜ちゃん探しの時もそうだったけど、飛影は超直情的だと思うので一度その
気になったらもうガンガン飛ばすような気がします。
ただ、そこで相手の気持ちや戸惑いを察しながらというのがその辺の男と違う
ところですね。でも、そろそろ限界ではないかと(笑)
次は初Hに漕ぎ着けられるといいなあ。
833名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 00:43:50 ID:Dg0VC95L
無頓着に部下の前で足を組みかえる躯。(スカートは穿かないだろうがw
ゆるく打ち合わされた衣服で少し前のめりで部下の報告を受ける躯。
「お前は女だっつーに!部下が目をそらしつつも注目してるだろうがぁ!」
と焦り&怒りの飛影。

そんなことを一人妄想して萌え。
834名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 01:00:35 ID:wMp4g7ir
なんか職人さん達だけではなく、その他の住人さん達にも萌えさせられます。
次回の12さんのSSはいよいよ飛影と躯の初H話?すごく楽しみです。

以前「次スレ立てましょうか?」と
次スレテンプレ案を出させて頂きました>>800ですが、
次スレ立てるのは(12さんの都合がよければ)
今度の月曜日、12さんのSS投下の後でいいでしょうか?容量まだおkだよね…?
835名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 01:55:44 ID:wcN4cLwR
幽遊白書でエロパロ その2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143823995/

すでに499逝っていたので、新スレたてさせていただきました。
横槍立てスマソ。

>12さん、続きは新スレで、よろしくお願いします。
その他、職人様、読者同志様方、暫時移動をお願いいたします。
83612:2006/03/32(土) 02:47:33 ID:5y14jHLC
そうか。
もう容量がそんなになっていたのですね。失念していました。
それでは今後は新スレに移動することにします。
立ててくれた方、激乙。
837名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 15:48:01 ID:V7Y5MIVo
誰か死々若丸×幻海とか書いてくれないですかね?
838>>800
>>835さん、新スレ立て激しく乙です。
代わりに立ててくださって有難うございました。

最後に、このスレでの投下SSをまとめてみました。
もう新スレに移動しなければいけないけれど、これだけ書かせて下さい。
レス番号等に見落としあればスマソ。