気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第2章

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1名無しさん@ピンキー
勝気だったり、高飛車だったり、男勝りだったり、
そんな幼馴染みが、委員長が、お嬢様が、お姫様が、女上司が、
ふとした瞬間に垣間見せる弱々しさ、しおらしさ、素直さ、
そんなギャップに萌えるスレです。

あるいは、レイプされ、屈服させられて従順になってしまう鬼畜展開もOKです。

SSの投下は、オリジナル・二次創作を問わずに大歓迎。

(前スレ)
気の強い娘がしおらしくなる瞬間に…
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1065173323/

(これまでに投下されたSSの保管場所)
2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.gozaru.jp/

2ちんちん:04/07/22 14:42 ID:Ujs3vnrn
2げととととととと
3名無しさん@ピンキー:04/07/22 14:51 ID:0m13iVnh
アレだ。年下の気が強い娘に萌えるわけだが
4名無しさん@ピンキー:04/07/22 15:20 ID:2GPsUgKF
少し年上がすき
5名無しさん@ピンキー:04/07/22 16:01 ID:pIhyKPx9
otu
6名無しさん@ピンキー:04/07/22 17:51 ID:/ZLvr1Q3
乙鰈!
7名無しさん@ピンキー:04/07/22 18:48 ID:KCYnmXq0
高潔意地っ張りのお姉様やお嬢様がすき
8796:04/07/22 19:23 ID:6aWyhPa4
1さん乙です。
それでは前スレの続きを投下します。
今回でラストです。

「ううっ…」
暗い牢獄に私のうめき声が響く。
あれから更に数日が経った。
私は相変わらず組織の男達に拷問、陵辱されると言う惨めな日々を送っている。
今の私は気力だけで持っているようなものだ。
薬の影響で、陵辱された後も私の身体には性への欲求が渦巻いていた。
だが、拘束された状態では自分で性欲を解消する事も出来ず、ただ身もだえしながら耐えるしかないのだ。
「ふっ、んん…」
身体に渦巻く性欲に、思わず身体を捩じらせる。
今の私は後ろ手に縛られ、両足も拘束されている『芋虫』状態にされていた。
何度もさせられた格好だ。
「はっ、ふぅん…」
今の私を他人が見たら、まさしく芋虫がのたうっているようにしか見えないだろう。
その時、淫気に苦しんでいる私の耳に足音が聞こえてきた。
―今は真夜中の筈だ、こんな時間に一体誰が―
足音は牢獄の前で止まる。そして鍵が開けられる音がしたかと思うと、乱暴に牢獄の扉が開かれた―。
9796:04/07/22 19:24 ID:6aWyhPa4
「…ッ!貴方は!」
私は思わず驚愕の声を上げる。
そこに立っていたのは私を捕えたあの大男だったのだ。
彼とはあの日以来会ってはいない、私が拘束されている間彼は一度も牢獄には来た事がないのだ。
それが、なぜ今頃突然やって来たのだ…。
「グシュシュ〜、ダークネス・クィーンともあろうものがいいザマだな」
相変わらず猛獣を連想させる目つきの男は口から涎を流しながら話しかける。
「ふふっ、貴方、私を誰かと勘違いしていない?それよりどんな御用でここに来たのかしら?」
懸命に淫気を抑えながら私は言う。
「お前にいい事を教える為にやってきたのよ」
「いい事?」
「そうだ、つい先ほどボスはここを出て行った。新しい商品を受け取るためにな」
「新しい商品?!まさか!」
男の言葉に、私は思わず上体をもたげる。
「そうだ、数人の少女達が新しい奴隷として調教される事になる」
「…!!そんなことはさせない!!」
私は必死で叫ぶ、それは魂の叫び。だが、そんな私に男はただ薄笑いを浮かべるのみであった…。
10796:04/07/22 19:25 ID:6aWyhPa4
「グフフ〜、『そんなことはさせない』だと?今のお前に何が出来るっていうんだ?」
「くっ…!」
無力な自分が恨めしい、私は悔しさに唇をかみ締める。
「グルル〜、なんだその顔は。己の立場がまだ解ってない様だなぁ」
「私の命に代えても貴方たちの思い通りにさせはしない!」
男がナイフを手に、ゆっくりと私に近づく。
「何も出来ない癖に口だけは一人前か…、馬鹿な女だ。だが、俺はお前のそういうところが好きだぜ」
そう言って、男は両足を拘束しているロープを切る。
「えっ?」
「グッフフフ。いかなる状況でも決してあきらめない意志の強さ、他人のために己の命をも捨てれる自己犠牲精神。お前は最高だ、俺はお前みたいなヤツをなぁ…」
クワッ!
男の目が大きく見開かれた。
「ズタボロにぶっ壊したくなるんだぁああああ!!!」
雄たけびを上げ、男はすさまじい勢いで私に襲い掛かってきた。
「!!」
とても反応出来る速度ではなかった、気が付いた時には既に私は男に組み敷かれていたのだ。
11796:04/07/22 19:26 ID:6aWyhPa4
「は、放しなさい!放せ!」
ジタバタともがく私。だが、全く抵抗になっていなかった。
縛られている上に薬を打たれている身では、例え相手が子供でも振りほどけないだろう。
「グシュシュ〜、お前に他人を守る力など無いわ。己の身すら守れねえんだからなぁ!」
「貴方…!」
「グルルル〜、これからお前に身の程というヤツを教えてやるぞ!」
男は剛直を取り出した。
あまりにも大きい、彼のモノに比べたらボスや他の男達のモノなど子供以下だ。
彼はソレを躊躇うことなく私の膣に挿入しようとした。
「グロロロ〜。行くぞぉおお!」
「止めろ!止めなさいっ!アッ、アァアーーーー!!!」
ズンッ!
男のモノが私の身体を貫く!
その大きさ、その勢い、私はなすすべも無く激痛を甘受するしかなかった…。
12796:04/07/22 19:27 ID:6aWyhPa4
「ウワァアアーーー!!!」
牢獄に私の絶叫が響く。
だが、男は私を両腕で押さえつけながら容赦なく腰を動かす。
「ガロロロ〜、どうだ?女どもが取引されようととしている時に、なすすべも無く犯される気持ちは」
「放せ!」
「グロロロロ…、どうだ?悔しいかぁ?そうだ、その顔だ。いい顔だなぁ!屈辱にまみれたお前の顔は美しいぞ!」
「ウグッ!私は…、必…ず…少女達…を…助…ける…。ウッ、ウォアアアーー!!」
「グフフ〜、そう強がるなよ。そろそろ俺のモノを感じる頃だ、お前も楽しむといい」
「な…、なんだと…。ハッ!ハァアーーー!!!」
ああっ、なんと言うことだ…―
私の身体はこの拷問に対してすら、快楽を貪っているのだ!
「グシュシュ〜、何が少女達を助けるだ?淫乱のお前の事だ、本当は女達の事など何も考えてはいまい」
「違う…」
「グハハ!これでもまだそんな口が利けるか!」
ズンズン!
「ウハァアーーーー!!!」
とても耐えられなかった。肉棒が更に私を強く貫くその衝撃は、より強い快楽になって私の身体を駆け巡る。
「アアッ!イッ、イヤァアアーーーーー!!!」
「ガロロロ〜、いいぞ、俺も感じてきたぞォ!!」
男が口を大きく開ける。
「お前のカラダをもっと味わわせてくれぇ!」
興奮した男は、そのまま私の首に噛み付いた。いつも薬を打たれている部位に、男の歯が突き刺さる。
「ッ!!ァアアーーーー!!!」
最早これは人間の性交ではない。獣のあくなき蹂躙に、私はなすすべも無く従うしかなかった。
「ガホォー!!」
男の牙が私の首筋に食い込む。
「アアッ、止めてぇー!」
今の私にプロとしてのプライドは最早無かった、今の私は唯の無力な23歳の女にすぎないのだ…。
13796:04/07/22 19:28 ID:6aWyhPa4
「グホホォーー!!いいぞ、お前の味は最高だ!」
「イヤァーー!!」
男に抱きすくめられた私は下半身を貫かれ、首筋をかまれている。
私に抵抗する気力はもう無い、あまりの恐怖に快楽すらも吹き飛んだように見えた―が。
「ガロロォーー!!」
ようやく噛み付きを止めた男は、更に腰を激しく動かす。
情けなくも、私の身体は再び快楽を感じていた。さっきまでと違うのは、私が抵抗するのを止めた点だけだ。
パンッパンッ
「グルル〜、かわいいぞ。オオッ!お前も一緒に感じろ!」
「イッ、イヤッ…。ハッ、ハッ、アッ、ハァアーー!!」
男が動くにつれて、私の身体も熱く淫らになっていく。
「グルル〜、お前はやはり最高だ!オォオ!出すぞ!お前も共に果てろぉお!」
「アアーーッ!ファアアアーーーーー!!」
男が咆哮を上げて、私の膣に射精する。
同時に、絶頂に達した私も身体が快楽に支配されるのを感じながら意識を失っていったのだった。
14796:04/07/22 19:29 ID:6aWyhPa4
「んっ、んん…」
絶頂に気が跳んだ私は、再び意識を取り戻した。
ずいぶん長い間気を失っていたように感じたが、実際は3〜4分くらいだったようだ。
男は既にいなかった。相変わらず後ろ手に縛られているものの、両足は縛られていない。そして、股間は綺麗にぬぐわれていた。
何かがおかしい…、何かが今までと違っていた。何だろう…。しばらくして、何がおかしいのかに気が付いた。
身体が軽い。組織に捕らわれて以来打たれ続けていた薬のせいで、私の身体は力が出ず、身体と頭が重い感じが抜けなかった。
それが今では嘘のように収まっている。もちろん拷問による身体の痛みや体力不足によるだるさはあるが、これなら以前のように戦うことが出来る。
早くここから脱出しなければ…。
もう時間が無い。私は身体をもがかせて、縛めを解こうと試みる。
バラッ…
信じられなかった、縛めは少しもがいただけではあっさりと千切れてしまったのだ。
久方ぶりの自由を喜ぶ間もなく私は身体をほぐす。身体の硬さが元に戻った所で縛めのロープを見る。千切れた部分は、明らかに刃物で切れ目が入れられていた。
(彼がやったの?でも、何のために?)
理由は解らない。でも、彼は明らかに私を逃がそうとしている。
身体の調子が良くなったのもやはり彼のおかげだろう、噛み付いた際に口に含んだ解毒剤を注入したものと私は考えている。
私はドアに手をかける、鍵がかかっていない事は最早確信出来ていた。
外に人の気配がする。だが、それにかまわず私は外へと足を踏み出した。
15796:04/07/22 19:31 ID:6aWyhPa4
外にいたのはやはりあの大男だった。
「貴方…、何を考えているの?私は貴方の敵でしょう?」
男は私の質問には答えずに、逆に私に問いかけてきた。
「グルル〜、お前は女共を救いたいんだろう?」
「えっ、ええ、もちろんよ」
突然の質問に私が答えるや、男は不意に背中を向けて走り出した。
「待って!どこへ行くの!?」
私の声に一瞬、男が振り返る。
「グハハ、来いっ!女!お前が行きたい所へ俺が連れて行ってやる!」
「!」
私は反射的に男の後を追いかける、時ならぬ追いかけっこが始まった。
私たちは建物の裏庭に出る。おそらく取引に大勢の人員が出払っているのだろう、途中、誰にも出会わなかった。
庭には二台のバイクが置いてあった、男はその内の一つに乗るやすさまじい勢いで飛び出していった。
私も慌ててもう一台のバイクに乗る。鍵は既にかかっていた、そのまま私も彼の後を追う。
暗闇の中、奇妙なドライブが始まった。
16796:04/07/22 19:33 ID:6aWyhPa4
30分程走っただろうか、男が案内してくれた場所は山奥の廃工場だった。
入り口付近に人の気配がする、良く見ると武器を持った男が数人たむろしていた。中には見覚えのある顔も何人か混じっている。
男は無言で私を工場の裏手に案内する。
2mを超える巨体にもかかわらず、前を行く男は気配はもとより、足音すら全く立てずに歩いていた。
―なんという男だ―私の身体を冷や汗が流れる。
この男の技量を改めて思い知る。今や私は確信していた、今の私ではとても彼には太刀打ち出来ない、と。
私の考えを他所に男は天井裏まで私を導いた、そして天井の隙間を指差すと無言でスコープを私に手渡す。
男に示されるまま、スコープで天井の隙間を覗く。
「!!」
私の目に飛び込んできたのは縛られた数人の少女と複数の部下を引き連れたボス、そして取引相手らしいチンピラ風の男数人だった。
なにやら話し合っているボス達を横目に、捕らわれた少女達は脅えきっていた。
許せない―
私の心が怒りに燃える。本来、私の任務は潜入調査であり、犯人捕獲は管轄外だ。だが、こんな場面を見て何もしないでいられるものか。
もうしばらく辛抱してね、必ず助けるから―私は心の中で少女たちに呼びかける。
17796:04/07/22 19:37 ID:6aWyhPa4
だが―ふと疑問が湧く。なぜ、彼は私をここまで連れてきたのだろう。私は振り返りつつ彼に声をかける。
「ねえ、何故貴方は私を―」
言葉が途中で止まる。
彼は姿を消していた。完璧に気配を隠し、いつの間にかここから出て行っていたのだ。
そして、彼がいた所に、敵に没収された私の武器や道具がおいてあった。
拳銃の弾を確かめる、確かに私の使っていた特殊スタン弾だ。
身体はまだ節々が痛み、疲労で少々脱力気味だが彼ら相手なら問題は無い。
私一人で人質を助け、敵を制圧することは不可能ではないはずだ。
命に代えても彼女達を助け出す―突入の準備をしながら、私は覚悟を決める。
そして、私は全ての準備を終えた。
―いくぞ―
新たなミッションの始まりであった…。
18796:04/07/22 19:40 ID:6aWyhPa4
その後、私は制圧に成功。少女達を全員救出し、犯罪組織の人員はボスを含め全員を生かしたまま捕縛することに成功した。
任務は成功したものの、拷問によるダメージが思いのほかひどく、私はしばらくの休養を余儀なくされた。
見舞いに来た上司から、お前はまた任務を逸脱した、本来は調査だけだろう、何制圧部隊の物まねをしているんだ、と小言を言われながら組織の建物の調査の結果を教えてもらった。
上司の話しでは、内部は相当荒らされていたらしい。そして、金品や組織の情報に関するものは一切がなくなっていたと言う。無論、私が手にした組織に関するディスクも見つからなかったようだ。
私には、誰が犯人か解っていた。そして、彼の真の目的も。
彼は始めから組織に関する情報を狙っていたのだ。そして、たまたま私が侵入してきた事から私を利用しようと思ったのだろう。
すなわち、私が組織と戦っている間に組織の情報を入手する事を思い立ったに違いない。あわよくば、組織の壊滅も願っていたのかもしれない。
組織は確かに壊滅した、だが、新たな犯罪組織が急速に根を伸ばしてきたとも言う。組織をつぶし、組織の情報を駆使して勢力を急速に伸ばす。彼はその犯罪組織に雇われていたのだと私は確信している。
全ては私の憶測に過ぎない。ただ、一つだけ確かなことがある。
それは、彼とは近いうちに再びあいまみえると言う事。
闇の世界から人々を守るのが私の使命。
私の戦いはまだ始まったばかりなのだ。

とりあえずこれで終了です。
Hの後のエピローグがだいぶ長くなってしまいました。
これでもだいぶ短くしたつもりなのですが、ストーリー重視の為どうしてもこうなってしまうのです。
申し訳ありません。
今までどうもありがとうございました。
19名無しさん@ピンキー:04/07/22 21:11 ID:lHcKU7KI
話としてもかなり面白い。
20名無しさん@ピンキー:04/07/22 21:45 ID:Xwb0d0Ze
GJ!!
面白かったですよー。

よかったら、またいつか新作書いてください。
21名無しさん@ピンキー:04/07/22 23:31 ID:+8Vj0AcH
なあ、どっちかつうと気が強くない訳でもない女の子が、若干ながらしおらしくならないでもない
ような話は投下しちゃ駄目か? 昔妄想スレにはったストックがあるんだけど。
22名無しさん@ピンキー:04/07/22 23:33 ID:0m13iVnh
>>21
言い太鼓とはわからんが、いいよ。っていうか頼む
23名無しさん@ピンキー:04/07/22 23:48 ID:+8Vj0AcH
あ、ごめんこのストックエロくないの忘れてた。だめだこりゃ。
24名無しさん@ピンキー:04/07/22 23:50 ID:whLagvdA
>>23
萌え>エロ
ですのでw
25名無しさん@ピンキー:04/07/23 00:13 ID:lRAEDkC+
よーし、若干スレ違いな気がしないでもないけどパパ投下しちゃうぞー 

【××12年5月5日 2歳の誕生日 手作りの不恰好なぬいぐるみに添えられた手紙より】
 しんちゃんへ
 二さいのおたんじょうびおめでとう!! はやく小学生になっていっしょに
小学校にいこうね。


【××16年4月8日 ■■小学校××16年度入学式開式2時間前 通学路途中の公園にて】

 うん、似合う似合う! え、ちょっと大きい? だいじょうぶよ、しんくちゃんは男の
子なんだから、これからどんどん大きくなるってば。もう、もっとシャキッとしなよ、
背の大きさで全てが決まるわけじゃないでしょ? だいじょうぶよ、いざって時には私
が守ってあげるから。何よ、かっこ悪いって? よわっちいくせになまいき言ってんじゃ
ないの! そういうセリフは一人でトイレに行けるようになってから言いなさいよね。
 でも早いね、こないだあたしが入学したと思ったのにもうしんちゃんの番なんだ……。
本当に早いねー。私ももう5年生だから2年しかいっしょに学校行けないけどさ、よろ
しくね? ……ほら、おばさんも呼んでるよ、行こう?
26名無しさん@ピンキー:04/07/23 00:15 ID:lRAEDkC+
【××20年6月12日 中学総合体育大会陸上地区大会決勝終了後 競技場裏にて】

 あ、慎! なんだ来てたの、さては小学校サボりだなコイツめ。この麗しい私の走り
を見に来たの? うりうり素直に白状しなさい。……違うの? ちぇ、素直じゃない
なあ。それよりどうよ、自己ベスト8秒も縮めたのよ! 凄いでしょ。まあ負けちゃった
けど……、今の私で勝てないなんてそれは陸上のルールがおかしいのよ、きっと!
だから悲しくなんてないわよ、だから慎もそんな顔しないの。ほら、泣かない泣かない。
もう、あなたももう中学年でしょう? 1年生に笑われちゃうわよ……。……え、違う
わよ……泣いてなんか、私のはね……。これはちがうの……。


【××21年3月18日 □□高校合格発表直後 自宅に掛かってきた電話より】

 キャ―――――!! 慎! やったわよ、見なさい、あそこに燦然と輝く113の
文字を! 電話じゃ見えない? もう、そんなの気合とか根性とか宇宙からの毒電波
とかで見なさい! 見ろ! でもまあ当然て感じ? 私ほどこの瞬間のためにがんば
ってきた中学生がいようか! いや、いまい! もうそりゃあ、あの6月12日以来
私は――
 (以後15分ほど完膚なきまでの自画自賛)
 ……と、まあそんなところね。慎も見習わなきゃ駄目よ? ……なによ、随分げん
なりしてるけど。長い? そんなの私の9ヶ月に比べたらねえ……、ん? 何? 
……あ、うん、ありがとう。そうだね、慎も応援してくれたモンね。
 じゃあお母さんにも連絡しなくちゃ。じゃ、切るね、バイバイ!
27名無しさん@ピンキー:04/07/23 00:16 ID:lRAEDkC+
【××23年10月19日 □□高校文化祭 昇降口前にて】

 おーきたきた、って随分大所帯ねえ……。皆、陸上部の友達? 上手くやってるみたい
じゃない。いやー、皆さん愚弟がお世話になってます。え? いやいや別に本当の姉弟
じゃないわ。……にしても、慎も陸上やるなんてねえ。小学校のひょろひょろの頃から
考えると嘘みたいね。……うん、本当に嘘みたい。凄いね、慎。私に引っ付いて泣いてた
子はもう居ないのかあ。ふふっ、そんなむくれないの。そういうところは変わってない
のよね。
 ……にしても何で陸上なの? サッカーとかの方が人気あるのに。やっぱり憧れの
麗しーい美人のお姉様の影響かなー……ってコラ、呆れた様なため息を残して何処へ
行くか慎っ! 待てっ!


【××25年1月1日 電話で叩き起こされた元旦午前0時7分 日付が変わると同時に放り込まれたらしい年賀状より】

 あけましておめでとう!
 ついに今年は慎も地獄の受験シーズンを迎えるかと思うと、嬉しくてならない私です。
やーいざまあ見ろ! まあどうしてもって言うなら勉強も見てあげなくもないわよ?
 ところで慎の事だから寝正月を決め込もうとしているんでしょう? ほら、図星だ。
そんな弟分をほうって置けない優しくて麗しいお姉様は、大学も推薦が決まった事だし、
君の健全な正月ライフをサポートしてあげる事にしました。という訳で5分で支度
しなさい、初詣行くわよ。君の家の前で待ってるから、美人を待たせるんじゃないわよ?
じゃあ5分後に!
28名無しさん@ピンキー:04/07/23 00:17 ID:lRAEDkC+
【××25年6月12日 中学総合体育大会陸上地区大会決勝終了後 控え室にて】

 慎ーーーーーっっ!
 凄い凄い、早い早い、県よ県よ! 我が中学校……えっと、夏崎先生何年振りでしたっけ?
そう15年ぶり! 15年ぶりの快挙よ! もう慎エライッ! 流石ウチの子!
この私ですら成し遂げられなかった偉業を……、もう私は姉冥利に尽きるわ。な
んかとうとう追い抜かれちゃったって感じよねえ……。
 ……え、控え室は関係者以外立ち入り禁止? 五月蝿いわね、大学休んでまで
やってきた私の何処が慎の関係者じゃないってのよ! ねえ先生!? ……ほら先
生もこういってるじゃない、慎のくせに生意気な、黙って褒められてなさい!


【××26年9月11日 なんでもない晩秋の日の夕暮れ 最寄駅のホームにて】

 えー、この子この子!? この一番右に写ってる子が千里ちゃん!? 嘘、可愛いじゃない!
どうやってたらし込んだのよコノコノコノコノ! 憎いね! ふーん、でもさあ
趣味は人それぞれって言ってもまさか慎になびく子がいるなんてね、なーんて……。
ホーント、こんな男になびくなんて変わってるわ。……あ、おこった? ははっ、
冗談よ大丈夫、まあ保護者の贔屓目で甘めの採点だけど慎になら中の上はあげられるわよ。
この子のためにも自信持ちなさい!
29名無しさん@ピンキー:04/07/23 00:18 ID:lRAEDkC+
【××29年3月18日 大学卒業式前日 着物屋にて】

 ねえねえ慎、これどう……ってちゃんと見てなさいよ。こんな美人の晴れ着姿なんて
見たくたって見られるモンじゃないわよ! どうせ千里ちゃんと別れてから女の子とも
ご無沙汰なんでしょ? あ、むつけた。図星ね? わかりやすいなあ、相変わらず。
……え、何、アイツ? 五月蝿い、所詮は私とつりあう器じゃなかったって事よ。まっ
たくデリカシーのない奴ね、誰に似たのやら? ……。ふふっ、そうね似てるかもね。
 え、それ? ……ふうん、慎はそういうのが好みなんだ。しょうがない、可愛い弟の
頼みだ! 親切なお姉さんに感謝しなさいよ? すいませーん。あの、コレと同じ奴
着付けしてもらえますー?


【××33年2月9日 27の誕生日の一ヶ月前 帰路にて】

 お見合いしたの。
 何そんな呆けてるのよ……? 私もう26、もうすぐ27よ? お見合いの一つや二つ、
舞い込んでくるもの。今回は結構格好良いし、年収も900万ですって! 900よ900!
凄いわよねー、普段何に使ってるのかしらね? 私の2倍以上よ。折角だから玉の輿狙っちゃおうと
思ってるのよねー。向こうも気に入ってくれてるみたいだし。とはいえどこんな美人ほっとく
男もいないでしょうけど! うふふ、私もコレで安泰ねえ!
 ……なによ、リアクションが薄いわね。……ピンとこない? まあ私は君みたいに若くないから。
いつまでも愛だの恋だのも言ってられないしね。……そろそろ身を固める時期って奴なのよ。
30名無しさん@ピンキー:04/07/23 00:19 ID:lRAEDkC+
【××33年2月14日 バレンタインデー 郵便受けに放り込まれたチョコレートに添えられた手紙より】

義理


【××33年2月17日 27の誕生日の20日前 メールより】

title:プロポーズされちゃった
 先月話してた人に3日前に、ね。いざとなると、なんだか妙な気持ちです。私もまだまだ若い
ってことなのかしらね? そう考えると何となく嬉しいです。返事は思わず保留しちゃったけど
恐らく受けると思います。ご祝儀今から用意しときなさいよ?


【××33年3月2日 27の誕生日の7日前 メールより】

title:入籍
 彼が忙しくて式は暫く挙げられそうにないのだそうです。それまでギッチリご祝儀貯めとき
なさい。良いわね? 来週の今日入籍します。


【××33年3月4日 27の誕生日の5日前 メールより】

title:チョコ
 どうだった? 結構自信作なんだけど? まああなたはご祝儀と3倍返しの用意がいるって
事よね。大変ねえ? 精々私の気が変わる事を祈っているのね。
31名無しさん@ピンキー:04/07/23 00:21 ID:lRAEDkC+
【××33年3月6日 27の誕生日の3日前 メールより】

title:(no title)


【××33年3月6日 27の誕生日の1日前午後11時50分 メールより】

title:(no title)
ねえ。

まだ? 


【××33年3月6日 27の誕生日午前0時 生まれて始めてこちらからかけた電話より】

 馬鹿慎。遅いわよ、本当に。……うん、でもまあ間に合ったから許してあげる。特別だよ?
……うん。じゃあ言う事があるでしょ。
 ほら早く……。
 ……ほらあ、電話切っちゃうよ?
 ……。うん、よく出来ました。もう、本当に何年待ったと思ってるの? ……うん、……そうだね。
じゃあさ、切るね。だって色々、向こうとも話しつけなくちゃなんないし、今日は忙しくなると
思うから私はもう寝なくちゃ。……ふふっ、いいじゃない別に。
 これからも一緒なんだし、……ね?
32名無しさん@ピンキー:04/07/23 11:18 ID:wk47pmrz
はぁ。限り無くエロいな。
個人的に言わせてもらえば、いくら文面がエロい小説より、
文面から妄想が出来る小説のほうがよっぽどエロいと思う。
こういう話大好きです。日記形式で話が進んでったり。アルジャーノンとかね。

しかし、ここって幼馴染スレじゃなかったよなぁ・・・とか思いつつ、
不意に気づいた事があった。

まさか
33名無しさん@ピンキー:04/07/23 12:40 ID:SHTyYOIE
>>32
まさか、何よ?
34名無しさん@ピンキー:04/07/23 19:31 ID:4zFmgPiY
>>25
おめーすげーな!

神認定だ
35でんでん:04/07/24 03:40 ID:bqQNt5ZK
「ユウ、どこの部屋にするの?あたし疲れてるんだから早くしてよ!」
「あ、うん・・じゃあ・・・えっと・・・」
ラブホテルの部屋を決めるディスプレイが赤色のライトに輝く。
「じゃあ・・・ここかな」
僕が指差したのはSMルーム。
ミキがハァ?とした顔で僕を睨む。
「あのね、言っておくけどあたし、SMなんて絶対しないからね」
「うん・・・わかってるよ」
ミキが僕を置いて先に部屋へ向かった。
その後ろ姿を見つめる僕の顔は・・・微笑んでいた。
気持ち悪いくらいに。
このけだるい惰性の関係に、刺激を与えられる。
もう少し、もう少しで・・・。
「クッ・・・ククッ・・・」
こらえきれずに笑いがこぼれる僕を、
部屋から出て来たカップルが気味が悪そうに見ていた。
36でんでん:04/07/24 03:57 ID:bqQNt5ZK
「ユウ、コーヒー入れて。砂糖はいつも通り多めにね」
ミキが寝転がりながら命令した。
僕は重い腰を上げて、コーヒーを作り始めた。
当のミキは煙草を吸いながら、ファッション雑誌をだるそうに読んでいる。
「はい、どうぞ」
「・・・」
ミキは無言でコーヒーを受け取り、ずず・・と音を立てて飲む。
いつもの事だ、何をしても「ありがとう」なんて言われた事が無い。
まあ、いい。
今日という日が訪れてくれただけでも十分だ。
ウトウトとしだしたミキを見ながら、
僕はまた口元が緩みだした。

素晴らしい。
この気の強い女が、このような格好をするなんて。
僕の目の前には、全裸のミキが四つんばいになっている。
両腕は背中に回されて手錠をかけられており、
両足はベッドにロープでくくりつけてある。
あとはミキを起こすだけ。
この状況を見て、どんな反応を示すだろう。
それを考えるだけで、僕の体は歓喜に震えた。
37でんでん:04/07/24 04:15 ID:5+wlGlee
「ミキ、もう時間だよ・・・起きて」
僕はミキの体を揺らした。
「う・・・ん・・・!?」
ミキの目がぱっと開いた。
自分の置かれている状況に、少し混乱しているようだ。
「さ、時間だよ、ミキ・・・」
「ちょ・・・バカ!ユウ、何考えてるんだよ!」
ミキは必死に体を動かしている。
クモの巣にかかった蝶とは、この事を言うんだろう。
「くそっ!ほどけよ、ほどけよっ!」
「だ〜め」
僕はミキの目にアイマスクを被せた。
視界を遮られた蝶は、聴覚だけを頼りに僕に叫びかける。
「こんな事して、後でどうなるか分かってんのか!ユウ!」
「うるさいな」
僕はミキのお尻を平手打ちした。
パーンと威勢のいい音が部屋に響き渡った。
「聞き分けの悪い子は、こうしないとね」
僕はミキのお尻を叩き続けた。
だんだんと白い肌が赤く染まっていくのが分かる。
「痛い痛いっ!やめてっ!」
僕は手を止めた。
「ごめんなさい・・・は?」
「なっ・・・だ、誰が言うかっ!!」
「そう・・・まだそんな態度とるんだ・・・」
僕はゆっくりと立ちあがり、壁に歩きだした。
そして壁に掛けてある、黒光りする革の鞭を手に取った。
38でんでん:04/07/24 04:30 ID:0EDhjOzr
鞭を大きく一振り。
さっきの平手打ちとは比べものにならない程の音が響いた。
「きゃあああぁっ!!?」
あまりの痛みにミキは体を仰け反った。
お尻にはミミズ腫れのような赤い線が4、5本できている。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃ・・・」
ミキが念仏のように「ごめんなさい」と言い続ける。
今まで僕に一言も「ごめんなさい」と言った事が無いミキが・・・。
「あ・・はは・・・あはははは!!」
僕はとうとう堪えきれなくなり、大笑いした。
こんなに、こんなに楽しい事は久しぶりだ。
生意気な女を従わせるのがこんなに楽しいとは。
「ううぅ・・・」
ミキの口から嗚咽がこぼれる。
アイマスクがほんのり湿りだした。
「ミキ、泣いてるの?可哀想にねぇ・・・」
「あ、あんたが・・・・・ひっ!?」
僕は可哀想なミキの為、体中を愛撫してやる事にした。
まずは、背中。
舌で背骨を沿うように舐めて行く・・・。
そして次は脇腹をくすぐるように舐め始めた。
「ひいっ・・・あっ・・・んぅっ・・・」
僕は一心不乱にミキの体を舐め続けた。
39名無しさん@ピンキー:04/07/24 06:32 ID:KJouzdsk
でんでんさんGJ!!!!!!!!!!!
ツボです!! 続きを早く読みたいです。
40無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:52 ID:2WQEhjdA
・・・エロへの到達が次々回見込みになってしまった・・・
それでもめげずに続きを投下!

 背後を歩く従僕を意識でもしているのか、リョウは治ったばかりの足を酷使してずんずん前
へと進んでいった。
 暗い道は足元もおぼつかないはずなのに、手を貸そうかと言われるのが嫌なのだろう。足元
も見ず、背後も見ず、真夜中の森を全く注意を払わず進んでいる。
 距離が離れていた。手を伸ばしても届かない距離にリョウはいて、エルが少し歩調を速める
とリョウもあわせて速く歩く。
 距離は縮まらず、すこしずつ、少しずつ離れていった。
 走って負えば、彼女も走って逃げるのだろう。魔法を使って距離を詰めれば、怒って森へと
飛び込んでしまうかもしれない。
 焦れたように視線を左右に彷徨わせ、エルは何度も口を開きかけては閉じるを繰り返してい
た。言うべきだが、言いたくはない。離れるなと言う一言を、あの少女がどう受け取るかなど
目に見えてた。
 離れるな。そばにいろ。それが懇願にせよ、命令にせよ、彼女は怒って走り出す。それは命
取りで、だがこのままでも彼女は危険で…
「…我が主…!」
 明らかに距離が離れ始めて、エルは仕方なく主の背を呼び止めた。
41無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:53 ID:2WQEhjdA
「何?」
 振り返った表情は、怯え一つ含まずに、ただ寒さに震えていた。
 唇に青みがさし、かすかに震えているのが分かる。
「…あまり、お離れにならないでいただけますか」
「はぁ?」
 不信そうに片眉を吊り上げたリョウとエルの距離は、既に一緒に歩いていると言えないほど
の距離になっていた。遠い位置にいる人間に発する声は必然的に大きくなり、森の獣を呼び寄
せる。
 彼女がそれをわかっていないはずは無かった。
 エルという存在に安心しているのか、それとも夜の森に怯えていると思われるのが嫌なのか、
どちらにせよ自分の存在がこの危険な状況を作り出している。エルは焦っていた。
「私から離れると危険です。どうか近くへ……」
「別に平気だよ。さっきから何も襲ってこないし。寒いから早く行くよ」
 向けられた背中が遠い。
 どう引き止めても彼女はとまる事は無いだろう。エル一瞬立ち尽くした。立ち尽くしてしま
った。
 距離が離れる。エルの手が届かない、強者の庇護の及ばない。
「しまッ――!」
42無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:54 ID:2WQEhjdA
「何? 何かい……」
 背後でかすかに聞こえたエルの声に立ち止まったリョウの頬を、何かがかすめて飛んでいっ
た。
 直後に頬に熱が走って、振り返って絶句する。
 数百を越える極細の触手を夜風にゆらゆらと揺らめかせて、抱えるほどの大きさの蜘蛛が鋭
い爪を地面に突き立ててそこにいた。
 瞬時に頭の中を様々な思考が駆け抜ける。目の前の生物の名称、特徴、嗜好、起こすべき行
動、上げるべき言葉、現状。一通りの認識を脳が勝手に行って、次に一つの疑問がはじき出さ
れた。
 頬の傷はあの足で付いたものだろうか、それとも、あの毒をもつ触手…?
 血が頬を伝って首に流れ、薄手の服を染めていた。
 強者の干渉範囲に弱者が飛び込んで来る事は決してない。リョウは、エルという捕食者のテ
リトリーを越えたのだ。
 リョウの手は腰のナイフを捕らえ、決して間に合わないスピードで引き抜いた。蜘蛛はとう
に地を離れ、獲物へと飛んでいる。人間の反射速度など、いかほどの価値も無い。爪が、触手
が、眼前に迫ってもリョウは目を閉じなかった。
 それは一瞬で、それは瞬間で。目の前で蜘蛛が奇声を放って停止した。
「ハミ……」
「傷つけたな……」
「っ……」
「私の主を傷つけたな……!?」
43無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:55 ID:2WQEhjdA
 すぐ背後に感じた体温に振り返って、リョウは後悔する間もなく凍りついた。
 恐ろしい。それは、彼の食事よりも遥かに恐ろしい。
 憎悪と怒りがない交ぜになった表情が硬く張り付き、全身の紋様が蒼から深紅に変わった姿
はあまりに異様で、リョウは目が逸らせなかった。
 ギチギチと、蜘蛛の硬い皮膚をエルの爪が突き破っていく音がする。
 奇声が甲高く、リョウのすぐ耳元で響いていた。吸い寄せれるように、クギ付けになってい
た視線が蜘蛛の方へと移動する。
「…ダメだ…」
 触手と足を必死でばたつかせて、蜘蛛が逃れようともがいていた。
 口から毒液とも、体液とも付かない白濁とした液体を吐き出しながら、喉を締め上げられた
鳥のような奇声を上げながら。
 一層深くエルの爪が食い込んで、黄色い血液が噴出した。リョウの顔にまで飛んだそれは生暖かく、生臭い。
「…ハミ…ット…ハミット…! ダメだ! 殺すな!」
 激怒したこのハミット種の男が、この哀れな生物を殺そうとしているのは明らかだった。
44無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:56 ID:2WQEhjdA
 彼の力を持ってすれば一瞬で終わる苦痛は彼の意思により長く続き、蜘蛛はいつまでも奇声
を放って足を必死にばたつかせる。嬲り殺しを遥かに越える恐怖は伝染した。
 逃れたくて、逃がしたくて、頬の傷はもう傷まない。
 我に返ったように背後のエルに掴みかかり、リョウはエルを揺さぶった。
「聞こえないの!? ハミット! 命令だ!」
 耳をつんざく絶叫はいよいよ必死になり、痛みと恐怖で蜘蛛は明らかに錯乱して鋭い爪を虚
空に振り回していた。
 エルにはリョウの声が聞こえていない事は明白で、その場所に存在している事を認識してい
るかさえ定かでない。
「殺さないでよ……! ハミットぉ!!」
「ッ…!」
 すがりつくように、服の上からエルの皮膚に五指を食い込ませると、エルは弾かれたように
我に返って拘束していた蜘蛛を取り逃がした。
 怯んだ…という表現が正しいかもしれない。エルの力が弱まると同時に、暴れていた蜘蛛の
爪がエルの両腕を容赦なく引っ掻き、地面へと落下した蜘蛛は這いずるように林の中に消えて
いった。
 呆然と佇むハミットの紋様は既に蒼い。ただ腕から滴り落ちる血の色が、予想外に赤かった。
「…ハミット…血……が…」
「…次は掠り傷ではすみません。私からお離れにならないでいただけますね?」
「ッ……」
 凍りついたような表情で言われて、リョウはかける言葉を失った。
45無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:56 ID:2WQEhjdA
 蜘蛛の命の一つや二つ、気にかけるような性格ではないはずなのに、リョウは蜘蛛を助けて
エルのことを傷つけた。怒って当然だ。この強い男が血を流しているのを見たことが無い。
 そもそも、エルの言う事を聞いて彼の傍を歩いていればよかったのだ。何処までも愚かしい。
迷惑ばかりで、頭の悪い女の典型のようだ。
 頬の傷…残るだろうか。毒が回った雰囲気はないが、今更になって痛み出した頬の傷を指で
なぞり、リョウはエルの冷たい後ろ姿を追いかけた。
 町の明かりが見える。他の従僕が待つ宿は近い。
「ねぇ、血、止めないの…?」
 地面を見つめて歩いていると、エルから滴る血が嫌でも目に入ってきた。線を描くように、
点を散らすように。
 後ろからだとエルの表情は全く伺えなかった。人間より体温が高いはずなのに、触れると凍
りそうなほど冷たい背中が全てを拒む。
 ギリ…と、歯を食いしばるような音が聞こえただけで、エルは返事を返さなかった。
 沈黙が切りつける。
「怒ってるよね……そー…だよね……」
「アイズレスが来ます」
「……え?」
 背を向けたまま放たれた言葉に、リョウは俯いていた顔を上げて少し向こうからかけてくる
みなれた影を目に留めた。茶色い髪を無造作に散らし、両目を包帯で覆った男。アイズレス…
ベロアである。
「私は失礼を」
「は…!? ぇ、ちょ・ハミット!? ハ……」
 言うなり夜に溶けたハミットを追いかけて、金属の腕が無意味に空気を握り締め、リョウは
呆然と道の真中で立ち尽くした。
 町の門をくぐってほんの数歩の所である。
46無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:57 ID:2WQEhjdA
「ロウ!」
「っ……ベロア」
「遅かったじゃないか…!」
 すぐ近くまでかけてきた最愛の従僕に叱責と共に抱きすくめられて、リョウは全身を包む温
かさに思わず細い体を抱き返した。
「……うん」
「元気がないね? 疲れたのかい? あぁ、こんなに冷えて…ケガまでしてるじゃないか」
 包帯の上から、さらにリョウと揃いの眼帯を着けたこの男は、リョウの事をロウと呼ぶ。
 一番最初にある記憶からそう呼ばれていたせいで気にならなくなっているが、理由を聞かれ
ても彼がそう呼ぶ理由をリョウは知らない。ベロアは何も教えてはくれないが、何故かそれで
構わなかった。聞いた事もないが、聞こうとも思わない。
「うん。モンスターが出てさ…でもハミットが守ってくれたから」
「ハミットが?」
「……うん」
 頷いて、沈黙する。
 ただそれだけの動作を行った主を心配そうに見下ろして、ベロアはすぐに唇に笑みを乗せる
とリョウの背を軽く叩いて歩き出した
「とにかく宿に戻ろう。ここは寒すぎる」
「ちょ、ちょっとまって。ハミットがどっかに…」
「見てたよ。宿に戻ってる」
47無愛想ハーレクイン:04/07/24 15:57 ID:2WQEhjdA
 見上げると、表情は変わらないのに、いつもは青い額の瞳が紫に変わっていた。
 アイズレスは感情で瞳の色が変化する。髪の奥から伸びた太い血管と神経に支えられた瞳は
人間よりもはるかに自由に動き、あらゆる物を“見る”事が可能だった。故に、彼はエルの行
動と行く先を暗闇の向こうから見たのだろう。だが、それだけでベロアの瞳の色が変わるのは不可解だ。
「どうかした?」
「……どうして?」
 紫色は、不機嫌と言うより不満といった所だろうか。逆に聞き返されてしまって、リョウはほんの少しだけ沈黙するとベロアの瞳を覗き込んだ。
「…顔に書いてある」
 言われて、ベロアは瞳の色をすぐに青くすり替えた。人間で言う所の、表情を取繕ったに当
たるだろうか……リョウが居いない間に、ベロアとエルの間で何か起こったことは明白だ。
「ちょっとね……捕まってた」
「捕まる?」
「まあ……なんでもないよ。ロウが無事ならそれでいいんだ」
「言いたくないわけだ」
「うん……まぁ……」
 それじゃあ、聞かないといって薄く微笑んだリョウに奇妙な笑みを返して見せて、ベロアは
リョウに従うように、少し後ろに付いて歩き始めた。
48無愛想ハーレクイン:04/07/24 16:03 ID:2WQEhjdA
とりあえずここできります。職人さんが増えた気がして非情に(・∀・)イイ!!
このスレのおかげで前にいたスレのSSの続きを書いていないのは秘密の話。
パロよりオリジの方が設定が楽しいよ。・゚・(ノ∀`)・゚・。
49796:04/07/24 18:56 ID:eDxN32+k
>>48
話が練りこまれていてとてもいいです。
職人さんが増えたのはとても嬉しいですね、みんなうまいし。
(・∀・)コリャオレハトウブンオヨビデナイナ
続きも気長に待っています。
50でんでん:04/07/26 00:01 ID:CGalPLxS
38の続きです。

「もぉ・・・やだぁぁっ・・・」
一時間は経っただろうか。
僕が舐め続けたミキの体は涎まみれ。
でも口と秘部だけは舐めていない。
なのに・・・口と秘部は既に涎まみれ。
「どれどれ」
僕はミキのアイマスクを外した。
さっきまでの強気な目つきは変わっており、トロンとした虚ろな目つきだ。
「ユウ・・・」
子犬のような瞳が僕を見上げる。
僕はとびっきりの笑顔をミキに見せてあげた。
でもミキにはそれが余計に恐いみたいだった。
「犬・・・」
「え?」
「ミキ、君は僕の犬だよ・・・」
ミキの顔がかっと赤くなる。
「違うっ!あたしはあんたの犬なんかじゃない!それに、あんたとはもう別れる!」
僕はミキの脇腹を軽く蹴った。
ミキの体はコロンと転がり、仰向けの形になる。
手は後ろに回されて手錠を掛けられているので、大きな胸が余計に目だつ。
僕は右手でテーブルに置いてあるミキのライターを持った。
そして、左手には・・・蝋燭。
51名無しさん@ピンキー:04/07/26 04:44 ID:OJZ+YHlj
続きマダー(・∀・)?
52名無しさん@ピンキー:04/07/26 15:53 ID:GGAzcmEz
今週の少年ジャンプの新人の読み切りがけっこういいぞ。
「タカヤ〜おとなりさんパニック〜」
画力はしょうじきイマイチだけど。

お姉さんぶるところとか、
後ろから抱き着いて胸を意識させてからかうところとか、
子供の頃に料理が下手だと言われたのにショックを受けて練習したとか、
せっかく作った手作りのお弁当を恥ずかしがって渡せないとか、

ツボを心得てる。
53名無しさん@ピンキー:04/07/26 20:27 ID:rBQI4Rej
うむ。あれか。
あれは良かったね。ほんとツボを心得てる。
そしてなによりもぉぉぉぉ!! 主人公がヘタレに堕ちきってない!!
54名無しさん@ピンキー:04/07/26 20:47 ID:GGAzcmEz
つうわけで、「タカヤ」を原作に小説化キボンヌ


おそらく続きは読めないだろうし、
あの作者の新作が読めるかも怪しいし。
55名無しさん@ピンキー:04/07/27 01:06 ID:5VEKYAbU
ギャグがショボイ
56名無しさん@ピンキー:04/07/27 01:24 ID:nHezJUFE
>>55
ギャグはまあ、おつまみってことで
57名無しさん@ピンキー:04/07/27 01:43 ID:fj+h9Tmy
ジャンプ系小説キボンヌの中、
あえて無謀にもでんでんさんと無愛想さんの続きをキボンヌしてみる豪の者がここに一人
58名無しさん@ピンキー:04/07/27 15:24 ID:43Sh3nLv
てかタカヤは何故あの兄貴がタカヤにベタ惚れなのか全く分からなかった。
正直構成力不足だと思う。萌えヲタを釣るにしても画力はあれだし・・・・
多分半年後くらいに赤マルに読みきりでも書いているであろう。
59名無しさん@ピンキー:04/07/30 16:47 ID:qKjU7+zJ
>>25
なんというか…GJ!
60無愛想ハーレクイン:04/07/30 20:47 ID:ikL1Nf3W
なんだか最近、自分の作品が激しくスレ違いなきがしてきたので、続きを別スレにて投下することにいたしました。
この板のどれかのスレッドなので、もしまかり間違って続きを待ってくださってるかたがいらっしゃったら、
コソーリそれっぽいスレを探してください。
中途半端な形ですいませんすいません。
いつか本当に『気の強い娘がしおらしくなる瞬間に・・・』的なものができたら、
また投下させていただきたいと思います。
61796:04/07/30 23:57 ID:JgXnYLto
>>60
そんなにタイトルを気になさる事は無いと思いますよ。
そんな事を言ったら俺のヤツはどうなるのやら。(´Д` )
でも、どこでお書きになろうと応援しているので、これからもがんばってください。
62名無しさん@ピンキー:04/07/31 00:01 ID:yqBA4dRE
いや、合ったスレに移動するのはいいので中途半端だとは思わないが
「それっぽいスレを探してください」はひどいですぜダンナ……
63無愛想ハーレクイン:04/07/31 00:34 ID:ILqtMMdO
|ω・

>62
エロくなさげな・・・

|彡サッ
64名無しさん@ピンキー:04/07/31 05:13 ID:qOvDWmlX
自分はSS書いたことないし、シチュ(甘め・微妙に既出)は出来る、脳内で文章の断片はかなり出来るんですが、
神々を前にして、その先は一度くらいは書いてみたいけれど出来ないなぁ、って感じです。
神々はどうやって神々になり得るんでしょう?
65名無しさん@ピンキー:04/07/31 08:23 ID:1W5gNKcA
>>64
書くことに尽きる。
恥ずかしさや躊躇いを乗り越えてなお書くその先に道は開ける。
66名無しさん@ピンキー:04/07/31 09:43 ID:AjHwUVXS
64
書きたい(こと)を書く。書きたい(もの)にはとびつかない。
その見極めをつけることが大事と河野多恵子がいってる。
とびついた場合、のような話にしかならないらしい。

常套句を書くことを避ける。初めに浮かんだ文を捨てて
二番目に考えたものを書く。断定的な括りを避ける。
やわらかく書くということがすぐにできることで、
詩のような独善的な表現には陥らない、みたいので
のようなものにはそこそこなれるけど・・・。

そういうことも、書いてみて初めて気づくことだと思う。


6764:04/07/31 21:03 ID:yz+833bF
ありがとうございます。いつになるのかわかりませんが、神々に一歩でも近づきたいと思います。
68ちんちん:04/08/02 16:52 ID:d9Qexdol
でんでん早くしろ
69名無しさん@ピンキー:04/08/02 22:56 ID:EDMMwT+G
てかおまいら

前スレ、90近く残ってますよ?
70名無しさん@ピンキー:04/08/02 23:10 ID:NbKrbC3l
1000でなくとも、500kbで書けなくなるはずだけど、まだ書けるかな?
71名無しさん@ピンキー:04/08/02 23:41 ID:2pJ4Fedm
あと2kbくらい。無理でしょうな。
72名無しさん@ピンキー :04/08/05 01:57 ID:EDZMyvB9
保守
73名無しさん@ピンキー:04/08/05 04:12 ID:LAsUz6gu
「一本っ! それまで! 勝者、大山美冬!」
「押忍っ!」
 審判の判定にたいして、美冬はわきを締め、短く応えた。ショートカットの髪が揺れて、きらきらと汗が零れる。
 一方、直前に見事な上段回し蹴りを側頭部にくらって、まるで棒倒しの棒が倒れるように崩れ落ち、床に倒れこんでいる対戦相手、北条香織のポニーテールはピクリとも動かない。
 すぐさまタンカが用意され、救護係に抱え上げられたとき、自分の頭の上で慌てた声が聞こえ、香織はうっすらと目を開けた。
「だ、大丈夫? 北条さん?」
 同じ道場に通っている吉村信広が心配そうに香織の顔を覗きこんでいる。
 それには応えずに香織は救護係に話しかけた。
「もう、大丈夫です。自分で歩けます」
 固い、感情のこもっていない声でそう言うと、起きあがりロッカールームに向かう。
 ちらりと自分を負かした美冬の様子を窺う。
 試合場を挟んで香織の反対側にいる美冬は、観客席にいた恋人らしき男とハイタッチをかわして満面の笑みを浮かべている。その顔は直前に空手の試合をやっていたとは思えないほど綺麗だ。
 顔中を腫らして、鼻血まで流している私とは大違いだ。香織は力無く笑うと、救護係に渡された脱脂綿を鼻に詰めた。
「あんまり無理しない方がいいよ。か、肩貸そうか?」
 吉村が慌てて駆け寄ってくる。
「いい、ほっといて。それより自分の試合のこと心配しなよ」
 心配する吉村をすげなく袖にすると、香織は全身の痛みに顔をしかめながら足を引き摺るようにして動かした。
74名無しさん@ピンキー:04/08/05 04:16 ID:LAsUz6gu
 控え室に戻ると、香織は部屋の片隅にある洗面所で顔を洗った。口をすすぐと、吐き出した水は血に染まっていた。
 ふと目の前の鏡を見ると、青いあざがいたるところにできている。とくに右目などは漫画のように大きく腫れあがっている。
 香織はじっと鏡の中の自分を見つめた。というよりも睨みつけたというほうが正しいだろう。
 本人は自覚していないが、人並み以上に美しい顔が無残なことになっている。だが、それでも香織の美貌はまったく損なわれない。なぜなら強い意志の光が瞳に宿り続けているからだ。それは肉体が打ちのめされても変わることなく輝いている。
 「また負けた」
 内心の思いを、ぽつりと呟いたその瞬間、瞳の光りが弱々しく揺らいだ。
 初めて大山美冬と対戦してから今日で三度目。そのどれもが一本負けだった。
「くそっ……なんで、なんで……勝てないんだ」
 出しっぱなしだった水をすくい、もう一度顔を洗う。熱を持った顔に冷えた水が心地良い。しかし、その程度では気持ちは納まらない。
 負けた悔しさではない、勝てない自分に対する不甲斐無さから、目頭が熱くなった。じわじわと瞳を涙が覆ってゆき、それが零れ落ちようとしたとき。
「北条さん? なにもしないままだとまずいから応急手当しようと思って来たんだけど……入っていい?」
 ドアの外から吉村の声が聞こえた。
「ちょっと待って」
 相変わらずの硬質な声で返事をすると、ざぶざぶと乱暴に顔を洗う。
 顔を上げた時には、いつもどおりの強い意思の宿った輝く瞳の香織がそこにいた。先ほどまで泣きそうになっていた人物と同じ人間とは思えない変わりようだった。
 しかし、今、その光の強さはどこか張りつめたものになってしまっている。
 胴着を脱ぎ、下着だけの格好になる香織。さすがにそのままでは不味いと感じたのか、ハーフパンツを履いたもののの、スポーツブラがぴったりフィットしている上半身は控えめな胸の形が露わなままだ。
「入っていいよ」
75名無しさん@ピンキー:04/08/05 04:18 ID:LAsUz6gu
 部屋に足を踏み入れて、もう着替え終わっているものと思っていた吉村は面食らった。
 贅肉のかけらもない、引き締まったしなやかで魅力的な体が惜しげもなく晒されている。
「う、上……着なくていいの?」
「これ以上着ると手当てしにくいでしょ」
 自分の魅力を理解していないのか、男として見られていないのか。間違い無く後者だと悲しい確信をして、吉村はテーブルに救急箱を置いた。てきぱきと消毒液などをとりだしていく。
「それじゃあ、痛かったらいってね」
 そんなことを言ったものの、吉村は香織の青あざができつつある顔を見て、自分が痛そうに顔をしかめた。
 目立つものからあざを冷やし、冷湿布を貼っていく。
「口開けてもらえる」
 黙ってがぱりと口を大きく開く香織。何箇所か切れて痛々しい傷口を見せている。そこにも眉をよせながら、薬を塗る。
 作業は進むのだが、気まずい沈黙に耐えかねて、吉村は周囲を見まわして会話の種を探そうとした。
「!」
 しかし、その行動は見事なやぶへびに終わった。香織の同世代の女の子よりも小さな胸の頂上。間抜けな男は二つの小さなぽっちを発見してしまった。
 普通のスポーツブラならそんなふうにはならないはずなのだが、不幸にも、いや幸運にもというべきか、香織は海外製のものを使用していた。尊敬する女空手家が同じブランドのものを愛用していたからである。
 見まいとするのだが、ついつい吉村の視線は香織のふくらみをさまよってしまう。
 そして、気をそらせようとして、なにも考えずに口を動かした。
「ざ、残念だったね。負けちゃって」
 吉村は言ってから、しまった! と心の中で絶叫したが声になった言葉を取り消すことはできない。
「私のほうが弱かったんだろうね」
76名無しさん@ピンキー:04/08/05 04:19 ID:LAsUz6gu
 氷のように固く冷たい声が部屋に響いた。
「そ、そうじゃなくて……その、あの。つ、次は勝てるといいね。あんなに練習してるんだからきっと次は勝てるよ」
「今回は勝てなかったけどね」
「だ、大丈夫だって北条さんは空手上手いし」
「下手だったら特待生になれなかったからね」
「えっ……と、あ、あれだ! たまには息抜きとかしてみたら」
「……負けたのに?」
 鋭い目で香織が吉村を睨みつけた。
「あんたみたいに負けてもへらへらしてられるような身分じゃないのよ! こっちは勝てなきゃプレッシャーかけられるのよ学校からも、コーチからも! なんのために金だしてやってるんだって!」
 荒々しく立ちあがり、香織は吉村を見下ろした。
「手当てしてくれる気がないんだったらもういい。帰って練習しないといけないから」
 手早く荷物をまとめ、ジャージを羽織ると香織は部屋を出て行ってしまった。
 あとには消えて無くなってしまいたいと悔やむ吉村が消毒液を持って残された。
77名無しさん@ピンキー:04/08/05 04:20 ID:LAsUz6gu
 翌日、香織はけがによるものであろう発熱で学校を休んだ。
 それを吉村は己の失言のこともあり、たいへん気をもんだが、結局香織は一日休んだだけでその次の日からは普通に登校してきた。
 しばらくの間、空手部の活動中、吉村は気まずい思いをしていたが、香織の方はそんなことはなかったかのように、今までどおりに接してきた。
 
「あんまり気にしてないみたいで良かったなぁ」
 自宅のベットに寝転がりながらぼんやりとテレビを見ながら吉村は呟いた。
 香織は敗戦後、空手部にくると今まで以上に熱心に練習していた。その姿勢は他の部員にも広がっていき、部員達はそれぞれの目標に向かって、香織を見習って充実したクラブ活動をおこなっていた。
「……あ」
 カバンをあさっていた吉村が間の抜けた声を出した。
「しまった。スケッチブック学校に忘れた」
 時計に目をやると、九時。明日でもよいかと考えたが、あいにくと明日は土曜日で学校は休みである。週末にあのスケッチブックがないのは痛い。今から家を出れば、なんとか学校が閉まる前につく。悩んだ末に吉村は学校に向かうことにした。
78名無しさん@ピンキー:04/08/05 04:21 ID:LAsUz6gu
ジャンプの作品とはなんのかんけいもないですが
よろしくお願いします
79名無しさん@ピンキー:04/08/05 11:19 ID:lnt6iKeO
新職人さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
気の強さがかなりいい感じ
80名無しさん@ピンキー:04/08/06 01:34 ID:QiZzBiBX
あれ?
空手部の美冬?

どっかで聞いたようなw
81名無しさん@ピンキー:04/08/06 18:44 ID:qixss1z1
>>80
空手部の美冬って有名なの?
なんのキャラか知らないので詳細よろしくお願いしてもいいかな
82名無しさん@ピンキー:04/08/06 18:55 ID:bJLpx4lM
>>81
佐世保で同級生を殺したNEVADAの愛称で知られる少女が書いていたバトルロワイヤルの
パロディ小説のヒロイン
83名無しさん@ピンキー:04/08/06 19:17 ID:oDoW3gTR
不吉な突っ込みだw
8480:04/08/06 20:07 ID:aruDZmLN
>>81
勘違いだったら恥ずかしいので作者さんの反応待ちw
8577続き:04/08/07 01:56 ID:AlDfZjm4
「ここでいいよな。すぐ戻るし」
 一人で言い訳しながら、吉村は下駄箱のすぐ前に自転車を止めた。
 言葉どおりに、五分ほどで吉村はスケッチブックをわきに抱えて教室から戻ってきた。
「ん?」
 校庭の端にある道場に明りがついている。こんな時間に自分以外に誰かが学校にいるとは。いつもの吉村なら見まわりの人だろう、そう思って帰ってしまうはずなのに、なぜか、誰がいるのだろう。そんなふうに気になってしまった。
 自転車で無人のグラウンドを横切って道場に向かう。
 静かに自転車を止めると道場の扉を少しだけ開き、中を覗いた。
 夕方までは大勢の人間がいたそこは、今は一人、香織がいるだけだった。
 照明がこうこうと照らすそこは、畳の上にぽつんと一つ、影が落ちているせいで、誰もいないよりも寂しい世界に見えた。
 覗き見をしている吉村にはまったく気付かずに、香織はえんえんと空手の型をくりかえしている。
 しなやかに体が動き、拳が、脚が、素早く繰り出される。そのたびに、きらきらと宝石のように汗が飛び散った。
 静かな道場に、畳を踏みしめる音と、技が空を切る音が響く。
 吉村がその華麗な体捌きに見惚れていると、香織は道場の端に吊るしてあるサンドバックのひとつに向かっていった。
 その表情を見る限り、もう限界だろうに、香織は休むことなくサンドバックを叩き始める。
 すぐさま鋭い打撃音が間断無く吉村の耳に飛び込んできた。
 みるみるうちに香織の足元の畳に汗が溜まっていく。
 それまでぼんやりしていた吉村は、ようやく自分の手にしているものがなにか思い出した様子で、スケッチブックを開くと、中に挟まっていた鉛筆で香織の練習風景を猛烈な勢いで描き始めた。
86名無しさん@ピンキー:04/08/07 01:57 ID:AlDfZjm4
 それから、どれくらいの時間が経っただろうか。吉村は十二枚目のラフスケッチを終えたとき、ようやく異常に気付いた。
 ちょっと待てよ。僕がスケッチ一枚に五、六分かかるとして……一枚目を描き始めてから……もう一時間以上経ってるじゃないか!
 まてよ、最初の様子だとクラブが終わってからもずっと一人で残ってたと考えるほうが……七時前に終わったから、そうすると……四時間!?
「い、急いで止めさせないと!」
 手にしていたスケッチブックを放り出すと、吉村は靴も脱がずに道場に飛び出した。
「北条さんっ! か、体壊すよ、休まないと!」
 喚き叫ぶ吉村の声が届かないのだろうか。異常とも言える集中力で香織は体を動かし続ける。
 近づいてみると、今まで気付かなかったが、香織の手を守っているグローブのすきまから赤いものが流れ出している。
「ほ……北条さん」
 やむを得ず、吉村は強引に香織の体を抑えにかかった。しかし、香織は制止を振りきって無理矢理に動こうとする。そのうえ畳に水溜りができるほど汗をかいているせいで、ずるずる滑って上手くいかない。
「だめだって! なんでこんなことを!」
 悲しいかな、男と女とはいえ力は香織のほうが上だ。吉村は覚悟を決めて、香織を押し倒そうとした。なかば倒れこむように体重を香織に預ける。
 それはあっさり成功した。
 もう限界を越えていたのだろう。簡単にバランスを崩すと香織はふらりと畳の上に倒れ伏した。
87名無しさん@ピンキー:04/08/07 01:58 ID:AlDfZjm4
「だ、大丈夫、北条さん?」
 立ちあがった吉村が声をかけるが香織はピクリとも動かない。どうやら気を失ってしまっているようだ。
 おろおろと視線をさまよわせた吉村は、道場のすみにあった誰かのタオルを見つけた。誰のものか、使用済みかどうかもわからないが、この際文句は言えない。
「タオル濡らして、あと……水だ」
 吉村はこれまでの人生で一番機敏に動いた。タオルを引っ掴むと、道場の外へ飛び出す。
 タオルを洗面所で濡らし、自販機でスポーツ飲料を買うと、再び、靴も脱がずに道場に飛びこんだ。
 ぐったりとしたままの香織に駆け寄ると、汗に濡れた顔を冷たいタオルで拭ってやる。
「え、っと、こういうときは、あ! 救急車呼ばないと、なんで気付かなかったんだ」
 ジーンズのポケットから携帯電話を取り出すと、ボタンを押そうとした。
「そ……そんなの、呼ばなくて……いいから」
 いまだに起きあがってはいないものの、顔だけを動かして香織が吉村の行動を止めた。
「北条さん! よかった。でも救急車読んだほうが……。僕もう、どうしようかと思って。」
 香織の気がついた安心からか、支離滅裂になりながらも、吉村がほっとした表情を見せた。
「……大丈夫。ちょっと、たぶん、たんに疲れただけだと思う」
 つらそうに話す香織に肩を貸して、香織を立ちあがらせると、道場の壁にもたれられるように場所を移動する。
 ゆっくりと香織を座らせると、吉村はあせりながら先ほど買ってきたスポーツドリンクを差し出した。
「こ、これ飲んで」
「ありがとう……」
88名無しさん@ピンキー:04/08/07 02:00 ID:AlDfZjm4
 素直に受け取った香織だったが、指に力が入らないのか、缶のフタを開けることができずに悪戦苦闘している。
「あ、気がつかなくてごめん」
 香織にかわって吉村が缶をあけ、再度缶を香織に渡す。
 気まずい沈黙のなか、香織がスポーツドリンクを飲む音だけが切れ切れに聞こえる。
 吉村がおもむろに立ちあがった。
「靴はきっぱなしだった。ちょっと脱いでくる。そうだ、ついでにもう一本飲む物買ってくるよ。それだけじゃ足りないだろうし」
 いろいろと理由をつけてみたものの、実際のところは沈黙に耐えかねてその場を離れたかった、というのが吉村の正直な気持ちだった。
 先ほどとは違い、ゆっくりと自動販売機に向かう。
「やっぱり、試合に負けたからかな。そしたら僕の言葉もちょっとは影響してるかもなぁ」
 あんなふうに体を痛めつける理由が他には見当たらず、吉村は深い溜息をついた。
「もしかして僕と北条さん相性悪いのかなぁ? しょっちゅう気まずいし。もしそうだったらすごいへこむんだけど……」
 気がつくと自販機の前にいた。香織のためにスポーツドリンクを、自分のぶんとしてコーラを買い、ふらふらと道場に戻る。
 ぽつんと道場の片隅に座っている香織は、今にも消えて無くなりそうに見えた。
「あ、これここに置いとくから」
「……うん」
 自分も腰を下ろし、吉村もコーラを飲みはじめる。炭酸の弾ける音がこんなにも大きく聞こえることがあるとは想像もしなかった。
 吉村にとって、まさに針山の上にいるような心地で十分が過ぎたころ、ようやく香織が声をかけてきた。
「なんでこんな時間に学校にいたの」
 それはこっちのセリフだよ、と思いながらも吉村が答える。
「スケッチブック忘れて、それ取りに来たんだ」
「こんな時間に? 美術の課題でなんかあったっけ」
「絵、描くの好きなんだ。だから週末にないと困るから」
「ふぅん」
89名無しさん@ピンキー:04/08/07 02:03 ID:AlDfZjm4
「あ、スケッチブック! さっき放り出したままだった」
 ばたばたとあわただしく道場の入り口に向かうと、すぐに吉村が帰ってきた。もちろん手にはスケッチブックを持っている。
「さっき、慌てちゃって」
「なんで空手部に入ったの?」
「え?」
「絵描くの好きなんだったら美術部に入ればよかったのに」
「いや、一応それにはわけがあって」
「どんな?」
「その、少しは北条さんも関係あるって言うか、その」
「あたしに?」
「覚えてないかな。まぁ仕方ないよね」
 吉村が少し悲しそうな顔を、香織が怪訝な顔をした。
「まだ入学したての頃、一回モデルになってくれないかって頼んだことがあるんだけど……」
「うそ!? そんなことあった?」
「ほんと一言、二言程度だから覚えてなくて当たり前だよ。
 僕は美術部に入るって決めてたんだけど、友達に付き合って色んなクラブを見てまわってたときに、組手をしてる北条さんを見て、一瞬でこの人を描きたいって思って。
 組手が終わってすぐにモデルになってもらえませんかって頼んだんだ」
「ごめん、全然覚えてない」
「それでそのときに、あたしより強かったらいいよって言われたんだよ。だから空手部に入ったんだ」
「そうなんだ……じゃあ別に空手が好きなわけじゃないんだ」
 感情がこもっていないその言葉は、まるで吉村を刺すようだった。
 慌てた吉村が両手を振って弁解する。
「そっそんなことないよ。初めはそんな理由だけど今は空手も好きだし。北条さんより強くはなれそうにないけど。それよりも、あんなふうに無茶しないほうがいいよ」
「無茶?」
90名無しさん@ピンキー:04/08/07 02:06 ID:AlDfZjm4
「あんなふうに練習っていうか、体痛めつけるみたいなことは」
「負けたんだから前よりもっと練習するのは当たり前でしょ!」
 突然、香織が声を荒げた。
 それに気圧されながらも、幾分小さくなった声で吉村が反論する。
「でも、あんなのは練習なんかじゃないよ。その、負けて悔しいのはわかるけどもっと、他のやり方があると思うし」
「どんな!?」
「それは……、でもあんなのは間違ってるよ。疲れてるみたいだし、気分転換でもしたほうが」
「うるさいっ!」
 香織は吉村を怒鳴りつけた。
「あんたみたいに空手も好きなんてのんきなこと言ってられるような人間とは違うのよ!」
「北条さん……」
「あんたと違ってあたしは空手の他にはなにも持ってないんだ! 気分転換なんて気安く言うなっ!」
 香織が頭を抱えて喚き叫ぶ。
「ずっと……ずっと、空手しかしてないあたしに、気晴らしの仕方なんかわかんないんだよっ! 気分転換なんて、そんなこと急に言われたってどうやって過ごせばいいかなんて……。
 休みだって空手の練習して! 空手以外のことなんて全然しなくて! 空手だけがあたしの全部で! 他になにも知らなくて! それなのに勝てなくて! 
 最初は楽しかったのに、今はもう楽しくなんかない。つらいだけなのに、いまさら辞めることもできなくて……もう……疲れた」
 最後の言葉を搾り出すように言うと、香織の目から涙が一粒零れ落ちた。それを合図にしたようにぼろぼろと大粒の雫が堰を切ったように溢れ出す。
 棟を締めつけられるような嗚咽を耳にしても、女性が泣く場面などに免疫のない吉村はただうろたえることしかできない。
「……ははっ、バカみたい。こんなこと他人に言ってもしょうがないのに」
91名無しさん@ピンキー:04/08/07 02:08 ID:AlDfZjm4
 泣きながら、香織は笑った。それは見る者の心を締めつけるような自嘲の笑みだった。 
 渇いた笑いを漏らした後の香織は、一転して抜け殻のようなうつろな表情になってしまった。
 いつもの力溢れる瞳は輝きを失い、ガラス玉のように見える。
 様々な感情を爆発させすぎて、エネルギーを失ってしまったのだろう。
 吉村は自分にできることはないかと、頭をフル回転させ、香織をなんとかなぐさめようと心だけが暴走した結果、あらぬことを口走った。
「だ、だったら……そ、その、ぼ、僕の絵のモデルに、なってください……とかは……だめ、かな」
「モ……デル?」
 頬を濡らしながら、きょとんとした顔で香織が呟いた。
 勢いで言ってしまったことになんとか収拾をつけようと、言葉を続ける吉村。
「その、いやなら、い、いいんだけど。できたらモデルになって欲しいんだ。気分転換になるかどうかはわからないけど」
「あたしが?」
「そう! 絶対にいい絵を描くから! それに普通なら絶対にやらないことをやるんだから、気分転換になる……ならないかな」
 最後のほうは自信なさげに声が小さくなったものの、それに反して吉村の目はらんらんと輝いている。
「あっ、あたしなんかがそんなモデルなんて! そんなの困るっ!」
 いやいやをするように首を振り、断固拒否の構えを見せる香織。
 しかしここまできてしまった以上、吉村もひくにひけない。
「大丈夫! 北条さんなら最高のモデルになれる、こんなに綺麗な人を僕は他に知らない」
 身を乗り出してきた吉村の勢いに押されながらも、香織はさらに断る理由を並べたてようとする。
 どうやら、あまりに突拍子もない頼みごとに混乱して、それを回避するのに必死で自分の悩みが一時的に頭から消えてしまったようだ。
「だめっ、無理だって、あたしなんか全然綺麗じゃないし、女っぽくもないし。ほら、これ、こんなふうに拳ダコのある女なんてモデルになんてなれないって」
 香織が拳を突き出しアピールしてみせる。
92名無しさん@ピンキー:04/08/07 02:10 ID:AlDfZjm4
「僕は北条さんのことを女らしくないなんて思わないし、拳ダコだって魅力のひとつだと思う。だから、そんなふうに自分のことを卑下するのは良くないよ。自分の魅力をわかってないんだったらモデルになることでそれに気付くと思う!」
 目の中で炎が燃え盛っているのではないかというほどに、情熱をたぎらせて吉村がかきくどく。
「でも……、そんなことしたことないし」
 言葉だけでは足りないと思ったのか、もう一押しだと思ったのか、吉村は傍らにおいてあったスケッチブックを広げた。
「ほら! これ見てよ」
 そこには数枚の風景画と、数多くの人物画が描かれていた。さらに言えば、人物のほとんどは香織だった。
 さきほどの香織が倒れる直前の練習風景から、試合中の香織、組み手をしている香織、タオルで汗を拭っている香織、制服姿の香織、色々な香織がそこにいた。
 香織は戸惑ったようにそのスケッチの数々を眺める。
「……これ、あたし?」
「そう! 北条さん、許可取らないで描いたことはあやまるけど、描かずにはいられなかったんだ! だからちゃんと僕に北条さんを描かせて欲しい!」
「あ、あたしこんなに綺麗なんかじゃない」
「僕はありのままを描いただけだ」
「嘘つかないでっ! ほら顔だってまだこんなに腫れてるし」
「腫れならひくの待つから、今度の土曜日にならもう元に戻ってるよ」
「で、でも、あたしその……む、胸ないからヌードなんてできないっ!」
 香織が耳まで真っ赤になって絶叫する。
 一拍おいて吉村が気の抜けた声をした。
「……ヌード?」
 香織の真っ赤に染まった顔をぽかんとした顔で吉村が見つめる。
「モデルって脱ぐんだろ?」
93名無しさん@ピンキー:04/08/07 02:12 ID:AlDfZjm4
 素人だからとはいえ、あまりな誤解を吉村は優しく解きほぐす。
「全部の女性画がヌードなわけじゃないでしょ? 僕が北条さんに頼むのは服を着たままのモデル。ヌードはヌードで描きたいけどそんなの頼めないって」
 安心した香織の様子を吉村は見逃さなかった。すかさず追撃をかける。
「さっきの言葉はヌードじゃなかったら引き受けてもらえるってことだよね」
「ち、ちがう」
「いや、違わないよ。今度の土曜日一時に学校の門のところで待ってるから、絶対にきてね」
「え、でも……」
「そうか! 練習ある?」
「土曜日は午前中で終わるけど……」
「だったらちょうどよかった」
 有無を言わさず約束をさせると、吉村は香織を家まで送っていくと言いだした。
 断ろうとする香織を、心配だからと言って、強引に自転車のうしろに乗せると、月明りのもとグラウンドをふらふらと頼りなく進んでいく。
 すると、校門が閉まっていた。当然である。とっくに深夜零時を過ぎているのだから。
 守衛にこんな時間まで学内にいた理由を勘繰られながらも、二人は何度も頭を下げて門を開けてもらった。
「家どこらへんなの?」
「家って言うか、寮に住んでる。知らない? うちの特待生が入ってる清流寮」
「あー、あそこか。じゃあ北条さん一人暮しなんだ」
「他に生徒がいっぱいいるから一人ってわけじゃないけど。相部屋だし」
 清流寮と彫られた、いかめしい石碑が鎮座ましましている寮の前で、香織が送ってくれた礼を言う。
「その……送ってくれてありがとう」
「いいよ、僕がむりやり送ったんだし。あ! 北条さんの家がわかったんだから僕土曜日迎えにくるよ」
「え!?」
「それじゃあ、また明日」
 戸惑う香織を残して、吉村は上機嫌で去っていった。
「ど、どうしよう……」
94名無しさん@ピンキー:04/08/07 02:28 ID:AlDfZjm4
>>81さん
他の空手部の美冬は知りませんが、73の文章にでてくる空手部の美冬は
以前、別のスレで書いた文章に出てくるキャラのつもりです。
名前を考えるのが苦手なもので、そのまま使いました。

おそらく80さんはその作品を読んでくれていて、
同じ美冬だということに気付いてくれたのではないでしょうか
と、思います。
まったくのうぬぼれ勘違い可能性もありますが
95名無しさん@ピンキー:04/08/07 08:24 ID:ExP5F6i1
期待sage
96名無しさん@ピンキー:04/08/08 11:33 ID:nMB51YLX
>>94
81ではないですが私も同じ作品(であろう)の美冬だとおもっていました。
ここに誘導されてきた人の一人ですから(^^;
勘違いではないと思いますよ。
これからもがんがって下さい。楽しみにしてます。
97みぃこ:04/08/12 02:41 ID:yysgJj7h
女性作者ってヒきますか?
文が・・・ですが、投稿してもよろしいでしょうか?
98名無しさん@ピンキー:04/08/12 02:49 ID:bNBaKPqw
>>97
期待
99みぃこ:04/08/12 03:42 ID:yysgJj7h
   1
「なによッ! 庵のバカっ!」
・・・まぁた始まった。いつもの朝の大喧嘩。
目の前でぎゃーぎゃー騒いでいるのは、俺・神崎 庵(かんざき・いおり)の幼馴染、花井 舞(はない・まい)。
小さい頃から、気が強い・・・というよりかはワガママ。喧嘩(とはいってもいつも舞ががなりたてているだけだが。)で折れるのは俺のほう。
「・・・大体庵はいつもそうよ! 女の子の気持ちも考えないで!」
今なぜ舞は怒っているのだろうか。・・・そうだ、寝ているのを起こしたのがいけなかったんだっけな。でも、俺が起こしていなかったらこいつ、遅刻してたぞ・・・?
 ワケあって舞と俺は一つ屋根の下。親の仕事の都合でね。もう家族みたいなモンだ。
もちろん、俺だってもう中2だし、オナニーだっていっちょまえに覚えてる。舞は性格のわりには顔だけはかわいいから、何回もあっちでお世話になったことがある。
妄想の中で、俺は舞のショートカットの髪をくしゃくしゃにし・・・白い肌に舌を這わせる。
・・・本人が知ったら怒り出すようなことも、妄想の中ではさせているし・・・。
 お、もうこんな時間だ。相変わらず舞は俺の前でぷんすかしている。
100みぃこ:04/08/12 04:00 ID:yysgJj7h
「おい舞、もう遅刻するぞ? いい加減・・・。・・・遅刻したら、ヒステリーがうるさいぞ?」
・・・ヒステリーというのは担任の女教師、大江のことである。太っていて、不衛生。そのくせ、むしゃくしゃしたことがあるとすぐヒステリー。ところかまわず撒き散らす。しかし、気に入った生徒にはとことん甘いという最低な教師。
「げッ、やばーっ。ヒステリー怒らすと根にもたれるわね。いそごいそご!」
・・・さっきまで怒ってたのは何処吹く風。ぎょっと顔色を変える舞。
   きーんこーんかーんこーん
「げ、チャイムだ。走るぞ、舞!」
「いっ、言われなくてもわかってるわよッ!」
舞の手をとる。しかし、とっさに
「そ、そんなことしなくてもあたしは走れるわよッ!」
・・・かわされた。まぁいいか。しかし、走り出した瞬間―――。
「ぁ痛ッ!」
いきなりお腹を押さえてうずくまる舞。
「だ、大丈夫か?」
「あ、あんたなんかに心配されてもねぇ・・・」
再び立ち上がろうとする舞。しかし、俺が思った以上にお腹は痛むらしい。
「どうした? 朝食の食いすぎか?」
「ばぁかッ!」
・・・そんなこんなで俺は結局、舞を背負って学校へ行くことにした。
101名無しさん@ピンキー:04/08/12 10:13 ID:YaaMbMeb
ゴールデンコンボ炸裂。
102みぃこ:04/08/12 10:51 ID:Myp8u0sI
   2
 「神崎くん。・・・神崎くん?」
 教室ではもう、ヒステリーが出席をとりはじめていた。
    がらがらがらっ
教室のみんなの視線が、舞を背負った俺に一斉に集まる。
「まぁ神崎くんっ! 遅刻よ、遅刻ッ・・・って、あなた、背中の花井さんは? どうしたの?」
当然といっちゃあ当然だろう。
 と、俺の背中から降りて花井がいった。
「先生、私・・・途中でちょっと体調崩しちゃって。庵くんに背負ってもらったんです」
「まぁ、そうだったの・・・。神崎くん、あなた偉いわ」
ヒステリーが感嘆の声を漏らす。どういう顔をしていいかわからず、つったっていると突然お尻に鈍い痛み。
 ・・・舞だ。舞がつねっている。その意思表示はもちろん。
「(あたしがフォローしておかげで庵のポイントあっぷあっぷだぁね。感謝しなさいよ)」
 ・・・どこまでこの性格はねじれているのだろうか。
103みぃこ:04/08/12 11:08 ID:Myp8u0sI
   3
 ・・・次の時限は体育だ。
あ、そういえばさっき痛がってたお腹はもう大丈夫なのかな・・・? 数学の担当・岩井先生の話をぼぅっとしながら聞いている俺。
   きーんこーんかーんこーん
「・・・で、次の時間までにP13〜P14 問3をやってくること。はい、委員長さん」
「きりーつ れーい・・・」
適当にあいさつを済ませ、体操着に着替える。友達と雑談しながらたらたらと体育館に入り、準備体操もたらたらと済ます。
「・・・今日の授業はバスケットボールです」
 ・・・今日はバスケか。ゴールやボールを準備し、やる気になっている矢先。
 突然、女子体育担当の河野先生が俺のほうに近寄ってきた。
「はぁ、はぁ・・・。神崎く、神崎くん・・・」
 ・・・体育教師だったらもっと体力ないのかね。
「今ね、花井さんが早退するから、荷物とか保健室に運んでくんないかな・・・?」
・・・さっきの腹痛のせいか? でも、なんで俺?
「え、なんで俺なんすか? アイツ、女子の友達だってたくさんいるのに」
「お、大江先生がね・・・『神崎くんに』、って言ってたのよ・・・」
・・・あのヒステリー。朝のことだけで俺のこと買いかぶりやがって。でも、他の目から見たって幼馴染の俺が妥当なんだろう。まぁいいか。
104名無しさん@ピンキー:04/08/12 11:23 ID:YaaMbMeb
いい。しかし、、、何かが足りない。何だ?
・・・そうか!
つまり、「ちょ、ちょっと何するのよっ!」「いいからちゃんとおぶされよ」
「背負ってもらってたんです」「おおーっ。」「ヒューヒュー、熱いねぇ。」「そんなんじゃないって!」
寝てるヒロインと必死に看病する主人公(逆でも可)、そして
「今までずっと居てくれたの?」「ああ。」「ありが・・・・いや、なんでもない」

これをはずしたら王道とは言えませんゼ、旦那ッ!!
105みぃこ:04/08/12 11:42 ID:Myp8u0sI
あ、アドバイスありがとうございますっ!!!
・・・やっぱり、私の文はミナサマから見るとやはり幼稚園児のおままごとみたいなものですね・・・。
>>104さんのアドバイスのもと、これからはもっと皆さんに満足していただける作品を書きたいなぁと思う次第です。
106みぃこ:04/08/12 12:16 ID:Myp8u0sI
足早に教室に戻り、舞の机から荷物をかばんにうつしてやる。
・・・かわいい、女の子らしい柄のナップザックがある。なんだろう、これ・・・。感触からして体操着だな。
ちょっと悪魔が囁いた。「こんな機会、もうないぜ・・・?」
確かに、そうだ。家にいたって、自分の部屋にもいれさせようとしないからな。洗濯だって自分でしちまうし・・・。
舞のものをちょっとでも触ってしまうと「何よ、さわらないでよ、バカ! セクハラよ、せくしゅあるはらすめんとよッ!」な〜んて罵倒されちまう。
そんなことも考えてか、俺は悪魔に、負けてしまった。急いで袋を開ける。
まずまっさきに出てきたのは、Tシャツだった。胸の部分の匂いを嗅ぐ。あ、甘い匂い・・・。
ここでオナニーしてしまいたかったが、理性が抑えた。・・・そしてさらに、持ち物検査。
 お次は紺のブルマがでてきた。ブルマ姿の舞はかわいい・・・ま、性格以外はいつもかわいいがな。
手でもみくちゃにしている間に、一部分だけ硬くなっているところがあった。なんだろう・・・?
 紺をさらに濃く彩るもの。・・・血だった。間違いない、これは鼻血でもなんでもなく、紛れもない経血だ。
 ちょっとカルチャーショックをうけて俺は、ブルマをナップザックに戻した。
すぐにまた、荷物の移し変え作業に戻る。と、今度は水色の星がプリントされた小さなポーチがあった。まさか、これは・・・。
 案の定。これは生理用ナプキンだ。「普通の日用」、と表示されている。動かした証拠がのこらないよう、すぐにはいっていたポケットに戻した。
 ・・・それから、勉強道具をいれるときもずっとずっと、舞の生理のことを考えていた。保健体育の教科書にも、生理のことは載っているけども・・・まさかホンモノを、舞でみることになるなんて。
 あ、なぁ〜る。朝お腹を痛がっていたのは・・・。
 ぼーっと、保健室への階段を上ってく・・・。
107みぃこ:04/08/12 23:58 ID:TOQSpZRA
   4
 保健室に入ると、三台並んでいるうち一番奥に舞が横たわっていた。養護の井上先生はいない。
ずかずかと舞に近づき、舞の通学かばんを突き出す。
「ん。これ」
「あ・・・」
一瞬、舞の顔が赤く染まるのを見た。だが、すぐに・・・。
「ちょ、中身見てないでしょうね! 何も盗んでないわよね!」
 ・・・いつもの舞だ。俺はくすっと笑った。
「な、なにがおかしいのよっ?」
いつものように、ぎゃーぎゃーやっている。
「あ、舞・・・」
そうだ、あくまでもこれは「お見舞い」みたいな形なんだよな。
「お腹、もう大丈夫か・・・?」
「も、もう大丈夫よッ!」
大きな声を出して、腹を抱えた。響くらしい。
「おい、大丈夫そうには見えないぞ・・・?」
「ほっといてッ! もう大丈夫よ、ホントに・・・」
・・・絶対、大丈夫そうには見えない。
「・・・お前なぁ。生理痛なら無理しないで薬飲んでこいよな」
 ・・・あ。言ってしまった。俺の悪い癖。目の前の舞はというと・・・。
「・・・・・・!」
顔を真っ赤にしてわなわなと震えている。やばっ、噴火する・・・。そう思ったが。
「な・・・なんでそんなこと・・・知ってんのよッ」
声に力がこもってない。響くからだろうか。いや、理由はそれだけではなさそうだ。顔が真っ赤だから。
「え・・・いや、まぁ」
いってしまってから後悔する。口実つくってないぢゃん!
「・・・」
いつもは気が強いはずの舞だが、すっかり黙ってしまっている。よほど恥ずかしいのか?
「あ、えと・・・そ、そのことは・・・内緒にしておい・・・」
   がらがらがら
 いきなり保健室のドアが開いた。
108名無しさん@ピンキー:04/08/13 10:12 ID:Z58vhBSc
うおーいい感じの流れですな。
続きをマターリ楽しみにしてます。
109名無しさん@ピンキー:04/08/13 15:40 ID:xO2Xoodx
>>105
いや、ただ単に104は俺の好みを話しただけであって(ry
本気にされたのなら、すまんと謝っておこう。

正直、文章とシチュはかなりヒットです。
これからも頑張ってください。

>あ、なぁ〜る。
エロいな。
110みぃこ:04/08/13 18:30 ID:5Kq7Mke4
 いきなり保健室のドアが開いた。井上先生だ。・・・なんちゅう美人さん。
「あら、お二人そろってどうしたの?」
ねめまわすような目で俺達を見る。口元には怪しい笑み。
「そっ、そんなんじゃないんです! あ、コイツ早退するんでしょ?」
普段なら「コイツ」と呼ぶと「あんたにそう呼ばれる筋合いはないわ!」といい、それから延々と責め立てられるはずなのだが、やっぱり恥ずかしいのだろうか。
今日は何もいってこない。
「あ、そうそう。朝は神崎くんが花井さんのことおぶってくれたんでしょ?」
え、なんでそんなこと知ってるんだ? 舞のほうを見ると、視線をそらされた。
だが、いつものツンケンとした視線のそらし方ではなく、うつむいてもじもじしているような、そんなそらし方。
「疲れるけど、神崎くんなら大丈夫よね?」
「あ、はい・・・」
俺の返事を受け取ると、井上先生は舞のほうを向き
「じゃ、花井さん。神崎くんにまかせてもいいわね?」
・・・やはり、素直に「はい」とはいえないのが舞である。そうとだけ舞に告げると、井上先生は何かを期待するように保健室を後にした。
「・・・舞」
「ふぇ! ・・・な、なによぅ!」
一瞬拍子抜けした声を出した舞だが、またすぐに気が強くなる。
「舞、立てるか・・・?」
「何よ、ほっ、ホントに・・・あたしを負ぶって帰って・・・くれる、わけ?」
舞の言葉は語尾に近づくほど小さくなっていった。
「ほらよ、立て」
そろそろとベッドから立ち上がる舞。そして、ゆっくりと遠慮がちに俺の背中に乗ってくる。
「・・・ありがと」
・・・小さい声で、そう、舞がつぶやいたような気がした。
111みぃこ:04/08/13 18:46 ID:5Kq7Mke4
   5
 舞を負ぶさったまま、玄関を過ぎたあたりで若干名こっちをじろじろ見ている。
 ふいに悪友の田中が「おーい庵! お姫様連れての逃走劇か?」とはやす声が聞こえた。
「あいつの言うこと気にすんなよ、舞」
「え? あ、うん・・・って、言われなくてもあんたとなんか!」
言い終わって舞は「いっ・・・」と俺の耳元でひたすら生理痛にたえる。
俺はできるだけ背中の舞に振動を与えないように歩く。しかし・・・授業道具+体操着を背負っているのにもかかわらず、軽い。いつも俺と同じもの食ってるよなぁ・・・? と思わせるような軽さ。
「んと、その・・・庵、疲れてない?」
は? 今なんとおっしゃいましたお嬢さん? 俺のこと気遣ってくれたよな・・・?
「? お前、俺の心配してんのか・・・?」
「なっ・・・! ぁ、あのそーいうことじゃなくって、こーいうときに何も気遣いできないのはマナー違反だと思っただけで、その・・・」
「ははは、心配すんな。じゅーぶん重いよ」
「なっ!」
「うそ」
「・・・もう〜・・・」
素直なときの舞はかわいい。いっつもこうだったらかわいいのに・・・あ、そういうといくら今の舞でもさすがに怒るな。
 それから俺は、急ぎ足かつ慎重に家を目指した。
112みぃこ:04/08/13 18:52 ID:5Kq7Mke4
私のヘタレな文章にお付き合い&ご意見いただき、ありがとうございます。感謝しています。
実はこの先、分岐点があり一方は「エロあり」もう一方は「エロなし」となっています。
そーこーで!
みなさんの意見を集め、ある程度集まった段階でどっちをカキコするか決めたいと思います。
できれば投票の際に感想いただけるとうれしいのですが・・・;

>>108さん
ありがとうございます。期待にそえられるよう頑張りますので応援よろしくお願いします。

>>109さん
いえいえ! とても参考になったんで謝るなんて!
実際、アドバイスされた部分も組み込んで頑張ろうと思いますw

最初、「『女性作家』ってやっぱりヒかれるよなぁ・・・?」と戸惑っていたのですが、実際応援していただいてうれしい限りです。
これからもよろしくお願いしますね。
113名無しさん@ピンキー:04/08/13 22:31 ID:5CJN3Jla
女性だろうが男性だろうが萌えれるのを書けるのは素晴らしいことでつ。GJ!

ただ、わざわざ宣言していただかなくてもよかった希ガス・・・
114みぃこ:04/08/13 23:31 ID:5Kq7Mke4
>>113さん
あちゃ、それもそうですね;
でも一度、「私は女だ」っていう内容をカキコんだことがあったので・・・^^;
それで、「女のくせに萌え小説書くのは変」だって思われたくなかったんで・・・。

あ、補足です。
「エロなし」は甘々でEnd
「エロあり」はえちぃ(しかし生理のため舞が嫌がって、挿入はなし)Endです!
希望あれば挿入あり書きますが・・・?
115名無しさん@ピンキー:04/08/14 00:30 ID:Fr1PHH6X
>>114
マルチエンディングで全部!
116名無しさん@ピンキー:04/08/14 02:13 ID:0QKp9FD3
最高ですよ職人様!
私もマルチエンディング指示。
そんで、いつか続編で本番もきぼんぬ!
117名無しさん@ピンキー:04/08/14 13:30 ID:YokHnSsK
ジャンプでFF10当てて以来、俺のツキが完全に無くなった気がする
118名無しさん@ピンキー:04/08/14 13:31 ID:YokHnSsK
↑完全な誤爆スマソorz
 本当にゴメン!
119みぃこ:04/08/14 23:46 ID:2j/nBS/S
え〜と、「マルチエンディング希望」という方がいるみたいですがw
甘々+挿入ナシ+(シチュは後日で)挿入アリ
という形で一本にしてもいいですかね!?
っといいますか、「甘々」とはいうとりますけども甘くないです、微甘かもしれません。

>>117-118さん
誤爆って初めてみました・・・(ぇ/ほんっとうに余談)
120名無しさん@ピンキー:04/08/15 00:39 ID:BA9rZh94
おぉ、また面白いくらい2chらしくない書き手さんだ。がんばれ
121名無しさん@ピンキー:04/08/15 03:28 ID:/BFPtqs6
厳密にはここ2chじゃないけどね(w
ただ、ここまで2chらしくないとみぃこ氏が年齢の問題クリアしてるのか逆に心配になる。

個人サイト的なノリでのテンション高い書き込みは、良くも悪くも目立つ。
ここはそうでもないけど、スレによっては痛いやつ認定されて叩き出される諸刃の剣。
他のスレもROMってがんがれ。
122名無しさん@ピンキー:04/08/15 04:18 ID:e5F+qjHN
俺は既にちょっと痛いとか思っていたりするが……。
話は好きなんでまあ頑張ってください。
123みぃこ:04/08/15 12:23 ID:erm3Afoc
   6
 ヒステリーに「花井さんの面倒みる人がいないから、あなたも特別に休ませてあげる」と許可をもらったので、今日はもう授業を受けなくて済む。
家の鍵を背中の舞にとってもらい、ドアをあけた上で中に入る。
まず舞を寝かさなきゃな・・・。でも、自分の部屋まで歩いていけるのか?
「舞、歩いていけるか?」
「・・・ぐ〜・・・」
 ん? もしかして、この返答は・・・ね、寝てらっしゃる! 静かな寝息をたてて、俺の背中で舞が眠っていた。
・・・おきたとき自分の部屋で寝ていないと怒り出すよなぁ・・・。
 そう勝手に口実をつけて、舞の部屋にはいっていった。
 女の子らしい、かわいいぬいぐるみがいっぱいある。それに、舞とすれちがったときにかすかに香る甘い匂いもする。
 二度と入れないという気持ちから、なかなか舞をおろせなかった。しかし
「あ、庵・・・って、あたしの部屋で何を・・・」
 舞が目覚めた。やっぱり、慌てふためいている。
よっと。俺は舞をベッド前でおろした。
「もう、大丈夫だよな?」
舞はちょっとお腹をおさえながらベッドの中にもぐりこんだ。
 長居していると舞にどやされる・・・そう判断した俺は、すぐさま部屋を出ようとした。
「あ! ちょっ待っ、庵・・・」
予想外。舞に引き止められた。すぐさま舞のそばに近寄る。
「ん? 足りないものはあるか?」
「いや・・・そうじゃなくってぇ・・・もうっ、あたしと長年付き合ってるあんたなら、こんなときあたしがどうしてほしいか・・・その・・・わかるでしょ?」
 頬を紅潮させてまくしたてた舞は、再びお腹を抱える。
「そうか。わかったから、もう心配すんな」
「え?」
 舞が何を望むべきなのは、今の俺にはなぜかわかった。
124みぃこ:04/08/15 12:24 ID:erm3Afoc
舞は、俺にずっとついていてほしいんだ・・・。
 舞の手をとり、ぎゅっと握る。あったかい・・・。
「そ、そうよ、あたしは・・・そうしてほしかった・・・の?」
 素直に「そうしてほしかった」とはいえなかったのか、語尾を英語の疑問文調にあげてはぐらかす。
「なんか、飲み物とってきてやるよ」
 そういって台所へ降り、適当に二人分麦茶をついでまた戻った。
「ほれ」
「・・・とう」
よく聞こえなかったが、多分「ありがとう」って言ったのだろう。
「まだ、お腹痛むのか?」
「・・・そっ、そうよ! 女の子はいろいろとタイヘンなのよ? 男子はそんな苦労しなくていいわよね!」
「じゃ、薬もってくる」
「え?」
予想外だったのか。
125みぃこ:04/08/15 12:27 ID:erm3Afoc
俺はまた台所の薬棚へもどり、箱に書いてある注意書きをよくよみながら慎重に薬を選んだ。
ここでもし、効かないようであれば・・・完治したときの舞の逆襲が怖い。それにくわえ、コップに水をくんで持っていった。
 薬を飲み終わった舞は、副作用で眠気に襲われたらしい。
「あぁ、眠い・・・」
「どうだ? 効いてきたか?」
「そんな・・・早くに効くわけないじゃん・・・」
 まぁ当たり前か。
「じゃ、すぐ直るおまじない、かけてやろうか?」
「ほ、ホント・・・?」
嘘だ。でも、今の舞を安心させるには効き目ばっちりといえよう。
「じゃ、目ぇつぶれ・・・」
「え? あ、うん・・・」
舞に目をつぶらせると、ゆっくり俺は舞の顔に近づいてった。
「ん・・・」
唇同士が触れた。キスって甘いんだな。ディープなキスがしたかったけど、まだお互い初めてだし・・・。
「ふぁ・・・」
長い時間が経ったあと、どちらともなく自然に離れた。
「・・・これで、直るはず」
確信を持って俺はそういった。(ここまでが甘々Endの予定でした^^;)
126名無しさん@ピンキー:04/08/15 12:40 ID:j0aS79r+
え〜っと・・・小説本文とあとがきは改行等が合った方が見やすいかと。。
いくら括弧を付けても本文の真後ろについてるのはちょっと・・・。
たとえば>>125だったらこんなかんじにするのはどうでしょう?


  125 名前:みぃこ[sage] 投稿日:04/08/15 12:27 ID:erm3Afoc
  俺はまた台所の薬棚へもどり、箱に書いてある注意書きをよくよみながら慎重に薬を選んだ。
         :
         :
  長い時間が経ったあと、どちらともなく自然に離れた。
  「・・・これで、直るはず」
  確信を持って俺はそういった。
  
  --------------------------------------------------
  (ここまでが甘々Endの予定でした^^;)

127名無しさん@ピンキー:04/08/15 13:14 ID:FRS/t0yP
何というかなぁ・・・痛いというか、少女漫画っぽいと言うか・・・・
悪いけどあんた、まともな恋愛ごと等体験してない気がするなあ。
結局の所、夢見てるんだよ。まだ。
人物の行動が違和感があるというか・・・。

建前はこうで、本音はと言うと・・・
んなおいしい体験が中学の間にできたら俺は(以下数十行省略)・・・!!!

エチーシーン見るの何となく不安になってきたyp。
ブツン!ズッニューとか出てきたらどうしようw
128みぃこ:04/08/15 14:40 ID:erm3Afoc
批評ありがとうございます・・・。
あぁーやっぱり私の文はまだ未熟なようで・・・。
この調子でいくとやはり萌えませんね、反省。
どうしよう・・・なんか続きカキコするのが怖くなってきた^^;
129名無しさん@ピンキー:04/08/15 14:42 ID:3/638nj2
ちょっと前の少女漫画の典型的なパターンだな。
それが悪いとは言わんけど
130名無しさん@ピンキー:04/08/15 15:15 ID:FRS/t0yP
いや、俺が言ってるのは文じゃなくてストーリーね。
もうちょっといろんな本読んで勉強してみなよ。
絶対良くなるから。
131名無しさん@ピンキー:04/08/15 16:24 ID:cVhIOQ2y
典型的なストーリー展開の小説を十作品くらい書くと、少しずつ自分なりの展開というのが見えてくるものですよ。
今の少女漫画は青年誌よりもエr(ry
未熟じゃない文字書きなんてこの世に存在しないくらいの勢いで、ガンガン書いてゆきましょう
一生懸命書いてるのは読み手はちゃんと分かってますから。
それと、投下していてそれを人に読んでもらっているんですから、自分の作品を卑下するようなレスはやめたほうが・・・・
なんてマジレスすいませんすいません。
書き手の一人として新しい書き手さんにガンガッテ欲しいです。
132名無しさん@ピンキー:04/08/15 18:33 ID:C6qDjUCD
世話焼き勝ち気系の幼馴染みが毎朝布団をはいでたたき起こしてくれる。
いつもツンケンしてる委員長が怪我したので嫌々負ぶってやったら背中で小さく「ありがとう」と呟いた。

そんなベッタベタの展開に萌えるスレですよ、ここは!
133名無しさん@ピンキー:04/08/15 21:05 ID:7Q+a5lRt
>128
作品の出来以前に、みぃこさんの場合は作品以外の部分での語りが多すぎたり
書き込みが2chの雰囲気から浮きまくっていたり
他人に読んでもらっているのに、自分の作品を自分で卑下したりと、
2chではウザがられる行動を繰り返している事も厳しめの批評につながっているのではと思います。

自信がなくてついアレコレと語りたくなる気持ちは分らなくもないけど、
作品の中身で勝負するつもりで、完結するまでは作品のみの書き込みにしてみてはどうでしょうか。
「初心者は半年ROMれ」とも言われてる位なので、
今のままで他所の板やスレに乗り込んで行ったらボコボコに叩かれる可能性もあります。
134しん。:04/08/16 21:29 ID:YhtA3BCZ
rose bud 

 この任務ももうすぐ終わる。

 私は殺し屋をしている。そして今は仕事の最中というわけだ。
ここは地中海に面したホテル。仕事でなければさぞやくつろげそうな
場所だが、今はそんな気分にはなれない。
そして、もし今この場所に一般客が来たとしても同じような感想を漏らすだろう。 

 …口を開けるほど肝が据わっているならば。

 ホテルの廊下は血にまみれていた。
そこには点々と死体、死体、死体。
 私の「仕事」の結果だ。
彼らがどんな人間で、どんな人生を歩んできたか。
善人か、悪人か。
貧者か、金持ちか。
 全てどうでもいいことだ。
 私は与えられた仕事をこなすだけだ。
いつもそうだったし、今日もそうだろう。
 今日の任務はつつがなくほぼ終わった。
あとはホテルの部屋を一室一室開けて、ぶるぶると縮こまっている
哀れな小鹿たちを一匹づつ「喰う」だけだ。
 そして最後の扉に手をかけた。

…この時、私は知らなかったのだ。
どちらが「小鹿」で、
どちらが「喰う」立場なのかを。
135しん。:04/08/16 21:31 ID:YhtA3BCZ
 誰もいない。

 一通り部屋を確認する。中は二部屋の作り。
大きさは割と広めに取られている。

 入ってまず目に付くのは部屋の一面全体を使った窓ガラス。
バルコニーに出ると、地中海が一望できるようになっている。

 次に目を引くのは部屋の中央にある大きめのテーブル。
家族連れでも悠々全員が一度に朝食を採れる様に出来ている。
テーブルの上にはバラの花入りの花瓶、各種調味料。
136しん。:04/08/16 21:31 ID:YhtA3BCZ
隣の部屋は寝室になっている。キングサイズのベッド。
きちんと畳まれている。確認。

 あとはトイレ付きのバスも確認した。 …誰もいない。
任務終了。部屋を出ようとして

 背筋が凍りついた。

 
 男がドアを背にして立っている。

137しん。:04/08/16 21:32 ID:YhtA3BCZ
 真っ黒なスーツを着たその男は、煙草の煙をくゆらせながら言った。

 「お仕事ご苦労様。 …ただ、「刈り残し」は良くないな」

 私は男の言葉が終わらぬまま無言で銃を抜き、撃つ。
殺しに会話など不要だ。

 しかし、当たらない。
男はひらりとターンして身をかわす。

 銃を、撃つ、撃つ。

 男はかがみ、ステップを踏み、ターンして、こちらに近づく。
まるで舞を見ているよう。そんなバカな!
私の狙いを外すなんて、そんな男が!
138しん。:04/08/16 21:33 ID:YhtA3BCZ
 「君の名前は?」

 言いながら、男は私のバックを取る。
すかさず銃を男に向ける。いや、向けられない。
男は私の銃を持っている右腕を捻り上げる。

 「うっ… うぐ!」

 私の顔が苦痛に歪む。男はギリギリと力を込めて捻りあげ続ける。
ものすごい力だ。一見華奢そうに見えるこの男にこれほどの力が
あるとは信じられない。
 私の右腕の骨が軋みを上げる。とうとう私は相棒とも言える
銃を床に落してしまった。ゴトリと鈍い音が響く。

 「名前を教えて欲しいな」

139しん。:04/08/16 21:34 ID:YhtA3BCZ
男が再質問。穏やかだが促すような口調だ。

 「ろ… Rose Bud」

 「Rose Bud? バラのつぼみ? 映画ファンかい?」

 「知ってるとは意外ね」

 「[市民ケーン]位なら誰でも知ってるさ。
…当然、本名じゃないんだろ?」

 「言えるわけ無いでしょ、本名なんて」

 会話を続けながら、男の隙を伺っている。
銃は、今取り落としたので最後。あとは弾切れのおもちゃが
数丁手元にあるだけ。となれば、左腕のスーツに仕込んでいる
アーミーナイフに全てを賭けるか。
140しん。:04/08/16 21:35 ID:YhtA3BCZ
瞬間、左肩にピリッとした感覚が。

 「…っ!?」

 続いて右肩。

 「さて、失礼をしたね」

 男は、私の右腕の拘束を外してしまう。
…バカな?

 しかし、何故かと考えている場合ではない。
瞬間、左腕のナイフを取り出し、背後の男に

 …!?
141しん。:04/08/16 21:35 ID:YhtA3BCZ
 ナイフを落としてしまう。
何故!?

 左腕に力が全く入らない。右腕もだ。
まるで、他人の腕のように自分の思うように動いてくれない。
…さっきの痛み、何か細工をしたな!

 「おやおや。物騒なものを隠していたね」

 男が私のナイフを拾い上げ、懐に収める。
抵抗の手段を奪われた。

 しかし、この私をこれほどまでに圧倒する男とは…
こいつ、手強い…!
142しん。:04/08/16 21:36 ID:YhtA3BCZ
 私は、渋々その事を認めざるを得なかった。
悔しそうな目で男を睨み付ける。

 「私を… どうするつもり?」

 「こうするのさ」

 「ッ!?」

 言うが早いか、背後の男は私の顎を持ち上げ、
顔を近づける。

 唇と唇が、重なり合った。


143名無しさん@ピンキー:04/08/17 01:42 ID:heNv/6N6
続きまだぁ?
チンチン
144しん。:04/08/17 12:45 ID:I7njTMZj
rose bud(2)

私は男が嫌いだ。

 私は、孤児としてとある組織に拾われ、そこでスプーンの使い方を覚えるよりも早く人間の急所を的確に突いて殺す訓練を受けた。
そのような場所では女性優遇などあろうはずも無く、
共に孤児として連れて来られた男たちと
同じ場所で食事をし、同じ場所で入浴し、同じ場所で寝た。
そこで私は嫌という程男という生物の醜悪さを知った。
奴らと同じ空気を吸うだけで、体が芯から腐っていく気がする。
私と同じく孤児だった少女はそこの男どもの慰み者となった。
彼女はいい子だった。私の親友だった。
それなのに。 …彼女が何をしたというのだ?
ただ少女だっただけだ。なのに… 嫌がる彼女を
男どもは寄ってたかってその体を犯した。嬲った。蹂躙した。
その時私は思った。
男に負けたくない。この腕で男を圧倒してやる。
その一心で私は生きてきた。
そして… 気づいた時は、私は組織では並ぶものの無い
殺し屋として知られていた。最強の殺し屋。血に塗れた戦士。
私の願いは、叶えられた。

 …そして私は、ここにいる。
145しん。:04/08/17 12:46 ID:I7njTMZj
「キスされてる!? 私が?」

 狼狽している私の事などどこ吹く風、男の舌が私の
口内に侵入してきた。途端、強烈なヤニ臭が私の
口の中を満たす。

 こんなのはいやだ!

 顔をしかめ、キスから離れようと私は身体を男から遠ざけようとする。
当然男が離してくれるはずも無く、後ろから身体を抱きすくめ、
私が逃げられない体勢を作り出してしまう。

 がっちりと後ろから両手を前に回され、
濃厚なキスは続く。

 「ン… ぅん… はっ… んちゅっ…」

 男の舌は私の口内を余す所無く蹂躙する。
歯茎、舌の裏側。頬の裏側、
そして、舌と舌が絡まりあった。

 「んっ! ふぅんっ…! ちょ… やめっ…!
……んんっ!!」

 キスの状態からなんとか顔を離し、抗議しようとすると
体を正面に回され、再び唇を塞がれる。

 立ったまま正面を向き合い、唇と唇がぴったり
重ね合わされ、舌が絡まり合う濃厚なキスが再開される。

146しん。:04/08/17 12:47 ID:I7njTMZj
プチュ… ピチャ… クチュ…

 時折、唇と唇の間から唾液の音が零れ落ちる。
嫌でもその音が耳に入ってしまい、私は
羞恥に頬を染める。
 
 「んんっ、プチャ… くちゅっ…」

 男は、私の背をドアに押し付け、
逃げられないようにサンドイッチ状態にし、口腔愛撫を続ける。
 
 男の舌技は、巧妙だった。
私は、男になんとか対抗しようとするが、知らぬ間に
逆に男の行為に協力するような形を取らされてしまう。

 舌と舌が絡まり合い、私の口内で淫らなダンスを踊る。

 「!!」

 男の唾液が口内に流し込まれる。

 「んっ…! んっふぅーっ!!」

 私はいやいやをするように顔を左右に振る。
男が逃がしてくれるはずも無く、どんどんと口内が
男の唾液で満たされていく。

 
147しん。:04/08/17 12:48 ID:I7njTMZj
「ンッ… ンッ… ンッ…」

 もうどうしようもない。諦めたように私の喉がコクコクと鳴り、
男の唾液を飲み下し始める。
 
 く… 屈辱だ…! 

 男の唾液が口内から喉を通り、食道、そして
胃の中に収められていくのをイヤでも感じてしまう。
吐き気が込み上げる。戻したい。
 しかし、しばらくその状態を続けていると、私の身体に
変化が生じた。

 身体が熱い。
まるで強い酒を飲み下しているような、身体の奥底が
カアッと燃えるような感覚。膝が笑う。
身体の均衡が崩れ始めている。
男の唾液は徐々に私の理性を蝕み始めていた。
 
148しん。:04/08/17 12:49 ID:I7njTMZj
 男がさらに私をドアに追い詰め、
私の両足の間に男の膝が差し入れられた。
脚を閉じたくても閉じられない。内股の情けない格好を晒し、
プルプルと太股が羞恥の痙攣を始める。
男の胸板に私の乳房が押し潰される。
両方の胸から鈍い痺れが体中に広がる。

 ま… まずい…

 私はなんとか逃れようと、男との間に両手をさし込み、
体を離そうとするが、その手を男の手が
やんわりと押し退け、逆に、指と指が絡められた。

 …これでもう、抵抗できない…
信じられない、私が男なんかに体を自由にされるなんて…

 男とドアに挟まれ、口の回りは唾液だらけ、
乳房は押し潰され、両手は抑え込まれて…

149しん。:04/08/17 12:50 ID:I7njTMZj
男の陵辱は続く。

 プチュッ… チャクッ… プチョ… プチュルルル…

 「ンフッ… んはぅ、 ンン… ッ… くっ、くぅん…」

 口腔愛撫の音は激しさを増し、私は翻弄されていた。
アサシンとして育てられた私は、「教育の一環」として
性的行為も教え込まされている。
耐性だって、人一倍あると思っていた。

 だが、この男の愛撫は、並ではない。
その技巧の前に、
ただただ私は組み伏せられ、
蹂躙され、
屈服を強いられる。

 こ… こんなことって…!

 そうこうしている内に、私の体に変化が訪れる。

150しん。:04/08/17 12:51 ID:I7njTMZj
 頭の中が、白で覆い尽くされる。
それは、最初はぼんやりと、漠然とした
感覚のみであったのが、
次第に、
徐々に、
段々と、
 頭の中が、白になっていく。論理的な思考が結べなくなっていく。
身体がボウっとして、火照る。

 「んっ… ふぅあっ…」

 まさか… 感じている!?
キスだけで… 私が… 男なんかに!!

 私が混乱している間にも、身体の疼きは大きさを増していく。

 胸が擦られ、背筋に甘い痺れが走る。

 ジュワッ…
股間が恥ずかしい液で濡れるのが分かる。

151しん。:04/08/17 12:51 ID:I7njTMZj
唇の間からは、飲み下し切れなかった唾液が零れ落ち、
顎を伝って床へと淫らな銀色のアーチを幾筋も描く。
唇と唇の間から時折覗く赤く濡れ光る互いの舌は、
人間のものではなく、なにか別の淫靡な軟体生物のよう。
互いの軟体生物は唾液にまみれ、交尾をするように淫らに絡み合う。
しかし、片方の生物は、もう片方の暴虐にただただ耐え、
逃げ惑い、その度に捕えられ、蹂躙を再開され、
犯し尽くされているように見える。
  
 まるでむわっと匂い立つような淫らな姿。
そして、その当事者は他でもない自分なのだ。

 く… 悔しい。
 殺してやりたい。
 自分にこのような痴態を演じさせる男を。
 せめて… せめて奴の舌を噛み切って…!
 
 しかし、その口から発せられるのは

 「んくっ… ンッふぅーん…」

 という、鼻に掛かった淫らな吐息だけ。
この声を自分が出していると言うことすら信じ難い。

 私は… そんな女じゃないのに…
152しん。:04/08/17 12:52 ID:I7njTMZj
 ペチュ… プチュく… チュパあッ…
クチュルルルル… くパッ…

 男の行為が激しさを増す。

 「くっ… くふぅ… ンひっ…!」

 それに比例して、私の喘ぎも強くなる。
私の痺れは無視できないレベルに達し、股間から溢れ出る恥ずかしい液は既にショーツを激しく濡らしているだろう。
身体は制御不能の甘い悲鳴を上げている。
閉じることを許されない両足はカクカクと笑う。
背中は私の意思を裏切って弓なりに反り上がり、
男を誘うように胸を突き出す。
なんて淫らな姿勢…!
私は赤面するのを抑えられなかった。

 「クッ… ンクふぅ…!!」

 もはや一刻の猶予も無い、早くこの淫らな戒めを
解かないと…! 
 
 私は激しく体を前後に揺らし、顔を振りたて、
縛りを解こうとした。セミロングの髪がボサボサに乱れてしまうが
構っている暇は無い。

 しかし、私の必死の抵抗を嘲笑うかのように、
男の両手が私の手から離れ、私の両頬に添えられた。

153しん。:04/08/17 12:53 ID:I7njTMZj
 「んんッ…!」

 だっ… ダメ!!

 喘ぐ私。そんな私を見て満足そうに男は微笑むと、
止めを刺そうと、震える私の舌に自分の舌を絡ませた。
そして、

 ジュルルルルルルッ!!

 激しく私の舌を吸い立てたのだ。

 「ンッ!! くひぃ…! くっ…ふぅぅぅぅぅーん!!」

 ぴゅっ…! ぷしっ!
私の体が,弾けた。
 弓なりに反り上がった身体はこれ以上ムリだという
状態で静止し、二の腕やふくらはぎがピクピクと甘い痙攣を起こす。
恥唇からは淫らな汁の噴出がショーツを濡らす。

 イ… った…?

 信じられない。軽くイった。キスだけで… 
絶頂に達してしまったのだ。
154しん。:04/08/17 12:54 ID:I7njTMZj
 ぷちゅっ。

 男が長い間拘束していた唇を離す。
どれくらいそうしていたのだろう…?
10分? 20分? 分からない…
時間の感覚がぼやけるなんて感覚は、
私にとっては初めての体験だ。

 男が密着姿勢から身体を離す。
私の膝がガクガクと笑い出し、へたり込みそうになるのを
背中のドアに寄りかかる事で何とか堪える。

 …プロの殺し屋の私が、こんな…

 呆然とする。キスだけで立てなくなるほど感じたのだ。
股間からは続きを欲する甘い疼き。
男に達したことを悟られていないだろうか…
唇の端からこぼれる唾液を拭い取ることも出来ず,
しばし甘美なキスの余韻に浸る。

 
155しん。:04/08/17 12:55 ID:I7njTMZj
「男は,初めて?」

 男は、悪びれず聞いてきた。
その顔には勝利者特有の余裕の笑み。

 「くっ…!!」

 私は,キスに潤んだ瞳で男を睨み返すことしか
出来なかった。

 そして、男は私に向けて宣言する。
…これからの夜を予感させる宣言を。

 「気に入ったからね。頂くことにするよ」
156名無しさん@ピンキー:04/08/18 01:32 ID:Hde+fzP8
GJ!!
キスだけでこれだけ濃厚だと続きへの期待が高まりますな。
157名無しさん@ピンキー:04/08/20 17:06 ID:bLsqV6y8

   ____
 /:::::::::::::::::::\
 |:::::l~~~~~~~~~)
 |:::::| ■■ ■
 |:::/ <・) <・)
 レ(6:. .:/(´ヽ >
  \::::::((━━)  <>>156おい、お前のレスで盛り下がっただろが!
    \::::::::::::ノ   


158しん。:04/08/20 18:28 ID:7C7XEn++
>157

 そんなことないズラよー。
159しん。:04/08/22 23:51 ID:aPcoPqqD
rose bud(3)

静かな夜。
部屋の外からは地中海の潮騒の音が聞こえるのみ。

 しかし,部屋の中はそのような静寂には似つかわしくない
空気が漂っていた。

 殺し屋の私は、甘く痺れた身体に鞭打って
再び男と対峙していた。

 「ほら… こっちに来なよ」

 男が私の腕を握り、引っ張る。
私の身体は、先ほどの愛撫の余韻が残っており、
おかしいほどに自由が効かない。  
 
 あっけなく男の側に引き寄せられてしまう。
勢い余って,男の胸板に顔を埋める形になってしまう。

 途端に、私の鼻腔にむせ返るような男の匂い。
160しん。:04/08/22 23:52 ID:aPcoPqqD
気持ち悪い…!!

 醜悪な,男の匂い。
男,私の敵!!

 私は思い切り男を突き飛ばし,後ずさった。壁を背にして
両手で胸を隠すようにガードする。
トップレベルの殺し屋としては余りにも初々しい少女のような仕草だが、
混乱している自分では気づかない。

 男が、私のほうに近づいてくる。

 「男は,初めてか?」
 
 先ほどの質問を再び聞いてくる。
私は、追い詰められた獣のような目で睨み付ける。

 男は全く頓着することなく再び私に口付けた。

161しん。:04/08/22 23:52 ID:aPcoPqqD
「んんっ! ふぅ…!」

 だめだ! だめだ! 
 再び私の身体の内側でくすぶっていた官能の炎が
燃え出し始める。
 早く逃げ出さないと!
頭の中で警鐘が鳴り響いているが、身体は容易にそれを裏切り、
ただ両手を弱々しく男の胸板に添えるのみ。
 
 男が私の口内を思うがまま蹂躙し尽くし,唇が離れた。

 「ンッ… く…!」

 両手で身体を掻き抱く。
男が身体から離れたことが,堪らなく寂しい。
身体が,熱い。
舌が震える。
口内が、もっと、もっとと騒いでいる。

162しん。:04/08/22 23:53 ID:aPcoPqqD
「よっと」

 男が私の肩を抱き,歩かせる。
私は、抵抗できない。
身体から抵抗する力を根こそぎ奪われている。

 「ほい」
 
 「うっ!!」

 部屋の中央にある大きなテーブルに乗せられる。
仰向けに倒れ付した私を見下ろす男。
男の背後に見える天井の室内灯の白い光が眩しい。

 「やっぱり、初めてらしいな」

 「違うわよ!!」

 私は叫ぶ。答えなくてもいい事なのに…

163しん。:04/08/22 23:53 ID:aPcoPqqD
そう、私は男は初めてではない。
男には何度か抱かれたことがある。しかし、その度に
男の醜悪さと、愚かさと、いかに女を道具としてしか
扱っていないかを確認するだけだった。
ゆえに、男との性行為で感じることも無かった。

 自然と私の相手は、女が中心になっていった。
同性と寝ると、気が休まる。安心できた。

 同性との性行為は、主に私がタチ、
いわば「責め」だった。私の技巧に同性が悶え泣き、
本気の証を迸らせながら絶頂に達し,昇天するのを
見るのが何より楽しかった。

 だから、私は処女ではない。性経験は
人並み以上に積んでいるつもりだ。

 …しかし、この男は…


164しん。:04/08/22 23:54 ID:aPcoPqqD
「いやーっ!!」
 
 男の手が私のスーツのジッパーを下ろし始める。
服を脱がすつもりなのだ。

 「おとなしくしなよ。初めてじゃないんだろ?」

 言いながら、ジッパーは腰のあたりまで下ろされてしまった。

 「いやっ!! やめ…… んっんゥーっ!」

 暴れる私の動きをキスで封じ、男は作業を続ける。
男の指がスーツの肩に掛かる。
ゆっくりとスーツが下ろされていく。
しかし,唇を塞がれている私は弱い抵抗しか出来ない。
肩をすくめ、スーツが脱がされるのを何とか抑えようとする。
…男の手の前に、全ては空しい抵抗に過ぎない。

 ああっ…!

 私の素肌の肩が外気に晒される。
男の手が止まる。

 「ほう」
165しん。:04/08/22 23:55 ID:aPcoPqqD
感心したように男が呟く。
男の目は私の左肩に注がれている。
私の左肩には,刺青。

 バラのつぼみの刺青があるのだ。

 「Rose Budとは良く言ったもんだ」

 私は唇を噛み、ワナワナと震える。

 …こんな奴に,見られてしまった…!
私の刺青を…
私の印を…
私の、純潔のつぼみを!

 「見ないで! 触らないで! 殺してやるっ!!」

 「何怒ってんだよ… 褒めてんだよ。綺麗だって」

 男が私の刺青に口付ける。

 「あっ…」

 身体がピクンと敏感に反応する。
憎い男の愛撫でも、快感に変換してしまうらしい。

166しん。:04/08/22 23:55 ID:aPcoPqqD
チュパ、チュピ… プチュッ…

 男は私の刺青に口付けを繰り返す。
まるで、そうする事でバラのつぼみを咲かせることが
出来るかのように…
 
 「いっ… いやあっ! いやっ…!  …ぃや」

 私の抵抗は快楽に弱められ,
まるでその愛撫を悦んでいるかのよう。

 男は刺青を気に入ったらしく,口付けから
本格的な舌での愛撫に切り替える。

 私の刺青は、男の舌に
舐められ,
吸われ、
挫かれ、
押され,
震わされる。

 男の執拗な愛撫を受ける度、
私の口からは

 「んっ…! ふぅ… くぅ…ん!」

 という淫らな声が漏れる。
167しん。:04/08/22 23:56 ID:aPcoPqqD
私の印が…!!
こんな男に汚されてる…

 私は、大事なものを汚される羞恥と屈辱と怒りと、
それを上回る快楽に震えた。

 私のバラのつぼみは、男の侵略を受けていた。
それは、私の誇りそのものと言って良かった。
その誇りが今、憎い男の手によって余すところ無く
陵辱されようとしている。

 バラのつぼみはふるふると震え、男の淫ら極まりない性の攻撃から
その純潔を守ろうと堪えているように見える。

 しかし、それはまた今までその身が味わったことの無い
快楽を与えてくれる男との出会いに喜び、
わなないているようにも見える。
168しん。:04/08/22 23:57 ID:aPcoPqqD
 裏切られた。
私の身体が、裏切られた。
男の愛撫で、裏切られた。

 ヌロォー…ッ

 最後に男の軟体生物のような舌が刺青を一舐めして、
その攻撃が一旦止んだ。

 私の刺青は男の唾液にテラテラと濡れそぼり、
室内灯に照らされ光り輝くその姿は、
ひどくいやらしく見える。


169しん。:04/08/22 23:58 ID:aPcoPqqD
 私は,敗北した。

 純潔が、汚された。

 私の印が汚されるのを快感に思ってしまった。
男に汚されるのを待ち続けていたような気がした。

 男の蹂躙を受けたバラのつぼみは
淫らに濡れ光り、その身を男への屈服の快楽で
わなわなとわななかせた。

 「くっ… ううっ…ぅ!」

 屈辱を堪えきれず、私の瞳からは敗北を宣言する涙。
トップクラスの殺し屋の私が… 泣くなんて。

170しん。:04/08/22 23:58 ID:aPcoPqqD
 「なに泣いてんだよ? …そんなによかったか」

 「うるさいっ…!」

 余りにも恥ずかしい。見られたくない。
今の私のこんな顔、男なんかに見られたくない…!

 私は顔を背け、さらに両手で顔を覆い、
自分の殻に閉じこもるようにして泣いた。

 しかし、左肩の刺青はその逃避を許さないとでも言いたげに、
男へ媚びるように淫らに濡れ光る。



 これからこの男にされることを、暗示しているかのように。

171しん。:04/08/23 00:00 ID:6U8JjGqq
以上。今回の書き込み、終わりデス。
感想、ご要望(なんてあるのか? この作品に)受け付中です。
がんばって書き込みますので、これからもよろしく。
172名無しさん@ピンキー:04/08/23 00:41 ID:NIbBeRC8
ハァハァ がんがれ
173名無しさん@ピンキー:04/08/23 13:22 ID:yi3P7wwv
GOOOOOOOOOOOOOOOOOD!!!!!
VERYYYYYYYYYYYYGOOOOOOOOOOOD!!!!!!










(*´Д`)ハァハァ
174しん。:04/08/23 16:28 ID:XEmVQTWq
>172,173

 サンキューっス。これからもがんばります。
次は多分4,5日後になると思いますけど。
175名無しさん@ピンキー:04/08/23 17:18 ID:6xGNGPuT
ローズたんかわええよぅ(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア

4,5日…!?この姿勢で降臨を待ってます→_ト ̄|○
176名無しさん@ピンキー:04/08/26 04:14 ID:I3peeO0z
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ(´д`*)
続きマーダ?
177名無しさん@ピンキー:04/08/27 12:15 ID:/O1/bV5n
tes

178名無しさん@ピンキー:04/08/28 09:04 ID:rOtVG0bb
続きマダー?チンチン
179しん。:04/08/28 16:23 ID:esd7wdgg
 了解。投下準備完了!
180しん。:04/08/28 16:25 ID:esd7wdgg
rose bud(4)

「ああっ…!!」

 男は、私を逃避させてはくれない。
卵の殻をむくように私のスーツを剥いでいく。

 両手でその行為を抑えつけ、何とかその淫らな
侵略を止める事に成功する。
沈黙の均衡。

 しかし、

 「ほーらほら、どうした?」

 「んくっ…! くぅう!」

 分かっている。男は全然本気なんか出していない。
本気を出したら、今の快楽に痺れた私の力なんかでは
全く勝負にならないことくらい分かっている。

 男は,いたぶっているのだ。
どうにでも料理できる相手を前に、その狼狽振りを楽しんでいる
だけなのだ。
181しん。:04/08/28 16:25 ID:esd7wdgg
男なんかに,ここまで…!

 悔しさに再び涙が溢れてくる。
しかし、だからと言って好きにさせるわけには行かない。
震える両手で、スーツが剥かれるのを防ぐだけだ。

 「きっ… くあっ! あっ」

 もちろん、今の抵抗は現在私に出来る全力だが、
平時の力に比べたら、情けなくなるほど貧弱に違いない。

 それ程に、これまでの男の愛撫は強烈だった。
それ程に、私は融かされていた。

 額に汗を滲ませ、瞳を瞑り、口を結び、必死の抵抗が続く。
しかし、それを嘲笑うかのように、スーツはじわじわと
ゆっくり身体を降下している。

 既にスーツは腰のあたりまで剥かれ、
私の黒のブラジャーと、それに包まれた両方の乳房は既に
外気に晒されている。

 顔を苦悶に歪め,肌を汗に濡らし,乳房を震わしながら
必死に抵抗している私の姿は男の目にはさぞ扇情的に
見えることだろう。
182しん。:04/08/28 16:26 ID:esd7wdgg
 「ほらほら、見えそうだ!」

 「うぁ! くぅっ!!」

 スーツが腰のくびれに掛かる。そこには、ブラとお揃いの
黒に統一しているショーツが…!

 そこは…! そこだけは!!

 「んっ! くひぃ!!」

 無駄と分かっていながらも、絶望的な抵抗は続く。
両手を股間に当て、手をプルプルと震わせながら
挫けそうになる気力を何とか奮い立たせ抵抗する。

 いいじゃない…
そこまでしないでも…
もう、いいじゃない…

 うるさい!! 
男なんかに!
男なんかに!

 私の中での葛藤は続く。
しかし、その葛藤の終焉は外部からもたらされた。

183しん。:04/08/28 16:26 ID:esd7wdgg
 「んひっ!!」

 背筋を走る快楽。
背中が反り上がる。

 男は、スーツの上から、私の股間に手を這わせているのだ。
秘唇のスリットをなぞるように、上から下へ、下から上へ。
巧み極まる指加減で私を追い詰める。

 たちまち私の身体が制御不能のわななきを起こす。
びくんびくんと意思の命令を無視して身体が跳ねる。
 
 瞬く間に抵抗しようと言う意思が削がれていく。
その間もじわじわとスーツはずり下ろされていく。

 「くっ… くぅぅぅぅぅーっ!!」

 真一文字に結んでいた唇から、とうとう淫靡な声が溢れ出る。
スーツを抑える手の力がどんどん抜けていく。
秘裂をなぞる男の手は激しさを増していく。
もうスーツはほとんどショーツを隠す役目を果たしていない。
むしろ、スーツからちらちらと見え隠れする黒のショーツが
逆に淫猥さを際立たせてさえいる。
私の最後の抵抗は終わりを告げようとしていた。
  
184しん。:04/08/28 16:27 ID:esd7wdgg
 私は,
屈辱に、
羞恥に、
怒りに、
敗北の予感に。
頬を染めた。

 「あひぃ…!」

 とうとう男の手がスーツの上から私の淫核を突き止めた。

 「あっ… あぅ、 …っ」

 私の瞳は、もはや男を見ていない。
中空を見つめ、身体は最後の断末魔のわななきを起こす。
身体は待っているのだ,憎い男に敗北させられるのを。
男の手によって、絶頂を極め、止めを刺されるのを。

 敏感過ぎるそこを、遠慮を知らない男の指がつまみ、

 躊躇なく捻った。
185しん。:04/08/28 16:28 ID:esd7wdgg
 「ひぃぃぃっ!! はぁぁぁぁぁああああーん!!」

 目の前が白く染まり,下半身が溶ける。
背中がクゥッと仰け反り、甘い痺れを起こしたヴァギナが
ひくひくとひくつき、秘唇がぱくぱくと開閉する。
 漏れる…! 何かが… 漏れて…ッ!!

 ぷしゃっ!! ぷしっ! ぷしゃあああ!

 私は,果てた。
潮を吹いて,果てた。
生まれて初めての潮噴きだった。
ショーツの下で、ヴァギナが私の意思を裏切り
愛液の噴出を続ける。愛液が下着の吸水能力の限界を超え、
床に滴り始めた。

186しん。:04/08/28 16:28 ID:esd7wdgg
 「あっ… あ…」

 重力の感覚が失せた。青空を漂うような心地良い感覚…
初めて味わう潮吹き絶頂の快楽を、私の身体は受け止めた。
この快感を知ってしまったら、もう元には引き返せない…
 あまりの快楽に私は声も出せず、ただ絶頂の嵐に
翻弄され続けるのみ。
しばらく仰け反ったままぷしゅ、ぷしゅっと愛液が
ヴァギナから発射され続ける。

 やがて、全ての力を使い果たしたかのように
海老反りに仰け反った背中が、テーブルに着地する。

 「んふっ… くひぃ…」

 私はプルプルと痙攣し、初めての絶頂エクスタシーの快楽に
苛まれる。

 男は、スーツに乗せられた私の手をゆっくり優しく退ける。
既に力など入っておらず、ただ添えられていただけの私の腕は
あっさりと男の命令に従う。

187しん。:04/08/28 16:29 ID:esd7wdgg
 右手が離された。 
 左手も屈服した。

 もはや妨げるものの無くなったスーツを
男は遠慮無く一気に足元までズリ下げる。

 「いやーーーーっ!!」

 男はスーツを私の足先から抜いてしまう。
床は既に私の愛液で水溜りが出来てしまっている。
男は私のほうに視線を上げる。

私は男の目にどう写っているのだろうか?
188しん。:04/08/28 16:30 ID:esd7wdgg
 ぐしょぐしょに濡れ光り、愛液を滴らせるショーツ。
汗に濡れた肌。
ぐったりとしどけなく横たわる身体。
時折快楽に痙攣を起こす腕、足。
初めての潮吹きに恍惚となる顔。
髪は乱れ、瞳には涙が滲んでいる。

 何もかもがどうしようもなく男を欲情させ、誘う。
私が憎むべき、男を。

 そして、目の前の男も、当然誘われたのだ。
動けない私の身体に覆い被さる男。



 本格的な陵辱が、始まった。  


189しん。:04/08/28 16:34 ID:esd7wdgg
 以上です。
お待たせしてすみませんでした。
次はいつ頃になるんでしょうね? 多分一週間以内には…
たぶん、おそらくは。

 というか、この小説、何人くらい見てるんだろ?
好評らしい事は分かるんだけど…
 もうカンペキ趣味性バリバリで書いてますんで、
それがウケるって事は、同じ性癖の人間が何人かいるって事になるわけで、
なんか嬉しいですな。 
190名無しさん@ピンキー:04/08/29 00:28 ID:JpQKOyRz
GJ!!
191名無しさん@ピンキー:04/08/29 01:50 ID:CF5bTEeN
しん。さん(*´Д`*)ハアハア
再降臨まで再びこの姿勢で待ち続けます_ト ̄|○
192796:04/08/31 00:10 ID:qv6zDk/i
しん。さん、私も見てますよー。
こういう話、個人的に好みです。
193名無しさん@ピンキー:04/08/31 00:48 ID:VZPhMuFy
ここってエロなしオッケーですか?
194名無しさん@ピンキー:04/08/31 02:37 ID:iT62rNqO
OK
195名無しさん@ピンキー:04/09/03 07:06 ID:CF4jHLLd
hosu
196名無しさん@ピンキー:04/09/05 22:08 ID:rkUqCMZ6
hosu
197名無しさん@ピンキー:04/09/07 21:36 ID:oOk9pbPl
hosu
198名無しさん@ピンキー:04/09/09 03:35 ID:sOvj+yAF
>>193
マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
199名無しさん@ピンキー:04/09/12 22:58:01 ID:l4kTc9/u
でんでんさんマダァー?
200名無しさん@ピンキー:04/09/13 21:44:48 ID:MBMHmD+8
しんさんキボンヌ
201名無しさん@ピンキー:04/09/14 19:25:44 ID:8j0VtsFT
   ____
 /:::::::::::::::::::\
 |:::::l~~~~~~~~~)
 |:::::| ■■ ■
 |:::/ <・) <・)
 レ(6:. .:/(´ヽ >
  \::::::((━━)  < しんさん光臨まだぁ?
    \::::::::::::ノ
202名無しさん@ピンキー:04/09/15 08:44:49 ID:wEqroiW6
ネタだけ出しますけど、優しい男と男装の麗人の話って、どうですか?
203名無しさん@ピンキー:04/09/15 18:26:11 ID:YmEurKT8
OK!
204名無しさん@ピンキー:04/09/19 03:14:44 ID:N4y7NhCu
205202:04/09/22 19:03:27 ID:3DKBsGha
SS投下します。
206名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:04:40 ID:3DKBsGha
「ラミー、貴女、男が出来たって本当なの?」
「ゴホッ、ゲホゲホ。何だそれは?」
女戦士ラミーは、同僚の質問に驚いて、飲み物を吐き出した。
「何って、結構な噂よ。鉄の女も身を固めたって。」
ラミーはこの国の中でもトップクラスの戦士だった。身体能力、技術、戦術、全
てに於いて秀でていた。また、その美しさも秀でていたと言っていい。並みの男
を上回る身長に、顔、体つき、それらが合わさり、見事な美貌を誇っていた。男
装の麗人と呼ぶに相応しく、男女から人気があった。
「まいったな。」
「じゃあ、嘘なの。」
「ま、まあな。」
ラミーは嘘を吐いた。ラミーには恋人と呼べる間柄の男がいた。しかし、それを
正直に話したくはなかった。冷やかされるに決まっている。訓練所の食堂を出て、
ラミーは廊下を歩くと、自分の噂話が聞こえてくる。
「ほら、彼女よ、例の。」
「まあ、身分もわきまえず富豪の殿方をたらしこんだというのは。」
「男に興味なさそうな顔して。」
嫉妬を含んだ話も聞こえてきた。無理もない。貧しい家系の出身で、戦士としての
能力で国の精鋭部隊の一員にまで上り詰めた自分に向けられる視線は覚悟してい
た。ラミーはその日は非番だった。訓練所を出て街に出て暫く歩くと、ラミーは少
し人目を気にし始めた。これから行く場所は、知り合いにあまり知られたくない。
目的の場所、ある富豪の屋敷に着くと、守衛に顔パスで入らせてもらい、ドアをノ
ックした。すると、老女が顔を出し、
「まあ、ラミー様、いらっしゃいませ。直ぐに坊ちゃまをお呼びします。」
と言い、奥の階段を昇っていった。暫くすると、老女が降りてきた。
207名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:06:17 ID:3DKBsGha
「申し訳ありません。坊ちゃまはお休みのようです。取り敢えずご案内します。
どうぞ。」
そう言って、老女に案内された。老女がドアを開けると、椅子に座ったまま眠っ
ている男がいた。
「お茶をお持ちいたちます。」
そう言って老女は退室した。ラミーは目の前で眠っている男を見た。彼こそ、ラ
ミーの恋人、カイだった。身長はラミーより低く年下で、甘い美貌の持ち主だっ
た。
(全く、昼間から居眠りして、部隊では考えられないことだ。)
彼は、ラミーとは正反対と言ってもいい人間だった。常に努力を怠らず、向上心
があり、悪を許さない正義感を持ち、時には非情さを見せ、知力と体力に優れる
ラミーに比べて、カイは無気力で、面倒臭がり屋で、物事に無関心で、ラミー以
上に無口で無愛想で、知力と体力に特に優れている訳でも無かった。彼らはラミー
がカイの家の警護を上層部から命令された時に知り合った。異性に対してあまり
関心の無かったラミーが付き合うようになったのは、カイの父が社交性に乏しい
息子に、女性と付き合って欲しいと、警護の際に顔を覚えていたラミーの上層部
に頼んだからである。ラミーは乗り気では無かったが、段々と彼に惹かれていっ
た。理由は、自分に無いものを持っていたことであり、その中でも、彼の冷たそ
うな瞳の奥に潜む、虫も殺せなさそうな優しさに惹かれていった。
(しかし、よく眠ってるな。)
このままでは夜まで目覚めそうにないカイを、ラミーは片手で揺さぶった。
「おい、カイ、いい加減に起きろ。昼間からたるんでるぞ。」
それでも起きない。ラミーは両手でカイの胸ぐらを掴み、揺さぶった。
「起きろと言ってるだろ!こら!」
激しく揺さぶると、ようやくカイは目を開けた。
「ふぁ、あ、ラミー。来てたのか・・・・。」
「もう少ししっかりしろ。全く。」
その後、二人は茶を飲み、話をした。といっても、殆どラミーが喋り、カイは相
槌をうつだけだった。
208名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:31:41 ID:3DKBsGha
ー数日後ー
「ラミー、妊娠したって本当なの?」
「ブッ、ゴホッ、ゴホッ、何ぃ?」
「噂よ、相手は富豪の御曹司だって。」
どうやらカイと会っているのを見られたらしく、最早隠し通せなかった。しかし、
まさかここまで噂に尾鰭がつくとはラミーは思ってもみなかった。
「ねぇ、相手の人って格好いいの?夜の方はどうなのよ?」
「まだそこまでいってない。」
「え?ねぇ、付き合ってどのくらい経つの?」
「3ケ月程だな。」
「嘘?じゃあ、キスは?」
「ま、まだだ。別にいいだろ。」
「よくないわよ!ねぇ、彼と会って何してるの?」
「何って、奴の家で茶を飲んだり、公園を散歩したり、演劇を見たり、そんこと
だな。」
「信じられない。ひょっとして彼、不能なの?」
「聞いてない。」
「愛されてるの、本当に?」
「う・・・・。」
確かに、話しているのは殆ど自分である。訓練所での出来事や戦術論などを自分
が話し、カイは専ら聞き役だった。
(もしかしたら、親に言われて無理矢理付き合っているのかもしれないな・・・
・。)
ラミーはひどく不安になった。それだけ、彼女の心の中でカイの存在が大きくなっ
ていたということだった。
209名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:32:29 ID:3DKBsGha
その後、ラミーはカイの家を訪れていた。二人でカードに興じている。ラミーは
以前から考えていたことを言った。
「カイ、今夜はここに泊めてくれないか?」
「別に。客間はあったと思うけど。」
「それだけか?」
「え?」
「いや、仮にも付き合ってるんだからもう少し色々とリアクションがあるんじゃ
ないかと思ってな。」
「別に。ただ、あんたはそういうの嫌そうに見えたから・・・・。それに、あん
たにうっかり殴られたら死にそうだからな。」
「色恋沙汰はよく分からん。しかし、何も無いなら無いで色々と言われるのでな。
お前が不能なんじゃないかと言われたよ。」
「別に。」
「はっきりと聞くが、お前、私のことどう思う?」
「なんでそんなこと聞くんだよ?」
カイは不思議そうである。
「不安なんだ。お前、いつも私の話を興味無さそうに聞くだろ。」
「本当に興味無いんだからしょうがないだろ。」
「自分のことは全然話さないし。」
「話すようなことしてないし。」
「はっきり言ってくれ。私を愛しているか?」
「んな、恥ずかしいこと言えるかよ。」
カイは少しうんざりとした様子だった。
「答えてくれ。」
ラミーがカイの肩をがっちりと掴む。暫し、無言の間が続いた。
「愛している。」
カイが口を開いた。
「本当か?」
「ああ。」
ラミーの瞳が、僅かだが涙に濡れた。
210名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:33:27 ID:3DKBsGha
「もう、いいだろ、この話しは。僕、下にあんたが泊まることを伝えてくるよ。」
カイは立ち上がり、扉に向かおうとする。
「私も行こう。」
ラミーも立ち上がり、カイを追おうとする。しかし、カイが扉の前で立ち止まっ
たまま動かなかったため、ラミーも立ち止まった。
「カイ、どうした?」
カイは少しの間、黙ったままだったが、やがて口を開いた。
「悪い。僕、もう我慢できそうにない。」
「え?」
ラミーには何のことか分からなかった。しかし、カイは振り向くとラミーを抱き
締めていた。一瞬、ラミーは思考が止まったが、すぐに気づくと顔を赤く染めた。
「なっ、なななな、カ、カイ、何をっ!」
「あんたの話聞いてて、柄にもなく興奮しちまった。」
「ば、馬鹿っ!放せっ!んぶ!?」
抗議の声を、カイは唇で止めた。唇を強く合わせると、顔を左右に振り、舌を入
れようとする。
「んんー、んっ、んぅー!」
初めてのキスに混乱しながらも、ラミーは力ずくでカイを引き剥がした。ラミー
は距離を保とうと後ろに下がると、足がベッドに当たった。それに気づき振り返っ
たラミーが顔を戻すと、カイが再びラミーに抱き付いてきた。そして、彼女の足
を払い、ベッドに押し倒した。
「うわっ・・・・!?」
カイは再び口づけようとし、ラミーはそれを躱す。そうしながらもカイは、胸当
ての下の乳房に手を伸ばそうとする。
「やめろっ、カイ!こ、こんなのは強姦だっ!なっ、殴るぞ!」
「かもな。でも、僕、もう・・・・。」
211名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:35:15 ID:3DKBsGha
カイは胸当ての下に手を潜り込ませ、乳房を掴み、揉みしだく。異性に胸を触ら
れる嫌悪感に、ラミーは抵抗を激しくする。
「な、何をする!やめろ!あっ、くっ・・・・!」
カイは片手で乳房をこね回しながら、胸当ての止め具を外す。それだけではない。
他の防具なども、不器用ながら全て外す。そして、ズボンのベルトをも外そうと
する。
「くっ、よせっ!」
ラミーは力を込めて起き上がると、膝蹴りを腹部に叩き込んだ。「うっ。」とカ
イが呻いた。ラミーは身を翻し逃げようとする。しかし、カイは逃がさず背中に
のし掛かる。ラミーはうつ伏せのままベッドに倒れた。こうなってはラミーとい
えども不利だ。カイは両手で両方の乳房をこね回しながら、首筋に舌を這わせる。
「ひゃっ!?や、やめ、ああっ、くぅっ、ひ、よせっ、ああっ、う、くぅっ!」
自慰も経験したことのないラミーは未知の感覚に戸惑い、嬌声を押し殺す。カイ
は背後からラミーの服を下着ごと捲りあげた。
「やっ・・・・。」
筋肉質な身体と、豊かな乳房が露になる。乳首は乳房を揉まれていたことと、服
やベッドで擦られたことで、既に固くなっていた。カイはそんなラミーの乳首を
指で挟み込んだ。
「あ、くぅぅぅぅ・・・・。ひぃっ、い、いやだあ!」
ラミーは必死に叫ぶ。カイはラミーのベルトを外して、ズボンの中に手を突っ込
んだ。下着越しだが、濡れていないことは分かった。
「よ、よせ!やめろおっ!」
カイは下着越しにラミーの秘部を撫で続けた。
「ひぃっ、ひぃあああああああ!ふっ、んふっ!やはぁっ!」
続ける内に、ラミーの秘部から、何かが流れてくるのが分かった。
212名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:36:43 ID:3DKBsGha
「やめろっ、やめろおっ!はぁん、はぁん・・・・。」
カイは今度はラミーの秘部に直接手を触れた。ラミーがビクッと身体を震わせる。
「よ、よせ・・・・。」
カイはラミーの秘部を揉み、こね回した。たまらず、ラミーが拒絶する。
「ぃやあああああああ!やだ、やだぁっ!は、放せっ、んあっ、い、今すぐ手を
放せっ!んひぃっ、さ、さもないと、あっ、あ、後で・・・・。」
カイは構わず指を一本そっとラミーの膣に少しだけ差し込んだ。
「えっ、まさか、まさか・・・・?あ、あああああああっ!いやぁーーーーーーーっ!」
「ラミー?」
「抜いてっ!抜いてくれぇ!ぬっ、抜けぇーーーーーーーー!そんな所・・・・、
いやだあああああああ!」
ラミーには、自分すら触れたことの無い所に、指を差し込まれて混乱してしまっ
た。戦士として、精神面でも訓練を積んだレミーでも、初めての性行為に狼狽え
てしまった。
「ラミー、大丈夫だ。」
カイは指をそっと引き抜いた。そして、ラミーを仰向けに寝かせて、ラミーのズ
ボンを下着ごと引き下ろした。
「やぁ・・・・。」
恥ずかしさに、ラミーは顔を手で少し覆った。カイは勃起したペニスを取り出す
と、手に添えて、ラミーの秘部に近づける。
(あれが私の中に・・・・。でも入るのか?ああ、怖い。こんな恐怖は初めてだ。
でも、もうすぐあれを入れられるんだ。そして、子供の種子を注がれて・・・・。)
213名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:38:25 ID:3DKBsGha
ラミーの心には、期待が表れていた。しかし、カイはそこから先へは進もうとし
ない。
「カイ?」
「ラミー、僕は全てを犠牲にしてまであんたを守る事はできそうにない。僕は人
を殺せないし、殺すつもりも無い。他にも犠牲にできないものはある。」
「そんなの知ってる。」
「それでも良かったら僕をこのまま受け入れてくれ。そして僕と結婚してくれ。」
「ああ。さ、続けてくれ。」
カイは頷いた。そしてペニスを秘部にあてがうと、挿入した。
「う、ううううっ・・・・。」
「くぅぅぅぅぅぅぅっ。あ、あああああああっ。」
カイに抱き付き、腕に力を込めるラミー。そして、カイのペニスはラミーの処女
膜を貫通した。
「っ・・・・、くあああああああっ!いっ、つ・・・・!」
「大丈夫か。」
「ああ、痛みも引いてきた。」
「そうか。じゃ、動くよ・・・・。」
「ん、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ!」
カイはピストン運動を開始した。ラミーの口から喘ぎ声が漏れる。そしてラミー
は挿入によってもたらされる快感をはっきりと感じ、それに身を委ねていた。
「んはぁっ、はあぁぁっ、きっ、気持ちいいっ、はあっ、あひぃっ、あふぅんっ!」
二人は、絶頂に達しようとしていた。
「僕、もう、駄目・・・・。」
「私、なんか、変な感じだ・・・・。」
「うっ、出る・・・・。」
「待ってくれ、中には出すな!まだ子供を産むわけにはいかん!」
「くっ、も、もう駄目・・・・。はあっ!」
「はあっ、はあっ、あはあーーーーーーーんっ!」
二人は絶頂に達し、ラミーの子宮には、精液が注がれた。
214名無しさん@ピンキー:04/09/22 19:39:01 ID:3DKBsGha
「妊娠してたらどうしよう?」
「戦士やめて僕の家で暮らせば?」
「何を言ってる?私は結婚しても戦士はやめんぞ。」
「やっぱりね。僕としてはやめて安全に・・・・。」
「私は戦士であり続ける。お嬢様のようにというのは御免だ。」
「でも今はこうして眠ってくれ。」
「ああ。」
二人は唇を合わせた。
215202:04/09/22 19:40:28 ID:3DKBsGha
終わりです。楽しんでもらえれば嬉しいです。
216202:04/09/22 19:42:39 ID:3DKBsGha
あ、ちなみに二人とも初めてという設定です。
217名無しさん@ピンキー:04/09/22 23:06:19 ID:4Ln2U2vN
文が稚拙。
218名無しさん@ピンキー:04/09/23 05:29:11 ID:xAtHr5wT
なかなか楽しめました。いいですね、女戦士。
219名無しさん@ピンキー:04/09/23 08:20:05 ID:5j1O+e26
悪いがもう少し推敲してからの方が良かった。
220名無しさん@ピンキー:04/09/23 09:14:14 ID:HL3kl/wX
カイ強いね。 実は一子相伝の怪しげな拳法の使い手とか・・・・・
221名無しさん@ピンキー:04/09/26 00:16:46 ID:1Pt/49CE
hosu
222名無しさん@ピンキー:04/09/29 01:28:26 ID:7F6Igl0x
保守
223名無しさん@ピンキー:04/09/29 21:00:13 ID:3QBqy5RQ
しんさんマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
224しん。:04/09/29 22:46:56 ID:LdXWdotc
男なんかに。

 「くひぃ…っ!」

 本格的な愛撫に、絶頂に震える私の身体は為す術なく
翻弄されていた。強烈な快楽の前に理性の壁は次々に
崩され、本能を剥き出しにされていく感覚に怯えた。

 既にブラジャーは鎖骨の所までズリ上げられ、
直に乳房を嬲られる感覚に晒される。
テーブルの上で、男と体を重ね合わせ、愛撫される。

 男の指が、舌が。

 私がこれまでに経験したことの無い快楽を
私の中に注ぎ込んでくる。気持ちが良すぎる。
身体が胸から融かされそうだ。泥沼にズブズブと
はまり込んで行く感じがする。
225しん。:04/09/29 22:47:36 ID:LdXWdotc
快楽に晒され、
 快楽に溺れ、
 快楽に染められる。

 もはや私は狩る側ではない。
縮こまって「喰われる」のを待つ小鹿だ。
目の前の男にただ黙って男の望みのまま
翻弄され、
陵辱され、
蹂躙されるだけの、弱々しい小鹿に成り下がった。

226しん。:04/09/29 22:48:02 ID:LdXWdotc
…そうされたかったんでしょ?


 私の中の「わたし」が囁き掛ける。

 
 本当は男に嬲られたかったんでしょ?
 本当は男に汚されたかったんでしょ?
 本当は男に蹂躙されたかったんでしょ?

 
 違う! 違う! 
男は醜くて、汚くて、臭い!

 
 そして、男は快楽をくれる。


 違う! 違う!


 そして、
男に抱かれたい。
胸板に顔を埋めたい。
貫かれたい。
昇天させられたい。


 違う! 違う!

227しん。:04/09/29 22:48:31 ID:LdXWdotc
 私は残された気力を振り絞り、男を睨み付ける。

 「男なんか、男なんか!」

 目の前の男は、いぶかしみながら私を見下ろす。
乳房から口を離し、私の顔を覗き込む。

 「…何?」

 「こんな事なんかで、感じるわけ無い!
男なんかに、イかされるわけ無い!!」

 「…何を今更」

 男は再び、私の胸にしゃぶり付き、愛撫を再開する。

 「……!! ……っぅ!!」
228しん。:04/09/29 22:48:58 ID:LdXWdotc
 私は血が出るほど唇を噛み締め、迫り来る快楽に耐えた。

 男なんかに感じさせられるはずが無い!
男の指なんか、舌なんか! 気持ち悪いだけだ!

 男は巧緻極まる加減で胸を激しく、優しく、虐めた。
ぐにぐにとイヤらしく次々に形を変え、男の好きにされる私の乳房。
私は男の手を止めようとするのだが、快楽に融かされ意識を
たやすく裏切って一足先に男に隷属してしまった私の身体からは、
自分の手を男の手に弱々しく添えるのみの抵抗しかない。
私の両乳房を這い回る男の手と、それに添えられ、
同じ動きをしている私の両手。
その仕草はかえって淫靡さを強調して
男の興奮を高めてしまっているというのに…
 男は乳首を咥え、吸い、しごき、捻り、引っ張った。
 こ、この男… 上手すぎる、抵抗できない…
こんな快楽、今まで…!
私は、心の奥底で認めてしまった。
認めざるを得なかった…
229しん。:04/09/29 22:49:30 ID:LdXWdotc

 「感じない! 感じてないっ! 感じてるはず…ぅぅうう!!」

 私の体は意思を完全に裏切り、官能の炎が全身に燃え盛る。

 男の指が、両方の乳首を同時に捻る。

 「あーっ!! 感じてない…! 感じて…あーっ!!」

 私の背が仰け反り、またしても制御不能のわななきに震える。
太ももがぴくぴくと痙攣し、絶頂が近いことを男に伝える。
また負けてしまう、男に負けてしまう…

 男が乳首を噛み、私に止めを刺した。

 「ひっ! んひぃぃぃぃぃぃいいーっ!!」
230しん。:04/09/29 22:49:56 ID:LdXWdotc

 私の背がクゥッと曲がり、足をピンと伸ばし、
三度目の絶頂に達した。胸だけでイかされた。
体がアクメの快感に痺れる。膣口からは絶頂の証が
噴出する。屈辱的な絶頂。憎むべき男の手によって
刻まれた刻印。
 私の意思は快楽とプライドの狭間で揺れ動く。
この快楽を享受して悦んでいいのか、悲しんでいいのか、
本当に判断がつかなかった。

 混乱を極める私を尻目に、男の愛撫は続く。
今度は男は目標を私のショーツに定めたらしい。
男の指がショーツの中に潜り込む。

 「ひぅっ!?」

 端から見て滑稽なほどに私の体がビクつき、跳ねる。
きっと当事者でなかったら、私自身も笑ったと思う。

 「おいおい、グッチョグチョだな」

231しん。:04/09/29 22:50:26 ID:LdXWdotc
 男が感想を述べる。
恥ずかしい…! 消えてしまいたい!
もちろん、そんなことを思った所で消えてしまえるはずも無く、
男の陵辱が弱くなるわけでもない。

 そして、男の攻撃が始まった。

 クチャ、クチャッ、クチョクチョッ、チャプ、くチャプ…

 たちまち部屋の中が淫靡な音で埋め尽くされる。
無論、その音を立てているのは私自身なのだが…

 強烈な快感が、私の股間から全身に広がる。
膣口には、男が淫ら極まる指技で私の愛液を
掻き乱し、混ぜ合わせ、奥から新たな愛液を
噴出させようと蠢く。
 股間で、別の何か淫靡な生き物が私を責め苛んでいるようだ。
 下半身が快楽で撫で融かされそうだ。

 あまりにも淫らな音に我慢が出来ず、耳を塞いだ。
耳を塞いでも聞こえるので、頭を振ってみる。
これでもダメなので、せめて憎い男に喘ぎ声を
聞かせてなるものかと、指を噛んで声を抑える。

232しん。:04/09/29 22:50:55 ID:LdXWdotc
 「聞かせろよ。 …イキ声」

 男のもう片方の手が私の指を押さえ、優しく口から
引き離してしまう。抵抗する手段を封じられた私は
かえって切なさが強まってしまった。

 「んくふっ…! ひあぁぁぁ!」

 男なんかに… 男なんかに…!

 男の指が深々と私のヴァギナに突き立てられる。
耐えられるはずが無い。私は達していた。

 「んひいっ! いっ…くぅぅぅぅぅうううううーんっ!!」

 ぷしゃ、ぷしゃっ、ぷしぃぃぃっ!!

 私は、高らかに敗北宣言である嬌声を上げた。
四度目の絶頂。本人が望まぬ絶頂。またしても潮吹き。
股間から淫らな香りが立ち上り、男の更なる欲情を誘う。
男に身体を差し込まれ、閉じられぬ両足はピーンと真っすぐ
中空に伸ばされ、ふるふるとそこでイヤらしく固定され、
自らの悦びを男に教えてしまう。
私のヴァギナが男の指を締めつけ、子宮に取りこもうと収縮を始める。

233しん。:04/09/29 22:51:20 ID:LdXWdotc
 私は、この瞬間、自分は女であることを理論ではなく、
本能で実感させられていた。
 精液など出るはずが無いのに、節操の無いそこは
快楽を与えてくれる物なら何でも男のペニスと認識し、
その子種を与えてくれる液体を搾り取ろうとするのだ。
 
 それがヴァギナの役目だから…
 それが女の役目だから…

 「まだまだ!」

 男が絶頂にわななく私の膣から指を抜き、うつ伏せに体を
ひっくり返す。私の裸の乳首がテーブルに擦れるが、
その痛みすら今の快楽に痺れた身体は快楽として認識してしまう。
そして、男の指は再びショーツの中へ。
震え、縮こまっている私の淫核に目標を移す。
淫核はまるで、これから男に施される淫らな暴虐を
恐れているかのように、ふるふると弱々しく痙攣する。
男の指が、包皮をゆっくりと剥く。

 「ひいっ!!」

 私の剥き出しのクリトリスが外気に晒される。
ショーツの生地に触れているだけで達してしまいそうだ。

 私は激しく悶え、抵抗し、テーブルの上で淫らな踊りを踊る。
爪が激しくテーブルを引っかく。テーブルには爪痕による
無意味で不可解な紋様が次々に刻まれていく。
テーブルの装飾品、調味料、花瓶が激しく音を立てて
床に落とされる。

234しん。:04/09/29 22:51:50 ID:LdXWdotc
 「い、いやっ、いや、いやぁぁぁああ!!
気持ちいいのやらぁぁああ! もう気持ちよくしないで!
あっ、ああっ! あひんっ! もう、イきたく、ないぃぃぃいい!!」

 「暴れるなよ、やりにくい」

 滅茶苦茶に暴れ、意味不明な言葉を叫ぶ私を男は押さえつけ
冷徹に、確実に。私を絶頂への階段を強制的に上らせる。

 男は、クリトリスの皮を再び被せてしまう。
そして、また剥く。

 包皮を被せ、剥き、被せ、剥き、被せ、剥く。

 あまりの衝撃に私は声も無く快楽の嵐に晒されていた。

 「…………っ、っ、ひぃぃぃぃぃぃいい!!」

 しゃっ、しゃっ! ぷしゃあああああ!

 また絶頂。連続絶頂の嵐に晒される。
どうやらイキ癖がついてしまっているようだ。
秘口から絶頂の証が迸り、陵辱者の手を熱く濡らす。
 もっとわたしに気持ちいいことをしてと、濡らすのだ。

235しん。:04/09/29 22:52:39 ID:LdXWdotc
  「あっ… あうっ… あひぃ…」
 
 私は声も無く仰け反る。もはや暗殺者としての私など
影も形も無い。
 ここにはただ、強い男に蹂躙されて歓喜の涙と潮を流す
一匹の牝がいるだけだ。

 「くっ… 悔しい… 悔しい… 男なんか…!」

 私ははらはらと涙を流し、悔しさに歯噛みした。


 私は、女だ…
 
 そして、女は、男に、勝てない…

  
 「どうやら分かったようだな」
236しん。:04/09/29 22:53:40 ID:LdXWdotc
 男は嫌味なほどの笑みをこぼし、次の行動に移った。
愛液でグシャグシャになって既に用を成していない私のショーツを
脱がしてしまう。
とうとう私のヴァギナが直接男の目に晒される。

 「あっ…」

 今まで散々嬲られ、陵辱されきっていると言うのに、
やはり恥ずかしかった。羞恥で私は頬を赤く染める。
 ヴァギナから零れ落ちる愛液が床へ向けて
一筋銀色の糸を垂らす。
まるで男の注意を引き、誘っているように。
さらに私は頬を染めた。
237しん。:04/09/29 22:54:03 ID:LdXWdotc


 次は何をされると言うのか…

 私の中には、これから起こるめくるめく陵辱への
恐怖感、
敗北感、
そして、
期待感に震えていた。



 床には、先ほど私が落とした花瓶が割れ、破片が散乱している。
花瓶に生けられていた花…

 バラのつぼみ。

 バラのつぼみは、地に落ちた。


238名無しさん@ピンキー:04/09/30 00:14:05 ID:auEgwr6a
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
エロエロだ!エロエロだ!!
239名無しさん@ピンキー:04/09/30 00:23:37 ID:XfCKCNcn
待っていました
しんさん

       _n n_
  _、_  .(  ll  )    _、_
( ,_ノ` )  `/ /ヽ  ( <_,` )
(    ̄ ̄___/ ヽ___ ̄ ̄   )
 \   丶     /     /    good job!!

続きを待ってます
240名無しさん@ピンキー:04/09/30 08:27:24 ID:f9Y13Q3v
GJ!
241名無しさん@ピンキー:04/09/30 14:28:36 ID:kCb/YH3K
キタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━━!!
スッゲーGJです!
242名無しさん@ピンキー:04/10/01 23:36:11 ID:emSNEacQ
グジョバ!
243名無しさん@ピンキー:04/10/02 04:29:26 ID:dCixCXy6
グジョンセン
244名無しさん@ピンキー:04/10/03 18:47:42 ID:xdU/7sMY
グッジョブ!心理描写が(・∀・)イイ!!
245名無しさん@ピンキー:04/10/06 20:56:06 ID:m2cbImsS
元ネタ有りでもOK?
246名無しさん@ピンキー:04/10/06 21:30:56 ID:C/YfIZPR
ばでぃばでぃOK。
てか、お願いします。
247名無しさん@ピンキー:04/10/06 23:59:36 ID:vG+OZqKB
しんさんぐっじょぶ。
248名無しさん@ピンキー:04/10/10 20:35:32 ID:hRTaqz0e
hosu
249名無しさん@ピンキー:04/10/11 03:02:21 ID:3gj49EJg
しんさん期待AGE
250名無しさん@ピンキー:04/10/12 11:59:16 ID:lQYQ7ZNq
>>245
大歓迎!

つうかオリジナル追放派から身を守る為にもパロはあった方が。
251名無しさん@ピンキー:04/10/12 23:34:16 ID:uPPimIl1
しんさん あんた すげぇよ
252名無しさん@ピンキー:04/10/15 20:03:56 ID:8NzA5RFF
hosu
253しん。:04/10/16 19:13:28 ID:IQz6mAI5
 私は、体を抱きかかえられ、
ベッドに運ばれていた。

 背中に当たるシーツの柔らかい感触が心地良い。
私の理性はその感覚を余りに危ういものとして激しく警鐘を
鳴らしているのだが、快楽に痺れた本能は
男の更なる愛撫をねだり、抵抗せずに、されるがままになっていた。
もっとも、この男に対しては、全力で抵抗しようとしても
恐らく勝負にならないであろうことも悟ってはいたが…

 私は、この部屋に入って、思い知らされていたのだ。
この男の、指が、舌が、性戯が。
私にどれほどの快楽をもたらしたか…
この部屋に入るまでは、全く想像も出来なかった世界。
254しん。:04/10/16 19:13:57 ID:IQz6mAI5
 私が男に屈服し、身体を嬲られ、潮を吹くなんて…
先ほど繰り広げられた淫らな攻防、それに敗北し
連続絶頂に晒され、あられもない声を上げさせられた事を
思い出し、羞恥に顔を赤らめる。

 「んっ…」

 男の手が、私の脚にかかる。
ブーツを脱がし始める。

 右足が外気に晒された。
続いて左足が、男の眼前に姿を表す。

 最後に、男は私の黒のブラジャーを外してしまう。

 ああ…

 これで私は、何も身につけていない。
男の前に、生まれたままの素肌を曝け出してしまった。

255しん。:04/10/16 19:14:25 ID:IQz6mAI5
 男が、私をベッドに横たわらせる。
これから起こるであろう淫らな時間を予感させ
身体がわななく。

 男が私にのしかかってくる。
思わず私は男の視線から身を守ろうと、身体を丸めてしまう。

 「隠すなよ。今更」

 「っ… うるさい…!」

 嫌がってはいるが、既に快楽に融けてしまった声。
男に屈服した声。
…発情した女の声。

 何でこんなことになってしまったのか…

 男の手が、身体を丸めて縮こまっている私の両膝に掛かる。
膝を開かせようと言うのだろう。

256しん。:04/10/16 19:14:53 ID:IQz6mAI5
 「んっ… いっやーっ!」

 さらに硬く縮こまる全裸の私。
当然、そんなことをしたからと言って、男が行為を止めるはずも無い。
膝と手の攻防が続く。
 しかし、結果は分かりきっている。私の身体はどうしようもないほど
融かされ、男の言うなりになるしかないのだから…

 「ああぁーっ!!」

 膝が開かれた。
膝はなおも閉じようとするが、もうどうしようもない。
結果、行き場の無い力が加わり、太股がプルプルと痙攣する。
自分でもひどくいやらしいと思う。
男はさらに手を進め、私を大股開きの格好にしてしまう。
いわゆるM字開脚のポーズを取らせ、固定する。
 
 当然、秘唇は男の目の前に晒されてしまう。
 
257しん。:04/10/16 19:15:22 ID:IQz6mAI5
 「もうヌレヌレだな。」

 「やっ!」

 恥ずかしい。死んでしまいたい。
男なんかに、こんなに…

 私は言葉と視線での責めに合い、
さらに秘唇からはトロリと愛液が零れ出す。

 見られてるだけで… 感じている…
私、変態だ…

 目の前の男によって自分でも知らない数々の性癖を
次々に暴露されていく。

 知りたくなかった…
私がこんなに淫らな女だったなんて…

 だが、恥辱の責めはこれで終わりではなかった。

258しん。:04/10/16 19:15:51 ID:IQz6mAI5
 男の手がさらに太股を押す。

 「やっあぅ!?」

 さらに私の体勢を変え、
私の顔の両脇に私の両足が来るような姿勢…

 つまり、まんぐり返しのポーズを取らされた。

 「ああっやーっ!!」

 私は、両手で顔を隠した。
そうしなければいけない気がした。
そうしなければ、恥ずかしさで死んでしまう気がした。
 
259しん。:04/10/16 19:16:20 ID:IQz6mAI5
 しかし、本当に恥ずかしいのはこれからだった。
男の指が、私の後ろの恥門を広げた。

 「あはぅ!」

 そして、突然の暴虐に驚き、閉じようと震える私のお尻の穴に
むしゃぶりつき、遠慮会釈なしに舌を差し込んだ。

 「うひぃぃぃぃ!!」

 私は、見も世も無く泣き叫んだ。こんなこと初めて…
未知の感覚に、どうしていいか分からなかった。

 お尻の穴が… お尻の穴が…!
舐められてる…っ!!

 ジュるッ… べチャ、ぴチョ… ジュルルルルル…!

 激しい音を立て、本格的な肛虐が始まった。
ヌメヌメとイヤらしく蠢く軟体生物が私のお尻の穴を責める感覚に
私は必死に抵抗しようとした。嬌声を上げる。

260しん。:04/10/16 19:16:50 ID:IQz6mAI5
 「んっ! くひぃ! あっくぅぅぅ! あぁぁーっ!!」
 
 しかし、頬は赤く染まり、身体はヒクつき、
身体中から甘い香りの汗が流れ出す。

 まさか… 感じている!? お尻を舐められて?

 信じられない! こんな事、あるわけがないっ!
  
 しかし、その間にも甘い痺れは肛門から全身に広がり、
秘裂からは自分も苛めて欲しいと愛液が流れ出す。
紛れもなく、私の身体はこの行為を快楽だと判断していた。

 ジュジュッ、プちゃ… プチュルルルル… じゅルッ!

 「あひっ! あひぃ! あひぃっ! あひいいいぃぃーっ!!」

261しん。:04/10/16 19:17:18 ID:IQz6mAI5
 肛虐は激しさを増す。私はあられもない声を部屋中に響かせた。
身体が疼く。迫り来る絶頂の予感に本能が悦びの声を上げる。

 こんなのはいけない! これだけは… ダメだ!

 「んくぅ! んひっ! くぅぅぅぅぅぅぅぅーうう!!」

 私は必死にお尻の穴の筋肉を引き締めた。
そうして、ヌメ光る舌を穴から締め出そうとしたのだ。

 お尻の穴でイくなんて、普通じゃない。
こんな事でイかされたら、私は戻れなくなってしまう。

 私のプライドを賭けた最後の抵抗が始まった。
絶望的な抵抗が…

262しん。:04/10/16 19:17:48 ID:IQz6mAI5
 くちゃ、くちゃ、くちゃ… クチュルルルル…

 「んんっ! ひっ! ひぃっ! ひぃぃぃーんっ!!」

 私は全身を汗に濡らし、目を硬く瞑り、涙を滲ませながら
抵抗を続けた。
 しかし、そんな抵抗などどこ吹く風というように男の舌は
私の肛内を好き勝手に蹂躙する。

 出てって! 出てって! お願いよっ!!

 私は必死に括約筋に命令を送る。
しかし、肛門の力は段々と弱まり、肉体は一足先に
男の舌技に屈服しようとしていた。

 「くぅぅっ! やっ! やらっ! やらっ! やらぁぁぁぁ!」

263名無しさん@ピンキー:04/10/16 19:18:15 ID:IQz6mAI5
 私の口からはろれつの回らない甘え切った声が漏れる。
まんぐり返しの姿勢を崩そうと、陸に打ち上げられた魚のように
私の身体が跳ねまわる。その姿はたくましい雄に交尾をねだる
淫らな獣の求愛のダンスのように見えなくも無い。
 当然男が逃がしてくれる筈も無く、両手を使い、私の身体を
優しく、しかし確実に抑え込む。
 そして、私に最後の瞬間を迎えさせようと肛虐を続ける。
 
 「くっ、くひぃ! ひぃぃ! くっ…ひぃぃぃー!!」

 とうとう言う事を聞かなくなった肛門括約筋が私の意思を裏切り
肛門が全ての抵抗を諦めた様にパックリと開き切ってしまう。
身体が男の前に完全屈服した証だ。
肛門がヒクヒクと痙攣し、目の前の陵辱者に快楽を求める。

もっと…
もっと気持ち良くして…
もっと虐めて…
早くイかせて…

264名無しさん@ピンキー:04/10/16 19:18:46 ID:IQz6mAI5
 男の舌が肛門から引き抜かれる。
そして、改めて肛門を責め始める。

 入り口を尖らせた舌でちょんちょんとつつく。

 「んっ、ひっ! ひいぃ! あっひぃ!」


 ダメよ… ダメっ… イかされちゃダメ…!

 
 入り口を丸めた舌で一回りねぶる。
肛門にヌメ光る唾液の池が出来る。

 「んぅぅぅひぃーぃぃいい!」

 
 イヤッ… イかされたく、ないぃっ!! …ぃやぁ!

 
265名無しさん@ピンキー:04/10/16 19:19:15 ID:IQz6mAI5
 両手で肛門が限界まで開かされる。
男の舌が硬く、尖らされる。

 ぬずっ!!

 「あひぃーーーーーっっっつつ!!」

 他人に対し穢れを知らない肛門に
男の舌が深々と突き立てられる。

 もう、限界だった。
あまりの淫虐の嵐に晒された私の肉体は、
一気に絶頂への階段を駆け上っていった。
一線を越えてしまった。もう自分でもどうすることも出来ない。

 両足はピーンと伸ばされ、足の指はキュゥゥゥっと丸められる。
手は所在無くふらつき、ありもしない救いを求めるように
中空を握る。無論何の助けにもならない。
体中の毛穴という毛穴が開き、男を誘う淫らな香りの汗を噴出する。
口からは快楽を堪えきれない涎が頬を伝う。
 秘唇が主人の命令を無視し、パクパクと開閉して
断末魔の悲鳴を上げる。
 
266しん。:04/10/16 19:19:54 ID:IQz6mAI5
 
 ダメ… もうダメ… イかされる… お尻の穴…で!

 
 「ひっ… ひぅっ… ひぅぅぅぅぅぅぅううううううーーーん!!」

 ぷっしゃあああああ!!

 膣口から潮を吹き、男の攻撃にまたしても屈した。
肉体は液体を出して男の舌を肛門から追い出そうと
しているのかも知れないが、何を勘違いしたのか、
男の舌が刺さっているアナルではなく、
全く無関係の恥唇から激しく愛液を噴出した。

 止めろ、私の身体…
そんな所には、何も無いと言うのに…!

267しん。:04/10/16 19:20:20 ID:IQz6mAI5
 吹き出された潮は高く舞い上がり、私自身の顔に降り注いだ。
あまりにも強烈なアナル責めによる絶頂は続く。
こんなところで果てるなんて…
あんな場所が、凄く感じる…
 私の脳内では肛門で果てたと言う羞恥や背徳感すら
快楽に変換されていた。
 今までで最高の快楽に私の全身は受け止めきれない程の
絶頂の嵐に晒された。
 
 ぷしゃ! ぷしゃ! ぷしゃああああ!
  
 愛液の噴出は止まらない。
次から次に噴き出てきては、私の顔に自らの敗北を
刻み付けるように降り注ぎ、犯していく。
 むわっと匂い立つ自分自身のイヤらしい本気汁を浴び、
甘美な敗北感を感じながら私の意識は薄れていった…


268796:04/10/17 14:00:28 ID:uBomscBL
休日なのにだれも書き込まないのね。
と言うわけでGJ!一番乗り。
しんさん、とてもいいですヨ〜。
269名無しさん@ピンキー:04/10/20 03:28:40 ID:Ia7mTYrv
がんがれしんさん(*´Д`)
270名無しさん@ピンキー:04/10/21 18:16:45 ID:zHgKIAEp
しんさん、待ってます(;´Д`)
271名無しさん@ピンキー:04/10/21 18:26:06 ID:b9cQFW6G
しんさん(*´д`*)
272名無しさん@ピンキー:04/10/26 22:22:46 ID:rjnfVkvW
hosu
273名無しさん@ピンキー:04/10/29 18:50:20 ID:U6Qli+xi
hosu
274名無しさん@ピンキー:04/11/02 04:52:24 ID:yHBL+RKI
職人キボンヌ
275名無しさん@ピンキー:04/11/02 21:03:06 ID:LegxdYNQ
もうちょい待って
276名無しさん@ピンキー:04/11/02 23:51:31 ID:PY9cupul
私は73の続きをいつまでも待ち続けます
277名無しさん@ピンキー:04/11/04 21:20:42 ID:O3Z3sRH8
>>73
同じく待ってます
278名無しさん@ピンキー:04/11/09 08:39:30 ID:PephmuTr
待ってます
279名無しさん@ピンキー:04/11/11 12:34:27 ID:45xaQosz
ほしゅ
280名無しさん@ピンキー:04/11/15 10:15:54 ID:gkNHoyzq
マダー?(・∀・ )っ/凵 ⌒☆チン
281無愛想ハーレクイン:04/11/15 22:36:45 ID:KE9MQJVk
 困った事になっているのは、随分と前から承知していることだった。
 男には興味が無い。かといって女に興味があるわけでもない。性欲はあるが、男が嫌い。
 結局自慰で性欲を処理することになって早数年。崇香は神の指を持った機械技師として世界
中からの仕事を受ける身でありながら、平凡な町の、平凡を装った病院で、平凡とは言いがた
いオペレーションマシンの整備にせっせと励んで顔をとツナギを油で汚していた。
 うららかな春の日差しも入らない、月も光り輝く夜中である。
 おぞましい量の歯車を交換し、気の遠くなるような量のナットを締め上げ、電線を交換し、
油をさす。その一連の整備を昼から夜にかけてやり続け、やっと9割方がおわった所で崇香は
ため息をついてレンチを工具箱に放り出した。
 電話が鳴って、ただ一言。
“アームの動きがぎこちない”
 それだけで崇香は全ての仕事をキャンセルしてこの病院に飛んでいくハメになる。
 ここは神の摂理を犯した矮小な虫のいる病院。
 BUG。人間を化け物に作り変える技術を作り、広め、絶望した男。彼が手でオペを行うこ
とは殆どなく、手術はほぼ、プログラムと遠隔操作で動くこの刃物の化け物、オペレーション
マシンによって行われているのである。
 再生者だとか、筋力強化だとか、崇香はそれらの手術を受けた人間を心底から軽蔑し、また
その技術を開発したこの病院の主にも、激しい嫌悪感を持っていた。ならば何故そんな悪の機
械の整備をするのか。
 簡単だ。化け物を作り出す技術をもった彼は驚くほど繊細で、優しく、人を愛し誰かを助け
ることに情熱を燃やす根っからの正義漢だったからである。
 両目を覆っていたゴーグルを惹き下ろして、まだ幼さの残る黒い双眸を外気に晒す。
 崇香はまだ18歳の少女だった。
282無愛想ハーレクイン:04/11/15 22:37:17 ID:KE9MQJVk
「崇香ちゃ〜ん。お茶が入ったよ〜♪」
 見計らったように、一息入れるとやつの声が聞こえてくる。
 朗らかな笑みを浮かべて清潔な白衣を翻し、BUG……いや、舞里はティーカップとケーキ
をトレイに乗せて手術室に軽やかに足を踏み入れた。
「疲れたでしょ? 休憩しよう?」
 人のよさそうな笑顔の右半分に派手な刺青をべったりと張り付かせ、分厚い眼鏡の奥で幸せ
そうに微笑みながら、躊躇なく床にケーキと紅茶を並べると、舞里はぺたりと冷たいタイルの
床に座り込んだ。
 意味もなく正座である。
「……一人で食べるからあんたは出て行きなさいよ」
 崇香は舞里が嫌いだった。だが困ったことに、舞里は崇香の事が好きだった。そして更に困
ったことに、ここ連日の疲れのせいで微妙に体の具合が悪かった。極めつけに、舞里が随分前
からそれに気づいているようなのである。
 いつもなら仕事が終わるまで顔を出さない、仕事は仕事としてプロらしく振舞うのに、今日
に限っては事あるごとに休憩しようといってくる。
 気のせいかもしれないが、舞里が出す何かを口にすると、少しずつだが体の調子もよくなっ
ていく気さえする。薬でも混ぜているのだろう。
 何となくプライドが許さない状況ではあったが、ここで何か体の調子のことに触れると彼に
完全に病人のレッテルをはられて仕事の途中にもかかわらずベッドに縛り付けられかねない。
 いつもと変わらない暢気な笑顔にいつも通りに毒を吐き、崇香は黙って舞里が出した紅茶に
手を伸ばした。
283無愛想ハーレクイン:04/11/15 22:37:43 ID:KE9MQJVk
 後はマシンにカバーをはめるだけ。
 大丈夫。まさかこいつの目の前で倒れるような失態はないだろう。
「崇香ちゃん」
 口に含んだ紅茶を飲み下すと、ひりひりとしていた喉の痛みが治まった気がして、崇香はほ
んの少しため息をつくと紅茶をすすりながら舞里を見た。
「ありがとう」
 満面の笑みの意味がわからない。
 思わずきょとんとして彼の色の薄い瞳を見返すと、舞里は自分もティーカップを傾けた。
「何よ? 報酬を貰って仕事してんだから、お礼なんていわれる筋合いないわよ?」
「いやいや、私が出した物を怪しまずに口にするようになってくれたのが、なんだがうれしく
って」
 出て行けといったのに出て行かず、のんびりとティータイムを決め込んでいるこの病院の主
の言葉にはっとして、崇香はそういえば……と紅茶をすする手を止めた。
 最初、この病院で出されたものには一切手をつけていなかったのに、いつの間にやら当たり
前のように口に運んでいる。
 もったいないからといって、崇香が手をつけなかったお菓子を舞里がぱりぱりやっていたの
が原因か、それとも彼の温和すぎる人柄にほだされたのか。
 今だって、混ぜられた薬がただ単に感覚を麻痺させるものではなく、快方に向かうための薬
だと当然のように思い込んでいた。
「……なんかむかつくわね」
「えぇ!?」
「負けた気分だわ。ムカツク」
 そう言い放って紅茶をあおり、モンブランにかぶりつくと、崇香は黒髪を押し上げていたゴ
ーグルを引きおろし、最後の仕上げに取り掛かった。
284無愛想ハーレクイン:04/11/15 22:40:52 ID:KE9MQJVk
……みたいなのを突然書きたくなったのでビクビクしながら投下いたします。
受け入れていただけるようでしたら、セコセコ続き書いて投下いたします。
皆様お久しぶりで〜す
285名無しさん@ピンキー:04/11/15 23:11:11 ID:ZjZxQPfw
わーい無愛想ハーレクインさんおひさしですヽ(*´⊥丶*)丿
もう一個の共々続き楽しみにしてます!
286名無しさん@ピンキー:04/11/16 06:41:07 ID:L5NyYeKJ
面白そうなシュチュエーションですね。続き見たい!見たい!ノシ
 
・・・ちなみに舞里って男ですよね?“彼”ってあるし。
中性的な名前と言動だったから、一応確認。スマソ
287無愛想ハーレクイン:04/11/16 17:49:37 ID:Fg2jdx8c
>>286
キャラの名前一旦開いて思うとおもってて忘れてました……
舞里→まさと→男
崇香→すうか→女
です
288名無しさん@ピンキー:04/11/20 22:33:02 ID:pg62C7FY
保守だ
289名無しさん@ピンキー:04/11/24 20:39:30 ID:TWiko95h
保守
290名無しさん@ピンキー:04/11/28 08:15:59 ID:Rp68t4B7
保守
291無愛想ハーレクイン:04/11/29 23:54:33 ID:YqprLQOh
 “まさかこいつの前で倒れるような失態はないだろう”
 確かにそれはそのとおりであり、崇香は動作チェックを終え、舞里の病院を出るまで、例え
ばれてはいても健康な自分を貫きとおした。
 問題は、病院を出て数分後。突然揺らいだ視界に、縋るものもない道端で崇香はその場に崩
れ落ちた。そしてさらなる問題は、道端でへたってる所に颯爽と舞里が現れて、患者として病
院に連れ帰られた事である。
 後をつけられている事に気づかなかった自分が情けないやら、お姫様抱っこなどという屈辱
的な状況から抜け出せなかったのが腹立たしいやら。ストーカーも裸足で逃げ出す追跡術だ。
 そんなこんなの腹立たしい経緯を経て崇香は今、体温計を口にくわえたまま、舞里の病院の
ベッドに憮然として横たわっていた。
「も、いいかな。体温計見るからお口あけて?」
 まるで子供でも扱うように言われた言葉に、しぶしぶ咥えていた体温計を投げつけると、舞
里は危うくそれを取り落としそうになりながらようやく目盛りを覗き込んだ。
 少し前までは普通の眼鏡だったのに、今は右目だけを補強する片眼鏡である。
「8度3分……まぁ、大体そんな感じだと思ってたけどね」
「家に返しなさいよ、誘拐犯」
「入院は誘拐にはいらないんだよ崇香ちゃん。私は、私の前で倒れた誰かは治療しないと気が
すまないタチなもんでね」
 今時珍しい水銀の体温計を軽くふり、眼鏡の奥でにっこりと微笑むと、舞里は冷却ポットか
らコップに水を注いで崇香へと差し出した。
「起き上がれるなら、薬飲もうか。粉とカプセルとどっちがいい?」
「……カプセル」
292無愛想ハーレクイン:04/11/29 23:54:55 ID:YqprLQOh
 一から十まで不本意だが、“この病院”で“この男”に逆らうことが何を意味するのか崇香
はよく知っていた。週に一度、オペレーションマシンの整備に来るのが崇香と舞里の契約だが、
一度だけ舞里がセキュリティシステムの整備を頼んできたことがある。
 いつも頼んでいる男が結婚してハネムーンに行ったとかなんだとかで、他に信頼できる機械
技師を知らないからという事だったのだが、舞里に渡された点検リストを見た崇香は思わず病
院中を見回した。
 壁という壁、床という床、天井という天井全てと言っても過言ではないほどの……そう、ア
レはトラップだった。人体強化手術の開発者ともなれば、それは怪しげな誰かに命を狙われも
するだろうが、なにもここまでと思うほどにこの病院は要塞化していた。彼の宣言一つで部屋
に押し入ったヤクザの5〜6人は瞬殺だろう。
「今ほどあんたに脅威を感じたことはないわ……」
「私を男として意識してくれてるって事?」
「なんでそうなるのよ!」
「おかゆ食べる?」
「いらないわ」
「卵粥もってくるね」
 会話がかみ合わないというより、会話がとてつもなく一方的だ。思いやりの押し付けという
よりも、強制看護の匂いがする。彼の質問は、質問の体裁を繕った命令なのか……
「……帰りたい」
 枕に顔をうずめてもごもごと呟いて、崇香は頭から布団をかぶると目を閉じた。そういえば、
薬はどうしたのだろうか? 薬を飲むために起き上がれといったくせに、今あの男は崇香をお
いてお粥を作りに行っている。
 あぁ、薬を飲む前には何か食べなければいけないのか。しかし、お粥を作るには随分と時間
が……
「お待たせ」
「へ……?」
「おかゆ、少し冷ましておいたから食べやすいと思うよ?」
「……インスタント?」
293無愛想ハーレクイン:04/11/29 23:55:30 ID:YqprLQOh
 眠ってしまったのかとも思ったが、時計を見ても明らかに5分も経っていない。だとすれば、
目の前で暖かそうな湯気をあげるこの食べ物はコンビニか何かで飼ってきた物なのかと推測
したのだが、舞里は得意げに微笑んで静かに首を左右にふった。
「崇香ちゃんの入院を見越して作っておいた。整備してる時にご飯の匂い、してたでしょう?」
 一体いつから自分はこの男の掌の上だったのかと泣きたくなる。
 完全に脱力して枕に突っ伏した崇香を不思議そうに見下ろすと、舞里は土鍋に入ったおかゆ
を乗せたおぼんをベッドサイドの棚に一旦置くと、小さなテーブルを用意して崇香の足をまた
がせた。
「食事テーブル。別個にあるなんて珍しいでしょ? 最近の病院は皆天井から伸びてきたり、
ベッドの両脇に収納されてたりするんだけど、あれ、子供がいたずらしたりすると危ないんだ
よね」
「……だれも聞いてない」
「食べさせてあげようか」
「自分で食べるわよ!」
 差し出されたレンゲを舞里の手から毟り取って、崇香は恐る恐る黄色い卵の浮いたおかゆに
手をつけた。
 舌を火傷しない程度に暖かい。なるほど、これが適温という事なのか。
「……さいてー」
「え!? あ、味見したんだけどな、まずかった!?」
「あたしの料理よりおいしいのよ。どこまでもむかつく男ね」
「なんだか愛すれば愛するほど反感買を買ってく気がする……私って損な性分」
 大げさに嘆くようなポーズを作っておどける姿に呆れつつも、おいしいおかゆをせっせと胃
袋に詰め込んで、崇香はレンゲを土鍋に放ると舞里に薬を催促した。
 とにもかくにも、さっさと風邪を改善してこの病院から……いや舞里から逃げ出したい。
「あ、崇香ちゃん」
「なによ……」
「おかゆついてる」
294無愛想ハーレクイン:04/11/29 23:55:58 ID:YqprLQOh
 しまった、この会話の流れは……!
 頭の中をお約束のシーンが駆け抜けて、崇香は思わず身構えた。
 なんと言う事だ。まさかこんなにもおあつらえむきなシチュエーションを舞里の前で作り上
げてしまうとは。
「はい、ティッシュ……どうかした?」
 差し出されたティッシュと、顔全体を護るように身構えた崇香の体制が滑稽だ。熱の所為だ
けではなく頬が紅く染まるのを感じて、崇香はティッシュの箱を奪い取ると、一枚だけ取って
残りを舞里に投げつけた。
「え? え? 私、何か気に障ること……」
「うるさいわね! 着替えるんだから薬と水置いたらとっとと出てきなさいよ!」
「着替えるなら見てたいなぁ」
「じゃあ目玉だけ置いてけば?」
 睨み殺せたら殺してるとでも言うような勢いで睨みつけられ、舞里は苦笑いを浮かべて立ち
上がった。
 これ以上ここにいると、本当に目玉をえぐられかねないと悟ったのだろう。事実、いつの間
に用意したのか崇香の手には既にドライバーが固く握り締められていたのである。
 逃げるように病室を去った舞里の後姿を見えなくなっても暫く睨み、崇香は気抜けしたよう
にばたりとベットに倒れこんだ。
295無愛想ハーレクイン:04/11/29 23:58:31 ID:YqprLQOh
未だエロに到達してませんが一旦切らせて頂きます。
次こそはとはいえないけれどエロくなるから。本当だから。
296名無しさん@ピンキー:04/11/30 00:59:34 ID:AU8BsXIT
(・∀・)ワクワク
297名無しさん@ピンキー:04/11/30 19:46:30 ID:H6j5z29R
無愛想ハーレクインさん・・・・・・・・・・・・GJ!
298名無しさん@ピンキー:04/12/01 13:57:08 ID:JcO9m7OG
保守
299無愛想ハーレクイン:04/12/01 23:04:27 ID:7GdirVSx
 可愛いものだ……と薬ビンを片手ににやける変態が一人、冷蔵庫の前に立っていた。
 冷蔵庫といっても一般家庭用の物ではなくれっきとした薬品冷蔵庫であり、これ一台でほぼ
全ての薬品の保存温度に適応できるという優れものだ。中は6つの完全に独立した空間に分か
れており、舞里は今、中段右側のドアを開いて薬品の残量を確認しているのであった。
 看護婦が居ないため、掃除から何から全て自分でまかなっているのである。
「何がかわいいって、いつも強気で事あるごとに金槌を投げつけてくるあの崇香ちゃんが、私
なんかに襲われる事に怯えてるのが私の野獣的な精神的側面を刺激するわけなんだけど、残念
ながら私は患者に足しては半ば機能不全気味になってるから襲おうにも襲えないんだよね〜。
残念なような安心なような、まぁ元々私はSのけは無いからいいんだけどさ、あんな風に怯え
られるとポーズだけでも危ないお医者さん演じた方がいいのかな? ってついつい思っちゃ
うわけなんだけど……」
 勘違いしてはいけない。今この部屋に居るのは間違いなく彼一人だけである。もちろん舞里
は受話器も持っていない上にその他の手段を用いて誰かと通信しているわけでも決して無い。
 独り言が酷いのだ。人と一緒にいる時も一人で勝手に喋っている事が多いが、これが一人に
なると更に酷い。自分の隣に架空の友人でも置いて話し掛けているのではないかと危惧の念を
抱くほど、舞里の独り言は深刻なものだった。
 しかし、素面でトリップ中のこの男を咎める物は誰も居ない。天才とはどこか常人とはかけ
離れた所がある事は、最早論ずるのも面倒なほどに常識となりつつあった。
 虫を相手に自慰を行う昆虫学者よりはいくらかましだろう。
300無愛想ハーレクイン:04/12/01 23:05:29 ID:7GdirVSx
「なーんて。思うだけで実行に移せないのが私の損な所かな。気が弱くて女の人押し倒すなん
てとてもとても……押し倒される事が無いわけじゃないけど、いくらナイスバディーだって患
者と体液交換する気にはなれないんだよね〜。一歩間違えてたら童貞だな、これじゃ。でもこ
の美顔で童貞って言うのも割と高感度アップかな? 崇香ちゃんは純情なのと軟派君とどっ
ちが好みなのかなぁ〜」
「純情硬派が好みだと聞いていますが?」
「うわぁああぁ!!」
 悲鳴を上げて飛び上がった舞里が放り出した薬ビンを楽々手の中に捕獲して、黒コートの男
はにっこりと微笑んだ。
「と……透くん! こ、こんな夜中に脅かさないでよ……! 心臓が止まるかと……」
 密着しすぎて冷蔵庫に溶け込むではないかと思うほどべったりと背中を冷蔵庫に押し付け
て、舞里は見知った顔に安堵するなり力なくその場にへたり込んだ。
 薬ビンをテーブルに置いて椅子を引いたこの男は、再生者であり舞里の幼馴染でもあった。
 付け加えるならば崇香が心底から殺したいと願っている男である。名を透と言った。
「それは失礼。しかし意味も無く来たわけじゃありませんよ? いい物をお持ちしました」
 髪は黒。灰色のまだら模様が入っているのは、染めている所為である。
「いいもの……? 誰から?」
「言うなれば僕からです」
「誕生日はまだ先だよ?」
「11ヵ月後でしょう? そういう場合はもう終わったという表現が適切だと思いますがね。
まぁ、遅ればせながら誕生日プレゼントです」
 詰襟のカソックを思わせる黒コートの内側をごそごそとやっていた透は、指先にぶつかった
小さなビンを掴むと、はだけたコートをキッチリと首までしめて小瓶を舞里に放り投げた。
「なんだいこれ? 薬品ならとりあえず間に合ってるよ?」
「崇香さんが居るでしょう?」
 言われて、舞里は驚愕した表情で透を見た。ほんの数時間前の情報が透の所に行くなんてお
かし過ぎる。まさか朝からどこかの屋根でこちらの様子でも伺っていたのだろうか?
301無愛想ハーレクイン:04/12/01 23:06:16 ID:7GdirVSx
「あなたが独り言で悦にいってる間に部屋を物色してたんですよ。気づきませんでした?」
「病室に行ったの!?」
「ぐっすりと寝てました」
「まさか何かしたんじゃ……!」
「しましたね」
「透くん!」
 叫んだ舞里にわずかに笑みを帰しただけで、透は用件はすんだとでも言うように立ち上がっ
た。
「本当は彼女の部屋の合鍵を渡す予定だったんですが、ここに居るのならばそっちの方がいい
でしょう。薬の効果はまぁ……医者のあなたに説明は不要ですね」
「こんなもの貰ったって使わないよ!」
「だと思って既に崇香さんに嗅がせてあります」
「なにしてくれてんの一体!?」
「あなた達の関係は本当に見ていて腹立たしい。どうせ彼女はもう処女でもなんでもないんで
す。薬の効果は“欲望が解消されるまで”。さくっと食べて捨てるなり繋ぐなりしておきなさ
い」
 蒼白な表情で何も言えなくなっている舞里に意味ありげな笑みを投げ、透は来た時と同じよ
うに非常口の誘導灯が張り付いたドアから出て行った。
 その向こうに隠れた手術室があるのは、その手術室を利用する化け物志願者と舞里と透だけ
だろう。その第二オペレーションルームの奥の扉を潜り、廊下を歩いて階段を下りれば、そこ
はもう外である。
「……ちゅ、中和剤……!」
 呆然と座り込んでいた舞里ははっと気がついて呟くと、弾かれたように成分検査に取り掛か
った。
 どうせもう処女ではない……そんな事はわかっている。誰がどういう状況で彼女の処女を奪
ったかだって知っている。理由だって知っている。だが、そういう問題ではない。彼女が犯罪
者だろうと、人間で無かろうと、そんな事は一切関係ないのである。
「……勘弁してよ透くん……!」
302無愛想ハーレクイン:04/12/01 23:07:06 ID:7GdirVSx
 検査機が吐き出した結果を絶望的にも降ろして、舞里は久々に誰かを怒鳴りつけたくなった。

 UNKNOWN

 正体不明の薬では、さすがの舞里も手が出ない。そんな正体不明の成分で形成された薬を人
間に嗅がせるなと叫びたかったが、当の本人は晴れがましい気分で帰路についているのだろう。
 価値観の違いを理解してくれ。こっちは愛を大切にしているんだ。
「……ちょっとまってくれ、ちょっと……」
 薬の効果は欲望が解消されるまで。だったら崇香が自分一人で何とかできるのではないだろ
うか? 朝まで放っておくのか? どこの人でなしだ一体。
「いや、でも、薬の効果がどの程度かにもよるし……それにアレルギー反応とか……だけど、
そんな……」
 眠っている。眠っているはずだ。それに歓楽街にでも行けば、男はいくらでも転がっている。
なにも彼女が嫌っている自分が相手をする必要は無いはずだ。しかし崇香は風邪を引いていて
熱も下がっていない。そんな激しい運動は避けるべきではないのだろうか?
 重い足取りで何とか病室のドアの前まで歩いていき、舞里はドアノブを掴んだまま硬直して
いた。
 開けていいものか、いけない物か。もしかしたら、自分が彼女にレイプ魔として見られるだ
けで話は丸く収まるのではないだろうか? 一生嫌われる上にマシンの整備にも来て貰え
なくなりそうだが、辛うじて彼女の面子とプライドは守られる。
 どちらにせよ、このまま突っ立っているわけには行かなかった。ドアを開ける。とにかくそ
うしなければ話は先に進まない。
「……ごめん崇香ちゃん……許してくれなくていいから……」
 思い切ってノブを回して、舞里は病室へと踏み込んだ。
303無愛想ハーレクイン:04/12/01 23:09:31 ID:7GdirVSx
切らせていただきますすいませんすいません。
だが今なら言える!次こそは!
304名無しさん@ピンキー:04/12/02 01:09:50 ID:uua3SIe5
乙です。続き期待。
305名無しさん@ピンキー:04/12/02 23:17:02 ID:VTaQnfV7
(・∀・)ワクワクワクワク
306名無しさん@ピンキー:04/12/04 15:25:37 ID:XoEmgKwy
「魔法のステージ ファンシーララ」の今市くん×篠原ちさってどうですか
な?
307名無しさん@ピンキー:04/12/07 04:43:35 ID:ahelegJh
誰も来ない(´Д⊂
308シグナルマン:04/12/07 10:24:19 ID:bbCcH2bk
……誰もとおらない……
309名無しさん@ピンキー:04/12/07 15:08:24 ID:San7pHY2
そして誰もいn(ry
310名無しさん@ピンキー:04/12/08 10:08:36 ID:hh1iOaKk
・流れぶった切って純愛物
・万人受けしないネタ(ギター)
・遅筆

ダメだ俺orz
書く気はあるので、二ヵ月程お待ちいただけませんかorzorz
311名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:34:12 ID:fbaoAG8n
276さん 277さん 278さん
待っていてくれてありがとうございます。
そして、お待たせしてすみませんでした。
文章が完成していたもので、てっきり書き込み済みとばかり思っていまして。
久しぶりにスレに来てみれば約半年放置というありさまでした。
今から慌てて書き込みますのでどうかご容赦を。
312名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:36:39 ID:fbaoAG8n
>>93 続き

 翌週の香織は、周囲から心配されるほどにおかしかった。
 空手についての悩みではない。
 そのことについては、本質的な解決ではないのだが、モデル依頼をされたという悩みにより、当面の問題として意識されなくなったという、怪我の功名があった。
 ぼんやりとしていることが多かったり、急に困り出したり。かと思えば少し嬉しそうだったり。
 その理由については香織自身が一番よくわかっている。いままで空手一筋だった自分を女扱い、それもモデルになって欲しい、などという最上級の扱いをされたからだ。
 それが嬉しくて浮ついた気分になったり、自分にそんなことができるのだろうかという不安から困ってみたりしてしまう。
 こんなに自分の感情がふらふらするとは思わなかった。
 空手のことだけを考えていたときはこんなふうにはならなかった。
 結局、何度もモデルを断ろうとしたのに最後の一歩が踏み出せないで、モデルの件について吉村と話すこともできず、新しい感情も御しきれないまま、一週間は瞬く間に過ぎてしまった。

 約束の土曜日。練習を終えて寮に帰ってきた香織は、ひどく落ち着かない様子でそわそわしている。
 見かねた同室の聡子が声をかけた。
「ちょっと、香織。なんか最近落ち着かない感じだけどなんかあったの?」
「な、なにもない」
「なんでそんなばればれの嘘つくの。最近のあんたなんかピリピリしてたけど、なんかここんとこ、それがなくなってるもん」
「それよりどっかおかしくないかな?」
 聡子の言葉を無視して、しきりに自分の服装を気にする香織だったが、ジーンズにティーシャツという格好ではおかしくなりようがない。
「別におかしくないんじゃないの。ふつー。いつものジャージ姿よりはまとも」
 気のない同居人の返事に怒った様子もなく、香織はせかせかと鏡で髪型をチェックし始めた。
 こちらもポニーテールにまとめただけで、ワックスでいじったりもしていないので、これまたおかしくなりようがないのだが、香織は真剣な表情で鏡を覗きこんでいる。
313名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:38:15 ID:fbaoAG8n
 これまでにない香織の態度に聡子は一つの結論に思い至った。
「わかった! カレシだ! そうでしょ。今日デートなんだ」
 香織が慌てて聡子に向き直る。
「ちっ、違う! そんなんじゃないから!」
 聡子はこの同居人がこうまで取り乱すのを初めて見た気がした。
「おかーさんは嬉しいよ。空手にしか興味がなかったあの子がこんなに立派になって」
 聡子はわざとらしく目尻を拭うふりをしてみせる。
「だから、違うって!」
「相手は誰なんだろうねぇ。お父さん、天国で娘の恋人を見極めておくれ」
 天を仰ぎ、よよよ。と無き崩れる聡子。
「聡子っ!」
 妙な小芝居に香織がキレた。
 ものすごい目で自分を睨んでいる香織を見て、聡子はやりすぎを後悔したがもう遅い。 
 聡子がさらなる怒声を覚悟したところへノックの音がした。
「北条さーん。なんか吉村って人が来てるよー」
 間延びした声が室内の二人の気を抜けさせる。隣室の陸上部員だった。
「は、はひっ! すぐ行くからっ」
 香織は裏返った声で返事をすると、どたばたと部屋を動き回った。
 もう一度格好をチェックすると、制汗剤のスプレーを手に取る。香水でないところが香織らしいといえば香織らしい。
「えっ! 吉村って空手部の? そうなんだぁ、以外かもしれない。香織って男は自分より強くないとダメっとか思ってそうだと思ってたけどそうでもないんだ。
 っていうか吉村って空手部員っぽくないよね、どっちかって言うと可愛い系だよね? そっちがいいの?」
 まったく懲りた様子のない聡子が好き勝手なことを言う。
「聡子っ!」
「私の相手してていいのぉ? 愛しい吉村君が待ってるよー」
 にやにやと聡子が人の悪い笑みを浮かべた。
「そんなんじゃないっ!」
 勝ち目がないのを悟ったのか、香織はむなしい抵抗の言葉を口にすると部屋を飛び出した。
314名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:40:43 ID:fbaoAG8n
「ごめん、待たせて」
 聡子のせいで妙に意識してしまい、香織はなぜか吉村の目を見ることができない。
 一方の吉村も、制服と胴着以外の姿の香織を見るのは初めてのため、緊張してどぎまぎしてしまう。
「ぜ、ぜんぜん待ってないよ。僕の家はこっからだとちょっと遠いけど、自転車だとそんなにかからないと思う」
「だったら、門の所で待ってて。自転車取ってくるから」
 香織が元気良く駆け出していく。
「え? あ、うん、わかった……そうだよなぁ、自分の自転車ぐらい持ってるよなぁ」
 密かに、ここに香織を送って来たときのように、再び自分の自転車の後ろに香織を乗せることができるのではないかと期待していた吉村は、とぼとぼと門に向かっていった。
 自転車に乗ってやって来た香織は、なぜか吉村が少しがっかりしているのに気付いたが、さっぱり理由がわからずに、首をかしげた。

「うわっ、なんか美術室の匂いがする……」
 吉村の部屋のドアを開けた途端に、絵の具の匂いが香織の鼻を刺激した。
「絵の具の匂いだよ」
 香織の背後で吉村が笑った。
「ふぅん……。以外に部屋汚いんだな」
 絵の具や、筆、スケッチブックに美術書、カンバスなどが雑然と部屋を占領している様子に驚きながら、香織は部屋に足を踏み入れた。
「そうかな、こんなものだと思うけど。あ、そこの椅子に座って」
 ばつの悪そうな顔で吉村が答える。
 言われたとおりに香織が、椅子に腰を降ろすと、吉村はその正面にある椅子に腰掛け、早速スケッチブックを開いた。
「え! もうはじめるのか? あたしこんな格好でいいの?」
 自信の飾り気の無い格好を見なおして、香織が慌てる。
「とりあえず、軽く腕ならしにスケッチするだけだから。それに格好はそれで充分だよ。気になるなら後で姉さんの服何着か借りてくるよ」
「お姉さんいるんだ」
「うん。じゃあ、できるだけ動かないでね」
 美術家モードに入ってしまったのか、吉村の目つきが空手をやっているときよりも鋭くなった。
 その真剣な表情に圧倒され、香織は結局それ以上なにも言えなくなってしまった。
 鉛筆が紙を走る音だけが狭い部屋に響く。
315名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:43:21 ID:fbaoAG8n
 最初のうちこそモデルらしくしようと頑張っていた香織だが、元来が活動的な性格のため、じっとしているのがしだいにつらくなってきた。
 それを紛らわすために、顔は動かさずに目だけで周囲を見まわしてみる。
 適当に積み上げられた本の背表紙から、いくつかタイトルを伺うことができた。
 近代美術の旗手。写実主義の技法。色の名前。デッサンの基本。などなど、様々なタイトルがあったが、香織の興味をひくようなものはない。
 視線を流すようにして移動させていくと、ようやく見知った単語の入った本が見つかった。その名もヌードデッサン。
 ぱちぱちと目から火花が出るような気持ちになった香織は、慌てて目線を逸らした。
 すると、途端に黙々と自分を見て手を動かしている吉村のことが気になりだす。服を着ているはずなのに、それをすりぬけて、裸の自分を見られているような気がしだしたのだ。
 そう感じだすと、とたんに落ち着かなくなってきた。吉村の後ろにあるベッドまでなにやら意味ありげに思えてくる。
 今まで、こんなにも他人からの、それも男からの視線を意識したことのなかった香織は戸惑った。
 な、なんかすごく落ち着かない。緊張してんのかなあたし。
 やっぱりモデルなんか引き受けるんじゃなかった。
 なんだろう? 見られたところが熱い?
 吉村の視線のせいで、香織の体はしだいに熱を帯びてきた。自分に浴びせられる視線に興奮しだしているのだが、香織にはわからない。ただ、体の奥が熱くなってきたと感じるだけだ。
 時間だけが過ぎていく。すでにスケッチが始まってから二十分は経っていた。
 頭がぼうっとして、なにも考えられなくなってくる。
「ん……はぁ」
 あきらかに疲労から来る吐息などではない、それはとろけるようなあえぎ声だった。
316名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:46:04 ID:fbaoAG8n
 吉村がぴたりと手を止めた。じっと香織の様子を窺う。初めと違いなぜか紅潮したほお、息までが熱っぽい。
「北条さん?」
 疲れたのだろうかと声をかけてみるも、香織はまるで反応せずぼうっとしている。
「北条さん」
 もう一度、さっきよりも強い調子で問いかけてみる。
 すると、ゆっくりと香織の視線が動いた。ぼんやりと吉村を見つめていた瞳に光が戻ってくる。
「え? あ、ごめん。ぼーっとしてた。なんだろ。モデルなんかやったことないから緊張したのかな、悪い。」
 吉村はなぜか謝る香織をまともに見ることができない。
「う、うん。初めてだから疲れたんじゃないかな。きゅ、休憩しようか。なんか、適当に持ってくるよ」
 スケッチブックを放り出し、吉村はあわただしく部屋を出て行った。
 ひとり残された香織は立ち上がると、伸びをした。
「なんだったんだろ、あの感じ。すごくどきどきしたけど。」
 自分の体が自分のものではなくなってしまったような、今までにない感覚だった。
 おそるおそる自分の体に触れてみる香織。
 鋭い刺激が胸に触れた指先から伝わってきた。
「ぁん」
 自分の口からでたとは思えないような甘えた声に香織は驚いた。
「なに……今の声」
 うっとりして、気持ちよくて。こんなのは知らない。
 もしかして、これは、聡子が言っていた……感じるってことなのか?
「で、でもなんでこんなときに。こういうのってエッチな気持ちになったときになるんじゃないのか」
 その手の話題からは逃げるようにして生活してきた香織は、初めての体験に混乱しきっていた。
「とりあえず、紅茶とクッキー持ってきたよ」
317名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:49:38 ID:fbaoAG8n
 紅茶でのどを潤していると、本棚の『ヌードデッサン』が目に入った。
「なぁ、やっぱりヌードって描いてみたいものなのか?」
 言ってしまってから、香織は自分の発言の大胆さに気づいた。
 聞きようによっては、まるでヌードになってもいいような言い方である。
 現に吉村は含んでいた紅茶を噴き出しかけてむせている。
「ごほっ、こへっ。っ、えっと……」
 いきなりの問いに、さすがに吉村も答えづらそうに口をもごもごさせている。
「いや、その、別に深い意味があるわけじゃなくて……」
 あわてて言いつくろうのだが、顔を真っ赤にしてしまっているのであまり効果はない。
「そ、そう! 本棚にヌードの本があるから、なんとなく気になっただけで……」
「それはまぁ僕だって描いたことはあるし、これからも描きたいけど。別にそれだけってわけでもないし」
「描いたことあるのか!」
 意外な返事に香織は驚いた。そして同時に、いったいどんな相手の裸を見たのかという、好奇心がわいてくる。
 しかし、その興味の中に、ヌードモデルへの嫉妬が含まれていることに香織は気づいていない。
「あるよ。そういうヌードモデルを相手にしたデッサンの会とか、そういうのが色々あるんだ。
 男のモデルさんの場合はたいしたことないんだけど、女のモデルさんが相手のときは裸だけが目当ての人が時々いて、それがいやで最近はもう行ってないけどね」
 吉村の言葉はほとんど香織の耳には届いていなかった。あるよ、の三文字だけがぐるぐると香織の頭の中で渦巻いていたからだ。
 お、女の人の裸見たことあるんだったら……私の裸見てどう思うんだろう。
 比べられたら、比べられたらどうしよう。どうしよう、困る、いやだ。
 やっぱり性格だけじゃなくて体まで可愛げがないと思われるのか。
 こんなに筋肉のついた体では女として見られないかもしれない。
 女らしくないということを自分でもわかっているせいで、どんどん気持ちが沈んでいってしまう。
 もはや、ヌードを描いてもらうことが前提の思考になっているのに香織は気づかずにいる。
318名無しさん@ピンキー:04/12/10 00:54:43 ID:fbaoAG8n
 そんな様子を見て、吉村は香織が脱がされると思って困っていると勘違いした。
「あの……北条さん? 僕はその、北条さんにヌードになってくれとか言うつもりはないから安心してくれていいよ」
 純粋に安心させるつもりの言葉だったのだが、空手に疲れ、かといっていまさら普通の女の子のような生活もできない香織には、そう受け取ることはできなかった。
 香織の頭の中でなにかが大きくはじけた。
「気使ってくれなくてもいい。ようするに、あたしみたいな女っぽくないやつの裸なんか興味ないってことでしょ」
 吐き捨てるように言って、香織は立ち上がった。
「気分転換にはなったからそのお礼だけは言っとく。それじゃあ」
 慌てたのは吉村である。わけのわからないうちに、ようやくモデルとして口説き落としたはずの香織が帰ろうとしているのだ。
「なんで!? なんか気に障ることいった?」
「別になんでもない。もう何枚か描いたんだからモデルになる約束は果たしたでしょ」
「北条さんのヌード描きたくないなんて一言も言ってない! 僕は、できることなら、北条さんのヌード描きたい! けど、そんなこと普通は頼めないじゃないか」
「本当に描く気があるなら今すぐ描いてもらおうじゃないか!」
「いいよ! 描く! じゃあさっさと裸になってよ」
 さすがに一瞬間があいたものの、香織は意地になっていたので、いまさら後に引くことなどできずに、ゆっくりと服を脱いでゆく。
 シャツにズボン、勢いよく脱ぐと下着姿になる。大きく息をついて色気のないスポーツブラを脱ぐと、さすがに胸を隠すようにしながらショーツを脱ぐ。
 急展開についていけずに、混乱したままの吉村はその様子をまばたきもせずに見つめている。
 なんでこんなことになってるんだ?
 僕の目の前で北条さんが裸になってる?
「このあとどうすればいいの」
 香織に尋ねられて吉村はようやく現実に帰ってきた。
「え、えと……とりあえず、構えてもらえるかな。あ! いや、やっぱり適当に立って。も、もちろんその胸とかは隠してくれてもいいから」
319名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:02:06 ID:fbaoAG8n
 しかし、香織は胸どころか、股間すら隠そうとせずに最初に言われたように、空手の構えをとって見せた。
 自分で体を隠すのはなんだか負けを認めたようでいやだったのだ。
 腰を落とし、基本の型をなぞる。ポニーテールが上下に揺れた。
「これでいい?」
「いい……」
 香織の体は素晴らしかった。飾りのためではなく、戦いのための筋肉はまさに美しい鎧そのものだった。張り詰めたそれは、静止していてもなお躍動感を感じさせる。
 それでいて、小ぶりな胸のふくらみと、ふくよかなお尻に象徴されるように、女性としての美しさを失っておらず、うっすらとのった脂肪が柔らかなラインを形づくっており、男なら誰でもが自分のものにしたいと乞い願うような体だった。
 練習中にできた日焼けのあとが、最小限の白いままの肌、衣服に覆われていたのであろう部分、を強調し、素晴らしいコントラストをつくっている。
 ところどころにある痣や、傷跡も香織の凛とした雰囲気をより高めるためのスパイスになりはしても、その価値を損なうものではない。
 そして、構えのために惜しげもなく開かれた足のせいで、薄桃色の清楚な秘部とそれを隠し切れずにいる淡いしげみ。
  ごくりと生唾を飲み込むと、吉村はスケッチブックと鉛筆を手に取った。
 だが、書き始める前にたっぷり三分使って頭の中から邪念を追い払わなければならなかった。このとき、吉村はこれまでの十数年で使った以上の理性を使った。
320名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:04:42 ID:jv/jxXHr
||Д゚)シ 支援
321名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:04:59 ID:fbaoAG8n
 ヌードになって五分後。香織は自分の愚かさを呪っていた。自分の八つ当たりが原因で全裸になることになるとは。
 いや、それよりも一番の問題点は、服を着ていたときよりも視線に対して敏感になってしまっていることだった。
 いまや見られている部分だけでなく、視線の届かないはずの背中側までが熱っぽい。体の心からじんわりと暖かくなるような、奇妙な心地だった。
 この千載一遇のチャンスを逃すまいと、吉村は一心不乱に手を動かし続けていたが、ふと自分の絵と本物の香織の間になにか奇妙さを感じた。
 どこか違和感がある。手を止めてじっと絵を見つめ、それから香織の裸身を見つめる。体のラインを追い、そこから細部に入っていくと視線が一点でとまった。
 胸が違うのである。正確には乳首と乳輪。わずかに膨らんだ桜色の部分とその先端。違和感の原因はその先端が立ち上がりつつあることだった。
 吉村は息を飲んだ。
 もしかして……北条さん感じてる?
 視線に興奮してしまうモデルがいるという話は聞いたことがあるけど、まさか北条さんが?
 吉村は自分の考えを即座に否定した。自身の欲望がそう見せているのだと思ったのだ。
 だが、その考えはさらに否定された。
 香織の足の付け根、つまり秘部から太ももへ、とろりと一筋の液体が流れ落ちたのだ。
 香織自身は気づいていないようで、どこかうっとりとした表情のまま動かない。
「……北条さん」
 おそるおそる手を伸ばしていく吉村。
 指先が触れた瞬間。香織は崩れるように吉村にもたれかかってきた。
 耳元に感じる、荒い吐息に吉村はうろたえてしまう。
322名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:07:56 ID:fbaoAG8n
「北条さん!?」
「よ……吉村ぁ……体が変なんだ」
「ちょっ、大丈夫」
 引き剥がそうとする吉村に抵抗しているのか、香織はなかば吉村にすがりつくような姿になっていた。
「なぁ、あたしってそんなに、女としての魅力ってやつがないのか」
 脈絡のない問いに吉村は答えることができない。ただ口をぱくぱくさせるだけだ。
「やっぱり……男はもっと胸も大きくて、可愛げのある女の子のほうがいいよな。こんなに筋肉ばっかりでさ、やわらかくもなくて」
「ぼ、僕の感じだと、え……と、北条さんもやわらかいと……」
「だったら、だったら、私がお前のこと好きだって言ったらどうする……」
 間近でみる香織の目はとても冗談を言っているようには見えない。いつもの凛とした雰囲気はまるでなくて、いつかの道場で見たときのように壊れる寸前のガラス細工のように見えた。
「急にこんなこと言って迷惑かもしれないけど、自分でも驚いてるんだ。あたしが、吉村を好きかもしれないっていうことに、あたしも今気づいたんだから。
 この前の夜に親身になってくれたり、モデルになってくれって言われたりしてすごく嬉しくて、あたし単純だから……それからなんだか吉村のことが気になって」
 卵から孵ったばかりのひよこは初めて見たものを親だと思うことがあるというが、香織の場合もそれに近いのかもしれない。
 とはいえ、きっかけが初めてまともに女あつかいされたというようなものでも、いや、だからこそ、一週間一人の男のことだけを考え続けていれば、本物の想いだといってもいいだろう。
 片思いしている女の子から逆に告白され、吉村の頭はおかしくなる寸前だった。好きな女の子と自分の部屋で二人きり、女の子は全裸、しかも告白のおまけつき。
 吉村はただ目を見開いて驚くことしかできずにいる。脳みそは考えることを放棄してしまったようだ。
「ごめん。なんか急に変なこといわれても困るよな。今の忘れてくれていいから……もう帰るよ。今日は本当にありがと」
 脱ぎ捨てた自分の服をのそのそと香織が拾う。
 香織に背を向けられて、吉村からは香織の様子を窺うことはできない。
 しかし、香織の顔からなにかが零れ落ち、手にしている下着に小さなしみをつくったのが見えたような気がした。
 それと同時に香織の肩が震えているのに気づいた。こちらは気のせいではない。
323名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:09:26 ID:fbaoAG8n
 北条さんもしかして……泣いてるのか?
 吉村は珍しく強引に、香織の肩をつかみ振り向かせた。
 香織の目は潤みきっていて、唇をかみ締めてひっしにこぼれるのを我慢していた。
「……みっともないとこ見せてごめん、うっとおしいだろ? あはは……」
 震える声で途切れ途切れに言いながら、無理やり笑おうとしている香織を吉村は思い切り抱きしめた。
「違う! 違うんだ! 僕が何もいえなかったのは、嬉しすぎてびっくりしたせいで、絶対に北条さんのことが嫌いとかじゃない!」
「いいよ、そんな嘘つかれると……みじめだからさ」
 香織が弱々しく吉村の腕を振りほどこうとした。しかし、吉村は腕を背中にまわし、より強く香織を抱きしめる。
「北条さんずっと前から好きでした!」
 突然、吉村が絶叫した。
「初めて会ったときからずっと好きでした! モデルを頼んだのも好きな人を描きたかったからです!」
 今度は香織が驚く番だった。
「うそだ……」
「うそじゃない! 僕のほうが好きだった時間は長い!」
 わけのわからない自慢をする吉村。
「でもあたしなんかにそんなことあるわけない……」
 自分の魅力にまるで気づいていないせいで、香織は現実を受け入れきれないでいる。
 業を煮やした吉村が覚悟を決めた。
 香織に有無を言わせずに、唇を奪ったのだ。
 香織の目が大きく見開かれ、それからゆっくりと閉じられる。
324名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:13:04 ID:EL22RENn
支援2号
325名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:13:41 ID:fbaoAG8n
あまりに連投しすぎるのもどうかと思うので、ここらへんで区切ります。
次回からエロパートです。
今度はすぐに続きを書き込みます。

かさねて、続きを待っていてくれた人には本当に申し訳ありませんでした。
326名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:21:15 ID:EL22RENn
何か・・・なんか・・・うおお!
唸ることしかできないぐらい好きです。
もしかして俺は脳みそから電波が出ててそれを作者さんが受信したのかと思うぐらい。
ツボにジャストフィットしてますです!

待ちますよ。ええ。待ちますともさ。
327名無しさん@ピンキー:04/12/10 01:22:03 ID:jv/jxXHr
ぱんつぬいで続き待ってます(*´Д`)
328名無しさん@ピンキー:04/12/10 02:36:15 ID:uWQM08eI
萌え(*´д`*)
329名無しさん@ピンキー:04/12/10 17:52:35 ID:rEQo8W99
>>327
風邪ひくぞ

オレモナー

しかし良いなあ、こういう展開。職人さんマジで乙
330名無しさん@ピンキー:04/12/10 22:25:07 ID:E8D/rTBD
>>306
魔女っ娘&魔法少女で萌エロ
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1091865265/

ここで書いてくれると感謝感激雨あられ
331名無しさん@ピンキー:04/12/11 01:44:36 ID:L8U2NQY4
>>326
長く待たされただけに、便秘が瞬時解消したときのような快感だ・・・
次のウン・・・続編を待つ。
332名無しさん@ピンキー:04/12/11 17:24:48 ID:BnS7pD9O
>>330
サンクス。
333323続き:04/12/13 00:46:27 ID:DRwCoX5H
>>323

 しばらくの間、二人はくっついたままぴくりとも動かなかった。
 そして、始まりとは逆に、名残を惜しむように二人の唇が離れていく。
「……っはぁ。え……と、だったら、どうなるんだ?」
 想い人の間抜けな言葉に吉村は苦笑する。だが、すぐにそれは満面の笑みに変わった。
「信じられないけど、僕たちは両想いってことだよ」
「ほんとに?」
「うん」
 力強く吉村がうなづくと、香織が吉村に飛びついた。
 吉村は支えきれずに、そのままよろよろと背後のベッドに倒れこんでしまう。
「ちょっ、北条さん。その……裸のままだと刺激が強すぎて、状況が状況だし、僕だって男だし」
「なぁ、吉村?」
 顔のすぐ横で香織にささやかれて、吉村はどぎまぎした。近すぎて今の香織がどんな表情をしているのか、まるで見えない。
「な、なに」
「あたしとしたい?」
 吉村の頭の先に雷が落ち、前身をくまなくしびれさせたのち、つま先から出ていった。
 い、今の状態でしたいって、ことはあれのことか?
 ……セックス。
 単語が頭に浮かび、心臓は激しくビートを刻んだ。
「ほ、北条さん?」
「好きな相手とだったらしたいものじゃないのか?」
「そりゃしたいけど、けどその」
「さっきモデルになってて、吉村の視線でなんか気持ちよくなって」
 さきほど香織の様子がおかしかったのはそういうわけか、と吉村が納得する。
「これが感じるってことなんだって思って。それで、吉村もあたしのこと好きだっていってくれて、
 言ってること訳わからないと思うけど……あたしの性格だと、今、勢いでいかないと、後からだと絶対にそんなことできないと思うから」
334名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:46:56 ID:DRwCoX5H
 先ほど、人生最良のときを迎えたと確信した吉村だったが、それは誤りだったと気づいた。好きな女の子と自分の部屋で二人きり、女の子は全裸、しかも両想いになったばかりで、彼女はひとつになろうと誘っている。
 明日から、世界中の神様に感謝して生きよう。
「ほ、北条さんがいいのなら僕もしたい。でも、その前にこっち向いてくれないかな。顔が見たい」
「見れるわけないだろうっ! こんな状況で!」
 首筋まで真っ赤になって、香織が怒鳴った。
「恥ずかしいの?」
「殴るぞっ」
「それは嫌だけど……」
 そこまで言うと、吉村はすばやく香織と体を入れ替えた。あっけにとられている香織に吉村がのしかかる。
「えっ? だめだっ、見るな!」
 香織が慌てて顔を隠そうとするも、両腕を押さえられてままならない。
 涙で潤んだ瞳も、薄桃色に染まった頬も、日に焼けた肌も、細い首筋も、鎖骨のくぼみまでもが綺麗だと吉村は感じた。
「綺麗だ。すごく」
 そして、今度はゆっくりと顔を近づけていく。
 香織もそれに応えるべく、目を閉じた。
 空手少女の意外に長いまつげも、緊張して固く結ばれている唇も、すべてが恋人を迎えるためにあった。
 互いの唇にとろけるようにやわらかく、愛おしいものが当たった瞬間、二人は痛いぐらいに強く抱きしめあった。
 二人はぎこちないながらも、だからこそ情熱的なくちづけを交わした。
 吉村の舌が恐る恐る香織の唇に触れた。香織はびくりと体を震わせたが、それに応えるべく唇をわずかに開いた。
 隙間から、進入した恋人の舌は、とびきり甘く感じられた。それをさらに味わいたいと、香織も舌を絡ませる。
 くちゅくちゅと舌が動き、吉村の舌が香織の中に触れるたびに、そこから融けていきそうな心地になる。
335名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:50:33 ID:DRwCoX5H
 いつしか香織はキスのとりこになっていた。
 互いの舌を思う存分に味わい、唾液を交換しあい、唇の心地よさを堪能する。
 吉村が顔を上げると、香織はうっすらと目を開いて、ものほしそうな視線をよこした。
 それに応えるべく、今度は軽い、触れ合うだけのくちづけを交わす。
 吉村が視線をおろした。はりのある美しい丘が目に入る。おそるおそる小さなふくらみに手を伸ばしてみると、それは掌にすっぽりと収まった。
 胸から伝わるぬくもりを感じながら、香織は頬を染めた。
「あの、その……胸小さくてすまない。こんなところまで女の子らしくなくて」
 自分を卑下する香織を止めるべく、吉村が手を動かす。
「んっ! はぁ……ん」
「可愛い女の子しかそんな声はだせないと思う」
 餅のようにむにむにとやわらかい感触を味わいながら、吉村がふくらみ始めた先端をつまんだ。
「ひぁっ、そこはぁ、んんぅっ」
 こらえようとする香織の意思を無視して、敏感な部分をつままれた体は敏感に反応する。我慢しきれずになかば悲鳴のような声が漏れた。
 小ぶりな乳房のぶんまで頑張ろうというのか、乳首が痛いぐらいに立ち上がり、とがっている。
 意地悪をしたくなった吉村が、可愛らしい突起を指ではじいた。
「ひやぁっ」
 しびれるような痛みが走ったかと思うと、じんじんと熱をともなって快感が広がっていく。
 香織はもはや吉村の思うままだった。
 しばらく胸をいじりまわし、香織をもてあそんでいた吉村だったが、とうとう我慢できなくなった。
 淡いピンクの乳首に舌を伸ばす。味を確かめるようにひと舐めするともう止まらない。胸に吸い付き、思う存分しゃぶりだした。
「うあっ、きゅ、急にそんなっ。くぅ、はぅぅ……」
 オナニーもしたことのなかった香織に、この刺激はきつすぎた。
 乳首を優しく甘噛みされるたびに口の端からよだれをたらし、胸を揉みしだかれるたびに目が潤み、恍惚とした表情で吉村の頭を抱きかかえた。
「あ、あっ。なんだ……んっ、こんなのぉ、知ら……なひぃ」
336名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:53:11 ID:DRwCoX5H
 お椀のようにというには大きさが足りないが、形のよい胸がゆがめられるたびに、香織の声が切羽詰ったものになっていく。
「北条さん」
 耳元でささやかれ、乳首をつまみあげられた瞬間。香織の受けた悦びは頂点に達した。
 背筋をのけぞらせ、快感に耐える香織。
「んっ、あ、あ……ひぁぁぁ!」
 いきなり様子の変わった香織に驚いて、吉村が顔をあげた。
「北条さん?」
「……なんか、すごかった」
 全身を包む幸福感の余韻に浸っている香織の顔は、少女ではなく女になっていた。
 あまりの色気の股間にさらなる血液が流れ込む。
「もしかしてイッちゃったの?」
「この感じがっ、ふあっ、そういう……ことなのか? わからないけど、そうかもしれない」
 ぼんやりとした意識のまま、余韻に震える香織が応えると、吉村は嬉しくなった。そして、もっと気持ちよくしてやりたいという心がわいてくる。
「もっと気持ちよくしてあげる」
「?」
 怪訝な顔をした香織だったが、自分の下半身に手が伸びていくのをみて事態を察した。
「ちょ、ちょっと待て」
 そこを触られるのは、まだ少し怯えがあった。
 慌てて体を起こす。
「あ、あたしばっかじゃ悪いからさ、今度はあたしがして……」
 そこで、初めて香織は吉村のズボンが膨らんでいるのに気づいた。
「うわっ!」
 叫んでしまってから、慌てて口を押さえる香織。
 あ、あれは、あれがぼっ……してるんだよな。
 あたしは、本当に今からするんだ、セックス。
 いまさらだが、事態を改めて理解すると、試合のときでさえ感じたことのないような緊張が香織を襲った。
「え、えっと、吉村も脱いでくれなひと、あたしだけ裸っていうのも困る、から?」
 香織の声が裏返り、緊張から妙な話し方になる。
 その言葉に、いまさら脱ぐのも恥ずかしいね。と照れくさそうに笑いながら吉村が服を脱いでいく。
337名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:54:33 ID:DRwCoX5H
 全裸になった吉村への香織の視線は陶然、股間に集中した。
 ぽかんと口をあけて、呆然と見つめる。
「さすがにそんなに見られると恥ずかしいんだけど」
 とは言うものの、吉村は隠そうとはしない。
「どうすればいい?」
「とりあえず……手でしごいてもらうとか」
「こっ! これを!?」
 香織が大きくのけぞった。
「いやだったらいいけど」
「あたしがやるって言ったんだからやる」
 ベッドから降り、吉村の足元に座りこむ香織。
 顔をそむけ、できるだけ見ないようにしながら、香織はペニスに手を伸ばした。
 しかし、触れる寸前で手が止まってしまう。
「やあっ!」
 場違いな気合を発すると、香織の手が素早く動き、勃起したものを握り締めた。
 驚いたのが吉村である。まるで加減せずに勢いよくこられたため、握りつぶされるかと思うほどに痛い。
「ぎょぉおっ! 痛い! 痛いってば、もっと力抜いて優しく」
 情けない悲鳴をあげるがこれは男なら仕方ない。
 顔を真っ赤にしながら、申し訳なさそうに香織が力を緩める。
「ごっ、ごめん! 加減がわからなくて。ここからどうすればいい?」
「そのまま上下に動かしてくれると嬉しいんだけど」
「わ……わかった」
 ごくりと生唾を飲み込むと、香織はがしがしと荒っぽく握り締めたそれをしごきたてた。
 途端に吉村が二度目の悲鳴をあげる。
「いっ! 痛いっ!」
「ご、ごめん!」
 ぱっと手を離した香織は、おそるおそる自分の握っていたものをちらりと見ると、即座に視線をそらせた。
「もっと優しくしてくれると嬉しいな。ここは急所だし」
 正確には睾丸が急所なのだが、敏感な部分ということに違いはないだろう。
 現に、吉村の目には涙が滲んでいる。
338名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:56:05 ID:DRwCoX5H
「なんでこうなんだろうあたしは……。がさつで……」
 香織は度重なる失敗に頭を垂れて落ち込んでしまう。
「だれだって始めてはしょうがないよ。慣れればいいだけだし」
「なっ、慣れるかな」
 うつむいた香織のほほに朱が走るが、吉村からはつむじしか見えない。
 吉村も言ってはみたものの、慣れている香織が想像できない。むしろ慣れないままのほうが可愛いかな、とやくたいもないことを考えてしまう。目の前の少女に知られたら正拳が飛んでくること間違いなしだ。
「……とりあえず、もう一回してもらえる?」
「う、うん」
 吉村のものはダメージを負ったことを微塵も感じさせずに、そそり立っている。
 今度はゆっくりと、しかし目はそっぽを向いたままで、香織はペニスを包み込むようにして触れた。
「痛くないか?」
「うん。大丈夫」
「よし……それじゃあいくぞ」
 わずかに不安をおぼえた吉村だったが、今度は三度目の正直というやつだった。
 しゅにしゅにと皮のこすれる音が聞こえるたびに、ペニスに血液が流れ込みさらに硬く、大きくなる気がする。
「これでいいのか?」
 真剣な様子の香織なのだが、やっていることがやっていることだけに、どことなく間抜けな感じがする。
「気持ちいいよ。北条さん。好きな人にされるのってすごく気持ちいい」
「そんなのは言わなくていいっ!」
 ぎこちなかった香織の動きもしだいに滑らかになっていった。
 それにつれて吉村の息も荒くなっていく。
「北条さん」
「なんだ」
「その、今度は……口でして欲しいって言うのはだめかな」
「口で? なにを?」
「僕のを舐めて……」
「変態っ!?」
 勢いよく顔をあげた香織が叫んだ。
339名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:57:15 ID:DRwCoX5H
「いいっ! 違うって。けっこう普通のことのはず……だと思う」
「本当に? 私をだますつもりじゃないだろうな」
 眉をよせ、あくまで疑う香織。はっきりいって香織の性知識は小学校の性教育に毛が生えたようなものである。そんな世界にいればフェラチオなどはアブノーマルな行為にしか思えないのだろう。
 見つめられることに耐え切れなくなったのか、吉村が手をばたばたと振った。
「無理ならいいよ。全然いいから」
「いや、あたしも女だ。他の女がしてるなら負けられない。どうすれば気持ちいいんだ?」
 勝ち負けの問題ではないとは思うものの、せっかくその気になってくれたのに水を差すほど吉村も枯れてはいない。
「えっと……口でくわえてしごいたり、舐めたりすればいいと思う。それじゃあ、よろしく」
 よろしくされてもおいそれとできるものではない。
 口に含むとなれば、さすがにそれを見ないわけにはいかない。
 血管が浮いて、痛いぐらいに勃起したペニスをまんじりともせずに見つめる。
 眉はしかめられたままで、とても色事の最中とは思えない。
「ほんとに無理ならいいから」
 心配した吉村の声も耳に入らない。
「あー」
 がぱりと口を開け、ゆっくりと口元を近づけていく。
 ちらちらと香織の舌が口の中で動いているのが吉村に見えた。それが今から己のものにからみつくのだと思うと、それだけでイッてしまいそうになる。
 香織は緊張しているのか、呼吸の感覚が短い。はぁはぁとかすかな息遣いが部屋の片隅に響く。
 そのため、吉村はペニスで香織の息遣いを感じ、その緊張ぶりを察することができた。
 開かれた香織の唇から舌が顔を出した。いつのまにか香織の瞳は閉じられている。まつげが小刻みに震えていた。
 少しずつ、香織の口元に吉村の勃起したものが近づいていく。
 すえたオスの匂いが香織の鼻を刺した。以外にもそれほどいやな匂いだとは思わない。
 もう、吉村が香織の舌先の熱を感じられるほどの距離に達し、粘膜同士が触れようかという瞬間。
340名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:59:00 ID:DRwCoX5H
「や、やっぱり恥ずかしくて無理だっ! できない!」
 真っ赤な頬をさらに染めて、香織が顔を上げた。今にも泣きそうな顔をしている。
「こ……今度までには絶対にできるようにするから、練習するから……今は許して!」
 それほど恥ずかしいのを堪えて、そこまで頑張ってくれたことだけで吉村は満足だった。
 そして想いが堪えきれずにあふれ出る。
「ああ! いつもはあんなに凛としてかっこいいのに、今はこんなに可愛いなんて! それも僕のために!!」
 吉村が確実になにかを踏み外した。
「馬鹿なこと言うんじゃない!」
 暴れようとする香織をベッドに引き上げると、キスをしながら押し倒す。
「んむ! んっ……」
 とたんに香織の体から力が抜けていく。
「北条さんがあんなに頑張ったんだから次は僕の番だよね」
 勝手に宣言すると、吉村は舌を香織に這わせだした。
 胸元の白と褐色の日焼けの境界線にゆっくりと舌で触れたのを皮切りに、じっくりと味わうように香織を舐めつくす。
 まず左側の鎖骨をなぞり、胸をとおり、わきに到着する。同じように右側も丹念に愛撫していく。
 舌が動くたびに香織の体は小刻みにふるえ、可愛らしく反応した。
 おなかのあたりに舌がやってくると、香織の体が硬直した。
 なぜなら、そこは香織が誇らしく思うと同時に、嫌悪している部分でもあったからだ。
 普通の女の子とは違う部分。割れた腹筋は鍛え上げた自分の証であり、女らしくない自分の証でもあった。
「そ、そこはいいよ……そんな男みたいなところ」
 香織が弱々しく恋人をとめようとする。
「どうして? ぜんぜん男みたいじゃないよ。すごく、すごく綺麗だ」
 腹を割っている線にいとおしげにくちづけした吉村は、今まで以上に執拗に口を動かした。
「……っ、ふぁっ、あっ、くぅぅ」
 触れられた部分への嫌悪感がどんどん消えていく。残るのは誇りだけ。
 香織はくすぐったいような、気持ちいいような、妙な心地で吉村に感謝していた。
「ひゃっ」
 おへそを舐められた香織が悲鳴をあげたのをきっかけに、吉村は香織のお尻に手を回し軽く持ち上げた。
341名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:00:44 ID:PcflTBoo
支援
342名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:01:06 ID:DRwCoX5H
 香織の足は自然と開かれてしまう。当然、大事な部分は丸見えだ。
「ちょっ、吉村っ! 見るなっ、やめろっ」
 ぱっくりと開かれた足を閉じようともがく香織だが、普通の体勢ならともかく、今のような格好では力がまるではいらない。
 しかし、吉村は吉村でなにを考えているのか、なかなか香織自身に触れようとはしない。ただ、じっとそこを見つめるだけだ。
 すると香織はモデルをしていたときよりも激しい視線を感じ出した。しかも今度は本当にそこを触られているような感覚さえする。
 じっとりと、体の奥から蜜が湧き出した。
 その様子を見ても吉村はまだなにもしようとしない。いや、顔を近づけて匂いを嗅いでいるようだ。
 ひくひくと鼻を動かすと、鼻腔を通り抜けた匂いが直に脳を刺激する。
 初めて嗅ぐ馥郁たる女の香りは吉村を夢見心地にさせた。
 が、その行為は香織にとっては羞恥を煽ることに他ならない。にもかかわらず、なぜか快感は増していくばかりだ。
 やがて、香織の秘所に溜まっていた愛液は限界を超えたのか、とろとろと重力にしたがって流れだした。
 ひきしまったお尻の割れ目にそってこぼれていき、とうとううっすらと色素の沈着した小さなすぼまりにまで達する。
 その頃になると、香織から普段の強気さはなりを潜め、ただ弱々しい声しかでなくなっていた。
「吉村ぁ、本当に恥ずかしいんだ……」
 小さな声が耳に入ったのか、吉村がおもむろに動いた。
 しかし、香織が想像したように手を離したのではなく、指でそこに触れたのでもなかった。
 吉村は、さらに香織のお尻を持ち上げると、自分はそのままの格好で首を伸ばし、香織の秘所にむしゃぶりついた。
「そんなところ、んっ! くぅ……ひっ、だめ、だっ」
 初めて味わう女の味に、吉村は夢中で舌を動かし、音をたてて蜜を吸った。
 一方、香織ももっとも敏感な部分をいじり、舐めしゃぶられて頭が羞恥と快感でどうにかなりそうになってしまう。
 やわらかい肉ひだをうねうねと動く舌が掻き分けていくたびに、背筋がのけぞり、かみ締めた唇からは堪えきれずに甘い悲鳴が漏れる。
343名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:02:49 ID:DRwCoX5H
 偶然、歯がひっかかり、包皮から埋もれていたクリトリスが顔を出すにいたって、香織は恥も外聞もなく吉村の頭にしがみついた。
「も、もうっ、本当にこれ……以上はだめ、らめらっ!」
 切羽詰った香織の様子に、さすがに吉村も顔をあげた。口元は香織の体液でぐしょぐしょになっている。それを手で拭うと、真剣な表情で香織を見つめた。
 香織は今までに感じたことのない感覚を受け止めきれずに泣いていた。ぽろぽろと涙をこぼしている。
「怖いよぉ。吉村ぁ、なんだかおかしいんだ。あたし、あたし・・・」
 吉村が優しくキスをしてやると、香織はわずかに安心したようだった。しゃくりあげるのが止まった。
「いまからするよ。初めてはつらいって聞くけど、できるだけ優しくするから」
 恋人の言葉を全面的に信頼しているのか、香織は黙ってうなずいた。
 それを合図に吉村が腰を動かし、挿入しようとする。しかし、初めてで緊張しているせいか、なかなか上手くいかない。
 濡れた表面をこするばかりで中に進入できず、失敗の数だけ香織が嬌声をあげた。
 幾度目かの挑戦の末、ようやくこれまでにないぐらい硬くなった自身の扱いに慣れたのか、香織の入り口に亀頭がわずかに沈み込んだ。
 はぁはぁと香織の呼吸が吉村の耳に届く。それにリズムを合わせ、一息にペニスを香織の中に沈めた。
 香織の中は素晴らしい締め付けだった。他人をなかなか受け入れない性格そのままに、媚肉は吉村の侵入を拒む。
 しかし、一度ペニスを許してしまうと、きつすぎるといってもいいほどに、きゅきゅうと初めての男を捕まえて離そうとしない。
 まさに香織そのものだった。
 その上、内側のひだが常にうごめき、間断なくペニスを刺激する。
 香織の引き締まった身体をつくった空手は、こんな部分にまで極上の影響を及ぼしていた。
344名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:04:20 ID:DRwCoX5H
 目をぎゅっと閉じ、初めてを堪える香織。縋るものを求めて、その手は自然と吉村の背中にまわされていた。
「くぅぅぅっ」
 香織が眉を寄せ、破瓜の痛みに耐えるそぶりをみせる。
 あまり刺激しないように、吉村もぴたりと動きを止めた。
「どう? 痛い?」
 ただ体を硬くしている香織を案じて、吉村が声をかける。
 しかし、香織はゆっくりを首を振った。おそるおそる閉じられていたまぶたをあげた。
「……痛くない」
「へ?」
「全然」
「え?」
 予想外の展開に、吉村は間抜けな受け答えしかできない。
 ぼんやりしたままでいると、香織が困惑した顔で口を開いた。
「なんだか変なっ、あっ……感じはするけどぉっ、痛くはない。は、初めてって痛いものなんだろう? なんで? あたし、本当に初めてなのに、なんで? 嘘なんかついてないのに、痛くないよぉ」
 激しい運動をしているうちに、処女膜がなくなってしまうということがある。香織の場合は厳しい空手の練習中になくなってしまったのだろう。
 しかし、そんなことのわからない香織は、自分が嘘つきだと疑われるのではないかと怯えている。
 そんな香織を吉村は強く抱きしめた。
 自分を包み込む力に香織は安堵する。
「大丈夫。嘘ついてるなんて思ってないから安心して。初めてが痛くなくてよかったよ。北条さんを苦しませなくてすんだんだからさ」
 きゅっと自分に覆いかぶさる体にしがみつき、泣きそうな声で香織が言った。
「……吉村ぁ」
「かっこつけすぎてる?」
「ばか」
 言葉の意味とは裏腹に、それを言った香織は幸せそのものだった。
「動いていいかな」
「うん」
「良かった。じっとしてるだけで気持ちよすぎて、北条さんを気持ちよくさせてあげられなくなりそうで」
 香織は照れ隠しに怒鳴ろうとした。しかし、それはかなうことがなかった。
 おそるおそる吉村が腰を動かし始めたからだ。
345名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:06:53 ID:DRwCoX5H
「ひぁ! ……あっ」
 ぱくぱくと香織があえいだ。
 破瓜の痛みがなかったとはいえ、初めてに変わりはない。
 隙間なくペニスに絡みついた柔肉をこすられて、声にならない声をあげる。
「痛い?」
 ぷるぷると首を振る香織。
「ち、違う。……電気が走ったみたいになって」
 吉村は安心して再び動き始めた。
 みっしりと詰まった香織の秘部は、自分のものを引き抜くのにも力がいるほどに、吉村を咥えこんで離そうとしない。
 たっぷり時間をかけて一往復を終えると、香織は放心したようにぽっかりと口を開けていた。
 本人の意思とは関係なく、ひくひくとうごめく内壁が、香織の感じている快楽の度合いをあらわすように激しくうねって、更なる動きを求めている。
 それに応えて吉村は抽挿を繰り返した。
 はじめはぎこちなかった動きも回を重ねるごとに慣れたものになっていく。
 肉棒が突き入れられると、そのぶんの愛液があふれ、シーツを汚した。
 ぐちゅぐちゅと粘膜が絡まりあい、二人は初めての行為に没頭していた。
「はぁっ、くぅぅん。よひむらぁ、すごひよぉ……あそこが、あそこがぁ」
 すすり泣くようにして押し寄せる快感の波に耐えながら、香織が吉村の背に回した手に更なる力をこめた。
「北条さん、僕も気持ちいいよ」
 好きな女を思うままにしているという満足感が、吉村の行動を加速させていく。
 今まで以上に激しく、香織の奥まで侵入する。
 体の一番奥を突かれ、思わずのけぞった香織が、恋人の背中に爪をたてる。
「ひぁぁっ! あぁ……んぁっ、こわひよぉ、おかしくなるぅ……」
 吉村の体にしがみつくようにまわされていた足が、香織の自由にならなくなり、伸ばされる。ぴんと伸びた爪先が痙攣するように揺れた。
 それでも、嬌声をあげるのを恥ずかしがっているのか、大声を出すことはせず、ひたすらに堪えている。
 一方の吉村は限界に近づいていた。
 ただでさえ狭かった香織の中が、きゅうきゅうと締まりだしていたからだ。
 吉村がピストンに慣れだしたように、香織の媚肉も男を受け入れることに慣れだしたのだろう。今まで以上に妖しくうごめき、吉村を責めたてた。
346名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:08:19 ID:DRwCoX5H
「あぁーっ! だめ、だめ……もうらめぇっ!」
 とうとう我慢できずに、香織が嬌声をあげた。
 と、同時に吉村も限界を向かえた。初めてにしては十分以上に耐えたと言っていいだろう。
 慌てて己のものを引き抜こうと身を引く。
 しかし、なにを勘違いしたのか香織が吉村にしがみついて離そうとしない。
「らめぇ、はなれなひでぇ……怖いよぉ」
「っ! 北条さんっ!」
 恋人の名を呼ぶと、吉村のペニスがびくびくと痙攣した。
 亀頭が膨らんだかと思うと、勢いよくどろどろの濃い精液を放出する。
 もはや声もでない香織がのけぞり、秘所が最後の一滴まで搾り取ろうと肉棒を締め上げた。
 香織は一つにつながったまま、気を失い、ぐったりとベッドに沈み込んだ。
 主の意識がなくなってからも、淫部はぴくぴくと動き、最後まで吉村に尽くそうとしている。
 力を失った己のものを抜き取ると、荒い息をつきながら、吉村は香織を見下ろした。
 自分以上に荒い息遣いでいるが、その顔は幸せそうに安らいでいる。
「はぁー」
 大きく息を吐くと、吉村は二人とも汗だくなのに気づいた。
 タオルを取ってこようとベッドを降りかけた吉村だったが、ふと思いついて再び香織に覆いかぶさった。
 そのまま香織の汗を舌ですくい、舐めだしたのだ。
 首もとをぺろぺろやっていると、くすぐったいのか、口元をほころばせて香織が身じろぎする。
 それを面白がって舌を動かしているうちに、香織が目を覚ました。
 初めのうちはぼんやりとしたままで、状況がわかっていない様子だったが、しだいに意識がはっきりしだしたのだろう。自分の体を嘗め回している吉村に気づいた。
「なにをしている」
 まだ本来の調子をとりもどしていないのか、どこか間抜けな質問だった。
「汗を拭き取ってるんだ」
「舌でか」
「うん」
 こっくりと吉村がうなずいた。
 ここでようやく覚醒しきったのだろう。
 素早く飛びのくと、布団で体を覆い隠した。
347名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:13:48 ID:DRwCoX5H
「へっ、変態!」
「普通の恋人どうしならみんなやって……」
「それは絶対嘘だっ!」
「ばれた?」
「当たり前だっ」
「でも、体はなんとかしないと。とりあえず……シャワーでも浴びる?」

 香織の強固な主張により、二人は別々にシャワーを浴びた。
 風呂場まで服を抱えて走る香織の揺れるお尻を見て、飛び掛るのを我慢したり、シャワーを浴びながら、背中の引っかき傷の痛みににやにやしながら耐えていたのは吉村だけの秘密である。
 照れくさいような、嬉しいような。恥ずかしいような、どきどきするような。不思議な心地で二人は部屋に戻った。
 しばらくの沈黙のあと、吉村が口を開いた。
「えっと……モデルの続きしてもらっていいかな」
 途端に香織の顔が真っ赤に染まった。
 先ほどまでの行為のきっかけとなったことを思い出したのだ。
 あたふたとしている香織を見て、吉村が苦笑する。
「大丈夫。今度はきちんと服をきてもらうから」
 それを聞いて、今度は香織が苦笑した。
 それから一時間。様々なポーズの香織を吉村がスケッチブックに写し取っていった。
「どうかな、これなんかいい感じに描けてると思うんだけど」
 吉村が香織でいっぱいのスケッチブックを開いた。
 香織がそれを見て溜息をつく。
「やっぱりあたしじゃないみたい」
「その、僕が言うのもなんだけど……北条さんってもっと自分に自身を持っていいと思うよ。すごく綺麗だし」
「なに言ってるんだ」
 ばしばしと吉村の背中を香りが叩く。
「ぐっ、いや、本当に、モデルがいいから僕の絵も上手く見えるんだ。それに……」
 そこで言葉をきると、吉村は意を決したように再び話しだした。
「それに、やっぱり好きなことを一生懸命やってる人はすごいと思う。
 だから、その、つらいときもあると思うけど、僕に手伝えることがあるならなんでもするから、あんまり自分を嫌いにならないで欲しい」
 言い終えると吉村は香織の様子をそっと窺った。
348名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:17:04 ID:DRwCoX5H
 香織はしばらく黙っていたが、ゆっくりとうなずき、かすかに笑った。
「北条さん!」
「本当にありがとう。心配してくれて。うん、あたしはもう大丈夫だと思うよ。なんだか吹っ切れた。
 吉村の言うとおり、好きでやってる空手なんだ。吉村見ててそれを思い出した」
「僕を?」
「吉村が絵の話するときとか、描いてるときとかに、楽しそうだったり、嬉しそうだったりするの見てて、なんか最初に空手始めたときの気持ちを思い出した気がする。
 空手習い始めたときはそんな周りの期待とか、プレッシャーなんかぜんぜん感じてなくて、ただ自分が好きで楽しかったからやってたんだと思うと、今の自分がバカらしくなってさ。
 吉村が言ったみたいに、あたしには休憩が必要だったんだなと思う。今だからそう思えるんだろうけど。いい息抜きになったよ。
 それに……その、空手以外の楽しみも見つけられそうだし」
 香織は言い終えるとはにかむように笑った。

 それから三日後。香織は引き止める吉村をむりやり引きずって、前回の試合で負けた大山美冬の通う学校をたずねた。
 なかば道場破りのようなかたちで訪れた香織の頼みを美冬は快く受け入れ、二人は試合をすることになった。
 結果は引き分け。勝てはしなかったが、香織にとって満足のいく試合だった。
 芯が太くなった感じがする。とは対戦後の美冬の言葉である。

 その後、密かにファンの多かった香織を奪ったとして吉村が多くの男子生徒と少数の女生徒に恨まれたり。
 文化祭に出品された香織をモデルとして描いた吉村の絵が、うっすらと情事の後をイメージさせるとして学校で問題になったり。
 当日になって絵のことを知った香織が吉村に上段回し蹴りをきめたり。
 色々あったがそれはまた別の話である。
349名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:20:18 ID:DRwCoX5H
長い間放置してあったのに暖かい感想ありがとうございます!

金曜日には書き込むつもりが、忙しくて今日になってしまいました。
かなりの大量投稿になってしまいましたが、ご容赦下さい。
350名無しさん@ピンキー:04/12/13 01:24:06 ID:LSstAmcA
傑作乙&萌え
またよろしく (*´д`*)ノシ
351名無しさん@ピンキー:04/12/13 04:03:52 ID:gxhnUxAd
4ヶ月越しのGJ!!!
可愛い二人がイイですな。
また読みたいです。
352名無しさん@ピンキー:04/12/13 05:55:09 ID:8N+CjPnv
GJ!!
353名無しさん@ピンキー:04/12/13 14:59:31 ID:gPGdB5fW
神はこの世に居られた。 
すばらしいです。
354名無しさん@ピンキー:04/12/13 23:34:01 ID:eUBiO6Rr
なんか、ものすごく初々しい感じでエロかったぜ。
ぐっジョブ!
355名無しさん@ピンキー:04/12/18 01:55:04 ID:TsvaxG8L
職人さ〜ん、来てくださ〜い!
356名無しさん@ピンキー :04/12/21 05:59:54 ID:R8D0Gf06
保守
357 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:45:27 ID:qlS9fopl
「ミニスカートはあれはすぐにSEXできるように作られたに違いない。あの形をちょっと考えてみろ。な。
だから私はスカートは嫌いなんだ。」

「はあ・・なるほどねえ。」

「匠君は私にそういう女であれというのか?」

「いや、違いますけど。たまにはスカートはかないんですか?って聞いただけじゃないか。」

「スカートなんて高校のときの制服でこりごりだ。そんなに好きなら匠君がはけばいい。」

「俺が?冗談でしょ。涼子さんはそう言うけど涼子さんの制服姿って皆に結構評判良かったんだよ?」

「う・・・・そういう他人の評価の話をしているんじゃない。せ、制服なんて男も女もズボンでいいんだ。」
特徴ある後ろで束ねた艶のある黒髪を揺らしてそう主張してくる。
358 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:46:19 ID:qlS9fopl
男言葉にこの内容。
しかしながらこんな話はするものの、涼子さんは別に今時はやりのジェンダーフリー論者という訳ではない。
ある時は男は力強くあるべきだと主張するし、涼子という自分の名前はとても女らしくて良いなどと言ったりもする。
たまに互いの部屋に遊びに行った時などは男を台所に立たせる訳にはいかないなどと言って中々上手な手料理を振舞ってくれる。
どちらかといえば古風な人間だ。
「そもそも匠君だって半ズボンは穿かないだろう?」

「そりゃ小学生じゃないんだから。ジョギングでもしない限り穿いたりしないよ。」

「だからそれを聞いているんだ。何でジョギング以外で穿かないんだ?理由を言え。」

「うーん。そりゃなんとなく恥ずかしいから。かな。」
俺がそう言った途端にんまりと笑ってくる。
359 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:47:49 ID:qlS9fopl
「ほうら、男だってそうじゃないか。女だっておんなじだ。」

「そうかなあ・・。」

「そうに決まってる。恥ずかしげもなくはいているほうがおかしいんだ。私は中学、高校とずっと恥ずかしかった。」

「まあ、涼子さんの勝手だけどさ。」

「ふふ。まあ、そう拗ねるな。私だってロングのスカートくらいは持っている。匠君が見たいというならそのうちはいて練習に来てやってもいい。」

議論が自分の勝ちで終ると確信したからだろう。勝ち誇った表情でそう言ってくる。
カチンときたので言い返してやる。

「べつにはいて来てくれなんていってないよ。でも恥ずかしい恥ずかしいって言ってるけど。
 涼子さん今年海に行く時ビキニかワンピース型かでさんざん悩んでたじゃん。」

「あれはそういう場所なんだからいいんだ。私は普段いる場所ではくスカートが恥ずかしいといったんだ。」
それにビキニにしないといった時、匠君はがっかりした顔をしたじゃないか。などと小さい声で言い足した。
360 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:48:53 ID:qlS9fopl
俺たちが議論をしているここは、練習スタジオの中だ。俺は涼子さんとバンドを組んでいる。
バンドといっても2人組み。俺が曲を作ってギターで演奏し、彼女が歌う。
ロックともジャズともなんとも言えない感じの曲だし、なんと言っても大学生のサークルレベルではあるのだが、
結構な美人である(喋らなければ)涼子さんの見た目もあって週末に駅前などで演奏するのだがそれなりに固定のお客さんもいたりする。
まあ何で毎週聞きにくるのかと常連さんに密かに聞いたところ、
なんでも涼やかな目元とあのでかい胸がたまらないのだとか言っていたので音楽性で支持されている訳ではないわけだが。
個人的には人数を集めてライブハウスでハードロックでもやりたいのだが残念ながらメンバーが集まらない。
俺が探してきて入れてもすぐやめてしまう。涼子さんと合わないのだ。

原因は多分に涼子さんにあった。
361 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:50:15 ID:qlS9fopl
涼子さんは非常に難しい人間だ。
彼女と初めて出合ったのは高校の時の図書委員会だった。
俺が2年で涼子さんが3年の時だ。

最初に持ったイメージは<付き合いづれえーー>。
まず絶対に敬語などを使ってはならない。先輩等と呼ばれるのも嫌う。呼び方は涼子さんだ。
「涼子先輩、席取っておきましょうか?」の一言で一週間口を利いてくれなかったこともある。
後、男にちやほやされるのも嫌がる。

美人なので初めて会った男は機嫌を取りたくもなるというものだが、大抵の男はここで手ひどく撃沈される事になる。
いきなり初対面で涼子ちゃん先輩などと言った男がそれ以降図書室で見かけなくなったりしたこともある。
男らしいのは建前で、本来の涼子さんは対等に付き合える友達が欲しいのだという事なのだが、
実に生真面目な生き方と言っていい彼女の事が判るまで俺も大分時間がかかった。
362 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:51:24 ID:qlS9fopl
そんな涼子さんと俺が仲良くなったのは、音楽の趣味を通じてだった。
ある日図書室に誰もいないのを良い事にディスクマンにピストルズを入れて頭を振っていた俺は肩に置かれた手に凍りついた。
しかしそろそろと振り返って見てみるといたのは教師ではなく、とっつき辛いと思っていた涼子さんだった。
「何聞いているんだ?」

「え??あ、すいませんって。え??」

「だからそれ、何聞いてるんだ?」

「えと、あの、ピストルズです。」
その時、敬語じゃなくて良い、と言いいながら微笑んだ涼子さんの顔を忘れられない。
その後知ることになる彼女なりの精一杯の笑顔でそうか。と言った後、横に座ってにこにことパンクは何を聞くのか。
The Damnedの『地獄に堕ちた野郎ども』はなかなか名盤だぞ聞いた事あるかなどと語りだした。
その後一時間ほどもピストルズからブルーハーツまで語り合った後、彼女は私は歌が上手いんだ。
カラオケに行った事も無いんだが、いつかバンドを組んで歌ってみたいんだ。といってぽんと俺の肩を叩いた。
363 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:51:53 ID:qlS9fopl
俺が一年間猛勉強をして追いかけるように涼子さんと同じ大学に入ったのはまあ、そういうことだ。
ギターを死に物狂いで練習した事も。
確かに付き合いづらいし、あまり男として扱われてはいないのだけれども、そうやって俺は彼女の傍にいる。
364 ◆/pDb2FqpBw :04/12/21 17:54:29 ID:qlS9fopl
2次でなくオリジナルです。
今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
365名無しさん@ピンキー:04/12/21 20:46:04 ID:0LNw8k8o
いいね、実にいいです。

欲を言うなら、匠側の口調が柔らかければ、メリハリがついてより読みやすい希ガス
366名無しさん@ピンキー:04/12/21 22:05:34 ID:vuutxKXk
気が強くて男言葉でしかも年上!
良いです。俺のツボです。
続きも期待してまってます。
367名無しさん@ピンキー:04/12/21 22:38:12 ID:rs6KlV2S
こういうのいいなー
368名無しさん@ピンキー:04/12/22 02:53:57 ID:KyBlPxKE
意外と人いるのね。

続きを期待sage
369 ◆/pDb2FqpBw :04/12/22 14:03:25 ID:y+4mWtbV
「ちょっと待て。それは違うぞ。その認識は間違っている。」

「そうかなあ。」

「デイブ・ムスティンがメタリカを首になったのはアルコール問題だぞ。実生活がきちんとしていない奴と一緒にやっていく事は出来ない。」
今日何故か急遽連絡もなしにうちに来た涼子さんはバムバムと机を叩きながら我が事のように主張してくる。
なんだか妙に<実生活がきちんとしていない奴>という部分に力が入っている。

「でもデイブはメガデスで良い曲一杯書いてるだろ?そのまま残っていれば違ったメタリカがあったかもしれないじゃないか。」

今のメタリカもロック色はロック色でいい。
しかしデイブがいればスラッシュメタルとしての色も残った又違うメタリカが見れたのではないかと俺は言いたい訳だ。
370 ◆/pDb2FqpBw :04/12/22 14:04:44 ID:y+4mWtbV
「むう、本当にわからずやだな匠君は。ちょっとまて、このお菓子に麦茶は合わない。コーヒーを入れてくる。」
そう言って立ち上がり、玄関横の流しにあるコーヒーメーカーに水を入れる。

「涼子さんコーヒーその戸棚の中」
「そんな事は知っている。」

戸棚の中から粉のコーヒーを取り出し、ザラザラとコーヒーメーカーに入れる。
軽量カップを使わずに美味しいコーヒーを入れるのが涼子さんの特技の一つだった。

「うちの父親が空手道場をやっていると言うのは匠君は知っていたな。」
背筋のピンと張った格好でコーヒーメーカーのスイッチを入れながら言う。

「ああ、なんかおっきな道場だったよね。テレビにもたまに出てる。」
涼子さんの実家の家はかなり和風だと聞いた事がある。
371 ◆/pDb2FqpBw :04/12/22 14:05:41 ID:y+4mWtbV
「その父が常々言っていた事がある。」
流しで洗った手を拭きながら戻ってくると又対面に座り込む。

「何さ。」
「大人になったら人の善意に期待してはいけない。誰も注意してはくれないのだから。だから子供のうちに他人に迷惑をかけないすべを学ぶのだと。」
「・・・なるほど。」
「無論、更正を期待しないと言う事ではないぞ。そういう意味ではさっき言った事は失言だった。
 私が言いたいのは一つの目標に向って頑張る仲間の中に、そういう人間がいた場合、距離をおかなければならなくなるかもしれないという事だ。」

えらく回りくどい言い方をした後、涼子さんは立ち上がってコーヒーを入れに行った。
372 ◆/pDb2FqpBw :04/12/22 14:06:39 ID:y+4mWtbV
「私もメガデスは大好きだ。偉大だとすら思っている。しかしきっと彼がドラッグやアルコールを止め、
 ああいう曲を作れるようになる為にはメタリカを首になった事も彼にとっては重要なステップだったはずだ。無論メタリカにとっても。」
「なるほどねえ。うん。それはわかるような気がするな。マーティ・フリードマンと出会わずにメタリカに居たままじゃあまたデイブも違ったかもしれない。」

そうだろうそうだろうとコポコポとコーヒーを入れながら涼子さんは満足そうにポニーテールに纏めた髪を揺らしながら頷いている。

「しかしだ。デイブがメタリカにいた頃に生活態度を改めていて、そのままであったとすれば、匠君も言うように私も見てみたかったな。」
生活態度を改めていてという部分に妙に力を入れたまま涼子さんがコーヒーにミルクと砂糖を入れる。
373 ◆/pDb2FqpBw :04/12/22 14:09:20 ID:y+4mWtbV
俺の分のコーヒーを机におき、そそくさとお菓子を用意すると、涼子さんがこほんと軽く咳払いをした。

「それでだ。匠君は最近大学のクラスメイトとの飲み会などにかなり積極的に参加しているようだが、
親元を離れたからといってあまり羽目を外すようではよくない。」

ダムッと机を叩きながら実によくないと繰り返す。

「ええ?俺?そんなに遊んでる訳じゃないと思うんだけど。精々月に一回くら」

「回数のことを言っているのではない。時間のことを言っているんだ。」

「でもそんな遅くまで」

「昨日は夜の12時過ぎまで家にいなかったみたいじゃあないか。」

かちゃかちゃと砂糖を入れたコーヒーを掻き混ぜながら被せるように言ってくる。
切れ長の目の中にある黒目が揺れている。不満そうだ。
374 ◆/pDb2FqpBw :04/12/22 14:10:35 ID:y+4mWtbV
「そ、それは・・・って涼子さんなんでそんな事しってんの?」

「む。。。そんな事はなんとなくわかる。」

「それにしてはえらく具体的な・・・」

「屁理屈をこねるな。だから私が言いたいのはその、なんだ。」
夜に電話をした時に匠君が出ないのは心臓に悪い。
だからあれだ、人に迷惑をかけないよう、前もって親しい友人には連絡くらいしておくものだ。
と涼子さんは少し俯きながら小さい声で言って、くぴりとコーヒーを口に含んだ。
375 ◆/pDb2FqpBw :04/12/22 14:15:20 ID:y+4mWtbV
>>365-368
ありがとうございます。やる気でます。

今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
376名無しさん@ピンキー:04/12/22 14:20:36 ID:KyBlPxKE
長編 の 予感 !!!

期待sage。
377名無しさん@ピンキー:04/12/22 19:16:35 ID:EfpX/u8i
涼子さんが俺のツボにはいっててイイ!
続き期待sage
378名無しさん@ピンキー:04/12/22 20:18:08 ID:owcoulzx
>>360の部分によると、涼子さんの胸はでかいそうだが、
その内匠君のを挟んだりしご・・・うわやめろなにをするあwせdrftgyふじこ
379 ◆/pDb2FqpBw :04/12/24 13:09:09 ID:k0paYZ1G
「いや、本当助かったよ山口さん。ありがとう。」

ノートとそれを取ったコピーを片手に答える。

「んーん。コピーぐらいだし。掲示板の補講通知見てなかったの?」
「まあ、ちょっと見逃しちゃって。」

頭を掻く。バンドの練習でサボったのだが、補講通知は見なかったことにしておく。

「じゃあ、そういうことで。私行くね。」

「うん。じゃあまた来週。教室で。」

「ばいばーい。」

嘘をついた事に少し罪悪感があったがすぐにこれからの練習の事に心は切り替わった。
手を振ってくる山口さんに手を振りかえし、コピーをとった図書館を背にする。
と、振り返った瞬間に猫のように目を丸くした涼子さんと目が合った。隣には友達の美紀さんがいる。
2人とも手には季節外れのアイスクリームを握っていた。
380 ◆/pDb2FqpBw :04/12/24 13:09:58 ID:k0paYZ1G
「ガンズ・アンド・ローゼスを知っているな。匠君。」

「勿論。当然。」

学校のそばにある喫茶店で対面に座った涼子さんに答える。
ここに連れ込まれ、事の次第を白状させられていた。
なぜだか涼子さんはいつもと違って妙に緊張しきった顔で俺の答えを待っている。

「じゃあ、KISSは知っているか?」

「知ってるに決まってるじゃないか。」

俺の前にはココア、涼子さんの前にはイチゴのショートケーキとコーヒーが湯気を立てていたりする。

「匠君はどう思う?」

「うーん。その2つのバンドって事?」

「そうだ。」

「どれもすごいバンドだよね。」
381 ◆/pDb2FqpBw :04/12/24 13:11:31 ID:k0paYZ1G
今日の涼子さんは薄手の黒のセーターに下は細身のジーパンを穿いている。
もともと長い足が細身のズボンのせいでさらにスタイルを際立たせていて、
スカートを穿いてもらいたいなどと言ったりはするのだが、これはこれですごく似合っていたりする。

「それだけか?」

「うーん。涼子さんの意図が掴めないけど・・ジャンルもそれぞれ違うし・・」

「こう、生き方を尊敬しているとか匠君は思っていないか?」

ココアをすすりながら答える。

「そりゃあ、かっこいいなとは思うな。」

それを聞いた途端、ふうーと深くため息をつくと
涼子さんは綺麗な流線型を描く眉尻を下げてなんだかなんともいえないような顔をした。
382 ◆/pDb2FqpBw :04/12/24 13:12:32 ID:k0paYZ1G
「コーヒー冷めるよ。涼子さん。」

「そんなことはどうでもいい。」

「それにさっきアイスクリーム食べてたのにケーキ食べたら」
む、と言いながらケーキをぱくつく涼子さん。

「てかいきなり涼子さんにここに連れてこられたけど今日、練習どうするの?」

「匠君は質問が多すぎる。」

「涼子さんもなんか言いたい事が纏まっていない気が・・」

ん、と涼子さんは覚悟を決めたように少し咳払いをした。
「ええとだな。匠君がクラスメイトにそんな、そんな事をされたら私が匠君の勉強の邪魔をしているようじゃないか。」

「え、そんな、あれはもう涼子さんと約束しちゃってから補講通知があったから。」

「それなら練習時間をずらせば良い。音楽ばかりでなく、大学の勉強は非常に大事なんだ。
 匠君が疎かにしてクラスメイトに迷惑をかけるようなら、私は匠君と一緒に練習なんて出来ないじゃないか。」
私が匠君に色々と教えてあげなければいけないのにと顔を赤くしながら一生懸命喋っている。
383 ◆/pDb2FqpBw :04/12/24 13:13:57 ID:k0paYZ1G
「ご、ごめん。」
と謝ると涼子さんは一度ふうと息をついて続けた。

「それに、それに私には恋人というものがいたことはないが、いるとすればだらしなくない男が良い。」
「え?」

「匠君はガンズとかが好きで、確かにグルーピーがいたり、次々と女性をとっかえひっかえするようなのは、
 格好が良いとか思ったりするのかもしれないけれど。」

同じ学科で、私は同じ授業を昨年受けているのだからと小さな声で続ける。
一生懸命喋っていて、怒っているのはわかるのだけれど。
なんだか泣きそうにも見えた。

「ええと、何を言っているんだ私は。とにかく、練習で授業をサボるのは良くない。そういうことだ。今日は帰って勉強すると良い。」
「え、練習中止??」

「元はと言えば匠君が悪い。」
「そっか・・・ちょっと残念。でも俺が悪いしね。じゃあ、帰ろうか?」

「む、匠君は帰ればいい。私はもう少し残っていく。」
「え?じゃあ俺ももう少し」

「いいから、匠君は帰る。」
なんだか焦ったように言う。
384 ◆/pDb2FqpBw :04/12/24 13:16:56 ID:k0paYZ1G
「怒ってない?」

「匠君がこれから授業をサボらなければ怒りなどはしない。」

「そっか・・」
確かに涼子さんの言う事は正しくて、
俺は涼子さんと会いたいが為に授業をサボった訳であって言い訳など出来なかった。

自分の分のお金を机の上に置いて鞄を持つ。
「ん、明日は12時からだからな。」

「うん。じゃあ、涼子さんまた明日ね。」
席を後にして店の入り口へと歩き出す。

「ん。・・・・匠君。」

呼び止められる。振り向いた瞬間、涼子さんは目線を逸らして、少し首元を赤く染めて。
ばいばい。と言ってとても似合わない仕草で小さく手を振ってきた。
385 ◆/pDb2FqpBw :04/12/24 13:18:53 ID:k0paYZ1G
>>376-378
ありがとうございます。やる気でます。
長編と言うか、短編の積み重ねのように思っていただければと思います。


今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
386名無しさん@ピンキー:04/12/24 15:54:54 ID:WfNZ6wOl
なんだこの期待感は・・・◆/pDb2FqpBw殿禿しく乙です。
387名無しさん@ピンキー:04/12/24 17:10:41 ID:3ir7YTKz
ぐっじょぶ!
388名無しさん@ピンキー:04/12/24 21:12:23 ID:Fx+dOt+E
涼子さんかわいいよ涼子さん(*´Д`)
389名無しさん@ピンキー:04/12/25 02:29:38 ID:bsxcNexc
メリークリスマス!◆/pDb2FqpBwさん、イイですね!涼子さんがカワイイです。期待してます!
390名無しさん@ピンキー:04/12/25 03:54:37 ID:Rdb2ju74
涼子さん可愛すぎる(*´Д`*)
ますますしおらしくなってくれ!
391名無しさん@ピンキー:04/12/25 13:58:41 ID:O+dxlKaF
GJ!

>390
簡単にしおらしくなってしまうよりも
しおらしくしたいのに素直になれないところがいいんだ、と思うんだがどうだろうか

それでこそしおらしくなったときのギャップに来るものがあるとおもうんだが
392 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:36:02 ID:KdGLhDka
「・・・・」

「いや、ほら、補講とテストが終わったら俺も帰るし・・・」

目の前には薄手の白いセーターを着て真面目な顔をして蜜柑を剥いている涼子さんがいる。
このタイプの薄手のセーターは少し胸が強調されすぎていて目のやり場に困ったりする。

「それはしょうがない・・。補講なのであれば。」

「涼子さんは20日に帰るんでしょ?俺は25の補講受ければ26日には帰れるから。」

むう、匠君と帰省しようと思ってたんだけどなといいながら蜜柑を持って炬燵にもぐりこむ涼子さん。
そもそも涼子さんは寒さに弱いらしく、最近は俺の家に来るとコーヒーを入れるとき以外は炬燵に潜りっ放しだ。
393 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:37:18 ID:KdGLhDka
「美紀さんは?新幹線で帰るなら方向一緒じゃなかったっけ?」

「美紀は28日に帰省だそうだ。」

「ふーん。ずいぶん遅いんだね。何か用事でもあるのかな。」

む、そんな事は匠君は知らなくてもいい。そう言って涼子さんは手を伸ばしてラジカセのスイッチを入れた。
FMラジオからポール・マッカートニーのWonderful Christmas Timeが流れてくる。

「年末だねー」

「た、匠君は24」
「ん?そうだ涼子さんは23日に何か用事があるんで早く帰るんだったよね」

「ん。。ん。そうだ。毎年空手道場の子供達とクリスマス会があるからな。父が必ず参加しろとうるさいんだ。」

匠君も呼ぼうと思っていたのに。とぷいと背を向ける。
394 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:38:08 ID:KdGLhDka
「そっか、それは俺も行きたかったな。涼子さんサンタクロースの格好とかするの?」

軽い冗談で言ったつもりだったのだが涼子さんは明らかに焦った。

「そ、そんな格好するわけないじゃないか!」

あんなミニスカートなんて考えられないと顔を赤くしながら喋っている。
何かと勘違いしているようだが黙っておくことにする。

「じゃあ、匠君は26日に戻ってくるんだな。」

「そうだね。25日の夕方にはこっち出ようかと思う。」

そうか、と言いながら炬燵の中でバタバタと足を動かす。

「暇ならみんゴルでもやる?」

うーん。とごろごろしながら唸っている涼子さんはん。と気合を入れると、がばちょと起き上がってこちらに向き直ってきた。
395 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:40:04 ID:KdGLhDka
「匠君。」

「・・・なに?」

「美紀はな。」

「ミッキー?」

「美紀だ美紀。」

「ああ、美紀さん。うん。」

「友達と遊ぶ為にこちらに残るらしい。」

「へえ。どっかいくのかな?」

「24日に泊まりで男性とディズニーランドに行くと言われたんだ。」

「へえ。」

確かに美紀さんも美人だしなあとふと考える。
まあうらやましくないと言えば嘘になる。つまり、泊まりに出かけたりするそういう関係にだ。
396 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:40:58 ID:KdGLhDka
「匠君はどう思う?」

「どうって・・いいんじゃない?恋人と行くって事・・だよね?」

「勿論。そうでなければ許しはしない。でも私は婚約を交わす前にだな、そんな婚前旅行のようなものは良い事ではない。と注意はしたんだ。」

と蜜柑を口に放り込みながらこっちをちらりと見て、当たり前じゃないかという感じで涼子さんは言った。

「婚約って・・・まあ、涼子さんならそういうと思ったけど。」

「泊まりとはけしからんと思わないか。匠君。」
例えそういう事がないにしても泊まりで行くなどとは実に良くないと繰り返す。

「そういう事はあると思うけど・・」

「なおさら良くない。」
ぴしゃりと言われる。
397 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:42:35 ID:KdGLhDka
しかしまあ、地理的な問題で泊まりも仕方ない場合もあるんだろうな。と言って涼子さんは頬杖をついてごろごろする。

「ん?涼子さんディズニーランド行った事無い?ここからならまあ、日帰りでいけるよ。」
少し引っかかったので聞いてみる。

「・・・匠君はあるのか?」

「うん。中学の修学旅行で。」

「私はあまり遊園地だとかそういう所には行った事がない。」

あまりそういうところに行ってわいわいとやるのは好きではないし。と涼子さんは続けた。

「匠君は行きたかったりするのか?」

「俺?・・・まあ。そうだね、意外と好きかなあ。ああいう雰囲気って嫌いじゃないな。」

「・・・・・」

涼子さんは相変わず足をパタパタとさせてじーっと黙っている。
その姿は何故だかまるで撫でてもらうのを待っている猫のようにも見えた。
398 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:43:40 ID:KdGLhDka
「・・・・・」

「えーと、その、涼子さん、今度一緒に行きません?まあ、俺でよければ。」

気恥ずかしいけれど。
まあこれは男の役目だろう。そう言った瞬間。

「24日が良い。」

と行くとか行かないとかでなく、そう返答が来た。

「え、でも涼子さん20日に帰るんじゃ。」

「丁度その日しか開いてはいない。」
そう断言する。
399 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:46:33 ID:KdGLhDka
「ええと、じゃあ、その日に。俺と遊びに行ってくれる?涼子さん。」

涼子さんはしばらく考えて。

「そうか、それでは帰省は26日に伸ばさないといけないな。匠君がそう言うのであれば。」
父は残念がるかもしれないけれど、あの子たちにはお年玉をあげることにすれば良い。
私は人ごみは苦手なのだけれど。うん。付き合っても良いな。
と呟いて涼子さんは向こうを向いたまま。

コタツから電話へと手を伸ばした。
400 ◆/pDb2FqpBw :04/12/26 01:54:05 ID:KdGLhDka
>>386-391
ありがとうございます。

ええと、一応保管庫のようなものです。宜しければ。。
http://uni.lolipop.jp/Rock_Frame.html

今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ

401名無しさん@ピンキー:04/12/26 01:56:19 ID:mx2rs5RW
GJ
がんばってー
402名無しさん@ピンキー:04/12/27 02:26:58 ID:NyfuECW3
GJGJ!やっぱりか〜いい〜な〜涼子さん。
保管庫も読みやすくていいですね。続きに期待!
403名無しさん@ピンキー:04/12/27 23:35:46 ID:i+RwNKPs
今一番期待してます
と思ったらうにさんでしたか!
萌えた体験談コピペ保管庫であなたのファンになりました。
404 ◆/pDb2FqpBw :04/12/28 23:38:38 ID:xmfue7RF
「む、ウィーザーか。前作はパワーポップだったのに急に変わったなこのバンド。」

「いいでしょ、このアルバム。テンション高いし。パンク的ですらあるよね。」

「見逃していたな。」

「なんかリヴァース・クオモは元々メタル好きだったらしいよ。相変わらず外見は気が弱そうだけど。」

ううむ。チェックしていなかった。これは良い。と言いながらコーヒーを啜る。
24日なのだから当然と言えば当然なのだが、カップルや家族連れで大混雑している。
響き渡る人々の話し声と楽しそうな響きが混ざり合ったように聞こえてくる。
少し天候を心配していたのだけれど、空は少し寒々しいくらいにからりと晴れてくれた。

その喧騒の中で俺と涼子さんは歩き疲れたこともあって、ベンチに座り込んで2人で音楽を聞いていた。
イヤホンの片方は涼子さんの耳に。もう片方は俺の耳に。
405 ◆/pDb2FqpBw :04/12/28 23:45:35 ID:xmfue7RF
「あれはあれで好きだったんだけどな。これも良い。ん・・・・匠君の言うとおりこのチュロスと言うのは美味しいな。」
と言って涼子さんはちょうど半分に切ったチュロスを又齧った。

「んーーー涼子さん、スプラッシュ・マウンテンでもいく?」

「プーさんは何時からと言っていた?」
口の周りに付いた砂糖を器用に舐めながら聞いてくる。

「ファストパスが・・3時半かな。あと30分くらい。」
ではここでもう少しのんびりしよう。と言って涼子さんはコーヒーを抱え込むようにしてまた啜った。

涼子さんの横顔を眺める。
珍しく唇に薄く光るピンクの紅をつけて。長めだけれど念願のチェックのスカートを穿いてきてくれている。
上着は短めのお気に入りの皮ジャン。涼子さんにしては気合を入れてくれた格好かもしれない。
そうやって隣に座っている人は間違いなく美人で。俺は幸せ者かもしれないと思ったりもする。
ぼうと眺めていると、涼子さんはこちらをちらりと見て、慌てて目線を逸らせた。
406 ◆/pDb2FqpBw :04/12/28 23:46:54 ID:xmfue7RF
「た、匠君はあれか。その、こういう所に一緒にくる人はいないのか。」

「?」
普段あまりこういう話はしないし。
とチュロスを又齧って相変わらず目線を逸らしながらもごもごと口ごもったように聞いてくる。

「・・・?」

「クラスメイトとか。その、山口さんとか言ったか。そういう子とかと。」

「。。。。いるわけ無いでしょう。」
これだけ涼子さんと一緒にいて他に女性がいるほどの甲斐性があればこんなに苦労はしていない。

「本当か?」

「バイト以外の日は殆ど練習してるじゃないですか・・・」

「む。」

「そうか。あれだな。匠君はあまりもてないんだな。」

涼子さんはうん。うん。と頷きながら大変失礼な事を言ってきた。
相変わらずイヤホンからは景気の良いパワーロックが流れてきている。
407 ◆/pDb2FqpBw :04/12/28 23:48:06 ID:xmfue7RF
「余計なお世話です。涼子さんこそどうなのさ。」

「ん?私か。・・・そうだな。」
と上を見上げながら意外なことを言ってくる。

「え?涼子さん・・・いるの?」
少し焦って聞き返してしまう。

「ふふ。そうだな。ディズニーランドは初めてだ。」
それに、映画も美紀と行くくらいであまり行かないな。
と足をブラブラとさせながら悪戯っぽい顔で言いかけてきた。
408 ◆/pDb2FqpBw :04/12/28 23:50:19 ID:xmfue7RF
「なんだ。。いないんじゃないか。」

「これから初めて行ける所がたくさんあると言うことだ。」

「なるほど・・そういう考え方もあるね。」

「そうだろう?なんだってそうだ。急いだって何にもならない。私だって行きたいところがたくさんあるぞ。」

「例えば?」
非常に興味のある問題なので聞いてみる。

「そうだな。テレビでよく見るからお台場など行ってみたいな。」

「ふーん。涼子さん、意外とミーハーなんだね。」

「後見たい映画も沢山あるぞ。ハウルの谷のラピュタとか。」

「ああ、なるほど。人気あるみたいだよね。」

「匠君は意外と思うかもしれないけれど、私は遊ぶのは好きだぞ。」

「それは知ってる。」
2人で笑いあう。

ま、そのうち誰かさんが連れて行ってくれるかもしれないな。と言って涼子さんは寒そうに又コーヒーを啜った。
409 ◆/pDb2FqpBw :04/12/28 23:57:02 ID:xmfue7RF
>>401-402
ありがとうございます。テンション上がるです。
>>403

恐縮です。

2日〜5日に一回ずつこんな感じで投下していくつもりですので
他の書き手様いらっしゃるようでしたら遠慮せず投下お願いします。

ネズミの国はもう一回続きます。

今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
410名無しさん@ピンキー:04/12/29 00:00:24 ID:P3tDfqje
キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
毎回読むのが楽しみで仕方ないよ(*´Д`*)ハアハア
411名無しさん@ピンキー:04/12/29 02:32:48 ID:HjTtPwmp
涼子さん萌。GJ!!
412名無しさん@ピンキー:04/12/29 04:29:07 ID:p0altBjb
涼子さんは素晴らしいが、少々匠君に甘すぎってーか優しすぎだとおもいます。
もうちょっとだけふだんはツンケンしていただけるとその、あの、あれだ、そーゆーときにもっと萌えられるとおもいます。

書き手さんの好きになさってくださってかまいませんが、まあそういう香具師も居るということで・・・
413名無しさん@ピンキー:04/12/29 12:35:16 ID:e2bG+CZk
第三者がいる時はきっとツンケンしてるんだよ
今までの話は話してる時点では二人きりの話ばっかだし
414名無しさん@ピンキー:04/12/29 22:34:22 ID:sOcKfVJD
どちらにせよ・・・




GJ!!!
415名無しさん@ピンキー:04/12/29 23:59:30 ID:tk/Ll/7C
エロ描写がないのに俺をここまで勃たせるとは…やるな!
416 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:03:54 ID:Ly09QQLq
「むう。」

普段見られない光景なので黙って見守る事にする。
狭い店の中にはざっと見ても50人位の人はいて、見失わないだけで精一杯だ。
その中を涼子さんは悠々と歩く。

「匠君。これは可愛い。」
と言って座り込んでいるドナルドダッグのぬいぐるみを指差す。

先ほどからそうなのだが涼子さんは別段俺に同意を求めているわけではなさそうだった。
というかこちらが付いていかなければたぶん一人でふらふらとさまよっていると思われる。
上の空と言っていい。
417 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:06:23 ID:Ly09QQLq
今までの付き合いである程度わかっていたが、涼子さんは可愛いものに目ざとい。
その総本山のような所に来てしまったわけだ。
まさかこんなに引っかかるとは思わなかったが、仕方がないのかもしれない。

ポニーテールにしている髪を揺らしながら実に真面目な顔をして歩いている。

「匠君。見ると良い。蜂蜜を持ってる。」
プーさんのぬいぐるみを指差して言う。

ちなみに俺はロックバージョンのディズニーソング集アルバムを買ってご満悦だったりする。
まあ閉園まで時間はあるし、パレードは綺麗だったしでここからは涼子さんにゆっくり悩んでもらおうと言うものだ。
418 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:07:58 ID:Ly09QQLq
しばらく観察していると涼子さんはふらふらと大通りに出て行った。
カルガモの子供のように付いていく。

「ここは危険だ。」
店から少し出た涼子さんはそう言って立ち止まって一人で頷いている。
「ずいぶん熱心に見てたね。涼子さん」
びくっと肩を震わせる。

「ひ、人聞きの悪い事を言わないで欲しい。」

「いや、、そうはいうけど今まで」

「そんなことはない。今だって匠君がいつまでもお店から出ないので私から出てきたんじゃあないか。」

いつになく焦った感じで言ってくる。
419 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:08:33 ID:Ly09QQLq
うーん。と悩んでいる涼子さんを見ていると可哀想になったのでフォローしておく。

「いや、でもほら可愛いよね。ぬいぐるみも。」

「・・・匠君もそう思うか。」
涼子さん本人は気づいていないだろうが、腕をぱたぱたとさせながら食いついてくる。

「私はいつもドナルドが気になっていたんだが、今日ここに始めて来てみてプーさんも可愛いと気づいたんだ。」

「あ、俺もプーさん好き。」

「匠君と乗ったあのアトラクションもとても面白かった。ドナルドのアトラクションがあるのなら乗ってみたかったな。」
うむうむと頷いている。
420 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:10:05 ID:Ly09QQLq
すっかり調子が出てきた涼子さんを見て思う。
今日は大混雑でディズニー日和ではなかったかもしれない。
でも今日は晴れてくれて、そして涼子さんはとても楽しそうにしてくれた。
軽くなった財布を握り締めて思う。
俺だってロックンローラーの端くれならpenniless weekendも上等ってなもんだ。

なんとかはプライスレスってどっかのカード会社も言ってる。
カード持ってないけど。

「わかった。じゃあ俺からプレゼントさせてよ。涼子さん。」
そう言って店へと引き返す。
421 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:12:09 ID:Ly09QQLq
え?と言う感じで人ごみの中、呆然としている涼子さんを尻目に涼子さんの見ていたぬいぐるみを持ってレジへと向かう。

値札を見てはいけない。Runnin' With The Devilだ。大丈夫。帰省の新幹線代は取ってある。寒さなら耐えられる。死にはしない。

その瞬間、いつの間にかぴったりと後ろについてきた涼子さんに腕を引っ張られた。

「いや、匠君に出してもらわなくてもそれなら私が。」
私の方が年上なのに出してもらう訳にはいかない。と財布を出しながら硬い事を言ってくる。

その手を引っ込めさせなくてはならない。カッコつけさせてよ。

Can't Stop Lovin' Youってなもんなんだぜ?

「えーと、言葉が出てこない。けど俺が買いたいんだ。駄目?」
さて、わかってくれるだろうか。

「駄目だ。匠君はあまりお金を持っていない。」
厳しい声で却下される。

駄目でした。
422 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:13:26 ID:Ly09QQLq
しかしそう言った後に涼子さんは首筋まで真っ赤に染めて。
コホンと一つ咳払いをして。

「しかし、私の予算も限られているし、匠君の気持ちもうれしい。」

ぬいぐるみを暖かそうに、そして大事そうに抱きしめて。

「匠君がプレゼントしてくれるなら半分ずつ出し合おう。」
そして、二人のものにしよう。そう呟く様に口を動かした。
423 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:20:03 ID:Ly09QQLq
>>410-411
>>414-415
ありがとうございます。
こう読んで頂いてるって感じでマジで感謝の気持ちが沸々と。
>>412
ご意見ありがとうゴザイマス。
最初にプロット叩いた時点でだよなあ・・とか思ってたり。
でもちょっとテーマと思惑があったりしたのでこれで落ち着きました。


今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
424 ◆/pDb2FqpBw :04/12/31 14:21:45 ID:Ly09QQLq
上の
>>412-413
ですね。ごめんなさい。

では。
ノシ
425名無しさん@ピンキー:04/12/31 14:28:45 ID:7DAOnPRu
>>416-422
乙であります!来年も良いお年を(゚∀゚)ノシ
426名無しさん@ピンキー:04/12/31 15:22:21 ID:sWcWHXJ/
◆/pDb2FqpBw殿毎度乙。

そして「駄目でした。」で不覚にもワラタw
427名無しさん@ピンキー:05/01/01 04:31:20 ID:CL0KfxV3
話の内側が専門的過ぎる気がしないでもない。
部分部分とはいえ、文章の重要格でコアな話をされても読み手に伝わるとは限らない。特に音楽の話だと万人受けするジャンルなんて無いんだし。
話を膨らまそうとする上で何か言いたいことがあるのはよく解るけど、
掲示板に投稿する=読み手に「読ませる」作品にするなら、そういう表現は極力避けた方が良いかもしれない。

俺、批評ばっかりだね。ごめんね。
折角キャラ立ってるのに殺しかねないっていう、ただのお節介だから。
428名無しさん@ピンキー:05/01/01 07:01:19 ID:HAvVR+4A

いや、俺はロックのこと全然知らないけど、二人がロックの話してる部分はすごく好き。
涼子さんの性格立ての小道具として全然上手く使えてると思うですよ。もっとやってくれ。
(ていうか、ヘンにマニヤックだとおもうところは誰かが解説してくれるともっと嬉しいけど、
作者さんにそれまでやって呉とはいいません)
429名無しさん@ピンキー:05/01/01 10:13:36 ID:3yQHRtK7
ロックの話はよくわからんが、雰囲気作りには役立ってると思う。
430名無しさん@ピンキー:05/01/01 17:54:09 ID:aNs3akEG
専門的で分からないところは、
雰囲気だけ汲み取ってスルーしますので問題ないです。
431名無しさん@ピンキー:05/01/03 20:43:19 ID:3ROjL7PQ
批評行為自体を叩く空気は作りたくないけどね。

今のところ俺の興味は最後まで行くのかどうか…

保守ついでにひとりごと。
432名無しさん@ピンキー:05/01/03 22:13:42 ID:4sy1hUZc
確かに盲信的になるのもどうかと思う。そういう空気はどういう訳かエロパロ板に多いし。

「俺はこうだから問題無い。」じゃなくて各々の意見を受け入れれ。
433名無しさん@ピンキー:05/01/03 23:27:28 ID:79CaPggb
誰も批評を叩いてはいないよ。
「自分にとっては問題ない」という個人の意見を述べただけだからね。
434名無しさん@ピンキー:05/01/03 23:36:58 ID:3ROjL7PQ
うん、いちおークギ刺しただけね。
435名無しさん@ピンキー:05/01/04 01:33:54 ID:rza3t7Sy
うーん、正直ロックのぶん疎外感は感じたが、それ以上の不快感はない。
436名無しさん@ピンキー:05/01/04 03:21:35 ID:owDmaDUW
物事は人によって見方が様々だから、コアなネタじゃ無いと
返って書きにくいと思う。あまりメインではない事の「解釈」で
揉める事も無いわけだから別にいいとかと。もし邦楽で同じように書くと
あーだこーだってのが来そうな気がする。。。
ロックはあまり分からないけど、話は面白いし続き期待してます
437名無しさん@ピンキー:05/01/04 09:41:49 ID:Qm8Ch8wB
私はロックの話は作者殿の半分も理解していませんが、それでもキャラが魅力的だから
十二分に楽しめます。続き期待してます。
438名無しさん@ピンキー:05/01/04 16:45:11 ID:SeRzIdSB
漏れも期待してるYO!
439 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:12:49 ID:+aIeEKeR
「匠君はだらしがない。」
隣に座った涼子さんは眉を顰めてこちらを見てくる。

「な、なんで?」

「お菓子は一口で口に放り込むものだ。こぼれて服についてしまっている。」
よくない。とそう言って俺の袖のあたりをパタパタと叩いて来る。

「スナック菓子はこぼして後でほろうものじゃないの?」

「そんな事はない。一口サイズを口に放り込めば汚れない。そうやって齧るからこぼれるんだ。」
そう言って涼子さんはじゃがりこをパキンと器用に半分に折ると口の中に放り込んだ。
440 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:14:31 ID:+aIeEKeR
帰省ラッシュのど真ん中、運良く自由席に座ることは出来たものの新幹線の中には人がみっちりと詰まっていた。
ワイワイガヤガヤとした浮かれた空気と子供の泣き声とで車内は大騒ぎだ。

「そういえば涼子さんの家はお正月はどんな事してんの?」

「お正月か。元日は家族でゆっくりと過ごすんだけれど、2日は空手道場の子供たちが来て餅つきをするんだ。」

「へえ、涼子さんも搗くの?」

「勿論だ。まあ、最近はついた後焼いたり料理を作ったりする方が忙しいから見ているだけだけどな。」
嬉しいらしく、にこにこと続ける。
「へえ、いいなあ。じゃあ結構わいわいとした感じのお正月だね。」

「うん。そうだな。年末はおせちなども作らないといけないしな。」
「涼子さんのおせちかあ。」
食べたいなあと言うと涼子さんは嬉しそうににっこりと笑って伊達巻が難しいんだ。と言った。

「匠君の家はどうなんだ?親戚が集まったりするのか?」
「んー。うちは普通だな。家族で挨拶して、そのくらいかな。もうお年玉ももらえないし、親戚も遠いからね。」
そうか、それは寂しいな。と涼子さんはお茶を持ち上げてこくこくと喉を鳴らして飲みながら言った。
441 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:15:42 ID:+aIeEKeR
「匠君はあれか?初詣とかには行くのか?」

「うーん・・。まあ、近所の神社にはね。あんまり有名な所には行った事無いなあ。」
昨年は合格祈願に奮発して5000円入れてきたけど。と続ける。

「そうか、私もだ。毎年同じ神社に行っている。」

「まあ、俺は今年は寝正月かな。そういえば涼子さんはいつこっち戻る?」

「・・・匠君はどうするんだ?」

「んー。俺は特に決めてないな。涼子さんと帰ろうかなと思ってたんだけど。」
そう言うと涼子さんはそうか。とほっとしたような顔をして。
じゃあ休み中に電話をする。と言って俺の実家の電話番号を聞いてきた。
442 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:17:39 ID:+aIeEKeR
騒々しくても駅弁も食べて揺られていれば眠たくもなる。

少し一眠りした辺りで目を醒ますと涼子さんはつまらなそうにディスクマンを聞いている所だった。
指でトントンと涼子さんの席に掛かっている俺の裾を弄りながらリズムを取っている。

「そういえば俺の家から涼子さん家ってどのくらいあるんだっけ?」

「匠君起きたのか。」
急に話し掛けるとビックリしたように慌てて手を離しながら言った。

「う-ん。うん。どれくらい寝てた?」
伸びをしながら聞く。

「30分くらいかな。食べてすぐに寝ると牛になるぞ。」
片耳からイヤホンを外しながらちらりとこちらを睨んで涼子さんはそう言ってきた。
443 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:19:58 ID:+aIeEKeR
「そんな事言ったって。正月は牛になるよ。」
ふわーと伸びをしながら言うと涼子さんは少しむきになった。

「匠君。そんな事では良くない。」

「そんな事言うけどさ、涼子さんだって昨年俺が受験で会った時、ちょっと太ったかもしれないって気にしてたじゃないか。」

まあ涼子さんが自分でそう言っていたものの、
外から見てみる分にはいつも通りの格好の良いプロポーションに見えた上に
薄手のセーターの胸にばっかり目が行って全然わからなかったんだけど。
それは言わないでおく。

大体俺は他の大学生に比べてかなり健全な生活をしていると思うのだけれど、それを言うと
「そんな事はない。匠君はだらしがない事が多い。」
と涼子さんにはぴしゃりと言われてしまう。
自分だって結構食べるの大好きなくせに。ふんだ。と付け足して言い返してやった。

「む、昨年はバンドもやっていなかったしちょっと油断してただけだ。」
昨年の事は言うな。と涼子さんは焦ったように続けた。
444 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:21:15 ID:+aIeEKeR
さらに涼子さんはむーと暫く考えた後、続けてこう言った。
「匠君は私のことを口うるさいと思ったりしているのではないか?」
不満だ。と思っているのではないか。とじゃがりこを持った手を振り回して言う。

「いや、そんな事は無いけど・・じゃ、じゃがりこ飛ぶ・・あ、あぶな・・」

「私は匠君の体の事を考えているんだ。きちんとした生活をしないと、病気になったときに大変なのは匠君なんだ。」
マスカラを少しつけた長い睫毛の奥に光る瞳を揺らせながら言ってくる。

「き、気をつけます。」
涙ぐんだようにも見える涼子さんが、あんまりにも真剣に言うので。
意地を張っていた事を忘れて返事をしてしまった。

それを聞いてうん。良し。と言った後、しかし涼子さんは顔を伏せて考えこんでしまった。
445 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:24:07 ID:+aIeEKeR
少し言い過ぎたかと焦ったが、涼子さんは下を向いたまま微動だにしない。

5分ほど考えた後、イヤホンを外しながらちょっと気にしたような言い辛そうな顔でこちらに向き直る。
眉毛が下がっていて、こういう顔は犬っぽくて可愛かったりするのだけれど、あまりしてくれない。
暫く言いよどんだ後、涼子さんは咳払いをして話し始めた。

「匠君にはこじつけと取られてしまうかもしれないんだが。」
「・・・うん。何?」

「今聞いていたのだが。PILと言うバンドだ。」
「ああ、パブリックイメージリミテッドってプログレだっけ?ピストルズのジョンライドンの。」

やはり音楽話になると盛り上がる俺と涼子さん。

「なかなかいい曲が沢山あるんだ。」

「へえ、聞いた事ないな。ジョンライドンと言えばピストルズだからなあ。チェックしてないや。」
聞いてみると良いと言って涼子さんは頷いている。

「デヴィッド・ボウイだってそうだ。グラム・ロックの立役者だが、
 実際はその後のシンプルなロックをやっているほうが長いし、魅力的な曲もたくさんある。
 私はPILもデヴィッド・ボウイもどちらも好きなんだ。」

「なるほど、それなんとなくわかるなあ。俺、BOOWYの時より氷室京介の方が好きだもん。
 HEARTのギターソロなんか痺れるしなぁ。だから氷室イコールBOOWYみたいな捕らえ方をされると寂しくなるな。」

意外とミュージシャンの本質と魅力ってのはずっと追いつづけないとわからないのかもね。と続けた。
446 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:25:52 ID:+aIeEKeR
それを聞いて涼子さんはぱっと顔を明るくして。

「そうだ。匠君は話が早い。だからだな。
 意外と人はその、派手な方にばかり目が行ってじ、実際の重要な魅力にきづかないんだ。
 無論表現する方にも努力は求められるのだけれどな。大事なのはこう、なんていうのかな。」

実生活においては例えば、あくまで例えばだが、料理が上手だったりとか、相手の事によく気がついたりだとかそういうことだな。
そこまで一気に言うと涼子さんは横に置いてあったじゃがりこをぱきんと折って。
最後の方はごにょごにょと声を小さくしながら、だから匠君は私が口うるさいとか思ってはいけない。と呟いた。
447 ◆/pDb2FqpBw :05/01/04 17:37:34 ID:+aIeEKeR
感想ありがとうございます。
今後私的な理由でペースは落ちると思いますが、
スレ汚しにならないよう頑張るです。

>427-
書き手として裏側を書くのは避けたい(書き出すと止まらないのでw)
のであまり的確なレスが出来ませんが、批評はありがたいです。
この作品内でその部分をどうこうは判らないですが、今後の参考にさせて頂きます。

ロック云々については
最初は洋楽板ででもゲリラ的に投下するかと考えていたからです。
1話1CDのライナーローツとして。その名残です。(´・ω・`)
これ読んで、ツタヤで見かけたときおっと思っていただけたら本望です。
適当な事かいていたりもするので鵜呑みにしちゃダメですが。

今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
448名無しさん@ピンキー:05/01/04 18:03:12 ID:pAWXtD7k
>◆/pDb2FqpBwさん乙です。

漏れはハンキー・ドリーとジギー・スターダストで完結したと思ってるグラヲタですが、
涼子さんと匠君の会話はなんとなく好きです。これからも続けてくだちぃ。
449名無しさん@ピンキー:05/01/04 23:51:47 ID:o4vXLFIH
涼子さんかわいい。
450名無しさん@ピンキー:05/01/05 00:35:42 ID:q+ZuhePk
いよいよ帰省でつか。楽しみでつな。
451名無しさん@ピンキー:05/01/07 02:06:00 ID:Ke1524YG
hosyu
452 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:03:34 ID:DHLLxl15
「匠君はずいぶんあっさりとしているな。」
不満そうな顔で言う。

「そんなこと言っても寒いだけだよ。」

そうかな、わくわくするんだけれどな。と言って涼子さんは膝を屈めて足元の雪を拾った。
桜色の着物の袖が雪につきそうになって。

「ちょっ。涼子さん、着物汚れるって。」
固めるでもなくえいや。と俺にぶつけてくる。

「うわ!冷たいって!」

「匠君は雪合戦とかしなかったのか?」

「したけど。小学生の時くらいだよ。」
なんだ。私は空手道場の子供たちと毎年しているのに。
とアップにした髪に刺したかんざしを弄りながら涼子さんは雪で濡れた片方の手をぱっぱと払った。
453 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:04:14 ID:DHLLxl15
急に匠君、初詣に行こうという電話が入ったのが31日の夜だった。
31日に雪が降って、本当なら元旦は外に出ないでコタツの中で暇を持て余していようと考えていた俺はその提案に飛びついた。

午前十時。まだ日は高く上っていなくて、吐く息が白い中。
涼子さんの家と俺の家の中間近くを待ち合わせ場所にして、こうして二人でてくてくと近くの神社に向っている最中だった。

「そういえば、向こうに戻る話なんだけれど、うちの父が車で送ってくれるんだ。匠君も一緒に帰らないか?」

「え?遠いのにお父さん大丈夫なの?ありがたいけど。」

「高速を使えばすぐだと言っているし、金曜に向こうに行って私の家で一泊したいんだそうだ。」

「そうなんだ。うーん。なら、良ければ。」

「そうか。良かった。実はその、」
言いにくそうに口篭もる。

「うちの父もそのだな、匠君の事を見てみたいなどといっているんだ。」
そんな事を言って、何故か涼子さんはついと視線を逸らせた。

「・・・・涼子さんのお父さん、俺の事知ってるの?」
背筋を這い上がるようななんとなく本能的な恐怖感に襲われる。
なんとなくなのだが。
空手道場の館長か。角田みたいな方だったらどうしようか。
ローキック対策ってどうやるんだったっけか。
454 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:05:46 ID:DHLLxl15
頭の中で角田とスパーリングをしている間、涼子さんは隣で片方の眉を上げて何か考え事をしている顔をしていた。
暫く考えた後、涼子さんはこほんと咳払いをして。

「ん、そ、そりゃあ同じ学校でその、一緒にバンドをやっていたりするんだ。食卓や電話で話題にくらいはする。」
まるで怒ったように涼子さんはそう言って。

「それは置いておいて、それじゃあ私達が向こうに戻る時は、うちの父に一緒に送っていってもらう事にしよう。」
私達という部分に妙に力を入れて。
そう言って涼子さんはくるりと表情を変えてなぜだかとても嬉しそうに笑った。
455 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:06:52 ID:DHLLxl15
「しかし夜の間によく降ったみたいだな。」

「ね、それにあんまり人のこない神社なのかな。真っ直ぐな道なのにあんまり足跡も無いし。」
昔何度か行った時はそこそこ人がいたのになあ、と涼子さんは首を捻る。

「俺は雪と言えばママス&パパスかな。」

「ん。んーと。・・CALIFORUNIA DREAMINか。」

「さすが。」

「寒くって故郷に帰りたいという歌だったな。」

「うん。ニューヨークは寒すぎるって。確か。そんなんだっけかな。」

隣に歩いていた涼子さんは少し前に出て手にはーっと白い息を吹きかけるとくるんとこちらに振り向いた。
自然と俺も歩みを止める。

「今年初めて親元を離れたんだ。匠君はホームシックになったりはしなかったか?」

「うーん。あんまり。もちろん、たまには帰りたくもなったけどね。」
涼子さんがいたから。と小さく付け足した。

「そうか。私もだ。昨年は帰りたくてしかたない事があったりしたんだけど、今年は全然無かった。」
と、涼子さんは少し目線を神社のある方角に向けてそう返してきた。
456 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:08:12 ID:DHLLxl15
さくさくと神社への真っ直ぐな道の真ん中に二人で立って。
昨日の夜の雪が嘘のように冬の青空は抜けるように高くて、
見上げるとなんだか吸い込まれそうにも思えた。

歩きながら涼子さんは着物の裾をちょっとつまみながら。

「似合うかな。これ。」
どうだろう、ととても女の子らしく聞いてくる。

「も、もちろん。」

こくこくと頷く。似合うも何も。
涼子さんがこれほど和服を着こなせるとは思ってなかったし、
今日の涼子さんはすごく、こういい意味で女らしく思えた。

「そうか。匠君がそう言ってくれるとうれしいな。」
本当に嬉しそうに涼子さんは言って。

雪道を2人でまた歩き出す。
457 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:11:16 ID:DHLLxl15
一緒に歩きながら、横の涼子さんは少し息をついて。
前を向いて、涼子さんはなんでもないことのようにそのままの口調で続けた。

「匠君が私と同じ大学に来たいと言って頑張っていたと言う事を聞いた時、私は嬉しかったんだ。」

「それで、今年になって一緒に練習したり、学校でお話をしたり。たまにその、、遊びに行ったり。」
一言ずつ区切るように。

「私にない事がいっぱいあって。」

「だから、うん。」

少し目をそらせながら。桜色の着物の襟元を左手で抑えて。

「だからこれからも匠君と一緒にいられるといいなと私は思う。」
涼子さんはそう言って横目でこっちを見ながら、がらじゃないかなぁ。と薄く紅をぬった唇を少し歪めて笑った。

突然の涼子さんの言葉に、俺は顔を伏せてしまう。
何も返答が出来なくて、情けないけれど。
でも言われた言葉の意味くらいは俺にも判った。
458 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:12:01 ID:DHLLxl15
それでも。

「神社が見えてきたぞ、匠君。」
沈黙を払うようにそう言ってたたと先に行こうとする涼子さんの手を取って、俺は勇気を振り絞った。

「俺もこれからも一緒にいたい。涼子さん。」

涼子さんはアップにした髪をこちらに向けて。
取った手に指を絡ませてきて、目尻を下げる涼子さんにしては珍しい笑い方で。

「これからもよろしく。匠君。」

そう言って、積もった雪に映る影を一つにしたまんま。
神社の方に俺と涼子さんは歩き出した。
459 ◆/pDb2FqpBw :05/01/07 11:13:46 ID:DHLLxl15
感想ありがとうございます。やる気でるです。


今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
460名無しさん@ピンキー:05/01/07 11:25:21 ID:6cKIQcVj
リアルタイムでみタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

萌えますなあ。
461名無しさん@ピンキー:05/01/07 12:42:03 ID:nGJfoQNV
更新ペースが非常に良いですね、おかげさまでスレを覗くのが楽しみになってます
涼子さんがこんなに甘い感じだと周りに誰も居ないような雰囲気ですが、
元旦の朝10時に人通りが少ない神社近辺ってのはちょっと不自然かも…
いや、人通りがあってコレ、ならそれはそれでアリなんですけど


涼子さんの前での師範との会話と、涼子さん抜きでの師範との会話に期待
チクチクと攻められるのか、それともコレまで男っ気のなかった娘との仲を応援するのか、どちらにしても面白そう
462名無しさん@ピンキー:05/01/07 19:57:45 ID:O0u0LWeK
更新乙。
涼子さんカワ(゚∀゚)イイ!
463名無しさん@ピンキー:05/01/07 20:07:34 ID:+KvV8UZ+
上手いなあ。涼子さんカワ(・∀・)イイ!!今後の展開が超楽しみです。頑張って!
464名無しさん@ピンキー:05/01/09 16:15:08 ID:qWc55Z4O
465名無しさん@ピンキー:05/01/09 17:18:34 ID:JagSXpWa
んどけっせん
466名無しさん@ピンキー:05/01/09 21:41:01 ID:UB9t6xZs
     、第
      三
      新
      東
      京
      市
467名無しさん@ピンキー:05/01/11 06:58:39 ID:mpGVTToT
涼子さんイイヨー
ガンガレ ◆/pDb2FqpBw
468名無しさん@ピンキー:05/01/13 17:41:16 ID:rYyToLQ+
щ(゚д゚щ)
469 ◆/pDb2FqpBw :05/01/13 17:52:32 ID:rNf1XDy0
「そうか、では家まで来てもらう事にするけれど、匠君はそれで本当に良いのか?」

「うん。送ってもらうだけでもあれなのに迎えに来てもらっちゃ悪いし。」
そんな事気にすることないのにな。と電話の向こうでふう、と涼子さんは溜息をついた。
涼子さんの方からはなにやらドタンバタンと中々賑やかな音がしている。

家まで迎えに来てもらう前に、やる事がある。とは言わなかった。
ローキック対策は兎も角として、こちらとしてはケーキの一つも買って行かなければ格好がつかない。

「なんか電話の向こう、ざわざわしてるけど。涼子さん忙しいんじゃないの?」

「いや、子供たちがボードゲームやなんかで遊んでいるんだ。」
お正月は空手道場と言うよりうちは託児所のようなんだ。と言って涼子さんは笑った。
470 ◆/pDb2FqpBw :05/01/13 17:54:49 ID:rNf1XDy0
「匠君ちの方は何も音がしないな。」

「ああ、うん。親父はパチンコだし、何より電話、廊下にあるからね。」
とにかく寒かったりする。

「廊下か・・匠君はPHSか携帯電話は買わないのか?」
私も持ってはいないけれど。と続ける。

「うーん。ほら、結構お金掛かっちゃうし、そんなに使用頻度も多くなさそうだしね。」

「美紀などはPHSから携帯に変えたなどといって何回も私に番号を教えてくるのだけどな。」
前の番号にかけてしまったり、メモするのに大変なんだ。と涼子さんは言う。

「へぇ。俺ポケベルは欲しかったけどな。なんとなく。」

「あれははなんだかピリピリと呼び出されるみたいで私は好きじゃないな。」

「はは、涼子さんは、やっぱり携帯も向いてないのかもね。」
そう言うと涼子さんはうーん。でも美紀を見ているといつでも連絡が取れるというのは魅力の一つではあると思うんだ、
と電話向こうで暫く悩んでいた。
471 ◆/pDb2FqpBw :05/01/13 17:58:08 ID:rNf1XDy0
寒さに震えつつ家の話などをつらつらと話していると突然ゴソゴソゴソ!!
という音と共に涼子さんの声がぴたっと途切れた。

続いてなんだか可愛げな声でおねえちゃん誰とお話してるの?なんて声が聞こえてくる。

さらにがたがたん。と言う音と電話越し遠くに涼子さんの触っちゃだめだよ。と言う声。
いつもとは違う言い聞かせるような声で、終ったら遊んであげるからとその声はそう言っている。

電話越しのざりざりとした優しげな声。

「ご、ごめん。匠君。少し子供たちが騒いでいるから電話を切る。」
「あ、うん。じゃあ又明日。涼子さんのお父さんによろしく言ってください。」

うん。と言いながら涼子さんはここでいったん言葉を止めて。
「その、それはそうなんだけれど。・・今日の夜も電話をしても大丈夫かな?」
その、そちらの家の方に変に思われないかな。と涼子さんは気にしたようにそう言った。
472 ◆/pDb2FqpBw :05/01/13 18:00:45 ID:rNf1XDy0
「も、もちろん!うちは大丈夫だけど、何かあるの?」

歯切れ悪く、涼子さんはごにょごにょと。

涼子さんはこほんと咳をして。
「ん。そうだな。その、なんだ。初詣の時にお互いの気持ちはその、うん。」

「その、あれなのだし。」
ええと、これからはその、
たとえば夜の10時位に電話して、その日にあった事をなにかお話するとか。
元気である事を伝え合うと言うか、なんというか。
少しその、私は変な事を言ってるかもしれないんだけど、なんて自信なさげに言ってくる。
473 ◆/pDb2FqpBw :05/01/13 18:03:26 ID:rNf1XDy0
きっと向こうでは、受話器を持って立ち尽くしたまんまだ。
中々こっちが言い出せないようなことを言ってくる涼子さんは、どんな顔で。

結わえ上げた髪の毛はどんなふうに今は揺れているんだろうか、なんて事を少し思った。

「ええと、わかった。じゃあ、夜は俺から電話するよ。10時で良い?」

「う、うん。そうだな。じゃあ、10時にかかって来る電話は私が取るようにしよう。」
少し嬉しそうに。
私から電話を切るのは少しあれだから、匠君から電話を切ってくれないか?
なんて涼子さんはなかなかに乙女チックな事を最後に言ってきた。
474 ◆/pDb2FqpBw :05/01/13 18:08:59 ID:rNf1XDy0
-------------------------------
感想ありがとうございます。
なんか書いていてすごく楽しかったり。
次で一区切り。

>461
うちの近くの誰もいない神社がモデル(どこだよ)なので、誰もいない風味だったりします。


今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
475名無しさん@ピンキー:05/01/13 18:10:29 ID:sTTwxN4C
涼子&匠はサマソニとかSONIC MANIAに興味あるんかな支援
476名無しさん@ピンキー:05/01/16 21:24:01 ID:f3V7b0yk
ほしゅ
477 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:08:10 ID:+j/WyaiJ
たしかにそうだ。容易に想像できるのに、想定していなかった俺が悪い。

「あれかな。鈴木君は。お酒とかはよく飲むの?」
ハンドルを握りながら後部座席にいる俺に話しかけてくる。
2回の休憩を挟んで、もうすぐ東京に入る所。
国産高級車の代表といわれるだけあって、乗り心地は非常に快適極まりなかった。

「あ、いえ。まあ。普通です。」

うちの娘と親しくなりたくば高速道路を車を引きずって歩かんかぁ!!と言う事も無く。
ローキック対策には蹴られる足を浮かしダメージを最小限に抑える事が重要だという情報も幸いにも無駄になってくれた。

むしろ涼子さんのお父さんは眼鏡とオールバックの似合う、
どちらかというとお坊さんや弁護士をやっていると言われても納得してしまいそうな、非常に知的な感じのする人だった。
478 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:09:44 ID:+j/WyaiJ
「そうか。私は日本酒が好きでね。今年はうちには来なかったけれども、来年は鈴木君も是非来るといい。」

「は、はい。是非。」

涼子さんは空調が聞いているから黒いラフなニットとジーパンの格好で、
隣に座ってはいるものの、耳にイヤホンが刺さったままで目線は窓から外を眺めている。
先ほどから微妙に震える声で無難な答えを探しつつ答えるという難作業をこなしている俺を尻目に
完全に我関せずといった感じである。

「いや、しかし涼子はあれだろう。男手で育てた上に私がやっているのが、ほら。こう言ったものだから。」
と言って俺の隣を親指で指し示してわかるだろ?という風に涼子さんのお父さんはくいと眉を上げた。

「我侭一杯に育ててしまっているから。」

「いえ、料理も上手ですし。そ、それに色々と俺の方がお世話になってます!」

「・・・ほう、料理というと鈴木君の家で?」
シフトチェンジをしながら涼子さんのお父さんは続ける。
心なしかシフトチェンジの際にクラッチを押す足がもたついたような気がする。

そして俺はなんとなくそこにトラップの香を嗅ぎ取った。
479 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:10:49 ID:+j/WyaiJ
「い、いえ。あー・・は、はい。そうですね。たまーに練習帰りに打合わせをこうした後に時間があった場合
 涼子さんにこう、手伝ってもらってって言う事が何回かあったりした時にですね。そうですね。何回か。」

ああ、そうなんだ。と頷いている。
涼子さんは上機嫌で横でヘッドバンキングの最中だ。

「ああ見えて意外と寂しがりやだから心配していたんだよ。」

「あ、そうなんですか?」

「うん。母親を亡くした時なんかはずっと閉じこもっちゃったりね。」

涼子さんからはあまりそういったことは聞いていなかった。
「そうなんですか。」
お母さんが亡くなられていた事だけは知っていたけれど。
480 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:13:27 ID:+j/WyaiJ
「うん。うん。それで色々と寂しい思いをした子だから、寝るときは布団じゃなきゃあ駄目だとか、
 人形がないと眠れないとか。普段はしっかりしているんだけど、実の所子供みたいでね。
 最初ははこんなので一人暮らしなんかできるのかと思ったんだけどね。」

「あ、そうなんですか。知らなかったな。確かに人形は沢山持ってますよね。涼子さん。
 でも今はベッドですけど、それは問題なくなったんですかね。」

ちらりと横を見ると視線に気づいたのか目線を送ってきて、
涼子さんはこちら側の手をヘッドバンキングに合わせるようにして、ぱたぱたとリズミカルに俺の手を叩いた。

ぼう、と涼子さんと手を絡ませていると、
「・・・今はベッドなのか・・・」
知らなかったなぁ。とハンドルを握りなおしながら涼子さんのお父さんは続けた。
心なしかスピードが上がった気がする。
481 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:18:29 ID:+j/WyaiJ
「いや、たまーーーに練習帰りに涼子さんを送っていった時にですね。ちょっとドアの隙間から見えた事があったんで。」

ああ、なるほどね。なるほどね。と頷いている。
涼子さんは曲に合わせて首だけを左右に揺らしていて、
それに合わせて後ろで纏めた髪がリズミカルにぴょこぴょこと揺れている。
恐らくこっちの声は全く聞こえてないと思われる。
今にも歌いだしかねない。

「ベッドねえ。」
涼子さんのお父さんは感慨深そうに寝れるようになったんだ、と繰り返している。

涼子さんの手をなぞって伝えようと試みる。
「タスケテ」
これ以上話していると、なにかとんでもない誤解を与えそうな気がする。
涼子さんのお父さんは恐らく娘である涼子さんの色々な情報をこの会話で得ているに違いなかった。

涼子さんに関してならいくらでも話したいのだけれど、
こう、こういう、なんていうかな。言葉を選ばないといけないようなその。
非常にデリケートな父と娘みたいな関係の中に俺のようなどこの馬の骨と言われても反論の余地がない人間とのこう、
うまーい感じの溶け込むと言うか変な事を言ったら良くないような。

手をなぞると、涼子さんはまったく気がつかないままん?と優しげな顔をして。
こんな所で甘えてくるな、というようにぴん、と俺の手のひらを指ではじいた後、
頭を揺らしながら戯れるようにはじいた部分をゆっくりとさすってきた。
482 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:20:37 ID:+j/WyaiJ
「鈴木君。」

「は、はい。」

涼子さんのお父さんは、暫く考えると、ハンドルを握って視線は前を向いたまま。
「がさつかもしれないけれど、結構心根は優しい娘だと思いますので、仲良くしてやってください。」
と、少し笑いながら言ってきた。

もしかしたら、バックミラーで俺と涼子さんの事を見たのかもしれない。
さり気ない、色んな感情が混ざった声だったと思う。
でもそれは何故だか、よろしく。と何かを頼んでいるような声に聞こえた。

「は、はい。こちらこそ、宜しくお願い致します。」
少し不自然なくらいに勢い込んだ声だったかもしれない。

そこまで来て、やっとこちらの雰囲気に気づいたのか、涼子さんはイヤホンを耳から外した。
イヤホンからはかちゃかちゃとまだ何かが流れている。
多分、ピストルズか、ローリングストーンズかな。何てことを考えた。

「お父さんと匠君はさっきから何を話しているんだ?」

「ん?涼子の話。学校の事とか、そういうことだよ。」
と涼子さんのお父さんはなんでもないことのように話す。

ふーん。と言って涼子さんはバックからペットボトルを取り出すと、くぴりと口に含んだ。
483 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:21:33 ID:+j/WyaiJ
丁度俺と涼子さんのお父さんの会話が途切れた時。
そして涼子さんが顎を上げてペットボトルの中身を流し込んだ丁度その時。
車の横をバイクがスピードを上げて追い抜いて、少し遅れて車が横にぶれた。
涼子さんのお父さんは危ないなあ、と言って逆側にハンドルを回す。

「お父さん、匠君はな。」
おっと。と今の衝撃で上半身のバランスを崩しながら涼子さんは続ける。
いつも俺に何かを自慢する時のようなふふん。といった口調だ。
後ろからか、横からか。ガシっというなんか乾いた大きな音がした。
キイーという金属を引っかいたような大きな音が聞こえてくる。

音の方を見ようと横をみると涼子さんはほつれてたれ落ちてきた横髪を直そうと手を上げたまま、
前を見て涼子さんのお父さんに何かを話そうとしている。
上目遣いで髪を目で追う仕草を見て、とても綺麗だと思った。
484 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:22:38 ID:+j/WyaiJ
でも、何かが変だ。
今までこんな事はなかったし、わからない。でも、

「んー?なんだい?」

何か生暖かいもので背中から頭までをを撫でるような感触がする。
ぐんにゃりと風邪を引いたときのような、ゆっくりと地面が斜めに傾ぐような。
肩からぐうっと地面に抑えられているような何かが全身を覆う。
耳鳴りのような、キーーーーーーーという音。

その時、特段何も考えず、左に手を伸ばして涼子さんの頭を抱えて引き寄せた。
涼子さんの薄いシャンプーの良い匂いと共に、ふと気になった。
その、俺は涼子さんのお父さんに涼子さんの恋人として認識されているのかどうかって言う事を。
それともただの友達、若しくは後輩とか。

涼子さんらしくない高い声でたっ匠君?という声と、横合いから聞こえる金属音。
涼子さんをビックリさせてしまったかもしれない。
確かに大胆な行動だと、我ながら思った。
今まで涼子さんの体に触れた事なんて、そうなかった。
これでなんでもなかったらこれは大問題だ。引っ叩かれるかもしれない。

でも、何も無かったら。何かがあったら。
485 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:24:54 ID:+j/WyaiJ
強烈な衝撃と共に、昔テレビで見た宇宙飛行士のような浮いている感じを体が覚える。
無音のまま、ぐんにゃりと時間が止まったまま。
涼子さんの頭を抱えたまま、窓の外の景色だけが激しく横に動いて、
ドアに叩き付けられるんだろうなとふと思った。

更に視線が激しくぶれたと同時にそのまま頭が強烈に何かにぶつかった感触がして、
同時にぐにゃというなんとも間抜けな軽い音がして。

そして、なんどか揺さぶられたんだような、声をかけられたような。

でも
すうと、眠りに落ちるように俺の世界は暗転した。
486 ◆/pDb2FqpBw :05/01/17 19:28:33 ID:+j/WyaiJ,
-------------------------
感想ありがとうございます。やる気でるです。


今日の所はこんな感じで。書け次第投下します。
ノシ
487名無しさん@ピンキー:05/01/17 22:03:16 ID:2SKJy6Dd
うはー。
お父さんの運転でうはー。
会話の緊張感にうっはー。キッツい。冷や汗出そう。

続きはどうなるんだー。

488名無しさん@ピンキー:05/01/17 22:32:05 ID:dNuhY7/0
ヤター!
続き期待しております。
489名無しさん@ピンキー:05/01/18 00:07:28 ID:Bi+055rd
関係ないですけど◆/pDb2FqpBw さんは
ギミギミズとかNOFXは聴きますか?
490名無しさん@ピンキー:05/01/18 02:17:30 ID:/yIrF0WY
涼子さんは聞こえないフリをしてたのかな?ホントに聞いてないのか?
491名無しさん@ピンキー:05/01/18 11:07:00 ID:/OUsPBDx
匠くんはどうなったの?
続きが気になる( ゜∀゜)=3 ムッハー!
492名無しさん@ピンキー:05/01/18 12:37:30 ID:Oo3r9miL
…なんか急に話が重くなったような
まさか匠くんと涼子さんが死ぬような展開はないだろうけど…親父さんも無事でいて欲しいなあ

なにはともあれ、続きキボン
493 ◆/pDb2FqpBw :05/01/19 19:17:28 ID:7Qc2ykit
神奈川ニュース 1月5日16時50分更新
4日午後18時20分ごろ、神奈川県厚木市上の東名高速道上り線で、柳達也さん(50)運転の乗用車が猛スピードで左側壁に衝突。
弾みですぐ後ろを走っていた会社員、岸充晴さん(53)運転の乗用車の側面に追突した。
岸さんと後部座席に乗っていた娘の涼子さん(19)は軽傷、
後部座席に乗っていた友人の鈴木匠さん(19)が頭を強く打って意識不明の重体。
県警高速隊の調べでは、現場は横浜町田インターの南約5キロ。
柳さんは直前に針路変更をしたバイクを避けようとしてあわてて左にハンドルを切ったと見られる。
この事故で横浜町田―厚木インター間上り線が午後18時30分から約2時間、通行止めとなり、現場付近は最長で約10キロ渋滞した。
1月5日朝刊 
(毎朝新聞) - 1月5日16時50分更新
494 ◆/pDb2FqpBw :05/01/19 19:20:49 ID:7Qc2ykit
-------------------------------------------------
すみません、
構成やらあれやらで少し次書くペースが落ちるです。

つうかしおらしくなる瞬間を書くためにおいら手間かけすぎ・・・

感想いただけてマジ嬉しいです。

書け次第投下します。

では。
ノシ

>489
NOFXは聞くですが、基本的に趣味程度なので
ロック全般あんまり詳しくなかったりします。アヒャ。
495名無しさん@ピンキー:05/01/19 19:44:55 ID:jB3zEmPv
なるほろ。そう来たか。
乙です。
496489:05/01/19 20:26:18 ID:PRzE4jVp
そうですか。NOFXを聴く職人さんがいてうれしいです。
497名無しさん@ピンキー:05/01/19 22:35:15 ID:GfMMJeT2
記憶喪失になる匠君。
498名無しさん@ピンキー:05/01/19 23:20:02 ID:h9gomvYx
記憶喪失になると本題のしおらしくなる瞬間がさらに遠ざかるかと・・・

匠君が寝てる間に双方の両親の間で外堀が埋まってそうな予感

ともかく、続きに期待
正座して待ってます
499名無しさん@ピンキー:05/01/20 00:08:36 ID:ozrGbary
看病モード発動?楽しみだー。匠君にはすまないが
500名無しさん@ピンキー:05/01/20 02:00:20 ID:Ru6/D1bx
◆/pDb2FqpBw氏の一挙手一投足から目が離せない。
私もディスプレイの前で正座して待ってます。
501名無しさん@ピンキー:05/01/20 11:39:48 ID:FGfH/CVV
とっくにしおらしくなってたような
502名無しさん@ピンキー:05/01/20 22:17:50 ID:RF8yQKS1
柳達也さん(50)は重症?軽症?
503名無しさん@ピンキー:05/01/20 22:49:12 ID:DDK/Ps6v
ナンバーガールのベストが出るらしいんだが涼子さんと匠君は買うのかな的支援
504名無しさん@ピンキー:05/01/22 09:47:34 ID:FCCJvUAl
わくわく
505名無しさん@ピンキー:05/01/23 15:38:45 ID:cvY/1QVo
どきどき
506名無しさん@ピンキー:05/01/23 20:41:56 ID:asvl9MKi
てかてか
507名無しさん@ピンキー:05/01/23 22:09:13 ID:8m2teOl9
てかてか?
508名無しさん@ピンキー:05/01/24 02:41:04 ID:Ua9G3CZm
ちかちか
509名無しさん@ピンキー:05/01/24 02:45:08 ID:Ll0UYe/T
もかもか
510名無しさん@ピンキー:05/01/24 08:44:29 ID:k2UgypT+
もんがもんが
511名無しさん@ピンキー:05/01/24 08:55:58 ID:xEECMvyP
モモタローハケーン
512名無しさん@ピンキー:05/01/24 14:31:34 ID:eCLwJun5
この怪しげな流れはさておき…

Holidays In The Sunの中の人、お願いですから寝取られ要素は入れないでくださいまし
513 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:02:57 ID:mNOi5XAk
「こんにちは。」
ナースステーション越しに顔が見えたので声をかける。

「あら、こんにちは。今日は早いのね。」
忙しそうに立ち働いていた婦長のおばさんは私を認めると手を止めてにこにこしながらやってきた。

「うん。授業が休講だったから早く来ちゃった。これ皆で分けて。」
「そう、あら、チョコレート?」

「うん。皆さんで分けてください。」
「あら、いいのに。でもありがとう。」
周りにいる看護婦さんも手元を覗いてからありがとう、と声をかけてくれる。

「ううん。皆に作ってきたからお裾分けです。」

そんな軽い挨拶を交わして奥の休憩室へと歩く。
今日のこの時間なら、休憩室には昔自転車屋をやっていたという髭のおじいちゃんと
スナックのママをやっているという紫色の頭をした五月さんがいる筈だった。
514 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:03:49 ID:mNOi5XAk
「こんにちは。」
ドアを開けてさっきと全く同じ挨拶をするといつも通りの明るい顔がいっせいにこちらを向いた。
病院や公共機関独特の機能的な細長い机と灰皿の位置、座っている人達の位置までいつもと同じだったりする。
「あら、涼子ちゃん。」

「こんにちは。やっぱり。」
あまりに想像通りで思わず笑ってしまう。
「どうしたの?」

「この時間ならおじいちゃんと五月さんがいると思ったから。座ってる位置まで同じなんだもの。」

「毎日毎日同じ顔しかいねえんだもんなぁ。ほら、涼子ちゃんこっちすわんな。」
お爺さんはまいっちゃうよ。と言う風にいうが、口調は軽い。

「ううん。匠君の所に行きますから。これ、皆さんで食べてください。」
それに煙草の匂いは苦手だし、煙草の匂いを付けたまま匠君に会いたくはないし。
鞄の中から袋を取り出して灰皿の置いてあるテーブルの上に置く。
515 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:07:16 ID:mNOi5XAk
「あら、何これ。」
五月さんが早速手を延ばしてくる。

「チョコレート。バレンタインデーだから。お裾分け。」

「あら、嬉しい。私も頂いていいのかしら。」
「もちろん。皆で食べて。細野のおばあちゃんにも会ったら言っておくけど、食べさせてあげてね。」
「下園の親父は糖尿だからあげれねえな。」

「あはは。下園さんにはあげちゃ駄目。じゃ、匠君に挨拶してきます。」
そう言ってドアへと向き直った。

「帰りは私のところに寄るんだよ。果物が余っちまってしょうがないから持ってって頂戴。」
五月さんはぷかーっと煙草の煙を吐き出しながらにっこりと笑ってそう言う。

そう毎日毎日色々な物を貰ってしまうと食べきれないのだけれど。
顔を見せると病室の皆が色々と相手をしてくれるから何も無くても顔を出す事にしていた。
それでも顔を見ると五月さんはそう言って私を誘ってくれる。

「うん。帰りに寄ります。」
そう言って休憩室の扉を閉めた。
一年も通っていれば長期入院者の人達とは顔見知りにもなる。皆、意外と明るくて気さくな人ばかりだった。
516 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:08:11 ID:mNOi5XAk
煙草の匂いが充満している休憩室を出て、薬の饐えた匂いが鼻をつく廊下を一人で歩く。
ナースステーションや賑やかな休憩室では感じないのだけれど、やはりここは病院なのだと思う。

一年と少し経って、結局匠君は目を覚まさない。
自発呼吸はしているものの目を醒ましたら奇跡。
一生植物人間のままの可能性も高い。そう言われている。

けれども私は、何故かこの状態に奇妙な安息感を感じていた。

学校へ行って、帰りに病院に行く。
ほぼ一日も欠かさず一年以上続けている。
今では学校よりも、一人暮らしの家よりもここが一番自分にとってしっくりと来る場所になってしまっていた。

ノックして返事が無い事を確かめて、部屋に入って匠君の顔色を見る。
「おはよう。匠君。」
不思議なもので日によって顔色が違ったり、何か雰囲気が違ったりする。
目を閉じている事に変わりは無いのだけれど。
517 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:09:33 ID:mNOi5XAk
匠君の横に椅子を出してきてラジカセを小さい音でかけてから座る。
看護婦さんが来るのが5時だから、それまでは多分誰も来ない。
買ってきたペットボトルを隣において。
匠君の横にある戸棚から半年ほど前に始めたパッチワークの道具を取り出して昨日の続きを始めた。

一日中匠君の顔ばかり眺めていると匠君が照れてしまうよなんて言って、
婦長さんが半年ほど前に私に教えてくれたのがパッチワークだった。

小さい切れを縫い合わせたりする、いわゆる裁縫仕事なんだけれど以外にもはまってしまった。
始める前は年寄り臭いかななどと思ったのだけれど、中々奥が深い。
手先を動かすから飽きないし、横で音楽を聞きながらなら尚更だ。
ふと病院にいる事を忘れて熱中してしまって、横を見ると匠君が寝ていたりしてびっくりする事もある。
518 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:12:32 ID:mNOi5XAk
そんな事をしているとふっと思い出した。
さっきまでずっとその事を考えていたのに、おかしくなってしまう。
部屋に入ってからあんまりにもいつも通りに動いたから頭から飛んでしまったのかもしれない。

「そうだ、今日はチョコレートを持ってきたんだ。去年は付き合い始めたばかりだと言うのに、それどころじゃなかったからな。」
編物を用意する手を止めて袋からチョコレートの包を取り出す。
ついでに少し伸びてきた髪も後ろで束ねた。

「一緒に食べようと思ったから二人分だ。私も食べる。」
そう言って。匠君の髪の毛を少し触って、それから半分を枕元に置く。

私が事故で得た傷は左腕の裂傷だけだった。
匠君に守ってもらったからかもしれないけれど、もう少し重い傷でもよかったと思う。

「食べたかったら起き上がって取ると良い。私は自分で食べる。」
チョコレートを口に放り込む。

薄情に思われるかもしれないけど、一度も泣いてはいない。

「ん。意外と美味しいな。匠君も食べると良い。」
枕元のチョコレートはやっぱり減らないのだけれど。
519 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:15:11 ID:mNOi5XAk
奇妙な安息感に包まれながら。
そんな風にゆったりと流れる日常の中で、私は毎日病院にきている。
まるで毎日庭の植物に水でも撒くように。

多分この安息感は、病院という場所を私が居心地のいい所だと思っているからなんだろう。
私は母の寝ている横でこうして良く絵本や児童書を読んでいるような大人しい子供だったから、
その頃に戻ったように感じているのかもしれない。

だからあまり不安にも思わない。

それに私の頭は抱えてもらった匠君の手の感触をまだ覚えているから。

おはよう。匠君。
今のところ匠君は、何度言っても起き上がってはくれないのだけれど。
520 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:22:48 ID:mNOi5XAk

-----------------------------------

少し遅れました。

感想ありがとうございます。

必要な部分を必要なだけ書きたいと思ってますのでのったりと見ていただけたら幸いです。

書け次第投下します。
では。
ノシ

>512
中の人などいませんので何の事やらさっぱりわかりませんが、
絶対入らないです。
ご心配かけてすいませんです・・
521 ◆/pDb2FqpBw :05/01/24 16:26:31 ID:mNOi5XAk
>520

ごめんなさい
>必要な部分を必要なだけ書きたいと思ってますので

の行はコピー間違いです。抜いてください。

では。 
ノシ
522名無しさん@ピンキー:05/01/24 20:56:55 ID:rYl2gNfT
長編乙でしたと
523名無しさん@ピンキー:05/01/24 21:48:44 ID:8x+yBe5K
毎回毎回きちんと萌えポイントが用意されてる・・・
524512:05/01/24 23:40:11 ID:eCLwJun5
続きキテターーーーーーーーーー!
一年以上もの間、匠君が植物状態になって、
原因の一端を担ってしまった涼子さんの親父さんはどう考えているのか、匠くんの家族はどう思ってるのか…
色々と想像が膨らみますね

それにしても、匠君が目覚めるまでは涼子さんは泣くこともできないのだろうか…とか考えると切ないですね
この二人には幸せになって欲しいなあ、などと思います
…ちと入れ込みすぎですかね

>絶対入らないです。
確約キターーーーーーーーーーー!
ありがとうございますだ
これで寝取られ入ったりしたら…鬱入って引篭もって学生生活が一年延びる、なんてことになってしまいそうで(笑


兎も角、続きに期待してます、がんばってくだされ
525名無しさん@ピンキー:05/01/25 01:03:27 ID:lff6PHxw
すごい…、小説読んでるみたい。
◆/pDb2FqpBwさんは本職の方ですか?
526名無しさん@ピンキー:05/01/25 02:52:49 ID:x23ZfHJf
>◆/pDb2FqpBw
GJ!!!

一年かあ・・・
涼子さん待ってるんだなあ。
匠いつまで寝てんだ、起きろねぼすけ!
527名無しさん@ピンキー:05/01/25 05:54:52 ID:yNCZ3LBO
>>525
ワロタ
528無愛想ハーレクイン:05/01/25 21:34:45 ID:Xo47H6Uc
|ω・ジー
お久しぶりです。
自分のしでかしてしまった展開が妙にしっくり来なくて長い間寝かせておりました。
転がしていたらエロのへ到達が遠く……
流血表現の苦手な方はスルーしてください
529無愛想ハーレクイン:05/01/25 21:36:52 ID:Xo47H6Uc
 ドアが開く音がして、甘い香りが部屋を満たしたのを感じた時、崇香は舞里が蜂蜜レモンで
も作って持ってきたのかと、うとうとしながら思っていた。
 ちょうど喉が痛かったし、甘い物は嫌いじゃない。いつもならば出て行け変態と罵る所だが、
今くらいは大人しい患者をしておく方が自分のためだと考えて、崇香は一切反応せずに黙って
布団に包まっていた。
 無駄に饒舌な舞里が部屋に入ってから一言も発しないのは不自然な気がしたが、医者として
眠っている病人を気遣っているのだと考えれば当然のことのような気がしないでもない。
 しかし、何故いつまでも突っ立っているのだろうと崇香が不信に思うなり、舞里はそのまま
部屋を出て行くと静かにドアを閉めて歩き去ってしまったのだ。
 わけがわからず体を起こしてみても、頭がぼうっとするばかり。
「何しに来たのよ、あいつ」
 特に何かを置いていったようにも見えないし……と思った所で、部屋の向こう側から舞里の
悲鳴が聞こえて崇香はビクリと肩を跳ねさせた。この病院の事情を知らない強盗だろうか? 
それとも舞里を殺そうと目論む誰かが銃でも持って押し入ったのか?
 暫く沈黙が続いた。さっき部屋に入ってきたのは、きっと舞里ではなかったのだ。
 ごくりと唾を飲み込むと、舞里の怒鳴るような声が聞こえて、崇香はこれはいよいよやばい
と枕の下に敷いておいたドライバーを握り締めた。
 舞里が殺されるのは一向に構わないが、とばっちりでこちらが死ぬのは勘弁だ。この要塞で
舞里が殺される可能性は極限に低いにしても、あの万年のんびり男がうっかり殺される可能性
だって大いにありえるではないか。
 少し前、舞里がついうっかり指を切断しているのを目撃したことがある。その時舞里は笑顔
で奥の部屋に引っ込んで、数時間後再び指を生やして戻ってきたのだ。接合手術だかなんだか
分からないが、とにかくあの男がどうしようもなく注意力散漫なのは事実である。
 手術で失敗しないのが不思議なくらいだ。
――足音……
 ドライバーを握ってベッドで息を殺していると、部屋に一歩一歩と近づく足音が聞こえて崇
香は慌ててドアの横に張り付いた。
530無愛想ハーレクイン:05/01/25 21:38:27 ID:Xo47H6Uc
 足音がドアの前で止まり……そのまま動く気配は無い。
 崇香は一層、ドライバーを握る手に力を込めた。舞里ならば、病室に入るのに躊躇などしな
い。ならばやはり、この部屋を空けようとしているのは歓迎されない客に違いない。
 ドアノブが回り、開いた。瞬間、崇香はドライバーを侵入者の胸めがけて突き刺した。
 硬い衝撃が手に伝わり、続いて生暖かい液体がドライバーを伝って流れてきた。
「え……?」
 聞きなれた声が上の方から降ってきて、崇香は愕然と顔を上げた。見上げた先には見慣れた
刺青が驚愕の表情に青く不気味に張り付いている。
 間違えた……と思った時にはもう遅い。
 ワイシャツと突き通して深深と胸に突き刺さったドライバーを奇妙な物を見る目つきで見
下ろして、続いて舞里は崇香をみた。
「……バ、バグ!?」
 だるさと高熱が一気に吹き飛ぶ程に、崇香は心底凍りついた。舞里の胸につき立てたドライ
バーのグリップを握ったまま、動くことが出来ずに硬直する。
 先に動いたのは舞里だった。舞里は状況を理解するや否や顔色を恐怖に染めて、迷わず崇香
を突き飛ばし、ドライバーを引き抜いて走り出した。
 警察に通報しに行ったに違いない。そうでもなければ、他の病院に連絡に行ったのだろう。
「あ……ぁ」
 短く喘いで力なくその場に崩れ落ち、崇香は血液の付着した状態で転がっているドライバー
を見て口元を覆った。
 血は、肘から先ほどの長さもあるドライバーの半分近くを赤く染めていた。一歩間違えれば
貫通するほどに深く、しかもあの位置は心臓があるのではないだろうか。いいや。いいや心臓
を狙ったのだ。確かに狙って、貫いた。
――どうしよう
 人を殺してしまった。しかも、ただの勘違いで。
――どうしよう……!
 呼吸が乱れ、引いたと思った高熱が再び襲い掛かって脳漿を沸騰させた。体が熱い。めまい
がする。
 だめだ、気絶する。
 思った直後、崇香は自分が床に倒れる音を聞いた気がした。
531無愛想ハーレクイン:05/01/25 21:40:00 ID:Xo47H6Uc


「崇香ちゃん」
 柔らかいベッドに、目を薄っすらと明けると白いシーツが飛び込んだ。おいしそうなおかゆ
の匂いがしていて、そしてよく聞こえない耳に飛び込んだ声は、間違いなく先ほど崇香が刺し
貫いた男の物。
「バグ!?」
 思わずベッドから飛び降りて、崇香はのんびりとした表情で構える舞里に掴みかかった。
「バグ! バグ……どうしよう、あたし、あたしあんたを殺す気じゃ……!」
「こ、殺す? なんの話?」
 掴みかかられてあわわ、と情けなくよろめいて、舞里はやんわりと崇香を押し返すとにっこ
りと微笑んだ。
「熱の所為で悪夢でも見たんじゃない? おかゆ、こんどは梅粥にしてみたんだ。食べるよね」
 いつもどおりの表情で、いつも通りに暢気に構える舞里に対し、崇香は顔色を青くした。
「夢の現実の区別くらい……!」
「食べさせて欲しいの?」
「誤魔化さないで!!」
 叫んでレンゲごと舞里の腕をひっぱたき、崇香は荒い息を吐いてベッドから飛び降りた。
 何時間眠っていたのだろう? 腕に注射の感覚があるから、きっと舞里の仕業に違いない。
「崇香ちゃん……」
 困惑したように中腰になり、舞里が逃げるように後退った。気を失う前と服が違う……着替
えたのだ。
 自分は確かに舞里の胸を刺し貫いた。この男は、それを無かった事にしようとしている。意
味が分からない上に、許せなかった。自分は間違いなく、目の前でのんびりと笑う男の胸を刺
したのに。
「……気絶したわ。熱も下がったみたい……どれくらい眠ってたのよ」
「丸一日。私が薬を打ったから、目を覚ます気配もなかったよ」
 薬を打って人工的に丸一日眠らせたと、そう困ったような笑顔で言い放たれて、崇香はいよ
いよ激怒で眩暈がしてきた。
 今度こそは本当に、自分の意思でこの男を貫きたい。手にドライバーが無くて……よかった。
532無愛想ハーレクイン:05/01/25 21:40:43 ID:Xo47H6Uc
「子供扱いってわけね……どうせ、傷だってあんたの化け物じみた御大層な医術で治しちゃっ
たんでしょ!? 血のついた服も、ドライバーも、全部無かった事にしたんでしょ!? あた
しは確かにあんたの事を刺したのに……!」
「ドライバーなら捨ててない」
 遮るように静かに言われて、崇香は言葉を止めて舞里のことを睨みつけた。
 舞里の苦しそうな表情の意味が分からない。
 しばらくして、その男の苦しそうな表情がふと緩んで、安堵したような表情で叩き落された
レンゲを拾い上げた。
「その様子なら、安心だ。きっと色々はったりかまされただけだったんだな、私。もう好きな
時に退院して大丈夫だよ。一応お薬は出しておくから」
「ま、まちなさいよ……!」
「これ以上追及されると、泣きたくならから、やめてね」
 新しいのを持ってくるよと言って立ち去った舞里の背中が本当に苦しそうで、崇香は抑えき
れない感情をどこにぶつけていいのか戸惑った。
 いらいらする。熱も無いのに眩暈と吐き気が襲ってきて、全身を掻痒感が包み込む。泣き止
んだ直後の子供のように落ち着き無く体を揺すって、崇香はベッドに戻ると前後に体を揺すっ
て頭を両手で抱え込んだ。
 なんだ、なんなんだあの男は。刺されても怒らない。あんなに怯えた表情で逃げ出したくせ
に、気絶した崇香を介抱して、事実事態を抹消しようとさえしている。
 全身が、どうして欲しいのか分からない感覚に包まれて落ち着かない。
 どれだけの時間そうしていたのか、舞里が行って戻ってくるまでの間だらか、ほんの数分だ
ったのだろう。
 戻ってきた舞里は、頭を抱えて揺れている崇香を見つけて痛むほどに奥歯を噛み締めた。
「私が怒らないから、怒ってるの?」
「そうよ……」
「大事件なのに、事件にしなかったから?」
「……えぇ」
「でも、大事件にならなかった。私は生きてるし、もう傷も消えた。崇香ちゃんは熱があって
意識も朦朧としてたし……」
「意識ははっきりしてたわよ!!」
533無愛想ハーレクイン:05/01/25 21:44:08 ID:Xo47H6Uc
 ヒステリックに叫んだ崇香の言葉に怯む様子も無く、舞里は部屋にゆっくりと入ってくると
レンゲを粥の入った土鍋に静めた。
 ベッドのすぐ側で、いつもの笑顔で笑う。
「私はミステリアスな男だからね。いろいろ秘密が多いから、事件になると私が困る。できる
なら崇香ちゃんにも、この事は口外して欲しくない。これで君の治療費はチャラだ。つまりは、
そういう事……事件にしたがらないのは君のためじゃない。全部私の保身のためだよ」
 じくじくと痛む傷を、何故かさらにナイフで抉られたような気がして崇香は震える体を抱き
しめて沈黙した。分かっている……この男の言葉は全て、嘘だ。
 崇香をかばうためにビジネスライクな言葉を吐いて、救い様の無い笑顔で笑っている。
「……笑ってばっかり……!」
 吐き捨てるようにそういって、崇香は立ち上がると舞里に与えられた就寝着を脱ぎ捨ててた
たんであった自分の服に手を伸ばした。
 最早舞里など、男でもなければあらゆる興味の対象外だとでも言うように。
「嘘を笑顔で隠して、何でも笑顔で誤魔化して……まるで人形ね。演技しかしない」
「はは……返す言葉はないな」
 複雑そうに笑って、いつもどおりの平然とした瞳を崇香の皮膚に滑らせる。
「退院するわ。お世話様。入院費は払うわ。私の報酬から差し引いて、足りない分は請求して
頂戴」
「いやいや、私もお医者さんごっこが出来て楽しかっ……」
「さよなら」
 冷ややかな音を立てて病室のドアが閉まり、舞里は一人、要塞のような病院に取り残された。
 お粥は手付かずで残っている……手を伸ばして一口食べ、舞里はおいしい、と微笑んだ。
「強姦魔って罵られた方が……よかったなぁ」
 効力は欲望が解消されるまで続く……媚薬という意味では無かったのだろうか?
 舞里は考え、すぐに忘れた。何にせよ、自分には彼女のどんな種類の欲望も、解消してやれ
る力などないのだから。
534無愛想ハーレクイン:05/01/25 21:47:48 ID:Xo47H6Uc
切らせて頂きます。
涼子さんかっこえかったっすよ涼子さん。
そういう口調に弱いのですよ涼子さん。
|)彡サッ
535名無しさん@ピンキー:05/01/26 11:31:17 ID:bwS85Lei
なぜか涼子さんの看病シーンで泣いてしまった(;_;
特にチョコを枕もとにおいて会話してるしーんで…
おれだけか…最近涙もろくなったなぁ。
536名無しさん@ピンキー:05/01/26 12:34:11 ID:++GRQWbI
久々にハーレクイン氏キタ(゚∀゚)!!GJ!
537名無しさん@ピンキー:05/01/26 12:35:33 ID:++GRQWbI
う、あげてしまった。すまない。
538 ◆/pDb2FqpBw :05/01/27 11:16:14 ID:SiRO3f2/
病院の中は時節、廊下をぱたぱたと歩く音と、窓の外から聞こえる車の音以外は殆ど音がしなかった。
あんまりにも静かだから私はこうしてラジカセをかけることにしている。
勿論音量には気をつかいながら。

そんな風にしてゆっくりとこうして病室で2人で音楽を聞いていると子供の頃を思い出す。

私位の年のロックファンは一番最初に何を聴いてロックファンになる人が多いだろう。

メタリカとか、ガンズとかだろうか。いや、エアロスミスやクイーンかもしれない。
どれも私の年代からすると微妙に古いバンドで、でもその魅力的な音楽や、
退廃的もしくは刹那的な雰囲気に惹き付けられてファンになった人が多いと思う。

始めは先輩やお兄さんお姉さんから煙草と一緒に教えられて、と言うのが普通なのかな。
それは少しマンガの読みすぎだろうか。
テレビで見てとか、クラスの友達に教えられてかもしれない。


私はというと母の部屋でよく一緒に聴いたエアロスミスとマイケルジャクソンが始まりだった。
後はたまにピストルズも。(これは小さな音でだったけれど。)
539 ◆/pDb2FqpBw :05/01/27 11:17:33 ID:SiRO3f2/
今考えると私の母は明るくて可愛らしい人だったように思う。
いつでも優しくて笑っていて、そして若々しい感じのする人だったと思う。
まあ19で私を産んだのだから私が小学生に入ったときはまだ25歳。
とても若いお母さんであった事には違いないんだけれど。

私にとって小さな頃から母とは病院にいる人だったけれども、
亡くなる前に自分が不幸だとか、不便だと私が思った事は一度も無かった。

ご飯や洗濯は近くに住んでいるおばさんや父の道場にいるお兄さん達がしてくれていたし、私もできるだけ手伝った。
大勢の人に囲まれて育ったから家事は皆でわいわいとやる物だと思っていたくらいだ。
そういう家庭環境も理由の一つだと思う。
けれどもそれ以上に母は子供に病気を感じさせないほど明るくてお話が上手くって、楽しい人だった。

行くといつもにっこりと笑って私をベッドの上に載せて抱っこをしてくれたし、
小学校に入って、私が一人で病院に行けるようになるとお父さんには内緒よ、
と言いながらベッドの下に隠すように置いてあるラジカセとカセットテープを持ってきて色々な曲を聴いた。
私はそれが楽しくって学校の事とか、昔のお話を一生懸命お母さんにした。

私はお父さんにばれちゃいけないと思ってずっと黙っていたのだけれど、
考えてみればラジカセを買ったのはお父さんなのだ。
あれはお母さんの私に対する悪戯っぽいちょっとした秘密、だったのかもしれない。
540 ◆/pDb2FqpBw :05/01/27 11:19:39 ID:SiRO3f2/
ふとそんな事を思い出していると後ろの椅子にお母さんが座るのがわかった。
パッチワークの手を止めて針を針休めに刺して話し掛ける。

「中々うまくいかないんだ。困ってしまう。」
ふう、と溜息を付きながら言うと、体重をかけた後ろの背もたれがきいと鳴った。

「あら、大丈夫よ。涼子は頑張っているもの。」
何を言っているの。という風に窘められる。

「そうかなぁ。私、何にもしてない気がする。お母さんの時と同じ事してるだけ。」
拗ねたように言ってみる。

「あら、お母さんの時も涼子は頑張ったじゃない。よく遊びに来てくれたわ。」
なんだか後ろで手仕事をしながら話しているような感じで。

「だって私が楽しかったもの。あれはお母さんの為じゃなかった。」

「それで良いのよ。お母さんも楽しかったんだもの。
 ふふ。道場で皆に構われて育ったから、涼子ちゃんは甘ったれでいっつもよく泣いてたのよ。」
思い出すような声で後ろにいるお母さんは言う。
541 ◆/pDb2FqpBw :05/01/27 11:22:09 ID:SiRO3f2/
「今は泣いてなんかない。」

「そうね。涼子ちゃん、強くなったね。」
ちょっと残念そうな口調で。

「覚えてる?お母さん。」
「なあに?」
「ロックは弱い人や元気が欲しい人が背中を押してもらう為に聴く音楽なのよって。」

「あら、懐かしい。そうよ。強い人が聴くんじゃなくて、強くなる為に聴くの。
 えい、頑張るぞって。涼子ちゃん、そんな事覚えてたんだ。」

「うん。私、よく聴いているんだ。」

「そう、じゃあ大丈夫ね。」
お母さんは感心したように。
まるで、何の心配もいらないみたいに。

「・・・もう行ってしまうの?」

「・・・・」
最後の言葉は聞き取れなかったけれど。
542 ◆/pDb2FqpBw :05/01/27 11:26:11 ID:SiRO3f2/
ふと気づくと部屋の中は薄暗くなって、いつのまにかお母さんはいなくなっていた。
ぼう、と病院の白い壁を見ながら。
こういう静けさはこういう色々な事を思い出させてくれるのかもしれないと、ふと思った。

時計を見るともう帰る時間になっていて。
膝に置いてあるパッチワークの道具を袋の中に入れる。
お話をしていたおかげで今日はあんまりパッチワークは進まなかった。

少し伸びをしながら立ち上がる。
病室の電気を付けて赤い夕暮れの中、カーテンを閉めた。

ドアの近くに歩いていって外を確認する。
薄暗い廊下に人がいない事を確認してから。
寝ている匠君の頬にそっと手を当ててゆっくりと顔を沈みこませた。
こればっかりはいつも少し照れてしまう。

すっと指で少し濡れてしまった所を拭って。

でも、そんなに悪い彼女じゃないと思うのだ。
これくらい、匠君は許してくれる。
いや、どちらかというと喜んでくれないと困ってしまうのだけれど。
543 ◆/pDb2FqpBw :05/01/27 11:27:51 ID:SiRO3f2/
これがお話なら、目を醒まそうってなものなのに。
仕方がない。

「じゃあ。匠君。」
返事は無い。

「おやすみ。」
手をちょんと突っついてさよならの挨拶を。

また明日ここに帰ってくるんだけど。
544 ◆/pDb2FqpBw :05/01/27 11:36:53 ID:SiRO3f2/

--------------------------------

感想ありがとうございます。

書け次第投下します。
では。
ノシ


>534ー
間違えて刺してるううううう。
アクションがかっこええです。いいなあ。

前スレって倉庫入りで見えないんですかね。
無愛想ハーレクインさんのは保管庫にあるので全部でつか?
545名無しさん@ピンキー:05/01/27 21:35:25 ID:Az4LDOPU
キター!
涼子さんかわいいよ涼子さん!
投下ペースもいい感じです。
546名無しさん@ピンキー:05/01/28 01:34:00 ID:lh3ZiZpX
頼むから匠君目を覚ましてくれょぅ・゚・(ノД`)・゚・。 ウワァァァァン
547名無しさん@ピンキー:05/01/29 11:32:29 ID:z3KmrN3R
涼子さんの作品ってエロ無し?
エロ無しで完結させていただきたいとおもふ今日この頃…
だめかな
548名無しさん@ピンキー:05/01/29 15:02:34 ID:b3oCH3xj
途中からこれはエロ無しだなってふいんきはあったが。
ここからどうあがけばエロ展開にもっていけるか想像できんし。

個人的なわがままかも知れんがこの板では
書き手さんは抜かせるために書いて欲しいけどね。

でもここまで涼子さんに萌えてきたし、続きも気になる
質の高い読ませる話に仕上がってるし、
無理なエロ展開で完成度が落ちるのも
モチベーションの低い気の抜けたエロ書かれるのも
作者読者双方によくない。
これはもう作者さんの当初の構想どおりにやっていただくしかあるまい。

まあグダグダ書いたけど、とりあえず
どうなろうと続きを楽しみにしてることは間違いないんでその辺は
誤解しないでよろしく。
549名無しさん@ピンキー:05/01/29 16:54:16 ID:ItcuTw3R
余裕でエロに持っていけると思うが…でも、エロなくても漏れはいいや


とにかく、匠君の復活に期待
涼子さんが可哀想だ
550名無しさん@ピンキー:05/01/29 18:32:09 ID:iv3MlsRb
涼子さんは寝てる匠君にチュウのひとつやふたつしたのだろうか?
それとも毎日?
551名無しさん@ピンキー:05/01/30 00:12:57 ID:U+an14nb
>>550
>>542-543を十回ぐらい読んで見れば分かると思うよ。
552無愛想ハーレクイン:05/01/30 02:51:15 ID:iWmJXESQ
 深夜を大分過ぎた時間にか弱い女の子を退院させてしまったという重大な事実に気が付い
たのは、崇香が退院して夜が明けた朝だった。
 物騒な時間帯に無事に家にたどりつけたか不安だが、昨日の今日で電話など入れたら受話器
からハンマーが飛んできそうな物である。
 その日は雲も風も無く、清々しい休日の朝だった。病院も、今日は諸事情により臨時に休業
中である。
「それで、崇香さんに嫌われたんですか」
 何故にこの男に呆れたような声を出されなければならんのか。
 アールグレイの濃厚な香りを漂わせ、オレンジクッキーの軽い音をかみ締めながら、舞里は
目の前で常識人面をしながら紅茶を啜る透に心持表情を引きつらせた。
 おおらかと言うより自分事に無関心の舞里にしては珍しい表情である。
「まぁ、女性なら崇香さん以外にも沢山いますし、そう気を落とす事はありませんよ」
 倫理観から見事に外れた慰めの言葉を吐いたのは、先日病院に現れて奇妙な薬を崇香にかが
せ、二人の仲をズタズタに引き裂いた張本人の透である。
 舞里としては、親友である透のこういった非常識な振る舞いを正してやらねばならないとい
う考えと、個人的な恨みを込めて電話で彼を呼びつけたのに、当の本人は叱られている事実に
すら気付いていない。
 自分の価値観で物事を決めるな。こっちの恋愛に手を出すな。それらの言葉の全を、舞里の
我侭のように受け取っているに違いなかった。
「こっこまで価値観が違うと君と親友続けてく自信が砂塵のように失せていくよ」
「おや、僕の意見にご不満が?」
「決めた。絶交する」
 短く断言した舞里の言葉に、これは少しだけ驚いたような顔をする。
「それはそれは、また一方的な縁の切り方をしてくれる」
「私は本気だよ透くん。もとはと言えば君があの時病院にきて変な物をばら撒いていかなけれ
ばこんな事にはならなかったんだ。私の心の女神をかえせ」
 一方的なような、あまりそうでもないような。常人とかけ離れた価値観を持つ二人がそろい、
会話が成立している事自体奇跡なのだろう。
553無愛想ハーレクイン:05/01/30 02:52:01 ID:iWmJXESQ
 かじり掛けのクッキーを突きつけられて困ったように顎をなで、透は小さく首を傾げた。
「しかし、崇香さんが舞里君を刺したことについては、僕は一切関係無いんじゃないですか?」
「君が私の病院に薬を渡しに来た事自体が問題なんだよ! いいかい? 私は崇香ちゃんに
は嫌われてるけど恨まれる事はしていない。なのに崇香ちゃんが私を刺したって事は明らかに
誰かと間違えたんだ。つまり! 君と!」
 クッキーを振り上げ、突きつけ、そして食べる。
「この病院の過剰なセキュリティーが彼女の自衛本能を無駄に煽ったとも考えられますがね。
僕の出現くらいであなたが大げさに叫ぶから、崇香さんも賊の侵入かと疑ったんじゃないです
か?」
 お前以上の賊がこの世に存在する物か。
 ここに透の通り名を知るものがいれば、間違いなく苦々しい表情でそう言うだろう。
 しかしそんな賊を作り上げた張本人にとっては、透の通り名など頓着の対象ではありえなか
った。透に再生者手術を施したのは舞里である。
「君は過剰って言うけどね、私が何回殺されかけてると思ってるんだい? そりゃ、今の私に
とっては多少いきすぎかも知れないけど、一般の患者さんを守る事を考え……誰か来た」
 チャイムと言うよりは警告音に近い、ポーンという機械音が部屋に響いて、舞里は途中で言
葉を切った。
「臨時休業中では?」
「急患は診ることにしてるんだ」
 クッキーに手を伸ばして口に含み、紅茶を手に持ったまま立ち上がる。
「ご近所の奥さんが心臓発作を起こした時に、医者の私が友人とお茶してたなんて決まりが悪
いでしょ?」
「よくある話だと思いますがね」
554無愛想ハーレクイン:05/01/30 02:53:11 ID:iWmJXESQ
「よくある話に甘えたら人間おしまいだよ」
 サクサクと軽い音を立ててクッキーを味わいながら玄関に向かい、ドアの前でコンピュータ
ーに向ってロックの解除を一言命じる。
 裏口は開け放してあるというのに正面玄関に重々しい――見た目は普通のドアなのだが―
―セキュリティを設けるわけは、舞里の優しい心遣いによる物だった。
 すなわち、化け物志願者しか存在を知らないような裏口から入ってくる者はプロとみなし即
抹殺。正面玄関を破ろうと試みる者は善良な強盗とみなし、全身全霊をこめて門前払いを試み
るのである。
 このセキュリティロックを解除して侵入してくる豪の者には、やはり抹殺もしくは半殺しの
制裁がまっているのだが……
「おまたせしまし――」
 ドアを開けて来客者の姿を確認するなり、舞里の全機能が一瞬完全にフリーズした。手にし
ていたティーカップが落下して、音を立てて四散する。
「す……」
「カップ、落ちたわよ」
 もう二度とメンテナンスにも来てくれないのではないかと思っていたのに。
「崇香ちゃん!?」
 感動なのか驚愕なのか理解に苦しむ調子で叫んで、舞里は不機嫌極まった表情で突っ立って
いる崇香と、部屋の奥――で紅茶を啜っているであろう透――を見比べた。
「ごめん! ちょっとまって!」
 どうしてこうもタイミングが悪いのか。何か言いかけた崇香を無視して叩きつけるようにド
アを閉め、舞里は透のいる部屋まで大急ぎでとって返した。
「帰れ!」
 部屋に戻るなり、開口一番これである。
「何を突然……」
「どういう奇跡か知らないけど崇香ちゃんが来たんだ。私と君が一緒にいる所を見られると非
常にまずい! だから帰ってください。お願いします」
 今日は舞里の珍しい表情を見ることが多いな、などと非常に暢気に構えながら、透は慌てる
様子も無くティーポットから新しく紅茶を注ぎなおした。
555無愛想ハーレクイン:05/01/30 02:54:33 ID:iWmJXESQ
「参考のために聞いておきますが、お断りするとどうなります?」
「心は痛むけどエマージェンシーコードを叫ばせてもらう。頭を狙うようにプログラムしてあ
るから再生者でも数日は再起不能だ」
 この男の必死な表情を見るのも随分と久しぶりだ……などという透の感慨を無視するよう
に乱暴にドアを殴りつける音がして、崇香が舞里の事を急きたてた。ただでさえ怒っている様
子だというのに、これ以上待たせたらロケットランチャーでも打ち込まれそうな勢いだ。
「透くんお願いだから! 裏口から出てってくれ!」
「拒否する事のできないお願いは命令だと思いますが……」
「私が冗談でEGコードの話をしたと思うなら大間違いだよ……? Dum spiro……!」
「それでは、そろそろおいとましますかね」
 とうとうコードを口にしはじめた舞里に最早冗談は通じないと悟ったのか、透はやれやれと
肩をすくめるとようやっと紅茶を置いて立ちあがった。
 人が狼狽している姿は見ていて実に楽しいが、相手が舞里ではそこまで苛めるわけにはいく
まい。少なくともこの病院では、若干ではあるが舞里にも勝機はある。
「まぁ、どうせ薬の効き目はまだ続いてるでしょうから……今度こそ物にするんですね」
「早く帰れ!」
 とうとう命令になった舞里の言葉に楽しそうに笑って見せて、透は足音も立てずに”非常口”
と書かれた誘導灯のドアに消えていった。
 本当に出て行ったかどうか確認するために付いて行きたい所だが、今はそんな余裕はない。
おお慌てで透の使っていたティーカップを食器洗い機に放り込み、崇香の元へ走ろうとした
所で、はたと舞里は気がついた。
――薬の効き目はまだ続いてるでしょうから……
556無愛想ハーレクイン:05/01/30 02:57:32 ID:iWmJXESQ
「まった透君! あの薬って結局どんな作用が……!」
 慌てて透の後を追おうとした舞里の足を、玄関を殴りつける音が引きとめた。
 だめだ……これ以上待たせるわけにはいかない。
「いつか恋に落ちた時に絶対苛めてやる……!」
 あの男が女を愛するなんていう奇跡が起こりえるかどうかは別として、この仕打ちに対する
報復がそれで済まされるのだから随分おき楽なものである。
 しかし、舞里が誰かに対して『いつか見ていろ』なんて感情を起こすのは年に何度もあるような事ではない。つまりそれだけの決意をさせるほど、崇香は舞里にとって特別なのだ。
 いつか見ていろ。絶対に泣かしてやる。
 密かな決意を胸に秘めた所で、再び玄関で……今度は工具箱でドアを殴る音がした。
557無愛想ハーレクイン:05/01/30 03:04:34 ID:iWmJXESQ
切らせて頂きます
いまだエロに到達できていない私にも耳に痛いお言葉が……
すいません精進します頑張りますエロくなります。

>>◆/pDb2FqpBw氏
このスレで書いてる物は保管庫で全てです。
間違えて刺してます。
やたらと流血表現が多くなる可能性がありますがごめんなさい。
|)彡サッ
558名無しさん@ピンキー:05/01/31 09:06:56 ID:ycjS0FCb
お二方ともがんがれ!

保守
559 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 13:51:19 ID:Fhgqsqrd
「そういえばあの時の匠君はおかしかった。」
こみ上げてくるおかしさを抑えながら。
パッチワークの手を止めて、何時の間にか隣に座ってこちらを見ている匠君に私は話し掛けた。


「涼子さん、俺、涼子さんと同じ大学を受けてみようと思うんだけど。」
大学で一人暮らしをするからと、図書室にいる匠君に借りていたCDを帰した時の事だった。

「そうか、それは面白い冗談だな。受験にもお金が掛かる。親不孝は良くない。」
人がいないのをわざわざ確認してから真っ赤になって匠君が言い出したそのセリフは。
卒業したら匠君とも接点はなくなるな、などと考えていた私にとって何故だかとても嬉しかったのだけれど。
正直言って目が丸くなるような内容でもあった。

「いや、冗談じゃないって。」

「そうか、冗談じゃないのか。それはそうとよく聞くといい。匠君。」
図書室の机を向い合せ出前に座っている匠君に引導を渡す。

「な・・なんだよ。」

「そうだな。それは言ってみればニルヴァーナがオリジナルメンバーでニューアルバムを出すくらいの可能性だと私は思う。」

「0%じゃないか・・・」
酷い。と身を揉んで抵抗しているのを尻目に、お姉さんである私は現実的な路線を薦める事にする。
560 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 13:52:05 ID:Fhgqsqrd
「しかし向上心があるのは良い事だ。違う大学なら可能性はある。
 丁度良いことに偏差値30からの大学教育を謳っている大学が近くにある。」
そこに行くと良い。といった私に対して、

「そんなに可能性ない?俺・・・」
匠君はやだよそこ、毎年新入生歓迎会で新聞に載るし。などと返してきた。

「可能性ないだろう。」
この前の期末テストでクラス何番目だった?と聞いてみる。

「38番目だけど、これから頑張るし。」

「そうか・・・。40人中38位か。」

「43人だよ。涼子さんがここが出るって教えてくれたから、ちょっと成績上がったんだ。」

「全然変わらないじゃないか。ていうか私が試験傾向を教えてあげたのに38位だったのか匠君は。」
誇らしげに43人中などと胸を張っている匠君に溜息が出る。
561 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 13:54:23 ID:Fhgqsqrd
「わかるか、匠君。自分の成績を自慢する訳ではないんだが、私は成績で言うと学年で結構上だ。」
誇る訳ではないが、無謀な挑戦を行おうという友人には現実というのは厳しいという事も示さなくてはいけない。

「うん。知ってる。上って言うか女の子の中では殆ど一番なんだよね。」
すごいよね。と嬉しそうに言う匠君を睨みつける。

「余計な事は言わなくて良い。8クラスあるから一学年360人として、巧君は300〜320位だ。」

「違うよ。298位だった。」
まるでその違いが合否を分けるかのように匠君は言う。

「だから変わらないって。匠君。」
しょんぼりと肩を落とす。

「成績がどうこうではないけれど、やっぱり無理は良くない。」
その、近くの大学では駄目なのか?と続けた。

一緒の大学なんて無理に決まっている。
でも、その時私は何故だかとても匠君と沢山お話をしたかった。
なんというか、そう。一緒に音楽の話ができる友人は貴重だから。

卒業を控えた今日、卒業した後の事をお話しできるなんて私は思っていなかったから。
562 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 13:57:35 ID:Fhgqsqrd
「記念に受けるのは良いかもしれないけれど、きちんと考えた方が良い。」

「・・・うーん。でも。でもやっぱり頑張るよ。なんとかしてみる。」
暫く悩んでいた匠君は図書室の机に肘を突きながらうん。と頷いている。

「そんなに強情を張らなくてもいいだろう。それこそ浪人してしまったら大変じゃないか。」

「その、涼子さんと同じ大学に言ってみたいんだ。」
何て返事して良いか判らないような恥ずかしい事を。

私はその言葉で固まってしまったし、ここからは絶対に匠君には言えない。

匠君が同じ大学に来たいだなんて言ってくれたその時、
私は匠君の事をかわいいだなんて思ってしまったのだ。

懐かれていて嬉しいとか、あまり友達のいない私に良く話し掛けてくれるだとか。
そのときまではそんな風にしか思っていなかったのだけれど。
563 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 13:59:00 ID:Fhgqsqrd
なんていうか、一緒の学校に行きたいんだなんて。
なんかそれは匠君らしくて、なんだかとても素敵な事を言われたように思ってしまったのだ。

「無理をしては良くない。でも。」
勉強でわからないところがあれば、聞いて来ると良い。
そんな事を言って引っ越し先の住所と電話番号を教える約束をした。

その時にはもう、私は匠君と一緒にいたいと思ってしまっていたのかもしれない。
564 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 14:02:02 ID:Fhgqsqrd
病院の外から、鶯の鳴き声が聞こえてくる中、ふう。と息をつく。

正月には下手っぴだったのに、大分上手になったものだと思う。

膝の上の荷物を横にどかして、いつの間にか最近長くなってしまった髪を後ろでもう一度纏め上げる。


「しかし受かったと聞いたときはびっくりしたな。」
匠君はあの時いきなり電話をしてきたし。なんて続けた。

ベッドの方を向く。さっきまでベッドの上でこっちを向いていたはずの匠君は、いつの間にか元に戻っていた。

「絶対無理だと私は言ったのに。」

いつものように匠君の頬にそっと手を当てて。
こうやって最近私はよく匠君とお喋りをする。
なんだか少し寂しくって、あんまり良くない事なのかもしれないけれど。
565 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 14:06:54 ID:Fhgqsqrd
匠君のほっぺたを拭って。

ニルヴァーナは未だにニューアルバムは出してない。
カート・コバーンはもういないんだから。

でも、そうだとしても。
あの時可能性が0%なんて匠君に言ったのは私の間違いだった。
匠君は電話をかけてきたんだから。

「受かりました。涼子さん。やったね。」
だなんて。まさに偏差値30からの大学受験を成し遂げてくれた。
一緒の大学に行きたいんだ。なんて笑わせてくれる。
頑張ったね、なんて私も思わず何の芸も無い返事をしてしまったけれど。


「今日は帰る。早くて悪いけど少し買い物をしなくてはいけないから。」

試験日の前、私は何てことなしに神様にお祈りをした。
匠君が受かるといいな。なんて。

「おやすみ。匠君。」

無宗教の癖にって怒られてもいい。
車から必死で匠君を引きずり出した後。
救急車に乗った私はいつのまにか同じように目をつぶって胸の前で手を合わせていた。

「また明日。そろそろ起きて。」

絶対無理だなんて思わない。
私の間違いだったのだから。
566 ◆/pDb2FqpBw :05/02/01 14:19:25 ID:Fhgqsqrd
--------------------------------

感想ありがとうございます。
やる気でます。

書け次第投下します。
では。
ノシ


>>:無愛想ハーレクイン氏
>このスレで書いてる物は保管庫で全てです。

ありがとございます。
なんかツボな展開です。薬が。薬が。
567名無しさん@ピンキー:05/02/01 15:19:35 ID:A3Gb9UD3
匠起きろ〜!
最近の ◆/pDb2FqpBw 氏の小説を読むと
涙でディスプレイが滲んで見えない…
次の投下も楽しみにしてます。ガンガレ!
568名無しさん@ピンキー:05/02/01 16:42:56 ID:hq7Q6mDN
ええ話や
569名無しさん@ピンキー:05/02/02 00:22:17 ID:+f12gRbH
匠ィ〜〜!
なにやってんのじゃあ!とっとと目ェ覚ませ!
涼子さんがこんなしおらしくなってんのやぞ!?
570名無しさん@ピンキー:05/02/02 01:28:27 ID:bPXWMLqm
匠君を強制的に起こしてみるtest

タテ、タツンダタクミクン!> _| ̄|○
             ↓
           _ト ̄|○
無理ぽ
571名無しさん@ピンキー:05/02/02 23:59:55 ID:2ePKQv2N
無理じゃない、ちゃんとできるじゃないか。アレとかソレとか
572名無しさん@ピンキー:05/02/05 21:07:03 ID:OI3nqYHS
573名無しさん@ピンキー:05/02/05 21:49:36 ID:SGfk8/eH
574名無しさん@ピンキー:05/02/05 21:53:15 ID:bKcjFvax
575名無しさん@ピンキー:05/02/05 21:53:27 ID:BCcOvPHE
576名無しさん@ピンキー:05/02/06 11:57:35 ID:na3FkY/l
577名無しさん@ピンキー:05/02/06 14:46:50 ID:3p7K8HLu
578名無しさん@ピンキー:05/02/06 15:35:03 ID:e+UwYWGc
579名無しさん@ピンキー:05/02/06 23:08:38 ID:ZO9nCEQp
ぬるぽ
580名無しさん@ピンキー:05/02/07 00:17:04 ID:8Xs6YgYB
ガッ

◆/pDb2FqpBw氏降臨待ち定期巡回支援保守sage
581 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:31:14 ID:EPfSgKXV
今日はしとしとと嫌な雨が降っていて、病院内の雰囲気もどことなく暗かった。
雨が降っている割にはそれ程冷え込んでもいなくて、もうすぐ春になるのだと思う。
今日は何日だったっけ?椅子に座ってジュースを口に含んで。
今日は匠君と何のお話しをしようかな、などとふと考えた。


「匠君は薄味のほうが良いんだっけ?」
その時私はこたつで何故か緊張している匠君に話しかけた。

「いや、何でも大丈夫だけど。」
涼子さんが作ってくれるなら、なんて言ってきた。

「はっきりとしないな。匠君は。」
そう言って私はエプロンを締めなおす。

ええと、これは何の時だったっけ?首を捻る。
そうだ。初めて匠君の家に料理をしに来た時だった。
匠君がカップラーメンばかり食べているとか聞き捨てならない事を行ったから、匠君を叱ったんだ。

男の子に作る料理は肉じゃがが良いらしいよ。
なんて美紀は適当な事を言っていたけれど、
個人的に唐揚とサラダにでもしようと思って私はその準備をしてきていた。

取り合えず油と包丁俎板その他を用意して。
匠君が殆ど使っていない、という理由で綺麗に保たれている台所をフル活用しなくてはいけない。
582 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:32:15 ID:EPfSgKXV
「しかし、綺麗な台所だな。匠君。」
綺麗というよりは包丁とやかんしかない。

「でしょ?結構片付け好きなんだよね。」
誉められたとでも思ったのか隣に立っている匠君は自慢げに言ってくる。

「誉めてなどいない。カップラーメンばかりじゃあなくって、色々と作る努力をしなきゃ。」

「ほら、匠君は机の上を拭く。」
向上心にかけている。と私はそう言いながら布巾を投げた。
匠君は素直にはい。とかいって机の上のものをどかして拭いていたと思う。

唐揚を揚げながら野菜を切っている時に後ろを振り向いた時。
匠君は何故だか嬉しそうにちょこんと座って、テレビでは無くて私のほうを見ていた。

「匠君。テレビでも見ていればいいのに。」

匠君はエプロンとスカートの私の格好を見て視線を逸らせたりして、
私はそれが恥ずかしくってTVでも見ていろなんて言ったんだった。
嫌じゃなかったんだけれど、匠君も男の子なんだと思ってちょっとビックリしてしまった。
それ以来スカートはあんまり穿かないようにしたんだっけ。
なんだか少し恥ずかしくて。
583 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:33:01 ID:EPfSgKXV
同じように後ろを振り返ってみるとドアがあった。
今は壁が白くて床が冷たい部屋が、私の方を見ている。

椅子を少し動かして匠君の横に座る。
そう。それにしてもリノリウムの床というのは冷たいな、と思う。
あの時の匠君の台所のステンレスみたいに。

・・・
そんな事より、もうちょっと考えよう。
きっとその後は。
584 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:36:49 ID:EPfSgKXV
「涼子は本当に料理が上手いね。」
そう、その後匠君は頭を撫でてくれながら私を誉めてくれる。


匠君はきっと入ったばかりの会社の仕事が忙しくって。
私は家にいるんだけれどそうやって毎日誉めてくれるから料理も楽しいんだ。
たまに失敗してしまうのだけれど。

何の会社でもいい。
帰りが早くって、一緒に夕ご飯が食べられる会社が良いと私は思う。


きっと美味しそうに食べてくれる。
あの時、油の温度が低くって生焼けだったから食べなくて良いって言ったのに。
匠君は一生懸命食べてくれた。
ご飯も少し水っぽくなってしまっていて。
でもカップラーメンより全然美味しいだなんて失礼な事を言ってきて。
585 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:38:33 ID:EPfSgKXV
「涼子、こっちにおいで」
料理が終るとそう言って頭を撫でてくれる。
匠君は優しくて、私はいつも少し甘えてしまう。

私はいつもこんな風で口調もこうだし、叱ってばっかりいて煩いと思われているだろうから。
あまり遊びも知らないから料理なんかで喜んでくれるとすごく嬉しかった。

匠君は後輩の癖に、すぐ拗ねてしまって生意気だし、自己管理がなっていないけれど。
私が叱っても優しいからちゃんと聞いてくれる。
ごめんって謝ってくれて、全然喧嘩も出来ない。

そう、たまには遊びにも行ったりして。
ディズニーに行った時みたいに。
あの時は確か私が少し無理を言って一緒にいったんだった。
アトラクションより、ベンチに座って色々お話しをしたのが楽しかった。

帰り際にぬいぐるみが欲しいといったら
少し笑いながら涼子はしようが無いななんてって言って買ってくれたりして。
586 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:41:18 ID:EPfSgKXV
あの時もそうだった。
ええと、匠君にはちょっと荷が重そうだったから私も半分出して、
匠君と2人のものにしようって言ったんだ。

匠君は買ってくれるって言ったけど、そのときの匠君の財布の中身くらい私は把握していた。
「俺からプレゼントさせてよ。涼子さん。」
だなんて。
でも。すごく可愛くて、嬉しかった。
年上なのに、あんなに喜んでしまったら匠君に変だと思われたかもしれない。

恥ずかしいから、今度買ってもらうときは控えめに喜ぶようにしようと思う。

肩をすくめて。
少し寒い気がする。頭も少し痛い。
雨が降っているからかな。
スカートなんて穿いてこなければ良かった。
涼子だなんて、呼んでもらった事も無いのに。
587 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:42:17 ID:EPfSgKXV
ふっと気づくと肩を叩かれていて、頭を上げると目の前に婦長のおばさんがいた。
「涼子ちゃん!」
いつものハキハとした話し方で、私のことを心配そうに見ていた。

「あ、婦長さん。」
首だけを婦長さんのほうに向けて。

「返事が無いんだもの。大丈夫?」
ふう。と溜息をついた後、肩に手を置かれて顔を覗き込まれる。

「うん。ちょっと眠っちゃっただけ。ごめんなさい。」
気づいてみるといつの間にか私は匠君の頭を撫ぜた格好のまんまで、カーテンの外はすっかり暗くなっていた。

匠君のほうに視線を戻す。

「そうだ。そういえば来週、匠君のお父さんがこっちにくるんだって。昨日電話をくれたんだ。」
椅子に座り直して匠君をちょんちょんと突っつきながら話す。
「久しぶりだねえ。ご挨拶しなきゃ。」

「ケーキでも買って来ようか。お母さんは来られないみたいだから、お父さんと、匠君と私の分。」

横で誰かが何かを言っているけど、私には聞こえない。

匠君はたしか、チョコレートのケーキが好きだったから。
588 ◆/pDb2FqpBw :05/02/07 19:45:24 ID:EPfSgKXV
--------------------------------

感想ありがとうございます。
やる気でるです。

涼子さん編は後一回。
中の人のあれがあれだったりするので
少し時間を頂くかもしれないです。

書け次第投下します。
では。
ノシ
589名無しさん@ピンキー:05/02/07 20:38:11 ID:3NNCj+Ld
◆/pDb2FqpBw 氏へ
いつも神な小説をありがとう。
また涙が出てきちゃったよ…
良作を作るには時間がかかるということは
重々承知です。
ガンガレ!超ガンガレ!
590名無しさん@ピンキー:05/02/08 00:46:16 ID:nKeyaU1G
涼子さんは何か分裂症というか妄想癖みたいな……。
匠君が蘇った時に、今度は涼子さんが……みたいにはならないよね……。
591名無しさん@ピンキー:05/02/08 01:46:46 ID:Fd7yxyhE
◆/pDb2FqpBw 氏乙です。
あれがあれだったりすると大変だと思いますが、体調に気をつけて書いてくださいね。

マルメタチョコレートケーキドゾー(・∀・)ノ●
592名無しさん@ピンキー:05/02/08 01:53:45 ID:TINrWJdi
フライパンもって匠君のベッドの傍に行きたい気分。
とっとと起きろー!
(間違って包丁)
593名無しさん@ピンキー:05/02/08 10:31:56 ID:yW4TzmeE
また大阪か
594名無しさん@ピンキー:05/02/08 14:11:27 ID:ZElNQnOx
つ「愛のフライパン」
595名無しさん@ピンキー:05/02/08 20:45:02 ID:8k26e+pP
包丁でも投げとけ
596名無しさん@ピンキー:05/02/09 12:04:09 ID:KyadJTTg
ヤンキター(・∀・)
597名無しさん@ピンキー:05/02/12 09:19:38 ID:oPXJq+OB
ほっしゅほっしゅ
598名無しさん@ピンキー:05/02/12 23:44:21 ID:uX43Pul7
599名無しさん@ピンキー:05/02/13 00:09:05 ID:ZZQmpPLt
600名無しさん@ピンキー:05/02/13 11:48:27 ID:P4zaXei5
3
601名無しさん@ピンキー:05/02/13 13:58:34 ID:L2577zn8
>>600
600を取ったのにその体たらく・・・
602名無しさん@ピンキー:05/02/15 12:06:13 ID:pCscJAyY
hosu
603 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:06:05 ID:ru+QkhnW
「あ、僕はいいのに。あ、あぁ、あーその位で。ありがとう。」
ベッドの横にある白い机の上でコポコポとお茶を出すと匠君のお父さんはそう言いながら恐縮してくれた。
勿論今までにも何度も会っているのだけれど、このお父さんは中々に匠君に似ている。
雰囲気とか。言葉とか。髪の毛が白くってにこにこと笑う所も。

「えーっと。匠君はチョコレートケーキだから。お父さんはモンブランとタルトとどっちが良いですか?」
お茶も出したことなので机の上に駅前で買ってきたお気に入りのケーキを並べる。

「あ、ごめんなさいね。僕の方が買ってこなきゃいけないのに。」
ありがとう、なんて言ってくるお父さんにフォークを添えてモンブランを出してあげる。

かちゃりとフォークがお皿を叩く音がした。

「お父さんは御煎餅とかのほうが良いかと思ったんですけど・・。」
いっつもケーキなので・・と続けた。

「あー良いよ、いい。甘い物なら何だって。」
大好きなんだ。甘い物。なんてにっこり笑って言ってくれる。
そういう顔も、とても匠君に似ている。
当たり前なのだけれど。
604 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:07:35 ID:ru+QkhnW
「少し痩せたかな。涼子さん。」
お茶をすすりながら3人で食べ始めた所、急にお父さんはそう言ってきた。

「あ、そうですか?ダイエットはしてないんですけど。ありがとうございます。」
ふふ、と笑って答える。結構甘い物は食べているし、体重は変わらない筈なのだけれど。

「いや・・そういうのじゃあないんだけど。」
うん。まあいいやなんて、お父さんは首を竦めながら答えてくれた。

「そうそう、最近良く匠君とお話するんです。」
私がそういうと、
匠君のお父さんはへえ。そうなんだ。と笑いながら話に乗ってくる。

「どんな話をするの?」

「うーん。昔こんな事があったね。とか。どこに行きたいね、とか。今日の天気とか。」
そんなとこです。と答える。

「へえ。そうなんだ。」
そうかあ。それは楽しそうだ。なんて。

「今日は顔色も良いみたいだし。お父さんが来て喜んでるんだと思いますよ。」
私がそう言うと、頷きながら、そうなんだ。だとしたら嬉しいなあ。なんて喜んでくれる。
605 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:10:52 ID:ru+QkhnW
そんな事を話しているとお父さんは急に椅子に座りなおした。

「うん。いつもありがとう。ちょっと安心したよ。でも君も少し休まないといけないね。」
匠君と同じ声で。ハッキリとした感じで。

「全然。私、いっつもここでのんびりしてますから。」
最近はパッチワークやってるの。

「うん。勿論、これからも匠と一緒にいてくれると嬉しいよ。
 でも学校帰りにちょっと寄ってくれるとか、それだけで匠は嬉しいんじゃないかなと思うんだ。」
違う、早く一緒にお話ししたいだけ。

「だって、起きた時に匠君の傍に誰もいないと寂しいかもしれないし。」

「勿論そうだね。匠だって起きた時に涼子さんの顔を見れたらとっても喜ぶと思うよ。」

「それに私は他に何も出来ないし。」
お父さんは横を見て、お。ラジカセだなんて言ってカチャカチャと触っている。
匠君と同じ。にこにこと笑いながら、私の話を聞いているんだか聞いていないんだか判らないんだから。

でも、こんな話をして、そんなものを見ていたらなんだかしらないけれど。
なんだか目のあたりが痛くなって。
髪の毛を直す振りをして顔を下に向けると、
何かがぽたぽたと私の膝の上に落ちてきた。
606 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:12:05 ID:ru+QkhnW
「だって匠君の家からはここは遠いからお父さんもお母さんも中々来れないし。」
違う。こっちの病院にして欲しいと何度も言ったのは私だった。
私はずっといっしょにいるからって。今思い出すとその時の私は子供のような事を言っていた。

「うん。わかるよ。涼子さんが随分匠の為に悲しい思いをしてくれたって事くらい、私は判る。」
匠君のお父さんは椅子に座ったまんまうんうん。と頷いて、それからケーキを一口食べた。

「あれは傑作だったしね。」
はははと笑って。

「ずっと一緒にいるんだから。匠君に一緒にいるって言われたからって。」
匠君の方を見て。
607 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:17:07 ID:ru+QkhnW
「その後涼子さんは、結婚するって意味だったなんて言ってきたから。」
さすがにこの気が弱い奴が学生のうちにそんな大胆な事を言う訳は無いよなあ。
なんてCDケースをかちゃかちゃと弄りながら言ってきた。

「下手な嘘だったね。涼子さん。ありがとう、すごいね。感心してしまうよ。
 でも、もう一年にもなるんだし。匠とは無理しないで。逃げやしないんだから。」

匠君と一緒で口下手だけれど。
私は優しい言葉だと思った。

所在無さげにCDケースを弄りながらそんな事を言ってくるお父さんを見ていて、ふと私は考えてしまった。
私はお医者さんでもないのに何かをしなくちゃって。
どうにかしなくちゃって、そんな事ばかりを考えていて、
自分がどんなに寂しくって、悲しい気持ちでいるかどうかもわかっていないのかもしれない。
608 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:18:26 ID:ru+QkhnW
白髪は白髪でかっこいいけれど。
このまんま、匠君のお父さんみたいに白髪になるまでお話できなかったら。
そう思ったら私はなんだか本当に悲しくなってきてしまった。
私はだらしないって怒る事も出来ない。

慌てて唇をぎゅっと噛み締めて。

「だって私のせいだから。匠君が私の事をかばったりしたから。」
視界に映る匠君のお父さんがぼやけて見える。

「馬鹿なんだ、私は自分の頭を抱えていたのに、匠君も同じようにすればよかったのに。」

でも。
「きっと匠君は、私を守らないとって思ってくれたんだ。」

だから。
「匠君とお話がしたいの。家に帰ったって誰もいないし。
 病院にいたって匠君はケーキも食べてくれない。」

右手でごしごしと擦った。
「今度は私が守ってあげるの。音楽を聴いて、お話しをして。」
609 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:21:27 ID:ru+QkhnW
急に胸の奥が苦しくなってしまって。
「匠君が、匠君が。」
まるで胸の奥から涙が湧き出るようにぽろぽろと流れてくる。

「お話したいのに。毎日電話するって約束したのに。」
もう一度言いかけて。
でも、もうその時には私はしゃくりあげてしまっていて、
喉からは理解できるような言葉は出てこなかった。

「だって一緒にって・・・匠君の馬鹿ぁ。」

顔を上げてもどうしようもなく涙が流れて来て、いつの間にか両手で顔を覆ってしまっていた。
どうしても悲しくて悲しくて我慢が出来なくって。

お父さんの前なのに恥ずかしい。
私はなんだか、まるで子供にでもなってしまったみたいで。
610 ◆/pDb2FqpBw :05/02/15 14:24:52 ID:ru+QkhnW
--------------------------------

感想ありがとうございます。
やる気でるです。

後もう少し。

書け次第投下します。
では。
ノシ


●\(゜ω゜=)
611名無しさん@ピンキー:05/02/15 18:20:07 ID:OMWOSfa9
GJ!
涼子さんの切ない気持ちがたまんない。
匠君早く目ぇ覚ませYO!!!

612名無しさん@ピンキー:05/02/15 18:51:06 ID:OY5nzbBC
涼子さん・・・(´・ω・`)
匠君目ぇ覚ませやゴルァ!
613名無しさん@ピンキー:05/02/15 21:46:54 ID:P1FXRptS
キサマには目覚ましを100個贈ってやりてえ。
これ以上涼子さんを悲しませんな。とっとと!起きろ!
614名無しさん@ピンキー:05/02/15 22:15:01 ID:Sm0tbPvf
20年間寝たきりで言葉も失った女性が突然言葉を取り戻したと聞いた。
匠君も大丈夫だ、信じている。
615名無しさん@ピンキー:05/02/16 00:39:40 ID:AhxxcFW5
つ「愛のフライパン」
616名無しさん@ピンキー:05/02/17 00:31:36 ID:WhcbdVYh
つ「愛の鋼鉄製ハリセン」



びしばしと
617名無しさん@ピンキー:05/02/17 12:09:29 ID:USPu0Yin
>>616
それって何ネタ?
618名無しさん@ピンキー:05/02/17 18:38:34 ID:WhcbdVYh
いや、ただの思い付きだからあんまり気にされても困る
多分いくつか掛け合わせてるし
619 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:01:31 ID:DVrkux+E
なんだかうるさいなあ。と思って。

懐かしい。かな?それでもないな。
何だっけこれ?よく聴いたな。
思い出せないけど。えーと、あれだよあれ。

最初に戻った感情はそんなものだったと思う。

30年間眠りについていた男がある日突然に目覚める。
そして自分の知らないうちに流れてしまった時間に愕然とする。
良くある映画の話だけれどあれは嘘だと思う。嘘ってのは言いすぎか。
でも、少なくとも俺の場合は違っていたと思う。。

勿論覚醒していた訳じゃないのだけれど、なんだかこう、少し浅い眠りについている時のような感触を常に感じていた。
部屋に人がいるだとか誰かが話している気がするだとか。
触覚じゃない、もわもわとした何か気配のような。
かといって何か考えていた訳でもない。
本当にぼんやりと。今だから思い出す。
そういうレベルでの意識はあったんだなと思う。
620 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:03:21 ID:DVrkux+E
だから最初に意識が開けたとき、なんとなく自分は随分長い間ここにいたんだろう、なんて思った。
体は動かないし、眼球が動くだけ。
声どころか覚醒している実感も持てなかったけれど。
それでも何かの音は聞こえて、自分がどこかにいる感触だけはあった。

最初のうちは途切れ途切れの意識の中で眼球だけを動かしていた。
音もうーん。なんとなく、少しだけ。やっぱり寝ているのかもしれない。
でもだんだんとやっぱり意識だけは戻っていると感じる時間が多くなってきた。

自分が寝ている状態である事もなんとなく判った。
まあ多分病院にいて、要は点滴で生きてるって事なのだろう。
ごはん食べたいな。食欲とか良く判らないし、体動かないけど。

だけど何故だか恐怖感はあんまり感じなかった。
しょっちゅう耳元で何か音がしていたし。
人の気配がしていたから。
そう。なんだっけこれ。
思い出せないけど。えーと、あれだよあれ。
ヒーリングミュージックかな。癒しって奴だ。
最近は病院でもこういう事に取り組むってニュースでやってたし。

でも、それにしては騒がしい気もする。
何度か話し掛けられている気もするし、それは看護婦さんなのかもしれない。
いきなり立ち上がって復活!とかやったら驚くかな。
心臓止まるかもしれないな。ま、体動かないんだけど。
621 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:04:16 ID:DVrkux+E
眠っているような、どこかが覚醒しているような。
そんな何かを考えているのか、眠っているのか判らない状態がどのくらいか続いた後。
何かのきっかけがあったのかは判らないけれど。

突然、横で鳴っている音楽がクリアに聞こえた。
目の前の煙が晴れるように意識だけが完全に覚醒していくのが判る。

それまでとは全く違う天地がわからないようなぐらぐらと回転するような気持ち悪さが体を包む。
そして、確かにに体が動かない事がわかった。
心臓だけがドクドクと動いているのが判るだけで、
覚醒した意識に対して、体自身は動かし方を忘れたように全く動かない。
現に動かし方は判らなかった。

全身が動かない事を確認した後、呼吸だけはしている事を確認して、そして恐らく伝える手段はこれくらいだろうと考えた。
上半身も下半身も麻酔がかかったように動かない。
それでも必死で息だけを吐き続けると、喉が鳴るような音だけは出た。
必死になって何度も繰り返す。

そんな苦労をしている中、隣で椅子がガタッという音をさせて動いた。
部屋に誰かがいたと言う事だけで安堵感を感じた。
それでも開かない目の隙間からうっすらと見える天井だけでは状況は全く判らない。
「んんーーー」
女性が伸び上がったような声を出す。

「さて、お菓子お菓子。」
「ぅぁ゛ー」
おお、出た出た声。なんだか判らないけど俺にも食べさせてください。お菓子。
口動かないけど。
622 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:05:41 ID:DVrkux+E
「ふう。」
少し溜息。足元のあたりを歩いているのが判る。

「ぅぁ゛ー」
だから俺も食いますって。
がさがさと頭のすぐ横で動いているのが判る。

「ぅぁ゛ー」「ぅぁ゛ー」「ぅぁ゛ー」
必死で肺から息を搾り出す。声出てますよー

「ぅぁ゛ー」
「っ・・?」
「ぅぁ゛ー」
「ふう。・・・ふふっ」
溜息と自嘲するような笑い声が聞こえた。

必死に息を吐き出しても口からは自分の耳にもかすかとしか言い様の無い音しか漏れない。
「ぅぁ゛ー」
もうちょっとしないと駄目かなあと諦めかけたその時、隣のがさがさと言う音が止まった。

「・・」
暫くの沈黙の後、カチャカチャと何かを横にどけたような音。
そして横で鳴っていた音がピタリと止められた。

「ぅぁ゛ー」
「・・・・・」
623 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:06:37 ID:DVrkux+E
開かない瞼の隙間から確認する。
恐る恐る覗き込んできた顔は、なんだか髪が随分伸びてお洒落な眼鏡なんかをかけていた。
しまった。やっぱり随分やっちまってたのかもしれない。
でも30年は経ってないみたいだ。
伸びた髪も眼鏡もセクシーだぜ涼子さん。

いや、これ涼子さんの娘とかだったりしたらどうしようか。
ママ、パパが目を覚ましたよ!とか言ったりして。
そしたらなんて言おうか。
涙ぐんで僕が君のパパだよ。かな。
君は本当にママに似ているね。なんつって。
彼氏がいるとか言われたらどうしようか。
マジで許せないんだけど。でも良い奴だったらしょうがないか。
でもまだ早いんじゃないかな。最近は30位で結婚するのが普通って言うし。
あー、そもそも名前はなんだろう。可愛い名前だといいな。
パパって呼んでくれるかな。父さんでも良いな。

まあ残念ながらそんな心配は全くない訳ですけれども。

それより最悪なのはパパ、匠おじさんが目を覚ましたよ。だよなあ。
パパって誰だよ。
624 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:08:00 ID:DVrkux+E
はじめまして、あなたの担当をしている山本と申します。
いやぁ、本当に良かった。すぐに涼子もここに来ますから。
はは、こんな時に何してるんだろうな。あいつ。
ほら、ご挨拶して。これ、娘の美穂です。
こんにちは、匠おじさん。ママからよく話、聞いてたのよ。
いやいやいやいやいや、匠さん。すぐに体も動くようになりますよ。
私達も家族ぐるみで応援させて頂きます。社会復帰もすーぐですよ。すぐ。
今は高齢者への支援システムも整っておりますし。ハッハッハ。

・・・・
だとしたら夢の世界に戻ろう。戻ってきちゃ駄目だったんだ。
ごめん、俺。空気読めないから。
625 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:08:45 ID:DVrkux+E
でも、その声は線の細い声だったけれど。
「・・匠君・・・、もしかして起きてる?」
間違いなく涼子さんだった。よく見てみれば背筋も伸びてるし。間違いない。
安堵感と共に息を吐き出してみる。
「ぅぁ゛ー」
顔は動かなくって、喉しかならない。おきてますよー。

「・・・おはよう。」
呆然とした表情で見下ろしながら言われる。
見上げて思う。少し胸、大きくなりましたか涼子さん。
半目になってるからそう見えるのかもしれない。

「ぅぁ゛ぁ゛ー」
おはよー。動かない唇で続ける。
手を握られる。
必死の思いで握り返す。それでもピクリとしか動かなかった。

「・・・おはようじゃない・・・おはようじゃないっ!」

今更だからもう少しこのままお喋りをしていたかったのだけれど。
髪の毛が伸びて眼鏡をかけている、懐かしくって見慣れない顔は。
「・・ちょ、ちょっと待ってて。ケーキ。じゃなくて。」
目を丸くしたまんますっと視界から消えて。
ええと、と言いながらぱたぱたと何処かへ走っていってしまった。
すっとした背筋と一緒に最後に見えたのはやっぱりぴょこぴょこと動く結んだ髪の毛で。

俺としてはその髪型似合っているよ、とかもうちょっと気の利いた事を伝えたかったのだけれど。
626 ◆/pDb2FqpBw :05/02/18 20:09:36 ID:DVrkux+E
--------------------------------

感想ありがとうございます。
本当にありがたいです。

書け次第投下します。
では。
ノシ
627名無しさん@ピンキー:05/02/18 21:04:13 ID:fmNqVT7w
愛のフライパン効いタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
よかった…ほんとによかった……
628名無しさん@ピンキー:05/02/18 21:25:17 ID:m2NhdnNS
包丁で脅した甲斐がアッタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
起きたなねぼすけ!待たせたぶんだけ涼子さんのことギュっとハグしてやれよコノヤロウ!!
629名無しさん@ピンキー:05/02/19 13:44:55 ID:LBrJM8He
ありがとうヤン夫妻!愛の力に感動しますた。

◆/pDb2FqpBw 様お体に気をつけて下さい。
楽しみに待ってまつ。
630名無しさん@ピンキー:05/02/19 19:41:32 ID:aoUPH5fl
だめだ、この喜びを表現する気の利いた分が思い浮かばねえ。
あれ、おかしいな何か流れてくるぞ──
・゚・(ノД`)・゚・。
631378:05/02/21 20:10:49 ID:QUAEj9pb
>>625
> 見上げて思う。少し胸、大きくなりましたか涼子さん。

その内匠君のを挟んだりしご・・・うわやめろなにをするあwせdrftgyふじこ
632名無しさん@ピンキー:05/02/22 02:40:58 ID:oPQMf+Tw
しかし何だ、その

                    匠君に萌えた
633名無しさん@ピンキー:05/02/22 03:10:59 ID:Nr5cE+EM
匠君キター!
エネルギー充填120%で続きを待ってます!
634名無しさん@ピンキー:05/02/22 19:11:20 ID:EY0XtjIL
一つだけ気になったんだが、
>涙ぐんで僕が君のパパだよ。
匠君何時の間に、パパになるような行為を涼子さんに…

うわなにやめろあqwせdrftgyふじこlp;.
635634:05/02/22 19:13:35 ID:EY0XtjIL
>まあ残念ながらそんな心配は全くない訳ですけれども。


見落としてた…_| ̄|○
636名無しさん@ピンキー:05/02/23 09:28:53 ID:ucxB729e
逆「トーク・トゥ・ハー」みたいになったのかも
637 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:35:20 ID:HPOJBeDN
「ほら、匠君。あと5周だ。もっと足を上げて。」
激痛に顔をしかめながら平行棒のような機械に掴まって体ごと引きずるように動く。
前には進んでいるものの、歩いているとは言いがたい格好だ。
目の前では俺のリハビリに付き合ってくれている涼子さんが椅子に座りながらじゃがりこを齧っている。

「・・・・涼子さん。」
今日はこの辺で。と目で訴えるけれど聴いてくれそうにもない。
「昨日はもう少し歩く事が出来た。今日はあと5周。」
じゃがりこを取りに来い!と言わんばかりに椅子に座ったまま冷たく言い放つ。
「だって痛いもんよ・・・。」

「痛くなどない。ほら、進む。」
中々に鬼のようだ。

「Def Leppardのドラムのリック・アレンは交通事故で左腕を失った。
 それでも立派に復帰して正式メンバーとしてレコーディングはおろか、ライブでだってドラムを叩いてる。」
それなのに五体満足の匠君が歩けないなんて事があるはずが無い。と涼子さんは言うのだけれど。
638 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:36:20 ID:HPOJBeDN
「うん。大分匠君の足も動くようになってきたみたいだ。」
病室への戻り、車椅子をカラカラと押してもらいながら話をする。

「そうかな。なんか感覚はあるんだけど。なーんか引きずってるだけのような気がするよ。」
おかげで腕はパンパンに腫れ上がるし。

「そうか?それでも掴まって一応歩けるのだから大分の進歩じゃないか。」
先生もそう言っているし。と嬉しそうに言ってくる。
心なしか車椅子のスピードもいつもより速い。

「病室に戻ったら一緒にテレビでも見よう。」
「へえ、何借りてきてくれたの?」
「なんだっけな。アクション物で匠君が好きそうな奴だったから。」

無論ビデオデッキは涼子さんの持込だったりする。
親やら友達やらからの見舞いが一段落して。
落ち着いて病室を見てみると、部屋の中はなんだかまるで涼子さんの部屋のようになっていた。
ちなみになんだか申し訳ないことに病室代の殆どは涼子さんのお父さんに払ってもらっていたようで
意識が戻って移った先の病室も個室で環境としては何だかとても良い。
639 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:37:00 ID:HPOJBeDN
「確か何とかって言うよく喋る黒人が出てる刑事ものだったな。」
後ろから話し掛けてきている涼子さんは。
結局俺の意識が戻ってからずっと一緒にいてくれている。

何だか離れてると又どうにかなってしまうとでも思い込んでいるような感じで
給湯室にお湯を取りに行ってもぱたぱたと小走りで帰ってきてなんだか正直少し申し訳なく思う位だ。
学校は休んではいないみたいだけれど、夕方の5時には必ずここに来て10時頃まで一緒にいたりする。
4年生だから授業のない日と土日に到っては9時頃には病院にきてくれている。

病院は意外とする事がなくて、
リハビリと検査の時間以外は寝ていたりCDを聞いたり本を読んだり位しかすることがないから
涼子さんが来てくれるのはとても嬉しいのだけれど。
それでも涼子さんには学校も生活もある訳だし。

意識が無かった時はどうだったのかと聞いても看護婦さんは笑って答えてくれなかったし、
涼子さんは暇な時に見に来ていた。としか言ってくれなかった。
今は暇な時どころじゃあないだろう。
正直今のこのペースでは涼子さんの負担になっているんじゃないかと少し悩む所でもあった。
640 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:38:36 ID:HPOJBeDN
それに俺自身の相手も相当骨が折れるはずだった。

今でこそ会話は出来るし、ある程度の事までは出来る。
こうやって歩く訓練もしているし、正直言って先行きは明るい。
多分にリップサービスなのだろうけれど、医者からは奇跡的だとも言われている。
それでもこうなるまでには2ヶ月以上かかっていて。

意識を取り戻して体の感覚は急速に元にもどったけれど、それでも起き上がるまでには2週間はかかった。
ちゃんと喋ったり、コミニュケーションを取れるようになるまでさらに2週間。
車椅子に移れるようになるまで1週間。
病院内をうろつけるようになるまで1週間。

これからはもっと長いという話だ。
元通りになるとしても、もうちょっと時間がかかるのだろう。

とりあえずの目標は来年度、出来れば今年の後期から車椅子無しで学校に戻れるようになる事だ。
とにかく時間がかかるのだろう。
涼子さんもそれはわかってくれている。
だからこそ俺は、涼子さんには疲れて欲しくないのだ。
涼子さんがいなくても大丈夫だと言う所を見せて安心させなくてはいけないと思う。
641 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:40:39 ID:HPOJBeDN
それに俺は休学しているけれど、涼子さんは4年生。
就職活動やなんやらと本当はすごく忙しいんじゃないかと思う。
なによりも涼子さんには俺と一緒にいて疲れたなあ。なんて思って欲しくない。

その、好きな人がいて。涼子さんだけど。
その人と一緒にいれる時間が少しでもあるのなら、
例え自分がどんな状況であろうと負担に思って欲しくはなかった
下らない見栄なのかもしれないけれど。

だから首を回して涼子さんの方を向いて。
「涼子さんさ、毎日だと疲れるだろうから、今まで通りのペースでいいよ。俺一人でも頑張れるし。」
無理しないで欲しい。なんてずっと考えていた事を思い切って言ったのだけれど。

涼子さんは立ち止まってきょとんとしてしまった。
同時に車椅子も止まる。
「今まで通りのペース?」
匠君は何を言っているのだろうという風に聞き返してくる。
642 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:49:46 ID:HPOJBeDN
「いや、ここ2ヶ月もずっと涼子さん俺の所に来てくれてるし。」
ほら、わかるっしょ?

「うん。当たり前じゃないか。」

「涼子さんが疲れちゃわないかなって思って。」
「匠君は私と一緒にいたくはないのか・・・」
そうか。と呟いている。何だか下唇が不満そうだ。
人の話を聞いてください。

「いや、違うよ。違うって。涼子さんもやる事沢山あるんじゃないかなって。」
それに、義務感とか感じちゃってるんじゃあないかなあって。
だったらやだなあって。ほらほら。

そう言うと涼子さんは後ろから俺の顔を覗き込んで暫く考えこんだ。
目を動かして考えている涼子さんの吐息が顔にかかる。
涼子さんの顔を見返すと、真っ白な病院の壁と、車椅子から見ると高い天井が見えた。

そうやって暫く考えた後、涼子さんは言った。
「やる事なんてないじゃないか。」
なんだか遊んでもらえない子供のような表情で。
643 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:52:02 ID:HPOJBeDN
「じゃあ、匠君がねむりこけていた時のペースで私はここに来れば良いと言う事だな。」
しばらく話して、別に俺が会いたくないと言っている訳じゃないと納得すると涼子さんはそう言った。
肩を潜めてふう。と溜息を付かれる。
何だか少しコミカルですね涼子さん。

「眠りこけてたって・・・。まあ、そういう事かな。負担にならないくらいに。」
涼子、俺はお前の体の心配をしているんだぜ?勿論心もな。

「眠っていてずうっと私の事を放っていたじゃないか。匠君は。」
はい。その通りなんですけど。ごめんなさいマジで。

「前の通り・・」
涼子さんは車椅子を押している手を止めて。
暫く考えて何とも言えないニュアンスで呟く。
644 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:54:02 ID:HPOJBeDN
「いや、あんまり時間を空けられるとそれはそれで・・・」
出来れば週に2度くらいは・・・
「我侭だな匠君は。」
だったら前の通りなどと言わなければ良い。と怒られる。

「いや、その。無理させたくないって言うか。」
こう、頼もしい彼氏づらがしてみたいと言うか。

「わかった。匠君がそう言うならそうしよう。匠君が寝ていた時通りだな。」
ふむ。仕方がないがそれなら確かに問題は無いだろう。別段疲れないしな。
くつくつと。珍しく悪戯っぽい笑い方をしながら。

涼子さんは後ろから俺の頭の上に顎をのせてきて。
「匠君。二言はないな。」
なんて、そう言ってきた。
645 ◆/pDb2FqpBw :05/02/24 18:55:49 ID:HPOJBeDN
--------------------------------

感想ありがとうございます。
やる気でるです。

後3話です。

書け次第投下します。
では。
ノシ
646名無しさん@ピンキー:05/02/24 18:56:54 ID:LVzynCN2
リアルキター!
毎回楽しみです、がんがってください!
647名無しさん@ピンキー:05/02/24 21:09:00 ID:jNUnGmrz
匠君ヘコタレたー。

しかしあれですね涼子さんは看護婦さんに口止めしてますねおれが看護婦なら吹聴するもん絶対。
648名無しさん@ピンキー:05/02/25 16:48:51 ID:kTHeTudN
これから匠くんは自分が考えていた以上に涼子さんに愛されていることを知るわけですか
649名無しさん@ピンキー:05/03/01 23:06:37 ID:fT1/VaDz
保守。
匠君元気になっておくれ。
650名無しさん@ピンキー:05/03/01 23:49:45 ID:ZtW/OOPo
オモシレー!こんなスレがあったとは。◆/pDb2FqpBwさん続きに期待してます
651 ◆/pDb2FqpBw :05/03/02 16:42:00 ID:+NlXtCWh
「んう・・・」
鼻に抜けるような声と、シャンプーの柔らかい匂い。

恋人同士だから当たり前の行為ではある。
えーと。ええと。うん。

「ん・・。」
両手を肩に乗せてきて体を寄せられる。
目は閉じたまま。
髪の毛が二の腕に落ちてきて、頭をぐいぐいと押し込まれるようにされる。
少し汗ばんだような、甘ったるい匂い。

「うん・・・」
うの方にアクセントがついている言い方で、
全身を擦りつけるようにくっ付けられた。
652 ◆/pDb2FqpBw :05/03/02 16:44:27 ID:+NlXtCWh
舌を擦り付けるようにして。
「んく。んー・・ん。」
真っ赤に染まった首筋が目に入って、やっぱり涼子さんは美人だなあと思う。

見惚れていると涼子さんの目がぱっちりと開く。
目線が絡まる。
顔を離して
「目を開けていちゃ駄目だ。」
恥ずかしいし。そう言って左手で俺の目を隠す。

視界が闇に包まれて、一瞬後に柔らかく唇が塞がれる。
「んう。」
んの方にアクセントを置いた、涼子さんらしくない少し抗議の色を含んだ弱弱しい声。
掴んできた手の力は思ったより強いけれど
擦り付けるようにされた体は思ったよりも軽いと思った。

退院の日が決まったからご褒美。
なんて言ってきたのだけれど。
653 ◆/pDb2FqpBw :05/03/02 16:46:59 ID:+NlXtCWh
ベッドの上で、涼子さんは俺の上に覆い被さるようにしていて中々離してくれない。
体を絡みつくようにさせて、俺の体に掴まるようにして。
ラジカセからは何かDJが喋っていたけれどまったく耳に入ってこなかった。

唇が離れる。
「匠君、目、開けてない?」
「うん。」
もう一度塞がれた。

唇が離れる。
「退院だね。」
「うん。」
垂れ落ちてきた髪が頬にかかってきてくすぐる。
涼子さんの匂いがした。

涼子さんはふにゃんとしていて、嬉しそうだった。
涼子さんの上半身が俺の上半身に預けられてきて、
俺はかなり不純な事に頭が支配されかかっている。
654 ◆/pDb2FqpBw :05/03/02 16:47:44 ID:+NlXtCWh
ゆっくりと背中に回していた手を涼子さんの前に持ってくる。
ここは病院だが、勘弁してもらうとしよう。
さようなら。いつのまにか過ぎていた僕のヤラハタ。
大事に取っておいたつもりは無いのだけれど。

そろそろと手を延ばして。涼子さんはまだふにゃんとしている。
俺の胸板に柔らかく押し当てられている夢にまで見た涼子さんの胸を鷲掴みにし

いてててててててててて。

「匠君そういうイヤらしいのは良くない。」
痛いイタイイタイイタイ。肉挟んでる挟んでる。つねるって言うかそれじゃ毟り取るみたいなイタイイタイタ

「非常に良くない」
わかりましたわかりました。
そういう行為は良くないですね。確かに。わかりました。イタイイタイ。

何を考えているんだと言う感じにふう。と溜息をつかれて、手を離してもらう。

「ミニスカートが良いとか、匠君はイヤらしい事ばっかりだ。」
これだから男の子は。
ぶつぶつと物凄く懐かしい事を言われる。

ぶつぶつとそう言いながらも俺の膝の上からどこうとしない涼子さんに手を延ばした。
喋る度にぴょこぴょこと後ろで結んだ髪の毛が揺れる。
「別にイヤだとかそう言う事じゃ無いんだから、匠君は場所とか」
「涼子さん。」
ふふ、涼子。そのうるさいお口を俺の唇で塞いでや
「・・・」
イタイイタイイタイイタイごめんなさいごめんな
655 ◆/pDb2FqpBw :05/03/02 16:58:23 ID:+NlXtCWh
思いっきり抓り上げてから俺の上を降りた涼子さんは廊下を伺ってから服装を調えた。
姿見も見て、少しほつれた髪の毛も直す。
てててとバッグの方に近づくと、リップクリームを取り出して後ろを向いて塗った。
長くなった髪の毛が揺れる。

「涼子さん、ごめんね。」
なんとなく謝ってみる。

えろくてすいません。
あと、いろいろありがとう。

少しだけ間があいて。
振り向いてゆっくりと近づいてきた涼子さんにがしっと頭を固定されて、
ゆっくりとついばむようにもう一度唇を合わせられた。

鼻先を突き合わせて、3センチの位置に目と目が会う。
その格好のまんま、涼子さんは少し恥ずかしそうな顔をして。

「退院の前に、ラジカセを持って病院の中庭でピクニックをしよう。
その日は晴の予報で、病院での最後の休日には丁度良いから。」

涼子さんはハッカの匂いがする、と続けて。
もう一度ゆっくりと左手で目を隠してきた。

656 ◆/pDb2FqpBw :05/03/02 17:00:38 ID:+NlXtCWh
--------------------------------

感想ありがとうございます。
励みになるです。

後2話。

書け次第投下します。
では。
ノシ
657名無しさん@ピンキー:05/03/02 19:57:30 ID:9xaUO+10
GJ!
読んでるこっちが「ふにゃん」としてしまったぜ!
658名無しさん@ピンキー:05/03/02 23:03:40 ID:Cc61K3oa
イイ流れだねぇ
659名無しさん@ピンキー:05/03/02 23:22:21 ID:56MA78cw
>「・・・」
>イタイイタイイタイイタイごめんなさいごめんな

ひさびさに気が強い涼子さんだー。

ラブ。
660名無しさん@ピンキー:05/03/03 01:04:27 ID:ON+PGqVv
       グッジョブ!!           ∩   ∩
       _ _∩           (⌒ )   ( ⌒)       ∩_ _ グッジョブ!!
        (ヨ,,. i             |  |  / .ノ        i .,,E)
グッジョブ!!  \ \          |  |  / /         / /
  _n      \ \   _、 _  .|  | / / _、_    / ノ
 (  l     _、 _  \ \( <_,` )|  | / / ,_ノ` )/ /    _、_    グッジョブ!!
  \ \ ( <_,` ) \         ノ(       /____( ,_ノ` )    n
    ヽ___ ̄ ̄ ノ   |      /   ヽ  俺   | __      \     l .,E)
      /    /     /     /    \     ヽ   /     /\ ヽ_/ /

ヤバイかわいいよ涼子さんかわいいよ。あと2話でお別れなんて寂しいが期待してます。
かわいいよ涼子さん。
661名無しさん@ピンキー:05/03/03 10:46:57 ID:edfHgUYU
非常にGJなのだが話の内容的には純愛SSスレの方が良いのでh(ry
痛いイタイイタイイタイ。>>660のもまいら肉挟んでる挟んでる。つねるって言うかそれじゃ毟り取るみたいなイタイイタイタ
662名無しさん@ピンキー:05/03/05 07:51:23 ID:dy9Y10UB
涼子さんはあいかわらずで。
匠君は叱られてかわいくて。

あと二話楽しみ・・・
663 ◆/pDb2FqpBw :05/03/08 13:50:17 ID:PbTb8NyZ
「もう一度行きたいな。ディズニーランド。」
涼子さんが少し考えて言う。

病院の中庭はぽかぽかと暖かくって、木陰に座り込んで涼子さんのお弁当を堪能した身としては眠くなる。
休みに相応しい、晴れた天気。
中庭と言っても病院自慢なだけはあって芝生も綺麗に整えられていて、所々に木陰になるように木が植えられていて。
車椅子の人が散歩をしたりしているのを除けば大学のキャンパスみたいに見えない事も無い。

「うん。行きたいね。」
今度の休みの日にどこに行くかを決めよう。
お弁当の後にそんな話になったのだけれど、
2人で木陰に座っているうちに2人とも眠たくなってしまった。
664 ◆/pDb2FqpBw :05/03/08 13:51:19 ID:PbTb8NyZ
「匠君はどこに行きたい?」
俺よりも涼子さんの方が眠くなっているみたいで、
口調がゆっくりとしていて今にも眠りこみそうだ。

「うーん。ラーメン食べに行きたい。かな。」
「そんなの匠君だけでもできるじゃあないか。」
ふう。と呆れられる。

そうは言ってもやっぱり病院食は薄味で食べ飽きたし、こってりとしたトンコツでもががっと食べたいのが本音だ。

「じゃあ、夕食は匠君の言う通りラーメンで。チャーシューをつけよう。」
私は卵を付ける。と渋々と言う。肩をこちらにもたれ掛からせて来て、ねむそうだ。
もう会話にはならないかもしれない。

太陽は真上に昇っていて、それだけここは暖かい。
隣をがらがらと杖代わりにカートをおしたお婆さんが通る。
俺達を見て、少し笑った。
665 ◆/pDb2FqpBw :05/03/08 13:52:09 ID:PbTb8NyZ
「その次のお休みの日には、CD屋に行こう。」
買いたくて待ってたCDがあるんだ。と涼子さんは言った。

そんなの今週一緒に行っちゃえばいい、といいかけた時。

「後、その次のお休みの日は本屋さんに行きたいな。」
眠そうな声で。やっぱりもう、俺の声は聞こえていないみたいだった。

「その次は、あそこに行こう。ええと、昔匠君と行った所。」
まわらない頭で一生懸命考えているように。
話しながら舟を漕いでいて、舟を漕ぎながら首を傾げて。
隣で見ていると寝惚けているのかさっぱりわからない。

「あと、新しく出来た駅前のビル。あと匠君とあそこにも行きたいって思ったんだ。」
「あそこって?」

返事は無い。
ぶつぶつとパッチワークがなんだとか、公園がなんだとか言っている。
口の中で何かを話しながら肩に頭を乗せて来て。
666 ◆/pDb2FqpBw :05/03/08 13:53:23 ID:PbTb8NyZ
「えーと、じゃあ、結局今週はどうしようか。」
返答には期待しない。
ラーメンを食べる事は決まっているけれど。今決めなくちゃいけないなんてことは全然無いのだし。

「ん?匠君、何か言った?」
急に目を開ける。と思ったらまた、目を閉じてしまう。

「----とりあえず、いっしょに練習をしよう。」

眠そうな涼子さんはむにゃむにゃとした声で、そう言った。
最近練習していないし。と続けると又ぐらぐらと舟を漕いで。

週末の予定はそうやって決まった。

それを聞いたら、なんだか俺まで眠くなってきてしまって芝生の上にゴロンと横になった。
天にむかってまっすぐと吸い込まれるような青空が一面に広がる。

それに合わせて、涼子さんがこてんと一緒に寝転がってくる。
髪の毛がふわりと浮かんで、肩をくすぐった。

図書館で音楽を聴いていた俺に声を掛けて来てくれて。
一緒にいたくて、必死になって勉強をして。
667 ◆/pDb2FqpBw :05/03/08 13:53:59 ID:PbTb8NyZ
確かVan Halenかストーンズ。それともエアロスミスだったっけ。
どこかの本に書いてあった。
「毎日毎日ギターを弾いて、ツアーにでて家に帰る。それを続ける事こそがロックンロールなんだ。」
そう言ってたって。

ロックンローラーにはなれないけれど、続けることが大事なら俺も続けようと思う。
こんなに楽しいのだから今のまま、ずっと側にいて。
最初からそうだ。
俺にとってのロックは図書館で涼子さんに声を掛けられた時に、具体的に始まったのだから。

くいくい。

寝惚けた涼子さんが、俺の袖を引っ張る。
ますます日は昇ってきて、病院の窓がその光を反射する。
もうすぐ木陰じゃなかったらおちおち寝てもいられなくなるかもしれない。

少しだけ涼子さんの頭を動かして木陰の方に移動した。
すいすいと寝ている涼子さんはなんだか満足したネコみたいな顔をして。
668 ◆/pDb2FqpBw :05/03/08 13:54:52 ID:PbTb8NyZ
うだるように暑くなって、蝉の音が聞こえてきて。
夕立の後に秋が来て、虫の音を聞いて。
寒くなったら炬燵で猫みたいにまるまって。

吸い込まれそうな青空を見ながら思う。
そうやってずっと続けばいい。
これからやりたい事や、やらなくちゃいけないことは沢山あって。
交通事故に遭ったり、好きな人に悲しい思いをさせてみたり。
ままならないことだって一杯ある。これからだってきっと。

でもずっと続く。

誰かが言ってたみたいな、休日みたいな楽しい毎日。
いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたのさって。


そういうロックンロールだ。



holidays in the sun
終わり
669 ◆/pDb2FqpBw :05/03/08 13:57:05 ID:PbTb8NyZ


---------------------------------------------------
ありがとうございました。


エピローグだけ後一回投稿させて下さい。


では。
ノシ
670名無しさん@ピンキー:05/03/08 16:58:12 ID:KdLLUwpu
こりゃあげるしかねーGJ
671名無しさん@ピンキー:05/03/08 18:30:23 ID:5a2qlqWm
やべー超GJ
感動したぜ もう一度GJ
672名無しさん@ピンキー:05/03/08 22:24:49 ID:6Pl9gJPH
甘い!ゲロ甘だぜ旦那!
GJ!
SGJ!!
SSGJ!!!
673名無しさん@ピンキー:05/03/08 22:38:58 ID:pIKSxOg8
やべー>>666で泣きそうになった。読み物で泣いたことないのに。GJ!!
674名無しさん@ピンキー:05/03/09 05:48:13 ID:QuN4r6SC
なんだこいつ 2chのれヴぇる じゃねえ
675名無しさん@ピンキー:05/03/09 17:25:53 ID:GYgQtkZ0
こんな良作があと1回で終わるなんて信じねえorz
676名無しさん@ピンキー:05/03/09 22:33:58 ID:+jxyJxb4
◆/pDb2FqpBw氏の連載が終わってしまったら、スレから職人さんいなくなっちまうな
677名無しさん@ピンキー:05/03/09 23:18:22 ID:WAIfJJLV
ハーレクイン氏がいるではないか。ばかめ。
678名無しさん@ピンキー:05/03/09 23:54:52 ID:KnzCHLeK
なんていうか、毎回毎回余韻の残る話だったなあ・・・・
読めて良かったよ。
679名無しさん@ピンキー:05/03/11 20:27:18 ID:tFvJ0hRU
>>677
向こうで番外とかやってるし、あまり期待はできんのでは・・・
680名無しさん@ピンキー:05/03/11 22:12:58 ID:ti1QcFK/
新しい職人さんを暖かく迎えようじゃないか
681名無しさん@ピンキー:05/03/12 09:54:53 ID:qWaTnc6S
このスレ初めて見て、そのまま最後まで徹夜で読みとおしてしまったよ。
◆/pDb2FqpBw氏、あなたは最高です。まさにGodJob!!

ていうか涙腺脆いのでもう涙止まりません。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
682名無しさん@ピンキー:05/03/15 00:27:12 ID:Fp66eS/J
しんさん再光臨して下さらないだろうか…
683名無しさん@ピンキー:05/03/15 02:14:32 ID:O2ScY8hU
音楽を元にしたSSって凄い好きだ。
こんなん書いてみてぇ。
684名無しさん@ピンキー:05/03/15 02:23:28 ID:O2ScY8hU
連投ゴメ


ロックンロールて、匠テメェ
くるりの岸田か!

>>作者さん
邦楽嫌いだったらスマソ。GJ
685 ◆/pDb2FqpBw :05/03/15 13:50:57 ID:twnioDrT
「結構いい部屋・・・だね。」
そう言うと、大きいダブルベッドにしたんだ。と言って涼子さんは笑った。

「しゅ、就職活動頑張ります。」
駅前15分。2LDK。
家賃は幾らなのでしょうか。聞けない。とても聞けない。
プレッシャーが圧し掛かる。
匠君は就職するまで気にしなくて良い。と涼子さんは言うのだけれど。

「コーヒーを入れよう。それから荷物を片付けなくっちゃ。」
動きやすいように両手で髪の毛を上に巻き上げるようにしながら
涼子さんは真新しいキッチンに立った。

粉のコーヒーをダンボールから取り出し、ザラザラとコーヒーメーカーに入れる。
軽量カップを使わずに美味しいコーヒーを入れるのが涼子さんの特技の一つだ。
「それでそれで、片付け終わったら、近所を散歩しに行こう。」
くるりと振り向くとそう言って。
涼子さんはつついと俺に寄り添ってきた。

686 ◆/pDb2FqpBw :05/03/15 13:53:03 ID:twnioDrT


「涼太はもてるようになる気がする。」
やさしいし、気が利くし。と横に寝ている涼子さんはこっちを向いて言った。

「まだ3歳なんですけど。涼子さん。」

「性教育はどうしよう。」

「早いって。」
もぞもぞと体を動かすと、そうか。と涼子さんは頷いた。

「匠君、沙希が彼氏を連れてきたらどうする?」

「まだお腹の中なんですけど。」
名前はもう付いている。

「12歳くらいになったら一緒にお風呂はいってくれないんだよ。」
お父さんあっちいってー。とか匠君は言われるんだ。と言って。
涼子さんはシーツを引っ張りあげながら笑った。

「許さない。一緒に入る。」
本気で答えた。

687 ◆/pDb2FqpBw :05/03/15 13:53:55 ID:twnioDrT


スピーカーから流れる音楽に合わせてガーガーと掃除機の音が重なる。

ずべしゃ

隣の部屋から派手な音が聞こえると同時に泣き声が聞こえてきた。
「匠君、大変だ。沙希がまたベッドから落ちた。」

隣の部屋を覗くと顔から派手に地面に落ちている。
何でこいつは柵を乗り越えるのだろうか。
とても活動的な女の子になりそうな気がする。

「はなが、はなが潰れてしまう。」
鼻がつぶれたら美人さんになれなくなっちゃうもんね。とほっぺたを突付いてあやしながら涼子さんは言った。

688 ◆/pDb2FqpBw :05/03/15 14:00:26 ID:twnioDrT


ぼろぼろになったCDをコンポの中に入れて再生ボタンを押す。
ラジカセからは勢い良くイントロ部分が流れてきた。

「これこれ、この曲。」

「う、うーん。ピストルズかあ・・・」

「よくきいてんじゃん。親父。」

「いや、だけど。ていうかおやじって言うなよ。子供。」
小学校3年生で。

「いーいーかーらー。放送委員会でお昼休みにお父さんお母さんの思い出の曲をかけるんだって。」

「でもほら、小学生でピストルズは。なあ。」
どんぐりころころとかかけるんじゃないの?普通。

パンを焼きながら。
涼子さんは振り返ると、holidays in the sunならどう?歌っている人は内緒で。
なんて悪戯っぽく言って、笑った。

689 ◆/pDb2FqpBw :05/03/15 14:02:01 ID:twnioDrT

ぐるぐるまわる。
そんな毎日が、ずっとずっと。

いつかそんな事を考えたな。って思い出す。
そんな事もあったなって思い出す。


転がってくうちに跳ねたり溝に落ちたり、角が取れて丸くなったり。
下り坂をゆっくり降りたり、坂道を駆け上がったり。

Like a Rolling Stoneって奴だ。

ボブディランや、ビートルズやローリングストーンズとか、エアロスミスとか
メタリカとかメガデスとか、ガンズなんかと同じ道を歩く。


好きな事を続けることに。
好きな人と一緒にいることに、理由なんかないのだ。


690 ◆/pDb2FqpBw :05/03/15 14:05:38 ID:twnioDrT

---------------------------------------------------
丸3ヶ月、ありがとうございました。
暖かく迎えて頂き感謝しています。

一応保管庫です。
http://uni.lolipop.jp/Rock_Frame.html


では。
スレッドの発展を心から祈って。
ノシ
691名無しさん@ピンキー:05/03/15 14:11:38 ID:ewVzGVqj
乙!
GJ!
リアルで読めたですよ。いままでどもでした。

なんかもうこの一家に幸あれということですねうんうん。
692 ◆/pDb2FqpBw :05/03/15 14:13:49 ID:twnioDrT
>684
なんでも聞くです。最近はブルーハーツを引っ張り出したり。

住民の皆様感想励みになりました。
マジでマジで。
上手くいえませんが本当に。

個別にレスできない事をご容赦下たい。

んでは。

ノシ
693名無しさん@ピンキー:05/03/15 14:18:34 ID:ggpkUJiw
気のきいた言葉はかけられませんけど、
とにかくお疲れ様でした!
最後まで見れて感無量です!
素晴らしい小説と感動をありがとう。
694名無しさん@ピンキー:05/03/15 17:53:20 ID:O2ScY8hU
ボブ・ディラン…
風の中に吹かれてる答えを掴んだとでも言うのか。
幸せだなちくせう。ああ、幸せもんだ。
695名無しさん@ピンキー:05/03/15 23:24:53 ID:9RTaV/Pb
いやはやつくづく乙だす。
696名無しさん@ピンキー:05/03/16 01:13:23 ID:jpZx9xEE
       グッジョブ!!           ∩   ∩
       _ _∩           (⌒ )   ( ⌒)       ∩_ _ グッジョブ!!
        (ヨ,,. i             |  |  / .ノ        i .,,E)
グッジョブ!!  \ \          |  |  / /         / /
  _n      \ \   _、 _  .|  | / / _、_    / ノ
 (  l     _、 _  \ \( <_,` )|  | / / ,_ノ` )/ /    _、_    グッジョブ!!
  \ \ ( <_,` ) \         ノ(       /____( ,_ノ` )    n
    ヽ___ ̄ ̄ ノ   |  俺   /   ヽ  俺   | __      \     l .,E)
      / 俺  /     /     /    \     ヽ   /  俺  /\ ヽ_/ /

お疲れ様でした。こんなに1つの話を楽しめたのは初めてです。うまく書けないけど感動しました。
もし新しい作品を書くことがあるなら是非見たいものです。
697名無しさん@ピンキー:05/03/16 01:33:21 ID:if1g0qMC
>◆/pDb2FqpBw

いいなあ。じつにいい。二人のテンポが。
春の日向みたいで。
グッドジョブでした。
698名無しさん@ピンキー:05/03/16 05:32:06 ID:2SBddEG1
やばい本気で感動した。いいものを読ませていただきました。
699名無しさん@ピンキー:05/03/16 11:01:11 ID:+8PTSuGG
最後の一話もほのぼのしててよかったです。
ほんといい仕事してますな〜。
700名無しさん@ピンキー:05/03/16 15:25:33 ID:Sqclp3n+
(^-^)
701名無しさん@ピンキー:05/03/16 22:05:05 ID:bmkzbS8y
さて

職人様が…
702名無しさん@ピンキー:05/03/16 22:07:31 ID:+Yr0yfhp
>>680がいるジャマイカ
703名無しさん@ピンキー:05/03/16 22:40:00 ID:VQ3hI42k
しばらくは余韻に浸りながらまったりと待とうじゃないか。
704名無しさん@ピンキー:05/03/18 22:04:30 ID:aM1LatBN
あまりに美しい話で何か悔しいので俺、自分のロックの知識はもう金輪際掘り下げません。

氏にはフォークかジャズの話作ってみて欲しかった。
705名無しさん@ピンキー:05/03/19 03:40:59 ID:9k8tyKUs
すぅごくよかったよ。
俺やっぱ純愛に弱いかも試練

この二人の結婚入場曲が何だったか知りたいところ
706名無しさん@ピンキー:05/03/19 08:32:50 ID:PGL0GsnK
>◆/pDb2FqpBw氏
遅ればせながらお疲れさまでした。そして名作を書かれた貴方に対し万言に尽き
せぬ感謝を。

>>705
涼子さんってロック以外では王道の方が好きそうなので普通にメンデルスゾーン
「真夏の夜の夢」の結婚行進曲(トランペットのファンファーレから始まるあの曲)とか
の「王道ど真ん中」な曲使いそうな気がするけど、どうだろ。
707名無しさん@ピンキー:05/03/19 15:10:33 ID:HJl4HkcI
QUEENの「愛に全てを(Somebody to Love)」あたりとか>705
708無愛想ハーレクイン:2005/03/21(月) 04:12:06 ID:Xq0EKMLz
 間違いを犯した。もしも相手が他の誰かならば、決して取り返しのつかない間違いを。
 庇われた――責められもしなかった。それどころか、あの男はあろう事か、事実を無かった
事にさえしようとした。
 対等に扱われない。不満。
 本心を見せない。不満。
 子ども扱いされる。不満
 あぁ、なんだ、自分はこんなにもあの男に不満を持っていた。
――プロとして仕事をこなせ。私情で仕事を放棄する奴ァ三流にもなれやしねぇ。
 既に過去の存在と成り果てた、大切な兄はそう崇香に言い聞かせた。
 兄は崇香の失敗を叱り、幼い少女に容赦なく責任を要求した。それは苦しかったが心地良い
信頼感。
 なのにあの男は……そうだ、あの男は決して責任を要求しない。それは、崇香の仕事を子供
のお遊びとして認識しているからに他ならない。
「……馬鹿にして」
 呟いて、崇香は深夜、舞里の病院から帰りついた自室で硬く拳を握り締めた。
「馬鹿にして!」
 荒々しく叫ぶなり重たい工具箱を壁に向かって投げつけて、崇香は乱暴に作業着を脱ぎ捨て
た。
 命に関わる怪我をさせられた筈なのに、あの男は怒らない。どんな暴言を吐いてみても、ど
んな暴力をふるってみても、あの男は絶対に怒らない。
 それなのに、崇香にとってあの男は何の脅威でもないはずなのに、追究するなと背を向けら
れると、何故か吐き出す言葉が消える。
 舞里の所でミスをした事はない。しかし、今回の一件ではっきりしたではないか。あの男は、
肉親を完全に失った崇香の保護者を気取っているに違いない。
 少年のような笑顔で、世間話でもするように愛を語る。
709無愛想ハーレクイン:2005/03/21(月) 04:13:22 ID:Xq0EKMLz
 怒りを落ちつかせる事の出来ないまま冷え切ったベッドに体を投げ出すように横になり、崇
香は毛布を頭まで引っ張り上げた。
 毛布の中で枕を抱き込むように丸くなり、目を閉じる。
しかし再び頭の中をめぐり始めた兄の声に、崇香は寝付く事が出来ずに飛び起きた。
 二度と顔も見たくない。あの男の余裕。あの空間での絶対的優位。殺されそうになってもま
だ笑う。
 だから、契約を放り出して仕事から逃げるのか。それでは本当に、プロなんかと呼んではも
らえない。
 胸の奥がざわめくのを感じて、崇香は震える呼吸を吐き出すと自らの頬を張り飛ばした。
――放棄なんてするもんか!
ベッドから飛び降り、服を着る事もせず、崇香は工房に向って走り出した。
 広い作業スペースの奥に、ワンルームのアパートほどの小部屋がある。その部屋の照明をた
たき起こして、小さく丸い鉄板をいくつも作業台に叩きつた。
 舞里のオペレーションマシンの歯車には、既存のサイズの物は僅かしか使われていない。
 崇香は様々な大きさと形をした歯車を、全て手作業で削り出していった。
――感情を殺せるようになれ。クライアントは、ただの人形だ。


「何考えてんのよあの男!」
 昨夜頭の中で繰り返した兄の言葉はどこへやら、怒りを拳に込めてドアを激しく殴りつけ、
崇香は暫く待って反応がないと今度は工具箱で殴りつけた。
 徹夜で今日の準備を済ませ、朝から昼過ぎまでぐっすり眠ってから舞里の病院に訪れた、日
の暮れかかった午後である。
710無愛想ハーレクイン:2005/03/21(月) 04:14:38 ID:Xq0EKMLz
 金属の塊で殴ったにもかかわらずドアには掠り傷もつく事は無く、当の本人はカップを割り
に出てきたきり現れないという状況に、崇香はムキになって工具箱をドアに向って何度も叩き
つけた。
 それこそ、ドアノブが回ってもお構いなしに。
 その後、真赤に頬を染めた鉄製の工具箱が、舞里の頬に懇親の力をこめて唇を落としたとい
えば、何が起こったかは想像がつくだろう。
 それからほんの数分後、無表情を繕いながら出された紅茶に目もくれない崇香と、ひび割れ
た眼鏡の奥で幸せそうに微笑みつつ消毒器を操作する舞里が、ダイニングキッチンでなんとも
滑稽な雰囲気を演出していた。
「もう絶対に来てくれないと思ってたのに、嬉しいなあ。まさか崇香ちゃんから会いに来てく
れるだなんて。君に会いに行くのにどうやって偶然を装おうか一晩中悩んじゃったよ」
 何の嫌悪感も無く、つい先日自らを貫いたドライバーを消毒器から取り出して、舞里は崇香
に向って微笑みかけた。
 崇香が舞里を刺したという物証はあれ一つ。おまけに、間抜けなくせに抜かりのないあの男
は、付着した血液成分をとことんまで除去したに違いない。
 もしも崇香が自首したとして、舞里は笑顔で精神病患者の戯言だとでも言って崇香の無実を
主張するのだろう。
「1年契約だもの……契約したらどんな事があっても仕事は最後までやるわ」
「さすが、偉いね崇香ちゃんは。私なんか、面倒になったら適当に放置しちゃうなぁ。あ、嫌
な感じの患者さんに対してだけね。だってタフでマゾな人たちって麻酔なしで手術しろって言
うんだもの。再生者は縫合しなくても勝手に傷口閉じちゃうし……はい、これ崇香ちゃんのド
ライバー。定期メンテは来月だから、これ取りに来たんだよね?」
 暢気な笑顔でドライバーを差し出され、崇香はそれを乱暴に受け取ると工具箱をもって立ち
あがった。
 向う先は第一手術室……オペレーションマシンの設置されている部屋である。
「崇香ちゃん? そっちは手術室……」
「再メンテするわ」
 不思議そうに声を掛けてきた舞里の暢気な表情が、その言葉に反応して僅かに真剣な色を帯
びて固まった。
711無愛想ハーレクイン:2005/03/21(月) 04:15:23 ID:Xq0EKMLz
「あたしはあの時調子を崩してた。しかもその後倒れたわ……そんな状態の技師がメンテナン
スしたメカなんて、あんたが患者に使えるわけないじゃない」
 あたしだって使えないわ、そう忌々しげにはき捨てて、崇香は再び手術室へと歩き出した。
「す、崇香ちゃん!」
 慌てた様子で呼び止められ、無表情のまま振り返ると、舞里はしばしいい難そうに沈黙し、
しかしすぐに微笑んだ。
「手伝わせてくれないかな。アーム、動かしてみた方がメンテ場所特定できるでしょ?」
 何をほざくか、この男。子供のお守りのつもりだろうが、仕事くらい一人で出来る。
 崇香は明らかに気分を害した表情で舞里を睨むと、冷ややかに背を向けた。
「結構よ。一人で出来るわ」
「効率を考えるとどっちが得策?」
 歩き出しかけた足を再び止めて、振り向きざま睨みつければ、そこにはやはりいつもの笑顔。
 効率を考えろといわれたら、どうあがいてもメンテ場所を特定できた方が遥かに時間は早く
済む。その上まだ、不具合個所があると決まったわけでもないのである。
 忌々しげに眉を寄せ、黙って背を向けた崇香の態度を了承と受け取ったのか、舞里は嬉しげ
に手術室までついてきた。
 何の変哲も無いドアの向こうが手術室だと知った時は驚愕したが、今ではこの病院のちぐは
ぐな内装には完全に慣れっこだ。この手術室の向こうに見えるドアからテラスに出られると知
った時は、最早驚愕を通り越して呆れ果てた物である。
 そしてそのテラスへ続くドアの前に見知らぬ男が立っている今現在、崇香はただ呆然と、平
平凡凡たるスーツ姿で銃を構える男を見詰める事しか出来なかった。
「……ちょっと、何の冗談?」
 まさにそんな気分。ドアを開けたら不法侵入者に銃を向けられていましたなど、舞里の要塞
においてありえるわけが無いではないか。
「どうしたの崇香ちゃん、入り口で突っ立ったりし――」
 舞里が背後から部屋に入る気配がして、いつもの調子でかけられた声が途中で濁った音に汚
された。
712無愛想ハーレクイン:2005/03/21(月) 04:16:34 ID:Xq0EKMLz
 溺れるように咳き込む、苦しげな声がする。
 一瞬、崇香の頬をかすって髪を散らした空気の意味は、部屋の向こうに立つ男の銃口から上
がる柔らかな硝煙で十分過ぎるようだった。
「こんにちは、デウセクス・マーキナー。仕事中の所本当に申し訳ないけど、君のクライアン
トを誘拐させていただくよ」
 間抜けなセリフだった。ただ冷静にそう思った。
 自分でも驚くほどに冷静に、細い首から壊れた蛇口のように血液を溢れさせる舞里を見下ろ
していたはずなのに、耳をつんざいた女の悲鳴が自分の声だと気がつくまでに、ずいぶんと時
間が必要だった。
713無愛想ハーレクイン:2005/03/21(月) 04:21:33 ID:Xq0EKMLz
住人の皆さまとてつもなくお久しぶりでございます。
◆/pDb2FqpBw氏の作品、非常に楽しく読ませて頂いておりました。
連載終了、本当にお疲れ様でした。
あんまり間を開けすぎた所為で塵と成り果てたと思われてしまっていた節がございますが、
これからも稚拙ながら宜しくお願いいたします。
ホントにこのシチュめちゃツボなんだってば……!
714名無しさん@ピンキー:2005/03/21(月) 14:13:04 ID:WJUovcJw
機械仕掛けの神キター(゚∀゚) GJ
715名無しさん@ピンキー:2005/03/22(火) 01:32:46 ID:NBZzV5yD
展開がちょっと強引な気がするのは俺だけ……?
716名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 12:54:46 ID:qwFyPu39
おまえだけだな
717名無しさん@ピンキー:2005/03/25(金) 17:07:49 ID:h4Oc2wK3
「ネクサス」の副隊長が、キレたコモンに犯されまくり、
肉奴隷にされる、と。

妄想が精神に影響を与えることも考えられる。
だが私は謝らない。
718名無しさん@ピンキー:2005/03/25(金) 22:39:09 ID:BqhPMc+U
気の強い>>717がしおらしくなるSSキボン
719名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 18:13:28 ID:3tqrrm0x
>>717
ショチョー!
720名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 22:57:01 ID:TdoVttvP
シンジ!レイ!
721名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 02:05:19 ID:Fs9fx0kR
なになに?
シンジ!レイ! シンジ…レイ… しんじ…れ…い 信じられない
722レイ:2005/03/30(水) 00:58:01 ID:arz2pfIU
「ちょっと何なの、このいいかげんな報告書は! もう少し、ましなのにしなさい!再提出!」
「は、はい!」
年下のわたしの叱責に縮み上がる中年の刑事。

わたしの名は澤崎祐華、この八王子中央署の署長なの。年齢は24歳よ。
えっ?
なんでそんな小娘が警察署長なんかになれるのかって?

フッ、当然の疑問ね。
その理由は、このわたしが選ばれた超エリートだからよ。帝都大学法学部を主席卒業。キャリア試験もトップで合格。
すでに出世街道を驀進することは約束されてるのね。
ここの署長を一年間務めたら、また本庁に呼び戻される予定なの。

ついでに教えてあげると、わたしって、すれ違うと誰もが振り向く美貌とプロポーションの持ち主。
まあ、完全無欠の女性ってわけ。
あまりに完璧すぎて、男が近寄ってこれないってところが少し難点かなあ。


723レイ:2005/03/30(水) 00:59:02 ID:arz2pfIU
まあ、いいわ。
わたしにつり合う男なんて、そうそう居るものじゃないってわかってるから。
ひょっとしてまだバージンか、ですって?
レディに対して、そんな品のない質問するものじゃないわよ。

それにしても、ここの署員の無能ぶりにはイライラするわね。
どうせお飾りのキャリアだ、機嫌とっとけばいいって態度が見え見え。
そうはいかないわ。

だってわたし、ゆくゆくは史上初の女性警視総監になるつもりだから。
ここの署長として、ちゃんと実績作って本庁に凱旋するの。
女だからって、舐められるわけにはいかないのよね。

毎日のように、年上の部下たちを厳しく叱り飛ばす日々が続く。
あいつらったら、わたしのことを陰で鬼だとか、ヒステリーだとか言ってるみたいね。
うー、ちょっと、腹立つわ。
なんとなく退屈な日々が続いていた。そう、あいつが現れるまで……


724名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 15:48:24 ID:DNZPxzcJ
唐突に始まりましたが先が気になりますな。
725レイ:2005/03/30(水) 18:33:11 ID:arz2pfIU
初めまして。いろんな良作が投下されてますね。
他スレで経験は積んでるSS職人です。
よろしければ先も書かせてもらいたいと思ってますが、いかがでしょう?
726名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 18:45:02 ID:RD+jauxU
>>725
拒む理由なぞありません。
続きをお願いします。
727レイ:2005/03/31(木) 01:05:39 ID:9Mi7W6HV
「まあ! 何よこの写真は!」
ある日、署長室にわたしの怒声が響き渡った。
低俗な写真週刊誌に、わたしの写真が載せられていたのだ。

そんなに怒るからには、もちろんちゃんとした写真ではない。
「エリート美人署長、不覚の(恥)写真撮られちゃった!」
などと煽情的な見出しが付いた、わたしのいわゆる‘パンチラ’写真だった。

ある屋外でのイベントに賓客として列席した時、一番前の列で椅子に腰掛けていたのだが
ついつい太股が緩んだところを、すかさずスカートの中を盗撮されてしまったのだ。
パンチラといっても小さな白い三角形が写っているだけで、羊頭狗肉の類だったが、わたしの下着が公衆の目に
晒されてしまったことに変わりはない。

実名は出してないし、顔にはモザイクがかかっている。しかし、わたしを知っている人間が記事を読めば、わたしの事だと
判る様になっていた。
抗議しようにも、逆さ盗撮とかではなく、自分の油断だからできない仕組みになっていた。
「自分はこんなに無防備で、市民の安全が守れるんですか?」
などと茶化した記事が憎たらしい。
728レイ:2005/03/31(木) 01:07:36 ID:9Mi7W6HV
(いや〜ん……悔しい!!)
わたしの胸に、やり場のない怒りが込み上げてくる。
怒りと恥ずかしさで、顔が真っ赤になっていた。
そして、そのまま署員たちの所に向かう。

「ざまあみろ、祐華のやつ威張り散らしてるから、こんな写真撮られるんだ」
「全くだ。バチが当たったんだよ」
「しかし、エッチな写真だな。オカズにしとこ」
「バカか、祐華で抜けるかよ」
署員たちは、日頃陰ではわたしのことを署長とよばず、名前で呼び捨てにしていた。

勝手な噂話に興じていた部下たちは、突然鬼のような形相をして現れたわたしにシーンとなる。
「そこ!散らかしてないで片付けなさい!」
「私語しないで、ちゃんと働きなさい!」
怒りをぶつけどなりちらすわたしに、何の罪もない部下たちはビクビクする。

「しょ、署長、今日は新人の刑事が赴任のあいさつに来る事になってますが……」
ノンキャリで叩き上げの中年の副署長が、オドオドした口調で申し出た。
「ああ、そうだったわね」
署長室にもどったわたしは、今日から配属になる新人刑事の身上書を手に取った。つい今しがたまで怒り心頭だった
わたしはそれを見て、ついクスッと笑ったのだった。
729名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 04:07:03 ID:rv7dg6IK
グッジョブ!
この高慢チキな女がしおらしくなるなんてたまらないですね!
続きすごく期待してます!!
がんがってください!
730名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 09:37:49 ID:jClaqjlr
GJ!
高飛車なオンナが、パンチラを撮られるってシチュだけで勃っちゃいます。
期待大。
731レイ:皇紀2665/04/02(土) 02:18:39 ID:0GwQCXiX
星川ルイン 25歳 男性
(クスッ、変な名前ね)
新人刑事の名前を知ったわたしは、思わず笑ってしまった。

(使える男だといいんだけど、あまり期待できそうもないなあ)
部下は皆、自分の出世の手駒としか考えていなかったわたしは、能無し揃いの中央署署員たちにイライラしていたのだ。
(ルイン、ルイン、それにしても宇宙人みたいな名前ね)
わたしは、ついさっきまでの怒りをすっかり忘れてしまっていた。

「署長、連れてまいりました」
所長室をノックした副署長が、新人を連れて入ってきた。
タコみたいな宇宙人でも現れるのではないか、と思っていたわたしの前に登場したのは、
スラリとした長身のイケメンだった。

「初めまして、今日から配属になりました星川ルインです」
イケメンの新任刑事は、はきはきした口調であいさつをした。
「わたしが署長の澤崎よ」
これが、あいつとの初対面だった。
732レイ:2005/04/02(土) 22:34:16 ID:0GwQCXiX
(結構カッコいいけど、中身はどうかしら?)
わたしは、彼の顔をにらむように見つめた。
大抵の男は、若くて美しいわたしにそんな視線を送られると、動揺するかオドオドし出すのだった。

ところが、このルインという刑事の表情は微動だにしなかった。
それどころか、彼の大きな瞳は、わたしの心の内を見透かしてしまうかのようにすら思えた。
焦ったわたしは
「驚いた? こんな小娘が署長で?」
と質問を浴びせた。

「いいえ、署長がお美しいだけでなく、大変有能である事はうかがってます」
「まあ、お上手ね」
そつのない答えだった。

「変わったお名前ね」
「はい、気に入っております」
なかなか隙を見せない新人が、だんだんわたしは小憎らしくなってきた。

「期待してるわよ、ルイン君」
年上の彼を、わざと名前で君付けで呼んだ。
「ご期待に沿えるよう、頑張ります」
ルインはそう答えた。
733レイ:2005/04/02(土) 23:44:51 ID:0GwQCXiX
「どういうことなの!何も手がかりがないって!」
ある日の捜査会議、わたしの怒鳴り声が響き渡った。
(うわ……また、祐華のヒステリーが始まったよ……)
列席する署員たちは、一斉に眉を顰めた。
そんな中、あいつだけは相変わらずクールな表情を崩さない。ほんとに憎たらしいわ。

退屈を感じるほど、何事もなく過ぎていた署長としての日々。
そこに突然、奇怪な事件が沸き起こったのだ。
八王子中央署の管内で、若い女性の謎の連続失踪が発生したのだ。
みな独身で、綺麗な女性ばかりだった。ある日突然、忽然と姿を消し行方は全くわからなかった。

「既に、五人の女性が行方不明になってるのよ。それなのに何もわからないなんて!」
拉致誘拐の線で捜査が行われていたが難航していた。
「懸命に捜査しておりますが、何せ何も物証がないもので……」
副署長が弁解する。

「探し方が悪いのよ!もっと一生懸命やりなさい!」
わたしの叱責で、会議は終わった。ほんとに能無しばかりだわ。腹立ちが収まらない。
被害者は気の毒だけど、わたしにとってはチャンスだった。この事件を解決して手柄を立てて本庁に凱旋よ。
そして、この時まで気付いていなかった。
被害者は若くて、美人の独身女性。わたしもその範疇に入るってことを。



734レイ:2005/04/03(日) 01:03:17 ID:syXMiqYs
その夜署長官舎の寝室、わたしはパジャマ姿でベッドに入った。
「まったくう、使えない連中ばかりなんだから」
成果無しの捜査会議をまだ、憤っていた。

その数時間後、わたしは熟睡中だった。
突然、口に何かが貼り付けられる感触で目が覚める。
「ううっ……」
声が出ない。口を大きなガムテープで塞がれてしまったのだ。

見回すと、黒覆面をした大柄な男が五人もいた。
(な、何者なの!)
わたしは驚愕した。セキュリティー万全のはずの署長官舎にこうも易々と忍び込むなんて只者ではない。
そして、更に身体を押さえられ顔にガムテープを貼られ、目も塞がれてしまった。
(い、いやっ!何をするの!)
何も見えなくなったわたしは、恐ろしさに身体が震えた。

バタバタともがくだけしかできない。
「八王子中央署署長、澤崎祐華だな?」
リーダー格らしい男が言ったが、もちろん答えることなどできない。
身体に、バチバチッと音を立てるスタンガンが押し当てられた。
わたしは、そのまま気を失ってしまったの。



735レイ:2005/04/04(月) 00:33:45 ID:XuqT0p8S
拉致されてから、どのくらい経ったのだろう?
ようやくわたしは、ハッと目を覚ました。
「こ、ここはどこかしら?」
そして、立ち上がろうとしたができなかった。

「ああっ!」
思わず悲鳴を上げる。
わたしは、台の上に仰向けに寝かされ、両腕両脚を大きく広げられて縛り付けられていたのだ。
手首足首を太い繩で、ガッチリと固定されていた。身動き一つできない。
そして、わたしが身に付けているのはブラジャーとパンツの下着二枚だけであった。

「こ、こんなのいやっ!」
わたしの心の中に恥じらいの感情が湧き上がる。プライドの高いわたしにとって、こんな恥ずかしい姿を晒すことなど
絶対に耐えられない。
そして、これからどんな目に遭わされるのか、言い様のない不安に駆られた。

唯一自由に動かせる首を動かし、辺りを見回す。
わたしの載っている台を中心に、部屋の床に魔法陣のような不気味な図形が描かれていた。
(い、一体どうなってるの?)
頭が混乱してしまう。
その時、部屋の扉が開いて、数人の男たちが入ってきた。
736名無しさん@ピンキー:2005/04/04(月) 01:45:30 ID:pRk4bm4h
支援
737名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 02:48:04 ID:A3zYMaea
援護
738レイ:2005/04/05(火) 23:07:17 ID:rk2n7nEg
男たちは皆、チベット僧のような衣装に三角の頭巾を被っている。
不気味な連中だ。何かの宗教団体なのだろうか?
だがわたしは、自分の恥ずかしい姿を知らない男どもに見られたくない、という気持ちの方が強かった。
必死でもがいたが、戒めはビクともしなかった。

私が縛られている台を男たちが取り囲んだ。
「われらのアジトにようこそ。澤崎署長」
リーダー格らしい、小太りで髭もじゃの男が話しかけて来る。

「誰なのあなたたちは?放しなさい!」
恥じらいをこらえて、わたしは言い放った。いつもの強気の口調は失わない。
「我等はバロル教団。わがホーリーネームはジーダ。面白いモノをお見せしよう」
ジーダと名乗る男は、部下に目配せした。

屈強な男たちが何かを担いで部屋に入ってきた。
大きな魔法陣の五角形の頂点に、わたしを取り囲むようにそれを立てる。
わたしは、思わず息を飲んだ。
五本の十字架に、誘拐された美女たちが全裸で磔にされていたのだ。
739レイ:2005/04/10(日) 16:50:41 ID:x9TsHoXP
しばらく彼女たちを見回したわたしは、何かがおかしい事に気付いた。
みなピクリとも動かないのである。
「彼女たちに何をしたの!」
わたしはジーダに叫んだ。

「さすがは有能な署長だ。よく気付いたな、この女たちはもう生きてはおらん。殺したあと磔にして冷凍保存していたのだ」
ジーダは、冷酷な事実を簡単に言ってのけた。
驚愕したわたしは
「ひどい! 何のためにそんな事を!」
と食ってかかった。

「フフフ、教えてやろう。これから、われらの王サタン様の降臨の儀式を行うのだ」
(サタン様!? 降臨の儀式!? こいつら悪魔崇拝の団体なのね!)
わたしはすこしずつ事情が飲み込めはじめた。

「魔法陣の完成のためには、六人の女が必要なのだ。もっとも美しく知性のある女をセンターに据えねばならん。
祐華君、君が選ばれたのだよ。サタン様にささげる生け贄としてふさわしい女性だ」
やっぱり、わたしが美しいから----などと喜んでいる場合ではない。
馴れ馴れしく名前で呼ばないでよ!
生け贄ですって!? 冗談じゃないわ!
740レイ:2005/04/10(日) 17:23:59 ID:x9TsHoXP
ジーダは、立て続けにわたしに非常な宣告を下した。
「いけにえは綺麗な身体でなければならん。邪魔な布きれは剥ぎ取らせてもらう」
下着しか身に着けていないわたしを、全裸にするつもりなのだった。

室内には十人ほどの男がいた。こんな連中の前にわたしの裸体を見せるなんて御免だ。
「い、いやっ! やめなさい!」
抵抗の意思を示そうと叫んだが、ムダだった。

ジーダは片手にナイフを持ち近づいて来た。
「やめなさい!か。自分の立場もわきまえず、高飛車な女だ」
まず、わたしのブラジャーにナイフを差し入れた。
「ううっ!」
縛られて、何もできないわたし。できるのは呻く事だけだった。

ブチッという音と共に、わたしの両乳房が露わになってしまった。
残るはパンツ一枚だけである。全裸にされるなんて絶対に嫌っ!こんな脚を広げられた姿で脱がされては、女性の一番恥ずか
しいところが丸見えになってしまう。
激しく焦ったが、どうしようもない。
そして、わたしに残された最後の砦に、ナイフが差し込まれた。
741レイ:2005/04/10(日) 22:10:01 ID:x9TsHoXP
(ああ……い、いやっ!いやっ!)
 わたしは心の中で絶叫した。でも声には出さない。敵に許しを請うことなど、わたしのプライドが決して許さなかった。
また、そんな事をしてもムダだと判っている。

 ジーダは、わたしを辱める事を楽しんでいるかのように、好色な、いやらしい眼つきでわたしの半裸の全身を見回した。
 そして、ナイフを使って手際よく最後の一枚を破り取った。
「アア……」
 小さく呻くわたし。とうとうオールヌードにされてしまったのだ。しかもX字形に両腕両脚を拘束されたままである。
 あまりの屈辱に全身が紅潮する。

 だが、わたしに加えられる恥辱はこれで終わりではなかった。
 またも、ジーダが告げた。
「生け贄に捧げる前に、清めの儀式を始める」
「清めの儀式ですって?」

 すぐ殺されるのではないかと怯えていたわたしは、それを聞いて少しホッとしたのだが、甘かった。
 ジーダが続ける。
「そうだ、この女どもはすべて受けておる。サタン様に捧げる前に我等全員と交わるのだ」
「なんですって!」
 彼の言葉を聞いて震え上がった。わたしの事を輪姦しようというのだった。 
742名無しさん@ピンキー:2005/04/10(日) 22:28:10 ID:gcTGDy4q
珍しい悪魔崇拝者ですね。
なにはともあれ、支援
743名無しさん@ピンキー:2005/04/18(月) 18:03:33 ID:OqRxSiRW
・・・俺が時を止めた。4/10の時点でな。
そして、脱出できた。
やれやれだぜ・・・

というわけで、続きキボンニュ

堕ちる姿を楽しみにしてるのは俺だけなのか?
744名無しさん@ピンキー:2005/04/21(木) 19:41:52 ID:gLeWVD15
素晴らしいほどの過疎化だ。
職人含めておまいらカムバックきぼんぬ。
745名無しさん@ピンキー:2005/04/23(土) 12:34:58 ID:mWaCFPL2
保守
746名無しさん@ピンキー:2005/04/24(日) 13:16:28 ID:3my06ZvP
うわーん、職人さんがいない。
747職人:2005/04/24(日) 20:34:45 ID:TGRxFm8q
呼んだ?
748名無しさん@ピンキー:2005/04/27(水) 02:02:20 ID:s+kR3sqX
ツンデレщ(゚Д゚щ)カモォォォン
749無愛想ハーレクイン:2005/04/28(木) 00:43:00 ID:vV4xl/ad
 
 秘密の裏口があるんだ、と言っていた。再生者になりたい者は、たった一人で秘密の裏口か
ら入ってきて、何もない小部屋でただじっと待つのだと。
 化け物にされるのを? と嫌味で聞くと、彼はただいつもどおり幸福そうに、そうだよ、と
微笑んだ。
――私は化け物を作ってる。転んだって泣かない化け物を。ねぇ、崇香ちゃん。君はこんな私
を軽蔑するかい? 君もやっぱり私の事を、神の領域を汚した身の程知らずの虫けらだって、
思うかい?
 頷いたのか、首を横に振ったのか、崇香はよく覚えていなかった。だが、恐らくは無視した
んだろうと思う。どちらの反応を示したとしても、舞里の笑みがいっそう深まるだけだと予想
できてしまったから。否定するのも肯定するのも、それは恐らく嘘なんだろうと思ったから。
 要塞は、舞里の声が死ぬと共にただの機械に成り果てた。秘密の入り口からの侵入に自動セ
キュリティは働かない。
 殺されるわよ、と忠告しても、舞里はただ笑うだけで、蕩けた脳で銃を乱射する狂人を呼び
込みかねないセキュリティの穴を埋めようとはしなかった。
 先程まで二人で座っていたダイニングキッチンから、ダイニングキッチンに存在するわざと
らしい“非常口”から、いくつかの足音が騒々しく駆けて来る音がした。
 何時の間にか落としたドライバーが床に転がり、崇香の足にあたって停止する。
 悲鳴を上げた喉がひりひり痛み、目がちかちかするような赤色に眩暈を覚え、崇香は数歩よ
ろけると、へたり込むのをようやく堪えて壁に手を突いた。
 その壁が、生暖かくぬるりと滑る。
 目を遣れば、壁は舞里の血で赤く濡れ、崇香の手に擦られたそれが汚らしく赤い帯を描いて
いた。
 恐怖でか、ショックでか、胃が激しく引きつるのを感じて崇香は乾きかけた血でべとつく手
を口元に押し当てた。
 喉まで這い上がってきた朝食をを必死になって飲み下し、胃酸に焼かれた喉を唾液で癒して
涙ぐむ。
 その耳に、カチン、という金属音が飛び込んで、崇香は手を口に添えたまま見開いた瞳を音
の方へと滑らせた。
 もう一度だけ鋭い金属音がして、ふぅ、と息をつく音がする。白い煙が、涙でぼやけた崇香
の瞳を曇らせた。
750無愛想ハーレクイン:2005/04/28(木) 00:44:13 ID:vV4xl/ad
「あぁ、嫌煙家だった? 悪いね、無断で火をつけるのがクセなんだ。嫌なら消そうか? デ
ウセクス――君の通り名は無駄に長いな。面倒だから本名で呼んでも? えーと……あー、な
んだっけ? まったまった、ここまで出かけてる。ちゃんと知ってるんだ。昨日調べた」
 耳の奥で心臓がゆっくりと跳ねる音がした。這い上がってくる嫌悪感に胸がギリギリと締め
付けられ、言葉が出せずに唇を震わせる。
「あぁ! 思い出した!」
 言うなり男は軽やかに弾指して、言う事を聞かない身体に振り回されている崇香を指差した。
 それを合図にするように、半開きだったドアが勢い良く開かれて、数人の男が慌しく駆け込
んで倒れ伏した舞里の回りを取り囲んだ。
 リビングから響いていた足音の到着だ。
「何を……!」
 布を裂く音と金属の擦れあう音に崇香が声をあげかけるのを、男は何度か舌を鳴らして注意
を引くことでやめさせた。
「だめだめ、今割りとデリケートな作業してるんだから、でかい声なんて出したら本当に大事
なドクターが死んじまう。心配しなくても大丈夫だよ、崇香ちゃん。ドクターを殺さないため
の用意はちゃぁんとできているんだから」
 殺してしまったら元も子も無いからね、とゆがめた唇から白い煙を吐き出して、男はくわえ
タバコでとんとんと胸を叩いて見せた。任せなさい、といわんばかりの、明るく自信に満ちた
表情で。
「それより、崇香ちゃんであってるよね、名前は。苗字は流石に分からなかったけど、名前だ
ったら割と簡単に調べがついたんだ。なにせそこで死に損なってるドクターが所かまわず名前
を連呼してくれてるから――」
「ふ……ざけ……!」
 崇香自身の乱れた呼吸にかき消されてしまいそうな小さな声を聞きとめて、男はいつ終わる
かも分からないおしゃべりを中断すると、とわざとらしく耳を澄まし、うん? と聞き返して
みせた。
751無愛想ハーレクイン:2005/04/28(木) 00:45:19 ID:vV4xl/ad
 かぁっと頭に血が上って、目の奥がくらくらする。
 それでも崇香は叫びかけた言葉を飲み下して、怒りで震える唇を恐る恐る開いてまっすぐに
男を睨みつけた。
「出て行きなさい」
 声が震えるのを恐れていたが、崇香の声は発した本人が驚くほどにまっすぐに男を貫いた。
 なれなれしい男の表情に一瞬だが変化が浮かび、若干の驚愕の後、押さえ切れない喜色に変
わる。
「お……っと。怒らせたかな? おぉ、怖い」
 男は大げさに怖がって見せながらくわえタバコを手に持ち替えると、ひゅぅ、と甲高い口笛
を鳴らして崇香の宣言をからかった。
「人間の首を撃ち抜いて……よくも平気で笑っていられるわね。あんたの受けた依頼は何な
の? 気違いのオフェンサー。私のクライアントの誘拐ですって? 再生者になると人の死ぬ
度合いもわからなくなるのかしら? 誰の目から見たって彼はもう助からない。もう用はない
でしょう? 出て行きなさい! この化け物!」
 語調を荒げた崇香の言葉に、男はむせるように吹き出した。タバコの煙が鼻に抜け、苦しげ
に何度か咳き込みながら白い煙をばたばたと手で払う。
「やめてくれ! 神の指を持つ機械技師がそんな時代遅れな発言、あまりにもナンセンスだ。
皮膚の美しさを保つため、金持ち女が定期的に皮膚を剥ぐ時代だよ? 他でもない、君が気遣
うその人こそが、そういう技術の第一人者じゃございませんか!」
「処置が完了しました」
 舞里を取り囲んでいた数人の中に、一人だけ背が低く、骨ばった男が交じっていた。その男
のやけに無感動な声が部屋に響いて、男が咳き込みながら涙ぐんだ目を向ける。
「喉もちゃんとつぶしたか? 声を出されたらこっちは全滅だ」
「問題ありません」
「外で車を回しとけ。俺はもうちょっと用がある」
752無愛想ハーレクイン:2005/04/28(木) 00:46:14 ID:vV4xl/ad
 神経質そうな表情を浮かべる初老の男は若造に使われる事をなんとも思っていないのか、男
の言葉に素直に従い、黒い角張った鞄にこまごまとした物をしまい始めた。
 その男以外は総じて大柄で、気味の悪い無表情。何を警戒しているのか全員が舞里に銃を突
きつけている。中には屈みこんで首筋にナイフを当てている者もおり、気を失った医者一人に
対する警戒にしてはあまりにも滑稽だった。
「ほーら、ね。君のクライアントは一命を取り留めた。ただし、彼は生き延びる代わりにその
美しい声を失った」
 落ち着いた呼吸。それでも何度か咳き込んで、再びタバコを唇に挟む。すっかり短くなった
それを一息吸うと、男はタバコを捨ててタイルの床に踏みつけた。
「ステキな人魚姫ストーリーだ。女の子にはたまらないね! さて、これで俺にはこの病院に
いる理由ができたわけだけど――説明してほしそうな顔してるね」
 カツン、と靴音を響かせて、男は一歩足を踏み出した。
 スーツの上着のポケットに両手を突っ込んで、子供が遊ぶみたいにタイルのつなぎ目を踏ま
ないように気をつけながら崇香へと歩み寄る。
「近づかないで!」
「簡易的なインスタント人体改造さ。知らない? 注射一本で一定時間化け物に変身できます
って言う猫型ロボット的秘密道具。まぁ、リミットは1時間程度だけどね。さて……ここから
がショータイムだ」
 手術台を横切って、手を伸ばせば触れられる程度の位置まで崇香に近づくと、男は口元をゆ
がめてもったいぶった調子で軽やかに指を弾いた。
「――バグを磔にしろ」
 その、独り言に近い声量の命令が、崇香の耳にはすぐ耳元で囁かれた時のようにはっきりと
聞き取れた。
 ぞっとするほど楽しげな宣言から悪夢の実現まで、さほど時間はかからなかった。耳を疑う
間もなかったといった方が正しいだろう。まるで元からそうする事が決まっていたかのように
――恐らく決まっていたのだろう――男たちは舞里の身体を軽々と持ち上げると、点々と血液
の散ったタイルの壁に押し付けた。
753無愛想ハーレクイン:2005/04/28(木) 00:47:13 ID:vV4xl/ad
 無表情な男達の手に光る漫画じみた銀色の杭と、どこにでも転がっているようなハンマーに
背筋が凍る。
 表情を作る事も忘れてただその光景を呆然と見つめていると、信じがたい腕力で腰を抱き寄
せられ、崇香は愕然と目を見開いた。
 男物の香水が鼻につく。
「ねえ、崇香ちゃん? 俺がクライアントに要求した報酬を君にだけこっそり教えてあげよう
か? 知りたいだろ? 人攫いの報酬が一体どんなもんなのか?」
「は……放せ!」
 怖気が走るほどの嫌悪感。全身の毛穴から脂汗が滲み出す。男に抱き寄せられている。そう
意識した瞬間収まりかけた吐き気が再び喉元まで這い上がり、崇香は弾かれたように暴れだし
た。
「放せ! 触るな! 触らないで!!」
 杭をハンマーで叩く音が煩くて、それ以外の音は何一つ聞こえなかった。
 肉がつぶれる音も、骨が砕ける音も、すべては金属と金属が激しくぶつかる音にかき消され
ていた。
「君だよ、崇香ちゃん。俺は君が欲しかった。何一つ欲しがらないバグが唯一欲しがる男嫌い
の女の子が!」
 作業着に男の指が掛かるのを意識して、直後に硬い布が引き裂ける音がした。
754無愛想ハーレクイン:2005/04/28(木) 00:48:13 ID:vV4xl/ad
流血表現注意を書くのわすれた……
苦手だった方は申し訳ありませんでした
755名無しさん@ピンキー:2005/05/01(日) 06:09:25 ID:zowfdFMN
>>574まで読んだ。

ところで、国語の教科書に「気の強い娘がしおらしくなる」小説が載ってて、小学生時代の俺が激しく萌えた
のを思い出したんだが、知ってる人いない?二十年位前。
しおらしくなる瞬間のセリフは「もう、ゆるいて(許して)」
756名無しさん@ピンキー:2005/05/01(日) 21:43:16 ID:KPhcaEd4
>755
田圃で泥球投げする話だろ?
「どろんこ祭り」今西祥智
ですな。
でもこれ、最近は教科書に載ってないらしい。萌えを理解できないフェミのバカどもが
「男性性女性性を固定化するのは問題だ云々」だと。
バカが。

男勝りなせっちゃんがいつのまにか追われる身になって(しかも、服を交換してるから
男の子の法被で!)泥まみれになって田んぼに女の子座りで泣きながら言うのが萌えるんじゃねえか!
畜生!こんな素晴らしい小説を教科書から排除するなど、あの野蛮人どもがっ!
泥まみれだよ?泣いてるんだよ?もう許して、だよ?
三郎だってそりゃ勃起するさ。ああしてるとも。臍につくくらい激しくナ!!!
757なんか思い出した:2005/05/02(月) 04:49:05 ID:qcnL8bN/
田圃に泥はつきもの。今日はよいわ。
758名無しさん@ピンキー:2005/05/03(火) 04:19:43 ID:athQkrTz
>>756
確かに萌えるけど、女の子が泥まみれはチョト可哀想な気も(´・ω・`)
759名無しさん@ピンキー:2005/05/04(水) 21:40:44 ID:0NPZloom
読んでからゆった方がよい
760名無しさん@ピンキー:2005/05/10(火) 23:48:12 ID:4Gxt2Gmp
また時が止まってる・・・。
こーなったら俺様が動かしてやる。


a---------------g----------------e!!!!!!!!
761名無しさん@ピンキー:2005/05/13(金) 03:22:16 ID:bC5OyokC
じゃ、俺はsageる。。。
762 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:33:23 ID:2MR05bmx
「今でも女の幸せは結婚にある。なんて本気で言うつもりですか?」
テレビの中では何とかという頭の良さそうな女性コメンテーターが机を叩いて言う。

「本気も今時も何も女の幸せは結婚にあるに決まってるじゃないか。」
まあ男もそうであるべきだが。と隣に座っている涼子さんは不満そうにテレビに呟きつつシャリシャリとリンゴをきれいに剥いていた。
いつもリンゴくらいは自分で剥くと言ってはいるのだけれど涼子さんは決してそれを許しはしない。

「でも今時は違うみたいだよ。女性の社会進出も進んできたし。」
ベッドに横になりながら口を挟んでみる。
今は涼子さんが帰るまでの少しの休み時間。
リハビリは主に涼子さんのおかげで苛烈を極めているから毎日のこの穏やかな時間は楽しみだった。
テレビから季節に合わせた薄手のブラウスから色白の肌を覗かせながらリンゴを剥いている涼子さんの方に向き直る。

清楚な格好は涼子さんに良く似合っていた。
763 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:33:57 ID:2MR05bmx
「それとこれとは全然違う。仕事をしながら家庭を持って幸せになればいい。
 結婚して幸せだと思う事が一番良いに決まってるじゃないか。」
同時に不満そうにぶんぶんと包丁を振り回す。

「うわ、包丁あぶな」
斬れる斬れる。リンゴの皮も飛ぶし。

「大体がだ。通い婚だの夫婦別姓だの男を台所に立たせろだなんて言うのは」
うちの父のように一人身なのであれば兎も角。と涼子さんは不満そうに言った。

「でも涼子さん、そういうのって男を甘やかせ」
「む。ほら、匠君。あーん。」
涼子さんの手がこちらに伸びて、言葉を遮る。
764 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:34:57 ID:2MR05bmx
「ほら、匠君。あーんだ。」
口を開けろと要求してくる涼子さんに向かってカパリと開く。
とフォークごとリンゴを突っ込んで来る。
ムグムグと咀嚼すると次の一口サイズに切られたリンゴが突きつけられる。
又カパリと口を開くとフォークをねじ込んでくる。
今度のは小さ目のウサギ。そう言って涼子さんは楽しそうにリンゴを弄くりまわす。

ウサギのリンゴの次はお茶だ。湯飲みを口の中に突っ込まれる。
涼子さんはそうしながら自分用に入れた紅茶をくぴくぴと飲みだした。
いつの間にか手元にはポッキーが準備されていた。

「匠君。さっきの話だけれどな。人には適材適所というものがある。」
涼子さんの口元でポッキーがパキリと音をたてる。
「う、うん。」
さっきの話?なんだろうか。頷くと涼子さんはふう、と息をついて話し始めた。

「有名なギタリストがソロアルバムを出しても大抵碌な事にならないようにだ。
 人はその場所にいられるようにその人が出来る努力を払わないといけない。」
私は、私が匠君の側にいられるように努力するとか、そういう事だなと涼子さんは言う。
765 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:37:32 ID:2MR05bmx
「でも、それじゃあ俺がやってもらってばっかりになるじゃないか。」
不満を表明する。ていうか涼子さんにそんな努力をされたら何にも適わなくなってしまう。
それじゃああんまりだし、
なによりもやってもらってばかりというのも情けない。
俺だって頼りがいのあるGuyなんだぜ涼子さん。

「そんな事は知ったことではない。」
ぴしゃりと言われる。今日の涼子さんは強気だ。

「ええ!うーんと。じゃあ、涼子さんは何をして欲しいのさ。」

「それは匠君が考えなくてはいけない。」
冷たく突き放しつつ、涼子さんはまあでも、そうだな。と続けた。

「早起きをする人がいいな。あまり寝てばかりいない人が良い。」
あと優しくて、それとそれと一生懸命リハビリをやる人が良い。と涼子さんはそう言って。

にこりと笑って匠君が頑張ってくれると嬉しい、なんて言ってまたリンゴを剥き始めた。
766 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:39:09 ID:2MR05bmx

@@@

「じゃあ匠君、お休み。」
お菓子を食べ終わると涼子さんはまた明日。と小さく手を振って部屋を出て行った。

「ふう。」
と涼子さんが出て行ったドアに向って溜息を吐く。
我侭は言えないのだけれど、毎日この時ばかりは少し寂しい思いに駆られる。
こんな事を言ったら涼子さんに怒られてしまうのだろうけれど。
毎日来て貰っておいてなんだとも言われそうだ。

厳しいリハビリだけれど、涼子さんがいたから耐えられている。
もしいなかったらと思うと寒気がする。
自分がこんなに弱いだなんて思ってもいなかったのだけれど。

そんな事をぼうと考えながら漫画でも読んで寝ようかと枕元の本棚に向けて手を差し出す。
と、指先が偶然、2段目に置いてある文庫本に当った。
一段目は俺が入れた漫画が詰まっている。
2段目には涼子さんが持ち込んだだけあって難しそうな本やら可愛らしい本やらが数十冊詰まっている。
一段目に向けて手を伸ばしたつもりだったのだけれど偶然2段目にてが当ったらしい。
普段あまり見向きもしない2段目を覗く。中でも薄い一冊を手にとる。
題名には「老人と海」と書いてあった。
767 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:40:05 ID:2MR05bmx
本を広げ、パラパラと捲ると滑らかな手触りが指に触れた。
栞代わりに挟んであったそれの上には、「匠君へ」と書いてある。
それは可愛らしい封筒で、明らかに今日昨日に挟まれた物ではなかった。

それだけを取り出して本は膝の上に置いた。
動かない手に一苦労しながら中から便箋を取り出すと、
それは涼子さんらしい飾り気も何も無い短めの手紙だった。

最後にはウサギのシールなんかが張ってあって涼子さんにしては可愛らしい。
いつの間に挟んだのだろうか。昨日?それともそれより前だろうか。それとも。

そんな事を考えながら10分位かけて読む。

2回読んで暫く考えた末、そのまま封筒に入れた。
768 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:41:40 ID:2MR05bmx
大分動くようになってきたものの、まだ震える手をゆっくりと抑えて膝の上の「老人と海」を固定する。
ラジカセに最近お気に入りのビートルズのラバー・ソウルを放り込んだ。
1曲目のドライヴ・マイ・カーも良いけれど、特にお気に入りは11曲目のイン・マイ・ライフ。
ラジカセから軽快な音が跳ねる。
まずは一ページ目を捲った。
涼子さんが言う通り、確かに俺は小説は苦手なのだけれど。

今は午後7時。俺の読むペースを考えると今日は夜なべになるかもしれない。
でも頑張って明日は涼子さんにこの本の感想を言ってやろうと思う。

涼子さんは驚いてくれるだろうか。
それともこれから本の話も出来るようになるって喜んでくれるだろうか。
それとも「匠君はもっと本を読まなくちゃ駄目だ」なんてすまし顔で言うだろうか。
手紙を読んだと知れたら涼子さんはとても恥ずかしがるだろうことは間違いないのだけれど。
769 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:43:16 ID:2MR05bmx
@@@@@

匠君へ。--------(ここにウサギのシールが貼ってあった。)

もしこれを匠君以外の人が開いたなら、そのまま元に戻すか、それも駄目なら捨てて欲しい。
でも、もし開いたのが匠君なら読んでくれても良い。

匠君が元気になってくれてとても嬉しい。
まだ匠君は眠ったままだけれど、きっと目を覚ます。
だからきっとその時に私はとっても喜んだと思う。
どうだったんだろうか。

今匠君は私の横で寝ていて、私は色々なことを考えている。
とても静かだけれど、退屈でとてもつまらない。
匠君の部屋ならゲームをしたり、一緒にお菓子を食べたり本を読んだり出来るのに。
君とお話が出来ない事がこんなにつまらないとは思わなかった。
びっくりしている。
せめて声が聞けるのなら良いのに。

一緒に学校に通えてとても嬉しかった。
それに楽しかった。
高校生の時から、それは変わらない。
だから私は匠君とこれからも色々とお話をしたい。
休みの日にでもまたディズニーランドに行けたら凄く楽しいと思う。もし晴れたらでいいのだけれど。
もし天気が悪かったら一緒に炬燵にもぐって漫画でも読みながら音楽を聞けたらとても楽しいと思う。
すぐにじゃなくても良いから。
770 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:44:10 ID:2MR05bmx
匠君はずっと寝てばかりいるから知らないだろうけれど私は随分と匠君の事を待ってる。
たとえ君が明日起きるのだとしたって酷い話だと思う。
だから起きた時に君は、私に謝るべきだと私は思う。

私はあの時にこれからも匠君と一緒にいたいと言ったのに。
匠君も俺もって応えてくれたのに。
あの神社の前でのことを私はまだ一言一句覚えているんだから。

それなのにいつまでも寝てばかりでは君は私に嘘をついたことになる。
世間では浮気されたって仕方が無いと言うに違いない。。
だから早く。早く起きて。
そうしたら私はとっても喜んであげるから。
771 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:45:05 ID:2MR05bmx
本当に匠君がこれを読むことなんてあるのかな。
匠君が横にいるのにこうやって自分の事を書くのは変な感じがするな。
なんだか今日は少し寂しい気持ちがしているからだと思う。

どうか。

どうか早く匠君が元気になりますように。


そしてどうか君の目に映る私が前のままでありますように。
どうか匠君ともう一度お話ができますように。
もう一度ゲームをしたり、一緒にお菓子を食べたりできますように。

私はここでちゃんと待ってるから。
匠君が
匠君が早く追いついてきてくれますように。

じゃあ、また明日。
おやすみなさい。

涼子
772 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:45:38 ID:2MR05bmx
ps.
昔から気になっていたのだけれど匠君はあまり本を読まないみたいだ。
ちゃんと本を読んでいれば受験の時もあんなに現代文で苦労する事も無かったと思う。
この手紙を挟んだ本はとても私のお気に入りだから是非最後まで読んで欲しい。
ロックと一緒で小説でも古典と呼ばれるものにはとても素晴らしい本が多い。
いつか本の話が出来たらいいなと思う。匠君と一緒に。


うん。少し弱気になっていたみたい。

どうか君のだらしない性格が直りますように。
どうか君が元気になっても他の女の子に目移りしたりしませんように。
どうか匠君がまた一緒にディズニーランドに連れてってくれますように。

こっちのお願いの方が、多分私らしい。
何度も言うようだけれど、私は匠君が思っているより遊ぶのが好きだ。
早く連れて行って。

もう一度、おやすみ。また明日。
773 ◆/pDb2FqpBw :2005/05/16(月) 14:50:40 ID:2MR05bmx

---------------------------------------------------

少し暇だったからといって又遊びに来てしまいました。

GW中に書いたのですが、
春はやっぱり暖かくて気持ちの良い季節だなあと思ったです。

では。
ノシ
774名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 19:45:45 ID:PQs1ovPE
。・゚・(ノД`)・゚・。
775名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 20:17:57 ID:f1xfH2y0
◆/pDb2FqpBw 氏
GJ!
また涼子さんと匠君の小説が
読めるとは感無量です。
素晴らしい小説をありがとう。
776名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 23:33:23 ID:oxvo/90g
>773
涼子さんだ!涼子さんと匠君にまた逢えて嬉しいよ!

春の陽みたいでとてもいいです。また二人の話が読みたいです。
777名無しさん@ピンキー:2005/05/16(月) 23:53:55 ID:3JiGYbyj
涼子さん、健気だ…ハッピーエンドで良かったよ…。・゚・(ノД`)・゚・。
778名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 00:24:41 ID:XLivWMeF
ここの住人てそんなに無愛想氏嫌いなのか?
779名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 03:17:31 ID:8D6EONNS
そーゆーことはわざわざカキコすることじゃないと思ふ
780名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 13:03:54 ID:v9dtpyj5
>778
面白ければレスが付くし、無愛想氏にも付いてる。
ここは無愛想氏だけのスレじゃない。
つうか読む人は誰のとか特に判断してないよ。書く人は一杯いた方がいいに決まってるんだし。
逆にそういう書き込みは無愛想氏の自演みたく取られるからよしといたほうがいい。


ということでキター!手紙カワイイ!
781名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 19:51:20 ID:pZO76NSV
・゜・(ノД`)・゜・ホントニヨカッタ、ヨカッタヨ
782名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:18:48 ID:B9vhD1BF
「おい、お前図書委員になったからな」
 風邪で学校を休んだ次の日、かばんを自分の机に置いた途端に、僕は幼稚園からの腐れ縁だった広尾に告げられた。
「はぁ? マジで?」
「おう、マジ。で、女の図書委員なんだけどよ……。あ、また後でな」
 広尾がなにか言いかけたところで止めてしまった。ドアを見ると先生が出席簿を手に教室に入ってくるのが見えた。
「お、おいちょっと待てって」
 声をかける僕を無視して、広尾は自分の席に着いた。当たり前だ。もし僕が広尾の立場だとしてもそうする。
 先生が朝のホームルームを始めるのを、ぼんやりと聞き流しながら、僕は黒板の横に張られている紙切れに目をやった。
 一番上には『二学期の委員』とでかでかと印刷されていて、その下には学級委員に始まって保険委員や僕がなったらしい図書委員、はては悩み事相談委員、宿題回収委員なんてわけのわからない委員まで、やたらとたくさんの役職が書かれている。
 一学期にも思ったが、どうしてこの学校はこんなにも無駄な委員をおくのだろう。まるでよく頑張ったで賞とか、綺麗に色が塗れたで賞みたいな、ものすごく子供だましな気がする。
 しかし、どうして僕が図書委員なんかに……。そういえば広尾が女子の図書委員がどうとか言っていたけど。
 僕は自分が二学期を通して一緒に図書委員をするのが誰なのか気になった。別に好きな子がいて、その子がいいなんてことはないが、嫌なやつよりは気の合う子のほうがいいというものだ。
 ちょっとした期待を込めて視線を投げかけると、そこには予想もしなかった名前が書かれていた。喜多薫。
「なんで!?」
 思わず声がでてしまった。あわてて僕はあたりを見回すと、クラスメートが驚いた顔をしている。
「馬鹿もん! なんでも、かんでもない。夏休み明けの始業式の日に休むお前が悪いんだ。いいな、ちゃんと今日の放課後の図書委員会に出席するんだぞ」
783名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:20:29 ID:B9vhD1BF
 なぜか会話が成り立っている。どうやら、そんなにタイミングをはずしたセリフではなかったようだ。
 しかし、なに? 図書委員会? 今日の放課後? 僕の混乱は収まらない。
「ちょっ、え、今日の放課後ですか?」
「馬鹿もん! なんど言わす気だ。これが最後だぞ。今日の放課後、図書委員会があるからお前と、喜多はきちんと出席するように。よし、それじゃあ今日も勉学に励めよ」
 いつも通りのしめの言葉を口にすると、先生はまだ呆然としたままの僕をほうって出て行ってしまった。
 僕の通っている高校は進学校というほど勉強にいそしんではいないが、札付きの不良が集まるやくざ予備校というほどでもない。実に中途半端な、至極普通の高校だ。
 だから、生徒にはまじめな高校生から、不真面目な奴、スポーツマンにオタクにヤンキーと幅広い生徒が通っている。
 そのなかで僕は、この普通の高校にかようにふさわしい、ごく平凡な生徒だ。
 しかし、僕と同じ図書委員をやる喜多薫は違う。立派なヤンキーだ。タバコを吸っているところを見たこともあるし、授業もサボる。噂では暴走族に入っているという話もある。はっきり言って僕とは共通点がまったくない。
 その喜多がなぜ図書委員なんかをやることにしたんだ? 他のクラスは知らないが、うちのクラスの委員は基本的に立候補制だから、先生に強制的にやらされたということもないだろう。
 なんで喜多が図書委員なんかに。
 僕は朝の出来事を思い出した。
784名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:21:46 ID:B9vhD1BF
 いつものように家を出て学校に向かって、通学路の土手をのんびりと歩く。
 最近の日本では珍しいだろう綺麗な自然が残っている場所で、川のせせらぎとともに、春には桜が咲いたりして季節ごとに姿をかえる中々に素晴らしい場所だ。
 今は夏なので、青々とした光景が広がっていて、草の香りが心地よい。
 学校に行くのは正直だるいが、そこを通っているときは自然って素晴らしいなぁ。などと柄にもないことを考えてしまう。
 ところが今日はそれがぶち壊しだった。
 なぜなら、さわやかな朝の空気を切り裂いて男の悲鳴が聞こえたからだ。
 僕以外にも数人いた学生やサラリーマンが一斉に声のしたほうを見る。
 そこには股間を押さえてへたりこんでいるヤンキーがいた。
 状況を察するに、男を見下ろしている女が男の大事な部分を蹴りつけたのだろうということはすぐにわかった。
 女は真っ青になっている男の顔面に思い切りサッカーボールキックを食らわした。
 男がへたりこんでいるせいで蹴りやすい位置に顔があったからだろう。
 しかし、だから蹴ってよいかというと、そうじゃない。
 男は盛大に鼻血を撒き散らしながら、後ろに吹っ飛んだ。もしかすると歯も折れているかもしれない。
 這いずりながら逃げようとする男に、女はさらに蹴りを加え続ける。
「てめぇ、しつこいんだよ! お前がなれなれしくしたせいで、朝のすがすがしい時間が台無しだろうが! ぼけっ! あたしの爽やかな通学を返せっ」
 それはこっちのセリフだとあたりにいた誰もが思っただろう。
 これから一日頑張ろうってときに、こんなバイオレンスシーンを見せられたのではたまらない。
 しかし、周囲の人間は、そんな抗議は一切せずに、それぞれの職場や学校に向かいだした。
 僕も当然そうするつもりだったのだが、ぼけっとその光景を眺めていたせいだろう。小刻みにしか動かなくなっていた男を蹴りまくり、あげくのはてに噛んでいたガムを男に吐き捨てた女と目が合ってしまったのだ。
 僕はすぐさま視線をそらし、学校に向かおうとした。
785名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:24:23 ID:B9vhD1BF
 だが、不運なことに女は僕を知っていた。そのうえ、あろうことか僕に声をかけてきたのだ。
「よ、よう桐野」
 そう、クラスメートであり、今学期の僕の相棒――図書委員限定――の喜多だった。
 ずんずんとこちらに近づいてくる彼女を、無視する勇気など僕にあるはずもなく、突っ立っているしかできない。
 どうして喜多の靴は赤く汚れているのだろう。地面には赤いものなんておちていないはずなのになぁ。僕がつらい現実から目をそらしていると、厳しい荒波が僕に襲い掛かった。
「一応言っとくけど、あたしは毎日こんなことをしてるわけじゃないからな」
 喜多はまずいところを見られたという顔をしていた。
「そうだろうね」
 されていては困る。ここは世紀末救世主が必要な時代ではなく、輝かしい二十一世紀なのだから。
「あのバカがなれなれしく肩組んできた上に、む、胸を触ったから、しょうがなくだな」
「……知り合い?」
「違う。いや……前にどっかで見たような気もするけど。なんだろ、友達の知り合いかなんかかな、それとも集会のとき会ったやつかもしれない」
「まあいいけど」
 それから、僕は気まずい思いをしながら、喜多と二人で学校に向かったのだ。
「よぉ、ガム食べる?」
「いいよ」
 僕はガムを吐きつけられた哀れな男を思い出してしまって、とてもじゃないがそんなものを食べる心境ではない。
「いまさぁ禁煙してるからさ、代わりにガム噛んでんだよ」
「禁煙……」
「やっぱり普通の男はタバコ吸ってる女嫌いだろ?」
「まぁ人にもよると思うけど」
「……えっと……さぁ、じゃあ、お前はどう?」
「なにが」
「タバコ吸ってる女は嫌いかどうか」
「まぁ吸ってないに越したことはないと思うけど」
「な。やっぱり禁煙してたほうがいいだろ」
「少なくとも健康にはいいだろうね」
 途中で友達と何人もあったけれど、僕と一緒にいる相手を見ると、誰も声をかけてこなかった。
 ぼんやりと図書委員にはまるで必要ないエピソードについて、僕が考えている間に一時間目が終わったらしい。
 授業の終了を告げるチャイムが聞こえ出した。
786名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:25:18 ID:B9vhD1BF
 チャイムが鳴り終わるのと同時に広尾の元に向かう。
「どうした桐野」
 広尾がのんきな顔で言った。
「なんで喜多が図書委員なんかやってるんだ?」
「あれ、なんで知ってんの? ああ、もう黒板の横に委員の表張ってあるもんな」
 一人で納得している広尾に、僕はもう一度同じ質問をする。
「なんで喜多が図書委員なんかやってるんだ?」
「さぁ、やりたかったんじゃねぇの」
「ヤンキーが図書委員なんかやりたがるか、普通」
「普通のヤンキーじゃねぇんじゃねぇ?」
 広尾からまるで馬鹿みたいな答えが返ってきた。
 小さいときからの腐れ縁じゃなかったら、とっくの昔に友達じゃなくなってるかもしれない。
「だって自分から立候補したんだから」
 僕の冷たい視線に気づいたのか、広尾があわてて付け足した。
「喜多が?」
「おう。えっとな……昨日の委員決めのとき男子で図書委員やりたがるやつが誰もいなかったから、俺がお前を推薦したんだよ」
 この馬鹿のせいで僕は図書委員になったのか。
 僕の内心の怒りを知らずに、広尾は言葉を続ける。
「そんで、女子もやりたいやついなかったんだよ。したら、そのあと喜多が図書委員やるって言って。それで喜多になった」
「ふぅん」
「みんなビビッてたぜ。なんで喜多が図書委員なんだって。でも、もう他に宿題回収委員みたいのしか残ってなかったからかもしんねぇけど。まぁ適当に頑張れよ。喜多ってちょっと怖いけど結構美人だし、楽しいかもよ」
 広尾が気楽そうに言うと、二時間目のチャイムが鳴った。
 あいつは朝のお子様には見せられない光景を見てないから、そんなのんきなことが言えるのだ。
 僕は、あらためて広尾がもてるのはその整った顔のせいだ、ということを実感しながら、席に戻った。
787名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:25:56 ID:B9vhD1BF
 その後は、いつもどおりに一日が過ぎていった。まだ夏休みボケの抜けない頭を学校に慣らしながら、適当に授業を受けていると、あっという間に放課後になった。
「それじゃあ、また明日も勉学に励むように」
 いつもどおりのしめの言葉で、いつもどおり先生は出席簿をばしんと叩き、教室をでていった。
「おう、それじゃあお先。図書委員頑張ってくれ」
 気楽にひらひら手を振ると、広尾が教室を出ていった。どうせ下駄箱に女の子を待たせているのだろう。
 が、さっさと下駄箱に向かえばいいものを、去り際にドアのところから顔だけ出してこっちをにやにや見ている。
 僕がいぶかしげな視線を向けると、待っていたように口を開く。
「もし、いい感じになったら女友達紹介するように言っといて。そっち系の女の子にあんま知り合いいねぇから」
 僕は広尾と友達をやめるカウントダウンを、今この瞬間に開始した。
 気まずい、ほとんど会話もしたことない殺戮マシンと同じ委員をやらなければならない僕の苦痛をわからないとは。
 喜多のほうを僕がちらりと見ると、ちょうど椅子から立ち上がろうとしているところだった。
「喜多さん」
「あぁん?」
 にらみつけられたが、これぐらいでひるんでいられない。
「そろそろ図書委員会行こう、もうすぐ始まる」
 なんだか、妙にぎこちないしゃべりになってしまった。
 最悪だ、これじゃあ声かけるのに緊張してるの丸分かりじゃないか。
「わかった」
 以外に素直な返事だったので、僕は少し驚いた。
 だるいからそんなもん行くわけねぇだろ。とかそんな言葉を予想していたのだ。
 僕たち二人は気まずい沈黙のまま、委員会を開く会議室に向かって廊下を歩いた。もっとも、居心地の悪い思いをしているのは僕だけで、喜多のほうはなんとも思っていないのかもしれないが。
788名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 01:29:19 ID:B9vhD1BF
続きます。
おそらく全部で四、五回の投下になると思います。
よろしくお付き合いください。
批判、感想あればよろしくお願いします。
789名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 08:57:22 ID:WZoRphSQ
>>782
十分面白から、このまま続き待ってるよ
790名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 18:04:06 ID:zlQ9MhX0
なんか、実はすげぇ健気な娘っぽい>喜多
ちょっとどもってしまうあたりがとても微笑ましいなぁ
今後の展開に激しく期待

ところでヤンキーはやはりロングの金髪だろうか。
791名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 19:21:27 ID:HuDUkWiS
茶髪のスケバン刑事のイメージだな。面白いし続き期待
792名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 23:12:01 ID:qURKqvt5
>791茶髪のスケバン刑事のイメージ
古っ、と思いつつ、俺もそんなイメージしか思いつかなかった…
今時はもっと新しいヤンキー像があるだろうに。
ってヤンキー自体が古いのか?
793名無しさん@ピンキー:2005/05/19(木) 03:28:24 ID:PdkadWE8
今は女のヤンキーとギャルの区別が付かなくなってると思われ
794名無しさん@ピンキー:2005/05/21(土) 23:50:34 ID:pKgs6qTI
保守age
795名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 00:11:21 ID:a5E1fq8Z
匠君と涼子さんのエチーが読みたいです・・・・・・
796名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 01:39:55 ID:qfkUhQ+g
このスレ住人の妄想のために最近のスケバンのイメージを晒しておこう
髪型 茶色か金のストレート、パーマはいない
身長 人それぞれだが大概中一の段階でタバコ吸うため、かなり低い
口癖 しゃーしゃんな(しゃしゃり出るな)なぜか何処のヤンキーも栃木弁
攻撃パターン ネコパンチと安全靴によるハイキック
ネコパンチは切れると伸びた爪で目を狙うタイプに変更
処女率 ほぼ0%
以上お目汚しスマソ
797名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 17:33:11 ID:K2tsXAba
>>796
>処女率 ほぼ0%

ここが昔と今との違いだな。
なんか昔のヤンキーって処女率ほぼ100%のイメージだな。
だからこそしおらしくなる瞬間に(;´Д`)ハァハァできるわけだが・・・
798名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 19:11:48 ID:qfkUhQ+g
まあ今のヤンキーは援交やら何やらで失う機会多いからなあ
あと追加
服装 スウェット(寝巻きみたいなもん)
好物 UCCコーヒー、カップ麺
常にコンセント式の携帯用充電機を手離さない
799名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 01:33:10 ID:LANcvQ21
やっぱ鮎川でしょ!
800名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 00:03:39 ID:Lvp++X5u
誰か…
「気の強い子が尿意」
このフレーズでビビっと来る者はおらんか!
801名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 02:35:26 ID:Nw3p9UmX
スカはよそでやってくれ
802名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 10:56:46 ID:8mKmcsw3
リトルジョーならセーフだが、ビッグベンなら俺アウト。
803名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:08:23 ID:ELu8x464
 喜多は他のクラスのやつにも知られているらしく、会議室に入ると中の人間に緊張が走った。
 ま、しかたないだろう。不良と図書館、ミスマッチにもほどがある。
 委員会自体は三十分程度で終わった。今日から持ち回りで、一組から順番に図書室の本の整理をしろということを通達して、その整理の際の注意事項を伝えるだけの簡単なものだったからだ。
 しかし、僕はその通達を受けると同時に、少しテンションが下がってしまった。僕は一組なのだ。
 委員会が解散すると、僕と喜多は図書室に向かった。当然だがその間、ほとんど言葉を交わさなかった。
 図書室に入ると、司書のお姉さんがさわやかな笑顔を向けてきた。
 今の僕にはまぶしすぎる笑顔だ。きっと、僕が喜多とどんな会話をすればいいか、ここに来る途中で百万通りのシミュレーションをしたことなんてまったく想像もしていないのだろう。
「あ、君たち図書委員の子? それじゃあこっちにある本を向こうの書庫にジャンル、作者別に分けてね」
「あたしそんなに本に興味ないからジャンルなんてわかんないんだけど」
 本に興味のないやつが図書委員なんかに立候補するな! ぶっきらぼうな口調の喜多に僕がひやひやしていると、司書のお姉さんはそんなことは気にせず、あいかわらずの笑顔で答えた。
「大丈夫よ。ちゃんと背表紙のとこに貼ってあるシールに書いてあるから。それ見れば誰でもわかるわよ」
 そのあと、細々とした指示を与えられた。
804名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:10:16 ID:ELu8x464
 説明が終わるころになると、僕はこの司書のお姉さんの笑顔は別に笑っているわけではなく、笑顔が顔に貼りついているだけなのだと思い始めていた。
「それじゃ、よろしくね。私は別のところで作業してるけど、サボっちゃだめよ」
 自分がサボるんじゃないのか。僕のもっともな思いは当然、口には出さない。
 再び、僕と喜多の二人だけになってしまった。
 さっさと終わらせて帰ろう。そうすれば、この苦痛からも開放される。
「えっ……と、僕こっちのほうやるから、喜多さんはそっちの書庫頼む」
「ああ、いいよ」
 短い返事を残して、喜多は僕に背を向けて歩いていった。どうやら僕はあまり嫌われてはいないらしい。
 しばらくのあいだ、僕はまじめに本の整理をしていたが、単純作業のため、どうしても集中力が切れてしまう。
 僕はぐるりと首を回し、大きく伸びをした。すると、離れたところにいる喜多が目に入った。
 驚くことに、喜多は眼鏡をかけていた。気の強そうな喜多の顔つきに、それはなかなか似合っている。将来、できるキャリアウーマンになるかもしれないな。たしか頭は悪くなかったはずだ。
 馬鹿な想像をしてぼんやりしていると、喜多は自分へ向けられる視線に気づいたらしい。
「なんだよ、あたしが眼鏡しちゃ悪いか」
 自分ではイメージに合わないと思っているのだろう。眼鏡姿を見られて少しばつが悪そうにしている。
「まさか。似合ってるなって思っただけだよ」
 僕の言葉に、喜多は驚くべき反応を示した。なんと照れくさそうに頬を染めたのだ。しかし、口から出る言葉はその可愛らしい様子とはまるで違っていた。
「うっせぇ。勝手なこと言ってんじゃねぇよ」
 さすがに迫力がある。僕は素直に謝り、再び作業に没頭した。
 本の山を少しずつ切り崩していると、どうも誰かに見られている気がする。
 顔をあげると喜多と目が合った。
「なにこっち見てんだ!」
 見てたのはそっちだろう。そう思ったが口には出さない。僕も大人だ、これくらいは広い心で許してやろう。決して殴られるのを怖がったわけじゃあない。
 重ねて言う。宝物を蹴り上げられてうずくまった朝の男なんか、頭に浮かびもしていない。
 軽く肩をすくめ、本を手に取った。
 図書室を沈黙が支配する。
805名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:11:29 ID:ELu8x464
 いつまでたっても減らない目の前の山にうんざりしていると、再び視線を感じた。
 喜多のほうを向くと、やはり目が合った。
「だから見んなって言っただろ!」
 真っ赤な顔をして喜多が怒鳴る。
 ちょっと待て。なんで僕がキレられなきゃならない。いや、落ち着け僕。
 そう、相手は触れるものみな傷つけるような女なんだ。
 海のように広い心で許してやろう。
「わかった。もう見ないよ」
 僕は小さく溜息をついてそう言った。
 すると、なぜか喜多が少し残念そうな顔をした。
「わ、わかればいいんだよ」
 もごもごと取り繕うように唇を動かすと、そのままうつむいてしまう。
 ギザギザハートの持ち主は難しい。
 そして、やっぱりというべきか。五分もすると、喜多の視線を感じはじめた。
 こういうものは一度気になるとどうにもならない。
 僕は顔をあげた。
 これで喜多と目が合うのは三度目か。
「いい加減にしろっつってんだろ」
 例によって喜多の声が図書室に響く。
 しかし、今回は僕の対応が違う。
 仏の顔は三度までだが、僕の顔に三度目はない。
 黙って立ち上がると、本の隙間をぬってずんずん喜多に近づいていく。
 今までと違う僕の態度に、少しひるんだ様子で彼女がこちらを見つめている。
「な、なんだよ」
 目の前に突っ立っている僕に、喜多が問いかけた。
806名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:13:45 ID:ELu8x464
 僕は喜多を見下ろしながら、口を開く。
「あのさ、僕のことが嫌いならそれでいいけど、そのうっとおしい因縁のつけ方やめてくれ」
 ブチキレて拳が飛んでくるかとも思ったが、喜多はぽかんとした顔で僕を見上げるだけだった。
 僕が目の前から立ち去りかけると、喜多は僕の服の裾をひっぱり、勢いよく立ち上がろうとした。
 突然の出来事に僕は思わずバランスを崩してよろけてしまう。
「おわっ!」
「えっ?」
 すると、僕を捕まえていた喜多の体勢も崩れる。
 僕たちは二人仲良く図書室の床に倒れこむこととなった。
 周りに積み上げられた本が僕の上にどさどさと落ちてくる。
 僕は本が凶器になりうることを知った。角がやばい、角が。
 ファイナルファンタジーの学者を馬鹿にしていたが、今ならナイスチョイスと褒めることができそうだ。
 古い本ばっかりだったのだろうか、あたりが埃まみれになってしまった。
 僕が咳き込んでいると、体の下から心配そうな声が聞こえた。
「おい……大丈夫か?」
 喜多だった。
「え、まあ大丈夫だよ。埃がうっとおしいけど」
「もしかしてあたしをかばってくれたのか?」
 そう! 僕はサーの称号を授かってもいいぐらいの紳士なのだ。体が自然と女の子をかばってしまう。わけがない。喜多の上に覆いかぶさったのは偶然だ。
 しかし、わざわざ真実を告げるほど僕はバカ正直じゃない。
「さあ」
 あいまいにとぼけてみせる。
「その、えっと……ありがと。一応礼は言っとくよ」
 素直にお礼を言われた僕は、驚きのあまり喜多を見つめてしまう。
 余計なことしてんじゃねえよ。とか言われると思っていたからだ。
 今日は喜多の意外な姿をよく見る日だ。もしかすると評判よりもいいやつなのかもしれない。
807名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:14:35 ID:ELu8x464
 眼鏡のレンズ越しに見える喜多の鋭い瞳に、僕の顔が映っている。
 近い!
 そのとき初めて、僕は今の自分が喜多と密着していることに気づいた。
 少しつりあがった気の強そうな目は、僕に猫科の獣を思わせる。そう、豹がイメージにぴったりだ。
 「あ、あんまり見るなよ……」
 図書室に着てから、もう何度も同じようなことを言われているが、今までとはまるで違う響きだった。
 喜多が顔をそむけると、眼鏡の上に髪の毛がかかって、視線を隠してしまった。
 黒髪ではない、きっと脱色剤で痛んでいるであろう金髪だ。
 最近は手入れを怠っているのか、根元のほうから元の黒が金をじわじわと侵食していて、いわゆるプリン頭になってしまっている。
 弱々しく、今にも消えてしまいそうなか細い声。
 恥ずかしそうにそむけられた顔。
 うっすらと桃色に染まった頬。
 かわいい。
 頭に浮かんだその四文字を僕は否定することができない。
 目の前にある本の背表紙を見つめながら、喜多がわずかに唇を開いた。
「はやく……どけよ」
 ついさっきまでのけんか腰はどこかへいってしまったのだろう。
 どうも僕に覆いかぶされてからの喜多は態度がおかしい。
 この密着した体勢が原因なのだろうか。
 そうすると、以外にも喜多はあまり男慣れしていないのかもしれない。
 僕はこの状況を利用することにした。
 喜多の元にやってきた問題を解決することにしよう。
「どうして僕をじろじろ見るんだ?」
「別に見てねぇだろ。いいからどけよ」
「いいや、見てた。本の整理してるとき」
「み、見て……ない」
808名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:15:21 ID:ELu8x464
 なんて強情な女なんだろう。
 まあいい。
「わかった。じゃあ見てないってことでいいけど、なにか僕に文句でもあるのか」
「は?」
 ぽかんとした顔で喜多が間抜けな声を漏らした。
「なにが気に食わないんだ。ケンカ売られる理由がさっぱりわからない」
「なんの話だよ?」
 のみこみの悪い女だな。それとも、まだとぼけるつもりなのか。
「だから、僕に文句があるからずっとガン飛ばして、にらんでるんだろ」
 これだけ言って駄目なら、もう喜多のことはほうっておくしかないな。
 僕がそう考えていると、喜多は眉を寄せて考え込んでいた。
 本気でなんのことかわかってないのか……?
 しばらく僕のことなど忘れたように喜多は悩んでいたが、ようやく思い当たるふしがあったらしく、小さく声をあげた。
「あっ!」
「なんで自分のことなのにそんなに考える必要があるんだ」
「あっ、あれは睨んでたわけじゃねぇよ。このぼけ!」
 くそっ。さっきかわいいと思ったのは気の迷いだった。
「じゃあなんで僕のこと見てたんだ」
「そっ……それはうっせぇ! 関係ねぇだろ、ばか」
「バカはそっちだ。見られてる本人が関係ないわけないだろ」
「ぐだぐだ言うなよっ!」
「ぐだぐだ言ってるのはそっちだろう、どうして僕を見てたのか早く言え」
「……」
 喜多は返事をせずに、ぎりぎりと歯軋りしながら、僕のことを睨んでいる。
 さすがの迫力というべきだろうか。けっこう怖い。
 そして……認めたくはないが、怒っている彼女の顔は綺麗だった。
 ひそかに喜多を好きな男が多いらしいというのもうなずける。
 しかし、いつになったら理由を教えてくれるのだろうか。
809名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:16:12 ID:ELu8x464
「なんでわからないんだよっ!」
 口を開いたと思ったら逆ギレとは。なんともはや。
「わかるほうが不思議だと思うけど」
「鈍感! お前神経ないんじゃないのか!」
 なんて無礼な女だろう。しつけのためにおしおきが必要だ。僕は喜多のほっぺたをつねってやった。
「ひたいっ。なにひゅるんだ」
 唇の端から空気が漏れて、間抜けなしゃべりかたになっている喜多を、僕はにやりと見下ろした。
「いいかげんに理由を言えってば」
「わかったよ、言ってやる。言ったらいいかげんあたしの上からどけよ」
「そういう、素直な言葉を待ってたんだ。教えてくれたらどくよ」
「くそっ! 好きな男を見るのに理由なんかあるかバカっ」
 今度は僕が眉をひそめ、間抜け面をさらす番だった。
「普通わかるだろ! なんで気づかないんだよっ! ちくしょう、このまぬけ野郎!」
 僕が喜多の言葉を咀嚼している間にも、ぽんぽんと威勢のよい言葉が浴びせかけられる。
 うるさいな。こっちは状況を理解するのに必死なんだ。ちょっとは黙ってくれ。
「この腰抜け! 男のくせにぺらぺら口ばっか達者で。日本が不景気なのもお前のせいなんだよっ! だいたい……」
 だんだん僕とは関係ないものの責任まで背負わされている気がするが、それはこの際どうでもいい。
「今、なんて言った?」
「あぁん? この前サイフ落としたのもお前のせいだって……」
 それはいくらなんでも自分のせいだろう……。
 いや、そうじゃない。
810名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:17:16 ID:ELu8x464
「ちがう。その前」
「買いたかった服を先に買われたのも……」
 僕はおちょくられてるのか?
「ちがう! その前、僕を見る理由だよ」
「ちくしょう! バカにしてんのか! そんなこと何回も言えるわけねぇだろ!」
「僕を好きだからって言ったな?」
 言うと、これまでの態度が一変して、喜多はもじもじと恥ずかしそうに、そっぽを向いてしまった。
「そ……そんなふうに言われると恥ずかしいだろ……」
「まさか・・・」
「まさかじゃねぇよバカ! ここまで言わせといてケンカ売ってんのか」
 ということは……喜多は僕のことが好きなのか!
 なんともはや……すごい展開になってきた。
 頭がくらくらする。
 しかし、とてもじゃないが好きな男に対する態度じゃないな。
「おい、告白したんだからさっさと返事しろよな」
「は……?」
「だから、私はお前のこと好きだって言ったんだから、その返事だよ」
「……」
「どうなんだよ。あぁ!?」
 これが告白の返事を待つ女のセリフか?
 普通はどきどきと一世一代の決心で、愛しい相手に想いを告げたのなら、その返事を待つ間は、不安と期待を行ったり来たりしながら、もうまともではいられないはずじゃないのか。
811名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:17:37 ID:ELu8x464
 それが『あぁ!?』ときた。まるでガンとばしてるみたいじゃないか。
 好きと言われたのは嫌ではない。むしろ嬉しいぐらいだが、ちょっとその態度には納得できない。
「ちゃっちゃと答えろよ。あたしのこと好きなのか嫌いなのか。付き合うのか付き合わないのか。どっちなんだよ」
 僕はカチンときた。
 もう少し殊勝な態度でいるべきじゃないのか?
 喜多にはお仕置きが必要だ。
「喜多」
 名前を呼ばれると、さすがに緊張するのか、喜多は黙ってこちらを見上げた。
 しかし、僕がいつまで経ってもなにも言わないので、焦れてきたらしい。
「おい、もったいつけないで早く言えよ」
「告白した相手に対する言葉じゃないよな」
「はぁ?」
「もっとしおらしい態度でいるべきじゃないのか」
「なに言ってんだお前」
「だから……僕がしつけてやる!」
812名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:21:10 ID:ELu8x464
お待たせしました787の続きです。
次回からHシーンに突入です。

813名無しさん@ピンキー:2005/05/24(火) 23:22:19 ID:vPY3o9J5
うはw リアルで見ちゃった!
今後が楽しみです!
814名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 13:12:43 ID:sPhjlh1H
しつけ!!しつけ!!(AAry
815名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 17:46:28 ID:a8+ri9To
>>811
うはwwwwwwwwwGJwwwwwwwwwwwwwwww
続き楽しみにしてますw
816名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 08:30:10 ID:bWfK+1HA
hosu
817名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 14:35:22 ID:xHYF/lP9
まだかぬ〜
818名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 22:15:50 ID:jPUWNcaC
>ファイナルファンタジーの学者を馬鹿にしていたが

ワラタw
819名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 00:31:53 ID:BBLKgEAV
ツヅキマダー?
820名無しさん@ピンキー:2005/06/03(金) 12:55:19 ID:O/bhpxdX
保守。
821811続き:2005/06/04(土) 01:34:25 ID:l0A8/B6M
 僕は喜多の手首を掴み、彼女のおなかの上にまたがった。
「うわっ、てめ、いきなりなにすんだよっ」
 当然、喜多は暴れて抵抗するが、やはり男と女では力が違う。その上、非常に不利な体勢である。喜多がどれだけ喧嘩慣れしていようと関係ない。
 もがくものの、僕をどかすことはできなかった。
「おい、こら。なんのつもりだ桐野」
 ドスの効いた低い声で、喜多が僕を問いただす。
「しつけだよ。好きな人に対する態度ってものがあるだろ」
「あぁん?」
「ほら、それだよ。そういうときはハイでしょ」
「てめぇ……」
 喜多の目が細められ、視線が僕を突き刺した。
「僕だってそんな態度でこられちゃ好きなものも好きって言えないじゃないか」
「え……? じゃ、じゃあお前もあたしのこと」
「それは今後の態度しだいかな」
「ど、どうすりゃいいんだよ」
 喜多が僕のことを好きだというのはどうやら本当らしい。
 実は僕は今までそれを疑っていた。
 しかし、こんなことをされているにも関わらず、こちらの好意を匂わせただけで、こうまで態度がかわると信じざるをえない。
 僕だって青春の真っ只中にいる健全な男子であるから、当然彼女は欲しい。
 それが美人ならなおさらである。ただ、かなりのじゃじゃ馬であるということが問題ではあるけれど。
「そうだな……まずはおしおきだな」
 僕は手近にあった紐を拾い上げた。本を纏めるために使われていたものだ。
 喜多が事態についてくる前に、僕は手早く作業を始めた。
 まず喜多の両手を縛り上げ、次いで両足を縛る。
 これで身動きがとれなくなった。できて這い回る程度だ。
822名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:35:51 ID:l0A8/B6M
 僕が立ち上がり、喜多を見下ろすと、さすがに不安になったのだろう。
「お、おい。なにする気なんだよ」
「おしおきといえば決まってるだろ。お尻ペンペンだよ」
 おもむろに喜多抱え上げると、椅子に座り、ひざの上に喜多をのせた。
「おいコラてめぇ、馬鹿なことしてんじゃねぇぞ! 後で絶対コロスからな!」
 喜多は身をよじるようにして脱出しようとするが、僕に抑えられているのでどうにもならない。
 わめき声を無視して、僕は手を高く振り上げた。
「ちょっと待てって、今なら許してやるから」
 すぱぁん。
 小気味良い音が図書室に響いた。
「つぅ……コロス。絶対殺すからな」
「ぜんぜん反省してないな」
 僕は続けて二度、三度と喜多のお尻に手を振り下ろした。
「おい桐野、やめろっつってんだろっ」
 しかし、喜多は大して痛がるそぶりも見せずに、元気にもがきまわる。
 そこで僕は気づいた。
 そりゃスカート越しならそんなに痛くもないか。
 僕の手が止まったのを勘違いしたのか。
「よし。今なら半殺しで許してやる。早くあたしを降ろせ」
 これだ。まるで反省の色がない。
「本当は僕だって嫌なんだけど、これも喜多さんのためだから」
 するすると手をスカートのホックにやる。
 ようやく僕の意図を察したのか、喜多がこれまで以上にじたばたもがきだす。
「おいっ! こらっ! なにする気だこの変態」
 跳ね回る脚がスカートに引っかかって脱がしにくかったが、それでも僕はやり終えた。
「……意外だ」
「なっ、なにがだよっ!」
「こんなに可愛らしいのはいてるとは思わなかった」
 喜多の下着は可愛らしいレースのついた純白のものだった。
 なんだかイメージにはそぐわない。
823名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:39:10 ID:l0A8/B6M
 僕が感慨にふけっていると、喜多は恥ずかしさと怒りのせいだろうか、耳まで真っ赤になっていた。
「コロス! 絶対コロス」
「はぁー。まだ反省が足りないみたいだな」
 僕はやれやれとばかりに肩をすくめた。
 ぱちぃん。
 先ほどよりも透き通った気持ちのよい音がして、ぷるぷると白いお尻が揺れる。
「っっつぅ……コロス」
 歯を食いしばりながら喜多がうめいた。
 やはり遮るものがなくなったからだろうか。ダメージは大きいようだ。
「あれ? まだそんな口をきくんだ」
「え? ちょっ、待てっ!」
 喜多の制止を無視して、僕は続けて二度、三度と手を振り落ろした。
「ちくしょぉ……」
 肉体的な痛みよりも、精神的な屈辱感がつよいのか、喜多はうっすらと涙目になっている。
 それを見た僕は少しかわいそうになってきた。
 第一、僕のことを好きと言ってくれているのだ。
「大丈夫? ごめん、ついやりすぎたかもしれない」
 急に態度を軟化させた僕を、喜多は眉を寄せていぶかしむ。
「こ、今度はあたしをどうするつもりなんだよ」
 普段強気な彼女がおびえた様子でいるのは妙な興奮を僕に与えた。
 もっと彼女をいじめたいと思ってしまったのだ。
 だが、口から出る言葉はまるで違う。
「僕は喜多さんをいじめたいんじゃないよ。僕もこんなことするのは嫌なんだけど、好きな人を少しでもまっとうにしてあげたいんだ」
 いじらしいことに喜多は好きな人の部分でぴくりと体を反応させた。
「や、やりかたがあるだろっ! あたしを放せっ!」
「ほら、その態度。それが改まるまではやめられないな」
 僕はきゅっと尻たぶをつねった。
「痛っ!」
 限界まで白いお尻をつねり上げると、ぱっと離す。
 真っ赤になっている部分を優しくなでた。
「大きいからつねりがいあるね。えっとこういうのなんていうんだっけ……ああ、安産型だ」
「うっせぇっ! 余計なこというなっ。コロスぞ」
824名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:39:52 ID:l0A8/B6M
「すぐ殺す、殺すって。そんな言葉遣いはよくないな」
 僕はまたお尻に触れた。
「ひっ」
 それだけで喜多は小さく悲鳴を上げる。
 そのときだ。
 僕はふと自分の太もものあたりが生暖かいことに気づいた。
 ちょうど喜多の腰を乗せているあたりだ。
 はじめは体温が伝わっているのかと思ったがどうも違う。
 湿っぽいのだ。
 まさか! おもらし!?
 だが、落ち着いて観察してみるとどうも様子が違う。
 もしそうだとすれば、さすがに喜多のほうにもなにか変化があるだろう。
「じゃあなんだ?」
「なにがだよ」
 知らずに声が出ていたらしい。喜多が尋ねてきた。
「いや……このあたりがなんか濡れてるみたいで」
「うわっ、ばかっ! どこに触ろうとしてんだよっ! こ、こういうことはもう少しあとでだ、お互いの気持ちを確認して、もっとよく知り合ってから……」
 僕が自分の太ももに手をやると喜多がこれまでで一番激しく暴れだした。
 なにやってるんだよ。と言いかけて、僕はようやく気づいた。
 我ながら危ないところだった。
 僕のひざの上に乗っているのは喜多の腰、つまり股間だったのだ。
 となると、やはりおもらし……か?
 僕が考え込んだまま動きを止めていると、跳ね回る喜多のせいで、勝手に喜多の太ももの付け根に指が触れてしまった。
 自己弁護になってしまうが、決して触ろうとしたわけではない。本当に。
「ぅあっ! さ、触られたっ! 変態! 痴漢! 絶対コロス!」
 めちゃくちゃ言う喜多をほって、僕は自分の指をぼんやりと見ていた。
 なんだか濡れている。
 ふんふんと匂いを嗅いでみる。
「このバカっ! 嗅ぐなっ!」
825名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:42:09 ID:l0A8/B6M
 よくわからない匂いだが……まさか。
 僕はぐっと喜多を押さえつけた。
 そしてじっと喜多の下着を見つめた。
 白い下着だが、股間の部分が濡れているせいで色が変わっているのがわかる。というよりも、うっすらと透けて包み込んでいるものがなんとなく見えている。
 これはエロい。
「喜多さん……濡れてる」
「ああん?」
 どうやら喜多自身は気づいていないらしい。
「だから濡れてるって言ったんだ」
「なにが?」
 僕は声をひそめて喜多の耳元でささやいた。
「喜多さんのア・ソ・コ」
「はっ!?……ぅぅうぅ」
 喜多の顔色がいっぺんに変わった。茹蛸よりもまっかっかだ。
 予想もしていなかった僕の言葉に、絶句して口をぱくぱくさせて、うめき声ともつかない音を喉からだしている。
「なっ、なっ、なに言ってんだよテメェ! わけわかんねぇこと言ってんじゃねえっ! なんであたしがぬ……濡れなきゃならないんだよっ!」
 途中口ごもったものの、羞恥心よりも怒りが勝ったらしい。
 論より証拠だ。僕は喜多の股間に指を伸ばした。
 狙いはもちろん染みになっている部分だ。
 くちっ。
「ふぁっ!」
 びくりと背筋をそらせ、喜多が甲高い声をあげる。
 自分がだした声に驚いている喜多の眼前に、僕は濡れた指先を突き出した。
「ほら。これ見てみなよ」
「こ、こんなのお前のインチキに決まってるだろ。あたしは信じないぞっ!」
 現実を受け入れられない喜多が頭をぶんぶん振ってわめく。
 僕はもう一度喜多のあそこに指を伸ばした。
 今度は濡れて薄く透けている布地に浮かび上がっているラインにそって指を這わせる。
「……っあぁぁっ」
 唇をかみ締めてなんとかこらえようとするものの、かすかな嬌声が喜多の口の端から漏れる。
826名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:43:36 ID:l0A8/B6M
「僕の指見て。濡れてるだろ」
「ちくしょう……なんで? 」
 普段は強い意志の光を宿している切れ長の瞳にうっすらと涙を浮かべて、喜多がつぶやいた。
 それは僕に対する問いではなく、純粋に不思議だったのだろう。自分の体なのに自分に理解できないことが。
 以前なにかで見たか、聞いたかしたが、人間の脳は不思議なもので苦痛や恐怖、羞恥などの負の感情がある一定レベルを超えると、それに対抗するために、それらの感覚をわざと快感に誤認するらしい。そうすることによってその己の精神の安定を守ろうとするのだそうだ。
 おそらく、今の喜多にもそれに似たことが起こっているのだろう。
 わけのわからない状況から自分を守るために、脳が誤作動を起こしたのだ。
 だが、僕はそんなことを言うつもりはまるでなかった。
 現在僕の心を占めているのはただひとつ。喜多をもっといじめてやりたい。
「僕の思い当たることはひとつかな」
「なんだよ……?」
 震える声をだしながら喜多は僕を見上げた。
「喜多さんは好きな男にいじめられて喜ぶマゾなんだよ」
 喜多の潤んでいた瞳が大きく見開かれ、涙がポロリとこぼれる。
「え?」
「いじめられるのが嬉しいんだ。喜多さんは」
「そんなわけねぇだろ」
 威勢のいい言葉の内容とは裏腹に、弱々しい声だった。
 もう一押しか?
「じゃあ、どうしてお尻叩かれたのに、あそこを濡らしたの?」
「……」
 いつもの鋭い瞳は無く、ふらふらと頼りなく喜多の視線がさまよった。
「いじめられるのが嬉しいんだよ。こんな風にっ!」
 僕は止めとばかりに、喜多のお尻をひっぱたいた。
「ぁぁあ」
 尻たぶがふるふると小さくゆれた。
 しかし今までと違い、喜多から悲鳴が上がることは無い。
 喜多の顔が惚けたように緩んでいる。
 いつものきつい表情もいいが、この顔もなかなかいい。
 おそらく僕しか見たことがないだろうから。
827名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:44:49 ID:l0A8/B6M
「ちょっと気持ちよかったんじゃない? 今の声、なんか嫌がってるような感じじゃなかったよね」
 僕は優しく語りかけながら、すべすべとした丸いお尻を撫でた。
 叩きすぎたせいだろうか、少し熱い気がする。
 再び、喜多のあそこに指を伸ばす。
 そこは先ほどよりも濡れていた。
 薄い布地越しに、指を動かす。
「っ……ぁぁ。くぅぅっ、さ、触るな」
「止めていいの? こんなに気持ちよさそうなのに?」
 僕の指が動くたびに、喜多の意思とは関係なく喜多の体の奥からどんどん熱い蜜が溢れてくる。
「そっ……それでも……」
「ああ、そう」
 僕は冷たく言うと、ぴたりと動きを止めた。指は喜多に触れたままで。
 僕が簡単に言うことを聞いたのは予想外だったのか、喜多はしばし呆然としていた。
 が、すぐにもじもじと内股をこすり合わせ始めた。
 当然だが、僕はそれには気づかないふりをする。
「どっ、どうして急にやめたんだ」
「だってかわいい女の子にやめてくれって言われたから」
「……かわいい……」
 ぽそりと呟くと、喜多は少し嬉しそうな顔をした。
 この期に及んで、まだ僕の言葉が嬉しいらしい。
 もうとっくに好意なんてものはどっかにすっ飛んでしまっていると思っていたが、女というものはわからない。
 喜多がぶんぶんと頭を振った。
「そんな言葉でごまかされてたまるかっ!」
「いや、僕の正直な気持ちだよ」
「だったらいいんだ。さっさとあたしを放せよ」
 ほっとしたように喜多が僕に言った。
 その言葉に安堵だけではなく、残念そうな響きがあったのは僕の願望だろうか。いや、そうではないはずだ。
「それはできない」
「てめぇ・・・」
828名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:46:02 ID:l0A8/B6M
「だって僕は正直な気持ちだったけど、喜多さんは正直になってないじゃないか」
「あぁ?」
 喜多がいぶかしげに眉を寄せる。
 このきれいな、気の強そうな顔を困らせてやりたいと思うのは、決して僕が変態だからではなく、思春期にありがちな青少年の複雑なリビドーからだ。……と思う。
「ほんとにやめて欲しいの?」
「あたりまえだっ、このボケっ!」
「やめて欲しいんだったら、こんな風にもじもじしないよね」
 もぞもぞと動いている喜多の下半身をさする。
 それだけで喜多は目をつむり、声をあげた。
「ひぁっ」
「ほら」
「い……今のは違うっ!」
「ウソはよくないと思うよ」
 喜多は僕の口調からなにか感じ取ったのだろう。身を硬くして罰を待った。
 期待には応えなければならない。
 僕は勢いよく喜多のお尻をひっぱたいた。赤くなっている部分を狙ったからさぞ痛いだろう。
「くぁぁぁっ!」
「今、ちょっと叩かれるの期待したでしょ」
「するかっ」
「またウソついた」
 その言葉に敏感に反応した喜多が再び体を強張らせた。
 だが、今度はなにもしない。
「……え?」
 拍子抜けした声が喜多の唇から漏れる。
「叩かれるの喜ぶ相手を叩いてもおしおきにならないから」
「わけわかんねぇこといってんじゃ……」
 僕は怒りでこみ上げる感情をごまかそうとしている喜多の言葉をさえぎった。
829名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:49:09 ID:l0A8/B6M
「今、期待してなかったって言える?」
「してるわけ……」
「本当に?」
「……」
「叩かれて気持ちよくなかった?」
「……」
「よくないって言い切れる?」
「……」
 この状況で、矢継ぎ早に降ってくる質問に答えられるわけがない。
 喜多は混乱しきってまともじゃいられないだろう。
 ここで僕が決め付けてしまえば、それが救いの手になり、喜多の答えになる。
「よくないわけないよね。ほら、こんなに濡れてるんだし」
 僕は喜多の秘部を触り、濡れた指先をその眼前に突きつけてやった。
「なかなか強情だな。さすが。……よし。じゃあこう考えよう。今気持ちいいのは仕方ないんだ」
「なん……だって?」
 うつろな瞳で喜多が反応を示す。
「こんな風に縛られてたら、いくらなんでも僕に逆らえない。だから仕方なしに僕の言うことが当たってるふりして、感じてるふりしてるんだよ。ね、喜多さん?」
830名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:50:01 ID:l0A8/B6M
「ふ、り?」
「そう、ふり。だから叩かれて気持ちよくなっても仕方ないんだよ」
「ほんとに?」
「本当だって。だから好きな男にいいようにされて、いじめられて気持ちよくなってるのは全部喜多さんの演技なんだ」
「演技」
「だから……」
 ぱぁん!
 喜多のお尻を叩いて、もう聞きなれたといっていい音を鳴らす。
「ひっ!」
「こんなことされて気持ちいいのも仕方ないことなんだ」
「……」
「好きな男が、僕が喜ぶから、わざと喜んでくれてるんだよね?」
「……」
「喜多さんは僕の奴隷だよね?」
「……」
「ね?」
「……ああ」
 どこか安堵したような声。聞き逃してしまいそうなかすかな声を僕は聞き逃さなかった。
 僕は心の中で歓喜の声をあげ、今すぐ走り出したいのを必死でこらえる。
 ここが肝心の場所だ。
「返事はああじゃないだろ?」
「……はい」
831名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 01:56:38 ID:l0A8/B6M
皆さん感想ありがとうございます。励みになります。

時間がかかってすいません。
ちょっと体調を崩してしまって手がまわりませんでした。

あと、前回にHシーン突入と言っておきながら、
今回のをHシーンと言ってよいのかどうか難しいですが、ご容赦をお願いします。

次回の書き込みでおしまいの予定です。
832名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 02:00:27 ID:fcel8CUr
うあぁぁぁ、ここでやめられてしまうとは!
めちゃくちゃエッチです、ストライクゾーンどまんなか!!

お疲れ様です。
体調崩されてたのですね、今は回復なさったのでしょうか?
どうぞお大事に。
まったり続きをお待ちしてます。
833名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 20:09:00 ID:w0npG6nD
ぐ…ぐっじょぶでした。
ディスプレイの前で悶えました…
834名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 22:48:14 ID:m/Ufqkpt
>>831
って、おいおいおいおい!
こんな良いところで生殺しですかorz
僕のこのおっきした物をどうしてくれるんですか?
835名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 23:40:59 ID:VLZGxiYd
いやいや、健康な青少年がこれほどまで言葉責めの素質持ってて良いものですか。
台詞一つ、文章一つ取ってみてもエロい。もちろん総体として見てもエロい。
つまり最強。GJ。
836名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 01:06:04 ID:1HTta6an
SS書いたんだけど載せていい?
レベルの高い作品の後だからお目汚しになってしまうかも知れないけど。
837名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 01:34:35 ID:AGFlYrn9
かまわん、やれ。


と言いたいが結局本人が満足できないなら他人も満足できないだろうよ
838名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 01:36:19 ID:QFzkc3FX
OK。
だが、あと一言でも謙遜の言葉を喋るのは許るさん。
839名無しさん@ピンキー:2005/06/07(火) 04:04:39 ID:iLDYfNKR
FACより>836へ
構わないからオレたちの頭の上にクソを垂れろ!
840【Switch】その1:2005/06/07(火) 08:59:03 ID:1HTta6an
久保田 慶太郎。
これが俺の名前だ。
めずらしくもない普通の名前だ。
勿論普通なのは名前だけじゃない。
成績もど真ん中で身長体重、果ては運動神経も人並み、これと言った特技も無い。多少やる気がないのを除けば何処にでも存在しうる学生の一人に違いない。
そんな俺にはたった一つの悩みがある。
その悩みとは。

今日も重たく感じる教室のドアを開ける。
自分の席は右前寄りで、入口からも良く見える。
その左隣りに悩みの“タネ”がいる―
「おは〜」
「おはよう、久保田君」
数人のクラスメイトに挨拶されて、手を上げるなり適当に返しながら自分の席に近づいていく。
当然朝は日光が眩しいので下を向きながらだけどな。
「ちょっと」
と、その俺の通り道に何やら影が落ちている。
誰かに呼びかけられたみたいだ。
通行を邪魔され、軽く頭に来たがこんな事をする奴は俺の記憶の中には一人しか存在しないので華麗にスルー
…しようとして失敗したようだ。
顔を上げて見ると、想像した通りの顔がそこにはあった。
長い髪にカチューシャ、大きな目に黒眼鏡、袖に腕章と『昭和の頃の委員長スタイルを守り続けてます』って感じの格好で腕を組んで立ってる奴の顔が。
841【switch】その2:2005/06/07(火) 20:20:51 ID:1HTta6an
「随分と早い登校ね」
学校に来るなとでも言いたいのか、この女は。
面倒臭いが、反撃してやろう。
「たまには早起きもいいだろう、…体にも良いしな」
とたんに奴の顔が紅くなる。
コイツは身体が余り丈夫な方ではなく、しょっちゅう保健室のお世話になっている。
それをからかってみたんだが…単細胞なのもコイツの短所だな。
すぐに顔に出るのも追加しておくか。
奴の名前は遠藤 沙織里。
ウチのクラスの学級委員なんかをやっている随分と奇特な奴だ。
友達も多いようだが俺だけ何故かウマが合わないらしく、毎日こういういさかいを起こしてるってワケだったりする。
「…アンタに…アンタにぃ…」
おっと危ない、これが出たら爆発5秒前だ。
いじり過ぎは良くないよな。
まぁいつもの事だし。
それに頃合いとしてももうすぐ授業の始まる時間だ、これでおしまいにしておくか。
憤慨の声を背に、俺は自分の席に座る事にした。
842【switch】その3:2005/06/07(火) 20:28:30 ID:1HTta6an
さて、授業も滞りなく進み、昼休みの時間である。
学生にとってそのヒトトキはまちまちであって、食堂ではたかがヤキソバパン一つが金剛程の価値となるような殺伐とした雰囲気に包まれる事など日常茶飯事であったりする。
そんな冒険者達を後目に俺は定食を頼んで席を探した。
結構、いやかなりいい気分だ。
俺に注がれる視線には殺気が混じってさえいるが。
だが…食べ物はあっても座る所が無さそうだ。
だが立って食べるワケにもいかない、俺は曲芸師ではないからな。
と、ちょうど良いところに手を挙げて俺を探してる二人組を見つけた。
「探したよ〜」
「それもかなり、な」
なかなか息のあったこのコンビは高校に入った頃からの付き合いで、坂井と霧島。
ちなみに背の低い少女とよく見間違えられてしまう方が坂井で、背の高い筋肉質な方が霧島である。
「席見つけといたよっ!」
「それも特等の、な」
「? ここはいつから機上になったんだ」
訳の分からない事を言う二人に軽く戸惑いを覚えるが、まぁいい。
誰だって立って食べるのはゴメンだしな。
そうして二人に案内された場所はといえば…
遠藤の隣りである。
…ピシッ
俺の中で何かが割れた気がする。
振り返って二人を見るとあさっての方向に走り去っている。
…仕返しは何が良いだろうか?
843【switch】その4:2005/06/07(火) 20:39:33 ID:1HTta6an
とりあえずアイツらへの仕返しは保留しとくか…
まず何より目の前にある唐揚げ定食(590円也)を完食せねば。
しかし椅子は空いているが強烈なプレッシャーを感じるぜ!
どうするよ俺。
食うも地獄、食わざるも地獄!
あぁ主よ、何故私めにかのような枷を!
…少し自分に酔いすぎたようだな。
と、ここで遠藤がこっちをじっと見ているようだが。
何だ、アイツ?
もしかして俺、口に出してた?
…キッツいな〜、俺。
「…たら?」
アイツ、何か言ってるな。
どーせアイツの事だから俺の事馬鹿にしたんだろうな。
「頭冷やすのはオマエの方だろっ!」
遠藤が軽く黙ってしまった。
俺の読みは大当たりかっ?
「そんな所にいられてもうっとおしいから座ったら、って言ったのよ!」
…耳痛て〜よ、オマエ。
「もしかして、人の厚意を無にする気?」
滅相もございません。
てか、絶対断ったら俺に何かするだろ?
「…わかったよ」
「よろしいっ」
何だコイツは。
余程良いことでもあったと見える。
…取りあえず聞いとくべきだよな?
「遠藤?」
「ん?何よ?」
「何で俺を座らせたんだ?」
844【switch】その5:2005/06/07(火) 20:50:09 ID:1HTta6an
俺が聞くと、遠藤は少し置いて、
「いつもとは違って、寂しそうな顔…してたから…」
…普段の行動からかけ離れているのは今のオマエだろ。
そんな事を言おうものならどんな目に遭うか分かりきっているから口に出さないけどな。
「私もね…ひゃうっ!」
とここで俺は右手を遠藤の額に当てて熱を計ろうとした。
「左手は俺のデコに当てて、と」
「な、な、な、なに」
「熱があるならちゃんと言えよな〜俺だって鬼じゃないんだから保健委員くらい呼んできてやるし」
「あわ、わ、わ、わ」
「俺も熱あんのかな、あんまり変わんないや。ともかく無理すんなよ〜オマエはただでさえ…な?」

…そして俺は塩ラーメン(440円)の洗礼を受けたってわけだ。
意味が分かんねぇよ、マジで。
845名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 12:02:41 ID:a5n8sU+B
うん、嫌いじゃない
今後に期待(^.^)b
846【switch】その6:2005/06/08(水) 17:07:22 ID:sOHZwSpW
…そして放課後。
昼休みの後、保健室に寄りどうにかして体育館のシャワーを浴びてジャージに着替えて授業を受けたワケなんだが。
授業では俺だけジャージなせいかよく黒板に立たされ問題をやらされたし、その後にあった体育のテニスではやる気があると誤解され、一人だけ部員と組まされたよ!初心者なのにな!
最後には部員に同情されてたからな!
…おっと、話が逸れた。
別にあの体育教師が悪いわけじゃないな。
諸悪の根源は別にいる。
俺はソイツに制裁を加える為に教室に向かっている。
…コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・ベ・キ・カ! 教室まであと10m。
俺はこの後の光景を想像して思わず笑ってしまった。
…と誰かが俺の肩を叩いた。
チッ、邪魔が入ったな。
振り返ってみるとウチのクラス担任である。
…先生、俺はシロですよ?
必死の主張も棄却され、罰として食堂の掃除を命じられてしまった。
…復讐のメニューを一つ増やすかな。
847【switch】7:2005/06/08(水) 17:08:10 ID:sOHZwSpW
掃除の終了を確認してもらったのが5時過ぎ。
部活の生徒もいるため下校時刻にはまだまだ早いが一般の生徒はほとんどが帰宅している。
…そう言えば坂井と霧島は先に帰ってしまっていた。
薄情な奴らめ。
学校にいてもすることが何もない帰宅部の俺としてはさっさと帰ってしまいたいな。
どうせ遠藤のヤロウも帰ってるだろうし。
明日には復讐を済ます事などを考えながら校舎を出ると空がやけに暗いのが見てとれる。
…こりゃ降るなぁ。
と思ったら激しい雨が降り出して来た。
…ヤベっ!今日傘持ってないやん!
ここで長い傘を持ってない事に気付いたが、すぐに自分の机の中に折りたたみ傘が入っているのを思い出した。
…ちなみに俺のクラスは4階だ。
俺は深くため息をついた。

教室の前に着いてみると、電気が付いている。
…きっと俺みたいな奴が他にもいたんだな
出来ればいて欲しくないが。
ここで教室の扉を開ければお互いのマヌケさ度合いが分かるというもの。
それは避けたかったが仕方ないな。
俺は教室に続くドアを開けた。
848名無しさん@ピンキー:2005/06/09(木) 03:45:59 ID:m4kwbjQD
もうちょいまとめて投下してくれるとありがたいんだが
849840:2005/06/09(木) 16:13:37 ID:2roqjbor
ではこっからエロシーンですので一段落ってことでお願いします
また間があきますし。
850名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 22:43:35 ID:olNomscU
期待しつつ保守。
851【switch:β1】:2005/06/13(月) 23:52:49 ID:qlkcPpT+
こんな時、どんな顔をしたらいいのか良く分からなくなるんだな―
教室に入ってまず、遠藤だけがいるのを見つけた。
それはいいだろう。
別にコイツだって傘を忘れる事くらいあるだろうし。
次に俺の席に座ってる事だが、これも百万歩譲って許そうじゃないか―恨みはあるだろうからしな。
無論仕返しは受けて頂くが。
最後に納得がいかないのが遠藤の顔が紅く熱を帯びている、この事だけだ。
…俺の脳味噌にはお手上げの事態だな、まったく。
とりあえずアイツを俺の席から引き剥がすとするか。
と、俺の席の近くに行き奴の腕を引くと、
「触らないでよっ!」
ドサッ!
…物凄い勢いで押されましたよ?
やっぱり病弱なんてウソに決まってるよ、この女。
今の押しは角界狙えますぜ。
と、今の拍子に遠藤が俺の席から離れた。
「バカめ!」
隙を見て俺の席を確保しようとしたが、二度目の押しに阻まれた。
…日本の女子相撲の将来は安泰だな。
「座らないでって言ってんでしょっ!」
…何をヌカすか、そこは俺の席だと何度言えば
「しつこいっ!」
また押し出された…今度は口に出してたみたいだな、以後気を付けよう。
「では帰るか、…と見せかけてぇ!」
「だ、だめぇぇっ!」
一瞬の隙間を縫い、俺は自分の席を奪い取ろうとしたが、遠藤も必死で食らい付き、もみ合いながら二人とも倒れ、椅子の座る部分に触れた瞬間に俺は違和感を感じた。
…べとついてる?
852名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 08:11:27 ID:AsEFhqRn
雨野たくろう×珠野ひなぎく
853名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 22:25:45 ID:gtl94zD3
危なくね?
854名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 11:52:32 ID:doISARoW
期待保守
855名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 04:17:07 ID:RTLCnimv
いい感じ♪
856無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 00:56:17 ID:lSveohn9
かなりの流血表現が含まれますので、苦手な方はご注意、またはスルーしてください
投下させていただきます

 オフェンサーという存在は、何かを奪うためにいた。それは非合法的な、だが処罰される事
のない、頭の切れる気狂い達の御伽噺のような天職だった。
 楽しみのために殺す事が罪として裁かれる。仕事として殺すことも、罪として裁かれる。だ
が人々は、何かをする過程で“やむを得ず”人が死ぬ事にはそれほど大きな嫌悪を示さなかっ
た。
 目的が大きければ大きいほど。素晴らしければ素晴らしいほどに、経過の上での人の死は軽
視される。時には、あいつは殺されてしかるべき人間だったとさえ人々は頷いた。しかしそれ
も、もう何年も前のこと。
 任務の遂行中に、“不慮の事故”で誰かが死んでしまってもそれは罪には問われない。この
事実に両手を叩いて飛び跳ねる者達が、世界には驚くほど多く存在した。
 オフェンサーは、各々の国のために命を賭けて戦うヒーロー。
 この認識は、嬉々として人を殺す異常者たちが過程を目的としてオフェンサーを名乗り始め
てから、瞬く間に一変した。
 力を持たない人々はオフェンサーを恐れた。彼らは一般人を襲うことは殆ど無いが、笑みさ
え浮かべて殺人を犯すのに決して裁かれることは無い。なんて恐ろしい事だろう、すぐにでも
彼らを葬るべきだと人々は騒ぎ立てた。
 しかしその時には既に、オフェンサーという存在を無くしては政治と治安が成り立たなくな
るほどに、世界は狡猾な殺人集団に依存しきってしまっていた。
857無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 00:57:11 ID:lSveohn9
 そして人々は、かつて殺し屋という存在が隔離された世界の住人であると認識し、物語の世
界でのみ活躍する職業だと思い込んできたときと同じように、オフェンサーという存在を電波
と紙媒体の中の住人として扱うようになっていった。


 硬い作業着を引き裂かれても、中に青いランニングシャツを着ていたために崇香は肌をさら
さずにすんでいた。
 布が引き裂かれる音から1拍置いて全身に恐怖が走り、やっと行動を起こせたのはそれから
また数秒間を開けてから。男の指がシャツの弛んだ襟に掛かった直後、崇香は悲鳴とともに懇
親の力をこめて男の体を突き飛ばした。
 腰をがっちりと押さえ込んでいた腕が驚くほど簡単に解け、男の体がよろける代わりに突き
飛ばしたこっちがバランスを崩してタイルの床にしたたか腰を打ちつける。
「ぁい……ッ!」
 思わず呻いて顔を顰め、それでも立ち上がろうとわずかに腰を浮かせた直後、ふ、と手術室
のまぶしい照明に影が差し、崇香ははっとして顔を上げた。
「さぁ、どうする?」
 楽しげに歪んだ唇と、新しいおもちゃにはしゃぐ子供のような不気味な目。ゲームの続きを
促すように、男は首を傾げて見せた。
 逃げ道を探して視線を下げれば、やたらと鋭い爪が目に入る。背筋をさっと冷たい物が通り
抜け、崇香は再び男の顔に視線を戻してその瞳の虹彩が明らかに人間と異なっている事に気が
ついた。
――この男は、一体どこまで体を弄っているのだろう? 細身からは考えられないような力、
人間と異なる瞳、その上、恐らくは再生者なのだろう。体の内側だけでなく、彼は外見さえ人
間でいるのをやめていた。
858無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 00:58:04 ID:lSveohn9
「いいね、無駄だって分かってるのに足掻く女の子ってのは本当にそそられる。次はどうする
んだい? 俺の腕から逃げ出して、追いつかれて、次はどうやって俺から逃げる? 君は抜け
目がないって有名だから、きっと凄い事をやらかしてくれるんだろう?」
 さぁ、どうした、逃げてみろ。そう言って捲くし立てた男の表情が不意に緩んで、柔らかく
微笑んだ。
「……ねぇ、分かるだろ? 逃げたって無駄なんだ。俺からは逃げられない。でも安心して崇
香ちゃん。俺は女の子を痛めつけるのは好きじゃない。だからちょっと我慢して、俺に愛され
ればそれでいい。そうすれば、俺は君という報酬を貰い、ドクターを連れて帰ってお仕事終了。
最高の結末だろう? そりゃ、勝手に報酬にされた君にとっては不満が残るだろうけど」
「来ないで……!」
 からからに渇いた喉が張り付いて、崇香は口いっぱいに唾液をためて飲み込んだ。僅かに腰
を浮かせたままじりじりと後退り、背後に這わせた手で道を探る。その時、指先に硬いものが
触れて、崇香はひやりとして動きを止めた。
 冷たい金属で、壁でも、ましてや誰かの靴でもありえなかった。先端はとがっていて体は細
い。引き寄せて手の中に収めると、樹脂製のグリップがしっかりと手に馴染んでくる。
 見なくても、崇香にはそれがなんだか一瞬で理解できた。ドライバーだ。さっき床に落とし
たのを覚えている。
――少しだけ……
 つ、と冷や汗が頬を伝い、崇香はゆっくりと、相手を刺激しないようにとかがみ込んでくる
男の顔を凝視した。
 背後に壁は近く、このままこうしていても決して事態は好転しない。だがもしも、ほんの少
しだけでもひるませる事ができたなら、テラスから外に飛び出せる。テラスから下に下りる非
常階段があるはずだから、もし上手くいけば逃げられるはずだ。それからどうするか考えるの
は、きっとその後でも遅くない。
「さすがは、その年で唯一無二の技術者になっただけの事はある。無駄に暴れて悲鳴を上げる
なんて醜態は見せないんだな。感動したよ、つまらないけど。さぁ、いい子だ。こっちに――」
「――行くとでも思うの?」
859無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 00:58:48 ID:lSveohn9
 無理やり強気に笑って見せて、崇香は痛みよりも驚愕で呼吸を止めた男を尻目に駆け出した。
 数秒送れて、男が息を吸おうとして激しくむせ返る音がする。
 ぞっとする手応えが、先ほどまでドライバーを握っていた手に残っているが、恐怖も罪悪感
も全く湧いてこなかった。
 少しばかり返り血を浴びたけれど、崇香はわき目も振らずテラスへ続くドアへと突進した。
 背後で、男が先ほどの舞里のように血液で溺れながら絶叫する声が部屋いっぱいに溢れたが。
その言葉の意味を理解するより早く、崇香はドアノブに手をかけた。
 間に合った。と歓喜したのは一瞬だった。金属のノブの冷たさを手の平に感じ、ドアを押し
開こうとした瞬間、何かにその腕を弾かれたのだ。
 先ほどまで眼前にあったドアがそこには見えず、今、崇香の瞳に移っているのは赤と黒の二
色のみ。
「な……ん……」
 勢いよく血を溢れさせていた傷がみるみる塞がっていくのを見つめながら、崇香の耳は硬い
ものを床に叩きつける音を呆然と聞いていた。
 金属とタイルがぶつかる音が何度か跳ねて、壁にぶつかる音がする。
「なん……で……」
「なんで……? なんでだって!? それはこっちの台詞だろう! まさかドライバーを突
き立てるなんて、何て事……このスーツはお気に入りだったのに!」
 ドライバーを突き立てて、後方に置き去りにしてきたはずの化け物が、崇香の目の前で汚れ
たスーツを示して怒鳴っていた。
 追いつかれるかもしれない、という考えがなかったわけではない。ただ、追い抜かれ、立ち
塞がられるとは思っても見なかった。自分が甘すぎたのか、この男があまりに常識外れなのか、
答えは考えるまでもない。
 この状況でオフェンサーから逃げようなどと、考えが甘すぎた。
860無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 00:59:35 ID:lSveohn9
「まったく……もう少し……簡単に事が運ぶと思ってた。君がこんなにも気が強くて、こんな
にも聞き分けが悪かったなんて……あぁ、君が泣き叫ぶ姿を想像して、君がへたり込んで動け
なくなるのを想像して、君がガクガク震えて俺に命乞いをするのを想像して、俺は君に優しく
してあげようと思ってたんだ。でも、いい。やめだ。君が“そう”ならしょうがない」
 ぜぇぜぇと息を切らし、何度も苦しげにせき込みながら、男は言い終わるなり崇香のうなじ
を掴んで無理やり後ろへ振り返らせた。
「いッ……痛いわよバカ! 苦しいじゃない!」
「前を見ろ」
「嫌よ!」
「見るんだ!」
 目が眩むほどの力で首を強く圧迫され、崇香は歯を食いしばって全身を緊張させて、言われ
たとおり正面に目を向けた。
「……それで?」
 見えたのは、杭を打たれた両肩から血を流し、目を閉じたまま動かない舞里の姿。
 苦痛に歪んだ表情を想像したが、以外にもその顔は穏やかで、崇香は彼が眠っているのだと
気がついた。正しくは、気を失っているのだろうが……
 全身どこを見ても血で赤く染まっている舞里の表情はあまりにもいつも通りで、腹が立つほ
ど安らかで、この状況さえも、彼にとっては何の変哲もない日常のように思われた。
 恐怖よりもむしろ安堵を覚えた崇香は、自分が相手の思惑とは違う感情を持った事に優越感
を覚え、余裕ができた。首筋に食い込んでいる鋭い爪が酷く痛むが、よほどの事が起こらない
限り取り乱すことはないだろう。
 突然、首をがっちりと固定していた男の手がふっと緩み、崇香はすぐさまその手を振り払う
と男の方を振り返った。
「これが何だっていうのよ」
 言うなり、男がぞっとするような目つきで微笑んだ。
「ドクターの足をもげ」
861無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 01:00:20 ID:lSveohn9
 押し入られ、喉を銃で打ち抜かれ、わけの分からない薬品を注射され、壁掛け飾りに成り果
てる。これ以上何か起こりようがあるなんて、常人ならば想像もしないだろう。
 男の放った言葉の意味が、分かっているはずなのにどうしても理解できなくて、崇香ははる
か後方でデク人形達が動く気配がするまでひどく間の抜けた表情で男の顔を見つめていた。
「なによ、それ……」
 言葉を発した瞬間、ぞっとした。ドクター・バグの足をもげ。この男は、舞里の足を引きち
ぎれと男達に命じたのだ。
「やめて……やめてよ、冗談でしょ?」
「冗談? まさか。どうせすぐに再生するんだ。いくらだって、好きなだけ苛め抜ける。俺は
女の子を可愛がるのと同じくらい、男をいたぶるのが好きなんだ。だから俺はこれから“こう”
する事にした。今から君が俺に逆らうたびに、俺はドクターの体のパーツを一つずつ剥ぎ取っ
てやる。逃げたけりゃ逃げればいい。構わないさ、もう止めない」
――そうしたら俺はドクターをいたぶって、君を得られなかった悲しみを癒すとしよう。
 骨が軋む音を耳が拾った。蒼白な表情で振り返り、舞里の膝辺りがみるみる赤く染まってい
くのを意識する。
「嘘でしょ……! 待ってよ! 逆らわないって誓うわ! やめさせてよ! あんたの部下
でしょ!? 命令してやめさせて!」
「どうして?」
「あたしを抱きたいんでしょ!?」
 激しくつかみ掛かられて、男はズボンのポケットに手を深く突っ込んだままわざとらしく思
案して見せた。
 そうして意地悪く笑みを浮かべ、ぐっと崇香の顔を引き寄せる。
「やっぱ、俺はドクターをいじめたい」
 目を見開いた崇香のすぐ近くで、男の唇がわずかに開いた。ダメだ、もう、何を言う時間も
ない。
862無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 01:01:13 ID:lSveohn9
「引きちぎ――ッ」
 再生すると言われても、気絶していた痛みを感じないと分かっていても、舞里がこれ以上傷
つけられる事があまりにも嫌過ぎて、崇香は男の襟首を掴むと力いっぱい自分の方へ引き寄せ
た。
 一瞬、警戒するような間があってから、男は唇を合わせたまま片腕を上げて壁際のデク人形
達に合図を送って崇香の体を抱き寄せた。
 腰に回った腕、触れ合った唇、絡み合う舌、混ざり合う唾液。生理的な嫌悪感に全身が震え
たが、崇香は一切抵抗を示さなかった。
 目を閉じて、自分に大丈夫だと言い聞かせれば気絶しそうになっても耐えられる。
 舌を絡ませ、たっぷりと唾液を注ぎ込み、崇香がそれを飲み下すのを嫌がって口の端から溢
れさせると、男はようやく唇を離して首筋に垂れた唾液を舐め上げた。
「正直、君がここまでするなんて思わなかった」
「バグには手を出さないで……」
「いいよ。君がそういうなら……でも答えてくれないかな? 君は再生者が嫌いで、再生者手
術を生み出したドクター・バグを嫌ってるって事で有名だ。普通、生存が約束されてる嫌いな
誰かのために体をはろうなんて思わない。どうしてドクターのためにそこまでする?」
 シャツの薄い布地の上から感触を楽しむように崇香の体に手を這わせ、男は全身を緊張させ
ている崇香の耳元で囁いた。
「クライアントだから? それとも痛そうなのを見ているのは耐えられない? まさか正義
感って事はないだろう? 何か弱みでも握られてるのかい?」
「そ……そんなの、どうだって……っ!」
「そうだね。そんな事、俺にはどうでもいいことだ」
「ぁ……ぅ、あ……待って、ちょ……力、が……」
 服の上から体を撫でられ、首筋と耳に舌を這わされただけなのに、崇香は体の奥から這い上
がって来るような甘い痺れに引き込まれて、まともに立っていられなかった。
863無愛想ハーレクイン:2005/06/20(月) 01:02:09 ID:lSveohn9
 自分で体を触ったって、こんな風になった事など一度もない。ツバを吐いてやりたいほど憎
らしい相手にしがみつかないと立っていられない状況に、崇香は頬を染め、肩を震わせたまま
必死に耐えた。
「へぇ、感じやすいんだね。変だな、男嫌いなんだったら、こういう刺激に慣れてるはずない
んだけど。妙な薬でもキマってる? ドクターに一服もられたかい?」
 聞かれても、心当たりなど一つもない。ただ無言で首を振る崇香を楽しげに見下ろして、男
は崇香の体を抱き上げた。
「でもまぁ、それならそれで好都合。こっちもたっぷり楽しめるってもんさ。まずはじっくり
観察させてもらおうか」


切らせていただきます。
864名無しさん@ピンキー:2005/06/22(水) 11:17:19 ID:z3DmpFOh
期待
865雪月花 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/23(木) 16:53:30 ID:q8aBc8CE
「雪宮さんお昼一緒にどう?」
「遠慮しますわ」
 お嬢は一緒にお昼をすることをかたくなに拒否する。
 このやり取りは学年とクラスが変わった日から毎日続いていた。
 俺もこのグループで一緒に食事しているとはいえ、どちらも折れることは無い。
「雪宮もこっちで食べないか?今日は雪宮の分も席を用意しておいたんだぞ」
 同じクラスで一緒に食事をしている幸島が今度は誘う。
 お嬢はちらりとこちらを見てため息をつくと、お弁当を持って立ち上がった。
「仕方ありませんわね」
 おぉ!?お嬢が折れた?
 ひょっとしてお嬢は幸島のことが。
 なるほど。そういうことか。で、あれば。
 俺は幸島と席を取り替えてもらおう。
 こうすれば元々空いていた俺の隣の席にお嬢がやってきて、お嬢は必然と幸島の隣の席となるわけだ。
「というわけで、幸島。席を替わるぞ」
「何がどうというわけなのかわからんが、それはしない方がいいんじゃないか?」
 おぅ?幸島は何をおびえているのだ?
 俺の後ろに何が…………お嬢?
 なぜ、手を振り上げているのです?
 それどころかその手に持たれた凶悪そうな木製の弁当箱は?
 それは角が当たるとものすご〜くいたいんですけど。
「お嬢……何か怒ってます?」
「胸に手をあててよ〜く考えなさい!!」
 がふ。
 お嬢、中身の詰まった弁当箱の角は立派な凶器です。
「馬鹿なことは言わずに、あなたはそこでお昼を食べてしまいなさい」
「……はい」
 俺の隣に座るお嬢。
 本名、雪宮木葉(ゆきみや このは)。黒髪のストレートの日本人形のような綺麗な女性。
 雪宮財団総帥の娘で、自他共に認めるお嬢様だ。
 ちなみに俺は木戸真(きど まこと)。俺の親父がお嬢の父親のボディーガードをしており、なし崩し的に俺がお嬢のボディーガード見習いとなった。
 と言っても、俺はあまりすることもなく、普通に高校生活を楽しんでいるわけなのだが。
866雪月花 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/23(木) 16:53:48 ID:q8aBc8CE
 雪宮家の夜は早い。
 お嬢の両親である、旦那様と奥様は普段からこの本宅にはあまり帰ってはこない。
 都心にマンションがあるらしく、二人はそこで生活していると聞く。
 お嬢も高校入学を機に引っ越してこいと言われたらしいのだが、お嬢が拒否したためにお嬢だけが本宅に住んでいた。
 もちろんお手伝いさんなどがいるにはいるが、お嬢の夕飯後には皆帰ってしまう。
「真。いますか?」
「はい」
 今、この本宅にいるのは俺とお嬢の二人だけだ。
 だから、俺がお嬢の側を離れるわけにはいかない。
「姿を現しなさい。貴方は忍者じゃないんですよ?」
「いや、障子を挟んで廊下いるだけなんですけど」
「3つ数える内に部屋に入ってこなければ、明日のお弁当は無しにしてもらいますわよ。ひと〜つ」
 ぐ。弁当無しは正直言ってきつい。
 学食はあるのだが、とてもじゃないがこの雪宮家の食事に慣れてしまった俺には不味くてしょうがない。
 ボディーガードの分際でとか言われそうだが、物心ついたときからお嬢と一緒に食卓についていたのだから勘弁してほしい。
「ふた〜つ」
「失礼します」
 はっきり言って俺にはお嬢が何を考えているのかわからない。
 こうやって部屋に招きいれてくれる日もあれば、絶対に入るなと言われる日もある。
 一度、呼ばれたので部屋に入ったら、中から小柄が飛んできて死にそうな目にあったことも。
 以来、呼ばれてもすぐには部屋に入らないようにしているのだが。
「はじめからそうすればよいのです」
 やはりお嬢の考えは俺にはわからん。
「ご用件は?」
「寝付けなかったら話し相手に呼んだだけですわ」
 なるほど。
 しかし、普段なら布団に入ると同時に寝てしまうようなお嬢が今日はどうして。
867雪月花 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/23(木) 16:54:04 ID:q8aBc8CE
「次の日曜。わたくしはお見合いをします」
「はい」
「……相手はお父様のお決めになった方。形の上でのお見合いではありますが、多分、その方と」
 お嬢は小さな声で内縁を決めることになります。そう言った。
 その時のお嬢の顔は寂しさと悲しさが混じった、泣きそうな表情だった。
「はい。私としても、お相手がお優しそうな方でよかったと思っています」
 お嬢のお見合い相手は、高学歴の背格好のよい人だ。写真を拝見した上では優しそうな人だと思う。
「本当にそう思われているのですか?」
「はい」
「貴方は……真は……わたくしが。見ず知らずの殿方と添い遂げてよいとおっしゃるのですか?」
 涙。
 俺はお嬢の涙を見たのは初めてだった。
 綺麗な顔立ちのお嬢の流す涙は、俺の空けた障子から差し込む月の光に反射され、まるでお嬢を飾る宝石のようだった。
「私は、ただのボディーガードです……そのようなこと考える権限はありません」
 お嬢が俺を好いていてくれているのは感じている。そこまで鈍感ではない。
 しかし、俺はそれを許されぬことだと考えていた。
 今更身分などと思われるかもしれないが、俺の体術の師匠でもある祖父がそういった時代錯誤的な考えの持ち主で俺はよくもわるくもその人の孫だ。
「お嬢」
「……真。わたくしを連れて逃げてはくれませんか?わたくしがお父様とお母様の下へ行かなかったのは…貴方がいたから」
「できません。それをしてしまったら、私の父と、私を信じてくださったお嬢のご両親に申し訳が立ちません」
「…………でしたら、わたくしがよいと言うまでそこから動かないでください」
 お嬢が寝床から這い出し、俺のすぐ側までやってくる。
 そして、動くことの出来ない俺の手を取り、それを自らの胸へとあてがう。
 お嬢の激しい心臓の鼓動が伝わる。
 お嬢が俺のことを好いた目で見るようなときは、自らそれを別な方向へ持って行こうと努力してきた。
 しかし、今この場ではそれは不可能だ。
「せめて、せめてわたくしの…純潔だけは真に」
 あげた顔は上気し、瞳も潤んでいる。
 これを美しいと言わずして何を言うのだろうか。
 俺はお嬢の顔に見ほれてしまった。
868雪月花 ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/23(木) 16:54:19 ID:q8aBc8CE
 ダメだ。ここで理性を無くしてしまったら、本当におしまいだ。
 俺だけではなく、お嬢だって不幸になる可能性だってある。
「……わたくはそんなにも魅力がありませんか?」
 違う。お嬢は魅力的だ。少なくとも俺の中では世界で一番。
「貴方と添い遂げられるなら、この雪宮の姓すらも必要ないと言うのに」
 俺だって出来ることならお嬢と一緒にいたい。
「無理を言ってしまってごめんなさい……真……おやすみなさい」
 …っ。
 いいのか。本当にこれで。俺は間違ってはいない……いないはずなのに。
 なんなんだ、この虚無感は。
 俺の心を闇が覆ってしまったような寒さと悲しさは。
「お嬢!」
「ぁっ」
 ダメだ。お嬢と離れたくない。離したくない。
 柔らかなお嬢の身体が、抱き締めた俺の腕を通して感じられる。
 暖かい。心を覆っていた闇が全て晴れていく。そんな感覚だ。
「真」
「お嬢。どこにも行かないでくれ……俺とずっと一緒にいて欲しい」
「真……わたくしも、わたくしも行きたくありません。ずっと、ずっと真と一緒にいたい」
 お嬢の涙が俺の腕に伝わる。
 熱く。それでいてお嬢の寂しさの冷たさの伝わる涙。
 俺はお嬢を抱き上げ、自分の方に向ける。
 申し合わせたかのような間合いで俺とお嬢は目を瞑る。
「んっ」
 お嬢の唇は柔らかく、お嬢の身体からは甘い香りがした。
 唇を重ねるだけの口付け。
 だが、お互いの気持ちを確認するにはそれだけで十分だった。
869雪月花(行間) ◆p.Yo7BdKcg :2005/06/23(木) 16:55:35 ID:q8aBc8CE
続きは近いうちに書きます。
ラストをどうしようか迷ってて。では
870名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 20:09:21 ID:3+htBGvg
くはーっ!俺としたことが電車の中で萌え死ぬところだったぜーい!!
GJGJ!!
871名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 21:53:13 ID:haQVYzlj
俺は萌え過ごしてしまったよ
872名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 22:21:04 ID:aLTqRtSZ
ちんちんおっきしたお
873名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 22:58:38 ID:0t5SWC48
>869
ラストシーンに迷ってるって?
内容はどうあれ、BGMは「サイモン&ガーファンクル」でよろしく。
874名無しさん@ピンキー:2005/06/23(木) 23:01:43 ID:3+htBGvg
木葉タンと真クンの愛のエスケープENDでおながいしまつ
875名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 00:07:15 ID:0WFUW9IZ
>>873
BGM語りは痛いだけでなくウザい
しかもそんなことにS&G持ってくんなカス
876名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 00:16:34 ID:x6LxpZPJ
『卒業』って言いたいんでないかい?結婚式乱入で花嫁と逃げるアレ。
877名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 01:07:32 ID:DaMj5pW6
テストン
878名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 01:08:00 ID:zBMzRav+
ところで、
現在495KBでギリギリなわけで、
てなわけで次スレ

気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第3章
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1119542810/
879名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 00:10:31 ID:9Ln7wxf1
>>878
乙、容量制限気づかなかたよ
880名無しさん@ピンキー:2005/06/26(日) 00:32:09 ID:uuBafsOC
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        て- '´                ` ‐- 、    \丶 \ 丶
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            ', ノ ,,,,...._                ', /
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              }'´ /    `ヽヽ.:::i.     ,.‐_´‐'´  丶
             /  '      ', '、:!:.. / , ' , '     } ヽ
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            ',   i          }'、__'/         /
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881名無しさん@ピンキー
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               /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:`''ヽ、
              /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:,.,.,.,.,._;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\
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            ヽi 、`ー''"l  i ゙i ///// };:;:;:;:゙i-,  l;:;:;:;:.)   〜 \/
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    i        〈,l ,r'´       ゙ヽ、   ̄    ;:;:;:;:│
     ヽ、 `ー-─<〈| L,,. ヘ二二ソ─--- .,ゝ     ノ;:;:;:;:;:;:│  
      \       ゙、   ---            /;:;:;:;:;:;:;:/
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           `'‐、_   ヽ、____ ,.-'"  `ヽ ヾ,;:;:丿
           _ノ';:`ヽ,_   ; ヾ、_ '     ヽ,  `''‐、,_
            /;:;:;:;:;:;:;:`>'"´    `      `'    ヽ,
           !;:;:i!;:;:;:;:r'"~ヾ、  ,;               ヽ
           ヽj !;:;:;:;:{'';:;'':;:;,ゝ、 レー'" ̄'-‐、、 、     ヽ
             ヽ,;:;:;:ゞ、ミ;:,_シ'ヾ;:;'':;,,;:;:'';:;:;:;:''ヾ、_i\      ヽ
              `ー'ー| ̄   `'ー=、;、=-'" ̄'y'  ヽ     ヽ