329 :
重ね当て:
気がつくとベッドに寝かされていた
まさかと思い自分の身を案じて何もされてないかを確かめるが、衣服は胴着のままで特に異変を感じられない。
すっかり立てなくなってしまい、リョウに抱きかかえられて運ばれている所までは覚えていた。
「……」
冷静になって今の状態を整理してみてが、ここは道場内の休憩室または医務室らしき部屋らしい、怪我の恐れのある事
をしているのだからこのような場所があっても不思議ではない、
持ってきた荷物もベッドの傍に丁寧に置かれていた。
体こそくたくたなものの質素な部屋の割にはとても快適で目覚めがよかった。
「(気持ちよかった……)」
布団の感触ではなく何かに寄り添うような感触が残っていたが、何だか判らない。
とりあえず香澄は布団から出て着替えて、帰宅することにした。
「おお、気がついたか、あまり無理はするなよ。」
といってもさすがに何もいわずに帰るわけにも行かず道場に顔を出すと、指導中のリョウが香澄に気づき声をかけた
「う、うるさい!世話をかけたな、とりあえず今は礼をいっておく」
「ははは流石はオッサンの娘だ、言葉こそ素直じゃないがちゃんと弁えているな」
軽く笑い安心するリョウに香澄は返す言葉がなく、そのまま立ち姿を見るしかなかった。
その際にリョウの胸元に目が行き、気持ちよかったのはリョウに抱きかかえられていた事だったと解り
屈辱に思った。
「だまれ!!今日は退くがいつかは必ず討ち取ってやる!首を洗って待っていろ!!」
と急に起こったように言い放つと早足で帰路についた。
「(あの年頃の娘の考える事はわからんな)」
と様子が変わった香澄に首をかしげる極限流師範だった。
「押忍!!師範、時間がきたので稽古つけて下さい。」
「おう、そうだったな」
と一通りの練習を終えた弟子にいわれ稽古を続けるリョウであった。
帰宅途中、香澄は赤面しつつ涙目になりなっていた
「くぅ、おのれリョウ・サカザキぃ…」
自分の中に屈辱以外の何かがあるが、それを認めたくはない
しかし、その気持ち紅潮してモヤモヤする気持ちは屈辱ではなくその何かが原因なのは明らかだった。
必死に否定しながら、足を進めた