皆様・・・約2ヶ月のご無沙汰でございました。
覚えてくださっている方がいらっしゃるでしょうか、あのじです。
はい、でかい口を叩いたにもかかわらず、こんなにかかってしまいました。
計画性のなさを再確認してしまいました。もう駄目です( ´Д⊂ヽ
予定量の4倍の長さになってしまいました。
サキュバスクエスト外伝、本当に素晴らしい出来映えですね!!
ファンになってしまいますたΣ(゚Д゚)ゞ ビシッ!
新しい、素晴らしい才能を見たあとでは、お目汚しですし、残り少ないレスを
消費してしまって大変申し訳ないのですが・・・・
お暇な方は、ご笑読いただければ幸いです。
「体温の狂気」
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身体に続いて、髪と顔も大まかに、急いで洗い終えたシンジが、シャワーですべての
泡を洗い流すと同時に、アスカの声がかかる。
「シンジ。」
「・・・う、うん。」
アスカがぼおっとしたままだったら、そのままバスルームから出て行こうとしていた
シンジだったが、再度、先をとられてしまい、間の抜けた返事を返してしまった。
「・・・ふふふ、少し、久しぶりだから、のぼせちゃった。少し休憩するから、アンタも、
バスタブに入りなさいよ。」
「え、あ、うん・・・・」
シンジの返事を待たず、アスカは、ゆっくりとお湯から立ち上がる。
お湯のうねる音とともに、薄く上気して、桃色に染まった肌のアスカが、一つため息を
ついて、壁に背中を預けるようにして、バスタブの縁に腰掛けた。揃えた両足は、
バスタブにお湯に泳がせたままの姿勢をとって、シンジに視線を向ける。
シンジは、おそるおそる、バスタブのお湯に体を沈めて、横たわる。
「はぁ・・・・・・」
生まれて初めて、という状況の連続で、緊張し続けていた体も心も、お湯のなかに、
ゆっくりと溶け出すようで、知らず知らずにこわばっていた筋肉がほぐれていく。
緊張の弛緩に身を預けているシンジを、みて、くすっと笑いをこぼすアスカ。
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「・・・・・なに、アスカ?」
「何、って・・・アンタ、それ・・・・」
アスカが、こらえきれないように笑いながら、形のいい足の指で、ちょいちょいと
さし示したのは、お湯の水面下から、そこだけ自己主張をしている、シンジのペニスだった。
「わあっ!!」
「動かないで。」
あわてて隠そうとするシンジを、静かな命令でぴたりと止めると、アスカは、くすくす
笑いながら、そのまま足をそっと伸ばした。
股間を隠そうとしたまま停止した、少し情けない姿勢で見つめるシンジの前で、
からかうようにちょっと足の指先を振ってみせると、静かに、シンジのいきり立った
ペニスを踏みつけた。
「んん・・・・」
「・・・やっぱり、カタいわね。馬鹿シンジ・・・」
そのまま、注意深く力を加減しながら、シンジのペニスを、足の指や、足の裏で
やわらかく刺激する。
少しの間、お湯のはねる音と、シンジの呼吸音だけを伴奏に、アスカは、シンジの
ペニスを、その足でもてあそび続けた。
「あ・・・アスカ!もう、やめ・・・・」
ついに、こらえきれなくなって、ばっと身を起こしながら叫びかけたシンジの言葉が、
ぶつりと断ち切られる。
アスカの姿を、あらためて見た瞬間、想像していなかった姿を目撃したせいである。
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アスカは、顔を伏せた姿勢で、その足で、シンジのペニスの感触を楽しむように
もてあそびながら、大理石の彫刻のような白い手で、自分の胸と、ヴァギナを、
ゆっくりとまさぐっていたのである。
お湯のしずくをまとった真っ白なバストが、アスカの左手の中で別の生き物のように
うねり、弾み、右手は・・・・女性の一番隠されている部分を、粘つく水音を立てて、
こねくり回している。
「・・・・・・・っ!」
呼吸をすることすら意識の外にはじき飛ばして、シンジが、石化したようにその姿を
凝視する。
(・・・・見てる・・・シンジが見てる・・・・)
(シンジの・・・チンポの感触を・・・オカズにしてるアタシを・・・)
(シンジの視線で・・興奮して・・・
いやらしくオナってるアタシを・・・見られてる・・・)
足は、シンジのペニスが、自分の足の下で、ぎりぎりと音を立てるように、
こちらも石化したかのようにもさらにかたくなっている感触を伝えてくる。
(・・・スゴい・・・スゴい・・・こんなに硬くなるんだ・・・・)
少しだけ視線を上げると、シンジと、目が合ってしまった。
目を限界までみひらいて、自分を凝視している、シンジの視線。
そう思ったその瞬間、また、身体に電気が走る。だが、アスカは、さらに
その考えを上書きした。
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(ああ・・・こいつ・・・アタシの・・・アタシのマンコを・・・・見てるんだ・・・
こんなに・・・いやらしく・・・汁を吹きだしてる・・・アタシを・・・・)
その考えが頭を走った瞬間、軽い絶頂に襲われる。
「んはっ・・・・はぁう・・・・!!」
自分の意識から切り離された場所で、自分の声帯が、快感の声を漏らすのを、
他人事のように聞きながら、アスカは、唇を釣り上げて、声に出さずに笑いかけた。
「馬鹿シンジ・・・そんなに見たいの、アタシの、いやらしいマンコ・・・・」
アスカの綺麗な唇が吐き出した、淫猥な単語に強打されて、びくっと身体を
震わせて、ようやく我に返るシンジ。忘れていた呼吸を、大きく吐き出す。
「はっ・・・・
はぁっ・・・・。」
そのシンジに、アスカが、時間を与えずに、たたみかける。
「ふふん・・・見るの、初めてなんでしょ?この変態・・・
何度、アタシのコレを、想像して、オナったのよ・・・・」
いたぶるように、シンジのペニスを、強めに踏みつける。
「んんんっ!」
「あらあら・・・・気持ちいいみたいね。やっぱり、変態だわ・・・」
アスカは、シンジの視線を貪欲に楽しみながら、気付かれないほど
ゆっくりと、膝を開いていく。
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シンジは、部屋で、アスカに犯されたときも、はっきりとは見なかった、
アスカのヴァギナが、明るいバスルームの蛍光灯に照らされて、
アスカの愛液でたっぷりと濡れて光っているのを、眼の奥まで焼き付けてしまった。
「・・・いいわよ、シンジ。」
そう、アタシを・・・
「アタシを、見て・・・・」
シンジは、アスカのつぶやきに吸い寄せられるように、アスカの膝の間に
身体を滑り込ませて、惜しげもなくされされた、アスカの股間を見つめていた。
白く静脈の透けた太ももの、さらに奥。真っ白な肌のなかで、そこだけ驚くほど
鮮やかなピンクが露出している。うっすらと生えた栗色のヘアは、愛液に濡れて
肌に張り付いて、身震いするほど扇情的だった。
大きく、荒くなったシンジの呼吸が、敏感な粘膜をわずかに刺激する。
シンジの吐息が当たったところが、気化熱で冷えて、また、すぐに熱を持つ。
アスカは、無意識に舌なめずりしながら、ささやきをしぼりだした。
「アタシを、見て・・・・ほら、一番奥まで・・・・」
右手の人差し指と中指をVの字にして、柔らかく形を変える、ピンク色の唇を
広げてみせる。
にちゃっ、と粘つく音とともに、その部分が糸を引いているのが、アスカ自身
にもわかった。
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「ふぅっ・・・・ふぅっ・・・・・」
震える声のような、切迫した呼吸を繰り返していたシンジが、突然、想像しなかった
行動をとった。
アスカの、まだ蜜をあふれさせ続けているヴァギナに、いきなり顔を押しつけると、
激しく舐め、しゃぶり、吸い上げたのである。
(えっ!?)
今まで、自分の手でまさぐっていたものとは、全く別種の快感が襲ってきたことに
唖然とするアスカだが、自分の太ももの間に埋まっている、シンジの黒髪を見て、
ぞくぞくするような陶酔感に全身をひたす。
あの、いつも煮え切らないシンジが、アタシを「襲って」いる!
アタシを、怖がってて・・・嫌われることも、殴られることも、知ってて・・・
それでも、アタシのココを・・・しゃぶりたくて、我慢できなかったんだ・・・・
シンジは、今、アタシを、そんなに欲しがってるんだ・・・
アスカは、今まで自分の股間をいじっていたその指で、シンジの頭を引き寄せる。
「ああ・・・馬鹿・・馬鹿シンジ・・・
アタシの・・・嫌らしいマンコ・・・そんなに一生懸命・・・なめてる・・・」
「んっ・・・ごめん、ごめん、アスカ・・・・」
時折、口の中で謝罪の言葉をつぶやきながらも、アスカの女性を、執拗にしゃぶり
続けるシンジ。
「馬鹿・・・とっても・・・イイんだから・・・・
勝手に・・・やめたら、それこそ・・・怒るわよ・・・」
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シンジは、アスカの、引き締まったお尻を抱え込むようにして、息をするのも
忘れたように、アスカの性器に唇と舌を這わせている。まだ加減がわからないのか、
少し痛みがあるときもあるが、その貪欲さも心地よかった。
アスカの狭い入り口に、必死にとがらせた舌を埋め込んでいくシンジの鼻が、
ちょうど、アスカの敏感な肉の突起を繰り返し、こすっていく。また、頭の中に
銀色の星が飛ぶのを感じて、アスカは、思い切り、シンジの頭を白い太ももで
締め上げて、ぐうっと背をそらす。
「はっ、はぁっ、はあぁっ!!!」
爆発するような快感に、遠慮なく声を上げて、初めての、「シンジからの行動の絶頂」
を、思う存分満喫するアスカ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・」
南の砂浜の海のように、優しく自分の身体を揺すっている快感の余韻に、また、ほぅっと
満足の吐息を漏らすアスカ。また、少し、こめかみがじんじんする。すこし、連続で
負担をかけすぎたのかもしれない。それにつれて、締め付けていた腿の力がゆるんでいくと、
窒息直前のシンジが、ようやく解放されて、湯船に仰向けに倒れ込んでしまった。
「はぁあああああ・・・・っ・・・・・」
酸欠になりかかっていたのか、少し紫かがった顔色で、激しく空気を吸い込むシンジ。
ぽうっとした視線で、満足げにその姿を見て、微笑むアスカ。
「ふふ・・・悪かったわね、馬鹿シンジ?でも、あんなに欲しがってたアタシのマンコで
窒息できるんだったら、本望よね?」
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「本望って・・・そんな・・・・」
さすがに抗議しようとしたシンジの言葉が、またしても中断された。
「・・・よかったから、ご褒美・・・」
アスカが、ゆっくりと身体をうねらせてうつぶせになると、バスタブの縁に手をかけて、
その白くて引き締まったお尻を、ぐっとシンジに向けて突きだして見せたのである。
だいぶ体重が落ちたとはいえ、まだ同年代の少女たちの平均よりずっと大きい、真っ白
なヒップが、そのきゅっと引き締まった穴も、先ほどの行為でまだじゅくじゅくとまだ
愛液で濡れそぼった性器も、これ以上ないほど大胆にさらけ出されていた。
さらに、シンジを小馬鹿にして誘うように、その引き締まったお尻が、ゆらゆらと
ゆっくりうねっている。
「ほら、こっちからなら、挟まれたりしないでしょ?好きなように・・・んんんっ!!」
最後まで言い終えないように、アスカの身体に、背中から熱いものがぶつかってきた。
「アスカ・・・アスカ・・・アスカ・・・!」
(えっ・・・!?)
シンジは、焦点の定まらない眼のまま、自分の、ぎりぎりと怒張したペニスを、
アスカの濡れそぼった穴に、狂ったように押しつけてきた。
(ああっ・・・・シンジ・・・・シンジが・・・・
アタシを、アタシを、欲しがってる・・・・)
シンジが、正気を失うようになるまで、自分に欲望をぶつけてきたことは、アスカの内側を、
思いもしないような熱い満足感で満たした。
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(自分から、自分から、シンジが・・・・・)
「アスカ・・・アスカ・・・アスカ・・・アスカ・・・」
うわごとのように、アスカの名前を呼び続けている、冷静さを全く失ったシンジは、
せっかくさらけ出しているヴァギナに、うまく挿入できないでいる。
焼けるように熱いシンジの怒張が、入り口をぐにゅぐにゅとこするのは、それはそれでまだ絶頂に
達しそうなぐらい気持ちいいのだが。
(馬鹿・・・そこじゃなくて・・・もっと上・・・)
(あ、それじゃ上過ぎ!あ・・・そこはアナルだってば・・・)
(も・・もう、じれったい!!)
アスカは、お尻を高く突き上げて、シンジの暴れる怒張を、麻薬の禁断症状のように震える
自分の手で、正しい位置まで導いた。もう、そうするだけでたまらなくて、肉の花びらを、
シンジの先端でくちゃっと押し広げる。
その瞬間、シンジが、思い切り、身体ごとぶつかるように進入してきた。
「はっ・・・はぁあああああっ!!」
さんざん刺激して、これ以上ないほど準備のできていたアスカは、背後から自分の身体の
中心を貫かれる快感に、喉をそらして歓喜の絶叫をあげた。細いアスカの指が、強化プラスチックの
バスタブの縁をぎりぎりと握りしめて、身体は弓のように反り返る。
突入を感じた時に、自分の今までで一番の快感に、絶頂に放りあげられたまま、休む間もなく、
シンジの機関車のような、激しい運動が身体を揺さぶる。
何も考えない、ただ、自分の腰をたたきつけるだけの運動だったが、気が狂うほどの快楽に、
アスカは唇の端から唾液を流して、何度も何度も絶叫した。
「うぁうう!!いひ・・いひよぉ、シンジィイイ・・・!!」
時間にすれば、ほんの一分か、二分程度かもしれないが、暴風のような時間のアスカの身体を
翻弄して、ついに、アスカは、ひときわ激しくなったシンジの突き上げに、ついに、がくんと
気を失ってしまったのだった。
ゆるみきり、唾液をこぼした表情で白目をむきながら、アスカの秘肉は、シンジをしっかりと
締め上げつづけていた。
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風を、感じる。
柔らかい空気の流れが、ゆっくりと、頬を撫でている。
ずいぶん、久しぶりの感覚だ。
アタシの部屋、アタシの、シンジから奪い取ったこの部屋は、ずっと閉め切って、光も差さないし、
じっとりと湿って、よどんだ空気がたまっているだけのはずだった。
この、風は?
すこし、水分を含んで、いつもより少し温度の低い風。濡れたアスファルトと、水分を含んだ
植物の匂いのする、この、優しい空気の流れは?
さっき、部屋で目覚めたときよりはずっと小さいけど、まだ、後頭部がずきずきする。
何も見えていないこと気がついて、自分のまぶたにそっと力を込めると、ゆっくりと世界が広がる。
眼に刺激のない、常夜灯の淡い光の中で、シンジが、心配そうにアタシを見つめていた。
「・・・アスカ、大丈夫?」
シンジが、抑えた声で、アタシに呼びかけてくる。アタシは、小さく鼻をならして、それに答えた。
・・・別に、何が不満なわけでもないけど、なんとなく、普通に返事をするのが悔しかっただけ。
顔を動かさないで、視線だけで、静かに見回す。
アタシの部屋だ。ベッドに寝かされていて、薄手のタオルケットが胸元までかけられてる。
ここしばらく、ずっと閉じっぱなしだった窓が開け放たれて、カーテンだけが閉じられている。
少し前に雨が降ったのか、水の匂いのする風が、カーテンをふくらませて、部屋の中を流れている。
シンジの手には、ミサトの使っていた、ビールがプリントされているうちわがあって、いままで、
それでアタシを仰いでくれていたらしい。
70
まだちょっとしびれている手で、タオルケットを払うと、アタシは上半身を起こした。
ご丁寧に、ちゃんとシャツとショートパンツまで着せられている。流石に、下着は着けていないけど・・・
そこで気がついて、ショートパンツの中を確かめてみるけど、アタシの中から、シンジの精液は、
流れ出してこなかった。
そういえば、気を失う瞬間、背中に粘つくお湯みたいなものが降りかかってきたような気がする。
あの馬鹿、また、イクときに抜いたんだ・・・
今度は、はっきりと、不機嫌で鼻を鳴らした。この次は、たっぷり、ナカに出させてやる。
でも、シンジは、アタシをお風呂から出して、身体をふいて、服を着せて。この部屋まで担いで、
寝かしてくれたんだ。
そして、たぶん、たっぷりと出した自分のザーメンを一生懸命洗いながしたり、どの服をアタシ
に着せるかで右往左往したり、着せるときにいちいちいろいろ思い出して赤面したりしたんだろう。
そして、寝かしたあとは、何をして良いか分からなくて、とりあえず、アタシを、扇いでいてくれ
くれたわけだ。
その場面を次々に連想して、思わず吹き出しそうな口元を、思い切り引き締めて、シンジに向き直った。
いろいろ言わなきゃいけないことがある。言いたいことも、たくさんたくさんある。
矛盾しているけど、でも、それは、言いたくない。
でも、でも、馬鹿シンジは、本当に馬鹿だから。アタシが泣き出したいぐらい、馬鹿だから。
たぶん、これでいい。
アタシの唇からは、アタシが、言いたくてたまらないこととは、別の言葉が流れ出す。
ようやく、身体を起こしたアスカを前に、シンジは、一度だけ声をかけたものの、何をして良いか
分からずに、うちわを手にしたまま、固まっていた。
もう一度、不満そうに鼻を鳴らしたアスカは、固まったシンジに目を留めると、
ぐっと唇に力を込めた。
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何か、物事を思い詰めがちな性格の少女が、愛の告白をする寸前、言葉を解き放つ力をため込んで
いる時のような、妙な力のこもった沈黙に、意味はわからないながらも、緊張するシンジ。
「シンジ・・・」
「・・うん。」
そこで、アスカが、また、呼吸を整えているような沈黙が一瞬。
「・・・ごはん、持ってきて。」
沈黙。
「・・・・え?」
なんとも呆然とした顔で、ぽかんとしたシンジに、いらだったようにアスカが続ける。
「作ったんでしょ、ごはん!食べるから、持ってきてって言ってんのよ!」
たたきつけるようにアスカの声に、シンジは、反射的に・・・そう、なんとも反射的に・・・
飛び上がって、部屋の外に飛び出ていった。
そして、さっきの騒動の最中、入り口の脇に置いたままになっていた、料理・・・・
苦心の、カッセラーと、アイントプフ・・・が、こぼれていないことを確かめると、
急いでキッチンに駆け戻っていった。
数分。
数時間前は、あんなにつらくて、切なくて、悲しかった、暖かい匂いが、ふわっと部屋の中に
届いてくると、アスカは、ほうっと息をついて、僅かに、自分の身体を抱きしめた。
さらに、数分。
アスカの部屋に、まず、折りたたみ式の床テーブルが据えられて、そこに、シンジ少年の
努力の成果が、香ばしい匂いをまとって、綺麗に並べられていた。
並べられた料理の数をみて、アスカは、また不満げに鼻を鳴らす。
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「・・・アンタの分は?」
「えっ、あ、その・・・」
「忘れたのね、やっぱり馬鹿シンジだわ。」
「あの・・・」
「忘れたんなら、早く用意しなさいよ。・・・ほら、早く!!」
まさか、アスカが、自分の同席を希望している等とは全く思わなかったシンジは、
その言葉に弾かれるように、また、飛び出ていく。その姿を見て、今度は満足げに
鼻を鳴らすアスカ。
そして、久しぶりに、本当に久しぶりに、二人は、食卓を囲んだ。
「いただきます。」
緊張を必死に隠しているシンジの声を合図に、アスカも、無言のまま、食器に
手をのばした。顔全体を、うっとりするような香りの湯気が包む。
また、内臓が、きりっとひねられるような苦痛に、アスカは、眉をしかめた。
(大丈夫、今は、もう、大丈夫・・・)
自分に言い聞かせると、そっとスプーンを手に取った。さっき、バスルームで
シンジに手を伸ばしたときのように、自分の意思に反して、スプーンを握った手は、
まるで麻薬中毒者のように小刻みに震えている。
(アタシは、そんなに卑しくないわよ!)
シンジは、視線を料理に落としたまま、静かにパンをさいている。少しだけ安心して、
アスカは、アイントプフの深皿に、スプーンを滑り込ませた。
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よく煮込まれた、肉と野菜のとけあった匂い。驚くほど口の中にわき上がってきた
唾液をそっと飲み下して、アイントプフの、最初の一口をそっと流し込む。
柔らかくなるまで煮込まれた羊肉が、奥歯でかみしめられた瞬間、熱い肉汁をあふれさせて、
香草と、何種類もの香辛料の匂いを、体中に染み渡らせる。飲み込んだスープが、食道を
滑り降りていって、ずっとずっと空っぽだった胃の中に収まる感触は、全身に鳥肌が立つようだった。
しばらく、何も考えられなかった。
気がつくと、アスカの目の前の深皿は、底が見えるまで空っぽになっていた。
そこに、いくつもいくつも、透明な液体がこぼれおちていた。
「うっ・・・ううっ・・・ひっく・・・うう・・・」
アスカは、顔を伏せたまま、声を押し殺して、自分が泣いていることに気がついた。
理由なんてない。
ただ、涙がこぼれてこぼれて、仕方なかった。
美味しかった。
シンジの作ってくれた食事が、こんなに素晴らしいものだなんて、考えたこともなかった。
ミサトに作るものの、試作品なんかじゃない。こんなに、こんなに一生懸命作った料理。
アタシに食べてもらいたいって思って作った、アタシのためだけの料理。
そのまま、細い肩を震わせて、必死に泣くことをこらえている幼女のように声を殺して、
それでもこらえきれずに、泣いていた。
(馬鹿シンジにだけは・・・泣き顔は、見せたくないって、思ってたのに・・・)
不思議と、今は、恥ずかしいという気持ちは、少なかった。その理由は、ちょっと、
思い当たらなかったが、唐突に、思い当たった。
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(そうだ、さっきと同じ。)
(馬鹿シンジは、馬鹿だから。本当に、悲しいぐらい、馬鹿だから。)
(これで、わかってくれる。)
当のシンジは、当惑して、どうして良いかわからず、おろおろしていた。
自分の知人達だったら、何か、こういう時の、正しい行動をしっているだろうか?
ませている割に気配りのきく、ケンスケだったら、綺麗なハンカチを、無言で差し出すだろうか?
軽いようで熱血漢の加持だったら、泣きやむまで、肩に手を置いて、待っているだろうか?
がさつだが優しいトウジだったら、怒ったような表情で、泣きやむまでつきあっているだろうか?
目の前で、アスカが、自分の料理を食べて、声を殺して泣いている。
こんな、今までの人生で、一度も考えもしなかった事態に、頭の中をかき回されていたシンジは、
一生懸命、身体が熱くなるまで考えて、自分の行動を決めた。
いったん、部屋を出て行った。
びくっと、アスカが、不安げに、顔を僅かに持ち上げる。
だが、シンジの足音は、すぐに戻ってきた。ひそかにほっとするアスカの目の前で、シンジは、
テーブルの隣の床に、鍋敷きをしいて、その上に、鍋ごと、熱いアイントプフを置いたのだった。
そして、何も言わないまま、これも、本当に久しぶりの、笑顔をアスカに向けた。
胸の奥の、大事に隠していた柔らかい部分を、ぎゅっと握りしめられるような、笑顔だった。
(ほら・・・やっぱり、わかってくれた!)
(アタシの予想だもん、外れるはずがないわ!)
アスカは、泣き笑いのような表情で、空になった、アイントプフの深皿を差し出した。
そして、シンジ少年は、本当に幸福そうに、たっぷりとおかわりをよそって、差し出した。
「はい。」
アスカは、泣き笑いのまま、ほんの少しだけ、つぶやいた。
「・・・・いただきます。」
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シンジは、自分の食事を再開しながら、笑顔のまま、こちらも泣いていた。
自分が、その人のために作った料理を、喜んで食べてもらえる。
あたりまえかもしれないことが、自分には、本当に、とても大切なことだった。
アスカは、どれくらいぶりか、シンジの料理を、思う存分に、満喫していた。
自分が、自分のためだけに作ってもらった料理を食べる。
当たり前かもしれないことが、自分には、とても大切なことだった。
アスカは、優に、3人前のアイントプフとパンを平らげ、カッセラーも残さず食べて、
ミサトの分にと用意していたカッセラーまで綺麗に片づけていた。
シンジが、本当に幸福そうに、アスカの好きだった、クリームを少し浮かべた紅茶を
いれてくれる頃には、今までの疲労と、安心と、満腹感とで、幸福そうにふわふわと
まどろんでいた。
それでも、シンジが入れてくれた紅茶をちゃんと飲み終えると、ふわふわとベッドに
向かった。料理の片づけを終えて、自分も紅茶を楽しんでいたシンジが、あわてて駆け
寄って、肩を貸す。
乳幼児をベビーベッドにそっと横たえるときのように注意深く、シンジかアスカを
ベッドに寝かせて、タオルケットを静かにかけようとすると、もう、まぶたが重くて
仕方がないらしい表情で、それでも、しっかりと、アスカは、シンジのシャツのすそ
を握りしめていた。
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「・・・アスカ?」
「・・・シンジ・・・一緒に寝て・・・」
「え、ええっ!?」
驚愕するシンジに、アスカは、ちょっと悲しそうにくすりと笑う。
「いじめないし、何もしなくていいから・・・・
アタシが眠り込むまで、隣にいて・・・」
恥ずかしい姿をさらしてしまったことでの脅迫でもなく、いつもの、高圧的な命令でも、
ましてや腕力を背景にした威圧でもない、ただの、お願いの言葉が、それだけに、
シンジをがんじからめにしてしまった。
「うん・・・いいよ。」
アスカが、壁際に身体をずらして作ったスペースに、シンジは、慎重に身体を滑り込ませた。
満足そうにそれを見つめていたアスカが、猫のようにあくびをすると、シンジの腕を、
宝物のように大切そうに、自分の腕の中に包み込んだ。思わず、びくっと背筋を伸ばすシンジ。
(何もしないって、いったのに!)
アスカは、またこれも猫のように知らん顔をして、思い出したようつぶやく。
「シンジ・・・明日は・・・部屋・・・片づけ・・・手伝って・・・」
「う、うん・・・」
シンジの返事を聞いていたのかいないのか、アスカは、もう、安心しきって、
本当に幸福そうに眠り始めていた。
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(ファーストも、ミサトも・・・どんなシンジの知り合いだって・・・・
今のアタシより、幸福な眠り方をした奴なんて、いないわよ・・・・)
(シンジ・・・)
(何をしても、誰を殺しても・・・絶対に、絶対に、手放さないから・・・)
幸福な夢の中の、物騒な決意を知ることもなく、やがて、シンジも、アスカの髪の匂いに
包まれて、夢も見ないような、深い深い眠りについた。
部屋の中の、紅茶の残り香を、水の匂いの風か、音もなくかき混ぜていた。
ミサトが、その晩、煮詰まった仕事のせいで、本部に泊まり込みになり、帰宅しなかったのは、
幸運だったのか、不運だったのか。
本当にいろいろなことがあった夜は、もう少しで、朝を迎えようとしていた。
今回は、ここまでです。
・・・・続いて、良いですか?(´・ω・`)