お姉さん大好き

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350掌 1/14
当時8歳の僕には2つ上の10歳のお姉ちゃんがいた。
僕よりちょっと背の高いお姉ちゃん、優しい家事の手伝いもしている。
お母さんのいないこの家庭では正に母代わりだ。
お母さんの顔は覚えていない、僕が生まれてすぐに病気で倒れたらしい。
僕とお姉ちゃんとお父さんと3人
僕が泣いてるとそっと手を握ってくれるお姉ちゃん、そんなお姉ちゃんが、大好きだった。
しかしある日、突然家族は崩壊した。
株やらの失敗だそうだ。莫大な借金を背負ってしまった。
数億に及ぶ借金は、家を売り、家具を売り、全てを売っても全然足りなかった。
ある日、お父さんはどこかへ消えた。崖の下で遺体となって見付かったそうだ。
しかし数億の借金をチャラにする程、金貸しは甘くない
四畳半のアパートに二人残された所に来たのは、その金貸しだ。
なんと、借金の返済のために売られたのは、僕ら姉弟だった。
351掌 2/14:04/08/10 19:22 ID:9jGmdgVY
身体を売って金を返す。イマイチその時は意味が分からなかった。
僕らが身体を張ったショーを披露するらしい、だがサーカスなどという優しいものではないらしい。
詳細を聞かされ唖然とした。
姉弟同士の種付け交尾ショーだそうだ。
無論未成年、違法ではあるが、警察や政治家、治安を守るべきお偉いさんの人達も利用してるため
もはや暗黙の了解となってるようだ。マスコミ関係も抑えてる為、外部には一切漏れない。
つまりは闇風俗。道徳も法も無い。
お姉ちゃんは昔から僕が見てもたまに見とれるほど可愛い。クラスじゃちょっとしたアイドルだ。
その容姿のせいで痴漢に襲われそうになったこともあったそうだ。
僕はそのお姉ちゃんに似て、元々女と間違えられるほどの女顔だ。そういった趣味の人からたまらないらしい。
強制労働という選択もあったらしいが、容姿端麗との事でこちら側に回されたそうだ。
頭が真っ白になり呆然としてる僕ら姉弟を男はワゴンで荷物と一緒に積め、どこかへ連れ去った。
そのまま100人くらい入る小さな会場に連れて行かれる。
ここが例の闇風俗なのだろう。
まだ客は一人もいない、薄暗い会場の真ん中にスポットライトが当たるステージがある。
一段高い広い丸い台、そこでショーを披露するらしい。
352名無しさん@ピンキー:04/08/10 19:28 ID:XTUsAbMH
支援
353掌 3/14:04/08/10 19:28 ID:9jGmdgVY
まず低い舞台の上に立ち、全裸で挨拶。戸籍を客に見せ本物の姉弟である事を証明する。
弟のペニスを姉が咥え激しくしゃぶり、そのままシックスナインの姿勢でお互いに舐めあう。
そして本番へ、正上位、騎上位、色々と変えながら姉弟でセックスを繰り返す。
無論、中に出す。姉が股を開いて精子が中に出された事を客に見せる。
後は客全員に犯される形となり、満足行くまで口や肛門や膣やペニスを好き放題に嬲られるそうだ。
説明を受けてるだけでめまいがした。

この予行練習は種付けも兼ねてるらしい。
そういえば前にお姉ちゃんは何か注射を受けてた、カプセルのようなものも飲んでいた。
中身は排卵誘発剤や色々だそうだ
客には幼女にみさなんの精液で種付けと銘打ってあるが、実際は僕の精子で孕ませる。
何でも雑種が混じるとどんな子供が生まれるか分からないからだそうだ。
一代目では奇形児も生まれることはそうはないらしい。
つまりは容姿を一定の基準に保つため、血統書付き。ろくでもない。

震える僕の手をお姉ちゃんはそっと握り、
誰のか分からない子供を孕むなら、弟の子供を孕んだほうがいい。
そういってくれた。
354掌 4/14:04/08/10 19:29 ID:9jGmdgVY
ステージに上がり挨拶をする。
恥じらいのため股間を押さえてる僕ら姉弟の姿を見て、男は容赦無く鞭を振り下ろした。
身体が裂けた、そう思った。激痛に身体を捩り倒れこむ僕にさらに二発三発。
すっかり萎えた股間にお姉ちゃんが顔を沈める。
一緒に風呂に入ることも最近では無くなった、そんな僕のペニスを間近にみて一瞬戸惑うお姉ちゃん。
ヒュッと鞭が鳴りお姉ちゃんの背中を叩いた。しかし悲鳴は押し殺していた。
僕のペニスをお姉ちゃんは一舐めして思い切って咥えた。
あのお姉ちゃんが僕のペニスを咥えてる、それだけでお姉ちゃんの口の中で僕のペニスは大きくなった。
弟の変化に顔を真っ赤にし戸惑うお姉ちゃん。しゃぶるどころではない。
舌がどうだの音がどうだのと口に含んだままお姉ちゃんはひたすら鞭を浴びた。
シックスナインの姿勢で交わり、僕はお姉ちゃんの性器を一心不乱に舐め続けた。
初めて見るお姉ちゃんのその一筋の割れ目、お姉ちゃんは見られるのも舐められるのも初めてだろう。
「あっ・・・・」僕のペニスを咥える口から声が漏れる。
お姉ちゃんの股間が濡れているのは僕の唾液だけじゃないはずだ。
355掌 5/14:04/08/10 19:30 ID:9jGmdgVY
準備が整った。
いよいよ姉弟でセックスを始めなければならない。
ペニスを立て横たわった僕の上にお姉ちゃんが乗っかる、騎上位というらしい。
膝立ちで僕のペニスの位置を合わせ、そしてゆっくりと腰を沈め・・・
少しペニスが当たり、膣口を広げたあたりで動きが止まった。
近親相姦の禁忌だろうか、処女喪失の恐怖だろうか。
全身に鞭を打たれながらもそれ以上腰を沈める事ができない。
やがて、意を決したかのように、腰を再び動かして僕のペニスを咥え込む。
一気に根元まで入り、完全にお姉ちゃんの中に埋まった。
肩で大きく熱い息を吐き、僕と目が合う度に顔を真っ赤にする。
そのまま上下を繰り返し髪を振り乱す。吹っ切れたのだろうか、本能が動かしているのだろうか。
僕は、お姉ちゃんの中に精液を吐き出してしまった。同時にお姉ちゃんの膣がキュッと締め付け痙攣する。
しかし、ペニスを抜かずに繋がったままお姉ちゃんを下に組み敷き、正上位へと移動する。
この方が精液を子宮にまで流し込みやすいらしい。
ようやく引き抜く事を許され、膣口から精子が零れ落ちる。
お姉ちゃんはステージに身体を投げ出し、呆然と中を見上げていた。
だが、本来はここからが本番となるのだ。

一通り予行練習は終わった。
鞭のせいで全身ミミズ腫れ、身体に心にいやって程に忠誠を教え込まれた。
心身共にメチャクチャにされた僕らは、薄暗く狭い独房のような部屋に閉じ込められる。
ボロボロのベッド、食事は一日2回、栄養剤のようなものをよく分からない流動食で流し込む。
部屋からは出れない、唯一の窓は鉄格子付き、夜になればあの悪夢のようなショーが待っている。
要するに、地獄だ。
356掌 6/14:04/08/10 19:30 ID:9jGmdgVY
ここに来て3ヶ月。
慣れぬ事に僕達はボロボロだ。
僕の肛門は直腸があちこち裂けてる。睾丸を強く抓られたせいで未だに激痛が残る。
お姉ちゃんの膣は赤く腫れて熱を帯びてる。大勢の客を相手にし酷使したせいだ。
そんなお姉ちゃんを犯さねばならないのだ。
傷付いた膣に僕のペニスを突き立て出し入れする度に苦悶の表情を示す。
しかし少しでも手を抜けば容赦無く鞭で叩かれる。
「私は大丈夫だから」と気丈に振舞うその笑顔が心に痛い。
そういえば、お姉ちゃんの下腹部が目に見えて膨らんできた。もちろんあの時の子だ。
「お疲れ」と優しい声がかけられる。
同じく親の借金の肩代わりで連れてこられた、僕達と同じ部屋の同居人だ。
僕より8つも年上の16歳の先輩である。
新入りである僕達に彼女は優しく接してくれた。彼女だってつらいに違いない。
この部屋にいるときだけは全てを忘れられたのだ。こんな状況でも一緒に笑いあう事だって出来た。
そんな彼女は、部屋のくすんだ色をしてるベッドで大きく膨らんだ腹を抱えくつろいでる。
これから出産ショーが控えてるらしい。
涼しい眼をしたセミロングの美少女、客から大人気だそうだ。
そんな彼女の出産ショーは満員。会場は異様な熱気を帯びていた。
彼女が立ち上がる。ちょっと大きめの乳房に付けられたピアスが揺れる。
「じゃ、行ってくるね」
しかし、彼女は帰ってこなかった。
357掌 7/14:04/08/10 19:31 ID:9jGmdgVY
元々、心臓も弱く病弱だったらしい。華奢で色白な身体はそのせいだった。
ただでさえ負担のかかる出産、出産前に犯され、出産中も犯され、出産後に犯され・・・・・。
何の処置もされず、ひたすら男に嬲られ続けた結果がこれだ。
命を賭して産んだ子供は死産。
亡骸は産んだばかりの子供と一緒に細かく切り刻まれて生ゴミとして捨てられたそうだ。
彼女は希望だった。笑顔をくれる彼女がそれだけで薄暗いこの部屋に光が灯った。
しかし彼女は、何も残せず、何も残らず、借金も苦しみも存在も全てが消えてなくなった。
今、お姉ちゃんは僕の子供を孕んでる。産まなければならないだろう。
死ぬかもしれない、いや殺されるかもしれない。
お姉ちゃんは悲しみと恐怖のあまり、歯をカチカチと鳴らし大きく身体を震わせ部屋の隅で声を殺して泣いていた。
僕は、ただ泣くだけしかできなかった。
358掌 8/14:04/08/10 19:31 ID:9jGmdgVY
それでも無情に時は流れ。
お姉ちゃんは臨月を迎えた。薄い胸に似合わぬ大きく膨らんだ下腹部。
僕はショーの度にお姉ちゃんを犯し続けた。僕の精液はお腹の中の子供までも届いているだろう。
男達もお姉ちゃんの膣を貪り食った。妊娠で敏感になってる膣に肛門に、遠慮無しに肉棒を叩き込んだ。
苦しいに違いない。でも僕に何ができるというのだろう?
一週間後、出産の時を迎えた。
お姉ちゃんは陣痛誘発剤なるものを注射され僕らは会場へ向かった。
薄暗いステージの上でお姉ちゃんは突然苦しみだした。陣痛なのだろう。
立ってもいられぬ痛みに膝を付くお姉ちゃん、しかし僕はそんなお姉ちゃんを犯さねばならなかった。
後ろからお姉ちゃんの膣に僕のペニスをねじ込んだ。
「いいいぃ・・・・・・ぎぃ・・・」歯を食い縛り耐えていたお姉ちゃんから悲鳴があがる。
それでも責めを休めるわけにはいかない。後でどんな罰を受けるか分からないからだ。
腰を大きく動かし激しく責め立てる。
ふと、お姉ちゃんの身体から力が抜ける。まるで配線が切れたかのように。
四つんばいのままだらしなく前のめりに倒れる、失神してしまったようだ。
それでも僕は腰を止めなかった。命令だから?ショーだから?罰が怖いから?
そうじゃない、僕の中に密かに沸いてた加虐心。それが僕を動かしていた。
理性ではお姉ちゃんに対する罪悪感で一杯だ、しかし本能は全く逆の行動を起こしていたのだ。
自らの精液で孕ませたお姉ちゃんが僕のペニスをぶち込まれ失神してる。その禁忌が欲望を駆り立てた。
359掌 9/14:04/08/10 19:31 ID:9jGmdgVY
ふとお姉ちゃんの股間、僕のペニスの上あたりから黄色の液体があふれる。
気を失い力が抜け、お姉ちゃんはおしっこを漏らしてしまったのだ。
瞬く間にジョボジョボと大きな水溜りになってしまった。僕はお姉ちゃんの中で果てた。
抱えてたお姉ちゃんの腰を離しペニスを抜くとそのまま前のめりに倒れこんだ。
膣から漏れる精液とおしっこの水溜り、お姉ちゃんはその中にビチャっと身体を落とした。
会場の熱気は頂点だ。失神したままお姉ちゃんは大勢に犯された。
僕はもう、何も分からなくなった。
お姉ちゃんは犯されながら出産を終えショーは終わった。
肛門に実の弟ペニスを捻じ込まれながら大股開きで出産。
あの狭い膣口から胎児の頭が覗いた所で、お姉ちゃんは激痛のあまり再び意識を失った。
しかしビンタですぐに覚醒され、地獄に戻された。
口の端から泡を吹きながらも、お姉ちゃんは出産と言う大儀をやりおおした。
ぐったりとしてるお姉ちゃんはその後3時間に渡って犯され続けた。
ボロボロのお姉ちゃんを身体を僕が背負い、ベッドに横たわらせる。
意識があるのか無いのか分からない。膣から流れ出る血と精子を何度も拭った。
心も身体も嬲られ尽くされた、しかし、僕らは生き延びた。

筆舌に尽くしがたい屈辱と暴行を受け続け得た挙句、ショー1回で得られる金が二人で1万5000円。
(一回のショーで得られる収入はそれの何百倍となる、1万5000なんて、端金だ)
後は食費と寝床代として5000円が引かれ残った1万は丸ごと借金返済に当てられる。
出産ショーは特別ボーナスとして3万、無論全て返済用。
身体をすり減らし、ほぼ休み無しで毎日働いて一ヶ月で30万、一年で1000万近く。
この年にしてはとんでもない大金だが、それでも数億という借金返済には遠く及ばない。
360掌 10/14:04/08/10 19:31 ID:9jGmdgVY
それから5年間僕らは犯され続けた。
毎日のように大勢の目の前でお姉ちゃんと交尾を繰り返した。
舐める様な視線を受け僕達の身体は男達に貪り食われる。
姉弟二人、ぎゅっと手を握りながら耐え、それが男達の残虐な欲望を駆り立てる。
臨月の腹を抱えようとも、肛門が裂けようとも、ショーはひたすら続けられた。
遠く霞んだ日常はもはや別世界。安息なんてどこか異次元にのみ存在する。
船の狭い貨物室で荷物と一緒に運ばれ連れて行かれ、どこか外国の地でショーを行った事もあった。
(暗く狭く身体がガタガタ震えるほどの恐怖と不安の中で、その間もお姉ちゃんは僕の手をぎゅっと握り締めてくれた。)
お姉ちゃんの出産数も10歳の頃から5回。孕んでは産んで、産んでは孕んで・・・・
今は6人目の子供を孕んでる。一人出産するたびに1000万分の返済となる。
5000万、普通に働いていたら拝めないであろう大金だ。
しかし数億という借金の前では焼け石に水。当然、子供も同じ運命を辿るのだろう。
ひたすら犯され孕まされ産まされ続け・・・・親子何代かかるかは分からない。
だがそうしてようやく払えるであろう金が数億である。
361掌 11/14:04/08/10 19:32 ID:9jGmdgVY
そしてふと僕達の体が異常である事に気付く。
ペニスは普段の状態でも15cmを超え、勃起すれば25cmに届く長さだ。
太さも直径は5cm。睾丸も小さな子供の拳くらいはある。その性器は店に来るどんな客よりも大きい。
そのくせ陰毛は全く生えず脛毛も無い。顔も未だに髭も生える事無く、男らしさとは無縁だ。
お姉ちゃんも同じく、陰毛も無駄毛も皆無。乳首や陰部の色素沈殿も無い。
その乳房はトップとアンダーの差が40cmを超える不自然なほどの巨乳だ。
当然、乳首を摘めば母乳も吹き出る。
妊娠と出産を何度も経験してるが、いわゆる出産太りとは無縁の体型。
子供らしさの残る15歳の少女の細くスレンダーな身体に、巨大な乳房と孕んだお腹が異様な対比となる。

そういえば僕達は昔から色々なクスリを投与されてた気がする。
普段からよく分からないカプセルや粉薬を飲まされたり、色々だ。
睾丸に太い針で何度も様々な種類の薬品を注射された事もあった。
(激痛のあまり40℃の熱まで出す地獄だった。フラフラになりながらも"仕事"はやりおおしたが)
お姉ちゃんはお姉ちゃんで排卵誘発剤を始め、しょっちゅう何らかの薬を打たれていた。
乳首や卵巣に直接注射をされてた事もあった。
僕には卵巣など感覚的には分からないが、歯を食いしばり脂汗を流し
のたうち回りながら必死で痛みに耐えてたお姉ちゃんを見れば相当な激痛である事は分かる。

そんな肉体改造を受け、ようやく「出荷」の準備が整ったらしい。
362掌 12/14:04/08/10 19:32 ID:9jGmdgVY
男に僕らの運命を聞かされた。
僕達を一人1億で買ってくれる人が見付かったのだ、当然、奴隷としてだ。
お姉ちゃんは東南アジアの富豪にだそうだ。
屋敷の地下牢に監禁され麻薬漬けにされ来客にその身体を振舞う。
ここでは比較にならないほどの地獄のような責めを受ける為、多くは1年もかからず嬲り殺されるらしい。
僕はアメリカのゲイ専用の裏風俗に引き取られる。
身体の小さい日本人は幼く見られ、その手の人達に高値で取引されるらしい。
そこで毎日毎日犯され続ける・・・ここと同じようなものだろう。
ただ、25歳までには医療関係に売り飛ばされ様々な生体実験を繰り返され解体されるらしい。
要するに、僕らは殺される。
この身体に全ての欲望と罪を背負い捨てられる、まるで雑巾のようだ。
しかし、元よりここに来た時点でこうなる事は分かっていた。
今更死の運命にショックは受けなかった。
それよりも、僕らが離れ離れで死ぬと知ったことが何よりもつらかった。
363掌 13/14:04/08/10 19:32 ID:9jGmdgVY
お姉ちゃんは薬漬けにしてから出荷されるようだ。
初めの一本目がお姉ちゃんに打たれる。
恐怖に顔を強張らせるお姉ちゃん、針が手首に突き刺さり液体が体内に送り込まれる。
目が、見開かれた。
「あっあっああっああああ」半開きの口から涎を垂らして言葉にならない何かを発してる。
髪を振り乱しながら床を転がり、ビクンビクンと細かく震え悶えている。
男は黒いカバン一杯の注射セットが置いて出て行った。
後は自分で打てという事だ、冗談じゃない、誰が好き好んで。
しかしこの薬はそんな意識も吹っ飛ばすほどの依存性があるのだろう。
もう理性など残っていないのだろうか、突然、中空を見つめ大声で笑い始めた。
お姉ちゃんが壊れていく。あの優しいお姉ちゃんが、。
数時間後、お姉ちゃんはようやく我を取り戻した。
禁断症状に身体を震わせ割れんばかりの頭痛のを抱えてる。
僕はカバンの薬を全て投げ出し、一つ残らず割った。
こんなもの、こんなもの!
364掌 14/14:04/08/10 19:33 ID:9jGmdgVY
ようやく落ち着きを取り戻したお姉ちゃんが口を開いた
「一緒に・・・・・・」最後まで言わずとも分かった。僕もお姉ちゃんと同じ事を考えていたからだ。
小さな僕らに突然のしかかった罪、理不尽な欲望と暴力。何故こんな事になったのだろう?
錆びた鉄格子を壊し、窓から身を乗り出し空を見上げた。
久しぶりに眺める広い空。
空も雲も風も、遠い昔お姉ちゃんと一緒に手を繋ぎ歩いてたあの世界と同じだ。
今、お姉ちゃんは僕の隣で震えてる。
そういえば、怖いとき、痛いとき、どうしようもないとき、お姉ちゃんは僕の手を握ってくれたっけ。

今度は僕がお姉ちゃんの手を握ろう。

お姉ちゃんに、微笑みが戻った。そして





固く手を取り合ったまま―――――





・・・・・・・・・・・・・・・・          END
365名無しさん@ピンキー:04/08/10 19:39 ID:XTUsAbMH
けっこう抵抗あるなぁ・・・でも乙。
366名無しさん@ピンキー:04/08/10 20:46 ID:zy/4G/dQ
これを読む事前にとある事件のスレを読んでいたので、
抵抗はあったけど…純粋に二人のラヴストーリーとして
読ませていただき、最後には涙が滲みました。乙です。
367名無し155:04/08/10 23:48 ID:chFu3Y88
掌氏、乙。泣きました。
小説とわかっていても、
実際、ありうるかと思ってしまう描写力。
…でも今度は甘々純愛ものを書いてほしい、いや、嫌ならいいんですよ。
368名無しさん@ピンキー:04/08/11 00:39 ID:A3O9Vh/v
・゚・(ノД`)・゚・。  本当に泣きました・・・。
369名無しさん@ピンキー:04/08/11 06:14 ID:fDaQulG3
流石にこれで抜けないよなぁ。。。居るんだろうか?このSSで興奮して抜ける人?
鬼畜は駄目って訳じゃないけど救いがなさ過ぎるのはちときついです。
370名無しさん@ピンキー:04/08/11 12:10 ID:YcBkIlnD
窓の下が意外と低くて無事脱出、って展開・・・・。
371名無しさん@ピンキー:04/08/11 15:06 ID:5o5pHuJi
BADENDでもいいから、鬼畜共を中骨クラッシュ鮭缶みたいにしてくれる
ヒーロー出してスッキリさせてよ・゚・(ノД`)・゚・
372名無しさん@ピンキー:04/08/12 02:28 ID:f/fWPv8I
週刊少年チャンピョンのアクメツがこの悪人どもを皆殺しにしてくれ、いやマジで
373名無しさん@ピンキー:04/08/12 21:47 ID:BAy3l5Kt
掌氏、乙です!
こういうシチュ大好きなんだけど、やっぱ抵抗ある人多いのかなぁ……
374名無しさん@ピンキー:04/08/12 23:36 ID:dT43tC+G
ノンフィクション
375名無しさん@ピンキー:04/08/12 23:42 ID:ssNAyO2b
吐き気がする。
こんなんで抜ける奴いるの?
376名無しさん@ピンキー:04/08/12 23:45 ID:A8pEknHd
>>349を見れ
377名無しさん@ピンキー:04/08/13 00:30 ID:3B3oPj+S
10歳の少女が妊娠できるか?
8歳の少年が妊娠させられるのか?
鬼畜ストーリー以前にそこがひっかかった。
378名無しさん@ピンキー:04/08/13 00:33 ID:beUZkWl0
最初にこういう感じの鬼畜系を見たときは本当に吐き気がするくらい嫌な気分になった。
今はそれほどでもないけど、やはり抵抗はある。

でもたまにこういうの見掛けちゃうから、
いざ純愛物がさらに甘ったるく感じられるよな、

まぁ鬼畜には抵抗あるから、基本的にスルーだけど。
なにはともあれ乙。
379薄給杉:04/08/13 17:30 ID:19/PdHlL
・・このように希少価値があるショーを提供する二人が日給一万円か?
鬼畜ストーリー以前にそこがひっかかった。

無印状態でも二人で二十万円程度はあげるべきだろう。
また出産時などは百万程度はあげるべき。
生理時は姉は二十万ぐらいが妥当だろう。
巨根、巨乳になればなるほど出演料は上がっていくべき。
赤ん坊一人につき五百万以下なら公正取引委員会が乗り出してくるぞ。
そう考えると、借財数億と言っても二、三年で返せる筈だ
380名無しさん@ピンキー:04/08/13 17:42 ID:wQYQ2jSC
>公取が出てくる
ワロタ
381名無しさん@ピンキー:04/08/13 17:48 ID:Ubn97UbX
給料なんて、いつかは借金を返して自由の身になれるという希望を抱かせて、
自殺したりするのを防ぐ為のものだからなあ。
382名無しさん@ピンキー:04/08/13 19:22 ID:EWK/X8nY
>>377
十分可能。
http://web.archive.org/web/20010219093841/www.daiwa-kensetu.co.jp/week/H120417/0417.htm

>>379
> 〜だろう。〜べき。
鬼畜になりきれてなければな。
383名無しさん@ピンキー:04/08/13 20:47 ID:yDV8BiRo
>>382
その幼女は一体誰にヤられたんだろうか……
384名無しさん@ピンキー:04/08/13 21:00 ID:VjaIYik6
>>379
奴隷同然のガキに高給を払ってどうするのよ
385名無しさん@ピンキー:04/08/14 00:25 ID:IrZ47Y91
>>379
「道徳も法も無い」ってあるやん。
そんな事言い出したら奴隷的拘束の禁止(憲法18条)、公序良俗違反(民法90条)、その他諸々で終了だ。
386名無しさん@ピンキー:04/08/14 02:15 ID:O4AZD7WV
このスレとはさ、ぜんぜん関係ないんだけど。

ここの住民が姉に告白するんだってさ

姉との日常会話〜(マジレス希望)3日目
http://human5.2ch.net/test/read.cgi/male/1091181530/
387名無しさん@ピンキー:04/08/14 07:46 ID:MO07Wgpt
>385
だったら一万円払うのも変だ。
払うならたくさん払わなきゃ。払わないならゼロで良し。中間項は有り得ん
388名無しさん@ピンキー:04/08/14 09:05 ID:c6AScMKA
別に重箱の隅をつつくこともあるまいに・・・
389名無しさん@ピンキー:04/08/14 10:19 ID:p4KcSpHU
0じゃ流石にやる気も萎えちゃうでしょ
それこそ早々に自殺してしまう
一応返済へ向かってるんだって気分だけは与えなくちゃ
なので生かさず殺さずのギリギリラインかも知れん

って何を議論してるんだ漏れは
390名無しさん@ピンキー:04/08/14 10:54 ID:Fz0fjox7
がたがたと細かいことに口煩い香具師が多いな。
377とか379とか何を求めてこのスレ来てんだろね、特に379
だから何なの?空気嫁よ。
お前らのくだらない疑問点挙げる前に純粋に作品に対する感想のひとつもないの


はい、すいません、自分が一番空気嫁てないね、ゴメンヨ。
391名無しさん@ピンキー:04/08/14 18:37 ID:jtQjsP0I
一応姉弟モノだし、読み応えあったよ。
作者の人はお疲れ様でした。
カナーリ鬼畜だから拒否反応起こす人もいるみたいだけど、
これはこれでいいと思う。異色モノとして。
392名無しさん@ピンキー:04/08/15 22:33 ID:AHE4tHSS
>>387
その通り、中途半端すぎなんだよね、そのあたりのスパイスが。

借金額は「無茶苦茶多い」とかって記述で十分。
いちおう仕事で返済になっている「らしい」で十分。

頭の中身はガキのママなんだから。
393名無しさん@ピンキー:04/08/16 09:58 ID:86e0k5G6
>>392
それはただのいちゃもんになってるぞ
>>389みたいな理由じゃ駄目なのか?
脳内補正ならいくらでもできるぞ
394名無しさん@ピンキー:04/08/16 22:49 ID:4SaoY8f4
ネパールとかじゃ債務奴隷って制度がマジでまだ残ってるらしいね。
親や祖父母が残した借金を払う為に半ば強制的に労働させられるみたい。

ってスレ違いやね、消えます。
395名無しさん@ピンキー:04/08/17 21:56 ID:376ukPYL
>>394
ネパールは地球上に最期に残った専制君主国ですからそういうのがあっても不思議ではありませんね
(実態はサテオキ他の君主制の国は立憲君主国を標榜しているはず)
396名無しさん@ピンキー:04/08/18 01:50 ID:8sXVaSuj
盛り上がっているトコロ申し訳ないが、そろそろこの談義に辟易してきたんだが…


まさか皆、萌を忘れてしまったか…
新たな職人降臨待ちしてみるテスト
397名無しさん@ピンキー:04/08/18 01:52 ID:Hde+fzP8
>>343の続きも気になりますな(*´Д`)
398ほらよ>>396:04/08/18 23:59 ID:9SdcIGQs
「どうしよう、ちーちゃん!お姉ちゃんAIDSになっちゃった!」
「氏ね」


             ―完―
399続きドゾー:04/08/19 19:58 ID:xqbR4ptT
「アタシ一人じゃ死なないわよ!アンタをヤり殺してやるぅ!!」
「AIDSバンザーイ!!」
400おきゃんぴー:04/08/20 16:02 ID:3RH7wIQp
分け入っても、分け入っても乳。今、僕は実の姉を目の前にして、そんな
事を思っている。

「こら、博ちゃん!お姉ちゃんの話を聞いてるの?」
おっと、姉ちゃんのカミナリが落ちた。自己紹介と現況を手早く説明すると、
僕は山城博信(やましろ・ひろのぶ)。通称、博ちゃん。今年、高校入学を
果たしたはいいが、勉強に身が入らず、一学期の成績を散々な結果で飾っ
てしまった、ちょいとおきゃんな男である。

「通知表がオール1って・・・人間業じゃないわ」
姉ちゃん・・・名前は沙織ちゃん。我が姉にして、某有名私立高校で教鞭を
ふるう、お願い先生って感じのお方が、僕の通知表を見てため息をついて
いる。ちなみに姉ちゃんは、お肌の曲がり角を迎えた二十五歳の美女。勤務
先の学校では、男子生徒たちから毎日のようにラブレターを貰い、同僚の男
教師たちからは連日プロポーズされるという、美人女教師であった。

「えへへ・・・そんなに褒めても、何も出ないって」
「褒めてない!」
人間業ではない・・・という言葉に、お褒めを預かったと勘違いをした僕へ、
姉ちゃんが吼えた。おお、怖い!実は姉ちゃん、教師という職業柄ゆえ、不勉
強にとっても厳しいのである。その上、仕事で多忙な両親に代わって、僕の
高校生活を監査する役割を担ってもいた。

「ちゃんと、おミソ入ってるのかしら・・・?」
姉ちゃんがそう言って、僕の頭を指でくりくりと小突く。無礼極まりない所業だが、
オール1を獲得した男に反論など出来るはずもなく、僕はただ、姉ちゃんの胸元
を見ているだけ。ついでに言っておくと、姉ちゃんは非常に恵まれた肢体の持ち
主で、バストは九十センチを越えるスイカップ。それらがぼよんと目の前で揺れ
る様は本当に悩ましい。ちなみに冒頭の文句は、この状況を表したものである。
401おきゃんぴー:04/08/20 16:26 ID:3RH7wIQp
「博ちゃんには、教育的指導が必要ね」
姉ちゃんが、僕と顔を突き合わせながら言う。あっ、何かいい臭いがする。
これは多分、駅前のケーキ屋さんで買ってきたシュークリームの臭い・・・
体重を気にしていると言っていたのに、あんなに高カロリーな物を食して!

「今日から、夏休み中は毎日、お姉ちゃんが勉強を教えてあげます」
バニラエッセンスの香りに鼻腔をくすぐられている間に、姉ちゃんは僕を見
下ろしつつ言い放つ。な、なんですと!冗談じゃない、生涯にただ一度しか
無い、高校一年の夏休みを勉強で過ごすなんて!

「いやだあ!僕は、遊びたいんだよ!」
「ぐだぐだ言わない!さあ、さっそく勉強開始!」
拒む僕を、姉ちゃんはいとも容易くヘッドロックで戒めた。言い忘れていたが、
姉ちゃんは武芸にも秀でており、無芸大食を自認する僕ではとても抗えない
女丈夫。しかし、頭を固められた時に、スイカップボインが頬に当たって、満更
でもなかったり。
「分かったから、ヘッドロックを外して!頭蓋骨が割れちゃうよ!」
もともと、厳しいが優しくもある姉ちゃんの命令には逆らえない。そうして、僕
は自室へと連れ込まれ、机の前に座る羽目となったのである・・・・・

「まずは、期末テストを見せてごらん。苦手なところを、お姉ちゃんがチェック
してあげるわ」
むっちりとした太ももを見せつけながら、僕の隣に陣取る姉ちゃん。近視なので、
勉強を教える際にはメガネを着用。うむ、知的だ。

「はい、期末テスト。恥ずかしいから、あんまりまじまじと見ないでね」
「何、バカ言ってるの。さっさとよこしなさい・・・」
僕が学科別に期末テストを手渡すと、姉ちゃんの顔色がさっと変わった。無理も
ない。何せ全教科、一ケタ台の点数しか取れていないのだから・・・
402おきゃんぴー:04/08/20 16:51 ID:3RH7wIQp
「こっ・・・これは・・・」
カサカサとテスト用紙を鳴らす姉ちゃん。ぷるぷると肩が震えているのは、
怒りのためであろうか。

「僕なりに、頑張ったんだけど・・・力及ばず・・」
姉ちゃんの怒りを和らげようと放ったこの言葉が、結果として火に油を注ぐ
事となる。姉ちゃんはテスト用紙を全て見終わった後、一呼吸おいて・・・
「この・・・バカちーん!」
と、怒り爆発君。そして椅子を蹴り、再びヘッドロックをお見舞いしてきた。

「ごめんよ、姉ちゃん!」
「こんなおバカさん、見たこと無いわ!さあ、今から猛勉強よ!このままで
は、高校を卒業出来ないどころか、進級だって危ないわ!」
勤め先では非常に冷静で、理知に溢れる教師と噂が高い姉ちゃんも、僕の
前ではいつもこんな感じ。今だってほら、僕の頭を腕で決めるためにガニマタ
となっているので、たくしあがったミニスカートの裾からパンティが丸見えにな
っている。もっともこれを粗忽というよりは、超弩級のバカな弟を持った彼女の
悲運を嘆くべきなのかもしれない。いててッ!そんな事をのんきに言っている
場合じゃなかった!今、頭蓋骨がピキっていったよ!ピキって!

「さあ、勉強を始めるわよ。分からないことがあったら、何でも聞きなさいね」
「・・・あい」
ヘッドロックからバックブリーカー。更にその後、空気投げで僕をベッドへ放り
投げた姉ちゃんは、ようやく落ち着きを取り戻したようで一安心。やれやれ、
勉強は嫌だが、姉ちゃんの暴力もごめんなので、一応は机に向かうか・・・
なんて思いつつ、立ち上がろうとすると・・・
「いてッ・・・」
くるぶしのちょっと下のあたりに、鈍い痛みが走った。どうも、投げ飛ばされた
時に、足をひねったらしい。
403おきゃんぴー:04/08/20 17:07 ID:3RH7wIQp
「どうしたの?博ちゃん」
「なんでもない。ちょっと、ひねったみたい」
「ええ!」
僕の異変に気づいた姉ちゃんが、血相を変えて近づいてくる。その目には
はっきりと困惑の色が見て取れ、心底僕を心配しているようだった。

「ごめんなさい・・・どこが痛むの?」
「平気だよ。どうってことない」
姉ちゃんがおろおろしながら、足首をさすってくれている。この時、僕の両足
をまたぐように座った姉ちゃんのスカートの中身が丸見えとなり、激しく萌え。

「やりすぎちゃったわね・・・本当にごめんね」
涙の玉を目のはじに蓄えながら、姉ちゃんは何度も謝った。優れた理知を持
ち、力強さも兼ね備える姉ちゃんではあるが、実は涙もろい一面も有している。
それ以上に、いつも僕のことを心配してくれる、弟思いの優しさも──だ。

「もう、痛くないから・・・大丈夫だよ」
「本当?じゃあ、ちょっと足首を動かしてみて」
足首をひねりはしたが、大事には至っていない。だから、心配そうな姉ちゃん
を安堵させるべく、僕は足の先に力を入れた。

「あッ・・・いやん」
足の指先に力を入れた途端、姉ちゃんはぽっと頬を赤らめ、僕を責めるような
目つきとなる。それもそのはず、僕の足の指は姉ちゃんのスカートの中にあり、
その先端がちょうど、女の人の大事な所に当たっていたからだ。
404おきゃんぴー:04/08/20 17:26 ID:3RH7wIQp
「ね、ちゃんと動くでしょう?」
「い・・・悪戯はよしなさい・・・博ちゃん」
僕は足の親指で、姉ちゃんの敏感な所をコチョコチョと掻いた。素足の指
はちょうど、パンティのクロッチ部分に突き刺さり、僕の両足を跨いでいる
姉ちゃんのアソコを撫でている。

「ああ・・・だめよ・・いけない」
「姉ちゃんが、動かせって言ったんじゃないか」
「そ、そうは言ったけど、こんな悪戯をして・・・って意味じゃ・・」
足の指先に温かい感触を得た僕は、今ここではっきりと姉を欲望の対象と
見ることにした。割れ目をなぞる足先に、姉ちゃんの──否、女の官能を読
み取ったからである。

「形勢逆転ってところかな」
僕はむずがる姉ちゃんの手を取り、体ごと抱き寄せた。そして、異性の羨望
の的である、スイカップバストを手中へと収めていく。
「いやッ!よしなさい!ひ、博ちゃん・・・」
ぎゅむっと乳房を揉むと、クリームの詰まったボールのような感触が──
それは、柔らかいのに弾力があり、強く握れば乳肉の中に指が沈んでいく、
極上の品質を持った女の双丘であった。

「ああ・・・も、揉まないで」
「いやだったら、僕を殴ればいい。さっきみたいに」
「そんな!ああ、博ちゃん・・・」
こう言っておけば、さっきみたいに投げ飛ばされる事もあるまいと、僕は意地悪
く囁いた。そして、胸をまさぐりながら、硬くしてしまった股間へ姉ちゃんの手を
そっと誘う。
405おきゃんぴー:04/08/20 17:38 ID:3RH7wIQp
「ここが、腫れてるみたいなんだけど」
「こッ・・・これは・・・いやッ」
もっこりと男を形作った僕のチンポに触れた途端、姉ちゃんは身を硬く
して顔を赤らめた。教師というお堅い職業にあっても、これが何を意味
しているかくらいは分かるに決まっている。

「ねえ、ちょっとズボンから出してくれないかな?」
「バ、バカを言わないで!」
「チンポの先が痛むんだ。さっき、姉ちゃんに投げられた時、怪我をした
かもしれないよ」
「そ・・・そんな」
先ほどのことがあるので、姉ちゃんには負い目がある。僕はそこへつけ
こみ、カチカチに強張った暴れん棒を姉ちゃんに触って貰うつもりなのだ。

「さあ、早く」
「わ、分かったわ・・ああ・・・」
姉ちゃんは白い指先を震わせながら、ズボンのジッパーを下ろしはじめた。
ジーッ・・・と金属音が部屋の中に鳴り響いた後、僕の暴れん棒はがくんと
弾け、その様相を完全に露呈する。

「いやッ・・・こ、こんな・・」
「腫れてるでしょ?ちょっと、触って確かめて」
「こ、これは・・・そういうのじゃ、無いでしょ・・博ちゃん、お姉ちゃんを困らせ
るのはやめて、大人しくして・・・」
ギンギンと恥ずかしげも無くいきり勃つ、僕の分身。姉ちゃんはそれを見て、
ただ身を震わせるばかりであった。
406おきゃんぴー:04/08/20 17:57 ID:3RH7wIQp
「姉ちゃん、おしゃぶりしてくれないかな?」
「ええ?」
「こなったらもう、僕のこれ・・・出さないとおさまらないんだもん。ねえ、
姉ちゃん・・・いいでしょ?」
「だ、駄目よ・・・あたしたち、姉弟なのよ」
「セックスさえしなければ大丈夫だよ」
僕の暴れん棒は、姉ちゃんの顔の前で今なお、忌まわしいほどの滾
りを見せていた。当然、こうなれば一応の決着をつけなければ、収まる
事は無い。

「それでも・・・こッ・・・これをしゃぶるなんて・・・お姉ちゃん、出来ないわ」
姉ちゃんはそう言って顔を伏せた。まさか、二十五歳という妙齢にあって
異性との経験が無い訳でもなかろうに。しかし、万が一という事も、無きに
しも非ずなので、念のため聞いてみよう。

「もしかして・・・姉ちゃん、エッチしたこと無い・・・の?」
「・・・う、うん」
なんて事だ!姉ちゃんは、誰もが羨むような美貌を持った女性であるにも
関わらず、二十五年もの間、純潔を守っていたのだ。それを知り、我が愚息
は更なる獣化を果たし、今やとぐろ巻く毒蛇の如し。

「だから・・・おしゃぶりなんて・・・出来ないの・・お願い、分かって・・」
先走りを漏らすチンポを前にして、姉ちゃんは言った。むう、どうしよう。処女
にチンポをしゃぶれとは、ちょっと酷な要望である。しかし、愚息の方も白い
粘液を放出したいと、力を漲らせているのだ。そうなれば、妥協案を持ち上げ
る事が望ましくなってくる。僕の欲望と姉ちゃんの純潔を守る、ナイスアイデアが。
407おきゃんぴー:04/08/20 18:11 ID:3RH7wIQp
「じゃあさ、手でやってよ。こう・・・シコシコと」
「ええ!」
「それだったら出来るでしょ?」
「ま、まあ・・・それくらいだったら・・・」
勉強はまるっきり駄目だが、こういう事に関しては非常に頭が切れる僕。
こうして、姉ちゃんは手コキという妥協案を受け入れ、僕のチンポを扱いて
くれる事となったのである。

「うーん、気持ちいいよ、姉ちゃん」
「は・・・恥ずかしいわ」
寝転んだ僕のチンポを掴み、上下に手首を効かせる姉ちゃん。動きはぎこ
ちないが、そこいら辺がいかにも処女っぽくてよろしい。

「おッ・・・おちんちんって、こんなに熱いのね・・それに、硬い」
先走りで手をぬめらせた姉ちゃんは、そう言いながらチンポの先を凝視して
いる。手コキでカリがひきつると、尿道がぱっくりと割れてなんだか切ない。

「お姉ちゃんの手って、ひんやりしてるね。すごく気持ちいいよ」
僕は傍らに居る姉ちゃんの太ももを撫でつけながら、いい調子。きちんと正
座してはいるが、目線がちょうど内股の奥に合わさっているので、しっかりと
パンティの存在も見て取れて、まことにいい風情なのである。

「ああ・・・おちんちんが膨らんできた・・・」
ぷっくりと膨れっ面を見せる僕の暴れん棒が、絶頂の予感を得ている事を
悟って、姉ちゃんは困り顔。知識としては知り得ているが、処女ゆえに男の
爆発などというものを、見た事は無いはず。
408おきゃんぴー:04/08/20 18:25 ID:3RH7wIQp
「姉ちゃん、寝転んで!」
「きゃッ!急に・・・どうしたの?」
僕はチンポが爆ぜそうになった瞬間、姉ちゃんを押し倒した。そして、スイカ
ップバストをおもむろに掴むと、
「ここに出す!いい?動いちゃだめだよ」
そう言って、乳房と乳房の間に出来た隙間へ、我が愚息を押し込み腰を使い
出したのである。いわゆる、パイズリだ。

「きゃあッ・・・い、いやあッ」
乳房を犯された姉ちゃんの悲鳴が上がると同時に、僕は果てた。それも、姉
ちゃんの顔やメガネに向かって、大量の精液を放つという蛮行をかましつつ。
「くッ・・・くさーい!なに、これは・・・」
白化粧を施したような顔の姉ちゃんが叫んだ。その間も、僕は射精の快楽に
酔いながら、姉の乳房の感触を愉しみ、また貪ったのである。

「ああ・・・姉ちゃん」
「バカ!博ちゃんのバカァ・・・」
幾度かチンポがバウンドすると、ようやく放精も終わった。そして、僕は禁忌の
姉犯を予感する事となる。今はまだその時ではないが、いつかきっと僕はこの
人と結ばれるだろう。姉ちゃんの純潔を奪い、彼女の上へ君臨するのは自分で
ある──そう、胸に秘めながら・・・

「好きだよ、姉ちゃん」
不意にそんな言葉が出た。気障を気取った訳ではなく、本心で。すると──

「博ちゃんの・・・バカ」
ふうっと甘いため息をつきつつ、姉ちゃんは僕の体を抱きしめたのであった。

おしまい
409名無しさん@ピンキー:04/08/20 18:35 ID:cf9QZSLc
ネ申!?
410名無しさん@ピンキー:04/08/20 20:13 ID:abBAf2Wb
激しくGJ!!!
411名無しさん@ピンキー:04/08/21 15:53 ID:LQ9N+mVI
GJ!
本番編もキボン。
412名無しさん@ピンキー:04/08/21 16:08 ID:JOrm1BjS
すげぇ!感動した!勃った!
413名無しさん@ピンキー:04/08/21 22:47 ID:NkVNXlQU
お久しぶりに乙!
414名無しさん@ピンキー:04/08/23 22:57 ID:kBA/ycxe
ホメ殺し?
415名無しさん@ピンキー:04/08/23 23:05 ID:IgnCq9B9
おねぇさんにホメ殺されたいでつ。
416名無しさん@ピンキー:04/08/28 12:42 ID:BQ/FkudR

ho
417名無しさん@ピンキー:04/08/28 13:19 ID:d2KsPrre
mo
418名無しさん@ピンキー:04/08/30 00:27 ID:UsCksd27
どけ
419名無しさん@ピンキー:04/09/04 06:28 ID:X+yoEp7w
age
420名無しさん@ピンキー:04/09/05 00:24 ID:/GyIuVQ3
「美由紀ー。おいこら、みゆー」
 グラグラと揺さぶられる。ああ、目の前にあった美味しそうなルイズのパフェが遠ざか
っていくぅ……。
「起きろって、みゆー。こらー」
 ゆさゆさと揺さぶる力が、どんどん強くなっていく。
 ああ、もう!
「うっさい! トール!」
 がばっと起きて、怒鳴りつけた。
 目の前には学校指定のスラックスにTシャツ。その上にだらしなくワイシャツを羽織っ
ている、妙にかっちょいい男が一人。ツンツンに跳ねた髪は、苦心の末のセットだと分か
ってるし、細い眉もあたしのカミソリで苦心して作った代物だ……が、まあ良い。それよ
りも言いたいことは別にある。
「トール……あたし、昨日はレポートで遅かったんだから……寝かして……」
 ばふっと布団に飛び込みなおして、枕を抱える。けど、トールはそんなあたしの声を無
視して、不思議そうに尋ねてきた。
「え。でもみゆ、明日は早いから朝起こせって言ったじゃん」
 言われ、時計を見る。
 八時、十二分。いつもならまだまだ寝ている時間だけれど。
 けれども。
「ヤバッ! トール! なんでもっと早く起こしてくんないのよー!」
 昨日半ば徹夜で仕上げたレポートの提出が、今日の“一限目”なのだ。がばっと起き上
がると、トールは軽く肩を竦めて。
「はい、本当の時間」
 もう一つ、後ろ手に持っていたのであろう時計を、あたしの目の前に差し出した。
 七時十二分。
 ――それってつまり?
「目が覚めただろ?」
 満面の笑みで笑うトールに、あたしはフルフルと震える拳を振り上げて――
「この――――性悪弟―――――!!」
 振り下ろした。
421名無しさん@ピンキー:04/09/05 00:25 ID:/GyIuVQ3
「酷いよな、みゆは。ヒトがせっかく起こしてやったのに、殴りつけるなんて」
 カチャカチャと音を立てて朝食を摂る。その間中、ずっとトールはあたしの目の前で、
殊更に青く痣になった頬をさらけ出すようにブツブツと文句を言い続けていた。
「うっさい。大体、女の部屋に勝手に入ってくる時点で、アウトなのよ」
「だって、みゆ。扉の外から呼んだって起きないじゃん」
 ぐ、と言葉に詰まる。それを隠すようにコーヒーカップに口をつける。
 うん。美味しい。トールの淹れるコーヒーは格別だ。その辺の喫茶店にだって、負けて
ないと思う。
「……それに、嫌なら鍵しめりゃ良いじゃん。付いてるんだから」
 フォークをヒトに向けるな。
「大体、俺が起こさなかったらいつまでも寝てるつもりだったくせに。その徹夜の成果の
レポートを今日出せるのは誰のお陰よ、ああん?」
「……トールのお陰、です」
「よろしい」
 ニヤリと笑う弟を、あたしはただ睨み付けることしかできなかった。

422名無しさん@ピンキー:04/09/05 00:26 ID:/GyIuVQ3
 あたし、舞阪美由紀は大学に通っている。実家は電車で数時間といったところにあって、
通学に不便という理由をつけて憧れの一人暮らしをして……いた。その一人暮らしにピリ
オドを打ったのは、目の前で妙に決まったポーズでコーヒー飲んでる、舞阪徹。高校生だ。
 ――苗字が一緒という事で、あたし達を姉弟だと思ってる人間は多い。というか、ご近
所にはそう説明してる。本当のことを言うと、いろいろ面倒だし。
 けれど、現実には。
「そういえばお袋から電話あったよ。みゆんトコの叔母さんから、リンゴが届いたからお
礼言っといてって」
「あ、うん」
 そう。トールとあたしの本当の続柄は、姉弟なんかじゃない。
 本当の続柄は、従姉弟。あたしの両親とトールの両親は昔から仲が良くて、あたし達は
それこそ本当に姉弟のようにして育ってきた。
 だから今でも、こいつはあたしを「姉貴」扱いするし、あたしもこいつを「弟」扱いし
てるのだ。でなければ、こんな風に従姉弟同士といっても同居なんて、できる筈が無い。
 だっていうのに、お互いの両親はそんな事気にもせずに、こっちの高校を受験したトー
ルとあたしに一緒に暮らせ、といきなり言い渡したのである。そりゃ部屋代とか色々安上
がりになるのは分かるけど、でも、普通ありえない!と思ったのも束の間。
 ――トールは、料理が上手かった。というか、家事全般において、あたしを遥かに超え
るエキスパートだった。一人暮らしにおける様々な問題に直面していたあたしは、結局
トールという最高の執事を手放す事なんか出来るわけもなくて。
 こうして、毎朝顔を付き合わせる生活を営んでる。

423名無しさん@ピンキー:04/09/05 00:26 ID:/GyIuVQ3
「あ。そうだトール。今日、あたしご飯いらないから」
「またコンパ?」
「そー」
 せっかく大学生になったのだ。遊べる時には遊んでおけ、といわんばかりに、あたしは
コンパに参加してる。彼氏いない暦もそろそろ長くなってきた頃だし、良い男を捕まえた
いなあ、というのが心情。
「……ふぅん」
 トールはそんなあたしを呆れ顔で見つめてる。
「なによ」
「べーつにぃ」
 そう応えて、トールはコーヒーを飲み干した。
「さて、んじゃ俺はそろそろ行くから。食器は水にうるかしといて」
「ん。分かった」
 頷くあたしを置いて、トールが立ち上がった。
 あたしが座ってるというせいもあるんだろう。けれど、立ち上がったトールは、背が高
いと思った。
「トール。今、何センチなの?」
「ん? 春に計った時は175だったけど。まだ伸びてるから、わかんね」
「嘘。まだ伸びてるの!?」
「成長期ですから」
 軽く笑って、トールはブレザーと鞄を手に、部屋を出て行く。
「戸締り、忘れんなよー」
「あ、うん……」
 ガチャン、とドアが閉まる音。そして残ったあたしは、ぱくり、とトーストに口をつけた。
424420-423:04/09/05 00:27 ID:/GyIuVQ3
このスレ的には、こんな展開はOKなんでしょうか。
とりあえず導入部だけ書いて投下してみた次第。
425名無しさん@ピンキー:04/09/05 00:34 ID:ZmkJpoLd
OK,GJ!!
426名無しさん@ピンキー:04/09/05 00:50 ID:LhO31zMR
GJ!!2
これまでにないシチュエーションだと思います。

超ガンガレ
427名無しさん@ピンキー:04/09/05 05:16 ID:siMb8JEF
正直「歩笑」姉たんに萌える訳だが
428名無しさん@ピンキー:04/09/05 06:10 ID:lc612uw9
「うるかしといて」は浮かしといて?
429424:04/09/05 08:22 ID:Ia0KVoGQ
>>428
「うるかす」は北海道方面の方言の模様。
当方、道民ですが、方言とは知りませんでした…Otz
430名無しさん@ピンキー:04/09/05 08:24 ID:Ia0KVoGQ
ちなみに意味としては「浸す」というのが一番近いイメージかな?
431名無しさん@ピンキー:04/09/05 09:03 ID:CsQ3jTRL
なに、二人が北海道出身であれば問題ない話だ。うん。
432名無しさん@ピンキー:04/09/05 12:00 ID:eZD8P98K
いいね。イイ設定ですよ。続き楽しみにしてるよ。
「うるかす」=「潤かす」=水に浸けておくって意味?
433名無しさん@ピンキー:04/09/06 01:20 ID:MY+wg1pl
脳内お姉さんのいらっしゃるスレはここですか?
434名無しさん@ピンキー:04/09/06 02:04 ID:gU7XID4C
地震!? お姉ちゃんこわいよぅ

じゃあ今夜はいっしょに寝よっか?
435名無しさん@ピンキー :04/09/06 06:14 ID:Zn1CeqQ4
皆さん凄ぇ良いSSでハァハァさせてもらってます。
上質のSSありがとうごさいます。

ちなみに自分は
◆5mSXuZ5GjE神様のSSの続きを待ちわびてる次第でございます。
436名無しさん@ピンキー:04/09/06 13:42 ID:eaNk2ysy
>>429
青森にも同じ言葉があるっす
意味も同じだったりします

424氏ガンガレ
437名無しさん@ピンキー:04/09/06 13:54 ID:EJ/WLNu7
うちの親は福島県の出身ですが普通に食器を洗うときに使いますね。

とりあえず>>424氏がんがれ。
438名無しさん@ピンキー:04/09/06 21:10 ID:VTgriZLu
北海道も福島も「ごみを投げる」(捨てる)って言うからこの辺までは結構共通してるようで。
439保守:04/09/07 12:30 ID:CysZ9ExO
保守
440名無しさん@ピンキー:04/09/07 20:28 ID:QfTGu2Pq
こういった絵掲示板もあったり
ttp://www10.oekakibbs.com/bbs/overthetop_2/oekakibbs.cgi
441名無しさん@ピンキー :04/09/09 11:55 ID:1j710RXg
4423人の姉:04/09/10 11:45 ID:ajh7H8SX
ミキ姉ちゃん?
いいのよ、貴方は横になってるだけで。
さあ、これからミキ姉と私とサキから入学祝いにいいことしてあげる
ミキ姉もユキ姉も好きモノだから気を付けてね

(続く…のかな?)
443名無しさん@ピンキー:04/09/10 16:38:53 ID:M+GsOrxS
いいや 続いてもらわないと困る
444名無しさん@ピンキー:04/09/10 23:52:36 ID:0PfBTQZt
ここの住民は今日発売の、富士見ミステリー文庫の
ROOM1〜3巻をよみたまい。特にツンデレ姉とか好きなら。
直接描写の無いラノベの癖にけっこーエロいし。
445〜反撃〜 1:04/09/11 11:58:46 ID:ZxyLh3FU
ちょっとスカ入るけど・・・・嫌いな人はスルーしてください↓

姉というものを持つ世の中の弟、妹の諸君には分かっていただけると思うが、
姉がウザい理由の一つに、こちらの覚えていない思い出話を――それもあまり
知りたくない思い出話を嬉々として話し出す、ということがある。
姉のいない人間は数年ぶりに近所のおばちゃんや親戚のおばさんに会ったところを
想像して欲しい。
まあ、たかちゃん、大きくなって。この間までオムツをしていたのにねえ。
お定まりのあの会話。
そう、姉の思い出話というのはおばちゃんのあのうざさと同じくらいにウザいものだ。
しかもおばちゃんたちと違って一年中一緒にいる姉は、気の向いたときに何度でも
その話を蒸し返すのだ。
たかちゃんはよく私の後を泣いてついて回ってきて小さい頃は本当にかわいかったわ。
たかちゃんはよくおもらしをして、私が隠してあげたのよ。
今日も姉さんはその話を始めだした。ああ、本当にウザいことこの上ない。
特に姉さんはよく僕がお漏らしをしたという話がお気に入りらしく、僕が何度怒って
見せても笑うだけで一向に話をやめようとしない。
姉さんは親愛の情のつもりなのだろうが、そんな大昔の話をされて面白いわけがない。
同じように何か思い出話を持ち出して反撃したくても、2歳という年齢の差は結構大きくて、
僕のほうはほとんど何も覚えていないのだ。思い出を大切にする、というより過去に
こだわる姉さんとこだわらない自分の性格の違いかもしれないけれども。
僕はキスをするふりをして姉さんの話をやめさせながら、僕は何とか姉さんをやり込める方法
はないだろうか、と思いをめぐらせていた。
446〜反撃〜 2:04/09/11 12:00:22 ID:ZxyLh3FU
朝の光に僕は目を覚ました。小さく伸びをしようとして、僕は肌に触れる暖かなものに気がつく。
僕の肌に重なる暖かなもの――これは姉さんの背中だ。
僕の腕の中に姉さんの体がすっぽりと入るようになったのはいつごろだっただろうか。
毛布からむき出しになった肩のラインはきれいだけど何故か痛々しく、僕はそっと毛布
をかけてやった。
起こさないように気を使ったつもりだったが、姉さんはどうやら目を覚ましたらしい。
「ん・・・・・・」
姉さんは小さな吐息をもらし、体を身じろぎさせた。
それでもまだ意識ははっきりとしないらしく、眠りに抗うように小さな息を吐きながら体を
縮こませたり伸びたりしている。その様子がかわいくて、僕は姉さんの乳房に手を回すと、
たふたふと軽くもみ始めた。
「やん・・・・・・」
姉さんの口から甘い喘ぎ声が漏れる。
乳首のくぼみを探し当てるように爪を立てて丹念につつき、またはいくら押してもすぐに
立ち上がってくるそれを指の腹でじっくりとこねくり回す。
姉さんの体はどこもお菓子のように甘い。
マシュマロのような胸に、その上にある飴玉みたいなつぼみ。そしてあえぎ声。
「あ・・・・・・ふぅ」
寝ぼけた姉さんは僕にされるがまま、時折熱い小さな吐息を漏らすだけだったけれど、
やがて姉さんは遠慮するように僕の手をゆっくりと動かし、起き上がった。
「起きるの?」
姉さんの肌の暖かさがまだ恋しく、僕は姉さんの細い腰をつかんで引き寄せる。姉さんが
愛撫――特に大好きな胸の愛撫の途中に抜け出すなんて、なぜだろう。
姉さんは恥ずかしがるようにちょっと間を置いて、小さく
「トイレ」
と言った。
447〜反撃〜 3:04/09/11 12:12:17 ID:ZxyLh3FU
「行くなよ」
「やだ・・・・・・本当にダメなの」
赤くなりながら姉さんは答える。本当に限界らしく、体がそわそわとしている。
その姿を見て、僕の脳裏にひらめくものがあった。
何年の悩まされてきた姉さんの思い出話。今が、反撃のチャンスかもしれない。
後先のことも考えず、僕は毛布から飛び出ると姉さんを後ろから羽交い絞めにした。そして足を後ろから絡ませて姉さんの足を開かせる。
「いや!何するの」
「ここでしちゃえよ」
僕は姉さんの耳にささやいた。
そして、片手で胸を押さえつけて、もう片方の手で膀胱のあたりを強く揉みしだく。
「あっ・・・・・・いやっ・・・・・・」
ぐっと体をこわばらせ腕を振り回して姉さんは必死に抵抗する。けれど、男の力に
かなうはずもない。姉さんが抵抗すればするほど、僕は姉さんを締め付ける手に力を
入れた。
448〜反撃〜 4:04/09/11 12:16:30 ID:ZxyLh3FU
「やっ・・・・・・だめぇ」
今にも泣きそうな姉さんの声。僕はもう一度姉さんの下腹をぎゅっと押さえつけた。
「あっ!」
姉さんの体がびくんと大きく震えた。が、持ちこたえたらしい。
「ふうっ・・・・・・」
体を震わせると姉さんは大きく息を吐いた。その声には既に涙の色がにじんでいる。
僕は作戦を変えた。
膀胱を押さえつけた手を離すと、今度は姉さんのあそこに指を伸ばす。
「やっ」
姉さんの体が引きつる。が、かまわず僕はそこの輪郭を人差し指でゆっくりとなぞり始めた。
「ダメ・・・・・・やめてぇ・・・・・」
姉さんの体から力が抜けていくのが分かる。その背中にキスをし、前かがみになる体を片手で引き戻しながらさらに胸をもみあげる。

続きは帰ってきてから連投します。
449名無しさん@ピンキー:04/09/12 23:38:34 ID:DFx7XBaM
(*・∀・)ドキドキ
450名無しさん@ピンキー:04/09/14 17:36:43 ID:2ADQvGeY
イイゾイイゾキタキターーーー!!
451名無しさん@ピンキー:04/09/17 12:45:41 ID:6o5TskAB
ほしゅ
452名無しさん@ピンキー:04/09/17 17:15:35 ID:/s2gICvM
らかんげきぃ
453〜反撃〜 5:04/09/19 20:30:32 ID:u/S4hJMf
「やめ・・・・・・」
姉さんの弱弱しい抗議の声。が、僕はかまわずに姉さんのあそこの探索を続けた。
まずは、肌と肉色の境のあたりを大きく一周。それからさらに溝へと指を忍ばせる。
「うう・・・・・・っ・・・・・・」
もはや姉さんは抵抗することをやめ、小刻みに震えながらじっとこらえている。
ここを刺激してやれば、もうすぐだ。
期待を込めながらくぼみになった場所を軽くまさぐると、生暖かな液体が指に絡みつく。
一瞬目的を達成したのかと思ったが、すぐに液体の正体に思い当たり、僕は指を放し
目で確認する。
無色に近いとろりとした液体。
こんな状況でも濡れるなんて、女性の体はやはり貪欲にできているらしい。
僕は姉さんの体を抱えなおし、僕は姉さんの目の前に愛液の絡まった指を示した。
「こんな状態でも、ちゃんと濡れるんだ?」
僕の言葉に、腕の中の姉さんの体がさらに熱くなる。
「あっちのほうは一生懸命我慢しているのに、こっちのほうは出るのをこらえられない
んだね」
僕はにちゃっと水音をさせて再び愛液を指で掬い取ると、それを擦り付けるように姉さん
の足の真ん中にあるつぼみを指で挟みこむ。
それからゆっくりと僕はそこをこねくり回した。
454〜反撃〜 6:04/09/19 20:35:16 ID:u/S4hJMf
「いやぁ・・・・・もぉっ・・・・・・もおやめて・・・・・・」
悩ましげに大きく息を吐きながら姉さんは訴えた。
「どうして?欲しいんじゃないの」
クリトリスを責めながら、僕は残った指でクリトリスの下のくぼみをなぞる。
そして中への入り口を探し当てると、僕はそこに浅く中指を入れた。
「あんっ・・・・・・」
姉さんの体が僕の手の中でびくんと震える。
「ね?どうなの?」
言いながら指を抜き、そしてまた浅く差し込む。
「やぁ・・・・・・」
「ほら、もっとあげるよ」
僕は姉さんの耳元でささやくと、逃げないようにさらに力を入れて姉さんを押さえ込み、
小さくかき回しながら少しずつ指を進入させた。
尿意をこらえているせいなのか、そこはかなりのきつさだった。
もともと姉さんのはかなり狭いのだが、今はまるで処女のそれのようだ。
が、そのことがいっそう僕の中の嗜虐心をあおる。
455〜反撃〜 7:04/09/19 20:36:46 ID:u/S4hJMf
姉さんの手が僕の腕に力なくすがりつくけれど、僕はお構いなしに入るところまで指を
進入させると内壁をこすりあげる。
「ひぁ・・・・・・!」
指を動かすたびにくちゅくちゅと水音がたち、そこはひくひくと生き物みたいに痙攣をする。
「うっ・・・・・・うー」
胸に当たる姉さんの背も手の中の乳房も汗でじっとりと濡れ、僕もまた熱に浮かされた
ように姉さんを刺激し続けた。
かき回し、中のひだの一つ一つをこすりあげ、肩を嘗め回し、胸をもみしだき、
その先にある突起をつまみ引っ張る。
見たい、見たい。姉さんがそうするところを。
姉さんの足が大きくがくがくと震える。そして僕の指の間をさらりとした液体が一筋流れた。
「もっ・・・・・・だめぇ・・・・・・・!」
姉さんの小さな叫び声とともに、僕は手を抜いた。
小さな水流の音、そして姉さんの泣き声に僕は目的を果たしたことを知った。
姉さんの体を離すと、僕は姉さんの股の下を覗き込んだ。
白いシーツに広がる染み。そして水にぬれてぬらぬらと光る陰部。
達成感と征服感とで僕はため息をついたが、姉さんは子供のように泣き出した。
456〜反撃〜 8:04/09/19 20:37:31 ID:u/S4hJMf
「だから、だから言ったのに・・・・・・もう・・・・・・」
搾り出すように言うと、また嗚咽を繰り返す。もっと怒りの言葉を投げつけたいのだが
次から次へと出てくる涙のせいで言葉にならないらしい。
「もっ・・・・・もおっ・・・・・・だ、大っ嫌い・・・・・・・うー・・・・・・」
「ごめん」
さっきまでの嗜虐心は一転、肩を震わせて泣いている姉さんがかわいそうで
思わず僕は姉さんの肩を抱きしめようとしたが、姉さんは手を払いのけた。
「馬鹿・・・・・・!」
そう叫ぶと、姉さんは泣きじゃくりながら布団から立ち上がり、部屋を飛び出した。
激しく扉を閉める音を聴きながら、僕はすでに後悔を始めていた。
(あーあ、やってしまった・・・・・・)
いつかもこんな風景を見たような気がする。
そういえば姉さんを無理やり押し倒してしまったときも姉さんはこんな
風に泣いていたけ。そして僕はというと今と同じく布団の上でいったいどうやって仲直り
しようかと思案していた。
僕という人間はいつも目的を果たしてしまうととたんに弱気になってしまうのだ。
弟の性、なのだろう。
常に自分は弟の上にいるという思い上がりと、絶対に弟は自分に逆らわないと信じている
無邪気さをずたずたにしてやりたいと思う一方で、常に姉の庇護の下にありたいと思う。
・・・・・・結局は姉には逆らえないよう心に染みつけられているのだ。
(あの時と同じように平謝りするしかないか)
まあ、これでしばらくは不名誉な昔話を持ち出されることはないだろう。
ため息をつくと、僕は風呂場で一人泣いているだろう姉さんの体を洗うべく立ち上がった。

お粗末さまでした。
457名無しさん@ピンキー:04/09/20 20:43:21 ID:j+Yztvil
GJ(・∀・)
458名無しさん@ピンキー:04/09/20 22:12:36 ID:5q/zlO1j
御馳走様ですた。
初めて押し倒した時の話も聞きたいでつな
459名無しさん@ピンキー:04/09/24 11:55:17 ID:w1Z+S5X4
保守
460名無しさん@ピンキー:04/09/26 18:30:55 ID:z1qq3h0b
◆5mSXuZ5GjE氏と420氏のSSの続きを見るまでは。。。
461おきゃんぴー:04/09/27 15:47:22 ID:aPyheTji
秋晴れの某日、某所にあるアパートで、山科由香里(やましな・ゆかり)と、孝也(たかや)の
姉弟は、朝餉を共にしていた。姉、由香里と弟、孝也は共に寝巻き姿で、六畳一間の部屋の
中に置かれたちゃぶ台を挟んで、箸を勧めている。

「姉ちゃん、お醤油とって」
「はい。孝也、マヨネーズをお願い」
「・・・やめろよ、姉ちゃん。ご飯にマヨネーズかけて食べるのは・・・」
「美味しいよ。お醤油ちょっと垂らすと、もっと美味しくなる」
「それ、絶対外ではやらないほうがいいよ。変人だと思われる」

ふっくらと炊き上がったご飯に味噌汁。これに、目玉焼きと香の物が添えられる。それが、二人
の定番メニューだった。もっとも、由香里の茶碗は、何やら怪しい彩を放っているのだが。

「姉ちゃん、父さんたちいつ帰ってくるのかな?」
「知らないわ。明日かもしれないし、一年後かも」
「いつまで僕たちほったらかしなの?」
「さあ・・・父さんたちに聞いてよ」
孝也がもりもりとご飯をかきこみ、由香里が品良くお新香を啄ばむ。こんな、姉弟ふたりきりの
生活になって、もう五年が過ぎていた。両親は考古学の権威で、今はエジプトに住んでいる。
その間、姉弟は一度も父母と顔を合わせてはいなかった。

「姉ちゃんは寂しくないの?父さんと母さんに会えなくて・・・」
二杯目のご飯を食しつつ、孝也が尋ねた。彼は今年十五歳になったが、滅多に会えぬ父母を
慕っては、こんな質問をする。要するに、甘えん坊さんなのだ。
「お姉ちゃんは孝也と違って、大人だからね。寂しくはないなあ」
弟とは反対で、二十三歳になった姉は、父母の不在を気にも留めていないご様子。どころか、
「もっとも、前に住んでた一軒家を人様に貸して、あたしたちにアパート暮らしをさせやがって!
という気持ちはあるよ」
と、目を剥いて孝也を睨みつけるという有り様だった。
462おきゃんぴー:04/09/27 16:10:16 ID:aPyheTji
「そうかあ・・・でも、僕は会いたいなあ。特に、母さんに会いたいよ・・・」
くしゅんと顔を歪ませ、孝也はうなだれた。彼は五年前、十歳のときに両親と別れている。
それ故、いちばん多感な時期に、母性にあまり触れられなかった。だから、いつも母を慕う。
また、慕わずにはいられなかった。

「しゃんとしなよ、孝也。ほら、また泣き虫さんが出てきたぞ」
「うん・・・」
由香里が励ましても、孝也は顔を上げなかった。おそらく、目の端には涙の粒が溜まってい
るのだろう、への字になった口元が泣きっ面をよく表している。
「孝也、泣かないの」
「うん・・・」
「孝也ったら」
「・・・ごめんなさい」
「別に、お姉ちゃんは怒ってる訳じゃ──」
十五歳になった弟が、母を慕って泣く。それが、由香里には痛いほど理解できた。五年前、
自分と孝也を残し、考古学の研究のために日本を離れた父母が、今更ながら恨めしい。

『あたしはともかく、孝也はどうするのよ!』
当時、十八歳だった由香里は、父母へそう怒鳴りつけた事を覚えている。その頃、孝也はまだ
十歳、小学生だった。すでに大学へ入学した自分はともかく、義務教育中の弟を置いて、両親
は外国へ行くというのだ。その上、帰国はいつになるか覚束ないという。由香里の憤怒は当然
である。しかし、両親は彼女に後を任せ、外国へ旅立って行った。暖かな、春の吉日を出立の
日に選んで──

「母さんが恋しいの?孝也」
茶碗と箸を置いた姉に問われると、弟はこくりと頷いた。すると──
「仕方がないなあ・・・ホラ、こっちおいで。いつものやってあげるから」
そう言って、由香里は寝巻きの前ボタンを、ぷつんと弾き飛ばしたのである。
463おきゃんぴー:04/09/27 16:41:02 ID:aPyheTji
「困った甘えん坊だわ、まったく」
寝巻きの上をはだけさせ、由香里は頬を上気させる。そんな羞恥に染まった姉とは逆に、
弟、孝也の方は顔色がぱっと戻っていく。今まで泣き顔だったのが嘘のように、晴々と
した笑顔が、十五歳の少年に似つかわしく宿った。

「ありがとう、姉ちゃん」
「そんなに喜ぶな!」
弟が顔を綻ばせている姿に毒づく姉。しかし、その間にも手は忙しなく動き、いつしか寝巻
きの上下は、六畳間の隅へ放り投げられていた。

「なんで、こんな事を・・・まったく!」
ぶつくさと文句を言いながらも、由香里は下着姿となる。白い胸元が晒されると、年齢に見
合ったフルカップのブラジャーがお目見えし、朝の爽やかな日差しを跳ね返していた。二つ
の丘はなだらかな丸みを帯び、カップの間で素晴らしい谷間を作っている。その下、腹部から
ビーナスラインにかけても脂はほどよく乗っており、パンティの股布部分が僅かに盛り上がっ
ていた。恥肉のつき具合が、秀でているらしい。下着はともに、淡いブルーを基調にしたお揃
いの物。

「姉ちゃん・・・」
孝也がごくりと生唾を飲んだ。彼は、おあずけを喰った犬のように身を竦ませ、姉との距離を
一定に保っている。しかし、目は眩まんばかりにまばゆい、由香里の肢体に釘付けだった。
「おいで。おっぱい吸わせてあげるから」
「うん」
由香里がまとめていた髪を解き、ブラジャーのフロントホックを外すと、孝也はを待ってました
とばかりに縋りついていく。しかも、実の姉の太ももに顔を乗せて膝枕を気取り、股間を隆々
といきり勃たせながら──
464おきゃんぴー:04/09/27 17:02:00 ID:aPyheTji
「吸うよ、姉ちゃん」
「噛まないでよ。跡が残ったら、大変」
孝也が唇を突き出し、由香里の乳首を吸った。その姿、まるで赤子の如し。
「ああ・・・」
ちゅうちゅうと乳首を吸いつけられると、由香里はくぐもった声を漏らし始めた。豊乳ゆえ
鈍感という通説は、彼女には当てはまらない。由香里は乳首が人一倍、敏感だった。過
敏と言ってもいい。

「おいしい?孝也」
乳首を吸われながら、姉は優しく弟の頭を撫でてやった。愛しむという言葉がぴったりな、
まさに慈母のような様相である。すると、孝也はこくこくと頭を何度も振り、夢中になって
姉の乳肉を貪った。そして──
「じゃあ、孝也のミルクも出しておきましょうか。こんなに大きくなってたら、学校行けないぞ」
由香里は、膨れ上がった弟の股間を握った。それも、何の躊躇も見せずに。
「手でしごくから、いきそうになったら言うのよ・・・」
孝也の男根が、由香里の手の中で波打っていた。姉は、弟の寝巻きのズボンをちょいと下
ろし、いきり勃った若気をくすぐってやろうというのである。

(いつもながら、恥ずかしいこと・・・)
弟の男根は野太く、小さな由香里の手のひらには収まらなかった。カリ首がずんと張り、
茎もしっかりと太い。さながら、女殺しといって良い物だった。そんな逸物を、姉である自分
が慰めてやる──それが、由香里にとっては恥ずかしくて仕方が無い。しかし、弟は姉の
胸の内も知らずに、
「姉ちゃん、気持ち良い・・・僕、気持ち良いよ。まるで、母さんに擦ってもらってるみたい」
と、のたまっている。
465おきゃんぴー:04/09/27 17:22:00 ID:aPyheTji
「母子でこんな事してたら、大変よ。もちろん、姉と弟だっていけないわ。お姉ちゃんがして
あげてるのは、孝也が甘えん坊で泣き虫だからよ。特別なの」
「そうかあ・・・でも、僕・・・特別でいい。だって、それなら姉ちゃんが優しくしてくれるから」
「バカね。いつまでも、お姉ちゃん子でいるつもり?」
「うん」
「困った子だわ」

孝也は由香里の膝枕で、相変わらず乳房と乳首を悪戯していた。由香里の方もそれに負け
じと、孝也の男根をきゅっきゅっと絞り込んでいる。そうした密戯がしばらく続いた後、孝也は
不意に姉の乳首を甘く噛んだ。まるで、何かに焦れたように。

「あッ・・・噛まないでって・・・言ったでしょう」
釣鐘のような乳房が、ひくっと波打った。孝也は乳首を甘噛みし、ぐいと頭を振って由香里を
泣かせる。そして、柔らかな乳肉を両手に収めながら言うのだ。

「姉ちゃんが悪い。もっと気を入れて、僕のおちんちんをしごいてくれなきゃ」
「一生懸命やってるわ」
「そうかな?手を抜いてない?」
「あなた、耐性がついてるのよ。もう、お姉ちゃんの手じゃ最後までいけないよって」
「だったら、しゃぶってよ。いいでしょ?」
「ダメ。もう、お化粧済ませちゃったわ」
「口紅なんか、またぬればいいよ。さあ、姉ちゃん」

孝也は由香里が拒むにも関わらず、すっと立ち上がる。そして、充血しきった男根を姉の顔の
前でぶらつかせ、口唇愛撫をねだった。
「さあ、姉ちゃん」
「分かったわ、もう」
弟の男根は、すでに手遊びでは小さくならない。それを悟った姉は、しぶしぶ了承した。そして、
女殺しの逸物を、紅を差した唇ですっぽりと包んでいったのである。
466おきゃんぴー:04/09/27 17:48:51 ID:aPyheTji
(お、大きいなあ・・・)
青い性臭漂う弟の男根を頬張りながら、由香里はいつもそう思う。特に、カリ首が秀逸な
太さで、もしこれで女を貫かれたら、自分は気を失ってしまうのではないかとも思う。
「ああ・・・ね、姉ちゃん・・・温かい」
孝也は気をつけの姿勢で、男根に這う姉の舌の感触に酔っていた。由香里は小刻みに
顔を前後させたかと思うと、今度は絡めた舌でカリ首の裏を激しく刺激する。その後、じゅる
っと音を立てて、尿道付近を吸うのである。これには、孝也も降参するしかなかった。

(ここだけ立派になっちゃって・・・困った甘えん坊さんだわ)
由香里は男根に右手を添え、指で輪を作り、茎の部分をしごき上げている。その上、左手は
玉を包む袋を揉み解していた。もちろん、口唇による愛撫はそのままである。
「姉ちゃん!僕、出るよ!」
ああ、と背を反らせる孝也。無意識の内に尻穴へ力を込め、放精の瞬間に備えている。する
と、由香里はよりいっそう手の動きを早め、上目遣いで弟の表情を見遣った。目には淫蕩な
輝きが見えており、咥えている男根を離そうともしていない。その姿はまるで、

出しなさい、飲んであげるから──そう言っているように見えた。

(イク時は、可愛い顔になるのよね、ふふふ・・・)
普段の由香里には、男の粘液を飲んでやろうという、酔狂な性癖は無い。しかし、孝也だけは
別だった。朝一番の濃い男汁でも、孝也の物ならば飲める。他人の男の物は御免蒙るが、弟
が放つ体液だけは美味しく頂ける姉、由香里だった。

「イクよ!ああ!」
孝也が感極まった瞬間、由香里はそっと目を閉じて唇をすぼめてやった。甘噛みでカリ首を締
め、精液が飛び出す時に尿道を吸ってやるつもりなのだ。それを、男が喜ぶ事を彼女は知って
いる。その直後、とうとう男液は彼女の舌先に、苦味をもたらせた。
(うはッ!凄い、凄い量だわ!)
立ち尽くす弟の股間へ縋り付き、精飲という行為に耽溺する姉。ごくんごくん──と、まるで、
芳醇な酒でも飲み下すように、由香里は孝也の子種を頂戴するのであった。
467おきゃんぴー:04/09/27 18:09:13 ID:aPyheTji
「フーッ・・・」
弟の子種を飲み干した所で、由香里はようやく人心地ついた。解いたために乱れた髪が、
悩ましく揺れている。
「お姉ちゃん、ありがとう」
尿道に残った精液までも吸い取ってもらい、だらりと男根を萎えさせた孝也が、姉の顔を
見つめながら謝した。彼も姉の口唇愛撫に昂ぶり、顔を赤くしている。
「どういたしまして。この、甘えん坊さん。スッキリしたら、早く学校へ行く支度をしなさいな」
「うん」
孝也は姉に促され、そそくさと着替え始めた。現金なもので、先ほど見せた泣き顔はどこへ
やら、制服を着ると今度は、せっせと鞄に教科書を詰め込んで、登校の用意を済ませていく。

「さてと。あたしは、お化粧直し・・・それと、服を着なくちゃ」
ねばつく男液を口にして、なお爽やかな由香里。紅が少し落ちたが、初秋の涼やかさもあっ
て肌は汗ばんでいない。化粧直しは、すぐに終わるはずだった。しかし──
「ちょっと、トイレ」
不意の尿意が彼女を用足しに向かわせた。すると、孝也が悪戯な顔つきでその後を着いて
いくではないか。そして、姉が使用中のトイレのドアを、そっと開けてしまった。

「ん?」
部屋のトイレは和式である。便器にまたがり、下着をひょいと下ろした所で、由香里は背後に
人の視線を感じた。今、この部屋には自分と弟しかいない。しかも、由香里はトイレの鍵を
掛けなかった。姉、弟の気兼ねない二人暮しゆえ、そんな習慣が無いのである。
「孝也?いやッ!入ってこないで!」
「丸見えだよ、姉ちゃん」
気づいた時は遅かった。由香里の真後ろには孝也がいる。それも、ちょうど段差になった便器
に目線を合わせるようにしゃがみ込み、無防備になった姉の陰部を見据える。
468おきゃんぴー:04/09/27 18:24:17 ID:aPyheTji
「ダメェッ!見ないで!」
「今さら、恥ずかしがる事も無いさ。僕が手伝うよ」
便器にまたがった由香里を後ろから抱きすくめ、赤ちゃんにおしっこをさせる格好を取る
孝也。半脱ぎになったパンティを汚さぬよう、両足は高く上げてやる。

「下ろして、孝也!」
「しー・・・こいこい・・・姉ちゃん、さあ、おしっこしてごらん」
「いやァ・・・」
由香里の尿意は迫っていた。もう、すぐにでも放水は始まってしまう。しかし、その姿を弟
に見られてしまうのは・・・
「ダメ!本当にダメなのよ!ああ・・・」
狂ったように叫ぶ由香里。しかし、慟哭の時はやってきた。

「ああーッ・・・」
ちょろりと黄金水がほとばしると、もういけなかった。由香里は弟に抱かれながら、放尿を
するという恥辱に甘んじてしまったのである。
「僕を、甘えん坊って言った罰さ」
「そんな、ひどいわ」
放物線を描いて飛ぶ、黄金水とその尿臭。由香里は恥じ入った。まさか、弟にそれを見ら
れ、臭いを嗅がれるとは思ってもみなかったのだ。しかし、恥辱は放尿が終わっても続く。

「終わった?じゃあ、アソコを僕が拭いてあげる」
「い、いいわ。お姉ちゃん、自分で拭くから・・・」
「僕が拭きたいんだ。姉ちゃん、お尻を突き出して」
「ああ・・・」

由香里をしゃがんだ姿勢に戻し、トイレットペーパーを手に取る孝也。それを幾重かに畳む
と、姉のもっともデリケートな場所を丁寧に清めていった。
469おきゃんぴー:04/09/27 18:40:26 ID:aPyheTji
「恥ずかしくて、死にそう・・・」
トイレのパイプに掴まりながら、由香里はヒップを弟に預けている。小水で湿った割れ目
を、掻き分けるように拭う孝也の手さばきはいやらしく、とても母恋しで泣くような少年には
見えなかった。

「ふふ・・・姉ちゃん、割れ目が開いてきたね」
「ダ、ダメよ!変な事を考えちゃ!」
孝也の手が、ぷっくりと肉付きの良い恥肉をまさぐっている。由香里は身を竦めた。このま
までは、禁忌の交わりを持ちかねないと──
「穴が開いてる。きっとここに、おちんちんを入れるんだね、姉ちゃん」
「ああ!ダメなのよぅ・・・」
肉のフリルを指で掻き分け、恥蜜がぬるむ女穴へ、ふっと息を吹きかける孝也。いつしか
男根を露呈させ、姉の尻先にそれを突きつけていた。

「やめなさい、孝也。さっき、おしゃぶりしてあげたでしょう?」
「いじゃない。やらせてよ、姉ちゃん」
「じゃあ、もう一回しゃぶってあげるから!お願い」
「やだよ。僕、姉ちゃんの中に出したいんだ」
「ああ、かんにん・・・」

由香里は、先ほどの野太い男根を頭の中にイメージした。あれが、自分の中に入ってくる。
あたしは、あれに征服されてしまうのだと、思わず身を硬くした。
(今までの事が、この子をつけあがらせてしまったのかしら?)
母親代わりに乳を吸わせ、男根を扱いてやっていたのは、他ならぬ自分──由香里は泣き
虫で甘えん坊の弟を思って、やっていた──少なくとも、そう思ってきた。しかし──
470名無しさん@ピンキー:04/09/27 18:46:52 ID:ucJV5oBD
姉円
471おきゃんぴー:04/09/27 18:53:53 ID:aPyheTji
「入れるよ、姉ちゃん」
「ひッ・・・」
恥唇が指で割かれていた。そしてその奥、肉穴が弟の男根によって狙いをつけられている。
もう、距離は幾許も無いと、由香里は観念しかけた。それでも一縷の望みをかけて、説得は
やめない。

「孝也、それを入れたら、あたしたちは姉弟じゃいられなくなるのよ・・・それでもいいの?」
男根が肉穴をぎゅっと押した時、姉は最後に聞いてみた。血縁の壁を越えるのかと、覚悟の
ほどを試したのである。すると、
「姉ちゃんは僕のことが嫌いなの?」
孝也は例の甘えっぷりで、由香里へ迫った。姉弟じゃいられなくなるという文句が、彼を不安
にさせているらしい。

「そうじゃないの。ただ、そこにおちんちんを入れると、あたしはあなたのお姉ちゃんじゃなくなっ
ちゃうの。ただのけだものになるのよ。孝也、あなたはあたしを、けだものにしたいの?」
「・・・ううん」
「だったら、お願い。そこは許して。おしゃぶりだったら、喜んでしてあげるわ」
「でも、僕・・・姉ちゃんの中に出したい。セックスしたいんだ」
「そ、それなら・・・」

孝也に背中から抱きしめられていた由香里は、きゅっと肛門に神経を集中させた。ここが──
ここが唯一、禁忌の交わりを避け、弟の思いを受け止めてやれる場所だと思ったのである。
そして、
「お、お尻の穴なら・・・いいわ・・・ここに孝也のおちんちん、入れさせてあげる」
自ら股の内から指を伸ばし、放射線状に伸びた肛門の皺を、きッ!と、広げたのであった。
472おきゃんぴー:04/09/27 19:07:52 ID:aPyheTji
「こんな狭い所に入るの?」
「アナルセックスっていうのよ。案外、入るものらしいわ」
トイレから部屋に戻り、布団を敷きなおした姉弟。二人とも、会社や学校は休むことに
した。もう、ここまできたら後にはひけない。由香里は寝転がり、身を横にして桃尻を孝也
に向かって突き出している。

「そこの乳液を取って。指でお姉ちゃんのお尻の穴を穿るのよ」
「ウンチつかないかな」
「バカッ!それが嫌なら、やめるわよ」
「ごめん。うそ。やるよ、やる」
どっぷりと乳液をまぶした孝也の指が、由香里の尻の割れ目を這う。ぬるり、とすぼまりを
浸す乳液のおかげで、指はすんなり肛内へ飲み込まれていった。

「温かいね。お尻の穴って」
「ああ・・・入ってきちゃった・・・もう、孝也のバカ!」
弟の指が尻穴を穿っている──自ら言い出したことだが、由香里にしてみれば、どうにも恥
ずかしくて仕方がない。
「指が二本も入った」
「い、いやッ!中で指を開かないで・・・」
尻穴を性器に見立てねばならないという恥辱に、由香里の体が震えた。しかし、不思議な事
に、弟の手遊びに喜ぶ自分が居る事も悟ってしまう。そこが、尻穴が、妖しく疼くのだ。
(うああ・・・こんな事って・・・)
由香里の理性のブレーカーが飛び掛っている。尻穴を穿られるという事が、これほどまでに
切ない愉悦をもたらせてくれるとは、思ってもいなかったのだ。

「姉ちゃん、入れていい?」
「そ、そうね・・・もう、いいかも」
弟が乞う形になったが、由香里の本心はすぐにでも肛姦を望む状態だった。並外れた孝也の
逸物で、自分を満たして貰いたいと、心の底から願っていたのである。
473おきゃんぴー:04/09/27 19:22:09 ID:aPyheTji
「入れるよ」
「ああ───ッ・・・」
野太い男根が由香里の肛内へ侵入した。ずずっと思わず体を逃がしたが、姉はとうとう
弟の男根で貫かれてしまった。それも、禁忌を避けるために、尻穴でのつがいを選んだ
のである。
「うわあ・・・おちんちんが、食いちぎられそうだ・・・っていうか、潰れそう」
「イヤア・・・・ヒイイッ・・・」
男根はせいぜい半分も入った程度。それでも弟は冥利を得て夢心地である。それに対し、
姉はまるで責め苦を受けたように、仰け反っていた。

「アアア・・・さ、裂けちゃうッ・・・」
男根の太さがおぞましい──尻穴を弛緩させているのに、この忌まわしい肉筒は肛内を
満たし、自分を苛んでいる──由香里は被虐心を露にし、ひいひいと泣き喘いだ。
(で・・・でも・・)
目を半開きにさせ、腰骨を抜けていく肛姦の衝撃に怯えながらも、由香里は思う。
(き、気持ちいいかも・・・こ、困ったわ)
弟の男根を排泄器官に迎え、快楽を得る。この事が、由香里の秘めたる性癖を燻りだした。

彼女はそう、尻姦を好む女である。

「姉ちゃん・・・このまま出していいの?」
「い、いいわよ・・・たくさん出してね・・」
ひくっひくっと、弟の男根がいななくのが分かる。その上、出し入れされている時の、筋張っ
た茎の血脈までも、はっきりと感じられる。彼女の尻穴は多感だった。
「イクよ、姉ちゃん!」
「来てッ!」
どくんと尻穴に温みを感じた瞬間、由香里も達する事が出来た。その快感は妖しく響き、今
は空き家の女穴にまで、愉悦を届けてくれたのである。

おちまい
474名無しさん@ピンキー:04/09/27 22:05:25 ID:9zXffgIl
ごちそうさまですた
475名無しさん@ピンキー:04/09/27 22:08:22 ID:Ou0fPpBe
おつかれさまですた
476名無しさん@ピンキー:04/09/28 19:06:37 ID:nr2H2G+j
GJ!でした。
477 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:07:33 ID:VIGoqZPy
 13
 
 そこから先。
 知らない世界。
 都がそこへ巧を引っ張りこもうとするのを巧は身体を捻って逃れ、その時、ポロッと涙
をこぼした。
「あれっ……なんだこりゃ」
 抵抗をやめて、何が起こったか確かめようとする巧を、都はなんなく押し倒し、その時
にその涙に気付いた。
 二人の動きがそれぞれの感情に縛られて止まっていく。
 都は我に返ったように目を見張り、その雫が自分の手の甲に流れ、染み込んでいくのを
見つめた。
 一方の巧は、原因もわからないまま、ともかく涙を都に見せてしまった事で恥ずかしさ
に顔を赤くし、思いきり都から顔を背けていた。慌てて、
「姉ちゃん。約束、したからな」
 苦し紛れではあったが、なんとか言っておくべき事は言えたので巧はほっとする。
 今のはナシにしておくから、やめようと。
「ごめんね……」
 都が、そう言ってベッドから下りた。靴を結局脱がないまま。消え入りそうな声とうつ
向いた姿に悲痛なものを巧は感じた。
478 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:07:51 ID:VIGoqZPy
 それを気にしつつ、どの意味なのか巧が考えていると、都はそれを取り繕うかのように、
「サッカーしばらく、できないよね。……ごめんね……」
「んー……まあ」
 巧は少し迷ってから、姉に笑顔を向けた。
「ま、それに関しては……。試合に出られないのは痛いけど、同じくらい姉ちゃんもきつ
かっただろ? って事にしとこうカナ。姉ちゃんには落ち度はないって事。なっ」
 その巧の示唆は都には意外だった。巧にそう思わせたものを、都自身はあまり自覚して
いない。
「私の痛み?」
「って姉ちゃん。俺がいらんことを言ったから、バーストしたんじゃないの?」
「私は……、昔からずっと、変わらない。変わってない」
「もしそうなら……」
 何か言おうとしてみたが、巧はそこであきらめた。
 
 都の最後の言葉は何か異様な重さを感じさせた。
 そのせいで巧はその後、都がいなくなって消灯になるまで悶々とし続ける。
 その間には、入れ違いにやってきたはるか、律儀に見舞いに来たサッカー部主将の遠山、
話を聞き付けておちょくりに来たナンパ仲間、どんどん増えてたまっていく彼等の相手を
複雑極まる面持ちで勤め、疲れ果てることになった。
479 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:08:09 ID:VIGoqZPy
 それは余計な事を考えないで済むぶん、巧にとっては楽だった。
 ひとりになるとすべてがぶり返してくる。
 そして何もかもないまぜにして抑え込んでいるうちに、朝を迎える。
 
 さすがに今朝は姉が来ないということで、巧は肩の荷を下ろしたように開放的な気分で、
顔馴染みになった看護士達と接していた。もう医師の話を聞いて家に帰るだけ(のはず)
だ。その優雅な時間に、今度は環と由美が押しかけてきたのだった。
 少しだけ戸を引いた隙間に環と由美の頭がひょこひょこと覗いたのを見て、巧は肩をが
っくり落とした。
「あのー、先輩方。なにしてんの?」
「学校なら大丈夫。私ら熱出して寝てるから」
 環が微妙に赤い顔で言うと、
「にゃっはっは、今頃都ちゃん、あたしたちのこと気付いてバーストしてるかも。あ、ジ
ュース買ってきてあげるヨ、何がいい?」
 由美が財布をじゃらじゃらと鳴らしてにんまりと微笑んだ。愛敬のある顔でそういう事
をするので、小悪魔という感じが強くする。
「ありがたいっす。オレンジスカッシュがこの階にあるから、それ」
「ちょっとぉ、朝食時なのよ、巧くん」
 タイミング悪く、トレイを持ってきた白衣の高野が頬を膨らませて巧を睨む。
480 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:08:26 ID:VIGoqZPy
 それを由美がめざとく、
「あっれ〜、「巧くん」だってえ? 巧クンのえっちぃ〜、看護士さんに何したのよう!」
 笑い出しそうな声でつっついた。
 高野に目を向けると、少しどぎまぎした表情をごまかすように、
「今日は妹さんだったりするのかな?」
「うーん、おしい」
 環がしたり顔で答えると、
「おしくないよっ」
 明らかに自分の事だろうと由美が反応する。
 巧はここは高野を助けてやる。
 ナースセンターで話題にされていることは気付いていたから、彼女がその延長で「巧く
ん」とうっかり呼んでしまったのだろうことは、看護士達の会話を想像しつつ思う。
「検査の結果ってもう出てるんだよね?」
 それを聞いて高野は、
「あ、うん。でも一応それはセンセイに聞いてね」
 巧の朝食のトレイを適当なところに置いて、手をひらひらさせながらそそくさと退散し
ていった。
 それを環と由美は二人揃って、ジト目で見送り、
「……それで、年上キラーの巧くん?」
 二人揃って、巧ににじり寄る。
481 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:08:45 ID:VIGoqZPy
「都と二人っきりはどんなもんでしたかな?」
 たちの悪い質問だ。
「うるさいな、あんたたちはもう、しっ、しっ、そういう人達は退場っ」
「ご挨拶ね、あなたをこの世で一番愛しちゃってる環様にこの仕打ち……そのうちウチの
女子バス一年の誰かに刺されるわね」
「女王様なんだっけ?」と巧が反応すると、
「おしいっ!」
 これは由美だ。
「おしくねえ! 由美、退場」
 環が喚いて、暴れる。
 その隣りで、「退場」の言葉に「あ」と何かを思い出したように、由美が行動を起こし
ていた。
「ちょっと散歩してジュース買ってくるねっ」
 由美がそのままさっさと病室から出ていく。それを見た環の方も用を思い出して構えた
風に、巧には見えた。
 どうしたのかと環に聞こうとすると、環の方から来た。
「都お姉ちゃんの唇は堪能できたかね?」
「げっ」
 直球ど真ん中の発言に、巧は環の表情を窺った。環の表情は「見た」と言っている。
 どっちを見たのか?
482 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:09:02 ID:VIGoqZPy
 それによっては巧の足場に関ってくるのだが、環はそんな巧に、
「実は昨日も昼休みに抜け出してきたんだあ。そしたらあろうことか」
 環らしい、悪戯っぽいにんまりした笑みを巧に近付け、
「眠ってる巧くんに都がちゅーって」
「こらっ、そこ、再現しない」
 そのまま口を押し付ける環を巧は手のひらで押し返した。
「ああっ、ひどい」
 「傷付いた」ポーズで腰をひねる環に、
「ややこしくなるから、ちょっとかんべん」
 巧は頭を抱えた。
「うー、まったくあの人は……やったんじゃないかと思ったんだよ。起きたらなんか、
反応あやしかったし」
「…………その口ぶりだと、それ以外にもヤッたのね」
 先の反応で、複数回であることがばれてしまっている。
 環は少し熱っぽく更に巧に迫った。
 妙な迫力を感じ、巧はベッドの上で後ずさりする。
(やべ、昨日の姉ちゃんとおんなじ……)
「あ、あのね、環さん。俺実は話があって」
「なあに。告白でもしようっていうの」
「うん」
483 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:09:18 ID:VIGoqZPy
「へっ……?」
 環が、欲しいとは思っているが、もらえるとは思っていない言葉だ。
 環は巧の本音を探ろうと、あらかじめ由美に言い含めておいて、今朝の襲撃を考えた。
 それを思い出す。
 臆面もなくうなずいた巧に視線を合わせたまま、表情の作り方を忘れてしまって、環は
ただ顔を赤くしていた。
 巧が都にどのくらい近付いているのか知りたかったのだが、自分の気持ちを試すつもり
ではなかった。
 だから、巧の言った事が一瞬わからなかった。
「環さん、俺と付き合ってくれる?」
 巧は、環に近付き過ぎないように注意深く、体勢を立て直す。
 由美がちゃんと扉を閉めていったので、心配はなかった。
 
「どういう、意味で?」
 環は、おそるおそる言葉を返す。信じきれないでいる自分を感じる。
 大部分は女の子だったが、告白された事は何度でもあるし、した事もある。それとは別
物のような、深く震える感じ。それを巧から隠せているだろうか。
「極端に言えば、俺環さんと一緒に暮らしたい」
「巧くん……キスしていい?」
 返事の終わらないうちに身体を近付けていくと、巧は慌てて、
「わあっ、えっと、その、うん」
484 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:09:36 ID:VIGoqZPy
 言葉が終わる前に、唇が巧の唇に軽く触れる。じっと巧の目を見て、すぐまた今度は少
し強く触れた。いつも冗談半分で襲っていた巧の唇の、本当の柔らかさに触れた気がして
魂が震えるような思いだった。そして、
「私のことが好き?」
「好きだよ」
 巧にそれ以上の事を言わせないで、今度は口を開いて巧の唇を吸った。そしてまた巧が
反応する前に離れて問いかける。
「都より?」
「待った……なんで姉ちゃんが出てくんの……言いたい事はわかるけど、俺は男と女の話
……環さんだけ……」
 巧の言葉を遮るように何度も巧の唇を襲った。
 そのたび途切れた言葉をつなぎながら、巧が気持ちを伝えてこようとしている。
 それを次々と愛しげについばんでいく。
 巧のそれは間違いなく本音だと環には思えた。
 繰り返す口付けのたびに巧の唇が開いていって、やがて舌と舌が擦れた瞬間に、二人は
身体をぶつけあうように抱きしめあって、布団の上に転がりながらお互いの舌を味わいは
じめた。
(巧くんの熱くて柔らかい舌、巧くんの唾液、巧くんの本当の気持ち)
 環の口の中にそれが流れ込んでくる。
 そして動き回る舌に口の中をかきまわされる感触が、環の身体の奥に熱いものを呼び覚
ましていった。
 自然と身体が、巧に押し付ける動きになってしまう。
485 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:09:54 ID:VIGoqZPy
 発達した胸と、白い太腿と、そして熱い部分が巧を求めている事を、巧の身体に教えて
いく。
 
 その動きが激しくなったために、巧はめくるめく口付けを中断せざるを得なくなってい
た。
 なぜなら……
「た、環さん……」
「ふふっ、わかってるわよ、巧くんの感触」
 二人の唾液で濡れ光った唇を動かして、環が、
「ごめんね。早いとこ用事済ましちゃって、こんなとこサヨナラしよ」
「あっ、やべ、そろそろ時間かも」
 検査の結果は聞かなくてもわかる。手続きという煩わしいものに一応付き合わないとい
けないだけだ。
「今さら言うのもなんだけど」
 環が、落ち着きのない様子で、
「ここは頑張ってスイッチ切っちゃうね」
「環さん、ばっちり入ってたよね? なーんか、しおらしい環さんって、かわい……」
 そういう巧に、格にもなく環は照れて唇を押し付けて言葉をちぎった。しかし、
「……巧くん。ひょっとして都にそういうからかい方、してないよね?」
「えっと、……この怪我を御覧ください」
 巧は憮然と右腕を動かした。
「なるほど。そういうことなんだ。……私でも怒るかも」
「あ、ひっどいの。でも俺、環さんはからかってない」
「そういうことにしときましょ」
486 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:11:39 ID:VIGoqZPy
「ちぇっ」
 
 その後も環は椅子ではなく、巧に並ぶようにベッドに腰を下ろしていた。
 今までの事を、差し障りがない程度に話している。
 放課後の馬鹿話や、巧が都を怒らせる数々の方法。環も、巧が知らない自分の話をする。
中学時代の環たち三人の話。
「けど、ひどいことするわねー」
「環さんが姉ちゃんにいらんこと言うからいけないんだよ」
「巧くんでしょ。……でも都のやつは、ほんとに勇者だって事がよくわかったわ」
「正直言って、ちょっと怖すぎ」
「なにが」
「入院初日にさ、実は一回目」
「黙ってさせてたの?」
 これは率直な環の気持ちだろう。巧は少し嬉しく思う。
「うとうとしてたんだよ、いきなりだったし、そのあと姉ちゃん速攻で逃げるし。まった
く。そんで次の日頑張って起きてたけど寝ちゃった隙に環さんが見てたっていう……」
「笑えなかったわよ、あれは」
「そのうち俺、犯されちゃうカモ」
 巧のオカマポーズに、環は軽く拳をぶつけながら、
「わかった。それで私に……」
487 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:11:57 ID:VIGoqZPy
「違う!」
 巧が急に大きな声を出してから、自分で気付いて、
「と、ごめん、違わないかもしれないけど、別に姉ちゃんから逃げる口実で環さんに声か
けたんじゃないからね。前からすごく気になってたし、環さん、その、すぐ引っ付いてく
るから、胸とか……じゃなくて」
 そこで一旦言葉を切る。そうすると、続く言葉は決まっている。環は巧の視線を精一杯
正面から受け止めた。
「環さんが好きだから」
「あー、わかった、ごめん、面倒くさいこと言わせて。私はね、両方ありだと思うから、
それでいいのよ。それと、わざわざ改まってちゃんと言ってくれるのはやっぱり巧くんだ
なあ。……ありがと」
 そう言ってそのまままた、スイッチが入りそうになるのをこらえている。
「じゃあ、私も言っとくね。実はね、入学してくる前から巧くんの事知ってたし、好きで
した」
 その一見、いつになくいっぱいいっぱいに見える環の告白の有り様に、巧は環の本質的
な魅力を十分に感じることができた。素直で、自分を隠そうとしない。そしてそれが男心
を震わせる見事な肢体に納まっている。すべてがバランスよく外側を向いている。巧が本
当に欲しかったのはやはりこういうものなのだ。
「環さん、ウチ来た事あった?」
「何回か、ね。都が巧くんの話嫌がるから、そん時から怪しいと思ってたんだ」
「信じらんねー、姉ちゃん」
「その時は巧くんまだ子供だったからね」
488 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/01 03:12:15 ID:VIGoqZPy
「二つしか違わないじゃん……」
「凄く違うわよ。それに比べたら高校入って来たときの巧くんって……」
 そこまで言って環は真っ赤になって口を手で押さえた。
「ほんと、環さんのそういう普段あんま見せない女の子っぽいとこがたまんない、俺」
「普段はどうだって?」
「普段は女の人って感じ」
「ふーん」
 環はその曖昧な感想に、曖昧に微笑む。
 それを見て巧は、気持ちの整理が案外簡単についた事を環に感謝したい気持ちになって
いた。
 
『この後、巧くんの部屋に連れてってね』
 年輩の看護士が現れて巧を連れていった後、環は自ら話の最後に巧に持ちかけた言葉を
思い出して、ひとり赤くなっていた。奔放にふるまってはいても、環とてバスケット一筋
の高校生活を送って来た、さほど経験もない普通の少女に過ぎないのだ。
 巧と、巧の部屋ですごす。
 都の親友をやっている以上そんなことはしないだろうと漠然と思っていたのに、他なら
ぬ都の暴走から機会を得る。
 布団に残った巧の熱に触れながら環は、あの巧との口付けの時の都を思い浮かべる。
489名無しさん@ピンキー:04/10/01 06:50:52 ID:bgawIFDs
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
キタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!


待ってました。すっごく面白いです。続きをワクワクしながら待ってます
490名無しさん@ピンキー:04/10/01 11:35:01 ID:KLjUEuhP
待ってました!
どうなるのか全然読めないなあ…頑張ってください。
491 :04/10/01 17:20:10 ID:OJqU5gH7
キターーーーー!!!!
実は半分諦めかけてただけに
再開して頂けて死ぬほど嬉しいです。
◆5mSXuZ5GjEさん、頑張って下さい。
492名無しさん@ピンキー:04/10/02 02:24:04 ID:AxG4DtkK
|゚)ジィー

|´Д`)<GJ!

|∀゚)<お茶置いてきます。
|∀゚)/≡旦スッ

|ミ サッ
493 :04/10/03 01:36:32 ID:Gx74eP3/
ホント面白いね。
良作乙です。
494名無しさん@ピンキー:04/10/07 19:32:18 ID:hEWdiKgv
保守
495 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:37:46 ID:KZ4fe+eJ
 14
 
「アレッ、巧クン環ちゃんはぁ?」
 一階に降りたところで由美が巧に声をかけ、看護士の後について、巧に並んで歩いた。
 由美の手には当然のようにジュースも何もない。
「せっかく二人にしてあげたんだから、ちゃんとイイコトしたぁ?」
「あのね……。まあ、いいや、おかげ様で」
 巧は思わず開き直って答えてしまった。
 由美はそれを見のがさず、にんまりと笑うと、
「巧くんと環ちゃんがくっついちゃえば都ちゃんもあきらめるでしょ」
 そう、とどめをさすようなことを言った。
(うう、筒抜け……というか)
「ひょっとして由美さん、後ろで糸引いてましたね?」
「えへへ……」
「褒めてないっす」
「えー」
「だって由美さん、基本的に遊んでるでしょう。あーくそ、またあとで」
 そう言い残して、看護士と共に外科診察室に入った巧を見送りながら、由美はその背
中へべーっ、と舌を出して笑った。小さな声で繋げる。
「都ちゃんのためだもん」
496 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:38:32 ID:KZ4fe+eJ
 
 環は、由美が戻ってくるとすぐに由美に頭を下げて追い出した。理由は言うまでもな
いので、「交換条件」有りで意気揚々と由美は帰っていく。
「あーもう。入っちゃえ」
 朝まで巧が使っていた布団の中に、無頓着に服のままで潜り込む。顔を隠したい。
 環は主に恥ずかしさで頭を抱えていた。全部報告する事になるに決まっているからだ。
 都のキスを見たせいで、性急になっていたのかも知れない。思いあまって由美に作戦
立案を「依頼」した。とにかく由美は、たぶんなんでもわかっている、常識はずれに利
口な友人だったから、今まで何度も助けてもらって、今また究極に危うい問題をゆだね
ているのだ。
 多分由美は誰がどうするべきか、どうしたらどうなるのか、もう全部わかっている。
それをすべて話してくれるということはないだろうが、環に不満はない。本当に危うく
て、助けなければならない時は由美は言ってくれる。
(巧くんに振られちゃったら、代わりに愛してあげるからね、由美)
 環はそんな悪戯っぽいことを久しぶりに思った。
「……なにしてんの、環さん」
 突然、巧の声がした。現実に引き戻されたのか、夢の中に引き込まれたのかどっちだ
ろうかと思いつつ、愛しい相手の声を聞く。
「やだ、巧くん女の子の部屋に入る時にはまずノックでしょ」
「あのね……着がえるからちょっと出ててください」
497 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:38:53 ID:KZ4fe+eJ
「あら、他人行儀じゃない」
「見たいの?」
「うん」
「…………い、いいけど」
(あれ?)と、環はその巧の反応に少しだけ違和感を感じ取って、一瞬首を傾げる。一
瞬。すぐに環にはわかってしまった。環の意識もそこに引き寄せられていたのだから。
巧は、さっきの約束をとても意識しているのだ。
 少し胸が熱くなって、環は熱くなったところを手で押さえた。
 
 下着を脱ぐわけではないので、巧にとっては別に恥ずかしい事ではない。
 とそこで肝心な事に気付いて、
「あのー。手伝ってもらっていいです?」
 出てて欲しいと言ったり、手伝えと言ったり。いつもながら行き当たりばったりで気
ままなものだ。そう思い、そしてそれが果して環にどのように思われているのか、この
とき初めて巧は意識した。
 環が即座に「えっへっへ、触ってもいいのね」と飛びつかなければ顔を強張らせてし
まっていたかもしれない。
「巧くん、身体薄いね」
「こういうの嫌い?」
「ううん、あたしマッチョってだめだから。ていうか巧くんの身体の線ってセクシー」
498 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:40:09 ID:KZ4fe+eJ
 そんなことを言われても、とっさに反応ができない。
(かっこわりぃ、俺)
 女の子に服を着せてもらっているからではない。女の子の顔色をうかがっているから
だ。外科診察室でも、巧は医師の説明を上の空で聞きながら、まだ見た事のない環の裸
のことばかり考えていた。胸や太腿の形や感触、そして……。身体を重ね合わせたらど
うなってしまうんだろう。環は何を思ってくれるんだろう。
 受け入れてくれるだろうか。一度きりの、一ヶ月前の体験の記憶に縋る。しょうがな
いことではあっても、巧は情けなくて、平静を装うので精いっぱいだ。
(本当に今日、本当に?)
 そういうこととは限らないじゃないか。そうして、着替えが終わってもぼんやりして
いると、
「心の準備はできたかね?」
 覗き込む無邪気な顔があった。
 その環のこともなげな言葉に、巧は救われた。本当にあっという間だった。いつもの
自分が巧を動かす。
「片手じゃ出来ない事は要求しないでくださいね」
 そう環を覗き返して、行き掛けの駄賃で唇をさらう。
「ああっ」
 笑ったまま環は反撃し、巧の唇に軽く歯を立てると、巧の荷物を抱えて廊下に走り出
た。
499 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:40:30 ID:KZ4fe+eJ
 世話になった医師や看護士の人達に頭を下げ、見送られる。
 後ろから巧に抱き着いて急かす環の態度はこっ恥ずかしくくすぐったい。それを後ろ
に追いやりながら、なぜか真顔の看護士の高野の、環に送る視線を追い、(あ、やっぱ
りちょっとはそうだったのかな)と意識を引っ張られる。だがそのことは、それを嫌が
るように露骨に抱きとめる環の胸の感触、その心地よさを欠片も揺るがすことはなかっ
た。
 とにかく思いがけず入り込んだ場所から日常の中へ帰っていく。
 そして、約束の場所へ近付いていく。
 
 今は二人で、待鳥家へ向かって歩いている。
「はるかはテニスで晩飯の時間、姉ちゃんは定時としてまあ、四時半? 親父はここん
とこ毎晩午前様、つまりオールオッケー」
「なあに、まるまる四時間いっしょに過ごせるって? エッチな巧くんはあたしと何を
したいのかな?」
「セガラリーの二百周耐久アタックとか」
 とっさに思い付いたのはなぜかレースゲームだ。
「よし、それでいこう! 負けた方が御飯作るのよ」
「…………ごめんなさい、うそです」
 環のあんまりといえばあんまりな反応に、あっさり巧は泣きを入れた。
「ていうか、環さんのつくる飯って……」
500 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:40:53 ID:KZ4fe+eJ
「失礼ねー、それに勝つ気でいるの?」
「そうですね、まるまる一周ハンデつけましょう」
「要らないわよ」
「ま、それでも俺が勝つけどね」
「そこまで言うなら、もっと賭けようか?」
 話を戻したつもりが沽券をかけた勝負のようになっている。そんな場合か、カッコよ
くエッチ方面に持ち込もうと意気込んだ時、
「負けたら一生巧くんの言いなりになるわ。どんなことでも」
 環があっさりそんなことを言った。
 巧の頭の中は真っ白になった。あまりに真っ白になったので、
「そういえば由美さんは?」
 そんな馬鹿な事を聞いていた。そしてそれなのに環は、一瞬虚をつかれたような妙な
表情をする。
 巧はそれを見て、さっき病室で我を取り戻すきっかけになった環の一言や、今の環の
積極性が、すべて由美の扇動によるものではないかと思った。
(由美さんのことをこれからチャッカマンと呼ぼう。……心の中でだけど)
 結果として悪い事は何もないのだ、しかもこんな勝負じゃ、負けるなんてあり得ない
のだし。
 病室で感じたような切迫したものではなく、ドキドキとワクワクが混ざりあった高揚
感。
501 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:41:15 ID:KZ4fe+eJ
 それを分け合っている相手に、巧はその重力から脱出不能なところまで深く引き付け
られていくのを感じていた。
 一生という言葉をあんな風に使う環の奥底はまるで見えない。
 
 15
 
 待鳥家の門や玄関、二階の都や巧の部屋に続く階段やトイレ、それらを環はとてもよ
く憶えていた。三年になってからは初めて訪れる。
 少なくとも都の部屋へは何度も入った事があった。三人仲が良くなってから、いつも
由美と一緒に。
 都の部屋は巧の部屋よりも奥にある。さらに奥にある妹はるかの部屋との間。
 家の造りは大きい方だろう。二代前の実家が裕福だったからだとか、環は多少のこと
は都から聞いていた。正確には由美と二人で根掘り葉掘り聞き出したのだが。
 今。
 環は巧と共に待鳥家の一階のリビングにいる。巧が片手なので、環が手伝って紅茶だ
のケーキだのを用意していた。ケーキは環が道中で買ったもの。ポテチを選択したいと
ころだったが、「コントローラが汚れる」というもっともな理由から却下。もう、すっ
かり二人とも臨戦体勢である。
「片手? 問題ないって。マイハンドルだし」
 とハンドルコントローラを持ち出してくる巧を見ているうち、環は笑いが止まらなく
なった。
502 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:42:06 ID:KZ4fe+eJ
「一周プラス片手がハンデでOK?」
「コースも環さんにお任せ」
 さっきからまるで考えていることを隠しきれていない巧がおかしくてたまらない一方
で、その様子から本当に欲されているのがありありとわかってしまう。環はそのことに
少し胸をつまらせる。
 勝っても負けてもその後に待っているものは同じだ。
(巧くんはそうは思ってないだろうなあ……)
 アナログスティックを親指でぐりぐりと回しながら、少し緊張している身体をほぐし
てみる。空いた右手を胸に持っていって、服の上から軽く揉んでみた。想像をめぐらし
てやると、じわりと湧き上がってくるものがある。心地よいかすかな快感を楽しみなが
ら、リビングの大画面テレビにセッティングされていくゲームマシンと画面上の疑似世
界に視線を向ける。
「あのう、環さん?」
「なあに?」
「一体何をしてらっしゃるんで」
「ふふっ、準備運動、かな」
「それって……」
 絶句して顔を赤くした巧を見て、環はそれ以上巧をからかうようなことはするまいと
思った。そういうつもりでしたんじゃない。ただ気を落ち着かせたかったのだ。それが
リラックスするのに一番お手軽な方法だったというだけで。
503 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:42:30 ID:KZ4fe+eJ
「俺、勝つからね」
 その巧の一言を背に、画面にカウントダウンの数字が躍った。
 
「環さん……」
「なあに?」
 ほとんどうめき声で、巧はじったりと環を見た。
「ハメましたね?」
「巧くんてば、情報収集が甘い」
 へたった巧の横に立ち上がって、環は胸を張ってくっくっくと見下ろす。
 その強調された胸を、怨めしそうに巧が見上げた。
 二百周どころか、七十周ほどで巧はギブアップした。その時点で環は巧を四周の周回
遅れにしている。差し引き三周のリードだ。
「まさか、この時のために密かに陰練積んでた……なんてわきゃーない」
 巧はハンドルを握ったまま、まだ固まっている。
「ありえねー」
「はいはい、勝負はあたしの勝ち」
「ひでー……」
 言い続ける巧の頭を撫でたくなるのをこらえ、
「とりあえずお茶入れ直してもらおうかなっ」
504 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:42:52 ID:KZ4fe+eJ
 ソファにひっくりかえって、その時予想外の巧の言葉を聞く。
「前の彼氏とやってたとか?」
「えっ……うん」
 とっさに声に出してしまったが、環は巧の方こそ言ってしまったことを後悔し、気ま
ずそうにしているのに気付いた。
 かぶせてしまわなきゃ、と思い、
「巧くんはそういうの気にする方?」
 まっすぐ巧の顔を覗き込む。
 ずるい聞き方だ。だからさらにかぶせて、
「ううん、ごめん、彼氏じゃない。ちゃんとつきあった憶えないし。巧くんにはつきあ
うって言ったよ?」
「わかった」
 巧はそう笑って、いつもの悪戯っぽい表情にあっさり戻った。
 こういう勘の良さも環が巧を好きな理由だ。巧がそういう嫉妬じみた言葉を使ったの
は正直意外だった。そこにはむき出しの心がある。それはころころと表情を変えていく。
本能的に隠し事をしないでいられるのだ。震えそうになって巧の身体を支えにする。
「環さん、苦し──」
 これは全部あなたのものだと、環が体重を巧に載せていくと、巧は熱い眼と息とで迎
え、環を抱え上げようと腰を上げた。
 環がそれを制していっしょに立ち上がると、身長の極めて近い二人の顔は、普通にし
ていても目の前に向き合う事になる。
505 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:43:17 ID:KZ4fe+eJ
 一時も間を置かず、唇を捻り込むように突き合わせ、たちまち舌を絡めあった。肩や
背に拙く動くお互いの手がもどかしい。
 巧が足を動かしたので、環はそれに合わせて身体を引いた。一歩また一歩と空間をず
らしていく。意思が通じているのを感じる。唾液に混じるクリームの甘味や紅茶の渋味、
それもまた相手の個人情報の一部だ。二人でいっしょに食べて、飲んだ。
 相手の唇と舌を貪り合いながら、ゆっくりリビングを横切っていく。掛け時計のムー
ヴメントの音が横へ流れていって、巧の右手がドアに当たって確い音をたてるのを聞き、
環は手さぐりで乱暴にノブを回す。少しだけリビングより冷たい空気が流れ込んで来て、
こっちだと行き先を告げている。
 環は巧の怪我を気遣わない。巧とのくちづけに溺れる事が環の誠意だ。少しずつ歩く
角度を変え、階段の方へ。そうする間にも、環の身体は痺れ続けていた。もう身体の中
は熱いもので溢れている。二人分の布地越しに、巧の硬く盛り上がった股間が触れてき
て、離れる。その度にスイッチが次々に入っていく。
 後ろ向きだった環の踵がやっと階段のステップに触れた。快楽へ駆け上がるための階
段。そう思った次の瞬間には、環は本当に駆け上がって服を脱ぎ捨てたくて、巧に訴え
かけようとしていた。顔が熱い。だが、巧の方が早かった。
「環さん、行くよ」
 その言葉尻が流れてしまうほど急に、巧が左手で環の手を取り、駆け上がりはじめた。
転びそうになりながらも追随する。環は、その勢いに呑まれる事を身体の奥底から望ん
でいた自分を、祝福した。
 巧の部屋の扉が目の前で開いていて、ベッドは目の前にある。
 
506 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/10 05:46:23 ID:KZ4fe+eJ
ごめんなさい、しばらく非姉ちゃん進行です。
できるだけ急ぎます。

いつも応援してくれる方、ありがとうございます。
はるかの方も考えてます。
507名無しさん@ピンキー:04/10/10 06:08:10 ID:qmYJUcqE
GJ!!
508名無しさん@ピンキー:04/10/10 15:54:32 ID:vnTIoxv+
GJ!!乙です。
いつも楽しみにしてます。
509名無しさん@ピンキー:04/10/10 17:31:09 ID:0NrhNq9/
急いでくれるんですか(;´Д`)ハァハァ
510名無しさん@ピンキー:04/10/11 21:35:37 ID:8G/ZKj3h
>>はるかの方〜〜

これは妹スレでですか?
511名無しさん@ピンキー:04/10/11 22:04:16 ID:nXRDVQEP
>>510
保管庫参照
512 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:38:10 ID:DjSOM/Qd
 16
 
 巧は本当に、負けると思っていなかった。
(迂闊だ……気付かなかった、うう、伏線ありまくりだったのに)
 でも環が一生と言う言葉を安易に使ったのではないこともわかった。すこしほっとす
る。気持ちは深いところに引き付けられたままだった。
 どうしても気になる。
 なぜあんな約束をしたのか。負けた時の事は言わなかったし、振る舞いからは環の意
思がわからない。でも、と巧は思う。
(聞かれたらはっきり答えられるけど。うん、自分で言いたいな)
 勢いだけで環を二階の自分の部屋に引っ張り込んだ巧は、扉を閉じながら奇妙な感慨
にとらわれていた。
(言って変えてしまおう。姉ちゃんのことも)
「環さん」
「はい」
 呼ばれたから応えるシンプルな反応が、不純物のなさを感じさせる。環の顔は熱く潤っ
た感じで、おかげで巧は迷わなかった。巧にとってはチャンスだった。
513 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:38:33 ID:DjSOM/Qd
「どんなに姉ちゃんに迫られても環さんとしかしない。好きな人としかしない。姉ちゃ
んは大切な人だけど、それは家族だから、俺に出来る事は全部やります。姉ちゃんを普
通に幸せになるようにしてやりたい。そのためにも環さんと本気で付き合いたい。だか
ら、環さんだけによっかからせて……」
 恥も何もかも棄てた、いや、むしろ恥ずかしい言葉だけを並べる。後でどれだけ後悔
することやら、と思いながら。たぶんそこまでしなければ自分は環の身体に立ち入る事
は出来なかった。そう思えたので、巧はほっとして、閉じた扉にもたれたまま環を引き
寄せ、なめらかな首筋に唇を這わせた。
 チュッと軽い音がして、それが環にいろんなことを伝える。
 
 それが最初の直接的な愛撫だった。
 環は心がすでにイッてしまっているのを知る。たったそれだけの刺激が、爆発的に全
身に拡がっていって環の身体を震わせた。
(巧くん、巧くん)
 思うだけで切ない。
 何も考えられなくなる前に目の前の恋人に語りかける。言葉にするのを忘れていた、
返事。
「さっきのペナルティよ……時間を忘れて」
 巧が訝しげに時計を見やる。環は熱に潤んだ眼で巧の表情を追った。意味を理解した
巧が優しく微笑んでくれた気がして、安心して身体の力を抜いた。
514 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:38:50 ID:DjSOM/Qd
「ととっ、環さん、これきびしー」
 巧がそれを支え、息を荒げながらベッドへ引きずっていく。たぶん、二人は体重もさ
して違わない。それを片手で運ぶのは相当大変だろうと思う。途中巧が本棚に寄り道し
て取り出したものを見て、おかしくなる。ハードカバーそっくりにデザインされたオモ
チャの(子供出版とでも書いてありそうな)怪しい小物入れだったから。
 やっと、ベッドに降ろされた。
 環は巧に報いるように、両手で巧の髪をかき乱しながら強く短くくちづけると、巧を
脱がせた。病室で着せてやったままのシャツとズボン、靴下。巧がなんとか遅れないよ
うに環を脱がせようとするのを熱く見上げ、体重を逃がして手伝ってやる。でも間に合
うはずがなく手こずってじれるのを、裸の胸を撫でながら鎮めた。下着だけの巧の身体
は熱を帯びて、環の眼に、病室で見た時とは別人のように艶かしく映った。
 ブラウスのボタンを外されながら、スカートのジッパーを下ろされながら、環は唇と
指を巧の上体へ狂おしく這わせる。これも今までの自分には出来なかった事だ。得られ
る喜びがかつてないことが嬉しい。
 そうして、二人とも下着だけになった。
 二人の身体の間に熱い息が渦を巻き、それさえ肌に刺激となって刺さっていく。感覚
が呼び覚まされていく。
「いい?」
 巧が環の胸に震える手を置いて、聞く。一も二もない。
「うん」
515 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:39:09 ID:DjSOM/Qd
 環が上体を捻るのに合わせて、巧の左手がぎこちなくブラジャーを両肩から抜いていっ
た。敏感になった胸を薄く擦られ、環は最初の声を出した。
「ぁ……」
 微かだったが、巧が瞬時に反応して、十分赤い顔をさらに赤くするのがわかる。愛し
い反応。自分の恥ずかしさは抑え、微笑んでみせる。あなたはどんなことをしてもいい
んだっていう拙い告白を、そうやってする。
 環の予想に反して巧は環の胸にそのまま触れなかった。
 疑問に思う前に巧の左手は環の腰骨に触れる。触れた場所から、全体が震える。巧が
『苦戦』する前に、環は手を貸した。
 
 環は周りがうらやむほどには、自分の身体に思い入れがなかった。
 直接触って、心から愛し合わせてくれる相手がいないなら、見られるだけなら、結局
絵に描いた餅だ。
 目の前の年下の恋人の切ない声を聞くのは、ひたすら嬉しかった。
「環さんごめん。ちょっとでもなんかしたら俺、出る。絶対出る。死ぬほど出る」
「あは、そんな言い方しないでよ」
 環の手で下着を抜き取られた巧の股間のものは透明に濡れ、華奢な体つきに不似合い
な凶々しい装いで、まっすぐ環の顔の方を向いていた。
 環の心臓が跳ねた。
516 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:39:31 ID:DjSOM/Qd
 間近のそれは、銃口だ。身体の内側全部が濡れていく気がする。でも今は恋人の切な
い想いを受けてしまいたい。環はしなやかに身体を折り曲げて、それを口に含んだ。恋
人の言葉通りにたちまちそれは激しく震え、環は自分の髪が強くまさぐられるのを感じ
た。愛しい反応。暴れる肉棒から吐き出される粘液は、喉よりも舌や歯茎を打ち、五度
で鎮まった。奇妙な味のする精液は口腔を満たしていて、行き場を失っていた。
 唇の縁で太さを確かめ、眼を閉じて口元に集中する。巧が腰を引くのに合わせてきつ
く口を閉じ、全身で呑む。
 
 二人とも、(ギプス以外)もう何もつけていなかった。
 環がせがむので、巧は振り返って迷う間もなく先へ進めてくる。こういう時にも意思
は通じている。さすがに片手で上になるのが厳しい巧は、環に促されておとなしく環の
隣に横になった。右手を上にする。
 たちまち環は引き寄せられ、首、胸と吸われて悶えた。指や唇だけでなく刷り込むよ
うに擦りつけてくる頬や鼻も、肌を快感で灼いた。
「あ、は……あ、あ、は……」
 とめどなく嬌声が口をついて出てしまう。テクニックも何もない素朴で強い愛撫に、
心が打ちのめされていた。ひたすら求められている。まやかしはどこにもない。痺れる
ものが背筋を何度も走り、そのたび太腿を擦りあわせて堪えた。そこはぬるぬると滑っ
ている。
「た、巧くん……もう……もう駄目……このままじゃ駄目」
517 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:39:55 ID:DjSOM/Qd
 環は我慢できないで腰を、巧の肉棒のあるところへ押し付けていった。
「環さんっ」
 呼吸の切れ目に辛うじて呼んでくる声に、精液で濡れたままの唇で瞼をついばみ、手
で直に巧のものを包み込んだ。環と同じようにぬかるんだそれに手のひらを犯されてい
く。興奮が胸を打った。
 堪らない。そういうものが巧にも伝わっていたのだろう。だから巧は再び切ない声で
吐露した。
「環さん……、やっぱだめ。どうにもできない」
「ちょうだい」
 すぐに応えた。再び身体を大きく折り曲げ、今度は深く口腔にくわえ込んだ。舌で雁
首の周りを激しく撫で付けていくと、来た。
「く……う」
 快感とも苦痛ともつかない巧の呻きが心を打つ。巧の心情を思うと、止まらないのが
環に出来る最高の愛情表現だと信じて、熱く喉を打ちつけるものに耐える。置き去りに
なっている自分のためにも、性急に次を求める。
 自分だからこれほどまでに果ててくれているのだと思って、とても嬉しかった。だか
ら、彼が自分の身体で本当に満たされてくれるまでは終わらないのだ。
 
「リセット。ね、来て」
 これを気遣いだと感じないでほしい。できるだけ熱く巧を抱き締める。口の中でまた
大きくなりはじめたものをすぐ放し、そうした。一瞬アソコに肉棒が触れて、巧が反応
するが、環は確信した。今から巧と結ばれる。
518 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:40:13 ID:DjSOM/Qd
 巧が微笑んだのを見て、その左手に小さな包みを握らせた。
 そのまま手を握りあわせて、きつくくちづけした。
 さっきの名残を巧がまるで気にしないのに戸惑うが、それもやはり嬉しい。雑念は巧
のどこにもなく、愛情とそれを繋ぐ肉体だけがある感じだ。環もそこに心を委ねる。
 ほんのわずかな時間で準備は整い、環は巧の前に脚を開いていった。
 男も女も、線の細さと肌の艶かしさを同じように見せていたが、男はやっぱり力強い
形を見せ、女はただただ柔らかく男を待っている。そんな絵を感じた。
 巧の息が潜められ、動きが消えるのを感じ、環は視線を合わせる。
 巧が言った。
「俺、すごい嬉しいです。環さんに会えたのも、こうやってひとつになったりできるの
も」
 このときばかりは無理をして、巧は上から環に被さった。環が手で誘導してくれてい
るのを知ってそれにはあえて甘え、せめてそこに意地を込めようとしていた。
 胸が熱くなる。
「環さんをいただきます」
「来て……」
 環がそう促した次の瞬間には、巧の肉棒が環を押し拡げていた。
「あ、ああっ! ……っ」
 息苦しいまでの入り口の圧迫感だけでなく、ずりずりと突き入ってくる質量は、環の
予想を超えて性感を押し上げて来た。
519 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:40:31 ID:DjSOM/Qd
 特別大きいというわけではない。
 とにかく今までの相手と違うのは、心がイケるということに尽きた。本当に欲しかっ
た巧の心と身体を取り込んで、また与えている充実感が環を押し上げた。
 キャンセル不能の爆発的な渦に呑まれ、気が遠くなりかける。
 やはり今までの相手に『本当』はなく、自分は巧という相手を探し当てた。
 それは真実だったと思う。
 
 肉棒が奥底に突き当たり、環を痺れさせた。
「すごい……直じゃないのに、めちゃ……くちゃ、気持ちイイ、です」
 腕の負担に耐えかねた巧の身体が落ちて来る。両手で強く抱きとめる。巧の表情は泣
き笑いに見えた。巧の体内を駆け巡っているものが伝わってくる気がする。
「よかった。うれしい」
 環は素直にそれを喜んで、「動いていいよ」と密かにねだった。
 エクスタシーの経験はまだ浅い。だが、この年下の恋人なら、すぐにでも狂わされて
しまいそうだと思う。
 そう、狂わされたい。この二人きりの部屋には雑音は入らない。
「残念ながらそんなに持たないデス」
 巧の言葉から震えが消えているのがわかった。だから、
「それでいいじゃない。いっそ箱がカラになるまでしよう?」
520 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:40:52 ID:DjSOM/Qd
 笑顔でそう言った。
 さっき時間を捨てたのだ、答えはいつでもいい。
「俺、絶対環さんイカせる」
 強い意志をもって言い放ったのを環は身体の奥で聞いた。環もそれを待っている。
 巧は繋がったまま身体を横にし、なんとか保っていた。
 膣内のものが心もち膨らんだように感じ、背中を少し反らせた。
 そしてそれが動き出した。
 擦りあげられる刺激がぐんぐん際どくなってきて、イクと思って身体を強張らせた時、
快感はそこを通り抜けていった。
 未知の感覚だった。イッているはずの快感なのに、その上に昇っていく。そういうこ
とだったのかと、環は興奮を深めた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ、あああっ!」
 拙く単調なはずの巧の肉棒の動きなのに、とめどなく濡れて快感が上がっていく。
 だが、巧が訴えてくる。
「環さん、ごめん」
 打ち付けてくる腰が重く大きく動いて、突き上げて来て止まった。
「い……んん、ああ……くっっ!」
 巧は全身を震わせている。
 その瞬間、環はぎりぎりのところまでせり上がって来たのを感じ、声を引きつらせて
いた。すぐそこまで来た。やはり、この男の子が教えてくれるのだ。言葉を探しながら
懸命に恥ずかしさに耐え、巧に伝えた。
521 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:41:11 ID:DjSOM/Qd
 若いというのはいいことだ、と冗談みたいに心の中で笑う。
 止まらない巧の欲望が今の環にとっては愛情そのものだった。二つ目の包みが開かれ
る。
 
 瞬間、恥じらいもプライドも、なにもかも、環の中から弾け飛んだ。
 本当に来た。
(なにもかも、巧くんに捧げても惜しくない)
 後で巧にそう言うかもしれないくらいに。
 挿入されて、押し拡げられていく最中にもう始まった。肉棒の動きに焦りやがむしゃ
らなところが薄れ、多少余裕を持ったストロークが環の中を満たした。圧迫感は相変わ
らずだ。時々角度や動きが変わり、巧自身が環の中を楽しんでいる様子がある。感触を
調べられているようなその感じが激しい羞恥心になって環の心を乱れさせた。
(調べないでっ!)
 間違っても口に出せない思いは、身体の動きになって巧の肉棒を締め付けていく。締
めた、というのが自分でわかった。そして同時に自分も巧の肉棒を調べているのだと。
「環……さん、さい……最高」
 言葉で評価されてしまうと、もう止めどがなかった。
「巧くん、んっ! のも、最高……よ」
 仕返しのつもりで言ったが、仕返しになっていない気もした。
「あっ、ああ、あ、あああっ、いや、なに、だめっ!」
522 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/13 02:41:25 ID:DjSOM/Qd
 そこから来た。
 マグマのように、絶対に冷めない圧倒的な熱を送り込まれている。源泉となる巧の肉
棒の動きも、反応したように激しさを増した。
「巧くん、あたし、ねえ! イクよ、もう!」
 巧に伝えてやりたかったので、伝えた。
 肉棒が喜ぶように大きさを増した。
「俺、俺、も」
(そうか、来るんだ、巧くんが)
 魂の震える音がして、同時に身体中を駆け巡っていた嵐が一つにまとまって身体の中
心を突き抜けていく。
「あ、ああっ、うあ、あ、あ! イ、イクッッ!」
 巧の身体のどこが怪我だったっけと、思う余裕もなく、きつく巧を抱きしめ、荒れ狂
う波に呑み込まれた。
「う……う、あっ、く……ッ!」
「ああああっ、あ、あ、あ…………ッッッ!!」
 声が出せない、搾り出せない状態になるまで叫んでいた。巧が果てるのもわかった。
 絶頂と同時に形容しがたい幸福な気持ちも沸き上がって来て、環は頬に涙が伝うのを
感じた。
523名無しさん@ピンキー:04/10/13 04:46:18 ID:uR1+sV3P
キターーーー!!!!
乙です。
この先、環or姉とどうなってしまうのやら・・・ハァハァ
524名無しさん@ピンキー:04/10/13 20:33:22 ID:DZ949chf
GJ!!!!
525名無しさん@ピンキー:04/10/14 01:54:24 ID:U0gs2VWT
賑わうことを祈ってage
526名無しさん@ピンキー:04/10/15 16:51:49 ID:bS8KqFrX
ベリー
527名無しさん@ピンキー:04/10/15 17:27:10 ID:+ARyT2m8
ドロドロの予感
528名無しさん@ピンキー:04/10/18 00:43:09 ID:M13alUNu
神の再降臨はまだなのだろうか

何かこの文だとクレクレ君みたいで鬱だ
529名無しさん@ピンキー:04/10/19 02:54:03 ID:T6lT58Yb
424氏はあのまま放置なのか・・・?
530名無しさん@ピンキー:04/10/21 18:43:59 ID:6pZopr+q
いつになったら続きが読めるのだろうか
531名無しさん@ピンキー:04/10/22 00:34:20 ID:lQBMwPXH
まあそんなにポンポン書けるもんでもなかろうに
532 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:13:07 ID:vqZ8//KT
開けるまいと思っていた某FEをあっさり開封してしまいました。
ごめんなさい。
クリアしたのでこっちを進めていきます。
来月に入るとアドバンスウォーズがあったりしますけど多分大丈夫
533 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:13:27 ID:vqZ8//KT
 17
 
 環の涙に気付いた時、巧は真っ先にそれを吸いにいった。
 涙の理由は問わない。どうあれ、これからはすべて一まとめにして環を包み込むから
だ。胸が詰まる。手を触れてはいけない美術品のような存在だった年上の美女に、「好
き」と言わせたうえその日のうちにたちまち裸をさらけ出させて、声を上げさせ、乱れ
させた。その現実味というものがやってこない。だからこそ巧は大胆に行動し、饒舌に
囁く事が出来る。
 しばらく体重を完全に環に乗せて、たわむ胸の感触を堪能した。巧が身体を動かすと
それに合わせてしっとりと熱く張り付いてくる。環の吐息も添えられるとまるでぬるま
湯に漂っている気分だ。アルバイトなどやったことはないけれど、この行為だけでも丸
一日の労働分の価値はありそうだ、などと不埒な事を考えてしまう。
「環さん、平気?」
 唇に軽くくちづけてから、頬を擦り付けるように頭を隣りに落とした。質問の意味は
二つだ。環は両方に応えて、
「とってもいい気持ち。巧くんの重さがすっごくリアルなの。それに……」
 少しはにかむような逡巡があって、
「肌触りがね、女の子みたいに柔らかくていいんだ」
「……なにげに失礼な事言ってない?」
534 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:13:46 ID:vqZ8//KT
「あははっ、褒めてるのよ? 好きな相手をもっと好きになれるとこ、ひとつ見つけた
んだから」
「確かに上半身はまるで鍛えてないけどね」
 と巧は拗ねたように息を小さくついた。でも、十分に心をくすぐられていて、顔を緩
ませてしまう。
「まだまだ知らない事の方が多いし、楽しみにしてるね?」
 と、環が顔を横に向けてきて、頬にちゅっとやってきた。
 頬に与えられた感触に痺れながら、さすがに欲情の嵐から解放されていた巧は、そこ
で後始末に思い至り、身体を横に逃がす。
「巧くんこそ右手大丈夫なの?」
「あー、なんか、夢から覚めてシクシク痛くなってきた感じカモ」
 くちづけをやりかえして身体を起こす。
 そして聞きにくかった事を聞いてみた。
「ところでさ。環さんって、女の子好きでしょ」
「あー」
 環はしばしそのまま言い淀んでいる。
 言葉につまったせいか聞かれた内容のせいか、多少バツが悪そうにしながら、
「隠してるつもりもなかったんだけど。嫌いじゃない、くらいだよ、ほんと」
 それでも言えたことにほっとする様子で、
「そうだね。別にどっちでもよかったの」
 どっちでもというのはもちろん、男でも女でもということだ。
535 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:14:10 ID:vqZ8//KT
 環がちょっとだけ怯えるような眼をして、顔を寄せて来る。正直に言ってみたけど受
け入れてもらえるか不安、そんな顔だ。
 そんなに変なことじゃない。心配はいらないし、それに。それは環らしさの一部だ。
「俺は、環さんが別に俺だけじゃなくてもいい」
 巧はフォローのつもりでそう言ったのだが、環はそう受け取らなかったらしい。巧の
胸に手を当て、少ししつこく撫でてきた。
「服だって革鞄だって、無理すると歪みが出るじゃない、気持ちだって同じでしょ? 
今環さんがどのくらい俺の方を見ててくれてるのか、それなりにわかってるつもりだけ
ど、自分ではどうしようもないことってあるし、そういう部分を縛り付けるとしたら」
 まるで責めてるみたいじゃないかと、心が痛い。
「それって、恋愛感情以外のものが入ってるよね。虚栄心とか、物欲とか。結婚とかの
制度的な損得勘定もだけど、俺は現実的になりたくない。だからさ、環さんが好きなの」
「巧くんって、年いくつ?」
 環が楽しそうに笑う。
「そういう意味では都も巧くんのお眼鏡にはかなうんじゃないの?」
「あのさ、冗談でもそれは言わないで欲しいんだけど」
 こういう返し方をされるとどうにも情けない声になってしまう。
536 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:14:32 ID:vqZ8//KT
 環もそこのところは汲んでくれて、
「あははっ、ただの言葉遊びよ。こういうのは由美が好きなんだ。──あのね、お肌に
関しては確かに、女の子は好きだけど、なんか女の子は飽きたっていうか。私は女の子
に愛される趣味はないし、こっちがちょっと触ってやると簡単に気失っちゃうし、手し
か使わないから、手を洗ったらもうね、忘れちゃうし、何も残らないし」
「なんか聞いちゃいけないこと聞いてる気がする……」
「するとね、その度になんか気持ちが凍えそうになっちゃうの。あの子達を玩具にして
るだけなんじゃないかって思う。だから近付かないほうがいいのよ、もう。ただね、自
分の中で由美だけはなんか違ってるんだ。首傾げたくなるくらい頭いいし、見すかされ
るっていうか、空恐ろしくなるくらい。ほら、『ラプラスの魔』みたいな人っているじゃ
ない」
「いや、そんなの存在しませんて」
「そんな由美がね、私が困ってるといつも助けてくれて──あ、私と由美は実は幼稚園
からいっしょなのよ」
 環の怪しい告白を聞いている間、巧は天井や壁と環の顔を交互に見て、ぐるぐると思
考を巡らせていた。その視線をこっそり、裸のままの環の身体に寄り道させながら、
「へー。姉ちゃんは?」
「都はね、確か中2からよ、うん」
「なんか、なんとなく距離感でわかる気がする」
「そうかね? ふふ、だからね、私は由美にだけは抱かれてもいいと思っていたの。今
はもう、巧くん以外にそんな気にならないけどね」
537 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:14:52 ID:vqZ8//KT
 環は“にっこり”と“にたり”の中間のような笑いを見せた。
「そ、そーすか。姉ちゃんはどうなの」
「都はまたちょっと違うよね。私にとっては親友。それ以上でも以下でもありません。
でも、あの子を傷つける奴は絶対許さない」
「怖いって。俺も気ぃつけないと」
「巧くんは初めからそんなことしないでしょ? 私に言おうとしてるの、そのことなん
だよね」
 それはその通りだ。
「……まいるなー」
「ちょっと聞いたけど、最後まで聞かせて」
「恥ずかしくって死にそうっす」
 だが、どのみち現実味がまだない今しか、言う機会はないのではないか。環もまっす
ぐ巧を見ている。なにひとつ見誤らずに受け取ってくれるだろう。
「ほれ」
「乳首で催促すんの、やめて……」
 それを聞いて環の笑いの“にたり”度が高くなったので、巧はやる気になった。
 
「初めてじゃなくてごめんね。環さんは年上だから、俺は全然気にしないけど、俺、初
めてってほんの一ヶ月前だったから」
「……うん」
538 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:15:21 ID:vqZ8//KT
 その反応だけは窺っていて、大丈夫そうなので、巧は後は続けて話してしまう事に決
めた。
「初めてじゃなくてよかったなーって思っちゃったから。もし今日が初めてだったら俺、
みっともなくて立ち直れなかったかもしれない。それでもかっこ悪かったけど」
「あ、待って。言わせて?」
 環のほうからポーズがかかった。
「巧くん、思い違いしてる。私もそんなに男性経験ないの。場慣れしてるのは認めるけ
ど、だから、初めてだったの」
 声が極端に小さくなった。
「初めてイッたの、巧くんが初めてイカせてくれたんだからね。すごく嬉しかったんだ
から」
 巧はここで環の涙の理由を正しく知った。巧の取るに足らないプライドのために恥ず
かしいのをこらえて言ってくれた気遣いも。
 やっぱり、何一つ隠さずに言ってしまいたい。
「環さん、ありがと」
「って、どこにお礼してんのよお」
「だってこれに催促されたんだもん」
「ひどっ」
 といいつつ環は笑っている。それがとてつもなく優しい微笑みに変わっていくのを見
ながら、巧はくわえた環の乳首を舌で一なめした。
539 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:15:40 ID:vqZ8//KT
「あっ……、ちょっと、違うでしょうが」
「だって、なんかもう、今日は出し過ぎだからこっちだけでもと思って──嘘です」
「そういう下品なこと言う巧くんはキライ」
「ごめんなさい」
「冗談よ。私も言えなくなっちゃうじゃん」
「あのね……」
 そういうやりとりがやはり楽しかった。断ち切りがたかったが、巧は言葉をつなぎは
じめる。
「姉ちゃんのこと、責任は俺と環さん二人にあると思うんだけど」
「そう……かな?」
「俺気付いたもん。環さんが俺にちょっかい出してくる時って、いつも姉ちゃんがいる
時なんだよね。挑発しすぎ」
「あは……なかなか鋭いじゃない」
「笑い事じゃないっす。でも俺のやったことの方が笑い事じゃない」
「そうなんだ?」
 環は巧のやったことを具体的には知らない。
 だからかいつまんで白状した。『欲情してる?』などと聞いてしまったことも、押し
倒したことも、『慰めてやる』なんて言ってしまったことも。
540 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:16:01 ID:vqZ8//KT
 思えば環達に出会うまでの悪戯はかわいいものだった。それが環の挑発に倣うかのよ
うに異性としてのからかい方に、よりによって楽しみを覚えてしまった。そして都の中
の眠っていた感情を呼び覚ましてしまった。やったのは巧自身だ。
「俺と環さんは共犯なんだからね。姉ちゃんのことには責任があるんだと思う」
「巧くんはどうしたいの?」
 そして巧はまた極端なことを言った。
「環さん、社会人になったら俺と結婚して。そんで、共働きして姉ちゃん養おう」
 
「姉ちゃんを更正させて、意地でも幸せになってもらうもんね。それまでは面倒見る。
もしどうしてもだめだったら、一生面倒見るんだ」
「巧くんってやっぱり素敵だなあ」
「環さんの意見は?」
「もし私が嫌だって言ったら?」
「ええっ、そんなこと言うの?」
 環は黙ったまま真顔で巧を見据え、答えに代えた。いや、促した。
 それに気付き、巧もはっきりと伝える。
「ひとりでも、やる」
 この言葉に環は、都に対する嫉妬を自覚した。
 姉弟というのは正しくはこういうものなのかもしれない。でも、巧は都を大切にし過
ぎていると環は思う。それに都は絆されたのではないか。
 想像のつかない未来があることを知り、それを怖れる。
541 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:16:26 ID:vqZ8//KT
 18
 
 環のそんな思いを知らず、巧は言葉を続ける。
「俺って、今まで惚れるってわからなかったから、ずっと性欲と恋愛感情の区別がつい
ていなかった気がする。環さんのおかげで少なくともそのことはわかったんだ。知らな
い子に手紙貰ったり急に抱きつかれたりして、どうしていいかわからなかったけど、そ
ういうのも大切にしていけると思う。だから、生まれた時から隣にいた人を大切にでき
ないわけがない」
 ひょっとしたら巧は本質的には環を必要としていないのではないのか。
 環の怖れはそこに集約されていた。
 確信を持って言える。そこまでまっすぐな巧を自分が見捨てるはずはないのに。自分
が見捨てた後の事まで巧は覚悟している。
 自分達の関係は、言ってしまえばまだたった一日の事だ。それをずっと前からそばに
いるような気になっている。
(巧くんは、それで平気なの?)
 そうではないと信じたい。だから、
「巧くんは一生私の言いなりなのよ? だから、ずっとそばにいて」
 と環は言った。
 
542 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:16:47 ID:vqZ8//KT
 その言葉を過剰に体現して、巧は環を再び求めてきた。
 巧の舌が首筋をきつく這い、鋭い感覚に環は背中を反り返らせた。
 たちまち、身体じゅうが燃える。が、
「お願い、私にやらせて」
 これ以上巧の腕に負担をかけさせられない。
 環は力任せに巧を下にすると、巧がやったように激しく抱きついて巧の肌を貪った。
巧も逆らわなかった。実際右手の分、他にかかった負荷が巧をくたびれさせていた。
 それでもまだ勃起できる巧も頼もしいと言えるが、環も貪慾だった。エクスタシーと
いうものを経験して執着が増し、それを与えてくれる恋人に心酔している。
 身体の表面すべてを同時に擦り合わせられないものかと環は焦れた。
 いや、もっと切実だ。
(巧くんと混ざりあいたい。そして、都もそう思っている)
 それはあまり嫌な感じのしない想像だったが、ただ巧を失うことは怖くてとても考え
られなかった。
 身体を押し付け、擦り付けるだけで快感が走り、さらに力が入る。だがこれでは巧を
ほったらかしにしている、と思うが止められない。
 その時巧の左手に片尻をつかまれた。股間の皮膚が引き攣れて感覚を生み出す。身体
の奥が収縮していくのがわかった。たまらず胸を巧に擦り付け、乳首同士がきつく触れ
あうと、環はたまらず大声を上げた。
「あああっ! 巧くん、出来そう?」
543 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:17:07 ID:vqZ8//KT
 自分でもはしたない言葉だと思うが、止められない。聞くしかないのだ。巧の目を見
ると、熱く環を求めているのがわかった。欲望を受け入れてくれる巧に奥底から酔い、
目を覆わんばかりの拙さで防護を施して、一気に、文字どおり巧をくわえ込んだ。
「う、くー、痺れる……」
 巧がかすれた声でそう言うのが麻痺した脳に心地いい。
 恋人をベッドに押し付ける初めての姿勢で身体を貪る。
(そういえば、本当に初めてだ)
 ぎこちなく動き出すと、巧も応えてくれる。その巧とて慣れないことに四苦八苦して
いる。二人して出来損ないのロボットみたいで少しおかしい。その予想できないお互い
の動きが意表をついた刺激を生むので気が抜けない。不思議な緊張感がある。
 自分のやりたいように動いているのに、巧に身を任せるだけより遥かにもどかしい。
 その時巧が上体を起こしてくる。それが二人の間に呼吸を生み出していった。
 ただ馬乗りになっているだけより動きが制限されるので、かえって正確に性感を高め
あっていた。自分が泣き笑いのような顔をしているのを意識しながら、環は少し低い巧
の唇に上体を屈めてくちづけていく。そうする間にも腰を打ちつけあって、唇が激しく
すれ違う。苦労してその口をとらえたところで環は巧の頭を抱え込んだ。巧が口を環に
任せ、環は腰を巧に任せた。
 上と下でつながり、一輪となって快感を互いに流し込む。
 先だってイカせてくれたときと変わらず巧の肉棒は環の内側で暴れ、環を狂乱させた。
まがい物ではなかった。本物に抱かれている。愛でられている。
544 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:17:26 ID:vqZ8//KT
「イク、またイク……」
 それがすでにあたりまえになっていた。
 巧を喜ばせる声が、とめどなく溢れ出ていく。
「あ、あ、っあ、あああああっっ!!」
 それが巧を刺激しているのがよくわかる。恥ずかしい。でもそれが自分を気持ち良く
もする。奇妙な幸福感。
「あ、あ、巧くん、お願いっ! ああっ、来てっ! あああっ! イク、くあああっ!」
 お互いの口が完全に相手をロストし、声で名を呼び合う。環さんと巧くん。
 意識がどろどろになって、時間や肩書きや、すべてのゲシュタルトが崩れていった先
で、繋がりあった性器の描く軌跡だけが焼きつけられていく。
 完全に満たされる。
 
 気がつくと、巧に強く胸元を吸われていた。
 痺れるような痛みがあって、その跡を温かく舌が這うのを感じる。マークは二つ。
「二人でイッた数」
 巧がひたすら照れくさそうに、でも楽しそうに言った。
 それは二人が共有したセックスの本当の数だ。
 巧がティッシュとゴミ箱と引き寄せて、あれこれと二人の身体の世話を焼いている間、
環は邪魔をしないように巧の空いている肌を撫でた。股間をぬぐわれると、小さく声が
出てしまう。
545 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:17:50 ID:vqZ8//KT
 お返しに巧の背筋にそって爪を這わせたり、耳朶をつまんだり。
「あのー、邪魔してないつもりだろうけど、ていうか邪魔にはなってないけど、めっちゃ
やるせないんですけど」
 環は声を上げて笑い、巧に協力する。
 少し弾け過ぎているのを感じ、自分にコントロールを促す。そうすると心の中が、目
の前の恋人に対する愛しさだけにまとまっていき、ほっとする。
 巧が環の身につけたものを集め、着せようとしているのに気付いた。そういえば、脱
がされるというのはよくあるが、でもそれは無理だろう。立場が逆だ。
「怪我が治ったらね」
 巧を押しとどめ、自分が巧に服を着せていく。それから布団で巧に目隠しをして手早
く身なりを整えた。巧の不満の声が聞こえる。言い分はもっともだが、これはけじめの
ようなものだ。
 環は窓際に寄って、カーテンを少し持ち上げた。暗くなってはいない。なってはいな
いが……。
「環さん、五時半……」
 巧が伏せてあった目覚し時計を起こしてよくわからない表情で言った。
「大丈夫、都は由美が確保してるはずだから」
 巧がさらになんともいえない顔になり、ベッドに突っ伏した。
「俺、明日由美さんの顔見れねー」
546 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:18:13 ID:vqZ8//KT
「大丈夫、由美の予言通りになっただけだから」
 言ってから後悔する。本当にこっぱずかしいものだ。
 見つめあってしまって、「最後だよ」と念を押してから、唇を巧にあずけた。巧のた
めにも、際限なく溺れるわけにはいかない。
 舌を舐められた時、包丁がまな板を叩く音を聞いた。
 
 *
 
「げ……はるかだ」
 巧は頭を抱えた。
 入院していたから食事当番のズレ等、その間家であったことは皆目わからない。
 はるかは食事当番の時、早めに部活を切り上げてくる。慌てて自分達の姿を確認し直
し、考える。
(帰って来たらただいまとか言って、まず部屋戻って着がえて、そんでもってシャワー
とかして、それから……てことわ)
 だらだらと汗が吹き出しそうだ。
547 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:18:32 ID:vqZ8//KT
 腕の中の環も気付いていた様子はない。が、
「あいさつしてから帰ったほうがよさそうね?」
「……楽しそうな顔しないでください」
 トントンと階段を降りていくと、途中で包丁の音が止まった。巧も固まってしまう。
包丁も再開しない。
 よくない反応だ。
 開き直って階段を下り切る。
 よく手入れされた小さな革靴が玄関の隅に揃えられていた。はるかの学校の制靴だ。
巧も去年までは使っていた。巧と環の靴も反対側の隅に寄せられている。
(靴見てこっそり入ってきたのか、まったく)
 どうしようかと考えていると、環に引っ張られた。
「わー、ちょっと待った、っこら、なんでこういうことになると遊ぼうとするん」
 だよ、と言う前にダイニングに引き込まれる。
「おじゃましてまーす」
「あ、た、環さん、お久しぶりです」
「花屋敷以来じゃない? この家も半年ぶりだし」
「あ、お姉ちゃんはまだみたいなんですけど」
「都はね、由美とおデートだから」
「何がおデートか」
548 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/22 16:18:51 ID:vqZ8//KT
「お、お兄ちゃん……」
 状況はまったく予測通りだったようで、はるかの目が泳いでいる。そのうえ真っ赤だ。
後のフォローを今から考えはじめる。しかし、
「包丁なんとかしてくれ。頼むから」
 固まってしまったように右手に握りしめられた包丁をはるかは両手で引き剥がしてシ
ンクに転がした。戻って来て、
「あの、環さんも、食べていきませんか。おね、お姉ちゃんももう、帰ってくると思う
し」
「いや、それは……」
 さすがにまずい。はるかが環の口元や手を目で追っている。何を想像しているかまる
わかりだ。
「巧くん退院するのに付き合っただけだから。じゃあ巧くん、明日からまた学校だね」
「あ、うん」
 『突き合った』だろう、などとは間違っても言えない。礼儀上「送っていく」と巧は
言った。このままはるかと二人にされるのも厳しい。
「それじゃあべこべよ」
 爽やかに返され、そそくさと玄関に下りて靴を履く環の、いつもむき出しのままの綺
麗なうなじを追いかけながら、(キスマーク、あそこにつけてやればよかった)と思う。
 と、環がくるりと振り返ったので巧はどきっとしながら、
「あ、じゃあ、名残惜しいけど。また」
 そんなささやかな仕返しをした。
 
549 :04/10/22 19:30:31 ID:TXI+g/es
GJです。
これをかなり楽しみにして毎日チェックしてる自分がいる。
550名無しさん@ピンキー:04/10/23 13:14:46 ID:NP/ovJF4
グッド
551名無しさん@ピンキー :04/10/24 18:31:10 ID:ushUnvEx
俺も楽しみにしてる
552 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:44:11 ID:3hkjqDSS
 19
 
(感覚が残ってる)
 環はあからさまにならないように、そっと腹の上に手を置いた。
 ひさしぶりだったせいもある。
 初めてでもないのに、なにか入ったままになっているような感じ。言葉では表せない
幸せな時間だった。まだそれが終わっていないみたいだ。今にもまたその感覚が動き出
して、身体を埋めつくすんじゃないかと思い、軽く背中を震わせた。
(怖いよ、巧くん)
 普通に足を運んで歩いてるのに、いつもの空気を吸っているのに、どこかに迷い込ん
だみたいだ。
 世界が違って見える。よく言われるような、初めての時にはそんなことはなかった。
つまり、本当に好きな人に初めて満たされることで『違って見える』わけだ。そんな風
に変に納得する。
 まっすぐで素直な、誕生直後のカップル。
 でも、その眩しい光に照らされて陰になったところがある。姉弟とはいえ親友が惚れ
た男を取ったという事実に変わりはない。
 由美はどうしただろうか。
 もうひとりの親友のことが気になった。
553 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:44:35 ID:3hkjqDSS
 由美は環だけのためにこういう状況をつくったわけではない。それは由美から聞いて
知っている。環が巧と二人きりになるということは由美が都と二人きりになるというこ
とだ。つまり、そういう事なのだ。
 環は由美のために少しだけ祈る。
 
 待鳥家から環の家までは多少距離がある。
 コンビニに寄って使う当てもないコロンやリップを物色した。化粧などしたこともな
いが、巧のために遠からずそうしたくなるかもしれない。
(もうすぐ夏だもんね)
 期末試験と、女子バスケ部も予選が迫っている。今日はもう行けないが、部長として
はそうそうさぼるわけにもいかない。環達三年生は最後の大会になることもあり、相当
力が入っていないといけないところなのに、色惚けしていたのでは後輩達に申し訳がた
たない。体調は、邪気が抜けたように良好だった。気の巡りが良くなったような気がす
る。そこに思い至って、歩きながら赤くなった。
(欲求不満が解消されたかな、えへへ)
 それでも最初の大会を棒に振った巧への気遣いを忘れるわけにはいかない。
 待鳥家の夕食を食べ損なったので、環は少し虫抑えをしようと、革鞄からシリアルバー
を取り出し、齧った。部活用にいつも用意してあるものだ。
(はるかちゃん、かわいくなったね。やっぱりみんな似てるし)
 真っ赤になってあたふたしていたはるかを思い出し、恥ずかしいけれど、楽しくなっ
た。巧が今頃はるかに何を言っているか、なんだか結構わかる。
554 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:45:00 ID:3hkjqDSS
 もしはるかまで巧を見ていたとしたらどうなるんだろう、ふとそんなことを想像し、
振り払った。
 自宅へ向かって最後の角を曲がり、残り電柱二本の道のり。
 そして、自宅に一番近い電柱──そこに由美がもたれていた。
 声をかけようとしてためらう。
 先にかける適切な言葉はたぶんない。由美はゆっくり環の方を見た。
「おかえりー」
 いつもの無邪気とは程遠い気の抜けた声で、由美はそれでも笑った。
「ハイ」
 環も笑う。十何年もそうしてきたから。
「やっぱり、言えなかったんだ?」
 由美の表情は寂しそうだったけど、それは映画の感動巨編を見て泣いた後のような、
余韻のある顔をしていた。だから環にはそう思えた。
「全然それどころじゃなかったもん」
 由美が頬を膨らませたが、怒っているようには見えなかった。一見小さい頃のままの
可愛らしい顔で大人びた目をする、この少女を振り回せるのはこの世でたった一人。
「ま、聞かせてもらいましょ。寄るでしょ?」
「あたし、おなか空いちゃったなー」
「ウチの御飯でよかったらたかんなさい、思う存分」
「えへへー」
555 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:45:28 ID:3hkjqDSS
 *
 
「で?」
「な、なに、お兄ちゃん」
「なんで赤くなってるのかな? はるかさんは」
「お……、お兄ちゃんのバカ!」
(うーむ、あっさり撃退できてしまった。これからはこのテで行こう)
 巧は、喚き散らしながら階段をバタバタと駆け上がるはるかを見送り、にっこり笑っ
た。こういうことはなまじ取り繕ったりするから旗色が悪くなるのだ。
「あ」
 だがそこで巧は、作戦に大きな欠陥があったことに気付いた。運用上の問題ではあっ
たけれど。あきらめて階段を上がる。
「はーるかちゃーん、晩御飯ー、最後までつくってくーださいなー」
 上がりながら声を大きくしていく。
「お兄ちゃんうるさい!」
 廊下の一番奥のはるかの部屋は、扉が半開きだった。そこに身体を入れると、ベッド
にうつぶせているはるかの身体が見える。
「こら、俺片手なんだからさ、はーやーくー、──スカートめくるぞ?」
「やっ」
556 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:45:46 ID:3hkjqDSS
 てきめんだ。がばっと起きるや、巧の横をすり抜けてまたバタバタと駆け下りていく。
「バカバカ、お兄ちゃんのエッチ! 変態!」
「なにおう」
 つけっぱなしのはるかの部屋のライトを消してから、
「おまえだってそのうち一弥の奴とするんだろう? エッチな事」
 トントンとゆっくり降りていく。
「な、なんであんなのとそんな事しなきゃならないのよ! わたし、もっとかっこいい
人じゃないと付き合わないもんっ!」
 振り切れっぱなしのはるかの顔はもう完全に真っ赤だった。
 待鳥家のはす向かいには、高松一弥というはるかと同い年の少年が住んでいる。保育
園以来のつきあいらしい。はるか自身がどうなのか知らなかったが、巧は彼に相談を受
けた事があった。もちろんその類いの相談だ。巧は、なんとなく自分に似たその少年が
嫌いではなかった。
(今日の所は話を逸らすために活用させてもらいましょう)
「陸上やめてテニス部に入ったんだよな、あいつ。健気なもんじゃん」
「よくあーいうことできるわよっ、キモイ! あれじゃストーカーじゃないっ」
「幼馴染みなんだからさ、もうちょっと優しくしてやれば?」
 はるかは少々一弥に厳しい。
 勝手に弟分にしている巧としては結構気になっている。
「俺に似て純情だし」
557 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:46:04 ID:3hkjqDSS
「お兄ちゃんは……、お兄ちゃんはふ、不純だもんっ!」
「不純で悪かったな」
「でもその……、いつから、あの」
 だんだん好奇心が勝って来たらしい。
「ごめん」
 と肩に手を乗せると、はるかはびくんと跳ねた。巧はすぐにその手を引っ込めると、
「なるべく気をつけるから、内緒にしといてくれよ」
「……お姉ちゃん、に?」
「ハイ、女王様に。今怒らしたら俺殺されると思います」
 巧が促すとはるかは思い出して料理の続きを始めたが、手元が怪しい。気にしながら
リビングでテレビをつける。ニュースばかりでちっとも逃げ込めない。
(自分で話題戻してどうする)
「きゃっ!」
「怪我すんなよー」
「うるさいな、お兄ちゃんと一緒にしないで」
「何つくってんの?」
「お兄ちゃんの嫌いなもの」
「そりゃないぜセニョリータ」
「きゃっ、急にこっちこないでっ」
「人間はほんとはグリーンピース食べちゃいけないんだぞ?」
558 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:46:23 ID:3hkjqDSS
「お兄ちゃんの嘘つき!」
 はるかがぶんぶんとお玉を振り回すので、退散する。だが「肉じゃがにグリーンピー
スを入れるのは間違ってる」というのは本音。
 その時、玄関で音がする。
 父の透ということはありえないので、姉の都だ。
「お姉ちゃんだ」
 はるかがお玉を持ったままリビングの方に来る。
「こら、垂れてるって」
「やっ」
 はるかがバタバタしているうちに、都は二階に上がって、すぐに降りて来た。着がえ
るのが早い。
 と思ってちらっと見て、巧はびくっとした。都はパジャマを着ていた。
「あれっ」
 はるかが気付いて戻ってくると、都は、
「ちょっと熱っぽいから、寝るね」
 と言うとすぐまた二階に上がってしまった。
(び、びっくりした)
 巧は『下着は外して寝ろよ〜』とかつい言ってしまいそうになるのをこらえ、複雑な
気持ちを飲み込んだ。改めて思えば正直かなり寂しいけれど、そうしなければならない。
(確かに──)
559 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:46:43 ID:3hkjqDSS
 都は少し目が赤くて腫れぼったい感じだった。でも、どことなく晴れやかな顔に見え
た。目の前で座っていた巧に拘泥するでもなく、穏やかに去った。
 巧がやろうとしている事にとって──環との事を逐一都に言ってしまうのがいいのか、
言わない方がいいのか、巧にはまだ判断がつきかねている。
 だからすこしほっとする。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんのぶんはとっとくんだから、食べちゃだめだからねっ」
「へーい」
 軽く返しながら巧は、炊飯器の電源が入っていないのをはるかにいつ指摘するか、笑
いそうになりながら考える。
 
 *
 
 環の部屋で、しゃべるだけしゃべって、食後だというのにスナックを食べるだけ食べ
散らかして、環のベッドに潜り込んでしまった由美を、環があっけにとられて見ていた。
「太るっての」
 とため息をつきながら、肩まで布団を上げてやる。
『あたし、感動しちゃった』
 そう言いながら都の話をする由美は痛々しいこともなく、投げやりでもなかった。名
女優の一人芝居を見ているようだった、と由美は言った。
560 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:47:12 ID:3hkjqDSS
 そういうものかもしれない。環とは違って、都が巧に片思いしていたのは気の遠くな
るような長い時間だろうから。人目を引く鋭い容貌で、芝居ではない本当の恋を唄った
少女に、聡明な由美といえど、何を言えばいいというのだろう。由美は都に告白するは
ずだったのに。
 
 *
 
 次に起こった問題は、これも意外に繊細な問題といえた。
 巧は片手で風呂に入ることになる。
 父が帰ってこないかと、一応待ってみたが、23時。
 苦労して包帯の上にビニールをかけていると、はるかに見つかった。
「お兄ちゃん、そもそもお風呂なんか入っていいの?」
「バカ言うな、これだけはもう我慢ならん。今日もさんざん汗かいて──」
 巧はそこまで言ってあわてて口をつぐんだが、逆にそれではるかには意味がわかって
しまった。
「こ、これだけ、ちゃんとつけてあげるね」
 ごまかすようにしながらも、輪ゴムとクリップを使い、締め付け過ぎないように気を
使いながら手際よくはるかが動く。巧が感心しながら見ていると、思い直したのか、
「背中だけでも流してあげようか?」
「はるかのエッチぃ」
561 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:47:35 ID:3hkjqDSS
「み、水着着るもんっ」
「そうだとしても俺は裸だぞ? いいのか?」
「ううー……っ」
「ひとりで出来るに決まってんじゃん、ばーか」
「ばかじゃないもん!」
「じゃあ、お利口さんはお勉強ちてくだちゃい」
 言い返す代わりにぼふっ、とクッションを投げ付けると、はるかは湯気を立てながら
ぷりぷりと階段を上がっていく。
「風呂上がりに水着なんかでうろちょろしてたらおまえが風邪引くだろうが」
「べーだ!」
「お、できた」
 準備を整えて、下着を取りに二階に上がる。はるかが部屋に引っ込んだのを確認して
から下着やパジャマを右手のビニールの上に乗せ、部屋を出て、そして……
 ぎょっとして階段で止まった。
「な、何してんの、姉ちゃん」
「お風呂入るんでしょ?」
「いや、大丈夫」
 なんとかそう言ってやりすごそうとするが、できなかった。
「ていうかなんで起きてんの」
「もう五時間寝たから」
562 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:47:54 ID:3hkjqDSS
「……」
 巧がまたそうっと逃げようとすると、都は人さし指で巧の右手を突いた。
「だ」
 あっけなく着替えは階段に散らばり、巧は急いで拾おうとするもすべて都に奪われて
しまった。そして、都はすたすたと先にたって風呂場の方へ歩いていく。
(な、なんだこりゃ……帰って来た時のあれは)
 巧は呆然と見送り、『嵐の前の静けさ』という言葉を思い浮かべていた。
 パジャマを人質に取られたので、行くしかない。
(ちくしょう、いったいあの悪戯娘に何吹き込まれてきたんだ)
 変な汗が出て来そうだ。
 脱衣所でまたぎょっとする。都はいつのまにか体操着になっていた。女子の学校指定
はシンプルな短パンだ。
「ほら」
 早く済ませてくれと言わんばかりに、普通に急かされる。
(?)
 何か企んでいる感じもしない。巧のシャツを手伝うと、それからダイニングの方に行っ
てしまった。その間に巧は全部洗濯機に放り込んで、風呂場に入ってお湯を被りはじめ
た。確かに、自分一人ではかなり苦しいと巧は思う。情けない。
 ブラシタオルと石鹸を前に悪戦苦闘していると、唐突に戻ってきた都がそれをそっと
巧から奪い、静かに泡立てはじめた。
 その手つきは本当に都らしかった。
563 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/25 19:48:12 ID:3hkjqDSS
「じゃあ、先にやっちゃうね」
 その言葉も生来の柔らかい喋り方で、よどみがない。
 左手では絶対に洗えないところ──つまり左手・左肩と、背中だけを流すと、都はさっ
さと出ていった。
 ほんとうに素っ気無いくらい普通だった。
(えっと。……これも由美さんマジックなのかな?)
 拍子抜けはしたが、おかげで巧は滞りなく身体を洗い終え、湯舟に浸かって本当に久
しぶりのくつろいだ感じを味わう事が出来た。思わぬ緊張も味わったが、そこから一気
に神経が鎮まっていくのが心地いい。
 頭を空にする。
(ホアキンになりたいなあ)
 子供じみた憧れが浮かんでくる。ホアキン、ルーケ、シモン、雲の上のスタープレー
ヤー達に肩を並べられるようなテクニックは望むべくもない。サッカー漬けの毎日を送
るなんてことは考えられないし、だからこそ試合に出られなくてもこの程度のヘコみ方
で済んでいるのだろう。
 じゃあ自分は何になるのだろう。なれるのだろう。二年も先を歩いている恋人につい
ていくのは結構辛いのかもしれない。
(姉ちゃん、毎日あの調子でやってくれるつもりかね)
 それを少しこそばゆく思いながら、湯から上がった。
 やっとこの長い一日が終わる。
564名無しさん@ピンキー:04/10/25 20:56:24 ID:msBHpPFM
ネ申降臨キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
毎日チェックしてる甲斐があった!
なんか先がまだまだありそうだ…ずっと楽しめそうですな、乙です!
565名無しさん@ピンキー:04/10/26 00:06:02 ID:aUTsnR60
乙津でございます
566名無しさん@ピンキー:04/10/26 00:50:19 ID:2P/6FlJM
都タソ…(;´Д`)ハァハァ
567名無しさん@ピンキー:04/10/26 11:40:00 ID:aUTsnR60
早く姉とやっちゃえYO!
568名無しさん@ピンキー:04/10/26 22:15:59 ID:uhqWQ27d
はるかと一弥の話が、幼馴染みスレで読める日を夢見る
569名無しさん@ピンキー:04/10/27 00:36:34 ID:tEu5B2bT
はるかと一弥の話もおもろそうだが
妹属性もある身としては妹スレの続編も読みたい。
でもやっぱ巧と都が一番読みたい。
570名無しさん@ピンキー:04/10/27 00:41:34 ID:CtLpxnZS
漏れは由美と都も気になるのう
571 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:48:50 ID:+k6dw9ob
こんなスレ違い寸前の長い話にいつもレスくださってありがとうございます。
プロット通りに進んでるけどまだたぶん半分くらいです。
短い話のはずだったのにおかしいなあ。投下のたび結構ビクビクしてます。
572 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:49:09 ID:+k6dw9ob
 20
 
 次の朝。
「ひょっとしてはるかちゃん、おニューの水着を巧くんに見せたかったんじゃないの? 
もうすぐシーズンだしぃ」
「だから、そういうことを楽しそうに言わないでください」
 巧は予鈴前の踊り場で由美につかまった。
 芋づる式に環と、取り巻きの女の子達と顔を合わせる。気恥ずかしいことこのうえな
い。目が合う度に環が目を泳がせるので、巧はまた新鮮な感慨を得た。
 予想以上の意外なあどけなさにくすぐられる。
 一部女子生徒の鋭い視線にも気付く。勘のいい女の子というのはいるものだ。遅れて
その『人込み』に突っ込んだ都が怪訝な表情をしたくらい、変なオーラがうず巻き始め
たので、通りかかったクラスメイトをダシに巧は逃走を計った。
「お? なんだよ巧」
「まあまあ、こないだ言ってたデリダキッズのコンサートの話を聞かせてもらおう」
「今なんか、すごくなかったか? おまえのまわり」
「気にすんな」
「腕は大丈夫なのか? おまえ、女を襲って返り打ちにあったんだって?」
 心配しているような口調だが、顔は思いきり笑っている。
「……」
573 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:49:30 ID:+k6dw9ob
 サッカー部の上級生にも出会った。
「おまえ、階段から落ちたとか言って、水臭いじゃないかよ。そんなにいい女だったか、
ん? でも無理矢理はよくないよなあ?」
 巧はがっくりしながら、
「まさか、学校中……」
「みんな知ってるな、うん。まあ運動部系はプライバシーないも同然だからな」
 みんな暇なんだろうが、おまえは普段から目立ってる、と付け加えると、彼は他の友
人に呼ばれて去っていった。
 肝心な部分がちゃんとぼかされているのは感謝するべきなのだろうか。
 人の噂も──というわけでしばらくは我慢が必要だ。だがそもそも、右手を吊って歩
き回ったら、自分で宣伝しているようなものである。
(ちくしょう。意地でも姉ちゃんは矯正してやる……)
 そんなことを考えながら教室の扉を引くと、
「勇者発見!」
「きゃー!」
「おかえりなさい、待鳥クン!」
 普段そんなに『クラスの中心人物』というわけでもないのに、朝からやたらハイな連
中が巧を出迎えた。気持ち悪い声を出す者までいる。
 自分の席まで歩くうち、巧は自分の顔が赤くなっているのを感じた。
「まさか、信じている奴はいないだろうな」
574 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:49:57 ID:+k6dw9ob
 革鞄で机を叩いてみても迫力のない事このうえない。そのまま肯定しているみたいだ。
 無視していればいいのだが、それほど間違ってもいないので、強く出られない。
(ホームルームが始まるまで寝たふりしよう)
 そう思って突っ伏していても横からつつかれる。
「いいかげんに──」
「きゃっっ!」
 はたいてやろうと立ち上がりながら、左手で……
 むにゅっと音がしそうな柔らかいものをつかんだのに気付いた。
「ざ、残間」
 ばっと後ずさり、慌ててまわりを見ると、ほとんどの者が巧の方を見て同じような笑っ
た顔をしている。
(こいつら殺す)
 頭にくるけれど、とにかく振り返って、脇に物を抱え、反対の手の人さし指を突き出
した状態で固まっている隣の席の少女を見た。
「悪いっ……、おまえがそーいうことすると思わなくて」
「う、ううん、平気」
 目をぱちくりさせているのは残間清美という、左隣の席の女生徒だった。女の子を見
た目で『体育系』と『文科系』の二つに分けるとしたら、十人が十人彼女を『体育系』
と言いそうなのだが、園芸部だ。
575 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:50:24 ID:+k6dw9ob
「ホームルームやんぞー」
 クラス担任の吉見がつかつかと入って来て、やっと皆が座席に散らばりはじめる。
 輪の中心にいた残間清美は、そこで活発そうな短髪をはねさせて小首をかしげ、
「ちょっと差し出がましいかなあとも思ったんだけど」
「は? 何の話」
 巧は彼女の差し出した3冊のノートを眺めた。
 受け取って自分も席につきながら、
「休んでる間の? ありがたいけど、字なんて書けないよ」
「あ、ご、ゴメンね。じゃああとでコピーして来る」
「そりゃ悪いって。ていうか、三日分ぐらい別にいいんだけど」
「そう、ごめん」
 巧は少し考える。
「残間あのさ、もし俺が本当に女襲ったとしたら、それでもこういうことしてくれる?」
「えっ……」
「冗談です」
「──なんだ」
「悪いけど『彼女』とはうまくいってます。怪我は関係ないの」
 とっさに、すこし冷たく言ってしまった。
 巧は話をしている間、礼儀上視界に彼女の姿を入れていたのだが、その自分の言葉の
せいで見ていられなくなって目を逸らした。その時、
「ヨッシー、聞こえねーよ」
「あ!?」
576 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:50:43 ID:+k6dw9ob
 一生懸命ホームルームをやっていた吉見が、その突っ込みに声を荒げた。
 ヨッシーというのは吉見のことだからつまり、巧と清美の会話が聞こえなくて邪魔だ
と男子のひとりが口を滑らせたのだった。
 聞いていたのはごく一部の生徒だったが、それでまた注目が集まってしまった。
 そんな瞬間に彼女は言う。
「憎ったらしいな……懐に倒れ込んでやろうかしら」
「キャー、清美ちゃんやらしー!」
「な、なによ」
 聞いていた女子の突っ込みに、笑って言った彼女の言葉に巧は救われる。巧は清美か
ら改めてノートを奪い取り、
「今写しちゃうよ、どっから?」
「お・ま・え・ら〜」
 吉見が近付いてくるや、ゴン! と巧の脳天に一撃を加えた。清美には出席簿でバシッ
と一発。
「ああっ、差別」
 巧のわかりやすいリアクションに清美は声を上げて笑った。これでいいと思う。
「いたっ」
 吉見が、その笑ったのを咎めてもう一発出席簿で清美をはたいた。
 
577 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:51:03 ID:+k6dw9ob
 *
 
 昼休み。
 朝方派手に降った雨のせいで屋上はむっとしている。
「二年の先輩がなんで?」
「学年が関係あるの?」
「そりゃ、ないっすね。俺三年の人とつきあってるし」
「! ……そ、そう」
 会話はそれだけだった。
 
「うんうん、誰にでもモテ期というのはあるもんだよ、巧クン」
「なんですか、モテ期って……」
「そしたら放課後下駄箱に何通か入ってそうね、例のアレが」
「にゃっはっは。総決算だね」
「ええっ、じゃあそれって、今日一日で終わり? うち止め?」
「なにか不満でも?」
「……ありません」
「そんなことより」
 環が巧のシャツをつっつきながら、
「巧くん、さっきの話し方なんか怖かったな」
「えっ」
578 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:51:28 ID:+k6dw9ob
 環は不安そうな眼をする。何故? と思う。いや、不安の色というかなにか、揺らい
でいる。巧にしてみれば、このタイミングでそんな眼をされるとそれこそ不安だ。心を
通わせてまだたった24時間が経ったばかり。
 環達三人がこっそり見ていたから、巧はその二年の女の子をきっちり切り捨てるしか
なかったのだし、そのために最大限の対処をやった。相手が告白(おそらく)する前に
こちらの事を言ってしまえば、相手はある意味恥をかく前に引くことができる。心づく
しじゃないか。スタンドプレイをしたつもりもない。
「話し方っていうか、セリフがキレキレだったねっ。それになんだか女泣かせな面構え
になってきたねぇ」
 由美の言葉に巧はハッと引き戻された。
「でも、巧クン女ったらしになっちゃだめだよー」
 なんでそうなるのかと不思議でならないが、頭の他の部分では冴えている。
 ゆっくり、都の方を見る。
 都があれからずっと穏やかなのは何故だろう、と思う。
 それから、環の気持ちを考えてみた。
 巧には、今度はその眼が、『知らない人にならないで』と言っているように見える。
 
 *
 
 放課後。
579 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:53:44 ID:+k6dw9ob
 当然のように下駄箱の前で、
「お約束って、いったいなんなんでしょうね」
 憮然としながら、巧は環に振り返った。
「俺の知らない人が俺に何を期待してるんでしょう」
 今まで巧は知らなかったが、専門学校へ進む予定の環は受験組の追加授業を受けない。
また、運動部系の部長は伝統的に非受験組から選ばれる。
 そんなわけで、部活前の時間を初めて二人で歩く。
「中見ちゃだめですよ」
 幸い、一通だけだったのだが、実際それは下駄箱に入っていた。
「名前だけ──ありゃっ」
「え、なんかやばい人?」
 巧がぱっと環から取りあげると、
「やばい人ってどんなのよ……えっとね、ウチの一年」
「女子バスケ?」
「そ。へー、あの娘がねぇ……ほら、あれよ、あれ。朝巧くんを睨んでたコがいたで
しょ」
「朝ですか? あー、睨まれてたのか」
「そうです、睨んでたんです」
「えっ」「ん?」
 二人してくるりと横を見る。
580 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:54:04 ID:+k6dw9ob
 キツイ眼の、いかにもヴァレーやバスケが似合いそうな、環ほどではないが長身の女
の子。巧のクラスではない。ぎりぎり髪止めを使える長さの髪を、後ろでまとめている。
 巧たちの方にまっすぐ近付いて来て、言った。
「先輩、待鳥くんとどういう関係ですか?」
(待鳥くん? 口きいた事ないよなあ、俺)と巧がじっと女の子の顔を見ていると、環
がそれに質問で返した。
「言葉で説明するのと行動で示すのとどっちがいい?」
 環が意外にも真顔で女の子を見ているのが、巧には印象的だった。
 その言葉を聞いて一瞬目を見開いた女の子が、
「両方やってください」
 とすぐさま言った。見た目通りの気の強さだ。
(おいおい)
 逃げ出そうと背を向けた巧を環がギュッとつかまえる。巧を見てにっこり笑った。
「マジかよ……」
 それを目ざとく見咎め、慌てて女の子が言い放った。
「先輩を汚したら、ただじゃおかないから」
 そこで巧はあれっ、と環と顔を見合わせ、それからにっこりと環に笑い返した。
 仕返しだ。
(へっへ、俺じゃなかったね。そうそう面白くされてたまるもんか)
 環は軽く頬を膨らませながら巧にひざ蹴りをかましてくる。
581 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:54:23 ID:+k6dw9ob
 そういうことなら、と、
「残念だなぁ。俺はてっきり、愛の告白をされるのかと思っちゃった」
 巧は手紙を女の子の目の前に出して、振った。
「なっ」
 絶句して顔を赤くするところは、純情そのものだ。それより言うに事欠いて『汚す』
とは何事だと、とっちめようと口を開くと。
 塞がれた。
「や、やだ……」
 女の子の狼狽する声を聞きながら、巧は環の舌を受け止める。次はいったいいつこう
してもらえるのか、早くも気になりはじめていたから、この不意打ちに感謝しながら舌
で応えた。それなのに、あっというまに離される。
「ねえ、吉田ちゃん。今私と巧のどっちにキスしたいと思う?」
 環が巧の首に両手を回したまま、薄く笑った。
 いったい何を言い出すのか、巧は目まぐるしく事態が変化しているのを感じながら、
目の前の少女──吉田麻理に、自身でも答えを求める。
 彼女が答えを出しているのはすぐわかった。目が怖い。
「チャンスは一度だけ」
 環が追い討ちをかける。
「ちょ、ちょっと待った!」
 女の子──麻理が自分の方に来るのを見て、巧は本気で慌てた。
582 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:54:56 ID:+k6dw9ob
 間に合わない。
 目も唇も固く閉じて、麻理は文字どおり巧にぶつかってきた。
 キスそのものが未知の行為に違いない少女の特攻。
 
 崖から飛び下りるような顔をして、口もきいたことのない男子の唇で、自己紹介もろ
くにしないでファーストキスをする女。
 表面の唾液の冷たい感触に、唇を押し付けた瞬間に気付いて、狂おしくそれだけを求
めた。環の唾液を。
 巧は、頭がおかしくなりそうだった。
 吉田麻理は、巧の唾液で汚れた環にくちづけるより、知らない男子との間接キスによっ
て環に触れる方を選んだのだ。
 
 離れようとした麻理を、巧は反射的に引き寄せた。半端でなく意地の悪い気分になっ
ていた。そういう風にコントロールしないと吐きそうだった。
 麻理は巧の腕に捕らわれた事を知り、暴れようとした。その時に、
「ねえ、吉田さん」
 耳もとで語りかけられて、最低限巧に身体が引っ付いてしまわないくらいに力を加減
する。巧の言葉を待って、聞いた。言葉の意味に身体を震わせた。
「ねえ、例えば、身体でも同じ事ができるけど? したい?」
583 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:55:21 ID:+k6dw9ob
 
 柱の裏にいた由美は、胸を震わせた。
 誰より吉田麻理の魂に共振し、同時に乖離する。
 隣の都にそんなことは知られたくない。
 
「君はさ、もうちょっと自分のやってることの意味を考えようよ」
 巧が最後に言ったその言葉で麻理は、おそらくこの場ではあきらめ、立ち去った。
「はー」
 環は感心していう。
「アドリブであんな風に合わせてくれるなんて、嬉しいな、巧くん」
 環は、腕の中に取り入れながら「おあずけの分」と唇を指で突いて、巧を受け入れよ
うとする。
 巧はそれに照れ笑いで応じながら、ゆっくり見つめ返した。
 心の中で、口にはとても出せない怖れを語る。
(環さん。俺、今日一日でもうこれだけ女の子に攻撃的になってる。やっぱりこれって
スタンドプレイだよね? 俺は環さんにそれを見て欲しいんだ)
 巧の顔を覗き込む環は、変わらず優しい目をしている。
(でもあんなことされて、どうしていいかわからない。環さん、俺はこんなんで本当に
いいのかな?)
 巧の揺らいだのをおそらく察して、環が表情を弱めた。それから笑って、
「ごめんね、でも私だって巧くんにいいとこ見せたいんだからね」
 と気持ちを晒した。少なくとも巧はそれを心情の吐露だと感じた。
584 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:55:41 ID:+k6dw9ob
 もう一度ゆっくり、環を見る。
 そういう環の表情はいつも信じられた。今も巧の心を穏やかに鎮めていく。
「はいはい、お二人さん、出てらっしゃいな」
 環がそう言って柱をゴツゴツと叩いた時には、巧はいつもの巧だった。
 いつもの無邪気な由美と、環と、自分と──都は相変わらず静かだった。
 
 *
 
 夜。
 巧がレトルトをベースに調子に乗ってつくったスペシャルエスニックカレーは、大顰
蹙を買った。
 とにかく辛いのだ。
 怒ったのは都。泣いたのははるか。
 それでも、もりもり食べまくる巧を見ているうちに二人ともがんばって食べ始めた。
怒りながら、だらだら汗を流して食べていた都は完食したが、ミルクでごまかしながら
半泣きで食べていたはるかは半分もいかずにギブアップした。ミルクの飲み過ぎだ。
「お兄ちゃんのバカ!」
 ミルクでたぷたぷになったお腹を押さえながら、はるかがバタバタ階段を駆け上がる。
「ああっ、はるかのやつ明日の朝の分まで飲んだな?!」
「しょうがないでしょ」
585 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:56:09 ID:+k6dw9ob
 都が巧を睨んだ。巧はおそるおそる、
「ね、姉ちゃん、汗拭いてあげよう」
「要らない」
「悪かったって。でも偉いと思わない? 片手でここまで作ったのよ、俺?」
「あんなにつくって後どうするの?」
「ああ、親父が食ってくれるから。残ったら親父と俺の弁当にしちゃっていいよ、密閉
できるやつあったよね」
 父の透は巧以上に辛いものに強い。
「あーうまかった」
 おいしかったし、都の態度がまるで以前のようでほっとする。激辛カレーのおかげだ。
ただ、今度やったらひっくり返されかねない。
 そうして。
「お風呂入る時は言ってね」
 先に都が言った。昨日と同じように二人の時間をこなす。
 
 湯舟の中で弛んだ身体を揉みながら、巧はため息で振り返った。昨日に続いてせわし
ない一日だったが、最後に思い出したのは、自分の言った言葉だった。
『もうちょっと自分のやってることの意味を考えようよ』
 そうだ、意味をちゃんと考えて、やらなきゃいけない事がある。
 そう思ったが、都からはあまりに何もない。自己解決してくれたのか、由美が変えて
くれたのか。巧は、そうして少しずつ、気を緩めようとしていた。
 それなら自分も少しずつ、姉に気を遣ってやりたいのだ。
 不器用ながら水気をちゃんとバスタオルに吸わせて、下着とズボンに足を通す。それ
からシャツを中途半端にかぶってリビングに戻ると、都は待っている。
586 ◆5mSXuZ5GjE :04/10/29 02:57:03 ID:+k6dw9ob
次回は超攻撃的都さんの予定です。
587名無しさん@ピンキー:04/10/29 03:22:11 ID:kV180XCu
キターーーーッ!! (゚∀゚)
起きてて良かった。
これだけ良質なものをこのペースで続けるのは凄いです!
超攻撃的都さんに期待して待ってます。
588名無しさん@ピンキー:04/10/29 12:56:12 ID:57c6Wrwx
GJ!
589名無しさん@ピンキー:04/10/29 14:31:12 ID:E9kkMRNB
おもしろい。。。フツーにおもしろいわ
590名無しさん@ピンキー:04/10/29 21:12:55 ID:Un1CLNGo
( ゚ω゚)?
( ゚ω゚)・
( ゚ω゚)‥
( ゚ω゚)…
( ゚ω。)コトッ
( 。ω)。コト コロロロ…
(((; д)) 。 。コロコロ…
GJ…SJ…WJ…UJ…GJ
↑ゴッドジョブ!
お茶ドゾー。
つ旦
591名無しさん@ピンキー:04/10/29 22:45:38 ID:M7hj8avg
乙です!
超攻撃的都姉ちゃんに激しく期待
592あかがわ いっぺぇ:04/10/30 16:02:30 ID:gxpBuZrN
姉さん 保守です
593名無しさん@ピンキー:04/10/30 18:37:29 ID:PpC7g6IM
ここは砂漠のオアシスですね。
594名無しさん@ピンキー:04/10/30 21:54:22 ID:KqpZT1QE
結構危ない位置にあるのでageます
595名無しさん@ピンキー:04/10/31 00:03:42 ID:h7V7iyQx
エロ目的だけじゃなく普通におもしろいッス
596名無しさん@ピンキー:04/10/31 01:42:48 ID:T2TAmTZh
まったく良い。
597 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:07:15 ID:OAzOmmHh
 21
 
 巧のパジャマの腕を入れてやってから、おやすみ、と言うと、都は先に自分の部屋に
戻った。
 風呂上がりの湿った巧の感触が指に残っている。都の心はそこに釘付けになる。
 親友の由美の前で堤防を決壊させ、感情のことごとくを吐き出した。それから踏み止
まれるようになったと思う。
 巧に最も肉迫したと思った瞬間、巧がこぼした涙が、厳しかった。あれが都の今の罪
悪感の根幹をなしている。人の気持ちを蔑ろにするというのがどういうことかわかった
気がした。それから、踏み込めなくなった。
 巧の目を普通に見られない。見たらまたすぐに捕らわれてしまうんじゃないかと思う
と、どうしてもつくった態度に終止してしまうのだった。
 昔の自分はどうやって巧に接していたか懸命に思い出す。長い、諍いの記憶。辿るほ
どに過激さを増す、子供らしい手加減無しの暴力ばかりが思い出され、打ちのめされる。
 そうやって巧にして来た事の罰なのだろうか。
 だから、自分は弟に嫌われているのだろうか。
 母がいなくなったときに分かち合ったいたわりを、自分はどこかになくしてしまった。
きっかけはささいなことだったと思う。でもよくは思い出せない。
 
598 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:07:42 ID:OAzOmmHh
 あの時、目の前に由美がいた。
 その時のことを都は穏やかすぎるくらい穏やかに思い出す事が出来た。
 由美に何を言ったか、細かい事は覚えていない。初めから覚えているつもりがない。
都が言ったのはたったひとつの事実だけ。
『巧を愛しているの』
 その時、目を開けていられなかった。
 巧が見も知らぬ女の子と身体を交わしたことを知った時、自分の目の前で親友の環が
お仕着せたくちづけを巧が避けなかった時、押し倒して来た巧があくまで自分をからかっ
ているだけなのを知った時、病室で決定的に拒絶された時、そして都と環への想いの違
いを語られてしまった時──その時々に思った事をすべて、自分でもわけのわからない
言葉に変えて吐き出してしまった。
 もう、自分の心臓の肉はえぐり取られようがない。針のように尖った空気が代わりに
流れ込んで来て、心を満たしている。
 空虚だけど、穏やかだった。
 もう命の残り時間を食いつぶしていくだけだと思う。『余生』と言ってもいいかもし
れない。
 自分がいったいどれだけの涙を流しているのか、わからなかった。
 自分より小さな由美が、由美の着ていた洒落た服が全て吸い取ってくれた。
 そうだった。由美。
599 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:08:01 ID:OAzOmmHh
 それから彼女の心の声に耳を傾けた。たぶん死に物狂いで優しい視線を送ってくれて
いる親友に、だけど応えてはやれない。
 自分の前方を見るしかなかった。
 
 前を見ていながら進めない、もどかしさにも少し慣れてきた。
 それを風呂場での巧の世話を通して確認できた。
 まず元通りに接していけるようになりたかったから、都はそういう今の自分をいたわっ
ている。
 それなのに。
 あのカレーだ。
 殺人的な辛さもさることながら、何もなかったみたいに飄々としている巧を見ている
うち、ふつふつと怒りがこみ上げて来た。
 風呂で相手をしているうち、背中をずる剥けにしてやろうかと思ったり、泡だらけの
ままガスを止めてやろうかと思ったりするが、ここでも踏み止まる。
 それが、布団の中で悶々とするうち、ある種の覚悟に変わった。
(本当に、人の気も知らないで。見てなさいよ……)
 そんな自分を都は、生まれて初めて頼もしいと思いはじめていた。
 
 *
 
600 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:08:26 ID:OAzOmmHh
 その日、弁当当番だった都は、やっぱり残った忌まわしいカレーで巧の分を満タンに
すると、さらにご飯用のケースにもカレーを流し込んでいっぱいにした。父の分は、ちゃ
んとカレーとライスで二つにしてまとめる。そこにこの時期には不似合いな携帯カイロ
を添えてハンカチで包んだ。一時間ほど前もって発熱させてやれば、これで昼には温か
いカレーが食べられるのだ。
 予想通りというか、起きて来てすぐ、父の透は巧のカレーを絶讃し、作り方を都に聞
いていきた。呆れて物が言えない。それはともかく、はるかと自分の分にすぐとりかか
る。下準備もしてあるので、こちらもすぐに出来上がる。巧はまだ起きてこない。そこ
へ、上からはるかの悲鳴が聞こえて来た。
「お姉ちゃん助けてよ〜。お兄ちゃん起きてくれないー」
「もう……」
 制服の上にかけていたエプロンを外して椅子にかけると、都はすたすたと階段を上がっ
ていく。
「朝ご飯食べる時間なくなっちゃうよう?」
「うー、俺の代わりに食べといてくれ。後で返せよ?」
「わけのわからないこと言わないで、もう〜、信じらんないよ〜」
 はるかが懸命に巧を引っ張り出そうとしているのが見えた。都は、
「私がやるから、はるかも朝ご飯すませなさい」
「う、うん、お姉ちゃん」
 寝ぼけた巧の問題発言で真っ赤になったはるかが、逃げるように下へ駆け降りていく
と、都は巧の部屋のドアを後ろ手に閉めた。
601 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:08:43 ID:OAzOmmHh
 巧がそれに勘づいたのか、薄目を開けて都の方を窺う。
「巧」
「な、なによ」
「これからは私が起こすわ。すぐ起きなかったら、襲うからね」
 巧が跳ね起きた。
「こ、こらっ、なんでドア閉めてんだっ」
「見られたらまずいでしょ?」
 目の前で巧がすっかり目を覚まして固まっている。
 それで都は、少し気が晴れた。こんなことで自分の気がすむのなら、安いものだ。
 
 *
 
 冗談じゃない。
 さっきの失言を都に言わなくてよかったとは思うが、関係なく姉の方から来ている。
「起きたから、襲わないでくれ」
 思わずそんな間抜けな事を言っていた。
 あっさり姉はドアを開けて、降りていってしまった。
 巧も急いで着がえ、後を追う。
 ダイニングテーブルの上にはすでに出来上がったお弁当と朝食が並んでいる。
 バターを塗ったトーストの上にベーコンエッグを全部のせてまっぷたつに潰し、例に
よって紅茶で流し込んだ。
602 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:09:02 ID:OAzOmmHh
「お兄ちゃん行儀悪い〜」
「これが正しい食べ方なんだぞ」
「そんなわけないじゃんっ、お兄ちゃんの大嘘つき!」
 そんないつもの巧とはるかを横目に都が一人でさっさと出ていく。
「あ、お姉ちゃん早いよっ」
 はるかと並んで急いで用意する。掴もうとした弁当がはるかのものだと気付き、笑い
そうになった。隣にあった普段使わない密封型の方を取る。もしはるかにまちがって持っ
ていかせたら、大変なことになるだろう。二度と巧のご飯をつくってくれなくなるかも
しれない。
 巧は、都の表情がすごく気になった。昨日よりさらに様子がおかしい。なんだか、雰
囲気が環っぽいし、さっきの発言もちょっと問題ありだ。
 試しに明日寝坊してみようかと思い、慌ててかき消す。
(しゃれにならん)
 はるかと別れ、二人で歩きながら身じろぎする。当然シャツは適当に着ているので、
あちこち不具合があった。着心地がどうにも落ち着かない。
「やっぱり朝も私がやってあげる」
 そう言って都が首に手をかけて来た。少し考えて、
「そこの公園で直してあげる」
 とさっさと歩きはじめた。巧は、いかんともしがたくそれについていく。
 公園にある障害者用にスペースを広く取ったトイレで、巧はシャツを着直させられた。
603 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:09:17 ID:OAzOmmHh
あまり時間もないので、さすがにてきぱきと都はこなす。とくに危惧するような事は何
もなく、通学ルートに戻る。
(やっぱりおかしい)
 巧は首を傾げながら、校門をくぐった。
 そして、昼休みに弁当を広げて頭を抱えた。
「……」
「おおっ、巧すげえなそれ! メシが見えねえじゃん」
「メシは入ってない……」
 蓋をとったとたんに教室中にそのエスニックな香が広まり、大注目を浴びる。
「まちがっておかず用二つ持ってきたんじゃないの?」
「そんなわけねーっての。姉ちゃんの仕業だ……」
「なにおまえ、あのお姉さん怒らしたんか。そりゃしかたないな、おまえが悪い」
 都が怒ると何故即自分のせいなのか。もちろん言い返せないが。
「誰かご飯分けて……」
 情けない声に応える男子はいない。
「ダイエットしてるから」とかそういって勧めてくれる、もともと少量の女子のものを
奪うわけにはいかないのだが、
「あっはははっ、あたしが恵んでやろう」
 そう仕返しのごとく残間清美が、ぼちゃんとカレーの海に落としたのを、ありがたく
いただく。
604 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:09:32 ID:OAzOmmHh
(ていうか、ぼちゃんと落とされたものをどうやって返すんだ)
 巧がスプーンを入れるのを、さっとその清美が奪って、カレーを一匙自分の口に入れ
た。
「このくらいいいでしょ?」
 そう悪戯っぽく笑った顔が一瞬にして固まった。
「か……」
「おまえな、そういうのは確認してから──」
「辛い!!!!」
 大声を上げて、清美がバタバタ教室を飛び出していった。
「お茶ならおまえ持ってるじゃん」
 いなくなった机につぶやく。
 逆に、それで男子が寄って来た。
「なに、スゲー辛いの?」
「おお、これで昨日はるか泣かしちった」
「おまえ、あんなかわいい妹泣かすなよ〜」
 そう言いながら一人が、一匙すくった。
「おおっ、これいいじゃん!」
「まじで? じゃ、俺も」
 そのうち、お礼と称してライスが少量ずつ提供され、やっとなんとか『昼ご飯』になっ
ていく。
605 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:09:47 ID:OAzOmmHh
「あんたら〜」
 戻って来た清美が肩をいからせて、
「あたしが舐めたスプーン〜」
「なんだよ、待鳥のだろ? それとも、待鳥に舐めて欲しかったのか」
 そう言ってべろべろ舐めている。
「〜〜〜っ!!」
 昼ご飯の最中に暴れるわけにはいかないのが気の毒だが、そんな清美を見ていると、
どうしても都の事を思い出してしまう。
 
 部活に出る前のひとときに、巧は人目を避けて環とくちづけを交わした。
 しばらくそれだけが触れ合える時間だ。
「次はいつ〜」と言い出せない自分が少し嬉しかった。だんだんと実感が増してきてい
る。自分は本当に、あの魅力的な三年生とつきあっているのだ。しかもセックスをして、
求めあって、女の喜びというやつを与えたのだ。自分が。そういう自負が育ち、都との
誠実な対話に向けて後押ししてくれる。
 サッカー部も女子バスケット部も次の週末に地区予選の緒戦がある。
 巧は出来る範囲でマネージャーの雑務を手伝い、たびたび抜け出しては環の様子を見
に行っていた。
 健康的な汗を流す部員達の中で、中心になって動く環のユニフォーム姿は、巧にはた
まらなく艶かしかった。
606 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:10:03 ID:OAzOmmHh
 失うなんて考えられない。必ず、ずっとそばにいるのだ。その執着が強くなっている
のは、環を抱きたいという欲求が止まらないからだという自覚があった。今もあのユニ
フォームのままで汗だくの身体を抱きしめたくて、胸を疼かせている。
 そして堂々と環を求められるように、都を正す。環の活き活きと集中したプレイぶり
に誓ってから、体育館を離れた。
 グラウンドのベンチでは、都が文庫本をめくっていた。
 巧はそのベンチの少し離れた位置に腰を下ろし、
「ウチの部長的には別に帰ってもいいみたいだから、もう帰ろうか?」
 環といっしょだと身体が切なすぎるので、そうしたかった。
 都は普通にうなずいて、本をしまった。
 巧も部室から革鞄を取って来て、二人で学校を後にする。
 
 最初の諍いの記憶。
 巧は、静かに歩き続ける都を目で追いながら、それを思い出した。
 昔、巧はコーヒー牛乳が好きでそればかり飲んでいた時期があった。あれは砂糖のか
たまりのようなものだから、当然のように虫歯になった。仕事の父に代わり都がつきあっ
てくれて、それでなんとか通い続けたのを覚えている。その頃に一度、コーヒー牛乳を
思いっきりひっくり返し、都が気に入っていた白いうさぎのぬいぐるみを汚してしまっ
たのだ。汚したと言うよりはもう、水浸しになった。その時の都は、怒れなくて困って
いる、という感じだったと思う。
607 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:12:04 ID:OAzOmmHh
 その夜に帰って来た父が、都に気を遣って『じゃあこの子もお風呂にいれてあげよう』
と言い、なのになぜか洗濯機で二人で楽しそうに洗っていたのを、巧はこっそり眺めて
いた。その時に、都は「お風呂なら、お湯であったかくしてあげないと」なんてかわい
いことを言っていた。そして、洗面器にいっぱいにしたお湯を運んで来た都はお約束通
りにつまづいて、見事にそのお湯を巧の上にぶちまけたのだった。
『ぬいぐるみが風呂なんか入るもんか、お姉ちゃんの馬ー鹿』
 巧は、自分が言ったセリフはこれしか覚えていない。代わりに、たまたまそこに片付
け忘れていたブーメランがあったのを良く覚えていた。
 歩きながら、傷跡に触れる。
(これが第一号だったんだな……)
 巧の額をえぐったあのブーメランは、あの後父によってこっそり捨てられてしまった。
裏のシールに血の跡が残ってしまったからだと思う。
(そう言や、あの頃はまだ姉ちゃんに『お』がついてた)
 あれをきっかけに、巧がからかって、都がそれに怒って暴力をふるうというスタイル
が定着した。『お』がついていると確かに相手に対する親しみが先に出てしまって、効
果的に姉を怒らせられなかったかもしれない。
 都が巧の手の動きに気付いた。
「それ、もしかしてまだ痛いの?」
 さすがに、これだけは都は心配する。もちろん大昔の傷跡で、なんともない。都もはっ
きりと覚えているのだろう。だから、今までこれでからかったことはなかった。
608 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:12:27 ID:OAzOmmHh
「全然。なんかたまに触ると落ち着いたりして」
 軽率な発言だったろうか? と都を見る。
 大丈夫のようだ。
「今日は晩飯姉ちゃんだったよね」
「材料はあるから、直帰でいいわ」
「中華なら四川風でよろしく」
 暗に辛いものを要求する巧を都は睨んで、
「こんどあんなの作ったらひっくり返すわよ」
「はーい……」
 ほとぼりが覚めるまで、しばらくは辛いものが食べられないと思うと少し寂しい。
 
 夕食が終わって、はるかが「宿題、宿題」と唱えながら二階に上がった後で、巧は都
に風呂のことを切り出してみた。
「一人で入ってみるよ。だいぶコツがわかってきたし、あと一ヶ月はこのままだしさ」
「そう、でも困ったことがあったら呼んでね?」
 そんな、普通の姉弟のような会話をして、巧は部屋に戻った。
 音楽を聞いたりマンガを読んだり、しょうがなく教科書を開いてぱらぱらめくってみ
たりして、普通に過ごしながら、はるか達が風呂に入ったり歯を磨いたり、といった物
音を聞いている。
 環に会いたい。いや、会うだけなら十分間に合っている。
609 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:12:45 ID:OAzOmmHh
(あー、つらいなー)
 股間に手がいってしまいそうだ。外で身体を動かして発散しようにも、まだ走るのも
辛い。せめてリフティングできるくらいになれば。
 静かになったので、見計らって風呂の準備を始めた。防水もぬかりなく、自分だけで
こなせるようになった。さらにテープを巻いて、ギプスの上にボディブラシを固定する。
「完璧」
 トラブルもなく、衣服の着替えもなんとかこなしていく。
 やはり、できないことができるようになると、同じ湯に浸かっていても余裕が違って
いた。人の手を借りないで自分でなんでも出来るというそれだけの事で、今まで以上に
ほっとする。なんとも不思議な気分だ。
 風呂から上がり、リビングには誰にもいないので、もう寝ようと明かりを落とした。
部屋の電気も、点けないでそのまま布団に転がり込もうと、して、ぎょっとした。
 都が寝ている。
(俺の……部屋?)
 それは間違いない。
(どういう嫌がらせだ……)
 本当に寝ているようだ。トイレに行って、間違って──都に限ってそんな寝ぼけた事
はしない。とにかくめくった布団を元に戻してやる。
 しょうがないので、姉の部屋に行った。姉のベッドに予備の布団を乗せて、そこで寝
る事にする。
610 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:13:05 ID:OAzOmmHh
 
「きゃー!」
 はるかのけたたましい叫び声を聞いて、巧はぱっちりと目を覚ました。自分が姉の部
屋にいることに一瞬驚き、それから気をとりなおして廊下に出る。
「あれっ? お兄ちゃん、どうなってるの?」
「なにがよ」
 まだ巧の頭はそれほどはっきりしていない。
 巧の部屋から飛び出して来たはるかが、布団を抱えた巧と部屋の中を交互に見て、
「お、お姉ちゃん、おはよう」
 と、巧の部屋から出て来た都に言った。
「お、おどかさないでよっ、一緒に……ふたりで寝てるのかと思った」
「ちょっとした冗談だ」
「ちょっとした冗談よ」
 都は巧の言葉をそのまま使い、自分の部屋に戻って着がえはじめた。
「ううーーっ」
 二人にからかわれたと思って、はるかは、
「お姉ちゃんのばかー! お兄ちゃんの超ばか〜!!」
 手に持っていたタオルを投げつけて、バタバタ駆け降りていく。
「あのな、姉ちゃんが寝ぼけて俺の……聞いてねえ」
 くらくらしながら、巧は起きてしまっていることもあり、しかたなく自分も準備を始
める。
611 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:13:23 ID:OAzOmmHh
 次の日はもっとひどいことになった。
 都とはるかの部屋には女の子ということで、鍵がついている。普段あまり使わないみ
たいだが、(確認なんてするわけにはいかないし)この夜、都はあろうことかこの鍵を
使い、なおかつ巧のベッドを、下着姿で占領した。
 「調子に乗ってると襲っちゃうよ」論法が逆手に取られているので、手も足も出ない。
反対に、都にはまだ「寝ぼけていた」という言い訳がきく。タチが悪い。
(お、俺は、テロには屈伏しないぞ……)
 巧は客間に行って毛布を確保すると、リビングに降りてゲームマシンを取り出した。
 本当にやると身体が持たないので、これを徹夜でやっていたことにして、ソファで寝
る。これが意外に寝心地が良かった。
 次の朝には、巧は父にそういうときは俺の布団で寝ろ、と勧められた。でも、さすが
にそれは出来ない。自分達は父が働いているから暮らしていけるのだ。テロには自力で
立ち向かう、と父に言うと、楽しそうで羨ましいな、と笑われた。
(楽しそうって……)
 姉は涼しい顔をしている。
 
 さらに次の日。
 まだはるかも起きている早い時間に風呂に入った。はるかが手伝いたがったが、もう
自分でもできるからと、防水処理だけ手伝ってもらった。
 都と二人でリビングでテレビを見ているので、その間に入り、さっさと部屋に戻った。
都が動く気配はない。はるかがいては確かに無理だ。
612 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:13:40 ID:OAzOmmHh
 やっと落ち着いて、ゆっくりと夜を過ごした。
 巧は今日、サッカー部の部室に死蔵されていた、フォーメーションプレイのビデオを
持ち帰った。
 普段は別の目的で使っているが、そういうものの為にという名目で父に譲り受けて来
てもらったデッキや小型テレビがある。
 プロの映像を見る場合、異常なテクニックやスーパープレイは見てもあまり参考にな
らないのだが、こういう地味な連係を扱ったものは、学生サッカーにも直接応用が効き、
実戦的──らしい。
「噛めば噛むほど味が出る──あれ?」
 映っていたのは、しょっぱなからカンフーキック。どれだけ見ても、唾吐きに頭突き、
肘打ち、後ろからの足払い。
「なによこれ……なんでこんなもの置いとくんだ」
 とは思ったものの、結構面白い。周りの選手の対応とか反応が、ラフプレイに対する
対処法としてやっぱり手慣れているのだ。
(怪我しないように転ぶ方法とか、やられたふりのうまいやり方とか)
 巧は、都に対してどうやって対抗するか考えていたから面白いのかもしれなかった。
 ベッドに横になって、画面を眺めているうちに目の前の問題に頭が切り替わって行っ
て、明日からどうしよう、そんなことばかり考えながら眠りに引き込まれていく。
 
 目覚めがとても爽やかな朝だった。
 ここのところ落ち着いて眠れなかった分、気持ちにも影響しそうなくらい、身体の軽
さを感じる。目につくところに置いてある目覚ましもまだ鳴っていない。
 その時に気付いた。
 腕の中に、下着の姉がいる。
613 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/01 03:14:28 ID:OAzOmmHh
最近とても楽しく書けています。
いつもレスをくれる方の存在が大きいです。感謝。
614名無しさん@ピンキー:04/11/01 04:45:42 ID:2O+Obs3g
うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!
キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!
キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!
キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!

腕の中に下着姿の姉。。。(;´Д`)ハァハァ
615名無しさん@ピンキー:04/11/01 04:49:59 ID:RYQ3BJdg
何となく寝られなくて2ちゃん徘徊してたら神キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!
乙です
ラスト2行からどう展開していくのか激しく気になります。楽しみです
616名無しさん@ピンキー:04/11/01 06:02:23 ID:7TQG/Sab
ヤヴェーー!!
かなりハマってしまった。
最後は姉とハッピーエンドで終わってほしいなぁ。
あぁ〜、もどかしい。
617名無しさん@ピンキー:04/11/01 22:27:45 ID:wBjbbIe5
( `Д´)このどぐされ野郎がー!
(;´д`)いやすいませんもういいませんごめんなさいごめんなさいごめんなさい
っていうのはおいといて、キターーー(゚∀゚)ーーー!
キターーー(゚∀゚)ーーー!!
キターーー(゚∀゚)ーーー!!!
グッジョブです!
このスレには神がいるぜ。
618名無しさん@ピンキー:04/11/01 22:56:27 ID:7ADqMtwi
ようやくまた賑わってきました。
職人さんに感謝。
619名無しさん@ピンキー:04/11/02 00:04:52 ID:WqnQVyCM
vs清美バージョンのパラレルも書いて欲しい今日この頃
620名無しさん@ピンキー:04/11/02 02:37:20 ID:sfC89uUa
むしろ由美×都(逆でも可)が見たい漏れ
621名無しさん@ピンキー:04/11/02 21:59:50 ID:D4kS8t8E
このスレでは御法度なのかもしれないが……妹とのエチも見たいなぁ。
姉の後でいいから。
やっぱり最後は3P……いや環と由美も混ぜて5P……こんな妄想は漏れだけかw
622名無しさん@ピンキー:04/11/02 22:44:47 ID:OSXpopJZ
保管庫もしくは妹スレ池
623 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:29:16 ID:3h68SMTR
 22
 
(かんべんしてくれ……)
 都は巧の左手を半ば腕枕にするように懐にいる。いや、最初は巧に腕枕させていたの
かもしれない。片手を遠慮がちに巧の胸に乗せ、静かな寝息を立てていた。
 弛んであどけないその寝顔が、本当の姉の顔なのだろう、と思う。
 細心の注意を払って、都の身体から離れた。それだけで何分もかかってしまう。
 あたりはあくまで静かで、誰も起きている空気はない。
 ベッドを降り、意識を今見た姉の肢体から無理矢理引き剥がした。
 もしこれが環なら、ブラをいじくったりして、『お、84のBなのか……なかなか』
などと後の心配をせずに戯れることもできるのだが。
(幸せそうに寝ちゃってまあ……)
 シンプルな水色のそろいの下着と、白くなめらかな身体を布団の中に隠してしまうと、
やっと一度息をつくことができた。ゆっくりはしていられない。さっさと身支度をして、
あたりを窺いながら洗面所に逃げ込んだ。ヘッドフォンをつけ、悪霊退散とばかりにM
Dで最近お気に入りのチャーミーチャフを大音量で聴きながら歯を磨く。
 ふと、ヘッドフォンをずらして窺うと、はるかの目覚ましの音が聞こえてきた。よし、
とまたノイズの海に逃避する。
「音漏れてるよ、お兄ちゃん。チャッツー?」
624 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:29:35 ID:3h68SMTR
 階段の音がしたと思うと、パジャマのはるかがパタパタとスリッパの音を立てて入っ
てくる。どん、と押されて、
「こ、こら、飲んじゃったらどうすんのよ」
 押し返す。うがいの最中だ。はるかが楽しそうにさらに押し返して来て、
「今度貸してね?」
 コップに水を入れ、自分も歯ブラシににゅるっと歯磨き粉を塗り付けている。
「んー。今日は俺が弁当だろ? 心配しないで寝てろ──ぷはっ」
 巧が濁った水を吐くと、
「お兄ちゃん、冷凍食品ばっかりなんだもんっ、あたしがちょっとアレンジするの!」
「だったら全部お前がやってくれよ」
 はるかはそれには答えず、ちょっと身体を引いた。
「?」
「お兄ちゃん、お姉ちゃんの匂いがする」
(ゲー……ポーカーフェイス、ポーカーフェイス)
 一瞬ビクッとしながら、なんとか平静を保った。ここで迷ってはいけない。
「ちょうどいいや、はるか、おまえあの馬鹿者をなんとかしろ」
「あ……、またお姉ちゃんに苛められたの? まーた、なんか怒らしたんでしょっ!」
 少し戸惑っていたはるかは、巧の言葉に納得がいってすぐいつもの顔になった。
 まあ、一安心だ。
625 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:29:53 ID:3h68SMTR
「怒らしたっていうか……、うーん、とにかく、ベッド占領されるわ、先に寝てたら入っ
てくるわ、嫌がらせもあそこまでいくと──」
「セクハラ?」
「おまえいい言葉知ってるな、はるか」
 はるかはきゃはは、と笑って歯を磨きはじめる。
 これではるかはなんとか味方にできた。と思う。
(甘いかな? これで姉ちゃんに釘でも刺しといてくれれば言うこと無しなんだが)
 堂々としていれば問題ない、当初からのスタンスに、巧は確信を持つ。
 でもやっぱりまだ決定的に、足りない。
 姉に諦める気がまったくないことはよくわかった。都は巧に、彼の方から手を出させ
ようとしている。手を出した後のことは想像するのも恐ろしい。
 だが巧の方も、姉が不可抗力を盾にしているうちは知らん顔をできるわけだ。
 降りて来た都は、相変わらず涼しい顔をしていた。
 
 *
 
 改めて考えるまでもなく、巧の作る弁当は、ちょっと寒々しい。
 冷凍のしなびたひとくちカツと、隣の席の小さな弁当箱に入っているおいしそうなだ
し巻を、サッとかっさらって取り換えた。
「ああっ!」
626 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:30:11 ID:3h68SMTR
 残間清美が立ち上がって巧を糾弾しようとした時、
「巧くん、久しぶりに晴れてるからさ、上行かない?」
 環が、由美をぶら下げて教室に入って来た。一瞬、教室が静かにざわめいた。
「あれ、もう食べてたの?」
「イヤ、今から」
 清美と箸でチャンバラをくりひろげながら、巧は弁当箱をさっと閉じて後ろに隠す。
「あ、ちょっとぉ、逃げるなあ!」
「俺がやったやつ、それカツだぜ?」
 カツと聞いて、清美が女の子とは思えないリアクションで自分の弁当箱に戻った。
「ホントだ」
 その隙に逃げ出そうとする巧を、数人の男子がつかまえた。
「こら、離せ!」
「頼む、巧! 俺達も連れてってくれ!」
「は?」
「お姉様がたと同席させてくれぇ!」
 もう一人がわかりやすく補足するので、巧はどうしたものかと環を振り返る。
 よく見ると、環と由美の後ろに三年生らしき女子が何人か連なっている。
 どのみち自分達だけにはならないみたいなので、
「ああ。まあいいんじゃないか?」
「同志巧に感謝するぞ!」
627 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:30:31 ID:3h68SMTR
「まじ? 俺も行く!」
 結局、十人以上に膨れ上がった三年女子と一年男子の一行が、ぞろぞろ大行進をして、
そうして屋上の座れそうな場所をだいたい埋め尽くした。
 まるで遠足のようだ。
 無理矢理ついてきた巧のクラスメイト達は、なんだかそれなりに楽しそうに『お姉様
がた』と話をしていて、巧はちょっといいことをした気分になっていた。
 だが、メインの『おかず』はやはり巧だったようで、
「ねえねえ、君なんだよね、環の彼氏」
 友人らしい女子の一人が、興味を抑えられなくなった感じで聞いてきた。
「これ、環にやられたの?」
 右腕を差して、言う。
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよっ」
 環が慌てて口を挟んだ。
 それを、男子たちがすかさず聞き付けて、全部そっちのけで巧に詰め寄った。
 環は、と巧が見ると、ちょっと照れくさそうな、申し訳なさそうな、そんな目で見て
いた。それには笑って返す。
「どういうことだ、今の話は」
「聞きたきゃそのミートボールを二個よこせ。大橋、おまえはそのレンコンの天ぷらで
いいぞ」
628 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:30:51 ID:3h68SMTR
「ふざけるな〜」
「梅干しをやる! さあ話してもらおう」
「ねえねえ、退院した日にさー、結局どこまでいったのー?」
 突然、由美がガソリンを振りまくようなことを言って、全員を注目させた。
 巧の顔がひきつる。環は真っ赤で、下を向いている。
(一番奥まで……なんて言ったらあとで殺されるんだろうなあ)とそんな環を見ていた。
 女子陣も、そんな環を見るのは初めてだったらしい。
「うっそ、環マジじゃん……」
 それまで興味深げにしながらも黙っていた女子が言うと、
「あー、そうよ、私はマジです!」
 環が立ち上がって拳を固めた。とても環らしくて、巧はそれを見ていると嬉しい。
 おおー、とか、やらしー! とか飛び交っている下で、巧の横に来ていたクラスの大
橋守が、
「残間はいいのか?」
 そう真顔で聞いてきた。
 いつかは誰かに聞かれただろうな、と思った巧は、用意してあった答えをただ、返す。
「悪いけど、俺には何もできない」
「そうか」
 大橋は、笑った。
629 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:31:08 ID:3h68SMTR
 この男はとてもいいやつだった。ナンパをやっていた頃に、巧は何度か一緒に遊んだ
が、女の子にちゃんと優しいし、約束を守る。名前通りというか。なかなかの男っぷり
だ。巧の知る限り、唯一の一人暮しの高校生でもあった。
「おまえ、それが聞きたくてついてきたのか」
「おまえの女が知りたかったんだよっ」
「いいけどな」
 笑って、そこで巧は環と目が合った。
 環がにっこり笑う。きっちり聞かれていたらしい。それからまた環は、他の女子につ
つかれてじゃれ返している。
「ところで由美さん、姉ちゃんは?」
「おやあ? 気になるの?」
「今日だけいなけりゃ、一応気になりますよ」
「ホントにそれだけぇ?」
 由美は、人さし指をしならせて巧の胸でくねくね遊ばせた。
「で、ね、姉ちゃんは、なにをしてるのかな?」
「生徒会の後輩に呼ばれてまーす」
「初めっから普通に言えないんですか……」
 そこへ、
「環ィ、由美が彼氏誘惑してるヨ!」
 と楽しそうに言っている声がする。
630 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:31:23 ID:3h68SMTR
 そんな中で、男子の中でもうひとりナンパ仲間だった男子が、
「待鳥おまえ、こんな年上の彼女がいるのに、なんであんな年下とホテルいったんだ
よー」
 と問題発言をした。
「え、ウソー」
「それ、どういうこと?」
 さっきまで環をからかっていた女子が、巧を見る。
 それをつぶしたのは環だった。
「一ヶ月前の話でしょ。本人から聞いて知ってるわよ? 私たち付き合いだしたの、ホ
ンの一週間くらい前だもん」
「ていうか」
 巧は、ちょっとくらくらして、
「……年下?」
「あのときのグループ、俺らの2コ下だよ」
 巧はたしか、彼女にリードしてもらってやっとのことで初体験を果したのだ。
「まあ、ふたりっきりの時に聞いてあげるから!」
 環が巧の背中を叩いて、そのまま背中を抱いた。
 そのおかげで巧はその話からはそれっきり解放されたのだが、(そもそも一体いつに
なったらふたりっきりになれるのさ)と膨れて、環と目を合わさなかった。
 早く姉のことを話さなきゃならないのに。
631 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:31:44 ID:3h68SMTR
 明後日は試合の日だ。
 環の集中を乱さないよう、いろんなことに気を使っているうちに、巧はその日は環と
キスもしないで帰ることになってしまった。
 
 *
 
 寝る前に、ドアの前にベッドを移動した。巧の体重が加わるので、絶対ドアは開けら
れまい。寝坊した場合、はるかが大騒ぎをするだろうがしかたがない。テロリストを撃
退するためだ。姉が今クローゼットに潜んででもいない限り、大丈夫。念のため、クロー
ゼットに姉が隠れていないか確認する。
 巧は、今夜こそと安心して布団に入った。
 それなのに。
(どういうことよ)
 巧の隣ですやすやとかわいい寝息をたてて、都は寝ていた。石鹸とリンスと都自身の
香りに脳をかき混ぜられる。
 まず姉と自分が接触している部分を確かめた。
 都は巧の左手を両手で抱え込んで、巧の足に、足をからませている。
 しかも。とっさにビクッと身体を引いてしまってから気が付いたが……
(俺の指、今姉ちゃんのパンツの中に入ってなかったか……?)
 一瞬の、『毛』が触った感触が指先に残っている気がする。
632 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/03 05:41:00 ID:3h68SMTR
 それとなんといっても目覚めが爽やかなのが癪だった。人肌うんぬんというウンチク
が頭をかすめるが、
(俺、本当に姉ちゃんに何もしてないだろうか)
 ない。これは絶対に姉の精神攻撃だ。
 前日よりさらに苦労して、下着姿の姉をはがす。姉の太腿や胸の感触にシャレになら
ないダメージを受けながら、なんとか頭からそれを追い払った。
 ベッドから這い出ると、巧は侵入経路を探しはじめた。
 見つけておかないと明日もご対面だ。
(ネズミじゃないんだからさ……)
 答えは簡単だった。ベランダ経由だ。確かに寝る前に確認しなかったが、巧の風呂の
間かなにかに開けておいたのだろうか。先手を打たれていたのだ。
(マジで信じられん)
 予想通り姉の部屋の窓が開いていた。一旦部屋に戻って身支度をすると、そのルート
で下へ降りて、姉はそのまま放置することにする。
 それからはるかの目覚ましが鳴った。
 そして、その朝も都の『涼しい顔』は徹底していた。
633名無しさん@ピンキー:04/11/03 07:18:10 ID:5JSy2y7i
ハァハァ

634名無しさん@ピンキー:04/11/03 12:07:51 ID:w9THqog6
これ売り出したら結構売れるんじゃないか?
635名無しさん@ピンキー:04/11/03 18:18:36 ID:VAvA+Ivk
このスレチェックするのが日課になってる。
面白すぎ。乙です。
636名無しさん@ピンキー:04/11/04 01:07:06 ID:vn9pPN6Q
早くセックルしる!!
と、思いながら待ってます。ドキドキ・・・
637 :04/11/04 20:36:05 ID:/nEcf8BS
キテターーー(゚∀゚)ーーー!!!
いつも乙です!!!GJ!!
638名無しさん@ピンキー:04/11/05 01:59:18 ID:bBQguhLH
妹スレで巧×はるかを、
幼馴染みスレではるか×一弥を、
気の強い〜スレで残間×巧を、

それぞれ読みたいと思う今日この頃
639名無しさん@ピンキー:04/11/05 04:36:34 ID:1SMgGVIE
そんなハードワークしたら ◆5mSXuZ5GjE 氏が倒れるぞ。。。
640 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:07:36 ID:sY6+Z4eY
もっといいのが思い付かないかと思って控えてたんだけど、
これ以上しっくりいくのが見つからなそうなので、タイトル付きにします。
保管庫の管理人さん、変更してもらえればうれしいです。
(いつも綺麗にまとめてくれてありがとうございます)

他の話については、この話を終わらせるまでは何も考えられない状態です。
641 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:07:59 ID:sY6+Z4eY
至上の鎖 23
 
 通学途中も、都の感触は巧の頭から離れようとしなかった。
 隣を澄まし顔で歩いている優等生の姉の外面は、本当、非のうち所がないと言ってよ
く、巧がもし『俺この人のパンツの中に無理矢理手を突っ込まされたんです』とか訴え
たとしても、大抵は信じてもらえないだろう。
(屈辱だ)
 プリーツスカートの中で見えないはずの姉の足が見えるような気がしてしまう。今朝
見て感じた全てが透けて見えそうな危うい幻覚。
 混乱を溶かす決定的な何かが欲しい。
 それでも巧は、状況は自分に有利になっていると感じている。
 あれ以上同じ手口がもう使えないのは、姉の方がよくわかっているだろう。
(いやもう、最大限ダメージ計上しましたって)
 だから今こそ決定的な何か。
 校門をちょうど抜けるところで、巧の肩を環が叩いた。
「おっはよ」
「おはよ、環さん。校門で会うの、珍しーね」
「『おはよ、由美さん』はぁ?」
「ごいっしょで」
「なあに、それ。──あ、おはよう都ちゃん」
642 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:08:17 ID:sY6+Z4eY
「うん」
 都は少し由美に対して照れを見せている。表情は柔らかい。
 環はそれから目を逸らし、
「巧くん、ちょっと内緒話しようか」
 こういうところが嫌みがなくて心地いい。
 巧は姉と由美に手を振って、環と校舎の周りを歩いた。
「明日試合なんだよね」
「そ。だから、練習はちょっとだけでみんな早く帰んの」
「会場に男子いないんでしょ? 俺、どうしようかなー、立場的にはサッカー部を優先
しなきゃならないんだけど、行きたくないし」
「巧くん」
「なんでしょ?」
「今日ウチに泊まりに来て」
「えっ」
 環の言い出したそれは、結構唐突な話だった。
「親、温泉旅行だから」
 巧は一瞬ちら、と環を見て、真意を窺う。願ってもないことだけど。
 なんとか気を取り直して、
「こんなときに俺が行っていいの? 行ったら俺、絶対襲っちゃうよ……」
「たまたま取れたらしくってさ、二泊三日。でもま、こっちもピリピリしてるとこだか
ら、ありがたいけどね」
643 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:08:32 ID:sY6+Z4eY
 環は巧の言葉をかき消すように言ってから、
「私も……私もね、このままじゃ試合に集中できないから」
 巧の首に腕を回して、にんまり笑う。
「えっと……」
 それには巧の方が赤くなった。こういうところはまだ巧は環に勝てない。
「ひとり……なの?」
「弟がいたりするけど」
 環はまたにんまりと笑って、
「無理矢理追い出した。ついて行かせた」
 と言った。
 
 とにかく、巧の頭には環の言葉が響いたままになって、巧をくらくらさせた。
 一度帰ってから外でおちあって行くことにして、唇だけで軽くキスをして、別れた。
 こうなると授業もまったく耳に入らない。
 なんとか環と他のことをする妄想で相殺しようとするが、遊園地に遊びに行けば観覧
車、海に泳ぎに行けば岩場の陰で水着のまま、とかエッチ方面にばかり働いて(しかも
ベタだった)、ろくな想像にならない。
 環はああ言っていたが。環は巧の『年頃の男の子の事情』に配慮したのではないか。
 そんなことを思った。試合に集中できないのは、巧が不満を感じているから。
644 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:08:47 ID:sY6+Z4eY
(うぬぼれてるか)
 昼休みには、目だけで気持ちを交わし、別れた。
 放課後までの長い時間をなんとか費やし、巧はしょうがなくサッカー部の部室を訪れ、
試合前日の部員達の中に混ざった。巧が怪我で抜けた穴のことを散々皮肉られ、なんと
かタイムスケジュールを確認して抜け出した。
 同じ総合体育センターの運動場の設備を使うことになったので、両方に顔を出すこと
が出来る。
 男女両バスケチームのミーティングがちょうど終わったところで、そのそばに都と由
美がいた。環は立場上まだ部員達に取り巻かれて忙しいようだったが、待ち合わせ場所
はもう決めてある。
「ほれ、帰ろ姉ちゃん」
 少し方向の異なる由美と途中で別れ、巧は都と二人で家路についた。どうしても早足
になってしまう。
「どうしてそんなに急ぐの?」
 姉に突っ込まれ、巧はとっさに言い淀んでしまったが。
 これはチャンスだ。
 決定的な何かをこれから姉に与える。
「姉ちゃん、今日俺環さんとこ泊まるから。親父によろしく」
 できるだけこともなげに言った。
「そう」
645 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:09:03 ID:sY6+Z4eY
 都もそれに簡単に返しただけだった。
「一旦帰ってから行くけど、メシはいいや」
 それから出かけるまでの間、巧は姉の顔を見なかった。見ないようにした。
 
 外岡(とのおか)家──環の家から数分の、待ち合わせていたコンビニで巧は環とお
ちあい、指を絡ませあってその道程を楽しんだ。
 と言っても、巧の頭の中はもうこの後のことでいっぱいだ。
 環は黒のタンクトップを着ていて、胸の形がすごくよくわかった。それに肩から脇を
大きく晒している。フレンチ袖のTシャツを着た巧とは二の腕をぴっちりと合わせるこ
とができた。巧はまだ背が伸びている最中だ。こうやって同じ高さでじゃれ合えるのも
今だけだと思い、積極的にその感触を求める。
 息をはずませた環は顔を逸らしているものの、身体は巧の方に押し付けてくる。
「なんか、遠いなー」
 環が堪えきれないというように言った。
 
 *
 
 巧が出ていったすぐ後にはるかが帰宅し、都は二人で好きなだけいいものを食べよう
と相談を始めた。
「お兄ちゃんは?」
646 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:09:22 ID:sY6+Z4eY
「友達のところに泊まるって」
 間違ったことは言っていない。環は自分の友達だ。
「じゃあね、じゃあね、甘ーい酢豚とかがいーなー、山盛りで」
 はるかは食事に関してだけは巧が天敵なので上機嫌だ。
「巧がいるとき食べられないもの、ね」
 以前酢豚と麻婆豆腐をセットでおかずにした時には、巧ははるかから麻婆豆腐を奪い、
自分の酢豚をはるかに押し付けて知らん顔をしていた。そういう時はまだいいが、甘い
ものに偏ると大変だ。都としては辛いものも甘いものもバランスよく楽しみたいのだが、
巧とはるかの間で結構苦労する。
 でもそういう喧嘩も楽しいものだ。
 今日の所は平和に二人だけの食事をする。
 お気に入りのドラマを見終わったはるかが風呂に入ると、都はしばらく一人でニュー
ス番組を眺める。頭には入ってこない。別のことをずっと考えている。
 はるかには、都と二人の時には見せない顔がある。真っ赤になって怒っている時の顔、
からかわれてパニックになっている顔。都はそういう時のはるかの顔がたまらなくかわ
いくて、巧を止めるべきなのに、じっと見ていたりすることがあった。
 はるかにそういう顔を、自分はさせられない。巧にしかできない。同様に巧にもさせ
ることはできなかった。それがたぶんできるのが親友の環だ。
 ころんとソファに横になり、「巧」と口に出してみる。
 自分でも重症だと思っている。
647 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:09:40 ID:sY6+Z4eY
 ごまかさずにはっきり告げていったところに都は、巧の強い意志を感じた。
 この一週間、都は幸せだった。もちろんあわよくば、ということを考えなかったわけ
ではない。今でもほんの少し可能性はあると思っている。それ以上に巧に触れていた時
間、その腕の中で本当に深く眠ったあの時間、それだけで都は幸せだった。
 そのために生きているのだ。疑いなく。
 時計を見るともう22時だった。巧が今頃何をしているのか、少し考えただけで胸が
締め付けられていく。都には巧以外の相手など、ありえない。想像できないというので
はない。いないのだ、本当に。巧以外に。それは巧が弟だからだ。彼が生まれてからの
全てを見守り続けてきた。それこそが弟だ。
 痛い。とても痛い。
 巧を引き止めなかった自分に対し、後悔が激しくこみ上げた。
 どう言って引き止められたというのか。方法などない。だけど、引き止めなかったか
ら、心が痛みに悲鳴を上げている。
 この痛みは朝になったら終わるだろうか。それともまた巧に触れられれば終わるのだ
ろうか。巧に愛されない限り終わらないだろうか。
 
 *
 
 外岡家の門をくぐると巧は、急に緊張した。
 玄関を上がって別の家の生活感というものを目の前にして、リアルさが胸に染み込ん
できた。
648 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:09:57 ID:sY6+Z4eY
 それはやはり他の家族にことわりなく他人が中に足を踏み入れるという罪悪感による
ものだろうと思う。そして自分はこの家の娘と身体の関係がある。そういう気負いが拭
えなかったところを、環に突き飛ばされていきなりリビングに転がり込んだ。
「ひでー、かんべんしてよ、環さん」
「気持ちはわかるけどね、しっかりしろっ、タ・ク・ミ」
 そのまま、頭を両手で押さえられ、唇を奪われた。またたくまに痺れさせられる。
「いきなりっすか」
「さすがに早く寝ないといけないからね。でもとりあえずお茶しよ?」
 環の部屋に通され、環が台所に行っている間、巧は部屋中をゆっくり見渡した。
(さすがにいい匂いするな、女の子の部屋)
 机の上のボードに、環と由美のツーショット写真、そして都を入れた三人の写真がピ
ンで止められている。
(ああっ、隅っこに超ちっさく俺が写ってる!)
 そういう写真を選んで貼った環の気持ちをふと想う。それとも、そんなに考えて貼っ
たわけでもないのだろうか。
 環が入って来て、しばらく紅茶でくつろぐ。
「その写真最高でしょ? しかも巧くんちょっとむっとしてんの、コレ」
「えー、そんなのわかんの、これで」
「わからないわけないでしょ、愛しい恋人の顔だもん」
649 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:10:12 ID:sY6+Z4eY
 そういう環の目は悪戯っぽいが、潤んでいる。
「じゃあ愛させてくれー」
 と巧が甘ったるくねだると、環はそれに答える代わりに、一足飛びに巧のシャツを引っ
張り上げた。
「ごめん、もどかしいよね」
 右腕を楽に通すために、巧はフレンチ袖を好んで着るようになっていた。もちろんも
どかしいのはそのことではない。
 脱がせ合いながら、お互い隙あらば相手の肌に吸い付いている。だが巧は十分に応え
ることができない。
「はやく環さんを、ちゃんと両手で抱きしめたいな」
 荒い息で環に訴える。
 姉につけられた傷が、二人の完全なる抱擁を阻んでいる。
 ギプスがまるで、巧を諦めようとしない都の執念そのもののようだった。
 どちらからともなく、環が上になるように動いて、結ばれた。
「巧くん……あうっ!」
 環が上体をぴったりと巧に押し付けると、結合した部分がきつくしなって巧を痺れさ
せた。
 上で身悶える環を左手だけで懸命にかき抱く。
「環さんの動き、エロすぎ」
「な、なによぉ」
650 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:10:28 ID:sY6+Z4eY
 環が締め付けながらやけに恥ずかしげな声を出すので、巧はすぐに堪えきれなくなっ
てしまって、
「もう一個持ってきてるからっ」
 と数回激しく動いて一回目を放出した。
「くぁー、もう、なんていうか、環さんの中ってたまらないです」
 まだ途中の環は、巧の言葉に悶え、言葉もなく荒い息で巧の唇を貪った。巧はそこか
らゆっくり、環の身体に触れながら次の準備をした。
 一週間前よりもやはり余裕を持って環に接することができている。それが嬉しい。そ
のうち、一回目から環をイカせてやるのだ。
「なんか、右手下にしたほうが意外と楽みたい、俺」
 そう気がついてから、巧は環の頭を抱え込んで横に向いた。
 自由な左手で環の身体のラインを丹念になぞる。動きに合わせて環の身体がうねり、
貪慾に愛撫を求めてくる。唇は重ねたまま、とろけるようなくちづけを繰り返し、その
間にも指で環の身体を探っていく。
 そうしながら、巧は片足を環の足の間に入れて股間を擦り上げていった。たちまちあ
ふれてきたもので巧の太腿がぬるぬるになった。
「環さん、楽にしててね」
「うん」
 環は薄く微笑む。
 余分な消耗をさせられない。だから巧は無理をする。身体を起こして、自分の下に環
の両足を押し広げさせていく。右腕が悲鳴を上げるが、挿入するまでの我慢だ。
651 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:10:43 ID:sY6+Z4eY
 仰向けでたわむ胸を名残惜しく舌で吸ってから、一度上体を落とした。すると環は、
「これがたまらないんだ」
 と巧の体重を愛おしげに受け止める。今の巧にはありがたい。そのまま濡れそぼった
入り口に左手で誘導し、ゆっくりと差し入れていった。
「んっ……は……あ…………ん」
 感慨深げな環のその声も巧には狂おしかった。巧が奥までたどりつくと、環はぶるっ
と大きく身体を震わせ、それから激しく巧を抱きしめた。
「ちょっと待ってね」
 と巧を押しとどめ、足を巧の腰にからめてくる。それで環の中が蠢いて、巧はまた身
体の中心を痺れさせた。巧は環に肉棒の感触を確かめられている気がして、恥ずかしく
て堪らなくなった。だが、目をちゃんと開いてみて、自分が組み敷いている女の身体の
美しさといやらしさといったらなかった。
「あんっ! やだ……巧くん」
 環が顎を上げて応えてくれた。その肢体の見事さに刺激されて、巧が肉棒をさらに大
きくしたのを感じてくれたのだ。
「環さん、イッてね」
 環が吐息で答えると、静止状態での悩ましい感触に別れを告げ、巧は前後に動き始め
た。環の膣内の吸い込まれそうな動きに抗い、効果的な動作に勤める。それがお互いの
快感を高めていくのがわかるから、惜しみなく力を注ぐ。
652 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/05 22:10:56 ID:sY6+Z4eY
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ、ああっ!」
 リズミカルな動きで反応する環の声は、途中から一気に大きくなり、巧をさらに急き
たてた。
 早く、もう待てない、と言う代わりに搾り取るような渦巻き状の締め付けが巧の肉棒
を襲う。
 巧はまだいける。重く深く、環を押し広げた。
「だ、だめっ、やあっ! んああああっ!!」
 痙攣に近い動きが混ざって、環が昇り詰めていく。我慢する理由はなかった。一緒に
イキたい。巧も動きを本能にゆだね、
「イク、イクッ、イアアア、や、あああっっ!!!」
 弾けていく環に引き込まれるように、解き放った。
 何もかも忘れてしまいそうな、絶頂の感覚だった。
 お互い脱力し、唇で余韻を与えあいながら、巧が環から抜け出す頃には、環はそのま
ま眠りに吸い込まれつつあるようだった。
 巧は環を精いっぱい綺麗にしてやって、パジャマらしきものを着せてやってから自分
も環の横になった。食事すらしていなかったことを思い出すが、この分だと早起きがで
きてたっぷり準備の時間が取れるだろうと思う。巧は環の頬にキスしたまま、泥のよう
に眠った。
 翌日の一回戦は、好調を維持する環中心の組み立てで、余裕を持って桐高女子バスケ
部は二回戦に進出する。
653名無しさん@ピンキー:04/11/05 23:14:29 ID:4zW1DTzP
GJ!あんた最高だよ…
654名無しさん@ピンキー:04/11/05 23:38:48 ID:/Bhtu6OT
GJ!もはや我がチャンネルブラウザは
これを見るためのみに使用されている...
655 :04/11/05 23:52:51 ID:W1vFFWA6
(;´д`)ハァハァハァハァハァハァハァハァ・・・
素晴らスィ、素晴らしすぎる。
エロいし面白いし早い。まさしく職人の仕事だな。
656名無しさん@ピンキー:04/11/06 01:13:43 ID:CtWxCMqE
はるかカワイイなぁ・・・
657名無しさん@ピンキー:04/11/06 03:10:25 ID:wuaktLuz
巧ハァハァ(;´д`)ハァハァ
都ハァハァ(;´д`)ハァハァ
環ハァハァ(;´д`)ハァハァ
はるかハァハァ(;´д`)ハァハァ
その他ハァハァ(;´д`)ハァハァ
…萌えないところがない。(;´д`)ハァハァ
658 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:27:27 ID:J/l/iazp
手元のテキストがちょうど4000行を突破しました。
都さん特攻編。
659 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:27:47 ID:J/l/iazp
 24
 
 綺麗にイカされた後の身体が、本当にすっきりしていることが、環を酔わせていた。
 不思議なくらい、バスケットに集中できる。
 試合場の応援組の女子に混じった男子の制服。しかも右腕を吊った痛々しい恋人の、目
立ち過ぎる姿が、おかしいくらい頼もしく見えた。
 運命なんて、と思うけど、信じてみたくなる。
 夢じゃないかと思い、今夜もそばにいてくれるだろうかと胸を熱くした。
 
「ほんと本番に強いよね、環ちゃんは」
 由美が持ってきたうちわでぱたぱた扇いでくれている。そして、
「身体のキレもすっごくいい感じ〜」
 そんなことを言っている。
 どうしても顔が赤くなってしまう。
「先輩、ドリンクちゃんと飲んでください、これも選手の仕事ですからっ」
 そんな律儀な後輩の押し付けるボトルを受け取りながら、巧の姿を探す。
 観客席の少し離れたところに、両側を女子に挟まれた巧を見つけた。
(…………なに、あれ)
 環は笑ってひっくり返りそうになった。
 巧の右に都。そして左に補欠の一年の吉田麻理が座っているのだ。
660 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:28:05 ID:J/l/iazp
 話をしているのか、していないのか、三人ともあらぬ方向を見ていて、意識だけはしあ
っているようだった。
 由美が時々それを見ている。
 
「先輩すごく調子いいよね。どうしてだと思う?」
 吉田麻理がいきなりそんなことを聞くので、巧は逃げ出したくなった。
「俺に聞いてどうすんの」
「待鳥くんは知ってると思うから」
「そうなの」
 この強気な娘の考えていることはまったくわからない。普通に何かを聞かれても別のこ
とを質されている気がしてしまう。
「白々しいのね。待鳥くんはあの時言ったこと覚えてる?」
「なにをよ」
「身体でも同じ事ができるけど、したいかって。私を誘ったのよ?」
 かんべんしてくれと思う。
「誘ってません」
「私、男の人とそういうことしたことないの」
「誘ってない」
「まあ、私たちの年だと、したことなくてもそんなに変なことじゃないよね。したいとは
思わなかったし。でもね」
661 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:28:19 ID:J/l/iazp
「誘ってねえ」
 隣には姉がいるのだ。
「待鳥くんから先輩の匂いがするよ。だから……」
「俺は惚れた女としかしません」
 巧が強く言ったので、そこで麻理は黙り込んだ。と思ったら、都が口を開いた。
「今日は帰ってくるの?」
 弟に向かって、いったいどういう聞き方だ。こんな場所で、声の調子が媚びを含んでい
る。『家庭を顧みずに仕事にのめり込み、毎日会社に泊まり込んでいる夫』じゃないのだ。
 これは、吉田麻理にはどう伝わっているのだろう。
(もうイヤ……神様仏様)
 祈りでも通じたのだろうか、その時、
「はーい、もらって帰るよん」
 いつのまにか後ろに回り込んでいた環が、巧の脇に両手を入れて、「よいしょ」と引っ
張り上げるジェスチャーをしてみせた。
「せ、先輩」
 麻理が慌てて立ち上がってかしこまり、真摯な視線を環に向けた。
 そして都がすがるような目をして見る。環が気付いて、巧に無言で振ってきた。巧に任
せるという信頼と、もうひとつ願望の眼差し。巧は環と同じ気持ちだ。
(そりゃあ環さんがはっきり言ったらむちゃくちゃカドがたつよな)
 巧は環に引き起こされながら、都の目にあえて言った。
662 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:28:37 ID:J/l/iazp
「もう一日、環さんのとこに泊まるからね」
 麻理が、このもう一人の先輩はどういう人だろうと伺う気配があったが、巧はそのまま
背を向けて環とそこから離れた。後は由美に任せる。明日の日曜もまた試合なので、簡単
な打ち合わせだけで今日は解散である。
 
「環さん、さっき姉ちゃんが変だって思わなかった?」
「思ったわよ。だいたい想像つくけど」
「後で話すから」
 巧が言うと、環は控えめに微笑んで巧の肩を叩いた。
「由美があのコのことはしっかり見てるから、大丈夫よ」
「それ、よくわからないな、俺」
 試合のご褒美に、環が巧にねだったカップアイスを二人で行儀悪く食べながら、駅前の
小道を肩をつつきあわせて歩いていく。
 環が気持ちよさそうに目を閉じて、吹いてきた風に短い髪を揺らしている。巧は、それ
を本当にまぶしそうに眺める。
 こうして引っ付いて歩いていると、贅沢な話だけど、少し離れたところから形のいいお
尻やすらっと引き締まった脚を眺めたりできないのがちょっと不満だ。自分を見ている環
を違う角度から見てみたい。
「巧くん、お風呂ってどうしてるの?」
「涙ぐましい努力をしてます、ハイ」
663 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:28:53 ID:J/l/iazp
「都……?」
「え、いや、もう、ひとりでできるようになりましたが」
 巧が弁解するように言うと、環はトイレに行けるようになった子供みたい、と笑って、
「ごめん、笑い事じゃないんだっけ」
「笑い事じゃありません」
 そんな話をしていたので、外岡家で二人でシャワーを浴びることにした。
 明るいうちから、風呂場で裸になった相手を見ていると、お互いに真っ赤になっている
のがおかしかった。実際恥ずかしいのだが、とても変な感じだ。相手に触れているとその
まま変になってしまいそうなので、巧は環に背中をお願いして、自分で前を洗った。
「やっぱりへんてこだよね」
 環にギプスをつつかれる。
「借金みたいなもんですねー。治ったらまず、それまでの分この右手をかわいがってあげ
てくださいね」
「ふふっ、そういうことなら大丈夫」
 その後は、自然とやはり抱き合ってしまった。お互いの首筋を距離がマイナスになるよ
うに絡ませて抱きしめあう。
「このままここでシたら超疲れそうよね」
 おどけて、環が巧を引っ張った。心を読まれているみたいだ。
 跳ねるように脱衣所に逃げる環の、裸のお尻はたまらない曲線を描いている。それを見
て巧は、絶対今日はバックからヤるんだと決めた。
664 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:29:08 ID:J/l/iazp
 
 *
 
 巧のいなかった昨日の夜、都は風呂から上がるとすぐ、巧の部屋へ行って巧のベッドで
眠った。唯一巧に近付くことができる場所。
 だが起きても巧はいなかった。恋人のところにいるのだから当然だ。
 自分は留守番をする姉にすぎない。
 巧に今夜も帰らないと言われて、周りが見えなくなった。由美に後ろから抱きしめられ
ているうちに少し気持ちが落ち着いたが、痛みはむしろ激しくなっていた。
 環の応援から帰宅し、まっすぐに巧の部屋へ行く。はるかは今日は、友人達と日帰りで
遊びに行っている。ひとりだ。
 TVラックの前に座り、そういえば巧はよくこれでサッカーのビデオを見ていたな、と
思ってTVをつけ、テープを回してみた。アダルトビデオが入っていたので、怒りのあま
りテープを叩き壊して中身を引きずり出した。
 カーテンをきちんと閉めて自分の部屋に戻る。
 もう巧が寝ているときにあの部屋に侵入することはできないだろう。
 起きている時に訪れて、ベッドに並んで腰掛けて話をしたりできれば、それだけでもい
い。そのくらいは、なければ自分は保たないと思って、深く沈み込んだ。
 気持ちを逃がす方法はないから、
(戻ってきたら絶対に襲ってやる)
665 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:29:22 ID:J/l/iazp
 都はもう、迷うことなくそう決めて、その時を思い描いた。
 すると、不思議と気持ちが楽になった。だから思うのだ、絶対成功すると。
 
 *
 
 環はうつぶせで、両手で枕を抱えてそこに顔を埋めている。巧がその背中に密着してい
る。
 ぴっちりと閉じた環の両脚を巧の脚が挟み込んでいる。その状態で、繋がっている。
 強烈な締め付けと密着感が、巧のものをただれさせていた。
 ぎちぎちと滑っていくしかない。暴れようとする環を完全に拘束したまま思う存分出し
入れをしているのだ。環は右腕だけを自由に使って、シーツをかきむしった。
 くぐもった声がかすれていって、環の狂態を音以外の世界で堪能した。
「巧くん、……これは、あ、駄目よ、私、明日、試合……んああっ!!」
 環が荒れ狂う快楽に耐えているのが肌で感じられた。だけど、巧は止められない。一回
目の自分が環をイカせるのだ。
 後ろから組み敷いて、『犯している』ような微妙な気分と、そのあまりの密接な姿勢に
環の体型を感じ、お尻の柔らかさを感じ、泣きそうになった。
 刺激が強すぎて、巧は逆にイケない。
 力を緩めると、繋がったまま身体を横倒しにした。その摩擦で、枕から離れた環の口か
ら大きな声が出ていた。
666 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:29:39 ID:J/l/iazp
 その声もかすれている。
 やっと空気にさらされた環の胸を、やわやわと揉んでいると、
「こんなの……どこで覚えてきたの? ちょっと」
「今日環さんとひっついてて発見したのっ」
 そう、やたら嬉しそうに言ってしまった。だから照れ隠しに、環のクリトリスのあたり
を刺激してやると、環は身体を震わせながらも、その二の腕を捕えて少し強く噛み付いて
きた。
「いででっ!! 環さん?!」
 見事に歯形の残った腕に、ふーふー息を吹き掛けながら、
「昨日の分、後ろにつけてあげるね」
 これは仕返し。環の綺麗な肩甲骨と背骨のラインの間の小さな空間に唇を押し付け、愛
情を込めて吸い上げる。
「やだっ、見えないとこ」
 環が暴れるので抜け落ちそうになって、慌てて巧は環の腰をつかまえた。もう一度深く
肉棒が環に潜り込んだ。
「や、う、ああんっ!! もう、やっ」
 不満げな声が気になって、後ろから覗き込む。耳たぶは真っ赤だ。恥ずかしがっている
と思って嬉しくなった。
「環さん、さっきイッた?」
 こく、と苦労して頷いているのをたまらなくなって抱き寄せた。
667 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:33:04 ID:J/l/iazp
「俺、やっと勝てた。じゃあ、今の分」
 余韻に震えている環の中から、振り切るように抜き出すと、その瞬間だけ果てしなく狭
くなって身体が痺れた。
 すっかり赤みが消えて元通りの胸元に、きつく『最新版』を刻印する。
「巧くんがまだイッてない」
 環が膨れて抗議してきた。
「こっちでイキました」
 自分の胸をツンと触れると、環は「キザ、ヘン」とめちゃくちゃおかしそうに笑った。
 それに、これは嘘だ。環の中で弾けたいに決まっている。
「でも実際、環さんにやっと仕返しできた感じ」
「どうしてそんなことにこだわるの?」
「女の子にはたぶんワカリマセン」
「そうらしいけどっ」
 環は、納得のいっていない顔で反撃に出た。
「私だって女だっ!」
 そのまま巧は押し倒された。
「こら、明日試合っ」
 巧の抗議は空しいし、必要もない。後が怖くないと言えば嘘にはなるが、逆らわなかっ
た。
668 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:33:18 ID:J/l/iazp
 
 *
 
 とはいうものの、
「それで負けて、環ちゃん下級生に刺されても知らないからねっ」
「もう負けちゃったんだから、しかたないでしょ?」
 頭を掻きながらなぜか由美に許しを乞うている。
 由美が本気で怒っているようなのが、環はたまらない。
「そのせいで負けたんじゃないってば。アイツら今年は優勝するわよ」
 べーっ、と引き上げる敵チームの方に向かってやってから、下級生より先に都に刺され
るかも、と思った。昨日の夜ヤリまくりましたとは誰の前でも絶対言えない。
「で、巧くんはなんで来ないの?」
「全然起きないから、置いてきちゃった……」
「信じらんない」
 幸い試合後で、上気した顔で赤くなってもわからないのが救いだ。
 汗をタオルで拭ってしまうと、
「都ちゃんがかわいそう」
「んー、そりゃ、どうだろ」
「なにが、どういうこと?」
 今日の由美は怖い。
「わかった、わかったって。ちゃんと気を遣ってるから、だから、いいでしょ?」
669 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:33:34 ID:J/l/iazp
 由美の髪をくしゃくしゃといじりながら、昨日巧からコトの最中に聞いた話を思い出し
た。
(都らしいなあ)と久しぶりに思った。他人事だったらどんなに笑える話か。
 巧は環に「絶対諦めさせるから」と言って、言えたことに安心したみたいにそのままば
ったり眠り込んでしまった。その寝顔の晴れやかなことと言ったら、なかった。体力は限
界まで使ったようだったが。
 そして環は、本当に全力を出し切って戦ったのだ。
 雑念は全て巧が吸い取ってくれていた。完全にプレイに集中して、それでもどうにもで
きない壁があったというだけのこと。ひとりになってからたぶん、わんわん泣き出してし
まうだろう。巧には見られたくない。腫れてしまってとても見られない顔になるに違いな
い。
(巧くん、やっぱり起きられなかったかぁ)
 都ははるかと、はるかの友達らしい女の子達といっしょだった。
(わー、あのコ達もモテそうだな。カワイイなあ、中学生って)
 そんな風に気を紛らわせながら、バッグに思い出深いシューズやリストバンドをしまっ
ていく。
 巧はまだウチだろうか。午前中だけで試合は終わりだが、ちょっと会い辛い。きっと結
果を聞いて気にするだろうから。
670 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:33:55 ID:J/l/iazp
 
 *
 
 巧が会場のどこにもいない。
 都は懸命にその姿を探したが、はるか達と一緒に行動していてはあまり目立った動きは
出来ない。
 試合が終わっても、巧は現れなかった。巧と引き離されるような恐怖を覚え、一目でも
見たいと願う。由美にも環にも聞けなかった。
 はるかにことづてをして、誰にも黙って抜け出した。
 環の家に行ってみようとさえ思ったが、結局家に戻ってきてしまった。
 玄関に巧の靴があった。
 バタバタと駆け上がってみると、リビングにいた。
 巧がぎょっとした顔で手に持っていた紙袋をそっと後ろに隠すのを気にも止めず、手の
届く距離まで近付いて行ったものの、そこから足が動かない。だから代わりに、
「どうして応援行かなかったの?」
 と聞く。
「起きれなかったから、なんか照れくさくって。それに、家にいたら電話かかってくるか
もしんないし」
「かかってこないと思うわよ。あのコ、負けた後はひとりで泣きたいはずだから」
「そっか、負けたのか」
 はるかは友人達とそのままショッピングに出かけていった。
 ふたりだ。
671 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:34:17 ID:J/l/iazp
 
「今日はもう出掛けない?」
「うーん……」
 都の問いかけに唸ったきり、巧は自分の部屋に戻ってしまった。
 たぶん、なにか企んでいると巧に思われた。気が焦る。追って行って、ノックして、
「シャワー浴びるから、いてよね」
 今から本当にシャワーを浴びる。このセリフは会心の出来だと、ふと思う。
「わかった」
 巧の返事をドア越しに聞いてから、そのまま準備も何もせずに下に降りて風呂場に入っ
た。勢いを増そうと、激しくシャワーをかぶり、力の限り身体を綺麗にしたら、もう止ま
らなかった。ゆっくり湯加減など出来なかったから体中、皮膚が真っ赤になっている。の
ぼせそうだ。引き戸を思いきり引っ張る。
 そのまま脱衣所を素通りして、びちゃびちゃと廊下を水浸しにしながら階段を昇った。

 巧の部屋まで一直線。
 突入した。
「待った! いや、わかったから、待ってくれ!」
 さっきの数倍ぎょっとした顔で、巧が後ずさった。
 なにがわかったのかは知らないが、逃げる隙は与えない。
 ドアを開けてすぐ退路を押さえ、ベッドに引っ張り込む。普段ならともかく片手の弟に
遅れはとらない。
672 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/07 06:34:29 ID:J/l/iazp
「俺が昨日まで何してたか、知っててやってんの?」
 都は気付く。それはその場逃れをする時の言い方だ。拒絶する時はそうじゃないのだ。
 隙があるわよ、と。
「恋人の応援に寝坊するような人は、犯してやるんだからっ」
 巧が一瞬諦めたような目をしたのを見た。
 願いが叶えられるのだろうか。
 たとえ月を貫通しようと衰えないくらい強いこの願いが。
 
 *
 
 ちくしょう、と姉に顔を見られないように体を入れ替え、巧は都の上になった。
 押さえつけ、動けなくしてやると、姉の方から積極的に大人しくなった。
(かわいそうだと思うけど、しょうがないよ)
 巧は自分に言い聞かせるように、ずぶぬれの姉の、裸の腰を持ち上げた。
 目の眩むような光景に気持ちを持っていかれそうになる。が、あと少しの我慢なのだ。
本当にあと一瞬、そして、カチャンと音がしてそれはハマった。
 やりきれない思いで、巧は呆然とする姉を見下ろした。
673名無しさん@ピンキー:04/11/07 09:59:40 ID:2ePasrPK
GJ!!(゜∀゜)
674名無しさん@ピンキー:04/11/07 10:22:17 ID:S6kgiMSm
都姉ちゃん特攻キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
職人さん乙です
675名無しさん@ピンキー:04/11/07 17:43:31 ID:LV9EEfh6
それ?それってなんだ。。。
676 :04/11/07 20:01:36 ID:yvLrJzIT
キターーーーー(゚∀゚)ーーーーー!!
乙津!GJ!
しかし、やれよボケ巧がYO!
据え膳食わぬはなんとやらだぞコノヤローー!!
677名無しさん@ピンキー:04/11/07 20:46:20 ID:nf3SfDNz
GJ
いつ見ても素晴らしい出来ですね
678名無しさん@ピンキー:04/11/08 14:54:42 ID:YZpZof+D
キャラクターがみんな魅力的で素晴らしい。
設定というかシチュエーション作りが上手い。
姉スレだけど姉以外も萌えまくるし。
姉スレとしては姉との本番が待ち遠しいけど。
679名無しさん@ピンキー:04/11/08 16:49:28 ID:edeme5Fr
1ページ18行として、4000行は222ページくらい?
今の時点で既にライトノベル1冊分くらいの量ですかね?

この先どのくらい続くか分かりませんが最終的にかなりのボリュームになりそう。
改めて素晴らしい仕事っすね。
これからも頑張って下さい。
680名無しさん@ピンキー:04/11/08 20:07:01 ID:bPWdWj08
GJ
681 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 00:58:46 ID:Uhvz138K
いつもありがとうございます。
どうも、このスレの容量内で完結させるのは厳しくなってきました。
食いつぶしちゃってごめんなさい。
プロットだと1行のところが実際書いてみると100行になってたり。

ところで自分も他の人の話の続きとか読みたかったクチなんだけど、
書き手の人はいらっしゃらないでスか。寂しい。
682 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 00:59:11 ID:Uhvz138K
 25
 
 放課後、環が見つからないのでうろうろしていると、元ナンパ仲間につかまって巧は
教室に連れ戻された。当面少し、環と姉のそばにいないといけないと思うのだが、久し
ぶりに仲間達と馬鹿騒ぎをしてみたい気分でもあった。
「巧、バスケの外岡先輩とデキてるってほんとか?」
「キミタチにはカンケーないよ」
 やけくそ気味に、不敵に笑ってやると、
「なんだその笑いはっっ」
 何人かが憤慨するのだが、
「その話もいいけど、な、昨日の女の子たちなんだけどさ」
「あのカチューシャしてた生意気な女がいたじゃん、あれがさ、まっつんのこと聞いて
きたのよ、俺んとこへ」
「まじで? じゃあ、俺あの仕切ってたコの番号もらってるからさ、今度──」
 聞いていると巧は、意外とこの連中はバランスが取れている奴らだと思う。勘がいい
というのか、変な立ち入り方をあまりしない。こういうのが世渡りとか、そういう技術
に成熟していくんじゃないだろうか。
「で、もうヤッたらしいじゃねーか」
「戻ってこなくていいんだよ、お前らは」
683 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 00:59:29 ID:Uhvz138K
 巧は、この話を都に聞かれるのが少し辛い。昨日あんな目に合わせたのだ。なんだか
んだ言って、環とのことをあまり耳に入れたくはない。今日はまだ追加授業中だから大
丈夫だろうが。
 昨日の姉は今まで自分の知らなかったこと、知らないふりをして避けていたことを暴
き立てていた。
 姉は、やはり魅力的だ。
「いーなー、おまえみたいのがいるから俺達は、まだ熟れてない青い実で我慢すること
になるんじゃないかっ」
「おめーはそっちのほうが趣味だろうが! ロリコン野郎」
「15はぎりぎりセーフだよ」
「そーかあ?」
「映画館とかとおんなじで、13未満だべ」
「おかしいって、それ」
(じゃあ俺もロリコンか。年なんかより、見た目がお年頃ならいいじゃんか)
 とはいえ見抜けなかった自分の浅さには少し幻滅する。
 そんなことを一人で考えていると、目ざとく突っ込まれた。
「あっ、こいつ反芻してやがった」
「反芻? ザッツグレイト」
「も・ど・っ・て・く・る・な」
 
「なあに、今日はロリコン記念日なの?」
684 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 00:59:43 ID:Uhvz138K
 環は、一度は巧達の放課後の馬鹿話を聞いてみたいと、これを密かに楽しみにしてい
た。その割には退屈だったので膨れて振り向くが、都は知らん顔を続けている。
 授業が終わると同時に都を引っ張りだし、柱の陰にこっそり隠れていた。
 環が抱えているせいか、都は腕の中で妙にそわそわと落ち着かない。
(? なにを過敏になってるんだろ)
 一人がナンパの会話術っぽいことを言い出して、その流れから『一番クサいセリフを
考えたやつに全員でオゴる』という賭けになっていた。
 陳腐だろうがなんだろうがとにかくクサい者勝ちだ。意外とこれが盛り上がっている。
次々そんな感じの言葉が飛び交って、巧もむずがゆくなるようなことを言った。『自分
の小指の赤い糸を辿っていったら、君に出会ったんだ』
 環が声をたてないように苦労して笑っていると、腕の中の都が赤い顔で、小指を出し
てじっと見ているのに気付いた。綺麗に手入れされた小さな指。
 その仕草と切れるような美しさが胸をうつ。
 心が引き寄せられる。
(か、かわいい……都、あんたはかわいすぎる! ホント、由美ほどの奴が一目惚れす
るんだもん)
 同時に、胸が痛くなる。
 駄目だ。こんなコから巧を奪った。
 こういうふうに巧の日常を覗き見るのは、本当に楽しかったんだと思う。
(本当に、かわいい……なんでこんな)
685 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 01:00:10 ID:Uhvz138K
 いいコなんだろう。
 巧に関して、環は都から恨み言を聞いたことがない。
(このコを守りたいな)
 由美にするように髪を軽く撫でてやっていると、都は怪訝な顔をしたが、されるまま
になっていた。どんなことを考えているのだろう。
 
 教室の中では、お題の『クサいセリフ大会』がなぜか『理論上の女の子最短攻略時間
の考察』に変わり、さらに『チンコスペック談義』にシフトしていた。
(なんでこうなるかな、男子は)
 男子バスケの連中もこういう感じだ。
 突然、一人が衝撃的告白をする。『俺の、なんかつんつるてんらしいんだよね』
『どういう意味よ』
『全然張り出してないの、先ッちょが』
『あ、それってやっぱり不利なんかな?』
『相手によるし、やりかたにもよるんじゃない?』
 どうもこの連中は恥を忍んで乞うような相手に弱いらしい。我も我もと自慢しあって
いる時の感じとは違い、なにやら真摯にアドバイスを送っているのがおかしい。『俺も
スペック不足感じることあるぞ?』
 巧だ、と環は耳をそばだてた。都が同時にピクッと動いたので、また笑いそうになっ
てこらえる。
686 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 01:00:24 ID:Uhvz138K
『ホントに?』
『いや、だまされるな、こいつはエリンギだ!』
(ちょっと待って……)
 環は慌てた。さすがにこれは笑い声を押さえられないかもしれない。身体を起こそう
としたら都に押さえられた。『細いっての?』
『違う、竿が普通に太くて、でもエリンギなんだよ!』
 妙に熱い主張だ。怒っていると言ってもいい。巧が訝しげに、
『あ、おまえ久我森だっけ、中学。……もしかして修学旅行んとき、居た?』
『居た。っていうか、大浴場にノギス持ち込んだの、俺』
『やっぱそうか! 俺あんとき優勝した奴のチンコ忘れらんねーよ……やっぱ世界は広
いわ』
 チンコ談義は終わらないが、赤い顔の都と目が合ってしまい、環はそのまま目が離せ
なくなってしまった。
 なんとも表現しがたい、奇妙な長い時間。こっちも赤くなる。
 これを横で由美が見ていたとしたら、誤解されてしまったかもしれない。
 チャイムが鳴った。
 三年の追加授業用の短いチャイム。
(ほら、逃げないと!)と都を追い立てて上の階へ逃げる。
「今度由美も連れてこよう」
 と言ったら都は睨んだが、顔が赤いままだったのでしまらなくて、悔し紛れに叩かれ
てしまった。
687 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 01:00:59 ID:Uhvz138K
「環」
「ん、なに?」
「巧をどこにも連れていかないでね」
 都が急にそんなことを言った。おやと都に見入る。さっきの表現しがたい時間と繋が
って、今日の都のらしくなさに思い及んだ。それはなにか、ついこのあいだまでの『私
の巧を取らないで』と言っているような目とまったく違っていた。
(これはぜひ、巧くんに聞いてみないと)
 巧はあっさりと答えた。
「昨日、絶対間に合わないと思って、まあ買い物しつつだけど、そのままウチに帰った
の。そしたら帰ったとたんに襲われたんだよ、姉ちゃんに。大丈夫、姉ちゃんは封印し
たから。これで」
 ミーティング後の部室棟の脇で、キスしたりべたべたしながらそんなことを聞いてい
た。巧が折り畳まれた紙を見せてくれた。『ボディロック 取り扱い説明書』
「て……貞操帯じゃないの、これ?」
「風呂にはそのまま入れるしトイレにもちゃんといけるから大丈夫」
「巧くん……」
 環は尻餅をついてしまって、巧を道連れにして制服を砂だらけにしてしまった。今日
はもう笑いすぎだ。
688 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 01:01:16 ID:Uhvz138K
「チタンワイヤー製のネットをラバーで覆ってあってね、金属でかぶれないし錆びない
し動きも制限されない。鍵がないと絶対外せない優れもの」
「あは、あははは、はははっ! わかった、説明しなくていいから、いや笑っちゃいけ
ないんだけど、あははははは、あはっ!」
「環さん、いくらなんでも笑いすぎ」
 転がったまま散々はーはー言ってからやっと環は立ち上がり、
「今日の都は、それが原因だったのね」
 砂を払いながら巧を起こし、
「都をグラウンドの方に待たすから何かと思ったら、でもさ、それ、使い方が逆よ」
「役に立てばいいんですよ」
 
 けど、と巧は本来の『使用目的』を思ってみる。
『二番でいいから、私にもして……、お願いだから離れていかないで、ねえっ!』
 そう言ってすがるのを巧は結果として突っぱねた。
 これは意地だ。同時に環に掲げられる最大の誠意だと思っている。
 病院では、姉の気持ちを受けないとはっきり伝えた。同時に、何をしてきても逆らわ
ないとも言ってしまった。
 あのボディロックでそれが実現できるのだと思えば、買い物は安かった。
 姉の理性じゃなく心が諦めるまで姉の苦しみにはつきあう。
 だが、昨日の夜から今日に至るまで、都が巧に見せていた従順さと嬉しそうな顔はど
うだろう。
689 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 01:01:31 ID:Uhvz138K
(ひょっとすると、姉ちゃんはとてつもなく自分に都合のいいように解釈してるんじゃ
ないだろうか……)
 つまり姉は今、鍵を持っている巧に独占されているのだという──
(頭おかしくなりそうだ…………)
 環も違和感を感じたはずだった。
「ねえ、環さん」
「逆効果だったかもね」
 環は巧が怖れている通りのことを言った。
 でも大丈夫だと思う。
「このまんまで時間が立てば姉ちゃんも悟ると思うんだけどな」
「じゃあ、ずっとつけっぱなしにさせるつもりなの?」
「姉ちゃん次第っす。ていうか、環さんまだ笑ってるし」
「だってさ──」
 環のバスケ部での活動も基本的に終わりだ。進学しない関係で後輩達に教えることに
はなるだろうが、自分のためにプレイすることはなくなる。
「お疲れさま、環さん」
 巧が手を差し出すと、環は少し顔を歪めて、でもすぐにっこりと笑って手を握り返し
てきた。その一瞬の泣き笑いのような顔は、昨日の名残なのだろうと思った。出来るな
ら一年の頃の環のプレイを見たかったと思ったが、それは言わなかった。
 グラウンドに出ると、まだ勝ち残っているサッカー部が激しい練習を行なっていた。
690 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 01:01:49 ID:Uhvz138K
(うっわー、行きづれー)
 組織力が増して、歴代のチームの中でもいい線を行っているという評判だ。
 巧のポジションに入った選手の動きを見ていても、自分より劣っているとは思えない。
 全治2ヶ月の巧にはチームがどこまで勝ち進んでも出番はない。それがわかっている
から、監督や主将の遠山も厳しいことは巧に言わなかった。
 期末試験も目の前だった。
 担任の吉見から特別にマークシートのテストを作ってもらえることになっている。
「姉ちゃん一年の時のテストとか持ってねーの?」
「真面目に勉強しなさい」
「そーだね」
「環さんまで、冷たいなー」
 待ちぼうけていた姉を拾って、環と姉に挟まれて帰った。環が急に笑い出したりしな
いかちょっと心配したが、そういうこともなく、それぞれの家に向かう。
 
 *
 
 都は、環に思い焦がれる吉田麻理のことを思い出し、環にキスをする自分を想像して
みた。ピンとこない。
 それよりもこの『拘束具』の意味が問題だ。
 何が起こったのか理解できないうちに、巧に『高かったんだから、大事にしてよね』
なんてことを言われたので混乱してしまった。
691 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/09 01:02:05 ID:Uhvz138K
 昨日巧に触られたところが熱を持ったまま、いつまでも疼いていた。今までと違う領
域に踏み込んだのだ。そこには巧だけが入ってくる。環は入ってこれない。
 弟のものになったという妄想が頭から離れない。
 さすがに、巧がそのつもりでやったわけではないことはわかるのだが、身体のどこか
から湧き出してくるこの嬉しさは理屈では抑え切れない。
 こんなのは普通じゃない。もちろん初めからそうなのだが。そして、どこまでもこう
やってはぐらかされていくのも。
 腹が立って、巧の左手を取り、自分の右手と組ませた。明らかにわかっていてこっち
を見ないが、拒まないので、さらに胸に当たるまで腕を巻き込んだ。
 腰を包み込んでいる違和感が、着実に何かに育っていた。
 試験勉強の細かなストレスは、身近なもので晴らされる。
 夜巧の部屋を訪れて、珍しく教科書に向かって唸っている巧に後ろから抱きついてや
れば大抵、紛れてしまう。
 巧は抵抗しなかった。部屋にも自由に出入りできた。
 無視を決め込むつもりなのだ。
 外堀を埋めた代わりに城壁が高くなっていた、そんな城攻めのような日常になぜだか
心が躍る。
 
692名無しさん@ピンキー:04/11/09 01:19:40 ID:AuIdpLkG
妄想姉
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!

これは普通の小説としても良いですね
693692:04/11/09 01:22:40 ID:AuIdpLkG
sage忘れた…
スマソ
694名無しさん@ピンキー:04/11/09 01:41:37 ID:p1fSHf43
キタキタキタキタ――――(・∀・)――――!!!!!

連日GOOD JOB!!!
いや、これはもはやGOD JOBだ(´д`*)ハァハァ

最近チェックするのが日課になってます。これからも頑張ってください!
695名無しさん@ピンキー:04/11/09 02:05:27 ID:Ax1XIBkq
乙です!
つか皆言ってるけど、ホント普通に面白いね。
今から次の投下が楽しみです。
子供の時に、少年ジャンプ待ってた時みたいな気持ちだなw
696名無しさん@ピンキー:04/11/09 07:28:45 ID:Tpdx3e8t
◆5mSXuZ5GjE氏は京都の人なのかな?
漏れは>424氏の続きを未だに待ってるんだが。。。
書いてくれないと勝手に続き書いちゃうぞ














いや、うそですスミマセンゴメ(ry
697名無しさん@ピンキー:04/11/09 21:16:36 ID:sJHq+bz+
正直、この作品が今年一番の萌え。
マジで。
698名無しさん@ピンキー:04/11/10 09:12:09 ID:nPa3cKjM
GJ!!!
699名無しさん@ピンキー:04/11/11 03:01:26 ID:e7369M/m
ん・・
700 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:34:50 ID:ccQAmcSC
>>696さん
なんのことを言ってるのかはわかりませんが、自分は兵庫出身です。

ところでちょっと遅いですが、恥ずかしい間違いをしてました。
「看護士」 ×
「看護師」 ○
です。高野さん(とおばちゃん)はおかまではありません。
701 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:35:18 ID:ccQAmcSC
 26
 
 期末試験まで一週間を切り、巧は試験が終わるまでの間、環と会わないことに決めて
いた。
 決意を固めないと実行できない軟弱さのあまり、環に宣言してしまった。
 してしまった以上環にお願いすることは不可能だ。
(俺って駄目人間)
 先日虎の子のお気に入りビデオが、姉の手で抹殺されてしまったのも痛い。貯金まで
崩してボディロックを買ったので、財布の中はからっぽ同然である。かろうじてうまい
棒が買える。
 暑くてやる気が出ない時には、一時の慰めにと環の顔を見に行く。
 休み時間の三年の教室は、一年生が足を踏み入れるにはとても勇気のいる世界だ。
 出入り口から、綺麗な横顔を本人に見つからないようにありがたく拝み、回れ右をし
たら目の前に由美がいた。
「お……おどかさないでください」
「環ちゃん? 呼んであげるねっ」
「わー!」
 慌てて由美を引き止め、
「いや、御本尊に触れるのはまずいんです。今は耐え忍ぶ時だからして……」
「巧クン、禁欲してるんだぁ? かわいいことしてるのね〜」
702 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:35:32 ID:ccQAmcSC
 巧はこのところ、由美の雰囲気が違ってきているのを感じる。こうやって話していて、
相変わらず年下みたいなあどけない表情もするのだが、そう、仕草や言葉の端々にちょ
っとした憂いを感じるのだ。
(だんだん大人になってるってことなんだろうか)
 漠然と思いつつ、
「ところであのー、姉ちゃんを戦闘マシンにしたのは由美さんですか?」
 じとっと見る巧に、由美は一瞬きょとんとして、すぐににんまりと笑って、
「『後悔しないのが一番』って言っただけだよ〜?」
「そういうもっともらしいことをさ、悪用できるときだけ言うのがひでーよなあ」
「あ、そういうこと言うんだ。おかしいなあ、巧くんが一番いい思いしてるはずなんだ
けどなぁ?」
(ちくしょう、いつかぎゃふんと言わせてやる)と思うのだが、由美に効果的なネタと
いうのが、これがなかなかない。
 
 期末試験は3日間。
 それが終わるとすぐ終業式があり、その日までに全ての答案用紙が順次返されてくる。
 巧はそれほど馬鹿でもなく、かといって秀才でもない。補習を受けることはないだろ
うから、手を抜いてつい夏休みの計画を考える方に頭が逃げるかというと、そうでもな
かった。
 宣言以来、環とは挨拶をかわすだけだった。
703 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:35:48 ID:ccQAmcSC
 近くにいなくても、巧は日々環に溺れていく。それがとても気持ち良かった。『巧く
んとしかしたくない』
 巧は別に構わないと言ったのに、そう答えたのだ、環は。
 その心遣いから、安心感が巧から性急さを奪い、勉強に集中させてくれている。
 それを煩悩に引き戻して巧を悩ませているのは都だ。
 有言実行の姉は、『起きないと襲うわよ』という言葉をとても忠実に実行する。法律
に違反しなければ何をしてもいいと考えるタイプの人間に正論は通用しないのだ。
 この場合、ボディロックだ。
(それ以外は何をしてもいいという)
 試験勉強で夜更かしをして、知らないうちにキスマークをつけられるのはなんだか納
得がいかない。
(いや、とにかく試験が終わるまでは我慢……)
 さらに、制服で布団に潜り込まれ、パジャマを脱がされる。
(我慢……)
「姉ちゃん、もしかして俺の目覚まし止めてない?」
 ふと思って、聞いてみた。
(ああっ、知らん顔してやがる!)
 腹いせに朝食時に家族の前で、
「俺、姉ちゃんに犯される夢見ちった」
 などと言ってからかうと、久しぶりに皿を投げつけられた。表面上は元通りの光景。
704 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:36:02 ID:ccQAmcSC
 一枚めくればそこでは果てしなく低次元な戦いが繰り広げられている。
 だがそんなやりとりもまた巧の心を潤しているのだ。
 
 *
 
「いてっ」
 屋上でぼんやりしている巧を見つけた時、ちょっと腹が立ったので、由美は後ろから
缶コーヒーを投げつけた。
「中入ってるじゃん! 信じらんねー」
「えっへっへ、手元狂っちゃった」
 このくらいは方便だ。
 環が遠慮しているので、都と三人でお昼の予定だったが、またなにか生徒会に呼ばれ
た都がなかなか来ない。
「頼りない生徒会だよな……」
「都ちゃんたちだって最初はあんなもんだったと思うけどぉ?」
「そっか、そうだよな」
 そう言ったきり、巧がまたぼんやり眼下のグラウンドを見ている。
 由美は、巧がこういうハマり方をするとは思っていなかった。欲望に忠実なところは
予想の範囲内だったが、そのベクトルは環だけに極端に偏っている。もうそれははた目
にも、世界に敵対せんばかりの勢いだと思う。
705 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:36:19 ID:ccQAmcSC
 最初に感じたのは、(都ちゃんがかわいそう)ということだった。
「腹減ったなー」
 巧が訴えてくるが、由美は都を待っている。その間、巧が弁当箱を開いて中をちらっ
と覗いては閉じたりしているのをそれとなく見ていた。
 髪型や服装が違うので気付きにくいが、都に似ていると思う。
 姉弟だから当然といえば当然だが、はるかも含めて雰囲気や造りがよく似ている。
 そういえば、と思い出す。都に見せてもらった待鳥の両親の写真を見た限りでは、親
は絵に描いたような美男美女の夫婦で、残念ながら出会うことのなかったそのお母さん
と都は生き写しといってもよかった。その写真に、『都ちゃんと私のこと、応援してく
れませんか』と願ったことがある。
「ん、なに? 由美さん」
 巧に目の前に寄られ、不覚にもドキッとした。
 切ないけどこれは違う。巧に残っている都の面影に引きずられているだけだ。
 他意のない眼差しから目を逸らす。
 都が上がってきて、由美の隣にすっと腰を下ろした。巧ではなく自分の隣だ。都自身
は特に考えてやっていることじゃないのに、こんなにも簡単に嬉しくなってしまう。
 それなのに。それ以上に都の気持ちと幸福を優先したくてしかたがないのだった。
 それを叶えてあげられたら、都を好きになったことに価値を見出せる。
 そんなことを思っている。
706 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:36:33 ID:ccQAmcSC
 
 *
 
 2日目の試験も全て終わり、なかなかの手ごたえに満足しながら、巧は徹夜組を除い
た面々で放課後の余裕の一時を過ごした。
 柱の陰には都、環、由美の三人。小声で、
「ふーんだ、二人でこっそりこんなことして楽しんでたのね。環ちゃんのいけず」
「私だって新入りだよ? まあ、まだ二学期も三学期もありますぜ、旦那。ね、都」
「都ちゃんのエッチ」
「な、なによ」
「追加授業受けるのやめたら、先生に怒られるかなあ?」
「そこまでするのか……」
『あっはっはっは、馬鹿はおまえだ!』
 笑い声には巧の声が当然混じっている。
 試験期間中ということで、テストの話題が出たりもしていた。
『絶対違うね、そこは』
『関係代名詞ってさ、要はひたすら入れ子にすりゃいいんだろ? いや、超みっともな
いだろうけどさ、文法的にあってたらマルくれんだろ』
「あれ、意外に真面目だね」
「そうだね、でもたぶんこれも賭けの対象になるんだよ」
「成績が上がるんならいいんじゃないの?」
707 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:36:49 ID:ccQAmcSC
「おっ、なんか先生みたいな発言」
「えへへ」
『お、じゃあ勝負するか? 明日返ってくる巧の古文の点数一本勝負』
『丁だ!』
『じゃあ俺が半』
 環がぷっと吹いた。
「成績の勝負かと思ったら……サイコロじゃん」
『じゃあ、罰ゲーム選択』
『3番!』
『3番は──女装! 女の制服でこっそり終業式に出る、だって』
『まじで? 絶対それ巧にしかできねえよ! 俺は勘弁してくれ』
『なんで俺ならできるのよ?』
『なんでって、なあ?』
 声がいくつかかぶり、巧以外の全員の意見が一致したところで、どうやら区切りがつ
いたようだ。
『校則違反じゃなきゃなんでもいいのだ!』
 三人はそこで退散する。
708 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:37:07 ID:ccQAmcSC
 
 *
 
 3日目の全ての試験の終了した放課後、巧は憮然とした顔で、環に答案用紙を見せて、
「環さん、貸して」
「は?」
「今日、行ってもいいんでしょ? そんで、罰ゲームやるから洗い替えの制服貸して欲
しいんだけど」
「あははっ、巧くん、賭けに負けちゃったのね。──ごめん、親と出かけることになっ
ちゃって。こないだと逆だけど」
 そんなことを環に言われたら、どうすることもできない。
「あ、じゃあ、制服だけ借りれたらいいっす」
 巧は失望を隠せない。
 体格的に環以外の制服は合わない。そんなわけで、家族に見つからないように制服を
ちょっとドキドキしながら受け取りに行き、
「ムネんとこが余りそー」
「それ、巧くんが言うとヘン」
 言いながら環が近付いてくるのを、巧は慌てて押し止めた。
 今触ったらそのままさらってしまいたくなる。環は寂しそうに笑い、
「また今度、だね。コレに変なことしちゃだめよ?」
 制服を入れた紙バッグをポンと叩くと、門の中に消えた。巧もすぐにそこを離れた。
 家に帰ると、はるかが難しい顔をしてリビングのソファで、テーブルとにらめっこを
していた。
709 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:53:34 ID:ccQAmcSC
 はるかのところでも期末試験が行なわれ、いつものようにこうやって都にわからない
ところを聞いたりしているわけだ。
「うう、わかんない〜」
 たぶん台所にいる姉に向かってぐずるはるかに、後ろから、
「また俺の勝ちだな」
「昔のお兄ちゃんよりはできてるもん!」
「いや、そんなことはありえないね。俺の方が上、おまえより十万点くらい上」
「お兄ちゃんの大嘘つき……」
 難題が頭の中でぐるぐる回っているのか、覇気があまりない。
「あれ、姉ちゃんなんでまだ制服着てんの?」
「帰ってすぐはるかにつかまったのよ」
 都がトレイに紅茶を乗せてやってくる。確かに都の革鞄もそこにあった。
「あたしはアリアリだよ」
 とはるかが白く濁ったものを取ると、あとひとつ。それは都の分だろうから、アリナ
シ、つまり砂糖アリのクリームナシ。都はここに、直前に普通のミルクを軽く入れる。
「俺のは?」
「葉っぱ足して今やってるから」
 と、都は空のカップとティーポットを巧の前に置いた。巧はいつもナシナシのストレ
ートティーだ。
 巧は、しばらくそれを眺めていて、「おし」と移動してダイニングの棚を開けた。
710 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:53:54 ID:ccQAmcSC
「あー! お父さんのウィスキー」
 紅茶の上に足すのだ。
「ちょっとだけだよ」
「巧」
 都がちょっと睨んできたが、それ以上なにも言わなかった。
「はるかのも入れてやろう」
「やー!」
 慌ててごくりとやったはるかは、やけどしそうになってミルクを取りに走る。
「そうだ、姉ちゃん」
「なに?」
「ちょうどいいから、これの着方教えてくれ」
「?」
 部屋に行って出してみせると、どんな反応をされるかと思ったが、姉は少し笑った。
(? あれ……笑ってる)
 少し酔いが回ってきているかもしれない。手っ取り早く説明を受ける。
「ホームルームを乗り切ったらばれないと思うからさ」
「担任は吉見先生でしょ? たぶん大丈夫」
「……鈍感?」
「ううん。あの先生、本当は生徒にすごく近いから」
「ああ──」
711 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:54:11 ID:ccQAmcSC
 説明している、脱いでしまうほど本格的に実演しているわけではないが、都の腰に、
鮮やかなレモンイエローのものががちらついた。下着ではない。巧のつけた件のボディ
ロックだ。裸になってそれだけをつけた姉を見てみたいと、急に思った。
(いけね、酔ってる)
 急いで引き上げると、そのままばったりベッドに倒れ、安心して眠ってしまった。
 
 次の朝は、終業式だというのに朝早くから登校するはめになった。
 部室で女子の制服に着がえるのだ。
 環や由美のものまねをして遊びながら、着がえて鏡を覗いた。
(へー、姉ちゃんみてーだ)
 当然教室では大騒ぎになる。男子よりむしろ女子が騒いでいた。やけくそ気味にしな
をつくって遊んでいると、
「うくくく……。全然男に見えないよ、待鳥くん。あんた、吉見に告白してみない?」
 隣の清美が苦しそうにそんなことを言う。
 その吉見の反応が一番ひどかった。一目見るや爆笑して、
「待鳥、先生ちょっとおまえにときめいた。──告白してもいいか?」
(あんたそれでも教師か)
 結局このままここはうやむやになって、無事終業式の女子の列の後ろの方に並んだ。
居心地の悪いことこのうえない。貴重な体験だ。それよりも女子がちらちらこっちを見
て笑っているのが困る。なぜか、他のクラスの女子も見ている。
712 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:54:31 ID:ccQAmcSC
(教頭はともかく、学年主任……なんで気付かないんだ)
 校長の念仏のような話を聞き流しながらおそるおそる周りを見渡した。三年の列が目
に入る。こうして見ると、なんていうわかりやすい三人組だろう。
 一番前の方に由美、列の中程に姉の都、一番後ろに環。
 それぞれ身長が150、161、170だから並べただけで結構いい絵になる。
 そういえばまだ彼女らに見せていない。
(いや、あんまり見せたくないけど、後でうるさいし)
 終業式が解散となった雑然とした昇降口で、巧は最初に由美とはち合わせた。
 その時の由美の顔は見物だったと思う。
 後から思えばそれは当然の反応だったのだが、巧は、今しかないと思った。
 姉の立場で誰かをからかうとしたらこういう感じだろうと前に思っていたことが口を
ついて出た。由美の肩を捕えて目を覗き込み、
「由美、愛してる」
 と情感を込めて囁いた。
 その時一瞬真っ赤になった後で由美の目に走った激しい怒りを、由美の後ろから来て
いた都と環の表情を通して、悟った。
 使える全エネルギーで由美は右手を振り抜き、巧の顔が一瞬で真横を向いた。
 強烈。
(マジビンタ……)
「この怒り方はつまり……」
713 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/11 04:54:45 ID:ccQAmcSC
 巧は露ほども知らなかったのだ。
 死に物狂いでひた隠しにしてきた少女の気持ちを、パンツの色を賭けてスカートめく
りをするような気軽さで暴き立ててしまった。しかも、めくったらパンツを穿いていな
かったくらいにキツイ。
 走り去った由美を環が追っていった。一瞬巧を見た環の目は、謝っているように見え
たが、巧はその表情になにか奇妙な違和感を感じていた。
 女子の制服を着ていることも忘れ、そのまま教室へ戻る流れに乗っていった。
714名無しさん@ピンキー:04/11/11 05:00:27 ID:HQRuzooU
ををキテル━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!

あ、えと自分は>696ですけど、ちょっとだけ京都にいたことがあって、
京都に久我森って地名があるのでどうかなぁと思ったまでで。。
715名無しさん@ピンキー:04/11/11 05:08:07 ID:HQRuzooU
ぐは_| ̄|○

ぐぐってみたら久我森の宮だった。。大昔の記憶なんてアテにならんな
スレ汚しスマソ
716名無しさん@ピンキー:04/11/11 05:22:57 ID:Ph1zkMww
キタ━━━━(゚∀゚) ━━━━!!!!!
GJ!!!
乙です!!!

つか展開が上手いなぁ・・・
この三角関係をどうやって収束させるんだろうと思ってたけど
由美がまた、都×巧×環の関係に変化をもたらすキーポイントになりそうですね。
717名無しさん@ピンキー:04/11/11 07:15:05 ID:jfh9ihIM
キタ━━━━(゚∀゚) ━━━━!!!!!
718名無しさん@ピンキー:04/11/11 14:33:22 ID:QDNahLyY
ふらりと覗いてみたらこんな大作&良作が……! 神GJ。

しかしこれ本当に本にならねえかな。電車男みたく。
719名無しさん@ピンキー:04/11/11 21:03:30 ID:o4wYG3GW
ついでだから由美も落としますか?
姉似のルックスを活かして。
はるかや清美や吉田さんも落としてハーレムマンセー
720名無しさん@ピンキー:04/11/12 01:22:39 ID:goOoeOxm
(´_ゝ`)b<Go(o)d job!
末長く続くと良いな、作者さんが。
721名無しさん@ピンキー:04/11/12 05:39:20 ID:AMkSXdyP
早く都とやっちまえYo!
722名無しさん@ピンキー:04/11/12 14:01:42 ID:lD6gA3Dx
450KB踏んだ人が次スレ立てるって暗黙の了解?があるけどこのままだと踏むの◆5mSXuZ5GjEだよなぁ〜。
SS書くのに忙しそうだし450KBオーバーに気づいた人がフォローでいい?

↓テンプレ例

【タイトル】
お姉さん大好き Part2

【本文】
妹スレ消失。姉萌えはこの先生きのこれるか!?


\ 前スレはここ  / ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄            
           お姉さん大好き
    _,,...,_     http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1080659392/
  /_~,,..::: ~"'ヽ
 (,,"ヾ  ii /^',)
━  ( -_-) / ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    |∩  ⊃
    |    |
    ヽ _ノ
     U"U



スマン、どうしてもキノコりたかった。っつうかテンプレ案大募集!!
723名無しさん@ピンキー:04/11/12 15:49:19 ID:MbQ7ZDf/
724名無しさん@ピンキー:04/11/12 19:25:25 ID:0OSyErV1
>>722
450KBは早過ぎだろ
725名無しさん@ピンキー:04/11/12 19:40:22 ID:AMkSXdyP
しかし妹スレの現状を見ると、いかにこのスレが神のいるスレか分かるな。
改めて職人さんGJ!
726名無しさん@ピンキー:04/11/12 21:21:04 ID:4PDKXjRs
実はこれは釣りなんだよ。最終話の二つ手前で雲隠れ…

((( ゚д゚)))アワワワワ
727名無しさん@ピンキー:04/11/12 21:22:40 ID:/KQN6RPe
>725
そうじゃない。
……イヤ、確かに神の存在は大きい。それは間違いないが。

つまり、妹萌えより姉萌えの方が、なんというか、その……強い、と言うことだ。
728名無しさん@ピンキー:04/11/12 21:32:03 ID:WrZoJNqn
姉さん・・・・事件です。

729名無しさん@ピンキー:04/11/12 21:36:15 ID:0OSyErV1
>>727
というか、その神がどっちに比重を置いてるかってことで。



はるか編をもっと!
730名無しさん@ピンキー:04/11/12 21:41:13 ID:4PDKXjRs
ウホッな…
731名無しさん@ピンキー:04/11/13 02:27:31 ID:xG1FeRn8
別の神はおらぬか?
732名無しさん@ピンキー:04/11/13 09:42:44 ID:8cS9+mVu
それは貴方の心の中に…
733名無しさん@ピンキー:04/11/13 16:21:17 ID:4fpyWcCI
シチュリクがあれば・・・って、投下しにくいな・・・
734名無しさん@ピンキー:04/11/13 21:36:31 ID:SvPWYzuW
何となく賑わいそうな予感・・・
735 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:02:00 ID:PZvZn0IZ
えっと……
とりあえず一回分落とします。27節目、10K前後です。
736 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:02:23 ID:PZvZn0IZ
 27
 
 まずい、と都と環が思った時にはもう遅かった。
 気付いたのは都が先だったが、二人とも間に合わなかったわけだ。
 巧は真っ赤に跡のついた頬で教室に戻る。吉見がテスト最終日の答案を全員に返しな
がら、ずっと肩を揺すって笑っていた。
(何を想像してるんだかね)
 クラスメイトたちも好き勝手にいろいろ言っていたが、残間清美だけは様子が変なの
に勘づき、他のネタを振って話を逸らそうとしてくれていた。
「気使ってもらっちゃって悪かったな」
「鈍感なやつが多いからよ、そっちこそ気にしないで」
 清美はにっこり笑って、頬の手形に自分の手をぺたっと乗せた。
「小さい女の子の手だっ」
「なんかそれじゃ幼児に手、出したみたいに聞こえるからやめてくれ……」
 清美の手は夏でも冷たくて、心地が良かった。
 終業式に出さえすればすぐ着がえてもよかったのだが、今の自分に相応しい間抜けな
格好だと思って放っておいた。右手を吊った背の高すぎる変な女は、そのままサッカー
部の部室に入り、大会を馬鹿な理由で棒に振った一年生部員に戻って、校舎の方に取っ
て返した。
 なによりもまず由美の姿を探すが、見当たらない。
737 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:02:38 ID:PZvZn0IZ
 環もいない。そのままの勢いで学校からも飛び出していったのだろうか。
(漫画じゃあるまいし)
 そこから環、由美の両方とまったく連絡がつかない。
(ていうか、俺おあずけのままなんだけどな)
 すぐそういうことを考えてしまう自分が情けないが、生理的な都合上仕方がない。
 おかしいな、と思ったのは3日ほど経ってからだった。
 
 ついに裸に貞操帯の格好で、幸せそうに張り付いて寝ている姉を死ぬほど苦労して引
き剥がした朝、由美の自宅に電話を入れた。つながらない。家族ごとどこかに出掛けて
しまっているのか。
 また、環の自宅へは母親らしき女性が電話に出て、「あのコどこ行ったんだっけ?」
などと後ろでのんきなことを言っていたので、早々に退散する。
 由美に謝らなければいけないのだが、巧は環にすぐにでも触りたかった。
 スケベ心からだけではない。このままでは姉を触ってしまいそうだ。
 なんとかごまかして、一人で遅い朝食を摂った。
 父はとっくに出勤しているし、はるかはテニス部の夏合宿の前準備とやらで早出をし
ている。やけになって食べまくっていると、姉が食べるものが何もなくなってしまった
ので、最寄のコンビニで一番安いカレーパンを買ってきて、マジックで『さんねんにく
み まちどりみやこ』と書き入れて姉の椅子の前に置いておいた。これ以上くだらない
ことが思い付かない。
738 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:02:54 ID:PZvZn0IZ
 することがない。
 いや、あるけどどうしていいかまったくわからない。
 しばらくぼんやりしていると、後ろからカレーパンを投げつけられた。
 昼間の姉は、すっかり以前の姉のようで、今の巧にはその順応性とこだわりのなさが
うれしかった。由美のことでは怒っているらしいが、巧にはなにも言わない。
「ねえ、由美さんは〜?」
 今朝もまたそう聞いてみると、
「知らない。自分で探しなさいよ」
 と、つれなかった。
「そうしまーす」
 暑くていやだが、やはりそのままにしておくには息苦しすぎる問題だ。外出したから
といってどうにかなるとも思えなかったが、じっとしていられるほど剛胆でもない。T
シャツにジーンズの極限な格好で玄関に降りていくと、姉がそれをじっと見ていて、
「あ、待って。私も出る」
「えー、早くしてくれよ……」
 姉の着替えを待っているうちにも汗が吹き出してくる。
 姉はなかなか部屋から出てこない。
 この日は今年一番の暑さになると予報で言っていた。
 それからしばらく待って降りてきた姉も、Tシャツにジーンズ姿だった。姉のこんな
格好を見るのは初めてだったが、少し都の身体には大きめのシャツ、だがそれよりも……
739 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:03:08 ID:PZvZn0IZ
(なんのマネだ……)
 ペアルックだった。わざわざ同じ色のTシャツを探してこんなに時間を食っていたの
かと思うと泣けてくる。
「俺、着がえてきていい?」
「だめ」
 腕を引っ張られ、ジーンズと青のTシャツ、加えてトートバッグの姉と出かける。
「で、どこ行きゃいいの」
「?」
 訝しげに見てくる姉に、
「もしかして姉ちゃん、アテがあるわけじゃないの?」
「由美がどこでなにしてるかなんて知らないもの」
 ぷるぷると拳を震わせて、巧はどうしてくれようと、姉の背中をふと見た。
「これ、俺のTシャツじゃん……」
 
 梅雨明け直後の強烈な暑さは例年通りで、巧はすぐに音を上げた。右手を吊っている
ストラップさえ煩わしくなり、
「今日の体力終了、だからもう帰ろうよ〜」
 とぐずってみせても姉はびくともせず、巧は駅前の繁華街を引きずり回された。
 ペアルックで片方が怪我人なので目立ってしょうがないのだ。擦れ違う女の子のグルー
プやカップル、営業のサラリーマン、果ては公園のニットキャップマンにさえ好奇の目
で見られてしまう。
740 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:03:26 ID:PZvZn0IZ
 駅前のロータリーで運良くパチンコ屋の販促のうちわを手に入れた。
 駅の反対側に出て、緑地帯の並木でようやく休むことが許され、巧は木陰のベンチで
ぐったりとして休んだ。
 目を閉じるとくらくらして、自分は夢でも見ているのかと思いたくなる。この日常は、
いろんな要素の混じった闇鍋のごとき夢なのだ。この数週間の間にとてつもなくいろん
なことが起こっていた。
 いや、今もまだその渦中で喘いでいるところだ。
 隣から、生温いながらも柔らかい風が送られてくる。都が派手な印刷のされたうちわ
でゆっくり巧の首へ向けて扇いでいた。
 薄く目を開けるとすぐ、余りにも優しい瞳が向いてきて、微笑んだ。巧は見なかった
ことにする。
「俺たちなにしに出てきたんだっけ」
「デート」
「ち・が・う」
 ずるずると腰を前にずらし、巧はまたちらりと都を見やった。
 ジーンズ姿というだけでこんなに別人のような魅力を見せる姉の都。細さ白さが病的
にならずに、強い日ざしに鮮やかに映える。
 しばし、欲望を忘れて美の化身に見入る。
(この下に貞操帯をつけてるなんてとても思えない)
741 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:03:40 ID:PZvZn0IZ
「姉ちゃん」
 吹き付けた熱風に、都はうちわを下ろし、巧の方をじっと見つめた。
「なあ、もうわかったろ。真面目な話、普通の彼氏見つけて俺のこと解放してくれよ」
「ひどいこと言わないで」
「いや、言うね。姉ちゃんはさ、覚悟しちゃってるわけ? そんなことしたらさ、たぶ
ん真っ当には生活できないよ」
「夫婦になることはできないけど、夫婦みたいに暮らすことはできるわ」
「そんな恐ろしいこと平気で言うか……俺には絶対出来ねえよ……」
「そんなこと、ない」
「姉ちゃんにわかんの? 俺、本気で姉ちゃんに幸せになって欲しいの。『自分が幸せ
にしてやりたい』っていうのとは全然違うんだからな」
「じゃあ巧は、私がどんなことで幸せな気持ちになるのか、本当にわかるの? わから
ないでしょ。それなら私の言ってることだって信じてくれてもいいじゃない」
「言ってることは信じてる、と思うよ」
 煮え切らない言い方をしてしまう。揺らぎを見せればすぐに差し込まれる、それはわ
かっているのだが、姉の、静かだけど強い口調に刃向かいきれない。
「それに、二番でいいからって言ったよ、私」
 何度聞いても姉らしくない言葉だ。
「責任とか義務とか独占とか、私には全然関係ない。どうしてわかってくれないの?」
(姉ちゃんこそどうしてわかってくれないんだ)
742 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:03:55 ID:PZvZn0IZ
 こんなに大切に思っているのに。
「口ではそう言っても、実際には一番の人に取って代わりたいって思っちゃうもんだろ。
不倫OLとかとおんなじ」
「思わないわ。環のこと好きだし、幸せになって欲しいけど、それを少し分けてくれる
くらいがちょうど環らしいから」
 環は非日常の象徴、打ち込まれた抜けない楔。
 都は日常的な存在で、それは比べるものではない。
「だいたい、なにが二番だよ……自分でなに言ってるかわかってねえし、そんなこと自
分の姉ちゃんに言われて俺がどんな気持ちになるかとか、考えたこともねーんだろ!」
 言ってから思う。そんなはずはない。
 姉はなにもかも考えた上で、そんなのが現実的な落とし所だと思っているのだ。
 その証拠に、今巧の目の前で都は穏やかに、ただ巧の声を聞いている。
「ちくしょ……、もう決まったことみたいに言いやがって……」
 頭をのけ反らせて、顔を背けたところで涙がこぼれてしまった。左手でそれを隠した。
 こんな涙では姉は二度と動揺しない。
「絶対、はずしてやらねー……」
「それでもいいよ」
 あたりまえのように都が言った。
「これ、一生大事にする」
 巧は虚しくなって、それには何も言わなかった。
743 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:04:11 ID:PZvZn0IZ
 
 そのまま家に帰った。
 はるかが帰ってきて、いつものように軽くちょっかいを出しながらも意識は姉の方へ
引っ張られていた。こういう別な難題があって、環に触りたくて触れない疼きを紛らわ
せている。
 現実逃避を兼ねて、姉にバラバラにされたビデオテープを冗談で(半分本気で)、発
掘された土器のように復元していると、目の前でまた姉に踏まれた。今度こそ再起不能
になった残骸は不燃ゴミのシューターに放り込まれてしまった。
 兵糧攻めだ。溜まったもののやり場がない。
 そして、しょうがなくリビングで、録り溜めしてあった海外サッカーのビデオを見て
いると、両側を都とはるかに挟まれた。
(…………)
 いかんともしがたかったが、待鳥家では、父・透の家長命令によりクーラーの同時使
用が禁止されている。
 じっと画面に映し出される試合を見ていると、やっと気持ちが落ち着いてきた。
 巧たちのサッカー部は過去最高の予選ベスト4まで駒を進め、そこで敗退した。巧も、
走るのに支障がなくなればすぐにロードワークを再開する予定だった。秋から始まる次
の予選には十分に間に合うだろう。隅の方でそんなことを思いながら、しばらく画面上
のゲームの成りゆきに没頭していた。
 ハーフタイムで一息入れて、おやつを漁っていると、たちまち都とはるかが動いてお
茶をやってくれて、ガンガンにクーラーを効かせた中、優雅に後半戦の観戦をする。
744 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:06:07 ID:PZvZn0IZ
 右に座ったはるかが、ぽてっと頭をもたせかけてきた。
 はるかは初めのうちは難しい顔をして見ていたものの、だんだん一心にボールの行方
を目で追っていて、さすがに疲れてきたのかもしれない。休憩だらけのテニス中継とは
だいぶ勝手が違うのだろう。ふわふわとあくびをしたと思うと、こっくりこっくりやり
はじめる。
「重いんだよ、はるか」
「ん〜」
「寝るなら部屋で寝ろ」
「やだ、暑いもん」
 と、はるかはそのまま巧の膝を占領した。
「……嫌がらせか」
 そこで、そこまで静観していた都が、じーっと巧の顔を見てきた。
 巧は知らん顔をして画面に集中する。
 気持ちよさそうに寝ているはるかが重い。姉がなにやら隣室に行くのを見てから、
「はーるかー、起きねーとつっつくからな」
「だめぇ……」
 一応まだ聞こえているらしい。本当に邪魔なので、
「うらうらうら」
 人さし指で、はるかの胸元を連打した。
 飛び起きた。
745 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:06:27 ID:PZvZn0IZ
「やっ、お兄ちゃんの馬鹿、エッチ〜!」
 飛び跳ねて床に転げ落ち、バタバタと逃げる。
「悪いのはおまえだ、まじで、そっちの一人掛けで寝ろ」
「エッチな人がいるところで寝るほど馬鹿じゃないもんっ」
「ホントかよ……」
 都がタオルケットを持って戻ってきて、それを受け取るとはるかは、そのままくるまっ
てすぐ眠ってしまった。
「わけわからん……」
「妹ならいいんだ?」
「姉ちゃんもわけわからんこと言うな」
「わかってないのは巧だけかもよ」
「そりゃ二年分くらいは姉ちゃんの方がわかってんだろーよ」
 画面を見ていても、もう試合内容がろくに頭に入らなくなってしまった。
 都は巧の左肩とソファの背の間に頭を突っ込んできた。首を捻って巧の方に顔を寄せ
る感触がある。巧は意地にかけても反応しない。姉の行動を黙殺することに決めたのだ
から。そうしないともう本当に『ノーフューチャー』である。
 その時廊下の電話が鳴った。
 都が出ようとするが、それよりも早く立ち上がってその行く手を塞ぐ。受話器を取っ
たが、何も聞こえてこなかった。巧も、「もしもし」とも言っていない。
746 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/13 22:06:39 ID:PZvZn0IZ
 多少の間があって、
「……巧くん?」
 間違いなく環の、でも少し変に聞こえる声がした。
「環さん、なにしてんの?」
 苛立った声が出たことに巧は自分で驚いていた。これで順番もなにもめちゃくちゃに
なってしまった。
「由美さん……は?」
「いるよ」
「今どこに──」
 都が後ろから抱きついてきた。身体が緊張し、都が脇にまわす手に、寒気のようなも
のが走る。
 巧は、夏の軽装ではどうやったところではっきりわかる場所を、強く吸われていた。
747名無しさん@ピンキー:04/11/13 22:36:40 ID:xl2aDs1W
ワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワク
748名無しさん@ピンキー:04/11/13 22:36:58 ID:SvPWYzuW
キテターーーーーーーー!!
乙です、GJです!!
今から読ませていただきます!!
749名無しさん@ピンキー:04/11/14 00:01:56 ID:D745pEWN
都が死ぬほど萌える。
GJです!
750名無しさん@ピンキー:04/11/14 00:35:52 ID:sXm6S3qv
とりあえず1回分というのが気になりますなぁ。
もしかして2回分もあるんですか?ハァハァ・・・
751 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:27:43 ID:frRkn9t3
やっとここまで来たって感じです。
巧くん決壊編。
752 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:28:02 ID:frRkn9t3
 28
 
 たとえばはるかはとても自然だと思う。普通に妹であって、巧の多少行き過ぎた悪戯
に対してもバランスを保った反応をする。
 都のバランスの悪さは、気持ちが顕在化するずっと以前からのものだ。
 変化を生むのはこういう不安定な精神だと物知り顔に誰かが言った。そうだとしても、
自ら強く望んで、自力でつくり出した変化こそが自分を守るのだと信じているのが巧だ。
「──」
 状況を説明する環の淡々とした物言いに疑問が湧いた。
(なんで、温泉なんかにいるんだ?)
「巧くん、反省してる?」
 意外に言葉が軽いので、巧は少しほっとしながら、
「そりゃもう。姉ちゃんの時にとっくに懲りてなきゃいけなかったことです。タチ悪い
ですよね……。直接由美さんに言いたいんです」
 そうだ。およそ他愛のない諍いなのになぜ、こんな極端な舞台ができあがっているの
だろう。
 姉は巧を骨折させたことで怒りを相殺されて、結果として冷静になってくれた部分が
あった。由美は平手を浴びせたものの表面だけで、巧におそらくなにひとつダメージを
与え得なかったことで、気持ちの持って行き所をなくしてしまっているのだと思う。と
はいえわざわざ巧から離れたのでは、余計にどうしようもないんじゃないのだろうか。
753 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:28:18 ID:frRkn9t3
手加減無しのフルパワーで空中コンボのひとつも決めてくれればいいじゃないか。
「今は言っても聞こえないかもね。あのコずっとお酒飲んでるから。ていうか、つぶれ
てずっと寝てるから」
「未成年……」
「巧くん、ごめんね。私もうちょっとだけここにいる」
「もうちょっと」
「うん」
「俺は今すぐにでも会いたいです……、由美さんに言わなきゃいけないこと、やっぱり
あるし」
 本当は環の後ろで由美が舌を出しているんじゃないかと思いながら、話している。
「環さんは、由美さんの方が大事?」
 なにをくだらないことを聞いているのだろう。子供みたいだ。だけどもしも、と頭の
奥の方が囁いてもいる。
 言ったら絶対後悔するのに、浅はかに考え無しに、口に出した。
「環さん、由美さんとそこで本当はなにしてるんですか?」
 環にははっきりわかったはずだ。
 巧が何を知りたがっているのか、巧が何を願っているのか、巧が誰を責めているのか。
 環が持っている答えは、たぶんことごとく巧の想像通りのはずだ。
「巧くん……、明日、必ず戻るから、待っててね? 巧くんのところに帰るから!」
 環の言葉も剥き出しだった。
754 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:28:36 ID:frRkn9t3
 ブツ、とそこで切れたのに気付いて、巧はゆっくり振り返った。
 姉が泣いている。巧の代わりに静かに泣いている。
(勝手に解釈して、泣かないでくれよ)
 都はフックを押さえ、自分が切ったとわざわざそう教えていた。
 受話器を姉に渡し、巧は熱気の異常にこもった自分の部屋で、ぼんやり考える。
(明日っていつのことよ)
 さらに三日、環は戻ってこなかった。
 
 巧はもともとゲイ的な感覚に偏見がない。だから、冷静ではいられない。情報があや
ふやなのをいいことに、楽観的に捉えようとも試みる。
 都は途中から巧の電話を階段に座って聞いていた。
 由美が仕返しに嫌がらせをしているのだというようにシンプルに考えていては、ハマ
るのかもしれない。姉の一筋縄ではいかない意外なまでのしたたかさに、巧は学習させ
られている。
 はるかが合宿で家を空けて二日目となり、巧は生活の大部分の時間を都と二人で過ご
していた。
(環さんは好きにしていいって、俺が言ったんだ)
『両刀のお姉さん』に惚れたときに織り込み済みの覚悟のはずだった。巧は自己評定の
甘さに初めて直面していた。
755 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:28:53 ID:frRkn9t3
 注意を欠いて、紅茶をこぼしたり、テーブルにつま先をひっかけたりと、感覚的なリ
ズムがかなり狂ってきている。集中できないのだ。「脆弱な自分」という認めたくない
現実が寄せてくる。
(俺は姉ちゃんを拒絶することで環さんを束縛する理由にしようとしている)
 それだけはちゃんと受け入れた。
 環との電話の後の三日間で巧は神経をすり減らし、都を心配させていた。
 待たされる感覚、宙ぶらりんの立場ほどじわじわ人の心を痛めつけるものはない。
『明日』という約束が反古になり、キツイ方に現実が傾くと、頭痛がし始めた。
 気分転換にサッカーもできない。悪い条件があまりに揃い過ぎている。
 夜、姉の勧めにしたがって、久しぶりに背中を流してもらうことになった。
 巧は多少身構えたが、都は裸で入ってきたりはしなかったし、前と同じように穏やか
に巧に接して、深入りはしてこなかった。
 そう感じながらなにげなく姉に尋ねる。
「姉ちゃんは俺の傷、いくつくらい覚えてる?」
 弟の狼藉に対して姉が行なってきた過剰制裁の、十年間の記憶。
「全部覚えてるよ」
 即答だった。
「だって私がつけたんだもの」
 たぶん姉は本当に、薄くなったり消えてしまって巧自身が忘れてしまった傷だって覚
えている。なんとなくそのことが染み込んでくる。
 そうやってお湯の中に浸かっていると、ようやく安らぐことができた。
756 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:29:10 ID:frRkn9t3
(姉ちゃんが電話切ったとき環さん、なんか言おうとしてなかっただろうか)
 それを、妄想じみた記憶のすり替えだと感じる。
 
 巧はクーラーを避け、網戸にしてベッドに転がった。
 うだるような暑さもこうしてみれば気を紛らわせる刺激になる。
 だが、なんだ大したことじゃないじゃないか、と思った瞬間に痛みが襲ってくる。
(姉ちゃんも由美さんも、残間や吉田もみんなこんなものを抱えて、ちゃんと生活して
るんだな……)
 そう考えると自分が劣っているように思えてきてヘコまされる。
 隠してあった『鍵』を取り出して、片手で玩んだ。最後の一線の物理的象徴、巧の精
神的限界。元の場所に戻し、目を閉じると環の感触に思いを馳せた。
 
 *
 
 巧は髪を切ることにして、駅前の最近流行の千円でやってくれる散髪屋へ向かった。
 客層はやはり値段につられた大学生やサラリーマンがメインだ。修行中の美容師見習
いのようなスタッフが多く、結構若者的には評判がよい。巧ももう何度かここで切って
いる。残念ながら、そういう店の常としてスタッフの入れ代わりは激しい。
 ここで面白い組み合わせに出会った。
 先払いの千円をカードに替えていると、正面に並んだ二つの理髪用の大きな鏡が目に
入り、そこに大橋守と残間清美の顔が並んでいたのだ。
757 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:29:27 ID:frRkn9t3
 大橋がにっこり笑ったのと対照的に清美は挙動不審になった。
「なんかいいもん見ちゃったなー」
 にやにや笑いながら、清美の後ろから鏡にジェスチャーを出してからかい始めた。敵
は散髪中であり、一方的に攻撃できる。
「お、覚えてろよ……」
「おまえが凄んでも全然こわくないぞ」
「目ェ潤ませて、『ごめんなさい、許して』とか言わねーとな」
 横から守が口を挟んだ。
「大橋ィ〜、あんたがいるからいけないのよ」
「ちょっと、お願いします、前向いててくださいよ〜」
 清美を担当している女性が情けない声を出すので、清美はしぶしぶかしこまって前方
の鏡を向いた。当然薄ら笑いの巧が視界に入る。
「〜〜〜ッ!!」
「やー、残間最高」
「巧」
 守の声に思い直し、巧は黙って下がった。
 それを清美が興味深そうに見ている。
 
「残間がなんか入ってくの見かけたんでな、後つけて俺も入ったの」
 守が意味ありげに言うと、清美がなにか言いたそうにその顔を見て、最後に、
758 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:29:44 ID:frRkn9t3
「あんたって、馬鹿みたい」
 と少し嬉しそうに言った。
 二人ともなかなかにシャレたカッティングをしてもらって、機嫌がよさそうなので、
巧はちょっと和んでいた。
 手を振って清美が去って行った後で、巧は、
「おまえ今の、残間に」
「いや、あいつの望み通りになったろ、あれで」
 つまり守はこの暑い中清美を映画に誘って、清美が守ののびすぎた髪にけちをつけた
のでここに入っていたのだ。彼女はこの千円バーバーを知らなかったので、お試しで便
乗したらしい。
「フツー、デートで散髪には行かねー」
「俺が連れ出しただけ。だからさ、おまえに見られて困ってたじゃん、あいつ」
「その気の使い方はおかしいんじゃねーの?」
 巧はそう言いつつも、(いや、あれはあれであのコに対するアピールになったのかも)
と思って、守の健闘を賛えた。
「俺様が100円屋でごちそうしてあげよう」
「100円屋かよ──いや、珍しいじゃん。なんかあった……って顔だよな、それ」
 巧は肩をすくめて一応肯定してみせた。
「別に相談とか愚痴とかじゃなくて暇つぶしたいだけだし、ウン」
「おまえは見かけの割にカタイんだよ。だからさ、人に迷惑さえかけなきゃどんどんバー
ストすりゃいいんだ」
759 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:29:58 ID:frRkn9t3
「迷惑の基準ってなによ?」
 守は巧をじっと見た。何かを考え、
「傷つけさえしなけりゃ何をしてもいいんだよ」
 少し先読みしたような言い方をしてくる。
「そーいうもんかね」
「そ」
「……法律に違反しなけりゃ何してもいい、ってのとだいぶ違うよな……」
「意味深だな、それ」
「いや、流してくれ、お願い」
(そういや由美さんは、後悔しなけりゃ、て言ってたな。いろいろあるもんだ)
「おまえって結構苦労してるわけ?」
 別れ際に巧はそう聞いてみた。
 守は楽しそうに笑う。
「俺は苦労から逃げるのに命賭けてるんだ。苦労しなきゃなんでもいい」
(なんだそれ)
 少しばかり涼しくなった頭を意識にしながら、巧は年寄りみたいに日陰から日陰へ、
辿りながら歩いた。
(逆に言うなら)
 都にしろ、環にしろ、由美にしろ。
(傷つけたら駄目ってことだろ。……無理だろ、それ)
760 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:30:15 ID:frRkn9t3
 そのとき、やっと首のキスマークのことを思い出した。
 
 やっとのことで家に帰り着くと、都はリビングで居眠りをしていた。
 そうっと二階へ上がり、下着を出してきて水浴びをする。千円バーバーではシャンプー
はしてくれないので、大抵頭に細かい毛が残っているのだ。水を受けている間だけは夏
も気持ちがよく、巧は水風呂に切り替えてたっぷりと時間を使った。
 まだ少し頭痛があった。
 やっぱり自分は痛かったり辛かったりするのは苦手だ。大橋守の言うような苦労しな
い人生、という基準がちょうどいいと思う。
 誠実にやろうとしても周りが許さず、苦労することばかりだ。でもだからといって誰
も傷つけたくないのだ。
(どうしたもんかね、姉ちゃん)
 なにをするにもバイタリティが要る。巧にとってその力の源は環だった。
 環の声が聞きたい。
 環の身体が欲しい。
 風呂場を出ると電話が鳴った。
 三日ぶりの環の声を聞き、だけど心は晴れなかった。
「巧くん、明日帰るね」
 空々しく聞こえるのを知っていて、淡々と言っている。
 明日になってからかけてきて、「今から帰るね」と言ってくれればよかったのにと巧
は思った。
761 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/14 16:30:46 ID:frRkn9t3
 その方が信じられる。
 めっきり、心が狭くなった。
 ぺたぺたと廊下を歩き、暑さに辟易しながら自室に戻った。
 もう一人、何を考えているのかわからない人物がベッドを占領している。巧が戻って
シャワーを浴びているのに気付いて懲りずに移動してきたのだろう。
 うつぶせで四肢を投げ出し、小さく寝息を立てていた。
 この日もジーンズにTシャツを着ていて、身体の、特に下半身の曲線が綺麗に伸びて
いた。背中から尻に、ブラとボディロックのラインが見える。髪が流れてシーツの上に
大きくひろがっている。ジーンズで押し上げられたお尻の形が目に焼き付いた。
 官能的だ、と思ってしまった。
 逃げられないようにするにはどうしたらいいだろう。
(肩と腰を押さえる)
 姉の目が覚めたらなんて言おうか。
(鍵を外して欲しいかどうか聞く)
 自分の一番やりたいことはなんだろう。
 机の引き出しを取り外し、その奥の板にテープで張り付けておいた鍵をむしった。
 都は眠ったまま動かない。
(姉ちゃん、起きて止めてくれ。それが姉の仕事だろ)
 憤りや焦りと理性が相殺された今、残っているのは欲望だけだ。
762名無しさん@ピンキー:04/11/14 17:42:42 ID:S7qCuiQK
キ( )タ(゚)ー(゚∀)ー(゚∀゚)ー(∀゚)ー(゚)ー( )ー!!
(;゚д゚)<ヤッチャウンデスカー!?
(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)
(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)(。A。)(゚∀゚)
763名無しさん@ピンキー:04/11/14 19:02:59 ID:TB1jRdSs
キタ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−(゚∀゚)−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−!!!!

ドキドキドキドキ!!!!
ついにやってしまいますか(*´Д`)ハァハァ
次が待ち遠しい・・・
764名無しさん@ピンキー:04/11/14 20:11:11 ID:PG1jFrof
職人さんGJ!!
しかしホント普通に面白いな・・・
765名無しさん@ピンキー:04/11/14 21:10:39 ID:Me09iSBT
しかし当初は想像もしてなかったほどの長編になったなぁ。
◆5mSXuZ5GjE氏の熱意に乙。
766名無しさん@ピンキー:04/11/14 21:34:50 ID:Z8WzJGoU
GJ!!!
767名無しさん@ピンキー:04/11/14 22:02:21 ID:X8zguMEA
ここってゲームのSSの投下はあり?姉しよにハマって何か書きたいなーと思ったんだけど。
768名無しさん@ピンキー:04/11/14 22:22:26 ID:ZdM8rbDX
いいんでないかな?
他に適当な板、スレが無さそうだし
特に困るような事も無いし
何よりSS沢山読みたいし・・・
769名無しさん@ピンキー:04/11/14 22:25:11 ID:jYa9K83u
>>767
熱烈歓迎!
770名無しさん@ピンキー:04/11/14 22:25:19 ID:9xVmN5cW
ネギ板にSSスレなかったっけ?
こっちに投下して貰ってもええけど、知らん人も多いのと違うかな。
771名無しさん@ピンキー:04/11/14 22:27:27 ID:iotOu9bB
>767
頼む。
772名無しさん@ピンキー:04/11/14 23:27:34 ID:MhxNFQ30
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
キタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!

GJ!!
次はついにセックルですか?
ワクワク・・・
773名無しさん@ピンキー:04/11/14 23:49:50 ID:xdM8cj4F
2回分も投下されてて得した気分だ。
GJ!!
774名無しさん@ピンキー:04/11/15 00:38:11 ID:QQiOEKVr
(*´д`*)ハァハァ
775名無しさん@ピンキー:04/11/15 04:07:07 ID:56FfX+P2
何だ、この超良スレは。。。
776名無しさん@ピンキー:04/11/16 00:32:26 ID:cKp6gUUU
このスレは2chの中でも最上位レベルの良スレですね
777名無しさん@ピンキー:04/11/16 17:58:28 ID:cKp6gUUU
777
778名無しさん@ピンキー:04/11/16 22:18:37 ID:Eo/yT3ww
最近は姉萌えがブームなのかな?
779名無しさん@ピンキー:04/11/17 10:13:02 ID:5dLKvc7o
1970〜80年代に「隣のお姉さん」系がブームになって以来なだ。
780名無しさん@ピンキー:04/11/17 16:28:07 ID:G0VDRE+i
しかし◆5mSXuZ5GjEさんのSSは
姉属性だけではなく、いろいろな属性が盛り込まれた優良SSだからな。
781767:04/11/17 16:44:16 ID:e7hHV++y
専用スレ見つけたんでそっちに書こうかと思います・・・。
こっちに書くのは正直ためらわれる(;´д`)
◆5mSXuZ5GjEさんの続き期待してまっす!
782名無しさん@ピンキー:04/11/18 01:05:16 ID:MBJPT8z9
期待age
783陽炎 ◆76mfWoL0i. :04/11/18 20:49:46 ID:6noWuJyH

昨日久しぶりにこのスレに来てみたら、も〜んの凄い長編が・・・・・!
これはやばい!やばいすぎる!マジはまる!

ドキドキ、ワクワク、ニヤニヤ、んでもってハァハァしながらw
思わず時間を忘れて読み耽ってしまっただよ。

2chはあんまししないけど、こいつぁーモロはまる。
姉貴もの好きなオイラとしては、かの有名な弟っすの
「姉貴の・・・・」スレ並にはまってる。
あれはリアルタイムで読めなかったから、今モーレツに感動してます!

◆5mSXuZ5GjEさんGodJobっす!

都お姉、環先輩マジ最高!エロカワイぃ!
そして、はるかタソ。マスコット・ペット的な激カワイさよのぉ。
(オイラ、ロリじゃないんで性的な期待はないがw)



この作品、ハガネたんに是非おせーてあげたいw
っつーか色んなトコに大宣伝したいトコだけど、
アラシが来るかもしんないからそーいうのは控えときます。

この作品、力の限り続けて欲しいです、ハイ。
プロット1行が100行などと言わず、1000行でもいいでっせー!
◆5mSXuZ5GjEさんがんばれ〜!
784 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/19 18:06:30 ID:dn/CbfLv
熱いレスありがとうございます。嬉しいです。

29節が長くなってしまって残り容量に入らないみたいなので、
次スレの頭に回してもいいでしょうか?
テンプレなどもよくわからないので、住人のみなさんの意見を待ちます。
一応もう整形して準備してあります。
785名無しさん@ピンキー:04/11/19 18:50:27 ID:UQjCSniv
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!

とりあえず、テンプレっつっても
このスレとまとめだけで良いんじゃないでしょうか?

↓こんなんで良いんだったら立ててみましょうか?

お姉さん大好き PART2

前スレ
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1080659392/
まとめサイト
http://sslibrary.gozaru.jp/

786名無しさん@ピンキー:04/11/19 19:36:55 ID:7/V2FQNJ
>>784
容量オーバーですか。早急に次スレ立てでいいと思われます。
>>785
たのんます!
787名無しさん@ピンキー:04/11/19 20:12:18 ID:xuS9SKUD
立てちゃって良いんじゃないでしょうか?
お願いします。
788名無しさん@ピンキー:04/11/19 20:34:16 ID:yGgeo6a0
789名無しさん@ピンキー:04/11/19 23:05:21 ID:PTMhWdE7
ではこちらも埋めますか。
自動的にdat落ちになるまであと11kbを
790名無しさん@ピンキー:04/11/19 23:13:40 ID:7/V2FQNJ
高島政信×姉
で「姉さんエロスです」というテーマでエロスを書いてください。エロじゃなくエロス
791名無しさん@ピンキー:04/11/19 23:44:14 ID:yZ52rJxt
 姉さん、事件です。
 大変なことが起こってしまいました。
 それというのも・・・・・・。

「どうした?」
 ホテルのロビーで、従業員二人が頭を悩ませているところに出くわしたのが、そもそもの始まりでした。
「いえ・・**号室のお客様から苦情が出てるそうで・・・・」
「苦情?」
「はい・・それに、お隣のお客様からも・・・・」
「一体、どうしたっていうんだ」
 僕が聞いても、二人は頭を抱えるだけでした。
「よし、俺が見てこよう」
 どのようなお客様にも、やはり不満を与えるわけにはいきません。そこで僕は、従業員から聞いた部屋へと向かったのですが、そこで・・・・・・

「い、いえ、お客様、そう言われましても・・・・」
 **号室のお客様は、まだ二十代も中盤の、それは美しい人でした。スーツ姿で、口には煙草を銜えて、恐らく会社では立場も上の方にいる、それが一目で分かりました。
「・・ったく」
 部屋の中に通された僕は、彼女の姿に見とれていたのですが、その彼女からとんでもないことを言われたのです。
「・・あのねぇ、私は、やらしー番組を見てただけなのよ。それだけだってのに、何で隣の部屋から文句を言われないといけないのよ」
「いえ、ですから・・・・」
 厳しい目で僕を見る彼女は、とても苛立っていて、こういうお客様にはまず冷静になってもらうことだと、そう思いました。
792名無しさん@ピンキー:04/11/19 23:44:30 ID:yZ52rJxt
「・・やはり、親子で旅行しているのですから、そういったことは・・・・」
 そう言うと、彼女は煙草の煙を盛大に吐き出しました。
「あのねー。ここは、私が借りた部屋なの。私がどう使おうと勝手でしょ」
「いえ、そういうわけには・・・・」
 言葉を濁す僕に、彼女の厳しい目が向けられます。
「常識は弁えてるわよ。何も部屋のものを片っ端から盗もうとか、そういうことを言ってんじゃないの。私は、ただ、オナニーするためにテレビをつけた、それだけなの」
 彼女ははっきりと言いました。姉さん、大変です。
「い、いえ、お客様、お客様、落ち着いてください」
「落ち着いてるわよ。焦ってるのはそっちでしょ」
 ふん、と鼻を鳴らした彼女は、まるで僕をからかうように煙草の煙を吐き出しました。
 姉さんもご存知のとおり、僕はこういう展開に非常に弱いのです。どうすればいいか、それを考えるだけで精一杯でした。
 その時です、彼女が煙草を灰皿に押し付け、僕の正面に立ちました。
「ねえ、なら、ホテルマンさんが相手してよ。もう溜まってて仕方ないの」
 彼女はそう言うと、僕の胸にもたれかかってきたのです。ああ、姉さん、事件です。
「お、お止めください、お客様・・・・!」
「選択肢は二つ」
 狼狽する僕の前に、指が二本立てられた彼女の手が表れます。
「一つ、あんたはこのまま戻る、私は部屋でテレビをつけて、大音量でそれを聞きながらオナニーする」
「・・・・もう一つは」
 僕は喉を鳴らして唾を飲み込みました。
「あんたが、私とセックスする。まあ、それなら少しぐらい声は抑えてもいいかな。その方が燃えるし」
 ああ、姉さん、どうすればいいのでしょう。どうすればよかったのでしょうか。
「さあ、どうする?」
「・・・・・・・・・・」
 ああ、姉さん、大変な事態になってしまいました。


 埋めネタなら簡単に投下できるんだがなー・・・というか、お姉さんではあるが、正式な姉ではないな。スマン。
793 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/20 14:22:33 ID:j5sB6RTQ
なんていうこともない番外編

『中学三年生』


「環ちゃんから都ちゃんに」
「授業中よ?」
 都のかすかに咎めるような上目遣いに肩をすくめながら、右隣の都に手紙の入った巾
着を渡す。文句を言っておきながら都が、何事かと巾着のヒモを緩めるのをくすくすと
笑って見ていると、左から環に突かれた。
「次あたるの、教えて、はやくはやく!」
「それ、宿題でしょ? なんで休み時間に言わないの〜」
 普段からルーズリーフを使っている由美は、環に要求された設問のノートを外して、
先生の死角に入った隙に、さっと渡してやる。
 も〜、とふと都の方を窺うと、しっかり件の手紙を開いて難しい顔をしている。
 今年七通目のラブレターだ。
 しばらくするとその手紙は再び巾着の中にしまわれて由美を経由して環に渡り、おそ
らく運動部のどこかの男子の手に戻るのだ。
 一応読みましたけどごめんなさい、というこの中学になぜか行き渡っている不思議な
習慣。最低限読んでもらえたことが証明されて、出した方も慰めになるからだろうか。
794 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/20 14:23:00 ID:j5sB6RTQ
 この三年の二学期になって、文化祭や体育祭も終わってしまって、どこの高校を受け
るかが生徒達の最大関心事になっていた。
 由美たちはそんなものとは無縁だ。環が大好きなバスケットそっちのけでがんばって
いるおかげで、第一志望の公立に三人揃って受かるのはほぼ間違いない、と担任にお墨
付きをもらっていた。
 二年生の時に続いて同じクラスになって、この学期には運と同級生間の政治力によっ
て、三人横並びの座席を確保した。
 真ん中の由美はごきげんだ。
 都に出会った頃の事を思い出す。
 環の部活友達が都とたまたま親しくて、その話を盗み聞きしていると、都に二つ年下
の弟がいることがわかった。
 環と由美はそれで顔を見合わせて、笑った。
 なんだ、最初の話のきっかけなんて、実に簡単につくれるんじゃないか。
 そうして、三人でお昼のお弁当を食べ合いっこするようになり、しばらくしてその時
の『共通の話題』を由美は引っ張り出してみた。
 三人に共通する家族構成、つまり都だけでなく、環にも由美にもたまたま二つ年下の
弟がいるのだ。
 ただ、その三人の弟達にはお互いまったく接点がなく、それが少し残念だったが。
 
795 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/20 14:23:30 ID:j5sB6RTQ
 *
 
 卒業が近くなったある日、環と二人で待鳥家に遊びに行った。
 噂の『弟君』はサッカー部の合宿から今日の夜遅く帰ってくるという。自分達の門限
とにらめっこをして、あきらめた。あと一週間ほどで高校に入ったら、門限をのばして
もらえるのに。残念だ。
 かわりに好奇心旺盛にきょろきょろしながら、はるかが都の部屋を覗きに来た。まだ
小学五年生のその親友の妹を環が気に入ってしまって、膝の上でおもちゃにしていたと
思うと、いっしょにパズルゲームをやろうとリビングに降りていってしまった。
 その間、由美は都と二人で窓の外を見ていた。
 充分に長くて、とても幸福な時間だったと思う。
 何を話したかはもう思い出せない。何も話さなかったかもしれない。
 都の、色恋にまるで関心のなさそうな無垢さが、まるで大切にしているオルゴールの
蓋についている小さな宝石のようだと思って、こっそり泣いた。
 ふらふらになった環が戻ってきて、
「はるかちゃん、ソファで寝ちゃったよ。もー、かわいいのなんの……都あれ、私にちょ
うだい」
「絶対いや」
「けちぃ」
 あのコと仲よくなりたいという、由美の切なる願いを叶えた長身の憎めない親友とと
もに、姉妹に見送られた帰り、少し歩いたところで、学生服でスポーツバッグを背負っ
た少年とすれ違った。
796 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/20 14:23:47 ID:j5sB6RTQ
 環が袖を引っ張ってきて、
「ね、あれ、ひょっとして弟くんじゃない?」
 こっそりと、怪しい足取りで追跡していくと、期待通りに少年は待鳥家の門をくぐる。
開いた扉の、玄関の明かりの中で迎えた都がかすかに浮かべた優しい表情が胸に残った。
「ひゃー、かわいいじゃん……」
 あの都、はるかと同じ血を引いているなら、そうだろうな、と由美も環の感想にコク
コクと同意した。
 まだ彼の名前を知らない。
 環と連れ立って夜の道を歩く。
 今の由美には門限の延長が最大関心事なのだった。


 了
797 ◆5mSXuZ5GjE :04/11/20 14:36:37 ID:j5sB6RTQ
失敗。
普通、卒業式は三月のアタマにやりますね。
推敲って大事だなあ。

一週間ほどで → 一ヶ月ほどで
798名無しさん@ピンキー:04/11/20 23:27:55 ID:MgiWIgZR
ウホッ!!

799名無しさん@ピンキー:04/11/20 23:37:38 ID:8LeV9mw9
いつもいつも素晴らしいお仕事。GJです。
800名無しさん@ピンキー:04/11/22 00:17:48 ID:tZkVs6+f
そ                                         
ろ                                           
そ                                          
ろ                                            
う                                            
め                                          
ま                                           
す                                          
か                                             
?                                          
そ                                         
ろ                                           
そ                                          
ろ                                            
う                                            
め                                          
ま                                           
す                                          
か                                             
?                                          

そ                                         
ろ                                           
そ                                          
ろ                                            
う                                            
め                                          
ま                                           
す                                          
か                                             
?                                          

803埋めよう:04/11/22 00:44:03 ID:/D8NFBJg

    ∩
    ( ⌒)     ∩_ _
   /,. ノ      i .,,E)
  ./ /"      / /" .
  ./ / _、_   / ノ' グッジョブ!!
 / / ,_ノ` )/ /
(       /  
 ヽ     |
  \    \

804埋めよう:04/11/22 00:44:48 ID:/D8NFBJg

   n                n
 (ヨ )              ( E)
 / |    _、_     _、_    | ヽ
 \ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/ / good job!!
   \(uu     /     uu)/
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805埋めよう:04/11/22 00:45:44 ID:/D8NFBJg
 ((  n         n  ))  ((   n         n  ))
    (ヨ )   _、_   ( E)       (ヨ )   _、_   ( E)
     \\( ,_ノ` )//         \\( く_,` )//
       ヽ   /   good job !!   \   /
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⊂____)   \ \                   /  /  (____⊃
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        (\ /  ))            ((  ヽ/)
         く_⊃                 ⊂_ノ


806埋めよう:04/11/22 00:46:39 ID:/D8NFBJg

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  ( l    _、_   / / ,_ノ` )/ /_、_    グッジョブ!!
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     ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ     |  ̄     \    ( E)
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807埋めよう:04/11/22 00:48:18 ID:/D8NFBJg

      n
     ノ.i
   /  ̄ )
   i    )⌒ヽ
   |   ,,/´_ゝ`)  グッジョブ!!
   ヽ  イ   /
    \   /
      `´ | |
       | |
       .∪

もっとこのスレが(次スレか)盛り上がりますように
808名無しさん@ピンキー:04/11/22 14:10:46 ID:GGHA+6Rz
ウィザード、足の遅いハイパーナイトを殺し、動きの速いハイパーナイト殺すと、ウィザードが4匹現れる。
そのうち1匹(本物で他は分身)を殺すと、クオックスが現れる。クオックスを殺すとドルアーガが出現。
ドルアーガを倒すと60フロアへ進む事ができる。はじめのウィザードと遅いハイパーナイト殺さなくても出せる。
809名無しさん@ピンキー:04/11/23 01:06:59 ID:9caJJmMh
ドルアーガの塔か……。

そうか,金ぴかのお姉さんは,イ シ タ ー なんだな!?
810名無しさん@ピンキー
フロア60でマトックを使ってしまった苦い記憶