そういや行為は無いもののFCでしょうもないエロネタは自分も考えたなあ。
(要約)
新人メイドのカリンちゃんをいたく気に入った特務兵がその姿を数枚盗撮。
こんなにいけてる新人さんがいたんだよとこっそり回してた所、
隊長に見つかって没収される。
建前は「大事の前でそんなにふらふらした行為はいかん」だが、
本当は「藻前らのずりねたにされてたまるか!」
その没収した写真を隊長がどうしたかは、ご想像におまかせ。
……案外神棚において拝むという超純情なことをしそうだなあ隊長は。
何とも馬鹿エロネタ話を考えたなあと、書いてみて痛感した。
一応、レーヴェ×カリンではある、これw
887 :
885:2006/04/15(土) 21:05:58 ID:JB4rAHWS
801ネタって……。
やまなしおちなし意味無し……なのか? まあそうだけどさ。
単にマジにレーヴェ×カリンな話が読みてえ→
→なら自分で書くしかないのか?→しかしカリンがどういう人物かさぱーり分からん
→書けねえよ!
な中思いついた苦し紛れのネタなんだ。
カリンとかミーシャとかレナさんとか故人は扱いが難しいやね
レナさんはSCでちょっとイベントがあったんでマシだろうけど
カリンお姉ちゃんの描写はそういったものになっちゃいそう…
レナのを作るとしたら、「弟が欲しい」発言の直後、カシウスと頑張っちゃった
ところとか、かね。
カリンはヨシュアやレーヴェの視点の回想で語られるのみで、言葉遣いすら分からんからな・・・
分かることは雰囲気がクローゼに似ていたというくらいか
俺は某SSのせいで
カリン=冷凍マグロチョコ
どろどろ愛欲まみれを希望してる人たちをレーザーで焼き殺しそうな
さわやかエロなし小説って需要ある?
あるとしたらどこに投げたら良い?
小ネタなのでサイズは小さめ。
>>894 あるあるあるある
ここで良いと思うけど
他んとこに投下するんなら教えてくれ
オーケー。ここに投下してもよし
PCゲー板の萌えスレに投下してもよし
897 :
894:2006/04/16(日) 17:09:25 ID:aedrlQj/
>>895-896 ありがとう、あまり上手じゃないが。楽しんでくれれば幸い。
書き忘れてたが英雄伝説空の軌跡 時間的にFCの直前あたりと思ってもらえれば。
---
「エステル、入るよ?」
何年前からかはもう覚えていないけれど、エステルの部屋は良い香りがするようになった。
勿論、エステルが香水をつけてるとかは絶対にない。そういうことに疎い子だから。
だとしたら、これは体臭?
以来、僕はエステルの部屋に入るのをいつも少し躊躇う。男の自分が出すことは絶対に無い香り。花のような、お菓子のような。
彼女の部屋は、僕の部屋に比べてすこし散らかっている。鏡台があるのが女の子の部屋らしいところ。でもその隣に棒が立てかけてあったりするあたり、エステルだと思う。
窓際に置かれているベッドで、エステルはこちらに背中を向けて眠っている。たっぷりした栗色の髪が、端から床に零れている。手を伸ばして、カーテンを引きあけた。
「くぅ……ん」
光に反応して軽く声が出る。その甘い声を、最近聞くのが怖くなってきた。自分の中の葛藤を直視してしまうからだ。そんな僕の思いなど露知らず、彼女はころりとこちらを向く。まぶたは閉じたままだ。
僕は彼女の母親がどんな人か知らない。僕自身養子だからなのもあるが、エステルがまだ小さな頃に、事故で亡くなったと聞いていた。彼女自身の顔立ちはあまり父さんと似ていないから、きっと母親似なのだろうなと漠然と思っている。
毎日外に出て日の光を浴び、元気に動いているにも関わらずあまり日に焼けない肌。うっすら小麦色だけれど、特にしみやそばかすは見当たらない。
目を開ければ赤みの強い褐色の瞳がのぞく瞼は、今は閉じられている。長い睫が頬に影を作る。ふっくりと色づく、わずかにぬれた唇。
「エステル」
そっと肩を揺する。白いフリルのついたパジャマからのぞく、白い喉。手に伝わる温みと、細い肩。手をそのまま滑らせたくなるのをこらえる。階下じゃ父さんが朝食の支度をしてるんだ。いやそうじゃなくてもそれはダメだけど。
「えーすてる、朝ごはんだよ」
「んー」
こんどは仰向けになる。この子はどこまで僕を挑発すりゃ気が済むんだ。思ってるのは僕だけだろうけど。
「んー……ヨシュアぁ……?」
甘く囁かれる自分の名。別に今が初めてな訳じゃないけど、どきりとする。当人は自覚がないから始末が悪い。
「あさー……?」
「そう、朝。父さんがもう支度してるよ。早くしないと冷めちゃうよ」
「ねむいー」
「ほら、起きなきゃ」
それでもむにゃむにゃと何か言うエステルに、僕はいたずら心を起こす。ほんの少し本音の混ざった。
「もう、起きないと襲っちゃうよ」
「おそうー?」
ようやくエステルが目を開けた。少しけぶる、紅玉色の瞳。
「うん、襲うから早く起きなさい」
「襲うって何するのー?」
「こうするの」
僕は彼女の頬に唇をつける。子供の頃エステルによくやられた、軽いキス。
「あはは、くすぐったーい」
エステルは無邪気に笑う。僕がどんな感情を抱いてるかも知らないで。
「いいからほら、起きるの!僕は下にいってるから、さっさと着替えて降りといで」
「はぁい」
(まったく、無防備なんだから)
「起きたか?」
「うん、何とか」
「いい加減お前が部屋に入るのを嫌がってもいい年頃なんだがなぁ。すまんなヨシュア」
「役得……って言っておけばいいのかな?」
カシウスは思わず振り返り、義理の息子を見た。その視線を受け、にこりと笑う彼に、父は肩を落とす。
「お前が言うと冗談にしか聞こえんよ」
「心外だなぁ。ホントにそう思ってるのに」
ヨシュエス(*´Д`)ハアハア
短いけど、凄いラブラブで良いね。ごちそうさまでした
あぁ、前のように今書いてるSSの一部をうpしてみるテスト
「とりあえずは自己紹介しておくかの。わしの名はアドル。アドル・クリスティンという。よろしくな。えぇ〜・・・」
「エステルよ。エステル・ブライト」
「僕はヨシュア・ブライトです」
901 :
894:2006/04/16(日) 20:21:51 ID:aedrlQj/
ぎゃー
ヨシュアは春生まれじゃなくて冬生まれだった orz
脳内補完を適当にヨロ。年齢的には間違っていない、はず。
---
肩越しに触れる、エステルの体温。
体温だけじゃなくなってきたのはいつからだろう?
だんだんと僕は、エステルを女の子として意識し始める。
癪に障るのは、僕だけそう感じてるみたいなところなんだけど。
「ヨシュア、何してるの?」
ひょいと肩越しに彼女が覗き込んでくる。言葉に3拍遅れてふわりと被さる栗色の髪が、さらりと腕の端に触る。
「本を読んでるんだよ」
「人形の騎士?ヨシュアこういうのも読むのね」
「君が読まなさ過ぎなの。ああもう重いよ」
「レディに重いなんて失礼な」
彼女は笑って取り合わない。僕が重たいと言うのも本当は嘘。毎日棒術で鍛える彼女の体は、引き締まって細く、軽い。僕が気にしてるのは、肩越しの感触。
間に服を何枚か挟んでいても感じる、温かな柔らかさ。頬に血が上らないよう、余計な部分が反応しないよう全力で意識を目の前の本に集中する。
そんな僕の葛藤など露知らず、彼女は後ろから手を伸ばして本のページをめくり、挿絵を眺めたりする。柔らかさが少し強くなる。髪から零れるほのかな甘い香りに、鼓動が早くなる。
「暑いよ」
「冬なのに?」
外は雪が積もっている。確かに僕の抗議はあまり説得力がない。父さんは今日家に戻ってこないから、ずっと二人きりだ。邪な思いが脳裏を掠めさってゆくのを、人事のように意識する。
「あーわかった。こんな可愛い子にくっつかれて、照れてるんでしょ」
「はいはい、重いってば」
胸の柔らかさがたまらないからずっとくっついていて欲しいなんて、死んでも言えない。そろそろ本気で振り落とさないとと思い始めたら、エステルが暴挙に出た。
「ヨシュア、顔赤いよ?」
ぎゅ、っと後ろから抱きしめられる。甘い香りが強くなる。背中が温かく柔らかい。体に回される腕も、寄せられる頬も……
「ちょっ、エステル!」
笑いながら彼女が逃げていく。僕は足を組む。全く……
無邪気は罪だと思った、そんな冬の日。
そろそろ父さんからエステルに一言言ってもらったほうが良いんだろうか。
そして別の話と勘違いしていたことに今気づく。
ちょっとシェラ姉のムチで吊ってきます
>>897 ほのぼの甘いヨシュエス良いよ。萌えた。
ほのぼの良いね
SCは話的に仕方が無いけど
こういうほのぼの分は無くなっちゃってるからなぁ
足を組む、という描写に腕を感じる
「エステル、入るよ?」
という部分だけで変な想像をした俺は生き埋めにされるべきだと思う
907 :
1/2:2006/04/17(月) 13:05:44 ID:YtZw5Tk6
894ですおはようございます。
とりあえず
>>906を掘り起こしつつ
そろそろコテハンつけたほうがいいですか?エロ期待の人に申し訳ないですし。
---
「あ、これ可愛いよ、ヨシュア」
王都グランセル、エーデル百貨店。アクセサリーの並ぶショーケースで、エステルが僕の腕を引く。
「本当だ、可愛いね」
エステルが指差したのは、細身の指輪。緑耀石(ペリーダ)のはまった銀色のものだ。指輪の横に書いてある注釈を見ると、どうやらエステルの誕生石らしい。
「でも棒術してると邪魔だよね……。擦りむいちゃいそうだし」
「それは、そうだね」
恋人は少し顔を曇らせ、やっぱりいいやときびすを返す。
「いいの?エステル」
「うん。せっかく買っても、着けなきゃ意味無いしね」
ひらひらと手を振る。目は思いっきり名残惜しそうだ。だけど彼女は僕の手を引っ張るから、仕方なくついていく。
少し早い時間に、ホテルで荷物を置いた。
「ちょっと本屋でも見てくるよ」
「ん、じゃああたしは少し寝てるね」
本屋に行くなんて大嘘だ。僕は急いでさっきの店に向かう。店員が覚えていたのか笑いかけてくる。
「贈り物ですよね?」
「……ええ」
不本意だが仕方が無い。僕は女性の装飾品なんて買ったこと無いのだから。店員に進められるまま、いくつか品物を手に取る。
「さっきの、ペリーダのはまった指輪あります?」
「ああ、恋人さんは8月生まれですか?」
「そうです」
涼しく光る細い銀の輪に填まった、新緑の緑が美しい。
「指の太さとか、わかりませんよね?後であわなかったら持ってきてください。取り替えますから」
「ん、いえ。鎖も一緒に貰えますか?」
きっとエステルはずっと身に着けていようとするだろう。でも棒術には邪魔だ、というより危ないから、僕は首に下げられるよう鎖も買い足した。
もう記憶も結構かすんできているけれど、遠い遠い昔、レーヴェが姉さんに髪飾りを上げていたことを思い出す。レーヴェは器用で、ちょっとした道具程度なら簡単に修理できてしまう人だった。
レーヴェが姉さんに上げたのは、小さなガラス玉をつないで作った、子供心に宝石のようだと思うようなキレイなものだった。姉さんの黒い髪に良く映えて、嬉しそうな表情を覚えている。
エステルも、喜んでくれるだろうか?これは手作りじゃないけど―――
908 :
2/2:2006/04/17(月) 13:07:41 ID:YtZw5Tk6
恋人は柔らかくまどろんでいた。しばらく悩んだ後、そっと手を取る。棒術をする彼女の手は、女の子の手にしては少し節が目立ち、指が長くしっかりしている。何本か試した後、左手の薬指に指輪を滑り込ませた。
軽くキスをすると、エステルは目を覚ます。
「もう帰ってきたの?」
「うん。欲しい本が特に無かったから」
「ん、お腹すいたかな。ご飯食べようか」
「そうだね」
この子は僕の挙動には敏感だけど、自分のことには凄く鈍感だ。指輪にいつ気づいてくれるだろうかと少し不安になった矢先、視線が手に落ちた。
「……あれ?」
エステルはしばし指を見つめ、右手で頬を引っ張った。
「痛い」
「何してるの」
驚いたように目を見開き、僕を見つめてくる。
「指輪」
「うん、キレイだよ」
「夢じゃ、ないね」
「うん。ちゃんとはまってるよ」
指と僕の顔を交互に見つめ、徐々に頬が上気してくる。
「わー……」
右手でそっと指輪をなぞる。髪が邪魔をして、細かい表情が伺えない。
「エステル?」
ぽとりと、雫が落ちた。
「ちょっ……エステル!?」
冬りんご色の大きな目から、透明な涙が零れ落ちる。僕は心底焦って、彼女を抱きしめた。
「ごめん、ごめんね。気に入らなかった?取り替えてこようか」
「やっぱり、ヨシュアが買ってきてくれたんだ」
「うん、欲しそうだったから……。首に掛けるよう鎖もあるよ」
沈黙が落ちる。たまらなく不安になって、思わず問いかけた声は酷く頼りなげで、他人のように感じる。
「嫌だった?」
「ううん」
ぽろぽろ涙をこぼしながら、彼女は僕を振り返り微笑んだ。急に愛しさが込み上げて、しっかりと抱きなおして見つめる。
「初めて、だから」
「ん?」
エステルは少し怒ったように目を伏せ、早口になる。
「初めて、ヨシュアが買ってくれたものだから、嬉しかったの!」
「それだけ喜んでくれると、僕もプレゼントのし甲斐があるな」
左薬指の指輪に、特別な意味があったことを僕が知るのは、もう少し後。
シェラさんが目ざとくエステルの首に光る指輪を見つけ、さんざんからかわれてからになる。
俺はあんたの文章…嫌いじゃない
911 :
867:2006/04/17(月) 18:49:01 ID:aPT38j+c
アンケート回答ありがとうございました。
割れると思っていたけど、ばっちり割れまくりありがとう( ´Д⊂)
シナリオ進行は既に決定済みなんでたぶん期待にはあんまり応えられないですが、
クローゼも混ぜられないかギリギリまで模索してみます。
基本的にはレン、エステル、ヨシュアがメインで。
教授?ゴメン自分催眠属性なかった……
>907
癒されました。
GJ!
エロもいいけどほのぼのもいいなぁ。
>>911 ならば逆に教授が受けでry
>>907 ごちそうさまでした。
さりげなくレーヴェ×カリンなネタ入れてるのも素敵だ!
やっぱりベタなラブ話は良いっすね。
本当に英伝6はプレイしてる所
家族に見られるのはこっ恥ずかしいゲームでした。(会話に萌え狂いまくりだったから)
894=907ですおはようございます。
おまいらが余りに褒めまくってくれるから、筆が滑って滑ってしょうがないじゃないですか。気づいたら明け方4時でしたよ orz
---
「カリン」
躊躇いがちに名を呼べば、長い黒髪の美しい少女が微笑む。もう手の届かない、愛しい娘―――
レーヴェは身を起こした。外はまだ暗い。ここはグロリアス内の自室。知らず手で顔を覆う。
もう12年も前の話だ。彼の生まれ育った村、ハーメルが焼かれたのは。
アストレイ姉弟とレーヴェの両親は流行り病で死んだ。百日戦役の三年前だった。今振り返って思えば、あれも何らかの策略だったのかも知れないが、今更知ってどうになるものでもない。
若干12歳にして既に大変な美少女だったカリンは、両親をなくした時から帝国の女街へ売られる話が出ていたが、カリンは弟を盾にそれを拒否し続けていた。弟は4歳だった。
「レーヴェ」
柔らかく落ち着いた声が、今でも耳に蘇る。素晴らしい琥珀色の瞳をしていた。
他の村娘と同じように、農作業もしていたし家事も炊事もしていたのに、不思議とカリンの手は荒れず、肌にも顔にも苦労が刻まれる事はなく。
いつも優しく笑い、弟をそれは大切にしていた。弟のヨシュアは、幼いうちに両親を亡くしたせいかとても甘えん坊で、カリンの姿が見えないと泣くような子供だった。
だから、カリンを誘えばいつもヨシュアが着いてくる。ヨシュアを邪険にすればカリンが怒るので、他の男は妬ましげにヨシュアを見たものだが、レーヴェはいつもヨシュアも一緒に誘った。
若干カリンへの点数稼ぎを考えていなかった訳ではないが、彼はヨシュアも可愛かったし、カリンが喜べばなんでも良かったのだ。
「レーヴェ」
姉に似た、見事な黒髪と琥珀色の瞳をしたヨシュア。顔立ちも似ており、将来は大層美男子になるだろうと思われた。自分を慕い、何かあればアヒルの子のように後ろをついてくる彼を、可笑しくも不憫だとも思いつつ可愛がった。
カリンはハーモニカ―――ハーメルの方言ではハモリカ―――が上手で、時々村長宅の導力ラヂオから聞こえてくる流行歌を、耳で聞き覚えては奏でてくれたものだ。中でも「星の在り処」が一番好きだった。そのハモリカは銀製で、
元々はカリンの曽祖父の物だったと言う。唯一ウチで盗まれたら困る物ね、と笑っていた。
―――強さにも弱さにも この心は向き合えた
―――君とならどんな明日が 来ても怖くないのに
結社にいるようになってから、彼は帝国語から、リベール語の名前に変えた。ヨシュアと共に結社に拾われた日から、もうどこにも『レーヴェ』はいないのだと、
愛する娘の面影ごと、あの焼け落ちたハーメルへ葬ってきたつもりだったのに。
なのに最近、何度も夢でカリンが微笑む。カシウス=ブライトの娘と楽しそうに笑うヨシュアを見てからだ。
「嫉妬、というのかな、これは」
暗闇に冷えた部屋で、知らず言葉が零れ落ちる。今頃ヨシュアはあの娘と眠っているのだろう。
ガラスに映る自分の顔には、表情らしきものは見当たらない。
不意に、鮮やかに蘇る光景がある。
一度だけ、カリンと交わした口付け。ヨシュアの目を盗んでしたそれは、甘く苦い思い出。
カリンが死んでからは、何が何でも思い出すまいと、教授に封印を掛けてもらったそれだ。
「何故……」
頬に一筋転がり落ちたものは、無かったことにした。
目の前のゆがんだ顔から、目を逸らす。
ヨシュアが、結社の束縛から解き放たれようとしている今、レーヴェの中でも確かに何かが変わり始めようとしていた。
―――決戦の日は近い。
レーヴェ×カリン、結構見たげな人がいるっぽいのでがんばってみたんですが、イメージに沿わなかったら申し訳ない。
明け方4時まで書いてたのは、これの次のものなんですが、次の奴は原稿用紙10枚程度の長さになってます。
スレの容量制限とかあると思うんですが、そのままここに放っちまって良いもんでしょうか。
圧縮してうぷろだの方が良いんだったら適当なところ教えてください、エロイ人。
余談ですが一連の話は、「キスにまつわる20の御題
ttp://lblue.client.jp/」に沿って書いてます。
いやほら、一応エロパロだし完全に健全なのもアレかなとか思ったもんで……
俺はぐちゃどろのエロが読みたいんじゃすっこめゴルァァァァ な苦情が来たら自サイトに引っ込みます。
>>915 お疲れ様です。
そういえば、あの虐殺事件をレーヴェが語るとき、
「家族〜」というキーワードがあったからそん時まで生きていたんではと
あら探ししてみるw
というのはおいといて、すっごくよかったっす。
またお待ちしております。
>>916 orz
少し調子に乗って書きすぎたようです。頭冷やしてきまつ。
本スレ見て、次の話を出していいのか不安になってきた昼下がり。
次の話マダー?
919 :
882:2006/04/19(水) 15:03:20 ID:CsCbT0cY
遅筆やってるうちに神々のおわすスレになってしまった。
畏れ多い…っつーかまだ書けない…orz
首を吊りつつ神々に最大の賛辞を。
どうもこんにちは。先日からエロ抜きSSを投げてる者です。
気を取り直して再びやってまいりました。トリップつけてみたので、エロ無しに用の無い方は適時ご活用下さい。
本スレでちょっと盛り上がってたので若干不安ではありますが、とりあえず投げてゆきます。
オリビエ×クローゼ です。ご注意下さい。
---
「寒いですね」
王都グランセル、冬。
クローディア=フォン=アウスレーゼは城のテラスで手に息を吹きかけた。白いドレスの上には、毛で縁取りされた上着を羽織ってはいるが、寒いものは寒い。
「帝国はもっと寒いですよ、姫」
隣に立つのはオリヴァルト=ライゼ=ユーゲント。お隣エレボニア帝国の皇子である。18番目だが。
「いずれ帝国も行ってみたいものですね」
クローディアの、濃紫の髪が風に揺れる。一年で彼女の髪はだいぶ伸び、肩を掠めるまでになった。一方オリヴァルトの方は、一年前とほとんど変わっていない。
「オリビエさんは、お変わりありませんか」
「ええ、有難い事に」
「寒いね、ヨシュア」
「うん。足元滑るから、気をつけて」
その頃ヨシュアとエステルは、カルバード地方を旅していた。カルバードはリベールに比べ、乾燥気味で気温の高低差がきついため、冬の寒さはかなり厳しい。
「にしても、びっくりよね。オリビエとクローゼ、結局縁談が出たんだね」
「僕は割りと予想してたけど」
エステルは驚いてヨシュアを見た拍子に、足を滑らせ尻餅をついてしまった。
「ほら、足元って言ったでしょ」
ヨシュアはそんな彼女を引っ張り立たせ、雪を払い落としてやる。冬用の赤いコートが、淡紅のまだらに変わる。
「そうなの?あたし全然考えてなかったよ」
本当に驚いたという口調に、彼は苦笑する。そしてそんな彼女に砕いて説明してやった。
「クローゼは今17歳。王族として、そろそろ縁談が出ても可笑しくない歳だってのはわかる?」
「うんうん」
「じゃあ、縁談と考えると……リベールの中で相手としてよさそうなのは?」
「んー……?デュナン公爵じゃちょっと歳が違いすぎるわよね」
「そうだね。クローゼのご両親―――確かお父さんの方が王族だったはずだけど、兄弟はデュナン公爵のみで、彼は独身。つまりクローゼに歳の近い従兄弟はいないんだ」
エステルは納得したように頷いた。
「そっか。じゃあリベールの中でクローゼとつりあうような人っていないのね」
ヨシュアはご名答、と微笑む。
「そう。貴族まで入れるとまた違ってくるのかもしれないけど、おそらくそれはないと思う」
「どうして?」
「一つは、クローゼは若くして女王になる可能性があるから。後ろ盾は大きいほうがいいからね。もう一つは、リベールにおける貴族で、極端に力のある家はないから、どこか一つと縁談を組むと力の均衡が崩れて、色々と支障が出て来ると予測されるから」
ヨシュア得意の先読み推理に、エステルはしばし混乱をきたし、3分ほど黙った後でようやく飲み込めたらしい。
「んーと、要するに相手がいないってことよね」
「まぁ、そうだね」
相変わらずエステルは政治や歴史に疎い。その分ヨシュアが知識を仕入れているのでバランスは取れているのかもしれないが、もう少し勉強してもらわないと、とヨシュアはひっそり決意を固めた。
「そうなると、次のターゲットは国外だけど……」
「カルバードは王様っていないでしょ」
エステルが珍しく鋭いツッコミを返した。
「えらいね、エステル。よく覚えてました」
「……なんかほめられてる気がしないんですけど?」
「失礼な、心の底から褒めたのに。カルバードは共和制で、王族に当たる位の人がいない。そうなると消去法でエレボニアに矢が立つ」
「オリビエなんて18番目とか言ってたから、いっぱい子供いるんでしょ?」
「そうだね。エレボニア皇帝には側室が多いから」
「そくしつ?」
首をかしげるエステルに、ヨシュアは内心思い切りため息を吐いた。いつぞやの「夜伽」もそうだが、この子はこの手の知識が無さ過ぎる。
「えーと、愛妾と言うところも、あるかな」
「あいしょう?占いの?」
「それは相性。んー……おめかけさん、とか」
「?」
「えーと……」
「今頃、エステル君とヨシュア君は、カルバードに居る頃かな」
「そうですね。ジークがそう言ってました」
「……いつも思うけど、便利な隼だねぇ」
「あの子はただの隼じゃないですから」
二人に噂されているとも知らず、リベールの姫とエレボニアの皇子は、テラスから見える湖を眺めていた。部屋に戻ろうとはどちらも切り出さない。
何しろ、部屋の中ではユリア中尉とミュラー少佐が待ち構えているのだ。戻ればまた腹の探り合いな縁談話に延々つきあわされるのである。
「寒くないですか、姫」
「まだ、我慢できます」
オリヴァルト―――オリビエは帝国でもかなり寒い方の離宮で生まれ育ったため、寒さにはめっぽう強い。今着ているのは、帝国風の黒いコートとズボン、その上にゆったりとマントを羽織っているだけだが、大して寒いとは感じなかった。
一方クローディア―――クローゼは、多少耐性があるとはいえ、やはりシルクのドレスの上に一枚羽織っただけでは限界がある。白磁の頬は血の気がなくなり、指先が隠しきれない赤みを帯びてくる。
「やれやれ、僕の婚約者予定殿は、やせ我慢がお好きのようだ」
「まだ婚約と決まった訳では」
ここでオリビエは、高貴と思わせる態度を少し崩す。
「8割がた確定だと思いますがねぇ?歳が違いすぎる気もするんですが、他に適当な相手がお互い居ないんだから仕方ない」
「……」
彼は軽く肩をすくめる。
「ま、後ろから痛いほど何かを期待する視線も感じますし、ちょっとサービスと行きますか」
「え……?ちょ、ちょっとオリビエさん!?」
オリビエはおもむろにクローゼの背後に近づき、抱きしめるように腕を回した。元々あまり男性への免疫がないクローゼは、展開についていけず慌てる。それに構わず彼は彼女を包み込む。
「こうすりゃ少しは暖かいんじゃないかい、クローゼ君」
マントですっぽりとクローゼを覆うように抱いている。余計な部分に腕が触らないよう、少し離しているあたりが腐っても紳士のオリビエである。
「……あたたかい、ですね」
「ほら、こんなに手が冷えてる」
そっと手を捕まれた。拳銃を扱うオリビエの手は、しっかりと大きい。反動のせいなのか、微妙にマメが出来ていたりもする。
状況に若干抵抗を感じつつも、オリビエの体温と厚手のマントで明らかに寒さが抑えられ、クローゼは少し肩の力を抜いた。
「そもそも、だね」
耳元で声がするのをくすぐったく感じつつ、不思議と嫌だとは思わないなと彼女が思っていたら、彼はいきなり爆弾を投げてきた。
「僕は他人に気のある女性にはさほど興味がないんだよ。……ヨシュア君に惹かれてたんだろう?」
クローゼ、硬直。
「はっはっは。初々しくてよろしい。でもヨシュア君にはエステル君がいる。あれは誰がどう見てもお似合いのカップルで、他人が入り込む余地は無いよね」
まっすぐ前を見たまま沈黙する彼女を、斜め後ろ45度から見やりつつ、彼は続ける。
「でも君は、エステル君も好きなんだ。だから身を引いておこうと思った。でも他の誰か―――たとえば僕とか―――を好きになる気はさっぱり起きない」
ふー、とオリビエは息を吐く。
「ったく損な役回りだよ。横恋慕中のお嬢さんにこっちを向かせてその気になって貰わなきゃいけないんだぞ、俺は」
普段の、少し人を食ったように丁寧な口調が、いきなり砕けたせいでクローゼは驚き、思わず振り返った。とたん、かなりの至近距離で目が合う。
「いけない、地が出てしまったようだ」
にこりと微笑むオリビエの表情からは、特に伺えるものは何も無い。
「オリビエさんって、いろんな面があるんですね」
「君だってそうだろう?クローディア姫……クローゼ=リンツ君」
「それは、そうですが」
「もっとも、僕は"オリビエ"をほとんど地でやっているけれどね」
「ピアノやリュートは、練習なされていたんですか?」
「アレは僕の母上が上手なんだよ。元々楽器演奏が上手だったのを、皇帝が見初めたのさ。小さい頃から聞かされていれば、嫌でも覚える」
「そうですか……」
ふと、クローゼはやけにオリビエの顔が近いのに気づいた。とたん真っ赤になる。
「お、オリビエ、さん。顔近いです」
「そりゃ近づけてるからね」
「え、ちょ、ちょっと……」
オリビエの、スミレ色の瞳にじっと見つめられ、一瞬どうしていいかわからなくなる。多分この距離は、恋人以外に許してはいけない気がするのに、動けない。
彼女は思わず目を閉じる。次の瞬間、唇が塞がれる事を半ば覚悟する。
(初めて、だったのに)
思わず目じりから一滴涙が零れた。
「……やれやれ、これじゃ僕が完全に悪者じゃないか」
目を開けると、オリビエが困ったように笑っているのが目に入る。
「ま、当分飽きない日々を送ることができそうだ」
ふわりとマントが離れた。急に寒く感じて、思わず自分の体を抱きしめる。オリビエの体温にかなり頼っていたことを今更ながら悟る。
「次があるかどうかは知らないが、ほっぺにちゅーくらいはしてくれると、僕もあっためがいがあるんですがねぇ?」
ははは、と軽く笑って、オリビエは部屋に戻ってゆく。
しばし呆然とクローゼは立ちつくし、我に返って一歩踏み出したらよろめいた。
(どこまでが本気なのかしら)
これからオリビエは一ヶ月城に滞在する。その間どんなことが起きるのか、考えると頭痛がしてきた彼女であった。
「……姫、何かされませんでしたか?」
「いえ、特に何も」
部屋に戻って更に1時間ほど歓談したあと、ミュラーとオリビエが退室したのを見計らってユリアはクローゼに尋ねる。
「本当ですか?ずいぶん長い間二人で何か話していたようですが」
「寒がったわたくしを、マントでくるんでくれた程度です」
「オリビエとクローゼ、うまくいくかなー?」
「オリビエさん次第じゃないかな」
カルバードで、そんな噂をされていることを、クローゼは知らない。
冷えた手を癒してくれた、大きな手だけがやけに印象に残った。
ヴァー
大尉と少将な気がする。なんかもう重ね重ね申し訳ない…
細かい部分は適当に脳内補完してくださりませ。
オリビエ×シェラ姉さん派な俺
でも、相変わらずふいんきは嫌いじゃないので次に期待
オリビエって、本名オリヴァルト・ライゼ・アルノールじゃなかったっけ?
GJ、楽しませて頂きました。
ミュラーは少佐であってますよ、確か第七機甲師団所属の少佐でした。
ユリア中隊長は大尉に昇進してますが・・・・
>>920-923 個人的には好きな組み合わせなのでGJ
しかしヨシュアは当然、クローゼが自分に好意を持っていたことに気付いてない…んだよなぁ…w
エステルかわいいよエステル
894さん最高
>>927 エステルとヨシュアは似たもの夫婦なんだよ
他人の色恋沙汰には目聡いくせに、自分のこととなるとてんでからきし
エステルが素で鈍感なのはガチ
ヨシュアは結構敏感なきがする
でも心の底からどうでもいいと思ってそう
931 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 02:44:03 ID:Bfai0g61
>>929 ヨシュアはそうでもないような。
クローゼの気持ちには気づいて無い様だけど、
ジョゼットのには気づいてたみたいだし。
・・・あまり関係ないが
人気あると思われるクローゼ。
しかし、彼女の必殺技の名前は良く間違われるような。
×リヒトクライシス
珍しいのだと
×サンタクロスノヴァ
ってのも見かけたよ・・・・・・
フィリー→ジュリオ
アルチェム→アヴィン
クローゼ、ジョゼット→ヨシュア
相手に気づいて貰えない片思いはお約束ってことで
ヨシュアは一端カプア一家と別れるときのジョゼットのやりとりで、ジョゼットの気持ちに気づいてるのか思ったけど
最終章の「エステルとジョゼットは何故そんなに馬が合わないのか」、でそれは否定されたw
なるほど。そういえばありましたね。
そのイベントはクローゼの
「・・・・・・・・・鈍感」
しか印象に(ry
「鈍感」やら「羨ましい」やら。
クローゼも自分から手を出さなくても密かに待ってたりしたんだろうか?
「応援するといいましたけどヨシュアさんから告白してきたりしたら話は別です」とか。
向こうがその気なら寝取る気まんまんなクローゼはやっぱり黒いぜ。
王家の一員たるものそれくらいの黒さは必要って
ばっちゃが言ってた
ぶっちゃけクローゼはヨシュア以上にエステルが好きだから
百合以外考えられない
エステルも好きだからってか脈もないしエステルが傷ついてるから諦めてあげたんだろ。
学園祭で本当にキスしようかと思ったとか遠慮のいらない相手
だと思ったら勝負に出てそうだ。というかエルベ離宮では微妙に勝負をかけてたが。
再会だけで抱きついて女神に感謝してたじゃん
それはヨシュアと再会して抱き付かなかったから
エステルの方が遥かに好きなんだろうとかそういうこと?
流れをぶった切ってこんにちは、894です。
次のお題が「ごめんなさい。」なんですが、ネタが沸いてきません。
---
僕がカシウス=ブライトの家に来てから、早くも3ヶ月が過ぎようとしている。
最初の一月は、怪我の治療で過ぎた気がする。カシウスにやられたのもそうだが、他の執行者に抹殺されかけた僕は、自分でいうのもなんだけど、命に別状が無いのがおかしい程の怪我を負っていた。
3日間熱が下がらず、奴と、奴の娘が交代で看病してくれたらしい。おめでたい連中だ。
「父さん、酷い熱だよ?」
「傷のせいで、体が治そうとがんばってるのさ。……悪いんだが、ちょっと呼ばれててな」
「あ、うん。ヤバそーだったら、伝書鳩でしょ」
「そうだ。躊躇わないですぐ飛ばすんだぞ。苦しみだしたり、吐いたりとかな」
「はーい」
そんな声を聞いたような気がする。熱で朦朧とする視界に、心配そうな女の子の顔が入る。
「あ、目覚ました。だいじょーぶ?何か飲む?」
「……みず」
「お水?んしょ、これどうぞ」
口元に出されたのは、長い口のついたガラスの容器。咥えろと言われたのでそのとおりにすると、そっと傾けられ、ひんやりと心地よい感覚が喉を通った。満足して口を離すと、石鹸の香りがするタオルで拭ってくれる。
「お熱の時は冷やすといいんだよ」
一概にそうとも言わないと突っ込みたいが、声を出すのもだるい。目を閉じていると、べちゃりと冷たいものが額に乗せられる。思わず目線を上に向けたら、濡れタオルを乗せたのと自慢げに言われた。
ちょっと、絞りが足りないんじゃないか?
思わず手を出し、タオルをつかむ。
「あ、だめ取ったら」
彼女の手を払いのけ、両手でタオルを絞る身振りをする。慌てて彼女がさし出した洗面器に、ざっと絞って、改めて額に乗せた。
「わー。あんた、力強いのね」
横でふににと呻きながらタオルを絞り、まねをする。なんとなく可笑しくなり、じっと見ているうちに眠くなった。
「ねむたくなった?ここにいるから寝ちゃうといーよ」
そっと手を取られる。熱で熱い手に、今冷たいタオルを絞ったばかりの手は酷く心地よかった。思わず握り返す。
彼女はにっこり笑い、僕の頭を撫でてくる。なんとなく落ち着いて、目を閉じる。
「えへへ」
思ったより傍で声が聞こえ、目を開けたら、ちゅ、と頬にキスされた。驚いてまじまじと見つめると、照れたように笑う。
「ママがね、あたしがお熱出すといつもこうしてくれてね。安心したの」
ああ、母親の真似か……
いきなり蹴られたときは、どんな子だと思ったけど。
結構……可愛い、かな。
起き上がれるようになると、今度は食事攻めにされた。カシウスが作る料理はおいしかったが、その娘が作る料理は……。しいて言うなら上手下手が激しすぎると言えばいいのか。食べられるものとそうでないものの差がかなり酷かった。
美味しくない時、僕が嫌な顔をすると悲しそうにするので、なんとなく罪悪感を覚えて全部食べて腹を下し、二人まとめてカシウスに怒られた。
よって彼女の作る、味のヤバいものは断固として残すという知恵を、僕は早々に身に付ける。
ベッドから出られるようになると、奴の娘があちらこちらに引きずり回す。最初は家の周り、次は家の外、それから街道、そしてロレントの街。
カシウスは街で知らない者の無い有名人のようで、その娘も皆に可愛がられていた。若干そそっかしいが、愛嬌があり、素直で人懐こい子だったから、妥当といえるだろう。
彼は元軍の高官だったのに、何故こんな辺鄙な町で暮らしているのだろうと思うが、それ以上に不思議だったのは、街の連中の僕への扱いだ。奴の娘と同格、下手をするとそれ以上に可愛がる。
自分でもまぁ悪くない容姿だと言うことは知っていたし、実際この容姿を使い何度か仕事をしたことがあったけれど、それを差し引いても本当に可愛がってくるのだ。
なでてくれる。おやつをくれる。晩御飯をご馳走してくれる。エステルと泊まっていけという。服を作ってくれ、勉強を教えてくれ、遊んでくれて、本を読んでくれて……
なんでこいつらはこんなに親切なんだ、腹が立つ。
人の温もりなんて、もうずいぶんと感じたことなど、なかったのに。
一番腹が立つのは、カシウス=ブライトの娘、エステル。
何かとあれば僕を呼ぶ。僕と何でも半分こしようとする。僕が辛くないか気を配り、僕が少しでも―――不覚ながら―――微笑んでしまうと、飛び上がって喜んだ。
僕が吹くハーモニカをそれはそれは褒めるものだから、唇が切れるほど吹き鳴らしたこともある。ほどほどにしろとカシウスに叱られた。
いつまでも僕と風呂に入ろうとするので、カシウスから止めてもらったこともある。いい加減11にもなってるのに、男と一緒に入ることに抵抗を覚えて欲しい。確かに来て一月ほどは、自力で入っていられなくて介助してもらったけどさ……
ブライト家は今まで交代で食事当番をしていたらしく、街までいけるようになった頃から僕も当番に組み込まれていたが、僕が作る料理をこっちが恥ずかしくなるほど褒めるもんだから、気づけば腕が上がってカシウスにまで褒められるようになっていたりもする。
雷の酷い日に二人だけでいたときは、僕にくっついて離れなかった。
軽いノックと共に、僕の返事を待たず扉が細く開けられる。
「ヨシュア……入っても、いい?」
僕の部屋は、エステルの隣。元は物置だったそこは片付けられ、若干殺風景ながらまぁまぁ居心地が良い。
「何?」
時刻は10時過ぎ。ブライト家では9時が子供の寝る時間。不本意ながらもカシウスに無理やり突っ込まれるのは癪だから、いつもはとっくにベッドへ入っている。
ただ、たまたまこの日はカシウスが仕事で留守。家にはエステルと二人きりで、僕は夜更かしをしていた。
「ん……なんとなく」
いつも二つに結わえている髪は下ろし、白い、ドレスのようなパジャマを着ている。いつもは僕と似たような格好をしているから、妙に女の子らしく感じる。
とことこと歩いてきて、僕のベッドに腰をかける。僕も寝ようとしていたところだったんだけど?
「もう寝るんだけど」
「え」
「10時だよ。カシウスがいたらとっくにベッドへ押し込まれてる」
「父さんは明日の夜まで戻ってこないよ」
「知ってる」
どいて、と身振りで示すと、彼女はしぶしぶベッドから降りた。僕はそのまま布団に足を入れる。彼女はじっと僕を見詰めてくる。
「何?」
もう一度聞いたとたん、外が白く光る、雷が鳴る大雨。
「やっ」
ふわりと甘いにおいに包まれた。エステルに抱きつかれたのだ。いや僕は漆黒の牙、この程度で動じなんてするもんか。
「ちょ……、エステル?」
「……っく」
声を殺しているが、どうも泣き出したようだ。柄にもなく焦る。
「ど、どうしたの」
「……り」
雷が怖いらしい。
「雷嫌いなんだ」
「そ、そんなこと、ないもん」
この期に及んで強がるが、声が震えていて全く説得力が無い。肩を押して体を離させると顔を背けたが、頬が濡れている。
「泣いて言われても説得力ないよ」
「うるさいわよっ」
言い終わらないうちに再び外が白む。もう一度ぎゅっと抱きつかれ、僕は抵抗を諦めて体重を掛けられるままにベッドへ倒れる。ミルクの香りだと思った。
えらく長いような気がしたけど、実際は時計の長い針が数字2個分くらい動いた頃、エステルが身動きする。小さいくしゃみをひとつ。
「寒い?」
「うん、ちょっと」
鼻声だが何とか聞き取れて、僕は上掛けを引っ張り、彼女を布団に入れてやる。すっぽりくるむと、少し笑顔になる。
「あったかいね」
「ごめん、もうちょっと早く気づけば良かった」
元々冬りんごの色をした瞳が、泣いたせいでもう少し赤い。いつぞやしてもらったように、頭を撫でてやると嬉しそうに目を閉じた。
「このまま一緒に寝ていい?」
「……ひょっとして、こんな日はカシウスと寝てるの?」
「うん。でも父さんそんなに家に居るわけじゃないから、いつもは我慢してる。父さんがしばらくいないときは、ティオの家とかに居させてもらうし」
迷惑かけちゃいけないもんね、と小さく笑う。
彼女の母親が数年前に事故で亡くなった、というのは聞いていた。幸せいっぱいで可愛がられて育っていると思っていた、エステルの寂しさを知る。
「……だめ?」
大きな目に涙をためて聞かれて、断れるはずも無く。
ちゅ、と頬にキスされる。ありがとね、という声とともに。
おかしい。
僕は、カシウス=ブライトを殺しにきたはずなんだ。
なんで馴染んでる?
優しくされるたびに感じるものが、苛立ちや腹ただしさとは違うことに、少しずつ気づき始める。
でもそれが本当はなんと呼ばれるものなのか、僕はまだ、思い出せない。
「よーしゅあー」
居間で本を読んでいたら、上から軽い足音と共にエステルが駆け下りてくる。危ないと思ったら案の定、スリッパを引っ掛けて転んだ。
「ったぁ……」
「慌てると転ぶぞっていつもカシウスに言われてるだろ」
「もー、カシウスじゃなくて父さんだって言ってるでしょー」
「君の父親かもしれないが、僕のじゃない」
「むー」
ぷっと頬を膨らます。僕より8ヶ月遅く生まれているとはいえ、同じ年のはずなのにまだ幼い感じがする。
「ねーヨシュア、釣りにいこ」
「棒術の基礎練は」
「もう終わったもん!」
「日曜学校の宿題は」
「う……あとでする」
「だめ。君は後でといってやらないで前日慌てるでしょ」
「だってわかんないんだもん」
「持っておいでよ。どこがわからないの」
「わーい、ありがとヨシュア」
ててて、と二階に駆けてゆく。
「だから走ると転ぶってば」
言ってるそばから、鈍い音が響いた。
「大分慣れたか、ヨシュア」
その日はカシウスがたまたま家にいた。話し声を聞きつけたのか、書斎から顔を出す。
「まぁ、それなりに。不本意だけど」
「それは、ウチに慣れたのが不本意なのか、エステルにいいように振り回されていることが不本意なのか」
「どっちも」
「あー、またカワイクナイこといってるー」
エステルが戻ってきた。となりに腰を掛け、ノートを広げる。僕がわからないところはカシウスが教えてくれたので、30分程度で済んだ。
「ったくエステル、もうちょっと勉強しとけよ。お姉さんって自分で言うくせに、ヨシュアの方が出来がいいってのは変だろう?」
「あたしはニクタイ派なのよ!」
訳のわからないことを言いながら片付けに上がってゆく。釣りにいこうねと言われ、断る理由も無いので承諾する。その夜はエステルの釣った、大きなサモーナのフライになった。
夜半、寝付けず窓に腰掛けていたら、下から声がかかる。
「お前ね、ベランダがあるじゃないか。転げ落ちるぞ」
「そんな柔な鍛え方はしていない」
冷たく言い返すが、カシウスは意に介さず僕を誘う。
「夜食あるんだが、食うか?」
「……」
そろそろ育ち盛りの伸び盛りにかかる僕は、確かにお腹が空いていた。別にお腹が空いてて眠れなかったわけじゃないと言い訳をしつつ、下に降りる。ニヤニヤされて若干居心地が悪かったが、目の前の食べ物には勝てず。
カシウスは葡萄酒、僕はりんごジュースを飲みながら、サモーナのマリネとサンドイッチを食べた。
「体、元に戻ったみたいだな」
「おかげさまで」
「……結社に戻るか?」
僕はあきれたようにカシウスを見る。
「今更?ただ戻れば殺されるだけですけど。死ねと言うなら何故あのとき僕を助けたんです?」
「いや、そういうことじゃなくてな。今のは一応聞いたんだ」
僕は首を傾げる。言っている意味が分からない。
「あれだ。うーんとな」
あー、とカシウスは悩み、僕を見る。
「俺は回りくどいのが苦手だから単刀直入に言おう。うちの子にならんか」
「……はい?」
一瞬言っていることが理解できず問い返すと、ぼりぼりと頭を掻いて彼は続ける。
「俺が長期に家を空けるときは、街の人にエステルを預けているんだけどな。あの子もそろそろ大きくなってきたし、一人で留守番できるようにはなってきてるんだ。ただ、ここ辺鄙だろ?女の子一人で留守番させておくのもなんか嫌でなぁ」
「……僕はエステルのお守りですか?むしろ、男と二人で留守番させとくほうがどうなんだって気が」
「お前にその気があるなら、とっくにヤってるだろ。そんなことになったら、問答無用で責任取らせるけどな」
カシウスの言うとおり、確かに可能といえば可能だった。一応戦闘訓練の一環でそのへんも実践含め経験はしているから。夜二人きりで隣に眠っていたこともあったし、やろうと思えば出来たことは否定しない。
ただ、あまりにも無邪気に眠っているので、手を出す気にならなかったのだ。そういう形でカシウスを出し抜くのはフェアじゃないと思ったのもある。
「んー、まぁ、あれだ。エステルもお前を気に入ってるみたいだし、お前もなんとなく楽しそうではあるし」
思わず反論しかけて、やめた。
非常に不本意ではある。あるけど。……楽しいと思うことも、たまにある。
「まぁ平たく言えば」
カシウスは照れたように笑った。
「俺もお前が気に入ったんだよ、ヨシュア」
僕は思わず胡散臭げに彼を見てしまう。
「……どこの世界に、自分を殺そうとした奴を気に入る人間がいるんです?」
「ここの世界」
さっくりと言い返され、僕は脱力する。
「イヤならいいんだが。でもきっとな」
エステルは大喜びするぞ、と付け加えられた。
「……それは……」
悪く、ない、かな?
案の定、エステルはこの話を聞いて大喜びし、カシウスと二人で延々ウチの子になれとステレオタイプでいい続け。
ついに折れたのは、カシウスに拾われてから半年後。ヨシュア12歳の誕生日のことである。
8年を経て、今度は本当の家族になることを、まだ彼は知らない。
グッジョブ。
あれ、何だ、何故だか涙がこみ上げてきた。
イイ話というものは、お涙頂戴じゃなくてもひとの心を打つもんだなとオモタ。
947 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 21:11:58 ID:vPi14oFC
やっべ
なんか泣ける。
いいねこういうの。
じーじぇい
GJ!!。゜(゚´Д`゚)゜。
2人の結婚式に再現ドラマ化したら全米が泣く(ry
新作マダー
前回が長すぎた感ひっしひしですが
今回短くてすみません orz
本スレ〜議論スレでクルツ先輩大フィーバーなのに煽られ、次回はクルツメインかも。
---
ベッドに弛緩した彼女を横たえる。
僕の、エステル。そっと髪を撫でる。もう会うことも無いだろう。そう思うと、体がばらばらになりそうなほど辛い。
唇をなぞる。間違いなく僕が初めての相手だった。申し訳ない気持ちと共に、堪らなく嬉しくなるのは不謹慎だろうか。
愛しいエステル。ぎゅっと抱きしめる。子供っぽいけれど、流石に体は確実に僕と違ってきている。服を重ねても誤魔化しきれない柔らかさが伝わる。
いけないと思いつつ、手が動いた。
最初は控えめに腕を。次は、スパッツの上から腿を。シャツの上から膨らみを押さえ、少しだけ押して、後悔する。
「……どうしよう」
手を離したくない。女性経験が無い訳じゃないのに、恐ろしく気持ち良い。指先をそっとシャツの下に滑らせる。滑らかな肌が触れたところで、我に返り慌てて止めた。
少しベッドにのし上がり、彼女の顔を見下ろす。薬のせいで眠った顔は、苦しんでいる様子も無い。少しだけ躊躇って、僕は唇を重ねた。今父さんが入ってきたら僕は間違いなく殺されるだろう。
でもその方が、幸せだったのかも知れない。
胸に込み上げてくるものが辛くて、唇を離してただ抱きしめる。
誰より近くて、誰より一緒にいた女の子。氷のように冷えて暗い場所から、光溢れる世界へ連れ出してくれた君。劣情を煽られた事があったのは否定しないけど、でもそれ以上に大切で、神聖な子だった。
こんなにも、君を自分のものにしてしまいと思うのに、ただ抱きしめている方が幸せなのは何故……
しばらくそうしていたが、残っていた精神力をかき集めて体を離した。もうそろそろ、父さんが戻ってくる時間だろう。
僕は手早く机から紙とペンを取り、書置きをテーブルに置く。
エステルを布団にくるみ、最後にもう一度キスをした。
「……エステル、好きだって言ってくれて、ありがとう。嬉しかったよ」
そっと王宮から忍び出る。
さしあたって、グロリアスに潜入する方法を考えなければ。忙しく頭を働かせ始めたヨシュアの表情は、ブライト家に連れてこられた頃の冷たさに戻っていた。
(父さん、エステル。ごめんなさい)
いろいろ感想つけたいとこだが今時間ない・・・だがこれだけは言わせてくれ・・・
じゃんけんぽん!
( ゚д゚)○>(゚д゚ )
あっちむいて…
( ゚д゚)σ(゚д゚; )
GJ!
( ゚д゚ )m9( ゚д゚ )
G.J イイヨイイヨ
954 :
946:2006/04/22(土) 16:33:27 ID:VKS6sOKE
うをっ、また涙が…。
感動のあまりテキストエディタが立ち上がらない漏れは実は遅筆の>882だという罠。
882さん期待してるけどクリアしてからきなよ(^_^;)
ネタバレみるとおもしろさ半減だよ
今朝3時にFCクリアして、さっきまで寝ずにSCやってた俺がきましたよ
>>951 GoodJob!!!
数年ぶりに筆とりたくなったよ。
こんな気分になったのはYU-NOぶり位か。
枕事ネタは本編が背景に出る以上かなりネタバレるがカンベン。
では執筆にかかるのでGW前位まで待っててくれ。
GJ! FCエンディングの切なさをちょっと思い出した。あれがなかったら
この作品への情熱はもっと少なかったはず…
>>338 たまたまザナネクで微エロネタ思いついたからネタだけついでに書いてみる。
「最後の騎士」執筆中のシャルが書いてる、
・某社の圧力によって彼は赤毛から金髪に強制的に染められました
・ハーレックの街に着くなり溺死しかけたのには驚きました
のくだりに焦った騎士君がシャルを愛撫攻めた上で事に至り、
いっちゃったシャルは渋々該当箇所を削除。
(引用文から見て取れる信頼度からして執筆してる時期にはとうにやっちゃってるだろと推定)
妙にこの二人の関係性は萌えるんだが、
よくよく考えたら英伝6アガットとティータの関係性にも萌えるのと
ベクトル同じだなあと。弁当作って渡したり、宿屋同室で夢見て怖くなったら起こしてもいいかなと
甘えてきたりする点はこっちが進んでるといえば進んでるけど。
リーゼ・アニエス・フローレにはさっぱり萌えなかった。萌え属性ってあるんだなあと思った次第。
流れ読めずにごめん。いきおいで書いた。
今後は英伝ネタも書くから。
ファルコムのエロ小説スレだから、別に英雄伝説である必要はないよ。
新作が出たばかりだから英雄伝説が多いってだけだ。
リーゼたん最萌えキャラな漏れは奇特なんだろうなあ
いやいやイリアンが最萌えキャラな自分の方が奇特だと思う。
でもOPのセリフが本当にけなげで。
多分住人とROM人、誰それと思ってる予感がばりばりする。
誰それ?
かきやー氏はもういなくなっちまったんだろうか……
>>963 公式サイトに一言すら載らなかった某ゲームのヒロイン(婉曲的表現)
OPにハァハァシーン有り。
……本人が死にかけるから虫の息状態という意味だが。
イリアン「こんな扱い酷すぎるわ」(原文ママ)
それ上司じゃなくて制作会社に言ってあげて下さい、イリアンw
イリアン?誰それ??だが
>多分住人とROM人、誰それと思ってる予感がばりばりする
>公式サイトに一言すら載らなかった某ゲームのヒロイン(婉曲的表現)
これで理解したw
新作マダー?
英雄伝説YSCはFCと比べて捕まったり、捕らえられそうになったり、
眠らされたり、薬盛られたり、操られたり等ピンチな場面が多いから
SS書く素材には困らないけど・・・
一連のストーリーもろにネタバレは大丈夫?
もうちょっと時期見た方がいい?
いや、もう充分バレOKだと思うよ。どの関連スレも普通にバレ全開で話してるし
もうネタバレ気にする時期じゃないしな
っていうか既にED後とかの話も出てるしw
何でもカモーン
971 :
名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 23:40:13 ID:JSVfQOck
ジョゼットがヨシュアを調教してヨシュア精神崩壊(マテコラ
……エステル達が助けに来たときにはヨシュアは精神を完全に壊されて社会復帰不能に(ヲイ
流れを無視してこっそりと投下|ω・)ノ
だんだんクオリティ下がってきてる気がひしひし。
---
遠くから、声が聞こえる。
「―――あ、しゅあー」
穏やかな春の日、柔らかな日差しを浴びて、子供が駆けてゆく。頭の両側で結われた、濃い栗色の髪が肩で踊る。
「何、エステル」
呼ばれて答える子供は、見事な黒髪と、琥珀の瞳。端正な面立ちだが、表情が硬い。
「ヨシュア、遊ぼう」
満面の笑みで誘われ、少年は口ごもる。
「僕は……」
「あ・そ・ぼ」
「……何するの」
「ぼーじゅつ!」
少女は可愛らしい顔立ちをしていたが、良く見れば手や足にあざやら擦り傷やらたくさんある。
短い丈の上着や、スパッツから伸びる手足は華奢と言えるほど細いのに、髪が長くなければ男の子と言っても差し支えないような輝きを
瞳に宿している。対して少年は、どこか借りてきた猫のような風情で、顔立ちの綺麗さも合わせ、髪が長ければ女の子と言ってもいいかもしれなかった。
「良いけど、カシウスがほどほどにしとけって言ってなかった?」
「ほどほどにやろっ」
「……難しい注文だね」
カシウスが、ナイフよりふた周りほど大き目の、木製の刀を少年に渡す。彼は両手に構えた。どうやら二刀らしい。立ち会うカシウスが感心するほどその構えに隙はない。
「りょーてで戦うの?」
「僕は棒よりこれの方が得意なんだよ」
「むー、負けないんだから!」
対して少女の方は、歳を考えればそう悪くも無いが、まだまだ上達の余地がある構え方。案の定勝負は3合ほどで決した。
が。
「おい、エステル大丈夫か?」
「う……」
痛みのあまり声も出ず蹲り、大粒の涙をこぼす少女に、少年が見る見るうちに青ざめる。
「うわー、ヨシュアちょっと伝書鳩取ってきて」
少年があわてて走ってゆく。この家に来てから初めて見せる、はっきりとした少年の動揺。
エステルの左手、肘と手首の中間くらいがうっ血し、歪んでいる。ヨシュアの加減を誤った一撃で、骨折してしまったのだ。
「―――キレイに折れてるし、一ヶ月ほど腕を使わなきゃ戻りますよ。3日くらいでまた様子見に来ますから」
連絡を受けて馬を飛ばしてきた医者が、痛み止めを置き、彼女の腕の骨を接いで帰っていった。エステルは日ごろから怪我で愚痴は言わない子だが、
流石に骨接ぎの痛みには耐えられなかったらしく、施術の間細い悲鳴が上がり続ける。ヨシュアは自室で布団をかぶって震えていた。
「終わったぞ」
悲鳴が止んで半刻もしたころ、カシウスが様子を見に来る。ヨシュアはそっと布団の端から目だけを出した。
「……心配しなくても俺は怒って無いから、出ておいで」
それでも布団から出てくる様子はない。引っぺがそうかと思い始めた頃、ようやくもぞもぞと起き上がる。
「僕……」
「俺も悪かった。一撃必殺"しか"学んできてない奴に、先に力加減を教えておくべきだったよ」
黙りこくるヨシュアの頭を、カシウスはわしゃわしゃと撫でた。
「そんなに悪いと思うなら、今日はエステルと一緒に寝るといい」
夜、エステルは熱を出した。カシウスは洗面器とタオルと着替えだけ用意して、後はヨシュアに任せるとばかりに下へ降りていく。
「何かあったら起こせよ」
これまで生きてきて、こんなに途方にくれたことは無いという表情のヨシュアに、カシウスは見られないよう笑いを噛み殺す。
「ん、ヨシュア……?」
熱っぽい顔でエステルが目を開けた。よほどすまなそうな顔に見えたのか、エステルが弱々しく微笑む。
「ごめんね、怪我しちゃって」
その発言に、思わずヨシュアは強く言い返す。
「なっ……謝るのは僕であって、君じゃない!」
微笑んだまま、エステルは続けた。
「ううん。ヨシュアに悲しい顔させちゃった。ごめん」
熱があるのに。
どう差し引いても痛いはずなのに。ヨシュアも骨を折ったことはあるから、痛みは知っている。腕も細い、体力も自分よりない。何より戦闘技術は雲泥の差なのに。
正直、このときまでヨシュアは彼女を見くびっていた。剣聖の娘というだけで、ただの子供だと。
この子は、強い。―――僕よりも、ずっと。
胸に迫るものがあった。体ががくがくと震える。ヨシュアの様子に驚いたエステルが起き上がろうとする。
「痛っ」
「あ」
添え木は当てられていたものの、うっかり力を掛けた左腕の痛みに彼女が小さく悲鳴を上げる。ヨシュアはあわてて寝かせ、洗面器に氷水を持ってきてタオルを絞り、額に載せてやった。
「つめたーい。いいねヨシュア、力強くて」
「そりゃまぁ、男だし」
エステルは布団から右手を出し、握ったり開いたりする。11歳では、さほど体格に違いがあるわけでもない。鍛え方の違いで、多少ヨシュアの方が太い腕ではあったが、それでもまだ子供の域を出ない。
「……あたしも強くなりたい」
「筋は悪くないから、練習を積めば強くなると思うよ」
「そう?」
「うん。僕は棒術ってよく分からないけど……カシウスは凄いと思ったし、君はそのカシウスに習ってるんだろ?だったら、大丈夫」
「そういうもの?」
「僕に剣を教えてくれた人がそう言ってた」
「そっかぁ」
エステルはカシウスから、ヨシュアが自分から話し出すまでは、決して過去のことを聞いてはならないと言い含められていた。どんな人だったの?と聞きたいのをぐっと我慢して、笑いかける。
「ヨシュア、寝ないの?」
「カシウスが今日はついて見ていろって」
一緒に寝ろといわれたとは、なんとなく気恥ずかしくて言えない。ところがエステルは屈託無く笑う。
「じゃあ、一緒に寝よ!……ちょっと動くの手伝って?」
彼女がベッドの奥に詰め、ヨシュアは言われるままに隣へ滑り込む。熱のせいで布団の中は温かかった。
「大丈夫?」
「それ、僕の台詞」
エステルの額に手を当てる。まだ熱い。起き上がって再びタオルを冷やし、載せなおしてやった。
「ありがとう」
「……僕が面倒見るのは当然だろ。怪我させたんだから」
エステルが沈黙する。静かな空気の居心地があまりよくない。
「じゃあ、おやすみ」
背中を向け、エステルが寝入ったらベッドから降りるつもりで目を閉じた。ところが、背中がつんつんと引っ張られる。
「こっち向いてよ〜」
しぶしぶ寝返りを打つと、彼女がにっこりと笑う。
「えへへ」
そっと、手を握られる感覚。驚いて解くと、少し悲しそうな顔。
「だめ?」
どうしてだろう。彼女の悲しそうな顔に、なぜか勝てない。そう思いつつ、握りなおしてやると嬉しそうに笑った。子供心に、可愛いと思う。
「ママがね、あたしが風邪引いたりしてこうやって寝てると、いつも手握ってくれてたの」
「そう」
頭を撫でてやると、嬉しそうに目を閉じる。
(……)
ヨシュアは肘で体を起こし、顔を覗き込んだ。
「なーに?」
「……なんでもない」
再び横になり、おやすみというとエステルは目を閉じる。熱のせいで消耗しているのもあったのか、すぐに寝息を立て始めた。寝入ったことを確認して、彼はベッドから降りようとするが。
「……は、離れない」
思いのほかしっかり手を握られていて、振りほどけない。無理に解くと起こしてしまいそうで、諦める。そんなヨシュアの挙動も知らず、彼女は良く眠っていた。活発に動き回る、男の子のような印象のエステルだが、
こうして見るとやはり顔立ちは女の子だ。長い睫が頬に影を作っている。彼は、そっと彼女の頬に顔を寄せ、キスをした。
知ってか知らずか、エステルが微笑む。
(な、なんとなく、我慢できなかっただけだよ)
誰も居ないのによく分からない言い訳をしてしまい、急に恥ずかしくなって布団に潜り込む。目を閉じ、しばらくするとヨシュアも夢の国へと旅立っていった。
「……仲良く眠ってるなぁ」
夜半、エステルの様子を見にカシウスが上がってきて、二人を見てそっと笑う。こうして見ると、エステルは勿論だがヨシュアも歳相応の子供にしか見えない。
(こんな子供に、惨いことをする)
殺戮者として自分の前に現れたときの冷たい瞳。間違っても11歳の子供がする表情ではない。させてもいけない。どうしてこんなことを叫んだヨシュアに、なんとなくなりゆきでと返したカシウスではあったが、あながち嘘でもなかった。
母親が死に、自分のいないあいだ人の家に預けられたりして、寂しい想いをしていたであろうエステルの、遊び相手にでもなればいい―――
最初はそう思っていたカシウスだが、この子供の礼儀正しさや、持って生まれた気質、優れた戦闘技能を見るに付け、彼は徐々に気が変わり始めている。
エステルの母親であり、カシウスの妻レナ=ブライトは、5年前百日戦役の最中「不幸な事故」で命を落とした。エステルには知らされなかったが、レナはその時妊娠していたのだ。
遺品を整理する中、彼女が彼に宛てて書いた最後の手紙にそれは記されている。
―――二人目を授かったみたいです。
―――今度は男の子だといいね?
カシウスは男の子が欲しかった。共に釣りをし、鍛え、いずれは跡取りとしての息子。幼いエステルはごく普通の女の子だったから。
レナがいなくなり、エステルは寂しさを紛らわすかのように、父の真似を始めた。釣りをし、剣術の真似事をする。ためしに少し基本の型を教えてやると、驚くほど飲み込みが早かった。そして今に至る。
しかしエステルは女だ。いずれは結婚し、家を離れるときが来る。孫の顔が見たくないわけではないが、その時自分は一人になってしまう。
息子がいてくれたら。
カシウスは若いうちに両親を亡くしている。妻も然り。唯一血を分けた家族のエステルに、去られることがおかしいほどに怖い。
(いつか、エステルと結婚なんてしたりしてなぁ)
そうしたら一石二鳥なのに、といささか都合のいい想像をした自分に苦笑する。
まさか9年後、その想像が現実となるなど知る由もない。
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さて次のお題は「メガネを外す」
メガネ……誰を標的に。
>>972-974 いつもながらぐっとジョブです!
眼鏡キャラって・・・女性キャラではドロシー男性キャラでは博士ぐらいしかいないでは・・・
素晴らしいなぁ。
神だなぁ。
ホロリときちまったい。
GJGJ!
毎度完成度高いSSでGJ!!
>>975 ラッセル博士
って博士ってラッセルの事だねorz
教授と脳内変換されてたすまん
984 :
名無しさん@ピンキー:
そろそろ次スレを立てないと危ういな。