僕はジョオと結婚したい。
そのためにはエイミーを消さなくては。
謀略でサンジェルマンの方に追い出そう。
ともかくもデバステーターを鍛え上げて最高の雷撃隊に仕立てあげなくては。
10月2日
漢口での戦後処理も終わり、これからどうすればいいのかわからない。
「フィリピンで働かないかい?」
スターリングに口説かれてオーケーした。
その日の夜はスターリングのお尻を掘った。
暖かくて締め付けてきて最高だった。スターリング大好きだ。
10月4日
マニラに到着。ルソン島の大部分は僕達同盟軍の庭みたいなものだが
南端の半島の連中は僕達に反抗的で戦車が通れないよう橋を弱い
木造に造っているらしい。これではいざという時が心配だ。
夜はスターリングを抱いた。彼のお尻はとっても気持ち良い。
機会があったらマルセルのお尻も掘ってみたい。
10月6日
僕は攻撃機デバステーター隊の指揮を任された。
頑張りまくって世界一の雷撃隊に仕立てあげてやろう。
今日もスターリングのお尻に挿入した。
互いにもう離れられそうにない。
いつかネロにも挿入したい。
ローリーと棟方志功
棟方志功は「わだばゴッホになる」と言ったが「ローリーになる」とまでは
叫ばなかった。これは近年まれに見る痛恨事であった。確かにローリーは
棟方に何の影響も与える事はできなかったがかと言って無視できる存在
ではなかったはずだ。
ローリーの壇林
ローリーはドゥリーットゥル式の空襲方法を考えつつモンタナの地に
創価学会の壇林を築くことを夢見ていた。彼は思っていた。
一日五時間の題目を唱えなくてはなるまい、と。
ドリトル先生爆撃記
戦争の終結までかなり時間がかかりそうだ。
それまで寺で爆撃の修行をしながら唱題に励むのも悪くないだろう。
南無妙法蓮華経…
RX-79G-C4 シャーマンユニット
RX-79グランドユニット武装・エンジン換装型。
性能は決して突出したものではないが堅牢性・信頼性は
極めて高く操縦し易い優れた機体である。
MSF-06X-ND ネロ専用ザク
ネロ専用に製作された改造ザク。S型ザクの機体をベースに
R-2型の脚部ブーストユニット、最新鋭アビオニクスと
新型エンジン、追加装甲を装備させた。運動性が極めて高く
新型ロボットとも十分に戦うことが可能である。
【海防艦25号】
丙型海防艦。典膳の「動く家」。現在はマーベラス港に係留中。
艦橋二階が典膳のトイレ・バスユニット付きの部屋となっている。
食堂兼会議室や幹部乗員用の個別寝室もある。
発語
これやこの逝くも帰るも別れては袖なき濡れて佐渡の大島
人に聞く初見に優る佐渡の小柳いで咲き誇る夜半の月かな
千人一首も褒め称え佐渡人国記も誇らしげなる自然の御嶋はこれこそ大佐渡ヶ島。
地図から眺めるその形も目出度き鶴が千年ならさてこそ大亀が万年の身を扶桑の
東海、日の出のよろこばしき畔に横たえるにもさも似たり。
その喜ばしき豊饒の郷、黄金の稲穂の生い茂る土地の東のはずれに新町なる
小港がございます。
シャーマンユニット ジョオ
陸戦型 メグ エイミー ローリー
RGM79D ベス ブルック サリー
ガンタンク アンソニー ケティ
ジョオ シャーマンユニット
カトリ ブルーマスター
フローネ マッドペンギン
RX-79G-A8 シャーマンユニット
陸戦型ガンダムの改良量産型。その機能をシンプルに絞っている。
僕はローリー。太平洋戦争で敗れて田舎の小島に引きこもっていただんだけど
ある日スターリングとピーターに呼ばれて丙型海防艦41号の艦長にされてしまった。
僕はもっと秋葉原で遊んでいたかったのに。
41号艦は今商船隊を護衛しつつアリューシャン列島を東へと航行している。
今は9月になったばかりというのに寒い。こんな日はとっと寝てしまうのが
一番だろう。侘しくてジョオの事を思い出してしまいそうなこんな夜には。
10月24日
航海はまずまず順調。これからきっと良い事が間違いなく起こりそうな
気がして何となくウキウキしてくる。
風は今日は強く雨も少し降ったが多少の事にはへこたれなくなってきたようだ。
きっとキスカ島で医者にもらった薬が効いているに違いない。
それにしてもあまりにも寒い。今日はこのまま毛布を頭から被って寝てしまおう。
調子が悪くなったら寝てしまうのが一番なのさ。
最近、トイレが妙に近くて困ってる。ダッチハーバーに着いたら医者に
良い薬をもらいたい。
10月25日
いつの日かこの艦の艦長を辞め再就職するための履歴書を書いた。
思ったより簡単に書けて一安心だった。
後で職務経歴書も書いておこう。でもきっと僕はこの艦の艦長を辞められないし
そもそもそんな事許されないだろうな。今日は幸いにも暖かい。
昨日みたいに震えることもなさそうだ。
GAT-X252D-FR フォビドゥンガンダム
フォビドゥンの廃部飛行ユニットを水中高速航行用に改装したもの。
水中での航行能力や運動性が劇的に向上し、その代わり飛行能力が
かなり低下している以外は通常のフォビドゥンと変わらない。
海港に面した土地の奪取を企むトラップ家のバトロイドと激闘を繰り広げる。
11月26日
今日は特に変わった事は無し。でも、ライフガードを飲みすぎて
気持ち悪いのはとんだしくじりだったかな。でも、必要な書類は
ある程度書けたのでかなり満足だ。調子が悪いから早く眠りたい。
君と早く会いたいよジョオ。
RGM-79GMC GMC-GM
GMC社の開発したGM。ビームシールドを装備しているのが最大の特徴。
11月27日
今日も気分が悪い。食べ過ぎたようだ。食事がなぜか美味しいんだもん、
しかたない。今日、書いておくべき書類は全部書き終わった。
後は仕事に精出すだけだ。じっと海を眺めているだけの仕事に。
コーラが飲みたいけどもっと気分が悪くなるんだろうな。やめておくけど
それでも飲みたい、何か飲みたいなー。今日もジョオと会えなかった。
10月30日
今日はいよいよ敵艦隊と決戦の日だ。
嫌でたまらない…。
コゼツ財団
医師団ロッシ会
ノース商会
パンダボワヌ社
赤毛連盟
闇連盟
孤島医師会
開拓者協会
木彫連盟
地主協会
リラク商会
クルー財団
セブンシスターズ
ハリントン財団
ニューコード商船
フォレット財団
ドリンコート家
海賊協会
ダークネス教団
ダーリング財団
ペンデルトン財団
トラップ男爵家
野生動物保護協会
プラムフィールド財団
GMC
煙突掃除組合
ラドリング鉱業
ミリガン財団
ネロ・ダース伝
地主の横暴と戦い、優れた人文学者を発掘し、ついには第二次大戦で
圧倒的なアメリカ軍の前に潔く散った少年の短い生涯を描く。
ローリー「こんにちは。教育テレビ『今日の防衛の時間』です。」
アプリコット「今日のテーマは『海防艦による防衛』です。
ローリーさん、海防艦で防衛を行う場合どのようなことに注意すればいいんでしょう。」
ローリー「まずは艦内でのどうやって楽しい生活を送るかですね。」
アプリコット「どんな生活を送ればいいんでしょう。」
ローリー「たとえばスカートの中に手を突っこんでみるとういうのはどうでしょう。」
アプリコット「やめてください、ローリーさん。」
「護る〜防衛とは何か」
「防衛の基本〜歩兵の本領」
「防衛と農業〜腹が減っては護りもできぬ」
「理想の小銃〜歩兵のシステム」
「特殊部隊〜新しい防衛の形を求めて」
「山岳兵〜地方色を生かした防衛を」
「民兵〜アマチュアイズムは防衛に寄与しうるか」
「戦車〜陸の王者の未来像」
「自走砲〜戦場の花形になりうるのか」
「大砲〜現在でも戦場の『神』」
133 :
ローリー:2006/10/31(火) 07:24:44 ID:FCS8lHRh
少年は自分の居場所を失い探す旅に出た。
たとえ故郷の人たちに背くことになっても自分の行き方を探すために。
134 :
ローリー:2006/10/31(火) 07:27:23 ID:FCS8lHRh
僕は自分の故郷のもの全てに失望した。
新しい出会いと人に全てを託すしかない。
135 :
ローリー:2006/10/31(火) 07:36:57 ID:FCS8lHRh
白い線を青い空に一文字に引きながら、まだ飛行艇は追ってきていた。
「落とすか?」
キリコがいつもの抑揚の無い声でつぶやく。僕はそっと口を開いた。
「止めよう。」
キリコに対してはいつも一言で済む。余計な言葉はいらない奴なんだ。
彼はそのまま押し黙ってレーダー画面に再び目を落とした。
「でも…。」
チャングムが僕に冷静な視線を向ける。
「このままずっと監視下にいるわけにもいかないわ。
落とさずとも追い払ったほうがいいと思うの。」
「そうかもしれないな…。」
僕はうなずくとキリコを見やった。
「キリコ、できるか?」
「ああ…。」
短くも頼りになる返事だ。
「ふーん、やっぱり元味方だもんな。落とすのは後味が悪いか。」
パタリロが口を挟む。彼はいつも毒舌だ。
「…。」
キリコが黙って機銃座と後尾の高角砲に指示を送る。
アプリ
キリコ
チャングム
マリネラ
えり
韓流
クワック
サリバン
ベペンシー
教育
僕達は北太平洋で名作劇場艦隊を打ち破ったが肝心の空母を逃してしまった。
これからもきつい戦いは続くだろうけど間違いなく僕達森林組合は勝つ。
138 :
ローリー:2006/11/01(水) 04:23:55 ID:b+USITAN
次は恐らくソロモン海での厳しい戦いになるだろう
その前にエンタープライズを完成させておかないと…。
139 :
ローリー:2006/11/01(水) 04:25:34 ID:b+USITAN
僕はアプリを愛している…僕に居場所をくれた人だからだ。
140 :
ローリー:2006/11/01(水) 04:27:30 ID:b+USITAN
僕のアプリ。愛している。彼女と深く愛し合えるなんて…。
141 :
ローリー:2006/11/01(水) 04:51:51 ID:b+USITAN
歩ーネットが修理されるまでは戦艦ニューヨークを任されるかもしれない。
142 :
龍達に告げよ:2006/11/02(木) 01:36:23 ID:lO8DA3hx
会議は大切だ。それはよくわかっている。心に沁みてわかっている。
でも…僕はやっぱり会議は…好きじゃない。今のここでの会議は。
「そこをよろしく頼むよ。」
「ここをこうしたらどうかしら?」
「それでいこうじゃないか。」
皆のやり取りを僕は頬杖を突いて黙って聞いている。
いけない。これじゃいけない。みんな真面目にやっているんだ。
僕も会議の場の一員として真面目にやらなきゃいけない。
だけど…。
どのくらいの時間が経ったのか。
いつの間にかついに今日の会議も終わりを告げていた。
みんなの背中が三々五々部屋を出て行くのが、わずかにぼんやり開けた
視界からでもわかった。
「うんしょ…。」
大儀そうに重い腰を椅子の上から浮かせると、僕はまだ会議室に残っていた
ジョーことジョセフィンに言葉をかけた。
「やあ、ジョセフィン。長い時間お疲れ様。
一緒にアイスクリームでも食べて一息つかない?」
「アイスクリーム…ですって!?」
ジョーの甲高い声がようやく静寂の訪れたばかりの部屋に響き渡った。
僕と彼女以外に会議室にはデービス教授やベル・モファット嬢はじめ
数人がまだ残っていたが、轟くジョーの叫びにビクンと背筋を伸ばすいなや
そそくさと肩を並べて部屋から立ち去って行ってしまった。
部屋には僕とジョーしか残されていない。
「いいこと、テディ。」
ジョーはそんな状況など気に留める様子もなく、眉を険しく寄せて僕を
グッとにらみつけてくる。
「何はなくともこれだけは言っておかなくちゃね!
あんた、最近たるんでるんじゃない?テディ!!」
143 :
龍達に告げよ:2006/11/02(木) 02:07:18 ID:lO8DA3hx
「た、たるんでる…?僕が?」
僕は驚きと憤りの混ざった吐息と声で彼女に問いかけた。
「そうよ、たるんでる!!」
両手を腰の脇に押しつけ、ジョーは更に言い募る。
「今日も半分居眠りをしてて一言も発現しなかったわね!!
我が国の政治の基本となる大切な会議を生半可な学校の授業の時みたく
無駄に過ごすなんてね…!」
「…ごめん…。」
返す言葉もない。僕は認め、素直に頭を下げた。
「ふん…。」
だが、ジョーは表情を和ませることはなく、なおも僕に厳しい視線を送る。
「テディ、あんたどうしちゃったのよ!
なんでそんなに怠け者に無気力になっちゃったの!?」
君のせいでもあるんだよ…僕は言い返したかった。
でも耐えた。彼女は僕の将来の君主になるべき女性だ。
そして…できることなら結ばれたい女性でもあった。
不可能ではない。僕もまた、この国の未来の宰相としての地位を約束されて
いる存在だからだ。この多島海の世界において女王と宰相が夫婦同士
なんて例はザラにある。そうだ、ジョーと僕、セオドア・ローレンスが
結ばれて悪い事が何があるものか。
でも…だけど…最近のジョーは僕に冷たい。
今日のように高圧的になる事も多いのだ。
なぜだ、どうしてだ。聞きたいのは僕の方なんだ、ジョー。
144 :
龍達に告げよ:2006/11/02(木) 02:47:06 ID:lO8DA3hx
ともかくこのギスギスした空気をなんとかしたい。
近頃のジョーは他の人間に対しては優しいのに僕には邪険に当たる事も
多くなってきている。未来の領主としての仕事と周囲の期待が重荷に
なり始めているに違いない。
だからこそ、いつも僕は彼女の機嫌を直そうと努力している。
今もその思いから僕はアイスクリームの話題を再び口にした。
「ジョー、機嫌をもう直してくれないかな?
アイスを食べようよ。昨日、プラムフィールド乳牛のミルクが届いたんだ。
我が家のメイドがアイスクリームを作って…。」
バンッ!
大きな物音が僕のセリフを遮った。
ジョーが腕に抱えていた電話帳の厚さの書類の束を机に思い切り叩きつけたのだ。
「テディ…。」
彼女の鼻筋と眉間には濃い一文字の皺がくっきり刻まれていた。
「私にはそんな悠長にアイスクリームを食べている暇は無いの。
これからこの書類を読んだりサインをしなくちゃいけないのよ。」
ジョオの声音には低い唸りすら含まれていた。
「そういうつまらない事にはね、エイミーかエリザベスを呼んでちょうだい。
喜ぶから。」
そう言い捨てるとジョオはくるっと踵を返して足音も荒く会議室から
出て行った。
145 :
龍達に告げよ:2006/11/02(木) 04:18:30 ID:lO8DA3hx
「坊ちゃま、旦那様がお待ちです。」
執事はいつも、いつまでも僕を坊ちゃまと呼ぶ。
どんな小さな子供でも、こんなおためごかしじみた呼びかけが気に入りは
しないだろう。僕もいい加減にしてくれと叫びたい。
しかし、他にこれが良いという呼び方も無いし一々執事に噛みつくのも
面倒くさい。僕は諦めている。
執事がそう呼んで心の平安を得るのならこれでいいやと彼が自由に僕を呼ぶ
のにまかせているってわけだ。
「わかった、すぐ行く。」
僕はいかにも余裕がある、っていう風に鷹揚にうなずいてみせる。
「何か御用ですか?…」
おじい様、と言いかけて僕は口をつぐんだ。
僕に背を向けているおじい様の肩からビリビリッと不穏な青い電流が
走り、透明なキナ臭い火花を散らしている。
不機嫌な時にいつも醸し出している雰囲気だ。
「入れ。」
短いおじい様の命令が飛ぶ。
その口調の硬さと重さ、聞く前からどんなきつい物か、よくわかっている。
まあ僕は慣れているからいいが、子供の頃のジョーやエリザベスなんて
酷くおじい様を恐れはばかっていたものだ。
もちろん、甘い懐かしさに浸る余裕などおじい様は与えやしない。
おじい様は振り向いて僕に鋭い眼差しを突きつけてくる。
「テディ。どうやら二、三年前の時みたいにわしは、お前の傍でお前を
見張ってなくてはならんようだな。」
やっぱり…会議の件だ。いや、もう呼ばれた時点で見当はついていたんだ。
おじい様が僕を呼ぶなんて…叱る時ぐらいしかない。
サンサ
デウズス
サリバン
スプリング
マリネラ
タイガニア
ナルニア
クワック
フジミ
ガリシア
バイストンウェル
ハンルー
カンジェン
ボスコニア
アップルフェラント
ワンコニア
147 :
龍達に告げよ:2006/11/03(金) 02:12:32 ID:DsSZZZym
おじい様の小言が始まった。
声を荒げたりするより、こんな静かな感じで始まる時の方がおじい様の
怒りは深いのだ。でも…おじい様には悪いけど僕は一から十まで丁寧に
全てを聞くつもりはない。
右から左へ通り抜けていく、風のようなものだ。
「近頃のお前はなっとらん。」
「しっかりせんか。」
「お前はこの国の将来を背負っていく人間なんじゃぞ。」
すっかり定番になってしまったいつものフレーズの数々が耳にちょっと
引っかかってはサーッと流れ過ぎて行く。
おじい様の小言が僕の人生の何かに有用になったなんてことはない。
僕が幼児の頃に亡くなったお母様が弾いてくれた優しいピアノの調べ、
そちらの方がどれだけ小さな心に響き、命を耕してくれたことか。
「ふううっ…。」
やがて、おじい様のお叱りは大きなため息で終わりを告げた。
「すみませんでした…今度はきちんと真面目にやりますので…。」
僕は丁寧に頭を下げてみせる。
「行ってよろしい。」
おじい様もおじい様で僕が真面目に話を聞いてるとは思っていないのかも
しれない。それでもそっとうなずいて僕を解放してくれた。
「ふう…。」
僕もまた、ため息を吐いて後ろ手におじい様の部屋のドアを閉めた。
148 :
龍達に告げよ:2006/11/03(金) 02:38:20 ID:DsSZZZym
「それにしても…。」
床をドスドス踏みしめつつ僕は一人ごちる。
「一体、誰から会議の事がおじい様に洩れたんだ…?」
会議に出れる人間は数が知れている。彼らのうちの誰かが、おじい様に告げ口
したんだ。だが…誰だ?おじい様に伝わる時間が早過ぎる。
ドスッ!!
「!?」
不意にどてっ腹に何かがぶつかってきた。
危うく倒れそうになるのを踏みとどまる。
「エイミー!?」
僕の身体に腕を回してしがみついてる、まぶしい金髪の持ち主の名前を
僕は叫んでいた。
「えへへへっ!!」
クリッとした青い瞳が僕を見上げる。エイミー。ジョーの末の妹だ。
まだまだ子供のくせして見る者の心臓を高鳴らせるほどに艶かしく美しい娘。
成長した暁には多島海最高のビーナスになるであろうと皆から噂されている。
誰にでも愛想良く接する八方美人な娘だが、その10年後の美神が最も
懐いている相手、それが僕だった。
「ねえ、テディ。さっきアイスクリームいただいたのよ!
とっても美味しかったわぁ!」
エイミーはきゃっきゃっと朗らかに僕に笑いかけてくる。
彼女の頭が揺れる度にキラキラと光の粒子が散る。
見事にくしけずられた黄金の髪が、窓から射してくる陽光を反射しているのだ。
美しい。確かに美しいと思う。でも、僕はあまり彼女が好きじゃなかった。
149 :
龍達に告げよ:2006/11/03(金) 16:38:56 ID:fTTfI8OD
それは何も、間違いなく今日の会議の事をおじい様に告げたのが
彼女、エイミーだから…というわけでは決してない。
僕はどうにも華やかな美人、誰もが絶世の美女と認めるような存在がなぜか
苦手だった。僕自身が地味で目立たない存在だからかもしれない。
僕はどちらかと言うと普通ぐらいの器量の女性が好みだった。
ジョーはその点、落ち着いた、どちらかと言えば十人前のルックスで美しい
と言うよりも可愛い娘だった。
僕は幼児の頃からジョオが好きで憧れていた。
遠い昔から結婚したいと強く思っていた。そして、僕達の結婚に適した年頃
はほぼ目前に近づいていた。もう16歳、来年には17歳だ。
僕とジョーは…。
「ちょっとテディ。」
エイミーの声で僕は正気づいた。
目線を下げれば不思議そうな面持ちでエイミーが僕をじっと見つめいてる。
「どうしたの?ボーッとしちゃって。」
「いや…何でもないんだ。」
「そうなの?ねえ、一緒にアイスクリームを食べましょうよ!!」
僕はあまり気の入ってない微笑を浮かべて首を左右に振った。
「いや、いいよ。今はそんな気分じゃないんだ…。」
僕はそっと両手でエイミーの身体を自分の身体から押しやって離すと、
廊下を歩き出した。
「テディ…。そんな…。つまらないわ。」
追いかけてくるエイミーの言葉を振り切って。
歩きながら僕は憂鬱な想いに沈んでいた。
僕の耳にも、とある噂がポツポツと流れ込んで来ている。
ジョーは誰とも結婚するつもりはないらしい。国家、すなわち
リルウィーム伯爵領と結婚する、と家族に言っているらしいと。
そうだ。僕なんて彼女の眼中にないのだ。
そうなると僕は将来、誰と結婚するのだろうか。
リルウィーム伯爵メイ家の子供達四人はみんな女の子だ。
美女と名高い長女のメグはすでにプラット卿と婚約している。
勇敢で知恵に溢れた次女のジョーは先程述べたとおり結婚する気がまるでない。
三女のエリザベスは聡明で器量良しで僕も気に入ってるが病弱でなかなか
ベッドから離れられない。
末娘のエイミーは未来の美の女神だが…僕はどうしても好きになれない。
でも…この分だと将来の宰相である僕はエイミーと結婚させられるのだろう。
「ふううっ…。」
僕は再びため息を肺の奥から吐き出した。
150 :
龍達に告げよ:2006/11/03(金) 21:40:40 ID:fTTfI8OD
彼女が僕の前に現れたのは10月の寒い雨が降りしきる午後だった。
小さなせせらぎのサラサラとした流れを思わせる、ライトブルーの長い髪。
今にも吸い込まれそうなぐらいにパッチリと見開かれた、小豆色の瞳。
ふっくらと健康そうな曲線を帯びた薔薇色の頬。
薄手の青い生地の服から惜しげもなくスラッと伸びている手足、その肌は
白磁の壺にも似て艶かしく輝いている。
美しいと一目で思った。だが、エイミーやメグのキラキラした美とは違う。
何と言えばいいだろう、慎ましい。それでいて清らかだ。
僕の審美眼はたちまちのうちに彼女の容姿を好もしく受け入れていた。
彼女が横一列に並んだメグ、ジョー、エリザベス、エイミー、そして僕の前
2mほどのところで、注意深げな足の運びを止め、立ち止まった。
「アプリコット・ラ・ブレインジ…です。」
涼やかな薫風と思われたそれが、彼女の吐息であり声だった。
透明感ある耳触りの良い口振り、優雅な唇の動き。
僕は天使の言葉を聞いたのだ。間違いなく。
「リルウィーム伯爵、ジョセフィン・メイ…よ。」
一方のジョーの声は硬く低かった。
彼女とても決して悪い声音の持ち主ではないのだが…。
何か無理をしているんじゃないだろうか。僕の心はチクリと痛んだ。
「長旅…お疲れになったでしょ?
部屋を用意したから、お話の前にゆっくり身体を休めてちょうだい。」
「…ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます…。」
ガチガチな社交辞令を二人の少女は交し合う。
僕は極上の人に出会えた喜びと言い知れぬ不安の混じり合った複雑な想いで
その様子を眺めているしかなかった。
151 :
龍達に告げよ:2006/11/06(月) 22:49:30 ID:Ya4ov+vy
「…。」
「テディ。」
「…。」
「テディ?」
「…。」
「…テディッ!!」
「うわ!?」
いきなり自分の名をわめかれて僕は椅子から飛び上がった。
「な、なんだよ…ジョー。そんな大声出すなよ。」
「私、さっきからあんたの事を呼んでたのよ。それなのにウンともスンとも
答えないで…。」
ジョーは不快げな眼差しを僕に送りつける。
「会議の時と一緒ね。心、ここにあらずって感じ。」
「…ごめん。」
「ふん…。話を続けましょ。あの子、アプリコットの事よ。」
「フォンテーンラントの件だね。
あの島はかつて彼女の両親の治めていた土地だったんだ。」
「今は私の国の土地!我がメイ伯爵家の島よ!!」
ジョーが叫ぶ。
デスクをバンと両手で一叩きして、彼女はドスンと椅子に腰を落とした。
「返すも返さないもないわね、問題外!!」
「ねえ、ジョー。」
僕は恐々とささやき声を唇の間から這い出させる。
「どこか代わりの土地を彼女に与えるっていうのはどうだろう。
ちょっとした小島でいいから。」
(ο`∀´)οフハハ
良作ですね。
153 :
名無しさん@ピンキー:
ho