もしも、ボク以外の男の人が藍蘭島に流れ着いたとしよう。
たぶん最初は、いやでも目につく変な部分――昔話から抜け出してきたよう
な生活ぶりとか、変な動植物とか、人間と動物が言葉を交わしながら一緒に暮
らしているとか――に驚きを隠せないだろう。その次に、島の外へは決して出
られないという話を疑い、確認し……愕然となり、悲しみ、一体どうしたらい
いのかと途方に暮れると思う。
だけど、一時的なショックが去って周りを見回し、そしてしばらく過ごして
みれば、彼の感想は見事に変わってくることだろう。
ここでの生活も悪くないかもしれない……そう思うに違いない。
電気水道ガス電話、便利なものなど何一つない。けれど、どんなに暮らしが
楽になろうと、原則的に人も他の生き物となんら変わらない。自分のことは自
分で何とかするのだ。そのことに気付けば、労働は苦役ではない。というか、
税も搾取もないので、自分たちの食い扶持を作るだけで充分なのである。そし
て藍蘭島は豊かな島だった。
辛いことなど何もなかった。
たった一つ、決定的なもの――男がいないということを除いては。
そして彼は考え至るだろう。
ここはなんて最高の環境なんだ!――と。
まあ、ボクも男だしわからない話じゃない。
男に色めき立つ女の子たち。村の将来を案ずる人たちは、次の若い命が生ま
れることを切に期待している。
そういった中で、藍蘭島という特殊な環境と照らし合わせて客観的に考えれ
ば、女性と仲を深めないのは、むしろ悪い気すらしてくる。
ただボクは思うんだ。それじゃあんまりにもだらしなさすぎるだろうって。
だってそうでしょ? こういうコトって、男と女が好き合って、初めて成立す
ることじゃないか。順番が逆だと思うんだ。お互いの気持ちを無視して強引に
くっつけようなんてすごく不自然なコトだし、なんかおかしいっていうか、大
人汚いっていうか。
人として、そして男として、許せない部分がある。
オババ様に何度も催促めいた言葉をかけられても、その気にもならなかった
ボクだけど、何も馬耳東風していたわけではなく、いちおうそこまではちゃん
と考えていたのだ。
それにボクは異邦人だ。藍蘭島がどんなに素晴らしいところでも、ボクには
帰らなきゃならない場所がある。それは、決着をつけなければならない事があ
るってことで、色々考えたけど、やっぱり会わなくちゃならない、会って話を
つけなければならない人間がいるってことだ。
そして一度島の外に出ることに成功すれば、ボクは気付いてしまうだろう。
藍蘭島に戻らなければならない理由がない、ということに。
藍蘭島には藍蘭島の暮らしがある。もし誰かと一線を越えてしまったら、ボ
クは何としても戻らなければならない。
でも、戻れるだろうか。ボクは戻れるだろうか。
(……それに、こんな思案しても……)
溜め息をつく。
ボクはそもそもまだ14だし、子どもを作る年齢じゃあないんだよな。
それに……だから。
東のぬしであるぱん太郎が人間になって、村の女の子に次々とちょっかいを
出して回るという思いも寄らなかった展開に、奴に対する嫌悪感は募るばかり
だったけれど。
だから、そのことに横槍を入れるつもりは毛頭なかった。
それは水面下で進行していたらしい。発覚した頃には、すでに何人もの女の
子が「彼」と関係を持っていたという。
初めて知った時はあまりの青天の霹靂な出来事に呆気にとらわれて、にわか
には信じられなかったほどだ。
ある意味、この島にボクが現れたことよりも遥かに大きな事件だった。
聞いた話によると、パンダであるはずのぱん太郎が人間の姿になったのは、
ランプの精みたいな魔人に願いを叶えて貰ったかららしい。なんじゃそりゃ。
村の長老であるオババ様を始めとして主だった大人が集まり、この事に関し
て話し合いがもたれた。
その結果、いくら姿が人間だからといってパンダの子が産まれてはかなわな
いと、ぱん太郎は西への出入り禁止になった。まあ当然か。
ぱん太郎は(追い返されるときはパンダだった、ていうか自在らしい、理解
の範疇を越えている)のーのー文句垂れながらも他のぬしにも睨まれて仕方な
く東の森に去り、村にはまた平穏が戻った。
ように見えた。
この日を境に、「婿殿、婿殿」とオババ様の催促が妙に増え、それを適当に
あしらい過ごしながらおよそ半年後のこと。
ある報せが村中に駆け巡った。
玉のような人間の赤ちゃんが村に生まれたという。
パンダみたいな愛嬌のある、丸々として元気で可愛い子だった。
産んだのは――誰であろう――梅梅だった。
その後にも、ぱん太郎と関係した女の子たちが続々と臨月を迎えた。
パンダとの合いの子かと危惧されたが、どこから見ても人間らしい、それど
ころか丸々と肥えて元気な赤ちゃんたちばかりだった。
村はそりゃもう大騒ぎになった。
とんでもない事態に落ち着きを失った村中の女性たちを、オババ様は一同に
集めた。ボクは呼ばれず、家にポツンとひとり残った。これは村の、そして女
性たちの問題だから、その辺を配慮したんだろう。
会合は長くなり、夜遅くに帰ってきたすずから聞いた話によると、オババ様
は皆に一喝したらしい。
「生まれてくる子が人であれば何ら問題はない。幸い、東のぬし様も以前のこ
とは水に流してくれるそうじゃ。ここはひとつ東のぬし様に手をつき、貴重な
御種をもっと蒔いてもらおうではないか」
ボクはそんな馬鹿な、と愕然となった。人間じゃない者に、いや人間の子が
生まれたんだから人間なのか……? でもそんな馬鹿な話があるのか。そんな
事がまかり通るのか。
強制はせず、基本的に各々の意志に任せるが、ぱん太郎が自分のところに現
れても邪険にせず、村のためを考えてほしいと、オババ様はそう言ったそうだ。
なんてことだ。
(すずは……それでいいのか……?)
ボクはそう思って向かいに座ったすずの表情を窺(うかが)ったが、それを
口に出して訊ねる勇気はなかった。
すずはどことなくショックを受けているような感じで、元気がない瞳でボク
を見つめ返してきた。
二人の間に、よくわからない空気が流れるのを感じた。
……でも、ボクは奇妙な確信があった。
すずは大丈夫だろう。だってすずは以前、「結婚はお互いが好きだからする
もの」って言ってたし。恋愛がまだよくわからないとも聞いた記憶がある。そ
れに意識してないから、男であるボクと一緒に暮して平気なワケだし。
そうだよね。まだそんな年じゃないんだ。
ただ、ボクはそれを言葉にするべきかどうかわからず、ごまかすように頬を
掻くばかりだった。
その夜、すずはいつもより早く寝床に就いた。
そりゃそうだろうなあ……と、暗闇の中に浮かぶ、こちらに背を向けて寝る
すずのうなじをちらと覗き見ながら思った。
この件に関して、ボクがとやかく言う権利はない。それに、いちおう女性側
にも拒否する選択肢はあるんだ。
だけど……なんだろう。
この胸のざわつく感じは……。
こんな形でこの村の未来を決めてしまっていいんだろうかと、納得できない
気持ちがある。
梅梅の顔が浮かんできた。
最初、殺るべしと息巻きながら疾駆する遠野サンに偶然遭い、梅梅がぱん太
郎に手籠めにされたと聞いた時は、耳を疑った。気分の悪そうな梅梅をオババ
様の所に診せに行くと、妊娠二ヶ月目であることが発覚したそうなのだ。
つまり、だいぶ前から誰も知らないまま、梅梅はあの無節操パンダに……
あの時はボクも、あの梅梅が、どうして、誰と、なんで、どうやって――な
どと、意識がストーンと落ちるような気分になった。それまでも梅梅とは普通
に会ってて、おかしな様子は微塵も感じられなかったしお腹も膨らんでるなん
てわからなくて、言われて初めて少し張ってたかなと曖昧な記憶をたどるぐら
いで――
現実感がまるでなかった。
怒髪天の勢いの遠野サンを、梅梅は必死に止めた。そればかりでなく、泣い
てぱん太郎をかばった。オババ様が、「堕ろさんのか」と訊くと、
「産みマス……」
と申し訳なさそうに、だけどはっきりと言った。
そして、梅梅はお母さんになった。
会合には出席できなかったが産後の肥立ちは良好で、他にももう何人かいる
出産し終えた子の中には、床から抜け出して動いている子もいるらしい。
身篭もったことが皆に知れ渡ってから以後、梅梅は……変わった。会いに行
くと、ずいぶん落ち着いた感じで、なんかこう……優しくなった。いや元から
優しいんだけど、そういう風な優しさじゃなくて、もっと大人の母性的な、そ
うそれ母性的、お母さんになったみたいな優しさ……って、なに元に戻ること
言ってるんだろうね。
とにかくこれが藍蘭島の空気なのか、彼女たちの強さなのか、結婚の契りも
交わさず、ていうかちゃんと正妻がいて、人間とすら言えないような男を共に
いただいているというのに、まったく落ち込んだ様子もなく、少女たちは今ま
でのようにしっかりと生きている。
という現実が、ボクの目の前にはあった。
……はあ。
理由もわからず、溜め息が出てしまう。
釈然としなかったが、けど、本人たちが納得していることに、ボクみたいな
部外者がどうこう言える問題でないのも確かだ。
(……島からの脱出方法、本格的に調べなきゃな…………)
寝返りをうちながら頭の中のもやもやをさっさと払い、ボクも布団を被って
眠りに就いた。
明くる日から、我が物顔で村をふらつく人間姿のぱん太郎があった。
それからは毎日、見かけるたびにぱん太郎は誰かしら女の子と喋っていた。
女の子たちはおっかなびっくりといった感じだったが、中には臆すことなく朗
らかに談笑している子もいた。洒落ているつもりなのかよく花をつまんで持っ
ていて、それをプレゼントしている場面もあった。
しかし彼がいくら調子に乗って次から次へと女の子たちに言い寄ろうとも、
石を投げて追い払う男たちなどいない。
正直、なんであんな奴がモテるんだろうと、ボクは首を傾げざるを得なかった。
どうして人間になれるかはとりあえず置いといて、ぱん太郎の人間姿という
のは、身の丈二メートルを超える巨漢──というか肥満漢であった。ただ、よ
く見ると奥行きはそれほどでもなく、むしろ横幅の方が凄いことになっていて、
太ってるというよりはまるまるっとした身体つきである。肌は普通の色だが、
着ているものがなぜかパンダ柄の木綿。牛柄にも見える。そしてその上に、愛
くるしいメイキャップのパンダ顔が乗っているのだ。はっきり言って、まだ人
外だ。あの身体の威圧感にパンダの愛嬌のミックスはないだろう。
軽薄な上に、誰彼構わず言い寄る放埒さ。自分勝手で無責任も甚だし過ぎる。
中身も最悪。のんのんうるさいしノンタンかお前は。パンダはパンダに求愛す
るべきじゃないのか。
(こんな奴に……)
ボクはやれやれと頭を振った。奴に手を付けられた女子たちは、これをどう
思っているんだろうか。
ぱん太郎が近づくと泣きそうな顔で駆け去っていく子もいて、むしろその方
が正常に見えた。
女の子に逃げられても、ぱん太郎はまったく意に介さなかった。つぶらな瞳
を回して次の子を捜しに、長い腕をるーんるーんと振りながら足取りも軽やか
に何処かへと消え去ってしまう。また見かけることもあるが、例外なく別の女
の子をつかまえて話していた。その中にはりんやあやねなども含まれていたし、
なんとゆきのまでいた。それだけでなく大人にまで声をかけていたりして、何
というか、呆れるばかりだった。
何だかな……もっとカッコイイ男がナンパしてるなら様になってるんだけど
さ。これじゃまるで異次元生物が徘徊しながらナンパ業に勤しんでるみたいだ。
すずも心配そうな目つきでその様子を眺めていた。
その不安そうな横顔を盗み見ながら、ふと今更ながらなことに思い当たった。
すずだけは、あいつに言い寄られてない。
「フフッ」
思わず笑みが漏れてしまった。
それに気付いたすずが振り向き、不思議そうな目でボクを見つめた。
「どうしたの?」
「ん? いや、何でもない」
「……?」
肩をちょっと上げて後ろ手に組み、胸をそらすような姿勢で小首を傾げるす
ず。少し持ち上げられた白い太股を撫でるように、短いスカートがさらりと流
れた。
目が合う。
ゆるやかに――微笑みが浮かんで――
「――ッ!」
不覚にドキッとして、ボクはさっと顔を逸らしてしまった。
な、なんだ。なんだろう今のは。
この異様な胸の高鳴りは……。
なんか、今、すごく……すずがとても可愛く見えた。
「ホントにどうしたの、行人?」
わざわざ回り込んでひょいとボクの顔を覗くすずに、慌てて背をシャンと伸
ばし、薪を背負い直した。頭の上のとんかつが落ちそうになって、「プー!?」
と鳴く。
「だからなんでもないって、それよりも早く帰らなくちゃ!?」
「え〜……?」なんだか納得いかなそうに頬を膨らませるすずだったが、すぐ
に可笑しそうに吹き出した。「変なの……ウン、じゃあ、帰り――」
言いかけてすずは、「あっ」と何か思い出したように言葉を切った。今度は
こちらが、「どうしたの?」と尋ねる番だった。
すずの目が宙を泳いだ。「ゴ、ゴメン、行人」と、申し訳なさそうな顔でい
きなり謝ってくるすず。「そういえば、これから……梅梅のところに行かなく
ちゃならない用事があったの」
「用事?」
「う、うん……。ホラ、梅梅もまだゆっくりしてなきゃいけない時期だから…
…。皆で持ち回りで助けようって、今日の夕ご飯の当番、私なんだ」
「そうだったんだ。……でも水くさいな、言ってくれれば、薪拾いなんかボク
一人でやったのに」
「ちょっと忘れちゃってて……ホントにごめんね……」
「ん? いいっていいって、そんな謝る必要なんかないよ。それよりも早く梅
梅のところへ行ってあげなきゃ」
「うん……」
すずはなぜか悄然とした顔になった。
なんだろうと思っていると、すずはポツポツと小さな声で言った。
「行人も……一緒に来る?」
「……え…………」
ボクは……ためらってしまった。
別に、梅梅がボクに冷たくなった──などということは、決してない。むし
ろ彼女の態度は前よりもフレンドリーになったぐらいで、ボクが訪ねると心か
ら喜んで迎えてくれる。だけどそんな梅梅と対照的に、ボクの方といえば、彼
女の傍にいるとやたら落ち着かない気持ちになってしまうのだ。どうしてもぱ
ん太郎が気になってしまうし、居ちゃいけない場所にいるような、そんな感覚
に苛(さいな)まれるのだ。
何故かは……わからない。
梅梅は全然不幸せそうに見えず、それはとても良いことなのに。
前とは違う雰囲気。前とは違う笑顔。前とは違う、その腕の中に赤ちゃんを
抱いて──
「いや、ボクはいいよ。代わりに薪持ってってあげる」
遠慮しようとするすずから多少強引に薪の束を受け取った。
「ついでに夕ご飯も作って食べちゃってるから、あっちでゆっくりしてきなよ」
「行人……」
すずは寂しげだった。
胸がズキッときたが、ボクは口を結んで視線を逸らし、それ以上すずの表情
を見ないようにした。
なんかおかしいな、ボク。……でも、すず、ごめん。あんな奴が大手を振っ
て村をのし歩いているのを見ていると、気分がよくないんだ。
「ありがとう行人……じゃあ、行ってくるね。……なるべく、すぐ帰るから」
そう言って去ってゆくすずの背中を、ボクはできるだけにこやかな笑顔で見
送った。
『くれぐれもあいつには気を付けて』
そう声をかけようとして……かけられなかった。
「なんで?」と……すずにそう聞き返されるのが怖かったからだ。
大丈夫さと、ボクは自分自身に言い聞かせた。まがりなりにもぬしであるア
イツの腕っぷしが強いことは確かだけど、すずはそれ以上に強いんだ。あのぱ
ん太郎を簡単に投げ飛ばすほどだもの。……心配ないさ。
「行こう、とんかつ。今晩はお前の好きな冷や奴を作ってやるよ」
と、ぷーぷー喜ぶとんかつの頭を撫で、重くなった荷物を苦労して背負いなが
ら家路を急いだ。
薪を入り口脇にどっさと置くと、蹌踉と中に入り、「ひー!」とかまちに伸
びた。鍛えているとはいえ、さすがに二人分はきつかった。
薄暗い吹き抜けの天井を見ながら休んでいると、もやもやと出てくるのはや
はり、ぱん太郎のことだった。
もう、新しく手を付けられた子もいるのかな……。
それを考えると、もやもやは水気を得た雲のように膨らみ、濃く重くなって
くる。
ボクのよく知ってる子たちも………………梅梅のように………………
(……くそっ!)
ボクはまだ疲れがとれない身体を無理に起こし、薪を置き場に移し替える作
業を始めた。
それだけは絶対に考えないようにしよう、と決めた事だったからだ。だって
ボクには関係ないんだ。関係ないことなんだ。この島の重大事に、いつかは島
の外に出ていくボクは関わっちゃいけないんだ。
梅梅はいいんだ。彼女はもう心を決めているのだから。
こんな気持ちになるなんて、気分悪い。
薪を移し終えると、ボクは木刀をひっ掴んで縁側に回った。
身体が悲鳴を上げるのも構わず、ただひたすらに腕を振る。
(くそっ、くそっ、くそっ!)
鬱屈した胸のむかつきを切り払うように、ボクは汗を飛び散らせながら素振
りを続けた。
あんな奴が何だっていうんだ。村には村のしきたりがあるんだ。ボクはまだ
責任能力のない未成年者で、あんな無責任極まりない奴なんかとは立場も考え
方も違うんだ、オババ様の期待に応えられる年齢じゃないんだ、そういう風に
育ってないんであって、女の考えることなんてわからないし、だからそういう
のはボクはまだこれからで、村の将来を見越してのやり方に異議を唱える権利
はないし、立場の違うボクにはボクなりの主義主張というのがあって、やるべ
き事があって、あんな奴とは違うんだ!
――素振りの回数も忘れ休みもつくらず振り続け、もう保たないというとこ
ろまで追い詰めた意識がオーバーヒートを宣言すると、木刀を落としてよろよ
ろと縁側に突っ伏した。
全身汗みどろでぜーぜーと息を吐く。頬をつけた部分があっという間に汗の
水たまりになった。腕が鉛のように重く、無茶な過運動に抗議するように全身
の筋肉から痛みが発していたが、胸のもやもやはだいぶスッキリした。
「………………ふぅ………………」
そう。考えても虚しいだけだ。
藍蘭島には藍蘭島の風習があって。背に腹は代えられない切実な問題があっ
て。それに馴染めなければ、ボクはもう。
「……美咲や父さんたち、どうしてるかな……」
海から家の中に吹き込んでゆく潮風の気持ちよさに身を委ね、ボクは遠い故
郷の家を思い出した。
帰りたい――
すず。
ボクは目を見開いた。
そうだ。
なに考えてるんだ。
身体を起こすと、縁側に腰をつけて青い海と空を遠望するように見やる。
ボクは自分で彼女に言ったじゃないか。ボクはすずの家族だって。
あの寂しがり屋のすずを置いて、一人きりにするっていうのか。
冗談じゃない。
そうさ。すずにはもう数え切れないほど恩があるのに、彼女を悲しませるな
んてとんでもない。
「……ふう」
また溜め息をついた。だが、さっきよりもずっと軽かった。
ボクにはまだ、ここでやるべきことが残っている。たとえゴクツブシ性悪ス
ケベパンダが他の女性全てを囲ったとしても、すずだけは必ず守る。
家族になった人を独りでこの家に住まわせるわけにはいかないし、大勢の女
をとっかえひっかえするような男にだけは、絶対やれないんだ。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
狭い小屋の中での、二人だけの空間。山のような男が尻をつく布団はまるで
ザブトンのようであった。
優しくせせらぐ川の音を聞くことなく、ヨダレを垂らしながら昂奮した荒い
息をつき、男は短い足で組んだあぐらの上に少女を乗せ、その肌に指を這わせ
回っていた。衣服をほとんど半裸にされ、後ろから男の太い指でなすがままに
されながらも、敏感なところを刺激され、少女も同じように熱い吐息を漏らし
ていた。
昂奮でいきり立った熱い肉棒を背すじのくぼみにすりつけながら、肉付きも
豊かな乳房をいやらしく揉みしだく。恥ずかしそうに閉められた脚の隙間に差
し込まれ、パンツの中に潜り込んだ中指が、その図体に似合わない細かな震え
で動いており、かすかな水音が聞こえてくる。
少女はその愛撫に懸命に堪えている風であったが、顔やからだには朱が差し、
肌にはしっとりとした汗が浮かんでいた。
切なそうに胸を上下させ、男の指遣いを感じているのは明白であった。
少女が夢見心地になりつつあるのを見て、男は壁際に置かれた花瓶の黄色い
花を一差し抜き取り、少女の鼻の下まで持ってきた。少女はそれに気付き、い
やいやと顔を背けたが、強引に花弁を鼻に押し当てられ、擦りつけられる。
ほわっと花粉が舞った。それを吸い込むと、少女は、「はっ──」と息を呑
み、その瞳がぼうと霞んだ。「や…………やぁぁ…………」
そのからだから力が抜けるように緊張が解れてゆき、唇から官能的な吐息が
こぼれる……投げ捨てられた花は、引き臼のそばに落ちていたもう一本の上に
交差した。
男の愛撫責めが再開されると、少女は敏感さを増したようにからだをしなら
せ、熱く湿った吐息をつきながら、次第に艶めいた反応を露わにしていった。
その凹凸の豊かな肢体を弄ばれながら、徐々に服を脱がされ……下着も取られ
……ついにはニーソックスだけの姿にされ、その脚もぐいと押し拡げられて恥
ずかしい箇所を丸見えにされてしまう。
からだに力が入らない少女はそれを止めることができない。涙をこぼしなが
ら、なされるがままであった。
男は赤ちゃんが産まれ出る場所にまで遠慮なく手を伸ばし、その無骨な指に
よって桃色に近い鮮やかな肉の園を開帳してしまう。
「うにゃあ……そ、そこ……そんなに拡げないでぇ…………」
時間をかけて弄くられたソコは、充分に潤んで充血していた。小さな突起は
ピンと気持ちよさそうに膨らみ、綺麗な肉ビラはぬらりと濡れてヒクヒク蠢く。
自身の小指も入らなさそうな狭い窄まり──だがこの奥に、女性である証の
部屋があるのだ。
「あああ……♥」
これまでとは比べものにならないほどの甘く痺れるような媚声を上げ、淫ら
にけぶる目の焦点を半ば失い、男の指は今動いていないというのに、少女はか
らだの奥底から源泉のように湧いてくる快感に身悶えた。
「いやあ……こんなの……いやだよぉ……!」
何もせずとも屈服していく少女に男は邪な笑みを深くし、いよいよ中指を折
り曲げ濡れた秘洞に当てた。
そこは──と言いかけた少女は、途端に言葉を失って喉の奥から喜悦を発し
てしまう。
小屋の中にぬぷぬぷと卑猥な埋没音、そして少女の嬌声が絶え間なく響いた。
少女の苦しそうな様子は、ほんの初めだけであった。いやらしく抜き差しさ
れる指がまたたくまに蜜液にまみれ、少女の顔には、先ほどまでよりもさらに
深い悦楽の表情が宿り、瞳を霞ませ、からだを快楽にわななかせながら、気持
ちよさそうな喘ぎ声を漏らすようになっていった。
そしていつしか……恥ずかしがるどころか、股を大開きにして果実のような
乳房を盛大に揺らし、腰を浮かせながら感じまくる少女がいた。
間もなく、少女は快美感に泣きはらした顔で切羽詰まったようにからだを悶
えさせながら、
「あ、あ……! も、もう……だめぇ…………イッ、イクうぅぅ…………♥!」
と、その四肢を痙攣させた。ビクビクと腰が張りつめ、媚肉が男の指を締め付
ける。
「──────〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ♥♥!!!!」
少女の絶頂は長く続いた。
やがて落ち着き――ぐったりとした少女の秘洞からようやく指が引き抜かれ
ると、ねっちゃりとした蜜が糸を引いた。
男の腹部に埋もれながら上気した顔を惚けさせ、絶頂の余韻に胸をゆるやか
に波打たせる少女。
男は少女の顎を持ち上げると、背を丸めて顔を近付け、頬張るようにその可
憐な唇を奪った。
拒む余裕など、もはやなかった。口ぜんたいをむしゃぶるように吸われて唇
をあっけなく割られ、舌を絡み取られながら、むわっとする口臭とヨダレを流
し込まれる。その濃密な口づけに、少女の体内で昂奮がふたたび盛り上がり出
し、瞼を閉じて喉を動しながら、男のヨダレを胃に落とし込んでいく。
男はやわやわと乳肉をもみ上げ、敏感になった肌を撫で回し、アクメに達し
た艶めかしいからだをなおも嬲り続けた。
少女はその痺れるような気持ちよさをまったく拒めず、思考が蕩(とろ)け
たような表情で、いつしか男の愛撫を進んで享受してしまっていた。
ぴちゃ、ぴちゃというキスの音とともに、何にも邪魔されることなく、二人
の熱い吐息が交わってゆく。
「さあ……いよいよ、お楽しみの種付けたーいむ、なの……♪」
男は舌なめずりしながらそう言うと、美味しそうに茹で上がった少女のから
だを四つんばいにさせ、踝まで届く長い髪を掻き分け、その上に覆い被さった。
二人の体格差は、まるで小猫にのしかかる巨獣であった。
お尻にくっつく熱いモノを感じた少女は、正気を取り戻したようにハッとし
て、ぐっしょりと濡れた秘陰を手で隠し、哀願の涙を溜めて男を見上げた。
「あ……こ、これだけは……お願い……他のことだったらなんでもするから…
…これだけはもう…………!」
「ナニ言ってるのん、こんなに濡れてれば、痛くなんてぜんぜんないのん。キ
モチイイうちに終わるのーん♪」
と、男は悠々と少女の手を外し、完全に皮が剥けたカリ太の大マラを慣れた腰
つきで秘裂に押し当て、「ああ……だめ……だめぇ……!」と震えながら拒む
少女などお構いもなく、一気に埋(うず)めていった。
ヌプジュプと潤んだ肉と肉が擦れ合う淫湿な水音とともに、少女の口から、
「アア〜〜〜ッッ!!」
と、哀切な嬌声がほとばしる。
少女の願いなどまるで初めからなかったかのように、あっけないほど簡単に。
二人は一つとなった。
男のペニスはその体躯に比べれば細長い棒のようであったが、少女の秘孔を
ぱっくりと拡げて奥まで挿し貫く、雄飛な剛直であった。
男は太腿をピッタリくっつけ深々と根元まで挿し込んだ状態で、気持ちよさ
そうにぶるぶると胴を震わせた。
「のーーー……♥ いい肉具合なのん……こんなメスもほったらかしに
してたなんて、あのニンゲンのオスはホント信じられないのん……!」
布団に上半身を突っ伏して胸を潰しながら、「あ……いや……いやぁ……!」
と、少女は枕を涙で濡らした。
「ニンゲンのメスマンコも悪くないのん、病みつきになるのん♥」
「お、お願い……やめてぇ…………」
「の♥ の♥ ダイジョブダイジョブ、キミもスグ病みつきになるから♪」
「いやあぁぁ……!」
だが、男の言葉どおりであった。
のしかかられ、からだを押さえ付けられながら、ケダモノのような動きで腰
を打ち付けられ。固くも柔らかいオス肉がくまなく広がるように、奥まで貪る
ように掻き回されて。
お腹の奥から響く、普段では味わうこともできない心地よさに、少女の忍耐
は一突きごとにもろくも崩れていってしまった。
半時もしないうちにもう、少女は身も心も虜になるような快楽に囚われ、長
い髪を乱してむせび泣くように、あられもない嬌声を上げていた。
なんでこんなに気持ちいいのか、少女自身にもわからなかった。痛かったの
は初めての時ぐらいだった。彼女だけでなく、ほかの子もそうだという。あん
な大きなモノを抜き差しされているというのに、めちゃくちゃに突かれ、擦ら
れ、掻き回されているというのに、もう前後不覚になるほどに気持ちよくなっ
てしまうのだ。気持ちよくて、気持ちよくて、気持ちよくて……! 何もかも
吹き飛んでおかしくなってしまいそうなぐらいだった。
どうしようもなく欲しがってしまうのだ。どんなに口で拒んでも、からだが、
お腹の奥が熱く潤んで求めてしまう──少女はそれに気付きはじめていた。
ごめんなさい……ごめんなさい…………ああ…………ッ!
男はというと、無数の襞々が奥までびっしり生えた名器の味わいに深い感嘆
の溜息を漏らし、まるでケダモノのように本能の衝動にあかせて律動をヒート
アップしていくばかりであった。
「の〜〜〜、の〜〜〜ッ♥!」太い腰を激しく打ち付けながら、性欲丸出しで
ヨダレを滴らせる男。「スゴイのん、スゴイのんッ、スゴイきもちいいのんッ♥!」
反り返った肉棒はさらなる昂奮でますます膨らみ、少女の蜜壺を思う存分押
し拡げてたっぷりと肉襞を蹂躙しまくる。
全身を薄桃色に染め上げて、そのたまらない快感に身悶える少女。
「こみ上げて来たの〜〜〜んッ! もう出るのんっせーえきドプドプ出るの〜
〜〜ん♥!!」
「あああ……ッ!?」少女は顔を上げて悲痛に叫んだ。「ナカはダメェ……ナカ
にだけはあぁぁ……ッ♥!」
「のののの〜〜〜〜〜んッッッ!!!!」
男はまったく聞いていなかった。その巨体で布団とサンドイッチするほど少
女の臀部を押し潰し、ぐいぐいと子宮口に当たるまで深々と突き入れた。
その淫撃にキュウキュウと収縮した肉壺の刺激が最後の一押しだった。
「ドプドプ〜〜〜〜〜ッッッ♥!!!!」
ドビュルッドビュドビュドプドビュッッ!!!!
ドビュドビュルルルルドププッッッ!!!!!!
ドプドプドビュドプドププッッッ!!!!!!
「ハ……ァァ……アアアァァアァ…………♥♥!!」
最奥まで届いた熱い塊。その全体が弾けるようにドクドクと力強く脈動する
のがわかった。夥しい量の精液がお腹の中に撒き散らされていく。それをはっ
きりと感じた少女は、のしかかられて満足に動けないからだをガクガクと震わ
せながら、抑えようもなく二度目のアクメに昇り詰めてしまった。
「種付けられちゃう……種付けられちゃうよおぉぉ……♥!!」
しかし、彼女の意志に反して熱く潤んだ肉襞はみっちりと埋(うず)まった
肉棒を奥へと招くように蠕動し、快楽に緩んだ入り口が常人の何倍もの精子が
詰まった濃濁な精液を誘い入れるようにヒクつき、次から次へと子宮内へ注ぎ
込まれてゆく。だが、男の精子が少女の子宮を侵略するのはこれが初めてでは
なかった。そこにはすでに、かなりの先達が溜まっていたのである。数ばかり
でなく生命力にも満ち満ちた兵隊たちは、生死を分けた戦場をまるで障害など
ない平野のように容易く走破してゆく。さらに溢れんばかりの加勢を得て欣喜
雀躍し、目指すべきただ一点を求めて強力に侵攻するのだった。
これほどの精液をこんなに大量に注がれてしまっては、新しい生命が創り出
されないほうがおかしい話であった。
「のんのんの〜〜〜出てる出てる出てるの〜ドプドプいっぱい出てるの〜〜〜ん♥
キモチイイの〜〜〜ん♥!」
男に引き抜く気配などまるで見られなかった。
あまりの射精量に満杯になる少女の膣内で、それでも熱いミルクの放出は止
まらず、結合した下部から白濁液がぶちゅぶちゅ、ねろねろと溢れ出してくる。
気がどうにかなってしまいそうなほどの淫悦に涙が溢れて止まらず、歯が噛
み合わない。頭が真っ白になっていき、身も心も舞い上がっていくような絶頂
の解放感。そしてその感覚は、経験するごとに深まっていくばかりだった。
「ニンゲンのオンナはみんな、ボクが孕ましてやるのーん♪ キミもボクの赤
ちゃん孕むまで、たっぷり交尾しまくってあげるからね〜♥」
「アアアアア…………♥!!」
本能の悦びを沸騰させるオスの肉と精でからだの奥まで征服された少女に、
抗う術など残されていなかった。
ようやく射精が収まると、男は満足そうに胴震いをして腰を上げた。
少女の生殖器官からゴポゴポと大量の白濁液を溢れ返らせながら出てくる肉棒。
だが──淫辱はこれで終わりではなかった。
硬度も熱気もまったく衰えないイチモツを揺らしながら、早くも次なる射精
欲に鼻息を荒くし、男は休む間もなく少女をひっくり返してまたのしかかって
ゆく。
「ハァハァ……今度はニンゲンのすたいるでやるのーん♥」
そう、一回では済まないのだ。男は疲れというものを知らないように、飽き
るまで何度でも少女のからだを責め嬲ってくるのだ。
そのほとんどを、膣内で果てるという結果で。
「……!」
未だ淫落の余韻醒めやらぬ少女の喉がゴクリと鳴り、蒸されたような目が汁
にまみれた男の股間を見つめる。これまでも全てそうだった。この快楽が、い
やこれ以上の快楽が、意識が飛ぶぐらいまで続くのだ。身も心も溶けてしまう
ぐらいに──その記憶が快美感とともに思い出され、酩酊するようにぼうっと
なってしまう少女。
こんなの……こんなのって……!
助けて…………!
(ごめんなさい……私、もう…………)
と、少女は心の中でそう謝りながら、再び胎内に侵入してきた異物の、めくる
めく心地よさを抵抗なく受け入れてしまい、どうしようもなく口もとを緩ませ
た。
あとはもう快楽の海の底へ沈み込むばかりだった。
貪り、悦び、やがては自分の方からからだを開き、濃密な一時の中で胎奥に
注がれる熱い精液を何度も感じながら、絶頂に意識を溶けうしなっていった。
××××××××××××××××××××××××××××××××××
あまり慣れたとはいえない電気もガスもない調理に手間取り、空気もけっこ
う静まってきた頃にようやく食事は出来上がった。
膳の上の粗末な有り様に苦笑しながらも、とんかつと向かい合っていただき
ますしたところへ、梅梅の家の行灯を借りたすずが帰ってきた。
脇を通るとき、ボクの料理のニオイなんかより断然いい、湯上がりの残り香
がふんわりと漂ってきた。お風呂も済ませてきたんだ。
やはりあっちで食べてきたらしく、ちょっと疲れちゃったから先に休ませて
もらうねと、さっさと寝床を作って着替えを始めた。もちろん、ボクはアッチ
向いてたよ。
すると、
「あ……」
と、何か気付いたような声。箪笥に駆け寄る足音。
なんだろうと思って振り返ると、ガラッ、パタンと風呂場に続く戸が閉まっ
たところだった。
そして風呂場を使う音が聞こえてくる。
「あれ?……お風呂入ってきたんじゃないのかな?」
味噌を入れすぎたカライみそ汁をすする。作る順番も間違えてて、もう湯冷
めしていた。トホホ。
しばらくして、ホカホカになったすずが出てきた。
「すず、梅梅とこのドラム缶風呂に入ってきたんじゃないの?」
と訊くと、なぜかエッとした顔になるすず。なんで?
「う、うん、でもまだ汚れてたとこがあったから入り直したの」
「あ、そうなんだ」
なるほどと思いながら、ボクは食べ終わった膳を台所に運んだ。なんかちょ
っと怪しかったが、それ以上追及しなかったのは、湯上がりのすずがなんだか
やけに色っぽくて、直視しつづけられなかったからだ。
後ろからすずの声が聞こえた。
「おやすみなさい、行人」
「うん、おやすみ」
振り返って、いつものように言葉を交わして。すずは布が擦れる音をさせて、
布団に入るところだった。
すずが寝づらくないよう灯りを小さなもの一つ残し、汗を落としにいく。
戻ると、すずは寝息を立てていた。
開け放しの縁側から夜空を見上げると、寝るにはまだちょっと早い月の位置
だったが、ボクも今日はすずに合わせて早めに眠りを取ることにした。
雨戸を閉めて自分の分を敷き、彼女の後ろ髪におやすみ、と心の中で言うと、
ボクもフトンの中に潜り込み、夜の潮騒と虫の音を聞くともなしに聞きながら、
ひさしぶりにすうっと眠りにおちていった。
ボクはこんなにも女の子に囲まれた生活をしながら、ついぞ女の子の気持ち
などわからなかった――わかろうともしなかった。
問題児な東のぬしの、同性として軽蔑すらおぼえる行動にばかり目がいき、
もう一人の男として何らその理由に気付くことがなかったのだ。
藍蘭島という社会。そこに住まう女の子たち。そして、男と女のかたち。
この村の主役は誰になったのか。誰が主役にしたのか。
それを厭というほど思い知らされたのは、翌日からのことであった。
夜が明けて、また今日も一日の生活が始まる。
これまでと違うただ一つの煩わしい要素を除いて、藍蘭島の人々はいつもと
変わらない日常を送っていた。
快晴の青空の下、おハナさんの所でカボチャの収穫を手伝う。中にはいった
い何百人分あるのか見当もつかないっていうか家にできるんじゃないかという
ほど巨大なモノがあり、これがヘルプの原因だった。
三人がかりでウンウン唸りながら、「これがホントウのハウスカボチャか」
「ガラスのカボチャを5個探さないと」「ここがあの女のハウスね」などとく
だらない事を言いながらなんとかテコで動かそうとしていると、畑の向こうに
ある道に複数の物影が現われた。見やると、くまくまに乗ったゆきのと他の動
物たちが、……げ。
ボクは眉をひそめた。一番後ろにぱん太郎がくっついていたからだ。ここに
来る途中、別の女の子と話してたのに。
「あ、いくいくたちだー!」
ゆきのはくまくまを立ち止まらせ、道の上から、「オーイ」と満面の笑顔で
手を振った。
「あ、ぱん太郎さまでねか」
おハナさんはテコ棒を放り出し、飛ぶように駆けていった。
おハナさんが抜けては仕事にならないので、仕方なくすずと一緒に後につい
ていった。
「やあ、ゆきの。これからおでかけ?」
「うん! ぱんぱんと一緒に森に木の実採りに行くんだー♪」
「へえ……」
ぱんぱんって……。
ちら、とぱん太郎を視界の隅に入れる。実に呑気そうな顔でおハナさんと話
していた。
「ぱん太郎さま、どこいくんだべか」
「このコたちと木の実採りなのーん」
「ウチのカボチャいらねが。蒸かすと美味いだよ」
「食肉植物の方がいいのーん♪」
「よっしゃ、今度それの畑作るだ」
おハナさんが秋波を送っていた。なんとなく、お似合いのカップルに……見
えるわけないか。おハナさんに失礼だ。
ボクはゆきのを手招きし、頭上から身体を傾けてきた彼女の耳に囁いた。
「いつのまに仲良くなったの?」
「え?……もしかして、いくいく、妬いてるの?」
ニヤニヤと笑うゆきの。
「ちがうよっ」なんでそうなるんだ、このオマセさんは。「アイツが誰かと一
緒に歩いてるのって初めて見るからさ」
「そうなの? けっこう他の子とも一緒にいるよ。この前もりんのところの仕
事手伝ってたし、しずしず達の山菜採りにも付き合ってたし。話してみれば面
白いヒトだよ」
「そうなんだ……」
知らなかった。いつの間にそこまでとけこんでたんだろう。
と、その時だった。
おハナさんから離れたぱん太郎がこちらに来たかと思うと、何気ない動作で
すずのスカートをぺろんとめくり、まじまじと中を覗き込んだのだ。
一瞬、周囲の時が止まった。
すずも固まってしまったが、数秒のタイムラグを置いて顔が瞬時に沸騰し、
「きゃーーーーーッッ!!!!」
と叫び、スカートを押さえてうずくまった。
「この野郎!!」
ボクはありったけの力でぱん太郎の腕を蹴り上げ、ついでに下がっていた顎
にもアッパーカットをかました。ガキン、と歯がぶつかる痛そうな音がする。
「んごーッののー!?」
もう一発いきたいところだったが、顎をおさえてぱん太郎は二三歩下がって
しまった。「な、なにするのー!?」
「そりゃこっちのセリフだっ!!」
すずとぱん太郎の間に割り込み、握り拳を顔の前に示して睨み上げる。コイ
ツ、もう勘弁できない!
「ぬぬぬーん……ぬしに手を出すとはいい度胸なの」
もう回復してしまったパンダの顔が凶暴そうに歪み、ボクはちょっと怖じ気づい
てしまったが、一歩も退かずに睨み返し続けた。怒りの煮えたぎる方が凄まじい。
メンチのきり合いになり、膨れ上がった闘志がいよいよ一触即発状態になっ
た時、横から飛び込んできたのはゆきのだった。
「ちょ、ちょっと二人ともやめてよ〜!」
わたわたと腕を振りながら間に入り、制止するように互いの方へぴょんぴょ
んと跳びはねた。
「ね、ね、仲良くしようよいくいく! ぱんぱんもさあ!」
う……闘争心が薄れる……。
「ボクは別にどっちでもいいのーん」
ぱん太郎の身体から力が抜けた。フッと笑い、肩をすくめると、憐れむよう
な眼差しをボクに送った。
なんだ……こいつ。
何故かは分からない。でもバカにされている。そんな目だ。それだけはハッ
キリと分かる。
ボクの全身の血がカッと昇った。絶対に許せない。「このッ……!」
「仲良くしよーよ! ね! ね!」
ゆきのが飛びついてきた。
「わかったのん、キミがそう言うならそうしてあげるのん」
「わー! やったー!」
ゆきのは嬉しそうにぱん太郎に飛びつき、その長い腕にコアラのようにぶら
下がった。「ぬし様大好き!」
怒りは収まらなかったが、ボクも身構えを解いた。
だが、ひとつだけ絶対に譲れないことがある。
「おい、すずに謝れよ」
「のん?」
つぶらな瞳でボクとすずを交互に見るぱん太郎。
「なんでー?」
「な……!」
また肩を怒らせたボクの腕に、すずがしがみついてきた。
「行人! やめて!」
「すず……なんで……!?」
「いいの行人、私は気にしてないから」
「でも、コイツ……!」
「突然のことだったからつい大声出しちゃっただけ」そう言って、すずは取り
繕うようにペロッと舌を出した。「あんなの全然ヘイキだから」
本人がそう言うのだから、これ以上ボクがやることなどなかった。
ゆきのがぱん太郎に、「スカートめくり禁止!」などと言いながら、彼らは
すぐ北にある森へと向かっていった。
なんともなしに道端に立ち、小さくなっていく後ろ姿を見送っていると、隣
に立ったすずがこちらに振り返った。
「ありがとう、行人。助けてくれて。……嬉しかった」
「え? と、当然じゃないか」そんなコト言われると照れてしまう。「いきな
りあんな事してくる方がどうかしてるし」
「……そうだよね。でも……」
ためらうような笑みを作り、すずは視線を泳がせた。
「……あんまり東のぬし様を怒らせるようなことはしないで……」
ボクは「え……?」と、すずを見やった。
え?
「今、村が変わりつつあるのは、行人も知ってるでしょ?」
「……そ、そりゃまあ……」
「東のぬし様のおかげでみんなが将来の希望を持てるようになって……それを
怒らせちゃって、もしこれ以上来てもらえなくなりでもしたら……みんな悲し
むと思うの……」
希望だって。
あんな最低パンダ野郎が去ったら悲しむだって。
そんなバカな。――と、言おうとして、ボクは寸手で言葉を呑み込んだ。唾
棄したい気持ちに偽りはない。だけど、我ながらみんなを侮辱する酷い言葉だ
と思った。
藍蘭島には藍蘭島の事情がある。社会の風習が違えば、理解の範疇を超える
ことだってきっとある。
これがそうなんだ。
──でも、ボクにはやっぱりわからなかった。
「そこまでして……そんなに欲しいのかな……好でもない人の……その、子ど
もを……」
「うん……」
すずは曖昧に頷いた。
「……たぶん、みんな村のことを考えてるんだと思う。でも……」ボクを見つ
める。「……やっぱり本心でも欲しいんじゃないかな。だって、みんなこの島
が好きだもん。ここでいつまでも暮らせたらいいなって……。それが自分の代
で終わっちゃったりしたら、それはとても悲しいことだと思うし…………。
………………それに…………………………」
言葉が途切れ、すずはもう姿の見えなくなった道の向こうを、目を細めて見
つめた。
ボクはそれを不思議そうに見た。
なんだろう……なんでこんな目をするんだろうか。
「……それに……なに?」
「え? う、ううん、なんでもない! ……あ!」
すずが慌てて指さす。おハナさんがハウスカボチャの前でじーっとこちらを
見ていた。
「行人、おハナさんが待ってるよ。行こう?」
「う、うん」
なんだか誤魔化された感じを受けたが、それも重労働をこなしているうちに
どうでもよくなってしまっていた。
「ちょっとその花が気になってまして、探しているんですの。でもやっぱりこ
の辺にはないみたいですね……まあ、それはいいとして」
ちかげさんは眼鏡をスチャと掛け直してボクを見た。
「行人さんが来てから、この村もだいぶ変わりましたですの」
「え? そ、そうなんですか?」
唐突に切り替わった話題に戸惑いながら応じるボク。
「ええ、変わりましたですの」ニコッと笑うちかげさん。「なんか色々と、止
まっていた歯車が動き出したように」
「へえ……」
「待望の子どもも産まれましたし……ちょっとビックリな展開ですが」
ボクはしばらく置いてから、
「そうですね」
と答えた。
「ときに行人さんは、これからいかがするおつもりですか?」
「え? この後はもう家に帰ろうかなと……」
ちかげさんの顔がヒクッとなった。
「そうではなくて──」目を瞑って頭を振る彼女。「……いえ、やっぱりいい
です」
「は、はあ……?」
それで会話は途切れ、ボクはそろそろおいとましようと腰を上げた。
ちかげさんは玄関の外まで見送ってくれると、戻り際に、
「行人さん……」
と、へんに改まったような感じでボクを見つめた。
「行人さんは……本がお好きですのね」
「へ? え、ええ……。ミステリー物は特に好きだから、どんなに細かい活字
でびっしり埋まってても、頑張って読みたいですね」
「フフ……」
ちかげさんは下唇に人差し指の横腹を当てておかしそうに微笑んだが、ふっ
とそれがやんだ。
次の言葉を待っていたが、ちかげさんはただボクを見つめるばかりで、その
訴えかけるような瞳にボクはなんだか落ち着かなくなってきた。後ろのぱな子
さんも「?」な顔をしている。
「な、なに?」
「……いえ。なんでも」また微笑むちかげさん。「行人さんは、行人さんです
ものね。でも、私もミステリーは大好きですの。
……色々なミステリーをね……」
謎な言葉を残して、扉は閉まった。
……なんなんだろう。
そろそろ日が沈みそうだった。
次第に夕付いてくる斜光の風景の中、すずがひょっこり居たりしないかなあ
……と、適当にぶらついて道を歩き、薄暗くなってきた林道を通りがかった時
に、ふと、木々の奥から人の声のようなものを耳にした気がした。
「……誰かいるのかな?」
声のしたような方向に耳を澄ませてみる。
「…………ぁ……ぅ……」
……やっぱり何か聞こえる。
茂みをかきわけて行くと、それは段々と明瞭に聞こえるようになってきたが、
同時におかしな様子も分かり始めた。
『……そこは……』『……あう……!』『……きゃうう……!』
ギョッと身体が硬直し、足が止まる。
なんだ……これ…………もしかして………………。
つばを飲み、ちょっと逡巡した後。
そこからは物音を立てないように歩き始めた。
まるで吸い寄せられているかのように。
いけない。倫理がそう警鐘を鳴らしてた。よせって、やめろって。
だがそんなボクの耳の中に、他の音をはね除けてその声は浸透してくるのだ。
『はうぅん……!』『……な、なんかおかしいよぉ……!』『あ……あ……あ
……だ、だめぇ……』
(まさか――)
心臓の鼓動が一気に高まる。心音が調子はずれたように、息が不規則になっ
ていく。
聞いたこともないような声音だった。頭の奥がピリピリと痺れ、血がカッと
昂ぶる。思わずよろめきそうになって、慌てて脇にあった木の幹に手を当てて
支えた。
一歩一歩、声は着実に近づいて来た。
「あう、あうぅ……ぅうぅん…………!」
背骨がゾクゾクしてくる甘酸っぱいビブラート。
「こ、こんなの初めてだよお……あ、あ、そ、そこは……! そんな……あ、
あ……! し、しないでぇ……っ!」
(まさか――)
昂ぶった血が冷えるような、でもまた騰がるような。醒めたワケじゃない。
騰がってるのか下がってるのか、よくわからなくなってきた。胸が痛い。つば
を何遍も飲み込む。目が乾く。ヤバイ、呼吸が苦しくなってきた。
引き返そうとも思ったが、声はもうだいぶそこまで迫っていた。ここまで来
てしまっては、背を向けて離れる方が怖かった。バレるかもしれない。バレた
らどうしよう。こんなとこたまたま通りがからない。どう弁解しよう。どんな
目で見られる。蔑まれる。憐れまれる。くそ、あの目で。ダメだ、やっぱり引
き返さなきゃ、だからもうダメなんだって。ああああ。
その間にも、脚はゆっくり、ゆっくりと……動いていた。
――立ち止まる。
目の前にボク一人の身体ぐらい十分に隠せるスギがあった。その向こう側か
ら、熱い息遣いと喘ぎ声が聞こえてくる。このスギを回ってしまえば、その現
場に鉢合わせするだろう。
ど……どうする……。見る……のか。
ボクはまるで念力発火でもするかのようにスギの木肌を凝視した。
見つかったらどうするんだ。覗き魔って言われて、みんなに知られて。すず
にも。
しかも相手はアイツだ。100%間違いない。
止めた方がいい。まだ引き返せる。今すぐ回れ右して戻ろう。知らぬ振りし
て帰ろう。
こっち向いてたらどうすんだ。頭出してすぐ見つかったらどうすんだ。
心臓がバクバク弾ける。
ボクは目を伏せてスギの幹に手をつき――――
そっと。
木陰から覗き……目を上げた。
見てしまった。
まさか――そのまさかだった。
ゆきの。
平まんじゅうの端っこで拡げた脚を膝立ちに腰掛け、「あっ、ああっ♥」と、
甘く上擦った声を漏らし、その未成熟な肢体をくねらせていた。
ボクの瞳孔は今きっと、驚きのあまり絞りきられてるに違いない。
ゆきのは身体を震わせ、なにかに堪えるように俯き加減な顔を真っ赤にして
目を閉じ、半開きの口からは濡れた舌が覗いていた。
「あ……あ……あぁう……♥!」
悲鳴のようにも聞こえる声。でも苦しんでるわけじゃない。
なんて顔してるんだ……。
スカートは片方の足首に引っかかり、白無地のお子様パンツで座っている。
帯を解いているため、ゆきののからだが揺れるたびになだらかな膨らみと小さ
な乳首がちらちらと見えた。彼女のふとももには手が乗っかり巻き取るように
押さえつけられていたが、ゆきの自身のものではなかった。それが伸びている
のは彼女が座っている、下の物体からであった。
無論、それは本物のまんじゅうなどではなく。
「あうゥッ! うぅぅんッ♥!」
今度はピンと背をしならせ、中空を仰ぎながらガクガクと震えるゆきの。頬
が緩んでいる。
腰がわずかに浮き上がり、パンツの股の部分が露わになった。そこはお漏ら
しをしたかのようにぐっちょりと濡れ、粘性の透明な汁がたらーりたらーりと
垂れ落ちた。
平まんじゅうから赤くうねうねしたモノが伸び、汁を垂らしている股部に埋
(うず)まるようにねっとり舐め回すと、
「ふうゥんッ♥!」
ゆきのの腰が逃げそうになるのを、平まんじゅうはふとももをしっかと押さ
えつけ、また元に戻す。
「ふぁっ……あ、ああ……ああぁ……♥!」
グンと上体がしなって今度は前に来て、背中を丸める格好になった。股を締
め、上着の裾と一緒に下の物体を掴む。服がシワになるぐらい強く握りしめ、
わなわなと開け、締めたふとももをぶるぶると震わせ――ボクがこれまで見た
こともない、性的快感に惚けた浅ましい表情だった……。
「いっ……いいっ、いいよぅ……♥」
「もっとやって欲しいのーん?」
平まんじゅう――ぱん太郎が口を離して下から尋ねてくると、ゆきのはうる
うるとした目で、
「やって、やって……!」
と、しきりに頷いた。
「ぬふふ、じゃあやってあげるから、今度はこの布も脱いで逆にまたぐのん♥」
ゆきののふとももから手が離されると、片手に挟んでいた黄色い花が地面に
落ちた。
「はぁ……はぁ……♥」
ゆきのはぱん太郎の胸に手をつきながら片脚ずつ持ち上げ、んしょんしょと
パンツを脱ぎ始めた。パンツとあそこの間にもぬっちゃりと何本もの糸が伸び、
プップッと切れる。びちゃびちゃに濡れたパンツを赤い顔で見つめると、ゆき
のは近くにあるスカートの上に放った。
覆うものが何もなくなった股間が拡げられ、ゆきのの大事なところが丸見え
になった。
陰唇がぷっくり膨らんだひとすじの可愛い割れ目。産毛がわずかに生えたば
かりの幼いスジは、しかし、ネトネトとした汁にまみれ、後ろの穴までいやら
しく濡れぼそっていた。
「さ、腰を落とすのん♪」
「う、うん……」
いくぶん恥ずかしそうに、ゆきのはぱん太郎の顔に腰を落としてゆく。
膝が曲がりきり、ゆきのの大事なトコロが……ぱん太郎の舌が直接アソコに、
触れて……
「あ、あ……♥」
と、ゆきのは鼻にかかった声を上げ、くたくたとぱん太郎の胸に頬をつけた。
ぱん太郎の顔が、ゆきののアソコにくっつき、少女が感じる部分を思う存分
舐めまくる──
ゆきのはさっきよりも一声一声がハッキリした甘い嬌声を上げた。くゆらす
ようにお尻をうねうねとする。それは……十一歳にはとても思えない、淫靡な
ダンスだった。
ぱん太郎が逃げる腰に業を煮やしてふとももを掴み、しっかり引き寄せると、
「ふぅ……うぅん……♥!」と、からだをプルプル震わせ、指を甘噛み、
動物のように発情して潤む目から涙をこぼしながら、ゆきのは股間から襲いく
る感覚に必死に堪えているようだった。
──なんて……光景なんだ……。
ボクはクラクラと意識が遠くなりそうになった。
ゆきのまで、こいつは──!
『ゆきのはまだ子どもなんだ。こんなコトしていいはずないじゃないか』
そう思う。思わなければいけない。
思うハズなのに。
そう思うなら、動くべきなのに。
まだ早すぎるって、止めに行くべきなのに。
足が、動けなかった。
いつしか、木々の間から垣間見える空は真っ赤に燃え上がっていた。
そして、枝葉が光を遮る薄暗い林の奥で――ゆきのはもう、すっかり耽溺し
ていた。
「ひぃっ……いぃぃ……い、いぃよぅ……♥!」
ぱん太郎の胸によだれを垂らしながら、股間からのいやらしい刺激にもがく
ようにからだを泳がしている。しかしふとももを固く押さえ付けられているた
めに腰だけはどうしても動かせず、快感は後から後から際限なく生まれてきて
しまうらしかった。
いつの間にかゆきのの上着も脱がしてしまっていたぱん太郎は、長い腕を活
かしてお尻から手を回し、ゆきのの割れ目をパックリ左右に開き、桃色の肉を
覗かせて直にソコを舐(ねぶ)っていた。ゆきのの大事なトコロは、敏感なト
コロだった。
ぱん太郎の唾液──だけなのだろうか──でぬらぬらと濡れる女性器。それ
は十一歳の熟していない肉体であるはずなのに、ボクにとって、とてつもなく
淫靡なものだった。
ゆきののお尻は、あんなにふっくらとしていただろうか。腰から胸に至る曲
線は、あんなに女らしいカーブを描いていただろうか。わからない。今となっ
ては記憶に自信がなかった。
甘い嬌声を震わせ続けていたゆきのに変化が現われた。そのからだが次第に
ビク、ビクと弾み始め、細かく痙攣しはじめたのだ。
「あ……あ……だめ……なんか……なんか来るよう……♥!」
と、追い詰められたような声で叫び、真っ赤な顔からポロポロと涙をこぼして
口をわななかせ、背中を反らしながら腕をピンと伸ばして爪を立てる。
「ああっ……ああああ……ッ……はあッ……あぁ……ッ……!」
しっかり押さえられた腰が前後にフルフルと震え、今度は俯き何かに堪える
ように目を瞑り、その喘ぎ声の間隔がせっぱ詰まったように早くなっていった。
「あッ……あッ……あ、あ……ああ、あ、ああ……はあぁ……あ……ああ!
ああッ────あ〜〜〜〜〜ッ! イクゥゥ〜〜〜〜〜ッッ!!」
あられもなく喉を震わせて鳴きまくるゆきの。傍目にその腿がギュウギュウ
とぱん太郎の顔を挟み込んでるのがわかった。
ゆきのの動きが止まり、その姿勢のまま固まったように、ただわずかにから
だを痙攣させていた。
それは十秒ぐらいだっただろうか。正確な時間、いや時計があっても、今の
ボクには永劫にも思える長さだった。
「────あァーーー……………………♥♥」
からだが徐々に弛緩してゆき、か細くなるまでゆきのの声は続いた。
緊張が抜けたゆきのは、ぱん太郎の胸にくずおれるように伸びた。
どうしたんだろう……ゆきの……もしかして……女の子にも男みたいに「イ
ク」っていう感覚があるのかな…………
ぱん太郎は元気のなくなったゆきのの背中などを撫でていたが、ゆきのがだ
いぶ落ち着いてくると、その身体を掴んで近くにあるスギまで持ってゆき、そ
こで膝立たせた。
内股までぐっしょりと濡れたゆきのの秘部。
「こ……今度はなにするの……?」
惚けたような目で訊ねるゆきのに、ぱん太郎は行動で示した。
ずり下ろされたズボンの中からビインッとバネ仕掛けのように、長大なエモ
ノが飛び出したのである。
ボクは息を呑んでいた。デカイ。
気にくわない奴という色眼鏡を差し引いても、それは間違いなくでかかった。
亀頭の付け根までしっかり皮が剥け、浅黒く反り返った太い肉茎。鮮やかに
育った毒キノコのように傘張るカリ首。大きさも、形も、悔しいけどボクでは
とても敵わない大人のペニスだった。
でも、ボク以上に驚いたのはゆきのだろう。
自分の顔ぐらいもある長さの醜悪な肉塊が目の前にそびえ立ったのだ。精臭
がここまで漂ってきそうなほどのおぞましい男性器を鼻先にまろび出されて、
まだ子どものゆきのがどれほど怖がるだろうか。
だが──
ゆきのはうっとりとした表情で、臆しもせずにソレに指を這わせた。
え………………
ええええええ………………!!??
「あは、いつ見てもすごぉい……♪」
そう言うと、両手で厚太の肉茎を掴んで曲げ、先端を自分の口元に引き寄せ
た。「あ〜ん」と、まるで食事を始めるかのように大きく開けられるゆきのの
口。いっぱいに開けてもなお亀頭の方が大きかったが、お構いなしにパクッと
先っぽだけを口に含む。
そして親指で裏筋を揉みながら、シュッシュッと両手でしごき始めたのである。
ボクは真っ白になった。
(あ、あのゆきのが……そんな…………!?)
信じられない眼前の光景。
でも、そんなボクを可笑しがるように、ゆきのはぱん太郎の男性自身に積極
的な奉仕をしていった。
「ん……ん……んむ…………」
ゆきのは口の中で鈴口を刺激してるらしかった。ときおり唇が離れ、頭を前
後に揺らしながら、突き出した舌の先でリズミカルに鈴口の中をほじくるのが
見えた。また、手と役割を交代すると、ハーモニカを吹くように口をつけて肉
茎をしゃぶりながら、中指の腹で鈴口をコネコネとする。
ときおり犬歯でカプッと敏感な先端に立て、ピクピクとペニスが反応し、切
なそうにしている顔が、「ウッ」と軽く歪むのを可笑しがっていた。
(うわ……うわ……うわあぁ…………)
ボクは思わず股間を押さえてしまっていた。あ、あんな風におしっこが出る
場所を弄くられたら、どんなになっちゃうんだろう……!
「ののの〜……」ぱん太郎も気持ちよさそうな吐息を何度もついた。「キミも
だいぶ上手くなってきたの〜ん……♥」
「あは♥ お母さん直伝よ♥」
……かがみさん……まで…………!?
ペニスを愛おしそうにしゃぶるゆきのの顔は火照ったように上気し、上目遣
いにぱん太郎を見る目がとっても潤んでいた。すごくいやらしい顔で、いつも
のゆきのと同一人物なのか信じられなかった。
「ん……んむぅ……んんむぅ……♥」
ゆきのの口戯は段々とノッてきたように熱が籠もってきて、ほとんどむしゃ
ぶりつくようにぱん太郎のペニスを味わう。そして彼にそうされたようにゆき
のもまた、舌から垂れ落ちるほどのつばをのせて満遍なく塗りたくり、指で広
げ、ぬらぬらと妖しい光沢を放つまで舐める。
「のの〜……ののの〜……♥ も、もう出るのー……♥」
ぱん太郎は上擦った声を出し、腰をカクカクと動かし始めていた。
「ののの〜……今日はまずどこに出してほしいの〜ん?」
「えっ……えと、ク、クチ以外なら……あっ」
ゆきのはパッと閃いたような表情になると、ぱん太郎のペニスを持ったまま
やおら立ち上がり、背を向けて後ろのスギに手をついた。そして、
「ここに……ぱんぱん、おねがぁい……♥」
と、脚を大きく拡げて腰をつきだし、秘裂の前までぱん太郎のペニスを誘導した。
「ナカがダメなら、せめて入り口でドピュドピュ出して〜♥」
「い、いいの〜ん?」
ぱん太郎は誘われるままに一歩前に出て先端を割れ目にくっつけると、愉悦
げに笑みながら昂奮を抑えられないようにハァハァと荒い息をついた。
「うん、ぱんぱんの熱いせーえき、ゆきののマンコにいっぱいかけてちょうだい♥」
「わかったのん、ナカに入っちゃうぐらい、ドプドプ浴びせてあげるのん♥」
少し腰を突き出して、ぱん太郎はゆきのの割れ目にパンパンになった亀頭の
先をぬちりと埋(うず)めた。
「んんっ♥」
と、ゆきのは気持ちよさそうな声を漏らして、甘く腰を揺らす。
ぱん太郎は自分の手で肉茎をしごき始めた。
「割れ目の中の肉がヌルヌルでキモチいいの〜、の〜♥!……ぬのーん、ぬの
ーん……♥」ぱん太郎の腰がカクカクと動き、今にもゆきのの処女膜を破りそ
うだった。「イクのーん、イクのーーーんッ♥!!」
もうしごかなくてもほとばしる直前を予感したぱん太郎は、肉茎から手を離
してゆきのの秘裂を左右にぐいっとさらに拡げ、真っ赤に膨らんだ亀頭のカリ
まで内に隠れるほど押し込んだ。
「あああっ♥!?」
ゆきのがその感触に官能的な嬌声を上げた瞬間。
それは爆ぜた。
ブピュッブピュッブピュッブピュッッ!!!!
ブピュピュピュッッブピュピュルルッッ!!!!!!
ブピュブュビュブュブュブュッッッ!!!!!!
肉茎が膨らみビクビクと脈動し、亀頭が埋(うず)まった周囲から、ビュッ
ビュッとまるで噴水のように白濁液が溢れ出してくる。ゆきのの秘裂が、お尻
が、内股が、みるみるうちに白く染まっていく。
その鉄砲水のような放出に唖然として、ボクは開いた口が塞がらなかった。
なんていう射精なんだ……!
しかも量だけでなく、その濃さも凄かった。ゆきのの肌についた白濁液は、
まるでゼリーのようにドロドロと垂れ落ちていく。どれだけ溜めればあんなに
粘っこくなるんだ。
「ああっ♥! あああっ♥! こっ、これナカで出しちゃってる
のおぉ♥!?」
「奥じゃないの〜、ほんの入り口で出してるの〜、あー……でも、これはこれ
でキモチい〜の〜〜ん……♥」
ボクもそれがナカで出されていないとは思えなかった。確かに入っているの
は亀頭だけ……みたいだ。けど、こんな勢いで出されてしまっては、中に流れ
込まない方がおかしかった。
「ああ、だめぇ、お母さんが、お母さんがナカはダメってぇ……♥ あ、ああ、
でもっ、でもすごい、すごい熱いのがいっぱい出てるよお……ゆきののマンコ
にいっぱい、いっぱいせーえきいっぱいかかってるよぉ……♥ せ、せーえき、
せーえきすごぉぃいぃ……っ♥!」
あられもない嬌態を振りまくゆきの。
出来る限りペニスが当たるようにつま先立ち、快感に酔いしれながら、パン
ダ人間の射精を女性器に浴び続ける姿は、もはやボクの知っているゆきのでは
なかった。年齢や胸の無さなんてどこかに吹き飛んでしまう……まぎれもない
「女」、だった――
ようやく精の放水が収まり、ぱん太郎の身体から力が抜けると、ゆきのの股
間は一面白で覆い尽くされていた。
手足をぶるぶるさせ、快感に緩んだ顔。精液をかけられただけで、あんなに
気持ちよさそうに……
「あ……あ…………赤ちゃん……赤ちゃぁん…………♥」
ゆきのは喜悦の涙いっぱいの瞳で、直上にあるぱん太郎の顔を見上げた。
「あぅぅん……やっぱり……ゆきのも赤ちゃん欲しいよお……♥」
「ぬふふ〜ん♥」ぱん太郎は極上の笑みを浮かべた。「マンコがキュウキュウ
って締め付けてきて可愛いのーん♥ ぬふふん、どうしても欲しいっていうん
なら、ボクのせーえき、ナカでドプドプ注いであげてもいいのん♥」
「ホ、ホント? ゆきのでも赤ちゃん出来るの?」
「もちろんなのん、ボクのせーえきマンコになるんだったら、いくらでも孕ま
してあげるのん♥」
ゆきのは淫蕩にけぶった目をきらきら輝かせた。
「ゆ、ゆきの、赤ちゃんつくりたい……!」
「ぬふっ、ぬふ、ぬふ〜ん♥ いいのん? ボクのせーえきマンコになるのーん?
種付けしまくってもいいのーん?」
「なるっ、なります、『せーえきマンコ』になるからぁ……種付けしまくってぇ……♥」
「種付けされて、ボクの赤ちゃん孕むのん?」
「うん、ぱんぱんの赤ちゃん孕む、種付けされてゆきの孕むからぁ……ぱんぱ
んの赤ちゃん孕ませてぇ〜♥」
「ぬふ、ふ、ふふ、ふふ♥」
ぱん太郎は腹を波打たせて笑った。腹の底から愉快そうな笑いだった。
「ぬふふ、それじゃあキミの小さな処女マンコもボクが開発して、ボクのせー
えきマンコにしてあげるのん。ボクのせーえきドプドプ入れて、子宮までボク
のモノにして、五匹でも十匹でもボクの赤ちゃん孕ませてやるの〜ん♥」
そう言うとぱん太郎は昂奮極まった息を吐き、ゆきのの腰を掴むと、ガチガ
チに勃ったペニスを真っ白に塗りたくられた秘裂の中へ、ケダモノの欲望のま
まに腰を進めていった。
「キミのばーじんも、いただくの〜ん♥」
あんな量を射ち果ててもまったく固さを失ってないペニスが、ゆきのの中に
入っていく……!
「あ……あうぅぅううぅ〜〜〜〜〜ッッッ!!!!」
今度は本物の苦悶の声だった。ゆきのの全身が、激しい痛みに襲われていれ
るように苦しそうに強張った。
やっぱりあんな大きなモノ、ゆきののからだじゃまだ耐えられないんだ……!
しかし──
ぬ"る"んっ
「んああッッ!!」
それは途中で加速し、想像よりも呆気なくゆきのの中へ収まっていった。
根元部分を少し残して挿入に成功したペニスに、「のの〜ん……」と、満足
の溜め息を吐くぱん太郎。
「あぁ…………ああぁぁ………………!」
ゆきのは上半身を大きく揺らしながら、辛そうな息を何度もはいた。
それとは正反対に、
「のののの……♥!」と、ぱん太郎はのど仏をさらしながら快感の声を雄叫び
のように上げた。「今までで一番のキツキツヌルヌルなのん……♥! ののの
のの〜〜〜……最高なのねん……♥!」
「はぁ……はぁ……う、嬉しいかも……♥」
「大丈夫の〜ん?」
「だ、だいじょうぶ……!」言葉とは裏腹に、ゆきのの顔は苦しげだった。
「思ったより……痛くない……よ……!」
「ぬふふ、これまでのエッチが効いたのかもー」
そう言うと、ぱん太郎はゆっくり、ゆっくりと動き始めた。
「んあ……んあ…………!」
しばらくは、ぱん太郎の腰の動きに合わせて、ゆきのの苦悶の呻きが続いた。
「う、うぅん……んあ、あ……うう……! あ、ああ……ああぅ……!」
ゆきのはスギに手をつき、突き入れられるたびに背中を張りつめ、脚をガク
ガクと震わせる。
まるで拷問のようだった。初めての女の子は、あんなに辛いものなのか。
そんなゆきのに、
「頑張るの〜ん。今ゆっくりやってあげてるから、早くボクのちんぽのかたち
をマンコで覚えるの〜ん!」
と、ぱん太郎は上から声をかけた。どこまでも呑気な声であった。
だが、ゆきのは健気にコクコクと頷いた。
ズチュ……ズチュ……ズチュ……ズチュ……
ほどなくして。
わずかずつだが、ゆきのの反応が変わってきた。
「あ……あ……あぁぁ…………♥ な……なんか…………お、お腹の中が……
ジンジン痺れてきた……♥」
「ぬふふ、どうやら感じてきたみたいなのねん、じゃあ、もっと速く動くのねん♥」
徐々に腰の動きを速めていくぱん太郎。
ズチュ、ズチュ、ズチュ、ズチュ、ズチュ、ズチュ
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あッ!」ゆきのの顔に快楽の兆しが戻ってきた。
「な、なに……奥に届いてる……あ、ああっ……奥に、奥に……ぱんぱんのお
ちんちんが当たってるぅ…………!」
「ぬふ、ぬふ♥ キミのお望みどおり、奥の子ども部屋にい〜っぱいボクの子
種注いであげるのん♥」
そう言って、ぱん太郎は腰の動きをさらに深く、強く、加速し始めた。
グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ!
「あううっ、あうっ、あうっ、あううっ♥!」
それはおよそ、人と人同士の光景とは思えないものだった。ゆきのがまるで
幼児の扱う人形のように揺さぶられている。
だけどそれでも、一度感じ始めた快感は無くならないようで、苦悶とも陶然
ともつかない表情で、ゆきのはうわごとのような喘ぎ声を上げ続けた。
信じられなかった。あんな乱暴に扱われて……あんなに大きいモノを入れら
れて……ゆきのはまだ小学生の年齢なのに……
二人の結合部から漏れ聞こえる音が、どんどんと大きく、高くなってゆく。
精液にまみれた入り口から、あの巨(おお)きいペニスがゆきののアソコにほ
とんど根元まで入っていく様は、淫猥以外の何ものでもなかった。
「のの〜♥ 狭すぎなの、ぬるぬるだけどぎゅーぎゅーなのー♥ キモチイイ
ののの〜〜〜♥!」
グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ!
「あ、あ、あ、あ、あ、あッ♥!」
ゆきのは前後に揺さぶられながら眉根をキュッとさせ、
「奥に、奥に感じるようっ、届いてるようっ! ぱんぱんのおっきいのが奥ま
で……来てるうぅ……♥!」
と叫んだ。
「の〜〜〜♥ の〜〜〜ッ♥!」ぱん太郎が吠えた。「締まるの〜ん、締まる
の〜ん、もう限界なのん、もうドプドプ出ちゃうの〜〜〜ん♥!」
ラストスパートが始まった。
ぱん太郎はゆきのの腰をがちっと掴み、深いところをえぐるように激しく腰
を打ち付けた。
「んああっ、んああっ、んあああっ!」
これにはさすがにゆきのも苦悶の悲鳴を上げた。
「痛いっ、お腹痛いようっ、激しすぎるようぅ……っ! お腹、お腹がぁ……
苦しいぃ……!」
ゆきのの上半身がずるずると地面に落ちた。腰だけが持ち上げられた状態に
なって、ゆきのがいくら苦しそうな声を上げても、ぱん太郎の貪るような律動
はとまることが――
「のの〜〜〜〜〜んんッッッ♥♥!!!!」
――とまった。
めいっぱいまで深々と挿し込んで。一瞬、パン太郎の身体が膨らんだように
も見えた。
ここまで放出音が聞こえてくるのではないかと思うほど、明快な絶頂射精。
ゆきのの胎内に、ぱん太郎の精子がどくどくと流れ込んでいるようだった。
「あっ……♥! あっ……♥! あっ……♥!」
ゆきのはからだをビクビクとさせ、うっとりと目を閉じながら、ぱん太郎の
子種が自分の胎内に注ぎ込まれるのを――ぱん太郎が言う、子ども部屋に注ぎ
込まれているのを――深く感じているみたいだった。
ピーンと伸びて震え、つま先立ちした脚の内側に、ネトついた白濁液が伝い
流れてゆく。それだけではなく、もう一本の脚が生まれたように、ゆきののア
ソコからドロドロと太い白布となって落ちていった。
ゆきのの生殖器官は中も外も、ぱん太郎のおびただしい精液で溢れかえっていた。
「はあぁぁ……♥ すごい……すごぉぉい…………♥ すごいよぉ…………♥」
うわごとのように言うゆきの。「ぱんぱんのせーえきが……どくどく……入っ
てきてるよぉ……♥!」
「の〜〜〜…………♥」
ぱん太郎は心底気持ちよさそうな吐息をつく。
「種付けられてるのわかるの〜ん? ドプドプせーえきで、お腹の奥に種付け
てるのわかるの〜ん?」
「わかる、わかるうぅぅ……♥!」熱に浮かされたように叫ぶゆきの。「お腹
の奥に入ってくるぅ、キモチイイのがいっぱい入ってくるようぅ……♥!」
「これでキミもボクのせーえきマンコなのん。ボクの子ども孕んで、痛い思い
して赤ちゃん産むのん」
「え……い、いやあ……痛いのはいやぁ……」
「でも子ども産んだら、またこうして交尾できるのん。産んで、孕んで、産ん
で、孕んで、産んで、孕んで……一生忘れられないほどキモチよくしてあげる
のん。ボクが飽きるまでキミはボク専用せーえきマンコなのん」
「ア……ァ…………ア〜〜〜〜〜………………♥」
ゆきの声はもう言葉にならず、堪(こら)えられない甲高い嗚咽を漏らした。
あんな量の射精を二回も立て続けたというのに、ぱん太郎はすぐにケロリと
して、
「ナカダシ一発だけじゃ満足できないのん、もっとやらせてもらうのん。せー
えきマンコにきょひけんはないの〜ん」
そう言ってゆきののからだを今度は地面に転がし、尻を向けるかたちでその
上をまたぐと、彼女の下半身を持ち上げて脚を拡げた。
そして、その体勢でペニスを埋(うず)め、腰を振り始めた。
グチョン! グチョン! グチョン!
「ふあぁぁあぁああぁぁぁああ…………♥♥!!」
ゆきのは細長い悲鳴を上げた。痛がっているのか、感じているのか、わから
なかったが、どちらかというと感じているようだった。
こんな姿勢でもセックスができるのかと、ボクは頭を殴られたようなショッ
クを受けながら、その想像を超えた行為を見続けた。
ぱん太郎が突くたびに前に注ぎ込んだ白濁液がビュプビュプッと吹き出し、
引いてもゴポゴポと溢れ出てくる。ボクの倍もある大きなモノが、ゆきのの小
さなアソコにもう、実にスムーズに出入りしていた。
「キモチイイ……キモチイイよう…………♥!」
ゆきのは悲鳴にも似た嬌声を上げ続け、最後はぐったりとして土に上体を横
たえ、だけど気持ちよさそうな笑みが消えることはなかった。
ゆきのを押し潰さん勢いで腰を打ち付けていたぱん太郎が、
「ドプドプ〜〜〜〜〜ッッッ♥♥!!!!」
と叫ぶと、ゆきのの背の付け根あたりを押しながら、密着した状態でピストン
運動が止まった。だらしない尻肉がビクンビクンと震えた。
その瞬間、「あああああッッ♥♥!!!!!!」と、ゆきのは子どもと
は思えないケモノのような叫び声を上げ、三度目の射精がほとばしるのを迎えた。
またもや半端じゃない量のようで、濃厚な白濁液がビュッビュッと噴き出し
て辺りに飛び散り、ゆきのの幼い肢体が真っ白になるほど浴びせかけられた。
顔も白濁に染めながら、ビクビクと全身を快感で痙攣させ、背中を反らせて
脚をいっぱいに拡げ、惚けたような表情で射精を胎内に受け止め続けるゆきの。
「んあぁ……んああぁぁ……♥ おなか、おなかが熱いよぅ……赤ちゃんが、
いっぱいできちゃうぅ……♥ タプタプしてるぅ…………♥」
「のの〜ん♥ ボクの特製せーえきいっぱい味わうの〜ん♪」
ゆきのは理性を失った顔でコクコクと何度も頷き、「赤ちゃあん……」と、
夢見るように呟いた。
「今後はいつでもどこでもボクのせーえきマンコなのー。ボクが命じたら、股
を広げて交尾して、ボクのせーえきマンコに注がれるのー。わかったのーん?」
「は……はあぁい……♥」
本当の理解しているのか怪しい表情で嬉しそうにお腹をさすると、水たまり
になっていた精液がヌルヌルと糊のように広がった。
この後も、ゆきのはぱん太郎の言う“精液マンコ”になってしまったように好
き放題犯され、失神するまで計五回も中に注がれた。だが、彼女の小さなから
だも子宮も特濃の白濁液で満たされて──ゆきのは自我を失うほどの快楽に包
まれて、最後まで幸せそうな笑みを浮かべていた。
(もしかしたら続くかもしれないかもしれなくないかもしれない)