「そうだ!お猿の兄ちゃんが選べばいいんじゃん!」
唐突に兎丸が叫んだ。
はっと、不毛な争いを続けていた者達が振り返り、今さらながら、それを、名案だという風に受け入れた。
その間に、猿野がどんな顔で俯いたのかも知らずに……。
いささか……、いや、かなりの緊張の面持ちで、子津が猿野の目の前に立った。
少し震える声で、尋ねる。
「猿野君、猿野君は誰と一緒に帰りたいッスかっ!?」
「……それって、誰と一緒に帰りたいかっていうのを隠れ蓑にして、俺が誰に一番好意を持ってるか言えってこと?」
うっと、猿野溺愛者達は言葉を詰まらせた。
その、幾分の嘘偽りのない、ストレートな言葉に。
確かに自分たちが言っているのはそう言うことだ。相違ない。
しかし、当の本人にここまではっきり言われると……なんというか、怯む。
だって猿野が選ぶのは、自分じゃないかもしれない。
いつも自信に溢れる彼らだって人の子。
不安がないわけではないのだ。