「あー、今日も暑いですねー……」
Tシャツのかかったハンガーを物干し竿にかけたヒッポは、雲ひとつない青空
を見上げながらそう呟いた。
身体の小さなヒッポにとっては、水に濡れた服やタオルを運ぶだけでも大変な
重労働である。まだ洗濯干しを始めたばかりだというのに、ヒッポは早くも息を
荒げていた。
身長50センチほどのペンギンが服を着て、洗濯物を干して、さらに人間の言
葉を喋っている姿は、よく考えると非常に奇妙だった。こんな光景を誰かに見ら
れたら、すぐにテレビ局を呼ばれたり、インターネットに書かれたりするに違い
ない。そう考えると、家の中に閉じこもっていた方が良さそうなものだが、それ
はできなかった。
にこらが家にいるときは、彼女が家事をすることになっている。しかし、彼女
が家を留守にしている間は、ヒッポが代わりを務めるのが決まりとなっているの
だ。理不尽な決まりとはいえ、王族の決めたことには黙って従うしかなかった。
まだ昼前だというのに、太陽は容赦なく照りつけ、気温も既に30度を超えて
いた。洗濯物の入った籠を持ちながら、家と庭とを何度も往復するヒッポは、汗
でびっしょりになっていた。
「やれやれ。こんな時に人間の姿になれたら楽なんですけどねえ」
額に浮かんだ汗を拭いながら、ヒッポは独り言を呟いた。人間の姿になれば、
身体が大きくなる。そうすれば自然と行動範囲も広がるから、仕事も随分と楽に
なるはずなのだが、それは出来なかった。彼らの種族は、長いこと人間の姿でい
ると、身体が乾いて元の姿に戻れなくなってしまう。そうならないために、でき
るだけ水棲動物の姿でいる必要があるのだ。
真っ白なシーツを物干し竿にかけると、籠の中の洗濯物は一つもなくなった。
ようやく一仕事終えたヒッポは、大きく息を吐いて、家の中に戻ろうとした。
と、そのとき。
「ただいま〜……」
か細く弱々しい声が、玄関から聞こえてきた。
(あれ? こんな時間に誰でしょう?)
玄関に走ったヒッポは、そこに一人の少女がいるのを見つけた。マリンブルー
の髪の毛が美しい、活発そうな感じの少女が。少女は顔を赤らめて、苦しそうに
胸に手をあてていた。
「あれ、波音さん? どうしてこんな所にいるんですか?」
「ちょっと、気分が悪くなってね……先生に言って、早退させてもらったのよ。
ヒッポ、あたしの部屋は片付いてる? 少し休みたいから、ベッドを用意してよ」
「分かりました。さあ波音さん、私の手につかまって下さい」
「大丈夫よ、そこまで悪くないから。それより……」
波音はカバンの中に手を入れ、一本のペットボトルを取り出した。なぜかラベ
ルは貼られておらず、中には飴色の液体が入っていた。
「さっき道を歩いてたら、これをもらったの。あたしはいらないから、あんたに
あげるわ」
「えっ、いいんですか? ちょうど喉が渇いていたところなんです。それじゃ、
さっそくいただきますね」
ヒッポはペットボトルの蓋を開き、中の液体を口へ流し込んだ。家事労働で喉
が渇いていたせいか、ボトルいっぱいに入っていた液体は、あっという間に空っ
ぽになった。ヒッポはボトルを口から放すと、プハーッと満足そうに息を吐いた。
と。
「あ……あれ……?」
急に目眩を感じ、ヒッポは身体をぐらつかせた。
猛烈な眠気が頭を襲い、立っていられなくなる。目の前の景色が万華鏡のよう
にグルグルと回転し、ヒッポは両膝を床に付けた。頭の奥に鉛を入れられたかの
ような、重く苦しい感覚が身体を襲った。
(まさか……いま飲んだジュースに、何かが……?)
バタリという音を立てて、ヒッポは床の上に倒れ込んだ。うつ伏せの姿勢で寝
転んだヒッポは、スースーと静かな寝息を立てていた。
それを見た波音は、ニヤリと口元を歪め、小さな声で呟いた。
「ふっふっふ。第一段階は成功、と……」
「う、う〜ん……」
数時間の後、ヒッポは深い眠りから目を覚ました。
目を開けた瞬間、奇妙な気だるさがヒッポの全身を襲った。窓の外を見ると、
太陽が南から西へと傾き始めている。どうやら、かなり長いこと眠り込んでいた
ようだ。
「やれやれ、ひどい目にあいました……ん?」
上半身を起こしたヒッポは何かに気付き、自分の身体を見つめた。、
いつの間にかヒッポは、少年の姿に変身していた。しばらく水につかっていな
かったせいで、ペンギンから人間の姿に変わってしまったようだ。
(仕方ない、またお風呂にでも入りますか)
「グッドモ〜ニ〜ング、ヒッポ。よく眠れた?」
突然、甘ったれた子猫のような声が聞こえてきて、ヒッポは怖気を奮った。
振り返ると、そこには波音がいた。椅子に腰掛け、肘掛に腕を乗せる波音の顔
には、妖しげな笑みが浮かんでいた。
「波音さん……何やってるんですか? 体調が悪いなら、寝てなきゃダメですよ」
「ああ、あれ? あれはウソよ。あんなの、学校を早退するための仮病よ」
「な、何ですって? それってサボリじゃないですか! プリンセスともあろう
お方が、そんなことをして良いと思ってるんですか? あと、あのジュースはいっ
たい何だったんですか?」
「さっきのジュースのこと? ごく普通のジュースよ。ただし、ほんのちょっと
だけ、睡眠薬を入れさせてもらったけどね」
「睡眠薬って……波音さん、あなたいったい何を考えてるんですか! 今日の波
音さん、何だかおかしいですよ! 何の目的で学校をサボったり、変なジュース
を飲ませたりしたんですか! さあ説明して下さい、波音さ……!」
突然、ヒッポの怒声が止まった。椅子から立ち上がった波音が、ベッドの上に
乗ってヒッポの方へ身体を寄せてきたからだ。
可愛らしい、でもその奥で何かを企んでいるような波音の表情に、ヒッポは思
わずたじろいだ。
「な……なんですか、波音さん? 何の真似ですか?」
「やっぱり可愛いわ、ヒッポ。まるで天使みたい……」
「えっ……?」
「あたしが初めてこの姿のヒッポを見たのは、夜の海岸を歩いていた時だったわ
よね。あの時からずっと思っていたのよ。ヒッポに抱かれたい、ヒッポと一つに
なりたいって……お願いヒッポ、あたしを抱いて。あたしの初めての人になって」
「い、いきなり何を言い出すんですか! そんなの許されるわけないでしょう!
大体、波音さんは海月先生のことが好きなんじゃないんですか!」
「もちろん太郎ちゃんは大好きよ。でも、太郎ちゃんって大人の男性でしょ?
ああいう人と付き合い続けていると、たまに子供っぽい男の子と付き合いたくな
るのよ。それでヒッポ、あんたに白羽の矢を立てたというわけよ」
「そんな、無茶苦茶ですよ! そんなこと私には……!」
できません、という言葉を、ヒッポはハッと飲み込んだ。
いつの間にか、波音がヒッポの右手首を握り締め、自分の左胸に押し当ててい
た。見た目以上に豊かで柔らかな感触が、ヒッポの掌から伝わってきた。
「分かる、ヒッポ? あたしの心臓、とってもドキトキしているのよ。あなたに
抱かれたらって考えるだけで、あたしは身体が疼いて、火照ってくるの……」
「は、波音さん……!」
「お願いヒッポ、あたしを抱いて。あなたの力で、この火照りを静めて……」
さらに身体を摺り寄せてくる波音の迫力に圧され、ヒッポはベッドの上に倒れ
込んだ。波音はその上に覆いかぶさり、ヒッポが逃げ出せないよう、両脇に腕を
伸ばしてベッドの上に置いた。
波音はヒッポの目を真っ直ぐに見つめていた。その瞳は、今まで見たことのな
い、不思議な魅惑に満ちている。見ているだけで吸い込まれてしまいそうな奇妙
な感覚が、ヒッポを包み込んでいく……
「………っ!」
ヒッポの頭の中で、何かが弾けたような音がした。
ヒッポはいきなり波音の両肩を掴むと、その手に渾身の力を入れた。何? と
驚く波音の身体を回転させ、ベッドの上に倒れさせる。ヒッポの上に波音が乗っ
かっている、という両者の体勢が、瞬時に入れ替わった。
一瞬、波音は呆然とした表情を浮かべたが、すぐにクスリと笑った。
「うふふっ。やっとその気になってくれたみたいね」
「言っておきますけど、何かあった時の責任は波音さんが取って下さいよ。私は
波音さんに脅されて、無理矢理こんなことをさせられているんです。そういうこ
とにして下さいね」
「もちろんいいわよ。全責任はあたしが負ってあげるわ」
「……分かりました」
ヒッポは波音の顔に自分の顔を近付け、唇を重ね合わせた。
触れ合った瞬間、お互いの温もりが二人の身体に伝わった。緊張と興奮のため
か、ヒッポの息はすでに乱れている。そのか細い背中に両腕を回した波音は、ヒッ
ポの身体が細かく震えているのを感じ取った。ヒッポの肩が、背中が、腕が、ピ
クピクと震えていた。
(怖がっているのね、ヒッポ。ふふっ、可愛いんだから……)
波音は唇を開き、舌先をヒッポの唇の上に這わせた。ギクリと肩を震わすヒッ
ポの唇をこじ開けた波音は、柔らかな舌を巧みに動かし、ヒッポの舌と絡み合わ
せる。波音の舌が動くごとに、ピチャピチャという音を立てながら二人の唾液が
交わりあっていった。
「ヒッポ……あなたも、舌を動かして……」
その声にヒッポは無言でうなずき、ぎこちなく舌を動かし始めた。決して上手
ではないが、優しくて温かい動き。その気持ちを確かめるかのように、波音はじっ
くりと時間をかけて、舌を絡め合わせた。そうしているうちに、ヒッポの身体か
ら固さが消え、震えも収まっていった。
波音は、ヒッポの首筋にあてていた両腕を解き、自分の着ているブラウスの合
わせ目に指を置いた。もどかしげな仕草でボタンをはずし、ブラウスを左右に広
げると、真っ白な波音の肢体が露わになった。着やせする体質なのか、波音の胸
の膨らみは、服の上で見るよりもずっと豊かだった。見ているだけで虜になりそ
うな美しい双丘の頂では、薄茶色の果実が細かく震えていた。
「……触って、ヒッポ」
「でも、どうやって……?」
「あなたの好きなようにすればいいのよ。あたし、ヒッポになら何をされても構
わないから」
「………」
ヒッポはおそるおそる手を伸ばし、波音の左胸に掌を添えた。波音の温もりと
柔らかさが、手のひらを通じて直に伝わってくる。その奥で激しく波打つ心臓の
鼓動まで、聞こえてくるかのようだった。
ヒッポは五本の指を動かし、波音の胸に食い込ませた。波音の胸はマシュマロ
のように柔らかく、ヒッポが指を動かすごとに、その形を変えた。ヒッポは我を
忘れたかのように、夢中で波音の胸を弄び続けた。
「あっ、ん……その調子よ、ヒッポ……」
波音の声は、少し乱れていた。ヒッポの愛撫の心地よさと、愛する人に抱かれ
ているという悦びに、心を震わせているからだろう。
ヒッポは波音の左胸に添えている手の動きを止めた。そして、開いている右胸
に自分の口を近付け、乳首に舌を這わせた。そこは既に固くなっていて、中に芯
が入っているみたいだった。ヒッポが口付けしたり、指でつまんだりしているう
ちに、少しずつ大きくなっていくような気がした。
「ああっ……気持ちいい……!」
全身が痺れるような感覚に、波音は全身をわななかせた。胸を触られて、舌で
なぞられているだけなのに、その感覚が身体の隅々にまで伝わってくる。全身が
燃え出しそうな快感に、波音は悶え、喘ぎ声を発した。
ヒッポは我を忘れて波音の乳房に指を食い込ませ、舌を這わせた。波音は、そ
んなヒッポの顎に二本の指をあてて、その面を上げさせた。
「ヒッポ。下の方も、お願い。」
「下って……?」
「バカね。そんなの、女の子の口から言わせるもんじゃないわよ」
波音は頬を膨らませ、ヒッポを睨み付けた。
波音はヒッポの片手首をつかむと、自分の身体の下の方へと動かした。すでに
裸となっている上半身と異なり、下半身はまだスカートも下着も着けたままだっ
た。波音はスカートの裾をたくし上げ、ヒッポの手をその奥へと導いた。
「………! 波音さん、ダメですよ、そんなことしたら!」
「何よ。ここまで来て、途中でやめるつもりなの?」
「だけど……従者にすぎない私が、プリンセスにそこまでするなんて……」
「構わないって言ってるでしょ。何度も言うけど、あたしはヒッポになら何をさ
れてもいいの。あたしの気持ちを無駄にしないで」
「は……はい」
ヒッポは覚悟を決め、スカートのファスナーを下ろした。薄青の布を引っ張る
と、清潔感ある真っ白な下着が姿を現した。
それを見た波音は、かすかに腰を浮かせた。ヒッポは大きく息を吸ってから、
最後の一枚を取り去った。
何も着けてない、生まれたままの姿の波音が、ヒッポの目の前に横たわった。
一糸まとわぬ姿になって、さすがに羞恥心が生まれたのか、波音は胸元と陰部
に手を回して顔を赤らめた。全てを晒け出す覚悟はできていたはずなのに、いざ
となると、やっぱり恥ずかしかった。
「えっと……どうかな、あたしの身体は?」
「キレイです……すごく」
「ほんと? 嬉しいわ、ヒッポにそんなことを言ってもらえるなんて。さあヒッ
ポ、続けてちょうだい」
「分かりました」
ヒッポは波音の腕を両脇にどかすと、自分の両手を波音の腰にあて、その股間
に顔を近付けた。
露わになったその部分は、薄い毛に覆われている。そして奥からは、すでに蜜
が滲み出ていた。蜜は波音の陰部を濡らし、窓から差し込む陽光を浴びて、妖し
げな光を発していた。
ヒッポは軽く口付けしてから、亀裂にそっと舌を這わせた。その瞬間、波音の
背筋に電気のようなものが走り、全身をびくっと震わせた。それに合わせるかの
ように、亀裂の奥から蜜が溢れ出し、ヒッポの唇と舌を濡らした。
ヒッポは舌の動きをいったん止め、二本の指で秘部の亀裂を広げてみた。波音
にとっていちばん敏感な部分であるそこは、赤く充血していて、奥の方で小さな
豆がヒクヒクと震えていた。指先でそっと触れると、波音は身体を硬直させてビ
クンと波うたせた。そこが性感帯なのか、今までよりも大きな喘ぎ声が、波音の
口から発せられた。
「ああっ、あたし……どうにかなりそう……!」
波音は、シーツをギューッと握り締め、息を荒げた。ヒッポが指を動かして、
舌を弄ばせるたびに、その刺激が何倍にもなって身体に広がっていく。それは快
感という大きなうねりとなって、波音を覆っていった。
ヒッポは何も考えず、波音の亀裂に舌を這わせ、指を挿れ続けた。波音はただ
されるがままだったが、いきなり両手でヒッポの頭を掴むと、その顔を上げさせ
た。
「ヒッポ……あたしも、あなたのを……」
その言葉に、ヒッポは無言で頷いた。腰を浮かしながら身体の向きを180度
回転させ、自分の股間を波音の目の前に差し出した。半ズボンの薄い布に覆われ
たそこは、大きくなったもので膨れ上がっていた。
波音は息を荒げながら、ヒッポのズボンを下ろした。そして下着を脱がせて、
ヒッポの下半身を露出させた。すでに固くなっているヒッポの分身を握り締めた
波音は、目を細めて恍惚の表情を浮かべた。
「ああ……ステキよ、ヒッポ。女の子みたいな顔をしているくせに、ここだけこ
んなに立派だなんて……」
波音はヒッポの分身の先端に、舌先を這わせた。二度、三度と舐めてから、波
音はそれを口にくわえた。全体の半分ほどを口の中に埋めさせながら、波音は何
度も舌を絡めた。
「くっ……波音さん……」
最も敏感な部分を刺激され、ヒッポは顔を歪めた。今まで経験したことのない
愉悦がヒッポを襲った。
「ヒッポ……すごく、美味しい……!」
波音はヒッポの分身をくわえたまま、せわしなく舌を動かした。ヒッポも波音
の股間に顔を付けた体勢で、亀裂に舌を這わせ続ける。液が溢れ出る音と、二人
の喘ぎ声とが、部屋中に響き渡った。秘所に刺激を与える快感と、秘所をなじら
れる快感とで、二人の理性は麻痺してしまいそうだった。
波音は口を開き、ヒッポの分身を離した。ヒッポもすぐに、舌でなぞるのを止
めた。
「ヒッポ……あなたのを、ちょうだい」
「……いいんですね、本当に?」
「ええ。もう、何がどうなってもいい……ヒッポが、欲しいの」
ヒッポは再び身体の向きを変え、自分のものを波音の陰部にあてがった。そこ
はもう、溢れ出る蜜でぐしょ濡れになっていた。
ヒッポは、少しずつゆっくりと、自分の先端を波音の亀裂に埋めていった。半
分ほど入ったところで、波音が拒絶していないことを確かめると、一気に力を入
れて、最後まで押し込んだ。
「あ、ああーっ……!」
二人の身体がぴったりと重なった瞬間、波音は悲鳴のような声を上げた。
一つに繋がった部分から、一筋の赤い液体が流れ出る。それは、波音がこれま
で守り通してきた純潔が破られたことの証だった。
痛みのせいか、波音の額には汗が浮かび、顔には苦痛の表情が浮かんでいる。
それでも波音は構わず、ヒッポの首に両腕を絡ませた。
「動いて、ヒッポ」
「でも、痛くないんですか?」
「うん、ちょっと……でも大丈夫よ。相手がヒッポなら、あたしは平気。どんな
ことでも、耐えてみせるわ」
「波音さん……!」
ヒッポは胸が熱くなるのを感じた。ただの従者にすぎない、しかも他国のプリ
ンセスの従者でしかない自分のために、ここまで尽くしてくれるなんて……その
思いに応えるかのように、ヒッポはゆっくりと腰を動かし始めた。
初めての行為であるせいか、波音は身体じゅうに力を込め、硬直させていた。
そのためヒッポは、いきなり激しく動くことはせず、ゆっくりと小さく動き始め
た。それと同時に、波音の身体をほぐすため、胸や腰に手を当てて、揉みしだい
た。
波音はまだ、苦痛の色を顔に浮かべていた。その表情は、思わずドキリとする
ほど艶っぽかった。苦しんでる姿を見てキレイと思うのは不謹慎かもしれないが、
今の波音の姿は、普段のお転婆な彼女からは想像もできないほど、美しかった。
少し経つと、波音の身体から固さが消えてきた。ヒッポの愛撫が功を奏したの
か、表情にも柔らかさが浮かんできているようだった。そこでヒッポは、腰に力
を込めて、その動きを速めた。
その行為に波音はすぐに反応し、喉を震わせた。ヒッポの背中に回された腕に
力が込められ、指先の爪が白い肌に食い込んだ。
「ああっ、すごいわ、ヒッポ……身体が溶けちゃいそうよ……!」
「私もです……波音さんの中、すごく気持ちいい……!」
「ヒッポ……もっと、もっと激しく動いて……!」
ヒッポは動きをさらに速くした。結合した部分から蜜が溢れ出し、二人の動き
をさらに激しいものにしていく。ベッドが揺れ、波音の豊かな胸のふくらみが大
きく震えた。
ヒッポが一突きするたびに、ベッドの上で波音の裸体が跳ね、耽美な喘ぎ声が
響いた。全身に汗を浮かべる波音の体内で、少しずつ締め付けが強くなっていく。
もう限界が近いのか、二人は瞼を閉ざして歯を食いしばっていた。
「波音さん……これ以上は……!」
「あたしも、もうダメ……一緒にいって、ヒッポ……!」
「う、くうっ……!」
「ヒッポ……あ、あああーっ!」
波音が叫ぶと同時に、二人の肢体がベッドの上でピーンと張り詰めた。
波音の身体の中で、ヒッポの分身が激しい脈を打ち、先端から情熱の証がほと
ばしる。それは波音の秘部の肉壁に、勢いよく飛び散った。ドクン、ドクンと鼓
動を打つごとに、温かいものが発せられ、波音の身体を汚した。
全身の力が抜け落ちたかのように、ヒッポはその場に倒れこみ、波音の身体の
上に覆いかぶさった。波音もぐったりとした状態になり、虚ろな目で天井を見つ
める。胸焦がす激情が去った後の虚脱感にひたりながら、二人は無言でその場に
寝転んだ。
それから数分後。ようやく我に返った波音は、ヒッポの頬を撫でながら、優し
く微笑んだ。
「ありがとう、ヒッポ。あたしの願いを叶えてくれて」
「そんな、お礼を言うのはこっちです。波音さん、すごくステキでした」
「あなたもステキだったわよ、ヒッポ……分かってると思うけど、今日のこと、
るちあやリナには内緒よ。もちろん、にこらさんやタキさんにもね。あの人たち
にバレたら、きっと大変なことになるわ。だから絶対、誰にも喋ったらダメよ」
「分かってます、誰にも言いません。変なトラブルは起こしたくないですからね。
従者の私がこんなことを言ったらいけないかもしれませんけど……波音さん。私
は、あなたを愛してます」
「あたしも……愛してるわ、ヒッポ……」
二人は、どちらからともなく顔を近付けて、唇を重ね合わせた。
愛情のこもった、優しく温かい口付け。
互いの温もりを確かめ合うかのように、二人はいつまでも身体を触れ合わせて
いた。