照りつける日差し。
抜けるような青空。
そして、駆け寄る水着の女の子。
思えば天涯孤独ということ以外、平々凡々な自分がこんな一時を楽しめるとは夢にも思わなかった。
「まことちゃーんッ、こっち、こっち〜!」
8月29日―――夏休み最後の日曜日。
俺達は、いや俺とうづきママは高校最後の夏を、この市営プールで過ごしていた。
施設の概要としては競泳用、子供用、流れるプールの三つがあり、そこで老若男女が泳ぎに日焼けに、と思い思いの行動をとっている。
……まぁ、俺も今はその一員に加わっているんだけど。
「まことちゃん、まことちゃんってばぁーーー!」
さっきから俺を呼んでいるのは、うづきママだ。
声はアニメのキャラクターみたいに甘ったるく、それだけ聞いている分には大人だなんて到底思えない。
「もうっ、遅いよ〜! うづき、急いで着替えてきたのに」
「うづきママ……その格好、何?」
違う。うづきママは、その姿すらも大人には見えなかった。
髪型はいつものツインテール、その顔はあどけなく、おまけに着ている水着がスクール水着ときたもんだ。
これではせいぜいが中学生、下手をすると発育の良い小学生と誤解されるかもしれない。
いや、うづきママには良く似合っていて可愛いんだけどね。そんな姿にドキドキしていたら、ロリコンだと思われる。
「これ? 『D.C!』のさくらちゃんだよ。制服は着てないけど、まことちゃんも見たことあるでしょ?」
うん、見れば分かる。よく見ると着けてるリボンがいつもと違うしね。
ついでに言うと、胸元の名札には大きく『よしの』と……って、俺が言いたいのは。
「あのね、うづきママ。こんな所でコスプレは不味いでしょ。ここは学園とは違ってコスプレ許可はされてないんだから」
「でもでもでもぉー、禁止もされてないでしょ? 去年のと違って地味だし、"普通の"人はコスプレとは気付かないと思うよ?」
「それはそうかもしれないけど……」
「でしょ。だからさ、行ってみよう!」
「わわっ、プールサイドでは走らない! 前にさつきママから叱られたでしょうがッ」
そのまま、なし崩しに連れてかれる俺。
恐らくは帰るまでずっとこの調子、その翌日には筋肉痛でうなされるママの世話をする羽目になるのだろう。
でも今は―――『息子』を経て『恋人』になった今はこういうのも悪くないかな、と思っている。
子供っぽい所。大人っぽい所。強い所。弱い所。
紆余曲折あったけど、俺はうづきママのそんなアンバランスな所を好きになったんだ。
……単純にヲタクの道に染まってしまったわけではないぞ。
皆考えることは同じなのか、プールは芋洗いとはいかないまでも、かなり賑わっていた。どこもかしこも人だらけで、泳ぐ分には不自由する。
もっとも、俺達は水泳をしに来たのではなく、プールで涼みにやってきたのだ。流れるプールの中で足をピョンピョンさせているだけでも十分だった。
……筈なのだが。
「うづきママ」
「ん? どうしたの?」
「俺にしがみつくの止めて」
「えー、うづき重くないよー。まことちゃんってば、もやしっ子なんじゃない?」
「こう見えても体力はあると思うんだけどな。どっかの誰かさんに付き合わされて、三日連続で人ごみの中を歩き通したくらいだから」
「そんなのコミケ参加者にとっては基本だよ。大手や企業狙いは炎天下で何時間も並ぶんだよ?」
「目的の為の異常な忍耐力はともかく、いい加減退いて」
「やだ」
「退いてってば」
「いやー」
こんな問答を続けている間にも、身体の奥底が熱くなる。
そもそも、ここは水中なんだから女の子一人にしがみつかれた位で、へばるわけがない。
問題は別の所。別の場所。
テントの張った俺の股間。
「うづきママ……ッ、ここプールだよ? 公共の場ッ。もっと分かりやすく言うなら、ひ・と・ま・え!」
「ん〜? 何のことかな〜〜〜フフフ……」
「だからっ、ウッ……、こんな所でエッチなこと禁止! バレたら……ッ!?」
傍目には、俺ら二人が身体を密着させてプールに浮かんでいるようにしか見えないだろう。
その解釈に間違いはないし、ここは流れるプール。いちいち通り過ぎる誰かに目を留めるはずもない。
けど俺の腕には今、うづきママの身体が当たっている。胸が、お腹が、太股が腕全体を包み込んでいるのだ。
年齢を間違われるほどの童顔とはいえ、うづきママも大人の女性。
付くべき所にはそれなりに付いていて、布地越しからは柔らかな感触が伝わってくる。
「あー、オ○ンチン硬くなってるぅ……。こんな所でハァハァするなんてイケナイんだ」
「バッ……、そんなこと言ってる場合じゃ……ッ!」
ささやきに前後して、へその下では根元を掴まれる感触。
俺のイチモツはうづきママによって勃起し、皮まで剥かれてしまっている。モノは弓なりに反って、水着を突き破ろうとしているかのようだ。
加えて、腕を差し込まれた水着からはプールの水が流れ込む。身体の熱と水の冷たさが対面する様には奇妙な開放感があった。
「うッ、クッ……うづき、ママ」
「ンフフフ……。ホラ、触ってみて♥」
うづきママの手で導かれたのは、水着のお腹に開けられた水抜き穴。
(なんでも古いタイプのスクール水着には、胸元から入った水着を逃がす為そういうものがあるらしい)
そこから滑り込んで触れた割れ目には、微かな違和感があった。
「濡れてる……?」
「そうだよ。うづき、まことちゃんの水着姿を目にしたら胸がキュンってしてね、一緒にいる内にイタズラしたくなっちゃったの」
顔を赤くして、更にしがみつくうづきママ。
『オイオイ、それ普通オトコ側の心理ちゃうん?』と似非関西弁で突っ込みたくなるが、そうも言ってられない。
ママの膣奥からは愛液がチロチロと湧き出ていて、その本気具合が窺えるからだ。
だけど、ここは公共の場。人に見られるなんてリスクは御免被りたい。
大体、俺達の関係からして元は生徒と教師。これがバレたら最悪退学・辞職しなきゃいけないかもしれないんだ。
「ねぇ、ここでしちゃおう? 殆ど水の中だから案外バレないよ。それに、こんなに人がいるんだから、何かあっても潜って逃げちゃえばいいし。ね?」
そんな俺の気持ちは無視してママは、しがみついたままで俺の正面に回りこむ。
火照った顔と熱く柔らかな感覚が迫り、次いで俺の水着のゴムがずり下がった。
水上から下を見れば、そこには勃起したイチモツと子供のように毛の生えていない割れ目が見えている。
それらは徐々に近づき……、重なり……、遂には結合へと至った。
「「アッ…♥」」
本格的に挿し入れたことで、一際大きな声が二人同時に上がった。
発した声が思ったより大きかったので、俺はとっさに周りを見渡す。
「……セーフだったね。まことちゃん、せめて声は出さないようにね」
「う、ん……っ、んんんッ!?」
強烈な刺激が下半身の深奥から伝わってきて、ろくに返事が出来ない。
動きこそ水中という事もあってゆっくりだが、代わりに半端じゃない締め付けが襲い掛かってくるからだ。
「クッ……、あっ……うづきママ、こんな所でしちゃったら精子が」
「ダーイジョウブ、こんな事もあろうかとピル飲んでおいたから♪ だからね……膣内で出してもいいんだよ」
「それ、間違った意味での確信犯……ッ!」
冷たい水の中という事で敏感になったのか。
それとも周囲に人がいるという状況に興奮してきたのか。
どちらにせよ、プールの水は相も変わらず一方向へと流れてゆく。
水だけじゃない。子供も、大人も、家族連れも、流れに乗ってグルグルと回り続ける。何を考えるのでもなく楽しんでいる。
だというのに俺は、俺とうづきママはプールの中、水面下で繋がっている。
バレるかもしれないのに、お尻や胸をナデナデさせられちゃっていたりする。
恥ずかしくて、だけど気持ちよくて、どんな顔をすればいいのか分からない。
俺に出来る事と言えば、その辺りを見回すくらいだった。
「あっ……ふぅ、……うぅっ、クゥ……ン!」
その間、うづきママはずっと俺にしがみついていた。
腕を首に回し、両足を背中に絡め、俺の足がプールの底につくタイミングで幼い喘ぎ声を耳元に響かせてくれる。
「あ゛うっ、ふ、フゥ……ィ、イッ、ぃぃ……ッ♥ いつもより……おっきいぃぃぃ……」
騎乗位のように腰を動かしているのが見えるわけでもない。
いつもは結合部から発せられる水音が聞こえるわけでもない。
だけど人がいて、水の中で、俺達はセックスしちゃってる。
そして目の前のロリータフェイスが、俺にある種の衝動を呼び起こす。
こんなにキレイなのに。
こんなに愛らしいのに。
それをメチャメチャに汚しているようで……無性にゾクゾクする。
「フゥゥゥッ……ンンンンム〜〜〜〜♥」
唇を割って舌が入り込む。
荒い鼻息と共に足とアソコの締め付けが強くなる。
そして―――お腹の中に熱い液体(モノ)を注ぎ込んでいた。
「ハーーー♪ こういう所でするのって新鮮だったね」
水中で汗が流れようと、膣内出ししようと、一戦交えたことには変わらない。
俺達はシャワールームの個室で一緒になってシャワーを浴びていた。
うづきママは今スクール水着を引っ張って、中にお湯を流し込んでいるところだ。
「見て見て、まことちゃんホラ♥ うづき、こんなにセーエキ出されちゃってたんだよ。いつもより多いと思わない?」
うづきママは股布を引っ張ってアソコの中から精子を掻き出す様を見せつけた。
子供のものをそのまま成長させたような、子供そのものと言っていいツルツルのアソコから白濁液が流れ出す光景は、何かの間違いみたいに思えてくる。
いや、むしろ、うづきママの存在自体が何かの間違いと言っていいかもしれない。
それを意識した時には、既にママの腕を掴んで壁際に押し付けていた。
「うづきママ……俺、我慢できない」
「え……? どうしたの? もしかして怒ってる?」
「ううん、違うよ。ただ一回だけじゃ満足できないってコト」
左手で、ママの股間を撫でさする。
そこからは精液のまだ残った音がする。少なくとも潤滑油の代用にはなるだろう。
「あっ、ダ、だめだよ。こんな所で……」
「大丈夫。『さっき』と違って壁で囲われてるから、バレる心配はないよ。……うづきママが声を出さなければね」
「…………!!」
今度は俺が返事を待たなかった。
すっかり硬くなったイチモツを手に添えて、うづきママの中へと沈み込む。
その瞬間、痙攣する身体と歪む唇を、俺は無理矢理に塞いでいた―――。
すべてが終わった頃、市営プールの出入り口からは夕日が差し込んでいた。
「さて、そろそろ帰ろうか」
「帰ろうかじゃないよぉ。うづき、まだ腰が抜けて歩けない……」
「しょうがないなぁ、うづきママは」
俺は某ネコ型ロボットのような口調でため息をつくと、ベンチで横になっていたママの前でしゃがみこんだ。
「はい、おんぶ」
振り向けば、うづきママは緩慢な動作で僕におぶさろうとしているところだった。
背中に人一人分の重みと塩素の匂いが伝わってくるまで、実に十数秒。
完全に力が抜けているようで、背負い直してもすぐ体勢が崩れてしまいそうだった。
「もう、まことちゃんとはプールに行かない……」
すぐ傍から、うづきママの声がする。
その言葉は文句というより、まだ疲労を訴えるような響きが含まれていた。
「本当ゴメン。まさかあんなに出るとは思わなかったから」
「それにしたって、やり過ぎだよぉ。うづき、あんなにイカされたの初めて……」
「ハハハ、俺も初めてだよ。それとなんか、こうね、気付いちゃった気がする」
「へ、何に?」
うづきママはこちらをキョトンと見つめている。
そういう普段の仕草は本当に子供みたいで、さっきまで乱れていた大人とはとても思えない。
「―――俺、うづきママをいぢめる方が燃えるんだって」
「……馬鹿ァ」
帰りの道はまだ遠く、夏の終りはもう近い。
そんなアンバランスさが、今はいとおしい。