「え、ちょ、ちょっと! 」
女の声がやや低くかすれがちに響く。
並んでいた列に割り込まれたかのような驚きを含んでいた。
「気づかれたかい。花嫁さん」
男の声にはあきらかに嘲笑がまじっており、
ようやく官能に気づいたか、といった物言いであった。
「や、やめ、、、こ、ここは、、、」
「花嫁」と呼ばれた女はシーツをたぐりよせ上体を起こす。
男はその動きでやや口を離せざるをえなくなったが、手はいまだ柔らかな肌にからみついていた。
「よいではないか。どこでも。さ、続きをしようじゃないかね」
飄々(ひょうひょう)とした口調のまま男は言い、にんまりとして視線の先の神秘をのぞいた。
「ここは、もう待ちきれんようじゃぞ」
と長い舌で舐めすくった。
「あっ」
片手で男の頭を押さえる。やや間があって息が漏れる。
小指を痛打した時のように。辛口料理を食べた時のように。
神経が過敏になっている。そこだけが過敏になっている。
「ずうううううううっと」
ほれ、と男が舌をだす。左右に速く動かす。そしてまた、にんまりと。
女は手に力を込め、そのおぞましい頭部を離そうとする。男はあざ笑うかのようにまた舌を出し動かす。
男の肩と背中の筋肉が盛り上がると、じょじょに頭部が前進する。
離す女。近づく男。女の足は次第に持ち上がりそのため重心が後ろへずれていく。
男は遊んでいる。一気にはいかない。女の甲高い声を心地よく聞いている。
やがて女の丸まった背中は押し倒される。一瞬シルクのひんやりとした感触が伝わった。
と思う間もなく股間に熱くねばい感触が広がった。
膝の裏を厚い手で押さえられている。
太ももが胸に当たる、胸が太ももに当たる。
どちらか分からないが、どちらにせよ今までにしたことのない体勢だ。
そしてその体勢のまま男に吸いつかれている。
「やああああああ!ああああ」
声は非難と罵声と拒否で組成されていたが、そこに官能が割り当てられるまでにそう時間はかからなかった。
「やあ、、、やっ」
男の動きは緩急をこころえており、その名札ほどでしかない粘膜にすべてを支配されていた。