TS・性転換・女性化小説(非強制) Part3

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196KINO@修行中 ◆Nq.KINOKeY
「ねぇ、待ってよオカマちゃ……」
まっすぐに前を見る姿。風の加護を受けて何かに立ち向かうような姿。
未来を見つめる紅玉の瞳。それは男女の区別無く美しいと思える姿だった。
「……あ……っ……」
「何のようだ。屑」
薄い唇が紡ぐ言葉。
「……その……あの……」
「消えろ。下衆が」
誰かの誹謗や中傷ごときで、この流れる血は汚されることなど無い。
それでも、言葉は刃となってまだ脆き心を切り裂く。
人間を殺すのは剣でも無く、魔法でもない。
魔物の襲撃でもなく――――――何気ない一言なのだ。




「親父!!!」
「どうしたアスリア。そんなに声を荒げて」
明らかに殺気立っている息子の姿に、さすがのムーンブルク王も困惑気味だ。
「この国はおっさんの代で終わりだな。あんな馬鹿見たことがねぇ」
吐き捨てるようにアスリアは続ける。
「おい、おっさん。あんたも自分のガキぐらいきちんとしつけしておけや。あのままじゃ所構わず
 戦争吹っ掛ける事になるぜ?まぁ……ここがどうなろうと俺はしらねぇけどな」
言い切るムーンブルクの後継者に、デルコンダル王は口元を綻ばせた。
アスリアが元は高女であることはデルコンダル王も知っている。
何よりも、ふがいない息子には気の強い娘をと常日頃から考えていたのだ。