チュ…ピチュ、チャク…
「ん…、はっ…あン、ア…あ…」
どうしてこんな事になっちゃったんだろう…。
「い、ヘクトル様…私…もう……」
「ん?もう我慢できないか?だろうな、ここはもうぐっしょりと濡れちまってるからな。
あとからあとから湧いてきて掬いきれねぇ。」
私の顔が羞恥に染まっていくのが分かる。
「そ、そんなこと………」
言い終わる前に唇を塞がれた。ヘクトル様の唇で。
さっきまで私のものを舐めていた唇ヘクトル様の唾液と私のモノから溢れ出た液が
混ざり合った味変な感じ。
舌を入れてきた。ぎこちないその動きを不意に微笑ましく感じて私もそれに応えてやる。
チュピチャ…
ヘクトル様が私の肩を抱く。
とさっ。
起こしていた上半身を押し倒された。離れていくヘクトル様の身体舌に絡まった唾液が糸を引いて…消える。
私はぼんやりとヘクトル様を見つめる。開脚したままの体勢がなんかヤラシイ。
ヘクトル様も上気した顔で私を見つめてきた。気恥ずかしくなって視線を下に逸らすと勃起したヘクトル様のソレが視界に入る。
息が、止まった。
全身が熱くなる。今の私は耳たぶまで真っ赤だ。間違いない。
失敗した…。完全に眼が離せなくなっている。もう何度も見た筈のソレは常に新鮮な驚きを私にもたらして来るのだ
なんて、迷惑な話。
私の視線に気づいたのかヘクトル様は唇の端を持ち上げた。
「欲しいのか、セレネ?」
致命的な一言を投げつけてくる。
じゅん、とアソコから甘い痺れが全身に伝わってきた。
言い返さなければ。ヘクトル様なんかにやられっ放しだなんて我慢できない。
「欲しがってんのはあなた様のほうなのでは。がっつかれて…ひっ」
人指し指と中指で乳首を摘まれ、そのまま軽くひねられた。
そんな些細な挙動で敏感に反応する我が身が恨めしい。
コリコリと私は突起を弄ばれる。
「あっ、…アアンん。この…調子にンム」
ヘクトル様の魔手はもうかたっぽの胸にまで伸びてきて私は唇を噛む。
指で乳首を挟まれ、手のひらを覆うように乳房に置いて揉みしだかれる。
「へへっ、可愛いぜ…セレネ…。」
ヘクトル様が覆い被さってきた。私の肩元に肘を突き、首筋に舌を這わせてくる。
舌の触れる感覚に思わず目を瞑る。
一秒ごとに頭が真っ白になっていく…そんな感じ。
「は、あ…ゃっい、ヘクトル様ぁ…」
無我夢中で伸ばした指に何か熱いものが触れる。
ソレがヘクトル様のものなのだと私の耳を食んでいた唇が動きを止めたことで分かってしまった。
気がつけばソレを握り締めている。
「お、おい…セレネ」
いつまでもイニシアチブを預けてると思わないように…
思考する部分の壊れた脳みそで思考する。…思考する。……思考する。
………思考して……何も、思い浮かばなかった。
仰向けに寝た状態で腕も伸ばしきっていて、まともに擦ることもできない。
できることと言ったらこのまま引いて私の中に招き入れることく…ら……い?
や、やだっ…そんなの、私が必死に欲しがってるみたいな…そんな
「お、くぅ。か、変わったことするな…お前」
「えっ?」
気付けば私は両手でヘクトル様のソレを包み込んで撫で回していた…。
「あっ、や…やだ、ち、違うっ…コレは、その」
「照れんなよ、新鮮で中々刺激的だったぜ。目ぇ瞑って愛おしそうに俺のもの撫でさするお前見てたら、もう完全にスイッチが入っちまったよ。」
スイッチなんかずっと前に…って
「え……」
うわ、ヘ…ヘクトル様のモノが渡曾の手の中でわかる位に硬直して…く、る。
「嘘…こんなのって」
「お前のせいだよ、セレネ。責任…取れよ。」
何を仰るウサギさん。無茶苦茶である。不可抗力である。調子に乗られぬように。
そんな言葉が頭の中をかすめてかすめただけだった。
ヘクトル様が私の足をさらに広げる。
私は何も言えず…動けず、ヘクトル様のすることを黙って受け入れる。
意に…ヘクトル様が私の身体から離れた。
「な、なんでしょうか?」
意図が掴めず思わず尋ねる。後で思えばこれは不覚以外の何物でもなかった。
私の体勢はもうヘクトル様秘蔵の春画もかくや、ってくらいに開脚している。
「セレネ、自分の指で拡げておねだりしてみな。」
…え?
今私の耳は機能したのか?ヘクトル様は今なんと言ったのか?
「な、なん…?」
ヘクトル様はニヤニヤしながら私を見ている。
「入れて欲しいんだろ?だったら俺にお願いしなくちゃなぁ」
ヘクトル様という方は…自分自身もギンギンの竿からモノ欲しそうに先走り分泌なさっているのに?
怒りと羞恥で目の前が真っ赤になる。
「お戯れを…アン!」
いきなりヘクトル様が私の…クリトリスに触れてくる。
ズ、ズルイッ。私に何も言わせない気だ!
ヘクトル様が顔をキスする気かってくらいに近づけてくる。
「俺の勝ちだな。」
息を呑む。
ああ、私は負けた、そう思った。
本当に楽しそうなヘクトル様のお顔を見て一瞬、『も、いいや』と思ってしまったのだ。
分かりました。
今回は屈服します。支配されます。ですが、これで終わりと思わないでください。
最後に支配するのは私の方ですよね?ヘ・ク・ト・ル・さ・ま
そう誓いを立て、私はそろそろと指を股間に持っていった。
「あ…」
ヘクトル様が、目を見開いて私の挙動を見つめている。
指が目的地に到達する十数秒が何時間にも感じる。それはきっとヘクトル様も同じ。
私の心臓は早鐘のようになり続けている。それはきっとヘクトル様も同じ。
耳を澄ませばヘクトル様の心臓の音も聞こえそうだが私の心臓がそれを許さない…ハズだった…のに。
チュクパァ
それは…とても大きく……淫らに鳴り響いた少なくとも私の中で…
それがアソコを指で開いた音だと理解したとき…私の頭の中は羞恥と混乱のみで埋めつくされていた。
しきりに混乱した後、ヘクトル様に聞こえてしまった?という思考が掠め、急速に頭が現実に引っ張られていく。
真っ白だった視界が徐々に晴れ…ヘクトル様を見た。
ヘクトル様は彫刻のように固まっていた。…唯一股間のモノだけが微かに、震え…て。
な、なんなの…アレ。充分に勃起している筈のソレは、まだ足りないとばかりに反りあがろうと…
成長しようと…はちきれる程に震えている。
あ、あんなので突かれたら…あ、私は
ヘクトル様は一心に私の指で開かれたアソコを凝視している。
テラテラと光る粘膜、トロトロと乳白色の汁が湧き出てくる私の……その、穴を
私は今ヘクトル様を支配している。早々に私の誓いは果たされた。
でも、同時に私はヘクトル様に支配されている。
どちらが優位でもない、危うい均衡の上に私たちはいる。
チョッとしたきっかけでその均衡はたやすく崩れ去るだろう。
どちらに?…決まってる。天秤そのものが壊れてしまうに決まってる!
そのきっかけを…引き金を私の唇が紡ぐのだ。そう、契約はなっているのだから
だから私は囁くように…声を出した。
「ヘクトル様、あ…私の中にき、来ても………いいです。」
懇願ではなかった。私のプライドが僅かに邪魔をしたらしい。
不完全な履行…それでも、それを口にした瞬間。
名前を……呼ばれた気がした
それはただの私の名を呼ぶ声ではなく……劣情を、
激情を愛情を、全ての感情を込めてぶつけられた乱暴な音の波だった。
私は腕を取られ、荒々しく組み伏せられる。
私の両足の間をヘクトル様の腰が強引に割って入ってくる。
そしてソレが私の中に入ってきた。
「…………ン!!」
声を上げようとした瞬間、唇を唇で塞がれる。
頭の中が真っ白になるどころじゃない。その時、私自身が世界から消えてしまった。
再び私が世界に戻ってきたと思えば、有無を言わさずまた意識を飛ばされる。
ヘクトル様が抽送を繰り返すたび私の思考は途切れる。
世界を取り戻すたびまた途切れる。
遮断と接続を繰り返す世界に私は気が狂いそうになる。
「ぷぁ…ハァッ、あン、あアああっハあン!」
ヘクトル様の唇を振りほどき、私は己を保とうと必死に声を上げる。
喉元を伝って落ちる雫が涎なのか汗なのか…それとも涙なのかもう判別する気も湧かない。
とにかく私は腰骨から背骨を伝って頭蓋に響いてくる快楽に痴呆のように足掻くだけで精一杯。
ヘクトル様は私の足を持ち上げ、身体を折り曲げ、ほとんど真上から腰を打ち付けてくる。
パンッ、パンと肌を打つ音が鳴っている。。
ギ、ギシ…ギィとベッドの軋む音が響いている。
ハァッ、フッ…フゥ、とヘクトル様の息遣いが聞こえてくる。
チュッ…クニュ、リュップ…と私とヘクトル様に絡みつく液の音がいやらしく。
そんな様々な音の乱れ飛ぶ中、私の嬌声だけが耳に届かない。
たぶん壊れている。壊れていく。
世界が切り替わるたびに私の何かが削れていってしまう。
違う。少しずつ別の世界に移行していくんだ。もう半分以上持ってかれてる。
私を構成するもの全てがこのまま別世界に移動したらどうなるんだろう。
「……セレネ」
え?
「…………セレネ…」
すでに耳は持っていかれてたのに。全ての音が消えていた筈なのに何かが聞こえてくる。
少しずつ覚醒しはじめる…この音は、懐かしいこの声は……ヘクトル様?
「……セレネっ、はっ………セレネ!」
ヘクトル様だ。今さら気づいた。コイツはずっと私の名前を呼んでたんだ…。
なら…なら私も返さなくちゃ。
「ヘクトル様ぁ、…アン、ハァンヘクトル様っ……ヘクトル様ぁ!」
でもそんな必要はなかった。なぜなら私も自分で気づいてなかっただけでずっとヘクトル様を呼んでいたから。
あはっ、ははは…ヘクトル様すっごい顔してる…なんだか可愛い。
でもきっと私もすごい顔してる。うわ、どんな顔か知んないけどそんなのこの方にしか見せらんないって。
……そして、私は悟ってしまった。ううん、ずっと前から知ってて今まで忘れてた。
私が今持ってかれている世界はヘクトル様だ。ヘクトル様の中に私は入っていってるんだ。
ヘクトル様が…私を連れて行かれるんだ。
大丈夫、怖くない。
どこにでも行ってあげる。そう思った瞬間から私の移動は加速する。
身体の感覚なんかもうないってのに私の中のヘクトル様だけはまだ感じていられる。
でもそれもどんどん希薄になっていって、視界も心もどんどん真っ白になっていって
私は叫んだ。
私は私の一番奥に熱い鼓動を感じて…弾けた。バラバラになった。そりゃもうミジンコに。
壊れていく私の世界。その向こうには…きっと新しい私が新しい世界を創ってる。
……わずかに残った意識の欠片で思った。
ヘクトル様…私を連れてって………
そうして…私は溶けていった…。
終了。