【ガイエ】田中芳樹作品エロパロ【ハァハァ伝説】 2
1 :
名無しさん@ピンキー :
2005/05/03(火) 01:27:20 ID:NjeIV3DO
,、‐'''''''''ヽ、
/:::::;;-‐-、:::ヽ _,,,,,,,_
l::::::l _,,、-‐"iiiiiilllllllllllliiiiiiiー-ゞ:::::::::::ヽ,
ヽ::`/: : : : iiiiiilllll||llllliiiiii: : : :ヽイ~`ヽ:::::::i/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. /;,..-‐、: : : : : l|l: : : : : : : : : : : : : \ ノ:::::}| やったね! トラトラトラのしまじろうが
>>2 ゲットだよ!
/: /: : : : :`.: : : : : : : : :/´ ̄\ : : : : : ヽ:::ノ | みんな、たまにははやくねてみよう! はやおきはさんもんのとくだよ!
. !: : : :iflllli、: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ: : : : : :.! |
|: : : :llllf l: : : : : : : : : : :.iflllli、: : : : :<iii| |>1ちゃんへ いいすれっどをたてたね! これからもがんばろう!
|: : : :|llll |: : : : : : : : : : .llllf l: : : : : : : : :.| |>3ちゃんへ こんどは
>>2 をとれるようにがんばろう!
|: : : :.!lllll!' : : : : : : : : : : |llll |: : : : : : : : :i<>4くんへ まじれすしようかどうしようかまよったのかな?
/: : : : : ○ : : .!lllll!' : : : : : : : :.i |>5ちゃんへ おまえみたいなばかはおとなになってもやくにたたないからはやくしのう!
 ̄|: : :" ,,,,,,,,,,,,,|____ : : : : : : : :.<iii/ |>6くんへ がきのうちはなんでもゆるされるとおもったらおおまちがいだよ!
. /!.: |:::::/  ̄''''''''l ヽ: : : : :-─/─ |>7ちゃんへ もういいいからしね!
ヽ ヽ/ ノ : : :ヽ/ |>8いこうのみんなへ いつかはしぬんだからはやめにけいけんするのもじんせいだよ!
\ \,,_ _,,,/ : /\ \____________________________________
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. //:::::/ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ノ::::/\
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4 :
牛男 :2005/05/03(火) 11:33:09 ID:KgUKKFl6
「コンラート、だったか? 世が、ラインハルトだ」 「――は、はじめまして!」 緊張のあまり、声が裏返ってしまった。 ラインハルトは眼を見張り、それからやや苦笑するような、おさない子供を労わるかのような表情になった。 「そう緊張することはない。余はルドルフ・フォン・ゴールデンバウムではないのだから。姉上が君の世話になっていることは知っている。感謝こそすれ、理由もなく怒るようなことはしない」 それからラインハルトは、隣の女性に視線をやった。自己紹介を促したのだろう。 くすんだ金髪の女性は、ラインハルトの視線にしばらく気がつかなかった。 「フロイライン?」 「え……あ、はい」 女性はぎこちない口調で、ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフと名乗った。 話には聞いたことはあるが、その姿を眼にしたのは初めてだ。 ラインハルトの主席秘書官という立場にあり、先のバーミリオン星域会戦では、自由惑星同盟の降伏および停戦を強行させて、間接的に皇帝の命を救ったとされる。 あの疾風ウォルフをして、「フロイラインの知謀は一個艦隊にも優る」言わしめた、才色兼備の秘書官だった。 「遠いところから、余に会うために、はるばる来てくれたのだ。フロイラインからもねぎらいの言葉をかけてやってくれ」 「は、はい。コ、コンラート……。その……」 そこでヒルダは眼を閉じ、何かに耐えるように睫毛を震わせた。 「ようこそ……ん……。歓迎、いたしま……す」 音を立てないように、荒い息をついている。
5 :
牛男 :2005/05/03(火) 11:33:48 ID:KgUKKFl6
様子がおかしいとコンラートは思った。 二人がけの四角いテーブルなのに、なぜ二人は並んで座っているのだろう。通常は向かい合って座るはずではないだろうか。 それに、何故? この女性は頬を赤らめ、顔を硬直させながらしゃべるのだろう。 時どき眉根を寄せ、唇を噛むような仕草を見せるのだろう。 以前のコンラートであれば、体調がわるいのかと見当違いの心配をしたかもしれない。 だが、こういう表情を見せた女性を、コンラートはすでに知っていた。 (こ、この人たち、何を考えてるんだ!?) ラインハルトの片手は、テーブルの下にある。 ヒルダとは不自然なくらいに接近している。 もちろん、手を伸ばせばすぐにでも届く距離だ。 「ところでコンラート。姉上からの手紙を届けてくれたそうだな」 「はい。こちらに、ございます」 用意していた手紙を取り出す。 座ったまま片手で手紙を受け取ると、そのままラインハルトはヒルダに手渡した。 「フロイライン。すまないが、ここで読んでみてくれ」 「えっ……」 美人の秘書官は眼を見張った。 「し、しかし陛下……。姉君からの、お手紙……ですよ?」 「構わない」 ヒルダは震える手で手紙を開き、読み始める。 「し、親愛なる……ラインハルト、へ……。あっ――」 かさりと、衣擦れの音が聞こえた。 テーブルクロスが揺れた音だろう。
6 :
牛男 :2005/05/03(火) 11:34:28 ID:KgUKKFl6
「ん……へ、陛下……」 「どうしたフロイライン。いつもの貴方らしくない。それでは、手紙の内容がよく分からないぞ」 「は、はい」 それからヒルダは、ところどころつっかえながら、手紙を読み始めた。 ラインハルトの片手は、いまだテーブルの下にある。 アイスブルーの瞳には、どこか悪戯めいた極上の光が揺れていた。 「こちらは……新緑がいよいよ……深まって、ん……まいりま、した。……はぁ、はぁ……。オーディンは今……初夏の、ん――き、季節……かし、ら――んうぅっ」 くちゅ。 空耳ではない。確かにそんな音を、コンラートは耳にした。 テーブルの下で行われている行為に、すでにコンラートは気づいている。 あ、姉が姉ならば、弟も弟だ。 こんな日も高い昼食の時間に。しかも客人の目の前で、何ってことをしている! 怒りと羞恥心で顔を赤らめたコンラートに、ラインハルトは満足そうな笑みを浮かべた。 優秀な美人秘書官にそっと耳打ちする。 「まずいな、フロイライン。あの少年に、気づかれそうだぞ」 囁き声にしては、少々大きすぎた。
7 :
牛男 :2005/05/03(火) 11:35:08 ID:KgUKKFl6
すっと目が合った。 その瞬間、ヒルダは耳まで真っ赤にして、手にしていた手紙をしわが寄るくらい強く握り締めた。 「へ、陛下……。い、……せん。……か――ごか……んを」 「だめだな。まだ手紙を読み終えていない」 あえぎとも呼吸ともつかぬ悲しげなと息をつき、ヒルダは唾を飲み込む。 視線が泳ぐ。 もはや手紙を読めるような状況ではないようだ。 テーブルクロスが擦れる音が、少しずつ強くなっていく。 「――あっ。……だ、だ……だ、めぇ……」 か細い、消え入るような声で、ヒルダが懇願する。 くちゅ、くちゅ。 「はぁ、はぁ……んっ。ゆる……して」 ラインハルトは許さない。残酷な微笑を浮かべたままだ。 そして、 「――っ!」 次の瞬間、ヒルダの上体が仰け反った。 「はっ……くぅぅぅう――!」 眼を閉じ、声を殺しながら、しぼるように息を伸ばす。 コンラートにとっては、あまりにも重苦しい空気。先日の悪夢が鮮烈によみがえり、わなわなと震えながら、立ち尽くす。 小さな食堂には、呼吸を整える音だけが、静かに響いていた。 「ふっ、コンラート。ご苦労だった」 若き皇帝は、テーブルの上のナプキンで手を拭きながら、十分すぎるほどに満ち足りた顔で笑った。 「確かに、手紙は受け取ったぞ。姉上にもよろしくお伝えしてくれ」
8 :
牛男 :2005/05/03(火) 11:35:55 ID:KgUKKFl6
食堂から退室すると、コンラートは扉に近づき、聞き耳を立てた。 『ふふ……見たか、あの少年の顔を。完全に、気づかれたようだ』 『へ、陛下! お戯れが、すぎますわ』 『フロイラインは、怒った顔がまた魅力的だな。それよりも……達してしまったのだろう?』 『う……そ、それは』 『どうした、フロイライン? 余の指は、確かに貴方の愛の証を感じていたぞ』 『そ、そんな……』 げんなりしてしまった。 自身の華麗極まりない容貌ゆえ、皇帝ラインハルトは、女性に対しては特に厳しい選定眼を持つといわれている。 これまで浮ついた噂がいっさいなかったことからも、女性に対して興味がないのではないかという憶測まで飛び交っていた。 年端も行かない少年を侍らせたり、同姓を愛するといったアブノーマルな趣味がないことは、帝国四〇〇億すべての民にとって喜ばしいことだ。 だが、性的高揚感を得るために、他人が見ている前で自分の秘書を持て遊ぶとは。 (だめだ、皇帝は頼りにならない! こうなったら――) コンラートはケスラー上級大将に取り次いで、オーベルシュタイン元帥への面会を求めた。
陛下、なんて事を…GJです! 続きもあるのかな?お待ちしてます。
GJ! 久々に積極的?な陛下を見れました。 流石、銀河の皇帝はやることが違うw。 話を取り次ぐメンバーも強烈そうだから期待大ですね。 お待ちしております。
1さん乙です 牛男さんのSSの続きがまた読めるとはもの凄く嬉しいです。 アンネローゼ様存在感ありますね〜。またSEXシーンが 見たい!ヒルダの喘ぐ姿も新鮮で興奮しました。ストーリー もエッチも続きが楽しみです。頑張ってください!
陛下GJ(笑)恥らうヒルダが可愛い!牛男さんありがとう。 銀英で最愛のヒルダをここで拝めるとは!次回は軍務尚書編…? 期待してます!
牛男さん無事に新スレに辿りついたようで良かったです。 さっそくのSS投下GJ!! >12 軍務尚書編と聞いて咄嗟に思い浮かんだのが ワンコとのやめろ何をするあqwせdrftgyふじこp
14 :
パタリロ :2005/05/07(土) 23:35:15 ID:vG5Y1N7p
岸本明x室町警視のSSキボンヌ
前スレ落ちちゃったか… そういや巣箱随分更新されてないみたいだけど管理人さん忙しいんかな。
そうだ、前スレの未収納SSかなりあったよな?それは大丈夫なのかな? 牛男さんの作品ブツギレになっちゃうし他にも途中の人とかいたのにな
なぜかこんなスレ
【DISCODE】ソフトさ〜くるクレージュ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/erodoujin/1115022557/ で見つけた銀英ネタ。
135 名前:最後尾の名無しさん@3日目[sage] 投稿日:2005/05/14(土) 09:33:37 ID:wpMOiZQh
よーしていとくふれでりかにぶっかけちゃうぞー
ヤン・ウェンリー
136 名前:最後尾の名無しさん@3日目[sage] 投稿日:2005/05/14(土) 10:51:03 ID:4t5QElc+
よーししれいかんかーてろーぜにぶっかけちゃうぞー
ユリアン・ミンツ
139 名前:最後尾の名無しさん@3日目[sage] 投稿日:2005/05/14(土) 21:05:13 ID:Ht63S+oc
よーしちんもかいざーりんにぶっかけ……げふげふっ、(吐血)
き、きるひあいす、おれはここまでしかこれないおとこなのか、
かいざーりんをぬがしたら……みんなで……
ラインハルト・フォン・ローエングラム
141 名前:最後尾の名無しさん@3日目[sage] 投稿日:2005/05/15(日) 07:44:17 ID:iAXZ1tJT
>>139 みんなで何する気だよ(w
カイザー・・・ ほす
久しぶりに来たら牛男様の続きが! 前スレのフレデリカ、アンネローゼのHは本当に興奮しました。 また二人の様子が読めたら嬉しいです。
保守。
22 :
グロッキー :2005/06/01(水) 22:21:50 ID:zTb/RBc+
室町由起子・薬師寺涼子VS岸本明・泉田準一郎のSSキボンヌ
ホス
@もしもラインハルトが女の子だったら・・・ ラインハルト「行くぞ!キルヒアイス!!」キルヒアイス(金髪の天使姉妹ハァハァ) Aもしもキルヒアイスが女の子だったなら・・・ ラインハルト「行くぞ!キルヒアイス!!」キルヒアイス(ラインハルト様&アンネローゼお姉様ハァハァ) Bもしもアンネローゼが漢だったら・・・ ラインハルト「行くぞ!キルヒアイス!!」キルヒアイス(ウホッいいお兄様) さあ、選んでくれ!!!
25 :
名無しさん@ピンキー :2005/06/09(木) 06:44:03 ID:CgoMtbhM
>24 保守ageついでに選びます。 自分は1番が妄想しやすく、 キルヒアイス×天使姉妹の3Pとかあったらいいと思います。 しかしどの設定も萌え心をくすぐるものがあって 捨てるのが惜しいな…(*´д`)ハァハァ
2。 誠実で有能な女性副官(´Д`*) ルビー色の髪もセクスィ
女体化はまずいんじゃなかったか?
28 :
名無しさん@ピンキー :2005/06/12(日) 06:17:27 ID:569Xf2Et
1、エヴァンゼリンをレイプ 2、フレデリカをレイプ 3、ヒルダをレイプ 4、マリーカをレイプ 5、カリンをレイプ 6、アンネローゼをレイプ 7、オルタンスをレイプ 8、シャルロットをレイプ 全て書けたら神!!
29 :
名無しさん@ピンキー :2005/06/12(日) 09:03:23 ID:issbk51p
ユリアンの前に裸のエヴァンゼリンとフレデリカとヒルダとマリーカとカリンとアンネローゼとオルタンスとシャルロットが現れた!! ユリアンはエヴァンゼリンに挿れた。「あんっ!」 ユリアンはフレデリカに挿れた。「あんっ!」 ユリアンはヒルダに挿れた。「あんっ!」 ユリアンはマリーカに挿れた。「あんっ!」 ユリアンはカリンに挿れた。「あんっ!」 ユリアンはアンネローゼに挿れた。「あんっ!」 ユリアンはオルタンスに挿れた。「あんっ!」 ユリアンはシャルロットに挿れた。「痛い!」 ユリアンは気持ちよかった
>29 頭の中で「♪ちゃりらりらりら〜ん(っちゃっちゃっちゃっちゃ)」と DQ2の戦闘音楽が流れるわけだが。
保守
32 :
エヴァ陵辱 :2005/06/19(日) 13:37:48 ID:b2BGTQOq
「しばらく帰れないよ」 その台詞はもう何度目だろうか、だがエヴァンゼリン・ミッターマイヤーの夫は軍人であり、 その言葉と夫の帰りを待つことにエヴァンゼリンは慣れていた。 今回は戦争ではなくシャーテンブルグ要塞の視察であり1週間ほどで戻ってくる予定だった。 玄関で夫の後姿を見送り家の中へ戻る。いつもと変わらない光景だった。ただ以前と違うのはフェリックスと ハインリッヒ・ランベルツの2人がいることだった。だがそれもエヴァにとっては気になることではなかった。 だがハインリッヒにとってそれは気にならないことではなかった。 ロイエンタールの叛乱以後、ハインリッヒはミッターマイヤー家で暮らしている。ひとつ屋根の下で一緒に暮らす うちにハインリッヒはエヴァに対して抑えきれない欲情を抱いていた。今回のミッターマイヤーの視察は千載一遇のチャンスだった。 エヴァとともにミッターマイヤーを見送ったハインリッヒの瞳が妖しく光り、口元は歪んでいた。 ・ ・ ・ 夕食を終え、フェリックスを寝かしつけたエヴァは浴室へ向かう。 服を脱いでいるエヴァをハインリッヒが荒い息をしながら覗き込んでいた。 エヴァが浴室に入りシャワーを浴び始めるとハインリッヒはエヴァの寝室へと忍び込み待ち伏せした。
33 :
エヴァ陵辱 :2005/06/19(日) 14:01:44 ID:b2BGTQOq
シャワーを浴び終えたエヴァがバスタオルを巻いたままの姿で寝室へと入っていく。 明かりをつけた瞬間、エヴァは心臓が飛び出すくらい驚いた。 「ハ、ハインリッヒ、な、なにをしてるの」 全裸のハインリッヒがエヴァの前に立っていた、瞳はギラつき、チンポはギンギンに勃起している。 「お、奥様!奥様!!」 ハインリッヒがエヴァに襲い掛かりバスタオルを取り、ベッドに押し倒した。 「ハインリッヒ!やめて!だめよ!わたしには・・」 「奥様!ずっとこうしたいと思っていたんだ!奥様!」 ハインリッヒがエヴァを押さえつけ用意していた電子錠を架けて両手を封じた。 「奥様!奥様のおっぱい!!」 小振りの胸にハインリッヒがむしゃぶりつき、強く揉み始める。 「い、痛い、やめてハインリッヒ・・」 「ハァハァ、奥様は僕のものだ、このおっぱいもオマンコも」 エヴァの声を無視して嬲り続ける。やがて胸から手と口を離したハインリッヒは エヴァの脚を拡げ、夫しか知らない花園へと自分のチンポを侵入させようとしていた。
34 :
エヴァ陵辱 :2005/06/19(日) 14:28:23 ID:b2BGTQOq
「そ、それだけはダメ!いけないわ!お願いやめてハインリッヒ!!」 「奥様、奥様にはいきなり挿入するくらいがちょうどいいよね」 ハインリッヒのチンポがエヴァの膣内へとねじり込まれていく。 「あァァー!痛い!抜いてぇ!お願いハインリッヒ!!」 エヴァの声を無視して激しく腰を動かすハインリッヒ 「奥様!すごい!すごくいいです!!奥様!!」 初めての快感にハインリッヒが興奮して絶叫する。 「あァ!出る!イク!イク!奥様ァ!!」 「やめてェェェ!!あなたァァ!!ウォルフ!!イヤァァァァ!!!」 エヴァの膣内に生温い感触が広がった。ハインリッヒの精液が勢いよく飛び出し エヴァの子宮の奥まで流れ込んできた。 「あァァ・いやァ・・・どうして・・ハインリッヒ・・・」 「奥様、これからは僕が貴女のご主人様になるんですよ、貴女は僕の奴隷になるんです」 エヴァの耳元でハインリッヒが冷酷な声で囁いた。
35 :
エヴァ陵辱 :2005/06/19(日) 15:15:22 ID:b2BGTQOq
「あァ・赤ちゃんできちゃう・・」 膣から溢れる精液を見たエヴァが弱々しく呟いた。 「赤ちゃんが欲しいのでしょう、だったらいいじゃないですか」 「ひどい、ひどいわハインリッヒ、わたしはウォルフの赤ちゃんが欲しいのに・・」 「元帥には無理ですよ、だから僕がしてあげたんです。感謝して欲しいですね」 冷然とハインリッヒが言ってのける。 「ああそれとあれを見てください」 ハインリッヒが指差したところには立体TV用のカメラがセットしてあった。 「いまのは一部始終録画してありますから、僕に逆らわないことです。いいですね」 エヴァは目の前が真っ暗になった。強姦されたうえにその様子を録画されたのだ。 エヴァはこれからハインリッヒにずっと弄ばれるのだと知った。
ランベルツ×エヴァとは意外な組み合わせ。 楽しみにしてます。
>>24 ラインハルトとキルヒアイス両方女
キルヒアイス(金髪の天使姉妹ハァハァ)ラインハルト(姉上様と赤毛の女親友ハァハァ)
38 :
エヴァ陵辱 :2005/06/22(水) 10:51:33 ID:686z09ok
「さあ、奥様、汚れてしまった僕のチンポを綺麗に舐め取ってください」 ハインリッヒがエヴァの口元にチンポをつきつける。先っぽに精液のついた チンポにエヴァは顔を背けハインリッヒに哀願した。 「お、お願い、ハインリッヒ、もうやめて、そんなことできないわ」 「なにを言ってるんです、いつも元帥にしてるようにすればいいんですよ」 「ハインリッヒ、どうしてそんなことを・・」 「貴方達2人の情事をいつも僕はドア越しに聞いていたんです。これって拷問ですよね 毎日お2人のSEXを見せ付けられて我慢ができなくなったんです。だからこれは奥様への罰なんですよ」 ハインリッヒがエヴァの髪を掴みチンポを顔に擦り付けながら答えた。 「さあ、奥様早くフェラして下さい、でないと先程までの奥様の痴態が全宇宙に向けて発信されますよ そんなことになれば奥様はもちろん、元帥の名誉も傷つくことになりますね」 ハインリッヒの脅迫に屈したエヴァがおそるおそるチンポを咥えしゃぶり始める。 「いい眺めです。あの“疾風ウォルフ”と呼ばれる帝国軍最高の勇将の御夫人がフェラチオしているんですからね」 ハインリッヒの冷酷な言葉を受けながら夫の名誉を守るため必死にエヴァは耐えていた。 「舌の使い方が極上ですね、これなら元帥が疾風の如くイッてしまうのも解かります」 さらにハインリッヒはエヴァの頭を掴みイマラチオで激しく突きまくった。 「ハァハァ!奥様!出しますよ!飲んでください!絶対飲んでください!!」 エヴァの喉の奥に熱いドロドロした感触が走り、口の中全体にそれが広がっていった。 「・・こ・こんなにいっぱい・・2回目なのに・・こ・濃い・・」 むせながらエヴァはハインリッヒの精液を飲み干していく。飲み終えた後も口の中はドロドロだった。 「どうでした奥様、元帥よりずっと濃くて多いでしょう、子作りにはこれぐらいでなきゃダメなんですよ。 だから奥様の願いを叶えられるのは僕なんですよ。だから奥様、僕を愛して下さい」 思春期の少年の冷酷で無垢な感情がエヴァに向けられると、エヴァの心は激しく揺さぶられた。 「・・・ハインリッヒ・・欲しいわ・・貴方の赤ちゃん・・・」
脅迫の女神薬師寺涼子のやり方はPCを使い相手会社の欠点を世界中に流す。 こう言うSSがあればな
40 :
さき20才 :2005/06/22(水) 18:53:01 ID:IRa5NgHm
>>38 いいですねえ。
やっぱりミッターマイヤーは薄いんですか(w。
>38乙 エヴァー!!
エヴァタンハァハァ
44 :
エヴァ陵辱 :2005/06/26(日) 11:06:38 ID:MdNhaH8z
「それでは奥様、四つん這いになってお尻を上げてください」 「・・・いや・・やっぱり・・ダメ・・・」夫への背信を覚えてエヴァが拒絶する。 「今更何をいってるんですか、元帥への後ろめたさですか?ですが口とアソコから精液を流した姿では 説得力がありませんよ。それに貴女は僕の命令を拒めないんです」 ハインリッヒはエヴァに勝ち誇った顔で録画されているカメラを指差した。 エヴァはそれを見て観念したかのように頭を垂れ、ハインリッヒに従った。 エヴァが恥ずかしさに堪えながら小振りな白いお尻をハインリッヒに向ける。 「では奥様、自分でアソコを拡げ、お尻を振りながらおねだりして下さい」 エヴァが拒否しようとするとハインリッヒはカメラを指差し無言で強要した。 「・・お・お願いです・・わたしに・・し・・て・ください」弱々しい小さな声でエヴァが言う。 「聞こえませんね、もっと大きな声で、具体的に何が欲しいのか言ってください」 「・わ・わたしのアソコに貴方のオチンチンを入れて、赤ちゃんの種を蒔いて下さい・・」 「仕方ない淫乱な奥様ですね、犯されたうえにおねだりをするなんて」 そう言いながらハインリッヒはエヴァの膣にチンポをあてがい一気に貫いた。 ぐちゅぶちゅ、ハインリッヒの精液とエヴァの愛液が動くたびに卑猥な音をたてて流れ出た。 「・・んく・はァ・あァ・・くゥゥゥ・・・」夫のことを思いながらもつい声がでてしまう。 「奥様は後ろから突かれる方が好きみたいですね、上の口も下の口もいやらしい声を立てるなんて」 「・・そんなこと・・あァ・ないわ・・うゥ・・」返す言葉にも力が入らない。 やがてハインリッヒはエヴァの乳首を弄びながら激しく腰を動かしていった。 「どうです元帥はこんなに長く保たないでしょう、せいぜい1分でしたからね、僕の観察では」 エヴァはそれに答えずにいたが、否定することもできないでいた。 「そろそろ出しますよ、奥様の御希望通り種をいっぱい蒔いて差し上げます」 ハインリッヒの動きがさらに激しさを増したかと思うとエヴァの膣内に生温い感触が広がって行った。 「・・・あなた・・ウォルフ・・わたし・・ごめんなさい・・」エヴァは何度も呟いた。 だが最後の言葉がどのような意味を持つのかエヴァにも分からなかった。
>>44 感じつつも夫を忘れないエヴァが素晴らしい!
余計興奮します。
始×茉理でまたやって欲しいなあ。 どなたかー!!
藤城奈澄x薬師寺涼子のレズSS希望
室町由紀子X薬師寺涼子のレズ希望 岸本明x薬師寺涼子、室町由紀子x泉田準一朗も良いな。
前スレでユリアンに滅茶苦茶に犯されるカリンの話があったけどあの続きってないの?
あのカリンには萌えた あれ読むまでユリアンの方がカリンに振り回されるキャラだと思ってたけど 責めがあんなに似合うとは思わなかったよ 続きがあったら職人さんにまた出てきて欲しい
51 :
前世篇 その1 :2005/07/14(木) 01:55:34 ID:FDHIPGjk
エロじゃないが、始×茉理。 朝焼けのもやの中、青竜王は水晶宮への帰途についていた。 官職には付き物であるが書類仕事(デスクワーク)は肩が凝る。 しかも徹夜明けだ。 ふと、女性の笑い声が耳に届いた…気がした。 視線を向けると鳥と戯れる美少女が雲海から突き出た山に 張り出した枝の上に腰掛けていた。 バランスを崩して宝貝から落ちかける青竜王を見て おかしげにクスリと笑う美少女。 一瞬すれ違う…永遠と思うかのような一時。 水晶宮に帰り出仕の前に身体を休めていると 先刻のことは幻かと思えてくるが、印象は鮮やかに残っている。 一月ほどして、また同じく徹夜明けとなった。 青竜王、決心して同じ所に通りかかるとまさにあの美少女が。 同日午後、西王母のもとに参じた青竜王は視線を感じ その相手をさりげなく見やった。あの美少女だ。 (なるほど、西王母の娘であったのか…) 美少女も、相手が青竜王だと気づいたようだ。 深窓の佇まいを見せる少女に青竜王は心惹かれるのを自覚した。
52 :
前世篇 その2 :2005/07/14(木) 01:56:24 ID:FDHIPGjk
天界ではあまた美姫を見ている青竜王であるが あの少女ほどに惹かれる相手はいまだかつて居なかった。 実際は「秋波に気づかない木石」と評されている始末なのだが。 青竜王としても、あの美少女をどうこうしようというのではない ただ、心惹かれたままにもう一度、例えば会話をする機会を 少々持ちたいと、ささやかな希望を抱いていたワケなのだが 西王母の娘となれば直接に誘いをかけられるものではない。 こちらも名門、あちらも名門。となると、何かの機会のついで という形でなければ周囲への波紋を過剰に呼んでしまう。 困った…責めあぐねている敵を攻略する以上の難問を どうクリアしたものだが、数日青竜王は悩みに悩んだ。 眉間に皺を寄せる主人を思いやって世話の者が 茶の回数を増やしりするのだが、その気遣いには気づかず 「何か給仕が多いな?」と不思議に思うだけである。 ジャスミン茶が運ばれて来て、さすがに三度目ともなれば 多すぎる、次は止めてもらおうかと青竜王が思ったときに 「そろそろ、西王母の桃の宴の時期ですね」 「ああ、毎年参じてはいるが見事な庭には毎回感服する。 …!」 「いかがいたしました?」 「いや、なにも!ああ…うむ、もう茶はよい。下がってくれ」
53 :
前世篇 その3 :2005/07/14(木) 01:57:03 ID:FDHIPGjk
西王母の宴ともなれば当然、娘達も参列する となれば、その機会こそ好機。見逃す手はない。 竜王家は毎年参列しているのだ、不自然なことなど何も無い。 (よし、これだ。) と、青竜王がひそかな決意を固め、着物を仕立て兄弟たちに 礼儀を仕込んでいるころ、彼の周囲は異様に盛り上がっていた。 特にすれ違う神仙たち神仙たちからこう声を掛けられる。 「桃の宴はまだかいのう」 こうも言われ続けては青竜王もハテナ顔であったが、宴席好きの 神仙のこと、宴を待ちわびている所為だろうと呑気に考えていた。 慎重にと心がける青竜王とは逆に更に盛り上がる気配である。 …なぜ神仙たちが知っているのかというと。 太真王夫人は毎早朝こっそり出かけていたつもりなのだが 姉、瑤姫はとっくに気づいており、姉の追及に降参した 大真王夫人は真相を姉に打ち明けていたのである。 そんな面白いこと、いやいや、可愛い妹の恋の成就のため 蘭藍和など男女の機微に聡い神仙に相談したところ それをどこからか聞きつけた一人からさらに多数へと さらに最近の青竜王の様子など合わせて考えてみるに あっという間に崑崙中に二人の事情が広まった…というわけである。
54 :
前世篇 その4 :2005/07/14(木) 01:57:42 ID:FDHIPGjk
「あの」青竜王が、好いた女にどう交際を申し込むのやら 神仙が二人寄ればその話題になるという始末。 主成分は二人に好意的なものばかりなのだが。 紅竜王がいち早く兄の面子の危機に気づいたのだが、 これが宴の当日、遠地への遠征が下ってしまった。なぜこの時期に この処置なのかは(青竜王以外には)公然の秘密であるw とうとう宴の当日がやってきた。 豪奢な刺繍の衣を纏った堂々たる青竜王の姿に、参列の女仙たちは すっかり目を奪われ宴席にはホウッと溜息が満ちた。 西王母も洒落が分からない人ではない、ゆえに青竜王の目的を 知っているのに、いや知っているからこそ、こんな事を彼に言う。 「上の姉の琴などはいかが?」 「すぐ下の子の笙は?」 「それとも遠乗りに出かけられますか?」 青竜王はどれも謝辞した。 「無粋な私より優れた聴き手があちらで待ちかねておられるでしょう」 「それではなおのこと二人の合奏が楽しみというもの」 「ここまでの桃の盛りは今を逃してはありません、遠乗りはまたの機会に」 あっぱれな男ぶりだがそつが無い。西王母はさらに踏み込みたくなった。 「瑤姫、青竜王はいずれ遠乗りをなさりたいそうですよ」 乗った瑤姫は 「まあ、それは大変光栄なこと」 とあでやかに微笑んでみせた。
55 :
前世篇 その5 :2005/07/14(木) 01:58:17 ID:FDHIPGjk
無責任な神仙たちは 「どっちに転んでもおもしろいやあ」 まだ紹介を受けない太真王夫人はどうにもヤキモキ。 気の毒に、本気で泣きそうになっておられると蘭藍和は助け舟。 「やあ桃といえば添うものは良き声の鶯でしょう。 こちらには無いのでしょうか?」 西王母も本来の目的と末娘の心配顔を思い出したが ここは青竜王の出方を待つことにした。 「今年の桃の宴は本当に心待ちにしておりました。 見事な庭園はもとより、今日は秘蔵にしてらっしゃるのは 存じておりますが、それを押して、奥の庭の花を一つ 見せていただけますよう、お願いに参りました」 確かに、西王母が私的に管理する庭園はあるのだが 青竜王の真意はそれではないことを西王母はとうに知っている。 彼の誠意にはもちろん不安はない。だが母はそこで言い切る覚悟、 それを確認したかったのである。 心得た西王母は待ちわびているだろう末娘に声をかけた。 「太真王夫人、こちらへ。青竜王を庭へ案内さしあげなさい」 夫人は慎ましやかに母の申しつけを受けたがあふれる笑みを いったい誰が見逃すものだろうか。 「さあ、こちらへどうぞ」 椅子から立ち上がった堂々の武将と並び歩くたおやかな美姫。 すばらしく絵になる二人が母の許しのもと引き合わされた。 これで目出度し目出度しではあるが、これで神仙たちが おとなしく二人を見守る…わけがないw
56 :
前世篇 その6 :2005/07/14(木) 01:59:59 ID:FDHIPGjk
さて、兄の危機の為常以上の能力で討伐を片付けた紅竜王 特急の獣に乗って宴席に駆けつけたものの、宴席は半ば空。 「これはどうした事か?」 真相は、体透明の宝貝を持って見物に出かけた神仙多数という話。 「兄さん!!」 「まあまあ野暮なことは、恋路を邪魔するのはナンとやら」 「してるのはあなた方でしょう!!」 激しい視線はあたり一体を焼き尽くすかの勢いである。 「ま、一杯一杯」「かけつけ三杯じゃあ」 迫力をものともしない多勢の神仙にみっしり取り付かれた紅竜王、 「兄さーーーーん!」 微妙な距離を置いて、ゆっくり庭を歩く美男と美女。 空中に浮かんで姿を隠した神仙たちは言いたい放題 「もっと近づけ!」 「ほらそこの段差で手を引くチャンスだろうに!この野暮天!」 「お嬢様も少〜し大胆におなりあそばされたらいいのにぃ」 「わたしゃなんかもうあの恥じらいの笑み一つで昇天ですわ」 「あれに参らないとは青竜王の堅物も筋金どころか鉄板ですなあ」 東屋にて夫人が手を伸ばすと鶯が寄ってきた。 「この子がここで一番の名手ですわ」 鶯が一声さえずる 「これは、見事に仕込まれましたね」 「いえ、この子はもともと熱心に唄う子で私は楽しませてもらってるだけ」
57 :
前世篇 その7 :2005/07/14(木) 02:00:35 ID:FDHIPGjk
鳥と自由に意思を交歓する少女、あの一目見た衝撃を青竜王は思い出した。 本気でのんびりと庭見物だけに来たわけではないのだ。グッと腹を据えた。 「こちらの庭は十分堪能いたしました。素晴らしい庭で目が洗われました。」 「まあ。もうよろしいので?では茶の用意をさせましょう。あちらへ」 張り出したバルコニーの眼前に広がるのは靄かと思うほど山肌一面の桃。 ゆったりと深呼吸をする二人、息をつくのが同時で、思わず微笑みあう。 「あーもう焦れったい。なんで隣じゃなくて対面に座るか」 「肩を抱け!そこだ!ああっなんで腕組みなんか一人でしておる!」 「夫人も期待しておろうが、この甲斐性なし!」 紅竜王もようやく奥の庭に辿り着き二人を見つけることが出来たが 心配するほどのこともない、いい雰囲気である。 それはいいのだが、わが兄ながら十分以上の成果であると思うが 二人の周囲にびっしり鈴なりの見物人はどうだ!! 二人には見えないが、紅竜王のいる側からは透明マントを ひっかぶった神仙の後姿が何十と丸見えなのだ。 「くっ…!」 二人を野次馬の視線からかばいたいのだが かといって自分がどう出ればいいのやら紅竜王は窮地に陥った。 つと、先ほどの鶯が鋭く羽をひらめかせて周囲を舞った。 「お」「わわっ」 宝貝マントをかぶる姿勢を崩され、神仙達の首だけが 空中に浮かぶ様子となった。そのうち一人が夫人と目がバッチリ。 「もうっ」 一瞬目が険しくなったものの態度には出さず 「とっておきの場所まで、ご案内しますわ」 と青竜王の手を取る。 思わぬ柔らかな感触にドギマギした竜王であるが彼女の取った行動は さらに彼を驚かせることであった。
58 :
前世篇 その8 :2005/07/14(木) 02:02:40 ID:FDHIPGjk
「こちらへ」 と夫人はバルコニーをひらりと乗り越え、谷底に身を躍らせた。 手を引かれて青竜王も谷へと落ちていく。 神仙たちの慌てたの慌てないのって。紅竜王にいたっては 隠れてたのも忘れてバルコニーへと駆け寄り身を乗り出した。 二人の姿は見る見る小さくなっていく。光に包まれ二人が消えた。 宝貝の発動した光である。二人は無事であるようだ。 とはいえ、あの大胆な思い切りと度胸の良さ。 兄が思っていた深窓の令嬢というイメージは覆っただろうが いい方向に違えたことだろうと紅竜王はほのかに予感した。 さて、堕ちゆくじゃなかった落ちていく二人はと言えば。 青竜王もいきなりのダイブに驚いたがそれも一瞬のことで あとは頭を下に逆さになったまま、花のように笑いかける 夫人と二人、言葉も無くただ見詰め合っていたのであった。 光の輪を通り抜けると、どこかの洞穴の中に軟着陸をした。 外を覗くと上も下も絶壁で、どうやら崖の中ほどであるらしい。 だが景色は絶景。雲海の中に大小の山の頂が浮かんでいる。 「どこかぶつけたりしてらっしゃいません?」 「いや…どこも」 「強引に連れてきたりして、怒らないで下さいましね」 「神仙たちが見ていたからね、むしろ助かったよ」 「気づいてらしたの!」 「まあそれは、戦場に立つ身であるし」 生真面目に受け答えする青竜王。夫人も緊張がほぐれ 「いかが?」 ゆったりした服の袖から桃饅頭を取り出した。
59 :
前世篇 その9 :2005/07/14(木) 02:03:30 ID:FDHIPGjk
「時々息抜きに、ここに休みに来るの。私の秘密の場所」 「ここに俺を連れてきたということは…」 予感はしているがそれでもやはり、胸には不安と期待が 同時に満ちてくる。 「そう、そういうことですわ」 いくら野暮でも鉄板の堅物であろうと「そう」とは何かぐらい さすがに察しが付いた。夫人の染まった頬が、何よりの裏づけである。 「これからは、あちらに見える山の東屋でお会いしましょう。 あそこは母の屋敷の敷地内ですから。 …あと、こちらはここに入る鍵となる宝貝です。 受け取って、下さいますか?」 おずおずと差し出された宝貝を、青竜王は夫人の手ごと そっと握り締めた。 「大事に、するよ。」 それは宝貝のことかそれとも自分の事なのか夫人は尋ねなかった。 すでに夫人の唇に優しく青竜王からの印を受けていたので。 「こちらに出入り口があるの」 手にした宝貝を岩壁に押し付けると音も無く空間が開いた。 そこを潜り抜けると、見覚えのある桃の木が目の前にあった。 「先の宴の席の裏手だから」 視線が合い、二人で先ほどの事を思い出して赤くなったりしていると 「あ、戻ってきた!」 瑤姫が軽快な足取りで二人の元にやってきた。 「宴はもうお開きよ。かといって飲み止む神仙たちじゃないけどね」 (…で、上手くいったの?) (教えない!もう、さっきは本当にハラハラしたんだから) (ごめんなさい許して、ね。でもあれで母様も納得されたんだし) 「じゃ、青竜王。妹を邸内に送り届けるようお願いするわ」 かくして、二人は崑崙公認の仲となった。
文中の敬語、他名称が怪しいのは、見逃してくだされ。 ではまた。
目茶苦茶萌えた。 どうもありがとうー!!
エロが無くても萌えられるものなんだなぁ(感心) とってもイイです(・∀・)b!!
萌えあり笑いあり。こーゆーの大好き。 板が板だけに仕方ないかもだけど、個人的にあんまりきっついのは苦手なので、 こういうのは嬉しいな。 またやって下さい。 つうかこのカプってだけで嬉しいやw
薬師寺涼子シリーズのSSキボンヌ
キルヒアイス×アンネローゼの純愛SSです(エロあり) 少し長いですがお付き合いください。よろしくお願いします。 シュワルツェンの館で過ごす最後の日、アンネローゼは火の無い暖炉の前で独り佇んでいた。 窓から差し込む朝焼けが彼女の半身を赤く染めている。もう何日も殆ど眠れずにこうしている。 暖炉の上の飾り棚にはフォトフレームが幾つか並ぶ。その中から一つだけ選んでぼんやりと眺める。 手にしたフォトフレームには彼女と、彼女の弟、弟の友人の三人が幼い笑顔で写っている。 総ての音が遠ざかり、心が巻き戻される。 ―ジーク、弟と仲良くしてやってね・・・― なかなか友人の出来ない弟が、隣の家の少年に出会ったその日から笑顔を見せているのが嬉しくて、 彼にそう声をかけた。赤い髪が上下に揺れ、とびきりの笑顔で弟と共に駆け出していった・・・。 三人で過ごした時間は短くも鮮やかに彼女の心に刻まれた。 後宮に召され自由と未来を失った後、唯一の心のより所は彼等だった。 季節毎に会いに来る彼等は知らぬ間に少年から青年へと変り、赤毛の青年は憧憬からやがて真摯な瞳で 彼女を見つめるようになった。 最初は戸惑い、畏れ、そして暖かい想いが胸に積もり始めた。同時に悲しみも抱いた。 皇帝の妾である自分は、彼に相応しくはないのだと。もしこの想いが人に知られるようなことがあっては、 彼の未来を閉ざしてしまうことになるのではないだろうか。それは考えるのも恐ろしい事だった。 彼に対してまるで姉のように振舞っていても、ふとした折にその眼差しが交差する。 その瞬間の喩えようも無い幸福感は、彼女の中の絶望を溶かす朝日のように暖かく満ちていった。
皇帝の死後、宮廷を退きこのシュワルツェンの館に移り、再び穏やかな日々が始まったように思えた。 10年前と違うのは、彼等が遊び疲れて帰って来るのではなく、命のやり取りをする場所から帰って来るということだった。 彼女の心痛は10年前の比ではなかった。 公務で忙しい彼等はほんの短い間を縫ってここへ帰ってきた。 様々な肩書きの付いた三人がそれを忘れていられる唯一の場所だったのかもしれない。 アンネローゼはいつも温かい手料理と笑顔で迎え、彼等の心と身体が休まるように心を配った。 それは彼女にとっても充実と喜びをもたらす尊い仕事だった。 その日はラインハルトの誕生日を祝い、三人だけでささやかながらも心のこもったパーティを催した。 腕を振るって作った料理を残さず食べ、よく飲む彼等を見るのは幸福だった。 時間が経つのも忘れ、たわいもない話をしながら笑い合う。カードゲームに興じ、夜も更けた頃、うたた寝をし始めたラインハルトを見て アンネローゼとキルヒアイスは顔を見合わせて微笑んだ。わざと幼い子供に言い聞かせるように囁きかける。 「・・・ラインハルト、眠るならベッドへ行かなくては駄目よ。」 「・・・子ども扱いしないでくださいよ・・・」 半分だけ目を開けて答えたものの、暖炉の暖かさと酔いの心地よさに吸い込まれるように目蓋が下りる。 「仕方のない子ね」 子供のような仕草に目を細め、アンネローゼの胸には懐かしさが去来した。 幼い頃、こんな風に眠ってしまってなかなか目を覚まさなかった弟をベッドに運ぶのにとても苦労した・・・。 そんな話をキルヒアイスに話すと、彼は穏やかに微笑み、ラインハルトの肩を優しく揺さぶる。 「ラインハルトさま、起きてください、ラインハルトさま・・・」 「ジーク、大丈夫?」 「ええ、慣れてますから」 いたずらっぽく笑うと半ば眠った状態のラインハルトを何とか立ち上がらせ、キルヒアイスは居間を後にした。
二人が出て行った後、散らかったカードやテーブルの上を軽く片付け、ソファに身を預ける。 軽い疲労感は充実した時間の証だった。 楽しい時間が深いほど、待つ時間が辛くなる。 目を閉じて深い息をつきながら膝の上で手を組み、誰にともなく祈る。 どこへ行っても彼等が無事にここへ帰ってきますように・・・。それはエゴイズムであると分かっていても 祈らずにはいられない。 自分の知らない世界へ翼を広げ飛び立つ彼等を、ただ見送るだけの自分に出来ることはそれだけだった。 できるなら、権力や戦いの無い世界でもう一度、すべてを切り取られてしまったあの日から、普通の生活を やり直してみたい。 みんな一緒に。そして・・・。 暖炉の薪が小さく爆ぜ、アンネローゼは緩やかに意識を取り戻す。少し眠ってしまったようだった。 目を閉じたまま夢の続きを追う様にまどろみに身を任せていると、すぐ傍に優しい気配がした。 そっと髪を撫でられる。指先が頬に触れ、唇をなぞる。 ほんの僅かな、羽毛のような感触にもかかわらず触れられた場所から電流のような刺激が流れ、 思わず吐息が漏れた。 「・・・っ」 触れていた指が動揺し、離れる。 アンネローゼはゆっくりと目を開く。跪いていたキルヒアイスは弾かれたように立ち上がった。 目を逸らし、うつむく彼の頬に朱がはしる。 それを見た時彼女の中で、何かが動いた。 離れたその手を優しく取って立ち上がり、そっと胸に凭れかかる。 軽い浮遊感は酔いのせいだろうか、とアンネローゼは思った。 そうでなければ信じられないほどの積極性に心のどこかで戸惑いながら。 暖炉の中で焼けた薪が崩れ、また新たな炎が揺らめく。 そのゆらめきを頬で感じながら、自分はまだ夢の続きを見ているのかもしれないとも思った。
彼は暫く呆然とし、次に硬直し、やがて大きく強い力が彼女の全身を包んだ。 「アンネローゼ様・・・」 掠れた声が頭上から響く。答えるように顔を上げ、真っ直ぐに見つめる。濃い青の瞳の中に彼女自身が 揺れて映る。 再び彼の手が頬に触れた。大きな手のひらにすっぽりと包まれ、やや上向きに促されると彼女は目を閉じた。 口唇に微かな震えが降りる。柔らかいそれはどこか遠慮がちに触れる。 焦がれるような気持ちに思わず強く応えると、震えは消え、情熱の迸るままに熱く押し包む。 口唇を離した後もなお息苦しいほどの抱擁に、胸が熱く震えた。 (酔ってなどいない、私は・・・待っていた・・・) 「ジーク・・・」 想いを込めて彼の名を呼ぶ。この気持ちをどう伝えるべきか言葉を選んでいたとき不意に彼の身体が硬直した。 「アンネローゼ様・・・お許しください」 かき抱いたままでキルヒアイスが呟き、噛み殺すような溜息と共に腕が外された。 何故、と問いかける時間も与えず身を翻し彼は部屋を出て行った。 アンネローゼは半ば呆然としたまま重い扉が閉まる音を聴いた。 自室に戻った彼はすぐに浴室へと飛び込み、頭から冷水を浴びた。冷たさに全身が粟立つ。 熱に浮かされた心が次第に冷静さを取り戻すと共に、彼は激しい後悔に襲われた。 「何ということを・・・」 衝動と欲望を恐れ、そして逃げてしまった。自分はあの憎むべき皇帝と同じだ。 欲望のままにあのひとを汚そうとした。 あのひとを心から愛している、遠くから見つめていられるだけで満足なのではなかったのか。 想うだけで満足する心、耐え難い欲望の心、どちらも真実だ。 壁に拳を打ち付けると苦い痛みが響く。流れる水が衣服を重く湿らせ、枷のように彼を俯かせた。 しかし・・・初めてこの胸にかき抱いたあのひとの身体の柔らかさと暖かさ、そして口唇の熱・・・ 思い出すと身体に熱が戻る。硬く屹立した己自身を感じ彼は再び恐れ、恥じた。
アンネローゼは繊細な装飾を施された鏡台の前に座った。 身を清め白いナイトドレスに身を包み緩慢に髪を梳く姿は、神話から抜け出た一柱の女神のような美しさで あったが、鏡に映る表情はどこか物憂げに沈んでいた。 彼の熱い眼差しに、彼の想いに応えたいと思った。そして胸に降り積もるこの想いを伝えたい、そう望んだ。 しかし長い抱擁と接吻の後、彼は突然出て行ってしまった。 (許しを請うのは私の方なのに) 浅ましい姿に幻滅されたのかもしれない。 『姉』として気付かぬ振りをするべきだったのだろうか。抱き締められた時のあの熱はシャワーを浴びても 消えずに身体の芯に残っている。 (知らない振りなど、もう出来ない・・・) 櫛を下ろし、立ち上がる。薄い水色のガウンを羽織ると音を立てないようにそっとほの暗い廊下へと滑り出た。 絨毯を踏み進む度、自問を繰り返していた。行ってどうするのか、何を言うつもりなのか・・・ 答えが出ぬまま、だけどこのままにはしたくない。 扉の前に辿り着く。深呼吸をし、意を決して扉を叩いた。 扉を開くとそこに金色の光があった。 蒼い瞳が真っ直ぐにキルヒアイスを見つめていた。桜色の唇がもの言いたげに開いたが言葉を発することは無く、 輝く光が流れるように胸に飛び込んできた。細い腕が背中へと廻され、ガウンが羽衣のように床へ落ちるのを 彼は呆然と見とれていた。 「ジーク・・・!」 言葉にならない想いの総てをぶつけるように彼を抱き締めた。 心を苛む恐れや後悔よりも強い喜びと驚きに彼は包まれ、熱い想いが全身を駆け巡り、抱き締め返すその腕を震わせた。
何故気が付かなかったのだろう。 初めて口付けた時、彼女は自分の気持ちに応えてくれていた。恥じるべきはそれに気付かず逃げ出した、自分の臆病さだ。 「アンネローゼ、様・・・」 喜びに潤んだ蒼い瞳が再び彼を見つめると、白い目蓋が下りる。吸い込まれるように口唇をそっと重ねた。 最初は軽く触れ、次に優しく挟む。押し包むように塞ぎ、舌先でなぞる。緩んだ口唇の隙間から舌を差し込み夢中で口内を探った。応える彼女の舌を絡め取り吸い上げながら、キルヒアイスは一層強く抱き締める。 息苦しさにようやく唇を外すと、熱い吐息が頬を掠めた。 よく晴れた夏空のような色をした瞳が、ある決意をもって彼女を見詰める。 アンネローゼは頬を染め、そっと彼の首へ腕を廻した。 至高の宝珠を扱うように優しく抱き上げ、寝台へと歩くたった数歩の間でさえ、眩暈がするほどの幸福感に包まれていた。 重力を感じさせない仕草で寝台の端へ掛けさせるとその足元へ跪き、細いヒールの靴を片方ずつ丁寧に外した。白い素足の爪先に口付け、そっと口に含む。くぐもっった吐息が聞こえ、足先に力が篭る。 それを解すように舌を這わせ、ささげ持った丸く柔らかい踵を撫ぜる。 脚を抱えるようにして脛から膝へと口付けながらドレスの裾をたくし上げ腰のラインをなぞると、布越しに下着の感触が無いことに心臓が大きく脈打つ。 「あ・・・」 おもわず見上げるとアンネローゼは羞恥に目を伏せ、しかし頬に官能の翳を映して彼を待っていた。 その表情の艶めかしさに彼の自制は消えた。乱暴といっていい手つきで自らの衣服を外し、彼女のドレスも剥ぎ取りながら覆いかぶさる。 瞳に揺れる荒ぶる光は彼女を少しだけ怯えさせた。
「あの・・・ジーク、明かりを消して・・・」 室内の照明は落としてあり、明かりはサイドテーブルのアンティークのスタンドのみ、それも明度は最小にしてある。 それでもお互いの姿は十分に確認できる。アンネローゼは恥ずかしそうに腕で胸を隠し「お願い」と消え入りそうな声で囁く。 ほの暗い室内で彼女の肌は陶器のように白く滑らかに、その陰影は喩えようも無く淫靡に映えた。 その芸術のような裸体を目蓋に焼き付けるかのように凝視する。視線から逃れようとする動きが却って男を駆り立てるということに彼女は気付いているのかどうか。 美しい・・・そして愛しい。いつまでも見詰めていたい。 アンネローゼはもう一度「お願い」と呟いたが、ジークフリードはその人生で初めて、彼女の「お願い」に首を縦に振ることをしなかった。 熱い身体をあわせ、貪るように全身に唇を這わせる。口付けるたびに白い身体は小刻みに震え、吐息が彼を満たした。不器用で性急な愛撫に応え過ぎる程応える自分の身体に半ば驚きながら、アンネローゼもまた満たされていく。 身体の芯はもう蕩けきっている。不意にそこへ彼の手が伸び滑り込む。 「・・・っつ・・・!」 「・・・すごい・・・」 アンネローゼは顔を覆い羞恥と快楽に耐えた。指先は易々と花芯に飲み込まれ、そこを弄る手の動きが陰核に触れた時、堪え切れず高く小さな悲鳴を上げた。彼は指の腹に力を入れぬように優しくその小さな突起を愛撫しながら、彼女の耳元に口を寄せ囁く。 「声を・・・聞かせてください・・・あなたの声が聞きたい・・・」 15歳で後宮に納められ、皇帝の夜伽を科されていた彼女のたった一つの抵抗は決して声を上げない事だった。快楽より痛みの方が強くとも唇を噛んで嵐が過ぎ去るのを待った。長い間そうしていた為か、どうしても声をあげることは躊躇われる。 しかし指が動くたび流れる電流のような刺激に、耳元に掛けられる熱い吐息に、彼女の眼裏が白く痺れる。 「あぁ・・・ああっ・・・!」 堪えきれず上げた声は小さく高く部屋に響いた。花芯を捕らえていたはずの指はいつの間にか彼の舌に変っていた。陰核を転がすようにそして優しく吸い上げる。 「だめ・・・だめ・・・そんな・・・ぁああっ・・・」
自分自身が熔けていくような感覚が彼女を白く飛ばし、四肢が痙攣する。一際高い声をあげた後ぐったりと力を失った身体を抱かれ、汗ばむ額に愛おしげにそっと唇が下りて来る。 アンネローゼは薄く目を開け彼の背中をそっと撫でた。引き締まった筋肉の感触を指に感じながら、その手はゆっくりと腰に流れ彼のそれに触れた。 「・・・ぅ・・・」 僅かな呻きを額で聞きながら指と掌でいとおしげにその形を確かめる。硬く張り詰めた先端が少しだけ濡れている。 「・・・ア、アンネローゼさま・・・いけません・・・」 腰を引き繊手から逃れた彼に身体ごと唇を押し付ける。閉じた太腿の内側はぬるみを帯びて熱く疼いている。そして彼の熱も疼くように脈打つのを腰のあたりで感じている。 「ジーク・・・・・・お願い・・・あの・・・」 はしたないと思う最後の自制心が言葉をためらわせる。 だがキルヒアイスは彼女に最後まで言わせることはしなかった。囁くような吐息が耳朶を打つ。 「あなたが、欲しい・・・」 身体の位置を変え、脚を割り、痛いほど張り詰めた彼自身を濡れそぼった中心にあてがう。 息を呑み、ゆっくりと腰を埋めていく。彼女の膣は狭く、異物を排除するかのようにきつく彼を締め上げた。 「あ・・・うぅ」 眉根を寄せ、苦しげな吐息を漏らすアンネローゼに覆い被さるように口付けながら、暴発しそうなほどの快楽に必死で耐えながら根元まで納めた。 「辛く・・・ありませんか・・・」 「大丈夫・・・よ・・・」 初めてではないのだから・・・。 言っても思っても仕方の無いことだと知りながら、アンネローゼはきつく目を瞑った。 (初めてならよかったのに・・・貴方が最初で最後の人ならよかったのに・・・私は本当は貴方に抱かれる資格など) 蓋をして塞いでいた心の痛みに彼女は再び捕らわれてしまった。
初めは遠慮がちに、やがて抑えきれないように激しく打ち込まれ、襞を捲られるように押し寄せる 熱い快楽と波が彼女を翻弄する。 そして愛される喜びに身を任せながらも、胸の中の黒い沁みは消えず、鋭く痛んだ。閉じた目から涙が流れる。 そんな少女のようなことを夢見る自分を恥じて。 唇の感触を目の端に受け、そっと目を開けると心配そうに揺れる瞳が彼女を映す。 ふと彼の動きが緩くなり、深く、より深い場所に彼自身を埋めた。 「お嫌なら、もう二度と触れることは致しません・・・どうか・・・」 大きな手が二周りほど小さなその手を包む。優しく温かいほど涙は止まらない。その頬に彼の汗が落ちる。 荒い息の中、絞り出すように彼はもう一度口を開いた。 「お許しください・・・」 彼は悲しげに目を閉じ呟く。閉じた瞳から汗ではない雫がこぼれ、彼女の頬を打ち濡らす。 「・・・愛して・・・います」 総てを諦めたような表情が深く胸に突き刺さる。 アンネローゼは自分の涙が彼を傷つけたことを激しく後悔した。 深く傷ついているのは自分だけではない、彼もまた胸の中に絶えず鋭い針を打たれているのだ。 それでも、こうしている。温かく包んでくれている。静かに、深く。 (ああ・・・) ―私はなんと愚かなのだろう。この愛しい人の腕の中にいるというのに。 白い手が額に触れ汗に濡れた赤い髪を掻き揚げ、涙を拭うようにそっと彼の頬に触れる。 アンネローゼは精一杯の微笑みを彼に贈り、包まれた手を握り返す。蒼い瞳が再び彼女を映した。 「ご免なさい、ジーク・・・私、」 上手く言葉に出来ない。だが伝えたいこと、今すぐ伝えなくてはならないことはわかっている。 今こうして繋がって、触れていられることはなんという幸いだろうか。アンネローゼは思いを言葉にすることができる幸せを噛み締めながら唇を開く。 「私も・・・愛しています・・・あなたを・・・心から」 目尻から一筋の光が零れこめかみへと消える。悲しみでも痛みでもない涙だった。 見開かれた瞳に驚きと喜びが広がる。湧き上がる愛しさに突き動かされるように唇を塞ぎ、何度も貪るように口付けた。
「・・・アンネローゼ・・・さま・・・」 繋がったままの陰茎が熱を取り戻し硬く張り詰めると、蠢く肉襞に再び締め付けられる。 想いがすべてを打ち貫くかのように激しく、彼を突き動かす。 「ああっ・・・ああっ!・・・」 恥じることなく素直に声を上げ、彼の首に腕を廻す。押し付けた乳房を荒く掴まれその先端を吸われれば はしたないほどの仕草で彼の耳朶を噛んだ。音を立てて挿される度、身体の芯からぞくぞくとした甘い痺れが全身を貫く。 「ジーク・・・ジーク!あぁ・・・っもう、私・・・!」 「・・・ぅ、くっ」 痺れの元が大きく膨らみ、早く深く貫く。 痙攣と共に迸る熱を身体の最奥で確かに受けながら、世界が白く遠ざかった。 緩やかに意識が戻ったが、アンネローゼは瞳を閉じたまま身動きせずに横たわっていた。 すぐ傍らに優しい気配がする。 そっと髪を撫でられる。指先が頬に触れ、唇をなぞる。ほんの僅かな、羽毛のような感触。 ああ、目を開いたら暖炉の前に居て、総て夢だったらどうしようかと思いながらも、そっと目を開く。 優しい瞳がそこにあった。どちらともなくお互いに微笑む。 手はまだ握り合ったままだった。唐突にキルヒアイスが口を開く。 「・・・必ずお迎えにあがります。それまで待っていていただけますか?」 緊張した面持ちで見詰める彼は少年のような表情で真剣に問う。 両手で彼の手を包み、そっと口付ける。自分でいいのか、という問いは愚問であった。 あの日、皇帝から開放された日、迎えに来た弟は『これからは幸せになってください』と彼女に告げた。 その言葉がいまになって心に沁みる。 幸せになりたい。この愛しい人と。涙の滲む瞳で、でも真っ直ぐに彼を見詰める。 「はい、待っています・・・いつまでも。」
微笑む彼女に何故かうろたえ、ジークは慌てて言葉を重ねた。 「あの、そんなに長くは、お待たせしませんから・・・」 その様子にくすりと笑い、 「きっとよ?でないと私すぐ、お婆さんになってしまうわ」 「いえ、そんなことはありません!・・・あ」 ぎくりとした表情になった彼が動揺しながら呟く。 「ジーク?」 「あ、いえ、ラインハルト様になんとお話しようかと・・・」 まあ、と笑うアンネローゼは少女のようで、キルヒアイスは少年のように赤面した。 「大丈夫よ、ラインハルトはわかってくれるわ。私たち、みんな幸せになれるわ・・・」 「はい・・・はい、アンネローゼさま」 迷いの無い瞳で見つめあい、口付けを交わす。 身体の隅々まで細胞が生まれ変わったような清々しい感覚に包まれて、アンネローゼは幸福だった。 未来が、再び戻ってきたのだ。 その朝、軍へ出仕する彼等を見送るとき、地上車に乗り込む寸前にキルヒアイスは振り向き、二人だけに分かる親密さで微笑んだ。 春の空より少しだけ濃い瞳が朝日を受けて輝く。 凛々しく逞しい姿を瞳と心に焼き付けて、アンネローゼは手を振った。 それが最後だった。
フォトフレームを抱いたまま赤い光の差し込む窓際へ歩み寄る。連なる街並みはまだ暗く、影絵のように切り取られている。 朝日はもう間もなく、遠く連なる屋根の間からより高みを目指すだろう。 朝焼けは燃える炎のように赤く、赤さは彼を連想させる。 「ジーク」 言葉が透明な雫となって頬を伝う。 『はい、アンネローゼ様・・・』 もういない筈の彼の声が聴こえる。窓を開け、何度も呟く。赤い光は涙で歪んだ。 「迎えに来て、ジーク・・・」 ―私もそこへ連れて行って・・・今すぐ・・・ 今度こそ自分は、未来を失ってしまったのだ。もう過去にしか生きられない。 たった一人の弟さえも切り捨てて。 やがて陽は昇り、清浄な光が街に注がれる。 赤い光が名残惜しげに彼女の姿を染め、すぐに消えた。 最後の光を抱きしめながらアンネローゼは窓を閉め、静かにそこを離れた。 Ende
77 :
65-76 :2005/07/17(日) 12:05:15 ID:2Gd9/OnN
拙い作品ですが、お読みいただければ幸いです。 でも、勃たないよね、これ・・・。orz どうも失礼いたしました。
78 :
名無しさん@ピンキー :2005/07/17(日) 13:03:55 ID:NnslCyvG
GJ! 感動したよ、ありがとう。
わーい神がキター!切なくてグッジョブですた。 そしてショタの道に走るアンネローゼ…。ぶっちゃけ、 コンラート・モーデル君は着替えとか風呂とか覗いてるのかしらん、ハァハァ。
。・゚・(ノД`)・゚・。
>>77 いやすごく勃ったです。アンネローゼ様最高!
書いてくれて感謝!!
82 :
65-76 :2005/07/18(月) 00:11:53 ID:BHukz1gU
感想を下さった皆さんありがとうございます。勃ってくれたとも言ってくださって感激! 初めて銀英伝を読んだときから妄想こいてたお話で、どこかで見たことあるような 手垢のついた展開だと自分でも思うのですが、どうしても書きたかったのです。 この二人、何も無かったなんて報われなさ杉で・・・。 この組み合わせのss(エロで)ってあまり見かけないのですが、当時は同人誌なんかであったんでしょうか? そのころに戻って男女カプものが読みたいです。 ぶっちゃけが ぶっかけ に見えたw
始×茉理の神もキルヒ×アンネローゼの神も ものすごく読みたかったのでうれしすぎた。 GJ! また書いてください
>65-76 うう…辛い(つД`゚)゚。 幸せになってほしかったな、この二人。 とても好きなカップルなので、イイ話読めて嬉しいよ。 乙&GJ!
薬師寺涼子が陵辱されて屈服するSSないっすか?
86 :
名無しさん@ピンキー :2005/07/19(火) 17:11:30 ID:zm+gqua1
キルヒ×アンネ…待ち望んでいたものが…(T∀T) 神様ありがとう!本当に本当に待ってたんだよぉぉぉぉぉ〜〜〜
85さん薬師寺涼子が陵辱されたら、屈服するどころか恨むよ。 そして仕返しに来るのがオチ。 何せ、「ドラよけお涼」「桜田門の黒バラ」「霞ヶ関の人間原子炉」と仇名されて位だから 薬師寺涼子の天敵は室町由紀子位だから、無敵と言えよう
薬師寺は話読んでないんでわからんが、薬師寺の性格はおそらく88さんのいうとおりなんだろう。 でも単に話がないか?って聞いている人にそんなのあるものかと反論しなくてもいいだろ。 気に入らなくともスルー。もしも知ってあげたら教えてあげればいいじゃないか。 もしもないなら俺が作る!っていう気概の人かもしれないじゃないか。 押しつけはイクナイ >85 俺はしらんごめん
>89 そのコテはお触り厳禁。スルー汁。 (メル欄)でこの板内のスレッド検索して、一番発言数の少ないスレの レス番1〜9で言及されてるヤシと同一人物なので詳細はそっち参照。
久々に来てみたら神降臨。神GJ! ヤン×アンネローゼの続きもきぼん…
神はまだか…。
薬師寺涼子シリーズで良く知ってるのさ。 岸本明に「お涼様」と慕われるし、室町由紀子には「お涼〜てんのよ。」と言われたり、 メイド二人には「ミレディ」と慕われる。 「やられたやり返す」というのは涼子の信条でない。「やられそうになったらこちらからやる」「やられる前にやれ」ですらない。「やりたいからやる、モンクあるか」が一番近い。(巴里・妖都変より)
前スレが読みたいのですがどこか置いてある場所はないでしょうか?
田中芳樹作品エロパロ でぐぐってみたら引っ掛かったよ。どっかのキャッシュか? 最後までは見れなかったけど結構後ろの方まで。800番台半ばぐらいまでだったのかな… このスレの頭の牛男さんのアレの前の部分は入ってなかった。 今も見れるかどうかは判らないけど。 …何か日本語変?解り難かったらごめん。
97 :
94 :2005/07/27(水) 20:53:30 ID:cKPDJi0s
>95,96 ご親切にどうもありがとうございます! おかげさまで読めました。完結していない作品いくつか ありますね。書いて欲しいなぁ。
98 :
薬師寺涼子 :2005/07/27(水) 22:21:37 ID:Dn8/M0UT
私のSS作りなさい。屈服させても屈服させられるのは嫌よ。
色々試みてはいますが、原作の雰囲気を壊さず、さらには 原作以上に色気を醸し出さなくてはならないwので時間かかります… 二次創作のサイトもありますが、それと同じように原作にない女性キャラ 出すのも嫌ですしね(個人的な意見ですが
なかなかまとまらんので自分にハッパかけるついでにお伺い&質問。 色目による伯爵令嬢リョウジョークってあり? それに、エロシーンあんまりなくても許される? で、質問の方だけど、バーミリオンでベイオウルフに乗り込んだ時 令嬢って軍服だった?それともいつものスーツ姿だった? 原作5巻読んでも描写が見つからんし、アニメはその辺を見ていないのでわからん…。
>100 とても読みたいです!ありで許されるのでぜひアップして欲しいです。 服は自分もわからないです。アニメ見たことないので。
>100 おお。楽しみにしてます。 あとあのときはたぶん軍服だったのでは… 今DVD手元にないんで確かめられない、ごめん。
>100 ベイに乗り込んだ時は軍服だった。昨日DVD見たから間違いないです。 令嬢は普段のスーツより軍服姿のほうがエロさを感じるのはオレだけ? ところでさ、憲兵総監夫にしつっこく責められるメイド幼な妻の話なんて有りかね?
>100 大事なことを言うの忘れてた 100さん、令嬢ネタ楽しみにしてます
105 :
薬師寺涼子 :2005/07/28(木) 22:19:47 ID:77y8Rb+d
泉田君&お由紀なら屈服しても良いわ、それ以外は駄目だけだけどね。
>>103 >憲兵総監夫にしつっこく責められるメイド幼な妻の話
ありありありありあり!!! 超あり!!
続×レディLが読みたいです…
レディLと続〜? 薬で体の自由を奪われた続、という設定にしたとしても そんなマネまでして迫り来るレディLを絶対零度の言葉で退け レディLだってそこまで淫乱女呼ばわりされて、なお続に迫るほど 女のプライド捨てちゃいないだろうし… つうか、続って童貞?もう経験済み?どっちだろう。
久々に銀英Wやってみた。 やっぱおもしれー。
色目による伯爵令嬢リョウジョークやると言ってた>100です。 長くなりそうだし愛ないリョウジョークだし、そう言いつつエロなかなか出てこないしなので 書けた分からキリがいい所で投下する形式でやろうと思います。 投稿時にはトリップつけとくんで回避したい人はNGワード設定よろ。
俺は長年、奴との付き合いを続けている。互いに艦を持ち、それが旗艦となった今でも、互いの艦を行き来して酒を飲む習慣は変わらない。 しかし…流石に、衛星軌道から敵の首都星を眺める経験は、今回が初めてだった。 そして、女が同席していると言う事態も。しかも、今は友人が席を外している。 今、俺は、事もあろうに友人の旗艦の一室で、女とふたりきりで時間を潰していると言う、あり得ない状況下に置かれている。 「――フロイライン・マリーンドルフ」 俺は目の前の女の呼称を口にした。 フロンライン・マリーンドルフと、帝国軍将兵に呼ばれる女。ローエングラム公の主席秘書官にして、深遠なる智謀を持つ女。 この女がまず俺の親友を説得して動かし、そして親友が俺にその作戦を伝えた。曰く、今から反転してもローエングラム公は救えない。公を救う唯一の方法は、ハイネセンを急襲して陥落させ、同盟政府から停戦命令を下させる ――兵法としては特に目新しい手法ではない。しかし、大胆だ。それはまるで、ローエングラム公が考案したかのような――。 俺は彼女には特に視線は合わせない。手の中のコーヒーカップからは既に心地よいコーヒーは失われていたが、そこに視線を落とす。 「…どうか致しましたか、ロイエンタール提督」 彼女の声が俺の耳に届いた。程よく効いている空調が、微かな作動音の中に女の声を混ぜる。彼女の声は何気ないものであるようだったが、訝しげな要素を含んでいるようにも聞こえる。俺の勘繰りに過ぎないだろうか。 気が置けない友人の艦で、まさか腹の探り合いのような真似をするとは――ふと、そのような事を思う。今日は何故か、妙に、神経がささくれている。 「不躾な質問をさせて頂きたいが、宜しいか」 「伺いますわ」 彼女は視線を上げた。探るような視線を俺に向ける。――俺はコーヒーカップに視線を落としたままだが。 しかし、その視線を上げた。俺は彼女を見つめた。口元には僅かに笑みを浮かべてやるが、おそらくはその目は笑っては居ないままだろう。鏡を見ている訳ではないが、俺は自分の表情が手に取るように判るし、扱うことが出来る。 「フロイラインは何故、私ではなく、ミッターマイヤー提督をお選びになったのですかな?」
俺の問いに、彼女は明らかに戸惑った。おそらくは、彼女の現状の心中の急所はこれだった。腹を探ったつもりだったが、それが明らかに正解だった。もっとも彼女はすぐにその表情を消してしまうように努力していた。 しかし、俺には無意味だった。既に俺は彼女の心中に気付いてしまった。 「…選んだ、と言う訳ではありませんわ」 しばしの間の後に、彼女は品のいい微笑を浮かべてそう答えた。門閥貴族の女らしい、美しい笑み。しかしここまで上品な笑みを浮かべることが出来る女は、貴族にもそうはいない。さぞかし心が清らかなのだろうか。 「しかし実際に私ではなく彼を選んでいる。私の艦隊と彼の艦隊とで、フロイラインが到達に必要な時間は然程変わらぬはずでしたな」 性根から歪んでいる俺が表す笑みは、彼女の清らかさに敵うべくもない。そして舌鋒こそ鋭くはしないが、俺は彼女に対する追求を緩めるつもりはない。 「或いは、人間に可能な限りの速さでハイネセンを失陥させる必要があるため、私ではなく疾風ウォルフを頼らざるを得なかった?――違いますな。あの男は、この作戦が必要であると判っていようが、自身の艦隊のみで動く訳がなかったのです」 「…提督は何故、そうお思いになりますか?」 「ウォルフガング・ミッターマイヤーという男は、客観的に見て、こと政治的な動きに関しては清廉潔白な男ですし、当人もそうあろうとする人間です。 仮に彼の艦隊のみが主君のために反転せずにハイネセンを失陥させたとしたら、彼はローエングラム公に対する忠誠心を疑われる事になりかねない。確かにこの作戦は公をお救い申し上げるためのものだ。 しかし、それでも、ここが彼にとっては越えられない一線と言う奴だったのです」 それが、俺の親友だ。全てにおいて馬鹿馬鹿しいまでに真っ直ぐでいて、高い矜持を持っている。それでも尚自分の立場を計算出来るから、旧体制時代のゴールデンバウム王朝においても俺と同様に出世したのだろうが。 俺は視点を落とした。何も入っていないコーヒーカップを弄ぶのにも飽きてきた。汚れの後も欠けもないカップをそっと皿に戻すと、乾いた音がした。 「私は彼と長い付き合いをしている。しかし、彼の行動原理は、少し洞察力がある人間が見ていたらすぐに理解出来るだろう。ましてやフロイライン・マリーンドルフ―― ローエングラム公の首席秘書官であるあなたが、それを見抜けない訳がなかったのですよ」
そこで一旦台詞を切る。…椅子に座り続けるのにも飽きてきた。俺は席を立つ。 「つまり、ミッターマイヤーを接触対象に選んだところで、結局は彼は自らの行動に正当性を与えるために誰か他の提督を共に行動するしかない。 そして、他の提督率いる艦隊と共にでは、彼の艦隊が誇る用兵の速さを完全に適用は出来ないでしょうな」 席を立ち、テーブルから離れる。ここはベイオウルフ内の会議室であり、十数人が着席できる規模のテーブルと椅子が設置されていた。俺と彼女はそこで向かい合いに着席していた。 俺は丁寧に引いた椅子を元に戻し、テーブルをゆっくりと回り込んでいった。自分の軍靴の音がやけに室内に響くような気がする。 「――…彼が疾風ウォルフであるのは、あなたにとって全く関係がない要素だったのではないですかな?むしろあなたが彼を選んだ理由とは、その矜持の高さだったのでは?」 歩きながらも尚俺は言葉を続けた。彼女は視線で俺の姿を追うのだろうか。彼女を見ていない俺には良く判らない。 やがて、俺は彼女の隣で立ち止まった。座っている彼女を上から見下ろす格好になる。 どうやら彼女は今は、俺を見ていなかったらしい。くすんだ金髪の頭頂が眼前にある。それは利発そうな印象を与え、そして実際に利発な女。この形のいい頭の中に、何処までの知略が展開されているのか? 俺は彼女の隣でかつんと軍靴の踵を合わせた。敬礼するかのように姿勢を正し、しかし彼女を見下ろす体勢を保った。そして、少しだけ微笑んで、言った。 「――逆を言うと、つまりは私は、あなたに全くと言って良いほどに信用されていないのでしょうよ」 俺はその台詞とその言い回しに、少しばかりの毒気を混ぜたつもりだった。鈍感な人間には嗅ぎ取れない程に、微妙な毒を。 毒――それは一体何か。嫌悪感か、蔑みか、それとも他の成分か?俺は人の心を負の方向に持っていく手法をわざと行う事があるのだが、だからと言ってその際に必ず自分が持つ毒を性格に自己分析出来ている訳ではない。 ともかく、俺の前では、彼女が視線を上げていた。俺に対して向けられた視線には、彼女の感情は覆い隠そうとされている。意識的に感情を殺そうとしているらしいが、それでも大抵の人間は自分の感情の発露を隠し通す事は出来ないものだ。 ――今彼女から感じられる感情は、困惑か、恐れか…その他の要素か。
「…提督にはローエングラム公を支えて頂きたいと思っておりますわ」 沈黙は長くはなかった。彼女の視線から微妙な感情の流れが消えたと思ったら、すぐににっこりと微笑む。爽やかというよりは、可愛らしいはにかみめいた笑み。自覚はないだろうが、ちょっとした男ならこれで落ちるのではないだろうか。 ともあれ、俺もこの状況に乗る事にした。彼女と同様に笑う事にする。 「ミッターマイヤー提督と共に、公の両翼となって、ですか?」 「そう言う事になりますわね」 「私如きに、非常に勿体無いお言葉ですな」 「帝国軍の双璧と呼称されるおふたりに相応しい仕事であると思いますが」 ここまでの会話に、俺は目を細めざるを得なかった。――どうやらこの女は冷静ではあるが、完全なる嘘をつく事は苦手のようだ。だとすると、俺も自分の直感を納得せざるを得ない。 「なるほど、あくまでも私はミッターマイヤー提督と共にと言う扱いですか。私単独ではやはり信用して頂けない御様子」 「そういう訳ではありません」 「彼の方は単独でもあなたの信頼を得ていると今回の一件で判明致しましたが、何故私では無理なのでしょう?」 ――自分の胸に聞いてみろとでも返せたなら、この女も楽だろうにな。俺は、自分で問うておきながら、そんな事を思う。 しかし表向きは、俺達は笑顔を浮かべたままの会話だ。つくづくこの女とは腹の探り合いが続く。どちらが先に自分の本音をぶちまけるか、その勝負になってしまう。実際には互いの本音が相手に薄々感じられているだろう事は想像がつく。しかし、それを露呈したくはないのだ。 おそらくはこの女も同じ事に拘り、このような猿芝居が続いている。彼女は嘘をつけないから手放しで俺を信用しているとは言えない。しかし様々な粉飾で、それを誤魔化そうとしている。 ――彼女ならば俺を本気で誤魔化せるとは本気で思ってはいないだろうが、少なくともストレートな暴露はしないようにしている。そして、俺も同様だ。
そういったやり取りが続く事を予想したのだろう。彼女はすぐに言葉を返そうとはしなかった。言葉尻を捉えられるのを嫌がるのだろう。 何も言わない彼女を良い事に、俺は彼女の隣にそっと片膝を付いた。恭しく頭を下げ、胸に手を当てて畏まる。形だけは、恭順の姿勢を取る。まるで大昔の騎士が女性に対して行うように。 隣から驚いたような空気が漂ってくるのが判った。彼女は机に向かい合った体勢のままであり、俺はその隣で片膝を付いているのだから、完全に彼女と向き合っている訳ではなかった。 しかし、彼女は驚いたのか、反射的に体をこちらに向けたのが判る。それでも、急遽の姿勢変更であるにも関わらず、椅子が微かに音を立てるだけだった。それは彼女のそつのなさが滲み出ているかのようでもあった。 「――あなたは公の首席秘書官です。あなたに信頼されると言う事は、公の信頼を得ると言う事でしょう。私はあなたの信頼を得たいのですよ」 恭順の姿勢のまま、俺は目を伏せてそう言う。それは、本音であったろうか。 「…私本人の信頼ではなく、私を通して公の信頼を得たいとお考えですのね」 俺の台詞に対し、彼女はそう返した。――何故か、俺は口元に笑みが浮かぶのを止められなかった。顔も上げないまま、彼女に答えた。 「いけないでしょうか?」 「…え?」 俺の回答に、彼女は戸惑ったようだった。 何ら意味のある台詞を返さず、短くそれしか言えなかった事で、それは明らかだ。このような猿芝居のような会話を交わしている以上、無意味な言葉を口に出す事は相手に付け入る隙を見出させるだけなのだから。 おそらく彼女は俺の言葉尻を捕まえたつもりだったのだろう。――自分の信頼を得たいと言いつつ、それはローエングラム公の信頼ではないのかと。なのに、俺はそれを受け流してしまった。 「失礼」 俺はそれだけ言ったが、彼女の許可は待たなかった。 彼女の右手をそっと手に取り、唇を寄せた。あくまでも恭しく。 これもまた、大昔の騎士のように――と言うか、現代の貴族の女に対する恭順の姿勢でもある。形の良い、白い肌の手の甲に口付ける。美しい手だと思った。 彼女の手がほんの微か、本当に微かに、ぴくりと震えるのが判った。
探り合いイイ(・∀・)! 愛のないリョウジョーク待ってるよ〜
117 :
薬師寺涼子 :2005/08/01(月) 14:18:14 ID:7XHi69Tw
薬師寺涼子は無敵のヒロイン
おお!色目と令嬢の性格が非常に上手く書かれている!お見事です!! リョウジョークに持っていくまでの舞台設定付けにぬかりがないのもイイ! 期待しておりますぞ!!
神が降臨しているではないか。 期待しています。
彼女は仮にも、門閥貴族の一族に名を連ねる一人娘であったはずだ。いくら父親が門閥貴族にあるまじきまでに誠実かつ平穏を求める人柄であるとは言え、貴族として社交界と隔絶出来る訳がない。だから、この手の挨拶には慣れているはずだ。 ――少なくとも、彼女はそう応対するはずだ。応対しようとするはずだ。 目の前の男は、あくまでも女性に対する「挨拶」をしているだけに過ぎないのだと。 俺は彼女の薄い手の甲にそっと口付ける。微かに香る上品な香水に、何気に手入れされている爪。自らを飾る事を知らないような娘だが、身嗜みと言えるレベルの事には気を使っているようだった。それには好感を持つべきなのだろうか。 俺は彼女の手首に軽く手を添え、手の甲に唇を寄せ続ける。手首は細く、しかし黒と銀に彩られた軍服の感触は普段俺自身が感じているものと同じだ。 最初に口付けた際に感じられた僅かな震えは、もう感じられない。もしかしたら平静を装っているだけで、鼓動はどうにかなっているのかもしれないが、手に口付けているだけではそんな事は判らない。 「――あの」 俺の上から短い声がする。戸惑っている調子の声。しかし俺はそれに応えず、相変わらず手の甲に唇を寄せていた。 「……提督?」 声の調子からは戸惑いだけが感じられ、緊張の成分などは含まれていないように思える。――或いは、緊張を覆い隠しているように思える。短い言葉から類推できる事は少ないのだが。 「どうかなさいましたか?フロイライン」 俺は唇を寄せたまま、問い返した。それ程大きな声にはならないが、はっきりとした口調になるように心掛ける。唇の動きがそのまま手の甲に当たるのが感じられた。そして、彼女の手の甲が反射的に震え、上で微かに息をつくのも判った。 「…これは一体どういう事なのでしょうか」 「どういう事かと仰いますと?」 手に唇を寄せたまま喋り続け、俺は顔を上げない。俺に彼女の顔は見えないし、彼女も俺の顔が見えないだろう。 「その…挨拶にしては少々長いのでは?」 彼女の声の調子からは相変わらず戸惑いが感じられる。そして、僅かながらに緊張の調子も紛れてくるような気もする。 「淑女に対する挨拶ですとも。紛れもなく」 俺は悪びれもせずにそう答えた。 確かに彼女の方が正しいだろう。男が女の手の甲に口付けると言うのは確かに挨拶だが、まさか長々と口付けを続けるのが正当な挨拶だとは思えまい。 しかし、彼女はそう思うなら、手を振り払うなどと言った行為に出れば良かろうに、その気配は全くない。嫌悪感を自分から出すつもりはないのだろう。それを明らかにしては、負けだと思うのだろう。 …何に対しての負けなのだ。俺も同等の勝負を挑んでいるからこそ、馬鹿馬鹿しく思える。彼女の回りくどい態度を笑えないし、逆に自分ごと笑ってしまいたくもなる。 「フロイラインはこのような挨拶には慣れておられませんか?」 「いえ、そういう訳ではないのですが…」 「では普通に流せば宜しいでしょう。――私もあなたに対して特別な感情はありませんよ」 俺はそう言って、不意に顔を上げた。彼女の顔を見上げる。 彼女は僅かに眉を寄せていた。戸惑ったようでいて、微かに不快感だか緊張感だかが感じられるような顔。 しかしそれは一瞬だった。彼女は「俺に顔を見られた」事を悟るや否や、すぐにその表情を消してしまった。整った顔を努めて維持しようと目論んでいる様子だった。改めてこうしてみると、美しい女だと思う。それは素直な感想だった。
「――私には特別な感情はお持ちではないと言う事は、やはり私の信頼は必要とは思ってらっしゃいませんのね」 俺の唇が手の甲から離れたからか、少しは余裕が出てきたのか。彼女は少しだけ微笑んでそんな事を言った。 「私はローエングラム公の忠実な部下です」 俺はそう言って頭を下げた。片膝ついたまま、まるで彼女に忠誠を誓うかのように。 「……私は公ではありませんよ」 俺の行動に対して、やはり彼女は戸惑ってしまうようだ。少しの沈黙の後に、そんな馬鹿正直な台詞が帰ってくる。 「しかしあなたは公の主席秘書官です」 「提督は、誰かに取り入って忠誠を証明するような方ではないと思っておりますわ」 「買い被りですよ」 ――本気で取り入っているつもりだとして、その取り入る相手に「お前には興味ない、お前の上司に興味があるから取り成せ」と露骨に言動で示すとすれば。それは馬鹿の所業だろう。そんな事をしたら、取り入る相手は気分を害する事はほぼ確実だからだ。 しかし今の俺の態度はそれを地で行っている。そして「俺が取り入る相手」である彼女は、だからと言って単に気分を害するだけに留まらないだろう。聡明な彼女ならば、俺が本気で彼女に取り入っている訳ではないと判ってしまっているだろうから。 では、目の前に跪く男は何をしたいのか?「取り成せ」と言う要求が存在しないならば、つまりは信用だの何だのを前置いた挙句に「お前には興味がない」と言う事を露骨に示したいだけだ――彼女にはそこまで判ってしまうだろう。 判ってしまったからと言って、どうだと言うのだ。彼女はやはり俺に対して態度で示せないだろう。俺がいくら嫌悪感を煽ろうが、彼女は何処までも交わそうとするだろう。しかし彼女の忍耐力は何処まで続くだろうか。 ――互いにそりが合わない事を自覚し、遠慮なく弁舌を振るう事が出来るオーベルシュタインと俺の関係は、その実健全なのではないだろうか。この彼女とのやり取りでふとそんな事を思い、内心苦笑せざるを得ない。
「また、不躾な事を伺いたいが、宜しいか?」 「…どうぞ」 片膝ついて忠誠を誓うかのようなポーズを取ったまま言う台詞ではないだろうが、彼女は不問に処した。何が出てくるのか楽しむ余裕はまだあるのか知らないが、ともかく彼女は俺に続きを促す。だから、俺も遠慮なく言葉を続けた。 「今回のフロイラインの計画が上手く行かなかったとしたら、どうなさるおつもりだったのですかな?」 「…と、仰いますと?」 「我々に出来る事は同盟首都星を急襲して無条件降伏を促す事だけでした。それ以降の話は同盟政府の裁量に任せるしかなかった。――仮に彼らが民主主義の守護者としての威信を賭けたとしたら?無差別攻撃される事を受け容れて尚、我々に折れるつもりがなかったとしたら?」 俺は問うて一旦言葉を切った。彼女が何らかの反論をするなら、それが出来る程度の間を置いてやった。しかし彼女は即答しない。俺もここで話を終わらせるつもりはなかったので、短い間を置いただけで話を続けた。 「また、ミッターマイヤーも危惧していたようですが、同盟政府が無条件降伏してもヤン・ウェンリーがその命令を無視したら?彼が誘惑に身を任せないのは、こちらの願望に過ぎなかったでしょう。そして、そもそも、無条件降伏の命令が間に合わなかったとしたら?」 「…リスクが大きいのは承知の上でした。ですが他に方法はなかったと思います」 俺の台詞が途切れ、彼女はそう答えた。しかし、その答弁で俺が納得すると思っている訳はないだろう。 「不躾で申し訳ないが、私はあなたの願望を今更伺っているのではありません。あなたの作戦の分岐点の行方を伺っているのです」 「……提督が何を求めておられるのか私には――」 戸惑いの表情が、微笑に取って代わった。ああ、それだ。何かを偽っているような表情。彼女の表情の変化を見た俺は、彼女の台詞を遮って畳み掛けた。 「聡明なあなたがそれを想定していなかったとは私には思えない。――我々の行動が完全なる成功に至らず、ローエングラム公が敗北すると言う分岐の先には、あなたはどのような策を見出していましたか?」 自他共に認める「策士」ならば、事象に対していくつかの可能性を呈示し、それに対応するだけの策を用意しておくものだ。ましてや相手の行動に望みを託すような願望めいた作戦を主に置いて安心している人間が、今までの実績を残せる訳もない。 ローエングラム公が敗死する。元帥府の軍人には高級将官であろうとも考える余地もなく、また空気として考える余地が許されなかった可能性。そこに切り込む事が出来る娘である以上、本当に敗死した後の可能性まで考えていない訳がないのだと、俺は判断した。
俺の畳み掛けるような問いかけに対し、彼女は黙り込んだ。口元から微笑が消えた。それは、彼女なりに出来の悪い取り繕いだと言う自覚はあったのだろう。 しばしの沈黙の後。彼女は口を開いた。しかしそれは俺に対して予想外の問いだった。 「――提督ならどうなさいましたか」 「………は?」 俺は初めて、彼女に対して意外そうな声を上げてしまった。反射的に止められなかった。 彼女の顔をまじまじと見てしまう。硬い表情だった。おそらくは、彼女自身もそれが危険な問いだと気付いているのだろう。 危険な問い。普通に考えて、主君の死を想定するのは、部下にとって不遜だ。 「…私ですか?」 「はい」 「公が亡くなったとして――私の身の振り方ですか?」 「そうです」 「あくまでも仮定として、ですな?」 「それで宜しいかと思います」 当初は本気で意外そうな声を出して俺は訊いた。そして彼女は頷くだけだった。それを繰り返しているうちに、俺は心中で意を固める。意外そうな声が、演技の範疇に収まっていく。 俺は視線を上げた。彼女の顔を見つめた。口元には少しの笑みを浮かべる。 「私が忠誠を誓うのは、ローエングラム公だけです」 そう、答えた。それだけの言葉で、俺が何を言いたいかは、彼女ならば判るだろう。 「…つまり、公が亡くなったならば、あなたは覇権を握ろうと行動を起こしたと?」 彼女の応対は少し口ごもった後だったが、それは彼女の演技だろうか。本心だろうか。俺にはどちらにも取れた。そして俺は意外そうな声を上げてみせる。 「そこまで飛躍されるとは思いませんでしたが、乱世に生きる軍人として機会があるならば生かしたいものだと思っております」 危険な問いと、その答え。あくまでも「仮に」と言う建前がつくとは言え、かなり踏み込んだ会話になるのは必然だ。しかしその建前がついている以上、俺が何を言おうと誰にも咎められる筋合いはない。 「もっとも、私だけでは力不足でしょうから、ミッターマイヤーを誘うのも良いでしょう。彼を味方にすれば将兵の大半も安心してついてくるでしょうし」 俺と奴の武勲を足しても尚、ローエングラム公には及ばないだろう。しかし、公に次ぐ第二の可能性を標榜するには充分ではないだろうかと俺は考える。何せ公と俺達ふたりに匹敵する武勲の持ち主は、現在の帝国には存在しないのだ。 「ミッターマイヤー提督は果たしてそのような考えに乗るでしょうか?」 彼女の疑問は当然のものだろう。俺はそれも考えていた。だから、口からすらすらと答えが出てくる。 この考えはあくまでも仮定として。それが建前だ。 「彼はまるで出世欲がありませんからな。ヤン・ウェンリーが同盟政府からの命令を無視する可能性より低いかもしれません。 しかし帝国に混乱をもたらす惨禍に較べたら、彼も一時的にでも統治者となる気も出てくるのではないですかな?――まあ、これは私の願望に過ぎませんが」 「そしてあなたは一時的で終わらせるおつもりではないのですね」 「実際問題として公がお倒れになった場合、他に我々が仰ぐべき人物は存在しますか?いないならば…やむを得ない事もありましょう」 「公には姉君がいらっしゃいます」 「それは現在の幼帝と同じく、傀儡として、あなたは薦めてらっしゃるのか?」 「…それは」 「主君亡き後の政権争い」と言う危険な会話は、彼女が口ごもる事で一旦止められた。
事実、現状の帝国の体制がローエングラム公に権力が一挙集中する独裁体制である以上、彼が敗死した場合にその代わりを務める事が出来る人間はいないのだ。No.2不用論を推し進めた結果がこれだ。 危機管理も何もあったものではないが、この「危機」自体を考慮する事を公自身が行わない限り、誰も表立ってこの危機に対して予防線を張っておく事は出来ない。 かろうじて考えられる可能性としては、正にこの首席秘書官が口にしたように、公の姉君に出馬して頂く事だろう。しかしどうも姉君は現状を取っても政治に関わる気が全くない様子だし、公のように全てを任せるに相応しい能力を持っているとも言い難いだろう。 となると、姉君は傀儡以外の何物でもなくなる。それは、今の体制における「ゴールデンバウム王朝を継ぐ幼帝達」と立場上何ら変わる事はない。それを姉君自身、そして俺達含め周りの人間が受け容れる事が出来るのか? 少なくとも、俺には出来ない。 そして、俺は「その時になれば自ら覇権を握る事も厭わない」と、今彼女に対して明言した。 彼女は俺を、危険な人間だと思うだろうか。 ――俺にここまで明言され、主君の首席秘書官という彼女の立場を考えれば、危険を感じない方がおかしいだろう。しかし、彼女が俺に対して何らかの言動を取れるだろうか。それはまた別問題だ。 「成程、フロイラインのお考えは公の姉君をお頼り申し上げるという事ですな」 「…そうなりますね」 「ええ、そうですな。血筋は全てにおいて優先される…全くもって今昔変わらぬ貴族の論理です」 俺が口元を歪めた笑いを浮かべ、そう告げる。と、彼女の眉も心なしか歪んだように見えた。――針で細かく神経を突付くような言動ばかりやってきた俺だが、彼女にも少しは効いているのだろうか。 どちらが先に自分の負の感情を露にさせるのか――奇妙な競争だ。この競争自体は馬鹿馬鹿しいが、俺はこの手の小娘は気に喰わない。何故だか、気に喰わないのだ。 この毅然とした小娘が感情を発露させた時――俺との競争に負けた時、何を思うのだろう?この気の強いまなじりに何が浮かぶ? 俺は歪んだ笑いを浮かべたまま、再び彼女の手を取った。
彼女はまた微かに震えたが、すぐにその震えも止まる。また跪いたまま、挨拶と言う建前の口付けが来るのか。彼女はそう思ったのだろう。しかし、俺の行動は彼女の予測とは、おそらく違った。 俺は彼女の手の甲に唇を落とした。それは前回と同じだ。 しかし、それから俺は、彼女の手の甲に吸い付いた。 それは跡が残るとか、それ程に強く吸い付いた訳ではない。しかし、敢えて目立つように音を露にしてやる。もっとも室内が静寂に包まれている以上、それ程大きな音を立てる必要はなかった訳だが。 それでも彼女の動揺を誘うには充分だったようだ。吸い付いた手がびくんと震えた。そして、反射的にだろう、手が俺から勢いよく引こうとしたのだ。しかし俺はその手首をしっかりと掴んでいた。逃がさない。 俺は吸い付いた唇をそのまま、彼女の指先まで走らせた。舐めている訳ではないが、先程吸い付いた際の唾液が唇を介して彼女の指に撫で付けられるのが俺にも判る。 きめの細かい肌と、手入れされ薄くマニキュアが塗られた爪の感触を楽しむ。そして俺は掴む手首の角度を変え、彼女の人差し指の腹に、軽く口付けた。 「…何をなさるのですか」 押し殺すような声がした。感情を露にしないように懸命に努力しているが、その声を押し殺す行為自体から感情が感じられる。俺に負けないためにも、無駄な努力と言う奴を彼女はしなくてはならないようだ。 俺は彼女に答えない。強張った人差し指の先に舌を走らせる。すると、彼女は震える。判り易い反応が来る。そのまま俺は指の根元まで一気に舐め上げた。そして、指の間をじっくりと舐めてやる。上で、息をつく雰囲気が感じられる。 俺は指を舐めてやりつつ、そっと視線を上げた。 彼女の顔は強張っていた。寄せられた眉は苦痛に満ちているようでいて、他の感情も見当たるようでもある。伏せ目がちでじっと何かに耐えている様子だ。唇は半開きになっていて、そこから吐き出される息は、俺が舌を走らせるのに反応してくれているようにも思える。 彼女の顔を無遠慮に見つめながら、舌を走らせる。人差し指ばかりではなく、他の指にも行為を行い、時には掌にも口付ける。ある部分を舐めると、彼女はほんの僅かに喉を反らせた。それを見て俺は低く笑ってみせる。 と、彼女は俺の笑いに気付いたのか、伏し目がちだった目をうっすらと開いた。熱に浮かされつつある――そのような表現を用いたくなるのは、俺が彼女に対して悪意を持っているからか?ともかく、彼女の瞳は普段の明晰な代物とは明らかに違ってきていた。 しかし俺の視線に気付いたのだろう。彼女は明らかにはっとして、目を見開いた。顔を横に振り、熱を冷まそうと心掛けようとした。が、俺はそれを見計らい、以前舐めた際に反応が顕著だった辺りに再び舌を走らせる。 それに対する反応は明快だった。彼女は体を強張らせ、軽く鼻に掛かったような声まで上げてしまう。そしてその事実に驚愕したか、再び激しく顔を振る。――反応は、可愛らしくもある。 俺は彼女の掌を舐め上げ、そのまま手首の辺りに口付けた。掌が俺の頬に当たるので、そのまま手に頬を寄せる事にした。まるで本気で愛しい恋人にでも対する態度のように。 以前はわからなかったが、今は彼女の体温が手からも伝わってくる。それはかなり熱い。 そんな風に彼女の手を弄び、彼女の様子を楽しみつつ、俺は言い放った。 「――公だろうが、その姉君だろうが――あなたが覇者を作り、支えていくのは、楽しい事でしょうな」
彼女が硬直したのが判る。熱を持った掌は、汗を僅かに掻いている。 俺からの痛烈な批判とでも思っただろうか。しかしその批判を、何故このような行為をなしつつ言い放つのかと理解に苦しむだろうか。 ならば俺は彼女にこう問いたい。――嫌いな相手をやんわりと追い詰め、いたぶるのに、全てにおいて論理的な思考は必要か?――と。 「――お戯れはお止め下さい!」 遂に、彼女が声を荒げた。と同時に、俺に弄ばれていた手を再び強く引こうとする。が、俺は相変わらず手首を強く掴んだ。相手の反応に合わせて掴む力を変える事は、普段の格闘訓練からして慣れている。 自分の行動が失敗に終わった事を悟った彼女は、再び何かを口走ろうとした。が、俺は優しく告げる。 「あまり騒ぐと外の人間に聴こえますよ」 効果は覿面だった。彼女ははっとした様子になり、そのまま口をつぐんだ。俺は満足し、ようやく姿勢を崩した。長々とこの女の前で跪いたままだったが、彼女の手を掴んだまま立ち上がる。同じ姿勢を保つ事は、軍人として訓練されているので苦痛ではなかった。 俺は空いている片手を胸に当て、やはり恭しく一礼した。微笑を浮かべたまま、彼女に言う。 「何せここはベイオウルフだ。あなたは勿論、私の旗艦でもない。お互いにとって、言わば領地外と申しましょうか。ミッターマイヤー艦隊の面々に、あまり気を使わせないように致しましょう。――ミッターマイヤーもいつここに戻ってくるとも知れませんし」 俺の台詞に、素直なまでに彼女は反応する。特にミッターマイヤーの名前には何らかの感情を動かされるらしい。 俺の旗艦であるトリスタンならば、旗艦内で起こった事が他人に知れたとしても緘口令を敷く事は容易い。少なくとも、俺が最高司令官である艦隊なのだから、俺の命令は絶対なのだ。 しかしここはミッターマイヤー艦隊の旗艦ベイオウルフだ。ミッターマイヤーと俺は同等の地位である上級大将だが、この艦隊の人間が俺の命令を無条件に効かなくてはならない義理はない。この艦隊で起こった事件の解決は、全てミッターマイヤーの裁量に任されるだろう。 そして、肝心な事だが、ミッターマイヤーは今この会議室を一旦退席しているに過ぎないのだ。彼が顔を出して同盟政府に勧告した以上、表向きの折衝は彼がやる事になってしまっているのだ。 勿論ローエングラム公一行がこのハイネセンに到着するまでは、不用意な約束事は出来ない。が、それでも窓口は必要となる。現在、その厄介な役目を押し付けられているのが、奴だ。 この秘書官の意見を聞き入れた上で、今は同盟政府の連中と「世間話」をやっている事だろう。しかし、その世間話が終わり次第、その結果を携えて奴はここに戻ってくるはずで…――。 「…それがお判りなら、このようなお戯れはお止め下さい」 彼女は、微かに声が震えていた。俺に対する精一杯の抵抗だろうか。しかし俺はその彼女を、鼻で笑った。それは嘲りにも似て――いや、もう取り繕う必要はない。これは、嘲りだ。
「フロイライン・マリーンドルフ。あなたは非常に明晰な女性だが、全ての事象を知り尽くしている訳ではないようだ」 彼女は俺の台詞を聞き、視線をやる。怪訝そうな瞳。そして、先程まで手を弄ばれた熱をまだいくらか残している瞳。俺は彼女に視線を合わせたまま、行動を一気に起こした。 掴んだままの手首を勢い良く背後のテーブルに押し付ける。彼女が座っていた椅子を軽く蹴ってずらし、向こうに追いやる。そして俺は彼女の上体に体を押し付け、圧し掛かった。 彼女の口から小さく悲鳴が上がるが、それはテーブルにふたりで倒れ込んだ衝撃で倒れた、テーブル上のコーヒーカップの鋭い音でかき消された。彼女もその衝撃音に耳を奪われたらしい。 ――この音で外に異常が伝わったなら?それに加えて、自分の叫びも混ぜていいものか? そんな事を考えたのだろうか。ともかく彼女はそれ以上叫びを上げる事をしなかった。 コーヒーカップの中にはもうコーヒーは存在していなかった。だから倒れても被害は皆無だった。 俺は皿の中で倒れたまま緩やかに左右に揺れているカップを片手で掴む。それをそのまま皿の上に置いた。置かれた際に鳴った音は、倒れた音に較べようもなく小さい。 彼女の片手首を掴み、上体同士を押し付ける格好になっている。まあ、普通の状況ではなかろう。誰かに見られたとして、言い逃れのしようがなかろう。 俺は彼女の顔に、自分の顔を近づける。そして、言葉を続けた。 「あなたはこれを戯れと仰る。そして戯れなら止めろとも仰った。そうですな?」 「…はい。ですから――」 小さな声で尚も、彼女は俺に思いとどまらせようとしているらしい。が、俺は彼女のか細い抵抗を断定口調で遮った。 「だからあなたは判っていないのだ」 整った顔がそこにある。美しい色をした瞳や、形をした唇が目の前にある。自分と同じく軍服を纏ったその合間から垣間見れる首筋は、軍人とは明らかに違うまでに細い。 そして密着した上体には、男を組み伏せた時には感じようのない柔らかな感触が、厚い軍服越しに伝わる。 「どうしても肉体的に苦痛を伴う女と違い、男はそんなものを一切感じない。単に快楽を追い求めるだけだ。 ――明晰なフロイライン。後学のためにも覚えておきなさい。男という生き物は、気紛れや戯れのみで、相手の意思など関係なく、女を抱く事が出来るのですよ」
俺がそう教えてやった後の彼女の表情は、見物だった。おそらく俺は暫く忘れる事は出来ないだろう。 驚愕と、怒りと、諦めと――色々な感情がない交ぜになっているのであろう、何とも言えない顔だった。そして、美しい顔と言うものは、どのような感情を発露しようが、美しいままなのだなとも俺は学んだ。 その顔を楽しみつつ、俺は自分の顔を彼女に近づけていく。彼女の見開かれた瞳に、自分の顔が映っている。――ああ、非常に嫌な、いい笑顔だ。我ながら、そう思う。何かに満足した表情がそこにあった。 硬直したままの彼女の顔に最接近する。息だけをしている、半開きの口元がそこにある。 ふと、はっとしたように、彼女は顔を背けようとした。 しかし俺はそれを許さなかった。 圧し掛かった俺は、彼女の唇を表面上は優しく奪った。
129 :
名無しさん@ピンキー :2005/08/09(火) 15:22:08 ID:DqmaUK/R
色目エチクサー(・∀・)!! 文章もロイらしく冷静で回りくどくてイイ! 続き楽しみに待ってるよ!
ただいま竜王前世編をまたまた書いているのですが、 一応エロはあるのですが少ないし なによりそこに到達するまでが長くて…orz それでも良い、と言ってくれるのであれば後日投下させていただきます。
>131 (0゜・∀・)ワクワクテカテカ
>131 是非!!
OK、全裸で待ってる。
135 :
古代竜王篇 :2005/08/18(木) 19:31:01 ID:29MDpe1u
色目リョウジョーク編を思いっきりぶった切りにしてしまいますので、作者の方、まことに申し訳ありません。 さて、投下開始します。 本当に長いので、数回に分けていきますので、よろしく。
136 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:31:46 ID:29MDpe1u
総力戦であれば、竜種の矜持と実力であれば十分以上に勝算はあったのだが 牛種は卑怯にも玉帝の御名を持ち出してきては竜種との衝突から姑息に身をかわし続けた。 牛種からの伝であっても玉帝の詔として出されたものを臣下である自分が堂々蹴り飛ばして良い 道理はないのだ。青竜王自身の忠心が仇となったわけである。牛種は、竜種の急所をよく掴んでいたといえよう。 全面対決を姑息に避けつつ、さらに牛種は竜種の神経をやすりで逆撫でするかのようにしつこく 小悪党を刺客として竜王達へ差し向け続けていた。 竜王一族も、牛種の真の目的は既に見抜いていたので、まとわり付く小バエの様な不快さにもじっと耐えていた。 ここで牛種の挑発に少しでも憤激して見せれば、それはそのまま牛種どもの言う「正当」に血肉を与えてしまう事に なってしまうからだ。 彼らは耐えた。さらに耐えた。実によく耐えた。 それでも再三、長兄にたいして弟達は提案…というか要は牛種を徹底的に叩きのめすよう説得…というか 率直な思いを訴えてきたのであるが、玉帝への忠心も一応あるが、なにより一族の長が決めたことである。 弟達は長兄の律儀さを歯がゆく思いながらも、彼らは兄が勇躍起つ時がくることを信じ心待ちにしていた。 そんな弟らの想いが通じたか青竜王の決意が固まったか、もう十何回目かも知らぬ牛種の雑魚を片付けた後、 青竜王は水晶宮の、星々のきらめきが玻璃の天窓から降り注ぐ広間へ皆を集めてこう言った。 「牛種らは玉帝の威光を分厚い隠れ蓑にしたまま、長期戦で我らを締め上げるつもりのようだ」 「……」 そんなの分かりきってることじゃないか、と弟達の目には落胆(ガッカリ)の気配が濃厚に漂っている。 白竜王は不満げな気を紛らわすためだろうか、カゴに盛られた菓子を次々に頬張っている。 そんな弟を半ば呆れて見ながらも、紅竜王たてやり場のない怒りは弟とまったく同じである。 「だが、牛種も焦りが出始めたのであろう、刺客の格も数も増える一方だ。つまり…」 青竜王は卓子(テーブル)に置いた手を組み直した。 「ここは牛種どもとの戦いの場としては、いささか手狭になってきている。水晶宮を出ることにしよう」 爆弾が卓子の中央に投げ込まれ静かに炸裂した。 だがその衝撃はこれまで窮屈に押し込められてきた狭い檻を吹き飛ばすには十分な威力であり 身体は卓子の前にありながら、すでに彼らの精神は高らかに天空へと飛翔していた。
137 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:35:25 ID:29MDpe1u
いきなり失敗しました orz orz orz 最初にこの一文を入れて補完してください 「―玉帝の在所が不明のまま、竜種は逆賊だと一方的に決め付け謀略で貶めてきた牛種。」 気を取り直して、続行。
138 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:36:32 ID:29MDpe1u
「さて、水晶宮を出るとなりますと、牛種の本拠地に攻撃ですね?」 「まあ待て、まずは玉帝の所在を突き止めてからだ」 「ということは、玉帝が見つかれば思いっきり暴れられるってことだ!」 「そこまでは言ってない」 「玉帝のいらっしゃる場所ってどうやって探し出すの?天界の誰も存じてないというのに」 「ばっかだなー簡単だよ。そんなの牛種を片っ端から締め上げて言わせりゃいいんだよ」 「そんな、行き当たりばったりで単純な作戦を兄さんが考えてるわけありませんよ。 …え?」 なんとも形容しがたい面相をした青竜王の姿を、紅竜王はそこに発見することになった。 嬉々として旅の支度に早速取り掛かっている下の二人は、それには気づいていなかったが。 「また戻ってきます」 縁起を担ぐわけでもなく、住まいへ頭を下げた末弟に皆も自然に頭を下げ、水晶宮を後にした。 「牛種の出方を待つ。となれば、一番効率いいのはどこでしょうね?」 「やつらの事だ、身が隠せる場所が多い所、罠を豊富に仕掛けることができる場所…」 「天空じゃ、隠れる場所なくて姿が丸見えだものね」 「人界か!」 「そう、牛種が玉帝を拉致奉り、…それ以上に何を企んでいるのかはハッキリしないが 天界で玉帝の所在を知るものが居ないということは地に居られる可能性は高いと見ていいだろう」 四人は牛種に見せ付けるため、あえて竜の姿になり人界へと降りていった。 人型に戻って簡素で身軽な服装に着替えた時には、すでに夕刻であった。山の端ににじむ陽の光は 天界では見られないものだ。青竜王は詩歌に詠われた風景を思い出し、佇んでいると 「兄貴、ぼーっとしてないの。それはそうと、戦の前の準備となったら♪」 せっかくの詩情は宙に掻き消えてしまい、やれやれ、と青竜王は溜息をついてみせた。 「分かってるよ。もう人家からも夕餉の煙が上がっている、ここで野営をはることにしよう」 水晶宮から持ち出した食料で簡単に食事を済ませ、けれども皆で額を寄せ合って食べる楽しみは なによりのご馳走で、一時期人質として幽閉されていた黒竜王はこの思いもかけない状況に 夢ではないかしらとしばし思い、手が止まった弟を見て食事はもういいのかと親切に残りを 引き受けようとして拳固を食らった者あり、その騒動を涼しくやりすごして皆のため 器用に茶を汲み分ける者ありと、まことに賑々しく人界での初日は幕を閉じたのであった。
139 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:38:00 ID:29MDpe1u
そのまま、牛種の襲撃はやって来ず、事件も起こらず一月が過ぎた。 ある程度持久戦になるのは覚悟していたことだが、こうまで期間が開くとやはり緊張が薄れてしまう。 なにより水晶宮から持ち出した食料が底を尽いてしまった。襲撃は人界に降りた直後からくると 思っていたので、そう大量に用意をしてこなかったのだ。 宝貝はあるのだが、無機物から有機物をとりだすことはかなわず、つまりどうしているかというと 天下の竜王達は山で小動物の皮をはぎ川で釣りをし、人里で多少の労働をしては現物支給してもらうという ある意味、牛種の小ざかしい襲撃以上のわずらわしさと向き合わねばならない羽目となっていたのである。 「今日も串刺しの魚とトウモロコシ団子、かあ。腹には溜まるけどなんか、こう味気がないっていうかさあ」 「塩ならまだまだ十分残ってるよ」 「んー、そうじゃないんだな。まだお前にはわからないんだなあ」 「湯(スープ)の出汁用にと取っておいた金華火腿を、オヤツ代わりだと全部食べたのは誰でしたっけ?」 「調味料として使うとは知らなかったんだよー。もう俺、間違って食べたりしない!大丈夫」 「食べる前に知っておいて欲しかったことですね」 「ま、だいぶ俺も仕掛けの罠作り上手くなったから明日は期待しててよ」 「どうだか」 「本当だよ、今日の魚を取る仕掛け籠作ったんだよ、それも村の人に褒められたんだから!」 「食べられる野草を丁寧に見つけられる貴君だって十分褒めるに値してますよ」 「なにそのずいぶんと優しい笑顔、立場は同じ弟なのに態度が全然違う、差別だ!」 「だまらっしゃい」 弟達が伸び伸び闊達なのは兄としても嬉しいが、だが、現在の状況は何時来るとも知れない 牛種の襲撃を受けて立ち、玉帝の所在を突き止め天にお戻しするという重大な使命の最中なのである。 (早く襲ってきてくれんかなー) などと青竜王には珍しく危険なことを思っていたとき、白竜王が突然棒立ちになった。 目はうつろ、口元はうっとりとゆるんでしまっている。 「…呼ばれてる。これは俺を呼んでいる。ぜひにも俺をと呼んでいる〜〜〜!」 白竜王はそんなことを口走りながら目の前から走り去っていった。 (俺たちを分断するための妖術か!?牛種、ついにきたか!) 香ばしい、実に美味しそうな匂が他の三人もようやく気づいた。 (これは!しまった!この状況を作るために牛種は兵糧攻めを!?いやまさか) 膠着状態を脱出できそうなのはありがたいが、かといって弟の暴走は止めねばならない。 青竜王は猛然と白竜王の後を追った。 香ばしい匂いはしだいに強くなってくる。松明でも焚かれているのか明度も増していく。 「!」 焚き火の脇にうずくまっている白竜王が見えた。肩が震え、上下に動いている。 とっさに木の陰に隠れさらに様子を伺うと焚き火の炎の陰に細い影が見えた。 呼吸を整え、青竜王は一気に焚き火の前に躍り出たがそこで急停止してしまった。
140 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:39:05 ID:29MDpe1u
まだまだありますわ。そんなに急いで来て、どうなさったの?」 玉じゃくしを手に花が開くような笑顔をその影は投げかけてきた。 「??!!」 「旨い、旨いよ太真王夫人!あー生き返るううう」 「なんで、貴女が、ここに?そして何を?」 「見ての通り、肉団子汁です。お口に合えば良いのですが、どうぞ。 なぜ居るのかというのは竜王家が人界で不自由無きようにと母の言いつけで参りました」 温かい碗を手に持ちながら、青竜王はいまだ目の前の人を信じられぬ思いで見つめていた。 牛種の謀略に陥る前から天界公認の恋仲である、西王母の末娘、大真王夫人その人を。 背後で足音が聞こえ、残りの二人が来た事を彼らに気づかせた。 「あ、大真王夫人、こんばんは」 「こんばんは、黒竜王。さあ、召し上がれ」 「太真王夫人…そうですか。崑崙の配慮、痛み入ります」 「ええ、崑崙は中立の位置ですから竜王様方には公然と肩入れできませんけど、私一人ぐらい応援しても 中立の天秤が大幅に傾く事なんてことはありませんわ」 「いずれ人界に降りていらっしゃるだろうと予想していましたが、早かったですね」 (貴女ならどんな状況であっても兄の元へ駆けてくるんでしょうね…) 四人としても“調理”された料理を口にするのは久しぶりなので、しばし太真王夫人の手料理に没頭した。 鉄鍋一杯の肉汁は食べつくされ、最期に放り込んだ米飯などは猫が皿を舐める以上にさらわれた。 「ここまで気持ちよく食べてもらえると料理人冥利に尽きますわ。ありがとうね」 「ううん。本当に本当に美味しかったよ!こちらこそ、ありがとうございます」 「果物もあるわ。でもこれきりなの。あとは干し果物になってしまうけどね」 「その食料袋、私が持っていきましょう。また困る事態になりかねませんからね」 「チェッ信用ないのな」 「前科者がなにを言っているのです」 「貴女が泊まるところを作りたいのだが、やはり一つ寝所じゃまずい。外套があるから 俺はそれに包まって一人外で寝るよ」 この非常時になに固い事言ってるんだ、と残りの者は長兄の融通の利かなさに呆れたが 「私も道具を用意して来ています。竜王様を外でなんか寝かせられませんわ」 結局、彼女の天幕は青竜王が使うことにし、安全のため彼女は大きな天幕側で休むことになった。 太真王夫人が一行に合流したことで、彼らの食糧事情は格段に向上した。 獲物を捕ってくるだけで良くなった白竜王などは喜色満面である。 いささか綻びた服の修繕も、簡素だが調えられた食卓と生活面が潤っていくにつれ 最初は彼女に恐縮していた皆も、彼女からの希望もあったのだが、遠慮なく物を言い合える 親しい仲へと変わっていった。それは彼女太真王夫人にとって嬉しいことであったし、長兄を除いて皆、 来る将来を先取りしたかのような状況に心が浮かれぬわけがなかった。 だが全員の心は一つ、離れるようなことは一切なかった。 「はやくこの宿題に片をつけなければならない」
141 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:41:49 ID:29MDpe1u
彼ら一行のささやかで、けれども賑やかな夕食後の一時、ようやく事件は訪れた。 生薬の心得もある太真王夫人の力作の、印度風肉汁に兄弟は感嘆賞賛の声を上げ 常以上の速さで鍋は空けられていった。 その後、太真王夫人はこれまた村人から分けてもらった乳で干し杏を煮固めたものを泉から 取り出しに出かけ、長兄は彼女夫人の警護。残りは火の端で満足しきった表情で休んでいた。 白竜王は先ほどの料理がいたく気に入った様子で、平らげた直後なのにもかかわらず しきりに「次はいつ作ってくれるのかなー、毎日これでも大歓迎だよ」などと 頬が緩みきった実にしまりのない顔である。 いつまでもそんな極楽郷に遊ばせてたまるかと牛種が思ったのかどうか、焚き火の火が 突然に立ち消えた。さきほどまで寛いでいた三人ではあるが、やはり最強の竜一族である。 危険の火が神経の端に点った瞬間、すでに迎撃体制を整え終わっていた。
142 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:42:41 ID:29MDpe1u
「まったく菓子の後に来れば良いってのに行儀をわきまえないやつらだ」 「ここはしっかりと礼儀をたたきこんでおかねばなりませんね」 言い方は穏やかであるが、紅竜王の全身から立ち上る気迫は鋭い。 救いなのはここに太真王夫人が居ないこと。彼女に武術の心得があるのは皆知っているが やはり将来の義姉さんになる人にはなるべく危険から遠ざかっていて欲しかった。 「太真王夫人は兄さんがいるから安全でしょう。むしろ心配なのがこっちに一人」 「そんなこと面と向かって言うなよな、黒竜王は繊細なんだから」 「あなたのことじゃないんですけどね」 そのセリフが三男の耳に届くより先に、黒い獰猛な影が三人の前に躍り出た。 そいつは無言のまま、大きく両手を振りかぶった。 と、最初の緩慢な動作とは裏腹に空を切る勢いで両手が振り下ろされた。 敏捷に飛び退った三人だが、爪は地面を深くえぐり撒き散らされた土が周囲に飛び散った。 「あ、俺最初ね」 「ああ!だからその無鉄砲さが心配だってあれほど」 「頑張って!兄さん!」 弟の声援だけを耳に入れた白竜王は高く飛ぶと木の枝に手をかけ回転した勢いでそのまま 敵の顔面に飛び蹴りをお見舞いしようとした。彼の計算で行けばその痛烈な一撃で敵は もんどりうって倒れるはずであった…はずであったというのはその敵は白竜王の急襲を 待っていたかのように彼の足首を掴み高々と持ち上げて見せたのだ。 「…だから言わんこっちゃない」 「へへ、面目ない」 「呑気に言ってる場合じゃないでしょうが!」 さすがに白竜王も(こりゃしくじった)と反省していたが、片足ならともかく両足首では いささか動きづらい。上体を跳ね上げて敵の顔面に拳を食らわそうかと力を溜めたとき 「ウ?ギャ!アア」 いつの間にか敵の後手に回っていた黒竜王が抜いた切っ先で敵の足の腱を寸断していた。 「謝謝!太真王夫人特製の冷菓子、半分分けてやるよ!」 「恩に対してずいぶんお礼が少ないですね。少なくとも一週間は全部を渡しなさい」 「そんな殺生な〜」 「大丈夫だよ。半分ずつで僕、それでいいから」 「甘やかしは人格の向上を妨げるんですよ、いけません」 とかなんとか軽口を叩きながらも三人の連携で包囲網を狭め、とうとう紅竜王の一戟で 敵の頭部は肩から切り落とされた。復活を防ぐために頭部は窪みに埋め、更に背の丈ほどの 石でしっかりと抑えつけた頃、長兄と太真王夫人が竹篭を手に皆の下へ戻ってきた。 長兄はピクリと眉を跳ね上げたが、三人が無傷なのを見ると緊張の顔を緩めた。 太真王夫人にいたっては三人が勝つのは自明のこと、とばかりにいつもどおりの態度で 「お待たせしたわね。でも、その前に手と顔を洗ってきなさいな」 兄弟は素直に彼女に従った。 果たして冷菓子は六皿分あったので、今日の殊勲者である黒竜王が二つ貰うことになり、 白竜王は敵に捕まるより怖い菓子抜きの刑を無事、免れられた。
143 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 19:59:56 ID:29MDpe1u
多少時は前後して、こちらは泉に向かった二人の道中。 夜の森、人目は無し、それなのに二人は手をつなぐことも無く肩を並べ歩いていた。 それでも、崑崙にいるときには考えられないほどの近さである。 (この状況の中じゃ不謹慎なんだろうけども、嬉しい) 寝起きの顔から、就寝のあいさつまで同じ時を過ごせる今の状態が嬉しくないはずがない。 なんといっても彼女はまだ歳若いのだから。一方で、彼女は自分の立場を弁えていた。 (私は崑崙からの派遣、という理由で来た身。万が一にでも青竜王様の顔に泥を塗るような “人界に愛妾を連れて遊んでいる”などと、触れ回られるわけには絶対、いかないわ) 西王母、そして姉妹からも同じような言葉で送り出されてきた。だが、その後に続くのが 「身の危険は自分で守れるでしょ?だから危なくなったら帰って来いなんて言わないわ。 寂しいとか、辛いとか、そんな安い言葉で青竜王様の気を惹く方がおしまいよ。 そういうさもしい女に成り下がりそうになったら、彼から離れてこっちに戻りなさい」 そんなこと言わないわ、と姉妹に宣言して出てきたが、その機会はまったく訪れなさそうだ。 現に、長身である彼の歩く速度は彼女に合わせて緩められている。 ぬめった地面では肩を貸してくれている。これで寂しいなどと思うわけがなかった。
144 :
竜王古代篇 :2005/08/18(木) 20:00:56 ID:29MDpe1u
青竜王の内心もまた、愛しい女性との擬似新婚暮らしに喜んでいるだけではなかった。 いくら濡れ衣とは言っても、やはり天界から追われている身なのだ。 それに比べ、太真王夫人はまだ西王母の娘としてかばわれる余地がある。 (いつ、西王母様の元へお返したらよいのだろうか) 感心なことに、そんなことを言ったら彼女が悲しい顔をするだろうと察する心はあった。 太真王夫人と別れる、という選択を青竜王は最初から思い浮かべもしなかった。 このまま手放した挙句、よその男に嫁がれてしまった日にはとうてい立ち直れないだろうことは 自覚していたが、これをどう彼女に説明したものだが、青竜王自身には分からないでいた。 (いつ晴れるかも分からない疑惑が解けるまで、ずっと待っていてくれないか…なんて いくらなんでも身勝手すぎるだろう。ましてや西王母様にいらぬ心労をお掛けしてしまう) 相手の状況は思いやれるくせに、相手の心情にはまったく鈍い二人を半月が静かに照らしていた。 泉に着くと、牛乳羹はほどよく冷やされ良い按配である。 容器を入れた竹篭を泉から引き上げて持つと 「そんな青竜王様、それぐらい自分で持てます」 「いいから俺に持たせて。貴女が来てくれた事に比べたらささやか過ぎるお返しだけど」 青竜王が歩き始めると、ふいに手から籠の重みが半減された。 「これなら、いいわ」 籠の持ち手を握る手に、蜜のようになめらかな感触が伝わってくる。 今が夜で助かった、と青竜王は安堵した。耳が熱くなっているのが自分でも分かる。 おそらく、顔も相当染まっていることだろう。 太真王夫人は手が除けられないことが嬉しかった。青竜王の手が熱いのを知ると 彼女の胸には彼への愛しさが満ち溢れた。今、歩くこの時だけは、どうか… そうして、先ほどの事件の直後に戻ってきたのである。
楽しい!! 楽しいし嬉しいよー。 続き楽しみに待ってます。
色目令嬢リョウジョークの中の人です。 いえ、他の方々、SS投下でも萌え会話でも存分にぶった切ってください。 どうぞどうぞお気になさらずに。 竜王古代編、可愛いよほのぼのしてるよ純愛だよ。 続きが楽しみです。
147 :
竜王古代篇 :2005/08/19(金) 23:16:23 ID:XXrsLofw
どうもリョウジョークの中の人、寛大なお心感謝いたします。 今日のを含め、あと三回投下します。 それでは。
148 :
竜王古代篇 :2005/08/19(金) 23:17:00 ID:XXrsLofw
それからは平穏無事な最初の一月が嘘のように牛種は次々に襲ってきた。 衆目がある天界を離れたらこっちのものとばかりに、えげつないほどのやり口である。 太真王夫人も愛剣の飛燕双を手に、時には兄弟の危機を救うことさえあった。 崑崙にいたころは、絹や宝玉に飾られた優美な衣をまとい、仕草は優しげ、と まさに深窓のお嬢様であった彼女だが、人界に降りてきてからはもともとの美しい顔立ちに 生気が満ち溢れ、内側から光輝くようである。動作は鳥が身を翻すかのように身軽、 碁を優雅に打っていた細い指は包丁を操る手へと変わったが変わらず白く綺麗で、 青竜王は、崑崙の彼女よりも人界での彼女こそが本来なのではと思うこと度々であった。 彼自身は真面目に太真王夫人の考察をしているつもりなのであるが、三兄弟から見れば 兄は美しい彼女に目を奪われ気を抜かれている様子にしか見えないこと度々であった。
149 :
竜王古代篇 :2005/08/19(金) 23:17:42 ID:XXrsLofw
太真王夫人の食事の支度を手伝い、小刀で芋を削っていた青竜王の手が止まっていたので 率先して引き受けた薪割りをせっせとこなしていた白竜王がからかい半分、 「兄貴、今度は何“難しいことを”を考えてるんだい?」 いつもであれば、その瞬間慌てて表情を整えるのが面白いのだが、今回は違い 「ああ、そろそろ場所を移動しようかと思ってな」 「え?いい場所じゃんかここ。食料は豊富だし泉は近いし申し分ないところだぜ」 「お前…俺たちが人界に降りてきた理由はなんだ?」 「えーっと…ちょ、タンマタンマ!覚えてるってば。牛種を徹底的にやっつけるため!」 「まだ足りないな。玉帝不明の情報を集める為だ。だがここで待っているだけでは勝手が悪い」 「そうですね、いくら敵が強くともそもそもが格下、手下の類ばっかりで何もつかめてませんからね」 「玉帝様のことが、天界にも漏れてないのだから…牛種の方も、知ってる人を限っているのかしら」 「そう。黒竜王は実に聡いな。でだ、玉帝を隠すのに不自然でないところといえばどこだろう?」 「いくら三千年を閲してるとはいえ、あの威光はただものじゃありませんよ」 「ああ、たとえ牛種に記憶を封鎖されていたとしても、あれは隠しきれるものではない」 「そこいらの街や村じゃ、周りの人にびっくりされちまうわな」 「木は森に隠し持て…つまり、同じような身分の人が集まるところかしら…宮廷?!でも、まさか」 「まさか、とは俺も思ったがかといって牢獄のようなところに置かれてらっしゃるとは思えない。 牛種にとって、玉帝を手のうちに置いているという事が唯一最高の切り札だ。不逞な事を言ってしまうが 万が一の事態が起きた時点で、牛種には何の根拠も無くなる。さらに全天から逆賊として 滅殺される運命になる以上、この唯一にして最大の手札を損なう失策は犯さないだろう」 「いやーそろそろこの牧歌的生活にもマンネリを感じていたんだよな。都かー楽しみだな」 「さっきまで田舎暮らしを絶賛していた人を引き離すのは、こちらとしても心苦しいですから ずっとここに住んでなさいね、天幕とか道具は置いていきますから大丈夫でしょう」 「都のお土産、何がいい?」 「黒竜王、お前まで!」 「はい、兄弟漫才はそこまでよ。さあ身の回りのものを片しましょう。自然を使わせてもらったのだから 以前よりもきれいに整えていきましょうね」 皆で竈を崩し、道具を纏め、穴は埋め戻し、旅立つ用意は整った。 「おやすみなさい」 「おやすみ」
150 :
竜王古代篇 :2005/08/19(金) 23:18:14 ID:XXrsLofw
―襲撃は夜半に起きた。 小用に起きた末弟は事後、後頭部の髪がざわつくのを感じていた。 年少であっても、戦いの経験を何度も積んだせいか感覚はすでに一流の武将のものである。 何気ない風を装い、天幕へ戻るとすでに他の三人も手元にそれぞれの愛剣を引き寄せていた。 ざわり、と木がぞよめく。ひたりと冷気が天幕に忍び込んできたが、まだ敵は遠い。 剣の柄に手をやり、石火で抜けるように中腰でかまえ、敵が近づくのをじっと待つ。 突然天幕が引き裂かれ、唸り声と共に敵の姿が目の前に現われた。 先手必勝と両翼から白竜王と紅竜王が居合いの声とともに切りかかる。 手ごたえがあり、地面にゴトリと二つ音がした。 「「音が二つ?!」」 見ると地面には牙をむき出しにした牛の首が二つ転がっている。まだ敵は立ち続けている。 「なんと、三面のバケモノか!」 気づいたものの、すでに二人は敵の背後に回ってしまった後である。 敵の正面に立つのは太真王夫人と、黒竜王だけである。 「お前ら、そこをどけ!」 意外な敵の容貌に呆然としていた二人は兄の一喝にすぐさま横に飛んだ。 ビュオッ 人間なら大の大人5人でも弓を引くことが敵わない強弓を引き絞り青竜王は矢を放った。 だが、焦りのせいだろう怪物の頭頂には刺さらず、肩を射抜いただけであった。 自分でも思わず動揺したところに 「青竜王様!これを!」 手に飛び込んできたものを見れば呪を彫りこんだ六角の聖杖である。 「玉傘聖呪か!」 これが投げられたという事は彼女は無事なのか、それよりも急を争う。 見ると怪物の切断された箇所からは新たな首がウネウネと再生されつつある。 怪物の前後を挟み二人で朗々と呪文を読みあげる。 首の再生が遅くなり、怪物の身体は絡め取られたかのように鈍重になってきた。 「はっ!」 怪物の頭がガックリ下がったところに、脳天に黒竜王の剣が深々と突きたてられる。 剣先にはすでに護符を刺してある。脳内から聖呪を打ち込まれた怪物は膝から崩れ落ちた。 青竜王は聖杖を心臓の真裏から突き立て、怪物の息の根を止めると二人の無事を確かめに走った。 「あんなに焦った顔の兄貴、初めて見た…」 「…そろそろ、魔境に足を踏み入れたということですかね」
151 :
竜王古代篇 :2005/08/19(金) 23:19:09 ID:XXrsLofw
顔に泥汚れが付いているだけで黒竜王は無事であったが、太真王夫人は足に一筋の切り傷を負っていた。 「敵にじゃないわよ、避けた時、木の根に引っ掛けてしまっただけだから」 けれども白く細い足に一筋の血の跡を見てしまった青竜王は落ち着いてはいられない。 うかつにも今更思い出したことだが、彼女は竜種とは違い、鱗を持たない生身の肌なのだ。 「だが、そうは言ってくれても、まだ貴女は崑崙に属している御身なのだから」 「つまり、崑崙に帰ったほうが良いってことかしら?」 青竜王だってこれまでの数々の恩を彼女から受けておきながらこのまま追い返すつもりは毛頭無い。 この数ヶ月の生活を青竜王こそ心底愛しく思っていたのだから。髪一筋ほども危険な目に合って欲しくない。 それなら自分の手元に置いておけばいい、けれどもこれからは牛種の権謀渦巻く宮廷に入っていくのだ。 巧みに彼女と引き離される危険は非常に大きい。ならば崑崙で待っててくれたならどれほど安心か。 太真王夫人だって、きっと分かってくれる。 そして彼女にとってくやしいことに、そういう青竜王の気持ちをまた心から理解できてしまうのである。 せっかくの美男美女でありながらこれ以上に無い不器用さの二人の恋をずっと見てきた兄弟も この状況を良く分かっていた。三兄弟自身、太真王夫人とここで別れたくはなかった。 けれども、いつまでも深刻に浸りきれないのがこの兄弟の美点である。 「太真王夫人が帰ったら、また砂をかむような日々に逆戻りか〜。でも行き先は都だから何とかなるか!」 「ここでお別れになるのは寂しいですけど、すぐに兄が迎えに行くでしょうから待っててやってください」 「都で食べた料理を覚えて帰るから、またきっと、美味しい料理を作ってよね」 「別れを惜しむ前にまず手当てだ、ちょっと太真王夫人を連れて出かけてくる」
152 :
竜王古代篇 :2005/08/19(金) 23:22:25 ID:XXrsLofw
「…たしか、このあたりだと覚えていたのだが」 そんなたいした怪我じゃないから歩けると主張する太真王夫人を 「いいから、俺に甘えておきなさい」 と彼女を背中に背負った青竜王は以前崖上から見かけた湧泉を探して歩き回っていた。 足元を猿の親子がすり抜け、煙のように消えた。「?」と思うと木に幾重にも絡みついたツタから 下りていったようである。湯気の匂いが気流に昇ってやってくる。「ここか」 「降りるよ。しっかりつかまっていて」 降りて周囲を見ると、こんこんと湧き出る熱水に、主流をそれた滝からの冷水が注ぎ込んでいる。 湯の中には乳房の傷ついた母猿、足を挫いた鹿など、ここは動物の湯治に使われている温泉らしい。 服が裂け、傷が覗いている肌をたっぷりの湯で洗い流し、湯の薬効か化膿は避けられそうである。 「よし、これで…」 と振り返ると、太真王夫人は湯面に目を吸い寄せられたままだ。 ああ、と青竜王は合点がいった。これまでの生活には何も不満は言わなかった彼女だが、風呂だけは やはりどうにもできず、身体を拭くだけとなっていたのだ。女性ならこの湯を使いたいのも当然であろう。 「どうぞ、入っておいで。俺は上で待っているから、終わったら声をかけてくれたらいい」 「…青竜王様は入っていかれないのですか?」 湯気に当てられただけではない赤みが彼の頬に差した。 「いや、そんな気持ちは本当に、その、ありがたいけど、しかし」 「ごめんなさい!こんなこと言ってしまうのははしたないと思うのだけど、でも…」 青竜王の喉は干上がり、耳元では大きく音が鳴る。 「背負ってもらったとき、ちょっと…どうかなって。あっ、ううん気にしないで!」 彼は完全に赤面した。
ああ…何かのたうちまわりたい… 凄え萌えるよ…
154 :
竜王古代篇 :2005/08/21(日) 21:57:45 ID:kXEna/9M
さて、と青竜王はこの状況をどうするかと素早く頭を廻らせた。 ああ言われているのに太真王夫人の勧めを頑なに拒むのも不自然であるし、なにより女性に ここまで言わせてしまった以上はそれに乗るというのが責任の取り方というものであろう。 それに、そもそも(客観的にはどう見えていようとも)彼女と自分は恋仲という状況なのだ。 “一緒に湯浴みをする”ぐらい、そういう仲なら普通に起こりえる。きっとそうに違いない。 (…であるから、ここは一緒に湯を使うというのが正しい振る舞いであるはずだ) ややもすると膨らむ煩悩を無理無理に抑えつけ、青竜王は道着を脱ぎ下穿きに手をかけた。 (言わないほうが良かったかしら…)と太真王夫人は思ったが、口に出した以上取り消しは効かぬ。 はたして青竜王がくるりと後ろを向いたので、(見ないようにしてくれたのね)と思い帯を緩め袖を抜き 湯の方を振り返ったところ、今度は太真王夫人の心臓が跳ね上がる番となった。 無駄なく筋肉がついた男らしい広い背から続く引き締まった腰、形良く腱が発達した長い脚と 自分でも一瞬のうちによくもと思ったが、青竜王の後ろ裸身をしかと見てしまったのだった。 衣の前をかき合わせその場にしゃがみこんでしまったが、いつまでもそうしていられるわけはない。 (まさか、さっきのセリフをそういう意味で取られるなんて…) 背後でザブリと湯の音がする。 (し、しっかりなさい!ここまできて逃げ出したら青竜王様に恥をかかせることになるわよ?) わずかな時間で肚を決めた太真王夫人は立ち上がるとスルリ、と衣を地に落とした。
155 :
竜王古代篇 :2005/08/21(日) 22:04:45 ID:kXEna/9M
先に湯に入った青竜王は、天に見事な満月があるのを見つけていた。しかも夜風は涼しく、 今の状況をどうかするとそのまま忘れてしまいそうである。 背後で、パシャンと小さな音がした。 油が切れた機械のようにぎくしゃくと後ろを振り返ると、湯着というのか薄い一重を身体に巻きつけた 太真王夫人の姿が見えた。 「そっちにいって、良い?」 まったくの素裸ではないこと、そして湯も多少濁っていることに安心を覚えた青竜王は 「どうぞ、こちらは視界が開けてて本当良い景色だよ」 とはいえ、まだ相手を直視する勇気が出ない二人は、背中合わせに湯に浸かっていた。 滑らかな湯の感触に、先ほどの襲撃で夫人を失うかもしれないと恐怖した心も溶け出していく。 やはり、太真王夫人には安全な場所に居てもらいたい。そして… 「そして、…なに?」 いつの間にやら口に出して言っていたらしい。まあ、ここまできたら本心を隠すこともなかろう。 「太真王夫人には崑崙で、俺たちがこの戦いに勝利して帰ってくるまで待っていてもらいたい。 その暁にはきっと西王母にご挨拶に伺うから。だから、俺たちを信じて待っていて欲しい」 そう青竜王が言い切った後、しばらく沈黙が満ちた。 (やはり、これは俺の身勝手な気持ちであったか…けれど本心は伝えきれた。思い残すことは無い) 「…何年でも、たとえ何千年だろうと、待つなといっても私は待ってるわ。私に好かれたからにはそれぐらい覚悟なさい」 冗談めかしてはいるが、彼女の真心が約束された返事である。にもかかわらず、青竜王はしょうもないことに 「ありがとう」 と一言返すのが、まったくの彼の精一杯であった。 ふと、底についていた手に太真王夫人の手がそっと重ねられた。瞬間、青竜王の身体に電撃が走った。 跳ねた手に驚いた彼女はハッと立ち上がろうとしたが青竜王はその手を離さず、そのまま己の内に抱きしめた。 湯着があるとはいえ、濡れた薄い布越しに感じる甘い香りと細い腰、白いうなじに張り付いた髪の悩ましさ。 これまで近くに居ながら敢えて意識から外していた分、その衝動は倍となって青竜王を突き飛ばした。 「…苦しいわ、青竜王様」 腕を緩め太真王夫人の顔を見れば、水の玉が髪を飾り、上気してつややかな頬、肌に吸い付いて透けた布 そのすべてが青竜王をどうしようもなく駆り立てる。だが鋼鉄の自制心が彼をギリギリ足止めさせていた。 彼女を怯えさせていないだろうか、それが気がかりで彼女の様子を伺うと、逆に覗き込まれた。 「天界から離れて久しいというのに、まだ眉間に皺寄せる癖が抜けてないのね」 可笑しくてたまらないといったふうに笑って、太真王夫人は青竜王の眉間をそっと指で撫でた。 先ほどまでの彼の悲壮さは彼女の笑顔ですっかり洗い流され、幸せな恋人達だけがそこに残った。
156 :
竜王古代篇 :2005/08/21(日) 22:05:20 ID:kXEna/9M
もう一度抱きしめなおすと太真王夫人も彼の背中に手を回し、見つめ合えば愛しさに満ちた視線がぶつかり ついばむような軽い口付けをくりかえす。彼女を湯から抱き上げると、軽くはだけた湯着の谷間に 水滴が流れ落ちた。 湯ですべらかになっている平らな岩に太真王夫人をそっと横たえさせ、肌に張り付いた薄絹をすっかり剥くと 内側から発光しているかのような美しい肌が現れ、青竜王の意識は急激に一箇所に絡め取られた。 体重を掛けないよう太真王夫人に覆いかぶさり、いつの間にやら伸びた彼女の髪をかき上げ、うなじに そっと口をつけると、彼女のしなやかな体は若鮎のように跳ねた。 腰を抱き、これ以上ないほどに身体を近づけ、割り開いた唇から舌を差し入れる。 額が触れるほどの顔の距離で、熱く潤んだ瞳が交じり合う。 白く揺れる胸の頂に軽く口付けると甘い声が青竜王の耳をくすぐり、肌の甘美さに彼の脳髄は蕩かされた。 水滴が転がり落ちる先をそのままたどるように唇を下にさげていくと、淡い陰りにたどりついた。 そのまま可憐な花弁に口を寄せていく。 サラサラと流れる湯の音とは違う水音を恥ずかしく思いながらも太真王夫人は声をあげるのを止められない。 お互い経験もないことだが肌に触れる相手の熱が愛しくて嬉しくて、彼女もそっと彼に手を添える。 「くっ…」青竜王は優しく太真王夫人の手を外させると足を割り、熱を持った入り口に彼自身をあてがうと ゆっくりと深く彼女に沈んでいった。 「あ、ああっ」 痛みよりも、結ばれたことが嬉しい。 目尻に溜まった涙をそっと吸い、胸の頂を摘まむと、太真王夫人の身体は弓なりに反った。 最初はお互いぎこちなかったが、互いに馴れるにつれて動きは滑らかになり、肌は熱く溶けていった。 温泉のへりに腰掛けた青竜王は上に乗った彼女の腰を支えると、顔をかたむけ深く口付けた。 あふれた唾液が彼女の細い顎を濡らす。淫らな姿でありながら、月光に照らされた白い裸身は彫像以上に美しい。 限界が近いと覚った青竜王は太真王夫人を深く胸に抱きしめると幾度も腰を突き上げた。 「っは、ああ、青竜王さ、ま」 (…愛している、誰にも渡しはしない。俺の、ものだ!) 愛する男の脈動を体奥で痛いほど感じながら、青竜王の胸に太真王夫人は倒れこんだ。 ゆるく胴にまわされた逞しい腕は優しいが、首筋にかかる息は熱く荒い。 そのささやかな刺激にさえ太真王夫人は身が震え、ひそやかな刺激を青竜王に送り返した。
157 :
竜王古代篇 :2005/08/21(日) 22:06:40 ID:kXEna/9M
…再び彼の竜は力を取り戻した。 彼女を後ろ向きに抱き抱え、水仙の茎を思わせる細い首筋に顔を埋める。 両の手は熟れた白桃よりも柔い双乳の重みを感じ、内ではあたたかく濡れた滑らかさに包まれ、 青竜王は美酒から口が離れぬ酔人のように、何度も口付けを白い肌に落としていく。 奥深くをぐるりと突く度に高く甘い声が漏れ出で、その声さえも味わうように舌を絡めると 切ない目が、彼女の快楽の深さを訴えてくる。深く結ばれた箇所に手を伸ばし撫であげると いっそう声は甘く高く、体の震えは大きくなった。何度かの軽い頂点を迎えたあと、 糸が切れた人形のように太真王夫人の体は崩れ落ち、同時に青竜王も精を解き放っていた。 睦言を囁き合い別離を惜しむ二人の影は、山の端に月が架かる時分まで片時も離れなかった。 翌早朝、朝もやの中太真王夫人は都へ向かう竜王四兄弟と別れ、崑崙へと戻っていった。 まだ数日は共に行動しても良かったのだが、太真王夫人にはある予感があったのだ。
うわあああ素敵過ぎる… まだ終わりじゃないっすよね?! …すいません馬鹿です。
159 :
竜王古代篇 :2005/08/22(月) 04:55:49 ID:j1TQ6Tx4
それから、竜種一行は地方の豪族の子弟という触れ込みで都の一学生の身分になりすました。 大量に持ち込んだ金子や調度品、彼ら自身の器量を見て、貸家の主人は快くそれを信じた。 青竜王は太真王夫人を火の粉から遠ざけるため、彼女も竜王家の邪魔にならないように連絡を控えたが、 二人ともに、あの月夜に結んだ時の気持ちをそのままに持ち続けていた。 牛種を倒し玉帝をお探し申し上げ、竜王家の汚名を雪ぎ、皆で太真王夫人を崑崙に迎えに行く。 これが至急の目的となった今、たとえ仮とはいえども“学生”ということに不満の声をあげていた 白竜王も、玉傘聖呪を一文字は多く覚えるよう、かなり前向きな気配を見せるまでになっていた。 ある夜、太真王夫人から宝貝で通信があり、気を利かせた紅竜王は下の二人を夕食に連れ出した。 三人が帰ってきた後も、変わらず戸が閉まったままなので開けて兄の様子を伺うと すでに画像は消えているにも関わらず、そのまま青竜王は壁を見つめ続けている。 「どうしたのですか?兄さん」 前に回りこんで顔を見ると、目は赤く、膝に置かれた手は固く膝頭を握り締めている。 (まさか、振られた…!?)(そんな?!)思わず三兄弟、最悪の事態を想像してしまったが 「太真王夫人が…」 「…(ゴクリ)」 「俺との子を身ごもっている、そうだ」 兄弟が事態を飲み込むまで、しばし部屋の空気は固体化した。それを真っ先に破ったのが 「いーーやっほぉぉぉぉぉぉ!」 天井に頭が着くほどに高く飛び上がり、青竜王の両手を握り上下にぶんぶんと振る。 「やったね!おめでとう!あ、名づけは俺にさせてね」 「あなたは生まれる前から御子に不幸を負わせるつもりですか」 「そんな、人を疫病神みたいに言わないでくれる?」 「…妹だといいなあ」 「黒竜王、こういう場合は妹とは言わないんですよ。姪っ子です。つまり彼女からみたら」 「叔父さん、だね!」 「…ええ。そうですね、叔父さん…という呼び名で合ってますよ…」 「ふふ、まだ僕こんな年齢なのに叔父さんかあ、ふふ、叔父さんだって」 「…もういいでしょう、黒竜王…」 オトナな紅竜王は“いつ”なのかは察していたが、年少の二人の手前それは言わないことにし 「これはより早く太真王夫人を迎えに行かねばなりませんね」 「ああ」 「街のあちこちでこのような噂を耳にしました。都から十里は離れた皇族の別荘に “前代の皇帝のご落胤”がいらっしゃるらしいと。しかもその話の出所が、宮廷で一年ほど前から 派閥を広げて帝におもねり、いまや最大勢力となった一派だというのですから…」 「こっちは私塾で“官僚への一番の近道は高い徳より袖の下”だなんて耳に入ってきてるよ」 「定食屋の人も“税はますます重くなるし、大臣は次々に処刑されるしどうなるのやら”って嘆いてた」 「宮廷が乱れ始めた時期と、牛種が我らにあまり構わなくなった期間と、奇妙に一致しているな」 「ええ、これはどう考えたらいいでしょうね」 「…その噂の人が玉帝、というわけでもないだろうが、その別荘の位置は分かるか?」 「すでに聞き込み済みです」
160 :
竜王古代篇 :2005/08/22(月) 04:56:39 ID:j1TQ6Tx4
早速、そこまで兄弟は様子を探りに別荘まで走った。彼らにとっては十里も一刻の距離である。 広い人工池に蓮が一面に浮かぶ、まことに瀟洒な造りである。その池に張り出すように設けられた きざはしに人影が歩み出た。木陰に隠れた彼らのもとにまで伝わってくる波動には覚えがある。 (まさかこんなあっさり見つかるとはなー、やっぱり牛の脳みそじゃこれぐらいが関の山か?) (罠という可能性を考えたらいかがですか?) (今日は何の準備もしてきていない、また出直そう) しかしてその三日後、その「玉帝かもしれないお方」から使いが兄弟の下へやってきた。 携えた手紙を読むと“こちらのほうが皇位継承権が高く、その証拠もある。だが何分手元不如意で ただいま支援者を募っているところである。聞くところによれば地方の豪族とか、 帝位に就いた暁にはきっと相応の礼を尽くす。ぜひとも詳しく話をしたい”とある。 「…なんですか?この、三流脚本以上にベタなこの設定は」 「こちらが先日非公式に訪問したこと、とうに向こうは気づいていたんだろう」 「じゃあ、あそこで見た人影は?」 「偽者、か玉帝ご本人でいらっしゃるか…はてさて」 「当然受けるんだろ?この挑戦状」 「あなたは街で娯楽小説読みすぎですよ」 「せっかく向こうから招いてくれたんだ、せいぜい乗ってやるとしよう」 翌日、礼服をまとい手配した馬にまたがり兄弟は別荘地へと向かった。 お互いに手の内は透けている以上、このような装いも馬鹿馬鹿しいことなのだが仕方がない。 「むこうではお茶菓子に茶ぐらい、用意してくれてるんだろうな?」 「こちらのお行儀しだいでしょうね。毒見役はお任せしましたよ」 敵地に乗り込むという緊張してしかるべき時なのに、相変わらずの舌戦に末弟もクスクス笑う。 そんな下の兄弟のやりとりを聞きながら、こっそり嘆息していたりしたのだが(これが俺ららしいのかな) と青竜王は思い直した。この世でなにより信頼しあえるこの四人、それに加わる一人の女性。 これから始まる戦いに負ける気などさらさらなかった。
161 :
竜王古代篇 :2005/08/22(月) 04:57:24 ID:j1TQ6Tx4
ところが事態は急変する。 謁見に出てきた皇帝後継者だという人物は、意識をあやつられた単なる人間であった。 ここまでは予想通りであったが、その後、敵の急襲もなく別の部屋に丁重に通された。 「ほら、白竜王。お望みどおりに茶菓子が用意してありますよ。ご遠慮なく」 「俺だってさすがにこんな所で用意されたものにまで手をつけたりしないさ」 「以前よりちょっとは成長してますね。いいことです」 「ちっとも褒められた気がしないんだけど」 突然、四方に開け放たれていた扉が派手な音を立てて次々に閉まっていった。 「ようやくお越しなすったか」 ところが、これまた敵が侵入してくる気配はいっこうにやってこない。 扉の隙間から外をのぞき見ると、呪符が幾重にも貼り付けられている。 「これは?!」 四人の脳内に、地を這うような湿った声が直接語りかけてきた。 『天界から人界にまではるばる落ちてきて、まことにご苦労なことであった。 だが、我らは人界より下、地界にて貴様らを待ち構えておったのだ』 「玉帝はいずこにおわす!!」 『それを教えるものがおるか、馬鹿め』 「地面にもぐっていたのなら牛と名乗らず、土竜とでも改名しなさいな」 「いやそれは土竜にも悪いし、なにより竜の字が汚れてしまう、蚯蚓がせいぜいだろう」 「蚯蚓は畑を耕す役に立つものなんだよ」 「うーん、それじゃあ何とあいつらを呼べばいいんだ?」 『ええい、貴様ら!!』 『まあいい、これから我らはお前らの手の及ばない、さらには妨害もさせない地へ赴くのだからな』 「どこへですか?いまさらお前らが身を隠せるところなど、どこにもありはしませんよ」 「竜一族の機動力と探査能力と、こちらの実力を知らないわけではあるまい」 『だが、時空にまで網をかけているわけではあるまい』 「まさか!」 『いくら玉傘聖呪であろうと、その結界が破れるには丸一日は掛かろうぞ。 その隙に我らは時空を飛ぶ儀式を悠々と済ませて遥か飛んでいくという算段だ』 「ならば、なぜ我らをここに招いた!」 『知れたこと。何もできぬ無力感を噛み締めながら、お前らの言う正義が朽ちていく屈辱を その身に染ませてやりたい。ただそれだけのことよ』 反駁する動機も奪われ、邪悪な波動が去った後も重苦しい沈黙が四人の上に降ってきた。
162 :
竜王古代篇 :2005/08/22(月) 04:58:15 ID:j1TQ6Tx4
それから四人は扉に体当たりもしたが扉は呪符で鋼鉄以上に固く閉じられているのを知ると 今度はこれからの対策を頭をつき合わせて話すこととなった。 「時空を飛ぶ、というのはどういうことでしょう」 「やつらなら過去に飛んで事象を改悪、とかやりかねないが、それはまず叶わないから無しだな」 「辰こう?(タイムマシン)は?」 「それで過去に行ったとして、果たして牛が地上で二足歩行をする世界が今に実現するか?」 「小細工程度じゃ、歴史の大本流に全部呑み込まれてしまうってことなんだね」 「それじゃ、未来へ飛ぶというのなら、いったいどこらあたりまで?」 「少なくともこの御世より先、だがいつ時空間から降りるのかは残念だが分からない」 「そんな、みすみす奴らを逃がしてたまるもんかよ!」 「方法はある。牛種と同じように時を飛ぶ術が我らにもある。だが…」 「兄さんが決断されたことなら、皆気持ちは一つです」 紅竜王の台詞に白竜王も、黒竜王も首をきっぱり縦に振る。 「気がかりなのは、太真王夫人のことですね?」 「…ああ」 「まだ多少時間はあります。早く通信を開いてあげてください」 ブン…と鈍い音がして空中に電磁の幕が映し出される。 「みんな、元気そうね。それよりも、事態は急を争います。異様な波動を天界も捉えました。 牛種はいったい、何をするつもりなの?」 手短にこれまでの経緯を青竜王は太真王夫人に伝えた。 「青竜王、いいえあなた。未来へ飛ぶつもりなのでしょう?」 「…ごめん、迎えに行くという約束を守れなくなった」 「あら、いつその約束が破れたの?わたし、期限をつけた覚えなんてないわよ」 月夜の思いを互いに胸に抱き、万感の思いを込めて二人は見つめ合う。 画像が乱れると同時に、生き埋めにするつもりであろう、部屋全体が鳴動しはじめた。 「太真王夫人!幾世に渡ろうとも、俺の妻はそなた一人だけだ!」 「あなた!」 途切れた画像をそれでも数秒見つめていた太真王夫人は息を整えると振り返り、 心配げに背後に控えていた崑崙の神仙に、矢継ぎ早に指示を出した。 「これから竜一族の時空飛翔への回線を開きます。崑崙の名誉をかけ、全力で支援します。 護符の用意を!竜種との唱和を合わせて空間の歪みは随時除去すること!」 天界と人界で増幅された思念波は、竜種の体細胞を原子にまで還元し、光り輝く粒子は 時空の流れにのり空中に溶け出し流されていった。彼らの意識も白く蒸発していく。 「太真王夫人…ありがとう」 回線が混じったのか、青竜王の最後の意識のかけらを感じ取った彼女は、そのまま泣きくずおれた。
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竜王古代篇 :2005/08/22(月) 04:59:20 ID:j1TQ6Tx4
意識を取り戻したのは、身重の自分のため手厚く設えられた寝所の上であった。 「そう、竜王様達は無事、未来世へと旅立たれたのね…」 「…お気を落とされぬよう、太真王夫人どの」 「いいえ、私の魂はすでにあの方に繋がれていますから、ご心配なく」 気遣ってくれた神仙に、気丈さを装った風でもなく自然に微笑んで太真王夫人はそう答えた。 彼女の繊細な美貌は、いまは柔らかい気配に包まれている。 「あと、半年ほどですか?」 「ええ、そのくらいに」 太真王夫人は自分の腹部に手をそっと添えた。 太真王夫人の出産は崑崙の西王母の宮殿の奥で無事に済まされ、一年を経過した後 その女子をつれ、太真王夫人はひそかに人界に降りた。 寒村のこれまた外れに建つ、清潔でこざっぱりした一軒家である。 数分歩いたところに老夫婦が暮らし住む農家がある以外は、何もないところである。 その子が五歳、可愛い盛りの歳になったころ、都の流行り病がこの寒村にまで及んできた。 それに掛かってしまった母親は儚くなり、幼子はどこからともなくきた大勢の人に 世話を受けながら、母親の棺が地に埋められるのを綺麗な目に涙を溜めて見つめていた。 隣の老夫婦は幼い子を残して亡くなった母親の無念を思い、その女子を貰い受けた。 もちろん、その母とは太真王夫人であり、竜一族と同じく時空を飛翔するため 牛種の残党に気づかれないよう、流行り病という偽装をとったのである。 我が娘への限りない愛おしさもあったが、人界に手放しても自然に溶け込んで生活できるまでに 成長するまでは、と未来世への転生をこれまで留めていたのである。 亡くなる(ふりをする)前日、太真王夫人は愛しいわが子を枕元に呼びこう言った。 「母さまは、遠いところにいくわ。でも、覚えておいて。ずっと先、いつかは分からないけど 絶対またあなたと会える。本当よ。これまで母さまが嘘をついたことはなかったでしょう? それとね、いつもあなたに話して聞かせてきた父さまともその時に会えるわ。楽しみでしょう? …悪い病気が移ったらいけないわ、さあ自分の寝所に戻りなさい、ね」
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竜王古代篇 :2005/08/22(月) 05:02:56 ID:j1TQ6Tx4
―それから、人界では三千年の時が経過した。 大陸は何度も戦の火に焼かれて、国境線も人も何度もめまぐるしく入れ替わった。 そのうち、中国から一人の男が陶磁器の売買いで名を揚げるべく、船の帆を張り日本へ進んでいた。 その男の祖先は中国の寒村から出てきたもので、その一族のものは皆、常人より力持ちで 体も頑丈とという特殊な性質を備えていた。それはさておき、貿易に成功したその男は そのまま日本に居つき、そのまま代を重ねていった。 災害、戦争にもその一族は危機を“なぜか”回避し、さらに時代は下って現代の日本。 その日は朝から良い天気のせいか、多数の鳥が早朝から鳴きさえずっていた。 叔父夫婦に待望していた子誕生との知らせを聞いた始の母親は、始の手を引き、 続を背中に背負って産院へとお祝いに向かった。 産後の疲労よりも母となった喜びが勝るのか、胸に女児を優しく抱いた叔母、冴子は 「茉理、と名づけたの。いい名前でしょう」 「本当に素敵、さぞや優しい雰囲気をそなえた綺麗な子になるでしょう」 母親同士の会話を頭上で聞きながら、始はまだ固く目が閉じられた赤子の手のひらを 軽く握ってみた。すると思いもかけぬ力強さで指を握られてしまった。 一瞬焦った始であったが、この小さく可愛い子が自分の妹分なのだと思うと 続に対する兄の責任感とは違った愛しさが胸にこみ上げてきた。 「こ、こら!俺のお姫様に触れるなぞ、悪い虫が着くには十年早いわ!」 「まあまあ、多少その時が早まっただけではないか、婿殿よ」 何か思うところがあるのか、靖一郎の慌てぶりをニヤリと楽しげに見ている祖父。 「冗談じゃありませんよ!義父さん!冴子も何か言ってくれ」 「大きな声でわめかないで下さいな。茉理の情操教育に良くありませんわ」 「くっぅううう、お姫様のためとはいえ…」 そんな騒動をよそに、始は手をしっかり握られ離してもらえずそのまま茉理にスヤスヤと 寝付かれてしまったこの状況に、さてどうしたらいいんだろう、と軽く困っていた。 ―高い天窓からは、二人を祝福するかのように煌めいた陽射しが真っ直ぐに差し込んでいる―
165 :
竜王古代篇 :2005/08/22(月) 05:06:48 ID:j1TQ6Tx4
終わり。 辛抱強く完結まで付き合ってくださった皆さん、ありがとうございます。 さらには、投下の合間に感想いれてくださった方々、本当に心の励みになりました感謝感謝。 細かい設定やら呼び名やら矛盾など穴だらけですが、妄想の力で強引に話をすすめましたので そこんところはご容赦くださいませ。 また萌えシチュが脳内で発酵するまでロムに戻ります。では!
お疲れ様でした。 そう来るか!な感じでしたよ…いやー良かったです。また待ってます。
GJ!
彼女の唇は思った以上に柔らかい。薄く引かれた口紅の感触は僅かに伝わる。品質が良い口紅なら、そう簡単には落ちないだろう。俺としては別に落ちても構わないのだが…。 俺が唇を奪った時には、彼女の口は半開きの状態だった。その状況を最大限に生かさなければならない。俺は彼女の精神が自律を取り戻す前に――つまりは簡単に言うと、彼女が我に返り口を閉じて拒まれる前に、彼女の口内に舌を侵入させていた。 強引に歯列を割らせる手段もないではないが、別に必要でもない女の唇を奪うために、省く事が出来る労力は省くに越した事はない。 無理矢理に唇を奪う事は、他の女でもない事はない。が、通常、俺がそのように口付けを許す女は、基本的には俺を好いている。だから拗ねている女に対して強引な態度に出る事はあるのだが、そんな女でも一旦俺に迫られたら徐々に許していくのが常なのだ。 今回はそれとはまるで違う。俺はこの女を別に好いてはいないし、特に抱きたいとも思ってはいなかった。そしてこの女も、俺に抱かれたいとは思ってはいないだろう。普段の女とはそこが違う。 俺が舌を差し込むと、口元に隙間が出来る。そこから息が漏れ、微かな声らしきものも出てくる。 嫌がるように顔を背ける。俺から逃れようとする。が、俺はしっかりと圧し掛かっている。手首を打ち振るって俺を退けようとしても、片手は俺が掴んでいるし、空いている手を振り回した所でその威力は軽過ぎる。本当に戯れで嫌がっているようにしか見えない。 ――本気で嫌だと意思表示したいのならば、もう少し激しく暴れたらいいのだ。俺はそう思う。が、彼女はそうしようとはしない。あくまでも、声も、態度も、荒立てようとはしない。それがこの娘の矜持か、誇りか。 折角、俺は人間の急所のひとつである舌を、彼女の口の中に差し込んでやっているのだ。どうせなら思いっきり噛み付いてやれば良いのだ。しかし彼女はそうしないし、俺もそれが半ば判っていたからこういう事をしている。強張った彼女の舌に、絡めてやる。 彼女が震えるのが伝わってくる。塞がれた口の中から、明瞭ではない声がする。逃れる舌を追い、更に弄ぶように絡める。結果的に俺の舌は彼女の口中を蹂躙する。 口元が唾液にまみれる感触がする。俺は空いている片手で、彼女の唇をなぞった。少々粘着質な感触がする。そして俺は親指の腹で唇を撫でてやった。そのまま、ゆっくりと顔を上げた。舌を、口を、彼女から離してやる。 口付けをやめて顔を上げる事で、彼女の顔を全体的に見ることが出来た。紅潮した頬に、潤んだ目元。口元は唾液で濡れていて妙に艶やかだ。そこから微かに荒い息が漏れている。 その瞳には、俺が顔を剥がした時には茫然自失と言った感があったが、俺が離れたと気付いたらしい。その後には眉を寄せて俺を睨むような顔になった。――「睨むような」と表現する他ない。何せ…。 「――そのような赤い顔で睨まれても、凄みと言うものは全く感じられませんよ。フロイライン」 俺は目を細めて笑い、彼女に説明してやった。唇に添えていた指でまた、唇をなぞってやる。彼女のまなじりが歪み、はっとしたように俺のその手を掴んだ。交わす事は容易かったが、俺はその手を拒まない。
俺は片手を掴まれたが、もう片手は逆に彼女の手首を掴んだままだ。そちらの片手をお返しに自分の方へ引いた。 彼女の手の甲を口元に寄せ、俺はその手で自分の唇を拭った。少し眉を寄せて顔をしかめて見せて――まるで汚い物を拭い去るような顔をして――数度擦り付ける。無論、彼女が見ているからそのような行動に出る訳だ。 手で口元を数度拭ううちに、湿り気と粘液が取り去られていく。そして彼女の手の甲を見ると、擦りつけられたせいか、僅かに赤くなっている。摩擦によって水分の殆ども飛んでしまったらしく、その部分は微かに光り濡れていただけだった。 が、ほんの僅かに人工的な色が残っているのを見る限り、口紅は完全に落ちていない訳ではないようだ。 俺は彼女にその部分を見せてやる事にした。――口紅が落ちてしまいましたよ。そんな事を、少し気分を害したような顔をして見せて。 「化粧道具はお持ちですか」 俺にそう問われると、彼女は微妙な表情を見せた。戸惑いなのか、怯えなのか――少なくとも、勝気な表情ではない。現状では、俺が完全に優位に立っているようだ。 「…はい」 数刻の迷いの末に、彼女は簡単にそれだけ答えた。だから俺は微笑んで言った。明らかに自分の優位を見せ付けるような笑みを浮かべ、彼女に対してまた顔を近づける。俺の顔を見せ付けてやる。 「それならば良いのです。化粧が落ちても後で直せばいいのですから」 「……あ、あの…このような事は…」 俺が顔を近づけた事で、彼女は顔を歪める。俺の接近から逃れようと、机の上をずり上がろうとする。そのために彼女は、折角彼女の方から掴んでいた俺の手首を離してしまった。 どうやらまた唇を奪われると思ったようだ。――今はそれが目的で顔を近付けた訳ではないのだが、いずれは同じ事をするのだから彼女の危惧は当たらずとも遠からずである。 「このような事、ですか」 俺は片手を胸に当てて、微笑んで彼女の言葉を繰り返す。優しげな顔をして見せるが、それは或いは彼女を侮蔑しているとも言える表情。どういった意味に取るかは、彼女の勝手だ。 ところが、彼女は戸惑いの表情を振り切るように目を伏せ、そして開いた。目元は微かに色づいたままだったが、それでも今までとは明らかに違う。 そして彼女は俺に対して口を開いた。 「提督は漁色家と呼ばれる方ですが、それが極端に短い時間であっても、一人の女性にしか愛情を注がないと訊いております」 ――おや。まだこの娘は弁舌でもって俺から譲歩を引き出そうとするつもりか。 彼女らしい行動ではあるのだが、その「彼女らしさ」を未だに保っている事が意外だった。ならば俺も彼女の弁舌に乗ってやることにしよう。それもまた一興、他の女とは違う。
「それは誤解ですよ、フロイライン」 「え?」 「私は酒を嗜む際に、何種類ものワインを同時に飲んで酒の味が判らぬような事にはなりたくないのでね。1本のワインボトルを空けるまではその酒の事しか考えないようにしているだけです。――そのボトルが空になってしまえば、別の酒に手を出すまでですよ」 つまりは俺にとって女は消耗品であり、それだけの存在なのだ――俺は彼女にそう述べたつもりだ。 「…女性は酒とは違います」 流石に彼女は俺の思想には引っかかりを感じるようだ。まあ、まともな人間ならば、酒に喩えられて面白かろうはずはない。が、俺もそう言われても、こう返す他はないだろう。 「そんな事を言われても、これは個人の主義主張の問題ですからな。皇帝陛下の御命令ならいざ知らず、あなたに強制される謂れはありません」 大して面白みもない答えだと我ながら思う。皇帝云々を除けば、まるで民主主義とやらを奉ずる連中の発言だ。どうやらハイネセンの惑星軌道上と言う場所が、悪いらしい。 俺はつまらん発言をした事になるし、俺からそんな発言しか引き出せない彼女の現状もまた、つまらんのだろう。だから、相手を続ける必然性を見出せない。さっさと会話を打ち切ろうと、意思表示をしておこう。交わし所が見付け辛い台詞を続けておく。 「それに、私が士官学校生でまだ無名だった時代ならともかく、"漁色家"としての悪名轟く現状において尚、私に接近しようとする女性がいるのだから仕方ありません。彼女らも私に消耗されたがっているのだと、私に勘違いさせたいらしいですからな」 そう言いつつ、俺は自分の胸に当てた手をそっと彼女の胸元に置く。軽く置いたつもりだったが、これでも既に彼女が息を飲んだのが、胸の上下で判る。やはり男に胸を触れられるのには慣れていないか? 軍服の厚い布地に、更にはその下にシャツを着ているはずだ。女性ならば、その下には更には下着でもつけているのかもしれないが、軍服が厚さに紛れて感触は殆ど判らない。軽く掌で押して撫でてみるが、彼女はすっかり身を硬くしてしまった。これではつまらない。 「――自分を嗜好品として扱われたくないのならば、そう扱う男の前に飛び出してくるべきではありません。そうお考えにはなりませんか?」 俺が不意にうなじに口付けると、彼女はびくりと震えた。そのまま首筋に唇を這わせる。そこにはうっすらと汗が滲んでいたが、俺には不快な感触ではなかった。 俺に掴まれたままの片手もすっかり硬直してしまっている。軽く拳を作った状態のまま動けない様子だ。 どうやら激しく抵抗するのははしたない事を思っているようだ。ならば体を硬くして動かさない事で感覚を遮断し、俺からの扱いに反応しないようにすると言う事か。良くある拒絶の仕方だ。だが、それが通用すると思っているなら、甘い。 俺を押しのける気がない事を状況から判断した俺は、彼女の手首から手を離した。もっとも、当初から肉体的な拘束目的で掴んでいた訳ではない。「拘束されている」事を伝えるために――精神的に拘束するために掴んでいたようなものだ。
覆い被さり、唇を彼女の首筋に這わせたまま、そのまま舌を走らせる。銀の装飾に彩られた軍服の襟周りの辺りをゆっくりと舐めてやる。 首周りにはかなり余裕がある。彼女に合わせて調節はしているのだろうが、それでも彼女に合うようなサイズの軍服はなかったのだろう。何せ、軍人としては規格外に小柄である俺の親友よりも、彼女は小柄なのだから。 余裕があるのは胸周りも同じだ。軽く添えて撫で回していた片胸の辺りを、俺は掴んだ。撫でるのではなく、掌で包み込むようにして揉んでやる。厚手の布地とその下にある布地の感触、そして柔らかい肉の感触が伝わってきた。 「…止めて下さい」 俺が嘗め回している喉が震えて、小さな声がした。それには返答せず、声を発した喉の辺りを俺は舐めてやる。すると、彼女はまた同じ事を言う。しかし言葉だけの拒絶に過ぎない。俺を止めさせる行動に出るつもりはないらしい。 「先程、このような事――と仰いましたが、このような事をされるのは初めてですかな?」 首筋に唇を這わせる合間にそんな事を言いながら、俺は自由な片手で彼女の襟を掴む。軍服を着ている相手のここを掴むような事は、他には殴り合う時位しかやった覚えがない。無論、今回はその時のように乱暴には掴まない。 優しく、ゆっくりと、襟元を開いてやる。…他の奴が着ている軍服を脱がせると言う行為も初めてではないが、それは…誰とは言わんが酔い潰れた際の介抱程度の事で―― 襟を掴む事と言い、つくづく色気がない前例しか記憶にないものだ。今回はそれとは全く違うケースである事を念頭に置いておく。 ともかく俺は彼女の襟元を開くと、彼女の首筋がどんどん露になっていく。軍服には不釣合いに細い首筋にゆっくりと根元まで唇を這わせていく。 軍服と言う奴は機能的に造られているもので、ボタンなどの外し方が判っているなら片手でも容易に脱がせていく事が出来る。そうして俺は、彼女の上着のボタンを中程まで外してやった。俺はふと顔を上げて確認する。 普通の軍人がその下に着ているのは白の開襟シャツである。しかし彼女が着ていたのは、白には違いないが女物のブラウスだった。おそらく自分に合うサイズを探し出せなかったのだろう。しかし軍服の下に着ているものとしては、不釣合いなものだった。 胸を揉み、撫で回す片手を俺は外してやる。すると彼女は大きく溜息めいた呼吸をついた。解放されて安堵したのか、その呼吸によって、胸も揺れて見て取れた事に彼女は気付いているのだろうか。その胸の動きはブラウスの上からはかなり露に見えている事に。 俺はそのブラウスの襟にも手をかけた。今回は両手でボタンを外していく事にする。女のブラウスを男の無骨な指がボタンを外していく状況を見たのか、彼女は流石に身をよじらせた。今回は言葉は発しないが、体で抵抗の意思表示をする。 しかしそれはあまり必死めいたものには感じられない。俺が圧し掛かり、体自体で彼女を押さえ込む事で、彼女の動きを制限する事は容易だった。 女の細身の体が男の下で足掻く姿は、却って男の劣情を煽る事を彼女は知っているのだろうか。少し忠告してやりたくもなるが、そんな義理は俺にはない。 俺は口を開く事無く、徐々に露になっていく彼女の生身にそのまま唇を進めていく。首筋から、鎖骨に至るまで。強く吸い付く事はしないが、舌を走らせて一時的に跡は残していく。 服に覆われている部分だからか、首筋よりも汗をかいていた。段々と内部に入っていくと、彼女の呼吸も穏やかではなくなってゆく。
ブラウスのボタンを中程まで外した所で、俺は手を止めた。丁度軍服と同じ辺りで外すのをやめた事になる。丁度――胸の辺りは通り過ぎて腹の辺りでボタンを数個残している事になる。 まだ服を開いていないのでその下は明らかにはなっていないが、胸が上下する様は良く判る。こうして見ると普段からスーツで覆うだけあってそこまで大きくはない胸だが、形は悪くないようだ。 …まあ、余程素晴らしい矯正下着を着けているなら、別問題だが。俺は顔を上げ、彼女の顔を見た。俺が片手を胸元に進めると、流石に彼女の顔に怯えが走る。そっと、ボタンが外されたブラウスの隙間に手を置く。彼女の反応――怯えを楽しんで、俺は手を中に進めた。 「もう、私を制止しないのですか?」 汗を帯びている肌を感じつつ、俺は胸元に突っ込んだ手を進める。そこには胸を覆うブラジャーの感触があった。どうやら普通の代物のようだ。 「…私が言っても止めるつもりはないのでしょう」 「成程、人間諦めが肝心と言う事ですか」 俺は目を細めて笑い、ブラジャーごと彼女の乳房を鷲掴みにした。すると、彼女は瞬間的に息が止まる。体が一瞬にして硬直する。 「諦めの選択が正しいのか誤りかは、これから判る事でしょう」 微笑んで俺は、鷲掴みにした手を緩める。が、そのまま掌で包み込み、感覚を確かめるようにして揉みしだき始めた。ブラジャーのカップや布の感触はするが、その下にあるものの感触を追うのは容易だ。揉む事で乳房に刺激を与えつつ、俺は指で乳首の辺りを優しく撫でた。 瞬間、彼女の呼吸音がここまで聞こえた。息を飲む音と、それによって膨らむ胸部。反射的にだろう、彼女の両手が瞬時に動いた。自分の胸を揉む不埒な俺の片手を押し留めようとしていた。 こういう無意識的な行動に対しては、こちらも強く出る事で彼女の本能にダメージを与える方がいい。俺は自由である片手を、再び彼女の手首を拘束する任務に就かせる事にした。 あちらの動きが瞬間的なら、こちらも瞬時に片手を動かし、彼女の片手首を掴んだ。そのまま勢い良く俺の体から引き離し、腕を伸ばした状態でテーブルに叩きつけるようにして拘束する。 痛いまでに強く握られた手首と、テーブルに叩き付けられた痛みで彼女は怯む。胸を弄ぶ手を掴む力が弱まった。俺はそれを機にして、手でブラジャーを捲り上げた。そのまま生の乳房そのものを掴んで揉む。 「な、何をするのですか!」 明らかに機を逸した悲鳴が上がる。――今更言われた所でどうしろと。諦めたのではなかったのか?俺の口元に冷笑が浮かぶ。 俺は当然彼女の悲鳴を無視して、汗ばんだ乳房を直に、巧みに刺激する事にする。今までのブラジャー越しの刺激により、乳首は既に敏感な反応を示していた。指で触れると、充血し硬くなりつつあるのが判る。その乳首を俺は指で挟みこんだ。 「嫌です、止めて下さい!」 どうした事か、彼女の動揺は激しさを増していた。それこそ今までの、ある種の余裕にも似た諦めをかなぐり捨てて、俺に対して叫びを発する。 どうやら本意ではない性的快感を与えられ、それにまんまと反応してしまう自分の体に嫌悪感を抱きつつあるらしい。だからその快感を与える元凶である俺をどうにかして排除したいのだろう。 理屈はわかるが、俺は彼女に同調してやる必要性を感じない。むしろこれを待っていたのだ。俺は乳房を揉み続け全体的に微妙な圧迫を加えてやる。その間にも指で乳首を挟みこみ、強く力を加えたり或いは擦り上げたりと刺激を与え続ける。 彼女の呼吸が浅くなる。俺はその口に自分の唇を重ねた。再び舌を彼女の口中に進め、舌を絡めて口付けを交わしてやる。彼女はそれからも逃れようとするが、噛み付こうとはしない。どうやらそういう抵抗の手段は思いつかない様子だ。 俺が彼女の唇を奪っている間も、胸に対する様々な刺激を緩める事はしない。むしろこの刺激によって、塞がれた口元から漏れる吐息や舌の動き、声にならない声を楽しんでいた。
抵抗される恐れはあったが、俺は彼女の手首を押さえ込んでいた手を離した。口付け、胸を弄んでいる最中、その手で彼女の腰を撫で回す。ボタンを緩められてたわんでいる軍服やブラウスの感触の更に向こうに、細身の体が感じられた。 徐々にその手を下ろしていく。やんわりと脇腹や腰を撫で回し、そしてベルトの更に下へ。厚手の軍服のズボン越しにだが、彼女の下腹部に手を触れた。 瞬間、キスを続けてきた彼女の口が強張ったのが判った。体全体に力がこもる。口内や乳房から、彼女の体温が急上昇した事が俺に伝わってきた。そして。 俺の頬に、鈍い痛みと鋭い痛みが走った。 解放していた彼女の手が跳ね上がり、俺の頬を打っていた。 密着した状態だったから避けようがなかったし、そもそも避けるつもりは俺にはなかった。彼女がこの体勢で、そこまで強く力が込められる訳もないと判っていたから――そして、彼女に頬を打たれた所でどうとも思わないからだ。 俺にとって女に頬を打たれる事は、女を捨てる際にそれこそ掃いて捨てるほどあるのだ。 微妙な熱さを含む鈍い痛みと、引き攣れたような鋭い痛みの両方を感じる。どうやら頬を打たれただけではなく、彼女の爪でも当たって擦過傷でも作ったか。まあ心境の上でも傷の上でも、気にする程の事ではない。 俺は何事もなかったかのように、彼女に対する愛撫を続けてやった。彼女の下腹部を、布越しに強く擦り上げる。途端、彼女は大きく息を飲んだ。体が一瞬跳ね上がるように反応する。 俺は彼女の反応に満足し、一旦口を離した。顔を近付けたままの体勢だが、俺は下腹部に触れた手を挙げて自らの頬を撫でた。 「――…引っ掻き傷を作ってくれるとは…大した雌猫だとは思いませんか?」 口元に侮蔑の笑みを浮かべて、頬の傷を見せ付けるように撫で付けて、俺は彼女にそう告げた。指先には、じんわりと滲む、半ば凝固していた血の感触が伝わる。 彼女は俺に対して睨みつけるだけだった。何か罵倒の言葉を口走るとか、そう言う事は出来ないようだ。…おそらく、その手の語彙は極端に貧しいのだろう。本当に育ちの良い――謀略云々はともかくとして、性格においては裏表がない娘だ。 「嫌だとか仰る割に、先程布越しに触れた感触からして…そう、何と申しましょうか。明らかに濡れてらっしゃったようだが」 厭らしいまでに回りくどい口振りとその結論に対して、彼女の目に炎めいたものが宿る。それは怒りか、敵意か――今まで明らかに臆していた彼女だったが、俺を排除すべきものと認識したらしく、敵意を隠さないようになったのか。 「そんな事――」 彼女は大きく口を開けて否定しようとしたが、その台詞は中断された。俺が強く乳房を握り締めたからだ。代わりに口からは、喘ぎとも悲鳴とも取れる不明瞭な言葉の叫びが漏れていた。 一旦そんなものを発せさせたら、後は楽だ。俺は乳房を的確に弄び、時には指先で既にある程度は硬く充血していた乳首をいじってやる。そうすれば口から声が漏れ続ける。 自分の意思に反して、性的快感を与えられ、それにまんまと反応してしまう。それはこの娘に対して相当の屈辱である事は先に知れていた。そして今の状況は、正にそれだ。 先程とは違い、今はキスで口を塞いでいない。だから、彼女自身にも彼女のあられもない声や吐息が聞こえてしまう。それは――彼女にとってどれ程嫌な事なのだろう。 彼女は相変わらず片手では俺の手首を掴んで胸を弄ぶ行為を止めさせようとする。が、それも無駄な努力だ。 彼女はもう片方の手で、自分の口を塞いだ。自分の声を物理的に止めようとした。 が、それは俺の思う壺と言う奴だった。俺は彼女に片手を伸ばす。彼女が先程言いかけた言葉を、俺が継いでやる。 「――そんな事ないと仰るなら――」 軍服と言う衣服は、重ね重ね言うように機能的なものだ。着脱の方法が判っているならば、それはかなり容易に行う事が出来る。そして俺は軍人を長年続けている。俺にとって軍服とは、どんな服よりも一番着慣れた着衣だった。 「――私が確かめて差し上げますよ」 俺は自由な片手で彼女の腰のベルトを解き、腰周りを緩めた。そしてその手を一気に内部に進めていた。
彼女の口からは悲鳴が上がった。それは口を塞いでいても押し留める事が出来なかった。 自分とは違う体温を帯びた、男の無骨な指が自分の下着の中に入ってきている。それは彼女にとって耐え難い事実であるようだった。 身をよじり、恥も忘れたように両足をばたつかせる。俺から逃れようとしているらしいが、俺はしっかりと体を彼女の足の間に割り込ませてしまっていた。だから彼女が暴れた所で、テーブルががたつくだけだった。 「はしたない真似はお止めなさい、フロイライン」 俺は苦笑を浮かべ、指を走らせた。彼女の陰りの内側をなぞってやる。すると彼女の体が跳ね上がり、足の動きが止また。 確かにそこはじんわりと粘液が滲み始めている状態だった。多分、布越しにでも判る状態だ。俺はその事実を彼女の耳元で、丁寧に解説してやった。その耳が真っ赤になると、そこに舌を走らせてやる。すると、俺が指で触れている辺りがまた僅かに濡れてきたように思えた。 「どうやら刺激が欲しいらしい」 そう告げて俺は親指で探り当てた小さな部分を擦り上げ、刺激を与えた。濡れているために滑りは良い。 「そんな事は……止めて下さい…」 「…艶の声以外では、それしか言えないのか?フロイライン」 俺は最早彼女への侮蔑を隠そうとはしない。敬語も使う気がなくなった。もっとも、彼女を押し倒してから今まで、厭味としての敬語しか使っていなかった訳だが。 耳や首筋、胸や陰部に対する愛撫を続けてやっていれば、彼女は弱々しい声で拒絶の言葉を続けるのみだった。その合間に声が漏れる。俺は舌での責めを中断し、彼女の顔を見た。 彼女は美しい顔を紅潮させていた。その理由は性的快感か、屈辱か。或いはその両方か。しかしその目元には涙が浮かんでいる。 彼女が、泣いている。深謀遠慮と行動力によって旧門閥貴族を見限りローエングラム公の側に付き、その策謀において高級将校らから絶大な信頼を得ている彼女が、唯一性的快感による陵辱には涙を流して屈していた。 それは、今の俺に屈したも同然だ。俺は任務をこなした時にも似た達成感を覚えた。 俺は満足して笑い、指を進める。陰部に触れる手の人差し指がするりと彼女の中に入った。硬くなる体を感じたが、俺はその指をそっと動かした。彼女の内部をゆっくりと探り、刺激する。 「ひ――嫌、止めて…そんな…!」 彼女は激しくかぶりを振った。目元からは大粒の涙をこぼしている。が、陳腐な表現だが体は正直と言う奴で、内部に入り込んだ俺の指を伝って彼女の愛液が溢れ出してきていた。 ――俺の袖が汚れるのは嫌だな。不意にそんな事を思う。そんな、冷たい事を考える俺は、どうあっても彼女に対して愛など抱きようがないのだろう。 しかし衣服を汚す嫌悪感は、彼女を屈服させ征服する達成感と満足感には勝てなかった。俺は愛液に塗れた指を彼女の中で動かしてやる。もう片方の手では相変わらず胸を執拗に責める。乳首を潰すように親指で撫で回し、勃起したそれを解放してまた摘み上げる。 「やめ…もう…嫌…」 「今のうちに、一回は絶頂と言う奴を味わっておいた方がいい。後々処女を失う際、楽になる」 苦痛を与えるよりも、快楽のみで終わらせておく方が、彼女にとって陵辱になるだろう。俺は敢えて指の数を増やす事無く、人差し指のみで彼女の中を傷つけない程度に掻き回した。 呼吸が荒くなり、口元からは嬌声が漏れる彼女の唇を、俺は再び奪う。俺の指の動きに合わせて戦慄く口と舌の動きに乗じ、俺はそこに舌を絡めた。時折彼女の口が大きく動き、吐息が漏れる。互いの口元が唾液で汚れるのも厭わなかった。 そして彼女が大きく息を吸い込んだ。細い体が大きく仰け反り、白い喉が反り上がる。瞬間、彼女の内部にある俺の指が、彼女の内壁によって強く締め付けられた。 次いで、彼女の体からがっくりと力が抜けた。弛緩してしまい、口からは荒い息が伝わってくる。――絶頂を迎えたらしい。俺はそっと彼女の唇を解放してると、名残惜しげに唾液が糸を引いた。 薄く開かれた瞳は潤み、涙を溢れさせている。顔や肌にはしっとりとした汗が流れていた。そして俺の指を締め付けていた内壁もゆっくりと弛緩していくが、まだ余韻に満ち溢れている。その指から伝わる愛液はすっかり俺の手全体を濡らしてしまっていた。
リョウジョークキテタ---!! + ∧_∧ (0゚・∀・) + テカテカ oノ∧つ⊂) ワクワク ( (0゚・∀・) + ∪(0゚∪ ∪ + と__)__)
GJ! GJ!
GJ!GJ!GJ!続き激しくキボン! ところでツンデレのカリンがユリアンにアタックして落とす話ってどっかにないですかね?
薬師寺涼子が友情出演したりして
びくつく内壁が俺の人差し指を、絡み付くように締め付ける。これは良くある感触であり、男の方はその肉感自体からは快感を覚える事はない。只、女を絶頂に導いた満足感から来る、精神的な快感なら感じる事が出来た。 内部に入り込んだ指だけではなく、触れている手の全体がじっとりと濡らされてしまっている。外側の小さな部分に触れている親指を軽く擦り付けてやると、容易く滑る。他の指で内腿を探ると、その辺りまでに粘液質な感触がした。 すっかり濡れてしまっている。――この小娘も、女として恥ずかしくない状態になったようだ。俺が人差し指と親指でそれぞれの部分に刺激を与えると、絶頂を迎えたばかりの彼女の肉体は容易く反応した。もう止める事が適わないらしい艶の声が口から漏れる。 しばし内部を探った後、俺はゆっくりと指を抜く。抜く途中も内壁を探るように撫で付け、親指を擦り付ける。その度に彼女の体がびくんと震え、声を発した。 指先が彼女の中からようやく抜かれると、その先から粘液が何本も糸を引く。最初は透明だったはずの液体も今目視すると幾分白く濁っている。それは、彼女が性的快感を得ていた紛れもない証拠だった。 俺はすっかり彼女の愛液にまみれた片手を徐々に挙げた。自分の顔の前に持ってくる。――恐れを抱いていたが、袖口までは濡れてはいなかった。しかし、手を動かせば、そのうちに垂れてくるかもしれない。今の所は気にしないでおく。 軽く粘つく指や手からは鼻を突く匂いがする。俺はその指を軽く舐めた。粘液が舌に絡まり糸を引く。 やはり、どうも旨いものでもない。愛液を「蜜」だとか表現する輩もいるが、それはあくまでも好きな女と言う精神的な補完が働いているからだろう。俺にとってこの女はそうではないし、そう言った女を今まで持った事もない。 下に視線を落とすと、彼女は息を整えようとしていた。しかしその紅潮した顔や潤んだ瞳を見る限りでは、未だに快楽に苛まれているようだ。
「――折角優しくしてやったのだ。泣く事ではなかろう」 俺は汗を掻いている胸から手を外し、ブラウスの中からも抜いた。汗の匂い――女の体臭を微かに帯びた手を感じつつ、その手で彼女の頭を優しく撫でてやった。 髪はほんの僅か湿り気を帯びており、空調が行き届いている旗艦内である事を考えれば、彼女は全身で汗を掻いているのだろう。 表面上は優しく、いとおしむように彼女の髪を撫でる。前髪をそっと掻き上げ、薄く化粧された額に口付けた。 すぐに唇を離し、顔を上げる。彼女の顔を見ると、再び瞳に炎らしきものが浮かび上がりつつあった。しかし、そこには以前のように激しい炎はなかった。潤んでいる瞳をフィルターのように介してしまっている。俺に対する憤りすら、体の快楽を破る事が出来ないようだった。 完全に屈服した訳ではないようだが、体は自由にならないか。それはそれで面白い事だ。俺は愛液に濡れた手をそっと彼女の唇に当てた。外気に触れ、ある程度熱を失っている指にはまだまだ粘つく液体がまとわりついていた。 顔に近付けられるとまず匂いが鼻についたのか、彼女は軽く呻いてテーブルをずり上がろうとした。俺に圧し掛かられているのだから、元々彼女の体の動きは自由にはならない。だから俺は特に彼女の動きを停めようとはしなかった。気にせずに、彼女の口に指を2本突っ込んだ。 指を突っ込まれた事、そして愛液の匂いや味による嘔吐感が来たのだろう。彼女は大きく呻き、喉が動く。指から舌が逃れようとして、口が大きく開かれる。口の合間から呻きや唾液が漏れる。 「どうした。自分の味だろう」 俺は全く気にせずに、彼女の舌や口内に指を絡め、擦り付けた。嘔吐感とは、体が毒物を受け容れまいとする本能的な感覚だ。彼女は反射的に両手を挙げ、俺の片手首を掴んだ。口を犯す指を引き抜こうとする。 俺はそれをあっさりと受け容れた。どうせ指に帯びていた愛液の殆どは与えたのだ。そこまで執拗に責める事でもない。俺は彼女の手の動きに合わせ、指を引き抜いた。今度は唾液が――おそらく愛液とも混ざり、糸を引いた。 「自分の味にも慣れておく事だ。後が楽になる」 濡れた彼女の唇を指でなぞり、俺は満足げに笑った。彼女は指から解放され、口を押さえて咳き込んだ。
――さて。いよいよだろうか。 いくら好きな女ではないとは言え、こうまで眼前で女に痴態を晒されては普通の男は反応するだろう。そして俺は漁色家と呼ばれるくせに女を侮蔑してならない男だが、不能者ではないのだ。自らが熱くなっている事を、俺は自覚した。 俺は女を侮蔑しているが、酒のように楽しむ事は好きだ。そしてその楽しみ方には色々な手法がある。今回のように、気に入らない女を暴力的にではなく屈服させる――その最終的な手段として、この熱さがある。 好きでも何でもない相手には違いないが、彼女とは違って俺の性的快感は不本意な物ではない。彼女を貶める、この上なく有効な手段なのだから。 …暴力的な手段にしないためには、もう少し柔らかくしてやるべきだろうな。俺はそう結論付けた。 彼女はおそらく処女なのだ、指1本で精一杯だった。とても俺自身を受け容れる余裕などない。そして、無理矢理に犯して痛みのみを感じさせるなど、それは俺にとって最高の陵辱とは言えない。 「……全く、処女とは手間の掛かる事だ」 俺は自分の気持ちを口に出した。彼女が俺の台詞に反応したのか、それとも未だ残る快感のせいか、その時震えた。俺は自分の顔をゆっくりと下げてゆく。両手は腰に触れ、彼女の軍服のズボンと下着にまとめて手をかけた。 顔が下腹部に近づくに従い、鼻をつく嫌な匂いが迫ってくる。 彼女は俺が何をしようとしているのか判っているのか知らないが、とにかく俺の顔が彼女にとって見られたくない部分に迫っている事は判っているのだろう。掠れた悲鳴を上げて俺の頭を掴もうとする。手が俺の髪に当たり、乱される…。 ――唐突に、室内に電子音が鳴り響いた。 それは俺にとって全く想定外の事だった。少し驚いて俺は顔を上げた。音のする方に視線をやる。驚いたのは彼女も同様のようで、俺の髪を掻き回す手が止まっていた。 機械的な電子音――どうやら壁際に備え付けられたインターフォンが発しているようだった。 …誰だこんな時に。俺はそう思うが、普通、旗艦の会議室でセックスするなどと言う不埒な輩を想定する訳がない。誰かは知らんが、俺や彼女に用があるから、会議室で待機しているはずの俺達を呼び出しているのだろう。 俺は顔を上げた。呼び出し音を背後に、彼女の細い体を片腕で抱き上げる。彼女としては予想外の事だったのだろう、引っ張られて体重をそのまま俺に預ける事になる。乱れた服が衣擦れの音を立てた。 そのまま俺は彼女を腕に抱きながら、引きずるように壁際に歩いていく。彼女は戸惑うように抵抗するが、俺は彼女の動きなど気にせず歩く。歩いていくと、彼女に掻き回されたせいなのか、自分の前髪が視界に落ちてくる。鬱陶しい。 俺は壁際に立ち、律儀に呼び出し音を鳴らし続けるインターフォンの受話器を手に取った。各部屋に備え付けられている程度の電話機なので、旧式のものだ。TV電話機能などはついておらず、受話器で音声のやり取りをする、AD時代から存在する形式の電話機である。 俺が受話器を取り耳に当てると、相手側が礼儀正しく名乗りを上げた。どうやらベイオウルフの通信士官であるらしい。 「――私はオスカー・フォン・ロイエンタール上級大将であるが、卿らの上官は現在外出しているのではないのか?」 至近距離に乱れた女の顔がある事などおくびにも出さず、俺は普段通りに艦隊司令官としての威厳を持って士官に応対した。 「…はい、ミッターマイヤー上級大将閣下がおふたりにお話があると言う事で…シャトルから通信がなされているのですが、お繋ぎして宜しいでしょうか?」 成程、そう言う事か。俺は納得した。余程の用件がない限り、自分達の上官と同じ階級の客人を呼び出すなどあり得ないと思っていたが…――俺はにやりと笑った。腕の中の彼女を強く抱く。 彼女は声を出しそうになったらしいが、至近距離に受話器があるのは判っている事だ。その声を押し殺し、自らも動かない。 「判った。繋いでくれ」 女を片腕に強く抱いた俺はあくまでも普通に、士官にそう告げた。受話器が電子音を発し、一旦通信が途切れた。 その瞬間、俺は彼女の方を向いた。抱いた腕に力を込め、彼女の顔をこちらに向かせる。受話器を片耳に当てたまま、俺は彼女の唇を奪った。
彼女の目が見開かれる。予想外の俺の行動に、口が戦慄く。そこに俺は舌を進め、貪る。耳元で鳴り響くトーン音を無視し、俺は彼女の唇を奪い続けた。微かにまだ愛液の味が残っていた。 口に吸い付くと水音がする。顔が密着しているからその音がやけに大きく聞こえるが、おそらくこのような至近距離にある受話器にも音は拾われる事だろう。 軽い断続音がして、不意に電話が通じた。 「――よう、ロイエンタール。遅くなってすまんな」 耳元で、いつもの親友の快活な声がした。上級大将に対する上級大将の発言とは思えない程にくだけている。その声を訊き、俺は口を女から離した。彼女を抱く腕を伸ばし、手で口元を拭う。 「…どうかしたか?取り込み中か?」 ごそごそとか言う音を受話器が拾ったらしい。怪訝そうな親友の声がする。 「いや、何でもない。――卿こそわざわざ何用だ」 ――取り込み中と言えば、この上もなく取り込み中だがな。俺は内心苦笑した。 俺の内心とは関わりなく、奴も受話器の向こうで苦笑する。 「ようやく茶飲み話が終わったのでな。いよいよ正式に国家元首と会談する事になりそうなので、一旦引き上げてきた」 「疾風ウォルフが逃げ帰った――と言う事か」 「自らの安寧のために国家を売る男とは、個人的には会いたくもないからその表現もあながち間違いではないが、国家元首との正式な会談となると俺独りの独断で行う訳にも行くまい」 「つまりは戦略的転進、か」 「妙に拘る奴だな…まあ、俺は卿とは違って政治は苦手だ。喜んで転進させて頂こう」 酒飲み話、或いは艦橋にてFTLで交わす会話――普段の奴と俺の会話の調子と全く変わらない。違うのは俺の腕の中に女が居る事で、その事実を奴は全く知らない事だ。 「それで、今、旗艦へ戻るためのシャトルの中なのか?」 俺は奴に話しながら、視線を彼女に落とした。彼女は固く瞼を伏せ、懸命に体を硬くしている。妙に動くと受話器の向こうのミッターマイヤーに不審がられると危惧しているのだろう。 逃げようとすれば音が立つ。だから彼女は動かない。俺は彼女を抱く手を緩め、その手であちこちに触れる。抱いているので掴むような風になるが、軍服越しに首筋に鎖骨、胸の辺りに触れていく。 「ああそうだ。今戻っている所だ…――」 ミッターマイヤーの声がする中、彼女の体が震える。口に手を当てて声を殺す。俺はそんな彼女を嘲笑うように、たわんだ服越しに胸を強く掴んだ。途端、くっと鼻から微かな声が通った。 彼女は慌てて俺と受話器を見比べたが、どうやらミッターマイヤーにはその声は届いていなかったようだ。奴はこの異変には何も触れなかった。――残念な事なのか、それとも安堵すべきなのか――。 「…で、俺達の元に戻るのは何時だ?」 「そうだな…今から10数分ではないだろうか。卿らを待たせ過ぎたし、なるべく急ぐ」 「俺達は勝者なのだ。同盟側を待たせるのは構わぬし、所詮俺達はローエングラム公から全権を委託された使者と言う訳でもない。いずれ正式な講和交渉は公主導の元に行われるだろう。せいぜい公が到着するまでに時間を潰させて貰おうではないか」 言いながら俺の片手は彼女の胸を強く揉みしだいていた。たわんだ軍服とブラウスがかさばり、胸の感触は鮮明ではない。 乳首が何処にあるのか探るのは困難であったし、あまりいたぶると本当に誤魔化しようがない声を漏らすだろう。現に今の段階でも、彼女の手で覆われた口からは荒い息が漏れ聞こえているのだ。 「いくら卿の艦隊とは言え、シャトルにまで疾風ウォルフの艦隊運用を適用せずとも構わぬぞ」 「そんなに急いでいる訳ではないから安心しろ」 親友との会話の傍、俺の腕の中で小娘が体をよじらせる。強く、乳房が変形し、また戻る程に強く揉んでやると、小さな胸なのに良い感触であるような気がするから不思議だ。彼女は紅潮した顔を軽く振り、足を摺り合わせる。 …感じているのか。電話中のため、言葉責めが出来ないのが非常に残念だ。俺はそう思った。
20分弱でミッターマイヤーは旗艦に到着する。やり取りはそういう結論に至り、シャトルからの通話は切れた。 艦外通話だったはずなのに艦内通話と同じく鮮明な通話だったのは、妨害電波の類が全く発せられていない証左だ。 つまりはこの星域は戦闘状態にはないと言う事で、ひいては我々銀河帝国軍が同盟の首都星を制圧している事に他ならないのだ。 ――そんな感慨を受けながら、俺は受話器を壁に戻した。そしてそのまま腕の中の彼女を壁に押し付けた。壁と俺の体で挟み込み、彼女の唇をまた奪う。強引に舌を絡め、口を吸う。荒い息が合間に漏れた。 「――あなたの処女を奪うつもりだったのだがな」 俺は彼女から口を離し、彼女の顎を掴んで俺の方に向かせてそう言った。濡れた唇の奥に赤い舌がちらついて見える。 「どうも疾風ウォルフに掛かると…そう言った余裕もなくなって困る」 彼女は俺の手から逃れようと顔を振った。俺は好きにさせる事にし、手を離した。彼女は顔を下に向けて荒い息をつく。顔を横に振ると髪が揺れる。伏せた瞼の睫の端が涙に滲んでいる。 「20分しか猶予がないとはな…あなたに準備を整えて貰い、痛いだけでなく私を受け容れさせて互いに悦楽を共有し、その上で後始末までしなければならない…」 俺は言いながら、彼女の頬を撫でた。軽く濡れているが、それは汗なのか涙なのか。ともかく、俺は彼女に結論を告げた。 「――20分で、それは無理と言うものだ」 室内に、沈黙が降りた。彼女の息遣いが響く。 俺の言葉をゆっくりと脳内で反芻したのか。彼女が顔をゆるゆると上げた。瞼が上がり、熱に浮かされた瞳が露わになる。 「……無理と仰いますと…?」 久々に悲鳴や喘ぎや――その他嬌態以外のまともな言葉を発したせいか、彼女の声は掠れていた。口の中に唾液が溜まっているらしく、妙に舌足らずの発言でもあった。 「言葉の通りだ、フロイライン」 俺は薄く笑い、冷ややかに言う。彼女の顎に手を触れ、上向かせる。 「おめでとう、あなたは好きでもない私に処女を奪われる事にはならない――どうやらミッターマイヤーはローエングラム公の生命ばかりか、意図せずにあなたの処女をも救う事になるようだ」
俺の宣告に彼女は何も言えなかったし、何も出来なかった。 徐々に見開かれる瞳に表れるのは、処女を失わずに済む安堵か。それとも、ここまでされておいては処女も何もあったものではないという自失か。そもそもこういう状況に追いやった俺に対する怒りと、自分の無力と無様さに対する諦めか――。 俺には彼女の気持ちは判らない。判らないが、ここで彼女が俺に処女を奪われないからといって、この屈辱が消え去る訳ではない、今までの陵辱に意味がなくなる訳ではない――それは判る。だから俺は、今の彼女を見て、低く笑うのだ。 「嬉しくはないのか?女にとって純潔とは最後の砦ではないのか?」 俺の厭らしい冷笑を視界に入れた彼女の瞳に、一気に炎が燃え上がった。美しいブルーグリーンの瞳が輝く。 どうやら俺が彼女を犯す事を完全に諦めたと判断したらしく、性的快感から懸命に体を取り戻そうとしているようだ。そして自分の体を制御下に置きつつある。だから瞳からもやのようなものが消え去ったのだろう。 「残念ながら、私は処女だの純潔だのと言う物に意味は見出さない人間なのでね。そんなものを有難がるのは、女に慣れていない男か、女自身だ」 俺はそんな彼女の額を撫でた。薄笑いを浮かべたまま、続ける。 「全く…処女を捧げると言う行為が余程特別で高潔だと思っている女が絶えないからこそ、私のような人間も絶滅しないのだ」 ――全く呆れたものだ。そう言いたげに俺は片手を振った。判り易く溜息をついてみせる。 それに対して彼女は壁から身を起こそうとした。が、俺は片手で彼女の肩を掴み、壁に軽く押さえつけた。彼女の体はあっさりと動かなくなるし、彼女もむきになって動こうとはしない。その代わりに、口が動く。 「提督…――私はあなたがこのような方だとは思っておりませんでした」 「陳腐な台詞だ。私は同じ台詞を数多の女に言われ続けている」 彼女が懸命に訴えようとした言葉だろうが、俺はそれを鼻で笑う。そうすれば彼女の精神に幾分かのダメージを与えられるだろうし、実際にこの手の詰りには俺は慣れていたのだ。 俺は彼女の前で肩を竦める。 「男の童貞は大して有難く思われないのに対し、女性の純潔にはある一定の価値を見出すのが人類社会の貞操概念という奴らしい。しかし、進歩的な考えをお持ちのあなたが、その考えに組するとは意外だな」 もっともこのふたつを同列に並べるのはおかしいだろう。俺が以前言ったように、男は童貞を失う際に快楽しか伴わないのに対し、女は処女を失う際には個人差はあるだろうが苦痛を伴うものなのだから。 どちらかに失うものがある限り、このふたつは同列に置く事は出来ない。だから俺は今、詭弁を述べている。 が、彼女はその詭弁に気付くだろうか。…いや、気付きはするだろう。そこから、俺に対して反駁できるだろうか?このような性的な話題を自分から口に出す事が出来るだろうか。 頭では論理の穴に気付いているが、口に出すには憚られる。結果的に反論出来ない。これは屈辱だろう。 ――そしておそらく、彼女もまた俺が「彼女は羞恥心が邪魔をして反駁が出来ない」と判って、このような詭弁を展開出来る事を知っている。それは彼女にとって、二重の意味で屈辱だろう。 詭弁を使い、相手はそれに反駁して来ないと判っている。だからこれは議論でも会話でもない。――言葉責め、と言う奴なのだ。 結果的にミッターマイヤーの意図しない介入によって、俺は彼女の処女を奪う事は叶わなかった。しかし、それでも俺が彼女より圧倒的な優位に立っているのだ。それを互いに自覚すべきだろう。
ミッターマイヤーが到着するまで10数分。彼女を抱くには短過ぎる時間だが、只待つのには長過ぎる時間だ。――だから、俺はある種の目的を達する事にした。 俺は彼女の片手を掴む。強い力で手首を引き寄せると、彼女がまたびくついた。瞳が揺らぎ、そこに灯っていた炎もまた揺らぐ。一瞬恐れの感情が表れたが、それを懸命に押し殺そうとしている。 ――何故だか、可愛らしいと思ってしまう。 「後学のため、教えて差し上げたい事がある」 俺は笑ってそう告げ、彼女の手を俺の下腹部に触れさせた。 途端、短く高い悲鳴が彼女の口から漏れた。反射的に彼女は体ごと俺から引く。が、俺は彼女の手首を掴んで離さない。 彼女の悶える姿を見て、深い口付けを何度も何度も交わしてきた俺は、昂ぶり始めていた。それは軍服の上からでも触れたら判る程度の状態で――もっとも、彼女は普通の状態であるこの部位にも触れた事はないだろうが。 俺はもう一方の手で、ゆっくりとベルトを緩めた。彼女の手を一旦退けさせて、その代わりにゆっくりと、見せ付けるように、前を開いていく。 既に半ばまで起ち上がっていたために、前を空けた事ですんなりと顔を出してきた。俺はにやりと笑い、彼女の手にそれを握らせた。 「――ひっ――!」 彼女の口から明確に悲鳴が出た。息を飲み、体を縮こまらせる。手を体に引こうとするが、俺は彼女の手の上に自らの手を重ねて離させない。 「慌てる事はない。貫かれる心配がないのに、触れる事は出来るのだ。良い経験だと思って頂きたいな」 彼女の手の震えと汗が俺自身に伝わってくる。逆に、俺の発する熱やその感触に、彼女は怯えているようだ。俺は一歩足を進め、完全に壁際に彼女を追い詰めた。体が密着するまでになる。 彼女の顔と俺の顔も、すぐそこに接近する。若干蒼ざめた彼女の額に俺は口付けた。彼女の口元から荒い息が漏れるのは、好きでもない男の雄を握らされていると言う圧迫感から――だろうか? 俺は彼女の手に重ねている手を、ゆっくりと動かした。強張った彼女の手を強引に、俺の上で滑らせる。彼女の白い指が、俺に絡みついている。その手がゆっくりと上下する――ように俺が扱う。 「――嫌です、嫌です!」 彼女は激しく顔を振った。俺から顔を背け、膝を曲げてまで体を縮こまらせようとする。両腕を完全に脇につけて折り曲げている状態になっていた。子供のようだ。俺はそんな彼女の肩を掴んだ。自分の方を向かせる。 「私は女性を絶頂に達しさせたのに、自らは果てないで満足するような紳士ではないのですよ。御協力願いたい」 眉を寄せ、まなじりを歪め、俺を見るその目に浮かぶものは怒りの炎ではない。最早恐怖だった。実際に男に貫かれる時と同等か、或いはそれより劣るのかは判らないが、似たような恐怖を味わっているらしい。 ――自らの手の中で、雄が育ちつつある。それは、やはり彼女にとって、耐え難い事であるようだった。 彼女の手は冷や汗で濡れている。その手を俺は上下させる。形のいい指が俺を刺激していく。爪は伸びずきちんと切り揃えられている事は、最初の段階で判っていた。だから俺はその手が雄の上に滑り込んだ時、指先で俺の先端を包み込むように絡めさせた。 只上下に滑らせるだけとは違った感触。俺はその刺激に思わず眉が寄るのを自覚した。そして彼女の指にもまた、違った感触が伝わったのだろう。びくりと震え、目許から再び涙がこぼれ始めていた。 俺は彼女に覆い被さった。そのまま、乱暴に彼女の唇を奪った。浅い呼吸をする半開きの口の中に、舌を進めた。強引に絡め、体を密着させ、手の動きを止めさせなかった。
――俺にも余裕がなくなりつつある。それは俺の脊椎を駆け巡る興奮からも判ったし、彼女の手を覆っている俺の手に伝わる感触からも判っていた。 手の上下の動きは非常に滑らかに行われている。彼女の手は汗でしっとりと濡れてはいたせいもあるが、俺の先端から先走りが分泌され始めてもいたのだ。更には、刺激を与えられて徐々に怒張していっているし、何より屹立していた。 …そのような興奮は、乱暴に唇を奪ってゆく事で相手に悟らせない。彼女も男の性的反応までは知識にはなく、また今の状況に恐慌しているために、俺の内情など判りようがないだろう。 ――しかし――…俺は決断した。 引き剥がすように彼女の唇から顔を離した。間を持たせない、素早い行動にお互いの息が漏れる。 そして俺は彼女の顔が傾いた隙を突き、その頭を片手で押さえ込んだ。 小さな悲鳴を上げて彼女は姿勢を崩す。握らせたままの手は俺が抑えているため、彼女の膝が崩れる。 乱れて半ば脱げていた軍服の状態では、彼女の動きが制限されているのもあったろう。彼女は俺の足元に跪く格好を取る事になった。そしてそれが俺の狙いだった。 膝を強く着いた痛みに耐え、立ち直った彼女は俯いた状態の顔を振り、上げた。そして彼女は状況に目を見開いた。 彼女の眼前には、俺と彼女の手が重ね合わされて握っている俺の雄があった。 恐慌を起こし、彼女は顔を背けようとする。が、俺の片手は彼女の後頭部に未だ存在した。彼女の頭を押さえ、逃がさない。 「何をなさい――」 「――後10分!」 彼女の悲鳴を俺は叫んで遮った。彼女は俺の言葉に反応する。俺は彼女に畳み掛けて告げた。 「もう10分を切っている。早く終わらせないと、あなたはまずいのではないか?――私のそれを握っている様を、ミッターマイヤーに見せたいのか?」 彼女は明らかに愕然とした。――この姿を誰かに見られる…いや、その誰かが通りすがりなどならともかく、よりにもよって彼女が全幅の信頼を置いているミッターマイヤーだったとしたら――?それは彼女にとって、悪夢だろう。 大きく息を吸う音がした。彼女が顔を上げた。きっとした――と言う表現を使うには、その顔は歪み過ぎている。そしてその歪みは俺に対する憎しみとか怒りとかではなく、本当に、愕然とした様だったのだ。 「…そんな事になったら、あなたもミッターマイヤー提督の信頼を失いますよ!?」 彼女の口から悲痛な訴えが放たれた。が、俺はすっと笑った。口元を持ち上げた。 「奴がこれで私を見限るなら――まあ、それはそれでいいのでは?」 ――そう言えば、俺が焦ると思ったのか?彼女は信じられないものを見るような目で、俺を見ていた。俺はそんな彼女を笑うしかない。 「…この程度の事で友誼が失われるなら、それまでだったという事だ。――もっとも、その友誼とて俺の我儘を奴が散々利いてきただけなのかもしれないのだからな。案外、奴にとってはいい機会になるのではないか?」 思わず「俺」と言う言葉が口からついて出る。半ば、呟きだったのだ。 ……本当に、奴に切られたら。多分俺はどうにもならなくなる。それは、嫌だと思う。ならば、こんな真似などやらなければいい。しかし――仮にこれを見られた所で、殴られて発散させて、ちょっと冷却期間を置けばまた普通に付き合えるような気もする。 そんな願望を持つ事自体、俺は奴に甘えているのだろうとも気付いている。 まあ、そんな事はどうでもいいのだ。奴に見られる心配など、心の底からしていないのだから。 「で、あなたは嫌がってこのままぐずがるか?私はあなたを解放する気はないぞ?このまま10分間、ミッターマイヤーが来るまで、この姿で黙っていたいか?」 それが、とどめだった。
結局彼女はミッターマイヤーにはこのような姿を見られたくないのだ。そんな彼女の「協力」が得られたら、俺もこんな姿をミッターマイヤーに晒す事もないのだ。だから、俺は、奴との友誼が壊れる事など心配していないのだ。 だから、鼻で笑うしかない。――彼女は自分自身を救うために、俺も一緒に救ってやるしかないのだ。何らかの策を練ろうにも、圧倒的に時間が足りない。彼女は、俺に、屈する他ない。 彼女がヤン・ウェンリーの性格を見切っていたかは、確証は持てなかっただろう。彼は同盟軍の提督であり、別に俺達に近しい人間ではないのだから。しかし俺は彼女の取るであろう行動に、確証が持てる。 沈黙の末、彼女は俯いたまま、小さな声で俺に訊いた。 「――……私は、どうすれば良いのですか?」 ほら見ろ。落ちたではないか。俺は喉の奥で笑う。 「そうですな…時間もない事ですし…――舐めて頂きましょうか」 びくんと震える彼女の頭を見下ろしていた。――屈服した彼女に対し、厭味ったらしい敬語での会話に戻してやる。この落差を、彼女はどう感じるだろう。 悩んでいる暇はない。彼女はそう思ったろうか。ゆるゆると顔を持ち上げた。 彼女の手の中にある、俺に視線をやる。すっかり怯えたような顔をしていたが、時間に追われている自分を自覚したらしい。ゆっくりと、恐る恐る顔を、唇を近付け――俺の先端に、彼女の舌先が触れた。途端、先走りが漏れる。俺は眉を寄せた。 そして彼女も俺の味を感じたらしい。顔を歪めてしまう。が、口を離す事はせず、そのまま舌を走らせ続けた。 俺の雄に白い指が絡んでいる。そして舌が音を立てて舐めてゆく。――全体的に舐めて下さい。そういうアドバイスをしてやりつつ、俺は彼女の拙い舌使いを見守っていた。 所詮素人女に技術など期待はしていない。こういうのは、やはり精神的な補完が必要だ。事前に手である程度は行っていたので、既に怒張し屹立している状態だ。 そこを彼女の舌が這い回り、その後に唾液の跡が残されていく。自覚があるのかないのか、先走りを舌で絡め取る。 俺は上気して来る自分を感じた。眉を寄せ、彼女の頭をゆっくりと撫でる。しかし、後一押しが足りない。考えつつ、乾いたように感じられる唇を舐めた。 「……5分を切りましたな。――無理せずとも構いませんが、先端の方だけでも銜えて頂けますか?」 暫くして俺は彼女にそう告げた。彼女の動きがぴたりと止まる。が、最早口答えをしている暇はないと思ったのだろう。彼女はすぐに、言われたままに俺の先端を口に含んだ。 「ああ…ゆっくりと口を動かして下さい…そのまま舌を使うのも良いでしょう…――」 俺は優しく彼女に言い聞かせてやる。本当に、愛している娘に対する態度のようにも見えるかもしれない。それ程に彼女は従順であり、俺は余裕を持っていた。 ともかく彼女は俺の指示に従った。拙いながらも、口を動かし、舌を走らせていく。淫靡な水音と、漏れる息と声。すっかり硬く、大きくなっていた俺の雄は彼女の口には余るらしい。口元から唾液が垂れ、白い喉を伝っていた。 最早恐怖感は消え去ったのか、彼女の顔がすっかり紅潮していた。たまにつく吐息が俺の雄に当たって、それも刺激になる。 ふと気付いたが、彼女は跪いた両脚を軽く動かしていた。まるで太腿同士を擦り付けるようにして――そう言えば、あの辺りからも水音がする。太腿を伝うのは紛れもない愛液であり、それも俺が先に指で絶頂を迎えさせた際に分泌されたものでは明らかにないだろう。 ふん。所詮――この小娘も、雌か。本当に、鼻で笑うしかない出来事ばかりだ。 それを悟った途端、背筋をぞくりと快感が立ち上ってゆく。――ああ、この感覚か。俺は軽く呻き、彼女の頭を押さえ、それを解放した。 彼女が途端に呻く。顔を歪めて嫌がる。その口元から、唾液に混ざって白濁液がこぼれ始めていた。それは口元を伝い、喉に線を作ってゆく。そして開いた襟元に辿り着き――。 「…軍服を精液で汚した経験はないので推測になりますが、おそらく目立ちますよ」 俺は彼女の髪を優しく撫でて、そう教えてやった。 すると、彼女の喉が動いた。口の中に溜まった液体を、嚥下する音がした。その顔は苦痛と嫌悪と屈辱に歪んだままだった。
部屋の入り口になる自動ドアが静かに動き、開かれた。小気味良い靴音が、ドアの起動音に続く。 「――遅くなって申し訳ない」 ミッターマイヤーがそう言いつつ入ってきた。広い会議室を一瞥し、まず部屋の真ん中辺りに立っていた俺を視界に入れた。 奴は俺に軽く手を挙げて挨拶をする。ほんの少し前、電話越しに話した時と態度は全く変わらない。爽やかな笑みを浮かべている。 次いで彼は部屋に視線を巡らせて――テーブルについていたフロイライン・マリーンドルフに気付いた。 奴は彼女に対し、礼儀正しくきっちりと敬礼をして俺と同じく声をかける。しかし彼女はミッターマイヤーに反応しない。テーブルに俯いたままだった。それに、ミッターマイヤーは小首を傾げた。 「…で、茶飲み話はどうなったのだ?」 俺はそんな奴の背中に声をかけた。すると奴は俺に振り向いた。 「ああ…俺としては出来るだけ早く、俺達3人で国家元首との会談を持ちたいのだが」 「3人でか?」 「ローエングラム公が御到着するまでは、俺達3人が帝国を代表する事になるだろう。誰か独りでは、我々の立場上まずい」 「例えば、総参謀長に妙な事を勘繰られる可能性があるからか?」 「はっきり言うな…まあ、その通りだ」 奴は苦笑した。ああ、あまりにも快活だ。――先程まで澱んでいた、この会議室の空気にも気付かないまでにだ。 ともかく、俺は少し考えて見せた。顎に手を当て、眉を寄せる。 「俺は早くに出向くのは、構わんのだが…」 「…何か、問題でも起こったか?」 俺の態度に、ミッターマイヤーは怪訝そうに訊いてくる。俺を見上げていた。だから、俺は片手で指し示した。その先には、椅子に腰掛けてテーブルに俯いている娘の姿があった。 「――フロイラインは体調が優れぬようだぞ」 「え――!」 俺の発言に、奴は慌てて彼女の元に駆け寄った。俯いたままの彼女の顔を、下から覗き込んでいる。 「ああ…顔色が悪いですな…きっとお疲れになったのでしょう…フロイラインの体力を考えず、強行軍を行った私の責任です」 本気で彼女を気遣い、そして自分を責めるような口調だった。眉を寄せ、彼女を見上げて――おろおろしている様を俺は眺めている。奴は地上でも、妻に対しても、このように本気で色々と気を使う男なのだろう。全く…良き男だ。 彼女が動いた。青い顔をして、ミッターマイヤーを見る。額からは冷や汗が流れ、彼女は口元を押さえた。 「…いえ…今回の作戦は迅速でなければならないのですから。正式な軍人ではない私が足を引っ張ってはなりませんでしたわ」 少しだけ目を細め、彼女は笑った。しかし顔色の悪さがそれで消える訳ではない。ミッターマイヤーは自分の髪を手で掻き回した。 「仕方ありませんな。フロイラインはお休みになっていて下さい。部屋を用意致します」 「いえ…提督が先程仰ったように、私達は3人揃っていないと、色々と不具合もございましょう」 「正式な講和会談でない以上、絶対に3人揃っていなければならない訳ではありません。特に、フロイラインは体調を崩されているのです。これは充分、欠席の理由になります」 「いえ…」 ミッターマイヤーは座っている彼女の視線まで屈み込み、彼女に対して賢明に訴える。が、彼女は青い顔をしながらも、小さな声で奴からの休息の誘いを拒み続けた。 埒があかんな。俺は苦笑気味に溜息をついた。微笑ましいまでに相手を気遣うミッターマイヤーの背後から、口を挟む。 「――間を取って、タンクベット睡眠で宜しかろう」 俺の声に、奴は振り向いた。俺は奴に対して微笑んでみせる。 「タンクベット睡眠なら、2時間も寝れば1日分の睡眠は取れる。2,3時間程度ならば、同盟政府を待たせても構うまい」 「……ああ、そうか。しかし、それで大丈夫だろうか?」 納得しかけたミッターマイヤーが疑問を呈する。が、その時隣から小さな声がする。 「…私はそれで構いませんわ。3時間、頂けますか?」 フロイラインの台詞に、ミッターマイヤーは頷いた。彼女に対して敬礼する。それは例えば上官に行うようなしゃちほこばったものではなく、むしろ女性に対する敬意が溢れた仕草だった。 「――判りました。すぐに用意させます」
………何故だか、俺は笑いがこみ上げてくる。 無論、声に出して笑う事はしないが、それにしても…。 ――何に対しての笑いか? 情事の後を一切残していない俺の手際の良さか?俺にいたぶられてこのような状態になっているこの小娘の無様さにか?それとも、旗艦であのような事が行われた事に、おそらくはずっと気付かないであろうミッターマイヤーの鈍感かつ快活さにか?それとも―― 俺には、判らない。判らないが、とにかく笑えて仕方がない。 「――…それでは俺も失礼させて貰っていいか?」 壁際のインターフォンに手を掛けようとしていたミッターマイヤーに俺は声をかけた。 「どうするのだ?」 「3時間あるのだ。俺もトリスタンに戻り、身支度をさせて貰おう。いくら俺達が勝者とは言え、国家元首に会うのだ。強行軍で疲れ切った姿を見せる訳にはいかぬだろうよ」 「…そうだな。そうした方が帝国のためだな」 「だから卿もこの時間を使って寝るなりシャワーを浴びるなりしろ」 俺の勧めに、ミッターマイヤーは軽く頷いた。それを見て俺は笑い――これは心からのものだ――片手を挙げ、自動ドアを通った。 部屋の外に出た俺の背後でドアがゆっくりと閉まる。その向こうから、インターフォンで部下を呼び出そうとしているミッターマイヤーの声が聞こえ、そしてドアが閉まって遮られた。 ドアが完全に閉まった状態では、どうやら完全防音らしい。流石は会議室だ。ならば、ちょっとした悲鳴などは、部屋の外に一切聞こえてはいないか。 俺は頬に手をやった。もう傷口の感触は殆ど感じられないし、腫れた感触は全くしない。頬を打たれても、この程度か。俺は喉の奥で笑った。 さて、あのふたりをふたりきりにしてやったが、果たしてどうなる事やら。 小娘はひた隠しにするだろう。が、ミッターマイヤーは女性心理には疎いが、元々の人間に対する洞察力は優れている。もしかしたら、事実に気付きはしないだろうか。 …気付いたら、その時だ。俺は口元に笑みを浮かべつつ、ベイオウルフの廊下に出る。通りすがりの士官が立ち止まり敬礼をするのを尻目に、俺は悠然と歩いていった。
以上で終わりです。 >100で言い出してからほぼ1ヶ月のお付き合いありがとうございました。 合間にGJレスなど下さった名無し諸兄に感謝。 ではROMに戻ります。
>190 挿入ナシでそうくるとは思わなかったw 鬼畜風味の色目一人称ヨカッタ(・∀・)yo!! 乙&GJでした。
おれはヒルダ好きなんだがねちこくて良かったよ 処女は護られてもこうやってきっちり仕込まれてたんで カイザーの良き藁になれたヒルダたん… おかげでローエングラム家は続く事ができましたとさ 色目ってめちゃ忠臣じゃんよw
>190 遅まきながらGJコール。 言葉攻めするロイ、かっこいいですな(*´Д`) そして耐えながらも感じちゃったヒルダタン(*´Д`)ハァハァ
さらに遅まきながらGJ!乙かれさまでした!ヒルダタン(*´Д`)
>>177 もっと遅まきながら同意 ツンデレ・・・
アルスラーン復活age
国王陛下に夜這いされるファランギースキボンヌ そろそろ新刊だな。
197 :
名無しさん@ピンキー :2005/09/19(月) 01:12:02 ID:54CD5BeI
ザッハークの手下達による触手輪姦凌辱だな。 陛下のはしかの相手もまとめて。
国王陛下に夜這い(?)するファランギース
199 :
名無しさん@ピンキー :2005/09/19(月) 17:34:59 ID:BEfsOQq0
鳥羽茉理のレイプもの考え中
最強の茉理ちゃんを犯れる相手って興味あるな 牛に精神を一時的に乗っ取られた竜王長兄とか?
兄さん以外が茉理ちゃんを襲おうとしたら その前に私が出て行ってそいつを殺します(T・R氏談)
↑続兄貴乙。 俺は天界の姫とウハウハやってるからさ、兄貴は天使のなっちゃんと よろしくやってきなよ。(O・R氏談)
203 :
名無しさん@ピンキー :2005/09/23(金) 19:20:05 ID:uhvSViWF
おーーーーほほほほほほほほほほほほほほほほっ!!!!
永楽帝×方考濡
205 :
名無しさん@ピンキー :2005/09/24(土) 17:01:19 ID:5FeyXxE7
茉理ちゃんレイプか、いいね
ボダン大司教に宗教裁判に掛けられて拷問されるエステル(15歳)キボン
ファランギースはかつて一度だけ、いたいけな少女を惑わせたことがある。 濡れ衣ウを着せられ仲間を残してエクバターナを追われ、ふさぎこんでいたルシタニアの騎士見習いエステルを笑わせようとして冗談を言ったのだ。 「じつはアルスラーン王子は女なのじゃ。股間のちんちんは偽物で、中には金貨と銀貨がはいっておる」 エステルはこれを真に受けた。 当のアルスラーンが妙な視線に気づくと、必ずのように彼の股間を見つめるエステルがいたものだ。 アルスラーンは言った。 「やらない……か?」 「うにゃっ」 エステルは両刀だった。むしろ女の方が好きだ。メルレインと趣味が似ていて、アルフリードよりも線の細いアルスラーンは好みだった。 ゆりんゆりんのつもりでアルスラーンの誘いに乗った。 続かない
だれかアルフリードとレイラを…
未亡人フレデリカと帝国の誰かとの交際、Hが読みたい。
フレデリカ「ああ・・はぁーん・・・あなたぁっ・・あっあなたぁ!」 アンネローゼ「ああっジーク・・そうよ・・ああっわたしのジーク!」 エヴァンゼリン「アアン・・ウォルフったら・・ふああっ・・ああ〜」 マリーカ「ウルリッヒさま!やだ・・そんな・・アアッ・・いけません・・」 カリン「いやっ・・アンッなにすんのよ!ああっダッメェ・・ユリアァン」 ヒルダ「あっ!・・・・陛下・・・そこは・・・違います・・・」
ヒルダ「ああっ、違っ……そ、そんなとこ……んんっ、お許しくださ……、 あ、ああっ……いやあっ、こんな……」
212 :
名無しさん@ピンキー :2005/09/29(木) 23:32:41 ID:3rAnBV8Q
>>209 ノシ 本編終了後の妄想ネタということで書いてはいるが
エロシーンまでが無駄に長い上、完成の目途が立たない…orz
213 :
209 :2005/09/30(金) 01:11:39 ID:7P3Je/1f
>>212 おお、書いている方がいるとは嬉しい限り!Hシーンまでが長いのは
物語としても感情移入としても良いのですごく楽しみです。
気長に待ってますので時間がある時に書いてぜひアップしてください!
フレデリカの相手・・・・温厚そうなミュラーとかどうだ? ミュラーの下士官時代の失恋相手って誰なんだろうね。
疾風夫婦ネタやりたいけど、この夫婦だとなかなかエロが入らない… つーかそもそも永遠の初恋気分夫婦ってのが味だもんなあ。 キスだけで終わってしまいそうだ。
フレデリカの相手は面識あるミュラーしかいない!と勝手に思っていたりする。 神降臨キボンヌ。
ってか そもそもヤンとフレデリカてHあったのかなーと。 奥様が、お風呂上りに勝負下着はいて寝室に行ってみりゃー 先に風呂入ったダンナ様、ぐーぐーいびきかいてました。 てのが日常のような気が・・・
保管庫に行けばヤン夫妻の初体験の模様が実況されてるぞ フレデリカがヤン以外の男とやるなんてリョジョークでもないかぎり有り得ないと思うんだがこのスレなら有りか
ヤン夫妻の初体験読んできた。 フレデリカ視点ってのがよかった。 そしてラストで泣いた…
220 :
212 :2005/10/05(水) 02:19:34 ID:rmM8vk7x
いまだ書き終わらない現時点で88kb分書いてて、
そんな長いのもはやssの域を超えてるし
読んでる方がダレるだろ…とセルフ突っ込みしつつ書いてみる。
>>218 自分が書いてるミュラー×フレデリカはかなりの純愛路線です。
>>214 氏、
>>216 氏の書き込みにもあるとおり、
自分も本編終了後で書くならフレデリカの相手はミュラーだろうと思いました。
OVAしか見たことないけど一度フレデリカと会ってるし、
その前に会っていただろうキルヒアイスは……だし。
あのOVAの雰囲気のまま2人のエロシーン書こうとするとと
どうも陵辱路線は思いつかないです…orz
書き込みついでにちょっと聞きたいんだが、
原作まだ読んだことがないし、ぐぐったサイトの資料からss書いてると
いずれどこかで間違えそうので、
この際だから本編・外伝まとめて全部購入したいと思うです。
それで調べたらノベルズ版、文庫版、デュアル文庫版とあるわけだが。
1.版の違いでそれぞれ内容が違ってたりしますか?
(ノベルズにあって文庫、デュアル版に収録されてない話があるとかまたはその逆とか)
2.現時点で全部揃えられるのってどれですか?
誰か詳しい人、書き込みおながい。
デュアル文庫が一番揃えやすい。古本屋とかで探せば他の版もあるかも知れんが。 内容は、どの版でも変わらない。明らかな誤植は直されている(直っていないのもある)。 ちなみに、OVAと原作の設定は少し違うので、あまり気にせんでもいいのではないか。 投下を期待している。
牛種に脳内のっとられた長兄ねえ… なんとか膨らませられたらやってみよ。
デュアルは揃えにくかったぞ?倍の値段かかるし。古本屋で100円で売ってる場合もあるし、まあ地域によるわな 漏れは未知腹の絵だと萎えるから買わなかった
アル戦の新刊買ったけれど 牛の腕輪が三人出てきてうち処女は0っておい、一人は王女かもしれないのに。 相変らずガイエのエロシーンもどきはもどき以上のなにものでもなかった。
レイラは処女のまま助かってほしいと切に願ってるよ。
226 :
220 :2005/10/07(金) 23:11:08 ID:vzD6oJGp
>>221 、
>>223 レスdクス。デュアルで探してみる。
見つからなかったら近所の本屋で一括取り寄せするかな。
じゃ、続き書いてくる。ノシ
アスランというと篠原千絵のマンガに出てくる馬のイメージ。
うわ誤爆スマソ。
>>220 長いのは好きなのでアップされるのが楽しみ。
あとデュアル版は冊数が倍だから嫌だな。
絵があるのは良いけど。
230 :
名無しさん@ピンキー :2005/10/09(日) 00:29:49 ID:82IIX7vu
ボダンってあっけなく殺されすぎ。 航海諸兄かナルサスにやらせてやりたかった。
>230 ラ板への誤爆なんだろうけど、 このスレで聞くと、何かウホッな感じがするw
航海諸兄というとグラーゼでウホッって感じだな。
233 :
あとのまつり :2005/10/10(月) 11:13:55 ID:UXSVC0QY
「ククク、竜王たちはまんまと罠に嵌ったようだな」 ランバート(を乗っ取ったもの)は含み笑いをしながらグラスに入ったウィスキーを飲み干した。 核ミサイルを止めるため竜身に変化した竜堂兄弟は幌金神縄という宝貝で絡めとられた白竜王を追って 月面まで誘導されたのだった。 「こちらはこれで良い、よし行け!これで竜王たちはやつらの救援はできん」 ランバートは香港にいる部下に命令した。命令を受けた部下は異形の怪物たちを解き放った。 香港の夜景には不似合いの怪物たちが標的のいる亜南飯店に向かって飛び立っていった。 「始さんたち、大丈夫かしら」 半壊状態の亜南飯店の一室で茉理が呟いた。 「心配ないさあの4人なら、きっと無事に帰ってくるさ」 心配そうな茉理に蜃海が慰めるように言った。 気休めだな、と思いながらも虹川も水池も同じ気持ちであった。 ガシャン!!! 窓ガラスの割れる音が部屋中に響いた。割れた窓からは異形の怪物が何匹も入ってくる。 「飛天夜叉!!」 茉理が声をあげると同時に水池が持っていた銃を飛天夜叉に向けて撃った。 弾は飛天夜叉の左肩に当たった。水池は何発も飛天夜叉に向け発砲し何とか1匹を倒した。 「逃げろ!茉理君!!」 蜃海が叫んだ。だが飛天夜叉の数は多く、虹川、蜃海、水池はすでに自分たちのことだけで手一杯の状態となってしまい 茉理とはだんだん引き離されていった。 「きゃあぁぁぁ!!!」 茉理を追い詰めた飛天夜叉が茉理を2匹がかりで押さえ込みそのまま飛び立った。
234 :
あとのまつり :2005/10/10(月) 12:12:26 ID:UXSVC0QY
「ん、ここはどこ」 豪華なベッドのなかでようやく茉理が目を覚ました。そして今までのことをゆっくりと紡ぐように思い出していく。 「・・あのとき亜南飯店で、さらわれて・・注射を無理矢理打たれて・・・」 ガチャ、思考の途中で部屋のドアが開き見知った(知らなくてもよかったが)男が入ってきた。 「やあミス・トバ、久しぶりだ会えて嬉しいよ」 ランバートがあきれるほど陽気な声で茉理に挨拶をする。 「やっぱりあなただったの、だんだんやることが日本の政治家のように下劣で強引になっていくわね」 「なにあの3人と1匹なら無事なようだよ。飛天夜叉たちは無数の鳥に追い払われたっていうから」 信用できるかどうかはわからないが蜃海たちの無事を聞いて茉理は安堵した。 「それでここにわたしを連れてきたのはどういう用件なの」 「なに簡単さ、もうじきここに竜王たちが乗り込んでくる。正義の味方のようにね、となるとここは悪のアジト 悪のアジトには囚われたお姫様が定番だろう」 身振り手振りをまじえながらのたまうランバートにあきれながら茉理が問い返した。 「人質って訳、あまり効果はないわよ残念だけど」 これまでも竜堂兄弟のやり方を見ている茉理には滑稽としか思えないが、ランバートの笑いの底に不気味なものを感じていた。 「・・・効果はある・・」 ランバートの口からランバートではない者の声がした。 「・・効果はある!!」 もう1度叫ぶとランバートは頭を抱え苦しみだした。まるでその者の出現を拒むように必死のように見える。 (同じだ)と茉理は感じた。香港で見たあの時と同様ランバートが変化していくあの牛頭人身の怪物に・・・
235 :
あとのまつり :2005/10/10(月) 12:34:50 ID:UXSVC0QY
変化が終わったランバート(というより牛男)は茉理に近づきさらに言葉を続けた。 「効果はあるのだ、お前が我らの人質となれば竜王どもはともかく崑崙の連中は手を出せん! さらにお前をダシに竜王どもと崑崙を切り離すことも可能だ」 牛男が茉理を押し倒しチャイナドレスを引き裂いた。 「何するの!人質は殺したら効果はないのよ!!」 「殺しはせん、お前は俺の慰みものだ」 そう言いながらさらにチャイナドレスを破いていく、茉理の白い肌が牛男に晒された。 「力ずくで女をものにしようなんて最低ね!!」 茉理が牛男を睨み付けながら叫んだ。 「奪い、姦し、殺す、これが我ら牛種の業だ」 茉理の耳に生臭い息をかけながら牛男は茉理の手をベッドに縛り付けた。
236 :
あとのまつり :2005/10/10(月) 13:14:43 ID:UXSVC0QY
牛男の手が茉理の白い乳房を揉み始めた。張りのある感触が牛男を満足させる。 「小娘と思っていたが、良い肉体をしているな」 そう言いながら茉理の胸を揉み続け、さらに舌を伸ばし首筋から耳にかけて舐め回した。 「・・くッ・・うう・・」 おぞましさと嫌悪感で茉理が身をよじる。 さらに牛男の舌が体の下に流れ揉んでいた乳房を舐め始める。茉理は目を閉じ口をつぐんでじっと耐えていた。 「はァ!あァ!」 茉理の体がビクッと跳ねた。牛男の舌がピンク色の乳首に触れ軽く噛んだのだ。 「ククク、乳首が感じるのか、もっといじってやるぞ」 牛男が茉理の乳首を何度もつまみ、舐め、さらに噛んでいく、そのたびに茉理は体をよじらせていった。 「乳首はもういいだろう、今度はここを試してみるか」 そう言いながら牛男は茉理のパンティに手をかけていった。 「そ、そこはいや!」 茉理が脚を閉じ必死に抵抗する。 「フム、仕方ない」 牛男はベッドの柱に茉理の脚を鎖で固定させた。茉理の脚は大股開きのまま閉じることもできなくなった。 改めて牛男は茉理のパンティを切り裂いた。パンティがシーツの上に落ち、牛男の前に茉理の秘密の花園が広がった。
ほーーーおーーー神降臨!
238 :
あとのまつり :2005/10/16(日) 10:23:22 ID:qvFiLQ5X
ふっくらとした恥丘に牛男は手を伸ばし黒い森に覆われた場所をかきわけていった。 「やめて!触らないで!!」 茉理が牛男を睨みつけ叫んだ。だが牛男は茉理のアソコに手を触れ周りを弄るように撫でていった。 そして閉じられたままの茉理のアソコを指で押し広げていった。 「クククまだ膜があるな、青竜王とはまだ交わっていないのか」 牛男の卑猥な問いに茉理は横を向いて答えなかった。ただひたすら声を発せず歯を食いしばって耐えている。 そんな茉理をいたぶるかのように牛男の指は茉理のアソコを弄んでいく、やがて牛男の指が隠れていた小さなピンクの豆を剥き出していった。 「ひゃぁ!はぁ!」 そのピンクの豆に触れた瞬間、茉理の体がビクッと弓なりになった。 「ククク、ここが感じるのか誰にも見せたことのないこの部分が、ん〜?」 牛男が茉理の耳に囁くように問いかける。その間もクリトリスへの愛撫を続けていた。 「・・そ・そんなことない・・感じてなんて・・いないわ・・・」 強がる茉理だったが牛男の愛撫を受けるアソコからは意思とは無関係に愛液が溢れるように流れてきた。 「強がるな、ココからはお前が感じている証拠が溢れているぞ」 牛男が愛液で濡れた指を茉理の口に入れかき回した。 「ククク、さらに感じさせてやるぞ」 そう言うと牛男は茉理のアソコに頭部を埋め長い舌を伸ばした。大陰唇、小陰唇を丹念に舐めまわし 溢れてくる愛液を音を出してすすっていった。 (・・あぁ・もうやめて・・なめないで・・) 茉理は声を出さずに耐えていたが体は震えていた。やがて牛男の舌がクリトリスに触れた。 「・・ひゃあ!!はあ!!ああぁぁぁ!!!・・・・・」 クリトリスを舐められ軽く噛まれた茉理は魚のようにビクッと跳ねた。 「・・は・・・始・・さ・・ん・・・」 そう呟いて茉理の意識はだんだん薄れていった。
薬師寺涼子シリーズを頼みます
続き〜… ところで誰か漫画版のノリで始×茉理やって下さらんか。 原作よりラブコメ度が高くて楽しいのだが…
乙!ってまさか終わり!?じゃないよね?続きガンガレー(・∀・)ノ つかみんな「GJ」くらい言おうよ・・・
薬師寺シリーズはまだか?
あとのまつり氏グッジョブ!! 始の乱入はありなのか!?
>>243 乱入のタイミングが楽しみで見ているのだが、続きまだかなー
一目でソレと分かる所で乱入か、黙っていれば分からない状態で助けにくるかでかなり妄想出来る
あ、どうも。 でも前スレは全部読んでるのです。ありがとう。 あっちにある(というか今まで出た)のは一応全部原作寄りだと思ってるんだけど… どうなんだろ?
もしかしてマジで終わりなのか? 続き頼んますー…
248 :
名無しさん@ピンキー :2005/11/04(金) 05:09:38 ID:llj4IP7U
続き…というか助けて始さん! 間に合って〜(>_<)
茉理タン股開きっぱなしかぁ……
ほしゅ
251 :
名無しさん@ピンキー :2005/11/13(日) 19:03:41 ID:0M+/sP4a
乙です! 茉理、どうなるの?続き、求む。 それから、エロくないけど始×茉書いてもいい??
いいよ
>251 是非。 近頃このカプ多めで嬉しい。
今更銀英の疾風夫婦ネタなんかを投下してもいいだろうか? 現在始×茉祭りっぽいから躊躇。
いやあ全然オッケーでしょう。 とか云いつつ自分は実はよりによって銀英伝未読だったりするんだけどw どなたかRHDも…無理?
>254 是非読みたい!!
257 :
名無しさん@ピンキー :2005/11/20(日) 21:07:53 ID:TeCTwX/I
疾風夫妻待ってるよ(・∀・)ノ 個人的にはユリアンに開発されたカリンが上になってアンアンいってるのも見たいですけどドナタカー?
251も254も(屮゚Д゚)屮カモーン あと>255の「RHD」ってどういう意味なのか禿しく気になる
>>258 灼熱の竜騎兵(レッドホット・ドラグーン)のことじゃないかえ?
てすと
うわ間違えた。ごめん。 疾風夫婦ネタかます予定の>254です。 予想通り長くなってきたのでぶつ切り投下します。 一応エロ入れるつもりで、それも結構長くなりそうなんだが…。 鳥つけるんで回避したい人はNGワードに指定してください。
エヴァンゼリン・ミッターマイヤーに職場の夫からヴィジフォンが掛かってくる事は、そう珍しい事ではない。その時間帯が夕方なのも有り触れている。 しかし、今日はその内容が正反対だった。 夫から夕方にヴィジフォンが掛かってきた際、彼女は反射的に落ち込んでしまう。 何故ならいつも「今日は帰りが遅くなるよ。食事もここで済ませるし俺の帰りを待たずに寝てくれて構わないよ」…そんな事を申し訳なさそうな顔をして、妻に言うのが常だからだ。だから今日も、彼女はそれを想定していた。 しかし、違ったのだ。 今回、彼は「9時頃には帰れそうだから、良かったら食事を作っておいてくれないかな?いや、君は食事済ませてくれてていいんだけど」と妻に告げたのだ。 が、普段のヴィジフォンとは内容が正反対なのに、彼は相変わらず申し訳なさそうな顔をしていた。それが、妻には不思議でならない。 エヴァンゼリンは夫からの申し出に頷いた。そしてヴィジフォンが切れた後、小躍りしてしまった。それは彼女の夫が言う「燕のように軽やかな舞」だった。 きっかり9時に、その一軒家のチャイムが鳴る。エヴァンゼリンはその音を聴くと、キッチンから駆け出した。玄関先に着き、簡単な鍵を開け、次いで扉を開けると、そこには彼女の夫が立っていた。 「――ただいま、エヴァ」 「おかえりなさいませ、ウォルフ」 挨拶をしながらウォルフガング・ミッターマイヤーは僅かに屈み込み、妻の頬に軽く口付けた。 顔や体が近付いた事で、エヴァンゼリンには夫から微かに漂う汗の匂いが感じられた。軍務省は空調が効いているために汗ばむ事はない。おそらくは帰宅するまでに汗をかいたのだろうと妻は思う。現在は8月であり、オーディンの季節は夏であった。 見ず知らずの男性の匂いなど近くで感じたくはないものであろうが、エヴァンゼリンにとって夫は例外だった。ともあれ彼の口付けはすぐに終わり、顔が上がる。妻の肩に片手を置き、覗き込む瞳は柔和なグレーだった。 「遅いのに、すまないな」 そして彼はヴィジフォンの時のようにまた申し訳なさそうな顔をする。その夫の態度に、妻はにっこりと微笑んで見上げた。 「まだ9時ですわ。今から食事と言う家庭もままあるでしょう」 「…もしかしたら、君も食べてないのかい?」 妻の台詞に夫は驚いていた。ヴィジフォンで先に食事をしておくように勧めておいたというのに、自分の都合で振り回してしまったのだと思った。 エヴァンゼリンは肩に置かれた彼の手に、そっと触れる。それは彼女よりも一回り大きくて暖かかった。 「ええ。折角ですから御一緒したくて」 すみれ色の瞳が夫を真っ直ぐに見上げ、にこやかに微笑む。その笑顔に夫は少しはにかんだ。そして彼女の肩を軽く撫で、手を離す。 「…あ、ごめん。俺、先にシャワー浴びてもいいかな。歩いて帰ったら結構暑くって」 苦笑気味に彼は言い、もう片方の手に持っていた鞄を持ち直した。それを合図にするかのように、彼は玄関から屋内へ歩みを進める。 「構いませんわよ」 妻は当然のように歩調を合わせ、彼の隣を歩いた。
「エヴァンゼリンの料理は極上だ」と、ミッターマイヤーは酒の席で隙あらば親友に自慢する事が少なくない。 無論、結婚以前の同居も7年を数えるだけあり、彼女が彼の味の好みを把握しているのも大きいだろう。しかし、彼としてはそれを差し引いても、妻の料理はどんな高級ホテルで用意されたものにも負けないと信じている。 が、彼は食卓を見た時に、既に気付いていた事があった。 「――そう言えば、今日は少し豪華じゃないかな」 「お判りになりまして?」 「俺の誕生日だから?」 夫の何気ない指摘に、妻は一瞬動きが止まる。 「…覚えてらしたのですね」 「忘れてると思ったかい?」 「ええ、出勤される時には何もおっしゃいませんでしたから」 相変わらずにこにこと微笑を浮かべて言うエヴァンゼリンに、ミッターマイヤーは苦笑して自らの髪をかき回した。――君には敵わないなあ。そんな台詞を口にする。 そして彼は足元に持ってきていた紙袋を持ち上げた。それは妻は出勤時には見かけていなかった物である。 「まあ、俺もあいつにこれを貰うまでは、自分の誕生日なんかすっかり忘れてたんだけどさ」 そう言って彼は紙袋をエヴァンゼリンに手渡した。妻の手に、少々重さを感じる袋が持たされる。彼女は上から中を覗き込む。どうやら中に入っているのは、箱状のものであるらしい。 それを確認し、彼女は視線を袋の中から上げた。夫の顔に視線を戻す。 「――…ロイエンタール大佐からですか?」 「そうなんだ」 妻は夫が言う「あいつ」とは誰かという事をすぐに把握し、夫もそれを当然だと思っている。それが彼らの関係であった。 エヴァンゼリンはミッターマイヤーの頷きにより、その紙袋から丁寧に箱を取り出した。長方形状の箱であり、中身からはそれなりの重さを感じる。彼女は「夫の友人から頂いた物」と言う事で、努めて丁寧にその箱を開封する。 中から出てきたものは、ワインだった。
彼女は酒の事を全く知らないために、それにどのような価値があるものかは判らない。しかし箱の立派さなどを鑑みると、ある程度は高価な物ではないかと判断した。 しかし、普段このふたりの大佐がやり取りする酒類にしては、これがミニボトルである事が意外でならない。 彼女は夫と結婚して1年だが、夫が出征する日々が続き同居の期間はそれ程長くはない。そして未だに彼女はそのオスカー・フォン・ロイエンタールと言う人物と直に接した事はなかった。 ミッターマイヤーがその人物を親友と呼んで憚る事はなく、酒を共にしている事は知っている。が、その酒盛りの舞台は戦場以外では専ら酒場やロイエンタール邸であり、ミッターマイヤーがロイエンタールを自宅に招いた事はなかった。 しかしながら、ミッターマイヤーは自宅で独りで酒を嗜む事もある。その際、最低でもワインは、フルボトルで1瓶は消費される。独りでこうなのだから、ふたりで飲む時は如何ばかりかと、彼女は思いを巡らせていた。 そして「独りでの酒の状況」を、親友たる人間が想像出来ない訳がないと――つまりは、こんなミニボトルでは彼女の夫は酔いも楽しみも出来ないだろうと、彼女は踏んだのだ。 そんな彼女の思いを知ってか知らずか、ミッターマイヤーはにっこりと微笑んだ。 「フルーツワインだ。多分、甘くてさっぱりしている味だと思う」 「…そうなんですか?」 彼女は両手でミニボトルを持ったまま、そう言う。彼女には酒の事は全く判らない。ボトルの首と底にそれぞれ手を当てて持つ事すら、持て余し気味だった。 ――ともかく頂いたのだから、早くお注ぎした方がいいのかしら?いや、食事しているうちに少しは冷やした方が美味しいのかも…そんな事を考えている。 そんな彼女に、ミッターマイヤーは続けた。相変わらず、微笑んだままだった。 「あいつが、君に――だって」 「………え?」 エヴァンゼリンは夫が言った台詞を理解するのに数秒掛かり、更にそれを理解した後にも当惑が意識を支配していた。 ――何故、ロイエンタール大佐が私に?しかも、ウォルフが言うには御自分の誕生日をこのプレゼントで知らされたとの事だから…彼にとってこれはウォルフの誕生日プレゼントではなかったの?それなのに、何故――? そんな疑問が彼女の脳裏に浮かんでは消えていく。その状況を夫も見て取ったのだろう。笑みが苦笑に変わった。 「あいつが言うにはさ、君と一緒に酒でも飲めって」 「…私とですか?」 「ああ。――全くあいつと来たら…"自宅では奥方を交えずに酒を飲んでいるとするなら、その分の時間を奥方を共有出来ていないのを惜しいとは思わぬのか?" と言って、それを押し付けてくれたよ」 ミッターマイヤーは苦笑を浮かべ、両手を挙げてミニボトルの経緯を述べた。彼の脳裏にこの夕方の情景が浮かぶ。 ――月末間近で決済書類に埋もれた彼を発掘するようにして、親友はその紙袋を手渡したのだった。いつもながらの皮肉めいた口調とその視線も思い起こされる。
「……そうなのですか」 一方のエヴァンゼリンはそれだけ言って沈黙した。俯き加減になり、ミニボトルを手の中に持て余す。彼女の白い指がボトルの腹のラベルの辺りを所在なげに撫で回している。家事を人並み以上にこなす立派な妻であるにも拘らず、その手と指は客観的に見ても美しいものだった。 ミッターマイヤーも妻の様子に気付いた。――どうも、独りで浮かれていやしないか俺は?彼女の所在なげな姿に気付いた彼の頭にそんな思いが一瞬よぎる。 が、ふと彼女の指の仕草に眼が留まる。白く美しい指が濃く深い赤色のワインボトルを撫でている姿がそこにある。 次いで視線を上げていくと、家事をし易いようなゆったりとした服に包まれた細身の体があり、更にはうなじに掛かるクリーム色のくせっ毛が視界に入る。俯いた事で長い髪が顔に掛かってしまっているが、そこから節目がちな瞳と少女のような桜色の形のいい唇も垣間見えた。 実際の時間にしてみたら、ミッターマイヤーが彼女の妻に眼を奪われていたのはほんの数秒の事だった。しかし彼が再び我に返った時、彼はそれを数分にも感じていた。 その長い時間を妻に費やした事に対し、彼は思わず赤面する。明らかに何かが違った目で彼女を見てしまった自分を恥じた。 彼にとって幸いなのか、妻は未だに俯いたままである。数秒と言う実質的には短い時間だったのも手伝い、どうやら彼の様子には気付いていないようである。 ミッターマイヤーは軽く顔を左右に振った。シャワーを浴びたばかりで生乾きの蜂蜜色の前髪が、彼の視界を顔を振った回数だけ横切る。 「ま、俺もあいつが言う事は一理あるかなと思うよ。君もたまには飲むといい」 ミッターマイヤーが出したのは、誤魔化すような、不自然なまでに明るい声だった。しかし彼の台詞に嘘はなかった。親友が言う"奥方と一緒に過ごす時間"を彼は望んでいたし、一度は妻と酒を共に嗜んでもみたかった。 当のエヴァンゼリンは、顔をゆっくりと上げた。夫程ではないが癖のある髪が、彼女の顔に掛かり、落ちる。眼を細め、口元を綻ばせて彼女は言った。 「――…つまり、ロイエンタール大佐は、ウォルフに素晴らしいプレゼントを下さったおつもりなのですね」 「ん?」 ミッターマイヤーは彼女の台詞に視線を上げた。妻の顔を見る。料理が並ぶテーブルだが、そこから僅かに身を乗り出すようにして、彼女の顔に出来る限り顔を近づけようとした。 エヴァンゼリンは夫の視線を拒まなかった。そっとワインボトルを胸に寄せ、大切なものを抱きしめるようにする。そして彼女は夫を見た。小さな唇が優しい言葉を紡ぎ出す。 「私はあなたと一緒に過ごす時間が愛しいし、素晴らしいものだと思っています。――あなたもそう思って下さるのならば、良いのですが」 「勿論だよ」 当然のようにミッターマイヤーは笑った。そこにあるのは、親友が言う所の「気持ちのいい笑顔」と言う物だった。そしてエヴァンゼリンもまた、この微笑に魅せられてこの夫からの求婚を受けたのだった。 「………良い方ですね。ロイエンタール大佐は。そのうちにお礼をしたいです」 「これもいい機会だ、そのうちにあいつを誘うよ。――君の料理は絶品だって前から言ってあるから、実際に食べさせてやりたい」 ミッターマイヤーは頷いた。――ロイエンタールがミッターマイヤー邸での酒の招待を口実をつけて拒む理由を、ミッターマイヤーには何となく判るような気がしていた。しかし、何時かは妻を紹介してやりたいとも思っていた。 それならば、自分の側にも何らかの口実があればいいのだ。「プレゼントのお礼」とは、何と適切な口実だろうか。そして、そこまで正当な口実があって尚、招待を拒むような親友ではないとも気付いていた。ある意味義理堅い男だと、彼は親友に対して確信している。 エヴァンゼリンは夫に勝るとも劣らない、「相手の気持ちを和ませる笑み」を浮かべた。 「私もその際には、ロイエンタール大佐のために、腕を振るおうと思います」 「いや、普段通りでいいよ。それで充分美味しいんだから」 妻の台詞に夫は相好を崩した。 ともあれ、夫婦の会話はそこで一旦打ち切られた。彼らの眼前のテーブルには、未だ手付かずの料理が広がっており、これ以上続けていては冷めてくる恐れがあった。それに、仕事を終えて帰宅した夫は勿論、妻もそれなりに空腹だったのだ。 ひとまず夫の親友からのプレゼントのワインは冷やされ、今は妻が用意していたワインが夫のために開けられる事となった。
原作への深い愛が感じられる… 続きを期待してます。ハァハァ
>疾風 イイ(・∀・)ネー 幸せな家庭が目に浮かぶ。 続き楽しみ〜
おそらくそういう事かと思う。 邪魔になってはいけないので予測は繰り広げない。 ひたすら禿しく期待してる。わくわく。
なんて優しく可愛らしい話なんだ〜!エロじゃなくとも本当に楽しめる、癒される作品! 期待!!
>268 ノシ 自分も多分268と同じ事を考えた 今はワクテカしている。 エロ無くても万年新婚夫婦っぷりに和む〜
271 :
名無しさん@ピンキー :2005/11/26(土) 16:39:50 ID:IS9hbliQ
「グムーーーーーッッッ!!!」 真っ赤に上気した表情から漏れる淫らな吐息をする茉理をみた牛男が雄叫びのような声をあげた。 牛男は表情こそ人間には変わってないように見えたが明らかに興奮して理性を失ったようだった。 ビチッ!ビシッ!ビリッ!ビリッ!ビリーーッッ!!! 牛男の着ていた高級スーツが膨張した体に耐え切れず破れて散っていった。 「ヒィ!いやあァァァァァァァ!!!」 我に返った茉理が全身を黒い体毛で覆われた牛男を見て悲鳴をあげた。手と足以外は本物の牛とまるで変わらない そして何より茉理が驚いたのは30センチいや40センチはある巨大な男根だった。 「グムーーーーーッッッッ!!!」 牛男は茉理に襲い掛かり強引に覆いかぶさった。だが茉理は身をよじらせベッドのシーツをつかんで必死の抵抗を見せた。 牛男は身を固くして抵抗する茉理をいたぶるかのように長い舌を延ばし茉理の耳を舐め回していった。 「クッ、ンン、いや!やめて!!放して!!」 牛男も意外な茉理の抵抗に辟易していたが、やがて手を茉理の膝から放すとその手で茉理の顎をつかんでいった。 茉理にとって不幸だったのは大声をあげていたため口を開いたままであったことだった。 口を閉じられないように牛男は茉理の顎をガッチリと掴んでいた。やがて茉理の眼前に巨大な男根が迫ってきた。 「ンーー!ウーー!ンンン!!!」 首を振って抵抗する茉理だったが牛男はそれに構わず茉理の口の中へ男根をねじ入れていった。 あまりの大きさに茉理の顎は外れそうになった。さらに物凄い悪臭が鼻を突いた。 「んぶう!んぐう!!んんーーー!!!」 茉理の口腔内の圧迫感とぬくもりで牛男はすぐに射精した。俗に言う「牛の一突き」というやつだ。 だが牛男は茉理を放そうとせず射精の余韻をじっくりと味わっていた。茉理は息苦しさに耐え切れず 牛男の精液を喉の奥から体内へと嚥下していった。
272 :
あとのまつり :2005/11/26(土) 17:30:19 ID:IS9hbliQ
存分に余韻を味わった牛男はようやく茉理を解放した。 解放された茉理は激しく咳き込み嗚咽をもらした。自分の非力と始に対する罪悪感、そして牛男への怒りで・・ そんな茉理の気持ちも知らず牛男は立ち上がるとまた茉理に近づいていった。そのときである。 ガンッッ!! 牛男の頭を茉理が側にあった壷で叩きつけたのだった。これには牛男もたまらず頭をおさえてうずくまった。 その間に茉理は牛男をはねのけ部屋から飛び出していった。薄暗い廊下を茉理は必死に走っていった。 廊下はただの一直線であり身を隠す部屋などは一切なかった。つまり敵を迎撃するには絶好といえた。 だが茉理にとっては少しもありがたくない、全裸で走っているので替わりの服を調達したいところなのだ。 ベッドのシーツでも奪えばよかったのだがいまさら言っても仕方がない。 「こんなとき映画やドラマならドレスの入ったクローゼットのある部屋があるものだけど・・・」 だが現実は薄暗い廊下が延々と続くだけ・・四人姉妹の荘園の広大さに呆れるばかりであった。 何度目かのドアを開けたときに視界が開けた。といっても外に出たわけではなくそこはサンルームだった。 だが先程まで何十分も走った廊下に比べるとはるかに明るく開放感はある。 そのサンルームはいくつかの部屋に通じているようだった。まず茉理は服と靴を調達するため その部屋のひとつへと入っていこうとした。 「きゃあァァァ!!!」 ドアを開け室内に入ろうとした茉理の目に怒りに震える牛男が立っていた。 「な、何でどうして・・・」 あまりのことに茉理もそれ以上言葉が出ない。おそらく先回りしていたのだろう。なにしろここは牛男の城なのだから。 茉理は身を翻し走ろうとしたが躓いて倒れてしまった。牛男は茉理に迫ると押さえつけ手錠をかけた。 そして手をふさがれた茉理の股を開かせそのまま持ち上げるといまだに怒張している男根を茉理のアソコにこすりつけた。
「牛の一突き」ワロタ。早すぎ。
おお、複数の職人さんが降臨している。GJ
茉理タン… まだ間に合うぞ始兄さん。
本当にねえ… 個人的には何とか間に合う方向に行って欲しいが… ワクワクとビクビクが混ざった状態で待ってます。
茉理タン 「牛の一突き」って挿入されたら即妊娠かよ アブねぇ・・
遅い時間ながらも、和やかに夫婦の食事は進んでいき、一段落する。 ミッターマイヤーは今現在口にしている料理が如何に素晴らしいものか、自分にとって嬉しい事か、それを調理してくれたエヴァンゼリンに対して楽しげに語る。そしてエヴァンゼリンはその評価に対して気恥ずかしさと共に、嬉しさと微かな誇らしさをも感じていた。 テーブルの上の料理がある程度片付いた段階で、先程のミニボトルのワインが冷蔵庫から再登場した。それは食事の間に程好く冷やされていた。 ミッターマイヤーが慣れた手付きでそのワインの栓を抜く。彼は既に妻が用意してくれていた赤ワインを1本開けていた。しかしその手付きからは酔いが全く感じられない。 ワインの栓が抜けると、途端にその口から微かな香りが漂ってくる。それは甘く、それでいてさっぱりとした香りで、それとなくそのワインの質の高さが伝わってくる。 「――ほら、エヴァ」 親友から酒を貰った事、その親友が少しは妻を気にかけていてくれた事、酒を妻と楽しめる事――それらが余程嬉しいらしい。 ミッターマイヤーは本当に楽しそうに笑いながら、妻にワイングラスを渡す。細身のグラスで、エヴァンゼリンの手には丁度いい大きさであるように思えた。 エヴァンゼリンは少し戸惑ったものの、夫の手からグラスを受け取った。困ったような微笑を浮かべ、感触を確かめるようにグラスを軽く何度か傾けてみる。そして夫に対してにっこりと笑いかけ、グラスを差し出した。 ふたりの視線が合う。すると、どちらからともなく顔を傾けて、少し声を出して笑った。逆の立場は良くあるのだが、夫が妻に酒を注ぐという行為はこの夫婦には初めての事である。普段やらない事をやるからか、何となく気恥ずかしかったのだった。 「…えーと、注ぐよ」 「はい」 少し笑った後、夫がそう言い、妻は頷く。その間もふたりは笑っていた。注がれていくワインの香りがふたりの間に漂っていく。
そしてエヴァンゼリンはグラスの半ばまで注がれたワインをじっと見ていた。彼女は酒類を殆ど飲んだ事がない。彼女にとって酒とは夫が飲むものであり、或いは料理に使うためのものであった。だから今のこの状況は、彼女にとって馴染みがない。 ワインを透かして向こう側を見ると、彼女の夫が微笑んで見ている。それに気付いたエヴァンゼリンは苦笑してしまう。 漂ってくる香りにはアルコール特有の匂いが含まれている。しかし果物らしき爽やかな甘い匂いは、彼女が嫌いなものではなかった。 少しどきどきしながらもグラスに口をつけ、傾けてみる。彼女は中の液体を軽く口に含んだ。香りと同じく、アルコールの風味と同時に果物の甘さらしき味が口の中に広がる。アルコールはそれ程きつく感じられず、ジュースのようなものとして飲む事が出来そうだった。 彼女はそれを一口飲んでみた。さっぱりとした風味が喉を伝わっていく。 「…どう?」 彼女の喉が動くのを見届けて、ミッターマイヤーは感想を訊く。エヴァンゼリンは彼の顔を見やる。どうも、不安がっている様子だった。 「…え…その…――美味しいですわよ」 「――それは良かった!」 ミッターマイヤーは軽く手を叩き、そう叫んだ。顔には満面の笑みが浮かんでいる。そのワインは彼自身がプレゼントしたかのような喜びようである。 彼としては、親友が渡すようなワインなのだからその質を心配してはいなかった。が、万が一と言う事もある――そう思い、万が一妻の口にワインが合わないと言う事態を心配していたのだった。 しかしどうやら妻はそのワインを美味しいと言い、それも本心からであると思われた。だから彼は安堵したのだった。 その夫の心情は、妻にも良く判っていた。だから、それを微笑ましいと思った。 エヴァンゼリンの胃まで下りたらしい液体が微妙な熱を持っている。だからそれは紛れもない酒なのだろうが、口当たりはとてもいい酒だった。彼女はグラスから口を離し、下ろした。夫の顔を見て言う。 「私はお酒の事は良く判りませんが、このお酒は飲み易くて助かります」 「そうか。――あいつは本当に気遣いが上手い奴だなあ…」 「明日お会いになったら、私に替わってロイエンタール大佐にお礼を申し上げて頂けますか?」 エヴァンゼリンの申し出に、ミッターマイヤーは頷いた。そして自分のグラスを傾ける。彼が消費している赤ワインは、そのグラスに残っているだけで終了だった。酒量としては普通の晩酌だった。 再びグラスから一口飲みつつそれを見ていたエヴァンゼリンは、不意に自分のグラスを夫に差し出した。 「あなたもいかがですか?」 「…え?俺?」 妻の台詞に、夫は戸惑う。微笑む彼女の顔と、その前のグラス、そしてグラスの中で揺らめく液体を見比べるように眺めやる。妻は酒に慣れていないだけあってか、既に頬が軽く色付いている。彼が彼女のそんな顔を見るのは初めてだった。
「いや、それは君のワインだから」 ミッターマイヤーは妻の申し出を固辞しようとした。片手を挙げて掌をそっと前に突き出し、彼女のグラスを押し留める仕草をしてみせた。直接グラスに掌が当たっている訳ではないが、エヴァンゼリン側からはグラス越しの視界全てが大きな掌で覆われていた。 が、エヴァンゼリンは尚も微笑を浮かべていた。グラスをその場で軽く揺らす。 「一口なら宜しいでしょう」 「悪いよ。それはロイエンタールが君にあげたものなのだから」 「彼にお礼を言うからには、あなたも味見をしておくべきではないですか?」 「………それは、否定できないな」 固辞してきていたミッターマイヤーも、エヴァンゼリンの論拠に対して遂に陥落した。――物腰柔らかでにこやかだけど、筋は曲げない。こういう所が敵わないなと、彼は思う。しかしそれは常々と同じく、悪い気分を引き起こすものではなかった。 「じゃあ、喜んで御相伴に預かるよ」 そう言ってミッターマイヤーは笑った。今まで固辞の意思表示を表していた片手をそのまま伸ばした。グラスを持つ妻の手に、自らのその手を上から重ねる。 エヴァンゼリンにとっては、自分より体温が僅かに高く、自分よりも一回り大きな掌が重ねられてきていた。手の甲から感じられる感触に彼女は何故かどきりとした。 彼女の夫はそんな心情を知らないまま、重ねた手をそっと引く。エヴァンゼリンの手ごと、ワイングラスを少しだけ自分の側に引き寄せた。ミッターマイヤーはもう片方の手をテーブルに突き、軽く腰を浮かせる。身を乗り出して顔をグラスに近づけた。 妻の手に自らの手を重ねたまま、グラスを傾ける。彼は妻の眼前で、勧められたワインを口にした。 彼の口はすぐにグラスから離れる。重ねた手から力をそっと抜き、妻の手を引くのを止めた。しかし腰は浮かせたままで、体を乗り出した格好のまま、彼はエヴァンゼリンの顔を覗き込む。 「――うん、さっぱりしてて飲み易そうだね。あいつは本当に酒の選び方が上手い」 ミッターマイヤーは先程口にした飲み物に対してそう論評した。普段から酒を飲み慣れている彼にとってはそれは果物ジュースのレベルでしかなかったが、飲み慣れていない妻には丁度いいアルコール分であるように、彼には思われた。 と、彼は妻がグラスを手にしたまま何も言わない事に気付いた。彼女は頬を微かに赤く染め上げ、何やら惚けていた。客観的に心ここにあらずと言う印象を与える表情だろう。
「…エヴァ、どうかしたかい?」 「――え?いえ、何も…」 ミッターマイヤーの呼び掛けに、エヴァンゼリンは反応した。取り繕うように微笑む。 「あなたにもこのお酒が素晴らしいものに思えるなら、本当にそうなのでしょう」 そう言って彼女はにっこりと笑い、グラスの中の液体を飲んだ。が、彼女の内心は何故だかどぎまぎしていた。――まさかウォルフの顔に見とれていたなんて、そんな恥ずかしい事言える訳がないじゃない。そんな思いがよぎっていた。 「ロイエンタール大佐は私達の事を良く理解されているのですね」 「…そうなのかもしれないな」 内面の動揺を上手く誤魔化そうとしているエヴァンゼリンの台詞に、ミッターマイヤーは苦笑した。笑いながら鼻の頭を掻く。 「きっと、君へのワインがプレゼントの主体ではなくて、こうやって君と俺が一緒の時間を過ごせるようにしてくれたのが、あいつなりの俺への誕生日プレゼントのつもり…なんだろうな」 「そうなのでしょうね」 エヴァンゼリンは笑顔で相槌を打ち、グラスを下ろす。元々グラスの半分程までしか注がれていなかったワインは、既に失われていた。 それに気付いたミッターマイヤーはミニボトルを手に取り、再び妻のグラスに注ぐ。ミニボトルだけあって量は少なく、このグラスに最後まで注ぎ切った時点でボトルから液体はなくなってしまうだろう。 エヴァンゼリンははにかみながら夫に対して軽く会釈をし、グラスに口をつける。何故だか彼女は今、目の前の夫の「気持ちのいい笑顔」を見るのが気恥ずかしかった。 これが酒に酔うと言う事なのか、それともこういう気持ちを誤魔化すために酒に酔いたくなるのか――彼女には良く判らなかったが、結果的にグラスを傾ける事に逃げていた。 口にしている酒は確かに彼女の口に合うものだったが、彼女にその味を楽しむ余裕はなかった。前述の理由の他にも、「夫の親友からの贈り物」だから残す訳にはいかないと言う配慮も働き、早目に飲み干そうとしていた。
どうやら、それが良くなかったらしい。 グラスから酒が無くなった頃には、エヴァンゼリンは俯き加減になってしまっていた。手にしたままだった空のグラスを何とかテーブルの上に戻す。そのままだったら床に取り落としていた事だろう。 彼女は両手をテーブルに突いた。顔を支えるように手で覆う。手に伝わる顔はとても熱いが、その掌自体もかなり熱を持っているように彼女には思われた。体の中心から鼓動の度に熱が発せられている。 「――エヴァ、酔ったかい?」 流石に心配そうにミッターマイヤーは声を掛け、自分の席を立つ。 「はい…どうやらそのようです」 その声にエヴァンゼリンは顔を上げた。夫に対して少しだけ微笑んでみせる。 慌てて彼は妻の隣に移動する。酒精によって真っ赤に染まった彼女の顔を見下ろした。目元まで赤くなり、その眼はとろんとしていて微かに潤んでいる。 「普段、君は酒を飲まないからね。それだけで酔うものなのか」 「そうみたいですね…」 妻は夫の心配そうな顔と声をよそに、再び顔を伏せた。腕で顔を支えようとするが、それすら億劫になってそのままゆっくりとテーブルに突っ伏してしまう。――みっともない。彼女は自分の状態をそう思うが、体が全く言う事を利こうとしなかった。 ミッターマイヤーは足早にキッチンに行き、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取ってくる。しっかりと冷えているそれをグラスに注ぎ、妻の前に置いた。力を失っている妻の片手を取り、グラスに指を絡ませる。妻は怪訝そうに顔を僅かに上げた。 「とりあえず水だけでも飲んで」 夫の勧め方は真剣そのもので、思考能力が下がっている妻はそれに素直に従った。緩慢に体を動かし、グラスに口をつけた。口の中に冷たい液体が侵入してくる。 どうやら体はそれを欲していたらしく、彼女はゆっくりとグラスの中の水を飲み干していった。喉を通過していく水が彼女の体を冷やしていく。酒による熱が若干奪われたように思えた。 水がなくなったグラスをミッターマイヤーの手が取り上げる。そして彼はエヴァンゼリンの頬に手を当てた。彼女の容態を確かめるかのように、顔を近付ける。 彼の視界に潤んだすみれ色の瞳が映る。桜色の唇から漏れる吐息からは僅かにアルコール分を嗅ぎ取る事が出来た。もっとも、それ以上のアルコール分を彼自身が摂取している。 「――吐き気があるなら遠慮なく言って」 「…いえ、それはありません」 間近に迫っている夫の顔に妻は微笑む。確かに吐き気はなかった。単に酒精の熱さに負けただけのようだった。その顔色は悪くなく、夫も妻が遠慮して嘘をついているようには思えなかった。 「そうか。じゃあ早く眠った方が良さそうだ」 安堵したように彼は笑い、すっと体を妻から剥がす。妻が座る椅子の前で前傾姿勢を取っていた彼だが、一旦上体を伸ばした。 が、次の瞬間には腕を彼女の下に差し込んでいた。片腕を彼女の膝の後ろに、もう片腕を背中に掛けて、そのまま力を込める。彼はあっさりと妻を抱き上げていた。
あまりにも軽々と抱き抱えられた事にエヴァンゼリンは驚いた。自分の足が床についておらず、宙に浮いている。彼女にとってこれは結婚式の時位しか記憶にない抱かれ方だった。 ミッターマイヤーはそのまま歩みを進める。リビングから廊下に出ようとしていた。 「ウォルフ、あの」 「どうかした?」 戸惑ったような声を上げる妻に対し、ミッターマイヤーはにこやかに笑い掛けた。人ひとりを抱え上げて歩いている状況とは思えない、普通の態度だった。 「独りで歩けます」 「無理しないでいいよ」 「…重いでしょう?」 「そんな事ないよ。君は軽いし、そもそも俺は軍人だ。将官になれば判らないが、現状ではまだまだ実戦部隊に籍を置いているんだからね。女性を難なく抱えられる程度には鍛えているよ」 全ての軍人がここまで鍛えて力があるのかはエヴァンゼリンには確証は持てなかったが、少なくとも自分の夫が小柄ながらも体操選手のような引き締まった体である事は知っていた。おそらくはバランスよく筋肉がついている体なのだろう。 とりあえず夫の邪魔はしないようにと彼女は不用意に動かない事にした。大人しく抱き抱えられたままに任せ、夫を見上げる。 彼は前を見て歩いていた。私服のシャツのためか上のふたつ程度のボタンを外しており、そこから垣間見える首筋と鎖骨は逞しい。蜂蜜色の前髪が歩く度に微かに揺れる。彼女はそれを見ていた。 ふと気付いたように夫が視線を下にやる。夫の顔を見ていた妻と、視線が合った。それに対して夫は目を細めて笑う。グレーの瞳が柔和な色を醸し出した。 瞬間、エヴァンゼリンは顔が赤くなるのを感じた。心臓が早鐘のように鳴る。落ち着こうと息を大きくついた。――さっきから、どうかしているわ。彼女はそんな事を思った。 彼女は自分の事ながら、普段とはどうも心の動きが違うように思えていた。何故かと理由を探すならば、やはり普段と一番違う事――飲酒にその原因を見出してしまう。普段やらない事をやるのはやはり考え物なのかもしれないと彼女は結論付ける。 そう思ったものの、彼女の中から動揺が消え去る訳でもない。鼓動は先程よりは遅くなったものの、平常心とは言えない状態を保っている。 そして水を飲んで少しは冷やしたものの、体は相変わらず火照ったままだった。廊下の外気に触れて少し冷えた自分の服が、肌に擦れる。それが心地良いような微妙な感触を彼女にもたらしていた。 彼女が内心の動揺を夫に悟られる事なく分析しているうちに、ミッターマイヤーは寝室の前に辿り着いていた。そこまでの歩調は全く変わる事がなく、やはり彼にとって妻の体重は大して問題にならない事であったようだった。 彼は妻の背中を抱いたままの片手で器用に扉のノブを回し、鍵を開ける。そのまま手を離し、肩で扉を押し開けていた。
ミッターマイヤー家の夫婦の寝室は常日頃綺麗に片付けられている。妻の努力の賜物ではあるが、もう一方の使用者である夫も整理整頓を心掛けているからなせる業でもあった。 扉を開けたばかりの室内は、程好く暑い。夜になったとは言え、オーディンの夏の終わりの気温はまだまだ高かった。ミッターマイヤーがエアコンのスイッチをオンにした事で、おそらくはすぐにそれも冷える事だろう。 次いで彼は部屋の明かりをつける。暖かい色をした室内灯が、調度類を照らし出す。寝る前であるが、とりあえずは妻をベッドに横たえるまでは明るさを絞るのは止めようと彼は思った。 「ウォルフ、ごめんなさい」 「いや別に俺は構わないよ。夫婦で気を遣うってのも何だと思うし」 詫びの言葉を投げかける妻に対して、夫は微笑むだけだった。そのまま歩みを更に数歩進める。綺麗にシーツが張られたベッドが前にあった。夫婦揃って小柄であるために、そのダブルベッドは彼らにとって少々広かった。 ミッターマイヤーは体を曲げる。腕の中のエヴァンゼリンをゆっくりとベッドの上に降ろす。腰と背中の辺りから彼女の体を横たえ、邪魔にならないように優しく腕から力を抜いた。彼女の体重を受け入れたベッドが微かに軋む。 ベッドのシーツは夏の気温を含んでいたが、エヴァンゼリンにとっては自分の体温の方が更に高いように思われた。彼女自らの体と服とシーツの温度の差異は、それぞれが密着した事によってそのうちに解消されるだろう。 ミッターマイヤーはゆっくりと腕を彼女の体から抜く。そして彼女の足に手を添えた。優しく彼女の靴を脱がせにかかる。夫の行動に、エヴァンゼリンは慌てた。片腕を突いて上体を浮かせる。 「あなた、自分でやりますから」 「気にしないでいいよ。君は休んでていい」 笑ってミッターマイヤーはエヴァンゼリンの靴に手を掛けた。軽く力を入れるだけで靴は脱がせられる。エヴァンゼリンは微妙な圧力から足が解放された事に気持ち良さを感じる。 結局彼女が押し留める間も無く、ミッターマイヤーは妻の靴を両方とも脱がせてしまった。彼はその靴をベッドの足元の隅にきちんと並べ揃えて置く。 それから彼は妻の元に戻り、妻のブラウスに手を掛けた。気が楽になるようにと言う観点から、ボタンを上から数個開けてやる。 「気分は今も悪くなっていないかな?」 「はい、大丈夫です」 「なら寝てしまえば、起きた時には酔いも覚めていると思うよ」 ミッターマイヤーはそう言い、掌で彼女の額を撫でた。その手が離れる間際、額に掛かるクリーム色の髪の一房を額からそっと払う。そしてその手はそのまま彼女の頬を掠める。熱い頬に触れる別の感触に、エヴァンゼリンは熱い息をついた。 ミッターマイヤーは妻に笑いかけ、立ち上がった。自らの蜂蜜色の後ろ髪を軽く掴む。 「――じゃあ、俺はちょっと片付けてくる」 「そんな、あなたにそこまでして頂く事は」 「何、洗い物をやっておくだけだよ。何処に片付ければいいかは判らないし」 妻の言葉に対して彼は苦笑して言う。肩を竦めて両手を挙げる。彼は妻の家事に言葉を挟む事は極力しないが、手伝う労力は惜しまない夫だった。 「俺の事は気にせずに君は休んでいなさい。――いいね?」 そう言ってミッターマイヤーは再び屈み込んだ。ベッドに肘を乗せ、横たわる妻の顔を間近で見られるようにする。至近距離で視線を絡め、眼を細めた。それから彼は顔を上げ、彼女の額に軽く唇を落とした。 その感触にエヴァンゼリンは震えた。自分の体温が一気に上昇するのを自覚した。頬すら一気に紅潮したのではないかと彼女は思ったが、目の前の夫は全く意に介していない様子である。 彼女の額から唇が離れていく感触がして、その後にはその辺りを軽く指で撫でられる感触が続く。潤んであまり鮮明ではない視界に映るのは、普段通りのにこやかな夫の笑みだった。 ――じゃあね。エヴァンゼリンは彼の唇がそんな言葉を紡ぎ出すのを聴いた。何故だか判らないが、彼女はそれに過剰に反応した。 その挨拶自体は日常的な会話であるにも拘らず、彼女は彼に行かないで欲しかった。
「――お待ちになって下さい。ウォルフ」 「ん?」 妻に呼び止められ、ミッターマイヤーは声を上げる。立ち上がろうとしていたが、一旦それを中断した。 彼女はそんな彼の両頬を、両手で挟んだ。エヴァンゼリンは自分の掌が汗ばんでいる事を自覚している。そしてその体温が夫に伝わる事を恥ずかしく思った。しかし彼は微笑んでいるだけだった。 エヴァンゼリンは夫の頬に添えた手を、ゆっくりと動かす。感触を確かめるように指を頬に這わせる。掌を動かして頬の感触を確かめ、指先で目許や眉などにも触れた。それらの感触に彼女の心が穏やかになる。彼女は瞼を伏せた。 ミッターマイヤーは妻の好きなようにさせていた。おそらくは酒に酔っているのだろう。だからあまりに迷惑になる行為以外は受け入れるつもりだった。妻も一晩寝てしまえば、この行為をすっかり忘れてしまっているだろうから。 それに彼には妻がここまで酒に弱いとは想定外であり、なのに酒を勧めてしまったと言う、彼にしてみたら「負い目」がある。とは言えその元凶とも言える親友を責める気にはなれないのが、彼だった。 エヴァンゼリンの指はミッターマイヤーの首の後ろに回り、長い後ろ髪を掻き分けている。彼は自分の髪をいじったり掻き回したりする癖を持っていたが、他人にそれをやられるとなると戸惑わざるを得ない。――やはりこの髪、鬱陶しいかなあ。そんな事を思っていた。 「――ウォルフ」 不意に妻が彼の名を呼んだ。それに彼は微笑みかける。 すると、エヴァンゼリンの瞼が薄く開く。目許を薄く染め上げ、潤んだ瞳が明らかになる。その瞳をミッターマイヤーは見ていた。かなり酔ったのか、それにしても――。 彼がそう思っていた時だった。 エヴァンゼリンは彼の首筋に回した手に力を込めた。 普通の女性の力である。普段のウォルフガング・ミッターマイヤー大佐ならば、そんなものには全く動じなかっただろう。しかしここは寝室であり、相手は酔った妻である。彼にとって、全く不意を突かれた事態だった。 彼はそのまま引き寄せられていた。慌てて肘に力を込めるが、眼前に妻の顔がある。彼の納まりがついていない前髪が、彼女の頬に落ちるまでに、近い。 ふたりは最接近した距離のまま、見詰め合う。ミッターマイヤーは意外な事態に戸惑った表情を浮かべているが、エヴァンゼリンは潤んだ瞳のままで夫を見上げていた。 エヴァンゼリンの形のいい唇が微かに動いた。ミッターマイヤーは吐息を感じつつも、彼女が何かの言葉を紡ぎ出しているように思えた。 彼女の手に軽く力が込められる。ミッターマイヤーは先程とは違ってそれに反応する事は出来たが、敢えて抵抗する必要性は見出せなかった。 引き寄せられるようにして、彼は妻と唇を重ね合わせていた。
やったー。疾風夫婦キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!! (;´Д`)ハァハァ エヴァたん酔ってるよ (;´Д`)ハァハァ
エヴァたんカワイス 続き楽しみにしてるよ!
わお♪エヴァタンちょっとリードなのがイイ! ドキドキする疾風かわいいよ やっぱり愛のあるエロはいいねぇ
花木蘭(妹の又蘭でもよし)キボン…
木蘭に妹なんていたっけ?
色目に一服盛られたエヴァたん‥‥ハアハア
>290 ガイエ版には出てこないけど原典には妹が出てくるバージョンの話がある
うをををエヴァタンいいよー。キスだけなのにドキドキしますた(;´Д`)ハァハァ
股間のベイオウルフが一斉射撃! ところでミが種無しなのか、エヴァが不妊体質なのか。
妻の柔らかな唇の感触に、ミッターマイヤーは眼を細めた。彼女のその口元が微かに開き、吐息が漏れる。それから探るように口の中に舌が差し込まれてきた感触が彼に伝わり、彼はそれを受け入れた。 自らもやんわりと舌を絡めてやる。彼は妻から微かに甘い味を感じ取ったが、おそらくそれは先程まで互いに口にしたフルーツワインの残り香だろう。しかしその微かな甘味が彼に何かを錯覚させた。それは彼を引き寄せている妻も同様であった。 エヴァンゼリンは相変わらずミッターマイヤーの首筋に手を回し、彼の顔を引き寄せていた。口内で舌を絡めている間、その手は夫の後ろ髪を梳る。 妻から与えられる様々な刺激に、ミッターマイヤーは自分が覚えている錯覚が大きくなっていくのを感じ、眉を寄せた。ベッドに肘を突いて上体を支えていたが、その手をエヴァンゼリンの頬に伸ばす。彼女の頬を優しく撫でると、肌が微かに濡れている感触がした。 何時しかエヴァンゼリンが引き寄せるのと同様に、ミッターマイヤーも彼女に覆い被さる格好になる。そして彼らの口付けも長く、深く、激しいものになっていた。息を継ぐために軽く口を離してはまた角度を変えて口付け、吸う。 夫の髪を撫でる妻の手はそのうちに彼の髪全体を撫で回し、時には何かに耐えるように掴むようになっていた。重なり合った上体を軽くよじらせる。 不意にエヴァンゼリンの唇から、夫の唇がゆっくりと剥がされた。ミッターマイヤーはベッドに突いた肘に力を込めて、自らの上体を僅かに持ち上げたのだ。 それにより顔も僅かに上がり、ふたりの口付けも中断された。それでも未だに彼らの顔は最接近したままで、互いの息が顔に感じられるまでの距離だった。 エヴァンゼリンは不思議そうな表情をして、夫を見上げていた。そのすみれ色の瞳は潤み、ある種の熱に浮かされている。口に残る優しい感触が名残惜しく思えて、彼女は自らの唇に軽く舌を走らせる。彼女の口の中の唾液が僅かに粘り気を帯びていた。 見下ろすミッターマイヤーからは、彼女の口の中に赤い舌がちらちらと動いて見えている。その様子に彼は軽い興奮と、同時に軽い困惑を覚えていた。ともあれ、彼はそんな妻の頬を優しく撫でる。 「――ウォルフ?」 頬を撫でる暖かい手の感触に満足しつつも、エヴァンゼリンは小首を傾げて夫の名を呼んだ。 「…えーと…」 名を呼ばれた側は、何故か苦笑してしまった。彼は肘に更に力を込め、腕全体を伸ばす。上体を完全に妻から引き剥がした。しかし彼女を覗き込むような顔の向きは変わる事はない。 苦笑を浮かべたまま、ミッターマイヤーは軽く自らの髪を掻き回した。今浮かぶ彼の表情には困惑と言うよりも、むしろ照れ臭さが見て取れた。 それをエヴァンゼリンはじっと見つめている。今も尚残る夫の唇の感触に、彼女の体は熱を保っていた。濡れた唇から漏れる呼吸が、彼女自身にとっても熱く感じられる。 沈黙はそれ程長くは続かなかったが、それでも1分弱は彼らは何の言動も起こさなかった。室内にはエアコンの作動音と風の音、そしてそれに紛れるように呼吸音が伝わっている。 それらの静かな音を遮り、ミッターマイヤーは口を開いた。にっこりと微笑み、エヴァンゼリンに言った。 「――俺を誘っているなら、部屋の灯りを消そうか」
このミッターマイヤーの発言は、エヴァンゼリンの体温を急上昇させた。本当に実測値で体温が上がったかどうかは謎だが、少なくとも彼女としては「火が出るかと思う」程に体温を上昇させたような気がした。 「――誘…う…!」 声がそれだけしか出てこない。出てきた言葉すら、まともに発音出来なかった。彼女は顔を真っ赤にさせ、次いでその顔を自らの両手で覆う。 恥ずかしくて仕方がない。顔を覆ってもまだ駄目なような気がして、彼女は体ごと夫を避けてしまう。今まで彼を見上げていたのだが、彼女はさっと向こう側に寝返りを打ってしまった。 ダブルベッドのためにそのスペースには余裕がある。熱くなった彼女の体に、エアコンの風で冷たくなっている部分のシーツが心地良かった。 ――はしたない。 エヴァンゼリンは心の中でその言葉を連呼していた。 全く、私はどうかしている。大体、どうしてウォルフにこんな事――。 その「こんな事」と、それをしでかした自分を思い出すとまた、彼女の顔が熱くなる。寝転がり、両手を顔に当てて首を竦めたまま、彼女は顔を横に何度も振った。脳内に思い返される情景を懸命に打ち消そうとする。 が、その感触は打ち消すにはあまりにも彼女の脳内に鮮明に記憶されていた。重なる唇、絡み合う舌――それらの感触に、心臓が早鐘のように鳴る。 一瞬、何かを求めるように彼女は唇を舐めるが、すぐに彼女は自分のその行動に気付いた。顔を振り、奥歯をぎゅっと噛み締めた。眉をきつく寄せる。熱い息を堪え、我慢する。が、その分熱が内に篭もってしまったようで、体が酷く熱い。 夫婦なのだから、この位の事は今更恥ずかしがる事もないのかもしれない。しかし、今回は彼女の方からこういう事を始めてしまったと言う事情がある。それは彼女にとって初めての事で、そしてしてはならない事だった。 エヴァンゼリンの実の両親は、ゴールデンバウム朝における一般的な平民であった。そして10代半ばにして彼女を引き取ったミッターマイヤー家の両親もまた普通の平民である。 彼女を育てた両者は教育方針も非常に素朴で健全だった。「良き娘」「良き妻」と言う観点を、彼女はごく自然に学び取っていた。 彼女が空気として理解しているはずであった「良き妻」の理念から、今回の行動は明らかに逸脱している。彼女はそう思い、そんな行動を取ってしまった自分を恥じて蔑んでしまっていた。
「――エヴァ」 彼女の耳に、夫の声が聞こえてくる。普段通りの優しい声だった。 「…ごめんなさい。私、何て、はしたない事を…」 しかし彼女は夫を見る事が出来ない。背中を震わせ、小さな声でそう言った。自分を抱きしめる格好のまま固まっていた。 そんな彼女に対して、夫の声が上から投げかけられる。 「何だ、そんな事を気にしていたのか」 「え?」 夫のあっさりとした口調に、エヴァンゼリンは思わず一言声を上げた。それは彼女にとって予想外の台詞だった。思わず腕の強張りが解けていく。 ミッターマイヤーは緊張が解けていく彼女の背中を眺めやり、その肩にそっと手を置いた。微かに妻の肩が震える感触が彼に伝わる。彼はそれを知り、少し微笑んだ。振り向いていないために、エヴァンゼリンにはその表情は窺い知る事は出来なかった。 妻の肩を軽く何度も撫でながら、ミッターマイヤーは優しい声で告げた。 「まあ、確かに驚いたけど…――俺は嫌ではないよ」 「…ウォルフ」 夫の台詞に、エヴァンゼリンは遂に振り向かざるを得なくなる。名を呼び、ゆっくりと彼を見た。 そして彼女が見たのは、夫の優しい笑顔だった。少しだけ照れ臭いような成分が含まれているようにも見て取れるが、大部分は普段通りの柔和な表情だった。 彼女は夫の普段通りの顔を見ていると、自分の顔の赤さが際立つような気がした。が、優しい瞳に見つめられていると、やはり彼女の心臓の鼓動は早まる。 ミッターマイヤーはそんな彼女の顔に手を伸ばした。額に掛かるクリーム色の髪をそっと摘み、払う。そして彼の顔自体も妻の顔に対してかなり接近してきている。エヴァンゼリンは自分の体から放射されている熱がそのまま夫に届くのではないかと思った。 「俺は君の夫だ。他の男ならともかく、相手は俺なのだから、はしたない事なんてないだろう」 ミッターマイヤーはそう言い、エヴァンゼリンの額に軽く口付けた。 彼女は自分の体温がまたしても上がった気がしたが、夫はそれに気付いた様子は見せない。或いは体温の上昇はあくまでも彼女が主観的に感じているだけであり、客観的にはそれ程上昇はしていないのだろう。 エヴァンゼリンの額から、柔らかい感触はすぐに離れる。ミッターマイヤーは唇を剥がしたが、顔と顔は接近したままで、妻のすみれ色の瞳をじっと覗き込んだ。ふたりの視線が絡み合う。 そしてミッターマイヤーはにっこりと微笑み、妻の肩を軽く叩いた。立ち上がり、視線を部屋の隅にやる。 ――部屋の灯りを消すつもりね。エヴァンゼリンは夫の視線にそれを見出した。 肩に置かれた手の暖かさが愛しい。どんな理由であっても彼が離れるのが嫌だ。どんなに短い時間であっても、離れずに傍にいて欲しい、彼をずっと見ていたい――ミッターマイヤーの何気ない行動に対し、何故か彼女の心の中に、そう言った感情が渦巻く。 おそらくは、酒の影響で日常封じ込めている感情が妙な形で解放されているのだろう。外征続きで自宅に居る事が少ない夫に対して寂しさを全く感じないかと問われれば、それは嘘だった。 しかも単なる仕事での赴任ならともかく、彼女の夫は職業軍人である。「暫く帰れないよ」「じゃあね」――その何気ない挨拶こそが今生の別れにならないとも限らない。彼女も、「遠縁の少女」の時代からそれを知っていた。 知っていても、彼女はそれを夫にぶつけようとはしなかった。自分の我儘で夫を困らせる事はしたくはなかった。 心の中に封じ込めてきていた思いが、酒の力を借りて表面に出てきている。彼女が素面ならばそう分析出来た事だろう。しかし今の彼女にはそんな余裕はなかった。仮に分析出来たとしても、その衝動を押し留める事はおそらく適わなかった。 離れようとしたミッターマイヤーの手を、彼女は掴んだ。衝動的な行動だった。女性の力のため、ミッターマイヤー本人にはそれ程強くは感じなかった。しかし、それなりには強い意志を感じさせる。 「――お待ちになって、ウォルフ」 行動に続いて妻の口からそんな台詞が発せられる。その態度に、ミッターマイヤーは振り向いた。一歩踏み出そうとしていた足をそのまま止める。 エヴァンゼリンは夫から手を離し、ベッドに身を起こした。そのままベッドの上に座り込む格好になる。長いスカートに覆われた足を揃えて曲げ、膝の上に手を置く。 ブラウスの上から数個のボタンは外されている状態だったため、僅かに襟元が開き胸が覗いている。そこにクリーム色の髪が掛かる。
彼女はすみれ色の瞳を夫に向け、言った。 「灯り、つけていて頂けませんか」 「え?」 ミッターマイヤーは妻の申し出にきょとんとした。様々な理由から、普段は明るい中での行為を妻は好まない。夫も特に不都合には思わず、ベッドサイドの灯りのみつけて行うのが常だった。そのため、先程も口付けを中断してまで室内灯を消そうとしたのだ。 が、今回の妻は全てにおいて普段と違うらしい。ミッターマイヤーはそれを改めて思い知った。 「今晩は…あなたに私を見て頂きたいのです…」 夫の視線を受け止めたエヴァンゼリンは俯いた。か細く小さな声で、そう言う。 微かに震える両手が、ゆっくりとブラウスの前に掛かる。ボタンは先程ミッターマイヤーに介抱された際に、上からいくつかが外された状態だった。既に胸元がちらりと覗く格好になっていたが、彼女はその真下のボタンに手を掛けた。 眉をぎゅっと寄せて、ひとつボタンを外す。次いで、更に下のボタンに手を掛ける。彼女は、指に妙に力が入ってしまい、上手く行かない気がした。気ばかりが焦って、もどかしい。押し殺している呼吸で胸が動き、外れた箇所が軽く開く。 ミッターマイヤーは、妻がブラウスのボタンを自ら外していく光景を、只見ている事しか出来なかった。何も考えられず、彼女の指の動きを注視する。只ボタンを外しているだけなので、ブラウスの合間からは細身の体が垣間見れるだけだった。 やがて、一番下までボタンが解放される。エヴァンゼリンはブラウスに手を掛け、そっと前を開いた。開いた襟元が肩まで落ちる。袖のボタンを外し、もどかしげに腕を抜く。背中の向こうに、脱げたブラウスが落ちた。 彼女の肩と背中にクリーム色の長髪が掛かり、微妙な色合いを醸し出す。エアコンによって調節された室内の空気が直に彼女の肌に触れる。熱で火照った体に、冷房が心地良く感じられた。 ミッターマイヤーは眼前の光景に、思わず大きく息をつく。それは溜息ではなかった。奇妙に空気が乾いているようにも感じられ、彼は唇を湿らせ、唾液を喉に追いやった。 夫婦なのであるから、彼が妻の裸体を見るのは初めてではない。出征続きで結婚生活も想定以上に時間を取れない状況ではあるが、それでも皆無と言う訳ではない。 エヴァンゼリン同様に彼も普通の一般的な平民の両親に育てられている身である。彼は生まれ持った性格とも相まって、健全な夫としての立場を貫いていた。 が、妻から求めてきている今回の状況は、今までとは違う。エヴァンゼリンもそう思い恥じらいを持っていたが、ミッターマイヤーからしても困惑せざるを得ない。 ――このような大胆な行動に出るような女性だったのだろうか?彼は内心そう思う。しかしエヴァンゼリンが危惧したように、彼は妻をはしたない女として蔑むような気持ちを全く持たなかった。 おそらくは、彼は妻に大きな愛情を注いでいるのが、第一の理由だった。しかし、それ以外にも、彼女を蔑むには目の前の裸体は厭らしさと言うものを全く持たなかった。 ブラウスを脱ぎ去ったものの、スカートは穿いたままだった。座り込んでいる彼女の両足は長い布地に覆われている。胸元には白いブラジャーが残っており、小さな胸は未だに隠されていた。しかし部屋の暖かな灯りが、彼女の肌を照らし出す。桃色に色付いた肌が晒されている。 ――美しい。ミッターマイヤーはごく自然にそう感じた。
一方のエヴァンゼリンは、スカートの上で拳を作って俯いていた。視界の隅に自分の髪が掛かる。脱いだ当初は僅かに寒気を感じたが、それも今では体内の熱と上手く調和していた。むしろ、体内の熱の方が再び勝ちつつある。 彼女はミッターマイヤーをまともに見る事は出来なかったが、彼の視線は感じていた。――どのような顔で、どのような眼で、私を見ているのだろう?彼女はそう思うが、それを確かめる勇気が出てこない。 「…はしたないとお思いでしょうけど…私を…――」 それ以上は、彼女の羞恥心が邪魔をした。これが彼女の限界だった。彼女は顔を上げる事無く、スカートをじっと見つめていた。 不意に、彼女の視界に影が差した。次いで、彼女が座り込んでいるベッドの近くが軽く軋む。 「エヴァンゼリン」 彼女の耳元で囁く声がした。その声と、それに伴う微かな空気の振動を彼女の耳は感じ取り、びくりと震えた。声のする方を思わず見てしまう。 エヴァンゼリンのすぐ近くに、ミッターマイヤーが腰を下ろしていた。 「何度も言わせないでくれ。はしたない事なんてない」 「ウォルフ…」 「俺は君を愛しているのだから」 そう言って、ミッターマイヤーは眼を細めて笑った。そしてエヴァンゼリンの顎にそっと触れる。 それを合図にしたように、エヴァンゼリンは夫の肩に腕を伸ばした。その後ろで両手を絡ませる。腕を狭めて抱きしめると、素肌に夫のシャツが当たった。品質は良いが洗いざらしの感触。 それを感じながら、彼女は夫に向き直る。そのまま彼らは唇を重ねた。
唇と舌の感触を確かめ合いつつ、彼らは抱き合う。互いの口の中を舌で探り合い、時には吸い付く。 ミッターマイヤーの手がエヴァンゼリンの髪を撫でる。梳り、首筋に触れ、素肌を露にしている背筋を優しく撫で回した。優しい感触にエヴァンゼリンは震え、更に求めようと口付けに没頭する。 不意に彼女の胸に開放感が現れた。今まで押さえつけられていたが、その感触が消えた。 背筋を撫でていたミッターマイヤーの手が、彼女のブラジャーのバンドの下に滑り込み、留め金を外したのだった。そのために彼女のブラジャーが解放され、カップが前にずれる。 それを感触として知ったエヴァンゼリンは、一旦腕をミッターマイヤーの背中から解放した。夫の首筋に絡める腕を戻し、肩紐が引っ掛かったままのブラジャーを完全に腕から抜く。 ミッターマイヤーが彼女を抱き締めたままだったため、口付けは相変わらず続行していた。彼女の動きはその邪魔にはならない。 エヴァンゼリンは腕から抜いたブラジャーを、若干鬱陶しげにその辺りに放る。彼らにとっては広いダブルベッドの隅に、それは着地した。普段の彼女からは考えられないような雑な扱いだが、今の彼女にとってそれは邪魔なものでしかなかった。 上体に身に着けていた衣服を全て脱ぎ去った彼女は、そのまま夫に抱き着く。露になった両胸が、夫の胸に押し付けられる。小さいが形はいい乳房が夫に密着する。 が、彼はシャツを身に着けたままだった。季節は夏なのでそれ程厚い布地ではない。そのために、夫には彼女の胸の感触が確かに伝わる。今までとは違い、確かに柔らかく、若干堅くなっている突起部分までもを、彼の胸に感じた。 と、彼の首から、妻の腕が解かれる。と同時に、密着していた胸も僅かに引き剥がされた。 どうかしたのかと思い、ミッターマイヤーは唇を離した。唾液が糸を引くのを感じつつ、彼は妻の顔を見る。 エヴァンゼリンはミッターマイヤーの胸元に手を伸ばしていた。細い指が両手で、彼のシャツのボタンに掛かっている。彼のシャツも夏のためか、上から数個開け広げた状態であったが、彼女はそれを更に広げに掛かっている様子だった。 「どうかした?」 ミッターマイヤーはエヴァンゼリンに声を掛けた。とは言え止めるつもりはないらしい。彼はその行動が純粋に不思議だったようである。 「邪魔です」 その問いに対し、エヴァンゼリンの回答は簡潔極まりなかった。夫を見ないまま、手元をじっと見ている。ボタンを外すのに集中している様子だった。ひとつのボタンを外し、また下のボタンに取りかかる。 「え?」 妻の作業を見守りながら、ミッターマイヤーは怪訝そうな声を上げた。彼には妻が言わんとしている事が理解できなかった。 エヴァンゼリンは作業を進めていく。若干強張っている指だったが、確実にボタンは解放されていく。 「あなたと私を遮る衣服が邪魔です」 彼女はそう言い放ち、ボタンを全て開け放した彼の胸元に顔を埋めた。
ミッターマイヤーは驚いた。一瞬眼を見開く。 妻の手が彼の胸を撫で、その手は襟元に及ぶ。そこを掴み、広げた。シャツが肩口で引っ掛かっている状態になる。 ミッターマイヤーは胸に潜り込む妻の背中に腕を回した。二の腕はシャツに覆われたままだが、若干動きが制限されている。 「…俺の傷跡、怖くないのか?」 彼は胸に顔を埋めた妻の頭に声を掛けた。少々眉を寄せていた。 「いえ…今は大丈夫です」 エヴァンゼリンはそう答えた。僅かに顔を上げ、今彼女自身が顔を押し付けていた箇所に視線をやる。そこにはかなり大きな裂傷の跡が残されていた。 暖かくも明るい室内灯に照らし出されているミッターマイヤーの体には、多数の傷跡が浮き上がっていた。裂傷だけではなく銃創やトマホークの斬撃によりもたらされたであろう傷まで、多様だった。 任官以来の最前線での戦闘によって、彼の体に目立った後遺症は残ってはいないが、生々しい傷跡は残されていた。 そして彼は、妻が僅かにでも傷跡を怖がってみせたから、行為の際には灯りを消そうと心に誓っていたのだった。無論、口に出された訳ではないが、彼は妻の態度を読み取る事には敏感だった。 エヴァンゼリンの指が、胸に残る彼の傷をそっとなぞっていく。そして別の傷跡に対し、彼女は軽く唇を落とした。均整が取れた胸に頬を寄せると、彼女にとっては心地良い匂いが感じられる。それに満足し、彼女は微笑んだ。 「私こそ、あなたを愛しているのですから」 彼女の唇からそんな言葉が漏れた。小さな声であったが、ミッターマイヤーはそれを確かに聞いた。 彼は妻を抱き締める腕に力を込める。そして彼は力の方向を変えた。彼女の上に圧し掛かり、そのままベッドに押し倒す格好になった。 エヴァンゼリンはそれに抵抗する事はなかった。むしろ彼の背中に腕を回し、引き寄せていた。
大胆エヴァカワイスギ(*´Д`*) こっちまで幸せになりそうだよ。 ◆dZQtv7lHHwさんGJ!
萌えた。すげー萌えた。 エヴァンゼリンかわいいよエヴァンゼリン! >「あなたと私を遮る衣服が邪魔です」 この台詞にハァハァ(*´Д`)=3 続きが待ち遠しいです。 首を長くして待ってます!
ふたりの体重を預けられる格好となったベッドが僅かに軋みの音を立てる。 ミッターマイヤーはエヴァンゼリンの顔の両脇に肘を着き、顔を覗き込む。それに対してエヴァンゼリンは潤んだ瞳を夫に向けた。一瞬ふたりの視線が絡み、直後に夫が顔を軽く傾けつつ妻の唇を自らのそれで塞ぐ。 エヴァンゼリンの両頬を、ミッターマイヤーの大きな両手が包み込む。下を絡められながら頬を撫でられると、彼女は心地良さを感じる。その手は頬に留まらず、髪を撫で上げ、うなじに触れていく。 そのうちにミッターマイヤーの唇が彼女の口から離れ、首筋に落ちる。そこを舐め上げ吸い付きつつ、片手が妻の乳房に伸びた。白く柔らかい肌に、軽く陽に焼けた男の掌が触れる。小ぶりだが形がいい乳房を軽く握り締め、揉みしだく。 その刺激にエヴァンゼリンは軽く顔を振った。意に反して鼻に掛かった声が出てくる。何となくくすぐったい気がして、少し身をよじる。 軽く足を摺り合わせた感覚に、彼女はどきりとした。顔が赤くなる。彼女は夫が今、彼女の鎖骨に口付けている状態に感謝した。この赤い顔を見られていない事に安堵した。 ――嫌だ。もうこんな状態になってる。彼女はそれに気付いたのだ。 彼女はぬるりとした感触に眉を寄せる。この分では下着まで濡らしている事だろう。その不快感もあった。しかし、足を動かした際に彼女にもたらされた、また違った感触にも彼女は眉を寄せざるを得なかった。 ――濡れているせいか、何気ない動きでも却って刺激がある。胸元まで下りてきていた夫の頭を、彼女は抱え込むようにして抱き締めた。胸の突起を口に含み、転がされると、彼女はまた顔を振った。合わせて堪えるように彼の髪を掻き回す。 ミッターマイヤーの手が彼女の細い腰を撫でていた。そして腰に引っ掛かった状態だったスカートにその手をかける。割とすんなりと留め金を外す。スカートを軽く引いただけで、それは膝の辺りまで脱げ落ちていった。 「――あ、ウォルフ…」 エヴァンゼリンは思わず声を上げた。しかしその声にも若干甘いものが含まれている。顔全体が熱に浮かされている状態は変わらない。 ミッターマイヤーは妻の声に構わず、スカートを引き抜いていく。片手でスカートを掴み、もう片手で両足を軽く曲げさせる。揃えた足から長いスカートが取り去られ、それは彼の手で彼女のブラウスが落ちている辺りに投げられた。 今やエヴァンゼリンが身に着けているものは、下着だけだった。しかし彼女はそれが濡れてしまっている事を悟る。今更恥ずかしくなり、両足を閉じた。脇を閉めて両腕も合わせ、軽く縮こまってしまう。
「どうかした?」 一旦体を引き剥がしたミッターマイヤーは怪訝そうな顔をして彼女に問いかけた。 エヴァンゼリンはそれに答えるかのように視線を上げた、すみれ色の瞳が彼を見上げる。その瞳は潤んでいて、顔は紅潮しきっている。小さな口元からは吐息が漏れ、時折何かを感じるのか眉を寄せていた。 「あの…私…やっぱりはしたないですよね…」 小さな声が色付いた唇から発せられた。それにミッターマイヤーは小首を傾げた。そして彼女の裸体に軽く視線を走らせた。 それは何気ない一瞥だったように思えるが、エヴァンゼリンにはそれすら熱い鼓動をもたらした。――あの人に見られている。それだけで、彼女は何かを感じた。瞼を伏せ、声を出すのを堪えようとする。 「――ごめん」 眼を伏せていたエヴァンゼリンの耳に、不意にそんな声が聞こえてきた。きょとんとして彼女は瞼を上げる。が、目の前にいるはずの夫の姿が視界に入らない。 と、下に気配を感じた。次いで、指先の感触が腰の辺りに伝わってくる。彼女は視線を落とした。 「――ウォルフ!?」 その事実を確認すると、彼女は思わず大きな声を出してしまった。 ミッターマイヤーは妻の下腹部に顔を埋めていたのだ。そしてその指が軽く、下着の裾に引っ掛けられている。 「あの、ウォルフ、止めて下さい!」 「どうかしたの?」 「だって、私、こんなに」 「…うん、確かに凄いよ」 夫に本当に感嘆しているかのような声を出され、エヴァンゼリンは一気に頭に血が上った。 その隙に、ミッターマイヤーは指に軽く力を込めた。下着の裾を、両脇から下に引く。 彼の手によって、エヴァンゼリンの下着が太股の辺りまで一気に引き下ろされた。
ミッターマイヤーは妻の下腹部を覗き込んだ格好で、糸を引いている粘液を見ていた。それは内腿の辺りにまで広がっている。足を閉じたまま擦り合わせたりした事により、却ってあちこちに広がりを見せたようである。 彼は頑なな妻の腿に手をかけた。軽く押して、片方の内腿を持ち上げる。少しだけ開かせた。そしてその部分に舌を走らせる。舌からミッターマイヤーの唾液が内腿に塗り付けられるのと同時に、ある一定の場所に絡み付くように付着していた粘液を、彼の舌が舐め取る。 「――あ」 その感触に、エヴァンゼリンは震えた。しかしすぐに自分がどんな状態に置かれているのかを思い出す。――夫が下腹部に顔を埋めている。それを彼女は恥ずかしいと思っていた。だから、彼女の両手は彼の頭に伸びた。彼の頭を押し留めようと努力した。 しかし女性の力は弱い。更にはミッターマイヤーは彼女の内腿を舐めるのをやめない。そのうちに舌で舐めるだけではなく、口付けていく。 不意に、自分の体内で何かが押し広げられる感触が襲った。慌てて彼女は視線を落とす。 ミッターマイヤーの片手が伸びていた。その指が2本、彼女の秘められた部分を広げ、そこから内部に侵入を試みている。 「や、ウォルフ…」 「大丈夫、柔らかいみたいだから」 彼の指がゆっくりと、粘液に絡め取られながらも内部に入っていく。エヴァンゼリンにとっては、違う体温の物体が自らの中に入って行き、その侵入を止められない。むしろ、受け入れているかのように思えてならない。 結局大した困難もなく、ミッターマイヤーの片手の人差し指と中指は、あっさりと付け根まで彼女の中に入ってしまった。その指が内部を探るようにゆっくりと動く。肉壁を押しつけ、広げ、また離す。 更に奥を狙うように動いたり、引いたりする。その度に粘液がくちゅくちゅと音を立てた。それはエヴァンゼリンには酷く卑猥な音に聞こえる。 そんな事をしていたミッターマイヤーだが、不意に内腿に口付けるのを止める。軽く顔を上げた。しかしすぐに別の場所へを顔が動く。 今彼女の中に埋もれている手の動きは止めないまま、もう片方の手が更に秘められた部分に向かう。指で未だ美しい色をしている花弁を捲り上げるように、押し広げた。そして露になった小さな部分に、彼の舌先が触れた。 「――あっ――!」 途端、エヴァンゼリンの体に痺れが走った。まるで雷に打たれたような――とは言え彼女にそのような経験はないが――感覚が背筋を真っ直ぐに駆けて行く。 ミッターマイヤーは彼女の体が震えるのを知った。そのままその部分を舐め始める。小さな肉芽を舌先で突付き、転がした。すると内部に入り込ませた指に締め付けが走る。彼は更にその指を内壁に擦り付けつつ、舌では刺激を与え続けた。 エヴァンゼリンの口から悲鳴が上がる。制止の言葉が漏れる。 しかし、そのうちに彼女の声は喘ぎに紛れて不明瞭なものとなっていく。いつしか彼女が夫の頭に手を伸ばしているのは制止のためではなくなっていた。感覚に耐えるようにその髪を掻き回す。 しかし彼女の体は打ち震えている。口から漏れるのは紛れもない艶の声になりつつあり、その細い体をくねらせていた。足の力も抜けて行き、徐々に夫の顔を受け入れるかのように軽く開いていった。
エヴァンゼリンの中で、ある感覚がじわじわと強まっていく中、唐突にミッターマイヤーは顔を上げた。舌が彼女の敏感な部分から離れていく。 彼女は夫の行動をぼんやりと見ていた。舌での愛撫が中断されたとは言え、未だにその部分には熱を感じる。それに彼女の内部に入り込んだ2本の指は、抜かれる気配はなかった。 ミッターマイヤーはエヴァンゼリンの顔を覗き込んだ。自分の舌で唇を湿らせてから、彼女の頬に軽く口付ける。その感触すら、彼女には疼きをもたらした。既に体全体が熱い。ベッドに横たえられた時から確かに熱は持っていたが、今の熱はその時のものとは明らかに違う。 「ごめん、エヴァ」 「…え?」 夫からの唐突な謝罪の言葉に、彼女はきょとんとする。熱に浮かされた表情のまま、小首を傾げた。 その仕草に当の夫は苦笑を浮かべる。自由になっている蜂蜜色の髪を掻き上げた。 「俺…もう限界だ。――いいかな?」 どちらかと言うと照れ笑いの区分に入るような苦笑で、彼はエヴァンゼリンにそう問いかけた。 そう言われた妻の方は一旦口篭る。何を言われているのか一瞬理解できなかったらしい。が、徐々に思考力が彼女の頭に復帰し、夫が何を言わんとしているのかを悟っていく。さっと頬に紅が差す。 しかしすぐに彼女は微笑を浮かべる。夫に視線を合わせ、口元を綻ばせて、軽い動作で首を縦に動かした。 その動作を見ると、夫は心底嬉しそうな顔をして笑った。今度は彼女の首筋に軽く口付ける。そのキスは、彼女にはくすぐったさと幸せをもたらした。 彼は唇と手を妻から離した。そしてもう片方の手もゆっくりと抜いていく。彼女の中に埋没していた2本の指が、内壁を擦り上げながらも外に出されていく。その何とも言えない感触を、エヴァンゼリンは瞼を伏せて味わっていた。 遂に指が完全に抜け切った時、彼女は一抹の物足りなさを感じていた。しかし、そんな自分を何処かではしたないと思う自分も未だ存在していた。 逆に言うならば、この感覚や熱をはしたなく思う気持ちが、彼女の中から確実に減少してきていた。 指を解放し、粘液がそこからじんわりと溢れ出す様を、ミッターマイヤーは一瞥していた。――正に蜜壺だと彼は思う。 しかし彼は落ち着いてもいられなかった。片手をその蜜で濡らしたまま、自らが穿いていたズボンに手をかける。 布地に粘液が塗り付けられる格好になるが、彼はそれを気にしている余裕を持たない。小柄ながら均整が取れた肉体を持ち、引き締まった腰を収めているズボンの前を開いた。 自宅用の私服のためにゆったりとした布地ではあったが、それでも押さえつけられていた。これ以上放っておけば暴発も必至だった――彼が下着ごとズボンを引き降ろした事で、既に昂っている彼の雄が露になった。 彼はエヴァンゼリンから視線を外し、ひとまず自分の衣服を脱ぎ去る事に専念していた。脛の辺りまで下ろされてまとまった状態のそれらを脱ぎ捨てようとするが、すんなりとは行かない事に彼は顔をしかめた。 とは言えそれ程手間取る事もなく、彼は鍛え上げられた肉体を惜しげもなく妻に晒す格好となる。 しかし手間取る夫の姿を一瞬でも目撃したエヴァンゼリンは、何だか微笑ましい気分になってしまう。余裕が僅かになくなった夫の代わりに、彼女のように僅かに余裕が現れた。 と、膝の辺りで引っ掛かったままの彼女自身の下着の存在に気付いた。彼女はその僅かな時間を利用して、それを脱ぎ去った。彼女はそれを衣服の山の頂点にまた投げる。
エヴァンゼリンは視線を前に戻す。そこにはミッターマイヤーが居た。ベッドに身を預けて横たわる妻を見ていた。彼女の頬に手をやり、顔を傾けさせた。エヴァンゼリンはそれを受け入れた。 ふたりはそのまま深い口付けを交わす。両者ともそれなりに興奮状態にあり、舌を絡める合間の呼吸が何処かしら荒々しい。 ミッターマイヤーの片手が、エヴァンゼリンの太股に伸びる。内側からゆっくりと押し、広げさせた。そこに彼は体を割り込ませていく。 エヴァンゼリンの柔らかい、蜜を溢れさせた部分に、突付くように触れるものがある。その感覚に彼女は眉を寄せた。キスで塞がれた唇の中で、僅かに声を上げる。 が、突付くように触れたのは一瞬であり、それはゆっくりと押し付けられる。そして彼女の体はそれを拒もうとはしなかった。掛けられた圧力を受け入れ、押し付けられていたものがゆっくりと、押し込まれていく。 それに対し、エヴァンゼリンが鼻に掛かった声を上げた。彼女の夫が唇を離してやると、喉を反らせる。解放された口から吐息が漏れた。 ミッターマイヤーはゆっくりと彼女に圧し掛かる。彼女の中に受け入れられていく己自身に纏わりつく感触に、彼は眉を寄せた。奥歯を僅かに噛み締め、息を堪える。 着実に進めて行き、やがて夫婦はひとつになる。エヴァンゼリンは己の中に、ミッターマイヤーの雄を完全に受け入れた。互いに抱き合い、体を密着させる。鼓動も呼吸も同一のものであるように思えた。 ミッターマイヤーは自らの雄が心臓と連動して脈動しているかのような錯覚を起こし、それが妻に伝わっているのではないかと思った。そしてエヴァンゼリンは確かにそんな夫の脈動を、自らの敏感な部分の粘膜から伝達されているかのような錯覚に陥っていた。 彼女の内部に入り込んでいるものは単なる異物ではなく、熱を持っていた。そして彼女はその熱がまた、自分の熱を更に上げるのではないかと思った。 実際に、自らの内部も発熱してきたように思えていた。熱いだけではなく、堅く大きなものが、彼女を中から圧迫する。その感触を彼女は追っていると、不意にじんわりと、彼女の中から何かが伝わってきた。 「――あ…っ」 掠れた声が彼女の喉から発せられる。夫の背中に回している腕に力が入る。 一旦感じた感覚が、彼女の中で繰り返されていく。それは反復される度に徐々に強まっていく。彼女はその感覚に、夫の下で身をよじらせた。 ミッターマイヤーが彼女の様子を見て、軽く息をついた。――馴染んだだろうか。彼はそう思い、我慢の時がようやく終わりを迎えた事を知った。そして彼は今度は彼の欲望のままに行動を開始する。軽く腰を動かす。彼女の最奥を突いた。 弾かれたように妻の体が反応する。彼に絡み付く腕が、強くなる。柔らかい胸が彼に押し付けられた。そこに何かしらの小さいながらも堅い感触を彼は覚える。どうやら彼女の乳首も堅くなってきている様子だった。 「エヴァ、行くよ」 彼は短くそう言う。しかし彼女の答えを待たないまま、彼は律動を開始した。
エヴァンゼリンは夫の逞しい体にしっかりとしがみ付き、時折顔を振っている。彼女を抱き締める夫の動きに合わせて、彼女の体も揺れる。 彼女の半開きの口元は濡れていて、揺らされるのに合わせてそこから吐息と、時には嬌声が漏れ出してきていた。 彼女は酷く熱さを感じていた。体全体に熱が篭もっている印象があり、今突き続けられている場所とその奥が更に熱い。しかし疼痛を感じる時期はとうに過ぎ、彼女に今もたらされているものは快楽のみであった。 揺らされながら、彼女は夫を強く抱き締めた。そうする事で体が密着する。それでも彼女はまだ足りないような気がして、もっとしがみ付いた。 ――遮るものはもう何もない。この人は今、私の傍にいる。そんな事を思い、顔に微笑が浮かびかけた。が、夫の律動により、口から不明瞭な言葉が漏れ、その表情が完全に形作られる事はなかった。 喉の奥が焼け付くように熱い。体の中の熱を放散させるための息が、直に当たる場所だからだろうか。今の彼女にはそこまで考える事は出来ない。自分が何を口走っているのかも判らなくなってきていた。 不意に、口を塞ぐ感触がした。同時に柔らかいものが彼女の口の中に侵入してくる。ミッターマイヤーが覆い被さって唇を重ねてきたのだ。 呼吸を妨げられて少し苦しくなったエヴァンゼリンは喘いだ。逃げようとする彼女の舌を、夫は絡め取る。妻の熱い吐息を飲み込んだ。 また違った淫靡な水音を耳に感じながら、エヴァンゼリンは夫の首筋に腕を回す。後ろ髪を指で絡め取ると、指の間でまた心地良い感触を得る事が出来た。 彼女は、伏せた瞼の奥が、段々と真っ白になってきたような気がした。激しくなってきた律動の中、自らの息が荒くなってくる。――その感覚が、一気に押し寄せてきた。 「――ああ……っ!」 エヴァンゼリンは白い喉を反らせて、短く叫んでいた。何も考えられない。頭の中が真っ白になってしまった。ひとつの感覚に体全体が支配される。 彼女がその悦楽に身を任せ、夫にしがみ付くと同時に、彼女の内壁が強く収縮した。侵入を許していた夫の雄に、刺激が加わる。既に充分に怒張していた状態のそれに柔らかく肉が絡み付く。 ミッターマイヤーもその刺激にとてつもない快感を感じていた。眉を寄せ、眼を細める。彼は限界に到達した事を悟り、彼女の内部を一際大きく突いた。根元まで深々と侵入させ、その全てに妻の肉感を感じさせる。 低く短く唸り、彼は自らの欲望を解放した。
短い間であったが、夫婦は暫く抱き合ったままでいた。 互いに押し寄せてきていた悦楽の波に身を任せ、そしてその波が徐々に引いていくのを楽しんでいた。体から力を抜き、大きく息をつく。呼吸が落ち着いてくるのを待った。 先に立ち直ったのは、夫の方であった。呼吸を整えているうちは顔を伏せて妻にはあまり見えないようにしていたが、ふっと顔を上げた。そしてにっこりと微笑み、妻の頬を撫でる。 「大丈夫?」 彼はそれだけを訊いた。それに対しエヴァンゼリンは少し微笑んだ。彼の下にいる彼女の胸は未だに上下していて、口元からの呼吸は平静なものには完全には復帰していない。 「…ええ…凄く、良かったですわよ」 小さく掠れた声が、形の良い唇から発せられた。その唇は濡れていて、さくら色を更に引き立てている。声が掠れているせいか、ミッターマイヤーにはそれに酷く色気を感じさせていた。 ――しかし…やはり大胆なような気がする。彼は以前にも思った事を今にも感じていた。しかも無意識に出てきた言葉のようだった。 ともかく彼は気にしない事にした。微笑を浮かべたまま、彼は妻の太股に手をかけた。少しだけ力を加え、広げさせる。動いた事で刺激になったのか、妻が微かに鼻にかかった声を上げた。それに一瞬気を取られたものの、彼は妻に告げた。 「…じゃあ、抜くから」 彼はそう言って、ゆっくりと力を込める。体を引き剥がし、彼女を穿つ自らを引き抜こうとした。 しかし、その行動に対し、エヴァンゼリンが声を上げた。 「――ウォルフ、お待ちになって」 「…え?」 掠れ掛けているが、はっきりとした口調で妻は夫に呼びかけた。それに、ミッターマイヤーは意外に思った。そして呼びかけの内容自体も彼にとっては意外であり、怪訝そうな顔になる。 そんな彼に、エヴァンゼリンはにっこりと笑い掛けた。離れていこうとしていた夫の肩に手をかける。そのまま引き留めようとしていた。 「もう少し、このままでいて下さいませんか?」 「え?でも君は何時までもこのままではきついだろうに」 ミッターマイヤーの台詞は妻を思いやってのものだった。いくら気を配っているとは言え、男が何時までも上に乗ったままと言うのは、妻の体力には厳しいだろう。 何より、貫いたままである。快楽が去りつつある今、そろそろ痛みと違和感の方が前面に出てくるのではないだろうかと彼は心配していた。 しかし、夫の考えを知ってか知らずか、妻は手に力を込めた。そのまま、引き寄せようとする。 ミッターマイヤーは戸惑うが、抵抗する理由もなかった。体から力を抜き、妻の自由にさせた。彼の体は再び妻の上に引き寄せられ、密着させられる。 エヴァンゼリンは笑った。少し、はにかんだような顔をした。伏目がちに、言う。 「いえ…もう少し…あなたを感じていたいから…」 彼女は、今自分の中にある存在を、幸せに感じていた。
どうしたものかとミッターマイヤーは思う。しかし、妻が望むならその通りにしてやりたかった。 結果的に彼が選んだ事は、体勢を変える事だった。しっかりと抱き締め、結合したまま彼は妻の体を押した。体力的に厳しい妻を下にしておくのではなく、側位の体勢にする。ふたりにとっては広いダブルベッドであるため、少々の寝返りを打っても全く問題はない。 その体勢のまま、エヴァンゼリンはそっと夫の胸に顔を寄せていた。とても愛しい男性の腕の中に在る事を、彼女は幸せに感じていた。顔を寄せている事で拾う、相手の鼓動や汗の匂いを愛しく思う。瞼を伏せ、自らの背中に回されている手の感触すら楽しんでいた。 言葉ではなく、体で色々な情報を感じ取ろうとしている事により、彼女の感覚は鋭敏になっていた。そのせいか、彼女の中に再びじんわりと熱が増してくる。 ――あ。 エヴァンゼリンは、夫とひとつになったままである事を実感した。 瞼をぎゅっと瞑り、眉を寄せる。肉体的なのか精神的なのか、彼女には判別がつかないが、熱源である彼女の内部の感覚を、意識的に追い始めた。 異物感はあるけれど、まだ乾いていないせいか痛みまではない。この感覚…――この人の肉体。それが、私の中に入っている。先程まであんなに強く、私を貫いて…――。 彼女の脳裏に再び、先程までの行為が蘇ってくる。彼女自身があれ程までに乱れた、あの感覚が徐々に思い出されてくる。鼓動が再び速くなってきた。熱さが、体の奥からこみ上げてくる。 エヴァンゼリンはくっと鼻に掛かった声を上げ、軽く喉を反らせた。 「――どうかしたか?」 ミッターマイヤーが不思議そうに問い掛ける。その台詞に、エヴァンゼリンはうっすらと瞼を開けた。垣間見られるすみれ色の瞳は潤んでいて、熱に浮かされていた。 夫に声を掛けられた事で、彼女の意識は体の感覚を追う事を一旦打ち切る。しかし、終わった訳ではない。むしろ夫に呼びかけられた事が、彼女の意識の方向を定める事となったのだ。 「…あなた…ごめんなさい」 彼女はそう言い、ミッターマイヤーの体を抱く腕をそっと外した。戸惑ったように見やる夫をよそに、彼女は夫の胸板に手をかける。そこをそっと押した。 ミッターマイヤーはこの体勢を無理に保とうとしていた訳ではない。そのため、押された事で容易く体は動いてしまう。妻の軽い力によって、彼の体はゆっくりと仰向けに導かれていた。 例によって抵抗する気がない夫が、妻の意を汲み、その導きに従った事もある。すんなりと体勢が変わっていった。 今や上に乗る形になった妻を見やり、ミッターマイヤーは小首を傾げた。――まあ、きついんだろうな。この方が楽かもな。彼はそんな事を考えていた。 エヴァンゼリンは眉を寄せていた。軽く息をついている。そっと両足を割って滑らせる。ミッターマイヤーの上に跨るような格好を取った。無論、ふたりはしっかりと繋がったままである。特に彼女が上になった事で、夫の雄は妻の中に根元まで余さず侵入を果たしていた。 と、妻の手が夫の胸から離れようとしない。彼女はその手に力を込めようとしていた。腕立て伏せをするような体勢から、ゆっくりと腕を伸ばそうとする。しかし彼女の力は足りず、体を支えきれない。体に力が入ってくる。
不意にミッターマイヤーの腕が上げられた。手が、妻の両脇に伸びたのだ。するりと撫で上げるようにして彼の手が妻の腰を掴み、力を込める。ぐいと持ち上げるように、エヴァンゼリンの上体が彼の力によって上げられた。 「あ、ウォルフ…っ」 夫の唐突な行動と、体を動かした事による衝撃に、エヴァンゼリンは声を上げた。結合部を擦り付けられるような動きが刺激になる。 「こうしたかったかい?」 下から妻の体を支えつつ、夫は問い掛ける。それに妻は小さな声で頷いた。 「…はい」 「じゃあ、君の好きにするといい」 ミッターマイヤーは微笑みすら浮かべて、そう言う。その態度に対し、エヴァンゼリンの頬に赤みが差した。 実際問題として、エヴァンゼリンは今自分が所謂騎乗位と呼ばれる体位を選んだ事を、知識としては知っていた。しかし女性上位であるその体位を、彼女は今まで用いた事はなかったし、させられた事もなかった。 そもそも今も衝動的に体勢を変えてしまっていた。体の中の熱と欲情に任せ、姿勢を変えた結果だった。狙ってやった訳ではない。が、今の自分は確かに夫の上に跨っている事に気付いた。 不意に自分が凄くはしたない事をしているという思いが、彼女の心をよぎる。熱に浮かされ潤んだすみれ色の瞳が夫の顔を伺う。彼は、只妻を見上げているだけだった。腰を支える手はそれだけであり、愛撫が始まる気配は全く感じられない。 彼女を見上げるグレーの瞳はある意味真摯な視線を投げかけていた。彼女はそれを直に受け止め、自らが上気してきたのを悟った。空調が効いているはずなのに、再び肌が火照ってくる。顔に流れるのは涙なのか汗なのか、判らなくなって来た。 やがて、過剰な熱を持った肌を持て余し、エヴァンゼリンは喉を鳴らす。緩慢に頭を振ると、クリーム色の髪が曲線を描いて揺れ、彼女の白い肌を伝った。それすらも、彼女には刺激になっていた。段々と、意識にもやが掛かってくる。 最初はおずおずと、彼女は腰を軽く上下に動かし始める。充分に濡れて粘液にまみれていた箇所が、彼女の動きに合わせて微かな音を立てた。擦れる感触に、彼女は声を漏らす。瞼を伏せて、視界を遮断した。只、その感覚を追い求める事に専念する。 「…あっ…ん…」 緩慢であったはずの彼女の動きが、徐々に大きく激しくなっていく。夫の胸に両手をついて体を繰り返し上下させる動きに、彼女は没頭していた。 大きく動けば内部に強い刺激が与えられ、それは彼女にとって快楽を伴う。その感覚を彼女は持て余すように、顔を大きく打ち振った。 下から見上げるミッターマイヤーは眉を寄せていた。しかし、妻の痴態に不快を感じていた訳ではない。 確かに彼は妻のこのような顔を見た事がなかった。ひたすらに快楽だけを追い求めるかのような表情は、喩えようもなく淫らであった。しかし、彼はそんな状況の彼女にすら、卑しさや醜悪さを全く見出す事が出来なかった。 柔らかな室内灯に照らされた妻の肌は薄くピンク色に染まり、汗でしっとりと濡れて光沢すら持ち合わせている。伏せられた瞼の合間から垣間見る事が出来る瞳は潤んだすみれ色で、目許には紅が差している。体を上下する毎に、小さな胸が軽く揺れていた。 ――彼はそんな妻の裸体を、またしても素直に美しいと思っていた。 妻の細い体にしては強い力を込めているようで、その体が浮き上がると夫の雄が半ばまで抜き出される。しかしすぐに彼女は腰を落とし、一気に雄を中に埋没させる。その動きが繰り返されていた。 夫の方も刺激を与えられて平常でいられる訳ではない。それは再び怒張し始め、彼女に更なる刺激を与えているらしい。 屹立した浅黒い肉体に、白く濁った粘液が絡みついている。度重なる蹂躙に彼女の美しい花弁は無残に散らされていたが、それを導く側になっていた彼女自身は全く意に介していない様子だった。
「――エヴァ」 不意にミッターマイヤーが声を発した。短く、溜息を内包したような声だった。 同時に彼は逞しい腹筋を用いて上体を起こした。そしてその勢いのまま、妻の火照った肌をその腕の中に抱き締める。 体がより密着した事で刺激されたのか、エヴァンゼリンは眉を寄せる。何かに耐えるように首が緩く振られる。ミッターマイヤーはその彼女の唇を捕らえた。噛み付くように荒々しく口付ける。ふたりは追い立てられるように激しく舌を絡めた。 そしてミッターマイヤーは、妻の体を強く抱いた。体を押し付けながら、自らの欲望に従って彼女を強く突き上げる。彼の衝動は、妻によって呼び起こされていた。冷静さを失う程の法悦感に押し包まれつつも、彼はそれに流される事をよしとした。 エヴァンゼリンは夫の動きに体を震わせる。その感覚をもっと味わいたくなり、彼女は腕と足をしっかりと夫の体に絡ませた。 そしてその動きに合わせ、彼女も腰を打ち振る。叫びも吐息も、全て夫の唇と舌に絡め取られていく。上下の粘膜に彼女は夫を感じ、熱で溶け合うかと錯覚する。 やがてふたりの動きは頂点に達し、一瞬止まる。そして妻の体が夫の腕の中でゆっくりと弛緩し、体全体ががくりと力をなくした。
続きキテター! なんて幸せなエチーなんだムッハー(*´Д`)=3 エヴァカワイス、ミッターマイヤーもカコヨス
うわあああぁぁあ萌えすぎてPCの前で転げ回りそうだあああぁぁ 互いを思いやるエチーがすごく良かったよ! そして大胆エヴァたんテラエロス! GJGJGJ!!
こ、これから事後の甘甘っぷりも楽しみです…!gj!
317 :
名無しさん@ピンキー :2005/12/17(土) 20:59:56 ID:fwlGyJNC
エヴァ可愛いよォ! あいがとです。GJです! あとの氏もマッテマス。青い彼は来るのかね?? 無事、間に合って助けられるんだけど、その後青い彼から・・・とかキボンv 間に合んないなら、注意書オネガイ。
エヴァンゼリンは瞼の向こうに明るさを感じた。それと同時に、彼女は意識を手放していた事を知る。 うっすらを瞼を上げていくと、天井にある室内灯は消灯されている事に気付く。部屋は暗闇ではなく、簡素な室内灯に外部からの光が反射している。視線を巡らせ窓の方向にやると、カーテン越しに薄い陽光が感じられた。 ――朝になっていたのね。とても良く眠ってしまったらしいわ。彼女はそんな事を考える。未だに眠気は消えていないらしく、うとうととして瞼が重い。彼女の体には疲れが残っているが、それは心地良いものだった。 その疲れに身を任せ、再び瞼を完全に下ろそうとしたその時、彼女は不意に思い出した。 ――朝――!?今日は休日じゃないわ! 慌てて彼女は上体をベッドに起こそうとする。が、その際に腰に鈍い痛みを感じた。思わず動きを中断する。浮きかけた体を、再びゆっくりとベッドに横たえた。 彼女は自らが何も纏っていない状態である事に気付いた。と、昨晩の状況をふと思い返す。――顔が赤くなる思いがした。腰も痛いが、別の場所にも擦れたような鈍痛がある。自分が何をしたか、彼女は脳裏に思い浮かべていた。 彼女は思わず、シーツに包まって丸くなってしまう。独りで慌てていた彼女だが、隣に居るべき夫が居ない事に、そこでようやく気付いた。 その時、部屋の扉ががちゃりと開けられた。そこから蜂蜜色の髪が覗く。 「――ああ、起きたか」 部屋の中に一歩踏み入れたミッターマイヤーは、ベッドに目をやり、そう声を掛けた。彼は軍服のズボンとシャツを着ていて、手には軍服の上着を提げている。そして片手にはカップが持たれていて、そこからは湯気と共に香ばしいコーヒーの香りが漂ってきていた。 夫の姿を見て、エヴァンゼリンは顔を上げた。慌てた風に声を上げる。 「ウォルフ、私」 「ああ大丈夫。出勤時間には余裕があるから」 ミッターマイヤーは笑顔で妻の言葉を遮った。そのまま歩みを進め、ベッドの前に立つ。そこに横たわる妻の体を眺めやった。 「…それより、ついでに淹れたから君も飲むといい」 そう言って彼は、手の中にあるカップをエヴァンゼリンの前に差し出す。 エヴァンゼリンはコーヒーが入ったカップにまず視線をやる。次いでにこやかに笑っている夫を見る。彼が着ている軍服の類には皺ひとつ寄っていない。彼女が昨日のうちに準備していた着替えであるようだった。 寝過ごす事など滅多にない彼女だったが、こんな事態を引き起こす日があるなら早目に準備しておくに越した事はないと、事前の自分の行動にほっとする思いだった。 そしてさり気なく、部屋の壁に掛けられている時計を見る。確かにミッターマイヤーが言うように、普段の出勤時間からも少し早い時間帯だった。しかしその時間は普通のエヴァンゼリンならば起きていて朝の支度をしているはずだったので、彼女には何の慰めにもならなかった。 ともかく彼女は、目の前で湯気を漂わせているコーヒーカップを何時までも無視している訳にはいかなかった。先程の痛みを思い出し、ゆっくりと体を起こし始めた。どうやら急に体を動かさなければ、痛みは酷く伝わってこないようだった。違和感は感じるが、痛くはなかった。 上体を起こしたエヴァンゼリンから、シーツが落ちる。寝ていた際には肩に掛けられていたシーツが、起き上がった事によりオーディンの重力に従い、腰の辺りまでずり下がってしまった。 彼女は慌ててシーツを掴む。再び肩の辺りに先端を掛けてみるが、上手くいかない。手を離すと再びそれは落ちてしまう。何度かそれを試してみて、その度に失敗を繰り返す。 エヴァンゼリンは諦め、シーツを胸に巻きつけた。脇で挟み込み、とりあえず胸から下を隠す事には成功した。 妻の慌て振りを、ミッターマイヤーはカップを持ったまま見ていた。――昨晩は、自分から裸体を晒したのに。彼はそう思うが、今の妻からはそんな印象は微塵も感じられなかった。やはり昨晩は特別だったのだろうかと彼は認識する。
「ウォルフ、頂きます」 彼女の小さな手が、ミッターマイヤーが持つカップに伸びた。彼女は両手でカップを挟み込むように持つ。夏の朝だが、寝室の空調は効いていたために、ホットコーヒーが入ったカップであっても暑苦しさを感じる事はなかった。 妻の手がしっかりとカップを受け止めるのを見てから、ミッターマイヤーはその持ち手に絡ませていた指をそっと外した。俯き加減でカップを顔に近づけていく妻を、彼は見ていた。 クリーム色の髪が肩から二の腕にかけて、広範囲に広がり掛かっている。その合間から見える素肌は白く美しい。両手で抱えるように持つカップが妙に大きく見える。彼女はそのカップの縁に、形の良い唇を寄せた。瞼を伏せてカップを傾ける。 ミッターマイヤーはこの一連の仕草を、やけに子供じみているように思えた。実際にこの手の仕草は彼女が引き取られてきた当時から良く見ているもので、歳を取ってからも変わる事はない。 彼にとってエヴァンゼリンが「妹」であった当時と同じものだし、体型や顔立ち自体もそれ程変化していないのだ。 そのような少女じみた彼女が妻となり、昨晩はあのような大胆な事をするのだから、世の中は判らない。彼はそう思った。しかし不快ではない。むしろ、いとおしい。 ミッターマイヤーは妻がコーヒーを飲む姿を見下ろしながら、自らの髪に手をやった。幾分かは手入れしたつもりらしい、収まりの悪い蜂蜜色の髪を軽く掻き回しながら言う。 「――俺独りで飲むつもりで淹れたんだが、どうにも加減が判らなくて淹れすぎてしまった。君が起きてなかったら自分で全部飲まなくてはならなかったよ」 苦笑しながら夫がそんな風に言うと、妻はにっこりと微笑んだ。 「美味しいですわよ」 「そうかな?君には全く及ばない」 「いえ、本当ですよ」 エヴァンゼリンのその台詞は本心だった。が、その判断は主観的なものが大きく含まれていた事だろう。それは彼女にとって、愛する夫が淹れてくれたコーヒーなのだから。愛情こそが調味料となっていた。 彼女の体内にコーヒーが染み渡る。暖かい液体が、人工的な空調で微かに冷めていた体を温めてゆく。昨晩飲んだ酒の成分も、ようやく追い出されていくような気がした。 ――酒?そう言えば昨日飲んだのだったわ。彼女はそれを思い出した。 酒のせいで昨日、ああいう事をしたのだとすれば、やはり普段飲まないものを飲むのは考え物なのかもしれない。昨晩も彼女はそう考えたが、今もその考えは変わらなかった。 軽く座り込んだ格好にすると、下腹部から軽く違和感が伝わってくる。直後ならばともかく、一晩眠った後でもこんな状況なのだから、昨晩余程――と、そこまでが彼女の考える限界だった。やはり、どうにも恥ずかしい。 エヴァンゼリンは思考を中断する。カップを口元から軽く離した。夫を見上げる。 「朝食はいかがなさいます?今からでも軽くお作り出来ますけど」 「いいよ。――食堂は朝からやっているから、たまにはそこで食べるとしよう」 苦笑気味に彼女の夫はそう言う。それを訊き、エヴァンゼリンは膝の上にカップを降ろした。カップの中にはコーヒーが半分程度残っている。 「今朝は起きられなくて…申し訳ありません」 「まあ、たまにはそんな日もあるだろう。君も俺のせいで毎日働き詰めなんだしね」 そう言って、ミッターマイヤーは腰を屈めた。座り込んでいるエヴァンゼリンに視線を合わせる。覗き込むようにして、彼女の顔を見やった。 「コーヒー、まだ飲める?」 「あ、いえ…」 「じゃあ、淹れた俺が責任持って最後まで片付けよう」 ミッターマイヤーは再びカップの持ち手に指を絡ませた。そのまま軽く持ち上げる。エヴァンゼリンの手も持って行かれそうになるが、彼女は慌てて手を剥がした。ミッターマイヤーは身を起こしつつ、そのカップに口をつけ、傾けた。一気に飲み干す。 エヴァンゼリンはそんな彼を見上げていた。液体を飲み干し動く喉元は逞しく、彼女はそれを魅力に感じた。
ミッターマイヤーはカップをサイドテーブルに一旦置いた。それから手に持っていた上着を羽織る。銀で彩られた軍服の袖に腕を通す。 「体は大丈夫?」 夫からの短い質問に、エヴァンゼリンは一瞬口篭った。 「あ…ええ…」 彼女は要領を得ない答えしか出来なかった。大丈夫であると言えば、嘘になる。しかし、そこまで大事ではない。それに、痛みを訴える場所が場所であるし、その原因もどうにも恥ずかしい代物である。彼女にはそれを悟られたくはなかった。 ミッターマイヤーはその返答に対し、一瞬手の動きを止めた。上着の前を閉める作業が中断され、エヴァンゼリンを見やる。エヴァンゼリンはその視線から逃れるように、俯いた。 「――まあ、今晩こそは俺は遅くなりそうだから。君は俺の事を心配しなくていいよ」 エヴァンゼリンの耳に、夫の台詞が聞こえてきた。衣擦れの音も再開されている。顔を上げると、夫が上着の着用を終えていた。彼女にとって、夫の軍服姿は見慣れていた。今となっては彼に一番似合う服となっていた。 「昨日の食器は洗うだけは洗っておいたし、洗濯物も運んでおいたよ。君もここから起きる時にはそれを着るといい」 そう言ってミッターマイヤーはベッドの上に新しい着替えを置く。エヴァンゼリンは申し訳ない気分になるが、彼は笑うだけだった。彼としても自分が出来る事はやっただけであり、特別な事をしているつもりではなかった。 夫のそういう所もエヴァンゼリンは愛していた。何て過ぎた夫なのだろうと思う。 ふと、ミッターマイヤーを再び眺めやったエヴァンゼリンは、声を上げた。 「――あ、お待ちになって、ウォルフ」 「ん?」 妻の声にミッターマイヤーは立ち止まる。彼女の方に向き直った。そんな彼にエヴァンゼリンは身を乗り出して言う。 「襟が曲がってますわよ」 「あれ?そう?」 妻の指摘に彼は小首を傾げる。どうにか視線を降ろして首元を見やろうとするが、彼には胸元までしか見えない。軽く襟元を掴んでいじってみるが、それを視認出来ない彼には果たして上手く調整出来ているのかは判らなかった。 「直して差し上げます」 エヴァンゼリンの呼び掛けに、ミッターマイヤーは歩み寄った。再び腰を屈め、彼女に視線を合わせる。軽く胸だけを突き出すようにする。 エヴァンゼリンの両手が彼の襟元に伸び、細い指が絡むように掴む。襟に指が添えられ、なぞるように首元を整える。彼女は真面目な顔をして、夫の襟元を眺めていた。ミッターマイヤーはそんな彼女の顔を見ている。 やがて、満足したエヴァンゼリンが指を離した。大丈夫な旨を夫に継げ、微笑んで視線を上げた。そこには夫の顔があり、彼もまた笑顔を浮かべている。 視線を合わせたからか、ミッターマイヤーは短く声を上げて笑い、妻の頬に掛かるクリーム色の髪を摘んだ。それを摘み上げて避け、彼は妻の頬に口付ける。暖かい感触が、妻に伝わった。 短く口付けた後、ミッターマイヤーは顔を離した。彼女の肩にそれぞれ手を乗せる。外気に触れて少し冷たくなっていた彼女の肌には、その手は暖かかった。彼の手に、妻の髪が絡み付く。それを軽く掻き上げてやり、その体を軽く抱いた。 「じゃあ、行ってくる」 ミッターマイヤーは妻の顔を軽く胸に押し付け、そう告げた。 エヴァンゼリンは銀に彩られた軍服の胸に頬を軽く寄せていた。その向こう側から微かながらも確かに聞こえる鼓動に、彼女は幸せを感じていた。胸元に手を這わせ、そっと顔を引き剥がす。微笑みを浮かべ、彼女は夫に言った。 「はい、行ってらっしゃいませ」 別れを想起させるこの手の台詞に、昨晩彼女は心を乱された。それが全ての始まりだったはずだった。しかし、今の彼女はこの台詞を普通に受け流すことが出来た。 彼女もそれに気付く。しかし昨晩の異変は、おそらく酒に酔ったせいなのだと思った。それに――今は、満たされているはずだ。昨晩、あのような事をしたのだから。 軽く手を挙げ、笑顔を浮かべたままの夫は扉の向こうに消えていく。エヴァンゼリンはそれを見送り、再びベッドに横になった。シーツを肩まで被る。どうにも体が疲れている。もう少し、眠ろうと思った。
士官専用の食堂もまた、朝食を求める士官のために朝から開いている。 もっとも、官舎やその付近にも軍人のための店は数多く存在するために、この食堂を利用する人間はそう多くはない。せいぜい夜勤の軍人がそのままここで朝食を摂ったりする程度の利用が、多数を占めていた。 軍務省内にある食堂のために厳密には客商売ではないので、利用者が少なくても食堂の経営には影響はないらしい。そのため、数少ない利用者にはありがたい店であり続けていた ミッターマイヤーはこの食堂を朝から利用する事は稀だった。結婚した後は勿論、結婚前も実家から通勤していた時期には、エヴァンゼリンの朝食を得る事が出来たからである。 士官専用の店であるからには、出される食事もそれなりの味であった。しかし、彼にとってはエヴァンゼリンの料理こそが最高だった。 今朝、久々に彼は朝からこの食堂に足を踏み入れた。月末だからか泊まり込みの軍人も普段よりも多いらしく、客もちらほら見受けられる。しかし混んではいない。彼は適当なテーブルにつき、適当なセットを注文した。 「――ほう、卿がこの食堂に来るとは珍しい事だ」 不意に、彼の頭上から声がした。訊き慣れた声である。 彼は視線を上げた。そこには彼が見慣れた金銀妖瞳を持つ青年の顔があった。 「ロイエンタール!」 「よう」 ふたりは軽く手を上げて挨拶を交わす。ミッターマイヤーは自然に相席を勧め、ロイエンタールも自然にそれに従った。向かい合わせになる椅子を引き、そこに長身を沈める。注文を取りに来たウェイターに対し、ミッターマイヤーと同じ食事を注文した。 「卿こそどうした。早いな」 ウェイターが去った事で一段落し、ミッターマイヤーはロイエンタールに話を向ける。 普段のロイエンタールはそれ程早く出勤する事はないし、彼はオーディンに邸宅を持ち使用人が常時詰めている。ミッターマイヤーとは別の理由で、彼は自宅で朝食を摂る事が出来る人間であった。その彼がどうして今、ここに居るのかがミッターマイヤーには謎だった。 親友からの問いに、ロイエンタールは唇を歪めて笑う。その笑みを見て、ミッターマイヤーは悪い予感がした。親友がこの手の笑みを浮かべる際には、偽悪的な言動が多い。 「卿はともかく、俺は遅いのだ。何せ朝帰りなのでな」 「………ああ、そうなのか」 果たしてロイエンタールが両手を広げて言った台詞に、ミッターマイヤーはげんなりしてしまった。 つまりは、そういう事なのである。 彼は親友が漁色家と揶揄されるまでに女性関係に甚だ乱れている事は長年の付き合いで判っていた。それを意識的に止めようとはしないが、やんわりと忠告する程度の事はしてきていた。 今日の場合、昨晩あれ程までに夫婦として満たされてきた気分が、今の発言で打ち消されてしまった気がした。ミッターマイヤーは妙に疲れを感じる。 「…女性の所に居たのなら、朝食位出るだろうに…」 彼はげんなりとした気分のまま、ロイエンタールにそう言った。しかし、ロイエンタールは笑みを浮かべたままである。更には、こんな会話が続いた。 「いや、流石に俺は振った女の家で食事できる程、厚顔無恥ではないよ」 「振った女性の家に泊まるのは、厚顔無恥じゃないのか」 「何、振ったのが朝起きてからでな」 つくづく自分勝手な男だ――ミッターマイヤーは内心そう思う。しかし、それを口に出す事はしなかった。 どうも、この男はそう言われたくて仕方がなくて、こんな偽悪的な態度を晒しているのではないかと、ミッターマイヤーには思わせていたからだった。だとしたら、望み通りの対応はしないでおこうと、彼は思ったのだった。
目の前の蜂蜜色の髪をした男が黙り込んでしまっているのを、ロイエンタールは眺めていた。そしてテーブルに腕をつき、口を開く。 「俺の事はどうでもいい。――卿こそ、どうしたのだ。奥方の機嫌でも損ねたか?」 興味津々と言わんばかりの金銀妖瞳がミッターマイヤーを眺めやる。当のミッターマイヤーは「卿と一緒にするな」に類する台詞をそのまま飲み込み、腕を組んだ。 「そうじゃない。彼女が起きられなかった」 その台詞に、ロイエンタールは軽く首を傾げた。顎に手をやり、真面目な顔をして言った。 「そうか。奥方もお疲れなのだな」 「俺のせいで結構大変な目に遭わせてるからなあ…」 ミッターマイヤーの顔に苦笑が浮かぶ。最前線への赴任も多いし、休日も不定期だ。自分だけならともかく、妻もその予定に合わせて生活を組み立てなくてはならない。その労力たるや如何ばかりかと、夫たる彼は心配している。 きっと、今朝はそれが出てしまったのだろう。昨晩酒を飲んだ事もあり、ぐっすり眠れてしまったのだろう。彼はそう思っていた。 と、そんな彼の思いをよそに、ロイエンタールが口を開いた。相変わらず、真面目な顔をしたままの発言である。 「全くそうなのだろうな。卿は昨晩、奥方を余程大変な目に遭わせたのだ」 一瞬、ミッターマイヤーは何を言われたのか判らなかった。 が、その台詞を脳内で反芻していくと、内に秘めた内容が彼にも判ってくる。それに伴い、彼の顔が見る見る赤くなっていった。 「………何故そうなる!?」 思わず彼は大声を出してしまう。顔を上げ、ロイエンタールを見やって叫んだ台詞だった。それに周りのテーブルも反応する。両手で数え切れる程度の客が、ふたりの大佐がついているテーブルを視界に入れる。 相席した男に声を荒げられたロイエンタールは、淡々としたままだった。顎にやった手が頬に動き、頬杖をついて親友を見上げる。 「何故と言われても…女が朝起きられないとなると、俺にはそうとしか思えぬのだが」 「卿なあ…」 ミッターマイヤーはまたしてもげんなりしてしまった。この親友が女性に対して著しい偏見を抱いているのも、良く判っているつもりだった。しかし、自分の妻に対してまで、そんな事を思われてはたまらなかった。 一方で、ミッターマイヤーとしてもエヴァンゼリンは「大変な目に遭わせた」自覚がない訳ではなかった。何せ普段やらない事をしたのである。 妻から迫られるという経験は、彼にも普段とは違った欲望を抱かせるに充分であった。普段以上に燃え上がった気が彼にもしないでもない。 自らの上に跨り欲情に任せて腰を振る妻の姿を思い返すと、彼は今でも平静ではいられない。おそらく、その際にはもっと凄い事になっていたのだろう。身を起こした後は、彼自身も欲情に流されて突き上げ続けたに違いない――そう思い、反省する。
「――…昨日は何かが違ったんだよなあ…」 ミッターマイヤーの口から、独り言としてそんな言葉がついて出た。瞼を伏せ、眉を寄せて腕を組み変える。訳が判らないと言った風情で、首を捻った。 そんな彼に、ロイエンタールが声を掛けた。軽く手でミッターマイヤーを差し示す。 「昨日、俺は酒を渡したが、奥方はそれを飲んだのか?」 「ああ…そうか、酒が入ったのが大きいんだろうな」 ミッターマイヤーは昨晩の出来事を脳内で思い返す。――最初にはそれがあった。あのフルーツワインを開けてエヴァンゼリンに飲ませ、そうしたら彼女が酔って潰れてしまい、寝室に運んでいったのだった。 飲酒が彼女の感情を露にしたのかもしれない。彼はそう納得した。独りで軽く頷いてみせる。 その仕草に、ロイエンタールは怪訝そうな顔をした。形のよい眉を軽く寄せた。 「…何だ。気付いていないのか」 「……何に?」 ロイエンタールの、一種の不服そうな顔に、ミッターマイヤーはきょとんとした。親友が何を言わんとしているのか、判らなかった。 ミッターマイヤーのその表情を、ロイエンタールは真正面から受け止めた。軽く溜息をつく。そして、言った。 「あの酒、催淫剤入りだったんだが」 「へえ………――って、ちょっと待ておい!」 ミッターマイヤーはそんな単語を聞くのが初めてだったために、一瞬軽く受け流しかけた。が、流石に気付き、慌てて反応を返した。 「何だ?俺は卿と奥方とに素晴らしい夜の営みを提供するつもりで、色々と苦労したのだぞ?」 そこから先には、あの「フルーツワイン」に関するロイエンタールの解説が続いた。 曰く、フルーツワインに混ぜても味が変わらない催淫剤を探すのにまず苦労する。更にはそこから習慣性が少しでも存在する催淫剤を全て排除した。その後には適当な薬剤の配分を考え、ワインのサイズを考えた。 無論、ワイン自体にも妥協は許さず、かなりの高級品を見つけて来た――。 ロイエンタールは漁色家ではあるが、普段付き合う女性には薬剤を使用しないために経験則はない。全てが手探りの中、真剣に取り組んだ「一大事業」であったらしい。とりあえず、彼は真顔でそう言った解説をした。 一方、解説された側のミッターマイヤーであるが、蜂蜜色の頭を抱えていた。俯き、無言のまま、親友の語りを訊いていた。 まるで普段の作戦立案のように、淡々とした、それでいて熱の篭もった語り口である。おそらくは、親友は本気で彼の事を想って、この「プレゼント」を考えたのだろう。 それはミッターマイヤーにも身に染みて判っていた。一部斜に構えた所はあるが、仕事には真面目に取り組む男である。その真面目な態度のまま、こんな事をしでかしてくれたのは痛いほど判った。 が、その「しでかしてくれた」と言う表現こそが、彼にとっては適切以外の何物でもない。 ロイエンタールが彼の親友であり、真面目な人間である事は判っていた。判ってはいたが――。 「……この……――が」 俯いたままのミッターマイヤーの口から、声が漏れた。押し殺したような声であった。頭を抱える手が微かに震えている。 「ん?どうかしたか?」 長い語りを終えたロイエンタールがミッターマイヤーに呼びかける。その口元には笑みが浮かんでいた。ある種、爽やかな笑みである。おそらくは彼を知る人間にとって、それは何故か嘘臭さを思わせるような爽やかな笑みであった。 ロイエンタールは自分がやった事が良い事であると疑ってはいない。だからこそ、偽悪的な態度を振りまく普段とは違い、爽やかに笑う事が出来るのだった。 そんな爽やかな笑みは、普段のロイエンタールを心配しているミッターマイヤーが見たくて仕方がない代物だっただろう。しかし今のミッターマイヤーには、そんな余裕はなかった。 むしろ、耳元に届いた声がやけに爽やかであった事が、ミッターマイヤーの中で何かをぶち切る結果となった。 「――…この外道がああああああああああああああああああああ!!」
"――私はその朝、夜勤明けであり、士官専用の食堂で朝食を摂っている所だった。 そこに、唐突にそのような物騒な叫び声が響いたのだ。無論、私だけではなく、数少ない食堂利用者達もその声に反応していた。 叫び声に次いで、物音がした。私が視線をやった頃には、そのテーブルが引っくり返っていた。その脇に肩で息をしている軍人が一人。そしてテーブルに隠れて良く見えないが、彼の足元から何やら声がしていた。どうやら彼は、同席者を殴り倒したらしい。 何やら会話を交わしているが、殴り倒された側もそれ程ダメージを受けていないらしい。やがて立ち上がると、私はふたりの上背の違いに少々驚いた。 と同時にふたりの階級を軍服で確認できる。大佐同士の喧嘩である。穏やかではない。 殴り合いが激発しそうであったが、店の主人がやんわりと割って入った事で、どうやら終結に向かいそうであった――。" ――ナイトハルト・ミュラーのゴシップネタ帳より
>254です。以上で終わり。 いくら厨設定とは言え序盤でオチを見抜く人が多かったっぽいですが、 ポプラン中佐の名言「パターンこそ永遠の真理なんだ」を胸に、 筋変えずに書いてみました。 展開上、エロパロのくせにラストが女っけなくてすまん。 萌えて下さったりGJ下さった方々に感謝。 銀英でまた何か思いついたら投下しようと思います。 それまではROMに戻ります。では。
ガイエもパターンの人だもんね。 とても楽しませてもらいました。 乙でした。書いてくれてありがとう。
あとの氏様のシチュで、妄想が膨らんでおります… でも勝手に続き書いちゃうなんて不義理はできませんし… とにかく続きをお待ちしております。ごゆりとどうぞ。
うん。よかった。最後のしめもいい。
連載乙!! 翌朝に打って変わって恥じらいを見せるエヴァたんが可愛い! 早起きできなくて慌てるところとか、ミッタの襟の乱れを目ざとく見つけて直してあげるところとか、 いい奥さんって感じで萌えでした。 ロイの親友を思うあまりの行きすぎた親切が笑えた! そしてオチのミュラーがナイスw 帝国内のゴシップを嬉々として収集する彼を想像して 笑いますたwww また何か思いつかれたら投下してくださるとのことなので、その日を楽しみにしております。 GJでした!
欲を言えば、最後のミッターマイヤーの怒鳴り声は 「ロイエンタールの大馬鹿野郎」がよかったなw
>330 それだと泣けちゃうじゃないか。 >325 乙でした!最後までエヴァは可愛いし、幸せな雰囲気を堪能したよ。
原作だとメックリンガーが日記をつけてたが、ミュラーもつけてそうだな。 しかし帝国のお歴々の赤裸々な姿が暴かれまくってるんで 永遠に封印処分をうけてしまったという罠。
つくづく、ミュラーが軍務尚書でなくて良かったよな、と思う奴はかなり居るだろう。 憲兵総監でなくて良かったよな、と思う奴も沢山居るだろう。 何よりも、ミュラーが陰湿でねちっこい性格じゃなくて良かったよな、と皆思ってるだろう。
オーベルシュタインもオナニーとかするんだろうか…いやするんだろうけど…
オチのミュラーにワロタ
>334 えっ?しないから犬を飼ってるんじゃないの?
クリスマスの晩にこんなところを見ている人なんていないと思うのでwww、 こっそりsage進行で出来上がったのを投下します。 本編終了後の妄想ネタ、ミュラー×フレデリカ(少しだけヤン×フレデリカ有り)です。 萌えと妄想の突っ走るままに書いた結果、 全21章、120kb超のとんでもない長さになってしまいました…orz 結局小説版を入手する前に書きあがってしまいました (あちこち探したんだが全巻揃いで置いてるところってなかなか無い…)ので、 随所に矛盾が生じている可能性大です。 読んでて途中で飽きた、「そんなの読んでる暇ねぇよゴルア!」、 文章表現が好みに合わない、「お前前スレの○○だろ! うっとうしいんだよ!」 等々気に入らない人は、題名の「2人でお茶を」で個別あぼーんしてください。 先に予告しておくと、軽いエロネタ(1人エチー)が3章、16章後半に、 キスシーンが1章、2章、4章、6章、14章に、本番なしのエロシーンが15章に、 本番ありのシーンが7章、16章前半、20章にありますので、 エロシーンだけ読みたい人はそこだけ拾い読みしていただければよろしいかと。 投下終了までスレをほぼ独占することになってしまうので申し訳ありませんが、 しばしの間お付き合いくださるようどうぞよろしくお願い致します。
1. 一度目は偶然だった。 それは、廊下と廊下が交差する地点での出来事だった。 その日、それまでのイゼルローン共和政府主席である フレデリカ・グリーンヒル・ヤンが、 イゼルローン共和政府軍司令官代理のユリアン・ミンツを伴って 幼帝アレクサンデル・ジークフリード・フォン・ローエングラムの暫定摂政、 ヒルデガルド・フォン・ローエングラム皇太后と 今後の問題について3時間以上にもわたる初めての会談を終え、 会議室から出て廊下を歩いていたときだった。 まだ草案としての域を出ていなかったが、 帝国・旧同盟どちらにも有利な条件を引き出す会談となったことに ほっとしていたのだろう、 フレデリカは自分のやや後ろを歩いていたユリアンに顔を向け、 話しながら歩いていたから気がつかなかったのだ。 話しながら歩いていたユリアンが 前方の廊下の曲がり角から現れた人物に気づき、 「あ、危ない!」 とフレデリカに注意を促したときには既に遅かった。 フレデリカはその人物と接触し、 「きゃっ!」 と短い悲鳴を上げながら、 そのまま転ばないように無意識のうちに接触した相手の上着を握り締めていた。 通常であればフレデリカもそれで転ぶことはなかったのだが、 いつもと違う状況がさらに事態を悪化させていた。 フレデリカが履いていた、公式の立場以外では履くことのない高さ10cmのパンプス。 それがフレデリカの足元を不安定にさせ、 相手の足を蹴り上げてしまっていた。 そのままフレデリカは後ろに倒れそうになる。 必然、上着をつかまれたままの相手も、 そのまま引っ張られる形で自分に圧し掛かってくる。
半分ほど倒れたところだった。 とっさの判断で硬い床に叩きつけられるフレデリカの身体を庇おうとしたのだろう、 彼女の背中と後頭部に相手の両腕が回っていた。 驚きで眼が見開かれ、 そのまま瞳に吸い込まれるかの如く互いの顔が近づく。 どすん、という大きな音を立て、2人の身体は床に転がっていた。 が、床に転がった直後の場面を何も知らぬ人物が見たら、 「仮皇宮の廊下の交差地点」というその場所で、 そのような狼藉を働いている、 フレデリカの上に圧し掛かっている人物に非があるように見えるだろう。 フレデリカの唇に、相手の唇が触れていた。 双方の顔が瞬間的に朱に染まる。 フレデリカを押し倒しているその人物は 「も…、も、もも…、申し訳ありません!」 弾かれたかのように身を退け、片膝をついてフレデリカの上体を起こした。 「お…お怪我はありませんでしたか、 フロイラ……違った、フラウ・ヤン?」 フレデリカが相手の力を借りて立ち上がるまで、 相手は片膝をついたままの状態を保ち続けた。 2人のそばに立っていたユリアンには、 その姿はフレデリカを護衛する誇り高き「騎士」のように見えた。 「え…、あ…、は…はい」 相手はフレデリカの返事で無事を確認すると、やっと自分も立ち上がって。 いまだお互いの頬が染まったまま、少しの間視線が合わさる。
慌てたように再び相手は謝罪の言葉を口にした。 「フラウ・ヤン、申し訳ございません! 以前からこの場所は衝突事故が起こりやすく、 小官もそれを充分心得ていたのですが、 今日に限って考え事をしながら歩いておりましたゆえ、 フラウ・ヤンのお姿に気づくのが遅くなってしまいました。 本当に申し訳ございませんでした!」 自分の失態から目の前の婦人を危険な目に合わせたことを詫び、 深々と頭を下げる、黒地に銀の意匠を施してある上着を着た人物。 「いいえ、こちらも私の後ろを歩いていたミンツ中尉と話しながら歩いていたし、 その…足元がぐらついてしまって…。 それでお召しものを引っ張ってしまいましたので、 その点から申し上げれば原因は私にありますわ」 とフレデリカの方も非を認める。 と、自分の目の前にいる相手の姿に、フレデリカは見覚えがあった。 「あなたは確か夫の葬儀のときに…」 砂色の髪。砂色の瞳。比較的高い身長。 いくらか高音ながらも柔らかい印象を与える声。 「はい、私は帝国軍元帥のナイトハルト・ミュラーと申します」 「あの時はフラウ・ヤンもご傷心であらせられましたので、 あまりお話することもできず…」 「…あの時は帝国を代表してのご参列ありがとうございました、閣下」 ととりあえず形式に沿った挨拶を交わす。 やっと互いの体裁が整ったのを見計らって、一度咳払いをしてから 「フレデリカさん、大丈夫ですか?」 とユリアンが声を掛ける。 2人はユリアンの存在をすっかり忘れていたことに気がついた。 「あ、…ええ。大丈夫よ、ユリアン」 ミュラーはフレデリカの後ろに立つユリアンに敬礼で挨拶した後、 「本当に申し訳ありませんでした、フラウ・ヤン。 少し急ぎますゆえ、私はこれで失礼致します」 とその場を立ち去ろうとした。
「お待ちください、閣下」 と呼び止めるフレデリカが、上着のポケットから何かを取り出す。 「閣下、失礼致します」 と取り出したハンカチでミュラーの唇を拭った。 「場所が場所ですし、元帥ともあろうお方の唇に口紅がついていたら、 あらぬ嫌疑を掛けられることになりかねませんわ」 薄手のハンカチ越しに触れられた指先のほのかな温かさが、ミュラーの唇に伝う。 ちり、と胸の奥がわずかに焦げる音が、ミュラーの内側に聞こえた。 「これで大丈夫です、閣下。では私も失礼致します」 とにこやかに微笑みながら一礼し、フレデリカ達の方が先に歩き始めていた。 少し急いでいたはずのミュラーは、 その後ろ姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。 (美しい方だった…) その晩、ミュラーは自宅のベッドで昼間のことを思い出していた。 (いや、1年ほど前に初めてお会いしたときにもそう思ったが、 なんというか…美しさに磨きが掛かったような気がする) 互いの注意力散漫から起きた偶発的な事故とはいえ、 金褐色の髪の触り心地が。 抱きしめたら骨が折れそうなほど華奢な体格が。 ミュラーの身体に蘇ってくる。 (あれほどのか細い身体のどこに、 共和政府主席としての才覚を隠しているんだろう? 少なくとも昼間の様子からでは、 少女の面影を残したまま大人になった女性としか思えない) 触れてしまった唇の柔らかさ、直後に顔中を真っ赤にして恥らった姿。 (あれではまるで…男を知らぬ乙女のような…) だが、ミュラーが亡き敵将ヤン・ウェンリーの 葬儀の際のことを口にしたときに、一瞬だけ見せた瞳の陰りは 間違いなくフレデリカが未亡人であることを物語っていた。 (1年足らずの結婚生活だったとも聞くし…寂しいんだろうな) 彼女の夫を倒すべくその戦いに参加したミュラーは、 結果的には彼女の夫を殺すための「舞台」を作ってしまった 責任と罪の意識の一端を痛いほど感じていた。 (あの場で詰問されても否定はできないのに) だが自分を呼び止めたフレデリカはそうはせず、 ハンカチ越しに自分の唇に触れ、にこりと微笑んだ。 その表情は、まるで姉が弟の身体を労わるような、慈しみに満ちていて。 (子供の唇を拭うかのように、傷つけないようにそっと触れられた…) 自分の指先が無意識に唇に手を延ばす。 が、ミュラーの意識は理性からの訴えでそこで強制的にストップが掛かった。 7、8年前の苦い記憶が頭の中に蘇る。 (…いや、止めよう。 あの日自分自身で悟ったではないか、自分は色恋事に向いていないと) 自分自身への警告を込め、わざと音を立てて唇に触れていた手を枕へ落とす。 固く目を閉じ、明日に備えてミュラーは眠りについた。
2. 二度目は未必の故意だった。 それは、個室に備えられたソファの上で起こった。 その日の午前中に行われた旧自由惑星同盟領の自治を認めるための 権利移譲条約締結を記念し、同日夕刻に開催された、 旧同盟領を代表してイゼルローン共和政府側首脳部と、 銀河帝国側首脳部の面々を列席者の中心とする 皇太后ヒルダが主催した非公式のパーティーの中での出来事だった。 無論フレデリカはパーティーの主賓として招待されていたが、 午前中の条約締結にかかる調印式、続く公式記者会見での緊張がいまだ解れず、 自分が気づかぬうちにいくらか体調を崩していた。 そこに雨が降ってきた。 帝国側が用意してくれた会場へ向かう公用車の中にいたときは それほど降りはひどくなく、フレデリカが着くまでには止むだろうと思っていた。 しかし、会場に近づくにつれ雨は激しくなり、 窓ガラスを叩くように音を立てている。 公用車は会場の玄関付近までフレデリカを運ぶはずだったが、 予想外の事態が発生した。 フレデリカを乗せていたその車が何の前触れも無く緩やかにスピードを落とし、 会場敷地の入口付近で停止してしまったのだ。 どうやらこの雨で車両運行用の電気系統がショートしてしまったらしい。 それが車両全体の故障に波及したのはフレデリカにも容易に理解できた。 車内端末のテレビ電話機能で緊急用サポート係を呼び出し、事情を訴えた後で 応対に出た係員に会場までの道程を尋ねた。 画面の向こうで何度も頭を下げながら道順を説明し、 代車をすぐに手配してそちらに向かわせると詫びる係員を責めることはせず、 「玄関まではそう遠くは無いのでしょう? でしたらここでぐずぐずしているよりは走った方がましですわ」 とフレデリカは会場玄関までの道程を、 出来るだけ濡れないように木陰を通りながら走っていった。
玄関に着いたときには、 あれだけ気をつけながら走ってきたフレデリカのドレスは水分を含み、 ずっしりと重くなっていた。 しかし、それ以上にフレデリカの顔は滝に打たれてきたかの如く濡れ、 顎先からボタボタと雫を落としている。 化粧もいくらか雨に流されてしまい、 列席者に挨拶に向かう以前に身支度を整える必要があった。 フレデリカは迷わず化粧室に向かい、 目立たない部分を絞って濡れたドレスをいくらか軽くし、 ハンカチで顔を拭って化粧を直す。 それからまずは自分を招待してくれた皇太后に挨拶すべく、 化粧室を出て、会場の長い廊下を歩き始めた。 絞っていくらか軽くなったとはいえ、 多分に水気を残したままのドレスはフレデリカの身体を冷やす。 しかも顔を拭うだけで役目を果たしてしまった小さめのハンカチのおかげで、 金褐色のセミロングはいまだ毛先から雫を落としていた。 急激にフレデリカの体調が悪化するのは当然だろう。 おぼつかない足取り。ふらつく頭。低迷する思考回路。 なんとかしなくては、とは思ったが、そこは初めて訪れている場所。 いくら記憶力抜群のフレデリカでも、 体調が少し快方に向かうまでの間だけ休息する場所を思いつくことが出来ない。 仕方なくフレデリカは誰かの助けを求めるべく、 右に左に身体を揺らしながら廊下を歩いていた。
そこに近づいてきたのは正装用軍礼服に身を包んだ人物。 後ろにたなびくマントからはその人物が元帥号を持っていることが分かる。 「あ……ナイトハルト…ミュラー……元帥閣下…」 とその人物の名前を呼ぶことはできたが、 続けて挨拶をすることが出来ないくらいフレデリカの足元が揺れる。 瞬時にしてフレデリカのただならぬ様子を察知したミュラーは、 「大丈夫ですか、フラウ・ヤン?」 と慌てて駆け寄る。 と同時にフレデリカの意識が混濁し、ミュラーの前にその身体が倒れこんでくる。 その身を守るようにかき抱き、フレデリカが床に崩れ落ちるのを防いだ。 ミュラーが抱きとめた腕の中の人物の身体が小刻みに震えていて、 着ていたドレスが湿っているのがすぐに分かった。 「……寒い…」 小さく漏らしたつぶやきが、フレデリカの発熱を物語っていた。 これ以上歩くことは困難だろうと判断したミュラーは 「フラウ・ヤン、失礼致します」と声を掛けてその身体を抱き上げ、 本会場からは目立たない位置にある個室のいくつかから、 最も至近にある部屋を選んで中に入り、ソファにフレデリカを横たえた。 「すぐに救護係の女官を呼んで参りますのでここでお待ちください」 とミュラーはその場を急いで立ち去ろうとしたのだが。 自分の手がフレデリカによってしっかりと握られていた。 「…いかないで、あなた…」 意外な言葉にミュラーの動きは制される。 混濁した意識下でフレデリカは、 自分を抱き上げソファに運んだ人物のことを、自分の夫であると錯覚していた。 そのことはミュラーにもすぐに分かったが、 自分を「あなた」と呼ぶ掠れがちなフレデリカの声が、 先日の仮皇宮廊下での時に続いてミュラーの胸の奥を少し焦がした。
「このままではもっと体温が低下し、ご体調を悪化させます。 ドレスをお脱ぎになり乾かした方がよろしいのですが、 ご自分で脱ぐことができますか、フラウ・ヤン?」 とミュラーはフレデリカに問いかけたのだが、 「ん……う……」 と返事が的を得ていない。 再びこの場を離れようとすればまたフレデリカに制止させられるだろうし、 そうかといってこのまま多分に水気を含んだドレスを 着せたままにしておくこともできない。 仕方ない、とミュラーはフレデリカの上体を起こし、 ひどくためらいながらも背中に手を回して、 ドレスのファスナーを下ろし、肩口からフレデリカの腕を抜いた。 ファサ…と上身頃がウエストまで滑り落ち、 下着に包まれた胸の膨らみが否応なしにミュラーの眼を釘付けにする。 (いや、駄目だ! 見てはいけない、見てはいけない…) とぐっと力を込めて瞼を閉じたが、 瞼の裏側には眩しいほどの美しい肌が焼きついていた。 そのまま顔を背け、フレデリカのドレスを腰から太腿へ下げる。 前は容易に下げることが出来たが、後ろは両足に遮られてうまくいかない。 膝裏を抱え、そのまま胸に近づけて腰を浮かせてから ドレスを腰椎から脱がせようとした。 「……んっ…」 鼻に掛かった甘い吐息がフレデリカの唇から零れた。 何度か確認のために一瞬だけ眼を開けたものの 要所要所を手探りにて作業を進めたのが災いして、 どうやらミュラーはフレデリカの形良いヒップに触れてしまったらしい。 一気に血流が顔に向かって流れてくるのを感じる。 「も、……も、申し訳ありません!」 と自分の非礼を詫びたものの、それに対するフレデリカの反応は無かった。 これ以上は自分でなんとかして欲しいと願うミュラーだったが、 太腿に引っかかったままの濡れたドレスをそのまま放置することも出来ない。 「フラウ・ヤン、あと少しだけご辛抱ください。本当に申し訳ございません」 と自らに言い聞かせるようにつぶやきながら、 やっとのことでフレデリカのドレスを脱がせることに成功した。
ソファにいる人物に不躾な視線を注がないように後ろを向き、 自分の軍礼服の上着からマントを外して傍らに置く。 それから、礼服のボタンを外してそれを脱ぎ、 眼をつぶってソファに横たわるフレデリカの身体に掛けてやった。 (何かの拍子にマントが滑り落ちてもこれで大丈夫だろう) それでようやく自分の視線を まともにフレデリカに向けられるようになったミュラーは、 その上からさらにマントを毛布代わりに掛けた。 やっとフレデリカの身体の震えは収まった。 立ち上がって帽子掛けに掛かっていたハンガーを取り、 脱がせたフレデリカのモスグリーンのドレスを掛けて戻す。 辺りを見回し、部屋の隅で目立たぬように機能していた 小型冷蔵庫の中から水差しを取り出して、 スラックスのポケットからハンカチを出し、それを湿らせた。 ソファの前に戻り、熱に浮かされているフレデリカの額にそれを乗せる。 「…あっ……」 急に冷やされた額にいくらか驚きつつも、それが思いの外心地よかったのだろう。 フレデリカの口からそれ以上の声が上がることはなかった。 続いてミュラーはフレデリカの口が 何か言おうとしていることに気がついた。 口元に耳を近づけ、何を言おうとしているのか注意を払う。 と、荒い息遣いと共に吹きかけられた吐息の熱さが、 別の意味でミュラーの背筋を痺れさせた。 「……み、…水…を……」 やっと聞き取れたフレデリカの要求にはっとなり、 ミュラーは慌ててソファから離れて先ほどの冷蔵庫に向かった。 隣にあった飾り棚の中からコップを取り出し、 水差しから水を注いでソファに戻る。 フレデリカの頭はソファの肘掛に乗せられているため、 口にした飲食物を喉奥に押し込むのは比較的簡単なはずだった。 しかし、ミュラーの支えを借りてコップから水を飲もうとする フレデリカの意識は朦朧としており、熱のためにずっと荒い息をついたままだ。 このためせっかく口中に入ったと思った水は、 口角から道筋をつけて零れていく。
(今この場に踏み込まれて、この姿を誰かに見られたら 何を言われるか分からないが…止むを得ない) 「失礼致します」 ミュラーはコップの水を自らの口に含み、 フレデリカの柔らかい唇に押し当てた。 そのままフレデリカの口腔にゆっくりと水を注ぎ込む。 「……ん…く…、…んくっ……ぅ」 今度は口角から零れずにきちんと喉奥に収まっていく。 「ぅ………、あなた……もうすこ…、…ん…」 全ての言葉を紡がれる前にミュラーは再び口移しで水を飲ませた。 「っく…、あなた……っぅ…」 押し当てた唇の感触がたまらなく心地よかった。 聞きようによっては悩ましげに聞こえるフレデリカの呼び声が、心をとらえた。 内側から突き上げられてくる衝動が、本能を支配していた。 コップの中の水が全てなくなるまで、 ミュラーはフレデリカに口付けを続けていた。 水がなくなったことに気がつき、 「ありがとう…あなた……」 数刻後に聞こえたフレデリカの言葉によって、ミュラーは自分が役目を果たしたことを知る。 コップを冷蔵庫の上のトレイに戻し、 「フラウ・ヤン、お加減はいかがですか?」と訊ねてみる。 返事が無い。 よく見ればフレデリカはいくらか安心した表情を浮かべたまま、 静かな寝息を立てていた。 (これでようやく女官を呼べる、か…) そのままずっと彼女を介抱してやりたい気持ちを、 眼を覚ますまでその寝姿を見つめていたい気持ちを、 大きく首を振ることで何とか振り払う。 (…あ、そうだ。前にも言われたことだし) それを拭うべく使いたかった自分のハンカチは、フレデリカの額に乗っている。 仕方なくミュラーは着ていたドレスシャツの左袖のカフスを外して裏返し、 その部分で自分の唇を拭った。 ドレスに合わせた品の良い色合いの口紅が、カフスの裏側を汚す。 カフスを元に戻し、フレデリカを起こさないように ミュラーは部屋のドアをそっと開けて外に出た。 結局その後はミュラーが呼んだ女官によってフレデリカは介護され、 大事を取って近くの病院に搬送された。 ミュラー自身が「洗面所に行く」と言って席を離れた時に起こった出来事だったので、 1時間以上経過してから会場に戻った軍礼服の上着を脱いだままのミュラーは 同僚たちからあらぬ疑いをかけられ、冷やかしの眼をもって散々からかわれた。 疑い自体は大したものではなくその日が過ぎれば忘れられる程度のものであったが、 ミュラーは会場を抜け出した1時間あまりの出来事の真実をその胸の奥に秘めたまま、 ただ笑って誤魔化したのだった。 その日フレデリカの身体に掛けてやった軍礼服がミュラーの手元に戻ってくることは無かった。 なぜならフレデリカはほかの仲間と共に、 その翌日には惑星ハイネセンへ帰投する準備に取り掛かっており、 ミュラーの方もその職務ゆえの仕事量に忙殺されてしまい、 互いに会う時間を作ることが出来なかったのだ。 誰かに言付けて返すことも出来ただろうが、 介護に当たった女官本人からフレデリカが事情を聞いてしまえば、 軍礼服を返すことでフレデリカだけでなくミュラーの方にも迷惑がかかることは明白だ。 いらぬ苦労をかけさせたくないという配慮をしてくれたのだろう、 とミュラー自身は好意的な解釈をして、それをそのままにしていた。 官給品である軍服、それも正礼服を紛失したのだから懲罰は免れないだろうと皆は噂したが、 どういう訳かそれについてミュラーが懲罰を受けることは無かった。
3. ミュラーは元帥号を持つほどの最上級士官であったが、 平民出身であるがゆえの倹約的価値観から、 その身分に似合わないほど小さなマンションの一室に居を構えていた。 独身でそれほど広い居室を必要としなかったし、 なにより付近を警備する憲兵隊によって安全性が確保されていたので ミュラー自身はそれで充分だと思っていた。 自分で玄関扉を開け、照明を点けて奥の居間へ向かう。 仕事用のアタッシュケースをテーブルに投げ出し、 浴室でその日の疲れを洗い流す。 部屋着に着替え、巡回のハウスキーパーが用意してくれた食事をとり、 明日の準備を整えて寝室に行き、ベッドに身体を横たえる。 翌朝ベッド脇の目覚まし時計の音で眼を覚まし、 別室にて軽く身体を動かしてからもう一度シャワーを浴びる。 着替えて朝食を食べ照明を消し、玄関扉の鍵を掛けて迎えの公用車に乗り込む。 それで充分だった。少なくともそれまでは充分なはずだった。 しかし、その日以来どういうわけかミュラーは自分の家が やけに寒々しい広さをそこに敷き詰めている気に囚われた。 玄関扉を開けた瞬間や、食事をしている最中のテーブル、 食器を片付けるために使う台所。 「使うか否かは本人の判断次第」として軍の保健省から強制的に支給された、 最低限のトレーニングマシンを置いてある別室。 そこに誰かがいてくれたら…とおぼろげな幻想を感じずにはいられない。 そして、自分がつかの間の夢を見るためのベッドがある寝室。 ベッドはシングルサイズのため自分一人しか寝られないのだが、 そこへ身体を投げ出した瞬間。 それまでのおぼろげな幻想がより強固で確実なものになり、 ミュラーは隣に眠る誰かのことを夢想してしまう。 つい視線は寝室の壁沿いに備え付けられたクロゼットに向かいがちだ。 その中にはあの日ミュラーが着ていた左袖のカフス裏が汚れたドレスシャツが、 ハウスキーパーに見つからないように丁寧に畳んで奥の方に押し込んである。 もし見つかったとしてもシャツのポケットにはカードが入っていて、 「自分にとっての想い出の品であるため、 このシャツを洗濯することの無いように」 伝える旨の文字が書いてあったので、それほど心配はしていなかったが。 その晩もミュラーは明日に備えて眠るべく ハウスキーパーによって丁寧にメイクされたベッドの縁に腰掛けていた。 しかし、帰宅前のささやかな酒宴の席で、 どう話が転べばそこへ繋がるのか、なぜか女性にまつわる武勇伝を順番に語ることになり、 他人ののろけ話を散々聞かされていた。 その上、ミュラーが語る番になって自分にはそのような話が無いことを話すと、 亡きオスカー・フォン・ロイエンタールがその場にいれば呆れるであろうくらいに 今は女性との逸話に事欠かなくなったフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトに 「いまだ10年近く前の想い人の影を引きずってるのか? あきれた奴だ」 とからかわれたのだ。 おかげでその晩はなかなか寝付けそうに無かった。 (それが原因で女嫌いになったわけではないというのに、ひどい言い様だ! 俺だって機会があれば自分と苦楽を共にできる女性と 一緒になりたい、結婚したいって思っているのに…!) 確かにミュラーは10年ほど前にそう思った女性がいた。 ただ、互いに置かれた環境の悪さと、互いの気持ちのすれ違いが原因で 別れるしかなかったのだ。 自宅に戻るまではなんとか耐えられたが、 自分自身でベッドを温めなければならないさみしさが、ことさら今宵は身に染みた。
そのまま自分を埋め尽くそうとする寂しさに耐えられなくなり、 ミュラーはふらふらと立ち上がっていささか乱暴にクロゼットを開け、 件のドレスシャツを手にした。 前の女性との思い出の品は、当の昔に処分してしまった。 ゆえにミュラーと、ミュラーの心に最も近いところにいる女性を繋ぐものは、 今はそれしか無かった。 それを手にして、カフス裏を彩る口紅の軌跡を見つめていると、 穏やかに微笑むフレデリカの姿が鮮明に頭の中に蘇ってきて、 廊下でぶつかったときのことも思い出す。 そのままベッド端に戻り、手の中で玩んでいると (あの人は、俺の不注意を咎めなかったな…) 次第にミュラーの気持ちは落ち着きを取り戻す。 しかし、落ち着きを取り戻した後のミュラーは、 それに引きずられる形であの日自分に助けを求めた女性の声を思い出してしまう。 発熱のために途切れがちになった声は、 ひどくミュラーの劣情を誘っているように思えた。 ずくん、と身体の中心が疼き始め、熱を帯びてくる。 (いけない…!) 戒めるつもりで自分に疼きを訴えてくるそれを手で押さえつけた。 が、押さえつけたことでかえって疼きが強くなる。 「……ぅ、…っ……」 (止せっ、…俺はあの人にこんなことを望んでは…) 理性はその衝動に抗おうとしていたが、欲望は勝手に腰をうねらせる。 熱を帯びたものを確実に握ろうとして、その手をぐっと押し付ける。 「……あ……、っ……ぁ」 自然と呼吸は荒くなり、 一層熱を増して勃ち上がってくるものをしっかり握るべく、 寝間着はおろか下着の中にいつの間にか手を延ばしていた。 熱いため息が耳官いっぱいに広がる感覚はまるで「その時」の息遣いのようだったのを、 垣間見たドレスの下の肢体が蠱惑的な肉感に満ちていたのを、覚えている。 「ふ……う…っ、………ん…」 握り締めていたはずのドレスシャツはベッドの上に置き去りにしたまま、 ミュラーの身体はずるずるとベッド縁からずり落ちていた。 手の中の膨らみは先端からぬるぬると粘液を滴らせている。 最後まで残っていたわずかな理性と感情を使い、 (あの人を汚すつもりか、ナイトハルト・ミュラー! やめろ、止めるんだ!!) 眼を閉じて頭を振り、きつく唇を噛みしめながら もう片方の手でそれに快感を与えている腕に爪を立てた。 「あっ! く……んっ、う……ぅ…!」 既に遅かった。 後戻りできないところまで本能に身体を支配され、規則性を失った呼吸音が耳に聞こえてくる。 粘液で動きが滑らかになったせいで、 性急に背筋を駆け上がってくる焦燥感を感じる。 「…は…ぅ……、う…く…! ……ふぁ…ぁっ」 びくん、と手の中でそれが大きく脈打ったのと同時に、 心のどこかでそう呼ばれることを望んでいた呼称が、耳の中で何度もこだました。 「あぁぁぁ……ッ!」 ミュラーの手のひらに、醜い欲望の証が弾けた。
4. 3度目は自分の意図ではなかった。 それは、自分のものではないベッドの上で起こった。 翌日、いくらか肩を落としながら元帥府に出勤したミュラーは 主席元帥で国務尚書の任に就いている ウォルフガング・ミッターマイヤーの執務室に呼ばれた。 昨日の酒宴には参加していなかったミッターマイヤーに 「卿にしては珍しいな。ずいぶんと元気が無いようだが何かあったのか?」 と言われたが、ミュラーはその理由を話せるはずが無かった。 「…まあいい。ところで今日は卿に新たな任務を話さなければならない」 とミッターマイヤーは深くは追求せず、本題に入った。 「これは、皇太后陛下から卿を指名してのご命令なのだが…」 と内容について聞かされたミュラーは首をかしげた。 「閣下ではなく、それを小官がですか?」 「ああ。どうやら陛下は、 相手側の幾人かと面識のある卿を派遣することで互いの信頼関係を円滑に進め、 それを利用してできるだけ多くの情報を収集して欲しいようだ」 「…なるほど。了解しました」 とミュラーはその任務に当たることになった。 「それから…もう一つ。 これは陛下から拝領したものだが、卿に渡すよう頼まれた」 ミッターマイヤーから手渡されたのは、7cm角ほどの小さな包み。 「中身については俺は知らぬが、『持ち主に返して欲しい』と仰せられた。 中身の確認は現地到着後にするように、とのことだ」 半月後、ミュラーは惑星ハイネセンの地に降り立っていた。 与えられた任務である 「銀河帝国に憲法制定、議会設立を図るため、 ハイネセン自治政府領にて情報の収集及び設備の視察を行う」 のが目的で、任務遂行に際しての期間は充分すぎるものであり、 特に問題なくそれは達成に近づいていた。 しかし、もう一つの任務が彼の頭を悩ませていた。 ハイネセンに到着したその日に首都ハイネセンポリスでの滞在先にて その小さな包みを開いたミュラーは、 添えられたメモの内容を見て身体が硬直しそうになった。 「このイヤリングは、フレデリカ・グリーンヒル・ヤン夫人が、 ○月×日の旧同盟領への権利移譲条約締結記念パーティーの際 高熱のため別室にて臨時療養していたときにソファにお忘れになったものです。 これまでの長きに渡りこちらで保管したまま返却しなかった非礼を詫び、 必ずご本人の手に渡るよう、直接面会して返却のこと」 少なくとも皇太后陛下は自分とフレデリカの間に何が起こったか、 またそのことで自分がフレデリカに対してどんな想いを持っているのか、 薄々は感づいておられるのだろう。 サインの入ったそのメモが、実はこちらが主たる命令状であるかのように思えた。 ミュラーは主目的の情報収集と設備視察を終えてもなおハイネセンポリスに留まっていて、 フレデリカに面会を求めるべく何度も電話を掛けようとした。 が、自らの醜い欲望を果てさせるために記憶の中の彼女を使ったことが ミュラーの自制心を揺るがせていて、 実際に面会した彼女の前でそれを保ったままでいられる自信が無く、 テレビ画面にフレデリカの顔が表示されるより前の、 回線がフレデリカの自宅へ繋がる直前に彼は遮断ボタンを押してしまっていた。 しかし、自分に与えられた時間は1日ずつ少なくなっていき、 ついに翌日にはフェザーン帰着のための準備に取り掛からねばならないという日。 重い足取りのまま、ミュラーは無人タクシーのドアを開け、 中に乗り込むと車内端末に目的地を入力した。 その日を休暇扱いとして処理するよう前日に部下に伝えてあったため、 その目的地を知っているのはミュラーと、その車内端末だけであった。 空が灰色の厚い雲に覆われた、ある冬の日のことだった。
その日の午前中キャゼルヌ家を訪問していたフレデリカ・グリーンヒル・ヤンが、 自宅の門前に立っている人物に気がついたのは、時間が午後に入った直後のことであった。 午前中に自宅を出る前には降っていなかった雪が、 帰宅したときには歩道をすっかり覆い隠している。 かなり前からそこに立っていたのだろう、頭と両肩にいくらか雪が積もっており、 足元の路面がその部分だけ雪の厚みが薄い。 「大変ご無沙汰しております。 確約もせずに突然お訪ねしてしまって申し訳ありません、フラウ・ヤン」 と見せた笑顔はいくらか眉根が寄っていて、相手の身体が冷え切っているのがすぐに分かった。 「暖かい飲み物をご用意しますのでぜひ中へお入りください。 知人にフルーツケーキをいただいたのですが よかったら召し上がりませんか、閣下?」 事前の約束無しに自分を訪ねてきたミュラーにいくらか驚きながらも、 フレデリカは突然の客人をもてなすべく台所に向かい、 お湯を沸かすべくやかんを火にかけた。 1杯目のコーヒーを飲んでいる間は、世間話をするだけで終わった。 しかし、自分を訪ねてきた用件を聞こうと 2杯目のコーヒーを台所から持ってきたときに、 「閣下?」 フレデリカはミュラーの身体が小刻みに震えているのを知る。 「…はい、何でしょう?」 と問いかけに応じる声にも震えが感じ取れ、 ミュラーの身体が変調をきたしているのでは、という推測が容易にできた。 「閣下、失礼します」 とフレデリカはミュラーの額に自分の手を当てた。 自分の手よりも熱いミュラーの額。推測が間違っていないことを悟り、 「大変!」 とミュラーの手をとり別室へ向かう。 その場にミュラーを立たせたまま、 室内からさらに別の部屋へ通じる扉を開けて中に入ると、何かを手に持って戻ってきた。 フレデリカは 「こちらに着替えて、そこに横になっていてください。 すぐに薬をお持ちします」 と手の中のものをミュラーに押し付け、足音を立てて部屋を出て行った。
押し付けられたものを広げてみれば、それは紳士物の寝巻着だった。 言われたとおりミュラーは渡された寝間着に着替え、傍らのベッドの中へ潜り込んだ。 それから改めて部屋の中を見回してみると、 そこがフレデリカの家の主寝室であることにミュラーは気づく。 いくらか体格のいいはずの自分が横たわっても、 もう1人横になれるほど広いベッド。 部屋の隅の整理タンスの上には、かつてこの家の主人であった男の写真。 普段のミュラーであったなら直ちに寝間着を脱ぎ、その場を離れただろうが、 今は急速に意識を手放そうとする身体の活動ゆえに対処できない。 ノックの音が微かに聞こえ、 フレデリカが入ってきたのは覚えていたが、 何かを伝えようとしている声は聞き取れなかった。 ひどく瞼が重たかった。軽い頭痛もしていた。 自然とミュラーの眼は閉じられ、 悪化した体調を修復すべく、意識はつかの間の闇へ旅に出る支度を始める。 と、自分の肩をそっとつかんで、 旅に出ようとする自分を引き止めている誰かを感じた。 ふにゅ。 柔らかいものが自分の唇に触れている。 それが何か考えようとした瞬間、口腔に冷たい液体が流れ込んできた。 相変わらず柔らかいもので口を塞がれているため、 「ん…くっ、…ぅ…く…っ…、ん…」 仕方なくミュラーはそれを飲み下す。 自分の口を塞いでいる、その心地よい柔らかさを持ったものを、 自分は知っていたはずだったが、 それを思い出す前にミュラーの意識は夢の中に落ちた。
5. 「ん……」 眠る前とは質の違う寒さにミュラーは目が覚めた。 眠る前に感じていた頭痛は消えていた。 上半身だけを起こし、自分が眠っていた環境を確認する。 程なくそこがフレデリカの自宅の寝室であることに気が付く。 が、毛布を引っ張り上げずにはいられないほどの寒さを感じ、 頭では理解していてもミュラーはベッドの中から出られなくなった。 発熱のため身体の内側から感じる寒さではなく、 外気の冷たさと同じ寒さ。 しばらく考えた後、視線で自分の着替えを探していると。 控えめに扉を叩く音がした。 「失礼します…あら、お目覚めになったんですね?」 と燭台を持ったフレデリカが入ってきた。 彼女はベッド脇に燭台を置くと、 「失礼致します」 と自分の額に手を触れた。温もりが伝わってくる。 「熱は下がりましたね。良かった…薬が効いたみたいで」 と微笑んだ。 その言葉で、ミュラーは自分がフレデリカによって介護されたことを知った。 「申し訳ありません、フラウ・ヤン。 あなたには1度ならず2度もご迷惑を…」 と言いかけたミュラーの言葉を遮るようにフレデリカは言った。 「それは気になさらなくて結構ですわ。 それよりも閣下、今日はこのままこちらにお泊りになってください」 思わぬフレデリカの申し出にミュラーは戸惑いを感じたが、 続くフレデリカの言葉でその真意を知る。 「実は閣下がお休みになっている間に降り続いた雪の影響で、 閣下がご滞在先へ戻るための交通網が遮断されてしまいました。 それからこれは…もし閣下がやはりお戻りになる場合に お車をこちらに手配する際に関わってくることだと思うのですが…」 と少し困った顔をしている。 「この住宅地一帯に電気を供給している送電線の一部には まだ地下埋設されていない部分があって、 その埋設されていない地域ではここより天候が悪化していたのです。 その情報は電気が止まる前の情報だったのですが 吹雪のおかげで送電線が寸断してしまったらしく、 電気供給も止まってしまいました」
電気の供給が止まっているということは、 通信設備に電気を必要とするテレビ電話を利用することはできない。 先ほどからの寒さの原因は、暖房機も電気によって稼動していたからということだろう。 「ということは…歩いて帰る必要が出てきたわけですね? 了解しました、では長居をせずに直ちに戻ることにいたします」 「いいえ。それもできませんよ、閣下」 と言いながら、フレデリカはベッド脇の小机の引き出しから、 厚手のガウンを取り出しミュラーに渡した。 「これを着て、こちらに来ていただけますか?」 と案内されたのはその部屋の窓際。 外の様子をうかがえば、月明かりに照らされた一面の銀世界が見えた。 それでミュラーははかなり長い間眠っていたことに気が付いた。 「もう雪は止んだのですが、 それまでに積もった雪で道路が封鎖されてしまって…。 除雪しましたから玄関から門の前までは楽に歩けても、 そこから先は1メートルは雪が積もっている歩道を 自ら除雪しながらご滞在先まで歩くことになりますよ」 ここから滞在先のホテルまでは数十キロメートル。 自分の体力ではどう考えてもたどり着けない。 「分かりました。ではお言葉に甘えさせていただきます」 とミュラーはフレデリカに一礼した。 「ところで、閣下はお腹が空いていらっしゃいませんか? 幸い台所と浴室に使っているガスの供給は止まっていませんので、 身体を温めるものはご用意できますよ。 ただ、先ほどまで発熱していたことを考えればご入浴はお控えいただくとして、 私は料理がかなり下手なので過剰な期待をされては困るのですが、 それでもよろしければ…」 と言いながらフレデリカが居間のテーブルに用意してくれた食事は、 多種類の具を1つずつ挟んだサンドイッチとトマトスープだった。 自宅で食べる時よりも食が進み、 互いに雪にまつわる話をしながら、何気ない冗談に笑い合う。 久しぶりに心のこもった手料理を腹が膨れるまで食べることができ、 ミュラーはこの状況下でありながらいつもより、 いやいつも以上に気持ちが安らいでいることに気が付いた。 食事の後に「念のため」と感冒薬を渡され、 「では、先ほどの寝室をご利用ください、閣下」 とフレデリカは一礼して食器を片付けるべく立ち上がった。 「お待ちください、フラウ・ヤン。 あの部屋はあなたがお休みになるための場所。 予備の毛布をお貸しいただければそれで結構です。 私はこのソファで休ませていただきます」 とミュラーは慌てて首を振ったが、逆にフレデリカの方も首を横に振った。 「閣下、それはいけません。 先ほどまで高熱でお倒れになっていたのですから、 ここで無理をなさっては元も子もありませんわ。 どうかベッドでお休みになってください」 とフレデリカは強制的にミュラーを寝室に押し込み、 「明日の朝までには除雪車が巡回して歩道の雪をなんとかしてくれるし、 交通網も回復するはずですから、明日にはお帰りになれます。 ご自宅とは違う慣れぬ環境ゆえ落ち着かないだろうと思いますけれど、 どうかゆっくりお休みくださいませ」 と挨拶して出て行った。
6. しんと静まり返った、自分のものではない寝室。 (そういえば、ここに住んでいたはずのユリアン・ミンツ中尉は、 同僚であったカーテローゼ・フォン・クロイツェル伍長と 1年前に結婚したと言っていたな) フレデリカ自身が今は政府要職の任から離れていたため 自分がハイネセンでの情報収集と施設視察を行うのに際して 最初に連絡を取ったのがユリアンであったし、 その本人とも実際に会って話をしたから事実だろう。 (ということは…それからはずっと独りでここに住んでいたのか) 一度ため息をつき、ミュラーは複雑な想いを抱いたまま、 整理タンスの前に立った。写真立てを手に取る。 写真立ての中の人物は、 ユリアンが結婚するよりもっと以前に亡くなったのを、 ミュラー自身が知っている。 (ミンツ中尉をはじめ、あの人の知人や友人、かつての同僚たちが ここへ訪ねてくることはよくあることだろうし、 またあの人自身も訪ねに行くこともよくあるだろう。 それにしたってこの寝室のベッドで独りで眠らせるのは 遺された者に対してそれはあまりにひどい仕打ちだと思わないですか、卿は?) ミュラーは返事が返ってこないことを分かっていながら、 心の中でそう言わずにはいられなかった。 (…成り行きでそうなってしまいましたから申し訳ありませんが、 今夜はあなたと、あなたと一緒に眠っていたあの人の代わりに 私がベッドを拝借しますよ) 写真立てを元に戻して、一度敬礼をした後、ミュラーは広すぎるベッドに横たわった。 (今夜あの人は…元のミンツ中尉の部屋で眠るんだろうか? この部屋だって寒いのに、 普段は人気の無い部屋ならばさらに冷えると思うのだが) その日2度目の睡眠を取るため、ミュラーは瞼を閉じた。 眠れない。寒くて眠れないのだ。 ベッドが自分の体温で温まれば自然と眠くなるだろうと たかを括っていたミュラーだったが、 寝返りを打つたびにシーツの冷たい部分に接触するため意識が覚めてしまうのだ。 自分の家の狭いベッドならばそんなことはなかっただろうが、 その部分を温めてから再び寝返りを打つと、 温めたはずの前の場所は既に冷えてしまっている。 暖房が機能していなくて室温が外気に近いこともあって、 ミュラーは何度も寝返りを打っていた。 と、そこにノックの音がした。 「はい」と返事をすると、そっと扉を開けてフレデリカが中に入ってくる。 「眠れませんか、閣下?」 「あ…もしかしてベッドの軋む音が響いて、起こしてしまいましたか? だとしたら申し訳ありません」 とミュラーはフレデリカがやってきた理由を自分なりに推測し、詫びを入れた。 「いえ、隣の部屋で眠る支度を整えていたところに、 あまり間隔を置かずに音が聞こえてきたものですから。 暖房が入らなくて家全体が冷えてますし、なかなか眠れないのも仕方ありませんわ」 と言った後で、フレデリカはベッドに近づいてきた。
「閣下、あちらを向いていていただけますか?」 と言われ、ミュラーは寝返りを打ってフレデリカの姿から視線を外した。 シュル、シュルシュル。 衣擦れのような音が聞こえた後、 フレデリカがミュラーの寝ている位置とは反対側の毛布をめくる。 「薬を服用されたとはいえ、風邪を引きかけている今の状態において この寒さでまた発熱されたら、今後の閣下のご予定に差障りが生じますでしょう? 暖房が切れている以上、私にはこんなことしかできませんが…」 とベッドの中に入ってきて。 「失礼致します」 ミュラーの背中から前へ腕を回してきた。 「フラウ・ヤン?!」 何事とかと思いミュラーは身体を反転させようとしたが、 「駄目です! 閣下、お願いですからどうかそのまま…」 遮られた。胸元に触れている彼女の腕には寝間着の袖が認識できない。 「…暖かい……ですか?」 背中からフレデリカの温もりが直に伝わってくる。 「……………はい…」 ぴったりと張り付くように身体を寄せ、自分を抱きしめているフレデリカが 寝巻着を脱いでベッドに入ってきたのは明らかだった。 ミュラーにとってその状況はある種の苦痛を与えていた。 首筋に吐息を吹きかけられ、胸の双球を押し付けられ、 自分の身体に腕を絡めてくる。 言い知れぬ興奮に心拍数が上がり、自分の呼吸が乱れ、 下半身の一部に血流が集中してきた。 しかし身体の向きを変えることを禁じられ、その人物が置かれた立場を考え、 「それ」を実行することによる弊害を考えて、 熱を帯びた身体を冷やそうと、沸騰寸前の自分の頭がなんとか努力している。 唇を噛み、眉を歪めながら「引き金」を引かぬよう耐えていたが、 それを無意識に引いてしまうのももはや時間の問題だった。 「そっくりだわ…」 不意に背中から声が響いた。 「え?」 「閣下の身体から立ち上ってくる匂いが、あの人のものと同じに思える…」 自分ではなく、相手によって「引き金」が引かれてしまった。
「フラウ・ヤン」 「はい?」 「今だけ…今だけあなたをフロイラインと…、 フロイライン・フレデリカとお呼びすることをお許しください」 予め断りを入れてから、ミュラーはフレデリカの腕の中から自分の身を少し離した。 直後、相手から禁じられていた「寝返り」を打ち、フレデリカの顔を見る。 「閣下!!」 いくらか怒ったような顔をして、 フレデリカは自分の身体を見られないようその両腕で隠そうとした。 その状態のまま、ミュラーはフレデリカの身体を自分の腕の中に収めた。 「あっ…!」 「フロイライン。あなたに初めてお目にかかった瞬間から、 私はあなたのことを気にかけていました」 先ほど洗ったばかりなのだろう、 金褐色の髪に指を梳き入れるとシャンプーの香りが漂ってくる。 「ただあなたに特定の意思を以って声をお掛けしなかったのは、 私があなたに出会ったときには既にヤン・ウェンリー提督の奥方であったから、 提督が亡くなってもなおあなたの心の中には常に提督の姿があったからです」 もう片方の手で、さするように背中をそっと撫でる。 「久しぶりにあなたに会っても、あなたは何も変わっていなかった。 しかし提督と、提督を師父と仰いだミンツ中尉とがあなたのそばから離れたことで あなたの背中が…あなたの心が…、 他に例えようの無い寂しさを訴えているのが私にはよく分かりました」 フレデリカの身体がピクン、と一瞬身じろいだ。 「フロイライン、私の匂いが提督と同じものであるというのなら、 今は私がナイトハルト・ミュラーであることをお忘れください」 少し腕の力を緩め、フレデリカの顔を上向かせる。 「こんな形でしかお慰めできなくて申し訳ありませんが、 今宵私は…あなたの想い人になりましょう」 自分自身がそれは詭弁に過ぎないと分かっていたが、言わずにいられなかった。 一度額に口付けた。 心のどこかでそれを告げることを迷いながらも、 次に自分が紡ぐ言葉は本心であると分かって欲しかった。 「あなたを…、あなたを愛しています、フロイライン・フレデリカ」 フレデリカの唇に、ミュラーは自分の唇をそっと重ねた。 偶然でも、未必の故意でも、自分の意図から外れたものでもなく。 4度目は自らの希望だった。
7. そのまま吸い立てて口腔を味わいたい気持ちを抑え、 ミュラーは頬に唇を滑らせた。 「私からあなたに風邪を感染させてはいけませんから、 ここからは他の場所でご容赦ください」 と唇以外の全ての部分を隙間無く埋める勢いで、 ミュラーは細かく自分の唇をフレデリカの顔に押し付ける。 そうしながら、彼女の髪を優しく撫で、軽く握りこみ、指先で玩んだ。 「あっ……か……閣…下、いけま……っあぅ!」 つい、と外耳の窪みをなぞると、 否定の言葉を発しようとしていたものが急に途切れ、甘いため息が零れる。 「『閣下』ではありませんよ、フロイライン」 そのまま何度もなぞりながら、少しずつ指先を内側に進めると、 「……は…んっ、……ゃ…あぁ…!」 フレデリカの身体が身じろぎを始めた。 「今の私の身体は、あなただけのものです。どうして欲しいのか仰ってください」 ふう、とミュラーが耳管に息を吹きかけてやると、 大きく息を吸い込みながら、フレデリカの白い首筋がぐっと持ち上がった。 ミュラー自身、女性を抱いた経験は片手で足りるほどしかない。 しかし天賦の才能なのだろう、「行為」そのものに対する不満を言われたことは一度も無く、 むしろ抱いた相手がそれまで以上に逢瀬を重ねたがるくらいのものだった。 それでもミュラーのこれまでの恋愛が成就せずに終わったのは、 問題がそれ以外の点にあるといえよう。 もともと彼と恋愛関係に及ぼうとは思っていなかったが、 今宵ミュラーの腕に抱かれているフレデリカ自身もまた ミュラーの才能に溺れそうになっている1人であった。 自分の上に圧し掛かっている男と こんなことをしてはいけないと分かっているのに、言えなかった。 屈服させようとするのでもなく、陵辱しようとするのでもなく、 心地よい高みに追い上げ、快感だけを自分にもたらす。 どこに触れて欲しいとか、どこにキスして欲しいとか、 自分はこれまで自分から望みを言うことは一度もしていない。 それどころか男の行為を何度も止めさせようとして言葉を発しかけているのに、 自分でも知らなかった性感帯を探り当てられ、丁寧にそこを攻められて、 その制止の言葉が続けられなくなる。 胸元すら触られていないのに、 フレデリカは背中と、頭と、腕に触られただけで軽い到達感を感じていた。 「フロイライン、もっと私を頼って下さって構わないのですよ」 と男は言うが、息を荒げながらフレデリカは首を横に振った。 「言うのが恥ずかしいですか? しかし…ほら、ここはどうして欲しいのか無言で語っています」 それまで肩口を撫でていたミュラーの手が、不意に胸元に下がる。 「んっ……ふあああぁっ!」 胸元から全身に電流が走り、 フレデリカの身体はそれに痺れたかのように胸元を前に突き出した。
羽が触れているようなくらい軽いものかと思えば、 先端の突起を指先で軽く弾き、反対側の突起に口付ける。 コリコリと摘み上げられたかと思えば、 手の中に収めて形が変わるほど揉みしだかれる。 下着の上から行われていることとはいえ、 フレデリカの双球はミュラーの手の中で自在に形を変え、 それを持つ彼女自身に切ない疼きを与え続けている。 しかし、決定打としての刺激が足りず、フレデリカはいつの間にか内股をすり合わせていた。 「……直に触れて欲しいんですね?」 とミュラーは問いかけるが、 フレデリカは陸に上がった魚のように口をパクパクさせ、 眉をひそめて何かを求めているような表情をするだけで、 意味のある言葉を言おうとはしない。 「下着を外しますからしばしお待ちを…」 その表情だけで自分が次に何をすればいいのか、ミュラーには解っているらしい。 胸元に口付けながら背中に手を回し、ホックを外す。 二の腕まで下がっていた肩紐がさらに緩み、 支えを失った膨らみがふるん、と揺れてわずかに広がる。 それから、白磁のように滑らかな肌を触らぬようにしながら、 ミュラーはフレデリカの下着を上にずらし、 下着の代わりにそれを覆い隠すような仕草で、そっと手を当てた。 それで充分だった。 「あああああッ!」 悲鳴とも思えるような声を上げ、フレデリカの身体は一度硬直した後、 ゆっくりと力を失っていった。 もう幾度自分は達してしまったのだろう。 ミュラーはまだフレデリカの下半身の、最も奥まった部分に触れていない。 にもかかわらずフレデリカは彼から与えられた胸への愛撫だけで 既に何度も気を遣ってしまっていた。 胸だけでそうなのだから「その部分」に刺激を加えられたら、 自分の意識が保っていられるかどうか考えると フレデリカの脳内回路は「否」と答え、その結論の恐ろしさに驚愕していた。 しかし一方で結論から導き出される甘美な誘惑に抗える自信はなく、 自ら進んでそれに溺れようとしている自分が憎らしかった。 「そんなに固くならないで……私に心を委ねてください」 適度にくびれた胴回りを撫でていたミュラーの手の平が、すっと太腿に下がった。 「ゃあああんっ…!」 落ち着きを取り戻しつつあった感覚が、否応なしに再び高まってくる。 しっとりと汗ばんでいた内腿がさらに湿り気を帯びてくる。 なかなかそこに触れようとしなかったミュラーの手が中心点に向かったときには、 フレデリカの下着は既に役目を果たさなくなっていた。 「これはもうお脱ぎになった方がよろしいでしょう、フロイライン。 こんなになっていては身に着けているだけで気持ちが悪くなりませんか?」 その状態のまま一度果てさせられた後、 フレデリカはミュラーが自分の下着に手を掛けているのを知ったが、 それをずり下げようとするのを阻止できるほどの力は残っていなかった。
追い詰められ、追い上げられ、限界点を越えた身体が何度も揺れる。 そこへ触れられてから数えても幾度目か分からぬほどの到達を終え、 そろそろ痛みを伴ってくるはずのそこは、痛みどころかなお愉悦を訴えていて。 それをもたらすために押し込まれた指を、 より奥へ引き込むように自分の意識外で勝手に締め付けていた。 「少し…指が痛くなってきました…」 と嫌味を伴わずに薄く笑う顔が視界に入り、 それ以上何も責められないことがかえってフレデリカの羞恥心を煽る。 それが自分のせいだと知ったフレデリカは それまで以上に顔を赤らめながら横を向いて視線を逸らした。 「もうこのままでは身体がつらくなってきたのではありませんか?」 そう言ってミュラーはフレデリカの身体から指を抜き、 着ていた寝間着と下着を急いで脱ぎ捨て、フレデリカの両足の間に腰を下ろした。 「参りますよ…」 熱を帯びたものが、それまで指を差し入れられていた場所に押し当てられる。 「あ……あっ……!」 それを待ちかねていたかのように、フレデリカのそこはふるふるとわなないた。 ゆっくりと収められていくミュラーの肉剣。 長さといい、質量といい、ずっと前に自分を貫いた人のそれよりも、 ミュラーのものはかなり上回っている。 肉鞘の、先端部分まで届いている感覚に喜び、 フレデリカの身体はそれだけで既に満足してしまったらしい、 その証拠に彼女の瞼の端からは雫を零し始めていた。 既にフレデリカの身体は肉欲に溺れ、自分を抱いている男のものになっている。 身体を繋いだままもう2度は悦楽の階段を上り詰め、 同じ数だけその階段を降り切ったというのに、いまだ彼女の心は扉を閉ざしたままだ。 「う……んっ、…う……ぅ…う!」 言ってはならない言葉を言いそうになり、 フレデリカは指を噛んでそれを喉奥へ押し込める。 それを口にしてしまえば、それを認めてしまえば、 彼女の心の中での貞操は灰燼に帰してしまったのと同じだった。 相当の我慢を強いられているはずのミュラーはそれを解っているのだろう、 自分の欲望を叩きつけてくるようなことはせず、 フレデリカが望んでいることを何も言わずに続けている。 フレデリカの眉が一層歪み、首が何度も横に揺れた。 まるでその姿は自分自身に何かを言い聞かせて耐えているようだった。 ミュラーは身体を前へ倒し、フレデリカの足を自分の背中に絡ませる。 それから彼女の背中に腕を回し、そのまま身体を抱え込んだ。 「んんんんぅっ!」 互いの身体がより深く繋がり、フレデリカの口元からくぐもったよがり声がこぼれる。 きつく歯形の付いた指を取って自分の指を絡ませ、 そのまま顔を近づけて何度か頬に口付けた後、 ミュラーは彼女が心を開くであろう一言を、口調を変えて耳元に囁いた。 「フレデリカ……愛してる…」
「ああああああッ!」 その直後の一突きで、フレデリカの身体は大きくしなり、 ミュラーの背中にフレデリカの爪が食い込む。 壺中はミュラーのものを一層締め付けた。またフレデリカは限界を超えてしまった。 「………た……、…ぁな…た…」 心の中の壁が崩れ落ちる。呼んではならない呼称でミュラーを呼ぶ。 フレデリカの濡れた瞳が、砂色の双眸を捉える。 しかし、その視線はそれを越えた先を見据えているようにも見えた。 「お願い、もう…どこにも……」 行かないで。 そう続くはずだった言葉が、唇に押し当てられたことで意味を成さなくなる。 それまで一方的にミュラーの行動を受け止めているだけであったフレデリカが、 何度も何度も音を立てながら自分の唇でミュラーの口を塞ぐ。 「あなたまで風邪を引いてしまう」 と顔を背けると、代わりにその延長線上にあった頬に幾度も口付ける。 「私を…独りにしないで…」 フレデリカの腕が、ミュラーの背中をまさぐる。 「あんな夢はもう見たくないの…」 涙を零しながらフレデリカはミュラーにしがみついた。 フレデリカがミュラーの先に何を見ているのか、「あんな夢」とは何を指しているのか。 ミュラーはそれを口に出すことはしなかった。敢えて口にすることでもなかった。 ようやく「彼女が愛した男」の代わりになることができた、と思った。 それは自分が望んだことであったが、 ここまでフレデリカの心を凍りつかせる男の存在が、今は少しねたましかった。 「今夜その夢は見ずに済むだろうから安心して…」 だが彼女のために、彼は「彼」の役を演じる。 「あぁっ…! あ……、あなた!」 それを演じきった後の自分を見てくれることを信じて、再び腰を動かした。 朝まで続くかと思われた、彼女一人のためだけに用意した ミュラーの「舞台」は、ようやくその幕を下ろすことになる。 「んっ……あな……た、もう……いい…から……、っう!」 フレデリカの側からそうすることを乞われた。 もとよりこれ以上の我慢はできそうに無かったミュラーは、 次にフレデリカを満足させたら自分の中に留め続けていた濁流を解放しようと思っていた。 しかしそれを開放する場所は、今彼女に愉悦を与えているところではなく、 別の場所にしようと考えていた。それだけに、 「…いいのですか?」 いくらかためらいを感じたミュラーだったが、 「……あなたを……中で……ぁっ! 感じ……たいの…」 そう言われて彼は彼女の願いを叶えてやることにする。 もしそうすることで後に自分にもたらす結果がどういうことになっても、 後悔の無い判断をしようとミュラーの気持ちは固まっていたのだが。 律動を早め、自分を、彼女を。 恍惚の頂点へ追い詰め、快楽の突破口へ追い込む。 ビクン、とフレデリカの身体が震え、 「ああああああッ!!」 ミュラーのものを包む肉襞が締め付けを強めた。 「う………くッ!」 彼女の中で屹立が脈打ちながら熱い迸りを放つ。 それはなかなか止まらず、蜜壺のうねりが止まるまで続いた。
8. 早朝、ミュラーは眼が覚める直前のまどろんだ意識の中で、 何かが自分の頬に押し当てられる感覚を感じた。 その感触に急速に意識が覚醒していき、瞼を開こうとする。 それが誰かの唇であることを認識した瞬間、その感触は急に無くなり、 続いてパタン、と扉が閉まる音が聞こえた。 その音で目が覚めた。 半身を起こして身体を目覚めさせるべく、軽く伸びをする。 辺りを見回して状況を判断し、自分の隣で寝ていたはずの人物を探す。 と、そこにはもうその人の姿は無く、 冷えかかった温もりだけがベッドに残っていた。 自分が目覚める前よりももっと早く相手が目覚めていたことを知る。 …あれからミュラーは、そっとベッドから抜け出して着替え、 浴室からタオルを探してきた。 何度も上り詰めて心身ともに疲れ果て、意識を失ったフレデリカの身体を拭き清めた。 床に落ちていたフレデリカの寝間着を身に着けさせると、 充足感と高揚感で高まっていた自分の体温が 室温によってかなり奪われていることを知る。それは彼女も同じだろう。 慌ててベッドの中に潜り込み、安らかな寝息を立てて眠っている人物を抱きしめる。 (ここへ来て最初に見たときと比べたら、ずっと穏やかな顔をしているな) ミュラー自身の身体も心地よい疲労感に包まれていて、 ようやく眠りの淵に立たされた感覚があった。 (できることなら明日以降も、俺の前ではこの顔をしてくれればいいのだが…) と思いながら瞼を閉じたのだった。 傍らに置いてあった自分の着替えを手に取る。 前日自分が熱にうなされている間に洗濯し、アイロンをかけてくれたのだろう、 ドレスシャツからは洗剤の香りがほのかに立ちのぼってくる。 丁寧に畳まれたスラックスは座り皺一つ無く、 近くのハンガーにかけられたジャケットには糸くずはおろか、埃も払われていた。 料理は下手だと言っていたフレデリカが、それ以外の家事は率なくこなしている。 彼女はこれまでの職業であった武官としての才能だけでなく、 実は家庭人としての才能も高いことをミュラーは知った。 着替えて窓際に立ち、カーテンを開ける。 朝日が昇り始めたばかりの街は融け始める前の雪で眩しいほどに輝いていて、 独特の静寂の中に包まれていた。 道路の方を見やれば車道は既に路面が見えている部分があり、 歩道の方も目の前を除雪車が作業している最中だった。 この分ならそれほど時間が掛からずに戻ることができるだろう。 ミュラーは早々に引き上げるべく、寝室のドアを開けて居間に向かうと、 ちょうどフレデリカがキッチンに立っているところだった。 「おはようございます、閣下。お加減はいかがですか?」 と微笑むフレデリカの顔は、ミュラーがここで最初に見た顔とほとんど同じだったが、 いくらか翳りがなくなったように見えた。 「おかげ様ですっかり良くなりました。 フラウ・ヤンには本当にお世話になりました。ありがとうございました」 と一礼し、すすめられたコーヒーとトーストを口にする。
「あの…それで、昨日聞きそびれてしまったのですが…」 とフレデリカが申し訳なさそうな顔をしてミュラーの顔を見つめた。 その言葉でようやく自分の用件を済ましていないことを思い出したミュラーは、 「ああ! そうでしたね。 あなたに用事があってここへ来たというのにすっかり忘れておりました」 上着のポケットから例の包みを取り出した。 「長らくお預かりしてしまい申し訳ありませんでした」 とそれをフレデリカに渡す。 包みを開き、中に入っているものを確認した瞬間。 フレデリカの顔がさっと青くなった。 「……そういうことだったんですか…」 とつぶやくと、その場から立ち去り別室に向かう。 程なくして戻ってきたフレデリカは その腕に抱え込みながら何かを握り締めていて、 それをミュラーに押し付けて言った。 「脅迫…なんですね、夕べのことは?」 「え……? いったい何を…」 突然口調を荒げるフレデリカの真意が分からずミュラーはそれを訊ねようとするが、 「とぼけないでください」 とミュラーは続く言葉を遮られた。 「あの日私が熱でうなされている間に閣下は私を抱いたのでしょう? そしてこれ…この片耳だけのイヤリングは、その証拠の1つで…」 その言葉でフレデリカが何を言おうとしているのかが分かったミュラーは フレデリカの誤解を解こうと口を開く。 「フラウ・ヤン、あなたは何か誤解をされているようだ。 それは皇太后陛下からあなたにお返しするように託されたもので、 あの日の私はあなたがお疑いになるようなことは何も…」 「でしたら、あの日着ていたドレスや下着まで無くなっていたのはどう説明を? 全部あなたが持っていらっしゃるのですね、閣下。 そしてそれを1つ私に返すごとに、その代償として私は閣下に…」 「フラウ・ヤン!」 思わずその両肩に掴みかかっていた。 容赦なくミュラーの爪先が肩肉に食い込むが、フレデリカはわずかに顔をしかめただけで。 両手に握り締めたままの何かを胸元に押し付けたまま、 「これを返せば閣下はこれ以上何もしないでくれますよね? 一度クリーニングに出してありますから、このままお持ち帰りください」 ミュラーをぐいぐいと玄関の方向へ押しやった。 「誰かに話したいのなら、お話になって構いませんわ。 フレデリカ・グリーンヒル・ヤンは貞操感の薄い女で、 淫乱で、脅されればすぐに足を開くと。 ですが、これ以上閣下の脅しには答えられません。 どうかお引取りください」 玄関用のタッチパネルを肘で押して扉を開き、ミュラーを玄関の外へ追い出す。 「もうここへは来ないでください」 バタン! 大きな音を立てて扉が閉まった。 「フラウ・ヤン! 私の話をお聞きください!」 扉を叩いて中にいるフレデリカを呼ぶ。 ドアノブを回しても鍵が掛けられていて開かず、 「ここを開けてください、フラウ・ヤン!」 ミュラーは何度もドアを叩き、叫ぶように彼女の名前を呼んだが、 フレデリカが出てくる気配はなかった。 ミュラーの傍らには、雪解けの泥水に浸った軍礼服とマントが落ちていた。
…一旦休憩。風呂入ってきますのでしばらくお待ちください。
風呂から上がってきたので再開。 ==================== 9. それから1週間ほど経っただろうか。 玄関のドアチャイムが鳴る。 「お届け物です」と言われてドアを開けたフレデリカが 受け取ったのは赤いストックの花束だった。 花を届けにきた人物が去った後に確認すると 差出人はナイトハルト・ミュラーとなっており、 ご丁寧にカードまで添えてある。 先日のこともあってフレデリカはその花束を飾ることなく即座にゴミ箱に捨てた。 しかし花束の配達はそれ1回限りでなく、毎日続いたのだ。 カードにはたった一言、「あなたへ」とだけかかれており、 その言葉は変わることがなかった。 だんだんフレデリカは受け取ることすら億劫になってきて 「持って帰って、送り主に返して欲しい」と頼んだのだが。 「それが…送り主の方には返せないんです」 「え? それはどういうことですの?」 「最初にこちらに花束をお届けするご注文を承ったとき、 『そのうち受け取りを拒否され返却されることになると思うが こちらは任地に戻らなければならない事情があるためそれには応じられない。 たとえ本人が受け取りを拒否しても必ずその家においてきて欲しい』 と言われまして…代金の方もこの先5年間毎日お届けしてもなお余るほどの 金額を前払いいただいておりますし、こちらとしてもどうすることもできないんです」 任地に戻らなければならなくなったということは、 既にミュラーはこのハイネセンの地にはいないのが明白だ。 「わかりました。私から本人に連絡を取ってみます」 と配達されたストックの花束をとりあえず受け取る。 どういうつもりで毎日花を送ってくるのか真意を掴めないフレデリカは、 花の配達を止めてもらうべくミュラーに連絡を取るために まずはハイネセンポリスの総督府に電話を掛けた。 「申し訳ありませんが、お取り次ぎすることができません」 フレデリカの嘆願を受け付けようとした事務官は淡々とした口調で言った。 「こちらのハイネセン共和自治領と帝都フェザーンでは使用通信帯域が異なるため、 現在通信設備のシステム変更を計画中であります。 しかし実際に工事を着工するまでに約2年、 ハイネセン共和自治領全体でシステム変更が完了するまでには さらに5年ほどの歳月が必要なのです。 もし今、伝言を承りましても実際にご本人に伝わるまでには 現時点では最低でも1ヶ月はかかることとなりますし、 ましてやミュラー元帥は帝国軍の最上級幹部であられますゆえ、 ご本人から直接お聞きにならない限りは こちらとしても軍規上の観点から一般民間人に連絡先を開示することができません」 結局フレデリカは毎日送られてくる花を受け取らざるを得なくなった。
ストックの季節が終わると次は黄色いクロッカス。 続いてピンクのチューリップ、白いアスターと続き、 それらの花がないときには赤いバラの花束が届いた。 最初は態度を硬化していたフレデリカも 「悪いのはあの人であって、花そのものには罪は何もない、か…」 と送られてきた花束を部屋に飾り始める。 1回に30本以上の花が花屋から届けられるため、 しおれた花を次々に交換していても生けきれない。 そのうちフレデリカの住居は ミュラーが送りつけてきた花で埋め尽くされるようになった。 (どういうつもりなんだろう…) ある晩、フレデリカは部屋中を彩る花を眺めながら、 ミュラーの行動を自問する。 (あの後、ハイネセンを経つ前に花屋に注文していったのかしら?) この先5年分の花を毎日届けさせるほどの大金を前金で払っておきながら、 あの日以来ミュラーは一度もフレデリカの前に姿を現さない。 (お詫び…なの? ドレスを返してくれなかったことに対する?) フェザーンからここハイネセンまでの旅程は約半月。 ミュラーの職責を考えれば忙しくて簡単には来られないことはフレデリカにも分かるが、 既に半年が経過している。 (確かにあの日は私も怒ってたけど…。 日を改めてすぐにここへ来てくれれば、私だって少しは考えるのに) そうは思ったフレデリカだったが、あの日のミュラーの行動には疑問を感じた。 (これがお詫びだとするなら、あの晩の「あれ」はなんだったんだろう…) 前段階で何度も上り詰めさせられ、 それから後も執拗なまでに限界を超えさせられたが、 それでも彼は思いのままに自分を蹂躙しようとはしなかった。 それどころかフレデリカがそうして欲しいと伝えるまで 自分の欲望を弾けさせようとしなかったし、 いざそうしようとするときも少し戸惑っているように思えた。 (あの人なら、そんなことしなかったのに) そこまで考えて、頭の中で亡き夫の姿が霞んでいたことに気づき、 「!」 (私ったらどうしてそんなこと考えてるのかしら、 まるであの人のことを忘れてしまったみたいじゃないの!) 慌ててフレデリカは首を大きく横に振る。 (いくら夫が先に死んだからと言っても、 私はヤン・ウェンリーの妻なのよ。他の男性の事なんて考えては駄目) おもむろにフレデリカは立ち上がり、寝支度を整えるべく寝室へ向かった。
10. さらにしばらく後、フレデリカは花束とともに 比較的大きな荷物を配達業者から受け取った。 差出人はまたもナイトハルト・ミュラーとなっている。 梱包を解き、箱の蓋を開けると1枚の便箋が目に飛び込んでくる。 すぐその下には布状の物体が丁寧に畳まれて入っていた。 広げてみるとそこに現れたのは、見覚えのあるモスグリーンのドレスと、 明らかに新品の、それもかなりの高級品と分かる下着類の包み。 「今どきこんな古典的な方法で連絡してくるなんて…。 手紙をデータディスクに変換してくれればいいのに」 と呟いた後、フレデリカはハイネセンポリスの総督府に 電話を掛けたときのことを思い出して苦笑いを浮かべた。 (そういえば、あちらのデータディスクが そのままこちらで使えるわけではなかったわね) フレデリカは便箋を開いてその文面を読んでみることにした。 『捜索の結果ドレスを発見することはできました。 しかしながら、下着類についてはあなたが病院に搬送されたときに 診察助手を務めた看護士が医師の診察の妨げにならぬように診察前に切断、 後に感染症等を防止する観点から焼却処分したとの報告がありましたため、 ご返却することが適わなくなりました。 この点につきまして帝国軍を代表しあなたに陳謝するとともに 代替品を送付いたしますのでよろしくご査収くださるようお願い申し上げます』 直筆のサインとともに書かれた文面はあまりにも事務的で、簡潔で。 「あなたへ」と書かれたカードとともに花を贈ってくる人物が 同じものを書いたとは思えなかった。 これで自分に詫びたつもりなんだろうか、とフレデリカは釈然としないまま 便箋をテーブルに置こうとした。と、そこに光が反射する。 「あら?…これは…」 窓からの採光が便箋の表面を照らす。微妙な陰影が浮き上がってくる。 便箋いっぱいに何かを書いた痕跡。 そのほとんどは何度も上書きされたのか文字が重なりすぎていて読めなくなっていた。 しかし事務的に書かれた文章より下に書かれた、なんとか読める部分には。 彼なりに考えながら書いたのであろう、より話し言葉に近い表現の、 彼の潔白を証明するに足る事実の一部。 最終的には合意の上で行われたものになったが、 あの日そこへ到るまでに自分がフレデリカに対して行ったことへの謝罪。 そして、フレデリカに対する自分の想い。 それらが表面的には見えない文字で綴られいる。 ペンを握り、強い筆圧で何度も書き直した結果だろう、 フレデリカに届けられたその便箋にミュラーの強い想いが刻まれているように思えた。 文末に書かれた「あなたを愛しています」という見えにくい文字列が判読できたとき、 フレデリカはあの日自分に囁いた彼の声を、 あの日彼に弁解の余地を与えなかった自分の行動を思い出した。 便箋を片手に持ちながら、フレデリカは家の中を歩き回りながら考える。
彼が言葉を紡ごうとする度にそれを途中で遮り、詰問した。 (そういえば…あの人はあのイヤリングを返すとき、 「皇太后陛下から預かったものであなたに返すように託された」と言っていたような…) 爪が食い込むほどにつかまれた両肩の痛みと、 その数時間前に何度も背中を撫でてくれた優しい感覚。 そこかしこに口付けられた時の唇の温かさが、忘れられない。 (あの夜たしか2回言われた気がするけど、でもあれは) 彼は自分のために「自分が愛した男」の代わりになってくれただけのはず。 (ではこの便箋の、この簡潔な文字列は? ここに書かれていたはずの、私への言葉をあえて伝えてこなかった理由はなぜ?) あの日の彼の言葉はきっと彼自身の本心ではないだろう。 フレデリカはずっとそう思っていた。 (毎日花を送ってくる理由は?) 解らなかった。彼の意図がつかめなかった。 軽くため息をつき、気分を落ち着けるためにお茶を入れようと思って、 フレデリカは足元に落としていた視線を正面へ向ける。 ふと目の前の本棚の、ある1冊に目が留まる。 何気なくその本を手に取り、ぱらぱらとめくる。 そこに書かれていた内容にフレデリカははっとなった。 「まさかあの人はこのドレスのことを含めて、だから花を送ってきたの…?」 赤いストック、黄色いクロッカス、白いアスターは、「私を信じて」。 ピンク色のチューリップは、「恋の告白・真面目な愛」。 赤いバラは、「愛情・熱烈な恋」を。 手に取った本には、それぞれの花にあてはめられた「花言葉」が書いてあった。 (本気なんですか、閣下…?) これまで数回しか会わなかったが、そこから考えられる彼の性格からして 彼が嘘をついているようには思えなかった。 しかし、フレデリカは首を横に振る。 「もしそうだとしてもいずれお断りした方がいいわよね、あなた」 その場にはいない夫からの返事は当然なかったが、 フレデリカは自分を納得させるかのようにつぶやき、踵を返して台所に向かう。 フレデリカは見えない文字で書かれていたミュラーの言葉を、 敢えて見なかったことにしようと心に決めた。 つぶやいた後もフレデリカの心の中には 少しだけ澱のようにに引っかかるものを感じていたが、 それが後に大きくなっていくとはこのときは考えられなかった。
11. ようやくミュラー本人からフレデリカのもとに連絡がきたのは、 それから3ヶ月も経った頃。 イヤリングを返しに来たときから数えれば既に2年が経過していた。 フェザーンから届いた封蝋つきの手紙の内容は 時候の挨拶と締めくくりの言葉を除けばごく簡単なもので、 「○月×日午後6時にホテル・サン・アルカンジェロにてお会いしたいので、 予定を空けておいてくださると助かります」 と書かれてあった。 フレデリカにしてみれば、自分の中では納得がいかないまでも ドレスが自分の手元に戻った時点で ミュラーとのことは一応の決着がついたつもりであった。 にもかかわらず向こうから会いたいと言ってきたということは、 正式なお詫びをするつもりで会うつもりなのだろう。 いまだ送られてくる花束に対する疑問はあったが、 フレデリカはそのつもりで当日を迎えた。 当日、ホテルのロビーでフレデリカを迎えたミュラーは、 「お待たせしてしまって、申し訳ありません」 と現れたフレデリカの姿に言葉を失った。 ミュラーは書面にて特に服装を指定したわけではなかったが、 フレデリカが着ていたのはクリームイエローのマーメイドラインのドレス。 その場に突然神話の中の女神が姿を現したかのような美しさは、 頭の中の語彙の全てを使っても表現できそうになく、 「…………」 ミュラーは口を半開きにしたままフレデリカを見つめる。 「…閣下?」 「…………」 「閣下、いかがされましたか?」 「…………」 「閣下」と呼んでもいまだ硬直しているミュラーの気を引こうとして、 フレデリカは違う呼称で呼びかけてみる。 「あの…ナイトハルト様?」 「え? …あ! すみません、フラウ・ヤン。 その…前にあなたのご自宅に伺ったときの服装で いらっしゃるかと思っていたものだから、びっくりしてしまって…」 「直前まで何を着ようかとても迷ったのですが、お気に召しませんでしたか…」 そう言ってうなだれるフレデリカを、 「い…、いいえ! とてもよく似合ってます」 と慌てて褒めるミュラー。 「ここのダイニングで一緒に軽く食事をと思っていたのですが、 せっかくそんな素敵な服装で来ていただいたのだから、 今日は予定を変えましょう」 そう言ってミュラーはフレデリカをホテルの外に連れ出した。
フレデリカが車で案内されたのはハイネセンポリス郊外のとある邸宅だった。 もともとこの邸宅は自由惑星同盟最高評議会議長であった ヨブ・トリューニヒトが別荘の1つとして所有していたもので、 トリューニヒト死亡時の遺産相続の際に遺族が相続税として現物納付したものらしい。 ミュラーの説明によれば現在はハイネセンポリスとその周辺に駐留する 帝国軍士官のためのクラブとして利用しているとのことだった。 ミュラーとフレデリカが屋敷内に入ると、先に室内にいた士官たち、 彼らに伴われて入店していた女性たちが驚きの表情を浮かべる。 ここに来るとはおよそ考えられない予想外の入店者2人の顔を見て 士官たちが慌てて立ち上がり、敬礼しながら一列に整列した。 「私とこちらのご婦人のことは気にしなくていい。 いつものように振舞ってくれ」 と言い置いてからミュラーは空いている席から 窓の外の眺めの良い席を選び、上席にフレデリカを座らせた。 「ここに私がいるのはとても場違いな上、いくらか危険な気がするのですが」 互いの近況を報告しあった後は話題が途切れてしまい、 辺りの雰囲気もあってフレデリカは沈黙に耐えかねて、 デザートが供された後にミュラーにそう言った。 「申し訳ありません。もっと他の場所へご案内したかったのですが、 あなたの服装が引き立つ場所で落ち着いて食事ができるところというと ハイネセンポリスの近くではここしか思いつかなったのです。 なんというかその…女性を伴って食事をする機会は 今まであまりなかったものですから…」 少し口ごもりながら照れた表情を浮かべるミュラーに対し、 「いえ、そうではなくて…」 とフレデリカはその発言に首を振る。 「既に辞任したとはいえ私はイゼルローン共和政府の代表者でした。 その私がこうして帝国軍専用施設で他の士官の方に囲まれながら 帝国軍元帥である閣下と食事をしているのはどうしても悪目立ちしてしまいますし、 何かあったときに閣下のお立場を悪くしてしまうのではないでしょうか」 とフレデリカの表情は真剣そのものだった。 「大丈夫ですよ」 とミュラーは笑いながらフレデリカに告げる。 「条約締結前ならいざ知らず、 今はあなたのことを悪く言う者は帝国内に存在しません。 心配でしたら、ここにいる者には今日ここで見たことは明日には 各自の記憶から消去するように伝えておきます」 「でも…」 「今まであなたには黙っていましたが、 万が一のことを考えてシヴァ星域での戦争後からずっと あなたの周りには常に警護役が配置されていますから、 あなたの身の安全は確実に保障されているんですよ」 「監視されていたということですか?」 「いいえ。極力あなたの生活に支障をきたさないように 警護を担当する者には言動を制限してありますからご安心ください。 それにあなたに危険が及ぶようなことがあれば すぐに私のところに連絡が入るようになっています」 フレデリカは自分の心配が余計なものであることを知ると 「差し出がましいことを申し上げてすみません」 と詫びた。 「もしあなたに何かあったら、心配で仕事が手につかなくなる」 その声に重なるようにミュラーは小さな声で呟いた。 「え?」 と思わず聞き返すフレデリカ。 「あ、いえ。私の方こそあなたにいろいろお詫びしなければいけない」 と誤魔化した後、ミュラーは椅子から立ち上がった。 「少し踊っていただけませんか?」
12. 屋敷内全体に音響設備が整えられているらしく、 天井に埋め込まれていたスピーカーから音楽が聞こえることには フレデリカは屋敷に入ってすぐに気がついていた。 フレデリカはミュラーに手を取られて食事をしていたホールの中央にいざなわれる。 数人のカップルがその場で華麗なポーズを体現しつつ、 優雅なステップを踏んでいることに引け目を感じ、 「私、ダンスはあまり上手ではないのですが」 と言ってフレデリカはダンスの誘いを断ろうとした。 「私の動きにあわせて足を動かすだけで構いませんよ。 それに踊りながら話せば士官達に聞き耳を立てられることもないでしょうから」 とそのままミュラーは腰に手を回してポーズを整える。 フレデリカは仕方なくミュラーの肩にそっと手を置いた。 「いろいろ話しますが、特に返答していただかなくて結構です。 踊っているように見えるよう、動きにだけ集中してください」 身体が近づき、ミュラーの顔がフレデリカの耳に近づいた。 「もっと早くにお詫びしに来ようと思っていたのに、 あれから2年も経ってしまいましたね。本当に申し訳ありません」 「私は……あっ」 ミュラーの言葉に返答しようとして、ドレスの裾を踏んでしまい、 フレデリカの身体が大きく傾く。 「おっと…大丈夫ですか?」 そのままバランスを取るようにミュラーは腰を支え、 フレデリカの身体を後ろに反らした。 「おお!」 踊り始めてすぐ大胆なポーズを決めているかのように見える 2人の様子に周りから歓声が上がった。 「すみません、お話に気を取られてしまって」 歓声に驚いて恥ずかしそうにうつむくフレデリカ。 「たとえお身体がぐらついてもなんとか致しますから、 どうぞ気になさらず私にお任せださい」 とフレデリカを諭しミュラーは踊りながら話を続ける。 「…あなたを脅迫して自分の意のままにしようだなどとは、 私はこれまで一度たりとも考えたことがありません。 あの日は本当に皇太后陛下からお預かりしたイヤリングを お返ししたらすぐに退去するつもりでした」 手を高く上げられ、その場で一回転させられた。 「日ごろの体調管理が不十分だったせいで 心ならずもあなたのご自宅に一晩滞在することになってしまい、 そのことが近隣住民の方のあなたに対する印象を 悪くさせてしまったのであれば謝ります…」 徐々にステップに慣れてきたフレデリカの動きがミュラーのそれに呼応し始める。
「お返事は首を動かすだけでいいですから、質問に答えていただけますか?」 ミュラーの言葉に従い、フレデリカは首を縦に振る。 「ドレスはお手元に届きましたか?」 縦に動かす。 「では、花は?」 分かっているはずなのになぜそんなことを聞くのか不思議に思ったが、 再びフレデリカは首を縦に振った。 「…よかった、手違いで届いていなかったらどうしようかと思っていたのです」 安堵したかのようなミュラーのため息が聞こえた。 「あの後すぐにお詫びに伺おうとしていたのですが、 憲法草案の一部が出来上がったとの報告があり、 自分が調査した資料と比較するために すぐにフェザーンに戻らなければならなくて。 だから再びあなたにお会いできる機会が来るまでの間に、 なんとかお気持ちを静めていただこうと思って 花を届けてもらったのですが、ご迷惑でしたか?」 フレデリカは少し迷う。 確かに最初は迷惑だと思った。 しかし、今も毎日届けられる花を見ているうちに、 当初ミュラーに対して感じていた怒りや苛立ちといった感情は もはやフレデリカの心に存在していなかった。 ドレスと共に箱に入っていたあの便箋を見て以来、 だんだんとミュラーのことを考えることが多くなってきていて、 今日の予定について連絡してきた手紙を読んでからは 「閣下は今頃フェザーンを発たれたはずね…」 「手紙に何も書いてなかったけど服は何を着ていけばいいのかしら…」 と届けられた花を見ながら今日がくるのをずっと待っていたのだ。 ミュラーの質問に「はい」か「いいえ」かで答えなければならないとすれば、 そこから導き出される答えはおのずと1つしかなかった。 フレデリカは首を横に振った。
「あのことも…いえ、あれは完全に私に否があります。 自分の理性で衝動を抑えることができなくて、 あなたにつらい思いをさせてしまった…」 ミュラーは勢いをつけて密着していた身体を離し、手を繋いだままポーズを取った。 少し汗をかいてきたのだろう、再び近づけられたミュラーの身体から 懐かしい香りが立ち上ってきたのを感じ、フレデリカの意識は混乱しそうになるが、 今自分と踊っているのはミュラーなのだと心に言い聞かせた。 「あの時はあなたにそんなことを伝えてしまっていいのか 自分でもいくらか悩みながら申し上げました。 しかし、あの日から今日までお会いできなかった間に あなたのことを考えているうちに、あの時申し上げた気持ちは 偽りではなかったことが自分でもよく分かりました。 ですから、今ならはっきりと申し上げることができます。 フラウ・ヤン、私は…」 そのとき、ちょうど天井のスピーカーから流れていた曲が終わった。 互いに一礼して次の曲がかかるのをしばし待つ。 前奏が聞こえ、踊る前の挨拶をしてポーズを取る。 ステップを踏み出そうとしたミュラーは、 フレデリカの身体がその場から動かないことに気づいた。 「フラウ・ヤン?」 「…………」 「踊るのが疲れましたか、フラウ・ヤン?」 「……………」 「どうかなさいましたか?」 声を掛けても返事がないことを不審に思ったミュラーは、 少し身体を離してフレデリカの顔を覗き込む。 「………!」 次の瞬間フレデリカの様子に慌てだした。 「人目につかない場所で少し休みましょう」 そう言ってフレデリカの顔を身体で隠すように寄り添い、 ホールから連れ出した。 フレデリカはその場に立ち尽くしたまま、泣いていたのだ。
13. 屋敷の裏は庭園になっていた。 その中でも最も屋敷から離れていて、目立たない所にあったベンチに ミュラーはフレデリカを座らせ、自分も隣に座った。 「先ほどよろけたときに足を痛めたのでは?」 フレデリカは泣きながら首を横に振った。 「どこかお加減が悪くなったのですか? それとも、もしかして今日はずっと体調が悪かったとか…」 「いえ、いいえ…。ごめんなさい、急に泣き出したりして…」 手の平で頬を拭うも、いまだフレデリカの目からは涙があふれ出ている。 「……昔のことを思い出してしまって」 「昔のこと?」 「さっきかかっていた曲…亡くなった主人が好きだった曲なんです」 僚友のエルネスト・メックリンガーあたりが聞けば その曲が誰の、なんという題名の曲かすぐ分かったのかもしれないが、 あいにくミュラーには聞き覚えがなかった。 「…歌詞のある曲なのですけど、さっきのはアレンジされた曲だったのか 前奏が終わるまで気がつかなくて…」 そういえば前奏が終わって本パートに入ってからも 歌詞は聞こえてこなかったなと思いつつ、 「フラウ・ヤン。よほどつらい事情があったのでしょうが、 あの曲のことで過去に何があったかは今は聞かないでおきます」 ミュラーは口元を覆って声を押し殺そうと、なんとか涙を止めようとしている フレデリカの手を取り、自分の上着の胸元をつかませた。 「本当のことを申し上げれば、 あなたにはいつも笑顔でいてほしい。ですが…」 フレデリカの頬に自分の手で触れ、涙を指先で拭う。 「泣きたいときは、いっそ思い切り泣いた方が気分は楽になると思いますよ」 そのまま、フレデリカの頭を自分の胸に押し付けた。 「いいですよ、好きなだけ泣いてください。ここなら誰にも聞こえませんから」 頭の上から聞こえてくる優しい声。背中と、頭を撫でる暖かい手。 「う………、ぅ…」 我慢ができなかった。 「ご……めんな…さい…、閣下……」 「なぜ謝るのです、フラウ・ヤン? あなたは悪くありませんよ」 「閣下、本当に…すみま…せ……」 ミュラーに言われても、フレデリカは謝罪の言葉を口にしながら泣き続けた。
フレデリカが泣き止んだのは、それから20分近く経った後だった。 「気持ちは落ち着きましたか?」 「……はい」 「だいぶ夜風が冷えてきましたし、そろそろ帰りましょう。 ご自宅までお送りします」 2人はホールを通らずに玄関へ戻り、 乗ってきた車でフレデリカの自宅まで戻ってきた。 掛けるべき言葉をうまく見つけられなくて、 ミュラーが頭の中で適当な文言をひねり出そうとしているうちに フレデリカは泣き疲れてしまったらしく、車の中で居眠りをしていた。 少しずつ自分の方に傾いてくる身体を黙って寄りかからせるミュラーであったが、 目的地に着いたのであれば夢にたゆたうフレデリカを起こさなければならない。 「フラウ・ヤン、着きましたよ」 と軽く膝を叩いてみたが反応がなかった。 「フラウ・ヤン」 と大きく身体を揺する。 「………あなた!」 フレデリカは目が覚める直前そう叫んだ。 自分の視界が徐々にはっきりして、今自分は誰と、どこにいるのか思い出して。 「大丈夫ですか?」 そう問いかけてくるミュラーの顔が、明らかに動揺している表情になっていた。 「すみません、お話の途中で眠ってしまうなんて…」 「お疲れになったのでしょう、もうご自宅の前まで着きましたから、 今日はゆっくりとお休みになってください」 ミュラーは一度フレデリカとともに車を降りて、 玄関までのわずかな距離を護衛するように歩いた。 「今日は本当にありがとうございました。 いずれまたお会いできる日が来ると思いますが、 それまでどうかお元気で。お休みなさい」 そう挨拶して車の方に戻ろうとした途端、後ろに引っ張られる力を感じた。 振り返ればフレデリカがコートの端を握っている。 「…眠りたくない」 「え?」 一瞬の小さな呟きをミュラーが聞き逃すはずはなかった。 「…あ! いえ、なんでもございませんわ。 こちらこそ珍しい場所にご案内いただきありがとうございました。 どうぞお気をつけてお帰りください。お休みなさいませ」 と慌てて取り繕うに言ってコートを放し、一礼して玄関の鍵を開けようとするフレデリカ。 「そういえば…フラウ・ヤン。 先ほどデザートの後の飲み物を飲み損ねてしまいましたね。 少し喉が渇きましたので、水をいただけませんか?」 ミュラーは女性としてのフレデリカのプライドを 傷つけないように気をつけながら、その「誘い」に応じてやることにした。
14. 「中へどうぞ」 と通されてすぐ、ミュラーは部屋…というより、 住居内全体に篭っている芳しい香りに気づいた。 「この花は…」 「全て閣下が送ってくださったものですわ。 今飲み物をお持ちしますね」 そう言ってフレデリカは台所へと消えていく。 赤いストックの花束が部屋中を彩っている。 部屋の四隅だけでなく、玄関から居間へ続く廊下、 ちらと見えた階段の1段1段の両端にも。 テーブルの中央にも大きな花瓶が備えられており、 1人がけのソファには座面の部分に板を置いて水平を保ち、 その上にも花瓶が置かれていた。 ──あの諍いがあったその日のうちにミュラーは急いで調べ、 「花束にして毎日届けてくれ。必ず毎日だ」と 調査資料をまとめるのに机を借りた総督府近くの花屋に自ら赴いて注文した。 「計算に時間がかかるから後で見積書を送る」と言った店員に 「金なら今払う」と携帯端末を操作して、 その場で自分の預金口座から花屋の出納口座に自分の1年分の給料を振り込んのだ。 時間がなかったからかなり強引な手段を使ってしまったとも、 1年分もの給料を嫌われている女性のための花束に使うとは酔狂なことだとも、 ミュラー自身フェザーン帰還後に思ったが、 それでもこれでフレデリカが少しでも気を静めてくれれば安いものだと思っていた。 しかしミュラーは銀河帝国とハイネセン自治領との間における 為替レートや物価の違いについてはすっかり失念していた。 10ヶ月ほどで全て使い切るだろうと思って自分が花屋に支払った1年分の給料が、 ハイネセン共和自治領においては株式上場企業トップクラスの 代表取締役の3年分の給料に当たることを。 惑星ハイネセンだけでなくその周辺の惑星には 野菜や花きの栽培に適したところが豊富なこともあって 花の値段は非常に安価であることを──。 それが今自分が目の前にしている光景の結果であることを知り、 ミュラーは後に花屋に毎日の配達を週1回の配達に切り替えさせることになった。 座る場所がそこしか見当たらず、ミュラーは3人がけのソファの端に座る。 程なくフレデリカがトレーを抱えて室内に入ってくる。 「ご覧のとおり向かい側のソファにも花を生けているので、 隣に失礼致しますね」 とフレデリカはミュラーの隣に座った。 出されたコーヒーを一口飲んだ後ミュラーは問いかけた。 「車の中でお休みになっていたとき、 気持ちよく眠っているのを起こすのもどうかと思って、 ご自宅に着くまでお声を掛けなかったのですが…」 「私としたことが、本当に失礼なことを…申し訳ありませんでした」 「いえ、あなたが詫びるほどのことではありませんよ。 それより、お目覚めの直前に少しうなされていたようですが大丈夫ですか?」
少し戸惑う表情を見せた後フレデリカは言った。 「…夢を見ていました。今までにも何度も繰り返し見ている夢なんです」 前にも似たようなことを聞いたと思ったミュラーはそのときのことを思い出した。 「亡くなったヤン・ウェンリー提督の夢、ですね?」 こくり、とフレデリカは首を縦に揺らす。 「いつも同じところで目覚めてしまって、それから後は眠れなくて…」 ふと時計を見ると、朝を迎えるまでにはかなり遠い時刻。 自分が退出した後は朝になるまでの数時間を フレデリカ1人で過ごさなければならないことを思うと、 ミュラーは胸が締め付けられるような感覚にとらわれる。 「なんとか眠れたとしてもまた同じ夢を見てしまうことも多くて、 結局起きてしまうのですけど」 「ヤン提督も罪なお方だ。亡くなられて数年経つのに、 いまだ夢に出てきて奥方を悩ませるとは…」 「いえ、私が思い出に縋って生きているからこんなことになるのではないかと。 周りの人からも忘れろまでとは言いませんが、 もっと他のことにも目を向けるべきだとはよく言われます」 と横顔で苦笑するフレデリカ。 「では、今日はもうお休みにならないと?」 「…そうなりますわね」 「朝までずっとお一人で過ごすのですか?」 「ええ、閣下がお帰りになれば」 「では私はあなたがお休みになるまで、帰らないことに致しましょう」 「ご冗談を」 「本気ですよ」 その発言が信じられなくてフレデリカは テーブルに落としていた視線を、ミュラーの顔に戻した。 ミュラーの手がフレデリカの頬に触れる。 そのまま顔が近づいてくる。 ゆっくりと瞼が下りたかと思うと、 「マイネ・リーベ・フレデリカ…」 そのまま口付けられた。 「………、いけません閣下…っ」 一度顔を反らしてミュラーの唇から自分の唇を離すが、 再び追い求められる。 肩を押して身体を離そうとするがその手をつかまれる。 「閣下……、…っお止めくださ……」 頬に触れていた指が耳に触れた瞬間、抵抗しようとするフレデリカの力が抜けた。 「………どう…して…」 ようやく口付けを解いてくれたミュラーに対して、 フレデリカはそう言った。 「…どうして私などを相手になさろうとするんです? 閣下ほどの素晴らしい方ならフェザーンにいくらでも お似合いの女性がいるでしょうに。 相手に死なれたとはいえ私は一度結婚しているし、 世間一般的に見れば殿方の興味を引くような女ではありません。 それなのになぜ…」 「あなただから、ですよ」 砂色の瞳が熱っぽく自分を見つめている。 フレデリカは横を向いてその視線から逃れようとするが、 「いえ、あなたでなければいけない」 頭を押さえられていて動けない。 「たとえ自分に好意を寄せている女性がいたとしても、 私はあなたのことしか考えられないし、考えたくもない。 私は、あなたを、愛しているんです」 はっきりとした口調でフレデリカはミュラーから告白された。
15. 「確かにあなたはヤン・ウェンリー提督の奥方だし、 それは今でも変えることができない。 ですが、それが何だというのです? 私があなたを愛する上ではそのことは問題ありません。 あなたはヤン・ウェンリー提督の奥方であると同時に、 フレデリカ・グリーンヒル・ヤンという一個人でもあるのですよ。 私は、フレデリカ・グリーンヒル・ヤンという人を愛しています」 ミュラーの口調はとても穏やかだ。 しかし、その口調に反して内容は燃え盛る炎のごとき激しさを帯びている。 「私もヤン提督のことを忘れろとは言いません。 ですが、ご友人たちが言われるように、 そろそろあなたはお気持ちの整理をするべきなんだと思う。 そのためのお手伝いを私がしてはいけないでしょうか?」 「手伝いって…?」 「こういうことです」 再び口付けられる。今度は表面を合わせるだけでなく、 歯列を割られ、ミュラーの舌が口中に滑り込んできた。 「………んっ……う…」 そのまま舌を絡められ、吸い上げられて、 フレデリカの全身に痺れるような快感が駆け抜ける。 「ぅ…ふ……、く……ぅ」 外耳を指先で挟まんだまま窪みに沿って撫でられ、 「…っん…ぅ……ん」 羽で触れているかのように背中に触れられ、身体がガクガクと震えだした。 ようやく深いキスから離れられたと思ったら、 「閣下…どうかお止めにな…っあ!」 その唇が頬に滑る。耳を玩んでいた指先が内側へと侵入してくる。 「私にこういうことをされるのが本当に嫌なら突き飛ばすなり、 舌を噛みちぎるなりしてもいいのですよ、マイネ・フレデリカ。 本当にあなたに嫌われているのだったら潔く諦めますから」 そう囁かれて、フレデリカは身を捩りながら考える。 確かにミュラーは今、 「愛しているのはフレデリカ・グリーンヒル・ヤン個人であり、 ヤン・ウェンリーの妻であることは問題としていない」と言った。 むしろ問題視していたのは自分ではないのか。 夫亡き後もそのことに固執し貞淑な未亡人を演じることで、 自分は「歩み」を止めていたのではないか。 ミュラーが自分を訪ねてきて以降、 最近特に夫のことを考えることよりも ミュラーのことを考える時間が多くなってきたのは、 今がその「気持ちの整理」をするべき時なのではないか。 そもそも自分はミュラーのことをどう思っているのか。 口付けられて本心から抵抗できないのは、自分に隙があるからではなくて…。
「…分かり…ました、閣下」 フレデリカは少しだけミュラーの身体を押して、 圧し掛かってくる力を制止する。 「では…忘れさせてください」 「え?」 「朝が来るまでの間で構いません。 あの人のことを忘れさせてください」 ミュラーがフレデリカの口から聞きたかったのは、 そんな言葉ではなかった。 「途中で止めたりはしませんよ。それでも?」 「ええ」 しかし、「忘れさせてほしい」と言ったということは フレデリカ自身がある程度覚悟を決めたのだろう。 「承知しました」 とミュラーは再び深い口付けを交わした。 背中に回している手で探りながら、ドレスのファスナーを少しずつ下げる。 以前のことを覚えていたこともあり、 ミュラーは容易くフレデリカの吐息を上げさせることができた。 今自分の片手は胸元に、もう片方は太腿にある。 煌々と照明が灯ったままの居間のソファに横たわっている 下着姿の彼女はとてつもなく淫らで、それでいて美しい。 快楽に身を委ねているフレデリカがそのことに気づけば、 間違いなく自分の行動を止めさせるだろう、とミュラーは思う。 ただ今の彼女は自分によってもたらされる愉悦に 身悶えしながらときどき甘声を漏らすだけで、 先ほどまでとは違い自分の行動をとめさせようとはしない。 呼吸を整えるためなのかフレデリカが時々大きく深呼吸した後に、 目を閉じたまま何か安心したような表情を浮かべるのは何故だろう?とは思った。 了解は得たものの本当にその先に進んでしまって良いものか、 ミュラーは自分の心の奥底にある狂暴性とも闘いながら、 少しずつフレデリカの心を覆い隠す「装甲」を剥がし始めた。 下着をずらして小高い山の頂上に吸い付く。 「あああああっ!」 甲高い悲鳴が居間に響いた。 舐め上げられ、吸いたてられ、形が変わるほどに揉みしだかれ、 その度にフレデリカの白い喉元が突き出される。 徐々に身体をずり下げながら身体のあちこちに口付ける度にミュラーは 「マイネ・フレデリカ…」 と彼女の名前を呼ぶが、 フレデリカの口からはいまだミュラーの名前が呼ばれなかった。 ショーツをずり下げ、その中に隠されていた花弁に指を添えると、 「……あっ、……ぁふ…ぅっ…」 フレデリカの身体の揺れがますます激しくなる。 そのまま幾度か限界を超えさせた後、 ミュラーは両足を開いて内腿に手を添え、艶めかしく光るその花に舌先で触れた。 その途端。 「…ぃぃやああぁっ!! あなた、そこはだめぇぇっっ!」 やっと呼ばれた名前は自分のものではないことに、 ミュラーの衝動は寿命の尽きた花のようにしおれていく。 それを象徴するかのように、 ストックの花の一つが音も立てずにテーブルの上に花びらを散らした。
ミュラーはゆっくりと立ち上がり、 床に散らばっていたフレデリカの着衣を1つずつ手に取った。 荒い息をついてソファに崩れているフレデリカの身体を起こす。 下着を足に通し、ブラジャーの肩紐を通して背中のホックを留める。 ドレスだけはそっと埃を手で払った後でソファーの背もたれに掛けた。 そのまま無言でフレデリカの身体を横抱きにして、 しっかりした足取りで階段を上がる。 「……え…? ええっ?」 そのまま最後まで続くだろう思っていたことが、 ミュラー自身が「途中で止めない」と言ったはずの「行為」が途中で止められ、 フレデリカにはその理由が分からずに焦りを感じた。 そのままミュラーはいつか自分が使ったことのある寝室へ入って行き、 そっとフレデリカの身体をベッドの上に横たえる。 「あなたが眠るまでずっとここにいますから、 どうか安心してお休みを」 そう言ってベッド脇に片膝を抱えて座り込んだ。 「ど…う…して…? なぜ途中で…」 フレデリカは思わず起き上がりかけるが、 「今日のあなたはとてもお疲れのはずです。お休みになってください」 と急に口調が少し荒くなったミュラーの態度に、 自分がベッドから起きて質問することを許されていないと知った。 「どうしてなんですか……」 またフレデリカの両眼から涙が溢れ出す。 「閣下なら……忘れさせてくれると…思った……の…に…」 フレデリカはミュラーに背を向けて自分の泣き顔を隠した。 誰かが自分の髪に触れている感覚に気づき、 フレデリカの意識はまどろみの中から急浮上する。 自分はあれから泣いたまま眠ってしまったのだ…と直前の行動を思い出した。 どうやら自分は頭を撫でられているらしい、そのまま目を開けようとしたが 「あなたの中で私の存在は… ずっと銀河帝国元帥のナイトハルト・ミュラーのままなのでしょうか…」 至近から聞こえてくる声に瞼を開けられなくなった。 「…それならそれで構わないのです。むしろはっきり言われるか、 あからさまに拒絶してくれた方がどんなにすっきりすることか。 私自身があなたに失恋したと思えば、それで済むことなんですから」 ミュラーは自分が寝ているすぐ後ろ、ベッドの端に腰掛けて、 自分の顔を見ながらそっとつぶやいているらしい。 「前は…私であることを忘れてほしいと私から申し上げましたね。 あのとき私はあの瞬間だけはあなたの最愛の人になれるように心を尽くしたつもりです。 しかし今度はあなたが忘れさせてほしいと言ったから、 あなたのお気持ちは私と同じものと確信して、私は私らしく振舞い、 あなたの望みを叶えるべく努力するつもりでした…」 ふう、と漏らしたため息が軽くフレデリカの顔にかかる。
「『閣下』と呼ばれたときは確実に私だと分かるのですが、 あなたが『あなた』と私に呼びかけるとき、 果たしてあなたは誰を呼んでいるのだろう?と不安になります。 ヤン提督なのか、私なのか、それともヤン提督の代わりになっている私なのか。 ……きっと呼びかけている相手は、今はまだヤン提督なのでしょうね。 私があなたに触れている最中、あなたは私を通じて誰かを見ているような目をしていたし、 私を呼ぼうとして『あなた』と言ったということは、 あなたの中のヤン提督の存在がそれだけ大きいという証拠ですから。 せめて私の名前を…」 と言いかけて、髪を撫でていたミュラー手が少し止まる。 「いや、名前で呼んでもらったところで何かが変わるわけでないな…」 再びため息をついて、髪を撫でる。 「今日私はあなたに結婚を申し込もうと思っていたのですが、 時期尚早のようなので機会を改めることに致します」 ベッドが揺れる。 「そろそろ戻らねばなりません。 このままご挨拶せずに退出するのは少し気が咎めますが…」 触れるだけのキスを施され。 「お休みなさい、マイネ・リーベ・フレデリカ。 近いうちにまた参ります」 そう言ってミュラーは立ち上がり、寝室を出て行った。 遠くでパタン、と扉の閉まる音が聞こえる。 やがて外から響いてくる規則正しい足音。 それが誰のものかはベッドの中のフレデリカには良く分かる。 追いかけたい。追いかけて、続きを、と縋りつきたい。 そうは思っても同じ過ちを繰り返してしまいそうで。 足音が聞こえなくなると同時に、傍らの目覚まし時計が鳴り響く。 フレデリカは鳴り続けるアラームを止めようともせずに、 しばらくベッドの中で自分を抱きしめていた。
16. ユリアンとカリン、キャゼルヌ夫妻、アッテンボロー、友人知人、僚友たちなど、 フレデリカに面会を求める人物は比較的多い。 相手の家に招かれたり、外で待ち合わせることも多いが、 可能な限りフレデリカはその相手を自宅に招き、 何度も練習して安定した味を出せるようになった料理を振る舞い、 いろんな話をして過ごした。 この日も学生時代の友人が遊びにきたのだが、 相手が帰宅するとその家にいるのは自分独りきり、 夜になって誰かと話をしたくても相手になってくれるものは誰もいない。 仕方なく彼女はシャワーを浴びて身支度を整えた後、 居間のソリヴィジョンでニュースやドラマを見たり、 図書館から借りたデータディスクで音楽を聴いたり、 夫の遺した書籍の中から適当なものを選んで読んだりして、 自然に眠気がやってくるのを待っていた。 適度に瞼が重くなってきたところで寝室のベッドに入り、瞼を閉じる。 ──パラリ。パラリ。 本のページをめくる音が等間隔のタイミングで聞こえる。 自分の近くでヤンが本を読んでいる音だ。 その音が少し気になって眼を開けると、 ちょうどヤンが自分の方を見ていたらしく、互いの視線が合わさる。 「あ…起こしてしまったかい? 悪かったよ」 と言って頭を掻きながらヤンは少し笑った。 いつの間に掛けてくれたのだろう、自分の身体には毛布が掛かっているし、 辺りを見回せば窓の外には星が瞬いており、頭の上には煌々と灯る天井の照明。 ソリビジョンからは音声だけが聞こえてきて、ヤンはあえて映像出力を切っているらしい。 最近巷で人気の音楽番組が放送されているらしかった。 今日のプログラムは往年の名曲特集らしく、以前ヤンが好きだと言っていた曲が流れている。 テーブルの上に置かれたティーカップの中の、底に残ったわずかな液体は すっかり冷めて蒸発し、内側に薄い茶渋の輪をつけていた。 この状況を整理すれば、軽く2,3時間は意識を逸していたことになるだろう。 フレデリカはソファに腰掛けたまま居眠りをしていた。 「ごめんなさい、私ったらすっかり眠り込んでしまって…」 軽く頭を振って意識を完全覚醒させた後慌ててティーセットをトレイに乗せ、 「いや、いいんだ。君も疲れているみたいだったから」 という言葉を受けながらお茶を淹れ直そうと台所に向かうフレデリカ。 「あなた、さっきと同じようにブランデーを少し入れますか?」 居間の方を振り返ってヤンに確認しようとする。 と、すぐ後ろにヤンが立っていた。 フレデリカはもう少しで悲鳴を上げそうになったが そのまま抱き寄せられたことでいくらかほっとして、 肺の中で苦しそうに圧しとどめてられていた空気をゆっくりと吐き出した。 「お茶はもういいよ、フレデリカ。それより…、その…」 と言いながらヤンが自分の手首をそっと掴んで歩き出す。 「一緒に寝よう」 ヤンの頬が薄く染まっているのに気が付いた。
結婚当初からヤンとフレデリカは寝室のダブルベッドで一緒に寝ていながらも、 夫婦揃って同じ時間にベッドに入ることはほとんど無かった。 読んでいる本の世界にヤンが没頭していて遅くなるか、 家事に手間取ってフレデリカが遅くなるか。 このため寝る前の2人の挨拶は 「フレデリカ、悪いけど先に寝るよ」か、 「あなたごめんなさい、先に寝るわ」であった。 どちらかが勤務時間中でもう1人は非番だったり、 勤務中にやり残した仕事を持ち帰って寝室の隣の書斎で片付けていたりと、 仕事に絡んで就寝時刻がずれることもよくあり、 ヤンが寝ているときにはフレデリカは起きていて、 フレデリカが寝ているときにはヤンが起きていることが多い。 しかし、2人が自宅に揃っていてそれ以外の挨拶がヤンの口から飛び出すとき。 それは口下手で愛情表現が苦手なヤンなりの「誘い文句」に他ならない。 口付けを交わしながら、寝室の方へ連れ出そうとするヤン。 「ん……あっ、あなたコンロのスイッチを…んぅ…」 台所に戻ろうとするフレデリカを圧しとどめ、ヤンは片手を伸ばしてスイッチを切った。 カップを洗おうとしていたためフレデリカの手は濡れている。 「く……ふ、ぅ…、駄目よ、手を拭かないとあなたのシャツが…」 フレデリカは口付けを解いてヤンの動きを一時止めさせようとするが、 「平気さ、そのうち乾いてしまうから……ぅん…」 そう言ってヤンは後ろ手でフレデリカの手を自分の背中に押し付けた。 フレデリカの手形そのままにヤンのシャツに染みがつく。 「……ふ…、…う…んっ、もう子供みたいなんだから…ぁ!」 頬を辿って唇を滑らせ、ヤンに首筋に音を立てて舐め上げられて、 フレデリカは小さな悲鳴を漏らした。 もつれ合いながら2人は寝室へと足を運び、ベッドへ倒れこんだ。 最初の頃と比べたら、ヤンの技術力は上がっている方なのだろう。 ぎこちなく外していたブラウスのボタンやブラジャーのホックは、 今では深いキスを交わしたままスムーズに外されていく。 胸元の突起に指を掛けられたときには、フレデリカの息は既に上がっていて、 「ゃ…ん! ……あ、はっ……ぅ!」 甘声をこぼしながら、ヤンの背中に爪を立てる。 赤子のように乳首を吸い上げられると、そこから身体全体に痺れが走った。 子供をあやすかのようにさすられる背中に反比例して、 ヤンの手は無遠慮に太腿の内側に触れている。 ゆっくりとその手がスカートの奥へと侵入し、ヤンの指先が最初の一撃を フレデリカのそこへ加える。 「あ、あな…たっ…!」 「ん?」 意地悪そうな笑みを浮かべてヤンが顔を上げた。 「…ず、ずるいわ、私だけこんな格好で…いるなんて…」 フレデリカが少し唇を尖らせて苦情を言うと、 「ああ、そうだったね」 と悪びれもせず、ヤンは起き上がって手早く着衣を脱ぎベッド下に落とした。 続いてフレデリカの背中に手を回してスカートの留め金とファスナーを外し、 その下のストッキングと下着も一度に膝下までずり下ろす。 「きゃぁ! あなたってどうしてこんなときだけせっかち……ぅん…!」 続く言葉を口付けで遮り、ヤンは足の付け根に隠れた彼女の秘唇に指先を触れさせた。
ヤンの顔が少しずつ下にずれていく。 さすがに服を着たときに露出する部分は避けてはくれたが、 そこかしこに激しい口付けを施され、フレデリカの身体には赤いほくろが散っている。 胸元の突起は痛いほどに固くしこっており、 秘唇の奥からはねっとりとした液体がヤンの指先を湿らせる。 やがてヤンの頭が下腹部までずれたかと思うと足を高々と持ち上げられ。 「……っあああっ! やぁあ、んぅぁああっ!」 ヤンの指先を湿らせていた液体を直接舐め取られた。 悲鳴に似た声がフレデリカの喉から迸る。 その場所への刺激は強すぎる上、排泄物がいくらか付着しているであろうところを 夫に舐めさせることには抵抗があった。 このためフレデリカは涙ぐみながら頭を振り、 「いや、ぁ…! あん、やめ……ぁぁああぅぅ!」 そこから離れさせようと腕の力全部でヤンの頭を太腿の間から押しのけようとする。 しかし次第にその刺激によってフレデリカの理性は燃え落ちてしまい、 後に残った欲望がヤンの頭を逆に押し付けるようになってしまう。 何度舌で拭っても溢れてくる滴りと、ヤン自身の唾液によって シーツに染みをつけるほどに濡れたその部分。 手を添えてそっと動かしただけで淫靡な水音を響かせるくらいになった頃、 「あの…フレデリカ……、そろそろいいかい?」 と問いかけられる。 ヤンの顔はいまだフレデリカの足元にあり、やや遠い位置にいる彼と視線が合わさった。 首の動きだけでフレデリカは了承を伝える。 言葉を伴わないその返事を受け、ヤンは起き上がってベッドの上に胡坐を掻いた。 「おいで、フレデリカ」 ゆっくりと起き上がり、フレデリカはヤンの首に腕を回す。 両脚はヤンの足の外側に置き、もう一方の手でヤンのものに手を添え、 狙いを定めつつ少しずつ腰を下ろした。 「んっ、…く! …ぅ、ふ……ぁ…」 入り口を閉ざしていた秘穴が開き、ヤンのそれが押し入ってくる。 自分で入れられる限界まで受け入れたフレデリカは、 首に両腕を絡ませてヤンにしがみついた。吹きかけられる吐息が熱い。 「も、もう……無理…よ、…これ以上…入ら…ないわ…」 そう言ってフレデリカは腰を下ろしきったが、 ヤンのものは根元から3分の1ほどがまだ収まりきっていない。 ふふっ、とため息交じりの笑い声が少ししたかと思うと、 「や…っ…んっあ! あ……、あな…た…っ!」 下から突き上げられる動作を加えられた。
そのときだった。 独特の機械音が、部屋に満ちた甘い空気を引き裂く。 ヤンが手を伸ばして、傍らのコンソールのボタンを手早く何度か押した。 「お休みのところ申し訳ありません。…あれ? 映像が表示されないのですが、どうしました?」 「ああ、ちょっと…今シャワーを浴び…ようとしていたところなんだ」 とその場の映像があったら相手はそれを否定するであろう苦しい言い訳をしつつ、 ヤンはフレデリカの身体を揺すりたてることを止めようとしない。 相手に自分の嬌声が聞こえるのを恐れ、フレデリカは自分の口元を自らの手で覆った。 「敵の総大将ラインハルト・フォン・ローエングラム提督からの通信が入りました。 停戦協定の締結に関する件なので至急会議室までお越しいただきたいのですが」 ずん、とひときわ大きく腰を揺すり、深々とフレデリカのものを抉る。 「………っう!」 抑えきれない声が指の間から零れ落ちた。 「わかったよ、着替えたらすぐ行く」 「お待ちしております」 ボタンを押し、回線を遮断するヤン。 「…ということだ、続きは…戻ってからになってしまうね」 胡坐座を解き、ヤンは自らその強張りをフレデリカの身体から引き抜いた。 「……ぁん!」 くぽっ、と卑猥な音が小さく響く。 抜き去られる衝撃がフレデリカに軽い悲鳴を上げさせる。 「戻るまで待っていてくれるかい?」 これまでもこうして急に仕事が入ったため交歓の途中で止めることは何度かあった。 その度にフレデリカは「仕方ないですものね」と苦笑しながら 夫を部屋から送り出していたのだが、 このとき、どういう訳かフレデリカはその日に限って ヤンを部屋から送り出したくない気分になった。 「いや…よ、もう少しだけ一緒にいて」 立ち上がりかけるヤンに縋り付き、 自分の愛蜜で濡れたヤンのものに指を絡ませる。 「く……! ふ…、フレ…デ…リカ、駄目だよ」 「もう少しでいいから…ねぇ、お願い…」 顔を近づけ、そそり立つものの先端に唇を触れさせた。 「…ぁ!」 フレデリカの意外な行動にヤンの眉根が寄った。
知識としては知っていたが一度も試したことがなかった動作。 それまでヤンからそうして欲しいと言われたことも無かったのに、 フレデリカは夫をその場に引き止めたい一心で 何度もヤンのものに自分の唾液を唇でなすりつける。 このまま一緒にいたい。でも送り出さなければ。 理性と強欲の間で感情が揺れ動くが、 数刻の後に無常にもヤンは強引にフレデリカの身体を引き剥がした。 「いい子だから待っていてくれないか。 戻ったら君も十分満足できるようにしてあげるから」 「本当に…?」 「ああ、約束する」 舌を絡ませ、息苦しくなるほどの口付けをする。 しかし、口付けだけでそんなに息苦しくなるものだろうか、 フレデリカは胸がつかえるほどの苦しさに違和感を感じながらも笑顔を作る。 「少し疲れただろう? 君はゆっくり休むといい。 みんなには私から言っておくよ」 そう言ってヤンは床に散らばった衣服をまとめて抱え、 ドア付近にある開閉スイッチを──ハイネセンの自宅にいると思っていたはずなのに、 いつの間にか辺りの景色はイゼルローンで使っている部屋のものに切り替わっていた──押して、 振り返りざまに笑いながら手を振って。 今あの人をここから、この部屋から送り出してはいけない。 あの人がこの部屋を出て行けば、もう会えないかもしれない。 瞬間的にフレデリカはそう思った。 そう思ってはいてもなぜかフレデリカの身体は動くことができず、 せめて声に出して夫を引きとめようとするが。 その言葉を口に出すより前に、ヤンはドアを閉めて寝室から出て行った。 しばらくして、ドアチャイムの音が聞こえた。 何か忘れ物でもしたヤンが戻ってきたのかと思った。 高揚する気持ちを抑えながら、 慌てて着替えてドアロックを解除する。 部屋に入ってきたのは自分の待ち人ではなく、 微妙な表情を浮かべている軍服姿のユリアン・ミンツだった。 「フレデリカさん…」 彼は何か重要なことを伝えようとしているのだが、 どう伝えればよいのか迷っているようでそれきり口を開こうとしない──。
「!」 その瞬間、フレデリカはベッドから飛び起きた。 額にはじっとりと汗が滲み、息遣いは荒くなっている。 「またあの夢…」 本当のことをいえば「夢」という表現はいくらか間違っていた。 宇宙暦800年5月下旬、イゼルローン要塞の居住空間の一室で、 確かにフレデリカとヤンは夫婦ならではの方法で深く愛し合っていた。 それを夢で見たのと同じように途中で中断を余儀なくされ、 ヤンが戻ってきたら続きを、と彼女はヤンの帰着を待っていた。 しかし、同年6月3日に戻ってきたヤンはその瞼を開いてフレデリカを見ようとはしなかった。 指先で触れた唇は部屋を出て行く直前にキスした時と比べると、 まるで氷に触れているかのように冷たかった。 それきりフレデリカはヤンとの約束を果たせなくなってしまったのだ。 以来彼女は幾度もその日のことを思い出し、 ついには夢の中でまでも行為の続きを願うようになる。 しかし、夢は夫が部屋を出て行くところで必ず途切れ、 その後ユリアンが訪ねてきたところで目が覚めてしまう。 ベッドに誘われるまでのきっかけはその夢によって違うが、 既に結果が分かっている夢の中で何度もフレデリカは夫を部屋に引きとめようとした。 熱烈なキスを繰り返したり、挑発的なポーズを取ってみたり、 強引に押し倒して自らがヤンを受け入れる体勢をとってみたり。 時には自分の衣服をロープ代わりにして手首を縛り、 自由を奪った状態でその場に拘束しようとも試みたが、 どういう訳か夫はその度ごとにフレデリカの「拘束」を器用にすり抜けて 部屋を出て行ってしまうのだ。 夢の中ですら思い通りにならない願望にフレデリカの苛立ちが募る。 また行為半ばで中断されて、目が覚めてからも火照る身体を フレデリカはすぐには冷やせずにいた。 両手で自らの肩を抱き、 「あなた…」 愛しい人の呼称を呼ぶ。 返事がない。返ってくることがないことはよく理解している。 分かっているのに呼ばずにいられなかった。 張り詰めた乳首が切ない疼きを腕に当てて伝えてくるが、 それを鎮めてくれる人物はそこにはいない。 手をずらして、ブラジャーの代わりに押し当ててみる。 「……ん…」 指の間に挟まった突起が触ってくれと言わんばかりに自己主張している。 そのまま間隔を狭めてくん、と上に引っ張った。 「あ……ぅ…」 そのまま手のひらを回して、重たいバストを優しくマッサージする。 そうして胸を揉みながら、 その人がもう片方の手で脇腹や腰を撫でてくれたことを身体は覚えている。 そのときと同じようにフレデリカの両手が自分の身体を這い回す。 意図的に避けていた部分に触れたときには、 その手は自分のものであって、またそうでないような感覚を覚えた。
寝巻きの中に手を滑り込ませ、下着の奥で息づいているその部分に直に触る。 くちゅ、という濡れた音は夢の影響で欲情していることを物語っていた。 そのまま指先を敏感な突起に押し付ける。胸元の小さな突起をきつく摘む。 「ん、くぅ! あ……なた……」 これが根本的な解決にならないことは分かっているのに、 「…は……ぅ、……んっ」 自分で自分を慰めることがどれだけ空しいことか理解しているのに、 「あなた……ぁっ、……んぅ……!」 それでも両手の動きを止めることができない。 そればかりか両脚はだらしなく開いて太腿だけを擦り合わせ、 軽く膝を立てて腰の動きを誘発させている。 上体は反り返って頭が左右に揺れ、いまにもベッドに倒れそうな体勢。 犬のように荒い呼吸がフレデリカの耳管を塞ぐ。 そのうちドサリと音を立ててベッドに崩れ落ちる。 スプリングの効果でフレデリカの身体は何度かバウンドした。 「ひ……あ、ああっ!」 瞬間、跳ね返りが指先の力を強めてしまい、 フレデリカの源泉から粘性の無い液体が勢いよく吹き出す。 それでも本能は満足していないのか、 彼女の指は源泉の奥にある蜜を探るべく押し込まれようとしていた。 「……ふ、……は…ぁ…」 そろそろと体内に収まっていくフレデリカの人差し指。 奥に進ませるたびにフレデリカの喉から甘いため息が零れ落ちる。 腕を伸ばしきってそれ以上入らないところまで推し進めると、 今度はゆっくりと引きずり出した。 「あ、あぁ……! あ…は……んっ」 そのまま出し入れを繰り返し、蜜を掻き出すフレデリカだったが。 「ぁあ……ん、ぃや……いやっ……」 片手はきつく胸を掴み、もう片方の手は 自分の身体の中で最大の悦楽を導いてくれる部分を穿っているのに、 フレデリカの首は左右に振られる。 「やぁん、……いやっ、あ……ん!」 足らなかったのだ。その穴を塞ぐために使っているその指の太さが。 「……んぅん、ああ、も……とぉ……」 届かなかったのだ。強い快感をもたらしてくれる場所に対してその指の長さが。 両脚を大きく開き、腰を持ち上げ、 痛いくらいまで腕を伸ばして根元近くまで押し込もうとするが、それでも足らない。 少し躊躇したがフレデリカは中指をも入れてみる。 「ひ、ぃぃっ!」 太さはなんとかそれで収拾がついたが、長さにはどうすることもできない。 フレデリカの頭の中に、蜜壷の奥を刺激してくれた人物の顔がちらつく。 指先をばらばらに動かすことで我慢することにし、 「…ぁ、く、…ふう…! ぅん……あっ!」 到達点を望むべく腰を、指を、緩急をつけて動かす。 もう片方の手で出入りしている指の近くの豆粒を転がした。 「ぁあっ…、はぁぁん…!」 そのまま追い込みをかけ、両手の動きを激しくする。 「っああああああッ!」 頭の中が白く染められ、直後強張っていた身体が少しずつ弛緩していく。 その瞬間、フレデリカの頭によぎった人物の笑顔は。 「……あぁっ、は…あああ、…あふ…ぅ…」 彼女を最もよく知っているはずの男のものではなかった。
17. その日フレデリカはハイネセンポリスにある共同墓地を訪れていた。 弔事用の花束をいくつも抱え、先に弔った順番に花束を置き黙祷を捧げる。 自分の両親やビュコック元帥、コーネフ、フィッシャー、メルカッツ、シェーンコップなど、 自分、あるいは夫であったヤンと繋がりのあった人物は比較的多い。 その墓の1つ1つに花を手向けた後、最後にフレデリカは夫の墓の前に立った。 「あなた…」 花を置いた後、辺りに誰もいないことを確かめて、 「私、迷っていることがあるの。聞いてくれるかしら?」 墓の中の人物に話し掛ける。 「ちょっと言いにくいことなのだけど…言うわね。 私、好きな人ができたの」 軽く上を向き、フレデリカはその人の容姿を思い浮かべる。 「帝国軍の幹部の方で、何度かうちに来てくれて…ああそうだ、 あなたはあの人に会ったことあるわね。 バーミリオン星域の戦いの後、停戦協定を結んだでしょ? 先代の皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムと会談する前に ご挨拶した方よ。あの人、あなたのお葬式のときに、 名代としても来てくださったの。 それ以来ずっと会っていなかったのだけど、いろんなことが重なってね、 ときどきうちに来てくださるの」 そこまで話し終えて少しため息をつく。 「それでね、あなた…。 もしかしたら私、その人に結婚してほしいって プロポーズされるかもしれないの。 はっきりと言われたわけじゃないんだけど、 これまでのことを考えるとなんだかそんな気がするわ」 再び視線が墓石に戻った。 「あなたのときはすぐにお返事してしまったけど、 今回はどうしたらいいのか、私自身迷ってるの。 だって、あなたのことが気になったから…」 フレデリカの表情が少し曇る。 「…たった1年足らずの生活だったけど、 それでもあなたのことを忘れるなんてできない。 私にとってあなたは私の全てだったんですもの、 あなたの望むことだったら何でもしてあげたかったのよ。 それなのにあなたは、あなたは…」 そこまで言ってフレデリカは唇を噛み締め、握り拳を作った。 自然に涙が溢れ出る。 「あ…、ごめんなさい。こんなこと言うつもりでここへ来たのではなかったのに、 どうしてもあのときのことを思い出してしまうわ」 頬を伝うしずくを手のひらで拭い、フレデリカは再び語りかける。 「だからね、あなた。 変な言い方だけど、あの人が本当に申し込みにきたら、 私はあなたと一緒にあの人と結婚しようと思うの。 あなたは私の心の中にたしかに存在してる。 決して消えることのない存在として、私の中の一部分にあなたがいる。 そのあなたの一部分ごとをあの人が私を愛してくれるなら、私、私…」 そこまで言った途端、一陣の風がフレデリカの身体を撫でていった。 近くにあった木の枝に咲いていた小さな花が、風に乗ってフレデリカの身体に降り注ぐ。 「…これは、あなたの仕業?」 墓の主からの答えはない。 「あの人とのことを祝福してくれるの?」 ふと空を見上げる。 視界は青空。墓地に到着したときの曇り空が嘘のようだ。 フレデリカは青空の先に、見えないはずの星の輝きを見つけ、小さくつぶやいた。 「ありがとう、あなた…」
18. 自宅を訪問する日時が書かれたミュラーからの手紙を フレデリカが受け取ったのは、それから2ヶ月も経っていなかった。 同じ封蝋つきでも前回送られてきた手紙とは違い、 金の箔押しが周囲に施された便箋と封筒で送られてきた手紙からは ミュラーの並々ならぬ決意が感じ取れる。 ついに来るべき時が来たのだ、と思い、 フレデリカはその日が来る前に自分の身の回りの整理を始めた。 夫が残した膨大な書籍は一部を残して図書館に寄贈し、 衣服や使っていた道具は形見分けとして夫に縁のある人に配り、 在りし日の姿を納めた写真や映像ディスクなどは まとめて箱に収めて銀行の貸金庫に預けた。 夫の遺品の処分が終わるとフレデリカは再び図書館に赴き 必要な資料を借り出してキャゼルヌ夫人を訪ねた。 その資料の一部に出ていた料理の作り方を教わり、自宅に戻ってからも何度も練習した。 何度も資料を読み直して疑問点があれば再び図書館を訪ねて新たな資料を探す。 それが自分の中でのミュラーに対する、また夫に対する決意の証明であるかのように、 フレデリカはその内容が自分のものになるように、 ミュラーに指定されたその日が来るまで資料を熟読していた。 玄関チャイムが鳴り、 扉を開けて最初にフレデリカの目に飛び込んできたのは、赤いチューリップの花束。 それが少し横に傾いたかと思うと、ミュラーの笑顔が視界に入る。 見慣れた笑顔が、なぜか今日はとてもまぶしく見えた。 「今日はわざわざお越しいただきましてありがとうございます」 とまずはフレデリカが挨拶をすると、 「これはあなたに…」とそのまま花束を手渡された。 それからミュラーは 「今日は私のために時間を割いてくださり、本当にありがとうございます」 と形通りの挨拶をする。 「中へお入りになって、居間のソファでお待ちいただけますか? 花を生けてからお話を伺いますので」 とフレデリカはミュラーを室内に入れた。 指定されたソファで待っていたミュラーは、 前回来た時と部屋の雰囲気が様変わりしていることに気がついた。 もともと質素で慎ましやかな生活をしているとは思っていたその部屋の中は さらにモノが少なくなり、必要最低限のモノしか置いていないように見える。 自分が送ったピンク色のチューリップが部屋のあちこちを彩ってはいるが、 配達を週1回に切り替えさせて量が少なくなったこともあり、 質素というよりは閑寂な世界に包まれてるように思えた。 手渡された花束の中から2,3輪取っては生け、次の場所に移動してまた2,3輪生ける。 そんなことをピンクのチューリップが生けてある花瓶の数だけ繰り返した後、 フレデリカは鋏とリボン、長さをそろえるために切り取った茎の破片をを持ってどこかへ消えた。 鋏をどこかへしまい、リボンと茎を処分するだけならそれほど時間はかからないはずなのに、 ミュラーはさらにしばらく待たされる。 その隙間を埋めるように映像が切られたソリヴィジョンから音楽が流れていた。
「お待たせいたしました」 とやっと現れたフレデリカは両手に大きなトレイを持っている。 「お約束の時間が13時ということでしたから、 もしかしたらお食事を召し上がらずに こちらにいらっしゃったのではないかと思って」 とテーブルの上に皿を置いた。 「これは…青豆のスープですね。しばらく食べていないな」 「良かったら遠慮なくお召し上がりください。お口に合えばいいのですが…」 とその一皿だけでなく、フレデリカはまだいくつか皿を並べていた。 「白アスパラガスのソテーに、コールルーラーデ、マッシュポテト… オーディンで両親と一緒だった頃のことを思い出しますよ」 そう言ってカトラリーを取り、それぞれ1口ずつ口に運ぶミュラー。 「とてもおいしいです。それになんだか懐かしい味がする。 まるで母が作ったもののようですよ。これらは…全部あなたが?」 ミュラーが「コールルーラーデ」と呼んだロールキャベツは よく味が染みていて口の中でほろほろと崩れる。 白アスパラガスのソテーは焼き加減もちょうど良く、 青豆のスープやマッシュポテトの塩加減はミュラーの好みに合っていた。 「ええ。閣下が食べ慣れているものをと思って作ったのですが、 味にはまったく自信がなかったんです。よかった、喜んでいただけて」 と向かいに座り、微笑んでいるフレデリカ。 デザートは得意のクレープに温かい苺のソースとアイスクリームを添えたもの。 ここでコーヒーを出そうとしたフレデリカだったが、 自分自身がそれほどコーヒーを飲まなくなったために豆を切らしていたのに気づいた。 仕方なくフレデリカは 「ごめんなさい、うっかりコーヒー豆を切らしてしまって…」 といつも飲んでいる紅茶を淹れてミュラーに振舞う。 ユリアン直伝の淹れ方で淹れたものの、 フレデリカ自身は自分が淹れたその紅茶の味には満足していない。 にもかかわらずミュラーは 「こんなにおいしい紅茶は初めて飲みますよ。 クレープにも良く合うし、紅茶だけ飲んでもとても香りが良い」 とフレデリカの淹れた紅茶を褒める。 「そんなに気に入ってくださるとは思いませんでしたわ」 「あなたが淹れてくださるなら、これから先ずっと紅茶を飲んでもいいな」 「……え?」 ミュラーの言葉に、クレープを一口大に切っていたフレデリカの手が止まる。 音も無く立ち上がり、ミュラーはフレデリカの方に歩み寄った。 そのまま彼女の右手を取って片膝をつき、見上げるように顔を見る。 「フラウ・フレデリカ・グリーンヒル・ヤン、私と結婚してください」 フレデリカの頬が軽く染まる。 「私は………」 フレデリカが何か言いかけたとき、 不意にソリヴィジョンから流れてくる音楽が次の曲に切り替わった。 「Oh,Honey…Picture me upon my knee (ねえ、ハニー…あなたの膝に座った私を想像してみて) With tea for two and two for tea (私たちは2人でお茶を飲んでいる) Just me for you and you for me alone…」 (あなたには私、私にはあなたしかいない…) 聞き覚えのあるその曲にフレデリカの、またミュラーの意識がそちらに向かう。 曲は前に聞いたことがあった。 「亡くなったヤン・ウェンリー提督が好きだった曲」であることも フレデリカから聞いた。 ミュラーはその曲が終わるまで口を開かなかった。 フレデリカも何も言わなかった。
「We will raise a family (一緒に家庭を築くのよ) A boy for you and a girl for me (あなたには男の子 私には女の子) Oh, can't you see how happy we would be… (それがどんなに幸せなことか分かるでしょう)」 フルートの音色が曲の終わりを告げ、ソリヴィジョンは次の曲へと切り替わる。 「……亡くなった主人と結婚したばかりのときに…」 数刻の沈黙の後、フレデリカはやっと口を開いた。 「私はいつかこの曲のとおりになれば、 きっと素敵なことになるだろうと思いながらあの人と暮らしていました。 そうなる前にあの人は先に逝ってしまいましたけど」 そう言ってミュラーの顔を見つめながら、くすりと小さく笑い声を漏らす。 以前、ユリアン・ミンツ中尉に会って自分の仕事を手伝ってもらったとき、 勤務時間外の雑談でミュラーは聞いたのだ。 ユリアンが軍人となる前のこと。フレデリカと会った頃のこと。 彼女と、彼女の夫の馴れ初めなど。 彼女は、自分を伴侶としてくれた夫にふさわしい妻となるために、 副官としての任務以上の努力をして、温かい家庭を築こうとしていたのだろう。 いつ誰がどんな形で訪ねてきても、 贅沢ではないが真心のこもった手料理と、いつ果てるとも分からない話題に満ちた、 心尽くしのもてなしで迎え入れられるような、そんな家庭を。 『休日とか仕事の帰りとか…ちょっと時間ができたときには できるだけカーテローゼと2人で訪ねるようにはしているんですが、 私たちが帰るときのフレデリカさんの表情は、いつも本当に寂しそうで…』 ユリアンが語っていたフレデリカの寂しそうな表情とは、 今自分が目の前にしている笑顔のことだろうとミュラーは思った。
「あなたが共同墓地に行った日…実は私もあの場所にいました。 結婚の申し込みをする前に、一度ヤン提督に報告しておこうと思って」 「まさか…聞いていらっしゃったんですか?」 「申し訳ありません、立ち聞きするつもりはなかったのですが、 あんなに長い間あなたがヤン提督と お話されるとは思わなかったものですから…」 ミュラーは申し訳なさそうに頭を掻いた後、再び真剣な表情をする。 「前にも一度申し上げましたが、忘れろとまでは申しません。 あなたはヤン提督の奥方として提督のことを心のどこかでずっと想っていてください。 そうすることがあなたにとっては最良の方法だと私は考えます。 しかし、あなたにヤン提督が必要なのと同じように、 私にはあなたという…フレデリカ・グリーンヒル・ヤンという女性が必要です。 それがあなたの望みであるなら、 歌のとおりの家庭を一緒に築いていこうではありませんか。 そのためなら私は元帥号を返還して、 ハイネセンポリスに転属願いを出しても構いません。 …いや、あなたが望まないのであれば、 軍人という職業そのものを辞する覚悟もできてます。 ですから…」 「一つだけ、お願いがございます」 ヘイゼル色の瞳がミュラーを見つめている。 改まった感じの口調に息を呑む。 「仕事であれ、遊びであれ、 用事がお済みになりましたら必ず帰って来て下さい」 フレデリカの意外な願いにミュラーは面食らう。 「浮気しないでほしいとか、酒は控えてほしいとか…ではなくて?」 「ええ」 その願い事がフレデリカにとってどんな意味を持つのか、 ミュラーには分からなかったが、 それでも軍人を夫とした妻の立場を思えば、 その約束がどれほど重要であるものかは理解できた。 「承知しました。 私ナイトハルト・ミュラーはあなたと結婚したあかつきには、 用事が済んだら必ず帰宅するとこの場において誓います。 私と結婚してくださいますか?」 「はい…私でよければ喜んで」 ようやく返ってきた返事にミュラーはほっとした。 ずっと握っていた彼女の右手の甲に口付けた後、 「キスをしてもよろしいでしょうか?」 と問いかける。 「えっ…あ、…その…はい」 少し戸惑いながら、フレデリカが返事をする。 膝立ちになり、ミュラーはフレデリカの顔に手を伸ばした。
19. 「マイネ・フレデリカ…愛してます」 口付けは1度で済まなかった。 口角に、中央に、唇を食むようにと何度もキスされ、 そのうち、柔らかい舌がフレデリカの口腔に滑り込んでくる。 「…う…ん、……っ…」 互いの両手が背中へ、後頭部へと回る。 整えられたミュラーの髪型が崩れる頃には、 唇に残っていた口紅がミュラーの口元を汚していた。 つぅ、と2人を透明な糸が繋いでいる。 「…分かってはいるのですが、うれしくて。 抑えが利かなくなりそうだ」 と再び唇を合わせ、苺の味が微かに残る舌を吸い上げた。 「……っ、ふ、…っか、構いませんよ…」 息を弾ませながらフレデリカが答えると、その顔が頬に滑った。 髪に触れていた指先が耳を撫でる。 「っひあっ…!」 一瞬背中が弓なりに反り返った。 首筋に唇を押し付けながら、 ミュラーは背中から肩、鎖骨を通り、胸元を撫でる。 陽の光が差し込んでくる居間での狼藉に対し、フレデリカからの苦情は無かった。 それでもずっと目を閉じたままなのを考えれば、 それなりに恥ずかしいのかもしれない。 ブラウスの上から形良い膨らみに手を添えると、 「…あっ!……ぅ…ん」 思わず出してしまった甘声をそれ以上響かせないように 肩口に顔を押し当てている。 しかし。 「ここでは動きに制約が出てしまうな…」 このときフレデリカは、1人がけのソファーに座って 両足を擦り合わせて身じろぎしていた。 「今日はこのぐらいにしておきましょうか、マイネ・フレデリカ?」 そう言ってミュラーは立ち上がり、自分が座っていたソファに戻ろうとした。 刹那、後ろから抱きつかれる。 「…いえ…、続き…を……、どうか続けて…ください…お願い…」 自分から乞うのは本当に恥ずかしかったのだろう、 聞こえてきた声の最後の方は音楽にまぎれて消え入りそうなほど小さかった。 煽られるようにミュラーは自分が座っていたソファにフレデリカを押し倒す。 ブラウスのボタンに手を掛けながら耳たぶを甘噛みすると、 「ふあ…っ、…! …や…ぁ…」 それだけでフレデリカの喉から悲鳴とも喘ぎ声ともとれる声が漏れる。 下着をずらし、胸元の双球に顔を埋めたときには 既に頂上の突起が硬くなっていた。 片方を指先で、もう片方を舌先で転がしながら腰椎を撫でれば 身じろぎでずり上がったスカートがタックを寄せた状態で指に触れる。 かなり追い込まれた状態なのだろう、 手を滑らせてストッキングの上からそっと両脚の付け根に手を添えると、 「……ゃ……あああっ!」 じわりと濡れそぼった感触がミュラーの手に伝わった。
ストッキングと下穿きを脱がせ、 そのまま敏感な秘所へ手を掛けようとしたときだった。 「あっ、……あのっ……!」 急にフレデリカがミュラーの身体を押し、動きを止めさせた。 「いかがされましたか?」 声を掛けるとフレデリカは荒い息をつきながら、 ミュラーの身体の下から抜き出て、ソファの下に膝をつく。 「いつも私ばかりが…先に…その…。 それでは申し訳ありませんから……」 とミュラーを座り直させ、膝を割ってその間に身体をこじ入れる。 ベルトに手を掛け、ファスナーの隙間に籠る熱源を探り当てると、 「いったい何をなさろうと……うわぁっ!」 それを下着の割れ目から引っ張り出した。 勃ち上がりつつあるそれに手を沿え、顔を近づける。 「い、いけません! あなたにそんなことをさせるわけには…ぁ、くぅ!」 慌ててフレデリカの動作を制するが一足遅かった。 その美しい唇がミュラーのそれの先端を包み込んでいた。 とてもぎこちないが情感の込められた舌遣い。 時折こぼれるくぐもった声。 細い指が絡んだままポイントを探るように動かされ、 その全てが自分のために行われているものだと考えると、 ミュラーの心は言い知れぬ興奮に満ちてくる。 止めさせなければいけないと自制心が働くものの、 それをはるかに上回る愉悦がそれを押さえつけている。 「あ……ぅ…、ふ……くっ、う…」 結果ミュラーは金褐色の髪を握りこむことしかできず、 快感に揺れる声を押し殺そうと口元を手で覆った。 やがて先端から薄蜜が滴り始め、それを惜しげもなく舐め取るフレデリカ。 「も、……もう、結構です…。 それ以上されては…あなたの顔か口を汚してしまう」 喘ぎながらミュラーは止めさせようとするが、フレデリカは軽く首を振る。 そのままミュラーのものを口腔にすっぽりと納め、上下に扱き始めた。 「ああっ! いけませ…んっ、そ……そんなに… 激しくされ…たら……っ!」 腰を大きく引いてフレデリカから逃れようとするミュラーだったが、 如何せんそこはソファの上。 思い切り腰をソファの背もたれに押し付けたところでそれ以上の行き場がない。 じりじりと身体を傾けて迫りながら より深いところで受け入れるフレデリカの行為は、 やがてミュラーに限界をもたらした。 「…駄目です! もう、離して…くだ……あっ、ううううッ!!」 一瞬膨れ上がったかと思うと、どくん、とフレデリカの口腔で ミュラーのものが爆ぜる。 眉根が少し寄ったが、フレデリカは何も言わず放出された液体を飲み下した。 「ん……けほっ…、こほんっ……んくっ」 喉奥に絡みつくのか軽く咳をして、 それから周囲にわずかに付着している液体をも舌先で舐め取って。 いくらか力を失ったミュラーのものを再び口に含んだ。
「…ぅあ…、も、もう…本当に、止めてください…。お願いですから」 そう言ってミュラーは両手で掬い上げるようにフレデリカの顔を持ち上げた。 「…お気に召しませんでしたか?」 と訊ねてくる口元はミュラー自らが放ったものでべったりと濡れている。 「いえ、そうではなくてですね…」 彼女自身がもともと持っていたであろう高貴で清廉な何かを、 自分の手でひどく穢れたものに染め替えてしまった思いがして、 「あなたを辱めるような、こんなことは…私自身が耐えられない……」 ミュラーはせめてもの償いとしてフレデリカの唇を何度も吸い上げた。 フレデリカの口内から強い苦味を感じなくなるまで口付けた後、 その場に立たせて手を伸ばし 再び彼女の内部器官を愛でようとしたミュラーだったが、 「いえ…もう……」 そう言って口ごもったままフレデリカはミュラーの手を握った。 彼女が何を求めているのか、自分が何をするべきかミュラーは悟る。 「分かりました。では、私の腰にまたがってください… そうです、そのままゆっくり腰を下ろして…」 「…あ…ぅ!」 近づけられたフレデリカのものがミュラーのものに触れたとき、 その部分はすっかり準備が整っていたことを知る。 少しずつミュラーのものが肉鞘に押し込まれると、 それに合わせてフレデリカの眉根が寄り、顔が美しく歪んだ。 握っていた手を離し、顔を押し付けられるように両腕が絡まる。 「ぁん! ……は…う…、ん……ぅっ!」 待ちきれない、とでも言いたそうにそのままフレデリカは 身体をミュラーに押し付け、腰を揺らした。 それまでの逢瀬ではほぼ受動的であったフレデリカが、 これほど積極的に自分を求めてくるとは思わなかったミュラーは、 「…なんだか…あなたのようであなたでない…ような…、 何かありましたか、マイネ…フレデリカ?」 と訊ねずにはいられない。 「…だ…って……うれ……しく…て……。 夢にうなされ…ても、今度は…あなたが……っあ! ナイ…トハル……様が傍にいてく…ださるから…、 独りで朝を…迎えなくてい……ひぅ、ぅ! いいんだって…思ったら…ぁあっ!」 フレデリカは少しだけ目元を滲ませていた。
その言葉は、自分を通じて誰かを見ているのではなく、 ミュラー自身を見ている証拠の表れだろう。 ヘイゼル色の瞳は濡れた輝きを放ちながら、目の前の人物を見つめている。 「やっと……呼んでくれましたね…私の名前を。 ずっと『閣下』の…ままかと思って…いましたよ…」 「え……? あ………」 指摘されてフレデリカの動きが止まった。 そのまま恥ずかしそうに顔を背け、頬をさらに赤く染める。 「いつまでも閣下とお呼び…していてはいけないかな、と…」 「…可愛い人だ。時々そうして…意外に可愛らしい部分を見せてくれる あなたが…私は…大好きですよ…っ」 ミュラーはしっかりとフレデリカの腰に手を回し、 下から身体を揺すり上げた。 「っあああっ! わた…し…も…好き…っ…、 大…好き…です…、ナ…ト……ぁ…ルト…様……ぁ!」 互いの想いが、感覚が。 繋がった箇所から全身に伝わり身体を痺れさせる。 「愛……して…い、ぁ…あ…っ!」 フレデリカがその言葉を言い切る前に身体が大きくしなった。 4つの瞳の奥底で、花火のように白い火花が派手に散る。 「ああああああッ!!」 「ぁ、うっ……ぅぅッ…!」 『私も愛しています』と言葉でそれを伝える代わりに、 ミュラーはその想いの全てを彼女の体内に注ぎ込んだ。
20. 「あの…ナイトハルト様…」 ソファに腰掛け、心地よい倦怠感に身を任せたまま その美しい髪を撫でていたときに、ミュラーはフレデリカに声を掛けられた。 「はい?」 「背中…痛くありませんか?」 「え?」 「以前その…私を…私と…あの…一緒に……あの時…」 フレデリカは思い出すこと自体が恥辱に晒されているかのように 言いよどみながらミュラーに尋ねた。 「背中にずいぶん大きな怪我をされた跡がある感じがしたんです。 先ほどからずいぶん強くソファに背中を押し付けていらっしゃるし、 それだけの大きな傷ですから、 ご無理をされればきっと痛むのではないかと思って」 ミュラーは苦笑を浮かべ、 「…あなたに対しては何も隠し事ができませんね。 隠したとしてもいつか見てしまうものでしょうから、 それなら今ご覧になりますか?」 と確認する。すぐにフレデリカの首が縦に振られたので、 前開きのボタンを外してドレスシャツを肩から滑り落とした。 「ご気分が悪くなったらすぐに言ってください」 そう言ってフレデリカの目前に背中を晒す。 「………!」 予想以上の裂傷痕と手術痕とが背中一面を覆っている。 それだけでなく少し覗かせた右腕には他の傷と比べるとまだ新しい銃創痕。 傷の数だけ彼は死の直面に出くわしたが、 辛うじてヴァルハラへの切符を手にしなかったのだろう。 それは彼が「鉄壁ミュラー」と呼ばれているのを体現している証拠でもある。 フレデリカは言葉に詰まった。 「今はもう痛みを感じたり傷が疼いたりすることはありませんからご安心を。 しかしこれも先代のラインハルト帝をお護りした 名誉の負傷と思えば大したことはありませんよ」 安心させるためにミュラーはそう言って、 滑り落としたドレスシャツを再び着直そうとする。 と、フレデリカが傷痕近くに手を置く気配を感じる。
ちゅっ。 小さな音が聞こえたかと思うと、ほんのり温かい感触が背中から伝わってきた。 フレデリカは自分の唇をその傷に触れさせているのだろう、 まるでそれは負ったばかりの傷を舐めて癒そうとする小動物のような仕草に思える。 音は何度も聞こえ、その感触も自分では見えにくい傷の形に沿って伝わってきた。 彼女なりの傷痕の癒し方なのだろうか、それとも──。 ミュラーは背中へ口付けられながら少し考えたが、 これが正答だろうと思えるものはいろいろありすぎてうまく考えをまとめられない。 ただ一つだけ分かったのは、先ほどの言葉といいこの行動といい、 今のフレデリカは本当に自分のことを心配してくれているということ。 温かくて、柔らかくて、慈愛に満ちたフレデリカの唇が背中に触れるたび、 その傷痕さえも彼女が消してくれるのではないかと思った。 そのフレデリカの行動に対しミュラーは言葉にこそ出さなかったが、 「今後はできるだけ仕事中の怪我をしないように気をつけよう」と心に誓った。 自分自身の健康のために、フレデリカにいらぬ心配を掛けさせないために。 そして自分が夫となることで、 「彼女の前夫」と呼び名を変える人と同じ運命を辿ることの無いように。 ──後に帝都フェザーンで行われた銀河帝国軍ナイトハルト・ミュラー元帥と 元イゼルローン共和政府主席フレデリカ・グリーンヒル・ヤンの結婚式は、 彼らの友人、知人、僚友だけでなく皇太后、幼帝アレク大公までもが出席し、 先帝ラインハルト・フォン・ローエングラムと 皇太后ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフの結婚式に次ぐ大規模な式典となって催された。 その席上、通常白のウエディングドレスに軍支給の正礼服で臨むべきところを、 フレデリカはモスグリーンのドレスで出席、 ミュラーが着ていた軍礼服にはあろうことか所々に古い泥汚れがついていた。 フレデリカのドレスがカラードレスだったことについてはそれほど問題は無かったが、 汚れたままの正礼服でミュラーが式に出席したことについては、 他の出席者の間でさまざまな憶測を呼ぶことになった。 後にさまざまな歴史家がその理由について仮説を立てたが 現在においてもいずれも確証を得るまでには至っていない。 しかし、その理由に繋がるであろう出席者のコメントが1つだけ当時の記録として残っている。 「自分が彼らの服装について訊ねると、彼は新婦と顔を見合せ微笑んだ後、 『これは私たち2人にとって、とても大事なものだから』と答え、 それ以上何も言わなかった。(フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト)」── <Ende>
全部投下終了したところでまず訂正とお詫びを。 全21章ではなく20章の誤りで、本番ありのエチーシーンの最後は19章目でした…orz 投下中に章番号の間違いに気づいてしまい、 投下前の前書きを訂正できませんでした。申し訳ない。 質問があれば書いてくれれば答えますけど、 本文中の矛盾点などについてはできれば各自脳内補完かスルーで頼みます。 (全編通してOVA1回見ただけで書いてるので、 何度も見てる人&小説本編読んでる人にとっては いくつも矛盾が見つかるんじゃないかと思われます。 しかし自分じゃどこに矛盾が生じてるんだかもはや見当もつかない…i|||i _| ̄|○ i|||i ) 花束ネタと、18章目の歌のシーンが書きたいばかりに書き始めたものですが、 後半になればなるほどグダグダでほんとにすいませんでした…orz では名無しのROMに戻ります。 |彡 サッ
リアルタイムで読んでしまった。 長編力作乙! 生真面目な二人に萌えた〜!
通しで読むことが出来て幸せでした。
すごい。長さを感じないくらいすーっと読めました。 ミュラー好きって訳でもなかったのに、ミュラーに萌えたw 素晴らしかったです。
ミュラーといえば全艦出撃!の小説があったな。
長編乙でした。リアルで読んでいたが、長い風呂wだったので待ちきれなかったっす。 原作との矛盾点はあるけど気にならないくらいだった。 一点だけ、シヴァ星域会戦からイゼルローンに帰還する途上、 フレデリカは風邪で倒れており、要塞帰還後は入院してるので、 ヤンとの最後の別れの際にエチーは絶対できないことくらいかな。 ともかく乙でした。 フレデリカかわいいよ、フレデリカ。
↑の矛盾点はフレデリカの夢の中のことだし気になりませんでした。 しかし気の長い二人ですね。初エチーから二年も・・・。 フレデリカ30歳前くらいっすね。ハアハア。
>>404 ロイエンタールの15、6の娘に手篭めにされる話か
何て言うか、泣けたよ。 大人の恋愛なのに初々しい。失いたくないって気持ちが切々と伝わって来ました。 幸せになって欲しい二人だ。GJ! 更に蛇足。猪の言動がツボw
おお、神が連続して降臨しているではないか。 お二方には是非とも >ナイトハルト・ミュラーのゴシップネタ帳 >亡きオスカー・フォン・ロイエンタールがその場にいれば呆れるであろうくらいに >今は女性との逸話に事欠かなくなったフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト これを更にkwskお願いしたいw
GJ!GJ! ありがとうございます!
フラウ・ヤンってのが引っかかる フラウって未婚女性のことじゃないかな? 未亡人でもヤン夫人だろうと?
413 :
412 :2005/12/27(火) 01:58:38 ID:T9k2u1Kw
ごめん、勘違いしてた フラウでいいみたいだ
俺は、フロイライン・フレデリカのが気になった。 フロイラン+姓かフロイライン+姓名と使うもんだからなあ。 (フロイライン・グリーンヒルとかフロイライン・フレデリカ・グリーンヒルならOK) それに結婚したことのある女性や大人の女性にはフロイラインは使わん。
ちょっと来ないうちに叱咤激励含めて
こんなにレスがついているとは思いませんでした。
皆様ありがとうございます。
>>405 >シヴァ星域会戦からイゼルローンに帰還する途上、
>フレデリカは風邪で倒れており、要塞帰還後は入院してるので、
>ヤンとの最後の別れの際にエチーは絶対できない
ユリアンがフレデリカのところに報告しに行くシーンは
書く前にOVAで再確認していたのに、そのことはすっかり失念しておりました…orz
その辺は適当に脳内補完していただけると助かります…(汗
>>410 本編終了後に残った「獅子の泉の七元帥」の中で、
きっと女性関係で問題を起こしそうだと思ったのがビッテンフェルトなのですが、
しかしそれ以上の思い入れはないため、
この点に関してビッテンフェルトのネタでは現時点では書けません。
本編に出てきた女性と絡ませようにも
自分にはビッテンフェルトの相手が思いつかないので、
これはビッテンフェルトに似合いの女性を思いついた
別の職人様にバトンを譲りたいと思います。
>>414 >俺は、フロイライン・フレデリカのが気になった。
ドイツ語は習わなかったためうっかりミスしてしまったようですね。
投下前にあれほどチェックしたはずなのに
改めて読み返してたらあちこちに誤字脱字などがあるし。本当に申し訳ないです…orz
当該箇所を「フロイライン・グリーンヒル」
又は「フロイライン」と読み替えいただくか、
これはこのssのオリジナル設定として見逃していただけるとありがたいです…(汗
また何か思いついたら書き溜めて投下したいと思いますが、
それまでは名無しのROMに専念します。
ではいつかまた書けた時に。
|彡 サッ
神降臨。職人さんGJ! 以前ミュラー×フレデリカをリクエストしたものですが待ったかいがありました。
GJ!乙!お待ちしてました。 逢瀬を重ねても、どことなくぎこちない二人がいい。 ちなみに作中に出てくる曲名は、「二人でお茶を」なのでしょうか。 歌詞はどこかで見たような記憶があるのだけど、曲が浮かばないので。
>>415 で引っ込もうと思ってたんですが、
質問が書いてあったのでまた性懲りも無く出てきました…w
>>417 >>401 氏からもご指摘がありましたが
2人が「生真面目」又は「どことなくぎこちない」のは、
文中において互いの話しぶりを「ですます」調のまま崩さなかったせいかと。
この2人が普通に話しているのはどうもイメージと違う気がしたし、
本編終了後2年経過させての妄想ネタとはいえ
互いの間にある「飲んで育った水の違い」
(でしたっけ? 間違ってたらすみません)に関わる溝は
結婚してからでなければ埋めるのは難しいのではないかと思い、
「ですます」口調を崩せませんでした。
違和感あるようでしたら適当に脳内改変してくださいです…。
それと文中の曲はご指摘の通りDoris Dayの「二人でお茶を(Tea For Two)」です。
ttp://www.dorisday.net/tea_for_two.html ↑こちらのページの下の方で聴けますので、18章を読むときにご活用ください。
では今度こそROMに戻れますように。
|彡 サッ
――その日、私は夜遅くまで軍務省に詰めていた。 本日、宰相閣下からケンプ提督との共同作戦(今は極秘だが、後には書き止める事も出来るだろう)を下命された。そのため、これから暫く忙しい事になりそうだった。 作戦の初期段階の打ち合わせを行い、明日からこれに基き互いの部隊を編成していく事になる。その前の夜に、一旦帰宅する事にした。ケンプ提督には妻子があるのだから、一晩の安らぎも必要と言う事だ。 しかし私は独り身であり、恋人も作る予定がない。だから自宅だろうが宿直室だろうが、大して変わりはないのだが…まあ今後を考えて数着の着替えも必要なので、帰路に着いている。 そんな訳で、帰宅ルートのひとつに、その公園が含まれていた。オーディンの都心にある公園であるが、夜遅いこともあり人通りはない。 戦時で治安も良くはない事もあり、不審者が見かけられる事もあるかもしれないが、私は自分の身は自分で守れるつもりだった。 公園を無造作に横切って、いつものように帰宅していく時の事だったのだ。 茂みの向こうに、人影が見えた。 私は少々驚く。反射的に、こちら側の茂みに姿を隠してしまう。そしてその人影に眼を凝らした。 その人物は中肉中背――いや少々痩せぎすか?手には何か、紐のような物を持っていて――ああ、その先には犬がいた。中型犬の、ダルメシアンか。人物は、私が良く見慣れた服を着ていて――銀に彩られた軍服であり、それはかなり高い地位の代物――。 ………オーベルシュタイン総参謀長!? その時確かに、私は本当に驚愕した。思わずその場で数歩後ずさる。 私が立てた微かな足音に反応したのか、彼が怪訝そうにこちらに視線をやる。――情報畑の人間とは言え、上級大将まで上り詰めた軍人には違いないようだ。勘は確かな人物である。慌てて私も気配を消すように心掛ける。 ――と言うか、私は何故隠れているのだろう。ふと、思った。 私は何も悪い事をしていないし、彼も見られては困るような事をしている訳ではないのだ。普通に通りすがって、会釈のひとつでも交わして普通に通り過ぎればいいのではないか?――そう思わないでもない。 しかし、どうも今更顔を出すのも、私の心情としてはやり辛い。結果、私は茂みに身を隠したままだった。 総参謀長は私の存在に気付かなかったらしい。小首を軽く傾げ、視線を戻す。リードを引く犬に従わされるように、彼は歩みを進めていた。 あれが…噂の老犬か。私は思い出していた。 柔らかく煮た鶏肉しか食べないと言う、ついこの前総参謀長に拾われたと言われる、老犬。私が仕入れた情報ではそういう事になっている。
と、犬の鳴き声のような声が聞こえた。何かを誘うような、甘い鳴き声。まあ、発情期の犬が良くあげるような――って、本当に犬の声か!? 彼らの更に向こう側に、ダルメシアンではないが中型犬が姿を現して、顔を伏せ気味にして鼻にかかった声をあげている。その肢体は柔らかくしなを作るようにしていた。…まあ、発情期なんだろう。 そんな雌犬の姿を、総参謀長はその場に立ち止まって眺めている。特に感慨は受けていない様子だ。表情は良く見えないが、おそらくは「冷徹なる義眼」と呼ばれる代物なのだろうと私は思った。 が。 件の老犬が、その雌犬に視線を向けた。2匹の視線が合い、絡み合うように顔を傾げ――。 リードを引き、老犬が勢い良く走った。総参謀長の腕が引っ張られる。彼はその勢いに任せ、数歩引きずられるようにして前に進む。 今まで面倒臭いような重い歩みしか見せていなかったダルメシアンの老犬が、その雌犬に飛び掛かるように走り寄る。いや、むしろ、勢い良く飛び掛かった。そして――。 …えーと、何というか。こんなものメモに残して私はどうしようと言うのか。 まあ、早い話が、ダルメシアンの老犬が、その雌犬の上に乗っかって、腰を振っていると。 ………くたびれた外見の老犬だと言うのに…発情期にはまだ反応できる年齢だったという事なのか。しかし…眼前でこんなものを行われると、その動きや聞こえる息遣いなどが、妙に生々しい。私は頭を抱える。 ところで総参謀長はどうしていたかと言うと、自らの愛犬が野良の雌犬に対して無体を働いている姿を、やはり微動だにせず眺めていた。ぴんと張ったリードも伸ばされた腕もそのままに。 飼い主に邪魔される事がない老犬はいよいよ盛り上がってきたようで、動きが早まり、そして、停まった。 老犬とは言え、どうやら腹上死は免れたらしい。私はそんな下らない事を思ってしまった。 気が済んだ2匹の犬は、事後の戯れも何もなく離れていく。雌犬は足早に茂みの中に走り去り、老犬はよたよたとした足取りで飼い主の足元に戻った。まるで老犬の方が主人であるかのように、その犬は総参謀長を無造作に見上げる。 その視線を受け止めた総参謀長殿は、また軽く小首を傾げた。が、それは長くは続かない。彼が一歩足を進めると、犬も歩き始めた。そして彼らはもう立ち止まる事はなかった。 視界の中から遠ざかっていく総参謀長の背中を私は見ていた。…今の老犬の行動に、何も思うところはないのであろうか? まさか………なにがおこったのか、判っていない訳ではあるまいに…。それとも「知識としては知っていた事を、想定外に目の前で確認出来、納得しただけ」なのだろうか。 普段の真面目そうな顔で、あの情景を見守ったのだろうか。…笑うべきなのか、何なのか。私は判断を保留する。 私は思いがけない偶然により、この情景を目撃する事が出来た。 が、これを誰かに話したら…私はどうなるのだろうか。あの「冷徹なる義眼」に射殺されるような目には遭いたくない。やはり、これはメモに書き止めるだけにしておいた方が良さそうだと判断した。
疾風夫婦ネタ書いた者です。 が、思った以上にオチの反響が大きく、 また義眼ネタの会話にもインスパイヤされたので上の文章を投稿しました。 人間同士のエロじゃないんだけどさw 実は以前にも帝国ネタを投稿したので、 今度は同盟ネタを考えようと思っていたのですが、 やはりデリカさんは萌えですなあと212氏の作品で萌えてました。 では今度こそ同盟サイドでネタ考えて、まとまったら戻ってきます。 御感想下さった方々、ありがとうございました。
>>420-421 内国安全保障局と憲兵隊に通報してきますた!
くそ、ミュラーめ、おいしいネタ帳もってるな…。
アッテンボローあたりといい勝負かも試練。ただしこっちは天然だが。
オーベルシュタイン犬ネタ禿ワロスwww 無表情で2匹の犬を見守る総参謀長閣下を想像してまたワロスw ちょうど今年は戌年だしね。 新年一発目に良いギャグSSを読ませていただきましたw しかし、ミュラーはいったいどれくらい帝国軍人の秘密を握っているんだ……
新年早々良いものが拝めました。 職人さんたちGJ&サンクス! >212=220さん 途中で何度も泣いてしまったよ(つД`) 読み応えのある大作乙でした。 >421 オーベルシュタインらしくて禿ワラw 同盟ネタも待ってるよ〜 それにしてもミュラーって、地味に見えて結構ワンアンドオンリーの存在感だな。
今やミュラーは芸能記者扱いw 人気があるのは良いことだ。
保守。 って、どんくらいで要るモンなんだろうか…
427 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/14(土) 18:34:38 ID:LvCLeEtl
エヴァタンレイプして〜
429 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/17(火) 22:18:27 ID:XpCYoaet
今日は竜堂さん家はお誕生会か…茉理タンの手料理食いてぇ
うん。きっと素晴らしい食卓なのでしょう。 単純に憧れがあるw
431 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/20(金) 03:20:41 ID:xG9mc+ch
肉だんごの牛乳スープw
「二人でお茶を」読みました。 良かった!パソの前で泣いちまった! ミュラー好きなので悶えましたわw
11/26日から途切れている方の続き、他人が投下してもいいでしょうかね? いちおう助かるバージョンにしてみたんですが…
434 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/24(火) 02:27:34 ID:KUtn4ZA0
ってあとの氏の…? 是非! 助かるんならなおさら是非!! っていうかオネガイ、読ませて…v
ええもう是非。 上の人も書いてるけど助かるなら尚更。 待ってます。 ラブラブでお願いしますw
436 :
偽あとの氏 :2006/01/24(火) 03:52:04 ID:+uoSm1sF
手錠を掛けられた両手はそのまま室内の飾り彫刻に引っ掛けられ 茉理は軽く爪先立ちをさせられる格好となってしまった。 目の前には猛り狂う牛男、そして股間に押し付けられるおぞましい一物、 さすがの茉理もとうとう意識を手放す寸前にまで追い詰められていた。 「は、じめ…さん…」 せめて心だけは最後まで折れないように、愛しい男の名前を小さく呟く。 ッガーーーーン! 重厚なマホガニー製の扉がベニヤ板のようにたわんだかと思うと 蝶番と木片を盛大に撒き散らしながら内側に大きく吹き飛ばされた。 涙の膜の向こうに見えたのは幻ではない、何度も何度も繰り返し その姿を願っていた人―竜堂始。 「茉理ちゃん!無事か!」 「始さん、始さん、始さん!」 いま自分がどんな格好でいるかなんて意識はすっかり飛んで、 始への絶大な信頼感と安堵とで茉理の心には生気が一気に蘇った。 「っほ〜う、王子様のご到着だね」 先ほどまでの本能をむき出しにした様子から一転して似非コメディアンの 口調に戻った牛男は始にバカ丁寧にお辞儀をして見せた。 「彼女から離れろ!お前の目的は俺たちだけだろう!」 始の怒声をまったく意に介さないまま、牛男はダラダラと言葉を続ける。 「これが映画なら王子はお姫様を助けてハッピーエンドとなるわけだが… もし、王子様がここでご乱心したらどうなるんだろうね? なかなかに斬新な展開、見ものだとは思わないかね?ウウン?」 「お前、いったい何を言って―」 「まあまあせっかちなジャパニーズ、今から退きますよ。クク…」
437 :
偽あとの氏 :2006/01/24(火) 03:52:55 ID:+uoSm1sF
確かに牛男は茉理からおとなしく離れた。 だが巨体の牛男の体の後ろで、茉理がいったいどんな姿にされていたのか 茉理が拉致されたと知って矢のように飛んで救いに向かった始は そこまでの予想をしていなかった。 牛男の真黒な巨体が横にずれると、茉理の姿が徐々に見え出す。 奴との十分距離が開いたら、即座に彼女を安全な場所に逃がそうと 待ち構えていた始は目にした光景に目の前がぐらりと揺れた気がした。 いや気ではなく、実際に始は床に膝をがっくりとついていた。 自分が自分でないような、そんな制御しきれない感情が衝動的に沸く。 頭を振ってその悪寒から逃れようとするが、うまくいかない。 だが彼女は早く逃がさねばならない。始の中に残る意志がそう告げ、 どこか神経が食い違ったままの体で茉理の方へと歩き出した。 「始さん…」 一瞬膝をついてしまった始にヒヤリとしたものの、こちらに迷いなく まっすぐに向かってくる姿に今度こそ安心を覚える茉理であった、が その余裕が出た分、自分の姿を恥じらう感情が戻ってきた。 果たしてそれが通じたのか、全裸の茉理の前に立った始は シャツのボタンを外し、袖を抜き、上半身裸の状態となった。 そのシャツを羽織らせるつもりか…と思ったらそれを床に放り投げ 茉理は両手を上に吊られたまま始に強く抱きしめられていた…! こんな感じです。また明日続きます…
438 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/24(火) 04:27:50 ID:KUtn4ZA0
あぁ、ダメぇ…v この展開素敵すぎ…。明日が楽しみです。 ラブラブにしてね「偽あとの氏」氏w
一瞬438は「偽あとの氏」に萌えもだえてるのかと思たw
キレたのか兄貴?! 無理矢理はいかんよ無理矢理は。 …この心配が無駄になりますようにw つーかこんな処で切るなんて生殺しですよハアハア。
441 :
偽あとの氏 :2006/01/25(水) 03:23:24 ID:sppNn+Ok
「は、はじめ、さん??!!」 「無事で…良かった」 「や、あの、ちょっと待って?ねえ、始さんってば!」 「茉理ちゃん…」 「始さんじゃないわね!あなた誰なの!!」 「俺は俺だよ」 「違うわ!」 きっぱりと言い切った茉理であるが、始の状態を見て愕然とした。 目の焦点は合っておらず、身体は異常に熱っぽいが顔は満面の冷や汗で青ざめている。 口元は固く噛み締められ、時おり震えさえしている。 (これは…一体どういうこと?!) 音声ではない、脳に直接入ってくる軽薄な口調が茉理の疑問に答える。 「クク…さすがに聡いねミス・トバ。なに、たいしたことじゃないさ。 彼の高潔な人格とやらをね、まあ君たちが下種とやら言う牛種の方へ 少々、スライドさせただけだよ。仕掛けるチャンスが君の姿を目にする その一瞬というのが難所だったけど、まあ今回は上手くやれた方だね。」 「なんでそんなことを!」 「これまでの経験則を踏まえてね、うん。君たち一族の結束は非常に固い。 なにより、長兄の統率が抜群だ。彼が堅牢である限り、物量的な力で 君たちを叩こうとしても、それはより強く弾き返される。そうだろう?」 茉理の返事を待たず 「―だから、彼の精神を潰すことにした。 彼の自信と自負は彼自身の理性への信頼感からきている。 もし、彼が自分の暴走を知っていながらも止められなかった そんな、失敗を冒してしまったとしたら…どうなるだろうね?クク…」
442 :
偽あとの氏 :2006/01/25(水) 03:24:14 ID:sppNn+Ok
精神をコントロールされているといっても、始が自分を抱きしめている状況に 呆然状態の茉理であったが、そんな陰湿な計画を聞かされて黙ってはいられない。 「そんな酷い!止めて!いますぐ術を解きなさい!」 「彼の一番の理解者である君がそういうのだから、これは極めて有効と いうことかな?それにね、私はたとえて言うなら銃の安全装置を解除した だけであって…つまり彼の今の行動はより本音に近いといえないかね…?」 「鍵を壊して車を盗んでおきながら、事故の責任は車の持ち主にあるだなんて そんな詭弁、通るもんですか!」 「まあ、そう言わないで。君も楽しんだらどうだい?ここで初体験というのは レディにとっては不満だろうけどね。でもご希望通りの男だろう?」 声がするには牛男はまだこの場にいるのだろうか、姿は茉理の視界からは確認できないが 牛男がニヤリと口を歪めて笑っているような気配はこの部屋に満ち満ちている。 (とにかく、始さんを正気に戻さなくっちゃ) 気は焦るものの両手の自由は利かないし、始にはしっかりと抱かれたままだし 打つ手なしと思われたが、茉理は諦めはしなかった。 だが、その間にも茉理の身体に始の手はのびていく。 背筋を優しくあやすように撫で擦られ、うなじにそって唇が沿わされるまでは まだ耐えられた。身体を固くしてなんとか快感をやりすごしていると 始の腕がゆるんで、茉理の身体はいったん解放された。 (始さんの意識が戻った…のかしら?) と思ったのもつかの間、より茉理の心は追い込まれる事態となった。 ―見られている。 恥ずかしさのあまりとうとう顔を横に背ける。始の意志ではないと分かっていても 目の前にいるのは始その人なのだと思うと心臓が勝手に走り出す。 ほどよい豊かさの胸、それに続く優美なウエストのくびれ、その下の柔らかな叢まで にも目は走らされる。 (いや…初めて男の人に…そんなに見、ないで…)
443 :
偽あとの氏 :2006/01/25(水) 03:25:31 ID:sppNn+Ok
そして磁力に引かれるかのように胸に手がのばされ、包み込まれた。 逃げることも出来ず茉理の身体は軽く反応してしまう。 牛男がそこにいるというのに乱れてなるものか、という固い気持ちはかえって 奥から湧き上がってくる快感の出口を失わせ内側の圧力ばかり高まらせていく。 さらに追い討ちをかけるのが始の声で囁かれるまさかの言葉。 「こんなに綺麗だなんて…驚いたよ」 指を食い込ませるようなことはなくやわやわと膨らみをもみしだかれ ついに押し殺したような声が茉理の口からもれる。 「んん…ぁぁ…」 その声に反応したか、始の頭が下がり彼の口が彼女の桜色を吸い始めていく。 「あっ」 今まで必死でこらえていたが、たまらず茉理は声を上げる。 「くっくく…」 牛男の冷笑を聞いて、必死に理性で踏みとどまろうとする茉理であったが 始の攻めはそれを押し崩すかのようにさらにエスカレートしていく。 乳首を吸われたまま、さらに舌でそれを舐め上げられ身を捩っている隙を狙って 指が下腹部にのばされていく。 けっして乱暴ではなく、密やかに反応を探るように股間を探っていく。 先刻まで牛男に弄られていたせいもあって、始の手ということも手伝ってか あっという間に茉理の谷間は湿り気を増していく。 幾度も敵を叩きのめしてきた手ではあるが、それは節くれだった指でなく 貴重な古書を丁寧に扱うのが習いとなっているその手。 書庫にこもって活字に熱中する始に、軽食の差し入れをしながら幾度となく 古びたページを丁寧にめくる手つきをひそかに眺めたりしていたものだ。 その手が、自分に触れている…ひょっとしたら本よりも繊細な手つきで。 今の状況から意識をそらそうとしたはずなのだがまるで逆効果になるとは 茉理自身、快楽に流されつつある証拠であったかもしれない。 続く。
444 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/25(水) 05:47:50 ID:7BMOAj7U
うわぁ、そこはかとなくラブいよぉ…素敵v ごめん、あたし煩いね?しばらく黙ってます。 偽あとの氏氏にも萌えつつある、モエモダニスト438より。
そういや始って童貞なんだろうか。
エロ本じゃなく茉理ちゃんセクシーショット(想像)をオカズにあれですよ。 ・・・・・・それすら無さそうに見えるのはどうしてなんだ。
長男として自覚を持ち始めた頃、近所のおねーさんに頼み込んで教授されている気がする。 もちろん学究の一端で。
448 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 14:00:56 ID:66QRaJdt
耳をふさぐことも出来ず、湿った音とそこが熱く潤む感覚とで 自分がいまどんな状態にあるか嫌でも思い知らされる。 さらにこうも乱れた自分を始に知られてしまっているのだという羞恥は さらに茉理の官能を煽り、今はただ唇を噛み締めて耐えるしかなかった。 が、その辛く耐えるような表情でありながらも時おり洩れる甘い吐息は 図らずも火へ油をそそぐような格好となってしまっている。 一方、始の方も死に物狂いでちりぢりになった己の精神を元に戻そうと 欲望の激流に押し流されるギリギリの淵で必死の努力を重ねているのだが あまりにも甘く蠱惑に満ちた目の前の光景は幾度も彼を躓かせる。 「あ…だめ、よ」 それは始にとってすでに制止の声ではなく茉理の性感帯を教える声。 逆にこじ開けたいという欲望を掻き立てる、閉じられた両膝。 脳内に充満する黒く熱いモヤが途切れる合間合間に茉理の様子が 断片的に思考に飛び込んでくる。 今、彼女は唇を白くなるまで噛み締めてかすかに首をふっている。 ときおり鼻にかかる息で、彼女が懸命に声をこらえているのを覚った 始は、乳首から唇を離すと今度は茉理の耳元に口を寄せて囁いた。 「声…我慢しなくていいから」
449 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 14:01:28 ID:66QRaJdt
茉理の固く強張った唇を解きほぐすように舌で軽くなぞり、 唇で唇を割って入りこんで吐息を全部吸い取るかのように深く吸う。 茉理の反応に次第に柔らかさが増し、くぐもった、しかし明らかに 快感に濡れている声が上がりはじめている。 (いっそのこと俺の舌を噛んでくれたら…) 牛男の意のまま墜落へ引き落とされるのを断固拒否、抵抗し続けている 一筋ほど残った理性がそんなことを思わせる。 だが…果たして彼女はそうするだろうか…否。 自分の状況よりも、相手の事情に重きをおくような子なのだ、 本来の意志―かどうかは保留としても―こんな状態の俺に攻撃を しかけて是とするような価値観は持ち合わせていない女性なのだ。 その結論に始はほのかな満足感を覚えたが、それよりもあとどれほど 正気を保っていられるのだろうか…それも時間の問題のような気がして その時初めて、絶望という言葉が始の脳裏にゆらりと立ち上がってきた。 (もう、このまま流されたい…) 初めて与えられた深い口付けと、快感の中心点をゆっくり撫でられる指に ややもすると意識を飛ばしそうになる寸前にまでいっている。 膝を閉じ合わせる気力も体力もとうに尽き、それでも耐えているのは 始を想うがゆえの心である。 元に戻った後、始は己を責めて許せないであろうことは容易に想像できる。 そうやって彼の精神に亀裂を生じさせるのが牛男の卑劣な目的なのだから 私が、ここで頑張らなくてどうしようっていうの! けれども身体の方が先に心を裏切っていく。いまだ両手を上に吊られて 自由の利かないままの茉理の身体は、始の愛撫に一層熱を帯びていった。
どうなることやらとビクビクしてたが… 何だ結局ラブラブじゃないかw でも文中に出て来ないだけでコレ、 牛が覗いてる、と云うか眺めてるんだよね。 ただ大人しく出歯亀やってるんだろうか、 それとも目の前の光景をオカズに… とか下らんこと考えてしまったw 何はともあれGJです。 続きwktkで待ってます。
451 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/26(木) 15:35:02 ID:J5y9Wzz2
GJ!状況はあれだが内面はしっかりラブラブなのがイイな ところで始はあれで結構茉理に色々してる希ガス。でも嫁入り前だからいつも寸止めw
452 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 18:18:36 ID:66QRaJdt
応援コメントサンクスです。 ラストは決まってて今は濡れ場作成中。難しいです… また夜に。
453 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 22:21:17 ID:66QRaJdt
身体は確実に快感に震えているのはとうに知れているというのに 茉理の心は崩落を頑なに拒んでいる。 (…崩してやりたい) じわりと始の中の黒さが勢力を増し濃くなっていく。 彼女の膝の裏に手を差し入れ片足を持ち上げると中に指を差し入れた。 「〜〜〜〜〜〜!」 ふさいだ口から声にならない声が洩れる。 滴るほど濡れているそこに、もう一本追加する。 「いっ!」 瞬時眉をしかめた茉理を見て膝を付き、愛撫にすっかり綻んだ華の頂点に 舌を這わせると、茉理の口から紛れもない喘ぎ声が絶え間なく漏れはじめた。 その様子にようやく始は満足したが、この心境の変化に始自身、愕然としていた。 (もう俺は、俺じゃなくなっているのか…?) 己の躊躇を置き去りにして、始の指と舌は茉理を追い上げる。 「あ、んんッ! はぁ、ああああアアアっ!」 くたりと体の力が抜けた茉理の身体を支えるのは宙に吊られた両手首だけ。 ついに陥落した茉理をその目と指に伝わる痙攣とで確認しながらも この獰猛な気持ちは一向に治まる気配を見せない。
454 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 22:22:12 ID:66QRaJdt
(…違う。“俺”が彼女に欲情しているんだ) 生まれたときから知っているという幼馴染という状況がそれを思うこと自体 回避させてきたのかもしれないが、そのストッパーが外れた今では 目の前の幼馴染の女の子は、瑞々しい色気を湛えた女へと変わっていた。 茉理をそんな目で見たのは初めてだが、その衝撃は始にとって不快なものではない。 上気してピンク色に染まった肌と、さらにその色が凝縮したかのような 脚の付け根に淫靡に開いた華。白く滑らかな脚を伝った愛液は床に染みを作っている。 なんて、綺麗で淫らな姿なのだろうか。 凶暴なものではない、別の違う気持ちが始の中で勢力を拡大しつつあり、体内の熱は 変わらぬまま一つの目的に向かって体が動きはじめる。 前を緩め窮屈であった自身を解放すると、熱くそそりたった剛直が露になった。 「やあやあ、とうとうクライマックスだねえ、ククククク。どうだいお二方、 今の気分は?」 得意の絶頂にあふれた牛男の声にも始はもはや動じはしない。 いまだ精神は暴風に荒れているが、始は己の腹を決めていた。 その覚悟を指針として、始はじりじりと正気に向かって歩きだした。 「茉理ちゃん、辛くなかった?」 「辛くなんかない、わ。手がずっと…優しかったもの」 「君が、欲しい。これは俺の、本当の気持ちだ」 先刻とは違い、いくぶんか生気が戻った始の目に迷いはない。 腰を抱え上げられ、浮いた両手首が彫刻の引っ掛かりから外されると 茉理はそのまま両手を始の首におろし自分からそっとキスをした。 「始さんと一緒なら何も怖くないわ。私も…始さんが、欲しい」 「すごく嬉しいよ」
455 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 22:23:48 ID:66QRaJdt
これまでに経験はないが、頭にはある知識と今の体験とでこれから どうすればいいのかは分かる。そのままクチリと入り口に押し当てる。 茉理を滑らかな彫刻に持たせかけて、下から掬い上げるように貫く。 一番太いところがゆっくりと飲み込まれた後は、すんなり奥まで収まった。 「フハハハハハ!!とうとう竜王も地に落ちたか!ざまもない! 取り返しのつかない後悔に苛まれ苦しむがよい!! ……なにぃ!!」 ここで牛男は愕然となった。 二人の嘆きと怒りが部屋に満ちると思われたのだがそんな気配はみじんもない。 性の交わりはすべからく劣情から生じてくるものだというのが牛種の価値観であり、 至高の恋情で結びあう性愛というものが存在することを知らなかったのである。 「こ…これは一体…!?」 二人の心に満ちる光は四肢の隅々にまで行き渡っていく。 始の精神の片隅に入り込んで巣食っていた牛男の精神体はその光に引き剥がされ 牛男の影響力は熱した鉄の上の水のように、あっというまに蒸発していった。 牛男の驚愕をよそに、始と茉理は己の感覚に向かって二人で走り始める。 熱く融けた茉理の中を突き回したい衝動を押し殺し、柔肉が馴れるまで 深く口付けながら、始は茉理の胸の先端をきゅっと摘んでは押しつぶす。 「ん、ふううっ」 茉理の身体がピクンと跳ねる。すでに痛いほどに尖った乳首を嬲られる快感は 体の奥底まで届き、甘い疼きが全身を廻っていく。 茉理の腰がかすかに揺れているのを知って、始も腰を大きく動かし始める。 腰を大きくまわしながら、浅く、深く、何度も突き上げる。 茉理のたおやかな身体は反りしなって強烈な快感に震えていた。
456 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 22:24:52 ID:66QRaJdt
「あっはあっ、は、じめっさん!」 始の瞳が一瞬深いブルーに光り、首の後ろに片手を回すと手錠の鍵を指でひねり潰した。 そうして茉理の背中を支え、くるりと後ろを向かせ深く幾度も抜き差しをする。 茉理の胸には再び始の手が伸び、揺れる胸をもむと同時に片手は前に回って、 熱く濡れた突起を探りあて、なぞり上げる。 「ああっ…あ、あ、あん……やっ……ああっ!始さん、始さん!」 「くぅ…はっ……」 自分の嬌声を聞きながら、すぐそばで苦しそうな始の声を聞いた茉理の中で 熱いものが脈打ちながら弾けた。 膝がくずれ、始とつながったままその場に茉理は座り込んだ。 「ランバート様!竜が三匹、赤白黒そろっていま上空に!」 始から弾き飛ばされていた牛男の精神体は、室内のスピーカーからの 部下の悲鳴によって床に寝ていた身体に引き戻された。 「西A棟より出火!風に煽られさらに拡大の模様!!!」 鳴り響く非常ベルと脱出口へのランプが点滅し、牛男に早くの避難を促す。 目論見が外れただけではない、確実に別の苛立ちが牛男に湧き上がるが これ以上ここに粘っていてはこれからの作戦に支障をきたしてしまう。 どたどたと廊下を走り、隠し通路に姿を消した。 最後に振り返った牛男の肩越しには床でさらに絡んでいる二人… 「勝手にやってるがいい!」
457 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 22:26:23 ID:66QRaJdt
幾度も歓喜の波にさらわれて、茉理は始の胸にしがみつく。 自分の中で始が膨れあがるのが分かるほど研ぎ澄まされた感覚の中 今自分が感じているのか感じさせられているのか判別もつかなくなり、 二人の意識は白く炸裂した。 まるで射精をうながすようにきゅううっと収縮する茉理の中を、始のものが びくびくと律動しながら熱いもので満たしていく。 その感覚に、茉理はさらなる高みへと舞い上げられていった。 ―冷たい水が全身に降りかかる感覚に始の意識はクリアになる。 屋敷のスプリンクラーが作動して消火を始めたようだ。 傍らに横たわる茉理を見やると彼女もこれで目を覚ましたようである。 「茉理ちゃん、大丈夫?動けるかい?」 嵐のように荒れた精神状態から完全に立ち直った様子の始を見て 「ありがとう、大丈夫よ」 と、茉理は始を安心させようと微笑んでみせた。 「でも…疲れたかな。ちょっと眠りたい…」 極度の緊張から解放された反動か、暖かい始の胸に抱かれて 茉理は急速に重くなってきた瞼をそのまま閉じた。 脱ぎ捨てた衣服を身に着け、眠っている茉理に手近なカーテンを巻くと 大切に抱き上げて廊下に出た。 「兄さん!茉理ちゃん!無事でなによりです」 延々と続く通路の先から兄弟達が二人の姿を見つけ駆け寄ってきた。 三人ともどこか手近なクローゼットから見つけ出したのか 高級そうな生地の服を身に着けている。 「スプリンクラーで二人ともずぶ濡れかと思って」 気配りのいい続は二人分の下着と服を用意してきていた。
458 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 22:27:57 ID:66QRaJdt
だが始の腕に抱きかかえられた茉理の格好を見て何か察したか 「こっちはちゃんと二人を連れて帰りますから、茉理ちゃんは 兄さんにおまかせします。キーが刺さったままの車が車庫に ありましたよ、じゃあBホテルで落ち合いましょう」 茉理を車の後部座席に寝かせ発車させバックミラーを見ると 壮麗であった屋敷が無残に黒焦げ、崩れ落ちていく様子が映った。 何億という価値だろうが、始には何の感慨も湧かない。 ただ収蔵されてた数々の美術品の不運を思うだけである。 ホテルに向かって車を走らせながら、先ほどまでのことを思い返す。 牛男が謀ったような自己嫌悪に絡め取られるようなこともなく 始は、何も失ってはいない。 だがそれと茉理への気遣いはまったく別物で、現在始の心のほぼ全部は そのことで占められている。 「ん…」 後部座席の白い肢体がわずかに動き、物憂げな声が上がる。 数十分かの眠りから覚めた茉理に気づき、始は路肩に車を停めた。 「そこに服があるから、どうぞ着替えてて。俺は外に出てるよ」 なんぞのブランドのワンピースを被りながら、いまさらながら 着替えに気を使ってくれる始に、茉理の内は暖かい気持ちで満たされる。 「終わったわよ、始さん」 「うん。」 なにか言いたいのだろうに、上手く言葉が見つからないのであろう けれども目をそらさずにまっすぐ向かい合おうとする始を見ていると さっき感じた気持ちは間違いでないことを心から確信する。 (私は、何も無くしてなんかない。それよりももっと…) 「始さんの気持ち、ちゃんと受け取ったからね」 「茉理ちゃん…」 「すごく嬉しかったの。本当よ?」 そうして茉理は花開くように笑って見せた。 気難しい顔をしていた始の顔が解け、笑顔で茉理にうなずいてみせる。 ―それで十分通じ合う二人なのであった。これからも、ずっと。
459 :
偽あとの氏 :2006/01/26(木) 22:33:47 ID:66QRaJdt
お…オワタ ハァハァ○| ̄|_ お待たせしましたー。じゃあまた。ノシ
ブラボーーーー!!! 素晴らしいラブラブを見せてもらった。顔がニヤニヤしてしまうよ。
うわあああああ… ラブラブだよラブラブ!! 超GJ!!実にお見事でした。 このくらいしか言えんよ。全く。 またやって下さいw
462 :
モエモダニスト438 :2006/01/27(金) 00:29:46 ID:dIVVYh9E
きゃーーーvv 素敵素敵ホントに素敵っ!!ラブいよぉ幸せだよぉ…マジで書いてくれてありがとう!! あんな状態でもずっと優しい始にかなりキました。ラストのあれで確かめ合える二人にも、メチャクチャ萌え悶えましたー。 お疲れ様でした、偽あとの氏氏v あぁっ…もぉホント、素敵ィ……ヨかったぁvv
牛が間抜けでよかったです。
464 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/27(金) 16:21:39 ID:dIVVYh9E
GJ!!お陰で始×茉熱が再発したよ。 どっか読めるとこ知らないか?エロでなくてもいいから。 誰かよろしく頼んマス。
知らないことは無い(少ないけど)んだけど… どうやってお教えすれば良いのだろう。 晒すのは恐ろしいし… …済まん、自分で思ってたよりまだまだ初心者並であるらしいOTL
466 :
名無しさん@ピンキー :2006/01/27(金) 19:04:33 ID:dIVVYh9E
レスサンクス。申し訳ない、連れにも「晒しになるとヤバイ」と叱られた…。未熟発言、誠にスマソ。 一応ぐぐってみたんだが、不作で…。どうやって見つけたか、方法を聞くのは構わないだろうか??
始が童貞なのはいいとして、茉莉ちゃんが処女じゃないのが気になる。 まあいいか。痛い痛い言ってたら萌えられないし。
上手いことやれれば大して痛くなく出来るのですよ。それだけのこと。 まあ普通に考えたら初めて同志だったらそう上手くは…と思わんことも無いけど、 ゆっくり手間隙かけられれば案外平気かもね。 このカプの場合信頼感がただ事じゃないし、リラックス出来ればさ。 >466 いやそれ言ったらこちらこそ未熟者ですわw 自分の良く行く所は色々扱ってる中に始茉が五編程置いてあるんだけど、 それでも今まで出会えた中では一番多い。暫く更新は無いけど。 最初は始×茉理でぐぐってリンク辿りまくって辿り着けたんだったと思う。 …ごめん役立たずでOTL
>466 ここでの晒しは2chに晒されるのとほぼ同義。 創竜伝系サイトの場合、過去にファンが掲示板でマターリ萌え語りとかしてたとこに アンチガイエサイトの管理人や信者が降臨して、空気読まないサイト宣伝カキコで 萌え語りに水をさされる…なんて事件に巻き込まれたとこが多かったから 2chみたいにアンチも一杯紛れ込んでる場所で自サイトを晒されるってのは 最悪サイト閉鎖の原因にもなりかねん。 ぐぐるよりも、同人系のサーチエンジンからサイト探すのがいいと思う。 おすすめはサーファーズパラダイス。(カテゴリー検索に「創竜伝」がある) 出てきたサイトから芋づる式にリンク辿って探すのがいいんじゃないかと。
おおー、GJコールがたくさん。
皆さんアリガトアリガト。
>>467 茉理ちゃんは処女の設定です(指で痛がる様子入れてみた
まあ、あとはやっぱり話の盛り上がりということで…w
それと、最初に自分に萌え気分を起こさせてくれたあとのまつり氏にお礼。
おかげさまでいい感じに妄想膨らませられました。
では名無しに戻ります。
471 :
464で466 :2006/01/28(土) 14:57:47 ID:65iXFBPH
>468氏、469氏 自分の考え無しな発言に親切な忠告&指南、誠にありがとう。お二方の言うように頑張って探してみます。 とりあえず468氏の言う所を目標に旅に出ます。では!
472 :
薬師寺ファン :2006/01/29(日) 23:17:25 ID:5vITqhKl
涼子×泉田を書こうと思ってるんですけど、エロ最中はどう進めようか悩んでます…。まず、涼子はバージン?次に泉田は攻め?
>>472 是非バージン 普通 そして正常医しがみつきで
>>472 あの歳でバージンはちょっと…とは思うけど、
やっぱりバージンで。
もしくは非処女でも経験地少なめで。
携帯から見るのが、なんか不便になったな。
500KB越えそうだからそろそろ次スレを立てた方がいい?