1 :
名無しさん@ピンキー:
ここは人間の住む世界とはちょっと違う、ケモノ達の住む世界です。
周りを見渡せば、そこらじゅうに猫耳・犬耳・狐耳・etc。
一方人間はというと、時々人間界から迷い込んで(落ちて)来る程度で数も少なく、
希少価値も高い事から、貴族の召使いとして重宝がられる事が多かったり少なかったりします。
けど、微妙にヒエラルキーの下の方にいるヒトの中にも、例えば猫耳のお姫様に拾われて
『元の世界に帰る方法は知らないにゃ。知っていても絶対帰さないにゃあ……』
なんて言われて押し倒され、エロエロどろどろ、けっこうラブラブ、
時折ハートフルな毎日を過ごすことを強要される者もいるわけで……。
このスレッドは、こんな感じのヒト召使いと、こんな感じのケモノ耳のご主人様との、
あんな毎日やそんな毎日を描いたオリジナルSSを投下するスレです。
このスレッドを御覧のヒト召使い予備軍の皆様、このスレッドはこちらの世界との境界が、
薄くなっている場所に立てられていますので、閲覧の際には充分ご注意ください。
もしかしたら、ご主人様達の明日の御相手は、あなたかもしれませんよ?
それではまず
>>2-4を見てください。
【今までに登場した作品一覧:登場順】
NO: 作品タイトル <作者様名(敬称略) 初出 経過>
01: こっちをむいてよ!! ご主人様 <こちむい 1st-29 全10+1話完結>
02: IBYD <180 2nd-189 停滞中>
03: 華蝶楓月 <狐耳の者 2nd-217 停滞中>
04: こちむいU あしたあえたら <あしたら(=こちむい) 2nd-465 連載中>
05: 火蓮と悠希 <(´・ω・`)へたれ猫 2nd-492 停滞中>
06: 十六夜賛歌 <兎の人 2nd-504 連載中>
07: ソラとケン <◆rzHf2cUsLc 2nd-645 停滞中>
08: ご主人様とぼく <65 2nd-738 停滞中>
09: 狼耳モノ@辺境(仮題) <狼耳モノ@辺境(仮題) 3rd-79 全1話完結?>
10: Silver Tail Story(仮題) <狼を書く者 ◆WINGTr7hLQ 3rd-103 連載中>
11: 放浪女王と銀輪の従者 <蛇担当 3rd-262 連載中>
12: 黄金の風 <一等星 3rd-348 停滞中>
13: 最高で最低の奴隷 <虎の子 3rd-476 連載中>
14: From A to B... <エビの人……もとい兎の人 3rd-543 全1話完結?>
15: 魚(・ω・)ヒト <魚(・ω・)ヒト 3rd-739 連載中>
16: 狗国見聞録 <692 3rd-754 連載中>
17: 草原の潮風 <63 4th-63 連載中>
18: 岩と森の国の物語 <カモシカの人 4th-82 連載中>
19: scorpionfish <scorpionfish 4th-125>
20: 猫の国 <◆ozOtJW9BFA 4th-522>
21: 不眠猫のお嬢様 <不眠症 5th-215>
それでは、ごゆっくりお楽しみください。
1乙
6 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 05:28:34 ID:hqCeqTyq
乙
1乙
8 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 12:07:22 ID:92m2aoer
1乙
乙鰈
電波びびび
即死回避
==========
コタツに入って黙々とみかんをむく。
ご主人様はコタツに入ってテレビを見ながらそれを食べる。
テレビからはわざとらしい笑い声が聞こえる。
最初のうちは話題もあったが、
ほぼ外界との接触が断たれている現状では、
それが底をつくのも当然であり。
ただみかんをむいて
ただみかんを食べて
「ねえ」
なんですか?
「前の主人ってどんな人だったの?」
前のご主人様は女性だったんですが、
聞きたいですか?
「やっぱり、いい」
コタツに入って黙々とみかんをむく。
ご主人様はコタツに入ってテレビを見ながらそれを食べる。
テレビからはわざとらしい笑い声が聞こえた。
==========
11 :
電波:2005/07/07(木) 19:22:34 ID:qdkB+gzT
触手×百合×ショタ。
問題は続編だと言う事だッ!
・・・・・・誤爆じゃないよな?
13 :
ピューマ担当:2005/07/08(金) 07:25:53 ID:t8I6ZhRw
スレ立て乙
>>前スレ631氏
エロパロ板SS保管庫様のところにあるアップロード掲示板の方にupしときやした
>>scorpionfish氏
ハンドルありで感想とか書いてると良くないことが起こるかもなので、手短に。GJっす!!サイコーっす!!
14乙。
14GJ!!!
14gj!
14GJ!!
保守
とりあえず、遅れに遅れた狐っ子と剣術少女のおはなし投下します。
前後編で、とりあえず後編(エロ編)は明日にでも。
ボクの仕事場の裏山には、質のいい樹がたくさん生えている。
香木、霊木、彫り物にはもってこいの樹。
……いや、少し順番が違うかな。
たまたま見つけたこの山が、そういう樹の多い場所だったから、仕事場をまとめてここに引っ越したというべきか。
ボクの名前は景佳。けいか、って読む。
一応、これでも一人前の彫像職人。
巫女連にも納品してる、自分で言うのもなんだけどイッパシの職人……の、つもり。
ちょっとした仕事があって、ボクはまた裏山に樹を探しに来ている。
樹といっても、やっぱりいろんな種類があって。
たとえば、巫女連に納入する像なんかは香木を使う。
香木と一口に言っても、実は好まれる香りもいろいろあるんだけど、それは話すと長くなるから今度。
それとは別に、なにかの儀式の補助に使う像なんかだと、いわゆる霊樹というのを探さなきゃいけない。
ここの裏山ってのは、ずーっと昔に何かあったらしくて、そのせいか霊樹と呼べるだけの樹が多い。
ただ、そんな場所だから……たまーに、変な事件とかも起きたりして。
裏山って言っても結構急な山だし、なにやらもやもやした霊気とかもあるから、ボク以外の人はめったに裏山には入ってこない。
そんなところだから、山の中、それも中腹より上まで登った場所で男の子が倒れてるのを見たときにはびっくりした。
「大丈夫?」
ボクはびっくりして、その男の子に近づいた。
服は僕たちの着ている服と似てる。腰には……刀みたいなのが差してある。
はじめは、どこかの武人さんなのかなと思った。だって刀なんか持ってるし。
でも、そこに倒れてたのは、ボクたちとは違う人だった。
耳も尻尾もなくて、黒い髪の毛をしてる。
それが、風のうわさで聞いた「ヒト」だと気づくのにちょっと時間がかかった。
「ん……」
ボクが声をかけたのが聞こえたのか、男の子はうっすらと目をあけた。
「あ、大丈夫?」
「…………」
男の子は、ボクをじっと見ている。
で。
「うわあぁぁぁぁぁぁっ!」
こっちが驚くような大声。
「よ、妖怪! 化け物、おばけ、もののけ!」
……よ……妖怪?
化け物とかお化けとかもののけって……ボクのこと?
「ち、ちょっ……」
「く、くるなああっ!」
おびえた目の男の子は、いきなり腰の刀を抜いた。
「え……って、わああっ!」
「くるな、くるな、くるなあっ!」
刀をむちゃくちゃに振り回してこっちに切り掛かってくる。
くるなって言いながら向こうから来てるんだけど、目の前で刀を振り回されると、そんなことは考える暇もない。
「ち、ちょっと、落ちつい……って、ちょっ、危ないよ!」
背を向けたらそのまま後ろから斬られそうなので、ボクは男の子の方を向いたまま、後ろ向きに走って逃げた。
……正確には、逃げようとした。
後ろに数歩走ったとろで……
ボクは、樹の根っこに躓いて後ろ向きに転んだ。
「いっ……たたた……」
立ち上がろうとした時。
もう目の前に、男の子がいた。
「この化け物おっ!」
そう言って、大きく刀を振りかぶる。
……まさか、こんなところで……なんだかわかんないまま死ぬの?
さすがに、そう思った。なんだかよくわからないけど、ボクが死ぬんだということだけはわかった。
怖くて、たまらなくなってボクは目を閉じた。
がっ……わぁあぁっ! ……べたんっ。
変な音が、三回続けて聞こえた。真ん中のは声かもしれない。
そして、なにやら重たいものが上にのしかかってきた。
「…………」
ゆっくりと、ボクは目を開けた。とりあえず、生きてるみたい。
「……むぎゅぅ……」
すぐ目の前に、男の子の顔があった。彼も転んだ……みたい。
とりあえず、逃げなきゃ。
そう思った。
ボクは、とりあえず男の子の体をどかして、体を起こそうとした……んだけど。
むに。
男の子を持ち上げようとして動かした手に、妙にやわらかい感覚が伝わってくる。
……これ……何?
むに。
むに。
むにむに。
やわらかくておっきなものに触ってる感じ。手が触れてるのは……男の子……? の、胸のあたり。
これって……えっと……
そんなときに、男の子? と目が合った。
「・・・・・・・・・・・・・・」
気まずい、沈黙。
「え……えっと……」
何か言おうとして、声が続かない。
男の子? の顔が、少し赤くなり、そして怒ったような顔に変わって……
ぱあんっ!
全力の平手打ちが、ボクの頬に飛んできた。
「このケダモノっ! 化け物、怪物、妖怪っ!」
少し離れたところで、男の子……だとボクが思い込んでた女の子が両手で胸を隠すようにして、こっちをにらみつけて罵詈雑言の限りを浴びせかけてくる。
「白昼堂々、なんてふしだらなっ!」
「い、いや、それはその誤解……」
「下心のある人は誰でも誤解というんです!」
「い、いや、でも本当に……」
言い訳を聞いてくれる雰囲気じゃなかった。
「こんな辱め……あなたを殺して私も死ぬ!」
え、えええええっ?
ボクはあわてて立ち上がり、また逃げようとして……そのときに気づいた。
女の子の持ってた刀が、どっかに行ってる。
女の子も、刀がないのに気づいて捜してる。
ボクの視界の片隅に、なにやら細長いものが見えた。
まさかと思って、頭の上を見あげる。
僕の頭の上にある大きな木の枝に、刀が深々と食い込んでいた。
たぶん、勢いよく斬りかかろうとした時に刀が樹に食い込んで、そのまま体だけがバランスを失って倒れたんだろう。
でも、これはボクにとっては好都合なこと。
女の子より、ボクの方が刀に近い。先に刀を取っちゃえば、なんとかなるかもしれない。
ボクは、食い込んだ刀をつかみ、そのまま思いっきりねじって抜こうとした。
ぼきっ。
鈍い音が、聞こえた。
僕の手に残ってるのは……真ん中から折れた刀の残骸。
「・・・・・・・・・・・・・」
また。
なんともいえない、微妙な沈黙が流れる。
女の子の顔が、呆然となり、そして徐々に怒りが浮かんできた。
「あ、あああああぁぁぁっ!」
また、大きな声。
「ち、父上の……父上の形見がぁ!」
か……形見?
「お、おのれ……わたしを押し倒して操を奪っただけでは飽き足らず父上の刀まで!」
え、いや、その……押し倒されたのはボク……
なんていえる雰囲気じゃなくて。
ものすごい勢いでつかみかかってきて、ボクの持っている折れた刀を掴み取ろうとしてくる。
でも、それを取られたら間違いなく……ボクは 今度こそ死んじゃうわけで。
ボクも必死になって取られまいとして、くんずほぐれつしてたんだけど。
その、山の中だし。中腹から上は本当に険しいし。まして足元は湿り気のある腐葉土だったりして。
そんな場所で取っ組み合ってたら……
簡単に足を踏み外して落っこちちゃうわけで。
「わあああぁっ!」
「うわあああっ!」
ボクと女の子は、そのまま崖の下まで落ちていった。
どさっ。
岩にぶつかり、樹に引っかかりながら、ボクと女の子は10メートル近くも崖を転げ落ちた。
何度か樹とかにぶつかって勢いが止められたのと、下が腐葉土だったのが幸いだった。
「いたたたた……」
全身が痛いけど、何とか、立ち上がることはできる。骨折とかもなさそうだ。
で、女の子は……
「……」
気を失ってるみたい。
「このまま……逃げちゃおうかな」
ふと、そんなことがボクの頭をよぎった。
「でも……まずいよなぁ」
夜は結構寒いし、怪我して動けなかったりしたらここだと凍死しちゃう。……いくらなんでも、見殺しにするのはちょっと気が引ける。
「……仕方ないかなぁ」
刀さえ渡さなきゃ、殺されることはないだろうと、ちょっとだけ甘い期待をしたり。
「えっと……骨とか折れてないかな……」
ひょいと、足を持ち上げる。折れてはないようだけど、足首の腫れを見ると、捻挫しているかもしれない。
だけど、こうして改めてみると、やっぱり女の子だと思う。華奢だし、色も白いし。
「……っっ……」
うめき声が聞こえる。やっぱり、どこか折れてるのかもしれない。
「立てる?」
女の子が目をあけたのを見て、そう声をかける。
「……このお……っっ……」
女の子は、とっさに上半身を起こそうとしたけど、そのまま崩れるように倒れる。
右腕が、不自然に腫れてる。
「右腕……か」
「こ、この……」
痛みで朦朧としてるようだけど、目はこっちを見てる。
「動かないで」
腰の袋から、紐を取り出す。そして手近な棒切れを見つけてくる。
折れてるのかどうかわかんないけど、とりあえず添え木をする。
「……っ……」
痛みのせいだろう、脂汗を浮かべている。でも暴れようとはしない。
とりあえず右手と足首に添え木をして縛ると、ボクは女の子を背負った。
「……な、何を……」
「話は後。とりあえず山を下りないと治療もできないし」
「……ち、ちりょうなど……」
「いいから。文句は後で聞く」
ちょっとだけ強い口調で言う。あまりそういうのは得意じゃないんだけど。
「…………」
でも、ちょっとは効果があったのか、黙ってくれた。
女の子とはいっても、やっぱり一人背負って山を降りるのは結構大変。山を降りて、仕事場に戻ったときにはもう夕方近くになっていた。
「…………」
女の子は半分気を失ってみたいにぐったりとしている。
ボクはとりあえず、女の子を畳の上に寝かせると、戸棚から鹿の油とか包帯とか、一通りの治療具を引きずり出してきた。
それから、いくつかの香木。鎮痛や精神安定の効果があるのをいくつか見繕ってきて、囲炉裏に投げ込む。実は、裏山の香木って囲炉裏に入れて焼けばいろんな薬効があったりするんだ。
……なんか一本、変なのが混じってた気もするけど、まあいいや。
「……大丈夫、ボクは怖い人じゃないから」
いつの間にか薄目を開けてボクを見る女の子に、そう声をかける。
「……ここは……どこ?」
「ボクの仕事場。明日、日が昇ったらまた診療所に連れて行くけど、今夜はここで我慢して」
「……みみ……」
「ん?」
「みみ……しっぽ……きつねさん……?」
「え、ああ、うん……いちおう、狐」
「こわくない……本当に?」
「うん、怖くないよ」
そう言って、ちょっとだけ笑う。
「ボクは景佳。木彫師なんだ」
「……」
香木のせいか、少しだけ落ち着いてきた気がする。
「どうして、あんなところにいたの?」
「……わかんない」
「わかんない?」
「わかんない……なんだか、山の中で道に迷って、霧に包まれて……」
「そっか。それで、僕たちの国に迷い込んできたのか」
「…………」
「どうしたの?」
「……やっぱり……こわい……」
「怖い? どうして?」
「……だって……」
それっきり、言葉が途切れる。……不安なのかな、って思った。
モノノケとか妖怪とか、ずいぶんな言われ方をしたけど、ヒトたちの世界では、ボクたちはそんな風に思われてるのかもしれない。
「それでも、安心して」
「……」
「ボクは、怖い狐じゃないから」
「…………うん」
しばらく、じっとボクを見ていたけど、女の子は静かにうなづいてくれた。
「怪我がないか、ちょっと見るから」
そう言って、帯に手をかける。
「あ……」
すこし、抗うようなしぐさを見せる。
「恥ずかしい?」
「…………うん」
「大丈夫。変なことはしないから」
「……胸……さわった」
「い、いや、あれはその、本当に偶然……」
「……ほんとに……?」
「ほ、本当だって……」
「いま……どもった」
「い、いや、だって、その、ほんとに……」
ボクはあわてて何か言おうとするけど、気持ちだけあせって言葉が出てこない。
「……くす」
そんなボクを見て、女の子がちょっとだけ笑った。
「おかしな狐さん」
「…………」
「うん。ゆるしてあげる」
「そ、そう……よかった」
なんだか、この子に振り回されっぱなしの気がする。
「……でも……へんなこと、しないでね……」
そう言って、女の子は目を閉じた。
帯を解いて、着物をはだける。色白の肌が目に映る。
「…………」
女の子は目を閉じているけど、時々恥ずかしそうに体を隠そうとする。そのたびに、怪我の痛みでぴくんと震える。
「痛くないようにするから」
そういいながら、服を脱がせる。
崖から落ちたときに女の子の服は汚れたり破れたりで、けっこうひどいことになっている。こんなのを着せておいたら、逆に破傷風にかかりそうなくらいに汚れてる。
袴と上衣を脱がせ……ようとしたけど、手足の怪我がひどいようで、動かそうとすると痛みで呻く。
仕方がないから、短刀を取り出して上衣と袴を切り裂く。
服を切り裂くと、少しづつ肌が見えてくる。色白の肌にはうっすらと汗の玉が浮かんでいる。
とりあえず上衣と袴を切り裂いて脱がせると、そのまま下帯とさらしも解こうとする。
さらしを解くと、女の子のおおきな二つの胸のふくらみが、ぷるんと揺れた。
「……っ……」
恥ずかしそうに、顔を背ける。
一瞬だけ見とれてたけど、今はそんなことをしてる暇はないから。
頭を振って煩悩を捨てると、そのまま下帯も解いて、女の子の体を束縛する余分なものを全部はずす。
「えと……外傷は……」
全裸の女の子の体を、じっくりと見る。
もちろん、変な下心なんてないから。これは全部、治療のため。外傷の確認のため。うん。
大きな怪我は、右手の骨折と足の捻挫だけ。体のほうはそんなに大きな怪我はない。
鹿の脂を巻いて、その上から包帯をして添え木を当てる。応急処置だけど、明日診療所に向かうまではこれでいいだろう。
「痛い?」
「……ちょっと……いたい」
「ごめんね」
「……いいよ。あやまんなくても」
「……あんまり、動かさないほうがいいかな」
「だいじょうぶ……そんなに気にしないで」
「そういえぱ……」
「何?」
「名前……なんていうの?」
「……かなえ」
ぽつりと、女の子はそう言った。
ぱちぱちと、囲炉裏の中で香木が燃えている。さっき放り込んだのは、鎮痛と精神安定と……あと何か変なの……
……って……たしかアレ……
たしか……催淫の香木だったような……
ぶんぶんと、頭を振って変な記憶を捨てる。いや、そんなはずはない。それだけはありえない。
「どうしたの?」
「あ、いや……なんでもない」
「ねえ……きつねさん」
「え?」
「その……なんだか……」
「何?」
「むねが……どきどきしてる。なんだか……からだがあつくて……」
「…………」
やな予感って、必ずあたるんだよなぁ……
「ねえ……きつねさん……」
「え、え?」
「なんだか……へんなきもち」
「そ、そう? ……えっと、そうだ……そろそろ眠ったら? 疲れてるでしょ?」
「ねむれない」
かなえが、変に熱っぽい目をこっちに向ける。裸で、そんな潤んだ目を向けられるとボクの方が困るんだけど。
「ねえ……きつねさん」
「……」
「いじわる……しないで」
……こういう時って……ボクはどうしたらいいんだろう……
(後編に続く)
……剣術少女とのコメディって言ってたのはどうなったよ自分。
予告と投下内容がずれるのはよくあることだけど、これはさすがに駄目なような気が。
後編でエロがてらにいろいろ立て直します。
えと、今回一人称というのに挑戦してみたんですけど、やっぱり難しいかも。
まあ苦労すれば、それはきっとSS書きとしては身になるんだと信じてがんばって後編仕上げます。
GJ!!
つ…つんでれヽ(´▽`)/
GJです!続き投下お待ちしております
よきかなよきかな めらぐっじょぶ
惜しむらくは景佳くんの外見がわかんないことだろうか。獣人なのかマダラなのかさっぱりなのでシーンが想像しづらいっす。
ともあれ、続きをテカテカしながら期待してます。
GJ!
>>35 >「みみ……しっぽ……きつねさん……?」
「え、ああ、うん……いちおう、狐」
これらのセリフ見る限りではマダラな希ガス
>37
となると百合ですな?イイヨーユリイイヨー
39 :
20:2005/07/10(日) 21:51:13 ID:VRr0/pGA
……ごめんなさい。
後編は明日とか書いてたくせに思いっきり遅れてます。
その、気長にお待ちいただければ……
遅れる分、きっとよりよくエロいものにしますから。
40 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/10(日) 22:06:14 ID:XyRRtuHR
39
ガンガレ、いつまでも待っているぜ!
>>39 よりエロいものに期待大。
お待ちしております
狐さん楽しみにしながら〜
蛇短編
私のご主人様は蛇です。そして、私は蛇が大嫌いです…
数日前から何となく嫌な予感はしていました。今朝、落ちている『それ』を目にして確信しました。
調べてみると、『それ』まだ新しい物らしく少し濡れたようにしっとりとしています。
もし私の思っている通りだったらとても危険です。
急いでここから出て行かないと取り返しのつかない事態にります。前回の時嫌と言うほど思い知りましたから。
「今日中にやってしまわないといけない大切な用事があるんだった。急いでやらなくちゃ!」
ご主人様に聞こえるようにわざと大きな声を出して家から逃げ出せ……ませんでした。
いつの間にか(気配消して人の後ろに立つ所も嫌いです)尻尾が私の腕をしっかり掴んでいました。
そして甘えるように頭を頬に擦り付けてきます。
鱗の感触が…いつもと違ってもっちりと張り付くような感じです。
やばいです。これはとてつもなくやばい兆候です。
「ご主人様、今日はた〜〜〜〜〜いせつな! 用事があるのです!!」
「ん〜。」
「ん〜じゃなくて、離してください。」
「ん〜。」
「って、ちょっと、尻尾を巻きつけないで下さい! きゃぁ、何処に連れて行くですか〜〜!」
巻きついた尻尾で軽々と持ち上げられ(尻尾がほぼ筋肉で出来ている所も嫌いです。)
ふかふかの絨毯の上に下ろされました。
ご主人様をみれば…嫌な予感的中、素っ裸です。
体中なんていうか搗きたてのお餅みたいにもっちり
していて、それでいて艶やか。そう、言うなれば産まれたばかりの赤ちゃんのよう。
はあ〜〜〜やっぱり朝方に脱皮したようです。落ちていたのは脱いだ古い皮。
(さすが爬虫類! でも脱皮する所も嫌いです。)
脱皮したては少し興奮気味になっていていつもにましてしつこくなります。
「駄目です、だめ〜〜! 本当に今日中に終わらせないといけない用事があるんです!」
「ん〜、だって、ずっと触れなかったから…ね?」
「ね? じゃありません! あ、ちょっと脱がしちゃ駄目です〜〜〜」
「すぐ終わらせるよ、中に出さないように頑張るから、ね?」
「イヤです! 何朝っぱら盛ってるんですか〜〜」
首傾けながら「ね?」って言われても蛇だから可愛くも何ともありません。
じたばたすればするだけ押さえられる力は強くなる一方で。(狙った獲物は逃がさないって所も嫌いです。)
かといって諦めたらきっと夜までネチネチと弄られて放してもらえない。
「わ、わかりました、1回だけですよ。すぐ終わらせてくださいね、絶対に中で出さないで下さいね!」
「うん。了解〜。」
…て元気よく返事をしたその口は嘘しか紡ぎ出せないのでしょうかね…?
舌と手と尻尾でねちっこく愛撫され(これだけで何十分かかった事か。)
体中の力が抜け、腰砕け状態になってから焦らして焦らして、お願いするまで入れてくれなくて。
「ご主人…様、お願い……」
「ん〜、な・に・を?」
「ああっ…い、いじわる、しないで…よぉ…」
「ん〜、入れた途端に俺イっちゃうかも…いい?」
「へ?」
私の返事待たないでググッと私の中に押し入ってくるご主人様の熱いモノ。
待ちわびたその感覚に声にもならない悲鳴上げて情けない事に軽くイってしまう私。
両足抱えて勢いよく打ち付けられて(ご主人様余裕無い…)
中で質量が大きくなるこの感じは…
「や、だめ…ん、んっ………抜…て…」
「ん、無理っ…ぽい。」
「や、ああっ…やだやだ、嘘つき…!!」
あっという間に私の中が熱い物でいっぱいになった。(ああ、まだ出てる。)
蛇にも色々あるみたいだけど、ご主人様のそれはその最中にどんなメカニズムなのか先が二股に分かれる。
(根元から2本あるヘビもいるらしい…)そして射精すると膨脹する。何時間…も。
膨張すれば抜けなくなる訳で…だから嫌だったのに…
何でヘビの交尾(の後)ってこんなにしつこくて長いんですか〜〜〜〜
ああ…これで夜まで開放してもらえないのは確実で…
あん、尻尾がお尻を弄りはじめた…2本挿しなんて、2本挿しなんて、変な性癖私に押し付けないで〜!!
次の日は何も出来ないくらい疲労しまくってるんだろうな…
と思いながらチロチロと伸びて来たご主人様の舌をカプリと咥えてやった。
全く、本当にヘビなんて大嫌い…
でもそれ以上に嫌なのは、そんなエロエロご主人様を受け入れるてしまっている自分だったりします…
勝手に脱皮しちゃったり、尻尾あったり、二股だったり、膨張して抜けなくなったり
で、ごめんなさい。蛇担当の方…
おっけえおっけえイイヨーイイヨー
グッドジョブ、グッドエロス、いやむしろステキエロス
設定も何の問題もないです。
いや、問題になるようならてきとーにこっちの設定に言い訳つけますんで、
やりたいようにれっつごーですよ、奥さん。
キツネもヘビも(・∀・)イイネ!!
脱皮って結構エロいなー、とか。
誰もいない…投下するなら今のうち|ω・`)コソーリ
投下しよう…と思ったけどやっぱ無理ス。穴が結構あったのでもうちょうい推敲してからで…|ω・`)
正座して待っていますよ。
どうか早めにおながいします(´▽`)ワクワク
仕事しながら待つことにしましょう(オイ
多分、深夜ぐらいには出会い編まで完成するかもしれない…|ω・´)
因みにナチス絡みなので嫌いな人にはスルーを推奨しておきます…|ω・`)
心配なら伏字とか txt 投下でつよ!
55 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 23:55:02 ID:/CbbCMRB
一番国土が広いのはどの国だろうか、と
53の人はどうしたのか、と
57 :
『あしたら』:2005/07/16(土) 01:58:33 ID:+ZbaXa+k
<<55
いきなり現われて個人的な意見ですが・・・
国土の広さならダントツに『イヌの国』と自分設定。
山がちの国ながら唯一、『ネコの国』に続くなだらかな丘陵地が穀倉地帯になってる感じ。
限定的な場所ながら基本の国土が広いので生産力は多い。(東西は山脈)
ただし、作物は山を越えて国民に行き渡るよりも、坂を下ってすぐに大消費地である
ネコの国の首都、『シュバルツカッツェ城』に輸出したほうがコスト的に楽、かつ利益が
出るせいか、『イヌの国』の庶民に作物がなかなか行き渡らない・・・
そして勤勉ではあるが、山国の田舎者の『イヌ』達は都会のやり手の『ネコ』の商人達に
買い叩かれてしまう事が多く、『イヌ』が『ネコ』の国民に対する感情の悪さは募るばかり・・・
そして今日もじわじわと丘陵を畑に変えて行く勤勉な農民(小作農)達・・・これは
ネコの国との国境にじわじわと近づいていく、ということでもあって・・・
なぁんて勝手設定・・・。他の職人さんはホントに気にしないでね。
『イヌの国』は農業国だけど、主要産業ではない・・・という事ならどうかな。
えっと、ほら、魔剣とか作ったりしてます。
『あしたらU』は今月中に・・・と言ってみるテスト。@です。
あ〜、あしたらさんだぁ!
今月ですかぁ、わくわく……
さて、そうなると見聞録の人とあしたらさんの設定のいずれにも矛盾しない作物が…………あったな。
生産高がやたらと高く、国土が痩せてても土地さえあればいくらでも育つ……
それは、ジャガイモとカボチャ!
そして水捌けの悪い土地でレンコン栽培。
これで矛盾が消える……のか?
農耕用魔法が有ってもおかしくないと思うけどね。
あと、ソバとサツマイモが定番だな>救荒作物
そういえば、作物の種なんかも落ちてくるんだろうか。
ヒトの世界にない作物でもいいと思うけどね
あしたら…
もの凄い(・∀・)ワクワク
>>58 >矛盾
狗国見聞録が、あしたらの約50〜100年前と (勝手に) 解釈すると矛盾消えるみたいでス
>>57 >ネコの国との国境にじわじわと
がくがく
>>61 まるまると育つ球根が可食部分とか?
百合根みたいに。
あしたら期待sage
>>57 今日も今日とて、ネコの国との国境に向けてじわじわと
勤勉なイヌの小作人たちは精魂込めて、穀物畑を増殖させてゆく。
しかし、流石に『このまま逝っちゃうと、ちょっとマズイんじゃね?』
の声が上がり急遽、作付け奨励植物を“またたび”に統一して
余計な衝突を回避しようと画策するスカポンな大地主たち。
当然『……あまりにも露骨過ぎ……』の突っ込みが入り、結局
ネコの国との国境付近のなだらかな丘陵地は見渡す限り
“キウイ”畑が広がるはめになってしまいましたとさ。
なんの解決にもなっていませんですか、そうですか(´・ω・`)ショボーン
>>66 むしろイヌの小作人と結託してマタタビ自生地を隠匿するネコのマフィアとか・・・・・・。
いかん。脳がサイパン状態になっている。
いや、ナンカおもしろい方向にいってると思う
おもしろいかあ?
王城追い出された元姫が召使いと仲間を集めてマタタビ密売組織をつくり、
マタタビを抱えて密入出国する途中で匂いが漏れて興奮してしまい仲間同士で乱交になるとか、
ネコの辺境警備兵に追いかけられ魔法でぶちまけられたマタタビのせいでなし崩し的に敵味方同士で乱交になるとか、
小作人との交渉中に品質確かめる為に舐めてみたら興奮してしまい異種族で乱交になるとか
そんなトンチキチンピラピカレスクロマンが読みたいのかっ!?
・・・・・・読みたいな。
マタタビを密輸する時、
ネコが運ぶ→自爆する
イヌが運ぶ→怪しまれやすい
ってことでヒトが運び屋になる、とか。
>>370 そういやトリの運び屋の話書いてる人がいたなぁ。
ネコの国ではマタタビは禁制品?
こちむいの2で高純度マタタビが危険な媚薬になってたな。
あぁ、願わくばこのスレに御降臨遊ばされる
数多の神々の内の一柱たりともが
『OCNの災い』に巻き込まれていらっしゃらない事を
伏して伏してお祈り奉りまするぅ〜
昨日からどこも人が少ないと思ったら、
OCN(及びぷらら他)が大規模規制を食らってたのね。
携帯な俺には何のことか分からん
規制解除されたようなので、あしたら期待sage!
狐の人と狼辺境の人と兎の人と
>>50の人にも期待sage!!
あんまり期待を表明するとプレッシャーになるぞ。
そういうわけで、俺のキンタマをみてくれ。
コイツをどう思う?
つ
ω
>>79 下がりすぎです。ヘルニアの疑いがあります。
象の奥さんにスカトロプレイをお願いしてどっ引きされるライオンのおじさん
ごめん
そういえば、ネコ以外の種族でも
男には獣人型とマダラ型の区別があるんだろうか、とか。
>82
今書いているSSではありにしているけど、他の書き手さんはどうなんだろうか?
>>83-84 私の書いているものもありですね。
出すかどうかはまだ分かりませんが。
こちむい世界観に準拠が原則かなー。マダラ型にはおいそれと触れたくない。
マダラ型に対するオモシロ解釈があれば使わせてもらいそうだけど。
で、そんなことよりなにより
こ ち む い マ ー ダ ー ! ?
87 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 01:06:19 ID:yZ6ahjF5
落ち着けっ!まだあと7日あるっ!
俺たちに出来るコトと言えば、すっぽんぽんになって正座して待ち続ける事だけだっ!!
待つのはいいが、上げるなよ。
不意打ちageの罪状により、石の膝掛け追加だ
>>87。
>>87 とりあえず座布団でもどうぞ。
つ △△△△△△△△△
……って、自分も早急に狐っ子の後編と連載の方を再開しないとマズいけど……
結局、
>>87が一番落ち着いていない罠。
>>85 あれ、こちむいでネコ以外のオスの外見についてどっかで言及あったっけ?
こちむいの外見パターンをそのまま自分の書いてる種族に当てはめる
てなことじゃなかろか
SS保管庫の世界観で種族についての説明が書かれてあった気がする
93 :
90:2005/07/25(月) 00:30:21 ID:leNaX8ah
こちむいの設定見てきた。
>男性は3種類。
>一つは、狼男のような半獣人タイプ。そして、『トトロ』のようなモグラのようなもっさりとしたタイプ。
>もう一つ、女性と同じ外見を持った『マダラ』と呼ばれる タイプ。
>それぞれのタイプの割合は約60%、39%、0.2%というところ。
>多種族がどうなっているかは不明
だそうだ。多種族は他種族の誤植だとすれば、結構自由に決めていいっぽい。
>>90 そうみたい。
パーセンテージさえいじればどうでも設定可能かな。
マダラの100%の世界も可、という事だっ!
前々から思っていたけど残りの0.8%はなんだろう?
ここのSSの獣人って、ただケモ耳と尻尾がついてるだけ?それとも完全に姿が獣っぽいの?
>>96 女の人は全員ケモ耳と尻尾がついてるだけ
男の人は両方いる
でも明確に姿が獣っぽいのだって表記があったのは
狗国のジーク君と「ん〜」が口癖のヘビのご主人様だけだったように思う
景佳君やリュナ卿はここ一番の断定的な描写が無いのでなんとも
ファルム様は女と見間違うほどの中性的な美男子
なんというか、独特の世界観だよね
ただけもの耳とか尻尾があればいいというものではないし
そんな俺はこのスレ大好き
>>97 えっと、景佳くんの外見は、サモンナイトに出てくるガブリオくんを少し黄色くして着物を着せた感じです。
100 :
名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 02:05:24 ID:wWupdALn
百ゲトあげ
>>97 えと。
リュナに関しては、人間体に角と尻尾がついてます。髪の毛がカモシカ色wというかシルバーグレイ。
ただ、人間より背が高くて、その割にかなり華奢に見えます。無駄な脂肪とかがなくて(人間だと不自然なくらい)すらりと引き締まった感じ。
少なくともガ○ルマン見たいな外見じゃあないですw
で、ネコの仲間なんだけどちょっとだけネコと違うのがライオン、つまり獅子の国のフェイレンです。
普段はファリィとかと同じで、人間体に尻尾、あと頭にライオン耳、ちょっと大き目の犬歯。髪の毛が鬣に似た感じでぼさぼさと。つまりマダラですね。
で、ネコとの違いは……普段はマダラで、ある条件を満たすと一定時間、獣人体に「変身」できる、というところ。
体毛が生えて、鬣も立派になって、爪と牙が伸びて、ついでに身体能力が大幅に向上します。
(SRPG風に言うとSTR、VIT、AGR、DEXが各1.75倍、MOV2倍、JMP3倍。技使用時の消費スキルポイントおよび技硬直時間が半減)
……まあ、フェイレンはまだ変身できないんですけどね。
ここのスレにSS書くときって、各国(話)ごとに魔法発動の設定やら、そんなのを勝手に決めていいの?
う〜んと、魔法の設定には意外と差がある
大まかな上限 (というか猫国のフローラ様) が決まっていることに注意して、みんな自分で決めちゃってるんですね
設定は……まとめ wiki を見てもらったほうが早いですスマヌ
魔法とか小難しい設定全然出てこない、ただエロ三昧の話も大歓迎ですのー
じゃ、ある程度なら自由設定なのか。
エロ三昧だけでもOKなのか。
じゃ、種族は実在する動物以外はどうなの?たとえば・・・ドラゴン(竜、龍)や、グリフォンとか。
後、土地に関しては色々あるらしいけど、勝手に増やしたりしていいの?たとえば島とか、森とか。
>106
俺なんて別大陸の話を書いている。しかし、流石にこれは許されるのだろうか?
え。いいんじゃないの?
書き込まれた時点で遡って過去が決まるかと
ぶっちゃけ書いたもの勝ち
待ち続ける・・・・。
で、あしたらさん・・・
こちむいを…待ちますよ
お暇なときにでも是非お願いします
他の人達も待ってやれよwww
>>114 いあ、もちろん他の方も待ってるがあしたらは7月中に投下するかも、ぽいことを言ってたからさ
ちょ、なんか前スレ盛り上がってね?
前スレようやく埋まったみたい
「さあさあ、現実逃避しても無駄よ〜♪」
ボスン。と参謀さんの自室の床に突き倒される僕。
どうでも良いんだけど、絨毯の毛の長さから、どれだけの金がココに回ってきているのかは推測して欲しい。
「剥ぐにゃ♪ 剥ぐにゃ♪」
完全に乗り気な参謀さんと御主人様に、為すがままに服を脱がされていく。
パンツだけになったときに、参謀さんがポツリとつぶやいた。
「……完全に無抵抗っていうのも、なんかつまらないわね」
「泣いても良いんですか……」
「うふふ。それでも良いんだけど、今日はね〜」
ぼふ、と音を立てて、大の字に横になった僕の顔面に、参謀さんが圧し掛かってくる。
俗に言う顔面騎乗ってやつ。参謀さんは下着脱いでいなかったけど、息が……息が……。
「ん゛ん〜〜〜!!」
「にゃふふふ。あったにゃ」
ごそごそと何かを探していた御主人様が、僕の両膝に何かの器具を取り付けた。
キリキリとネジを巻く音。次第に、ピッタリと閉じた両膝が強引に開かされていく。そして、
「んん゛んんん!!!!!!!!!!!!!!!!」
フワフワとした、それでいてチクチクする毛みたいなのが、僕の内股を往復している。
「にゃふふふふふ〜。“ねこじゃらし”の拷問を受けるにゃ〜♥」
くすぐったさに暴れようにも上半身も下半身も動かないし、腕も参謀さんに押さえつけられてて……
……って、指しゃぶらないで下さい参謀さん!!
「2本あるにゃ。体中をこちょこちょするにゃ。地獄の責め苦を味わうにゃ〜♥」
って脇腹だめですワキバラ!! そこ弱……あ、ちょ、ダメ、ダメっ!!
「ふふふ……。さ〜て、お姉さんは何しようかなぁ……」
左手で僕の腕を掴んだまま腰を上げる参謀さん。
「ぷはッ………んん゛っ!!」
息を止められてた分大きく吸い込んだら、参謀さんが唇を重ねてくる。しかも空いた右手でワキをくすぐりながら。
「んふ……。気持ち良い? でも、コレくらいで参ってちゃ、だ・め・だ・ぞ♪」
そのまま参謀さんの右手が、既に固くなってた僕のモノをパンツ越しに撫で上げて……。
【前スレ 670 の続きです。折角なので投稿。これ、スレ移行後の埋め立て時に皆でやると面白いかも知れませんね〜】
>>119 ぐっじょぶ
確かにこのリレーは埋めにちょうど良いな。
122 :
虎の子:2005/08/09(火) 23:35:15 ID:USDlbaMd
近日中に投下の予定、忘れられているかもしれない感じ。
投下するのは前スレ? それともこのスレの方が良い?
前スレは 500kB 越えてるんで、こっちのスレへ m(_ _)m
ミリアたんキターヨ
夏休み。
…………夏休みってなんですかー
・・・・・・さあ、何なんでしょうねー。
夏休みとは・・・SS書きを休むための口実さ・・・。
いや、暑さにまけて本当に進まないんですってば。
今、ウシ娘とウナギ娘が登場するSSを書いている。
しかも別大陸という設定なのだが…駄目だ。中々進まない。
俺も暑さでKO中…俺を異世界に落としてくれぇぇぇぇぇ!!!
ウナギ娘ってどんなんやねん?
・・・ヌルヌルが天然ローションとか?
土用の丑コンビだから義姉妹どんぶりではないかと
大陸がどうのこうのという設定は最初に考えねばいけないのだろうか、もしかして…。
132 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:46:08 ID:UyMglRcg
遅れながら、投下開始します。
133 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:46:48 ID:UyMglRcg
「―――何やってんのご主人様?」
翌日、セリスは未だに自室でへたり込む主の姿を見て怪訝な顔になった。
とうの昔に麻薬の効果は切れているはずなのだが、
「は、話が違うじゃない。全然痺れが取れないわよ」
「え、そんなはずないけど」
「実際そうなのよ!!」
「う〜ん」
セリスは可愛く小首を傾げて考える。
薬の調合は完璧なはずだった。
さすがのセリスも主にいい加減な物を飲ませる訳にも行かず、何度も組成を確認しているため、そうそう間違いが起こるはずもない。
「……………あ」
「何? 何なの?! 一体どうしたの?」
あまりにも呆然としたセリスの表情に、ミリアは思いっきり不安になった。
「よく考えたら、この麻薬って人間用だったんだよね。通りで効果が消えないはずだ。ご主人様って人じゃないもんね」
「そ、それだとどうなるの?」
「ま、効果は変わらないんだけどね。効き過ぎて困るってだけなんだよ。参ったねー」
「『参ったねー』じゃない!! 速く元に戻してよ!!」
泣きそうなミリアに対してあはははと笑って誤魔化す無責任な下僕であった。
134 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:47:30 ID:UyMglRcg
「まあまあ、下手したら心臓が止まってたんだから、少しは喜びなよ」
全く持って嬉しくない慰めである。
「げ、原因はあんたでしょう!?」
「それはともかく、さっさと直さないとね」
ミリアの言葉を軽く流して、セリスは手を伸ばした。
「あれ、ご主人様、どこか悪いの?」
「べ、別にどこも悪くないわよ」
そうは言う物のミリアの様子はどこか違和感があった。
一見すると普通だが体が震えて眉間に皺が寄っている。
まるで何かに耐えるかのように―――
セリスは口元に手を当てた。
吊り上がった口端を隠すために―――
「実はご主人様、その薬は情事の時に使う物なんだよね」
「情事?」
「つまり、セックスだね」
「なっ!?」
その言葉にミリアは耳まで真っ赤にする。
135 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:48:25 ID:UyMglRcg
「それでこの薬は、特殊なプレイをする時に使う物なんだよ。縄とかを使わずに相手の自由を奪うための物なんだ」
「と、特殊なプレイって?」
「拘束プレイ」
どこか躊躇いがちに訪ねるミリアに、セリスはあっさり答えた。
「拘束プレイって、あの」
ミリアは、勿論その意味を知っている。
ただでさえ耳年増な年頃の上、娯楽の乏しい田舎に置いて恋愛や性に関しては都会より進んでいる事が多いのだ。
それどころかセリスに処女を奪われた影響で、他の娘から一歩リードしているぐらいである。
「な、何でそんな薬を使ったのよ!?」
「いやー、調合が簡単だから作ってみたんだけど、まさかこんな事態になるとは思っていなかったよ。これからは気を付けないとね」
「そんなことはどうでもいいから、早く治してよっ!!」
どこかせっぱ詰まったようなミリアに、セリスは肩をすくめた。
136 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:49:20 ID:UyMglRcg
「まあ、治すのは簡単だよ。僕の精液をご主人様の子宮の中に注げば良いんだから」
「それって、もしかして―――」
「うん、早い話がセックスすれば治るよ。元々、それように作られた薬だからね」
苦笑するセリスにミリアは顔を真っ赤にする。
「じょ、冗談じゃないわ!! 他の方法をないの!?」
「それがイヤなら、後数時間ほっとけば治るよ。ま、情事をしたくないんなら待った方が良いね」
「ちょ、すぐには治らないの?!」
「……………ご主人様、どうしてそんなに急ぐ訳、何かあるの?」
「な、何にもないわよ」
そう言ってそっぽを向いてしまう。
ミリアにも分かる程度の不審そうな顔を演じながら、セリスは笑いを噛み殺した。
「それなら良いけど―――じゃ、僕は仕事があるから退散するね」
「ま、待って」
退出しようとした時に呼び止められ、セリスは不思議そうに首を傾げた。
勿論演技で―――
137 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:50:07 ID:UyMglRcg
「どうしたの、ご主人様?」
「そ、その、もう一つの方法試してみてもいいかなって―――」
「ご主人様、本当にどうしたの? いつもなら絶対イヤって言うくせに」
セリスの非常に不審そうな視線の演技は正に絶技であった。
相手に不信感を認識させながら、真の目的は隠したまま視線を合わすのは、単純な人間にはとても行えない技術である。
「た、単なる気まぐれよ。他の理由なんて無いんだから――」
「えー、だけどなあ。僕って清廉潔白だから、そう言ういい加減な事はしたくないんだよね」
「あんた、毎晩やってるでしょうが!!」
彼女の叫びの通り、セリスは半ば強引に毎夜ミリアと体を重ねていた。
毎回毎回言葉では拒絶するのだが、気付いた時にはセリスのテクニックですっかり快楽に酔わされ、翌朝まで体を貪られるのだ。
「それは対価、仮にも魔王を下僕にしてるんだからそれぐらい我慢しなよ。第一ご主人様だってそれなりに楽しんでるじゃないか」
「あ、あれは――」
頬を染めて言い訳を言おうとしたミリアをセリスは黙らせた。
自分の唇で―――
138 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:51:04 ID:UyMglRcg
舌を差し入れてミリアの口内をゆっくりと味わっていく。
歯を磨いていないミリアの口の中は微かにクッキーと紅茶の味がしたが構わずそれも味わう。
何度も体を重ねてそれなりの反応を返すようになったミリアだが、その舌使いはまだまだ稚拙で何とも微笑ましい。
セリスの舌はミリアのように速く動かず、ゆっくりと緩慢にそしてネットリとミリアの口内を弄ぶ。
歯茎の裏、舌の付け根、頬肉をある時は突き、ある時は舐め、ある時は素早く擦る。
反撃に転じようとするミリアの舌を翻弄して、快感を感じるポイントを的確に付いていく。
口を塞いでいるので息づかいは分からないが、荒い鼻息はそれが息苦しさだけではない事を濡れた鳶色の瞳が証明していた。
キスのせいでただでさえ薬で弛緩している体から力が抜け、ミリアはセリスの胸にもたれかかるような体勢になる。
「ご主人様の唾液って美味しい」
天使のような美少年であるセリスが美味そうに唇の周りに付いたミリアの唾液を指に絡めて舐め取る姿は、それだけで女性の欲情を掻き立てる程扇情的だ。
しかもその唾液が自分の唾液であればミリアでなくともどきどきするだろう。
しかし、その一瞬後には悪魔のような邪悪な笑顔を浮かべている。
「ふふ、ご主人様ってすぐ顔に出るね。そんなにキスが良かったの?」
「……………」
「赤くなちゃって可愛い」
耳元でそう囁いてやるとミリアの顔が更に赤くなる。
ミリアの服装はジーンズにシャツという動きやすい格好をしているので、セリスはシャツをまくり上げその胸を露出させた。
相変わらずそこはスレンダーであったが、セリスが焦らすように爪先を円を描くように動かす。
「ひゃ」
痛むようなむず痒いような微妙な感触にミリアは身をすくめる。
次第に速度を速め、それにつられてミリアの性感も上がっていく。
139 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:52:13 ID:UyMglRcg
「うくっ」
いつもの事だがミリアは行為の途中、声を押し殺そうとする。
声を上げるのが恥ずかしいのもあるが、ほとんど意地で人を玩具にするセリスに抵抗しているのだ。
そう言う態度がセリスを喜ばすともしらずに――
「ご主人様、気持ちよかったら声出してね。そっちの方が愉しいし」
「だ、誰が声なんて―――」
わざわざミリアの羞恥心を煽って頑なにさせるのも毎回の事だが、ミリアは未だにセリスの真意に気付いていない。
「ふ〜ん、残念だなー」
そう言いつつ、ミリアの首筋を甘噛みする
びくっと体が震えるが声は出さない。
ゆっくり、丹念にすぐにイってしまわないように舌を這わせ、歯で擦り、指で唾液を塗りたくって愛撫した。
「い…………あう………うく………」
体に力を入れて抵抗するが、そうすると神経が余計に過敏になって快感が伝わりやすくなる。
快感をある程度積み重ねると、セリスは腕で胸を揉みほぐしミリアの体を抱きかかえた。
決して大きいとは言えないが、ハリのある胸をセリスは口にくわえる。
そこもゆっくりじっくり愛撫すると、乳房を舐めて、乳倫に吸い付く度にミリアは小さく反応する。
端から見ていると赤子が母のミルクをねだっているような感じだが、そのような純粋無垢な行為ではない。
「ひゃうっ、そこは」
ミリアは必死に口をつぐんでいるが漏れ出す声は止まらない。
「あれーご主人様、声出さないんじゃなかったの?」
セリスが意地悪そうにそう言うとミリアは慌てて口を閉じた。
そんな主の様子に苦笑しながら、彼はジーンズを降ろす。
140 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:52:51 ID:UyMglRcg
「毎度思うんだけどさ、もう少し色気のある物を履いた方がいいよ」
「よ、余計なお世話ひゃああああああああああっっ!!」
純白の下着に手を這わせ、敏感な所を布越しに擦るとミリアは呆気なく声を上げた。
「駄目だなあ、そんなに声出したらみんなに聞こえちゃうよ」
そう呟きながら尿道の入口をノックする。
「そ、そこは駄目!!」
「何で?」
必死で止めようとするミリアにセリスは無邪気に首を傾げる。
「何でってそれは―――」
そこまで言ってミリアは口をつぐむ。
「よく分からないけど、ともかくやるからね」
「止めろって言ってるでぐうっ!?」
尿道を抉るような指の動きにミリアの眉間に皺が寄って、脂汗が流れる。
「ご主人様ー、あまり力を入れると痛いだけだよ。ほーら、リラックス、リラックス」
まるで赤子を宥めるかのように脇腹を優しくさする。
「ひうっ、駄目」
「もう、強情だね」
必死になるミリアにセリスは諦めたように指を離した。
しかし彼女が安堵の息を付こうとした瞬間、セリスが指をその秘所に突き込んだ。
「みゃあうっ!? い、いきなり、ひゃう」
油断した所に一気に突き込まれたため、かなり深くまで指が入り込み、その指がミリアの胎内を擦った。
「ご主人様って、ここが弱いんだよね」
セリスがミリアの急所の周りをゆっくりこする。
入口からおおよそ指一本分の長さ、腹側の膣壁がミリアの急所の一つだった。
と、突然、セリスの指先がミリアの急所を一気に擦りあげる。
「ひゃああああああ!? やあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「ご主人様、いっぱい気持ちよくなってね♪」
罪のない笑顔でセリスは急所を擦り続ける。
「やぁっ、擦っちゃ駄目え、しょこは駄目なの!!」
「嘘ばっかり、気持ちいいくせに」
あまりの快楽に舌がもつれ頭を振りたくるミリアに耳を貸さず、セリスは容赦なく指を動かす。
「やああああああああああっっっ!!」
擦られた刺激が快感に変換され脳髄を叩き、ミリアは絶叫する。
自由になる首から上を振り乱して、快感から逃れようとするが、ミリアの行動パターンを熟知しているセリスにとってはかえって逆効果だった。
腰を離され仰向けに倒れる所を、指を曲げられて膣に引っ掛けられる。
実質、ミリアの急所を指が抉る形になった。
「引っ掛けちゃだめぇぇぇぇぇぇえぇええええぇぇぇぇ…え?」
絶頂に達しようとした寸前、セリスの指が止まる。
同時に倒れ込むようになったミリアを優しく抱き留めた。
「ど、どうして止めちゃうのよ?」
うっかり口を滑らせてくれた主にセリスはにんまり口を歪めた。
「あれ、ご主人様止めろって言わなかったけ?」
「だ、だって、あんなのずるいわよ」
相手の揚げ足を取らないと気が済まない召使いの言葉に、ミリアは恨めしそうな視線を向ける。
「これだけ濡れてれば充分入るね」
濡れそぼったミリアの秘所にセリスは指を這わす。
「ちょ、ちょっと待って」
急ぎ自分の物を突き入れようとするセリスにミリアは待ったを掛けた。
「何、ひょっとして今更イヤになったの?」
「そ、そうじゃないけど、その――――ちょっと待ってくれない?」
「………………ご主人様」
「え、えと、別にイヤになった訳じゃなくて、そのあの、やっぱりもう少し待って」
非常に不機嫌な顔をする召使いにミリアは慌てて弁明する。
「…………ま、いいけどね――少しだけなら」
「え、あ、本当!?」
普段なら絶対渋るはずの申し出を、セリスはあっさり了承した。
当然というか何というか、その唇が歪んでいることにミリアは気付いていない。
141 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:54:55 ID:UyMglRcg
数分後
「で、もう良い訳?」
「ええと、うん――もういいわ」
セリスの言葉ににミリアは頷いた。
さっきまで火照っていた体はだいぶ収まってきている。
これなら大丈夫だろう。
「じゃ、いくよ」
そう言うとセリスは自分の物をミリアの中に突き入れた。
「あう」
何度やっても慣れることのないこの瞬間、
決して不快ではない、それどころか快感を伴う出来事でありながらミリアはこの行為が大嫌いだった。
「あ〜、ご主人様凄い嬉しそうな顔してる。そんなに気持ちいいの?」
毎回ムードなんぞ時の彼方に置き忘れた召使いの言葉が、ミリアの神経を逆なでするからだ。
「き、気持ち良くなんてないわひゃうっ!?」
「えー、本当?」
胸の先を舌先で転がしながらセリスは嬲るように言う。
「ば、馬鹿、そこは――」
一旦、静まったはずの身体の火照りが再び再燃する。
しかし、セリスは構わず繋がったままミリアを抱き寄せた。
身長差があるのでミリアの胸のあたりに顔を押し付けることとなり、セリスはそのあたりに重点的に舌を這わせながら腰を動かすのだ。
「あひゅ、そんな、いっぺんには駄目―――」
大きな刺激を中心に複数の小さな刺激がミリアの体を走る。
そして徐々にしかし確実に、その体には快楽が積み上がっていく。
と、唐突にセリスの腕の動きが止まった。
それに連動するように腰の動きも止まる。
「え、どうして―――」
困惑するミリアは、自分の胸元あたりにあるセリスの顔を見た途端絶句した。
天使のようなセリスの容貌、そのまま天使のような笑みを浮かべている。
「ご主人様―――」
「な、何?」
非常にイヤな予感がしてミリアは反射的に後退ろうとした。
もちろん、薬のせいで実際には全く動けなかったが――
「覚悟してね」
言葉と同時にセリスの手が動き出す。
「ちょ、何考えてひゃいぃぃぃぃぃぃぃっっ!?」
先程までゆったりしていた愛撫が突然激しい物になる。
乱暴に胸を揉み砕き、肌に歯を立てる。
しかし、ともすれば苦痛になるだけのそれが、全て快楽に昇華されているのだからセリスのテクニックはかなりの物だ。
「あひゅ、ひゃひゅ、ひょっととめて」
下火になったはずの全身の快楽が油でも注がれたように一気に燃え上がる。
(な、何これ、か、体が熱い)
セリスに触れられてもいないはずの部分まで熱を持ち、体中が火照ってくる。
「ひゃあ、セリスわひゃしなにかひぇん」
当然である。
先程までのセリスの愛撫は言わば無自覚のうちに焦らしていたような物なのだ。
ゆっくり、少しずつ確実に快楽をため込み一気に爆発させる。
その威力は普通の交わりなどより遙かに激しく、相手を一段上の絶頂へ叩き上げるのだ。
「ちょ、っと、セリ、ス、待って」
「聞こえない〜聞こえない〜」
途切れ途切れのミリアの制止をセリスはさっぱり綺麗に無視した。
全身の快楽が一斉に吹き上がり、もはやミリア自身には自分がどういう状態なのか理解できない。
しかし体中から伝えられる快楽のノイズの中、ミリアに一つだけ分かることがあった。
142 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:56:24 ID:UyMglRcg
「!? や、セ、リス、ほんと、うに、とめて、でちゃう」
「う〜ん、何が?」
「そ、それはあひゃうっ!?」
「何でも良いけどさ、もうすぐイっちゃうよ」
セリスの言葉通り、ミリアの体は後一歩で絶頂に達するところまで追いつめられていた。
もはや、背に腹は代えられないと彼女は叫ぶ。
「お、おしっこ、トイレに行かせてっ!!」
昨日より身動きが取れないミリアは当然というか何というか人体の定期的な排泄欲を感じており、その尿意が限界近くなっていた。
「こ、このままだと出ちゃう!!」
「出せば」
「………………へ?」
即答を返されたミリアは、全身を駆け上る快楽さえも一瞬忘れた。
「別に出せばいいよ。僕は気にしないから」
「ば、冗談は止めて――」
しかし、セリスの言葉は冗談ではなかった。
ミリアの急所を一気に擦り上げる。
「わひゅうっっ」
「ほらほら、ここが気持ちいいんでしょう」
セリスが動くたびにミリアの体が快楽に一歩近づく。
「ば、馬鹿、駄目だっていってるでしょうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!」
怒鳴るのとほぼ同時にセリスはミリアの急所を突き上げた。
その一瞬後、ミリアは絶頂に達する。
「ひぃ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」
情けない悲鳴とともにミリアの体が硬直した。
そして、
シャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!
尿道口から黄金色の水が勢いよく飛び出す。。
「あ、あ、あ…………ヤ、ヤダ出ちゃう」
言葉では拒否しながらも絶頂と排泄の快感が織り混ざり、ミリアの顔に至福の表情が浮かぶ。
十数秒の排泄の後、ミリアの体が弛緩した。
「うふふ、どう気持ちよかったでしょう?」
服が汚れるのに構わずセリスはミリアを抱き寄せた。
「ば、馬鹿ー、なんて事するのよっ!!」
薄笑いを浮かべるセリスに対し、ミリアは半泣き状態だ。
まあ、一日に五回ほどくびり殺したいと思う相手であっても、排尿の瞬間を見られるのは耐えられた物ではない。
「あ、何、ひょっとして恥ずかしすぎて泣いてるの?」
うつむいてしまったミリアにセリスは、にこやかに微笑んだ。
「ご主人様さ、意外に気持ちよかったでしょう? いった時あんなに気持ちよさそうな顔してたんだから―――「嫌い」うぇ?」
ミリアの呟きにセリスが変な奇声を上げる。
143 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:57:13 ID:UyMglRcg
「どうせ、あんたはあたしのことをオモチャぐらいにしか思ってないんでしょう。大嫌いよ」
彼女はは涙に濡れた目で頬を膨らませてそっぽを向く。
その表情はその全てを持ってして、『私は拗ねています』と主張していた。
(うわ、子供みたいな拗ね方だな)
何というかそう言う態度に出られると、もっと虐めたくなってしまう。
しかし、これ以上やったら本気で嫌われそうなのでセリスは強靱な自制心で、それを押さえ込む。
「誤解だよ。僕がいつご主人様をオモチャ扱いしたのさ。よく考えてみて―――」
悲しげな声音で嘆願するセリスをミリアが彼を一瞥、数秒黙考してみる。
睡眠中に尻尾を巨大ねずみ取りで挟まれたり、コーヒーにマタタビを煎れられたり、泳げないことを知っていて川に蹴り落とされたり、ミミズで満たされた落とし穴に落とされたり、顔に落書きされたり――――
「――――――やっぱり、オモチャ扱いしてるでしょう」
「あ、良く分かったね。意外な感じ」
セリスの言葉にミリアの視線がさらに険悪になる。
「……………」
「まあ、冗談は置いておくとして、確かに僕はご主人様をオモチャだと思っているよ。だけどね――」
セリスはミリアの体を床に横たえると顔の位置をそろえた。
「僕はご主人様のことが大好きなんだよ」
「なっ!?」
真摯な紅の瞳の告白にミリアが絶句する。
「ななななななななななななななっ、何言ってんのよ?!」
「あーあ、そんなに慌てないでよ」
慌てふためくミリアの耳元でセリスはささやく。
「大体、好きでもない相手とこんな事する訳無いでしょう?」
言いながらセリスはミリアにのし掛かと、そのままミリアの下半身に体を滑り込ませた。
そしてミリアの股間に顔を埋め、躊躇いなくそこに舌を這わせる。
「した後は、綺麗にしないとね〜」
「や、ちょ、やめてよ」
たった今、排泄を終えたばかりのそこに舌を這わせられるなど、女性として耐えられる物ではない。
「ご主人様が好きだから、僕はこんな事するんだよ。誰にだってやる訳じゃないんだから」
「ふひゃあっ!?」
濡れそぼったそこに唇を触れさせ、音を立てながら尿道に残った物をすする。
「どう、こういうのも気持ちいいでしょう」
汚物を舐められている背徳感と、普段生意気な少年がそのような事をしていると言うシチュエーションがミリアの快楽を刺激した。
「うぅ」
「ほら、また濡れてきた」
セリスがミリアの眼前に突きつけた指の間には、快楽の証である透明な液体が糸を引いている。
その指が再び中に突き込まれると、ミリアの秘裂からさらに蜜が流れてきた。
そのままセリスはミリアの中に自分の物を進入させる。
「ひゃぅんっ!!」
お世辞にも丁寧とは言い難いやり方ではあったが、なぜか最初の時より快楽が多かった。
144 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:58:05 ID:UyMglRcg
「僕はまだ、イッてないんだよね」
ミリアの胸を味わいながら、セリスは呟いた。
「だけど、今度はいけそうだよ」
情緒と言う行為はセリスにとって肉体的快楽を楽しむと言うより、精神的娯楽という要素強い。
相手の表情や仕草などを観察するのが本来の目的であり、快楽は二の次なのだ。
当然、それは相手に好意を持っている事が前提となり、嫌いな相手と肌を合わせる事などありえない。
無論の事、快楽的絶頂という物は存在するが―――
「ねぇ、ご主人様、僕の事本当に嫌いなの?」
憂いを乗せたその言葉に、ミリアの体がびくりと震えた。
まるで甘えるかのようにセリスがミリアの腹に頭を乗せると、絹のような流れる黒髪がその肌をくすぐる。
「ねぇ、ご主人様」
「べ、別に嫌いじゃないわよ」
媚びるような甘い声で呟かれると、どうしても拒絶できない。
「嬉しい」
邪悪なる本性とは裏腹に、その声はどこまでも無垢だった。
「か、勘違いしないでよ。別に好きって訳じゃないんだからっ!!」
「それで十分だよ」
ミリアの表情や仕草を堪能するにはそこまで言ってくれれば十分である。
セリスが腰を動かす。
同時に十本の指がミリアの体を這い回り、胸を揉み、腰をさすり、二の腕を擦って、脇の下をくすぐる。
(何でこんなに上手なのよ!!)
決して激しくない動きでありながら、ゆっくりと相手を気遣った愛撫は先程と違い心地よい快感を引き出していく。
口を閉じようとしても喘ぎ声が漏れ、快楽を堪えようとも体がひとりでに反応する。
「イキそうなんだね」
主の様子を敏感に察する召使いとは優秀といえようが、今の場合のミリアにとっては羞恥を逆撫でするロクデナシである。
「我慢しなくていいよ。僕も一緒にいくから」
言われなくとも、もはやミリアに我慢など出来なかった。
セリスが本気になれば、経験のない小娘を手玉に取る事など容易い事だ。
抵抗など出来ないし、したとしても意味がない。
途轍もなく悔しい事であるが、精神とは逆に体の方はセリスの行為を欲している。
そして限界の時が来た。
145 :
虎の子:2005/08/12(金) 00:58:38 ID:UyMglRcg
「うああぁぁぁぁぁぁぁぁっん!!」
主の到達に数瞬遅れてセリスも達する。
小さな体の中のどこに、これだけの量が入っていたのか疑わしくなるほどの物がミリアの中を満たす。
「ふあぁぁぁん、、、」
熱を持った液体に満たされ、体から力が抜ける。
「そんなに気持ちよかった? 凄い幸せそうな顔してるけど」
セリスの言葉通り、ミリアの顔は涙や涎で大変な事になっていた。
何というか顔の筋肉が全て緩んでしまったような感じになっている。
「み、見るな、馬鹿」
緩んだ頬を必死に引き締めようとするが上手くいかない。
卑怯だと思う。
下腹の暖かさが凄く気持ちよくて、全然イヤじゃない。
普段人を玩具にするくせに、こう言う時だけこんなに心地よいのは絶対に反則である。
「さてと、薬が切れるまで後何回出来るかな」
「………………………………え?」
さりげなく呟かれた言葉にミリアの表情が固まる。
「―――――ちょ、ちょっと一回すれば薬の効果が消えるんでしょう!?」
呆然とした状態から数瞬で脱却したミリアにセリスはにっこり微笑んだ。
「ああ、あれ嘘だよ」
「…………………………………………………………………………………嘘?」
即返答された内容が脳に染みこむまで、数秒の時間を必要した。
「うん、ご主人様とセックスするための方便だよ。トイレを我慢してるのは初めから分かっていたからね。放尿プレイもやってみたかったし―――」
「って、知ってたの?! あたしがトイレを我慢してる事!?」
「あれだけ挙動不審なら誰でも気付くよ」
当然とばかりにセリスは苦笑する。
「ばれてないと思って必死で誤魔化すだもん、面白すぎて笑いを堪えるのに苦労したよ」
ミリアの体が震える。
もちろん怒りで―――
「ご主人様、もう少し嘘の練習をしないと、政治はハッタリと狂言の世界なんだから、そんなんだとやっていけないよ」
「馬鹿!! 最低!! 変態!!」
召使いの心の底からの忠告に対し、ミリアは罵声で応えた。
「ひどいな。僕はご主人様のためを思って言っているのに――――」
「うるさい!! 大体、あんたあたしの事が好きなんでしょう!? もっと大切にしなさいよ!!」
「好きだよ。ご主人様の困った表情や怒った表情が」
「………………………………………………え?」
「なんて言うかな。こう、子犬に意地悪して、その必死でささやかな抵抗を楽しんで悦に入る? そんな感じなんだよね」
薄く染まった頬に手を当てて恥ずかしげに身を捩るセリスの姿は、とても可憐であったがミリアにとってはなんの救いにもならない。
「ご主人様って凄く単純だからね。僕のお気に入りの玩具だよ」
純真無垢な瞳で語るセリスに、ミリアの脳内温度が急上昇する。
「チビ!! サディスト!! ゲス野郎!! ご主人様をなんだと思っているのよ!?」
「さっき言ったでしょう? 玩具だって、ご主人様ったら、お・馬・鹿・さ・ん♪」
「クソ野郎!! 一発殴らせろっ!!」
ヒートアップする主とは対照的に、セリスは冷ややかな冷笑を向ける。。
「そんなに悪口ばかり言って、ご主人様ったら、自分の立場をよく考えてみてよ」
「ひゃあっ!?」
達したばかりの敏感な部分をさすられミリアは情けない悲鳴を上げる。
「後数時間は動けないんだから、もう少し言葉遣いには気を付けた方が良いよ」
言いつつ、セリスの指がミリアの肌を撫でる。
「な、何する気?」
大方の………というか九十九パーセントの予想は付くが、わずかな希望にすがって聞いてみるミリアに、セリスは天使の微笑のままのし掛かった。
「分かってるくせに♪」
そう言いながら指の関節をならす。
「さーて、制限時間内に何回出来るかな」
「ちょ、冗談止めて。あたしイったばかりで―――」
「大丈夫、大丈夫、気持ちの良さは保証するよ。まあ、失神ぐらいはすると思うけどそこら辺は根性でがんばってね」
その日、ミリアの悲鳴がセリスの部屋に響いた。
146 :
虎の子:2005/08/12(金) 01:00:12 ID:UyMglRcg
「そうよっ!! あのクソ野郎、あたしをさんざん玩具にして!!」
過去の回想を思い出させた書類を引きちぎり、ミリアは地面に叩き付けた。
結局あの後、薬の効果が消えるまでセリスはミリアの体で遊びまくったのだ。
何度懇願しても愛撫を止めず、失神を数回繰り返してようやくミリアが解放された時には、冗談ではなく本気で足腰が立たなくなっていた。
それ以来、たまに食事やお茶に訳の分からない薬などを入れられるようになったのだ。
対抗するために四日ぐらい絶食した事があるが、最終的に食欲に屈してしまい超強力な媚薬入りの食事を食べさせられた事もあった。
その時は弱みに付け込まれ、かなり恥ずかしい事までさせられたりもしたのだ。
あの一件以外、ミリアはほとんどやけで毎食ちゃんと食べるようにしている。
「あの腐れ召使い、いつかあいつにも毒を盛ってやるんだから、そしてうふふふふふ―――」
微かに頬を染めて身勝手な未来像にほくそ笑むミリアに、しかしながら世の中は無情だった。
「何やってるの? そんな気持ち悪い笑い声上げて―――」
背後から掛けられた声にミリアの肩がびくっと震える。
「セ、セリス、何でここに!? 説明会に行ったんじゃないの」
「ちょうどシルスお兄ちゃんが帰ってきたから、そっちに任せたんだよ。それよりご主人様―――あまり、仕事がはかどっていないようだけど?」
横目で未だそびえ立つ書類の山を眺めるセリスに、ミリアはたじろいだ。
「い、今の話聞いてた?」
「? なんの事―――」
「な、なんでもないの、全然全くあんたには関係ないから」
きょとんとするとセリスに、ミリアは首が取れるほどの勢いで否定した。
「? まあいいけど、少し休憩しようか、時間はタップリあるからね」
そう言いながらセリスはお茶の準備を始めた。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう」
先程までの事があったので、ミリアの笑顔は微妙に引きつっていた。
「だけど、何であんな不気味な笑い声を上げてたの? ついに頭の中身が腐り始めたのか心配なんだけど」
「そ、そんな分けないでしょう。ちょっと、含み笑いの練習をしてただけよ」
「何で?」
「な、何でって、今週の週間『乙女の祈り』で含み笑いをすれば運勢が急上昇って書いてあったのよ!!」
ちなみに、乙女の祈りとは世界中の投稿者からコラムや広告、記事を募集して、その中から厳選された物を乗せている雑誌である。
大陸夢想と名高い猫の国のリナ将軍の護身術教室や、さらに同じく猫の国の猫ヒゲ薬局の通販などが載せられている。
たまに訳の怪しげな薬や機械の通販などが乗ったりする事もあり、結構いかがわしい部分もあるのだが大陸中で売れに売れている雑誌だ。
その中の占いのお部屋は大陸中の占い師や魔法使い達の中から選ばれた占いが数種類載っており、的中率が五割以上と言う事で人気の記事である。
基本的に投稿者は女性のみで、男性の投稿は受け付けていない。
逆に投稿者が男のみの『紳士のたしなみ』と言う雑誌もある。
その雑誌の今週の溜息と言うコラムでは、見るだけで気が重くなるような日々の疲れを綴った文章が載っていたりし、その投稿者の中には、『虎国の胃潰瘍S』や『猫姫Mの召使い』と言ったペンネームの人物達がマニアの間で大人気になっている。
「――そんな占いあったっけ?」
「あ、あったのよ。イワシの骨で占うイワシ占いで、どんな形で骨が取り出せるか占う占いよ!! 某イワシ姫だってこれで毎日の運勢を占っているらしいのよ!!」
首をかしげるセリスにミリアは一気にまくし立てて押し込む。
「……………………」
「あ、このクッキー美味しいわね!! もう何枚でも食べられたちゃうわ!!」
ジト目の召使いにミリアは話題を逸らすため、紅茶をガブガブ飲んでクッキーをばりばり貪り喰らう。
乙女という光景からはほど遠い物だ。
「…………ご主人様、体の方は大丈夫?」
「え、何――」
セリスの質問とほぼ同時にミリアは倒れた。
147 :
虎の子:2005/08/12(金) 01:01:29 ID:UyMglRcg
「な、これってまさふあぁぁぁぁぁぁんっ!!」
動かそうと身を捩った瞬間、全身が火を噴いたように火照ってくる。
「いやー、相変わらずご主人様を引っかけるの面白いな。そんな事じゃ僕に毒なんて盛れないよ」
朗らかに笑うセリスにミリアの顔が引きつる。
「き、聞いてたの、あたしを騙したわね!!」
「お互い様でしょう。ご主人様」
どこか嘲笑的なセリスの失笑にミリアの顔は興奮以外で赤くなる。
「卑怯者!! 下劣!! ケダモノ!! 淫魔!!」
ミリアの罵倒にセリスの笑顔がさらに深くなる。
「ご主人様、何度も言うけどこう言う時は自分の立場を考えた方が良いよ」
「うひゃあっ!!」
セリスの指が触れただけでミリアの背筋に、飛び上がるほどの快感が流れる。
「今度の薬は結構自信作なんだよ。感度は倍加されるけど、イキにくいようになっちゃうから、たっぷり焦らすことが出来るんだよ」
にっこり笑ってセリスはミリアを押し倒す。
「ひ、ひやゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
その日、荒野に誰にも聞かれる事のないミリアの悲鳴が響いた。
【了】
148 :
虎の子:2005/08/12(金) 01:02:58 ID:UyMglRcg
はい、第二話やっと完結しました。
時間がかかった割には、全然ぱっとしませんね。
お目汚ししてすいません。
次回はすぐにでも取り組む予定ですが、投下出来るのはいつになる事か―――
ちなみに次回の予定は『猫耳メガネっ娘?』です。
それではまた次回!!
GJっ
通勤電車の中からGJ!
151 :
虎の子:2005/08/12(金) 08:13:41 ID:UyMglRcg
追記、今まで書いていませんでしたがシルスはマダラです。
よっしゃきたあああああああぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!
やっぱり読み手としては感情移入がし易いキャラがいいよな。
余りも卓越しているキャラが活躍しても( ´_ゝ`)フーンって感じ。
虎氏キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!! 超GJ!!
なんか今回ミリアたんからツンデレのかけらが見えたような気がした。
てすつ
抜き足、差し足、忍び足・・・
ここはシュバルツカッツエ城の東ウイング、通称『姫様長屋』の廊下。リナとユナは
細心の注意を払って昼下がりの廊下を歩く。そして目的のドアの前に来た。二人が
いつ来てもいいように通常、鍵はかかっていないはず・・・。
『開いてる・・・』
『そ――っと入るですの――っ!! 』
二人、こそこそとアイコンタクトして中に忍び込む・・・。
『いったい姉上は何をやっているのだろう・・・どうも朝は様子が変だったな・・・』
『姉妹三人の秘密は共有ですの――っ!! きっと二人だけで美味しいもの食べてるん
ですの――っ!! 』
と、心配顔のリナに興味津々のリナ。廊下の冷気が入ってきてバレないようすぐに
ドアを閉じる・・・。
この二人がなぜこんなマネをしているかを説明するには、まず今日の朝の出来事から・・・
メニューは単純。ほんの少しコゲ色のついて、そして中はふっくら半熟の卵焼き。
それにキツネ色のトースト。ジャムとマーガリンがあって、オレンジジュースのパックの
アメリカン式。
今までシリアルやらチョコバーなんかを持ち寄って朝ゴハンの代わりにしていた
三人のネコ姫様たちは目を爛々と輝かせてぼくと卵焼きを訴えるように半々に
見つめている。ぼくは慌ててコホンと咳払いして言う。
「えっと・・・それではいただきま・・・」
「「「いただきますにゃっ!!!」」」
ぼくがのけぞるほどの勢いでザシザシとフォークで卵焼きに攻撃を加えるご主人様たち。
まだ幼いご主人様たちはテーブルの椅子は大きくて、リナ様以外の二人は寸足らずの
足をプラプラとさせている。実にカワイイ・・・
ぼくは慌てつつも、楽しく追加のトーストを焼いたり、グラスのオレンジジュースを
注いであげたり、自分の卵焼きをご主人様から守ったりと実に忙しい。
一国のお姫様とは思えないほどの壮絶な朝食が一段落つくと両手でグラスを
持ちながらオレンジジュースを飲んでいたユナ様が言った。
「マナ姉、今日は何して遊ぶですの――っ?」
10年後にはゴシックロリータのドレスできめるユナ様も、今は襟元のみにチャチな
フリルがついた丸襟の黒いシャツを着ている。それを聞いて、取っていたパンの耳を
咥えながら目を輝かせるリナ様。赤いキュロットにチェックのシャツが実に似合っている。
パタパタとリナ様の赤い耳が落ち着き無く動き出す。なにせ今のシュバルツカッツエ城
には誰もおらず、今の三姉妹の最大の敵は『退屈』なのだから。
しかし期待で目を輝かせる二人をよそにつれない返事をするご主人様。
「にゃむ・・・今日はわたしは部屋で召使とヤル事があるから、お前達は二人で遊ぶと
いいにゃあ」
ぶった切ったデニムに長袖のTシャツと10年後とまったく変わらない服装でご主人様が
椅子の上であぐらを組みながら言う。
「え――っ!」
二人のブーイングがハモる。ぼくも援護射撃する。
「そうですよ、子供は風の子、家でゴロゴロしてるとウシになっちゃいますよ」
「う、うるさいにゃっ!! 年下のクセに偉そうに」
確かにご主人様は20歳越してるけど、外見はまだブラをするのも早いぐらいの
幼女じゃないですか・・・。
ムッとするぼくにご主人様はふいにぼくの耳元に小声で囁く。
「にゃにゃ・・・今日は昼からエッチしたいにゃ・・・よいにゃろ、よいにゃろ・・・」
と、テーブルの下のぼくの手をぎゅっと握ってくるご主人様。しかも背が小さいせいか
少し紅くした顔の潤んだ瞳でぼくを見上げるようにして・・・。かあいいなあ・・・10年後には
いつでもどこでも強引にぼくを押し倒して・・・あうううっ・・・。
「で、でも・・・そういうのは夜までとっといたほうが・・・ねえ・・・多分・・・」
『偉そうな年下の言葉』はあっという間にぐらぐらと揺らぎ始める・・・。ご、ご主人様、ぼくの
手の平をくすぐったらだめです〜。こそこそしている主従にユナ様の声。
「マナ姉〜、一緒に遊びたいですの――っ!! 」
「にゃふ・・・い、いや、前からの約束なんにゃ!! ・・・そうにゃ!! ほら、お前からもいうにゃ!! 」
「え、でも・・・ほら・・・ごにょごにょ・・・」
あらかさまにぼくに偽証を強要するご主人様。不審気なリナ様とユナ様の視線が
痛い・・・。それになんか言いにくい・・・。だってリナ様とユナ様にしてみれば、大好きな
ご主人様をいきなりとられてしまったような気分になるだろうし・・・。
などということを考えていたぼく。しかし不意に隣のご主人様がぼくの肩に頭を
もたせかけてくる、そしてわざとらしく言うのだ。
「にゃふぅ・・・今日はにゃんかスチームの効きが良すぎるにゃあ・・・」
長袖シャツの襟元を指でつまみ、パタパタと胸元に風を送るご主人様。
「え、じゃあ・・・暖房、少し落とします・・・ふぁっ!? 」
なんの気はなしに返事をし、反射的にご主人様の方を見た瞬間、ぼくの目にご主人様の
くつろげた襟元の奥の方まで視線がいってしまう。それはシャツが包む内容物がまだ
圧倒的に平べったいせいか実に見渡しがよく、ほのかに膨らんだ二つのなだらかすぎる
丘や、長袖シャツの生地によって擦れたのか、小さくツンと立ち上がってる桜色の
突起まであと少しで見えちゃいそう・・・。ばくが魅入られたように視線を泳がした瞬間に
ご主人様は早口で言う。
「ほら、お前からも今日はわたしは確か大事な用事があるって言ってたよにゃ?」
不審気な二人の妹を横目で見ながら言うご主人様。その時のぼくは思わずご主人様の
胸の奥を覗き込もうとしていて・・・
ちょっと角度が・・・と『こくん』と頷くように思わず顎を引いて視線をかえた瞬間・・・
「ほら、ほらっ!! 召使もこの通り頷いてるにゃ!! ほらお前たちさっさと出て行くにゃ〜!! 」
と嬉しそうに二人の妹を追い出しにかかるご主人様。ぼくは我に帰るが後の祭り・・・
「えっ、いや・・・あのその・・・これは・・・」
「二人とも、ここは姉に任せて遊びに行くにゃ、お前等のかわりにわたしがたっぷりネットリ
大事な用事をこなしておくにゃあ・・・にゃふふふ・・・」
とヨダレを拭いながら二人の妹達をドアの外へと誘導する事に成功するご主人様・・・
ああリナ様、ユナ様、待って――っ!! そんな目でぼくを見ないで――っ!! ああ、ぼくってば、
ぼくってば――っ!!
そして時は戻る。コッソリとマナの部屋に忍び込む二人。
「リビングは・・・いないな・・・」
午後の昼下がりのリビングを見渡すリナ。今日のおやつはクッキーらしい。このところ
きちんと掃除されたリビングのテーブルにはティーセットとほんのりと甘いバターの香りがした。
甘美なおやつの時間を思い、にへら、と頬を緩めているとするとチョンチョンと背中を
つつかれる感触。
「リ、リナ・・・マナ姉の寝室・・・研究室から呻き声が聞こえるですの――っ!! 」
と小声で告げるユナ。こくんと頷いて二人手を取りながら廊下を音を立てずに
進んでいく。ドアは小さく隙間が開いていてそこから断続的に呻き声が漏れていた。
家政婦は見た!! ・・・じゃなくて、ネコ姫様は見た!!
ドアの隙間の限られた視界ながらベッドの上のマナ上半身がはっきり見えた。
「ひぎゅ、にゃっ!! ああっ、あっ!ダメ、ダメにゃあ――っ!! 」
悲鳴が二人の耳を貫く。マナの体は一部しか見えないが、四つん這いにされ、
視界の外の召使に後ろからお尻を激しく叩かれているらしい。しかも、なんと
全裸に剥かれている。
『パン、パン、パン、パン・・・!! 』
激しく肉を打つ音が聞こえる。そのたびにマナは前に突き飛ばされそうになり
必死でシーツについた手で持ちこたえる。ついにその細腕では耐えきれなかったのか
ガクガクと力尽きる。しかし、その後ろからの攻撃は情け容赦なく止まることはなく、
マナは何度も無様にシーツに顔を押し付けられつつくもぐった悲鳴をあげていた。
『何ですの?お仕置きされているんですの――っ?』
しかし、それはあまりにも本気でせっぱ詰まった雰囲気が充満してる。
『そ、そんな・・・あの姉上が苛められて・・・くっ・・・負けているのかっ!! 』
目の前に広がるシーンはどう見てもマナの旗色が悪い。
『ま、マナ姉が、マナ姉がっ・・・マナ姉で勝てないならユナ達が今、出て行っても
きっと瞬殺されてしまうですの――っ!! 』
『あわわわわ・・・な、なんということだっ・・・』
二人、手を取ったままドアの外でへなへなと崩れ落ちる。ギリギリと唇を噛み締めて
言うユナ。
『すっかりダマされてましたの――っ!! いつもは優しい仮面をかぶって影で
お仕置きなんて、特命係長みたいですの――っ!! 』
『ま、待てユナっ!! 形勢が逆転しているぞっ!! 』
半べそのユナが慌ててドアの隙間に目を近づける。
そう、マナは何とか体勢を入れ替えると今度は召使いの上に馬乗りになることに
成功していた。ドアの隙間からはあまり良く見えないが今度はマナがマウントポジションを
とり、激しく召使を攻撃しているらしい。
「に゙ゃ、にゃっ、にゃっ!! これはどうにゃっ、ほら、ほらほら・・・」
上からドンドンと召使に体重をかけて乗っかるたびに、下敷きになった召使いの
カラダが苦悶に打ち震える・・・ように見える。
『頑張れ!姉上〜っ!! 』
『そうですの――っ!! このまま首をギュ――ってするですの――っ!! 』
小さく拳を振り上げ、声にならない声援を送る二人。しかし、今のシーンを見てから
腰が蕩けたように動かなくなっているのに気がつかない。
マナの優勢はつかの間。やはりドアの隙間からはマナの上半身しか見えない。
召使はいつの間にかマナの見えない下半身側に移動して、両足を抱えるように
押さえつけているらしかった。そしてマナは2人の記憶にないほど悶え苦しんでいる。
「ひにゃっ!! あひっ、あっ、あっ・・・ん――っ、そんにゃトコロまでっ、あ゙あっ!! 入って来る
にゃ、奥までっ、奥までっ・・・にゃっ、もうダメにゃ、こんにゃの恥かしいにゃ――っ!! 」
シーツを破れんばかりに掴み、両手で顔を隠したまま打ち振ったり、陸に打ち
上げられた魚のように体全体を油汗まみれになってシーツの上をのたうち回るマナ。
『い、いったい見えないところでなにがっ!! 』
『きっとすごい攻撃ですの――っ!! 』
『火で炙られてるとか・・・』
『でもピチャピチャって小さな水音が聞こえてましたの――っ!! 』
自分達が考えた恐ろしい想像にガタガタと震えながら固く抱き合うネコ姫たち・・・
すっかりぐったりとしたマナに止めを刺そうと召使が再び現われれば、その二人の
震えさえも凍りつく。
ぜいぜいと荒い息をつき、小さな胸を上下させるマナ。そのマナに一廻りは大きい
召使がのしかかる。しかも、のしかかっただけでは飽きたらず、マナの肩口に『にゅっ』と
自らの白いふくらはぎが現われた。窮屈な姿勢に強引に折りたたまれてしまったらしい。
『い、いかんっ!! 完全に押さえ込まれてしまったようだ!! 』
『えっ!? いったいどうなるんですの――ッ!! 』
この答えは押さえ込まれてる本人が熱のこもった悲鳴で自ら叫んだ。
「にゃふぁっ!! わ、わたしっ、トドメ刺されちゃうにゃ――っ!! 」
『『ヒイイイイッ!! 』』
ついに怖れていたセリフを聞き、卒倒しそうになる二人。そのトドメに向けての
攻撃はその名に相応しいものだった。ベッドが軋むほど小さな姉は裸のまま
押し付けられ、組み伏せられ、何度も体重の乗った体当たりをされていた。
ときおり一部見える召使いの背中は上下だけでなくマナに体重をかけたまま、
踏みにじるように動いたりしてる。
二人は完全にフリーズしてしまって、視線はドアの隙間から離す事ができない。
「にゃっ、あひっ!んっ、ん――っ!! そんにゃに、そんにゃにされたらバラバラに
なっちゃうにゃ――っ!! 」
『『バ、バラバラ・・・ヒイイイイッ!! 』』
「うにゃ、あ゙、あ゙っ、深いっ!! わたしの、わたしのお腹の奥までズンズン刺さって、
えぐられてっ、にゃっ、ああっ、ふにゃっ!! はにゃん!! 」
『え、抉られて・・・』
『さ、刺さって・・・』
『『ヒイイイイイイイイイイッ!!』』
そして最後の時が訪れた・・・
「もうわたし、死んじゃう、死んじゃうにゃ――っ!! 」
マナの上半身が断末魔のように反り返り、毒薬を飲んだように不自然に痙攣始める。
『『死・・・死んじゃうっ!? !!!!!!!!!!!!!』』
大好きな姉を死なせてはなるかと、ユナとリナの金縛りがその不穏な言葉で
一気に解けた。ガクガクする腰を鞭打って必死で立ち上がる。恐ろしさのあまり少し
漏らしてしまったのかパンツの前がネットリと濡れていたが今はそれどころではない。
ドアに体当たりするように部屋に駆け込もうとするが、腰が抜けていて転がり込むように突入・・・
「ユナを残して死んだらダメですの――っ!! 」
「頼むっ、お願いだから!罰なら、罰なら私も一緒にぃっ!! 」
「・・・ふにゅっ、わたし、もう、もう!! イ、イ・・・へっ!? な、なんにゃっ!! 」
召使と同時にイこうと、限界まで我慢に我慢を重ねていたマナ。そのせいか
不意の乱入に完全に反応が遅れてしまう。
「ご主人様っ!! ぼく、イキますっ・・・んっ、ああああっ!! ・・・えっ、うわわっ!! 」
「「姉上 (マナ姉)から離れろっ(ですの――っ)!! 」」
ラストスパートをしていた召使が『どーん』と二人の乱入者に突き飛ばされた。
哀れ、召使はベットの下へ頭からまっ逆さま・・・
そしてその瞬間。
『ビュクッ、ビュクッ!! 』
召使いの濃い白濁はマナの胎内ではなく、スローモーション気味に空中に
白い軌跡を描いてベッドに突っ込んだ2人へと・・・
「あわわわわわわっ!! な、なんだこれはっ、目が、目がああああっ!! 」
「べ、ベタベタが、髪についたですの――っ!! ちょっとニガイですの――っ!! 」
さっきの勇ましさはどこへやら。混乱してマナの研究室をくるくると走り回る二人。
マナが状況を理解したのかワナワナと拳を握って身を起す。
「にゃ、にゃにゃっ!! ・・・イ、イキそこねたにゃ・・・わたしの一日ぶりの愉しみを・・・」
握った拳がふいに組み合わされ見覚えのある印を切る。
「天・地・ネコ!! 爆来っ!!!!」
『ボウンッ!! 』
と、これから何度も弾け飛ぶ運命にある研究室の扉・・・今回が記念すべき
第一回目の日であったのだが、ベッドの下で気絶していたぼくには知るよしもなかった・・・
リアルタイムキタ――――(゚∀゚)――――!!!
あしたらさんGJです!!
リナとユナの勘違いが面白かったです
その夜。ぼくは首をかしげつつご主人様のベッドの上で正座していた。少し
緊張している・・・
『な、なんでご主人様の部屋に二人がいるんだろう・・・』
そうなのだ・・・ぼくがご主人様に言われて、なんというか・・・『夜のお勤め』を
しようとご主人様の部屋に入ると、リナ様とユナ様がぼくを待ち伏せするがごとく、
ベッドの隅っこににちょこんと座っていたのだ。
時々、上目遣いにぼくをチラチラとぼくを見てる、目が合うとぼくをジロリと
睨むのはユナ様。そして慌てて目を逸らすのはリナ様だったりする。ぼくは
コホンと咳払いして二人に問い掛ける。
「あ、あの・・・リナ様もユナ様もお部屋に戻らなくてもいいんですか?もう夜おそい
ですよ・・・それにこれから、ぼくはごにょごにょ・・・」
「い、いや、姉上はああ言うが・・・力及ばずとも・・・」
と、お茶を濁そうとするリナ様。
「またイジメる気ですの・・・特命係長にはダマされないですの――っ!! 」
と、意味の判らないコトをぼくに言う、やけに挑戦的なユナ様・・・
どうも二人ともてこでも動こうとしない。
その時、バーンとドアが開いてヤル気マンマンのご主人様が入ってきた。
「さ〜て、今日もはじめるにゃ〜っ!! 」
お城から支給されたダサいシュミーズと子供パンツ姿のご主人様。小脇にティッシュの
箱を抱えて仁王立ちしてる。実にトホホな格好・・・
そしてとんでもないコトをいきなり言った。
「さ、お前!! とっとと服を脱ぐにゃ・・・」
「へっ・・・ええっ!? 」
ぼくは驚愕する。
「でも、でもっ!! まだ二人ともここに残っていますけど・・・三人いっぺんなんて
10年早いです・・・あわわわ」
『ぼ・・・ぼくが気絶してる間、いったい何が・・・』
ヤル気マンマンのご主人様、そして敵意に満ちたリナ様とユナ様・・・。
今日も長い夜になりそう・・・
165 :
『あしたら』:2005/08/16(火) 01:09:35 ID:hNuefUNs
・・・続く
遅れてごめんなさい。今回はすぐエッチ部分に入ります。
たまには物語の進行、設定やバトルなんかを忘れてこんなのも
いいかな・・・などと思って書きました。
ちなみに設定日時は1月の松の内という、現実世界とはトンでもない
ずれが生じてますのであしからず・・・
まだ学校は始まってないようです。マナがミルフィに自分の召使を
優越感たっぷりに自慢できるのはまだ1週間以上先のようです・・・
次回、ぼくが二人の妹姫の誤解を解くために奮戦?します。
リナ様とユナ様の貞操あやうし!
それでは・・・
あしたらさんGJ!
あしたらさん キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
ロリ三姉妹4P!4P!4P!4P!4P!(烈海王のノリで)
上北――――――(・∀・)―――――――!!
あしたら様GJ! 続きお待ちしております!
石布団の上で待ち続けた甲斐があったよ。
あしたらさんGJ!!
快感を覚えるようになるほど裸正座し続けた甲斐がありましたよ
GJです!
↑そんな漏まいらに萌えちまったわけだが
家政婦は見た とか 目があああっ とか
そこかしこに散りばめられたパロディに笑い転げた俺ガイル。
173 :
名無しさん@ピンキー:2005/08/18(木) 17:25:37 ID:2xrK2LwC
ワラ
174 :
蛸の人:2005/08/19(金) 05:15:02 ID:fjXvHwtP
GJ!!
助手君かわいいよ助手君。
・・・・・・ぉや?みれねえですよ?
昼頃は見れたんだけどなぁ
みえた!みえたよ!
ではこれからしっぽり読ませていただきます。
ボ、ボールではありませんか もしかして
はふぅ、堪能させていただきました。
バカップルかーいーよ
かーいーよバカップル
いっこだけ何があるとすれば、多人数の会話のとき少し混乱するかも。
181 :
蛸の人:2005/08/22(月) 03:32:27 ID:r9PDScv4
(;´Д`)ハァハァ
このツンデレは良いツンデレですね。GJ!
ほしゅ
あ〜なんか、みんなどんどん投下してる……やばいなぁ……
とりあえず来月こそは、いいかげんに狐っ子短篇完成させよう……
それから長編も再開させなきゃ……
個人的に熊が好きなのに、熊話が無いので自分で書いてみようかと
天然メガネっ娘養蜂家まで考えたが・・・
国とか熊耳の設定ばかりで話が書けない・・・文才無いってカナシイorz
>>186 平気じゃないんで ^-^; とりあえず現段階のデータはローカルに退避しました
アダルト & CGI 可のスペース見つけて、なるべく早くに再開したいです
pc1... やはり復活できなかったか
>>187 文章力は書けばついてきますよ。
5年書いててもorzですが……(とほほ
>>188 お疲れ様でした。
>>187 まずは好きな作家さんの真似してみよう。
そんでその文体で日記を書き続けてみる。
191 :
蛇担当:2005/08/30(火) 19:39:57 ID:a5OmeHDc
ふらりと立ち寄ってみれば今宵のお話キテタ―――――ヽ(゚∀゚)ノ―――――!!!!
葬らんワラタ
シャンティさんに問い詰めやらせたら一級かもしれないと思た。
>>189氏
>>190氏
ありがとうございます&190氏GJ!
好きな作家さんの文体で日記・・・やってみるか。
なんとか9月中には投下したいなぁ(ボソ)
サトル脱出失敗かw
…ちょっとラーメン二郎逝ってくる。
>>192-194 ややや、どうも楽しんでいただけたようで何より。
>>195 日記を続けるコツは
・毎日やらない
・ただし、二日続けて休まない
・最初から量を書こうとしない
・起こったことだけじゃなく感想も書く
です。
がんばれー。でも焦んなー。
>>196 食い物の描写を文中に入れると、どうにも食べたくなっていけません。
ダイエットとか!したいけど!
ところで今回エロメインだったので、
次はアクション多めの「月の話」でいこうと思いまーす。
キーワードは「魔法遺跡」「世界崩壊の危機」「異世界からゲスト」
来年までには上げたいですね。それではー。
……柊?
……来年?
>>199 はっはっは、葉っぱがとげとげの常緑樹が何故関係するのですかな?
>>200 まあ、来年までって言っておけば4ヶ月はあるから上がらなくもないかなーって。
>>201 まあ、落ち物の物語ですし。
それにむしろ今回は締まる方向性で。(ナニヲ?
保守
このスレ的に逆に人間の世界に獣耳っ娘が落ちた話はどうなのだろうか?
そーいうのはすでに世の中にたくさんあるジャマイカ
では獣しょたっこではどうか?
すでにクトゥルーと同じシェアードワールドものになってるから
同じ世界観を共有しやすい作品のほうがいいと思う
保守
頭痛い
>>210 GJ
そう言えば保管庫の方はきちんと機能しているのかな
>>210 GJ!!
ちなみに ShubaltsCattse じゃなくて SchwarzKatze の綴りが正しいのかもしれないっス。
ドイツ語でシュバルツカッツェ。意味は黒猫。
こっちは……スペース申し込んだんだけど音沙汰無いよ('A`)
>>212 間違いの訂正サンクス
知識もなしにこういうことするから間違うんだよね
やめないけど
>>212 続きのほうも期待してますぜ?(何故に疑問系?
最近スレが停滞気味じゃ喃
まあ、職人さん待ちだからね
正座して待つことにしよう
全裸で
停滞というかtxt投下が多いので進んでない印象。
で、最近はスレ投下ではなくtxt投下が流行なのですか?
>>217 txt投下する人間が言うのも何だけども、流行じゃなくて投下が楽だからだと思う。
とくに見聞録の人とかは洒落にならない量があるから・・・・・・。
鯖にも優しいしね
220 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/25(日) 21:15:23 ID:qdg3DUyr
一話で100kbとかときどきある品
上げちまった。スマソ
222 :
保守:2005/09/29(木) 21:01:43 ID:4oT2s2Sg
にゃー
マダラの女装ショタっ娘とかどう?駄目?
かいてくれたのむ
え?マジでいいの?だったパパ頑張っちゃうぞー♪
でも、ホモネタの場合はちゃんと断りいれてね。
>>225 期待しまくるから 途中で投げ出したりしないでねん
>>223 拾ったはずの女の子に立場逆転されて、トゲの裏あたりを重点的に舐め回されたりするのですか?
ふと思ったんだけど、リアルの蛇とか鳥とか魚とかって卵生じゃん。
ってことは、んーと、その、うん、アレだ、つまりね、
産 卵 シ ー ン 希 望
・・・ダメ?
>229
そこまでくるとモンスター娘スレとかになりそうだな。
まぁ、言いだしっぺが神になればいいじゃないか。
みんな発狂してるなw
もちついて神々の誕生を待とうじゃないか
ふと思ったんだけど、魚の国では室内には空気があって、マダムファルムの所だと室内でも水中なんだけど、
どっちで統一すれば良いんだろうか。
王宮とかなら室内に空気あるけど、水中でも息が続くようにすれば良いのかな?
>>232 それは魔法の規模が小さいからです。
ファルムの住処はちいさな洞窟なので奥まった寝室には完全に空気がありますが、入り口あたりの砂の間は、なんとなく水に浮く感じを残してあります。
魔窟の方は、地上と繋がっており、船を改造しているので普通に空気があります。なので獣人もいます。
この二つの場所の間には結構距離が有り、移動の際にはシロの息が続かないため、限定的な水中呼吸魔法をファルムが施していました。
という具合に考えております。
海の世界も広いので、サカナの国とは別個に設定を考えております。
なのである程度距離がある場所ならお好きな方法でよろしいのではないでしょうか。
>>233 こんな夜遅くに御回答ありがとうございます m(_ _)m
室内は空気があるという事で描写してみることにします。
>>233 作品産むより設定練る方が楽しいタイプ?
仕事を言い訳にすっかり怠惰癖のついた自分を追い詰める意味も兼ねてこっそり投下予告。
えっと、今度の日曜に景佳くんの狐っ子短篇か「岩と森の国ものがたり」のエロあり新作を投下します。
TXT形式じゃなく書き下ろしで。
……さあ、これで後に引けなくなったぞ自分。
よし、正座開始だ。
期待は膨らむばかりでございます
よし、週末までオナ禁だ。
ストーリーの保管は、初代スレからSS保管庫様が行ってくださっています。
そちらに任せていたのですが、wiki 側でも保管した方が宜しいのでしょうか?
任せていた、って言葉が悪かったですね。申し訳ありません。
245 :
242:2005/10/06(木) 18:43:13 ID:taLVTCTD
>>243 「できたとしたらすごくうれしい」ぐらいの話なので気にしないでくだされ。
削るんだ、246
>>241 再開乙
>>246 2ちゃんブラウザ種類によっては、リンクが張られる時に
URLの後ろの「】」 がURLに含まれちゃって邪魔してるみたいだね。
これ削って張ればOK。
今、保管庫のSSを見返してたら凄い痛いSSを改めて発見。
俺もあんなのだけは書かない様にしよう……マジ痛い。
ぽつりと、アンシェルがレーマに尋ねる。
「レーマは、もしヒトの世界に戻れるのなら……戻りたいか?」
「うーん……」
すこし、考えるレーマ。が、すぐに答える。
「正直、あまり戻りたくないですね」
意外な返事だったのか、アンシェルが問い返す。
「なぜだ?」
「こっちに落ちてきたのが五歳の時でしたし……いまさら帰っても、正直居場所がないといいますか……」
「家族がいるだろう」
「いたとしても、その……名前も覚えてないですから。……名前どころか、ほとんど何も覚えてないですね、向こうの世界のこと」
「……そうか」
「ま、それはそれで割り切ってますよ。どのみち、元の世界には戻れないらしいんだし。」
明るい表情で答えるレーマ。ちくりと、アンシェルの胸が痛む。
「悪いことを聞いたな」
「そうですか? むしろ、お前いらないから帰れとか言われたほうが辛いですよ」
「言うわけないだろうっ!」
突然、声を荒げるアンシェル。怒鳴ってから、急に目をそらし、つぶやくように言う。
「……私のほうが、困る」
「え?」
聞き返すレーマに、はっと振り向くアンシェル。頭の上のリボンがかすかに揺れる。
「……あ、いや、その、なんだ……」
少し頬を染めて、アンシェルは続ける。
「昔は、私ももう少し強かった気がするのだがな」
「……」
「いつの間にか、弱くなったのだな。お前がいないと、私のほうが耐えられそうにない」
「じゃあ、ますます戻れないですね」
「そう……だな。戻らないでいてくれれば……うれしい」
「まあ、でも」
「でも?」
少し不安げな目で、レーマを見るアンシェル。
「そういう話は、部屋に帰ってからにしましょうよ」
「え? ……あ、ああ、それもそうか……」
部屋に帰ると、リシェルの姿が見えなかった。
「……めずらしいな、リシェルが一人でどこかに出るなど」
「それに危険ですよ。仮にもリュナ卿の奥方なんですから、誰から狙われないとも限らないですし」
「探しにいくか。……いや、メモくらい残しているだろう」
部屋の中を探す。戸棚の中に、手紙は入っていた。
「えーと……『リュナの知人の所に向かいます。少し遅くなるかもしれません。夜中の三時までに帰ってこなければ先にベッドで寝ていてください』か……」
「夜中の三時、とはまたずいぶん遅い時間だな」
「ですね。まあそれも多分、もう一枚の手紙を見ればわかりますよ」
「もう一枚?」
聞き返すアンシェルに、微笑してレーマが言う。
「リシェルさまが僕あてにこの手の手紙を書いてるときは、もう一枚隠してるんですよ。今回なら、ベッドの……ああ、これだ」
枕の中から、封筒に入った手紙を取り出す。
「必要以上にそっけない手紙で、家具の名前が一個だけでてる手紙だったら、たいていこういういたずらをしてるんです」
「……おまえとリシェルも、そういう秘密を持ってるのだな」
アンシェルの奇妙な言葉遣いに、ふと小首をかしげながらに答えるレーマ。
「秘密といいますか……本人は気をつけてるつもりなんでしょうね」
「まあよい。手紙にはなんと書いてある?」
「えーと……二枚ありますね。……これは地図、ですか。南部居住区ですね。ふうん、大きな建物だ……ここにいるってことですか」
「そこに、三時以降……か?」
「そのようですね。警備とかをかいくぐるにはそのほうがいいのかも知れないですし」
「かいくぐる?」
問い返すアンシェルに、レーマが少し暗い声で答える。
「……あまり、よくない所にいるみたいです。軍施設ですから」
「……」
「手紙では、リュナ卿が昔いた部隊の施設だとありますね。まあ、リュナ卿ではなくリシェル様を狙うというのは、少なくともあまりまっとうな態度とはいえないですし」
「そうだな」
「……まあ、あと手紙では……」
「なんだ?」
「三時まではゆっくりしてください、って」
「……それもそうだな。軍施設に乗り込むのならば、休息をとっておいたほうがよい」
その言葉に、微苦笑を浮かべるレーマ。
「あとは、アンシェル様がお読みになってください」
そう言って手紙を渡すレーマ。それを受け取り、読み進めるアンシェルの顔が、急に赤くなる。
「れ、れーまっ! これは……」
「一応、気を使ってるんでしょうね」
「余計な気遣いだ!」
顔を真っ赤にしたまま、怒ったように言うアンシェル。
手紙の末尾には一文が添えられていた。
追伸。この手紙を見つけてから三時まではきっと時間がありますから、姉さまと二人で素敵な夜をすごしてくださいね。
ベッドとお風呂はきれいにしておきました。邪魔者はいないので二人で愛をはぐくんでくださいね
「あ、愛って……」
戸惑ったように口走るアンシェル。
その肩に、レーマが軽く手を乗せると、びくんと大きく震える。
「まあ、リシェル様もこう言っていますし……どうします?」
「ど、どうって……その……」
目を伏せるアンシェル。
「いつまでもこんな格好もなんですし、お風呂にでも入りますか?」
「……お、お前がそうしたいというのなら……わたしは……」
消え入りそうな声。
「どうします?」
「……だ、だから……その、おまえが……おまえが、好きなようにすればいい……」
「わかりました」
肩をすくめるレーマ。このご主人様は、普段は自分から動かないと気がすまないくせに、こういうときは自分からは動けないところがある。
そのくせ、レーマが自分の希望通りに動かなければ怒る。
わがままといえばわがままだが、それをかわいいと思ってしまうのはほとんど十年も一緒にいたせいかもしれない。
もっとも、そんなかわいらしさを見せ始めたのは最近のことでもあるが。
「じゃ、先にお風呂ですね」
そういいながら、レーマはアンシェルの服に手をかける。
いつになく着飾ったアンシェルの服を、一枚づつ脱がせてゆく。
リボンやブレスレッドのような装飾品は、きちんと形を整えて机の上に置く。それから上着を脱がせて、ハンガーにかける。
白いブラウスのボタンを外してそっと脱がそうとすると、アンシェルがぴくんと小さく震えた。
小ぶりな乳房を包む白い下着と、色白で華奢な身体がランプの明かりに照らされる。
かすかに目をそらして下を向くアンシェルの頬はかすかに赤い。そんな表情のまま、アンシェルは少しも動かずに、レーマが一枚づつ脱がせていくのに身を任せている。
下着に手をかけ、背中のフックを外す。
「あ……」
かすかに手を動かして胸を隠そうとしたが、すぐに手をおろす。小ぶりな乳房と、その先端の桃色の突起があらわになる。
「…………」
羞恥の表情で、少し上目遣いにレーマを見る。
くすりと、レーマが笑う。そしてその頬にキスをする。
「大丈夫ですか?」
「……だいじょうぶ」
小声で返事が返ってくる。何度も肌を合わせていても、まだ恥ずかしさは残っているらしい。
十年も続いた、名目上は今も続く「ペットと主人」の関係が、この時間だけはまるで逆になったかのように、今のアンシェルはおとなしくなっている。
最後に残った下着に手をかけ、左右で結ばれた紐を解く。
小さな布切れが、床に落ちる。それを広い、他の下着や服と一緒に置く。
いまは一糸まとわぬアンシェルを椅子に腰掛けさせると、レーマも服を脱ぐ。
そして、自分の脱いだ服もたたむと、椅子に腰掛けたアンシェルを両手で抱えた。
「……れーま」
ふと、アンシェルがレーマの名を呼ぶ。
「はい」
返事をするレーマ。
名前を呼び、そして当たり前のように返事が帰ってくる。そんな距離さえない頃があったと、アンシェルは思った。
それに比べれば、今は本当に、この距離に二人がいることが、当たり前なことが幸せなことなのだと思う。
「……いや、呼んでみただけだ」
そう言って、アンシェルは気持ちよさそうにそっと目を閉じる。
目を閉じたアンシェルの唇に、そっとレーマは唇を重ねた。
浴室。
石鹸の泡が、アンシェルの白い肌を覆っている。
「……んっ……あ……ぁん……」
その泡の中で、レーマの指がアンシェルを愛撫する。
レーマの上に腰掛けるように乗っているアンシェル。背後から、左右の指が優しく肌を刺激する。
指を滑らせるようにしてやわらかな肌を撫でると、そのたびにくすぐったいような感触がアンシェルを襲う。
「れーま……」
アンシェルの、熱っぽい目が振り返る。
「どうしました?」
やさしい微笑を浮かべて、レーマがその目を見つめる。
「……呼んだだけ」
そう言って、今度はじっとレーマを見つめる。
また、軽く唇を重ねる。
舌を絡ませ、そしてそっと離す。
右の掌が、アンシェルの乳房に触れた。
「あ……」
小さく声が漏れる。
下から持ち上げるように、小ぶりな胸のふくらみを包み、そして軽く揉む。
「ん……」
声を押し殺すように口を閉じるアンシェル。そんなアンシェルの表情の変化を楽しむように、やさしく乳房を揉む。
左手は、その間にも肌のあちこちをくすぐるように愛撫する。
「……っ……」
唇を強く閉じ、声が漏れるのを必死に絶えるアンシェル。健気なしぐさが、妙に色っぽくかわいらしい。
右の人差し指が、乳首に触れた。
「んっ……」
たまらず、声が漏れる。
くりくりと、指が桃色の突起を転がす。
「んっ……あ……」
その先端が硬くなるのに合わせて、強く閉じていた唇から、切なげな声が漏れ始める。
左手の指が、そっと恥部に触れる。
泡の中を掻き分けるように、奥まで差し入れた指に、暖かくぬるりとしたものが絡みつく。
左右の指を、少し激しく動かした。
ぴくんと、アンシェルの裸身が大きく動く。
「駄目ですよ」
わざと、そう言うと、アンシェルの身体を背後から抱くように近づけ、密着させる。
「アンシェルさま」
そう、声をかける。
「……れーま……」
焦点の合わない瞳が、レーマを見る。
「気持ちいいですか?」
「うん……」
まるで幼児のような、甘えるような舌足らずな声の返事がくる。
「よかった」
そういって、また愛撫を再開する。
「……んっ」
優しい刺激が、肌の奥まで伝わり、じんと痺れるような何かがあふれてくる。
かすかに涙を浮かべたアンシェルの目が、レーマをじっと見ている。
左右の指が、一度離れ、そして今度は逆の動きを見せる。
さっきまで乳房を愛撫していた右の指が恥部へともぐりこみ、そしてゆっくりと蠢動しつつ前後に動く。
左の指が、今度は左の乳房に触れ、そして五本の指が優しく揉む。
ぬるりとした、すべるような感触がここちよい。
身体の奥から、とめどなく溢れてくる快楽に、時々耐え切れなくなって身悶えして逃れようとするが、そのたびに左右の指は、攻めを一度とめて、強くレーマの側に引き寄せる。
そして、おとなしくなってからまた愛撫を再開する。
「あん……はぁん……あぁ……」
唇からは、絶え間なく喘ぎがもれる。
熱っぽい瞳はいつの間にか、快楽にすべてをゆだねたようにそっと閉じられている。そのふちに、少しだけ涙のようなものが見える。
レーマの左右の手が、それをみてそっとはなれ、そして抱きかかえるように左右の脇に添えられる。
そして、両手で少し持ち上げると、背後からできるだけ優しく挿れる。
「んっ……」
かすかな喘ぎ。
ゆっくりと、上下に動かす。
最初はレーマの手の動きに合わせていただけのアンシェルの裸体が、少しづつ自分から動きはじめる。
慣れないぎこちない動作で腰を動かすと、そのたびに強い刺激がアンシェルを襲い、声を上げさせる。
それを支えるレーマの腕が、少しだけ大きく動く。
肌を包む白い石鹸の泡は、アンシェルが大きく身体を動かすたびに小さな泡となって回りに飛び散る。
かすかに、くちゅくちゅという粘着質な音が聞こえる。
「アンシェル様」
「……っ、んくっ、んん……」
貫かれる度に襲い掛かる快楽のせいか、呼びかける声にも返事はない。
そもそも、まるで求めるように自分から腰を動かす、そんな乱れたアンシェルを見たのは初めてだったかもしれない。
「あっ、あん、ああっ、ひあぁ……」
喘ぎ声が、途中から泣くような声に変わってきている。そろそろ、限界が近いのかもしれない。
少しだけ、左右の腕の動きを激しくする。
それに合わせて、アンシェルも腰の動きを早める。
そして。
泣くような声を上げて、アンシェルは果てた。
「……れーま」
浴槽の中。泡を洗い流した二人は、仲良く湯船の中にいる。
「はい」
「……ずるい」
「なにが、です?」
「なにが、って……その」
先ほどの痴態を思い出し、目をそらすアンシェル。
「私は、どんどんお前から離れられなくなってゆく」
「……それは、その」
何か言おうとしたレーマに、すかさずアンシェルが言う。
「れーまのせいだ」
「ぼ、ぼくのですか?」
「そうだ。全部レーマが悪い。……私が、こんなになったのも、元はといえば全部れーまのせいだ」
「…………」
そう言いながら、湯船の中で肌を押し付けてくる。
「だから、元の世界に戻るなど許さないからな」
その言葉に、くすりと笑う。
「何がおかしい!」
「戻りませんよ、そんなこといわれなくても」
苦笑するレーマに、目をそむけたまま続けるアンシェル。
「それだけじゃない。私のそばを離れることも許さん」
「……はいはい」
「はいは一度」
「はい」
そう返事をしながら、レーマは両腕をアンシェルの腰に回して、くいと引き寄せる。
「あっ……れーま、何を……」
「これでも、忠実なペットのつもりなんですよ」
そういって、また指を肌に這わせる。
「……れーま……あっ……」
「三時まで、まだまだ時間はあるんですし、ね」
「……バカ言うな……」
そう言いながらも、肌を寄せてくるアンシェル。
その顔が、レーマの方に向く。
潤んだような目が、しばらくレーマを見つめていたが、やがてアンシェルは自分からレーマの首に手を回して、唇を重ねてくる。
奥手というか、少なくとも色恋沙汰に対してはリシェルより言動が幼いアンシェルが自分から求めてくるのは、初めてのような気がした。
「んくっ……んん……」
正直、アンシェルの動きはぎこちない。考えてみれば、今までずっとレーマがリードしてきたのだから無理はない。
──まあ、いいか。
こういうのも、すこしづつ二人で慣れていくものだろうとか、そんなことを思った。
──それよりも、だ……
のぼせないうちに風呂から出ないと、三時までに倒れたのでは冗談にもならないとかいう思いが脳裏をよぎった。
……短いですけど、とりあえずなんとか上げました。
ストーリーがまるで進んでないような気もしますが、それはまたそれで。
もしかしたら、8後編という形でストーリーの方を進めるかもしれないですし。
とりあえず、こんどは早いうちに本格的な再開をやりたいと思ってたりします。
イヤッッホォォォオオォオウ!!
GJ!
総天然色ツンデレなアンシェル様キタワァ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!!!
続きも待ってますよ〜
アンシェル様 キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
アンシェル様 キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
もう十分愛はぐくんでますよ。
このところこのスレ元気ないなーて思ってたから
すげーうれしいね
思わず一日中保管庫の作品読みふけってた
他の作者さんも元気でおられるだろか
元気だよー
来年までに間に合うか微妙になってきたが・・・。
266 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/12(水) 18:02:36 ID:HhOgHt1O
がんばれ〜 と
267 :
ピューマ担当:2005/10/13(木) 18:00:41 ID:wQOWmSNB
あ (゚Д゚;)
まあいいや。何とかしよう。
ピューマ担当様、相も変わらずGJです!
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
ピューマさん待ってました!GJ!
>>267 拝読させて頂きました。良いお仕事かと。
なんかこう、新鮮だ。
『落ちもの』の『大人』ってのはあんま見た覚えがなかったからだろうか。
いやもう、GJです。
272 :
ピューマ担当:2005/10/16(日) 03:20:49 ID:C1kIFSbh
>>272 キター!!でも寸止めー。
続き、期待してます!
>>272 もう、ただ一言のみ。
激しくGJです。
あ〜続きが待ち遠しい……
……待つのもいいけど、お前もさっさと続き書けよと、もう一人の自分に叱られたorz
甘いな、俺なんかもう一人の自分に罵られたぜ!
ウホッ
質問させてー
1レス40行前後として何レスまで投下していいかね?40くらい行きそうなんだけど
おとなしくtxt投下のほうがよさげ?
キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
ご自由にどうぞ。txt でも投下でも。
1レスにつき全角2048文字、60行までいけるようになってるから
もう少しレス数は減らせると思いますよ。
>>277 どちらでも構わないと思いますが、
40も貼るのはちょっと大変だと思うので、
txt投下のほうがいいかも。
(30秒に一回しか書き込めないので20分くらいかかる)
できれば直接投下して欲しいかなと。
スレが伸びてるほうが嬉しいじゃないさ。
気分的な問題だけどね。
282 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:42:39 ID:vj6u/Nvu
まず、何やら不用意な投下予告とかしてスレ止めてしまっていて、すいませんでした。
この場を借りてお詫びをば。
それでは、
『木登りと朱いピューマ』の続き、行ってみます。
えっちくした所くらいきちんと投下してみたいと思いますので、お相手して頂けたらと思います。
少しだけ乱暴な表現を含んでいます。お気をつけ下さい。
283 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:44:31 ID:vj6u/Nvu
------------------------------------------------------------------------------------------
〜 7++ 〜
------------------------------------------------------------------------------------------
──カッ、カカッ、カカッ
俺には分からないどこかに向けて、朱奈はリャマを進ませている。
二人とも皇館を出てから終始無言だった。
朱奈が見せた激情の名残がそうさせたのかもしれないし、
ただ単にお互いがお互いを盗み見合っているだけなのかもしれないが。
来た時と同じように、道の両脇には等間隔で蛍光柱が並び、
幾らか強さの増した黄緑色の光がぼんやりと地面を照らす。
「なあ、朱奈…」
「……」
朱奈からの返答はない。
それでもなんとなく、だらだらと話したい気分だった。
「朱奈を拾ったときのこと、言っておいてもいいかと思うことがある。
……俺は決して助けようと思って家へ連れ帰ったわけじゃない」
俺はかなり周りくどいと、よく周囲から言われる。
言いたいことはさっさと言え、と。
「ひどい魔が差したというか、
あ、いや、この言い方だと悪いことをしたような感じがするな……。
あー……衝動買い…、のようにね。
なんだか分からないけど、持って帰ってしまったんだ」
しかし、色々と話すことで見えてくることもあると、俺は思う。
「そこからは朱奈も知っているだろうけど、一応介抱らしいことはした。
しかし、俺はそれまで犬や猫など飼ったこともなかったから、
本当に、適当にやっただけなんだ」
まっさらの自分を見て欲しいというのは、ひどい傲慢だが、
少しだけでいいから、知って欲しいと思うのはそうではないはずだ。
「もし、あのままぐったりとしたままだったら獣医を呼んできただろうし、
もし、飼主を探そうなんて気になったらそうしていただろうし、
もし、野生に返そうなんて思い立ったら、父に頼っていただろうし」
俺にとって朱奈はすでにそういう存在だった。
人間とピューマだった頃から、『ヒト』と『人間』になった今でも。
俺は朱奈のことが知りたいし。
朱奈に俺のことを知って欲しい。
284 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:45:48 ID:vj6u/Nvu
「ただ、あの時の状況が朱奈にいいように運んでいただけで、
朱奈からすれば都合の悪いことになったかもしれない」
「……」
「もちろん、それは俺の身勝手な思いであって、
おそらくそうなった時には、朱奈にとっていいことをしている気になっているはずだ」
「……」
「だから…その…俺に遠慮なんてすること、無いんだ」
「……」
「自分の立場を傷つけるようなことを、して欲しくない、朱奈。
せっかくの母娘の関係を崩すようなことを、して欲しくない」
「朱奈が俺のことを大事にしてくれているのは、
分かりきってる──うぬぼれ、かな」
「そんなこと、ありませんよ……うぬぼれてもらって、かまいませんよ?」
ようやくにして、軽やかな声が呟いた。
それでもその声音は深い何かを含んでいるように感じた。
しかし、今の俺では彼女の心の内を探ることはできない。
とりあえず、会話のきっかけを生めたことを喜ぼう。
「……この世界は、朱奈の世界なんだから、
自分を一番大事にしたって誰も文句は言わないはずだ」
「まあ……それでは、フユキは一体何番目に大事にいたしましょうか」
「え…ぅ…隅っこの方で、いいよ」
「フユキは謙虚ですね」
「というか、その質問は反則だろう、朱奈。
変数が式に対して多すぎる。
だいたい、解を導き出すとしたら『傲慢』と『謙虚』しか出てこないだろ」
「ふふふ……『自惚れ』てもらって構いませんよ?」
「む」
──カッ、カカッ、カカッ
己に乗せられた鞍の上で、何かと何かがやや大きめに左右へ傾ぐ。
硬くなめした皮製のそれに体毛が巻き込まれて、
彼はひどく機嫌を損ねた。
鼻息一つ、わざとらしく伝えると、
主人は口先だけの謝罪を繰り返し、また楽しげに笑い出す。
なんだかむしゃくしゃして、胸のむかつきごと下品に一つ、げっぷを吐き出した。
しかし、それすら主人とその連れには面白いらしく、
彼はもう、心底どうでもよくなった。
早くかさかさに心地よい干草の寝床に体を横たえたい。
そこで彼は気づいた。
太陽が沈むまで丹念に整えた寝床も今頃古びた女房に占領されているだろう、と。
この疲れた体を労わってくれるのが、どろどろに汚れた干草と女房の糞であるならば。
……。
どうしてやろう、こうしてやろう、ああしてやろう。
決して実行できるはずのない作戦を練るのが彼の精一杯で、彼の日常でもあった。
285 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:47:14 ID:vj6u/Nvu
----------------------------------------------------------------------
〜 8- 〜
----------------------------------------------------------------------
幼子の館【エルクェ・ワシ】。
国営のその保育施設は、夜時に訪れると不思議な威容を伴う。
昼時の好ましい騒がしさを自然と思い返して、
その差異に「何かいるはずのないモノ」を漠然と感じるからかもしれない。
平屋が多いこのキンサンティンスーユで、
階層が多いというのはそれだけその国にとって重要である事を示す。
一階部分はいくつもの教室で占められ、各々は漆喰の壁できっちりと隔てられる。
学習用の器材だけでなく遊具や寝具をも備え、さながら幼子たちの砦のようだ。
二階部分は逆に保母たちの準備室。
自分たちの受け持った教室の真上にあるらしいが、詳しくは明かされていない。
防犯上の理由とも、貴人たちにしか分からぬ呪術的な理由からとも言われている。
後者は割りと眉唾であるが。
ここまでは『あちら』の一般的なそれとかけ離れてはいるまい。
しかし大きく様子を違えるのは、その大きさと形。
『あちら』にある『スタジアム』という建物をご存知だろうか。
エルクェ・ワシはその特大スタジアムの如き、二階層の建築物と思って欲しい。
『グラウンド』部分は子供たちの遊び場たる中庭で、
『観客席』は一つ一つ区切られた教室となる。
上空から観察すれば、ちょうど視力検査のときに見られる、
ひとかじりした黒いドーナツを思い出すことだろう。
これは勿論だが、エルクェ・ワシは他にいくつかあることも記しておこう。
そして──説明が長くなった。
最後の舞台はその幼子の館からさらに広がった同心円上に数珠のように並ぶ、
保母たちの宿舎のうちの一つ。
朱奈にあてがわれている、一軒の平屋へと──
286 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:49:16 ID:vj6u/Nvu
------------------------------------------------------------------
〜 8 〜
------------------------------------------------------------------
また、ふわり、と。
一陣の風が部屋を通り抜けた。
どちらかと言えば暑い気候のせいだろう。
朱奈の家は風通しがかなり良く、すっきりと。
また、柱や廊下などがどことなく和風な木造家屋を彷彿とさせる。
一方日本なら大きな襖やら障子やらが思い浮かぶが、ここでは部屋を蒸し暑くするだけだろう。
その代わり、目が粗い簾のような垂れ布が部屋を隔てている。
プライバシーやら色々気になるヒトもいるだろう。
しかし、これは治安の良い証拠であるし、隣の家の明りは見えもしない。
なにも問題はなさそうだ。
今、泳いだ視線の先で垂れ布がふわりと舞うのが見えた。
彼女の心尽くしをちびりとあおる。
そして、ほどよい酒気もあってか、料理を口に運ぶ手も止まらない。
しかし黙々と食べ続けているのはそのせいだけではない──間がもたないのだ。
いつの間にか、正面にいたはずの朱奈は俺の左隣に座っている。
……これもまた俺の部屋にあったものを参考にして、造ってもらったらしいが、
こちらでは今俺が座っているソファのようなものを【フォチクィ】と呼んでいた。
そのフォチクィに身を沈め、朱奈は俺の左腕を抱え込む。
さらに左肩には頭がことりと預けられている。時々、ピューマの耳が掠めたりした。
自分以外の体温が、それも女の子の体温が密着していて、
しかもそこに女の子だけの胸のふくらみが接しているともなれば──
やや時間を遡る──
「う、わ……」
賛辞の言葉すら忘れて俺は見入っていた。
「簡単なもので申し訳ありません」
朱奈も最後の陶器皿を置くと、向かいに腰を落ち着けた。
「はい」と取り皿を渡されて、俺はのそのそと受け取る。
「これ……すごいな……」
「フユキのお口に合えば何よりです」
実に素晴らしい。
何をそんなに感動しているかというと。
「クイとユンカのトマトソース和え……ワイコのそら豆ワッティア……
イサーニョの甘辛煮……各種セビチエ……になります」
少しだけ照れたような顔で説明してくれた。
287 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:50:41 ID:vj6u/Nvu
「これ……『あちら』の料理にそっくり、だ」
「えっと……見様見真似ですから、味のほうはあまり自信がありませんが」
液体の入った瓶を差し出され、とっとっ、と注がれた。
「その上、あまり節操のない組み合わせで」
一品目……肉類とコーンのトマトソース和え。
二品目……サツマイモのそら豆スープ。色が緑だが香りは味噌汁。
三品目……ジャガイモの甘辛煮。見た目は芋の煮っ転がし。
四品目……串に通してあるが、どう見ても魚の切り身。お刺身だ。
「食べられそうなものだけ、おつまみにして下さい、ね」
なみなみと注がれたぐい飲みのような器からは、濃厚な酒精の香りがする。
チチャ酒というこちらでは一般的なアルコールらしい。
手元と、食卓と、朱奈の顔とをうろうろと見比べる俺を、朱奈は穏やかに見つめていた。
おそらくこの料理たちは、『あちら』に浮幽した時に、
俺が食べていた物を覚えてきて朱奈が『こちら』風にアレンジしたものだ。
そう気付くと、体にカッと燃料が入ったように熱をもった。
「いらっしゃいませ、フユキ」
── 「『こちら』の世界に、いらっしゃいませ、フユキ」
「ありがと、朱、奈」
声が詰まるのを全力で阻止する。
「これからも……よろしく」
引っ張られるように頭が下がった。
……そして今に至る。
知らぬ間に、俺が呆けていただけか、朱奈が隣にいるこの状態。
それなのに朱奈は特別何でもないという顔をしているし、
俺だけが騒ぎ立てても、意識し過ぎなようで踏み込めない。
「朱奈」
「何ですか? フユキ」
「……うまいな、これ」
我ながら芸のない台詞だ。
「ありがとうございます。ちなみにそう言うのはもう三度目になりますよ」
からかいが入ってるのが分かる。
「そうか」
そしてまた、さぁっとそよ風が通り過ぎた。
288 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:51:54 ID:vj6u/Nvu
「朱奈!」
「はい、フユキ」
「朱奈も飲んだらどう?」
飲んで朱奈が眠くなってでもくれれば──
「あまり頂きすぎると、ニヤトコに障りますので」
「あ、うん。そうだったな。朱奈にはお役目があった」
はい却下。頼りない液体に腹いせと、一口でチチャを飲み干した。
これまた即、酒を注ぎに朱奈の手が伸びるが、器をちょっと右に置いたせいで届かない。
おお。無意識だけどエライ、俺。
これで朱奈は酒を注ぎに俺の腕を離して──
「うぅっ」
──はくれず、さらに胸を押し付けるようにして注がれてしまった。
「どうしました?」
「……少し、腕が痺れて」
まさか、やわらかなふくらみがどうとか言わない。言えない。
「まあ、お疲れのようですね」
「うん。今日は色々ありすぎたから、かも」
本当に今日は長い一日だった。ほんのひと時、数々の驚きを振り返った。
だから──
隣で朱奈が何か考え込むように目を伏せ、物悲しく微笑んだとは、俺は夢にも思わなかった。
「フユキ」
「うん、何?」
「わたくしは小さい頃、前皇陛下の御所にたびたび遊びに行きました」
「……」
いきなり話が飛んで面食らう。
「前皇陛下ということは、朱奈のおばあさん?」
肩越しにしゅっと、頭が服にこすれて縦に振られたのが分かる。
三角形の耳も同時に微風を送る。
「毎回お菓子を頂いてしまってそれはもうおいしくて、嬉しくて。
何かお返しがしたいと思い、お背中を揉んで差し上げたところ大変喜んで頂けました」
再確認。この娘は本当にいい娘だ。
「ですから、わたくしは手揉みには自信があるのです。お疲れのフユキにも是非とも」
「え、そんな。朱奈だって疲れてるだろ」
「してあげたいのです」
またぎゅうっと腕を抱え込まれた。
勢いに釣られて咄嗟に朱奈をほんの間近で振り返り、
視界の隅でたわんだ眩しい双丘とその谷間を垣間見てしまい、
これまで意識しないようにしていたところにナニカが集中する感覚。
「わ、分かったっ! それじゃ頼もうかなっ」
この手を離してくれるなら何でもいい。反射的に答えていた。
「それでは、行きます」
俺はゆったりとしたフォチクィにうつ伏せになっていた。
背後で布地がきしっと沈み込む気配、次いで肩の辺りに朱奈の両手が添えられた。
中腰になっているのだろう。ぐっと力が加えられ、その体重ののった負荷はけっこう重い。
そして背骨を重点的に圧したり、リズムよく左右交互に沈んだりして相当気持ちいい。
「う、あ……いいよ、朱奈」
自然と目は閉じ、口からはため息が漏れる。
「んっ……んぁ、それは、なによりっ、です…んんっ」
そのこめた力のせいか、朱奈の口からはヘンな声が出ている。
「フユキのせなか。意外と……たくましい……」
心地よい圧力は次第に腰へと下りてくる。その分肺は楽になった。
さらに深い安堵を吐き出した。
「本棚の、整理、好きだから、あぁ……かな。分厚いほ…んっ、たくさんあるし。
朱奈も知ってる、だろ」
「ふふ。はい、フユキ。んっ……」
あの地震と火事では到底無事ではありえないだろうが、俺の部屋の隣は丸々一室本だらけ。
ピューマの朱奈をそこで遊ばせていたことがあるわけで。
やがて、
「……」
やや不穏な空気を感じる。少し様子がおかしい。
朱奈ではなくて、俺の。
肩から背中、腰に至るまで大変きもちいいのだが、ひねるような円運動のせいで──
「んくっ、んっ、んっ。気持ちい……ですか?」
朱奈のこの上擦ったような甘やかな声音で──
不覚にも一箇所、ヨコシマな血が流れ込んでいた。
一度朱奈の声から「女の子が感じている時の声」を連想してしまうと、もう止まらなかった。
背中にまたがる彼女からは分からない、そう分かっていつつも、
鼓動からしてみるみる速まってしまう。
そして、
「次は前の、方も……」
耳を大きく疑う。ぎくりとする間もなく朱奈の手が両脇からすすっと腹側にまわっていく。
「いや、まずいってっ!」
ようやく焦って手のひらをつき、上体を起こすが、転瞬。
「ぅあ?」
ぐるっと体を返されて景色もひっくり返る。
やわらかいフォチクィのおかげで体は何事もない。
しかし、仰向けになって拓けた目に飛び込んできたのは、とんでもない、大事だった。
「あっ。フユキの…こんなに……ぁ、もっ…と…?」
幾分ゆっくりとした朱奈の声はつい先ほどまで背中で聞いていた声と変わらない。
けれども、彼女のその有様は俺の不粋な妄想そのもの、いや、それ以上だ。
290 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:53:31 ID:vj6u/Nvu
いつの間にか上衣も下衣も、袖裾丈全てが極端に短く。
桃色の蕾と、朱色の陰りが透き通るようで、『あちら』で言えば極薄のキャミとショーツだ。
そして鳶色の視線といえば俺の股間にまじまじと注がれ、
紅く照る唇はぺろりと一度だけ上側を舐めた。
「朱奈っ!何て──」
煽情的すぎる様相にばっと目を逸らした。
「驚かせてごめんなさい、フユキ。気持よく……できてました?」
「……!」
息が詰まってどっちをどう答えたらいいのか分からない。
それに、いきなりの成り行きを謝っても、己の服装その他に頓着していない──
そんな朱奈の不可解さにも当然、俺は気づけない。
「すっ、すぐ退くっ」
下半身でテントを張り上げて、晒してしまったことがただひたすらに恥ずかしい。
身を捻って文字通り朱奈の下から逃れようとするが、
「お厭…?」
両肘をがっちりとつかまれて動けない。
見かけとは裏腹にこもる力はかなり強く、
それでいて離そうと力を入れてもさらに強く握られるだけだろう。
そう直感するだけの余力が朱奈にはあった。
「気持ち…よかったの、ですよね?」
「……まあ、うん」
……昔ある生物の講義を受けたことがある。
犬に電気ショックを与えたとすると、もちろんその犬は刺激から逃れようと抵抗する。
しかし全身をがっちりと固定し、あらゆる反抗を封じ込む状況に追い込むと、
その犬は全身を電気による痛覚に苛まれているはずなのに、一切の抵抗をしなくなる。
全てを諦めたような行動を取ると言う。
今の俺はちょうどその状態に近いと言えるのではないだろうか。
ゆるゆると顔を正面に戻し、逆光に近い朱奈を仰ぎ見る。
「うれしい」
鋭い目元をさらに細めて無邪気な表情。
なのに、それはひどく、不均衡。
「わたくしも……いい、ですよっ…んぅ」
すっと朱奈の腰が跳ねるように動き、その光景にはっと息を飲む。
下腹をわずかに覆うだけの小さな白い逆三角形には、蛇のように朱色の尻尾が這っていた。
見た目にそれと分かるほど先端付近はてらてらと濡れ、
頂点を擦ったり弾いたりするごとに妖しく体がくねる。
「フユ、キがっ……っ…見っ」
いつから行われていたのか分からないが、俺の妄想はまったくの外れではなかったと悟る。
湿ったような水音と、小さくて熱い吐息とに魅入られて、艶かしさをごくりと飲み込んだ。
291 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:54:15 ID:vj6u/Nvu
「それでは……っ」
ぎしっ。
朱奈の重心が移動し、蛍光を遮った。
その影に、俺はようやく朱奈のそこを凝視していたことに気づいた。
「あー。えっと、その」
しかし意味不明なほど頭が働いてこない。
辺りが暑い感覚を覚え、それが自分の顔から出る熱だと気づいた時には、
何故かだんだんと上から近づいてくる鳶色の瞳に吸い込まれてしまっていた。
そして、腰から下では水に濡れたブラシのような感触がずりずりと、
アワスカを器用に脱がせていくのを呆然と感じるばかり。
朱奈の唇が動き出す。
「サヤ・クサ様。ご照覧あれ」
"ぴちゃ"
まったく経験なんてないけれど、そこが朱奈と俺が一緒に気持ちよくなれる場所だと感じられる。
そして自分以外に触れて初めて分かる。
それが射精間近のようにぎちぎちと膨れ上がっていること。
「ニヤトコの儀」
さらに、唇を触れ合わせるように。息はもう、触れ合っている。
"ぐちっ"
さらに、沈み込んだ。
「これより」
刹那。
俺と朱奈は二つの唇へと互いに押し入った。
「ん────!」
「ん────!」
体中が隅々まで沸き立つ。
朱奈の膣内は熱くて、ぬるついていて、狂おしいくらいに気持ちいい。
二人の腰は強く接合してしまって動くに動けない。
それでも動きたい。気持ち良く、もっと。
自由な肘から下を跳ね上げると、触れた朱奈の滑らかな肘を握り締め、
押さえつける彼女の肢体を突き上げた。
「んんっ!」
狭道を、それこそ1cmも擦れていないだろうに、それだけで快感が倍加する。
一方朱奈も太腿を締め上げ、ただでさえ狭い膣内をさらに捻りこんだ。
さらに攻めは止まらない。
逆に俺の口内に押し挿っていた朱奈の舌が這い回り始めた。
歯茎をでたらめに突き、俺の舌を誘う。
二つの舌はようやく出会えた恋人たちのように絡む。
「んむっ!」
今度は俺が悲鳴を上げる番だった。
自分で触れてもくすぐったい敏感な上顎の裏をざらざらと舐められる。
我慢できなくて向った俺の舌は、彼女のそれに己の主人と同じように押さえつけられる。
そしてなお、無駄な努力と嘲笑うかのように上顎をくすぐられた。
292 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:55:11 ID:vj6u/Nvu
「ぷはっ」
「ふふっ……」
もう降参だ、と朱奈の肘をぺちぺちと叩き、
睦み合っていたお互いの唇は銀糸を引きながら離れた。
息苦しさから急に解放されて、がっつくように空気を取り入れる。
「はっ…はっ…はっ…」
「フユキ。口を深く吸い合う時は、鼻で息をしませんと、ね?」
さも可笑しそうに彼女は笑う。
もう何度も見た、ふわりとからかうような笑顔なのにぞくりとする。
ただ唇が濡れている、それだけで。
「こんなに、零して」
頬にちゅっと音を立てて唇付けられる。気づけば口の端から唾液が零れていた。
つまり、口内にたまっているのは朱奈と俺の──
なんだかひどく恥ずかしくて、そっと飲み込んでみた。
味なんて変わらない、けれども。
「朱奈の……味」
「……はい」
恥ずかしさが伝わったのか、朱奈もはにかむように。
「わたくしも、フユキの、味」
「ああ」
今度は両者が同じくそうしたいと願い、その願いは当然の如く叶った。
二回目もまったく容赦がない。
唇も使って朱奈の中に吸い込まれ、思うがままに翻弄される。
逆に上顎におずおずと這い寄ってみれば、これもまた敏感な舌裏をくすぐられ、
たまらず口付けを離して撤退すれば、一回目のように頭を押し付けられて侵攻された。
「ぁん」
苦し紛れに動いた手が、張り詰めた小粒に触れた。
朱奈は思わずといった感じで背をくんと反らせ、その反応に俺は少しだけ気を良くする。
乳首を刺激されるのは朱奈の意ではないらしく肘で邪魔してくるが、
俺の肘を掴んだままではうまくいかない。
続けてその蕾を薄い下着越しに弾いてあげると、
「はあ、フユキっ。んっんっんっ」
眉間に少しだけ皺が寄って、それがすごく可愛い。
加えてその高く上擦った声が、胸の奥を燃え立たせる。
もっと、もっと聞きたい。もっと気持ちいいって、教えて。
「やぁっ。いけま、せん……いけませんっ……」
「だめだっ。 止まらないっ……て!」
一旦止まっていた突き上げも再開する。
相変わらずぎゅうぎゅうと膣に握りこまれていて抽送はわずかだが、
ふと俺は思い出していた。
女の子が最も感じるところが、お互いのぶつかり合う付近にある、と。
「『あちら』で、はっ。クリトリスって……言うぞ、ここっ」
「あ、あ、ぁ、あっ! だっ、めぇっ!」
朱奈のそこは傾いだ上体に阻まれて見えないが、知識しか頼れる手段がない。
必死に腰を動かしてぐりぐりと抉る。
その時にはもしかしたら彼女は痛いかもしれない、などと心配する余裕など欠片もなく。
293 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:55:55 ID:vj6u/Nvu
しかしそんな拙ない律動も、そのうちどうでもよくなっていた。
熱い朱奈を行き来するほどに、自分の快感だけがクリアに澄み渡る。
最奥に眠る最高に気持ちいい爆発を、朱奈の最高に素敵な旋律とともに味わいたい。
ぐうんと反り返るような悦楽に手を伸ばして──
「んがっ!」
おおよそ、男女が絡まりあう時に相応しくない奇声が自分の喉から飛び出した。
それも当然だ。
ケツの穴に何かを突っ込まれる経験なんてないのだから。
「は、ふ。おいたは……それまでになさい、ませ、フユキ」
はい、犯人はこの人らしいです。
俺は強制的に律動を止められ、朱奈は息を整えながらも落ち着きを取り戻していた。
しかし突っ込まれた本人はそれどころではない。
衝撃にぱくぱくとあえぐだけ。
「シュナサン。コレ、イタイ」
朱奈は悪戯っぽく喉でくくっと笑う。
「わたくしの尻尾です。危ないところでしたから」
これの方がよっぽど危険物だと思うんだ。立派に。
「フユキはまったく油断がありませんね。放っておくと何をするか分かりません」
そこで彼女は一旦ふいっと視線を泳がせた後、
「ですが。先ほどのフユキは……すごおく熱っぽくて、激しくて、……ふふっ」
片手で頬をついっと撫でられた。
朱奈にとっては何気ない動作だろうが、快感を貪った自分の衝動を揶揄されているようで、
かあっと血が昇るのがありありと感じられる。
「でも」
するすると胸元をはだけられ、
「これよりはわたくしにお任せを」
そんなことを呟いた朱奈に再び腕を拘束され、ゆっくりと半裸の肢体が動き出す。
ぬるま湯のような気持ちよさが、じわじわと広がって行く。
しかしそれは比較の問題。
過敏に過ぎる肉全体を膣襞がぐじゅぐじゅと蠢いて止まらない。
思考が霞む。瞼を落として意識を痺れに埋めた。
本能に従って腰が持ち上がり、自分にとって一番いい体勢を取ろうと動く。
「イきたい、ですか?」
頼りない浮遊感の中、俺は首肯した。
「ならば誓いなさい、フユキ」
その声は何処までも優しく慈しむが如く。けれども。
「あなたは、このサヤ・ピスカ・ピュマーラの『奴隷』である、と」
霞んだ朱奈の表情は冷徹ささえ感じられた。
294 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:57:00 ID:vj6u/Nvu
── 『奴隷』。
その音の意味を理解した途端、全身の産毛を悪寒がちりちりと苛立たせた。
この感覚はそう、二度目だ。
獣頭の男に何やら含められ、その後朱奈の手で触れられた時だ。
(── 挿れて欲しいってー匂いがぷんぷんしてるだろうが。
皇族ったって何も変わらねぇ。ヒトと見りゃそーゆーことさせる気満々だ──)
あの男の不愉快な物言いを思い出した。
しかし、今覚えた不愉快な悪寒はそれだけではない。
「さあ、フユキ。誓うのです。其は何ぞ?」
目の前で妖艶に身体を揺らす朱奈の口から、
……あの男が俺をそう、呼んだように、
……「『奴隷』的な扱いこそ受けませんが」と言ったくせに、
奴隷になれと零れるのが疑いようもないからだ。
── 思えば、俺は何をやっている。
俺と朱奈はどうして、こんなことになっている。
こちらで目覚め、とてもよくしてくれた朱奈。
こちらの世界を何一つ知らない俺に万事を噛み砕き、心配いらないと言ってくれた朱奈。
『落とした』ことを詫び、俺はそれを許した。そのとき流れた、涙は一体。
「黙するだけでは答えになりません。諾か否か。発するのです、フユキ」
ふつふつと沸いてくる感情。
それは果たして悔しさなのか、怒りなのか、それとも悲しみなのか。
俺に対してなのか、彼女に対してなのか。
「いい加減に──」
無理やりに眦を吊り上げ、
突如。
ずんという衝撃が俺の機能一切をせき止めた。
「かはっ……」
内腑からの雷光が肺を直撃し、喉を全開にして喘ぐ。
菊門に潜り込んでいたその物体をすっかり忘れていた。
息を殺した捕食者が、好機を捉えて飛び掛ったように。
それが腸内を抉った痛みだった。
思考が吹っ飛び、ひたすらに耐える。
「許しません。諾か否か、それのみ発しなさい」
朱奈の尻尾は何かを探るように蠢き、違和感から逃げるように俺はのたうった。
「仮に、諾ならば」
「あああっ!」
恥も外聞もなく声を高く荒げた。
これまで経験したどんな快感より巨大な質感が脳を埋め尽くす。
寄せては返……さない。白い波が次々と襲い掛かる。
全身がぶるぶると震え、肛門から……否、前立腺を物理的に愛撫される未知の刺激に狂った。
295 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:57:30 ID:vj6u/Nvu
「わたくしの四肢はフユキの物。悦楽を望む、ままに」
「……っ! ……っ!」
ともすればだらしなく広がる歯を食いしばり、朱奈の顔に視線を投げつける。
慈愛に満ちたようなその声音とは裏腹な、冷たいまでの無表情も、依然としてそこにあった。
「朱奈ぁっ!」
そう叫んだところで、何を続けるつもりであったのか。俺自身にも分からない。
しかし猛々しく水位を増す射精感に溺れたくはなかった。
浮き輪代わりに手当たり次第、感情を呼び覚ました。
──「おはようございます、フユキ」楽しげに白い歯がこぼれた。
「…頬の味も」呟いてはにかんだ。
「笑うとは何事です!」顔をその髪に劣らず真っ赤にして怒った。
(それなら、今の朱奈は?
朱奈であって、朱奈で、ない気がする。
でも、それでも俺は──)
──「わたくしの大切な、方です」一筋だけの透明な雫が辿った。
「『こちら』を嫌わないで、下さいまし……」顔を曇らせて、ありもしない罪を悔いた。
「辛かったっ、…ですっ!」俺の肩にすがりつきながら、許しを請うた。
(何だろう、このもどかしさ。
俺は何を想う。手が届きそうで届かない。
もう少しで理解できる。俺は朱奈を──)
「っはあああっ!」
焦点の定まらないぼやけた視界が戻ってくる。
(このっ! もう少し、だったってのにっ)
しかし、何かをつかみかけたところで意識を奪われた怒りはすぐさま霧散した。
桁を違えた快感が怒りを弾き飛ばす。
なかなか出てこない返答に業を煮やしたのか、包まれた屹立が、奔流の如く噛り付かれた。
快感の中枢を裏から表から、隙間ない挟撃はみるみるうちに激しさを増す。
真夏に晒された氷のように俺の正気を溶かし、
核たる雄をさらけ出し、
剥き出された雄は出口を求めて、尿道を駆け上り──
「あ……」
盛んだった情動はいきなり止まる。
口からは情けないことに、何とも頼りない吐息が漏れる。
慌てて口を噤んだ。
「誰の膣に精を出せるとお思いですか?」
水位を下げる射精感を逃すまいと、
小突き、煽り、突き放す。
「うっあぁ!」
「我を忘れて、おしまいなさい。イきたいのでしょう?」
射精できそうで、できない。
残滓は次第にその量を増し、鬱屈したむかつきが頭を揺らす。
信じられないが朱奈はそのポイントを明確に見抜き、恐るべき膣で俺の未熟な雄を嘲笑う。
その都度、意識は端から削り取られて、足場はもう、ない。
296 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:58:05 ID:vj6u/Nvu
「だ……」
「だ?」
「出したい……」
息も絶え絶えだ。
救いを求めて見上げても、「どうしたらいいのか、お分かりでしょう?」と、
鳶色の瞳は無言の圧力で何の輝きも映さない。
(もう限界だ──言えば──言ってしまえば──気持ちよく──言って──イって──)
「朱奈、の……」
「……奴隷で、いい」
認めた。
ぐきっと、痛みが胸に刺す。
ほんの一瞬の吐露であったが、この胸の楔がはますます深く潜り込む予感というか直感というか。
これから俺はことあるごとに思い出すだろう。
状況なんて関係ない。
お前は奴隷だという焼鏝に、己から身を差し出した、その事実。
変わらない、何も。
(お前は本当に、辛い現実から逃げるのだけは天才だ)
もう一人の自分が語りかけるようだ。
俺という人の根底にある卑怯さは、醜く肥え太ることはあれど消えることはない。
「……っく」
ふと腕の戒めが解かれた。
菊座を埋めていた栓も独特の違和感を残して去った。
激しかった朱奈の肢体も、もう動かない。
「フユキ」
朱奈の上体が傾き、俺の脇に肘をつき、支える。
息が触れ合うほど密着した朱奈の顔は硬いまま。
次いでぬかるみの中から引き抜かれて、ひやりと俺の欲望が空気に触れた。
「どうぞ……イきたいので、しょう?」
半分胡乱な頭に呪いのように響き、浸透する。
──飢えに飢えた一匹の雄が、呼応するように首をもたげた。
(ハァ……ハァ……)
からからの口内を粘っこい唾液で湿しながら、恐る恐る朱奈の太腿に手を伸ばした。
朱奈からの反応はない。逆に頤を少しだけ引いて頷いた。
初めは伺うように、そして徐々に強く、弾力のある肌に指を食い込ませる。
(ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ!)
耳元で大鐘を突かれたように痛いほどの鼓動を感じる。
身じろぎする振りをして、飢えたその器官を少しだけ突き上げると、
「んっ」
かすかな、本当にかすかな雌の嬌声。
297 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:58:51 ID:vj6u/Nvu
(……ドグンッ!!)
「うああぁ……うああああっ!!」
それは縛縄を食い千切るには充分すぎる合図。
今度こそがっちりと、弾性に富んだ太腿に爪を突き立て、力の限り雌の膣を食い破った。
「ひゃん! い、たっ……」
めちゃくちゃに朱奈の膣内を攻めたてる。
朱奈の額に逆光でもはっきりと分かる歪みが、痛覚によるものだろうと関係ない。
血管が薄く浮き出る喉首が鮮やかに翻る。
この俺にも牙があるならば、間違いなく突き立てていたことだろう。
両脇でぎりりと皮膚が擦れる音がした。
脇目をやれば、朱奈の拳が白くなるまで握り締められている。
我慢……できるならやってみればいい。
「あっ、あっ…ああぁはっ、も、ちょっ」
今更謝られたって許すものか。
焦らして焦らして、俺を苦しめた罰だ。
奴隷じゃないか? ああ奴隷だ。性奴隷が奉仕して何か?
こんなにもいやらしい体を好きにできるなら何も構わない。
朱奈は、朱奈は、俺だけの物だ。
「フユキっ! フユキぃっ!」
もっと声を上げろ、朱奈。
高く高く、俺の欲望を満足させろ。
朱奈が啼けば啼くほど際限なく俺は高まれる。
いっそのこと壊れるまで、抱きとおしてやる。
子宮の奥の奥まで、いや、足りない。俺の精子で血管の果てまで埋め尽くしてやる。
── 自分でも少し異常だとはうっすら思う。
確かにいろいろ揺さぶられて、体も、心も。
凶暴な野性の虜になってしまったのは仕様のないことかもしれない、けれど。
鋭敏に過ぎた感覚が朱色の縄を捕らえた。
逃がす、ものかよ。
「きゃっ! 何、をっ!」
別の生物のようにのたうつのは、濡れた朱奈の尾。
線虫のようなその形は気色悪い。
それに、こいつは俺を苦しめた。……復讐、だ。
「ぃたっ……えっ…っ!!」
右手でそいつごと雌を持ち上げ、浮いた体に次々と杭を打ち込む。
受けられるか、受け止められるか。
首をそんなに振ったって駄目だよ。
まだイくには早い。
「ぐ、ぅぐ。壊れ、こ、われ……」
まさか、そんなことないだろ。
298 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 01:59:48 ID:vj6u/Nvu
……こんなに!
「いやあっ!」
……締め付けて、来るじゃないか!
「……うぅっ!……う……ぅ……」
「ぁ……」
朱奈の首が力を失ってがくりと垂れ、鎖骨から胸にかけて朱い髪がばさりと広がる。
己の腹の上で伏した雌を悠然と眺めながら、
俺はここ数分で体得した嗜虐心を大いに満足させた。
── だが、果たしてそれだけ、か。
拷問にかけた捕虜を逃がす拷問吏が、一体どこの世界にいる。
「…め……き……ぉ…ぁ」
惹かれて、魅入られた切れ長の瞳は目いっぱい広がりながらも、焦点を結べず無様に移ろう。
切り揃えられた朱い髪は今やほつれ、うねった姿を醜く顔にこびり付かせる。
締まりなく開いた紅い唇からは唾液が何筋も流れ、その言葉は意味なき苦しみ。
「ぅ、ぃ……っ」
…にも関わらず、朱奈は呟くのを決して止めない。
いらいらする。
意識なんてもうないだろうに、何が朱奈を駆り立てる。
これしきでここまで呆けるなんて、もう正気じゃないなんてふざけすぎだ。
いらいらするが……余興だ。
壊れる前に何が言いたいのか聞いてやろう。
「ぇ……ふっ……」
「……」
「フユキ…… ───き……ぁ、ぅ」
「……」 今この雌は何を言った。「 き」?
「おし…た、い……お慕い…し…ぃ」
「……」 お慕い。慕う。好き?、誰を?
「フユっ、キ。好き……の……」
「……」 フユキ。芙雪。俺の名前。好き。…訳が、分からない。
好き? ──誰を? そんなまさか。
「痛っ」
肩口へ鈍い痛みが走る。
眼球を動かすとそこには、朱奈。
瞳は虚ろなまま痛みに耐えて、俺の肩に弱々しく噛み付いていた。
瀕死の獣のように。そして──
流れる、一筋の滴。
── わたくしの大切な方、です ──
記憶の起動は閃き。
それでも、灼けるような脳内には冷ややかな清水が湧き出した。
それは蒸し暑いばかりの蒸気を吹き上げて火照りを駆逐し、理性の泉を作り出す。
失せろ、理性。
俺はこの身体にありったけ奉仕する義務がある。
── わたくしの
朱奈自身だってそう言った。
── 大切な
一度沸騰した欲望を抑えられた試しがないくせに、しゃしゃり出て、くるな!
── 方、です
「フユキ……?」
朱奈の声が耳をくすぐった。
俺としたことが、一瞬だけ呆けていたようだ。
それにしても、どうしてそんな冷静なんだ。
そうか、足りないか。もっと動いてやるから。
「泣いて、いるのですか?」
啼いているのは朱奈だろう。
俺が涙を流すはずなんて──
「あ……」
目尻に温かくざりっとした舌の感触。
「泣くほど、何が悲しいの、ですか?」
「悲しくなんか」
「嘘」
「嘘じゃない」
「ではどうして、わたくしの身体を責めないのです。弄ぶのではなかったのですか?」
「……え」
言われて気付く。
「……おかしいな。朱奈、また何かしたんだろ」
それは戯言。力を入れてもぴくりともその欲望は動かない。指一本すら動かせない。
「何も、していませんよ」
「嘘だ」
「嘘ではありません」
「だって──」
「だって?」
300 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:01:38 ID:vj6u/Nvu
「朱奈がおかしなこと、言うから」
奴隷になんてしませんて言ったくせに。
俺のことを奴隷になれとか強要しておいて。
「──俺のこと、言うから」
変なこと言うから俺はおかしく、なった。
「あべこべ過ぎておかしいんだ。何で俺が、子供みたいに泣いて……っ!」
止まれ。泣き止めよ。
「タダでヤれる女を前に……怖がるみたいにっ!!」
── わたくしの、大切な、方、です ──
「朱奈の、朱奈が、俺を狂わせて」
思えばそのとき、俺は小さなとくんという心音を聞いたのではなかったのか
その一筋の涙を見て、俺は何を想ったのか
「……き、とか言うから」
「フユキ?」
「何を、朱奈の何を──」
── わたくしの、大切な、方、です ──
「悔しいんだ! 俺だけこんなに、苦しんで……でも、勝手で」
「……」
「あふれ、て……あふれてっ」
綺麗だった
きらきら、輝いてた
「朱奈が、好き、なんだ」
301 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:02:41 ID:vj6u/Nvu
----------------------------------------------------------------------------------
〜 9 〜
----------------------------------------------------------------------------------
「おかしいだろっ? 笑える話だろっ? あ、あははっ。
どこの世界に、主人を好きになる奴隷がいるんだ。奴隷でいいって言ったのは俺なのになっ!」
「……」
「朱奈、笑って。バカなヒト奴隷だって」
「……」
でも朱奈は何も言ってくれない。
"ふわっ"
「……朱奈……」
それは春のそよ風。
「笑いません」
けれど存在は確か。俺の唇はもう、朱奈の唇の味を覚えている。
「笑ってなど、あげません」
朱色の彼女は、切れ長の瞳をさらに細くして──微笑む。
嘲る色など欠片もなく、母が子を安心させるようにぽむぽむと、頭を撫でられた。
「フユキはこうしてわたくしを慰めて、くれましたね」
そういえば、そんなこと。潤んだ視界の朱奈は、
「フユキは、ご自分がお嫌い?」
優美な曲線を描く紅唇と、目尻が下がった鳶色の瞳。それはまぎれもなく。
「でも……わたくしは、フユキが好き」
俺の信じたかった、朱いピューマの化身。
「そんな、慰めなんていらない」
でも、納得できない。ガキのように拗ねた。
「……」
「俺は朱奈の何を──信じたらいいんだ。こんな茶番、俺を騙して楽しいのかよっ!」
悔しいことに、さらに水が滲み出す。
格好悪い泣き顔を見せたくないのに、首から下は悉く俺の命令を聞いてはくれない。
「【ニヤトコ】……ですから」
「……」
「これがわたくしの仰せつかった、お役目、ですから」
朱奈は俺の頭を手繰り寄せ、汗で蒸れた下着越しに、双つのふくらみへ押し付けた。
女性の濃厚な匂いが流れ込んでくる。
でも、不思議と安らかな懐かしさ。
302 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:03:25 ID:vj6u/Nvu
朱奈は吟じるように音を紡ぎ出す。
「【ニヤトコ】を果たさなければならなくなって……
こんな回りくどく……フユキを追い立てて……
けれども、フユキを……
わたくしをシュナと呼んでくれるただ一人を壊してしまいたくなくて……」
「フユキに、抱かれればそれで良いと、愚かな手段に手を染めて……
わたくしを憎んで嫌って忌み抜いて、それでも構わないから……」
「生きたフユキで、いてさえくれれば」
壊す、とか、生きた、とか。一体何事、なんだ。
「どういう……」
さらにぎゅっと、鼻先を谷間におしつけられた。
まだ、話は終わっていない、と。
「【ニヤトコ】とは、ヒトを房事にて篭絡し、廃人にせしめること。
キンサンティンスーユに害なす前に人格を剥奪。己に忠実な性奴隷として一生を縛すること」
── それがヒトを召抱える皇族に課せられた、運命 ──
「ヒトはただそこにいるだけで、容易に人間を虜にします。
そして始末に負えないのは、自分の主人を傀儡にして、
……国ごと屠ろうとする悪意あるヒトが存在するということ」
「無論、ヒト全てがそうではないでしょう。しかし、わたくしたち人間は怖いのです。
偉大なる前例が既に、封ぜられた歴史【ヤナ・ワタ】としてこの国には在るのですから」
「【ニヤトコ】に処すか否か。それは皇后陛下がお決めになられることです。
キンサンティンスーユを脅かすほどの知性、知能、英知を備えているかを判断なさるのです」
「……しかし、わたくしはそこを甘くみていたのですね」
ふかふかした布団のようなやわらかさと暖かさは、既視感を誘う。
情欲よりも安息を覚えて睫が震えた。
「いくらヒトの……フユキが賢い『落ちしヒト』であろうと、悪いヒトではない、と。
わたくしが母上に説明すれば、きっとお分かりになって頂けると思い込んでいました」
「それが、この有様」
淡々と話すのは、彼女がその奥底で煮立つ感情を抑えているため。
朱奈は俺の短めの髪をまさぐりながら、
「陛下は自身の手でフユキを壊せと。
……フユキの優しさを奪うなど、
……フユキの人格すべてを奪うなど、
……もう誰もわたくしを、シュナと呼んで、くれないなど」
耐えられません、と悲痛にも呻いた。
俺はただ朱奈の鼓動を、とくとくという鼓動を耳にしていた。
自分もその音と重なればいい、と想いながら。
303 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:04:09 ID:vj6u/Nvu
「【ニヤトコ】の目的は端的に表すと、国をヒトの悪意から守ること。
ならばヒトの悪意を何か他のことに逸らせてしまえば、間接的に国を守ることに、なります」
「そこで……フユキにわたくしを憎悪してもらおうと思ったのです」
── 俺のことを悪くない、悪くないんだと免罪符を押し付ける彼女が、悲しい。
「憎しみという感情は、人間の中で最も強い感情であると、わたくしは思っています。
フユキを貶め、フユキはそのように自分を扱われたことを憎むでしょう。
裏切られたと傷つくでしょう。呪うように忌み嫌うでしょう」
── またもや朱奈に自分自身を傷付けさせてしまって。
「そうすれば、フユキは愚かな主人を憎むことに全力を傾け、
キンサンティンスーユのことを歯牙にかけなくなることでしょう」
── そしてもう、口を尖らせて不平を洩らしていた俺はいない。
「それが……わたくしなりの【ニヤトコ】。
わたくしは、わたくしが恥ずかしい。
フユキと国とを……天秤にかけて国をとった……薄情な女、です」
── 我ながら単純すぎて、笑えてくる。でも、嫌じゃない。
「そして、もっと恥ずかしいのは、
フユキも、わたくしのことを好いてくれた、と
……想いが叶った途端に浅ましくも、こうして決意を翻してフユキに許しを請うていること」
── 俺は本当に、何もかも、至らない。
「そんな、こと、ない……」
くぐもって声が擦れる。
「そんなことない」
自分の胸元で感じた振動をそれと察して、朱奈が抱えていた腕をゆるめた。
口元が自由になり、繰り返した。
「薄情なヤツが、あんなに情のこもった料理を……作れるものか」
「いいえ、いいえっ。そんなこと──」
「そんなこと、あるんだ」
幸い、首から上は動く。
目を縋るように合わせれば、朱奈は口を閉じて俺を待つ。
304 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:05:03 ID:vj6u/Nvu
「どんな気持ちで、朱奈は作ってくれたの?
……壊れる前の最期の晩餐だから、せいぜい懐かしい料理でも食べるがいい、とか?」
頬を少しだけ引き攣らせて首を横に振った。
「……それなら、いい様に操られる予定のヒトに同情した?」
右、左と朱色の髪がやや遅れて揺れた。
「……自惚れさせて、もらおうかな。
『こちら』風の『あちら』の料理を作ってくれたのは、俺に喜んで欲しかったから?」
「でもっ!……それは、詭弁に過ぎません……」
一瞬だけボリュームを上げた彼女の語調は、すぐさまか細くなった。
「俺は、美味しかったよ。何よりその気持ちが嬉しい」
「それは……」
「つまるところ、本音ってヤツは根元からは裏切れないってことだと、俺は思うよ」
「確かに……俺は……言ってたことと違うだろって……ムカッとはきてた。
なんだろうな……朱奈の【ニヤトコ】の話。
……聞きようによっては同情の、憐れみの、誘い水とも取れるけれど……違うよね」
── なぜなら、それが真実の話であるらしい、から。
「俺はほとんど、『こちら』の朱奈を知らない。
……だから、朱奈の葛藤とか思いやってあげられない」
── とても、悔しいことに。
「けれど、こうやって」
「訳を話してくれたら、朱奈にまた一歩近づけた気がするんだ。
ごめんなさいって謝られたら……許すのが、その、好きってことだろ」
── 勿論、ただ無条件に許すイコール好きではない、ということは誰しも分かっているだろう。
ある前提の下で、許す事が好きである事を代弁してくれるということだ。
「俺はもう、根元のところから朱奈のこと」
んく、と唾を飲み込んで、息を接ぐ。
「それで朱奈も根元のところで、俺のことを奴隷になんてしたくなかった」
── どんな決意を秘めたとしても。
「そしてこれも……本当のことぶち明けて、ごめんなさいって言いたかった」
── 人間なのだから、揺らぐだろう。不安にもなるだろう。
「だから……今、明かしていなくても、朱奈はきっといつか俺に本当のことを伝えていたはずだ。
俺は単純にできてるから、きっとその場合も朱奈を許してしまう……と思う」
── だから、怖くて辺りを見回したときに誰かが大丈夫だよ、と言ってくれれば。
「二人が同じことをお互いに想って、それがいつ許し合ったかなんて関係ないよ」
── 川がいつ分かれて、合流したかは、海に流れこんでしまえば関係ないのだから。
「したかったら、もうするしかないように、人間はできてる」
── しなかった事は、結局したくなかったという事。
『To be, or not to be』なんてクソクラエだ。
悩むフリなんてやめて素直になってしまえば、それでいい。
「……わたくしの計画がうまく事を運べなかったのは、その根元のせいでしょうか?」
半分を己に言い聞かせる。
「俺は根元のおかげだと思っている。
……まあ、失敗したせいで朱奈には迷惑かけそうではあるが」
「何を謝ることがありましょう。わたくしは ── 幸せ」
二人でいられることを幸せという朱色の彼女は、
今までで一番、キレイだと思う。
「想い人から逆に想いを伝えられ、それを狂喜しない女などいません。
お互いに想い合っていけるのですから。
もう、何もかも関係ありません、ね」
ヒトと人間でもない。
奴隷と主人でもまた、ない。
無論、落ちたばかりの時の、男と女でも、ない。
お互いを恋しいと想い合う、絆。
「今だけは、今だけは、このまま、幸せなままで」
「もう一度言って?」
面と向ってせがまれて言うのは、
恥ずかしい、けれども。
「……好きだ」
きゅっと可愛らしく柳眉を寄せて。
「厭。名も呼んでくださいまし」
── 朱奈が、好きだ ──
さらにぐしぐしと、さらさらの髪を擦り付ける。
「しあわせすぎて、ふやけてしまいそう。
……わたくしも、フユキが好き。何度でも、何度でも言いましょう」
── 大好き、フユキ ──
首筋から、胸から、鳩尾から、鎖骨から、ふんふんと匂いを嗅ぐように、顔全体で触れ回る。
顎にはふさふさの耳が当たってる。
恥ずかしくて、くすぐったい。
「ぁ……やっと、体が動くよ。まるでブリキのきこり、だ」
朱奈は目をぱちくりさせている。
ぎごちなく手を伸ばして朱奈の髪をゆっくりと梳く。
「童話、でさ。『オズの魔法使い』っていいお話があるんだ。今度ゆっくり……」
本当、そっくりだ。
「心」のないブリキのきこりは、話のラストに気づく。
無いと思い込んでいた「心」が実はもともとあったんだ、と。
俺の場合、無いと思い込んでいたのではなくて、気づかない振りをしていただけだが。
そして「心」ではなくて「好き」という感情だったが。
本当に、なんて清々しくて、下半身の痺れるような……
は? 下半身って何よ、俺!?
306 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:06:46 ID:vj6u/Nvu
がっと首を持ち上げると、
「早く元気になりましょうね〜……びゅくびゅくって出しましょうね〜」
朱奈サン。キャラ違ッテマセンカ。
「ふふっ。ほら、フユキ。もうこんなにこちこち、です」
そんなわざとらしくしないで。
まるきり通販番組だよ、それじゃ。
「朱奈……何やってるのさ」
「……続きに決まっています。……ね〜?」
「ソイツには耳も口もない」
「む。フユキがご存知ないだけです」
「あ、ぅく」
親指でしっかりと鈴口を押さえられた。
そのまま張り詰めた亀頭にも、さわさわと指が添えられる。
「確かに、っ。口だがっ」
「そして、これが……っふぁぁぁ」
いくらなんでも早業すぎる。
あっという間もなく俺の上に跨って、朱奈の膣内にのみこまれた。
「耳、ですよ……分かりますか?」
「ぉ、ぉぉおっ! 分かる、分かったからっ!」
どういうシステムなのかいまいち理解できないが、
所謂「エラ」「カリ」のところだけ、きゅうきゅうに締め付けてきた。
「ハァッ。んく、朱奈。はしゃぎすぎ」
「嬉しい、ん…っ…ですもの」
ふわっと微笑む。けれども──
雷に打たれたように、びいんと背骨が軋んだ。
分かってしまった──膣内に迎え入れている時の朱奈の笑顔はまた別の笑顔だと。
ほんの一枚薄皮を剥いだような微妙な変化だけれど、より可愛らしく、より淫らに。
どんどん、どんどん滾ってくる。
朱奈も俺の違和感を悟ったのだろう。
「あ、あ。いい子、ですね」
肉芯が埋め込まれた辺りをうっとりとさすった。
「……そんなにソイツがいいなら、朱奈の保育所に送り込んでやるぞ、ソレ」
なんか納得いかない。
「ハーイ、朱奈センセイ。ドウシテボクハ大キクナルノー」
「……うっふっふ。フユキ、ひょっとして、小さなフユキに妬いて……ます?」
「…………何やらさっぱり」
「へえぇ。ほおぉ。フユキ、カワイイ」
またぱたんと倒れ伏した。
ちょっと離れただけなのに、朱奈の体温が懐かしい。
そのまま少しだけ上目遣いでこちらの様子を伺う。
「フユキは意外と独占欲強そうですね。意外……でもありませんか。
わたくしを苛んだとき、色々と言っていたようですし」
「……こんなむさ苦しい男捕まえてカワイイとか言うな。それで……なんて言ったらいいか。
すまない。すごくがーっとなって……痛かったろ」
話を蒸し返すことは不要だと分かっていたが、
脳裏にちらつく朱奈の辛そうな顔に謝らずにはいられなかった。
「そうですか? どちらかと言えばフユキは、キリッとした感じでおばさま受けしそうですが。
それと、気にすることは全く無いのです。
あのように仕向けたのはわたくしの責だと言ったはずです」
307 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:07:31 ID:vj6u/Nvu
「……」
指を絡められる。お互いに汗ばんでいるが、嫌じゃない。
ぴたりと吸い付く感覚に力を強めた。
「もう、フユキ。好き同士で『ごめんなさい』は似合いません」
一瞬だけ、絞るみたいに膣内がうねった。
「んっ」
鼻息のような声が漏れ出る。
「……小さなフユキの方がよほど正直です」
「っは……朱奈は、すぐソレに、頼る。ずるい」
「なら力ずくででも生意気な小娘を躾けたらいいです」
「言ったな」
再び朱奈が俺のことを挑発する。
しかし、どす黒い苛虐心はもう何処を探してもいない。
あるのは、ただきらきらと、恋しいだけ。
恋しい人を腰の上に乗せたまま起き上がり、フォチクィに深く腰を沈めた。
ちょうど、おいしく料理をいただいていた時の姿勢だ。
早く言えば、対面座位。
「これなら、朱奈にキスできる」
寝転がったままだと、身長差が、ね。
それでもちょうどではないわけで、少しだけ腰を屈めて位置を調整した。
「『きす』。唇付けのことですね」
「どこで、それを?」
「ふふふ。フユキはよく『あちら』でやっていらした癖があります。
翻訳……しながら、口に出してお仕事していました」
「あ……」
この調子なら、自分でも知らない弱味とか握られてても不思議じゃないな。
「男の方と女の方がいて……恋人同士で……二人で交わすものなら、楽に分かろうというものです。
こういうふうに……」
お互いに角度を違わせて、紅いぬるぬるの粘膜で触れ合った。
ひたすらに優しい触感。初めての時のように貪りあうのではない。
それでも情熱的と感じられるぐらい気持ちを込めて。
掛け替えのない人と絡めあうことに特別な兆しを見つけるのは、
それが特別な儀式をしないと、触れ合わせられないから。
「ぷはっ……いいですね、『きす』。何より響きがいいです。
軽くて、それでいて濃く唇に残るような響きが」
「キス」ともう一度呟いた後、下唇──銀線が一瞬だけ橋をかけた──を微かに指で辿った。
「気に入った?」
「はい、フユキ。それにフユキのキスが上手くなっているのも」
「ははっ。そうか」
上手と褒められて悪い気がするわけがない。
でも、もっと上手くなりたい。勉強したい。……楽しい勉強だもの。
「朱奈。もっといろいろ、教えてくれるか?」
「はい、フユキ」
308 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:08:06 ID:vj6u/Nvu
飽きることなくお互いの舌を銜え込んだ。
ぼんやりと瑞々しい果実に例えられることを思い出した。
まったくその通りだと思う。
舐めても舐めても減らないそれを夢中で味わう。
「胸、触るよ」
「……どうぞ」
か細い声が囁く。
左手を腰に回して支えると、右手を薄い下着の上からあてがった。
「はっ……」
朱奈は少しだけ息をためた後、短く吐いた。
猫科の耳もぴくりと同時に反応する。
そのままカップを下から掬い上げるように。
「あ、ふ……ん」
指はばらばらに沈み込ませて揉みしだく。
「すごいね。ふわふわだ」
好きに形を変えるそれを執拗に弄り回す。
もう一度首を伸ばして、ほのかな唇同士を触れ合わせた。
そして追ってくる小さな舌先をかわし、頤に水音を閃かせて遮った。
目先でこくりと動く喉首。
惹かれて近づき、キスを落とし、
「あっ」
鎖骨の辺りに強く吸い付いてみた。
脂肪の少ないその感触は、恋しい人の核に触れている、そんな錯覚を覚えた。
「……もっと強くした方が、いいのかな」
ほんのりと紅く散った未熟なキスマークに再び唇を重ねて、
ちろちろと、舌先でからかう。
「……知りませんっ……」
依然として囁く声音は拗ねてしまったようだ。
「朱奈、どうしたの? すっかり大人しくなって」
鳶色の目元がとろんと潤み、波打つ瑪瑙。
顔全体でも熱を帯びたように、頬に薔薇色を散らしていた。
「フユキが……上手、ですから……」
「……またそんな。おだてたって何も出ないよ」
睫を震わせながら、朱色の髪を揺らした。
「いいえ、フユキから……すごく、出ていて……」
何のことかと問う間もなく朱奈の両手が浮き上がって、俺の黒髪の中に指を差し入れた。
視界いっぱいに、透けそうな下着に儚く守られた女の子だけのふくらみ。
右手でゆっくりと圧しながら、手近なところにキスをしてみた。
309 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:08:40 ID:vj6u/Nvu
朱奈の高まった体温を感じる。
鼻腔から進入してくる香りは甘いとしか表現できない。
胸一杯にためこんで、固く尖った桜色に吸い付いた。
「ひゃ…ああっ、あ……」
一段、音階をあげた朱奈の切なげな声は、俺の中のたがを次々と外していく。
それが恋しい人を切なくさせるスイッチであると分かると止まらない。
優しく、それだけを思ってころころと転がす。
こめかみを淡く掻く朱奈に力が入る。
その度に、肉楔を包んでいる朱奈の秘所もきゅっきゅっと収縮し、
忘我感がじりじりと幅を寄せてきた。
「…くふっ…っん!…ぁ…ぁっ」
朱奈の感じてる顔を見られないのはかなり残念だ。
けれども、これまでの色々なお礼も兼ねて、もっともっと良くなって欲しかった。
薄い布地を通しキスに熱中する。
「ん…んっんっ……んぅぅ」
そんなに口を噤んで我慢しなくても、全然構わないのに。
あくまで基本は優しく、一瞬だけ変化をつけながら。
唇の上下で挟んだり、舌先で押しつぶしたり、甘くゆるゆると噛んでみたり。
知るだけの知識を試す。
「朱奈……」
右手を一度、ふわふわから外して両腕でなめらかな腰を支える。
お尻にかけて急激に増すボリュームはいつまでも撫でていたい。
一番ほっそりとしたところが特に細いから、なおさらみっしりと感じる。
そのまま薄いキャミの下側から潜り込ませるようにして、
十本の指で再度、優しげなふわふわへと辿りついた。
「フユキ…あっん、ん、くぁ……ふ、フユキぃ…」
自然と二人の距離が開いて、朱奈の火照った顔が見える。
離れ離れになったのが嫌なのか、幼い仕草でイヤイヤをする。
「朱奈、動いて……いいかな」
いつにも増して可愛らしい朱奈にくらくらしながら、聞いてみた。
「……」
「朱奈……?」
惚けてしまったかのように押し黙る朱色の女の子。
ぐにぐにと柔らかな膨らみを掴み取りしていた手もそっと下ろして、朱奈の反応を待った。
「朱奈?」
もう一度呼ぶ。
酔ったみたいにふらふらした瑪瑙の焦点は合っているのだろうか。
「……はっ」
それからすぐに、感付いたようだった。
「す、すいません、フユキ。こうも容易に酔ってしまって……」
310 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:10:44 ID:vj6u/Nvu
どうもさっきから会話が微妙に成り立っていないところがある。
「んっ…はい、わたくしも、我慢できなく。はい、フユキ……」
「ちょ、待っ……ぐぅっ」
朱奈が唐突に腰を振りたて始めた。
最後に見た顔はまた酔ったようなほつれ顔。
いきなりの重く痺れるような刺激。
突発的に沸騰するのを必死にこらえて、奥歯を軋ませた。
せり上がった喉に熱い粘膜が張り付く。
はむはむと喉仏を甘噛みされていた。
「フユキはぁっ…ど、ぞっ、その…ま、まぁ…っ…はむ……んむ」
壺の中身の粘性に負けるまいというような激しいうねりに、相槌すら打てない。
「っ……っ……」
「びゅう…って、出させて、差し上げまっ……」
眼球の奥がちかちかに煌く。
眩しくて瞼を閉じても、それは今度は瞼の裏で慌てふためいた。
逆上がりの持ち手のように、脇の下から肩へ朱奈の爪が食い込む。
その痛みすら不思議と気持ちいい。
熔け合った体温の所在が俺と朱奈の位置関係を如実に示してくる。
朱奈の身体の前面は全て俺に貼り付いていて。
こうまでも求められて、その事実に己の分身と同じくらい奮い立つ。
叫びたい。何を。そんなの、分かるだろ──
「朱奈っ! いいよっ、も……出るっ、ぅっ」
反対に俺の手は彼女の尻肉をふにゅっと鷲掴み。
フォチクィの弾力を利用して散々に押上げる。
ぎしぎしという軋む音と、お互いが吐き出す獣のような喘ぎ声。
暑い。暑苦しい。いや、違う、暑くてキモチイイ。
汗だって、二人とも、こんなに。
己の胸のところで、熱く張り詰めた双つの蕾が潰れて擦れる。
もう、どれがどの反応を引き出すのか分かったもんじゃない。
粘ついた音がぷちぷちと跳ねて、
朱奈の陰唇をじゅっと引き摺り出し、ぷちゅっと水音をたてて再び膣内に詰め込んだ。
「うれし…ぁ、ぁ…今?…まだっ?、早く……はやく」
「待っ、も、本ト、すぐっ! そこっ!」
── 倫理的なナニカはすべからく逃げ出してしまっていた。
生でヤっている時点でそれは意味をなさないとは分かっていたけれども。
「あ───!」
「くぅぅぅん!」
子犬みたいな悲鳴が尾を引いて響き渡る。
めくるめく恍惚の膣に解き放つ。
奥まで届いてしまえと朱奈のお尻を押し付けて──
入りもしない子宮口を闇雲に──焦らしに焦らされた想いの丈を、一息、二息と植え付けた。
311 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:11:36 ID:vj6u/Nvu
「はっ…はっ…はっ」
全身が心地よく弛緩する。
だるい両腕を動かして、こんな俺を好きだと言ってくれた女の子をかき抱いた。
朱奈の長めの髪をゆっくりと梳いて、朱奈の反応を待つ。
「……フユキ」
触れては逃げるピューマの耳に悪戯し始めた頃、名を呟かれた。
「ありがとう、朱奈」
しっかりと目を合わせて、感謝を伝えた。万感の想いをこめて。
「……」
しかし朱奈は目を伏せる。
思いもかけなくてうろたえた。
「し、朱奈……」
それでも彼女の腕は依然として離れないし、嫌われたと、言う訳では。
「あんなに、乱れて、しまって……わたくし、恥ずかしい、です」
ぽつぽつと話し始めた。
これってひょっとしたら照れまくっているのではなかろうか。
いろいろなギャップを感じて鼓動が収まってくれない。
「いくら、酔っていても……あのような事……いやらし…ねだって」
「朱奈、落ち着いて」
とりあえず背中をぽんぽんとさすってあげる。
「どうしたの? 実はお酒全然ダメだった、とか?」
「そ、そうではなくて、ですね?」
ちらちらと見上げてくる。
「フユキの『匂い』に酔って、しまって、ですね?」
「はあ」
思わず自分の二の腕の臭いを嗅いでみた。
臭いとか、かなりショックだ。
「この話はっ…また、後にしましょう、フユキ」
早口ででまくし立てて、
「「んっ」」
朱奈が腰を浮かせて結合を解く。
「わたくし、お風呂を頂いてきます。お客様を差し置いて失礼でしょうが、
何卒、お許しを」
312 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:12:39 ID:vj6u/Nvu
本気で落ち込むね、これ。
ピロートークとやらを期待してあれこれ考えていたのに、
お互いを見ながら笑いあってみたかったのに、
俺の彼女サンは取り込む隙もない。
しかも、お風呂ということはすぐに洗い流したいくらい、俺臭うってことでせうか。
がくうっとうなだれた向こうで、
「あいたっ」
ガツッという音に顔を上げると。
朱奈が腰に手を当ててよろけていた。
どうやら食卓の縁にぶつかったらしい。
「大丈夫?」
とっさに声をかけて立ち上がろうとした。
"はらっ"
二人の視線が ─朱奈は後ろ向きに振り向いて─ 一点で交わった。
両脇の紐で結ぶタイプの朱奈の小さな白いショーツ。
衝撃で紐がほどけたのだろう。
丸い穴で通してある朱色の尻尾に引っかかって床に落ちはしなかったが、
キュッとせり上がったヒップの後ろでひらひらと舞っている。
そしてその白い布切れを彩るのは、
鮮やかな赤──鮮血の跡。
ばっとしゃがみこんで後ろ手に隠すが、もうばっちりと確認してしまった。
あの朱色の翳りのせいで目立たなかったのか。
「朱奈……」
無防備に裸身で座り込んだ、恋しい人の扇情的な姿勢に、
「ふぇ……」
泣きそう、と思った時には全身でぶつかって行った。
何故だかひどく掻き立てられた。
「朱奈! あい、あ、あ」
しゃがんだ朱奈のお尻を、その漲った─知らぬ間に─肉刀の位置まで持ち上げる。
「愛してるっ!」
幸運なことに一回で奥まで貫くことができた。
313 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:17:14 ID:vj6u/Nvu
ということで、フユキ君には一回出してもらったことだし
申し訳ないですがここで一旦切らさせていただきます。
はぁ、かなり背伸びしながら書いているので、色々と至りません。
どうぞご指南下さい。
それと続きを楽しみと言ってくださった方々、大変励みになります。
もうちょっとお付き合いよろしくです。
314 :
ピューマ担当:2005/10/21(金) 02:19:19 ID:vj6u/Nvu
あああ、すいません。肝心なことを忘れておりました。
投下に関して
>>277の質問に答えてくださった方々、大変助かりました。
それでは。
ありがとうございます。これでぐっすり寝れそうです (*´Д`)ハァハァ
>「ならば誓いなさい、フユキ」
>「あなたは、このサヤ・ピスカ・ピュマーラの『奴隷』である、と」
このあたりが本当に痺れてたまらない。こういう展開は苦手で大好きです。
316 :
315:2005/10/21(金) 18:25:48 ID:ptLe6Bje
あうあう。言い忘れてたです。
ピューマ担当様、GJです!
ピューマ担当様、GJ!!
あえていうなら、素敵
ごちそうさまでした。
320 :
ピューマ担当:2005/10/24(月) 18:43:11 ID:In5kGafm
>>315-319 お粗末さまでございました っ旦 お茶でも飲んでお待ちくだされい…
>このあたりが本当に痺れてたまらない。こういう展開は苦手で大好きです。
詳しく感想レスがもらえてこっちもビリビリきて悶えてます。
ガガガ頑張りますっ。
緑色になりながら保守。
飲み過ぎw
323 :
ピューマ担当:2005/10/30(日) 18:12:03 ID:HXLiGTJN
うし、帰ったら読むぜ!
>>323 あなたはうちを泣かす気ですか!?
ええい、これ以上は読んでない人もいるだろうから言えんけど!
323GJ!超GJ!
目から汁が止まらねえ…!
最後の場面でエロが無かったことに安心している俺ガイル
涙が止まんねぇ・・・
涙でやってたレポートが見えねえ・・・・
どうしてくれんだGJ!
「今会いに行きます」は途中で力尽きたのにこれは最後まで読めたのは俺の偏り具合のせいでしょうか?
たぶん、そうじゃないと思う。
>>323ありがとうございました。
330 :
ピューマ担当:2005/11/01(火) 00:16:46 ID:KaB0Oz/v
>>324 お待ちしてます!
>>325 >>326 >>328 へへ泣かしてやったぜ〜な感じですが、
そういう俺も皆さんの温かいレスに…あれ…ぼやけて…
どこが一番キましたか? なんて調子にのって聞いてみたり…
>>327 率直に言って、うれしい限りです。
>>329 …「今会い〜」ちょっくら読んでくる! それとどういたしまして。
通じてレスを下さった方に、勿論読んで下さった方々全員に方々に、感謝の慈雨を、なんて。
ホントにこのスレに出会えて良かったなと思います。
これからも、このたくさんの獣耳(ヒレ)と少しだけのヒトの世界が、
皆の力でぐいぐいと広がって行きますように。
それと設定まとめなどをちょこちょこ、と。
あ、のちほどWikiの方にお邪魔いたしますね。…勝手にいじって怒られない…のかな?
>>330 ピューマ担当様GJ! やっと読む時間ができたです。・゚・(ノД`)・゚・。
涙が止まらないっス。愛がいっぱいでお腹もいっぱいです。
>勝手にいじって怒られない…のかな?
結構みんな好き勝手にいじってるんで、問題ないのですよ〜
畜生、実家が保育園やってるから今後の二人の日々が想像できて余計クるものが。
苦労はあるが実りある日々だ、頑張れー!
そういえば、長編で一応完結した人って、こちむいの人以来二人目の予感。
先週まで幼稚園で実習やってたモンです。
>>332 ナカーマ( ・∀・)人(・∀・ )
かわいい子どもらに囲まれて
「しゅなせんせー」「ふゆきせんせー」ってな感じに慕われる二人の姿・・・・
漏れも今だから想像できまつ・・・二人に幸あれ。
335 :
326:2005/11/01(火) 23:30:22 ID:BZyW/UEg
>330
遅レスながら、
「俺たちの子は、キンサンティンスーユの子供全員…」
のあたりでもう、一気にキました。
子を持つ=愛情の証ではないが、
二人が愛し合うだけでなく親となる幸せも得る道を
こんな形で作ってくれたことに感動。
朱奈とフユキの未来とピューマ担当神に乾杯!
陛下エロ過ぎw
337 :
335:2005/11/02(水) 01:22:54 ID:x7Wzce9x
×子を持つ=愛情の証
○子を持つ=唯一の愛情の証
です。スミマセン
あなたのような神を見たのはこちむい氏以来だ
>>330 どのシーンがというより、二人のHがちゃんと『愛し合うこと』になっている点がすばらしいっすよ!
他にも、陛下が良いですね!
もう、いったい、二人がどうなるのかとはらはらしていたら……
そりゃ、シュナも泣きたくなるっす。
でも、ちゃんと二人を思いやってる、ある意味、二人を見守る全読者の代表ですね。
あーもーなんだかね、一部のおませな子供たちが絶対
「しゅなせんせー、ぼくがおおきくなったらおよめさんにしてあげるー」とか
「あたしは、ふゆきせんせーとけっこんして、しゅなせんせーみたいなおかーさんになるの」
とか言いだしそうですな……。
あれ、なんだか目から汗が吹き出して止まんねーや。
341 :
ピューマ担当:2005/11/05(土) 00:53:58 ID:kW1yff9r
あいや、なかなか時間がとれず遅レスすいません。
わざわざ質問に答えてくれた方、どうもでした。
最後いろいろと詰め込みすぎて説明しきれているか少し不安だったものでスイマセン。
がんばって完全完結目指します。
なんかもう嬉しくてありがたくて眠れそうにないっすね。ちょっくら酒買ってきますノシ
342 :
虎の子:2005/11/05(土) 13:05:04 ID:SfeDHhFt
ただいま執筆中、冒頭だけなら上手くいけば来週中に投下可能かもしれません。
ちなみに今回は猫耳眼鏡っ娘です。
他の作家の方々ががんばっているので負けていられません。
激!期待!!
星のピラミッドの一室。
惨劇の一部始終を話し終えたリュナが、ふっと吐息をつく。
「……まあ、そういうわけだ。恥ずかしながら、次に会ってもまるで勝てる気がしない」
「珍しいわね、リュナが弱音を吐くなんて」
「こればかりはね。星のピラミッドのど真ん中だからこそ、僕でも術っぽいものが使えたが、もし他の場所だったら生きてたかどうかもわからない」
国内でもっとも魔素の集中する霊地に建てられた神殿の、その最中深部。資質のないものでも、外部魔力を取り込めばそこでなら術を使えるほどの、一種の特異点。
カモシカ、あるいはヒトが魔法を使えるほどの魔素の満ちた場所は、国内では数えるほどもない。
「もっとも、僕が術を使えるほどの場所なら、もともと素質のある奴なら、さらにその力を増す。テレポートなんて、普通はそう簡単に……短時間に二度も三度も乱発できる魔法じゃない」
「……だがな」
アルヴェニスが異を唱える。
「それならそれで、お前を生かして去った理由がよくわからない」
「そうね。リュナの話だと、どうも不自然だわ」
「……それは、案外簡単に説明がつく」
リュナの言葉に、顔を見合わせるアルヴェニスとフィリーヌ。
「どうやって?」
「フィルは、答えを半分言ってるだろう」
「答えって……不自然、としか言ってないけど」
「それが、答えの半分なんだよ」
「不自然……が?」
よくわからない様子のフィリーヌ。
「フィルもアルヴェニスも、僕のことはそれなりに知ってくれてるし、僕が言うことは信じてくれる。でも、そうじゃない人たちはどうだろう」
少し肩をすくめ、リュナは続ける。
「軍隊上がりで、少々危険な経歴のある奴が、シャリア様に面会しに行った。しかもそいつの目的は和議……といえば聞こえがいいが、要は体のいい降伏」
「……」
「で、話しに行ったはいいが何時までたっても戻ってこない。おかしいと思って見に行くと、中ではシャリアさま以下衛兵まで皆殺しにされ、生存者はただ一人」
「それって……」
「しかもの一人が、よりによって和議を持ちかけた張本人。おまけに剣の腕もそこそこある。……この状況で、僕を犯人だと思わないのはよほどのお人よしさ」
「罠にはめられた、と」
「……罠というほどのものかはよくわからない。偶然、僕があのタイミングで行ったから利用しただけかもしれない」
そう言いながら、ふと目を扉に向ける。
「……とはいえ、結果的には和議の道しかなくなった。疑われようと憎まれようと、選択肢はひとつしかないんだから、彼らは最後の指揮を僕に委ねるしかないはずだ」
扉の向こうで、物音がしたような気がした。
「幹部クラスが全滅だしね」
「ああ。各地に展開している師団クラスを呼び戻すのは難しいだろうから、一気に事を進められる」
「まるでクーデターだな」
「……結果的にね。まあ、しかし油断は禁物だ。下手したら暴走される可能性はある。……そうさせないためにも、ちょっとみんなと話をつけてくるよ」
そう言って、剣を片手に立ち上がる。振り向かずに続けた。
「二人とも、武器の準備はしておいた方がいい。……この先はどうなるか、僕も予想はつかない」
そのころ。
リシェルは、アルルスに連れられてひとつの部屋に案内されていた。
そこは、やや豪華なつくりで、もちろんグランダウスの自宅ほどではないが、家具もきちんとしたものをそろえてあった。
豪奢だが清潔な感じの部屋は、確かにリシェルの好みに合った部屋だが、窓には装飾のほどこされた奇妙なデザインの鉄格子がはめこまれており、おのずと自身の立場を思い知らせている。
「いずれは、あの鉄格子も外すことにはなるでしょうが、それもリュナ卿が協力していただかなくては」
「リュナが、このようなことをする方に協力するとでも思っているのですか?」
「はい」
リシェルの詰問に、アルルスは当然のように答えた。
「これでも、リュナ卿との付き合いは我々の方が長いですから。奥方様がご存じないことも存じておりまして」
「どういうことです?」
問い詰めるリシェル。アルルスは、微笑を浮かべて答えた。
「たとえば……そうですね。奥方様は、リュナ卿の経歴に『おかしい』とは思いませんでしたか?」
「おかしい?」
「はい。ルークス家といえばかなりの門閥ですが、そこの長子が騎士団でも士官学校でもなく、なぜ独立遊撃隊に、しかも一兵士として入ったか」
「それは……」
一度だけ、聞いたことはある。そのときは、少し考えてからこう答えてくれた。
「……それは……もともと、軍人になる気がなかったから、とりあえず楽そうな遊撃隊で軍歴だけをつけたと」
「楽な?」
くっと、アルルスが笑う。
「何がおかしいのですか!」
「……いえ、失礼。ですがそれは嘘ですよ。こう申しては何ですが、エグゼクターズは国内で一番厳しい部隊ですから」
「しかし、リュナは……」
「あなたに、真相を語りたくなかったのでしょうね。……あの方は人の心を読みますから、本当のことを言うとあなたも悲しまれると思ったのでしょう」
「……どういうこと……ですか?」
「これから言うことには、嘘はありませんよ。……申し訳ありませんが、覚悟して聞いていただきます」
少し真剣な表情でアルルスが言う。その表情に、少し飲まれたリシェルが言う。
「……わかりました。話してください」
アルルスは、ひとつうなづくと話し始めた。
リュナ卿は、一言で言うと捨てられたんですよ。
もともと、リュナ卿の母君は高貴な方ですが病弱でしたから、リュナ卿が幼いころに亡くなられた。
それで、もともとが政治的思惑での結婚でしたから、父君にもさほど思慕というものがなかったらしい。すぐに後添えを娶られましてね。
そして、この後添えとの間に二人の子をお生みになられた。……カミル様とカルロ様。
さてそうなると、邪魔なのがリュナ卿です。長子ですし、なにより正妻の子ですから。
それで、13歳になるや否や、エグゼクターズに入隊させたわけです。
当時は、この国も平和なものでしたから、正規軍は戦う機会などまるでなく、武器を使うのはもっぱらエグゼクターズが国際犯罪者を追悼する場合だけでした。
つまりは、エグゼクターズは当時唯一の実戦部隊……言い換えれば『一番死に易い部隊』だったわけです。
そこへ入隊させたことの、その裏の目的は、いうまでもないかと思います。
ただ、父君には思い違いがあった。
どうせすぐに死ぬだろうと思っていたリュナ卿が、じつは戦士として一級品の素材の持ち主だったわけですね。
一級品の素質が、厳しい訓練で磨きこまれて、やがては特歩……少数任務、単独任務専門の実力派揃いの部隊ですが……そこに入るまでになった。
もっとも、そのころには二人の弟君も、こちらはきちんとした騎士団に入隊されて、やはり相応の力を発揮されていましたから、この時点ではまだ父君は弟君に後を譲れると思っていたわけです。
……さて、ここからが少々重い話です。
リュナ卿はその後、特歩でもずいぶんな結果を残されてます。そしてその後、命を帯びて獅子の国に派遣され、二年後に19歳で戻ってこられた。
奥方様と出会う一年少し前です。そのころには二人の弟君も成長され、それぞれ騎士として将来を嘱望されていました。
その頃、リュナ卿と数名の仲間たちが、密命を帯びてある場所へと向かっています。いかなる命であったか、これは向こうに守秘義務があるのでわれわれも聞けません。
ところが、たまたま同時期に、リュナ卿の二人の弟君もそこにいらした。こちらは、ただの休暇だったようです。
ですが、お二人はそこで謎の死を遂げられた……
「どういうことですか! それじゃまるで……」
我を失ったようにまくし立てるリシェル。それを軽く手で制すと、アルルスは続けた。
「リュナ卿と彼の部下たちが何をしたか、これは何もわかりませんし、証拠もありません。ですから、この二つ……リュナ卿の秘命と弟君の死、ここに関連は見出せません。ただ偶然、そこにいただけです」
「……だったら、そんな言い方は……」
「しかし『何もしなかった』という証拠もない。この後の流れを簡単に申し上げます」
「聞きたくありません!」
悲鳴を上げるように叫ぶリシェル。
「いえ、どうしても聞いていただかなくてはなりません。あなたは奥方様ですから」
「……いや……聞きたくない……」
「聞いていただきます」
厳しい口調で言うアルルス。そして、相手の返事を待たずに続けた。
ルークス家の後継候補は二人とも亡くなられたわけです。こうなると、残るのはリュナ卿しかなかった。父君は、やむなくリュナ卿をエグゼクターズから引き取り、後継にしました。
……いままで、リュナ卿と呼んできましたが、正確にはこのとき初めて、リュナ・ルークス卿となられたわけです。それまではただのリュナ・ルークスにすぎなかった。
もっとも、父君とは別居することになり、もともと別邸だったグランダウスの住居を住まいとされました。
……そして、ここから王室を中心に次々と事件が起こります。
証拠がなかったり、あるいは衆人環視の元の事件にもかかわらず犯人が特定できなかった事件が、後に内乱が勃発するまでに14件発生しています。
うち七件が暗殺。そして、前の陛下の崩御も、誰もが口にはされませんが、ありえないほど突然の出来事でした。
そして、その後も事件が起きるたびに王室には亀裂が走り、やがて内乱となり、今に至ります。
この内乱でリュナ卿は父君と同じく、王弟派につかれた。……そもそも王弟派とは、女系の王の擁立に反対する勢力。およそその手の差別を嫌うリュナ卿らしからぬ、とは思いませんか?
「……それじゃ……まるで……」
言葉を失うリシェル。
「もちろん、私はは一般論として結果を述べたまで。奥方様が何を思われようと、その証拠はありません。……まあ、残すような人でもありませんが」
「…………」
うつむいたままのリシェルに、アルルスが少し優しい口調で言う。
「とはいえ、リュナ卿は家族の愛に恵まれない方でしたから、逆に自分が得た家族は大事になさるでしょうね。……奥方様の身を案じないはずがない」
「…………」
「では、今日はこれで。よい夜を……といっても眠れないかもしれませんから、安定剤は向こうの机の引き出しにあります。あとは呼び鈴をならせば侍従が駆けつけますので用件をお話ください。あと、夜食ももう少ししてから運ばせます」
そう言いのこすと、アルルスは扉を閉め、鍵をかけて立ち去っていった。
「……りゅなぁ……」
足音が遠ざかった頃、リシェルが、耐え切れなくなったように嗚咽をもらしはじめた。
その頃、ライファス城の地下。
「久しいな、ギュレム」
「……これは、ステイプルトン殿」
「面白いことがおきる。準備をしておけ」
「……面白いこと?」
「危険なこと、と言ってもよいがな」
「それは……」
「ある男が、和平を求める交渉に決裂し、賊の頭領と部下30人ばかりを皆殺しにした。やがてその男はこちらに逃げてくる。忠義の臣としてもてなしてやれ」
「ある男……それはまさか」
「お前も知っている男、かもしれぬな」
「……その男が……しかし」
「その男を救えば、お前にとっても必要な駒となるはずだ」
「……承知しました」
ステイプルトンは、飄然と去る。
──いつの間に来られたのだ……相変わらず謎の多い……いや、それよりもまさか……
残されたギュレムは、一人疑問を残しながらも、玉座のローザに伝えるために歩きはじめた。
再び、星のピラミッド。
「……遅いな、リュナの奴」
「時間はかかるわ。相手が疑ってるとなるとなおのこと。徹夜になるかもしれないし、徹夜しても決裂するかもしれない」
「……場合によっては、リュナを引っ張って逃げることもありえるか」
真剣な顔のアルヴェニス。フィリーヌも、緊張した声で答える。
「覚悟しておいたほうがいいわ」
「……目いっぱい頑張った末が身内に疑われて逃げる、じゃあ浮かばれねぇな」
「リュナは、ずっとそんな目に会ってたわ」
フィリーヌの言葉に、アルヴェニスが肩をすくめる。
「……あいつと一緒にしないでくれ。俺には真似できん」
「私も、ね」
「……そういえば、フィルは」
「何?」
「リュナとの付き合いも長いよな」
「そうね……訓練生の頃からだから、8年近いかな」
「どんな奴だった?」
「ん〜……初めの頃は泣き虫だったな」
「泣き虫?」
驚いたような声を上げるアルヴェニス。
「そ。泣き虫の癖に妙に強がってて、おかしなところで意地っ張りなんだけど……やっぱり泣き虫ね」
「あれが、ねぇ……」
「だからあいつ、今でも私に頭が上がんないでしょ。恥ずかしいところ、たっぷり見られてるから」
「……確かに」
苦笑するアルヴェニス。本人は対等ぶってるつもりでも、ところどころで腰が引けていたりする。
「ま、そうは言っても……私も、リュナには知られたくないことも知られてるし、お互い様なんだけどね」
「どんなことだ?」
「知られたくないことを言うわけないでしょう!」
「う……」
怒られて肩を落とすアルヴェニス。
「……その、エグゼクターズじゃ、ほとんどずっとリュナと私がコンビだったから。表向きは『対国際犯罪者部隊』なんだけど、裏向きってのもあるのよ」
「……どんな部隊にもつきものではあるな」
「でも、裏向きの仕事は証拠残すわけにも行かないし、おのずと優秀な……って自分で言うのも変だけど、その、ミッションの通算成績がいい人がやることになったのよ。そうなると、自然とそんな仕事も増えて」
「なるほどね」
「コンビで力を発揮する場合、いいことも悪いことも含めて、互いを知っておいたほうが有利だし。昔……つまり、リュナが獅子の国に行くまでのことはお互い、たいていのことは知ってるわ」
「俺の知らないことも、か」
「アルの知らないことばかりよ」
そう言って、少しだけ顔を曇らせる。
「言いたくないようなことばかりしてたし。そんなこと、アルには言いたくないし」
「……リュナも、なんだろうな」
「たぶんね。リシェルちゃんには、その頃のことはほとんど話してないはずよ」
「……夫婦間で隠さなきゃならないほどのことか」
「たぶん……リシェルちゃんは受け入れるまでに時間がかかるはずよ。リュナ、優しいし……いつもリシェルちゃんが傷つかないようにしてたから。もしかすると、それがかえって保護しすぎてリシェルちゃんを弱くしたのかもしれないけど」
「嘘は嘘を呼ぶからな」
「もともと、リシェルちゃんを必要としてたのはリュナの方なのよ。あいつには、安らげる場所と、安らげる相手が欲しかった。……当然よね。七年もあんなことやってたら、壊れないだけでも奇跡だわ」
「フィルじゃ駄目なのか?」
「言ったでしょ。私とあいつは、お互いに知られたくないことまで知りすぎてるって」
少し悲しげなフィリーヌ。
「……」
「そうじゃないのよね。リュナにとって必要なのは、あのまま、ルークス家の一員として育った、貴族としての自分を演じられる場所」
「演じる……ったって、いまはもう立派なルークス家の」
「立場的にはね。でも中身はそうはいかないわ。……貴族になりきるには、少々嫌な経験をしすぎたから」
「それで、演じるわけか」
「そうとしか言いようがないから。運命が変わらなかったときの自分を想像して演じるしかない。でも、想像はできても、なりきることはできない」
「……そんなの、楽しくないだろう」
アルヴェニスの言葉に、軽く首を振る。
「楽しいはずよ。たとえ演技でも、その空間は幸せなはず。そしてきっと、リュナが幸せでなきゃ、リシェルちゃんはあんなに幸せそうには笑わない」
「そういうもの、なのかもな」
よくわからない。だが、少しわかるような気もする。
「しかし、フィルはそういうの必要ないのか?」
「私? ……私は結婚してるわよ」
さりげなくいうフィリーヌ。その言葉に、アルヴェニスは驚いたような声を上げる。
「え、ええええええっ!? フィルの旦那なんて、見たこともないぞ?」
「そりゃそうよ。私だって見たこともあったこともないし」
「は?」
あくまでも普通に語るフィリーヌに、アルヴェニスがぽかんとなる。
「私たちヒポグリフ種って、まだまだ実験体なのよ。一人一人が、それ一代だけの種。それで、生まれる前から次の代への配合が計画されてて、生まれた時には誰の精子と誰の卵子を交配させるか決まってる」
「……それって……」
それで、ある程度の年齢になったら卵子を配合に差し出して、それで終わり。それが私たちの……」
「普通、そんなのは結婚とは言わないだろう!」
「普通はね。ヒポグリフって、普通じゃないのよ」
「……」
「まあ、でも私は、リュナのそばにいられたらそれだけでいいから」
「……切ない話だな」
「そうでもないわ。……何ていうか、わたしとリュナはね、恋愛とか色恋とか、ましてや結婚とか配合とか関係ないのよ」
フィリーヌは、微笑さえ浮かべて言う。
「腐れ縁、って言うか……離れようがないっていうか……リュナは、私にとってはもう一人の私だし、リュナも、私のことをもう一人のリュナだって思ってる。私たちってそういうものなの」
そう言って、フィリーヌはリュナが出て行った扉を見る。
「だから、お互い自分の分身みたいなもの。……結婚、という話で言えば、自分自身とは結婚できないでしょ? そんなものなのよ」
わかったような、わからないような気がした。なにやら言葉巧みにごまかされているような、そうではないような。
「……なんだか、仲間はずれにされたような気分だな」
「そんなことないわ。私やリュナと、アルは間違いなく仲間よ」
リシェルの閉じ込められた部屋の中。
リシェルは、布団を頭からかぶってベッドにもぐりこんでいた。
心の中が乱れて、何も考えられない。
リシェルの見たリュナは、いつも笑顔を浮かべて、優しく振舞ってくれていた。その姿が、心の中で揺れ動く。
「リュナぁ……」
嗚咽のような声を漏らすリシェル。
その指が、服の上からリシェル自身の恥丘に触れる。
ゆっくりと、指を動かす。
気持ちよい刺激が、下腹部にじんと伝わってくる。
──もう……何もかも忘れたいよ……
指を少し早く動かす。そのたびに、刺激があふれ出してくる。
秘所から、何かとろりとしたものがあふれてくる。
──足りないよ……こんなんじゃ、忘れられないよ……
ベッドの中でスカートを脱ぎ捨て、白い下着の中に指を入れる。
ぬるりとしたものが、指を濡らす。
薄い恥毛をかきわけるようにして、指を自分自身の中へともぐらせる。
「んっ……」
強い快感が、リシェルの全身を襲う。
──もっと……もっとほしいよ……
指を、乱暴に動かす。そのたびに蜜が溢れ、強い刺激が電流のようにリシェルを襲う。
──もう……壊れちゃいたいよ……
「んくっ……んん……ひあん……」
可愛らしい唇から、嗚咽交じりの甘い声が漏れる。
指を包み込むように溢れてくる液はとめどなく溢れてくる。
もうひとつの手も、乱暴に胸のふくらみをもみしだく。その先端の、硬くなった突起を指先で転がすたび、心地好い刺激が全身を包む。
ぼんやりとした意識の中で、指だけが自分のものではないように的確にリシェルの敏感な場所を刺激する。
「……れーまぁ……」
無意識に、声が漏れる。その声の意味に、自分自身で気づく。
──え……どうして……れーまなんて……
その脳裏に、いつもの笑顔を浮かべたレーマの姿が写る。
(どうしたんですか、リシェルさま)
──れーま……あのね、わたし悪い子なの……
レーマに心の中で謝りながら、指を動かす。
(どうしたんですか?)
──わたし……リュナのおよめさんなのに……れーまのこと考えてる……
自責の念を責めるように、レーマの声が聞こえる。
(いやらしいんですね、リシェルさまは)
──そんな……ちがうの、だって……
(違いませんよ。だって、こんなに濡らして)
恥部の中をまさぐる指の感触。そして、じんじんと快感が伝わる。
──だって……
(それに、どうしてリュナ卿じゃなくて僕のことを考えたんですか?)
──わかんない……わかんないよぉ……
くちゅくちゅと、いやらしい音が恥部から漏れる。
(リシェルさまが、ほんとはいやらしい子で、悪い子だからでしょう)
──ちがう……わたし、わるいこじゃないもん……
脳裏に浮かぶレーマが、次々と言葉で責める。そのたびに指の動きは激しくなり、蜜がこぼれる。
(ほら、そんなにしてるとベッドが汚れますよ)
──だって……れーまのせいだもん……
(どうして僕のせいなんですか?)
──だって……れーまが……
それ以上、何も考えられなかった。
(仕方ないですね)
レーマが、肩をすくめて笑う。そっと顔を近づけて、唇を重ねてきたような気がした。
(ほんとに、いやらしいご主人様なんだから)
──だって……れーまにあいたいもん……やさしくしてほしいもん……
「いますぐ……れーまにあいたいもん……」
リシェルの口から、小さく言葉が出る。
指が蠢動するたび、ぴくんぴくんと、小刻みに震える体は汗と愛液でぐっしょりとぬれている。
ほとんど何も考えられなくなって、真っ白になった頭の中で、レーマの声だけが聞こえたような気がした。
「すぐに、行きますから。もうすぐ行きますよ、リシェル様」
──うん……まってるから……
安堵したように、全身の力が抜ける。
溢れた愛液は、ベッドをぐっしょりと濡らしていたが、失神したまま眠るリシェルには、もう気づかなかった。
その寝顔が、すこし安らかになっていた。
……はい、岩と森の国ものがたり9です……が。
マジで空気嫁よお前と言われそうな展開です今回。
まあ自分、重い話は書くの苦手なんで、リュナとリシェルにはとっとと誤解といて仲直りさせますけど。
えっと……おなぬーというものを書いてみました。
なんか、いつもいつもいつも難しいと書いてる気がしますが。
その、蛇さん偉いな、ウサギさん偉いなと実感した次第で。
今回、実は家のパソコンがHDぶっ壊れて、頭の中のプロットだけを元に漫画喫茶で六時間かけて書き下ろしたという裏話もあるんですが、それでこんな展開しやがったから……
まあその、岩と森の国ものがたりの元プロットだと……まだ半分来たところだったりorz
とりあえず、来年完結できたらいいなぁ、とか思いつつ地道に書きます。
とりあえず、昔の隔週ペースは無理でも、せめて月間ペースには戻したいなぁ……
リアルタイムげっつヽ(´ー`)ノ
カモシカ担当様GJです。PCのご冥福をお祈りいたします m(_ _)m
重い話は苦手……だけどハラハラしながら読ませていただいてます (*´∀`)
リュナがどんだけリシェルを好きなのかってことだな。それとその逆も。
次回はそこに期待してもいいんだよな!
パソコンがダメなら紙に書けばいいじゃない。
と、マリーぶりつつグッジョー!
ところで、結局Wikiって何処に行ったのさ?
誰か設定とキャラ考えてくんない?
書いて見たいけどオリジナル創作はやったことないし、できない。
>>358 丸投げせんと「こんなのどうだろ?」ぐらい言ったらどうだい?
>>358 大陸の北東にあるシロクマの国というのを考えたことがある。
気候はロシアってゆーかシベリア。
服を着て眼鏡をかけたまんまシロクマな外見の王様の治める国で
特産品は何故か鉱山から出てくる透明度の高いガラス。
主人公は身長2mのシロクマのお姫様と身長120cmのヒトの少年。
ひたすら無口で天然なお姫様に一生懸命ついていく少年従者。そんな感じ。
詳細欲しいならも少し挙げれるけども、これ以上は蛇足かなとも思う。
ああ、そうか。
>>358 をみて一瞬 「それはなんか違うんじゃないか?」 とか思ったけど、
良い設定と良い書き手が出会うというのも、微妙にアリかもしれないな。
360さん詳細きぼん
漠然とシャコの国というのは考えたことがある。
いずれかの魚の国の暗部を担っているベルセルクのバーキラカみたいな連中で、
男はクリーチャーそのもの、女性もモンハナシャコがベースだからバカみたいな
打撃力を有してるとか。
女性は遮光器土偶みたいなゴーグルしてて、そのスリット部分がぐりぐり回転
することで感情をあらわすとか。(― ―)(\ /)(/ \)って感じで。
で、結局ビジュアルしか浮かばなかったので放置した。
ツンデレタイガーというのを考えた
書いた
無理だった
後は頼む
>>363 書いてくれるなら明日辺りに落とします。
書いてくれないのならどっかでなんかに使い回しますので落としません。
書かせていただきます。
大陸から離れた島国で暮らすカンガルーの一族というのを考えたことはある。
みんな裸エプロン。(成人女性のエプロンは正面に巨大なポケットがついてる)
こらこらこらwwww
ところでこちむいの作者さんは最近は何を書いているんですか?
設定投下されるなら避難所がよいかと。
あるいはあの、ときどきやたらと重くなるwikiに新項目立てるか。
ぱっと読み通した通りすがりから一言二言
こちむいとピューマがすごい
兎のssと本人の人間性が共にキモい
それでは
俺は狗の人のが結構好き。エロ抜きで普通に面白いと思う。
俺もあんな感じの書きたいんだがなぁ…如何せん力が足りん。
蛇担当氏の話が好きだな。続きが待ち遠しいよ。
>>367氏へ
>>373さんのご指摘もありまして避難所の方に落しました。
あとはご自由に使い倒して下さい。
>>376 が、元旦までには・・・・・・エロ少ないかも知れないけど・・・・・・
『不眠猫のお嬢様』がさりげなく好きだったり
誰からも好きと言われない職人さんたち(´・ω・`)カワイソス
……いや、俺が不人気なのは前からわかってるからいいけど、他の職人さんがどういう気分になるかと。
書きたいから書く
読んで欲しいから投下する
それでいいんじゃね?
ま、人の好みと読者のコメントのタイミングでレスなんざ変わってくるわけだし
そこで折れる奴もいれば「筆の力で流れを変えてやる!」と思う奴もいるだろうし
それに、「絶対に評価されるとは限らない」からレスは嬉しいんだと思う
動力源が読者の好反応の方にとっては エロパロはサバンナ
しかし砂漠化進行中
過去ログ追ってみたら…確かに兎の方は…ちょっとなあ
385 :
367:2005/11/14(月) 12:11:24 ID:yWUoTXRO
頂いた設定を元に少し書いて見ました。
今回は導入と言う事でエロ無しです。
ちなみに王様はスターリンです。
386 :
白熊の国:2005/11/14(月) 12:13:57 ID:yWUoTXRO
大陸北東――カンブリア地方。
万年雪とブリザードによって閉ざされたこの地には、人とは別の高等生物が暮らしていた。
彼らは皆一様に背が高く、毛皮と白熊の耳がある。
神がかつてこの地上を建設した時、人と熊を掛け合わせて作った種だと言われている。
人は神々が黄昏の時代を迎えるころ、この乾坤(せかい)と分離されてしまった。
爾来往来は無い。一部の例外を除けば。そしてここにも例外があった。
「エカさまー!」
少年が一人走り寄ってくる。茶色の髪の毛の下に利発そうなまなこが輝いている。
エカさまこと第三王位継承権者エカテリーナ・ニコラチェファ・ポリャンスカヤの従僕である。
エカさまと呼ばれたエカテリーナは無愛想な顔つきで従僕を迎えた。
「……ラウ、早く来い」
それだけぶっきらぼうに言うと、また背中を向けてすたすた歩き出す。
その後をラウと呼ばれた従僕ブラウンが必死でついていく。
エカテリーナの身長は204センチメートル。
まだ十歳で身長120センチ弱のブラウンと比べればまるで山と竹の子だ。
387 :
白熊の国:2005/11/14(月) 12:14:26 ID:yWUoTXRO
ここは熊人族の国である。
四方を大山に囲まれ、気候は極めて厳しい。
取れる作物も乏しいが、鉱山から多量の宝石やガラス石が採掘されるので、
国家は交易で富んでいる。
国王はヨシフ・ヴィサリオノヴィチ・ジュガシヴィリU世と云う。
善政を布く王である。
彼女――エカテリーナはその第三皇女であるが、無口で奇矯なその振る舞いの為に政治からは遠ざけられている。
中には「白痴姫」と陰口を憚らないものまで多い。
しかし、彼女はそんなことなど気にしていないのである。
388 :
白熊の国:2005/11/14(月) 12:15:14 ID:yWUoTXRO
そんなある日――
「無い、無い、無い」
エカテリーナが何度も呟く。いらいらと忙しなく歩き回り、時々壁に八当たりする。
彼女は彼女が好きな油絵の筆を失くしたのであった。
「エカさま、筆なら別のが用意できています」
そうブラウンが勧めるが、
「――駄目だ」
短く応える。どうもお気に入りの筆であるらしい。
妙なところでこだわりのある彼女は、こうなると聞かない。
愛用の筆がなく彼女のいらだちは極限に達していた。
彼女はきっとブラウンを睨み付けた。
(お前がちゃんとしていないから筆を失くしたんだ)
目は雄弁に語っている。ブラウンは度を失って退出した。
「……逃げやがって。バカ」
それから二時間後――
389 :
白熊の国:2005/11/14(月) 12:15:50 ID:yWUoTXRO
エカテリーナは今度はブラウン少年が気になって、いらいらしていた。
(あいつ、どこへ行った――?)
「おい、ラウ、どこ行った」
短く宮殿の僕人に尋ねる。
「あの少年なら外に出ましたよ。何でも油絵の筆を探すとか」
「!」
まだ天気が暖かかったころ油絵を書きに近郊の泉までいったことがある。
そのとき筆を失くしたに違いない。
(バカ……!)
体が震えてくる。
外は猛烈なブリザードが吹いている。
人間のましてや少年であるブラウンに耐えられるはずはない。
(ラウ――)
エカテリーナは外に飛び出した。
そのまま一駆けに泉まで走る。距離にして十キロ。
雪は降り積もり、行方を遮る。
390 :
白熊の国:2005/11/14(月) 12:16:25 ID:yWUoTXRO
(いた――)
ブラウン少年は雪の中にうずくまっていた。
慌ててその体をだき起こす。
「エカさま……」
ブラウンはゆっくり目を開けた。
「これ、筆――」
ブラウンの凍傷になりかけた指の中にはしっかりと筆が握られていた。
(バカ――)
ブラウンの顔に暖かいしずくが零れて粉雪を溶かす。
エカテリーナはぽろぽろ泣いていた。
「エカさまが喜んでくれて、よかった――」
(バカ――)
彼女はブラウンを抱いて嗚咽した。
4yen
何か読んで神話に疑問を感じるのは自分だけか
>>384 俺は好きなんだが、まあ好みの問題か
>>385 まあ、もう俺の手から離れたものだからどうしようと勝手だけど。
どうなろうと知ったこっちゃ無いけど。
なんていうか、その
頑張れ。
>>393 作者の人間性がアレなのは好み以前の問題
漏れ達は作品を読みたくて待っている訳で。
作者の人間性とかそんなん作品が面白ければどうでもいい訳で。
つーか人間性とかそこまで突っ込むのはどうなのかと思う訳で。
まあ要はまったりいこうぜ、みんな。って訳で。
猫の国から’05
ご主人様は冷え性
気紛れシマアジロード
さんま1/2
肉級の煮っ転がし
たらこ100%
※只今スレ住人が発狂しています。
暴れ出したら鎮静剤
だが、近づくのは危険。
405 :
『あしたら』:2005/11/17(木) 02:44:05 ID:DUiYiSq6
はい、すみません。こんな遅くなったけど、
・・・とりあえずできれば日曜日ぐらいに投下予告・・・させて下さい。
遅くなりすぎました。結構書き溜めてはいるのですが寝かせていろいろと
加筆したり、大きくかなり大きく削ったりしている所です。宜しくお願いします。
SSの保存に3インチディスクを使っていたんですが・・・(エロSSはキケンなシロモノなので)
先日、今までの『こちむい』やら『あずまんが』などのSSを保管していたディスクが破損・・・
本編は保管庫にあって本当に良かった・・・
だけど『こちむい』のプロトタイプやら、設定やらが永遠に闇の中に・・・。
せめてCD焼けるパソが欲しいよ・・・orz
あれな流れぶったぎって神キター!!
>>405 キケンなシロモノを保存するならネットストレージ使ってみては?
Yahoo!アカウント持ってればすぐ使えるし。
3インチディスクは壊れやすいから気をつけなければ。
つ Hi-MD
使ってる人がほとんどいないので中身を覗かれる心配なし
・・・・・・てかあしたらさんあずまんがのSSも書いてたのか。
>>407 さんきゅー。
ネットストレージ利用してみた・・・いいなこれ!
前スレでも確か住人発狂してたなー
個人的にシマアジロードがウケタw
んで、今生きてる作者の方は元気に書いてくれてるはずなので応援しつつ、熊さんもガンバレー。
次はHまで書いてみるか、ひたすら話膨らませたりすると反応もらえるかもよ。
今のままだと設定をそのまま文章に移した感が否めない。
キミだけのお話をいつまでも待ってる!
そういえば、フロッピーは壊れやすいけれどデータの救出の難易度も低いから、
諦めなければ何とかなることも多かったりする。
412 :
虎の子:2005/11/18(金) 01:34:55 ID:A24dG2qQ
少々遅れましたが、作成完了しました。ただ今見直し中で明日には投稿可能な様子です。
413 :
390:2005/11/18(金) 14:16:53 ID:SxLGCtTZ
反応がいまいちだったんですが、しょぼかったのでしょうか。
もしよければ後学のためどこが駄目だったか教えてください。
>>413 反応の多さは文章量に比例するの法則
つーか、話すすんでねーじゃん
415 :
392:2005/11/18(金) 15:35:46 ID:GAAZMDAE
疑問、正確には違和感の理由を述べると
向こうの住人は自分たちをネコ、イヌ、ヘビ等々と称しているし
獣人という概念はあくまでヒト召使いや書き手の表現の一種に過ぎないと思っていたので
人と熊を掛け合わせたという神話に正直うん?と首を傾げた。
ただし、自分も一言一句全ての設定覚えている訳ではないので間違っていたらすまん。
あとまあ王様のネーミングセンスがちょっと…
確かに短いし展開がないからつまんないな
長文スマソ
個人的に言うとねー。
このスレの世界観ではサルがヒトへ進化しなかった代わりに、それぞれの国で動物から「○○族」に進化したと解釈してる。
だから「人」「人間」ってのはその「○○族」を指すわけでうちらのようなのはあくまで「ヒト」なのよ、人権すらないのよ。
付け加えるとヒエラルキー底辺なわけさー。
>神がかつてこの地上を建設した時、人と熊を掛け合わせて作った種だと言われている。
>人は神々が黄昏の時代を迎えるころ、この乾坤(せかい)と分離されてしまった。
この表現がね、ちょっと引っかかるんよ。大陸北東って書いてくれてるから、スレの作品群に沿ったもんだと思ったけどさー。
これ読んだ限りでは「ヒト」と「動物」を組み合わせて「○○族という人間」ができた、というように理解した。
○○族の人間が神話として、これを本気で考え出すかなー。
「ヒト」がいなくちゃ神様は自分たちを作れなかったわけだよね?
すると立場的に、○○族 < ヒト が成立してもおかしくない。ヒエラルキー逆転の恐れが出てくるんだ。世界観の矛盾に繋がる。
細かいことかもしれんけど、こういう違和感が質を下げちゃう。
大陸外れて別の異世界だよって言い張るのもありかな。とりあえず今のままじゃのーぐっど。
話の筋に対してはこれから期待させていただく。盛り上がる展開を考え出せ、書き続けて見せつけてやれー。
418 :
390:2005/11/18(金) 21:48:09 ID:SxLGCtTZ
精進します。
設定だした人間から一言だけ。
説明と描写は違うんだ。
AだからB。
Bだけ書いてAを想起させるのが描写だ。
Aはただの理由であり今現在のドラマじゃないんだ。
>>397 遅レスすまんが・・・ひょっとして
『お父さんは心配性』?
421 :
虎の子:2005/11/19(土) 01:58:12 ID:XO3F9LLN
だいぶ遅れました。
今から投下します。
題名は「嘲笑われた常識」でお願いします。
422 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:00:34 ID:XO3F9LLN
「つまり、この電磁加速砲と言うのは、今までの火薬の爆発によって弾丸を飛ばしていた従来の銃などとは違い、磁力によって弾丸を飛ばすんです」
瓶底の厚いメガネを掛けた猫の少女の言葉に従い、中空に映し出された立体映像が筒型の兵器を映し出している。
「利点としては、弾丸の速度を上げるために通常なら火薬を増量し、その増量に伴う爆発力に耐えられる強度や銃の口径の増加などが必須となっていた訳ですが、電磁加速砲はそれらの束縛から解放されたという事です」
グラフと映像に注釈が加えられ細分化される。
「これにより、発射速度が指数関数的に増大し、全体の軽量化にも成功しました」
猫少女の言葉に反応するように次々グラフや数式が映し出され、立体映像の上に重ねられる。
「攻撃力も、貫通力という点に置いては従来の中で最高の物です。エネルギー消費量が多いという欠点もありますが、大した問題ではありません。互換性を持たせるために通常のバッテリーを使っていますが、充分使用可能で―――あの、大丈夫ですか?」
説明を中断した猫少女は、目の前で突っ伏す自らの雇い主に聞いた。
「ご、ごめん、ちょっと止めてくれない。なんか拷問されている気がするの」
「………お前、ちょっと情けないぞ」
頭を抱えるミリアにシルスが半眼を向ける。
「だって、こんなの分かる訳無いじゃない。一般人には理解不能よ」
銃身に使われる金属組成の化学式や銃口内部の力学計算の数式などで埋め尽くされた紙の束など、ミリアにとっては頭痛の原因以外の何物でもない。
「いや、それは単にお前が理数系に弱いだけだろ」
兵器の仕様書を指先でこするミリアにシルスの言葉は冷ややかだ。
「何よ。泣き虫シル坊の癖に」
「それは関係ないだろう」
頬を膨らますミリアにシルスの顔が引きつる。
「―――どう、勉強ははかどっている?」
ミリアがシルスにさらに何か言おうとした所、唐突に開いた扉からセリスが顔を出す。
「って、この様子じゃあ駄目だね」
主の様子を見るなりセリスは嘆息する。
「ご主人様、脳細胞増やせとは言わないけど、せめて学習能力は発達させてよ。虎の女性は生物学的に猫と同じくらい賢いんだから、努力すれば何とかなるはずだよ」
「そ、そんなことありませんよ。ミリア様もだんだん良くなってきてます」
召使いに叱責される主を庇ったのは、今まで兵器の説明をしていた猫の少女だ。
「エリス、君がそうやって甘やかすから、いつまでもこれは成長しないんだよ。もう少し厳しくしないと―――」
「冗談じゃないわ。これ以上、厳しくされたら死んじゃうわよ」
ミリアの抗議にセリスは冷笑を浮かべる。
「だったら、いっそ死んでもう少し性能の良い脳味噌を持って生まれ変わったら? その方がご主人様のためになる気がする」
「何ですって!?」
「………ついでにもう少し理性的でお淑やかになってくれ」
ぼそっと呟いたシルスをミリアが叩き倒す。
「ともかく、これ以上勉強の量を増やすならストライキするからね」
「ああ、別に良いよ。やりたければやればいい。そう言う場合は、勉強が楽しくなる薬とか機械とか用意しておくから、ちょっと脳内麻薬が異常分泌して笑いが止まらなくなったり、頭に電極が生えたりするけど、それでも良いならストライキでも何でもすればいい」
口調こそ冗談だが、セリスなら本気でやりかねない。
「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」
たかが若輩の虎の少女に魔王と口げんかして勝てる通りはないのだ。
悔しさと怒りに耳を立てる少女にセリスは肩をすくめる。
「うにゃ〜、どうしたのかなご主人様? 何か凄い悔しそうだけど、もう少し態度を改めないと本気で課題の量を増やすよ」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」
「もう止めろよ。どうせ勝てないんだから」
歯ぎしりするミリアを、悟った感じのシルスが宥める。
こういう場合、シルスの方が余程現実的だ。
423 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:01:16 ID:XO3F9LLN
「それよりエリス、そろそろ機械歩兵のメンテナンスの時間だから一緒に立ち会ってくれる?」
「あ、はい」
セリスの言葉にエリスと呼ばれた猫の少女が頷く。
そして部屋の扉の前まで行くとミリア達の方を向いて、着ている白衣を揺らしながら丁寧にお辞儀した。
「それではミリア様、今日の授業は此処で終了させて頂きます」
「ああ、それでいい―――て言うか、やめとけって」
実際にエリスの返事に応えたのはシルスであり、言われた本人はセリスが扉の方を向いているのを良い事に何やらジェスチャーでセリスの頭を殴ったり足で蹴飛ばしたりしている。
シルスの言葉の後半も、無謀なる親類に向けた物だった。
「………追加用の課題は後で持って行くから、それまでの今の課題を終わらせておいてね」
異界の魔王は無謀なる挑戦者に適切な報いを下し、そのまま部屋を後にした。
その後ろをエリスがついて行く。
閉まった扉の奥で何やら酷い罵詈雑言とシルスの宥める声が聞こえるが、少年はもはや関心がないとばかりに歩き出した。
「あの、ミリア様の課題――もう少し減らしたらどうでしょうか?」
「うん?」
唐突に話しかけられてセリスは、きょとんとした顔でエリスを見返した。
あまり知られていない事だが、彼は親しい者だけの時は意外と無防備なのだ。
それこそ、急に話しかけると姿通りの子供のような反応を返す。
「―――何がおかしいのさ」
「い、いえ、ただミリア様の課題の量を、もう少し減らした方がいいじゃないんでしょうか」
セリスに半眼を向けられ、エリスは慌てて緩んだ頬を引き締める。
数秒ほど冷ややかな視線にさらされ、後頭部にイヤな汗をかく。
「…………仮にも僕の主だよ。高い教養を身につけて貰わないと困る」
「で、でも、多くすれば良いという物でも無いですし、あまり強制させてやる気をなくされても本末転倒じゃあありませんか――」
エリスの心配事にセリスは嘆息する。
「どうせ、七割はシルスお兄ちゃんに押し付けるよ。あの二人の力関係は熟知しているからね」
「…………た、確かに、そうですね」
一瞬黙考したエリスの頭にはシルスの机に自分の課題を積み上げ、溜息を付きながらそれを片づけるマダラの少年の姿が思い浮かんだ。
「まあ、シルスお兄ちゃんの脳味噌は、ご主人様より遙かに性能が良いから大丈夫だよ」
シルスはその軽そうな見た目とは裏腹に、文武両道の優秀な虎人である。
専門家には及ばないが、セリスの課題もちゃんとこなし、それなりの知識は蓄えてきていた。
一時期、本気でシルスとミリアの頭の中身を交換する事をセリスは考えていたが、頭の中を取り替えたら意味がないと気付き、実行直前で取りやめたのはセリスだけの秘密である。
「それより、今は機械歩兵のメンテナンスだよ。僕直属の暗部以外は、こまめな定期メンテナンスが必要なんだから」
機械歩兵、生身の肉体を機械に置換したり、投薬によって身体能力を大幅に増強する戦闘増強技術の一つである。
単純的な能力は従来の兵士の十倍、総合的戦闘能力は五十倍以上に跳ね上がり、王宮親衛隊や、この領地直轄の守備部隊に大量投入される生態兵器だ。
ただし、体の一部が機械のため定期的なメンテナンスが欠かせないのが欠点の一つである。
そして通常の機械歩兵のほとんど全ては、この猫耳少女によって作られているのだ。
424 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:02:09 ID:XO3F9LLN
「そう言えば、もう少し整備の回数を減らした方が良いよ。性能を上げるのは良いけど、それで内部構造が複雑化して整備回数が増えるんじゃあ本末転倒だしね」
「それは分かっているんですが、なかなか上手くいかなくて」
整備の頻度や維持用のコストなどが増えれば実戦での運用上色々な問題などが出てくるため、兵器開発ではその所との折り合いが実に難しい。
一発で国一つ吹き飛ばす大砲を作っても、一発撃つのに国家予算百年分の金額が必要な兵器など誰が使う物か――
単純な金銭の問題でもなくとも、条約で禁止されているなどの政治的制限や、実戦稼働に耐えられないなどの運用的制限が多ければその兵器は使う意味がない。
相手以上に自分達に損害を与える兵器など、自爆装置だけでたくさんである。
どんなに威力を誇る超兵器であっても、それ以上に何らかのコストが掛かるのならとても実戦では使えないのだ。
生態兵器も同じだ。
単純に力を上げるために人工筋肉の量を増やせば、質量が増大し一定値で出せる出力を上回ってしまう。
さらにそれだけの物を動かすエネルギーも供給しなければならないし、摩擦、電気抵抗などの損失も考慮に入れなければならないのだ。
そう考えると正に性能とコストは相反する物であるのだが、エリスが目指すのはそのような妥協の産物ではない。
彼女が目指しているのは、そのような常識を遙かに超えた所に存在する領域だ。
永久機関、人工知能、後天的魔力の増強などだ。
無論そこへ辿り着くまでの道は険しい。
エネルギー総量は変化しないというエネルギー保存の法則、質量は不変とする質量保存の法則、生来の魔力は一生そのままという魔力係数保存の法則などの根源的な法則を真っ向から否定しなければならないのだから、普通の科学者達、魔法使い達は鼻で笑うだろう。
そのような物は不可能だと――
そんな物はあり得ないと―――
だが、エリスは違うと思う。
この世に知らない事はあっても、不可能な事は存在しないと―――
どんな、法則も理論も何時かは覆される時が来るはずなのだ。
そう思い、自分はそれを信じ続けた。
どんなに笑われても、嘲笑されても研鑽し観察し、観測と理論構築を続けたのだ。
そしてセリスと出会った。
彼は、自分達より遙かに進んだ技術を持っており、誰も振り向かなかったエリスの理論を初めて認めてくれたのだ。
「何なら、鈴(すず)の体を少し見せて貰えばいい。参考程度にはなるだろうしね」
セリスの言葉にエリスは頬が引きつるのを自覚した。
「えと、それはちょっと―――」
乱林 鈴(らんばやし すず)、セリス直轄の暗部部隊のリーダーを務める人の少女である。
人でありながら、その戦闘能力はS級国際犯罪者《トリックスターズ》にも匹敵する超人だ。
暗部はセリスが自分で揃えた非公式の部隊で、その全てが人であるという前代未聞の構成が行われている。
その役割は重要人物の護衛から暗殺、諜報などの、表沙汰に出来ない非公式な仕事の多岐にわたっている。
しかも、暗部の全員はセリスが直々に身体を改造して常識外の力を身に付けているが、鈴はその中でも、さらに別次元の戦闘能力を持っている。
一般の機械歩兵達は、暗部を真似てエリスが模倣した物に過ぎないのだ。
「ん、どうしたの?」
「私、どうもあの子が苦手で―――」
礼儀正しい少女ではあるが、何というかこう刺々しい物を感じるのだ。
一瞬で命を刈り取る暗殺者に一瞥されると、気の弱いエリスはそれだけで引いてしまう。
とてもではないが、体を見せてくれとは言えない。
「ん〜、まあ、彼女は誤解されやすいけど良い子だよ。真面目だし、責任感も強いし」
「…………そうなんですか?」
滅多に人を誉めるという事をしないセリスが賞賛するというのは、自分にとって何となく面白くない。
少々言葉がぶっきらぼうになっても、無理無い事だ。
425 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:02:40 ID:XO3F9LLN
「あ、ひょっとしてヤキモチ焼いてる」
「な――そ、そんなことありません。私はただあの子が苦手なだけです」
顔を真っ赤にしてムキになるエリスにセリスは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「あ、鈴」
「みやぁっ!!」
背後を指さすセリスにミリアは文字通り飛び上がった。
急いで背後を振り返ってみると、そこには真っ白な壁があるだけだ。
同時に聞こえる笑い声の主は言わずとしれたセリスである。
「本当に苦手なんだね」
「ひ、ひどいですよ。お師匠様(マスター)」
余程驚いたのか半泣きの表情でセリスに恨みがましい目を向ける。
エリスは自らの師である彼の事をマスターと呼ぶ。
彼女にとってセリスは同じ科学者であると同時に、自らより遙かに高い階梯を歩む上位者なのだ。
だから畏怖と尊敬を込めてお師匠様と呼ぶ。
「いや、やっぱり君をからかうのは面白いな。ご主人様と同じくらいに―――」
「…………それって誉められてるんですか?」
「誉めてるつもりなんだけど、ご主人様はいつも怒るんだよ。何でだろ」
「分かる気がします」
意味不明とばかりに肩をすくめるセリスにエリスは沈痛な表情をする。
この少年の歪んだ愛情表現は今に始まった事ではないが、それを理解出来る者などそうはいまい。
さらに本人がそのことを自覚しているので尚のことたちが悪い。
「ひどいね。君はどっちの味方なんだよ?」
「限りなくミリア様の味方になりたいんですけど―――」
「酷い弟子だ」
ふざけた会話をしながらセリス達はエレベータに乗り込む。
「話は変わるけど、王都の大規模発電施設の様子はどうなってる? 君の事だから心配ないと思うけど、あそこは事故の一つでも起きたら洒落にならないからね」
「は、はい、それはもう万全の体勢です」
エリスは意気込んで返事をする。
王都にある大規模発電所は猫の国などの魔光によるエネルギーではなく、純然たる電力を供給する施設である。
これは一般の所領などに配備される電動機による発電施設とは違い、核融合施設や合成生物による生態発電、それに伴う生物科学研究所などが併設されており事故が起こった日には王都が消滅して下手すれば生物災害が発生するだろう。
「火災、地震、洪水、その他の天災や破壊工作にもビクともしません。絶対大丈夫です」
「調子に乗るな、未熟者」
自信をみなぎらせて断言したエリスにセリスの鋭い叱責が飛ぶ。
「貴様が知っている知識など、全ての内の一片にも満たぬのだぞ。我ですらこの世の何一つとして断言する事など言うのに、戯れ言ならともかく心の底から絶対などと口にするな」
いつものふざけた口調ではなく、弟子に対する師の叱責は酷く鋭く冷たい。
「貴様がしくじるだけで、無数の命は消える。それでも、貴様は平気か? 死に逝く者達を嘲笑えるか?」
「す、すいません」
自分が背負っている物の重さを指摘され、エリスは即座に頭を下げた。
自分が作る物は、一歩間違えれば幸運以上の不幸を周りに撒き散らす。
知恵も力も諸刃の剣、破滅と恵みは裏表だ。
だからこそ、それを扱う物はそのことを忘れてはならない。
いや、それを忘れ無責任に力を行使するならばそれが一番幸せだろう。
力を振りかざし欲望を満たし、何一つ代償を支払わない。
強者の苦悩を知らず弱者の制限を受けぬ間に居ることこそ、真の幸せなのかもしれない。
(だけど、私はそうはならない)
力もそれに対する代償も責任と共に一緒に背負い込む事を決めた。
自分の無責任さで人が傷付くのはイヤだし、なによりその程度では目の前の少年の横に立つ事が出来ないからだ。
「ま、分かっているならいいさ。そのまま精進しな」
冷ややかな表情から一転して、少年は苦笑を浮かべる。
「念のために暗部に護衛させとくけど、気を付けといてね」
「は、はい、ありがとうございます」
エリスの礼を聞くともはや興味はないとばかりに、扉の方を向いてしまう。
426 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:03:28 ID:XO3F9LLN
「……………………」
「……………………」
沈黙がエレベーターの中を支配した。
象でも運搬な可能な上に半分がガラス張りの巨大エレベーターだが、密室となるとやはり圧迫感がある。
「―――あの」
「何?」
即座に返事を返され、エリスは言葉に詰まったがそれでも何とか言葉を続ける。
「その…………今夜……何も予定がなければ一緒にお食事しませんか―――――出来れば二人っきりで」
もじもじとはっきりしない態度で両手の指先を擦り合わせながら、最後の方など頬を染めて蚊の鳴くような声で言う。
それにセリスは―――
「僕とセックスしたいの?」
「……………………な、ななな何言ってるんですかっ!!」
あまりに直接的な物言いにエリスの頬は一気に真っ赤になる。
「わ、私はそんなつもりで言った訳じゃあありませんっ!! そんな風に思われるなんて不愉快ですっっ!!」
半ば怒りの籠もった声にセリスのケラケラとからかうように笑う。
「じゃあ、聞くけど、今まで二人っきりで食事とかしてその後情事に及ばなかった割合を出してみな」
その言葉にエリスは、非常に優秀な頭脳をフル回転させて、今までの事を思い出す。
そして確率計算、
そうやって出た確率は―――
「え、え〜と、六十パーセントぐらいかな〜」
可能な限りセリスから目を逸らし、エリスはさりげなく呟いた。
「随分サバ読んだ物だね。僕の試算だと二十パーセント程度のの確率なんだけど」
「う゛…………」
エリスの試算も大体そのあたりだった。
逆に言えば実に八割近くの確率で、二人っきりになるとその手の行為に及んでいるのだ
さらにその数値はプライベートになると、限りなく百パーセントに近くなる。
「それにさ」
素早い動きでセリスはエリスの腰に抱きつく。
運動神経が断絶している彼女に、素早い少年の動きを止める力など無い。
「お、お師匠様」
反射的に抱き留めてしまった弟子の腹に、師は構わず顔を埋める。
そこは、自然な体臭とは違う甘い匂いがした。
「――何この匂い? いつもなら、平気で三日ぐらいお風呂に入らない癖に、香水なんて付けてどうする気だったのさ」
「こ、これはその身だしなみのためうひゃあっ!!」
悪戯を思いついた子猫のような表情を浮かながら、セリスは手を白いシャツの脇から服の中に手を滑り込ませる。
「や、駄目ですっ!! こんな所で!!」
「そう言った所で、僕が止めると思う?」
弟子の抵抗と制止を歯牙にも掛けず、服の中で手を動かす。
「だ、だってカメラが―――」
階を示すプレートの上に設置された監視カメラに目をやるエリスだが、セリスは気にしない。
「警備システムの統括はアリスがやっている。別に見られた所で恥ずかしくないだろう」
「で、ですけど――」
「堅い事言わないでよ。ちょっとぐらい、いいじゃないか――」
そう言いながら、腹の辺りのシャツを露出させてそこに顔を埋める。
「ん、」
頬を擦り付けるようにして、エリスの腹が擦られそのまま腕が背中に回される。
指先が肩胛骨の出っ張りに沿ってすっと走ると、体から力が抜けてしまう。
少女のように華奢で、ピアニストの如き繊細な手の平が背中の筋肉を揉むように動く。
427 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:04:01 ID:XO3F9LLN
「少し肩がこっているようだね。研究もいいけど少しは運動しなよ」
「はい、んあ」
微乳と言うより、無乳な胸が露出させられエリスの顔が羞恥に染まる。
「本当に成長しないな。今度女性ホルモンでも打ってみる?」
「ひ、ひどいです。人の気にしている事を――」
エリスの胸は文字通りぺったんこだ。
三次元には進出出来ず、二次元で事足りるぐらいの無乳っぷりだ。
横に並ぶとあのミリアでさえ優越感に浸れるほどの無乳なのだ。
「まー諦めたら、この年で全然成長してないんだ。体質だと思って割り切るしかないね」
「うう」
エリス自身自分の胸の事は良く分かっている。
それがかなりの確率でこれ以上の成長を望めない事も―――
平面な肉壁に出来た二つの突起の片方にセリスの指が触れる。
「ひゃん」
「これだけ刺激してるんだから、少しぐらい大きくなってもいいのにね」
小さな舌が伸ばされ、それが腹を伝って脇へ移動した。
「ふひゃあっん!! そ、そんな所」
「やっぱり、ちょっと臭うね。ちゃんと毎日お風呂に入りなよ」
そう言うとセリスは念入りにそこを舐め始める。
同時にエリスの体を壁に押し付け、そのまま両足を持ち上げてしまう。
ちょうど、エリスの両足の間にセリスの体が挟まる形だ。
「そんなつもりはないって言ってるけど、この下着は何なのかな?」
エリスの下着は上下とも黒いシルク製で、男の欲望を刺激するようにレースをなどを使って卑猥さを演出している代諸だ。
普段着ではないと言い切れないが、身嗜みの標準が白衣とシャツとタイトスカートのエリスにしてはおかしすぎる。
「普段着じゃないよね。誰に見せるために付けているの?」
「そ、それはたまたま――」
「たまたまね、ふ〜ん」
かけらも信用してないセリスの視線に耐えられず、エリスは俯いてしまう。
「じゃあ、此処がこんなに期待しているのもたまたまなのかな」
濡れそぼった下着を撫でながらセリスが囁く。
「……………」
エリスは今度こそ顔を真っ赤にする。
何度も情緒を重ねる内にその手の反応はかなり敏感になってきたが、それを認めるのはやはり気恥ずかしい。
それに対して体の成長が皆無なのはさらに悲しい。
しかし、エリスに時間は与えられなかった。
下着に手を入れられ、そこから強引に中に入れられ、一気に掻き混ぜられる。
「うはあぁあぁああっっ!!」
何度経験しても慣れない感覚、しかし決して不快ではない。
熱いお湯につかった時のように、下半身から神経が揺さぶられ全身に鳥肌が立つ。
本人以上にその体を熟知しているセリスの指が、エリスの体を這い回る。
「ひっうあう、お師匠様」
眼鏡越しに視線を向ければ少年が苦笑を返した。
「どうしたの? そんな物欲しそうな目をして」
セリスの純真無垢な表情にエリスは恨めしげな視線を向ける。
(うう、意地悪です)
自分の心の内を分かっている癖に、セリスはわざわざ聞いてくる。
他人を焦らせもてあそび、その葛藤や羞恥をあおるのは性技の常套手段だが、彼ぐらいの熟練者になると、やられる方はたまったものではない。
いつもなら、ここからさんざん焦らして、最後に理性が吹き飛ぶぐらい激しくするか、ゆっくりじっくり愛撫を続け、まるで体が溶け出すようなじんわりした絶頂を味わわせるのだ。
しかし今回は違った。
428 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:05:59 ID:XO3F9LLN
「ふぁう」
中に入れられた指の本数が増えると、エリスは熱い吐息を漏らす。
そして次の瞬間、その指がバラバラに高速で動き出した。
「ひ、ひゃうっ!? ああああああああああああああっっ!!」
体中の神経の端々まで電流が流れ、体中の筋肉が硬直する。
セリスの指使いは一見乱雑そうに見えて、その全てが楽器の合奏のように緻密に計算し尽くされ重なり合う妙技だ。
擦り、引っ掛け、抉り、突き刺され、剥き出しにされた神経に快楽を流し込まれる。
「お、お師匠様、は、激しすぎ、くひゃんっ」
快楽に震える少女は言葉すら続けられず、それに飲まれていく。
体内に溜まった熱を僅かでも排出しようと息を吐き出せば、同時に喘ぎ声も出てしまう。
「さっきの返事だけど、君の部屋にならお呼ばれしてあげてもいいよ」
「そ、それは」
「駄目なの?」
言い淀むエリスに、セリスは無邪気に首を傾げた。
と、同時に指をさらに深く突き入れる。
「ふああぁあああっ」
神経をあぶられるような快楽が脳を叩いて、魂を絶頂まで突き上げる。
しかし、その手が不意に止められた。
「お、お師匠様?」
真っ赤になった顔で突然の愛撫の停止に、エリスは切なげな表情で師匠を見る。
「君の部屋に呼んでくれるなら、続けてあげるよ」
「そ、そんな、それは駄目ですっ!!」
「じゃ、やめるね」
それまでの激しさとは対照的にセリスはあっさり手を引っ込める。
「あ、あんまりです此処までしておいて」
「じゃ、呼んでくれる? それとも、僕を呼べない理由でもあるのかな。たとえばまた部屋の中がゴミ屋敷になっているとか」
セリスの瞳が非常に冷ややかな視線を帯びる。
「え、ええと、」
「いつも言っているよね。出した物は元に戻せ、ゴミは捨てろ、食べた物は片づけろ、服は散らかすなって」
冷ややかな視線のままセリスは秘裂の周りに指を這わすと、その焦燥にエリスは息を漏らした。
「で、君の部屋に呼んでくれる?」
「はぁ、それは――」
了承しかねる猫耳少女にセリスはゆっくり指を離していった。
429 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:07:03 ID:XO3F9LLN
「やあっ、やめないでくださいっ!!」
とっさに叫んだ物の、一瞬後には冷静になり耳の中まで赤く染まる。
「呼んでくれる?」
エリスの秘裂から垂れた愛液が、床に敷かれた高級な絨毯をぐっちょり濡らしている。
こんな状態で愛撫を堪える事が出来る訳がない。
「わ、分かりましたから、意地悪しないでください」
「ふふ、ありがとう。でも部屋はちゃんと片づけておいてよ」
涙を溜めた瞳で懇願する弟子に釘を刺し、セリスは指の動きを再開した。
「ふはぁあああああああっっ!!」
水音と共に指が膣内に侵入し高速でかき回し、舌が体を這い回る。
セリスの愛撫は今まで何度も受けてきたが、いっこうに慣れも飽きもしない。
まるで麻薬のように受ければ受けるほど溺れていく魔性の愛撫を前に、エリスは絶頂まで駆け上がっていく。
「ひふぅうっ、イク、イっちゃいます。セ、セリスさん、私イっちゃいますうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!」
絶叫と共に背筋を仰け反らし、快楽の祝福を受けようとした瞬間セリスの手が素早く離された。
「ああああああああああああああ、え……………あ…何で―――」
戸惑う少女にセリスは微笑み、エリスの体を下ろした。
「セ、セリ、お師匠様何で」
絶頂の寸前で快楽から引きずり下ろされた少女は、自ら零した愛液の水溜まりにへたり込む。
しかし、失望の表情で自分を見上げる弟子に、セリスは天使の皮をかぶった悪魔の笑顔で応えた。
「続きは後でね」
「…………へ?」
唐突な宣告に少女が何か言う前にセリスは扉の横の隙間にカードを差し込む。
軽い電子音と共に扉が開いた。
「ちょっ、ええ!?」
気付いたエリスが咄嗟に手を伸ばすが、腰が抜けているために前のめりに倒れ込んでしまう。
「人の顔を見て笑った罰だよ。しばらく我慢しな」
ひらひらと手を振りながら師は弟子に背を向けて歩み出す。
「ま、待ってください。わ、私、腰が抜けて――もう」
「これも修行だよ〜ん。せいぜいがんばってね」
そう言い捨てるとセリスは去っていく。
後に残ったのは腰が抜けて足腰の立たなくなったエリスだけだった。
430 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:07:49 ID:XO3F9LLN
「うう、酷いです。お師匠様」
膝をがくがく振るわせながら、エリスは自室の扉をくぐった。
「もう少し素直になれば、ミリア様だってあんなに怒らないのに」
師に対する批判を零しながら、エリスはソファーに倒れ込んだ。
下着の方はぐちょぐちょに濡れてしまったので着替えたかったが、この部屋には着替えがない。
正確には着られるような着替えがないのだ。
いや、実際にはしわくちゃになったワイシャツや、脱ぎ捨てられたスカートや、三日ぐらい身につけていた下着があるのだが、そんな物は着れない。
エリス自身はいいのだが、師であるセリスが許さないのだ。
別に誰かに見られる訳でもないので構わないと思うのだが、セリスはそんな無精を許さず毎日入浴と着替えを義務づけている。
初めのうちこそ研究に没頭して、五日ぐらい同じ服を着たままなどざらだった。
しかし、一度十日間連続で同じ服を着続けたエリスにセリスが激怒した事があった。
その時は泣き叫ぶ彼女に構わず、セリスはその小さな舌を使ってエリスの全身に溜まったふけやアカを舐め取ったのだ。
それ以来、エリスは三日に一度は入浴と着替えを行っている。
さらに問題はそこだけではなく、セリスの愛撫の名残が未だに体の奥でくすぶっているのだ。
絶頂寸前まで行ったため、不完全燃焼気味の性欲はエリスの体を常に刺激し続けていた。
こうやってソファーに横になっているだけで、体中に微弱な刺激を受けている。
快楽にはほど遠いが、無視出来るほど小さい物でもない。
いっそ自分で慰めてしまおうかと思うが、自分のつたない愛撫ではセリスの快楽以上の物を手に入れる事など無理だ。
下手に刺激したらよけいに悪化しそうである。
「か、片づけないと」
いっそのことセリスが来るまで安静にしていたいが、このまま横になっている訳にもいかない。
セリスが来た時、部屋が散らかっていたらただでは済まないだろう。
(ともかく、まず現状を把握しないと)
エリスは部屋の中を見回した。
まずは下、厚手の絨毯が敷き詰められている床は、脱いだ衣服に書類とゴミが散らかり足の踏み場もないどころか、絨毯の毛がほとんど見えない。
しかも、絨毯には変な色のシミとカビが生えていた。
次に机、上質な黒檀の机の上面はこれまた書類とゴミにまみれ、食べかけのまま放置されたカップラーメンの汁や、ハンバーガーが変な匂いを発している。
しかも、机の上に置いた服にそれがこぼれて大変な事になっていた。
最後に壁、埋め込み式の書棚には本が一冊もない。
出した本を戻さずに積み上げ続けた末、エリスの身長の倍近くある歪なピラミッドを形成している。
「…………無理です」
優秀な頭脳は、僅か五秒でそう断じた。
自分は猫にあるまじき事に運動神経が絶無なのだ。
その上、家事も苦手と来ている。
この世にインスタント食品とファーストフードが無ければ、エリスは毎日生野菜をかじっていただろう。
しかし、出来なくてもやらなければいけない。
不可能を可能にが自分のモットーなのだ、何よりこの部屋の状態を見たセリスが笑顔で納得してくれるとは思えない。
「まず本を片づけないと」
床の面積の多くを占有している本を片づけ、そこから順々に部屋を片づけていく計画である。
先に棚の掃除をした方がいいかもしれないが、セリスもそこまで言う事はないだろう。
431 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:08:40 ID:XO3F9LLN
しかし、本のピラミッドの眼前まで来ると自分の愚かさに頭を抱えた。
ページの合間に書類や付箋などを挟み込んだ本を無節操に積み重ねていった結果、本のピラミッドは非常に不安定な形に積み上げられている。
下手にどこかの本を動かしたら、今にも崩れて来そうだ。
数秒黙考して大丈夫そうな場所を探し出し、その本に手を掛ける。
しかし、
(ぬ、抜けない)
周りの本が側面を圧迫し、本が抜けないのだ。
「く、この、」
強引に引き抜こうとするが、非力なエリスの腕ではビクともしない。
「ん〜!!」
本の山に足を掛け、全身で本を引っ張る。
「ぐぐぐうぅ〜っ!!」
数秒の硬直状態の後、唐突に本が抜けた。
だが全身で本を引っ張っていたエリスは急に支えを失い、そのまま真後ろに倒れそうになる。
「わひゃあっっ!!」
咄嗟に前に手が伸びたのは運動音痴のエリスからすれば、正に奇跡的な出来事である。
しかし、その手が掴んだのがピラミッドの一角だったのはいただけない。
掴んだ本は一瞬の抵抗の後、簡単に抜けてしまったのだ。
結局、彼女は後ろに倒れてしまった。
しかも、抜かれた本のせいでピラミッドのバランスが崩れ連鎖的に全部が倒壊する。
そのほとんど全てが倒れ込んだエリスに降りかかってきた。
「きっ」
悲鳴を上げる前にエリスは本の波に飲まれてしまう。
432 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:09:25 ID:XO3F9LLN
「し、死んじゃうかと思いました」
本の海原から這いだしたエリスは自らの後ろを振り返る。
そこには崩れ去った本のピラミッドの残骸があった。
よくこの状態で助かった物だ。
下手すれば体が圧迫されて圧死していただろう。
「うう、どうしましょう」
しかし、エリスに助かった命を喜んでいる暇はなかった。
本のピラミッドが倒壊したせいで、部屋の中に本が散乱し埃やら何やらが舞い上がってる。
その上、倒壊した時の衝撃で飲みかけのコーヒーなどが絨毯にこぼれ、致命的なシミを作っていたりするのだ。
もはや片づけなど絶望的な状態であった。
打ちひしがれたエリスが下を向いた時、一つの書類の束が目に止まる。
「これは――」
日に焼けた書類には多数の数式と図面が描かれており、素人にはその内容が遙かに高度な物だとしか分からない。
「こんな所に有ったんですね」
かって自分が変人と疎まれ、誰にも顧みられる事の無かった時に書いた物だ。
ふと、左手の甲を見ると、そこには醜い傷跡があった。
まるで何か切れない刃物を突き刺したような傷跡だ。
(そう言えば、お師匠様と出会って私が最初に作ったのも電磁加速砲でしたね)
エリスは傷跡を愛おしげに撫でた。
まるでとても大切な物のように――――
433 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:11:21 ID:XO3F9LLN
エリス(外見年齢十四歳ぐらい)
猫の少女で、ミリアより頭一つ分背丈が低くつるペタな体型
髪は肩で切り揃えられた茶髪で、服装は白衣にタイトスカートとシャツを常時装備、
瞳は青みが掛かった銀眼だが、分厚い眼鏡で遮られ普段は見る事が出来ない。
ミリアの家庭教師兼セリスの弟子にして助手、
セリスにその優秀な頭脳を見出され、領地に連れてこられた。
セリスを除けば、領地のテクノロジーに精通しているのは彼女だけのため、様々な組織や国にその身柄を狙われている。
性格は真面目だが、同じ服を着続けたり整理整頓が出来ないなどのずぼらな面も存在する。
434 :
虎の子:2005/11/19(土) 02:18:09 ID:XO3F9LLN
以上です。
次回から本編に入ります。
書き終わって気付いたんですが、濡れ場が薄いですね。
そこで皆さんに質問なのですが、濡れ場はもう少し濃いめの方がいいでしょうか、それともこれぐらい薄い方がいいでしょうか?
皆さんの意見を指針にさせて次回の話を考えていこうと思います。
目標は今年中に完結です。
自信はありませんけど――
それではまた次回!!
GJ!!!!!
や、十分エロイですよ。それでも濃くなるのはうれしいかぎりですがw
知恵熱で頭から煙噴くミリアたん萌え
エチシーンは好きに書いてくださって結構です
虎の子さんGJ。
さて、日曜日もあと6時間足らず。
おまいら間違ってもあしたらさんに催促レスなんかつけるなよ。
ましてや
>>405にアンカーつけたりするんじゃないぞ。
待ってますとか超期待とか全裸で正座してるとか、全裸で水かぶって夜の屋上で正座して寒風に耐えてるとか書いて無用なプレッシャーあたえるんじゃないぞ。
>・・・とりあえずできれば日曜日ぐらいに投下予告・・・させて下さい。
つまり、日曜日に「投下予告」がされるんだからな。勘違いするなよ。
正直、コメントに困る。
>>虎の子さん
眼鏡少女エロス。舌で全身洗いエロス。むしろそれこそをっ!そここそをっ!
>>438 仕方ない、全裸は止めて120%裸で行くか。
ナレーション「説明しよう!120%裸とは全裸よりも裸のことである!」
怪人「なにい!こ、この力は?ええいお前等、やってしまえい!」
戦闘員「イーッ!」
(ゴメンナサイ発狂してます)
おまいらもちつけ。まじでもちつけ。
「えっ、あの、その・・・」
今度はぼくがうろたえる。あわててぼくは二人の服を脱ぎ始めたネコ姫様を止めようと
声をかける。
「リナ様、ユナ様も・・・いきなりこんなコト・・・」
目をやるがすぐに声が飛んだ。
「み、見るなっ・・・は、恥かしいのだ・・・」
「エッチですの――っ!! 目をつぶってるですの――っ!! 」
「あわわわわっ・・・す、すみませんっ!! 」
後姿だが肩まで真っ赤にして身をすくめる二人。初々しく恥らう二人に、いつもの悪いクセで
あっさりと状況に流されてしまう。反論するのも忘れ、ぼくは目を固く閉じ、さらにくるりと
ベッドサイドに腰かけ後ろを向いて固まる・・・衣擦れというよりはパタパタ、そしてゴムのパチン
という音がするような・・・
「いいにゃ、もう振り向いいてもいいにゃよ・・・」
ご主人様の声。ぼくはさっきまでの良識は地の果てに忘れ果て、心臓をばくばくいわせ、
逸る心をなだめながらばっと振り向く・・・
「うわぁ・・・」
ベッドのシーツの上には3人の下着姿のネコ姫様。左からユナ様、真ん中にご主人様、
そして右側にリナ様。
ベッドの上に全員膝立ちをしてる。ユナ様は腰に手を当てロリロリのボディを誇示するような
ポーズ、だけど顔を真っ赤にして視線は斜め下のシーツを必死でつまらなさそうな表情を作りつつ
見ている感じ。下着は黒色だけどコットン、10年後のようなフリルはなし。ご主人様やリナ様と
違ってユナ様だけブラジャーをしている。三人姉妹の中で一番のおませさんなのもあるだろうが、
10年後とかわらないリナ様の容姿はギリギリ3人のなかで一番発達している・・・ような気がする・・・。
腰に手を当てた挑発的なポーズはどうやら自分だけが所持しているAカップのブラを自慢したいらしい・・・
リナ様はシュミーズの胸元にちょっと大きめな赤リボンのワンポイント。シュミーズは
胸のところだけコットンでそこは下と同じ赤のチェック柄。そしてその裾からチラリと覗く
パンティも赤地に白のチェック柄。両手で軽く口元を隠すようにしながらモジモジとぼくを
見つめてる。手は口元を隠すのではなく、肘の辺りで自分の貧相な胸を隠そうとしているのが
主な理由らしい。少し潤んだ大きな瞳といい、飾り気のないシュミーズの肩ヒモから覗く細く
白い肩といい、10年後とは違い逆に儚げで守ってあげたくなってしまうほど・・・
ご主人様といえば勝負下着は先日のお漏らしのせいで洗濯中。ストックがないのか
お城支給の子供パンツである。しかも真っ白の綿のスリップは半分脱ぎかけでお腹の辺りに
腹巻のように絡まってる・・・。よって説明以下略・・・
微妙な間に耐え切れなくなってぼくは言う。
「ユ、ユナ様・・・えと、その・・・素敵なブラジャーですね・・・はは・・・」
不意にガバッと顔をあげてぼくを見るユナ様。
「べ、別にたいしたことないですの!! チューブトップブラって言うですの、ちなみにパンツと
お揃いですのっ!! このごろおっぱいに谷間が出来たからしかたなく着けてるだけですの――っ!!」
と嬉しそうにめんどくさそうな表情で解説するユナ様。谷間はちょっとウソ気味のような
気がするが、ぼくはユメを壊すような事は言いません。そのあと錫色のツインテールを
かきあげつつ、二人の姉の胸元を見て『フフン』と微笑む・・・
「くっ、お腹から、背中から必死にかき寄せてやっとブラをつけてるクセに・・・」
「ケッ・・・頭を使わないから胸に栄養が行っただけにゃ・・・」
毒づく二人の姉。気まずい空気が流れるので慌ててぼくはリナ様に言う。
「リナ様も素敵ですよっ!それに10年後にはもう、すっごく大美人になってこの世界に
大いに轟くほどなんですよ!! 」
「ほ、本当かっ!! 」
縋りつかんばかりにぼくに尋ねるリナ様。
「ほ、本当ですっ・・・」
どちらかといえば同性に大モテというのは伏せておこう・・・
「わたしはどうにゃ?バン、キュ、ボーンって感じになるかにゃ?」
ご主人様も慌てて聞く。一応平らめな胸は今の所コンプレックスらしい・・・大きくなったら
なったでノーブラですごす事の多いご主人様の言葉とは思えない。
「も、もちろんですよ!! ご主人様もリナ様もグラマーに・・・」
「ユ、ユナはどうですの――っ!! 」
「・・・・・・」
「な、な、なんで黙るですの――っ!! 」
「え、あの、その・・・今のユナ様の可愛さに勝るとも劣らずというか・・・」
「うふふ、やっぱりですの――っ!! 」
うん、ウソはついてないよね・・・
そんなあらかさまに安堵した様子をからかうリナ様にユナ様は食ってかかるが
ご主人様が不意に言う言葉にピタリと動きを止める。
「ほら、いいかげん静かにするにゃ。今日はきっと多分クリスマス(25歳)過ぎても男っ気が
ないに違いないリナとユナのためにわたしが、キチョーなヒト召使を貸してやるにゃあ」
下着姿でもつれ合う姿勢のまま動きを止めたリナ様とユナ様。恥かしさを不意に
思い出したのか、肩まで真っ赤にして俯く。ご主人様とぼくをかわりばんこにチラチラと覗き込む。
ぼくは慌てて言う。
「あ、あの・・・こういうのって『遅い』とか『早い』とかないと思うんです・・・ほら、例えば運命的に
出会った二人がいろいろあって結ばれたり、もっと霧の湖畔とか夕焼けの海辺とか
、ロマンチックかつ清らかな・・・」
自分の世界に入って熱弁を振るう召使に構わずにマナは妹達に言う。
「ほ〜ら、まず『オトコ』を見せてやるにゃあ・・・ほらほら、じっとするにゃっ」
倒れ込んだぼくのパンツをパジャマごと引張るご主人様。慌てて手でガードするぼく。
ぐい〜んと伸びる生地。
「うわっ、だ、だめですよっ!! そんな心の準備がっ・・・」
「ほら、言う事聞いて昼間の誤解を解くにゃ、ホントはいいコトしてたんにゃあって!! 」
「は、話せば解かりますってばぁ!」
「そんなのん気なこと言ってると大臣だって撃たれて死ぬにゃ。ええいっ、うっとうしいにゃ!!
天、地、ネコ・・・重力加速!」
小さく呪文を唱えるとぼくの額をチョンと突付く。すると瞬く間に仰向けにベットに押し付けられるぼく。
「んっ!? お、重いっ・・・」
身体どころか手の平、指の先までがずっしりと重く身動きできなくなる。
「にゃふは〜、図書館の本を見て憶えた重力呪文にゃ、いまお前には3Gの重さが
かかってるにゃ・・・さてと・・・」
そしてぼくのおへそ上に後ろ向きに跨るご主人様。
「ぐえっ・・・!! 」
魔法の影響か、跨ったご主人様の体重もはるかに増加していて、ぼくの抵抗を完全に封じてしまう。
ぼくのお腹の上にどっかりと乗ったご主人様が実に楽しそうに言う。ぼくが見えるのはぴょこぴょこと
跳ねる黒シッポとご主人様のポニーテールだけ。
「ほ〜ら、これがオトコのチンチンにゃ〜」
パンツごとズボンを膝まで下ろされてしまった。
「ああっ・・・だめですよぅ!! み、見ないで下さいっ!! 」
ぼくに許されているのは首を振ることぐらい。ご主人様が幼くてもぼく、いつもと同じ目にあってるような・・・
「な、なんだ・・・こっそり読んだ『れでぃこみ』なるものと違う・・・芋虫のような・・・」
「リナは子供ですの――っ、でもこのぐらいふにゃふにゃならきっと入れてもイタク
ないですの――っ!! 」
勝手な意見を言う二人。ぼくの哀願は完全にスルーして下半身に集中してる・・・
「エッチのやり方、教えてやるにゃ・・・まず、こうやってやさしく触るにゃ・・・」
小さな手でそれを握るご主人様。まだ全然エレクトしていなくて『ふかっ』と質量を
ご主人様の手に預けるだけのぼくのシャフト。ゆっくりとしごく・・・には早いので軽く
揉むように上下に動かしていく・・・
「こうすると気持ちいくって興奮してくるにゃ」
ごきゅりと唾を飲んで身を乗り出す二人の妹。目の縁を染めてご主人様の手元を
食い入るように見てる・・・と思ったら、ふいにぼくに聞いてくる。
「む、む・・・コホン・・・あ、あの・・・あ、姉上に触られて、き、気持ちいいのか?」
「そっ、それは・・・そんなことっ、ありませっ・・・はふっ・・・んっ・・・!」
「わっ、リ、リナっ、今『ピクン』って動いたのですの――っ!! 」
「あっ、あっ・・・ダメですぅ・・・見ないでっ、んっ・・・」
大の字の格好でぼくより小さい女の子に乗っかられてイタズラされてる。とても
恥かしくて情けないのに・・・しかし心とは裏腹に体は徐々に反応し始めて来た。
「にゃふふ、ドクンドクンってしてきたにゃ。ほら、お前たちも触って見るにゃよ」
「「え、えっ!! 」」
身を乗り出していた二人だが同じぐらい後ろにのけぞる。そんな様子に頓着しない
ご主人様は二人の手を取るとぼくのシャフトに押し付ける。
「ほら、良く見てちゃんと観察しておくにゃ。今オトナになっておかにゃいと、またあの
エイディアに『ションベンくさい父なしガキ』だとかバカにされるにゃよ・・・」
「う、うん・・・」
「さ、さわるですの――っ・・・」
その言葉に背中を押されたのか、離れかけた手の平に力がこもる。
始めに触れたのはユナ様。熱い手の感触・・・
「骨はない見たいですの・・・結構ずっしりして、ふにゅふにゅしてて・・・少しキショイですの――っ」
うう・・・少しショックです・・・。
そしてすぐにリナ様の指が先端に触れてくる。
「ふむ、周りはそうでもないが、先っぽにピンクの部分がのぞいていて・・・おおっ!! 動くのだ、
めくれた部分の下にもピンクの部分が続いているぞ・・・」
と、指先でくるくると先端の亀頭と余ってる皮の境界線を撫でるリナ様。指先で皮を
引っかけるように持ち上げては『ピタン』と元に戻すのを繰り返してる。
「ひゃふっ、ダ、ダメですよぅ・・・そんなに先っぽだけ・・・くふぁ・・・」
「にゃっふふ、それは皮をかぶっているんにゃあ。その余ってる分だけチンチンが大っきく
なるんだにゃあ」
夢中な二人に対してご主人様がエバって言う。先日までの様子とは大違いだ。そしてその
言葉にビクリと反応したのはユナ様。
「ど、どういう事ですの――っ!? これ以上大きくなるんですの?」
「そうにゃ、コレを気持ちいく触ってもっと大きくさせるにゃ、コレが上手に出来るのがオトナの
オンニャってヤツにゃ!! 」
エッヘンと薄い胸を張って言うご主人様。昨日まで平気で爪を立ててたクセに・・・
「・・・ほらリナ、指で輪っかをつくってシコシコやってみるにゃ」
えばったまま、卑猥なジェスチャー付きで指示するご主人様。
「う、うむ・・・こ、こうかな・・・ん、と・・・こうか?姉上・・・」
「ぼ、ぼくのなんですからぼくに聞いてくださいよぅ・・・シクシク・・・」
小さく抗議するがまったくをもってスルー・・・
押し黙った姉妹。部屋には上ずった溜息だけが響く・・・
『しゅにしゅに・・・』
「なんか、先っぽが、お顔出しては隠れてたりしておかしいですの――っ!! 」
「で、でも・・・なんかさらにドクドク、ビクビクしてきたような・・・始めよりすっごく大きく
なってきたし・・・はふぅ・・・」
「ほら、ユナもボーっとしてないで根元の方もシコシコするにゃ!」
「は、はいですの――っ!! 」
と、まだ硬度が十分じゃないけど半端な柔らかさに四苦八苦しながらも小さな手をぶつけ合い
つつシャフトをしごき立てる二人。
必死でガマンしてたけどもうダメそう・・・。だってまだ何も知らないなネコ姫様がぼくのを
シコシコして、小っちゃなさな手は少し汗ばんでいて・・・手が動くたびにお腹の上でプルプルと
ご主人様のお尻が揺れてて・・・ぎこちない手つきだけど、時おり乱れた二人の熱い吐息がぼくの
アソコにかかって・・・。血が下半身に集まって来る感触・・・
「だ、ダメですぅ!あ、あっ・・・大っきくなっちゃうっ!! 」
下を向いていたシャフトは重力に逆らってゆっくりと立ち上がっていく。ぎゅっと
握り締めていた二人のネコ姫様の握力をものともせず弾き返すと余っていたはずの皮が
逆に足りないほどパンパンに膨れ上がり、反り返って存在を誇示する。
目を見開き、フリーズする二人。同時に飛び退き、ベッドから転落しそうになってからようやく
踏みとどまる。
「う、うわわわっ!! い、いきなり手が回らないほどに・・・」
「な、なんですの――っ!! メタフォルモーゼしたですの――ッ!! 」
怯える二人にニヤニヤしながらご主人様が言う。
「どうしたにゃあ、もっと大っきく、カタクにゃるにゃよ〜」
「う、ウソですの――っ!! 」
がっちりとパンティの前を両手でガードして宣言するユナ様。
「あわわ・・・お腹にあんなモノが完全にめり込んだら今度こそ本当に死んでしまうっ・・・」
白い顔でお腹の手術跡を撫でているのはリナ様。
そんな二人を見てご主人様は優越感たっぷりに言う
「仕方にゃいにゃ、続きはわたしがやってやるにゃ・・・」
お祈りするように両手を組み合わせ、スナップを効かせながら本格的に上下にしごいていく。
飛行機の操縦桿を握るみたいにしてるらしい。ときおり組み合わさった手の両の親指の腹がぼくの
シャフトの裏筋を擦るように撫でていく。コットンのパンティが、かがんだせいでキュっと引張られて
くっきりと小さなお尻のかたちを露わにして、ぼくは『ごくん』と唾を飲んでしまう。
「ご、ご主人さまぁ・・・んっ・・・」
二人の妹とは違い、すでに知っているご主人様のタッチはそれなりに巧みで、腰が震え一気に
血が集まって来る。重力魔法のせいか、下半身に血液が集中したのか、少し頭がクラクラする。
ぐんぐんとさらに体積を増していくシャフト・・・
「にゃふ、ほら・・・またカタクなって、反り返って来たの、判るきゃ?」
お腹に張り付きそうなシャフトを両手で押し返すようにしながらしごくご主人様。
「「・・・・・・」」
横顔を真っ赤にして凝視するリナ様とユナ様。もっと見たい、でも恐ろしいといった感じなのだろうか。
「ここの部分が特に感じるトコロにゃ・・・こうやってカリ首の部分を・・・」
組み合わせた両手でシャフトをぎゅっと握りながら、両方の親指はぼくのシャフトの
カリの裏にそっていじめる。
「ご、ご主人様っ!! あっ、ダメ、くっ、そこばっかり触るの反則っ・・・ひゃふっ・・・!! 」
2倍以上の重力に襲われながらも自然に腰が浮きあがってしまう。
「すごい・・・まだ大きくなる・・・血管もゴリゴリ浮き出て、脈打って・・・午前中はパニックになって
よく確認できなかったが・・・す、すごい・・・」
「な、なんか先っぽからおツユが出てきましたの――っ!! ううっ、ニガイのいやですの――っ!! 」
手に集中しながらもご主人様が得意げに言う。
「オトコでも濡れるにゃ、苦いのが嫌ならコドモはアイスキャンディーでも舐めてるにゃ・・・
にゃふ・・・ん・・・」
つたい落ちた先走りのせいで『ニチュ、ニチュ』とご主人様の手からいやらしい音が響きだす。
「にゃふ・・・ざっとこんなもんにゃ・・・」
ご主人様が意気揚揚と二人の妹を見ながらゆっくりとぬとぬとになったシャフトを解放する。
同時に手の平についた先走りをチロリと舐めた。
「あっ・・・」
そのあとに続く『やめないで・・・』という言葉をぼくは必死で口の中でおさめる・・・
普段ならもう何回もイッてるのにまだ一回も放出していないぼく。もう腰を中心に『ドクンドクン』と
血の巡る音が鼓膜の裏に響いてくるほど・・・。せめて自分の手で思いっきりしごきたいけれど、
その手は魔法で増やされた重力のせいで大の字になったまま動けない。
『ああ・・・もうなんだか頭が真っ白になっていくみたい・・・』
頭に行く血まで足りなくなってきたのか、重力の魔法のせいで血の流れが悪くなってきたのか
本当に意識が薄れてきそう・・・。なぜか瞼の裏に荒ぶる波と防波堤が見えるのは気のせいだろうか・・・
449 :
『あしたら』:2005/11/21(月) 02:43:26 ID:InXDs8G1
つづく・・・
久しぶり過ぎてうPするのが不安でしょうがない・・・
遅くなりました。うそつきですね・・・。
次からエロ部分に入ります。
今日はもう寝なくてば・・・
次回はうPは明日!召使いの逆転が始まります。頑張ります。
GJ!!
明日も期待しています。
GJ!!
やっぱ最高だ。
452 :
虎の子:2005/11/21(月) 19:00:54 ID:0TSuxWWY
うう、やっぱり本家は段違いですね。
私もこれぐらい書けるといいのに
召使いの逆襲お待ちしてます。
GJ!そして
>瞼の裏に荒ぶる波と防波堤
其月 待 大 !!!
あしたらさんの投稿を待ち構えているのは俺だけだろうか
そんな自分の背後で起こる召使いの変化も知らずに、得意げな様子でマナは妹達に続ける。
「さて・・・どっちが一番始めにヤルにゃ・・・?」
「「・・・・・・・・・」」
不意の言葉に顔を見合わせる二人。
「あ、あの・・・まずマナ姉がお手本・・・」
「ユ、ユナが先に、リナより先にオトナになりますの――っ!」
気弱なリナより先に決断したのはユナ。後悔の表情を浮べるリナだが後の祭り・・・
そして・・・。恥かしいのか下着姿のまま跨るユナ。ぼくは頭の中までドキンドキンと脈打ちながら
最後の時を待つ・・・。やっとイケる・・・
「よ、よいしょですの――っ」
膝立ち・・・では大きなシャフトがつっかえるので中腰になってパンティのクロッチをずらして
徐々に腰を落としていく・・・。黒の下着の隙間から見えるはずの幼いスリットはご主人様に
遮られて見えない。
「ほら、ここにゃ・・・そのままゆっくりにゃ・・・」
感触でぼくの根元を握ってご主人様が導いてる見たいだけど・・・。
ぼくのシャフトの先端とユナ様の粘膜が触れ合って、そして徐々に、そしてじわじわと重みが
加わり・・・そして・・・。ああ、入れてすぐにイッちゃったらぼくどうしよう、ユナ様がっかりしないかな・・・
「み゙ゃあああああああああっ!!!!!」
響き渡る悲鳴の奔流・・・。
「えっ・・・!? 」
重感じる顎を引き、下方を見ればベッドの隅でうずくまって悶絶しているユナ様の姿が・・・
「や、やっぱり、すごくイタイですの――っ!! そ、想像と全然違うですの――っ!! ぐしゅ・・・
血まで出たですの――・・・」
目に涙を浮べ、うずくまり体をふるわせるユナ。大事な所を押さえていた指先を見て
スンスンと鼻を鳴らしながら言う。
「にゃは〜、ユナにはちょっと早かったかにゃ?これに懲りたらわたしの召使にちょっかい
だしたらダメにゃよ〜」
と、楽しげに言うマナ。こうなる事が判っていたらしい・・・
「さてと・・・次はリナの番にゃあ・・・」
くるり、とリナに流し目を送るマナ。
「や、やっぱり、いい・・・」
青い顔をして一旦脱いだ服を身につけようと慌ててかき集めているリナ。
「リナだけ処女のママでいいのきゃ?」
予想通りのクセに、イヤミたっぷりのマナの言葉にリナは慌てて言う。
「い、いや・・・手術の傷痕が痛むので今日は・・・」
またもやイキそこね、生き物のように・・・いや、生き物だけど、ビクンビクンと脈打つ
シャフトを恐ろしそうに見つめながらわざとらしく下腹部を押さえるリナ・・・でも押さえる
キズの場所が左右逆・・・
しかしそんなリナを背後からがっしりと捕まえるネコ姫様が一人・・・
「リ〜ナ〜!! リナも不幸になるですの―――っ!! 」
ツインテールを振り乱したがに股気味のユナが・・・。小さく頷きながらマナも言う。
「そうにゃ、わたし達はいつも『三人同じで一緒』が生まれてからのルールにゃ」
と、言うが早いが飛び掛りリナの細い足を取るごマナ。上半身はがっちりとユナ様に
羽交い絞めに・・・
「や、やめっ!! い、いやああああ〜っ!! 」
じたばたと宙吊りにされてもがくリナ。今の腕力は3人とも拮抗しているので2対1で
結局強制的に跨らされてしまう。
「いや、いやっ!! 」
「ほらっ!観念するにゃっ・・・ええい、じっとするにゃっ!! 」
羽交い絞めにされたまま、ぶんぶんと顔を振りたくるリナ。マナが片腕で腰を抱え、
片方でシャフトを支え挿入を試みる。リナはそれを阻止しようと、お尻を振って
逃れようとするのだが、そのたびにほとんどツルツルぷにぷにのアソコが召使いの
脈打つシャフトの先端を何度も未熟なスリットで擦り上げていく・・・
『ああっ・・・ぼく、まだイッてないのにい〜っ』
不自由な体のまま、歯ぎしりする召使。
「往生際わるいですの――っ!! 」
「やだやだやだやだ〜っ!! 」
先にカッコ悪い姿を見られたユナ様も必死。そしてリナ様ももっと必死・・・。
『はあっ、はあっ・・・ご主人様のお尻・・・暴れるからあんなに食い込んで・・・形も
クッキリしてて・・・お腹に当ってる所がプニプニしてちょっと湿ってる・・・はあはあ・・・』
面積の多いマナのコドモ下着だが、前かがみになるとキュっと引張られ、微妙な
凹凸にたっぷりとした布がピッタリと食い込んで全ての形が露わになってしまう。
『ごっ、ご主人さまぁ・・・』
その時、召使いの瞳で大いなる波が弾けた。それは『巨人の☆』における瞳に炎や
『ガンダムなんとか』における種割れ現象にも勝るとも劣らない何かだった!!
なんということか!揉みあう三姉妹の下でジリジリ、ギリギリと召使いの手が
シーツを這うように動き出す。
「ぐぬぬぬぬぬ・・・ごっ、ごっ、ごしゅじんさまぁ・・・」
小さく呟きながら顔を紅潮させ召使が手を持ち上げる、そして両方の手のひらが
がっちりとマナの腰を掴んだ。同時に『パリーン』といった感じに魔法の効果が
唐突に切れた。
「ご主人さま―――――っ!ぼくは前からご主人様のことが――っ!! 」
「なっ!? にゃっ、なんにゃっ!! は、離してっ・・・!? ひにゃああああああっ!!
前からってまだ3日ぐらいしかたってにゃいにゃ――っ!!!」
召使はマナの腰を引き寄せクッキリとした秘密の部分に顔を突っ込む。そのまま
飢えた犬のようにガウガウとむしゃぶりつく。
「ま、まさか・・・ま、またコワれたにゃ―――っ!! 」
先日の経験をもとに少しビビリながら叫ぶマナ。しかしその行動は三人のもみ合いに
新たな変化を呼んだ。引きずられたマナがバランスを崩し、目の前のリナに思わず
抱きついたからだ。顔面騎乗位のマナに騎乗位寸で抗うリナ。そしてリナはマナに
ラグビーのタックルみたいに腰の辺りにしがみ付かれ、腕ごとマナに押さえられてしまう。
「にゃっ!! でも今がチャンスにゃ!」
この状況に慄きながらもマナは叫んだ。
「ハイですのっ!! リナ、おーじょーせいやーですの――っ!! 」
羽交い絞めしたリナの両肩を全体重をかけてシーツへと押し付ける。
『ズンッ!! 』
シャフトが一気にめり込む。3分の2程没入した所で余りの強烈な締め付けにシャフトが
食い止められた。初めてなのにあまりの急な挿入に一瞬だけ軽い膣痙攣が起こった感じ。
「くふあああああああああっ!!!!」
ワナワナと召使いの上で体を折り曲げ、息と一緒に悲痛な悲鳴を絞りだすリナ。ユナは
羽交い絞めしているリナの勢い良くのけぞった後頭部を必死でかわす。
「どうですの――っ!! ユナの痛み、わかったですの――っ!! だから、あれぐらい痛がっても
普通ですの――っ!! 恥かしくないですの――っ!! 」
「にゃふは〜、リナもこれに懲りたらわたしの召使にちょっかい出すんじゃにゃい・・・
ふにゃっ!! 匂い嗅いだらだめにゃあ〜!! わたしは離すにゃあっ!! 」
じたばたと暴れるが、それは召使いの顔にやわらかな下腹部を食い込ませるぐらい
にしかならない・・・
得意げに勝手な事を言う二人のイジワルネコ姫たち。しかし当のリナは・・・
「あれ?・・・い、痛・・・痛く・・・ない!? 」
『ぱちくり』と目を瞬かせる。
「「にゃん(なん)だって――(ですの――)っ!! 」」
驚愕するマナとユナ。
「そういえば激しい運動をする女は処女膜の隙間が広がって余り痛くないとか聞いた事が
あるようなにゃいような気がする・・・ひにゃっ!! そ、そこは後ろの・・・にゃああん!? か、噛んだら
ダメにゃっ、このヘンタイ召使っ!! にゃ、あっ・・・」
召使の攻撃に耐えつつ解説するマナであったが当然おさまりがつかないネコ姫もいて・・・
「なんでですの〜っ・・・リナも初めてはイタクなきゃ不公平ですの――っ!! この〜っ!! 」
「ちょっとユナ、やめっ・・・イタッ、痛いっ!! 」
背後から手を回し、リナの平べったい胸の先っぽをぎゅいぎゅいとにじるユナ。ほとんど
八つ当たりである。
「ひうっ!! やめて、やめてっ!! いたいっ!」
半べそで悶えるリナ。細身の肢体がイタズラで火に炙られたようにくねる。しかしそのたびに
身体の中心に深く打ち込まれたシャフトがお腹をえぐり、へなへなと崩れ落ちそうになり、
リナの抵抗をか細い物にしてしまう。
「ひうっ、そんなに乱暴に・・・ユナっ、やめっ・・・痛っ・・・あううぅ・・・」
「そうですの――っ!! これが初めての痛さですの――っ!! ほら、リナもちゃんと動く
ですの――っ!! 」
調子づいたユナはリナのまだ小さな乳首をつねったまま両手で上下に大きく動かす。
「ひいいっ!! あひっ!!!」
胸の千切れそうな痛みに引張られ、身体の方が勝手に浮く。しかしすぐに敏感な乳首は
下方向に引張られ、強制的に腰を降ろさせられるというのを繰り返す。そのたびにまだ小さな
ヒダが巻き込まれ、そして内部のデリケートな柔肉が召使いの凶悪に張り出したカリ首で
根こそぎ掻き出される・・・。ぎこちない騎乗位を何度もやらされてしまうリナ。
「あっ、や、やめっ・・・んんんっ・・・あっあっ、お腹でごりごりしてるよ〜っ!! 」
細いカラダに油汗を浮かし悲鳴を上げるリナ。大きな紅い瞳がウルウルと滲む。
つづく・・・
ちょっと短めですが今宵はこれまでにしとうございます・・・
これから佳境です。リナに巻き込まれていくマナの運命は・・・といったトコロ・・・
召使が特殊能力を発揮していますがバトルSSにはなりませんのであしからず。
皆さんの感想をいつも気合を入れるために読み返していますが、なぜかユナ様にだけ
専用1行AAが存在しているようです。
『ぼく×マナリナ』の後の『ぼく×ユナ様』はそのAAの方に捧げます・・・
Uが終わったら、以前の質問であった新学期の幼年学校のお話も書きたいなあ・・・
それではおそまつさまでした。次回は日曜まで・・・無理かな・・・おやすみなさい。
日曜まで生きる希望が湧いてきた
あしたらさんキテタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!
GJです!続きもお待ちしております!
ロリx3に意識飛びそうになった。マジで。
やっぱり本家は凄いなぁ……。
ゆーなさま!ゆーなさま!(ワンスモア!)
ゆーなさま!ゆーなさま!(レッツシャウト!)
ゆーなさま!!ゆーなさま!!(クラップユアハンズ!)
ゆーなさま!!(ちゃっちゃっ!)ゆーなさま!!(ちゃっちゃっ!)
(シャウトユアハート!!)Aカップーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!
>>462 失礼な!
ユナ様の見事なまな板に対してなんという暴言を!
Aカップなんて中途半端なものはユナ様には必要ありません!
>>463 AAA(アンダーとトップの差5cm)カップブラ?
……あぁ、『晒』かぁ……
狗国見聞録って、もう終わってる?
すごくおもしろかったんだけど。
保管庫を見る限りではまだ続きそう
真のヒロインは『私』ではなくズィーキュンだと思っていました。あと、サブヒロインは頭。
468 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/25(金) 20:53:29 ID:hAsh08B/
age
最近スレ住人がアッパー方面に発狂している件について
炬燵の季節ですから
アッパーな流れに乗じて投下予告をしてみたりしてみなかったりしてみる。
近々運が良ければまだ脱いでない浅黒い肌の人が来ます。
キタコレ!
ワクテカして待ちます
まだ脱いでない浅黒い肌の人って…だれだ?
しらね
まさかシャン・・・うわ南氏;gvhんっさいf;;S;ふぉいおjさ
クロダイのおねいさんの可能性もありか
>>467 もう少しで、終わりそうなんだけど
作者さんは、続き書いてはくれないだろうか
クロダイのおねえさんっぽいな。
あるいはビッグマム。
>477
俺はエロがなくてもいい。面白ければそれでいい。
だからズィーキュンの活躍をみたい。
しかしさらにリナに試練が襲い掛かる。歯止めの切れた召使が華奢な身体にも関わらず
お腹の上に2人を乗せたまま激しくリナを突き上げ始めたからだ。
「ひあっ、ああっ・・・ダメっ、おっ、あっ、あっ、あっ・・・」
まだ、騎乗位のコツさえ掴めていないリナは時おり不意打ちに行き止まりを乱暴に
突かれてしまい、その強烈な圧迫感に声も出ない。ところが暴走した召使はマナにも試練を
与える・・・
『ビリビリビリッ!! 』
マナのパンティが引き裂かれる音。どうやら感触だけでなく直接味わってみようと強硬手段に
でる召使。
「うにゃ――っ!! ダメにゃ、乱暴はダメにゃ――っ!! 」
慌てて身を起し、片方の手を大事な部分、もう一方の手をお尻に持っていくがすでに
召使いの舌はマナの大事な部分に顔を食い込むほどに寄せている。お腹にパンティのゴムと
白い布の残骸をまといつかせながら背筋を反らせて絶叫する。
「ひにゃああああっ!!いやにゃっ!! そこはダメにゃっ、ああっ、ひにゃ、あっ、んきゅ・・・
はあぁぁん・・・早く逃げにゃいと・・・あはぁっ・・・」
ついに舌での直接攻撃に晒され、のがっちりと白い太ももに指の跡がつくほどしっかりと
固定されて顔面騎乗位でありながら、下の召使に思うままに舌で犯されてしまう。
「にゃはっ!! ひくっ、あっ、はあ〜、んっ・・・そんにゃに奥までっ・・・そこは、そこはダメにゃっ!!
で、出ちゃ・・・んんん・・・」
妹たちの前での失禁は絶対に阻止しなくてはと思っているマナ。舌を快楽にからきし弱い
尿道口から遠ざけようと、がっちり押さえつけられている腰をせめて前に突き出すようにするが、
そうすると秘裂の内部、奥深くまで舌が侵入して来て、えぐるように舐め上げたり舌自体が
細かく震えたりする。ロリータな身体には強烈過ぎる愛撫に腰の力が抜けると、舌はまだやっと
顔を出したばかりのクリトリスのほうへと目的を変え、途中の尿道口し舌先がかかってしまい、
我に返って慌ててじりじりと腰を突き出すというのを繰り返すマナ。
二人の姉をお腹に乗せたままそれをものともせず、ワイルドに腰を突き上げ自分の
快楽をむさぼる召使い。ユナは変に熱に浮かされたようになりながら夢中でリナの胸を
つねったりしていたのだが、不意に気付いて声を上げた。
「リナのお大事・・・ヌルヌルになってますの・・・おかしいですの・・・」
リナの腰にしがみつきながらユナが言う。
「は、はっ、初めてのクセに感じてるにゃ、リナのマンコが美味しそうに咥え込んで
ヒクヒク言ってるのが目の前で見えるにゃ・・・痛くても感じるリナはヘンタイさんにゃあ・・・
にゃっ、あっ・・・ん〜っ・・・」
自分も舌の動きに合わせ、ヒンヒンと喘いでいるのを棚に上げ、声を浮ずらせながら
言うマナ。合さった幼い胸を通して二人の動悸が16ビートを刻んでいるのが判る。
「ち、違うっ!! ・・・あ、姉上だって召使いの顎がびちゃびちゃになるほど濡らしてる
ではないかっ・・・そ、それにそ、そんなにクネクネといやらしく腰を擦り付けてるクセにっ・・・
ひあっ!? ・・・あ゙あっ、お腹が、お腹がいっぱいなのっ!」
不意の突き上げに顔を打ち振って悶えるリナ。赤い髪がほっぺに張り付いて幼い
顔立ちながらほのかに妖艶な香りが立ち上る。リナ様はおっぱいの先っぽを苛められ
ながらも、だんだん激しく感じ始めてきてるらしい。時おりほとんど根元まで飲み込んで
ぎくしゃくと円を描くように腰を使うたび、大きく息を吐いて絶叫する。シャフトを包む壁が
徐々に体温を高め、そして潤みをおびてきたのを感じる。
「そ、そんにゃこと・・・にゃい・・・ひあっ、ダメ、ダメっ、吸ったら、そんにゃに吸ったら
蕩けちゃう・・・蕩けちゃうにゃあっ!」
ご主人様はぼくの頬を太ももではさみつけるとクイクイと腰をグラインドさせぼくに
アソコをこすりつける。こんなに幼いのにストリッパー顔負けに腰を使ういけないご主人様・・・。
蜜がピュッピュッと噴出すようにあふれ、粘度もトロトロしてきて徐々に高くなる。
「ひいっ!! だめっ、そこ凄く、凄くっ・・・スゴイのっ!お腹が引きずり出されちゃう・・・
ヘンなのが・・・やっ・・・気持ちいいっ!! 初めてなのに気持ちいいっ!! こんな太いのお腹に
刺さってるのにっ、胸、つねられてるのに、死ぬほど気持ちいいのっ!! ・・・あ、姉上っ!!
んっ、むううっ・・・」
「にゃっ、ふにゅっ!! ・・・んむっ、ちゅっ・・・にゃふぅ、深いところで舌が震えてる、わたしの
プニプニしてるとこ、引張ったらだめにゃっ、ひにゃああああっ・・・」
ついに理性が決壊したのか、それともあられもないよがり声を出すのが二人とも
嫌だったのか、リナ様とご主人様ははすすり泣くように声を絞り出すと身を乗り出すようにして
抱き合い、互いの唇に夢中で吸い付く。くもぐった喘ぎと舌の絡み合う音がぼくをさらに
興奮させ、舌の動きと突き上げの速度はヒートアップしてくる。ご主人様のアソコからは
ぼくが咽るほどほどに溢れてきたし、リナ様の下腹部からも『くちゅ、ぷちゅ』と卑猥な音が
こぼれだす。
「あ゙あ゙あ゙っ・・・ずんって、ずんって!! ひっ!こ、こんなの初めてっ!アソコがヘンっ!!
おかしく、おかしくなるっ!!!やめてっ、おっぱいイタイのにっ、ひあっ、気持ちいいっ、
いいっ、ズンズンいいのっ!! も、もうメチャクチャなのっ・・・あ、姉上――っ!! 」
「ひみゃああっ、お願い、お願いにゃ!! クリの下は舐めたらダメにゃっ、後は好きにしても
いいからっ、ひにゃ、ああっ、んっ、んっ・・・にゃあっ、もう食べて、わたしのココ、
食べてにゃあっ!! 」
小さな身体を持て余すほどの強い快楽に二人の細い腰がぼくの身体の上で小刻みに
跳ねたり、不器用にグラインドさせていく。すすり泣くような喘ぎ声の合間に二人の
化粧気のない唇が合さり、薄い舌が互いの口を行き来し、突き出した舌どうしが絡みあい、
トロリと唾液が銀の糸を引いてぼくのおへその辺りにほとり、としたたり落ちる・・・
「ぼく、イキそうです・・・リナ様も、ご主人様も・・・たくさんイクなってくださいね・・・はんっ、
くっ・・・はあああっ、リナ様のキツイ・・・ご主人様もアソコはこんなに小さいのにもうトロトロに
なってヒクヒクいやらしく開いてますよ・・・」
「そんにゃコト言うにゃぁ、ひあああっ・・・イク・・・イッちゃうぅぅ・・・リナ、リニャも、
ひ、ひっしょぉに、イクにゃ・・・ひ、あ、あああっ、あひっ・・・」
抱きしめていた手を伸ばし騎乗位で激しく揺れるリナ様のクリットを巧みに探り当てると、
少々手荒く愛撫していく。小さなお尻はクンクンと前後に細かく揺れながらぼくの口元に
押し付けてくる・・・。高まる二人の喘ぎの二重奏・・・
「にゃあああっ、イク、イクイクイクイクイクイクイク――ッ!! 」
一番始めにイッたのはご主人様。熱い蜜が噴出す。尿道口を責めなかったため、
お漏らしは何とか耐えたらしい。でも代わりにぼくが溺れそうなほど熱い蜜が
『ぴゅ、ぴゅっ』と吹き出て顎を熱く濡らす。
「ひにゃあああっ、もう、もう、離してにゃ――っ!! ま、また・・・来ちゃうにゃ――っ!!!!!」
腰をはしたなく振りたくりながら、絶頂を向かえるご主人様。ぼくは浮き上がる腰を
がっちりと押さえつけながらご主人様の絶叫が続く間、最後まで舌で愛撫を続ける。
ねちっこい愛撫のせいで小爆発が連続して訪れるご主人様。肺の空気を全て吐き出した
後も喘息のように掠れた声でよがりまくりながら、ガクガクとカラダを痙攣し続け、小さな
スリットから大量の蜜をしたたり落とした。
ぼくもご主人様のツルツルプニプニの下のお口がぼくの唇でわななき、上の口がせつない
喘ぎ声を絞りだすのを聞き取るとほぼ同時に暴発してしまう。
「出るっ・・・うあああああっ、あっ、あっ、たくさん出てるっ・・・リナ様の初めての所にたくさん
出しちゃってます――っ!!!!」
シャフトの脈動と同じタイミングで『グイッ、グイッ』とぼくの腰が勝手に浮き上がる。小さな
ご主人様たちとはいえ二人乗せたまま、まとめてブリッジしてしまうぼく・・・なんかすごいかも・・・。
そしてすぐにリナ様も後を追う。腰が浮いたせいで、さらに挿入が深くなり、シャフトの先端が
まだピッタリと固い子宮口を小突く。その度にリナ様は艶めいた絶叫を振り絞る。よくみれば
シャフトが深く入るとリナ様のお腹がその分、ぽっこりと膨らむような・・・。リナ様は下から
大きなシャフトでメチャクチャに突き上げられ、胸は千切れるほどギュイギュイとつねられ、
そしてディープなキスをされ、同時にクリトリスを揉みしだかれるという3人から同時かつ
強烈に責められながらついに初体験で初絶頂を迎えた。
「あっ、あっ、いいっ、ひいっ!! おっぱい痛いのに、アソコも引っかかれてるのに、気持ちいいっ!!
だめっ、ひあっ!いいっ!いいっ!ひうっ、こんなのっ、イタイのでイクのクセになっちゃうよ〜!!
イヤッ、イタ、ああっ、すごいすごい―――っ!! イク――っ!!!」
前から後ろから苛められ、下から猛烈な突き上げと共に襲い掛かる快楽にわからなくなって
赤い髪を振り乱して絶叫しまくる。
「あ、姉上っ!? お、お腹が赤ちゃんの素でパンパンになってるよぅ・・・ 」
「にゃああああああっ、リナ、リナっ・・・」
リナ様を苛めることも忘れ、互いに抱き合う二人。
ご主人様とリナ様は絶頂を迎え、ほとんど白目を剥きながら横に倒れ込むようにずるずると
シーツに崩れ落ちた。リナ様の秘裂から『ぐぷっ』と言う音と共に白濁が止まることなくトロトロと
お尻と太ももの中間部を横に流れ落ちていく・・・。ご主人様も油を塗り込めたように、たっぷり、
みっちりとした恥丘の柔肉がキラキラと光り、時おり『ヒクヒク』と痙攣し、トロリと内部の蜜を
外に押し出している・・・
「す、すごいですの・・・」
自分も関わっていたとは言え、二人の狂態にドギマギしているユナ。顔が熱くて、そして
下腹部はもっと熱い。下着の色が黒でずっしりと濡れたシミが目立たなくて心底良かったと
ホッとする・・・が、ふいにゆっくりと、ゆっくりと召使が身を起した・・・。なにかイヤな予感がする・・・
「今日はコレでお開き・・・ひっ・・・」
目を見開く。召使いのシャフトはまだヒクンヒクンと大きさもかわらずそそり立っている。
『トロリ』とリナの蜜と召使いのミックスしたいやらしい液体がつたい落ちるのから目が離せない・・・
「こんどはユナ様の番ですよ・・・だいじょうぶ、ちゃんとイカせてあげますからね・・・」
ニッコリとやさしく言う召使。しかし裏腹にそのシャフトは怒張している・・・
『あんなの入ったら死んじゃうですの――っ!! 』
叫びたいのだが口に出せない。冷たくなったクロッチの部分は新たな熱い蜜でどうしようも
ないほど濡れ始めていた。身体は求め、心は逃げたいという葛藤に押しつぶされそうに
なりながらギクシャクとユナは部屋から出ようと苦労して向きを返る・・・
『ガッ!! 』
背後から掴まれる手。初めて嗅ぐオスの匂い。その瞬間にへなへなと腰に力が入らなくなる。
「ひっ!? 」
床に押し倒されるユナ。ユナは意志とは反し、召使を迎え入れようと勝手に開きそうになる足を
心で叱咤しながら、のしかかる召使を手で必死で押し戻しながら叫んだ。
「イヤ――っ、許してですの―――っ!! ユナ、犯されちゃうですの――っ!!
た、助けてですの――っ!!!!」
上ずった声が面白いように掠れた。頼みの二人の姉は目を覚まさない・・・。
支援
485 :
『あしたら』:2005/11/28(月) 01:34:42 ID:bYXCFiX2
・・・つづく
お粗末さまでした・・・
次回は『ぼく×ユナ』です。これがメインなので今回はエロ薄めに仕上げてあります。
この頃『文章が長すぎます』というエラーが出なくなったような気がします。
それではまた…。次回の予定は未定・・・
あしたらさんキテタ━━━━━ヾ(>ワ<)ノ━━━━━!!!!
いつもおつかれさまです。そしてGJ!!
>次回は『ぼく×ユナ』です。これがメインなので今回はエロ薄めに仕上げてあります。
ぅ、うわ。もうメインディッシュ食べた気になってた…… orz
これで薄い方なのか……本編超期待。
初々しさを損なわずにドロドロエロエロ
感動した
誤解を恐れず言えばちんちんおっきした
神め
中の人が変わっている気がしてならない
今年、夏頃に子供が出来たからな
えぇと、アレだ。月並みだがGJだ。
いやすみませんGJでございますでした。
>>485 >この頃『文章が長すぎます』というエラーが出なくなったような気がします。
少し前に、レス当たりの書き込み制限が緩和されてます。
たしか、行数も容量も2倍くらいになったはず。
このスレって獣の男と人間の少女とかの話は、だめなのか?
つ【狗国見聞録】
ディンスレイフが個人的に気に入ったなぁ…
ズィーキュンマダー?マジでズィーキュンに(*´Д`*)モヘモヘ
スレタイ
ただそれだけ。
>>498 最後は、女の子が妊娠して終わるかな?
ずっと更新ないけど、いつまでも待ちつづけるよ。
かなり下世話な疑問で、ちょっとアレな気もするのですが……
狗国見聞録の彼女さんは、あちらの世界に落っこちてから
『月に一度の赤い靴』は、いったいどうなっているのでしょうか?
なんでも、↑の期間の女性の汗の臭いは普段と違うらしく
(現実世界の)ちょっと嗅覚の鋭い人なら、期間中の女性としばらく
密室的空間にいっしょにいるだけで、判ってしまう事が有るらしいんですよ
それと当然、処理するためには『お座布団』とか『栓』が必要になると
思われるのですが、鳥も通わぬド辺境に一人暮らしの軍人さん(雄)が
必要とする日用雑貨にそんなものが混じると、流石にちょっとおかしい
と思われてしまう危険性が有るんじゃないでしょうか?
……もっとも現実世界の雄でも、『大地主』なら『お座布団』必要かも……
>>501 奴のことだ。
コンドームと間違えて買った生理用品があったりするんだろw
>>502 彼は辺境一人暮らしでコンドームを何に・・・・・・
ああでも通販で掃除用具と間違えて座布団買ってそうな気がする。
ジーク、かわいいよ、ジーク
ジークハイル
君の心のなかに
入るなのか
は、いるなのか
勝利万歳……いや、この場合はまんまジーク万歳の方がいいか?
>>510 いや、本来は「祖国万歳」なんだがな。
このスレにはヘルヲタはいないようだな。
ド・・・ドイツ語なんて分からないんだからねっ
東ドイツ国歌が流れるゲームも知らないんだからっ
アリ巣にカエレ
514 :
506:2005/12/08(木) 22:01:27 ID:HfHIiUXZ
すまん、なんか変な流れ作ったorz
許しません
罰としてエクスカリビャーの刑です
さて、今年もあと一ヶ月足らずで終わるのか。
……神職人さんには追いつけず、それどころか後から来たピューマさんやサソリ魚さんにはあっさりと追い越された一年だったな……
年内にはもう一本くらい投下できたらいいなぁ……
……てか俺、一年もあったのに実際に投下したのは何回だよ……orz
お前だけじゃない
(´A`)人(´A`)人(´A`)ナカーマ
だがエクスキャリビャーは痛そうなので勘弁
美川べるのもすこしづつ知られてきているのかな?
え?ミカベルとG=ヒコロウは基本だろ?(真顔で)
かゆ……うみゃ…………
>519
俺は岩佐あきらこと道満清明が追加される
なんかまた変な流れになってまつよ
とりあえず、流れについていけない漏れがいる。
俺もついて行けない。
仕方ないから新作でも書こう。
行く川の流れは絶えずしてたまに濁流になったりもするが
しばらくすればまた元の穏やかな流れにもどるさw
さすがネコミミスレだ。
変な流れでもなんともないぜ。
今年中に投下を予告したのに
まだ半分もできてないが
なんともないぜ。
http://h.pic.to/6c6jl ソウルキャリバーVでジークたんとリュナ卿作ってみた。こんな感じかなぁ、とか思いつつ。
耳が男キャラに用意されてなかったのと、犬っぽい顔がなかったのが悲しいところだけど。
リュナ卿は鹿耳も鹿角もなかったんで帽子でごまかしたりしてますが。
いちおう、ジークたんは有能な軍人っぽさを出したかったのと、リュナ卿は毛皮感とアクティブな感じを出してみたつもりです。
ただ、実際に動かすと……まあ理想と現実の壁とかいろいろ。つかジークたんがおにゃのこパーツで作ったから……orz
>>528 リュナ卿いいな。言われてみると毛皮感がマッチしてる気がする。
>528
>ジークたんがおにゃのこパーツ
大丈夫。TSスキーなので妄想補完できた。だから少なくとも俺は大丈夫。
>>529 どもです。
実はリナ様も作りたかったんですが、リナ様には欠かせないカチューシャとリボンがキャリバーVにはないorz
サーラ様は……その、キャリバーやってる人ならわかると思うんですが、もろ蛇の頭なパーツが女性キャラ向けにあるんです。ただ、それ使うと作者さんから怒られそうなので……w
>>530 あ、よかった。ありがとうございます。
シャギーレイヤー使ったり、なるべくおにゃのこっぽくならないパーツを使ってはみたんですけど、やっぱりそう言ってもらえるまでは不安でしたから。
533 :
蛇担当:2005/12/17(土) 20:14:00 ID:UOaAGv3O
>>528 おお、こんな手段が。
リュナ卿がロシア軍人のようだw
オリジナル系のスレは、視覚的なものにはどうしても不足しますからな。
こーゆー試みは面白いですね。
>>531 怒ったりしないです。むしろ是非。あえて是非。
プリーズ。プリーズ、ギブミーチョコレートミスターっ!
まあ、冗談はともかくちと見てみたいです。
蛇足ですが
ttp://www.moeruavatar.com/ こんなので作ってみても面白いかも。
534 :
ピューマ担当:2005/12/17(土) 21:35:46 ID:HOXn1w8x
面白そうなのでWikiの方にgif画像up
続きとか新作とか展開に詰まると、すぐ遊んでしまいます。
どう見てもサボリです。本当にありがとうございました。
>>533 あ、あの、その……マジで洒落にならないパーツなんで怒らないでくださいね。
とりあえずプロトタイプのサーラ様とサトル君です。砂漠の女王と言われて真っ先に思いついたのがコレ……ここから防具その他をデコレートします。
……てかプロトタイプサーラ様、元ネタがバレバレな気もしますがw
http://h.pic.to/6fdn8
獣っ娘パーツが多いEDITモードがあるゲームって何があるだろう……
>>535 うむ、ヘビだ。まごうことなきヘビだ。(ヒゲを描かれた炎の錬金術師のよーに)
まあ実際、想定の範囲内でしたが。
OK、ちょっと元気もらいました。頑張って続き書きます。
>>241 うわ。ピューマさん、気がつけば書き込んでるなぁ……それも細かい。
てか、今となってはカモシカの国が「アステカ・インカ風味」なんて恥ずかしくて言えそうにないなw
とりあえず言い訳混じりに「岩と森の国ものがたり」10の序章です。
カモシカの国がどうしてこうもいい加減な設定なのかという理由込みでw
年末までには本編をまとめて投下してみせます。月一ペースだけはもう崩さないぞ、と。
──────────────────────────────
国が滅ぶ、とはどういうことなのだろう。
ふと、リュナはそんなことを思うことがある。
王家が存在し、民が多種族の奴隷ではなく、それなりの自由と権利を持って生きている。
それを国家の存在する証といえば、確かに滅びてはいない。
だが。
自種族の言葉と文化を失い、他国の貨幣を用い、自国だけでは自給すらままならない状態は、果たして本当に国が存在するといえるのか。
この辺境の国で語られる言葉はコモン(共通語)であり、使われる貨幣はセパタ。
縄縛文字はとうの昔に過去のものとなり、かつては少々血なまぐさい風習とともにあった彼ら独自の信仰は、他国の自然科学の影響を受け、あるいは多少の圧力と意図的曲解も受け、今ではかつての面影はほとんどない無害なものとなっている。
それが非だというつもりはない。それはある種の「近代化」であり、時代の流れの必然でもある。
第一、リュナ自身……他国との積極的な交流を武器としてのし上がってきたところもある。
が、それでも。
ほんの少し、心に引っかかるものもある。
──本当に、この国は滅びてはいないのか。
ならば、自分は何のために動いているのか。
そんな疑問は、どうしても拭い去ることができない。
カモシカの国にある四つの金鉱と三つの銀山。その埋蔵量は大陸随一ともいわれる。
国内すべての食器を黄金製に換えても余るといわれるその金を武器に、かつてこの国は独立を保っていた。
が、今では。
「攻めてくるだけの価値もない国」
──そう言い切ったのは、リュナ本人である。
金銀が枯渇したわけではない。まだまだ、採掘量に底は見えない。
問題は、金銀そのものの価値が暴落したことにある。
錬金術。
エリクサ──賢者の石の完成。
猫の国が成し遂げた奇跡。あるいは悪夢。
今でこそ大量生産されるようになり、犬の国ではそれこそ便利な傷薬みたいな扱いをされているそれは、その当時にあっては紛れもなく奇跡であった。
奇跡の起こした副作用。
卑金属が貴金属になることは、つまりそれまで貴金属とされてきた黄金や銀といったものがその価値を失うことでもある。
金鉱も銀鉱も、その価値を失った。
旧帝国──かつて、この国が「帝国」と自称していた頃の話。
錬金術による金銀の急増、そして飽和は、金本位制を取っていた周辺諸国の経済を大混乱に陥れた。
常識はずれのインフレーションは国民を一気に困窮に陥れ、農地を手放して流民となるものが続出。
生産能力を失った旧帝国は崩壊、混乱は止むところを知らなかった。
それを収束させることになったのが、東南の国からやってきた、セパタという貨幣を中心とした新経済体系。
面白いようにインフレは収束し、セパタを中心とする経済は浸透した。
……当然の話だった、かもしれない。
最初から、それが目的だったとしたら。
経済の混乱、旧帝国の崩壊。
それを利用してのセパタの浸透と、より「近代的」な王政の確立。ついでに、より「近代的」な文化と文明へ傾倒させるちょっとした教育。
そこまでが、すべて仕組まれたものだとしたら。
猫の国の繁栄に、いろいろと都合のよい国家が生まれることになる。
むろん、証拠なんて何もない。
が、よく似た経緯を歴史の一ページとして刻まれた国はいくつかある。偶然にも、ずいぶんよく似た時期に。
仕組まれたものだとして、別にそれが悪いとは言えない。強いとはそういうことで、弱いとはこういうこと、それだけのことに過ぎない。
「……おい、リュナ」
物思いを、突然さえぎられた。
「ん? ……ああ、アルヴェニスか」
物憂げに、声の方向を見てそう言う。
「ずいぶん疲れてるな」
その声に、周囲を見渡す。会議室にはもう誰もいない。会議が終わった後、いつの間にかうたた寝していたようだ。
「……さすがにな。何とか目処はつけたが、まだ流動的だ」
和議に向けた長い話し合い。ようやく一段落はつけた。後は細かいまとめだ。
「とりあえず今夜は休んで、あした仕上げの話をする。もっとも、その一晩でどう変わるかがわからない。だから油断もできない」
「……明日は、俺も手伝う」
「アルが?」
「一人で何もかも背負うなって前から言ってるだろう」
「……ああ、そうだったな」
苦笑する。たしかに、そうだった。
アルヴェニスは、いつも二言目にはそう言う。実際、少々背負いすぎてる気もする。
「……そうだな、手伝ってもらうか。失敗できないからな」
リュナは、そう言って椅子から立ち上がった。
ぐらり。
少し、めまいがする。
「おい、大丈夫かよ」
「……大丈夫、と言っても信じてくれそうにないな。……今日はさっさと寝るよ」
「そうしろ」
肩を借りて歩く。さすがに一人で無理をしすぎたかもしれない。
その頃。
フィリーヌは一人、部屋に残っていた。
アルヴェニスはリュナの帰りが遅いと出かけていった。いま、部屋にいるのは彼女一人。その心の中に、奇妙な思いが交錯する。
──何ていうか、わたしとリュナはね、恋愛とか色恋とか、ましてや結婚とか配合とか関係ないのよ。
自分で口にした言葉。その言葉が、妙に空虚な響きで脳裏を巡る。
確かに、そのはずだった。
パートナー。同僚、あるいは戦友。そういったもの。そしてまた、お互いの鏡写しの姿。だから、恋愛感情なんか入り込む余地がない。
そのはずだった。
「……ふう」
ため息が漏れる。
──本当に、そうなのかな。
わからない。思えば八年も前からの腐れ縁だ。そしてその間、ずっとそう自分に言い聞かせてきた。
──リュナにとっての私って、何なんだろう……
リュナには、リシェルという妻がいる。そして、いうなれば職場のパートナーとして自分がいる。
──パートナー?
心の奥で、何かが引っかかる。
──本当に、自分はパートナーとして……
「リュナに、必要とされてるのかな……」
思いが、ぽつりと言葉に出る。
前から、ずっと前から思っていた疑念。
身分。フィリーヌは所詮、ヒポグリフ種という実験体の合成人間、言ってしまえば人ならざるもの、所詮はただの消耗品のようなもの。だからどうしても、重要な会議なんかには入れてももらえない。
もちろん、リュナはそうは思っていない。が、周囲の偏見はどうしても存在する。「人間」と「人間ならざるもの」という壁はやはりある。
そして、そういうのを目の当たりにするたびにリュナは本気で怒り、時には自分の上司であろうと関係なく怒り、机をたたいて怒鳴ることさえある。一度などは本気で殴り飛ばし、相手を骨折させたことも。
リュナは、どんなときでもフィリーヌを守ろうとしている。
だからこそ、フィリーヌは思う。
本当に自分はリュナのパートナーなのか、と。
リュナは全力でフィリーヌを守っている。しかし、一方でフィリーヌは。
──いったい、リュナにとって何の力となっているのだろう。
そう思うと、不安が押し寄せてくる。
いつまで、こうしていられるのか。
ただ、一方的に守られ、助けられるだけの存在。だけど妻でも恋人でもない、ただの古い知り合い。
そんな都合のいい関係が、本当にいつまでも続けられるのか。
──もっと。
フィリーヌは思う。
──リュナに、必要とされたい。
自分は、リュナがそばにいないと生きていけない。
でも、リュナは違う。フィリーヌがいなくても困らない。
だから、いつでも離れて行ける。離れてゆかないのは、ただリュナが人並みはずれて優しいから。
だけど、何かの間違いでいつ離れても不思議はない。それでも、リュナは何も困らないのだから。
その恐怖。リュナが、この世で一番大切な人がいなくなる恐怖。それが、フィリーヌを苛む。
──だったら。
彼が離れないようにすればいい。リュナが、絶対に離れないようにすればいい。
フィリーヌが、リュナにとってかけがえのない存在に、欠かせない存在に、誰よりも大事な存在になればいい。
リュナが、フィリーヌなしではどうすることもできないように。彼を自分から逃げられないように束縛すればいい。
リュナを離さないためなら、なんでもする。リュナがいなくなるという恐怖から逃れるためなら、何だってできる。
恐怖は、人の最も原初の本能。
それゆえに強い恐怖は、それ以外の理性をすべて吹き飛ばす。
だから、悪意あるものはそれを利用する。
確実に堕ちるという確信とともに。
リュナが知らない場所で、フィリーヌに近づいている悪意が、まさにそうであるように。
……とりあえず、リシェルとリュナが再会する前にとっとと片付けておかないとならない話がひとつふたつありますんで、そっちを先に片付けます。
それにあわせて、レーマ君とアンシェルのパートもあるんで、後三回くらいはぐだぐだした話が続いたりします。
ふと思ったんですけど、ご主人様サイドというか、獣っ子の側が主人公のSSって意外と少ないんですね。
まあ、たしかに普通はヒトを主役にするものですけど。
そう考えると、ご主人様サイドのリュナが一方の主役張ってたりする「岩と森〜」も、埋没はしててもそれなりの存在価値はあるのかなあとか思います。
ちなみに、
>>536のアンシェルさま。
実際に作って動かしてみると割と(´Д`*)ハァハァ だったりします。
……でもじつはミリア様の方が萌えるつーか気に入ってたり……w
GJ!
年末楽しみにしてます!
カモシカさんグッジョー!
ぐだぐだしてようが背景がしっかりしてると読んでて安心する
それと継続は力なりってヤツだろ、自分のペースで書き綴って行ってほしい
さりげなく猛烈に邪悪なことしてるな、猫の国w
しかし、そんな事をしててもおかしくないと思わせるふいんきがあるのが猫の国w
一体何が・・・?
保存庫の世界観見ると結構分かる
551 :
カモシカ担当:2005/12/23(金) 13:39:29 ID:Y61AFpK2
まあ、「血まみれ」の異名をとる方ですからねえw>現女王様
もっとも、錬金術でよその国の経済と国家体制叩き潰した方はもっともっと前の女王様だと思いますが。
逆を言うとフローラ様だったらもっとえげつない事をしてた可能性は高いかと。
しかし、あっさり「錬金術を完成させた」とか書いたけど……問題ないですよね、きっと。
見聞録ではエリクサだって出てきてるんだし。
……もうすぐクリスマスですねぇ。
フロミアのヒト居住区あたりを舞台に、アンシェル様とレーマ君の外伝っぽいクリスマス短編の一本も書こうとしたんですがみごとに挫折しましたw
そもそもこちむいワールドで「クリスマス」という概念を持つ国がいくつあるのかは謎ですが。
メジャーな宗派の大きなお祭りはどこでもあるのでは。
猫の国だとやっぱり正月がそれに当たるのかなあ。
553 :
ピューマ担当:2005/12/23(金) 18:06:11 ID:McY+2PxF
>>カモシカ担当さん
設定に見合うだけの作品になるよう精進します〜
設定練る方が楽しいんですゴメンナサイ
ただ今から次作『夜明けのジャガー』の投下になります。
ちょい時間ないのでえっちぃところは後日……すぐにでも。
100kbほどですが、今作はバトル風味なので苦手なヒトはスルーよろです。
§ § §
大地そのものが鳴動している。
砦の周囲に暮らす動物たちはその異様な物音と地響きに既に逃げ去っている。
およそ三十チルケ(一チルケは手首から肘までの長さ)もある木製の防壁の上で、
大勢の兵士たちが所狭しと騒ぎ立てているからだ。
刃同士がその硬さを競い合い、甲高い金属音を響かせれば、
軍靴が床を蹴りつけて砂埃をもうもうと立てる。
野獣の断末魔のような軋んだ音は、声帯をいっぱいに縮めあげた雄叫び。
そこには一片の臆病も無い。
勇猛な者だけが集い、戦意を高揚させる為だけに特化した音律。
互いに鼓舞し合い、高まる勇気を分かち合い、さらなる力を──憎きを屠る力を請い願う。
そこは、戦場。
けれども、戦場という言葉からくる血生臭い印象と「そこ」は噛みあわない。
兵士の集団は防壁上できれいさっぱりと二色に分かれながらも、
双方は広場によって隔てられ、お互いに攻めかかる気配は感じられないのだ。
寧ろひたすらに騒音をかき鳴らし、相手も放つそれに負けまいとしているようにしか見えない。
その時、硬くなめした皮鎧を黒色に染めた一方の集団が割れる。
巨大な貝笛を口に当てた兵が五名現れた。
── ボ、オオ、ォ、オオォオォォォ ──
楽隊と予想される彼らの勇壮な旋律が響くと、両陣営はぴたりと騒音を止める。
『草刈の輩に勝利の生贄を』
黒色の陣が一糸乱れずに唱えれば、
『皇后陛下の御世に恵光あれ』
打ち負かさんと反対側、紫色に備えた陣も一斉に指導者を讃えた。
そして、
── ボ、オオ、ォ、オオォオォォォ ──
紫色の陣からも、同様な雄々しいまでの旋律が大気を震わせる。
§ § §
ここは女系国家キンサンティンスーユ南部、ジャグゥスーユよりもさらに南。
緩衝林と呼ばれる地帯に点在する砦のうちの一つ、ピコン砦──
要衝とは言えないが最前線に近い部類に入る。
詰めている兵士はおよそ七千、砦の機能に拠って守るというよりも討って出て敵を蹴散らし、
あわよくば追走して敵砦まで寄せ掛ける機動性が求められた。
加えて不利な砦を援護するような遊撃部隊としての役割もある。
自然、軽装の兵を中心に編成され軍用のリャマも多数配備された。
(軍用リャマとは戦場に着く直前で乗り捨てられる事が前提で、特別な帰巣訓練を受けたリャマの事)
>1
このような防備が初めてなされたのは約150年前に遡る、ある事件が発端だった。
ユリィニシヤ暦341年、一部のジャガー族およそ一万人が蜂起。
女性上位の世に不満を持つ彼らは、男性による王政復古を掲げていた。
国外南方の緩衝林に拠点を構え、皇館へ離反宣言を叩きつけたのだ。
鼻息荒く使者を務めたジャガー族の若者を前にした当時の皇后はどうしたかと言うと、
可愛らしく『天の河』を捨蘭、と鳴らしながら、
「まあ、楽しみ」
夕食の献立に好物が出ると聞いた時のように、にこやかに微笑んだという。
全く危機感の感じられない発言であったが、皇后の行動は迅速を極めた。
その日のうちに飛脚を一斉に走らせ、事件の全容を全集落に通達。
集落の長だけでなく、立て札にて民一人ひとりに至るまで知らしめた。
それには、蜂起したジャガーたち(以降賊軍と呼ぶ)が突きつけた、
皇后を非難する文章もそっくり記されていた。
……これには幾らかの理由がある。
キンサンティンスーユを統べる君主として後ろ暗いことは何一つ無いという意思を表し、
建国以来初となる大規模な反乱に対する余裕と自信をも同時に表す。
さらには蜂起した賊軍が女性を拉致していた事を踏まえ、各集落に自衛を促す目的もあった。
他にも予備役からの緊急招集、ジャガー族の長を総司令とする鎮守師団の設立、
国庫を開いて軍資金の確保、食料・武具等補給物資の増産などが勅として発せられた。
当時の皇后が採った対策に対して後の歴史家などは一定の評価を与えている。
──国庫をまず第一に開き、戦時増税の開始時期を可能な限り遅延させたこと。
――そして国の余剰資金が尽きる前に、民の総生産を向上させる政策をいくつか打ち出したこと。
以上の二つにおいてである。
これらの政策の中にピコン砦を含む防砦群の建造もあった。
緩衝林付近に放った斥候の情報で賊の砦がちらほらと見られたことから、
特級建築士と軍関係者の進言に、皇后は一度目を通しただけで建造を許可した。
全九個の防砦と全三個の神殿(物資貯蔵を兼ねる)が一年後に完成する。
戦力の充実、物資の備え、世論の調整──賊軍の鎮圧は時間の問題かと思われた。
しかしここで、ある誤算が生まれる。
鎮守師団(以降官軍と呼ぶ)が想定していた以上に、賊軍の戦力もまた増強し続けたからである。
ジャガー族を中心とする構成は変わらなかったが、
彼らだけでなく、ピューマ族やオセロット族からも身を投じる者が続いた。
威力偵察の成果を計算すると、その兵数はなんと純粋な戦闘員だけで四万に達すると予想された。
官軍総数が六万余であったから一揉みに揉み潰すというわけにはいかない。
さらに賊軍は自らを『草刈衆』と自称。(草は初代皇后の蔑称)
本拠地マヨルナ砦において催された決起集会では、
禁じられて久しいはずの、人間を生贄とした儀式が行われたという。
この事態に、皇族院・長老院・軍務省は紛糾した。
決戦論から慎重論まで…はては賊軍の独立を容認する動きすらあったらしい。
そして議論が三千の騎獣隊【ルカノ】、即ち──
"侍女"三千と同数"騎化兵"による、ピューマ族最強混合部隊の投入へと落ち着こうとしたその時、
「お止めなさい」
物静かで穏やかな皇后の一喝と…一瞬遅れた乳児の泣き声が参内の広間に木霊した。
各議員たちは一斉に息を飲む。
これまで沈黙を保っていた皇后が、
「よしよし……ごめんなさいね」
御簾を隔ててはいるものの、産んだばかりの乳児を伴っていたその大胆不敵さに瞠目したのだ。
乳児が皇后の乳房に吸いつく音を最後に押し黙ると、
キンサンティンスーユ国主はやわらかに、流れるように話し出した。
そして一刻半後、臨時議会はようやく解散した。
家路へと、または残務整理へと向かう各議員の表情は一様に蒼白だった。
──誰もが皇后の言う可能性を否定できなかった。
──四代前の皇后からこの事態を前もって予想し、
代々練成され続けたその対応策以上を考案することができなかった。
完璧なる百年の平和を採るのではなく、極少量の不安を抱えた千年の安穏を採る。
そういった政治の残酷さを思い知らされた。
しかし彼女ら彼らもれっきとした立場ある者。
時には民意を操り、最大多数の最大幸福を言い訳に清濁併せ飲む覚悟を持ち合わせていた。
「そのように肩を落とすことはありません。
妾は代々の皇后の遺産を継いでいるだけですから。
世を乱す者たちを…強さをはき違えた者たちを一つ処に集わせておく利を解するのです」
合同議会の解散を告げる、静かに冷えた音色を思い返したものは皆、畏怖に体毛を逆立てた。
……例えるなら皇后は賊軍を一つの誘蛾灯とみなしたのだった。
仮定の話として、あなたは前方にある暗闇の中に蠢く大量の蛾を知覚した。
そのまま進んだとすると、
目の見えない蛾たちは遠慮なくあなたに頭をぶつけ、あなたは不快な気持ちになることだろう。
しかしそこで誘蛾灯を設置すると、
光に誘われた蛾たちはあなたではなく、高熱の灯に次々とその身を捧げるだろう。
これと同じ事を、皇后は代を重ねながら考え出した。
誘蛾灯を賊軍、蛾を不満分子、「あなた」をキンサンティンスーユという国自体に、
それぞれ例えれば理解してもらえるだろうと思う。
──賊が集う反乱が無ければ、
不満分子たちはキンサンティンスーユのあちこちで細かく、いつまでも害をなすだろう。
あちこちを手で払わなければならないだろう。
そして、
──賊が集う反乱があれば、
その反面キンサンティンスーユはおおよその部分で不快とは無縁でいられるだろう。
自分本位の力を求める厄介者たちは、南の密林に自ずと集まって行ってくれるだろうから。
各個撃破の理念にはもとるが、強力な軍を持つからこそ可能な手段であると言えよう。
このようにして、一種の必要悪として賊たちは求められた。
会議での皇后の言を借りれば、騎獣隊の援軍によって彼らを殲滅してはならなかったのだ。
反乱が鎮圧されたとしても、またいつか集積した悪意が再び反乱として噴出さない根拠はない。
そして……度重なる内乱による民意の乱れは容易く国の寿命を短くする。
皇后はその民の不安を最も恐れ、賊軍と官軍との衝突を長期化させることで、
内乱自体を日常に組み込みたかった。
──民にいつか「いっつも南の方でなんかやっとるがぁ、わしらには関係ねぇことだぁ」
と思わせることが最大の懸念であり、賊よりも遥かに強敵だった。
以上のような経緯により、官軍の増員は見送られた。
その後両軍は幾度と無く激突を繰り返し、防砦の攻防に明け暮れた。
戦端が開かれた当初は、なかなか決着のつけられない官軍へ非難が集中したが、
そのたびに皇后は四代前からの遺産を次々と繰り出していく。
才媛五人分の頭脳が代を超えて政策を掲げ、民の生活を徐々に向上させることで不満を慰めた。
…そしておよそ150年後の現在。
皇后は数度代を重ね、民も世代を同様に重ねた。
この反乱を勃発当時から知る者は既に老い、
今や、国土南部に賊軍がいることは不思議な事でも──恐ろしい事でもなかった。
賊軍は官軍が「受け止めて」くれるおかげで、民は平和に暮らせることに満足している。
皇后陛下に仇なす敵を「攻めきれない」と不満をあげていた150年前と比較すると、
民は政治の導くままに懐柔されたと言えるだろう。
ここで、もう少し密度のある戦況の説明へと移ろう。
官軍総数六万五千余。国力の増加に比例して僅かに兵数は増えている。
占有している防砦は賊軍から奪取した二つを加えた、十一防砦、三神殿。
一方の『草刈衆』三万余。
最近ではさらに、賊軍の後方で何者かがいる可能性が高まっているため、正確な兵数ではないと思われる。
事実としてありえないはずの増援が認められたからだ。
さらに占有砦は六砦、一大砦しかなく、両軍を比較すれば官軍の優勢と答える人間が多いだろう。
しかし、ここ五年ばかり賊軍も別の力をつけてきた。
砦に加えて十五の陣営を設置し始めたことだ。
三万余を十隊に分け、合流・分隊を織り交ぜる。
そして各陣を高速且つ確率論的に移動することによって官軍へ的を絞らせない作戦に出てきた。
陣を攻めても無人である事が多い。
そこには占有価値の無いただの柵で囲われた平地があるのみ。
さらには手薄になった防砦を急襲され、甚大な被害を受けたことも少なくない。
政治の思惑はともかく攻めるに攻めきれず、膠着状態に近かった。
当然軍務省は表立っては官軍の増員を叫び続けている。
しかし、現皇后である十代目皇后はにべもない。
「現状の保持を最優先せよ」
不作ではないが平均をやや下回る近年の生産業は国庫を余分に潤すほどではない。
公開された残高と予算を突きつけられれば、軍関係者は黙るしかない。
そして頼りの民は「ありがたや」と平和を守る官軍に頭を下げるのだ。
民意即ち国の意志──政治に飼い慣らされた民を焚きつけるには、蛮勇も詭術も持てなかった。
さらに最近の戦況を詳細に見る。
ユリィニシヤ暦501年チュの月2日、東端に連なるヨリコテ砦に賊軍一万が寄せてきた。
その日ヨリコテ砦は人員入れ替えの途中で、ワキパル将軍以下たった二千の守兵がこもるのみ。
官軍の事情を知り尽くしたような動きは司令部を震撼させた。
この時ようやく間諜の存在を疑い始めたのだが、ここでは伏せておく。
即座に飛脚【チャスキ】が疾走し、近隣の防砦に救援要請が発せられた。
しかし、賊は周到だった。
オセロット族の隠密兵を伏せ、チャスキを道中で謀殺──
さらに間の悪いことに、なんとキンサンティンスーユ全域に雨季が到来したのだ。
連日の豪雨に河川が相次いで氾濫。
ヨリコテ砦へと繋がる橋脚はすべて濁流に押し流され、絶望的な陸の孤島と化した。
苦肉の策として、主力を一度賊軍の縄張りへ進め大きく迂回する作戦がとられたが、
……同じくこれも『草刈衆』の手の内に過ぎなかった。
雨の中の強行軍は官軍兵たちの体力を奪い、待ち伏せた賊の奇襲に呆気なく倒れる。
やがて後方の砦に敵兵の目撃情報が入ると精強な官軍もすごすごと後退するしかなかった。
まさにヨリコテ砦守兵二千の命は風前の灯であると、誰の目にも明らかなように思えた。
しかし、ここで事態は僅かに好転の兆しを見た。
全て討たれたと思われていたチャスキが一名、命を賭してピコン砦へ辿り着いていたのだ。
ヨリコテ砦と連絡がつかないことを怪しんでいたピコン守備団は、目の前で事切れた使者の亡骸に燃え上がる。
傷病者を含む守兵千のみを残した六千名をヨリコテ砦岸へ進めた。
溢れ返る河水という危険を顧みないその無謀ぶりは厳格な官軍の好むものではなかったが、
彼らの心意気に官軍本隊は沸き返った。
そしてヨリコテ砦が賊の襲来を受けてから四日後。
飽きることなく振り続ける大粒の雨の中、ウナワルタ将軍以下ピコン守備団はついに、
オグマ千人隊長以下『草刈衆』二五七連隊へと肉薄した。
賊軍と遭遇せり、の報を受けた官軍司令部は再度作戦を立案する。
各砦へ守兵を多く割り振ったその作戦は、主力をさらに絞った二万をして賊領へ押しやった。
これは賊への牽制を主務とし、ピコン守備団が敵残存部隊に挟撃されないようにするためだ。
そして邪魔者は止みもしない雨粒のみ、という東端砦の攻防戦は──
彼らの足元の泥濘のように形勢は二転三転とした。
開戦から二日後、ピコン守備団長ウナワルタ将軍が雨水に足を滑らせ転倒――
頭を強く打って意識不明の重体となる大事件があったかと思えば、
指揮権を受け継いだ『舞姫』のあだ名を持つパシャ斬込大隊長が目覚しい活躍を見せた。
隊を指揮すれば、大掛かりな賊方の攻城兵器を壁にして数の劣勢を物ともしない。
しかも本人が陣頭に立って賊兵を突き伏せる一方で、
苦心して編成した八百名をクク・ロカ侍女に任せ、不安定な泥濘の中で穴を掘らせた。
そしてヨリコテ砦へ一隊と補給物資を運び込ませたりと、芸は細やかにして大胆だった。
一方の賊は設置型の攻城兵器を多数破壊されたことで一旦後退する。
夜明け直後、手持ちの武器で当初の砦攻めを敢行し始めた。
荒天から降り注ぐ大粒の雨の中に、
巨大投石紐【ヤトゥン・オンダ】から撃ちだされた大人の頭ほどの岩塊が混じった。
ヤトゥン・オンダとは、個人で扱える投射武器の一つである。
5チルケほどの丈夫な紐の先に岩塊を結びつけ、反対側の端を両手で持って振り回し、投じる。
ちょうど『あちら』の世界で言うところの「ハンマー投げ」という陸上競技に近い。
ジャガー族の巨躯によって遠心力を加えられた物体は恐ろしい破壊力を生む。
破城槌や破城斧で弱っていたヨリコテ砦の防壁は、次々とめりこむ岩弾を止められるはずもない。
合流を果たした官軍だったが、焦ったピコン・ヨリコテ合同守備団はそれを阻止すべく行動を開始した。
しかし善戦していたパシャ斬込大隊長から、
長期間防御に疲れきったヨリコテ砦の長ワキパルへ指揮権が移ったのが災いしてしまう。
部隊を二手に分け左右同時挟撃を仕掛けたが──これは賊にも予想しえた作戦だった。
賊は二五七連隊を第二戦隊、第五戦隊、第七戦隊へ分隊して布陣していたのだ。
そのため左右から進撃してくる官軍の様子は戦力を半減させた棒攻めにしか見えない。
凄惨すぎる各個撃破のいい的だった。
投石手の一斉水平投射が無力な官軍の側面を次々に粉砕する。
風下に立つしかなかった合同守備団の不運であったとも言えるだろう。
水溜りに新鮮な血液をあらたに加えながら、三百余の死体と多数の血塗れた岩弾を残して後退した。
この時点での両軍の戦力は官軍七千、賊軍九千余。
まだ兵数に余力のある『草刈衆』は即座に勢いにのった。
加えて、物資が尽きかけていたため決戦を急ぎたかったという理由もある。
元々ヨリコテ砦の攻略が二五七連隊の主務で、攻城兵器は豊富であったが武具の備えは少ない。
いくら屈強の戦士たちを言えども素手では戦えないということだ。
各戦隊は合流して、頭から順に二、五、七戦隊が縦隊となって進軍する。
砦の西側にどうにか集結した様子の官軍は盾を構えながらも落ち着きが無い。
賊軍はそれ幸いと車懸の陣形で突っ込んだ。
車懸とは──当時ピューマ国王だったサヤ・クサが野戦で取った陣形の一つ。
由来は知られていないが、いくつかの小隊に分けた部隊を次々と相手前衛にぶつける戦法だ。
つまり最初に敵に当たった小隊が一旦退くと、すぐ次に新手の小隊が攻撃する。
これを繰り返すことによって敵は常に応戦しないといけないが、自軍は休憩を挟む部隊が出来る分有利になる。
しかし、車懸が二周して官軍の盾をこれでもかと削っていたその時だ。
突如砦の防扉が開き、官軍の二部隊が突撃してきた。
官軍は投岩からの突撃に恐れて一つにまとまった風に見せかけ、
主力精鋭を砦内に潜ませて体力を回復させていた。
後退の最中、ワキパル将軍はパシャ斬込大隊長とクク・ロカ侍女が率いる直属部隊に命じたのだった。
パシャ隊とクク・ロカ隊はしゃにむに突っ込む。
ちょうど『草刈衆』第二戦隊が後退する隙間を狙ったその突撃は、
疲労したその隊を後列から文字通り蹴散らした。
実はこの時、クク・ロカの放った奇跡が第二の戦隊長に致命傷を与えていたという。
先頭を賊戦隊が走り、その次を官軍の二隊が追う。
車懸の順序から言えば第五戦隊がその後に続き、小生意気な部隊を追い討つのだが、
囮を引き受けたワキパル将軍以下は雪辱に燃えていた。
ヨリコテ守備団は、物資を運んでくれたクク・ロカ侍女の女神もかくやという激励を思い出し──
ピコン守備団も自分たちの誇る『舞姫』が、
『ハチドリ【クェンチィ】』の如く舞い、冷静に細突剣を振るう姿を思い返し──
古来より、女性の戦う姿というものは戦意を高揚させるものだ。
『草刈衆』連隊長としての指揮も出すべき第五戦隊長オグマだったが、
突出した二部隊を全力で援護する形になった官軍の猛反撃を受けて、それどころではなかった。
自分の戦隊を維持するだけで手一杯だった。
ここに車懸の陣形の弱点がある。
車懸を用いられる軍隊には二つ条件がある。
……軍全体の指揮に乱れなく統率が取れていること。
……軍全体の力量がはるかに相手軍を凌駕していること。
よって、第五戦隊長と『草刈衆』連隊長を兼ねているオグマが全体の指揮を取れなくなり、
防戦一方だった官軍が一斉に奮起して戦力を一時的に増した現在――
攻撃一辺倒の陣形が役に立たなくなっていた。
加えて、第七戦隊長はいささか混戦向きの人物でなかった。
攻城戦を得意としていたが、それ以外は並以下。
あろうことか、第七戦隊を二手に分け第二と第五の戦隊に振り分けたのだ。
オグマ連隊長はいらいらと各方面からの使者の応対に追われていたが、
そこに第七から派遣されてきた臨時部隊長の顔を見た時、彼に殺意が沸いた。
「貴様今から第七に戻ってヤツの首を刎ねろっ!
第七総がかりで官軍の背面を突くぐらいやってみせろっ!」
戦線維持に追われ、指示を出し切れなかったことを物語っていよう。
そしてヨリコテ砦攻防戦は最終局面を迎えようとしていた。
増援がないだけに勝負はつきにくく、両軍は指揮系統が残っているのが不思議なくらい著しく損耗している。
賊軍は……その数八千五百。通じて、約二千が無力化。
隊長の不在のままずるずると敗走を続けていた第二戦隊が、第七戦隊の半分と指揮権を得てどうにか復活する。
官軍の攻勢をひたすらに耐えた第五戦隊が、ようやく復帰した全兵力で敵を振り切って後退する。
さらに、損傷が激しい兵士たちの装備はさらなる戦いには耐えられそうもない。
官軍は……その数六千七百。通じて、約千三百が無力化。
ワキパル将軍は見事汚名を雪ぎ、昏倒していたウナワルタ将軍も意識を取り戻す。
また攻防戦全般にわたって活躍を続けた二人の女性の存在が、いやが上にも戦意を鼓舞する。
ただ、強行軍からの連戦はかなりの体力を必要として、幾ばくかの休息が必要でもあった。
さらにピコン砦から持ち出してきた糧食が乱戦の最中水に浸かってしまい、
体力の回復にも時間がかかりそうだ。
総合して両軍は理由を違えながらも動くに動けなく、援軍も望めない。
ここにきて、千日手の状態を呈してきた──
──さてここで、非常に興味深いキンサンティンスーユ地方の風習がある。
"決闘【プカラウクァ】"と呼ばれる勝敗決定法だ。
キンサンティンスーユ建国以前三種族は各スーユで王国を築き、
国境付近では集落に毛が生えた程度ではあったが、防砦の奪い合いを続けていた。
そして時には局地的な長期「睨み合い」が発生することも珍しくなかった。
ほとんどの件においてどちらかの援軍によって勝敗は決するが、
極めて低確率で単なる消耗戦になることがあった。
……それはどのスーユにとっても好ましくない状況。
表立って公開されることはなかったが、豊かではなかった各スーユは徒に物資を消費することを嫌い、
画期的な勝敗決定法"決闘"を馴れ合いの如く考え出した。
攻撃側、防衛側ともに代表戦士一名を選び、両軍の見守る中別の砦にて代表同士を戦わせる。
そして勝利した戦士側の軍がその砦の所有権を獲得するのだ。
選出された戦士の責任は重大だが、敗れた場合は己の命をもって償われる。
一方の勝利者は名誉という確かな褒賞を受け取り、上級将校へ抜擢される場合もあった。
"決闘"制度は全兵士にとって一気に躍進する数少ない機会であり、
兵役につく者なら決闘によって勝利を収め、出世する夢を一度は見るだろう。
現在では三つのスーユが統合し、国力も増強…長期戦は可能になったが、
何分風習という力は潜在的に意識化に埋め込まれているものだ。
男性の英雄願望とも相まって未だに決闘制度は形を残している。
──そう、ユリィニシヤ暦501年チュの月15日、雨天の隙間のその日。
最も近場のピコン砦において、官軍・賊軍の同意をもち、"決闘"へと状態を移行させた。
§ § §
── ボ、オオ、ォ、オオォオォォォ ──
猛々しい貝笛の音が切れ、再び騒ぎ出した声援──
「貴様が出てくるとはな」
8チルケほどの、二足の獣型をした偉丈夫が吼えた。
その高身長と玉蜀黍色の体毛を彩る美しい黒模様から、彼がジャガー族であることが分かる。
「私が隊の中で一番強い」
ちら、と今にも泣き出しそうな曇天を見上げながら、獣の耳と尾を持つ大柄な女性が無愛想に応えた。
山吹色をした髪は肩のあたりで外側に巻き、その毛髪は所々で薄く煤けた炭の色をしていた。
遠くから見れば黄色と黒色の二色が交互に混じったように見えるだろう。
彼女もまた、対戦相手と同じくジャガー族だった。
男は面白くなさそうに鼻を鳴らし、
「女ごときに……だらしない」
その鋭い眼光は彼女の後方で、得物を打ち鳴らす紫備えの官軍へと向けられていた。
「だが、ハチドリ【クェンチィ】は三刀流ではなかったか」
再度目の前の女性へ視線を戻す。
そして、ぎゅ、と黒色の皮鎧が擦れ、
「ジャガー族が伝統…戦爪は左右二つのみ。貴様が使いこなせるか」
右の手首から、手甲と一体になった黒光る三本の爪が決闘相手へと向けられた。
戦爪【フィニャシッル】──ジャガー族が太陽神ウィラコチャから授けられたと言われる神聖武器。
肘から手首までの手甲と一体になっていることが多く、
手首から先に二本から五本の刃が、刃渡り〜1チルケ半で生えている。(1チルケは手首から肘までの長さ)
この得物を両手に戦うことはジャガー族にとっては神聖な戦いであることを表す。
余談だがピューマ族は【フィニャチュナム】特殊な形の穂先を持つ短槍、
オセロット族は【フィニャフュル】扇のような展開式の短刀が種族別神聖武器として知られる。
「侮らないで」
一方の女性兵士は言葉短く吐き捨てた。
「クェンチィは翼と嘴だけではない」
相手と同じように、右手の銀色をした刀身を持つ戦爪をゆっくりと持ち上げる。
その表情には…何も無い。
冷酷とも冷血とも見る者もいるだろう。
もっとも、自分の命を絶つかもしれない相手に慈しむような顔をされても困るが。
「時にはその鋭い爪で捕まえる」
彼女の戦爪は男の黒光りするそれとは違う。
言うならば速さを活かした連撃を考慮に入れた造りだ。
長さは足りない射程を補うべく1チルケ半限界、刃は刀身を支える根元を除いて薄い。
その代わり爪身は五本が連なり、欠けてしまっても補えるようにしてある。
黒色の鎧を着込んだ『草刈衆』代表が、じりじりと黒爪を近づける。
「降るなら今のうちだ、パシャ」
ぐわ、と黄色い牙を剥き出し、全身の筋肉が急激に盛り上がった。
「命だけは助けてやる……ひび割れた肉の器としてだがな」
今にも弾けそうな気負いが体毛を逆立て、周囲を圧倒する。
パシャと呼ばれた官軍代表も銀爪を伸ばす。
「冗談。それも面白くない」
戦爪を装備する腕は細く、紫色の皮鎧をまとう身体もどちらかといえば華奢に見える。
しかし見劣りする容姿ながら、彼の闘志を見事に受け止め──いや、無関心に跳ね除けている。
「私の裸を前にして勃たなかったのを忘れた? オグマ」
パシャは挑発するように、指をくいくいと曲げた。
「うぬ!」
さあ、とオグマと呼ばれた賊の顔色が変わる。
「言い返せないのが、あなたの限界。そして──」
" ギャリ、リンッ "
甲高く耳障りな、金属が重なる音──
「この醜女がぁっ!」
オグマはパシャの戦爪を跳ね上げ、後方に跳んだ。
「……」
同様に彼女も退がり、無言で武器を構える。
『決闘開始ぃッ【ウィプハル・オクハル】!』
互いが得物を触れ合わせるのが決闘開始の合図らしかった。
ピコン砦の防壁上で二色に分かれた官軍・賊軍ともに、より大きく騒ぎ出す。
「太陽神ウィラコチャよ…」
「おお、我らが主神。この猛きジャガーを…」
ジャガー族の男女が…彼と彼女が唱える神の御名は同一だ。
同じ神を信じながら互いに命を削るそれは、ある種の滑稽じみた趣きがある。
パシャは真っ直ぐに前を見つめ、両手に備えた銀爪を顔の高さまで持ち上げる。
「照覧あれ……」
五本の刃のうち三本ずつを使い、褐色の頬に三本の赤い血線…左右合わせて六本の線を引いた。
弾かれて飛び散った血液は後方に、山吹色をした肩までの髪に赤色を加える。
この儀式めいた行動に名は無い。
しかし女性兵士にとっては重要な儀式と言える。
初めて女性が戦場に出たとき、その頬に雄々しく伸びる髭が無いことを男が散々にからかった。
するとその女兵士は手にした短刀をざくりと頬へ突き刺し、自らの血で髭を赤く描いたのだ。
その剛毅な女性の名も種族も知られていないが、
それ以来、戦う覚悟を示すために女性は頬を傷付けるようになった。
傷口から流れ落ちるそれに構う素振りすら見せず、パシャは背を丸める。
その様は獲物に飛び掛らんとする、肉食獣を彷彿とさせる。
冷静そのものの彼女とは対照的にオグマは見事は逆上していた。
小さめの目はいっぱいに広がり、ぎりぎりと血走っている。
ただ、代表に選ばれる程の戦士だ。
その構えに隙はなく、中段に揺れる黒爪は狙いをすましつつその狙いを悟らせない。
(…それなら)
ふわ、とパシャの踵がほんの僅かだけ浮き上がる。
彼女の変化を見抜けた者は非常に少なかった。
両軍の手錬れた戦士だけが、パシャが先に仕掛けることに気付いただろう。
その手練れの中にオグマも含まれていた。
(なめ──)
極限まで頭を低くして突進する紫色の弾丸から、銀光がするすると伸びるのを見て取る。
「──るなっ!」
腰だめた黒爪をその銀の軌跡へ薙ぎ払った。
彼としてはその薄い刃を半分ほどは折りたかったのだろうが、
パシャとしてもむざむざ折らせるつもりはなかった。
巧みに腕の力を抜くと黒爪の剛力を受け流し、銀爪を守る。
(……さすがは)
びぃん、と鳴り痺れる左の戦爪を感じながら、右の五連爪も突き出す。
その狙いは──神聖武器を薙いだばかりの手首。
(ちょろちょろ、とっ!)
オグマは手首を返し、爪身同士を絡み合わせた。
彼の装備した戦爪は猪口才な小娘のそれほど脆くはない。
鍛えに鍛えぬいた三本の鋼は、ジャガー族男性の腕力に充分耐えうるものだ。
即座に肘をねじってか細い武器ごとパシャを引き寄せる。
──しかし、それすら彼女は利用する。
地面を蹴りつけ意表を突く。自由な左爪でオグマの喉元を薙いだ。
「うぅお…おっ!」
オグマは限界まで上体をそらして避けようとするが、完全にはかわせない。
目の前を一陣の突風が通過した後には、ちり、とした熱が喉を走った。
「女ごときの切れ味」
戦場にある時は、曲刀を装着していた山吹色の尾を一振りし、
「なめないで」
パシャもいくらか猛っているのかもしれなかった。
言葉数の少ない彼女にしては珍しい。
そして相手に左肩を見せる半身をとった。
パシャの得意とする構え。
先日のヨリコテ砦攻防戦では賊軍を次々と突き、魂を地下世界へと誘った。
両手に装備した細突剣を鮮やかに繰り出しながらも、
尾に縛りつけた鉤針のような形の曲刀でやや防御の薄い背中側を守る。
「ハチドリ」「三刀流」と呼ばれる所以だ。
しかし……今日の得物は両手の戦爪であったはずだ。
背中側に回り続けられれば、不利になるのは明らかだろう。
(甘いな、小娘)
戦士の直感もそれを感じ取る。
決闘に緊張し平常心を失ったのだろう、と。
無口だった過去の女を思い出し、自分を煽るような発言をしたのも頷けた。
黒爪を中段に戻し、
(勝てる……!)
オグマは勝利の血酒を飲み干すための第一歩を踏み出した。
" シャッ──ギィンッ "
素早い何かが空気を裂き、金属が悲鳴をあげる。
「……くっ!」
自信を漲らせていたはずのオグマは、目をむきながら武器を交差させて防御をとる。
…と、そこに再び危険な風が襲い掛かる。
「っ! 何だ、それはぁっ!」
一撃目とは向きも角度も異なる爪撃に、屈強なはずのジャガー戦士は元の位置に戻らされた。
『草刈衆』の部隊を預かり、これまで何人もの官軍兵の鼻先を蹴飛ばしてきた。
そのような歴戦の彼が見たことのない戦爪の扱い方を…よりによって女が考え出すとは信じられなかった。
加えてどうやらその爪捌きが強いらしいと直感してしまうのが腹立たしい。
「これ? キオに教えてもらった」
パシャの構えは先程とそう変わらない。
しかしその左腕の動きが奇妙だった。
半身のせいで一番前に出ている左腕がだらりと下がり、ゆらゆらと左右に揺れている。
そして肘は直角気味に曲げられ、銀爪はというと相手の方を向くべき切っ先が何故か横を向いている。
──のだが。
「ぁ、あっ!」
オグマはその爪の閃きを捌ききれずに、手甲で受けるしかなかった。
このままではいつかこの硬化皮革の手甲もぼろぼろになり、血が噴出すだろう。
続々と流星が大気を銀色に描いて飛び掛り、受身では不利と見たオグマは前に出る。
(…軌道が…)
彼はひとまず、一度仕掛けたかった。
その頼りない銀爪をへし折ってやればいつでも逆転できるはずだった。
確実にこの爪を血の管に差し込み、息の根を止められる。
しかし、
(…軌道が、読めんっ!…)
すでに六度、パシャの奇妙な左手だけの爪運びを受けているにも関わらず、
全ての軌道がムチのようにしなり、不規則で視覚しきれない。
七度目の銀光が輝き、オグマはたまらず後退した。
──「それはフリッカースタイルっていうんだぜ」
「あちらの言葉を話さないで。分からない」
「難しくねーって。拳を点滅させるような戦法ってことだ」
「まあ、いい」
「教えてやったのに、まあいい、はねーだろー!」
(キオ……)
つい三年ほど前に『落ちて』きた雄のヒトのことを、パシャは思う。
「ツキオミ。キオって呼んでくれていーぜ」
命の恩人の元へ、体調が回復したという彼の元へ見舞ったとき、そう自己紹介をしてくれたものだ。
「はっ!」
気合とともに爪身を飛ばす。
まだオグマは防戦のままに対抗手段を出せないでいる。
うまく防いではいるが、手甲がその用をなさなくなった時が勝負だ。
それまで左の銀爪が保ってくれればそれでいい。
パシャは右を温存し、勝利のための切り札とするつもりだった。
──「足も使うんだよ、ご主人サマ」
「足?」
「こーやって…足踏みしながら、距離を保つ」
(よし…やってみる、キオ…)
頭の中でムチを振るうときの感触をなぞり、左腕そのもので体重をのせた一撃を突き出す。
「…はぁ……はぁっ!」
オグマは牙を噛んで耐える。
散発的に打ち払う己の黒爪はパシャの体をとらえることはない。
「この、俺様がっ」
吠えるだけでは勝てなどしない。
それは彼にもわかっている。
しかし、十度目を超えた爪撃のあたりからパシャは軽快に周囲を動き回る。
さらに捉えにくい。
軌跡すら体系化できないのに、攻めの起点すら危うくなっては側面をとられるのも時間の問題だ。
またも封じ込めるかのような銀閃が絡みつき、
「おおおっ」
オグマは出鱈目に迎撃する。
がぎっ、と黒爪が幸運にも払いのけた。
オグマはほっと安堵し――
「──っ!」
(退けて…守れたことが誇れるものか!)
思わず安心してしまった自分への怒りを、そのまま攻撃に転嫁する。
オグマは右爪ですくい上げるように斬りつけた。
その一撃はパシャの見積もりよりも踏み込んだものだった。
余力を残した跳躍で大げさなほど飛び退り、距離を開けようとする。
(させんっ!)
オグマは、今までのように舞われても今度こそ手甲が用無しにならないという楽観をする気にはなれなかった。
湿って固まった地面を足先で噛み、息を吸い込んで突進する。
オグマの視野には急速に大きくなるパシャの姿──
…と、その身体がぐらりと揺れた。
初めて見せた対戦相手の隙にさらに加速をすすめる。
このまま均衡を崩したパシャにぶちかまし、組み伏せてしまえばいい、と。
オグマは首をすくめ、右肩を怒らせて走りこんだ。
彼女も一級の戦士──山吹色の尾で器用に反動をつけて身体を思い切り右側へと放り出す。
「あぁっ、ぐぅ!」
それでも男性ジャガーの巨体は女性の華奢な身体を捕捉するに充分だった。
重い衝撃を受け、パシャは回転するように弾かれてしまった。
オグマは獣のように四つ足になり、速度を殺す。
「っしゃあっ!」
小石が巻き上げられて気味の悪い音をたてる。
それは、ごつい武器爪と相まって先祖返ったジャガーのようだった。
「オ、グマっ……なにを…し、たっ……」
名を呼ばれた彼は背後に弱々しく霞むパシャの声に、余裕を持って立ち上がる。
「貴様の鍛えが足りぬということだろう」
そして振り返ったジャガーの顔は残忍そうな色をはっきりと、含んでいた。
パシャはうつ伏せに倒れこんだまま起き上がることができない。
(身体が……くぅぅ…)
あの程度の体当たりなら、二十三の少女の時から戦場に慣れ親しんだこの傷だらけの身体は何度も受けたはず。
そのはずだった。
しかし、従順に縦横無尽に戦爪を振り抜いていた腕はひくひくと痙攣するのみ。
さらに左腕だけではない。
右手も両足も、尾も、舌でさえうまく動いてくれない。
「あ…ぁ……あ、うっ!」
悠然と接近したオグマの足音が止まった後、パシャは首の根をぐいとつかまれた。
そのまま幼子のように軽々と持ち上げられる。
「…おぐま…ま、さかっ…」
パシャの目には味方…紫色の官軍が写った。
そして彼女は気づいてしまった。
背後の賊軍からは勝利を確信する喚声が、視界内の官軍からはどうしようもない絶望が鳴り響いていることを。
オグマは内々からこみ上げる歓喜を抑えきれない。
「もともと、つまらぬ保険のつもりだった」
大衆が見守るこの栄光の場で、全ての者が勇者である自分を誉め、讃えている。
「このような奥の手を使わせたこと、ほめてやる」
そして装備した神聖武器を巡らせて、敗者となった生意気な女兵士のそれへ絡ませる。
随分と予定は狂ったが、当初の予定通り──薄い刃をひねり折った。
無力化した雌の銀爪を一本一本断ってやるごとに腰の奥が打ち震え、
射精しそうなほどの快感が彼の全身を駆け回る。
「あの、とき……ど、く…」
「ほう」
身体全体が痺れていようとも思考までもとはいかない。
そこまで強力なものは不自然すぎる症状を現してしまうからだ。
「いかにも。爪合わせの時に仕込ませてもらった」
遅すぎる後悔をしているであろう女に、オグマはせせら笑う。
地下世界への土産とばかりに種を明かした。
「痺れ毒を、な」
彼は卑劣にもパシャの右爪へ毒を付着させていたのだった。
決闘開始の合図時──
離れる間際に投じた粘着性の、指爪ほどの大きさの胞子袋はパシャの銀爪に触れて拡散する。
銀刃に塗布されたそれはまず……対戦相手のオグマではなく、パシャの両頬の血線へと潜り込んだのだ。
少量であったため即効ではなく、そして遠目にはやがて彼女が自然に足を滑らせたように見えるはずだった。
さらに、パシャによって万が一傷つけられることがあっても、
量の減じた痺れ毒はオグマの巨躯を侵すほどの強さをもたない。
「痴れ、も…の…はじを…し、れ」
「知らんな」
コカの亜種の粉末によって身体の自由を奪われた女は、それでも必死にもがく。
それを見たオグマは本拠地の砦で盛大に行われた「祭祀」を思い出した。
あの女性たちは今のパシャよりも遥かに強力なコカで泥酔させられていたが、
贄の縄を打たれ、犯されつくしていた。
「貴様が早々に負けていればこうもならなかっただろうよ」
女性を虐げることに快感を覚えるような環境に親しんだオグマは平然とうそぶく。
一時は官軍に身を置いていたことが、ひどく損をしていた気分にさせてくれる。
『草刈衆』こそ我が故郷──オグマはもう、キンサンティンスーユに愛想を尽かしていた。
「悔しかろう? 本陣に持ち帰り、兵たちの慰み者にするところだが……」
オグマは今までに幾人かの女性捕虜を得たことがある。
そういったとき『草刈衆』では、
虜囚とした隊の人間がその女性を殺さない程度に好きにできる権利が認められていた。
逆に犯し殺した場合には、本人の頭部へ五十発の棍棒打ちの罰が与えられる。
当然のようにそれに耐えられる者などおらず、そうした死体は局部を切り取られて打ち捨てられる。
死して尚、男性としての尊厳を奪われる程に女性の価値は高い。
というのも──
彼女には本拠地において、延々と兵士と交わることを、新たな兵士を産むことを望まれているためだ。
『草刈衆』内で女性は男性の性欲処理道具であり、休みなく子を産むための道具にしか過ぎない。
子を多数産み続けた女性が早く逝くことになったとしてもそれを上回る供給があれば済むこと。
華奢な身体を持ち上げていない方の黒爪を天高く突き上げると、オグマ子飼いの部下たちはさらに汚く罵った。
「孕めん石女に用はない」
そして凶刃をパシャの皮鎧…胸元へと伸ばす。
切っ先が蠢き、軍衣を裂いて潜り込む。
「や……やめろ、やめ…」
呂律の怪しいながら、なすがままの彼女の声にかすかな狼狽が混じった。
「その汚い傷を晒してから死ね、醜女」
バリッという嫌な音をさせて、硬化皮革が接着剤や止め具とともに無理やり引き剥がされた。
痺れたままの身体にそれを止める手立てがあるはずもなく、無残に彼女の上半身が露になった。
「ぁ…ぁ」
首の根元を固定されているのでパシャは嫌でも見てしまった。
自らの裸身に走るそれを見た味方が眉をしかめ、目を逸らす。
絶望と憐憫と嫌悪の表情に、ぐるぐると混じりながら染まっていくのを見てしまった。
パシャの裸身は褐色の肌にほどよく筋肉という張りを備え、
鎧に蒸れて汗ばんだせいでかえって滑らかさを際立たせている。
そして女性だけの双丘は豊かに実り、押さえつけていた胸当てを外されて恥ずかしげにふるふると息づく。
──しかし、美しく肉感的な女性らしさよりも何より、
左の乳房から右の腰骨にまで太く引かれた火傷と思われる引き攣れた傷痕がすべてを圧倒していた。
「はーっ、はっはっ!」
オグマの得意げな嘲笑にパシャは可能な限り顔を背けた。
どこを向いても彼女を暗鬱にさせる風景しかなかったが。
「貴様らが愚かにも憧れた舞姫は、このような醜い女ぞっ!」
濡れた雑巾を叩きつけたような音をさせて、まとわりついたままの革片と軍衣を振り払ったようだった。
その躊躇いのない刃は易々と皮膚を裂き、脂肪を貫き、心の臓へと突き立てられるだろう。
ただ──
(キオ…)
彼女は視線を人垣に走らせる。
二度目の死期から救い出してくれた、従者として尽くしてくれた、この醜い傷痕を優しく愛撫してくれた──
(キオ…キオ…)
大切なヒトの姿を一目見てから、瞳の奥に焼き付けてから逝きたい──
「待てよ、おっさん」
その声は彼女にとって聞き慣れた響き。
しかしこの場にあるはずのない幻聴、なはずだった。
「キ、オ」
そう思いつつも眼球を限界まで声のした方向へ向ける。
そこには彼女の、頼れる従者の姿があった。
官軍兵に支給される紫色の皮鎧を身につけ、無造作に広場を歩いて来る。
「きた、ら、いけない……!」
パシャは肺の中身を絞れるだけ絞って大声を出そうとするが…当然のように叶わない。
彼の身長は6チルケ半に及ばないほどだが、
薬草で金色に染めた頭髪はちりちりと焦げたように捻れ、ヒトの足りない身長を補うように方々へ伸びていた。
観衆のうち幾人かは彼の頭を奇妙な海栗か、珍妙な枯れ草溜りと思うだろう。
獅子の鬣と呼ぶには、ヒトである彼には不似合いだ。
肌はオセロット族の女性と見間違えるほどの白さ。
ただ、今や頬に血を昇らせ、化粧を施したようだ。
「神聖な決闘場へ踏み込むな、下郎!」
パシャの耳元でオグマが怒鳴りたて、つられて賊軍も怒号を次々に上げる。
「退がれ!」
「ヒトごときが…主人は誰だ!」
「オグマ様、そいつも血祭りに!」
防壁を乗り越えようとする者もちらほらと見える。
その自分と同じくらいの体躯にどれ程の勇気が詰まっているのか、パシャは痛々しいほどに……哀しい。
「く、る、な…キオ…」
卑劣な手段を使われはしたが、決闘に負けた主人に従者の彼を巻き込みたくはない。
殺されるのは自分一人でいいはず──
(──なのに、なのに)
「くるなぁ…」
頼れる存在をついに見つけてしまったパシャの心は、どうしようもなく彼が来てくれたことを喜んでいる。
「毒使うような下郎に言われたくねーなっ! あぁ!?」
ヒトとしてはどうだか分からないが、
オグマと比較すればひ弱なほど細い身体全体で張り上げた叫びは、喧騒を一瞬で吹き飛ばした。
「……な、何っ!」
ざわざわと敵味方問わず、防壁に小波がたち始める。
身を乗り出していた賊軍もその動きをぴたりと止めてしまった。
金髪のヒトも、パシャをぶら下げるオグマまで二十チルケほどの距離で立ち止まった。
それほどまでに毒物を使うことは決闘において禁忌だ。
階級を剥奪されるだけでなく軍という集団から永久追放されてもおかしくはない。
「言いがかりはやめろっ!」
オグマという人物を一部なりとも知るパシャには、彼が動揺しているのが分かる。
強いのはその武芸だけで、根拠なく肥大させた自尊心の他は子供並みだ。
…ただ、その過信は昔のパシャも含めて考えの足りない者には頼もしく見えるものらしい。
「そうだっ! 隊長を侮辱するな!」
「殺せぇっ」
現に賊兵たちは盛んにオグマを援護している。
「っるせえ!」
またもや狂騒はヒトの一声で頭を打たれた。
彼は堂々と衆目にその身体をさらしている。
声量ではなく声質、音波のもつ迫力だ。
「俺は一つ特技がある」
まるで、ヒトの身分でキンサンティンスーユの兵に立ち向かうという彼の本質そのものだ。
「遠くにいてもそいつが何を言ってるか分かっちまう」
大げさに体を動かし、敵味方区別なく惹きつけ──
「その口の動きでな」
「嘘じゃねーよ!」
彼は周囲をぐるりと見回しながら、ざわつく観衆を丸め込むように続ける。
「俺はこいつら二人の会話全部分かったぜ。例えば……そうだなー」
一拍開けてからほくそ笑み、口の端を吊り上げた。
「おっさんが昔パシャを抱けずに、肉棒おっ勃たたずにひいひい逃げ帰ったこととかなっ!?」
二つの陣営の所々から、誰かがたまらずに吹き出した笑いが聞こえた。
敵方である『草刈衆』を含めて、金髪の捻れた針頭を止めようとは思わなくなっていた。
決闘に乱入してきたのがキンサンティンスーユを支える三種族のいずれかであるならともかく、
力の弱いヒトであることが、彼にどこか道化じみた面白さを付与していたからだ。
劣るヒトが何するものぞ、と。
彼を知らぬ者は皆……決闘を見守る観衆は、自然と一つの道化劇を観る観客となっていた。
ふと見ると彼は大仰に肩を竦めて、
「意気地ねーなぁ、おっさん。こんないい女放って……賊に寝返ったなんざ」
やれやれ、と言うように首を振っていた。
その仕草がいちいち絵になる男だ……道化【カニチュ】としてだが。
「なっさけねー男だ」
そう言い終ると、金髪のヒトはその瞳に精一杯の凄みを利かせてきた。
何枚の舌が生えているのかと思うほど、口が止まらない。
「そいつを、放せよ……俺のご主人サマをよ」
戸惑いかけていたオグマがその言葉に復活する。
「は…ははっ! これはいい!」
始めは乾いた笑いだったが、次第に勢いがついてくる。
「種無しと石女とは、似合いすぎるぞっ!」
ヒトはキンサンティンスーユの民と交わっても、子をなすことがない。
よって雄のヒトをさらに卑下する意味で「種無し」と呼ぶことがある。
「主人も愚かなら、奴隷も愚か。負けたからと言って、毒を使ったなど難癖をつけおって……」
そしてオグマは黒爪を天に突き上げ、それからゆっくりとパシャを主人と呼ぶヒトへ突きつけた。
「この戦爪に一欠けらたりとも毒などないっ。太陽神ウィラコチャの御名において誓う!」
「ああ、そーだろーな」
言い出した本人なはずの彼の口からあっさりと認める発言が飛び出した。
それに周囲が気付くと同時に、彼は言葉を自分で継いだ。
「お互いの戦爪に細工がねーか確認したはず、もちろん所持品もな」
「それならっ──」
「──けどよ! おっさんがその足の裏に隠してる、パシャの戦爪はどーよ」
「…それが、どうしたっ!」
目ざとい者は戦で鍛えられた動体視力でとらえたことだろう。
オグマは重心をわずかに移動させたように見せながら、小さい目を動かして足元を探っていた、と。
「そこから毒が出たら……」
遠目からも聴衆の幾人かが気付いたくらいだ。
それほど距離の開けていないヒトの彼も、どこか満足そうに首を縦に振った。
「……おそらくかなりの少量だろーが、薬師の手にかかれば明らかだろーよ」
さらに彼は続け、息を切らすことなく毅然とした調子を崩さない。
「おっかしーだろ。検査したのに出ねーはずの毒物が出る……おっさんがパシャの爪に仕込んだんだ」
「それは貴様らも同様だ! 俺様を検査したのは貴様らの身内であろう!」
そこで金髪の彼は視線を横に向け、上を仰いだ。
「言ったろ? 俺は口の動きが読める。パシャの口から「どく」って出たときピンときた」
「──おい、チタラ!」
すると計ったように、防壁の手すりへ一人のジャガー戦士が連行されてきた。
その彼は項垂れ、後ろ手に縛されている。
そして縛縄の端を握る官軍兵士たちのうちの一人がチタラと言うのだろう。
舞台のヒトに向けて拳を突き上げ、彼も同様にそれに応える。
「ぜーんぶ吐いてくれたぜ、証拠ありだ。おっさんが趣味悪くパシャをひんむいてる間に、な。
おっさんの検査役は間諜……裏切り者だ」
「おっさんが毒持ってるの、見逃してたんだよなぁっ!」
滝が落ちるようにとはこのような事例を言うのだろうか。
キンサンティンスーユ国土を三つに分断するアマル・マョ川の遥か上流に位置するそれのように、
彼は急転直下の勢いで話の筋を組み立て、そう断定した。
一瞬しん、と静まり返ったのも束の間……どこから始まったのかざわめきは広がりつつある。
「種明かしはそれだけじゃねー!」
しかし、壇上──実際は防壁上から見ると下方だが──のヒトが腕を一振りして叫ぶと、
全員がその奇妙な金髪に目を移し、展開を待ち受ける。
「ついでに俺は見た。俺はおっさんが……その黒光りする武器を布で拭ったのをな。
どうして一度もパシャを傷付けられなかった刀身を、拭き取る必要があるっ! 血なんか付いてねーのにっ!
……じゃ、それはどーしてか。
賢いヤツならもー分かるよな。
パシャの爪に毒を塗ったなら、あれだけ何度も打ち合ったんだ…おっさんの爪にも毒が付着していたはずだ。
だから──
『自分の武器に少しでも毒が付いてるのが我慢ならなかったから、つい拭ってしまった』んだ。
黙ってれば分からねーものの……迂闊な発言と行動で台無しだ」
そして彼は一つ、深呼吸をした。
まるで理解しきれていない観客の呼吸に合わせるかのように。
「ははっ、ご丁寧に太陽神に誓っちまったんだから言い逃れすんなよ?
まー今更だがこっちには証人がいるから、パシャに毒物反応が無いってことはまずねーはずだがな!」
「分かるやつだけ応えてくれればいーぜ!
色々と、仮定潰しの話はすっ飛ばしてるからな――」
── そら、おっさんの負け、だよなぁっ !? ──
確かなどよめきは爆発的に連鎖反応を生じた。
火付け役がいるのかもしれなかったが、
紫色のケモノたちは怒りの鏝を押し当てられて狂ったように雄叫びをあげていた。
一方の黒色の賊軍は今や主役の一人となってしまったヒトの発言の意味を理解できるだけに、
当惑の面持ちで見詰め合う。
「ほら…おっさんはさっさとパシャを放せ」
道化から役者へと羽化を果たした彼が、ゆっくりと近付く。
「うる、うるさいっ! 寄るなっ!」
「……ホント、なっさけねー男だ……」
乱入した人物のせいで大いに格を落としたオグマは勢いに押されて後ずさる。
さらにぶら下げたパシャの首下に黒爪を押し付けて脅しをかける。
「勝者は俺様だ、砦は…草刈の同胞のものだ…」
血走った小さな目は瞬きすらせず、黄色い牙の隙間には唾液の泡が絶えない。
「いーぜ。くれてやるよ、あんなボロ砦」
「……は?」
一兵士に過ぎない彼の言葉は、越権行為という意味そのままだ。
しかし、紫色の聴衆は己の身に湧き上がる血肉の衝動を抑えきれない。
「決闘の勝ちはくれてやるって言ってんだよ、おっさん。
毒物仕込むような卑怯な賊なんざ、追い立てる価値すらねー!
さっさと尻尾丸めて、自分たちで壊した砦に帰れ!」
厳格な規律で縛られてはいるが、ピューマ族もジャガー族も、オセロット族も、元を糺せば獰猛な狩猟民族だ。
その気質は気高く、確実な強者としての裏打ちをされた誇り高き魂【ノホティペ】は赤々と心に実っている。
弱者に過ぎないヒトの彼に、こうも清廉な誇りを見せ付けられては──
「──てめーらも、そー思うだろぉ!?」
奮い立たぬ者など、この舞台には皆無──
「でもよ、そいつ殺したらどーなるか分かってんだろーな。
てめーらはともかくキンサンティンスーユでは女は宝だ……例え、子が産めなくてもな。
……ピコン砦の女神が一柱、舞姫パシャを殺したら寛容な俺らも黙ってられねーよ!」
観客全てが身を乗り出し、空想の舞台に上がり、彼ら一人一人が役者と化していた──
「──だよなっ!?」
興奮と狂熱の坩堝の中心で、
「もう一度言うぞ、おっさん。ご主人サマを放せ」
針頭を風に靡かせた彼が幾分穏やかな声で諭すように促した。
やがて…観念したのかオグマは手をゆっくりと戻し、磔られていたパシャも崩折れた。
「いい判断だ、オグマ連隊長さんよ」
ジャガー戦士は立ち尽くす。
彼の名を初めて呼んだヒトの声音には、かすかに侮蔑の色が含まれていただろうか。
しかしその顔にははっきりとわかるほどの安堵が現れていた。
今までずっとオグマを睨みつけていた視線は、ようやくにして己の主人を捉えらている。
「そうだな。その石女に、我らは価値を与えない……」
オグマが低く呟き──黒色の巨躯はうずくまるように頭を屈めた。
" バ、シュゥッ "
「──ちぃっ!」
無造作に近付きかけていたヒトは、その黒い風圧に飛ばされたように地面へ転がり、オグマの黒爪を避けた。
「……しかし、俺様を侮辱した。貴様は……許さん」
払い終わった刃は既に元の位置に戻って揺れている。
オグマの血走っていた小さな目はさらに血流を増し、紅そのものの瞳と化していた。
両手の戦爪を構え、筋肉を隆々と盛り上げる。
「……ヒトごときに大人げねーとか思わん?」
彼も一挙動で俊敏に起き上がった。
自らの主人と同じように左肩を前にした半身に構える。
両の拳は軽く握られ、得物らしい物は何も持っていない。
さらに両手は顎を守るように引き上げられた。
「なっさけねー……」
そして、トトン、と足を踏む。
機敏に前後左右へ飛び跳ね始めた。
こちらはパシャよりも調子が速い。
「ま、いーや。喧嘩売られたら買うしか、ってな!」
そうして彼は口中に指を入れると、かちりと歯を鳴らした後すぐに引き抜いた。
指先には赤い血が押し出され、女性兵士と同じように両の頬に赤い線を描いた。
歴史上初となる"決闘二回戦"が始まろうとしていた。
『決闘だぁッ【ウィプハル・オクハル】!』
紫色の官軍が熱狂的に叫び始める。
賊軍は戸惑いも甚だしかったが次第に釣られるように、声量を増して連隊長を応援しようと続く。
「ウオオオオッ!」
ケモノの咆哮を上げてオグマが肉迫する。
「…っ!……!」
しかし、有能な戦士としての爪捌きは一向に当たる気配がない。
逆にヒトは着実に危険な刃をかわす。
ぐるぐると跳ね回りながら、時には上体を細かく逸らせて爪閃を見切る。
そればかりか、気迫の篭められた連撃の合間を縫うように左拳を上に突き出し、ジャガーの鼻先を叩く。
「…効かんゾっ!」
「鼻水出しながらっ……吠えんなっ」
しかし有効打とはお世辞にも言えない。
「オォ!」
オグマは左の黒刃を真っ直ぐに最小距離で突き込む。
それでさえ簡単に避けられ、筋肉など無い様なヒトの腕は瞬時に隙間へと割って入る。
(……バカめ)
オグマは内心でほくそ笑む。
拳が当たった瞬間に顔を逸らす。
威力の無い攻撃を深く突き入らせると、それが戻る機を見てありったけの力を篭めた右爪で斬りつけた。
しかし──
それはヒトの背後の大気を思い切り掻き回しただけ。
金髪のヒトはそこからさらに一歩踏み込むことで致命打をかわしていた。
「……らぁ!」
密着した姿勢から、ヒトが吼える。
いつの間にか腰だめていた拳をオグマの脾腹付近に二連打――いや、肝臓付近にも一つ。
「ぐ、ふっ!」
そして巧みに右腕を折り畳む。
潜り込んだ懐から、固めた拳で顎を跳ね上げる。
「…ウォ……ぉ…?」
視界どころか瞼の裏にまで火花をバチバチと飛ばしたオグマは後退する。
――が、その強靭なはずの足がふらつく。内臓が軋む。
「脳ミソ揺さぶられる感覚はどーよ?」
ぼそぼそとこもったような声は余裕すら感じさせる。
引き上げられた拳の裏で、彼はじっとオグマを見据える。
細かく見て取れば、瞳はくるくると動き回り相手の状況を探っている。
その様はまるで、水中に泳ぎまわる魚を断崖上から鋭く狙う──一羽のクルイドリ【ピクェロ】。
官軍の一団はまた別の騒ぎ方で軍靴を踏み鳴らす。
「ピクェロ」という彼のあだ名と「キオ」という彼の名を連呼する。
ピコン砦には二羽の鳥がいる──賊軍には一羽しか知られていなかったが、官軍ではかなりの噂となっていた。
【クェンチィ】パシャは【ピクェロ】キオを従える、と。
その二羽は種族すら異なるが、雌のハチドリが雄のクルイドリを庇い、その逆も然り。
二羽の鳥が翼を広げて飛び回れば倒れ伏す二種類の賊が生み出された。
一つは小さく深い穴を穿たれた身体、もう一つは昏倒して意識を失っている身体。
今……賊軍『草刈衆』は戦場ではなく、防壁上という最高の観客席でキオの妙技を見せ付けられていた。
「まだ、やるか、おっさん」
音節ごとに区切り、小刻みに足を飛ばすキオ。
「……効かん!」
頭を二度だけ打ち振ってオグマも応える。
しかしその声は猛々しさとはほど遠かった。
戦意はどうあれ、躯が訴える悲鳴を無視することができないでいるようだった。
「じゃ、次、効くヤツ、な」
「……!」
キオは平然と奥の手をほのめかし、オグマもヒトを侮るのを止めた。
無言で姿勢を低くし、左爪を前に、右爪を腰だめに構える。
牽制気味の左を囮として右爪を全力で突き抜く、オグマ必殺の構えだ。
「……。………」
金髪の針頭は依然、細かく跳ねながら──ぶつぶつと呟いている。
このヒトは何をするつもりか、とオグマは眉を寄せて不審がった。
「…雨降神ショロトルよ……」
(…しまったっ!)
音声を意味持つ言葉として認識した瞬間、彼は自らの愚かさを悟った。
奥の手の存在を洩らしたヒト奴隷は自分に警戒させ、その稼いだ時間で奇跡を願っていたのだった。
「ああああっ!」
(──間に合えぇっ!)
オグマはその場に小石を巻き上げ、全速力で小癪なヒトへとぶちかます。
その勢いは先程パシャへ仕掛けたときよりも抜群に速い。
「シャアアアアッ!」
もはや悠長に牽制などしている時間はない。
左爪を引き絞り、反動・捻転を加えて右の黒爪を撃ち抜く──その脆弱な身体を粉砕せん、と。
すると驚いたことにキオは半身だった身体を開いた。
オグマの致命打を正面から受けるようにしか見えない。
「死、ネエェェッ」
両者の勢いの差に、ジャガーの強爪がヒトを貫き通すと、一瞬誰もがそう思った。
だが次の瞬間、大勢がはっと息を飲む。
キオの手に短刀が握られているのに気が付いた。
彼が決闘開始から常に、己の拳のみで戦っていたものだから、得物一つ持っていないと皆が勘違いしていた。
そして、黒く唸る刃と短い刀身が衝突したと見た刹那。
信じられない光景がそこにあった。
真っ直ぐに突き出されたはずのオグマの戦爪が、横を向いてキオの前面を素通りしていた。
何が起こったのか分からないといった表情のオグマの顔面を、ヒトの彼が鷲掴みにする。
鍛えこまれた戦士の反射はオグマの黒爪をしてキオの腕に食い込ませるが、
刺された本人は目を閉じたまま精神を集中させる。
「終わりだ……《脱水》【ユゥリ・マン・ウゥマ】」
キオが行使しうる奇跡で最強のそれが、オグマの巨体に宿る水分を根こそぎ蒸発させた。
§ § §
──一面の火の海、炎の大波。
──もうもうと立ち込める白煙と黒煙。
──出口一つ無い、狭苦しい室内。
──そしてそこに蹲る、幼い少女。
色彩だけは鮮やかなのに、火が爆ぜる音も焦げ臭さも感じない。
そして火炎から放射される熱量もまた、無い。
それも当然……ここは眠りについているパシャ自身が見る、夢の中の風景なのだから。
パシャは幼い頃、集落一つを完全に燃やし尽くす大火を体験した。
そこで極めて原初的で、かつ純粋なまでの恐怖というものを感じて以来、
炎に周りを囲まれている少女の夢を見るようになった。
夢の始まりはその風景を遥か上方から眺めている。
五つの感覚は一つを残して閉鎖され、視覚のみで炎と煙と少女を目に収める。
しかし時が経つにつれて俯瞰風景は拡大を続ける。
それぞれの輪郭がはっきりとしてくると、幼い少女はパシャ自身の幼い頃だと悟るのだ。
背を丸めてうずくまり、尻尾の先をがじがじと無心に齧る姿。
表情は無いに等しいが、その瞳だけはらんらんと不気味に輝いている。
それを見て取った刹那。パシャは気付く。
──近寄りすぎた。
──逃げなくてはいけない。
──また、「あれ」を味わうのか。
しかしそれは叶わない。
ずるずると引き寄せられた意識はついに幼い頃のパシャへぴったりと重なる。
閉じられていた残りの五感を一気に解放されてしまう。
感覚によって提起される負の感情は特別言わなくても分かるだろう。
火炎と燻煙の宴を生々しく知覚し、誰へとも知れない嘆願を繰り返す。
助けて、やめて、と。
少女からの絶望の呻きは、
自分自身でさえ忘れていたような──身体の防御機能が封じていたはずの奥底へも容易く侵入する。
そうして出来た経路からは続々と「恐怖」が流れ込む。
純度の高いそれは瞬時に心を膨れ上がらせると、呆気なく破裂した。
破裂したときが、目覚めのとき。
そして彼女は寝汗で冷え切った身体を独りで抱きしめ、毛布を頭から被らない時はなかった。
ただひたすらに怖かった。
今日はまだ良かった、けれども。
いつか知れない日……「恐怖」が破裂しないまま際限なく自分を追い詰める日が来るのではないか、と。
目覚めることが無くなるのではないか、と。
しかも悪夢は気紛れなこと限りなかった。
一週間以上見なかったと思えば、三日連続で苛まれることもある。
パシャにとって眠りにつくことは好ましいことでも安らげることでもない。
なぜ人間は睡眠をとらなければならないのだと、益体もないことを思いもした。
けれども──炎夢はある日を境に様子を違えるようになった。
ふわふわと思考している間に夢は進行していた。
かなり景色がくっきりとしてきている。
(あ……私…)
何度も夢見ているはずなのに、この瞬間になるまでこの少女が自分自身であるとは分からない。
(…早く…)
在りし日の流れならば、待ち望むことなど何一つ無かった。
恐怖しか「そこ」には無かったのだから。
(…早く…早く…)
しかし今はもう違うのだ。
少女はもう怯えなくていい。
もう結末を知っているからこそ、欲する。
しゃがみこむ少女を救う、その銀色の戦士を。
『パシャ』
夢見る本人のものではない誰かの声が聞こえてくるが、少女は顔を伏せたままだ。
パシャは自ら身体を乗り出し、少女の前にふわりと浮かぶ。
(ほら、顔を上げて…)
怖がらせないように両手をそっと伸ばし、小さな頭を正面に向ける。
『パシャ』
一度目よりはっきりとした声に彼が近寄ったことを感じた。
彼女の意識体は浮遊したまま少女の背後へと回ると、少女の視界に彼を捉えさせた。
同時に、パシャも彼を仰ぎ見る。
──非常に奇妙な服を着た男だった。
全身をすっぽりと覆う銀色に輝く鎧のせいで顔の細部まではうかがい知れない。
だが、そこに安堵を覚えるのはパシャの欲目だからだろうか。
彼は灼熱の炎に燃え上がることもなく、炎も煙も弾き返してどっしりと構えていた。
『もう、大丈夫だ』
三度目に発した言葉とともに、彼は片膝をついた。
少女はその銀色の威容を恐れたのか、しゃがんだ姿勢のまま後ずさろうとするが、
(……怖くないから)
パシャは後ろから抱きついて少女を押し留める。
そして優しく彼女の頭をあやしながら抱き上げた。
(キオは…優しい、ぞ?)
銀色の戦士も同じく立ち上がり、パシャに向けて両手を広げた。
(いっしょに…行こう?)
そして浮いていた身体を地に降ろし、少女を胸に抱いたまま彼に自身を預けた。
彼も戸惑うことなく二人を抱き上げる。
その動作は荒っぽさを感じさせながらも、がっしりと支える腕の力は強く、胸の中に抱き込まれてしまう。
連鎖して人を抱えるような三人の姿は、多少奇妙な光景かもしれない。
しかしここはパシャの夢世界……観察者は彼女しかいないのだから誰に憚ることもないだろう。
やがて一体となった三人は歩き出す。
炎も煙も彼女らを避けるように道を開け、彼の歩む度の揺れに心地よさを覚える。
そしてそれは次第に穏やかな安らぎへと輪郭をぼやけさせ、彼女の炎夢はゆっくりと終わりを告げるのだった。
§ § §
パシャはぱちりと目を開けた。
次いで二、三度瞬いて周囲へ意識を巡らせる。
四方はひらひらと薄い布で囲まれ、消毒薬のつんとした臭いが鼻をついた。
戦から帰還するたびにここへ世話になるのは、前衛を任される彼女にとって避けられないことだ。
この刺激臭も慣れたものだった。
「──」
「──」
話し声が耳に届き、記憶にあるその二人へそっと耳をそばだてた。
「たぶん痺れ毒は…コカの亜種の一つだ。後遺症はないと思う。細かい傷の手当はキオに任せるよ」
「おー。慣れたもんだからな。……にしてもあいつには気の毒だったか」
「……そりゃまあ、皆少しはパシャを見る目を変えるとは思うけど、キオの機転があったしな。
かえって、もっと人気出るんじゃん?」
「そりゃ周りの反応だろーが。俺が言ってるのはパシャの気持ちだよ。
本人が隠したいものを抉り出されて、ましてや同情なんかもらったところで虚しいだけだろーよ」
二人の会話が自分のことだと分かり、パシャの傷痕がぴりりと引き攣れる。
「へいへい。おアツイことで」
「てめっ」
「…《不屈》で強化されてない拳が効くかよ。薬はこんなもんだな」
「ルッファもくれ。眠れた方がいーだろ」
「んじゃ、いつものところから一束新しいの、出しといていいから」
「あいよ」
「一応安静にさせといてな……俺イヤだからな、ヘンな臭い染み付いた敷布洗うの」
「チタラ…。俺を何だと思ってるわけ?」
「ご主人様に好かれ過ぎてて、どう見ても困ってるようには見えないヒト」
「《脱水》させるぞ、コラ」
「あー、嘘ウソ。この齢でまだ干からびたくないわ」
「口ン中だけ《脱水》とかもできんだぜ……」
「おー怖。……んじゃちょっとウナワルタ団長んとこ診てくる。まだ頭痛いらしい」
「了解。もう若くねーんだから暴れんなってオヤジに言っとけ」
「そのまま伝えてやるよ。またあとで」
そして仕切りを翻し、釣られて揺れた鈴の音が残る。
足音が一人分遠ざかって行った。
医務室にはパシャともう一人の気配が残される。
「キオ?」
思い切って声をかけてみた。
「お。目さめたかよ」
声の主が近付き、寝台を囲む布の隙間から金色の海栗頭を覗かせた。
七千を数えるピコン砦と言えども──先の戦でいくらか数を減らしてはいるが、
こんな変わった髪型をしているのは一人のヒトしかいない。
「キオ…一体どうなった?」
「……そりゃかなり答えにくいな。たくさんありすぎてよ。…あ、とりあえず起きられるか?」
「ん」
パシャは肘を突いて上体を起こし、キオもどこからか小さな椅子を持ってきて寝台の傍らに腰を下ろす。
手馴れた様子で治療道具を広げると、
乳鉢を左手に持ち、中に入っている粘性のある液体へ粉末を次々と混ぜていく。
パシャも無言でその鮮やかな手つきを見ていた。
「すまない」
やがて、それとは気付かないほど小さく唇を震わせた。
「……なんで謝んだよ」
調合し終わった薬液を湿布に塗っていたキオはぶっきらぼうに口を尖らせる。
「キオが何だか不機嫌そうだから。……不甲斐なくて、すまない」
「当たり前だ」
そしてキオは腰を浮かし、寝台へ身を起こしている彼女へ乗り出した。
「心配ぐらいさせろ。ちっとあっち向け」
言葉遣いは荒っぽいがそれを真正面に受け取るほど、キオに対して無理解ではない。
素直に彼が湿布を当てやすいように三本の赤い線が走る右の頬を向ける。
すぐにひやりとした気持ちよさが覆い、それをさらに被せるようにキオの温かさも触れた。
「傷の軽い重いじゃねーぞ」
少し言葉が足りないとでも思ったのだろうか、キオは続ける。
湿布の上から左手をあてがい、じぃと彼女を見つめる。
「パシャが傷つきゃ、傷つけやがったクソ野郎にいらつきもする。キゲンも悪くなるさ」
そうして再び左用の湿布を作り始めた。
「私は負けた」
「だから?」
パシャは食い下がった。
キオの気持ちは分かるが、しくしくと胸が疼く。
それに彼の腕を何重にも巻く白い包帯が目に入ってもいた。
おぼろげにだが覚えている。オグマの戦爪が食い込んだはずだ。
「だから……情けない戦いをしてすまない。弱い主人で、キオに迷惑をかけて、すまない」
「言いたいことはそれだけか」
作業を止めたキオが睨みつける。
「それは俺に謝ることじゃねーだろ。心ン中にいる自分にそーすりゃいいことだ」
遠慮のない口調はかすかな怒りを滲ませながら、パシャの立ち上がった山吹色の耳を打った。
「俺はこーしてパシャの傍にいる。なのに主人に失望した風に俺のことを言うな」
同時にキオの怒りはパシャの心の内を強かに鐘打つ。
弾かれたように「分かった」と答え、口を閉じて項垂れた。
そして顔を上げたときには、キオは既に湿布をもう一枚作り終わっていた。
「……」
「……」
二人は視線を交わし、お互いに何をするべきかを窺う。
パシャは左の頬を差し出し、キオは先程と同じく湿布を反対側にあてがった。
「毒をなくす薬と、代謝を早くする薬が混ぜてある。それとこれ、よく眠れる薬だから。これ水な」
さらに緑色の小粒と水筒を押し付けた。
「今晩ぐっすり寝て、明日起きれば大丈夫だろ」
にい、と。
そこでキオは柔らかく微笑んだ。
(……そこで笑うのは、ダメだ)
キオにたしなめられて少し怯んだところに、この優しさなのだ。
ひび割れに染み込む清水のように何かが彼女の心に行き渡る。
(他人は私を『ハチドリ』と呼ぶけれど)
強さは多分にして、この優しいヒトに支えられているのだと思う。
キオこそが【クェンチィ】の安心できる唯一の宿り木。
羽を休め、羽毛を繕い、採ってきた蜜で喉を潤す──
「キオ……」
だからこの金髪の従者に、礼を存分にしたいといつも思う。
けれども彼女は、自らの心を上手に表現するには不器用すぎた。
彼の言い分を借りれば「素直すぎて言葉が回らない」なのだそうだ。
……となると、軍人としての行き方しか知らないパシャは、報いる手段を一つしか持てないでいる。
「抱いて…?」
本来ならば「抱いてもいい」という許可が妥当なのだろうが、
素直な唇は、心の内を正しく読み取ってパシャ本来の希望を言葉に出してしまう。
「だめだ。安静にしてろ」
答えは素っ気ない拒絶だった。
だがパシャは、彼が少しだけ躊躇った様子を見せたことに満足する。
「抱いて、欲しい」
聞き分けのないフリをしてみる。
「お前さんはいつも唐突だな」
「そんなことはない」
「あ?」
「私は寝てた時から、キオのことを考えてた」
「そりゃ、パシャの理屈だろー……」
彼の表情はとても複雑だ。
その裏で色々なことを考えているに違いない。
「……良くねーことがあったから、感傷的になってるだけだ」
「そう?」
パシャは可笑しい。
先程キオは自分のことを勝手に決め付けるな、と言ったはずなのに、
その舌の根が乾かないうちに自分でパシャの心を決め付けている。
おそらくそれを指摘したとしても、キオは憮然とした顔で、
「俺のことはいーんだよ」そう言うだろう。
「でもよ」
そう言って、キオは椅子から寝台の上に体を移した。
自然な様子でパシャの肩に手を回すと、ぐいと引き寄せ唇同士を触れ合わせた。
「いい女放っとくほど、俺は贅沢じゃねーよ……」
「…ん」
薬くさいことを除けば、優しくて甘い唇づけ。
パシャは陶然としてそれに酔った。
「事後処理やら何やらで忙しいだろ。夜にまた来るから……それまで大人しく寝て待ってろ」
「……ん、分かった」
キオはパシャに誘眠薬を飲むように言い、
それが終わると抱きかかえた肩を引いて、毛布も次いで引き上げた。
パシャもされるがままに身体を横たえる。
枕に頭を預けた途端、ちらりと安らかな眠気を覚えて浅く息を吐いた。
すると、計ったように向こうで呼び鈴が聞こえる。
「じゃ、行ってくるぜ」
「ありがとう、キオ」
しかし彼はその場を動かない。
仰向けのパシャに顔を近づけながら、じっと瞳を見据える。
「キオ?」
黒く濡れたまっすぐな光に戸惑うと、
「俺もありがとうだ、パシャ」
キオはぐりぐりと黄黒二色の髪をかき回し、
「生きて帰ってくれて、ありがとうだ」
再び唇を重ね合わせた。
§ § §
──一面の火の海、炎の大波。
──もうもうと立ち込める白煙と黒煙。
──出口一つ無い、狭苦しい室内。
パシャの意識の深くに刻まれた火炎は消えることはない。
(珍しいことも、ある……)
しかし、日中に二度も炎夢を見ることは今までになかった。
なぜだろうと思う間もなく、答えが示された。
──そしてそこに、力なく座り込む女性。
今回の夢はやや様子を違えていた。
火の海の中で往生しているのは彼女自身で、その姿も今とそう変わらない。
(これは…私の記憶……思い出……)
一生のうちで二度も大火事に巻き込まれるのは不運としか言いようがないが、
(キオと出会えた、その日)
そのおかげで現在の従者を得ることができたのだ。
パシャに限ってだけは幸運と言えるかもしれない。
三年前のある日の夜、もう少し経てば空が白けるその刻。
パシャが詰めていた砦は一斉に炎に包まれた。
草刈衆から奪ったその砦は卑劣にも、時間をおいて発動する種類の罠が仕掛けられていたらしかった。
密林の国らしく、キンサンティンスーユ付近では火攻めは好まれない。
生い茂る木々は隣人にも等しく、伐採するにもきちんと管理し、神々に祈りを捧げてから切らせて頂くのだ。
そのことを考えれば、木の生命力をひどく劣化させるような火を大規模に用いることは、
非難の対象となるべきだと理解できるだろう。
しかし賊軍は密林の民の基本すら忘れ、罠を残していった。
自分たちの砦を奪った官軍の一網打尽を狙ったのだった。
賊軍の躊躇ない撤退を怪しんでいた近隣の味方部隊がほどよく伏せていたため、
火攻めから連なる夜襲は逃れたが、火災によって命を失った者は思いの外多かった。
パシャも間違いなくその内の一人となっていただろう──彼が『落ちて』来なかったならば。
業火が最も勢いを増していたその時、パシャの意識は朦朧としていた。
煙を大量に吸い込んだからだ。
また、それだけではない。
炎に対する純度の高い恐怖は身体を戒め、すくんだような手足はかくかくと震えて使い物にならない。
部屋の隅に座り込みながら、呆然と、緩慢と死を受け入れなければならない、と。
彼女はそう、覚悟していた。
"ドシャッ"
盛大で騒がしく、重い音が落ちてきた。
上の階から人間が落下してきたらしい。
膝を上手く使って着地した彼は、損害もないようですっくと立ち上がった。
そのいでたちにパシャは驚いた。
彼の身に着けているものは、官軍の誰とも一致しない。
勿論、賊のそれでもない、まったくの見たことのない服だ。
荒天時用の合羽に似た形で銀一色。
火炎が舐める天井を突き抜けてきたというのに全く燃えていなかった。
金属であれば炙られても燃えないだろうが、彼の着る服は柔軟性があり、金属鎧であろうはずがない。
立ち上がった彼はきょろきょろと慌しく頭を動かし、何かを探しているようだ。
そしてパシャの胡乱な視線と彼のそれが絡み合う。
すると一瞬の間を置いて彼は何事か叫びだし、頭を抱えた。
パシャが覚えている分には、その叫びは罵声のようだった。
その様子はまるで迷い苦しんでいるようで、おそらく罵声は自分に対する苛立ち。
彼女は直感した。
彼は一時の迷いを、その一瞬だけ持て余していた。
最後に一つ声を荒げ、パシャに近付く。
邪魔な木材と家具を次々と持ち上げ──それでも燃えない──道を開け、
「もう、大丈夫だ」
面頬に覆われた仮面が初めて言葉を口にした。
パシャが頷くこともできずに見上げていると、その銀色に覆われた両手で彼女を抱きかかえた。
そして豪快に振り向き、炎の中を突っ切って足早に進む。
パシャはただ目を閉じて、彼に任せた。
「もう、大丈夫だ」その言葉に、このような状況だというのにひどく安らいだ。
いや、安らぐような気分と、得体の知れない興奮のような小波が混じったような。
もし身体が自由に動けていたならば、まず間違いなく彼の首を腕を回して抱きついていただろう。
極限状況の錯覚かもしれない。
それでも、初めて見るはずのこの男に不思議と信頼を溢れさせていた。
真っ暗な視界の中で不規則な方向転換が続いた後、パシャは豪快に地面へ投げ出された。
驚いて目を開けると、そこはもう何も燃えていなかった。
夜明けの薄明かりに轟々と砦が燃え上がっているのが向こうに見えるだけだ。
次いで、どさり、と音をたててもう一人が投げ落とされた。
彼はパシャの他にも、逃げ遅れた女性を一人運び出していたのだ。
彼女は同じく砦に配属されていた侍女で、名を確かクク・ロカと言った。
助かってしまったことをパシャと同じく目を丸くして驚いていた。
「くそっ……待ってろ、よぉ…」
銀色の彼はそんなことを呟きながら、ふらふらと振り返る。
その方向は今にも燃え落ちそうな砦。
頼りない足取りで、一歩、また一歩と足を進め始めた。
彼はまた炎の中へ飛び込むつもりなのか、パシャは戦慄する。
「死ぬ…つもり?」
隣の侍女も同じような感想を持ったのだろう。
「やめるんだっ……」
「やめなさいっ!」
二人で顔を見合わせると、銀色の鎧を両側から抑えこんでいた。
「っ、るせーっ!」
屈強そうに見えたが、二人の人間を抱えてこの場所まで来たのだ。
彼は女二人を振り払うほどの体力を残してはいなかった。
引き込まれるように三人は尻餅をついた。
「まだ、まだ!…残ってっ……!」
しかし、二人はその衝撃に手を離してしまい、彼は再び立ち上がった。
「っそぉ…」
そのまま泳ぐように歩き始めたその時だった。
──最後の一線が轟音とともに切断され、砦が崩壊した。
「ぁ…ぁ……ぁ?」
銀色の彼は歩みをようやく止め、口からはぶつぶつと何事かが洩れている。
同色の兜をむしり取り、ごとりと地面に落とす。
汗濡れた黒髪──彼がもつ、元々の髪の色──が湯気を立てて飛び出した。
「あ……ああ…あ、ぁああ!……」
声は次第に大きくなっていたが、糸が切れた人形のように両膝を落とし、両腕は力なく垂れ下がる。
そして──
『 唖――――――――――――――――!!! 』
晴れ渡った夜明けの空に遠く長く尾を引くように、彼は力の限り咆哮した。
畏怖――
パシャがそう感じたときにはもう、一粒の涙が頬を伝っていた。
隣を見ればクク・ロカもまた同様、だった。
パシャが彼と再会したのは三日後だった。
あの後意識を失った銀色の戦士は、あの大火からの生存者たちと同じように近くの砦に収容されていた。
ようやく身を落ち着け、クク・ロカ侍女と連れ立って彼を見舞った。
医務室の粗末な寝台に寝かされていた彼に、二人は思わずはっと息を飲む。
体のあちこちに打ち身をつくり、包帯を巻かれている。
そしてその包帯が両眼をきつく覆っているその痛々しさもあるが、
「ヒト……」
パシャはヒトというものを初めて見た。
肌にはまったく毛がなく、白い地肌が広がっている。
髭は顔の下半分にまばらに伸びてはいたが──無精髭と言うらしい──
頬からピンと長く細く生えているわけではない。
鼻や口は、つるつるに磨いた姿見で見るパシャ自身の形のまま。
極めつけは、その耳と思われるものの形の奇妙さだった。
複雑に捻れて顔の横についている。
「目を損なったのですか?」
傍らのクク・ロカがヒトに付き添っている衛生兵に問いかける。
「そうではありません。
彼が私の姿を見たら驚くでしょうから、目を開ける前にこちらの事情を知ってもらった方が良いかと」
収容先の砦付き医務主任である、オセロット族の男性が丁寧な口調で答えた。
「そ…そうですか」
彼女は返答もそこそこに、雄のヒトをしげしげと観察し始めた。
パシャも彼女にならって彼を見つめる。
「そろそろ、こいつ取ってくれないッスか?」
と、包帯の上から顔をつるりと撫でながら、ヒトが言葉を発した。
その声音に『もう、大丈夫だ』あの日の彼の声を重ね、パシャの胸は高鳴った。
「男がどんな顔してても関係ねー。女が俺の世界の女とそー変わんねーならそれでいいさ」
そして、へへっ、と下品とも取れる笑い声が零れた。
パシャがある予感に駆られて顔を上げると、案の定、クク・ロカ侍女はその童顔を歪めていた。
彼女はひどく男嫌いで有名だ。
興味を嫌悪感が上回ったようだ。
「あんたたち美人なんだってな。年齢も近いっぽいし。得したってもんだ」
「……不潔ね、あなた」
火に油を注いだ彼に、クク・ロカは思い切り蔑んだ。
「私は彼の目を見て、礼を言いたい。包帯を頼めるだろうか」
「頼ンます」
パシャは慌てて医務主任にとりなすが、ヒトの彼はクク・ロカの痛烈な言葉に堪えた様子もない。
大物なのか、単なる鈍感なのか、パシャは何やら可笑しい。
彼とたっぷり話をしてみたい、漠然とそう感じた。
「ゆっくり目を開けて、眩しさに徐々に目を慣らして」
「ういッス」
ヒトの彼は起き上がり、既に包帯は解かれている。
パシャとクク・ロカも寝台の隣に置かれた椅子に腰を下ろし、彼の目が開くのを待ち受けていた。
男嫌いの彼女は憮然とした表情だが去ろうとはしなかった。
嫌悪感を礼儀で押さえつけているといった趣きだ。
一方のパシャはまんざらでもない。
珍しく頬にはわずかに血を昇らせ、ヒトの目が意思を宿す瞬間を期待している。
「楽しみにしてるぜ……」
そして俯いたまま数度瞬かせた後、彼は迷いなく顔を上げた。
「俺はツキオミ。キオって呼んでくれていいぜ」
パシャの想像した通りの目をしていた。
不適そうな強い光がまっすぐに見つめてくる。
ただ、隣の侍女にも目を移した後、オセロット族の衛生兵を見て大げさに驚いた。
パシャは思わず吹き出していた、それはもう、随分と久しぶりに。
それから、キオはパシャとクク・ロカの二人が預かることになった。
パシャが主人で、クク・ロカが副主人というように。
落ちてきたヒトは通常……身分の高い者へと献上されるのだが、キオの落ちてきた場所が悪かった。
軍隊という特殊な環境では守秘義務というものが発生する。
一般人がいてはならないのだ。
それも火災から逃げ遅れた人間を二名も救助するという非常に目立つことをしたのならば、尚更だ。
そこで軍上層部では、
「日付を遡ってキオが入隊していた事」「さらに従者が二人の主人を救ったに過ぎなかった事」
を強調し、二人にキオの主人になるべく通告した。
§ § §
「ホントに、そんな顔の男ばっかなんだな」
「怖いか、ヒト」
「いんや。よく見りゃ愛嬌のある顔してるぜ。それと俺はキオだ」
「それなら、キオ。
今日は二人を助けたお前の勇気を讃える宴であると同時に、
あの卑劣な火災で命を落とした、儂らの同僚の魂に杯を献じる宴でもある。どんどん呑め」
「あー、もしかして目上じゃないッスか? 見た目じゃ分かんなくて、えーっと……」
「んむ。儂はウナワルタだ。一応将軍と呼ばれる立場ではある。
だが……今日は無礼講だ。堅苦しい礼儀などは取っ払え」
「んじゃ、遠慮なく。……元いた世界では消防士だった。助けられなかったヤツらへの礼儀も心得てる。
どんなヤツらだったか……俺にも想像できるように教えてくれ」
「ふむ、話は長いぞ?」
「この酒はうまい、いくらでも呑めるぜ」
「よし、キオ。儂はお前が気に入った。儂の元へ来ぬか?」
「冗談だろー。美人二人のご主人サマから、色気ねーおっさんに鞍替えなんかしねーよ?」
「ぬはは、それもそうだな……それではここへ座れ」
パシャはあっという間に場に溶け込んでしまったキオを横目に見ながら、他の兵士たちと杯を献じている。
彼らはパシャが口下手なのを知っているから、それほど話しかけてこない。
おかげでゆっくりと酒を嗜むことができる。あまり酒に強いわけではないのだ。
周囲を見渡すと、あの侍女の姿は既にない。
最初の一杯だけを付き合い、
「自室で偉大な魂たちに祈る」とでも言って早々に宴から抜け出したに違いない。
しかしその裏では、むさ苦しい男だらけの場にいたくなかっただけだろう。
ふと、開始早々ウナワルタ守将と酒を酌み交わしていたキオの卓へ、新たに二人が加わっていた。
若い彼らともすぐ意気投合したらしく、キオは会話内容に合わせた表情でチチャ酒をあおっている。
その顔は先程パシャと二人きりだった時の、ひどく真剣で切羽詰った表情とはまるで違っていた。
「ご主人サマって呼んだらいーか?」
「ん、パシャで。あとは時と場を考えて」
「おう」
パシャは臨時に手配されていた部屋にキオを誘った。
例の火災で守備隊が半壊してしまったため、いずれ早いうちにどこかの砦へ追加配属されるだろう。
それまでに色々とキオに説明しておく必要があった。
パシャ自身が一体何者で、軍内でどのような役割を担っているかということについてや、
キオに課せられる予定の軍務についてだ。
クク・ロカにも同席してもらうように言ったのだが、素っ気無く断られてしまった。
「副」主人であることを強調して、彼女は過度の干渉を嫌ったのだった。
早い話、パシャはキオの処遇を押し付けられた。
元々この部屋は仮眠室らしく、簡易寝台が二つ備え付けられていた。
成ったばかりの主従二人はそれぞれ寝台の端に腰かけ、向かい合う。
「どーにも腑に落ちねーことがある。一つ聞く」
「……何?」
逆に彼の方から話しかけられた。
唐突に口調が厳しくなっている。
何から話し出そうと思い巡らせていたパシャは、その眼光に一瞬気圧された。
「あの部屋に落ちてきたのは俺だけか?」
今までのあっけらかんとした調子は既にどこにもない。
「そう」
「ホントだな」
「嘘を言っても、何の得にもならない」
すると、キオは目に見えて明らかに、生気を失ったような顔をした。
「事情を話して」
パシャの唇は自然と動いた。
言った後で、はっとする。自分の行動なのに、予想外だった。
他人を気遣おうとすること自体、あまりなかった。
ただ、キオが悲しそうで、パシャはそれが彼らしくないと感じた。
言い淀んだ彼に追い討ちをかける。
「私は主人」
「…わかった。実は──」
キオの話すことによれば、落ちた日のあの時──
元いた世界で彼は、地震によって発生した火災から逃げ遅れた人々を助け出す作業をしていたらしい。
そしてそれを職業としていることも語った。
その極めて似通った状況に口を挟もうとしたが、キオは遮る。
「助けようとした目の前で、俺の弟がふっと消えた。沈むように消えたんだ」
振り分けられた救助活動先で、その燃える建物の中になんと肉親がいた。
"要救助者に隊員の肉親がいたならば、彼もしくは彼女を救助するのは最後"という決まり事で、
ようやくキオが弟の元にたどり着いたときは、かなりの勢いで火災が進行していた。
そして必死に手を伸ばして近づくと、横たわっていた彼は泥沼に沈み込むように消えたらしい。
「この世界にヒトが『落ちる』ってんなら俺の弟も絶対『落ちて』きてるはずだ。
パシャ見ただろ……見たって、言えよっ!」
そして踏み込んだキオも彼の弟と同じく『落ちた』というわけだ。
これでキオがパシャを担ぎ上げる前に、なぜか苦しんでいたような様子も理解できた。
キオは弟を探していたが、その前に、新たな要救助者を発見してしまったから──
助けられそうだった弟を置いて行かねばならなくなったから──
「キオ、落ち着いて」
「落ち着いてられっかよ、これがぁ!」
キオは立ち上がって激昂する。
顔全体が怒りに紅潮し、話すうちにこみ上がった感情を抑え切れなくて、口元がぴくぴくと引き攣っている。
その色を綺麗だと、パシャはこの場にそぐわない思いを抱いた。
「キオの弟さんを私は見なかった」
「だったら──」
「多分!」
パシャは声を高めてキオを押し止めた。
(さっきは彼をかばって、声を出して笑って、今度は大声を出して──)
急に人間くさくなったものだと、内心で苦笑した。
「……多分、弟さんがこっちの世界の何処かに『落ちて』るのは確か」
宥めるようにキオの両手を引く。
「じゃあ、どっかで助かってるんだな」
急激に硬さが抜けたキオは促されるままに、今まで座っていた寝台に腰を下ろす。
「そうも言えない」
しかし、気休めでも嘘を言うことをパシャは好まない。
「何だと?」
「誰か人間のいるところに『落ちる』とは限らない。人里離れたところで野垂れ死ぬかもしれない」
「てめぇっ!」
キオは飛び上がって詰め寄り、彼女の襟元を乱暴につかんだ。
しかしパシャは全く動じる様子を見せなかった。
冷酷に、いきり立つ視線を受け止める。
「んな簡単に、人の弟を死ぬとかぬかすなっ!」
「例え人間に拾われたとしても他の国に『落ちた』ら大変。奴隷商人に売り飛ばされる。可哀想だけど、現実」
キオは急に立ち上がり出口へと向かう。
「……だったら弟を探しに行く。すまねーがご主人サマごっこもこれまでだ。
介抱してもらった恩もあるが、俺もパシャを助けてやったってことでひとつ頼むわ」
「ふざけないで」
それを許すわけがない。
奇妙な縁だとは思うが、幸運にも拾われた彼をむざむざと死なせたくはない。
素早く彼の身に着ける衣服をつかむと、元いた寝台の上に投げつける。
さらにパシャは彼の上に滑らかに圧し掛かる。
キオも跳ね除けようとするが、
「ヒトの力は弱い、雄と言っても」
ジャガー族の圧力に、手も足も出ない。
「ここから逃げ出してどうするの?」
「どーにかすんに決まってだろ!」
(ああ、やはり……)
冷静にキオを見据える。
炎の中から自分やクク・ロカを助け出し、人間離れした印象を抱いていたが、
彼もやはり同じような思考を持つ人間なのだ、と。
焦りもすれば、冷静になり切れず感情に任せた行動を取ろうとする。
しかしそれに失望したというわけではなく、一層親近感を強めただけだ。
「地図は? お金は? どうやって身を守る?」
「くそっ、放せよ!」
「この通り、ヒトは弱い。奴隷扱いされるにはそれだけの理由がある」
「……」
組み伏せられた彼はばたつかせていた手足を止め、力を抜いた。
「だったら、弟のことを放ったらかしにして! ご主人様ごっこしてればいいってのかよっ」
それでもキオの眼光が消えることはなかった。
少し気紛れを起こせば触れ合ってしまいそうなほど近距離で、二人は見詰め合う。
仮眠室にはしばらく沈黙が居座っていたが、
「一つ提案」
「んだよ」
その間にパシャはあることを思いついていた。
良い考えだとすら感じられる。
「私はあと五年、兵役を務めれば休暇を得る資格ができる」
「……」
おかしな話になったものだ、とパシャは思う。
けれども、どうにか激情を抑えこもうとしているこの男は、勇者の素質を持っている。
キオが身に着けていた銀色の鎧は非常に燃えにくい材質で作られているらしいと聞いてはいたが、
キンサンティンスーユの民の誰が、あの服を着て火炎の中に飛び込めるだろう。
パシャほどではないにしても炎に対する恐怖は、密林の民の心に潜在的にある。
弱いはずのヒトが誰にも成し得ないことをやってのける。
だから、主従の壁を越えて従者のために尽くすことに何の躊躇いも生まれない。
「それまでキオが従者になってくれれば、その休暇を使って、弟さんを探しに協力してもいい」
何も生み出せず、失うだけの人生。
そして敵にいつか斬られる運命、それだけの一生。
その下らない生き方に、キオの弟を救うという使命があれば、
この世で命を永らえたその意味もきっと、少しは見出せるだろう。
パシャは考えるだけでなく言葉に出すことで、その思いが強くなっていくのを感じていた。
§ § §
キオはパシャの従者となることに渋々ながら首を縦にした。
他に有効な手段を見つけられるまでの繋ぎという条件だったが。
まずはこの世界に慣れることが重要だと、冷静になったらしかった。
数日後、ウナワルタ将軍を始めとした生存者全員がピコン砦の増築に伴って編入されることが伝えられた。
機動部隊としての部隊運用力に定評のあるウナワルタ将軍の力が買われたからだ。
それに合わせて元いた将軍は逆に防砦組織力を認められ、前線にあるほかの砦に転じたらしい。
同じくパシャは斬込隊の一隊を任され、クク・ロカも中衛司令補佐の一人に昇格した。
一方ヒトであるキオは衛生兵として数えられた。
無力だからといって、日々を無為に過ごさせるほど甘くはない。
配属当初、物珍しいキオへ皆の視線が集まった。
しかし彼は持ち前の陽気さで途端に打ち解けた。
キオを連れて砦内を歩くたび、すれ違う兵士たちが好意的に彼へ挨拶する。
時には砦内の広場で、細々とした空き時間中に得物の扱い方を教えてもらったりするのだ。
パシャはいつも中庭にある切り株を椅子代わりにしながら、頬杖をついて様子を眺めることにしていた。
初めのうちは監督するのも主人の役目だろうと、彼女なりに不慣れな立場をこなしていただけだった。
しかし、次第にそうでもなくなってきた。
キオを見ていると、楽しい。
「深くすんな! 数突け、浅くだ!」
パシャの視界で目まぐるしく動くうちの一人は、赤銅色の体毛をしたピューマ戦士。
左手を仰々しい包帯で吊りながらも、右手に構えた手槍で鮮やかに軌跡を描く。
「……!」
もう一人は訓練を必死でこなすキオの姿だった。
汗でびしょ濡れた上衣は既に脱ぎ捨てている。
両手持ちの長槍を、荒っぽく呼吸しながら突き出す。
しかし布の巻きつけられた先端は軽々と跳ね上げられる。
「槍先奪られたら負けだろうが!」
ピューマ戦士の手槍が一転して、最小距離でキオの額を小突く。
同じように穂先の代わりに布が詰められた手槍だったが、仰け反ったキオの額は腫れたように赤く染まる。
「話にならんな」
「……ん? 何か言った?」
パシャはキオの様子をただ何となしに眺めていたので、観客がもう一人いることをすっかり失念していた。
ヒトは体毛を持たないので、通常その下に隠れているはずの筋肉のうねりが直接的に見える。
運動に上気した白い肌につい見惚れていた。
「話にならん、と言った」
パシャの傍らでどっしりと胡坐をかいているのは、錆びた鉄色をしたジャガー族の男性だ。
彼女の同僚で、斬込隊長同士知らない顔ではない。
むしろ親しいと言える。
キオの相手をしているピューマ族の上司で、上司が部下の様子を見に来たというわけだ。
「でも、ユパ。キオは全てにおいて「話にならない」と?」
「むうん……パシャの言いたいことも分かるが」
「彼は"目"がいい」
「ただ、筋肉の伸縮がまったく間に合わん」
熟成された戦士の見極めはパシャのそれと合致していた。
一対一で向かい合い、先に仕掛けられたとしよう。
相手の初動から視覚情報を受け取り、その攻撃を避けるか受け止めるか捌くかを判断し、行動に移す。
傍観者二人が見る分には、キオは視覚情報を処理する速度が素晴らしい。
一方で行動に移すために必要な、筋肉の動きが「素晴らしいまでに遅い」。
"目"で得た利を、のろのろとした"行動"で全て使い果たし、逆に負債を背負うほどだ。
見るとキオはまだ座り込んだままだった。
何事か呟いたようで、手にした長槍をピューマの彼に投げつける。
しかし、彼は回転する柄を自分の持つ手槍ごと楽々と掴み取ると、キオの頭を手加減しながら叩く。
「キオの負け、な。食券五枚忘れるなよ?」
叩き続ける。
「しかし、ちょいとましな槍も使い物にならなかったなぁ?」
ついには、石突の部分で黒髪の分け目をごりごりと擦り上げた。
「ハゲんだろーが! サキトハてめー調子こきやがってっ!」
怒り心頭に達したキオが長槍をつかもうと両手を振り上げるが、
サキトハと呼ばれた男は既に木の棒を撤退させている。
「あれぇ? あれあれぇ?」
座ったまま両手を振り上げて、なんとも情けない格好でぷるぷると震えるキオに、
サキトハが揶揄して追い討ちをかける。
「サキトハ。てめーは俺を怒らせた」
「で?」
「一発殴らせろっ」
「バカどもが。子供か……」
「……いいと思う。仲良い証拠」
キオがサキトハに飛び掛り、飛び掛られた方は簡単に突進を避ける。
ピューマ族の彼がキオの指導を提案したのは、
左腕が今も無事に肩から生えているその恩義も少なからずあるだろう。
ピコン砦に着任したばかりの時、賊とのちょっとした小競り合いが発生した。
そこでサキトハはある事故から左腕に深傷を負い、キオがそれに応急処置を施した。
技術として、ひどい出血には止血帯を用いるのだが、周期的に止血帯を弛め血流を再開させなければならない。
しかし、きつく縛った結び目を解き、再び縛るという作業はかなりの時間を有することだった。
時間の浪費は体組織の死を意味する。
告生司祭のもとに運び込んだ時に修復不可能であれば悲劇で済まない。
《治癒》の奇跡でも限界がある。《完治》の奇跡は高位の司祭に限られるからだ。
そこでキオはヒトの世界の知識を効果的に実践し、血流の確保を短時間で成し遂げた。
短い枝を使って結び目の固さを自在に操るその技は、
搬送時間も同じく短縮し、おかげでサキトハの左手は切断を免れた。
それ以来療養中のサキトハとキオは親交を持ち、この場に至っている。
「俺だけ年寄りにするつもりか」
「……ふ。ユパは苦労人」
体中に鉄鎖を巻きつけたジャガー族の彼は自分の目を疑った。
ピコン砦で偶然再会はしたが、
国内にある養成所で見知っていた彼女は冷笑すら浮かべない無感情に近い人物だった。
それが注意深く見ればと言う条件がつくが、顔を少しだけ綻ばせた。
「パシャ…」
「ん?」
「……すまん、何も……ああ、キオは今何をしている?」
二人が見る向こうで、キオがサキトハに殴りかかっていた。
二つの拳を顎の前に引き上げ、軽快に動き回っている。
「拳闘。元いた世界でそういう闘い方を少し齧ったらしい」
「拳に拠って闘う、か。心意気は買うが――」
言い終わらないうちにサキトハが、突き出された拳をあっさりといなした。
そしてすかさず、作ったばかりの額の赤い斑点へと手槍の先を正確に合わせた。
「――むう。動きの組み立て具合は、まだまともだが」
「あれは、今晩にも痣確定」
「……そのようだ」
額を押さえて悶絶するキオに、サキトハは再び黒髪へ石突の部分を擦り付けている。
彼の嫌がることが大好きなようだ。
「……ふ、ふふ」
隣のユパがちらちらと盗み見てくるのも構わず、パシャは笑みを洩らした。
言いにくそうにしていたのも、自分の変化であろうと推測していた。
この砦には彼以外にも軍養成所時代の同期が生き残っていて、さながら同窓会のような様を呈していた。
「星の456期生」と呼ばれた猛者揃い──
ジャグゥスーユに大きく構える軍養成所では、今もその華々しい武勇伝が語られているらしい。
そして、その同期生たちは不躾にもパシャが随分と笑えるようになったと冷やかすのが、照れくさかった。
それを否定する気持ちは彼女にはない。
当然かもしれないとさえ思うほどだ。
……それについての根拠らしいものもある。
幼い頃出くわした、両親と子を産む機能を奪った火事以来、
平均して三日に一度見ていた悪夢を見なくなったからだ。
正しくは、見慣れた夢の中にキオと思われる銀色の救い主が現れるようになったからだが。
キオには何度感謝してもし足りないと思う。
あの恐怖は鳴りを潜め、すっきりと安心するような目覚めを迎えていれば、
憂鬱さを隠すための無感情さとは無縁でいられるだろう。
もっとも、顔の筋肉は動かないことに慣れ親しんでしまうくらい怠けたままだ。
可笑しいことがあっても、ちょっぴりと寝返りをうつ程度しか動いてくれない。
ふと、ユパがいつまでも落ち着かない様子を続けていた。
「しかし、なんだ」
この曖昧な物言いは、若いながらも貫禄を見せる第三斬込隊隊長としての彼らしくない。
そのうろつく視線の先をたどる。
「これ? キオが、こうした方がいいって」
パシャは足首から膝上までを覆う、濃紺をした筒状の脚貫を摘んで見せた。
布製のそれは、軍衣の一部を改良したものだ。
正式なそれは腰に巻く布と二本の筒状になった布を、下半身の形に合うようにまとめた衣服だ。
キオの防火服の下衣も同じような形をしていた。
がさつく皮製の脛当てや膝当てから肌を守るためとはいえ、この暑苦しい軍衣は女性兵士に不評だった。
そこでキオが助言したのが、太腿の上部で、腰の部分と脚の部分を切り分けてしまうことだった。
そうすることでくつろぎたい自室などでは脚だけを取り外してのびのびとできる。
わざわざ穿き替える必要がない。
また、最近キンサンティンスーユで流行りつつある、女性用の短い丈の腰布と相性が良かった。
ひらひらした軽めの生地でできたそれは、動くたびに風に揺れて可愛らしいと評判だ。
この戦地でも流行は例外ではない。着てみたいと思う女性兵士も多いはずだ。
……しかし、それは脚部の大部分がむき出しで軍規に合わない。
そこで地肌が見える箇所に、切り離した軍衣の脚部分を穿く、という発想になった。
奇抜な発想をしたキオはさらに、なぜか腰布と脚部分の間を厳密に測り、
地肌を少しだけ見せるようにこだわった。
この肌の見える部分を「絶対領域」と言うらしい。
「むう……うう…」
ユパはパシャの狭い褐色の部分を特に見ていた。
(何、この男。照れている?)
そう思った瞬間、パシャは閃いた。
(……もしかして)
キオの「絶対領域」という物々しい言い方に、ヒトならではの知恵かと思っていたが、そうではないらしい。
これが世の男性が好むという、
「見えそうで見えない極意」とか「ちらりと垣間見える隙間の極意」とか言うものだ、と。
(キオ……)
教えてくれた時の彼の何とも楽しそうな表情を思い出して、頭が痛くなる。
彼が喜んでいるのに純粋に嬉しさを感じ、怪しむこともなかった。
この服装は気に入っているから別にやめるつもりはないが、キオには後でゆっくりと説明してもらおう。
既にサキトハに苛められている彼にはとても申し訳ないが――
とりあえず腹いせに、無遠慮に凝視し続けるユパの両眼に山吹色の尾を力いっぱい叩きつけた。
§ § §
またある時――会話の端々に夏至大祭についての話題が上るようになった頃。
ピコン砦内でも、太陽神を祝福する祭りをささやかながら行おうと、
パシャの他数人の女性兵士が飾り付けの準備をしていた。
そこに、水気で体毛を撫でつけた体へ、大き目の布をぶら下げた兵士の集団が寄って来た。
「パシャ。パシャ!」
彼女の名を呼ぶのは一人のオセロットだった。
彼も456期生出身で、今は撹乱を得意とする隊に所属している。
その彼が珍しく興奮気味にがなりたてる。
「水練場で今いいもんやっからよう! 見に行ってみい!」
美しく優美な曲線を描く尻尾の先から滴を垂らしている様子からすると、訓練から帰ってきたばかりだろう。
パシャは周りの女性たちと顔を見合わせた。
男たちは男たちで、戦地ゆえに参加できない本国の夏至大祭の気分を味わおうと、
砦と目と鼻の先にある支流で泳いでいるらしい。
その国民的な感謝祭では毎年、定例行事として大規模な水泳大会が催されている。
そこで優秀な成績を修めるのは大変な栄誉だ。
何といっても各集落から代表者を一名選出し、全国民が注目する。
さらに皇后も天覧するとあれば、誰でも奮い立つだろう。
「どうだろう?」
パシャは一緒に作業していた女たちに聞いてみた。
キオに謀られた例の服装がもとで彼女たちと仲良くさせてもらっている。
「ちょっとぐらいなら……ってもう! サッリェさん行っちゃったし……」
詳しく聞く間もなく、微かに若葉色の体毛を持つ小兵は体を拭きながら立ち去っていた。
結局、好奇心のままにパシャたちは川べりに移動した。
そこはかなりの人だかりで、水に濡れた兵士たちがひしめいている。
「少し、いい?」
パシャは手近な兵士の肩を叩き、「いいもの」を聞いてみようとしたのだが、
「ご主人様のお着きだ!」
彼は声高に叫び、人だかりが一斉に振り向く。
「審判! 少し合図待て!」
「パシャが来たんかぁ。場所空けてやれなぁ!」
妙な雰囲気に明らかに怯む女たちを余所に、兵士の集団は真ん中からぱくりと割れた。
河川周辺の様子がはっきりとわかる。
さらに促されて近くまで寄ると、そこには見知ったヒトがいた。
「よっ。ご主人サマ」
「キオ!」
急遽作られた飛び込み台の上で、白い半裸の姿が手首やら足首やらをぶらぶらとほぐしていた。
他にも十人ほどがキオと同じく泳ぐ準備をしていた。
(また、キオは……)
パシャは内心、溜息をついた。彼はいつもこうだ、と。
興味を持ったことには何にでも首を突っ込む性格のようだった。
それでいて別に飽きっぽいというわけでもないのでいいとは思うのだが、どうしてもヒトは劣る。
危なっかしくて彼女は気が気ではない。
さらにこの頃になると、キオを道化【カニチュ】のように扱う人々が増えてきた。
当初は仲が良い証拠と笑っていられたパシャだったが、それが頻繁になると目に余る。
キオはヒトだが、人にからかわれるために存在しているのではない。
それが面白くない。
「キオ、泳ぐの?」
「見ての通りだなー」
おそらくサッリェの言う「いいもの」とは、パシャの従者が泳ぐその様。
まさか溺れるのを面白がるというほど悪趣味ではないだろうから、彼は泳げるのだろう。
となると、キオの泳ぎ方が滑稽であるか、ひどく遅いかのどちらかだ。
カニチュは観客に笑われるから、道化。
「私も泳ぐ」
パシャは問い詰めたい。
キオがあの火災の時に何をしてのけたか知っているのか、と。
確かに武芸はてんで使い物にならないし、軍人らしい強さとはかけ離れている。
それでも命を救い、助ける時の勇気は誰にも負けないはずだ。
……だから、キオを貶ようとする輩は許さない。
「ちょっと、パシャ。落ち着いて――」
「心配いらない。私は落ち着いている」
女友達の声もパシャの耳には入らない。
装備を次々と外して彼女に持つように押し付ける。
耳を疑い、彼女の変わった提案に驚いた男たちも、展開が飲み込めるとがやがやと騒ぎ出した。
小波のように情報は集団に伝わり、状況を詳しく見ようと木に登って客席を確保する者もいる。
夏至大祭において泳ぐのは男女ともだが、きちんと性別に分かれて記録会は行われる。
平均記録は男性の方が肉体的有利を活かして僅かに速い。
パシャも女性の例外には洩れないだろう。
どうしても男性には勝てないはずだと全員が思った。
負けると分かっている勝負に、わざわざ参加するパシャは何を思うのだろうか。
「おおおっ!」
軍衣の脚部分が取り払われ、伸びやかな脚線美が露になると、俄然騒ぎが大きくなった。
好色そうな口笛が吹き鳴らされているほどだ。
「ちょっ、パシャ。下着見えるぞ……」
「知らない。見たいなら見れば」
小声で注意するキオも、主人の公開脱衣に戸惑う。
みるみるうちに、喉元の上まで覆う袖のないぴったりとした上衣と、ひらひらした腰布のみの服装になった。
薄い生地は彼女の胸を窮屈そうに押し込めている。
次に山吹色に黒色の筋がいくつも走る、肩までの髪を紐で束ねると、
「うなじの色気」を知る密林の民たちは一様にごくりと喉を鳴らした。
「審判、キオの隣でいい?」
誰もがパシャの言うことに逆らわない。
キオの右側に並ぶ選手たちは一個ずつ右にずれて、席を譲った。
「おーい、どうしたんだー、パシャー、らしくないぞー」
パシャの心の内を知らないキオは声を潜ませて、隣に立つ主人の顔を窺う。
「私はキオの主人」
「いや……それはそーだろーけどさ」
パシャは自覚していなかったが、ぎらつく瞳の光は従者を明らかに怯えさせていた。
「用意ぃ【ウィプハル】!」
審判の声が響き渡っても、一向に観客は黙らなかった。
「用意っつってんだ!」
五度目の「用意」に審判が怒号を上げると、どっと笑い声が起こり、その後ようやく話し声は収まっていった。
「ウィプハル!」
パシャは足先に指先をつける、柔軟体操のような「用意」の姿勢をとる。
尻尾で隠そうにも丸見えな下着は無理やりに意識の外に押し出す。
この胸に残る傷跡が露になることに比べれば、物の数ではない。
女性であるパシャが到底勝てるものではないと、とうに理解している。
終わりから二つの席次を主従で独占してしまうことも。
しかし主人が無責任に傍観して、キオだけを道化にしてしまうよりは格段に良いはずだ。
(キオだけを笑いものにはさせない)
パシャをむきにさせているのは、まさにそれだった。
劣るヒトを笑うのは、彼の主人でもある自分をも笑うことだと知らしめてやりたい。
ハチドリ【クェンチィ】は決して、同胞を無下にしない。
「飛べッッ【オクハル】!」
号砲一発。
打ち鳴らされた鐘の音に、ケモノたちが一斉に飛び込み台を蹴りつけた。
巨大投槍器【ヤトゥン・チュナム】から放たれた大槍の如く飛び出していく。
この蹴り足の強さ、即ち飛距離を稼げるのが男性の強みだった。
パシャも女性ゆえに男性よりも早く投射の頂点を過ぎ、水面へ落下する姿勢をとる。
そして背後の様子が見えてくると、予想通りの状況が見て取れた。
案の定キオの蹴り足は弱い。
パシャはまだ水面に届くまで距離があるというのに、出遅れたキオは水飛沫を上げて着水していた。
一時遅れてパシャも同じく着水する。
ざぶんと深く潜ると、気持ちいい冷たさがパシャの全身を流れていく。
手と足をかき回して頼りない水の抵抗を押しのける。
そして前方で白い泡の塊がいくつも出現し、男性兵士たちも飛行から潜行へと状態を移行させていく。
そして――
パシャの傍らをもの凄い速度で物体が通過して行った。
彼女は一瞬、それを水中で生活するという白百足かと見間違えた。
しかしその実際は、
(キ、キオ!)
白百足にしては巨大すぎる。
信じられないことに、パシャの従者が細い白肌を波打たせて突っ込んで行った。
その泳法はキンサンティンスーユに一般的なものではなかった。
手足で水をかくことで前へ進むのが水泳の基本。
それなのに、ヒトは風に靡く一枚の旗のようにうねりながら前へ前へと泳いでいく。
「ふあっ!」
パシャは急いで水面に顔を出す。
まだキオは浮上してきていない。
パシャは水上に首から上のみを浮かべ、水中の四本ある動力を全力で回転させつつ、
従者の出現を今かと待つ。
白い身体が浮かび上がったのはそれからさらに後。
先行する男性兵士たちがすべて水上に顔を出してからだった。
(ああっ)
パシャの驚きは一人だけのものではなかった。
確認しようもないが、確信は持てる。
水をかき回して進む全員が、大げさに水飛沫を立てて「先頭」を泳ぐヒトに顔を向けていた。
顔は水上に、それ以下は水面下に。
常にそれを保って泳ぐのが、密林の民が経験上学んだ泳法だった。
しかし――他の運動ではすべて劣っていたはずのヒトの泳ぎ方は秀逸だった。
顔は水面につけている。
必要な呼吸は左右に顔を振り、水上に口元を出すことで可能にしている。
さらに頭の動きに合わせて両腕が半円を空中に描くように、交互に飛び出ている。
両足はといえばこれも交互にばたつかせて、盛んに水飛沫と水泡を生み出している。
不思議なこともあるものだ。
だが別にそれほど驚くことではないだろう。
キンサンティンスーユの民が得意なこともあれば、ヒトの得意なこともあっておかしくはない。
(よし! そういうこと!)
キオの泳法が速いのならば、体の構造が近いパシャにも可能だろう。
鋭敏な戦士である彼女の洞察力は速く泳ぐための機構を素早く察知していた。
泳ぐための四本ある櫂は半分ほど空中に出すことで、水の抵抗を減らしている。
そして広い空間を得た腕と脚は大きな力を生む。
回転数の上がった動力は自ずと速力に繋がるはず――
気を抜けば笑い出してしまいたいような気分が、パシャの全身を包んでいた。
キオの動きを少し真似ただけで倍以上の速力が出る。
(何より、身体が軽い!)
水と空気の違いは分かっていたつもりだが、実感してみるとかなりの規模だった。
呆然とキオを見送る他の選手たちの脇を同じように水飛沫を上げたパシャが轟然と抜き去る。
パシャの目の前に折り返しの川岸が見えてきた。
キオは既に手が届きそうなほど岸に近い。
そして、再びキオの妙技が偶然前方を見ていたパシャの目の前で起こる。
岸の直前でぐるりと前方回転を行うと、足の裏を岸壁につけ、
うずくまるように折りたたまれた膝の反動を利用して白百足のように潜行していく。
横回転ではなく、縦回転にすることもまた発想の転換だった。
首から上を沈めないパシャたちには思いもつかない。
彼女の卓越した運動神経はキオの折り返しを正確になぞるが、自分の動きに彼女自身が違和を感じていた。
確かに、速い。
だからこそ速い自分に驚きを隠せない。
前進する速度をそのまま縦回転への動力と換え、足裏で岩肌を捉えると全力で蹴りつけた。
ジャガーの脚力と肺活量は主従の差をかなり縮めていた。
パシャが前方を確認せずとも、キオの両脚が生み出す白い泡が真横に少しだけ見える。
次第に二人の耳に、観客が上げる声援が色濃く聞こえてきた。
誰にも予想しえなかった順位でキオとパシャが競り合う。
この時点になると、パシャの頭の中には唯一つがあった。
自分の認めたキオが他人に軽んじられるのを反発する気持ちは朝靄のように、既に消えている。
前を行くキオを捉える、より速く――それは純粋に勝負を楽しむ気持ち。
やがて、左右に首を振って泳ぐパシャの視界に、暴れるキオの下半身が並んだ――と思った刹那、
突然彼の足がふいと消える。
それに驚く間もなく、
「――――!!!!」
ごつん、という衝撃がパシャの頭を襲った。
(痛い……)
つい「殴ったのは誰だ」と思ってしまい、水中に深く潜りながらパシャは赤面した。
キオとの勝負に熱中するあまり終着点を確認していなかった。
間抜けと言われても反論できない。
パシャは終わりの岸壁に思い切り頭をぶつけてしまったのだった。
その音は大きく鳴り、当然観客たちも気付いているだろう。
(は、恥ずかしい……)
パシャは恐る恐る浮上した。
「おかえり。ご主人サマ」
浮き上がるときに分かってはいたが、水を通すのと通さないのでは大違いだった。
川べりは大歓声に包まれている。
それでも、パシャの従者の声はしっかりと耳に届いた。
既に水中から上がっていた彼は座り込み、浮かんできた主人に手を差し伸べている。
「ははっ! この俺がキンサンティンスーユで一番速いんだってよ!」
水時計が指す目盛りの値と、周辺を飛び交う「新記録」という単語がそれを証明している。
キオは本当に嬉しそうだ。
パシャは素直に手を取った。
「それっ!」
大げさに掛け声を上げて、キオは主人を引き上げた。
「そんでパシャが女で一番速いってことだ。おめっとさん」
続いてパシャは、肩から厚手の大きい布をかけられた。
さすがに激情が去った後ではこの格好は恥ずかしいものだったから、キオの好意がありがたい。
「いや、しかし焦った。パシャの追い上げすげーんだもんよ」
「キオのおかげ」
「あ? ……ああ、もしかして俺の見て途中から真似ッコしたわけ?」
「ん」
「それ、普通にパシャの方が速いってことじゃねーか……」
どうやらキオは最初から勝算があったらしい。
ヒトの泳法の方が速いという情報がきっと前からあったのだ。
「だってよー。お前ら完全に『イヌカキ』だしな。勝てんに決まってんだろ」
「空を飛ぶみたいだった。身体がすごく軽かった」
身体の線を流れていく水の感触をつい思い出し、パシャの口調も僅かに熱くなる。
……サッリェはたまたまキオが泳ぐのを見ていて、この偶発的な競泳に出るように言ったのだろう。
「いいもの」とは、従者の活躍を間近で応援してやれというような、彼なりの気遣いだった。
もっともパシャまでも出場するとは思っていなかっただろうが。
「サッリェ……」
オセロットの彼にもできないことはなかっただろうが、一本気質なサッリェらしい。
他人の手柄を掠めるような人物ではない。
それとは逆に、
(自分は果たしてどうだったろうか……)
自問すれば答えはすぐに出た。
「私は、恥ずかしい」
パシャは小さく独白する。
『私は、恥ずかしい』
その声は小さかったがはっきりとキオたちに届いた。
親しい仲間たちでじゃれ合っていたが、談笑を止めて全員がはっと振り向く。
パシャは肩にかけられた白い外套を翻していた。
一瞬だけ見えた横顔は少しだけ、憂い顔。
視線を下に落とし、うつむくような彼女はまるで「らしく」なかった。
男たちの注目を受け止めて堂々と服を脱ぎ散らした彼女とかみ合わない。
去りつつある彼女の後ろで揺れる山吹色の尾が垂れ下がっているのは、
水を吸って重くなっているから、というだけではないだろう。
「……」
ほぼ全員が顔を見合わせて惑う中で、キオだけがじっとパシャを見送っていた。
――その後は随分と気の早いお祭り騒ぎが続いた。
誰もが試したいと競泳に参加し、キオは参加できない者からの質問攻めにあった。
順応性の高い戦士たちはそれこそ水を得た魚のように泳ぎまくる。
そしてキオの出した新記録はキンサンティンスーユの民によって次々と塗り替えられはしたが、
確かにこの日、キオは革命者だった。
また、この革命には二つの後日談がある。
ヒトの泳法に野心を持ち「本国の夏至大祭にどうしても参加して記録を残したい」というものが百人を越え、
ウナワルタ守将によって大目玉を食ったこと――
水練の一種として取り入れられた技は戦士たちによって磨き上げられ、
ヨリコテ砦の救援をそもそも成功させた、濁流を泳ぎきるという非常に大きな戦果をもたらしたこと――
597 :
ピューマ担当:2005/12/23(金) 18:47:07 ID:McY+2PxF
以上になります。ではまた!
598 :
カモシカ担当:2005/12/23(金) 19:53:58 ID:8B0zTLDn
>>597 たった今読ませていただきました。
素晴らしいクリスマスプレゼントをいただきました。ありがとうございますです。
……読者としては超・大満足なんですが書き手としてはこれの後に投下はつらいなぁw
GJ
もふう、スゲエ量。
明日ゆっくり読ませてもらいます。
GJ!
続きがものっそい気になる!!
こんなにスレが伸びたのは一年ぶりくらいだから驚いた。
GJ!!!
GJ以外にどういう賛辞があろうか。
パシャさんステキ、キオかっけぇぇぇ!
パシャかーいーよ
かーいーよパシャ
GJでございます。
ちなみに、残り容量どれくらいなんだろう。新スレはまだ立てなくても大丈夫かな。
現時点で433KBなんで、
安全域は、あと50KBくらい。
まあ、テンプレは用意した方が良さそう。
リレー
ttp://red.ribbon.to/~eroparo/sslibrary/o/original608.html の続きいってみっか
====================================
「うふふ、こんなのはどうかしら」
パンツ越しに参謀さんが股間を僕のモノに押しつけてくる。
2枚の布越しにじっとりとした暖かさと胴の部分を挟み込んでくる柔らかさが伝わってきて、
僕のはもっと固くなっちゃう。
「あら、まだ脱いでもいないのにこんなにしちゃって……。やらしいんだぁ……」
「う、うわ、うごいちゃだめです〜」
参謀さんが腰をくっつけたままゆっくりと前後に動かす。布越しのざらざらな感触が気持ちいい……。
その間にも御主人様の猫じゃらしと参謀さんの指が僕の身体をまんべんなくくすぐり続ける。
「ひゃ、ひゃう〜っ!」
「うふふ、女の子みたいな声出すのね?」
「にゃう〜ここも女の子みたいになってるにゃあ」
「にあっ!?」
御主人様、乳首いぢっちゃだめです〜〜〜!!
「あらほんと。くすっ、かわいい……」
====================================
だれか つぎ たのむ
>>597 ちょっと長いけどGJ!(*´д`*)ハァハァ
611 :
虎の子:2005/12/26(月) 20:36:49 ID:PBR6Sqjk
カモシカ担当様へ
良かったら錬金術の詳しい内容や、欠点、生成不能な物などを教えてください。
ちょっと、こちらの小説で資源関係の話を書くかもしれないので―――
錬金術で作れないといったら人体錬成に決まって・・・
【バックファイヤでもっていかれる】
613 :
カモシカ担当:2005/12/26(月) 23:02:33 ID:18ifytWD
>>611 実はまだ正直、詳しく語れるほど練り込んだ設定は作れてないんです。
……正直、だから「猫の国が完成させた」というよそ任せの設定にした部分もありまして。
ただ、従来の金銀がそれまでの価値を失った中で、新たに「貴金属」の地位を得るものがあるとすれば、それは魔法金属なんじゃないかな、とかは思いますが。
携帯からなんで確認できませんが、たしか見聞録で犬の国が見つけたのが魔法金属の鉱山じゃなかったかと。
あと、鉄とか銅とかは従来と価値は変わらないと思います。
……その、まぁ、他の職人さんが書いていない部分はある程度の自由裁量が許されるとは思います。
そうでなきゃ「大陸一の金銀産出国」なんて鬼設定を何の伏線もなしにいきなり第10話で出すなんて暴挙はやれないw
……まあ、南米文明が元ネタですから、いずれ触れなきゃならないにしても、他の職人さんが金鉱銀鉱に触れてなかったから「じゃあウチでやるかな」みたいな部分もありましたし。
そこから他職人さんの話や自分の過去話との整合を考えながら微調整、ときどき力押しwするのが書き手の醍醐味だと思うです。
他の職人さんの意見なんかも聞きながら、いっそ今から設定を作り上げるのも面白いかもしれないですね。
なにせこの世界、人の理を越えた人がいくらもいるんですし。
金銀の他にマンガンやニッケル、下手すりゃウラン鉱山もあったりしてなw
あったとしても、扱えるかどうかは別問題だけどね。
616 :
蛇担当:2005/12/27(火) 19:40:15 ID:osgRjzB8
「なあ、エリーゼ。この行き倒れこんなもん掴んでたんだが、お前読めるか?」
「ちょっとみせて・・・・・・ああ、これ向こうの言葉ね。えっと、なになに
『すいません、どうやら今年中には全部終わらなそうです。
予告したのにこのていたらく。てゆうか半年もなにしてたんだ俺。
いや、プロットは出来てるんです。マジです、ホントです、信じて下さい、俺の目を見て下さい。
とはいえ、ただ間に合いませんと言い訳するのは誠意もなければ芸もないと思いまして
前編だけでも今年中にお送りしようと思います。
それでは放浪女王と銀輪の従者第五話前編をお楽しみ下さい。
ttp://www.degitalscope.com/~mbspro/userfiles_res/database/701.txt 追伸:一発でゲストキャラを当てられた瞬間、やっぱりやめようかと思いましたが結局出しました。えい、ちくしょう』」
「・・・・・・なんの手紙なんだ?」
「私に聞かれても・・・・・・ただ一つ言えるのは」
「言えるのは?」
「この手紙から欠片も誠意を感じないって事かしら」
>>616 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
サーラ様キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
毎回毎回楽しみにしております
GJ!
>>616 毎回のことながらGJです。
いや、前編だけっていわれてもそれでも十分えろいし熱いし面白いし、はい。
……しかし「ケルベロス」相手にしちゃあ、そりゃ何人束になっても勝てんわ、エグゼクターズw
>>611 ちょこっとwikiとかで確認してみました。
採掘が確認できるもの
イヌの国……真銀(ミスリル?)
オオカミの国……良質の汎用金属(鉄とか銅?)
カモシカの国……金、銀、銅、硝石、石炭、硫黄、アンセニウム
……って、改めて書くとカモシカの国……なにこの資源大国w。
あと、錬金術が存在していると考えられるのが猫の国、イヌの国、そして蛇の国。
やはり、ミスリルとかオリハルコンとかの魔法金属は生成できないことにしないと洒落にならない事態になりそうです。
この行間から溢れる緊迫感……流石っす。
GJ! 後編も期待しております! 全裸で。
なぁ、幾等何でもようやく蒸気機関車が走り始めたぐらいの文明を数年そこらで
オーバーテクノロジーにまで発展させることは可能なのか?特に虎。
魔法と落ち物があるからね。ある程度のところまでは可能だと思うよ。
……虎は良い意味で意味で反則だと思ってるけどw
虎に関しては「工場を魔法で建てたよ!」とか言われても納得するしかないからなあ・・・・・・。
623 :
虎の子:2005/12/28(水) 23:32:46 ID:qqq9+VQD
>>620 例えばお菓子を作る時、全く新しいお菓子を作ろうとすれば、それは一流の職人が長い時間掛けないと作れません。
しかし、レシピと現物と道具と材料がそろえば素人でも割と似たような物が出来るのと同じ理屈です。
また、生産などは既存の技術で作成出来るまでレベルを落として設計図を書いて、それを生産工場がそのまま生産する訳です。
だから、詳しい原理や理屈を知っているのは設計者のエリスやセリスだけでほとんどの工場は、書かれた設計図の物をそのまま生産しています。
そうすれば理屈は分からなくても生産だけは可能ですから、極端な話、既存の技術より一段階上の機械を既存の技術で作り上げて、さらにその機械を使ってもう一段階上の技術をとどんどんやっていけば――
やっぱり、無理でしょうか?
無理かと聞かれたら……無理かもしれない(苦笑)
問題なのは、オーバーテクノロジーなのはセリス君だけであって、虎の国本体はそうでもないこと、とか。
全ての世界の基準は猫(つーかこちむい)だからなぁ。
いつからスレタイと合わなくなったんだw
>>625 基本の段階でカラオケと方天画戟が共存してるんだから、面白ければ整合性とかあまり気にするなということかw
……オーバーテクノロジーよりも、この世界って超人増えたな。
どう考えてもリナ様より強いだろって感じのジークたんにファルム様にセリス君にステイプルトン。
ジークたんに倒されたけどあの敵役の魔術師。
さらに蛇の国に落ちてきた彼。
リュナ卿やサーラ様も何げにかなりいい勝負しそうだし。
>>623 銃火器方面は、かなり無茶効く気がする・・・。
同じ時代の先進国同士の品でも、整備性・生産性・値段がピンキリみたいだし。
ミサイルも、アナログな装置で結構良い品作れますし。
カモシカの国に土地買って、魔法でステンレス生産できる工場でも作ろうものなら、
税金で売上の0.0x%をピンハネするだけでも、かなりの外貨が国や地元自治体に舞い込んできそう。
どこの国も、そんな高級な鉄を湯水のように生産できる設備なさそうだし・・・。
>>627 たしかに、超人増えたねぇw
エリーゼも、たぶん任務の中身やら使える魔法やらを考えると……ステイプルトンと同程度の力を持つ可能性はあるし。
まだドラゴンボール化してないだけマシとはいえ、すでに「無双のリナ」が半分「人間最強のクリリン」と同レベルになってる気がw
個人的にはセリス君よりスティングレイフの方が「やっちまったな」感は強いかも。
アレが有りなら、ある意味何でもありって思うし。
面白けりゃなんだって良いじゃないかと思う(苦笑
世界観について綿密な打ち合わせしてたわけでもないし……。
×スティングレイフ
○ディンスレイフ
……ステイプルトンとディンスレイフがごっちゃになったorz
>>631 いや、それは同感w
>>617-619 過分な賞賛ありがとうございます。
後編もなるたけ早く提供したい所存です。
・・・・・・冬期休暇中にどこまで進むかなあ。
あ、あとかってにカモシカのハイランダーに妙な剣術があることにしてしまいました。
・・・・・・まあ、彼の部族独自の技術って事で。ちなみに元ネタ↓
ttp://www1.neweb.ne.jp/wb/kaname/ahund/manual/manualFSA.htm >>623 ぶっちゃけ「未知の設計図面から実際に物を作り上げる技術者」を育成するだけでも2年は必要かと。
蒸気機関レベルの工業規格には存在しない概念の機械加工とか多いでしょうし。(特に電気・電子系)
大がかりな機械を作るとなると溶接という加工がどうしても必要になってくるんですが、
当然それをやる為の技術者も一人や二人じゃ足りませんし、それに設備・ガスも必要。
工場運営できるレベルとなるとそれなりにわかる人間の人数も必要で(メンテ等)、なにより高精度の
基礎的な機械部品(パイプ、ボルト、ナット、ワッシャ、パッキン、ダボ.etc)を大量に生産する設備も必要なわけで
それを含めると、それはもう・・・・・・。「セリス君いつ寝てるの?一日30時間働いてない?」レベルの忙しさに。
>>628 銃火器に関してはリアル世界でも「設計図もなしにAK作るガンスミス」なんてえのがいまして、
アフガニスタンの話なんですが。なんでも作り方を「手で」憶えてしまっているとか。職人ってすげえ。
あと作りが簡単な銃というとリベレーターなん色物のがありますな。
>>629 エリーゼはあんな化物みたいに強くねえです。
彼女の本当の強さは「知らない国に一人で出向いて1〜2年でならず者の組織を作る」技術です。
よーするにビンラディンみたいなコアとして活動するテロリストなわけですな。
剣も魔法も一流レベルではなく、それを組み合わせた戦闘術も一対一の状況に特化した物だったりするので
実は一般の兵士3人に囲まれるとなすすべ無いというw集団戦であの火の魔法使ったらえらいことになるしw
ズィーキュンの続編マダー?
数年そこいらでレールガン造っちゃうんだから、セリス君の魔法じゃないの?
636 :
虎の子:2005/12/30(金) 13:20:32 ID:VVyoqFB/
>>633 ええと、電子部品や技術者は猫の国の人達を裏表関係なく、札束でひっぱたいて連れてきて、部品もそっちで生産した物を買って来れば可能と思います。
細かい電子部品も最初の内は、猫の国の工場に発注して作ってもらうと言う事で―――
後はもう、自動車組み立ての要領で、発注した部品を流れ作業的に組み立てればOKかと
そう言えば、この世界の硬貨は一体何で出来てるんでしょうか、
金銀が暴落しているから、やはり魔法金属か何かでしょうか?
セパタの通貨保障をするものが金銀以外であれば、何の材質でも大丈夫かと思いますが、
偽造対策を考えるとなにがしかの魔法はかけられているかと。
638 :
蛇担当:2005/12/30(金) 21:30:07 ID:38u5wzob
なんの疑問もなくラーメン屋台で銀貨出してたな・・・・・・。
まあ、地域ごとに金属の希少度が違うって事で。
>>638 あんたのは面白いからその辺気にならない
>>636-638 賢者の石が無制限に生産可能というわけではないから、
暴落とはいえ金銀が無価値になったわけではないと思われ。
カモシカの国が陥った状況っていうのは、
実歴史に見るなら、メキシコでの銀の大量採掘における世界的な銀大暴落とか、
80年代日本の円高(これにより資源の価値が相対的に半額以下に暴落)による国内鉱山の閉山とか、
そんな感じなんじゃないかと。
結局、錬金術が成立しても、金銀の希少性・価値の帰着先が
埋蔵量・採掘コストから、エリクサーの生産性の問題へ変わるだけなわけで。
642 :
カモシカ担当:2005/12/31(土) 18:19:49 ID:bmHYVZjP
えーと、結局第十話、間に合いませんでしたorz
でも、くじけずに来年も頑張ります。
それでは皆様、よいお年を。
あけましておめでとうございます
昨年は非常に良作に恵まれた年でございました
今年も荒れる事無く良作が投下されますように
また、作者様一同がご健勝であられますように
心より願っております。
どうか皆様、今年もよろしくお願いいたします。
あけましておめでとうございます。
旧年中はお世話になりました。
今年の目標は「岩と森の国ものがたり」の完結と、あと……
幼女でメイド服で「だんなさま」って呼んでくれるヒト召使の物語を文章化したいですw
645 :
虎の子:2006/01/02(月) 11:46:37 ID:faSFPqkb
あけましておめでとうございます。
元日の初詣で生まれて初めて大吉を引き当てました。
が、逆に一年分の運気を使い果たしてないか不安な虎の子です。
ただ今見直し中なので、短いですが今夜中に新年の一発目を投稿出来ると思います。
それでは皆様、今年もよろしくお願いします。
あけましておめでとうございます
>>644 >幼女でメイド服で「だんなさま」って呼んでくれるヒト召使の物語を文章化したいですw
ムッハァ 期待してます!
>>645 >が、逆に一年分の運気を使い果たしてないか不安な虎の子です。
いや、それおみくじの意味無いでしょw
>ただ今見直し中なので、短いですが今夜中に新年の一発目を投稿出来ると思います。
全身舐め掃除クル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
647 :
虎の子:2006/01/02(月) 23:59:42 ID:faSFPqkb
嘲笑われた常識
図書館、つまりそこは書物と言う情報媒体の一つが多量に置かれた場所を示す。
そこに行く目的は様々で、小説、文庫、漫画などの娯楽を楽しむ者や、何か調べ物をする者、もしくはこの静かな環境を利用して勉強する者などがいる。
そして、彼らはその最後に当てはまった。
「何、これは僕に対する挑戦か何かなの?」
笑顔のまま、しかし声に怒気を込めて、セリスは自らの主に呟く。
「な、何よ。あたしだってがんばったんだからね」
ミリアの方も精一杯反論するが、その言葉に力はない。
彼女の今の姿を一言で言うならば、受験にテンパッタ受験生だろう。
頭には合格必須と書かれたはちまきが巻かれており、どてらを着込み、机の上には大量の教科書と資料集が置かれていて、その横には各種栄養ドリンクが配置されている。
目は血走っており、櫛を入れられない髪がボサボサになっていた。
「がんばった? ははは、これを努力というのか? これは研鑽だったのか? そうかそうか、そうだったんだね。うん、その結果が―――」
セリスは乾いた笑いを上げると、紙の束を机に叩き付ける。
648 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:00:45 ID:faSFPqkb
「これなんだね」
叩き付けた紙の束、その全てに赤ペンで大きく0の文字が印字されていた。
「ねえ、ご主人様、冗談だよね。仮にもこの魔王たる僕が教えてるんだよ。それがなぜ0点しか取れないの? 嘘でしょ。冗談でしょ。ふざけているだけだよね。て言うか、最後の奴は全部同じ問題なんだよ」
相手を責めると言うより、自分が現実逃避するためにセリスは呟く。
「――それに、あれでもちゃんと授業に付いてきてるんだよ」
そう言ってあれを指し示す。
「………あれってお前な」
指さされた『あれ』が、何やら不満げな声を上げたがセリスは無視した。
「くそ、やっぱり基礎の復習をもっと念入りにやった方が良かったのか―――」
「あのな」
「それよりやっぱり、数学の計算力を付けるべきか―――」
「いい加減、無駄な事は」
「睡眠学習を取り入れた方がいいか、休眠中の海馬にパルス信号を送って―――」
「人生諦めも肝心だぞ」
「いっそ、脳味噌を改造するか八割方廃人になるけど」
「いや、だからこれだけやっても無駄って言うか、お前より長い付き合いだがそれがどれだけ不毛な事か分かっているつもりなんだが」
649 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:01:33 ID:faSFPqkb
「…………っ、うるさいっ!!」
セリスは机に拳を叩き付けた。
その衝撃で積み上げられた、教科書が崩れ落ちるが誰も気にしない。
「今、ご主人様の馬鹿を直す対抗策を考えているんだから邪魔しないでよっ!!」
並の人間なら失神しそうな殺気を放っているが、シルスはまるで哀れむような視線をセリスに向ける。
「あのな、ミリアはただの馬鹿じゃないんだぞ。なんてたって、数学の教師が『お願いですから、真面目にやってください』って、土下座するぐらい馬鹿なんだぞ」
「そんな事は分かっているよっ!! この馬鹿さ加減が世界遺産的なんて事はとうの昔にっっ!! だけど馬鹿にだって努力する権利はあるんだよっ!!」
「いや、努力でどうにかなるレベルじゃないし。この馬鹿レベルは」
「ご主人様は、確かに馬鹿レベル百の大馬鹿かもしれないけど、それだって魔王の僕に治せない訳無いじゃないかっ!!」
「治せるのか? この馬鹿を」
「…………………………」
微かに光明を見つけたようなシルスの視線から目を逸らし、セリスはミリアの方に視線を向けた。
「………………………………………と、ともかくどんな大馬鹿でも、僕のご主人様なんだから、絶対頭脳明晰になって貰わなくちゃ困るんだよっ!!」
机に突っ伏して頭を抱える主からさりげなく視線をはずし、セリスは断言する。
「いや、いくら何でもミリアの馬鹿は治らないと思うげふぅっ!」
分厚い百科事典で顔面を殴打されてシルスはひっくり返った。
650 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:02:46 ID:faSFPqkb
「…………さっきから聞いていれば人の事を馬鹿馬鹿って」
ゆらりと幽鬼の如くミリアが机から立ち上がる。
「何、あんた達あたしの事をそんなに馬鹿にしたいの? 三日三晩一睡もさせずにこんな所に缶詰にして、それで口を開けば馬鹿だのアホだの―――」
「いや、事実だしぐふぇっ!!」
的確な意見を呟いたシルスののど元に分厚い教科書が叩き付けられる。
「あたしだって、がんばったわよ。努力したわよ。だけど仕方ないじゃない。頭が悪いのは生まれつきなのよ」
下を向きながら肩を振るわせ、その紅い髪を亡霊の如く垂れさせる。
「それをあんた達は、馬鹿馬鹿っていい加減あたしも我慢の限界よ」
(いや、待て、なぜそこで分厚そうな本を両手に持つ?)
声帯が麻痺しているためシルスは心の中で突っ込んだが、無論そんな物はミリアには届かない。
何やら、幼なじみの背後にどす黒い闘気のような物が立ち上がるのをシルスは確かに見た。
(ま、待て落ち着け、)
声が出ないため心の中で叫ぶが、ミリアに心を読む力など無い。
シルスの思いも虚しく、ミリアは腕を振りかぶった。
「それでも我慢して、大嫌いな勉強を続けてるのよ。それなのにあんた達はあああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
絶叫と共に本を投擲、しかも此処は図書館、投げるべき物には事欠かない。
とってもお偉い学者が書いた分厚い論文が、辞典が、図鑑が次々宙を舞いシルスに激突する。
著者達も自分が書いた物が凶器として使われるとは思いもしなかっただろうが、その巨大さと質量と形の破壊力は武器として申し分ない。
かくして、物理的攻撃力に変換されたミリアの怒りは、その全てが存分にシルスに浴びせられたのだ。
そのある意味、知識を冒涜するような凄惨なリンチはミリアが図書館の職員に止められるまで続くこととなる。
無論の事、セリスはとうの昔にその場から姿を消していた。
651 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:04:14 ID:E2A5s/Gz
「さて、ご主人様がとてつもない馬鹿だと証明できたわけで、その対策を講じなければいけないんだけど何か意見はある?」
蔵書に囲まれたセリスの部屋、そこには『第一回チキチキミリアの馬鹿への対策を語り合う会』と言う垂れ幕が下がっていた。
ちなみに参加者は、セリスの他に当事者のミリアとシルスだけである。
「いや、もう諦めた方がいいと思うぞ」
シルスが即座に無難な意見を口にするが、セリスは無視した。
と言うか先程ミリアの凄惨なリンチを受けてから、それほど間もないというのにシルスの体には傷一つ無いのはある意味異常だ。
「あのね、僕が仕えてるんだよ。この魔王たる僕が、その自覚がご主人様にはないの?」
「な、何よ。頭なんか悪くたっていいじゃない」
「何を言ってるのさっ!! ご主人様はただでさえ、アホで間抜けな顔してるんだから、真空状態の頭蓋骨の中身を多少は埋める努力をしないと、政治の世界に出てからに出て馬鹿にされるよっ!!」
ミリアの反論をセリスは恐ろしく失礼な言葉と共に切り捨てる。
おそらく、三日三晩実り無い授業をさせられた事を根に持っているのだろう。
652 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:05:19 ID:faSFPqkb
「僕なりに考えたんだけど、つまり僕は人に物を教えるのに向いてないんだ」
青筋を浮かべる主をないがしろにして、セリスは自分の意見を述べる。
「一応、僕も魔王なんて、数百年に一度ぐらい超高位の魔法使いや魔術師に力を貸したり、知識を与えたりする事があったんだけど、そう言うの存在は正に常識外の天才なわけで――」
そこまで言ってセリスはピシッとミリアに指を突き付けた。
「こんな、大馬鹿者に物事を教える経験なんて皆無だったんだよっ!!」
「それってただ単に、お前に人に物を教える才能が皆無なだけ何じゃないのか?」
拳を握りしめて熱弁を振るうセリスに、シルスは何気なく呟く。
「…………………」
「…………………」
シルスとセリス、二人の視線が数秒無言のまま絡み合う。
「―――そこで提案なんだけど、どこからか家庭教師を招こうと思うんだ」
自分に不都合な沈黙を即座に切り捨て、話を再開したセリスを多少呆れた目で見ながらシルスは問い返した。
「……………家庭教師?」
「そう、ご主人様の教育係で教育の専門家を招こうと思うんだ。候補は、こんな感じで――」
セリスが横から取り出したホワイトボードには複数の名前が書かれていた。
653 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:06:15 ID:E2A5s/Gz
血塗れフローラ、
因果の女王アナヒータ
イワシ姫マナ、
揮奏者ディンスレイフ、
死の克服者パルトラ、
怠惰なる賢者エニヒッシ、
屍使いボルグイノス、
無垢なる外道レンピネスク、
魔に魅入られし精霊使いミドルア、
等々、
おおよそ、魔法や科学、錬金術、遺失魔法の分野で有名な者達が、セリスの指し示したホワイトボードに書かれていた。
ただし、指奏者やら屍使いやら、教育者の道どころか人道を踏み外してそうなのがちらほら見受けられたりもするのはどうだろう。
しかし、何よりシルスは思った。
654 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:07:15 ID:E2A5s/Gz
「……………まあ、呼べる呼べないは置いておくとして、この全員が束になっても無駄な気がするのは俺だけか?」
シルスとセリスの二人が顔を見合わせ、同時にミリアを一瞥しこれまた同時に―――
「「………………ふうっ」」
「ケンカ売ってるの? あんた達」
どこか疲れた溜息を吐く二人に、ミリアの怒りは煮立っていく。
「いや、世の中は無情だなと思って――」
「そう言う物だよな」
どこか達観した表情で向かい合い、再び同時に嘆息。
「あ・ん・た・ら・ねぇ」
怒りのボルテージが振り切れ、ミリアは手近にあった灰皿を掴む。
「じゃあ、探してくるしかないか―――」
「探すって、どこに?」
「ちょっと遠出でして王都まで行ってくるよ。あそこの研究施設で頭の良さそうなのを二、三人見繕ってくるよ」
「見繕って来るって、そんな簡単に貸してくれるのかよ」
「お兄ちゃん、何のために僕が麻薬の合成なんかしたと思うのさ」
シルスのもっともな意見に、セリスは肩をすくめた。
655 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:08:23 ID:E2A5s/Gz
「今現在、この領地の財政は表向きは大した変化はないけど、実際には現金はもちろんのこと、証券、多種多様な魔法金属のインゴットが置かれているからね。伯爵レベルの領地ぐらいの財はあるよ」
「それを使うのか?」
セリスが合成した麻薬は、非合法組織を通じて大陸中に輸出され、この領地に巨万の富をもたらした。
書類上は変化していないが、地下の隠し金庫には莫大な資産が眠っている。
ただし、あくまで非合法な財であり、大ぴっらな使い方は出来ない。
「そのためのお金だよ。それと、そろそろ合法な産業に着手しないといけない。弱小領地の財政が潤沢すぎれば、いずれ怪しまれる」
いくら儲けたとしても、使い方に制限のある金はそれほど役に立たないのだ。
しかし、正当な産業を興し発展させ、その儲けの中に非合法な儲けを混ぜ合わせれば、その出所を探るのは困難になる。
「それと、一筆書いてくれる。『この者を代理として技術者の提供を求む』って」
さすがに見た目がヒトの小僧一人が、大金を持っていたら怪しまれてしまう。
「ご主人様、一週間ぐらい留守にするけど―――」
「へ?」
投擲物、(灰皿、猫の置物、文鎮、坪)を掻き集めていたミリアの動きが止まる。
656 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:13:28 ID:E2A5s/Gz
「る、留守にするの」
「そうだよ、寂しい?」
「…………う、うんそうね。とっても寂しいわ」
心の底から嬉しそうに、ミリアは喜色満面で首を振る。
「もう、何、とっても残念よ。貫徹で勉強させられたり、 変な薬の実験台にさせられたりしないから、二度と返ってくるなこの野郎なんて欠片も思っていないわっ!!」
まるでこの世の楽園を見つけたかの如く、ミリアの心は浮き足立っていた。
セリスが居ない日常、変な悪戯も嫌いな勉強もさせられない日々、それを思い浮かべるだけで心が弾む。
「だから凄く悲しいわ。いっそのこと半永久的に帰って来るなとか、何かの事故で記憶を失って全て忘れろとかになったら、凄く嬉しいなって思わないでもない気はしないけど―――」
夢見る乙女の如くミリアはうっとりとした表情になる。
それに対しミリアの一言ごとに、セリスの目が冷ややかになっていく。
「うん、そうだね。でもね、ご主人様」
セリスがミリアの手を取る。
657 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:14:32 ID:E2A5s/Gz
「な、何!?」
今まで下僕に体を触られてろくな事がなかったため、ミリアはあらか様に警戒する。
「そんなに警戒しないでよ。僕も寂しいんだから――」
その時、ミリアは初めて下僕の腕が震えている事に気付いた。
まるで飼い主に見捨てられた子犬のように上目遣いで見上げてくる。
「いや、あの――」
普段の生意気な態度が嘘のようにしおらしい。
顔付きも愛らしく、華奢で小柄な体付きのセリスにそんな表情をされると、誰だって自然と頬が赤くなるだろう。
いや、絶対誰だって―――
セリスの背後に居るシルスが深々と嘆息したようだが、そちらにはガラスの灰皿を叩き付けておく。
「そ、そりゃあ、あたしだって多少は―――」
どこか拗ねたように下僕から視線を外し、口の中でもごもご呟く。
「だからね、僕の事を一日も忘れないように課題をタップリ出してあげる」
「…………え?」
「うん、ご主人様が大の苦手にしている、高等数学と物理工学の課題を山ほど出してあげるから、そのカビの生えて発酵しかけの脳味噌に、僕の事を焼き付けてね」
信徒に祝福を与える天使の如く、セリスの顔は慈悲深い。
手に持っているのは死に神の大鎌だが―――
「もちろん、さぼったりしたら、うふふふ」
明言はしないが、その微笑みは正に魔王のように人の不安を煽る物だった。
「と言う訳で、ご主人様死ぬほどがんばってね。いっそのこと死んで、転生し無いと駄目なぐらいの量があるから」
唖然とする主から躊躇いなく手を外し、セリスは笑顔で部屋を出て行く。
「愛してるよ。ご主人様」
ケラケラと笑いながら、セリスは部屋の外に消える。
「…………学習力がないな」
ポツリと呟いたシルスの顔面に、ミリアは猫の置物を投げつけた。
658 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:18:44 ID:E2A5s/Gz
今回はエロなしです。
次回もおそらくエロなしです。
その次ぐらいで、エロが出せたらいいなと思います。
>>646 すいません、今回は舐めません。
その話はまた機会があったら書こうと思います。
659 :
虎の子:2006/01/03(火) 00:53:26 ID:E2A5s/Gz
スレには関係ありませんが、少し皆さんにお聞きしたい事があります。
おみくじについてなのですが、あれは悪い内容が出たら木に結びつけるのか、良い内容を結びつけるのでしょうか?
ちょっとした疑問なんですが、皆さんはどうしているでしょうか?
ちなみに私は結びましたが、途中でおみくじが真っ二つに裂けてしまいそれをそのまま結びつけてしまいました。
>>659 >引いた後の神籤を境内の木などに結ぶ習慣がある。
>本来は「結ぶ」が「縁結び」に通じることから、祭神に縁結びの神徳がある
>神社でのみ行うものであるが、祭神に関係なくどの寺社でも行われていた。
>二月堂のように千枚通しのようなものにおみくじを刺すところもある。
>だが近年、木に結ぶと木の生育が悪くなるため、神籤を結ぶための場所を
>用意している寺社が多数を占める。 (“おみくじ‐Wikipedia”より)
>>おみくじは持ち帰るもの?結んで帰るもの?
>■ おみくじには神や仏からのありがたいメッセージやパワーが秘められているので
>吉凶にかかわらず記されている教訓を戒めるつもりで持ち歩き、後にお礼を込めて納める。
>■ 自分にとって都合の悪いおみくじはその場で結びつけ、さらなるご加護をお願いする。
>良いおみくじは持ち帰り、後日境内に結ぶこと。
>つまり、その場で結ぶのは凶をとどめて吉に転じるようにお願いする場合のみ。
>また、たとえ凶であっても自分への戒めとして持って帰っていいようです。
>>おみくじをどこに結びつけたらいいの?
>おみくじをむやみに捨ててはいけません。その場にせよ、持って帰るにせよ
>神や仏と縁を「結ぶ」ため、時が経ったら境内に結んでください。
>(必ずしも、おみくじを引いた寺社でなくとも良いそうです)
>また、「凶のおみくじを利き腕と反対の手で結べば、困難な行いを達成することによって
>凶が吉に転じる」という説もあります。
>おみくじを木々の枝に結ぶのは、木々のみなぎる生命力にあやかり、願い事が
>しっかり結ばれますように…という祈りが込められているそうです。
>■ ただし、むやみに境内の木々に結びつけると植物が傷みますし、
>景観を損なう心配もあります。「おみくじ結び所」が指定されている場合には
>必ず指定された場所へ結んでください! (“おみくじ…その勘違いが運を逃します‐All About”より)
ちなみに自分は、何が出ても必ず持ち帰りますが。
虎の子さんGJ
セリス君、典型的な「理解できないことが理解できない」病にかかってますなw
ほっぺたを照らす水底の光。
汗ばむ肌に触れあう、ひんやりとした感触と、その奥の鼓動。
絡まる指と、髪を梳く指。
あたしは、まどろみに身を任せながら頬をシーツにすり寄せる。
耳元に吹きつけられた吐息にあたしはぴくっと身をすくませて。
短く、呟く。
「お水……」
溜め息と苦笑する声。背中の重みが消えて。
衣擦れの音に続いて、瓶からコップに真水を注ぐ音。
「おいで」
シーツの上を這うようにずりずり動き、少し身を起こして受け取ると一息つく。
さっきまで腰があった位置がちょっと冷たい。
円窓に目を向けると、ちょうど熱帯魚が窓の前を横切っていった。外は明るい。
コップを枕元のテーブルに置こうとして、腕に触れた小箱をひっくり返す。
床に硬い音が散らばった。
シーツの枕元にもそれは飛んできて。
「やれやれ」
ファルムの指が拾い上げて、寝ころんでいるあたしのまわりに並べていく。あたしも手伝って天蓋付きの寝台の上に、すべてひろげる。
内側に絵が描かれた二枚貝は、貝合わせに使う玩具で。
二つの絵柄を合わせて語る、暇つぶし。それらは符号にもなっていて、組み合わせると特定の単語になる。
娯楽に飢えているあたしに、ファルムは時折これを使ってお話をしてくれる。
たとえば、『戻る』と『王国』の貝なら、魔窟より深いファルムの棲み処より、もっと遠いところにある都となるらしい。
『旧き』と『氏族』の貝ならリテアナさん達のこと。『王国』には一切属さない、だけど気にかけてる。そんな感じ。
ファルムはそのまま寝台に腰掛け、手首のトゲヒレで二枚貝を弄んでいた。
寝台のちょうど真横に位置する部屋の片側の壁は水が流れていて、鏡のように部屋を映し出す。
豪奢な寝台にぐったりと横たわっている、少し波打った、小さな人影。腰の辺りにだけ、シーツをかけて他は何も纏っていない。
背後に見えるファルムの姿。こちらも装身具の他は特に身につけていなかった。
あたしは半ば無意識に、手さぐりでそっと自分の太股の間に触れる。
うわ、まだぬるぬるだ…。
指先に付いた白濁したぬるぬるをちょっと見て、シーツで拭く。
ファルムは考え事をしているらしく、貝を選り分けるトゲだけが緩慢に動いている。
肩から背中にかけて、白い膚に時折透ける赤黄色の鱗。
あたしの耳と同じ位置に生えてる赤黄色のトゲヒレ耳と、後頭部から背中にかけて腰のラインまで垂れ下がる深紅の長いトゲヒレ。
貝を選り分ける手が止まった。
あたしは手元を覗き込む。
『扇』、それに『爪』。
「これは?」
あたしの声に、考えから引き戻されたのか、ファルムは短く言った。
「かつてサカナの国の都を探し求めた陸(おか)の獣の意。転じて、旧き氏族の天敵」
あたしは布製の枕に頬を埋めた。
布製の枕はあたし専用で、トゲトゲの邪魔なファルムは使ってない。寝台にシーツをひくのは単に趣味らしいけど。
ファルムが貝を弾くかわりに、手を伸ばして、あたしの髪を梳く。
「……陸の扇より来る獣はサカナの国を見つけ出せず、旧き氏族に爪をもって問うた。旧き氏族は黙し、互いに命を水底に沈め、波は去った」
語りの口調で述べた後、溜め息をひとつ、ファルムはついた。
「敵は陸の扇の爪だけにあらず。落ちものもまた、災いなり」
あたしも落ちもの、っていうらしい。
籠もっていた頃は実感がわかなかったけど、魔窟に来てから腑に落ちた。
魔窟に流れ着いた品々の中には時折、こことはまったく違う絵が重なることがある。懐かしさはないのに、なんとなくそれは幻覚じゃなくて、かつて見たことのあるもので。
それが落ちものの証。そして、何よりも獣とかサカナとかトリとか、混じってない変な姿のヒトのあたしのこの体が、落ちものの証。
「落ちものは海を汚す。落ちものは海を傷つける。鋭い爪の傷よりも、深く海底をえぐる。目覚める度に死は人々を連れ去る」
たとえ陸地に出ても、そこはあたしの、世界じゃない。落ちる前の世界じゃない。
あたしは、あたしは……。
身を縮こめると、ファルムが微かに苦笑した。
枕を抱きしめるあたしの手に、自分の手を重ね合わせる。
あたしは、指の間に潜り込んできたファルムの白いみずかきのある指を、ぎゅっと強く握りしめた。
こうしていれば恐くなかった。
「終わることのない日々に人々は倦み、やがてそれはこう囁かれた。
『逃れ戻ってきた王国の移動に伴う強大な魔力が、陸の扇で起こる空間のひずみを引き寄せ、二つの災禍をもたらした。だから泡の中に閉じこもっておるのだ』、と」
ファルムの言葉には、淡々とした響きがある。突き放したような物言いは、あたしの中の疑問を置き去りにする。
それが言いがかりなのか、真実なのか。
「疑惑の殻の中は狭く、人々はやがて棲み処を求め、争い始めた」
どこか遠い痛みなのに、胸が重い。
「いくつもの氏族が泡と消え、あぶれた民は新たな海を目指し散っていった。爪が去り、この海を挟む国々とも便りが途絶え、人は減った。だが、争いは終わらなかった」
あたしには想像もつかない長い時の流れ。
それをファルムは見てきたように語る。
「落ちものへの対処こそが新たな争いの元だった。武力だけではどうすることもできないのが落ちものだからねえ。
もともとこの海域の奴等は魔力持ちが根づかない。血の気が多くて国を作るには至らない奴等ばかりが残ったからさ。数少ない魔力持ちは独りで生き延びてきただけあって、氏族が滅びたはぐれ者に多かった」
声が冷ややかさと湿り気を帯びた。何故だかすっとファルムの膚が冷たくなったような気がして。
あたしはファルムの顔を見た。
ファルムは、読めない表情を浮かべていた。
彫像のような、白い肌。胸の曲線も、引き締まったお腹も、胸に比べると控えめなお尻も、感情が出るトゲヒレも、ぴくりとも動かない。
「…まあ、悪夢はけっこう前に終わったんだけどね」
少し間を置いて、ファルムが呟いた。
あたしの髪を撫でて、ファルムの手が離れる。
あたしはそれ以上追及できず、貝を小箱に片づけ始めたファルムを見つめることしか出来なかった。
ファルムは、過去にいろいろあったんじゃないかなって思う。
これまで会った他の人は誰もが、ファルムをマダムと呼んでた。
マダムって呼ばれてるファルムはあたしと一緒にいる時より纏う雰囲気が妖しい。
どのくらいの知名度があるのかは掴めてないけど、みんなマダムファルムしか知らないみたい。
マダムファルム。そう呼ばれる通りに振るまい、常に心がけて、それが自然になってる。
でも、あたしは、マダムファルムなんて呼ばない。魔女ファルムとも呼ばない。
せめてあたしが隣にいる時は、ただのファルムでいい、と思う。
理屈とか、歴史とかわかんないから。
ファルムが背負ってるものを知らないヒトがひとりいてもいいと思う。
まあ、自分の背負ってるものもわからないんだけど……。
(セレフィアじゃ抜けなかったし)
ふっと、頭の中を唐突に、ある言葉が通り抜けた。
心の奥がちくっとする。
……なんでひっかかってるんだろ。
「ねえ…」
言葉を紡ごうとして、声をかけたはずだった。
ファルムは小箱をテーブルに片づけようとして固まっていた。
あれ?
「……ファルム?」
つっついてみた。胸を。
うう、弾力のあるしっとりした肌と胸ですね。
あたし、どう考えても負けてる。
確か迎えに来てくれた時は胸板だったような気がするのに……。
あたしが勝手にへこんでいると、
「……『魅せ』つけてくれるねえ……リテアナ」
呟きとともに深紅のトゲヒレが動いた。
あ、拡がってく。
確か、これは魔力を使ってる時なんだけど、それよりも…。
「リテアナさん?」
あたしは身を乗り出した。
実は気になっていたのだ。
あの二人が、とくにあの子が大人しく言うことを聞くのか。
最後まで懲りてなさそうだったあの子を、叱ってくれるのかどうか。
逆ギレしてたらどうしよう、とか。
不安が思わず顔に出たのか、ファルムが笑んだ。
「気になるかい?」
こくりと頷く。
「そうだねえ……。シロにも見せてやろうかね。このファルムだけが『視て』いるのはもったいないからねえ」
ファルムは悪戯を思いついた子供のようにほくそ笑み、重さを感じない動きで腕を上げた。
指差した先は、サイドボードの向こう、壁を伝い落ちる、途切れることのない水鏡。
手首のトゲヒレが指に沿ってゆっくりと立ち上がり、爪のように伸び、弧を描く。
ファルムの唇が音無き声を紡ぎ、空気が震えて、水鏡に波紋が出来た。
波紋が淡い紫光を帯びて、水面に魔法陣を描き出す。
真円から拡がる、真四角の、光の模様。
水鏡いっぱいに拡がったそれが、一瞬、目も眩むほどの光を放ち。
まぶしさに手をかざしたのは一瞬。
「ご覧?」
放光する水鏡には、確かに影が映しだされていた。
音はしない。
映像だけで判断するしかないんだけど……。
なんか、ふかふかした、白。
いっぱいあるけど……これって羽毛?
あ、白い羽毛にわさわさ埋もれてたところから這い出てきた。
なんだろ、なんか視界がチョコレート色…。
ぼやけていた焦点が合う。
違う。これ、肌だ。
あまりに視点が近づきすぎて、最初把握できなかったそれは、徐々に対象から離れるのに従って明確に目に映り。
きゅっと引き締まったくびれから続く、艶やかな…お尻?
しっとりとした浅黒い肌に黒銀の腰ビレ、そして奇麗な背中。その腰をわしづかみしてる羽毛だらけの太い腕。
てことはこの視点が最初に這いだしたのは……胸毛あたりってことで……。
「え? ええええー?!」
動揺してファルムの腕にしがみつく。
その……、こういうのなんていうんだっけ? 隠し撮り? 今視てたんだから…生中継?
周囲は明るいけど、どこか日陰で。
場所は、すごく狭い、小屋?
床板が見える。
うう、それ以上視点下がらないでー。出入りしてるモノまで見えるー!
ぶんぶん頭を振っていると頭上から面白がったファルムの声が降ってきた。
「どうだい?ヨウセイの視界は。映しだすのは骨が折れるんだけどねえ…」
いや、ファルムの声、すごく愉しげで説得力ないんですが…。
「こ、これって? ど、どうやって?」
挙動不審を押し隠すように、あたしは問う。
ていうか声裏返ってるけど。
「ヨウセイの視界。目に見えないほど小さいから、見られている方は気付かないがねえ」
魔女ファルムの情報源のひとつだと、ファルムは笑った。
「魔素のないシロにはつけておくのが大変だけどねえ、勝手に着替えもするし」
「す、すみません……」
なんか、言ってる意味がわからないけど、そのヨウセイを、あたしが結果的にある程度振り払っちゃったみたいだ。
どこまで視てたんだろ。どこから視てたんだろ。ちょっと気づくの遅れたみたいだけど……。
思い返すも恥ずかしい。
顔が熱くなる。
冷たいシーツの感触を求めて視線がさまよった。
そのままぱたりと倒れ込む。
「ほら、顔をお上げ」
シーツに顔を埋めて、恥ずかしさに悶えていたあたしの背中をさらりとファルムが撫でた。
思わず体が勝手にびくっと震えてしまう。
体が勝手に反応するう……。
困ったように顔を上げると、ファルムの笑顔の向こうに水鏡の映像が大写しになっていた。
やっぱり…あの二人…っ。
ぷるんぷるん激しく揺れてる大きな乳房。
くびれた腰を押さえつけて、激しく突き込まれる羽毛に覆われたソレ。
音が聞こえてきそうな激しいお尻と腰のぶつかり合い。
膝にひっかかった白のTバック。床に落ちてる三角ブラ。
小屋中に舞い上がる羽毛。時折拡がる翼。
あれ?
頭の向こうに、もう一人……。
あの、背の低い子は……。
「そんな…」
あたしは、思わず両の手首を押さえた。まだ少し鞭の跡が残り、ひりひりするところをさする。
黒銀の巻髪が勃った乳首へと流れて、揺れた。
その頭を鷲掴みにして、リテアナさんの頭部を上から押しつけ股間への口付けを強要しているのは紛れもなく、ラフィリだった。
胸元には細い銀鎖のペンダントが揺れていて。全裸で、嬉しそうにリテアナさんを見下ろして、何か告げる。
それにリテアナさんが首を振る。
粗末な床板の上で、後ろからニワトリ男に責められ、喘ぐ声が聞こえそうで。
ごくんと唾を飲み込む。
どうゆう、こと?
あの二人に、正確にはラフィリにされたことに、体が強張る。
リテアナさんは、あの二人より偉いんだと、叱ってくれるんだと思ってたのに。
ファルムの脇腹にぎゅっと抱きついて、いやいやするように、顔を膚にすり寄せる。
「まあ見ておいで」
ファルムはあたしの背中を撫でながら告げた。軽く言ったけど、それは命令に近いもので。
ファルムの腰に抱きつきながらも、だからあたしは、そのままそれを見続ける。
リテアナさんは、四つん這いの状態で突き上げられ、こらえるように顔を上げた。
乱れた髪が顔に張り付いて、小さく開かれた紅い唇から荒い吐息が零れる。
前髪に隠れて見えない瞳。
突き上げに耐え切れなかったのか、腰が落ちかけたところを、また引き上げられる。
「ひゃっ」
息を呑んで見つめていたあたしのお尻を、ぺしり、ぺしりと、ファルムが叩く。
あう。そのリズム……だめえ……。
ラフィリの存在で引いたはずの気持ちいい波が、心とは裏腹にスイッチが入りそうになる。
画面の中では、上半身の崩れたリテアナさんが両足を広げて座り込むラフィリの下腹部に手を這わせ、目を閉じて舐め、愛撫していた。
ん?なんだろ。なんか変。何か、先程から同じ動作を繰り返してるみたい。
ラフィリの股間に光が集まり始めた。
ファルムの舌打ちが聞こえて、あたしがおそるおそるファルムを見上げた途端、光が炸裂する。
「ふえ?」
改めて視線を戻すと、ラフィリの体が、微妙に変化していた。
上半身は女の子のままだけど……その、さっきまでリテアナさんがいじってた辺りが…。
え?
ええええ?
えと。
ラフィリのは、その、あたしが、しかたなくファルムの命令でお口でして、でもその後なくなったどころか、女の子になっちゃって。
でも。
今、画面の向こうのラフィリにはあって……。
「やはり魔法陣の一部を消されていたようだねえ……」
…それは、その。あたしが、砂を蹴った時で。
術のフォロー、したはずだけど、やっぱりフォローになってなくて。
「ごめんなさい」
なんだか、目が熱くて。
視界がぼやける。
「なんだい、なんだか熱いねえ」
ファルムの白い指が自分の太股を拭い、それからあたしの顎を捉えて、顔を上げさせる。
ファルムの顔が目一杯近づいてきて。
下瞼をぺろりと舐められる。
「これと、汗は、潮の味がするのにねえ……」
そのままひょいと腰を抱き上げられて、ファルムの脚の間に座らされる。
後ろからぎゅっとされて、目の前には容赦なく画面があって。
びっくりして、涙は引っ込んでしまった。
「見ておいで、といっただろう?」
あたしはこくりと頷く。
って、なんかリテアナさんが上体起こされてニワトリ男に両足抱えられて、大股開きでラフィリにえっちい姿思いきりさらしてるところで。
ふわふわの白い羽毛に埋もれるように抱きかかえられたリテアナさんの浅黒い肌が小屋の中に差し込む光を受けて艶っぽく照り返し。
白と黒のコントラストにあたしは赤面しながらもまじまじと見てしまう。
あ、お尻だったんだ……。
前、ぱくぱくしてる。これって無修正ってやつだよね。
サカナの人って毛とかないなあ。つるつる。
そういえば、ファルムもつるつる。
「ふむ…」
「えっ、やっ…」
ファルムがあたしの足を掴んで、リテアナさんと同じポーズをとらせた。
M字に足を開かされて、軽くお尻が浮いて、ファルムの膝の上に載せられる。
「な、なんで…!」
う、うう。丸見えだよお。
リテアナさんたちに見えなくても、視線合っちゃいそうで、恥ずかしい。
「追体験はどうだい?」
あたしの膝と足首を後ろから固定しながら、ファルムが囁く。
そ、それって。
「後ろはだめだもん」
そんなことできないし。痔になったらやだし。
大真面目に呟いたら、ファルムが耳元で声を殺しながら吹き出した。腹筋が小刻みに震えるのが背中越しに伝わる。
むー。
むくれたあたしの頬をファルムのトゲヒレが軽く突っついた。
「音も聴かせて欲しいかい?」
「もしかして、ファルムには音も全部聞こえてるの?」
「当然」
「うー」
ちょっとやきもち。
ファルムは指を鳴らした。
微かな、音がつく。
セリフは聞き取れない。
でも、水音だけは、はっきり聞こえて。
そのいやらしい音にあたしは赤面する。
なんか操作してる。ニワトリ男の腰付近にいるヨウセイが拾ってる音だけ、出してるんだ〜。
「どうしたんだい?」
いじわるなファルムの声とともに、あたしの割れ目をなで上げる指。
片手で胸を拘束するように揉まれて、片手で股間をいじくられ。
あたしはすっかり弄ばれながら、足を閉じることもままならず、ぺたんとファルムの膝の上に座り込む。
音量が上がった。
『姉さま……とてもキレイだよ』
う。ラフィリの声。
あたしをいじめた時より、ずっとずっとうっとりした、興奮しきった声音。
『ラフィリ…どうして、……あっ、』
哀しげなリテアナさんの声が、ニワトリ男に足を抱え上げられて落とされる度に、切なげに跳ねる。
『だってヒレなしで遊んだからって……マダムファルムだか何だか知らないけど酷いじゃない?
第一、ぼくのアレをなくそうとした人だし。ぼくマダム嫌いなんだよね。
せっかく姉さまを喜ばせてあげられるものが生えてるのに、なかったら楽しませてあげられないじゃない?』
とても傲慢な子供らしい理屈。
ラフィリはその言葉に一切疑問を覚えていないようだった。
『マダムファルムは…あんっ、…偉い方なのよ?』
『……そんなこといって、ほんとは姉さまが好きなだけのくせに。
聞いたよ?迎えに行った時抱きついたって。ぼくに術をかける時に大人しくヒレなしに奉仕させちゃうような人なのにね』
その言葉を聞いた時、ファルムが不機嫌そうにあたしの耳を嬲った。
画面の中のリテアナさんと同じポーズで抱きかかえられるあたし。
違うのはあたしのなかにはまだファルムが侵入してないことで。
さっきから割れ目にこすりつけられる感じではそれも時間の問題だった。
『ねえ、マダムファルムのこと、好きなの?』
『ちがっ』
『ふうん……じゃあ、なんでそのこと言われてからあそこから蜜がどんどんあふれ出してくるのかな。
おしりをたっぷりいじめられて、トキオの太いのにヤられて来ちゃった?姉さまほんとはこんなに淫乱なのに。
仕事の時もプライベートの時もあんまり前面に出してくれないんだもの』
ラフィリがリテアナさんの乳首を弄んで、目を伏せて吸い始める。
ニワトリ男が胸を押さえられたリテアナさんの身動きが取れないのをいいことに、思い存分揺さぶって小刻みに突き込みを繰り返す。
リテアナさんは俯いたまま、耐えていた。
時折、深い吐息がこらえ切れずに熱っぽく吐き出される。
『ねえさま……気持ちイイ? 今ぼくが前も埋めてあげるね……』
ラフィリの興奮が最高潮に達し、久しぶりのシャフトを、リテアナさんのあそこにしきりにこすりつけていたその時。
薄く開いて吐息を漏らすだけだった赤い唇から、舌がちろりと覗いて、唇を舐めた。
それまで放心状態に見えたリテアナさんの指が、素早く動いて、今まさに挿れようとしていたラフィリの根元を押さえ込む。
『ね、姉さま?』
戸惑ったような声がラフィリから上がる。
それには構わず、リテアナさんの手が動いた。
『トキオ!』
ラフィリが顔色を変えて、リテアナさんを後ろから抱え込んでいたはずのニワトリ男に怒鳴る。
でも、視線をあげた瞬間、呆然とする。
ニワトリ男は、痺れていた。
羽毛がすべて逆立ち、大気中で静電気の弾ける音がする。
ふわりと舞い上がったリテアナさんの髪から、初めて眼の表情が垣間見えた。
その瞳は妖艶に潤み、愉悦に満ちていたけれど。
冷たく。
先程あげていた声からは想像もつかない表情で。
指から青い放電が微かに走る。
『トキオっ』
形勢が逆転したことを悟ったラフィリは逃げようとするが、時遅し。リテアナさんの指からもたらされる快楽と痛みに逆らえずに脱力し、そのまましりもちをつき、両足をひろげた姿で力なく座り込む。
まるでさっきまでのリテアナさんのように。
あたしとほとんど変わらないポーズ。
あたしは、ぞくりと背中を震わせる。
『おいたが過ぎるって言ったでしょう?ラフィリ』
リテアナさんが愉しげに宣告する。
その胎内からゆっくりと硬直したままのニワトリ男のシャフトが抜けていく。
濡れた太股と、トゲヒレをラフィリに見せつけるように立ち上がり、足を進める。
『奴隷とのお楽しみはともかく、あなたにもイイ思いをさせるわけにはいかないわ』
細い紐でラフィリのシャフトの根元が縛り上げられる。
『ねえさま、何をっ』
ラフィリはそうはいうものの、体が痺れて言うことを聞かないようだ。
リテアナさんは無視してニワトリ男に向き直った。
ニワトリ男はシャフトを天に向けたまま固まっている。
『ラフィリの甘言に付き合うの、気持ち良かった?』
ぞわっとニワトリ男の体中の羽毛が逆立ち、ぴりぴりと空中に青く放電する。その時、ちらりと首に細い鎖についた籠入りの黒真珠が見えた。
あれは、ファルムの耳飾りと同じもの。ずっと粒は小さいけど。
「革だと水を吸った時に首に食い込むからねえ」
ファルムが愉しげに呟く。
その意味合いはファルムのものとは天と地ほど違っていて。
どちらかというとあたしのチョーカーに近い、より強い…。
『誰がご主人様だか、言ってごらんなさいな、トキオ』
ラフィリに見せつけるように、白い羽毛に覆われたマッチョな体に黒銀の艶めかしいサカナが絡みつく。
表情の分かりにくいニワトリの鶏冠を、手首のトゲヒレと細い指が撫でる。
『リテアナ様……です』
リテアナさんの指が、ニワトリ男の臀部に這わされ、股間に消えた。
『では、あの子は…?』
おしりに指を突っ込まれたまま、ニワトリ男がうめく。
『リテアナ様の…っ、大切な、宝物です』
『でもいいわよ?汚しちゃって』
『え?』
二人の声が同時に重なった。
リテアナさんは当然、といった顔で、冷笑を浮かべる。
『…ほら』
『うっ』
リテアナさんの指の動きで、限界まで怒張したニワトリ男のそれから、ラフィリの顔面にむかって白濁が飛び散った。
『美味しい?ラフィリ』
リテアナさんはそれを見下ろして微笑んだ。
咽せたラフィリは、顔中を白濁で汚して、信じられないというように口をぱくぱくさせる。
瞼の上にもとろりと白濁がかかって、その目は開けない。
『ねえ、さまぁ……』
じくじくとラフィリのシャフトから透明な液が滲み出る。
『どうしたの?イキタイの?』
リテアナさんの声は優しい。でもとても色っぽく、そして残酷だった。
ラフィリの目に、涙が浮かぶ。
黒いヒレ耳をしゅんと下向けたその姿は、年相応にしおらしく。
でもあたしにはそれもちょっと演技がかってるように見えた。
『可愛いラフィリ。残念だけど、あなたにはマダムファルムの機嫌を損ねるだけの価値は無いの。ちょうどいいわ、あなたにも後ろの気持ち良さを教えてあげる。それとも前がいいかしら?』
リテアナさんは動じない。
『やめて、ねえさまっ。ぼく……言うこと聞きますから、もう悪戯はしませんから……トリ族のヤツに初めてを渡さないでくださいっ!』
ラフィリは怯えながらひくひくと足を震わせていた。
その媚態にどくんと、萎えかけていたニワトリ男のシャフトが復活し始める。
『ちょっと、本気じゃないよね?トキオ』
ラフィリが慌てて、牽制するように哀願の声を上げる。もう、声にも余裕のかけらは無かった。
ニワトリ男は小刻みに電気刺激を受けて、理性が砕けたような濁った眼をラフィリに向けた。
『ほら、ラフィリが頼んでいるんですもの……ね?』
リテアナさんがささやく。
白いトリの大男が、小柄なサカナのラフィリに覆いかぶさっていく。
『やめっ、…』
その後、唐突に、画面は途絶えた。
「ファルムっ」
あたしは振り向こうとして、唇をファルムの指でふさがれる。
「んんっ、むー、んくっ」
口の中を嬲る、ファルムの爪のない指。
脇を這う、ファルムの舌。
手足の自由はたくみに奪われ、あたしの中をすべてかき乱すように、ファルムのシャフトが埋まっていく。
それをすんなり受け入れていくあたしがいる。
ファルムの集中力が切れたのか、それとも見せたくなかったのか。
わからないけど。
体を駆け巡るすべての感情が、快楽で塗り替えられ、まるでさっき映し出されていた事が幻のように、あたしの頭も何も考えられなくなっていく。
「ねえ?お仕置きは気持ちいいだろう?シロ……」
リテアナさんの声音と被る、ファルムの低い、興奮を押し殺した囁き声。
暗転する世界。
ほっぺたを照らす水底の光。
あたしは目を覚ますと、真水をもらって飲んでから、リテアナさんの動向を尋ねる。
ファルムはヨウセイさんを使役して、こっそり水鏡に映してくれる。
『あまりおいたが過ぎるとイワシ姫に食べられちゃうわよ?』
どこかの、小屋。
別れた時と同じ、ワンピースを身に付けたリテアナさんが、何事も無かったように立ち上がる。
羽毛が逆立ったまま固まっているニワトリ男と、気絶しているラフィリの影が、視界の隅に映る。
なんで裸なんだろ?
ヨウセイさんの目線にしっかり合わせて微笑むリテアナさん。
『ね?ちゃんとお仕置きは済ませましたでしょ?』
その声はいつもの明るい茶目っ気のある声だった。
水鏡は真実を映すとは限らない。
水鏡はウソを映すとは限らない。
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以上、クロダイ編、完結です。
>>662-700 予告をしておきながら年を越してしまい、もうしわけありませんでした。
なお、文中にはふたなり描写がございますので、お嫌いな方は避けて下さればと思います。
投下前に注意書きがなくてすみません。
では。
カサゴさんGJ!
イワシ姫に「食べられる」ラフィリ君も見てみたい気がw
次スレはまだ立てなくても大丈夫?
その前にテンプレだな。
ここに書くとオーバーしそうだから、避難所を使った方がいいかも。
そういえば、前スレ最後にWikiにテンプレ
って話があったけど、あれどうなったんだろ。
そういえば来月でスレ誕3周年でつね
埋め
クロダイ編完結おめでとさんです。
>もう悪戯はしませんから……トリ族のヤツに初めてを渡さないでくださいっ!
ラフィリたん……なんかもうすっげえ興奮したw
生中継が途絶えたのがなんとも胃炎 GJ!!
>>674さん乙です。
ちよこっとチラシの裏。
「岩と森の国ものがたり」第十話、やっと展開が見えてきました。今月中には何とかうぷれるかと。
で、自分の過去作読み返してたら。
>>346 >そして、この後添えとの間に二人の子をお生みになられた。……カミル様とカルロ様。
>ですが、お二人はそこで謎の死を遂げられた……
……カルロって、どっかで見た名前……
年齢とか出自とかも似てるような……
もしかしたら、本当は死んでなくて、黒焦げになった判別不能な死体だけ残ってたとか……
いやまあ、ネタに悩む頭が生んだ勝手な妄想なんですけどね。
王様の仕立て屋読みながら決めた名前だなんて口が裂けても言えねえな。
まだ埋まらない?
埋め終えてから新スレ逝こうぜ
埋めネタに振る話題でもないが・・・・・・
結局シロクマの続きはでるのだろうか?
修業するとか言ってたし書くんじゃねーか?
いくらなんでも他人から設定もらっておいて放置はしないだろう。
ジークの続きは書かれないとあきらめた方がいいみたいだな……
作者さんいないみたいだし……残念だ……
私待つわ、いつまでも待つわ……。・゚・(ノД`)・゚・。
感想有り難うございました。
以前どなたかが突っ込んでらした気がするのですが、
実は他のかたがたよりもはるかに設定を考えていないもので、
いろいろ組み込んだり、どうやったらエロをもっともらしく始められるか、という方向に重点を置いております。
マニアックすぎたやも…と思いましたので、読みにくい点がありましたら御容赦を。
>>672 イワシ姫のくだりは慣用句なようなものですが、ほんとに食われると大変そうですね…。
>>680 2スレ続いて止めをさしておりますが…恐縮です。
生中継は実はプロット上は最後までありました。
が、中継している側がそれを最後まで見ているかという疑問につきあたったので物語重視にさせていただきました。
埋めがてら、これにて。
うまっているかな〜?
>>689 >生中継は実はプロット上は最後までありました。
>が、中継している側がそれを最後まで見ているかという疑問につきあたったので物語重視にさせていただきました。
そこで視点変更ですよ。
埋まれ
梅梅
残念だったな!オレがいる限りこのスレは埋めさせないぜ!
ここより下は誰にもレスをつけさせない!
もしレスをつけたいというのならこのオレを倒してからカキコするんだな!
馬鹿は無視して梅梅
うめー
……そういえば、羊が居ない。
言われてみれば・・・・・・
はっ、羊書こうとしていた…
羊といえば剃毛……
バリカン
バリカンがあるかどうかは疑問だが。
バルカンならありそうだな。虎か猫の国あたりに。
,j;;;;;j,. ---一、 ` ―--‐、_ l;;;;;;
{;;;;;;ゝ T辷iフ i f'辷jァ !i;;;;;
ヾ;;;ハ ノ .::!lリ;;r゙ 埋め作業してなければ圧縮で落ちてたんじゃないか
`Z;i 〈.,_..,. ノ;;;;;;;;>
,;ぇハ、 、_,.ー-、_',. ,f゙: Y;;f そんなふうに考えていた時期が
~''戈ヽ `二´ r'´:::. `! 俺にもありました
埋まった?
まだ
埋め
706 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/31(火) 04:29:08 ID:XmamD5Wu
707 :
名無しさん@ピンキー:2006/01/31(火) 17:33:17 ID:dNdLtdcg
埋め
埋め
埋め
メエー
諸君、私は獣耳が好きだ。
諸君、私は獣耳が好きだ。
諸君、私は獣耳が大好きだ。
712 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/02(木) 00:04:10 ID:x1iaEv7k
713 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 18:08:59 ID:k27Dty5a
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅桜梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅梅
埋め
産め
母母母母母母母母母母
海 梅
海 梅
海 梅
海 梅
海 梅
海 梅
海 梅
海 梅
海 梅
海 梅梅
毎梅梅
梅 梅梅
梅 梅
苺苺苺苺苺苺苺
埋めまくり
最後ならスレ住人全員異世界に落ちる ・・・かも