「おはようございます、皆さん」
その時、教室の入口から瑞穂の挨拶が聞こえてきた。
その声に教室はしんと静まり返り、どこからか「誰?」と言う声が聞こえてきた。確かに顔は同
じだが、髪型は違うし化粧はしてないし、服装に至っては全然違うから、パッと見、瑞穂だと言う
事がわからかったのである。
「瑞穂ちゃん、おそーい!」
まりやが叫んだ。
「…………ぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええっっ!!!」
教室が狂乱に包まれる。いや、瑞穂の後ろを追いかけてきていた者達も、廊下で一緒に悲鳴
をあげた。
それからは学院中を巻き込んだ大騒ぎになった。
まず叫び声を聞きつけた他のクラスの生徒達が大勢押し寄せ、ホームルームにやってきた緋
紗子が悪ノリして、男装瑞穂のお披露目会を開く事になった。
初めのうちは三年A組で行っていたのだが、ギャラリーは増える一方で、それならばと緋紗子
が学院長に話を通し、二時限目まで潰して改めて全校生徒に対してのお披露目会を講堂で行
った。
そして、それが終わった後も興奮醒めやらず、とても授業に集中できるような雰囲気ではなか
った為、その日は瑞穂の触れ合い感謝デー、と言うことになってしまったのである。
結局、その日は終日お祭り騒ぎで、瑞穂はと言うと、放課後が来て下校時間になるまで解放さ
れる事は無かった。
そして、学院を揺るがす程の大騒ぎに事態を重く見た学院側は、瑞穂に対して男装禁止令を
発令したのであった。