[ターナ]
あ、エフラム
良かった。ここにいたのね。
[エフラム]
どうしたんだターナ。
そんなに血相かえて
[ターナ]
エフラム・・・
あの竜の女の子に
おにいちゃんって呼ばせてるって・・・本当?
[エフラム]
・・・
いきなりなんだ?
[ターナ]
やっぱり・・・
そうなんだ。
毎晩いっしょに寝てるってのも・・・本当なのね
[エフラム]
!
[ターナ]
本当・・・なのね?
[エフラム]
ちがうぞターナ。
誘われはしたがもちろん断った
[ターナ]
やっぱり。
わたしエフラムのこと信じてたわ。
[エフラム] (左)
俺に何か用が
あったんじゃないのか?
[ターナ]
・・・はい。
・・・わたしもエフラムのこと
お兄さまと呼んでもいい?
[エフラム]
!
[エフラム]
それはできない
[ターナ]
どうしてよ。
私じゃいやなの。
[エフラム]
そうではないが・・・。
[ターナ]
なによ。
それじゃあミルラはよくって
わたしはだめなの?
[エフラム]
そんなことは・・・
しかし俺はルネスの王だし
きみはターナの姫なのだろう?
お互いの立場というものがある。
[ターナ]
!
エフラムはいつもそうやって
わたしから距離を置こうとする
エフラムはターナのことなんて
どうでもいいのね。
[エフラム]
ターナ・・・
どうしたんだ急に?
最近、君はどこか変だぞ。
[ターナ]
もういいわ。
エフラムなんて知らない。
エフラムお兄さまのバカ。
[エフラム]
ちょっと待てターナ!
一人で行ってはだめだ。
・・・いったい何を怒ってるんだ?
[ラーチェル]
エフラム、ちょっとお待ちなさいな。
[エフラム]
?
[ラーチェル]
いろいろな方々から
噂をうかがいましたけれど、
手当たり次第に若い娘をつかまえては
お兄ちゃんと呼ばせているそうですのね
仮にも軍の指揮官が
そんなことでいいんですの?
けだもの! ヘンタイ! 悪魔!
[エフラム]
いったいどこから
そんな噂が・・・
[ラーチェル]
・・・・・・
[エフラム]
・・・?
どうしたんだラーチェル。
急に押し黙ってしまって
いつもと様子が違うようだが。
[ラーチェル]
べ、別に
なんでもありませんわ・・・
で、でも、せっかくですから
わたくしもあなたのこと
兄上と呼ばせてもらいますわ
[エフラム]
!
[ラーチェル]
戦場で長話もなんですから
それではごきげんよう兄上
[デュッセル]
エフラム
少しよいか?
[エフラム]
デュッセル。
すまないな。
グラドの人間であるあなたに・・・
[デュッセル]
気にするな。
わしのような不忠者でよければ、
遠慮なくこき使ってくれ。
ところで最近よからぬ噂をきいたのだが。
なにやら手当たりしだいに若い娘をつかまえては
お兄様と呼ばせているそうな。
仮にも一軍の将とあろうものが
そんなことでいいと思っておるのか?
[エフラム]
またか
[デュッセル]
ふむ・・・
しかしエフラムも、あれから
ずいぶん腕を上げたな。
初めてわしを尋ねてこられたそなたは、
まだ女性の礼儀も知らぬありさま。
お世辞にも筋がいいとは
言いがたかったが・・・
[エフラム]
なんの筋だ。
[デュッセル]
何があろうと、己の信じる道を
どこまでも貫けるような・・・
強い王になられよ。
[エフラム]
まってくれデュッセル。
・・・いってしまったか
しかし、そろそろ噂の出所をつきつとめて
なんとかしなければならないな
[エフラム]
ルーテ。少しいいだろうか
[ルーテ]
何でしょうか?私への要望は
七種二十五項目に分類されますが
あなたの用件は既にわかっております。
[エフラム]
さすがルーテだ。
きみに声をかけたのは正解だったな。
[ルーテ]
私、優秀ですから。
それで、わたしはどのように
お呼びすればよろしいのでしょうか。
お兄様。
兄くん。
兄君さま。
アニキ。
あにぃ。
兄上様。
兄チャマ。
お兄ちゃん。
お兄ちゃま。
にいさま。
兄や。
おにいたま。
いろいろありますが?
[エフラム]
いや、もういい。すまなかった。忘れてくれ。
[エフラム]
おい、フォルデ・・・
[フォルデ]
!?
・・・なんですか、エフラム様?
[エフラム]
・・・今、何か隠しただろう?
[フォルデ]
・・・何言ってるんですか、
今は戦闘中ですよ。
ほら、俺なんぞに気を取られてたら、
敵にやられてしまいますよ。
[エフラム]
いいから、隠したものを出せよ。
早く見せろ、フォルデ。
[フォルデ]
・・・わかりましたよ。
[エフラム]
・・・なんだ、これは?
これは?
この絵は?お前が描いたのか?
[フォルデ]
・・・ええ・・・依然にね。
[エフラム]
・・・素晴らしい絵だな、フォルデ。
お前は、剣術だけじゃなく絵心もあったのか。
・・・しかし・・・
これを他の兵にもみせたのか?
[フォルデ]
ええ。
いちおう俺の自身作ですから。
[エフラム]
・・・そうだ、フォルデ。
この絵を俺にくれないだろうか?
[フォルデ]
ええ、もともとエフラム様のために描いたものなのです、
ぜひもらってください。
[エフラム]
ありがとう、フォルデ!
やはり見事な絵だ。
[フォルデ]
エフラム様もいつか
俺に絵のお返しをしてくださいよ。
[***]
しばらくして兵士達の噂は消えた。
フォルデの絵に描かれていたものは
優しそうなエフラムと、
その肩によりそうように眠る
ミルラの姿であったという。