冬
「ウフフッ、どうしたの? さっきからあまり口をきかないけど」
「あ、ごめん……晶に見とれてた」
まじめな顔でそんなことを言う。
わざわざあつらえたドレスだもん。褒められるととってもうれしい。
「あ、ありがとう……うれしい。私もね、あなたに……」
「私も……なに?」
真剣な表情で聞き返す彼。
……やだ、私ったら何を言ってるのかしら。
あわてて言い繕う。
「あっ、少し酔っちゃったみたいね。なんだか妙に頬が火照ってる」
「晶まだ一口も飲んでないじゃない」
「バ、バカ! いいじゃないの……きっと素敵な夜景に酔ったのよ」
「ふ〜ん」
何? その意味ありげな微笑み!
私があなたのこと好きなの知ってるくせに、それを言わせようってわけ?
「それにしても、本当にこんなディナーをご馳走になってもいいの?」
「もちろんだよ。……晶、うれしくない?」
不安そうに聞いてくる。
「えっ? 私はもちろんうれしいけど……お金は大丈夫なの? なんなら私も払うけど?」
「アルバイトしたんだ。この日のために」
ちょっと怒ったように彼が言う。マズイ、怒らせちゃった?
「そ、そう……じゃあご馳走になるわね」
クリスマス。
今日のために私は長崎から上京した。
当然ホテルを取ってある。
今日、彼に私の初めてをあげるつもりだ。
あの夏の日のあと、何度かそういう関係になりかけた。
でもまだ私たちは結ばれていない。
彼の何かに我慢している顔を何度も見た。
私だって子供じゃない。それが何を意味するのか分かるつもりだ。
……もうそんな我慢はさせたくない。
「あ、あの…その……ありがとうね。とってもうれしい」
しゃべっていないと涙がこぼれそうになる。
本当にうれしい。私のためにアルバイトしてくれた、あなたのその気持ちが……。
今はその好意を素直に受けよう。
「今年は…あなたのおかげで素敵なクリスマスイブになりそう」
「い、いやぁ、そう言ってもらえると僕もうれしいよ」
「あの、ね……食事が終わったら私の部屋に行きましょう?」
「……え?」
「あなたに、最高のクリスマスプレゼントを、あ・げ・る」
春と秋は割愛ということで。
というか、思いつきませんでした。