イガラシが松尾家に呼び出されて一時間ばかり、彼は松尾の母親と向かい合って話をしていた。といっても実情は松尾の母が一方的にイガラシに話しかけているだけだったが。
「イガラシくん。なにも私はあなたを攻めているわけじゃないのよ」
居心地が悪そうにしている少年を目の前にして話をしていると、改めて、まだ中学生の子供だということがわかる。
いくら野球部では猛練習を引っ張るキャプテンとはいっても、所詮まだ十代も前半の子供なのだ。一対一で大人と話すのは緊張を強いられるのだろう。相手が決して好意的でないとしたらなおさらだ。
松尾の母は再度、イガラシに言った。
「ただ、中学生らしい範囲で練習をしてくれればいいと思ってるの」
「それで優勝ができればね」
小柄な少年は精一杯虚勢を張って答えた。
しかし、それが松尾の母のかんに触った。思わず語気が荒くなる。
「あなたは、うちの息子をあんな目にあわせてまで優勝したいの!」
そう改めて問われると、イガラシにもなぜそんなに優勝したいのかわからなくなってくる。しかし、彼の信条としてトップを狙うのは当然のことだったし、今まで部員に強いてきた練習だって無駄になる。
「したいです。一番を目指さないでどうするんですか。ここでやめたら、部員を裏切ることにもなります」
精一杯の抵抗か、上目遣いでイガラシが言った。
松尾の母は何も言えなくなってしまった。納得できない言葉ではなかったからだ。
やむをえず、彼女は情に訴えかけることにした。大人と子供とはいえ、言葉では言い負かされかねない。
イガラシのすぐ横に席を移し、彼の手をとる。
「ね、イガラシくん。あなた達はそれでいいかもしれないけど、子供を心配する親の気持ちにもなってちょうだい」
「い、いや……」
突然近づいてきた松尾の母にイガラシはドギマギしてしまった。自分の後輩の母親とは思えないぐらい彼女は若かったし、きれいだったからである。はっきり言って後輩の親ではなく大人の女に見えたのだ。
いままでとは打って変わってひるんだイガラシを見て、松尾の母はチャンスと見たのか、さらに身を乗り出した。
「あなたは頭がよさそうだから少し考えればわかるでしょう?」
「……」
イガラシはひざの上に乗せられた手の感触に考えるどころではない。その上、香水の匂いだろうか、松尾の母親の方から良い香りもする。
うろたえているイガラシの様子に、松尾の母は少し余裕を取り戻した。そして改めて少年の様子を観察する。
なにが原因かはわからないが、自分が優勢にあるのは間違いなさそうだ。
ふと、目を落とすと、少年の股間が膨らんでいるのが見えた。
一瞬あわてた松尾の母だったが、すぐに思い直した。
これはチャンスかもしれない。きっとこの少年が野球で無茶をするのはそれしか楽しみを知らないからだ。それ以外の楽しいことを教えることができれば、野球に対する情熱も消えるかもしれない。
「ねぇ。イガラシくん……」
今までとは違い、妙に色っぽい声で名前を呼ばれて、イガラシは固まってしまった。このあたりは所詮中学生といったところか。
「あなたがそんなに野球ばっかりするのは、他に楽しいことを知らないからでしょう?」
「そ、そんなことは」
「今から私が世の中には野球以外にもすばらしいものがあるってことを教えてあげるわ……。例えば――女の人のアソコ見たことあるかしら?」
「なっ、ないです」
目前の女性のあまりの豹変振りに、思わずバカ正直に答えてしまうイガラシ。
そうこうしている間にも、松尾の母ははいていたスカートをするすると脱いでいった。
ごくりと生唾を飲み込むイガラシをからかうように、焦らしながらゆっくりとショーツを下ろす。
「ここよ、ここ」
「うむ」
原作のセリフは二つしか利用できませんでした。
とうとう神降臨! 続きキボン
オチをつけるな、オチをw
ことが終わると窓辺に立って、松尾の母親はむせび泣いた。
「明日からどうやって無垢なあの子の前にたてるでしょう……
私にはもう、その資格がないんだわ。――何度も罪を犯してしまったんですもの」
「何度もですか?」
イガラシはおどろいて訊いた。
「すると、あなたは……こういう事を、その……何度も?」
すると、頬を上気させた松尾の母は舌なめずりをしながら言った――
「だってイガラシくん、――まだ何度もおやりになるんでしょう」
「くわっ!」
最後に科白を一つ使ってみました。