【GPM】アルファシステム総合エロ小説2【式神】

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1名無しさん@ピンキー
ガンパレードマーチや式神の城を生み出したアルファシステムの総合エロパロスレです。

前スレ
【ガンパレ】アルファシステム総合エロ小説【式神】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1060786530
2名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:41:15 ID:oArk3U/q
アルファシステムサーガよりアルファシステムが関わった全仕事。

ファイティング・ストリート (PCエンジン−CD)
 格闘アクション ハドソン 88.12.04
凄ノ王伝説 (PCエンジン−Hu)
 RPG ハドソン 89.04.27
マネーダイアリー (PC−9801)
 ビジネス サムシンググッド 不明
SCD (X−68000)
 ツール SHARP
No・Ri・Ko (PCエンジン−CD)
 アイドル ハドソン 88.12.04
ダウンロード (PCエンジン−Hu)
 シューティング NECアベニュー 90.06.27
モンスターレアー (PCエンジン−CD)
 シューティング ハドソン 89.08.31
イースT・U (PCエンジン−CD)
 RPG ハドソン 89.12.21
大魔界村 (PCエンジン−SG)
 アクション NECアベニュー 90.07.27
バトルスタジアム (ファミコン)
 スポーツ I・G・S 90.12.20
3名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:41:56 ID:oArk3U/q
サイバーコア (PCエンジン−Hu)
 シューティング I・G・S 90.03.09
ノーブルマインド (X−68000)
 RPG アルファ・システム 不明
パワーリーグ (X−68000)
 スポーツ ハドソン 不明
上海2 (PCエンジン−CD)
 パズル ハドソン 90.04.13
上海2 (X−68000)
 パズル ハドソン 不明
ポピュラス (PCエンジン−Hu)
 シミュレーション ハドソン 90.04.13
バイオレントソルジャー (PCエンジン−Hu)
 シューティング I・G・S 90.12.14
イースV ワンダラーズ・フロム・イース (PCエンジン−CD)
 RPG ハドソン 91.03.22
ダウンロード2 (PCエンジン−CD)
 シューティング NECアベニュー 91.03.29
Float2 (X−68000)
 浮動小数点パック SHARP 不明
4名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:42:41 ID:oArk3U/q
Float3 (X−68000)
 浮動小数点パック SHARP 不明
サイバーコア (X−68000)
 シューティング SPS 不明
トリッキー (PCエンジン−Hu)
 パズル I・G・S 91.07.06
財テク家計簿 (PC−9801)
 ビジネス サムシンググッド 不明
ポピュラス ザ・プロミストランド (PCエンジン−SCD)
 シミュレーション ハドソン 91.10.25
天外魔境U 卍MARU (PCエンジン−SCD)
 RPG ハドソン 92.03.26
アドベンチャークイズ カプコンワールド (PCエンジン−SCD)
 クイズ ハドソン 92.06.19
Float2 (X−68030)
 浮動小数点パック SHARP 不明
Float3 (X−68030)
 浮動小数点パック SHARP 不明
サイキック・ストーム (PCエンジン−SCD)
 シューティング 日本テレネット 不明
5名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:43:23 ID:oArk3U/q
ハテナの大冒険(PCエンジン−SCD)
 クイズ ハドソン 92.06.19 ※カプコンワールドとカップリング販売
超英雄伝説ダイナスティックヒーロー (PCエンジン−SCD)
 アクション ハドソン 94.05.20
キアイダン00 (PCエンジン−SCD)
 シューティング 日本テレネット 92.10.23
エグザイルU 邪念の事象 (PCエンジン−SCD)
 アクション 日本テレネット 92.09.22
ドラゴンスレイヤー 英雄伝説U (PCエンジン−SCD)
 RPG ハドソン 92.12.23
クイズキャラバン カルトQ (PCエンジン−SCD)
 クイズ ハドソン 93.05.28
ゴジラ爆闘烈伝 (PCエンジン−SCD)
 格闘アクション 東宝 94.02.26
CD−ROMカプセル2 (PCエンジン−SCD)
 オムニバス 小学館 93.05.21
エメラルドドラゴン (PCエンジン−SCD)
 RPG NEC HE 94.01.28
CD−ROMカプセル3 (PCエンジン−SCD)
 オムニバス 小学館 93.08.09
6名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:44:04 ID:oArk3U/q
龍虎の拳 (PC−エンジン−AC)
 格闘アクション ハドソン 94.03.26
CD−ROMカプセル4 (PCエンジン−SCD)
 オムニバス 小学館 93.11.
ゴジラ怪獣大決戦(スーパーファミコン)
 格闘アクション 東宝 94.12.09
GODZILLA(DESTROY ALL MONSTERS) (Super NES)
 格闘アクション 東宝 95.
CD−ROMカプセル5 (PCエンジン−SCD)
 オムニバス 小学館 94.03.
エメラルドドラゴン (スーパーファミコン)
 RPG メディアワークス 95.07.28
CD−ROMカプセル6 (PCエンジン−SCD)
 オムニバス 小学館 94.07.
ホーンドアウル (プレイステーション)
 ガンシューティング SCE 95.12.29
リンダキューブ (PCエンジン−SCD)
 RPG NEC HE 95.10.13
MYST (プレイステーション)
 アドベンチャー ソフトバンク 95.01.27
7名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:44:50 ID:oArk3U/q
MYST(Play Station the Best) (プレイステーション)
 アドベンチャー ゲームバンク 97.03.28
ドリームチェンジ 小金ちゃんのファッションパーティ (Loopy)
 着せ替え カシオ 95.
わんわん『愛情物語』 (Loopy)
 アドベンチャー カシオ 96.
シミュレーション・ズー (プレイステーション)
 シミュレーション ソフトバンク 96.11.29
シミュレーション・ズー (セガサターン)
 シミュレーション ソフトバンク 97.02.07
タクラマカン 敦煌傅奇 (プレイステーション)
 アドベンチャーパズル パトラ 96.11.22
タクラマカン 敦煌傅奇 (セガサターン)
 アドベンチャーパズル パトラ 96.12.27
ネクストキング〜恋の千年王国〜 (プレイステーション)
 恋愛SLRPG バンダイ 97.06.27
リンダキューブ・アゲイン (プレイステーション)
 RPG SCE 97.09.25
リンダキューブ・アゲイン(Play Station the Best) (プレイステーション)
 RPG SCE 99.06.03
8名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:45:31 ID:oArk3U/q
ネクストキング〜恋の千年王国〜 (セガサターン)
 恋愛SLRPG バンダイ 97.11.20
拡大越前 (Windows)
 アプリケーション パトラ 不明
幻世虚構 精霊機導弾 (プレイステーション)
 ガンシューティング SCE 97.12.11
ルナ シルバースターストーリー (プレイステーション)
 RPG 角川書店 98.05,28
ルナ シルバースターストーリー(Play Station the Best) (プレイステーション)
 RPG 角川書店 99.04.28
リンダキューブ 完全版 (セガサターン)
 RPG アスキー 98.06.18
サイバー大戦略 出撃!はるか隊 (プレイステーション)
 シミュレーション システムソフト 99.02.04
サイバー大戦略 出撃!はるか隊(Super Lite 1500シリーズ) (プレイステーション)
 シミュレーション サクセス 00.09.28
俺の屍を越えてゆけ (プレイステーション)
 世代交代RPG SCE 99.06.17
俺の屍を越えてゆけ(Play Station the Best) (プレイステーション)
 世代交代RPG SCE 00.07.06
プチぷちコレクション(i−mode)
 セルフチェッカー ハドソン 01.01.22
9名無しさん@ピンキー:05/02/15 00:46:12 ID:oArk3U/q
高機動幻想ガンパレード・マーチ (プレイステーション)
 学園戦略シミュレーション SCE 00.09.28
Magic:The Gathering (ドリームキャスト)
 トレーディングカードゲーム セガ 01.06.28
式神の城 (アーケード)
 シューティング タイトー 01.09.13
暴れん坊プリンセス (プレイステーション2)
 RPG 角川書店・ESP 01.11.29
式神の城 (Xbox)
 シューティング キッズステーション 02.03.14
式神の城 (プレイステーション2)
 シューティング タイトー 02.06.27
式神の城EX (Windows)
 シューティング キッズステーション 02.08.08
テイルズ オブ ザ ワールド なりきりダンジョン2 (ゲームボーイアドバンス)
 コスプレRPG ナムコ 02.10.25
式神の城 EVOLUTION 紅/藍 (Xbox)
 シューティング キッズステーション 02.12.19
式神の城U (アーケード)
 シューティング タイトー 03.04.22
式神の城 (ゲームキューブ)
 シューティング キッズステーション 03.10.24
新世紀エヴァンゲリオン2 (プレイステーション2)
 ワールドシミュレーター バンダイ 03.11.20
10名無しさん@ピンキー:05/02/15 03:34:35 ID:IXoERU5p
乙です。
11名無しさん@ピンキー:05/02/15 10:28:29 ID:AbqJjox6
…前座にしてはよくやったと誉めておく
好きな物を陳情するがいい
12名無しさん@ピンキー:05/02/15 15:25:46 ID:mZq8muNU
>1
乙ー
13名無しさん@ピンキー:05/02/15 18:44:47 ID:8gS2e2gt
>>1

即死回避
14名無しさん@ピンキー:05/02/15 23:45:21 ID:IXoERU5p
即死回避&乙
15名無しさん@ピンキー:05/02/17 08:12:02 ID:eB+2nzxc
即死回避祈願
16名無しさん@ピンキー:05/02/17 21:12:56 ID:pn67OA1J
>>1
乙!
舞の少なめおっぱいで即死回避
17名無しさん@ピンキー:05/02/17 21:47:11 ID:xHCY8oaN
即死回避。
18名無しさん@ピンキー:05/02/17 23:13:17 ID:ekSChF66
即死条件が判らないので
即死回避
19名無しさん@ピンキー:05/02/18 02:15:35 ID:XaaU/9qw
即死回避
小説書くとかは無理なんで、とりあえず萌えておく。
恋人同士になったら独占欲強そうな新井木(;´Д`)ハァハァ
20名無しさん@ピンキー:05/02/18 13:38:25 ID:cd5iyYcE
回避
21名無しさん@ピンキー:05/02/18 15:34:52 ID:/BgrxBDZ
kaihi
22名無しさん@ピンキー:05/02/19 03:18:12 ID:DQEYkiFl
23名無しさん@ピンキー:05/02/19 08:20:10 ID:qLjj3Vr1
とう
24名無しさん@ピンキー:05/02/19 11:46:15 ID:FO8hMp8c
25四条 ◆JeifwUNjEA :05/02/20 14:33:35 ID:E6y1WkiJ
うが、新スレ……
26名無しさん@ピンキー:05/02/21 20:38:31 ID:2x89wMJy
>>19
一理ある。世界を超えて好きな男追ったんだから

でもガンパレで一番独占欲強いのは原ってのは譲れない
争奪戦時の新井木は話聞いてくんねーだけだが
原は日曜のデートの約束破っただけでPCが女性でも・・・
27ガンパロ 夜明け1:05/02/21 23:32:04 ID:CDNZ/WZh
 真夜中に私は屋根の上で歌を歌っていた。
いつもの魔術の儀式に使う歌ではない。
呪いではなく、願いの歌。

大切な人が負けないように。

声はか細いけど願いを込めて、歌う。
そばには赤いちゃんちゃんこを見に纏う、小隊の守り神が私を見ている。
夜の暗闇の中、遠くから小さくの砲撃の光と音が聞こえる。
あの中で彼はあしきゆめと戦ってっているのだ。

愛しい人が死なないように。

私が口を開くたびに周りを青い光の玉が包んでゆく。
戦う力のない私はこうする事しかできない。
できないから、ただひたすら歌う。願いを込めて。

どのくらい経ったのか。
歌う私の後ろで階段を上がってくる音がする。
遠くの砲声は止んでいた。守り神もいつのまにか消えていた。
そして彼が姿を現す。
愛しい人は帰ってきた。
私を包んでいた青い光が彼も包む。
彼にもこの光は見える。
彼はゆっくりとした歩調で私の前に立って私を、抱きしめた。
28ガンパロ 夜明け2:05/02/21 23:33:55 ID:CDNZ/WZh
彼の体はあたたかい。
たくましい腕と胸からは汗と、血の匂いがした。
私は抱かれたまま彼の顔を見上げる。(といっても、元から彼の方がとても背が高い。)
綺麗な金髪と青の瞳。トレードマークの帽子はなかった。
何も語らない彼。
私は背を伸ばすように彼の口にキスをする。
「・・・・泣くな。」
愛しい彼の顔は何故かぼやけている。
「うれ・・・しいから・・。」
「そうか。」
彼は笑った。見た目はほとんど変化がないけど。
今度は彼の方から私の方にキスをする。
長いキスの後、彼はこちらを見つめたまま
「いいのか。」
私は小さく頷いた。
彼は私の制服のボタンをゆっくりと外してゆく。
「・・・!」
不器用に上着を脱がせようとするが、思わず止めてしまった。
自分で頷いたくせに素肌を見せるのは怖かった。
前の学校でのいじめ。
そこで付けられた傷。
自分で傷つけた傷。
誰が始めたわけでもない。
どうして自分だったのかさえわからない。
ただ耐えつづけた。
そうして私は喋る事がほとんど出来なくなっていた。
人に接する事も怖くなっていた。
体の傷は癒えても、記憶の傷は絶対に消える事はないから。
そう、思っていた。
29ガンパロ 夜明け3:05/02/21 23:36:32 ID:CDNZ/WZh
今は、違う。
小隊の皆がいる。
そして彼がいる。
だから、自分から脱ぐ。
上着を外し、下着を脱いだ。
夜の闇。青の光の中。私は彼の前に全てをさらけ出した。
さすがに恥ずかくてうつむいた。
そのうえ少し、肌寒い。
彼は表情を変えないまま、私の体を愛撫する。
ゆっくり、優しく。
「・・あ・・・」
声が漏れる。
彼の硬い指がそのたびに止まるのが嬉しい。
「んん・・」
自分の中で高まっていくのがわかる。
内股が濡れていくのも。
胸の先端が張ってきたことも。
それどころか全身が熱い。
指が、舌が触れるたび、そこに電撃が走る。
2度ほど絶頂を迎えた。
30ガンパロ 夜明け4:05/02/21 23:37:50 ID:CDNZ/WZh
もう、あそこからはとめどなく愛液がつたっている。
「いいか。」
私は彼の敷いた制服の上で横になると、彼の方に両手を広げる。
「・・・・きて・・」
自分の上に彼が重なってくる。
そして。
「うあっ!・・・あ・・あ・・」
彼のが私の中で動くたび、そこから快感が脳に響く。
「あ・・・うん!・・あ」
彼は私にキスを 口の中に舌が 好き 熱い
あそこが 気持ちいい 気持ち 気持ち
気持ち気持ち気持ち
「い・・・く!うああああっ!」
「・・・・・・・・・・!」
私が痙攣した後、彼の精液が一気に私の中に入っていく。
その快感で私はもう一度いった。
行為の後も私は彼としばらく抱き合っていた。
ただ抱き合っていた。
31ガンパロ 夜明けend:05/02/21 23:39:20 ID:CDNZ/WZh
 夜が明けかけた頃。
二人はプレハブ校舎の上に座っていた。
私は彼の膝元にいる。
彼は腕で私を抱いたまま、歌を歌う。
突撃行軍歌。
私も彼に合わせて歌を歌う。
青い光の園で、それはどこまでも響いていた。
二人は青い光に包まれている。
青い光は日があける頃までそこを照らしつづけていた・・・。
32ガンパロ 夜明けep1:05/02/21 23:41:07 ID:CDNZ/WZh
 次に目が醒めたとき、彼はいなかった。
日が昇り、青い光はもう見えない。
プレハブの屋根がいやに広く感じられる。
私はなぜか怖くなって彼を探す。
校舎。整備テント。公園。
どこにも彼はいなかった。
その日の朝。
彼が昨日の戦いで戦死したことが私に伝えられた。
33ガンパロ ep2 ある日:05/02/21 23:44:00 ID:CDNZ/WZh
 空が高く昇って。暑い日差しの中。
私は河川敷を散歩していた。
あの日の出来事は何だったのか。
夢だったのか、妄想だったのか、幽霊だったのか。
いまだにわからない。
涙はもう流れない。
私はゆっくりと歌を歌う。
歌は河川敷の草の音にかき消されて響く事はなかった。
小隊の皆は元気にしているだろうか。
私は小隊を辞めた。
それからも小隊の皆とは交友が続いている。
歌い終わった後、私は下を見る。
大きくなったお腹をなでた後、私はゆっくりと自宅に帰っていく。
もう、季節は夏に変わろうとしていた・・・・。


 おわり
34名無しさん@ピンキー:05/02/22 00:53:49 ID:drw+0QA4
いいですねえ。しみじみしていて傑作。
35名無しさん@ピンキー:05/02/24 21:33:40 ID:lIVOF8zS
GJ過ぎる…やっぱ萌には銀河が良く似合う。
胸の中がほんわかとあったかくなった…そして悲しく冷めてしまったよ。
36ガンパロ :05/02/25 01:56:53 ID:SuV3H/CH
>>34-35
どうもです。今回のは頭に浮かんだやつを勢いで書いたので、
ほとんど見直し、推敲がされてないです。
だから来栖が死んだ前後は、今見るとかなり駄目だ。
最初は死なないはずだったのに自分でも不思議です。35の人ほんとスイマセン。
このカップルは2番目に好きだなあ・・・
とりあえず次からは完成したら1日置いて見直します。
37ガンパロ 男子の本懐?1:05/02/25 03:05:05 ID:SuV3H/CH
「あ〜あ、まったく、ついてねえよなあ・・・」
日曜日の午後。滝川は快晴の中一人学校へ向かっていた。
このところ、こちらが圧倒的に有利な状況なので、戦闘もなく、
5121小隊は平和な日々を送っていた。
そんなときの英語のテストで赤点を取り、滝川は一人、本田先生から補習授業を言い渡されていた。
サボればマシンガンの銃口を向けられるのは誰でも知っている事実だ。
「森とせっかくのデートができるチャンスだっただよなあ・・・。
 速水は舞とプールデート(*今は四月です)だし。なんで日曜に・・・」
ブツブツ文句を言いながらも、既にプレハブ校舎を上がろうとしているあたり、
滝川の性格が出ていると言えるだろう(本田先生が怖いだけかもしれないが)。
1組の教室はなぜかカーテンと暗幕で中が見えなくなっていた。
滝川は不思議に思ったものの、また本田先生のきまぐれかなんかだろうと思って
戸を開けた。
 その途端。
「う、うわあああああ!?」
誰かに体を思い切り引っ張られた滝川は、一瞬で教室の中に消えた。
そして戸がすぐに閉められる。
38ガンパロ 男子の本懐?2:05/02/25 03:06:10 ID:SuV3H/CH
教室の中は暗くてよく見えない。
パニックに陥りかけた滝川は複数の手に机に下ろされた。
押さえつけていた誰かはそのまま滝川を机に縛り付ける。
まるでまな板の鯉だ。
 縛り終えた人物は、教室の電気をつけた。
明かりが眩しかったが、滝川は、ようやく周りの状況を確認することが出来た。
「ほ、本田先生!?それに、な、なんで2組の女子もいるんだ?」
そこには腕を組んでいる本田とのんびり教科書を読んでいる芳野先生。
さらに芝村をのぞく1・2組の女子が狭い教室の中、滝川を見ていた。
どこか緊張した空気が流れているが、滝川はその空気は読めない。
滝川がまた混乱しかけた頃、本田が黒板にチョークで文字を書いていく。
「ようし、オメーら。前から言ってたとうり、今日は保健の授業をやるぞ!」
黒板に書いてある文字は、”男子の生態”。
滝川はようやく自分がこれからナニをされるかを理解した。
図らずも滝川の願いである「Hな雰囲気を、見てみたい」という願いは叶おうとしていた。
本人を中心として。
39ガンパロ :05/02/25 03:12:08 ID:SuV3H/CH
 いったそばから思いついたネタを投下。
また見直しはしていない・・。今回はウハウハです。
続きは次に来たときに。朝早いのに何やってんだか・・・
40名無しさん@ピンキー:05/03/01 19:47:10 ID:E/Wo4dAj
保守
41OVERS:05/03/02 23:51:42 ID:+Kmpwdv0
どうやらオレはまだココにいてイイらしい。よかった。
42名無しさん@ピンキー:05/03/03 23:02:25 ID:rREFC8uq
えーと、前スレの「深淵」拝読して激しく萌えて、萌に鞭打たれ、田代に蹴り飛ばされてぇ! てなリビドーの赴くままに改造絵なぞ思わず作ったり。
ここは画像貼り付け禁止なんで、角煮に貼ったとこへ誘導しておきます(あっちのガンパレスレ落ちてた…orz)
簡単なコラの旧作に、稚屈な改造絵で申し訳ありませんが、OVERSさんが良かったら貰ってやって下さい m(_ _)m

http://sakura03.bbspink.com/ascii2d/test/read.cgi/1108007527/421
4342:05/03/03 23:21:29 ID:rREFC8uq
うむむ、貼ったはいいが、人大杉でギコナビでも角煮へ飛べない… 
仕方ないので貼ります。飛べない場合、萌え.jpその他板アルファスレの68/69で。 

tp://moe2.homelinux.net/src/200503/20050303582584.jpg
tp://moe2.homelinux.net/src/200503/20050303582642.jpg
44OVERS:05/03/04 00:51:16 ID:9Zwl77XI
>>42
あらあら、わざわざ作ってくれたんですかー!?ありがたい。



…見れない…orz でもお気持ちありがたく頂戴します。
45OVERS:05/03/04 01:24:16 ID:9Zwl77XI
>>42
見れました!GJ!
46名無しさん@ピンキー:05/03/05 02:49:14 ID:OcCG5EXk
板のローカルルールでは画像張りつけ禁止となってるが創作支援のためならよさそうな希ガス
47OVERS:05/03/05 03:50:02 ID:X+ydYgwm
…そーいや前スレで自作絵晒してしまいましたな。失礼しました。
48ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:05:11 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・1>
どこまでも続く長い回廊を、少し小柄な影が滑るように進んでいく。
走る動作が軽やかなのは、彼がまだ少年だからだろう。
七篠(ななしの)十兵衛、七篠家第十代当主。当年とって零歳三ヶ月。
先月、初代の「一太郎」を襲名したばかりである。
岩柱の影から飛び出してきた悪羅大将をすれ違いざまに切り伏せても、歩みの速度を全く変えない。
巨体の鬼は斬られたことすら自覚せぬまま、鮮やかな切り口を見せて二つに裂け、すぐに消滅した。

十兵衛は、初陣ではない。
つい先月、生後二ヶ月にして、一族の手練れとともに地獄巡りに向かい、凄まじい戦いの中に身をおいたばかりだ。
わずか一ヶ月の修羅の旅の成果は、当世最強の剣士の誕生だった。
京で一番という源頼満でさえ、都の大路で、地獄めぐりから帰ってきたこの少年とすれ違ったときに驚嘆している。
「七篠の先代とは、選考試合で三度戦い、三度とも負けた。
それが倒れられたと聞いて残念に思っておったが、当代がまだ少年であれほどならば、七篠家は安泰じゃな」
十兵衛の父、九代当主・九郎太は、それほどの名剣士であった。
そして、その九郎太が手ずから奥義を与え、自分の最後の出陣に連れて鍛え上げた十兵衛は、
術の腕前はともかく、武器を取ってはすでに天下無双であった。
それゆえに、生後三ヶ月で大族・七篠家の当主に就き、いま、鳥居千万宮を一人で斬り進んでいるのである。
49ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:06:03 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・2>
十兵衛は、出陣の前に一族の者と交わした会話を思い出していた。
「―先代様のご遺言は、お聞きになりましたね」
「うん」
「先代様は、九尾吊りお紺様を解放できなかったことが唯一の心残り、とおっしゃっていました」
彼にとっては姉にあたる薙刀士・美鈴の説明を、十兵衛は背筋を伸ばして聞いた。
「九尾吊りお紺様は、もう十分に業を絶たれていますが、まだ解放されておりません」
「この間、姉上たちが討伐したときも解放されなかったんだよね」
「美鈴、でよろしいですわ。貴方は私の弟ですが、今はもう七篠家の当主です。
たとえ最年少であっても、一族の誰にも敬語を使う必要はありません」
「でも姉ちゃん―」
「そんなくだけた言い方はもっとだめです」
ため息をついて、美鈴は説明を続けた。
「先代様の推測では、お紺様を解放するにためは、おそらく討伐隊に剣士が必要だということです。
この間の討伐隊の時には、先代様は当主様の訓練のため、家にお残りになられておりましたから」
「うん」
わずか二ヶ月前の、厳しくも楽しかった修行の日々を思い出して、
十兵衛は思わずすすり上げそうになったが、姉の厳しい視線を感じてあわててこらえた。
当主は、そういう姿を他人に見せてはいけないのだ。
「年も明けたことですし、お紺様はまた復活なさっております。
当主様のお力で、あのお方を解放してあげてください」

狐美姫の間は、おどろおどろしい怨恨が渦をまいているようだった。
この世のすべてを憎しみの目で見ている美しい女神は、あらゆる恨み言を呪詛に変えて襲い掛かってきた。
だが、十兵衛の振るう群雲の剣の相手ではなかった。
たった三度の斬撃で、九尾吊りお紺は天に還った。
50ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:06:53 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・3>
数ヵ月後、七篠家の居間は重苦しい沈黙に包まれていた。
締め出しを食った十兵衛は、うろうろと居間の周りを回ったが、
戸口から中を盗み見ようとするたびに、姉の美鈴から睨みつけられて追い出された。
当主なのに、当主としての大仕事に関する会議には出席できないらしい。
居間で喧々諤々の議論を戦わせているのは、美鈴をはじめとする、一族で「成人」した者と、客人の何柱かの神々のみ。
会議の中身も気になるが、敦賀ノ真名姫をはじめとする美しい女神たちも、十兵衛の興味をかきたててやまないというのに―。

「本来、当主様の筆下ろしには、盟約に従い、敦賀ノ真名姫様がふさわしいのですが…」
何度目か、弟を居間から遠ざけた美鈴は、これまでの話をまとめた。
美鈴は、一族の中で最年長というわけではないが、その実力と、当代の姉ということもあって、議長役をつとめている。
「七篠家は、ここのところ、ちょっと<水>の素質に傾きすぎちゃったからねえ」
名前が挙がった敦賀ノ真名姫は残念そうに首を振った。他の女神たちも同意する。
天界屈指の美貌を歌われる人魚の女神をはじめとするこの神々は、
自分たちを解放してくれた七篠家に対して、絶対的な好意を寄せている。
初めて交神の儀を行う男子に対して、手ほどきをすることを申し出たのも彼女たちのほうからだ。
「はじめて天界に登るのは、なかなか気苦労が多いのよ。
強力な力を持ち始めた貴方たち一族を利用しようとしたり、罠をしかけそうな神も多いからね。
―昼子ちゃんだって絶対的には信用できないわよ」
真名姫はそう言って小さく笑い、何代目かの当主に対して
「私や片羽ノお業様のように、七篠一族が解放した神々は、その点は信頼できるわ。
初めてのときはそういう神々を選んで儀式の経験を積み、その後で、
力が強くて心の底が分からない、手ごわい神様を相手にするほうがいいわよ」と申し出た。
51ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:07:43 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・4>
以来、七篠家は、最初の交神の儀には、そうした神々に相手をしてもらうのが吉例になっている。
特に代々の当主は、この申し出をした美しい人魚の女神に敬意を表し、敦賀ノ真名姫で筆おろしをすることになっていた。
だが、それが裏目に出たのか、代を重ねるに従い、七篠当主の家系は水の要素に特化し始めている。
これ以上、水の神々と交わり続けると危険である、と真名姫は判断した。
そもそも、初代当主が魂寄せお蛍と交わって二代目を作って以来、七篠は水の女神との縁が深い。
生命力に満ち溢れ、癒しを得意とする水の女神たちは、まだ力が弱かった先人たちにとって、願ってもない協力者だったからだ。
美津乳姫、水母ノくらら、みどろ御前、泉源氏お紋、那由多ノお雫、鳴門屋渦女……。
水の女神にはいわゆる「女らしい」美人がそろっていたことも、大きく影響したかもしれない。
―七篠家の男は、長い髪と巨乳に目がないという噂はひそかに有名だ。
「―何代か、別の要素の血を混ぜるといいわよ」
その女神を誰にするかで、会議はもめているところだった。
52ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:08:28 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・5>
「選ぶべきは火か、土ですね。一族の中でも当主の直系は、風の要素も強いから」
そういう美鈴も、瞳は水色だが、髪は翠の黒髪である。
「しかし、われらが解放した神々で適当なお方はおりませんな」
七篠が今までに解放してきた女神たちは、能力や性格、奉納点、十兵衛の素質との相性を考えるとどれも一長一短だ。
今のところ、候補に挙がっている女神は、土公ノ八雲と赤猫お夏の二柱。
だが、毒蜘蛛の女神では微妙に力が弱く、雌猫はあまり信頼できない。
「できれば、初めての相手は、経験豊かで優しい女神を選んでやりたいものですが」
普段冷徹な美鈴が、弟のことに関しては妙に感傷的なのも、話が進まない原因の一つになっている。
「この辺の位の女神って、ちょうど<水>の人が多いのよねえ。
片羽ノお業さんが<風>の女神なのも痛いわ。あの人なら文句なしなんだけど」
真名姫はため息をついて天井をにらみ、それから、あっという表情になって手を叩いた。
「そうだ、うってつけがいるわよ。―九尾吊りお紺さん。あの人、土の女神よ!」

美鈴以下、七篠家の人々は顔を見合わせた。
「し、しかし、あのお方はいわゆる世間一般的にいうところの、きち…」
「これ、失礼なことを言うな。その…ああ、そうそう、狐憑きと言おうとしたのだな?」
「…狐の女神さまだから当たり前じゃない、というか、そういう問題ではなくて…」
慌てふためく面々に、真名姫は順を追って辛抱強く説明した。
「大丈夫、お紺さんはもう正気に戻っているわよ。
今では神様の中でも一番穏やかなくらい。もともとすごく優しい人なのよ」
「……」
「それに、人間だったころは人妻で経験豊富だし、石女だったので逆に子作りのことに関しては詳しいわよ。
もちろん神様になってからは、子供を産めるようになったし…」
「……」
「何より、あの人は自分を解放してくれた十兵衛さんに感謝してるから、きっといい結果になるわよ」
結局、その一言が決め手で、十兵衛の交神の儀の相手は九尾吊りお紺と決まった。
53ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:09:13 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・6>
「―さ、こっちにおいでな。緊張することはないよ」
天に昇る儀式は長い時間がかかったはずだが、あっという間に終わった。
気がついたときには、十兵衛は、お紺の天上界での住居に通されていた。
これから何をするかを思うと、身の内が震える。
お紺は、くすりと笑った。地上で戦ったときに宿っていた狂気の光は、その瞳のどこにもない。
最初に見たとき、十兵衛は、別人ではないかと思ったくらいだ。
「こんなかしこまった所じゃ、緊張するなってほうが無理だよね」
お紺の住居は、巨大な神社だった。
鬼の住処となる前は鳥居千万宮がこうであったにちがいない、というような深い神秘をたたえた社。
その大玉殿で、ふたりは向かい合っていた。たしかに、厳粛すぎる雰囲気である。
「じゃ、小母さんの部屋に行こっか!」
お紺は明るく笑うと、十兵衛の手を引いて神殿を出た。

見るものを圧倒する大玉殿の裏手には、小さな小屋があった。
庵と呼ぶには生活感がありすぎる狭い小屋は、ふしぎとほっとする雰囲気があった。
「ここは?」
「ん? 小母さんの部屋さ。神様にしてもらったのはいいけど、あの神社だけじゃどうも肩が凝ってねえ。
生きてるときに住んでいた小屋をそのまんま作ってみたのさ」
手ずからお茶を淹れながら、お紺が答えた。
お茶といっしょに出した素朴な菓子に、十兵衛がいかにも食べ盛りの様子を見せてかぶりつくのを、目を細めて眺めた。
54ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:09:51 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・7>
「さっきの神殿より、こっちのほうがずっと居心地いいね」
「小母さんもそう思うわ」
くつろいだ様子になった十兵衛にお紺は笑顔でうなずいた。
懐かしげな表情で小屋を見渡す。
「小母さん、生きてたころは、ここで色んなことをしたんだよ。
ご飯作ったり、お寝んねしたり、内職したり、亭主と喧嘩したり…」
「……」
「もちろん、アレもいっぱいしたねえ…」
くすくすと笑うお紺に、十兵衛は好奇心いっぱいで聞き返した。
「アレって?」
「知りたい?」
「うん!」
「教えてあげようか?」
「うん!」
年増女の術中にあっさりとはまったのは、十兵衛の年齢では仕方のないことかもしれない。
あっ、と思ったときには、お紺は十兵衛にぴったりと身を寄せていた。
神殿ではあれほど緊張していた十兵衛が、不意打ちを食らってなすすべもなく押し倒される。
ぬめぬめとした唇が十兵衛のそれと重ねられ、甘い吐息が吹き込まれるのを、七篠の当代はしびれる頭で感じた。
その耳に、お紺のささやき声が遠く聞こえた。
「アレっていうのはね、男女の秘め事のことだよ。―今から小母さんがたっぷり教えてあげる」
55ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:10:35 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・8>
十兵衛の口を吸いながら、お紺は自分の巫女装束をどんどん崩していく。
大ぶりな乳がむき出しになったとき、十兵衛は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「ふふふ、お乳は好きかい、坊や?」
「うん!」
「じゃあ、たんとお吸いな」
自分の乳に飛びつくようにむしゃぶりついた十兵衛の頭を愛おしげに撫でながら、お紺はちょっと暗い眼をした。
(まだこんな子供なのに―。まだこんなに甘えたい盛りなのに―)
この子は鬼と戦い続けなければならない。二年もしないうちに死ななければならない。
女神である母親の乳にこうして吸い付いたこともないであろう十兵衛に、お紺は憐憫の想いを強く抱いた。
もともと母性本能の塊のような女神である。
「―せめて、小母さんが、うんと良くしてあげるからね―」
十兵衛の下肢に手を伸ばし、袴を脱がす。下帯の上から、十兵衛の「男」に触れる。
「あっ!」
少女のように甲高い声を上げて身をよじろうとする十兵衛を、顔に乳房を押し付け動きを制する。
布越しにこわばりを優しくなでさすり、玉袋を軽く揉む。
「うふふ、もうカチカチねえ。―ね、坊やのおちんちん、小母さんに見せておくれな」
淫猥なことばをささやきながら、お紺は返事もまたずに十兵衛の下帯を脱がしはじめた。
56ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:11:35 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・9>
「まあ、可愛いおちんちん!」
お紺は声を上げた。十兵衛が真っ赤になってうつむく。
たしかに少年のこわばりは若枝のように初々しいが、お紺は、自分の言葉が相手の自尊心を傷つけたことを悟った。
だが、小娘のようにあわてて傷口を広げるようなことはしない。
もう一度、十兵衛の口を吸って間を取ってから、軌道修正を試みる。この辺は百戦錬磨だ。
「ん…坊やのおちんちん、すべすべだよ、桃色で、綺麗ねえ。
―でも石みたいに硬くて立派よ。大きさだって大したものだし」
「本当?」
自分がまだ大人になっていないことが気になる年齢の少年は、年上の女性から賞賛されて自信を取り戻した。
「もちろんだとも。小母さんの飲んだくれ亭主のよりも、ずーっと立派だよ。―ね、口取りしてあげよっか?」
「口取り?」
「坊やのこれを、小母さんのお口でかわいがってあげることさ。
年増の女房は、亭主にこんなことしてあげるものなんだよ」
「お、小母さん!?」
自分のこわばりに唇を近づけたお紺に、十兵衛はすっかり驚いて声を上げた。
「ふふふ、今日は一日、坊やがあたしの亭主になっておくれな」
狐の女神は、少年のこわばりを優しく口に含んだ。
十兵衛は、初めて味わう年上の女性の奉仕に、眼もくらむ思いだった。
少年はすぐに大きく身を震わせて泣く様な声を上げてのけぞったが、お紺は唇を離さなかった。
お紺の口の中に、十兵衛のはじめての射精が放たれた。
女神はそれを、今年一番に捧げられた稲穂を食する儀式の時のように、うやうやしく飲み込んだ。
57ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:12:29 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・10>
袖口で口元をぬぐいながら、お紺は、ぺったりと座り込んで荒い息をついている十兵衛に微笑みかけた。
「ふふ、いっぱい出したね、坊や。どうだった、小母さんのお口は? よかったかい?」
「う、うん!」
「ふふふ、坊やのは味も匂いもすっごく濃くって美味しかったよ。
子種も、元気なのがいっぱいさね。―これなら、どんな女神を相手にしてもいい世継ぎが作れるよ」
自分が何をしに天上に上がってきたのかを思い出して、十兵衛はまた身を硬くした。
「ふふふ、安心おしよ。小母さんが、みんな教えてあげるから。さ、こっちにおいで」
帯を解いて全裸になり、お紺は十兵衛を手招いた。横たわって大きく足を広げる。
「ごらんな。―交神の儀式といっても、小母さんのここに、坊やのおちんちんを入れるだけのことさね。
怖がることはないよ。まずはじっくり眺めてごらん」
十兵衛はおずおずと近づいた。白い腿の間に顔を寄せる。どんなに緊張していても、好奇心は抑えられないらしい。
お紺の身体からたちのぼる甘い女の匂いを吸い込んで、十兵衛は陶然とし、
十兵衛の火のように荒い息が秘所に当たって、お紺は声をかみ殺した。
「……お、小母さんっ…!?」
「なんだい?」
「小母さんのここっ、な、舐めてもいい?」
「ふふふ、いいわよ」
経験はなくても、知識としては知っているのだろう。あるいは男の本能がそうさせるのかもしれない。
十兵衛は熱心にお紺の秘めどころを舐めはじめた。
58ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:13:42 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・11>
「そうそう、そうやって舌を使って……、上手だねえ、坊や」
女の粘膜をなぶられながら、お紺は右手を伸ばして十兵衛の頭をそっとなで続けた。
十兵衛に悟られぬようなごく自然な動作で押さえつけたり、緩めたりしながら、十兵衛に舐め方のコツを教え込む。
時折、予想外の快感が走り、声をあげてのけぞったりする。この子は、天性の女殺しだ。
時間がたつにつれ、教えるつもりが、公主がすっかり逆転してしまった。
「ああ、いいよ、坊や。すぐに、どんな女神だって坊やにいかされちゃうようになるよぅ」
すすり泣きまじりの感想は、お紺の本心からのものだった。
褒められた少年は、さらなる褒め言葉を欲する子供特有の熱心さで、年増女の秘所を舐め続けた。
「あ、あ、だめ、坊や。坊やの舌でいかされちゃうっ!」
お紺は十兵衛の頭を自分に押し付け、びくびくと体を痙攣させた。
十兵衛の顔に、お紺の蜜がしぶきのようにかかり、少年はびっくりした。

「はあ、はあ、今度は小母さんが坊やを気持ちよくさせる番だね……」
腰にまったく力が入らないが、お紺は最後まで務めをはたそうと身を起こした。
すでに秘所は潤いきって、いつでも女の極みに達する準備を整えている。
―この状態で、十兵衛のこわばりを胎内に受け入れたら、どんなことになるだろうか。
(もう一度、気が違っちまうんじゃないか―)
眼のくらむような期待感には、怯えすら混じっていたが、お紺のうちにあるマゾ的な要素がそれを狂おしく欲した。
坊やにとどめを刺して欲しい。お紺は、十兵衛の男根を手に取り、自分の入り口に導いた。
「さあ、坊や、―小母さんのここで、男におなりな」
十兵衛はうなずき、わななきながらお紺の秘所に突き入れた。
お紺はもう一度のけぞった。
温かな粘膜に包まれた七篠の当主は、女神の膣内に熱い精液を何度も吐き出した。
心配したように狂うことはなかったが、お紺は、すでに天上にいるというのに、さらに高いところに何度も登りつめた。
59ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:14:36 ID:DLmQXUE5
<七篠家十代当主・十兵衛・12>
「―あんた……本当に…すごいねえ」
万珠院紅子は、汗まみれの身体を起こす余裕もなく、褥の中からうっとりと男を見上げた。
―七篠の当主。
たかが人との合いの子、しかもまだ子供と思って侮っていたが、とんでもない。
性遍歴には自信がある美貌の女神でさえ、いまだかつて相手したことがないほどの手練れだった。
これでは褥の中で快楽のるつぼに引き込み、自分の魅力におぼれさせて、
あわよくば手駒にしてやろうという企みはおじゃんだ。
―だが、そんなことは、もうどうでもいい。
「はじめに教えてくれた人が、すごくいい人だったんだ。女のことは、みんなその人に教えてもらった」
十兵衛は、なつかしげな表情で答えた。
紅子をいいようになぶり続けた男のはにかむような笑顔に、黒髪の女神は、その女に対して激しい嫉妬を覚えた。
しかし、十兵衛がその髪を無造作な手つきで軽くすき始めると、そんなこともたちまち忘れて甘えた声を上げた。
「―で、他の神様たちがなんだって?」
「ええ、太照天は夕子も昼子も動き出したわ。保守派の連中も。これからひと荒れ来るわよ」
「ふうん、君も気をつけなよ。僕にいろんな情報を教えたことがバレたら厄介なんじゃないの?」
「もうっ、意地悪っ!」
改革派も保守派も、今日からは関係のないことだった。
もうすぐ、この男は天界に登って神になるだろう。
敦賀ノ真名姫をはじめとする親七篠家一派の盟主となり、すぐにでも天界の有力な勢力の領袖になる。
自分は当然、その一派に加わるのだから、既存の派閥との関係は紅子にとって、もうどうでもいいことだった。
気になるのは唯一つ、十兵衛の愛人の座を、その女と争わなければならない羽目に陥るかもしれないということだ。
(いったい誰が、こんなすごい男に「女」を教えたのかしら)
紅子は、嫉妬混じりの疑問に思いをめぐらせたが、
愛しい半人間の男は彼女よりすっと上手で、ヒントのかけらも与えてくれなかった。
60ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :05/03/06 00:17:08 ID:DLmQXUE5
むかーし書きためてた俺屍のを手入れしてみますた。
お紺さんは、飲み屋で会いたいお姐さんですw
61OVERS:05/03/06 22:48:52 ID:L4LGhHam
>>ゲーパロ専用氏
GJ!

ゲーム持ってないのに絵が欲しくて攻略本買ったアタクシ…でも神様と小作りってエロいよな!な!
62四条 ◆JeifwUNjEA :05/03/06 23:27:42 ID:0iuvfuE0
ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6殿、萌え!
63OVERS:05/03/09 22:34:40 ID:Tf+dhDs3
ぬ?誰も書かない?また書くよ?イキオイで…いいの?いいのかなぁ?
64名無しさん@ピンキー:05/03/10 00:16:58 ID:u1rcuadM
頼みまつ。
65名無しさん@ピンキー:05/03/10 06:46:58 ID:/8/WTFkB
>63
若宮×田代嬢でお願いします
66OVERS:05/03/11 21:45:42 ID:BmjyXeFt
その男は特に親しいってぇー訳でもねーのにいきなりオレを屋上に呼び出しやがった。

「お・田代ぉー よく来てくれたー」

大きなガタイのクセして子供の様に喜んでやがる。なんだっつーんだ一体…

「あのな…女性というものは…その…なんだ…どう言う物をプレゼントされると嬉しいもんなんだ?」
「あ゛ぁ!?なんだそりゃ?」
「いや・だからな 例えばオマエなんかだと何をプレゼントされると嬉しいもんかな?と…」
「…なんでそんなコトオレに聞くんだ?」
「えー…あー…それはつまりだな…スカウト連中でこういう話が出来そうな(女性)がオマエしかいないんだな うん」

確かに…来栖にはヨーコがいるけどあの性格じゃーこういう話には持っていきづらいわなぁ…
滝川はお子様だし後輩に聞くのもバツがワリぃか…

「ダレにやるんだー?若宮センパイ」
「原整備長だ…」

即答かよ…しっかしあんな女のどこがイイんだかネェ〜…

「あの精悍な顔立ちといい聡明さといい…」
「聞いてねっつの! あ・ワリ」
「あぁイヤイヤ こっちも少々取り乱し気味だったな」
「んじゃ他のヤツとかに原について聞いてやるよ 何か解ったら教えっから」
「本当か!?」
「出世払でいーぜー」

そう言ってオレは校舎を後にした。


==続く==
67名無しさん@ピンキー:05/03/13 19:35:56 ID:08pju12h
保守age
68OVERS:05/03/16 23:35:06 ID:0N4b1L6/
若宮(センパイ)はあの女の話を聞いてる時はホント幸せそうだ。

「そうかそうか そういうのが好みなのか」
「こんな細かいことまで調べるのストーカー臭くねぇ?」
「いやいや 情報は多いに越したことは無いからな」

でもまぁこーやって話すのも悪くないと思ってる自分がいるのも事実なんだよなぁ。
どーしたもんやら…そんなある日の放課後、オレは聞かなきゃいい事を聞ーちまった。

「センパイ 最近若宮さんがセンパイのことイロイロ探って回ってるらしいですよ?」

森の声だ。

「あら アナタも知ってたの?」

原が答える。

「なんか男らしくないですよねぇー コソコソしちゃって…情けないって言うか 気持ち悪いですよ」
「あらいいじゃない?カワイくて」
「えー? じゃあセンパイ若宮さんに告られたらどうするんです?」
「なぁに言ってるの もともと好みじゃないもの お断りよ?フフフ…」

…ハラが立った。何故かは知らない。
…ムカついた。理由が見当たらない。
…気がつくとオレは若宮を探して駆け出していた。

==続く==


…なんかオレが書くと森&原コンビは悪役になっちまうなぁ…反省。
69名無しさん@ピンキー:05/03/17 11:34:19 ID:Wdu9pv+6
>68
いや、悪役だろ。萌を虐めている時点で俺(銀河でプレイ)で何度も殴りかかった。
ちなみにスカウトプレイ中だったので、銀河は体力3000以上、気力2500以上、運動力3000以上の化物ですた。
こんなのと戦ったら幻獣も挽肉だよな。原も森も挽肉になったのかな?
70名無しさん@ピンキー:05/03/19 01:34:05 ID:gbhjnuzc
>69
ちなみに、ガンパレゲーム中に原と森が萌をいじめている描写はないって、気づいてた?
あの火傷の痕すら、誰がやったものだかわからないわけで。

森も原も不器用で誤解されやすいんだと信じたい
71名無しさん@ピンキー:05/03/19 16:45:48 ID:3UMrxMNu
>70
あるぞ。萌と仲良くなると萌がいじめられているという話を滝川、中村、瀬戸口から
聞くことができる。(その3人だけだったかな?ほかにもいるかもしれない。)
その際に瀬戸口は「俺たちの原女史あたり」と名指ししている。
7271:05/03/19 17:18:31 ID:3UMrxMNu
追記。見つけたから転載しておく。
瀬戸口
「心痛むことだ。
 俺達の原女史あたりが、最近、石津をいぢめてるという話だ。
 …お前は石津の方、たのむわ。
 俺は、原その他を黙らせるからな。
 え? ふふっ、もてる男ってのは、俺みたいな奴なんだ。」

中村
「なんか…原さんと森が、石津をいぢめてるらしいばい。
 教えたけんね。どぎゃんかしなっせ。」
73名無しさん@ピンキー:05/03/19 20:24:18 ID:uzSuEpmB
それは噂であっていじめの描写じゃあないんじゃないかな、きっと。

火傷とかは前の学校での事だと思ってた。
74OVERS:05/03/20 23:32:12 ID:FldYroQF
…ヤケドは知らんかったなぁ…もっと原&森いぢめなきゃイカンなぁ。ヌムゥ。



学校中を駆け回ってようやく見つけた。アイツは相変わらずの様子だ。

「若宮ァ!!」
「ん?どした田代」
「もぅあんな女追っかけるの止めろよ!」
「田代…?」
「アイツはアンタが必死になってるの知ってて…知ってて…!?」

勢いに任せて怒鳴るオレの頭を若宮の手のひらがわしわしと撫でる。

「…知ってるさ」
「!?」
「でもなぁ 好きになっちまったらどうにもならないんだよなァ…」
「…」
「その内オマエも解るって… ありがとな」

そのまま肩をポンと叩く。知らない内にオレはセンパイにしがみついて泣いていた。
75OVERS:05/03/20 23:40:43 ID:FldYroQF
アレからイロイロあった…今居る若宮は2人目で、オレとのやり取りなんて知らない。
でも相変わらず原を追っかけてる。

「あれ?香織ちゃんどうしたの?」
「かっ香織ちゃんて言うなって言ったろ!!」

速水と良く話すようになった。もしかしたら好きになったのかもしれない。でも…

「厚志!何をしている士魂号の調整に行くぞ!」
「あ・うん今行くよ じゃあね」

アイツには芝村がいる…最近少しだけあの時若宮センパイの言ったことが…解った気がした。


==田代香織の事情 了==






え?エロ無し?正気!?
76名無しさん@ピンキー:2005/03/22(火) 09:43:35 ID:FGGNWAEO
テスト
77名無しさん@ピンキー:2005/03/22(火) 10:14:16 ID:FGGNWAEO
ありゃ?書けた。
規制が解けたんか・・・。

機会があればそろそろ一つ投下してみるとしますか・・・。
7870:2005/03/24(木) 00:09:58 ID:7WrhM+Nv
>71
>73に先に言われたけど、そう言う事。噂でしょそれ。
で原も森も萌もみんな不器用だから、ってのが理由だと俺は信じてる
ヤケドだってなんの疑問もなく前の学校だと思ってた。

萌の態度についイライラしちゃう原と森。みたいに。
79名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 12:54:02 ID:rCGZfUi6
日本人だったら言葉の裏を読め。噂の形にしてあるのは角が立たないように
するためと、主人公に自分自身で確認させるためだ。少なくとも瀬戸口と中村のセリフは。
まあ、こう言っても無駄なんだろうけれど。物事を自分の都合の良いように
解釈したくなるのはオレ自身理解できるし。
80名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 17:46:14 ID:uxuYRiA/
何があったのかキチンと語られてないから妄想し放題ですよ。


原と森と萌・・・(;'Д`)ハァハァ
81名無しさん@ピンキー:2005/03/25(金) 22:15:35 ID:gJBNBNFz
原さんが萌を虐めるのって、善行が萌を気にかけてるからだったっけ
原さんとしては善行の気を惹きたいのだから、跡の残るような虐め方はしないと考えた方が自然だよな
でも、原さんって切れると刺す人だからな〜
いやいや、刺す人だからこそ、刃物傷ならともかく火傷跡はつかないはず…
82名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 15:45:45 ID:Qf9DM03p
自分も火傷は中学時代のいじめのせいと思ってたけど。
あの頃本当に酷いいじめられ方して、精神壊れかけてたからAが憑依出来たんだろ?
電撃小説版でも原さんは姑みたいな嫌がらせしかしてないから、
てっきり「石津さんの作る味噌汁はしょっぱいわねぇ私を高血圧で死なせようっていうのかしら」
とかそんなノリだと思ってた。
83名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 21:08:29 ID:tBj1EoNI
>82
電撃小説版って榊のやつか?
だったら原・森のいじめによって萌は死に掛けてるぞ。
84名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 22:35:45 ID:/1zKgbFC
あのヒス女に関しては、イジメしてるかどうかなんて些細なことだろ。
85名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 01:06:10 ID:H8G/CMjn
萌える場所なのに荒らしてどうすんだよw
原が好きな奴だっているんだ。若宮とか。
そういう奴がいるからにはどっかいいとこあるんじゃねーの?
86名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 13:34:58 ID:ZtkdxKVC
そういや石津にブレインハレルヤ使うって四コマがあったな。
「おねえ・・さ・・・ま・・・も・・・っと・・・いじめて・・・」だとか何とか言ってて萌えた記憶が。
87OVERS:2005/03/29(火) 21:26:30 ID:FhhesRfK
>>86
ソレダーーーーーーーーーー!!
88名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 22:33:29 ID:XBypANxw
>85
原さんのいい所は顔だろ?一応ミスコン顔だかアイドル顔ってキャラ解説になってたはずだし。
ちなみに原がねちっこい小姑みたいな性格は善行がへたなわかれかたをしたせいだったはず。(嫉妬深いのは前からだが)
善行と付き合っていた頃は素直な良い子だったんだ。
ということで恨みつらみは善行にぶつけるべし
89名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 00:38:59 ID:4uANKn3T
>88
おまい良いこと言うな。しかし善行さんに俺はついていくと誓いを立ててしまった…
善行さんも不器用な男だったという訳だ。っつーことで誰か来萌の純愛キボン
90名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 07:46:17 ID:ZJzna7xt
来萌ってまたオカルティックな・・・
まあオレも好きだが。
91名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 10:08:21 ID:ElvYsB4X
そこで来須プレイの二日目に萌を恋人にした俺ですよ。



いや、SSは書けんが。
92名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 11:46:21 ID:4uANKn3T
萌が実は巨乳だったらということを提案してみる。
ゴスロリできょぬー…そして暗い。う〜ん…マニアックだぜ
93名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 15:16:22 ID:ZJzna7xt
俺的カプは狩谷×田辺な訳だが。
94名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 17:09:17 ID:ZvuMDL/E
森茜姉弟の爛れた性生活を。
95名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 18:33:00 ID:ZJzna7xt
ここエロなしはどうなのよ?
最近エロなしおKのとこ多いから聞いてみる訳だが
96名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 20:23:28 ID:0NGOdCYI
エロいネタすら最近は少ないんだ。
いくらでも来い!!

しかしニーギ(否新井木)好きは少ないんだろうか?
97名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 20:33:29 ID:wvRNE5Va
同士よ
9895:2005/03/30(水) 21:00:46 ID:ZJzna7xt
俺も好きだよ?ただ式神の設定を全然覚えてないから書けないだけ。
99名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 21:39:42 ID:8gtWnBZi
>>92 きょぬーな萌なんか萌じゃないやい。ひんぬーだからこそ萌は萌なんであっt
(99の首筋に注射器が突き立てられた)
100名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 23:17:39 ID:ZJzna7xt
エロなしおKなら書いてみるか。
狩谷×田辺だけどな。
来萌は…が多くなりそうでだるそう…。気が向けば書くかもしれんが。
テンションあげるために再び起動するかな。
101名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 12:05:29 ID:NWLw3gHk
今気付いたが100ゲトしてた…
俺のPS2がガソパレを読み込まなくなる罠にはまってしまったわけだが…

まあそれはそれとして、萌が原さんにいじめられるを、萌が原さんに性的にいじめられるに脳内変換してみるのはどうよ?
102名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 14:01:50 ID:g+o8k2ST
>101
「あなた…こんなことされて、感じているのね」
「なっ。は、離して!離しなさい!」
「いや…よ」

みたいな図が一瞬で浮かんでしまった。
103100:2005/03/31(木) 14:55:37 ID:NWLw3gHk
なんかしらんが俺の脳が変なものを受信した。という訳で投下。


「はぁ…」
最近私には、悩みがある。
あの日。善行と別れてから私は、二度と恋などすまいと思っていた。
たが、その私が今はどうだ?
あの子の一挙一動に心を動かされてしまう。
認めたくない。そんな理由であの子を傷つけて、遠ざけて。結局自己嫌悪に陥ってしまう。
本当はそばにいたいのに。抱き締めて、その唇を―
そこまで考えて我にかえる。私は何を考えているのだろう。
あの子は―
石津さんは女の子だというのに。



善行と別れたせいで百合に目覚め、好きな気持ちを否定するため萌をいじめてしまう、みたいな。

続きは気分が乗ったら書くかもしれん…
10470:2005/03/31(木) 22:32:00 ID:zWYtCZeU
>103
期待してます。原さんの萌いじめの理由はそうであってほしいドリーム
105103:2005/04/01(金) 00:05:37 ID:NWLw3gHk
ネタで書いたものを期待されると困る…。
しかし期待されると断れないのが俺のよくないところなわけで。
頑張るか。
106103:皇紀2665/04/01(金) 01:04:36 ID:DEe3fM3u
彼女の事が気になり出したのはいつからだっただろう。
初めは善行に可愛がられている彼女が妬ましかった。
ただ、それだけだと思っていた。
彼女が善行の側に居るだけでイライラする。
だから、彼女が善行から離れるように色々なことをした。
だけどその度、胸が痛んだ。
―罪悪感だと思っていた。
確かに罪悪感ではあった。ただし、彼女にではなく善行に対してだが。
私は善行から彼女を遠ざけたかったんじゃなく、彼女から善行を遠ざけたかったのだ。
何てことはない。最初から私は彼女の事を―
日に日に強くなってゆく想いを必死に閉じ込めてきた。だけどそれも、もう限界が近い。
いますぐにでも彼女を自分のものにしたかった。
だが就業時間の終りまであと15分はある。たったの15分。
しかし皆をまとめる整備班長という立場である以上、仕事を監督する義務がある。
いくら最近出撃がないとはいえ、手を抜くわけには行かない。

時間が経つのがもどかしい。
速く、速くと急かす心を責任の一言で押さえ付ける。
時計を見ると就業時間まで後5分に迫っていた。
たった5分。それだけの時間がこんなに永く感じるとは。
私はおかしくなっている。狂っているのだろう。…恋をしているから?二度としないと誓ったのに―
107103:皇紀2665/04/01(金) 01:07:36 ID:DEe3fM3u
なんというか…
ムズいよ、これ。自分で言い出した訳だけど。
有り得ないカプだしな〜。一応最後まで書くとは思うけどね。
108名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 03:07:15 ID:Vz0HbHiI
107
マターリ待ってるからガンガレ
109103:皇紀2665/04/01(金) 12:22:54 ID:DEe3fM3u
就業時間が終わると同時に私は即座に席を立ち、走り出していた。
我ながらみっともない、と自嘲する。
これではまるで恋する少女ではないか。
冷静になれ。私はもっとクールな女だろう?
たかだか小娘一人程度に振り回されてどうするのだ。
何とか落ち着きを取り戻しかけた心も整備員詰め所から出てくる彼女の姿が目に入った途端、一瞬にして瓦解してしまう。
「石津さん。話があるんだけど」
暴れる心を必死に押さえ付け平静を装う。
彼女の肩が震えているのが解る。
当然の反応だ。私は彼女のをイジメている主犯格なのだから。
「………」
彼女は返事をせず、こちらを振り向く気配さえ窺わせない。
顔も会わせたくないということか。
辛い。苦しい。これが私のしてきた事への罰だというのか?
気持ちを偽り続けた代償だと?
「石津さ…」
彼女を振り向かせようと、肩に手を置こうとしたその時だった。
彼女は走って逃げ出したのだ。
私は無我夢中で彼女を追った。
夜の風が私を包む。だが、この程度で高ぶる胸の熱さを冷ますことなど出来ない。
近付いてゆく彼女の背中。詰まってゆく彼女との距離。
そして私は、校舎裏で彼女に追い付きその手首を掴んだ。
「なちなさい。どうして逃げるのよ!」
わかっている。私の事が嫌いだからだということぐらい。
私はそう思われても仕方ない事をしてきたのだから。
110103:皇紀2665/04/01(金) 12:39:50 ID:DEe3fM3u
「………」
相変わらず返事は返ってこない。だが、掴んだ手首から伝わってくる震えが、強くなっていくのを感じる。
それに比例するように私の中の苦しみも、重さをましていた。
その状況をどうにかしたかった。
愛しい気持ちと罪悪感で私はどうかなってしまいそうだった。
だからなのかもしれない。私は強引に彼女を振り向かせ、次の瞬間にはもう抱き締めていた。
彼女はとても驚いていた。当たり前だろう。
自分をイジメていた、自分を嫌っているだろう相手からの突然の抱擁など理解できる方がどうかしている。
成長途中ではあるが柔らかなその四肢。
うつ向いていてもわかる可愛い顔。
少しウェーブのかかった艶やかな黒髪。
彼女の全てが愛しい。
「……どう…して?」
彼女の発した言葉は困惑だった。
「私は―」
恋をするのが怖かった。傷付くのを恐れていた。
だけど、私ははまた恋をした。
思えば私は臆病だった。逃げて逃げて、逃げ続けていたんだ。
でも、もうそんな私からはサヨナラしなくちゃいけない。
待っているだけじゃ何も始まらないのだから。
勇気を出して、私は―
「あなたを、愛しているわ」
と、言った。
111名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 22:54:17 ID:M9CEeV/I
>110
まだエロくないのに起った
112名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 20:06:13 ID:zJBC4Lon
4月バカ丸一日2ちゃん断ちしてたら>>103氏がキテター
急がなくていいんでガンガレー
113名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 00:42:15 ID:PL8VWoYN
>103
苦悩する百合おねえさまイイヨ(・∀・)イイヨー
こういうの待ってたよ 続きに期待
114名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 12:17:13 ID:pc6j6EEu
それで物陰からスカウト二人組が見ているんだな?!
115名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 15:01:29 ID:Eb1dAFw2
やっぱ、俺屍ってキャラが神様、昼子ぐらいしか固定じゃないから
SS少ないね。
116名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 19:56:11 ID:Yz5wZwFD
遅レスだけど
俺屍SS書いたひとGJ!
いまだにファンが多いのわかる気がするなあ・・・とSS読んで思タ
117名無しさん@ピンキー:2005/04/10(日) 19:26:00 ID:DWsIKfro
俺屍SSは、他にもありますか?過去ログの見方がおかしいのかなー…トホホ。
118四条 ◆JeifwUNjEA :2005/04/10(日) 19:44:09 ID:yhtb/Ex+
>>117
エロくない作品スレの過去ログにありまする
かなり前から連載がストップしてるみたいでつ

119名無しさん@ピンキー:2005/04/11(月) 22:55:24 ID:uXuNZXDt
このスレ、予告と書き出し&馴れ合い発言で放置、あとはシチュ批判ばっかり・・・。
それで次の職人さんが遠慮して投下待ちって・・・。
保険発言&賞賛カモン!しながら、だらだら出し惜しみする人ほどつまんない内容なのにね。

120名無しさん@ピンキー:2005/04/12(火) 00:18:45 ID:mSX4FlSB
この板のどのスレでも通用しそうな意見だなー
121名無しさん@ピンキー:2005/04/12(火) 07:08:04 ID:+xXt9VbH
個人サイトのBBSとは違うわけだし、
荒れたくはないけど、だからといって書き手と名無し、名無し同士が
仲良しこよしで馴れ合う必要もまたねーしな。
122名無しさん@ピンキー:2005/04/12(火) 18:38:42 ID:KWffsGCc
ブリーチで舞タンを発見…芝村一族はソウルソサエティにも進出していたのか……
123名無しさん@ピンキー:2005/04/15(金) 04:26:57 ID:j2zhTVT6
>>119
思っても言わないのがお約束ですよ。
124名無しさん@ピンキー:2005/04/17(日) 01:00:50 ID:83MXuHoB
>122
しょーさい、しょーさい!!
125名無しさん@ピンキー:2005/04/18(月) 21:59:27 ID:Mo/8/HoP
>>119>>121のカキコで書き手が引いてんのかな?
新作読みTEEEEEEEEEEEEEE!
126四条 ◆JeifwUNjEA :2005/04/19(火) 02:46:17 ID:mXVyfB/k
えーとですね、103氏のが良い雰囲気なんで邪魔したくないなーとか思ってます
漏れのは物凄い軽いノリなんで
シチュ批判、というか雑談の内容は一切影響してないっす
原作違うし、その後に投下するガンパレも↑には引っかからないカプだけだし

うpする時間もねぇやちくしょー
127名無しさん@ピンキー:2005/04/20(水) 09:50:27 ID:RUbiebxm
ガンガレ>>126超ガンガレ!!
128ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:52:23 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・その1>
「―当主様、やはりお考え直しになりませぬか」
七篠家第四代「一太郎」こと四天丸は、苦渋の色を浮かべて進言する一族の者たちの言葉を、黙って聞いていた。
「たしかに五郎は、若輩の中では随一の使い手ですが―」
「あやつは、気性が荒すぎます。戦いの時ですら他の者のことなど眼中になく、己一人のように勝手に振舞います」
「先の出陣の折りも、他の者と連携もせず、死人が出なかったのが不思議なくらいで―」
「いや、燕どのがあやうく死にかけましたぞ」
口々に語られる五郎への批判に、壮年の剣士は腕組をして目を閉じたままだった。
板張りの広間に、沈黙が満ちた。
一座の者は、その威厳に気おされたようにいったん口を閉ざしたが、積もった憤懣はかなりのものであったらしい。
また口をそろえて、五郎の次期当主指名をいさめ始めた。
「それにあやつめ、あれほどの腕になっておりながら、いまだ<お雫>の術すら使えません」
決定打のつもりだろうか、四天丸に次ぐ年長者が、大きな声で言った。
<お雫>は、中級の癒しの術である。
単純な割りに強力な回復術であり、創家以来四代を重ねた七篠家の面々ならば、心得ていて当然の術であった。
たしかに、怨敵・朱点童子を大江山に討伐せん、と機運高まる七篠の戦士たちにとしては、それは致命的な欠点であった。
「―五郎は、<心の水>に著しく欠けております」
「人を思いやる心をもたぬ者を、七篠の主に据えることはなりません。―当主様、なにとぞご再考を!」
四天丸は、ゆっくりと目を開けた。
「―そうか。五郎は、<お雫>を使えぬか」
七篠の当主の座にあってもう一年半を閲する男は、あごに手を当てて考えていたが、やがて、問題の槍使いを呼ぶように命じた。
129ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:53:00 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・その2>
「五郎、当主様がお呼びだよ」
燕の声が、下から聞こえる。
五郎は、物憂げに樹の下の少女を眺めた。
「なんだ、俺の追放でも決まったか?―いよいよお前が次期当主だ。頑張れよ」
少女は驚いて息を呑み、それから真っ赤になって怒鳴った。
「冗談でも言うな! お父はそんなこと言わない!」
燕の父は、現当主の四天丸である。
初代一太郎から続く七篠当主の直系に生まれた娘で、その剣才は目を見張るものがある。
父の四天丸が剣士として育て、奥義を伝授したのもうなずける。
だが、戦士としての天分、実力は、五郎にはるかに及ばない。
燕だけでなく、七篠家の次世代を担う少年少女たちは、束になってもこの槍使いにかなわなかった。
いや、当主の四天丸を除いて、一族の誰もが五郎に及ばない。四天丸でさえも抜かれるのは時間の問題だろう。
五郎が、これほどの問題児でありながら、次期当主候補からはずされないのはこの実力に理由があった。
しかし、本人は、それをあまりよく思っていない。
「―だいたい、七篠の当主は「当主直系の剣士」という不文律があるだろう。傍流の槍使いがなることはない」
五郎は、木の枝の上に寝そべったまま、燕に言った。
「ちがうよ、もっと強い不文律がある。当主は、「その代で最強の男」が継ぐこと―」
たしかに、七篠の当主に関しては、その二つの不文律があったが、今までは何の問題もなく家継が行われていた。
初代から四代に至るまで、七篠の当主はその条件をかねそろえていたからである。四天丸のように。
だが、その子の代になって初めて候補者が割れた。
男子を授からなかった四天丸には「当主直系の剣士」として燕という娘がおり、「その代で最強の男」である五郎が別にいた。
「―ままならんものだな」
五郎はぼそりとつぶやいて木から飛び降りた。
130ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:53:35 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・その3>
「で、話とは何だ。当主殿」
五郎は、ぶっきらぼうに上座の剣士に尋ねた。
挑発的な気持ちはないが、一歳半―それは短命の呪いをかけられた七篠一族にとっては五十年にも値する―
も年上の当主に対して不遜な印象は免れない。この場に他の者がいれば、たちまち非難を浴びせるだろう。
「うむ。―単刀直入に聞こう。お前は<お雫>の術を使えんのか」
「……使えぬ。使おうとも思わぬ」
「そうか……」
四天丸は顎をなでた。
「併せの術も苦手だ。……なぜそんなことを習得せねばならんのか、実は分からぬ」
五郎は、とつとつと語りだした。
「いや、癒し技も併せの術も、俺以外の者にとって必要なことは分かる。
だが、そんなことの前に一突きで敵を倒せばそれで良いではないか、そう思われてならん。
そもそもが、自分より弱い人間と組んで敵と戦い、それに併せながら戦わねばならぬことがしんどい。
出来うるならば、一人で戦い、一人で勝ち、一人で敗れて一人で死んでいきたい。
それが、七篠の戦い方として危険な考えであるなら、俺はここを去ってもいい」
槍使いは、たしかにその傲慢なことばを吐くほどの実力があった。
この天才は、血を重ねることで強力になる七篠一族において、二代か三代先の力を備えた突然変異者だ。
だが、お雫の術すら使えぬほどに心の力が偏っていては、当主どころか、七篠の一員としても危う過ぎる。
―どうするべきか。
当主の心はすでに決まっていた。
「―五郎に命ずる。交神の儀を行え」
「なっ……?!」
「……相手は、那由多ノお雫様だ」
131ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:55:56 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・その4>
「君が、五郎君? ―よろしくね!」
岩の上に腰掛け、素足を清水にくぐらせながら、女神はにっこりと笑いかけてきた。
五郎は返事をせず、あたりを見渡した。
那由多ノお雫の住居は、綺麗な小川が幾筋も流れる、明るい林の中だった。
なんとなく、神と言うものは豪壮な神殿の中に鎮座しているものだ、と思い込んでいた槍使いはちょっととまどう。
「返事はなしか―。聞いてる以上の無愛想さんね」
袖なしの白い衣に水色の宝玉を無数にちりばめた衣装をゆらして、女神が苦笑する。
「そんなことは、どうでもいい。―とっとと交神の儀を済ませよう」
これ以上はない、というような仏頂面で五郎は言葉を返した。
儀式の中身は知っていたが、別段、期待もない。面倒だという思いのほうが勝っている。
お雫は、ぷっと頬を膨らませた。まだ若い女神は、顔立ちに幼さが残るせいか、そうした表情が良く似合った。
「あー、可愛くないーっ。せっかく君と会ったときに<選んでくれてありがとう>って言おうと思っていたのに……」
それが、この女神が昨晩夜なべして考え、明け方になってようやく決まった「求愛を受け入れる言葉」ということを五郎は知らない。
知らないから、さらに冷たい返事をした。
「それも、どうでもいいだろう。はやく終わらせて帰らせてくれ。子供が出来れば、七篠ともおさらばだ」
まさに今、床を共にしようとしている相手からそんなことを言われれば、女ならば、誰でもカチンとくる。
たとえ、それが慈悲深い水の女神の中でも―少々おてんばとはいえ―もっとも優しい一人といえども。
「…ふ…うん、…そういうこと、言うんだ…」
お雫はちょっと目を眇めて五郎を見つめた。
「―君には<心の水>が足りないね」
「そんなものは戦いに不要だ」
「そう思う? ―まだまだ未熟ね。…水の女神って、普段は大人しいけど、怒るとけっこう恐いんだよ?」
お雫が冷たく微笑んだ。その美貌に、戦慄を覚えた五郎が本能的に跳び下がろうとした瞬間、女神は呪を彼に投げかけた。
五郎の体が硬直する。
「<くらら>。―これも水の術よ。私の妹分が創った術だけども、私も得意なの」
強力な催眠にからめ取られて失神した無礼者を見下ろし、女神は微笑に残酷なものをにじませた。
132ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:57:06 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・5>
目を覚ますと、五郎は小川の中にいた。
五寸もない深さの清流に胡坐をかいた状態で座らされている。
後ろ手に縛り上げられた腕を動かそうとするが、びくともしない。立ち上がることも出来なかった。
「むだよ。―水竜の髭を千切れるほどまだ君は強くないわ」
正面の岩に腰掛けたお雫が彼を見下ろしていた。
「俺を、どうするつもりだ?」
五郎は恐れることなく女神をにらみつけた。己の未熟は痛感したが、心は折れていない。
「んー。交神の儀の前に、君には特訓を積んでもらおうと思います」
お雫はにっこりと笑ったが、まだその笑顔にはちょっと恐いものが混じっている。
「―特訓?」
「そ、<お雫>の術が使えるようになるまで、君は永久にここから帰れません」
「それは無理だ。……俺は…使えんよ…」
五郎は珍しく目をそらした。<心の水>が決定的に欠け、使えぬ術があるということは、
本当はこの天才にとって大きな心の傷だった。
「あら……」
相手の表情を見て、お雫の瞳がちょっと和らいだ。<心の水>に長けた者は、相手の心情を読み取ることが得意だ。
女神の微笑から意地悪なものが抜け、本来の優しげなものに戻る。
「―大丈夫よ。君が本当に覚える気があるなら、絶対に覚えられるわ。
なんといっても先生がいいもの―わたしは、あの術を創った本人なのよ」
お雫は、帯を解いた。宝玉がちりばめられた衣を脱ぎ捨て、裸になる。
女神の裸身を目の前にして、五郎は呆然とした。
「今日は特別。<お雫>にも必要な<心の水>の極意、君に教えてあげる」
お雫は立ったままで足を軽く広げた。座り込んだ五郎のちょうど顔の高さに「それ」が来るように調節する。
「ね、舐めて―」
水の女神は、腰を押し出すようにして自分の女性器を五郎の目の前に突き出し、恥ずかしそうな表情で言った。
133ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:57:44 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・6>
「な、舐めるって……これをっ!?」
五郎は狼狽しきった声をあげた。
「あ…大丈夫、汚くないよう。私、水の女神だもん」
確かに女神は自分で意識してしなければ排泄を行わないし、そもそも水の女神ほど綺麗好きな神様もいない。
お雫はあわてて言ったが、五郎が懸念したのはそれではなかった。
「そ、そ、そんなことできるか―!」
目の前三寸の距離にある女神の性器から必死になって目をそらす。
真っ赤に茹で上がった顔と、どもった声が、女神に真意を容易に測らせる。
「……意外。ずいぶん恥ずかしがり屋さんなのね」
「ち、ちがっ―!」
真っ赤になって反論しようとして正面を向き、目の前のお雫の秘所をまともに見て慌てふためく。
「えへへ、照れてる、照れてる。―遠慮しなくてもいいよ、たっぷり見て」
そういうお雫のほうも、頬が少し赤い。それを隠すように、勢いよくまくし立てる。
「君だって男の子だもん、女の子のここには興味あったでしょう?、それが普通よ。
男の子なら、好きな女の子のここを見たくなるし、舐めたくなるし、他のこともしたくなるもの。
そして女の子は、好きな男の子に見せたくなるし、舐めてもらいたくなるし、他のこともしてほしくなるの」
どさくさにまぎれ、相手に好意を抱いている事を口走ったが、混乱しきった五郎はむろん気付かない。
「で、できるか、そんなこと!」
もう一度、自分に言い聞かせるように大声で怒鳴り、五郎はぷいと顔を背けた。
ちょっとの間、あっけにとられたような表情を見せたお雫だったが、
やがて唇に微苦笑を浮かべて、五郎の顔を覗き込んだ。
「…そんなこと言っても、君のここは、そう言っていないみたいだけど?」
お雫の白い素足が、浅い流れを割って動いた。胡坐をかいている五郎の足の間に滑り込む。
「―あっ!」
槍使いはうめいた。お雫の足は水に濡れた袴と褌の上から、正確に五郎の男根をなぶっていた。
134ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:58:15 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・7>
「ほれほれ、硬くなってるぞ、―どうしてかな?」
足指で布越しに五郎の男根を掴んだお雫は、意外な強さでそれをこすった。
槍使いは声を殺して上体を震わせる。
「ふふーん、金冷法が効いてきたかしら?」
お雫は笑った。浅瀬に浸かった五郎の下腹部は、冷たく綺麗な水にさらされている。
男子の急所は熱に弱い。反面、冷やすと精力増進につながるという。
「ま、本当のところは、さっき君の体液の流れを少しいじらせてもらったのが原因なんだけど」
くすくすと笑いながら、足指を器用に動かし、女神は五郎の袴の紐を解く。
五郎の褌は、中からの圧力で大きく膨れ上がっていた。
「体液の…流れ…?」
荒い吐息をつきながら、七篠の槍使いはお雫を見上げた。
「うん、君に素直になってもらうのに、ちょこーっと、ね。
―精液を作る力をほんの三倍くらい増強しただけ。気にしない、気にしない」
「うわわっ!」
股間に感じる違和感の正体を認識した瞬間、五郎はすさまじい射精欲に跳ね上がった。
「うふふ、呪をかけたから射精は出来ないぞ。―君が<お雫>の術を取得するまで」
「ひ、卑怯な……、あ、足をどけろ…」
五郎は、がくがくと震えながら抗議した。
褌の上から優しく男根をなで上げる女神の足は、今の五郎にとって凶悪極まりない拷問器具だった。
「なんとでもおっしゃい。槍を構えてエイ、トウ、だけが全てじゃないのよ。
世の中はいろいろな方法で満ち溢れているの。戦い方も、愛し方も。―よく勉強しておきなさい」
お雫は手の―いや足の動きを休ませずに言った。
それから、それを続けながら、五郎に自分の秘所を舐めるかどうか質問した。
強情な槍使いは、ここからさらに二回拒んだが、三度目についに女神に屈した。
135ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:58:54 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・8>
「うん、その調子よ」
お雫の股間に顔をうずめた五郎は、湿った音をたてている。
秘所を舐める舌には、技術も熱心さもなかった。
天才槍使いは、屈辱感と敗北感いっぱいで、しかたなく舐めているのだろう。
しかし、お雫はそれには触れなかった。
―強制した奉仕を受けていることに悦びはない。
相手の心を察する<心の水>に長けた水の女神たちは、自分に何かされるだけの関係を好まない。
相手の快楽を感じ取り、自分の快楽に変えることが出来るために、むしろ奉仕するほうを好む女神が多い。
―もちろん一番いいのは、自分が相手を、相手が自分を悦ばせようとする関係だが。
六ツ花御前や月寒お涼など、いかにも冷たさそうな氷の女神たちでさえ、閨ではひどく優しい。いわんやお雫は―。
その彼女が、一方的な奉仕を「我慢して」続けさせているのは、理由があった。
(ごめんね…あんなに赤黒く膨れ上がって…かわいそう…)
自分がかけた呪のせいで、はち切れんばかりの男根を抱え、苦しげに奉仕を続ける五郎を見ると、
お雫は、目的あってのこととはいえ、済まなさと憐憫でいっぱいになる。
いっそ全てを解き放ってこちらが奉仕してやりたい―。
口でも性器でも、五郎に最高の快楽を与えることが出来る自信はあった。
(―だけど、それではだめ。この子のためにならない)
お雫はぐっと我慢した。土の女神と並び、水の女神は辛抱強いことで知られている。
(―そろそろ、来てくれてもいいんだけど…)
あることを待ち続けるお雫が、そっと息を吐いた瞬間、それは唐突にやってきた。
気のない奉仕を続ける五郎の舌が、何百何千分の一の確立で、お雫の敏感な部分をタイミングよくなぶった瞬間。
「―っ!!」
お雫は身をよじった。声をかみ殺す。
「……!?」
五郎は相手の反応に驚いた。
「―いいのよ。……気にせず続けて」
お雫は一瞬にして去った快楽をあえて追わず、身体を立て直した。
136ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 11:59:50 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・9>
五郎は考えた。
―お雫の、今の反応は何だろう?
舌と唇を休めず、注意深く自分を縛り上げている女神を伺う。
…たしかさっきは、ここをこうして……。
同じように動かしたはずだが、今度はお雫はちょっと震えただけだった。なかなか難しい。
五郎はにわかに、今、自分がしている行為に興味を持った。
最初はそれを、自分を上から見据えている女神に反撃したい、という気持ちからだと思ったが、
すぐにそうではないことに気づく
(さっきの……なんか可愛かったな)
目の前の女が快感に身をよじらせたことは、性交経験のない槍使いにもわかった。
どういう理由か分からないが、もう一度それを見たい、という感情が強く沸く。
五郎の舌使いは慎重になった。目の前の花園を少しずつ確認しながら行為を行う。
集中してくると、いろいろなことが分かってきた。
女神の息遣い、体温、肌を伝う汗、性器の形状―最初見たときのどぎまぎとした感情がよみがえった。
(こうかな?)
「あっ……!」
お雫はまた身をよじった。目をつぶって、熱いため息をつく。
何度か繰り返しているうちにコツがつかめてきた。女神が悦ぶたびに五郎の中にも喜びが生まれてくる。
(―この流れだと、今度は、ここだ)
次にお雫が「して欲しいこと」がなんとなく読めてきた。慎重だった五郎の動きが徐々に大胆になる。
女神は身を震わせる時間が長くなり、しだいにその体勢は崩れていった。
そして、ついに、お雫は達した。
137ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 12:00:30 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・10>
「ひっ―!」
がくがくと身を震わせたお雫の様子に、五郎がびっくりして顔を上げようとすると、女神はその頭を抱え込んだ。
「だめ、いっちゃう。―私の雫、受け取って」
かすれた声と同時に、女神の秘所から、達した証―大量の蜜液が溢れ出して、五郎に降りかかった。
顔をつたう女神の<お雫>を、五郎はごく自然に口を開けて飲み込んだ。女神の作った至上の液体を。
―後年、五郎はあらゆる薬の中で最上級と言われる<大甘露>を飲んだときに、
「世の中にはこれ以上のものがある」といったと言う。
お雫は体の痙攣がおさまるのを待って、五郎をつかんでいた手を離した。手足を縛る水竜の髭も切る。
「―ありがとう。すっごく、気持ちよかった」
「俺も……」
射精をしていないのに、五郎は充実感に満ち溢れている自分に気が付いた。
きっと恥ずかしげな女神の微笑を見たせいだ。
この微笑みは、自分が作った。―その確信が、男の心を充たす。
「―それが<心の水>よ。相手を読み取る心の働き。もう、君も<お雫>が使えるはずよ」
お雫はにっこりと笑った。
五郎はびっくりして女神を見上げた。
「―ふふ、ま、それは下界に帰ってから試してみなさい」
お雫は岸に上がって柔らかな草の上に腰掛けた。ぽんぽんと傍らの草を叩き、横に来るように五郎を誘う。
「……今は、交神の儀をしましょう。
君にたっぷり気持ち良くしてもらったから、今度は私が君をうんと気持ち良くしてあげたいな。
それから、二人で一緒に気持ち良くなろうよ!」
その言葉通り、お雫は五郎にたっぷり奉仕した後、その潤みきった蜜壷に彼を優しくくわえ込んだ。
五郎は溜まりに溜まった欲望を何度も女神の中に吐き出し、お雫はそれを全て受け止めた。
―数刻後、ぐったりとして夢見心地の槍使いを抱きしめながら、お雫はささやいた。
「童貞卒業おめでとう、七篠の五代目当主サマ。―君と私の子供、きっと良い子に産んであげるから、楽しみに待っててね」
138ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 12:01:11 ID:zhFsUEIx
<七篠家五代当主・五郎・11>
「―くっ! ―強い!」
<朱点閣去る橋>を守る鬼、石猿田衛門の必殺の突きを受けて燕は吹き飛んだ。
(せっかく、ここまで攻め上ったのに―)
鉄壁の防御力と高い攻撃力を持つ田衛門は、燕や五郎など力押しを得意とする今回の討伐隊にとって鬼門だった。
五郎ですら互角が精一杯という強敵に、複数同時攻撃を使われては打つ手がない。
(せめて五郎が他の人間と上手く連携してくれれば―)
あるいは戦い方によっては勝てぬ相手ではない。しかし、それは望めまい。血を吐きながら燕は立ち上がった。
回復の術を使いたいが、石猿は意外に素早い。自分の敏速では先手を取れるかどうかは運だ。
(―あれ……?)
田衛門の前に、五郎がいなかった。討伐隊の残りの二人が必死になって鬼を防いでいる。
あの二人では、せいぜい一巡りの防戦が手一杯だろうが、―五郎はどこに?!
「―動くな、術がかけにくい」
背後から声をかけられ、燕は硬直した。
右肩に燃えあがるような感覚が走り、すぐにそれが痛みとともに涼やかに引いていく。
「これは―<お雫>!?」
怪我を癒された燕は驚いて振り向いた。五郎が立っていた。
「……俺の一番得意な術だ。―青葉、彦兵衛、散れ!」
燕の脇を疾風のごとく駆け抜け、五郎は愛槍を振るった。的確な指示を受けた二人が跳び下がると、石猿の前に立つ。
「―燕! <花乱火>の併せだ! お前に合わせるぞ!」
五郎は田衛門の刀を避けながら叫んだ。燕はもう驚かなかった。
彼女の父親の死により、今月、七篠の五代目当主になったばかりの男の指示に従い、他の二人とともに術を唱え始める。
後ろを振り向くことすらせずに石猿と渡り合う五郎が、自分の分の術を失敗するかもしれない、という心配はなかった。
今の一連の動きでわかった。―五郎は、いまや一族の中でもっとも<心の水>に長けた男なのだ。
相手の心を読んで、味方がして欲しいこと、敵がされたくないことを悟ることはお手の物だ。
―数瞬後、完璧な七倍掛け<花乱火>を受けて石猿は倒れた。

……七篠家の第五代当主は、大江山討伐を成し遂げた人間として、今でも一族の語り草だ。
また、五郎は<お雫>をはじめとする各種の回復術に長けた術者としても、子孫のお手本となっている。
139ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/04/23(土) 12:05:40 ID:zhFsUEIx
最近のスレの流れがよくわからないけど、久々に俺屍書けたので投下します。

お雫様はサークルとかの一年センパイのお姉さんというイメージがあります。
コンパでは意外にノリがいいけど、帰りは飲みすぎゲロゲロの後輩を面倒見よく介抱したり…とか。
140名無しさん@ピンキー:2005/04/24(日) 22:26:58 ID:p5yTR3/+
GJ!!
愛液を大甘露の描写にくすりと笑ってしまいました。
141名無しさん@ピンキー:2005/04/25(月) 00:35:01 ID:tI3iXd96
GJ age
142名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 09:52:21 ID:hKbFDryW
GJageの併せ、2人目!
これは面白いv
143四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:26:53 ID:nyyPl1OT
適当に書いてしまった式神SS投下
144四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:27:39 ID:nyyPl1OT
「くうっ!?」
「こんにゃろ!」
小夜に仕掛けた化け物に札を思い切り叩きつけてやる。
どおん、と派手な爆発。
後には塵だけが残った。
「小夜、大丈夫か?」
「……大した事ではありません。ひどく弱い呪い、ですね」
その装束には僅かな黒ずみがある。余程の不意打ちだったんだろうな。
しかし。
「なあ、どうしたんだよ、こんなのばっかりだろ」
何となく心配になる。どうも最近は注意が散漫で、さっきのように簡単に
化け物の攻めを喰らってしまう。
ちょっと前にデカイのを倒したばかりだ。その直後は流石に疲れ果てて
暫く休養をとったはずだけど、まだ全快じゃないのか。
「大丈夫、です。……帰りましょう光太郎さん」
涼しげな笑みだけど、どこか影があるように感じられる。
「本当か?……送ってやるよ」
手を繋いで俺達は歩き始めた。
145四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:28:22 ID:nyyPl1OT
小夜の部屋はオッサン(玄之丈)の事務所から少し歩いた所にある。
丁度俺の部屋とは事務所を挟んで正反対の場所だ。
デカイのを倒した後、小夜は故郷に帰るだろうとの予想を裏切り、この町で修行すると言い出した。
小夜の力は強い。強すぎるあまり、無関係な人達をほんの僅かだけど巻き添えにしてしまった。
それを悔やんでの決意なのだろう。
『わたくしは倒す術しか知りません。守る術を身に着けたいのです』
ま、俺としては小夜と一緒にいられるのは素直に嬉しかったけどな。
色々あってオッサンが部屋を都合し、ふみこが使わない家具なんかをくれてやり、
金先生なんかは化け物関係の事件があれば優先して情報をくれるし。
そうじゃない依頼も出来るだけ俺と組んで解決する、という状態なのだ。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
そして、こんなふうに二人きりで肩を並べてお茶を飲む以上の仲だったりする。
男女の間に友情はない。全くその通りだと思う。
デカイのを倒し、その後にやってきたのは平和と、こいつに対する特別な感情だった。
この部屋に最初の客として呼ばれ、小夜も同じだった事を言葉と身体で知る。
「顔、赤いですよ?」
「気のせいだって」
その、小細工なしの求愛は思い出すだけで赤面してしまう。
俺も男な訳で、手加減抜きで応えてしまった辺りは反省してる。
もっと優しくしてやるべきだったな。
ぐ、と肩に重い感触。
「小夜?」
答えはない。見れば微かに荒い息をして、ぐったりとしている。
「おい、小夜!しっかりしろ!」
汗も出始めている。
さっきの──呪いって言ってたな。あれ、なのか?
……俺じゃ、どうしようもない。ふみこを呼ぼう。
っと、その前に布団に寝かせてやるか。

146四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:29:27 ID:nyyPl1OT
「どれ、確かめるとしましょうか」
ふみこは俺の説明である程度の予測はついたらしい。
眼鏡にふちに中指を当てて何かを呟き、そして紫の眼光が一層強くなる。
「ふむ、確かに呪いのようだけど、……ふむ、なるほどね」
「どうなんだよ?」
俺の問いかけに指を離してから答えた。
「光太郎、少しも解らない?」
何だか苛々した声。そんな事言われても解らないものは解らない。
俺だってそっち方面の勉強はしているけど、まだはっきりとした成果は出ていない。
「…解らない。俺、……ごめん」
俺がしっかりしてれば助けられるのに。
「ふ、そんなに落ち込む必要はないわよ。光太郎がもっと実力をつければ良いだけの話よ。
 さて、見せてあげましょうか」
幾分柔らかい表情で言うふみこ。それも結構堪えるものだけど、黙っているか。
す、とふみこは小夜に手をかざす。とろりと赤い可視化された魔力がさらさらと霧となって
小夜に降りかかる。
「な、あ?」
何だこりゃあ?
赤い粒子は小夜の装束に届かない。ごく近いところで止まり、形を作り始める。
それは回転する札、いびつな歯車にも見える。常に重なり合い、分離している。
これなら俺でも解る。何重にも積まれた結界だ。
「見ての通りよ。小夜には強力な霊的結界が施してあるの。こんなふうに
 幾つも重なっていて、しかも止まる事を知らない。この隙間を縫う術なんて皆無に
 等しいでしょうね」
だったら、
「なんで化け物の呪いが効いたんだよ?」
147四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:30:14 ID:nyyPl1OT
「ひとつひとつをよく見なさい。どれも高度だけれど、完全じゃないでしょう?
 最も完全な守りなんてありえないんだけれど……だから、こんなに重ね掛けしてるの。
 呪いが効いたのは運よ。万が一の不運ね。全部の隙間がぴったり合った瞬間に呪いが
 通ってしまったのよ。小夜本人も呪いへの耐性はあるけど、この結界が邪魔をして
 外に吐き出せない状態なの」
偶然飲み込んでしまった異物を吐き出せない、という事らしい。
小夜は眠ってはいるが、苦しそうだ。
早く、助けてやりたい。
「ふみこ、どうしたら助けられるんだ?」
数瞬の思考の後、口を開く。
「安心しなさい。……そうね。小夜を苦しめてるのはどちらかと言うと結界の方ね。
 慣れない呪いに対応しっぱなしだから、結界へ霊力を上手く渡せていないのよ」
「何で結界が苦しめるんだ?」
腕を組み、ふみこの視線は強くなる。
「これをかけた奴、人でなしね。守りの対象から力を削り取ってまで維持しようとする
 なんて、一種の拷問だわ。何を考えているんだか」
俺の問いを無視して怒っている。……もしかして。
「小夜の事、気に入ってる?」
は、と我に帰ったふみこ。気まずそうに目を泳がせて、俺にたどり着く。
「そうね……なかなかに面白い娘だとは思ってるわよ。この子は私を嫌ってるみたいだけど」
小夜はあまりふみこと話をしない。女同士だからもうちょっとは仲良く出来るだろうと
期待してるんだが。
結局は小夜の潔癖さが壁になっているのだろう。魔女というだけで嫌っている感がある。
ふみこは時々姉のように振舞うことがあるけど、それは本心からだな。
小夜に向けられる目も言葉も優しい。いいコンビになれる筈だと思う。
「うん、そりゃ良かった」
時間が経てばきっと上手くいく。
この二人が仲良くしてる光景は、さぞかし絵になるだろう。
148四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:31:05 ID:nyyPl1OT
小さく咳払いしてふみこは続ける。
「話が逸れたわ。……そういう事ね。
 呪いを無理に押し出そうと力を浪費して、その上に結界からも適量以上の
 力を削られてるのよ。小夜を楽にしたいなら、
 結界の隙間をもう一度作り出して吐き出させるしかないわね、今のところは」
この魔女でさえ万が一と例える隙を、意図的に。
眠っている時でも隙を見せない結界だ。それを操るなんて不可能じゃないのか。
「どうするんだよ?」
俺に笑いかけて言う。
「安心しなさい。そんなに急ぐ用件でもないのよ。
 そうね、このまま二週間も放置するれば小夜が勝手に呪いを解くでしょうね。
 明々後日頃には対応方法を覚えて目を覚ますでしょ」
何もしなくてもいいと言うけど、
「……でも、俺、見てられねえよ」
やっぱり小夜の苦しむ姿なんて見たくない。
いますぐ、助けたい。
「な、頼むよふみこ」
す、と目が細くなる。何だろう、その感情は読み取れない。
次の瞬間には柔らかいものになった。
「仕方ないわね。じゃ、見せて説明してあげる」
さっきと同じく手をかざし、赤い魔力を垂らす。
音もなく小夜に近づき、矢のような形になった。
先端が指した所の結界が激しく蠢く。隙なんて微塵もなくなる。
「この勘、流石ね。……解る?結局は警戒心に反応して動く種類なのよ。
 まずはこの警戒心を解くのが第一歩で、最大の難関ね。その後なら大した事ないんだけど。
 ……戦いの時くらいしっかりしなさいよね、全く」
あー、やっぱりいいおねいさんだ。
ひょっとしたら小夜みたいな妹が欲しかったのかもしれないな。
149四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:31:53 ID:nyyPl1OT
「で、どうするんだよ?」
寝ていても働いている警戒心なんて、解くのは無理なんじゃないのか。
「……明日に薬を渡すわ。起こして飲ませてあげて。
 後はそう時間がかからずに結界は停止するでしょうね。
 その後にでも呼んでちょうだい」
薬?霊的なものに薬なんて効くのか。
……いや、ふみこを信じるしかないだろ。
「うん、頼むよ」


ふみこの言った通り、執事の人が昼前に薬を持ってきた。
小瓶に入っている薬。意外にも無色透明だ。
魔女の薬と言えば赤くてどろどろ、なんて印象があるけどな。
小夜への配慮なのだろうか。
とにかく飲ませなきゃ。
「おい、小夜、起きてくれよ」
何度か肩を揺さぶる。そろそろと瞼が開く。
小夜は上体を重そうに起こした。
「…あ、光太郎、さん。…駄目です、まだ……」
いつもなら凛とした声が、全く切れ味を失っている。
表情もまだ平時には程遠い陰り具合だ。……早く元気にしてやりたい。
「薬だ、飲めよ。……知り合い、から貰ったんだ」
湯飲みに注いだ薬を渡す。
ふみこの名前は出さない方がいいだろうな。
「……はい、頂きます」
思考にも霧がかかっているのだろう。何の疑いも持たずに湯飲みに口をつける。
こくり。こくり。細い喉が鳴って、小夜は飲み干した。
150四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:32:37 ID:nyyPl1OT
はあ、と熱っぽい息を吐いて俺を見る。
目が虚ろになってる。飲ませる前よりもひどくなってる気がする。
「ちょっといいか?」
額に手を当てると、結構熱い。もっと水を飲ませてやるか。
効くのがいつなのかは解らないけど、下手すれば脱水症状もあり得るだろうし。
「水、持ってくるな」
台所で水を湯飲みに入れて戻る。
「……何してる、小夜」
見れば布団の上で裸になっている。行儀よく正座なんてしてるし。
躊躇いがちに俺に顔を向ける。──赤い頬。
「光太郎、さん」
その声音は明らかに俺を誘うもので、……そんな事してる場合じゃないだろうに。
「小夜、寝てろって」
寝かしつけようと肩を掴む。
「っ!」
ひくりと身体を震わせる。その眉間にも特別なしわが入っている。
何回も抱いたから解る。感じてる、らしい。
……そういう事かよ、全く。

151四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:33:25 ID:nyyPl1OT
「は、む…はふ、あ、……っ」
口から溢れる涎に目もくれずに深い接吻を続ける。
やっぱり……いつもよりも、舌の動きが激しい。
少しずつ鼻先を擦りあわせるような浅い口付けに変化させ、小夜の舌を誘い出す。
そして一気に角度を戻して顎を噛み合わせる。
「んん!……っ!は、ふ、っ!」
溶けるように、溶かすように絡み合う。ぐちゃり。音が鳴る度に俺達の境界線はなくなっていく。
もっとだ。もっと、深く、繋がろう──。
腰を這う手を胸に持っていく。小夜の胸は、俺の大きいと言えない手でもすっぽりと
覆えてしまう。標準よりは下のサイズだろう。
でも、好きだ。
「んああ、や、ふあああ、……」
ちょっと力を入れるだけで、意のままに形を変える。小夜が応えてくれる。
突起を親指と人差し指で挟んで、捻る。
「ん、ああ!」
束縛を少し緩めて、押し込む。
「……っ!」
びくりと身体全体がうねり、より淫らに染まっていく。
普段が潔癖な分、こんな変化が凄く新鮮に感じる。とても同じ小夜だとは
思えない。
「は、あ。光太郎、さん……」
どれだけ違って見えても小夜は小夜だ。
俺の惚れてる小夜。
152四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:34:07 ID:nyyPl1OT
とっくに首や頬、胸なんかは俺の涎でてらてらと光っている。
そうでない所だって小夜の汗で鈍い光沢で埋まっている。
物欲しそうな目で、俺を促した。
「解ったよ、小夜」
今までは服を着たままだったけど、それも終わりだ。
手早く全部脱いで、横になって待つ小夜に倒れこんだ。
軽いキスを何度も繰り返しながら思う。
本当に柔らかい。何で、こんなにも触り心地が違うんだろう。
小夜が俺の肩に手を置いて、重なっていた胸を離す。
「………」
こくんと頷く。その意図はひとつだけだ。
焦らしすぎたか。
「ん、ごめんな」
小夜の脚を開き、その間に腰を据える。性器の狙いを定める。
この状況。何度目かは覚えてないけど、それでも心臓が高鳴ってしまう。
小夜も同じだ。期待を込めた目で俺を待つ。きれいな胸が速く上下している。
「ん、ふあ……」
俺は性器の先端だけを挿入して上体を乗り出させる。
ほっそりとした十の指。俺の指を同じ本数だけ絡ませ、がっちりと固定。
はあ、はあ、はあ、はあ。
何もしてないのに呼吸が荒ぶる。どくどくと血流がうるさい。
あとは登りつめるだけだ。
153四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:34:53 ID:nyyPl1OT
「んんんん!、んん、は、んん!」
繋がるのは性器だけじゃなくて、唇も。
粘液を混ぜる音が二箇所から発生する。
「ん、あ!んあ、あむ、……っ!」
艶声も俺の物にしたくて、ひたすら舌を押し入れる。
性器も休みなく動かし続ける。奥に届くと、小夜の秘所が締まる。
ぎゅうう。気が遠くなる快感。もっと、したくなる。
「は、ああ!…んぁあ!」
俺は舌を引き抜いて、快感の抽送に没頭した。
必死に腰を振りまくり、快楽を紡ぎ出させる。
「は、はあ!こうた、ろ、ああ!くああ!」
「ん、……はあ、どうした、小夜?」
小夜の声に、やっとの事で振動を止める。止めても、その余韻でくらくらしてしまう。
首を振って身を焼く快感に翻弄されてる小夜。これ、我を忘れてるんだろうな。
「小夜?何だって?」
下顎に口付け、言葉の続きを言わせる。
目に僅かな理性の光が戻った。
「……っ、その、…後ろ、から……」
羞恥に耐えながら小夜は言ってくれた。
真っ赤な顔。それでも閉じなかった黒い瞳。
滅茶苦茶可愛いよ、小夜。
「うん、小夜がしたいように、してやるよ」
性器を──我ながら意地が悪いな──ゆっくり、ゆっくり引き抜く。
「んあ…、あ、ああん」
消えていく快感を少しでも味わおうと、目をつぶって秘所の変化に意識を集中している。
今突き入れたら、どんな声を出すんだろう…いや、小夜のお願いを叶えなきゃ、な。
抜けた俺の性器は勢いよく反り返り、小夜の熱蜜を振り飛ばした。
びちゃり。へそまで届く。
「…っ!、ん、ふはぁ…」
恍惚の声。まだ達していないようだけど、その時は近いか。
154四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:35:36 ID:nyyPl1OT
惚けたように動かない小夜に俺は言う。このままじゃ、出来ないぞ。
「小夜、身体、起こして」
「は、い…」
のそのそと四つん這いになる小夜。秘所から透明な液体が見る間に噴出して、
白いふとももに筋を作る。
衝動に耐え切れず、その性蜜に舌をつけた。
「ふああ!…ああ!光太郎、さぁん!」
美味しい。垂れた分を舐めとり、さらに源泉から飲む。
ずず、ふは、ぬちゃり、ずずずず。
小夜の、香りだ。ごくり。小夜の味。なんて、淫靡なスープ。
っと、さっきのお願いを忘れそうになる。
口を離す。小夜は軽く達したのだろう、上体を支える腕が今にも折れそうに揺らいでいる。
もっと、高みへ行こうな。
俺は言葉をかける事もなく性器を入れる。
「んあああ!…っあ!ふ、あ!」
布団を握る小夜の手。ぎり、と指が食い込み、俺の性器も絞られる。
…我慢しろよ。簡単に達するな、小夜。
中ほどまで性器を抜き、一気に叩き入れる。
「──っ!…!、…─!」
肌が楽器のように高い音を鳴らせている。声なんて出す必要はない。
美しい背中が踊る。黒い髪が舞う。
ぐちゃぐちゃの中。どこまでが小夜で、どこからが俺なのか、判別がつかない。
とにかく熱い。心が猛る熱さ。
もう容赦なんてしない。ひたすら頂上を目指した。
「…っああ!あ!くぁあ!ひ、…っ!っ!あああ!」
小夜の指がますます布団に刺さる。俺の性器もああなってるんだろうな。
あんな、乱暴な扱いをされているのに、何でこんなにも気持ちいいんだろう。
…は、あ。先端の灼熱が俺を支配している。こっちはとっくに臨界寸前。
「こ、こうたろっ!は、──っ!ん、ああ!」
小夜も、かな。
155四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:36:25 ID:nyyPl1OT
背中が限界まで反っているのは、性器が動きやすいようにする為か。
そのくせ秘所はぎちぎちに狭まって性器を止めようとしている。
その矛盾が、余計に快感を垂れ流す。
く、そ。これ以上は耐えられない。
「はあ、は、あっ!小夜…っ!」
びくりと反応する小夜。握られた布団が、遂に握り潰された。
「ああん!ひ…、…っ!ああああああ!」
千切られそうな圧力と、それを上回る勢いで放出される精液。
狭められた通り道を駆け抜ける欲望。
「ぐ!──っ!あ、ぐぅ…っ!」
どくり。吐き出される度に要求され、また吐き出す。とくり。
何度かそれを繰り返して、俺たちは脱力。
ずるずると二人とも横に崩れてしまう。
汗ばんだ背中が目の前にある。抱きしめて口付け。
「……………」
「小夜?」
反応がない。離れて顔を覗くと、すやすやと穏やかな寝息をしている。
うん、可愛いぞ小夜。
頬に接吻し、俺はやっと一息ついた。
「はぁ、気持ち、よかった…」
久しぶりだというのもあるだろうけど、小夜を気持ちよくさせた、という事の方が
大きい。心底、満足だ。
小夜の身体を拭き終わって、服を着る。
さて。
「ふみこ、いるんだろ?」
156四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:37:45 ID:nyyPl1OT
部屋の隅に声を投げかけると、ふみこが現れた。姿隠しの魔術を解いたのだ。
しかし、趣味が悪いよな。
「若いわね、全く」
その声も顔も冷静さが失われていない。俺達の激しい情事を余すところなく見終えたのに、
平時と変わらない。
大した女だ。
「じゃ、頼むよ」
小夜の警戒心を解く。つまりは小夜が心から安心する状況にする為の薬。
詳しい成分なんて聞きたくもないけど、そういった心情にする薬だったのだろう。
「よし、これなら問題なしね」
側まで近づき、昨日と同じく魔力を垂らす。
結界を可視化させたのは次の作業へ集中する為だろうな。
そして細い糸のような魔力で小夜の結界を移動させる。
ふんふんと鼻歌なんて余裕を見せているけど、とんでもない高等技術だぞ、これ。
例えるなら、何十メートルという長い糸をぶら下げて針の穴に通すようなものだ。
俺には狂気の沙汰としか思えない難行を、苦もなく実行している。
魔女だな。生粋の魔女だ。
俺でも解るような穴が開き、直後に黒い霧がぶわりと吹き出す。
「あら、明日には解いていたかもね。……目が覚めるのは早くても朝でしょうけど」
予想外だとふみこは感嘆の声を出す。何にせよ、成功らしい。
小夜に布団をかける手つきが優しい。……小夜に接する時だけ、魔女っぽい印象が
薄れている気がする。妹か弟を相手にしているような優しさだ。
きっと小夜みたいな妹が欲しかったんだろうな。
立ち上がったふみこは数秒だけ俺を見詰め、不機嫌そうに言い出した。
「あのねぇ、お茶でも出して労おうって気にはなれないの?」
「あ、ごめん。俺の部屋でいいか?」
ふみこが満足しそうな高い店なんて行けないし、そうでなければオッサンの事務所か。
「よろしい」
腰に手を当てたふみこは肘を俺に突き出す。
腕を組め、か。お嬢様育ちというのは本当で、些細な動きに余裕が感じられる。
「はいはい、御一緒しましょう」
157四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:38:33 ID:nyyPl1OT
執事の人は屋敷に戻したそうだ。
したがって、歩く以外の交通手段はない。
……ふみこに視線が集まっている。さすがに若いとは言えない外見だけど、
美人である事には間違いない。
盗み見ると、集まる視線を全く意識していない様子だ。肝が大きいのか慣れてるだけなのか。
ふと疑問に思った事を口から出してみた。
「なぁ、ふみこ。眼鏡、変えた?」
デザインは大体は同じだけど、微妙に丸みのある形に変化している、と思う。
「……まあ、そうよ」
珍しく歯切れの悪い言い方だ。自分でも納得のいかない壊し方でもしたんだろうか。
「……あげたのよ。……お詫び、みたいなものね」
遠い目をするふみこ。何かを思い出し、懐かしんで、惜しむような表情になった。
簡単に誰かに渡せるような品ではなかったのだろう。相応の思い出が詰まっていたのは想像しやすい。
ま、ふみこみたいな魔女が着けてる辺り、普通の眼鏡ではないんだろうな。
「そんなに惜しい眼鏡だったのか?」
「……そんなに高いものじゃないわよ。元々、ちょっとした補助具みたいなものだったのよ。
 魔法が未熟な頃に貰って、それのお陰でコツを掴めて、……今では無ければ無いでいいの。
 何となく手放せなくなっただけの眼鏡よ。度も入ってないし、代えならいくらでも作れるの」
さばさばとした返事だ。
ふみこ自身がそれほど気にしていないのなら、俺がどうこう言える話じゃないか。
158四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:39:24 ID:nyyPl1OT
す、と俺を見たふみこが言う。
「しかしまぁ、その歳で一人暮らしなんて感心ね」
「そりゃ、こういう仕事してるんだから当たり前だろ」
真夜中に飛び出すのも珍しくない仕事だ。家に居たところで迷惑になるだけだ。
説得には相応の痛みもあったけど、今はこの生活が気に入ってる。
俺の素直な言葉に納得したようだ。ふみこはふんふんと頷いている。
そんなこんなで到着。
鍵をポケットから取り出して、開錠。
「さ、入ってくれよ」
「あら、見られたくないもの、ないの?」
まあ、その辺の始末は小夜と付き合い始めてから、きっちりとするようになった。
不意の訪問にも対応出来る。
「あるけど、ちゃんとしてあるよ」
隠す必要もないから正直に話す。
にっこりと笑うふみこ。
「よろしい」

159四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:40:07 ID:nyyPl1OT
うお、……場違いな靴が俺のと一緒にある。
ふみこの姿なんて完全に部屋と合っていない。少しだけ後悔する。
もっと気の利いた場所、あったかもな……
まあいい。まずはお茶か。ふみこならコーヒーかな。
台所に寄ろうとすると、ふみこがくるりと洋服をなびかせ俺に向きなおして一歩踏み出した。
何だよ?
そう声にする間もなく唇を塞がれた。
「──!」
そのままドアに押し付けられ、かちゃりと鍵がかかる音。次いで鎖も。
腰にふみこの手がまわってくる。艶かしい手つきに背筋がぞくぞくする。
「報酬が、先でしょう?」
話が違うだろ。その言葉も呑まれてしまう。
あっというまに舌が滑り込んできた。俺も男だ。負けまいと応戦して、
完敗。
「んは、んん…は、ふ…」
上手い。上手すぎる。
主導権を握り返すための巻きつけをあっさりと避けられ、目標を見失った隙に逆にやられてしまう。
その感触。今までにない体験に心身が停止して、口内を隅まで弄られてしまう。
早くも冷たい舌に思考を根こそぎ奪われて、ぼんやりとなってしまう。
その指もシャツに潜り込み、地肌を撫で回している。
「っ、ばか、やめ……、──」
抵抗しようにも、あまりにも快感が強すぎて上手く出来ない。
ばくばくと昂る心臓。
「はあ、光太郎、どう?」
どうって、どう言えばいいんだろう。
妖艶な微笑みに、くそ、丁度いい言葉が見つからない。
再び入ってくるふみこの赤い舌。…こんな、簡単に身体を支配されてしまうなんて──
160四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:40:54 ID:nyyPl1OT
ちゅるちゅると唾液を吸われ、何も考えられない。
背にまわっていたふみこの腕に力が入って、俺はなすすべもなくどこかに連れて行かれる。
ぎしりとベッドに押し倒された。
ようやく、開放される。
「は…はぁ、あ…」
起き上がれない。脳髄にこびり付いた感触が消えてくれない。
かちゃかちゃ。鉄が軽く触れ合う音だ。俺の、腰の辺りから響いている。
って、
「ふみこ、やめ、っ!」
抗議は快感に却下されてしまう。見なくても解る。ふみこは迷いなく俺の充血した性器を
露出させ、赤い舌と同じく冷たい白い指で嬲っている。
「ふふ、濡れてるわね」
あまりにも恥ずかしい台詞。止めさせたいのに、こんなに興奮してる俺はどうかしてる。
ゆるゆると、確かめるように凹凸をなぞられる。腰がむずむずする。
どうせなら思いっきりしてくれ。こんな半殺しなんて地獄だ。
何も考えられないくらいの、刺激をして欲しい。
「あは、見て光太郎」
ふみこの言葉が持つ強制力に逆らえない。
溶けかかった脳みそを持ち上げて、固まる。
「ほら、…凄い量。もっと出してあげる」
ふみこの両手が、ごしごしと竿をしごいている。まだ横腹だけを刺激されてるだけだというのに、
透明な液は性器全体を覆っている。ふみこの指が往復すると、一層濡れる俺の性器。
…足りない。いい加減に、焦らすのは止めてくれ。
「何?言わなきゃ、解らないわよ?」
楽しそうな表情。言うまで、このもどかしさを解消してくれないのかよ。
快感は微妙なところを行ったり来たり。
…くそ、こんな事、言わされるなんて──
「ちゃんと、して、くれよ、ふみこ…っ!」
にやりと口元を歪め、先端に口付けられる。
「ぐうっ!」
161四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:41:52 ID:nyyPl1OT
シーツを握って、なんとか耐える、けど、
「う、ああ!──!あ、ぎ、あ、…っ!」
全部がふみこの口に収まる。亀頭に舌がヒルみたいに吸い付いて、
挙句に、その穴を、犯し始める──!
頭がおかしくなりそうだ。……怖い。そのくらいの快感。
ちゅぶりと口が離れる。
「ほら、私の唾液で光ってるわね。…ふふ」
んな事、見れば解るっての。息をつく間もなく、再開。
「ん、…んふ、…んん」
色っぽい鼻息が這い上がってくる。ぐんぐんと性器の先端が膨れ上がっていく。
だめだ、出る……!
「い、っ!…うああ、──が、あ!」
急激な痛みに我に返る。根元に爪が食い込んで、快感が引込む。
とにかく出ずに済んだけど…、ちゅううう。先端に密着した唇が吸い上げて、
また、出そうに…!
「は、ああ!ふ、みこ、…っあ、ぐ!」
痛い。爪がまたしても絶頂を妨げる。
ひりひりと理性が焼けている。何で、こんな意地悪をするんだ。
それきり快感も痛みも途絶えた。はぁはぁと息が荒い。
腰は何もしてないのに重く、快楽の大きさを証明していた。
するする。ふぁさ。とさり。
布が擦れる音がしたかと思うと、ふみこが俺の腹に座る。
適度にふっくらとした身体は、それだけで男を誘惑する魅力で満ちている。
「ふふ、どうかした?」
揺れる豊かな胸。手に触れる脚の感触は絹のよう。
「………」
何も言えない。ふみこの姿を見ているだけで、さっきの快感が戻りそうだ。
今まで意識しなかったけど、こんなにいい身体、だったのか──
「いいのね?じゃ、遠慮なく」
肉感的なスタイルなのに眼鏡の奥にある瞳は冷たく、余計に現実感を失わせる。
今更のように夢じゃないと確認。そのくらい幻惑的で、挑発的なふみこ。
162四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:42:39 ID:nyyPl1OT
ある種の安定感を醸す腰が上がって、向こうにある俺の性器が覗く。
手を添えられた性器は主の意思に反してびくりと振るえ、この先の展開を待ち望む。
俺も、待っているのを認めざるを得ない。こんな一方的な展開なのに、興奮してる。
ずぶりと先端がふみこに埋まる。表面の神経をむき出しにしながら、さらに飲み込んでいく。
…もう、何も考えられない。
「あ、…っあ、は、あ」
「く、うう…んあ」
ふみこと俺の息が混じって熱量を増し、二人で分け合って吸う。
ぺたりと俺の胸板に冷たい手。
「どきどき、してるわね。ふふ」
愉快だと笑って、腰を振り始めた。
「ん、は…ぁん、ぅん」
ぎしぎしぎしぎし。ふみこは微かな艶声を吐きながら、俺のを優しく愛撫する。
ただ乱暴に締めるような事はない。中のぬめりを損なわないようにぴったりと密着して、
時折きつくなる。緩めたり締めたりしながら上下するふみこの中。
「…ふみ、こ…すごく、いいよ」
俺はまだ動かない。動けばこの感覚が失われそうだ。
「でしょう?…ん、は、ねえ、光太郎…」
だんだんと揺れが早くなる。眼鏡がずり落ちそうになって、ふみこの左目が直に俺を
捕らえる。
「……何故?」
ふみこらしくない、感情的な声。
「何故、小夜なの?」
今にも落ちそうな眼鏡。今にも剥がれそうな壁。
「私じゃ、駄目なの?どうして?」
辛そうに歪む眉間。隙間から零れ落ちる本音。
「私を見てよ、光太郎……っ!」
応えたいと思った。
上体を起こして抱きしめ、そのまま押し倒す。
163四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:43:24 ID:nyyPl1OT
「ゃ──、……っ!」
何だか呆けたような表情。
かあ、と音がしそうな程の勢いで白かった肌が赤くなっていく。
何だ?俺、何もしてないぞ?
「どうした、ふみこ」
今更のように目を逸らす。随分恥ずかしそうだけど、今更何で?
数秒して、小さい声で言う。
「あの、……したことない、の」
要領を得ない。どういう事だろう?
「ごめん、もうちょっと解りやすく意ってくれよ」
「こうして抱かれるの、初めてだって、言ってるの!」
さっきまでは魔女としての行為で、これからは女のしての交わりだと言う。
硬く握られた拳。ちらちらと盗み見る目。羞恥に耐える顔。
こんなふみこ、見た事ない。その、凄く、
「うん、可愛いよふみこ」
とっさに顔を隠そうとする手を掴んで、まじまじと観察する。
全身が震えている。不安なのだろうか。
年頃の少女のような反応。魔女の外見だけど、その下にはとんでもなく純粋で、
子供のようなふみこ。誰も知らないふみこだ。
もっと、見たい。
「顔、ちゃんと見せて」
眼鏡を取り上げる。
「や、駄目ぇ……」
「何で?」
「………」
眼鏡なしで人と接する機会がなかったんだろう。
「怖いなら、こうすればいいんだろ?」
抱きしめて、間近で視線を合わせる。震える身体が、今度は一気に加熱する。
「っ!」
息も忘れて俺を見詰めている。男を男として認識したのは本当に初めてらしい。
164四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:44:06 ID:nyyPl1OT
がちがちに緊張した顔と身体。ほぐしてやらなきゃ。
は、あ。耳元に吐息を吹きかけると、びくんと跳ねた。
あまりにも正直な反応に、その、どうにかしたくなってしまう。
まっさらなふみこ。どう染め上げようか。
「光太郎、わ、私……」
「任せろ。ちゃんとするから」
今だに緊張は続いている。性器はとっくに繋がってるのに、多分その事すらも忘れているんだろう。
だから、口付けから。
手で顎の向きを変える。少しだけ開いた唇に、優しくキス。
「ん・・・」
軽く何度も口付け、だんだん固さが消えていく。
とろんと下がる目尻。よし、もっとだ。
「ん、……っ!は、む!」
舌を混ぜる深い交わり。俺を押し倒す前とは全くの別人だ。
俺の大して上手くない舌使いに簡単に翻弄されてる。
「ちゅ、はあ、ん…んん……ふはぁ」
犯す。口内を隅々まで犯す。女の子みたいなふみこ。女の前のふみこ。
うん、ちゃんと、女にしてやろう──
「ん、くぁああん!…は、ああん!」
むにむにと大きな胸を揉むと、指の間に柔肉が挟まる。
しっとりと吸い付く肌。硬い突起まで愛撫する。
「……っ!んあ、──ぁ、ああ!」
何かする度にちゃんと反応してくれる。本当、初めてなんだろうな。
……むくむくと、本能的な衝動が急激に育つ。
滅茶苦茶に、奥深くまで触ってみたい。
「……ふみこ、いいか?」
ふるふると瞼が開く。紫の瞳が濡れている。
「な、に?」
あー、完全に忘れてるな。ま、いいか。
「動いていいかって、訊いてる」
ぼう、と燃え上がる頬。やっとどういう姿勢なのかを確認したらしい。
165四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:44:49 ID:nyyPl1OT
きゅうと膣が締まる。
「ん、あぁ……ん」
それだけで感じたのか、悦声があがる。
肝心の返事はどうなんだろう。
「ふみこ?」
「あ、…はい。……っ、どうぞ」
恥じらいながらの答え。年上の魔女なんかじゃなくて、
ここにいるのは素直で控えめな深窓のお嬢様だ。
成熟した見た目は未熟な内面の裏返しなのだろうか。
「光太郎?…どうかしましたか?」
いつもの上品さや大人っぽさに存在感がない。本来の幼さが滲み出ている。
嬉しい。ふみこが無垢なところを見せてくれるという事がとても嬉しい。
「いや、悪い。あんまり可愛いから見惚れてたトコだ」
「…ばか」
照れてる。思わず笑ってしまう。
何の工夫もない仕草がとても新鮮で、俺は堪らない気持ちになってしまう。
それじゃ、始めますか。
「動くよ」
少しだけ腰を引いて、突く。
「は、…ぁ、…」
目から理性の輝きが消え、口は半開き。
酔える程度の快感を得ているらしい。…そうだな、もう少し、この調子でいこうか。
「ん、あぁん…は、──う、ん」
抑えられた声量に、興奮してしまう。
まだだ。もっと女の悦びを知らせてやるんだ。俺ばっかり気持ちよくなるなんてずるいだろ。
「はぁ、はあ、…っ、んん!」
「ふみこ、気持ち、いい?」
息を荒げながらこくんと頷くふみこ。よし。
「んじゃ、もっとしてあげる」
動きを加速。ぐちぐちと音がする。ふみこの背が反り返って、密着する面積が増える。
口の開きが大きくなって、はあはあと声の代わりに熱っぽい呼吸。
気持ち良さそうな顔を隠そうともしない。
166四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:45:52 ID:nyyPl1OT
「いい、です、こうた、……はあっ!」
俺も同じで、本能を抑えているのが辛くなってきた。
……ま、いいか。ふみこも良さそうだし、やってしまおう──
ぎりぎりまで引いて、がつんと叩きつける。
「ひあぁ!」
さっきのは奥まで届けるだけの前後運動だったけど、
これからは手加減なしの性交だ。
「あ!は、ああ!ひ、い!」
ばちんばちんと肌が弾ける。あられもない声を存分にあげるふみこ。
女の、ふみこだ。
「く、うう!」
俺も呻き、狂ったように性器を往復させる。ぬるぬるの中をがちゃがちゃに引っ掻きまわす。
そろそろ限界だ。果てる前にふみこをもっと気持ちよくさせよう。
腰を止めて左足を跨ぐ。右足を胸に抱いて、再開。
「んあああ!……っ!っ!は、あああ!」
脚がかみ合う分、より深くまで届ける体勢。攻めるポイントもずれるけど、
どうやらここが一番らしい。今までとは比較にならないくらいに、締まっていく。
はあ、……もう、限界。
「ふみこ、っ!出すよ!う、く!」
直後に根元から先端まで膣に掴まれ、動きを封じられる。
「……っ!光太郎っ!」
悦びに震える膣を、俺の精液が飛びぬける。
どくんと迸る度にふみこの中が蠢いて、胸に抱く脚がぐらりと揺れる。
「……あ、はぁ、はあ」
出し尽くす。ちゅぶりと名残惜しそうな音をたてて性器を抜く。
ふみこは汗だくで放心状態だ。目の焦点はどこかを彷徨っている。
すぐ側に寄り添って抱きしめる。紫の髪を撫でて、額に口付け。
「……ちがう、でしょ?」
視線を下げると、微笑んだふみこが首を伸ばしてくる。
……そうだな、本来のところにしようか。
形のいい唇にもう一回。自然な笑みに、俺もつられて笑ってしまう。
お互いの体温を噛み締めながら、しばらく休息を取った。
167四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:46:44 ID:nyyPl1OT

「あんまり美味くないぞ」
「そうでもなさそうだけどね」
淹れたコーヒーを渡す。
ふみこと二人っきりって、多分初めてだな。
一口飲んで、ふみこはテーブルに置く。
「中々だわ。褒めてあげる」
「そりゃどうも」
話す事はあまりないけど、その分、ふみこの何気ない仕草に意識を集中出来る。
何て言うか、優雅って感じだ。最適化の一歩手前。本当にこれだけは残してもいい、
という最高の飾りだけが備わってるというか。
俺みたいなガキでも解る。本当に『いい女』だと。
……くそ、俺も馬鹿だな。
「光太郎?」
格好悪いのは解ってるけど、出来るならもう一回抱きたい。
「言わないと、解らないわよ?」
駄目でもともとだ。言ってしまえ──
「なぁ、ふみこ、あのさ──」
『ごりん!』
……何だ?
音源は、玄関の辺りか?
首を伸ばして見ると、ごとりとノブが落ちる。
僅かな隙間から漏れるのは、見える程に鮮烈な霊力。
──まさか。
ごろごろと雷鳴のような音をたててノブが押し退けられる。
鎖が張り詰めて、ばきんと切れる。開く速度は少しも減速しなかった。
役立たずめ。時間稼ぎくらいしやがれ。
で、握りつぶされたノブを掴んで立つのは小夜。
晴れやかな笑みだ。ああ、あの顔でノブをぶっ壊したんだな。
鎖も無視して開けたんだよな。……本気で怒ってるよなぁ。
無言であがってくる。ふみこは──悠然とコーヒーを飲んでるし。
さあ、どうする?
168四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:47:33 ID:nyyPl1OT
小夜は俺の隣に座って、機嫌良さそうにふみこに言う。
「ありがとうございました、ふみこさん」
「どういたしまして」
二人とも穏やかに話している。うん、嵐の前の静けさに違いない。
ふみこからも言い知れない圧力が噴出し、小夜の霊力は一層強くなった。
ちなみに俺を挟んでの会話だ。何を言っても無駄というか、最終局面に展開するだけだ。
さあ、どうする?
「光太郎さん?」
「はい!」
びし!と背筋が伸びた。伸ばさない方がどうかしてる。
見ると……風もないのに髪が舞い上がってる。その笑顔との組み合わせは最高だ。
「何をしてらっしゃるんですか?」
「あーと、その、」
「深く愛し合った後の語り合いよ」
この魔女、しれっと点火発言しやがった。
「あなたに訊いていませんよねえ光太郎さん何をしてらっしゃるんですか?」
よく一声で言い切ったな、偉いぞ。……どうしよう。
「私が言った通りで──」
「ふみこ、待てって」
ふみこは余裕の微笑だ。
マッチで燃えないからって松明を投げるな。それに、
「お前、朝まで寝てるって言っただろ?」
「魔女の言う事を真に受けちゃ駄目よ」
「な──」
「私の言う通りに訓練すれば、簡単に見抜けるくらいの実力がつくわよ?」
ふみこの手が、顎と腰に伸びる。
「こら、やめろって、──」
さっきの交わりと比べれば何てことない筈なのに、どうして、こんなに……
「ふみこ、頼むか止め「光太郎」ハィ!!」
小夜が呼び捨て。本気の証拠で、火消し不可。
無言で立った小夜。その顔は、……憤怒だ。
ふみこも立つ。座ってる俺のはるか高い所で視線がぶつかってる。
169四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:48:19 ID:nyyPl1OT
「そろそろ、はっきりさせませんか?」
「望むところよ」
ここでやる気かよ。座っていられず、間に入る。
「待てって、二人とも」
「「光太郎」」
俺は固まった。この二人に睨まれて平気な野郎がいるなら紹介してくれ。
「「どっち?」」
くそう、お約束じゃねえか。
「「どっち!?」」
迷ったら基本だ。
目には目を。歯には歯を。お約束にはお約束を!
「あっち!」
だん!とテーブルを飛び越え靴を引っかけて部屋から離脱。
直後に小夜が追ってくる。逃げる場所、この近くなら──
『プルルルル』
こんな時に電話かよ。
170四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:50:11 ID:nyyPl1OT
『ウチの事務所に来るんじゃねーぞ。痴話喧嘩は他所でやれ』
助けてくれよオッサン!って、
「何で知ってるんだよ!?」
『ここの前をふみこが機嫌良さそうにお前と過ぎて、その後に殺気満々の小夜が
 通るなんて、馬鹿でも事態の予想はつくだろうが』
「助けてくれよ!」
『うるせえ。知ってるか?少年期は体力0になっても勝手に復活するんだぞ?』
「何だよそりゃあ!」
『んじゃ、Sランク出したいなら一回は耐久値をなくさなきゃならん、でどうだ?』
「どこの世界だよ!」
『とにかく来るなよ。いいところなんだからな』
アイアイもらった、なんて意味不明な言葉で電話は切れた。
……さて、オッサンは当てにならないし、出来るだけ応用の幅がある言い訳を考えようか。
人ごみの中を追ってくる小夜と、俺の部屋で待ち構えるふみこ。
この二人を納得させる理屈なんて、南極と北極が隣接する可能性をでっち上げるのに等しい気がする。
……そこの人。そう、あんただ。妙案、求む。

171四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/03(火) 03:52:20 ID:nyyPl1OT
適当杉スマソorz
光太郎の口癖「たん」はどうしてもつけれなかった……

残りのガンパレも早いうちにうpします
172名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 04:13:08 ID:z7SJTnH6
四条ドノ!ブラボーですぞ!
173名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 06:41:10 ID:YHyECqpG
四条様乙!GJでした。
174ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/05/03(火) 15:49:53 ID:F2qcqt5H
四条 ◆JeifwUNjEA 様超GJです。
笑顔で嫉妬バリバリにらみ合い→どっち!状態がいいなあ。
アルファシステムのゲームは俺屍とGPMだけしかやっていないけど
これ読んだら、式神の城も猛烈にやってみたくなりました。
調べたら今月ベスト版が発売されるんですね。・・・買おう。
175名無しさん@ピンキー:2005/05/04(水) 20:20:44 ID:LTrDVgub
>174
絢爛舞踏祭
ttp://www.alfasystem.net/game/kenran/
式神の城 七夜月幻想曲(ADV)
ttp://www.alfasystem.net/game/shikiadv/
よろしくノシアルファ儲ですwwwww
176名無しさん@ピンキー:2005/05/04(水) 21:27:47 ID:1kUElUqR
四条氏の作品は何回か見たことあるけど、
いつも素晴らしい……
177名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 03:10:12 ID:/aiave7F
四条氏、GJ!

ふみこタン、まさか処女だったとは……萌えた…
178ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/05/05(木) 18:02:50 ID:sC3EwOpF
>>175
うわ、ありがとうございます。これも買わねばw
実は式神、ベスト版待ちきれずに1.2とも買ってきてしまいました。
シューティング苦手ですが四条 ◆JeifwUNjEA 様のSSがさらに楽しめるようにガンガリます。
年下男を夫にするのに色々ガンがる最強魔女・・・ふみこタン壷キャラだー!
179名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 20:01:48 ID:unz2p7yM
>>176
四条氏とかここの職人さん達の他の作品は、
どのスレに行けば見れますか?
180四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:52:27 ID:a3s3d2m5
>>178
ぶっちゃけ式神は数えるくらいしかプレイしてないのですよ。
市販の小説版を読んで妄想膨らませて書いたSSでした。
STGはいつまで経っても「下手の横好き」程度の腕前でつ。この辺りで止めておくのが一番イイのかも。

ガンパレ前編1をうpする前に一応。
前スレに書いたSSの設定を継いだものではありますが、モロに影響してるのは後編だけです。
前編3までは↑を読んでいなくても多分大丈夫です。捏造度高いですけど。

ではうp
181四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:53:09 ID:a3s3d2m5
雨が降っている。
濡れたアスファルトの匂いは好きだが、それを感じるのは降り始めだけ。
それ以後は鬱陶しい。早く止めばいい。
「悪い知らせがある。昨日尚敬校の生徒が一人戦死した」
本田は教壇に立つなり不機嫌な声で言った。
「今日だけでいいから、気を遣ってやれ。いいな」
その生徒が誰なのか、大部分の人は既に知っている。整備士上がりの戦車兵で、
結構かわいい子だった。人望もそこそこあり……惜しい人ほど簡単に死んでしまう。
「お前らの中からは死人は今のところ出ていないが、気を引き締めろ。
 連勝してるからって調子に乗ってると痛い目見るぞ」
ちらと速水に視線を向ける。芝村の姫と同棲するようになってからこの男は変貌を遂げた。
少しだけ普通より武器を使い分け、少しだけ普通より移動して、少しだけ普通より作戦会議をする。
いつか俺が言った通りの、絢爛舞踏に近付いた。速水がいる限りこの隊からは戦死者など
ありえないだろう。歓迎するべきことだが、やはり前のままでいて欲しかった。
「それと、通り魔の犠牲者がまた出た。こっちの方も気を付けろよ」
少し前からこの近辺でとんでもない馬鹿が出没するようになった。男女問わず襲い掛かり、
徹底的に暴力を振るい逃げる。全身黒尽くめの格好らしいが、これ以上の特徴もないらしい。
全く金品を奪わない点が犯人の異常さを物語っているように思える。
何度も犯行を重ねながら決定的な証拠を一つも残さないのは頭が良いからだろうが、馬鹿は馬鹿だ。
捕まるのはそう遠くはないだろう。その時に何をされようが同情の余地はない。
この事は割りとどうでもいい話だ。今現在、俺にとって最大の懸案は速水の二つ隣に座っている
壬生屋だ。想像するまでもなく、美しい黒髪の向こうでは真剣な表情だろう。
数日前の教室で会った時と同じように。
182四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:53:53 ID:a3s3d2m5
『お慕いしております』
見た事がない程思い詰めた表情で、その言葉を俺に突き刺す。
いつもの防御壁が全く意味を成さない。彼女に向き合わざるを得ない。受け流す事が出来ない。
『瀬戸口さんは、私をどう想っているのですか?』
傍観者。それが俺の立ち位置だ。確執も固執も捨てている筈なのに、何故こんなにも迷っているのか。
どの様な理屈で即答を避けようとしているのか、解らない。
『なんで、俺なんだ?』
卑怯だ。疑問に疑問で答えるとは。はぐらかすつもりはないのに、そうしてしまう。
『瀬戸口さんは何度も何度も助けてくださいました。だから、……いえ、違います。そんな理由では
 ありません。そんな、理由なんて思いつきません。好きになってしまったから、ではいけませんか』
感情に理屈なんてない。そんなのは当たり前だ。
その当たり前から理屈で逃げようとしている俺は何なのか。
『瀬戸口さん……』
壬生屋の声に落胆が混じる。視線が下がる。ああ、違うんだ、壬生屋。
『今、答えを言わないと、駄目か?』
本気の気持ちには同じく本気で答えなければならない。その踏ん切りがまだつかない。
今の俺には答える資格はない。…資格を得たいのか、瀬戸口。
『……お待ちしておりますから』
壬生屋は静かな声で告げると、教室を去る。俺は動けない。
さあ、考えろ。

授業を終えて、さてどうするか。
すぐにでも片付けなければならない仕事はない。しかし遊ぶ気にもなれない。
壬生屋に対する気持ちを明確にしなければならないのは解っているのだが……
「瀬戸口君、ちょっといいですか?」
階段を降りきった所で善行に呼び止められた。
「今日は加藤さんがお休みでして、書類の整理を手伝って貰いたいのですが」
断ったとしても命令に変わるだけ。頼み事の段階で了承した方が精神的負担は軽くて済むか。
何かに集中して心を休めたい、というのもある。
「俺で良ければ手伝いますよ」
善行は軽く頷いて言った。
「ではよろしく」
183四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:54:36 ID:a3s3d2m5


「瀬戸口君の考えは解りますが、既に決定した事です。明日、正式な告知と面通しをします」
──事の顛末はこうだ。
戦闘地域からは民間人は徹底的に締め出される。報道関係者ももちろん含まれるのだが、
何の間違いかこの隊の一番機を至近距離から撮り続けた映像がテレビを賑わせた。
幻獣を一方的に倒せる兵器。人類が勝てる希望。
巨大な人型戦車が幻獣を薙ぎ倒す様は衝撃的で、反響も大きい。各局で次々と放映され、
いずれも高い視聴率を叩き出した。
隊の知名度は飛躍的に高まったが、そういった映像を欲しがる人間が群がるようになってしまった。
出撃時には大掛かりな人払いが付き物となり、政府の人員を借りても戦場に民間人が紛れ込んでしまう。
戦闘での犠牲者が出ない様にする為、政府は報道関係者に伝えた。
『報道関係者の戦闘地域での活動を一層制限する』
流石に飯の種を潰されるのは困るとマスコミ連中もやりかえす。
『人型戦車の映像を政府広報が提供するべきだ』
かくして新たな護衛対象、余計なお荷物が増えるという事になった。
これ以上の策はなく、選択の余地がないのは認めなければならないのだが……。
「護衛として岩田君を付けます。それと撮影中の映像は士魂号と同じく常に
 指揮車でチェック出来るようにもします」
無職なのはそいつだけ。これも仕方なしだが。
「岩田に勤まりますかね」
あの変人に期待するのは正直どうかと思う。ひたすら自分を撮らせる、というのもありうる。
……興味が無きにしも非ず、という感じか。
ふ、と軽く笑って善行は続ける。
「そんなに不満そうな顔をしないで下さいよ。ああ見えても結構やれる人なんですよ」
決まった事に今更文句を言う気にはなれないが、疑問はある。
「……らしくないですね。やけにあっさりと受け入れたみたいですけど」
何かと慎重に進めるのがこの男だ。最終的な判断は司令の意思を尊重するともなれば、
小難しい表情でしばらく悩むのが当然だろう。
裏がある、としか思えない。
「やましい事は何もありません。来年には似たような状況になっていた筈ですし。
 予定が前倒しになっただけですからね」
184四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:55:22 ID:a3s3d2m5
「どうしてこんな面倒な事を画策してたんですか?」
ない方が良いに決まっている。士魂号の行動を制限するのは不利益しか生まない筈だ。
「軍の上層部では未だに士魂号の能力を疑っている方々がいらっしゃいます。偏見を正す為には
 数字より映像で、という簡単な理屈です」
「そして士魂号の増産化へのはずみを着けよう、ですか?そう上手くいきますかね」
とりあえずは壬生屋の腕前に感謝すべきだろう。もしあの映像が負けを表すものであったら、
この隊への評価は最低になっていたか。
……士魂号の増産。あの噂、本当だったのだろうか。
「司令、少し前に士魂号だけで編成された隊が出来たって話、本当ですか?」
スカウトすらも排除した純粋な士魂号のみの隊。
当時は幻獣の襲撃が相次ぎ確かめる暇すらなかったが、実際はどうなのか。
「あれは……ええ、事実です」
「本当だったんですか!」
驚かずにいられない。5121小隊以外で士魂号をまともに動かせたところがあったとは。
「彼……その隊の司令は私の士官学校時代の後輩なのですが、ある財閥の御坊っちゃんだったのですよ。
 その辺りの環境やら力を利用して、強引ながらも見事に編成まで漕ぎ着けました」
遠い目でつらつらと善行は続ける。
「大変な自信家でしてね……まあ、それなりの能力もありましたが」
それきり沈黙してしまった。話したくないのかもしれないが、もう少し聞きたいものだ。
「士魂号だけ、って事は何体で運営してたんですか?」
「重装三体に軽装一体で、全てが単座です。基本の兵装は前衛の重装三機はジャイアントアサルトと
 超硬度大太刀、後衛の軽装機には93mmライフルとバズーカ。
 今年に入ってからはミノタウロスの増加が目立ってますから、妥当な判断だと言えるでしょう」
合計四体。無理をしたものだ。
金と物は食うだろうが、うまく行けば相当な戦果を挙げているだろう。
しかし、続報はない。
185四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:56:10 ID:a3s3d2m5
「……訓練もしっかりこなして初陣に向かい、そして戻らない。
 友軍が確認したのは潰された指揮車のみ。相手も馬鹿ではない。そう思い知らされました」
知能が低いとされる幻獣だが、驚く程鮮やかな不意討ちもある。
単純な力任せだけならここまで人類が劣勢に立たされる事もなかっただろう。
四体か……勿体無い。オペレーターの俺ですらこう思うのだから、そうか。
この間の原の荒れようはこれだったのか。
と、待てよ。
「士魂号は見つからなかった?」
「そうです。恐らくは幻獣に持ち帰られて分解され、弱点を探られているのでしょう。
 我が隊の勝利もいつまで続くか……」
戦況は厳しくなる一方か。全く、楽じゃない。
「ま、そういう士魂号に対する悪い印象を払拭するためにも、政府広報に良い絵を撮ってもらうしか
 ないのですよ」
「……そうですね」
運が良かったと言えなくもない。仕事は増えるが、それ以上の効果も望める。
帳尻を合わせることが出来る。これだけでも間違いなく恵まれている方だ。
「今後の展望としては……」
夕日で光る眼鏡を僅かにあげて善行は言った。
「今年中に政府と民間での士魂号の評価を上げ、我々の支援者を増やします。
 来年の自然休戦期が終わる前には、5121小隊とほぼ同じ構成の新しい隊が作られるでしょう」
にやり、と意地の悪い笑み。こんなところは原とよく似ている。
「そして、ここの司令をあなたに譲ってから私は別の隊へ移動、になると思います」
まだ諦めていないのか、この男は。
「そんな柄じゃないですよ、俺は。何故俺なんですか?」
腕を組んだままこちらを向いた。戦闘中の冷酷な眼光が灯る。
「視野が広い。常に冷静な思考が働いている。何に対しても主観よりも客観が勝っている。
 発想に幅がある。正確には全ての方向に発想が出来る。
 ……そうですね、問題があるとすれば本気になっていない位ですか」
知ったような口を利く。
186四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:56:54 ID:a3s3d2m5
心で舌を打ちながら反撃した。
「速水では駄目なんですか。あいつの方が能力なら上でしょう」
「そうですね……速水厚君も悪くはないですが、彼は芝村舞さんに拘り過ぎる。彼女が係わると
 見境がなくなってしまう。
 指揮官としては問題です。それに、彼自身も幻獣を直接倒すのが望みのようですし」
人を物として分析している。全く善行らしい言葉だ。
俺はここまで人間味が欠けている筈がない。
「……司令と俺は違います。同類扱いしないでくれますか」
「そう思いたいだけでは?まあ、そうでないとしても今の私と同じ位の判断や思考は出来るでしょう」
「…………」
否定は出来ない。オペレーターをこなしながら俺はそれに気付かされた。
思考の根の部分は恐らくは殆ど同じ。たまたま枝分かれした方向が違うだけだと。
さて、と善行は机の上のファイルを片付けて席を立つ。
「今日の仕事は終わりですね。おかげ様で早く済みました」
「そりゃどうも」
結構時間はかかったが貸しだと思ってくれれば儲けもの。
しかし相手が善行ならそれも怪しいが。
「善行居るー?」
どこか気の抜けた原が小隊長室に入ってきた。俺に見向きもせずにずかずかと善行の側に回りこみ、
腕をがっちりと捕まえた。
「ほら、帰るんだから送りなさい」
こいつらは最近やたらと仲が良い。善行の言う『別の隊への移動』には原を連れて行くのだろう。
行った先でまた離縁して復縁するというお決まりのパターンか。
「ではお先に」
微妙に頬を緩めた善行と何やら楽しそうな原が通る。
手伝わせた理由はこれだ。確信出来る。
原は顔だけをこちらに向けて言った。
「校門で未央ちゃん待ってるからね」
だから?と訊き返せる心理的状況ではなく、黙っているしかない。
……くそ。何だってこうあいつの事には慎重なんだ、俺は。
187四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:57:41 ID:a3s3d2m5
雲の隙間から夕日が覗いている。
原の言った通りに壬生屋は校門でうろうろしていた。
赤い傘をぶらぶらと揺らし、その心情も同じく揺れ動いているのか。…俺も似たようなものだが。
「途中まで送りましょうか、箱入り娘さん?」
俺の声で我に返ったようだ。ぴたりと動きを止め、ゆっくりと俺に身体を向ける。
不自然な硬い表情だ。期待と不安でごちゃ混ぜになったのを強引に塗り固めている感じだ。
「……はい。宜しくお願いします」
「ああ、任せろ」
我ながら重い返事だと思う。軽い口調で尋ねておいて、それはないだろうと言いたくなる。
多分顔もひどいものだろう。
「傘、ないんですか?」
「近いからな」
それきり何も言えないまま歩き出し、壬生屋もすぐ横に居るが沈黙している。
綺麗な虹を見ながら、それでも適当な言葉が思いつかない。
解ってはいる。俺が本気になって相手にしているは壬生屋だけだと。
今まで散々からかってきただけに言いにくい。……こんな時だが、言ってしまうか──
「瀬戸口さん、ではまた明日」
T字路の突き当たりで壬生屋が言う。
言いそびれた。決意しかけたところに水を差されてしまった。
彼女の家はここを右に折れ、公園前を過ぎて大分歩かなければならない。
俺は左に曲がってすぐだ。
「ん、じゃあな、壬生屋」
全力で普通の声と表情で応える。
壬生屋は責めるような視線で一瞬だけ俺を見詰め、小さく頭を下げて背中を向けた。
呼び止めて言ったとしても信じて貰えないだろう。『言った』よりも『言わされた』感が
どうしても勝ってしまう。出来る事ならしっかりと向き合って言いたいが。
離れていく長髪。俺も爪先を翻す。明日なら話せる機会がある筈だ。
188四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:58:23 ID:a3s3d2m5
少し歩き、ふと何か聞こえる。話声、か?
「…──…、─…、」
周囲に人の気配はない。民家の中には当然いるが、今聞こえたのは屋外での会話だ。
突然にみしり、と圧縮された雰囲気。静寂が降り積もる感覚。
…何かヤバい。この感じは、戦場のものではないのか。
より具体的な表現をするなら、幻獣に直接睨まれているような──
「    」
!聞こえた。人が倒れる音が、後ろから。
走る。電柱や生垣が後ろに流れ、公園の入り口から組み伏せられた壬生屋が見えた。
「──っ!」
問答無用。黒い男を追い払う。
「離れろ!」
走り寄りながら壬生屋の様子を観察した。
雨上がりの泥に上半身を押し付けられ、失神しているらしく抵抗はない。
白い胴衣にじわりと汚れが染み込んでいる。右腕で首の後ろを押さえつけられ、
左腕は、あろうことか紅い袴を脱がせようとしている!
この野郎は、許さん。この場で始末してやる。
服装と同じく真っ黒なフェイスヘルメットがこちらを向く。頭部への打撃は効果が薄いだろうが、
思いっきり捻ってやる。生死など知った事か。
「離れろと、言ったぞ!」
蹴った。的確に首を捻じ切る前蹴りは確実にヘルメットが在った空間を蹴り飛ばした。
音もなく男は退いていた。足が水溜りに着地した筈なのに、殆ど音を立てない。
素人ではない。かなり、できる。
「……っ!」
本能が警告している。その強さだけではない。この気配はとてもじゃないが人間と呼べるものではない。
冗談ではなく、幻獣のそれと同じだ。背丈はそれほどではないのに、凄まじい巨体に見えてしまう。
何なんだこいつは。人か。幻獣か。
力みのない立ち姿に隙はない。得物は持ってないようだが、下手に飛び込めばこちらがやられる。
だが見過ごせと言うのか。
沸騰する本能と凍結する理性が俺の中でせめぎあう。
さあ、どうする。
189四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:59:13 ID:a3s3d2m5
いつ反撃が来ても良い様に腰を落として構える。黒い男は半歩だけ下がり、一瞬で振り返って逃亡した。
逃がすものか。必ず捕らえてやる。
「ぅ、………」
微かな呻き声に足が止まる。こいつを放って行くのか。……それは、出来ない。
僅かな躊躇の間に男は見えなくなっていた。
「おい、壬生屋!しっかりしろ!」
抱き起こしながら声をかけるが、意識はまだ戻っていない。
身体から流血はないようだ。泥でひどく汚れてはいるが、他は何ともないように見える。
「はぁ……、無事らしいな、壬生屋」
心底ほっとした。やはり玄関前まで送ってやるべきだったか。
しかし、この壬生屋を屈服させる相手とは誰だ?それこそ唯の暴行魔には不可能な芸当だ。
ぽつり、ぽつり。
いかんな、雨が降ってきたか。そう思った頃には土砂降りになった。
ざあざあと不快な雨音。傘は、くそ。持ち主の業に耐えられなかったらしく、折れ曲がって開かない。
まずは俺の部屋に連れて行くのがベストか。壬生屋の家に送ったとしても、こいつの身体は
冷え切ってしまうだろう。
「後でいくらでも怒っていいからな」
誤解されても仕方なし。決意し、さして重くない身体を背負う。
……本当にこの身体で幻獣と戦っているのか。あまりにも軽く、柔らかい。
「何を馬鹿な。やることやれよ、瀬戸口」
そうだ。やるべき事をやれ。一刻も早くこいつを介抱する。
足元の水溜りを踏み散らし、靴先から水滴が飛ぶ。吐き出す息が白くずぶ濡れ服が重い。
どれもがどうでもいい瑣末事だ。
壬生屋が寒そうに震え出した。早く暖めてやらなければ。
190四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/08(日) 23:59:57 ID:a3s3d2m5
ようやく到着。
ソファに座らせ、間髪いれずにバスタオルで顔と髪を拭いてやる。
泥は雨で流されてしまったらしく、意外なほどに汚れはない。
さて、本題はここからだ。
「壬生屋、起きろよ、おい」
「…………」
反応なし。起きてくれれば最善なのだが、無理に起こすのも良くない気がする。
しかし濡れた胴着を着せておく訳にはいかない。
「頼むから、終わるまでそうしていてくれよ」
俺が脱がすしかないようだ。女性の服を脱がすという場面は初めてではないが、
相手が壬生屋で、それに加えて同意を得ての行為ではない。
正直、緊張している。迷いもある……この阿呆が。こいつの身体を壊してもいいのか。
壬生屋の表情を窺う。よし、まだ起きていない。
ソファに横にして手早く腰の結び目を解く。袴を膝まで下げて俺は動けなくなった。
「……くそ、反則だろ、そりゃ……」
無駄のないほっそりとした太股、汚れのない白い下着。
短気で古風な印象を完璧に打ち砕く破壊力がこの光景にある。
「ったく、見惚れてる場合かよ」
強引に感情を抑え付け、出来るだけ「物」として壬生屋を脱がせ始める。
タンスからズボンを出して穿かせる。サイズが合う訳が無いが、何も無いよりはましだろう。
続いて上を脱がせる。発育は良好。凝視したい欲求を無視し、長袖を着させた。
寝室まで抱き上げてベッドに寝かせ、止まる事なく胴着を洗濯機に放り込んだ。
間違っているのかもしれないが、とりあえずはこれ以外の手段はない。
壬生屋は穏やかに眠っている。着替えさせる段階では皮膚や骨格に異常はなかったと思う。
しかし改めて検査を受けさせる必要はあるだろうか。
傍に座る。すうすうと静かな寝息。
──壬生屋を傷つけることなく昏倒させる男。
幻獣と同じ気配で、人間と同じ姿。ありえない話だが、事実だ。
「ぅ……ん……」
微かな呻きに思考は断たれ、俺は壬生屋に声をかける。
「壬生屋、解るか?壬生屋?」
部屋の明かりで眩しそうに瞼が歪み、そろそろと開く。
191四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:00:39 ID:jG+Oa3/y
「瀬戸口、……さん?」
戸惑いながらも俺を確認してくれた。心底安堵し、確かなものにしようと言葉をかける。
「よし、どうだ?身体や意識におかしい所はないか?」
壬生屋は目を閉じ、数秒してから言った。
「……はい、大丈夫みたいです」
壬生屋ほどの剣術家ならどんな身体の異常も察知できるだろう。この報告については信頼して良い。
目を開けた壬生屋はきょろきょろと周囲に視線を送り、動揺を増大させたようだった。
「あの、ここって、……」
まぁ、当然の問いではあるか。
「俺の部屋だ。お前さんの家は遠いからな、勝手に連れ込んだって訳だ」
「つ、つれこんだ……っ!」
羞恥と興奮で紅い顔。だが、これで良い。
少しでも倒されたという事実から遠ざけるべきだろう。精神的なショックを受け止めるだけの
姿勢を作らせる時間が必要だ。
意識してからかう表情を作って、軽薄そうな声で言ってやる。
「思ってたよりもいい身体だったぞ。ご馳走様、壬生屋」
「〜〜〜〜〜っ!!」
そうだ、怒れ。
今日だけ、というのは無理だろうが、あと十分でもさっきの事を忘れていろ。
お前の強さが戻るまで。
「目が覚めたなら何も出来ないか。ま、後は好きにしたらいい」
俺は返事を聞かずに部屋から出ようと立ち上がる。
「……ありがとうございます」
見れば、俺の思惑は見抜かれていたらしい。壬生屋はやや沈んだ表情で感謝の言葉を述べていた。
やはりそう簡単にはいかないか。
俺は壬生屋の傍に座り直し、努めて事務的にこれからの事を訊いた。
先ほどの事も訊きたいが、壬生屋が言い出すまで待つべきだろう。
「胴着なら今洗ってるところだ。乾燥機なんてないからな、その服で帰るか?嫌なら学校のお前さん
 のロッカーから制服を持ってくるが?」
流石に濡れきった胴着で帰るとは言い出さないだろう。
192四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:01:29 ID:jG+Oa3/y
壬生屋は数秒だけ考え、少しは力強くなった声で答える。
「では、制服を持ってきてもらえますか?」
「解った。一応鍵をかけていくからな」
壬生屋の精神状態は決して十全ではない。その顔の翳りは深く、一方的に倒されたという事実が
首をもたげ始めたに違いない。
……ゆっくり行ってくるか。俺が出た後、相応の揺り返しがやってきても不思議ではない。


壬生屋の制服を持ったまま、俺は鍵を開ける前に十分ほど時間を潰した。
揺り返しの最中に出くわすなどという馬鹿は避けたいものだ。
『こんこん』
ドアをノックする音。俺ではない。
「瀬戸口さん、大丈夫ですから、入ってもよろしいですよ?」
薄いドア越しの声は平時と同じ響きだと思う。壬生屋自身も大丈夫だと言っているなら、
まず問題はないだろう。
「……入るぞ」
俺は声をかけ、鍵を取り出した。


「たしかにショックですけど、そんなに落ち込んでられませんから」
テーブルについてコーヒーを飲みながら、壬生屋は落ち着いた表情で言う。
明らかに長すぎる袖を持て余しつつも、その所作に鈍さはない。
体調は元通りのようだ。いつもの元気さには若干届かない感じはあるが。
193四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:02:11 ID:jG+Oa3/y
壬生屋はその時の状況をとつとつと語る。
「公園前を過ぎようとしたら、僅かですが何か得体の知れない気配を感じて……」
園内に踏み込むと、奴がいた。黒ずくめの男。
「例の通り魔だと感じてしまって、声をかけようと思った瞬間に、……人間ではなくなりました」
幻獣をそれこそ間近で見続けた壬生屋がこう言うのなら、あれは、幻獣なのだ。
その表情はより硬くなる。
「答えは返ってこないだろうなって思いながら、誰なのかを訊きました。
 ……その人、その者は何も言わず手刀を首に当てたんです」
挑発行為だな。こうして見せろと言ったのだ。
ごくりと細い喉が鳴る。恐らくはその時も同じ事をしたのだろう。
「……今でも信じられません。その手が、研ぎ澄まされた名刀のように見えました。
 振り下ろされて、切り裂かれる私が、頭に浮かびました」
自らの震えを止めようと身体を抱く壬生屋。
今日はここで終わらせよう。ここから先は危険だろうと思った。
「もういい」
強めの声での命令する俺に、従う事なく言葉を続ける。
「……怖かったです。だから、間合いを詰めながら持っていた傘を振り上げて、その時に解りました。
 完全に見切られてるって。予備動作だけで、私がどこを斬ろうとしているのか見切られてるって。
 何百と繰り出しても絶対に当たらないって解った直後に、意識がなくなりました」
伏せられる顔。なくなったのは意識だけではないはずだ。
「明日から、やり直しですね……」
これまでに築き上げた自信も、元に戻せるといいが。
そして顔があがる。真剣な目で、俺に感謝の言葉を述べた。
「ありがとうございました。この恩は、必ず返しますから」
真摯な眼差し。真っ直ぐな意志。
「ああ。……いつでもいいぞ」
出来る事ならもう少しだけ先にして欲しいものだ。今の俺には、それを受け取れるだけの資格はない。
壬生屋の純真さに触れるような手をもっていない。
194四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:02:57 ID:a3s3d2m5
「────」
その瞳に違った色が混じる。
期待と、興奮。
この間の続きを聞けるのだと思っているようだ。
それらが失望に変質するのはそんなに先の事ではない。俺がなにもしなければ、だが。
ちゃんとしてやりたいから言った。
「もう少し待ってくれるか?」
疑問で埋まる視線。
「お前さんも知っている通り、俺は結構な付き合いがあってな。……全部、断ってからだ。
 そのほうがいいだろう?」
俺もそうしたいのだ。こいつの本気を同じくらいの本気で受けたいと考えるほどに、
俺は惚れこんでいる。
この言葉も事実上の告白だ。
壬生屋はそれに気付き、頬を染め始める。
「出来るだけ早く、そうして下さいね、瀬戸口さん」
恥じらいが僅かに滲み出す穏やかな表情。
雨は止んでいる。帰すには丁度いい頃合だ。
だが、もっと見ていたかった。


翌日。
昼食時間に小隊の全員を会議室に集めた善行が、政府広報の男を皆に紹介する。
それまでの経緯も説明していた。
全滅した士魂号小隊の事は言わなかったが、それは正しい事だと思った。
『プルルルルル』
善行の傍にある電話が鳴る。
受話器を取り、すぐに戻す。そして一言。
「出撃です」

195四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:03:40 ID:jG+Oa3/y
今回の敵勢力はとにかく数が多く、しかしスキュラやミノタウロスが含まれず、さらには足の速い
きたかぜゾンビすらもいない。
『群れ』としか言いようがない進軍。個々の判別が困難な程に密集した隊列。
──おかしい。
幻獣も馬鹿ではない。
数は確かに力だが、俺達の小隊が相手だと解るとすぐに分散して各個撃破を狙ってくるのが常だ。
今日はそうしない。固まったままこちらにじりじりと寄ってくる。数頼みの強襲、でもない。
これならば良い的になるだけだ。なのに、散ろうとしない。
──おかしい。
「変ですね」
俺は口に出し、善行の言葉を促す。
善行も不審に思っているようだ。
「……ですが、この一群以外に敵は見当たりません。手早く片付けましょう」
言葉通りに周囲は全く敵影がない。
が、それならば迷う必要もないか。
善行の指示に従って三機の士魂号が走り出す。
スカウトは念のために後方にいるトレーラー付近で待機させる。
士魂号から送られるヘッドカメラの映像を眺めながら、これならば全くの無傷での勝利になるだろうと
確信する。二番機、三番機のジャイアントアサルトの火線が幻獣の群れに吸いこまれていく。
一番機は着かず離れずの距離を保ち、うまく注意を引きながら突撃の機会を窺っている。
……やはり、うまく行き過ぎている。胸の不安が高まる。
「何だ……?」
突然に全ての幻獣が背中を見せて敗走を始めた。
驚く前に呆れてしまった。このような行動は初めて見る。これだけの数で来て、数体倒されただけで
撤退するのか。
不安が一気に高まった。
変だ。絶対におかしい。
士魂号のパイロット達も戸惑っているらしく、追撃は鈍い。
散り散りになる幻獣。そして、全身に渦巻いていた不安の理由が解った。
196四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:04:23 ID:a3s3d2m5
「え?」
東原の声だけが響いた。
回線を開いているパイロット達も、善行も、俺も、何も言えない。
平坦な野原には六つの塊があった。
そのうち三つは小隊の士魂号。残りの三つが敵。
「え、ええ?たかちゃん?」
東原は混乱している。無理もない。
俺達は、なおも言葉を出せない。混乱もあるが、緊張が一番の理由だ。
正直、スキュラやミノタウロスだけでの編隊のほうが楽に戦えると思う。
士魂号三機とそのパイロットにはそれだけの強さがあるからだ。
だが、この相手には通用するのか。
「瀬戸口君、分析を開始して下さい」
無言で善行に従った。赤外線等でその相手を照らし出す。
見慣れた形。当然だ。この小隊になくてはならないものが、写っている。
『ごくり』
無意識に唾を飲み込んでいた。
動力源は、意外にも二つだった。それだけでも脅威的になるだろうか。
生体装甲が幾つも重ねられているらしく、ごつごつと全体が盛り上がっている。
黒い大岩のような外見。ミノタウロスに似て、決してそれと同じではない。
『なぁ、厚志。新型、だよな?』
通信回線から滝川の声が弱々しく聞こえる。
『……だったら良かったんだけどね』
答える速水も緊張を隠そうとしない。
俺も同意する。全くだ。新型であって欲しかったが、どうやらそうはいかないようだ。
繭のように固まっていた四肢が解かれ、ゆっくりと立ち上がる敵。
「こんな手があったとは……私もまだまだ、ですね」
善行の呟き。誰が予測できただろう。
士魂号が幻獣に乗っ取られるという事件を。
197四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:05:06 ID:a3s3d2m5
『アサルトは通じないな、ありゃあ』
『……だね。バズーカ取ってきてくれる?』
『近接戦なら、私の出番ですね』
『待て。連携を怠るな。各個撃破されるぞ』
パイロット達はいち早く対応策を練っている。善行は止めさせる事なく沈黙し、重い決意を感じさせる声音で
通達した。
「既に察しているかと思いますが、目前の敵はあなた達だけを目標にする存在のようです。
 細かい指示は与えません。各々が適当だと考える行動を取ってください。
 今回の戦闘ではあらゆる損害も認めます。命令は二つ。
 敵戦力を完全に殲滅せよ。不可能であれば、可能な限り損傷を与え、戦死せよ。
 ……我々も撤退しません。安心して戦ってください」
時は満ちたとばかりに動き出す戦い。
二番機だけが離脱し、一番機に二匹、三番機に一匹が襲いかかる。
俺の視線は一番機からの映像に固定され、両手はあらゆる回線を遮断し、
そして口は大声をあげていた。
「何言ってるんだ、あんたは!」
一番機が両手持ちに改良された超硬度大太刀を振り上げ、振り下ろす。
「戦死しろ、だって!?ふざけるな!」
黒い装甲に衝突し、激しい火花が散る。
次の瞬間には砲撃のような突きが炸裂する。
「どんな理由でそんな命令をするんだ!?言ってみろ!」
198四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:05:58 ID:jG+Oa3/y
しかし、通じない。
硬い装甲に僅かなへこみを作るのが精一杯だ。
「士魂号が幻獣に乗っ取られるという事実をもっと深く考えてください」
太く唸る四本の腕。一本の剣では捌き切れる筈がない。
「限りなく人間に近い兵器が乗っ取られる。即ち、人間が幻獣がに乗っ取られるという可能性も
 少なくない、いえ、非常に高いと考えるべきです」
黒い嵐から必死に逃げながらも剣を突き出すが、効果は無に等しい。
「見ての通り、相手は近接戦闘に特化されています。肘から先が長く、太い指もあります。
 間違いなく生け捕りを最優先にした武装です」
左手首が掴まれ、どこからか飛んできたジャイアントアサルトの弾が直撃してごつい手が離れる。
安心する暇もなく突き出される腕。
「もし彼らが捕らえられ、敵として現れた場合、どれだけの脅威になるのか予想が出来ますか。
 総合的な能力では他を圧倒する三番機、得意分野ではその三番機すら上回る一番機、二番機」
伸びてくる腕の連携が巧みになっていく。
二匹交互に、上下左右から。
「それを操るパイロット。彼らでも倒せない幻獣。
 ……止めるとしたらどれだけの戦力が必要ですか。私には想像もつきません」
剣を繰り出す隙さえも殆どない。挽回の可能性さえも摘み取ろうと襲いかかる四つの棒。
「……死んだ状態なら、乗っ取られる可能性は下がるでしょう。乗っ取られたとしても、
 生前の能力は完全に発揮出来ないはずです」
後退に次ぐ後退。相手は元士魂号単座型だ。その追い足は速く、離れるのも難しい。
「その為の戦死命令です。恐らくは彼らも理解しているでしょう。
 ……不本意ですが、この命令はしなければならないものなのです」
止まった。
二匹の人型幻獣は激しかった追撃を止め、こちらの隙を伺っている。
「出来る限りの情報を集め、信じて待つしかないのですよ、我々は……」
剣が下がって見えなくなった。
一番機は構えを解いてしまったのだ。
199四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:06:42 ID:jG+Oa3/y
俺は慌てて回線を繋いだ。
「おい、なにしてる!剣士が剣をおろしてどうするんだ!」
動作は止まらず、納刀は完了した。
好機とばかりに迫る幻獣。
「壬生屋!構えろ!」
『……瀬戸口さん』
落ち着いた声だ。絶対に窮地なのに慌てる素振りを感じさせない。
──諦めた、のか。
四つの手が同時に迫る。
捕らえられ、壬生屋が気を失うか抵抗の意志をなくするまで乱打されるのだろう。
こんな事なら、昨日はっきりと言っておくべきだった……すまない、壬生屋。
『私、自分を剣士だと言った覚えなんてありませんよ?』
腰が沈んだかと思うと、視界を埋めていた幻獣が消えた。
「な、に……?」
ずずん。二連続で岩が落下したような音が響いた。
一番機が振り返ると、起き上がろうとしている幻獣。
『古くから代々伝わる武術の継承者です。私はそう思っていますが』
冷静さを保ったまま、二方向からのタックルを視認するようにカメラが動く。
そして左右に機体が揺れる。
ずずん。幻獣が、仰向けに倒れた。
『剣が通じないこの幻獣は確かに脅威ですけれど、人間として扱えるならどうという事は
 ありません。いくらでも手があります』
再び起き上がった幻獣が拳を固めて、繰り出す。
「……っ?」
不可思議な視界の変化に俺は翻弄された。
いつもの直線的な機動ではない。流れるような滑らかさ。
『オペレーター、聞こえますか?』
不意に聞こえた丁寧な言葉。咄嗟に誰なのか理解出来ず、ようやくその主を思いつく。
「岩田、か?」
『あれは、本当に、一番機ですか?』
政府広報が持つカメラの映像を画面に出し、俺も同じ事を思った。
超硬度大太刀を振るわない一番機がそこにいたのだ。
200四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:07:24 ID:jG+Oa3/y
次々と飛んでくる幻獣の腕を紙一重で避け、カウンターの打突で牽制し、隙を逃さずに投げる。
起き上がろうとするところに容赦のない前蹴り。もう一匹が立ち上がらないまま苦し紛れのなぎ払いを
繰り出すが、その腕すらも掴まれ、投げ飛ばされる。落ちたところには相棒がいて、無様に転げまわる。
幻獣とて黙ってやられている訳ではない。ないのに、圧倒的に一番機が勝っている。
二本の腕で一匹の両腕を完全に極め、もう一匹の襲撃をしっかりと見据え、膝を屈めて旋回。
身体を跳ね上げ、またしても幻獣達が仲良く重なる。
いや、前とは違う。投げられながらも一番機の手首をふたつともしっかりと掴みやがった。
しかし一瞬だけだった。電光のように一番機の爪先が幻獣の両肩を抉る。がくりとその指が開き、
一番機は脚を振り下ろすついでに深く踏み込み、両の双掌で叩く。
トンにして二桁を超える重さの幻獣が景気よく吹っ飛び、その隙を逃がさないとばかりに
地に這いつくばっていた幻獣が一番機の両足首を狙う。
雑草ごと目的を捕らえようとする手が空振り、宙に浮かんでいた一番機が強烈な足刀を幻獣の頭頂部に
見舞う。反動を利用して十メートル程の距離を後退する一番機。大胆な攻めから一転して、慎重な
待ちの体勢だ。
起き上がろうとする幻獣のすぐ横をもう一匹が走り抜ける。一番機は動かない。
そして幻獣は腕を伸ばして再度捕獲の機会を掴み、
『馬鹿、ですね』
一番機は幻獣の肘を掴み返した。
びくびくと全身を震えさせ、太い指が対象を解放してしまう。
すう、と自由になった手をあげる一番機。横から襲いかかる幻獣の拳を狙ったように捕らえ、
指の一本を捻ると、壬生屋の断定の声。
『人差し指ですね。残りは親指と中指ですか』
二匹は完全に動けない。がくがくと痙攣するのが精一杯だ。一番機の手が的確に神経のツボを突き、
あるいは痛みを最大限に引き出す関節技を極めている。
自分は剣士ではないと壬生屋は言った。正しくその通りだろう。
急所を突く打突や重量や重力をものともしない投げ。加えて掴むだけで極まってしまう関節技に至っては
剣士に出来る事ではない。人体に精通する戦い方。代々伝わる武術の継承者との言葉は、正しい。
201四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:08:15 ID:jG+Oa3/y
拘束に飽きたのか、一番機が身体を傾けながら膝を曲げ、伸ばす。二匹の幻獣が宙に浮いて、頭から大地に
突っ込んだ。
すぐに跳ね起きる幻獣が捕縛か殴殺を達成すべく行動するが、最早触れる事さえ難しい。
時間を追う毎に壬生屋は相手の実力を把握し、恐らくは出来る事と出来ない事を細かく言い当てるだろう。
ふと俺は思った。
ケンカの素人二人と武道の達人一人ではどちらが強いか。答えは考えるまでもなく決まっている。
壬生屋は言った。剣が通じない幻獣は脅威だが、人間として扱えるなら問題はない、と。
全くその通り。その武術は異形を狩る為に創られ、実績を上げ、それを疎ましく思う人間をも排除し続けたのだ。
両方に勝てるから、今に伝わる。数も質も、道具も罠もはね返す積み重ねなど想像もつかない。
それほどに壬生屋家の業は強かったのだ。
『……遅い、ですよ。そんなものが通じると思っているのですか』
壬生屋は呟きながら幻獣の攻撃を捌く。
いつもなら感情を押し殺した気迫の声をあげるものだが、恐らくは戦死した兄との稽古を思い出している
のだろう。その言葉には大量の感情が載せられている。
『もっと強かった。兄上は、こんなものじゃなかった。兄上を、帰しなさい……っ!』
今まで溜め込んでいた想いをぶつけるように一撃一撃が重く、鋭い。
突然の警報に殴られ、俺は事態の確認に移る。
「二番機、大破だと?」
パイロットの生死は、
『こちら滝川!予備の士魂号で掩護に行きます!』
やたらと元気な報告で確認が取れた。
「怪我はないか?」
『平気です!何してたんですか?トレーラー狙われてましたよ!』
「すまん。ちょっとな」
滝川の位置を示す光点がトレーラーに向かっていく。
三番機の点が幻獣のものから遠ざかっている。どうやら何とかしたらしい。
『よしっ……一番機、やれる?』
速水のやや落ち着いた声。壬生屋も同じような雰囲気で答えた。
『一対一ならやれます』
『もうすぐだ。耐えろ』
芝村の言葉が終わると同時に広報のカメラが丘を迂回して来た三番機を捉える。
202四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:09:01 ID:jG+Oa3/y
片膝をついて、ジャイアントアサルトから凄まじい速射が始まった。
遠距離と言っていい間合いであるのに膝の裏や腰に集中して着弾し、幻獣のものではない赤い体液が噴出す。
……くそ、人間の血で動いてるのか。
射撃に晒される人型幻獣が振り返り、これ以上撃たせるものかと突進を始める。
画面手前での均衡も破られた。
『はっ!』
壬生屋は気合とともに苛烈な打撃を連続で叩き込む。
ごん!ご、ごん!
上半身の装甲の隙間に拳が刺され、幻獣がよろめいた直後に斬撃とも呼べる水面蹴り。
払われた足が高く上がり、直後に足首を掴む一番機。
『やぁ!』
その腕が半円を描き、背中から落ちるはずだった幻獣の身体が反転し、腹から着地する寸前に
黒い身体を刀が真っ二つにしていた。真っ赤な体液が飛び散り、一番機を染める。
背の装甲は薄く、前面の装甲も内側から攻撃には弱かったのだ。
そして三番機の切り札が炸裂した。
爆風から身を守る為、政府広報と岩田、そして一番機がミサイルを撃ち始めた三番機から離れた。
『くそ、こんなに……っ!』
速水の判断は決して間違いではない。確実に損傷を与えるべく出来るだけ引きつけての発射。
なのに、回避される。腐っても士魂号なのだ。機動力に関してはミノタウロスの数段上だ。
さらには当たりそうなミサイルに自らの装甲の千切りとって投げつけることで直撃させない。
数発は当たっている。しかし止まりはしない。
『チィッ!』
芝村が舌を打ち、それでも幻獣の装甲は砕けない。
脚や頭部には大きな亀裂が生まれているようだが、腕と胸はまだ耐えるだろう。
突進は止まらず、それどころか速度を落とさずに三番機の目前まで迫った。
続行するミサイル発射と、至近距離からの爆圧が二人のパイロットを激しく揺さぶる。
機体も確実に損傷を受けている。
『……っ!止め……ない…か!?』
『無理……!』
とうとうミサイルは撃ち止め。三番機は黒焦げで、膝をついた姿勢で指一本動かせない程のダメージ。
そして幻獣。僅か数メートルの距離で動いている。
203四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:09:52 ID:jG+Oa3/y
豪腕だけが機能している。がっちりと組ませ、高々と振り上げられた黒い塊。
一番機が止めに入ろうと疾駆するが、間に合う筈がない。
振り下ろされる黒鎚。
『「────…………っ!」』
誰もが言葉を失い、一際大きな音が辺りに響き渡った。
大きな塊が奇妙に歪み、ぐらりと揺らいで、沈む。
「……二番機、敵幻獣を撃破」
安堵を噛み締めながら俺は言った。紙一重で、二番機のバズーカが間に合った。
「滝川君もやりますね、未調整の士魂号で長距離射撃を成功させるとは、大したものです」
「……ですね、戻ってからちょっとは褒めてやりましょうか」
善行も心底ほっとしたようだ。無理もない。
これほどの危機は初めてだった。一番機だけが無事で、二番機は中破。そして三番機も動けない。
「お前たち、怪我は?」
『外傷はない。ひどく気分は悪いがな』
『僕も大丈夫です。壬生屋さんは?』
『何ともありません。ハッチは開かないのでしょう?今、助けてあげますから』
鞘に刀を収めた一番機が歩き出す。壬生屋も相当に疲れているのだ。
慣れない素手での戦闘に、普段の何倍もの精神力を費やしたのは当然だろう。
力を抜いた善行が言う。
「さて、帰ったら準竜師に陳情しなければなりませんね」
「ま、修理には時間がかかり過ぎるでしょう。それしかないと思いますよ」
これだけの損傷はまず直せないだろうな。整備班は激怒するかもしれないが、現時点では入手が
困難とされる士魂号よりも、生きた四人のパイロットの方が数段重要だ。
盾としてその場しのぎの捨て駒。しかし、なくてはならない剣に成長した。
『希望』という例えが大げさではないくらいの戦果を挙げている。
それを続けさせる為にも、すぐに新しい機体は来るだろう。
204四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:10:35 ID:jG+Oa3/y
『一番機、九時だ!』
芝村の叫びに反応し、抜刀しながら向きを変える一番機。
広報のカメラも同じ方に向けられ、生き残っていた幻獣を写す。
『脊椎、外してたか』
その相手は三番機が迂回した小高い丘に立っている。
腹には背中から刺された超硬度大太刀が突き出ていて、出血はそれほどでもないか。
速水の言う通り、急所を外したのだ。先端に土が付着している。一度は大地に縫い付けられたのだろう。
俺達の目を気にせず、幻獣は刃を掴んで引き抜く。動作には力があった。
じりじりと周辺の空気が変わるのが解る。
二番機はまだ遠い。着く前にはやってくるだろう。
「頼む、壬生屋」
手負いだからといって油断は出来ないが、それでも壬生屋なら倒せる。
不安は拭えない。だが、やってくれると信じるしかない。
『了解』
短い返答。一番機が数百メートル離れた敵に向かって走りだし、すぐに止まった。
「……何だ?」
幻獣はまだ動く。超硬度大太刀だけではなく、脚や腰、背中の装甲も取り除いている。
限界まで満ちていた緊張が、さらに重さを増す。
装甲が残っているのは胴体の前半分と肘から先だけ。
身軽になり、腰を低くした幻獣の両足がありえない太さに膨張する。
どくどくと赤く脈をうち、倍近くはあるだろう。この戦闘が終われば、間違いなく使い物にならなくなる。
こちらの士魂号にはやれない事だ。
205四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:11:20 ID:jG+Oa3/y
醜い頭部をかばうように腕が組まれ、爪先を深く地中に食い込ませるように地を踏み締める。
「そう来るか……」
奴の策は明確だ。
あの脚力で一番機に体当たりをして、そのまま馬乗りになって殴る。それだけだ。
ぶ厚い装甲は剣を通さない。脚を斬っただけでは勢いは止まらない。まず間違いなく奴の狙い通りになる。
仮に、引きつけてから側面に回りこんでの斬撃を狙ったとしても、あの長い腕が広がってしまえば
簡単に阻止出来るか。さっきと同じ殴り合いになったら?機動力の差が大きく、不利なのは明白だ。
二番機が着いても射撃での援護が難しくなるだろう。
許されるのは正面撃破のみ。
壬生屋も完全に剣で倒すつもりらしく、中段の構え。
……やれるのか。あの装甲に剣が通じない事は知っているはずだ。だが、壬生屋が思考し、選んだことだ。
全てを託せるのはやはり剣なのだと無言で宣言している。
すう、と一番機が上段構えになった。
『──っ、すごいな』
『ふむ、流石だ』
三番機の二人が何かを確認し合っている。
「どうした?」
『……物凄い気合いですよ。邪魔しちゃ駄目ですよ、瀬戸口さん』
……そうだな。何か言ってやりたい気持ちはあるが、それは帰ってからにすべきだ。
今は見守るしかない。信じて待つしかないのだ。
206四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:12:03 ID:jG+Oa3/y

しん、と全ての動きが止まっている。
草木も大気も、空間から心までも。
それほどに固形化した雰囲気が俺達を支配している。
一番機の持つ大太刀が陽光で輝き、対する幻獣は塗りつぶされたような黒と赤が光を吸い込んでいる。
鋭い静寂はなおも続き、
「……来たか」
破ったのは幻獣だった。
ごごご、と地鳴りにしか聞こえない走行音を発しながら迫ってくる。
一番機は動かない。敵が間合いに入るまで待ち、そして斬るつもりか。
耳に入らないだろうが、それでも言わずにいられなかった。
「出来るのか、それは」
連続した大地の打撃音は最初だけだった。
『ごおっ!』
暴風という例えでは完全に不足している。下手な竜巻を凌駕する勢いで腕が届かない範囲の草花を弾き飛ばし、
その数倍も離れた木々すらも纏っている大気で薙ぎ倒す。
影響を与える領域は時間と共に幅を広げている。一番機に近づく程、速度が増しているのだ。
赤黒い脚も漆黒の装甲も、最早流れる色でしかない。
殆ど目視不能な速さ。二番機の全力走行でも不可能な疾走だ。
恐らくは開発中とされる士翼号をも超えているだろう。
加えて、
「……ォォォォオオオオオ!!!!」
脚がすくむ雄叫び。腹の底から震えあがってしまう威圧感。
心臓が抉られるようだ。スキュラに睨まれても、これほどの恐怖は感じないだろう。
──駄目だ。あれに勝てる人間はいない。あれを倒せる兵器は存在しない。
唇を噛み、無理やりに開きかけた口を閉じる。
逃げろなどと言ってはいけない。余計な邪魔はするな。
壬生屋を信じろ、瀬戸口。
一番機に収まる壬生屋が何事かを呟いていた。
『あなた、最高です。最高に、綺麗に斬ってあげます……!』
背筋が凍る。普段の熱さを全否定する声音。……壬生屋も、こんな化け物を飼っていたのか。
時が止まったように動かない白い輝きと、狂ったように流動する赤と黒が交差する──!
207四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:12:46 ID:jG+Oa3/y

瞬間、
弾けた白が彗星になり、
赤黒い雪崩が加速され、
落雷に似た音が炸裂し、
全ての物音が消え去り、
俺達の勝利が確定した。
はあ、と誰かが溜め込んでいた息を吐いて緊張が解けた。
「大した奴だな、全く……」
文字通り一撃で斬ってしまった。
真っ二つになった士魂号幻獣型がぐずぐずと崩れながら重なっていく。
生命活動が完全に停止しているのか、派手な体液の発散はない。
ずしずしと滝川の操る予備機が動かない二機に近づいてきた。
『大丈夫か、みんな!』
『滝川止まって!』
何を考えているのか、速水は滝川の接近を止めさせた。
壬生屋は気絶している。俺が起こしている間に滝川が二人を出すのが適切だと思うのだが。
少しでも早く戻る為にも、無駄に時間を費やすのは避けたいところだ。
「速水どうした?」
『まだ剣気が収まってないんですよ。傍に寄ったら……多分、斬られる』
速水の声には冗談を思わせる響きが全くない。
俺は手を動かしながら改めて一番機からの情報を確認する。
間違いなく気絶しているはずだ。それでも戦える状態なのか。
文字通り身体の芯から武術家らしい。
「……よし、戦闘モードを切ったぞ。滝川、三番機のハッチを開けてくれ」
『了解』
二番機が三番機に張り付いて焼け付いたハッチをこじ開け始める。
俺はトレーラーを呼び寄せ、隣の東原が壬生屋に呼びかける。
「みおちゃん、あさですよー!」
のん気な口調だが、とりあえずは平時の穏やかさが戻った証拠だ。
208四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:13:30 ID:jG+Oa3/y
一番機の回線からも寝起きを思わせる声が聞こえる。
『ん、……はい、起きます……から……』
毎度の事ながら、渾身の一撃を繰り出す毎に失神してしまう壬生屋が少し可哀想だ。
何も着けていない生身状態やウォードレス姿ではいくらでも動けるのだが、
士魂号に乗ってしまえばそれだけで脳の揺れは何倍にもなり、簡単に限界を超えてしまう。
こればかりは対策のしようがない。鍛錬で克服出来る類なのだろうか?俺には解らない。
三番機の二人が何やら話し合っている。
『最後の振り下ろしは見事だったな、厚志』
『だね』
……最後、の?
幻獣には一つの断面しかない。よく見れば、腕の装甲は半分ほど裂けて肩から抜け落ちているか。
壬生屋の剣は組まれた腕に阻まれ、しかし勢いを失わずに幻獣を切り伏せた。
俺にはそう見えた。一撃で仕留めたはずだが。
「速水、一発じゃなかったのか?」
速水は迷いなく答えた。
『戻ってからスローで見れば解りますよ』
ごそごそと開いたハッチの隙間から速水と芝村が出てきた。
二番機が振り返り、滝川が呼びかける。
『一番機、聞こえる?』
『……はい、聞こえます、大丈夫です』
『おっし。三番機、運ぼうぜ』
『了解です』
そしてトレーラーのエンジン音が近づいてきた。
209四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:14:17 ID:jG+Oa3/y


「ったく、これはこれは」
俺は会議室で先ほどの戦闘を見直して、納得した。
巻き戻してもう一度再生する。壬生屋の最後の一撃。
緩やかな曲線が光を残しながら幻獣に振り下ろされる。
次のコマ。腕の装甲に激突し、切断まで至らず肩から両腕を千切り落としていく。胴体に剣先は当たらず、無傷だ。
次。落下する腕が接地すると同時に突きが入っていた。正確に士魂号の心臓部を貫いている。
次。僅かに間合いが詰まる。幻獣の突進は止まらないが、壬生屋の剣も止まらすに引き抜かれた後だ。
次。再度の突き。コクピットの中心。もう一つの心臓があったところだ。
次。剣先が股の下まで通っていた。切断面は頭頂部からだ。刺したまま力で押し斬ったのではない。
剣が抜かれ、上段に振り上げられて、振り下ろされる動作が撮れていない。
陽射しが反射する事さえ出来ない速さで、加えて火花すら生ませない技量での斬撃だったのだ。
ここからは両者とも動かない。暫くしてから腕のない幻獣が崩れる。
体液を撒き散らさないのも当然。二つになる前に、両方の心臓が止まっていたからだ。
「いい宣伝になりますね」
隣にいる善行がまるで他人事のように呟く。
が、俺も同じ意見だ。
「抜群ですよ」
これを見て嘆息しない者はいないだろう。
人型戦車の真価を発揮している映像だ。これなら俺達の小隊があげている戦果を納得させる事が出来る。
……善行の読み通りになるな。
新型が開発され、既存の型も量産に向かう。パイロットだけではなく整備員の育成にも力が入る。
士魂号は禁忌の塊ではあるが、それの公表にさえ幾つもの策があるに違いない。
──勿体無いと思う。この策士が関東に戻り中枢を握ったなら、頭の固い連中に出来なかった
思い切った方向転換をやってくれるだろう。
この小隊に居る時間は少なければ少ない程、良い結果をもたらすのではないか。
決して目立たないが速水や芝村の姫にも劣らない善行。その能力を最も生かせるのは、狭い指揮車の椅子などでは
ない。幸いにもここの仕事の真似くらいなら俺にも出来る。ならば。
……またしても善行の読みが当たっているな。到底面白いとは感じないが、何十年も続くふざけた戦争が終わる
なら、俺もやれる事をやるだけだ。
210四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:15:00 ID:jG+Oa3/y
「司令、関東に戻りませんか?」
やや驚いた顔でこちらを見る善行。しかし一秒後にはいつもの雰囲気に戻る。
「私は構いませんが、よろしいのですか?」
最終確認か。まあいいだろう。
「あんたみたいな腹黒い人は同類を相手にしてるのが一番です。俺達にうつさないようにしてもらいたい
 んですよ。……爺さん連中とまともにやれるのは、司令だけだ。幻獣は、こっちで何とかしますから」
眼鏡の向こうで様々な思惑が浮き上がり、混ざり合ってから沈静化する。
むこうに戻ってからの行動を考えていたはずだ。それを抑えつけ、俺に意識を向きなおした。
普段の冷たさを感じさせる声で善行は言う。
「ではよろしく」
「了解」
言葉と共に俺は頷いた。


報告書やその他雑用をやっつけてからハンガーに出向いてみる。
左肩と腰部を吹き飛ばされた一番機。全身切り傷だらけの二番機に黒こげの三番機。
予備だった単座も損傷が激しく、両膝から下がない。
明日の朝一番に全機とも新調されるそうだが、……どうにも信じられない。
準竜師自身が新しい機体と他の物資を約束した以上、それについては疑問など持ちようがない。
信じられない事のひとつが、こうしてここに戻れたという現実。もうひとつの、それを成す事件も
今だに飲み込めていない。本当に、あれは……
──いや、考えるのは止めよう。報告書には記されていない出来事なのだ。
なかった事に思考を割く意味はない。
目の前ではそれぞれの整備員が使えそうな部品を片っ端から外している。その動きが重いのも無理はない。
精根込めて整備した機体が、たった一日でこうも破損するのは完全に予想外だったろうな。
「仕事、終わり?」
振り返ると、ふてくされた顔の原がいた。
「一応は。こっちはまだかかるみたいですね」
211四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:15:43 ID:jG+Oa3/y
形の良い眉に皺をよせ、仕方ない事だと表現している。
「ま、これもこの子達の役目だって解ってるんだけどね。なかなか、そうはいかないのよ」
並の戦車を遥かに越える手間をかけなければ動かない人型戦車。
情がうつってしまうのはパイロットだけではなく、整備員もそうなってしまうのは至極当然だ。
俺にとっては誰が当てはまるのか。
「………」
「………」
不自然な沈黙を破るべく、半ば強引に俺は言う。
「ま、誰も死なずに済んだのはこいつらのお陰ですよ。誰も悪くなんかないでしょう」
昨日までは最高の整備具合だった機体。そうでなければ、欠けた人数は二人で済まなかっただろう。
原を見ると気を持ち直したように「さて」と士魂号に向かって歩き始めた。
俺も気が緩んだのだろうか、
「壬生屋は、帰ったんですか?」
何となく言ってしまった。
原は振り返り、にっこりと笑いながら答える。
「保健室で寝てるわよ。……しっかりね、瀬戸口君」


ノックし、少し待っても返事がない。
「入るぞ」
俺は声をかけてから保健室に入る。
暗い室内には壬生屋の静かな寝息だけが佇んでいる。他には誰もいない。
「………」
明かりを点けて傍に寄り、置いてあったイスに座る。きしりと僅かな音。
壬生屋は全く反応しない。それだけ眠りが深く、今日の戦闘が激しかった証拠だ。
それなのにきっちりと胴着に着替えてから眠りこける辺りは流石だと言わざるを得ない。
穏やかな寝顔。見ている俺の心もつられるように深くなっていく。
……誰と居ても、こういう気持ちにはなれなかったと思う。
貴重な時間が身に沁みるようだ。これが喪われる寸前になった、今日の出撃。
212四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:16:28 ID:jG+Oa3/y
「ぅ、……ん……」
甘えるような声を小さく出しながら、壬生屋が目を細く開く。
「瀬戸口さん、……今、起きます……から……」
頭の方は眠ったままだな。どうやら戦闘中に失神したのだと勘違いしているのだろう。
俺は起き上がろうとする壬生屋の肩を押さえつけて言う。
「寝てろって。もう終わったんだ。保健室だよ、ここは」
壬生屋は室内を見渡し、俺の言葉を確認する。
ふぅ、と小さい溜め息を吐いてから再び目を閉じた。
疲れは残っているな。間違いなく。
不意に今日の出来事が思い出され、胸に湧いた言葉をそのまま形にする。
「よくやった。お前さんは強いな」
何を思ったのか、苦笑いを浮かべて壬生屋は真っ白な布団から手を伸ばす。
「握って下さい……お願いします」
言われるままにか細い手を握ると、その震えが伝わってくる。
「今更、怖くなってきました。全然強くなんかありません」
その笑顔も無理やりに作っているのだ。
時間の経過と共に震えは小さくなる。
「瀬戸口さん、もう結構ですから」
怖かったのは敵だけではなかっただろう。自分が世界から切り離されるのも怖かったはずだ。
喪いたくないものなんて、それこそ無数にある。誰だってそうだ。
「あの、聞いてますか?」
理不尽な別れなんて当たり前の時代だ。なら、理不尽なくらいに強い結びつきをさっさと作ってしまえば
いい。躊躇ってる暇などない。
「もしもし?」
今まで広げていた緩い絆。なくなっても、数日後には忘れてしまう繋がり。
俺にも狂っていた時期があった。それを広げ始めた理由も、昔の事だ。
「もしもーし。瀬戸口さーん?」
あってないような不確かなものなど、特別なひとつに敵う道理がない。
昔は昔だ。どうやっても手が届かない霞と変わらない。
こうして掴める実体を持たない、幻。
213四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:17:19 ID:jG+Oa3/y
「よいしょ、と。どうかしましたか?」
現実を見ろ。万人への愛は誰かを救うのか。支えにもならないのを自覚しろ。
支えたい人がいるのなら、生きて欲しい人がいるのならもう止めろ。
こいつは──どうしようもないくらいに特別なのだ。他の人と同列にしたくはない。
「あ──きゃ!」
抱きしめた。壬生屋は硬直しているが、構わない。今から俺の全てを注ぐと決めた。
俺は壬生屋の耳元で宣言する。
「壬生屋、俺の部屋に行くぞ」
「あ、あの……」
「お前を抱く。いいな」
身体を離して正面から見詰める。壬生屋は戸惑い、羞恥を表しながらも小さく頷いた。


俺達はほとんど無言で保健室を出て、校門を通る。
月が明るい。周囲に他の人は居ない。風もなく、自然と繋いだ手に全神経が集中してしまう。
微かに熱を帯び、一歩ごとに高まっている気がする。
こいつの事だから、誰かが姿を見せればすぐにでも手を放してしまうだろうな。
横目で壬生屋を盗み見る。
既に緊張で表情が硬い。が、濡れた瞳に隠しようがない興奮を読み取れた。
俺の視線に気が付いたらしく、綺麗な目をこちらに向けて壬生屋は微笑んだ。
「瀬戸口さんは、あの部屋には誰も入れてないんですよね……?」
そして珍しく穿ったような事を言う。
当たってはいるのだが、その言葉を口にした理由を知りたくて俺も訊きかえす。
「そうだな。その通りだ。……何でそう思うんだ?」
「だって、瀬戸口さんの匂いだけでしたから」
しっかりしてるな。壬生屋も女の子、という事か。
……そうだ。俺は誰も入れなかった。相手の部屋に行くのは何度もあるが、招き入れる事は一度もなかった。
情を交わす時もそういった施設を利用し、そうでなければ相手の部屋で済ませてきた。
心を許せる人ではなかったからだ。
214四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:18:06 ID:jG+Oa3/y
それなりの外見をしているのは自覚しているし、やってくる相手には相応の態度を示した。
誰にも溺れないように距離をおいて、溺れさせないように突き放す。決して悟られないように注意深く。
選ばない、という偽善。選ばせない、という自己満足。
今だから解る。
無意味だ。あまりにも無意味過ぎる行為。何も残らず、残させない行動。
それなのに止めれば相応のしっぺ返しは確実だ。
──馬鹿野郎が。本当に、馬鹿だったな。
「瀬戸口さん?」
やや困惑の表情で壬生屋が俺を見つめていた。
「悪い、ちょっとな。……なあ、明日から、格好悪いところを見られると思うけどな、……」
強引に断ち切るのだから、俺もただでは済まないだろう。
壬生屋は様々な感情を混ぜた顔で俺を見ている。
「俺は、お前を選んだ。絶対だ。他のヤツなんてどうでも良いと思ってるからな」
決めた。もう戻らない。ずっとこいつだけを見ていよう。
壬生屋足を止め、数秒してから微笑む。
「……信じてます。私も、覆らないと信じてますから」
215四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:18:50 ID:jG+Oa3/y

窓から月光が斜めに差し込んでいる。
カーテン越しではあるが、電灯を消した室内を十分に照らしてくれている。
俺は淡い光沢に満ちるベッドに腰掛けている。下着だけの状態だ。
壬生屋は部屋の中心で同じく下着姿になっていて、俺に背を向けて立ち尽くしていた。
黒い髪。無駄なものを削ぎ落とし、しかし女性らしい丸みが残っている肢体。
下半身の下着はぴっちりと張っていて、男ならば誰もが覚える安心感を醸している。
月の光から逃げるようにその場から動かない。恥ずかしさを抑えつけようと自らの身体を抱いている。
緊張、してるな……。
俺は無言で立って、壬生屋のすぐ近くまで行く。
明るさと暗さの境目が俺達を隔てている。早くこちらに来て欲しいと思うが、急ぐのも馬鹿らしい。
僅かに俯き、気配を察した壬生屋が躊躇いがちに言った。
「あの、私っ……その……」
消えてしまいそうな小さい声だ。
確かなものにしたくて抱きしめる。
「──っ!」
びくりと跳ねる身体。
緊張するな、などと言葉をかけても逆効果だろうな。ゆっくりと手を動かし、表面を覆う緊張を解そうと
力を入れずに撫でる。
「ぁ……っ………」
張り詰めた肌が心地よい。少しも指を食い込ませないように、ただただ撫でる。
腕を伸ばしてより抱きしめるように腰に手を伸ばし、もう片方は胸の下着をさする。
快感を呼ぶに至らない興奮だけを煽る行為だ。なのに、壬生屋の口からは色めいた吐息が何度も溢れる。
綺麗な髪に寄せた鼻から甘い匂いが沁みこんで来て、
俺も壬生屋と同じように興奮が高まり、もっと激しくしてやりたくなるが、我慢だ。
「ん、んん……く、ぅん……」
声を堪えようとする仕草がたまらない。まだ恥ずかしいのだろうか。
少しだけ我慢できなくなった俺は壬生屋の肩口に顔を埋め、囁く。
「そんなに、我慢するな。俺しかいないんだぞ。安心しろよ」
俺の言葉を聞き届けた壬生屋は意を決したらしく、包む腕から身体を抜いて、振り返る。
216四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:19:33 ID:jG+Oa3/y
震える瞳と唇。高すぎる鼓動を静めるように息を繰り返して、はっきりと言った。
「瀬戸口さん、……私を、汚してください……」
そして俺の胸に飛び込む。光が当たり、昂揚で染まる肌がきれいだと思った。
大きすぎる興奮と不安、そして僅かばかりの羞恥を隠そうと壬生屋は俺の胸に顔を埋めている。
熱い吐息が何度も鳩尾から臍へ流れ落ちる。
一体、どんな表情をしているのか。俺は言葉をかけずに細い顎をつまんで、持ち上げた。
「…………」
眉間にぴくぴくと皺が現れては消える。この後の行為に不安を抱いているのがよく解る。
──そういえば、唇を重ねるのも今が初めてだったか。
俺にしては珍しい、いや初めての事件と言える。それだけ、大事にしたいと意識しているのだろうか。
顎から手を放さず、もう一方の腕で抱き寄せて唇を重ねた。
柔らかな感触が口先から全身に届く。温かく、優しい波。
数秒程度で離して壬生屋を見ると、ほんの少しだけ笑っていた。
「嬉しい……」
どくんと脳髄に重く響いた。
こんな事を言われた記憶はない。……もっとしてやりたい。もっとだ。
もっと、悦ばせてやろう──
するりと背中にまわってくる壬生屋の腕。紅い頬がおずおずと寄ってきて、俺達は再び口付けた。
「ん、………」
小さな鼻から昂った息が漏れ出す。
新鮮な反応だ。俺の中の恋情がどうしようもないくらいに熱を帯び、半ば強引に唇を離しては密着させて、
わざと音を立てながら何度も繰り返す。
ちゅ、と幼稚にも聞こえる淫靡な濡れ音。
数度目の音が消えると、壬生屋は体重を俺に預ける。豊かな膨らみが胸に当たって、熱い。
はぁ、と焼けつくため息を吐く。最初にあった緊張はかなり解けているようだ。
「壬生屋、こっち」
肩を抱いてベッドに近づき、一緒に座る。
惚けた表情で俺に視線を向けて残る感覚を追うのに夢中らしく、完全にされるがままだ。
腰の逃げ道を両手で塞ぎ、俺はさらに追い打ちをかけるように接吻した。
217四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:20:18 ID:jG+Oa3/y
唇で唇をついばみ、ぐんぐんと物足りなさが頭をもたげる。
深さが足りない。こんな浅いのでは満足のしようがない。
更にとろける表情を浮かべている壬生屋に俺は言った。
「口、開いて」
疑問を一切感じない様子で薄く口が開く。
がぶり、と音がしそうな勢いで唇を合わせ、舌をねじ込んだ。
「──っ!ん!……!」
未知の刺激に離れようとする身体を力づくで密着させ、赤い舌を目一杯伸ばす。
本来の役目とは全く違う使い方もある事を身をもって教えてやろうと、俺はめちゃくちゃに舌を踊らせた。
ぐちゅぐちゅと唾液が混ざり、時折生まれる隙間から淫らな呻き。
「ん、ん……は、ぁぁ……ん」
ひとつこぼれる度にその音は高くなる。
気付けばか細い腕が俺の首を固定し、ひっきりなしに壬生屋は口と舌を動かしている。
恥じらいも忘れ、この行為に泥酔していると言って良い状態だ。
「は、あ、……っ、くは、んん……」
酸欠で頭の回転が鈍り、俺も余裕を失い始めてしまい、壬生屋への感情がどうしようもなく膨張してしまう。
生まれる、ではない。この気持ちが生まれたのはこいつを初めて見た時だった。
爪先から髪の毛まで衝撃が奔ったのを今でも思い出せる。
咄嗟に否定はしたが、それでも否定しきれなかった感情だ。抑圧から開放されたそれは勢いよく暴れ出し、
より深く壬生屋の口内に濡れた舌を侵入させた。
「……、──っ!はふ、は、はぁ……」
結合を解いて、酸素補給。
ぐったりと壬生屋が俺の胸に崩れ落ちる。
声を掛ける間もなく顔の位置が戻る。目尻が下がった目を俺に向けてくれた。
「すごい、ですね……」
「……まだ序盤だぞ、おい」
どうにか口は動いてくれた。気を抜けば弛緩した表情や溢れ落ちる雫に見惚れてしまい、動けなくなりそうだ。
218四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:21:02 ID:jG+Oa3/y
腕を背中にまわす。ちょっと脊椎に悪戯。ちろちろと指先でつつくように撫でると、
「ひゃ、っ!」
可愛らしい反応。それでも止めさせないところを見ると、やはり刺激的なのだろうか。
「ん、ぁ、……は……」
目を閉じ、全身を震えさせる壬生屋。
微弱な電気信号なのに、身を焼くような激しいものだと感じているようだ。
気付かれないように刺激を繰り返しながら、背中にある下着の繋ぎ目を外す。
そして、するりと腕から引き抜いた。
豊かな乳房が外気に触れ、壬生屋はようやく俺のした事に気がついた。
「ぁ……っ、……」
恥じらいで仄かに染まっていた顔があっという間に真っ赤になった。
これも、可愛い。
こいつの劣情を煽るべく綺麗な丸みに手を添えて、焦らすように揉みあげる。
弾力に富み、俺の意思によって形を変える壬生屋のそれは非常に官能的だ。
見ているだけでこちらの気持ちが熱くなる。
「あ、ぁあ……ん、ふ、はぁ……」
シーツを握り、かと思えばへその前で指を絡ませて快感を示す壬生屋。
だんだんと力が強くなっている。シーツの皺はより深くなり、己の指と噛み合う時も白く変色していく。
はぁー、はぁー、と一回ごとの呼気は大きく、肺の膨らみも尋常ではない。
胸の変化を見つめる目はとっくに虚ろだ。自慰の経験はあるだろうが、全くの別物としか思えない刺激に
対応不可能、というところか。
もっと、感じて欲しい。俺だけを見させてやろう。
手を放し、押し倒す。
さらさらと広がる黒髪に沈む月色の身体。俺を受け入れるように広がった腕。
冗談ではなく、本気で美しいと思った。
壊れ物を扱うように桜色の唇に口付け、首筋や鎖骨にも続けた。視線は壬生屋の顔に固定し、外さない。
「ん、……や、ぁぁ……っ!」
接吻の位置が下がると、それだけで喘ぎは大きくなる。
期待が膨らんでいるのだろう。その期待を丸ごと快楽に変換させる為に俺は言った。
「壬生屋、目、開けて」
219四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:21:48 ID:jG+Oa3/y
おずおずと開いて、躊躇いがちに俺に向きなおす。
「あ……あ、ぁ……」
「大きいな、お前さんのここ」
言ってから唇だけで思いっきり愛撫した。
何度もつまんで、吸って、押し付ける。
「あ、ぁああ!や、はぁん!」
息なんてさせない。ただひたすらに柔らかな肉を捏ねる。わざと音をたて、唾液を塗って滑りを良くしてから
甘い噛み付き。
「……く、ん!」
かぷ、と既に勃起している乳首にも同じ事をすると、
「んくっ!」
首や脊椎が反った。もっとして欲しいと訴えるように。
それこそ餓えた犬のように貪った。ぬちゃぬちゃと粘っこい液体とぴんと張った肌、ふるふると痙攣する肉を
同じものにしようと口に含んで、歯を立て、舌を這いずり回した。
「ひ、……ぁああん!ん!……あふ、んああ……ん!」
息も止めて俺は続ける。逃げ出そうとする獲物を抱きしめ、滾りの全てを力に変えて俺は続ける。
「ふ、く!……ん、ふくああぁあん……っ!」
一際甘い啼き声がふるえ、俺の頭を抱えたまま全身が硬直し、数秒して弛緩した。
荒く、淫らな呼吸を聞きながら顔を上げ身体を起こす。
「………、っ」
意識せずにごくりと唾を飲み込んでいた。俺の想像を遥かに超える色っぽさがそうさせた。
燃える欲情に焙られた身体が熱く、猛る本能に背中を押されるように
きれいな脚が創る三角の空間に手を伸ばし、止まる。
僅かにもじもじと脚を擦り合わせていた。隠そうとしているようだが、壬生屋の中にも性的な疼きが
渦巻いているらしい。
なら、待たせるのは拙いな。
「………」
少し迷い、何も言わずに白い下着に指を触れさせた。
「ん!」
220四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:22:34 ID:jG+Oa3/y
親指以外の四本を這わせ、熱した部分を持ち上げるようにそっと力を入れる。
「ん、ぁぁあ、……」
閉じられていた口が恥ずかしげに開き、押し出される掠れた喘ぎが部屋中に染み渡る。
今にも暴走しそうな感情に蓋をして俺は続けた。
ゆっくりと静かに指で撫で、時折食い込ませる。
壬生屋が初めてだから、というのもあるが俺がそうしたいのだ。
丁寧にしてやりたいから。大事にしてやりたいから。
薄く開く瞳が俺を捉え、壬生屋が言う。
「瀬戸口さん、私、脱ぎますから……」
その表情には羞恥以外の感情も多く読み取れる。……もっとしたかったが、これでもいいか。
「解った」
俺は身体を離し、壬生屋は身体を起こして下着に指をかける。
壬生屋の視線がちらちらと俺と自分の下着を行き来する。『見るな』と言いたいのかもしれないが、
その言葉が出るまで俺は見つめようと思う。
目を放したくないから。
どんな行動も見逃したくはないから。
「…………」
暫くして、諦めたように壬生屋は脱ぎ始める。
顔を真っ赤に染めながら、息を殺すように口を閉ざしたまま。
するすると滑らかな肌と白い布が擦れる音。それ以外に聞こえるのは心臓の鼓動だけだ。
揃えられた脚がくの字に曲がり、つま先から下着が外れる。
一糸纏わぬ姿である事をを自覚した壬生屋はより一層羞恥を感じたようだ。
下着を無造作に置くと身体を抱き、横になって俺から視線を逸らす。脚は閉じたままなのだが、
僅かに見える陰唇がどれほど男の本能を昂らせるのか想像も出来ないだろうな。
「脚、開いて」
強めの口調で言ってしまう。そろそろ理性が怪しくなってきた証拠だ。
「……、その、……」
恥らう壬生屋が俺に行動を促した。
もう待てない。
「開けって、壬生屋」
密着している両膝を遠慮なしに掴んで、ぐいっと広げた。
221四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:23:17 ID:jG+Oa3/y
「ぁ、──っ!」
弱々しい悲鳴と共に月光に濡れる秘所が露わになった。
閉じるつぼみからとろとろと液体が零れ、シーツに染みを作っている。
視線を上げれば両手で顔を隠そうとしている。が、指の隙間から覗く瞳はしっかりと俺に向いていた。
俺も壬生屋の顔を見つめたまま秘所に口付ける。
「んあっ!」
がくんと腰が跳ねた。
脚が閉じないように膝にある手を太ももの中ほどに移動させ、がっちりと掴んでから舌と唇で
花弁を撫で、そっと開く。
「ああ、は、ぁああ……っ!」
男ならば興奮せずにいられない色だ。俺だけが知っている艶。
口の溜まっていた唾液を飲み、割れ目の奥に舌を侵入させる。
「……!あ、ああ!んあっ!」
短い舌での微かな摩擦にも嬉しいくらいの反応をしてくれる。
淫水もこんこんと湧き出し、その源泉を追い求めたいという欲求は膨らむ一方だ。
壬生屋は顔を隠すのを止め、脳髄に奔る快感に耐えるようにシーツを握る。
悩ましげに眉に皺がよっていて目尻には涙もあるようだ。
……いかんな。もっと、泣かせたくなってきた。
気付いてしまえばその気持ちを抑える事は不可能になってしまった。
「壬生屋、聞いてる?」
うっすらと開く瞼。
「何、ですか……?」
それきり黙ってしまう様子は、明らかに思考力が落ちていると予想出来る。
赤い頬が可愛い。
「ここ、凄い熱いぞ」
言いながら中指を刺し入れた。
「はぁ、あ、くぅ……」
指先が進み、深く埋まるほど良く締まる。
その感触は俺の性器を直撃する。さっさと入れさせろと叫ぶように硬く充血している。
まだだ。もっと、壬生屋を悦ばせてやってからだ。
222四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:24:01 ID:jG+Oa3/y
自由な親指の腹で豆のような突起に触れる。
「あああ……っ!」
くりくりと弄び、膣内も大きく変形しようとして俺の指に阻まれて余計に感じている。
シーツを掴んでいた手が俺の手首に絡まった。
その力は弱く、しかも固定するだけ。俺の行為を続けさせる意思表示だろう。
小さな勃起を思いっきり押すと、
「だ、めぇ!……!──っ!!」
壬生屋は背を反らせながらびくびくと痙攣する。
だらしなく垂れた涎が光り、膝も持ち上がる。数瞬してから全身が緩んだ。
どさりと落ちる脚。目には鈍い輝きだけが灯る。
惜しげもなく太ももが開かれた光景は、性器による突撃を実行するに十分な条件を揃えている。
が、もう一度だ。
今度は親指だけではなく、膣内の中指も使い表と裏から潰す。
「ひ、ぃ!」
再び跳ねる身体。声にならない悲鳴をあげて、更には両足でブリッジするように腰が持ち上がった。
失神に至る程の快感から逃れようとする行為だろう。
高々と掲げられた秘所は凄まじい蠢動をしている。何度も何度もうねり、搾り、吸い取ろうとする。
かくかくと揺れる脚が断続的に絶頂を迎えているのを示していた。
「……!あ、……っ!」
指から力を抜くと、途端に腰が落ちた。
恍惚の声が漏れ、ひくひくと四肢が震えている。秘所から溢れた蜜で尻が光っている。
「ん、ん……」
……もういい。
こいつを、ぶち込もう。
壬生屋と深く繋がろう。
俺はトランクスを脱ぎ捨て、膝立ちで壬生屋の股に移動する。
「あ、う……」
ベッドの軋みに意識を取り戻した瞳が俺のモノを捉えた。
壬生屋の身体に緊張が戻る。
……ちょっと、拙いか。
223四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:24:45 ID:jG+Oa3/y
「後ろからするか?」
「うしろ、……」
俺の言葉に壬生屋は戸惑い、しかし視線を俺から離さないままで身体を起こして四つん這いになる。
意外だった。箱入り娘だと思っていたが、こういった知識は普通にあるようだ。
もっと潔癖に育てられているのかと予想してたのだが。
まあ、それならば遠慮もいらないだろう。
突き出された尻。緊張を解すように丸く撫でた。
「ん、ああ……」
臨界寸前まで高まった興奮が肌の感度を最高にしている。
顔を近づけると、壬生屋が発する匂い立つ熱気で肺が一杯になった。
口付け、
「あん!」
腰全体に十本の指を歩かせた。
「は、ふぁ、ぁ……っ」
滑らかな背筋から力が抜け、ベッドに頬を寝かせて喘ぐ壬生屋。
太ももに透明な液体が筋を創る。こんこんと流れ出す壷と同じように、
俺の性器も先取りの雫で濡れている。
さて。
「挿れるぞ」
燃える本能とは逆の静かな声だった。
反り返る性器を壬生屋の秘所にあてがう。
「──っ!」
揺れる尻をがっちりと掴んで、腰を突き出させた。
ずぶずぶと硬い棒が熱い肉に埋まっていく。狭い膣内を掻き分け、途中にあった最後の抵抗をも貫いた。
「……ぅ!は、く、っ……!」
壬生屋は息を殺して痛みに耐えている。
ぎちぎちに締まる膣。痛みを訴える反応だが、俺には全く伝わらない。
快感だけが得られる感触の全てだ。
体内に留める事が出来ず、吐息になる。
「あ、……は……」
224四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:25:31 ID:jG+Oa3/y
脳を焼いた官能が再び性器に戻って活力となり、ますます硬くなる性器を引き抜いて、挿入する。
「っあ……ああ、は、ああ!」
壬生屋の口から漏れるのは苦痛の声に違いない。
なのに俺の本能は燃え盛る一方だ。腰を叩きつけ、割れた尻はひと揺れしただけでその衝撃を吸収してしまう。
もっと、したい。
ばちんばちんと素肌を衝突させる手加減なしの性交。
「あ、あ、あ、あっああ!」
指が食い込む柔らかい臀部。壬生屋を気遣う余裕もないくらいに俺は興奮している。
こんな気持ち、初めてのような気がする──。
「ん、ん!はん!ああん!」
……大事な所は完全に繋がっているのに、満足出来ない。
物足りない。快感も十分だ。物足りない。甘い鳴き声は耳に届いている。物足りない。
こんなのじゃ足りない。
限界まで登りつめようとする本能を必死にねじ伏せ、どくどくと叫ぶ性器を抜いた。
赤く染まった尻が着地する。
壬生屋は荒い呼吸を繰り返し、身体に漂う痛みを打ち消している最中のようだ。
が、俺は待たない。
「………」
無言で抱き起こす。
弛緩した身体が俺に寄りかかる。首も頭部の重さに耐えられずに反り返り、俺の肩から墨色の滝が
流れ落ちた。
真っ白なうなじが目前にある。下腹部の行き場のない欲情に押されるように接吻。
「ん、……」
はあはあと意図的に息を吹きつけ、壬生屋の本能を煽った。
「や、んん!はぁ、っ!」
性器同士の触れ合いと比べれば随分と軽い刺激だが、しかし壬生屋の身体には力が戻ったようだ。
頭が持ち上がり、その瞳はしっかりと俺を見る。
緩んだ赤い頬が近づいてくる。いつのまにか伸びていた細い腕が俺の顔を捕まえ、次の瞬間には
唇が重なった。
くちゅ、とゆったりと舌が混ざり、唇が絡む。
225四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:26:14 ID:jG+Oa3/y
緊張は完全に解けたようだ。雌としての衝動に抵抗しようという気持ちは消し飛んだらしい。
「……、……っ、ふは、ぁ……」
ようやくにして口を離した。
目尻の下がった壬生屋の眼が愛しく、俺の中にあった炎は燃え広がるばかりだ。
どさりとやや乱暴に寝かせ、勢いをそのままに股を開かせる。
期待で埋まる表情。
応えろ。
狙い、貫く。
「ぁああああん!」
大きな声が響き終えるのを待つ事なく抽送を始めた。
壬生屋の両脇に手をつき、乗り出すように下に向かって叩きつけた。
黒い髪が振り回され、形の良い乳房が上下にたわむ。悦声は止まらずに何度でも木霊する。
「ん!あぁん!……っ!くふぅ!」
……これだ。この姿が見たかった。
愛液を垂れ流して俺の逸物を受け止める秘所。
腰での結合に歓び、よがる顔。
「ぅ!──っ!ふ、ぁ……!」
俺の喉も快楽の雄叫びで振動し、ひと突きする度に融ける理性を溢れさせながら、本能が硬く熱していく。
壬生屋も同じだ。人間らしい感情を液体として飛び散らせ、俺の本能をより感じようと締まり続ける本能。
どろどろに絡み合う情欲。その奥にある本能よりも原始的な想いが性器の根元に集中し、力を蓄え始めた。
「い、は!ああぁ……ん!や、ん!ひ、っ!」
「は、……!ふ、!……んむっ!」
突然に息が吐けなくなり、混乱を混濁させるように口の中で何かが蠢いていた。
首にも熱いものが巻きついていて、数秒後には両方から力が抜けた。
「……は、んふ……」
口を離すと唾液が糸を引き、壬生屋の唇に繋がっている。
こいつめ。
226四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:26:57 ID:jG+Oa3/y
「積極的になったな、壬生屋?」
「……、わたし、あの」
目が泳ぎ、それきり言葉が出ない。
自分でも理解出来ない衝動による行動らしい。
「いや、言わなくてもいい。いいから、……」
その先は行動として俺は示す。止まっていた性器の律動を再開させた。
今度は背を反らしてただひたすらに最奥を目指した。
壬生屋も先ほどを上回る媚態で身体をよじり、俺に貫かれる快感に酔いしれている。
俺自身も僅かに回復した理性が消えるまで時間を要さなかった。
全身が一瞬ごとに泡立つ感覚におかしくなりそうだ。ぐつぐつと煮えたぎり、その熱はたったひとつの行動を
促すように天井知らずに高まっていく。
「あ、ひ、ああああああんん!!」
「うう……っ!」
まだだ。もっと融かせ。もっと融かして、深いところまで届くようにしよう。
誰も触れた事のない奥底に触りたい。そして俺の想いを焼き付けてやる。
一生消えない跡を壬生屋に。
「瀬戸口、さぁん!」
「は、なんだ?」
最後の瞬間を先延ばしにするような、途切れ途切れの会話。
「私、っ、ああ…ん!こんな、ん、あ!ああ!」
「喋るな。舌、噛むぞ」
だから喋らせない。
呼吸が止まるような激しい突き上げ。
俺の方も凄まじい締め付けに声を出せない。
「───!……っ!」
「っ、っ、っ!」
それでも全ての部分は絶頂寸前の悲鳴をあげている。
歪む眉、染まりきった頬、開いたまま閉じない唇。
ぽろりと涙が流れる。
「ぁ……ぁぁあああああ……っ!」
肺に残っていた嬌声が搾り出され、同時に巻き起こる膣の胎動が俺の本能を完璧に砕き、
最後に残っていた『欲しい』という激情が、形となって放出された。
227四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:27:40 ID:jG+Oa3/y


「   、──、は、う……っ」
何度も何度も灼熱を吐き出し、終わったかと思うと身を潜めていた快感が俺を襲う。
もう一滴も出せないのに精液を撃てと本能が命じる。
律儀にも性器は脈動し、出ていないのに失神ものの悦楽を発生させて俺を押しつぶそうとしている。
「あ、ふ……う……」
情けない弱々しい声だが俺にはどうする事も出来ない。
こんなにも強烈な官能に晒され、加えて完全燃焼するなどという体験は初めてだ。
快楽の残滓が重く、それこそ身体が倒れないように支えるだけで精一杯だ。
その腕も機能を停止する寸前になっている。がくがくと震え、目の前にいる壬生屋に沈んでしまえと口煩い。
……正直、男としては耐え切った姿を見せたい訳で。
しかし、俺の背中を優しく抱き寄せる腕が儚い抵抗を簡単に打ち破った。
「っと……」
咄嗟に肘をついて壬生屋の身体に全体重が乗らないようにする。
目の前には満足気に微笑む顔。背がより強く引かれて胸と胸が密着した。
とくとくと壬生屋の鼓動が伝わってくる。
俺の心音も届いているに違いない。
「瀬戸口さん、温かい……」
鎮まっていた心に波紋が広がる。
その呟きは俺に聞かせる為のものだろう。
何も言わずに口付け、身体を起こす。
「あ、……」
俺の手を掴む壬生屋。
離れないで欲しいと訴える目だ。俺もそうしたいが。
「風邪ひくだろ、このままじゃ」
軟化した性器を抜いて、秘所と性器に張り付く粘液をティッシュで手早く拭く。
足元に押し退けられた布団を引っぱりあげ、壬生屋と俺に被せた。
「ん、いいぞ」
「……うふっ」
楽しそうに笑い、胸の飛び込む壬生屋。年頃の少女と同じようなあどけない笑顔だった。
228四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:28:24 ID:jG+Oa3/y
すっぽりと腕に包まる身体はしなやかで温かく、最高の抱き心地だ。
──心底、愛しいと思う。
艶のある髪を撫でると、気持ちよさそうに頬を染める壬生屋。
薄く開いていた瞳が閉じて、慌てるように開いた。
今日の疲れが一気に出てきたのだろう。
「寝てもいいんだぞ?」
んー、と悩んだのは一秒にも満たなかった。
即座に笑顔で答える。
「はい、……おやすみなさい」
言い終えてすぐに寝息が聞こえるようになった。
無防備な寝顔が可愛い。
……そう簡単に見れるものじゃないな。
時間が許す限り見続けたいと思った。
もっと違う顔もするのだろう。時間をかけて、全部見よう。
そして見ていられるように守る。その為にはあらゆる手段を講じる。
これが、俺の一番したい事だ。

229四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/09(月) 00:29:09 ID:jG+Oa3/y
大丈夫かなぁ、うーん……

また来週
230名無しさん@ピンキー:2005/05/09(月) 00:42:56 ID:NnVhft+a
うわー、リアルタイムで遭遇してしまった。それも一番好きなカプ。
まだどきどきしてるよ・・・もう1回読んでくる。

こういう時なんて言えばいいんだろう?・・・ご馳走様?
231名無しさん@ピンキー:2005/05/09(月) 02:21:55 ID:lEsvocP3
(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
四条殿、激しくGJ!
232名無しさん@ピンキー:2005/05/09(月) 05:07:55 ID:dOht46Qo
四条殿は素晴らしいSSを書かれるのですから
各作品にタイトルをつけてやってくださいませ。

保管庫なんかで「○○×○○」なんてのはそれだけで読む気萎えるし、
そうでなくてもタイトルは作品の顔であります。
是非ご一考を。
233名無しさん@ピンキー:2005/05/10(火) 01:05:23 ID:wmKkz8/d
めちゃくちゃ面白かった。
壬生屋かっこいいよ壬生屋。
一号機好きにはたまりませんでした。GJ!
234名無しさん@ピンキー:2005/05/10(火) 01:38:32 ID:fI0Bpq/F
四条氏長編乙&超GJ!壬生屋はカコイイし、
瀬戸口の躊躇と踏ん切りをつけた後のギャップもイイなあ。
235名無しさん@ピンキー:2005/05/10(火) 23:42:49 ID:oyKIp+1c
うわあああ留守にしてる間に大好物瀬戸壬生キテターーーーーーーーーー!!!!!!!!!
戦闘シーンもカコイイわエロいわもう、GJ!
236名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 23:58:48 ID:YoQvDQU8
四条氏て文章がすんげぇ巧いですね。構成力すんげぇ。
氏の瀬戸壬生はエロシーンが無かったら、そのまま公式のサイドストーリーになっててもおかしくないです。
エロも雰囲気が凄くラブラブで、幻想的な感じがしました。
瀬戸口男前だし、壬生屋がたまらなく愛らしい。
他のキャラも凄く立っていて、ものすごく読みごたえがありました。
御馳走さまです!!

漏れも氏を見習ってもっと文章上手くなれるよう頑張ろう…
237四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:35:37 ID:C2W2a8lh
皆さんレスありがとうございます

>>232
必死こいて考えますた
>181-228の瀬戸壬生のタイトルは「ひとつの選択」
ベタですね

>>236
「巧い」とか「構成力」とか書かれても?しか浮かばない人からそういったモノを読み取れたとしたら、
かなりの確率で錯覚だと思われます
市販の小説を読む時すらもこれらを全く意識してないんですけど……
概念自体が全然解らない、が本音でつ


ベタなタイトルで第二弾
「二度目があるのなら」
238四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:36:25 ID:C2W2a8lh
「わはは、下手くそめ」
暇つぶしに整備員詰め所で士魂号が撮った映像を観賞している。こいつが結構面白い。
それぞれのパイロットが何を狙っているのかが手に取るように解っちまう。
特に二番機、滝川の視界は目まぐるしく変わりまくる。全然落ち着きやがれねえ。
「おらおら、余所見してると」
がくんと衝撃が走り、僅かに傾くカメラ。
慌てるように機体が向きなおされて、そのまま敵を撃つ。
狙いにかけた時間はほんの少しなのに、的確に急所に当てる。
射撃は上手いんだよな……
で、調子に乗ったところで不意打ちを喰らう。
「もっと後ろにいりゃいーのにな」
撃破数を伸ばそうと必死になるのはいいけど、慣れない突撃なんてするからだ。
装甲の薄い機体は接近戦には向かないんだ。前みたいに遠くからの掩護に徹してるのがコイツらしい
戦い方だろうに。
「田代さん、何見てるの?」
「っ!とぉ……」
突然の速水の声。真後ろからだ。
驚かせるんじゃねえよ。
「いや、暇つぶし。指揮車の整備はすぐ終わっちまうからな」
振り向きながら言って、その落ち着いた顔が視界に収まる。
微笑んではいる。が、それ以上の全てを読ませない顔だ。
……嫌な顔だぜ、くそ。
く、と目だけが動いてオレが見ていた画面に焦点が移る。
「ああ、二番機だね」
冷たい眼差しだ。感情と呼べる熱はこれっぽっちもない。
本当に、嫌なヤツになった。
芝村と同棲するというだけでこうも変わってしまうのか。
ひとつひとつの言葉は重さを増し、行動の効果も段違いに意味のあるものになった。
撃破数も爆発したように伸びて、今では冗談半分で『絢爛舞踏』なんて呼んでも気にした様子を
見せない。肝が座ったというか、器がデカくなったというか。
239四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:37:09 ID:C2W2a8lh
ちょっとだけ意地の悪いことを言ってやる。
「三番機も見たけどな、お前、他の二機も倒すつもりか?」
一番機はひたすら真っ直ぐ進む事しか考えていない。
二番機は撃破数を気にし始めたらしく突っ込むことが多くなったが、それでも遠距離射撃に徹するのが普通だ。
で、三番機。
幻獣を見ていない時間がかなり長い。大部分は味方である一番機と二番機を睨んでいた。
その動きを完全に分析するつもりなのか。
「そんなんじゃないよ。僕も二人の得意分野に追いつきたいからね。もう少し、強くなりたいんだよ」
さらっと怖い事を言いやがる。
機体の操作はほぼ完璧で、誰が見たって舌を巻く挙動をさせることが出来ているのに、まだ強くなりたいってか。
──もっと先がある、ということだ。傍に居られるだけで緊張してしまう能力を持ちながら、満足していない。
こいつはどこまで強くなるのか。一体何をするつもりなのか。
「そんなになって、何するんだ?」
意識して呆れたような声で言うと、
「決まってる。この戦争を終わらせる」
果てのない無機質な返事だった。
……人間は、こうも変われるものなのか。芝村も似たような言い方はするが、こんな印象は受けない。
背筋の戦慄を気付かせないように画面に目を移し、オレは言い返す。
「ま、期待しとくぜ」
「そうだね。出来る限りの手は打たないとね」
幾分冷たさが和らいだ。
ほっとする。
「じゃ、また明日」
オレを見ないで別れの挨拶を口にして出て行く速水。
返ってくるだろう挨拶を拒否するように振り向かない。
別次元の何かを滲ませている雰囲気だった。
それに、怖い。
「……なんて奴だよ、全く」
画面では剣を振りかざす一番機が掩護に来ていた。
240四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:37:52 ID:C2W2a8lh



今すぐにでもスカウトに転属したいんだが、実際はそうもいかない。
若宮と来栖のコンビは強力で、半端なことでは怪我もしてくれない。
オレの出番はあるのかね、ったく。
憂さ晴らしにサンドバッグを殴り、全体的な能力も伸ばしているが声はかからない。
味方のヘマを願うような腐れにはなりたくないが、こんな宙ぶらりんの状態が続くのも結構負担だ。
「さて、行くか」
気を紛らわせる為に石津の手伝いをする事が多くなった。
最初はただのひやかしのつもりで見に行っただけなんだが、随分と重労働をしている姿を
見せ付けられてしまって、とてもじゃないが放っておけなくなっちまった。
がたがたと開きにくいドア。
中に入ると、いつものように石津がいる。
「オッス」
「………」
オレを見て何も言わずに頷く。
謝意を意味する動きだ。最近ではこれ以外の意思表示も解るようになってきた。
石津は顔の変化が乏しく、心の傷で言葉を発するのが難しい。
その分、何を考えているのかがちょっとした仕草によく出るヤツだ。
オレも皆と一緒で初めて会った時は『係わらないほうがいいな』なんて思っていたが、
実際に接してみると自分の意思を相手に伝える事が出来る性格なのだ。
そこらへんの優柔不断な男よりもずっと付き合いやすい。
いじめられている、という先入観を取っ払えば普通の女だとすぐにでも解る。
小柄なのは仕方ないが、いつも俯き加減なのは大きな損だな。
それと暇さえあれば妖しい本を開いているのも、か。
「今日は洗濯物だったか。さっさとやっちまおうぜ」
「………」
再び頷く小さい顔。
241四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:38:39 ID:C2W2a8lh
作業の分担は単純だ。石津が洗濯機に洗い物を次々と放り込み、脱水を終えたものをオレが屋根上まで
運んで干す。それだけなんだけど、その量は半端じゃない。
整備は汚れ仕事だ。何をするにもオイルや人工血液なんかで服の色が変わってしまう。
気休め程度でも抑えようとウエスで拭くし、洗う時間も気力もないとなるとそこら辺にブン投げるのが
当たり前になる。その習慣が身についてしまえば誰も洗おうとしなくなる。
石津は何も言わずに床に散らばった布をかき集めて洗濯機に突っ込んでいる。
臭いも手触りも最悪だが、
「……洗えば、落ちる……から……」
だそうだ。
大したモンだと思う。
しかし若宮よ。手前の下着くらいは自分で洗え。
「おっし、行くか」
山盛りになったかごを二つ積み上げ、ついでに物干し竿を担いで部屋から出る。
水気のある洗い物は重い。石津みたいな華奢な身体ではロクに運べもしない重量になってしまう。
「よ、と!」
バランスを崩さないように階段を登りきり屋根に上がる。
一旦かごを降ろして物干し竿を組み上げ、片っ端から適当に干しまくる。
色とりどりの洗濯物が列を作り、風になびいている。
「さて次、と」
まだまだ残っている。さっさとやってしまおう。

同じ事をもう二回繰り返してようやく終わった。
部屋の椅子に座って、額の汗をふき取りながら息を整える。
「ふ、……」
こんなのをひとりでやってたんだよな。
石津の体格には全く合っていない仕事だ。善行も酷い仕打ちをしやがる。
ことり、とテーブルに湯のみが置かれた。
「サンキュ」
「………」
石津が淹れてくれたお茶に早速口をつける。
毎度のように思うのだが、美味い。
242四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:39:31 ID:C2W2a8lh
石津も隣に座って飲んでいる。しかし目は本から離れない。
「………」
随分と親しい仲になったな、思う。
以前なら、こうして傍にいる事もしなかった。離れたところにひっそりと自分だけの世界に
浸っていた。ふと覗きに行くと、もっと離れる。
ひとりが基本だった何よりの証拠だろうか。
ちょっと前に本田に言ったことがある。
兄弟や親を連れてくるべきじゃないのか、と。
余りにも寂しげで、今にも消えてしまいそうなこいつを何とかしてやりたい。
返事は素気ないもので、
『石津は孤児院育ちだ。肉親はいない』
……そりゃないだろ、と言いたくもなる。それでは心が病んであたりまえだ。
直る為の環境すらも作れないとなれば、希望だって持てない毎日だろう。
『なに、力になれるやつならいるさ。お前とかな』
この言葉に従ったつもりじゃないけど、オレは石津に構うようになった。
うまく話せないなら、触れる回数で埋め合わせればいい。考えた末の馬鹿みたいな単純な行動だったが
効果はあった。
ちょいちょいと肘の辺りを触られ、石津に視線を送ると──何か言いたそうな表情だ。
「……見せて、……あげ、る……」
理解不能な図形で埋まるページを開いた本を持ち、つらつらと部屋の中を見渡して
視線を固定し、とつとつと歩いていく。
「なんだよ、石津?」
オレの問いを聞きながら石津が振り返って、ポケットから出した紙に鉛筆で何かを書き始めた。
近づくと、
「……離れて」
と止められる。
紙には本にある模様が書かれているようだ。まだ完成していないのが解る。
石津は神妙な面持ちで床に紙を置いて、足りなかった最後の数本を書き入れ、立ち上がった。
「……うおっ!」
ぶすぶすと煙が上がり始めた。火を使ったようには見えないし、発火性の何かがあった訳でもない。
243四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:40:19 ID:C2W2a8lh
オレが見つめる中で、しかし出火には至らなかった。
「魔法、……」
石津がどことなく得意げな顔を浮かべている。
以前から知っていた事だ。こいつは、所謂『魔法』を信仰し僅かではあるが行使も出来ると。
オレが知る限りではちょっとした気休め、おまじない程度のはずだった。
が、今のは違う。この方向性は明確な物理的現象だ。
「……。凄えな、うん」
恐怖よりも驚きの方が強い。
まぁ、オレ自身も他のやつらが出来ない事を身につけてるから、こう思うのかもしれないが。
石津は不思議そうな表情だ。
「怖く、ない?」
「いや、オレも変な事は出来るからな。……見てろよ」
足場を確認して両拳を構え、得意のストレートを放った。
「ふっ!」
拳が走り光が迸る。
照明が点いていない部屋が一瞬だけ明るくなった。
「……田代、さん……」
吃驚している石津。
そういえばこの隊で今のを見せるのは石津が初めてだ。聞いた事もなかっただろうな。
「オレもこうだからな。石津と似たようなもんさ」
どうにかして仕組みを知りたいとは考えた事もない。
使えるのはケンカの時だけだし、なくても困らないからだ。
対して石津の態度は真剣そのもので、他人が介入する余地なんて全然ないくらいだ。
絶対に解き明かそうと毎日奮闘してるように見える。
「……なんで、幻視って……言うのかな……?」
床の紙を持ち上げ、表面にある何かを指ですくう。
見えないの、とオレに掲げた。
細い指には何もない。塵すら見当たらない。
244四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:41:10 ID:C2W2a8lh
「………」
──何も、言えない。
言えばこいつが傷つく。
オレのは見せる事が出来る。同じ事が出来ない石津の痛みなんて想像もつかない。
くそ、何か言ってやりたい。
「……いい、の。解ってる……から」
声には落胆が混じる。
部分的に焦げた紙をゴミ箱に捨てて、石津は席に戻った。
「何で、……同調って、言うのかな……?」
同調と幻視。
普通じゃないと決め付け、普通だと安心する為の方便。
石津の不思議な力はそう呼ばれている。
「魔法、なのに……」
こいつの言う魔法だとして、証明する手立ては存在しない。
普通の奴には見えないものを主張する人=幻視能力の保持者、科学的に証明されない能力の持ち主=
同調能力保持者、と定義されているのかもしれない。
魔法を同調と同一視する人もいるらしいが、同調能力者を石津くらいしか知らないやつだろう。
それ程までに希少で、忌み嫌われる能力だ。
「……何だっていいだろ。お前はお前だ」
異質すぎる力だとして、それが何だ。
常人には出来ない事だってやれるきっかけにはなるだろう。
目が良いとか走るのが速いとか、それと一緒だ。
「なぁ、絶対に諦めるんじゃないぞ。いつか、役立てる方法が見つかるはずだ」
出来ないと思った時が終わり。戦場と同じ理屈が人生にも適用出来る。
「あり、がとう……」
確かな感情が浮かんでいた。
感謝と嬉しさ。
真っ直ぐ過ぎる瞳が眩しくて、オレは一秒も見ていられなかった。
245四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:41:52 ID:C2W2a8lh



「わたし、ね……お姉ちゃんが、……いるの」
いつものように仕事を手伝い、のんびりと休憩していると石津が呟いた。
『石津は孤児院育ちだ。肉親はいない』
本田の声が胸で鳴り響く。
そのように記憶を変えてしまったのかもしれない。
記憶の改竄なんて珍しくもない。忘れる、という機能も立派な改竄と言えるはずだ。
「ん、そりゃ何よりだな」
これ以上の突っ込みは止めておく。きっと、ボロが出る。
嘘だと気付く。
壊してはいけないものだ。
「本当……よ。わたし、覚えてる……」
それきり黙ってしまった。
こいつにとっては魔法と同じくらいの大事な、生きる支えなんだろうな。
オレはどうだろうか。
石津のように、誰かに強い感情を持っているつもりはない。
恋愛も経験してない。思い出はあるが、何が何でも拘りたい程の体験もない。
ただ、戦場に立ちたいだけだ。
戦って生き延びて、その瞬間だけを欲しがってるだけなのか。
速水の後ろ姿。
「田代、さん……」
心配そうにオレを見つめる石津。
「何だ?」
「怖い………顔、してた、………」
かもしれない。速水の事を想像するだけで、言いようのない恐怖が滲んでしまう。
何なんだよ、くそ。
「ちょっとな、速水の事、考えてた」
嘘を吐くのが躊躇われた。石津に話して、気分を紛らわせたい気持ちもある。
石津も思うところがあるらしく、テーブルに視線を落として黙っている。
246四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:42:40 ID:C2W2a8lh
と、口を開いた。
「全然……変わっちゃった、よね………」
「全くだ。ああも変わるなんて想像もつかなかったな」
戦況を有利にする為にはあらゆる手を使い、準竜師にも積極的に接触を持っているとの噂もある。
既に芝村の一員ではあるが、速水の名前は捨てていない。
それがどういった理由なのかは口にしていない。
あいつみたいな強い人間が芝村に増える、という事実はそれだけで嫌なもんだ。
一方でこの隊の芝村舞を見ていると、ひょっとしたら希望もあるかと思えてしまう。
所謂芝村、冷酷で人を人と思わない外道達の姫として育てられ、しかし人を思いやるところを少しだけ
持ち合わせた芝村舞が頂点に登りつめたなら、この世はマシにはなると思えてしまう。
「変わらない、人間なんて……いない、と、思う」
「……だよな。オレは、どうなるかね」
興味がない訳ではないけど、なるようになれだ。
ちょうど三番機の二人が詰め所の前を通った。芝村が熱心に何かを話し、速水が諫めている、という感じだ。
珍しくない光景。く、と速水の目だけがこちらを確認する。
……敵でも探すような印象だった。芝村の傍にいる時には余計に冷たい目を周囲に配るようにもなった。
肝心の芝村は気付いていないようだ。
何か、危険な感じがある。スカウトとして戦場に立っていた緊張感を覚えてしまうのが、
気のせいだったらいいんだがな。
「さて、と」
わざと明るい声を出し、凝り固まった空気を吹き飛ばす。
日課の体力トレーニングと射撃の練習をやってしまおう。
席を立ち、視線を隣に座る石津に向けた。
「石津はどうする?」
「………」
やることが残っているみたいだな。
「じゃ、お先」
頷く白い顔。以前だったら俯いて沈黙してただろうな。
こうやって人が変わっていくのはやはり面白いもんだ。
速水だけは、当てはまらないようだけどな。
247四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:43:28 ID:C2W2a8lh

チャイムが鳴り、午後の授業が全て終了した事を告げた。
最近は幻獣も大人しく、隊のほぼ全員が最低限の仕事をして帰宅するというサイクルになっている。
出撃が続く時はこれでもかと連続するんだから、休める時には休む、との鉄則を守るべきだ。
今日は石津も早く帰るだろう。
何となくハンガーに足を運び、三機の士魂号を見上げている。
整備員のオレが担当しているのは指揮車だ。場合によっては士魂号のも手伝うが、大体は力仕事をやらされる。
正直に言えば、細かい所をやれるだけの知識がないからなんだが。
出撃のない日が続くと修理も進む。今日だと直す所はひとつとしてないはずだ。
こうして整備員連中が誰もいないのがその証拠だ。オレの出番もまずありえないだろう。
担当である指揮車も完全に整備が終わっていて、出撃するまでは見る必要もないくらいだ。
『かつんかつん』
足元で金属音を立てながら二階にあがる。
ここからだとコクピットが並んで見える位置だ。
──しかし、パイロットは別だ。
愛機を文字通り手足として駆動させる連中だ。感覚との誤差は少なければ少ない方がいいに決まっている。
整備には終わりがあるのだが(滅多にないけどな)、調整にそれはない。
ただひたすら数値を追い詰め、それが生き延びる確率に直結するとなれば手は抜けない。
今動いているのは一番機と三番機だ。珍しく二番機が止まったままだ。
滝川の乗る二番機が最も調整に時間を使っている。滝川自身が人型戦車に異常とも思える愛着を
注いでいる所為もあるけど、素直に言えば調整も下手なだけだったりする。
ふぅ、と軽い溜息と共に一番機コクピットから壬生屋が出てきた。
しかしまあ、よく胴着であんな狭い所に入れるよな……
「よう、お疲れ」
「あ、どうも」
声も表情も曇りがなく、晴れやかだ。
調整は順調で、自身の漲る力にも久しぶりの爽快感を得ている、という様子だな。
変にちょっかいを出す気にもなれない。
「滝川、いないのか?」
248四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:44:15 ID:C2W2a8lh
「今日はお休みみたいです」
あの元気しか能のないやつがねぇ。珍しい事もあるもんだ。
「明日には元気になると思いますよ」
「くく、全くだ」
滝川は呆れる程切り替えの早いやつだ。
他の隊が大損害を受けたとの報せがあれば不安そうになり、朝になれば忘れたように登校してくるのがあいつだ。
壬生屋もそれは実感している。含み笑いをしながら言っていた。
ちら、と三番機に目をやる。
コクピットは閉じ、二人の声が聞こえてきそうだ。
今の速水と一緒にいられるのは間違いなく芝村だけだろう。隊の連中は大体がオレと同じように、
速水へ畏怖と呼べる感情を抱いている。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
何だって、こんなにも──速水がやってのけるだろう偉業を、否定したがるのか。
「大丈夫、ですか?」
壬生屋が心配そうにオレを覗いていた。
「………、ちょっとな。お先」
軽く手を挙げて礼の代わりにして、ハンガーから出た。

外に出た直後に声をかけられた。
「田代」
「ん?」
休みのはずだった滝川のものだ。
「具合悪いんなら、」
振り返り、喉が固まった。
顔中痣だらけだった。切れているところはないようだが、相当に痛いだろう。
「どうした、その顔」
痛そうに顔をしかめながら、滝川が答える。
「……酔っ払いに、やられた」
それきり何も言わない。多分嘘だ。言いたくない理由もあるんだろうな。
249四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:45:05 ID:C2W2a8lh
オレは強引に話しを続けさせた。
「で、何で出てきたんだよ?家で休んでりゃいいだろう」
「それ、なんだけどさ、……俺に、格闘術っていうか、喧嘩の手技を教えてくれよ」
真剣な眼差しだ。
どこからどう見ても、本気である事に疑いを持てない顔だ。
今なら時間もあるし、受けてもいいとは思う。
が、少しだけ疑問が頭に浮かんでしまい、躊躇うことなく訊いた。
「やり返したいってか?」
苦い顔になり、すぐに元に戻る。
「そうじゃない。昨日さ、俺って本当に格闘戦が出来ないんだなって思い知らされたんだ。
 このまんまじゃ、いつかこの欠点が皆をピンチにしてしまう。……だから、習いたいんだよ」
ふむ、筋は通っているか。
それでも疑問は残る。
「そうだな……なんで、オレなんだ?若宮とか来須でもいいんじゃないか?
 あいつ等の方が戦闘経験があるだろ」
「……田代は見たことないんだったな。若宮さんは接近戦だと蹴りを上手く使う人なんだ。
 俺が乗る二番機は装甲が薄いから、隙の大きい蹴りはあまり良くないと思う。
 他の士魂号だと平気な攻撃も、一発だって喰らうのは不味いだろ」
確かに蹴りの隙は多いし、繰り出す為にはそれなりのバランス感覚が必要だ。
自分に向いていない事をよく把握しているな。
「で、来須が駄目な理由は?」
「来須さんは……カトラスを使うんだけど、滅茶苦茶上手いんだぜ。壬生屋さんと同じくらいだよ。
 二番機が大太刀を持ったら、どうしたって足が遅くなってしまうだろ。今までみたいなスピードで掻き回す
 戦術が出来なくなる。……あとは、武器を使えるようになるのってかなり時間が要ると思うし」
なるほど。それでか。
ずっと馬鹿だと思っていたけど、これは改めるべきだな。
「頼む、田代」
すがるような弱さではない。ただただ必死で、懸命な態度だ。
250四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:45:52 ID:C2W2a8lh
女のオレに迷わず頭を下げに来るのも、それなりの器量がある証拠だと思ってみるか。
「解った。引き受ける」
「恩にきるぜ!」
辛気臭い顔が一気に明るくなった。
結構思い詰めるやつらしい。そのくせ切り替えが早いってのは珍しい男なのかもしれない。
「よし、早速やるか」
ここでもいいか。今日なら誰も通らないし。
と、その前に。
「滝川、両腕あげて」
「こうか?」
疑いながらも腕を真っ直ぐ上に伸ばす。
オレは正面からばんばんと脇、横腹、太ももの三箇所を軽く叩いた。
感触ではそれなりの筋肉はついているようだ。なら使い方を覚えさせるだけか。
……顔赤くしてやがる。アホか。
「何照れてるんだ、馬鹿野郎」
「あー、ごめん」
男が女に身体を触られるってのは確かに少ないだろう。
ま、いいか。
「よし、見てろ」
土を踏み締めて腰を落とし、右手を引いて左手は軽く上げる。
「まずはこいつだ。基本中の基本、中段正拳突き」
身体の芯を意識しながら全身を連動させ、右拳に全てを乗せて突き出す。
拳が空間を切り裂き、直後に輝きが迸った。
「あ……」
何だ、中段でも出るようになってら。
「田代、それは?」
「オレも知らねーんだけど、いつの間にか出るようになってたんだ。
 こんな感じでな」
構え直し、ストレート。
251四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:46:34 ID:C2W2a8lh
さっきとは比べ物にならない光が散った。
「おお!」
やっぱり吃驚するんだな……。
ま、いいか。
「光っても光らなくても威力は一緒だぞ。ほれ、お前もやれ」
顔を引き締め、気を取り直した滝川がオレの構えを真似する。
「こう、か?」
「そうだ。ゆっくりやるから、よく見ろ」
滝川の目を意識しながら、出来るだけゆっくりと腰を回し、肩に動きを伝え、拳を伸ばす。
向けられる視線はちょこまかと動かずに、オレの身体全体を眺める感じだ。
結構上達は早いかもな。
何となくガキの頃を思い出す。師匠に習ってた時、オレはどう見られていたんだろうか。
「ほれ、やってみろ」
難しそうな顔だ。見るのとやるのじゃ大違いって事を実感してるに違いない。
迷いながらもそろそろと身体を動かし始めた。
「こうきて、こうか?」
それぞれの部分はそれなりだけど、連携がまるで駄目だ。
これらを滑らかに繋ぐには経験を積む以外の方法はないとオレは知っている。
「もう一回見せるぜ」
熱心な視線を浴びながら、拳を繰り出す。
うーん、と唸ってから滝川も真似する。
さっきよりはマシか。
「いいぞ、その調子だ」
適当におだてながら何度も同じ動作を繰り返させた。
辺りが暗くなり始めた頃、偶々だけど滞りなく拳が突き出るようになった。
「おっし、その感じ」
「本当か?」
息を弾ませている。一回一回に集中力を注いでいる証だ。
そして嬉しさ半分戸惑い半分の表情。
252四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:47:21 ID:C2W2a8lh
が、満足して貰っては困る。
「毎日朝晩百回はやれよ。とにかく回数をこなすしかないんだからな」
一瞬だけげんなりした顔になったが、すぐに元に戻った。
明確な目的があるからだな。
「ありがとうな、田代」
「馬鹿、まだまだ最初だぞ。全部終わってから礼は言うもんだろ」



「なぁ、士魂号に乗って練習しなくてもいいのかよ?」
石津の仕事を手伝ってから滝川の練習に付き合い、終わり頃に訊いてみた。
考えてみれば、こうして生身でパンチの練習をしたとしても、それを士魂号に乗って
同じことが出来なければ、全く意味のない行為だ。
「いや、その辺りは大丈夫だぜ」
珍しく自信のこもった声だ。
「何でだよ?」
「最初は、それこそ普通の戦車の延長線みたいに考えてたし、乗り方もそうだったけどな。
 最近じゃ、身体の一部みたいに動かせるんだ」
表情にも迷いはない。本当に、その通りなんだろうな。
「……そうだな、デカいウォードレスを着てる感じ、かな。
 この間なんかワイヤーロープを使ってあや取りとかしてたし」
アホか。
だが、指の先まで意思が通っていなければ到底出来ない事でもある。
オレが思っていた以上に士魂号の操縦技術は高いようだ。
二番機は撃墜数が最も少なく敵の中に突っ込むような派手さもないが、決して他の二機に劣る訳ではない。
多分射撃に関してはオレの方が下だろうな。
「………、滝川。射撃のコツって何だよ?」
スカウトに抜擢されない一番の理由はこれだと思う。
格闘戦では若宮と来須に並ぶと自負しているんだが。
「うーん、色々あるけどな……やって見せるのが早いか」
253四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:48:08 ID:C2W2a8lh

という流れで二人っきりで射撃場に来た。
他に誰も居ない。静寂には微かな生活音すら聞こえない。
滝川は模擬弾が詰まった拳銃を両手で持ち、的が見えない入り口付近でオレに言う。
「適当に並べてくれよ。走りながら撃つからさ」
緊張の度合いが低い表情だ。
思いっきり意地悪に並べてやろう。
「おっし、任せろ」
部屋の隅から幾つもの的を運び、高さや距離をバラバラに並べまくった。
近いところから順に撃つだろう。……最後の一個は遠く、さらに殆ど横に向かせた。
当てようとしたら小さい模擬弾数発分の幅を狙える腕前が要る。
まあ全部に当たる事はないだろうが、どれだけのものか見せてもらうか。
「いいぞ、滝川」
言いながら歩き、壁にもたれかかる。
す、と緊張で滝川の顔が引き締まる。
「ん!」
銃口を下げ、勢いよく走り出した。
短距離走と変わらない全力走だ。
一秒に届かず的が見える場所に到達し、滝川は並ぶ的を視認する。
『パパパパパパパパン!』
腕が上がりきった直後、発砲音が連続して──全ての的に弾が当たっていた。
的ひとつに一発撃って、必ず当てている。
最後のひとつ、横を向かせた的にもしっかりと当たっている。
走りは一瞬も止まらなかった。揺れる銃で、毎回狙いを修正しての連続狙撃だ。
精度が高いとはいえない拳銃を使用しての早業。
これは、──とんでもない領域の、高度な技術だ。
「すげーじゃんかよ、おい」
足を止めた滝川はにやけながら俺に言う。
「そうでもないって。実戦だと、足場が悪いし敵も動くしでこうは当たらないからな。
 このくらいはやれないと」
……どうやら射撃に関してはオレの遥か上にいるみたいだ。
254四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:48:52 ID:C2W2a8lh
こういった技術にはお世辞なんか言いたくない。
「いや、大したもんだ。こんなにやれる奴、見たことないぜ」
へへへ、と照れ笑いする滝川。
妙に頼もしく思えるのは錯覚ではないだろうな。
「どうやってあんなに正確に撃てたんだよ」
オレも銃を持ち、的に向けて構える。
滝川は困ったように眉毛をひそめて、自信なさそうに言い出した。
「まずは、だな──」



「今日から実戦形式にするぞ。ほら、コレ着けろ」
「あー、うん」
「………馬鹿!避けろ!」
と、
「違うって、もっと反動も意識しないと」
「んな事言われてもよぉ」
「違うってば!こう持つんだって言っただろ!」
の繰り返しの毎日が続くようになった。
お互いの得意分野を認め合い、上下関係が入れ替わることにも何の抵抗もなかった。
教えるのも教わるのも力の差を認めないと始まらない。
性格も嫌いではなかったし、半ば相棒として一緒にいる事が多くなった。
焦げ付くような戦場への執着心は陰に隠れ、殴ったり叱られたりの交流に奇妙な満足感を覚えている。
……随分と丸くなりやがって。
「なぁ田代、ちょっと付き合ってくれないか?」
いつものように格闘訓練を終えて校門から出ようとした時、滝川がオレに言った。
「なんだよ?」
「偶には遊ぼうぜ。毎日訓練じゃ疲れもとれないだろ」
確かにその通りなんだけど。ま、いいか。
「いいけどよ、誘ったんだから楽しませろよ」
人懐っこい笑顔で、滝川はオレの先に立って歩き出した。
「へへ、面白い所だぜ」
255四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:49:39 ID:C2W2a8lh
連れられていったのは唯一栄えているといって言い通りだ。
オレも一通り目を通したが、大した所でもないと思っているが。
「で、どこ行くって?」
「こっちだ」

少しの間だけだったが、オレは随分と楽しんだ。
滝川の楽しもうという姿勢にも引っ張られた感じもあるが、まあ良しか。
こいつなら、戦争が終わってからもこの調子でやっていくんだろうな。
オレは──その自信がない。
「どうした?」
滝川が心配そうにオレを見ていた。
それぞれの部屋に帰る途中だ。辺りは夕暮れの橙が降り注いでいる。
自分の声とは思えないか弱い呟きが口から出てしまった。
「戦争終わったら何するか、って考えてた」
何をするか。
何ひとつ思いつかない。
働いて、結婚でもして、ささやかな生活でもするのか。
オレのしたい事なんてひとつしかない。速水は戦争を終わらせるだろうし、そうなるのが全人類の願いだ。
しかし、オレにとっては『死』と呼べる時代だろうな。
自然休戦期には結構な数の兵士が刑務所行きになる。
ちょっとした隙に自分を見失って馬鹿やって、捕まってしまう。オレは次の戦争の為だと言い聞かせて
過ごすつもりではいるが、それがずっと続くとなればどうなるか解らない。
個人的な事情を優先するなら、戦争は続いて欲しいと願っている。
相当にヤバい奴なんじゃないのか、このオレは。
「何って、色々楽しめばいいじゃんか」
滝川はキョトンとした表情で、呆れるくらい簡単に言いやがる。
「ふ、はははっ」
悩んでたのが馬鹿らしくなった。
256四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:50:27 ID:C2W2a8lh
確かに、暗い方ばかり考えてもしょうがないか。
「だよな、うん。──っと」
ぽつりと頬が濡れる。
雨だ。
空を見上げ、分厚い雲が見上げた頃には土砂降りになる。
「このヤロ……」
「田代、あそこで雨宿りしようぜ」
ばしゃばしゃと道路の水を蹴り飛ばし、ひっそりと佇む個人商店の軒下に入る。
服はとっくにずぶ濡れだ。
「いきなりだな、ったく………」
気休め程度でも水気を落とそうと軽く服を叩いた。
滝川も無言のまま表面の水滴を払っている。
「………」
どきりと心臓が鳴った。
ぴったりと張り付く制服の下では肩や背中が逞しく盛り上がり、男である事を嫌でも意識させられる。
オレの腕や足には同年代の女を遥かに上回る筋肉がついている。しかし、女らしさは隠しようがない。
胸も大きい方だ。
「───」
男と女の違い。
急に恥ずかしくなって滝川に背を向けた。
「早く止んでくれりゃいいな」
苦し紛れの独り言まで吐いてしまう。
らしくない。そうは自覚していても、羞恥心は消えてくれない。
「田代」
跳ね上がりそうな身体を捻じ伏せ、そっけない態度を演じた。
「何だよ?」
「今日は、ごめんな」
「………馬鹿。謝る事じゃないだろが」
257四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:51:29 ID:C2W2a8lh
今日のスパーリングで鳩尾にいいのをもらってしまった。
滝川はオレの猛攻を凌ぎ切って、短い呼気と共に正拳突きを叩き込んだ。
一瞬、息が出来なくなった。すぐさま追い打ちをされていたら、多分倒されていただろう。
それをしなかったのは単なる甘さだ。
「次はちゃんと止めを刺せ。戦場じゃ、命取りだぞ」
「解ってる」
雨の音だけが暫く聞こえ、唐突に滝川は言った。
「な、面白かったか?」
オレは背を見せたままだ。滝川の顔がどんな風になってるかは確認出来ない。
ま、いつもの半笑いだと思うけどな。
「おうよ、久しぶりな」
「じゃ、次はもっと面白い所、連れて行ってやるぜ」
妙に重さを感じる言葉だったが、オレも同意していた。
「期待してる………じゃあな」
小降りになった雨の中をオレは走る。
頬の熱さは中々消えてくれなかった。



昼飯を食い終えた頃、召集がかかった。
会議室に小隊の全員が集まり、司令が政府から派遣された男を紹介する。
皆と同じで余計な人間を現場に連れて行くなんて馬鹿のやることだと思う。
が、命令だ。それに出撃前の混雑が減るならばと強引に納得させた。
解散の雰囲気になりかけた直後に、出撃の命令が下された。
ばたばたと走り、トレーラーの運転席に腰を降ろしてからエンジンをかける。
そしてハンガーのすぐ傍に止めつつスイッチを操作。
荷台を展開させすぐにでも士魂号が乗れるようにしなければならない。
助手席側からも原、森が乗り込む。
原が目の前の通信機を操作し、指揮車からの連絡を聞けるようにした頃には、ずしずしと
士魂号が歩いてくる。
258四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:52:16 ID:C2W2a8lh
ずぅん、と車体が揺れ、通信機の傍にあるランプが点灯した。士魂号の固定が完了したのだ。
「今日はどこまで行くのかしら?」
原が軽くスピーカーを叩くと、数瞬のノイズの後に司令の声。
『通達。敵の出現位置は、───』
事実だけを述べる声が流れ出す。結構遠くだが、担当戦域である以上は文句など言えない。
『全車発進』
指揮車が走り出した。オレもアクセルを踏み、重いトレーラーを動かした。

暫く走って郊外に向かう。
民家は全く見えない。窓には青々とした緑だけがあった。
片側二車線の道路は新しく、奇跡的にもこの一帯で戦闘が行われなかったことを示している。
さらに走り、車線が減った後に通信が入った。
『左前方のドライブイン跡地に停車。士魂号三機は徒歩行軍に移る』
言われるままにトレーラーを止め、車体の揺れが収まる前に士魂号が降りる。
ドアミラーを見ると、他の二機、二番機と三番機も降ていた。
潰れたドライブインの駐車場は大きく、トレーラー四台がすっぽりと納まるだけの広さがある。
三機の士魂号を追うように指揮車が走り出した。
「ふぅ……」
小さな溜息が出る。
緊張からの解放なんかじゃない。
オレも駆けて行きたいという衝動を吐き出す為のものだ。
本当に、いつになったら生きている瞬間に出会えるんだろうか。
「………」
沈黙が狭い室内に満ちている。
他のトレーラーも一緒だろう。通信機から入ってくる指示を一瞬でも早く聞き、対応しなければ
ならないからだ。
弾層の準備や機体の応急手当、場合によっては戦場に近づく事もある。
ぼ、ぼぼん。
やがて、遠い轟音が耳に触れた。
これは……ジャイアントアサルトか。
259四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:53:05 ID:C2W2a8lh
『二番機、ナーガ撃破』
『三番機がゴルゴーン撃破なのよー』
スピーカーからは撃破の報告だけが伝えられる。士魂号は全く無傷らしい。
その後も撃破は続いている。オペレーターの声にも緊張は感じられない。
雑魚ばかりという出現報告は本当だったようだ。この前はずいぶんと食い違う敵と当たったものだが。
ふと正面を見ると、若宮と来須が戻ってきた。
窓を開けてオレは訊いた。
「どうした?」
「トレーラー付近で待機、命令だ」
この二人ならば強力な不意打ちがあっても時間稼ぎくらいは出来る。
司令らしい抜け目のない作戦だ。
『────』
スピーカーが黙る。
声の代わりに、凄まじい緊張感が広がっていく。
「……何だ?」
ただ事ではない。
スカウト時代に身につけた勘が危険だと訴える。
腹の底がきりきりと固まる感覚。
『新型、だよな?』
『だったら良かったんだけどね』
滝川と速水の会話だ。
二人とも異常なまでに声が硬い。
新型か、との疑問には完全な否定。これほどに慎重にならざるを得ない相手とは、何だ?
『アサルトは通じないな、ありゃあ』
『……だね。バズーカ取ってきてくれる?』
『近接戦なら、私の出番ですね』
『待て。連携を怠るな。各個撃破されるぞ』
二番機が乗っていたトレーラーからばたばたと音がする。
開いた荷台から巨大な筒がはみ出した。
『既に察しているかと思いますが、………』
260四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:53:53 ID:C2W2a8lh
どんな犠牲を払ってでも倒せ。パイロットの命すらも犠牲にしろ、という馬鹿げた指示が
室内を冷やす。
どんな敵だ?新型じゃないのか?
見た事があるのに、何で最強の敵だと司令は判断したんだ?
ぶるりと原の身体が揺れた。
「まさか、なんて、事を………っ!」
間違いなく怒っている。充血した目は通信機を睨み、歯を食いしばっている。
一体なんだというのか?
訊きたいけど、そんな雰囲気じゃない。
原の隣にすわる森もオレと同じように困惑している。
は、と何かに気付いたように視線が泳いだ。
「そ、んな事が………?」
「そうよ。絶対、そうよ!」
原は律儀にも答え、ばしんとスピーカーを叩いた。
物にあたるなんて初めて見る。整備班の班長ともなれば、どんな理由でも物を粗末には出来ないはずなのに、
こうして八つ当たりをしている。
怒りの理由は見当もつかない。
「森、何なんだよ?」
原と同調するように怒りが顔に広がり始めた。
ここから見えない幻獣を凝視するように、フロントガラスに視線を送っている。
「士魂号が、幻獣に、乗っ取られたんです」
馬鹿な。
「………、けどよ、可能なのか?」
「『きたかぜ』だってやられてるでしょう。連中だってずっとそのままじゃない。
 士魂号が乗っ取られるのは時間の問題だったのよ。何で、考えなかったのかしら……っ!?」
だが、しかし。
「班長、まともに動いてる人型戦車って、ここだけだろ?」
「………ちょっと前に、他所でも士魂号M型だけで構成された隊が出来たって噂、本当だったのよ。
 その隊は全滅して、こうして敵になって出てきた。それしかない」
硬く握られた拳が原の膝上で震えている。
261四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:54:36 ID:C2W2a8lh
原は人型戦車の開発に関係していた。それだけに、悔しさは相当なものだろう。
『……レ…ラー!そこにバズーカ置いて逃げろ!』
滝川の声だ。
『新手だ!そっちを狙ってるぞ!来た道を戻れ!スカウト二人も一緒だ!』
ずしずしと士魂号の足音が大きくなっていく。間に合いそうだが、念のためだろうか。
若宮と来須も手伝い、二番機のトレーラーから突き出ていたバズーカが地面に降ろされる。
『くそ、こんなに速かったのかよ!早くしろって!目の前だぞ!』
前?
空中に、真っ赤な塊が浮かんでいる。
白い二番機じゃない。派手な音とともに、それは着地した。
「────!」
二番機じゃない。一番機、三番機でもない。
深紅の人型戦車、いや、『元』人型戦車だった。両腕には超硬度大太刀がぶら下がり、
装甲を限界まで削ぎ落としたシルエットは細いの一言につきる。
決定的に違うのは匂いすら感じられるような有機的、生物的な脈動を見れる事だ。
どくどくと全身に血管が浮き出ている。ヘッドカメラの代わりに大きな目が張り付いている。
生物でも機械でもない、あの世の住人に見えた。
「田代さん!」
叱咤の声でオレは自分を取り戻す。
積まれている部品を吹っ飛ばすように急旋回。
「くっそぉ!」
ゆっくりと幻獣は歩み寄って剣を振り上げ、突如飛び下がった。
幻獣の足元に、大きな弾丸が次々と穴を開ける。
『どけえええええ!』
滝川の雄叫びが身体を揺さぶった。
その時には車体は旋回を終え、ドアミラーの隅にかろうじて士魂号が映っている。
「………くそっ!」
もっと見ていたい。手助けなんて無理なら、せめて応援でもしてやりたい。
心の熱がそのまま右足に乗ってしまい、ペダルを深く踏み込んでしまう。
『うおおあああ!』
アサルトが連続で火を噴いているのが聞こえる。
262四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:55:19 ID:C2W2a8lh
逃げる事も応援を待つ事も許されない戦いなんて初めてのはずだ。
やれるのか。
やり遂げる、と信じる事がどうしても出来ない。
『よーし、こっちだ!』
二体の足音が遠ざかり、通信機の感度も若干下がる。
指揮車と他の士魂号の通信は届かない。随分と遠いところで戦っているらしい。
「田代さん止めて。ここでUターンして待機」
「了解っと」
広い交差点は大きい車体でも十分に旋回する事が出来る。
信号はのん気に青から黄に灯りを移動させ、決死の雰囲気を和ませようとしているみたいだ。
しかし、スピーカーからの音声が許さない。
一際高い金属音が響く。
『ひとの物を蹴飛ばすなっての、この野郎!』
バズーカを取り損ねたのか。
決め手が遠く離れたのに、滝川は冷静さを失ってはいない。
『なんて速さだよ、ったく………うおっ!』
ごうっ!
至近距離を刃がかすめた突風に違いない。
その間合いは絶対に不利だ。
オレが教えた通りに動け、馬鹿!
がきんがきんとジャイアントアサルトが弾切れを訴える。
『弾倉、交換、のふりだよ馬鹿!』
直後、鈍い爆裂音。
オレが仕込んだ正拳突きが入った!
『今のうちに、真正面から戦える所………っ!』
そうだ。お前は下手糞なんだから、場所を選べ。
足場がしっかりしていて、真正面から戦える場所を探すんだ。
がさがさと枝を掻き分ける音が混じる。林の中か。それなら幻獣の持つ大太刀も上手く振れないし、
とんでもない回避力も鈍るかもな。
263四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:56:15 ID:C2W2a8lh
弾倉交換を終わらせていたらしく、発砲音が再開した。
『……、こっちと同じだな、装甲は薄い。どこに当たってもダメージになる』
なら、さっさと倒せ。
木を叩き割る不快な音が続く。大太刀が次々と乱立する木々に衝突しているようだ。
『よっし、ここなら得物なんて邪魔だろ。こっちは撃ち放題だぜ!』
景気のいい声だ。調子よく攻撃が当たっているらしい。
しかし、安心していられたのはその時だけだった。
………勝てよ馬鹿!

逃げ場なんて、………何だよそりゃあ!発砲。発砲。木の葉が擦れる音、音。
太い風きり音。くそ、滅茶苦茶、うおっ!足音走る音発砲。サルかお前は!
人は地面を走るもんだろくそ!地響き金属音木が震える音機体が転がる音。
オオオオオ!風きり金属音。痛ぇなくそぉ殴打衝突落下音、発砲発砲さっさと
死ねよ馬鹿発砲跳躍、跳躍音。ぬ、あ!足音衝撃音かすり傷だろ馬鹿発砲音。
静寂。何だ?落下音考えるもんだなくそう飛来音飛来音落下音葉擦音発砲音
弾倉交換音、発砲発砲。確か、こっちだったよな走行音木が割れる音。
ゆっくり探させろよお前!発砲落下走行音。風きり音風きり音。どこ行きやがった、
しまったアアアアア!衝撃衝撃音警告わあああ本機は重大な損傷離せこの野郎
衝撃音警告音グハハハハちくしょおおお!至急脱出あああアああアアあああアアアア!
繰り返される呼吸。………ごめんな。爆発音。

「──っ!」
勝てよ馬鹿!何か言えよこの野郎!
スピーカーからは耳障りなノイズしか聞こえない。
通信機はコクピットに収まっている。それが壊れて機能を失う事態なんて、ひとつしかない。
目から血が滲みそうなくらいに音源を睨んでも、滝川の声は復活しなかった。
──滝川が、死んだ。
「てめぇええええ!」
がつんとハンドルを殴り、それでもぐちゃぐちゃの感情は燃え盛る一方だ。
「………くそお!」
264四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:56:58 ID:C2W2a8lh
もっと面白いところに連れて行くって約束はどうした。
お前がいないんじゃ、どこ行ってもつまんねーだろ。
もっと殴らせろ。もっと射撃の秘訣を教えろ。
もっと、オレと居ろよ!
あいつの事で頭が一杯になる。逃げられない。目を閉じ耳を塞いでも、滝川の姿は消えないし声も次々と
聞こえる。
「っ!っ!──っ!」
狂ったようにハンドルに額を押し付けて耐えた。ざっくりと心が欠けた痛みと、
欠落したモノの重さと、それが戻らないという現実の冷たさに。
ちくしょう、ちくしょう!
今すぐ戻って来い。オレの前に出て来い。そして、文句をありったけ聞かせてやるから、帰ってこいよ!
『………ぃ、聞、……るか、トレーラー!』
驚きながら通信機に目を向けた直後、沈んだ室内に安堵の空気が満ちた。
戦闘は終わっていないのに、こんなにもほっとしたのは多分初めてだろう。
『予備機で援護に向かう!早く来てくれ!』
四台目のトレーラーが物凄い勢いで走っていく。
「田代さん、行きましょう!」
返事もせず、オレは車体を動かした。



「ふー………」
外された士魂号の部品をハンガーの棚に置いて一息つくと、いつからか居た司令がオレに声をかける。
雑務からの解放で、いつもの冷たさは随分と和らいでいるようだ。
「今日はご苦労様でした。田代さんを明日からスカウトに配属します」
──やっと、か。
こみ上げるのは嬉しさばかりじゃない。オレがスカウトになった最たる理由は、現役の怪我にあるんだからな。
「あいつら、どのくらいかかるんですか?」
「早くて二週間、遅ければもう一週ほど延びるそうです」
頑丈さでは他の追随を許さない若宮と来須。二人ともが大怪我をした今日の戦い。
同時に思い出される出来事。
265四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:57:51 ID:C2W2a8lh
「………で、どうするんですか、あれ?」
あえて固有名詞を出さずに尋ねる。
司令は不味いものでも食ったような顔をして答えた。
「まあ、仕方ない、というところですか。今日中に居なくなると言ってましたし、あの人の提案も
 妥当なものです。結局は私も同じように処理したと思いますよ」
確かにな。
オレでも強引に隠蔽しただろう。どう足掻いても合理的な説明なんて不可能だし、
出来たとしても上は信用しない。余りにも突飛でつかみ所のない報告なんて一蹴されるだけだ。
怪しいと思わせ、それ以上の追求もさせない方法を取るしかない。
この辺の案など思いつきもしないけど、司令は何とかしたようだった。
「しかし……射撃が出来るようになってましたね。少々驚きました」
どう思っていたのはか訊くまでもないか。
冷たさが若干増した視線を正面から跳ね返し、言う。
「変わらずにいられる人間なんていませんよ、司令」
今日でそれを思い知らされた。
オレの本心はどうなっていたのか。意識して目を背けてきた感情が、どれほどに成長していたのか。
滝川の存在が、どういったものに豹変していたのかも。
「………、そうですね。人間は変化し続けるものですからね」
司令も頷いて同意する。
背中から原の声が響いた。
「今日は終わりにしましょう。皆、お疲れ様」
振り返る。全ての士魂号に修理不能な部品だけが張り付いている。
明日には全機が新調される。こいつらとはお別れだ。オレ自身はそれほど手をつけていないけど、
そこそこに感情を持っていたらしく、正直に言えば惜しい。
他の整備員も似たような心境だろうか、それぞれが複雑な面持ちで担当の巨体を見詰め、ついには諦めた。
背を向けとぼとぼと歩き出す。
………オレも帰るか。
寂しさが背中を押し、顔だけ振り返らせても離別の言葉は出なかった。
266四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:58:35 ID:C2W2a8lh



ドアを開け、中に入る。
三つの鍵はそのままだ。普段ならすぐにでも締めるところだけど、その必要はない。
──ったく、根性なし。
制服を脱いで壁にかけ、ラフな普段着に着替えた。
ぼふ、とベッドに腰掛ける。
……、なに迷ってやがる。
『がちゃり』
ドアのノブが回った音。き、と蝶番が軋む音も続く。
立ち上がり、玄関に向かうと、予想通りに滝川が居た。俯いて、言葉を探しているように見える。
「……」
鍵を開ける前からずっと見ていたのは知っている。声をかけやすいようにゆっくり歩いて、ポケットを
探る時も時間をかけた。
ま、オレも似たようなもんだ。さっさと言ってやれば良かったか。
手を握り締め、何かに耐えるように沈黙し続ける滝川。その様子を見ているだけで、オレの中で様々な
感情が混ざり、鮮やかな発色を創り出す。
見たことがない色だ。とても綺麗で、身を投げ入れたい衝動に駆られてしまう。
適当な言葉を出せないのはオレも同じだ。
促す場面なのか。待つ場面なのか。
「…………」
「……、礼が言いたくて、来たんだ」
搾り出すような言葉は未だに下に向いた口から。
身体が焼けつくように熱い。
「あのさ………」
今度こそ、滝川はオレを見据えて言った。
「こうしていられるのは、田代のおかげだ。本当にありがとう」
力強い音だった。
全く──随分と、男らしくなりやがって。
267四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/15(日) 23:59:24 ID:C2W2a8lh
「馬鹿野郎」
叱咤と同時に滝川を抱きしめた。
実感する。オレよりも貧弱な体格で、どうしてこんなにも──男だと意識させるのか。
乱暴だった腕からだんだんと力が抜けて、オレらしくもない優しい抱擁になっている。
「心配させるな、馬鹿野郎」
滝川の手も腰にまわってくる。抱き寄せる、というよりも添えるに近い感触がオレのガードを
外していくのが解った。
本当にらしくない。いつまでも続けと願わずにいられない。
「うん、悪かった」
全身が加熱される感覚。たまらない。
大事な物を失いかけた時の感情が思い出され、それを打ち消すような時間が流れる。
胸元には滝川の頭が埋まっていて、………普通は逆だろうに。
でも、嫌じゃない。
「俺、………」
上を向いた顔には強い決意が漲っていた。
つられるように心臓が高鳴り、来るであろう言葉を無言で待った。
「俺、田代に惚れてる。好きだ。──田代は、どう思ってる?」
やっぱり、か。
いい加減認めるか。オレも、こいつの事が好きらしい。
だけど、
「聞きたいか、滝川」
「聞きたい」
オレが納得出来ない。こんな所で、こんな格好で言うにはあまりにも惜しい。
だから。
「だったら、もう少しだけ強くなって、男らしくなって見せろ。
 そんときゃ、オレも少しだけ女らしくなってるんだからな」
男女として付き合うには、オレも滝川も変わらなきゃいけない。
ちゃんとした繋がりを創る為には不可避な事だと思う。
268四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/16(月) 00:00:31 ID:C2W2a8lh
滝川にもその意図は伝わったらしく、真っ直ぐな視線をオレに向けている。
「………、じゃ、明日からもよろしくな」
「ああ。何があっても死なないように鍛えてやるぜ」
色気もなにもない会話は、とても自然な笑顔で交わされていた。
腕を解き、身体を離してがっちりと握手する。今の関係で一番似合う触れ合いはこの辺りだろう。
「──────」
「………………」
くそう、やっぱり、この先に進みたくてしょうがない。
動き出そうとする身体を止めるようにオレは言った。
「じゃあな」
「ん、また明日な」
いつもの半笑いを見せ、滝川が出ていた。
手の温もりが一瞬毎に冷めていく。
「……ま、こんなもんだろ」
第一歩を踏み出せただけでも良しとしようか。
女らしい格好か……。
誰に相談すりゃいいんだ?原はなぁ……何言われるか解らないし、ありもしない嘘なんかを
広められたら厄介だ。パス。
となりゃ小杉か、田辺か……。いつかはこの事が漏れるだろうが、その時はその時だ。公言しよう。
「ふん、行けるところまで行ってやるか」
終戦後に訪れるだろう二度目の人生への不安はきれいさっぱり消えていた。
戦争なんてさっさと終わらせて、あいつと一緒に遊んで、楽しむ。
明確な目的が出来た。もう迷う必要なんてない。
らしくないと思いつつ、今固まったばかりの気持ちを手にする事にした。

269四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/16(月) 00:01:29 ID:C2W2a8lh
エロなし&パワー不足スマソ

また来週
270名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 02:25:39 ID:E9kTpmWC
四条氏GJ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!
田代可愛いなー!
271名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 20:44:30 ID:1vXNNZEX
よし、GJ!!
相変わらず本職かと見まごう(もしかしたら本職かもしれないが)腕前だな。
272名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 22:44:13 ID:O2JYpT9o
GJ!!
来週にも期待! (*゚∀゚)=3
273名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 21:27:07 ID:zY44cqhQ
式神の城V発表age
274四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:45:13 ID:BPKsRcfS
>>271
本職とか書かんで欲しいのです
最近名前を広めているらしい同人ゲー体験版をプレイした訳ですが、コレが凄いのなんのって……
漏れのSSなんか同人作品に爪の先すらも届いていないっすよ
非常に悔しい

ゲーム中の単語を都合良く解釈しまくった前編3をうp開始です
タイトル「三つ目の思い出を」
275四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:45:57 ID:BPKsRcfS
紅い粒がぽつぽつと降りてくる。紅い雪だ。
春が終わりそうな季節に、真っ青な晴天から。
私にとっては珍しい現象じゃない。昔からの、馴染みのある光景だ。
直径数ミリ程度の紅い粒を人差し指で受け止める。一瞬して、溶けるように皮膚に染み込んだ。
降るだけじゃなくて、地面から湧き出る事もあるのだ。じわじわと霧のように周囲の物を
覆いながら広がって、薄くなって消える。
目を凝らせば、血液のように身体を巡っているのも解る。
音も熱もないけれど、それは確かに私の一部として活動しているのだ。
誰にも見えない紅。私だけが見れる存在。
私以外の人には見えない塵。誰の身体にも流れている──力。
この正体は依然として不明だけれど、私自身は魔法の源、魔力だと考えている。
普通の人なら馬鹿げてると思うだろう。当然だ。見えず、触れられず、感じないのであれば
それは無いのと同義だ。
私がこの粒を魔力だと信じる一番の支えは、誰にも言えない遠い記憶なのだ。
物心つく前から孤児院で育った私が持っている記憶。


──温かい手が、私の頭を撫でている。
年老いた男の人と、幼い女の子の会話。
『いつも関心だねぇ。さぁ、魔法の勉強をしようか?』
『えー?今じゃないと駄目なの?』
『駄目かな?いっぱい教えなきゃいけないからねぇ』
『……わかった。すぐもどるから、まっててね』
心地よい感触が失われ、声が遠くなる。
去っていく誰かを目で追うと、紅い波が私を襲い、ごおごおと風の音。


──そこで記憶はおしまいだ。
記憶にある魔法という単語と美しく紅い波。目に映り、触れることが出来る粒。
この二つだけが私の考えの拠り所だ。
276四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:46:41 ID:BPKsRcfS
記憶なんて、結局は自分に都合のいいように作り変えられるものだと知っているけれど、
あの会話と紅い風景は本物だと思うのだ。それ程に存在感があって、私と常に一緒だった。
いつも漂っている魔力。誰もが口に出さないだけで、私と同じように感じて、見えているのだと
思っていた。
『ないよ、そんなの』
『馬鹿じゃない?』
『あるんなら証拠出してみろよ』
誰もが否定した。私の見えるものと、私の記憶が否定される。
私は認めてもらいたくて、必死に話した。確かにあるのだと何度も話した。
嘲笑。無視。侮蔑。
やがてそれらの言葉には暴力が加えられ、私が何も言わなくてもこの身に襲いかかるようになった。
彼らを責める気にはなれない。異常を排除しようとする集団行動は理に適ったものであり、
──私は、それに該当するものなのだから。
それでも私は諦めない。理解して貰える事については殆ど望みはないと確信しているけれど、
私の噂を聞きつけた他の魔法使いが現れる事を期待していた。
私はひとりなんかじゃない。同じ仲間は必ずいるのだ。
……どれだけ待っても現れなかった。
裏切られたとは思わない。何処にもいない誰かに期待してただけだから。
けれど、その代償はしっかりと私に植え付けられてしまった。
気が付けば会話が普通に出来なくなっていた。私自身すらも感じ取れない深いところは確かに傷ついていたのだ。
誰も理解し得ない私の感性。幾度も否定された感性は、それでも消えてくれない。
紅い湧出地に立てば、それだけで私の身体は力を回復するのだ。どんなに疲弊していても、
このお陰でやってこれたのだ。
だけど、信じてもらえない。
そして理解を得ようとするのを止めた。誰とも話さず、ひとりで魔法の証明をするべく
怪しげな本と格闘する日々。
そんな姿が殊更奇異に見えるのは当たり前の事だ。疎遠すべき異常者は消去すべき異端者になり、
更に明確な行動を伴う。故に、私はより一人っきりになろうとさ迷い歩くようになった。
紅い泉。不安定なものならばどこにでも存在する。アスファルトの上、空き地の中。流れる川の中にも。
次の日には消えてしまうものには頼れないし、そういったものは随分と弱いから大した効果もない。
277四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:47:27 ID:BPKsRcfS
あちこちを散策し、朽ち果てた大屋敷などに安定した泉が多い事に気付く。
その泉をある種の力として行使した痕跡。あるいは知らず知らずに力としていた残骸。
不思議なもので、幻獣からは遠ざかるような動きを示す。
これがきっかけで幻獣の出現を察知し、つい口に出してしまったが為に死神扱いをされた事もあった。
悪いのは私。この子達ではない。
魔法はあるのだ。この身体にだって流れ、蓄積している粒。
私はこれを使えない。
悔しい。私だけの世界だなんて思いたくはない。誰の目にも見えるように形と色を与えたいのに、
方法がない。
どうすれば、この子達を認めさせてあげられるのだろうか──



今日の幻獣、士魂号と融合した敵は強かった。
四機のうち二機までもが行動不能な損傷を受け、それでも私達は生き残ったのだから運がいい。
実際に敵と相対していないはずのオペレターや私、トレーラーで待機している整備員も皆疲れきった顔だろう。
あの激しい戦闘の音や幻獣の叫び声を思い出すだけで震えてしまう。
……私は弱い、と思う。
勝手な想像にさえ怯えてしまう。
士魂号が撮影し、指揮車に記録された映像なんて見たくもない。
幻獣の強さは概ね外見と一致する。今日の敵を見てしまったら、それだけで失神してしまうだろう。
気分を変えようと砲塔に上り、銃座に腰を下ろす。
びゅうびゅうと吹き付ける風が気持ちいい。癖のある長髪が後ろに流れた。
なのに、紅い粒、赤い波は広めの川を越えて真横からやってくる。右手の切り立った崖に吸い込まれていく。
こういった風景を見れるのは私だけの特権だ。
「ふぅ……」
何となくため息をついて、道路の先に何かがあるのが解った。
あれは……岩のようだ。
十メートルほど手前で指揮車は停止し、後ろのトレーラーも同じく停車。
278四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:48:10 ID:BPKsRcfS
足元からは司令とオペレーターの話し声が聞こえる。
「落石、かよ」
「……そのようですね。若宮十翼長、来須十翼長。落石により通行不能になっています。処理を手伝って下さい」
「俺もですか?」
「当たり前でしょう。パイロットや整備員は動かせませんからね」
「了解、ったく……」
元気よく指揮車の横を駆けていくウォードレス姿の二人。
ほどなくして車内からもう二人が出てくる。
岩のサイズは大したものではないけれど、数は結構ある。少し時間がかかるだろう。
最年少の東原さんも出てきて「んー」と崖に視線を送りながら背伸びをしている。硬い椅子に座りっぱなし
というのは結構疲れるものだ。
四人の作業に興味を持ったらしく、とことこと歩いていく東原さん。
転がる岩。どこから落ちて来たんだろうか。岩壁に視線を移して観察した。
それこそ草木も生えない硬い壁だ。登れないほどの急斜面で、まだ見つからない。更に高いところでそれらしい
部分があった。
……不自然に、黒くなっている。焼けて、焦げている感じだ。
落雷なんてありえない。ここを通る時や戦闘中も雨はなかった。道路も乾いていて、朝から続く晴天を
証明している。今だって真っ青な空だ。
──ひたすらに高く青い空。ゆっくりと遊歩する白い雲。傾き、僅かに黄色い太陽。
ごくりとのどが鳴る。全身に満ちていく戦慄が私を動かした。
上下左右を見渡す。ない。遠い道路や崖の上にある林。ない。振り返って数台のトレーラー。その向こうの風景。
……ない。見慣れた赤い子達の姿がない。
退避が完了した、という事。
幻獣が、来る──!
いそいで司令に回線を繋いで、私は言った。
「敵、……幻獣が、来ます……っ!」
司令が私を見て叫んだ。
「戦闘準備!」
司令はばたばたと駆け戻りながら全員に命令する。
279四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:48:52 ID:BPKsRcfS
追うようにスカウトの二人と瀬戸口さんも走る。
「敵って、どこからですか!?」
「恐らくは河川側ですが、崖にも注意するように!」
直後に後方で爆発音。がらがらと岩が落ちる音も続いた。遠くにはゴルゴーンの姿。
やられた。幻獣達は最初からこれを狙っていたのだ。
全員を疲労させ、安心させてから怪しまれない足止めをして気を緩ませ、その隙に包囲する。
まさか、こんな凝った手を使うなんて。
一番後ろのトレーラーから飛び出した士魂号予備機がジャイアントアサルトを放ち、崖を崩したゴルゴーンを倒す。
幻獣はそれきり現れない。様子見、だろう。
司令は友軍を要請したようだったけど、それまで持ちこたえられるだろうか。
機銃を河へ向け、やってくるだろう幻獣を一瞬でも早く見つけようと気合をいれた。
二機の士魂号は河に入って待ち構えている。
司令からの通信が入った。
『すぐに友軍は来ますが、油断しないように』
──でも、こんなチャンスを逃がすような戦力で来るのだろうか。
数瞬してから河の向こうが歪んで、ぞろぞろと幻獣たちが姿を見せた。
私の、相手だ。
「──っ!」
狙いをつけて、撃った。
全身を軽々と吹き飛ばす衝撃が手元から伝わってくる。しかし頑丈な銃座は全てを吸収して
私に射撃を続けさせた。
小さな幻獣が次々に弾けて消える。消える。消している、私。
「うぅ……っ!」
後から後から現れる。
胃からこみ上げる何かを強引に封じて、撃ちまくる。
焼けた銃身が何度も弾丸を吐き、私の倒すべき敵はいなくなった。
少しだけほっとする。殺さずに済む時間。甘いとか言われそうだけれど、やっぱり殺したくはない。
例え幻獣だったとしても。
視界の左端では士魂号も戦闘に入っていた。派手に水を蹴りながら動き、中型幻獣を相手にしている。
一番機が迷いなく斬りつけ、二番機は躊躇せずに撃っている。
280四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:49:36 ID:BPKsRcfS
「舞、そっち持って!」
「よし、行くぞ!」
三番機のパイロットとスカウトは邪魔な岩をどかそうとしていた。
整備員たちは見えないけれど、トレーラーに隠れているのだろう。彼らに戦闘は殆ど無理のはずだ。
私も偉そうな事を言える程ではない。彼らに比べて暇が多い分、銃に触っている時間が多いだけの話だ。
再び湧き出す幻獣。照準を合わせて引き鉄に力を入れる。
ぼろぼろと落ちる薬莢が床を叩いて、金属音が連続した。
──今度は止まらない。止められない。銃身を振り、向きを変えた隙に違う方向から近寄られる。
「ううううう………!」
士魂号は来れない。目の前にいる中型幻獣に背を向けられるはずがない。
道はまだ塞がっている。強引な突破も無理だ。見れば、トレーラーの向こう側でも戦闘状態だ。
光と音が繰り返されているのが解った。
「あ、……あ、っ!」
土手を登りガードレールを乗り越え、懐に入られた。どんなに銃口を下げても撃てない場所に侵入された。
ニタリと笑う幻獣が、
「おらああああ!」
野太い大声とその主の飛び蹴りで消し飛んだ。
若宮さん、だ。
「石津、安心して撃ちまくれ!近いのはまかせろ!」
言いながらも殴り、蹴り、撃つ。ひとつの動作でひとつの敵が減っていく。
その強さより、大きな背中が一番安心させてくれる。
気を持ち直して私は弾丸を送り続けた。
若宮さんは僅かに顔を横に振って言う。
「来須!頼むぞ!」
来須さんが走り、整備員たちの掩護に向かった。途中でカトラスを振るい、紙を切るように幻獣の数匹を
──全部、身長2メートル以上のゴブリンリーダーだった──簡単に仕留める。
多分、壬生屋さんとほぼ変わらない腕前だと思う。
どぉんと再び崖が崩れた。開きかけていた道路が沢山の岩で埋まる。
逃げられない。ずっとこの繰り返しになるんだろう。必死の思いで岩を片付けても、ちょっとした
ことで簡単に元通り。
281四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:50:19 ID:BPKsRcfS
「……くそ!」
「厚志、来るぞ、引け!」
芝村さんの言葉を証明するように、岩の小山をゴブリンやゴブリンリーダーが乗り越えてきた。
しかし次々と撃破されてしまう。二人の連携は固く強力で、全くつけ入る隙がない。
……でも、弾が尽きれば難しくなる。体力が続かなくなれば終わる。
そんな嫌な展開を否定するためにも撃つ。
こんな所で死んでたまるか。魔法を、使えるようになるんだ。
『石津さん右!ナーガを撃って!』
強い口調での命令に、考える前に身体が動いた。
ぐるんと銃座が旋回して撃つべき敵が照準に収まり、直後に轟いた閃光がナーガの細い胴に刺さる。
余りにも機械じみた動作。嫌気で胸が一杯だけれど、引き鉄を戻さずに幻獣を砕く。
私だって死にたくない。
「は、っ!」
向こうにもう一匹。赤い目がぎろりと私を見た。
いくつもの輝きが列をなしていて、どれもがレーザーの照射口だ。
「わ、……ぁ、あ!」
混乱を声にして吐き出し、僅かに残った理性だけに意識を向けて攻撃した。
被弾し踏みとどまろうとするナーガをひたすら撃つ。
でも、倒れてくれない。そして赤い目が一層光って、ぐらりと揺れる。
間に合った──
「きゃ、っ!」
白い光に反射的に顔を下げ、ばちりと指揮車に黒い筋が焼き付けられた音がした。
あの幻獣は倒れながらもレーザーを出していたのだ。
じいじいと焦げる音に目を向けると、僅か一メートル離れた所にその痕がある。
怖い。隠れたい。でも、出来るだけのことはしなくちゃいけない。
『その調子です。崩れた崖を越えてくるのは殆どがゴブリンなので、他の隊員に任せます。
 石津さんは河の下流から来る敵を撃ってください』
司令はナーガに撃たれたという事を何とも思っていない口調で言う。聞いている私の心も落ち着きを取り戻し、
周りには銃声やお互いを呼び合う声が繰り返されてるのがようやく解った。
282四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:51:06 ID:BPKsRcfS
その喧騒で不安が生き返る。
「援軍、まだ、……ですか……?」
『もう少しかかります。頑張って』
通信が切れる。薄れていた恐怖感も戻ってしまう。
……私だけじゃない。誰だって同じなんだから、私だけが折れる訳にはいかない。
改めて周囲を確認した。
視界の左前方、深めで水量が少ない河の上流で士魂号が戦っている。次々とやって来る中型幻獣を倒し、
追い払っている。けれど、いつものように一方的な展開にはならない。
三番機がいない為に攻撃力が不足しているからだ。
動けない指揮車とトレーラーを守る、という足枷もある。迂闊に離れる事も出来ない。
右前方と正面から来る幻獣を撃つのが私の役目だ。小型も中型も区別なく討ち倒す。
河の流れは道路よりも低く、撃ち下ろしという条件により機銃での損傷はより大きなものになる。
私さえしっかりしていれば幻獣の撃破はそれほど難しいものではない。
今のところは撃つべき目標は存在しない。
トレーラーの向こう、崩れ落ちた岩壁の辺りでも激しい戦闘が起きている。
「大介、本当に行くの?」
「このままじゃ駄目だろ……行くぞ、遠坂」
「行ってきます、田辺さん」
「………」
皆も頑張っている。
私も頑張ろう。



私達は善戦した。
過去形で述べるしかない状況になっている。
283四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:51:48 ID:BPKsRcfS
「弾、弾をくれ!」
「いってー、くそっ!」
「中村サンもう無理でス。ここで他の人の手当てをして下サイ」
「おい、小杉!」
「……クリサリス!」
「ちょこまか動くなっ!」
「皆下がって!」
漂うのは疲労と焦燥、絶望を拒む見せ掛けの姿勢。
『石津さん指揮車から降りて!複数のゴルゴーンに狙われました!早く!』
命令により砲塔から指揮車の中に一旦戻ると、瀬戸口さんと司令が機材を繋ぐケーブルを片っ端から外している。
さっきの戦闘の記録だけでも持っていこうとしているのだ。
私には手伝えない。早く出よう。
ぐらぐらと車体が揺れる。直撃はしないまでも、近くに生体ミサイルが落ちているらしい。
「ふええ、……」
今にも泣きそうな東原さんが二人を見詰めたまま立っていた。
この人達から離れるのが怖いのだろう。しかし、迷ってる時間もない。
「……東原、さん……行くわよ」
小さな手を取って搭乗口に寄り、素早くドアを開けてから外を窺う。
この車を狙っていたゴルゴーンが見える。気圧されないようにお腹に力を入れて睨み返すと
幻獣の側面が弾けた。
二番機の攻撃だ。
「っ!」
走る。
こちらに注意が向きなおす前に隠れよう。
ジャイアントアサルトの轟音を背中で聞きながら駆け、気付けば空いていた手には拳銃が握られていた。
無意識の行動。私の、本音だ。
「は、はぁ、はっ!」
指揮車の陰に入り背中を預けると、機材を抱えた司令と瀬戸口さんが私の前を走りぬけた。
直後に鼓膜が轟音で破れそうになる。ぱらぱらと装甲の破片が降ってきて、がくりと車体が傾いた。
「間一髪、と」
「今の状況で言う事ですか?」
軽口を言い合いながらお互いの無事を確かめているようだ。
284四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:52:36 ID:BPKsRcfS
「滝川ぁ!」
田代さんの声が一際大きく響いて、とっさに指揮車の角から顔を出すと仰向けに倒れようとする二番機が見える。
最後の仕事とばかりにジャイアントアサルトを振り回し、広範囲に弾丸をばら撒いて、ついに倒れた。
「行くぞ岩田!」
岩田さんはやれやれと愚痴をこぼして田代さんの後を追う。
見れば倒れた二番機を庇うように一番機が立ち塞がり、近寄ろうとする幻獣を片っ端から斬り倒していた。
被弾を恐れずに突撃し、一匹でも減らそうと斬り伏せる。
二番機のハッチが開いてパイロットが飛び出した。無事のようだ。
逃がさないとばかりに二番機を包囲しようとするゴブリン達を、田代さんと岩田さんが寄せ付けない。
滅多に見ない組み合わせだけど、見事に息は合っている。
「善行!友軍は!?」
後ろでは原さんが司令に掴みかかっていた。その額には汗が流れ、いつもの冷静さはなかった。
司令も同じような感じだった。歯をかみ締め、決意したように口を開く。
「……足止めされています。突破がいつになるかは予想できないそうです」
その言葉を聞いた人達は何も言えない。
口を開けば、絶望の呻きが出るから。
原さんは俯き、そして顔を上げて銃を構えて走った。指揮車を襲おうとしている幻獣に向かって発砲する。
「石津さん、借りますよ」
それを見た司令も私の銃を取り上げ、原さんの隣に向かう。
三番機パイロットの二人は既に弾切れのようだ。私にはとても真似出来ない体術を駆使して群がる幻獣と
戦っている。
『伏せて!』
通信回路から壬生屋さんの声が聞こえ、黒い大きなものが頭上を横切った。
どぉん、と岩壁に衝突し、そこにめり込んで落ちてこないのは大太刀を持った一番機の腕だ。
一番機を象徴する兵器。最後に残っていた士魂号が、戦力を失った証拠。
「馬鹿、さっさと脱出しろ!」
瀬戸口さんが叫び、否定するように一番機は戦っていた。
白い人工血液を撒き散らし、それでも片腕と両足で幻獣を倒してる。
足掻いている。この先の展開を否定しようと抵抗しているだけの姿だ。
285四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:53:20 ID:BPKsRcfS
この場に居る皆の姿に、ぞぶりと穴があいた。
「………───っ!」
声にならない悲鳴があちこちからあがった。私の喉もあげていた。
もう助からない。腰部が大きく欠け、何も出来ずに倒れる士魂号。
次は誰かだ。
「くそっ!」
瀬戸口さんが走った。アスファルトの穴を飛び越え、豹のように音もなく駆ける。
こちらに戻りかけていた二番機パイロットと、その傍に居る二人も壬生屋さんの救出に向かう。
……私は、行けない。武器になるものが全く無い。
一番機にはゴブリンが何体も張りつき上半身の動きを完全に封じている。
一際大きく見えるゴブリンリーダーが一番機によじ登り、ハッチをこじ開けようとしている。
「壬生屋!」
「壬生屋さん!」
「どけぇ!」
「ちっ!」
四人の叫びと隊員全ての願いを無視してハッチが剥ぎ取られ、投げ飛ばされる。
腕を振り上げた幻獣が、ハッチと同じように吹き飛ばされた。
飛び出した壬生屋さんがカトラスを振ったのだ。
「すごい……」
刃の先端だけではなく、振るった腕さえも見えなかった。
コクピット周辺にいた数体の幻獣が一瞬で斬られ、夥しい体液の噴水を突き破って
壬生屋さんが疾走する。
道を塞ごうとする幻獣も簡単に斬り倒し、あっという間に四人と合流してしまった。
その速さは驚愕に値するものだ。出迎えた四人も戸惑い、そして何か言われたのだろうか、
壬生屋さんを囲んで弾丸を撃ちながらこちらに戻ってくる。
若宮さんもそれに加わり、ほどなくして指揮車の陰に五人が帰ってきた。
「壬生屋!おい!」
瀬戸口さんの呼びかけに応える事も出来ずに、がっくりと膝をついて荒く息をしている。
これではカトラスを振れないはずだ。合流した時にこの事を言ったのだ。
「おおああああ!」
指揮車の向こうで派手な咆哮と発砲音が連続した。声は若宮さんのものだ。
286四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:54:05 ID:BPKsRcfS
そして速水くんと芝村さんに引きずられて来る巨体。
「ぐ、げほっ……がは!」
脇腹の辺りから大量の血液が流れている。それ以外のところからも出血している部分はいくつもあった。
痛そうに顔を歪め、悔しそうに拳でアスファルトを叩く。
ごつん、ごつん。動けない自分を責めるようだ。
「馬鹿っ!」
新井木さんが叱り付けながら手当てを始めた。私もその姿に自分の役目を思い出し、両の手足にある傷を
塞ぐ。新井木さんが手を動かしながら言った。
「馬鹿!こんなに無茶してっ!」
「……やらなきゃ、お前が死んで、しまうだろうが。……悪いかっ」
脂汗を滲ませながら言い切ると、がくんと気絶した。
失血によるものではないと思う。神経が激痛に耐えられなくなったのだろう。
「こっちもお願い!」
森さんと小杉さんに支えられてやってきたのは来須さんだった。
太ももの傷が大きい。しかし太い動脈は辛うじて無事らしい。
「……っ!」
若宮さんのように声は出さないけれど、噛み締められた顎が痛みの大きさを示していた。
「……痛い、わよ」
目いっぱい力を込めて止血する。痛みを考える余裕もない。
強引に塞いで、縛る。
「どうですか?」
後ろから田辺さんが尋ねる。
「……体力次第、よ……」
私がした処置も本当に応急でしかない。
完全な死を迎えるまでの時間を少しだけ長くするだけの気休め。
「……何してやがる!さっさと来いよ!」
滝川くんの言葉で、周囲の異常を思い知らされた。
銃声が途絶えている。幻獣特有の鳴声だけが霧のように漂い、私たち人間の声はひとつとしてなかった。
誰の銃にも弾丸は僅かしか残っていなくて、無駄弾を避ける為にも引き付けて撃つ必要があるのに、
幻獣は近寄ってこない。
殆どの人が指揮車の陰に集まっているのに、攻撃してこない。
287四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:54:48 ID:BPKsRcfS
完全に囲まれている。
どこにも幻獣がいる。日が沈みかけ、暗さを増していく空間に赤い目がいくつもいくつも光る。
殺意と憎悪の火。
逃げたい。
その一心で指揮車の角から顔を覗かせると、さらに多くの赤が壁を創っていた。
禍々しい色の銀河だ。
「……ぅう!」
もう助からない。戦える人も数えるほどだ。
私を殺そうとする幻獣はその何倍もいる。
「は、……ぁ……!」
この身体が熱を持たない塊になる。そして肉の塔を構成する部品として使われるのだ。
力が入らなくなった膝に、ざくんと硬い灰色が刺さった。
「あ、あ、……」
じわりと染み出した赤。膝を中心に緋色がひろがっていく。
ざわざわと周囲が揺れだした。人の声、悲鳴?弾ける空気も。
それよりもこの赤に目意識が向いてしまう。何故、勝手に出て行くのか。
過去にこんな事は一度もなかった。
……私の身体には居られない、ということだろう。
身体を抱く指の隙間や爪の間からも逃げ出している。
私に将来はないと。
「助けて……」
その想いを否定するように流出は勢いを増していく。
ぞろぞろと列を作り、規則正しく私から離れ、行き場がない事を知ったように立ち止まる。
「助けて、よぉ……!」
私のお願いなんて聞いていない。好き勝手にざわざわと遊んでいる。
……無理もない。私は、この子達を従える方法をしらないから。協力してくれるように頼む方法も
見つける事が出来なかったから。
私の所為だ。私がしっかりしていれば、存分に力を発揮出来たのに。
「……御免なさい」
謝っても意味はない。
288四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:55:41 ID:BPKsRcfS
この子達は間違いなく消えて、死んでしまうから。
本当に悪いこと、しちゃったんだな──。
ぐるぐると渦を巻き始めた。赤い小さな海が私を中心に回転し、水位もどんどんと高くなっていく。
勿体無い。これだけの勢いがあれば何だって出来るのに。
私の未熟さが、それを許さない。
「御免なさい……っ!」
自分よりもこの子達がなくなってしまうのが不憫でならない。
ざぶざぶと波が高くなって、暗くなりかけた空が時折見えなくなる。周囲もよく見えない。
──懐かしい。
私の最初の思い出を再現しようと試行錯誤しているみたいだ。
もう十分、なんだけどな。
更に完璧なものにするつもりらしく、私を囲む赤い壁が出来上がる。頭上にも蓋がされていて、
本当にあの時と同じになった。
「ぁ、……」
ごうごうと唸る紅砂。
懐かしさが温かくて、なんだかほっとする。
思い出を引き出す匂いもあるような気がする。
不思議な感覚だ。
この雰囲気は、あの頃に戻ったみたい。
「っ……、ぁ……」
懐古の声じゃないけれど、誰かの呟きが聴こえた。
幻聴だろう。ありえないものが聴こえるはずがない。
こつん、と硬いものが落ちる音がすると急速に海の色と勢いが褪せていった。
……もう終わりなんだな。
「いったー……あ、つ──」
誰かの声はまだ続く。大人びた艶のある声だ。
「しんじ、られない。術も式も何もかも滅茶苦茶なのに、こんな力技で召喚なんて」
赤が消えて、まだ存在している──人?
赤い海があった場所には蹲る私と、背の高い女性だけが居た。
癖のある長髪が伸びている。胸にかかるまでの長さだ。高そうなゆとりのある服を着ていて、
どこかのお嬢様、という感じだ。
289四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:56:25 ID:BPKsRcfS
額に手を当てて、ぼそぼそと一人で喋っている。
「それよりも、何で私が?問題はそこね……」
手が下ろされ、冷たい視線が私を射抜く。
僅かにつりあがった目尻が身を包む威厳を増幅させている。
直感だけど、魔女だと思った。
捻じ曲がった杖や三角の帽子なんてないのに、そう思えるなにかがあった。
「………」
私はぼんやりと見上げるしかなかった。
見たこともない人なのに、とても親しい人だと断定までしている。
何故なのか理由がはっきりしない。けど、間違いない。
かけている眼鏡に長い指が添えられて、その人は私に言った。
「貴女ね。ねえ、どうやって、……貴女、は」
そこまで言うと、唖然とする女性。
威圧感がどんどんと薄れていく。その目からも冷たさは完全に消え失せる。
膝が曲がって、美人としか言いようがない顔が目の前で微笑む。
「久しぶりね。お姉ちゃんの事、覚えてる?」
……その意味は、ひとつしかない。
「……、ぁ……」
あの記憶はやっぱり正しくて、本当の事だった。
「ほら、思い出せない?」
頭を撫でられる感触も、同じものだ。
目が熱くなって、今まで封じ込めてきた感情が出てきそうになる。
何とか誤魔化そうと握られた拳にも優しく大きな手が重ねられた。
その人は私の肩口に顔を埋め、安心したように言う。
「……覚えててくれたんだ。よかった」
「あ、う──!」
喉も目尻も限界寸前。
ずっと待っていたこの時を確かめたくて、しなやかな指をちゃんと握ろうとすると
その人は立ち上がった。
「ちょっと待ってて。ここ、終わらせてからね」
290四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:57:08 ID:BPKsRcfS
突然に喧騒が耳を直撃する。幻獣の嬲るような攻撃が始まっていたのだ。
発砲音が連続し、合間に叫び声。
その様子を腕を組み面白そうにお姉ちゃんは眺め、
「どこにも戦争はあるものね」
と余裕の構えだ。
腕を解いて手の平を目前にかざすと、その小さな舞台で赤いなにかが踊る。
「こっちも同じ、か……まぁいいわ」
心底つまらなそうな呟きだ。
「まさか、民間人!?そこの人伏せて!」
お姉ちゃんを見た森さんが強い口調で命令する。
優雅とも言える動作でお姉ちゃんは振り返って、森さんはぎくりと硬直してしまった。
私からはどんな表情なのかは見えない。さっき見た怖い顔なのだろう。
ふわりと私に向きなおし、笑顔で肩に手を置いて言う。
「ほら、立って」
言われるままに立ち上がる。
「私の傍が一番安全なんだから、離れちゃだめよ」
その言葉は絶対の約束だと思う。だから、子供みたいにお姉ちゃんの腰につかまった。
直後に赤い流れが目の前を横切る。
凄い、と思った。
それは信じられないくらいに存在感があって、しかも綺麗な模様まで刻まれている。
糸として束ねられて編まれたそれは、まるで美しい刺繍のようだ。
音もなく何重にも流れる複雑な赤色に見とれてしまい、何も言えなくなる。
「………」
「あら、見えるの?」
見上げて頷く。
お姉ちゃんはにっこりと微笑んだ。
「あとでもっと教えてあげるわ」
声にこめられた力強さに私は何度も頷いた。
私を片腕で抱き寄せ、もう一方の腕を皆に向かって突き出す。
するすると赤い線が放出され、半球状に皆を覆ってしまった。
きっと守りの魔法なのだろう。
291四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:57:54 ID:BPKsRcfS
殆どの人が異様な空気を感じ取りざわめく。周囲を見渡して、お姉ちゃんに視線を固定させてしまう。
「ご心配なく。味方です。皆さん、動いてはいけませんよ」
それだけ言うと集まる目線を無視し、ぶつぶつと小声で呟きながら肘を曲げ、暗くなりつつある空に二本の
指を揃えて立てた。
爪の先に圧縮された深紅が固まって、眩いばかりの輪を生み出す。
直径を広げながら指から手首を通り抜け、肘の近くまで降りていく。
数秒の間で五つの輪がきれいに並んだ。
「さ、行くわよ」
準備は完了とばかりに歩き出すお姉ちゃん。
動かない指揮車とトレーラーの間を通り、河の方へ私を連れて行く。
この先には数え切れない幻獣がいるのは解ってる。なのに、震えは全くなかった。
これから起こる現象を余すところなく記憶しようと気合まで入っている。
高い集中力を感じさせる表情でお姉ちゃんが言った。
「魔法はね、できるだけ普通の人に見せるものじゃないのよ。
 よほど強力なものじゃない限り見えないのが当たり前なんだけどね。
 目の前で理解不能な現象が起これば、それを行った人を恐れてしまう。
 悪い事じゃないけど、そうなれば貴女が嫌な思いをするんだから」
それはもう知っている。
我流のおまじない程度の事でも随分と嫌われたのを身をもって体験している。
「出来れば、私が教えた事も隠して生活して欲しいのよ。皆から何か訊かれても適当に誤魔化して
 欲しいわ」
魔法に携わる者としての心得、だろう。
既に授業は始まっている。一言一言を聞き逃がしてはならない。
でも……
「どうかしたの?」
私の心配事を見抜いたようにお姉ちゃんが尋ねた。
「皆……大丈夫、かな……」
あれだけの幻獣の攻撃が集中してしまったら、流石に耐えられないのではないあろうか。
そうなれば隊の皆も黙っていられないだろうし、内側からの力にはそんなに強くない種類なのかもしれない。
292四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:58:38 ID:BPKsRcfS
緊張していた頬が緩んで、優しい声で言ってくれた。
「大丈夫よ。長持ちはしないけど、かなり強力なものよ。そうね……このトレーラーが最高速度で
 突っ込んでも全然平気なくらいかな。もちろん内側からもね。……でも、混乱はするかな。
 貴女には見えるけど、あの人達には見えない壁だから」
……そんなに凄いものを、あんなに簡単に。
「お姉ちゃんって、……凄い、魔法使い、なの……?」
つい訊いてしまう。
それを聞いたお姉ちゃんは豊かな胸を張って答えた。
「そりゃそうよ。貴女もね、私の一番弟子なんだから胸を張っていいのよ」
ちょっと、嬉しい。
自然と笑みを浮かべているのが解る。
私を抱き寄せていた手が優しく髪を撫でてくれた。
「やっと笑った顔、見れたわ」

こつこつとアスファルトを叩いていた靴が止まる。
林の暗がりには無数の赤い点が確かな意思を持って存在していた。
僅かに揺れて私達を見ると、その闇を身体にして近づいてきた。
それなりに広い河があっという間に埋まってしまった。川底が掘り返され、きれいな流れが泥になる。
「しかしまぁ、解りやすい相手よね。……どうやって生まれたのかしら」
川を渡るモノ達を見ながらのお姉ちゃんの独り言。
冷静で、感情の薄い声だ。
「今から見せるのはあくまでも修得の過程で得たものよ。魔力を操る技術を転用するとこうなるけど、
 こういう事を極める為に身につけちゃ駄目よ」
必ず痛い目に遭うからね、と付け加えると私を見た。
信頼の眼差し。
……絶対に守ろう。
私も同じくらいに気持ちを込めた視線を返す。
ぽんぽんと私の肩を叩くお姉ちゃん。確認か約束か、どちらかだろう。
正面に向き直して腕を伸ばすと、紅光の輪の一つが抜けて新聞紙二枚程度の広さに拡大した。
私達を取り巻く守りの壁とは全く違う印象の模様が書き込まれている。
293四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/22(日) 23:59:26 ID:BPKsRcfS
ぐるぐると幾何学的に入り組んだ大小の筋に魔力が通り、まるで起こされた撃鉄のような迫力を帯びる。
「さあ、やるわよ」
そして、ただただ一方的な殲滅戦が始まった。
一対数十という数の差だけど、強さを比べるなら正反対だ。
銃弾と爆発物を使用しない現実味の薄い戦闘は、実際目にすればひどく幻想的なものだ。
炎上、凍結、変質、溶解、切断、落雷、墜落、圧潰。
どれもがありふれた自然界の力で、どれもが絶対に想像出来ない暴力を伴う。
隊の皆を囲んでいた幻獣達もその異常に気付いて駆けつけたけど、それだけだった。
何も出来ないままに次々と消されてしまう。
お姉ちゃんはとてもつまらなそうな顔だ。一刻も早く終わらせてすっきりしよう。そんな感じだ。
「………」
激しい魔力の変化の全てを、私の目は捉えていた。
詳しい理屈はひとつとして知らない。なのに、理屈に反しない変容なんてありえないと
直感で理解していた。



数分後。
あれだけいた幻獣はきれいにいなくなった。
夕日が眩しい。
「よし、こんなものね」
お姉ちゃんの勝利宣言だ。
「………」
私は何も言えない。
通常の戦闘では絶対にありえない痕が眼下に広がっている。
凄まじい力が行使された証拠。半ば夢のような時が現実だった印。
………。
こんな事が、出来るなんて。
「さ、戻るわよ」
かけられた優しい声に我に返って、握られていた手を引かれて指揮車の向こうに戻った。
隊の皆は無事だった。
けれど、重苦しい沈黙と怪訝な表情だけがその場にあった。
294四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:00:12 ID:BPKsRcfS
お姉ちゃんを見ると、特に気にした素振りをしていない。
予想通りなんだろうけど、どんな言い訳をするんだろうか。
す、と音もなく立ち上がったのは壬生屋さんだ。
「お聞きしたいのですが、宜しいでしょうか?」
その目と声には明らかに挑発するようなもので、お姉ちゃんも似たような返事。
「人にものを訊く時は、まず名前を言うものよ」
ぴく、と壬生屋さんの眉毛が動く。
そして無言のままお姉ちゃんの目前まで迫り、真っ直ぐな声ではっきりと言った。
「壬生屋未央と申します。あれだけの数をどうやって、」
「みぶや!へえぇ!ふぅん……」
珍しい動物でも見るようにあちこちから壬生屋さんの顔を眺めるお姉ちゃん。
何でそんなにするんだろうか?
「な……何ですか!?」
「軍属の方とお見受けしますが、姓名と所属を賜りたい」
困惑の壬生屋さんの間に割り込んだのは司令だ。
すぐ後ろには原さんが控えている。
お姉ちゃんの妖しい視線がちらりと原さんに向いた。
「っ、………」
何かを言いかけて、不機嫌そうに視線を逸らす原さん。
……何でお姉ちゃんは勝ち誇った表情を浮かべているんだろうか?
焦点を司令に戻したお姉ちゃんが言う。
「何故軍属だと?」
簡潔な問いに、司令も短く答えた。
「雰囲気です。民間人のものではありませんので」
鋭さに満ちる視線で司令はお姉ちゃんを見据えている。
少しだけ考えて、お姉ちゃんも答えた。
「私は、この子の姉です」
そして私を引き寄せた。
嬉しくて恥ずかしい感覚が顔から胸に落ちる。
田代さんの驚きは他の人よりも大きい。
295四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:00:59 ID:BPKsRcfS
司令の顔にははっきりとした不満が現れた。眼光も同調するように密度を増す。
「そのような情報はこちらにはありませんが。
 ……では、どのように敵を撃破したのですか。一回も銃声らしきものは聞こえませんでしたが」
「この戦闘の事ですけれど」
お姉ちゃんはいきなり話題を変える。
その声音にも威厳が満ちていた。司令よりも上の地位からの命令に聞ける強さだ。
「あなた達だけで排除した、と報告してくださらないかしら?」
「……、どういう事、でしょうか?」
眼鏡の向こうにある不満が怒りに変化しかけている。
……仕方ないだろう。一民間人だと言い張る人の命令に従うなんて、それこそ軍としての沽券に係わる。
これ以上誤魔化しても手荒い方法を選ばせるだけだ。
しかし、
「虚偽の報告なんて初めてじゃないでしょう?今回もそれをやってくださればいいのです。
 私が居なかった事にしてくださいな」
お姉ちゃんはその一線を自分から越えてしまった。
「………」
司令は何も言わない。
それがとても怖かった。
たいていはこの後、爆発する。
「………」
「………」
睨み合いが続き、司令が奥歯を噛み締めたと同時にお姉ちゃんの目も細くなる。
「舞!」
「ば、馬鹿者!何を!」
速水くんが芝村さんに覆いかぶさった瞬間に辺りは赤い空間に包まれ、直後に鼓膜を弾き飛ばすような
爆音が炸裂した。
「ゃ、……!」
頭の中が真っ白になって気が遠くなる。
私を繋ぎ止めるように肩をしっかりと掴んだのはお姉ちゃんだろう。
唯一の肉親の無事を確かめようと顔を上げかけ、私は固まってしまった。
296四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:02:00 ID:qimtTP3z
「ふぅん、あっそう」
一切の感情が切り取られた響きだ。
その相手が誰なのかは決まってるけれど、そうじゃない私まで背中に冷たいものが滝をつくっている。
ばさばさと厚い布が靡く音に目を向けると、真っ赤なマントがはためいている。
「え、うそ!?」
「……なんだと?」
疑問のざわめきを聞きながら私を守るようなマントを見て、お姉ちゃんを見た。
赤かった空間は元に戻っていた。戻らなかったのは、お姉ちゃんの姿だ。
真っ赤な三角帽子とマントを身につけている。高級感に溢れた長袖も柔らかいスカートも、ひたすらに
赤い法衣に変化していた。
これが、信じられない。
皆に見える程に凝縮した魔力の結晶だ。さっき見せてくれた守りなんてこの服に比べれば何百分の1でしかない。
「まったく、見逃してあげたんだけどな」
細く鋭い目をそのままに振り返る。
私の肩からは手が離れていた。
「そこにいなさい。大丈夫よ」
本気の声。だけど、それ以上にお姉ちゃんの全身から放出される魔力に圧倒されて動けない。
「分からず屋は嫌いよ」
……ぞっとした。背中の戦慄が身体の隅々まで広がった。
そんな私に気付かず無造作に掲げられた手に、染み出すように現れたまっすぐな杖が水平に落ちる。
飾りの少ない実用性を重視した外見。
くるりと垂直になった途端にとんでもない力が宿った。
「っ!……!」
がくがくと全身が痙攣してしまう。今の私は心の底から畏怖している。
見習いですらない私でもこうなってしまう程の魔法使いだった。天上人、でも不足している。
「邪魔」
やる気のない声と緩慢な動きで淡く光る杖が振るわれる。
『ごおん!』
燃え盛る指揮車がミノタウロスに殴られたように宙を舞って、道路を塞ぐ岩に激突した。
力ない何気ない動作に、それだけの威力があったのだ。
小隊の皆が凍りついた気配がひしひしと伝わってくる。
297四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:02:48 ID:qimtTP3z
「あ、……」
お姉ちゃんが睨む方向に大きな塊が浮かんでいるのが見えた。
スキュラ。遠距離からのレーザーでの攻撃を主とする大型幻獣だ。
一番機の腰部を破壊し、二番機の膝を撃ち抜いて機動力を奪い去った敵。
どんな兵器でも真っ向勝負では勝てない脅威に、
「逃げないなら、倒すだけね」
お姉ちゃんは簡単に死刑宣言をした。
ぴたりと杖の先端をスキュラに向けると、周辺に散らばっていた高濃度の魔力が明確な形を持ち始める。
「え、ええ……!?」
「何だよこりゃあ?」
皆の声からすると、どうやら見えてしまっているようだ。
私はそれ以上に理解している。
感覚だけど、今アスファルトの上に描かれ始めたのは空間を遮断する目的のものだ。
私と皆を守り、さらには魔力の漏洩も許さない。
そして、これから行う魔法の基礎でしかない。
内側に満ちる魔力は膨大で、閉鎖の術を完了させても殆ど目減りしていなかった。
次の魔法が始まる。
お姉ちゃんの口から小さな声が連続していた。
全然聞いた事がない異国の発音に誘導されるように凝縮し、お姉ちゃんの身体に巻きついてからも
圧縮されて図形化する。身体のラインをなぞるように張り付いたそれは、言うならばレンズだろう。
お姉ちゃんを太陽だとすると、その強烈な光を一点に集中させる為の仕掛けだ。
さっき見たような変化をさせない、単純で純粋な力として叩きつけるつもりなんだ。
「あ、く……!?」
突然の悪寒が神経を突き抜けた。
本能が探り出した原点には、やはりスキュラがいた。
大きな目が私達に焦点を合わせるように力強く動いて、止まる。
「あ、あ!」
ぎらぎらと輝く瞳孔が、内に秘めていた力を放った。
アスファルトは瞬時に溶解し、トレーラーのエンジンが次々と爆発する。
切り立った崖にも穴が穿たれたに違いない。
298四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:03:39 ID:qimtTP3z
ばきり、と円で囲む結界に亀裂がはいった。
「……っ!」
相手も必死だ。今破らないと勝ち目がないと解っている。
普通では考えられない程の連続放射だ。
光の柱が何度も私達を突いて、なぎ払い、叩き潰そうとする。
ぎしぎしと軋む防御を忘れているようにお姉ちゃんは目を閉じて集中している。
「───。よし」
不可思議な歌は終わり、全身を覆い、内側にも流れていた赤が杖の先端に集中している。
その輝きは硬い。研ぎ澄まされた刃物のようだ。
「終わりね、お馬鹿さん」
その言葉を合図に太陽みたいに光の放射が強まる。
マントがなびき濃い影が伸び、他の皆も赤く照らされている。全員が理解不能に陥り、硬直していた。
「は、っ!」
短い呼気とともに打ち出された光弾が、スキュラでも破壊出来なかった壁を容易に貫通して飛んでいく。
人間の頭蓋骨ほどの大きさだ。残光も美しくかろうじて目視可能な速度で飛翔する。
スキュラも黙っているはずがなく、ゆるりと巨大な身体を横に移動させた。
直撃を避け、反撃を狙う為の行動なのは確かだ。
──そうはならなかった。
ぴたりと瞬間的に止まったかと思うと、最初の数倍はあるだろう速さで大きな弧を描き幻獣を飛び越えた。
振り返る暇も与えずに背面から巨眼を貫いた。空洞の幅は魔力の塊の何倍もあった。
そして高々と舞い上がって上部と腹部を串刺しにする。止まらず左右の側面を穴で繋いで仕上げとばかりに
斜め方向からの突撃を二回。ちょうど『×』になる光の尻尾。
ぐずぐずとスキュラが崩れながら消える。お姉ちゃんが攻撃してから数秒でこの結末だ。
異常と言える手段を使いはしたものの、生身の人間がスキュラを一方的に撃破してしまったのだ。
ふぅ、と私にだけ聞こえる溜息を吐くお姉ちゃん。
見上げれば明らかに疲労の色が窺える。大丈夫よ、と無音で唇を動かして皆に振り返った。
かつん、と杖を突き立てる。静まり返った夕暮れに似合う透き通った音だった。
その顔には自らに対する誇りが満ちている。
気を確かに持っているのは司令と速水くんと芝村さんだけだ。
私では読み取れない思考が三人に巡っている。
299四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:04:46 ID:qimtTP3z
流石と言うべきだろうか。司令だけが答えの出ない問題を振り切ってお姉ちゃんに言う。
「あなたは、何なのですか?」
風に吹かれるマントが唐突に存在を失い、真紅の法衣も柔らかな洋服に戻る。
アスファルトに立っていた杖も消えていて、空いた手が優雅に私を抱き寄せた。
懐かしい匂いと久しぶりの安堵が私を包む。
「私は、この子の姉です」
優しくて揺るぎのない台詞が、とても嬉しかった。



「あら、ちゃんと片付いてるじゃない」
お姉ちゃんは私の部屋に入ってすぐにそんな事を言った。
最低限の整頓だけはしているつもりだけど、それだけだ。
台所やお風呂の場所を確認するようにあちこちを見回しているけど、私にはそんな余裕は
なかった。
……夢にまで見たお姉ちゃんが、この場所に。
「……、うぅ、っ!」
胸の感情が喉を通って、目からも零れ落ちる。
繋いでいた手も勝手に動いて、お姉ちゃんの背中に回っていた。
夢じゃない。本当に夢じゃないんだ
「ぐ、あう!……わ、あああああ………!」
ずっと耐えてきて良かった。何度も諦めようかと思ったけど、我慢してよかった。
やっと、会えた。
お姉ちゃんの洋服に顔を押し付けて私は泣いた。
悲しかった事も辛かった事も苦しかった事も、全部がごちゃ混ぜになって私を埋め尽くす。
それ以上に嬉しくて嬉しくて。髪を撫でられる感触や深々と抱かれる優しさが、余計に私の
心を瓦解させ、溶解させた。
「……っ!、っ、………!」
お姉ちゃんは私の行為を無言で受け入れてくれた。
300四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:05:33 ID:BPKsRcfS



ようやく泣き終えて顔を離す。
お姉ちゃんが膝を曲げて視線を合わせてくれた。
目尻が濡れている。何度も確認した事を、こんな時なのに改めて確かめる。
この人は私のお姉ちゃんなのだ。
「ずっと、いてくれるの?」
懇願と確認と。
お姉ちゃんは悲しそうに俯いて、それでも私を正面から見据えて言った。
「ごめんなさい。……朝になる前に、居られなくなる、と思うわ」
……やっぱり、そうなんだ。
何となくは理解していた。この世界に居るだけで相当な力を消費してしまうのだ。
お姉ちゃんの身体に流れる魔力は随分と減っている。これがなくなった時にいられなくなる。
私には分けてあげる方法なんてないし、多分お姉ちゃんも断るだろう。
「さ、ご飯を食べましょうか」
誰にでも解るくらいに無理をした明るい声と表情だ。
あと少ししかいられないなら、それこそ無駄な時間は小さい方が良いに決まってる。
私も意識して笑顔を浮かべて台所に向かった。



私の作った料理なんて簡単なものだったけど、お姉ちゃんは美味しいと言ってくれた。
それ以上に作れる事を褒めてくれる。
「屋敷だと、やらせてもくれないからね……」
屋敷。家じゃない。
本物のお嬢様だ。
……私とは全く違う環境で育ったお姉ちゃん。
なんで、こんな事になったんだろうか。
訊いていい事なんだろうか。
他にも疑問はあるけど全部無視して、一夜の夢だと決め付けてしまった方が良いのではないのか。
301四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:06:59 ID:qimtTP3z
「どうしたの?何でも言っていいのよ?」
私の気持ちを察したお姉ちゃんが言ってくれた。
……。やっぱり、訊こう。
「……私と、お姉ちゃんって、どうして、……別れた、の?」
鎮痛な面持ちで暫く沈黙してからお姉ちゃんは答えた。
「……結局は私の所為よ。私も貴女も小さい頃の話だけどね、お爺様から魔法を教えてもらってたの。
 その時はとにかく遊びたくて、貴女に構いたくて……それで、無理しすぎたのよ」
空になった皿を見詰める瞳は後悔で濁っている。
「早く終わらせようって頑張りすぎて、自分の力量じゃ絶対に扱えないくらいの力が出てしまってね。
 それで、貴女は私の住んでいた世界から消えてしまったの」
そして、この世界に来てしまった。
お姉ちゃんの見た目は(正直に聞かせたら怒るだろうけど)どんなに若くみても二十台ぎりぎり、だろう。
対する私は十台半ばだ。記憶では何歳も離れていなかった。私がこっちに来る時にずれてしまったのだ。
302四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:07:45 ID:qimtTP3z
でも。
「お姉ちゃんは、こっちに居るだけで、力を使って、……なくなったら戻るんでしょ?」
重い表情で頷いて、私の言葉を待つ。
「じゃ、私はどうして、……戻らないの?」
特に何かをしているつもりはない。
身体も昔から異常はなく、実は健康体だったりする。
ふぅ、と息を吐いたお姉ちゃんが私の疑問に答えてくれた。
「……、救いになるのかならないのか、どっちかしらね。
 貴女にはこの世界に溢れる魔力を自然に吸収する能力があるからよ。だから、何もしていなくても
 いられるの。貴方が力を出し切って空っぽになったつもりでも、その直後には吸収が始まってしまうから、
 この世界から消える事が出来ないのよ。自覚はないでしょうけど、着ている服とか、
 持っている物からも吸っているのよ。
 私たち……普通の魔法使いも体内で生産しているんだけど、
 こういった別世界では消費のほうが上回ってしまうから、いつかは完全に空になってしまうのよ。
 貴方と同じように他の物から吸収するのは全く不可能な事でもないけど、大掛かりな仕掛けが要るし
 時間も必要だから簡単には出来ないわ。
 まぁ、はっきり言えば効率も良くないからね。
 ……貴女がどうしてそうなったのかは予想がつかないけど、子供の対応力って凄いわね。
 生きようとする力って言うのかしら」
303四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:08:34 ID:qimtTP3z
今もお姉ちゃんの服に赤い砂は落ちているけど、確かに吸い取ってはいない。表面を流れ落ちるだけで
中には入っていかない。
私は、じんわりと染み込んでいく。
「私、本当の家には、戻れないの?」
ずっとひとりなのだろうか。
もう逢えないのだろうか。
私を勇気付けるようにお姉ちゃんは微笑む。
「でもね、私を呼び寄せたのは貴女よ。貴女にはそれだけの力を蓄える事が出来る。
 今日のは偶然だけど、それでも召喚してしまった。
 ……ちょっと羨ましいくらいに素質があるし、意欲だってある。方法さえ覚えればどれだけ
 伸びるか解らないわ。頑張れば、また逢えるのよ?」
自分でも解る。頬が熱くなって、身体の芯が力強く私の心を持ち上げる。
また、逢う事が出来る。
「さてと、さっさと片付けましょうか?出来るだけ教えたいわ」
お姉ちゃんも私と同じように気分が高まったようだ。
使い終えた食器を二人で運ぶ。
どんなことでも記憶しようと精神が昂っていく。



「……あー、駄目ね、うん」
何故魔法を極めようとするかという根本的な目的を説く事から授業は始まった。
私は言われた通りにあれこれと試し、どれもがお姉ちゃんを喜ばせた。
どうやら基礎の部分については我流ながらも会得しているとか。
あとは応用を覚え、幅を広げるだけらしい。
「でもなぁ、どうしよっかなぁ……」
心底残念そうな声と表情。
これまでの褒め言葉が続いていただけに、その落差が気になってしまう。
「お姉ちゃん、……どうしたの?」
「その、なるべく直に教えた方が良いんだけどね、『お姉ちゃん』としての時間を過ごしたいな、
 とか思ってるのよ」
304四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:09:26 ID:qimtTP3z
私も似たようなことはちょっとだけ思っていたけれど、こちらからその提案を出すのは気が引ける。
「よし決めた。お風呂に入りましょうか」
返事をする前にぱたぱたと片付け始めてしまった。
なんだか凄く嬉しそうだ。
「勉強、……どうするの?」
「良いの良いの。後は一人でも出来るわよ。ちゃんと宿題も作ってあげるから」
言いながら使わずに置いてあった数冊のノートと鉛筆を取り出し、机に置いて何やら呟く。
じりじりとふたつに魔力が灯り、ノートの上で鉛筆が踊りだす。
「自動書記ってやつよ。今日見せた破壊の魔法よりもずっと難しいんだから」
ようやく私は気がついた。お風呂って、
「お姉ちゃんも、一緒に、入るの?」
「そうよぉ。隅々まで見てあげるんだからねぇ」
にやにやと意地の悪い笑顔。……私としても全く興味がない訳ではないけど、
差を見せ付けられるのは既に解っている事だ。
……お姉ちゃんを見た原さんが数秒もしないで視線を外したのも、多分これだろう。
「異議なし、ね。じゃあ行きましょう」
私の手を引いてお風呂に歩き出す。
空いていた手にはしっかりとバスタオルがあった。
抜け目がない人だなぁ。と感心してしまった。

食事前にスイッチを入れておいた風呂釜のお湯は、ちょっと熱いくらいだ。
桶で混ぜるとちょうどいい温度になる。
「入るわよ」
ドアが開く軽い音に続いて入ってくるお姉ちゃん。
肩越しに視線を送る。
……。原さんの眼力は確かだ。
胸も腰も実に形よく膨らんでいて、同姓である私から見ても魅力的だ。
原さんもスタイルが良いけど、お姉ちゃんよりは熟成されていないのが解る。
深い色合いの白い肌。髪の毛は私と同じように癖がある。だけど、見事なまでにアクセサリーとして機能している。
胸の双丘は大きく、腰にはどっしりとした安定感が漂い、男性ならば振り返らずにいられないだろう。
私は……痩せっぽちで出るべきところは殆ど出ていない。
305四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:10:20 ID:qimtTP3z
「気にしなくてもいいのよ。私も貴女くらいの頃は似たようなものだったわよ」
「……本当に?」
私のすぐ後ろに座って、桶でお湯をかけてくれた。
肩を起点に胸や腹、背中からお尻までが熱くなる。
「ああ、若いわね……」
とても羨ましそうな言い方だ。
つい口に出てしまった。
「お姉ちゃんも、若いと、思う」
あはは、と軽く笑ってからの返事。
「いいのよ、解ってるわ。そろそろ下り坂って実感はあるのよ。
 ……貴女はこれからよ。あと数年もすれば見違えるわ。ウチの家系って皆そうなのよ」
お姉ちゃんはスポンジにボディソープを垂らし、私の背中を優しく洗い始めた。
その声も温かい。
「ある程度までは子供みたいな感じが続くんだけど、変わる時は一気に変わってしまうの。
 アルバムなんて笑えるわよ。ページをめくると別人みたいになってるんだから」
思い出したのだろう、くすくすと素直で控えめな笑い声が室内に響く。
私も見たい。見たいから決めた。
「私、見にいくから」
今の私でも解る。呼ぶよりも行く方が何倍も難しい事が。
それでも叶うように努力して、いつかは生まれた屋敷に戻りたい。
「……そうね、貴女ならきっと来れるわ。頑張って」
私に力を与えるようにお湯を注ぐお姉ちゃん。
ざぶざぶ。
……このままだと前まで洗われそうだ。
「お姉ちゃん、……」
「ああ、やっぱり前は恥ずかしいよね」
やっぱり洗うつもりだった。
ごしごしと擦り始める。……本当に出てきてくれるんだろうか、この胸は。
後ろでお湯が流れる音がした。お姉ちゃんも身体を温めているのだ。
「この髪の色、お母様譲りね……」
懐かしむように手櫛を通され、私も反応してしまう。
306四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:11:04 ID:qimtTP3z
「……そうなの?」
「そうよ。もし私の住む世界に来れたら写真を見せてあげる。美人よ」
楽しみがまた一つ増えた。
必ずお姉ちゃんに会いに行けるようになろう。
洗い終わったのを察したようにお姉ちゃんがお湯の入った桶を渡してくれた。
こんな事なのに嬉しい。
「一回温まりましょうか」
お姉ちゃんが湯船に入り、私の肩をぴたぴたと叩く。
つまり、
「一緒に、入るの?」
「そうよぉ。もっとスキンシップしましょう?」
にこにこと満面の笑顔だ。断られる可能性を全く考えていないみたいだ。
仕方ない、か。
「……うん、解った、わ」
お姉ちゃんが足をたたんで、私は空いたところに爪先を伸ばす。お湯の熱さがじんじんと
骨まで伝わってくるのが気持ち良い。
「はい捕まえたー」
「あ、っ!」
ざぶんと派手な水飛沫が散って私はお姉ちゃんの腕に収まっていた。
お尻に当たる弾力は若々しい。背中には当然膨らみが感じられる。
「うふふー」
本当に楽しそうに頬擦りしてくる。
ちょっとだけやり返したくなった。
「お姉ちゃんは、恋人、……いるの?」
「あ、あははー。それ訊くんだ」
意外。
もっと訊きたくなって、言葉を続ける。
「候補は、いるの?」
「んー、まぁ、いるんだけどさ、なかなかねぇ……。
 男の人ってさぁ、名画よりは真っ白なキャンバスのほうがいいのかしらね……」
溜息。
307四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:11:59 ID:qimtTP3z
その例えが何を現すものなのかは理解できる。
いくら魔法が使えるとしても、その手の方向に強くなれる訳じゃないし、多分使ってはいけないと思う。
「全部、絵の具で埋まってるの?」
「どうかしら……よく解らないのよ」
その絵は大きくて立派だけど、だからこそ近寄って見ようとする人はまず居ない。
遠くから眺めるのが良いと誰もが思ってしまうから。
近寄ってくれないなら近付いていけばいい。……そんな簡単な話じゃないと思うけど、
そんなに的外れでもないはずだ。
「強引に、見せてあげれば、いいんじゃないの?おもいっきり、近いところで」
「……んー、その機会があれば試そうかな。ありがとうね」
すこしだけ私を抱く腕に力がこもった。
こういう風に扱われるのは本当に久しぶりだ。
嬉しくて、上手く言葉が出ない。
「……ごめんなさい」
ひどく沈んだ雰囲気でお姉ちゃんが言った。
その意味がよく解らなくて、私は訊く。
「何、が?」
「貴女が上手に喋れないのは、ずっと傷ついてきたからでしょう?
 ……私がした事が原因だよね。私が、しっかりしていれば、……」
私を捨てた誰かにそういった感情を持ったのは否定しない。
何度も考えた事だ。意味がないと結論し、それでも繰り返したものだ。
でも。
「私は、お姉ちゃんを、許す」
ぐ、と身体の密着した面積が広くなった。
言葉はないけれど、先を促しているのは解る。
「私が、やってこれたのは、……お姉ちゃんの思い出があったから、だもの」
何回も挫けそうになった。
でも、同じ回数だけやり過ごせた。一番の理由はその思い出があるから。
「これからも、ずっと、生きていけるよ。今日の事、ずっと覚えていられる、から」
ついに会えた。手を握ってもらったし、言葉も交わした。
知識も教えてくれた。今までの生き方が正しいと証明してくれた。
「だから、許すの」
308四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:13:11 ID:qimtTP3z
その原因が何であろうと許せる。
他の感情も伝えたくて、大きな手をしっかりと握った。
「……、ありがとう」
言葉も身体も振動していた。
心からの安堵が吐息として首筋にあたる。
私も安心しているのを知って欲しくて、全身から力を抜いて背中を預けた。
「………」
「………」
そうして過ごした時間が何秒か何分なのか、よく解らない。
余りにも穏やかな空気はいつまでたっても新鮮で、飽きがこない。
かくん。
「ぁ、……」
軽い衝撃は、私の頭部からだ。
眠りに入ろうとする私を、身体が止めてくれたらしい。
「今日はいっぱい喋って、頑張ったものね。あがりましょうか」
「……うん。そうする……」
湯船からあがりお風呂から出ると、お姉ちゃんは何も言わずに私の身体を拭き始めた。
子供じゃないと思いつつ、嬉しさに逆らえずに黙っている私。
「はい、終わり」
お姉ちゃんも楽しそうだった。
私はそのまま寝巻きに着替える。お姉ちゃんを見ると、床にある赤い球に指を伸ばしている。
サッカーボール大の球体がぱちんと弾け、ふわりと洋服が広がる。眼鏡も載っていた。
「こうしないと消えちゃうのよ」
そういえば、そうか。
さっきの授業で言っていた。この服にも貴女に見えないくらいの力を通してるのよ、と。
この世界にとってはお姉ちゃんと一緒にきた洋服も異物なのだ。
抵抗力がなくなればあっさりと消えるだろう。
慣れた手つきで洋服を着たお姉ちゃん。
「さて、眠りましょ」
……いいな、こういうの。
今日限りだけど、寂しい眠りから解放される。
309四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:13:58 ID:qimtTP3z
ベッドは小さく、ちょっと無理があるけどお姉ちゃんと一緒に布団に入った。
抱き合うような姿勢にならざるを得ないけれど、充実感は格別だ。
安心する。
眠気は洪水のように私の中に溢れ、目を開けているのもつらい。
「おやすみなさい」
「……、……」
答えようとする意思さえも温もりの中に消えていった。



目を刺す光が私を目覚めさせた。
ぼんやりとした頭で昨日の事を思い出す。
色々とあった日だった。念願の殆どが実現し、新たな願いと目指すべき目標を見つけた日でもあった。
思い出すだけで身体の芯が活力を生産する。
低血圧で寝起きは悪いはずなのに、がばりと勢いよく身体は起き上がった。
「……、うん。頑張る」
自分に言い聞かせるように呟く。
お姉ちゃんとの約束を守ろう。その為の努力を惜しんではいけない。
何となく生きていた昔は終わった。
今日からは違う。
やる事がある。
──視界の隅に、紅い箱があった。
「……?」
机の上だ。
昨日使ったノートのすぐ横にある。
ベッドから降りて冷たい空気を感じながら近づく。
昨日見た赤球と同じ役目をするものだと理解出来た。
中には何かが入っている。
忘れ物なんかじゃない。私への贈り物だ。
310四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:14:49 ID:qimtTP3z
そろそろと指を伸ばし、角に軽く触れた瞬間に赤色が私の身体に浸透した。
「あ、ぁ、……っ!」
限界まで濃縮された力が体内を駆け回った。ぐるぐると走り、ごうごうと吹き荒れる。
今まで使っていなかった回路にも注がれ、びくびくと気でも違ったように背筋が仰け反った。
それほどまでに力強く、圧倒的なお姉ちゃんの魔力だった。
「……、は、あ……」
じんじんと全身が熱を持っている。
やっぱりお姉ちゃんは凄い。こんなに濃い力を常に生み出し、制御しているんだ。
追いつけるとは思わないけど、可能なところまで近づいて、びっくりさせてあげよう。
「……じゃなくて」
そうだ。もうひとつの贈り物を確かめなきゃ。
視線を下げる。お姉ちゃんがかけていた眼鏡があった。
その下にはメモが置かれている。
『貴方に合うようにしてるつもりだけど、かけてみて』
残された鉛筆の文字に従って私は眼鏡をかけた。
「……え、えぇ……!?」
世界が変わった。
今まで見てきた魔力の粒が、形を変えている。──いや、違う。
こんなにも多様な形をしていたんだ。丸いだけじゃない。棒のようなもの、四角いもの。
これは補助具だ。初心者向けの道具。
落ちる粒子を追って、メモに含まれる魔力を形にした文章が見える。
『この字が眼鏡なしで見えたら半人前。この文章が全部読めたら一人前よ↓』
……何も見えない。どんなに目を凝らしても輪郭すら感じられない。
ふと気になってノートを開くと、余白が随分と大きい。
今の私には見えない文字で、新たな課題が綴られているに違いない。
これからの道は随分と険しいものだと容易に知れた。
でも。
「うん、頑張る」
絶対に、辿り着いて、お姉ちゃんと会おう。
短い手紙にはお姉ちゃんの名前と、私の本当の名前も載っていた。
この名前で呼んで、呼ばれたいと私は思う。
311四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:15:37 ID:qimtTP3z



登校すると、皆が軽く驚く。
「おい石津、……雰囲気が全然違うぞ」
田代さんが彼らの気持ちを代弁してくれた。
眼鏡をかけたまま私は学校に来たのだ。
お姉ちゃんがいつも傍にいるようで、私はそれだけで顔をあげていられる。
「そのうち、慣れる、わ」
ふ、と微かに笑った田代さん。
「そうだな、変わらない人間なんていないんだよな……」
ぽんぽんと私の肩を叩いて席に戻っていくと、
どすどすと重い足音を響かせて坂上先生が教室に入ってきた。



そして、理解した。
他の人には魔力は流れていない。表面を滑り落ちるだけで、内部には存在していないのが
はっきりと見えるようになった。
──ひとりだけ違う。
触れるだけでばちばちと弾き、流れを否定する人がいる。
魔力が避ける対象は後にも先にも幻獣だけだ。その事実が覆された。
……違う。中に、幻獣がいるのか。
間違いはない。私の感覚は真実のみを訴える。危険だ。私だけじゃ対処出来ない。
彼に直接言ったとしても、最悪の場合、私が消されるだろう。
彼ではなく内に潜む『彼』に。
どうする。
賭けだけど、常に傍らに居続ける人に言おう。
信用してもらうにはどんな内容を、どんな言葉で告げるべきだろうか。
考えよう。

312名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 00:17:05 ID:ZbVc4aVk
やべぇ。鳥肌たった。
戦闘シーンかっこよさ過ぎる。
久々にガンパレやりたくなった。
313四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/23(月) 00:17:50 ID:qimtTP3z
前菜としてうpした式神SSに繋がる内容になったわけですが……
うあー不安だ
滅茶苦茶杉

また来週
314名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 10:38:16 ID:Bb3lk6P2
お疲れ様ですた!いつも楽しませてもらっております。
式神やってないんで魔女さんってあの人かな?位にしか分らんのが悲しい。
式神やるぞー。
315名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 23:04:26 ID:YgcojTW7
おなじく、式神やってないんで、
魔女さんっていうとあのメガネの独逸姐さんしか思い浮かばない。

ガンパレも、世界の謎とかさっぱり解ってない人間ですが、
すごく楽しく面白く読めました。
石津さんは最愛キャラなので、嬉しかったです。田代と仲いい所も、すごく
嬉しかったです。

稚拙な感想ですいません。
いつも、面白いSSをありがとうございます。
316名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 00:07:48 ID:IW2BaqaN
式神の城はコミックスも出てるので読んでみ。
現在、第1部全3巻が完結し、第2部第1巻が発売中。
317名無しさん@ピンキー:2005/05/28(土) 21:09:35 ID:lKMvkrJ/
式神知らんけど面白かったっす〜
読んでて希望の持てる話に出会えると嬉しいっす
318四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:31:00 ID:Rmjwt+MP
毎度の事ながら、レス貰えるのは嬉しいです。感謝。

式神やってない人って結構居ますね。
まぁ漏れも数えるくらいしかやってないのですが。

前編1〜3と後編を並べると起承転結になってたり、
全部が変化をテーマにした内容になってたりするのは100%偶然です。

>180にも書きましたが、後編は完全に俺設定を土台にしてるんで
前スレにうpしたのがどうしても受け入れられない人は読まないほうがいいかも……


後編「死闘」
319四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:31:43 ID:Rmjwt+MP
誰も居ない整備員詰め所にディスクだけを持ってきて、端末に読み込ませる。
二番機の記録映像が映し出された。
「………」
やはり格闘戦があまりにも不出来だ。口で何回か忠告したけど、聞き入れてくれなかった。
どうしたらいいんだろうか。やっぱり、身を持って知っても貰うしかないんだろうか。
そのときの状況を何となく想像してしまう。

──。
探す。探す。居た。
肩に手を置いて、振り返ると同時に一発。
驚きの顔で背中から倒れる滝川。何か言おうとしているみたいだけど、舌がまわっていない。
ずりずりと手足を使い、僕から離れようとしている。哀れな子犬を想わせる震え。
馬乗りになって殴った。必死の防御の隙間を縫うように、拳を奔らせる。
もっと。もっと。もっと。もっとだ。
腹なんて対象外。屈辱と痛みを覚えてもらうには顔だ。なるべく肉と皮が薄いところを集中的に、
しかし裂傷にならないように。黒い服に赤い血は目立つ。戻る最中に怪しまれてはいけない。
握った手を開き、張り手に変えてみる。びくびくと痙攣はより大きくなって、恐怖も倍増した事
だろう。ばちん、ばちん。
悲鳴の一つもあげずに耐えるのは流石だと言える。
でも褒めないし、行為も止めない。
ガードがだんだんと緩くなる。顔の痣は大きく、切れた口内の血が零れ始めた。涙も滲んでいるようだ。
不可解に思ってるだろうな。ま、滝川が強かったら、こうはならなかったんだし。
「くくっ」
喉から悪魔のような笑い声が漏れ出した。
320四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:32:25 ID:Rmjwt+MP
どちらかと言えば虐められる方の属性を持っているつもりだったけど、虐める側にもなれるみたいだな僕って。
「ふ、ははははっ………」
殴る。拳からの衝撃が心地よい。幻獣を撃つ時の爽快感に似ている気がする。
息があがってしまい、手を止めた。
滝川陽平はがくがくと震えを隠そうともしない。次の暴力に怯えきっている。
やってみたいけど。止めだ。
これ以上はトラウマになるだけだな。
──。

何を考えてるんだ、僕は。
仲間を力づくで従えても意味なんてないのに。
ずきり。頭痛がひどい。
「さて、舞のところに帰らなきゃ……」
端末からディスクを取り出して、足元のバッグを手にしてから部屋を出た。
それからはいつものように舞と一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に布団に入る。
戦争を終わらせて、この生活を確かなものにするんだ。



一番機の記録映像を見て考える。
やはり解りやすい癖がある。幻獣とて馬鹿ではない。
倒される前に、僕達の情報をどこかに送っている可能性は否定出来ない。
もし一番機の癖が露呈してしまったら、それだけで戦線の維持は難しくなってしまうだろう。
放置してはいけない。
想像する。

──。
居た。瀬戸口と一緒か。
待った。待った。
待った。
よし。
321四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:33:08 ID:Rmjwt+MP
先回りして公園に入る。着替えはバッグに入れ茂みの中に放り込む。
じゃり、と塵を踏んで壬生屋未央が姿を現す。直後、僕を見て驚いたようだ。
流石だ。気配を微弱に抑えていたのに気が付いた。
壬生屋未央が僕の正面に立って、何事かを訊いている。
答える必要なんかない。応える必要なんかない。
ただ、身体に刻み付けてあげるだけだ。壬生屋未央は一向に僕を襲おうとしない。
だから挑発した。
「──、」
いい顔だ。
赤い傘の先端が持ち上がり、ぴたりと僕の喉を指す。
では、授業開始。
一歩踏み込むだけで、壬生屋未央の間合いに入る。
顔には緊張が漲り、傘が残像を生み出すほどの速さで振り上げられ、振り下ろされた。
細く弱い骨組みだけど、骨折には十分な速度を有していた。
ぶぅん!ぶん!
当たらない。当たるほうがどうかしてる。
女の緊張が驚きに変化し始めた。それも当然で、踏み込んだ直後に剣筋を読まれているのを
自覚したからだ。
当たらない。当たらない。当たらない。
驚きが絶望になっていく。絶対の自信を持つ剣技が全く通用しないなんて悪夢に等しいだろう。
一か八かの大振り攻撃も僕は難なく避け、壬生屋未央の表情を間近で観察する。
ありえないと今にも叫びそうないい顔だ。………やっぱり、加虐嗜好もあるみたいだ。
傘が土を抉った瞬間に手刀を決め、気絶させる。
これで十分か。殺す事も出来たのだと知らしめるのに成功しただろう。
どさりとうつ伏せに倒れた女の身体は妙に艶かしく、最近の欲求不満を思い出させる。
が、舞以外の女には触れたいとも思わない。
いや待て………瀬戸口隆之が来る。
この際だ、壬生屋未央の精神的な弱さを補強してもらうか。
少しだけ衝撃的なところを見せてやろう。
322四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:33:54 ID:Rmjwt+MP
失神した女の尻を持ち上げ、覆いかぶさる。意識が戻ってもいいように首を押さえつけ、
赤い袴に指を食い込ませる。
「………!」
走り寄る瀬戸口隆之の怒りが炸裂した。
「──、……!」
よし、こんなものか。
後は上手くいくだろう。
──。

また馬鹿な事を考えている。
けど、有効な手段でもある。これは認めなきゃいけないような気もする。
空が重く曇った。
雨が降る前に帰ろう。



絢爛舞踏勲章まであと二体。
隊の皆が変な緊張を感じたままその日の仕事を終え、それぞれが寝床に帰る。
いつものように食事を摂ると舞が言い出した。
「厚志、聞きたい事がある」
ひどく真剣な顔だった。うやむやにしてはいけない。
「どうしたの?」
「………寝室で、話す」
舞は椅子から立ちあがり、僕の手を引いて寝室に連れ込んだ。
「どうしたのさ?」
泣きそうなくらいに思いつめた表情が見ていられない。
323四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:34:40 ID:Rmjwt+MP
唇が震え、舞は何も言わずに僕をベッドに座らせた。
「ねえ舞………」
部屋の隅にあったバッグを僕に突きつける。
見た事がないものだ。僕のでもないし、舞のものでもない。
ずきりと頭の側面が痛む。
痛すぎて、視界がぼやけていく。
「厚志が、やったのか」
頭が痛い。
「そうだ。僕だ」
気が触れてしまいそうな痛さだ。
全身に鳴り響いて、どこも動かない。
「何故、そんな事を………」
「戦争を終わらせる為だよ舞。あの二人は弱い。有能とは言えない。
 だからやった。欠点を補うにはこれしかない」
口も手も重くて一ミリも動かせない。
だけど、舞は誰かと会話しているような気がする。
「馬鹿者!何故………っ!」
「滝川陽平。格闘戦能力+3、精神的強度+1。田代香織への干渉をレベル2へ引き上げ。
 精神的不安定度は増すものと思われる。期間、約2週。それ以後は安定の見通し。
 壬生屋未央。格闘戦能力+1、精神的強度+2。瀬戸口隆之の安定度は大きく弱体化。−4。
 従って干渉レベル5へ変更。期間、自然休戦期まで。必要であればその後も監視対象」
誰かの呟きは止まらない。
「滝川陽平は、今思うともっとやっても良かった。両腕の関節を全部外しておけば、きっとその手の技も
 覚えようとしたに違いない。壬生屋未央も強姦するべきだった。瀬戸口隆之を動けないようにして、
 その目前での強姦。精神的な依存関係はより強固なものになったはずだ。どちらとも今からでは遅い。 
 ………失敗だった。戦争の終結を遠ざけるだけだった」
頭痛が弱くなり始めた。
もう少し、か。
324四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:35:24 ID:Rmjwt+MP
「………それで、二人に何かあったらどうするつもりだった?」
「その時は三番機の撃破数が伸びるだけだ。問題ない」
ようやく痛みが消え、身体の自由が戻ってくる。
「街の人々を、襲ったのは……」
「僕だ。隠蔽に必要だったからね。もうやらないよ」
視界は明瞭になり、舞の脚が、震えている?
何があったんだろうか。
「ねえ舞、どうしたの?」
見上げれば、強張った顔だ。
怖がるような、悲しむような。無駄な脂肪がない両腕が僕の肩に伸び、そのままベッドに押し倒された。
「ちょっと、舞?」
「厚志、あの場所へ行け。頼む」
あの場所、僕の心の中の事だ。あの日から何回か行ったけど、空っぽだった。
舞にも話してある。なのに行けと言う。
「何もないって言ったよね?」
「それでも、だ。行ってくれるか、厚志」
舞は泣きそうな顔をしている。自覚はないのかもしれないけど、僕はそんな表情を止めて欲しいと思った。
「解った。行ってみるよ」
約束だ。絶対に守らなきゃいけない。
舞も満足したように頷いて、目を閉じる。
「待ってるぞ。時間がかかっても良いからな」
力を抜いて身体を重力に任せ、心の扉を想像する。



がきん。
久しぶりの動作音は硬く、戻ってきたんだなと実感する。
「──、な」
325四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:36:10 ID:Rmjwt+MP
夕日で溢れる広場ではなかった。
薄暗い。空には月が浮かんでいて、生臭い匂いが鼻を刺激する。
ごくりと喉が鳴った。こんなの、戦場でもありえない光景だ。
「何だ、これ……」
一歩踏み出す。
ぐち、と粘着質の何かを感じ取る足。硬かった以前とは別物だ。
「……何だ、これ」
こんなのが、僕の心の世界だと言うのか。
歩む度に粘つく音が響く。こうなった原因が何なのかをはっきりさせないと、帰るに帰れない。
どうして──こうなってしまったのか。
「……」
だんだんと粘りが弱くなる。
けど、安心なんて出来なかった。前方から誰かの気配が強まり、正直に言えば今すぐ逃げ出したい気分だ。
幻獣がどんなに居てもこうは思わないだろう。
舞にも話した事はないけど、ウォードレスさえ装着していればミノタウロスと一騎討ちしても無傷で
勝てる自信がある。もちろんそれなりの武器は必要だけど。
なのに、畏怖と言える感情を否定できない。
かつかつと足音が聞こえ、その声が混じった。
『待ってたよ厚志。やっと逢えた』
脳内に直接聞こえるのは、きっと本当だろう。
その人は楽しそうな表情で僕に歩み寄る。
『ふん、芸がないな。いつもの制服だね。ま、その方が解りやすくていいか』
僕の前に立ち塞がる人は黒い服を着ている。──いや、黒い輪郭が身体を造っている、のか。
誰なのか。
その答えはとっくに出ている。
「なるほど、ね」
ここは僕の世界だ。世界は、命を生み出す。
誰かが生まれるとしたら、僕以外に誰がいるというのか。
『納得したみたいだね、厚志』
326四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:36:54 ID:Rmjwt+MP
「名前で呼ぶな。馴れ馴れしいにも程がある」
あえて威圧的に言ってやったけど、効果はない。それは不敵に笑い、言葉を続けた。
『自分を呼ぶってやつ、試してみたかったんだよ。結構面白いな』
くつくつと笑う僕に似た誰か。
実際のところ、僕を乗っ取る為の条件を満たすにはこれしかなかったんだろう。
だから、ああして舞にバレるような事をした。
『………解ってるみたいだね』
「当たり前だよ、偽者」
僕を倒して僕になる。それがこいつの目的だ。
黒い髪の『僕』が拳を握り、戦闘態勢になった。
僕も黙っていられない。
「ふっ!」
先手必勝。
勢いよく接近し、殴りつける。しかしあっさりと防御された。
『おいおい、名前くらい言わせてよ』
煩い。
こめかみ、脇腹、鳩尾、顎。一秒もかけない連打だ。
しかし全部が防がれる。
「く、あ!」
突然に振りあがった脚を防御。がつんと全身が揺れ、その隙に距離を取られてしまった。
ぴ、と僕を指差して『僕』は言う。
『速水厚志に対する芝村厚志、ってのは無理があるかな』
黙れ。
拳と脚が空を裂き、交差する。
何度も繰り返し、またしても離れる僕達。
『ああ、もっと適切な言い方、あるんだな』
僅かに弾む息を整えながら言葉を待った。興味もあったけど、一番の理由はその気配の変質だ。
327四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:37:39 ID:Rmjwt+MP
これは。
『人間に対する』
さっきと同じように指を伸ばし、
『幻獣──』
身体が変容していく。
僕と同じだった体格がどんどんと大きくなり、見覚えのある形に変化していく。
これは、ゴブリンリーダーか!
「くそっ!」
待て、ここは僕の世界だ。こいつと同じように、僕だって装備を創り出す事が出来るはずだ。
「………!」
微かに身体が浮いて、直後にはウォードレスを着込んでいた。
よし、これならやれる。
腰のカトラスを抜き、殴りかかってきた幻獣を横方向に避け、側面を斬りつける。
ざっくりと硬い皮膚が破れる感触は現実のものと一緒だ。
僕の知識を基本としての変化であるのは間違いなさそうだ。これなら、どんな幻獣になっても勝てる。
『駄目だなこの身体は。次だ』
むくむくと巨大化が始まる。
ミノタウロス。
そう判断した僕は同等に巨大な想像を創り出す。
この距離で最も適しているのは、一番機だ。
ぐぐ、と身体が持ち上がり、一瞬だけ視界が塞がれた。全身が硬い感触に包まれ、視界が開けると
同時に武装を確認する。
士魂号単座。重装。大太刀一本と肩には盾。
……全てが想像通りとはいかなかった。レーダーが働いていない。目視だけでの戦闘なんて初めてだけど、
一対一だから無くてもいいか。それ以外に損傷や異常は見当たらない。
目前の幻獣も巨躯を確かめるように腕を回し、拳を打ち鳴らした。
『ラウンド2!行くぞ』
「来い!」
328四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:38:22 ID:Rmjwt+MP





「厚志!厚志!………私は、見ているしかないのか!苦しい時も辛い時も支えると約束しただろう!
 何か、何か方法があるはずだ。どうすれば、助けてやれるのか。──、……、っ!
 待っていろ厚志、すぐに、戻る!」




329四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:39:04 ID:Rmjwt+MP
幻獣は滅茶苦茶に拳を振り回す。
僕の剣を近づけてはならないと、ただひたすら振り回す。
『ああああああ!』
が、予想を上回る動きではない。寸分違わず、僕のイメージ通りの速さでしかない。
右ストレート、そして、左のなぎ払い。
ここだ。
なぎ払いを潜り、空いた脇を通り抜けながら一閃。
がつんと確かな手応えで腹が割れ、直後に身体を旋回させて背中も斬りつける!
大きな弧を描く剣先は、
「ちっ!」
幻獣の腕が防いでいた。壬生屋さん程の腕前があったら、その障害ごと真っ二つにしていたのに。
追い打ちを仕掛ける前に、再び距離を取られてしまう。
『ふん、これも駄目だな』
脇腹の切り傷を気にした様子はない。耐久力だけは僕の想像を遥かに超えるものになっているらしい。
次の変貌は予想がつく。
『じゃあ、これだ──』
俊敏に飛び跳ね、一気に巨大化する。
ずるりと長い尾が突き出され、人型だった身体は太く、長くなった。
大きな目が開いて僕を捉える。
「馬鹿か、君は」
この間合いでスキュラに化けたところで何になる。どんな攻撃も、こっちの剣よりも遅いに決まっている。
中身も幻獣だな。僕なら、こんな選択はしない。
『ああ、いい身体だ』
どこがだ。接近戦が全く不可能な、爆撃と狙撃だけの幻獣だろ。
「なら反撃して見せろ」
がんがんと地を蹴飛ばして接近し、剣を構える。
敵は動かない。余裕のつもりか。──まあいい。
間合いを計り、斬撃の筋を決める。相変わらず一ミリも動かないスキュラ。
「………貰った、っ!?」
ぐん、と爪先に力を込め、眼前に迫った何かに剣を振り下ろす。
鉄と鉄の衝突音が響いた。邪魔が入ったか。
………いや、これは。
330四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:39:50 ID:Rmjwt+MP
直径は士魂号の胴体と同じくらいだ。ごつごつと盛り上がり、あるいは節くれだった形だ。
色は赤と黒。不規則な色合いには艶があり、鍛え上げられた筋肉を想像させる。
『だから言っただろ、いい身体だって』
正体はスキュラの尾だ。
鞭のようにしなり、大太刀を抑え込んでいる。
まさか、こんな事が。
ぎりぎりと火花が散って、接近戦に特化してある一番機と全く互角の力を持っている。
「くそっ!」
どうする。こんな手があるなんて、考えたこともなかった。どうしたらいいんだ。
『まだまだ、これからだぞ人間!』
びゅるんと巻き戻されて一気に襲ってきた。
「く、あ!」
剣を振り上げ、叩きつけて防ぐ。
みしりと全身から悲鳴が聞こえ、その威力の大きさが実感出来た。
これは──ミノタウロスの一撃よりも上だ。
『ははっ!もっとだ!』
速さはこっちの大太刀と変わらない。軌道の豊富さでは完全に僕の負けだ。
防ぐだけで精一杯。
ぶんぶんとがむしゃらに剣を振り捲くる………!
「う、おあっ………!」
技術も駆け引きもない。手を止めれば、その瞬間に致命傷を喰らってしまう。
上、右。
左、下、右、中心。
左上下、下上。
右左左上下下中心右上左右中心上、上右中心下左上左中心下右上上中心下左右。
くそ速い上下中心右右左下左、この間合いだと左上左、右左右左上右下。
上中心中心下左完全に右右下上中心、左、右、中心、上下左右右左上下下上、負けてしまう。
「ちぃっ!」
右からの払いをしゃがんで避け、思いっきり後方に跳ぶ。
331四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:40:39 ID:Rmjwt+MP
なんて奴だ。
僕だって壬生屋さん程じゃないけど、それなりの腕前のつもりだった。
が、全く歯が立たない。
着地。
姿勢制御の為だとされていた尾に、これほどの能力があったなんて。
スキュラは追って来ない。来れない、が正しい表現か。移動速度が遅く、
レーザーの射角からは外れているんだから少しは落ち着ける時間を持てる。
はず、だろうが!
「なっ!」
下げていた剣で防御体勢に移った直後、巨大な胴体の体当たりを喰らってしまった。
「ぐ、ふ!」
飛ばされながら考える。
ありえない。
ありえない。
どうやって、この距離を一瞬で詰めたのか。スキュラの速さじゃない。軽装の士魂号でも出来ない瞬発力だった。
地面に衝突し、背面が削られている。
どうやって、………そうか。強靭な尾で、跳ねたのか!
『あはははっ!いいぞ!』
空高く舞い上がり、余裕の高笑いなんかしてやがる。
更には処刑宣言までしやがった。
『そのコクピット、完全に潰してあげる!』
「………幻獣に勝つのはいつだって人間だ!」
機体を一番機から二番機へ変更。装備、ジャイアントアサルト、超硬度大太刀、肩には盾、バズーカ。
煙幕弾頭とアサルト用弾倉が、──そこで確認は終わりだ。スキュラが地表に降り、こちらを窺っている。
機体を立ち上がらせ、銃を構える。大太刀は腰から下げたままだ。
まだ撃たない。
真正面で、障害物もないこの状況だとまず当たらないだろう。
スキュラもレーザーを撃てるけど、目の向きがしっかりと視認できる以上、全部回避出来る自信がある。
だからといって互角でもない。この距離は絶対にこちらが有利だ。
側面に回りこみながら距離を詰めれば良い。レーザーの射角は狭い。
332四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:41:21 ID:Rmjwt+MP
旋回し、捕捉して発射準備に移った時には僕が射角から消えている。
こっちは好きなだけ撃てる。疾駆しながらの射撃は精度が悪いけど、的が大きいから
そこそこ当たってくれるだろう。
走り出そうとして、止まる。スキュラの行動を見極めてからの方が良いだろうと思ったからだ。
『さて………』
ぼろぼろと生体ミサイルをその場に投下し始めた幻獣。
当然僕には届かず、爆煙が吹き上がり敵の姿が見えなくなった。
確かにこちらの視線を遮る事は出来るが、それはそっちも同じだろう。
『………いくよ!』
しゅん、と飛翔音が聞こえて右前方で爆発が巻き起こる。
レーザーではない。
もう一度聞こえ、今度は真正面で爆発。
「何だ!?」
この距離だと、レーザー以外の攻撃手段はないはずだ。
そうか、投擲──!
『あはははは!』
尾での遠投は続く。姿勢の崩れも利用し、僕に着弾点を予想させない。
こっちも動き、発砲はしているけど、何発も当たっていないだろう。そして敵の狙いは少しずつ精度を
あげている。足音から方向と距離を測り、どうやらレーザー以上に射角は広いらしい。
「くそ!」
いつもだったらとっくに終わっているのに。
がくがくと機体が揺れる。狙いも上手くつけられない。もっと、練習しておくべきだったな………。
「ぬうっ!」
盾に隠れるように機体を丸め、目前での爆発を受け流す。
ぎしりと全身が悲鳴をあげた。ダメージ計を見ると、ほぼ全ての部分に軽微の損傷がある。軽装甲って
こんなにも脆いのか。
爆圧と煙が消え、敵の姿も見えない。
どこだ。どこにいる。
ぞくりと戦慄。直後に後退すると、足元にレーザーが穴を開ける。
上か!
333四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:42:07 ID:Rmjwt+MP
真上からのレーザー攻撃だ。
『おらおらおら!』
光の柱が側面から迫ってくる。小さく後ろにジャンプし、
着地と同時に背中から襲い掛かる光。長い尾を振り回し、レーザーの軌道を強引に変えたのだ。
「くっ!」
正面には生体ミサイルが降り注ぎ、こいつも胴体の回転で広範囲に撒き散らされる。
バズーカを振り上げる時間はない。止まれば、どちらかが当たってしまう。
アサルトをひたすら撃つ。撃つ。撃つ。
ダメージは少ない。厚い生体装甲に阻まれている。何とかして胴体後方か腹部のミサイル投下口を
狙いたいけど、今は無理だ。
大きな身体が近づき、凄まじい圧迫感に耐えながら弾丸をぶち込んだ。
「──っ!今!」
ぐらりとふらついた。その隙に逃げなければ。
全力でダッシュさせ、本能がフルブレーキさせる。
まずいまずいまずいまずいまずい、危険だ!
踵だけじゃなく腰や手もついて減速し、身を焼き尽くすような緊張感はますます高まる。
「ぐ、ううううう!」
炸裂音が足元で木霊した。
大樹のような尾が地に突き刺さり、一瞬でも判断が遅かったら間違いなく潰されていただろう。
考えるな行動しろ危機は続いている!
刺さった尾を足場にして跳躍すると、僅か半瞬の差でスキュラの胴体が落下する。
ぎりぎりのところでぺしゃんこを免れ、全身の戦慄は今度こそ最大になる。
レーザーで、撃たれる!
どこを狙っているかなんて考えない。強引に身を捩じらせ、銃口を空に向けて引き鉄を引いた。
「ううううう!」
反動が機体の位置をずらし、レーザーの直撃はなんとか避けた。
機体の前面が軽く焼けている。コンマ一秒でも遅かったら僕は死んでいた。
『おお、よく逃げたな』
褒めるな馬鹿。
着地してジグザグに後退しながら弾倉を交換する。
スキュラは刺さった尾を足代わりにして立ち上がった。
334四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:42:54 ID:Rmjwt+MP
「………っ」
高い。
月が意思を持ち、人間を眺める光景だと錯覚してしまう。
きりきりと胸の奥が固まっていく感覚がある。何か、拙い。
更に離れようと後退すると、幻獣も行動を始める。
『ああ、こういう手もあるか』
先ほどと同じように生体ミサイルを投下。
尾は抜けていない。投擲は無理だ。なら、何が………?
スキュラの身体を隠す爆煙が、ぐわりと変形する。
『そー、れぇ!』
数十の黒い塊が煙から飛び出す。
って、ミサイルかこれは!
「馬鹿な!」
しゃがんで防御体勢。辺り一面が爆発で吹き飛んだ。
ミサイルランチャーでの爆撃とほぼ変わらない。尾で身体を振り回しながら、生体ミサイルを
飛び散らせたのだ。
『だけじゃないよ!』
ぼ、と視界の右端に光の剣が現れ、僕を斬り殺そうと迫ってくる。
だよな。レーザーにも同じ事が出来るんだよな!
「せっ!」
ジャンプで避け、着地直後に爆弾の群れが殺到する。
反撃の余裕なんてない。煙で視界が塞がれ、爆弾と剣で体勢を崩されるでは殆ど何も出来ない。
回数を重ねる度に両者の間隔は狭くなり、回避も難しくなり始めた。
「ぐぅ!」
どれだけ激しくても軌道や速度が一定だったらどうにでもなる。
が、そうはならなかった。
「斜め、かよ!」
単純な跳躍や屈伸では完全な回避が難しい軌道だ。横に機体を移動させ、ジャンプでどうにか避けた。
こんどは脇腹から肩まで分断しようとする動き。半ば転がるように姿勢を低くしてやり過ごす。
「は、っ!」
ばらばらと爆弾が宙を舞い、これまたダッシュで爆圧圏外に。
止まっていられない。攻撃すらままならない。
335四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:43:42 ID:Rmjwt+MP
何度目かの弾幕が右からやってきた。
着弾点を見極めようと注意を向けた直後に視界がぼやけるレーザーかよちくしょう!
咄嗟の回避が間に合わず、肩が僅かに焼けた。
『あははははは!』
レーザーの攻撃は続く。
胴を水平に切断するレーザーをジャンプで飛び越し、ぎくりと全身が硬直した。
機体の落下が始まってもレーザーは足元を通過していない。力づくで胴体の振りを鈍らせている。
このままでは、やられる!
「こ、のぉ!」
ブーストを全開にして落下方向を強引に変えて難を逃れることができた。
僕を斬り損ねた光は踵を返し、再度襲い掛かる。
うつ伏せになって避け、背中を斬られたかと錯覚するくらいの至近距離をレーザーが走り抜けた。
さらに爆撃が続き、身動きもままならない。
駄目だ。機体、装備が重過ぎる。
レーザーが直撃して使い物にならない盾と、担ぐ暇もないバズーカを外し、……そうだな、動かないように
ちゃんと固定しておくか。
──、よし。
何度目かのなぎ払いをしゃがんで避け、アサルトを正面に撃ち込みながら駆けた。
「はっ!」
弾丸に押されて胴体が振り戻ってこないらしく、次の攻撃が遅れている。
一気に距離を詰め、アサルトを背中に担ぎながら大太刀を構える。
「うおおおお!」
真下に着いた瞬間ジャンプし斬りつける!
『流石二番機、速いな!』
剣先が幻獣の側面を垂直に割ろうとして、離れていく。
尾を使ったジャンプで避けられたのだ。
「ち!」
右手を離して上体を伸ばしても届かない。
336四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:44:26 ID:Rmjwt+MP
──が、本命はこっちだ!
空いていた右手にはアサルトが握られ、ぴたりと腹の弱点を狙っている。
「もらった!」
発砲金属音発砲金属音発砲金属音発砲金属音発砲金属音発砲金属音!
当たって、いない!
落下しながら理由が見えた。尾が弾丸を全部防いだのだ。
邪魔な尾だ。こいつを何とかしないと駄目だ。
『ほーらよ!』
尾が伸びてくる。大太刀で応え、機体への直撃は免れるも力勝負では完全に負けだ。
接点が離れる前に地面に叩きつけられ、衝撃が響く間にも尾が持ち上がって、振り下ろされた。
「つっ!」
ブーストで機体を浮かせ肘と踵で地面を弾き、必殺の突きを回避。
一気に離脱しようとする僕をスキュラの尾が阻む。がつんと右肘をかすり、ならば左へと移動しても
尾はしっかりとついてくる。
立ち上がる暇はない。何とかして、仰向けの体勢で逃げ出さなくては。
「ぬ、あ!」
紙一重で避ける度にがしがしと大地が穴だらけになっていく。
『はははははは!』
その気なら、胴体を落下させて僕を殺す事が出来るのに、それをしない。
遊んでいる。悔しいけど、認めざるを得ない。
『もっとだ!』
視界に映り続ける腹が開き、ミサイルが落ちてきやがった。
「くあああ!」
咄嗟の狙撃は成功した。
強烈な閃光が辺りを白く染め上げ、直後に真っ黒な尾。
危ないところで避ければ再び爆弾が落ちてくる。照準を合わせた直後に尾で弾かれ落下する軌道が変わる。
「この!」
何とか撃ち壊してもヤツの爆撃は続行している。
弱点を尾で隠し、その左右から次々と落ちてくるミサイルの群れ。
横方向への退避を不可能にさせて、次があるとすれば、
「……やっぱりか!」
337四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:45:13 ID:Rmjwt+MP
予想通りに強烈な打撃が振り下ろされた。
大太刀を地面に叩きつけ、反動を利用して遠ざかろうとしてもすぐに追いつかれてしまう。
「ちぃっ!」
きりがない。
狙撃、爆発、削身の激光、必殺の黒槍。
全身にダメージが蓄積していく。ここでは勝てないと解っていても、どうにもならない。
『お手上げ?こっちはもう一手あるんだけど』
胴体が持ち上がって力を蓄えた単眼が機体の真上に移動していく。
尾と爆弾は止まっていない。避け続けながら、敵の狙いを理解した。
動き回る僕へのレーザーが外れたとしても全く問題はないんだ。
地面を這いずり回る僕を尾で横から殴り、レーザーに激突させればそれでいい。
絶体、絶命──!
「させるか!」
大太刀から手を放し腰の煙幕弾頭をもぎ取って、地に叩きつけた。
煙のドームが一気に拡がり視界が塞がる。
「っ!」
大太刀を掴み思いっきりブーストを噴射させてついに脱出。
幻獣があっという間に見えなくなった。敵も僕を見失い、あらぬところに尾を叩きつけている音が聞こえる。
やっと一息つけるか……。
「何てバケモノだよ、ったく……」
一発しかない煙幕弾頭をもう使わされてしまった。
無くなったものはどうしようもないか。今ある物で何とかするしかないだろう。
誰が想像出来るだろう。スキュラが一番機以上に接近戦に長け、
二番機よりも機動力があり、攻撃方法の豊富さでは三番機を凌駕するなんて。
「だからって負けられるか」
煙幕から抜け出し、アサルトの弾倉を取替えながら機体を止めて立ち上がらせる。
普通ならここで撃ちまくるのが定石だけど、この相手には意味がない。
『よし見つけた!』
勢いよく灰色の霧から飛び出す幻獣。
こちらと同等以上の機動力を持ち合わせているんだから、煙から脱出するなんて朝飯前だ。
338四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:46:00 ID:Rmjwt+MP
勝負は仕切り直しになった。
よく見ればスキュラにもダメージはある。こちらも軽いと言えない程度にはある。
低空に佇む幻獣が地面すれすれに高度を下げ、ぐぐ、と地鳴りに似た音が聞こえた。
『いくぞ!』
尾で跳躍する体当たりだ。
その身体が高速で迫る光景は悪夢と言っていいだろう。
しかし、いくら速くても動きそのものは直線だ。敵の幅も解っている。
当たる理由がない。最低限の回避行動をした後、予想と違う事に気付いた。
「高い……?いや、これは!」
身を投げ出すように最大限の退避をすると、爆発が後を追ってきた。
体当たりではなかった。その瞬発力を併用した爆撃だ。
「この手も、ありだよな………!」
見切りが早かった為こちらは無傷だ。スキュラは尾をなびかせて飛行の最中。
後ろ、もらった。
「っ、な!?」
ぎゅるんと尻尾が横に流れ、換わりにレーザーがやってくる。
折角の射撃姿勢を潰して避け、ならばともう一度と立つと光の源に睨まれていた。
「くそう!」
上半身を捻ってレーザーの追撃をやり過ごし、次の瞬間には敵の体当たりだ。
「く、ああ!」
避けきれず左肩がダメージを受けた。
機体は独楽のように回転し、僕はそれを利用して敵の背面に銃口を向け馬鹿止めろ続きがあるぞ!
「がぁあ!」
激しい衝撃が機体を吹き飛ばし、何秒もの滞空時間の後に大地に落下する。
何とか防御姿勢、簡単に言えば身体を丸めるように機体を折りたたんで衝撃を分散する事が出来たようだ。
けど、致命傷がそうでなくなった程度だ。脊椎が折れる一歩手前の状態になってしまった。
右腕も似たようなものか。
あと一発も喰らえない。
『何だよ倒せてないのか。じゃ、もう一回だ』
レーザーと体当たりなら避けられる。尾は駄目だ。
柔軟で強力な尾だけは避けようがない。
どうする。
339四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:46:55 ID:Rmjwt+MP
『とどめだ!』
レーザーが空間を焼き、体当たりが機体をかすめ、尾が振りかぶられた。
逃げられないなら、
「……こんの野郎!」
自分からぶつかってしまえ!
アサルトを背中に担ぎ大太刀を両手で握って、迫り来る尾に振り下ろした。
刃が衝突する寸前に小さく飛び上がり、狙い通りに機体は浮かされた。
びきりと嫌な音が刀身から伝わるけど仕方ない。片手をスキュラの尾に伸ばし、懸垂の要領で機体を引っ張り
あげて尾を蹴り飛ばす。
機体を捻り、大太刀の柄を両手で掴み振り上げた時には胴体がすぐそこにある。
「今度こそ!」
尾の根元を足場にし、唸る剣が幻獣の背面に届かない。
剣先が空を斬り、足場が実体を失う。
「……っ、!」
胴体が沈み、足場が消えたということは上!
掲げた大太刀に尾が落ちてくる。金属が割れる音に混じってやつの声が聞こえた。
『良い反応だな人間。精々足掻け』
視界がスキュラの胴体で塞がれたけど、それよりも
集中力を最大まで高め、一連の動作を想像する。
両脚を僅かに屈伸させ衝撃へ備えさせる。腕は全力で剣を支えみしみしと軋んでいる。
如何に士魂号でもスキュラの全体重と尾の力には耐えられない。着地と同時に脱出しなければ。
集中しろ。足の裏が地面に触れた瞬間に重心を後ろに移し、上半身も屈めて尾に触れる刃をずらす。膝から
力を抜く。集中しろ。腕を伸ばしたまま尻をつく寸前思いっきり脚と脊髄を伸ばし、跳ねるようにスキュラの
下から飛び出した。
両足を振り上げた勢いで後転し、ぐるんと一回転して足裏が接地すると同時に前方にダッシュ。
敵は尾に座るように僕に背中を向けている。
もう一回叩くチャンスだ!
音速で接近していく大太刀は、またも空振りだ。
「──くそぉ!」
尾で胴体が持ち上がり、ついでとばかりに爆弾が降ってくる。
340四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:47:39 ID:Rmjwt+MP
『惜しい惜しい』
腹が立つほどの余裕だ。
爆発物の雨を潜り抜け、速度を落とさずもっと走った。
『惜しいなあ!』
皮膚が電気を帯びたように痺れている。命を奪う脅威が迫る予感だ。
見えないけど、後方からレーザーが接近しているのだろう。
「ぬ、うううああああああ!」
横に飛び避けたい衝動を懸命に堪え、限界まで引き付ける。
やつのレーザーが軌道修正不可能な至近距離まで待つんだ。今動いたら胴体を横に振られて、僕は終わりだ。
「あああああああああ!」
がくがくと機体が揺れる。走行速度が安定性能を超えようとしている。
まだだ。もっとだ。
真っ黒な空が後ろに流れていく。斜め上には月が輝き、微塵も移動していない。
本当に、走っているのだろうか──!
「くあっ!」
光の筋がが腹を貫通した幻覚を覚えた瞬間に横っ飛びする。
ぶわりと熱風が頬を撫でる錯覚と同時に、恐るべき破壊力を持った白い壁が視界の半分を埋めた。
転げまわるように方向転換して銃を構え、空だった弾倉を捨てる。
残りの弾倉は数える程か。機体のあちこちが中度の損傷。そして幻獣は、まだまだ元気だな。
……倒せる、はずだ。
『様子見なんて止めておけ人間。動かないと死ぬぞ』
何を馬鹿な。
レーザーも生体ミサイルも、アサルトの弾丸さえも飛び交っていない状態でそんな事になる理屈がない。
『いいのか?ほら、もうすぐ落ちるぞ?』
上か!
直後、真っ赤な爆発で周囲が埋まる。
「………!」
全身にダメージ。重度の損傷が機体を侵食していく。
──危険だ。
341四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:48:28 ID:Rmjwt+MP
『よそ見するな前を見ろ!』
爆圧からようやく解放された時には、レーザーが地面を裂きながらやってきた。
先端はふらふらと揺れ動き、注意を逸らす事も出来ない。意識を離した瞬間、この機体は真っ二つになるだろう。
攻撃も不可能だ。アサルトを構えた隙を逃がすような相手じゃない。
高速で接近する光の束を睨みつけ、五m、四m三m!
「せっ!」
全身を連動させた回避行動でレーザーから遠ざかり、足場を固める暇もなく薄暗い空を見上げる。
いくつもの爆弾が放物線を描き僕に向かっている。その向こうにはレーザーが細い柱として見えている。
爆発物の落下地点を見極め、機体を移動させ終えた頃には炸裂する衝撃に取り囲まれ、ぐらぐらと
揺れる視界には目的を斬り殺そうとする熱線が………!
「ちく、しょう!」
機体の損傷なんて気にしていられない。爆発が収まりかけている方向に駆けて必殺の一撃をやりすごす。
が、空には爆弾の群れが再び現れる。
「ったく!………?」
天を分ける柱、レーザーが太くなってる?
──こっちに振り下ろされてるんだろ避けろ!
折角の安全地帯をかなぐり捨て横にジャンプ。ばりばりと嫌な音を立てて地面が割れる。
僕は降ってくるミサイルに照準を合わせて引き鉄を引いた。
「当たれぇ!」
狙いは直撃しようとするミサイルだ。一発目が外れ、二発目も外れ、三発目がようやく当たる。
「うっ、ぐ………!」
当然全てのミサイルを撃ち落せるはずもなく、至近距離での爆圧が士魂号を襲う。
人間で例えるなら、全身が火傷と裂傷で埋まっている状態になった。出血も酷くて、あと何分ももたない。
「どうするよ、くそ」
今、距離を詰めても先ほどの高機動戦闘を強いられるだけだ。
接近戦に勝つだけの技術もないし機体も傷だらけだ。
必ずしも接近戦になるとは限らない。尾で跳躍され、再び撃ち合いになる可能性も十分にあるだろう。
しかしこの場所も間違いなく死地だ。
アサルトでの狙撃をするチャンスすら稀だ。撃てるのはレーザーが地面を走っている短い間だけ。
もっと離れれば生体ミサイルが届かないようになるかもしれないけど、レーザーを見切るのは不可能になる。
今だってぎりぎりだ。
「──、けど!」
342四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:49:25 ID:Rmjwt+MP
このチャンスを逃してはならない。ここで当てれば、何とか勝利への道筋は見える。
横に移動すればミサイルでの損傷は減らせるだろうけど、何もかもがぶち壊しだ。
降ってくるつぶての着弾地点を見切り、その隙間で片膝を立てて残り少ない弾丸を撃った。
「当たれぇええええ!」
損傷の激しい脚部が衝撃を吸収しきれない。一発撃つ度に狙いがずれてしまう。
でも当てるしかない。一発でも当たれば──!
『もらった!』
回避が間に合わず命を食いちぎる遠距離砲が肩を削る。
更なる悪化を覚悟しながら僕はアサルトを撃ち込んで、………当たった!
『おいおい、一発くらい当ててくれよ』
急げ。最後の弾倉を装着し、アサルトは背中に。
腰の剣を両手で持って全速力だ。一歩でも近づけ。
「僕が狙ってたのは、お前なんかじゃないんだ!」
しゅるしゅると重い風きり音が、前方から響いてくる。
『まさか!』
「ああそうだ。撃ち続けたのは、地面に固定したバズーカの引き鉄だよ!」
斜め上を向かせて固定していたバズーカ。その引き鉄前に通してあった盾の欠片を狙ったんだけど
──全身を血まみれにして、やっと撃つ事が出来た。
ずぅんと大きな爆発。幻獣の背面がざっくりと吹き飛ばされた。
『まだだ!』
声の勢いをそのままにレーザーが照射された。
まるで鞭のように振り回し、叩きつけ、払いあげる。
僕は全てを回避した。かする事すらさせなかった。バズーカが当たる前の動きと比べれば、話にならないほど
緩慢で、冴えがない攻撃だ。
駆け寄る僕から離れようとしないのは尾が使えないからだな。
ようやく、叩ける。
この士魂号も深刻なダメージにより、機動力は大幅に低下している。全力を出せる回数は数える程度だろう。
が、それで十分だ。
足止めさえ出来れば、僕の勝ちは間違いない。
「うおおおおおお!」
『まだだぁあああ!』
辛うじて持ち上がっている胴体から無数の生体ミサイルが投下され始めた。
343四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:50:16 ID:Rmjwt+MP
懐へ潜り込んで跳躍し、斬りつけるのは不可能だ。
「そんなの、予想通りだよ幻獣!」
ブーストと両脚をフル稼働させて高くジャンプ。手に収まっている大太刀を逆手に持ち替え、巨大な胴体の
前面中心、レーザーの照射口である単眼に機体ごと突き刺す!
「いけええええ!」
スキュラの身体が視界いっぱいに広がり、凄まじい全身に衝撃が走った。大太刀は、残念ながら
半分しか埋まっていない。軽い。機体が軽すぎて命までは届かないか。刺さった場所も悪い。
目標だった眼よりも上だ。一番機だったら、重さを利用して切り裂きながらとどめを刺せただろうに。
しかし、これすらも予想範囲内だ。
「これで、最後だ!」
大太刀に片手でぶら下がって、思いっきり右腕を埋め込んでから両脚で蹴りつける。
がきんと確かな金属音が機体を貫いた直後、大太刀が折れた。
まあいい。後は仕上げをするだけだ。ここまで頑張ってくれた事に感謝すべきだな。
蹴りの反動でスキュラが遠ざかる。敵は動かない。瀕死状態のようだけど、駄目押しの一撃をくれてやる。
半分の長さになった大太刀を捨ててアサルトを構えた瞬間、
ぐん、と幻獣の胴体が持ち上がった。
『もらったぁ!』
長い尾が両の太ももに巻きついた。ついに、捕まってしまった。
完全に予想外だ。──死んで、しまう。
着地音が響き、巨大な単眼が目の前にある。
死んでしまう。
衝撃に耐え切れず首が折れて死ぬ。
叩きつけられた頭蓋から脳が飛び出して死ぬ。
限界以上の圧力で死内臓の悉く死が破裂して死ぬ。
破壊され死た士魂号の部品に貫かれ血が止ま死らずに死ぬ。
割れた室内へ流入する人工血液で呼吸が出死来なくなって死ぬ!
この身を固定する拘束具死が吹き飛び背骨が捻じ切れて死ぬ死ぬ死ぬ!
死死折れた肋骨が肺に突き死刺さって死ぬ食いしばっ死たはず死の歯が舌を噛み切って死ぬ!!
全身の骨という骨が粉砕して死ぬ死椅子が外れ滅茶苦茶に跳ね回って身体が団子のように丸まって死ぬ!!
344四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:51:14 ID:Rmjwt+MP
「わあ、あ、あああああああ!!!」
銃口を士魂号の腹に押し当て引き鉄を引きまくった。
へばり付いていた装甲が剥げ、脊髄が削られる。もっとだ。もっと撃て。撃たないと、死んでしまう!
『はっ、錯乱か?』
煩い黙って見てろ何もしなかったら死んでしまうんだ!
『馬鹿だねぇ。その弾全部喰らわせたら勝てたかもしれないのにな』
それで勝てるなら黙って見ていないだろう。
残りの弾数、五、四、三、二、一!
「ちくしょう!」
ぼろぼろになった機体を何とか動かし、銃口を正面に向けた。
あと一発しかない。想像通りになる可能性は低いかもしれない。しかし今の状態ではこれが最善手だ。
『一発じゃどこに当てたって倒せないぞ。ま、最後だし、言いたい事言っていいぞ』
多分、乗っ取りを完成させる条件には僕を精神的に負けさせる事も含まれるのだろう。
最後の別れなら、いくつか言っておこうか。
「………幻獣を倒すのは、いつだって人間だ」
『まだ言うかよ。この状態で、こっちが負ける理由なんてあるか?』
スキュラと比べればあまりにも小さい弾丸が一発。これが最後の一手だ。
倒すなんてまず不可能な、ささやかな抵抗にしか見えないのは当然。
『まぁ、慣れない二番機だったけど、よくやった方だろうね。まさかここまで追い詰められるなんて。
 接近戦と射撃がもう少しやれたら、多分負けていた』
だろうな。
恐らくは壬生屋さんや滝川だったら、もっと楽に倒せたはずだ。
斬り合いと撃ち合い、どちらかに徹するだけの力があれば、こうはならなかっただろう。
だからこそ、この方法だけが残った。
「不思議に思わなかった?」
『………何がだ?』
どうやら考えもしなかったようだ。
これは完全に──僕の勝ちで決まりらしい。
「この士魂号の装備、変だと思わなかった?」
345四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:52:10 ID:Rmjwt+MP
『な、に………?』
「盾と大太刀だけなら一番機の装備だ。でも、アサルトやバズーカまで積んである。軽装だし」
『何が、言いたいんだ!』
「戦い方もだ。離れたりくっついたり。これってさ、何番機の戦い方だと思う?」
『………っ』
膨らんでいく不安で気配が揺らめくのが見えた。
さて、最後の仕上げだ。
「三番機パイロットが、三番機の装備をしないと思う?」
照準が捉えて離さないのはスキュラではない。
『まさか!』
伸ばした腕で食い込み、両足の蹴りでしっかりと固定されたミサイルランチャーの弾倉。
これが狙いだ。
壬生屋さんと滝川のような技術を持っていない僕では、確実に勝つ方法はこれしかなかった。
「幻獣を倒すのはいつだって人間だ。君の最大の敗因は、倒すべき相手を士魂号二番機だと
 決め付けてしまった事だ。倒すべきは三番機パイロットの僕だという認識を怠ったから、君は負けるんだよ!」
銃口から飛び出した弾丸がはっきりと見える。叱り付けたくなるほどゆっくりと飛んでいく。
弾丸の向こうに見える眼が光を帯び始め、尚も前進する終幕の引き手を見届ける事なく腕を動かす。
コクピット前面をがっちりと塞いだ直後、音と衝撃で意識が吹き飛んだ。






「早くせよ!………すまぬ、本当に急いでくれ。私の頭でよければいくらでも下げる。
 頼む。………やってくれるか。説明したとおりにすればそなたは無事だ。必ず実行せよ。
 ──、よし、やるぞ!」
346四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:52:58 ID:Rmjwt+MP





ぎし、と金属が軋む音で生きている事に気がついた。
「………は、ぁ………」
死んでいない。
奇跡的にも身体に外傷はないようだ。骨や内臓からも痛みや異常の報せはない。
「………やっぱり、ぎりぎりだったか」
辛うじて確保されている視界では、大きく歪んだコクピットが僕に向かって盛り上がっている。
士魂号の腕が機体に埋まっているのだろう。あと二十センチも埋まっていたら、僕は絶命していた。
計画では尾に捕まる事もなく、もっと遠くからミサイル弾倉を撃つ予定だった。
現実には身動きがとれなくなってしまったから、ああして胴体を撃ちまくり、脊髄を損傷させて
爆発の衝撃で吹き飛ばされるように仕向けたんだけど。
「出来るか?」
全く正常な士魂号を強く想像しても、何も変化しなかった。
いくら僕の世界と言えど、そこまで都合よくはならないか。
「さて、出るか……」
全身が冷や汗で濡れている。
機体に撃ち込んだ弾があと一発少なかったら。その先は想像しないほうがいいな。
ごそごそと拘束具を外し、変形したハッチを開けて這い出す。
外に出ると千切れた胴体が目に飛び込んだ。なかなかに痛々しい。機体も黒こげだ。
地面に降り足を踏み出すと、途端に転びそうになってしまった。
「っと、──本当に、ぎりぎりだったんだな」
ウォードレスの左膝がうまく動かない。潰れかけている。
何にせよ、肉体は無事だ。それぞれが最低限の仕事、パイロットを守るという任務を果たしてくれたのだ。
心で感謝しつつ、士魂号に振り返りウォードレスを脱ぐ。
多分あいつは死んでいない。気配はいまだに衰えず、僕を侵食している。
疲れの残る身体を引きずり、焼ける幻獣の傍に到着する。
347四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:53:42 ID:Rmjwt+MP
スキュラの大部分が吹き飛ばされている。無数のミサイルによる全弾同時一点集中攻撃。
これに耐え切れる幻獣なんているはずがない。
しかし。
「………」
炭化した傷口を掻き分け、やつが出てきた。
『無茶するね、全く………』
地面に立つ。ぽたぽたと真っ黒な液体らしいものが零れ落ちる。流石に無傷とはいかなかったようだ。
距離は約五メートルか。
再び肉体を駆使する戦闘を始めようとした時、途方もない違和感で真横に顔を向ける。
「………何だ?」
誰か、来た………?
『はは、我らがお姫様の登場だぞ、厚志』
僕達はほぼ同時に駆け出した。
ちら、と目を向ければ、僕と全く同じ格好になっていた。
見慣れた制服と青い髪。鏡でも見ているようだ。
僕でもそう思うんだから他の人が見分けられるはずがない。
何とかして僕こそが厚志だと教えたいけど、いい方法が思いつかない。
「『舞!』」
呼ぶ声も同じだった。きっと舞は混乱しているに違いない。
ここからだとどんな表情なのかはっきりとは見えない。早く捕まえて、こいつから遠ざけないと。
「『こっちだ!』」
手を伸ばし、僕は生涯で一番後悔した。
利き手である右手ではなく、反対の左手を差し出していた。
やつはしっかりと右手を伸ばしている。一瞬だけ僕に向けられた目には勝ち誇ったような光があった。
今から腕を替えたとしても、舞の不審を大きくさせるだけだ。
分が悪いと知りつつもこのまま行くしかない。
舞の顔がはっきりと見えるようになった。焦りと不安、そして緊張で染まっている。
一秒でも早く、そんな嫌な表情を消してあげたい。
「厚志!」
舞は僕達の方へ真っ直ぐ走ってくる。どちらを選ぶのかは決まっているらしく、迷いはない。
348四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:54:26 ID:Rmjwt+MP
「『舞!』」
ぐんぐんと距離が詰まっていく。
近づくほどに僕の気持ちは暗くなる。勝ち目の薄さで胸が圧迫される。
もうすぐ手が届く。
舞もしなやかな腕を伸ばし、次の瞬間、僕は思いっきり横方向に駆けた。
腕の中には舞がいる。しっかりと僕を僕だと認識して、この手を取ったのだ。
「舞、どうして!?」
訊きたい事は沢山ある。今の事もそうだし、どうやってここに来たのかも知りたい。
何故来たのかもだ。
脚を止めて舞を降ろし、その顔をまじまじと見詰める。幻じゃない。
本当に解らない。どうやって、ここに?
「厚志、話は後だ」
僕の向こういるやつを見ている舞。
……そうだな、あいつを倒すのが先だ。
振り返ると、不思議そうな表情で右手を見詰める『僕』がいる。
わからないと首を傾げ、不敵な笑みを浮かべた。
『ふん、まぁいいか。………そうだ、もうひとつあったな』
気配が重く、濃密になっていく。
まだ化けるのか。
最初と同じように僕達に指を差し、言った。
『速水厚志に対する芝村厚志、幻獣に対する人間。絢爛舞踏に対する──』
噂に聞く幻獣側の決戦存在。
スキュラの比ではない危機感が全身を支配する。
だけど、僕の意識は舞だけに向いていた。
自信と誇りに満ちた凛々しい顔。
慢心や油断を許さず、どんな隙も見逃さない兵士の顔だ。
「ねえ舞………」
「解っている。こういう事、だろう」
349四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:55:19 ID:Rmjwt+MP
音もなく士魂号三番機が現れ、肩膝を立てて座っている。
その足元にはウォードレスが二体。これで戦える。舞と一緒に、いつまでも戦える。
「………やるぞ、厚志」
僕は無言で頷き、何度もそうしたように無骨な戦闘服へ指をかけた。






一面が橙色に染まっている。
あの日の夕焼けに僕達は身を晒し、真っ黒な物体に目を向けている。
『僕』が苦しげに悶えながら、その身体を縮小させていく。
人型だった身体が飴のように溶けて、高さと形を失っている。
後ろに倒れこんでいる士魂号も砂のように崩れ、地面に還っていく。
「………」
「………」
再生の可能性なんて皆無だ。力なくくずおれる様子に疑いは持てない。
それでもなお、何事かを呟いていた。
『………叶えるんだ。舞の願いを、叶えるんだ──』
重油に酷似した液体はぞろりと流れ、僕の影になった。
結局のところ、『僕』は僕でしかなかった。
必死に戦い抜いた相手の願いは、僕のものと全く同一でしかなかった。
ずきりと頭痛がして、『僕』の記憶が断片的に流入してくる。
痣だらけになった滝川の顔。築き上げた誇りが崩れ去っていく壬生屋さんの目。
名前も知らない一般人が傷つき、血を流す。
胸が、痛い。
「………、ねえ舞」
とりあえずは感謝をしなきゃ。そう思い身体を向きなおす。
350四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:56:02 ID:Rmjwt+MP
「馬鹿者が」
頬が熱く痛み、受身も取れずに尻餅をついた。──舞に、殴られた。
「馬鹿者が!」
拳を握り締め舞が怒っている。ただただ純粋な怒り。
突然の事に狼狽しながら立とうとすると、足元で小さな音がする。
何の変哲もない包丁が刺さっていた。何度も舞の為に振るった包丁だ。
僕が創り出した物ではない。なら。
「………」
無言で舞がそれを抜き、逆手に握りしめて振り上げた。
容赦のない視線が僕に注がれている。一層強まる眼光とともに刃が振り下ろされ、
「っぐ、う!」
薄い肉に突き刺さり血が流れた。
舞の空いていた手に突き刺さり、自身も痛そうに顔を歪めている。
……何をしているんだ舞は!
「舞!止めて!」
立ち上がり、制止させようとした。
一体どんな理由でそんな事をするのか──!
「邪魔をするなっ!」
ばちんと平手打ちされた。
拳での一撃とほとんど変わらない威力に、僕はまたしても転ばされてしまう。
濡れる頬に指を伸ばすと、べったりと血が付いていた。
「なんで、そんな………」
「これがお前のした事だ、厚志!」
完全に舞の剣幕に圧倒されてしまい、見ているだけだ。
小さい手の平からは血が溢れ、今度は手首からも流れ始める。
激痛を隠そうともせず、舞は包丁を振り上げ、振り下ろす。
「っ!お前は、私を支える者を傷つけた!」
鬼気迫る表情。包丁を持ち替え、無傷だった手の平にもつき立てる。
「私の為だと決め付け!私を傷つけたのだ!」
両腕はもう真っ赤だ。
351四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:56:56 ID:Rmjwt+MP
しかし、声と動作が弱まる事はない。
「傷つけて傷つけて傷つけて、そして!」
ぐ、と首筋に包丁が添えられ、
「──!」
僕の両手がその先を止めていた。
目の前には舞の顔がある。勢いはどこかにいってしまったらしく、はあはあと苦しそうな息だ。
唇も瞼も震え、ひどく辛そうだった。
「私は、厚志の傍に居られなくなるぞ。それでもいいのか、厚志」
懇願の眼差しが僕の逃げ場を塞ぐ。
舞にこんな顔をさせるなんて、なんて馬鹿な事をしたんだろうか。
この人の願いを叶える。それが僕の望みだ。けど、こんな風に傷つけたら意味なんてない。
「………ごめん、舞………」
舞の表情は晴れない。
「──私たちが戦争を終わらせる理由は、私たちを支えてくれた人々に報いる為だ。
 彼らを守り、その延長線上に戦争の終結があるのだ。そうでない終戦などに意味はない」
一言一言が僕の奥深くに落ちていく。
「解ったか厚志。彼らは私たちを信じているのだ。私たちも彼らを信じて戦わなければならない。
 彼らも、我らと同等の努力をしている。その関係こそが、新たな平和をつくるのだ。
 ──あの子も、それを望んでいるはずだ」
………そうだ。
今の僕を見たら、きっと怒るだろうな。
「本当に、ごめん。舞」
心から搾り出たようなかすれた声だった。こんなにも後悔したのは初めてだと思う。
表情にも出ていたのだろう。舞はゆっくりと頷いて、僕の手をとった。
「よし、帰るぞ」
ぽっかりと浮かぶドア。
舞がノブに手を乗せた瞬間、全てが白で染まった。
352四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:57:44 ID:Rmjwt+MP





目を開くと、天井の電灯が見えた。
手の暖かさに気付き視線を動かすと、舞が僕の手を握っている。
両手で包み、何かを祈るように見えた。
「………」
申し訳ないという気持ちでいっぱいだ。
やってしまった事を償うとしても、やはり終戦以外の方法が思いつかない。
焦ってはいけない。今は土台を組み上げる時期だ。無理して崩れる事をしてはいけない。
──にしても、舞はどうやって僕の中に入れたのか。
今現在、『力』は完全に失われている。僕から招き入れるなんてありえないはずだ。
『僕』もそんな事をしないだろう。舞が入れば、それだけで僕を倒すのが何倍も難しくなるのを理解していた
だろうし。
答えは舞しか知らない。
身体を起こし、尋ねる。
「舞は、どうやって──」
がば、と首に抱きつかれてしまい、またしてもベッドに倒れこむ僕。
「ちょっと、………」
「すまぬ」
耳元で舞が謝罪の言葉を紡ぎ始める。
「私があの時にしっかりと言っていれば、こんな事にはならなかった。厚志をまたしても殺しかけてしまった。
 私の、所為だ。すまぬ………」
抱く腕は震えていて、力強さは塵ほどにも感じられない。
………怖かったんだ。予想でしかないけど、戦っている最中には随分と暴れたり叫んだりしていたと
思う。それを見たから僕の中に入ってきた。
こんなことになる馬鹿な真似は絶対にしてはいけない。舞の望むとおりに戦って、終わりを目指す。
なによりも重要なのは、舞を辛い気持ちにさせない事だ。
だから、僕がした事は最低の行為だ。胸が抉られる。本当に──馬鹿な事をしたんだな。
353四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:58:28 ID:Rmjwt+MP
覆いかぶさる小さい背中を優しく抱きしめ、僕の無事を改めて伝えた。
「………」
「………」
不意に首筋が刺激される。柔らかく、一瞬だけの感触だ。
今が初めてじゃない。これで三度目だ。
「舞………?」
そろそろと首をまわすと、舞が物欲しそうな表情で僕を見詰めている。
──僕を、欲している。
言葉もなく僕と舞は唇を重ねた。
何の迷いもなく滑り込んでくる舞の舌。いつもだともっと初々しく、躊躇いがちなのに今のはそれがない。
深くまで伸ばし、僕のと結びつこうと必死に蠢いている。
「ん、は………、ぁ、………」
唇に唾液が塗られ、淫靡な音が融け始めた。
酸素を取り入れようと強引に隙間を作ると、あっという間に塞がれてしまう。
「は、──っ、ちょ、……待って、んん!」
信じられないくらいに激しい。喉まで届けと突き入れられ、かと思えば自分にもして欲しいと
吸われてしまう。
酸欠で歪んでいく心を意識しながら薄く目を開けると、舞も同じように目を開いていた。
ぞくりと背中が震え上がった。意識も無意識も感情も理屈も、全てが叫ぶ。
この女と性交しろ。この身体にある熱を根こそぎ注いで、満足させてやれ。
いつもなら否定する考え方だ。可能な限り優しく丁寧に、が僕の信条だった。
けど、こういった否定が蓄積され、結果として『僕』が誕生したのだと思えてならない。
舞は舌だけじゃなく柔らかい身体すらも僕に擦り続けていた。
脚に脚を絡ませ、腰と腰を密着させ、心臓までを結合させたいと胸を突きつけている。
頬も桜色に染まっている。視線だけが性交前の興奮とは別物の感情を表していた。
切なそうで弱々しい光。僕の中にも似たような気持ちが呼び起こされ、とても──辛い。
「──、ふ、はぁ……」
壮絶な口内での踊りが終幕し、舞はくたりと僕に身体を預けた。
余韻を見せ付けるように胸に頬擦りしている。
マイナスの感情で埋まる瞳に、微かな高揚が混じっているのが見えた。
僕の心に飛び火して、雄の部分がどんどんと力強く屹立していくのが感じられた。
354四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/29(日) 23:59:12 ID:Rmjwt+MP
「ん、……」
ぴく、と舞も身体を震えさせてからより強く僕を抱きしめる。
恥じらいと情欲が混じり、口付け前の感情は随分と消えているようだ。
「舞……」
もう一度キス。そのまま身体を起こし、舞を押し倒す。
恥ずかしそうに顔は横を向いているけど、目だけが僕を捉えて離さない。
腕も解かれたまま白い布地から起き上がろうとしない。いつもなら小声で馬鹿者とか呟きながら
胸を隠しているのに、しない。
「…………」
僕を誘っている。
こんなにも明確な誘惑は初めてで、見ているこっちがどうにかなりそうなくらいに可愛い。
「…………」
無言のまま腕を伸ばし、制服の前を開く。
素っ気のないシャツをたくし上げて、ブラジャーのホックを外す。
舞は視線の焦点を僕の手に移し、制止する事もなく見詰めたままだ。
自らを興奮させる為なのだろうか。目を閉じようとしないで、次の行動を待っているように見えた。
「…………」
なら、待たせるのは駄目だ。
そろそろと柔肌を露出させて顔を近づけ、舞を覗き上げながら胸に唇を密着させた。
「くぅ、ん…………」
興奮しきっていた肉体は接吻だけで快感信号を生み出し、滞りなく支配者へ報せる。
肌から立ち上る熱気が鼻腔をくすぐってたまらない気持ちになってしまう。
奥深い場所がぐんぐんと大きく、重くなっていくのが解る。迫り来る本能。
いつもの抵抗はしなかった。僕だって我慢の限界だ。こんなにも舞に欲情したのは、初めてだったから。
「舞──!」
がっちりと両手を掴んで、僕は目の前にある乳房を貪った。
「あ、ああ!……っ、ぁ、っく……!」
幼いと言っていい柔肉は、しかし性的な刺激に敏感だ。
突起は硬く充血し、唇や舌で弾く度に全身を跳ね上がらせる。
僕は荒い息を吹きかけながら二つを弄び、愛する。
「うああ……っ!は、やぁ……!」
355四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:00:00 ID:Rmjwt+MP
舞が快楽に喘いでいる。何度見ても飽きない、色めいた表情。
艶のある啼き声は止まらず、僕をどこまでも興奮させてくれる。
既に性器は勃起していてびくびくと唸りを上げている。先取りの液だって溢れ出しているのが解る。
舞の身体も似たようなものだろう。両手がきつく握られ、ふわりと緩む。繰り返される動作は
膣内の動きを忠実に再現しているみたいだ。
早く挿れたい。思いっきり出したい。
いったん口を止めて身体を離し、舞の上半身を抱き起こして僕は言った。
「脱いで」
虚ろな目を僕に向ける舞。
「…………」
こくりと頷き、普段と比べると格段に遅い仕草で服を脱ぎ始めた。
ベッドに尻をついたまま上着に指をかけ、するりと衣擦れ音が部屋に流れる。
快感の残滓は重そうで、力があまり入らないらしい。
僕も脱ぐか。
「…………」
「…………」
舞から視線は外さない。僕は服と下着を投げ飛ばし、舞はやっとショートパンツを脱ぎにかかっているところだ。
かちゃかちゃとベルトを緩ませてジッパーを下ろし、少しだけ尻を浮かせて太ももまでずり降ろす。
「…………っ」
羞恥の表情にはほんの少しだけど嬉しさも混じっている。
白くきれいな胸が膨張と縮小を繰り返していて、その昂りがよく解った。
僕の観察を止めさせない。
もっと見て欲しいと訴えるように。
舞は思い切ったように腕を動かし足先からパンツを抜いて、タイツに指を食い込ませた。
ぴったりと閉じられた脚は細い。舞は一気にタイツを脱ぎ、美しい肌を露出させる。
ごくりと喉がなった。
いつ見ても胸が高鳴ってしまう。普段の生活で脱ぐ時は殆どない。羞恥心がそうさせている、というのは
あまりにも都合の良すぎる解釈だろうか。
爪の色が見えるようになった。
「────」
舞は残った最後の一枚を脱ごうとせずに僕を見て、自らの胸を隠してころりとベッドに倒れこんだ。
356四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:01:07 ID:Rmjwt+MP
くの字に寄り添った脚は離れず、膝が天井を向いている。
真っ赤な顔で、それでも僕を覗き上げる視線を止めようとはしない。
「…………」
興奮が猛る。
見ているのも辛い。こんなにも誘ってくれているなら、待たせるのは罪だろう。
僕は無言のまま下着を掴んで、焦らすように脱がせ始めた。
「っ!」
びくりと揺れる二本の脚。舞は言葉を飲み込むように口を閉ざし、僕の行為を見守っている。
下着の位置が股間から離れる程に僕達の昂揚は突き上げられ、身体がどこまでも熱くなっていく。
ほんの僅かな摩擦にも舞はよく反応する。ぴくぴくと膝が揺れ、胸を覆う腕にも力が入っている。
体温がうつる下着は温かい。
やっとの事で舞は生まれたままの姿になった。
頬だけじゃなく全身がほんのりと赤い。
心臓がうるさい。唸る血流に押し切られるように、僕は舞の膝に手をかけた。
「ん、……」
一瞬の硬直を無視して、力を込める。
抵抗はない。僕が手を動かす分だけ開いていく。
「……ぁ、ぅ……」
胸から手が離れ、顔を覆い始める。
恥ずかしそうな表情が信じられないくらいに可愛い。
もっと可愛くさせたいから、じりじりと脚を開かせた。
「……っ、ぁ、ああ……!」
感情の渦を吐き出すように喘ぐ舞。
指の間から覗ける瞳は開いていて、弱々しくも色っぽい視線が僕を射抜く。
半開きの口は閉じず、はぁはぁと外気が往復している。
そして──股間の唇も薄く開いていて、涎を垂れさせていた。
最高潮だったはずの興奮が更に高まる。
とてもじゃないけど、衝動を抑えきれない。
か細い膝をベッドまで押し付けて、指が食い込むくらいに強い力で太ももを掴む。
「ふ、……んん……」
これから襲いかかる快感に備えるように、舞はシーツを握り締める。
357四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:01:50 ID:Rmjwt+MP
いくよ、舞。
「は、──ぁああああ!」
僕は濃厚な口付けをする。
舌をおもいっきり伸ばし、コンマ一秒とて動きを止めない激しいディープキス。
「はひ、……んあ、ああああ!」
ぐちぐちと粘液が泡立ち、いい匂いが鼻腔を焼き尽くしていく。
跳ね上がる腰を引き寄せて固定して。
「ふあっ!あ、あ、ああ……っ!」
頭に舞の手が伸びてきたようだ。
髪に指が絡まって、引き離そうとはしなかった。
もっとして欲しいと訴えるように、唇に唇を押し付けさせる舞。
口の中に流れてくる液体は熱くて、
伸ばす舌も熱い肉と混ざり合って。
「くああああぁ………ん!」
一際甘い声と共にのたうつ身体。
硬直し、弛緩する。
「………う、ふぅ………」
舞の指が髪から抜け落ち、僕も舌を秘所から引き抜いた。
白濁した愛液が湧き水のように静かに溢れ出し、射精への激情に油を注いでいる。
──早く、挿れたい。
ぐったりとシーツに沈む舞を見下ろしながらトランクスを脱ぐ。
膝で立つとぎしりとベッドが悲鳴をあげ、快楽で濁る舞の目に力が戻って僕を捉える。
ほんのりと染まっていた身体がますます赤みを帯びて、僕の性器もより力強く勃起するのが解った。
──はやく、いれろ。
灼熱の本能が僕に命令する。その壷を満たし、悦楽を大量生産させろと。
だけど、同等に強力な理性からの囁きを選ぶ事にした。
「……どういう風に挿れて欲しい?」
ただ絶頂させるだけじゃ足りない。舞の世界を完全に奪う為にも果てのない快楽に溺れさせてあげたい。
言葉の意味を察した舞は更に恥ずかしそうに僕を見て、唇を噛んだ。
爪の先から髪の毛の一本に至るまで性衝動が浸透している事を自覚し、
しかし強い自制心がそれに抗っているのだろう。
358四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:02:41 ID:Rmjwt+MP
「……ぅ……、……」
閉じる唇の奥でかすかな喘ぎが鳴り響く。
瞳の濡れ具合が一層深まって、ついに舞は動き出した。
「…………」
無言のまま身体を起こし、四つん這いになる。
羞恥心が最高になったのか、手繰り寄せた枕に顔を隠してしまった。
それでも僕は言う。
「ちゃんと、準備してくれる?」
「う、ふぅ……」
真っ白な布地から爪が離れて引き締まったお尻に伸びる。
びくりと震える丸み。進む指先が秘所の両脇に添えられて、おずおずと花弁を咲かせた。
光の筋がとろとろと降りていく。
ひくひくと痙攣を繰り返す性器が信じられないくらいに魅力的で、……もう十分だ。
ここからは僕がしてあげる番だろ。
荒い呼吸を他人事のように意識しながら肉棒の狙いを定め、舞の最深部まで一気に突き入れる。
「ああああああぁぁ……ん!」
がっしりとベッドにしがみ付く舞を見詰めながら、腰を退いて、突き出す。
「ぃ……っは、んああああぁ、あ、あああ!」
優しくなんて出来ない。舞の中をごりごりと抉りかき回す。僕の心も同じように攪拌され、どんどんと
快感が馴染んでいく有様が頭に浮かんだ。
リズミカルに蠕動する膣は貫く度に熱くなり、妖艶さを増していく。
「ふっく、う、あぁ、はぁああん!」
勃起を愛撫される感触がたまらない。
渦巻く激情と反比例するように優しくて、壊れ物を扱うような丁寧さが嬉しくて。
「は、あ!ん、ん、ふ!」
身体が悦び、口から重い溜め息が何度も吐き出される。打ち付ける腰にも力がこもって、
舞のしなやかな背筋がびくびくと痙攣している。
射精感の高まりを意識しつつ、僕は抽送を続けた。
「んあっ、……ふ、くぅぅ……ん!」
359四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:03:32 ID:Rmjwt+MP
精液を搾り取ろうとする締め付けが硬直し始めた。舞は絶頂の予感に身を任せ、枕を抱きしめたまま
背骨を反り返らせ──
「……ぁ、ふ……」
絶頂には至らなかった。僕がそうさせなかったからだ。
あと数度の貫通で実現していただろうけど、こんなのじゃ駄目だ。
今までで一番の絶頂を迎えさせてあげる為にも、ここは我慢してもらうんだ。
「あ、……ん、んん」
たぷたぷとお尻が小さく前後している。
止まった僕の性器に活力を塗りつけるように、舞の肉が這いずりまわる。
わずかに見える瞳にも情欲で濡れていて、信じられないくらいに色っぽい。
ごくりと喉が鳴る。燃えるような息を飲み込んだ僕は、ほっそりとした腰をベッドの降ろしてから
太ももを跨いで抽送を再開する。
「んあ、ああ、ひ、……っ!」
舞も啼き声をあげ始める。
さっきよりも甘くて高い美声だ。
腹に抱く脚はどこまでも柔らかく、僕の抽送に合わせて踊っている。
「くふ、………ぅう………ん!」
枕に食い込む指はどんどんと深く刺さり、感覚を支配する官能の大きさがよく解る。
もっと悦ばせてあげたくて、抱いていた脚をより開かせて突きまくる。
目前で足の指が握られ、解ける。動かせない左足の分まで悶えるようだ。
「あ、ああ、あつ、しぃっ!」
唇と舌で足の指と裏を愛撫した。普段ならくすぐったいだけの刺激は、身を貫く快感を倍増させる
効果しか持たないようだ。
悦ばせてあげられている、という事実が嬉しくて、僕は夢中になって性器を前後させ、口でも愛撫を続けた。
「は、あひぃ……っ!」
膣と指がぎっちりと搾られ絶頂の到達を教えてくれる。
でも、まだだ。
もっと気持ちよくさせるんだ。
「……!……っ!──!!」
開く舞の唇から無音の悲鳴が部屋中に響き、僕は性器の律動を止める。
「ぁ……ふ、うぅぅ………」
360四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:04:30 ID:NlYYufVU
僅かに流れる悦声と共に全身から力が抜けた。
絶頂に達しなかった身体は燃えるように熱い。何度も寸止めされた官能は柔肌に手を添えるだけで
快感を分泌させているらしく、そっと撫でるだけでひくひくと震える。
忘我の一歩手前にいる舞。
「…………」
僕もうれしいはずなのに、これ以外の感情も膨らんでいく。
薄い胸に抱かれる真っ白な枕。
こんな物にさえ、僕は嫉妬しているのだ。
枕を奪い、投げ飛ばす。
この腕に収まっていいのは僕だけだ。
性器が抜けないように注意しながら、跨いでいた膝を持ち上げて視界に入れる。
遊んでいたもう一方にも手をかけると、股間の茂みを中心にするM字が完成した。
舞は快楽の余韻から脱出していない。虚ろな目で浅い呼吸を繰り返しているだけだった。
「舞………」
僕は小さく呼びかけて腰を打ちつけ、覚醒を促した。
軽い一撃で舞は自分を取り戻し、目の焦点が僕の顔に合う。
「ん、は……あつ、しぃ……」
戸惑うような表情をして、僕の名前を呟いている。
激しいなんてとても言えない緩やかな刺激なのに、絶頂した時と同じ締め付けが僕の剛直に巻きつく。
舞もそれを理解しているのだろう。全身に染み渡る歓喜の量は間違いなく一番のはずなのに
何故達しないのか、という疑問を抱いているに違いない。
丁寧に積み上げた快感の地層が分厚く重なって、いつもの限界はとっくに超えてしまっているからだ。
絶頂の極みに登りつめる為には更に高く舞い上がる必要がある。
「ふ、ぅあ、……っああ、はああぁ………ん!」
結合部からの淫楽がそういった雑念を溶かし始めた。
最奥まで繋がる度に、硬い頬がゆるんで、変化する。
もっと溶かしてあげたくて、そっと頬に指を這わせた。
「…………」
僕の手を両手つ捕まえ、より強く擦らせる舞。
するすると何度か往復させ、離したかと思うとちろちろと舐めてくれた。
恥ずかしげもなく奉仕している。芝村の末姫を筆頭とする全ての肩書きを忘れている。
361四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:05:25 ID:NlYYufVU
本当にただの女として、僕に尽くしてくれている。
いつのまにか止まっていた性器を動かした。
「……、っは、うう……ん!」
多分意識していないだろう。
舞はとんでもないくらいに魅力的な微笑みを浮かべていて、僕の中にいる本能を荒々しく獰猛にさせた。
「………舞っ!」
今度こそ激情のままに舞を突きまくった。
一突き毎に舞は絶頂に達し、熱い身体をわななかせて僕の逸物を搾り上げる。
火照るうなじがたまらなく妖艶で、つい口に含む。
「は、っくううぅ……ん!」
瑞々しい肌だ。細胞の一粒一粒に生気が行き届いていて、加えて艶かしさすらも感じられる。
滑らかな皮膚の裏側までも舐めつくそうと舌を強く押し当て、すくい上げた。
「っあ、は、……ああ!」
喉へ近づく程に舞の顎が持ち上がり、喘ぎ声も重さを増大させる。
悲鳴にならない振動で震える喉を愛し、顎の先端にキスすると唇の位置が下がってきて、
何かを言いたそうに開き、閉じる。
「…………」
瞳も期待で満ちていて。
秘所に性器をねじ込むように、濡れた唇を舌で割る。
「ん、んん!」
舞の舌も膣のように巻きついてきて、二箇所からの快感が脳髄を責め立てた。
唾液と愛液を分泌する肉壁がぎゅうぎゅうと僕に吸い付き、離れようとしない。
「ん、んんあ!ああ、ふああ!」
美味しい料理に無言で箸をつけるように、僕は舞の身体を抱きしめて突き上げる。
ふっくらとした四肢が背中と腰を引き寄せ、煽情的に胸と股間を躍らせていた。
膣も同じように僕にしがみついて離さない。
ぬちゅぬちゅと粘つく水音が部屋に溶ける。摩擦を繰り返すもっとも敏感な部分に快感の塊が生まれている。
完全に結ばれる度に加圧され、重くなっていく。滲み出る快感の余波だけでこんなにも気持ちいい。
凝縮された本物が爆発したらどれほどに素晴らしいんだろうか。
その瞬間を一秒でも早めようと無茶苦茶に腰を振りまくった。
「ひあああぁぁ……っ!」
362四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:06:25 ID:NlYYufVU
仰け反っていた舞の身体が海老のように丸まってすっぽりと僕の腕の収まり、数秒後にはまた反り返る。
がくがくと揺れる顔は淫楽で染まりきっていた。
細い眉にしわが刻まれ、下がる目尻からは涙が光っている。
紅い唇は閉じる事なく浅い呼吸を繰り返し、やがて喘ぎ声が混じり始めた。
「……、ぁ、は、ぁあ、はあああ!」
舞の柔肉が信じられないくらいに熱く締め付ける。
腕や脚も膣と同じように僕の身体に巻きつき、全身が舞の中で蠢動する性器になった錯覚をしてしまう。
僕もそろそろ限界だ。
絶え間なく襲いかかる快楽が残り少ない理性を破壊していく。
精神力を総動員して、舞に囁いた。
「いくよ、舞……っ!」
舞もかくかくと頷いて、あられもない言葉を叫んだ。
「わた、し、……っくうううぅぅ……ん!」
溜めに溜めた官能が遂に爆発した。
舞の奥深い場所で、何度も何度も炸裂する。
「は……っ!」
「ふ、う、あ!」
跳ね上がるお互いの身体を抱きしめ合い、どこにも行かせないとより強く引き寄せ合う。
融けた心が混じり、その歓びは何物にも替え難い。
肉体も五感を埋め尽くす快感に打ち震えて止まらない。
「………………」
「………………」
時間と共に鼓動と痙攣が治まっていく。
感覚の全てを凌駕していた官能が去り、抱きしめるしなやかな肉感が戻ってきた。
ひとつ息を吸って顔をあげる。
「舞………?」
目を閉じたまま微動だにしない舞。
熱が冷め切れない頬は赤く、しかし穏やかな息をしている。
「ノックアウト、しちゃったか………」
久しぶりにしてしまった。
363四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:07:13 ID:NlYYufVU
舞への償いのひとつになればいいけど。
眠りを邪魔しないようにそっと身体を起こし、軟化した性器を抜く。
分泌液の処理をして布団を引き上げる。
「ん、………ぅん………」
目覚めないままに舞が僕の胸に顔を寄せてくる。
胸にも真っ白な手が伸びて、普段の言動からは想像も出来ない甘えっぷりだ。
完全燃焼したはずの衝動が燻り始める。
それでも僕以外の全てを忘れさせてあげられたんだ、という満足感が消火してしまった。
「ふ、ぁ………」
欠伸をしながら舞を抱き寄せ、僕も意識を闇に沈めた。



胸の上で静かな音がして目覚めた。
重い瞼を開いて目を向ける。
「おはよう、厚志」
芝村に挨拶ない、というのが彼女の口癖だ。
しかし身体を重ね合った翌日には必ず朝の挨拶をしてくれる。
どんな組織にも属する事を忘れた舞だ。
「………おはよう、舞」
僕の言葉を聞き届けた舞は音もなく身体を密着させてくる。
瑞々しい肌の感触は最高で、つい僕も抱き寄せてしまう。
静かな時間が流れ、ふと忘れていた疑問を思い出した。
僕の腕を枕にする舞。訊いてみよう。
「あのさ、………何で、僕を疑ったの?」
『僕』ならは絶対にそんな隙を見せなかっただろう。
目的を達成する為にも、あらゆる手段を用いて疑われる事を避けたはずだ。
364四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:08:03 ID:NlYYufVU
穏やかな表情を崩さずに舞は告げた。
「石津が、お前の中に幻獣がいると訴えたからだ。その理由までは言わなかったが、真剣だった。
 それからだ」
石津萌。
それほど重要視する必要がない隊員だと思っていたけど、どうやら間違いだったみたいだな。
資料にあった魔法云々と関係があるのかもしれない。
けど、追求はしない。僕の恩人だ。
疑問が一つ消え、すぐに別の物が浮かんでくる。
「じゃあさ、どうやって僕の中に入ったの?」
他人の心を一方的に覗いてしまう力。あの子が行ってしまう時に一緒に消えたはずの力だ。
舞は何ともないように口にする。
「東原に手伝って貰った。私の身体を通して、厚志の心を読ませたのだ。全力でな」
「………無茶するね」
確かにそれならば可能だろうし、成功もした。
ののみちゃんが言っていたな。僕の力は同調の一種だと。
またしても恩人が増える。
戦争が終わる頃にもなれば、二桁では足りない数になってしまうな。
ちゃんと守り通して感謝の言葉を伝えよう。
そして最後の疑問。
「舞は、どうやって僕達を見分けたの?」
これが一番の謎だと思う。
お世辞にも明るいとは言えない場所だったし、僕が見た限りでは姿に差異はなかった。
それなのに舞は迷いもせず僕の手を取った。
どんな理由なのか想像がつかない。
「解らないか、厚志」
珍しくからかうような表情で僕の胸に頬擦りしている。
考えながらより密着させるように抱き寄せ、……あ、そうか。
「私を引き寄せるのは、いつも左腕だ。あの時はそれが決め手だった」
そういえば、唯一違ってたのは伸ばした腕だったか。
全ての疑問が氷解し、謝意を込めて舞の髪を撫でる。
365四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:08:54 ID:NlYYufVU
舞も身動きせずに僕を見詰め、言葉を発しない。
「………………」
「………………」
時計の針が進む音がようやく意識され、時刻を見ると結構な時間だった。
身体を起こそうとすると、阻止するように舞が体重を乗せてくる。
「えっと、舞?」
ちょっとだけ不機嫌な顔である。
「皆を信用せよ、と言っただろう?」
「そうだけどさ──」
「昼まで寝過ごしてしまったとしても、問題ないはずだと言っている」
不機嫌、というよりも拗ねるような表情か。
その意図は明確だ。
「……そうだね、偶にはそんな事もあるはずだよね」
舞の顔が明るくなった。胸を隠しながら上半身を起こして、もう一方の手で結わえられた髪を解く。
完全な休暇に入る時には必ず舞はこうする。
凛々しさが薄れ、女の子らしさがよく解る髪型だ。
女の顔にもなって、僕の胸に倒れこんだ。
身体の芯が疼いて血流も速くなる。舞は扇情的に微笑みながら胸板に口付けを繰り返している。
昼までの時間は舞の為に使おうと僕は決めた。


366四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:09:42 ID:NlYYufVU
ついでにエピローグも投下します
タイトル「五時過ぎくらいは」
367四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:10:39 ID:NlYYufVU
自然休戦期の直前に真新しい訓練シミュレータが届いた。
私達に実物との違いを埋めさせる為だという。
箱としか例えようがない外見とは裏腹に、内部は驚くほどよく出来ていた。
訓練期間中に使っていた物とは雲泥の差だ。
上層部がやっとのことで士魂号の能力を認めた証左だと言える。
大きすぎる二つの箱はハンガーにしか入らず、整備班を説得するのに結構な手間を費やした。
操縦席の挙動については外部からの入力で調整出来る仕様であるのは幸いだった。
設置してからは三人で調整した。厚志は『どうしても入れたいデータがある』とひとりで別行動していた。
そして今日。
外部に接続された二つのモニタには、現在行われている戦闘が映し出されている。
無音で語られる一瞬の連続。
「おお、やっぱり凄いや」
厚志は驚嘆の呻きを零しながら見入っている。私も同じで、評価の言葉を探す間にも次々と高等技術が
画面に現れる。
一番機と二番機の相手をしているのは、厚志の中に居たというスキュラだ。
機動力を得た大型幻獣は、それこそ最強と呼ぶに十分な強さだ。
「……、お、お、うぉー……」
「何と……そうくるのか……」
無論一対一。
壬生屋と滝川の単純な戦闘力を知る為にそうしたのだが、正直に言えば圧倒されている。
無限の変化を見せる剣筋と、どんな体勢でも一点を貫く射撃。
得意分野では絶対に勝ち目がないと思い知らされる。私達の三番機が勝とうとするならば、
それこそ機体を潰すような無茶をするしかないだろう。
幻獣の撃破数では大きな差が存在する。だが、実力となれば紙一重よりも差がない。
見くびっていたつもりは微塵もないが、これほどやれるとは思いもしなかった。
私と厚志が見守る中、両機とも幻獣を撃破した。
シミュレータの側面が開いて二人が出てくる。
「何とか、ですね……」
「厚志よぉ、こんなスキュラって本当に居るのか?」
疲れきった様子だが、それでも勝った。
368四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:11:26 ID:NlYYufVU
厚志に目を向ける。
手駒の強さへの驚きではなく、仲間としての頼もしさが顔に表れていた。
「おお、やってるな」
後ろからの声は瀬戸口のものだ。
スカーフの赤が今の地位を無言で語っている。
善行が関東に戻ったのは一週間前だ。このシミュレータには『人類が逆転する為の第一歩です』
とのコメントが添えられていたらしい。
「こんなのでねぇ……」
瀬戸口はどうにも信じられない、という顔を隠そうともしない。
それを聞いた壬生屋も言った。
「……怪我をせずに高度な訓練が出来るようになる、というのは素晴らしい事だと思うんですけど」
腕を組み、難しそうな顔で瀬戸口は返事をする。
「それは解ってるんだが……。
 善行はな、『成功すれば、貴方が妻帯する前に人類側が絶対的な優勢に立てます』とか
 自信満々に言ってたからな。……こいつで、戦況が急変化するなんて信じられないんだが」
「さ、妻帯……!」
壬生屋は頬を紅く染め固まっている。
緩みそうな口元を引き締めて、私も瀬戸口に尋ねた。
「司令、自然休戦期入りの宣言はいつ頃に?」
「もう三日もあれば出るそうだ。一旦はこの小隊も解散だが、明けてからはまた一緒になるらしい。
 ……原は、そうはならないが」
この男も独自の情報ルートを構築し始めているようだった。
戦闘での指揮は数える程だが、それほど不安も感じられなかったのを記憶している。
滝川と壬生屋は嬉しさ半分悲しさ半分という複雑な表情をしている。ひとりでも欠けてしまう事が
耐えられないようだ、
そして厚志は──僅かではあるが、曇りのある表情だ。
あの日以来、厚志に話しかける人間は増えた。皆は口に出さないまでも、相当な圧迫感を
覚えていたのだ。
私は特別な変化があったとは思えないのだが。
絢爛舞踏勲章を授与された今でも減る事がない。
かつてこれ程までに穏やかなヒーローはいたのだろうか。
369四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:12:10 ID:NlYYufVU
「……森さんも腕を上げてるし、そんなに落胆する事ないよ、滝川」
「でもよぉ……」
念のためと私も瀬戸口に訊く。
「原との連絡は可能なのか?」
「ああ、いつでもな」
声こそは淡々としたものだが、顔はあからさまに嫌がっている。
戦闘での被害状況は筒抜けになるのだろう。小言を聞かされるのも想像に難しくはない。
森は喜ぶかも知れないが。
「そろそろ帰ろうか、舞」
時刻を確認すると、結構な時間だった。
太陽が沈むのが遅い為にまだまだ早い時間だと錯覚してしまう。
「そうだな」
残る三人に目礼し、ハンガーから出た。



歩きながら厚志に話しかける。
「……善行は、本気なんだろうな」
「みたいだね」
善行の策。
あのシミュレータを全国の遊戯施設に売り出すという大胆な思いつきは成功するのだろうか。
維持費などは軍が持つ事が決まっている。国の後押しも加わるなら間違いはないと思われるが……。
あくまでも士魂号の模倣機でしかない。売り出す際には操作方法も簡略化するし、グリフも見る事はない。
他にも商品としての魅力も盛り込む必要もあるだろうが、『幻獣との戦い』を
これほどに再現出来るものは初めてだとか。
370四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:12:53 ID:NlYYufVU
考えるまでもなく大規模なイベントも計画しているだろうし、上位入賞者はそれだけで
士魂号の操縦については『資質あり』と判断されるに違いない。
人型戦車を運用する上で最も厳しい点と言えば、パイロットの育成が難しい事だ。
まともに動くものすら少なく、更には故障時の整備に手間がかかり過ぎる。
両方の問題を回避する為にシミュレータを開発する。この程度ならば誰でも思いつくが、
まさか民間に広めようとは。
「上手く行くといいね」
「……そうだな」
戦争を終わらせる。
厚志の望みは私のものでもあり、全人類の願いでもある。
今こそは私が厚志の手を引いている状態だが、全てが終われば背中を預けてみたいと思う。
……少しだけ、その時を味わいたくなった。
聴力に全神経を集中させる。よし。視界には誰もいない。周辺で動くのは私と厚志だけだ。
──よし。
「………舞?」
驚きと嬉しさの交じり合った声だ。
顔は見れない。手を繋ぐという行為が、こんなにも恥ずかしい事だったとは。
「………」
言葉は続かない。
止まりかけた身体は厚志の手に引かれ、ゆっくりと動き出す。
不思議と嫌な感じではない。
不思議と、嬉しい。
「………」
「………」
休戦期に入れば、これまでとは違う仕事にかかりっきりになってしまうだろう。
のんびりと休める時間は取れないはずだ。
甘えられる時は今しかない。
仕事が終わった午後五時過ぎ。
身体中に広がる快い熱さに、私は気持ちを沈めさせた。

エピローグ 終
371四条 ◆JeifwUNjEA :2005/05/30(月) 00:15:46 ID:NlYYufVU
スキュラvs二番機は思いっきりバーチャロン方面で書きますた
ガングリ方面が一番合ってるとは思うんですけど

読んで下さった方、ありがとうございました
372名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 01:52:07 ID:UBzoPkJw
>>四条氏
あなたは私の心の師匠です。
GJなんて言葉では表現しきれない。GOD JOBを越えてます。
臨場感あふれる戦闘、多角的な物語構成、登場人物の心情の変化、そしてエロさとエロのバリエーション、
字だけでこんなに表現される方がいらっしゃるなんて信じられない。
御馳走様です。絶品です。幸せな時間をありがとうございます。
舞ちゃん(*´Д`)
373名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 14:57:02 ID:JqN0Vi1a
ヤガランテやタングラム戦を思い出すな・・・・・・
乙GJ!!
374名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 22:52:45 ID:XihKL6An
ゲーセンでパイロット候補発掘、というのにあれ?と思ったら
ビンゴでしたか。
エロはもちろん戦闘シーンの描写が神です。超GJ。
375名無しさん@ピンキー:2005/06/06(月) 03:20:10 ID:F3O1CNuL
保守
376OVERS:2005/06/08(水) 14:04:54 ID:o8MSd370
…やっぱ本物の神は違うなぁ。
感想書こうにもイイ言葉が見つからない。
勉強せねば;
377名無しさん@ピンキー:2005/06/15(水) 12:49:15 ID:NjrSANJX
そろそろ1回ageときますね
378名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 23:28:13 ID:z4YuhEnG
ageときますね
379名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 19:30:01 ID:epmcYhyJ
世界はそれを愛とよぶんだぜ
380名無しさん@ピンキー:2005/06/29(水) 20:22:26 ID:laPZh6w5
 
381http://hotel-nozoki.jp/?pee1:2005/06/29(水) 20:23:35 ID:lWBwloQ7
昨日、他スレで話題になった生中継のサイト。
書き込みがあって、関係者から漏れた、テストIDとPAS Sらしよ。
テストなので無料で見れる。ただ、、アクセスが多くて、かなり重たい…。
ホテ ルで、へんなカップルが必死でHをしてた。
id:02020002000 pa ss:2000
id:04040004000 pas s:4000。どちらでも可。受けるから見て!!
382名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 02:15:22 ID:sU4ldX/q
pink鯖ってどれぐらい保守しなくても大丈夫なん?
383名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 21:32:17 ID:wLAF4XkH
週イチで保守してればおkじゃね?
384名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 22:57:37 ID:MM/aoadH
絢爛舞踏祭はこちらでいいですか
385名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 23:40:59 ID:cQROZYf0
世界観共通だから良いと思うよ。
386名無しさん@ピンキー:2005/07/08(金) 09:25:50 ID:AR2XdyF3
イカと女主のお昼寝を
387名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 05:27:42 ID:7Wyaqj43
そろそろ保守?
388名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 11:33:17 ID:nI5l/cBf
保守
389名無しさん@ピンキー:2005/07/17(日) 01:18:01 ID:jrSf3mxb
今加藤でやってるが狩谷×加藤萌える…
390名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 01:13:35 ID:uEoS2vCS
かりかといいよなーwwww
391ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:44:48 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その1>
「──お覚悟くださいね」
向かい合ったときに、百足お銀が最初に言った言葉はそれだった。
それっきり、何も言わず、じっとこちらをみつめている。
(……やりにくい)
七篠(ななしの)家第十三代当主・十三朗は、居心地悪げに身じろぎした。
地獄で<大百足>に封じられていたこの女神を解放したのは彼である。
鉄壁の防御力を誇る鬼は地獄でも屈指の実力者であったが、その正体、銀の瞳を持つ女神は、それ以上に難攻不落だった。
お銀は、天の神の中でもいわゆる保守派、人間との接触を拒み太照天昼子と対立した一派の中心人物の一人である。
「流動的な物事」を極端に嫌う彼女が、政治的な消極性にもかかわらず、高い地位にあったのは、
ひとたび戦いになれば、最高位の神々にも匹敵する戦闘力と、物事に当たって愚直なまでに退かない絶対的な精神力にある。
それは彼女の天上での住処にも表れていた。
古風な造りの邸宅は、あきれるほどに広い。<速鳥>の術を使わねば、奥まで達するのに三日も掛かりそうだ。
山中に埋まる鉱物―金銀鉄の守護者である百足の女神にふさわしい財力の象徴だが、過剰な装飾は一切ない。
しかし、吟味された建材とこれほど広大な館のどこにも塵ひとつ落ちていないことのほうが彼女の性格と実力をよく示していた。
(この女を敵にまわしたら面倒だ)
無表情で、まっすぐにみつめてくる視線だけで、それはうんざりするほどによく分かった。
──十三郎は、交神の儀の経験は多いほうである。
当主であるだけでなく、一族の同世代では際立って優れた素質を持つために、
できるだけ多くの子供を作ることを決められていたので、天上に登るのはこれが四度目の交神になる。
だが、過去に彼が接した女神と比べると、この女神はあきらかに異質だった。
顔立ちは、美しい。意外に幼さを残しているが、顔の造形は、はっきり言って女神の中でもかなり美人の部類に入る。
だが、おおよそ表情というものが浮かばないのでは、女らしさどころか人間味すら乏しかった。
(まるで石か氷でも相手をしているようだよ)
十三郎はため息をついた。
確かに彼女は、石のような鎧を着込んだ氷雪針地獄の主であった
392ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:45:59 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その3>
以来、十三郎は口取りが大好きになった。
野分の前もそれが得意だったし、赤猫お夏も舐めることが得意な女神だった。
(でもこの人は、口でなんか、してくれないだろうなあ)
目の前の女神を眺めて、十三郎は、ため息をつきそうになるのを懸命にこらえた。
「──始めないのですか?」
お銀が問うた。感情がこめられない声に、十三郎は自分でも分かるくらい気分の乗らない声で返事をした。
「いえ、始めましょう」
およそ、愛のない交わり。褥の上に横たわったお銀の肢体を見て、十三郎はそう思った。
装束は夜着に着替えてきたが、地味一辺倒のものに変わりはない。
何より、無言無表情のままで天井を見つめている姿に、七篠の当主は、自分の心が急速に萎えていくのを感じた。
(大丈夫だろうな、相棒)情けない話だが、褌の中の男根はぴくりとも動かない。
ひょっとしたら、人生で初めて「女の前で勃たない」という経験をしてしまうかもしれない。
十三郎はお銀の横に添い寝した。
「……」
真横に来た男に一瞥もくれずに、女神はまっすぐ上を見つめている。
処女は、初めての夜を迎えるときは、ただひたすらに天井のしみを数えて時を過ごせばよい、とは
年増女が嫁いでいく少女にもっともらしく吹き込むことだが、この女神は何を考えているのだろうか。
第一この部屋の天井は、年季は入っているが、汚れや染みのかけらも見つからない。
夜着をはだける。大きすぎず、小さすぎず、形の良い胸乳があらわになった。
手を当ててみる。思った以上に柔らかく、肌理の細やかな肌だった。
ゆっくりと揉みはじめたが、──反応はまったくない。
「……」
「……」
無言のまま、夜着の下のほうまではだけていく。
髪と同じく、つややかな黒色の茂みに守られた秘所をさらしてさえ、女神は無反応だった。
(どうすりゃいいんだろ…)十三郎は泣きそうになった。
393ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:47:28 ID:hFz3BlQ/
だああ!まちがったーorz
394ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:47:56 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その1>
「──お覚悟くださいね」
向かい合ったときに、百足お銀が最初に言った言葉はそれだった。
それっきり、何も言わず、じっとこちらをみつめている。
(……やりにくい)
七篠(ななしの)家第十三代当主・十三朗は、居心地悪げに身じろぎした。
地獄で<大百足>に封じられていたこの女神を解放したのは彼である。
鉄壁の防御力を誇る鬼は地獄でも屈指の実力者であったが、その正体、銀の瞳を持つ女神は、それ以上に難攻不落だった。
お銀は、天の神の中でもいわゆる保守派、人間との接触を拒み太照天昼子と対立した一派の中心人物の一人である。
「流動的な物事」を極端に嫌う彼女が、政治的な消極性にもかかわらず、高い地位にあったのは、
ひとたび戦いになれば、最高位の神々にも匹敵する戦闘力と、物事に当たって愚直なまでに退かない絶対的な精神力にある。
それは彼女の天上での住処にも表れていた。
古風な造りの邸宅は、あきれるほどに広い。<速鳥>の術を使わねば、奥まで達するのに三日も掛かりそうだ。
山中に埋まる鉱物―金銀鉄の守護者である百足の女神にふさわしい財力の象徴だが、過剰な装飾は一切ない。
しかし、吟味された建材とこれほど広大な館のどこにも塵ひとつ落ちていないことのほうが彼女の性格と実力をよく示していた。
(この女を敵にまわしたら面倒だ)
無表情で、まっすぐにみつめてくる視線だけで、それはうんざりするほどによく分かった。
──十三郎は、交神の儀の経験は多いほうである。
当主であるだけでなく、一族の同世代では際立って優れた素質を持つために、
できるだけ多くの子供を作ることを決められていたので、天上に登るのはこれが四度目の交神になる。
だが、過去に彼が接した女神と比べると、この女神はあきらかに異質だった。
顔立ちは、美しい。意外に幼さを残しているが、顔の造形は、はっきり言って女神の中でもかなり美人の部類に入る。
だが、おおよそ表情というものが浮かばないのでは、女らしさどころか人間味すら乏しかった。
(まるで石か氷でも相手をしているようだよ)
十三郎はため息をついた。
確かに彼女は、石のような鎧を着込んだ氷雪針地獄の主であった。
395ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:48:28 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その2>
十三郎は、手持ち無沙汰と言うように、懐や袖口をいじった。
七篠の当主としては初の大筒士の出身の彼の、愛用の武器<戦管大和>は、控えの間に置いてきてしまった。
別に交神の儀に必要なものではないが、会話も続かぬ時間に手元にあればどんなに落ち着くことだろうか。
(──ああ、野分の前の時とか、赤猫お夏の時は、良かったな…)
思わず以前に交わったことがある風と火の女神のことを思い出してしまう。
どきりとするような胸元と、奔放そのものの腰使いが魅力の野分の前と、
油断ならないが、うまくのせれば閨では楽しい相手に変貌する赤猫お夏との交神はすばらしいものだった。
種類は違うが、二人とも、女そのものの色気を惜しげもなくふりまく女神である。
それと比べてしまうと、お銀のさっぱりと纏め上げられた黒髪と、飾り気のない茶色の地味な装束までもがうらめしく見える。
(──交神の相手があの人だったらなあ…)
ふと、十三郎は、自分の初体験のことを思い出した。

十三郎のはじめて交神の儀の相手は、敦賀ノ真名姫である。
七篠家に解放され、親七篠の神々のリーダー的存在になっている彼女は、代々の当主の筆おろし役も務めていた。
十三郎の前の何代かは七篠の血の資質が傾きすぎていたため、彼女はその役を遠慮していたが、彼の代で、またその役に復帰した。
天界屈指の美しさを誇る女神に「女」を教えてもらった自分は、幸運だったのかもしれない。
もともと優しく情熱的な女神であるが、久しぶりに枕席に侍ったこともあって、真名姫の尽くしぶりはすごいものだった。
「私ね、人魚だったころ、見世物小屋でさんざんお客を取らされたんだ。
──でもほら、人魚って下の穴が分かりづらいでしょ?
みんなお口でしようとするから、私、お口でするのがすごく得意になっちゃった。
んん…。イきたくなったら遠慮しないで出していいよ、全部飲んであげるから…」
凄惨な過去を、自分で明るく茶化しながら十三郎の男根を咥える真名姫に、初体験の少年は天にも昇る気持ちで精を放った。
真名姫は、少年の青臭い樹液を、喉を鳴らして飲み干した。
396ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:48:52 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その3>
以来、十三郎は口取りが大好きになった。
野分の前もそれが得意だったし、赤猫お夏も舐めることが得意な女神だった。
(でもこの人は、口でなんか、してくれないだろうなあ)
目の前の女神を眺めて、十三郎は、ため息をつきそうになるのを懸命にこらえた。
「──始めないのですか?」
お銀が問うた。感情がこめられない声に、十三郎は自分でも分かるくらい気分の乗らない声で返事をした。
「いえ、始めましょう」
およそ、愛のない交わり。褥の上に横たわったお銀の肢体を見て、十三郎はそう思った。
装束は夜着に着替えてきたが、地味一辺倒のものに変わりはない。
何より、無言無表情のままで天井を見つめている姿に、七篠の当主は、自分の心が急速に萎えていくのを感じた。
(大丈夫だろうな、相棒)情けない話だが、褌の中の男根はぴくりとも動かない。
ひょっとしたら、人生で初めて「女の前で勃たない」という経験をしてしまうかもしれない。
十三郎はお銀の横に添い寝した。
「……」
真横に来た男に一瞥もくれずに、女神はまっすぐ上を見つめている。
処女は、初めての夜を迎えるときは、ただひたすらに天井のしみを数えて時を過ごせばよい、とは
年増女が嫁いでいく少女にもっともらしく吹き込むことだが、この女神は何を考えているのだろうか。
第一この部屋の天井は、年季は入っているが、汚れや染みのかけらも見つからない。
夜着をはだける。大きすぎず、小さすぎず、形の良い胸乳があらわになった。
手を当ててみる。思った以上に柔らかく、肌理の細やかな肌だった。
ゆっくりと揉みはじめたが、──反応はまったくない。
「……」
「……」
無言のまま、夜着の下のほうまではだけていく。
髪と同じく、つややかな黒色の茂みに守られた秘所をさらしてさえ、女神は無反応だった。
(どうすりゃいいんだろ…)十三郎は泣きそうになった。
397ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:49:19 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その4>
──ぴしゃ。
遠くで水音がした。
どれくらい長い間、人肌のやわらかさを持った石のごとき女神の身体を愛撫していたのだろうか。
十三郎はその音で我に返った。
──どこかで、その音を聞いたことがある。
あれは確か……。

(──女はね。各々がまったく違う生き物と思いなさい。特に、女神は、ね)
天界屈指の美貌を誇る人魚の女神は、いたずらっぽく笑いながら、初体験を終えたばかりの少年に寝物語してくれた。
透き通るような水面を、その優美な尾で軽く叩いて、水しぶきと、あの水音を立てながら。
(みんな、好きなものも嫌いなものもまったく違うし、その示し方だって全員ちがうわ)
忘我流水道で解放された女神は、年若い七篠の当主の髪をなでながら、様々な事を教えてくれた。
夢うつつの中で何を教えてくれたのか、今まですっかり忘れていたが、不思議とその一節だけは思い出すことができた。
(大嫌い、が大好きの裏返しの女神もいれば、無関心がものすごい執着の裏返しの女神もいるの)
(──大切なのは、表面に見えるものに囚われないこと)
(……私を助けてくれたあなたのご先祖様は、腐りかけた人魚の屍体の中に私を見出してくれたわ)
ぴしゃ。
敦賀ノ真名姫は、優しい水音を立てながら、十三郎にそう教えてくれた。

「……池が、あるのですか?」
水面を叩くその音は、たしかに、魚が跳ねる音に聞こえた。
「──少し離れたところに」
必要な答えを必要最小限だけ返す女神は、天井を見つめたまま、ちょっと考えて続けた。
それがどれほどに珍しいことか、十三郎は知らない。知らないから会話は流れるように続いた。
「──あの池の魚が、夜に跳ねるのは珍しい。私は、はじめて聞きました」
「館の主がそういうのなら、魚ははじめて跳ねたんじゃないですかね」
枕の上でお銀は静かに頭を振った。
「私は長らくここを留守にしていたから、魚はずっと昔から跳ねていたのかもしれない」
398ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:49:55 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その5>
「留守──?」
「私は、ずっと地獄にいたから」
「ああ、そう言えばそうでしたっけ」
地獄に落ちたお銀を解放したのは、他ならぬ十三郎である。
しかし、目の前の美しい女神と、巨大なムカデの化物とは容易に結びつかず、言われてやっと思い出した。
まだまだ真名姫の言うところの「表面」に囚われているのかもしれない。
「──」
お銀が、そっと首を動かした。
何か言いたげに唇が動いた──ように思えたが、十三郎は、それを確認できなかった。
お銀の、瞳をまっすぐに見てしまったからだ。
この強力な女神の名は、その瞳の色から取ったのかもしれない。
「……」
胸乳を愛撫し続けていた手が止まった。
はじめて気付いた。──この女神は、今まで見たどんな女よりも、美しい。
十三郎は、吸い寄せられるようにお銀の美貌に自分の顔を近づけた。
美しいものをもっと間近で見たい。本能に近い、そんな想いだったのだろうか。
だとしたら、女神に近づきすぎた十三郎の唇が、お銀のそれに重なったのも、やはり本能だったのだろう。
「あ……」
百足お銀は、はじめて声を上げた。
その声を、十三郎は、もっと強く女神の口を吸うことで封じた。
「んん……」
お銀の目が見開かれた。
陶磁のように白く冷たい頬が、たちまち桜色に染まる。
──ぴしゃ。
どこかで水音がしたが、二人にはもう聞こえなかった。
──ぴしゃ。
どこか満足げに、池の魚はもう一度跳ねたようだった。
399ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:50:25 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その6>
口付けを交わしているうちに、相手に変化が現れたことに、七篠の当主は驚いた。
お銀は、あきらかに、変化していた。
石のように他を拒絶していた肌が汗ばみ、上気している。
重ねる唇から漏れる吐息さえも、それまでの無味無臭から甘やかにかぐわしく変わっている。
(──もしかして)
十三郎の脳裏にひらめいたものがあった。
一度唇を離す。桜色に染まったお銀の美貌を見つめながら、口の中に唾液を溜める。
再度口付けした際に、それをお銀の口中に流し込んだ。
「──!!」
効果はてきめんだった。
お銀は目を一杯に見開いた。裸身がびくん、と跳ねた。
「…あ……ああ、あ…」
唇を離さず抱きすくめる。お銀のあえぎ声が十三郎の口の中で溶けた。
お銀は、観念したように目をつぶった。十三郎の唾液を飲み込む。
女神は、断末魔の蟲のようにびくびくと身体を震わせて褥の上に崩れ落ちた。
今まで完全に不感症だった女神が、口付けだけで達したことを悟った十三郎は、憶測を確信に変えた。
お銀は、唾液に弱い。
──古来、ムカデの弱点は人の唾だと言われる。
この女神の化けた大百足には遠く及ばないが、三上山に棲む巨大な百足は、鏃に唾を塗った矢によって斃された。
唾液は、ムカデの硬い殻を弱める力があるとも言う。
お銀には──身にまとった心の鎧を溶かす効果があるのか。
十三郎はお銀の首筋に舌を這わせた。
完全に脱力しきったお銀の肢体が、また跳ね上がる。
金縛りにあった女神をもてあそぶように、お銀の肌をゆっくりと舐め上げていく。
首筋から、鎖骨のくぼみ、肩、腕、指先は一本一本を丁寧に口に含む。
わきの下を唾液まみれにしてやると、お銀は続けざまに気をやった。
十三郎は、自分が<水>の素質が高い半神であることに感謝した。
体液の分泌は多いし、それを調節もできる。お銀の全身に唾液を塗りたくることくらいは朝飯前だ。
400ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:50:57 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その7>
「んん──!」
十三郎の唾液を塗りたくられたお銀は、白い肌を羞恥の色に染めて悶え狂う。
胸乳をなぶる。
先ほどの愛撫では僅かな反応さえもしなかった身体が、これ以上がないくらいに乱れる様を十三郎は堪能した。
鴇色の乳首を口に含み、吸い上げると、女神は声を上げてのけぞった。
白い滑らかな腹を、太ももを、足指をくまなく舐め上げた十三郎の舌が、長い旅路の果て、最後の目的地に近づいた。
「──そ、そこは……」
十三郎の意図を悟ってお銀は小さく悲鳴を上げた。
首筋や胸乳を舐められただけで、これほどの官能を与えられているのに、
性器そのものに十三郎の唾液を直接塗りつけられたら、一体自分はどうなってしまうのか。
(本当に狂うかもしれない)
お銀は怯えた。
だが、その怯えには、抗うことのできない甘やかな諦念が混じっていた。
しびれたように力の入らない身体を懸命に動かし、お銀は自分から下肢を大きく広げた。
十三郎は、お銀の白い太ももの奥に顔をうずめて、相手が望んでいることをしてやった。
「ひあっ!!」
お銀が続けざまに達する様は、秘所に吸い付いた十三郎には見えなかったが、唇と舌とで十分に感じることができた。

「ああ、あああ……」
それからの小半時は、お銀にとって地獄と天国だった。
身を焼くような媚薬の原液を身体の外と中に注ぎこまれ、何度も絶頂に導かれる。
麻痺している身体が、純粋な反応だけでうねり、悶え狂う。
これが無言無表情で知られた女神か、と思うほどにお銀の反応は激しかった。
最初は同じ方向に重なるように添うていた二人が、いつのまにか、頭を互いにして仰臥する形になるほどに。
「──」
執拗に自分の性器を責める十三郎の舌戯に霞みきった瞳で、お銀は目の前のものを見つめた。
女神の痴態を見て大きくそそり立った十三郎の男根を震える手で握り、お銀はそれに口付けした。
401ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:51:39 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その8>
「──え?」
女神の秘所を夢中になって責めあげていた十三郎は、突然自分の下半身に与えられた快楽に驚愕した。
お銀が、十三郎の男根を口に含んでいる。
今まで経験した女神のそれと比べれば、ぎこちないものであったが、
歯を立てぬように丁寧に舐め上げる舌と唇に、七篠の当主の男性器はたちまち最大限まで膨張した。
──お銀が、自分に口取りをしてくれている。
十三郎の興奮も一気に盛り上がった。
昂ぶりきった気持ちの前では、性技の巧緻など何も関係なかった。
半神の男と女神は、互いの性器をむさぼりあった。
やがて──
お銀がもう何十回目かの絶頂を迎えるのと同時に、十三郎も精をお銀の口の中に放った。
「んんっ──」
<土>の女神は、唇から溢れんばかりの大量の子種を必死に飲み込む。
明らかに、そうした行為に慣れていない女が相手のために努力している様子に、男はどきりとした。
「……は…ぁ」
視線が定まらないお銀が、息も絶え絶えに唇を離す。
お銀の艶やかな唇と、十三郎の男根とが、銀色の糸でつながれる。
十三郎は、女神に抱きついた。
倒れこむように、お銀は褥の上に横たわった。交わりのはじめの如く。
しかし、その潤んだ瞳は、もう天井ではなく、今は十三郎を見つめている。
「……後生…です。お情けを……とどめを…刺してください」
「ええ、僕も──あなたの中に入りたい」
お銀の痴態に十三郎の「男子の大砲」も準備万端だった。
今したたかに精を放ったばかりとは思えない硬度と大きさを保ちながら自分の内部に入り込んでくる
十三郎の男根に、女神は、押し殺した声を上げた。
やがて、その声がすすり泣きに変わり、歓喜の声に変わり、お銀は七篠の当主の子種を自分の子宮に迎え入れた。
402ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:52:10 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その9>
後朝(きぬぎぬ)の別れ──。
昨晩の痴態が嘘のように、お銀は自分を取り戻していた。
また無言無表情になった女神に、十三郎は、また声も掛けられずにいた。
わずかに違うのは、二人が朝食の席をともにしていることだった。
昨晩は──たしか、控えの間で休息がてら一人で酒食をとったような気がする。
質素だが身体にはよさそうなものばかりが並ぶ食卓で、ぎこちない時間が流れる。
「──」
椀を空にすると、お銀が手を差し伸べてそれを受け取る。
飯や汁が充たされて戻ってくる椀を受け取り、また食べ始める。
お銀の給仕は完璧だ。
自分の椀に視線を落としている女神は、どう考えてもこちらを見ている風に思えないのに、
十三郎にぴったりと息が合っている。
何か言わなければならないような気がしてならないが、何を言えばいいのか分からない。
そろそろ腹もいっぱいになりつつある。食事が終わり、別れのときが近づいているのに。

──ぴしゃ。
またどこかで、魚が跳ねる音がした。
「──」
「──」
水音に、視線をあげた二人が、今日始めて互いの顔を見つめあった。
どちらからということもなく、ため息が漏れる。何かに観念したように、二人は会話を始めた。
「……おせっかいな人がいるようですね」
「やっぱり、あの人かな」
「たぶん──そうでしょう。あなたに勇気を与え、私に嫉妬させる水音です」
「……嫉妬?」
「あなたの心の中に居る女は、全て私の嫉妬の対象です」
百足お銀は、銀の瞳でまっすぐに十三郎を見つめた。
まっすぐ一本だけ。この女神は無口だが、口を開いたときは一切の駆け引きをしない。
403ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:52:39 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その10>
「……ええと、その…」
十三郎は困惑の極致に陥った。何か言わなければ──。
「……やっぱり、百足の女神様だね。唾に弱かったんだ」
昨日のことを言おうとして、最悪の言葉を選んでしまったことに、七篠の当主は青くなった。
神に本性のことについて述べるのは一番の非礼に当たる。
唾液を塗られたお銀の反応の美しさや可愛らしさを、どうしたら生々しさを避けて褒めることができるのか、
それに気を取られたあげく、とんでもないことを口走ってしまった。
「──ちがう」
お銀は激しく頭を振った。だが、非礼を怒っている様子ではない。
間違いを知って欲しい、正しく認識して欲しいと強く想う女の反応。
「私は、唾に弱いのではない。──つがいになる男の唾に弱いだけ」
「──え?」
「私が化身した大百足を斃し、解放した人。天上に戻るとき決めていました。──私がつがいを得るとしたら、その人だけ。
拒まれたら、朽ち果てるその日まで私はずっと独り身ですごします。百足は、生涯に一体しかつがいを選ばぬ蟲だから」
「……」
「私は…あなたとつがいになりたい。──あなたは、どうなのですか?」
「……あ、ああ、ええ。──もちろん、喜んで」
反射的に答えた十三郎は、目の前の女神がぱっと喜色を浮かべたのを呆然と眺めた。
よく考えもしないで答えた言葉の重大性に気がついたのは、
お銀が膳をずらし、畳の上に額ずきながら言った言葉を聞いてからだった。
「では──。二人が朽ち果てるその日まで、末永くよろしくお願いいたします。
言うまでもないことだと思いますが、私は天界で最も執念深い女です。つがいとなる以上、──お覚悟くださいね」

七篠十三郎が天界に登って新たな神になったとき、神々たちは震撼した。
すでに一族から多くの神を生み出している七篠から、さらに強力な神が生まれたということも衝撃であったが、
十三郎が神になるやいなや随身を申し出た一人の女神の存在に、天界の派閥、とくに保守派は大きく動揺した。
404ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:53:15 ID:hFz3BlQ/
<七篠家十三代当主・十三郎 その11>
その女神──百足お銀は、離反をなじる保守派の神々を銀色の瞳でまっすぐとみつめた。
それから、いつもと変わらぬ無表情で、自分はこれから七篠派になるということを淡々と宣言し、
「以後、七篠に害意を抱く方はすべて私の敵となります。──お覚悟くださいね」
と言う一言で締めくくった。
お銀の瞳と言葉には、彼女の長い生涯においていつもそうであったように、まったく揺るぎというものがなかった。
保守派の神々は戦慄とともに、お銀への説得をあきらめた。
この女神は、天地が滅びようとも決して変心しまい。事実、地獄に落とされても自分の信念を少しも曲げなかった女だ。
敵にまわせば、相手の息の根を止めるまで、いつまでもあきらめない。この世で一番厄介な敵になる。
そして百足は、生涯雌雄で行動をする。片割れが殺されれば、連れ合いは必ずその復讐に現れる。
最も小さく弱い種類のものでさえ、つがいを殺されれば、自らの命を捨ててまで何万倍の大きさの人間を刺し、その毒で苦しめる。
いわんや、この最強の女神は──。保守派の神々は身震いして立ち去った。

(……ただし、味方にするのにも覚悟がいるんだよなあ)
先日、神となったばかりの男はひとりごちた。
傍には、無言無表情の女神が常に侍っている。
飽かず倦まず、ただもくもくと彼の世話を焼き続けるお銀にはばかって、他の女神たちは誰一人として十三郎に近づこうとしない。
──ひょっとしたら、自分は貧乏くじを引いたのではないか。
天界に登るとき、好色な女神たちとの悦楽の日々を考えなくはなかった十三郎としては、何となく騙されたような気がしないでもない。
(……だけど、まあ、これはこれでいいか)
そう思い直したのは、今、ちらっと目が合ったときに、お銀が頬を染めて小さく微笑み返したからだ。
すぐに石のような無表情に戻ったが、彼女のそんな表情を見ることが出来るのは天界広しといえど自分ひとりだけだ。
──それに、お銀は、閨の中ではどんな女神よりも可愛い。
405ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/07/18(月) 11:57:22 ID:hFz3BlQ/
順番貼り間違えました。
>>391-392は無視してください。何やってんだろ、俺・・・orz

百足お銀さんは、俺屍で一番好きな女神の一人です。
最強ツンデレ無口っ子ということで。
解放できるのがゲーム終盤も終盤なので、あまり子供を産ませられないのが残念。
406名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 13:24:07 ID:z01IvIZd
ビ バ ツ ン デ レ
乙!
407名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 13:57:22 ID:BpvHRMEg
おいおい、昼から何をエロエロしてるんだ。
GJ
408名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 15:30:57 ID:uI0ik2yS
保管庫管理人さまのために作品名とタイトル、カップリングの表記をお願いします。
409名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 19:30:02 ID:v86HwDCK
>>405
GJ!!!
ネ神、最高です!
410名無しさん@ピンキー:2005/07/20(水) 04:33:18 ID:LrJGrCxM
ageときますね
411名無しさん@ピンキー:2005/07/21(木) 01:09:20 ID:jE5t7Zxm
ゲーパロ専用様、いつも素晴らしい小説を
ありがとうございます。

今度は男神との話が見てみたいです。
ウホッ じゃないやつでひとつ。
412名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 05:02:36 ID:LqxOmP3F
人民元が対$2%切り上げて通貨バスケット制に突入した件について
413名無しさん@ピンキー:2005/07/25(月) 01:45:31 ID:nwZngfid
さて、ageるとするか…
414名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 23:15:07 ID:GLXUwp46
絢爛舞踏祭に萌えはあったのか(*´Д`)ハアハア
415名無しさん@ピンキー:2005/07/28(木) 02:12:20 ID:A641lavm
舞踏子×誰でもいいから男キャラのSSきぼん。
ポー教授不可。イカ可。
416名無しさん@ピンキー:2005/07/28(木) 08:36:08 ID:1cvtlj0E
ぬこ先生もありなのネーウ
417名無しさん@ピンキー:2005/07/28(木) 23:13:26 ID:kur1jFJe
イカはありなのかwww
418名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 20:31:59 ID:zWfCHp+X
>>415
あからさまな欲求不満女子ワロス
419名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 22:40:08 ID:9b6D9IW0
ガンパレ続編キタワァー
420名無しさん@ピンキー:2005/08/02(火) 19:39:29 ID:tDw1vC5n
このスレがあったことに気付かず、こちらにヤガミ×エステルを投下してしま
いました。需要があるか、わかりませんが、ご笑納ください。

スレが無い作品のエロSSを書くスレ 3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1109471728/180-196
421420:2005/08/02(火) 19:46:52 ID:tDw1vC5n
>>408
失礼しました。
作品は絢爛舞踏祭です。
タイトルは…「エステルの性教育」かなぁ(なんだそれは)。

よろしくお願いいたします。
422名無しさん@ピンキー :2005/08/03(水) 17:43:20 ID:qQrkDAel
向こうのスレに誤爆してしまった・・・OTL

>>420
乙!
GJでした!

描写が丁寧でよかったです。
続きも呼んでみたいですね〜。
423名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 19:11:06 ID:vCk+CMzt
俺屍、男神×女一族って需要も供給もあんま無し?
424名無しさん@ピンキー:2005/08/03(水) 19:43:32 ID:SDAFz6WY
>423大いに需要はあります!
もし書くのであれば攻略本のどの娘なのか教えてくれると嬉しいですね
425420:2005/08/03(水) 23:33:57 ID:mh2JX1bK
>>422
感想ありがとうございます。

脳内映像を文章に落としてるんで、あれでも実は描写としては抜けてるんですが、
あれ以上書くのはつらくて…。あとは表現能力の限界でなんかなんか、なんです。
精進しましょう。

続きは最後一応締めちゃったんで、書くとしたら、少し慣れた後?
SEXから始まってしまったけど、それでいいのか、みたいな。
それはそれでエロいかもw
萌え神さまが降りてきたら書きます。
426名無しさん@ピンキー :2005/08/03(水) 23:39:35 ID:qQrkDAel
>>425
お待ちしとります〜。
427名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 02:21:37 ID:4HmE22C5
四条氏てここ以外に投下されてるスレあるのかな?
またこの人のSS読みたいよ。
428四条 ◆JeifwUNjEA :2005/08/05(金) 03:35:53 ID:JgpLPf5S
漏れがレスして良いのか?と思いつつ
>>427
このアルファスレ以外だと
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://sslibrary.gozaru.jp/
のシチュ別にいっこだけあります
コテとトリは全く同じなんですぐ解ります
保管庫に収容されてないスレにも投下はしてますが、こっちは万人向けじゃないのでパス

絢爛舞踏祭をプレイする余裕なしの毎日だぜ! フゥハハハーハァー
ハァー……orz
429K:2005/08/05(金) 12:38:13 ID:xsNC4qQc
自サイトに上げる予定の「絢爛舞踏祭」ヤガミX舞踏子(名前はマイ)18禁小説です。
ヤガミエロSSが増える事を祈って、フライング投下します。
ちなみにエロなし長編の番外編ですが、これ単品で充分楽しめるようにしてあります。
長いですが、ご容赦下さい。
430K:2005/08/05(金) 12:39:21 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-01)

マイは自室で本を読んでいた。
数週間前の戦闘で左腕を負傷したマイは命令違反の罰という名の静養をしていた。
傷ももうほとんど完治しているからそろそろ戦線復帰も出来るだろうと思う。
マイが本を読むのに飽きて、ベッドから起き上がったその時、自動ドアの開く音がした。
誰だろうかと思って、ベッドから降りるとヤガミがこちらに歩いてくる所だった。
ヤガミが目の前に立つ。
「どうだ、腕の調子は?」
「うん、順調だよ、サーラももう大丈夫だと言っていた」
「見せてみろ」
「えっ?」
「恥ずかしいのか?」
ヤガミが馬鹿にしたように鼻で笑う。
「そ、そんな事ないわよ!」
マイは内心鼓動を高まらせながらも太陽系総軍のジャケットを脱ぐ。
そして、羞恥に頬を紅潮させながらも白いブラウスのボタンを外すと、シャツを脱いだ。
ヤガミの目の前に左腕を突き出す。
ヤガミは優しくマイの二の腕を掴んだ。
「包帯を解くぞ」
「うん」
ヤガミが丁寧に包帯を解いて、ガーゼを外した。
数週間前まで血の固まった生々しい傷があった場所には歪に歪んだ瘡蓋の張った皮膚があるだけだった。
431K:2005/08/05(金) 12:41:51 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-02)

「やはり痕が残るな……」
「私の本当の体じゃないからいいよ」
「だけど、ここにいるまでの間はお前の体だろう」
「確かにね、だけど、責任を持って、私をもらってくれたからいいよ」
マイはそういうと、嬉しそうに微笑んでヤガミの腕に抱きついた。
「まだ嫁ではないがな」
「痛っ!?」
マイは唐突に叫んだ。
「どうした?」
マイはヤガミの腕から手を離して、瘡蓋のある二の腕を掴んだ。
ヤガミの服に引っ掛かって、瘡蓋の一部が剥がれていた。
そこから血が滲んでいる。
「馬鹿な奴だな」
「その言い方はないでしょ?」
痛みから目の端に涙を溜めていると、ヤガミが唐突にマイの二の腕を掴んだ。
顔を近づけたと思った瞬間、その血を舐める。
「ヤ、ヤガミ!?汚いから止めて」
「俺は気にしない」
「あなたが気にしなくても私は気にするの!」
マイが真っ赤な顔をして、大声を出すとヤガミはようやく止めた。
二の腕を掴んでいた手を離す。
432K:2005/08/05(金) 12:45:54 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-03)

「あっ……」
「どうした?」
ヤガミの唇がマイの血で濡れている。それがエロイなと思っていたら、声に出てしまった。
「……唇に血がついている」
マイはヤガミの唇に触れると、指先で血の痕を拭った。
その瞬間、唐突に抱き締められる。
「ひゃっ、ヤガミ!?」
「……医務室でも思ったが、お前は無防備過ぎないか?」
突然の話の転換にマイは驚く。
「何の事?」
「男と二人きりの空間でいつまで下着姿のままいるのかという事だ」
マイはそういわれて、途端に恥ずかしくなった。
「いやっ!」
何とかヤガミの胸の中で両手を動かして、胸を隠すが谷間を寄せる結果になってしまって、益々いやらしい姿になってしまう。
「マイ……」
ヤガミが甘い声で名前を呼ぶ。それだけで心が蕩けてしまいそうになる。
ヤガミはマイの顎を上向かせて、唇を重ねた。
歯列を割って、深く舌を求める。
何度も何度も角度を変えて、求めた後、マイはヤガミから解放された。
ヤガミの手がブラジャーのホックに掛かった。
数週間前、医務室で自然にここまで進んだ。
しかし、あの時はいつ誰が来るかも分からない恐怖があって拒んだ。
しかし、今は二人の間に拒む理由はない。
ブラジャーのホックが外されて、胸がヤガミの視界に晒される。
433K:2005/08/05(金) 12:46:27 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-04)

「……綺麗だ」
ヤガミは感嘆したような声を上げた。
お椀型の小さ過ぎず、大き過ぎない美乳の中央に桃色の乳頭が立っている。
ヤガミは大きな手で乳房に触れた。マイが反応して、ビクッと体を震わせる。
マイの乳房はヤガミの手にすっぽりと収まってしまった。
人差し指と中指の間で乳首を摘む。その瞬間、快感が電流を流されたように全身に流れる。
「……あぁんっ…ヤガミっ……」
「感じているのか?」
マイはコクリと頷く。
ヤガミはフッと笑って、悪戯を続ける。
「それじゃあ、これはどうだ?」
今度は人差し指と親指の先で摘んで、爪で優しく刺激する。
「……やあああ…だめええ……」
マイは鋭い快感に身じろいで、ヤガミの服を握り締める。
膝がガクガクと震えて、まともに立っている事も出来ない。
「フッ、可愛いな」
ヤガミはマイの腰を抱くと、徐にマイの耳朶を甘噛みした。
わざと音を立てながら、舌で耳朶を嬲る。
「……はぅんっ…んんっ…んんっ……」
腰を抱いていたヤガミの手が滑り、タイトスカートのホックを外す。
そして、ファスナーを下ろしたら、タイトスカートを擦り下ろした。
そのまま、ストッキングにも手を掛けて、足首まで一気に下ろす。
マイは無意識に足を上げて、ストッキングを吹き飛ばした。
もうマイの身体を包んでいるのはパンティー一枚だけである。
ヤガミはその姿に口の端を吊り上げると、ベッドに横たわらせた。
434K:2005/08/05(金) 12:46:59 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-05)

その姿を眺めながらヤガミは黄色のジャケットを脱いで、下に着ていたシャツも脱いだ。
ベルトを外して、ホックも外して、ファスナーを下ろすと、一気にズボンも脱いでしまう。
マイは思わず、息を呑んだ。
黒色のボクサーパンツが大きく張り詰めている。
現実世界での事だが、マイも男性経験は何度かある。
しかし、その相手の誰よりもヤガミのものは大きいように見えた。
ヤガミがベッドの上に乗って、マイの手前に膝をつく。
ヤガミは躊躇なく、マイの両膝を掴むと股を広げさせた。
「……やあああ…だめええ……」
羞恥から思わず、声が出る。パンティー越しとはいえ、ヴァギナの形がヤガミの目に晒されている。
それ以上にマイはパンティーにいやらしい染みを作っている事に気付いていた。
何故、白を基調とした下着を今日穿いていたのだろうと思う。黒ならまだ触れられるまでは分からないのに。
「いやらしい染みがあるな」
「……いやぁぁぁ…言わないで……」
「事実だろう?」
ヤガミが楽しそうに笑う。どうやら、ヤガミはSの気があるらしい。
そういう自分はMの気が少なからずあるのだけれど。
ヤガミが足を大きく広げさせると、徐にパンティーに触れた。
いやらしい染みを作った部分に指が触れたと思った瞬間、爪が上に滑り、そのままクリトリスを刺激した。
「……あぁぁっ!あぅ……あっ、あ……ああっ……」
マイはガクガクと膝を揺らすとそれだけでいってしまった。
「もういってしまったのか?本番はまだまだこれからだぞ」
マイは羞恥心に顔を赤くする。義体だから恐らく、処女なのだと思うけど感度は抜群だった。
ヤガミがよほど上手いのか、マイが感じやすい体質なのかは分からない。
実際の話、マイは何度かの男性経験を得ているがここまで感じた事もなかった。
435K:2005/08/05(金) 12:47:52 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-06)

「つ……続けて……」
マイが声を震わせてそういうとヤガミは苦笑した。
「ああ、お前が何度いこうが元からそのつもりだ」
ああ、大変な人を好きになってしまったかもしれない。
ヤガミは徐にマイの太腿を下から掴むと、広げさせて、パンティーに顔を近づけた。
いやらしい染みがある部分にヤガミの舌が這わさせる。
「……あんっ、はぁんっ…あぁんっ、あんっ……あぁーんっ!」
チロチロとまるで、蛇の舌のように執拗に攻められる。
直接、舐められるよりも布擦れがあって断然気持ちいい。
空に飛び上がっていくような快感が下から上がってくる。
ああ、またいってしまう。マイは思わず、ベッドを掴もうとして、掴めずに爪を立てた。
「あぁーっ! いくっ、いくぅぅーっ! あぁぁぁっ……」
マイは凄い勢いで上がってくる快感に身を委ねた。
痙攣しているように身体がビクッビクッと震える。
「またいったな」
「…うーん……」
返事なのか、吐息なのかももう分からない。
マイは股を開いたあられもない姿のまま、ぐったりとしていた。
マイの愛液でベッドはいやらしく濡れている。
ヤガミは苦笑して、マイの顔に近づくと額に口付けた。
それから、徐にパンティーを脱がすと、それを捨てた。
436K:2005/08/05(金) 12:48:24 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-07)

「綺麗な色だ」
マイの愛液で既にべちょべちょの状態であったが、秘裂は綺麗なピンク色をしていた。
クリトリスなんてまるでピンク色をした真珠のようである。
ヤガミのものを待ち構えているようにヒクついているヴァギナは置いておいて、真珠のようなクリトリスに触れる。
その瞬間、マイの身体が刺激に反応して、ビクッと震える。
親指で潰すようにクリトリスを捏ねくり回す。
「あんっ……あぁっ、はぁっ……」
気持ちいいと思った瞬間、ヤガミは唐突にクリトリスから手を離した。
思わず、マイは目を見開いた。今までの執拗な攻めからは考えられない。
もしかしたら、自分の身体を少しでも気遣ってくれているのだろうか?
そんな事を考えていたら、ヤガミの指先が入り口にあてがわれた。
「挿れるぞ?」
「うん」
ベッドに垂れるぐらいに溢れた愛液のおかげでヤガミの指は意外にスムーズに挿入を果たした。
第二間接まで挿入していた指が今度は根元まで挿入される。
「あんっ、あんっ……あーんっ!」
気持ちいいけどまだ足りない。
奥がムズムズして、もっともっと刺激が欲しいと思ってしまう。
「もっと…もっと…し…て……」
「大丈夫なのか?」
マイはコクリと頷く。
ヤガミは苦笑して、人差し指も追加する。
437K:2005/08/05(金) 12:48:58 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-08)

「あぁぁっ!……あっ、あっ……あんっ」
膣壁がギチギチと音を立てながらもヤガミの指を根元まで飲み込んでいく。
ヤガミは膣壁を刺激するように指を前後させて、膣壁を擦る。
やがて、膣壁で前後していた指が愛液を掻き混ぜるように回される。
「あんっ、あぁんっ……あんっ、あっ…あっ、あんっ!」
ああ、またいきそうだ。ヤガミの激しい攻めに快感が上がってくる。
それに呼応して、膣壁が収縮して、ヤガミの指を締めつける。
いく!と思った瞬間、ヤガミはあっさりと指を引き抜いた。
今まで膣壁を圧迫していた指が抜けて、ヴァギナにぽっかりとやらしい穴が開く。
マイはいけそうでいけなかった感覚に股を大きく開いて身悶えた。
だけど、マイは指よりももっといいものがある事を知っている。
愛しい人の分身がある事を知っている。
ヤガミはベッドに膝をつくと、ボクサーパンツを下ろした。
すると、完全に勃起した極太のペニスが血管を浮き出させた状態で飛び出した。
マイはそれを見ただけで膣壁をヒクつかせてしまう。
ヤガミはベッドに座ると、ボクサーパンツを脱いで捨てた。
「あっ…もう、ダメぇ……ヤガミ……私、我慢、できない……」
「どうして欲しい?」
ヤガミが極上の笑みで微笑む。
知っているくせに意地悪だ。
そう思いながらも目の前に下げられた快楽のもとに勝てない。
「ヤ、ヤガミの……おちんちんが…欲しいの……」
「それから?」
ヤガミがマイのヴァギナにペニスを押し付けて擦り付ける。
ヤガミのペニスから溢れた先走りの汁とマイの愛液が擦り合わされて、卑猥な水音をさせる。
「うぅっ……奥を、いっぱい、突いて…欲しいの……」
マイが言い終えると、ヤガミはマイの頭を撫でた。
438K:2005/08/05(金) 12:50:25 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-09)

「よく言えたな」
優しい笑顔にマイも微笑み返す。
ヤガミは徐に亀頭をマイの入り口にあてがった。
ああ、ようやく一つになれる。大好きな人と一体になれる。
マイに処女喪失の恐怖はなかった。
ヤガミはマイの太腿を抱えると引き寄せて、自らも押し進んだ。
ヤガミの極太のペニスがゆっくりと挿入される。
「……あっ、あぁんっ!」
溢れるほどに出ている愛液と丹念に解してくれたおかげで痛みも苦痛もなく受け入れる事が出来る。
それ所か気持ち良過ぎて、すぐにもいってしまいそうになる。
ヤガミの挿入が突然止まる。
恐らく、処女膜に触れたのだろう。
「いくぞ」
「うん」
マイはベッドに付いた手に力を入れた。
ヤガミのペニスが挿入を再開する。
その瞬間、奥で何かが引き裂かれたような感じがして、痛みを覚えた。
「つっ!」
「大丈夫か?」
「…うん……」
現実世界で処女喪失した時よりも遥かにマシだ。
あの時は痛くて、痛くて溜まらなくて、一分でも早く終わるのを願うばかりだった。
ヤガミが微笑んで、マイの手を掴む。
「奥まで入ったぞ、そこから見えないから?」
ヤガミが片方の手でマイの手を引っ張っると、もう片方の手で腰を抱いた。
ヤガミのペニスが根元まで自分の中にずっぽりと入っているのがよく見える。
ヤガミはマイの手を離して、抱き方を変えると腰を引いた。
その瞬間、血の筋が流れに沿って、ヤガミの竿から根元に流れた。
マイは一つになれた事に感動して、照れ笑いする。
すると、ヤガミもまた笑った。
439K:2005/08/05(金) 12:51:08 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-10)

マイをベッドに横たわらせて、ヤガミはマイの細腰を抱いた。
そして、子宮口まで一気に押し進めた。
「あぁんっ…あんっ、あーんっ……あっあっ、あっあっ……」
荒々しくヤガミのペニスが膣壁を前後する。
マイの愛液と血とヤガミの精液が混じり合って、いやらしい水音を立てる。
マイの両手が伸びて、ヤガミの首に巻きつく。
膣壁が痙攣するようにヒクついて、ヤガミのペニスを締めつける。
ヤガミもその締め付けにペニスを一際大きくして、ヒクつかせた。
「あんっ、はぁんっ……中で、中で…出してっ!」
マイは逃すまいとするように両脚で、ヤガミの腰をしっかりと抱え込んでいた。
その瞬間、ヤガミは子宮口に亀頭を叩きつけて、射精した。
ビクビクとヒクつく亀頭から子宮内部に向けて数回精液が噴射される。
「あぁっ、熱いぃ……あっ、あんっ、あぁっ……」
マイは膣壁で愛する人の精液を全て受け入れて、いった。
しばらくするとペニスの律動が収まり、絡みついていたマイの両脚が緩められた。
ヤガミは腰を引いて、膣壁に突き刺さっていたペニスをゆっくりと引き抜いた。
すると、精液と愛液と血が混じったものが亀頭とヴァギナの間に糸を引いた。
続いて、いやらしく開いた穴からドロドロと同じものが流れてきた。
それを見て、ヤガミはマイの膣内に自分の精液を注ぎ込んだことを改めて認識した。
440K:2005/08/05(金) 12:51:40 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-11)

「義体、だから…妊娠は、しないよね?」
「フッ、妊娠したいのか?」
ヤガミは意地悪く笑う。
「どっちでもいい」
愛する人の子であれば欲しいと思うのが女だ。
しかし、マイは妊娠、子供というよりもただ、愛する人の精液をすべてこの身で受け入れたかっただけだ。
義体だから恐らく、受精する機能はないと瞬時に判断したのである。
「それならばもう一度注ぎ込んでやろうか?」
その言葉に驚いて、半身を起き上がらせるとヤガミのペニスは始めと同じように、完全に勃起して、血管を浮き出させていた。
つい先程射精した精液ではない先走りの汁さえ垂らしている。
何て回復力の強い人なのだろう。だけど、よく考えれば、ヤガミは挿入に至るまで只管我慢していたのである。
マイはベッドに横たわった。
「いいよ」
「そうか」
ヤガミは嬉しそうに微笑むと、マイの腰に触れてうつ伏せになるように促した。
そして、うつ伏せになったマイの腰を抱いて、四つ足の状態にさせると腰を高く上げさせた。
精液を垂らしたいやらしいヴァギナがヤガミの視界に晒される。膣壁の収縮までも見渡させる。
ヤガミは弄ぶように徐にピンク色の精液を溢れさせているマイのヴァギナに触れた。
垂れた精液を指でなぞって、そのままヒクついている穴にその指を挿入させる。
「くぅっ…ふぅぅぅん……」
いやらしい水音をさせて、指が挿入したと思ったら奥の精液を掻き出そうとするように激しく動き出す。
何度もいって、感度も低くなっているだろうにそれでもマイは感じてしまう。
「あぁんっ…あんっ、あぁっ……!」
ヤガミは唐突に指を引き抜いた。
441K:2005/08/05(金) 12:53:12 ID:xsNC4qQc
(約束-番外編-12)

片手でマイの腰を抱いて、もう片方の手でペニスを握るとマイの入り口に亀頭を突き当てる。
ヤガミはそのまま一気に突き入れた。
「……あぁぁーんっ!」
ヤガミがマイの腰を力強く両手で抱いて、子宮口を突き上げる。
「あんっ、あぁんっ……あんっ、あっ、あっ、…あんっ!」
まるで、動物の交尾である。
種保存の本能に従って雄の獣が激しく雌を求めるようにヤガミはマイの奥に精液を噴射させる為に腰を使う。
もうそこには言葉も感情もない。ただ、射精したいという欲求があるだけだ。
そして、マイには愛する人の精液をすべてこの身で受け入れる事しか頭にない。
「あんっ、はぁんっ…あんっ、あんっ……あぁーんっ、あんっ……はぁぁーんっ!」
マイの膣壁が激しいヤガミの攻めに堪えられないかのようにヒクつきだす。
「あんっ、あんっ……もう、だめ…もう、いく…ヤガミ、ヤガミッ!」
マイは全身を痙攣させたように震わせると達した。
ヤガミも強烈な締め付けに堪らず、マイの膣内に精液を叩き付けた。
一度目と同じくらい、いや、それ以上の精液をマイの子宮に向けて噴射させてしまう。
ペニスがドクドクと脈打つ度に残り汁が飛び出し続ける。
ヤガミは繋がったままマイの肩に唇を落とす。
「良かったよ」
「うん、私も、良かった」
「そうか」
ヤガミは肩にもう一度キスする。
くすぐったいけどその行動がヤガミの気持ちを雄弁に語っているように感じて少し嬉しくなる。
「これからも時々、その…Hはしようね」
「快楽に目覚めたか、マイ?」
マイは頬を紅潮させて慌てる。
「違うよ!私は幸せな気持ちになるから、その……」
「冗談だ、分かっている」
「もう!」
マイは振り返って、眉根を顰めようとした。
しかし、自分の奥にあるペニスが角度を変えて、思わぬ所を突かれて声にならない悲鳴を上げた。
「馬鹿な奴だな、そのまま俺の体温を感じながらじっとしていろ」
マイは徐に抱き締められる。熱いヤガミの体温を生肌で感じていると何故か心が落ち着いてくる。
マイはやはり、ヤガミの事が好きだなと苦笑した。

END
442K:2005/08/05(金) 12:58:39 ID:xsNC4qQc
長々とお目汚し、申し訳ありません。
それではヤガミエロSSが増える事を祈って、バイトに行ってきます。
443名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 20:56:28 ID:GggA6lAP
>>442
GJ!素晴らしい、感動しました
舞踏子小説イイネ
444名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 23:35:03 ID:/nG2R/gt
>>429-442GJであります
舞踏子は、あの唇とスカートの切れ込みが魅惑的だ。
ベッドに上がる時のあのアングルはドキドキする。
445名無しさん@ピンキー:2005/08/06(土) 15:14:13 ID:2TJHpfQV
絢爛の人たちは個室でも平気で入ってくるからな
446名無しさん@ピンキー:2005/08/06(土) 16:00:48 ID:0MuX6aW/
舞踏子ってそんな人気なのか。まだ見たことないから公式行ってくる
447名無しさん@ピンキー:2005/08/09(火) 14:07:02 ID:8h+rXStz
>>420のヤガミは大人技能20
>>429-444のヤガミは大人技能80
というところであろうか。それぞれ味があるね。
448名無しさん@ピンキー:2005/08/09(火) 18:37:27 ID:81dpPHTF
まあ初期値10だからな>ヤガミ
つか、いい大人がのきなみ10ってテラワロス。
ところでブルブルマッサージってやっぱりローターのことなんだろうか…。
そんなものを渡す舞踏子というのもテラワロス。
449名無しさん@ピンキー:2005/08/09(火) 22:32:10 ID:ZOX14OB8
>>445 軍艦で鍵がついてるのは陸戦武器庫(反乱防止)と軍医の冷蔵庫(酒保管)だけ、だそうな。
450名無しさん@ピンキー:2005/08/10(水) 04:52:14 ID:kgRQi2F7
>>448

大人BALLSは… 一体何をやってるんだろう?
451名無しさん@ピンキー:2005/08/10(水) 14:57:58 ID:QRYDJtB1
>>450
いろんなテクニークを教えてくれるんだよ…きっと。
452名無しさん@ピンキー:2005/08/11(木) 01:05:41 ID:ypm0sY7X
>>450

つ 触手
453名無しさん@ピンキー:2005/08/15(月) 20:13:10 ID:3+WA30lC
hosyu
454名無しさん@ピンキー:2005/08/21(日) 15:35:37 ID:WAZgknfW
保守age
455名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 11:40:30 ID:hXhI9HKM
このスレではAマホも許容範囲なのかー?

過疎って人がいないような気もするけど聞いてみる。
456名無しさん@ピンキー:2005/08/23(火) 11:46:05 ID:PBNHsuhi
いいんでない?
457ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/08/23(火) 21:31:40 ID:2wZGsP6G
<七篠家五代目傍流・燕・1>
月が明るい夜であった。
そろそろ初夏に入ろうとする季節でも、日が沈めば、まだ涼しい。
「……ま、それでも氷の都から帰ってきた体にはちと辛いが──」
五郎は、渋茶をすすりながら苦笑した。
──当主となってまだ数ヶ月の身だが、誰もそうとは思わないだろう。
荒れ果てた京を独力で復興させ続ける名門・七篠(ななしの)家の総帥にふさわしい貫禄だった。
たとえ短命の呪いに身を蝕まれ二年足らずで死すべき血が流れている一族だとしても、五郎の成熟ぶりは特筆に価する。
先代当主・四天丸は、剣士としての実力だけでなく長者として世に知られ、信頼されていたが、
新当主の五郎も、短期間で同じような落ち着きと老成を身にまとっている。
それは交神の儀による精神的な成長だけでなく、ここ数ヶ月の激動を経験したためでもあった。
「しかし、黄川人が朱点童子だったとは、な──」
──七篠一族の悲願である、朱点童子討伐を為し遂げたのもつかの間、
真の朱点童子・黄川人と、新たな、そして強力な鬼たちの拠点の出現に、人間界はまさに激震した。
桁違いの実力を持つ新たな鬼たちは、鬼朱点を斃した五郎たちでさえも、容易に撃退できない存在であった。
それでも、気力体力ともにまさに全盛期を迎えつつある新当主を擁した七篠一族は、
すばやく反撃の態勢を整え、鬼の棲家へ出撃していった。
──今月は、忘我流水道へ向かい、はじめて敦賀ノ真名姫を倒したばかりである。
人間に深い恨みを持つ人魚の女神を天に返すには、業の断ち切りが足りなかったが、
その先の氷の洞窟にまで進むことができたのは、初めての討伐にしては上出来であったろう。
氷洞からの帰還後、暑さが倍増して感じられるという五郎のぼやきは、ご愛嬌である。
「──当主様」
戸口のほうで、声がした。
「イツ花か。どうした?」
五郎は、七篠家に代々仕える巫女に声をかけた。
「はい。──燕様のご成人のことでご相談が……」
「──ほう。うっかりしていた。あいつもとっくに年頃だったな。交神の儀をさせねばなるまい」
五郎は頭をかいた。
燕──先代当主・四天丸の娘である女剣士は、彼と三月違いの生まれだから、もう交神の儀ができる年頃になっていた。
しかし、大江山討伐のあとの混乱の中で、一族は連戦を強いられたため、ここ数ヶ月そうしたことに頭が回らないでいた。
そもそも、燕が成人していたことも、今思い出したようなものだ。
「燕にも随分と苦労をかけたからな──」
天才児・五郎には及ばないとはいえ、先代直伝の奥義を受け継いだ剣士の力は討伐隊に欠かせぬものであったし、
粘り強く、また冷静な性格の彼女は、当主にとって心強い副将格であった。
悲願達成のため、強力な子孫を残すという意味でも、長年の労苦に報いるためにも、
次月に予定している久々の交神の儀は、燕に行わせるべきであった。
「ふむ。──しかし、どの神と子をなすべきか?」
五郎は、七篠家と縁のある男神の名を思い浮かべようと眉根を寄せた。
「ああ見えて燕は晩生だ。力もさることながら、できれば心の優しい男神に添わせてやりたい」
「──そのことで、折り入ってご相談がございます」
眼鏡をかけた巫女は、真剣な表情で自分が仕える当主を見つめた。普段のおっちょこちょいさとは対照的だ。
「何だ?」
「燕様は、とある<水>の男神様にご執心のご様子。交神の儀の折は、よろしくご配慮くださいませ」
「──ほう」
意外そうな表情になった五郎は、やがてにやりと笑って頷いた。
「そういえば、燕が解放した男神がいたな。──あいつもなかなかどうして面食いだ」
「では、お願いいたします」
「わかった。──下がる前ですまんが、六兵衛を呼んできてくれぬか」
「はい。六兵衛様ですね」
イツ花が、二ヶ月になったばかりの五郎の息子を連れてきた後に下がる。
七篠の当主は、先日初陣を果たしたばかりの長男に咳払いをしながら問いかけた。
「ああ、なんだ。その──父者は、これからお前の母者に会って話をせねばならんことができたが、お前も付いてくるか?」
「──行く!!」
幼い槍使いは、間髪いれずに答えた。
「うむ。では、付いてくるがいい」
照れ笑いを仏頂面でかくすことに成功した五郎は、屋敷を出てしばらく歩き、小川のせせらぎが聞こえる場所まで足を伸ばした。
「──あら、五郎に、六兵衛」
いつのまにか、小川の中に那由多ノお雫が立っていた。
呼び出しもしないのに女神が現れたことを、五郎も六兵衛も不思議とは思わない。
彼女は、いつでも二人を見守っているのだ。
458ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/08/23(火) 21:33:56 ID:2wZGsP6G
<七篠家五代目傍流・燕・2>
「──ふうん。燕ちゃんも、いよいよ交神の儀なんだ」
ひとしきり六兵衛を遊ばせた後、眠りについたわが子の髪をなでながら、お雫が笑った。
「うむ」
「その顔。──まるで妹が嫁ぐときのお兄さんみたいにそわそわして」
「似たようなものだ。七篠家は、一族全員が家族だからな。中でも俺と燕とは年も近いし、気も合った」
「まあ、お兄さんとしては、妹さんの交神の儀が気になるわけね。──で、私に何を聞きたいの?」
「……万屋玄亀とは、どんな神なんだ? ──同じ<水>の神ならよく知っているだろう?」
五郎は、先日の出撃で亀甲鎧を身に付けた燕が解放した神の名をあげた。
「んー。まあ、いい子よ。少なくとも、見た目ほど軽くはないことは確かだわ。
それどころか亀の神様だけあって、ものすごく辛抱強いし、堅実」
お雫は、言葉を選びながら答えた。
沼坊主に閉じ込められていた男神は、良家の御曹司、といった雰囲気を持つさわやかな青年の姿を持っていた。
軽い言葉遣いのために誤解されることも多いが、別に心配することはない、というのが女神の感想だった。
ほっとしたような表情になった五郎は、すぐにまた真剣な顔に戻った。
「で、だな。その、聞きにくいことなんだが……」
「何?」
「うむ。その……あれは、大亀の化身なんだろ?」
「そうだけど…それが何か?」
「……その、アレも大きいのか? <亀の頭>と言うし……」
一瞬、質問の意味がわからなかったお雫は、数瞬後、おもいっきり五郎の頭を叩いていた。
「──痛え!」
「馬鹿っ!! 何を聞くかと思えばっ!!」
「いてて、殴るなって。──冗談で聞いてるんじゃない──あいたっ!
…燕は小柄だし、意外と華奢だから、あんな大亀相手じゃ辛いかと思って──痛いっ!」
「私が知ってるわけないでしょうがっ!!」
ますます速度を上げてぽかぽかと殴りつける女神に、五郎は頭を抱えてうずくまった。
そのとき眠っている六兵衛が、くしゃみをして起きそうな雰囲気にならなければ、
五郎は、七篠の開闢以来始めて「女神に撲殺された当主」となっていたかもしれない。
あわてて物音を消した父と母の痴話喧嘩を見ることなく、六兵衛はまた深い眠りに落ちた。
「……<くらら>まで使うか、普通?」
「黙って──。まだ術のかかりが浅いから……うん、完全に眠ったわ」
ほっとしたように一息ついた女神が、五郎のほうを見る。
処刑執行再開かと身を硬くしたが、お雫は気が抜けたようだった。川べりに腰を下ろして、大きく伸びをする。
「まあ、君が相変わらずお馬鹿なのは、よくわかったわ。──当主になっても、父親になっても」
「むう」
「と言うよりも、昔より馬鹿になってない、君?」
「むむう。──昔、俺に<心>についていろいろ教えてくれた女神がいて、な」
「ふうん。──きっといい女なんでしょうね、その人」
「俺が馬鹿になったとしたら、そいつのせいだ。──たしかに最近やたらと笑うようになった、と言われる」
「お馬鹿さん。今のほうが、昔のぶんむくれ顔よりずっといいわよ。
……それと、お馬鹿ついでに言っておくけど──燕ちゃんが懸想している相手、玄亀君じゃないわよ」
「──何!?」
女神と違い、<水>の男神は数少ない。好戦的な男には<火>の神が多いのだ。
その中にあって、実力も姿形も、玄亀は相応の相手に思えたし、燕自身が解放したという縁もある。
五郎が、燕のご執心の相手を玄亀だと思い込んだのも無理はなかった。
「じゃ、誰だ……? ──鹿島中竜、ちがうな。淀ノ蛇麻呂──いいや、燕は長虫嫌いだ。
雷電五郎──はまだ解放されていない。嘗祭り露彦──ナメクジも苦手だったな。……まさか、氷ノ皇子!?」
「あの御方も、まだ解放されていないでしょうに。だいたい貴方達、会ったこともないんじゃない?」
たしかに忘我流水道の半ばで引き返した討伐隊は、氷ノ皇子と謁見──戦うことすらなかった。
「じゃあ、燕は、誰に想いを掛けているんだ?」
「もう一柱、燕ちゃんが解放した<水>の神様がいるじゃない、──とびきり心優しい、いい男神様よ」
「……!?」
その神の事を思い出して、五郎の顎がかくん、と開きっぱなしになった。
459ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/08/23(火) 21:35:01 ID:2wZGsP6G
<七篠家五代目傍流・燕・3>
「……ま、ま、待て。それは、相翼院の、その──<あれ>か?」
「口が悪いわね。あの神様と呼びなさい。だいたいさっきから、神の名前を呼び捨てなんて不遜よ」
「そ、そんなことはどうでもいい。──あれ、いや、あの神なのか?」
「ええ、そうよ。──燕ちゃんは、物事の表面にとらわれない良い娘よ。あの方の良さを、よくわかっているわ」
今の天界での序列は下とはいえ、自分よりはるかに古くから祭られてきたその神のことを、お雫は粗略に扱わなかった。
──五郎も知っている。あの神は、この国に小川が生まれ、沼ができたときから居た神だった。

──その神は、人々が田を作ったとき、最初に喜び、最初に祝福を与えた神だ。
稲に害を為すものを平らげ、雨の中で歌を歌って人々を勇気付けた神だ。
力は弱いが、心優しく、常に人の味方であった神だ。
──彼が、鬼にとらわれたとき、田と言う田は悲しみにくれたと言う。
彼とその眷属の歌を聞けなくなった、と知って。
──そして七篠の女剣士が、その神が閉じ込められた鬼を切り捨てて解放したとき、
田と雨は、彼の神の眷属たちとともに、いっせいに歌いだした。
今夜のように。

「──来た」
よく手入れされた田畑に四方を囲まれた東屋の中で、花嫁──燕はびくりと肩を震わせた。
覚悟はできているし、何よりも待ち望んだ瞬間であったが、不安におののくは、処女の習性だった。
ぱらぱらという傘に雨が当たる音が聞こえる。
その音さえも優しいのは、傘が、大きな里芋の葉を手折って作ったものだからだ。
「──やあ。……ほんとうに、おいらでいいのかい?」
戸口を開ける前に、そんなことを言う男神に、燕は躊躇なく答えた。
「お待ちして──いいえ、お慕い申し上げておりました。
どうぞお入りください──白浪河太郎様……」
その神──燕が相翼院で解放した河童の神は、眷属の蛙たちの唱和する声に押されるようにして、東屋に入ってきた。

燕は、普通の人間の歳に換算すれば二十歳をとうに過ぎた娘だ。
だが、袴姿もりりしい女剣士は、一族の中でも潔癖で晩生なことで知られている。
一生を剣と七篠家の悲願達成に捧げて悔いぬ、という生き方をしていた燕が、
それを改めたのは、相翼院でこの神、白浪河太郎を解放してからだ。
以来、燕は、夜に物思いにふけることが多くなった。
その姿を見たイツ花に、ほろりと心情を漏らしたこともある。
それが五郎の耳にも入って、今日の交神の儀の運びとなったのだ。
──自分が、なぜ河太郎を慕うようになったのか、燕はわからないでいた。
子供の頃から蛙は苦手ではなかったが、年頃の娘として、特別にそうしたものに愛着を持っていたわけではない。
白浪の術は得意だが、最も良く使うというわけでもない。
(たぶん──)
たぶん、この方の優しい目と手を見たからだ、と燕は思っている。
燕に斬られ、解放されるときに、河太郎は、彼女に礼を言った。
その柔らかな眼差しと、からだの割りに小ぶりな手が、彼女に強い印象を与えたようだった。
男女のことは、わからない。
あの時から、七篠家きっての堅物娘は、恋に焦がれる乙女となった。
その想いが、今叶う。

「ひゃ……」
河太郎の愛撫は、想像したとおりに優しく、そして想像以上に大胆だった。
河太郎の長く器用な舌は、燕の隅々までを舐め上げ、処女の体から快楽を呼び覚ましていた。
唇や乳首の先端だけでなく、秘所や、後ろのほうまでも丁寧に愛撫する舌に、
燕は気が遠くなるほどの羞恥と、快感と、言い表せぬほどの感情に心臓が破裂するのではないかと畏れた。
しかし、大人としての準備を急速に整え始めた女体は、それに対応して狂おしく乱れる以上の害悪をもたらさなかった。
それは、河太郎が、大きな口を開けて、手足の一本一本を根元から含んでくまなく愛撫したり、
下半身を丸々のみこんで、あらゆる性感帯を舌と粘膜で包み込んだりすると、
燕の身体は、すっかり子供を作る機能を覚醒させた。
460ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/08/23(火) 21:35:58 ID:2wZGsP6G
<七篠家五代目傍流・燕・4>
「うん。──行くよ」
「は、はい……」
「こわいかい?」
「はい。──い、いいえ!」
素直に返事をしてから、あわてて否定する。
ぶんぶんと頭を振ると、立てば腰までもある黒髪が、汗ばんだ頬や額にからんだ。
「痛かったら、これを噛みしめなぁ。少しはまぎれるよぉ」
河太郎は首からぶら下げた緑の棒を燕に差し出した。
──瑞々しい胡瓜。
優しい心遣いと、何かが微妙にずれている配慮──河太郎らしい贈り物だ。
だが、処女にはそれを笑う余裕もなく、燕は神妙にそれを口に含んだ。
「──んんっ!」
柔らかく、固い、不思議な感触。
破瓜の痛み。
──がりり。
燕が、女になり、また母親になったとき、胡瓜は、半ば以上噛み砕かれて燕の胃の府に収まっていた。

「……顔はおいらに似ないといいねェ」
河太郎が、名残惜しげに燕の背や肩を撫で回しながら言った。
「いいえ、貴方様に似た良い子を産みます」
「女の子だったら、かわいそうだよぉ」
「そんなこと、ありません! きっと、可愛い娘になります」
明るい月に下で、優しい父親と、りりしい母親が、最初で最後の小さな言い争いをしていた。
真剣な、楽しいひと時。
やがて、河太郎は立ち上がった。
別れの時間が来ていた。
顔を伏せた妻は、まだ夫の手を握っていた。
そのうつむく姿に、問いかける。
「──もう、名前は決めてあるのかい?」
「はい。楓──あなたの優しいこの手を忘れぬように、その名前をつけようと思っています」

蛙手(かえるで)──楓(かえで)。
七篠家第六代当主・六兵衛に仕え、その子、七代当主・七郎太に剣の奥義を伝授した女剣士である。
母たる剣士が、父親似と主張し続けたその姿は、しかし、子や孫の世代の同族からも慕われた愛くるしいものだったと伝わる。
461ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/08/23(火) 21:45:25 ID:2wZGsP6G
>>411、423
文も短く、エロも少ないですが、なんとなく思い浮かんだので
一番お気に入りの男神で書いてみました。
せっかくの胡瓜をねじこむ描写がない?
河太郎様はそんな鬼畜なことはしません、たぶんw

>>424
攻略本P269イラストで言うと
燕:左から二番目、下から二番目の直髪娘
楓:一番右、一番下のコロコロ娘 ……ですかねw
しかしみんな攻略本持ってるのかな……。
462名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 00:04:43 ID:fW1261Fn
>>461
神め!!!!

実は423ですが、1本2本構想だけはあるものの
七篠家シリーズのあまりの秀逸さに、脳への影響が強すぎて
家設定やら家名にバリエーションが持たせられない状況。このまま書けないぽ。
463名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 08:00:38 ID:ZrbCkS50
GJ!!
河太郎ラバーにはたまりませんでした!ご馳走様です!
464名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 15:44:37 ID:xrAty7RR
GJ!!
今まで河童は避けて通ってましたが、あのほにゃり顔が好きになってしまい
ました!
465名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 22:18:37 ID:lOqk22UB
七夜月幻想曲かなりいい。ストーリーは。
演出はよく言えば王道、悪く言えば新味がない。
ボスとのシューティング戦なんて要るのか本当に?

まーそれはおいといて、月子たん萌え〜♪
小夜たんも萌え萌え〜♪♪
メイたんは・・・さすがに犯罪だな。やめとくか(マテ
466ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 :2005/08/25(木) 20:47:54 ID:HJMnXh1x
>>462
        ドンドコドンドコ!ドンドコドンドコ!
             ∧_∧   ∧_∧      ガンガレー!
ずーり        /   ・ω ./   ・ω     俺屍SSガンガレー!
 ずーり    ∧_∧__ノ...../____ノ∧_∧  ずーり
        /    )          /  ・ω・)
       ∧_∧ _ノ  ヒ、ヒィー   ...../_∧_∧
      (    )   ('A`≡'A`)     ( ・ ω ・ )
       ヽ ∧_∧   人ヘ )ヘ  ∧_∧__ノ
        (・    ヽ  >>423   (・ω・  \
ずーり    ヽ_ ∧_∧   ∧_∧___ノ 
           ω・   \ ω・   \    ずーり
           ヽ____\ヽ___ノ
467411:2005/08/27(土) 00:09:05 ID:ZOPxqxGW
神!!!リクエスト応えてくれて
ありがとうありがとう!!!!!!
涙が出そうだ!


しかし、下半身丸飲みだけは笑った。
人間同士じゃありえねえよw
468名無しさん@ピンキー:2005/09/02(金) 14:00:09 ID:jaOw/7vY
ここって保管庫とかないのかな
前スレログがほしいんだけど にくちゃんねるで見つからなかった
469名無しさん@ピンキー:2005/09/03(土) 00:12:16 ID:D9bUllhb
>468
君にいいものをあげよう
ttp://database.f-adult.com/game1.html
470名無しさん@ピンキー:2005/09/03(土) 15:06:32 ID:x16oxpov
>>469
ありがとう!愛してる!
471名無しさん@ピンキー:2005/09/04(日) 01:33:10 ID:aGg7rWXO
今日、ネカフェで保管庫から四条さんのSSをシチュスレの作品を含めて、全て印刷させていただきました。
印刷代だけで4000円以上しましたが、この値段以上の価値があると思いました。もっと金だしてもええわ!
素晴らすぃなぁ…
小説が本業でないなら、映像関係の仕事をされていらっしゃるのかな?情景が頭の中で綺麗に再生されましたよ…
速水×舞のSS読んで、感動で涙が出ました。ガンパレードマーチの曲が脳内再生されましたよ!すげぇ!!
ああこれ漫画にして描きたい。しかし小説と云うか文章でしか表現出来ない描写があるのだなあ、と昔から思っていたのをはっきり実感させられました。
四条さん、大ファンです。

俺屍やろうかな。
七篠家シリーズを読ませていただいて、滅茶苦茶やりたくなった。萌えで鼻血でそうになった。


なんでこのスレはこんなクオリティの高すぎる作品ばかりなんだ……!
長々とすんません。
472名無しさん@ピンキー:2005/09/04(日) 03:26:55 ID:h4oupjZ1
>>471
パソコン買った方が安上がりな罠
473nKn_dK:2005/09/08(木) 02:18:35 ID:BNb3iOhd
拙サイトにすでに上げてしまったSSですが投下します。
「絢爛舞踏祭」ヤガミ×舞踏子です。
濡れ場に入るまでに延々とながーいエピソードが続くので
そこは割愛します。

あらすじを申しますと
 スイトピーとマイ(舞踏子)が官憲に乱暴されかける。
 マイは果敢に応戦するもスイトピーを人質にとられ大ピンチに。
 間一髪のところでヤガミ以下数名の夜明けの船クルーに助けられる。
 帰艦したマイは官憲に負わされた怪我の治療を受けると
 艦長室でエリザベスよりスイトピーと共に事情聴取&お説教を受ける。
 マイはそこでヤガミが助けに来てくれたこと、
 気絶した自分を抱きかかえて帰ってくれたこと、
 自分の身を気遣って上着をかけてくれたことを知る。
というところから以下が始まります。
474nKn_dK:2005/09/08(木) 02:22:50 ID:BNb3iOhd
(01)

マイは一人で紅茶を飲んでいた。
スイトピーは自室で休むと言って少し前に出て行った。
マイは少し気持ちを落ち着けてから部屋を出ることにした。
ニヤニヤしながら歩いてたら気持ち悪いだろう。
(今日は良い日だ。
ヤガミが助けに来てくれて、
ヤガミがだっこしてくれて、
ヤガミのジャケットを着れた。)
いくら飲んでもにやけ顔はおさまらない。
足りなくなってスイトピーの残した紅茶も飲んだ。

マイはテーブルに頬を付け、火照りを冷やす。
目を閉じ、ヤガミを想う。
息 が詰まる。

(ああ・・・!)
マイは無性にヤガミの顔が見たくなった。
今の時間なら自室で寝ているだろう。寝顔でもいいから見たい。
マイは立ち上がるとヤガミの自室に向かった。


マイの予想に反してヤガミはベットにはいなかった。
(まさか艦橋・・・?
どこまで仕事すれば気が済むのよ、あのバカ。)
マイはすぐに顔が見たかったのに、期待を外されて腹が立った。
(しょっちゅう倒れてるくせに。休むときは休みなさいよ。もう。)
マイは小走りで部屋を出て行く。
どうしても、今すぐに顔がみたかった。

部屋を出てエレベータに向かおうと進路を曲げようとした時、
目の端にちらりと黄色が映り振り返った。

ヤ ガ ミ だ !

思わず笑みがこぼれる。どんな時でもヤガミの姿を見ると嬉しくなる。
ヤガミは前方から中央に向かって歩いて来ていた。
トイレだったのだろうか。
マイの姿を認めて立ち止まる。
マイは満面の笑みで駆け寄った。
「ヤガミ!」

ヤガミはマイの呼びかけには答えない。口を硬く結んでマイを見ていた。
ヤガミが素っ気ないのはいつものことだ。マイは全く気にならない。
「ヤガミ。助けに来てくれてありがとう。
連れ帰ってくれてありがとう。とっても嬉しかった。」
マイはヤガミの様子は気にしないで想いの丈をぶつけた。
とちらないように気をつけて気持ちを込めた。
475nKn_dK:2005/09/08(木) 02:23:39 ID:BNb3iOhd
ヤガミは相変わらず無言だ。さすがに少しおかしいとマイは思った。
いつもなら素っ気なくても相槌くらいは打ってくれていた。
ヤガミの顔を覗き込む。視線は強く、睨んでるといってもよかった。
(え・・・怒ってる・・・?)
マイは戸惑った。二人の感情の温度差にやっと気づく。
(もめ事起こしたから怒ってるのかな?)
ヤガミの視界に入ることは嬉しかったが、睨まれるのは嫌だ。
機嫌を直してもらいたかった。

「あのね、不可抗力だったのよ?」
こういうときは下手ないいわけをしない方がよいのだが、
マイはそこまで気が回らない。ヤガミは未だ無言だ。
「ほら、怪我も大したことなかったし。」
ヤガミの視線が更に強くなる。マイは気圧されて縮こまった。
「それはMAKIに直させたからだ。実際は酷いものだった。」
ヤガミが口を開いた。声音は厳しい。
「お前は逃げ続けるべきだった。」
マイは泣きたくなった。さっきまでの幸福感が一気に逆転して辛くなった。

「でも、スイトピーが・・・」
「お前になにができた?」
語尾にかぶせてヤガミが言う。それは核心を突いた一言だった。マイは黙る。
「他者を守る力がないのなら逃げるべきだ。
被害を最小限に抑えなくてはならない。」
マイは顔を跳ね上げた。
「そんなこと出来ないっ!」
マイの勢いにもヤガミは全く動じない。むしろ目は厳しさを増す。
「お前は何の為にここにきたんだ?」
「自由を守るためよ!」
マイは即答した。先程までの怯えた表情はない。毅然とヤガミを見詰めていた。
476nKn_dK:2005/09/08(木) 02:24:24 ID:BNb3iOhd
「・・・たった一人の為に他の何億を犠牲にするのか?」
「犠牲にはしないわ。」
ヤガミはマイに押されるように態度を軟化させていた。
「結果的にそうなるだろう?」
「私はそうは思わない。だって結果的にヤガミが助けてくれたじゃない。」
マイは見詰めたまま少し笑った。ヤガミは目を伏せて視線を外した。

「気をつけるんだ・・・。再起はないぞ。」
マイはヤガミの見続けていた。口元を 指先を 肩を 瞳を 全身を注意深く観察する。
この素直でない男は常に何かを隠している。
優しさの中に冷酷さを、怒りの中に悲しみを、
偽の感情のベールで本心を隠す。
それを見抜けないととってもつきあえない。そんな男。
そして理解する。彼は悲しんでいた。

(心配してくれたの・・・?だったら素直にそう言えばいいのに!)
なんて解り辛い、なんてややこしい、なんてひねくれた・・・!
でもたまらなく愛おしい。

マイは込み上げてきた感情を抑えない。
ヤガミの首に飛びつき引き寄せる。
唇を奪う。

唇を話して目を開く。見開かれた濃い灰色の瞳がそこにあった。
愛おしさに微笑む。
「私は死なないわ。」
再び口付ける。優しく・・・優しく・・・
「私はあなたに夜明けを見せるのよ。
あなたは望むのでしょう?
私の全てをあなたに賭けるわ。
誰の意思でもない、私が選んだのよ。
100年の平和をあなたに誓うわ。」
一言ごとに唇を重ねる。口付けごとに抱きついた首の強張りが溶けていく。
「すきよ・・・ヤガミ・・・すきよ・・」
477nKn_dK:2005/09/08(木) 02:25:37 ID:BNb3iOhd
(04)

突如、マイは抱き寄せられた。爪先が床を離れる。
唇が強く重なる。
マイは驚いて目を見開き、口内へ入ってくる感触に硬く目を瞑った。
思考が停止する。
ただ、唇と舌の感覚のみに囚われる。

どれほどそうしていたかわからない。
ヤガミは唇を離し、マイを見詰めた。
マイは放心したように見詰め返す。
「部屋に・・・行こう・・・」
マイは黙って頷く。濃厚な口付けは彼女の意識を痺れさせていた。


マイは導かれるままに部屋の中を進んだ。
ベットの傍でキスをした。
温かな感触に意識が眩む。マイは自ら口を開き彼に応じる。
ヤガミは片手を腰に回し、片手で器用に上着を脱がせていった。
「あ・・・」
マイは素肌に触れる指の感触に我に返った。
気づけば上半身はブラジャーだけだった。
それもするりと外されてしまう。
そしてヤガミはスカートに手を伸ばす。

「あ・・・まって、えっと・・・ヤガミも・・・」
自分だけ裸なのは恥ずかしい。
マイは慌ててヤガミのジャケットを脱がそうとした。
しかし指先に力が入らず、なかなかうまく出来ない。
もたもたしているマイを待たずに
ヤガミはさっさとスカートの留め具を外してしまった。
スカートが落ちる。

これ以上脱がされたらほとんど素っ裸である。
マイは全力でジャケットを開いた。
袖を抜くためにヤガミは腰から手を離した。
マイがホッとしたのもつかの間、再び腰に手が回される。
「い、い、いっぺんに脱がすの禁止っ」
なんともムードのないセリフではあるが、マイは必死だった。
少しでも全裸になるのを引き延ばしたかった。
ヤガミは口の端を持ち上げて笑った。
「わかってる。」
478nKn_dK:2005/09/08(木) 02:26:37 ID:BNb3iOhd
タイツだけを引き下げる。
途中まで降ろしたところでヤガミはしゃがんだ。
足を抜くには立ったままでは難しい。靴も脱がせなくてはならない。
マイはヤガミを追って視線を下げる。

「!」
マイは太股に走る赤い爪痕に硬直した。
気を失っていたマイに暴行の記憶はない。
しかし、その痕跡は自らの身に刻まれていた。
借り物の身体に傷つけられたことは大して気にならないが、
それをヤガミに見られるのは嫌だった。

「あ・・!」
ヤガミが太股に口付けた。赤い傷跡の上に舌を這わせる。
「ちょ・・・っと!順序がちがぁーう!!」
マイは声を張り上げた。
いきなりそんなきわどいところにキスするなんて間違ってる。
ヤガミはニヤリと笑うとタイツと靴を脱がした。

その笑みでマイは理解する。ヤガミは全部解ってた。
マイが何に囚われたか、どうすればその呪縛から解放できるか
承知の上の行動だった。

マイは悔しくなった。掌の上でいいように転がされているみたいだ。
少しふてくされてヤガミのシャツを引っ張る。
「ほらっ、ヤガミも脱ぐのっ。」
「よせよ。伸びるだろ。」
ヤガミはまだ笑ってる。
マイはますます恥ずかしくなってぐいぐい引っ張った。
「いいから。早くっ。ばんざいして。」
「色気ないな・・・」
ヤガミは苦笑しながらメガネを外した。シャツを脱ぐ時に引っかかるのだ。
マイは動揺した。メガネを外すという動作にもう後戻りができないと感じた。
目眩に襲われ視界が暗くなる。
意識を保つ為に深呼吸してからシャツを脱がした。
ヤガミの引き締まった上半身が視界を支配する。

マイは服を脱がせたことを激しく後悔した。
激しい目眩にぶっ倒れそうだった。まともにヤガミを見られない。
きっと顔は真っ赤だ。おそらくヤガミは笑ってる。
「ほら、立って。」
マイはヤガミを見ないようにして言った。
ヤガミは無言で立ち上がる。
マイはなるべく上半身が視界に入らないようにベルトに手を伸ばした。
バックルに触れようとした手が止まる。
その下の膨らみに目が釘付けになった。
479nKn_dK:2005/09/08(木) 02:27:34 ID:BNb3iOhd
マイは逃げ出したい衝動を必死で押さえてバックルを外す。
指がおかしいくらいに震えて何度か失敗した。
なんとかズボンの留め具を外し、足を抜こうと屈みかけたが、
ヤガミは踵を引っかけ、自分で靴もズボンも脱いでしまった。
瞬間、ベットに押し倒される。
ヤガミはマイの腰を持ち上げて最後の砦も脱がせてしまった。

「ちょっ・・・!」
「遅い。」
強引な展開に抗議しようとしたマイに一言告げると、ヤガミは口を塞いだ。
ヤガミはかなり焦らされていた。
マイは意識してやったわけではない。
いやむしろ全速力でがんばっていたのだが、
ヤガミは逸る気持ちを弄ばれているかと感じた。

マイの口を強引にこじ開け、舌を差し込む。
彼女のものを絡め取り吸い上げる。
「んぐ・・・んん・・・」
マイが呻く。息苦しさのためか、快楽のためかわからない。
どちらでも良かった。ヤガミは彼女の舌の柔らかさを楽しむ。
何度も複雑に舌を絡ませた。
彼女の唾液を吸い、自らのものも送り込む。

「・・・ん・・ん・・・・」
マイの声が甘みを帯びてくる。
強張っていた舌も腕も柔らかくヤガミに絡んでいた。
ヤガミは唇を離し息継ぎをする。さすがに苦しくなってきた。
マイの唇はヤガミを追う。
ヤガミは笑った。彼女を捉えたと実感する。

マイにはヤガミの笑みの理由が解らない。
不思議そうに物欲しそうにヤガミを見る。顎を軽く上げて口付けを誘う。
ヤガミは彼女の望みには答えずに耳朶に舌を這わす。
「!」
マイは息を強く吸った。ひゅっと呼気の音がする。
全身を強張らせて刺激に耐えていた。背中に回された手に力がこもる。
ヤガミの舌は徐々に下に移る。
白く細いうなじを何度も往復し、華奢な鎖骨をなぞる。
マイは吐息が音を持たないように慎重に吐き出していた。
480nKn_dK:2005/09/08(木) 02:28:56 ID:BNb3iOhd
舌は柔らかな丘陵を登り始める。
「あ・・・まって・・・ヤガミ・・・」
マイが腕に力を込めてヤガミを引き上げる。
ヤガミは疑問の視線を向けた。
「ここに・・・いて。顔を・・・みていたい・・・。」
そういって、ぴったりと身体をくっつけた。
柔らかな肢体の感触がヤガミの腰に疼きを与える。
「これじゃ、なにもできないぞ。」
ヤガミは苦笑した。焦らさないでくれと願う。
しかし、マイは駆け引きでも何でもなく、純粋に顔を見たいと思っただけだったのだ。
メガネを外したヤガミも優しいヤガミもマイにとっては貴重だった。
まあ、照れていないかと言えば嘘になるのだが。
「キスは・・・できるよ?」
そういって唇を重ねる。ヤガミもそれに応じた。


マイからのキスは良かったが、それでは足りない。
もっと、もっと強い刺激が欲しかった。
ヤガミは覆い被さっていた身体を横に倒す。
上半身は彼女がしがみついていたのでそのままついてきたが、
腰から下は無防備に晒される。
慌てて後を追おうとする彼女より先に、ヤガミは柔らかな茂みに手を滑らせる。
「んん!」
突然の刺激にマイは顎を跳ね上げた。
口をしっかり結んで嬌声が漏れないようにしていた。
ヤガミの指先は温かな湿り気を感じていた。
指を奥に滑らせる。そちらの方が更に潤っていた。
「んー・・・・」
指の動きに合わせてマイが身を捩る。
ヤガミは背に何かが這い上がる感覚に唾を飲み込む。
彼女の反応はたまらなく官能的だった。

ヤガミの指は彼女の形を探索するように滑っていく。
柔らかな膨らみを、その膨らみの間にあるたっぷりと潤った谷間を。
マイはその動きに合わせて背を張り、身を捩った。
そしてますますヤガミにしがみついてきた。
481nKn_dK:2005/09/08(木) 02:30:15 ID:BNb3iOhd
ついに指は硬くなった小さな突起にたどり着く。
「んー!」
マイは一際大きな声を上げると、大きく仰け反った。
下唇を噛みしめ、嬌声を堪える。
指は彼女の体液をすくうと突起に塗りつけた。
「んん・・・ん・・」
彼女は強く唇を咬み、身を捩る。
ヤガミは彼女の唇が傷つかないかと思った。
舌で彼女の唇をなぞり、キスを促す。指の動きも緩める。
マイは口付けに応じるため、口を開いた。震える吐息がヤガミの頬にかかる。

熱い呼気がヤガミに獰猛な衝動を呼び起こす。
彼女を狂わせたい。
ヤガミは舌を差し入れ、同時に指の動きも再開する。
いや、更に激しく動かした。
「んー!!んん!」
マイは激しく仰け反り唇が離れかけるが、背に回したヤガミの腕がそれを許さない。
ヤガミは舌を入れたまま徐々に唇だけを離していく。

「んぁっ・・・はぅんん・・くぅ・・」
唇の隙間から嬌声が漏れる。
マイは声を漏らすまいと口を閉じようとしたが、
彼の舌に自らの歯が当たりそれが叶わないと気づく。
ならば唇を合わせようとするも、彼が身を引くのでそれも出来ない。
マイは羞恥と快楽で意識が眩んだ。

ヤガミの身体は痺れるような興奮に囚われていた。
彼女の甘い声、ますます潤いを増す秘部。
挿入の衝動をわずかに残った理性で押しとどめる。
まだ彼女には羞恥が残っている。
彼女に求めさせたかった。
ヤガミは指を離した。マイは身体の緊張を緩め、息をつく。

舌を引き抜き彼女を見た。
マイは夢見るような目で視線に答える。荒くなった息を整えていた。
ヤガミが優しく笑う。マイはつられて笑った。
笑いかけてもらうのはいつでも嬉しい。
次の瞬間、マイの中に指が差し込まれた。
482nKn_dK:2005/09/08(木) 02:31:06 ID:BNb3iOhd
「あうっ!」
なんの気構えもしていなかったマイは大きく喘いだ。
指は激しく複雑に彼女の中を探っていく。別の指が彼女の突起を刺激する。
「あっ・・・!ああ!」
一端ゆるんだ気持ちは直ぐには戻らない。
マイは為す術もなく快楽に悶えた。責め立てる指から逃れようと身を捩る。
ヤガミは腰に腕を回し彼女の動きを制する。
マイはヤガミの肩を押して身を離そうとした。
どうして逃がしてくれないのか。マイは泣きそうだった。
彼女の動作は結果として大きく胸を張ることになる。
ヤガミの前に薄紅に染まった乳房が差し出された。
当然のようにヤガミはそれを口に含む。
マイの声が上擦った。
もう何も考えられない。

ヤガミは硬くなった乳首を舌で転がしながら、彼女の陥落を確信した。
押し返す力は弱く、導くままに足を開いた。
もう彼を抑制するものは何もなかった。
思うままに乳房を貪り、秘部を弄ぶ。
彼女もまた抑えることなく身を躍らせた。
手の甲を滴がつたう。


マイの動きが鈍くなっていた。声は掠れ、呼吸は途切れがちだった。
ヤガミは指が小刻みに締め付けられるのを感じていた。
マイはヤガミの肩に額を押しつけ、しがみついた。
次の瞬間、全身を強く張り、震えた。指への締め付けが一際強くなる。
彼女はしばらく息を止めたまま震えていた。
そして糸が切れたように弛緩する。

ヤガミは指を引き抜いて彼女の様子を伺った。
マイは浅く短い呼吸を繰り返し、空の一点を見ていた。
ヤガミが覗き込むと焦点を合わせ、照れ笑いを浮かべる。
ヤガミの二の腕に顔を押し当て、片目だけで見上げた。
「・・・・いっちゃった・・・・」
そう言った後、なおさら照れて顔を押しつけてくる。
483nKn_dK:2005/09/08(木) 02:31:58 ID:BNb3iOhd
(10)

ヤガミは衝動に駈られてマイをきつく抱きしめる。
「ど、どうしたの?」
正直でない男にはとても言えない。愛おしく思ったとは絶対に言えなかった。
ヤガミは腕に力を込めて挿入の欲求に耐えた。
己のそれは張り過ぎるほど張っていて、
絶頂を迎え敏感になっている彼女の中に挿れるのは躊躇われた。
少し間をおかなければならない。

マイが身動ぎする。きつく締め過ぎたかとヤガミは力を弛めた。
彼女の手がヤガミの下着に触れた。ヤガミは驚いてマイを見詰める。
マイは照れながら、しかし目は逸らさずに言った。
「しよっ・・・か・・・?」
ヤガミは昂ぶりの為に声を出せなかった。喉が引きつる。
マイは下着を脱がす。
反り返ったそれに引っかかり少し手間取り、マイは照れた。
そして何も纏うものがなくなったヤガミをみて更に照れた。

「えっと、どうしよっか・・・?」
マイは脱がすために上半身を起こしていた。
ヤガミもそれに習って身を起こしている。
自分から切り出したものの、自ら上にまたがったり、
足を開くことは出来なかった。出来ればヤガミに誘導して欲しい。
ヤガミは無言でマイの両肩をつかむと横になるように促した。
顔が少しこわい。マイは緊張した。
ヤガミは足の間を割って身を置く。
マイはヤガミから視線を逸らさない。もったいなくて逸らせなかった。
真剣な表情。でもいつものものとは全然違う。初めて見る顔だった。
ずっと見ていたいと願う。
しかし願いは叶わない。
マイは仰け反り、きつく目を閉じた。

彼女の中は予想以上に狭かった。
ヤガミはマイの負担にならないようにゆっくりと腰を沈めた。
動きに合わせてマイが甘い吐息を漏らす。
ヤガミは激しく突き上げようとする衝動を必死で堪えていた。
ゆっくりと優しく身を動かす。
切ない吐息。時折混じる嬌声。艶めかしい表情。
ヤガミは試練に耐える。
マイが首に腕を絡め、口づけを求める。
彼女から舌を差し入れ、絡めてきた。
とろけるような感触にヤガミは自制が効かなくなる。
484nKn_dK:2005/09/08(木) 02:32:54 ID:BNb3iOhd
「・・・!っ・・っ・・・・っ・・!!」
あまりの激しさに吐息は声にならない、いや息すらはけなかった。
ヤガミにしがみつくこともできない。
身体のどこを弛めてどこを張ればいいのかもわからなかった。
これが快楽なのか苦痛なのかもわからない。
手足をピンと突っ張り、大きく仰け反る。
激しい突き上げの為か、無意識に身体が逃げようとするのか
マイの身体は上へ上へとずり上がっていった。

ヤガミは身体を離し、マイの太腿をつかみ固定する。
更に深い部分までヤガミが到達し、マイは音にならない悲鳴を上げた。
片手は目を覆い、片手はベットに爪を立てる。
ヤガミは泣いてるのかと思い動作を止める。己の暴走を恥じた。
手をどけてマイを覗き込む。マイは虚ろな瞳であらぬ方向を見ていた。
泣いてはいなかったが、ヤガミは心配になって呼びかける。
「マイ・・・。」
マイはヤガミを見た。焦点が合うまで少し時間がかかった。
笑顔を作ろうとするも叶わない。身体が気怠い。

ヤガミはマイの頬に 額に 瞼に 唇に優しく口づける。
マイに少しずつ表情が戻ってきた。
「大丈夫か・・・?」
マイは黙ってにっこり笑い、ヤガミの問いに答えた。
「すまない・・・少し、その・・・」
ヤガミが詫を述べようとして口ごもる。マイはそれを制するように唇を重ねた。
「もっと・・・しよ・・・ヤガミ・・・」
ヤガミの手を握る。両方の掌をしっかりと合わせた。


ヤガミの動作に答えるようにマイも身を揺らしている。
互いが互いに優しくし合う。
指で 唇で その身体の全てで。
マイは時々目を開ける。
濃い灰色の瞳がマイを見ていた。
これ以上がない幸せ。
全てが満たされる。
ゆっくりと穏やかに極みに向かう。
485nKn_dK:2005/09/08(木) 02:33:51 ID:BNb3iOhd
(12)

マイが震える。強く収縮し内なる高まりをヤガミに伝える。
彼女は彼を深く捉え、更に内側へと引き込もうと波打つ。
ヤガミはそれに抗することができない。
また、その必要がないことも感じていた。
彼女は達した。ならばこの抑えがたい内圧を解き放ってしまおう。
ヤガミは身を突き立て、奥深くに放出する。
数度大きく脈打つ。更に深くに届くように押し込む。
マイはヤガミを強く抱き、それを受け止めた。

ヤガミは長く深いため息をついた。猛烈な倦怠感が身を襲う。
マイは半身になり、彼が横になれる場所を作った。
そこへヤガミは倒れ込んだ。
息をついてマイを見る。彼女はヤガミを見詰めていた。
目が合うと微笑んだ。あまりに無垢な笑顔にヤガミは戸惑う。
己の行いが悪事のように感じてしまう。
「なんだ?」
ヤガミは彼女の微笑みをそのまま受け取ることができない。
間を持たせるために口を開いた。マイは包み込むように笑う。
「すきよ、ヤガミ。」
今の彼女には羞恥も虚栄もない。心を無防備に晒す。
ヤガミは困惑した。どう対応すればいいかわからなかった。
マイは彼の戸惑いなど気にしないで身を寄せた。頭をヤガミの胸に乗せる。
「すき・・・すきよ・・・だいすき・・・」
軽く目を伏せて囁き続けた。
ヤガミは気の利いた言葉をかける事が出来ず、黙ってマイの髪を梳いた。
囁きは次第に不鮮明になっていき、やがて寝息へと変わった。

ヤガミは困った。身動きが出来なくなってしまった。
動かせる手と足を使って衣類を引き寄せ、マイと自分に掛けた。
彼女に動きが伝わらないように努める。
「ん・・・」
マイが身動ぎした。ヤガミは起こしてしまったかと様子を伺う。
マイは寝たまま手足を絡めてきた。ますます身動きができなくなる。
ヤガミは苦笑した。自由の効く腕を伸ばして彼女を抱く。
彼女に顔をなるべく近づけて囁いた。
「好きだ・・・」
486nKn_dK:2005/09/08(木) 02:34:42 ID:BNb3iOhd
(13)

「マイ、起きてくれ。マイ」
ヤガミに揺すぶられてマイは覚醒した。
目は開けたものの、状況が把握出来ない。ぼんやりとヤガミを見た。
「出航だ。作戦会議にいく。」
ヤガミはマイの下から腕を引き抜くと起きあがった。
痺れに顔を歪めながら服を身につける。
マイはヤガミにつられるようにして身を起こした。
身体に掛けられた服が滑り落ちる。マイはゆっくりと服に目を向けた。
それは黄色のジャケットだった。

ヤガミは麻痺した半身に苦労しながら服を着た。
最後に上着を身につけようと服を探す。
「な、何してる?」
服はマイが着ていた。しかも前をしっかりと留めている。
ジャケットの裾からほっそりとした足が覗いていた。
その眺めはとても良いものだったが、今は急がねばならない。
「おい、冗談はよせよ。」
マイはいたずらっぽく笑うと、ヤガミの腕を逃れてベットから飛び降りた。
「マイ!」
ヤガミは語気を荒げた。今はふざけている暇はない。
マイは少しふてくされてジャケットをつまんだ。
「せっかく着れたのに・・・」
名残惜しそうに服を離すと、ヤガミに正面を向け腕を広げて立った。
十字架のようなシルエットになる。
「はい。」
ヤガミはその行動が理解できない。疑問の視線を投げかける。
「必要なんでしょ?どうぞ。」
マイは胸を突き出した。欲しかったら自分で剥げということらしい。

先程とは立場が逆転していた。
脱がされるほうは堂々としていて、脱がすほうが照れている。
ヤガミは服を取り戻すと、彼女になるべく目を向けないようにして身につけた。
見たら色々と気になってしまう。
そんなヤガミを試すかのようにマイが抱きついてきた。
踵を上げて顔を近づける。キスを交わした。
「・・・お前も早く服を着ろ。」
マイの瞳はいたずらっぽく笑ってる。
「会議が終わったら第二種になるぞ。」
「残念でした。私、しばらく民間人だもの。すること、ないもの。」
マイは動揺しているヤガミが珍しくて楽しい。
487nKn_dK:2005/09/08(木) 02:35:22 ID:BNb3iOhd
(14)

「いいから着ろ。」
ヤガミは勝手に動こうとする手を制して彼女を押し返した。
マイはすねたように身を翻すとベットへと向かう。
ヤガミは未練を残しながらも部屋を出て行こうとした。
「ヤガミ。」
振り返るとマイがベットのある物陰から顔を覗かせていた。
「いってらっしゃい。」
にっこり笑って手を振った。ヤガミは目を伏せる。
かわいい と思う。だがそれを面に出すことは出来ない。
「ああ。」
仏頂面で短く答えた。マイは彼が照れていることを承知している。
愛しい背中を見送った。
488nKn_dK:2005/09/08(木) 02:38:15 ID:BNb3iOhd
長々と駄文、お目汚し失礼致しました。
あれとかそれとか代名詞が多いのはご容赦下さい。
当方大人技能が低いため、能力の限界値でございます。
どうかご寛容に対処下さいませ。

ではこれにて失礼いたします。
489nKn_dK:2005/09/08(木) 02:46:05 ID:BNb3iOhd
あれ?読み返したら番号がふってあったりなかったり・・・・
文章の順序はあってます。
申し訳ございません。
連投するのが初めてのため、あわてていたようです。
脳内補完の方よろしくお願いします。
490名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 03:22:42 ID:SsFto8mn
膨らみ云々ってのはちょっとわかりにくいな
一瞬胸愛撫してるのかと思った
491名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 06:42:42 ID:ONylYiUx
ちょっと主語が多いですね。
「ヤガミは」
「ヤガミの」等。
492名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 08:12:17 ID:EnUlh+0V
全年齢板で宣伝しないでくれ……。
携帯だとh抜きも意味ねぇぞ
493名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 09:44:36 ID:OXpqvptk
どこ?
494名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 18:51:31 ID:45zvWUXO
下手な文章だ…
495名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 19:30:02 ID:+o0mUU3I
そういうことは心に秘めとけや…
前より上達した気もするし、芽をつぶすのは勿体無いだろ
496名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 20:41:01 ID:7I2/3fzY
舞踏子の名前は可能な限り伏せちゃくれまいか。
名前変換のない夢小説読んでるみたいでちょっとしんどい。
497名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 23:57:58 ID:+rlQY08a
さんざんだなw
自分は>472以前>492以降しか目を通してない訳だが。
498名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 03:13:02 ID:v4/fIo37
私としてはヤガミ×舞踏子が読めればなんでもいいのでGJ。
乙かれでした。

今の流れでSSが投下しづらくならないように切に祈る。(特にヤガミ×舞踏子)
499nKn_dK:2005/09/09(金) 06:15:29 ID:VEDZk05G
未熟・稚拙なものをお見せしてしまい、
お目汚し申し訳ありません。
こうして皆様のご指摘を受けますと
己の改善すべき点が明確にわかります。
大変ありがたいと感じております。

自分一人で書いて、読んでいるだけでは
なにも変わらないと思うので。
今回の投下はかなりの冒険でした。
ここでやるなという意見もあるでしょうが・・・
さらなる精進をしたいと考えております。

また、全年齢版の方に宣伝を載せてしまったことを
深くお詫び申し上げます。
浅はかでした。
不快に思われた方々、ご迷惑をおかけした方々
誠に申し訳ありません。

それでは失礼します。
500名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 11:39:17 ID:8jLGtCg3
>>499
うんうん。
2ちゃんだからコメントは辛口だが、
マナーさえ守ってくれれば投下は大歓迎。
読みたくない人は読まない。

しかし、499のコメントすら不自然だからもう少し本を読んだ方がいいのでは。
妄想という創造とアウトプットが出来るコトは素晴らしい事だから
ま、めげずに気長に頑張れ。うらやましい限りだ。
501名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 23:06:22 ID:3EruWopS
若宮×新井木キボーン。
倉庫から引っ張りだしてきたらカナリつぼでした。
502名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 23:15:53 ID:+pevH6nl
新井木たんは七夜月幻想曲であっちゃんを助けて頑張ってるという話だったから、
あっちゃん&舞たんとの3Pきぼんぬ。
503名無しさん@ピンキー:2005/09/10(土) 00:22:26 ID:gLRh7yV5
>501
あれはヨカタ・・・
504名無しさん@ピンキー:2005/09/10(土) 00:50:44 ID:3jgDFRak
だ、誰かスイトピーを…
505名無しさん@ピンキー:2005/09/10(土) 06:12:30 ID:aTh4fDbn
スイトピー×ホープ×BL
の3Pきぼんぬ
506名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 18:14:34 ID:4H3fsAbC
>>503
愛を感じるよな…
507名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 18:28:16 ID:bkhKTSVq
エステルがイカナの触手にぬらぬらされるシチュはどう?
508名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 21:22:01 ID:aTh4fDbn
ソレダ!
むしろイカナ×全女キャラで
509名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 21:59:30 ID:IKME9tHM
そして全員喰われると
510名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 23:00:58 ID:Mzh0u99L
最後は全員で烏賊焼きか?
511名無しさん@ピンキー:2005/09/15(木) 22:35:47 ID:WUJc/y0a
とりあえず保守。
512名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 09:40:33 ID:BxowxKTY
マイケルのSSはネット上の何処にも無い事が判明した

ああ、いい女なのにマイケル
513名無しさん@ピンキー:2005/09/21(水) 22:35:45 ID:QXBVCLdm
hosyu
514名無しさん@ピンキー:2005/09/25(日) 04:07:17 ID:8n+W/NwE
あげ
515名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 20:10:04 ID:RtvD+xMu
女マイケルの場合、相手は誰になるんだ?
ハリー?
516名無しさん@ピンキー:2005/09/27(火) 09:38:26 ID:tIbgvc+R
ハリー×ふたなりマイケルで


マイケル「ちんぽみるく出ましゅぅぅぅぅ!!!」





みたいなのがいい
517名無しさん@ピンキー:2005/09/27(火) 22:02:13 ID:QfwcJ8nW0
なに言ってんだおまえら
ここは流れに逆らってタキガワ×マイケルを主張する

だんだん女らしくなっていくマイケルにムネムネしつつも
(あのロケットみたいな乳もくびれた腰もチアノーゼ気味の唇も
全てはハリーのため・・・・・・!)と悶々なタキガワが
しょっちゅうマイケルと衝突してるんだよ。
喧嘩のあとハリーに泣きついてるマイケルを目撃したりするんだよ。
そんなある日いつになく真剣なマイケルに告白されるんだよ。

タキガワ仰天。
「え、だってお前・・・ハリーと・・・」
「ハリーのこと好きかも、って思ってた。でもタキガワに対する気持ちは全然違うんだ。
なんていうか・・・ずっと深い・・・」

そう言ったマイケルの瞳はきれいな琥珀で、俺は目が離せなくなる。
そうだ。初めて会ったときから、そうだったんだ。

「ごめん。俺、気づかなくて」
「この胸もね、タキガワが大きいのが好きって言ったから」

愕然とした。あれは最初にマイケルを「女」として意識したときだった。
気持ちを認めたくなくて、まだふくらみかけの胸にあてつけて言った言葉だった。

「タキガワ、どのくらいのが好きかなあ…って毎日考えてたら、こんなになっちゃった」
「俺の・・・ため・・・・・・?」
「うん。そうだよ」

ずっと他人のものだと思っていたもの、遠くに眺めるしかなかったものが
一瞬にして手の中にある。
ゴクリと喉が鳴った。

「・・・・・・ね、見てくれる・・・?」







萌えね?
518名無しさん@ピンキー:2005/09/27(火) 23:37:10 ID:Qb5OqxYW
萌える。禿同。実際自分のデータではマイコーが女性化したのタキガワが原因だったから。
519名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 04:33:01 ID:sCiZSkk8
>>517
ありがとう、いい夢が見られそうだ
520名無しさん@ピンキー:2005/10/02(日) 22:11:52 ID:0QLBABS+
いよいよガンパレード・オーケストラ放映開始。
まあ前作設定引き継ぐようだから、ゲームと切り離して楽しむものなんだろうな。
521名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 00:21:09 ID:k1DWXEk2
>>499さんのサイトが知りたいんだが…。よかったらググるヒント教えやがってください。
522名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 01:23:49 ID:XTjsu6Hr
>520
いつからですか?
523名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 01:49:09 ID:aRFgQ111
>>521
主役二人の名前でぐぐったら着いたよ。
524名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 02:42:52 ID:k1DWXEk2
>>523 ちょっ…もうちょい…詳しく…
525名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 03:20:13 ID:cnpImriA
>>524
自分523じゃないが、
主役二人の名前(カタカナ)でぐぐって3件目。速攻出たぞ。
526名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 03:51:58 ID:ZH0ZDRcT
マイケルのSS希望!希望!希望!希望!き(ry
527名無しさん@ピンキー:2005/10/08(土) 11:21:16 ID:JUuxLYRV
>>526
マイケルといえばふたなり
ふたなりと言えば↓
528名無しさん@ピンキー:2005/10/09(日) 00:35:47 ID:/0cAKB6j
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| 次でボケて! |
|______|
`∧∧ ‖
(゚д゚)‖
/  づΦ
529ウルソ:2005/10/09(日) 13:54:45 ID:oixnDbXp
呼ばれてもいないがここは一発ウルソ(517)が出撃し ま  し   た

ハリー×マイケルで
ハリーはちょっと鬼畜入ってるといい


「やだっ……!やめてよ、ハリー…っ…」
「誰も来そうにないが?」

 嘘だ。機関室の最深部とはいえ、個室ですら鍵のかからない潜水艦において
誰も侵入できない場所などない。しかも航行中であり、戦闘に入れば途端に人が増えるのは確実なのだ。
しかし抵抗の一番の理由は羞恥でも関係の暴露でもなかった。
また、小柄な体を背後から抱きすくめて無骨な手を這わせる男もそれを知ってとぼけた返事をするのだ。
ずっと昔に好きだと言われた低い声で。

「あ……っ、お、奥さんも…子供もいるクセに…っ!」
「なんだ。そんなことを気にしていたのか」
「そ、そんな……ぅあ……こと、って……」

男は慣れた手つきで衣服の隙間を広げた。滑らかな肌をたどり、乳房に触れるとそれは手のひらにすんなりと馴染んだ。
やわやわと揉んでやるとすぐに先端が固くしこる。大きさも反応も、男が開発して慣らした。
ハリーは満足げに目を細めた。うなじに口付け、ざらりとした髭の感触に跳ねる肢体に喉の奥で低く笑う。

「そんなに気になると言うなら」

するりと片手を下へ滑らせる。がくがくと震える足の間の、服の上からでも見えるほど猛ったものを撫で上げた。
マイケルの肌がぞくりと粟立つ。そこは、ほとんど愛撫を受けた経験がなかった。
思わず引きかけた腰は男の腿に阻まれて逃げることができず、焦らすような刺激に腰が揺れた。

「ふあっ……やぁ……」
「今日はこっちを可愛がってやろうか」
「あっん、んんっ……やぁ…!」

直接触れられるとそれはさらに太さを増した。男の荒れた指に強く扱かれる痛みすら快感に変えて、
鈴口から溢れる蜜が派手な水音を立てる。
赤く充血しきった先端を指で擦られ、マイケルはあっけなく果てた。

「あぁっ!あ、あ、駄目っ…ぁっく、あっああ…!」

手の中でびくびくと痙攣しながら白濁液が吐き出される。
その青臭い体液にぬめる手でゆるく揉みこみ、ふたたび欲望を育てながらハリーは耳元で笑った。

「……随分溜まってたようだな」
「んぅ……もう……やめっ……」
「これでは足りないだろう?もっとイかせてやるよ。おまえが」

ハリーはそこで言葉を切ると、胸にあてがっていた手を外し、尻から割り込ませた。
く、と指を押し上げ、うるみきった秘所を股布の上から捏ねる。

「ココに欲しいと泣いて請うまでな」



……あやうく801になるところだった……
真面目なハリー好きな人にはすいませんとしか……orz
530名無しさん@ピンキー:2005/10/09(日) 23:08:06 ID:/0cAKB6j
>>529
最近までふたなりの意味も知らなかった私だけど、かなりドキドキしながら読みました。
GJ!
531名無しさん@ピンキー:2005/10/11(火) 00:42:05 ID:XF75P8TE
>>529続きキボンヌ
532名無しさん@ピンキー:2005/10/15(土) 17:41:54 ID:RmzZFt2C
保守
533ウルソ:2005/10/18(火) 00:44:21 ID:e+6zP3qU
>>531
やなこった

舞踏男×スイトピー投下。
スイトピー過去捏造。超適当。
534舞踏男×スイ@ウルソ:2005/10/18(火) 00:46:04 ID:e+6zP3qU
 それはとても風変わりな告白だった。
 おかげでプレイヤーが告白と気づくまでに半日かかったほどだ。
 「お兄様と呼んでもよろしくて?」
 「二人だけの時なら」
 
 艦橋の中央に据わる巨大なコンソール。その席は「夜明けの船」を制御する全ての部署を監視する艦長席である。
 現在、艦長席のほかは無人。規則的に明滅する天井が床に落とす人影は、ない。
 
 青い軍服の上に黒のレースで縁取られた白のドレスが広がる。
 過剰な量の布は華奢な少女の体の描く曲線を外へ露にすることはなかった。
 肌も外から見える部分はほとんどない。
 少女の纏う堅苦しい雰囲気そのもののように、少女を守り外界から隠していた。
 自らの仕事場である艦長席に座り、少女を膝の上に乗せた男の手も。
 
 「……んぅ……」
 服の下からもぐりこんだ男の手がまだ固い胸のふくらみを押さえた。
 少女は微かに呻き、白いレースに覆われた細い指をぎゅっと握りしめた。
 くるりと乳首の周りを指先でなぞられ、反対側の手がスカートをかき分けて内腿を這いのぼる。
 思わず手を引きかけた少女の耳に男の声がかかる。
 「手を下ろしてはいけないよ」
 男の声は、冷静で優しい。
 「は、はい…」
 コンソールの上で握られた両手が震える。
 その声は少女の纏う壁を壊す甘い幻想だった。
 「……お兄様」
 
535舞踏男×スイ@ウルソ:2005/10/18(火) 00:47:20 ID:e+6zP3qU
 男の指は内腿をたどり、下着のわきから秘所に触れた。茂みはほとんど存在せず、
 ふっくらとした盛り上がりは滑らかな表面を晒している。
 仄かに湿るそこを楽しむように数度指を往復させ、少女の兄ではない男は口を開いた。
 「足を広げなさい」
 「はい」
 少女は従順だった。膝を大きく割り、足で男の両足をはさむ。
 重厚なドレスの下でぴったりと閉じられていた秘唇がほころび、その奥がわずかに外気に触れる。
 「あっ……はぁ…はぁ……」
 そこはクチュクチュと微かな音を立てて男の愛撫を受け入れた。
 陰核を指の腹でこすり、濡れはじめた入り口の周りをなぞる。
 キュ、と乳首をつまみあげると大きく背がしなった。
 「はぁん!……やぁ…」
 痛みと快楽がないまぜになった感覚に悲鳴に近い声が上がる。
 それでも両手はコンソールの上から離れなかった。
 幾度も絞るように乳首を揉みこまれ、黒白のカチューシャと両側で巻かれた金髪がぱさぱさと揺れた。
 「あっ、あ、ぁ…っ、おにい、さま……っ」
 「なんだい?」
 秘所の立てる水音は一段と派手になり、とろとろと蜜を溢れさせる秘孔は男の指をくぷりと飲み込んだ。
 狭い肉襞をかきわけて激しく抽挿され、少女の息はますます乱れた。
 「あぁん!あぅ…んんっ、あっ!…っく…わ…わたくし………もう…」
 ジュプ、と空気混じりの卑猥な音を立てて指が抜かれた。秘孔が埋めるものを失って切なくヒクつく。
 スイトピーはため息のような喘ぎを漏らした。
 
 「あっあ、あ、あっは……あぁん!」
 男は少女を膝の上に乗せたまま、下着の横から猛る自身を割り込ませ、下から貫いた。
 充分に潤った未成熟な隘路が男を締め付け、えもいわれぬ快楽をもたらす。
 少女はコンソールから言いつけどおり手を離さなかった。
 後ろを振り向かないように。
 
 男は少女の背中を押し、コンソールへ伏せさせた。
 坐位で後背位をとらせ、細腰をつかみ激しく上下させる。乱暴ともいえるやりかたに、少女の意識が溶けてゆく。
 「はぁっ…、あっん、おにい、さまぁ…っ、もっと……ぁあっ!もっと、して…!」
 びくびくと腟内が痙攣し男を追い上げる。肉棒が秘所を突き上げるたびにあがる卑猥な音は、
 行為を覆い隠す繊細な布が意味を失うほどに際立っていた。
 「っ…おにいさまぁ…あ…!」
 最奥に吐き出され、少女の背が魚のように跳ねた。余韻にひくつく秘孔から白濁が溢れて肉棒を伝い落ちた。
 ずっと行為を隠していた布に行為の染みを刻んで。
 
 男は「お兄様」が何者なのかは知らない。知ろうとも思わない。
 ただ、それは少女が殻を破り内面を晒すために必要な装置なのだ。
 抱かれながらその美しいブルーの瞳が自分を映すことはない。それはこの先誰に抱かれても同じだろう。
 
 男は長くため息をついた。
 それからまだ息の乱れる少女を抱きおこして優しく口づけた。
 瞳を閉じたいとしい恋人に。
 
536ウルソ:2005/10/18(火) 01:02:02 ID:e+6zP3qU
以上。

>>496さんの意見を参考にさせていただきました。男女逆ですが。
舞踏男の名前を伏せるついでにお兄様と呼ばせてみました。
というかスイトピーにお兄様と呼ばれてぇー!

あと「ご主人様ぁ…!」「この犬が!」もいい。
うちの舞踏男はニックネームが「ベンジャミン」で呼ばれるたびに激しく後悔する。
537名無しさん@ピンキー:2005/10/18(火) 01:57:12 ID:9SRYo7SG
激しくGJ!!
スカートで見えないの萌え。
ベンジャミンワロスw

スイトピーみたいなタイプは、いったんプライド崩されたらすごそう。
538名無しさん@ピンキー:2005/10/24(月) 00:42:30 ID:ffsTPo0t
>>521
絢爛サーチで年齢制限→上から三件目
539名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 11:24:18 ID:IdFz/d5Y
>>538
それ、違うサイト。
ヤガミ マイでぐぐったら2つめに出てくるサイトが正解。
540名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 15:22:19 ID:yRMxo6Vy
ぐーぐるはパソコンの設定で出てくる順番とか変わってしまうのよ
必ずしも同じ検索結果になる訳じゃないよ
前にメインPCでかなり上になるサイトがサブマシンだと数ページ後になっててビクーリした事が
541名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 19:04:58 ID:EXDiO76i
どっちにしても、そこまで細かく個人サイトの在り処のヒントを出す必要なくない?
グーグルに登録されてるのは確かなんだから、それで見つけられない人は
見られなくてもしょうがないと思う。
542名無しさん@ピンキー:2005/10/26(水) 22:11:08 ID:42N3AK/W
流れ豚切って悪いが、ここの女マイケル話読んでムネムネして、
ノータッチだった男マイケルを性転換させた。何だこのエロ可愛い娘は!
ときめきだしてマッサージまで後一歩のところで マイケルがシー突喰らって死んだ。

・・・・・_ト ̄l○
543名無しさん@ピンキー:2005/10/27(木) 15:46:32 ID:14kZUD+U
>>542抱きしめる
544名無しさん@ピンキー:2005/10/27(木) 20:25:40 ID:bn8uzsWC
>>542
ばかだなぁ、タキガワと同じ部署に放置して
タキガワのために性転換したマイケルをおいしくいただけばよかったのに。
マイケルが「タキガワが信頼してる」という伝言を持ってきたときは
ニヤニヤ笑いが止まらなかったよ。

エステルたんが嫌悪スパイラルに突入したけどキニシナイ
なぜかミニスカになっていたので結果オーライ。
でも、本命の嫌悪が250超えを記録…音楽がならないorz
545542:2005/10/28(金) 16:52:45 ID:CQlaQKzA
マイケル・・・。いやイルルタソが心から離れないよ。・゚・(ノД`)・゚・。

そういえばマイケルの公式絵見たこと無いのって漏れだけ?
パッケージとか取説の表紙とかの絵描いてる人の美麗マイケルが見たいぜよ
546名無しさん@ピンキー:2005/10/29(土) 14:29:26 ID:E/x/cCEJ
>545
ナカーマ

取説表紙といえば、タキガワがウエンツに見えるのは私だけだろうか。
スレ違いスマソ。
547sage:2005/11/01(火) 01:30:52 ID:gVfqKDbU
流れに逆らってオーケストラの横山×石田と言ってみる。
548名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 07:34:34 ID:8dIuaP9n
流れに逆らってガンパレの王道速水×芝村と言ってみる
549名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 17:45:54 ID:VJCKCOdi
流れに逆らってガンパレのマイ王道自主認定で森×原の下克上と言ってみる
550名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 19:41:23 ID:8dIuaP9n
絢爛のゲーム版小説読んだ。(電/撃で出してる奴)
イルル王子の総軍制服(;゚∀゚)=3ハァハァ!!

ってことでハリー×マイケルにも一票
551名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 21:36:38 ID:EyctNe6m
善行×萌。
552名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 21:41:59 ID:2sGRe2He
善行萌え!?
553名無しさん@ピンキー:2005/11/02(水) 00:20:30 ID:FUgo1Re8
コータロー×小夜×月子の3Pで(ry
554名無しさん@ピンキー:2005/11/02(水) 19:29:55 ID:IlkZqU7a
それじゃあ、マイト×イイコ×水の巫女の3Pで(ry
ゲームじゃないし、自分も想像できないが。言ってみただけ。
555名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 01:43:40 ID:6OpnBQzP
うちでもそのうち誰かが死亡事故やらかさない限り
体質は変わらないよ。高学歴っていいよな
俺は仕事でミスしたら逮捕されるけど、あいつらはごめんなさいで済む。
556名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 03:04:43 ID:KW4sQvLC
どこの誤爆かは知らんが、まあ公務員に対する不満は同意。
557名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 07:23:17 ID:8KQ4WwZV
俺もそう思うが役人ってだけで冷たくするのは止めような。
真面目に働いてるのにそういう目で見られてノイローゼ気味になってる人もいるから。
558555:2005/11/03(木) 08:58:59 ID:6OpnBQzP
誤爆した、俺は公務員じゃなくて車掌だよ
GPOでなんか書こうと思ったけどゲーム発売してからの方がいいよね。
559名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 09:49:01 ID:DRujEB7c
役人も民間も下っ端はあっさり首切られて、上の連中はゴメンナサイコノトオリデスアヤマッテルダロ!で終わる傾向がある。
560名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 15:05:03 ID:/k7rpMJF
 本田先生だったか?ゲーム中で有能な奴が偉くなるのは義務だって言い切ったのは。
でも上に行くころにはたいてい組織の体質に染まりきって・・・って話がエロからずれてるぞ。
561名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 20:35:38 ID:Mq7J14Up
エロス!エロス!щ(゚д゚щ)カモーン
562名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 23:07:21 ID:gWIq4cBs
式神の七夜月で瀬戸壬生再燃。
子持ち夫婦で妄想中。
563名無しさん@ピンキー:2005/11/07(月) 00:41:47 ID:qVj/T5zP
誰ぞドランジ×舞踏子萌えの方はおらぬのか…
ドランジ分が足りな…
564名無しさん@ピンキー:2005/11/07(月) 11:11:32 ID:1FwwqQAm
>>563
いや、ドランジは萌える。萌えてるよ!
565名無しさん@ピンキー:2005/11/07(月) 15:15:40 ID:qN7Yx0gP
むしろ舞踏子×ドランジで
5661/2:2005/11/08(火) 14:39:49 ID:MaqLWwgf
昼寝の済んだ直後のひと時は、カール・T・ドランジにとって最も憂鬱で最も幸せな時間だ。


一人用の狭いベッドの上。軽い脱力に心地よくまどろんでいると、
腕の中の柔らかい体が身じろぐ。

彼女は部屋が暗くなるのを嫌がる。
おそらく艦被害で封鎖された部屋を連想するせいだろう。

手を緩め薄目を開けると、天井から真っ直ぐ飛び込む光に滲んだ視界の中
しなやかな身体が起き上がり、伸びをする。
白い肌は光に馴染んで眩しい。

風の妖精だ。
光の海だ。

白熱灯と安物ベッドのシーツの海の中で、何を言っているのだろう、と思いとどまる理性は残っていた。
そんな事を考えているうちに、ぬくもりが手の内から逃げ離れていく。
艦内は適温に保たれているはずなのに、肌に冷たい風が触れる。
思わずその腕に手を伸ばし、捕まえていた。
黒い髪が揺れ彼女が振り返る。
「なぁに?ドランジ」
「……、いや」
自分がした事ながら、咄嗟の事に返事がすぐに出なかった。
言葉を濁していると彼女は不思議そうにまた髪を揺らし、ベッドへ手をついて自分の顔を覗き込んでくる。
「まだ、出港まで10時間もあるだろう」
「うん。だからまだ、ゆっくり寝てていいよ?最近、休めてないでしょ。…それにほら、いつも終わった後、眠そうにしてるし」
くすくすとからかい半分に笑って、子供にするように、寝転がったままの自分の髪を崩し撫でる。
部下を萎縮させる事も多いこの顔が、彼女にはそう扱うように足る風に見えているらしい。
…実際疲れているのは確かだ。連日の激戦で右舷配備の人間には仮眠を取る暇も無い。
迂闊に倒れでもすれば、敵艦と出くわす時には必ず先陣を切る彼女を危険に晒す事となる。
彼女から貰ったマッサージロボを酷使しながら必死で身体を保たせている毎日だった。
それでも。
5672/2:2005/11/08(火) 14:42:12 ID:MaqLWwgf
互いの仕事が終わるのを待って艦橋から急ぎ出た時の事。
水槽の前で一人佇み、小さく呟いていた彼女の姿が、脳裏によぎって消えて行った。
あと21。

捕まえたままの腕を支え、左手でその肩を引き寄せる。
細い身体はあっけなくバランスを崩し、己の腕の中へ戻ってきた。
驚いて小さい声を上げたが、それは無視して、すぐ目の前へ来た額へ口づける。それからこめかみへ、耳の端へ、首筋へ、鎖骨へ。
「ちょ…ダメだってば。私、後で会えたらって、ミズキと……、っ」
背を反らして逃げようとしているのを感じ取れば、
背中に添わせた指で背筋を腰の辺りまでさっとなぞる。反応は顕著だ。
そのまま腰をしっかりとホールドして、唇と舌とを小ぶりな胸の突起に這わせる。
色の変わる境目から全て覆うように、柔らかく口に含み舌の腹でこすり上げると、
上の方から甘く息を飲む音が聞こえた
「も……我慢の利かないコーコーセイじゃないんだから、……ん」
軽く前歯で甘噛みし刺激を与える。
よく分からない抗議には答えない。所詮宇宙軍人、言葉で引き止めるよりも動作で語った方が早いらしい。

頭上から、しょうがないなあ、と苦笑の滲んだ小さな声が聞こえた。
髪の上から額に口付けられた、温かな感触。
彼女の手がこちらの脇腹を撫ぜ、下へと辿っていく。
軽く吸い上げたのち口を離し、身体をずらすと、
早くも再び起き上がり始めている自身へ細指が絡みつき、柔らかく揉みこんでくる。
指の腹が裏側の筋をゆっくりとなぞり上げる。
最初はやわやわと、次第に激しく与えられる快楽に、そのまま身を任せてもいたかったが。
己も歯を噛み締めて堪え、改めて彼女の手首を掴み止めた。
太腿の上に跨っていた体を、引き倒し、入れ替わりにベッドへ仰向けに寝かせる。
「駄目だ」
瞬きし問いかけるように見上げてくる視線に、口の端を上げた。
「今日は外に出さないから、覚悟してくれ」
568名無しさん@ピンキー:2005/11/08(火) 14:49:58 ID:MaqLWwgf
俺屍、書きあがらねっす。
代わりにエロス・ドランジ×舞踏子・舞踏子×ドランジと
リクエスト全て兼ね備えさせようとしたが、色々無理だった _| ̄|○

うちのドランジは飛行長。
顔は怖いが本当は可愛いぜ!みんな気づけYO!とばかりに
普段は鼻眼鏡つけてもらってます(゚∀゚)アヒャ!
569名無しさん@ピンキー:2005/11/08(火) 20:46:58 ID:1+wae5sk
か…ネ申!! 
ドランジ×舞踏子が舞い降りたよ! 萌 え 死 ぬ !
こういう甘々なのに飢えてました神!ありがとう!!

飛行長ドランジもいいな、かっこいいな。
あの身長がたまらん… orz
570名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 00:05:16 ID:bDOJ6y+C
>>568
さっき感想書いたけど書き込み失敗してるようなのでもう一度。

激しくGJ!!
ちょっと「可愛いお姉さん」風の舞踏子可愛いよ舞踏子。ドランジも可愛いけど。
微妙に切ないのもイイ。

そしてうちでもドランジは飛行長してもらってます。
自分は艦長だからしょっちゅう眺めたり話したりできるし、
倒れなくて偉いので良い飛行長。
いや倒れる飛行長も良い飛行長だけどw
571名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 00:56:04 ID:zQBd1dR+
舞踏子かわいいよ舞踏子。
ドランジ、男としか噂されないから完全に視野の外だった。

ところで>567の最後のセリフ

>「今日は外に出さないから、覚悟してくれ」

中出し宣言と思って読んでた自分……orzハズカチー



ところで諸君、ミズキの調教日記はどうか。
572名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 01:02:56 ID:IQT1bbxZ
>>571
ミズキが調教されるのか? 調教するのか?
573名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 01:03:19 ID:IQT1bbxZ
うわ、sage忘れ。スマソ
574名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 01:05:43 ID:bDOJ6y+C
>>571
……あっ……!!
そうか、「外出させないよ」って意味だったのか……!!
575名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 01:48:45 ID:I9wYDhU2
>>571
>>574
そんなおまいらが大好きだw
576名無しさん@ピンキー:2005/11/09(水) 02:05:14 ID:dwaCLrK0
>>566
乙!

>>555
いいんじゃないかGPO投下しても?TVウニメ放映してるし。一応キャラの性格も公開されてる訳だし

…というより自分は待ってますノシ
577名無しさん@ピンキー:2005/11/13(日) 23:03:53 ID:gRqtdqVS
ロジャー×ニーギ
熱烈に求む!
578名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 00:24:29 ID:SSvpFxUB
>>577
先輩に一途なニーギを他のキャラ(特に異性)と絡ませるのって、結構難儀でないかい?
579名無しさん@ピンキー :2005/11/14(月) 03:17:31 ID:dUz1JwZI
>>578
玄乃丈だったらやりやすいと思う。玄の片思いだが。
いくつか同人や小説を読んだが結構好き。
580名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 03:34:41 ID:gyvbWETu
>>578
レイープなら問題ありませんよ!(まさに外道)
581名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 10:34:09 ID:vyUmouru
最近このスレを見てふみこにハマり式神1&2購入
…知り合いからふみことニャンコポンが同一人物と知る…
ゲームでここまで凹んだのは初めてだorz
582名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 10:57:03 ID:SRWxOC1J
あれ?確定してたっけ?<ふみこ=ニャンコポン

ところでここはエロ要素を滲ませてはいるがほとんど無い
単なるパロ的作品は投下可能なんだろうか。
583名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 13:28:54 ID:UISpu1Kn
無問題
584名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 17:18:13 ID:VBsP26R2
あの眼鏡、素に戻った時の口調、ノギの話に出てくるのはミュンヒハウゼンだろうし
これでふみこたんじゃなかったら俺びっくりだよ
585名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 17:28:24 ID:FydUD7DY
ニャンコポン結構かっこいいと思うんだけどな
586名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 21:18:48 ID:H1k2Y4Nz
【ドランジ×舞踏子 甘々ver.】

出港2時間前。



「あ゛ーー……」
「……なぁ」
「……、んー…?」
「君は」
「うん」
「──いや」
「……。なぁに?ドランジ。今日はさっきからもー」
「いや、だからな。その。
 ……いつまで君は、俺のことを、ドランジと呼び続けるつもりなんだ?」
「……」
「……」
「…………」
「…名前を忘れたとか言うオチは勘弁してくれ」
「……いや、それは無い。無いから」
「じゃあどうして」
「やー。それは、……いいじゃない。慣れちゃっ」
「よくない」
「…………」
「…………」
「……。カー…」
「うん」
「──っやっぱ今のなしっ」
587名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 21:19:52 ID:H1k2Y4Nz
ぐったり寝た後の起き抜けは、このくらいぐだぐだしてるといい。

カールって呼んでも誰の事はすぐに分からないよね。
という言い訳の元に、先の投下物の呼び名のおかしさとか
脱字を誤魔化しに来ました。エロスは無いが投下する。
実は絢爛は一週間やって放り出した。
Wikiを見ながら書いた。今は反省している。

>>571>>574
分かりづらくてスマソ。
でもそれはそれで萌えですね。義体だけどな!(゚∀゚)

ちゅうか感想を下さった皆々様方ありがとう。
588名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 22:16:50 ID:OVKRqB+3
ゑろもいいけどこっちもいい!

やっぱり貴方は神ですわ。
禿しくGJ!
589名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 00:02:40 ID:ARWAwJaS
まああんまり調子に乗るなというか、いい塩梅を見極めろよ。
590名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 01:26:01 ID:ZwMENV2h
>>587
この板ではお喋りな投下者は煙たがられる事もあるので
もう少し抑え目に振舞う事をお勧めします。
作品は果てしなくGJ!あなたの舞踏子は超萌える。

>>589
お前は言い方ってもんを考えろよ。
591名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 03:26:46 ID:je8cfnYL
こうやってまた神が減っていくのか、と暗澹な気分となった。

>>586
また気が向いたら萌え作品投下plz
592名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 14:37:32 ID:bW64LlCy
作者のオナニーはもう十分だって
いい加減うざいよ?
593名無しさん@ピンキー:2005/11/15(火) 16:51:12 ID:8/oKc7rF
職人自体はどうでもいいし、別にコミュニケーションとりたいとは思わんからさ
(ハァハァしながら執筆する職人の姿を想像するうすら寒くてとちょっとキモイしw)
作品だけ落としてりゃいいんだよ
よくできてりゃお褒めの言葉をいただけるし、クズなら叩かれる
それでいいじゃん
594名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 02:56:45 ID:u/HQlG4j
そんな勝手な考えでは職人がいなくなるな。
職人は保護してナンボ。
595名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 03:14:41 ID:NUoz/ZuK
こういう流れで潰れていったスレが、どれぐらいあったことか・・・
596名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 03:58:20 ID:q66wldhz
別スレで職人やってたが、
たまには作品に関する言い訳とか補足をつけたくなる時がある。
コメントつけてくれた人へお礼を言いたくなる時だってあった。
でもこの手の「職人は作品だけ投下してりゃいいんだよ!あとは黙ってろ!」
的な流れが怖くてとてもじゃないが作品以外の書き込みが出来ない。
息苦しさのあまり、結局2chでは書き手撤退して読む側専門になった。

保護しろとまでは言わんけど、
>>590みたいな書き方で注意してくれれば自分も完全に消えずに済んだのかな…と昔を思い出して悲しくなりました。
597名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 17:46:04 ID:tAZyagWz
>>593 お褒めの言葉っておい読み手はそんなに偉いのかよ
需要と供給の関係はあくまで対等であるべきだろう
598名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 17:52:03 ID:XJmOrUpV
オナニ―駄文には……

つチラシの裏
599名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 18:44:01 ID:pPASPXGT
>>597
でも小説投下のスレなんだから、読み手と書き手だと書き手の方が大事な人材だと思う。
まあ、作品を投下できないにしても、妄想とか書き手の意欲になる感想とか書いて
スレを盛り上げられる読み手なら必要な人材だと思うけど。
何も貢献してないくせに批判・叩きばかりは一人前の厨がこの手のスレを駄目にするんだよね。
600名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 00:04:04 ID:Id/z3Zcd
600ゲト
601名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 01:18:16 ID:D3gbt213
き も い よ ?
602名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 02:24:55 ID:JuzgsZ1C
さぁ、再びスレが荒れてまいりました!

今ここで!満を持して!ふみこ=ニャンコポンだと初めて知った俺が来ましたよ藻前等!

つーか読み手が過剰反応し過ぎると某12の国のスレみたくなるからヤメロ
603名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 02:33:34 ID:g/DpDxMe
釘刺すのは一人がやればそれで十分だろうに、
我も我もと良識ぶった輩が皆似たようなこと言って湧き出すのってスンゲー迷惑なんですけど。
604名無しさん@ピンキー:2005/11/17(木) 03:01:42 ID:0a5iUVIo
よし、じゃあこの話はここまでにしよう。
次の投下をマターリ待とうじゃないか。
605名無しさん@ピンキー:2005/11/18(金) 03:06:22 ID:xo7UUL+R
ニャンポコは抱ける位いい女だぞ!

606名無しさん@ピンキー:2005/11/18(金) 12:55:28 ID:1zvjK+m2
ニャンコポンは片足ストッキングがエロ可愛いぞ
607名無しさん@ピンキー
売れっ子人気作家気取って、いい気になってるから叩かれんだよ。
スレというか、板自体の雰囲気を掴まないうちから投下しようなんて
大それた事考えるからこうなる。
半年ROMれ。