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その頃…宮殿の大広間では、エレスサール王が一人で泣き叫ぶ姫たちをなんとかなだめ彼女たちをそれぞれの部屋に帰した・・。
エオメルの花嫁を人目みたいと、ちょうど所用で来られなかったガンダルフ以外の
旅の仲間たちが、その場にいた。
偉大な王が珍しくへこへこしている姿を美しい笑みを称えたレゴラスと寄り添うように
かわいらしいギムリがぶどう酒を飲みながら、その騒ぎを優雅に眺めていた。
あまりにもあっけない主役の退場により折角の豪華な料理も、無駄になってしまったと思っていたが・・。
ホビットの娘達が、夜食と称して目の前の大きなローストチキンにかぶりついていた。
「まさかファラミア様を連れて行くなんてね・・。ファラミア様大丈夫かしら?エオメル王は荒っぽいから・・」
とメリーが両手にチキンを握り締め、口を開くと。
「まさかあの美しい人がエオメル王なんかに奪われるなんて・・ショックよ・・私にとってファラミア様は女神だったんですもの!」ピピンも目を潤ませて、チキンを握り締めながらしゃべっていた。
「女神っていったってファラミア様って・・ああ見えて意外といい年でしょ?まあお若く見えるから、エオメル様とお似合いだけど。」
「年のことなんて別にいいじゃない、ファラミア様はヌメノールの血をもつ人よ、人より長生きなんだから
年上のおじさんより、年下の若いエオメル様のほうが長く暮らせるでしょ。」
2人の会話が続いていたが・・。
「ファラミア様も幸せであれば…良いのではない?」
とフロドはチキンを口いっぱいほうばるサムを見つめながら、つぶやいた。
「「そうね」」再び2人はチキンに集中した。
188 :
143:04/09/25 02:16:57 ID:kVKQm0nm
一仕事終えたエレスサール王はしばらく呆然とパイプをふかしていたが、
肝心の王妃がいないことに気がついた。
やはり、自分のかわいい妹があんな荒馬王に持て行かれて、ショックだったのだろうか・・。
後でたっぷり慰めてあげよう・・。フフフッ・・。
ああ・・こんなことなら早めにファラミアに手つけておくのであった・・。
惜しい…実に惜しい・・。
私が癒しの手で救った後しばらくは、私に好意をもったことはすぐに気がついた。
彼女はボロミアに似ていたのはもちろんだったが、母親のフィンドゥイラスに瓜二つであった。
あの麗しいフィンドゥイラスが蘇ったのかと一度は目を疑った。
すぐにでも押し倒したかったが、しばらく知らぬ顔をして彼女の反応を楽しんだ。
たぶん彼女は処女だったのだろう・・。なんと初々しい女性であろう…。
しかしエルフたちがボロミアを救い出し、連れてきてから状況が変わった…。
あの柔らかな笑顔がみるみる消えて無表情で私と向き合っていた。
ボロミアと私の間を気にしてのことであろう・・。なんといじらしい・・。
ボロミアも私が彼女に近づくのを嫌がった、たぶん彼女の中にあるヌメノールの血によって私がファラミアを
狙っていると予期していたのであろう…。
おかげで私は執務のときだけしかファラミアと顔をあわせることができなくなってしまった・・。
などと・・暢気に思いに耽っていると、突然大広間の重い扉が開く・・。
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143:04/09/25 02:18:50 ID:kVKQm0nm
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そこには恐ろしい顔を自分に向けてる愛しの王妃が仁王立ちでいた。
その瞬間和んでいたはずの大広間が、ボロミアの登場で一斉に緊張が走る・・。
「ボロミア・ど・・・どうした・・」とエレスサールが問うと・・。
ものすごい形相でゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「いないの・・」
と低い声でつぶやくと・・。
「ファラミアもエオメル王もどこにもいないのよ!城の中をくまなく探したのに・・」
と、突然エレスサール王の胸倉をつかんだ。
「あの2人をどこに隠したの!」
いつも貞淑なかわいい我妻が鬼のような風貌に変わってしまったことに気がつき
少しでもボロミアを落ち着かせようと、
「私たちも部屋に戻って楽しもうではないか」
と何もなかったようにボロミアに告げてみた。
・・バキッ…。
・エレスサールの左頬にものすごい衝撃が走る・・。
ボロミアの拳がエレスサールを殴り飛ばした。
「ボ・・ボロミア何をする…これでも私はこの国の王でお前の夫だぞ!」
エレスサールの左の鼻の穴から、鮮血が流れ出す。
これでは王の威厳もあったものではない・・。
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143:04/09/25 02:22:07 ID:kVKQm0nm
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周りで見ていた、レゴラスとギムリはあわててボロミアのを止めようとしたが・・。
ボロミアは今まで見たことがないくらい、怖い鬼のような形相で2人を睨む…。
思わず・・2人も後ろに下がるほど、ボロミアには近づけない・・。
「アラゴルン!エオメルの部屋は何処?教えなさい!」
低く響くその声は、怒りがこもっている。
「エオメルの部屋に行ってどうする気だ?今更お楽しみ中の2人を邪魔するのは・・どうだろう・・。」
妻の凶器のまなざしに、さすがにおびえながら訴えた。
「楽しみかどうかいって見なければ、わからないでしょ。それでなくてもファラミアは男を・・」
『知らない・・』と言う言葉を飲み込んだが・・。
そこにいたみんながぎょっとする・・。
「ああ・・こんなことしてる間にも私のかわいいファラミアがあの暴れ馬に犯されてるかと思うと気が狂いそう!エオメルめ・・許せない!・・どこにいるのアラゴルン!」
腰に下げていた剣をアラゴルンの前に突き立てる。
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143:04/09/25 02:23:50 ID:kVKQm0nm
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ボロミアの凄みに「東の塔・・の南側の…最上階の部屋だ・・鍵はエオメルが持っている・・」と思わず、エレスサールは口走りってしまった。
「あの隠れ部屋に連れ込んだのね!・・鍵がなければあの2枚の鋼鉄の扉を壊さないと・・ギムリ斧を持って私と一緒に来て!」
ボロミアの変貌に戸惑いながらもギムリは急いで斧を部屋に取りに行った。
ボロミアが大広間を出ようとすると、エレスサールは彼女の手をとり
「ボロミア待つのだ…エオメル王は大事なゴンドールの同盟国の王だ!彼の機嫌を損ねたくない!頼むから彼の思いを遂げさせてほしい・・」と懇願するが、ボロミアはその手を振りほどこうとする。
「ボロミア!私とファラミアとどちらが大事だ!」
王もなりふりかっまってなどいられない、決死の覚悟で最愛の妻を止めようと投げた言葉のだったが・・
「もちろんファラミアよ」
そういうと、エレスサールの腕を振りほどき、大広間を出て行った。
エレスサールはボロミアの言葉を聴き、顎が外れたくらい大きい口を開けその場に崩れ落ちていった・・。
レゴラスは残されたエスレサールが哀れでならなかった・・。
ピピンはボロミアの言葉を聴いて、デネソールの言葉を思い出した・・
「やっぱり親子なのね・・」