「うわあああっ!」
犯人の背中が燃える。
「テツ!デリートは……!」
「わかってますって。……噴射拳インパルスフィスト!」
一瞬燃え上がった犯人の背中が、インパルスフィストの水圧で消え去り、そのまま犯人は気絶したらしくその場に倒れた。
「これにて、一件コンプリート、ですかね?間一髪でしたね、ジャスミンさん」
テツはD-ワッパーで犯人の手首を固定して起き上がらせた。ウメコは私に駈け寄って
「ジャスミン、大丈夫だった?」
「うん、2人が来てくれたから。ありがとう」
そう答えたものの、――違う……”2人が来てくれた”からじゃない。あの”声”……。
犯人をちらりと見ると、左腕には微かに血が流れている。
「――ごめん、先に帰ってて!」
「ジャスミン?」
「ジャスミンさん!」
驚く2人を現場に置き去りにして、私は走り出した。――犯人の腕の傷。あの傷からすると私の後ろから”撃った”はず。
”撃った”のは、多分”彼”。
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誰もいない、電気もないビルの隙間に駆け込んで、俺は息をきらしながら壁にもたれかかった。
「やっちまったな……」
俺も”あいつ”も懲罰もんだろうな。あの傷を調べたらすぐに俺が撃ったって、わかるだろうし。
でも、あいつがあのままやられるの、黙って見てられなかった。せっかく地球に帰ってきたってのに、
いきなり”あいつ”が殺されそうになる場面を見て、見てるだけなんて出来るわけねーだろが。
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それにしても……あのまま宿舎に帰ればよかったのに、何でこんなところに逃げ込んできたんだ?
……バカか俺。自問自答したってすぐに答えなんて出てくるのに。
ジャスミンがここへ来ることを望んでいる、俺がいる。
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なんとなく感じる、懐かしい”彼”の気配。
それに引き寄せられるかのように、私はいつのまにか電気も何もない街外れの路地裏に辿り着いていた。
(ここかな)
通りには誰もいない。まさかと思ってビルの隙間を1つずつ覗いてみる。
1つ……
2つ……
そして3つ目。――見つけた。月明かりに微かに移る人影。背を向けてはいるけど、華奢な体に長い手足。
そして、トレードマークのツンツン頭。間違いない……。
「バン?」
そっと声をかける。私の声に反応して、その人影はゆっくりと私の方を向いて。
「来てくれると思ってたぜ……」
やっぱりバンだった……。
(あの流れ星の願い事、叶ったんだ)
そう思いながら、私は彼に駈け寄ろうとしたその時。
無機質な通信音が鳴り響いて……私はそのまま立ち止まったまま彼の応答を聞いていた。
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やっぱり来てくれたんだな。駈け寄って来るジャスミンを抱き締めようと、そう思った矢先に突然鳴り響く俺のライセンス。
「――はい」
『伴番、お前どこほっつき歩いてるんだ?』
やっぱりギョクさんか。タイミング悪いな、相変わらず。
「ちょっと、腹減っちゃって……」
『食べ物くらい、宿舎にもあるだろう?まだ任務が終わってないというのに、ちょろちょろと出歩くんじゃない。すぐに戻って来い』
「……ロジャー」
そう答えて、俺は通信を切って、ライセンスをポケットに入れた。
せっかくジャスミンに会えたって言うのに……。でも、これも「仕事」だからしょうがない。