「ねぇ…千百合ちゃん」
「なんですか?」
鳴滝荘4号室、通称開かずの間。
その曰く付きの部屋の主は嬉しそうにハンガーに掛けられた衣装を物色していた。
部屋には黒崎親子のダンボールに勝るとも劣らないほど、ぎっしりと埋め尽くしたたくさんの衣装。
僕はその中心に座らされている。
「ねぇ…そろそろ終わりにしない?」
「何言っているんですか、まだ始まったばかりですよ?」
「うぅ…」
僕は大きな鏡に映る一人のメイド服を着た女の子を見てがっくりとうなだれた。
僕をまっすぐに見据え、全く同じ動作をする女の子。
わかってはいるけど、未だにこれが自分の姿だとは思えなかった。
でも、この子は僕が思うように姿を変えた。
試しに笑ってみると僕を見つめる子は微笑み返してくれる。
(ホントにこれが僕なんて…信じられないよ)
友達が一目惚れする気持ちもよくわかる。
鏡に映る少女はそれくらいの魅力を秘めていた。
「りゅ〜うちゃん?」
「ひぁ!?」
「一人でニヤニヤしてなにをやってるんですか〜?」
ぼーっと鏡を見ているといきなり耳元で囁かれた。
「な、なんでもないよ、なんでもっ!」
「そうですかね〜?」
いつの間に戻ってきたのか、千百合ちゃんは僕に後ろから抱きついて囁く。
こういう時の千百合ちゃんの囁きは小悪魔的な含みを秘めている。
「さっきからずっと鏡を見てましたけど…どうしちゃったのかな〜、隆ちゃんは〜?」
「なんでもないってば!」
「そうは見えませんでしたけどねぇ〜?」
言えない。
鏡に映った自分に見とれていたなんて言えるわけがない。
「まぁ、確かにこの子は犯罪的に可愛らしいですからねぇ…」
「ち、違うって…」
「ほら、この子もあなたのこと、見つめてますよ?」
「え……」
そんな千百合ちゃんの言葉に、思わず鏡を見てその子と目が合ってしまう。
───ドクン
不意に鼓動が高鳴る。
(な…なんだろう、この感覚…)
千百合ちゃんの言葉によって僕はますますその子のことを意識してしまっていた。
「ほら、隆ちゃん…。 この子もあなたのことがとても気になるみたいですよ?」
「………」
千百合ちゃんの囁きでどんどん鼓動が早くなっていく。
僕は操られるように鏡に映る少女に釘付けになっていた。
視線の先の女の子も僕を見つめ、頬を赤らめている。
「あむ…」
「んっ……」
「ふふ…」
僕の目の前では無防備な少女が千百合ちゃんの愛撫を受けていた。
耳たぶをあまかみされ、後ろから胸をもみしだかれる。
それでも潤んだ瞳で切なげにじっと僕を見つめている。
「ほら…この子ももっと隆ちゃんに見てもらいたいって…」
「だ、ダメだよ、千百合ちゃん…」
「隆ちゃんもドキドキしてますね?」
「そんなことは…」
でも…僕は千百合ちゃんの囁きを否定することが出来なかった。
それどころか、彼女の言葉で僕の心に新しい感情がどんどん芽生え始めている。
「この子もこんなエッチな顔して…隆ちゃんが欲しいんですかねぇ?」
「……」
千百合ちゃんのなすがまま愛撫され、切なげな視線を僕に投げかける少女。
(僕は…何を考えているんだろう…)
僕は千百合ちゃんの言葉に流されるまま、鏡の中の少女に興奮を覚えていた。
「くっ…」
「ふふ…隆ちゃんもすっかり固くなってますね」
千百合ちゃんは僕の下着に手を入れ、熱く憤るものを柔らかく握った。
「だ、ダメだよ…千百合ちゃん…」
「あら? 隆ちゃん、いつもより大きくなってますよ?」
執拗な言葉責めに僕は翻弄されていた。
鏡の中では一人の少女が千百合ちゃんに責められている。
長いスカートの裾から手を入れられているためか、その下の様子は窺い知ることは出来ず、
まるで女の子が千百合ちゃんに責められているような錯覚を覚えた。
「んっくっ…うぅ……」
「隆ちゃん、自分の心に素直になりましょう…?」
「ち…ゆり…ちゃん…!」
徐々に千百合ちゃんの手は激しさを増していき、鏡の中の少女はビクビクと反応している。
それでも僕を切なげに見つめる瞳は逸らそうとはしない。
「はぁ…はぁ…」
「ほら、隆ちゃん、この子も欲しがってますよ」
「………」
「エッチな子なんだから…たっぷりかけてあげましょうね」
「う、うん…」
僕はもう千百合ちゃんの言葉を否定できなくなっていた。
僕がうなずくと鏡の中の少女は嬉しそうに笑みを浮かべた気がした。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「隆ちゃん、もう我慢できない?」
「うん…」
「ふふ…よかったわね、ご主人様がご褒美をくれるそうですよ」
「ご、ご主人様…? あ、うぅっ」
千百合ちゃんのさらに速度を増す。
緩急をつけて握り、僕は限界に達しようとしていた。
「さぁ、隆ちゃん!」
「うぅっ!」
僕は千百合ちゃんの激しい愛撫に耐えられず、ぎゅっと目をつぶった。
まぶたの裏側で乱れる少女の姿が浮かぶ。
(ご主人様…来て…来てくださいっ!)
その刹那、聞こえるはずのない声が聞こえたような気がした。
「くっうぅぅっ、もうっ…!!」
そして、限界まで達したものが一気に解き放たれた。
その瞬間、ビュクビュクと熱いものが僕の顔に降り注いだ。
「うっ…あぁ…」
脳裏には僕の精液を浴びて喜びに打ち震える少女の姿が思い浮かぶ。
僕は熱いものを何度も何度も浴び終えるとゆっくりとまぶたを開いた。
目を開いて飛び込んできた鏡の中の光景。
そこには想像と同じように顔に白濁を滴らせ、恍惚とした少女の姿があった。
「あ…あぁ…」
「ふふ、隆ちゃん、Correctですよ…ほら、この子も喜んでいます」
「…うん…」
そんな千百合ちゃんの声も聞こえなくなるほど、僕はその少女に心奪われていた。
(ご主人様…ありがとう…ございます…)
そんな声が聞こえた気がした。