「ヴァネッサ…」
「なあに?」
「ふふ…」
マドラックスはいたずらっ子のような、仔猫のような表情で
ヴァネッサの背中にもたれ掛かった。
そのまま腕ごと体を抱きしめる。
「ちょっと…、コーヒーが淹れられないわ。離れて」
いつしか護衛として雇ったマドラックスの保護者代わりになってしまっている
ヴァネッサであった。
「熱いコーヒーはいやよ」
ヴァネッサに窘められ、そう言いながらしぶしぶ体を離すマドラックスの
表情は上目遣いで。
いたずらが過ぎて叱られた子犬そのものだった。
意外と表情がころころと変わる娘である。