1 :
名無しさん@ピンキー:
2 :
さすらいのキリ番ゲッター:2005/08/09(火) 18:27:12 ID:Mbu+gtpJ
2ゲトー
∧∧ )
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡(
 ̄ ̄(( ズザーッ
3 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/09(火) 18:28:46 ID:zOLHp9nm
ほっしゅ
保守
まってました!!雪菜きぼん
6 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/11(木) 01:02:29 ID:ldE2SXt9
保守&スレ立てるだけではなんなのでネタを振ってみる。
皆さんどんなカプがお好き?
自分は飛影×躯。
アニメでの最終回、薄暗い躯の寝室に、当たり前のようにノックもなしに入り込んで居座る飛影、それを容認する躯の姿に
「こいつら出来てるだろ!?」と大興奮したなぁ。
桑原×雪菜や戸愚呂(弟)×幻海のプラトニックラブも好きだな…勿論エロも好きだが。
俺は幽助×螢子か幽助×ぼたんが好き
飛影雪菜 近親相姦最強
戸愚呂(弟)×玄海(若)萌えるなぁ…身長差が。
ルカ(漢字忘れた)×陣とかも萌。
蔵馬は妖狐時代はヤリまくってそうだが、南野は童貞っぽい気が…
エロは書けないので、神の降臨期待ほしゅ。
10 :
他力本G(ry:2005/08/11(木) 02:57:33 ID:kC3uUxne
じみに雪菜×桑原がイイなぁっと言ってみた…だれかヨロシク!
戸愚呂(弟)×幻海、桑原×雪菜は前の冨樫総合スレで良作ss作品があったね。
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://adult.csx.jp/~database/index.html ↑ここでは人間界ver.コエンマ×ぼたんや飛影×雪菜がある。
過去の良作を読みながら神の降臨を待ちましょう…
自分も書けたらいいんだが挫折しちまった_| ̄|○エロはムリポ
エロでも非エロでも、小説を書ける人って尊敬するなぁ。
12 :
躯と云ふ女:2005/08/11(木) 23:07:59 ID:KqiDfNNd
ゆらりと瘴気の如き陽炎が揺らめいていた。
鼻先ひとつでそんな澱んだものを振り払い、飛影は奥の寝間へと足を踏み入れ
る。
すうすうと寝息をたてて、ひとりの女が睡眠の中にいた。
どんな女よりも最高の、女。
たとえ半身が焼け崩れていても、誇らしげに立つ様は戦慄すら覚えるほどだ。柄にもないと思われるだろうが、胸が震える。
「…飛影か」
暗がりの中で女が目覚める。
「ああ。邪魔をしてる」
「構わないさ」
寝台から身を起こした女は、頭を一振りする。
その秀麗な面差しは、暗がりの中でも光を放つようだ。女は妖艶な唇で言葉を
吐く。
「丁度いい。遊ばないか」
「…悪くはないな」
気まぐれを装った返事に、どんな女にも勝る女がにいっと笑った。
13 :
躯と云ふ女:2005/08/11(木) 23:09:13 ID:KqiDfNNd
どうして出会ったかなど、陳腐な話だ。
男と女であれば、生まれ落ちた地や種族が違えど魂が引き合う。魂の色が酷似
していれば更に引き合い、出会わずにはいられない。ただ、それだけのことだ。
「眠りが少し足りないようだ」
「ならば帰る、キサマはまた寝ればいい」
「こんな時にか?」
互いにくつくつと笑いながら戯れることは、既に遊びのひとつになっている。
他の誰にも触れられてはいない乳房は、まだ小娘のように硬い芯を指先に感じ
させた。これが悦ばずにはいられようか。
「嬉しいか」
「まあ、な」
暗がりの中の戯れは、それぞれの立場を忘れる。
普段縛られているしがらみを忘れる。
そんな充足感を得たいが為に、男はここに足を踏み入れ、女はそれを待つ。
ただ、それだけの関係なのだ。
すみません、短いけどこれで終わりです。
以前はものすごく大好きだったんだけど、まだ勘が戻ってないですね。
この二人は今でもベストカップルです。
神が降臨なされた!!飛影×躯(;´Д`)ハァハァ
>>12さん、お疲れ様ですた。
魔族的な、甘くない雰囲気がいい感じです。
>>12さんが“この二人が好き”なのが文面から滲み出てますね。
16 :
12:2005/08/12(金) 01:03:57 ID:CAX2XCkf
ありがとうございます。
この二人は、以前も今も本当に好きですね。
元々は飛影ファンだったんだけど、よくぞ彼に躯を出会わせてくれたと作者に
感謝しましたから。最高の男と最高の女万歳。
冨樫は絵こそ手抜きだけど、時々とんでもない女を描くから侮れないです。
アカズの少女なんか、その最たるものですね。
>元々は飛影ファンだったんだけど、よくぞ彼に躯を出会わせてくれたと作者に
感謝しましたから。最高の男と最高の女万歳。
全文同意!書いてるの自分かと思いましたよ。本当いい男と女だよ。
上記カプだけじゃなく、幽白は何気にいいカップルが揃ってるなぁ。
でも雪菜ちゃん、桑原と万が一のことがあったら死んじゃうよ
19 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/12(金) 12:45:59 ID:dwVMvxpu
誰か幽助×螢子キボン
>>12 GJ!カッコエエ…!躯タンは最高にいい女だよねぇ。
>>18 そうなったら多分、桑ちゃんも飛影にあぼんされちゃうから大丈夫。(?)
>>12さんGJです!
躯と飛影のカプすきなんで嬉しい・・・
22 :
12:2005/08/13(土) 01:07:55 ID:zpKjTqa0
何か、さらさらーっと書いただけなのに、GJの嵐でお恥ずかしい。
あれからも色々な作品にハマってるし、今も大好きな作品があるけど、躯ほど
毅然としたいい女はいませんね。
ただ美しいだけではなく、過去に複雑で醜い事情があった、体が半分焼け崩れ
ていてもそれを隠すことなく堂々としているところがいいのです。なので、
アニメ版のキャラデザインは若干不満でした。
飛影と一緒にいる時は、やはり女性だから雰囲気が和らいでいるのが可愛らし
かったです。
もうちょっと頑張って、少し長いのを書いてみようかな・・・。
こんな良作を“さらさらーっ”と書けるあなたは素晴らしい!
>>12さん、新作期待してます。マターリ待たせて頂きますよ。
おぉ、幽白スレ立ってたんですね!!
>>12さん乙でした。
ところで、ぼたん×女の子蔵馬は邪道ですかそうですか。
ごめんなさい、言ってみただけとです…吊ってきまつ…。○| ̄|_
26 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/13(土) 17:08:41 ID:mzXGTUr2
飛影が、なんらかの理由で弱ってる躯を無理矢理犯す小説が読みたい
27 :
夏祭りの夜に:2005/08/14(日) 03:43:31 ID:26OUn6Qh
『今年こそ一緒に祭りに行こうな、予定空けとけよ』
かなり早いうちからそう言っていたのに、当の本人はまたどこかへ行ってしまっ
たまま連絡がない。
もう、しょうがない奴。
中学生の頃からそうだったからもう慣れてはいるが、このままずっとあの子供の
ような幽助をただ待っているだけなのかと、蛍子は心のどこかで焦りと怒りを感
じている。
連絡がない時は一体何をしているのか、いつ帰るのか、それさえ分からないま
まここで待っていることを当然のように思っているのは、もう我慢が出来ない。
来年大学を卒業して社会人になってしまったら、もうそんな呑気な相手をいちい
ち待ってはいられなくなるのだ。
今だったら許してあげる。早く帰って来なさいよ。
夏祭りはいよいよ翌日と迫った日の午後、蛍子はぼんやりとそう考えながら空
を見上げた。
もう、今年の浴衣もちゃんと買ってあるのだから。
28 :
夏祭りの夜に:2005/08/14(日) 03:44:18 ID:26OUn6Qh
翌日は街全体がどこか浮かれた雰囲気になっていた。
早朝のうちから浴衣姿ではしゃぐ子供たち、商店街を派手に飾る安っぽいけれ
ど温かみのある色彩の波。どれもこれも夏祭りの気分を盛り上げるのに相応し
い。
「おばさん、ジャガイモとタマネギ下さい」
近くの八百屋で買い物をする蛍子に、おばさんもにいっと笑いかける。
「今日のお祭りは盛り上がるよ。あんたも彼氏と行くんだろう?」
「ええ、まあ…」
「だよねえ、こんないい娘さんになったんだから、男も放っとかないよね」
「おばさんたら…」
もちろん蛍子もそのつもりだった。
小さな頃から幽助のお嫁さんになりたいと思っていた。いつも何かある度に結
婚しようねと言ってくれたし、きっと大人になったらそうなる筈だと思っていたの
に、放っておかれてばかりだ。
腹が立って、いっそ別の人と付き合おうかと思ったこともあるが、やっぱりそん
な気になれないまま二十歳を過ぎてしまった。
幽助。
私はいつまでも待っている訳じゃない。
早くしないと後悔するからね。
買い物帰りの道で、はらりと涙が零れた。
29 :
夏祭りの夜に:2005/08/14(日) 03:46:45 ID:26OUn6Qh
夜になると、街は一層賑やかになった。
屋台の並ぶ神社に向かって歩く浴衣姿の家族連れがぞろぞろとひしめく。蛍
子の家の食堂も、いつもの何割り増しかの客で込み合っている。いっそ、ここ
でずっと手伝いでもしていたら気も紛れるかと思っていたのに、変に気を利か
せた両親がもう手伝わなくていいいからと言ってきた。
「だって、忙しいでしょ」
「祭りの夜に若い娘を家に閉じ込めるような、無粋な真似はしねぇんだよ、ウ
チは」
荒っぽいが気のいい父親が、そんな風に言ってくる。
その気持ちは嬉しいが、蛍子はまだ素直に喜べない。
一緒に行く相手がいないのだから。
それでも乗らない気分で浴衣を着て、下駄を履いて外へ出ると、どこからか軽
やかな太鼓の音が聞こえてきて、それなりには楽しい。このままぶらぶらと歩
いてみようか。
一人だけの蛍子は、足を神社へと向けた。
30 :
夏祭りの夜に:2005/08/14(日) 03:48:45 ID:26OUn6Qh
一時間ほど屋台を見て回り、何となく赤い金魚二匹と薄荷の飴を買って昼間
よりも涼しくなった街を歩く蛍子の耳に、懐かしい声が届いたような気がした。
「蛍子」
「えっ?」
振り返っても、誰もいない。
「蛍子、久しぶりだな」
「…幽、助?」
暗がりの中に、確かに待ち続けた相手が立っていた。
相変わらず、長い間待たせたことなど気にも留めない様子で呑気そうに笑っ
ている。
私がどんな気持ちで待っていたと思ってるの!
ひっぱたいてやらないと気が済まない。そうは思っても、下駄履きの足はだん
だんと幽助に向かって走り始めている。
「ごめんな、蛍子」
「幽助のバカぁ!」
終わり
31 :
夏祭りの夜に:2005/08/14(日) 03:51:56 ID:26OUn6Qh
12です。すみません。
今回は飛影×躯じゃないです。
普通のカップルっぽいのも書きやすいかな、と思ってやってみたらこうなりま
した。女の子が待っているだけって、やっぱり辛いよね。
32 :
12:2005/08/14(日) 09:02:17 ID:26OUn6Qh
あー、「螢子」だったね、そういえば。
コピペしとけば良かった。
33 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/14(日) 19:08:25 ID:54DP9tB/
>1を読め
>>12さん、GJです!今回は王道・幽助×螢子の幼馴染カップルですね。
原作の二人の関係がとてもよく表現されてますね。
原作の一コマにもありそうです。
この二人はこれからもず〜っとこんな関係が続いていきそうな感じが…
でもこの後急展開!ってのもいいかもね。
>>12さんは現段階ではこのスレ唯一の職人様…
>>12さんの文章好きですよ!
SS書けずにクレクレばっかり言うのは大変申し訳ないですが、
いつか
>>12さんの飛影×躯のエロ3割増w小説が読みたいなぁ。
35 :
12:2005/08/15(月) 02:39:53 ID:1dLR82qh
えっ、エロですか(困)
他の作品ではバリバリ書いているので、検討してみます。
エロパロスレで全然エロくないSS投下して帰るつもりだったのか
37 :
12:2005/08/15(月) 09:35:15 ID:1dLR82qh
申し訳ありませんが、さすがにいきなりエロは書けません。
幾つか試してみてからということになります。
エロパロ専門のスレにSS投下しといて「さすがにいきなりエロは」ってアータ・・・(;´Д`)エロパロッテシッテル?
39 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/15(月) 14:11:21 ID:XJcgnF74
12氏の文章が好きだから、エロ無しでも面白いんだが。
幽助×螢子もノスタルジーな雰囲気が凄い良かった。
でも、あの、やはりここはエロパロ板だから…。エロ無しの投下も
時には有りだが…
ここの基本はエロっていうのを踏まえた発言して欲しかった…
上げちまった…ごめんorz
41 :
12:2005/08/15(月) 14:39:20 ID:1dLR82qh
>>39 本当にそうですね。反省しています。
とりあえず次からはエロを頭に入れて話を作るつもりです。
>>12さん期待してますよー
∧_∧
( ´・ω・) まぁ皆さん、茶でも飲んで幽白エロ語りでもしませう。
( つ旦O ∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬∬
と_)_) 旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦
>>42 女体化…幽白だと蔵馬が真っ先に餌食wになりそうだな。
もっとも本人は激怒しそうだが。
女の子ネタなら幽助が原作では女装させられてたな。螢子の女子高潜入する時。
女体化も結局は腐女子のオカズだろ
>12氏
これからも期待してますよ!ガンガレ!!
女体化は個人的にはちいとアレだな。女人禁制の女体化蔵馬ハァハァ
スレはどっかにあったけど。蔵馬はドSであって欲すぃ。
厨房の頃に蔵馬の女装をよく描いてたのは、若さ故のなんとやら。
いざとなると中々手を出せない酎と、実は積極的な棗とか読みたい。
>>45 女体化はやっぱあかんですかね?(´・ω・`)
でももし、蔵馬が男装の女の子だったら、それはそれで萌えてた鴨。
男装の麗人って好きだし。
しかしそれだと、まんまセラムンのはるかさんになってしまう罠。
(中の人も同じだし)
>>46 自分も男装の麗人も、女装の麗人も好きだけどなw
女体化までいっちゃうと、キャラ違ってしまう気がして…
まぁ、その辺は華麗にスルーだが。
誰かに強制女体化され、襲われそうになるがブチ切れて形成逆転。
女王様的に攻…てのだったら読みたいかも。
てか、上のは蔵馬のイメージで妄想ww
女体化イラネ('A`)
49 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/16(火) 18:46:46 ID:TxtxRr9a
凍矢×小兎
または陣×瑠架がいいなー
こういうマイナーなのってなかなかサイトにも無いし
良スレ発見!
幽助×螢子 キボンヌ
幽遊全盛期、801ばっかりだったから飢えちゃってて……
_ ∩
( ゚∀゚)彡 カルト!カルト!
( ⊂彡
| |
し ⌒J
やっぱ女の子蔵馬はスレ的にはNGですたか…。
いや、正直スマンかった。orz
話の流れを変えるのに、雷禅×食脱薬師キボンと言ってみます。
大人っぽい恋愛物だと更に萌えー。(*´Д`)
幽白大好きだったなー。
後にも先にもあれだけハマった漫画はない。当時小房だった自分にとって日常生活の90パーは幽白で染まってたW
>>12さん、GJすぎ!!エロがなくても文章が上手いから充分読み応えありました。自分的には幽助X螢子がお気に入り。
ほのぼのしてて螢子可愛い(´∀`*)
自分もカルト読んでみたいな
夢など最初から、悪い夢しか見ない。
理由はとうに決まっている。あの腐りきった下衆な男の元から逃げてきてか
らずっと、だ。
今ではもう全て振り切った筈なのに、まだどす黒い思念の残滓でも残ってい
るように時折眠りの中で膨れ上がっては苦しめる。あれからどれだけ時が経
ったか知れないのに。
そして、恨みは晴らしたというのに。
重い、辛い、苦しい。
長い間ずっと誰にも言えはしない言葉を飲み込んで、いつもはまた眠りに落
ちるのが常だ。
それなのに、当然のように心の不可侵な領域までを侵食してくる男がいる。
「悪い汗だ」
いつの間にかまた寝間に入り込んでいた男が、躯の冷たい額の汗を拭って
醒めたように笑う。
「来て…たのか」
「暇が出来たからな。それよりも」
わずかに荒れた指先が唇をなぞった。
「何故、吐き出さない?苦悩など心に留めていても堆積するばかりだ」
「お前に言っても詮無いと思ったからだ」
「見くびるな」
飛影という名を持つ男はくくっ、と小さく笑った。
女と生まれたのは間違いだと思った。
女であっただけで、あれほどに忌まわしく惨い目に遭う。
だからこそ、逃げ出してからは女を捨てた。身を飾ることも装うことも縁のない
ものだと決めつけていた。増してやこの半身が焼け崩れた醜い体は、あくま
で自意識の中で誇るだけのもので、か弱い女のものではない。
そう、ずっと思っていた。
「お前、は…」
「何だ」
「何故現れた」
首筋に舌を這わされて、思わず声が上擦る。女を捨ててからは、女が辿る
営みなど知らずに来てしまったのだ。なのに、この男は。
「何故、など無粋というものさ」
低い声がざわりざわりと官能の端々に火をつけていく。ああ、この男は何故
このようにして、何故自分はこの無礼な振る舞いを許してしまうのだろう。
遊びという名目の元に。
暗い寝間に次第に熱が篭もる。
二人の指がゆっくりと絡まる。
男の指と女の、指。
何度こうして交わってきたのか分からない。ただ、数を重ねるだけはっきりと
することは、この男がどれだけ浸透してきているかということだけ。体の隅々
までも、隠していた心の隙間までも、容赦なく入り込んでしまっているのを
もう不快には思わないのが奇妙だった。
そして、今日も巡り会った男と女は交わりを持つ。
終わり
12です。
本来はエロ属性だと思うんだけど、まだ本調子じゃないので、これだけ投下
しておきますね。
(*゚∀゚)=3 ムハーいいよいいよ 12さんGJ!
待ってました、飛影×躯・第2弾!この官能的な雰囲気…
12さんの文章はホント読ませるなぁ。
61 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/18(木) 21:22:02 ID:MNa1bPEd
良スレ発見!!
幽助×ぼたんキボン
どんなカプが好き?ってネタは結構出てきたので今度はちょっと趣向を変えて
皆さんどんなシチュエーションを考えてる?と聞いてみる。
“どんなカプで”も込みで。
幽助×螢子や桑原×雪菜は“ドキ☆ドキ初エチー”とかかな?
このシチュでは前の富樫総合でのサザムさん作の桑原×雪菜がとても良かった。
飛影×躯は12さんのSSのような魔族的かつ官能的な雰囲気が似合うと思う。
躯のトラウマを二人で克服していく過程も見たいなぁ。
>>59 乙です
飛影×躯いいですね
個人的にはもう少しエロ度が増すと嬉しいですw
>>62 飛影×躯だとやっぱり躯のトラウマを克服って感じの話が見たいですね
鬼畜蔵馬(南野バージョン)が雪菜たんを言葉攻めやら虐める話が読みたい私は少数派ですかorz
>>63 12です。今後徐々にエロを増やしていく予定でいます。
その合間に幽助×螢子のほのぼのでちょっとエロ、とかコエンマ×ぼたんの天然
だけどさりげにエロ、とかも挟みたいです。
67 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 18:35:38 ID:TEo7tkEL
12さん、これからも新作期待してますage
>>65 (・∀・)アタラシイ!新鮮だね、そのシチュエーション。
しかし雪菜ちゃんが誰かにあんな事やこんな事…ってな事実を知ると約2名発狂するな。
コエンマ×ぼたんの職場上司部下エロ読みてーー
バルス!
相手は男なら誰でもいいから、瑠架のエロ小説見たい!
おまいらが本当に見たいのは責められる雪菜じゃなくて責める蔵馬だろ?
エロけりゃいーじゃん
責められる蔵馬がいい。
…嘘だよ馬鹿だなあ。
その場合責める女キャラは誰なのか、と問い詰めたい
女キャラじゃなくてむしろ男キャラに(ry
>>77 男×男は厳禁な
主要4人組の中でただ一人特定の彼女が出来なかった蔵馬…
喜多嶋麻弥ちゃんとは悲恋に終わってしまったしカワイソス
蔵馬とデキそうな女の子って誰がいいだろうか。
雪菜?ぼたん?妖狐時代に躯と?
再会した喜多嶋と再び惹かれあって…とか?
暗黒武術会で飛影と幻海を結界に閉じこめた瑠架に「お仕置きの時間だ」とか?
…これくらいしか思いつかん_| ̄|○ソウゾウリョクモットホスィ
ズバリ黄泉の別れた奥さん。(勝手に設定)
>>76 静流、温子、孤コウ(漢字分からん)、躯などアダルト系の女きぼん
82 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/02(金) 22:15:53 ID:i3yMb3HO
神光臨期待age
幽白エロ読みてぇ…(;´Д`)ハァハァ
>>12さんの小説また読みたいなぁ
12です。
今、ちまちま書いているところです。
もう少しお待ち下さい。
うわー
>>12さん、お久しぶりです。
>>12さんの文章好きなもんで。いつまでもお待ちしております。
人に頼るだけではイカンと、只今小説書く練習中。
…エロの雰囲気すら出ていねぇよ…これじゃうpできねぇ(つД`)
カルトキボン
「陣さん…」
どことも知れない空間の中で、陣は女の声で目を覚ます。
「どっ…どこだべ!?ここは…」
辺りを見回すが白くぼやけた風景が広がるばかり。
「ここは…私の結界の中です」
裸体の肝心な場所に紐が巻き付いただけの女性が、妖艶な微笑みを
浮かべて座っている。
どこかで見た事がある。
確か、暗黒武術会の会場で…瑠架といったはずだ。
「ねえ、陣さん…?私と遊びましょうよ…」
彼女はゆっくり近付き、陣の胸元をつーっとなぞる。
ただ、書いてみただけ。
88 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/04(日) 16:52:31 ID:5Meez/UH
>>86 gj
とりあえずあげ。
>>78 ぼたんではないかと。
特に繋がりもないけどどこか似た感じがするので(超主観)
けなげに蔵馬×ぼたん待っているだけの私ですが、
基本純愛でほんのりサドな蔵間と処女ぼたんの初夜書いてくれる神いますか・・?
orz・・・6カンカラ15カンシカヨンダコトナインダケドネ...
飛影X雪菜は?
90 :
12:2005/09/04(日) 19:20:43 ID:gDniQK5/
少しずつ書いていたものが、ようやく形になってきました。
とりあえず今出来ているものを投下します。続きは随時投下予定。
91 :
業火の蝶:2005/09/04(日) 19:21:29 ID:gDniQK5/
あまりにも静かな日だった。
普段は轟々と騒がしく耳を打つほどなのに、今日ばかりは何故か風が凪い
でいる。不吉な予感にも似ていて胸が騒いだ。
珍しく百足の見張り台に立った女は、あらぬ方向に目を遣り、わずかに顔を
歪めて哀しげに笑う。
「ああ、また人間が…」
歪から誤って魔界に落ちてくるのが見えたのだろうか。その横顔はいつもの
怜悧さを感じさせない。まるで子供のような頼りなさだ。
この美しき女主人の我侭に腕組みをしながら根気良く付き合っていた男は、
頃合いを見て声をかけた。
「気が済んだか」
「まあな」
手摺りを掴んでいる手が氷のように白い。冷たいのだろうか。周囲には誰も
いない。自分の手を重ねると紅を引いたように鮮やかな女の唇からふふっ
と笑みが漏れる。
昔一度だけ迷い込んだことのある、深い洞窟の奥で見た毒花の妖しい色香
にもそれは似ていた。
「ここは、いいな。よく見渡せる」
「そうか」
「お前はいつも、こんな光景を見ているのか」
「ああ、そうだ」
「羨ましくなる」
間近で見れば見るほど、実に美しい女だった。元々は側近くに寄りこそして
も触れられはしない立場ではある。けれど欲した。どことなく似たものを感じ
取ったからだ。柄にもないと言われようが滅茶苦茶に欲した。そして得るこ
とが出来た。
否、恐らくは女の方もそれを望んでいたに違いない。そんな度の過ぎた自
惚れすら持つことも厭わないほどに、二人して他者には漏らせぬ秘密を共
有している。
92 :
業火の蝶:2005/09/04(日) 19:22:38 ID:gDniQK5/
「また悪い夢でも見たら、来ればいい」
「ああ、そうするさ」
こんなものがはたして気晴らしになったのかどうかは知れない。ただ、女は
それまでの気鬱な表情が少しだけ緩んでいる。
「飛影、後であの人間たちを」
「そうだな、場所は絞れている。すぐに行けるさ」
風の凪いだ日、躯という名の女主人は筆頭戦士である飛影と共に見張り台
に立って、パトロールの指揮をしていた。
業務報告書には、ただ短く無感情にこう書かれることだろう。
表面上はそれだけの関係だ。
翌日の午後、珍しく訪問者があった。
それほど知り合いのいない飛影にとっては煩わしいことこの上ない話だが、
一体どこの酔狂な奴がと興味はあった。
どこか殺風景な内装の応接室で待っていた人影は、飛影の足音を聞きつけ
るなり、すらりと立ち上がってにっこりと笑った。
「やあ。お久し振りですね」
蔵馬だった。
人間界に残った為に、今ではそれほど会うこともなくなってはいたが、それ
でも人間界の様子等を定期的に報告しに来る時は顔を合わせる。あれから
特別変わったこともないのに、懲りずに月に一度は訪れる。よく飽きないも
のだと関心するほどだ。
「何の用だ」
この男は特別勘が鋭い。わずかな様子から気取られぬようにしなければと
用心していたというのに、やはり何か察したものがあったらしい。以来、決
して口外はしないものの、事あるごとにちくりちくりと揶揄をする。
厄介な奴だ、と腹の中で溜息をついた。
93 :
業火の蝶:2005/09/04(日) 19:23:53 ID:gDniQK5/
「嫌だなあ、飛影。今日はプレゼントがあってね。君たちに」
そら来た。
何の企みもないような美しい顔を崩すことなく、蔵馬は晴れ晴れと核心に
切り込んできた。上着のポケットから薄い紙包みを取り出すと、傍らのテー
ブルにぱさりと置く。
「薔薇の種です。最近趣味で品種改良などに凝っていてね…魔界でも容
易に根付いて繁殖するものを作ってみたんです。いかがですか?」
「何のことだ」
「こんなものでも、躯の気休めになればと思いましてね」
そう言った瞬間の瞳には、隠しきれない魔が滲んでいた。
「馬鹿馬鹿しい」
「まあ、ものは試しです」
包みをテーブルに残したまま、蔵馬は立ち去って行った。わざわざこんな
ことをするからには、全く企みなどないとは言えない。けれど、『気休めに
なれば』という言葉はどこか魅力的な響きがあった。
夜更け過ぎ、いつものように周囲に人目がないことを確認しながら奥の
間へと足を進める飛影の懐には、あの紙包みがあった。
どうせ戯言、と言えばそれまでの話だ。だが、本当に女が喜ぶのなら一
度ぐらいは騙されてやってもいい。
そんな気がしていたのだ。
寝台に気配はあるが、奇妙に静かだった。
近寄ってみると躯はすっかり寝入っている。あれからずっと自分の執務を
こなしていたのだろう。疲れない筈がない。見張り台で気晴らしのひとつ
もしたい気持ちは分かる。
ならばこのまま起こさずにいようか。
そう思っていた目の前で、花が開くように躯はわずかに目覚める。昼間
の無機質なまでの硬い雰囲気とは全く違う。今はただの女だ。
飛影の為に用意されていた、極上の女。
それが今、無防備な肢体で横たわっている。
94 :
業火の蝶:2005/09/04(日) 19:35:56 ID:gDniQK5/
「…ああ、来ていたのか」
「今、な」
「うたた寝を」
柔らかな花弁のように言葉を続けようと動く唇を塞ぎ、舌を差し入れる。
これほどの女を目の前にして、昂ぶらない男などいる筈がない。色香な
ど感じさせない服装をしていても、媚など一切零さなくても、持って生まれ
た美質は否応なく周囲の下種な男共を魅きつける。だが、こうして寝台
を共に出来るのは自分ただひとりだ。
そんな喜びがただならぬまでに体中を満たして、舌を交わしながらもい
つになくもどかしい手つきで衣服を剥いで行く。
指先に感じる滑らかな肌の感触はやはり素晴らしくいい。生娘そのもの
のように張り詰めていながらも、男の手を悦ぶようにしっとりと吸いつい
てくる。日の光の下で眺めれば、薄い皮膚の下で静脈が巡る作り物の
ように完璧な肌だ。
それなのに、こうして暗闇の中にあるとそれだけで男を惑わせるほどの
妖艶な艶を放つ。触れても歯を立てても決して痣にも傷にもならない肌
に、せめてもの跡を残してやりたい。
そう思わせるほどに見事な肌だった。
「ん…痛っ…」
いつになく乱暴な愛撫に、押さえつけられた手首がひくひくと痙攣して
いる。そんな様子もまた、そそった。
剥ぎ取られた衣服から、普段は隠されている真っ白な乳房が零れ出
している。右側は醜く崩れているが、それすらも愛おしいと思えるのは、
やはりこの女に魅き寄せられているからだろう。
どれほどに肌を重ねても、足りない。
体だけでは全く足りない。
時々気鬱になる心の内までも知りたい。
そこまで思いつめてさえ、いるのだ。これほどの女の前では、飛影もま
たただの男に成り下がる。
うまいなあ・・・GJです!
96 :
業火の蝶:2005/09/04(日) 20:04:36 ID:gDniQK5/
これまでずっと、この行為は遊びだった。
それならば、この女も了承していた。
それでなければ触れることさえ叶わなかった。
最初から心の内など見せないのが前提の関係でしかなかった。
だが、もうそれでは満足出来ない。
これまでの空々しい形ばかりの余裕などかなぐり捨てて、飛影は貪欲
さを剥き出しにしていた。決して性急に求めることが躯にとっていい訳
ではない。他に手立てを今この時に考えつかなかったのだ。
いつにない様子に、女特有の怯えを滲ませて躯は見上げている。
「お前、変っ…」
「変にもなるさ。貴様はそうさせる女だ」
身に纏っていたものはすっかり寝台の下に落とされた。布で覆われて
いた素晴らしい曲線の体が、何もかも包み隠さず闇の中でなまめかし
い色を帯びる。
「こんなにいいものを隠している女だ」
「あぁっ…」
豊かな張りを持った乳房をわざと強く揉みながらも、つんと立った先端
に歯を立てる。案の定、敏感になっていた体は、いっそ哀れなほどに
びくびくと跳ねた。
そんな変化をまざまざとその目で眺めながら、自分もまたこれ以上な
いほどに昂ぶっているのを飛影は感じていた。これほど美しく乱れ悶
える女の姿をもっと見ていたい。けれど、限界も近そうだ。
どうにも耐え性のない男というものの本能に舌打ちをしながら、すっか
りあらわにされて蜜を零している淫らな花に指を伸ばした。今までわず
かも触れられてもいないのに、そこはもう男を待ち受けて震えている。
それがどれほどに嬉しいか、いずれ教えてやろう。
そんなことを考えながら、指を二本差し入れて女の性感をより煽るよう
に動かし出す。それがひどく感じ過ぎて辛いのか、髪を打ち振って拒
むように高い声を上げた。
「うぅっ、そんなのは、嫌だっ…」
「じゃあ、どうして欲しい?」
「うっ、うっ…」
97 :
業火の蝶:2005/09/04(日) 20:39:40 ID:gDniQK5/
「言えば何でもしてやろう」
ぺろりと耳を舐め上げると、それもまた感じるのか肌がわなないた。目
尻に涙を滲ませながら、躯はきっと睨む。だが、既に快感に潤んでいる
せいかいつもの迫力はない。
「お前は、一体何を望んでるんだ」
「別に。ただいつもの遊びだろう」
「…お前は嘘をついている」
一粒の涙を落としながら、それでもすんなりとした腕を伸ばして飛影の
首に絡めてくる女は、もう埒を明け渡していた。
「いいから、早く来い…」
「そうだな」
体の奥から疼きが突き上げているのか、断続的に指を締め上げていた
そこに飛影は自分自身を押し当てて、先端で蕩けている花を焦らすよう
に捏ね回した。
「あぅ…そんなことは、いいからっ…」
回していた腕の力がわずかに強くなる。お互いに、もう我慢出来ないと
ころまで来ている。頃合いは丁度いい。しばし弄ぶだけだったそこを、
思い切って一気に奥まで突いた。
「あああああっ!!」
耐えきれない声が熱の篭もった室内に響く。
熟れきった内部は待ち受けたものを千切らんばかりに締め上げ、激し
い律動の快感を更に増幅させていく。お互いに愉しむ為に無意識に築
き上げてきた感覚だった。
こうしている時の至福を何に例えればいいのか、分からない。
それほどにかけがえのない女となっているのだ。だが、この女はどうだ
ろう。まだその深遠までは図れないでいる。
それでも、それなりの絆というものを感じて、飛影はもう何も考えること
なく一心に限界の果てまで女を突き上げ続けた。
もう焦点の合わない目をして縋りついている躯は、さほどの声すら上げ
る余裕もなくして、ただはあはあと息を荒げるだけだった。
98 :
業火の蝶:2005/09/04(日) 21:08:55 ID:gDniQK5/
夜が明けようとしている。
闇の中でしか交わり合えない二人の時間がもうすぐ終わる。
魔界で一番の女は、もう指先ひとつ動かせないほど疲れきって子供の
ように寝入ってしまっていた。
こうしている間にも薄明かりが寝間にも差し込もうとしている。
そろそろここを出なければいけない。
歓楽に浸っていた時を惜しんでいる暇はなかった。
飛影は脱ぎ捨てた衣服を纏いながら、しばらく起きる様子もない女の
頬に口付けた。せめて悪い夢など見なければいいのだが、と案じるの
だが、杞憂だろうか。
ふと、寝台の下にいつの間にか滑り落ちていた紙包みを見つけて拾
い上げる。中には薔薇の種が入っていると蔵馬は言っていた。魔界で
も根付いて繁殖する品種だと。
くだらないことだが、育ててみようか。
そんなことを考えた。
それでこの女が少しでも哀しい顔をせずに済むのなら、と。
寝間を出る頃、飛影は一度だけ振り返って眠りの中にいる女を見た。
今見ているのはどんな夢だろう。自分と出会ったことが幸せだと思う
のならばいいのだが。
柄にもないことを考えて、溜息をつく。
そもそも最初にこの女に魅かれた理由を、昨日のことのようにまだは
っきりと憶えている。
自分ではどうにもならない業火の中で、焼かれ苦しみ悶えながらも羽
ばたきを続けようとする蝶のように見えたから、だったのだ。
終
99 :
12:2005/09/04(日) 21:13:03 ID:gDniQK5/
ようやく完成しました。
応援して下さった方々、ありがとうございます。
平日はなかなか書き込めませんが、これからも休みの日にまとめて投下する
つもりでいます。
100 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/04(日) 22:51:02 ID:fxHeHZ/v
コエぼた激しくキボンヌ
神降臨!!ヽ(゚∀゚)ノ
12さん、乙ですた。
99、天才!
なんなんだ…この不思議な世界は…。
>>12さん激しくGJ!!お疲れ様ですた。
本当文章上手いですね。エロの中にもちゃんと愛があって (・∀・)イイ!
飛影×躯好きなんで凄く嬉しいです。
これからも新作期待してます。
>>12さんの小説ワールドから抜け出せなくなってしまった…
いかにも秘め事といった感じの淫靡な雰囲気が良いですねぇ。
12さん、ぐっじょぶ! 次回投下も心待ちにしてます。
ぼたんエロが見たい!
106 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/05(月) 01:56:23 ID:ZOA3Ksv3
ぼたん×蔵馬で!
108 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/05(月) 22:14:57 ID:ww8AUjDJ
ネ申kitaxaaa!!!!!(゜∀゜*)ノシノシ
>>12殿もつかれ様です。
>>105 >>106
激しく同意
とりあえずぼたんに蔵馬絡ましてくれたら何も言う事は・・!
神光臨なのでとりあえずアゲ
ぼたんはコエぼたの職場エロ物がいいな・・
110 :
12:2005/09/05(月) 23:04:32 ID:IiS6GMoB
ぼたんも書いてみたいけど、書くとしたら一体どっちがいいのかな。
正直どうすればいいのか迷ってる。
個人的には、より繋がりがありそうなコエンマかな。
原作で、ぼたんが誰かに恋愛感情もしくはそれに近い感情を抱いたようなシーンってあったっけ。
だれか男キャラを意識するとか。
蔵馬×ぼたんもいいけど、コエぼたは捨てがたい。
要するに書いていただければ読みます!
最高!
ぼたん受けの中ではコエンマ×ぼたんが一番好きです。
ぜひに書いてくださいませ(*´Д`)ハァハァ
ゆうすけ×ぼたん
ぼたんは特定の相手がいなかったから、いろんなカップルの組み合わせが考えられるね。
それぞれ面白そうだ。でもやっぱり自分としてはコエンマ×ぼたんかな。
幽助×ぼたんで是非とも(*´Д`)
不器用な桑原に手ほどきするぼたん。
俺はとんでもないことを思いついた。
静流×ぼたん
幽助×ぼたん(・∀・)イイ!
123 :
12:2005/09/07(水) 00:49:07 ID:ssNpkj2g
とりあえず習作ですが、コエンマ×ぼたんを少し書いています。
出来上がり次第投下予定。
今日の仕事が終わろうとしている。
疲れたなーと思いながら、ぼたんは背伸びをした。
同じような仕事、同じような毎日の繰り返し。それでも人間の生死を見
守るのは神聖なことだと思っているし、誇りもある。単調ではあるが、
それなりには充実していた。他に何も望まない。このまま日々が続い
ていけばいい。
ぼたんはそんなささやかな毎日を楽しみ、ささやかなことを考える女性
だった。
奥の間へ続く廊下がばたばたと慌しい。
何故だか今日は人の出入りが激しいのだ。
「何だろうねえ、騒がしい」
仕事はもう終わったことだし、面倒に巻き込まれるのは御免だからさっ
さと引き上げよう。そう決めて控え室へ急ぐぼたんの着物の襟首が突
然ぎゅうっと締まった。
「ぐえっ」
「お、済まんな」
後ろから襟首を掴んでいたのは、コエンマだった。こんなところでつい
つい天国を見そうになって、ぼたんは涙目になりながら猛抗議する。
「何すんですか。死んじゃいますよおっ」
「だから済まんと言っておろうが。ちと仔細があっての、お前に用事が
あったのだ」
「へ?」
もう仕事は終わった筈だ。一体何の用事があるというのだろう。まあ、
人間界と同じでこの仕事にも残業というものはある。でもこんなタイミン
グで残業を言い渡されるのは嫌だなあ。
そんなことを考えながら、ぼたんは直属の上司の言葉を待った。
「実は、人間界に一緒に行って欲しいのだ」
「はああ?」
その言葉に、ぼたんは顎が外れそうな思いだった。
このお坊っちゃんは一体何を言っているのだろう。
以前なら頻繁に行ってはいたが、今はもうそれほどの用事もない筈
だ。第一、父親の閻魔大王がこの間引退して事実上の新しい閻魔大
王になったばかりだ。まだ利害関係剥き出しの派閥も整理出来てい
るとは言えないのに、ふらふら人間界に遊びに行っている場合ではな
い。
それが分からないのだろうか。
そんなぼたんの杞憂を察してか、コエンマは表情を曇らせる。
「これで最後だ」
「…?」
「疑うならば親父に言ってもいいぞ」
「いえ、言いませんけどね」
「…それが本当ならば、約束してくれるか」
「ええ、きっ…」
咄嗟のことで、何が起こったのか分からなかった。突然抱きすくめら
れて唇を塞がれている、と気付いたのはコエンマの唇が離れてから
のことだった。
廊下の隅でこんなことをしているなんて、咎められたら言い訳が出来
ない。そう思ったものの、当の上司がやらかしていることなら、どう対
処すればいいのだろう。
ぼたんは、こんな時に限ってあくまでも冷静だった。
「行ってくれるな?」
「ええ、まあ…」
何がどうなのか全然分からないまま、返事をした。それを了承と取っ
て、コエンマはにいっと笑う。
「そうか、では行こうか。あやつらに会わねばならんのだ」
「えっ、ええっ!?」
腕を引かれてずんずんと連れて行かれながら、ぼたんは自分の流さ
れがちな運命を少しだけ呪った。本当ならば今頃は帰ってくつろいで
いる時間なのに、どうしてこうなってしまうのだろう、と。
ささやかな、本当にささやかな金平糖ほどに小さな夢も見られないの
だろうか。
まずは未完。
126 :
12:2005/09/07(水) 01:39:02 ID:ssNpkj2g
そんなにエロくもないけど、習作ということでひとつ。
私としてはやっぱりぼたんにはコエンマですね。
うおーコエンマ×ぼたんキテルー!
12さんGJ!タイトルも可愛くてよいですな!
自分もやっぱコエンマ×ぼたんだな〜
あと前のスレで戸愚呂×幻海(若いときの)書いてる人が居て
それも良かったなぁ
超GJ!!!!
コエンマぼたん好きなんで嬉しいvv
続き期待して待ってます。
12さん激しくGJ!
コエンマ×ぼたんイイよ〜
ぼたんがとてもカワイイですね。
続きすごく楽しみです。
130 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/07(水) 16:45:03 ID:Kxw7t0GQ
キター!
飛影×ぼたんレイープとか言ってみる(・∀・)
蔵馬も混ざって3pとか言ってぬる(´0`)
コエンマは実の姿で想像すればいいのかw
赤ちゃんプレイワロスw
ぜひ12さんに飛影×ムクロのムクロから求めるVer.を書いてほしい。
はっ!!(笑)
今通りすがっちゃった12です。
そうですね。金平糖の続きを今週投下予定なので、その後なら大丈夫そうです。
躯はもう、今でも大好き。以前も書いたけど、今までハマったマンガの女性
キャラの中ではダントツで一番ですね。
今ハマっている作品もあるけど、それとは完璧に別格♪
数週間ぶりにここに来たけど結構伸びてるじゃねーか
12さんGJ!
躯関連のカップルだと、
飛影×躯もいいが雷禅×躯や蔵馬×躯も見てみたい
やはり飛影×躯が一番いいが
139 :
12:2005/09/10(土) 22:15:48 ID:UQ7o6EyQ
雷禅はちょっと書いてみたいです。
私が書くとしたら、地獄のような環境から逃亡して放浪していた少女期にもしか
したら出会っていたかも・・・というものになるでしょう。
イイね!それ
雷禅×躯も(・∀・)イイ!
雪菜陵辱キボーン
143 :
12:2005/09/11(日) 19:10:31 ID:r1UHX65l
金平糖の続きは現在書いている途中です。
書き上げたものから順次投下していきますね。
気まぐれでいつも何かといえば振り回されている、そんなコエンマと出会ったのは今の仕事に
就いた最初の日だった。まだあの時はほんの子供だったけれど。
そう、ただの子供だった。
広すぎる敷地の中でついうっかり迷ってしまって、新人たちの集合時間が迫ってきているとい
うのにどこへ行けばいいのか分からなくなり、悲しくてべそをかいていると、どこからかひとり
の男の子がとことことやって来て、唐突に話しかけてきた。
「何だ、お前」
「えっ…」
「そうか、迷ったのか。この時期はよくいるようだな」
この子も新人だろうか。そう思って思わず泣くのを忘れていると、彼は何かが入った小さな紙
包みを渡してきて、前方の大きな木立ちを指さした。
「あの木の向こうに行けば集合場所の表示が出ているから、分かる筈だ。じゃあな」
「あ、のっ…」
ぼたんはお礼を言いたかったのだが、何故だかうまく言葉が出てこなかった。それを特別気
にする風もなく、彼は来た時と同じようにまたふらりと立ち去ってしまう。
「ああ…どうしよう」
ともかく、集合時間に遅れる訳にはいかない。教えられた通りの場所に急ぎながらも紙包み
を開いてみると、それまで見たこともないような色鮮やかで綺麗な砂糖菓子が入っていた。
それが新しい世界に来たことを実感させてくれて、とても嬉しくなった。
初日はそれ以後も色々なことがあったけれど、鮮明に憶えているのは突然の出会いと紙包
みの砂糖菓子のふたつだけ。
あの男の子が閻魔大王の息子で、砂糖菓子が金平糖という名だと知ったのは、それからし
ばらく経ってからのことだ。
「何をぼーっとしておる。早くせんか」
「えっ、はい!」
地上に着いてから、コエンマの足は妙に速い。油断しているとはぐれそうになりながらも、ぼ
たんは必死で後をついて行く。足を進めていくと目に入る建物の並びにどこか見覚えがあっ
た。この周辺には幽助が住むマンションがあった筈だと思い当たる。
「あのう、コエンマ様」
おずおずと、ぼたんは尋ねた。
「何だ」
気が急いているのか、足を止める気はないらしい。振り向くことなく言葉を返してくる。
「ここは確か幽助の…」
「おお、そうだ。奴は風来坊だからな、放っておいたらいつ会えるのか分からんので先手を
打って便りを出しておいたのだ。この間の夏祭りの夜に帰ってきていたらしいぞ」
「へえー、そうなんですか」
幽助。
決して忘れない仲間の顔を、ぼたんは思い浮かべる。
結局は人間界に残ったというのに、それでも魔界には時々行っているようだ。その為にいつ
も待たせている螢子にも寂しい思いをさせているんだろう。全く男はいつまでも子供でしょう
がない、と少しだけ腹が立つ。
ここ数年は色々と忙しくてみんなとそれほど会ってはいなかったけれど、人間の仲間たちと
の日々は今でも決して色褪せてはいなかった。大変なこともたくさんあったけれど、あの体
験はきっと誰もが出来る訳ではない分輝いて映るのだろう。
そんな感慨にぼたんが浸っていると、突然コエンマがからからと笑いながら爆弾発言を言
ってのけた。
「でな、驚け。奴は遂に年貢を納めたらしいぞ」
「ええええーーー!!!」
年貢って、もしかして…。
あまりにも突然のことだったので、思わず足が止まってしまうほどだった。
「よう、コエンマ、ぼたん。久し振りだったな」
ドアを開けて陽気に出迎えた幽助は少しだけ大人びたものの相変わらずだった。だが、そ
の左手の薬指にはしっかりと指輪が嵌まっている。まだ二人が中学生の頃からぼたんは
知っているだけに、それがとても嬉しくてついつい貰い泣きしてしまう。
「あんた…やっとその気になってくれたんだね、あたしゃ嬉しいよ。これで螢子ちゃんも待っ
た甲斐があるねえ」
「大袈裟なんだよ、お前は」
ぼたんのそんな様子に、照れ臭そうに笑いながら頭を掻く姿はやはりまだ中学生の時と変
わらない。
「そりゃあ大袈裟にもなるじゃないか。あんたのバカさ加減はみんな知ってんだからね。螢
子ちゃんをこれ以上泣かせたら、許さないんだから」
「はは、分かったって」
何が起こったのか詳しいことは分からない。ただ、これで螢子は報われたのだと思うだけで
嬉しい。ぼたんにはそんな利他的なところがあった。リビングに入っていくと、螢子と蔵馬も
座っている。
「螢子ちゃん!」
ぼたんは螢子を見るなり、がばっと抱きついた。
「会いたかったよう、でも良かったねー、またあのバカが泣かせたりしたらすぐに言いなよ。
あたし、すぐに来るからねー」
「ぼたんさん…」
ようやく事態が一段落して気持ちが落ち着いたのか、螢子は穏やかに笑っている。その様
子が本当に幸せそうで、羨ましくなるほどだ。
「私ね、もうこれだけで充分なの。幽助が決心してくれた。それだけで…」
「螢子ちゃんたら」
幸せの形は人によって様々だ。四六時中一緒にいるだけが幸せとは限らない。それでも、
自分の幸せがどんなものなのか冷静に見定めている螢子にぼたんはまた貰い泣きをして
いた。
ぼたんカワエエ(*´Д`)ハアハア
ぼたんがカワエエから相手がコエンマでもいいや
「お久し振りでした、二人とも」
蔵馬はやはり穏やかな笑みを湛えたまま、会釈をした。昔と変わらず、いや、更に美しくな
っている。ぼたんですら、つい見蕩れてしまうほどだ。人間界に残って生活してはいるが、
やはり時々は魔界を訪れているらしい。この間は飛影に会ってきたという。
「飛影も、久しく会ってはいないな。元気だったか」
すっかり宴会の様相になっているリビングで、コエンマは尋ねた。
「ええ…とても。ただ、色々あるようですけどね」
少し酔っているのか、どこか物思うような表情で蔵馬は目を逸らす。色々、というのはこうい
うことらしい。
躯という名を持つ飛影の女主人は、最近また気鬱が進んでいて執務にも影響が出始めて
いるらしい。それで直属である飛影が何くれとなく世話を焼いているとか。この間は自作の
新種の薔薇の種を贈り物として持っていったのだという。
「それで気が晴れるといいんですけどね」
願いを込めるように、手にしていた缶ビールを煽る横顔が、どことなく翳りを感じさせた。
「何だよ、飛影もやっぱり男だよな。美人には弱いってか」
ひとりですっかり酔っ払っていい気分でいる幽助は、そんな軽口を叩く。ようやく身を固める
決心をしたっていうのに、まだ自覚は足りないのか、とぼたんは呆れた。
「あんたとは違うよ、飛影は」
「そうよ、男らしいじゃない。そんなに好きな人に尽くしてくれるなんて羨ましいわ」
意外にも、螢子も同意してくれた。見れば、いつの間にか缶ビールが三缶も空いている。二
人で雑談しているうちに、随分飲んでしまっていたらしい。
「螢子ちゃん、飲み過ぎだよ」
「あははー、だって今夜は楽しいんだもん」
男共の方は、もう勝手に盛り上がっている。ならば女は女同士にしか出来ない話をしよう。
そう思い直して、ぼたんはありったけの缶ビールをキッチンの冷蔵庫から持って来た。
「いい、もう飲もう。螢子ちゃん」
「飲みましょう。滅多に会えないんだし。私もぼたんさんに会えて嬉しい」
すっかり寄って真っ赤な顔をしている螢子は、やはり羨ましいほどに幸せそうだった。それ
がずっと変わらなければいいのに、とぼたんはこっそりと祈った。
宴会は丑三つ時といえる時刻になって、ようやく終わった。
すぐに盛り上がってしまったのでその場では尋ねるのも憚られたが、仲間たちのひとりであ
る桑原が不在だったのは現在アメリカの大学にいる為らしい。根が生真面目な彼は、驚くこ
とに、法律関係の仕事に就く為に精力的に勉強を続けているのだとか。雪菜も一緒に行っ
ているということなので、一層頑張りに磨きがかかっているのだろう。
みんなそうやって大人になっていくのだ。
人間ではない分、何だか遅れを取っているような気がして少しぼたんは切なくなった。
「あー、今日は楽しかったですねえ」
ぼたんはすっかり酔っ払ってしまって、ふらふらと空を見上げながら歩いていた。前を行くコ
エンマは時々振り返りながら苦笑している。
「そうだな、お前もいい気晴らしが出来ただろう」
「ええ、まあ…えっ?」
「…知っておったぞ。お前が最近仕事に行き詰まっていたのは」
「…そんな、嫌ですよう」
酔っ払っている気軽さでひらひらと手を振るが、確かにその通りだった。時々死に行く人間
たちの姿を見るのがたまらなくなる。そんな時があって為にならない情けをかけて失敗する
ことが最近はよくあった。
死の刻限は決まっている。それはよく知っているのに、何とかして救いたい。時々はそんな
思いに駆られることがあったのだ。コエンマは端正な横顔を崩すことなく言葉を続ける。
「我々の役目はごくシンプルだ。最後の最期に迎えに行く。ただそれだけのもの」
「…ええ、それはよく」
「お前は優しいんだな。それが過ぎてしまうのが問題だ」
溜息をついている間に伸ばされた腕が、たやすくぼたんを捕らえてしまう。
「あ、コ…エンマ様…?」
「お前は今が幸せか?」
「あ、え、ええ…まあ」
「そうか、だが嘘はつくなよ」
抱き寄せたまま、乱れかかった髪を細い指先がさらりと払ってくる。
「嘘なんて、つきません」
月も見えない真っ黒な空が腕を回す相手の頭越しに見えた。幸せなんて、そんなに簡単に
決められないものなんだろうなあ…。そう思いながらも、本当のことは分からない。もしも自
分であれば、例えば螢子のようにいつまでも待っているのはとても性に合わなくて爆発して
しまうかも知れない。
だが、螢子はそれでいいという。
何が本当の幸せかなんて、誰にも分からないものなのだ。
「お前は全く…」
黒い夜空に紛れるように半開きになった唇に重なるものがあった。抱き締められているせい
で抗うことも叶わない。それなのに、酔っているせいでぼんやりとした頭が別にいいやと判
断を下す。それなのに。
「…!!」
人形のように大人しくなっているのをいいことに、舌がぬるりと唇を割って入ってくる。慣れた
様子で口内を探られて舌をきつく吸われる段になって、ようやくぼたんは自分の身に振りか
かる危機に気がついたのだった。
「な、何なさってるんですか」
慌てて体ごと引き離そうとしながら、腕を振り回した。
「気にするな」
「しますってば!」
「お前は、儂が嫌いか」
「好きとか嫌いじゃなくてですねえっ…」
「立場か…くだらない話だ」
コエンマは苦しげに顔を歪めると、唐突に首筋に唇を這わせては吸ってきた。時々きつい痛
みがあるのは跡を残しているからだろう。着物では隠しようがないのに、そんなことをされた
ら幾ら上司でもただの職権乱用だ。セクハラ、という言葉も人間界にはある。
「あ、や、めて下さい…」
酔っているせいでの弱い抗いは全く役に立たない。
それどころか煽っているように思えるのか、ますます行為は度を越えていく。深夜で人目な
どないのをいいことに、近くの壁に押し付けられて胸元をすっかりはだけられていた。頭では
これはヤバいなと思っているのに、全く力が入らない。
どうして。
どうして、こんなことに。
泣くことすらも忘れて、ぼたんはただこれから何が起こるのか待ち受けるしか出来なくなって
いた。
「…ほう、白いな」
いつも着物で隠している乳房が夜目にも真っ白く抜けて見えるのか、感嘆したような声が漏
れた。生き物のような長い舌がぬめぬめと這っていく感触は、あまり気持ちのいいものでは
ない。必死で耐えていると、いきなり両手で揉まれた。
「ひゃうんっ」
「こうしていると、お前は綺麗だな…もっとよく見せろ」
すっかりその気になっているらしい。声はひどく熱かった。それが怖くて、切れ切れの抗議の
声を上げる。
「嫌、いやですっ…もうっ…」
「諦めろ、ぼたん」
「嫌です。あたし、まだ失業したくないんですようっ」
「何、だと…?」
「だって、死人を迎えに行く神聖な仕事だから、生娘じゃないといけないって…だからあたし」
「…そうか」
人間の世界でも巫女など、神に直結して神聖であるがゆえに、まっさらな生娘だけが勤められ
る職業があるという。霊界も似たようなものだ。それを信じているだけに、そう簡単に辞めたくは
なかったのだ。
「あたし、他に仕事は出来ないと思いますし…」
「そうだな、それは大変だ…悪いことをしたな」
あれだけ熱かった口調が、やや冷めていた。とりあえずは、これで今夜の危機は脱したとほっ
とする。行き詰っているとはいえ仕事は仕事。辞めたらおしまいなのだから。
「それでは今夜はこれで終わりにしよう。忘れろ」
相変わらず身勝手なことを言いながら、また唇が軽く触れてくる。これはきっと、月のない夜だ
からそんな気にさせたのだろう。そう思うしかなかった。
あれはたちの悪い夜だったようだ。
首筋の跡はすぐに消えたが、左の乳房の脇に残された跡は消えてくれそうもない。それどころ
か、日毎に鮮やかに浮き出てきているようだ。まるで人間が体に施す刺青のように、赤く生々
しく存在を主張している。そう、それこそ牡丹の花のように。
「嫌んなるねえ、全く…」
何かされそうになったことはそれほど気にも留めていないが、跡が残ったのはダメージがある。
鏡の前でがっくりとうなだれながらも、これを許容するしかないのかなあ…と悩む日々だ。
それでも気を取り直してさて行くぞ、と控え室から出てすぐに、悩みの元凶であるコエンマに出
会ってしまった。
「お、随分早いな、ぼたん」
何事もなかったような白々しい綺麗な顔が殺意さえ覚えるほどだ。
「早いなじゃありませんよ、どうしてくれるんですか、これ」
他の誰にも決して見せない胸元の跡を示して見せた。
「ああ、それか。なかなか似合うぞ」
「じゃなくてえっ!」
「何といっても、儂のものだという証だからな」
「…えっ」
「それと、この仕事が生娘でなければいけない、というのは全くのデマだからな。そういう訳で
次の機会には覚悟するがいい」
にやーっと人の悪い笑みを浮かべた顔は、あの月のない夜よりも悪質だ。途中でやめただけ
に、まだ諦めてはいないらしい。これは大変なことになったと青ざめる。
「まあ、そう固くなるな。これでも舐めてろ」
苦笑しながらも、コエンマはポケットから紙包みを差し出した。この光景は遠い昔の大切な記
憶とそっくり同じだ。ぼたんは思わず受け取ろうと手を伸ばす。
「あ、金平糖…」
「お前は可愛かったなあ、頼りなくて」
「悪かったですね」
金平糖の入った包みを胸に抱きながら、ぷいと横を向いた顔がおかしかったのか、コエンマ
は頭を撫でてきた。
「だから放ってはおけないのだ、ぼたん」
その手があまりにも優しいので、思わず顔が赤くなる。意識してはいけない相手だというのに、
これでは何にもならなかった。
小さくて甘い金平糖。
ささやかでもいいからそれだけの夢を見ていたい。
ぼたんのあまりにも淡い恋の始まりだった。
153 :
12:2005/09/11(日) 22:07:09 ID:r1UHX65l
「終わり」を入れるの忘れたけど、これで完結です。
結局最後までは書かなかったけど、いずれきちんと書きたいです。
この二人には、いきなりヤってるのは似合わないなと思ったので、徐々に過程を
続けていきたい。
週末の素敵SS投下キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
12さんGJ!!純情なぼたんがめちゃんこカワイイですね。
話が、前作の幽助×螢子や飛影×躯SSにもリンクしていたり、
仲間達のその後の近況にもちゃんと触れられていたりするのがまた良かった。
この二人の続編も是非、拝読したいです。
12様キテタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!!!!
毎度GJです。ぼたんかわいいよぼたん(;´Д`)ハァハァ
コエンマ様テラウラヤマシス ○| ̄|_
うあー!キテルーーー!
12さんは飛影×躯みたいな妖しいエロからほのぼのエロまで書けるんですねー。
想像以上にGJです。
うおー12さん乙&GJっす!
ぼたんちゃんカワェェ(´∀`)
ぼたんちゃんの話し方やキャラが的確で
違和感なく読めました、12氏GJすぎます!!
159 :
12:2005/09/15(木) 01:35:55 ID:wsfVmPyS
皆様、GJの嵐をありがとうございます。
やっぱり今でも好きなマンガだから、それぞれのキャラとかはっきり憶えているし、
意外と書けたりするものですね。エロパロでもあまり外れたキャラにはしたくない
ですからね。
今度の日曜日は
>>136さんのリクエストに応えるべく、色々と考えているところです
が、何か要望がありましたら今のうちなら出来うる限り書きたいと思っています。
何かありますでしょうか、皆様。
12さん、あなたのお陰で週末の楽しみが増えますた…ありがとうございます。
136さんじゃないけど飛影×躯の“躯から求めるVer.”って(・∀・)イイ!
今までどちらかと言うと飛影の方がエチーに積極的だったから、
逆に今度は積極的な躯ってのも見てみたいなぁ。宜しくお願いします(´∀`)
積極的な躯もいいが、俺はひたすら責められまくる躯が見たい
蔵馬×ぼたんとか、蔵馬×ゆきなとか…
蔵馬じゃなくて妖狐ってのも見てみたい…
>>12さんの文章力なら違和感なく読める気がします
蔵ぼ(・∀・)イイ!!
お待ちかねの週末がきますた…
12さん期待(;´Д`)ハァハァ
165 :
12:2005/09/18(日) 16:42:46 ID:rKVxHxVe
ええー!!!(笑)
どうしよう、期待されちゃってるよー!!!
とりあえず、今日中には・・・。
166 :
12:2005/09/18(日) 23:59:52 ID:rKVxHxVe
今日中には無理でした。
あと二時間ほどかかります。
167 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 00:21:57 ID:o7XhzSSL
気長に待ってっから気にすんなや
そうですよ〜
マターリ待たせて頂きますから(´∀`)
169 :
12:2005/09/19(月) 01:19:04 ID:sK3WL7+Z
ホンマ済みません。
色々やってみたんですが、エロと言えない代物になりました。
理由は、冒頭でぶちまけた設定です。
とりあえず、投下。
170 :
水底の夢:2005/09/19(月) 01:20:00 ID:sK3WL7+Z
悪夢には大抵、決して忘れることの出来ない罵りと嘲りの声がつきまとう。
実際の年月にすればそれほど長くはないのに、今もまざまざと記憶が蘇るのは、やはりあ
の男の側にいた日々が忌まわしいにも程があるからに違いない。
『我が娘よ、お前はもう逃げられん』
日毎美しく聡明に育つ少女に愚劣な男は欲望を隠しもせず、それが当然だとさえ傲慢に振
舞った。その挙句が都合のいい体にする為の手術だ。
思い出せば嘔吐するほどの出来事ばかりだったが、それでも意を決して醜く焼け爛れたせ
いで逃れることが出来たのは、むしろ幸運な方だったのだろう。あの糞忌々しい男は、子供
であっても女でさえあれば見境なく犯し、感情のままに暴力で制圧するような卑劣極まりな
い奴だったのだから。
「躯様」
呼びかけられる声で、意識が浮かび上がる。
「ああ、眠っていたようだな」
「御無理もありません。もう診察は済みましたのでお帰りになられてもよろしいですよ」
「そう、しようか」
診察台から起き上がると、ふるりと頭を振る。
このところ数日、どうも微熱が続いていて体が妙に重く、だるかった。さすがに何か病でも
あるのかと気にかかっていたところに、飛影が近くの診療施設に話をつけておいてくれた
のだ。そうでなければ滅多なことでは医者にかかろうはしなかったところだ。
「それでですね、躯様」
「何だ」
「大変申し上げにくいのですが…」
異形の医者は口篭もる。下手なことをすれば首と胴体が泣き別れるとでもいうように、びく
びくとしているのがおかしくて、躯は続きを促した。今更特にどんな症状を聞いたとしても、
特に失うものなどない。そう思っていたつもりだった。
「それでは、申し上げます…」
171 :
水底の夢:2005/09/19(月) 01:20:51 ID:sK3WL7+Z
穏やかな風が頬をさやさやと撫でた。
百足の見張り台の上で、躯はぼんやりと風が渡る景色を、そして落ちる人間たちを眺めて
いる。目に映るものは何もかもが変わりないのに、奇妙なほど気分が撃つ鬱々として重か
った。
いっそすべてを相殺する為にここから落ちてしまえたら。
そんな思いもあった。
「躯」
聞き慣れた声が背後でする。
「ひとりで登るなと、言っただろう。落ちたらどうする」
「まさか」
わざとくくっと笑ってみせる。今の今まで逆のことを考えていたというのに。この男にだけは
女としての弱味を見せる訳にはいかなかったのだ。
「無理はするな。いるんだろう?」
耳元で鳴る風が一瞬、止まった。
「何のことだ」
「とぼけるな」
恐らくはあの医者から聞いたに違いない。溜息をついて手摺りを背にすると、どう言ってい
いのか分からずに俯いた。初心な娘でもあるまいし、こんなことになるとは全く知らなかった
訳ではない。ただ、こんな業の深い女には有り得ないことのような気がしていたのだ。
そんな様子を静かに見遣って、飛影は首を傾げながら腹に手を当ててくる。
「いずれ来る時が、来ただけのことだ。貴様は何も案ずることはない」
「…そんな戯言などいらない」
「戯言だと思うか」
「…」
これまでの関わりの中で、この男の誠意や情熱が嘘偽りでないことはよく知っているつもり
だった。だが、それと知っていても戯れるのはただの遊びだと思い込まなければ、心がばら
ばらになりそうになる。本心など、とても見せられはしないのだ。
「案ずる必要はない。俺が守ってやろう。貴様と、この子をな」
頑なに返事を拒む躯に構わず、飛影はそれだけ告げた。
風はまだ止まったままだ。
172 :
水底の夢:2005/09/19(月) 01:22:02 ID:sK3WL7+Z
こんなことで戸惑うのは、まだ自分が女であることに囚われているせいだろう。飛影の言う
通りに、いずれ来る時だっただけの話だ。だが、今更母となるのはやはり抵抗があったし、
今後あの男にもどんな顔をしていいのか分からない。
薄暗い寝台の中で何度も寝返りを打ちながら、躯は浅い夢を見ていた。
また、嘲りの声が聞こえる。
『娘よ、可愛いお前には格別の不幸をくれてやろう』
ああ、うるさい、うるさい、うるさい。
どれほどの時が経過しても、忌まわしい男を殺しても、あの声だけは耳から消えることはな
い。それが呪いででもあるように。
澱んだ寝間の空気がふっと掻き回された気配がして、目覚めるといつもの気配があった。
「気分はどうだ」
「…悪くない」
「そうか、せいぜい大事を取れよ」
まだ微熱は続いている。額に手を当てながら、そんな気遣いを見せる飛影には何も翳りも
企みもない。ある筈もない。あってたまるものか。
妙に苛立っている。
「飛影」
苛立ちがこんなことをさせるのだ、と無理矢理に理由をつけて、躯はただ隣に横になって
体を休めようとしていた男を突然組み敷いた。
「何をする」
「黙れ」
「…大事を取れ、と言った筈だ」
「そんなことは知らない」
望んで出来た子ではない、とは言わないが今は生まれるべきではない子だ。ならばこう
している間に勝手に流れてしまえばいい。母にあるまじき残酷な考えで、躯は頭がいっぱ
いになっていた。これまでにも、生きる為のし上がる為にどれだけの命を葬ってきたか知
れない。それならば、別に罪悪感を持つ必要などないのではないかと。
「お前はそれでいいのか?」
飛影が醒めた声を出した。
構わない。返事をすることなく、躯はそう叫んだ。
173 :
水底の夢:2005/09/19(月) 01:22:50 ID:sK3WL7+Z
いつもは強引な凶器そのものでしかない雄を引き摺り出すと、余計なことを聞かないうち
に舌先で舐めた。こんな風に仕掛けるのはそうないことで、余計に苛立ちか興奮か分か
らないものが体中を突き上げていく。
「お前になど、会わなければ…」
無意識にそんな言葉が唇を突く。一欠片も、そんなことは思ってはいないというのに。だ
が、男の意のままには二度とならぬと決めていたのに、結局はこの有様で子を成してい
る事実に、まだ頭がついていってはいない。
「…そんなことでは、流れはしない。知っているだろう」
しばらく様子を見守っていた飛影が、身を起こした。
「替われ」
ぞっとするほどに禍々しい目の色をして、男が笑う。
「そんなにいらないというなら、覚悟をするがいいさ」
結局、明け方までの間にどれだけ乱暴にされただろう。
それでも、まだ腹の中のものが流れる予兆はない。ほっとしたような、忌々しいような気持
ちで躯はぐったりと寝台の上でまどろみ始めている。腹立ちをぶつけるような交わりからす
るに、多分この男は最初から自分を母にするつもりだったのだろう。
それを拒むも受け入れるも全てはまだ、これからのことだ。
無表情で躯を見下ろしている男は、どこか苦々しい色を目に湛えている。
さしあたって、今だけはあの底知れない悪夢も見ないままだ。
終
174 :
12:2005/09/19(月) 01:24:35 ID:sK3WL7+Z
す、済みませんです。
色々考えてたらこんな展開に。
どうしよう。
GJ!
とても良かったです!
GJです!
12さんにお願いなんですが…タイトルと一緒にカプ名も書いていただけたらなと。
検索しづらいもので…
えーと、飛影×躯の躯から求めるVer.をリクエストした者です。
12さん、よかったですよー。
でも、せつない話だ…。
178 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 10:08:18 ID:Elht1PdC
アニメではロマンスになりかけた静流とあの何とかって人きぼん。
原作では、中表紙で静流が女戦士みたいな格好してるのヨカタ。
12さんGJ!!いつも乙です!
躯、せつなすぎるよ…(つД`)
>「お前になど、会わなければ…」
この言葉がすげぇ泣ける。
「妊娠」という、自分が女である事が完全証明される事態に
戸惑いが隠しきれないんだよね、躯…
先日「週末期待」だなんて書いた者ですが、
この言葉が12さんの重荷になってしまったのならすみません。
でも12さんの文章本当に好きなんですよ。
「書けや( ゚Д゚)ゴルァ」と急き立てるつもりだったわけじゃないんだ…
180 :
12:2005/09/19(月) 13:40:06 ID:sK3WL7+Z
こんにちは。
三連休中にも関わらず、今日は何故か会社に行ってみた12です。
>>176 分かりました。
次回からは名前欄に「○○○○(タイトル)○○×○○カップリング」
という風に記入すればいいでしょうか。
>>177 リクエストして下さった方ですか。はらはら。
頑張ったのですが、話の展開上、エロくなりませんでした。この上は、いずれ
仕切り直しますです。
>>179 うーん・・・。
躯はそれまでずっと、女であることを自己否定しなければ生きてはこれなかった
し、そういう環境にもなかったのだと思うのです。長い間それに慣れていたから
価値観が変わりきれていないのでしょう。
ただ、流れてしまえばいいとは思っていても、それは単なる一時的な衝動でしか
ないことを自覚はしているんじゃないかな。
せっかく授かった子なんだからね。
あ、「週末期待」の方でしたか。
それでしたらお気に病むことはありません♪
私は本当に書くことが趣味で大好きなので、ガンガン毎日書きまくっている人間
です。むしろ、「今日はこれ書いて、明日はこれで」と自分で決まりをつけない
と、怠けて書かなくなるたちですから。
181 :
179:2005/09/19(月) 16:11:15 ID:XxawleDm
そう言って頂けると幸いですが…
いつも12さんの良作、楽しく拝読させて頂いております(´∀`)
蔵ぼキボン
蔵ぼキボン
リクエストがあんまりしつこいと、あんた自身だけでなく蔵ぼも嫌がられるぞ。
桑原と雪菜みてみたいなぁ。
飛x骸GJ!!
なんだこの神降臨スレ!
12さん、いいよー!
つーかこの後、どうなるんだ、この二人…。
躯がそれこそ流産とかしちゃったら壊れちゃいそうだなー。
あ、雪菜×桑原はちょっと読みたいかもw
あの飛影と躯のお子様だもの、ちょっとやそっとじゃ流れたりしないよ!
…そう思いたい。
“躯のトラウマを二人で克服”話、読みたいなぁ。
桑ちゃんと雪菜ちゃんもいいね。この二人も好きだ。
12氏GJです、こういう切ない系のお話もいいものよのう
高校生カップルみたいな初々しさが期待できそう>桑原雪菜
191 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/21(水) 04:59:51 ID:nClTC7YL
ゆきなとくらまをお願いします…
192 :
12:2005/09/21(水) 23:48:05 ID:pAmqpkV+
変な展開にしてごめん。
でも、二人の子供は絶対に流れる展開にはしたくないです。てか、書きたくない
ですしね。躯は何としても幸せになって欲しいもの。
ところで、今度の日曜日は何を書こうかな。
今のところ予定では蔵馬×ぼたんでやってみようと思っています。桑原×雪菜も
いいけど。
流産展開はないんですね…本当良かった。>飛影×躯
それはないだろうとは思ってましたが内心「もしかしたら…」と心配してたので、
その言葉聞いて安心しますた。
そんな鬱展開になったらいくらなんでも二人が可哀相すぎるよ…
蔵馬×ぼたんは初ですね。どんな話になるのか期待しております。
194 :
12:2005/09/22(木) 23:36:08 ID:2HN0Gml5
不安にさせて申し訳ありませんでした。
特別ハッピーエンド至上主義ではないけど、必要以上に悲劇を入れて盛り上げよう
とするのは好きじゃないのです。だから二人と子供には明るい未来が待っていると
いうニュアンスに今後は持っていきたいです。
ぼたん登場は二度目だけど、前回のコエンマ絡みの話とは別のものにするつもりで
います。あくまで別次元ということで。
195 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/23(金) 23:34:13 ID:uNqaDwuz
妖狐×静流or蔵馬×静流はいかがでしょうか?
原作的にも違和感無い少し大人のカップル
>>195 読んでみたい!!
投下キボン(´Д`*)
197 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/24(土) 01:08:07 ID:LaLT/MKE
>195
まさにそれ今書いてる途中なんだが…w
>>197さん
アダルトカップル期待!(;´Д`)ハァハァ
がんがってくだされ。
左京×静流とか…orz
12さん、いつも乙です。
ところで質問ですが、上の方で「毎日書いている」趣旨のことを書いてますが、
普段はどんなもの、どんなジャンルをを書いているのですか。
出来れば読みたいのですが。
202 :
197:2005/09/25(日) 01:04:27 ID:kw2u9xtp
なかなか連休なのに仕事休めずorz
蔵馬×静流 投下します
「静流さん今からお仕事ですか?」
玄関先で出くわしたので軽く挨拶を交わす。
早くなる鼓動を押さえ、極力平静を装いながら。
高校受験に向け勉強に励んでいる桑原くんの様子を見に来ているという大義名分
であるが、実際のところ桑原くんには悪いが彼女に会えるというのが俺の中では
ウェイトが重い。
「あー蔵馬くん、いつも悪いねウチのカズが世話んなって」
そういいながらの笑顔の彼女が眩しい。
「せっかくの日曜なのに今日は急に仕事入っちゃってさー全く人使い粗いったら
ないよ」
「フフ、大変ですね」
「じゃ、カズんこと、ヨロシクね」
慌ただしく出て行ってしまった彼女。
擦違いざまに香る彼女の残り香。
眩暈がするようだ。
203 :
197:2005/09/25(日) 01:05:48 ID:kw2u9xtp
気になりだしたのはいつからだろうか。
気が付けばいつも彼女を目で追っていた。
初めはそれは彼女が人一倍霊感が強いせいで、妖気を纏った俺からすれば気にし
てしまうのは当然だろうと思っていた。
だがやはりそれとは何かが違う。
しかもその感情が最近更に膨れ上がりつつある。
抑えられない何かがある。
そう、俺は彼女が欲しいんだ。
自分の中にそんな強い独占願望があったのか自分でも意外だと思う程。
204 :
197:2005/09/25(日) 01:11:59 ID:kw2u9xtp
11月に入り、高校入試まで日がないので近頃は休みの日だけでなく、平日も週に
何回か桑原くんの家に通っている。
「お邪魔しまーす」
「お、蔵馬くん、いらっしゃい。カズの奴、まだ帰って来てないんだよ。まった
くどこほっつき歩いてんだか…」
「いや、俺が若干早めに着いただけですから…」
「もし良かったら夕飯軽くつまんでかない?私も今帰って来たばっかりで大した
もん用意してないけど」
「ありがとうございます、じゃあお言葉に甘えて」
学校の方で放課後受験対策の補習があるのを知っていて、なのに早めにここに来
るのは彼女と二人きりで話せる時間が欲しい為。
自分の必死さに、笑ってしまう。
話題は専ら桑原くんの成績の話。
彼の小さい頃の話。
桑原くんの話ばかりだ。
彼女は自分の話を自分からはしない。
俺からは魔界での近況とか。
他愛のないやり取りだが俺にとっては貴重な時間だ。
同じソファーに座りながらの談笑。
また彼女の匂いがする。
頭がおかしくなりそうだ。
205 :
197:2005/09/25(日) 01:14:26 ID:kw2u9xtp
ふいに彼女から質問された。
「そういえばさ〜蔵馬くんは好きなコとかいないわけ?カズは雪菜ちゃん雪菜ち
ゃんで裏飯くんは蛍子ちゃんでしょ?君はカズと違って顔可愛いし勉強できるか
らモテてるんじゃないの?」
「いやー…そんなことないですよ。俺、学校では大人しくしてますから…」
いきなりの質問に動揺したが必死に取り繕う。
「またまたー謙遜しちゃってぇ」
そういいながら彼女は4本目のビールを開ける。
ほてった頬と潤んだ唇が嫌でも目に付く。
もう、抑えられない。
206 :
197:2005/09/25(日) 01:15:47 ID:kw2u9xtp
続きはまた日を改めます
あと4時間したらまた出勤なもので・・・
>>197さん
途中でもGJ!! 静流さん視点ではなく、蔵馬視点なんですね。
続きの方も、ワクテカしながらお待ちしとりますよー。
つうか、夜勤の方、お疲れ様でつ…。
蔵馬×静流、待ってましたー。
>ほてった頬と潤んだ唇
想像してしまいました・・・
蔵馬信者→12さん信者になりそなイキオイ(*⌒▽⌒*)
まぢ楽しみにしてます!!
210 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/25(日) 09:19:34 ID:qOVHd4Vx
蔵馬×静流イイッ!!!
続き楽しみにしております。更に妖狐に変身しちゃったりしたら…!!vvv
211 :
197:2005/09/25(日) 20:46:17 ID:cJzQbqDw
蔵馬×静流 続き投下します
どうしてそうしてしまったのか、自分でも分からない。
彼女の横でその香りを嗅ぎ、声を聞き、二人の間の空気越しに伝わる幾分平熱よ
りも高めであろう体温を感じているうちに理性が飛んだ。
そんな強引なのは自分のポリシーにはそぐわないのに。
「えっ、ちょっ……ん…ぁ……んん…はぁ…く、くるし…よ…」
気が付いたら俺は彼女を押し倒し、呼吸の自由を奪っていた。
腕っ節のいい彼女とはいえ、さすがに俺の力には及ばない。
自分で何をしてしまったのか理解するのに数秒時間がかかった。
「あ、俺……」
「……何なの…これ…」
気不味い沈黙が流れる。
「………すいません、俺、帰ります」
思わずその場を立ち去ってしまった。
"どうかしてる"
驚いた彼女の顔が脳裏に焼き付いて離れない。
あの視線、絶対俺を軽蔑しただろう。
「はぁ…」
自室のベッドに転がり、天井を仰ぎながら情けなさに溜め息がでる。
とにかく彼女の声、匂いが俺をおかしくする。
以前に比べて魔界を訪れる回数が頻繁なのが作用しているのか、俺の中の獣の部
分が敏感になっている気がする
212 :
197:2005/09/25(日) 20:47:11 ID:cJzQbqDw
それから一週間、俺は桑原家を避けた。
しかし時期が時期だけにそんなことを続けている場合じゃない。
入試まで追い込みの時期だ、桑原くんの調子が気になる。
意を決して金曜の夕方、俺は桑原くん家を訪ねた。
今までの統計的に金曜なら彼女と遭遇率は低い。
が、そんな策謀も虚しく会ってしまった。
インターホンを鳴らして待っていると、ドアが開き、彼女が立っていた。
「……どうも」
「あぁ…入んなよ…」
そのままリビングに通される。
またソファーで二人並んでテレビを見ている。
会話はない。
俺は彼女からそれとなく距離をとって座った。
出された珈琲が冷め切った頃、彼女がテレビの画面を見据えたまま、先に口を開
いた。
「……カズは今日帰って来ないよ」
「…えっ?」
「今日はね、沢村くん家でいつもの四人で勉強会すんだって。」
「…そうですか、じゃ俺、帰りますね」
「でも、あたしが話があるんだ、君に」
真面目な顔で、こちらへ向き直した彼女の口調が力強くなる。
213 :
197:2005/09/25(日) 20:48:31 ID:cJzQbqDw
「この間の…ことですか…」
"来たか…"
俯いたままで、どう説明するか、あれこれ考えていたらまた彼女が言う。
「本気なら、あたしは構わないよ」
耳を疑った。
「え…」
何も言えず、驚いた表情のまま顔を上げ、彼女を見つめる。
どんな罵声を浴びせられるのかと覚悟していた。
想定外の展開に、動揺が隠せない。
冷静沈着が俺の取り柄だというのに。
真剣な表情で彼女は続ける。
「だから、君が本気なら、あたしは構わないよって…」
俺はまた俯いて答える。
「本気です…じゃないと俺、女の人に…あんなことしません…」
この間の自分の行動を思い出したせいで顔が熱い。
「ぷっ……アハハハハ」
不意に彼女が笑い出した。
「え、何ですか…?俺何かおかしいこと言いました?」
「ふふふ…だって押し倒したりするくせに急に帰っちゃったりさ、度胸あんだか
ないんだか」
「…それは」
確かに恥ずかしい。
「つか、意外だったなーいきなりかよ、みたいな。もっと紳士なのかと思ってた
。やっぱ男だねぇ」
笑いながら彼女が俺の肩を叩く。
触れられて、俺はまた自分が抑えられなくなった。
「あっ……」
勢いよく彼女の両肩を押さえ付け、倒した。
「静流さん…俺、そんなみんなが言う程、紳士なんかじゃないですよ」
言い終わるや否や彼女の唇を奪う。
214 :
197:2005/09/25(日) 20:49:36 ID:cJzQbqDw
続きはまた後程orz
静流姐さんすてきだ・・・GJです
216 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 00:55:37 ID:nOkDpWTu
うぉおージラされるっ!!
続き楽しみにしてます!
217 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 01:03:17 ID:IxL74YDj
いつか雪菜を書いてもらえたらうれしいです…
218 :
12:2005/09/26(月) 02:09:21 ID:rIrJkTfx
すみません。
今週はちょっと他のところが押したので、また今度ということで。
短いものでもと思ったんだけど、書けませんでした。
219 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 06:07:36 ID:NaKAezxE
いつまでも待ってます(^O^)vわくわく♪
>>197さん
GJ!蔵馬×静流いいなぁ。続き期待しとります。
>>12さん
そんな、気にしないで下さい。
12さんの都合の合う時にまた宜しくお願いしますよー(´∀`)
桑ちゃんが高校目指して猛勉強してる時って静流ねーちゃん年いくつなんだろ?
21歳くらいですよ。3歳上だそうですから。
間違えた。桑ちゃん高校受験=15歳だから、静流さんは18歳です。
224 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 20:35:40 ID:nOkDpWTu
フムフム。ありがとうございます。
じゃあ蔵馬(秀一)とタメか蔵馬の方が年上なのでは??
それでも姉さん口調の静流さんカコイイ!
桑原中3時て蔵馬高3か…?
今更ながらコエぼたのSSの中でちゃっかり桑ちゃんが
エリートコースを進んでいるのにワロタ。
228 :
12:2005/09/28(水) 01:15:09 ID:g50tyF+e
どうも、12です。
いや、桑原くんは根が真面目だからね。思い込んだらどんなことでもすると思う
んだ。頑張れ、とにかく頑張れ。
雪菜ちゃんも側で応援しているぞ。
雪菜ちゃんが傍にいてくれるし、勉強もより頑張れるというものですな。
なんやかや言っても、何気にこの二人もいい感じだなぁ。
230 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/29(木) 14:08:32 ID:dRQ0PtIc
飛影は雪菜のホームスティ、どう思ってるんだろう…?
雪菜ちゃんに関しては、もう「自分の道を歩いていけ」と思ってるでしょう。
故郷である氷河の国の因習に囚われず、自由に生きろと。
ホームステイ先に選ばれた桑ちゃんの事は
“潰れ顔”とか口では散々に言ってるけど、
心の奥底では「信じるに値する人物」だとは評価していると思う。
桑ちゃん霊力のある方だし、あの通りの人柄だから
人間界での雪菜ちゃんのボディガードくらいにはなれるだろうとは思っていそう。
この流れであえて言おう
飛 影 × 雪 菜 萌 え !
誰か書いてくれないかな…
兄妹カプはちょっと嫌だ
アニメオリジナルの左京×静流が
けっこう好きだった…盲点な感じ
>>231 あー、そんな感じだろうね。いい感じ。
ただ桑と雪の性行為は直接雪菜の死に繋がるから
その時飛影はどう判断するだろうね。
237 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/30(金) 21:45:06 ID:q0PzcOYK
原作読んでごらん。
氷女は異種族と交わると…
いやいや、異種族と交わって 「子供が出来る」と死ぬ んだから、
子供さえ出来なければ大丈夫。
また、「異種」族なんだから同姓だと少しは違うかも。
氷菜が飛影と雪菜を身籠ったのも、百年に一度の分裂期に合わせて密通したからだよね。
240 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/01(土) 14:49:58 ID:LhHhZS1W
じゃあ雪菜×誰でも全然問題ないですね
避妊はしてよ。
氷女は100年に一度の分裂期に子供が生まれるけれど、
そのときに合わせて異種族の男と交わると、生まれてくる子供は男の子で、
相手の性質をそっくりそのまま受け継いで生まれてくる。
そして、種族との子を生んだ氷女は命を落とす。のはずだよ?
だから、分裂期でなければ交わっても子が生まれることは無い、と思ってたんだが。
アニメでは氷菜さん(飛影と雪菜の母親)は生きてたなぁ。
アニメと漫画じゃ結構設定変えられてたよな。
じゃあ桑原に都合がいい設定で
じゃあ100年生きない桑ちゃん…いや、
100年後に生きてたとしても
きっと現役ではない桑ちゃんは、
安心して雪菜とやりたい放題なわけですね。
良かった良かった。
245 :
197:2005/10/02(日) 00:14:04 ID:trPp/q77
遅くなりましたが蔵馬×静流続き投下します
246 :
197:2005/10/02(日) 00:15:43 ID:trPp/q77
舌で口唇で、彼女の口を貪る。
「…っはぁ…ふっ…んん……」
合間合間に洩れる必死に酸素を求める甘い息遣いが堪らなく俺を刺激する。
彼女が俺の頭に手を伸ばし、髪を鷲掴みにする。
着ているシャツのボタンを上から一つ一つ外していく。
はだけていくシャツの下からうっすら透けていた黒い下着が露わになる。
「ぁ……」
胸の、下着に覆われていない部分に口付ける。
彼女の白い肌に痕を残す。
"もう俺の人だ…誰にも渡さない…"
下着に手を掛け、それを床へ捨てると、ほのかに桃色の芽がその存在を主張して
いた。
彼女をソファーに座らせたまま、俺は床に膝をつき、彼女の両足を開き、その間
に膝間付いた。
そこから双丘を下から掴み、口を寄せ先端を舐め、甘噛みを繰り返す。
「…やっ……んっふっ………」
「声、出しちゃってください…俺、静流さんの声聞きたいです…」
感じる個所をつくと、逃げようとするのを掴まえ更に責め立てる。
247 :
197:2005/10/02(日) 00:16:49 ID:trPp/q77
「…あっ…ん……てゆうか…ひゃっ…ちょっ…タンマ!!」
「…?」
行為を中断し、下から上目遣いで彼女を見上げる。
蒸気した彼女の頬の色が何とも艶っぽい。
綺麗だ。
「あのさ…場所…場所変えない…?」
上がった息で途切れ途切れに言う。
「それに…シャワー浴びていいかな…」
考えてみればそうだ…配慮が足りなかった。
「あ、すいません…」
しかし、このまま彼女を離したくない。
リビングを去った彼女を一時は見送ったが、その間大人しく待っていられる程冷
静ではなかった。
「えっ…蔵馬くん…?」
「…俺、やっぱ待てません」
彼女がシャワーを浴びている中、バスルームへ着衣のまま押し入る。
「ん…はっ……あぁ………」
そのまま右手で彼女の右手首を掴み壁へ固定し、また口唇を奪う。
同時に左手を彼女の蜜壺へ。
「ひゃっ…ああん……」
人差し指を差し入れてみる。
「…凄いな、静流さん、こんなに」
抜き出した指を彼女の目の前にかざす。
溢れた愛液が指に纏わりついて、バスルームの照明の光に照され光る。
「そんな……わざわざ見せてくれなくても…分かるよ、自分の体だもん……」
顔を真っ赤にして俯く彼女が堪らなく愛らしい。
248 :
197:2005/10/02(日) 00:19:11 ID:trPp/q77
指についた愛液を、彼女に見えるように舐めとる。
「凄いのは静流さんだけじゃないですよ」
掴んだ彼女の右手をまだ布に抑えられているが、怒張している俺の欲望へと持っ
ていく。
「ほら……ね」
「ホントだ、凄い……」
左手でまた彼女の中を掻き回す。
「ぁ……はっ…ひゃん……」
指をきゅうと締め付けられる。
彼女がシャワーを止め、俺のパンツの前ボタンを外し、ファスナーを下ろした。
外気に触れた俺のモノは感覚が酷く敏感になっている。
彼女はそれを白く細い指で握った。
先端からの先走りの液が彼女の指を濡らす。
俺にもたれかかり耳元で囁く。
「いいよ、入れて………」
彼女を抱き抱えるようなかたちで一つになる。
「…ぁ…はぁっ……ん……」
「んっ…くっ……」
ゆっくりと彼女の中を出入りしていたが、次第に速度を上げていく。
慣れてきたのを確認しつつ、激しく彼女を貫く。
底知れぬ快楽のせいで頭が真っ白になる。
意識が遠のく。
彼女の体重が完全に俺にかけられたと同時に俺も欲望を彼女の中に放った。
一瞬全身を脱力感が襲ったが、持ち堪え、二人分の体重を支え切った。
249 :
197:2005/10/02(日) 00:23:18 ID:trPp/q77
彼女の大腿から収まり切らなかった白濁液がつたう。
ずっとこのまま抱きしめていたかったがそうもいかない。
彼女を抱えながらゆっくりと自分のモノを抜く。
まだ意識が戻らない彼女の体を丹念に洗い、服を着せ、寝室へ運んだ。
仕事で疲れていたのもあり、そのまま寝てしまったようだ。
俺ががっつき過ぎたせいもあるだろう。
「おやすみなさい」
額に口付けてから呟き部屋を出る。
枕元に
"また明日来ます"
とメモを残して。
250 :
197:2005/10/02(日) 00:25:29 ID:trPp/q77
何だか盛り上がりに欠ける感じになってしまいましたorz
明日は1ヶ月ぶり休みなんで出直して来ます
197さんキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
GJ!&乙です!蔵馬×静流も良いのう。
蔵馬も静流も落ち着いた“大人の魅力”のある人物だから、
そんな彼らがこう余裕がないのって逆に新鮮でいいなぁ。
197さんぐっじょぶ。辛抱たまらず風呂場に乱入する蔵馬が強引えろす。
>>242 いやそれちょっと違う。
分裂期でなくとも異種族の子供は生めるけど、母体が死亡&子供が邪悪になる為に、里の掟では絶対禁止。
だから氷菜さんは、男とヤったのがバレて堕胎とかされないように、分裂期と重なるよう時期を見計らって仕込み。
でなければ、里のオババ達の話し合いで、「わざわざ100年周期に合わせて男と密通を……」とは言わんでしょう。
253 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/02(日) 02:49:04 ID:JWTHludq
待ってました!!最高でしゅ(*⌒▽⌒*)
254 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/03(月) 00:56:36 ID:/uBLL4MK
いいですね〜!!期待してた甲斐がありました!
静流姉さんてかなり経験豊富で普通の男じゃ満足できなそうな感じだけど蔵馬にペースを乱される感じがカワイイ
その後も気になるなぁ
>>12さんや
>>197さんが書かれるような
素敵SSを読む事が出来て幸せです(;´Д`)ハァハァ
12さんのコエンマ×ぼたんの続きが気になる今日この頃…
それから飛影×躯のその後も禿しく気になりまつ。
いつかまた読みたいなぁ。
ネタ振り。
暗黒武術会時の螢子やぼたんのジーンズ姿。
当時流行のジーンズの型がそうだったのか、
全体的に、特に腰周りがピッチピチでヒップラインがもろ分かりエロス。
そりゃ、幽助も思わず触りたくなる罠。
それからトレカか何かのカードでの飛影と躯の2ショット。
後ろ向きから振りかえっている躯のおけつに(*´д`*)ハァハァ
そういや顔を包帯で包んで正体隠している時も、腰周りが女性的でエロかった。
原作やアニメ等で女性陣に思わず感じたエロスありませんか?
雪菜の着物姿に(;´Д`)ハァハァ した
どんな拷問されたんだろうか
そろそろ圧縮来そうなんで保守カキコ
>>257 「肉体に対するあらゆる苦痛はこの5年やりつくした」@垂金
って事は…
良スレ発見
保守
「苦痛じゃなくて、快楽をやりつくせ」、とコマに向かって叫んだあの夏の夜。
261 :
197:2005/10/06(木) 22:21:41 ID:2Ahe4XI8
私でよければ雪菜凌辱モノそのうちあげます
197さん、是非お願いします!(;´Д`)ハァハァ
相手誰だろう…垂金と下僕の人間&妖怪?それとも戸愚呂だろうか?
雪菜ちゃん監禁話は「雪菜ちゃんカワイソス!垂金ユルサン!」って思うのに
SSは読んでみたい自分…_| ̄|○
263 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 23:15:49 ID:7IOuuLgM
垂金みたいなキモイのなら、素人童貞キモオタの漏れも何の気兼ねも無く感情輸入できるから嬉しいです。
雪菜たんのオデコから足の指の先までナメナメしたいです
それはそうと、いいスレですね
腐女子いないから
うおおおお197氏おねがいします(`・ω・´)
266 :
197:2005/10/07(金) 21:50:20 ID:bh4Gai5H
桑原×雪菜 前提の 蔵馬×雪菜で書いてみます
267 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/07(金) 22:39:54 ID:QKpYfuuZ
垂金と雪菜たんきぼんぬ
雪菜凌辱モノとくれば、てっきり相手は垂金か!?と思いきや…
考えが甘うござった。
桑原×雪菜・前提で蔵馬×雪菜ってどんな話になるんだろ?
197さん、がんがって下さい。
>>266 期待してまつ。
ドキがムネムネでつ。(*゚∀゚)=3ハァハァ
>>78 創作意欲が思い切りそそられるw
が、蔵馬のキャラ的に絶対ありえなさそうなんだよな…。
>197
待ってます。
272 :
12:2005/10/08(土) 12:19:36 ID:E4ZQVghB
連休に入ったので、書きたかったものをまとめて投下します。
まずは蔵馬×ぼたんで。
273 :
胸騒ぎ:2005/10/08(土) 12:21:23 ID:E4ZQVghB
十月の始まりは金木犀のイメージがある。
住宅街ばかりではなく、どこでもあの金色の小花の芳香を感じることが出来るのは特別嬉し
くて、どこか心が華やぐような感覚がある。
秋の深まりと共に世の中はこれほどまでに美しく変化していく。
なのに、自分の周囲は何も変わらないのはどこか苛々としてたまらない。
それが、蔵馬の現状だった。
秋の晴天はすっきりと澄み渡って心地良い風が吹いている。
いつものように営業で得意先回りをしていた蔵馬は、空を渡る鳥の群れを眺めて無意識に
溜息をついた。時刻はもう午後三時過ぎ。今日もとてもいい天気だった。
たまたま通りかかった河川敷の空き地には人の姿はなく、少しぐらいはサボってもいいかと
近くの自販機で缶コーヒーを買って柔らかい草むらに腰を降ろした。
「ああ、本当いい天気だ」
大きく伸びをしてからきっちりとネクタイを締めた襟元を少し緩めると、ようやく気分も落ち着
いてくる。
苛々しているのは正直なところだが、それは人間として生きている今の自分の立場や環境
のことではない。それでいえば他人よりは充分過ぎるほど満足な結果が出せていると自負
しているし、誰もが認めるところの筈だった。
今年の春、蔵馬の勤める義父の会社は一部上場を果たした。
元々は大手釣具メーカーの孫請け会社でしかなかったのだが、数年前から次第に業績が
上昇して見事独立を果たした。取り扱う品目がやや特殊なだけにこれまでは特定のメーカ
ーの独占状態にあった市場も、数年の間ですっかりシェアが義父の会社に切り替わり始め
ている。
もう少し頑張らないと。
蔵馬はいつもそう思っていた。
あと少し頑張って、業績を軌道に乗せてしまったら、後は安心して会社を義弟に託すことが
出来る。そうしたらもう自分は自由にどこにでも行ける。責任を果たしてしまえば誰にも文
句を言われる筋合いはない。
早く、そんな日が来ればいいのにと。
12氏の蔵ぼキター!
ワクテカしながら待ってます
275 :
胸騒ぎ:2005/10/08(土) 12:42:32 ID:E4ZQVghB
「蔵馬ー」
鳥のような影が突然目の前をよぎったかと思うと、真っ白な着物姿のぼたんが現れた。その
姿は以前と変わりなく清々しくて愛らしい。
「こんなところにいたんだ。頑張ってるねえ」
からりと笑う顔が子供のようだ。
「今はサボりですよ。そんなことでもないと気が抜けませんからね」
「あははー、そうだね。あんたも大変だあ」
サボりという言葉が気に入ったのか、ぼたんも並んで座る。立場は違ってもお互いに色々な
ことがある。こんな時ぐらいは息抜きをしてもバチは当たらないだろう。ましてや、ぼたんは昔
からの知り合いで気心も知れている。少し話でもしていれば気も休まっていいかも知れない。
「あたし思ったけどさあ」
ぽつりと、ぼたんは呟く。
「みんな変わっていくんだね…羨ましい気がするよ」
「羨ましい?」
「うん。人間は早く年を取るけどさ、だからこそすごい勢いで成長していく生き物だと思うんだ。
あたしから見れば取り残されていく感じがあってねえ」
膝を抱えて溜息をつくぼたんの横顔が、以前見慣れていたものよりは細くなった気がする。
確かに人間は普通百年も生きていない。その短い間に目まぐるしく悩み、悟り、心得て成長
を遂げてひとつの生き物としての成熟を迎えるのだ。人間ではないぼたんはそれが羨ましい
という。
「多分これからみんなと会う機会も減っていくと思う。それが寂しくて…」
普段明るく気丈に振舞っているというのに、今こうしてそんな弱気を見せてくれるのが何だか
嬉しかった。そんな顔は滅多に見せてはくれないのだから。もしかしたら気を許してくれてい
るのかと期待しそうになっている。
「ぼたん」
空になった缶を握り潰す。
「気兼ねすることはないですよ。みんな仲間じゃないですか」
「うん、そうなんだけどね」
無理に笑顔を作った顔が、泣いているように見えた。
ワクワク(゜∀゜*)<蔵ぼエロー!!
277 :
胸騒ぎ:2005/10/08(土) 19:32:48 ID:E4ZQVghB
「…何かあって話したい時があれば俺に話して欲しいんです」
白い頬に手を伸ばしてみる。嫌がったら冗談にするつもりだった。なのにぼたんは硬い表情
をしたまま反応もしない。それが普段隠している男のずるさを増長させていく。
真っ白な細い飛行機雲が空を二分割するのが見えた。
「うん、ありがとね」
少ししてから、ようやくぼたんは顔を上げて笑みを浮かべる。今までは誰にも話せないことだ
ったのだろう。口にすれば気が楽になるのは誰にでもあることだ。
「ごめん、こんなこと話して」
「いいえ。嬉しかったですよ」
「つまんないことだってば。忘れておくれよ」
「いえ、忘れてあげません」
はっとしたように、ぼたんは凝視してきた。何か言い出さないうちに肩を抱いて無理やり顔
を向けさせると、驚いたように開かれた唇を奪った。慌てたように離れようと突っぱねてきた
腕を掴んで動きを封じてしまう。自分でもこんなところで、と思ったのだが幸い誰の姿も近く
で見ない。
「…何のつもりだよ、一体」
唇が離れてすぐ、真っ赤な顔をして睨むぼたんの目から涙がぽろぽろと零れ落ちた。友達
だと思っていた相手にまさかこんなことをされるなんて思ってもいなかっただろう。けれど、
付け入る隙を与えたのはぼたんの方なのだ。
男はいつでもそんな隙を虎視眈々と狙っている。
「支えてあげたい、そう思ったからです」
人間として生きていくのはたやすいことではないが、あながち難しい訳でもない。要領を心
得ている蔵馬ならば尚更上手にこなしている。けれど、それだけではない心を満たすもの
が欲しかったのだ。幽助も飛影もとうに自分なりの幸せを見つけているのが少し羨ましい
気がして、そんな焦りも拍車をかけている。
だが、ぼたんはまた表情をわずかに曇らせただけだった。
「そんなこと、言わないで欲しいんだ…あたし…」
「俺じゃあ、駄目なんですか?」
「有り難いと思ってる。嬉しいんだけど…」
さっきは細かった飛行機雲がぼんやりと太く滲んでいた。
リアルタイム投下キタワァ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゚゚・* !!!!!
279 :
胸騒ぎ:2005/10/08(土) 19:58:45 ID:E4ZQVghB
「誰か、いるんですね。気になる人が」
「…うん、まあ」
「俺の知ってる人ですか?」
「…うん」
「そうですか…」
正直言って最近これほどまでに落胆したことはなかった。恋愛に疎い訳ではなく、好意を
寄せられることも珍しくない、そして女性と付き合った経験も何度かあるというのに、蔵馬
は今までいつもこれはという時に思いを寄せる相手を逃していたのだ。今回も判で押した
ように同じ結果になってしまったことに笑いさえ込み上げてくる。
「あはは、そうですか、はは…」
「蔵馬?」
「いいんです。分かってました…気にしないで下さい…はは…」
「ごめんね、ごめん…本当に」
さっきまで暗い顔をしていたぼたんは、元の様子に戻っている。きっとこれからも変わらな
い付き合いが出来るに違いないと勝手に安心していた。つい変な気を起こしてしまったけ
れど、下手をすれば大事な友人を一人失うところだったのだから。
ひとしきり笑い終えた後、急に真顔になった蔵馬はぼたんの髪を一房手に取った。改め
てこうして見ると絹糸のように細くて綺麗だ。この髪も心も全部独占している相手がいる
のは嫉妬するべきことだが、それがぼたんの幸せに繋がるならばここで見守るべきなの
だろう。
魔界に残してきた娘と同じように。
あっけなく終わった恋の結末にしては奇妙に清々しい気持ちで、蔵馬は淡い色の髪に
口付けた。
「応えられなくてごめん」
ぼたんの細い指が頬に触れた。
「でもね、あんたはあたしの大事な友達だよ。ずっと」
「そう言って貰えるだけで充分です」
ようやく気持ちがほぐれたのか、くすくすと笑う愛らしい顔がこんなに間近にある。それ
だけでも滅多にない役得に思えて嬉しくなった。
280 :
胸騒ぎ:2005/10/08(土) 20:19:26 ID:E4ZQVghB
「じゃあね。また何かあったら来るから」
「ええ、いつでも待っています」
空の彼方にぼたんが飛び去って消えてしまってからも、蔵馬はまだしばらくその場に
留まっていた。生きている以上は悩みの尽きることもないが、悩んでも仕方のないこ
とがこの世には多過ぎる。今までは持ち前の要領と狡猾さで上手くこなしていたと思
っていたけれど、実のところは普通の人間以上に囚われていたのかも知れない。
そうさせるものが人間というものの複雑さなのだろう。
ぼたんが心を奪われているのは誰なのか。それも気になるところだが、とりあえず今
のところは自分が置かれている立場の中で精一杯生きてみるべきなのだと心を決め
る。その過程で何か迷いが生ずることがあれば、仲間たちに尋ねればいい。それぐら
いはしてもいい筈だ。
「人間は、まだ分からないことばかりだ」
そろそろ空の端が赤くなり始めている。誰に言うともなく呟くと、また笑えてきた。この
ままずっと人間を装って生きていくのもまた一興というものだ。
握り潰して足元に転がした缶を拾い上げると、蔵馬は何事もなかったように立ち上が
って元の日常に戻っていった。
でも、絶対に諦めないから。
一度ぼたんに対して芽生えた執着がまだ心の隅に残っていることに、少しばかりの
心のざわめきを感じてもいるのだが。
終
281 :
12:2005/10/08(土) 20:21:48 ID:E4ZQVghB
書いているうちに、何か余韻のある終わり方になりました。
でも、恋愛感情ってそう簡単には消えたりしないものだから、これもありだよね。
ってことは三角関係になったりして。うわー。
12さん乙です!
ごめんね、のぼたんちゃんに萌え
283 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/08(土) 22:42:00 ID:QaWNFzM8
GJ!だけどエロ無し(´・ω・`)ショボーン
12さん激しくGJ!!乙でした。
12さんの新作SSをまた読む事が出来て嬉しいです(´∀`)
この話は時間系列では前作「金平糖ほどの夢」の後ですね。
ぼたんが想う人物とはやはりあのお方でしょうか…三角関係も(・∀・)イイ!!
今回はエロなしだったけど次回作(どのカップルかには拘らず)に期待しますw
>魔界に残してきた娘
最初「ふーん蔵馬の彼女かぁ」と流していたけどもしかして実の娘(a daughter)の方?
蔵馬パパンだったのか!?
285 :
12:2005/10/09(日) 00:41:47 ID:wJF7j1bd
エロなしでごめん。
蔵馬は今のところエロを考えつかないんだ。
この先はどうなるか分からないけどね。
それと、「魔界に残してきた娘」は彼女でも実の娘でもなく、義理の娘です。
今はまだここまでしか書けません。
12氏のSSは、良い感じで幽白の匂いを感じます。
12さんのぼたんの描写が最高。
つーか幽白は女性キャラが基本的に魅力があるよな。
>>285 “義理の娘”かぁ…
オリキャラって例え脇役でも、読む人によっては好き嫌いあって難しいと思うけど
12さんなら違和感なく仕上げられそう。
>>287 禿同。ぼたんに限らず12さんは人物描写上手いよね。
キャラのイメージを壊さず上手く文章化している。
あと、自分も幽白の女性キャラって好きだな。それぞれ個性が光っている。
圧縮来る…?
良スレなので保守
保守!
来そうで来ない、でももう来ますね。圧縮。
念のため保守。
292 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/12(水) 09:45:39 ID:3/B2c1rc
どうやら圧縮落ち回避出来たみたいですね…ヨカタ
酎と棗の関係も何気に好きだったな
バトル直後にいきなりナンパし始める酎にワラタ
12さん上手なのはいいんですけど、良コテさんにこんなの言うのも悪いんだけど…
ここってエロパロスレだよね?エロなしっていうのはどうかと
たまにはいいべ>エロなし
きっと次は書いてくれるよ(*´д`*)
12さんは >>蔵馬は今のところエロは考え付かないんだ
けれど、リクが多いから書いてくれたんだべ?
もしアレなら他のカプをリクエストしてみるといいと思ったべ
296 :
12:2005/10/14(金) 01:21:14 ID:LsmpSSiF
すみません、その通りです。
蔵馬のキャラを考えると、あんまりエロが浮かばないというのが正直なところ
ですね。
何か萌えそうなカップリング希望。とか書いてみたり。
今のところは飛影×躯ぐらいしか幾らでもエロを絡められるカップリングがない
ので。
297 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/14(金) 09:09:57 ID:cV6HkN1l
仙水「ははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははは」
_____ _____ _ _ _ __ _
|_____ | | | rヘ、 || / / | | く\ __,| |__ rー――┘└―― ┐
__ / /  ̄ ̄ ̄ ̄ \ \/ / / / | | /\ ヽ冫L__ _ | | ┌─────┐ !
| レ' / \ 〈 / | | レ'´ / く`ヽ__| |_| |_ー' | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|`┘
| / / , \ く_/| | | , ‐'´ ∨|___ ___| r‐、 ̄| | ̄ ̄
/ / / / \/ | | | | _ / 〉 / \ | | |  ̄ ̄|
/ / ______ / / | | | l__| | / / / /\ \_ / \_| | ̄ ̄
/ / | | |/ | | |____丿く / <´ / \ // /\ `ー――┐
 ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ` `´ ` `ー' `ー───―'
298 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/14(金) 21:01:16 ID:R0LFMB+r
そうだよな。例え、いつも良作投下してくれる職人さんでも
やっぱり全てのキャラクターのエロパロなんて網羅するのは難しいし、
それぞれカップリングやシチュにも好みがあって当然だと思う。
だから、
>>296で12さんも言っているように
こちらから12さんや197さんら職人さんが萌えて創作意欲が出るような
カップリングやシチュエーションを上げていったらいいのでは?
って訳で、雷禅×食脱医師の女なんてどうでしょうか?
大人の恋愛・一夜の恋。雷禅、食脱医師の尻の下に敷かれていそうですが。
それから飛影×躯スキーとしましては
12さんが書かれる飛影×躯も、もっと読みたいです(*´д`*)
何度もガイシュツですが「躯のトラウマを二人で克服」話に(;´Д`)ハァハァキタイ
299 :
298:2005/10/14(金) 21:03:02 ID:R0LFMB+r
sage忘れちまった。スマソ
300 :
12:2005/10/14(金) 22:59:39 ID:LsmpSSiF
雷禅×食脱医師はすごくイイ!
一度書いてみたかった二人です。大人なりのそれぞれの事情や思惑が絡まり合い
ながらの逢瀬っていいですよね。
すぐにしは無理ですが、近いうちに是非。
飛影×躯もカタツムリの歩みですが、続いていくと思います。
雷禅×食脱医師、12さんの萌えの琴線に触れた様でヨカタ。
飛影×躯と共に期待しながらマターリ待ってます。
12さん応援保守
保守
305 :
12:2005/10/18(火) 00:46:14 ID:UxNg+6SC
応援保守があったので、頑張って書いてみた。
コエンマ×ぼたん・・・だけどきっと本編は次の日曜日になると思う。
とりあえず前フリということで。
306 :
12:2005/10/18(火) 00:48:46 ID:UxNg+6SC
「お疲れ様、じゃあお先ー」
「あ、おつー」
仲間たちの最後の一人が出て行ってしまうと、広い控え室は急にがらんとする。
疲れたな、と思いつつも、ぼたんはまだここを離れたくなかった。手にした飲み物の容器の
中には、中身がまだ半分以上残っていた。出来れば早いところ帰ってしまって、誰にも会わ
ずに済ませたいのだが、人間界で昔流行ったナンとかの法則に従えば、一番最悪な状況
下で最も会いたくない相手に出くわすのが普通らしい。
「全くねえ…あたしの柄じゃないよ、くよくよしてさ」
誰に言うでもない呟きが、急に冷えてきた空気を震わせる。
「ぼたん、いるか」
「えっ」
突然、今一番聴きたくない声が聞こえてきた。
ナンとかの法則が通用するのは人間だけではなかったようだった。
他に誰もいないことだし、渋々といった様子でぼたんは突然の訪問者にお茶を出した。当
然のように湯呑み茶碗に手を伸ばしかけた相手は、穏やかな物腰に人の悪い笑みをにた
りと浮かべている。
今はテーブルを挟んでいるからいいが近付かれでもしたらアウトだ、と本能がレッドカード
をちらちらと見せてくる。決してうろたえてはいけない。
ぼたんは平静を装って尋ねる。
「…どうしたんですか、こんなところに来て」
「うん、まあな」
「ここは男子禁制なんですよ。誰かが着替えてたりしたら言い訳出来ませんから」
「そうなのか?」
「そうなんです」
「知らなかったぞ」
「今憶えておいて下さい」
307 :
12:2005/10/18(火) 01:00:17 ID:UxNg+6SC
何だか腹の探り合いをしているようだ。大体、最高権力者でもある立場で、それを知らな
い筈がないではないか。これは明らかに、ここにぼたん一人しかいないことを分かってい
て入って来たのだろう。
それなら、あくまでとぼけて煙に巻いてしまえ。
やぶれかぶれで、ぼたんは腹をくくった。
下手をすれば貞操の危機でもあるのだから。
「あんまりふらふらと勝手な行動をなさらないで下さいね。フォローするのが大変ですから」
「そんなつもりはないぞ」
「もっと自覚を持って欲しいのです」
「自覚なら、あるぞ」
嘘をつけ、と心の中で吐き捨てる。
今は誰よりも美麗な姿をしているこの上司は、中身の幼稚さをそのままに今まで随分好
き勝手な行動をして周囲を振り回している。ぼたんもどれだけ翻弄されたか知れない。プ
ライベートでは絶対関わるまいと思っているのに、こうして相手のほうから来られては全く
お手上げなのだ。
「それなら、コエンマ様」
この際、あえて提言をしようとしたぼたんはその時、信じられないものを見た。
テーブル越しだからと安心していたのに、間近に見ているとうっとりとしてしまいそうな相
手が、何の前触れもなくテーブルを乗り越えて抱き寄せてきたのだ。
「えっ、あ、あの…」
「お前は本当に厄介だ」
「何、言ってるんですか」
ヤバイヤバい、と本気で思った。本能のレッドカードはもう慌てふためいて全開に出されて
いる。心臓も壊れそうにドキドキしているというのに、ぼたんはそれでも真正面から相手を
見据えていた。というよりも、目が離せなくなっていた。こうしていると、本当に変な気分に
なりそうだ。
「ぼたん、覚悟は出来てるな」
以前言ったことを決して忘れていない相手は、更にたちの悪い笑いを綺麗な顔に浮かべ
ていた。
308 :
12:2005/10/18(火) 01:01:12 ID:UxNg+6SC
とりあえず、今日はこれだけ。
ちなみにタイトルはまだ決まってません。
コエンマぼたんキタァ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゚゚・* !!!!!
12さんのSSは、地の文がきっちり頭に入ってくるので凄く読みやすい
これからぼたんちゃんがどう翻弄されていくか楽しみだ
12さんGJ!
日曜日まで待てそうにあえません。
指くわえて待ってます!
12さんのコエンマ×ぼたんキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
GJ!ぼたん貞操の危機に(;´Д`)ハァハァ続きワクテカしながら待ってます。
12さんお疲れ様です。
コエンマ×ぼたん大好きなので嬉しいです。
応援してるのでがんばってください!
いつもながら最高です(^-^)♪
12さんが来るまでのお目汚しかもしれませんが・・・
幽助×螢子です
その日、螢子は疲れてた。
新任早々、担任が決まり、それがいわゆる問題児クラスで
毎日悪ガキ相手に悪戦苦闘であった。
悪ガキなら幽助で慣れてる。と思っていたが、相手が違うからか
自分が変わったからか、どうも意思疎通ができない。
特に女の子なんかだと、優等生だった自分からは想像もできないことを
やってのける子もいる。
今日は、そんな子の一人がクラスの子を傷つけ、親御さんに謝ってきたところだ。
至らない自分にうんざりし、教師という職業に不安を感じ出していた。
マンションを見上げると、自分の部屋の窓が明るい。
家出る前に消し忘れた?いや、もしかして・・・・!
いそいで階段を上がり、ドアを開くと
「お帰りー。螢子」
そこには、ゲーム機片手にニカっと笑っている幽助が座っていた。
幽助の顔を見ると、いままで入れてた肩の力が抜ける。
「あんた。今日屋台は?」
「気分じゃないから、早く閉めちゃったー」
幽助は時々そんなこと言って屋台を閉める。
そして、今日のように勝手に家に上がりこんで、くつろいで
泊まっていって。
歯ブラシ、ゲーム機、プロレス雑誌
そんな風にしてるうちに螢子の家は幽助の物で侵食されるようになった。
「それはいいけど、部屋散らかすのは止めてよ。」
「まあまあ、それよりメシ食べるー?俺、さき食っちゃったけど。」
素直に嬉しい。
幽助の作ったご飯は美味しいのだ。
「おーい。食べねーの?」
「た、食べる!」
温めなおされたおかずが螢子の目の前に並ぶ。
ぐう とお腹が鳴る。
一口、食べてみる。
やっぱり美味しい。
気がつくと、夢中で食べていた。
「ごちそーさまっ。」
箸を置くとくくっと幽助が笑う。
「なによ?」
「いや、お前さーほんとうまそーにメシ食うな」
その言葉に、かああっと顔が熱くなる。
「本当に美味しいんだもの」
「いやいや、料理人冥利に尽きます。」
ニンマリと幽助が笑った。
二人で食器を洗う。
正確には 螢子→洗う人 幽助→拭く人 という形だ。
「なー。お前さー。最近暗くねぇー?」
その言葉に少しドキッとする。
「俺さー。妖怪専門の始末屋だって言ってんのに、
最近屋台で人生相談持ちかけられることが多いわけよ。」
「ふーん。」
その気持ちもわかる。
幽助のあっけらかんとした性格はどんな人にでも頼られる。
「で、少しは俺もお前の相談ぐらいには乗れるって。」
「別に、幽助に話すようなことなんてないわよ。」
幽助に愚痴をいいたくなかった。
愚痴ばかり言ってる疲れた女の姿を見せたくなかったのだ。
せめて、幽助の前ではしっかり将来を見据えてたときの自分のままでいたかった。
だけど
「ふーん。ならいいけど。」
「でも・・・・ 幽助 あんた中学のとき、先生のことどう思ってた?」
何気ない感じで、でもどうしても聞いてみたかった質問をしてみた。
「俺の話かー?・・・まあなあ、どいつもこいつも説教臭せー奴ばかりで
うっとーしいだけだったけどな」
「そっか。」
出した声が沈んでいるのが、自分でもわかった。
やっぱり、私が生徒にしてることってうっとうしいだけなのかな。
「おい、急にだまりこくってどーした?・・・・・・!」
急に幽助の顔がアップになったかと思うと、唇が触れた。
ポカッ
一秒の沈黙の後、つい殴ってしまった。
「バカ バカバカバカバカ」
ドンドンと幽助の胸を叩く。
その手をふいにつかまれ、抱きしめられた。
「お前さ。たまには俺に甘えろよ」
その言葉に気が緩みそうになる。
「なによ。わたしの心配の原因の8割は幽助なんだからね」
「まーそういわれるとなにも反論できないわ。」
そういって幽助は頭をかいた。
「じゃあ・・・ひとつだけ甘えさせて」
幽助の目を見上げた。
「わたしを優しく抱いて。」
「へ?」
ふっと笑って指を突き立てた。
「いつものように、自分本位じゃだめよ。わたしを大切にして。」
「おいおい、いつもって俺、そんなH下手かー?」
本当は幽助はいつも優しいんだけれど。
ぎゅっと螢子から抱きついた。
上を見上げて、ぽりぽりと鼻の頭をかくと幽助はまた口付けした。
今度は深く、舌をからませる。
「ふぁ・・・」
螢子が息を漏らす。
唇を離すと、幽助は螢子を抱いて、寝室へ運んだ。
今度は螢子のほうから、口付けを求めてきた。
潤んでいる目が色っぽい。
幽助は服の中へ手を滑らせた。
細い腰をなで、背中へ そして器用にブラジャーのホックをはずした。
窮屈におさめられていた乳房が幽助の手へはじける。
その胸は幽助の手に収めても余るぐらいだった。
こわごわと乳房を揉みしだく。
螢子の言葉を思い出して、いつものように強くできない。
「んん・・・」
螢子は声を出すのを嫌がる女だった。
歯をかみ締めて、小さく声を漏らす。
そんな螢子の崩れた姿をもっと見たかった。
悪戯心が、芽生える。
触る前にもう立ってしまっている、小さな突起をころころと転がす。
「もう固くなってるのな。螢子」
「バカぁ・・・」
ぱああっと螢子の顔が赤くなる。
乳首を下から上へ、上から下へ 丁寧にねっとりと舐める。
「やっ・・・ふぅぅん」
そっとスカートをたくしあげ、足をたどり、
その先の、小さな布をさする。
クリトリスが浮き彫りになっているのがわかる。
「ゆ・・幽助ぇ・・・」
「わかったわかった。」
そういうと、幽助は螢子をベットへ押し倒した。
そして、もう一度口に吸い付いた。
口付けるというよりは口を犯すように
そうしながら、足をぐいっと持ち上げた。
「ちょ・・・ちょっと幽助なにしてるのよ・・・」
「優しくして欲しいんだろ?」
そういうと、パンツをすべりおろし、あそこの部分が丸見えになった。
かちかちになったクリトリス
割れ目はもうぬるぬるになっている。
そっと、割れ目に舌を這わせた。
「やっ・・・汚いっ」
「なにいってんだよ。キレイなもんだぜ。」
ピチョピチョと音をたてる。
螢子は身を縮まらせ、目をつぶっている。
次は、指で触ってみる。
「あっ・やぁぁぁぁぁぁ」
クリトリスを触ると、いつもより大きな声で螢子が鳴いた。
(ここが、螢子のツボか?初めて知った。
やっぱり螢子の言うとおり、俺自分本位なのかなー)
執拗にクリトリスをいじると、螢子は幽助の腕を持ち、
身をくねらせた。
そのまま、もうベチョベチョになった秘部へ指をはわす。
ぬるっと簡単に指が膣へ入りこんだ。
「はぁんっ・・・」
よりいっそう螢子が乱れる。
「俺、限界かも・・・」
そういって、幽助はペニスをとりだした。
それはすでに、グロテスクに大きくなっていた。
「・・・・っ・・・」
螢子が言葉を詰まらす。
そのペニスをクリトリスへ激しくこすりつける。
「んっ! んんっ、んんんんんんっ!!」
思いっきり幽助の胸を螢子がつきとばした。
「おい、なんだよ。」
「お願い・・・つけて」
「へ?」
その言葉が一瞬理解できない。
「妊娠するのは嫌だからっ・・・」
螢子はいつも避妊にうるさかった。
子供なら育ててやるって言ってるが、絶対と言う。
今日はいつも以上に乱れた螢子に夢中になり、つい忘れてた。
「いやあ、すまんすまん」
いそいそとポケットのなかから、コンドームを取り出す。
「ん?」
ふと、心の中である願望が膨れ上がる。
「螢子ちゃーん」
ニッコリわらってふりかえる。
「なによ。早くつけてよ。」
螢子がキッとにらむ。
「螢子ちゃんさー。避妊したかったら、僕につけてくれないかなー?」
「はあああ?」
そういった螢子の顎を、ぐいっとつかむ。
「せっかくやる気だったのに、そがれちゃったし、
それぐらいやってくれてもいいと思うなー。」
そんなことを口では言いながら、ブツはまだビンビンだった。
「なによぅ・・・」
「別にいいけどねー?つけてくれなくても。僕はそのまま犯るだけだしー」
螢子の顔が一瞬で赤くなる。
「わ、わかったわよ!」
そういって、幽助の手のコンドームを取り上げた。
緊張しながら、幽助のペニスに手を触れる。
「優しくしてね。」
「うるさいわね!」
そういって虚勢を張りながらも、顔はこわばってた。
ゴムにペニスを当て、手をすべらす。
「うっ・・・・・」
大きく自分の物が反応しているのがわかった。
「こんなに大きいの、どうすればいいのよ。」
螢子が涙目で見上げる。
「しょうがないなー」
そういって、幽助は自分の手を、螢子の手に重ねた。
ゴムはひっぱられ、奥までペニスをしまいこんだ。
「ふぅ・・・」
螢子が安堵のため息をつく。
その螢子を無理矢理押し倒す。
「やっ・・・・」
焦ったように、ペニスを螢子の秘部へ押しあてる。
ズボズボと簡単にはまっていく。
膣の中の暖かさがペニスを通して感じられる。
ズッズッズッ
夢中で腰を振る。
それにつられて、螢子の乳房が激しく揺れる。
「あっ あっ は・やあああん」
「もっと鳴けよ。その姿が俺は見たいんだよ。」
「あ、ああっ!あああああん」
グッチョグッチョグッチョ
真っ暗な寝室では、音が良く響く
さらにピストンを激しくする。
「幽助っ・・・・ちょっと乱暴」
「ごめ・・っ止めらんね・・っ」
ビクッビクッ
螢子の体が痙攣する。
「幽助ぇ・・・・」
名前を叫びながら、螢子は絶頂に達した。
それとほぼ同時に、幽助も白い欲望を吐き出した。
「ねえ、幽助?」
螢子は幽助の背中を抱きしめた。
「ん?」
「やっぱり、幽助が変わったのって、幻界さんや蔵馬君たちと出会ったから?」
「なんだよそれー。俺変わった?」
「変わったわよ。前なんか他人なんか寄せ付けない雰囲気だったのに」
んーと幽助はちょっと考え込むと、照れくさそうに口を開いた。
「んーまあ、それはあれかな。俺の通夜みてからかな。」
「お通夜ぁ?」
「うん。霊体になって、俺なんか死んでも誰も悲しまねーよ。とか思ってたらさ、
おふくろとかお前とかはぼろぼろと泣いちまうしよー。
・・・あと竹中のセンコーも泣いてた。
なんかあんなのをみちまうと、
こんなどーしよーもねー俺でも思ってくれてるやつがいるんだ。と思ってよ。」
「ふーん」
「あっ。なんだよ。笑って。あーもうぜってーこんな話お前にしねー」
「ふふふ。幽助」
「あん?」
「ありがと」
【完】
以上です。
前置きが長かったり、エロの部分が拙かったり(いやそれ以外もか?)
正直、エロパロとしてどうなんだ。って感じですが、
とりあえず、自分の想像する幽助と螢子の関係はこんな感じです。
キタ━━━━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━━━!!!!
幽助×螢子 GJ!
テンポのいい話の進め方だし、何より悩む螢子タンがハァハァ
なんだかんだ言って強気の幽助も、萌えました!
螢子ってこんな萌えキャラだったんだな(゚∀゚)
ゴムつけるシチュにハァハァしました。GJです!
>>314さん激しくGJ!!幽助×螢子、凄く(・∀・)イイ!
“お目汚し”だなんてとんでもないです。二人のらしさが良く出てますね。
12さんのコエンマ×ぼたんの新作も前フリが投下されたし、
もしかして今週はSS投下黄金週間?嬉しすぎる(;´Д`)ハァハァ
突然の萌え再発で探してみたら良スレ(*´Д`)ハァハァ
けーこ可愛いよけーこ、不遇系ヒロインだったのに萌えキャラだ
幽白って結構萌えツボ多かったんだなーと今更思い出したよ
左京×静流とか戸愚呂×幻海とか飛影×躯とか雷禅×醜女のねーちゃんとか
大人萌えだ。
GJ!
>>314さんマジGJ!!
これだよ…俺ずっとこれが見たかったんだよ…最高
教師になった大人螢子激萌え!
幽螢のノーマルカップリング、
大好きだったんですけどなかなか同士がいなくてねえ…
堪能しました、有難う!
躯(素顔)と螢子(原作後半)萌えだった俺には
完全版の表紙は寂しすぎるよ…
どうでもいいはなし。
螢子、原作の前半から中盤にかけては「中学生らしい可愛らしさ」だったけど、
後半では一気に大人っぽくなったよね。本当美人さんになった。
それから、素顔の躯も凄くきれいで大好きだけど、
最近覆面姿の躯もカワイイ、ギョロ目ハァハァとか思うようになった私は変ですね( ´∀`)
幽助×ぼたんって需要ありますか?
なんか想像して興奮してきた>幽助×ぼたん
長編映画の2人が良い雰囲気だったので色々妄想しました
幽介×ぼたん需要あります!
DBの悟空とブルマみたいな関係だなーと
思ってます
338 :
12:2005/10/23(日) 21:45:56 ID:3kMdNQP5
幽助×ぼたんで盛り上がっているところで済みませんが、コエンマ×ぼたんを
投下します。
339 :
闇の中の恋:2005/10/23(日) 21:53:03 ID:3kMdNQP5
「…何のことですか。あたし知りませんから」
こんな、誰もいない場所で抱き締められていると何だか変な気分になってきそうで、ぼた
んは必死で腕を伸ばして突っぱねようとするのだが、相手の力は少しも緩まない。こんな
危機はもちろん初めてのことで、どうしていいのか分からない。
「あの、コエンマ様…」
「どうして、逃げようとする」
「…?」
何故なのか、ここまで大胆な振る舞いをしているというのに、コエンマは妙に苦々しい顔
をして見下ろしている。
「お前という奴は、本当に苛立たしいぞ」
「…言っている意味が分かりません」
「そんなに儂が嫌いか?」
「ですからそういう問題ではないと…」
「うるさい!」
何が気に障ったのか、突然声を荒げたコエンマは畳敷きの床にぼたんを押し倒した。身
動き出来ないようにがっちりと両手首を押さえられて、ぼたんはただ目を丸くして見ている
だけだった。
「あ、あの…?」
「お前の心の中を今ここで見せろ、ぼたん」
コエンマは怖いほど真剣な目をしながら、頬を乱暴に撫でてくる。あまりのことに逃げよう
という気もなくしてしまい、ぼたんは訳が分からなくなって混乱していた。別に焦らすような
素振りをした憶えもないし、そもそも立場が違い過ぎてそれは有り得ない。
ほんのわずかな恋心は芽生えているが、それが故にただの片思いで終わる筈だと思っ
ている。
それなのに、コエンマが何もかも掻き乱すような言動をしてくるのだ。せっかく互いの立場
や事情を考えて思いを隠しているというのに、これでは何にもならない。
340 :
闇の中の恋:2005/10/23(日) 21:53:48 ID:3kMdNQP5
「嫌です、あたし」
「何故だ」
「どうしても、あたしを失業させたいんですか?コエンマ様…」
一世一代の演技力を駆使して、切ない表情を繕いながらぽろりと涙を零して見せた。
普段そんなことをしたことがないだけに、自分でもよく出来たと思う。下手に煽られてうっか
り本心を出してしまうより、適当にズレたことを言った方がいいこともあるのだ。今がきっと
その時なのだと思うから。
予想通り、見せたことのない涙に相手はうろたえたようだ。頬に当てていた手で涙を軽く
拭った。
「何を泣いている」
「コエンマ様が悪いんです…」
その時、うまくいったと思っていたぼたんにとっては運の悪いことに、室内の照明がぱっ
と消えて途端に薄暗くなった。どうやら消灯の時間が来たのだろう。何もこんな時に、と
悔しくなる。
「この間も言ったであろう?失業などはせんぞ」
「それじゃ、あたしが納得出来ないんですってば」
薄暗い室内でも、ぼたんの白い着物がぼうっと淡く発光するように見えた。まるで今にも
展翅されようとしている蝶のようだった。
「あたし、この仕事は大好きですから。デマだとしても決まりごとであればちゃんと従いた
いんです」
「お前も、大概愚かだな」
「ええそうです、あたし…」
薄い着物の襟元がぐいっと開かれて、直接乳房に触れられる。
「もう黙れ」
言葉を続けようとした喉が突然ひくりと痙攣した。強引に唇が重ねられて、何も言えなく
なってしまう。本当は色々とこの際言いたかったこともあったのに。
12さん、待ってましたよ!
コエンマ、強引でドキドキです。
続きよろしくお願いします
342 :
闇の中の恋:2005/10/23(日) 22:24:32 ID:3kMdNQP5
ずるい、本当にずるい人だ。
千切れるほど強く舌を吸われながら、ぼたんは薄く目を開く。
こんなことをされながら、驚くほど気持ちは醒めているのが不思議だった。
きっと、この天真爛漫な上司はぼたんの恋心に気付いているのだろう。だからこれほどま
でに素早く無体なことが出来るのだ。今こうしている状況は、そうでもないと成立しない。
けれど、もっとずるいのはなし崩しでもいいと思っている自分の方だとぼたんも分かってい
る。そうやって全部の責任を押し付けようとしているのだ。被害者を装って。
「…ぼたん、どうして見せない」
唇が離れても、苛立ちが更に激しくなったような声が降る。暗さにようやく目は慣れてき
ていたが、まだぎらぎらとした目の光しか識別出来ない。
「嫌だって、言ったじゃないですか」
「そんなに嫌か」
「嫌、です」
それで諦めてくれると思っていたのに、しゅっと音がして、帯が器用に解かれた。暗がり
の中で、着物よりも白いぼたんの華奢な体が晒されていく。曖昧に映し出される曲線が
男の嗜虐心を煽るのだろうか、急に声すら漏らさなくなる。
「やっ…」
今、明るくなくて良かったと心から思った。静かな室内の空気がぴりっと緊張しているの
が分かる。ごく間近で低く笑う声がするだけの、一触即発の様相に今あるのだ。
「…ほう、なるほど…目に見えるものはやっと分かった。さて」
「な、んですか…」
「見えないものも見せて貰おうか」
凄まじくぎらつく目がにやっと笑む。
「だから…」
ああ、もう何も抵抗出来ない。
そう思えるほどに、ぼたんはぎりぎりまで追い込まれていた。恋心なんか持ったばかり
にこんな目に遭うのなら、最初から何も知らなければ良かった。それでいながら、恋を
したが為に今その相手と抱き合っている事実そのものは嬉しいのだ。
そんな相反する思いが胸の中を激しく駆け巡っている。
343 :
闇の中の恋:2005/10/23(日) 23:10:41 ID:3kMdNQP5
「うっ、うぅっ…」
袖も抜かれて、着物はすっかりただの敷き布にされていた。柔らかな膨らみの片方は
大きな手で揉まれ、もう片方は時折歯を立てられながら舐められている。もう逃れる気
もなくなって、されるがままになりながら、ぼたんは極力声を殺していた。消灯したとは
いえ、いきなり誰がが入ってくるかも知れない。そうなったら言い訳すら出来ないのだ
から。
「もっと、声を出せ」
暗くて良く分からないのだが、乳房にはきっとまた痣のように鮮やかな跡が増えてい
ることだろう。そういう悪趣味な戯れが好きなのだとは知らなかった。
「嫌、ですから…」
「ほう、そうか」
全ては自分の手の中のことだと尊大になっているコエンマが、また笑う。抵抗さえしな
くなった白い蝶をこれからどうやって蹂躙しようかと、舌舐めずりしている様子なのが腹
立たしい。けれどわずかな期待もある。
そんな思いがある時点で、既に共犯なのだ。
おそらくは、同じぐらいずるいこの男も自覚しているだろう。特別口にしないだけで、そ
んな暗い意識を共有しているのが不思議だった。
闇の中で成就しようとしている恋は、闇に似合う思いしか生まないのだ。別にそれでも
いい、とぼたんは諦める。
そうでもしないとこの時を迎えることなど出来なかったのだから。
「ぼたん」
熱い声が耳元で響く。
いやらしく腿を撫でていた手がいきなり膝裏を掴んで大きく開かせてくる。一番隠してお
きたい部分があらわにされて、さすがにぼたんもうろたえた声を出す。もっと明るい場所
だったら、きっと真っ赤な顔をしていることだろう。
「何、するんですっ…!」
「…面白いな」
「離してっ、下さい…」
「だから、黙れ」
苛立ちがまた頭をもたげたのか、鋭い声を発してコエンマは制するように薔薇のような
薄い襞で構成されている部分を舐め始めた。きっとこれまでのことで濡れているのを悟
られている。そう思っただけで、体が一気に燃え上がる。
「あっ、嫌っ…」
344 :
闇の中の恋:2005/10/23(日) 23:53:10 ID:3kMdNQP5
「うっ、うぅっ…」
袖も抜かれて、着物はすっかりただの敷き布にされていた。柔らかな膨らみの片方は
大きな手で揉まれ、もう片方は時折歯を立てられながら舐められている。もう逃れる気
もなくなって、されるがままになりながら、ぼたんは極力声を殺していた。消灯したとは
いえ、いきなり誰がが入ってくるかも知れない。そうなったら言い訳すら出来ないのだ
から。
「もっと、声を出せ」
暗くて良く分からないのだが、乳房にはきっとまた痣のように鮮やかな跡が増えてい
ることだろう。そういう悪趣味な戯れが好きなのだとは知らなかった。
「嫌、ですから…」
「ほう、そうか」
全ては自分の手の中のことだと尊大になっているコエンマが、また笑う。抵抗さえしな
くなった白い蝶をこれからどうやって蹂躙しようかと、舌舐めずりしている様子なのが腹
立たしい。けれどわずかな期待もある。
そんな思いがある時点で、既に共犯なのだ。
おそらくは、同じぐらいずるいこの男も自覚しているだろう。特別口にしないだけで、そ
んな暗い意識を共有しているのが不思議だった。
闇の中で成就しようとしている恋は、闇に似合う思いしか生まないのだ。別にそれでも
いい、とぼたんは諦める。
そうでもしないとこの時を迎えることなど出来なかったのだから。
「ぼたん」
熱い声が耳元で響く。
いやらしく腿を撫でていた手がいきなり膝裏を掴んで大きく開かせてくる。一番隠してお
きたい部分があらわにされて、さすがにぼたんもうろたえた声を出す。もっと明るい場所
だったら、きっと真っ赤な顔をしていることだろう。
「何、するんですっ…!」
「…面白いな」
「離してっ、下さい…」
「だから、黙れ」
苛立ちがまた頭をもたげたのか、鋭い声を発してコエンマは制するように薔薇のような
薄い襞で構成されている部分を舐め始めた。きっとこれまでのことで濡れているのを悟
られている。そう思っただけで、体が一気に燃え上がる。
「あっ、嫌っ…」
345 :
闇の中の恋:2005/10/23(日) 23:55:38 ID:3kMdNQP5
長い舌が奥まで入り込んできては悪戯をする。指先がそこを開いて溢れているものを
掬い取り、慣らすように愛撫を続けている。未知の感覚とはいえ、女と生まれた以上は
与えられるものに対する反応など誰でもそう変わることがない。ぼたんは脱がされた着
物を引き寄せて、声を殺す為にぎりっと噛んだ。
「ン…」
「強情っ張りめ」
そうは言いながらも、望む通りの反応があったことが嬉しいのだろう。わずかに上機嫌
な響きの声が戻っている。一番感じてしまうことを執拗に繰り返されて、意識はとうに
限界に来ていた。心臓は激しく高鳴って今にも壊れそうで、乳房が呼吸に合わせて上
下しているのが自分でも分かる。
「あたし…もう…」
きっと、今なら何でも口走ってしまいそうだった。けれど、それより先にコエンマの方が
己の欲情に従って硬く隆起しているものを押し当ててくる。濡れきっている部分は先端
を容易に呑み込んで、更に奥へと促すように蠢いているのが分かって、また体が熱を
帯びた。
「ひっ、嫌、ですっ…」
「可愛いぞ、ぼたん」
欲情に呑まれた声がじわりと耳を焼く。その響きが快くて、ほぼ無意識のままぼたん
はしっかりと腕を回してしがみついた。そのすぐ後に、硬くて熱いものが体の奥を傲慢
なまでに切り開くのを感じた。瞬間に、ものすごい衝撃で息が止まりそうになる。
「くっ…」
「キツいな」
「あぁ…ふっ、ひどい…」
まだ入れられただけなのに、奥がじんじんと熱く痛んでいる。薄目を開けて睨んで見
せても、支配した気になっている男は平気な顔をして頬を撫でてくる。
「もう諦めろ。その代わり愉しめ」
男の傲慢さを剥き出しにして、コエンマは腰を使い始めた。ぴっちりと繋がれた部分
が、濡れきっているにも関わらず引き攣れたような激しい痛みを伴っている。それが
たまらなくて声を殺すのも忘れかける。激しく身を捩って抵抗するように喘ぎ始める。
「はっ、うあっ…嫌、いや…」
たった今、ぼたんは純潔を失ったばかりなのだ。
346 :
闇の中の恋:2005/10/24(月) 00:28:50 ID:OSDe+v+r
「…だから嫌だって言ったじゃないですか」
ようやく呼吸が落ち着いて、まともに口が聞けるようになってから恨みがましい目を向
けても、欲しいものを手に入れて気が済んだらしい相手は平然としている。
「嫌だと?どの口が」
「もちろん、この口です」
いつもの口調で応戦しながらも、きちんと着直した着物の下から肌に無数についた跡
が透けているに違いないと暗い気分になる。明日からどうすればいいのだろう。そん
な現実的なことをもう考えて頭を悩ませている。
「ぼたん」
急に馴れ馴れしくなったコエンマが、二人きりなのをいいことに肩を抱く。
「あまり真面目に考え過ぎるな。お前は以前のまま仕事を続けていればいい。もし支
障があれば計らってやろう」
「そういう特別扱いは嫌いなんですってば!」
ぷいっと拗ねて横を向くのは、もちろんそういう振りをしているだけだ。それをコエンマ
も分かっているのか頭を撫でる。
今夜は流されてしまったけれど、しばらくはこのままでいた方がいい。あまりにも互い
の立場が違い過ぎるからこそ成就しても素直に喜べない恋だった。そんな風に健気
なことをぼたんは考えているというのに、目の前の男は至って能天気だ。
「まあ、もし失業の憂き目に遭ったとしても、儂のところに来ればいいことだ」
「お断りします。面倒そうだし」
「面倒か」
「色々と背後関係や周囲の思惑がありそうじゃないですか」
「はは、そうかもな」
ぼたんは溜息をついた。全くこのお坊っちゃんには困る。自分の周囲のことが全然見
えていないのだ。うかうかと恋に煽られて言いなりになったら大変なことになりそうで、
それがこの先のことに足止めをかけているのだ。
けれど、今はきっとそれでいいのだろう。まだ何もかも始まったばかりなのだ。
まずは有り得ないことだと思っていた恋が叶った事実が、ぼたんを少しだけ浮かれさ
せている。
終
347 :
12:2005/10/24(月) 00:31:32 ID:OSDe+v+r
途中、二回送信してしまいました。ごめんね。
とりあえず、二人はヤっちゃいましたということで。多分、この様子だとまだ
続きます。
今回は思ったよりも時間がかかってしまいました。
12さんのコエンマ×ぼたん続編キタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!
激しくGJ!!週末本当に楽しみにしておりました。大作でしたね、本当に乙です。
状況表現や心理描写が巧みで、思わず作品の中に引き込まれてしまいました。
戸惑いながらも受け入れてしまうぼたんに(;´Д`)ハァハァ
投下を待ちつつ日にち超えしました。
ぼたんの言葉と心と身体は裏腹という設定にドキワク(*´д`*)
12さんいつもながら乙です。
コエンマ×ぼたんの展開はまだ続くということで
次回作も長い目で待ってます
12さんお疲れさまです
本当にすてきな作品ありがとうございました
次回作も楽しみにお待ちしております
12様キター!!すっげぇ心待ちにしておりました
ぼたん、ぼたん可愛い…
強引なコエンマがまた萌え。
待ってた甲斐がありました(^-^)♪これからも頑張ってください★
12さんや197さん、314さんのような素敵職人さんのおかげでスレが潤います(・∀・)アリガタイ!
354 :
12:2005/10/27(木) 01:00:10 ID:MlLLzc8O
こんばんわ。
「闇の中の恋」の後日談に当たるものを、つい書いてしまいましたので投下
します。
「闇の中の恋」を待って頂き、投下に喜んで頂いた方々に捧げます。
355 :
其の後:2005/10/27(木) 01:01:49 ID:MlLLzc8O
ぼたんの苦難は全然終わっていなかった。
あれ以来、無視に近い反応に徹して自衛しているというのに、コエンマの方は堪える
どころかいちいち物言いたげな顔でにやりと笑みを返すだけだ。下手に何か言おうも
のならこちらの方が薮蛇になる。
そういう駆け引きめいたことは性格的にとても苦手だというのに、どうしてこうなったの
だろう。
そんな自分の運の悪さを心の中で嘆きながら、ぼたんは昼間の休憩時間のお茶をの
んびりと啜っている。今こうして寛いでいる控え室の隅で、この間あんなことが…。
何だか他のみんなもいる時にはあまり思い出したくなくて、ついつい油断していると思
い浮かべてしまう数日前の情景を必死で頭から追い出した。
「ぼたん、ぼたんったら」
さすがにどこか様子のおかしいぼたんに、仲間たちは不思議な顔をしてそーっと覗き
込んでくる。
「え?あはは。ちょっと最近調子狂っちゃっててさ。木の芽時だからかねえ」
「それ、春先の言葉だけど」
「いやいやいや、今のあたしはそれぐらい変ってことで。あははは」
本当に、どこかおかしくなっている、とは思っている。そんなわざとらしい誤魔化し方し
か出来ないのがいい証拠だ。
「ぼたん、いるー?」
仲間の一人が入り口で声を上げる。
「コエンマ様がお呼びよ」
「あー…あたし、また何かやらかしたかもね」
突然、災難が来た。
356 :
其の後:2005/10/27(木) 01:03:36 ID:MlLLzc8O
「お呼びでしょうか、コエンマ様」
重々しい扉を開くと、奥で今一番会いたくない上司が頬杖をついてにやにやとこちら
を見ていた。こんな時でも白々しくなるほど綺麗な姿に、つい見蕩れそうになる。
「まあ入れ。気兼ねすることはない」
「…ええ、分かりました」
扉が閉まる前に、誰かが入ってきてくれないかと少しは期待したのだが、生憎その
気配もない。哀れにも、ぼたんは密室状態の中に置かれてしまったのだった。
「ぼたん」
「な、んでしょうか」
反射的に身が竦んでしまう。
「何だ、その警戒は」
「そりゃあ、そうでしょう」
「愚か者、儂は最近のお前の仕事振りに渇を入れようと思っただけだ」
「渇、ですか」
多少苛々とした様子で、コエンマは机を指で叩く。そのヒステリックな音が耳障りに
響いた。
「最近、日報の書き落としが多過ぎるぞ。昨日は人数と時間を間違えていたな。お
前らしくもない」
「誰のせいですか」
「ん?」
「誰のせいですかって、言っているんです」
ぼたんは思わず大きな声を上げていた。この間のことがあってから、何もかも狂いっ
ぱなしだ。誰にでもある何でもない出来事だと思い込もうとする分、色々と無理が生
じてきていて、それが余計に歪みを生み出していたのだ。
「おまえ自身の弛みのせいだ。それぐらいは分かれ」
だが、コエンマはにべもない。それが更に不機嫌を募らせる。
357 :
其の後:2005/10/27(木) 01:18:25 ID:MlLLzc8O
「ええ、それは自覚しています。けど」
「けど?」
「あんまりひどいじゃないですか、あんなことしておいて」
自分のプライドにかけて、それだけは言わないようにしたかったのに、この流れがあ
まりにもハマり過ぎていて言わずにはいられない雰囲気になっていた。誘導された、
と気がついたのはその直後のことだ。
あくまでも冷静さを崩さずに唇の端を上げて笑う小憎らしい上司に、ぼたんは一瞬殺
意を覚えてしまう。それほどに見事な誘導の仕方だった。
「ほう、ではお前はあの出来事の始末を要求するのか?」
「いえ、別にそこまでは」
「いいだろう。要求を呑んでやる。さあ、来い」
椅子から立ち上がり、あまりにも魅惑的に片手を差し出してくる姿が一瞬にしてぼた
んを捕らえてしまった。子供のように無邪気でいて、天才的な策略家のこの麗しい上
司を、どうしても憎む気にはなれない。それどころか、望むままに誘導されたことを嬉
しいと思えてしまうのだ。
「あたしには、分かりません…何故、あたしなんですか」
「分からんか。愚か者」
正直を言えばわずかにまだ迷いもある。それを一蹴するように強い言葉が決心を促
していた。流されても、いいのかも知れない。
ぼたんは迷いながらもふらふらと差し出された手を取った。
終
358 :
12:2005/10/27(木) 01:22:19 ID:MlLLzc8O
最初は少しエロくするつもりだつたんだけど、全然エロくなりませんでした。
反省しながら今夜はもう寝ます。
12さんいつも乙です。後日談イイですね。
コエンマ策士だなーw上手く引っかかるぼたんがまた可愛い。
今後の二人の関係を暗示しているような描写もイカス。
コエンマ、悪人ですねー。
結局乗ってしまうぼたん萌えヾ(≧∇≦)ノ"
エロ展開はまたいつかあるんでしょうか?
乙でした!
362 :
12:2005/10/28(金) 22:53:52 ID:RlICtOfv
皆様、どうもです。
続きはまた日曜日に書く予定にしています。何だか一応の決着をつけるまでは
自分でも気になってしまっているので。
エロの方も頑張りますので、また読んで頂けると嬉しいです。
12さん乙です!
コエぼた大好きなんで、この間の週末も楽しみにして待ってたんですが
続きが!そしてまた更に続きを?!
すごい楽しみです!
12さん、期待しております。
策士コエンマと純情ぼたんの絡み、とても楽しみです。
12さん乙です〜
今週仕事がめっちゃキツかったのですが、
12さんの作品でがんばって乗り切れました!
明日の作品も楽しみにしておきます。
366 :
12:2005/10/31(月) 00:08:34 ID:fGwvVqa6
こんばんわ。
頑張って書き上げましたので投下します。
367 :
恋愛ジグソー:2005/10/31(月) 00:09:25 ID:QsWFlm+q
「ぼたん」
「離して、下さい」
入った途端に後ろから抱き締められて、またかとぼたんは目眩を起こしかけた。一度
安易に許してしまったばかりにこの通りだ。
たとえどんなに好意を持っていたとしても、こんな風に無理やりされるのなら同意のな
い強姦と何も変わりがないというのに、それでもしたいのだろうか。男特有の醜い本質
を見てしまったような気がして、ぼたんは溜息をつく。
諦めからふっと体の力が抜けたのを感じ取ったのか、残酷な蜘蛛のように獲物を絡め
取ってしまった狡猾な男が満足そうに笑った。
普段コエンマが仕事をしている部屋には迂闊に入ってはいけない。
以前の何度かの経験でぼたんはひどく警戒していた。けれど呼び出されれば仕事絡
みの話も当然あるし、上司である以上は決して無視は出来ない。自分の立場を分か
っていてそれをするのは卑劣だ。そんな望まざる厄介な関係に陥らせてしまっても、
獲物として縛っていたいのが男の性というものなら、それは随分歪んでいるとしか言
い様がない。
淡い片恋はとりあえず叶ったとはいえ、こうしてどろりと澱んだ現実に汚されているの
だ。何が、そして誰が一体正しいのだろうかと混乱してもいる。
襟元から手を差し入れられて、息を呑んだ。
「あたし、まだ仕事が…」
「そんなものは、儂が取り計らってやる。だから今日はここにいろ」
「嫌です、そんなこと、嫌!」
「強情を張るな、ぼたん」
両手で乳房を緩く揉まれ、耳を甘噛みされながらも、今日は流されたくないとぼたん
は必死で耐える。こんなことを続けていたら決して報われないままなのは分かってい
た。それでは余りにも惨めに過ぎる。
「お前も、ここに来る以上はその気持ちがあったのだろう?ならば余計なことは一切考
えるな、虚勢も張るな。らしくない振る舞いなど許さんぞ」
美しくも傲慢な支配者となった男が、舌舐めずりをしながら低く笑った。その声がひど
く耳障りに聞こえて、恐ろしさにぼたんはぞくりと身を震わせる。
368 :
恋愛ジグソー:2005/10/31(月) 00:10:19 ID:QsWFlm+q
これまでの経験でもう知っていた。
こうなってしまったら、この美貌の上司は蹂躙し尽くして気が済むまでここから帰して
はくれないだろうということを。それほどまでに欲情しているのを布地を通して肌身で
感じている。
怖いと思う反面、それほどまでに激しく求めてくれることを待ち望んでもいた。互いの
気持ちは相変わらず擦れ違ったままで、もどかしいのだが。
支配者の命令はこの密室では絶対的だった。
逆らうことなどこれっぽっちも出来ずに、ぼたんは壁にもたれながらおずおずと着物
の裾を開いた。すらりと伸びた足が痛々しいほどに剥き出しにされる。
「もっとだ。そこが良く見えるようにしろ」
椅子に座り、蛇のように鋭い視線をぎらぎらと光らせながら、コエンマは更に追い討
ちをかける。下着など着けていないのだから、これ以上たくし上げたら隠しておきた
いところがあらわになってしまう。
さすがにそれだけは出来ずに躊躇していると、わずかに苛ついたような声が飛んで
きた。
「早くしろ。それとも、手伝って欲しいか?」
「…!」
そんな恥ずかしいことはされたくない。思い切って臍の下あたりまで裾を上げてやる
と、目を合わせたくなくて反射的に横を向いて目を閉じた。帯だけは辛うじてそのま
まだったが、着物は襟元も裾も完全に開ききっていて隠したいところは全部丸見え
になっている。こんな風に辱められるなんて思ってもみなかった。
最初から全部脱がされるよりも、ひどく淫らでそそる姿に違いない。
「ほう…」
蛇のように執拗な目に、ぬらりとした淫欲が滲んでいた。
「やはりそうしていると、美しいな。普段のお前からは想像も出来ないだけに、なか
なか悪くない」
くすくすと笑う綺麗な顔がこの上なく邪悪に映った。こんなに残酷なことを指図する
男に恋をしたのだから、仕方がないことなのだろうか。
369 :
恋愛ジグソー:2005/10/31(月) 00:12:16 ID:QsWFlm+q
じっくりとぼたんのあられもない姿を眺めた後、ようやくコエンマは立ち上がって頬
を撫でてきた。腹立たしいほど優しい手つきで。
間近で見られているだけでも息が上がりそうになっていただけに、少しは安心した
のだが、これだけで終わらせてはくれない男だ。
「…もういいぞ。裾から手を離しても」
「ひどい人ですね、コエンマ様」
髪を撫でられても、気休めにしかもう感じられなくなっていた。
「何がだ」
「あたし、こんなのは嫌です。これじゃ、只のオモ」
オモチャじゃないですか。
そう言おうとした唇が突然塞がれる。強引に入り込んできた舌がぬめぬめと口腔
内を這い回っては息もつかせぬほどに蹂躙していく。それが苦しくて逃れようとし
ても、がっちりと手が頭を押さえつけていて叶わなかった。
「…ん、ぐっ…っ」
まるで怒っているような仕打ちに身が竦む。
「お前という奴は、まだ分からんのか」
細い糸を引きながら唇が離れると、驚くほどに真摯な目が覗き込んでいたことに
気付く。
「何の、ことですか」
「儂がこんなことをたやすく仕出かすと思うのか」
「…そんなこと、知りません…」
「愚か者めが…」
やはり怒っているようだ。一体何が勘に障ったのだろうかと考える暇もなく、男は
足元に膝をついて屈み込み、晒されたままになっていた敏感な部分に深く顔を埋
めてきて舐め始めた。
「やだっ…」
信じられないことをされて、一気に肌が染まる。
「騒ぐな」
370 :
恋愛ジグソー:2005/10/31(月) 00:13:04 ID:QsWFlm+q
短い叱咤で抵抗を封じると、コエンマは柔らかく鮮やかな薔薇のように男を誘って
いるそこに更に舌を這わせ、指先でも秘匿された奥までを暴きたてるかの如く開
いていく。直に目にしているのなら、もう知られていることだろう。すっかり濡れて
しまっているのを。
どうしていいか分からずに、ぼたんはただ半泣きになりながら立ち尽くすしか出来
ずにいた。
「ひっ…、も、うっ…」
熱く柔らかいもので舐められている刺激で溢れてくる蜜の量が増えているのだろ
う、啜り上げるような濡れた音がそこから卑猥に響いてくる。乳房までを紅色に染
めながら、そんな極限の恥ずかしさに耐えているぼたんを、男は時折面白そうに
見上げていた。
指先が敏感さを増している内部に入り込んで抉りながらも、興奮して硬くなってい
る薔薇色の核をいじる。突然の悪戯に驚く反面、それがひどく感じてしまって、た
まらず高い声を上げてしまう。
「あっ、あぁっ…あああっ…!!」
「いいぞ、そのままいけ。ぼたん」
内部を突いてくる指は速度を増している。このまま達してしまいたくないのに、体
だけが激しく追い上げられてぼたんは頭が真っ白になる。
「あんっ、もう、もうダメですっ…!」
快感から逃れようと壁に頭を擦りつけるようにして、とうとう男の目の前で絶頂を
迎えてしまった。溢れ過ぎて啜りきれなかったと見える熱い蜜が、とろりと腿を伝
って落ちてきた。
「…あ…」
まさかこんなことまでされるとは思ってもいなかったぼたんは、放心状態のまま
息を荒げて目を閉じていた。そんな放埓な姿に男がそそられない筈がない。これ
だけ煽って言うなりにしてきた男が満足そうにほくそ笑む。
「コ、エンマ様…」
「甘露だったぞ、ぼたん」
濡れた唇をぺろりと舐めながら立ち上がった男は、最初から募らせていた激しい
淫欲をいよいよ剥き出しにしてくる。
「そろそろ儂も愉しませて貰うぞ」
「あぁ…もう、許して下さい…お願いですから」
371 :
恋愛ジグソー:2005/10/31(月) 00:14:11 ID:QsWFlm+q
「何を言うのだ。これから愉しめるのだろう?お前も、儂も」
「うっ…」
これは悲しいという感情なのだろうか。涙が零れる。
「だから泣くな」
涙なと全く意に介さない態度で、コエンマは真っ白な足を抱え上げるとグロテスク
なほどに張り詰めきったものを、濡れそぼった場所にぐっと押し当ててきた。衝撃
で一気に意識が覚醒する。
「嫌あっ…!」
男の欲望そのものの肉棒は今まで以上に大きくなっているというのに、刺激を受
けてもっとたくさんの快感を欲していたらしいそこは、すんなりと侵略してくるもの
を 歓喜するように呑み込んでいく。蕩けてぬるぬるになっているせいで、あまり
にも抵抗がなくて驚くほどだ。
奥まで突き入れてしまうと、安堵したような吐息が頬にかかる。
「ほう、よく濡れているからだな」
「そんなこと、言わないで下さい…」
「儂には分かるぞ、感じているのだろう?それならば愉しむだけだ」
もうどんな言葉も卑猥にしか聞こえず、ぼたんは激しく揺すり上げられながら目を
伏せていた。それなのに、快楽を感じてまた体は燃え上がってくる。肌が上気し
て美しく染まる。最初はただキツくて痛かっただけなのに、今は無性に熱くて痺れ
るような感覚に変わってきているのが不思議だった。
これが女の感じるものなのだろうか。
「ぼたん、可愛いぞ…」
いつもの冷静な口調とはまるで打って変わり、感極まったような口調で囁く声が
熱を帯びる。中を乱暴に掻き回し、突き上げてくるものの早さも次第に激しくなっ
ていやらしい濡れた音も高く響いていく。そのリズムと鼓動がぴたりと重なってい
るようで、余計に辛い。
「いやっ、ああぁん…!」
一度達しているせいか、感度が上がっている。既に朦朧としながらぼたんは崩れ
落ちそうな体を支える為に、目の前の男の背にそろりと腕を回した。
「ぼたん、ぼたん…もっと愉しめ。お前の辛い顔は見たくない」
「あうっ、はぁああっ…」
激しい突き上げに感じ入ってしまい、もうぼたんは二度目の頂点を迎えそうにな
っていた。
372 :
恋愛ジグソー:2005/10/31(月) 00:15:13 ID:QsWFlm+q
「ああ、あっ、あぅ…」
断続的に叫ぶ声と共に、内部が強く締まるのだろう。男がその度に息を詰めるの
を感じ取りながら、もう限界に差し掛かっているぼたんは必死で繋ぎ止めている
意識を手放そうとしていた。
「あぁ…もう、コエンマ様っ…!」
「いいか、ぼたん」
「…ん、ぅうう…いい…」
「嬉しいぞ、よく言った…」
頬に唇が触れた気がしたのが最後だった。限界まで追い上げられていた体は呆
気なく頂点を越えてしまう。
そのすぐ後に熱いものが注ぎ込まれたような気がしたが、意識は唐突に薄れてし
まった。
次に気がついた時、ぼたんは床に座り込んでいて、呆れたような顔で覗き込んで
いるコエンマの顔が一番に目に飛び込んできた。
「…あたし、どうしたんですか」
「とりあえず、思い出せ」
着物は元通りきちんと着付けられているし、体には何も痕跡などない。だからあれ
は夢だったのかと一瞬考えかけたのだが、狡猾な上司は忘れさせまいとするよう
に真っ白な首筋に吸い付いて牡丹色の彩りを落とした。
とんでもないと、思わず声を上げる。
「…何てことするんですか」
「お前があまりにも能天気だからだ。そして無防備だから印をつけただけだ。以前
のようにな」
「あたし、そんな風にされるの嫌です」
「愚か者」
今度は唇に触れられる。
さっきのような官能的なものではないのが嬉しい。そう思った瞬間、息が止まるほ
ど強く抱き締められた。一体何が起こっているのか、ぼたんはまだ頭がついていか
ない。
「儂に目をかけられているのは何だと思うのだ、一体…」
373 :
恋愛ジグソー:2005/10/31(月) 00:16:49 ID:QsWFlm+q
コエンマは苦々しい様子で言葉を吐く。
それがひどく苛ついた感じだったので、奇妙に思いながらも従順になる。どんなこと
をされても結局は嬉しいのだ。それをどう言えば分かって貰えるのだろう。こんなに
好きなのに。
「どんな風にしても、いいんです。あたし」
「どういうことだ」
「特別だからです、コエンマ様は。だからあたしオモチャでも」
「だからそれはやめろ」
顎をくっと持ち上げられ、間近で睨みつけられる。怖い、と思った。
「あ、あたし…」
「誰がお前をそんな扱いにしたというのだ?可愛いと思ったからではないか」
「…嘘」
「本気で怒るぞ」
あまりにも真剣な瞳に心までが竦んだ時、髪を撫でられた。宥めようとするのでも安
心させようというのでもない。ただ湧き上がった感情のままの無意識の優しさに思え
て、ぼたんはふっと笑った。
もしかしたら、空虚でしかないと思っていたこの関係も、救いがあるかも知れないと
思えたのだ。
「…分かりました。コエンマ様を信じます」
「本当だな」
「あたしも、嘘なんかつきません」
最初にあれだけ混乱ていたというのに、今は何だかすっきりとした気分だった。恋心
を持ったのは間違いだと思っていたけれど、きっとこのまま大切にしていてもいいの
だろうし、いつかもっと嬉しいと思える時が来るに違いない。
そんな気がしている。
複雑なジグソーパズルのように先の見えなかったこの恋も、ある程度の展望が見え
てきたようだった。
終
374 :
12:2005/10/31(月) 00:19:18 ID:QsWFlm+q
今日は気合いを入れて一日かかりきりになっていたのですが、あんまりエロい
雰囲気にならなかったかも。
現在エロ精進中です。本当はもっとすっごいの書きたいんだけどね。
とりあえず、投下したのでもう寝ます。
それでは皆様、おやすみなさい。
>>12タソ お疲れ様でした(゚∀゚)
寝ようとしてたとこにリアルに遭遇できてヨカタ!
おやすみなさーい。
>>374 GJです(;´Д`)ハァハァ
エロかったす。
萌えました。
おやすみなさい。
エロくないって、充分エロかったです・・・。
GJ、12さん!
また、続きとか書いてください。
Sなコエンマ、ヨカタ・・・。
あぁ、こんな朝から(*´Д`)ハァハァ しちゃって、どうしよ・・・_| ̄|○
12さんGJ!激しくGJ!!いつも良作投下して下さって有難うございます。
エロかったですよ〜
それなのにこれより「もっとすっごいの」だなんて…どうなるんだよ(;´Д`)ハァハァキタイ
男女の性意識の違いもよく表現されていたように思います。
両思いなのにどこか擦れ違っていた二人が最後に思いを通わせるようになってヨカタ(*´∀`*)
379 :
12:2005/11/01(火) 00:43:28 ID:VPufpVJV
こっそり来ましたです。
皆様にエロいと言って頂けて、頑張った甲斐がありました。
自分的にはもっとエロエログチョグチョで「抜ける」ものを目指しているので
すが、いかんせん作風に合わない。orz
そんな訳で、これまで通りの文体で通すしかないようです。でもエロ修行だけは
依然続行中。そのうちすっごいのが書けるといいなと思っています。
体の構造が違う以上、男女の性意識も当然違いますよね。
そういう一方的に男だけ、女だけの視点からではなくてそれぞれの性差のような
ものも織り込んでいきたいです。せっかくエロ主体の話を書いていることだし。
エロって実は奥が深いことを実感しているところです。
文章がお上手で読みやすい!テンポもイイですね!
GJ!!
381 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 21:30:16 ID:7phgf3Sv
12さん素敵(*⌒▽⌒*)かっこいいです!!グッジョブ☆
12さんいつも以上のGJ!お疲れ様でした。
コエンマぼたんシリーズは回を重ねるごとに
エロ度がUPしていって、
今回は萌えどころの騒ぎではありませんでした。
今のでも十分にすっごいと思いますよ。
けど、今後の作品にもものすごく期待してますよー。
どうも。
また来ました。
実は、まだ自分の中では終わりきれていない感じがするので、もう一回ぐらい
続きます。もちろん次でとりあえず完結しても、また何かあれば喜んで書きま
すが。
だって書きたい妄想がそそられるしね。
エロ度がUPしたのは、やっぱりここに書いているからでしょう。
ここど普通のは書けない雰囲気だから、ついついエロのボルテージが(笑)
きっと、次も自分的にはリミッター外す勢いで、エロでラブなものを書きたいと
思っています。
もうお互いの気持ちが分かった後だから、また子供のようにじゃれ合ったりする
んじゃないかと想像したり。
384 :
12:2005/11/02(水) 00:13:57 ID:JamPW+KG
すみません、名前欄消してました。
なんとなく最近12さんが影響を受けたであろうSSがすけてみえるのは
気のせいでしょうか。いろいろと模索されているところだろうと
思いますので、がんばってください。
386 :
12:2005/11/02(水) 00:37:53 ID:JamPW+KG
まだ起きてました。
えーと、最近参考資料にしているのはエロアニメのDVDだったりするので、
該当のSS(何のジャンルだろう?)は関連性がないです。ごめんなさい。
わかりました。考えてくださればそれでいいです。
これ以降続けるつもりはありません。
玄武・青竜・朱雀VS桑原・蔵馬・飛影・幽助
青鬼ジョルジュx蔵馬の義理の母親
12さんがんがって下され!
奥の深いエロ期待しております。
最初は愛の無いエロかと思ってたけど、ちゃんと愛のあるエロだったところがGJ!!
強姦とか苦手な自分としては、セクハラコエンマよりこっちの方が気分のいい終わり方だった。
>髪を撫でられた。宥めようとするのでも安 心させようというのでもない。
>ただ湧き上がった感情のままの無意識の優しさに思え て、ぼたんはふっと笑った。
ここのところがすごく良かったです。
12さんお疲れ様でした。
391 :
12:2005/11/07(月) 00:03:06 ID:2P7VeeUu
こんばんわ。
今週は色々あって、最後まで書けませんでしたので途中までです。
次こそは完結させたいです。
392 :
12:2005/11/07(月) 00:03:47 ID:4rh6y0+C
昼の休憩時間の控え室では、今日も甲高い声が飛び交っていた。
他人の噂話に花を咲かせるのが好きなのはどうやら女性特有の本質らしい。そこ
は人間と変わりがないようだ。
「でね、嫌だって言ったの。そしたらあいつ、何で言ったと思う?」
どうやら恋愛中らしい仲間の一人が、相手とのことを一段高い声であからさまに話
している。
昼食を摂った後、どこかへ行く気にもなれずにぼんやりしているぼたんは、そんな
話を右から左にただ聞き流していた。自分の恋愛を人前で堂々と言えるのが少し
羨ましい、とも思った。
あれから、コエンマとの関係は特に進展もなく続いている。だが、それでいいと思
っている。あまりにも急速に進んでしまったら、きっと気持ちがついていけなくなる
に違いないからだ。
「ぼたん?ねー、ぼたんったら」
隣の仲間が軽く小突いてくる。
「え?」
「ぼたんって、そういえばそういう話をあんまりしないね。何で?」
無意識に突いてくる核心に、心臓が跳ねた。
「だ、だって…あたし、恋愛なんかしてる暇ないって」
「そっかー」
咄嗟に取り繕った嘘だったが、案外すぐに彼女は引き下がった。やはり自分はそ
れほど恋愛中には見えないのだろう。それはそれでちょっと傷つくのだから勝手な
ものだ。
「そうだよね、ぼたんは仕事命の子だから」
「うっそー、私は早く辞めたい。好きな人と幸せになりたいの」
周囲の仲間たちは、口々にそんなことを言う。この仕事が好きなのは本当のことだ
けど、何より先決な訳ではない。だが、こちらが何も言わなくても誤解をしてくれて
いるのは有り難い。
この時間が終わったら、またあの部屋へ行くことになっている。表向きは当然仕事
関連のことだが、実はそうではないことを分かっているのは当事者であるぼたんだ
けだ。
393 :
12:2005/11/07(月) 00:04:50 ID:2P7VeeUu
「最近コエンマ様からの呼び出しが多くて大変よね。でも期待されてるって証拠だ
からいいのか」
「え、ええまあねー。ほらあたし、他に何もないからさ」
とりあえず今のぼたんにとっては、仲間たちに気付かれないようにすることに注意
を払うのが精一杯だった。
物音ひとつ一切漏れない重い扉の内側で、二人は上司と部下から只の恋人同士
になる。正直言ってそういう濃密な空気にはまだ慣れていないのだが、いつもここ
に来る度に惑わされてしまうのだ。それも全部惚れた弱みというものだろうか。
いつ見ても翳りなく麗しい男は、誰にも見せない顔で笑う。
「来たか、ぼたん」
「来たかじゃありませんよ、もう。勤務時間中の呼び出しは御遠慮下さいと言ってあ
りましたのに」
こんなことが下手に周囲にバレたら大変だというのに、何て気楽なのだろう。そんな
ことを考えながら、拗ねて横を向く。そんな様子に心から楽しそうな笑みを見せて男
は手招きをした。
「まあそう固いことを言うな。膝に座れ」
「えっ?」
「膝だ。分かったな」
「…分かりましたよ…」
一体今日はどんなことをされるやら。まるで予想もつかないまま、近付いていっても
手の内など見せない笑顔が憎らしい。
「…失礼します」
絶対何かされる。
そう思いながら座った途端に腕が回されてきた。
「あ、のっ…」
「待ちかねたぞ、ぼたん」
「またそんなことを…」
言うなりだとはいえ、自分から来たのだから今更逃げられない。そう思わせてしまう
手口にまた翻弄されている。それが好きという感情なのだろうなと、納得がいかな
いなりに結論をつけている。
394 :
12:2005/11/07(月) 00:05:32 ID:2P7VeeUu
そうは言っても便利な感情であることは否定しない。
襟元をはだけられて手を差し入れられても、もう驚きもしないのだから。当の恋の相
手は耳に舌を這わせながら、満足気な声音で囁いてくる。
「大人しいな、今日は」
「今更ですってば。こうなっちゃったら」
頬が熱かった。きっと真っ赤な顔をしているのだろう。こうして体を密着して抱き寄せ
られながらも、わずかに残っている抵抗が気持ちをガードしている。抱かれるのは
理屈では収まらないが、まだどこかに躊躇があるのもやはり理屈で片付くものでは
ないのだ。
「お前は本当に可愛いな」
ちょんちょんと唇をつついてくるコエンマの指が不躾に口の中を探った。
「ァ、何を…」
「ただの愛情表現というものだ、気にするな。それとも口がいいか?」
了承を得たとばかり、唇を重ねてきながらもその手は馴れ馴れしく薄紅色に染まっ
た乳房を揉んでいる。指先が敏感になっている先端を弄びながら、悪戯をするように
時々爪で引っ掻くのがたまらなくて身を捩って抵抗を試みた。
「んっ、嫌…」
「そら、気持ちがいいんだろう?素直になれ」
吐息のような声が唇にかかる。
「だからそれは…あたしっ…」
「全く強情なことだ」
それほど不快には思っていない様子で、男は柔らかな髪を撫でる。最初の頃の強
引さが嘘のようだ。それもまた自分と同じ変化なのだろうかとぼたんは思う。それが
何故か嬉しいのだから奇妙なものだ。
「ええ、そうです。強情なんです、あたし」
ようやく、ぎこちなくても思いは繋がったのだ。だとしたらもう迷わなくてもいい。恋に
身を灼かれるようなじれったい心持ちで、これから底のない歓楽を貪ろうとしている
貪欲な男に縋りついた。
395 :
12:2005/11/07(月) 00:07:17 ID:2P7VeeUu
申し訳ありませんが、ここまでです。
続きはまた来週ということになるでしょう。でも、絶対に今度は完結させます。
それでないと次の飛影×躯等が書けないですから。
GJヾ(*´▽`*)ノ
>>391 ご自身の生活が第一だから、あんまし無理しないでね
気長にマターリ待ってるから!
12さんのコエぼたは本当に素敵…
理想的というか。たまりません〜
12さん、GJ&乙です!
だんだんコエンマのペースに飲まれていくぼたん…
何だかんだ言っても、やっぱりぼたんはコエンマの事好きなんだよなぁ。
続きコエンマ×ぼたんの完結編、また次回作飛影×躯ほか大いに期待しております。
12さんのSS投下、本当にいつも楽しみにしておりますが、
根を詰めずに12さんのペースでがんがって下さい。
12さんはエロをコンパクト、かつ濃厚に描けるとこがすごいと思う。
飛影×躯もまた気が向いたら書いてほしいです。
こんなところに400が落ちているのでゲットしますね☆
401 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 01:17:24 ID:4P39dAHZ
そして保守
ウホッいいスレw
さっき芸スポ速報板に行ってびっくりしたのだが、高橋ひろさんがお亡くなりになったらしいよ
持病があったそうで、死因はそれらしいのだが
いいシンガーがまた一人、霊界へ行ってしまったな……嗚呼
早速その板を見に行って、高橋さんの公式HPのBBSも見ました。
。・゚・(ノД`)・゚・。まだお若いのに…ご冥福をお祈り申し上げます。
消防の頃、アニメをリアルタイムで見ていた者としてはとても悲しい…
>>403 自分は懐アニ板の幽白スレで知りますた。。・゚・(ノд`)・゚・。
謹んでご冥福をお祈りします。
朝一番にここ見てびっくり。
思わず公式サイトや色々なスレを見て回りました。
まだ四十代に入ったばかりと若かったのに勿体無い・・・。
あの張りのある声とメロディーラインが好きだったんです。
本田美奈子.もそうだけど、若くして亡くなるのは哀しいですね。
本人が一番無念だったでしょうね。
心から御冥福をお祈りします。
407 :
12:2005/11/13(日) 23:28:06 ID:LBPSphYW
こんばんわ。
今現在、先週の続きを書いているところです。
出来上がり次第投下予定。
12さん、マターリ待ってます!
409 :
12:2005/11/14(月) 01:16:37 ID:UrWapQ7R
ようやく完成しました。
投下します。
「お前らしい答えだな」
笑い続けながら乳房を揉む手が力を強める。そろそろ本気になってきているようだ
と感じる。もう逃げるつもりのないぼたんは続きを促すように、男の胸に頭を擦りつ
けて目を閉じた。
「ですから、あたし一度気持ちが決まったら頑固なんです」
「ああ、そうだな。分かってたぞ」
全て分かっている風な口振りをする憎らしい男がもう一度唇を塞ぎながらも、片手
で着物の裾を割る。
「う、んんっ…」
感じる場所を知り尽くしている指が、躊躇なく的確にそこを撫でながら刺激を与え
てくる。どうされても体が跳ねてしまうほどに女の性感の芯となっているところだ。
そこを意図的に探られればたやすく燃え上がる、煽られる。
増して心奪われた相手にされていることだ。あっさりと陥落しても何らおかしくはな
い。それでもまだ残されている意地が強情を張らせる。
「…そんな、こと…嫌ですっ…」
「ほう、どうしてだ」
「だっ、て…」
「言ってみろ、ぼたん」
耳元であくまでも優しく囁く声が妖しさを増す。その声音だけで耳を焼かれてしま
いそうで、途端に体が熱を帯びた。愛撫を続けられている乳房も性感の芯も、むず
痒いほどに熱い。底意地の悪い指先が溢れてくる蜜を掬い取っては内部を突いて
くるのがひどく感じた。
それを認めたくなくて、激しく首を振る。
「ん…嫌ですってば…」
「まあいい。そういうお前を落とすのも愉しみというものだ」
くすくすと笑う声と共に舌が耳に差し入れられる。もうすっかり蕩けていた体には過
度な刺激となって、まだ入れられてもいないのに達してしまいそうだった。また目の
前で醜態を晒すのが嫌で、無意識に体が逃げを取る。
「は、離して…下さい…」
途端に逃すまいと強く絡みつく二本の腕。
「恥ずかしがるな、気にすることはない。ここで今すぐ、いけ」
ああ、この人からは絶対に逃げられない。恐怖や不安ではなく、むしろそれとは正
反対の安堵と温みを感じて、極限まで高まっていた体と心が開放されていく。昇天
に向かって。
「あ、あんっ…あああっ…!!」
「そうだ、もっと叫べ。どうせ外に声は漏れないぞ」
逃れようもなく抱き締められて昇り詰めていく。それが自分だけの特権のように思
えて、更に興奮が高まっていた。身の内から湧き上がる波が激しく全身を震わせ
て、全てを波のように浚っていく。
「ああっ、い、いやあーーー!!」
跳ね上がる体を自分では押さえられず、ぼたんはこれまでにない声を上げながら
コエンマの腕の中で果てた。
首筋から汗が一筋胸元に落ちていくのが分かった。
荒い息をつきながらしばらく黙り込んでいたのだが、少し気持ちが落ち着いてくる
と、相変わらず抱き締めている腕の力が少しも緩んでいないことが気に障った。
「…離して、下さい」
「そのつもりはないぞ」
「…そんな」
性感を煽り、昇り詰めさせ、その顛末まで全てを見ていた男が余裕を見せつける
ように笑う。まだ続きがあると言わんばかりだ。それ自体は今までのことで充分に
分かっているから別に嫌ではない。けれど、逢瀬の回を重ねる毎に思いが深まる
のか執拗さが増していく気がするのだ。それが時々怖くなる。
万が一、今こうしている気持ちが離れてしまったらと思うと、ぼたんは多分もう耐え
られそうにないのだから。
そんな不安を読んだように、敏い男は糖蜜のように甘い声を耳に流し込んだ。
「この手は決して離さん。いいか、分かったな」
「…コエンマ様」
くどくどと伝えるでもない。
ただ一番大事な一点だけを言葉にする。
それが思いの深さをダイレクトに感じさせてくれる。
厄介で策略を巡らされては手中にされてきたけれど、そんな気持ちだけは純粋な
のだとこれまでの関わりでぼたんも察している。それだからこそ心魅かれたのだ
とも。
優雅な動作を伴って片手が動いたと思うや、後ろで束ねていた髪がはらりと解か
れた。その瞬間に間近で物凄いほどに真剣な目が見つめてきて、思わず息が止
まりそうになる。
「あ、何、を…」
「わがままだと思われようが、儂はお前が欲しいと思うぞ。嫌か?」
「…え」
あまりにも率直に過ぎる言葉が見えない矢のように胸を刺した。確かにずきりと鋭
い痛みを覚える。
「嫌なら言え」
「嫌、じゃありません…でも正直言って戸惑いはあります」
「何がだ」
「あたしなんかじゃ、きっといつか不満に思うんじゃないかって」
「馬鹿者」
澱のようにずっと胸に溜まっていたものが、たった一言で吐き捨てられた。何だか
無性に腹が立って、拗ねて見せる。
「馬鹿とは何ですか」
「お前があまりにも察しが悪いからだ」
解かれた髪を撫でてくる手は優しかった。
「こんなことを、他の誰にすると思ってるのだ」
「…あっ」
巧みに膝の上に座らされた体勢を変えられ、向かい合わせにされた。剥き出しの
真っ白な腿が男の体を挟み込むような体勢に、再び体が燃える。着衣の布越しに
感じるものは既に硬く屹立しているのだ。きっとこのままされるに違いないけれど、
ここに入って来た時からそれをずっと待っていた。
「儂が欲しいのも必要なのもお前だけだぞ、いいな」
「…は、い…」
「いい答えだ」
翳りのない満悦の笑みが心を蕩かす。
そのまま抱き上げられて、晒されたものの上に腰を落とされた。じれったく内部を
満たすものを待ち続けていた体が、妖しく煮え滾る熱を受け入れた途端に淫らに
うねる。
「あっ、ん…!」
体が歓喜していた。
もう内部を切り開くものに対して何の抵抗もない。ただ甘い疼きだけが繋がった部
分から激しい電流のように四肢を駆け巡っている。髪を振り乱しながらもっと快感
を搾り取ろうと、無意識に腰を振って喘ぎ続ける。細い腕が男の首に絡みついて
いた。
「いい、ようだな。ぼたん」
腰を 使って激しく突き上げてきながら、満足気に呟く男の声が聞こえた。それだけ
でも、ひどく感じてしまう。
「はあぁん…そんな、こと…仰らないで、下さい…」
「そんな風に、もっと乱れろ。もっと儂を欲しがれ。それが今のお前だ」
「あたし、あたしっ…」
もう何も考えられなくなりそうだった。
目の前がちかちかと発光し始めている。
あと少しで、というところで大きな両手が敏感になっている乳房を強く捏ね上げてき
て、わずかに残っていた正気が飛んだ。
「あんっ、コエンマ様あっ…!」
「いけ、今すぐに」
限界を感じてびくびくと体が跳ねる。もう誰にも止められない衝動が激流のように駆
け巡って、その快感のあまりの凄まじさにぼたんはふっと意識を飛ばしてしまった。
次に目覚めた時、以前のようにすっかり後始末をされて身支度も済んでいた。髪も
きちんと束ねられている。
何ひとつ情事の残り香もない。
それが少し残念に思うのは、やはりこんな束の間の逢瀬に慣れてきているからな
のだろう。唯一の救いはそれを単なる一時の戯れにはしないコエンマの思いと態
度だけだ。
「目が覚めたか」
しばらく気を失っている間、途中だった仕事を続けていたらしい男が近付いてきて
屈み込む。案じているような表情が少し嬉しい。
「何か飲むか?あれだけ叫べば喉が渇くだろう」
「…いえ、あたしは後で」
「欲しければ、遠慮しないで言うんだぞ」
頬を撫でられ、唇を啄ばまれる。
言葉は少なくても、それがお互いに思いを通じ合っているように思えて、感動すら
覚えていた。最初から身分が違うというのに、その優しさに甘えて自惚れてもいい
のだろうか。いいのかも知れない。
そう感じて胸に温かいものが満ちてくる。
「…コエンマ様」
「何だ」
「あたし、一生信じていいんですね。コエンマ様を信じてもいいんですね」
「当たり前だ」
何でもないことのように返された言葉が、ぼたんの中で白く美しく力強い翼を形作
った。今ならば、このまま望んだ夢に向かって飛んで行けるかも知れない。もちろん
望んでいたものとは、愛そのものの世界だった。
けれど、全て寄りかかるのは決して本意ではないと、まだ意地を張らせる。
「それなら」
「ん?」
「もっと大事にしてくれないと、嫌ですからね」
まさかそんなことを言うとは自分でも思っていなかったので、真っ赤な顔をしてぷい
と横を向いた。
側で笑い声が聞こえる。
「分かった分かった、嘘偽りなどこの儂が言うものか。それでだな」
ふわっと体が浮いたように思った。コエンマが抱き上げたのだ。これはまさか有名
なお姫様抱っこというものでは、と一瞬停止していた思考が動き出してから考えて
いきなり慌て出す。
「コ、コエンマ様っ…」
「お前も嘘偽りはなしだぞ。儂にだけは真実を常に見せろ」
「分かりました、からっ…」
これからお互いにどうなるのか、はっきり言って未来の明るい展望が見えた訳では
ない。困難なんて幾らでもある筈だし、その度に煩わしくて苛々してしまうのかも知
れない。
それでも、何とか越えていけるような気がした。
この人となら、大丈夫な気がしたのだ。
曖昧ながらも、そんな自信は消えない光のようにぼたんの中で輝いている。今はわ
ずかな光でも、少しずつ強く不変の輝きになるようにしていきたかった。
その為にも、決して離さない。
所有欲全開で嬉しそうに抱き上げている男に、ぼたんは思いきり良く腕を回して花
のように笑った。
終
416 :
12:2005/11/14(月) 01:27:17 ID:UrWapQ7R
今回、予告したにも関わらずエロ少な目です。
先日、高橋ひろさんが亡くなったショックをまだ結構引きずってて、エロを書く
気になれなかったのです。
何だか、数年前にやはり四十代という若さで病気の為に亡くなられた村下孝蔵さん
とかぶっちゃって・・・。
才能あるミュージシャンが、どうして連れて行かれるのでしょう。
ところで、番外編という形でもうひとつ今回書ききれなかったものを書くかも知れ
ません。それで今回のコエンマ×ぼたんは完結です。
エロないけど。
乙です!!リアルタイムで読ませて貰いました!
神!!文が上手過ぎる!!
十分エロかったですよ、次回も楽しみにしてます
12さん、いつも乙です!
明るい希望に溢れた締め括り方が良かったです。
エロもGJ!
先日の高橋ひろさんの訃報に落ち込んでいたのですが、
この話の未来ある二人の様子に少し元気を貰いました。
番外編にも新たな次回作にも期待しています。
あげとく
420 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 01:39:59 ID:WJ2asjzK
もっかい
GJ!!ものごっつよかっです。本当に心理描写が上手くて、12さんのつくる文に惚れぼれしてしまいます。高橋ひろさんの事、本当に残念です。色々辛いとは思いますが頑張ってください。
次回作の飛影×躯のSS、幽白の中で一番好きなカップルなだけあってすごく楽しみです。番外編と共にわくわくしながら待っています!
飛雪の近親相姦みたい
自分は飛影の父親×氷菜(飛影&雪菜の母親)が読みたいなぁ。
飛影の父は原作・アニメ共に名前すら登場しなかったが、
原作にて「忌み子は雄性側の性質のみを受け継ぐ」と記述されている事から
おそらく炎系妖怪だったと思われる。
炎と氷、真逆の種族である筈のふたりがどうやって出会い、愛を育んだのか凄く興味がある。
>423 激しく同意!(・∀・)
忌み子は残虐な性格を有する事が多いってあるけど、父親の性格はどんなだっただろう。自分的に穏やかで優しい人だったと思うが。
飛影と雪菜のほうが想像しやすそうだ。
じゃあ、誰か投下キボン。
12さんは今のところ手いっぱいみたいだしな。
12さんのコエンマ×ぼたん番外編や次回作の飛影×躯に激しく期待しながら、
飛影の両親にも惹かれる…_| ̄|○コノウワキモノメ
飛影父がどんな人物だったかは想像するしかないけれど、
少なくとも、氷菜に「自分の命を捨ててでもこの人の子供を産みたい」とまで
思われる人物であったのは確か。
飛影父×氷菜イイ!
もちろん全編想像になっちゃうけど、たまにはいいかと。
書いてみたいが自分の実力じゃできん…。
自分も、飛影父は愛想が無くても、根は優しい人だったんじゃないかと思う。
429 :
12:2005/11/20(日) 23:11:44 ID:AU2DjuPF
こんばんわ。
流れを切って、コエンマ×ぼたんの番外編投下します。
これで全編の完結です。
「で、今日は一体どういう御用件なんでございましょーか?」
相変わらず勤務時間中にコエンマに突然呼び出されたせいで、ぼたんは不機嫌な
顔をあからさまにしている。さすがにこんなことが続いたら他の仲間たちにも示しが
つかないというのに、この上司は一体何を考えているのだろう。
今日こそは一言言ってやらないと、と拳を握り締める。
そんな気持ちも知らず、コエンマは今日も見蕩れてしまいそうに綺麗で静かな笑み
を浮かべて鷹揚に手招きをする。猫のように間合いを読んで近付きながらも、これ
から起こる言葉の遣り取りを必至でシミュレートしていた。
「あのですね、あたしは」
「今日はちと頼みがあってな」
「へ?」
予想外の言葉に、一瞬思考が飛んで是非とも言わなければと思っていた台詞を
全部忘れてしまった。そのまま膝の上に抱き上げられる。
「いや、幽助の奴がな。ようやく式を挙げるらしいのだ。さすがに入籍だけでは螢子
ちゃんが可哀想だとは思っておった。まあそれほど金もないから内々で済ませると
いうことだが」
「うわあ、それはおめでたいことですね」
嬉しい知らせに、ぼたんは心底嬉しくなった。以前会った時の二人はまだようやく
入籍したばかりで、待望の新生活もあまり馴染んでいない感じだった。いつふらり
と旅立つか分からない幽助では螢子も気が気ではないのだろうとは案じていたの
だが。
「でな、折角招かれていることでもあるしお前もどうだ?」
「えっ…あたしですか?」
「螢子ちゃんの希望だ」
「あたしに、出席して欲しいって…?」
不覚にも、涙が溢れた。
螢子とは彼女が中学生の頃から関わりを持ってきた。色々大変なこともあったけ
れど、女同士ということもあってすぐに仲良くなって打ち解け合い、現在に至って
いる。住む世界が違うだけになかなか会えないけれど、いつもどうしているのか
気になっていた。
その螢子が、人生の一番良き日に来て欲しいと言っているのだ。嬉しくない筈が
ない。
「必要なものは儂の方で揃えてやる。お前はただ螢子ちゃんを盛大に祝ってや
ればいい」
「あたし行きます。そんなことなら行かなきゃですよ」
「お前なら、そう言うと思ってたぞ」
満足そうな顔でコエンマは微笑している。自分と同じように螢子も友情を感じて
いてくれたのが嬉しくて、零れ落ちそうになる涙をそっと袖で拭った。感激してい
るぼたんをよそに、不敵な男は着物の襟元から手を差し入れて肌を撫で始めて
いる。
「で、何をなさっているんですか?」
「もちろん、いつものことだ。儂が話だけでここから帰すと思ったか」
やはり、それだけは忘れていなかったらしい。またしばらく仕事が出来ないなと
思いながら、今日だけは大人しく従ってもいいかなと身を任せることにした。
「まあ、いいですけどね。今日は嬉しかったし」
何もかも心得た指先でするすると脱がされていきながら、とうに全てを許容した
笑みを浮かべているぼたんは、名前の通り牡丹のように艶やかな色香を纏って
いた。
一ヶ月後の空は快晴。
こじんまりとした教会の中は、あらゆるところに白い花が飾られていて清らかさと
華やかさに満ちていた。二人の新しい門出を祝うに充分過ぎる雰囲気は、女であ
ればついつい憧れてしまう。
資金にものをいわせるような華美なものではないが、精一杯最高の式にしようと
いう二人の気概が感じられて、それがまた嬉しくなるのだ。
「どうだ、ぼたん。お前もいずれは」
教会に入ってすぐ、周囲に誰もいないのをいいことに肩を抱こうとしてきた馴れ馴
れしい男の手を思い切り叩いた。振袖など着てなければ蹴りも入れたいところだ
った。
「何のことですか。みんなの前で余計なことを仰ったら怒りますからね」
「ほう、何を言えばそうなるのかな」
「何をって…色々ですっ!!」
そこで、はっと気付いた。
着飾って薄化粧をしているというのに、普段の調子で声を上げてしまった。もし他
の誰かに聞かれでもしたらと思っただけで、かあっと顔が赤くなる。下手をしたら
パニックに陥ってしまいそうなぼたんを見て、コエンマはさも楽しそうに声を出して
笑った。
「お前の一人芝居は、面白いな」
「…コエンマ様のせいですからねっ」
拗ねながら頬を膨らませて横を向いていると、外からざわざわと物音が聞こえてき
て、見慣れた顔が幾つも現れた。その中心にいたのは。
「ぼたんさん!」
見違えるように美しい晴れ姿の螢子が、飛び込んできた。その勢いでがばっと抱
きついてくる。
「来てくれたんですね」
「当たり前じゃないか。あたしが螢子ちゃんをお祝いしない筈ないしね」
「うふふ、それもそっか。でも嬉しいです」
「本当に、おめでとう。あんなどうしようもない奴だけど、螢子ちゃんを絶対に幸せ
にしてくれると思うよ」
「…ありがとう、ぼたんさん」
シンプルな純白のドレスで嬉しそうに頬を染める螢子は、白い花そのもののよう
で本当に綺麗だった。昔から知っているだけに、本当に幸せになって欲しいと願
ってしまう。
「よう、ぼたん、コエンマ」
一団の背後から顔を出した妙に気楽な男は、もちろん幽助だった。何故か腹が
立ってしまって、ついつい余計な老婆心を出してしまう。
「あんたねえ、これから責任重大だよ。前みたいにふらふら出かけてらんないか
らね」
「ははは、分かってるって。こんな日にキツいな」
「あんただからだよ。螢子ちゃんだけは守って欲しいからね」
「ああ、約束するよ。あいつ泣かせらんないからさ」
その時だけ、驚くほど真剣に幽助は返事をした。きっとその気持ちだけは本気な
のだろう。それなら安心して大切な親友を託せる。そう思った。
「で、飛影はどうしたんだよ。やっぱりアレか?美人に夢中で他人事には興味な
しってか」
見知った顔の中に、ただひとりいない仲間。幽助はきょろきょろと見回しながらも
不満そうに言葉を吐いた。
「いえ、そうじゃなくて」
苦笑しながらそれまで黙っていた蔵馬が事情を話し出した。
「実は、あの二人には最近子供が出来ましてね。躯は元々気鬱気味でもあるし、
しばらくの間は飛影は離れられない状態なのです。招待を仲介したのですが、
その通りでして」
「…そっか。じゃあ仕方がないな。まあめでたいことだし」
それはぼたんも今まで知らなかったことだった。来られない事情を察して、幽助も
軽く笑うしかない。
「へえ、飛影にねえ。おめでた続きじゃないか。あんたたちにはいい知らせだった
ね」
「ああ、前みたいにやってらんないのは分かってるぜ」
同じぐらいの年齢のカップルでも将来の見通しの甘い、いい加減な考えでやって
いけると思っているのは大勢いる。けれどこの二人はそれなりにきちんと考えて
背伸びしないで生きていこうとしているのだ。それは素直に評価出来るし今後の
強みだとも思う。
幸せそうに顔を見合わせて笑っている二人が、心から羨ましく思えた。
式の時間がそろそろ迫っている。
厳粛な式の間中、ぼたんはずっと螢子の姿を追っていた。穏やかな神父の声が
その場の空気を神聖なものにして、二人の幸せを永遠のものにしていくような気
がする。
お互いの誓いの言葉も、指輪の交換も、夫婦としてのキスも、全てが一枚の絵の
ように綺麗でつい見入ってしまっていた。隣で手を握る無遠慮な男のことは、この
際忘れたことにして。
教会のドアを開けて出てきた二人は、晴れやかな笑顔を満面に浮かべて寄り添
っていた。何もかも正反対な筈の二人なのに、何故かすっかり雰囲気が馴染ん
でいて、これほどに似合いのカップルはいないと思えるほどだ。
「おめでとう、螢子ちゃん!」
袖が邪魔なのも忘れて、ぼたんは嬉しくてぶんぶん手を振った。はにかみながら
真っ白な花嫁はにっこりと笑う。
「ありがとう…ぼたんさん」
これまでとは違い、親友が少し遠くへ行ってしまうような気がして、ふっと一瞬寂
しくなった。
それでもつつがなく第二のイベントは行われようとしていた。そう、独身女性たち
の注目の的、ブーケトスである。今回の出席者たちの中でそれに該当するのは
ぼたんと螢子の友人数人だけだ。
「ぼたんさん、絶対に受け取ってね!」
子供のように笑いながら、螢子が後ろ向きになってそれまで持っていたブーケを
投げてくる。真っ白な花を束ねた可憐なブーケは綺麗な弧を描いてぼたんの方
へと落ちてくる。
これは是非とも受け取らないと、ととっさに手が伸びたが、懸命に手を伸ばしても
届かず、あとほんの少しというところに落下しそうだった。他の女性たちでも届か
ない。
「あっダメそう…」
「任せろ」
不意に、隣から誰かの手が伸びてきてがっちりと落下しそうなブーケを掴んだ。
「…コエンマ様」
「ほら、ぼたん。これが欲しかったのだろう?」
輝くように白いブーケを差し出す男が、誇らしげな笑みを浮かべている。あまりに
も綺麗だったのでしばらく見蕩れてしまったほどだ。
「あ、りがとうございます…」
ブーケを受け取った女性はどうなるか。
少しだけその意味を思い出して、改めて顔が赤くなる。ブーケを抱き締めて顔を
隠すしかない。
「ぼたん、次はお前で決まりだな」
後々の将来までも関わろうとする男が、そんな姿を眺めながらこの上なく優しげ
に笑った。
終
436 :
12:2005/11/20(日) 23:20:59 ID:AU2DjuPF
これでおしまいです。
また何かあれば書きますが、今後しばらくは別のカップリングになると思います。
それと、今回ちょっとだけしか出なかった蔵馬ですが、文章に出なかったところで
色々とコエンマとの応酬があったかも知れません。
それでは、おやすみなさい。
12さん乙です!
この二人にも幸せな未来が待っていると確信させるラストで
読み終わってからも幸せな気分でした。
このスレに辿り着いて本当に良かったです。
次回作も楽しみにしてますね!
12さん激しくGJ!コエンマ×ぼたん長らくお疲れ様でした。
幽助と螢子の結婚式が、象徴的にコエンマとぼたんの明るい未来を
暗示しているように感じられました。
螢子との友情も、読んでいて非常に気持ちのいいものでした。
何年経っても変わらない仲間達の様子にも嬉しくなったり。
ところで、蔵馬の話の中に出てきた飛影と躯の子供って、もしかして
前作「水底の夢」にて躯が“出来た”と言っていた、あの子供でしょうか?
だとしたら、ちょっと嬉しいです。
ラストのコエンマ…これはもう立派なプロポーズですね。
この二人が式を挙げるのもそう遠くないかも…?
439 :
12:2005/11/22(火) 01:00:28 ID:lBF/dsCd
こんばんわ。
そうです。飛影と躯の子供とは「水底の夢」で出ていた子です。
母親は子供を通してもう一度人生を追体験するというので、一度は失われた幸せな
幼少期を一緒に体験していって欲しいなと思っています。
コエンマ×ぼたんは最初、ここまで書くとは自分でも思っていなかったので続いて
しまって意外でした。でも、続いた分色々と書きたい場面がどんどん出てきて、
それが楽しくもありました。
既に幸せなカップルとして少し先を行っている幽助と螢子の二人を対比させてみた
くて、最後は結婚式の場面になりました。
プロポーズめいた言葉もあったし、これからどうなるんでしょうね。
まあ、それは色々想像に任せるということで。
それでは、おやすみなさい。
次は飛影×躯で話を発展させていきたいと思っています。
12さんの素敵な小説を読んで、幽白熱が再燃してしまいました。
どうもありがとうございました。
自分もなにかこのスレに書けないかと思い
数日前から桑原×雪菜で書き溜めていたのですが、
思い切って投下させて頂こうと思います。
小説を書くのは初めてのことなので読みづらい点や、表現の拙い点など
多々あるかと思いますがどうぞそのへんはご愛嬌ということで…
また、奥手なふたりのことなのでエロにたどりつくまでが少々長いです。
どうぞよろしくお願いします。
雪菜が桑原家にホームステイして1年が経とうかとしている。
毎日が平和に穏やかに過ぎていく。
初めて人間界に来た頃の雪菜は、まだまだ幼いあどけなさの残る少女で、
恋愛感情というものにはまったく縁遠いものだった。
桑原和真にとって、そんな少女はまさに硝子細工で、大事に大事に接してきた。
一目惚れから始まった恋心は雪菜には届いていない。伝えるのはこわい。
もし、もしも彼女を困らせるようなことになったら…と思うと、
いかに猪突猛進型の和真といえど思い切ることはできないのだ。
ひとつ屋根の下で暮らせるだけで満足していたのだ。
少なくとも、昨日までは――――
********
「じゃあ和真、あたしもう行くけどあんた雪菜ちゃんに変なこと……まあ、心配いらないか」
旅行用の鞄を持った静流が弟の部屋のドアを開けて。
「んだよ姉貴、いいかけてやめんなよな!なんだってんだよその哀れむようなカオは!?」
「あんたも可哀想というか、我慢強いというか、
まあ、とにかく明後日まであんたと雪菜ちゃん以外誰もいないんだから、
戸締まりと火に気を付けんだよ。じゃ、行ってくるから」
「わーってるよぉ、もうガキじゃねえんだから、心配すんなって」
そう言って口を尖らせる弟を一蔑して静流はドアを閉める。
子供じゃないから一応心配なんだけどねぇ…と思ったが、口には出さず。
階段を降りると、雪菜がちょうど夕飯の買い物から帰ってきたところだった。
「雪菜ちゃん、じゃあ行ってくるから。留守番させちゃって悪いけど、よろしくね。
明後日にはウチの親が帰るはずだから」
「はい。大丈夫です、それに和真さんがいてくれますし…
せっかくのご旅行なんですもの、楽しんでらしてください!」
無垢な笑顔の雪菜。
和馬とふたりきりで夜を過ごすこともまったく意識している様子はない。
雪菜を見ている限り、和真を頼りにしてるのもわかるし、決して嫌ってることはないとわかるが。
心の中で弟に改めて同情しつつ、静流は家を後にした。
玄関のドアの閉まる音を二階の自室で聞きながら、和真は不機嫌そうに椅子を揺らしていた。
姉の言いたいことはわかる。わかっていた。
が、自分に何ができるというのか。
雪菜に対して欲望がないといえば嘘になる。
深夜、壁一枚隔てた隣の部屋で眠る彼女の姿を想像して自慰にふけることもしばしばだ。
だが、欲望を吐きだしたあと決まって自己嫌悪し、うしろめたさで頭をかきむしりたくなった。
汚したくないのに、想像とはいえ大事な少女を犯す―――――
自分の欲の深さにうなだれる。
それでもこの状況に対する嬉しさがじわじわとわいてきて頭をもたげる。
雪菜とふたりきりで過ごす。
外出や旅行の多い親が家にいないことは珍しくないが、静流までいないことは珍しい。
なにかを期待したくなる。
しかしすぐに激しくかぶりを振って煩悩を振り払う。
「和真さん…?」
「うわっ!!!」
突然の声に跳びあがりその方向を見ると、雪菜が申し訳なさそうに
半分だけ開いたドアから顔を覗かせていた。
「ごめんなさい、ノックしたんですけど返事がなかったので…よかったらお茶にしませんか」
「は、はいっ」
慌てて散らかったテーブルを片付け、雪菜の持つお盆を受け取った。
見るとカップがふたつある。
呆気にとられた和馬の表情に気付いた雪菜は少しあわてて、
勉強の邪魔になりそうだからやっぱり自分は自室に戻る、ということを言い出した。
が、和真がそれを力いっぱい止めた。
普段、雪菜がひとりで和真の部屋に入ることはない。
からかい半分の親や静流が「年頃の女の子が、男の部屋に入るのはよくない」と
彼女に吹き込んだおかげで、自分の部屋で雪菜とふたりきりになることなどなかったのだ。
加えて彼女は、和真の勉強の邪魔になってはいけないと思っているらしい。
「今日は皆さんおでかけで、ちょっと、寂しいですね」
カップを両手で包んで、雪菜がかすかに睫毛を伏せて笑う。
淡い期待にどぎまぎしていた和真だったが、その言葉で正気に戻る。
(みんないないもんだから、心細くなって俺のところに来ただけか…)
それでも、頼ってこられたことが嬉しい。
雪菜は和真の部屋が珍しいらしく、無邪気に周りを見回している。無防備―――だ。
男とふたりきりになることをまったく気にしている様子はない。
たぶん相手が誰であろうとそうなのかもしれないが、自分を信用してくれているのだと前向きに考える。
しかし、目は正直に彼女を追ってしまう。
きれいな髪
長い睫毛
柔らかそうな、小さな淡い唇
細い肩
―――控え目そうに膨らむ、ふたつの丸み…
人形のようだ、と和真は思う。
雪菜はかわいい。それはわかっているが、最近は綺麗になってきたようにも思う。
着物姿の雪菜も清楚でよいが、洋服姿もよい。
この家に来たばかりの頃は着せかえ人形状態で、
静流や母があれこれ雪菜に着せては満足そうに顔を見合わせたりしていた。
今日の雪菜はAラインの薄桃色のワンピースに、白い毛糸で編まれたカーディガンをはおっている。
和真の学校の同学年の女子と比べたら、雪菜のそれは少し子供っぽい格好なのかもしれない。
しかし少女らしい、やわらかな雰囲気を持つ彼女にはぴったりだと思う。
彼女には派手な露出の多い服などは着て欲しくない。
わりと古風なのかもしれない自分の趣味が、和真は嫌いではなかった。
「さっき買い物に行ったら、お魚がとてもおいしそうだったので、今夜はそれを焼いて…
あと、肉じゃがを作ろうと思うんです。和真さんお好きでしたよね」
にこにこと話す雪菜。
(幸せだ…)
好きな彼女とひとつ屋根の下で暮らし、一緒にお茶を楽しみ、
今日は自分のために食事を作ってくれるという―――
たわいもない会話をしながら、和真は幸せで舞い上がっていた。
そんな時に事件は起こった。
444 :
桑原×雪菜4:2005/11/24(木) 19:27:01 ID:A74caDl9
「あ」
雪菜は何かに気付いたようでベットの下に体をのばす。
「なにか、本が落ちてますよ」
「え?」
はた、とベットの下を見ると同時に和真は声にならない驚声をあげる。
そういえば昨夜使ったエロ本をベットの下にかっぽったままだった。
「ゆっ、雪菜さんそれは―――」
和真があわてて雪菜を止めようとしたが遅かった。
親切心から、ベットの下に落ちていた本を拾いあげた雪菜は、
それを見た瞬間はキョトンとした顔をしていたが、
その本の内容を理解すると途端に真っ赤になり泣きそうな表情になった。
時間が止まったような気がした。
和真は、雪菜の取り落としたエロ本を拾うこともできず固まった。
床に落ちた本は、和真のお気に入りのページに癖がついていたのであろう、
ばさりとだらしなく広がっていた。
そこには、雪菜に似た少女―――の痴態
その少女は恥じらいながらも、ピンク色のワレメにしっかりと男のモノをくわえこみ、
今にも自分から腰を振りだすのではないかと思うほどのいやらしいカオをしている。
和真は、この写真に何度お世話になったかしれなかった。
想像の中で雪菜の体を自由にして犯す。
細い腰を何度も突き上げて、何度も何度も彼女の腟内に己の欲望を吐きだす。
そういった妄想を、この本から膨らませ毎夜のように昇華させていた。
行為の後でひどい罪悪感を感じながらも、そのオカズは捨てられなかった。
445 :
桑原×雪菜5:2005/11/24(木) 19:28:34 ID:A74caDl9
「こ……これが…、男女が交わるってこと…なんですか?」
雪菜は、衝撃が薄れてきたのかその少女のページを恐々ながら凝視していた。
痴態をさらす少女が自分に似ていることには気付いてないようだった。
「え、えーと、その、まあ…」
和真は雪菜の質問に曖昧に答えながら、ささっと本を取りあげた。
雪菜の目に入らないように背中に隠す。
「すっすいません、その、へ、ヘンなもん見せちゃって…」
「えっ、いえ、わ、私こそ余計なことしてごめんなさい…あの、男のひとは、
そういうものがお好きなのは知ってますから…その…」
気まずい。
しかし雪菜はこういう男の生理のようなものを理解してないんではないかと思っていたが、
今の話を聞くとそうでもないらしい。ただ、セックスについての具体的な知識はないようだ。
男女の交わり、ということはなんとなく知っているのだろうが。
「和真さん、は…その、女性と交わったこと、あるんですか?」
思わず咳き込む。
「そっそんなことは…ッ」
ありませんよ、というのもなんだか恥ずかしい気がして、和真は言葉を飲み込んだ。
それにしても大胆なことを聞いてくる。
おそらく純粋な興味からの質問なのだろうが…
「…私たち氷女は、異性と交わるということ自体、
タブーとされているので…どんな感じなのかなって、少し思ったものですから…
和真さんならいろんなこと知ってるので、教えていただけるかと思ったんです…、
へ、ヘンなこと聞いてしまってごめんなさい…」
頬を赤く染めながらうつむく雪菜。
なんだか妙なことになってしまったと思いつつ、
彼女のことを知るいい機会だと考え直し和真は顔をあげた。
「あのっ…前から聞きたかったんスけど…氷女は、その、異性と交わるだけでも死んでしまうって…?」
「いえ、あの、100年に一度訪れる分裂期に合わせて異性と交わって男子を生むと命を落とすんです。
…私の母がそうでした。でも、その分裂期に重ならなければ、異性と交わっても大丈夫なようです。
タブーとはいえ、氷女の中にも分裂期を避けながら密かに、外界の異性と付き合っている者もいましたから…」
「そ、それじゃその、分裂期に重ならなきゃ大丈夫なんスね!?」
「ええ、でも…分裂期以外に子供が生まれることはないので、
人間のように…好きなひとの子供を生むことはできません。
生むとしたら、私の母のように命と引き替えに生むしかないんです」
雪菜の頬はもう赤くはなかった。
反対に寂しそうな自重気味の笑顔を浮かべていた。
446 :
桑原×雪菜6:2005/11/24(木) 19:29:43 ID:A74caDl9
和真はずっと気になっていたことを雪菜の口から聞けてホッと息をつく。
体の関係がすべてとは思わない。
が、やはり氷女にとって性行為=死ではないと知れたことは嬉しかった。
「ゆ、雪菜さん……っ」
「はい?」
少し小首をかしげ、顔をあげた雪菜が一瞬ドキリとするほど可愛くて、
和真はとっさに言葉を失った。
(俺は…)
雪菜さんが好きだ。
今なら、この妙なテンションなら、告白できそうな気がした。
雪菜の瞳が和馬の言葉を促すように「?」と優しく瞬いた。
「雪菜さん、お、お、俺はっ…ずっと、ゆ、雪菜さんのことを…」
心臓が爆発しそうだった。
それでも今を逃してはいけないような気がした。
「すっ…好きなんです!」
言った。
ついに伝えてしまった。
今自分の顔は真っ赤だろうが、それでもグッと顔をあげ真剣に雪菜の目を見る。
雪菜はびっくりしたような、とまどったようなカオをしていたが、
言葉の意味を飲み込んだのか再び頬を染めた。
そして、はにかむように微笑んで
「ありがとう、ございます…私も、和馬さんのこと、好きです」
と、嬉しそうに答えた。
和真はポカンと口をあけて、そんな雪菜を眺めている。
「和真さん…??」
447 :
桑原×雪菜7:2005/11/24(木) 19:30:34 ID:A74caDl9
信じられない。
雪菜はありがとうと言った。
自分のことを好きだとも言ってくれた。
それでも和真は信じられなかった。
こんなにあっさり受け入れてもらえるなんて。
「そ、それはその、loveで…?それともlike…?」
「らぶ…?らいく…って…?ごめんなさい、言葉の意味が私よくわからなくて…」
雪菜は申し訳なさそうに言う。
なんと説明すればよいのかわからず、和真は頭をかく。
そして、思い切ったように雪菜の小さな手を握った。
「ど、どうスか…?こうされて、嫌な気持ちですか?」
雪菜はふるふるとかぶりを振って笑う。
「いやだなんて、そんなことないですよ」
和真はだんだん自分が大胆になっていくのを感じていた。
さっき雪菜が自分を好きだと言ってくれた事実が、少しずつ染み渡り気が高ぶる。
「じゃ、じゃあ…」
今度は、雪菜の体をそっと引き寄せて抱きしめた。
小さな雪菜の肩は、和真の胸のなかにすっぽり収まってしまう。
突然の密着に一瞬とまどった雪菜だったが、やはり「いやではない」と答えた。
ここまでしても拒否しようとしない雪菜に、
和真はさっきまでの不安が消えていくのを感じていた。
448 :
桑原×雪菜7:2005/11/24(木) 19:36:53 ID:A74caDl9
>>441-443にタイトルを入れ忘れてしまいすみません。
それぞれ順に「桑原×雪菜」1、2、3となっています。
初めての投下なので緊張してしまいました。
今日はここまでで失礼します。
まだエロまでたどり着かずにすみませんが、
またもう少し書き溜めたらまとめて投下したいと思います。
449 :
440:2005/11/24(木) 19:44:47 ID:A74caDl9
たびたびすみません
蛇足ですが、氷女の生態の部分は二次創作ということで大目にみてやってください。
まちがってるかもしれませんが、この話の中では一応そういうことで進めていこうと思ってます。
桑原くんはすごくいいやつだと思うので、
好きなコと幸せに結ばれてもいいんじゃないかと思いながら書いています。
桑原×雪菜キタ━━(゚∀゚)━(゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚)━(゚∀゚)━━!!!!
GJ!GJ!GJ!
初々しい二人が可愛らしいですね
このカプ好きなので嬉しいです
続きワクテカして待ってます!
キタコレ!!
私も桑原×雪菜好きなので楽しみですよ440さんGJ!
まだエロシーンじゃないというのに描写がエロくてハアハアです。
桑原がんばれ!
12さんも440さんも次回の投下を楽しみにしてます!
GJ!
続き待ってます。
>>12さん
次回作は飛影×躯ですね。
この二人の関係がまたどのように発展していくのか、
とても楽しみです。
>>440さん
桑原×雪菜激しくGJ!
桑ちゃんも雪菜ちゃんも本当初初しいですね。
思わず応援したくなってくるカップルです。
続き、大いに期待しています。
454 :
440:2005/11/25(金) 16:52:07 ID:4GdtydZu
レス付けてくださった皆様どうもありがとうございます、
とても嬉しいし励みになりました。
以下、桑原×雪菜
>>441-447の続きになります。
少し長いかもしれませんが、最後まで一気に投下させていただきます。
どれくらいの間、そうしていただろうか。
最初は戸惑いの色を見せた雪菜も、和真の胸の中で安心したように小さくなっている。
自分の心臓の音が耳に響く。きっと雪菜にも聞こえてるだろう。
(やわらけー…)
初めて異性を抱きしめる和真にとって、雪菜のやわらかさは驚きだった。
男とは根本的にちがう。肩も背中も腕も、全部がやわらかくて温かい。
雪菜の髪が頬に触れて、そのふわりとした香りにくらくらする。
自分だって同じシャンプーを使ってるはずなのに、この違いはなんなのか。
思わず、和真は雪菜の髪を撫でてしまう。撫でたあとで、急に照れて慌てて手を離したが。
「くすぐったいです…」
そう言って首をすくめながらも、雪菜は気持ちよさそうに、和真の胸の中で仔猫のように小さく身じろいだ。
ふと、和真は特にやわらかいものが自分の体にあたってることに気付いた。
雪菜の胸が、ぴったりと押し付けられてその形を変えていた。
カーッと、体が熱くなる。
思いが通じたことに感動して、この夢のような状況にぼぉっとなっていたが、途端に意識が下半身に集中した。
―――雪菜を自分のものにしたい
下世話な欲望が頭をもたげる。
さっきまでは思いが通じたそれだけで満足していたのに、もう彼女のすべてを欲する自分の欲深さに自己嫌悪する。
しかし、この状況で彼女を開放できるほど和真は大人ではなかった。
その時、ふと雪菜が和真を見上げて笑った。
「…和真さんの心臓、すごくドキドキいってます」
今までピンと張りつめていた和真の理性が切れた。
雪菜のやわらかな唇に自分のそれを重ね、押し付ける。
「ん…っ?!」
瞬間、雪菜の体がこわばり和真の腕から逃れようとするが、
男の力には敵うはずもなくされるがままに唇を奪われる。
何度も角度を変えて、和真は夢中で雪菜の唇を吸う。
やわらかくて少し冷たい雪菜のぷっくりした唇。
夢にまで焦がれた、雪菜とのキス。
そう思うと、和真の雄はもう止められず興奮が高まる。
ちからが抜けて、息ができず苦しくなった頃ようやく和真の唇が離れた。
雪菜は荒く息をしながら、くったりと小さくなった。
何が起こったのか、まだ理解できていないのかもしれない。
「雪菜さん…」
彼女をゆっくりベットに横たえて、雪菜の目を見る。
「嫌ですか…?」
たとえ雪菜がいやだと言っても、自分はもう止まれないかもしれない。
それでも、やはり彼女を大事に思う気持ちが和真にブレーキをかけた。
雪菜はうるんだ瞳で、少し不安そうに和真を見つめた。
少し間をおいて、小さくかぶりを振る。
「いやじゃ、ないです…でも、なんだか和真さんが、知らない男のひとみたいで…少し、こわい…です」
雪菜の素直な言葉が嬉しくて可愛くて、たまらず彼女の首筋に顔をうずめた。
「ひぁっ」
突然の刺激に、雪菜の肩がピクンと跳ねた。
白い首筋についばむようなキスを繰り返し、少し紅潮した形のよい耳をちろちろと舐めあげる。
雪菜は未知の刺激にただ震えて、されるがままになっている。
「…ぁ…あ、や、くすぐった…で……んぅっ」
和真はキスをやめずに、震える手で雪菜の服を少しずつ脱がせていく。
もどかしくて、ひと思いに破きたくなるが、衝動を抑え硝子細工を扱うようにできる限り優しく雪菜に触れる。
しかし、和真がしようとしていることに気付いた雪菜はあわてて彼の手をおさえた。
「ま、待って!待ってください…っ」
切羽詰ったような雪菜の声音に、和真はビクリと体を離した。
やはり嫌だったのか、調子に乗りすぎたかと途端に不安になる。
「雪菜さ…」
「和真さんは、私が妖怪でも、いいんですか…?」
思いもよらない雪菜の言葉に、和真は一瞬動きが止まる。
考えたこともなかった。
下から見上げてくる雪菜の瞳は、せつなそうに揺れている。
「私は、和真さんよりもずっと長く生きる妖怪です…
そのうち、和真さんはどんどん年を重ねて…大人になって…」
「でも私は、きっと今の姿のまま、変わらないでしょう…
和真さんに、あとで後悔されるようなことになったら…
ご迷惑、になるようなことがあったら私…」
雪菜の泣きそうな表情がつらい。
いつも穏やかな彼女が、内でこんなことを考えていたなんて気付かなかった。
雪菜は妖怪で、自分は人間だ。
そうだ。彼女の寿命は人間のそれとは比にならないくらい長い。
いつか自分は老いて、彼女を置いてゆく。その時、彼女の姿は今とほとんど変わりない…
置いてゆくのと、置いていかれるのとはどちらが辛いだろう。
本当に考えたこともなかった。
雪菜はずっとこんな寂しい不安を抱えていくのか―――
和真は、不安そうな雪菜を強く抱きしめた。
「後悔なんかしません、俺は、雪菜さんが妖怪だろうが人間だろうが…そんなの俺は…」
答えになっていないのはわかっているが、他にこの思いをどう彼女に伝えればいいのかわからない。
思わず涙声になってしまい、和真は言葉を繋げるかわりにキスをした。
さっきのような欲にまかせた荒々しいキスではない、今和真にできうる限りのやさしいキス。
ふ、と唇を離すと、今度は雪菜のほうからキスをしてきた。
おずおずとではあるが、和真のキスを真似るように唇を寄せてくる。
はにかむような、愛しさの溢れるような可愛らしい雪菜のキスに、和真の雄が思わず反応してしまう。
「んぅ…っ」
もう止められなかった。
舌で、雪菜の小さな歯列を割り彼女の口内を蹂躙する。
突然再開された刺激に雪菜は体をこわばらせるが、今度は震える手で和真の胸にしがみつき、
いっしょうけんめい彼の愛撫についていこうとしていた。
「ふぁ…はぁ…あっ」
ワンピースのボタンがはずされ、白い胸元が露になる。
可愛らしい下着が雪菜の胸を包んでいる。
「や…やっぱり恥ずかし…っあ、や、やあっ」
小さな手で胸元を隠そうとする雪菜の仕草が、余計に和真の雄を刺激する。
ぐいと下着をずらすとやわらかな胸が空気にふれてフル、と震えた。
着やせするタイプなのだろうか?
雪菜の胸は服を着ている時よりもしっかり質量があり、和真の掌にきもちよくおさまった。
「あ…あ…あ…」
白桃のようなふたつの胸を、大きな掌でもまれ、小さなピンクを和真の指がかするたび
泣きそうな雪菜の小さなあえぎ声が部屋に響く。
可愛くてたまらない。その声が和真の加虐心をあおる。―――もっと聞きたい。
「きゃうっ」
雪菜の胸の、小さなピンクの実を口に含んで転がす。
「いやあ…あっ…あ…かずまさ…ん」
「雪菜さん、すごい、かわいい…かわいいッスよ…っ」
刺激を与えられて、小さな実がぷっくり膨らんで硬くなる。
感じているのか、雪菜の嬌声が次第に艶を増し、高くなっていく。
ふと、雪菜は自分の太ももにあたる硬いものの気がついた。
それは、自分の大事な部分にこすりつけられるようにゆるゆるとグラインドしている。
瞬間、さっき見た本の、恥ずかしい写真を思い出す。
(和真さん…)
雪菜は男の裸を見たことがない。しかし、さっきの写真で男性と女性の体のはっきりとした違いはわかっていた。
(あの、棒のようなものが…私のなかに…?)
とたんに雪菜の体がカアッと熱くなった。
和真の骨ばった指が、雪菜の秘所に触れたのはその時だった。
「や…っ」
びくんと全身が震えて、雪菜は恥ずかしさと未知の刺激とのこわさに、思わず逃げようとする。
しかし、ただうつぶせになっただけで和真の腕の中から逃れることはできず、目の前の枕にしがみついた。
和真は震えそうになる指で、雪菜の少女の部分を下着越しに、ワレメに沿って指を往復させる。
はじめて触るそこは、くにゅくにゅとやわらかくて、熱くて、
乱暴にしたら壊れてしまうんではないかと不安にさせられるほど頼りない。
「いやあ…かずまさん…あっ…あ…っ…だ…めえぇ…ぇ」
うつぶせになり、真っ赤な顔を枕にうずめながらも感じているのか、雪菜の腰はかすかにだが揺れている。
そのさまがいやらしい雌を感じさせて、普段の雪菜とのギャップにますます和馬は興奮する。
ふと、和馬の指が止まる。
(雪菜さん…濡れて…)
見ると、下着にしっとりと小さなシミができている。
そこがうっすらと透けて、雪菜のピンク色の秘所の陰がかすかに浮き上がっている。
「………ッ」
「きゃ?!」
ぐい、と雪菜の細い腰を持ち上げ、一気に下着をずりおろす。一瞬はずかしい蜜が糸をひいた気がした。
「いやあっかずまさん…っ?!」
突然の荒々しい和馬の行動に、雪菜はとまどう間もなく押し流される。
まだ何者も受け入れたことのない少女のそこは、ひくひくと小さく震えて蜜に濡れてはいるもののピッタリと閉じている。
和馬はそこを乱暴に舌でこじあけ、雪菜のワレメを蹂躙した。
「アーっあっ…アッ…やあ…ァ、そ…なとこ…っ」
雪菜は恥ずかしさと気持ちよさに、頭が真っ白になるような気がした。
こんな、腰を突き出したみだら格好で、和真に恥ずかしい箇所を全部見られて、舐められて…
膝がガクガク震えて、今にも崩れ落ちそうになる雪菜は、自分のあえぎ声を他人のもののように感じていた。
(こんな恥ずかしい声…でちゃうなんて…私…)
「きゃうんッ」
一段強い刺激に、雪菜の腰がビクンと跳ね上がった。
和真が、雪菜のワレメにある小さな突起を見つけ、そこを吸い上げたのだ。
「やあああああ、あっ…アッ…アッ…アーッだめ…ッだめ…ですっ…いやあああ…」
強すぎる刺激に、雪菜の嬌声が跳ね上がる。
その声にあおられた和真は、その小さな部分をクリクリと舌でねぶり、さらに指でワレメの薄いひだをこねる。
くちゅ…くちゅっ…くぷっ
「あああぁ…ア…あア…」
恥ずかしい水音が耳をつき、今まで感じたことのない快楽が雪菜の全身をしびれさせる。
もう言葉は言葉にならず、ただ和真の愛撫に流され感じるだけだった。
「あっ…ア、いや…ヘン…なにか、きちゃう…ッ…かずまさん…わたし…アッ…あ、あ、ア―――――…ッ」
きゅうう…っと雪菜の秘所が痙攣し、全身を震えさせて、腰から崩れ落ちた。
和真が、ひくひくと震える雪菜のワレメから指を抜くとトロ…と蜜が溢れて太ももを伝い、シーツにしみを作った。
放心したような雪菜はベットに沈み込み、瞳をとろんとさせて未だ全身を細かく震わせている。
「雪菜さん…?」
「……」
(…イッた…のか…?)
和真は荒い息と興奮を抑えるように深呼吸すると、改めて雪菜を見る。
うつぶせになった雪菜のカーディガンとワンピースは大きくはだけて白い背中を露にしている。
丸いおしりと、かすかに見え隠れするピンク色のワレメ、そこから一筋たれた蜜…
乱暴に脱がせた下着は、膝のところでひっかかって丸まっていた。
(これじゃまるで、レイプされたみてーじゃねえか…)
自分がしたことなのに、まるで他人事のように感じる。
彼女の感じるさまがもっと見たくて、夢中で愛撫してしまった。
雪菜のそうした痴態は、再び和真の雄の本能を刺激する。が、深呼吸したことで少し落ち着いた。
とろんとした雪菜をやさしく仰向けにして、互いの顔が見えるように向き合うかたちにする。
やさしくキスをして、内心雪菜に乱暴なことをしてしまったことを詫びる。
彼女は初めてなのだ。
自分だってこういうことは初めてだが、自分は男だし、彼女のそれとは意味の深さが違う気がした。
それに自分は一応こういうことに対する知識だってある。
雪菜はそれすら未知のことで、不安だろうに自分を信頼して体を預けてくれてるのだ。
そう思うといっそう腕の中の彼女が愛しくなる。
「和真さん…」
雪菜が息を整えたのか、恥ずかしそうに小さく身じろいだ。
「私…ごめんなさい、なんだかすごくて…わけがわからなくなって…はしたないですよね…」
「そんなことないです、雪菜さんは、その、気持ちよくなってくれたんでしょ…?」
和真のストレートな言葉に赤面しながら、雪菜は小さく頷いた。
「きもち、よかったです…すごく、きもちよくて…私…」
素直な雪菜の反応に和真は嬉しくなって、彼女の紅潮した頬にキスをした。
そして、中途半端に脱がせたままの雪菜の服をすべて脱がせ、自分も裸になる。
陽はもう傾いて部屋のなかは薄暗くなっていたが、
雪菜の白い肌はその中に浮き上がって本当に雪のように白く感じられた。
雪菜は初めて見る異性の体を目の前にして、
恥ずかしいのかこわいのか、真っ赤になってうつむいてしまう。
女性ばかりの氷河の国で生まれ育った彼女にとって、異性の体は本当に未知のものだ。
胸板の厚さとか筋ばった腕といった、普段意識せずにいた自分の体との違いがはっきりとわかる。
なによりの違いは、和真の中心で反り返るもの―――
「は、恥ずかしいッスね…」
お互いに裸になって改めて向き合うと、さすがに照れるものがある。
「恥ずかしい、ですね…」
普段と変わらない和真の、少しおどけたような照れ隠しの言葉にほっとして、雪菜はくすっと笑った。
そして、さっき服越しに自分の太ももにこすりつけられていたモノに、そっと触ってみる。
「ゆっ、雪菜さ…!」
突然の思いもよらない刺激に、和真は肩を震わせる。
「!ご、ごめんなさい、痛かったですか?」
「い、いや、痛いんじゃなくて…っ」
気持ちいい。
あの雪菜が、触ってくれたと考えるだけでさらに膨張してしまう。
「え…っ、なんだか、また大きく…?」
雪菜は、初めて見る雄の変化を目の当たりにして戸惑う。
自分が触ったことで、腫れてしまったのだろうか…?と不安になる。
それに―――
「こんなに、大きいのが本当に、私のなかに入るでしょうか…」
思わず、不安に感じていることを口にしてしまった。
和真は、そんな雪菜の素直な言葉にも感じてしまう。
たまらず彼女に覆い被さって、一度落ち着いた体に再び刺激を与えていく。
さっき達したばかりの雪菜の体はまだ熱く、感じやすくなっていた。
「んむ…っん…!!」
キスしながら、和真は再び雪菜の秘所に指を這わす。
そこはまだ潤って、くちゅ、と小さな音をたてて和真の指をやわらかく包み込む。
(ここに、挿れる…)
想像しただけでたまらなくなる。
ずっと妄想の中だけで犯してきた、大事な少女のはじめてを自分がもらえるのかと思うと、
幸せで胸がいっぱいになる気がした。
「あっ…や…あ、あ…ッ」
くちゅ、くちゅ、と骨ばった指に蹂躙されて、雪菜のそこは紅く充血してヒクヒクとひきつった。
「雪菜さん…っ」
「あっ」
雪菜の膝裏に手を滑り込ませて一気に持ち上げる。
震えるそこはくぱりと割れて、透き通りそうなひだが蜜に濡れて光っている。
あまりに恥ずかしい格好に、雪菜は真っ赤になって言葉も出せず、思わず両手で顔を覆う。
和真は、自分の雄を雪菜の濡れたそこにあてて、やわらかなひだに割り込ませるようにゆっくりと前後させた。
「ひ、や、やあああ…アッ、アッ…いやあ…」
いきなり挿れるのはさすがにしのびなくて、
少しでもこの大きさに慣れさせるように彼女のワレメに竿の部分をこすりつける。
裏筋にぴたりとまとわりつく肉の感触に、和真は震えるような快感を感じた。
「雪菜さん、雪菜さ…っ」
「ンッ、んぅっ…ア」
(和真さん、の…すごく熱くて、固くておっきい…こんなのが、ほんとに…)
ごつごつしたそれは、少々グロテスクな感もあり少女を怯えさせる。
熱い肉棒が自分の大事な部分にこすりつけられるのを指の間から見ながら、雪菜は不安になる。
それでも、やはり与えられる刺激はきもちよくて、不安と裏腹に恥ずかしい声が漏れてしまう。
自分の動きに合わせてかすかに雪菜の腰が揺らめいている。
恥じらいながらも感じている彼女が、可愛くていやらしくて。
腰がとまらない。
もう我慢の限界だった。
ぬぷ…と、己の先端を少女のなかに埋め込む。
雪菜はあまりの衝撃に息をのんだ。
和真はゆっくりと腰をすすめるが、なにかに引っかかるのを感じた。
処女膜だ、と本能的に直感する。
「……ッ」
雪菜が、破瓜の痛みに耐えるように唇をかんで、和真の腕にすがりついてきた。
涙をうかべて耐えている雪菜を見るのがつらくて、
一瞬やめようか、とも思ったが、もう今更止められない。
少しでも痛みを紛らわせてやろうと、きつく噛み締めた雪菜の唇をほどいてキスをする。
ふ、と雪菜の体から力が抜けたのを感じて、和真はひと息に腰をすすめた。
「…ン・んん―――ッ…ッ」
一瞬ひっかかった部分を抜けると、なんの抵抗もなく、にゅるりと根元まで入った。
雪菜の膣内はやわらかく和真自身を包み込んで、不規則に小さく震えている。
「は、はいっ…た…?ほ…んと、に??私…っ」
雪菜が、初めて感じる圧迫感に震え、細かく息をはきながら今にも泣きそうな声で、
不安そうに和真を見上げた。
「雪菜さん…っ」
和真は、できるだけ腰をそのまま動かさないように、感極まって雪菜を抱きしめた。
「雪菜さん、雪菜さん…雪菜さん」
嬉しくて、涙がでた。
ずっと思いを寄せてきた少女の、はじめての男が自分なのだ。
「和真さん…」
少女に気付かれないように、枕に顔をこすりつけて涙を拭いた和真は、
ゆっくりと体を離して彼女と向き合う。
雪菜は、嬉しそうに微笑んでいた。
「うれしい、です…和真さん……」
コロリと、小さな氷泪石がこぼれた。
「よかった…和真さんと、ちゃんとひとつになれて―――…」
雪菜の言葉に、和真はまた泣きそうになるが、グッとこらえた。
「少し痛いかもしれないけど…」
そう言いながら、和真はゆっくりと腰を動かし始めた。
まだ痛いのであろう雪菜は、きゅっと目をつむり、与えられる刺激に背を仰け反らせた。
(すっげぇ、きもち、いい…っ)
吸い付くように自分を包み込んでくる雪菜の膣内があまりに気持ちよくて、
正直、和真は衝動にまかせて腰を突き振りたくなるのを抑えるのに必死だった。
まだ行為に慣れない雪菜にそんなことをしたら、こわれてしまう気がした。
「はっ…あ、アッ、アッ…」
それでも、腰を前後させるうちに雪菜の声音が変わってきたことに気付く。
最初は苦痛の色が濃かったあえぎに、次第に艶のある嬌声が混じるようになってきた。
自分の下で、少女だった雪菜が女になっていくような感覚を覚えて、和真は興奮する。
「アッアッアッアッ、やあ、ア、アッ」
腰を打ち付けるリズムにあわせて、雪菜の泣きそうなあえぎ声が零れる。
気持ちよさそうに、淫らに腰を振る自分の痴態に彼女は気付いているだろうか。
和真は、深く、浅く、雪菜を蹂躙する。
「アッ、か、かずま、さんッ…かずまさん…ッ」
和真のものをくわえこんで乱れる雪菜の姿は、あの本の写真なんかよりずっと刺激的だった。
きゅうう、と雪菜の最奥が締まり、和真はその刺激に危うくいきそうになる。
小さく痙攣をはじめた雪菜のそこから、絶頂が近いことを感じ取る。
和真自身も、もう限界が近かった。
「ひあっ!?アッいや、かずまさ…っアッそんな、そんな…っだめえっ」
急に、激しく腰を打ち付けてくる和真を受け止めかねて、雪菜はこわくなる。
(こわれちゃう…っ!)
「いやあ、あ、あ、アっ、アッアッアッアッ…だめ…だめ…ア、あ、ア」
がくがくと、雪菜の足が跳ねる。
恥ずかしい水音はどんどん小刻みに響き、ふたりの頭は真っ白になっていく。
和真は、もっと深く突くようにと雪菜の細腰をつかむ。
「雪菜さんっ、雪菜…ッ」
「あ…ア……ふ、あああぁああぁぁ…―――っ」
雪菜の膣壁がキュウっと締まり、びくびくと痙攣する。
和真はとっさに、かろうじて己のそれを引き抜き、雪菜の白い腹に大量の精を吐き出した。
*********
「いーから雪菜さんは休んでてくださいっ」
エプロンをつけた和真が、起き上がろうとする雪菜をベットに押し戻す。
あれから、初めての異性を受け入れた衝撃からか雪菜は腰が抜けてしまい、
ひとりでお風呂に入ることもできず、結局和真と一緒に入ることになってしまった。
和真は丁寧に雪菜の体を清めてあたたかいパジャマを着せると、大事そうにベットまで運んだ。
しかし雪菜は、情けなさと申し訳なさと恥ずかしさで寝ることもできず、
起き上がろうとするたびに和真に押し戻される、のを繰り返すことになった。
「ほんとにごめんなさい、私が、夕飯の支度するはずだったのに…」
「そーんなの俺がしますから、雪菜さんはゆっくりしててください!」
和真は上機嫌で、彼女のそばでジャガイモの皮を剥いている。
その手付きはなかなか手馴れたもので、雪菜は感嘆した。自分よりも上手かもしれない…。
(明日こそは、ちゃんと私がご飯作らなきゃ…!)
しかし、そんな雪菜の思いは結局遂げられることはなかった。
なぜなら次の日も、今日のように腰が抜けてしまうからであった。
終
466 :
440:2005/11/25(金) 17:09:34 ID:4GdtydZu
ということで桑原くんと雪菜ちゃんの初めての話、これでおしまいです。
拙い文章で恥ずかしいですが、少しでも楽しんで頂けてたら嬉しいです。
今回桑原君は外にだしてましたが、ちゃんと避妊してあげないといけませんね!
次にする時はちゃんとコンドームを用意しないと。
長々と失礼しました。どうもありがとうございました。
GJGJ!!エロくて文も上手くて最高でした。
幸せそうな二人の心境が伝わってくるようでした。
また何か書いて下さい〜。
440さん、お疲れ様でした!エロくてGJ!
文章も、とても読みやすくて(・∀・)イイ!
桑ちゃんと雪菜ちゃんの、初めてだけど愛情のあるエチに萌えますた。
萌えた…萌えたよ
440さんGJ!
エロいのにさわやかだー!
飛影にばれないことを祈るw
(;´Д`)ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハ(ry
雪菜ちゃんかわいいよ雪菜ちゃん
>>470 うん、飛影にバレたら速惨殺ものだ罠。(w
。・゚・(ノД`)ヽ(;Д; )モライナキシチャターヨ
桑ちゃんが感激で泣いちゃうとこがよかったー!!ぐっときたよ。
GJ!!!!!
もう日付の変わる頃。
桑原和真は自室のベットに座り、ぼんやりと掌の中の小さな氷泪石を転がしている。
(俺…ほんとに雪菜さんと…)
なんだか未だに信じられない。
こうしてひとりになってみると、数時間前のことが嘘のように感じられた。
手の中の氷泪石は、破瓜の際に零れ落ちた雪菜の涙だ。
「…これは、和真さんが持っていてください」
行為のあと、はにかみながら雪菜が自分に手渡してくれた。
和真はその時の雪菜の笑顔を思い出しながら、手の中の小さな石を握り締めた。
時計を見ると0時をまわっている。
よし、とダウンジャケットを着込むと、和真は音を立てないように部屋を出た。
雪菜の部屋の前で立ち止まり、一瞬どうしようか迷う。彼女はもう寝ている。
そっと扉を開けてみると、女の子の部屋らしい良い香りがした。
本当になぜこんなにも自分の部屋と違うのだろうと思いながらベットをみると、雪菜の寝顔が見えた。
(今日は無理させちまったもんなぁ…)
よく眠っている彼女の寝顔を見ながら心の中で詫びて、静かにドアを閉めた。
**********
外に出ると澄んだ冬の夜の空気が思いのほか気持ちよく、和真は深呼吸する。
そして冷たいアスファルトを蹴って思い切り走り出した。
今日、憧れの少女と初めて通じ合えたことを思うと嬉しさがこみあげてきて、
この夜道をのんびり歩っていく気分にならなかったからだ。
ひとしきり走って、もうすぐで目的地に着くというところで和真は止まり荒い息を吐く。
白い息が次々に夜空に溶けていき、つられて顔をあげた。
星がよく見えて、そのままぼんやりと立ち尽くす。
1番奥のポケットに入れてきた氷泪石を、確かめるように握り締めた。
目的の薬局のシャッターは閉まっていたが、
その横に控えめに置いてある小さな自販機はぼんやりと闇の中で自己主張している。
「やっぱ男の責任として、ちゃんと避妊しねーとな…」
今日は余裕もなくて、避妊具なしで臨んでしまった。
一応最後は外にだしたが、それが気休めにも避妊とはいえないことを和真も知っている。
それに雪菜の場合、普通以上にそういったことに気をつけてあげなくては――――
しかし、さすがに白昼堂々とこういった類のものを近所で買うのはやっぱり恥ずかくて、
こうして夜の闇に乗じて自販機にやってきたのだ。
カコン、と出てきた小さな箱を手に取った時、聞きなれた声が和真を突き刺した。
「おーい、なんだ桑原ぁ?」
「!!!」
場合が場合なだけに、ギクリとして振り返ると、幽助が白い息を吐きながら近づいてきた。
「なっ、な、なんでオメーこんなとこにいんだよ!?」
和真は今手に入れた小箱をポケットにねじこみながら照れ隠しに悪態をついた。
「なんでって、オメーと同じ買いもんだって」
「え…っ」
キョドる和真をよそに、「あいつコレないとやらせてくんねーんだもんなー」とぶつぶつ言いつつ、
幽助はさっさと自販機から目的のものを手に入れる。
その手馴れた様子に和真は内心舌を巻いた。
小箱を手にした幽助は、ふと何かに気付いたように和真をじっと見る。
「な、なんだよ?」
「…いや、だってさ、おまえコンドームなんか使う相手いねーだろと思って」
心底不思議そうに、失礼なことをさらりと言う幽助。
いつもなら和真が脊髄反射で反応してそのままケンカになるところだが、今日はちがった。
和真の顔は緩みきって、妙な自信が溢れている。幽助はまさか、と思い当たり絶句する。
「……お、おまえ、まさか…マジ?」
幽助のたじろぐ様子を満足そうに見やり、和真は照れながらグッと頷いた。
「あきらめねえでホントによかったぜ…今日はコレ用意できなかったけどよ、
次はちゃんとしねえと雪菜さんに申し訳ねえっつーか…」
「……!!ヤッたのかよ?もう!?マジで?!」
幽助はにやける和真を見て、信じられなそうにあとずさる。
脳裏に一瞬、飛影の顔が浮かんで消えた。
幸せそうに雪菜への想いを熱く語り始めた親友を横目で見ながら、こいつ殺されるかもな…と思う。
しかし、ずっと雪菜だけを一筋に想ってきた和真のことを知ってるだけに、
その恋の成就には驚きつつも「よかったな」と心の底から思う。
夜道を、特に会話もなく男ふたりでフラフラと歩く。
「なー浦飯ぃ」
「んー?」
「女の子ってなんであんないいにおいすんだろうなー」
「さーなー」
「……」
「……」
「俺これからマジでさー」
「んー」
「雪菜さんのこと大事にするぜー」
「…んー」
道が別れて、それぞれ背中を向けて歩き出す。
幽助は、振り返り和真を呼び止めた。
「桑原ぁ!」
「あー?」
「よかったな!」
和真は一瞬目を丸くして幽助を見たが、すぐに相好を崩し「おう」と答え再び背を向けた。
親友の背中を見送りながら、あ、と幽助は呟いた。
「殺されねーよーに気をつけろって言うの忘れた…」
しかし、すぐにまあいいか、と思い直し自分も歩き出す。
どうせ言ってもしょうがない。深く追求されても困る。
それにしても飛影がこのことを知ったらどんな顔をするか見ものだ、と思う。
もしかしてアイツのことだから邪眼で見て、もう知ってるかもしれない――――
心の中で和真と飛影に合掌して幽助はおもしろそうに笑うと、幼馴染兼恋人の待つ家路を急いだ。
**********
飛影は不機嫌そうに邪眼を閉じた。
今日、妹があのつぶれ顔にとうとう奪われた。
その事実は悪夢のように飛影をさいなみ、なんともいえない複雑な心境にする。
自分の片割れとはいえ、やはりまだまだコドモだと思っていた。というより思っていたかった。
ところが、雪菜はいつの間にか恋することを覚え、男を受け入れ…
そして今、枕もとに立つ自分の目の前で幸せそうな寝顔を見せている。
自分に口出しする権利はないと思いつつ、いてもたってもいられずに百足を抜け出しここに来てしまった。
「…バカが…」
もし間違いがあったらどうするんだ。そんなにあのつぶれ顔がいいのか。
幸せそうに、のんきな寝顔を見せる雪菜に小さく悪態をつく。
さっき邪眼で見た際に桑原が言った言葉は、飛影の殺気を少しずつ削いでいく。
大事にする、とアイツが言った。
それは、憎たらしいが信頼するに値すると飛影もわかっていた。
殺さないまでも、怒りにまかせてボコボコにしてやるつもりでいたが、そんな気もなくなった。
雪菜が幸せなら、それでいい。
しばらく妹の寝顔を見たあと、静かに去ろうとする。と、雪菜が小さく寝返りをうった。
「かずま、さん…」
何の夢を見てるのか、にこにこと笑っている。
飛影はそんな雪菜を一瞥して、彼女の部屋を出た。
コンドームの小箱を手に上機嫌で夜道を歩く和真が、
いきなり目の前に現れた飛影に一発殴られるのはその直後の話である。
476 :
440:2005/11/26(土) 19:11:36 ID:jP6pcPBa
こんばんは、桑原×雪菜
>>441-447、
>>455-465の
蛇足として書いたものを
>>473-475に投下させていただきました。
これはエロなしですみません、最初に断ってから投下すればよかったですよね。
書いてるうちに桑原くんに感情移入してしまって、
ついつい楽しくなって調子に乗って書いてしまいました。
レスを下さった皆様、どうもありがとうございました。
こういったエロパロ書くのは初めてだったので反応いただけてとても嬉しかったです。
またそのうち、忘れられたころにスレ汚しさせていただきたく思います。
せっかく雪菜ちゃんも貫通したことだし、もっとエロいこともさせてやりたいと思いつつ…
とにかくこれで本当に440の桑雪初めて話はおしまいです。
どうもありがとうございました。
連日の投下で、もし他の方が投下しづらくなってたらすみません。
440ネ申乙でしたーーーー!!!!
後日談込みで禿萌えました。
感情移入してるだけあって桑が生き生きしててサイコーでした。
雪菜ちゃんもカワエエ
ぜひぜひもっとエロいことさせたSSも読んでみたいです
440サマ、神ーーーー!!!!!
後日談から陽炎のように萌え立つ雰囲気こそが、エロいです。
最中もいいけど、「これから」のことも妄想できそうな感じがよいです!
幸せな気持ちをいただきありがとうございます。
後、後日談キターーッ!!!マジ良いっすよ!!(*´Д`)≡3
心の底からキュンと来ました!!幸せな感じがすごく伝わりました。登場人物の台詞や行動もみんな「らしく」て良かったです!特に飛影に萌えた〜。
本当このスレに出会えて良かったと思います。このスレ全体の穏やかさが好きだ。大好きだ!!!
神GJ!超GJ!
自分もこのスレに出会えて良かったと心から思うよ……
後日談キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
440さん、GJ!GJ!!お疲れ様でした。
長年の恋が成就して、
思わず夜の道を走り出してしまう桑ちゃんの嬉しい気持ち、本当分かるよ。
親友の恋の成就に心から祝福する幽助や、
複雑な気持ちを抱えながらも、
「雪菜が幸せなら」と黙って見守る(桑には一発お見舞いしているが)
飛影兄貴もいい奴だ。
みんな幸せになってほしいね。
桑原×雪菜、続編期待しています。
440さんの都合の良い時にまた投下して下さい(´∀`)
あーっ!440さんキテター!GJ!GJ!
440さんの文は本当にそのキャラクターをつかんでてスゴい。
頭の中では本当に桑原たちが動いてたよ。
12さんをはじめ、次々に神が現れるスレだ。
483 :
12:2005/11/27(日) 22:20:11 ID:mNxC4pcy
こんばんわ。
今現在、飛影×躯で書いている途中です。
しばらく続く予定なので、エロ少ないと思うけどあと少しで投下出来るかな。
それと、今週は440さんの作品にハアハアしていました。
二人のそれぞれのキャラが本当に生き生きしてて、展開に無理がないのがすごい
と思いました。しかもエロい。
憧れる文体です…。
待ってました12さん!!!(・∀・)エロ少なくても全然イイです!早く読みたいです!頑張ってください!!
485 :
孵化:2005/11/27(日) 23:12:22 ID:mNxC4pcy
日に焼けてはいない真っ白な首筋がすっかり隠れてしまうほどに、その髪は伸
びてきている。鬱陶しいと思ってはいたが、以前のように何の思い入れもなくぷ
つりと切る気にはなれなかった。
「大分、伸びたな」
男の指先が、悪戯に細い髪の先を弄んだ。
「そうか」
「伸ばしてみないか」
何事にも無関心を装うこの男のこと。そんな些細な事柄など所詮他人事だと気
にも留めないと思っていたから、その言葉には少し驚いて椅子から立ち上がり
かける。
「何を、いきなり」
「特別何の意図もない。ただ、そういう貴様も見てみたい。そう思っただけだ」
「酔狂な」
「そうかもな」
腹芸などしなくて済む他愛のない遣り取りをしていると、結局は自分も只の女で
しかなかったのだと躯は気付かされる。落胆や失望などではなく、それまで憶
えのなかった他者への期待というものに違いない。
期待。
以前ならば決して誰にも心を許せなかったというのに、何という変化だろう。女
であることを受け入れるだけでこうも心が変化してしまうことに、まだ慣れきれ
てはいないが、悪くはない気分だった。
この男ならば、信じられると確信しているから。
数日後、ひとりの少女が躯の住処を訪れた。
荷物は小さな鞄ひとつだけ。ここまでかなりの長旅をしてきたのか、足元が埃
っぽく汚れていて少し疲れているように見えた。
486 :
孵化:2005/11/27(日) 23:13:25 ID:mNxC4pcy
今後、次第に思うように身動きが取れなくなる躯の為に、飛影が身の回り一切
を取り仕切る世話係を一人雇い入れると以前言っていたのを思い出した。単な
る冗談などではなく、本当に迅速に成し遂げるところが普段は無口なあの男の
美点だろう。
応接室に通された少女は、緊張しながら用意していた言葉を並べ立てる。
「あの、お話は伺っていると思いますが…飛影様からの依頼でやって参りまし
た。雛と申します」
「ああ、聞いている。提示された条件で良ければ今日からでも構わないがどう
だ」
「ええ、それはもう。ただ私はあまり気が利かない方なので躯様のお怒りを買
わないかと心配で」
あまりにも恐縮している雛の様子に、思わず躯は声を上げて笑い出してしまっ
た。この娘を世話係として選んだ飛影の気持ちが分かるような気がした。
いくら何でも、四六時中べったりと側にいることは出来ない。
飛影にも仕事はあるのだし、何よりも女である躯の気持ちを全て理解出来てい
とは言えない。まして、これから体が変化してくるに従って精神的にも不安定
を極めるだろう。そうしたら、女のことは女でなければ分からなくなるからだ。
ただ、それによって雇われたのがまだ男など知らない小娘だというのが、唯一
の不安材料ではあるが、そこまでを望むのは酷というものか。
「とりあえず、今のところは普通に仕事をしてくれればそれでいい。何か追加す
ることがあればその都度指示しよう」
「はい、分かりました。それではよろしくお願いします」
慌ててソファーから立ち上がると、深々とお辞儀をする。そんな態度に躯は好
感を持った。
その日は午後になってから、意外な来訪者があった。
直接ここに来たことなどこれまで一度としてない蔵馬だった。
訪問の折には飛影とは時々話しているようだが、躯は特別用件もないこともあ
ってここ数年というもの顔すら合わせてはいない。
「珍しいことだな」
「そうでしょうね…まあ思うところがありまして」
「思うところか。まあいいだろう」
487 :
孵化:2005/11/27(日) 23:14:18 ID:mNxC4pcy
雛に対して取っていた態度とはまるで違う、気のなさそうな様子で長椅子に横
になりながら眠そうに言葉を返す。
「世話係を雇ったそうですね。いいことです」
「まあな、これからどんどん大儀になることが多いというのでそうなった」
「安心しました。大事にされているようですので」
「お前はいつも杞憂ばかりだ、昔から変わらないんだな」
そう、昔からこのやたらと綺麗な男は人の心配ばかりをしている。以前はこの
姿ではなくまばゆいほど銀色に輝く妖狐であったが、やはりそこだけはわずか
も変わらない。
「俺は結局あなたを守りきれなかったですからね。飛影にはその度量があった
ということでしょう」
「と、いうことになるな。薔薇の種はその罪滅ぼしという訳か」
「ええ、まあそんなところです」
ぬけぬけとよくもそんなことを、と思うほどあっさりと蔵馬は肯定しながらゆっく
りと近付いてくる。応接室の扉の外で、茶器の盆を持った雛が入っていいもの
かどうか迷っている気配がした。
長い指をした美しい手がまどろんでいる躯の栗色の髪を撫でる。
「もしも、飛影があなたをないがしろにすることがあれば、俺はいつでも牙を剥
くでしょう。それほどに今でもあなたをむ」
「躯様!」
突然思い切ったように、扉が開かれた。
銀の盆を側のテーブルに乱暴に置くと、雛はぽろぽろと泣き出す。
「あんまりです、躯様…あれほどまでに飛影様が大事にして下さっているのに
こんなところで」
「何を 勘違いしている?」
長椅子から身を起こすと、半身の瑕疵など何の影響ももたらさないほどに美し
い女が、長らく忘れていた愉快そうな笑い声を立てる。
488 :
孵化:2005/11/27(日) 23:15:23 ID:mNxC4pcy
「そうか、お前はまだ知らないのだったな。それではこの際教えておこう。この
男は以前俺の養い親だったことがあるのだ」
「え?」
「そう、ずっと昔にね。今は姿が変わっていてそうは見えないでしょうが事実で
す」
髪を撫でる手を止めることなく、愛おしそうな視線を向けながら蔵馬は優しく微
笑した。
「…失礼しましたっ!私、とんでもないことをっ…」
「気にするな。こんな状況であれば誰でも間違えるだろう」
「本当に、申し訳ありませんでした!」
気が動転しているのだろう。雛はテーブルの上の盆を忘れたまま扉を閉めて
走り去ってしまった。これは後で慰めのひとつも言わなければ辞めかねない
と思いながらも、また睡魔が襲ってきそうになっていた。
「昔からすれば、本当にあなたは成長した…見事です」
「そうあらねばすぐに死んでいただろうからな」
「結局、俺はあなたの人生の局面には立ち合えなかったということです」
「だが、お前があの時助けてくれなければ、今の俺もなかった。それは感謝
している」
「光栄です、躯。いえ、うてな」
遠い昔、そう呼ばれていたことをふと思い出す。
「懐かしいな」
久し振りに温かい心持ちになった。
あの極悪非道な男から逃れてすぐ、半身のひどい火傷から感染症を起こして
死にかけていた躯を気紛れに拾い、傷が癒えるまで庇護してくれたことは今
でも鮮明に憶えている。
そのことは以前飛影にも告げていたので勘繰られることもない。
「あなたは今、幸せですか」
柔らかい指先が唇を撫でた。
「そうだな。多分…」
「それで充分です。あなたが幸せであれば俺は何も望まない」
髪を撫でる手が気持ち良くて、そのまま眠りに入ってしまう。これまで失われ
ていた欲しかったものが一気に戻ってくる感覚だった。出来ればこの手が別
の、今不在の男ならもっといいのにと考えてもいたが。
489 :
孵化:2005/11/27(日) 23:16:06 ID:mNxC4pcy
「蔵馬が来たそうだな」
寝台の上で、まだ子供のような容貌の男が長く執拗な口付けの後でぼそり
と言葉を残す。声音がどこか妬いているように思えてくすりと笑った。それが
気に障ったのだろう。
「何がおかしい」
いつにない怒ったような声が寝室の空気を乱した。
「お前が気にするとはな」
「当たり前だろう、貴様は既に」
「既に?」
「…妻も同然だからな」
そのまま、物も言わずに行為を開始した。やはり不在の間にそのような出来
事があったことに不機嫌になってはいるようだ。だが、それもまた嬉しく思っ
てしまうのは女の性というものなのだろうか。
「何もかも知っている癖に」
「それでも、貴様が他の男といるのは我慢ならない」
やはりこの男は嫉妬をしているのだ。わざとこうして煽ってまで引きつけよう
とする自分の卑劣なまでの女心。いっそ滑稽なほどに必死だと思う反面、
そんな醜態が我ながら愛しいのだから笑える。
「飛影」
次第に追い上げられて意識が混沌とする直前、正気を引き上げながら目の
前の男の頬を撫でて出来るだけ笑って見せた。
これだけは言っておきたいと決意を込めて。
「俺を、妻と思ってくれるんだな」
「当たり前だろう」
その言葉だけで何もかもが一瞬にして溶けて、完全に満たされていくようだ
った。
女としての始まりなのだろう。
終
490 :
12:2005/11/27(日) 23:21:09 ID:mNxC4pcy
すみません。
本当にエロなくなりましたです。
まあ、これから話が進んだら徐々にエロ解禁ということでひとつ。
あと、世話係の雛は完全オリキャラなので反応が怖いですけど、一人ぐらいは
入れないと今後の展開が出来なさそうだったのです。
では、今週は早めですがおやすみなさい。
ジェラ飛影萌えーー萌えーー
12様、乙でございます。
おやすみ(´∀`)ノシなさいましゃー!
12さんの飛影×躯、キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
GJ!!いつも乙です!エロじゃなくても十二分に萌えます…
前作「水底の夢」では、情緒不安定気味だった躯も、
今作では、すっかり落ち着いているようで何より。
やっぱり“愛されている”って感情が、ひとを穏やかにするんだなぁ。
今回一番驚かされたのは、過去の蔵馬との関係。
オリキャラ・雛も違和感なく、いい味出てます。
今後の展開に目が離せません。来週の日曜が待ち遠しいです。
何か、ホント続編の形の一つとして拝見させていただいてます。
12さんGJです!
12さんキター!
GJ!GJ!!
大人のしっとりした雰囲気イイです。
嫉妬飛影萌え〜
最近このスレを見るのが楽しみで楽しみで…
神サマありがとうございます。
12さんGJ!
続き楽しみにしてます。
496 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/29(火) 22:09:27 ID:Rm7heAru
保守
(/ω\)アア・・・ヨミオワッチャッタヨ。
素敵なSSを投下して下さる職人様方、いつも有難うございます!
誰かカルト書いてくれー
○○書いて、とだけ書き込む奴へ。
そんなに読みたいなら、何か少しでもいいからネタを振ってくれ。
一から考えなきゃならないと、イメージが沸きづらいんだよ。
自分は小説とか書けないんで、職人さんか書いてくれるものはどんなカプでも嬉しいです。
原作終了してずいぶんたつけど、幽白は大好きな作品だから、
このスレで神の作品が読めるだけで幸せですよー。
このスレ覗くのが日課になりつつあるw
502 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/03(土) 23:52:47 ID:x5vvZiBY
ネタふり−幽助蛍子、コエンマぼたんがベースにある幽助ぼたんが読んでみたいです。お互い一番大切な人はいるけど、お互いを一番理解し合ってるのがこの二人でパートナーだけど恋愛ではなく友情より甘く愛情より痛いって感じの。ドリーム入り過ぎスマソ
いいな幽助ぼたん自分も読みたい
蛍子ちゃんはもちろんすごい好きだけど、幽助ぼたんカプも好きだ。
いいコンビだよね、映画も良かった。
505 :
12:2005/12/05(月) 01:23:28 ID:Jkk6QfDf
こんばんわ。
少し遅くなりましたが、投下します。
ちなみに、今回もエロありません。ああ…。
506 :
冬薔薇の日:2005/12/05(月) 01:27:13 ID:Jkk6QfDf
良く晴れた日の午後だった。
風邪は少し冷たかったが、日差しは柔らかくて暖かい。
これからの時期でも大丈夫だからと、教えられた通りに雛は今日も庭園の隅
に種を蒔いて育て始めた薔薇の手入れをしていた。それほどの手間もなく、
ただ水を与えるだけでいいと蔵馬は言っていた。その言葉の通り、面白いほ
ど早く芽が出てするすると日毎に成長する薔薇は、眺めているだけでも時を忘
れてしまうほどなのだろう。
さっきから雛は夢中になっている。
「早く花を咲かせるのよ。躯様に喜んで頂けるようにね」
何度も水場まで往復しては如雨露で水を与えることなど何でもないと言わん
ばかりに、言われたとおりの作業を淡々とこなしていた。
そんな献身的な少女の姿を薄暗い室内から眺めながら、躯はこの日ずっと目
を通して是非の判断を下していた書類を一旦片付ける。
「…躯様!?」
突然の人影に振り返った姿が陽炎の中にある。
初冬の時期とはいえ、これほどに日差しが強ければ日に焼ける。雛ぐらいの
年頃であれば過剰なほど気にして、帽子ぐらいは被る筈なのに。そんなことも
忘れて薔薇の水やりをしている少女の姿は微笑ましく映った。
「今日は暑いぐらいの日差しだ。無防備だぞ」
飛影がきつく注意しているせいで、最近はあまり外にも出なくなっているのは
いかにも不健康に過ぎる。周囲を散歩するぐらいならきっといい筈だ。そんな
考えから日傘を差して庭園に出た躯だった。透き通るほどに青白い肌に紫外
線が突き刺さるようだ。
507 :
冬薔薇の日:2005/12/05(月) 01:27:54 ID:Jkk6QfDf
「私、あんまり日に焼けないみたいですから…躯様こそお体に注意して頂きま
せんと」
「まるで病人扱いだな」
「あっ、いえ。そういう意味では…」
慌てて口籠る雛に笑いが漏れた。
「気にするな。今日は幾らか体調がいい。だからこうして少しは体を動かしてい
るんだ」
嘘ではない。
以前ならば考えられなかったこんな穏やかな毎日が、次第に内面をも変えてい
る。それは悪くない変化だった。いや、むしろ嬉しいことだろう。それを素直に受
け入れている自分がいるのは躯自身にとっても驚きなのだが。
「蔵馬様から栽培方法を教えて頂いた薔薇…順調ですよ。きっと早いうちに花
を御覧にいれられると思います」
自慢げに少し胸を張る少女が眩しい。普通に育っていさえすれば、自分もこん
な風に感情をそのまま出せていたのだろうかと羨ましくなるほどだ。だが、今
となってはないものねだりなど意味もない。
「そうだな、期待している。蔵馬が作った薔薇ならばきっと大輪の花をつけるこ
とだろうからな」
「お任せ下さい」
何故だか、この少女には今まで誰にでも感じていた警戒心というものを感じな
くて済んでいる。それもまた喜ばしい変化か。こうして次第になりたくて仕方が
なかった普通の女になっていくのだろうか。時間はかかったけれど遅くはない
に違いない。
「お前はいいな、純粋だ」
「私が…?」
「そうだ、きっといい家族に恵まれたんだろうな」
「ええ、まあ…」
屈託なく微笑む雛の表情に全てが表れていた。やはりこの少女は愛情溢れる
家族の元で普通に育ったのだ。
508 :
冬薔薇の日:2005/12/05(月) 01:28:32 ID:Jkk6QfDf
「あの、躯様」
「何だ」
嫉妬にも似た羨望を憶えたのを悟られただろうか。そんな浅ましいことを考えて
いることを知ったらこの無垢な少女はどう思うだろう。今はそれが少しだけ怖い
と思った。日傘で歪みかけた表情を隠す。ひらりと緩やかなデザインの上着が
風邪に揺れた。
「今までお仕事をされていたのでしょう?お疲れでしたらお茶を淹れましょうか」
「…ああ、そうだな。では頼もうか」
「はい!」
新しい用件を言いつけられたのが嬉しいのか、少女は空になった如雨露を手に
して軽く辞儀をしてから屋敷へと走り去って行く。
雛はこんな所で雇われるには勿体無いほど、本当にいい娘だ。
最初に会った時からそれは変わらない。
その真っ直ぐな心が自分の為に無残にも汚れてしまわないか。それが心配で
ならない。
こんな考えは飛影が知ったら、きっと笑うだろう。
お前が人のことを心配するとはな、と。
「こんなところで何をしている」
タイミング良く聞き慣れた声が背後で響いた。まだ仕事中である筈の白昼だと
いうのにどうしてここにいるかなど、あえて考えないようにした。
「散歩。他に何がある」
「体を労われ、と言った筈だ」
「もちろん、心掛けているさ。お前が言う通りにな」
オフホワイトの日傘をわざとくるくると回して、照れ隠しに顔を見せないようにし
た。それがじれったいのか、子供のような背丈のままの男は後ろから腕を回し
てくる。
509 :
冬薔薇の日:2005/12/05(月) 01:29:16 ID:Jkk6QfDf
「飛影?」
屋外でこんな振る舞いに及ぶなど、予想外だった。
「分かっているか。お前は母になるんだ。他でもない、俺の子のな。だから過剰
に心配したとしても不思議ではないだろう」
「ああ、分かってるさ…だからだ。腹がそれほど目立たない今のうちに、色々な
ものを見せてやりたい。そう思ってもおかしくないだろう」
まだ目立たない腹に手を当ててみても、本当に存在するのか確証が持てないの
が正直なところだ。それでも、現実は少しずつこれまでの日々を容赦なく侵食し
てくる。
「ある程度ならば構わない」
「悪いな」
まだ日は高い。もうすぐ蕾をつけようかという薔薇の群生に囲まれながら躯は晴
れやかに笑って見せた。初冬にしては珍しく暖かい日だからこそ浮かれて出た
戯言。単純にそう受け取って欲しかった。
まだこれから色々なことがあるとは思う。
気持ちも安定しているとは言えない。
それでも、何につけ支えてくれるこの男がいるならば、頑張り通せる気がしてい
るのは確かだった。
「これからも側にいてくれるな、飛影」
「当然だ」
きっとこんなに暖かい日だから。
誰に言うともなく言い訳をして、決して離さない覚悟をした男と唇を重ねる。日差
しはまだ明るく、庭園の緑は眩しいほどみずみずしく。そんな日だからこそ全部
が絵空事に思えるほどにふわふわとした感覚があった。
終
510 :
12:2005/12/05(月) 01:30:57 ID:Jkk6QfDf
最近、エロが振るわないなあ。
頑張らないと、と思います。
>>510 GJ!!
乙でした。飛影は躯タンを大切にしてますね^^
>エロ振るわない
多分、お話だと躯タンが妊婦さん状態だから、難しいのかなと思います。
かと言って無理やり妊婦エロスもなぁ(´・ω・`)個人的にはショボンヌ
エロパロ板ゆえ、思うところもあるかも知れませんが、頑張って下さい。
…出過ぎたマネしてスマソ
ネ申様↓↓のような話を書いて下さい。おねがいします。
雪菜が拉致され輪姦、犯人はまだ生きてたトグロ兄
桑原ブチキレルが返り討ち、というか殺される
激怒したヒエイ。トグロを殺しに行くが実はダミーで
その間に躯を狙いにいく。躯は楽々追い払うはずが流産してしまう。
この間わずか3秒
さらにクラマの母を狙いにいくトグロたった3秒しかたってないので
くらまに連絡がいってない。母は犯された後殺される。
流産してからわずか1秒
さらに・・・
12さんキテター!
乙です!
雛がいい子でなごむ〜
514 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 19:29:57 ID:FsSjzP4/
ネタフリA−幽助蛍子、コエンマぼたんがベースにある幽助ぼたん絡みの、飛影ぼたんレイープ物。若しくは、白狐(蔵馬でも可)ぼたんレイープ物。お節介を焼くぼたんを疎ましく思い遠ざける為レイープとか。ちゅーか、神様。ぼたんだったら何でもいいです。
12さん、乙&GJです!
照れ隠しに日傘を回す躯、テラカワイス!
そして心配性の飛影にほのぼのしました。
ラブラブカップルの二人を読んでると、こっちまでほんわかしてきます。
いつもクオリティの高い作品をありがとう!
12さんGJ!
優しいストーリーに心がぽかぽか暖まりました。
飛影も躯も良きパパ、ママになりそうですね。雛が癒し系で萌え。
エチは…安定期に入ったら可能でしょうが、
やっぱり母体優先になりますし、激しい事は出来ないでしょうね。
それに、今回のお話でもそうでしたが、
飛影、躯とお腹の子の事を心底大切に思っていますし、
少なくとも“無理やりエチ”は現段階では考えられないなぁ。
>>514 どうかsage(メール欄に「sage」と書く)と改行をして下さい。
せっかくネタふりしてくれているのに、これじゃ読みにくいです。お願いします。
12さん、乙!
先週からずっと気になっていたのですが、
やっぱり雛は「氷菜」にかけてます?
518 :
12:2005/12/06(火) 00:41:39 ID:q1q9mN0o
>>517さん
こんばんわ。
その件は全く無意識でした(笑)いつもネーミングは勘なので。
ただ、前回のタイトルが「孵化」で新キャラだから雛にしただけだったのです。
あと、蔵馬に名付けられていた躯の名がうてなで、「これから変わりつつある魔界の
礎となるべき人物」という意味を持たせたかったので、ある程度関連付けたい気もあり
ました。躯自身もこれから変化を遂げていく訳で、その意味でもね。
でも、
>>517さんの解釈も素晴らしいので、そっちも加えようかな(をい)
519 :
12:2005/12/06(火) 00:45:58 ID:q1q9mN0o
その他、感想を下さった方々、本当にありがとうございました。
設定がかなり自分の首を絞めているので、エロどうしようかと思案中。
まあ、躯はそろそろ安定期に入ると思うので、その時にでも。やっぱりエロ書かないと
自分でも落ち着かない・・・。
それでは、今日はこれでおやすみなさい。
517です。
12さん、そうなんですかw
雛‐氷菜だと思ってて「12さん、深いっ!」と思ってましたw
でも
>>518も納得です。
これからも12さんのエロ、期待してます。
>>516ごめんなさい。もうしません。
ちゅーか、sageは知ってますが、馬鹿にされてるのかな?
>521
多分516さんはあなたがsageのやり方を知らないと思って
親切心で書いてくれたんだと思いますよ。
知っててもそれを実行しなければ、知らないと思われても仕方ないし。
て、いつのまにか幽白で単独エロパロスレ立ってたのね。
以前のスレで飛影×雪菜のSS書いた者です。
ここのスレも活気があって楽しませていただきました!
神作品揃いでシビれました。
12さん(上手すぎ!凛とした文体が素敵です)
440さん(ラブラブ桑雪萌え…!飛影兄も萌え(笑))、
その他の皆様お疲れ様です!イイもの見ました!
いつかまた自分も、SS投下できたら良いなー。
523 :
516:2005/12/07(水) 12:38:43 ID:suNywVh4
>>521 522さんが仰る様に「もしかして知らないのかな?」と思って書いたのですが…
書き方がくどかったですね。気を悪くなされたようで、すみませんでした。
>>522 有難うございます。sageの件は、私の書き方が不味かったです。
言葉って難しいですね。でも522さんには分かって頂けて、嬉しかったです。
あなたの作品は、SS保管庫にて拝読させて頂いておりました。
心理・状況描写に長けてその上エロい。めちゃんこ萌えました。
どうか都合の宜しい時に、またSS投下して下さい。522さんの新作も読みたいです。
524 :
522:2005/12/07(水) 18:05:01 ID:mVpMd9AE
>523
おぉ、ありがとうございます。
そうですね、近いうちに出来たら良いなと思います!<ss投下
実際、このスレに刺激されて、また書きたい気持ちがムクムクと(笑)
次作も飛影×雪菜になると思いますが…(汗) 引き出し少ねぇ〜。
では頃合いを見て、またお邪魔させていただきますです。
525 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/07(水) 18:57:51 ID:gtS7qnJA
>>523丁寧な謝罪有難うございます。
以後気をつけます。
乗り遅れてしまいましたが、12さん今回も
素敵な作品ありがとうございます!
そして、今更ながら2ちゃんねるなのに
このスレのあたたかさと丁寧さに驚いています。
新鮮な感動ですヽ(´∀`)ノ
やはりこのスレが大好きです
528 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 19:18:18 ID:f/Oy6Z2V
>>524 522さん、新作マターリお待ちしております。
飛影と雪菜、今後二人の関係がどう変化していくのか、とても気になります。
そして12さんの飛影×躯、毎週続編が投下されるのが楽しみで仕方ありません。
幸せそうな二人の姿に、こちらまで穏やかで満ち足りた気分になってきます。
このシリーズは二人の子供が誕生するまで、是非とも続けて頂きたいです。
職人の皆様方のおかげで萌えまくりです。SS投下いつも有難うございます(´∀`)
530 :
522:2005/12/11(日) 02:19:56 ID:mViSe5jB
>529
ありがとうございます。
新作は前作とは全く別物になりそうですー
前作が半分レイープモノだったので今度は愛情いっぱいで書きたいです。
半分ほど書きましたが…エロ本番に到達するまで長いよorz
最後まで書き上げてから、手直ししてまとめて投下しようと思います。
よろしくお願いします。
今日は12さん、来ないんだろうか。
なんかもう週始めの楽しみになってるからちょっと寂しい。
532 :
12:2005/12/12(月) 00:59:37 ID:NdKWRk1G
こんばんわ。
遅れて申し訳ありません。
そして今回もエロありません(号泣)
鳴きながら投下します。
前半が雛視点、後半が躯視点の変則になっちゃったけど。
533 :
天空蝶:2005/12/12(月) 01:00:27 ID:NdKWRk1G
遠くで時折雷鳴が低く轟いていた。
とはいっても、まだ雨はすぐに降りそうになく、空は鈍い色の雲が広がるだけなの
だが、見上げていると奇妙な不安が広がってくる。
「大雨になるでしょうか」
今日も薔薇の手入れをしていた雛が如雨露を抱き締めながら傍らにいた男に問
い掛ける。
「夜半ぐらいにはかなりの勢いで来そうですね。用心するに越したことはありませ
ん」
「ええ、そうですね」
空気が休息に冷えてきている。雨の気配にふるっと身を震わせながら、雛はかつ
て躯の養い親だったという美貌の男を見上げた。
辺境の地で生まれ育った彼女にとっては、躯でさえかつて魔界の三竦みと恐れ
られていた程度の認識しかなかった。たまた家族が多くて働きに出る必要を感じ
ていた時に、飛影側から躯の世話係を一人雇い上げるという話が近辺に広めら
れたので応募しただけに過ぎない。最初は何も知らなかったのだ。
そのせいで両親からは『お前のような気の利かない田舎者が躯様の不興を買う
ようなことをすれば、すぐさま首を刎ねられるに違いない』と最後まで説得された
のだが、無理やり押し切ってやって来た。
それほど働きに出たかったのだ。
これまでの伝聞からすれば躯という存在は、きっと厳しくて怖いに違いない。
最初はそう思い込んでいたのに、実際に接してみると拍子抜けするぐらい普通で
優しい女性だった。言動が多少独特ではあるが気になるほどではなく、むしろ単
なる使用人である自分にそこまで気を遣うことはないのに、と思うことがよくある
ぐらいだ。
534 :
天空蝶:2005/12/12(月) 01:01:14 ID:NdKWRk1G
それについては、少し前にどうしてなのかと飛影に尋ねてみたことがある。
だが、『もし不愉快でなければ、躯のしたいようにさせてやって欲しい』と言われ
ただけだった。
もちろん不愉快である筈がない。雇い主としてはこの上なく理想的と言えるだろ
う。ただ、優しくされればされるほどに躯の精神的脆さを感じ取ってしまって切な
くなるのだ。
妊娠中ということも、拍車をかけているだろう。
伝聞の端々で伺える信じられないほど壮絶な過去を思い出す度に、気の毒でた
まらなくなるのだ。
「あの、蔵馬様」
一足先に屋敷に入ろうとしていた蔵馬を呼び止める。
「蔵馬様のところにいた時、躯様はどんな女の子でしたか?」
秀麗な容貌を持つ男は、勘繰りようによっては出過ぎた質問に思えるそんな他
愛無い言葉にふっと形容し難い笑みを漏らした。
「…可愛いらしい子でしたよ。とても素直でした。あのまま大人になればいらぬ苦
労もしなくて済んだでしょうけどね」
聞いてはいけなかった、と咄嗟に思った。
しがらみや憎悪などという単純なものではなく、深く思い遣り合うからこその離反
というものをそこに感じてしまったからだ。誰にも、どんなことにも事情というもの
はある。
うっかりそこに踏み込もうとしてしまったことを、雛は恥じるように黙り込んだ。
それまで辛うじて明るさを保っていた空は、次第に雲行きが怪しくなっている。
「躯は、どうしていますか?」
唐突に尋ねられ、口篭りながらも答える。
「今は寝室でお休みになっていますが」
「では、顔も見ずに帰った方がいいですね」
雛が伺い知ることの出来ない躯の過去に関わっている蔵馬は、どこか寂しげな
表情で笑った。
535 :
天空蝶:2005/12/12(月) 01:02:00 ID:NdKWRk1G
『娘よ』
またあの声が聞こえてきた。思い出すだけで反吐が出そうになる。
『誰よりもお前を可愛がり慈しんだというのに、どうしてこんな目に遭わせる』
血みどろの姿で呪わしそうに吐き出す声が耳の奥で粘りつく。
ああ、忌まわしい。
これは夢の中だとはっきり認識しているというのに、抜け出すことが出来ないもど
かしさで雁字搦めになる。
今でもこれほどに自分を縛り上げる下種な男は、実際にはもう存在しない。飛影
の配慮によって滑稽な玩具同然の姿になっても、あの男はそれ以後も躯をせせ
ら笑い、罵倒し続けたのだ。
『愛しい娘よ。お前は結局逃れられないのだ』
うるさい!
ある日、どうしても我慢出来なくなって原型を留めないほどに切り刻んで殺してや
ったというのに、まだこの男の影が離れない。気が済んだという実感がないのだ。
いや、それどころかこの世に存在しないからこそ、この激情のぶつけ先が分から
なくなっている。おそらくは精神の変調とやらも、全てはそれが原因となっている
のだろう。
殺せば全てが報われると思っていたのに。
額に手が当てられて、ようやく堂々巡りな夢から覚めた。目を開けば飛影が間近
で覗き込んでいる。
「…また悪い夢でも見ていたのか」
どこか心配そうな声音だった。
「気にすることはない、いつものことだ」
「だから余計に事態は悪くなる。どうして辛いなら助けを求めないんだ」
熱でもあるように、体が妙に重かった。額にはじっとりと汗が滲んでいて気持ち
が悪い。
「それほどお前が心配するほどのことでも、ないからだ」
「バカな」
一言で片付けた声には苛立ちが含まれていた。
536 :
天空蝶:2005/12/12(月) 01:02:43 ID:NdKWRk1G
「どうして貴様はそこまで何でも抱え込む。そんなに誰もが信じられないか」
「…そんな訳じゃない」
「貴様は以前の弱くて孤独な子供から桁違いに成長した。なのに精神だけはこ
れっぽっちも変わってはいないんだな」
汗でべたついた髪を撫でる手が頬へと滑り落ちる。掌があまりにも熱く感じて、
思わず息を呑んだ。
「もっと周囲に頼れ。心を許せ。それがなければこれからも頑迷な子供のまま変
われないだろう」
「何故だ」
苛立ちがわずかに伝わってきて、躯までが荒い声を上げてしまう。これまで頑な
に線引きをしていた領域にまで入って来られるのは、何よりも恐怖に感じてしま
うのだ。
「何故、踏み込んで来ようとするんだ」
「愚問だ」
頬に当てられていた手が唐突に華奢な喉首を締める。力は然程込められてはい
なかったが、この男が相当に怒っているのは分かった。
「貴様は妻だ。ならば包み隠さずにいて欲しいと思うのは当然だろう」
押し殺したような声が闇夜に響く。
怒りが本気だと察して気まずく黙り込んだままの躯は、次の瞬間に信じられない
ものを見たように目を見開いた。これまでしばらくの間一切の手出しもしなかった
男がいきなり着衣を捲り上げてきたからだった。熱が篭もっている体が抵抗ひと
つ出来ずにあっさりと晒されていく。
「…何を、する…っ!」
「黙れ」
「飛影、嫌だ…」
「黙れと言っているんだ!」
こうなったきっかけは自分の頑なさだと知っている。だからといって強引に屈服
させられるのだけは我慢ならない。それではあの忌々しい男と同じではないか、
そんな八つ当たりに近い感情で必死で撥ね付けようと足掻いていると、急に男
の動きが止まった。
「…飛影?」
537 :
天空蝶:2005/12/12(月) 01:03:31 ID:NdKWRk1G
「…悪かった、気にするな。正気を忘れただけだ」
さっきまでとは打って変わったように、顔も見ずに寝台から降りようとする男を無
意識に引き止めた。
「行くな」
反応がない。
「悪いのは俺だ」
「今はまだ貴様を理解し切れずに、些細なことで逆上したらひどいことをしかねな
い。しばらくはここを離れていよう、その方がいい」
「嫌だ」
背中を向けた男に縋りついて子供のように駄々をこねる。ならばどうして先程は
あんなに拒んだのかと自分でも滑稽に思うほどだ。姦計など巡らせることのない
真っ直ぐな気性がこんなところでも感じられて、胸が一杯になる。
「…済まない、どうしてこうなったのか俺にも分からない。ただ、これだけは信じて
欲しい。お前が望んでくれるなら妻でいたいし、周囲の好意も有難いと思ってい
る。決して猜疑心がある訳ではないんだ…」
「そんなことは、知っている」
男の返事はやはりあっさりとしたものだった。
「まだ時間が必要だとは、思っている。貴様には俺が知らない事情が幾らでもあ
るんだから。だからこそ側にいたい、それは分かるな」
その声には、もう怒りは微塵もなかった。余計なことなど何も言わない男ではあ
るが、許されたのだと思った。
「ああ、分かるさ、飛影」
再び頬を撫でてきた手は言葉のない分、ひどく優しい。この男だけは何があって
も離してはいけないと感じて涙が零れる。すかさず、全てを心得たような指先が
拭ってきた。
引き止めてしまったのだから、きっと今夜は抱かれるだろう。確信がある。それも
覚悟の上だった。
子供の頃は神などいないと思っていた。
いたとしても、ただ見守るだけなら誰でも出来ることだと。
今はこれほどの巡り合わせを用意してくれたことに心から感謝するしかない。
鳥であれ蝶であれ、飛ぶ力を持つものであれば自分で飛ぼうとするのだし、絶え
ずそう心掛けていなければ地に落ちるだけなのだから。
終
538 :
天空蝶:2005/12/12(月) 01:07:07 ID:NdKWRk1G
鳴きながら投下…って何だよ自分。
もちろん、「泣きながら」です。
一応、前振りは出来たので次ぐらいにはやっとエロが書けるかなと思って
います。
さすが妊婦にやり放題は出来ないよなー、と思いながら書いているので、
どうしてもセーブ気味。そして欲求不満(笑)
では、皆様おやすみなさい。
531さん、たらたら書いててごめんなさい。
12さんGJ!毎週のSS投下、いつも有難うございます。
躯が痴皇のトラウマから完全に解き放たれるのには、
まだ少し時間がかかるかもしれませんが、
飛影や周囲の人々との深く暖かい関わりの中で、
徐々にでも、その傷が癒されていけばいいですね。
そしてエロの件ですが、たとえヤリタイ放題、激しい描写がなくとも
相手をいたわりながらのセクースって、すごく萌えると思うのですが…
ぶっちゃけ挿入なしでも(;´Д`)ハァハァ出来ますよ。
540 :
522:2005/12/14(水) 02:13:06 ID:QC7Ub+im
飛影×雪菜SSが出来ましたので一気に投下させていただきます。
好きじゃない方は読み飛ばしていただいて結構です。
あれこれ思いをつめこんだら大変キモ長くなってしまいました
エロ本番に辿り着くまで、本当に前フリが長いですが、ご容赦いただければ幸いです。
このSSを書く原動力を与えて下さった、このスレの皆様に感謝致します。
「飛影さん…」
布越しに胸の曲線をなぞると、雪菜の口から熱い吐息が漏れる。
今は亡き幻海師範の家の一室に、青白い月明かりが差し込んでいる。
家を囲む山々は静寂に包まれ、誰にも邪魔される事はない。
肩から背中へ。
二の腕から頬へ。
飛影の手が、ゆっくりと雪菜の身体を這う。
時折、胸や太腿あたりに、触れるか触れないかぐらいの力で指を這わせると、
雪菜はそのたびに、はぁ、と小さく息を漏らす。
そんな彼女の反応にわざと気づかないふりをして、飛影は焦らすように全身への
愛撫を続ける。
「や…ん…っ」
―――――――
魔界パトロールの気晴らしに、飛影は久しぶりに人間界を訪れた。
街で一番高いビルの上から雑踏を見下ろすと、以前来た時は無かった
色鮮やかな電飾が、街のあちこちを彩っていた。
風は冷たく、空もどんよりと曇っているというのに、人間たちは皆どことなく
楽しそうな様子で歩いている。
…何か祭事でもあるのだろうか。しかし飛影はそんな街の様子は気にせず、
いつものように第3の目でこちら側の住人達の姿を追う。
折角人間界まで訪れても、挨拶する事はほとんど無く、様子見だけで
済ませるのが彼流だった。
幽助に……蔵馬に……桑原……
馴染みの面々は、相変わらず元気でやっているようだ。
ただ一人を除いては…
(…?)
飛影の邪眼には、肩をがっくり落としてうなだれる桑原青年の姿が映っていた。
近くでタバコを咥え立っていた静流が、「まあまあ、年末年始もあるんだから」と
何やら弟の背中に慰めの言葉を掛けている。
しかし、弟桑原が活気を取り戻す気配は全く無い。
(…何だ…?)
しかし、飛影はすぐに気がついた。桑原家に居るはずの、一人の少女の気配が
その場にないことを。
静流はフゥゥーっとタバコの煙と共に溜息をつき、面倒臭そうに頭を掻いた。
「……カズ。あんたね、男だったら好きな娘のわがままの一つ位聞いてやんな。
いつまでも辛気臭くしてんじゃないよ。全く…せっかくの……だってのにさ」
静流の台詞には聞き慣れない言葉もあったが、それはさておきながら飛影は
すぐさま少女の姿を探した。
彼女とは随分会っていない。
最後に会ったのは彼女の氷泪石を返そうとした時だったか…
懐かしい妖気を辿っていくと、程なく彼女の姿は見つかる。
彼女は人間界の衣服を身に纏い、幻海邸の庭で落ち葉を掃いていた。
飛影は思わず、その少女の名を――自分の妹の名を小声で呟いた。
「雪菜…」
寒空の下、雪菜は幻海邸の庭中に散った木の葉を掻き集めていた。
フリルの白いブラウスに碧い髪と同系色のロングスカートという出で立ちは、飛影を
複雑な感情にさせた。
(………)
庭全体を見渡せる大きな樹の上から、飛影は彼女の様子をうかがっていた。
なぜ顔を合わせるわけでもないのにここまで来てしまったのか…
飛影は自分でもよく分からなかった。それでも、実際に妹の姿を自分の目で
確かめられた事で、飛影は安堵していた。
(元気そうだな…)
実は以前、飛影は雪菜に彼女から預かった石を返そうとした事がある。
(お前の兄はもうとっくに命を落としていた。伝え聞いただけだが信用できる情報だ。
もう、くだらない兄探しはこれで終わりにしろ)
しかし、飛影がそう言って差し出した石を雪菜は受け取らなかった。
(分かりました…でも、その石はあなたが持っていてください。なんだか、あなたが
持っていたほうが良いような気がするんです……)
優しく笑った雪菜の顔が、飛影の脳裏にいつまでも焼き付いていた。
突如、一陣の強い風が吹いた。
風は少女が集めた木の葉を、いとも簡単に持ち去っていく。
少女の目は自然と、宙に舞った枯葉の行く先を追う。
見上げた視線と、見下ろす視線がぶつかった。
「……飛影…さん…?」
握っていた箒が、彼女の手から落ちる。
名前を呼ばれ、飛影はハッとしてその場を立ち去ろうとしたが、次の瞬間、
乾いた音を立てて箒の柄が雪菜の足の上に落ちた。
「あ痛っ」
「!」
飛影が思わず、樹の上から着地して駆け寄る。
「!あ、いえあのっ、だ、大丈夫です…」
顔を赤らめて箒を拾い上げつつ、雪菜が弁解する。
「ご、ごめんなさい、私、びっくりしちゃって…」
「…イヤ」
無意識のうちに、飛影は雪菜の拾った箒を手に取る。
一本の箒を二人で持つ形になり、また目と目が合った。
「…お久し…ぶり…です」
雪菜はそう言って、恥ずかしそうに微笑んだ。
表情をまともに見ることができず、飛影は握った箒の柄を苦々しげに見つめた。
「立派なお家もお手入れをしないと住めなくなってしまいますから。さっきまでは
家の中の掃除をしていたんですが、埃がすごくって」
淹れた茶を飛影に差し出しながら、雪菜は言った。そして、自分の茶を淹れ、
縁側に座った飛影の隣に並んで腰掛けた。
「…あいつは手伝うと言わなかったのか?」
立ち上る湯気を見つめながら、飛影は雪菜に問い掛けた。
「え?」
「かなりショックを受けていたようだが」
飛影は邪眼で見た桑原家の事を雪菜に話して聞かせた。
「そうでしたか…」
雪菜は目を臥せて話を聞き終えた後、しばらくして、ゆっくりと語り出した。
「実は、和真さん達にはここに来る事は告げていません。ただ…今夜は帰らないと
いうことだけ、伝えてきました」
「…何?」
「飛影さん、ご存知ですか?人間界にとって、今日が特別な日だということ…」
「…?…」
「クリスマスイブっていうんです。イブというのは前夜祭で、つまり今夜は一番
大切な人と過ごす日なんです」
クリスマス…そういえば、静流が言っていたのはそんな言葉だった気がする。
なるほど、街の様子がいつもと違っていたのはそのせいか…飛影は思った。
雪菜はさらに話を続けた。
「ですから、本当なら今夜は和真さん達と過ごすはずだったんですが……
今朝、急に思い立って、行き先は告げずにこちらに来させて頂いたんです。
和真さんはとても心配してくださったんですが、一人で行かせてくださいって、
私、本当にわがままを言って出てきてしまって……」
雪菜はそこまで言うと、自嘲気味に微笑んで、茶を一口飲んだ。
飛影はその光景が目に浮かぶようだった。あの桑原のことだ、雪菜が家を出る
最後の最後まで雪菜を引き止めたに違いない。
だが飛影は、雪菜の言葉のある部分が引っかかった。
「急に思い立った…だと?」
雪菜はもともと無計画に出歩く性格ではない。そのことをよく知っていた飛影に
とって、彼女の言葉には少し違和感があった。
飛影の問いに、雪菜は少し間を置いて答える。
「…はい…少し皆さんと離れて過ごしたくて」
「……」
「……」
(何故だ?)
顔に出ていたのだろう。
飛影の心の中を察してか、雪菜は飛影に向かって少し困ったように微笑むだけだった。
どんな顔をして目を合わせればよいのか分からない。
「あ」
雪菜の声に、飛影は顔を上げた。
雪菜が見上げた方向を見ると、灰色の空に白い雪片がちらちらと舞っている。
「雪…ですね」
雪菜は感慨深げに呟いた。
「…ああ」
飛影はまだ先程の言葉が気になっていたが、空を見つめる雪菜の横顔を見て、
それ以上詮索するのを止めた。
「そうだ、いいものがあるんです」
そう言って雪菜は部屋の奥に入っていくと、一本の酒瓶とグラスを持って戻ってきた。
「部屋の掃除をしていたら見つけたんです。呑まれますか?」
「雪見酒か。…良い考えだな」
グラスに注がれた透明な液体を飛影が一口口に含むと、ふわっと涼しい味が喉の
奥に広がった。この家の主だった者の愛蔵品だったに違いない。
「私もいただきますね」
そう言うと雪菜は自分で別のグラスに酒を注いだ。
「いつから酒が呑めるようになったんだ?」
飛影が半分驚いたように訊くと、雪菜はふふっと笑った。
「静流さんに教えてもらったんです。…そんなに呑めないですけど」
そう言って、雪菜も一口酒を呑んだ。
「…わぁ…美味しい…このお酒」
「…そうだな…」
目を輝かせて酒を呑む雪菜の姿に、飛影はほんの少し可笑しさを覚えた。
雪は次第に本格的に降り始め、庭全体を白く覆っていく。
「飛影さん、お寒くありませんか?」
自分は寒さなど全く感じないはずなのに、他人の身を案じて出たその言葉には
雪菜の性分がよく表れている。
「いや…このくらい、大した事ない」
飛影の返事に雪菜は優しく微笑む。
飛影は再びゆっくりと酒を喉に流し入れる。
「お前にとってはこれから良い季節なんだろうな」
「はい…あ、でも、人間界の冬のお料理はちょっと苦手です」
「?」
「熱いですから」
くっと、飛影の口元が思わずほころぶ。
それにつられて雪菜も笑う。
久々に訪れた人間界で、こんなに穏やかな時間が過ごせるとは思っていなかった。
雪菜はいつでも周りをそうさせる力がある。それは自分に対しても例外ではなく。
全く、自分と正反対だ、と飛影は思った。
「蔵馬さんが仰ってたんですけどね。海の向こうでは、クリスマスの日は戦争も
休戦になるんだそうです。兵士たちが家族の元へ帰るために」
「…本当に、特別な日なんだな」
「…はい」
飛影が答えると、雪菜は嬉しそうに笑った。
「メリークリスマース!!」
桑原家では幽助達が集まって盛大なパーティを開いていた。
「っかーー、うめッ!にしてもつまんねーなー、やっぱ飛影がいね―と」
「ほーらー、桑ちゃんいつまでも落ち込んでないでさ、呑も!ね!」
ワイワイと賑やかな若者たちの様子を、静流はテーブルから少し離れた窓辺に立ち、
微笑みながら眺めていた。そして、窓の外に目をやると、小さな声で呟いた。
「大事な人と…過ごせると良いね…雪菜ちゃん」
雪も止み、日も沈んだので帰ると言ったのに、泊まっていけと雪菜は言った。
「大丈夫じゃないですよ、お酒も呑まれてますし…風邪を引かれます」
確かに、美味い酒でついつい進んでしまったのか、少し呑みすぎたらしい。
立ち上がると視界がぐらりと揺れて、飛影は思わず柱に寄りかかった。
「あっ…」
雪菜は手を差し出して、一瞬飛影の身体を支える格好になったが、すぐその手を引いた。
彼女の顔も少し赤くなっている。酒のせいだけだろうか。
「…今、お布団敷きますから…」
そう言って、雪菜は部屋に入っていく。
「……」
彼女に触れられたところから、身体が不可思議な熱を帯びてくる。
朦朧とした意識の中、飛影は彼女の姿を見つめていた。
雪菜は別の部屋から寝具を運び込み、手際よく用意をし始めている。
飛影は先程の雪菜の言葉を思い出していた。
大切な人と過ごす日、と彼女は言った。
彼女にとって大切な人といったら……
「お前」
飛影は突如切り出した。
雪菜の手が止まった。
「お前…本当は、兄を待ってたんだろ?」
雪菜はその場で俯いたまま、じっと動かなかった。
ふらつく足取りで、飛影はゆっくりと雪菜の元へ歩み寄る。
「皆と離れて過ごしたいなどと抜かしやがって…」
「……」
「人間界が勝手に決めた特別な日にあやかって、こうして一人で待っていれば
奇跡が起きて兄が会いに来るとでも思ったのか?」
「……」
「前に言ったはずだ。お前の兄は魔界で死んでいたと」
「……」
「いい加減、くだらん考えは捨てろ。兄が現れるなどあり得ん事だ」
「それでも、あなたは、ここに来てくれたじゃないですか」
今度は飛影が言葉を失う番だった。
「…あなたはこうして、会いに来てくださったじゃないですか」
「何……?」
飛影は手の中の汗を握り締めた。自分の心音が段々と速くなっていくのが分かる。
「昼間あなたが目の前に現れたときは…本当に奇跡が起きたのかと思いました。でも、
本当…嬉しかったです。あなたはいつも、なかなか顔を見せてくださらないから」
「……」
「あなたが兄であることはずっと前から気づいていました。はじめは、どうして名乗り出て
くださらないのかと思っていましたが…私が危険な目に遭わないよう、ずっとそうやって
守ってくださってたんですよね。それが分かってからは、ずっと…感謝していました」
「……」
「こんなに大切にされて…雪菜は果報者です」
雪菜の顔が耳まで赤く染まっている。
飛影はその場に立ちすくんだ。
胸の鼓動が、自分の耳にもはっきり聞こえるくらい大きくなっていた。
雪菜は立ちあがり、飛影の前にゆっくりと歩み寄った。
「こんなことを言ってしまうのはおかしいかもしれませんけど…私、母の気持ちが今なら少し
分かるような気がするんです」
飛影の胸に、今までずっと押し殺してきた感情が湧きあがりつつあった。
――ダメだ。言うなそれ以上。
気づいてはいけない。気づいてはならない。
彼女の本当の想いに。自分の本当の想いに。
「飛影さん」
彼女が自分の名を呼ぶ。
飛影は黙って俯いていた。雪菜の足が、飛影の前に来て止まった。
「…………」
雪菜と目が合う。その瞳は、感情が零れてしまわぬように大きく見開かれていた。
「今夜…ずっと一緒に居ていただけますか?」
震えるような雪菜の声に、飛影は為す術なく、小さく頷いた。
「…お布団…すぐもう一つ用意しますね」
飛影の前から離れようとした雪菜を、飛影は何も言わず抱き締めた。
「あ……あの……」
雪菜は頬を紅く染めて一瞬戸惑ったが、身体の力を抜いた。
この健気な少女を、飛影はいたわってやりたくて仕方なかった。
雪菜を抱く腕に力がこもる。
「ずっと大事に思っていた。お前を傷つけたくなかった。だから…自分でも気づかない
ふりをしてた」
「飛影さん……」
魂の、片割れ。
自分には、こうする資格など無いと思っていたのに。
「…離れていた時間が、少々長すぎたのかもしれないな、俺達は」
彼女の細い身体も、柔らかな髪も、すべてが新鮮で、懐かしくも思えた。
潤んだ瞳で自分を見つめる彼女の表情が愛しかった。
飛影が雪菜の唇を塞ぐ。
「ん……」
そのままゆっくりと、倒れこむようにして、二人は抱き合った。
永い全身への愛撫を続けながら、飛影は何度も雪菜に唇を重ねた。
下唇をゆっくりとついばんだあと、舌でなぞる。
ピクン、と雪菜の身体が反応する。
みずみずしい果実のような雪菜の唇を味わうと、今度は唇をなぞっていた舌を
その隙間に割り込ませる。
やがて雪菜の甘く柔らかな舌に辿り着くと、深く絡ませてそれを味わった。
「んんっ……」
唇を塞がれ、雪菜がくぐもった声を出す。
愛しい。
飛影は左手で雪菜の頭を抱きかかえるようにして舌を深く差し入れ、右手は
背中から腰にかけてのラインをゆっくりとなぞっていく。
口に、背中に、愛する人の体温を感じながら、雪菜は今までにない至福の時を
感じていた。
ブラウスのボタンに手が掛けられ、そこから飛影の右手が侵入する。
「ひぁっ……」
雪菜は驚いて突然の侵入を防ごうとしたが、既に手は雪菜の胸に到達していて、
ちょうど雪菜は自分の手で彼の手を自分の胸に導くような格好になった。
「心配するな…」
「あ……やぁ……」
飛影は下着の上から雪菜の胸をやわやわと揉みしだく。
「はぁっ……ん……」
飛影は雪菜の首筋に舌を這わせ、鼻先をうずめるようにして愛撫を続けた。
彼女の頭を抱きかかえていた左手も参入し、雪菜は為す術もなく飛影の愛撫に
身を委ねる。
「あっ……ぁ…っ…ん」
雪菜の艶っぽい声に、飛影は気が狂いそうだった。
飛影の手が、雪菜のショーツの中に滑りこみ、指が一番敏感な場所に触れる。
「――っ…」
雪菜のそこは既に十分過ぎるほど熱く潤んでいて、とめどなく蜜が溢れ出していた。
「濡れすぎだぞ…お前」
「やぁ………ん」
飛影の一言一言がまるで媚薬のようだ。
布の存在を邪魔に感じて、もどかしげに飛影は雪菜のショーツを脱がせる。
「んんっ……」
蜜壷に、つぷ、と指を差し込むと、ず、ず、といとも簡単に指を受け入れていく。
熱く柔らかい雪菜の肉襞は、飛影の指にぴっとりと張りついてくる。
奥に指を挿れて掻き回すと、クチュクチュといやらしい水音が室内に響いた。
「あああ……っ、飛影…さんっ…」
(……っ)
くらくらと、やもすれば飛んでしまいそうな意識を飛影はかろうじて持ちこたえる。
目を閉じて互いを全身で感じあい、何にも代え難い心地良さに、何もかもを忘れた。
それはまるで遠い昔、母親の胎内で過ごした時のような、温かい幸福感だった。
飛影は、今度は雪菜の両膝を内側からぐいっと持ち上げる。
「はぁ、…は、飛影さん……?」
そのまま両膝を左右に押し広げると、先程まで指を挿れていた秘所が露わになる。
「!や、あ、あの……」
雪菜が手で隠すよりも先に、飛影は股間に顔をうずめた。
「――っ/////」
きれいなサーモンピンクの割れ目に、チュ、と軽く口付ける。
そして、包皮を剥き露わになったクリトリスをちろちろ舐め上げる。
「ひゃああぁぅっ!!」
一番敏感な部分を直に刺激され、雪菜の身体は一瞬ビクンと大きく反応する。
唇が蜜壷の入り口全体を多い、ちゅく、ちゅくと音を立てて溢れる蜜を吸う。
(あっ、いや、はずかしい、そんなとこ……ああっ)
雪菜はあまりの恥ずかしさに、両手で飛影の頭を離そうとする。
「っ、やぁ、だめっ、そこは……はあぁぁん!!」
だが、飛影は両腕で雪菜の太腿の付け根をがっちりと掴んで離さない。
蜜壷に深く舌を抜き差しすると、じゅぷじゅぷと音を立て、蜜が溢れ出す。
「ああっ、やん!!おねがい、飛影さん、ひえいさ、ああっ!!」
膨張するクリトリスをついばみ、優しく歯を当てると、雪菜は泣き声にも似た嬌声をあげた。
さらにこれ以上ないというくらい、深く舌を入れて暴れさせると、雪菜の身体がビクン、と大きく
撥ね上がる。
「ふぁっ、やあぁぁん、やあああーっ!!」
初めての絶頂を迎え、雪菜は身体を大きく仰け反らせ果てた。
どっと奥から一際熱い蜜が溢れだし、飛影の舌の上に流れた。
「はぁ、はぁ、はぁ…はぁ…」
絶頂を迎えた余韻で、雪菜の身体はまだ少し、ピク…、ピクン…と震えていた。
先程の甘美な感覚がまだ、身体中のあちこちで渦巻いている。
(はぁ…はぁ……私……飛影さんに…)
愛する人に最後まで行かせてもらえた事に、雪菜は思わず感極まり、涙を零す。
「……大丈夫か?」
顔を上げた飛影が、口を両手で覆う雪菜の格好を見て心配そうに訊ねる。
それがまた嬉しくて、また涙を流しつつ、雪菜はフルフルと首を振った。
「…雪菜」
飛影は彼女の耳元に落ちた涙の結晶を優しく払い、彼女を抱き締める。
そして、再び可憐な唇に口付ける。
「飛影さん…」
「雪菜……雪菜」
飛影が唇に舌を割りこませると、雪菜の舌に自分の愛液の味が広がった。
「んんっ…」
「イヤか?」
悪戯っぽく笑って飛影は雪菜の額に額をくっつける。
「う、うぅん…」
少年のような彼の仕草に顔を赤くしつつ、雪菜は小さくかぶりを振って答えた。
「雪菜…俺、もう……」
飛影のそこは既に充血して、ズボンがはち切れんばかりに膨張していた。
圧迫しているズボンを下ろすと、その中央から大きくそそり立ったものが現れる。
それは目的の場所を求めて怒張し、その先端からは先走りの透明な液体がとろとろと
溢れ出していた。
(――っ……)
思わず唾を呑みこんだ彼女の喉元が上下に動いた。
雪菜が初めて見るその大きさに驚いていると、既に飛影は彼女の両脚を開き、濡れた
蜜壷に自分のものをあてがう。
「あっ……ひ、飛影さん……」
「…できるだけ優しくやってやる」
飛影はそう言うと、濡れた蜜壷の中に、自分のペニスをゆっくりと押し込んでいった。
「はあああぁぁっ……!!」
先程彼の指と舌によって十分ほぐされていた入口は、クチュ、と音を立てて飛影のものを
迎え入れる。
(あっ…熱い、…飛影さんの……こんなの、溶けちゃいそう……)
溢れる蜜が潤滑剤の役割を果たし、飛影の雁首は、狭い入り口を通り抜けると、ぬるりと肉襞の
中におさまる。
(……あぁ、つ、繋がってる、私、飛影さんと……)
まだ先端部分しか入ってきていないが、愛する人と確かに結ばれた事に、雪菜の胸は熱くなる。
一方飛影も、先端が雪菜の熱い襞に包まれている気持ち良さに、それだけでもう既に発射して
しまいそうになる。
(う……く、…雪菜っ……)
何とかこらえつつ、さらに腰を奥へと進める。
腰を押し進める時に雪菜の身体も一緒に動いてしまわないよう、飛影はしっかりと手で雪菜
の腰を固定する。
そうして飛影のものはさらに雪菜の奥深くに進んでいく。
チュプ・・・ジュプ・・・
「あっ・・・はあぁぁん・・・」
やがて、飛影の先端が雪菜の最奥に突き当たり、雪菜の蜜壷は、飛影の肉棒をしっかりと奥深く
まで咥えこんでいた。
それはまだ少し幼い面影の残る雪菜にとって、初めて迎え入れた「男」だった。
(……ああ……飛影さんが…入ってる……私の中に……)
飛影と本当の意味で結ばれたことが嬉しくて、雪菜の目から、また涙が溢れる。
飛影は、繋がった部分を通して雪菜の鼓動を感じる。愛しくてたまらず、そのまま彼女の身体を抱き
締める。
「雪菜……」
「飛影さん……」
ぽぉっとする頭を、大好きな人に優しく撫でられる。そして、飛影の方から、延々と長いキスが始まる。
最初は唇を優しく重ね合うだけだったのが、何度もするうちに次第に激しいものになっていく。
ちゅぷ、ちゅぷと音を立てて舌を絡め合うと、雪菜は頭の中が真っ白になる。
とろけるような極上の感覚に、雪菜はすべてを飛影に任せ愛し合う。
繋がったままのキスがこんなに気持ち良いものだとは雪菜は思わなかった。
「んむっ……ん……、んはぁっ、んんっ…」
やがて飛影がゆっくりと腰を動かし始めると、そこからまた新たな快感が生み出されていく。
「んあっ…ああっ…あん、…ああっ…」
ズチュ…ズチュッ…
性器と性器が擦れ合うたびに、雪菜の肉襞は更に熱く潤いを帯び、飛影の肉棒は硬さと太さを増していく。
「ふぁっ…あん…っ、飛影さんっ、の…っ、…すっごい……おっきいッッ」
「…雪菜…ゆきなっ……」
「あっ、ああん…やっ、…飛影さんっ…、ひえいさっ……」
うわずった声で雪菜が繰り返すと、飛影の腰の動きは刺激を受けてさらに激しさを増す。
ヌプっ、ヌプっ、ヌプっ、ヌプっ、と一定のリズムで腰が突き上げられ、快感が蓄積されていく。
「やっ、やあっ!やん!あん、はああぁぁん!」
ずっと自分のものにしておきたい。
一生手放したくない。
飛影は腰を突き動かしたまま雪菜の唇に吸いつき、舌を深く絡ませてくいくいと動かす。
上下の口を激しく突かれ、雪菜は快感で意識が飛んでしまいそうになる。
「んんっ、んふぁっ……やんっ!は……はぁっ!ああっ!!」
ヒクヒクと痙攣している雪菜に、まだ足りないとばかりに飛影は雪菜の両方の乳首を捏ね上げる。
「やあああぁっ!!」
飛影が乳首を親指と人差し指でつまんで擦り合わせると、雪菜の身体がビクンと撥ね上がった。
口と、乳首と、下の口を同時に責められながらどうすることもできず、雪菜は最果てまで上り詰めていった。
飛影も雪菜の蜜壷を激しく突き上げ、熱く甘く柔らかな果実を全身で味わいながら、一気に高みに向けて
走り出した。
「あん、あ、あ、あぁ、ひえい、さん、ひえ、…っさ……!!」
「……っ、イクぞ……ッッ」
「あっ、あああああああーーッ!!!」
目が眩むような絶頂が二人を襲う。
―――ビクン!…ビクン、ビクン、ビュク…
飛影のペニスが雪菜の最奥を突き上げ、精液が二度、三度と大量に雪菜の中に放出された。
濃厚な白濁液は、キュッと締まった雪菜の膣によって飛影の先端から最後の一滴まで搾り取られ、
子宮の入り口を満たした。
自分の種が、雪菜の襞の隅々まで行き渡るよう、飛影はなおも腰を動かしつづけた。
「やああぁぁぁ・・・・・・」
ゆっくりと飛影が蜜壷から肉棒を抜くと、その穴から、トロっと白濁液が溢れ出す。
「はあ、・・・・・・はあ・・・・・・はぁ・・・・・・」
「・・・っ・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
絶頂を迎えた痙攣がようやく収まると、崩れ落ちるようにして飛影は雪菜に身体を預けた。
力の入らなくなった身体で呼吸を整えていると、意識が段々と遠のき、深い眠りに落ちかけていく。
雪菜の細い指が、自分の髪を優しく梳いている。
薄目で彼女のほうを見やると、柔らかく微笑む顔が見えた。
深い充足感に満たされながら、飛影は目を閉じた。
目が覚めるとまだ夜中だった。
見慣れぬ天井に一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。
「ん・・・」
声がしたほうを見ると、すぐ隣に雪菜の寝顔があった。
あどけない彼女の寝顔を見つめながら、つい先程の出来事を思い出す。
先程の行為とは裏腹に、穏やかな寝息を立てる彼女の顔を見ていると、何とも言えぬ感情が胸を
締め付けた。
自然と飛影の手がのび、雪菜の頬の当たりを優しく撫でる。
人差し指でこめかみをなぞると、雪菜がくすぐったそうな笑みを浮かべた。
誰にも渡したくない。
飛影は一人、考えにふける。
雪菜の両目がゆっくりと開く。
「・・・ん・・・」
飛影と目が合うと、雪菜は眠たそうな目で幸せそうに微笑む。
彼女はゆっくりと自分の手を飛影の手に重ね、その手に口付ける。
「すまん。起こしたか?」
「・・・んーん・・・」
夢うつつに答える彼女を愛しく思いながら、頬や髪をしばらく撫でていると、雪菜がすり寄ってくる。
そして、雪菜のほうから飛影の唇に、チュ、と軽く口付けた。
「ん・・・・・・」
雪菜はそのまま飛影の胸に頬を寄せる。
「…痛くなかったか?」
飛影の問いに、雪菜はほとんど痛みを感じなかったと答えた。きっと、生まれる前はもともとひとつ
だったのだからそのせいだろう、と彼女は言った。
「・・・ここに・・・飛影さんが、してくれたんですよね・・・」
雪菜が幸せそうに下腹部あたりをさすりながら言う。
「分裂期まで、いっぱい、できますね」
「バカ」
思わず赤くなった顔を見られたくなくて、飛影は雪菜の頭を胸に押し付ける。
雪菜はキャッと小さく悲鳴を上げたあと、ふふふと笑って、飛影の背中に手を回す。
このまま眠って次に目覚めたら、魔界へ戻らなければならない。
そしてまたいつもの日常がやってくる。
ならばいっそ、このまま彼女を連れ去ってどこか遠くへ逃げてしまおうか、とさえ考える。
飛影の考えがなんとなく伝わったのか、雪菜が落ち着いた口調で話す。
「…待っています。この世界で、ずっと」
「…雪菜…」
「またいつかこうして過ごせると信じて、私、待ちます。大丈夫です…私、待てます。今日のことを
思い出せば、そのたびに、心は繋がっていると、思えるから……」
「…………」
「抱いてください。次に会う時まで、ずっとその感覚を覚えていられるように」
「…雪菜」
飛影の唇が雪菜の唇に触れ、そして再び二人は身体を重ねる。
まるで、今まで離れ離れになっていた時間を急速に埋めるかのように。
夜明けまで、二人はお互いの身体を抱き合い、その感触を、温度を、感じ続けた。
世界で一番愛する人と過ごす、最高のクリスマス。
青白い月だけが見ていた、ふたりの、秘密。
おわり
553 :
522:2005/12/14(水) 02:39:30 ID:VB+M1qFL
以上です。長くてすいません。
自分の中のこうであったらいいなぁ、と思う飛影と雪菜を文章にさせていただきました。
しかし幽白はキャラがそれぞれしっかり立っていて、やっぱりそこが魅力ですね。
お酒が呑めるようになったのは静流さんのお陰にしたり、
ちょっとしたウンチクは蔵馬に教えてもらったことにしたり、
便利だなぁと(笑)書いてて本当に楽しかったです。
ありがとうございました。
>>553 GJ!
幽白の魅力についても超同感。
本当に幽白好きなんですね。
何か泣けてきた。
>>553 事後のお茶目な雪菜たんが死ぬほど可愛い(;´Д`)ハァハァ
そして普通に感動もしますた。
クリスマスにぴったりの心温まるお話ですね。
サブキャラにも愛を感じます。
とにかくGJ!
よければまた書いてくれると嬉しいです。
待ってました522さん!!GJです!(;´Д`)ハァハァ
大作ですね、投下有難うございました!
前作のちょっぴり強引系にも萌えましたが、甘々な飛影×雪菜も凄く良かったです。
人間界での仲間達の様子を、邪眼を使って“様子見”だけで済ませる、って所が
いかにも飛影らしいですね。
雪菜ちゃんも可愛すぎる…彼女の所作どれをとっても可愛らしくて…
飛影や桑ちゃんじゃなくても、守ってあげたくなります。
主役である兄妹は勿論、脇役の桑原姉弟らのキャラも原作のそれに近くて、
原作キャラのイメージを壊さない、522さんの技量に感服すると共に、
そこに、522さんの幽白に対する愛情をひしひしと感じました。
522さんの都合が宜しければ、どうかまたSS投下して下さい。
次作も期待しています。
邪王快楽白龍波炸裂記念age
いや、あがってないしw
>>557 >邪王快楽白龍波
言い得て妙w不覚にもワロタ
黒龍波を白龍波wに置き換えてみると
アニメ版での飛影VS躯なんかは、かなりエロス
二人とも互いの名前を叫びながら戦ってて、
しかも躯は受け止めちゃっているし。
>>553 イイ!正直、あんま飛×雪は好みじゃなかったんだが、心温まる話でした。
つか雪菜、最高!
しずるタンととぐろ弟の大人の恋愛キボンヌ。w
562 :
12:2005/12/18(日) 23:22:51 ID:Id2gLjpr
こんばんわ。
今日は用事があって外出していたので(つまり、普段の日曜日は暇(笑))
書くのが遅くなっています。多分、完成は午前二時ぐらいになると思いますので、
気長に待って頂けると嬉しいです。
ところで、以前検索する時の為にタイトルの後ろにカップリングを書いて欲しいと
言ってきた方がいました。私も「分かりました」と了承したのですが、その後は
すっかり忘れていました。ごめんなさい。
今回から、タイトルの後ろにカップリングもつけるつもりでいます。
>>561 戸愚呂弟×静流…これは新しい関係ですね…
アニメ版では、左京が静流となんだかイイ感じになってましたよ。
12さん、今週も期待しております。
>>531さんじゃないけど、毎週、週の初めに
12さんの新作を読ませてもらうのがとても楽しみ。
リロし忘れてしまったら12さんが…
12さん、マターリお待ちしております。
時間はあまり気になされずに、12さんのペースでがんがってください。
カップリング名の件は了解しますたヽ(´∀`)ノ
565 :
12:2005/12/19(月) 02:32:59 ID:iAHI3Str
遅くなりました。
こんな時間ですが投下してから寝ます。
冬は昔から嫌いだった。
身を切られるような寒さは下手をすれば命までも奪う。
まだ何の力もなく、蔵馬の庇護からも離れて獣のように生きていた傲慢な小娘
の時、何が一番厄介だったかといえば対抗することなど絶対的に不可能なこん
な季節の寒さ。
他のことならどうとでも出来たのに、こればかりは自分の無力さを嫌でも感じさ
せられた事態が何度となくあったからだ。
それが今はどうだ。
辛かったことなど全部一瞬にして忘れてしまいそうに綺麗な、真っ白い月を眺め
ている。こんなに穏やかな心持ちで空を見上げる夜など、これまでほとんどなか
ったというのに。
奇妙なものだ。ほんのわずかに何かが変わっただけで、他の全ての要素が塗
り替えられていくなんて。それはただの現実味のない絵空事だと思っていた。
もし実際にあるとしても、自分には縁がないと決め付けていたのだ。
「一人で何をしている」
夜着だけという、驚くほどの薄着でふらりとこんなに冷える屋外に出たことを軽く
咎めるような声が、背後で聞こえた。わざと振り向きもせずに素っ気ない言葉を
返してやる。
「見てみろ。今夜の月は大層綺麗だ…寒いからこそ余計に冴えて見えるから、
つい時間を過ごしてしまった」
「体を冷やすなと、医者からも言われているだろう」
寝間から持ってきたのだろう。ふわりと肩にかかるガウンが、しんしんと冷え始め
ていた体を少し温めた。今夜の月は真珠のように美しいけれど、さすがに外に長
居など出来なさそうだ。
声音はぶっきらぼうだが、心から心配をしてくれている男に笑みが漏れる。何も
かもが好転したように思えるのは、この男がいたからだろう。これまでどれほど
自己確立の為に足掻き、長い戦いを続けてきたか知れない。そうして一時はの
し上がってもみたが、それでも得ることの出来なかった心の平穏は、今ただの女
になって初めて、あっさりと手中にしている。
不思議なものだが、世の中はこんな風に回っているのだと実感した。どんなに時
が過ぎたとしても、きっと何度でも幸せになれるのだし、遅過ぎるなどということは
決してない。こうして心の余裕を持った今、躯はようやくその意味を知る。
さすがに屋敷の中に戻ると、想像以上に体の冷えを自覚して身を縮めた。何か
熱い飲み物でも欲しいと思ったのだが、いつも子猫のようにくるくるとよく動いて
立ち働いている少女の姿はどこにもない。
「雛はどうした?」
いつもの調子で尋ね、はっと口を噤む。
生憎と時刻は深夜を回っている。幾ら住み込みだとしてもこんな些細な用事を無
理強いは出来ない。
日常、どれほどあの少女に頼っていたのかと思わず苦笑する。
「座っていろ。支度は俺がする」
応接間でいつも好んで使っている長椅子に躯を横たえさせると、飛影は手馴れた
様子で暖炉の埋火を薪に焚きつけてから奥の厨房へと消えた。いつも思うことだ
が、見かけによらず随分と心配りをする男だと感心してしまう。
知り合った当初はそれほど情が深そうには見えなかったが、それはきっと自分も
同じことだった。互いに出会うまでは一体何が欠けているのかなど考えもしなか
ったのだから。
そんな風に、足りないものを補い合う為に男と女が出会うのなら、これほどいびつ
で歪んだ欠片同士もなかっただろう。細かな部分までが驚くべき精度で符合して
いくことが素直に嬉しい。
暖炉の火は心地良くとろとろと燃えている。
柔らかな赤い火を眺めていると、自然と睡魔が襲ってきて長椅子の上でゆったりと
舟を漕ぎ始めた。剥き出しの真っ白な爪先も、もう冷たさを感じなくなっている。
それほど長い時間のことではなかったのか、頬に当てられた手の感触で不意に
目が覚める。
「…ああ、済まない」
「寝るのなら、これを飲んでからの方がいい。体が温まる」
放っておかれたことを咎めるでもなく、まだ冷たさが残っている指先に持っていた
硝子のカップを押し付ける。
取っ手付きのカップに入っていたのは、暖めた果実酒だった。ことのほか滋養の
ある果物から作られたということで、こんな時期の飲酒などとんでもないと禁止し
ている飛影も、これだけは薦めてくる。立ち昇るふくよかで甘い香りが鼻をくすぐっ
た。
香りにつられて一口飲む。
口当たりの良い甘さの割に度数は結構強いと聞いている。お陰で体の芯までが
一気にかあっと熱くなった。あっと言う間に中身は空になる。男は、そんな様子を
嬉しそうに眺めていた。
「美味いか?」
「ああ、ありがとう。また俺のわがままのせいで手間をかけさせてしまったな」
「気にするな。貴様は自分の体のことだけを気遣っていればいい」
優しい男だ。
髪を撫でられて、また睡魔が襲いかかりそうになるのを必死で意識の底で押し
退けながら微笑んで見せる。
「俺は…お前に甘えてもいいんだな」
何を今更、と言いたげに男は首を傾げた。
「妻が夫を頼り、甘えるのは当然のことだと思うぞ。まだそれほどの力はないかも
知れんがな」
「そんなことはない!」
髪を撫でる手を取り、宝物のように胸に押し当てた。
「…お前は、これ以上望むべくもない夫だ。俺には勿体無い程にな。だから躊躇
する気持ちはある。嬉しいのと同じほど不安にもなる」
「バカげたことだ」
ごく普通に育って妻となっていたなら、こんなくだらないことで思い悩んだり不安
になったりはしないだろう。ほんの数年のこととはいえ、この命の始まりの大事
な数年を悲惨に過ごしたことで、その後長い時を生きてきてもまだ恐怖の芯は
残っている。
そんな躯を何も言わずに根気良く見守っている男だ。
一笑したくなるのも道理に違いない。
「もう、どこも冷たくはないな」
「ああ、大丈夫だ」
暖炉の火は相変わらず適度な量の炎をちらちらと上げながら、静かに燃え続け
ている。男はごく近くで寄り添いながら頬杖をついた。
「お前は、もう一度生き直せるんだ。子供と一緒にな。これほど面白いことがあ
るか?」
「面白い…?」
「いまだにお前を呪って離れないあの糞野郎には何よりの復讐になる」
それだけ言ってのけると、人が悪い笑みを浮かべて唇を触れ合わせてきた。
そんなことは、考えもしなかった。
「そう、なるのか?」
「その為にもお前はもっと幸せになればいい。俺がそうさせてやろう」
「幸せに…なれるんだな、俺は」
暖まった室内は徐々に心までを溶かしていく。夜着を少しずつはだけられ、遂に
は長椅子から滑り落とされても抵抗する気はもうなかった。
「寒かったり、冷たいなら言えばいい。それと同じことだ。寂しかったり怖い時は
いつでもこうして側にいよう、躯」
あの男から精神的肉体的に逃れる為に半身を焼いた体だ。
自分では狂気からの独立の証として誇りにもしているが、この男の目にはどうだ
ろう。以前はそれを気にしてもいたが、今更隠しても詮無いことだ。
「あぁ…」
宥めるように乳房を撫でられて、思わず声が上がる。
母になりかけている体はようやく安定期に入ったところで、こんな行為もある程
度なら出来るようになっているとはいえ、まだ未知のことばかりで正直言えば戸
惑っている。
だからこそ余計に燃え上がるのは女の本能だろうか。
「いいな、躯」
そんな躯に欲情を掻き立てられたのか、珍しく声の上擦りを隠せずに男が重な
ってきた。体をさらさらと撫でる手は優しいのに、伝わってくる鼓動はひどく熱く
て激しい。煽られるように更なる熱が湧き上がる。
「…悪いな、今夜は我慢が出来そうにない」
「飛影、構わない…お前の好きにしていい、からっ…」
求められていることが嬉しくて、今夜はもう何も考えずにしっかりと腕を回して夫
たる男を抱き締めた。
しんと静まり返った夜。
月だけが物言わず魔界を照らしている。
何もかも満たされ合う為に抱き合う二人の許には、冷たい月の光など微塵も届
きはしなかった。
「えーと…どうしよう」
たまたま喉が渇いて起きてきた雛が、偶然そんな二人の姿を見てしまっていた。
水が飲みたいのに、厨房には応接間を通らないといけない。
「お邪魔する訳にはいかないし…うーん…」
恋に恋する年齢の雛には、長椅子の上の二人が何をしているのか良く分かって
はいなかった。
終
571 :
12:2005/12/19(月) 02:45:05 ID:iAHI3Str
ごめんね。
変なオチをつけてしまいました。
いや、単に雛を書いていなかったので出番を入れたくて。
それと、来週はいよいよクリスマスなのでちょっと企画物みたいな感じのものを書いて
みたいと思っています。せっかくだからオールキャストで。
でも、メインは飛影×躯で、とか色々今から考えていたり。
ちょっとギャグっぽくなるかも知れません。
桑原くんと雪菜ちゃんの二人も出したいと思っています。
それでは、おやすみなさい。
12さん、GJ&乙です!
甲斐甲斐しく躯の世話をする飛影、とてもいい旦那ですね。
迷いながらも、自分の幸せを肯定していく躯の姿に感動しました。
甘い二人の雰囲気も良かったです(*´Д`)
ラスト、情事に突入する際の、切羽詰った二人の様子に萌え。
そしてオチに出てきた雛ちゃんがまた可愛い。純情なんだなぁ。
来週の“オールキャスト”、とても楽しみにしています。
573 :
名無しさん@ピンキー:2005/12/21(水) 23:57:48 ID:2tcHNOo3
飽きた
GJ!GJ!
>>571 12さん、毎週楽しく拝読しております。
来週のオールキャスト、飛影と躯、桑ちゃんと雪菜ちゃんの他には、
前に連載していたコエンマ、ぼたんのカップルや
幽助、螢子のカップルも登場するのでしょうか?
みんな大好きなカップルなんで…そうだとしたら嬉しいなぁ。
他の人が投下しにくくないですか?
>>576 ぱらぱらと12さん以外にも投下され始めてないか?
さらにみんなクオリティ高いし。
自分も書いてみたいがこれは才能の必要性を感じる。
>>576 とりあえず、12さんが頑張って書いてるのが呼び水になって、
他の人も書いてくれていると思う。
最初から誰もいなかったら、すぐ寂れるだけだし。
579 :
12:2005/12/25(日) 23:52:39 ID:CfjwkALp
こんばんわ。
今日も午前二時ぐらいに投下の予定です。
遅くて申し訳ありません。
時間は気にしないで下さい。
ワクテカしながら待ってます。
581 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:38:21 ID:qfxJJBy+
十二月二十五日。
外国の神様が生まれた日とはいえ、どうしてこの国ではお祭り騒ぎになっている
のかよく分からないが、とにかくこの時期は街が華やかに飾りたてられ、眺めて
いるだけでもうきうきしてくる。
誰もが嬉しそうな、幸せそうな顔をして歩いているのがその証拠だ。みんなそれ
ぞれに幸せの中にいるのだろう。
「ほら早く支度してよ。時間ないんだからね」
「…分かってるって。全くうるさい女だなあ」
「うるさいとは何よ、口を動かす前に手を動かす!さっさとしなさい」
新婚夫婦の幽助と螢子は、相変わらずの調子で毎日を過ごしていた。特に、今
日はみんなで会う約束があるので螢子は気が気ではない。時間などあってない
ようなものだと思っている幽助には、積極的に尻でも叩かない限り言うことを聞
かせることなど出来ないと分かっているのだ。
「へいへい、相変わらずキツいことで」
まだ半分も身支度を終えていない幽助は、起き抜けのぼんやりした頭をぼりぼ
りと掻きながら文句を言う。
「何か言った?」
「いーえ、なんにも」
今日はクリスマス。
仲間たちが出会える滅多にない日なのだから特別だ。
582 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:39:07 ID:qfxJJBy+
そわそわと腕時計を眺めながら、桑原は落ち着きなく家の門の前を行ったり来
たりしている。それがよほど目障りなのか、静流はわざわざ家から出てきて手
にした煙草の煙を顔に吹きかけた。
雪菜はまだ身支度に戸惑ってるのか、約束の時間を過ぎてもまだ部屋から出
てこない。催促するでもなく、じっとこんなところで待っているのは、もう趣味のよ
うなものだ。
「うざい。男ならもっとドンと構えてな。そんなんじゃ嫌われるよ。全く」
「放っといてくれよ。せっかく久し振りに帰って来たんだし」
「久し振りの割には全然変わんないみたいだね、あんたたち」
「うっ…」
核心を突かれたようで、思わず黙り込んでしまう。確かに、アメリカの大学に留
学する時、雪菜も一緒について来てくれた。
『和真さんお一人では大変でしょうから、私もついて行きます』
そう言われた時は本当に嬉しかったし、向こうで一緒に暮らしている間もまるで
夢の中のような日々が続いている。それは今も変わりない。ただ、あくまでもそ
れだけだ。それ以上のことは何もない。
何となく、まだ踏み込めずにいるものがあって、それが頑なに二人の間に横た
わっているのだ。
そんなことを考えているうちに、慌てたように玄関を明けて走ってくる雪菜の姿。
「…ごめんなさい、こんなに遅れてしまいまして」
よほど急いでいたのか、胸を押さえている。だが、遅れてまで身支度をしただけ
あって上から下まで淡色で纏められた服装が初々しく似合っている。ぐるぐる巻
きにした白いマフラーが少し気にはなったが。
「なに、構いませんよ。雪菜さん」
583 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:39:53 ID:qfxJJBy+
今までそわそわしていたというのに、急に余裕を気取る弟に、思わず静流は噴
き出した。
「カズ、あんたには似合わないから」
「うっせってば」
昔から絶対にかなわない姉に、それだけ短く吐き捨てるといそいそと雪菜に駆
け寄る。
「雪菜さん、では行きましょうか」
「はい、和真さん。あ、その前に」
中学生の時からずっと思い続けてきた雪の化身のように美しい雪菜は、にっこ
りと笑って首に巻いていたマフラーを外すとふわりと桑原にかけてくる。
「えっ!?」
「何とか今日に間に合いました。和真さんが寒い思いをしないように、頑張った
んですよ。お揃いです」
頬を染めて微笑む顔がとても美しい。そういえば、一ヶ月ほど前から部屋に篭
りがちだったのは二人分のマフラーを編んでいたからだったのだろう。
寒いというのに、まだ二人の様子を眺めていた静流が茶化す。
「あっはっは、あんたには不相応過ぎ。まあ雪菜ちゃんに感謝しなよ」
「分かってるって」
ひらひらと手を振って送り出す姉の視線が刺さるようだ。一応は二人を応援して
くれているのだろうが、どこまでその気があるのか怪しいものだ。
「皆様に会えるの、楽しみです。お変わりないといいのですが」
二年前に留学をして以来、里帰りは初めてのことだ。以前色々と関わりがあっ
たからこそ、雪菜も以前の仲間たちを特別大事に思っているのだろう。それが
桑原としてもとても嬉しい。
「そんなに変わりはないと思いますけどね。あ、幽助んとこぐらいかな」
「御結婚されたんですよね。羨ましいです」
道すがら、にこにこと笑いながら顔を向けてくるのが今でも心臓に悪い。どうし
てこんなに純粋で美しい人がいるのかと思うほどだ。
584 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:40:33 ID:qfxJJBy+
「…ついて来ないで下さい」
「ほう、つれないことだな」
「あたし、みんなに会いに行くだけなんですからっ」
「それでは、儂も行って構わないだろう、ぼたん」
地上に降りてもまだ後をついてくる男に、ぼたんも少々呆れ顔だ。何だと言うの
だろう、このお坊っちゃんは。プライベートも与えないつもりだろううか。そんなこ
とを考えながら、あくまでも無視して歩き続けている。
仲間たちと会うのは幽助と螢子の結婚式以来だ。あれからのことを色々と螢子
と話したかったのに、と絶望的な気分になる。
そんな時、突然目の前のデパートの壁に貼られた広告に、思わずぼたんの目
が釘付けになった。
「わあ、綺麗…」
淡いブルーのトーンの中に、煌めくような雪の結晶を模したジュエリー。まるで
本物の雪のように美しい。
今、若い女性たちの間で爆発的に流行しているジュエリーがあった。
華やかな広告に乗せた『真冬に誓った愛は、永遠に溶けない雪となる』のキャ
ッチフレーズと共に、某ブランドショップが展開しているウィンタースノーシリーズ
のペンダントがそれだ。
雪の結晶をモチーフにして、煌びやかな石を繊細に配置したデザインはクール
でエレガントともっぱらの評判だった。もちろん、それぞれの女性たちが財布と
相談出来るように、様々な価格帯でダイヤモンド、クリスタル、スワロフスキーと
材質も多様に取り揃えてあるのも人気の理由だ。
テレビやネットでも宣伝されているせいで、知名度もかなりのもの。特に、この
クリスマスシーズンに向けてはジュエリー業界の売れ筋商品ともなっている。
585 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:41:13 ID:qfxJJBy+
「よう、蔵馬」
待ち合わせ場所のオープンカフェで先に来て座っていた蔵馬を見つけると、幽助
は呑気に手を振った。その後ろから螢子がぺこりと頭を下げる。
「ごめんなさい、幽助の支度に手間取っちゃって」
「いえ、いいんですよ。もう分かっていることですから」
「何だよ、お前まで」
「事実でしょう?」
くすっと笑う顔は今日も晴れやかで美しい。日曜日だというのに隙なく着こなし
たスーツが冬の日を反射するかのようだ。
「ところで、何だよ。お前からみんなに召集をかけるなんて」
「みんなに会いたい、というのはまあ口実で、本当のところは野暮用なんですが
ね、飛影のことです」
「…ああ、最近こっちに来ないからなー…で?」
乱暴に空いている椅子に座ると、肩肘をつく。
「躯のね、プレゼントを買って来いというんですよ」
「はあ!?そんなことで呼び出しかよ」
「あはは、ええ、簡単に言えばそれだけです。でも断れないんですよ…邪眼で
視られている訳ですからね」
律儀な性格そのままに、随分早いうちに来ていたのだろう。テーブルの上の紅茶
はすっかりなくなって、空のカップだけが残されている。
「なので、みんなに会うついでに一体何がいいのか相談しようと思いまして」
最近、飛影が人間界に来ることは滅多になくなった。仲間と会うこともしない。躯
という世にも美しい女につきっきりなのだ。
「へー、あいつが女にクリスマスプレゼントねえ…柄じゃねえな」
「あんたがそんな気もないからって、失礼よ」
「何だよ螢子、突っかかるなよ」
危うく喧嘩になりそうなところを救ったのも、常識人である蔵馬だった。
「あ、みんな来ましたよ」
586 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:41:47 ID:qfxJJBy+
「よう、久し振りだったな」
「皆様、御無沙汰しています」
桑原と雪菜が満面の笑みでこの場に現れる。その少し後に続いてぼたんとコエ
ンマ。これで勢揃いというところだ。
「桑原、頑張ってるみたいだな。昔からは考えられないぜ」
「当たり前だっての。俺には幸せにしたい人がいるんだ」
「桑原が留学したのは二年前だが、その数年前から会っていなかった幽助は旧
友との再会に興奮気味だ。
「ま、気持ちも分かるけど、一緒になるのは考えた方がいいって。俺は早まった
かなって思ってんだ」
がっくりと肩を落とすしらじらしい演技をしながら、同情を引こうとする幽助の背後
で凄まじいオーラを出す螢子が仁王立ちになっていた。
「なあんですってえええぇぇぇ…!」
「あ、あははは。まあまあ螢子ちゃん。せっかくの再会なんだしさ。許しておやり
よ」
一瞬にしてここを修羅場にしそうな勢いの螢子を慌てて止めるのは、やはりぼた
んだ。
「もう、ぼたんさんったら。早まったのは私の方です」
「いいじゃないか。夫婦ってのは綺麗事ばかりじゃないんだからさ」
よしよし、と宥める声が興奮していた螢子を宥める。
「それで、本題ですが」
幽助と螢子に言ったことではあったが、もう一度飛影に託された用件を伝えよう
と蔵馬が口を開く。
587 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:42:25 ID:qfxJJBy+
「それだったら、あれがいいんじゃないかな」
話を一通り聞いたぼたんは、即座に閃いたように瞳を輝かせた。
「ウィンタースノーシリーズ、どう?」
ここに来る時に見ていた広告の商品だ。あまりにも美しいのでついうっとりと見
上げてしまっていたほどだ。
「ああ、今話題になっているものですね。魔界では雪の結晶のモチーフという概
念はないので、いいかも知れません」
蔵馬はそれで決まりだとでも言うように、にっこりと笑った。元々託された用事
は出来るだけ早めに切り上げて、滅多に会えない仲間たちと遊ぶ計画があった
のだろう。
「雪か…」
感心したように、桑原が呟く。
「雪菜さん、マフラーのお礼にあなたにプレゼントをしてもいいですか?」
「えっ?」
今の会話で、シリーズの商品を雪菜にプレゼントすることを思いついたのだろう。
「是非そうさせて下さい」
「…ええ、有り難く頂きます」
初々しく頬を染めて微笑む表情が、何とも愛らしい。
「じゃあ、そこのショップも近くにあることですし、まずは行きますか。それからみん
なで今日は目いっぱい遊びましょう」
ここ数年で、やたらと仕切りが上手くなった蔵馬の速攻の采配には誰も文句はな
かった。
588 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:43:09 ID:qfxJJBy+
色々あったクリスマスも、終わろうとしている。
とっぷりと日が暮れた街は宝石を散りばめたようにきらきらと眩く輝いて美しい。
散々遊んで疲れた体を引きずりながら、集まった仲間たちはまた元の生活に戻
ろうとしていた。
「今日は本当にありがとうございました。俺の野暮用で付き合わせてしまいまし
て、感謝 しています」
最後まで蔵馬は礼儀を欠かさない。静かに頭を下げて背中を向けた。その手に
は午前中に購入した品が下げられている。
「…さて、帰るか。何か腹減ったな」
一時間前に軽く食べたばかりだというのに、幽助は呑気なものだ。
「あんたはそれしかないの?全くもう…」
そんな遣り取りをしながら、新婚夫婦は雑踏の中に消えていく。
「…和真さん、ありがとうございます。私、一生大切にしますね」
プレゼントされたクリスタルのペンダントを嬉しそうに指で撫でながら、雪菜は蕩
けるように綺麗な笑みを浮かべる。
「なあに、そんなことぐらい…」
「幸せにしたい人って、私ですよね」
「えっ?ええ、まあ…」
「…幸せにして下さいね、和真さん」
「…えっ」
何を言われたのか頭がついていかないうちに、雪菜は恥ずかしそうに一人で走
って行った。慌てて追う桑原も、何だか嬉しそうだ。
「あっ、待って下さい、雪菜さん!」
「…さて、あたしたちも帰りますか」
さすがに一日付き合って、ぼたんもくたくたになっていた。けれど心が通じている
仲間たちと一緒にいるのは楽しいし、また明日からも頑張ろうという気になれる。
「そうだな、では一緒に」
「や、で、す」
仲間たちと一緒の時はやたら大きな猫を被っていたというのに、いなくなった途
端にこれだ。疲れていることだし、今日はあまり関わり合い似ないうちにさっさと
帰ろう。そう思っていたぼたんの鼻先に、冷たいものが押し付けられた。
「ひゃっ」
「随分、これを羨ましそうに見ていたな。欲しいのだろう?」
それは、今日随分と話題になっていたウィンタースノーシリーズのペンダントだっ
た。いつの間に買ったのだろう。それよりも、人間界の金銭を持ち合わせていた
ことが驚きだ。
「…別に欲しくなんかありません、後で何されるか分かったものじゃないし」
ぷいっと横を向く顔は明らかに拗ねている。
それぞれのクリスマスは、こうして無事に閉じられた。
589 :
聖誕祭:2005/12/26(月) 02:46:13 ID:qfxJJBy+
「飛影」
胸に輝く雪の結晶のペンダントを嬉しそうに撫でながら、躯は微笑んだ。
「こんなに気を使わなくて、良かったのに」
冬の日を全て眩く反射して輝いているペンダントは、いかにもこの美しい女に相
応しい。今更人間界にわざわざ行く気はしなかったが、用事なら蔵馬がこなして
くれるから造作もないことだ。
それよりも、些細なことでこの女が喜んでくれるのなら何でもしよう。
「そんなことは、貴様が気にする必要ないことだ」
「ああ、そうだったな…」
人間界では外国の神様が生まれた日に過ぎないクリスマスだが、二人にとって
は改めて絆を結び直す大切な日となった。
終わり
590 :
12:2005/12/26(月) 02:57:14 ID:qfxJJBy+
タイトルに、オールキャストを入れるの忘れてた。
それと、みんな出したので、あまり出来は良くなかった・・・。
反省してます。
>>590 ほのぼのしてて、良かったですよー! GJです!
今度は・・・そうだ、幽介と螢子の夫婦生活など一つ。
12さんの優しい文体だと、螢子視点の方が繊細に表現できるかなーなどと。
・・・勝手なリク、すみません(汗
勿論、飛影×躯、コエンマ×ボタン、桑原×雪菜、どのカップリングも大好きです!
12さん、GJ!それぞれのカップルに見せ場があって良かったです。
個人的には、桑にマフラー編んでプレゼントしてあげる雪菜ちゃんがテラカワイス
締めの飛影&躯の落ち着いた雰囲気も(・∀・)イイ!!
>>591 幽助と螢子の夫婦生活いいね!12さんの設定じゃ新婚サンだし。
現在連載中の飛影×躯が無事完結したら、是非書いて頂きたい。
ありがとうございました。
GJ!
ID:TwCrkA9xは何が言いたいんだ?
>>594-595 ん?誤爆か?
>>590 12さんGJ!乙でした!クリスマスの華やいだ雰囲気に、
読んでいた此方までワクテカした気分になりました。
これが今年最後のSSになるのかな?
今年は職人様方に恵まれ、数多くの良作を読ませて頂く事が出来ました。
職人の皆様、本当に有難うございました!ヽ(´∀`)ノ
598 :
12:2005/12/29(木) 20:09:03 ID:crlJ2rXX
こんにちは。
>>591>>592さんのリクに応えて、元旦には幽助×螢子で書いてみようと思って
います。元旦は色々とネタがありますしね。で、出来ればエロにも持ち込みたい
とか企んでいます。
裏を返せば、私自身はクリスマスも元旦も暇ということです(笑)なので今から
話を考えているところ。
それでは私も今年はここまで。
元旦にまたお会いしましょう。皆様、どうぞ良いお年を♪
599 :
592:2006/01/01(日) 00:38:39 ID:iNmMFXqS
12さん、幽助×螢子のリクエストに応えて頂きまして有難うございます。
姫はじめですね(;´Д`)ハァハァ楽しみです!
職人の皆様、今年も素敵なSS投下を心待ちにしておりますヽ(´∀`)ノ
600 :
12:2006/01/01(日) 23:17:43 ID:VtccuPl9
明けましておめでとうございます。
元旦から私は暇でした(笑)
ところで今日投下する予定の話は、だらだら悩んでいたりしたので例によって
もう少し時間がかかりそうです。
多分、午前二時から三時までの間に何とかなるかと。
居間頑張って書いているので、ピッチ上げます。
楽しみにしております〜
602 :
12:2006/01/02(月) 03:04:26 ID:SnCMQ+Ff
たった今、完成しました。
なんかもう鼻血出そうです(笑)
では、投下♪
603 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:05:25 ID:SnCMQ+Ff
元旦の午前六時。
前日までかかりきりでおせち料理を作っていたせいで、やや睡眠不足気味の螢
子はまだ眠そうに目を擦りながらキッチンにやって来た。
結婚したばかりとはいえ、こういう季節の節目だけはきちんと忘れずにいたい。
それは両親の教育の賜物でもある。
「うーん…我ながら良く出来たかな。後はお重に詰めるだけね。それからお雑煮
を作ってと…」
黒々と艶やかに仕上がった黒豆を一粒口に運んでから、にっこりと満足そうに微
笑む顔は新妻そのものだった。
午前八時。
あまり早く起こすと文句を言われるので、ぎりぎり譲歩したこの時間に寝室へ向
かう。そんな螢子の気も知らず、当の幽助はまだ呑気に夢の中だった。どうせろ
くな夢を見ていないらしく、呆けた顔で何やら聞き取れない声で寝言を言っている
のが憎らしい。
ついつい悪戯で鼻をつまんでみた。
「…っ、ぷはっ!」
「ははっ、あははは!」
その歪んだ顔があまりにも面白かったので、笑い出してしまった。それが気に障
ったのか、目を覚ましてすぐに拗ねたように口を尖らせて文句を言う。
「てめ、元旦早々殺す気かよ」
「あんたがいつまでも呑気に寝てるから悪いんでしょ。全部支度は出来たから起
きて」
604 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:06:24 ID:SnCMQ+Ff
早朝から頑張った甲斐あって、キッチンのテーブルにはずらりと御馳走が並んで
いる。三重に積み重ねられたお重にぎっしりと詰められたおせち料理に黒塗りの
雑煮の椀、それに屠蘇器のセット。
元旦の食卓には欠かせないものがそこには全て揃っていた。
前日まで年越し番組と深夜映画を見ていて大して寝ていなかった幽助は、まだ
眠そうに渋々トレーナーとジーンズを身につけている。その間に螢子は隣の部屋
で正月用の淡いピンクの着物を黙々と着ていた。まだ着慣れているとは言えない
が、外から見ておかしくない程度には着られるようになっている。こんな日ぐらい
はきちんとしていたかったのだ。
「幽助、どう?」
「うわ、すげーな。見違えたじゃん」
「えへへー、ありがと」
着物の袖で真っ赤になった顔を隠して照れ笑いをする螢子に、幽助も嬉しそうな
顔で頭を掻いている。
「じゃあ…朝食にしようか」
「そうだな。腹減ったし」
「うわ、すっげー。豪勢じゃん」
全て準備の整った食卓を一目見て、また幽助は感嘆の声を上げた。それが決し
て変に大袈裟ではないのが何だか嬉しい。特におせちは品数がたくさんあって
下ごしらえも大変だったけれど、その一言で報われた気がした。
「なーにお世辞言ってんの」
「いやいやマジ。うちのお袋なんか、こういうのダメだったし」
「うーん、まあ温子さんは仕方ないって」
くすくすと笑いながら、無理やり椅子に座らせる。確かに幽助の母親、温子はこ
ういうものに気が回らなそうだ。それでも子供を抱えて女一人で一生懸命だった
ことは子供の頃から身近に見ていて分かっている。
女はやはり子供を持つと偉大だ。
結婚してからも、改めて実感している。
605 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:07:35 ID:SnCMQ+Ff
「今年もよろしくね」
「ああ、頼むぜ」
食事の前にお屠蘇の杯を飲み欲して、新年の誓いを交わす。こんな時のぴりっと
張り詰めた感じが好きだった。
「じゃあ、食べて」
中身が詰まっていて重いお重を広げながら、螢子はいそいそと勧めた。つられる
ように箸をつけて煮しめを口に運んだ瞬間、笑みが零れる。
「うん、うめー」
「そう?いっぱい食べてよ。蒲鉾とか数の子はそりゃ無理だけど、手作り出来る
ものは出来るだけ自分で一から下ごしらえしたんだからね」
自慢げに微笑む螢子は、目の前で美味そうに食べ続ける顔を見ているだけで幸
せだった。元々が食堂の娘でもある。自分が作ったものを食べて喜んでくれる人
がいるだけで嬉しい。料理がそれなりに得意で良かった。
こんな時は本当にそう思う。
食事の後片付けを終えた後、いよいよ初詣に出かけることにした。
さすがに元旦はどこの神社も混んでいるとは思うのだが、これも習慣のようになっ
てしまって午前中のうちに出かけずにはいられない。
「ほら、これ早く着てったら。お天気はいいけど結構寒いんだし」
いつものように、食後だらだらとゲームを始めようとする幽助を追いたててダウンジ
ャケットを着せようとする。
何かにつけて尻を叩いていないと、幽助はなかなか腰を上げようとしない。その為
にいちいち文句を言われるのだが、腹を立てていても始まらない。
両親がいつも言っている。時は金なりと。
それに倣って、この一年の始まりの日となる今日の時間は少しも無駄にはしたく
なかったのだ。
居間の床に寝転んでいる幽助はぶーぶー言っている。
「何だよ、神社は逃げないって」
「早めに行かないとすぐに午後になるわよ。日が暮れるのは早いんだからね」
「うるせーなあ」
「…いいから立つ。そしてこれ着て玄関。はい、すぐに実行!」
こんな風に常に気を つけて仕切っていないと、本当に今日はすぐに終わってしま
いそうだ。
606 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:08:28 ID:SnCMQ+Ff
午前中の青空は綺麗に澄んでいる。
真冬だから寒くはあるのだが、気のせいか空気もいつもより澄み切っているよう
な気がした。
「いいお天気ね」
「そうだな」
さすがに普段より街中に人はいないが、螢子のように着飾っている若い女性たち
はみんな初詣に行くか、もしくはどこかへ訪問しに行くのだろう。華やかな雰囲気
が溢れていて何だか嬉しくなってくる。だが、好事魔多しとは良く言ったものだ。
「よそ見をしない!」
すぐ側を通りかかった華やかな振袖姿の女性の方につい目が向いてしまった幽
助の腕を思いっきりつねる。
「いてーな!」
「あんたが悪いんでしょ」
そんな遣り取りをしながら二人が着いたのは、近所では一番大きな神社だった。
大きいとはいってもこの時期のテレビではよくニュースとして映っているような、参
拝客の多い神社というほどではない。だから少しは窮屈な思いをすることなくお
参りが出来ると思ってここにしたのだ。
境内に入ると、やはり人は多いが心配していたほどではない。この分ではすぐに
先頭まで辿り着けるとほっとしながら、バッグに入れていた携帯カイロを隣の幽
助に差し出す。
「もう少しみたいね。寒いからこれ使って」
手袋も忘れていたので指先が冷たそうだった幽助は、嬉しそうに飛びついた。
「お、悪いな」
毎日特別変わったことをしている訳ではない。けれどこんな何気ないことの積み
重ねを繰り返すことで、夫婦としての日々がだんだん充実したものになっていく
ような気がした。
607 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:09:06 ID:SnCMQ+Ff
無事にお参りを済ませ、破魔矢と家内安全のお守りを買う螢子の側で、幽助は
別のお守りを持って、これも欲しいとしきりに茶々を入れる。
「何?あんたはどんな願いがあるの」
「へへー、こんなの」
よくよく見れば手に握られているのは『安産祈願』のお守りだ。
「…何考えてんの。そんな状況じゃないでしょ」
「もし出来ても、俺がおぶって育てるしさ。子供は嫌いじゃないんだよなー」
「お腹にいる間、私が色々困るじゃない」
頭が痛くなった。
教師を目指して毎日山のような課題やレポート作成に追われているというのに、
そんな余裕はない。子供が欲しくない訳ではないのだが、来るべき時期は今で
はないのだ。それをこれまで何度も話していたというのに、全然分かってくれてい
なかったことが螢子を少し憂鬱にした。
男というものは、大体こんな風に現実があまり良く見えていないものなのだろう。
こんな日に苛々していても始まらない。これはまた後で旦那教育を徹底しないと
いけないと決意を新たにする。
「あ、あいつら…」
ひとまず安産のお守りだけは却下して境内を出ようとしていた時、幽助が大きな
声を上げた。指した指の先には桑原と雪菜の姿。
「ちょっと、やめなさいよ。邪魔しちゃ悪いって」
「いいからいいから」
仲睦まじく顔を見合わせて笑っている二人の側に、幽助はちゃっかり走って行っ
た。
「よう、お前らも来てたんだな」
「まあな。初詣ぐらいはしねーとな」
クリスマスの時と同じく、お揃いの白いマフラーをしている二人の間に割って入っ
た図々しい男の後ろから、消え入りそうな様子で螢子は溜息をつきながらぼとぼ
と歩いて行く。
だが、幸いなことに二人はそれほど気にはしていないようだ。
608 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:09:47 ID:SnCMQ+Ff
「…ごめんね、雪菜ちゃん。せっかく一緒 なのにお邪魔しちゃって」
「いえ、そんなことないです…」
意気投合して笑いながら話し込んでいる男二人を横目に、螢子は取り残された
形の雪菜の側へと寄る。まだ少女のような可憐さを残している雪菜は控えめな
正確そのままに溶けるように淡い笑みを浮かべて頬を染めた。
「さっき、お参りした後でおみくじ引いたんです」
「わあ、何だった?」
「大吉って出ました…なのでそこの木の枝に結びつけようとしていたら、和真さ
んが『いい結果が出たおみくじはこれから一年間のお守りに出来る』って言って
下さって…」
そう言って、もう一度更に赤く頬を染めてはにかみながら笑った。その笑顔はも
うじき境内で咲き誇る紅梅のようだった。
「雪菜ちゃん、今すごく幸せなのね」
あまりにも嬉しそうな笑顔に、引き込まれそうな錯覚を覚えながら尋ねてみた。
途端に、もうこれ以上は無理なほど真っ赤な顔をして見ている方が胸が痛くな
りそうなほど満面の笑みを見せてくれた。
「…はい、とても」
雪菜が羨ましくなって、後でひいてみたおみくじは中吉だった。
まあ平凡なのが何よりといったところか。それが自分には一番似合っているよ
うだ。
ところで昼食はまだおせちの残りがあるからいいとして、夕食はどうしよう。
まだ正午少し前。
神社の境内を出て家路を行く途中、そんな考え事が頭を占めている。今から螢
子の気がかりは夕食の支度のことだった。おせち料理とは家庭の主婦が三が
日の間炊事をしなくていいように作るものだ。だが、幽助が美味い美味いと大
喜びで、もう半分近く平らげている。昼食でも同じペースだったら夜にはすっか
りなくなっているだろう。
609 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:10:37 ID:SnCMQ+Ff
だが、せっかく作ったものがいつまでも残ってしまうよりは遥かにましだ。あんな
に喜んで食べてくれるのなら、また来年も作ってあげたい。女はそんな風にごく
シンプルに出来ている。
「幽助」
まだ隣で安産のお守りがどうとか、ぶつぶつ言っている幽助に声をかけた。
「何だよ」
「夕食、何がいい?」
昨日までのおせち作りのエネルギーは、もう残っていない。全く別のものを作る
としてもそれほど凝ったものは無理だけれど、とりあえずリクエストは聞いてお
くつもりだった。
案の定、昼食の時点でおせちは幽助が完食した。
家に帰ってからも出し忘れた年賀状書きや掃除の残りなど色々と細かい用事
があったので、何だか慌しい元旦になってしまった。
そうこうしているうちにあっと言う間に日が暮れてしまって、もう何も夕食の支度
をする気などなくなってしまっている。
仕方なくキッチンの戸棚にいつもストックしてあるレトルトのカレーと、レンジで
温める御飯で済ませることにした。さすがに元旦に料理を作るのは勘弁して欲
しかったのだ。
「ごめん、こんなものしかないの」
「あーいいよ。今日は御馳走づくめだったからさ」
反応は意外にあっさりしたものだ。普段食べ慣れていないものをたくさん食べた
という満足感があるのだろう。
610 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:12:56 ID:SnCMQ+Ff
「あー、今日は大変だった」
何とか家の中の掃除の残りを終え、夕食も入浴も済ませてしまってから、よう
やく人心地ついたように居間のソファーで横になったパジャマ姿の螢子は、今
日初めて安堵の溜息をついた。
「お疲れー」
幽助が冷蔵庫から取り出した缶ビールを渡してくる。
「サンキュ」
一日の用事が全部終わったことで疲れがどっと出てきて、ここですぐにでも眠
ってしまいそうだ。でも、時間はまだ宵の口。出来ればもう少し遅くまで起きて
いたかった。おせち作りで年末は潰れてしまったのだから。
プルタブを開けると、軽快な音が弾ける。
そのままごくごくと飲み干して、乾いた喉を潤す。大人になってからこの味を覚
えたのだが、やはりビールは美味しい。
「…もう一本くれる?」
「いいぜ、待ってな」
すぐに新しい缶を持ってきた幽助は、何の前触れもなく唇にキスをしてきた。
「…何、してるの」
「そろそろしたくなったなー、と思って」
「冗談。私、疲れてるの」
こんな状態なのに求めてくるなんて、本当に冗談じゃない。そう思っているの
にさほど抵抗しなかったせいで了承と取ったようだ。幽助の手はパジャマのボ
タンを一つ一つ外していく。
慌てて制止しようと腕を突っぱねた。
「ちょっと、待って」
「ダーメ♪」
まるで駄々っ子のようだ。一度その気になったら絶対に引かない。けれど螢子
もここで思うままになりたくはなかった。あと一時間で前から見たかったドラマ
が始まるのだから。今疲れてはいられない。
「お願い、やめてったら…」
611 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:13:41 ID:SnCMQ+Ff
「螢子」
声を上げた途端に、急に幽助は真顔になった。
はだけられた場邪魔をぐいっと開くと、あらわになった乳房に頬を寄せて囁くよ
うな小声になる。
「今日さ、すっげー嬉しかった。朝起きたら見たこともないような御馳走が並んで
て、お前は綺麗な着物着て勧めてくれて、そんなの経験なかったんで信じられ
なかった」
「幽助…」
「結婚って、こういうものなのかなって思ったら、もっともっとお前を大事にしたく
なった」
居間ではバラエティーを放送しているテレビの音だけがやけに響いていた。
「私も、そういう気持ち。だから手間をかけておせち作ったの」
「ありがとう」
「…いいって、そんなこと…」
何も考えていないようでも、いつも気遣ってくれる気持ちを秘めている。昔からそ
れは分かっているつもりだったのに、毎日の忙しさに紛れて忘れてしまったのは
自分の方だった。それに気付いて、柔らかな髪を撫でる。
「私は、幽助がいればそれでいいの」
「螢子」
「あんたが言ったんだからね。私を大事にして。私もいっぱいあんたを大事にす
るから」
冷たいままだった唇が熱を分け合うように重ねられた。
「…ン」
疲れていた体は、ほんのわずかな刺激であっと言う間に燃え上がった。触られ
るだけで、舐められるだけで敏感に反応して快感を蓄積していく体が自分でも
信じられないほどだ。
このままどんどん追い詰められていったら、どうなるのだろう。
「なあ、入れていいかな」
「…ダメ、あれ使って。じゃなきゃ嫌」
612 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:14:15 ID:SnCMQ+Ff
幽助が二人の間の子供を欲しがっているのは痛いほど分かっている。けれど今
だけは無理だ。どんなに頼まれても。
ものには時期というものがある。その場の衝動で全てを忘れる訳にはいかない
のだ。
「仕方ないな」
ズボンのポケットに忍ばせていたものを取り出してパッケージを開く。本当はこ
んなもの、螢子も好きではない。しかし事情が無理やりそれを正当化する。
ゴム特有の無粋な臭いが漂った。
「じゃあ、いくぜ」
「…うん」
幽助の願いを無碍にするゴムが装着され、それでも焼け付くほどに熱いものが
ゆっくりと螢子の中を抉った。何度知っても内部が擦れ合うこの一瞬だけはまだ
慣れることが出来ない。
「い、やっ…」
「螢子っ、いいか…」
「わか、んないっ」
粘膜が馴染んでいくごとに中から激しく煽られる。早く全てを忘れろと。まだ理
性を捨て切れていない螢子は戸惑いながらもただ必死で手放しそうな意識を繋
ぐだけだった。
もうじき、全部呑み込まれる時が来る。
ドラマは結局最初の三十分だけ見られなかった。
すっかり疲れ果てていたものの、それだけは見たいと思っていた螢子は眠気を
堪えて見続けている。
「螢子」
「んー、何?」
隣でぼんやりと所在なげに、やはりドラマを見ていた幽助が唐突に話しかけて
きた。
「無理強いしてごめんな…飛影に子供が出来たって聞いてから無性に羨ましく
なっててさ」
「そんなことだと思ってた」
613 :
初春日和:2006/01/02(月) 03:15:13 ID:SnCMQ+Ff
そう、螢子には原因が分かっていた。
なかなか会えずにいる親友に子供が出来たという知らせを聞いて以来、幽助が
少しだけ変わったことを。いつでも授かる環境にあるのに、それが叶わないもど
かしさを感じていることも。
「今は無理だけど、いつか近いうちにきっと私は幽助の子供を生むから」
「…本当だな」
「うん、約束する。だってあんたは家族が欲しいんだものね」
家族。
何という甘美な響きだろう。出来れば今すぐにでも与えてあげたいと思う。だが、
その前にしなければならないことを遂行することが一番の近道だと螢子は思っ
ていた。
義務も権利も同時に果たして、初めて二人は新しい家族を迎え入れることにな
るのだから。
何だか慌しい新年最初の日だったけれど、新しい目標も出来たのでまた一年
頑張れそうだった。
終
614 :
12:2006/01/02(月) 03:18:29 ID:SnCMQ+Ff
エロはどこですか(笑)
二人の元日情景だけ延々と書いていたらエロの入る隙間がなくなったような
気がします。こういう切り替えも今後の課題ですね。
桑原くんと雪菜ちゃんの二人を入れたりする余裕はあったけど。
新年早々から12さん投下キター!!!
毎回読ませる文章を落として頂いてありがとうございます!
仕事も幽助もどちらも大切で、そしてどちらにも真剣に向き合いたいという
蛍子の葛藤がかいま見えました。
家族を欲しがる幽助が切ない…(ノД`)
桑原&雪菜も幸せそうでほのぼのしました(*´∀`)
次作も楽しみにしております。GJでした!
わー!!
あけおめでございます
12さん、幽介×螢子を最初にリクしたものですが、感謝感激です
さすが、さすがのできばえ、激しくGJ!素敵なお年玉をありがとー
・゚・(ノ▽`)・゚・。
12さんGJ!リクさせて頂きました592です。お年玉有難うございました!
おせちは手作りで、ちゃんと着物を着て、午前の間に初詣も済ませる…
螢子の几帳面な性格がよく表れています。幽助が家族を欲しがるのは、
もしかしたら家族の愛情に飢えていたからかもしれませんね。
人間界での父親はダメ親父っぽかったし。
幽助は子供好きだし、螢子は(教育ママという意味ではなく)しっかり躾しそう。
もし二人に子供が出来たら、いい子に育ちそうです。
次回作も期待しております。次回作は何かな?飛影×躯の続きかな?
キタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
619 :
12:2006/01/03(火) 12:08:18 ID:TLIc0tSQ
591さん、592さん。
喜んでいただけたようで幸いです。頑張った甲斐がありました。
二人が結婚していたら、きっと家庭を引っ張っていくのは螢子ちゃんの方で
こんな感じで…というイメージが元々あったので、割とすぐに膨らませる
ことが出来ました。
幽助は、きっとごく普通の家庭に憧れているんじゃないかなと思ったので、
そういう描写も入れてみたりして。
思えば螢子ちゃんの御両親も、幽助がただの不良だった時でもちゃんと理解
して可愛がっていた感じがありましたよね。
ああいう、何でも言い合えるあったかい家庭を作りたがっているんじゃない
のかな。
本当の父親は、温子さんを殴るような奴なんで問題外です。
それで、次ですが、まだ決めていません。
飛影×躯だと子供が生まれるまでまだしばらく話が続くと思うし、都合良く
トラウマ克服という訳にもいかないので長期戦です。
ただ、だらだらと続けるのもどうかという気持ちもあるので一旦切って別の
話も展開してみたいかな。
連載は一旦切って別のお話を展開するってのもいいですね。
連載物から時間が遡りますが、飛影と躯の初めて話や
まだ互いに心を開ききれていない時期の話なども読んでみたいです。
勿論、他カップルも大歓迎です。
幽助×螢子、コエンマ×ぼたんのラブラブカップル話や
桑原×雪菜の初々しいカップルの話も大好物ですし、
以前、少し話が挙がっていた雷禅×食脱医師の大人の恋にも興味あります。
ただ、飛影×躯の連載物は最後まで続けて欲しいです。
時間はいくらかかっても構いませんので…どうかお願いします。
621 :
12:2006/01/03(火) 21:32:53 ID:TLIc0tSQ
620さん、提案をありがとうございます。
もちろん続けていた話は中断することはありませんので、最後まで何としても
書くつもりでいます。
そして、現在の二人の原点となるエピソードも書いてみたいと思っていたので
今現在は想像を膨らませています。
何度か書いたこともあって愛着が出てきたので、他のカップルの話も合間に書
きたいです。幾つもの話が複合的に構成していけば、もっと全体に面白みも出
てくると思いますし。
以前にも書きましたように、私は書くのが本当に好きです。
普段は別ジャンルで書いていますが、やはりこの作品は個人的に特別な思い入
れのあるものですので大切にしたいのです。
622 :
1/2:2006/01/04(水) 00:37:53 ID:07DTWZyp
連載物は最後まで書いて下さるとの事、とても嬉しいです。
毎週楽しく拝読していますが、回が重なるうちに、
「この二人の行方を最後(一つの決着を見る)まで見届けたい」
という思いがだんだん強くなってきました。
12さん版飛影×躯ストーリー、これからも期待して待っています。
それから、“現在の二人の原点となるエピソード”
これってすごく興味をそそられますね。今から楽しみです。
他カップルの話も挿入し、幾つもの話を複合的に構成していく事によって
全体の面白みも増す…という考え方も、とても良いと思います。
12さんの幽白世界がどんどん膨らんでいきますね。
623 :
2/2:2006/01/04(水) 00:42:04 ID:07DTWZyp
そして、12さんの幽白への思い入れの深さに、今更ながら感激です。
12さんはじめ、ここの職人様方からは多大な原作への愛情を感じます。
「自分と同じものを好きな人が、こんな素敵なSSを書いてくれるんだ」と
SSが投下される度に、嬉しく思っています。有難う!
行かない。
626 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 01:09:59 ID:kqT5vIms
ゆうすけとゆうすけママの近親相姦お願いします
ageてそんなくだらねーこと書くな。
基本、女の子に「ぃやあ・・・・」とか言わせたいんだけど
幽白の女の子はそんな事いわなさそうだね
雪菜ちゃんは言いそう
12さんの桑雪キボンです
631 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 13:58:12 ID:mW4A0o33
これ流行った当時の話なんだけど、
これの同人本(?)とか出してるような女がいた。
なんか、鞍馬とその声優が好きだって言ってたけど、
口数はかなり少なくておとなしいという以外にはおかしい所はなかったと思う。
で、ちょっとした事がきっかけで付き合うようになって、
幽遊白書の同人本を見せてって言ったら猛烈に拒否されたんだよな。
なんか、「引かれる」みたいな事を言ってた記憶がある。
俺はその時は意味がわからなかったんだけど、
いわゆる801本書いてたんだろうなぁ。
処女だったんだけど、最中はマグロの癖にフェラだけは妙に上手かった。
一瞬、口の経験だけはあるんじゃないかと疑ったんだけど、
今思えば、脳内妄想を重ねた上のテクニックだったのかなとふと思った。
スレ違いなんだが、処女+腐女子って
マグロ+フェラ上手いってのがパターンだったりする?
>>631 ここよりも、控え室スレあたりで質問したら、詳しくかつ大量の答えが返ってくると思うよ。
12さんの桑雪も読みたいですが、440さんの桑雪の続きも気になる所。
酎×棗とか雷禅×食脱医師とか、左京×静流などを書かれる職人さんは
いらっしゃいませんかね……。
634 :
12:2006/01/08(日) 21:59:26 ID:m7k29L3r
こんばんわ。
今日書くものは色々考えたのですが、632さんの案で桑原×雪菜で展開して
みるつもりです。ただ、今日は前編という形になるかも知れません。何だか
雪菜ちゃんが悩んでいるみたいなので。
エロに辿りつくには大分かかりそうです。
それでは、また後ほど。
投下は午前一時から二時頃になりそうです。
桑原×雪菜クル━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
12さん、期待しております!
>>632 440さんの桑原×雪菜も良かった!初々しい中にもエロさがあった。
兄バカ気味な飛影がまた微笑ましくて…。
キャラクターが原型を留めつつも、その職人さん色に染まっている。
職人さんによって同じキャラクターでも個性があって、そこがまたイイですね。
636 :
12:2006/01/09(月) 02:12:21 ID:+RBxdeGe
一応、前編が書きあがりましたので投下します。
まだエロには程遠い段階ですが。あああ…。
北の地方では毎日のように雪が降り続けていて、豪雪による被害が出てきてい
るという。もちろん都会でもそれと無縁でいられる筈もなく、今日は朝からくもり後
雨、または雪という予報が出ていた。最近は本当に寒いせいで、街を行く誰も彼
もが寒そうにコートを着込んで暗い目をして黙々と歩いている。
何となく、ごめんなさいと雪菜は誰にも見つからないようにこっそりと頭を下げた。
当然のことながら、この寒さも雪も雪菜の仕業ではないけれど。
買い物帰りにふと立ち寄った雑貨屋で、凝ったデザインのフレームで飾られたス
タンド式の鏡を見つけた。あまり衝動買いなどはしないけれど、今日はどうしても
欲しくなったし、値段もそれほど高くはなかったので雪菜は思い切って買うことに
した。
決め手となったのは、いつも大切にして首から下げているペンダントがその鏡に
とても綺麗に映ったからだった。
『雪菜さん、これを受け取って下さい』
みんなで集まった日に揃って出かけたショップで、金色のリボンをかけた純白の
箱を差し出して真っ赤な顔をしていた和真の真剣な顔が忘れられない。確かに
クリスマス前までテレビで盛んに宣伝をしていた綺麗な雪の結晶型のペンダン
トが欲しい、とは密かに思っていたけれど、決して口には出さなかった。
それなのに心を察したようにプレゼントをしてくれた気持ちがとても嬉しい。自分
はこれといって特別なことをしてやれてはいないのに、どうしてそんなに優しくし
てくれるのだろう。
いつもそんな気持ちで申し訳なく思っていた。
「和真さん、今日は何が食べたいのかなあ…今日は寒いから、ポトフかシチュー
にしようかな」
早くも夕食のことを考えながら買ったばかりの鏡を抱き締めて、一人きりの雪菜
は空を見上げた。薄い灰色の空は今にも雪が舞い降りてきそうな雰囲気で張り
詰めている。
和真のことが好きか嫌いか。
単純に決め付けるなら、絶対的に好きには違いない。
そして和真が心から思ってくれていることも充分に分かっているつもりだ。これで
何の迷いがあるというのだろう。
そこまで何もかもが整っているのに踏み込めないのは、やはり種族の違いによる
ものがあるからだ。
まだまだ百年に一度の分裂期には間があるのだから、情を交わすだけならそれ
は可能だ。だが、それはとてもいい加減なことに思えた。お互いに真剣になれば
なるほど、何ひとつ形を成さない行為がどれほど無情なことか雪菜はずっと悩ん
でいる。心優しく、誰にでも大らかに接している和真なら、自分の子供を望んで
当然なのだから。けれどそれを与えてやることだけは自分には決して出来ない。
もしも分裂期が今この時に訪れていたならば、何の躊躇もなく思いを遂げていた
だろう。
母親の氷菜の気持ちが今なら良く分かる。心に思う男の子を成したいと願うのは
女であれば当然の本能なのだから。
「そういや、あんたたち明後日戻るんだっけね」
「え、ええ。そうですけど」
ポトフを作る為にキッチンで食材の準備をしていると、後ろから静流が話しかけて
きた。危うく冷蔵庫から取り出したブロッコリーを取り落としそうになる。
「だったら、ここはあたしがやるから。あんたも支度とか色々で忙しいだろ?」
「いえ、大丈夫です。もう必要な荷物は全部詰めましたし」
「雪菜ちゃん」
急に静流は真顔で向き直った。元々端正な顔が引き締まると、尋常ではない凄
みが出て心の中を覗かれてしまうような錯覚を覚えた。茶髪の下で切れ長の瞳
がすうっと細められる。
「は、い…何ですか」
「あんたたちも長いからさ、野暮は言いたくないけど」
「…はい」
「ここらではっきりさせてやんないと、アイツが可哀想でさ」
「…」
とうとう来てしまった、と感じた。
やはり、周囲はそう感じていたのだ。和真の優しさに甘えてばかりで心を曖昧に
したまま今まできたけれど、もう次の段階に移る時に来ている。それを直に肌で
感じて、雪菜は目を閉じた。
どうして、こんなに大切なことを今まで放っておいたのだろう。心臓がどきどきして
思わず深呼吸をした。
「…私、和真さんのこと、とても大好きです。だから一緒に行くんです。これからも
ずっと…一緒に…」
「よし、分かった」
さっきまでの異様な凄みは静流から消えていた。いつもの笑顔で見下ろしている
だけだ。呆気に取られてしまって目を丸くしていると、ばんばんと肩を叩かれる。
「だったら、それを直接アイツに言ってやりなよ。ね?」
「…はい」
時刻は午後四時半。
まだ日は短い。そろそろ空は暗くなってくるだろう。いつの間にかすっかり冷え切
った空気が空から白いものを降らせている。
「わあ、雪…」
真冬のプレゼントは真っ白で夢のような粉雪。もしもの為にと持ってきたビニール
傘の上で、さらりさらりと微かな音楽のように優しく響いていた。和真は午前中か
ら近所の図書館に行っている筈で、もうそろそろ帰ってくるだろう。迎えに行こうか。
それとも近くで待っていようか。どのみち自分はそれほど寒さを感じないのだから
気楽なものだ。
「…雪菜さん?」
図書館が見える大通りの角に立って、よし、ここで待とうと決めてすぐに待ち人は
現れた。
「どうしたんですか、こんなところで」
分厚いコートにこの前プレゼントした白いマフラーを巻いて、完全防備の和真が心
底驚いたように目の前に立っていた。
「和真さんをお待ちしていました」
「…こんなところでですか、寒かったでしょう」
雪菜の正体を知っているにも関わらず、そんなことを言う和真にくすくすと笑いが
漏れる。本当に、何て優しい人なんだろうと。
「いえ、少しも」
「風邪をひくじゃないですか。早く帰りましょう」
「…はい、和真さん。傘はこれひとつしかないですけれど」
それだけのことで顔を赤くする和真をこっそりと確認して、何だか胸の中が暖かく
なる。粉雪はしきりに降り続いていた。心なしか街の騒音も静かに思えて傘の柄
を持つ和真の腕に縋りついた。これまで、どんな時でも雪菜を第一に考えてくれ
て、守り続けてくれたのなら、思いは返さなければいけない。そう決意して。
「…雪菜さん!?」
「私たち、周りからどう見えるんでしょう」
「どどどど、どうって…?」
すっかり動揺したような声が上から降る。
「恋人同士、だったら嬉しいのですけれど…」
「そっそんなっ…ははは冗談はやめて下さいよ…」
「いいえ、嘘でも冗談でもありません。私…和真さんのことが…」
その時、突然歩道近くの道路を物凄い勢いでトラックが通り過ぎていった。続きを
遮られて思わず口を噤んだけれど、動揺しきっている和真は気付いていないよう
だ。
いつもはここでおしまいだけれど、今夜はきっと。
二人が新しい段階へ進む為にも、これは必要なことだからと雪菜は可憐な表情に
強い決意の色を湛えて微笑んだ。
続く
641 :
12:2006/01/09(月) 02:17:25 ID:+RBxdeGe
てなことで、続きはまた来週です。
ちゃんとエロ書けるといいなあ。
本文で和真なのは、もちろん雪菜ちゃん視点だからです。タイトルでは一般的な呼称の桑原
だけどね。
また飛雪が見たいですー!
桑ちゃんからとりもどす(?)カンジのやつを。
12さん、桑原×雪菜GJでした!相合傘萌え。
真剣に桑との今後を考える雪菜ちゃんに好感を覚えました。
弟思いな静流さんもイイ!これからも二人の愛を応援してくれる事でしょうね。
続きが凄く気になります。前編、という事は来週は後編?来週が楽しみ。
桑雪大好きなんですごく感動してます。
来週を楽しみにまってますので、健康にきをつけつけつつ
頑張ってください。
あのさ…すっごく言い出しにくい雰囲気の中言うけど、
叩いてるわけじゃなくて疑問に思っただけなんで怒らないで下さい
12さんの書くものってエロ無しも多いよね?
文章的には自分も好きなんだけど、エロ無しって普通「スレ違い・どっか池」で
終わらされない?
12さんだけ特別なの?このスレだけ特別なの?
>>645 スレによる、としか言いようが無い。
自分が良く行くスレの殆どが、
「一回で全部貼れる長さのSSにはエロ必須」
「連載になる場合は、エロ抜きの回も許容」って感じだけど。
647 :
12:2006/01/10(火) 22:50:13 ID:aE/Bhjy2
>>645 仰る通りです。
ここはエロパロ板ですので、エロ無しの話は基本的に拒絶されても当然だとは
思っています。ただ、このスレ住人様方の御好意によって自由に書かせて頂いて
いる形に落ち着いていますね。
もちろん、私もエロ書くのは大好きなので頑張ってはいますが、たまに全くない
ものも書きたくなる時がありますので。
とりあえずは、エロパロ板のスレで書いている、ということを常に自覚していこ
うと思っています。
>>647 そんなクソ真面目に答えてて恥ずかしくならないか?
茶化すよりは真面目な方がいいのでは?
12さんが特別にひいきされているわけではなく
過疎スレにコンセプトに投下してくれる作家さんだから大事にして
いこうと思ってるわけでして
過疎化が進むような安易な発言は避けて欲しいな
ここは確かにエロパロ板だけれど
エロイかどうかもそりゃあ、重要だkれど
大人が読んで楽しめる、大人の幽白SSスレである、と
私はいつも、そう認識して足を運んでいます
たぶん、ここを読む方の大半が、同じ思いでいらっしゃるのではなかろうかと・・・
マジレスの応酬で気持ち悪い
12さんをはじめ、このスレの職人様方はみんな“読ませる文章”を書いて下さるので、
自分はいつも投下を楽しみにしていますよ。
で、ただ待ってるだけじゃなんなので、雑談のネタふりでも。
物語の終盤、一気にカップル(片思い含む)が増えたなぁ…と思いませんか?
>>645書きました。
マジレスしてくださってありがとうございます。
気分を害されたでしょう
>>12さん、すみません。
ただ、前から気になってしょうがなかったもので…
「だったらお前がエロ書けやゴルア!」なレスを想像してびくびくしながら訊きました。
過疎スレに投下してくれる大事な作家さんだから、エロ無しでもいいわけですね。
>>12さんの文章は私自身好きですから、これからも読みたいと思っています。
週明けが楽しみなのも事実です。
質問に答えて下さってありがとうございました。
これだけじゃナンなので、雑談に乗ってみます。
アニメだけかもだけど蔵馬と静流って結構いい感じじゃなかった?
何気にお姫様だっこしてたり、何気に隣に立つシーンが多かったような…
蔵馬だけ特定の相手がいないことだし、
アニメだけでも静流さんとくっついちゃえ!とか思ってた自分。
柳沢と1コマだけ出てきたベリーショートな女の子に萌えたけど
名前すらわかんねー…。
同じく刃霧要と名もない子に萌えたけど
名前が…
そして関係もわかんね
>>655 死んだ猫見てたシーンのおかっぱ娘の事?
要には妹が居る設定らしいのでその線が濃厚かと。
顔立ち似てるし。
確かに妹かもね。
ちょっと顔が似ていたし、能力(能力名は分からないけれど)も持っていたし。
でも、可愛かったな。
原作終盤の日常話、ちょっと好きだった。
例えば
>>654のヤナくんの話みたいな、キャラの意外な一面を見る事が出来て。
日常話は城戸がなんか可哀相だったなw
なにげにキューピッドとリンクしていたのが嬉しかった
あっちも好きさ
キューピットとリンクしてた>>どんな場面で?気がつかなかった。
662 :
12:2006/01/16(月) 23:35:16 ID:Tu3NfMR8
風邪をひいて、土日と寝込んでいましたので書けませんでした。
今度の日曜日までには完治させます。
>>653さん。
御指摘の件はもっともなことですし、私自身も以前からエロ無しの作品を書く
ことについての疑問を感じていましたので、自分自身の考えをきちんと見極める
意味でもいい機会でした。
これからも時々はエロ無しのものを書くとは思いますが、ここがエロパロ板で
あることを忘れないようにしたいと思います。
基本はエロ、ということで。
12さん、体が資本ですよ。
まずは風邪を早く治してください。
新作はマターリお待ちしております。
12さんの復活を待ちながら、
雑談の続きでも。
>>660 どのあたりがリンクしていたのかな?気になる。
「てんで」の方は読んだ事ないんだけど今度立ち読みしてみようかな。
「てんで」はラブコメなんだよね。
ラブコメといえば、酎と棗のカップルもラブコメ調だったような…
665 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 12:51:29 ID:FANTvmcp
保守もかねて職人さん降臨期待age
12さんの桑原×雪菜続編も楽しみにしております(;´Д`)ハァハァ
圧縮近づいてる。保守。
エロパロ版「SPECIAL DAY」読んでみたいなぁ。
12さん、具合大丈夫だろうか。ちょっと心配。
667 :
12:2006/01/23(月) 01:27:16 ID:J3nSb33g
こんばんわ。
病状は快方に向かってはいますが、まだ本調子ではないです。
今週こそはと思ったのですが…申し訳ありません。
続き物にしちゃったのに、すぐに書けないのは本当に悔しいです。
>>12さん
いつまでも待ってますので。早く元気になって下さいね。
症状が回復に向かっているとの事、安心しました。
病気も怪我も“治りかけが大事”と言いますし、今はゆっくり休んで下さい。
桑原×雪菜、飛影×躯の続編、楽しみにしております。
12さん完全復帰&職人さんが新作投下して下さるのを期待しつつ保守
ここって原作に沿わないカプでもいいかな?
幽助×ぼたんとか
oK。
すくなくとも漏れはOK.
それ言うなら漏れが見てみたいカプはもっとありえんよ?
……幽助×雪菜。
>>671 もちろん!!!!!!!!!!
ずっとずっと幽助×ぼたんが読みたかった・゚・(つД`)・゚・
公式カップルもその他カップルも、どんと来い!
幽白は女性陣も男性陣も魅力的だからな。
675 :
12:2006/01/29(日) 21:59:49 ID:DBRa4Hkx
二週間お休みしてしまいました。
ようやく回復したので、今頑張って桑原×雪菜を書いているところです。
多分、午前一時から二時に投下出来るかと。
まだ序盤でエロに突入していませんが、何とか最後まで書きたいです。
了解です。
ワクテカしながらずっと待ってるです。
12さん、お帰りなさい!
桑原×雪菜楽しみにしております(;´Д`)ハァハァ
スイマセン、不躾な質問とは思うのですが
>>12さんは幽白以外の冨樫作品スレでは書かないのでしょうか?
現行ではHUNTER×HUNTERしかないんですけど。
12さんの書く冨樫キャラがもっとみたいな・・・と思ってしまいまして。
679 :
12:2006/01/29(日) 23:42:45 ID:DBRa4Hkx
>>678 現在、メインは全く別の作者の作品でして。
その他にも、連載中の作品で地味にちょこちょこと書いているところです。
幽白以外の冨樫作品も興味はありますけどね。
HUNTER×HUNTERなら、王とアカズの少女、コムギなら書けそうな気がします。
他のカップリングはよーく読み込まないと掴みきれません。
冨樫先生のストーリー立ては凡人の想像を超えてます。
680 :
12:2006/01/30(月) 00:28:42 ID:EBvX5TbP
すみません。
今夜は最後まで書けないかも知れません。
なんかまだエロまで到達していないのです。
普段は三時に就寝しますので、それまで頑張ってみて、キリのいいところで
切るしかないようです。
12さん、気にしないで。
無理のない程度にがんがって下さい。
投下をお待ちしております。
682 :
12:2006/01/30(月) 02:25:33 ID:EBvX5TbP
力尽きました。
途中までですが、降下します。
粉雪は本格的な雪となって、街を白く染めていく。
普段は騒々しく響いている騒音さえ、包み込むようにしんしんと降る雪はまるで
逸る心を後押ししてくれるようだ。
明日からはまた異国の地で二人きりになるけれど、その前に確実なものが欲し
い。
夕食を終えて後片付けも済んでしまってから、雪菜は足音をひそめるようにして
和真の部屋のドアを叩いた。本でも読んでいるか、まだ荷物を纏めている最中
かと思っていたのだが、すぐにドアは開いた。
「雪菜さん?どうしたんですか」
「え、ええ。ちょっと…入れて貰えますか?」
「いやあ、まだ散らかってるんで」
ちらりと背後を 覗いてみると、確かにその通りだった。
もう明日には出発するというのに、至るところに乱雑に放り出された服やズボン、
本類が散らばっている。新たに持っていきたいものもあるのだろうが、これではど
れを選んでも部屋を片付けるのが大変そうだ。
「まあ…和真さんたら。荷物はなるべく少なくすると仰ってましたのに」
思わずくすくすと笑う雪菜につられて、真っ赤な顔をして照れ笑いをする人の良い
顔が本当に好ましいと思う。以前は少し悪い道に逸れていたらしいのが信じられ
ないほどだ。
「私、片付けるのを手伝いましょうか。もうどれを持っていくのかお決めになってい
るんでしょう?」
どんな口実でもいい。とにかく部屋に入れさえすれば。
何だかテレビドラマの恋人同士の駆け引きを思い出して、知らないうちに笑みが
漏れる。こんな風に自分が誰かと接するなんて初めてだった。そこまでしても今
夜は納得する答えを欲しているのだろう。
「いや、それは…雪菜さんだって御自分のことで大変でしょうから」
「私は、もう全部済ませました。よろしいでしょうか?」
「…それでは少しだけお願いしますね」
「はい、では失礼します」
生真面目な性格がこんなところにも表れている。向こうにいる時もそうだった。用
事がある時以外は決して雪菜を部屋に入れようとしないし、そんな時でさえため
らっているように見えた。
一時は嫌われているのではと勘繰ったこともあったのだが、そうではないのだと
すぐに察することが出来たのは、いつでも変わらない優しさ故だ。だからこそ自分
が簡単に相手のダイレクトな反応を欲しがるような性格ではなくて良かった、と雪
菜は心から思っている。
不器用なほどに優しいこの人の良さを一番良く分かってあげられている。そんな
自負があったからだ。
「和真さん」
床に散らばっていた本をきちんと本棚に並べながら、ほとんど目を合わせようとは
せずに硬くなりながらもトランクに荷物を詰めている和真の反応を伺った。
「何ですか、雪菜さん」
手にしている小説の背表紙のタイトルに、『夜』という文字があるのが何となく目
に留まった。
「私が同行するのって、ご迷惑ではない…ですよね?」
「そんな、とんでもない!」
慌てたような声が背後で上がる。
「俺なんかが一人であっちに行ったって、右も左も分からないことだらけですぐにホ
ームシックになってます。雪菜さんが御一緒してくれて、いつも本当に助かってい
るんです」
「私も英語はまだ良く分からないし、部屋の片付けや買い物や炊事ぐらいしかお
手伝いすることがありませんけど」
部屋の空気が変わった。
「それで充分です。雪菜さんがいてくれれば、それだけで」
必死な声だった。
きっとこの優しい人はそう言うに違いないと思いながら、誘導したことにわずかな
罪悪感を憶える。本当に、変な小細工など必要なく接することができるのは心か
ら有り難いと思った。
「じゃあ、私はずっと側にいていいんですね」
「こっちこそ、お願いしたいぐらいですよ」
「嬉しい、和真さん」
無意識の涙が溢れて頬を伝い、ころりとフローリングの床に落ちた。監禁から開
放されてからというもの、これまで零れ落ちることのなかった氷泪石だった。真実
の思いを得た喜びで形成されたからこそ、余計に美しく見えた。拾い上げると掌の
上で白くまろやかな光を帯びている。
目の前で起こったことに息を呑む気配がした。
「和真さん、これは私の今の気持ちです。私…」
くるりと向き直ると、また泣き出さないように気をつけて笑った。
「私、和真さんが大好きなんです。今までずっと守って下さって本当に感謝してい
ます。でも、それ以上を望むのは間違っているでしょうか」
「え」
「明日からはまた御一緒します。そこでも日常は続くでしょう。だけど、私、今夜は
和真さんと」
どう言えばいいのか分からない溜息の後に、呆然として立っている和真にしがみ
ついた。
「雪菜さん…?それってまるでこの間のドラマの台詞みたいですよ」
和真にとっては雪菜の言葉が本気か冗談か判別出来ないでいるのだろう。声は
わざとらしく明るい。それに、抱き締めていいものかどうか迷っている腕がもじもじ
と横を擦り抜ける。
「あのドラマのヒロインは、主人公に愛を告げたんですよね」
「…そうですけど」
和真はごくり、と唾を呑み込んでいる。三日前に二人で見たドラマの内容をこんな
ところで再現するなんて、思ってもいなかった。恋愛経験などはこれまで全くない
雪菜だから、こんな時の気の利いた台詞はついドラマの中のものになってしまった
のだろう。
「今の私はそのヒロインと同じなんです。和真さん」
「それって、それって…」
「続きを、言わせないで下さい…恥ずかしいですから」
また涙が零れそうになった。手の中の氷泪石を握り締めながら目を閉じた雪菜の
髪を和真がぎこちなく撫でてくる。
「雪菜さん、俺なんかでいいんですか?本気にしますよ」
「こちらこそ。私は和真さんと同じ人間ではありません。いつもそれが心に引っか
かっていたんです。でも、今夜は」
「続きは、言わせません。夢みたいです、本当に…」
急に強く抱き締められて、気が遠くなりそうだった。今まで互いに踏み込めずにい
た段階をようやく越えたのだと悟る。種族の違い、生命の長さの差、二人を隔てる
目に見えない障壁はたくさんあるけれど、とにかく今夜だけは忘れていたかった。
「…あまり、見ないで下さいね」
恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらも、ベッドの上に横たわる雪菜の姿はひどくそ
そるものがあった。セーターもスカートもまだきちんと身に着けてはいるものの、横
たえられた時のまま半端に乱れている。
どう扱っていいのか悩んでいる様子の和真の手が頬に触れてきた。
「いいんですね、本当に」
「はい、私もう覚悟はしています…」
さらさらと頬を撫でる手の感触が気持ち良かった。和真はいつでも雪菜が嫌がるこ
と、不快に思うことなど決してしない。だからこそこんな時でも全てを信頼して身を
預けられるのだ。それが女にとってはどんなに幸せなことか教えてあげたい。
「雪菜さん」
意を決したように近付いてくる顔が強張っている。
ああ、この人だから安心出来るんだと思うと、自然と体から力が抜けていって目を
閉じる。そのすぐ後に触れるだけの感触を唇に感じた。
「…和真さん」
「嫌、ですか」
「いいえ、嫌じゃありません。嬉しい…」
今夜のうちに今まで踏み留まっていたことを全部するのだと思うと、頭がくらくら
して混乱しそうになる。けれど、一番大好きな人となのだからと自分に言い聞か
せていた。心臓が今にも壊れてしまいそうに鼓動を打ち鳴らしている。
触れる熱の心地良さを憶えたのか、何度も唇は重なり、触れ合い、その後に舌
先が唇をこじ開けてきた。
驚きはしない。みんなしていることなのだから。
あくまでも怯えさせないように緩やかに口腔内で動く舌が、ようやくどうしていいの
か分からない雪菜の舌を捕らえて絡みついてきた。
「ん、んっ…」
鼻から抜ける音がやけに隠微に響いて、自分でなくなったような感覚が急に襲い
かかってきた。この先、幾らでもこんな感覚に囚われてしまうのだろう。それでも
怖くない、と決意を固める。
重なり合っている体の重みが妙にリアルだった。
「雪菜さん、本当に可愛いです…」
「ん、嫌、です…そんなこと」
「触っても、いいですか」
構いません。そう言う前に和真の大きな手はセーターの上から胸の膨らみに触れ
てきて確かめるように軽く撫でる。
「あ、ぁ…」
「すごい、こんなに柔らかいなんて」
「私、和真さんが大好きです。ですから、全部和真さんのものなんです…お好きに
なさって下さい…」
真っ赤になりながらもそれだけ言うと、雪菜はどこかに消えてしまいたいほど恥ず
かしくてぎゅっと目をつぶった。今からこれでは、きっと最後まで経験してしまった
ならきっと死んでしまうかも知れない。冗談ではなくそう思う。なのに、既に女とし
て生まれた性が本能的に男を求め始めていた。
浅ましいのではなく、元々そう出来ているのだ。
続く
688 :
12:2006/01/30(月) 02:32:43 ID:EBvX5TbP
いいところで断念です。
続きは来週には、是非ともっ…っ。
桑原くん、ごめんよ。寸止めしてしまって。
12さん、GJ!凄く萌える…ヤバイです。
積極的な雪菜ちゃんテラカワイス 恥じらう姿もテラカワイス
本当に桑ちゃんの事愛しているんだなぁ。
雪菜ちゃんって一見おしとやかで大人しそうな印象を受けますが、
独断で故郷を飛び出して兄探しをしたり、人間界にホームステイしたりと
結構行動派なんですよね。
来週は遂に桑ちゃんと身も心も結ばれるのか…(;´Д`)ハァハァ
続きを心待ちにしております。
無駄に長いね
12さんGJ!読ませる文章いつも有難うございます。
ワクテカしながら続き待ってます。
いよいよ…ですか。
飛影兄が知ったらどうなる事やら。
あ、でも12さん所の飛影は躯の妊娠でそれどころじゃなさそうだな。
それに割と雪菜の好きに任せているイメージがある。
頑張れ、桑ちゃん!これからが男の見せ所だぞ(`・ω・´)
692 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 08:54:19 ID:lb2p70ho
>>690=
>>691です。
後日、書きそびれた事(飛影兄が知ったら〜)に気づいて
「連続して書くのもなー」と思いながら書いたのですが、
確かに自演臭いです。すみませんでした。
694 :
12:2006/02/05(日) 23:16:43 ID:ZJvQNWd3
こんばんわ。
今日は用事で外出していたので、まだ序盤を書いている途中です。
アップは就寝ぎりぎりの午前三時近く…でしょうね。
それでは、頑張って書くとします。
桑原×雪菜待っています(・∀・)
696 :
12:2006/02/06(月) 02:01:03 ID:NjSVZ7uV
書き上がりましたので、投下します。
それではどうぞ。
697 :
12:2006/02/06(月) 02:02:05 ID:NjSVZ7uV
誰でもこうすることだから。
そう自分に言い聞かせて雪菜は無理に笑った。
本当は恥ずかしくてここから逃げてしまいたい。けれど誰よりも大切な人ともっと絆
を深めるかけがえのない儀式なのだから。その思いだけがこの場に辛うじて雪菜
を繋ぎ留めている。
その為にこそ、今夜という時はあるのだろう。
「雪菜さん」
「…はい」
すぐ近くでまともに目が合ってしまった。真摯な瞳に映る自分の顔はまるで泣いて
いるように見えて、また目を閉じる。その瞼に柔らかな唇の感触。
「こんなに嬉しいことはないです、大切にしますから」
緊張をしている心を解きほぐすような誠実な声だった。
「はい、和真さん」
髪を撫でる手がセーターにかかる。
「脱がせますよ。いいですね」
「…和真さんなら、喜んで…」
女として、きっと後悔することのない夜が始まった。
下着以外は全て脱がされてしまってから、急に静かになった気がして瞼を開いた。
「…どうか、なさいましたか?」
「いえ、何も」
気配からして、息を呑んでいるようだ。何かあったのかと身を起こそうとして制止さ
れる。
「あんまり綺麗で…見蕩れていました」
「そんな…恥ずかしいです」
いつの間にか、和真も上半身だけ脱いでいた。
698 :
12:2006/02/06(月) 02:02:55 ID:NjSVZ7uV
宥めるように髪を撫でていた手がブラへと下がった。セーターの上よりもダイレクトな
感触が我慢していた恥ずかしさを思い出させてしまう。
「…うっ…」
「嫌、ですか?」
「嫌じゃないです…続けて下さい」
布一枚を隔てて確かめるように肌を撫でてくる手が熱を帯びている。それが嬉しい
ような、怖いような気がして思わず体が震えた。
「あ…ぁ」
「不安にならないで下さい」
ブラの上から乳房を撫でる手に力が篭もる。咄嗟に嫌と言いかけた瞬間に、首筋に
唇を落とされた。
「あぁ…和真さん…」
暖かかった。
それだけで何故か安心してしまえるのは何故なのだろう。些細なことだけれど、紛
れもなく誰よりも信頼しているのだ。
何をされても許せるほどに、この人が大切で。そして好きで。だからこその信頼が
こうして築き上げられている。
それなら、何も恥ずかしいことなんかない。
知らないうちに、緩く乳房を揉んでいた手はブラの中に潜り込んでいた。あくまでも
強引ではない手の感触が、次第に無垢な体を狂わせていく。
「はぁぁっ…」
「本当に、綺麗だ…夢みたいです…」
「ぁ…和真さん。私、こうして側にいます。ずっと…これからも…」
「嬉しいです、雪菜さん」
ぷつん。
背中に回っていた片方の手が苦心しながらもブラのホックを外した。淡いピンクのブ
ラの下から現れたものに、また息を呑んでいる。もっと大きければ良かったかも知れ
ない、と思いながらもおずおずと腕を伸ばして和真の首に抱き着いた。
699 :
12:2006/02/06(月) 02:03:37 ID:NjSVZ7uV
「早く、和真さんのものにして下さい。遠慮はどうかなさらないで」
本当はもう心臓の鼓動が激し過ぎて止まってしまいそうだけれど、我慢をして笑い
かける。
剥き出しにされた乳房は両方とも大きな手の中にあった。痛くないぎりぎりの力が
まだ理性で配慮していることを伝えてくる。大切にしてくれているのは嬉しい。けれ
ど、この人が本当にしたいことを思うさましたのなら、それは一体どれだけ激しいの
だろう。何となく、気にかかった。
その激しさを早く知りたいと思った。
「雪菜さん、本当に…勿体無いぐらいです」
「あ、んっ…」
右の乳房に軽い痛みが走った。歯を立てられ、吸われているのだと気がついて改
めて頬が染まる。その合間にも、ぴったりと閉じられていた足の間に何かの感触を
感じる。
「あぁ、和真さん…」
指先がショーツの中へと入り込んでいたのだ。自分でも触ったことのない場所に熱
い指の侵入を許して、意図しない声を上げてしまう。
「もう、止まりません。いい、ですね」
一番感じる部分をぐりっと攻められて、肌が粟立った。頬が触れそうなごく近くで声
がする。体がどんどん追い上げられていくのさえ、もう何も怖くはなかった。
「和真さん、もっと、して下さい…」
指で攻められ、そこから濡れた淫らな音が響いてくるのを感じながら何度も口付け
を交わして気持ちを落ち着けた。こんなに嬉しいと思えることを踏みとどまっていた
なんて、きっと以前の自分は愚かだったのだろうとさえ思える。
「はうぅっ…!」
濡れそぼったそこを指で慣らすように突かれて、声までが濡れた。それを恥ずかし
いと思う気持ちは、もうない。
ぐっしょりと濡れたショーツを取られ、足を大きく開かれても、これからきっともっと近
付けるのだという期待しかなかった。
「…綺麗だ」
「和真さん?」
700 :
12:2006/02/06(月) 02:04:33 ID:NjSVZ7uV
「どこも真っ白なのに、頬も、胸も、ここも…熱を持つと薄紅に染まるんですね」
「…そんな。言わないで下さい…」
そんなに大層な体ではない。そう言おうとした口が喘ぎを漏らす。
「ひぁうっ…」
薄紅に染まる。そう言った箇所に舌が這ってきたからだ。ぴちゃぴちゃとそこを舐め
る濡れた音だけが卑猥なほどに響いている。
「あ、あんっ、そんなことっ…」
シーツを握り締めて、雪菜は甘い声を上げる。体の中心から疼きのような鋭い感覚
がぴりっとせりあがってきて、苦しいほどに追い上げられている。
「雪菜さん…」
突然、いつになく低い声がした。ズボンのジッパーが下げられ、見たこともないもの
が腰から突き出しているのを雪菜はぼんやりと瞳に映している。きっと、これが入っ
てくるのだと。
だが、本能的な恐れはやはりあるのだろう。わずかに震えているのを察した和真が
優しく髪を撫で、口付けをする。
「嫌だったり、痛かったら言って下さいね」
「大丈夫…です。私、耐えられますから」
嘘ではない。
この人が与えるものであれば、決して悪いことでは有り得ないのだからと竦む心を
奮い立たせる。
「じゃあ、行きますよ」
指がそこを開いた。先端が押し付けられて馴染ませるように捏ねられる。
「来て、下さい」
目を閉じたその時、少しずつ侵入してくる熱いものが意識を飛ばした。
「あ、いっ…」
予想してはいたが信じられないほどに痛い。まるで地の滴る刺し傷の中に棒を突き
入れられるようだ。こんなの、絶対無理だと体が悲鳴を上げている。それなのに口
からは耐えるような押し殺した声しか出てこなかった。
「う、ぅぅうっ…」
「全部、入りましたよ」
701 :
12:2006/02/06(月) 02:05:16 ID:NjSVZ7uV
どこか上擦ったような声が降る。奥深くまでずくずくとした熱を感じて断続的に体が
震えた。女と生まれた者は誰でも最初にこんな思いをするのだろうか。
熱くて、苦しくて、体がひどく重い。
なのに、心だけは妙に落ち着いていた。
「…和真さん」
「何ですか、雪菜さん」
「みんな、こうするんですね」
「そうです。みんな同じです」
「だったら…和真さんのしたいように…なさって構いません。動いて下さい」
ずる、と傷口と密着している棒が動いたように思った。
「あ、あぁあ…ん」
髪を振り乱し、与えられる痛みを受け入れてただ雪菜は喘いだ。声が枯れて喉が
ひりついても、抱き締めてくる腕に縋って、叫び続けた。
「雪、菜さん…」
もう遠慮することもなく、腰を使って攻めたててくる体が大きく震えた。もう限界が近
いのかも知れない。
「和真さん、大好きですっ…」
「雪菜さん…俺も、です…」
抱き合ったまま、一番奥に熱い迸りを感じてひくりと喉が痙攣した。これで全部この
人のものになったのだ、という実感だった。
「すみません、そんなつもりじゃ…」
「…何のことですか?」
事が終わってしばらくした後、和真は土下座せんばかりに這いつくばって平謝りし
ていた。思い切りベッドの端にいるので、転げ落ちそうだと心配になるほどだ。
「いや、だって…その…突然のこととはいえ、中に出したりしたんで…」
つまり、普通であれば男性が用意するべきものを使用しなかったことを詫びている
のだろう。
702 :
12:2006/02/06(月) 02:05:55 ID:NjSVZ7uV
誘ったのは自分の方で、そんな準備などしていなかったのは当然のことだというの
に、何て律儀な人なのだろうとおかしくなってくすくすと笑った。
こういう人だからこそ、好きになったのだろう。
「和真さん」
「は、はひっ…」
恐縮しきっている大切な人の方にそうっと手を置く。
「気にしないで下さい。私、和真さんのものになれて嬉しかったんです。これが人間
の女だったら、きっと子供を残してあげられるのにと思いますけど」
「何もいりません、雪菜さんさえ側にいてくれれば」
がばっと起き上がって手を握ってくる和真に、微笑みが漏れた。ああ、きっとこれか
らもこの人となら仲良くやっていける。ずっと側にいられる。そんな暖かい安心感が
あった。
翌日の朝は眩しいほどの快晴。
二人の新たな出発の日としては上々で、この先もいいことがありそうな予感がした。
「ほら、和真さん。襟元が乱れています」
出かけるまでの時間は充分に取ったというのに、せっかちな性格の為か慌てて服
を着て部屋を出たらしい和真を雪菜がいつものように呼び止めて服の乱れを直して
やる。
「いいですよ、これぐらいは」
「ダメです。どんな人が見ているか分からないんですからきちんとしないと」
そんな微笑ましい二人をキッチンのテーブルから眺めていた静流がにやにやしてい
る。
「へぇーえ。何とか進展はあったみたいだねえ」
きっとこれからも、二人はこうして仲良く過ごしていくのだろう。
703 :
12:2006/02/06(月) 02:06:44 ID:NjSVZ7uV
「…」
遥か遠くの魔界から、苦々しい思いでつぶさに視ていた者がいた。
言うまでもなく、雪菜の兄の飛影である。
押し黙ったままで額に貼りついた目を元通りに隠してしまう。
「どうした、一体」
「何でもない。ただ不愉快なだけだ」
「妹、のことか」
居間の長椅子に横たわりながらさらりと言ってのけた女は躯。今は飛影の上司に
して妻となった身だ。事情は何もかも心得ているだけに踏み込んだことも言える。
「どうしてそう思った?」
「お前がそんな不愉快な顔をするのは、決まって妹を視ている時だ。さては心配す
る必要もなくなった。そんなところか」
「…まあな」
「ふふふ」
これ以上話題を引き摺る気はないと、側のテーブルから薄い本を引き寄せて読み
始めた女の横顔が彫像のように美しい。
「気に入らない奴だが、奴でなければ八つ裂きにしていたところだ」
拗ねたように長椅子の端にどっかりと座る飛影が諦めたような溜息をついた。
終
704 :
12:2006/02/06(月) 02:15:43 ID:NjSVZ7uV
あ。
タイトルとカップリングをつけるの忘れてた。
先週の続きだから全く同じなんだけどね。
それでは、おやすみなさい。
12さん、乙でした!
大変おいしゅうございましたー。
本編も言うことなしで楽しませていただきましたが、
最後の拗ねてる飛影がかなり萌えですよw
ムハー(゚∀゚)=3桑原×雪菜イイ!
けなげな雪菜ちゃんの恥らう様子に萌えました。
遂に心身ともに結ばれたふたり…これからもお幸せに。
>「奴でなければ八つ裂きにしていたところだ」
なんだかんだ言っても飛影、桑の事認めてるw
12さんGJでした!次回作も期待しております。
ナイスです!
ΩΩΩ<GJ!
12さんの次回作はどのカプールの話かな?
個人的には、飛影と躯の付き合い始めて
まだ日の浅い頃の様子なんか読んでみたいなぁ。
躯妊娠話の番外(過去)編って事で。
709 :
12:2006/02/10(金) 01:33:08 ID:kyb8jMTa
たった今、通りすがりました(笑)
今現在、日曜日には何を書こうかと悩んでいる途中です。
再来週ぐらいには雷禅と食脱医師のお姉さんの話を書きたいなと思っていますが、
問題は今度の日曜。
うーん。
飛影×躯は意外と最初の取っ掛かりが難しかったり。
お互いに意識するようになるまでが時間がかかりそうな感じ。とりあえず、考慮
してみますね。
それと、風邪で寝込んでいた時に、コメントを下さった皆様。
お礼が本当に遅れましたが、本当にありがとうございました。
一介の物書きに過ぎない私にとって、この上ない励ましになりましたです。ぺこり。
それでは、日曜日にサプライズ。
職人さんが男性なのか女性なのか気になる。
12さんの文は繊細だから女性かなって思ったけど…
女性だろうが男性だろうが、萌える文章投下して下さる
貴重な職人さんだという事には変わりないさー
>>709 708で飛影×躯キボンと書いた者ですが、
雷禅と食脱医師も大人の魅力があって好きです。再来週も楽しみ。
>飛影×躯は意外と最初の取っ掛かりが難しかったり。
互いに意識し始めるのってやっぱり「SPECIAL DAY」以降かな?
俺は酎と棗が一番好きだったなぁ。
この二人の関係もよかったね。
酎の片思いかと思いきや、棗も酎の事を憎からず思っているみたいだし。
このカップルのSSも読んでみたい。
もうすぐ月曜日。12さんの週初SS楽しみにしています。
714 :
12:2006/02/12(日) 22:35:47 ID:wq7tp1V3
こんばんわ。
今現在、飛影×躯で書いているところです。
上でも書いたように、最初は頑なな二人のことだからなかなかエロに結びつき
ませんが、何とか頑張ってみます。
投下は二時以降になるでしょう。
それでは、その時間にて。
魔界トーナメント終了後、ひとまずの平和が魔界には訪れていた。
単純な仕組みだったが優勝者が暫定的に納めるという案は全くの平等なもので、
それほど悪くはない。それによって国王ではなくなった躯もまた、長年の重圧から
開放されて気楽な毎日を送っていた。
とはいえ、元々の部下たちは黙っていない。
躯ほどの優れた能力者にはそれなりの役職をと、目覚しいほどの働きをもって新
体制の幹部に推挙をしてきた。
それによって、人間界から何かの偶然で落ちてくる人間たちを救出して無事に送
り届ける役目が回ってきたという訳だ。
魔界と人間界はある程度似通っているからこそ、どこかに通じている道があるの
だろう。人間たちが何をもってそこを抜けてここに落ちてくるのかは、一切の個人
的意思が介在しない以上定かではないのだが、その謎はなかなかに興味深い
ものがある。
ある種の共通点を調べてみれば、原因なり傾向が見えてくるのかも知れないが、
そこまでする気はなかった。
躯にとっては何事も空虚なものでしかない。
子供の頃から夢中になれること、のめり込めることなど何ひとつ見出せないまま
に今まで生き永らえている。
これからも、きっとそうなのだと思っていた。
女の形を辛うじて貼り付けただけの、不完全な生き物でしかないのだから。
「今日はどうだった」
「一人。若い女だった。落下した時に右肩と腕に打撲傷があったので処置をして
おいた」
「そうか、それは御苦労だった」
「仕事だからな」
深夜になってその日の仕事を終えようとしていた躯の側で、ごく短く事務的な遣
り取りをする男は飛影。国王だった頃から筆頭戦士として常に一番近くにいた男
だ。現在でもその立場は少しも変わらず、最も信頼出来る存在でもある。
パトロール用の百足を取り仕切るのにもようやく慣れてきた躯にとって、こういう
存在が側近くにいるのは有り難い話だ。
「疲れただろう、もう帰ってもいいぞ」
「ああ、そうする」
どこまでも二人の間にあるものは淡々としていて、そんな雰囲気は悪くない。必
要以上に自分の中に踏み込まれることを良しとしない躯にとっては。
そろそろ眠ってしまおうか。
立ち去る気配を感じた途端、疲れを覚えていた体がどっと重くなる。目の奥に重
い感覚が残っている。執務室の奥にある寝間に引き上げようとしていたその時の
ことだった。
入り口に、まだ誰かの気配を感じて首を傾げながらも声をかける。かなり落として
ある照明のせいで、顔までははっきりと見えなかったことが不覚となった。
「飛影か?」
返事はない。
「明日も早い。こんなところで無駄な時間を費やすな」
やはり返事はなかった。
「早く帰」
言葉が終わらぬうちに、その不埒な者は無言のまま照明の光源をあっさりと壊し
て獣のように躯に襲いかかってきた。年齢を重ねたというのに、子供の頃以来の
本能的な恐怖ゆえに身が竦んでしまう。
「何を、するっ!!」
慌てて声を上げたが無駄だった。二、三発殴りつけられて床に転がされ、本気で
恐ろしくなって言葉すらも出なくなる。
まさか、今になってこんな目に遭うなんて。
蔵馬の庇護の下から出てからは、こんなことの繰り返しだった。
元々、女が戦いに負ければどうなるかなど決まりきったこと。まだ碌に力のない
小娘だった頃は捕虜になって慰み者になるか、その場で陵辱されるかの二択し
かなかった。
散々に穢れ、屈辱に耐え、泥を掴みながらも死ぬことだけは決して選択しなかっ
た。それでは、あんな思いをしてまで糞忌々しい男の支配下から逃げた甲斐が
ないと耐えながら、立ち上がってはまた歩く毎日。そうして自力で何とか這い上
がってきた。
もう、あんな目に遭うなど有り得ないと思っていたのに。
「何者だ、お前は!」
侵入者は声ひとつ出さず、ただ不遜な笑いをたてるだけだ。
それがまた空恐ろしく、衣服を破かれながらも躯はただ闇雲に抵抗するだけだ
った。しっかりと両手首を押さえつけられていては到底かなうものでもなかった
のだが。
「…ぐっ!」
突然、無様な声を残して躯に覆い被さっていた男がぐったりと倒れ込んだまま
動かなくなる。
執務室の入り口付近で、ぽうっと小さな蝋燭らしき灯りがともった。
「無事か?」
飛影の声だった。
「…良く気付いたな」
「たまたまだ、物音がしたからな」
背中を一突きされて絶命した侵入者の死骸を足で蹴り飛ばしながら、飛影は相
変わらずの波のない声を出す。どうして部外者がこうまで簡単に百足の中へと
入り込んだのかは分からない。
「それにしても、無用心なことだ」
呆れたように呟く男に、わずかばかり腹が立つ。
望んでこんな奴を引き入れた訳ではない。それなのにどうして非難されなければ
いけないのか。
「お前には関係ないだろう」
この男のお陰で助かったというのに、ついそんなことを口走る。普段から不機嫌
な顔をしている飛影の表情が、わずかに引きつったように見えた。怒らせてしま
ったのだ。
「…そうか」
「助けて貰ったのは、感謝している」
慌てて言葉を継ぐも、もう遅かった。表情を一層険悪なものにして、飛影は黙っ
たまま執務室を出て行った。
「飛影!」
追いかけようとした躯だったが、何故か足は動かない。こんな時はどう対処して
いいのか分からなかったのだ。これまでの生のうち、女として生きたことなど皆
無だったことがこんな時になってネックになっている。
「俺に何を望んでるというんだ、一体…」
蝋燭の灯りが残されたままの室内で、躯はただ立ち竦むだけだった。
翌日、いつものように部下として躯の前に現れた飛影は、何ひとつ変わらずに
淡々と任務を遂行していた。昨夜のわだかまりなどすっかり忘れてしまったのか
とわずかに安堵するも、どこかに拭い去れない冷たさが凝っている。
こんなに執念深いとは思わなかった。
元はといえば自分が原因を作ったことも忘れ、腹立たしい思いが湧き上がるの
を今更ながらに感じてしまう。
ただの部下のひとりとしてなら扱い慣れているのに、この男だけはどうしても手
に負えない部分がある。その思いがどこから来るものなのか躯自身も分からな
いままに、ただ表現しようもない腹立ちを隠している他なかった。
これまで経験したことのない胸の悪さが次第に広がっていく。
「今日はどうなった」
「三人、男の子供が一人に夫婦が一組。妻の方はとうに死んでいた」
「…そうか」
いつもの如き報告の遣り取りだった。
壊された照明は元通りに直されている。昨夜の侵入者の遺骸はもうない。血の
匂いも綺麗に拭われていて、あの凶行があったことなど誰も知らなかった。全て
は初めから何もなかったこととして躯の中で片付けられていた。
「躯」
それなのに、飛影だけは忘れてくれない。
声音を変え、身を乗り出して机の上に投げ出された躯の手にささくれた指先を
重ねてきた。
「何をする」
それほど危機感もなく、顔を上げた躯のごく近くでぞっとするように冷たい瞳が
覗き込んでくる。何か深い思惑がどろりと絡み合っているような、そんな色をし
ていて、うっかり見つめ返せば巧みに絡め取られてしまいそうだ。
「躯」
「何だ、突然」
「貴様には自覚がないのか」
珍しく、苛立ちを抑えているような声。
「何の、だ」
途端に強く手を握られた。
「無論、女であることの」
「くだらないことだ」
「…くだらない、だと?」
明らかに不愉快そうな声音になった。失態を犯してしまったと思ったが、躯とし
てもここで引く訳にはいかなかった。
「そうだ、俺は既に女ではない。あえて言うなら女の形をしているだけのもの…
だから、別にもうどうってことはない」
「そう、なのか」
「だから」
ごくりと唾を呑み込んだ。何かこの男を納得させることさえ言えればと思ってい
たのに、何故か口から出てきたのは頭の隅にもなかったことだった。
「昨夜は、わざわざ来なくても良かった」
ざわり。
急に、室内の空気が冷えた。
おぼろげな感覚などではなく直に肌寒さを感じて、咄嗟に目の前の男を見上げ
た躯の体が強く抱き締められた。どんな表情をしているのかは、もう分からない。
「貴様の口は、嘘ばかりを言う」
「何だ、いきなり戯言を…」
「本音を言え」
飛影は恐らく本気で怒っている。それでいながら躯の嘘を見抜いて感情を抑え
ているのだ。もし、このまま嘘を通せば殺されかねない。いや、こんな穢れた女
でしかない自分だ。別にそれでも構わないが、この男に嘘をつき通すことなど
もう不可能なのだと本能が訴えている。
それがどういう感情なのかは、まだ分からなかったが。
「言ってもいいのか、飛影」
「構わない、貴様が言うなら許容してやろう」
言葉の表層だけなら何と傲慢なことを言う男だと思っただろう。しかし、躯には
不思議と理解出来た。
許容。
その単語を聞いた途端に、この男は躯のことを何もかも分かろうとしているのだ
と感じ取れたのだ。現在も、過去も、口にし難い出来事のひとつひとつまでを。
信じられるか否かは、これまでのことで察することが容易だ。
「…では、言おう。お前が来てくれるのを期待していた」
その言葉と共にぱきん、とこれまで何重にも分厚く塗り重ねていた嘘と意地の
殻が弾ける。
閉じ込めていた女が、姿を現した。
終
721 :
12:2006/02/13(月) 02:37:07 ID:HzvPg2N4
自爆。
やっぱり、エロには到達しませんでした。
回を重ねないと、この二人はそこにまで至らないようです。
>>711 個人的には「SPECIAL DAY」の頃って、既に二人の関係は進行しているように感じて
います。だって女性の寝室に普通に入るし、躯も別に抵抗がないようだし。
もっとも、あの回があったからこそ今でもこうして妄想が出来る訳ですが(笑)
あの当時の冨樫先生は神だった…。
久しぶりにこのスレを覗きました。
12さん、相変わらず良作を書きますねぇ!
>>721 確かにSPECIAL DAYは神の出来ですよね。いろんな見方もできるし。
私としてはSPECIAL DAYで飛影、躯がそれぞれを男・女として意識したんじゃないかと
思います。
あと、やっぱりこの二人が初めて関係を結ぶまでって結構大変そうですよね…。
「飛影×躯の恋愛初期」をリクエストした708です。
12さん、難しい題材のリクエストを受けて下さって本当に有難うございました。
恋愛感情の仄かな“きざし”って凄く萌えます(;´Д`)ハァハァ
これから少しずつ、二人の関係は気のおけない同士から
男女のそれへと変化していくのでしょうね。
このお話の続き、彼らの関係が少しずつ進展する様をいつかまた読んでみたいです。
その前に、来週の雷禅×食脱医師の女。大いに期待しております。
724 :
723:2006/02/14(火) 01:22:44 ID:eurQKpZ+
連投すみません。「SPECIAL DAY」はホント良かったですよね。
>>722 >やっぱりこの二人が初めて関係を結ぶまでって結構大変
躯は勿論の事、飛影もまた父母の性行為から
生を得た為に、結果的に母を死に追いやり、
自らも忌み子として故郷を追放されたという過去がありますし…
簡単にはいかないでしょうね。
でも、このトラウマとも言える過去を乗り越えて
更に互いの絆を深めてほしい、だなんて思っとりますw
12さんの雷禅×食脱医師の女に期待!(・∀・)
726 :
12:2006/02/18(土) 16:46:57 ID:grP4L/Ch
こんにちは。
明日書き上げるにあたって食脱医師登場の回を改めて読んでいます。コミックス
は手元にないので、この為だけに完全版を買いましたとも(笑)
でも、得るものは多かったです。じっくり自分なりに話を練りたかったし。
あの幻想的で隠微な独特の雰囲気が出せるかどうか、まずはトライです。
>>726 >この為だけに完全版を買いましたとも(笑)
(・∀・)チゴイネ!!
728 :
12:2006/02/20(月) 00:24:24 ID:g4kxEWQ4
こんばんわ。
まだ書いている途中です。やっぱりまた終われません(笑)
エロはまた来週になりそうです。
コミックスは実家に置いたままだし、この際完全版で揃えようと思っていたので
今回はいい機会でした。大好きな作品はマンガ喫茶で簡単に読み捨てられない
です。
729 :
12:2006/02/20(月) 01:39:07 ID:g4kxEWQ4
とりあえずは、キリがいいところで今回は中断します。
エロはまたしても来週、ということで。
では、投下します。
間近に人の気配がある。
臥せっていた女はわずかに目を開くとその者の姿を視界に認めた。
「…探してきてくれたか」
「はい、医師様。お望み通りの女がひとり、近隣の村におりまして、先程話をつ
けておきました」
どうやら使いの者らしい。
「そうか、手間を取らせて済まぬな。このような身では赤子に乳をやることも叶わ
ぬ」
女の腹は大きくせり出していてもう臨月を迎えているらしく、いつ生まれてもおか
しくない状態にある。だが、女そのものはひどく衰弱しきっていて下手をすれば
赤子と引き換えに命を落としてしまいそうだ。
女はこの国の密教屈指の食脱医師。
自らの身をもって病める者たちを救う術師である。
その肉も血潮も全ては腐り朽ちた人間の肉を食らうことで得た免疫。よって、病
んだ者が口にすれば良薬にもなるが健康体の者はたちまち死病に陥る諸刃の
剣となる。そんな体だからこそ、こともあろうに血を分けた我が子に乳すら与えら
れないのだ。もっとも、このように弱り果てては医師でなくとも叶えられはしない。
ほう、と溜息をついてやっとのことで寝床から身を起こした女は、乱れた黒髪を
掻き上げると開け放たれた窓から空を見上げた。鏡の如き黒い夜空に半月がぽ
っかりと浮かんでいる。
あまりにも白く美しい月の姿に、女の表情が和らいだ。
「今宵は良い夜だな…」
使いの者は奥の厨房から粥の膳を運んできた。
「最近、あまり食がお進みではないようですね。これからお生まれになるお子の
為にも召し上がって頂きませんと」
「ふ、そうだな」
女の頬が更に緩む。
「医師様」
やや躊躇したように、使いの者は後じさりながら問うてきた。
「そのお子の父親は一体どこのどなたで」
途端に、血の気の失せた薄い唇が禍々しい笑みを形作った。孕んだことを知って
からというもの、常に好奇の視線と陰口がつきまとってきたのだろう。ここまでは
っきりと尋ねられたことはなかったが。
「さあな、仔細は知らぬ。だが、まあ面白い男だった」
くすくすと笑う女の凄まじさに気圧されたように、使いの者は何も言わずに姿を消
してしまった。
「ほんに、良い夜だ…あの時と同じだ」
げっそりと肉の落ちた頬に、わずかに血の気が戻る。
全ての始まりの夜を思い出しているように。
祭壇の上の蝋燭が、ふっと一本だけ残して掻き消えた。
座して瞑想を続けていた女は、その気配で瞼を開く。
「…何者ぞ」
闇の中に、何者かの気配があった。何がおかしいのか笑ってはいるようだ。それ
が少々不快になって声を荒げる。
「何者と聞いておるのだ」
いまだ返事はない。だが、闇に紛れていた者はいざり出てその姿を現した。
容貌は怪異にしてぎらぎらした眼差しの色が研ぎ澄ませた刃物を思わせる。これ
まで目にしたことのない大男ではあるが、明らかに人ではなかった。
だが、世も末とばかりに魑魅魍魎の跋扈するこの国において、直に目に止めるこ
とはなくとも異質な存在ぐらいは常に感じられる。
珍しくもない話だ。
ふん、と女は軽く笑う。
「化け物、何の用があって来た。ここはお前のような者が来るところではない。即
刻立ち去れい」
化け物は無言のまま更に近寄って来る。
「…何のつもりかは知らぬが」
化け物からは人の臭気がした。人肉を好む習性らしい。もしや何も知らずと食ら
いに来たのかとおかしくなった。
「我を只の人間と同じと思うな。愚か者よ」
「ほう」
化け物男が初めて口を開いた。
「ならば、どう違うのか言ってみよ。生意気な人間の女め」
げらげらと笑う口からは生臭い人肉の臭い。
「わざわざお前に示すのも面倒だが」
女は白い法衣の襟元をぐっと掴んでくつろげた。そのままはらりと体から落として
しまう。蝋燭一本の灯りで照らされる女の腹は酷いまでの傷跡で覆われていて
完全に削げ落ちている部分もあった。もちろん、自らの血肉を病人に与え続けた
結果の尊い創痍である。微塵も悔いることはない。
「見よ、我は医師。呪術をもって病める者に奉仕する為のこの身。血も肉も病苦の
者たちの薬となり、お前のような下賎の輩が食せばこの毒がたちまちにして肉を
蝕むであろうぞ。お前などに扱いきれる代物ではない。それでも食らうと申すか」
醜く傷ついた裸身と女の気迫に、化け物男はわずかに怯んだようだった。これで
去ってくれるかと内心安堵したものの、油断は出来なかった。
「さて、どうしてくれよう」
舌舐めずりをしながらも、長い爪を持った化け物男の手が頬を掴んだ。わざわざ
忠告したというのに、まだ食い気だけは残っているのかと睨みつける。
「人間など、他に幾らでもいよう。我に構うだけ無駄というものだぞ、化け物」
まさに対峙となっていた。
最初は人間対化け物だった筈が、いつしか女と男になっていることにも気付いて
はいない。
「食らえねば、腹いせに殺せば良かろう。しかし、お前にも化け物としての誇りは
ある筈だ。我の命を奪いし瞬間、お前もまた唯一の誇りを失い、只の獣として堕
ちる羽目になろうぞ」
くす、と薄い唇が笑う。
これで、完全に勝ったと思った。
これで得体の知れない化け物男も諦めて立ち去ると。
だが、甘かった。
何を思ったか、男はその場にどっかりと胡坐をかいて動く気配もない。
「何をしている」
一体どういうつもりだ、この化け物は。とっとと立ち去らぬかと女は出方を伺って
いた。殊更命乞いをしたい訳でもないが、医師としてのこの身が失せれば近隣
の病める者たちが困るだろう。それでは意味がないのだ。元より術師の家系に
生まれた訳ではない。たまたま近親者たちが病に苦しんでいたからと目指した
医師の道。どんな困難も人を救済する為と思えば血反吐を吐いてでも耐えられ
た。
蛆の湧いた病人の腐肉を食らうことなど、何でもなかった。
そこまでしてようやく医師となり救済の年月を重ねていたというのに、こんな化け
物一匹の対処に苦慮している。
あってはならないことだった。
だが、それ以上に苦慮しているのは化け物男の方に見えた。
「…何をしていると」
「女」
ずっと俯いていた男が、何事かを決意したように床に這いつくばった。そのまま
一間の隅へと下がって、頭を擦りつけるばかりの体勢になった。ごりごりと床に
額が擦れる音が響く。
「この一夜で良い。俺の女となれ」
「何を言う」
「…頼む」
くだらない冗談だと思った。
出て行かぬ、しまいには拝み倒して口説く。腹の中が読めずに悪い夢だとでも
思うしかなかった。女として生きてきたことなど、只の一日とてない。どうしてこ
んな下賎な男に身を任せられよう。
「馬鹿なことを」
「そう、思うか」
「いかにも、な。お前のような化け物など信用出来ぬわ」
「それでも良い」
呆れて相手などしなくなっても、化け物男は同じ格好でいる。溜息をついて寝間
へと下がる。
どうせ単なる気紛れ。そうとしか思えはしなかった。
続く
734 :
12:2006/02/20(月) 01:47:22 ID:g4kxEWQ4
今夜はこれでおしまいです。
作中の食脱医師の台詞は原作のものをあえて使用せずに、言わんとして
いることを自分なりに解釈してみました。
では、おやすみなさい。
735 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 02:30:44 ID:kJpdpAm4
GJです。素晴らしい。
GJ!
勝手なことを言わせてもらうと、こういう雰囲気は特に
12さんの本領発揮という感じがします。続きがとても楽しみです。
エロエロでいっちゃってください。
12さんGーJッ!!凄い、凄いです!
平安期の闇の部分、おどろおどろしい雰囲気の表現がとてもお上手ですね。
そして何より、食脱医師の凛とした姿勢に惚れました。
続き楽しみにしています。来週が待ちきれないくらいです(;´Д`)ハァハァ
738 :
440:2006/02/21(火) 18:29:47 ID:ZB3qisio
こんにちは、お久しぶりです。
以前桑原×雪菜を投下させていただきました440です。
あれから懲りもせず少しずつ続きを書いていたのですが、
投下したいと思っていたバレンタインに間に合わず…
微妙に時期をはずしてしまいますが、せっかくできあがったので投下させていただきます。
今回は雪菜ちゃんが痴漢にあったり、桑原くんが雄っぽかったり(?)と
あまりほのぼのした流れではないので、苦手な方はスルーお願いします。
晴れた2月の午後、雪菜と静流は喫茶店で一息ついている。
バレンタインを明日に控えて、駆け込みでさまざまなチョコレートを吟味する女性達があちこちで見られ、
雪菜もそのうちの1人で、仕事に行くまで時間があるという静流がつきあってくれて買い物をすませたところだった。
もっと早く知ってたら手作りできたのにな…と思いながらも、可愛らしいチョコレートを眺めて選ぶ作業はとても楽しかった。
テレビや店などでしきりにバレンタインという文字が目に入り不思議に思っていたが、どういう意味なのか静流に聞くまでわからなかったのだ。
「しっかし…、ねぇ雪菜ちゃん、今更だけどウチのアレでほんとにいいのかい?」
和真が雪菜に想いを打ち明けて、彼女と奇跡的に通じ合ってから1ヶ月がたとうとしていた。
ふたりがつきあいだしたことを知った周りは驚愕・祝福とが混ざり合ったような反応だったが、特に驚いていたのが静流だ。
頬杖をついて、質問と裏腹にやさしい目をして自分を見る静流。
雪菜は最初なんのことかわからずに小さく首を傾げたが、
すぐに和真のことかと思い当たり、頬を染めてうつむいた。
「あはは。でも、ありがとうね。ってアタシが言うのもヘンだけどさ…
バカな弟だけど、あいつ雪菜ちゃんに対してだけは誠実だから。
しょーもないヤツだけど、相手してやってね。
雪菜ちゃんにひどいことしたらアタシがシメてやるからさ」
静流は、赤くなった雪菜を見て笑いながら言う。
「そっ、そんな、ひどいことなんて…」
雪菜はあわててかぶりを振った。
傍らの小さな紙袋には、ひと目見て気に入った可愛らしいチョコレートが数個。
好きな男性に渡すものらしいけど、いつもお世話になっている桑原家の全員にあげようと思って買ったもの。
しかし、和真にあげるものは少しだけ大きめのものを選んだ。彼は甘いものが好きだから。
「…でも、和真さん、アルバイトというのを始めてからずっと帰りが遅くて…
なんだか最近疲れてるみたいで、少し心配なんです。
朝御飯も食べずに出て行ってしまうこともありますし…」
「淋しい?」
雪菜を覗きこむように、静流は少しからかい混じりに聞く。
――――淋しい?
雪菜は静流の言葉を心の中で反駁する。
そうだ。淋しい。
自分でもこの気持ちをどういえばよいのかわからなかった。
パズルのピースがぴたりとはまったような気がして、雪菜は顔をあげる。
「大丈夫よ、短期のバイトだっていうし。まあ、慣れないことして疲れてんじゃない?
バカなりにタフなのは、鍛えてやったアタシが保証するよ」
雪菜は、なんだか自分が急にわがままになった気がして、申し訳ない気持ちになった。
和真が頑張って働いているのに、それで自分のそばにいないからといって淋しいと感じるなんて。
以前はこんなことはなかった。
幼かった雪菜は、恋というものを最近になって少しずつわかってきている。
わかってきたというよりも実感しているというのが正しいだろう。
和真に好きだと言われて、彼の真剣な気持ちがとても嬉しかった。
彼に抱かれて、幸せを感じた。
しかしそれまでの雪菜は、それが和真に対する気持ち―――
恋という自覚がほとんどなかったというのが正直なところだった。
幼い彼女は、和真を好きな気持ちはあれど、それが彼だけに対する特別なものだとは自分でも気付かずにいた。
1ヶ月前のあの日から、雪菜は和真を「男」として強く意識するようになった。
近くに彼がいればドキドキし、いつもある姿が見えないとそわそわして自然と彼を探してしまう。
家族に隠れるように、照れながらも時折自分をぎゅっと抱きしめてくれる和真に、雪菜は膝が震えるくらい緊張する。
それは紛れもない恋で、雪菜はそんな自分の変化に少し戸惑っていた。
***********
仕事に向かう静流と別れて帰途につく。
ひとりで大丈夫かと静流は心配したが、雪菜は笑顔で手を振った。
人間界の生活にも慣れて、切符の買い方も、電車の乗り方だってちゃんと覚えた。
ひとりで電車に乗るのは初めてだが、降りる駅を間違えなければ大丈夫。
そう思いつつも、やはり少し緊張しながら人混みに流されるように雪菜は電車に乗り込んだ。
(すごい、こんなに混むなんて…)
運の悪いことに、帰宅時間と事故が重なったらしい。
雪菜の小さな体はドアに押し付けられて、窒息しそうになる。
それでも、胸に抱えた小さな紙袋だけは潰されないように注意した。
いつも、和真や静流たちはこんな電車に乗ってるのだろうか。
そう思うと、自分がひどく甘ったれな気がして恥ずかしくなる。
以前、飛影に言われたことを思い出す。
「甘ったれるな」
本当にそうだ。
ぼんやりと目の前に流れる風景を見ながら雪菜は思った。
春が近いとはいえまだまだ日暮れは早く、遠くに見えるマンションや鉄塔に明かりが灯っているのを見ると、
いつも胸がいっぱいになって苦しくなる。あの灯りのもとに、みんな帰っていく。
そう思うと、雪菜は泣きたくなる。
帰れる場所があるというのは、幸せだ。
故郷を捨てた自分が、そんな気持ちになるのはおかしいかもしれないけれど。
表立って言葉にすることはなんだか図々しい気がしてはばかられるが、
桑原家は、雪菜にとって本当に安心できる、帰れる場所だった。
今夜はみんな遅くなると言ってたので、夕飯のしたくは自分と和真の2人ぶんだけだ。
和真がアルバイトというものを始めてから一緒に食卓を囲むことは少なくなってしまったので、雪菜は嬉しくなる。
今日は帰りが早いと言っていた。
何を作ろうと考え始めた時、彼女はふと違和感を感じた。
(え?)
実をいえば、先ほどからやけに自分に触ってくる手を感じていたが、
それはただ混雑しているからだと思い、特に変に感じることもなかったのだ。
しかし、この手が意思を持って動いていることに気付いた時、雪菜は激しく戸惑った。
細いけれど骨ばった指。が、コートの中に入ってくる。
その手は、やわらかな感触を楽しむように雪菜の双丘を撫であげた。
(え?え?なに?どうして?)
「痴漢」という言葉も知らない雪菜はパニックになる。
しかしこの行為に対する嫌悪感は確かで、その手から逃れるように小さく身をよじった。
雪菜の後ろに立ってぴったりと身を寄せてくる男は、
逃げようとする少女を電車の揺れに合わせて巧みにドアに押し付ける。
(こわい…)
この男の意識が、触れる手から流れ込んでくるような気がして雪菜は固まった。
自分の性をいたずらされるような、汚されるような感覚。
恥ずかしさと恐怖で声も出せず、逃げることもできず、じっとうつむいて体をこわばらせる。。
少女がおとなしく抵抗できないとわかると、男の手はさらに大胆に動いてきた。
スカートの横のチャックをすばやく下ろすと、そこから手を入れて直に雪菜の肌に触れる。
突然の生暖かい感触に、雪菜はビクリと肩を震わせた。
気持ち悪い。こわい。恥ずかしい。もうやめて…
不安な感情のかけらがぐるぐると回り、雪菜は吐きそうになりとっさに口をおさえた。
突然、昔のことを思い出した。
暗く静かな部屋に閉じ込められていた自分。
欲にまみれて、醜く歪んだ人間の黒い感情が流れ込んでくる。
しばらく遠ざかっていた負の感覚に、こんなところで触れることになるなんて。
冷気で威嚇することもできない。そんなことをしたら周囲の人間まで巻き込んでしまう。
「ぃ…ゃ…」
かろうじて零れ落ちた声は小さく、ドアの開く音と人混みにかき消される。
と、下着の中に入り込もうと動いていた男の手が、突然、不自然に離れた。
雪菜は一瞬緊張がとけてドアにもたれかかり、おそるおそるうしろを見る。
ざわざわと降りていく人混みを背に、男の手を締め上げた和真が立っていた。
**************
「ゲー、事故か…?」
乱れたダイヤに人のごった返すホームで和真はつぶやいた。
次の電車乗れるかな、と思うと案の定滑り込んできた車両はすでに混んでいて、
それでも押し流されるようにして和真は電車に乗り込んだ。
それなりに身長があるので、窮屈だがあまり息苦しさは感じない。
とりあえず次の駅で余裕ができて、少し体を動かせるぐらいには隙間ができたのは救いだった。
今日は、ここしばらく通っていたバイトの最終日で、久々に早く家に帰れる。
和真は胸の内ポケットに入れた封筒を確かめて、ほくほくと窓の外の流れる夜景を見た。
(すずめの涙みてーな額だけど…)
それでも自分で、生まれて初めて働いて稼いだお金だ。
使い道はもう決めていた。というより、そのためにきつい勉強の合間を縫ってバイトしたようなものだ。
雪菜の笑顔を思い浮かべて、和真は上機嫌でふと車内を見渡した。
一瞬、視界の端に見覚えのある赤いダッフルコートが見えてどきりとする。
(雪菜さん?!)
そういえば、今日は買い物にいくと行っていた。
赤いコートを着た雪菜は、童話の赤ずきんを連想させる。
思わぬところで彼女に会えた嬉しさと、こんな電車に乗って大丈夫かと思う気持ちが湧き上がる。
見ると、小さな雪菜は人混みに埋もれてしまって、ドアに押し付けられるようにじっとうつむいている。
考えるより先に体が動いていた。
雪菜のところまで移動しようと、ヒンシュクを買いながら少しずつ隙間を縫っていく。
ある程度近づいた時、少女の肩が小刻みに震えているのがわかり和真ははっとする。
じっとうつむく彼女の横顔は真っ赤で、何かに耐えるようにぎゅっと目をつむっている。。
「雪菜さ…っ」
名前を呼ぼうと口を開けた時、車内アナウンスが流れドアが開いた。
降りようとする人波の中で和真は、彼女の衣服の中に伸びる手を見て固まった。
しかしそれも一瞬で、状況を飲み込んだ瞬間怒りで頭が真っ白になる。
それからあとのことはよく覚えていないが、振り返った雪菜の泣きそうな顔だけが印象に残った。
*************
気付くと、和真は人通りの少ない路地裏で男に馬乗りになっていた。
すぐ近くで電車の音が響く。
和真の下でひょろりとした体型の大学生か浪人生か、そんな容貌の男は顔を腫らしてヒィヒィうめく。
その情けない表情にイラリとして、そう感じるより早く、もう一発殴っていた。
突然、男を引きずるようにして電車を降りた和真を、雪菜はくず折れそうになる足で追いかけた。
何も言わず、ただ恐ろしい表情で男を引きずっていく彼に戸惑う。
和真が男を無言で殴り始めた時、雪菜はしゃがみこみ動けなくなった。
今までの恐怖や、緊張が一気に解けて涙がこぼれる。
それでも、這うようにして必死に和真の腕にすがりついた。
「やめて…お願いです、お願い…」
腕にしがみついてくる雪菜が泣いていることに気付き、和真はよりいたたまれなくなる。
頭が真っ白になり、彼女の前で暴力をふるってしまった自分の浅さにも舌打ちしたい気分だった。
この男が雪菜にした行為は許せない。殺してやりたいぐらい気持ちがささくれ立っていた。でも。
逡巡する和真の横を特急電車が空気を震わせながら通り過ぎていった。
「…行け」
和真は男を解放すると、低く呟いた。
男はあとずさるように地面を這いつくばって、自分を見下ろしてくる和真を見上げた。
「俺の気が変わんねーうちに行けってんだよ!!」
男は怒鳴りつけられてビクリと震えると、あわてて闇に消えていった。
和真は、足元に男のメガネが割れて転がっていることに気付くと、それを思い切り蹴って大きく息を吐きだした。
**************
「…ありがとうございます」
和真からココアの缶を受け取り、雪菜は小さくうなだれる。
さっきの衝撃は薄れてきたもののやはりショックは抜けず、座り込んだベンチから動けない。
隣に座る和真も、さっきから何もしゃべらない。そのことがいっそう雪菜をうなだれさせた。
(和真さん、怒っている…?)
いつも明るく自分に接してくれる和真が、こんなふうに憮然とした表情を見せるのは初めてかもしれない。
なにか怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。
やっぱりさっきのことで、嫌われてしまったのだろうか。
うつむいて、少し赤くなってしまった膝頭をじっと見詰めながら不安になる。
電車内でのことを思い出し、ぎゅっと目をつむった。あの時和真が現れてくれて、本当によかった。が、
あんなところを彼に見られてしまったことを思うと恥ずかしくて、雪菜は泣きたくなる。
もうこれ以上の沈黙に耐えられそうもないと思った時、和真が口を開いた。
「…どこまで触られたんスか」
「え?」
その声は小さく、とっさに何のことかわからずに雪菜は和真の横顔を見つめる。
「どこまで触られたんスか、さっきの奴に」
ずっと目線を逸らしていた和真が、少女に真剣な表情を向ける。
雪菜はいきおいうつむいて、泣きそうな表情になる。なんて言えばいい?
もう少しで下着の中に指を入れられそうになっただなんて、とても言えない。言いたくない。
答えられない雪菜を見て一瞬顔を歪ませると、和真は突然立ち上がり彼女の手をひいた。
「あ、あの…?!」
戸惑いながら雪菜は、手をひかれるままに和真についていく。
と、けばけばしい路地の一角にあるビルの、人目を避けるようなひっそりした入り口をくぐる。
雪菜は、どこへいくのかと和真におずおずと問いかけるものの返事はもらえず、ただついていくことしかできない。
薄暗く照明の落とされた部屋に足を踏み入れるなり、強い力で抱きすくめられて雪菜は戸惑った。
「和真さん…!?」
部屋の中央に置かれた大きなベッドに押し倒された雪菜は、
状況についていけずに、困ったような、怯えたような目を和真に向けた。
その目にびくりと動きを止め、和真は苦しそうな表情を隠すようにゆっくり少女の肩に顔を埋めた。
「和、真さん…?」
戸惑いながらも、自分の背に手を回してくれる雪菜が愛しくて、和真は思わず、少女を抱きしめる腕に力を込める。
自己嫌悪に言葉もでない。
(なにやってんだ俺はよぉ…)
和真の頭の中は、雪菜と同じか、それ以上に混乱していた。
少女への愛情、欲望、あの男に対する嫉妬―――そんな感情がぐるぐると和真の中を駆け巡る。
和真は自分の独占欲に戸惑い、あきれた。
電車の中でうつむく雪菜の横顔を思い出す。
知らない男の手が這うのを、じっと我慢して肩を震わせていた。
こちらを振り返った時の、頼りなく不安な瞳。
―――自分はそんな彼女に欲情している。
自分の大事なものを横取りされる感覚、汚される感覚にあの男への怒りが沸騰した。
が、それ以上に、恥辱に可憐に耐える雪菜の姿に、本能的に動物のような欲望があたまをもたげたのだ。
そんな暗い闇が自分のなかにあることに気付いてしまい、和真は頭をかきむしりたくなる。
「…すいません雪菜さん…」
そう言ってゆっくり体を起こす和真に手をひかれ、雪菜も戸惑いながら体を起こす。
「すいません…」
「どうして和真さんが謝るんですか、そんな、謝らないで…?」
深くうなだれる和真の、つらそうな表情にはっとする。
どうしてこんなカオをするのだろう。
目の前の和真があまりに弱々しくて、雪菜は思わず小さな子供を抱くようにそっと抱きしめた。
ドキドキしているのが、きっと聞こえてしまうだろう。
それでも雪菜は、じっと抱きしめ続けた。
(あったけぇ…)
氷女なのにあったかいなんて不思議だな、と思いながら、和真は目をつむる。
あんなに波立っていた心が少しずつ平静になっていく。
ふたりを包む空気が穏やかになって、どちらからともなく顔を見合わせるとフッと微笑した。
「すいません、もう大丈夫ッスから…」
「はい」
照れたように頭を掻きながら和真が体を起こす。
いつもの彼に戻ってくれて、雪菜はホッとした。
さっきまでの荒々しい彼は、自分の知らない男の人のようだった。少しだけこわかった。
無抵抗の相手を一方的に殴るような和真を見たのは初めてだった。
たとえそれが自分のためだとしても、やっぱりそんな彼は見たくない。
雪菜はひと息つくと部屋のなかをゆっくり見回して、ふと、この部屋に浴室がついていることに気付いた。
トイレも、洗面台も、テレビもある。そしてこのベッド。
誰かがここに住んでるのか、なのに自分達が入ってしまっていいのかと少女は慌ててしまう。
「和真さん、あの、このお部屋、勝手に入ってもいいんでしょうか…?誰かのお家なんじゃ…」
雪菜は戸惑ったように和真を見る。
思いもよらぬ少女の純粋な発想に和真は小さく身じろぎ、どもりがちに説明する。
「…いっいや、あの…えーと、ホラ、ずっと前、暗黒武術会の時に俺らが泊まってたホテルがあったでしょう。
あの、あれと似たようなもんですから…」
「あ、そうなんですか、よかった…」
不安そうにしていた雪菜はその言葉にホッとして、明るい表情を浮かべる。
その笑顔に、和真の心はまた少し重くなった。
ここはホテルでも、ただのホテルではない。
男と女がセックスすることを前提として存在している、いわゆるラブホテルだ。
頭に血がのぼり、思わずこんなあやしい場所に入ってしまったことを和真は後悔した。
何も知らない雪菜を、騙し討ちのように強引に連れ込んだことに良心が痛む。
しばらく物珍しそうに部屋を見回していた雪菜は、改まったように和真に向き合って微笑んだ。
「こんなふうに和真さんとふたりだけになるの、すごく久しぶりですね」
「ここのところ、ずっと和真さんお忙しそうでしたから」
そういえばそうだ。和真は顔をあげて、嬉しそうにはにかむ雪菜を見た。
つきあいはじめてから、互いの部屋でふたりきりになるようなことは努めて避けるようにしてきたので―――
ひとつ屋根の下に暮らしている家族に対して、そういう部分は潔癖な和真の提案で―――こんなふうにふたりきりで向き合うのは久々だった。
急にここがラブホテルだということを再認識して、和真は真っ赤になった。
思わず確認するように部屋を見回した。初めて入ったが、きれいな部屋で少し安心する。
「す、少し休んで落ち着いたら帰りましょう、ね!」
「はい」
本当はこのまま雪菜と朝までいたいが…学生の分際で、しかも雪菜を連れて朝帰りなぞしたら、確実に姉に殺されるだろう。
それでも、やはりこの状況は若い和真を攻め立てる。
煩悶する和真をよそに、雪菜は浴室のドアをあけて中を覗き込んでいる。
先程からずっと浴室を気にしているようだ、と思った途端、おもむろに雪菜が自分を振り返った。
「…あの、このお風呂に入っても、大丈夫でしょうか?」
突然の雪菜の言葉に、和真は思わず顔をあげた。
「え…っ?ふ、風呂に入りたいんですか?」
「…」
思わずよこしまなことを考えてしまい慌てる和真に、雪菜は困ったように少しうつむいて、背中を向ける。
「…あの、さっき、……だから…」
言葉は少なかったが、和真にはすぐにその意味が理解できた。
知らない男に触られたままでいたくないのだろう。気分的にも、いやな感覚を一刻も早く水に流したいのか。
やっぱり、彼女の心は少なからず傷ついてるのだ。もしくは、やっとできた薄いかさぶたを剥がされたといってもいい。
人間界に来て、桑原家で暮らすようになってからはほとんど遠のいていた人間の負の部分―――に触れて、
気丈にふるまってはいるがやっぱり傷ついたのだ。
「…俺も、入っていいですか」
「えっ?」
「俺も一緒に入っていいですか」
予想していなかった和真の言葉に、雪菜は真っ赤になって慌てる。
「え、え、あの、でも、…」
互いの裸には、この1ヶ月の間に少しは慣れつつはあったが、一緒に風呂に入ることなどなかった。
なにより家族と同居のため、そんなことは考えられなかったのだ。
(はずかしい…けど…でも…)
いつも、申し訳ないぐらい自分に対して控えめな和真がこんなふうに押してくるのは珍しかった。
一緒に入るということは…やっぱりそういうことになるのだろうと思う。
そう思うと、恥ずかしさと言いようのないうしろめたさに和真の目を見ることができなくなった。
少し迷って、戸惑いつつも雪菜はこくりと小さく頷いた。
先に入ってますね、と言い残して雪菜は真っ赤な顔を隠すように、足早に脱衣所に消えていく。
和真はその背中を見送りながら、彼女に聞こえないように小さく息を吐いてじっと手を見る。
思えば、思い切り人を殴ったのはいつぶりだったろう。
自分でも思い切ったことを言ったと思う。
今日は普通でないことばかりで、気が高ぶってるからだろうか。
雪菜が風呂に入りたいと言った時、とっさに思った。
彼女についたあの男のにおいを、自分の手で落としたい。
一緒に風呂に入りたい、という純粋によこしまな気持ちももちろんあったが、
それ以上に、自分の手で雪菜の体に残されたあの男の感覚を払拭したかったのだ。
脱衣所のカゴに、きれいにたたまれて置かれている雪菜の衣服を見て、和真は自身がズクリとうずくのを感じる。
最後に雪菜を抱いたのは、もう10日以上前だ。
ここしばらくは学校とバイトで忙殺され、なかなか家でふたりきりになれる時間もなく、彼女に触れることもままならなかったのだ。
和真はもどかしそうに着てる服を脱ぎ捨て、少女の待つ浴室のドアを開ける。
あたたかい湯気にふわり撫でられた頬が一段と熱くなった。
シャワーの中に雪菜が背を向けて所在なさげに立っている。
翠色の髪は濡れて、細い肩に流れている。恥ずかしさからか少し震えているのが、ますます和真の雄を刺激した。
一方、雪菜は目の前の鏡に映る和真の姿をちらりと確認したものの、すぐにうつむいてしまう。
(和真さん、もうあんなに…)
カァッと体が熱くなる。
これが初めてというわけではないのに、まじまじと異性の体を見るのはやはり抵抗がある。
鏡の中の和真のそれは、すでに固くそそりたっているのが、湯気の中でもはっきりわかった。
彼が自分を欲してくれている、と思うと恥ずかしいけれど嬉しくて、雪菜はちょっとだけ誇らしい気持ちになる。
しかし、次の瞬間それもすぐに羞恥に変わってしまった。
「…っ」
和真が、泡立てた手をそっと雪菜の肩に置いた。
そのままゆっくりと腕、背中と優しく撫でられて、雪菜は恥ずかしくてきゅうっと目をつむる。
「俺が洗いますから…」
雪菜はこくんと頷いて、和真にまかせる。
(和真さんの、手…)
電車の中での、あの手はあんなに気持ち悪かったのに。
同じように背後から触られてるのにも関わらず、和真の大きくてあたたかい手は全然ちがう。
(きもちいい…)
和真は荒くなりそうな息をなるべく抑えながら、雪菜の体を泡立てていく。
10日ぶりの少女の体は、耐えがたいぐらいやわらかく自分を誘惑してきた。
背を向けている雪菜の表情は、前にある鏡で確認できる。
最初は眉間にしわが寄るほどきつく目をつむっていたのに、自分の手が触れるにしたがい、
次第にトロンとした表情に変わっていくのが、ひどく可愛くてたまらなくなる。
雪菜のそれは、いつも和真の庇護欲と加虐心を同時に刺激するのだが、
もっととろけたカオを見たくて大抵の場合後者が勝る。
特に今日は。
「ん…っ」
背後から突然胸を触られて、雪菜は思わず声を出してしまう。
その声が思いのほか大きく浴室に響き、ふたりの耳を刺激する。
(やだ、お風呂だから、声響いちゃ…?)
とっさに声を殺そうと唇を噛むが、与えられる刺激に小さく声が零れてしまう。
和真は、そんな雪菜をいじめるように、やわらかな胸の頂を骨ばった指ではさんで、掌でおおきく揉みしだく。
快感を散らそうとゆるゆるとかぶりをふる雪菜は、それでも声を出さない。
それを見た和真は右手をゆっくり下に移動させると、少女のやわらかな花びらに指をからませた。
「ふあぁッ」
「雪菜さん…」
少女の薄いひだはやわらかく和真の指を迎え入れ、与えられるゆるゆるとした刺激に答えるように蜜を溢れさせた。
「あ…ア…やぁ…」
くりゅくりゅと小さな芽を小刻みに撫でられて、雪菜は立っていられないぐらい感じてしまう。
力が入らず、カクカクする膝でかろうじて体を支えるが、それも今にも崩れそうで涙がこぼれる。
(こんな、立って…なんて、初めて…)
やわらかなベッドに横たえられて彼の重みを感じるのが、それが雪菜にとっての「行為」だった。
一緒にお風呂に入るのも初めてだというのに、こんなふうに立ったまま、後ろから…
「か、和真さ…や、やっぱり…や…ここ、じゃ…アッ」
今にも座り込みそうになりながら、雪菜は和真をふりかえって懇願する。
その瞬間、ずっとおしりに押し付けられていた固いものがちゅるんと少女のワレメをなぞった。
「…ッ」
ガクン、と崩れそうになる雪菜の体を左腕で支えて、和真はそのまま腰を前後させる。
なのにわざと侵入を避けて。ぱちゅぱちゅと濡れた肉のぶつかり合う音が響く。
「アッアッやあッアッ…だっ、めぇえ…っ」
うしろから和真のごつごつとした雄に薄い花びらをこねまわされ、
前からは指の腹で芽を刺激され、少女はされるがままに快感に流されてしまう。
「雪菜さん…っすごく気持ちよさそうな顔…よく見える…っ」
「やっ…そんなの…」
和真の言葉に、思わずかぶりをふる。と、鏡の中の彼と目が合った。
雪菜はあまりの恥ずかしさにこれ以上ないぐらい真っ赤になり、泣きそうな表情になる。
目の前の大きな鏡には自分の乱れた痴態が、つま先から髪の先まですべて映り込んでいる。
正視できずに目をそらそうとするものの、どうしてもそらしきれない。
(これが私…?)
「すごい可愛いッスよ…ほんとに、可愛い」
耳元で荒い息を吐きながら、和真が指をチュプ、と雪菜のなかに挿れる。
「ふあぁ…」
突然侵入されて、背筋がゾクリと震える。
でもそれはあまりにも浅く、雪菜はふるふるとかぶりを振って抗議するように鏡の中の和真を見る。
和真はそんな少女の様子を見ながら、彼女をゆっくり攻めた。
さっきの男は…―――和真は考える。
―――きっと雪菜をこんなふうにしたかっただろう。
おとなしくて、清純で、お人形のような少女を、自分の思うように蹂躙して乱れさせて―――
自分の腕の中で、とろけるような表情で鳴く雪菜。
彼女をこんなふうにするのは俺だ。
彼女のこんな表情を見ることができるのは俺だけだ。
彼女は俺のものだ。
「かずまさ…」
雪菜が、和真の右手に小さな手を重ねる。
さっきから指で浅くかきまぜられるばかりで、満たされない刺激に戸惑ってしまう。
いつもなら、いつもなら…
(だめ…)
はしたない、と思いぎゅっと目をつむる。
でも、今日の和真はいつもと少し違う。今日は初めてのことばかりで、目が回りそうだ。
それでも体は和真を求めて疼いてしまう。
浅い刺激では我慢できない。なぜなら自分は、彼のすべてを知ってる。
いつものように和真のすべてが欲しいのに、今日はわざとじらされているみたいで―――
「雪菜さん、欲しい、ですか」
自分が考えていたことを読まれたようで、雪菜は恥ずかしさに固まってしまう。
「欲しい…?」
もう一度、彼女の意思を確かめるように耳元でささやく。
お互い向き合っていたら、とてもこんなことは聞けない、と思う。
雪菜は困ったように逡巡していたが、小さく頷いて答えた。
「ちゃんと言ってください」
和真の言葉に弾かれたように固まる雪菜。
自分でも意地が悪い、と思ったが、やっぱり今日は、どうしても彼女の言葉が欲しかった。
「……ッ」
クチュ、チュ…と、恥ずかしい水音と、殺したような二人の息が浴室に響く。
雪菜は、真っ赤になって懇願するように鏡の中の和真を見ては、うつむいて目をそらす。
そんな彼女を見て、和真はチクリと心が痛む。いじめたいわけじゃない。
でも―――
「雪菜さん」
もう一度、確かめる。
「……」
「……」
「……い、です」
震えるような小さな声が、和真の耳をかすめた。ゴクリ、と息を飲む。
「…ちゃんと、聞こえるように…」
熱い泉のなかから指を引き抜かれて、雪菜は膝を震わせて、泣きそうな表情になる。
「…っ…ほ、しいです…」
「お願い…和真さん、の…ぜんぶ…―――ッ」
言い終わらないうちに、雪菜の体に熱い杭が打ち込まれた。
ずっとじらされて疼いていた部分が、突然固い雄に犯されてきゅううっと締まる。
「ふあァあぁア…んッ」
挿れられただけで軽く達してしまったのか、雪菜は荒い息を吐きながらくず折れてしまう。
それでも、和真の雄をくわえこんだソコは、小さく痙攣して彼に耐えがたい刺激を与えてきた。
細い腰を突き出し、鏡にすがりついて、深く自分を受け止めてくれる少女の痴態に、和真の背筋が震える。
「ひぁ…っ」
突然、鏡から引き離されて、あぐらをかいた和真の中心にうしろから深く抱きかかえられた。
ついさっき達してしまった余韻がまだ残っているのに、改めて与えられる刺激は強すぎて涙がこぼれる。
「や、か、ずまさ…っ待って…ま…ッアッアッやあァッ」
突き上げられて身をよじるものの逃げられない。
それどころか、膝の下に腕を入れられ、両足を大きく広げられ―――
「……ッ!!」
「こんなふうに、見るの…初めて、でしょう」
和真の言葉に、両手で顔を覆ってしまう。
あまりの恥ずかしさに声も出せず、子供のようにいやいや、と弱々しくかぶりを振ることしかできない。
今日の和真はおかしい、いつもの優しい彼じゃない、どうしてこんな…?
「雪菜さん、ちゃんと見て…っ」
「や、ア、らめれすっこ…なのっ、アッ、いやぁ…ちゃんとっ向き合って…っ…おねが…」
ガクガクと下から突き上げられながら、少女は必死で懇願する。
目の前の鏡には、信じられないくらい恥ずかしい自分の姿がある。
充血して紅くなった小さなワレメがめいっぱい広げられて、テラテラと光る和真の雄が上下に抜き挿ししている。
そのたびに恥ずかしい結合部からクチュックチュッと恥ずかしい蜜がはじける音が響く。
「俺のが奥まで侵入って…コンコンあたってます…っすごい、やらし…っ」
「あっ、ア、あっン、や、やぁあ、アッあっふ、ふぁッ、あぁあッ」
雪菜の鳴き声に煽られるように、和真の腰が一定のリズムで上下する。
それに合わせて、雪菜の細い肢体は跳ね上がり蹂躙される。
(らめなのに…らめ…なのに)
(きもち…よすぎちゃう…っ)
和真に少しずつ快感に慣らされてきた少女の体は、
これまで数回かさねた行為によって花開くように男を受け入れつつあった。
強く深い快感に、羞恥は遠く押し流されて、貪欲な雌が雪菜の意識を覆う。
されるがままになりつつも、トロンとした表情で、和真の腰の動きに合わせてかすかに腰を振る。
きっと自分では気付いていないであろう雪菜のそんな淫らな姿は、和真を一層煽った。
クチュクチュとこすれあう部分にそっと指を這わせて少女の敏感な花芽をやさしくこねあげる。
「!!やっアッ、ア―――ッらっ、めぇえ、それっ、や、あっア、ア―――ッ」
ビクビクと背を反らして、強すぎる快感に雪菜は恥ずかしさも忘れて鳴いてしまう。
こんなに乱れる雪菜は初めてかもしれない。
少女の泣き声のような淫らなあえぎ声が、激しい突き上げに押し出されるように吐き出される。
きゅうきゅうと和真の雄を締めるそこの感触から、絶頂が近いことがわかる。
最後とばかりに、小刻みなピストンで愛しい少女を攻め上げる。
「やっ、アッアッアッ、ひァあ、らめ、ら、めえぇっ、かずまさっ、アッやああぁ」
「雪菜、さん、ゆき…ッすごっい、ヒクヒクして…っ」
「らめ、もうっ、もうイクっイっひゃいまふ…っ、やっ、アッごめ、なさぁア、アッ、アッ、アッ…」
「俺もっ、もう…ッ!」
「アッ、かずまさっ、アッぁあッン、アッ、はァあッアッやっ、らめっらめ…っ」
「ひぁッめ…らめ、ぇ…アッも、ふ、ア…ッァアあぁああああアあァ…んッ…っ…っ」
雪菜の薄い肩がビクビクと跳ね、強烈な甘い締め付けに和真の息が思わず止まる。
次の瞬間、少女の体内に熱い白濁の波がはじけた。
少女のそこは不規則に痙攣しながら、和真の雄をすべて欲しがるようにそれを離そうとせず、
和真は最後の一滴まで少女に注ごうとゆっくりと輸送を繰り返した。
受け止めきれずにこぼれた白濁が床に滴って、熱い湯に流されていった。
**************
「ごめんなさい!」
数十分後、ベッドの端と端に座って、背中を向けてうつむく雪菜に頭を下げる和真がいた。
もうお互い服を着て、さっきまでの激しい行為の残り香は消えつつある。
「雪菜さん…」
やはりやりすぎたんだろうか。
あんなことがあったとはいえ、いや、だからこそ優しくしなければいけなかったのに。
頭ではそうわかっていても、心では複雑な気持ちに整理がつかず、結局あんな意地悪なことをしてしまった。
こっちを向いてくれない雪菜に近づくこともできず、和真は頭を抱えてしまう。
「…どうして」
「え?」
まだ背中をむけたまま雪菜がやっと口をひらいてくれた。声が消え入りそうなほど小さい。
「…どうして、さっき、いつもみたいに向き合ってして、くれなかったんですか…?」
「う、そ、それは…」
「すごく、恥ずかしかったし…不安だったんですよ…」
おずおずと振り返った雪菜の頬は赤い。
さっきの自分の姿を思い出しているのかもしれない。
いつも彼女を抱く時は正常位で、抱き合いながらするのが常だった。
今日のように、後ろから一方的に抱かれるような行為は初めてで、それに対して雪菜は戸惑っていたらしい。
しかし、電車内の雪菜の様子に少なからず欲情したなどと口が裂けても言えるわけない。
それでつい、支配欲にまかせて突っ走ってしまったことなど。
「ほんとスミマセン、なんていうか、興奮しちゃって……意地悪でしたか」
「意地悪ですよ…」
抗議するように自分をを睨んでくるが、あどけなさの残る彼女がそんな顔をして見せても迫力がない。
行為の時とのギャップが激しくて、それがまた可愛くてたまらないのだが…
そんなことを考えて、思わず頬が緩みそうになるのを和真は必死でこらえる。
「…嫌われてしまったのかと、思いました」
「えっ?な、そんな、なんで?!」
「……他の、男の人に…触られたから……だから、嫌われたのかと…」
「ちがいますよっ!!」
再びうつむきつつあった雪菜は、和真の大声にびっくりして丸い目を彼に向ける。
「嫌いになるなんてありません、そんな、あんなことで…いや、なんていうかその、ちがうんです」
「意地悪っていうか…えーと…その…ぶっちゃけていうと」
「……」
「やきもちッス」
オロオロと言葉を紡ぐ和真をじっと見つめていた雪菜は小首をかしげる。
「…やきもち…?」
この複雑な気持ちを、うまく雪菜に伝えることができず頭を掻く。
苛立ちや独占欲や、そういったものに煽られて、今思い返すとひどく乱暴にしてしまった。
それに、初めて彼女を抱いた時以降はちゃんとコンドームもかかさなかったというのに、
今日は少女に見せ付けるように中に出してしまった。
勢いもあったが、今日はどうしてもそうしたかった。
「と、とにかくもう、今日みたいに乱暴なことしませんから!ほんとに!」
生真面目に宣言する和真の様子に、雪菜の表情がやわらかくなる。
「大丈夫です、そんな…。たしかにすごく恥ずかしかったですけど…」
「その、最後までずっと和真さんと向き合えなかったから、不安になってしまったんです」
「…でも、今日みたいなの初めてで…」
恥ずかしそうに、言葉を選びながら話す雪菜を見る。
「…気持ちよかった?」
言葉を引き取ると、少女は真っ赤になってうつむいてしまった。
その表情はまぎれもなく女で、あどけない顔立ちに艶が加わり、それを見ると和真は誇らしくなる。
自分が、真っ白だったこの愛しい少女に、あの初めての日から少しずつ少しずつ色を付けてきたのだ。
「和真さんは…?」
雪菜が問い返す。
困らせてやろうという彼女なりの反撃のつもりなのだろうが、まったく反撃になっていない。
和真はそんな少女が可愛くて、ぎゅっと抱きしめることで答えた。
**************
次の日、バレンタインです、と雪菜から小さな包みをもらって和真はびっくりした。
昨日彼女が大事そうに抱えていた荷物はこれだったのか、と。
自分のために慣れない電車に乗って、街に出て、買い物をして、そして。
猛烈な嬉しさと申し訳なさにどうしようもなくて、和真は高速でその包みをあけると―――
もちろんリボンも包装紙も一切破かず、しかもきれいに折りたたんで―――バリバリと彼女の愛を噛み締めた。
まるで誰にも横取りされまいとするように。
あまりの早業に目を丸くする雪菜に、和真も小さな包みを差し出す。
「雪菜さん!俺もコレ!どうぞもらってください!」
これを雪菜にあげたくて、無理してバイトしてきたのだ。
びっくりさせたくて、気付かれないように彼女が寝てる間に、間違えないように必死でサイズも計ったのだ。
あまり高いのは無理だったが、自分で働いて稼いだ今の自分の精一杯。
「その、なんていうか、それにはヘンな虫を寄せ付けない効力があるんですよ!だから、いつも身に付けててください!」
和真は、照れを隠すように早口でまくしたてる。雪菜は小さな包みを解いて箱を開けた。
その様子を風呂上りのビールを飲みながら眺めていた静流は、微笑ましい気持ちになりながらもしっかり突っ込みを入れる。
「カズぅ、そんなおもちゃの指輪じゃ効力薄いよ。雪菜ちゃん、もっとキラッキラした強力なやつ買わせてやりな」
「うっせーな、言われなくてもそのうちもっといいの買うよ!」
ニヤニヤと雪菜の掌を覗きこむ姉に、ムキになって反応する和真。
そんな姉弟のやりとりを横目に、雪菜はそっとそれを手にして嬉しそうに光にかざした。
きれい。
細い銀色の輪。
「雪菜ちゃん、それはね、左手の薬指にはめるんだよ」
「あ、姉貴…!」
先を越されてしまい、和真は慌てたように姉を睨むが、彼女は一向に気にしない。
「…こう、ですか?」
静流のアドバイスに従って、左手の薬指にリングをそっと通すと、それはぴったりと指にはまった。
「わぁ…これならいつも身に付けられますね!ありがとうございます、和真さん。大事にしますね」
花がほころぶような笑顔を見せる雪菜に、和真は真っ赤になって嬉しくなる。
きっと雪菜は指輪の意味など知らないのだろうけど、それでもいい。
ささやかな主張を込めて、彼女の指に収まるそれを見る。
この少女は自分のものだから、誰も触るな、という主張。
もちろん効力の程などわからないが―――
「あっ、もしかして和真さん、このためにアルバイトを…?」
はた、と気付いたように雪菜が和真を見た。
「え、いや、まあ…でもほんと、安物ッスけど」
「そんな…」
申し訳なさそうに、少女の睫毛が伏せられる。
「私、高価なものなんていりません、これで、十分うれしいですから…」
「和真さん、無理しないでくださいね。ほんとに、もう無理しないでくださいね」
恐縮しきりの雪菜に、男には無理させていーの!と言い切る静流。
姉貴が言うとシャレにならないと和真は突っ込みそうになったが、思うだけに留めておいた。
「まあとにかく、カズ、あんたしばらくはもうバイトの予定はないんだろ?」
「おー、テストもあるしなぁ」
「だってさ、雪菜ちゃん。よかったね」
静流の優しい手にポンと肩をたたかれて、雪菜は頬を染めながら嬉しそうに頷いた。
―――最初はびっくりしたけど
正直いって、ふたりがつきあうとわかった時は心配だった。
弟がこの氷女の少女に思いを寄せていることは、わかりすぎるほどわかっていたけど。
雪菜のほうはどうなのか、和真の思いに流されているのではないか。
もしそうなら、いつか和真も雪菜も傷つくと思い、内心心配していた。
でも今はそんな心配は取り越し苦労だったと思う。
雪菜の和真を見る目は、ちゃんと恋する少女のそれで、和真に対する思いがわかる。
なんだか嬉しくなって、もう一本いこうと冷蔵庫をあけたところで弟のあわてたような声が聞こえてきた。
「ちがうんですって雪菜さん、これは義理チョコといって…」
「でも、やっぱりそれは和真さんがいただいたものなんですから、私が食べてはいけないと思います」
何事かと思い見ると、一見してあきらかに義理とわかるチョコがテーブルに無造作な山を作っている。
高校でそこそこ人気者らしい和真が、おおかたクラスの女の子にもらったものだろう。
「へぇ〜、ひーふーみー…8個!カズにしては大漁だねぇ」
「あ、姉貴!姉貴も雪菜さんに説明してくれよ、これは義理チョコっつーもんで、そんな深い意味ねーんだって!」
慌てる和真の傍らで、複雑そうな顔でチョコをみつめていた雪菜だったが、お風呂に入ると言い残して足早に出て行ってしまった。
呆然としながらそれを見送る弟を見て、静流は吹き出した。
「あんた、これ雪菜ちゃんに一緒に食べようって言ったの?」
「だ、だってよぉ、オレは雪菜さんのチョコもらったら満足だし、たくさんもらったから雪菜さんもどうぞって…」
「バッカだねー」
がっくりと肩を落とす弟をケラケラ笑って2本目のビールを煽る。
「でも、よかったじゃないの」
「なにがいいんだよぉ、なんだかわかんねーけど雪菜さん怒ってたみてーだし…あぁあなんでだあ〜っ!??」
さっきまでニコニコしてた雪菜が、突然よそよそしくなってしまった理由がわからず和真は頭を抱える。
静流は、さっきの雪菜のこわばった表情を思い返す。
それは困ったような悲しいような笑っているような、本当に複雑な表情だった。
学校という雪菜の知らない世界で、和真が女の子にチョコをもらう程度に周囲に好かれていること―――に対する。
和真がみんなに好かれていることは嬉しい。
でも、自分以外の女の子からもチョコを受け取る和真がいることが腹立たしく悲しい。
そして、そんなふうに考えてしまう自分に困っている。
そんな表情だった。
ようするに―――やきもちだ。
少女のそんな複雑な気持ちに気付かない弟の鈍さがおかしくて、静流は笑った。
「カズ、あんた幸せもんだよ」
761 :
440:2006/02/21(火) 19:10:32 ID:ZB3qisio
以上(
>>739-760)桑原×雪菜でした。
雪菜×桑原っぽくもありますが、両想いということで。
しかし、投下するのはすごく勇気がいりますね(汗)
途中-11-とするところを間違えて、-12-がふたつ並んでしまいすいません。
お目汚し失礼しました。どうもありがとうございました。
毎週新しいお話を投下してくださる12さんはすごいです。
これからも楽しみにスレのほう覗かせていただきます。
440さんの桑×雪キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
続きをお待ちしておりました!!
痴漢を撃退する桑原が格好良かったです。
強引な桑原に戸惑いながらも流されてしまう雪菜がいい!
オチの所で、雪菜の焼き餅に気付いていない桑原が、いかにも彼っぽくて笑いましたw
もし続きのお話を思いつかれましたら、是非また投下してくださいませ。
GJでした!!!
440さん、お久しぶりです。GJ&乙でした!
一気に読ませて頂きました。バレンタインネタ良いですね。
ラブホ、風呂場、鏡の前でお清めH…シチュにも萌えました。
互いにやきもち焼いたりもする二人ですが、
突き詰めた所、独占欲は愛情の裏返し。
相手の事を気にしなければ起こりえないですもんね。
「彼(彼女)の事が本当に大好きなんだな」と微笑ましく感じました。
440さんの桑原×雪菜をまた拝読する事が出来て、とても嬉しかったです。
都合の宜しい時にまたSS投下して下さると幸いです。
でも異種族との間に子供ができたら出産後に死亡だよな……
>>764 それは言っちゃいけない…てかその辺のこともちゃんと考えてくださってるのでは?作者様は。
なんかそれらしき話が過去ログにあったはず。
記憶違いならごめんなさいと謝っておくが。
766 :
440:2006/02/22(水) 08:10:11 ID:T9XqLUZE
>>764さん
すみません、同じスレへの書き込みだったのでつい甘えてしまって言葉足らずになってしまいました。
一応このお話のなかでは「分裂期に合わせて交わらなければ避ければ大丈夫」という
ちょっと都合のよい設定になってます。
(
>>765さんフォローありがとうございました)
とりあえずエロパロということで楽しんでいただけたらと思います。
レスくださった方、どうもありがとうございました。
投下する前はすごく緊張したので、反応いただけてとても嬉しいです。
またそのうち、なにか書けたらお邪魔させていただきたく思います。
それでは、携帯から失礼しました。
どうもありがとうございました。
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) 12さんの雷禅×食脱医師にワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
768 :
12:2006/02/26(日) 16:42:39 ID:OsM3UAHD
ぎゃー、テカテカされてるー!!(笑)
いつも夜になってから書いているもので、今日もこれから取り掛かるところです。
どんなものになるかはまだ分からないけど、が、頑張ろうっと。
769 :
12:2006/02/27(月) 01:44:46 ID:8d5n6Dkz
今、書き終わりましたので投下します。
白状すると、あんましエロくないかもです。何か、やっぱりあの二人にはアレでコレで
っていう細かい描写は野暮だと思ったので。
では、どうぞ。
一刻ほど過ぎただろうか。
夜着に着替え、床に就いてからもなかなか寝付けなかった。
何処ともなく現れたあの化け物は、もう痺れを切らして姿を消したに違いない。そ
う踏んだものの、気にはなっているのだ。
寝間の戸を開いた女が見たものは、先程とわずかも変わらずに床に張り付いて
いる大男の化け物の姿だった。
「何のつもりだ」
「然りと言うまでは、ここを動かん」
「愚かなことを」
あまりの愚直な姿に、思わず口元が緩んだ。
何と言われようと長年冷たく凝り固まった心が解きほぐされることはない。言葉な
ど存外いい加減なもので、何とでも綺麗に取り繕える。そして女というものは知っ
てか知らずかそれに騙される。
その果てに、ずるずると堕ちていく女たちをこれまで腐るほど見てきた。こればか
りは医師ですらも治せない不治の病とも言えるのだろう。
「女、然りと言え」
「言わぬ」
「言いやがれっ…」
不自然に体を縮こめて、律儀なまでに頭を床に擦りつけている化け物男のいっそ
滑稽なまでの様子を眺めていると、これが自分の機会なのではとも思い至る。
どのみち普通の男は気味悪がって寄り付くことのない女。病身ならば頼む拝むと
下にも置かぬ扱いで手を合わしもされるが、壮健さを取り戻せばもう一切見向き
もされなくなる因果の女。
ならば、この化け物でも良いではないか。
どこぞの者とも知れぬ男と忌まわしい運命を負った女。それもまあ、似つかわしい
と言えなくもないだろう。
何よりも、これほど乞うているのなら、まさに女冥利。
祭壇の蝋燭は、燃え尽きようとしていた。
「化け物」
板張りの床に足を踏み入れると、異様な緊迫感を感じ取れた。
ぺたり。ぺたり。
裸足で歩を進める女は、これまで閉じられていた窓につっかい棒を立てて外気を
入れた。すっかり失念していたが、今宵は良き半月の夜。折しも隣家の庭で咲き
誇る白梅らしき花弁がひらりと舞い込んでくる。澄んだ青い光が見渡す限りの世
界を満たしていて、実に美しい。
「ほう、妙なることよ」
化け物は、まだ見動きひとつしない。
「お前、それほどに我を乞うか」
「当然だ」
「なにゆえに」
「小難しい理屈などいらんだろう」
ふ。
薄い唇が心からの笑みで彩られる。
それもまた然り、と言うべきか。確かに情などというものは小賢しい言葉など無用
の次元にある。
ひらりひらりと散りかけの白梅の花弁が途切れることなく舞い込んでくる。何と良
き夜よ。まさに今宵が定められた夜なのかも知れなかった。
「…いいだろう。お前の戯言に付き合ってもやろう」
未だに這いつくばったままの化け物の前で膝をつく。それが本当のこととは思わな
かったのか、しばらくの間は頑なに同じ姿勢を崩さぬままだった。
「我もお前を乞うぞ」
「…本当か」
ようやく、化け物はがばっと顔を上げた。長い間、床に擦りつけていた額に薄く痣
が浮いている。それが何故かおかしい。
「理屈ではない、と言ったのはお前だ」
そこで、化け物の中の何かがぷつりと切れたのだろう。そのまま冷えきった床に
転がされた。刹那、鳥肌が浮く。
はらりと花弁が舞うのが見える。
月明かりが室内にまで忍び込んでいた。
相手を傷つけようと思うなら、幾らでもこの化け物ならば可能だろう。そう思わせる
長い爪の生えた指が顔にかかる乱れた髪を払い、頬を撫でた。容貌怪異といえど
も根は人間とそう変わりがないらしい。命あればどんな種族であろうともどこかで
似通うものなのだろうか。考えれば当然のことだ。
「ふ、ふ…」
見た目よりはよほど細心に肌を撫でている手が、奇妙なほど熱い。
「何だ、いきなり」
「我に通う男など皆無と思っていた。まさかお前のような化け物が懸想するとは思
わなんだ」
くすくすと笑う声に気を悪くしたように、化け物男は思いきり女の青白く浮き上がっ
た乳房を握る。まるきり初めてだというのに痛いだけではない妖しの感覚に、女の
喉が無意識に反った。
「あ、うぅっ…」
大男の化け物が覆い被さってしまうと、痩せこけた女の体は隠れて見えなくなる
ほどだ。
「くっ…」
存外に巧みな舌先が円い形を愉しむように乳房をなぞり、先端を弄んでいる。誰も
がこうするのだと思うと笑えてきた。人とは何と原始的なものなのだろうと。だから
こそこのように化け物も引き寄せられる夜があるのか。
次第にはだけられていた夜着が遂に肌から滑り落ちた。
「女、もっと見せろ。お前そのものを見せろ」
とうに興奮しきっている声が、女の体にも火をつける。ただ一夜のこととはいえ、安
い戯れとも決して思えなかった。
足の間に体を割り込ませてくる無礼さを、咎めることなどしない。男とは人間でなく
ともこういうものなのだと頭では分かっている。頭だけだから実際にこのような場面
に立ち会えば本能的に怯む。しかし、気付かせたくはなかった。それが女としての
矜持だった。
床を引っ掻く爪に痛みが走る。
血が滲んだかも知れない。
限界まで広げられた足の間で、化け物男がぎらぎらと目を輝かせながら更に身を
割り込ませようと躍起になっていた。例の細心をもって充分に受け入れるべき場所
を慣らしたつもりなのだろう。だが、未通女がどれだけ頑ななままか知らずにいる
のだ。特別怖くも不安もないが、ただ無心に痛む。
まるで殺そうとでもするように、硬く反り返った凶器が女の内部を勝手気侭に突き
上げ、掻き回して翻弄していく。熱い、痛い。
頭に浮かぶのはそれだけだった。
「あ、ぁうっ…う」
「まだ、ここは硬いな」
「仕方なかろう、無理を言うな」
苦しみ悶え、額に脂汗をかきながらも女はひたと眼差しを男に据えたままだった。
女と生まれた者に与えられるものがこれほどの苦痛しかないのであれば、一体
誰が男などに狂うだろう。
この行為がもたらすものの本質は、目に見えるものでも感覚に触れるものでもな
く、精神に深く関わってくるからこそ古来より女は燃え狂うのだ。
例外なく、我もなのか。
全身の骨が折れそうなほどに強く抱き締められ、獣そのものに立ち返ったように
盛る男に成す術もなく、女はただ声を上げながら身悶えるばかりだった。
半月は、随分と高く昇ったようだ。
何が何だか分からぬままの行為が終わっても、化け物はまだ居残っていた。べ
たつく股の始末と身支度を終えて女が湯場から戻っても、まだ呑気に横になった
ままでいる。亭主でもあるまいに、と女はおかしくなった。
「とっとと帰らぬか、化け物よ」
「まあ、そう言うな。見るがいい、今宵はやけに良い月だ」
「…ああ、そうだな」
こんな風に夜を過ごしたことなど、あっただろうか。
化け物風情に膝を貸す羽目に陥るとは。
そうは思っても、どこか安堵する気持ちがあるのは自分でも不思議だった。
「なあ」
「何だ」
「名前ぐらいは教えろ」
月を眺めながら甘えたように男は乞う。
「そんなものは、とうに捨てた。それに意味のないことだ」
娘時分までなら、まだ名乗る名もあった。しかし、そんな普通の女のすることを
全部放棄してまで得た医師の生き様の中で、何もかもを忘れてしまっていたよ
うな気がする。こんな化け物との逢瀬でそれを甘く苦く思い出すなんて信じられ
なかった。
「我、一国の食脱医師。他に一切の名を持たぬ身。それで良かろう」
「…ふん」
はぐらかされたと思ったのか、男は膝の感触を確かめるように身を摺り寄せてき
た。後は他に何の言葉も交わさず、ただこの夜の刻を楽しんでいる。奇妙なほど
に静かで充実した夜だった。
夜明け間近になる頃、ようやく化け物は立ち去って言った。
何か言いたそうにも見えたが、あえて問わないことにしてそのまま送り出した。
恐らくはもう二度と会えない男だ。躊躇して何になろうか。
白梅の花弁はあたかも偶然から始まった情そのもののように、室内に白く降り
積もっている。
白梅の咲く頃のとある一夜は、女にとっても後々忘れられぬものとなった。
男の種が腹に宿ったからだった。
女の体は芯の芯まで毒性が染みていた。
よって、腹の子が壮健に育っていくのとは逆に、女自身の健康をも蝕んでいくよ
うになっていた。考えれば当たり前の話だ。毒と無毒は決して相容れない。そし
て、女は子を無事に生み落とすことだけを考えるようになった。きっと我が子の
成長は見られないと確信していたからだ。
衰弱を増しながらも、女は難産の末に男の子供を生み落とした。傍目に見ても、
もう幾ばくも余命を感じられない焦燥振りだ。これで良く出産が出来たものだと気
の毒になるほどだが、それが母の執念というものなのだろう。
「医師様、立派な男児でございます」
「…そうか」
手伝いに来ていた者が産湯を使わせた子を枕元に置く。小さくて貧弱で、まるで
人間とは思えないほどだ。その小さな手が差し出す女の指をぎゅっと握る。
不意に涙が零れた。
「は、はは。お前は生きたいのだな。これから自分の生が待っているのだな」
行く末を見守ってやれないことが心残りでならないが、以前使いの者に探させた
乳母に預ければきっと立派に育ててくれるだろう。何にせよ、自分はもう終わりな
のだ。
ふと、一夜だけ関わった化け物男を思い出す。
名前ぐらいは、教えても良かったかも知れぬと思った。そうすればあの男は再び
自分の許を訪れただろうかと。こんな思いもしない未練があったことに、女は色を
失った唇に薄く笑みを浮かべた。
「…医師様?」
それで、終わり。
女の指は赤子に握られたまま、二度と動くことはなかった。
時は流れる。
女の生んだ子は乳母に育てられて何不自由なく育ち、自分の出自を知らないまま
成長して結婚し、老いて死んだ。その子も、その子も。
あの一夜の出来事が明かされるのは、人ではないだけに長い時を生きた男とそ
の息子が魔界で出会う時を待つことになる。
男もまた女を忘れられずにいたと知ったら、女は一体どんな顔をしただろうか。
776 :
12:2006/02/27(月) 02:05:05 ID:8d5n6Dkz
あ。
終わりをつけるの忘れてた。
これで「幻夜」完結です。投下時の間違いで先週からの通し番号じゃないけど、ごめーん。
でも頑張ってみた。
GJ!!!
乙です!
ちょっと切なくて泣けてきたよ…
GJ!
情感があって良い〜
12さん、GJ!!「幻夜」完結お疲れ様でした。
食脱医師の気高い生き様がまた切なくて泣けました。
半月の夜、白梅の花弁舞い散る中で枕を交わすふたり…
映像的にもすごく美しいですね。映画のワンシーンみたいです。
次の作品も期待しております。毎週楽しみにしていますよー
次はどんな物語かな?(;´Д`)ハァハァ
うむむ、静謐とした雰囲気が見事ですねぇ。
額に土下座痕のついた雷禅を想像してちょっと吹き出しました。
これだけコンスタントに良作を投下できるなんて、正直すごいなぁ……。
12さん、すばらしい・・・
マジ泣きしちゃってます・・・
保守!
12さんの次の作品はどんなのかな?ワクテカしながら待ってます。
783 :
12:2006/03/04(土) 22:40:21 ID:HipIlECp
おお、何だか好評だったようで嬉しいです。
元々少ない原作のエピソードをどうやって膨らませようかと考えながら書いた
ものだったので、報われたような気がします。
以前は現代ものよりは明治時代の東京、とかそういう時代がかったものばかり
書いていたので、個人的にも時代を感じさせるものには割と馴染みがありました
から、比較的書きやすかったこともあったけど。
で、次はまだ考え中です。
せっかく雷禅も出てきたことだし、また幽助×螢子の日常編でもやってみたい
かな。
次回作は幽助×螢子ですか。イイですね〜この二人も好きだな。
12さんの幽助×螢子は原作から飛び出してきたようで、
素朴な、どこにでもいるようなカップルって感じがして凄く好きです。
>以前は現代ものよりは明治時代の東京、とかそういう時代がかったものばかり
書いていたので、
12さんの書かれる歴史(時代)小説って凄く興味あるなぁ。あ、すれ違いスマソ。
785 :
12:2006/03/06(月) 00:19:03 ID:IN1yXB24
今、幽助×螢子を書いているところですが、何か螢子の出番が少なくなって
しまいました。そして何故か蔵馬が出てます。
今日は短めに収めたいので、早いうちに投下出来るかも知れません。
とりあえずは二時頃ということで。
近くの家の垣根から、目にも鮮やかな紅梅が咲き誇っているのが見えた。
ああ、もう春なんだなあと改めて感じている。
客の途切れた午後の時間帯、仕事もひとまず一段落してぼんやりと屋台に肘を
つきながら、幽助はうららかな陽気の穏やかさを楽しんでいた。
少し暇になったので、ついいろいろな思索に耽り始める。
「さーて、今日は何作るべ」
まずは今夜の献立のことだ。
今年に入ってから、大学の卒業を控えていることもあって螢子の周囲は一段と慌
しくなった。順調に必要な単位を取り、教員資格の件も着々とクリアしているから
こそ、家事や日常の細かい仕事は必然的に割と暇な幽助の担当になっていた。
まあ、それはいいと思っている。元々が、子供の頃から放任主義もいいところで毎
日のように遊び回っていた母親に食事の支度などをしていたぐらいだ。男子厨房
に入らずという古臭い考えは最初からない。
むしろ、そんな経験があったからこそ今こうして螢子を支えられると思うと、嬉しい
ぐらいだ。これもまた巡り合わせというものなのかと頬が緩む。
「…豆腐のあんかけか、豚肉の炒め物か…あいつ意外と食うからなあ」
上手いこと煽てられているかも知れないが、毎日の食事を美味しいと喜んでくれる
顔は本当に嬉しそうで、その顔を見たくてもっと頑張りたくなるのは只の惚気では
ないと思いたかった。
これまで色々あったが縁あって夫婦になったのだから、互いに努力し合わなけれ
ばせっかく手に入れたものが色褪せてしまう。
最初は好きという気持ちだけで良くても、二人で生活を営むとはひどく現実的なも
のなのだから。
「今日も疲れて帰って来るだろうからなあ…やっぱ炒め物か。味噌汁は豆腐とワ
カメにして…」
ようやく具体的な献立が頭の中で揃いそうになっていた。
「考え事をしているところで悪いけど、醤油ラーメンひとつ」
急に、客の声がすぐ側から聞こえた。
「…はいよ」
がばっと顔を上げると、そこには面白そうに覗き込んでいる蔵馬の姿があった。外
回りをしている最中に屋台を見つけて寄ったのだろう。
「そういや、営業だっけ」
「ええ、そうですが」
「大変だよなあ、外回りが多くてさ」
「慣れたらどうってことはないですよ。適当にサボれますし」
蔵馬の義父の会社は釣具メーカーだと聞いたことがある。彼が高校を卒業してす
ぐに就職した時は正直何を早まったことをと思ったのだが、あれ以来会社そのも
のは飛躍的に業績を上げてきていて、今や大企業の仲間入りをしている。先見の
明があったと言うべきだろう。
「幽助こそ大変ですね」
出来上がったラーメンを啜りながら、蔵馬はぼそりと呟く。
「…そうでもないけどさ」
「俺には、家庭を持つ大変さにはまだ飛び込めないですから」
口調は淡々としていたが、どこかに自嘲があった。別に気にする必要などは、どこ
にもない筈だ。容姿にも頭脳にも仕事の能力にも恵まれているのだから、その時
が来れば相応しい相手が現れるだろう。蔵馬なら、望めばどんな女でも可能なの
ではないかと思うほどだ。
だが、浮いた噂のひとつもなく、ただ何かの苦行のように黙々と毎日働いているだ
けだ。幽助から見れば、何だか色々なことが勿体無いと思えて仕方がない。
「蔵馬…」
「あ、そう言えばこの間、また魔界に行って来ましたよ」
心の内に踏み込まれるのは嫌なのか、さっと話題を逸らしてきた。ここはひとつ、
はぐらかされてみるのも友情なのではないかと思った。
「へえー、あいつらはどうだった?」
あいつら、とは言うまでもなく飛影とその妻の躯のことだ。もう何年も会っていない
し飛影も人間界には来なくなっている。たまに幽助自身が魔界に行ってもタイミン
グが悪いのか会えた例がない。
「このところ、躯のお腹が大分目立ってきてましてね、何かあっては大変だと飛影
の気の遣いようったらなかったですね」
「そっか。飛影もそろそろ親父かあ」
一緒に戦っていた頃が遠い昔のように思えた。
「みんな、それぞれだということですよ」
食べ終わって丼を返してきた蔵馬が、元通りの柔らかい笑みを向けた。女なら見
蕩れるほどに綺麗な笑顔だ。きっと働き詰めの毎日でも、それなりの手応えや充
実感を感じているのだろう。それが少し羨ましかった。
「けれど、俺たちの関わりは決して消えたりしないことですからね」
「あ、ああ。そうだよな」
こんなに話したのは去年のクリスマスの夜以来だ。何だかすっきりした気分にな
っている。蔵馬もまた、同じなのだろう。代金の硬貨を置く手つきが何となく軽快
に見える。
「…じゃあ、俺はこれで。幽助も頑張って」
「分かってるって。じゃあな」
一休みしたせいで蔵馬の姿には一段と生気が漲っているようだ。簡単に頭を下
げて立ち去る後姿を何とはなしに眺めながら、不思議と清々しい気分になってい
た。それぞれに変わっていくし、立場もその度に変わりはしても、決して仲間たち
が昔一緒にいたことは心の中から消え失せたりしないのだと。
だからこそ、飛影も安易に人間界に来たりしないのだろうし、今は何よりも大事
な女のそばについているのだ。気にしなくても、もしもまた何かがあれば、再び
顔を合わせることになるだろう。
仲間とは、そういうものなのだ。
「そうなんだよな、飛影」
春の陽気の中、うーんと伸びをしながら、なかなか会う機会のない仲間に声をか
けてやる。
もちろん、答えなどはないのだが。
「あー、疲れたあ」
午後六時半。
言葉通り、へとへとになって螢子は帰って来た。時間と体力があればそのまま
幽助を手伝ったりすることもあるのだが、今日はダメそうだ。まあ、まだ課題が残
っていたり家に帰ってからもやらなければいけないことがあるのは分かっている。
無理はさせられない。
「幽ちゃん、大事な奥さん労わってやんなよ」
「そうそう、いい子じゃないか」
すでに酔っ払っている常連の客たちが、からかうように笑う。柄は良くないかも知
れないがとにかく人はいい。たまに螢子が手伝っているのを見ると、いつも娘でも
見るように目を細めている。螢子も食堂の娘だから客たちの人の良さは見抜いて
いるのだろう、いつもにこにこと応対してくれている。
「ありがと、おじさん。今日はもう私ダメかも。幽助、水ちょうだい」
いつもより帰りが遅かっただけあって、疲れきっている螢子は遠慮がない。受け取
ったコップ一杯の水を一気に飲み干すと、どこかのオヤジのように開放感たっぷり
の大きな声を出した。
「あー!!生き返ったあ」
「おいおい、客の前でみっともねーぞ」
普段ならこんなことはしないのに、と少しだけ慌てながら宥めようとする。だが、元
気を取り戻した螢子は無敵だった。
「何よ、私だって普通のお客さんの前だったらこんなことしないって。今ここにいる
のがおじさんたちだから、くつろいでるのよ。ね♪」
抜け目なく常連客たちに目配せをする。
「そうそう、疲れてんならそれぐらいいいだろ」
「幽ちゃん、新婚早々亭主関白は嫌われるぜ」
「…ちぇっ」
ハイになって勢いづいている螢子には、もう勝てそうもなかった。早くも尻に敷かれ
ている気がしないでもない。
「お腹空いたねー」
常連客たちが帰った後、二人で早めの店仕舞いの支度をしているとぐうぐう鳴る腹
を抱えて螢子が情けない声を出した。
「…そうだな。今夜は何食べたい?」
「んー…明日も今日と同じタイトなスケジュールだから、しっかりスタミナつけときた
い。お肉がいいな」
幽助の頭の中で作り上げていた献立が、数時間振りに浮かび上がってくる。
「よし、任せときな。帰ったらうんと美味いの作ってやるからさ」
「うわあ、嬉しい。幽助の御飯ってすごく美味しいよね。私なんて料理の才能ない
のかなあ。子供の頃からお父さんに仕込まれていたのにさ」
暗がりに紛れて、抱き着きながら漏らす声が夜風に震えている。
そんなことを言っていても、螢子の料理だってかなりのものだ。それは時々食堂で
食べていた幽助が一番分かっている。出来れば世の中の亭主のようにデンと座っ
て上げ膳据え膳といきたいところだが、夫婦の形は複雑な現代の中にあれば人そ
れぞれ。亭主が女房の世話をするのだって構いやしない。
何よりも、一番大事な女が喜び満足しているのならそれでいい。
男ってのは因果だよなあ。
決して今の暮らしが不満な訳ではないが、溜息が漏れた。
そうだよなあ、親父。
今はもういない魔界の父親に向かって、心の中でこっそりと問い掛ける。
『男ってのは惚れた女をモノにする為なら、どんなに滑稽で情けないことでもしてみ
せるもんだ』
一度だけ、そんなことを言っていた。
その結果として、今の自分があるとなれば決して無視は出来ない。あの父親が何
百年も忘れられないほどの女がどれほどのものだったのかは、想像するしかない
が、多分容姿を含めて気概や生き様が良かったのだろう。
『あれは、白梅のような女だった。本当にいい女だったぞ』
長い年月を経ても、そうやって懐かしく思い出すような真摯な恋は少し羨ましい。だ
が、形は違ったとしても幽助にも今こうして大事な女がいるのだ。
「螢子」
「ん、何」
幽助は屋台を引きながら、隣を歩く恋女房に話し掛けた。
「手、繋いでいいかな」
途端に、暗がりでも螢子の頬がぱあっと染まったように見えた。信じられないものを
見たように、目が滑稽なまでに見開かれている。
「な、何よいきなり」
「そんな気分になっただけだ」
「…あんたっていつも突然よね」
顔を背けながらも、仕方なくだというように手がそうっと触れてきた。了承と解釈して
ぎゅっと握ってやる。
「サンキュ。飛びきり美味い飯作ってやるからな」
「…当たり前よ、バカ」
何だか幼稚園の頃に戻ったようだった。あの頃はいつも手を繋いで日暮れの道を歌
いながら帰ったものだ。もしかしたら、あの頃からこうなることが決まっていたのかも
知れないなどとセンチメンタルなことを考える。
白梅の女ではないけれど、無理やり例えるなら螢子は桜だ。
春になったらどこでも見られるし、どれも綺麗で迫力があるけれど、一輪一輪にして
みればひどく儚げで薄い花弁で出来ている。その癖、包み込むような優しさを絶や
さないのだ。
傷つけたり、壊したりは絶対に出来ない女に違いはない。
つくづく男は因果だ。
どんなに女が強くなったとはいっても、やっぱりそんな繊細なところが放ってはおけ
ないのだから。
「味噌汁の具は何がいい?」
「え、うーんとね、ジャガイモとワカメ」
繋いだ手を振りながら、子供に返ったように二人は暗くなった道を歩いていく。どこ
にでもあるような平凡な日常だけど、それが何よりも大事なものだと知っているから
些細な遣り取りでさえも心が躍るのだろう。
そんな二人を見下ろすように、空には三日月がぽっかりと浮かんでいた。もう少しす
れば満月に至る上弦の月となる。
終
792 :
12:2006/03/06(月) 01:49:38 ID:IN1yXB24
てなことで、「幻夜」と対ではないけど、遺伝のなれの果てとなった息子夫婦の
話でした(笑)エロはどこかに忘れたようです。
ちなみに、「幻夜」での半月は上弦の月でした。
私は何故か月というものに対して異常なほどの思い入れがあるので、作中にも
よく登場します。
満月なら幸せな二人、半月なら上弦か下弦かで幸せに向かうか不幸に向かうか
決めたり。つまり、上弦の月の下で契った雷禅と食脱医師は幸せだったという
ことです。息子もいるしね。
で、今現在の息子夫婦も満月に向かう三日月の下、ということで幸せなのです。
蛇足ですが、まさに今夜が上弦の月。
弓張月とも呼ばれる風情のある形をしています。
では、おやすみなさい。
GJ!幽助いい旦那さんだなあ。
普段しっかり者の螢子がこうやって寛げるのも幽助の前だからこそ。
立場が“幼馴染”から“夫婦”に変化しても、
ふたりの関係の根っこの部分は変わらないんでしょうね。
そして、彼ら仲間たちの関係も。
それから、月にこだわりがあるんですね。「幻夜」以前の作品では、
「藍色月夜」=“冬の月”くらいしか気付かなかった…もう一度読み直そう…
月もそうですが、「幻夜」の白梅に、本作品・「ミカヅキ」の紅梅
ちゃんと対になるようになってますね。さすが。
794 :
12:2006/03/06(月) 23:45:52 ID:IN1yXB24
感想をありがとうございます。
二人には揺るがない信頼関係があると思うので、立場が変わってもそれが何より
確かなものなのでは、と思っています。
この作品で書くようになってからは、まだそれほど作品数がありませんので月
そのものは頻繁に出てきていませんが、以前から色々と手掛けていたジャンル
では月はかなり重要なものとなっています。
多分、今後はもっと登場すると思いますのでそこも注目して頂けると面白いかも
知れないですね。
保守。戸愚呂(弟)×幻海読んでみたいなぁ。この二人の関係も好きだ。
職人さん、お願いします。
それから12さんの飛影×躯、躯はもうそろそろ妊娠後期?
最初から読んでいたら、なんだか情がわいてきて…
>>194で結末は解っているけれど、やっぱり気になる。
796 :
12:2006/03/11(土) 20:56:13 ID:F3K1UZqp
こんばんわ。
明日は出かける予定があって、帰りが遅くなるので書けないかもです。
短いものでも何か書けるといいんだけど。
SSの投下はまた、12さんの都合の宜しい時にして下さい。
いつも良作投下して下さって有難うございます。
次回作も期待してますよー(´∀`)
>>786-791 久しぶりに来てみたら幽助×螢子キテタワァ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!!!
何気に他カプ萌えの人にも親切な文章になってるのが素敵です!!
普段はROM専だったのに、嬉しさのあまり初パピコしてしまいましたw
また気が向いたら書いてくださいねノシ
乙でした〜
っ旦~ とりあえずお茶おいときますね
次スレマダー
まだちょっとスレの容量残ってるし、スレ立てはもう少し後からでも
いいんじゃないかなと思ってたけど、やっぱそろそろ立てたほうがいいのかな?
何なら私が次スレ立てましょうか?
801 :
800:2006/03/18(土) 22:58:02 ID:faKBIxT9
今度の月曜は12さん、小説投下してくれるかなあ?
ところで今すぐ立てるかはともかく、とりあえず次スレのテンプレ考えてみました。
804 :
800:2006/03/18(土) 23:20:01 ID:faKBIxT9
ほとんどこのスレの>1と変わってないし…_| ̄|○
「女体化ネタは専用スレで」の言葉も入れておいたほうがいいかなあ?
他にも「この言葉を入れたほうがいい」「この言葉はいらない」ってのがあったら
案を出してください。
805 :
12:2006/03/19(日) 22:59:18 ID:U8fmXUjg
こんばんわ。
今週は時間がそれほどないので、短いものになると思います。
エロなし、雛視点です。
ところで、しばらく来ない間に次スレの話題になっていたのですね。
>>800さん、テンプレ案のことですが、個人的にはほぼこの通りでいいと思い
ます。ただ、女性化ネタはスレ違いのように思いますので、その注釈は必要
ですよね。ここは公式捏造フリーですけれど、あくまでもノーマルカップリ
ングのみですから。
では、投下に向けて頑張ります。
二時過ぎぐらい…でしょうか。
806 :
800:2006/03/20(月) 01:08:02 ID:KOCnYd+O
雛ちゃん登場って事は飛影×躯ですね。ワクテカ。
12さんの小説を読む事が、週のはじめの楽しみの一つになってますよー。
ところで、テンプレ案へのコメント有難うございます。
やっぱり「女体化ネタは専用スレで」の言葉も入れたほうがいいですかね。
12さんのアドバイスを踏まえまして、次スレテンプレ案の改正版を作ってみました。
>2部分はとりあえずは変更なしという事で、省略しています。
808 :
12:2006/03/20(月) 01:29:04 ID:faJaSJDK
>>800さん、お疲れ様です。
それでとりあえずはいいと思います。
まだスレには余裕がありますので、何か不足点がありましたらその都度考慮
すればいいことですし。
ところで、エロなしなので今回飛影ほとんど出て来ないかもです。
期待をさせてごめんなさいです。
まだ時間が少しあるので、何とか補正をば。
魔界にも、春が来た。
手に触れる水が温くなったことが心から嬉しくて、雛はここ数日厨房の仕事に一層
力が入っている。冬の間はどうしても億劫で仕方がなかった床の拭き掃除も壁掃除
も時間をかけて丁寧にこなし、隅々まで清めていく。
そうして綺麗になった厨房の中で、二人の主の為に料理をするのが何よりの楽しみ
になっていたのだ。
「雛、水をくれないか」
眠りから覚めたのだろう。昼近くになってから主の一人である躯が声をかけてきた。
「はい、只今」
気に入りの居間の長椅子に、今日も気だるそうに躯は美しい体を横たえていた。寝
覚めは誰でもぼうっとしてしまうものだから気持ちは良く分かる。雛はグラスを片手
に薄暗い厨房奥の水瓶から冷たい水を汲み出すと、秘密の一滴を落とした。そして
銀の盆に載せていそいそと運んでいく。
「はい、躯様。お待たせ致しました」
長い指で額を軽く押さえていた躯は、薄い瞼をひらして少しだけ笑って見せた。ゆっ
たりとした服装だが、それでも大分腹の辺りが目立ってきていた。
「…悪いな、お前も忙しいだろう」
「いえ、全然」
雛が怖がることを危惧しているのだろうか。躯はいつも雛には焼け爛れた顔と体の
左側を極力見せない。そんなことを気にしなくてもいいのに、といつも思う。ただ普
通に美しい女性より、この女主人は何倍も綺麗で魅力的だ。それはこれまで辿って
きた複雑怪奇な人生が培ったとも言えるし、今最愛の相手を得て幸せに過ごしてい
るからとも言える。その意味では全てにおいて、躯は雛にとって理想であり、憧れの
女性でもあったのだ。
淡いブルーのグラスに口をつけて、一口水を飲んだ躯は、わずかに首を傾げた。
「…甘い、な」
思わず笑みが漏れた。大切な秘密を明かすように、悪戯っぽく肩を竦める。
「ウスベニカズラの花を煮詰めた汁を入れてみました。甘いから口当たりもいいし滋
養もあります。それにすっきりと目が覚めますよ」
「そうか、ありがとう」
「いいえ、実家は元々医者と言うほどでもありませんが草花の効能に詳しい家系
でしたので、これぐらいなら私も知っているんです」
自分の知っていることは大したことではないけれど、それで大事な主人が少しでも
元気になってくれればいい。
無垢な少女、雛の願いはそれだけだった。
「後ほど、庭園の薔薇を少し切ってこちらと執務室の方にお持ちしますが、他に欲し
いものはございませんでしょうか」
「…いや、特別ないが」
「…が、と言いますと?」
躯はわずかに眼差しを翳らせた。
「お前は働き過ぎる。昼間の間は俺だけしかここにはいないのだから、適度に手を
抜いていればいいだろう。その働き振りに対して、何もしてやれないのが心苦しい
のだ」
雛は心底驚いてしまった。この夫婦二人の主人が大好きだからこそ少しでも心地
良く過ごして欲しいから何もかも頑張っているだけなのに、それが負担だというの
だろうか。それならば、こちらこそ悪いことをしていると思った。
この美しい主人はこれから出産という大事を控えているのだから、余計な気を使わ
せたくないのに。
「躯様」
この思いが通じるだろうか。雛は言葉を選ぶように一度唾を飲み込んでから口を
開いた。
「私、私…躯様と飛影様にお仕えして以来、本当に夢みたいに幸せなんです。お
二人の為ならどんなことでも喜んで頑張れるぐらいです。躯様がお気に病むことは
何もありません。私が望んで、そうしたいと思ってやっていることですから」
通じているだろうか。
雛はただ二人が仲良く幸せであればそれでいいのだ。
「…雛」
ふっと表情を緩めた躯は、とても綺麗な笑顔を見せてくれた。今ここに飛影がいな
いのが勿体無いほどだ。
「済まんな。そこまで気遣ってくれるのは本当に嬉しく思っているぞ。だが」
途端に、それまで見たことがないぐらい悪戯っぽい顔になった。
「命令だ、この屋敷の中ではもっと自由にしてもいい」
急に、主人と使用人という境界を越えて、普通に女同士の友達のような間柄にな
った気がした。こんな風に接してくれるというのは何と幸せなことだろう。
胸の中に綺麗な風が吹いたような気がした。
「…はい、躯様。それでは咲きたての一番綺麗な薔薇をお持ちしますね」
「こら、言った先から」
「私はお二人が大好きですので」
満面の笑みで言い放った雛に、躯も言葉が続かないようだった。
自由にしていいと言ったのは躯なのだ。それなら、思う存分自由に振舞って二人
が何の不自由もないように取り計らっていこう。心からそう思っていた。
二人の喜びは雛の喜び。
二人の幸せはそのまま雛の幸せなのだから。
空がすっかり暗くなった頃、もう一人の主人である飛影が帰って来た。二人の間
では交わす言葉もそれほど多くない。見交わす視線も素っ気無いほどだ。だが、
それだからこそ実に多くの感情が入り混じっていることも雛は承知していた。大
人の男女とは何と複雑で難しいことか。それ故に面白いと思えた。いつか、こん
な真摯な恋愛を自分も出来るだろうか。
二人に対する思慕も込めて、雛は密かに願う。
この幸せな二人のように、いつか運命の人に出会えたらいいのにと。
普段は澱みがちな寝間の空気が、今日は豊穣この上なく香っている。
入ってすぐに敏感にもそれを察した飛影は、すぐに根源を探り当てた。奥の衣装
箪笥の上の花瓶に生けられた薔薇のせいだと。瑞々しい花弁を指先で弾くと、
決して悪くもない表情で言い放った。
「雛の仕業か」
「そうだ、いい匂いだろう。あの娘はここには決して入らなかったぞ」
「そんな野放図では困る」
ふふっと軽く笑った躯は、寝台の上で夫となった男を待った。こうすることに何の
ためらいもなくなったのはいつの頃からだろう。もうはっきりとは分からなくなって
いた。だが、それが幸せということなのだと思ってもいる。
以前、ずっと一人きりで生きてきたと思っていた。
だが、他者と関わり合う以上は常に気遣い、気遣われているのだろう。そんな何
でもないことを自覚したのも、ごく最近のことだ。本当に躯の芯は生まれたての
赤ん坊のように何も知らない部分がとても多くて、時折自分でもその物知らずさ
に戸惑うほどだ。
寝台に、ぎしりと心地良い重みが加わる。
「貴様も少しは自重しろ。いつまでも無自覚なら早いうちに医者たちにつきっきり
にさせるぞ」
「…それもつまらないな」
「貴様の体の為だ」
一体いつどこでそんなことを憶えたのかと思うほど、飛影の与えてくる仕草は優
しい。普段の無表情からは微塵も伺えないほどだ。だからこそ思いの深さも知れ
て、躯は暗がりの中で薔薇の香よりも豊穣で妖しい笑みを漏らす。
この男の為に子を生むのだと思えば、何でも耐えられそうだ。
抱き寄せてくる腕の力強さに酔い痴れながらも、陶酔一歩手前のあえかな声が
寝間に零れる。
「お前で…良かった」
終
813 :
12:2006/03/20(月) 02:37:49 ID:faJaSJDK
あ。
投下時の間違いで、3が二回続きました。
本当は4だったんだけど。あああ。
明日も平常通り仕事がありますので、後悔しつつこれでもう寝ます。
おやすみなさい。
814 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 03:21:24 ID:Htc7ac78
GJ!
忙しいのにお疲れっす
あんま無理せんといてな?
GJ!12さん、いつも乙です。雛ちゃん、本当いい子ですね。
躯との主従を越えたちょっぴり同性の友達めいた雰囲気もいい感じです。
互いに強い絆で結ばれ信頼しあう両親や、心優しい世話係の少女に
囲まれて、生まれてくるであろう子供。幸せだろうなぁ。
もしかしたら、既にお腹の中から両親たちの様子を見ているかもしれませんね。
父親である飛影は「生まれる前から目も見え耳も聞こえていた」そうですし。
>>808 次スレテンプレ案、少し早めに出してしまいましたが、
まだ少しは容量残っているので出来ればギリギリまで使いたいと思っています。
勿体無いしね。
雛ちゃんは、そんじょそこらの男には勿体無い!
・・・・まるで、年頃の娘を持ったパパンな気持ち(*´д`*)
幸せそうで、良いなぁ(*´д`*)
>>816禿同。
でも、こんな心根の優しい子だったら素敵な恋愛出来そう。
オリキャラだって事忘れちゃうぐらい違和感ないし、好感持てる。
回を重ねるごとに絆を深める飛影と躯の関係にも萌え。
なんかこの飛影、立会い出産しそうだなあ。
スレの容量的にはSS投下出来るのもあと1,2作品ぐらい?
明日は12さんのSS投下あるのかな?ワクテカ(0゚・∀・)+今回はどんな話かな?
あ、でも毎週仕事でお疲れかと思いますし、あんまり無理をなさらないで下さいね。
819 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 11:17:54 ID:3FRw4X9p
何でこのスレは荒らしがいないのですか?
人が少ないから
821 :
12:2006/03/26(日) 22:58:00 ID:Oxvs2cot
こんばんわ。
「予兆」の続きを書いているところです。
まだ初Hまでの道のりは遠そうだけど、何とかエピソードに違和感のないよう
に繋げていきたいところです。
今回もあまり長くないかも知れませんが、頑張ります。
飛影×躯、恋愛初期話の続編キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
少しずつ進展していく二人の関係に激しく期待してます。
12さん、無理のない程度に頑張って下さい。初H話まで見届けたいです。
823 :
12:2006/03/27(月) 02:33:08 ID:i9SnnI2f
書きました。
ちょっと短いけど、その代わり来週はエロ書けそうです。
ようやく繋げられたー。
最近、眠りが浅くなったことを自覚している。
そのせいで疲れが取れにくくなっているのが躯の悩みとなっていた。
原因は言うまでもなく、あの男だ。
躯を眺めている時のあの物言いたげな昏いおぞましい瞳が、いずれ自分の何
もかもを暴きたててしまう気がして、それが少なからず怖いと思った。
別に何を望んでいる訳でもない。ただこのまま踏み込んで来さえしなければ、
まだ自分は平静でいられる筈なのだ。
だが、遠からずあの男は一番恐れていることを仕出かすに違いないことも分か
っている。そんな風に付け入る隙を与えたのは紛れもなく自分自身なのだ、と
いうことも。
ああ、面倒なことだ。
溜息をついて、眠れない苛立ちに任せてごろりと寝台の上で寝返りを打つ。
これまで女として過ごしてきた経験がないせいで、こういったある種の情が絡
んだものはどう対処していいのか分からない。かと言ってこのまま言うなりに
なるのも癪だ。
「…もっと簡単な女を相手にすればいいものを。お前も愚かだ、飛影」
薄暗い寝間にやるせない溜息だけが積もっていく。
早急に目を通さなければいけない業務報告書が、机の上にこれでもかと積み
上げられている。
数日前に直接管轄する部下に対して大幅な人事異動を試みてみたのだが、
まだ表立った結果は出ていない。ある程度満足する成果を得るまでは各人そ
れぞれの慣れぬ環境から様々なトラブルが発生することだろう。それまで個々
が頑張りを見せてくれると嬉しいのだが、と躯は考えている。
昼間はあくまでもこれまで通り、女の面など見せるべきではないと自戒してい
た。あの男、飛影にもそれが通用するかどうかは知れないのだが。
「疲れているのか」
ようやく報告書を全て処理し終えた頃には日が落ちかけていた。
影のように執務室に現れた飛影は、二つのカップを持っている。そのひとつを
机の上に置いた。
「飲め」
「…ああ、済まないな」
さすがに目が疲れきっている。目頭を押さえながらカップを手にした躯は、立ち
昇る異様な香気に首を傾げた。
「薬湯か」
「似たようなものだ。最近激務が続いているだろう」
「別に大したことじゃないさ」
何かの薬草を煎じたものなのだろう。ひどく強い香気があるが一口飲んでみれ
ばそれほどは苦くない。不思議と気分が落ち着いてたまっている疲れも取れる
ようだ。他者のことなど一切の無関心を装うこの男が一体どこからそんな知識
を、と急におかしくなった。
「躯」
そんな心の隙にするりと入り込むように、男の無骨な手がカップを持つ躯の指
に触れた。ひどくその指先が熱く感じて動悸が跳ねた。
「何を、する」
「一人で無闇に気を張るのは、もうやめろ」
「訳の分からないことを…」
そのまま両手首を強く捕まれた。まだ半分ほど中身が残っていたカップは無残
にも床に転がり落ちて派手な音を立てた。割れてなければいいがとこんな状況
に陥りながらもつい考えてしまう。
「…離せ」
「納得する答えを出せばいつでも離してやる」
「お前が納得する答え、だと?」
「そうだ。お前は元のお前になれ。何も身の丈に合わないものに必死でなる必
要はないだろう」
「…知った風な、ことをっ…」
薬湯の苦味が口の中に残っている。それ以上に、やたらと馴れ馴れしい飛影
の物言いには引っ掛かるものがあった。一体、この男はどこまで愚弄すれば
気が済むのだろうと苛立ちながら椅子を蹴って立ち上がる。まだ捕まれたまま
だった腕がぎりっと更に強く力を込められる。
「ならば、どうして貴様はあの時俺に思わせ振りなことを言ったんだ」
「それは」
忘れる筈がない。
過去に魔界整体師である時雨と対峙してこれを倒した時、飛影もまた瀕死の
重傷を負った。その並ならぬ気概、その潔さを快く感じて情けを施してやったこ
とがある。もしかしたらこの男が何かを変えてくれるかも知れない、と思ったの
は事実だからこそ命を繋げてもみたのだ。
『お前になら全てを見せられる』
そう言った言葉も嘘ではない。
だが、それが女としての言葉かどうかは自分でも曖昧だった。飛影は完全に
女としてだと認識しているようだが。
「…お前にわざわざ言う必要など」
苦し紛れに吐いた言葉は続かなかった。唇が塞がれたからだ。驚きで見開か
れた目がひどく静かに覗き込んでいる目とぶつかる。
「……何てことを」
ようやく開放された後、あまりにも突然のことに頭の中がぐるぐると混乱しきっ
ていて上手く物が言えなくなっていた。こんなことなど、以前は当たり前のよう
に繰り返されていた。自分の意思など全く関係なく男たちの望むように。だか
ら、別に何でもないのだ。そう思ってもどうした訳か飛影にだけは動揺するの
を隠せない。
「あ、あ…」
「躯」
「…さわ、るな…触るなっ…」
焦点の合わない目で、躯はうわ言のように繰り返すばかりだった。
唐突に短い時間のうちに色々なことがあり過ぎて、錯乱していたのだろう。
気がつくと執務室ではなく、寝間の寝台の上にいた。完全に回りきってはい
ない頭でどうしてここまで辿り着いたのか、と考えても答えは出せなかった。
隣で不躾にも寝そべっている男を見るまでは。
「…飛影か、俺はどうしてここに」
「日が暮れた。執務室からここは近い。貴様は倒れて動かないから運んでや
っただけだ」
不機嫌な声には同じだけの不機嫌な声。どうしてまだここにいるのか、と聞
こうにもそれを許さない雰囲気がある。やすやすと寝台まで侵入されてしま
ったことも驚愕だが、当然のように居座る飛影の心情も全く理解出来ない。
「お前、さっさと立ち去れ」
「どうしてだ」
「ここは俺の寝間だ。勝手は許さない」
「そうか」
軽く威嚇したつもりなのに、全く通じてはいないようだ。何とふてぶてしい男
なのだろう。思うようにならない事態に内心苛々しながらも、奇妙な安堵はあ
った。
こんな遣り取りはそれほど悪くない。
そう思った途端に、強烈な眠気が襲ってきた。
こんな状況では知らない間に襲われそうでとても眠れはしない。わずかに湧
き上がった不安も、髪を撫でてくる手が跡形もなく溶かしてしまってひどく気
持ちがいい。
「このところ、眠れなかっただろう。見ているからゆっくりと眠れ」
「何、を…」
何か反論をしなければ。そんなささやかな足掻きもすうっと真っ暗な意識の
中に紛れ込んでしまった。これまでの自分であれば考えられもしなかった。
誰かの目の前で眠りに落ちるなど。
だが、そんな強がりも綺麗に溶け崩れていく。
終
828 :
12:2006/03/27(月) 02:41:06 ID:i9SnnI2f
がはり(吐血)
こんなところで終わるなんて…何だか乗ってきたところなのに、来週までエロ
書けないよー。
てか、飛影。そこまでいったら普通襲うだろ。
あ。
躯の『お前になら全てを見せられる』発言時、絶対飛影は聞いていたし見て
いたと思います。額の目も開いてたし。
そりゃ半身焼けただれとはいっても美しい女の全裸を
しっかり見せられてしまったわけですからな…
>>12サン
しかも躯からすすんでw 躯は「その気」じゃなかったんだろうけども
飛影のそのときの心情考えてみたらそりゃ、なあ。
一瞬の驚愕の後、内心バクバクしまくってたんでは。じっくり観察。
あの水槽?から出た後、躯を見る目が俺の上に立つ野郎→女へと
変わったんでしょう。これまで意識してなかった躯の首の細さとか
気がつくようになってしまい、躯が無自覚な仕草にさえ色気を感じてしまう。
だがしかしそこで悶々としないのが飛影。さっさと行動に出る。
そんな感じかなーと予想してました。
12さん、グッジョブ!!
“彼女にとっては思いがけない”飛影の行動にうろたえる躯に萌え(*´д`*)
深層心理では意識しちゃっているんだろうなあ。本人は気づいてなさそうだけど。
一方の飛影はやる気満々ですね。もう一直線。
まぁあんな言葉かけられて、裸まで見せられちゃ誰だってそうなる罠。
でも、無理矢理実力行使には出ずに(チューまではしているが)
躯の不安感や混乱する感情を理解した上で、言葉でちゃんと諭したり、
寝間の寝室まで連れて行って寝かせてあげたりと、飛影はなかなか紳士的?ですね。
この後“送り狼”になるのかならないのか、今後の展開が激しく気になります。
来週も凄く楽しみです(;´Д`)ハァハァ 12さん、素敵な作品いつも有難うございます。
832 :
12:2006/03/29(水) 22:35:32 ID:gIZwk8g8
はううーーー、
>>829さんの後半の設定は激萌える。
ですよね、そうですよね。
あんなに綺麗なものを見ちゃったら、男として意識しない訳がないですよね。
その後結構すぐに寝室に普通に入るぐらいの仲になったっぽいし。
ああ、その設定で何か書いてみたいです。
そして
>>830さん。
雪菜ちゃん探しの時もそうだったけど、飛影は超直情的だと思うので一度その
気になったらもうガンガン飛ばすような気がします。
ただ、そこで相手の気持ちや戸惑いを察しながらというのがその辺の男と違う
ところですね。でも、そろそろ限界ではないかと(笑)
次は初Hに漕ぎ着けられるといいなあ。
無頓着に部下の前で足を組みかえる躯。(スカートは穿かないだろうがw
ゆるく打ち合わされた衣服で少し前のめりで部下の報告を受ける躯。
「お前は女だっつーに!部下が目をそらしつつも注目してるだろうがぁ!」
と焦り&怒りの飛影。
そんなことを一人妄想して萌え。
なんか職人さん達だけではなく、その他の住人さん達にも萌えさせられます。
次回の12さんのSSはいよいよ飛影と躯の初H話?すごく楽しみです。
以前「次スレ立てましょうか?」と
次スレテンプレ案を出させて頂きました
>>800ですが、
次スレ立てるのは(12さんの都合がよければ)
今度の月曜日、12さんのSS投下の後でいいでしょうか?容量まだおkだよね…?
836 :
12:2006/03/32(土) 02:47:33 ID:5y14jHLC
そうか。
もう容量がそんなになっていたのですね。失念していました。
それでは今後は新スレに移動することにします。
立ててくれた方、激乙。
誰か死々若丸×幻海とか書いてくれないですかね?
838 :
>>800:
>>835さん、新スレ立て激しく乙です。
代わりに立ててくださって有難うございました。
最後に、このスレでの投下SSをまとめてみました。
もう新スレに移動しなければいけないけれど、これだけ書かせて下さい。
レス番号等に見落としあればスマソ。