零 紅い蝶の繭&澪&千歳でハァハァ 参

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888622:05/01/21 00:39:56 ID:TrVCCj55
>>887続き
眠ることなく、朝が来た。二人は飽きることなく、互いの体を愛撫する。
「澪・・もうどこにも行かないでね・・」
「・・うん・・行かないよ」
「フフ・・お姉ちゃんのこと好き?」
「うん、好きだよ」
「誰よりも?」
「誰よりも」
「じゃあ、お姉ちゃん以外はもう誰も見ないって言って・・」
「・・うん、お姉ちゃん以外もう誰も見ない・・よ・・」
「良かった・・・フフフ・・お姉ちゃん安心した・・」
繭はもう確信していた。妹の、自分に対する愛情を、思わず、声が
明るくなる。嬉しそうな姉の声。澪も思わず嬉しくなる。・・もう、
これでいいんだ、と澪は思った。姉が喜ぶなら、後はもうどうなっ
てもいい・・そうおもう自分がいる。薄く笑う澪。最初に体を求めたのは・・誰?
・・そう・・本当は・・私が壊れているんだよ・・お姉ちゃん・・
「良かったよ・・澪・・これで・・」
・・一緒にどこまでも堕ちていけるね・・澪
・・・うん、お姉ちゃん・・どこまでも・・
絡み合う手・・そして・・唇。
「約束だよ・・澪・・」
輝くような笑顔で繭は妹に言う。
・・澪はお姉ちゃんが守るよ・・もう誰にも渡さないから・・ね?

その日の夕方、繭は一人で公園へ向かった。
        ひとりで
          こうえんへ
              むかっていった
                               終わり                          
889名無しさん@ピンキー:05/01/21 01:33:52 ID:LQD1Pmf0
みっ・・・澪タンも繭タンの指でイかせてあげてくだっさーい
(*´Д`*)ハァハァ
890奈落の蝶:05/01/21 15:34:06 ID:+xdCykHu
 両の眼窩より吹き出るようにして流れ続ける血液。
 禁忌の孔を覗いた代償はわたしから眼を奪い去った。
 突如視界閉ざされた極度の混乱と脳髄を――神経を焼くような激痛から逃れるようにわたしは獣のように喚き、泣き叫び、その場でのた打ち回った。
 もう何がなんだか解らなかった。ただ痛くて、怖くて、わたしは泣いた。
 突然ぐいと何者かに片方の腕を引っ張られた。
「――お姉ちゃん!?」
 思わず顔を上げたが何も見えない。確認出来ない。わたしは眼が見えないのだ。
 そのまま引き摺られるようにしてわたしはその人物に手を引かれて行った。
 駆ける。ひたすら――何処までも駆ける。
「お姉ちゃん! お姉ちゃんなの!?」
 姉だ。そうに違いない。それ以外考えられなかった。
 なのに――わたしにはどうしても眼の前の人物が姉だと確信出来なかった。
 決して眼が見えなかったからだけではない。奇妙な違和感を感じたのだ。
 わたしの腕を凄まじい力で掴むその掌からは、離すまい――というよりは逃がすまいという意志すら感じられた。わたしを導く力強く確かで早い足取りはとても脚に障害を抱えた者のものではない。それはどれもわたしの知っている姉の像とは符号しない。
 そして何より――
 嗤っていた。
 その人物は嗤っていたのだ。
 最初はクスクスと幸せを噛み締めるように、次第に身の内に湧き上がる興奮を抑えきれぬように大きな声で、嗤っていたのだ。
 それは確かに姉の声だった。聞き違えようもない姉の声のはずだ。
891奈落の蝶:05/01/21 15:35:21 ID:+xdCykHu
 でも――
「ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんなんでしょう! 返事してよ!」
 怖かった。まるで姉じゃないような――違う。姉がとても恐ろしく思えて、怖かったのだ。
 今わたしの手を引くのは姉であって欲しかった。でも同時に姉であって欲しくなかった。姉が光を失ったわたしを連れて必死でこの村から逃げようとしてくれているのか、それとも何者とも知れぬ化物に奈落の底に攫われようとしているのか、解らなかった。
 いつの間にかわたしは痛みさえ忘れ、得体の知れぬ恐怖と漠とした不安の虜となっていた。
 どれだけの時間を駆け続けたのだろうか。ほんの僅かの間であった気もするし、随分と長い間走り続けたような気もする。その間もわたしはずっと問い続けた。
 あなたはわたしのお姉ちゃんなの?
 ずっとそれだけが気になった。
 やがてわたしの幾度目かの問い掛けに、漸く前を行くその足がぴたりと止まった。
 痛みも、乱れた呼吸の苦しさも忘れてただただ緊張した。
 不意にわたしの血塗れの頬を冷たい掌がすうと撫でて――
「澪。私達ずっと一緒だよね――」
 わたしの穿たれた眼窩に息を吹き込むようにして甘く涼やかな囁き声がした。
 その声はやっぱり、
 嗚呼、わたしのお姉ちゃんだ――。
 安堵と恐怖にぞろりと背を撫で付けられて、血を失い過ぎたわたしはいともあっさりと気を失った。記憶はそこで途切れた。
892奈落の蝶:05/01/21 15:37:06 ID:+xdCykHu
 自室のベッドに一人横になり呆と天井を仰ぐ。しかし、視覚は失われているので結局認識できるのは無明の闇だけだ。だから横になろうが縦になろうが映る風景はみな同じだ。
 痛みと、突然視力を失ってしまったことによる一時的な恐慌も引いてしまえば、後に残るのは諦めにも似た倦怠感だけだ。
 荒れることも塞ぐことも殊更ない。だから今のわたしは安定していると云えるのだろう。
 ただ、視力を失うとどうにも受ける刺激が著しく減少するのがいけない。
 意識の間隙が大きくなる。寝ているのか、それとも覚醒しているのか、それすら判然としない模糊とした時を過ごすことが多くなった。
 何か天倉澪と云う人格までがこの緩緩とした日々の中で摩滅してしまったような気さえする。
 やはり情報が――刺激が少ないのだ。
 姉以外の人間と言葉を交わすことがなくなってどれくらい経っただろうか。
 母がわたし達姉妹の前から姿を消してしまってからどれ位経っただろうか。
 わたしがこの家から一歩も外に出ることがなくなってからどれ位の時が経過した。
 そうだ。全部全部あの日から始まったんじゃないか。
 あの忌わしい村での事件の後、気を失ったわたしが姉に運ばれて何とか家に戻ることが出来たあの日。
 わたしが目を覚ました時には今の世界は既に出来上がっていた。

 姉と盲いたわたしの、二人だけの閉じた世界。
893奈落の蝶:05/01/21 15:39:02 ID:+xdCykHu
 外には出してもらえない。姉に厳しく禁じられた。だから学校も辞めた。正確には姉によって辞めさせられた。テレビもラジオも電話も一切は壊れてしまった、そう姉に云われた。
 母は何処かに行ってしまったまま帰らないとも云われた。わたしの世話も治療さえも姉が一人で全て行っている。
 今のわたしは姉の口以外から人間の言葉を耳にすることはないし、姉が語る事でしか世を知る術がない。
 いつしか姉だけがわたしの世界の全てになっていた。
 それは異常なことであると思う。
 明らかに故意に姉はわたしと外界を隔絶した。その意図までは汲めないが、わたしは自身の家に拘束こそされないものの囚われたと云うことになる。
 最初はこの奇妙な世界に戸惑いもした。疑問も抱いたし、反発も覚えた。そして何より恐怖した。
 幾度もそんな姉を非難し、糾弾し、元の生活に戻して欲しいと懇願した。しかしその度に姉は
「どうしてそんなことを云うの、澪」
 と不思議そうに笑うだけだった。
 一向に埒の明かない問答に、ついには姉を拒絶したこともあった。自室に閉じこもり、姉との接触を一切絶った。
 しかし結果は二日と持たなかった。
 食事すら一人で満足に摂れないわたしが引き篭もってみたところで待っているのは惨めな飢え死にだけだ。
 それに何より自室に独り篭り無明無音の時を過ごすことに、全ての感覚を奪われ暗闇に放り出されてしまったような心細い――あまりに果敢無い心持に精神が耐えられなかったのだ。
 結局、逃げ出すようにして部屋から飛び出したわたしの前には、まるでこうなることを予測していたかのように姉が温かい食事を用意して待っていた。
 もうわたしは姉に逆らうことは出来なかった。
894奈落の蝶:05/01/21 15:40:02 ID:+xdCykHu
 例えば姉は衣服を一枚も身に着けない時がある。常時というわけではなく、わたしと接触する機会のある時にそうする節があった。人一倍恥かしがりやの姉が例え家中とはいえ一糸纏わぬ姿で徘徊するなど以前であれば考えられない。
 だが、姉はわたしの世話を焼く時その露にされた肌をむしろ押し付けるが如く振舞う。
わたしの少し痩せすぎて筋張った皮膚に触れる、姉の女らしいつるりとした柔らかな肌の質感。ふわふわと頼りなさそうで確りと弾力を有した乳房の感触。偶に――だが、積極的に皮膚を刺す強い陰毛のざらついた刺激。
「ね、ねえお姉ちゃん。服――そのせめて下着くらい着けなよ」
「どうして?」
「だって――そのヘンだよ。裸で居るなんて」
「澪には私の姿は見えないんだしいいじゃない」
「そういう問題じゃないよ。わたし――困る」
「澪とわたしは女同士だし、それに姉妹なんだよ。何を意識することがあるの?」
 そう云われてしまえばわたしは黙るしかない。それではまるでわたしの方が実の姉の裸身を意識するヘンな娘だ。
 結局わたしは赤面して俯き、再び姉の肌の刺激のなすがままとなるのだ。
 そして姉はそんなわたしが面白いのか、耳元でくすりと嗤うのだった。
895奈落の蝶:05/01/21 15:40:50 ID:+xdCykHu
 明け透けで、奔放で――姉は、天倉繭はこんな人間だったろうか。
 違う。姉はこんな娘ではなかったはずだ。
 確かに天倉繭と云う人間の全てを知っている訳ではない。姉は昔からどこか不透明な部分があった。幼い頃から薄膜一枚隔てて接しているようなそんな微妙な距離感を感じていた。
 見えるのに、こんなにも近いのに、手を伸ばしても決して触れ得ぬような、そんなもどかしさ。その二人の隙間に吹く風が酷く冷たく感じもした。
 姉はわたしに何かを隠していた。
 だからわたしの知っている天倉繭が真実の姉の姿である保障はない。
 それでも姉は変わってしまったように思う。あの日を――あの村の出来事を境に。
 それを姉に云うと、姉は笑ってそれを否定した。
「違うよ澪。私は変わったんじゃない。私は漸く本当の私になれたの」
 意味が解らなかった。
 そう云えば、いつのまにか姉との間に感じていたあの奇妙な距離感は失くなっていた。
896622:05/01/21 16:29:43 ID:3YjE3dXD
>>895
うおお〜素晴しい!素晴しいです!!
これこそが俺の理想の澪繭でつ〜(感涙)
早速全裸待機、ハアハア・・ハアハア。
897273:05/01/21 19:07:07 ID:gM4kyAAQ
黒い話が続くのは素晴らしい。
 マックロクロスケ、サイコー!
 繭のどんよりどよどよな闇に囚われる澪ハラショー!

 ……それはともかく、黒い話だと静母ちゃんはいつも貧乏くじだな。
 可哀想に(ニヤリング)。
898名無しさん@ピンキー:05/01/21 21:04:20 ID:zoefIcGK
>>895GJ
ダークな話好きが多いな
さすが零好き
澪繭以外のカプも禿しくキヴォンヌ
実はこっそりMEGAタンの話をまだ待ってるんだけど(w
あと本スレで話題になったりしてる桐生姉妹とか
899622:05/01/21 23:28:18 ID:qf+5LoMk
>>895度々レススマソ
俺、この文体好きだわw
雰囲気いいよなぁ〜。純文学のかほりが・・・ハアハア・・・

・・まだ全裸でつが、何か?
900622:05/01/22 04:38:14 ID:3/5ji5uB
今のうちにSS投下しまつ

SS「告白」

「ねえ、澪・・」
「ん・・なあに、お姉ちゃん?」
学校帰り、繭は妹に声をかける。が、それは途中で切れたままで。
「・・どうしたの、お姉ちゃん?」
心配そうに姉の顔を覗き込む澪。そこには暗い表情の姉がいた。
「・・ううん、なんでもないよ、澪・・」
口の端をなんとか曲げて微笑む繭。あ、無理してる、と澪は思った。
「ねえ、お姉ちゃん、無理しないで・・心配ごとがあるなら私に言って・・」
しっかりと姉の手を握り、正面から見つめる。そう、もう澪は決めたのだ、
もう二度と姉の手は離さないと、そして、姉を悲しませたりしないと。
視線がぶつかる。まっすぐな澪の瞳とせつなげな繭の瞳、しばらくの沈黙の後、
繭が口を開いた。
「私・・・告白されちゃったの・・クラスの男の子に」
「え・・・・」
澪は結構・・いやかなり驚いた。ぽかんと口をあけて姉を見つめる。
901622:05/01/22 04:51:07 ID:3/5ji5uB
>>900続き
澪の胸に一瞬もやもやした気持ちが生まれた。これはなんだろう?そう思った。
しかし、困っている姉に何か言わなければ、という考えがその気持ちを瞬時に
消した。
「え・・そ、そうすごいね、お姉ちゃん・・良かったんじゃないかな・・?」
呆けた顔をしてなんだかめちゃくちゃなことを言う。そんな妹に繭は叫んだ。
「すごくないよ・・澪の馬鹿!」
「え、ええ?」
「もう知らない!」
澪の手を振り切って、足を引きずりながら駆け出す。澪はそんな姉をただ呆然
と見送った。
・・・泣いていた?
澪は姉の悲しげな横顔を思い出しながら、ようやく繭の背中を追いかけ出した。
902622:05/01/22 05:21:58 ID:3/5ji5uB
>>901続き
・・・ヨカッタンジャナイカナ?
聞きたくなかった、聞きたくなかった・・そんな言葉。
繭の目からとめどなく涙が溢れる。足の痛みももうどうでも良かった。ただ、
どこか遠くへ行ってしまいたかった。
「お姉ちゃん、待って!」
澪が追いかけてくる。
繭は必死に逃げようとしたが、運動神経の良い妹から逃げられる訳もなく、
すぐにおとなしくつかまってしまった。
必死に息を整えてから、澪が繭に言った。
「・・ごめんね、お姉ちゃん」
「・・・・・」
繭は何も言わなかった。きっと、妹は自分が泣いてる理由もわからないで、
謝っているんだと思ったから。
その日の夕方、繭は一言も妹と口を聞かなかった。澪は必死で話しかけるが、
応えてくれない。澪はほとほと困ってしまった。夜も更けた頃、いつものよ
うに繭は自室のベッドにもぐりこんだ。・・澪は今日は来るだろうか?二人
で一緒に眠るようになってから、よく繭のベッドを利用するようになってい
たからだ。交代した方がいいんじゃない?という姉に妹は「ううん、お姉ち
ゃんのベッドの方が柔らかい」と言い張って利かなかった。同じベッドなの
に、とその時繭は可笑しくて仕方なかった・・。
・・・それなのに、澪の馬鹿・・・
903622:05/01/22 05:53:29 ID:3/5ji5uB
>>902続き
男の子に告白されたことなんて、繭はどうでもよかった。だって、自分が好き
人はすでにここにいるから・・そう、澪がいるから。ただ、不安になった、も
し、今告白されたのが、私じゃなくて、澪だったら?澪だったら、どうするだ
ろう・・?コンコン、とノックの音がした。
「お姉ちゃん・・眠った?」
消え入りそうな声で澪は姉に声をかける。返事は無い。はあ、とため息をつき
立ち去ろうとすると、「・・・開いてるから・・」と微かに声が聞こえた。
ゆっくりと部屋に入ってくる澪。すでに姉はシーツの中にもぐりこんでいて、
顔は見えなかった。近寄ると、姉はただ黙って、脇に寄ってシーツを持ち上げ
てくれた。ありがとう、と澪は呟きながら中にもぐりこと、繭は何も言わず、
ただ、いつものように寄り添ってきた。温かさが身にしみて澪はほっと安堵の
ため息をついた。二人はそれから何も言わないまま、眠りにおちていった。
翌日、繭は学校を休みたいと母に言った。その何か思いつめているような表情に
ただ事じゃないものを感じたのか、静は何も言わず了承した。その日は澪だけで
登校することになった。
904622:05/01/22 06:18:16 ID:3/5ji5uB
>>903続き
「なあ、天倉、話しがあるんだけど・・」
声を掛けてきたのは、隣のクラスの男子生徒だった。繭と同じクラスで確か名
前は柴田だ。繭に気があると他の男子生徒にひやかされてたが、まさか・・
・・まさかコイツが?お姉ちゃんに?
一気に胸の中にもやもやとした何かがうまれる。澪は思わず柴田を睨んでしま
った。
「ああ、おい睨むなよ頼みがあるんだ」
「頼み?」
ここじゃなんだから、といって運動場に向かう。途中何人かにひやかされたが、澪
は徹底無視した。運動場につくと、澪はすぐに聞いた。
「頼みって・・何?」
「お前のお姉ちゃんに・・繭さんに謝ってくれないかなってさ」
『繭さん』という柴田の言葉が気に入らなかった。なんでだろう?なんでここ
まで腹が立つ?
「・・・なんで?」
「昨日、繭さんに告白してさ、振られちゃったんだよ」
「え?」
柴田がまた姉のことを『繭さん』と呼ぶのが気に入らなかったが、その後の振
られたという言葉が気になった。
「どうして?」
今度は柴田がもやもやする番だった、複雑な表情をしてしばらく澪を見つめた
後、ようやく口を開く。
「好きなんだってさ・・お前が」
・・・今度は澪がもやもやする番だった・・。
905622:05/01/22 06:56:51 ID:3/5ji5uB
>>904続き
え・・え?今・・柴田はなんて言った?澪は混乱した。柴田はお姉ちゃんが
好きで、でもお姉ちゃんは・・え、私?
「お、おい、そんな変な顔するなよ、俺だって最初は混乱したよ」
「ご、ごめん、い・・意味がよくわからなくて、柴田・・くん、なんて?」
頭を抱える澪。それを見て、なんだか今にも倒れそうだ、と柴田は思った。
「柴田でいいよ、あのさ、よく聞いてくれよ」
頭を掻く柴田。それを見て、なんだかすごく嫌そうだ、と澪は思った。
「俺が繭さんのこと好きだって言ったら、繭さんは『他に好きな子がいるから』
って、断った。んで、俺は『誰だ』って聞いたんだ、そしたら・・」

・・・妹なの

「・・って、俺、最初冗談かと思ったけど、すごくせつなそうだから、これは
本気だって思った。でも、つい、悔しくてなぁ、妹に取られたって変な話だろ」
澪は言葉もなく聞いていた、そうか、それで・・姉が泣いた理由がわかった。
そして、自分のこのもやもやとした気持ちの正体も。
「・・大事なのはこれからなんだが・・」
もう、澪にとってはこれ以上大事なことなんてなかった。
「俺、ついからかって、繭さんを泣かした・・っオイ!どこいくんだよ!」
すでに澪は駆け出していた。柴田が何度か呼びかけると、ようやく澪は振り向いた。
「そういうのはさ〜自分で謝んなよ、柴田くん〜」
澪は大声で叫ぶ、そして、思い出したように、付け足した。
「あと『繭さん』って呼び方〜なれなれしいからやめてね〜」
再び、澪は駆け出す。その顔には晴れ晴れとした笑顔が浮かんでいた。
906622:05/01/22 07:21:44 ID:3/5ji5uB
>>905続き
繭は自室でただ何もすることなくボーッと過ごしていた。なんだか、何もかも
が億劫になってしまい、何もしたくない。どさっ、とベッドに倒れこみ、虚ろ
に天井を眺める。・・・澪は今どうしているだろう?くすっと笑みを浮かべる。
考えるのはいつも澪の・・そう妹のことばかり。それなのに、澪は・・
「・・・馬鹿」
トントン・・とノックの音がした。
「え・・誰?」
おかしい、と繭は思った。母は仕事に出かけているはずだ、澪は学校だし、
一体誰だろう?
「お姉ちゃん、いる?」
「澪・・!どうしたの?」
ガチャリ、と勢いよくドアを開ける澪、走ってきたのだろう、顔は紅潮し
息は荒い。姉の姿を見つけると、ニコッと、微笑んだ。
「澪・・どうしたの?学校は?」
妹の笑顔に見とれながら、繭は言った。
「フフ・・やっと、口聞いてくれたね、お姉ちゃん」
「え、あっ・・」
思わず、口を抑え、顔をそらす繭。そんな姉に微笑みながら近づく澪。
そっと、ベッドに腰掛けている姉の前にしゃがみこみ、その膝に手を置く。
「お姉ちゃん、あのね、私お姉ちゃんに今、どうしても言わなきゃいけな
いことがあるの・・聞いてくれる?」
「う・・うん、いいよ・・・」
一度口を聞いた以上、もう黙っているわけにもいかない。あきらめた様子
で繭は澪に言った。そっと、澪の手に自分の手を重ねる。
「・・・何?」

907622:05/01/22 07:52:14 ID:3/5ji5uB
>>906続き
「昨日・・クラスの男の子に告白されたって、お姉ちゃん言ってたよね?」
「・・う、うん」
びくん、と肩を震わせる、それは繭にとって一番嫌な話題だ。
「私も・・実は告白したい人がいるんだ」
「え・・・・」
ショックで頭が真っ白になる。嘘・・澪に好きな人がいたなんて・・。
「あ、泣かないで、お姉ちゃん・・」
いつの間にか繭の目から涙が溢れ出す。そんな姉の目を優しくハンカチで拭く
澪。
「うう・・ん・・お姉ちゃん、泣いてない・・泣いてないよ」
妹の手を振り払おうとして、逆に妹にその手を強く掴まれた。下から覗き込む
ようにして、澪は姉を見つめた。
「お姉ちゃん・・私が告白したい相手はお姉ちゃんだよ」
「え・・・」
突をつかれ、視線が絡み合う。澪の優しい眼差しが、繭の涙に溢れた目を癒す。
そして、深呼吸して、澪は囁いた、愛しい姉に。

           私はお姉ちゃんが好きです

見上げる澪の顔に、姉の涙が雨のようにこぼれてきた。



908622:05/01/22 08:08:32 ID:3/5ji5uB
>>907続き

その日の夜、二人はいつものように寄り添って眠っていた。ただ、違うのは、
二人の腕が互いの体を強く抱きしめていることだけ。
「・・・眠れそう?お姉ちゃん」
「うん、大丈夫・・ねえ澪」
「ん?」
「もう一度言って・・」
そう言って、妹を見つめる。その目が潤んでいて澪はどきっとした。
「う・・うん・・でも」
くすと姉は笑った。
「恥かしい?」
「そ・・んなこと・・わっ?」
いきなり澪の上にのしかかる繭。
「フフ・・じゃあ、お姉ちゃんが代わりに言っちゃうよ〜」
そう言って、赤くなる妹の耳元に口を寄せ、そして、言った。

             澪・・大好きよ

                        
                                了
909名無しさん@ピンキー:05/01/22 17:06:55 ID:5m6cku2S
うわかこgっっsかおいうあお;0$

(*´Д`)はぁはlはlはlはlhぁhぁはlはぁぁはぁはぁ
このスレ最高だ!!!!

>>奈落の蝶さん
話の流れがじわじわやばさを醸し出す!!!コレは!
コレは蝶萌えることになりそうで続きが激しく楽しみっす!!
>>622さん
 毎度毎度おいしい!おいしいよ!!ありがとう!!!
元気っ子澪と少女な繭姉最高!!! 
910奈落の蝶:05/01/23 08:02:32 ID:I4pdhaOm
 わたしは溜息を一つ吐くと、ベッドの上で大きく寝返った。
 また取り留めの無い思考に嵌っていたことに気付く。ふと気付けば内省の海で記憶を拾い上げているような曖昧な日々。夢も現も、過去

も未来もわたしにとってはどれも境界をもたぬ現在でしかない。やがてはそこに己と云う個さえも溶けていってしまうのだろうか。そんな風にも思う。
 ぎゅうと強く瞼を閉じて――開いてみた。
 境界など見えるはずもなかった。やはり見えるのは昏い闇だけだ。
 改めて思う。これがわたしの世界だ。わたしの今だ。
 姉と二人きりの――奈落の如き闇の世界。
 そう。わたしはいつのまにか今を受け入れてしまっていた。
 不都合も不満もあるし、何より現状が普通でないと云う認識もある。だがその一方でわたしはこの曖昧な暗闇と、姉と過ごす日々を日常

として寛容している。
 現状を打破しようだとか改善しようなどと云う意欲はとうに失せた。否、そんな気など最初からなかったのかも知れない。
 わたしは異常を異常と認識した上で今を受け入れたのだ。
 何で。
 ――なんでなんだろう。
 そう思うと、何故か脳髄に姉の顔が浮かんだ。
 それはわたしが光を失う前の記憶。わたしと同じ顔なのにちっとも似ていなかった姉の記録。全て終わってしまった過去という名の残滓

。もうわたしは姉の顔を見ることは出来ない。
「お姉ちゃん――」
 自然と言葉が口をついた。
 隣の――姉の部屋を少しだけ意識した。
 ふと、閑寂と張り詰めた静謐に何かの音が混じりだすのを感じた。
 薄い壁を一枚隔てた向こう側から聞こえるのは音――いいや、声だ。
 姉の部屋から姉の声がする。
911奈落の蝶:05/01/23 08:06:46 ID:I4pdhaOm
 まただ。
 また――聞こえる。
 ――またお姉ちゃんがしている。
 聞こえてくるのは姉の声。姉の――喘ぎ声だった。
 姉が自慰に耽っている。自室で己を慰めている。
 姉はわたしの名を呼んでいた。
大きな声で、切なそうに苦しそうに、でも愛しそうに、淫らな行為に浸りながら澪、澪とわたしの名を呼んでいた。
 あの日以来姉は日に幾度となく自慰を行うようになった。
 しかも秘める様子などさらさらなく、まるでわたしに見せ付けるかの如く行う。
 何度も何度もわたしの名を呼びながら。
 わたしに出来ることは姉の行為が終わるまでの間耳を塞ぐことだけだった。
 しかし耳を塞いだところで完全に声を遮断出来る訳ではないし、姉の声を打ち消すような別の音響媒体がある訳でもなかったから、気を紛らわすことも出来ずに、いつもわたしはじくじくと滲みてくる姉の嬌声に浸されながらただ胎児のように丸くなるのだ。
 嫌悪するでも、特別不快でもなかったが――どうにも居た堪れなかった。
 耳を塞ぐ、身を丸める。瞼を閉じれば目の前の世界を切り離せるだろうか。
 ――なんでわたしの名前を呼ぶのお姉ちゃん。
 ――お姉ちゃんはわたしのこと想って――してるの。
 ――わたしはお姉ちゃんのなかでどんな姿をさせられているの。
 ――お姉ちゃんの頭の中でわたし達はどんなことをしているの。
 ――女の子同士なんだよ。血を分けた姉妹なんだよ。それでもいいの?
 ――お姉ちゃんはわたしのことが、
 ――わたしのことが、
「好きなの――?」
912622:05/01/23 10:53:25 ID:fhw8fX9s
うあ〜・・よ、良すぎますよ!
自慰する繭最高!いいですね〜このじらしw
澪タソは是非、耳を押さえるのではなく、姉の部屋に
乱入して・・
913名無しさん@ピンキー:05/01/23 11:00:25 ID:XGZSDd1M
つづきたのしみだ
914名無しさん@ピンキー:05/01/23 14:47:32 ID:p3n4Kmlo
>>911-912
いいプレッシャーの掛かり具合だな・・・。描写気に入ったよ!
まじでいける。
伝わるものを感じたよ。
915名無しさん@ピンキー:05/01/23 14:52:45 ID:p3n4Kmlo
アンカーミスった・・・。
>>910-911ね。
916名無しさん@ピンキー:05/01/23 21:44:34 ID:IBogLf0x
隣の部屋でそんな・・そんなことされたら
俺だったら、とっくにやってる・・

いけ、澪!いって姉を犯・・ウワマテコラハナセ
917名無しさん@ピンキー:05/01/23 21:49:58 ID:IBogLf0x
度レスだが、ふと思ったが、この二人どっちかが異性の方が
良かったんじゃないか?でも、そしたらやりまくってるだろ
うしな・・。やはり同性同士だからこそここまで惹かれるの
だろうか?どう思ふ?
918名無しさん@ピンキー:05/01/23 21:52:21 ID:p3n4Kmlo
もし澪が弟だったら繭は、ちょっとマイペースでおっとりしているが、でもまともな姉になっていたと思う。
もし繭が兄だったら、妹からはあまり理解されない兄になっていたと思う。
919名無しさん@ピンキー:05/01/23 22:47:48 ID:IBogLf0x
なるほど、異性だと逆にまともになってただろうな。
やはり、「女同士」「双子姉妹(しかも一卵)」という禁忌が
ドロドロした愛というか情念を生んだんだろうな。
俺も、今度双子姉妹どっちかに生まれてみたいな(藁)
920奈落の蝶:05/01/24 07:41:36 ID:cgQYsjSo
「好きだよ澪」
 突然掛けられた声にわたしはゆるりと覚醒した。
 いつの間にか姉が居た。わたしの部屋に――わたしの傍に。
 わたしはどうやらあのまままどろんでいたようだ。
 姉はベッドに腰掛けると、横になっているわたしを覗き込むようにした。
 姉は自慰を終えるとそのままふらりとわたしの部屋を訪ねる。
 そして汗に濡れ、愛欲に火照ったその肌の温もりをまるでわたしに分けようとするかのように、身を寄せてくる。
 一糸纏わぬ姿でわたしの隣に横になり、背後から抱き締めるようにして、髪に顔を埋め、指と指とを絡ませる。
 項のあたりにかかる熱い吐息。
 熱くしっとりと濡れた掌。
 背に感じる鼓動。
 濃密な甘い甘い雌の薫り。
 これもわたしの――わたし達の日常だ。
 わたし達はこうして幾つもの夜を越えてきた。
「お姉――ちゃん」
「好きだよ。澪のこと――大好き」
「なんで――」
「だって訊いたでしょ? 好きなの、って。だからこれが答え。わたしは澪のことが好き」
 わたしの頬を姉の指がつうと撫でる。
 この指が先刻迄姉を慰めていたのだろうか。
「じゃあ――澪は私のことどう思ってるの?」
「え」
「澪は私のこと好き?」
「わたしは」
「どうして澪は逃げないの?」
「わたしは――」
「厭なんでしょ? 家に閉じ込められて――自由を奪われて。厭じゃないの?」
921奈落の蝶:05/01/24 07:48:33 ID:cgQYsjSo
 そうだ。どうしてなんだろう。
 何故わたしは逃げなかった。何故この歪な世界を受け入れた。姉を受け入れた。山奥の一軒家という訳でもないのだ。逃げようと思えば、助けを求めようと思えば幾らだって可能だったはずだ。
 なのにわたしは今もこうして姉に抱かれている。
 それは多分――
 厭ではないからなのだろう。
 不満も不信も、怒りも恐れもあったけど、決してわたしは今を――姉と二人のこの奇妙な世界を厭だとは思わなかった。思えなかった。
 だから逃げる必要を感じなかった。
 それどころか――もしかしたらわたしも望んでいたのだろうか、この世界を。
 いや、そんなことどうでも良い。
 わたしは姉さえ居てくれたのならそれで良かったのかも知れない。
 ただいつまでも一緒に――。
 起きているのか、眠っているのか甚だ曖昧な状態でわたしはぼんやりとそんなことを考える。
 何だか夢を視ているようで酷く現実感がなかった。否、現実感なんて――とうの昔に失っている。わたしは常に夢と現の刃境に居るではないか。
 また姉の声が聞こえる。わたしは確りと応えているのだろうか。
「ねえ澪。わたし子供の頃から――あの村でだってずっと待ってた。待つことしかできなかった。澪が来てくれるのをただ待つだけ。だって私には澪みたいな立派な羽がなかったから。飛べなかったから。
遥か彼方で羽ばたく澪には届かなかったから。私の羽は――痛んでいたの。でもあの日、澪もその羽をもがれてしまった。飛べない身体になってしまった」
 私嬉しかった――姉は少し申しわけなさそうに云った。
「ごめんね澪。澪の眼が見えなくなって――私嬉しかったの。澪のことが心配だったし、悲しかった。苦しんでる澪の姿を見るのは胸が張り裂けそうだった。でも――何よりあの時私は嬉しかった」
 耳元に姉の唇が寄せられた。
「これで澪は私のものだって――」
922奈落の蝶:05/01/24 07:51:24 ID:cgQYsjSo
「私の手の届かない処でいつも綺麗に舞い羽ばたいていた澪が――いつだって見上げることしか出来なかった澪が、今は私の直ぐ傍に居る。待っていることしか出来なかった私が――ホラ、今はこうして澪を迎えに行くことも出来る。もう澪への想いを偽る必要もない」
 それが嬉しかったの、そう云って姉はやはり少しだけ申し訳なさそうに――嗤った。
「どれだけ身体を交わらせても、どんなに想いを溶け合わせても私達は決して一つにはなれない。時の流れの中で心は移ろい、思い出は腐り、身体は朽ちて――やがて死ぬ。
でも、世界に二人だけだったなら――息も出来ない程ど小さな狭い世界の中でぴったりと隙間なく身を寄せ合って生きることが出来たのなら、刹那も永遠も二人だけのもの。
一つにはなれないけど、同じ夢を視続けることは出来る。今日も明日も関係ない、二人の時間が世界の全てになるの」
 ――でも
「でもわたし達本当にこのままでいられるのかな――」
 いつまでも。何処までも。二人で一緒に変わらぬまま生きていけるのだろうか。
 そう思うと少しだけ悲しくなった。
「どうかなあ――」
 そんな言葉に思わず、姉の掌をぎゅうと強く握ってしまう。そんなわたしの態度が可笑しかったのか姉は一度クスリと嗤った。
「でも、だいじょうぶ」
 まるで幼子に言い聞かせるかのように耳元で優しく囁く。
「例え二人離れ離れになっても、澪が遠くに行っちゃっても、今度は私が」
 探してあげる――。
923奈落の蝶:05/01/24 07:53:30 ID:cgQYsjSo
「お姉ちゃん」
 わたしはごろりと身体を返し、姉と向き合う。多分直ぐ傍には姉の顔がある。
「でもね、澪。忘れないで」
 姉はわたしの手をそっと取る。そして指を絡ませながらするすると何処かへ導こうとする。
 辿り着いたのは、つるりとした滑らかな質感。柔らかい様な硬い様な奇妙な弾力。命の脈動。
 それは姉の細い細い首筋だった。
 姉はわたしの指を一本一本丁寧に己が喉元へと絡ませていく。
「忘れないで――本当の幸福はこの先に在るんだって」
 肌の張り。筋肉の弾力。動脈の収縮。
「悲しいことなんて何もない。怖いことなんて何一つない。時間に、外の世界に切り刻まれてしまうその前に――私の想いが腐り爛れてしまうその前に、全てを止めて。終わらせて。
訪れぬ未来に想いを馳せることも、過ぎ去りし来し方に囚われ続けるのももう沢山」
 どれだけ身体を交わらせても、どんなに想いを溶け合わせても一つにはなれないけれど、ホラこうすれば――姉の掌がわたしの指の上から覆い被さり、力を篭める。
 指が――わたしの指が、姉の肌に――食い込んで――いく。
「こうすればきっと私達は一つになれる。私の身体も心も、魂も時間も全部全部あげる。この一瞬が――澪と一つになるその至福の瞬間が私の全てになるの。
そしてあなたの記憶の中で私は永遠に生き続けられる。永遠の刹那――私達は其処で――」
 蝶になる。
924奈落の蝶:05/01/24 07:54:28 ID:cgQYsjSo
「お姉ちゃん――やめて」
 わたしは姉の胸へと赤子のように顔を埋める。
「わたしはお姉ちゃんのことを――」
 でも、わたしは頭の何処かで理解してしまっている。きっとわたし達は――
「ふふ――いいよ、澪。今は未だ焦らなくても。時間はたっぷりあるもの」
 これも夢ならいいのに。
「待ってるから。ずっと――ずぅっと待ってるから。澪ならきっと――」
 でも夢も現も蕩けあうわたしにとって全ては等しく今でしかない。ならばこれもまた――逃れ得ぬわたしの世界か。
「さあ、今はおやすみなさい。また――いつもみたいに歌を唄ってあげる」
「お姉ちゃん、わたし――」
 わたし達――
「うん――ずっと一緒だよ、澪」
 ゆっくりと意識が堕ち始める。すうと深い深い処へと引かれる感覚。己と云う輪郭が崩れていく。
 姉の温もりを感じながら。
 姉の優しい歌を聴きながら。
 わたしは僅かな光さえ差さぬ奈落の虚で繭に包まれ空の夢を視る。
 解っている。
 解っていた。
 いつかはこの昏い空を独りで羽ばたかねばならないと云うことを。
 姉の思い出と共にわたしは一体何処まで高く昇れるのだろうか。
 それでも今は――今だけは。
 ――お姉ちゃん。
 想いは言葉にならず、わたしは闇の中に溶けて行った。
925奈落の蝶:05/01/24 07:55:16 ID:cgQYsjSo
 このよのこえは ことかわり
 あかにえくさび つくすあで
 つみとがうくる たねとなし
 とこよのみかぜを ねがわくば
 げしたてまつらん あかいちょう
 げしたてまつらん あかいちょう
「またね、澪。目が覚めたら、また逢いましょう――この明けない夜に。終わらない闇の果てに」
「――したよね、約束」
「いつまでも待ってるよ」
「ずっと一緒だから。私達永遠に一つだから」
「同じ血肉を別ち持つ私達ならきっとなれるから――」
「一緒に還ろう」
「その日が来るのを――楽しみにしてるよ」
「それまで、おやすみなさい――」

「――澪」


 

926名無しさん@ピンキー:05/01/24 07:57:28 ID:cgQYsjSo
読んでくれた人、どうもありがとうございました。
期待してくれた、どうもすみませんでした。
……ちっともエロくなりませんでした。ドカーン。
927名無しさん@ピンキー:05/01/24 19:30:33 ID:Qs5lZdqR
>>926
いやぁ。エロ無しでもいいもん見れた。まったく綺麗な流れの文でした。
切ない。まったくこの二人は切ないって事。で天下とれるな。

つわけで次回作もぜひぜひお願いしたいであります!!
928名無しさん@ピンキー:05/01/24 20:26:02 ID:fQsicgHu
>>926
つか、なんとなく読み飛ばしてたんだが、ラストの数回が面白かったんで、タイトルで検索して、読み直してみた。

エロいよ、おい!
つか、きょーれつにえっちくさいんだが。
つか、ちんこたった!
つか、いいよ!
つか、いけるよ、これ!
929622:05/01/24 20:35:04 ID:EroQUZQL
いやあ、素晴らしいよ!!せつなくてグー!
とにかく文が美しいのに感動しまつた。文体でハアハアしたのは久しぶりでつ。
しかし色っぽい繭姉に比べ、澪お子様でかわええなw

俺も↑と同じく次回作期待してます。
930622:05/01/24 20:53:16 ID:EroQUZQL
なんか、大人(20代〜)繭姉っつ〜のもいいかなw
で、可愛い妹のためならなんでもするという(藁)
職業は・・浮かばないなあ。家事手伝いかやはり?
931622:05/01/24 22:26:27 ID:EroQUZQL
SS「大きくなったら・・」

「ねえ、お姉ちゃん、大きくなったらなんになりたい?」
「え?」
いきなり妹に聞かれて顔をあげる繭。
日曜日、二人はどこも出かけずに妹の部屋でのんびりしていた。妹のベッドで
寝そべる繭と、傍に腰掛ける澪。澪の手には学校から配られた紙が握られていた。
「・・・それ、進路相談の?」
「うん・・」
ゆっくりと繭は体を起こし、妹の肩へあごを載せる。そして一緒に文を読む。普段
なら姉のそんな動作で赤くなる澪だが、夢中になってるため気づかない。そんな真剣
な妹の横顔を間近でニコニコと見つめる繭。
「・・澪はなんになりたいの?」
「う〜ん、そうだな、大きくなったら・・」
大きくなったら、という言葉がなんだか子供っぽくて、でも妹には似あってて、繭は
くすくすと笑う。
「もう・・また笑う、なんで?」
「フフ・・なんでもな〜い」
そういって、甘えるように妹に抱きついた。
「フフ・・もうお姉ちゃんってばくすぐったい・・」
「クスクス・・澪だって・・」
しばらくじゃれあう、そうしているうちに、ふと澪が呟いた。
「あ、そういえば・・あのときも」

932622:05/01/24 22:45:55 ID:EroQUZQL
>>931続き
「あのときも?」
じゃれあっている最中に水をさされて、繭はちょっと不機嫌そうに聞き返す。
「うん、ほら、小さい頃お母さんの実家でこうやって遊んでて・・」
「?」
「覚えてない?お姉ちゃん?私その時になんになりたいか言ってたよ」
からかうようにでも、少し照れるように笑う澪。そんな妹の表情が新鮮で、繭
は少しドキっとした。
「え?お姉ちゃん、おぼえてないよ、澪なんて言ったの?」
なんだか、どきどきする・・もう少しで思い出しそうで、でも出てこない、なんだろう?

            繭と澪は仲がええのう
            うん、だってわたし、

「あ」
繭が呆けたような顔になる、そして珍しいことだが、赤くなった。
「思い出した?」
にっこりと笑う澪。繭はただ黙ってこくんと頷いた。
933622:05/01/24 23:03:50 ID:EroQUZQL
>>932続き

       大きくなったらお姉ちゃんと結婚するんだもの

「・・・って、私言ってた」
「そう・・・だったね・・」
赤くなってうつむく姉を見て、冗談で言ったつもりの妹もなんだか次第に恥ずかしく
なってきた。
「ん、ま、まあ、そんなこと進路相談でいえないしね、お、お母さんもいるし」
ガサガサ、と意味も無く紙を広げたり閉じたりする澪、そしてまだうつむく繭。
「や、やだなお姉ちゃんそんなに赤くならないで、私、恥ずかしいよ」
「お、お姉ちゃん、あ、あ、赤くなんかなってないよ、澪がへんなこと言うから・・」
へんなことどころか、ほんとはすごく嬉しかった。わけもわからず胸が熱くなる。
「へんって、お、お姉ちゃんはなんになりたいの?」
「わ、わたしは・・うん・・」
澪の耳元へ顔を寄せ、繭は赤くなりながら必死で囁いた。
・・・お姉ちゃんも一緒・・

二人とも進路相談には不向きな答えだった。
                         
                                 
                                 了
934名無しさん@ピンキー:05/01/25 16:30:22 ID:D5I+TRL5
good job
935名無しさん@ピンキー:05/01/26 08:28:12 ID:yQnyv11s
>>622

ほのぼのいいわぁ。普段揺るがないだろう繭が動揺するのが激しくイイ!
936622:05/01/26 21:52:56 ID:p/EsS9Z1
動揺すると、繭はかなり可愛いと思われ いや、もともと可愛いが・・
937622
というわけで度々スマソ 投下しまつ

SS「姉の悩み」

カツン、カツン、コツン・・
「あいた・・」
杖を持った妹が声をあげた。寄り添って歩いていた姉はどうしたの?と妹を見上げて
聞いた。
「ううん、なんだか杖の長さが合わなくなったみたいで」
そういいながら、器用にひょい、と杖を持ち替え、手首を回した。どうやら、少しひ
ねったらしい。
「大丈夫?」
「うん、平気」
にこっ、と姉の方へ向かって笑う。そんな妹の微笑みが眩しくて、いつも繭は照れて
しまう。妹の目はもう見えないのに、その双眸は優しく姉を捉えているようで。
「さ、行こう澪」
「うん」
そうして、再び腕を組んで歩き出す。以前まで手を繋いで歩いてたのが、最近は頻繁
に腕を組むようになった。そう、大晦日のあの日初めて肌を重ねた日から。繭はあの
日のことを思い出すたび幸せになる。ただ、そう、繭には今少しだけ悩みがあった。
「澪、寒い?」
「ん?そうだね、少し」
妹が少しだけ震えているのに気づき、繭は両手を絡ませるようにする。そして、ニコ
ニコと微笑みながら、妹に囁いた。
「お姉ちゃんが、暖めてあげようか?」
澪はしばらく何も言わず、ただ、照れたように小声でばか、と呟いた。フフフと笑う
繭。二人は結構幸せだった。