「あずみ」のエロパロってないの?

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289名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 23:22:25 ID:pgF1mUTs
女になってしまったうきはが、仲間や弥衛門にエロされたり
あずみと百合ってしまう。

かなり書きたいんだが、いいか?
290名無しさん@ピンキー:2005/12/09(金) 10:58:26 ID:nAkYrRzL
もしかして>>229か?
291名無しさん@ピンキー:2005/12/09(金) 19:41:19 ID:SYG7+HAN
289だが、229とは別人です。
うきはXあずみ書いてくれた作家さん、最高に良かった。
兵介Xはつねも書きたい。
292名無しさん@ピンキー:2005/12/09(金) 22:05:05 ID:nAkYrRzL
書きたいなら書け。
注意書きしときゃいいよ。
俺は面白ければなんでも読むよ。
293名無しさん@ピンキー:2005/12/09(金) 22:14:37 ID:SYG7+HAN
わかった、
頑張って書くわ。
294名無しさん@ピンキー:2005/12/09(金) 22:31:41 ID:/FttmhxY
注意書きだけでなくコテハンもつけれ
鳥はいらんから
295名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 16:12:13 ID:tsrwWnHg
わかりやした〜
296名無しさん@ピンキー:2005/12/11(日) 16:27:05 ID:D0BaHS0e
あずみの相手ってうきはが一番人気あるの?
297名無しさん@ピンキー:2005/12/12(月) 00:54:45 ID:TC3UdPWa
個人的には兵介も大アリ
298名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 01:46:09 ID:xHJbNZbp
兵介Xはつねでエロ書こうと思って、24巻辺りから読み返してみたけど二人接点無さすぎ。
難しい・・・
299名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 02:24:41 ID:Tl2bvVWv
↑妄想力に期待
300名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 02:57:30 ID:xHJbNZbp
妄想力かー・・。
多少兵介やはつねの性格や設定変わるかもしれんが、頑張ってみる。
301名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 13:39:32 ID:KId+TeJm
待ってても来そうにないし
なんかすごいほめられたから
脳味噌ぞうきん絞りで
きく×あずみ書いたお
ヤってるけどやはしエロくならない

誰か月斎×あずみ頼む
302『同道』1:2005/12/24(土) 13:40:55 ID:KId+TeJm
 呼びかけても、抱きしめても。
 繰り返し、繰り返しそうしても。
 鴉たちが早くよこせと騒ぎ立てている。それはただの肉なのだから、こちらの取り分だ、と。
 あずみは身震いとともに首を振る。
 美しかった顔面は血に染まり、ほとんど原形をとどめてはいない。泥に沈む体は何もまとわず、足首には縄跡がくっきりと残っている。まるで食肉用の鶏のようだったが、それでもそれは――まぎれもなく、きくなのだ。
 呼びかけても、抱きしめても。
 何一つ、かえらなくても。
「おのれ毘沙門天、よくもきくを……っ」
 あずみは中空をにらみ、ほどなくぐっとまぶたを伏せた。
 どろついた溶岩が脳へとのぼりつめていくのがわかる。翼があればすぐにも奴の首を落としに行くのに! しかし腕の中の体は冷たく重い。
 あずみは死をよく知っている。
 これから何をしようと、そこでついえた命は二度とは戻らないのだ。
 ――また、守れなかった。
 これが最後と、きくの体を強く強く抱きしめた。
 そのとき。鴉の声と羽音の間から、かすかな揺らぎが胸に届いた。
 今にも消えてしまいそうな、だがまだ確かにそこにある。心の臓を動かす、命の揺らぎだ。
「きく!」
 呼吸が止まり脈が極端に弱くなる状態。一見死体と区別がつかないが、人工呼吸などにより息を吹き返す場合も少なくはないという。
 疑う間もなく飛びついた。
 送り込んだ唇から最初の吐息が返ってくるまで、気が遠くなるような厳しい岐路が広がっていた。

 痛い。体中の神経が引きちぎられるようだ。苦しい。ここは一体どこなんだ。何も見えない。痛い。真っ暗だ。あるのは痛みと苦しみだけだ。亡者が呼んでる。助けてくれ、俺は一体どうなっちまったんだ! あずみ! あずみ! あずみっ!
「大丈夫だ! 俺が守ってやるから! 今度こそ、絶対に。大丈夫だから!」
303『同道』2:2005/12/24(土) 13:42:53 ID:KId+TeJm
 闇がひらけた。
 白い手が蝶のように額をなでた。
 その不思議な色の瞳が隣にあれば、きっとどこでだって生きていけるんだ。
「また怖い夢を見たんだな……。大丈夫だ、きく。ほら、ちゃんと生きてここにいるだろう? 思い出したか?」
「あずみ……」
 あずみが目で返事する。声はちゃんと届いている。
「あずみぃ……」
「大丈夫。体も少しずつ治ってきてる。すぐにまた歩けるようになる。俺はずっとそばにいるから。きくを置いていったりなんかしないから」
 きくは涙があふれて止まらなかった。
 優しい声。あずみはいつも助けてくれる。足手まといな自分を放り出すこともせず、夢の中からまでも。
 あずみのそばにいると心がどんどん裸になっていく。もう刺客には戻れない。あずみを殺すことはおろか、だますことさえしたくない。獲物を罠にかける作り笑いも、同情を引く泣きまねも――。
 今までの年月すべてが無駄になったとしても、あずみが残れば他はいらない。
「……子どもに戻っちまったみたいなんだ。私はきっとあずみの世界に生まれ変わったんだよ。何もかもあずみだらけなんだ。約束……死ぬまで一緒にいてくれよ……お願いだよ。あずみが……あずみがいてくれないと……」
 差し出した手は、しっかりと握りしめられた。
「うん、約束だ」
 ――ああ、怖いものは何もない。
 目尻にたまった雫を拭い、微笑むと、てっきり微笑み返してくれると思ったあずみの表情に緊張が走った。
「あずみ?」
「……大丈夫だ」
 あずみは自分に言い聞かせるようにうなずいて、小屋の外に出て行ってしまった。
「……あずみ?」
 きくは上半身を起こすことさえままならない。だがこの胸騒ぎは知っている。あずみが毒でやられたとき。左近が連れ去り、もう……帰らないかもしれないと、思ったときの。
 きくは同じようにして心の中で何度もあずみの名を唱えた。あのときはそうしていれば帰ってきた。
 約束したのだ。今度だってきっと帰ってくる。二人は死ぬまで一緒にいるのだから。
 ――死ぬまで。
 不安が蛇のようにのたうった。
304『同道』3:2005/12/24(土) 13:48:43 ID:KId+TeJm
 きくの顔色が夕闇の空と同じ色になった頃、ようやくあずみが戻ってきた。
「あずみ……」
 歓喜しても、笑えない。あずみの顔が水で濡れている。返り血を落としてきたのだ。
 あずみは何も言わず顔を拭うばかりだが、きくの頭の中ではそれまで手をつけようともしなかった状況把握が急速に成し遂げられていく。
 死んだと思った自分が目を覚ましてから何十日たつだろうか。何度目をさましても同じ寝床の上だった。
 つまり、刺客たちは繰り返しここに来ている。しかしあずみは動かない。――何故か? 決まっている!
 きくは唇をわななかせたが、結局何も言えやしなかった。自分を置いていけ、とは、決して。
 あずみは首を傾げた。
「どうした? きく。してほしいことがあったら遠慮するな」
 きくは笑ってみせる。あずみに対しては二度と向けないと思った作った笑顔で。
「……うん。元気になるからね」
 あずみが太陽のように微笑んだので、どうしても目が潤んだ。
 なんでこんな人間がいるんだろう。自分のそばに、いてくれるんだろう。
「あずみ……」
「ん?」
「好きだよ。あずみが好き。あずみが好きだよ。あずみ」
 あずみは不思議そうな顔をしている。何故いきなりそんなことを言い出すのか、といったところだろうか?
 きくには判別できなかったが、澄んだ瞳にしっかりと映っている自分の姿に思わず本当の笑みがこぼれる。
「へへ、へへへ……」
 抱きしめられるばかりだった生まれたてのきくの心に、大きな支柱ができあがりつつあった。

 それから一月、きくはすっかり回復した。元通り、どころか、以前よりも元気になったようだ。
 毎日が楽しくて、心も体も軽くって、殺し殺された夢ももう見ない。代わりにもっとひどい夢を見る。あずみが殺される夢。きくにはなすすべがない。目の前で一番大事なものをみすみす奪われていく夢だ。
 だがきくはもはや怯えたりなどしなかった。夢だと知るやいなや飛び上がり、腕立て伏せをしたり、木切れを木刀に見立てて振ってみたりした。
 あずみは何も言わず、ただ笑っていた。
 丹後への旅が再開され、二人の行く手を阻むものは今のところ姿を見せない。楽しい日々が続いている。
305『同道』4:2005/12/24(土) 13:52:19 ID:KId+TeJm
「今日は旅籠に泊まるからね! せっかくこんなでかい町にいるんだ、絶対! 野宿反対!」
「……きく、そんな贅沢は」
「金なら私が稼いでるし、体力は温存しておきたいんだよ」
「体はもう治ってるだろう」
「大事をとるの! ああー疲れたーっ」
「……仕方ないなあ」
「やった! あずみの気が変わらないうちに宿とってくるからね!」
「きく! おまえまだ走れるんじゃないか!」
「気のせいだよ! ははは」
 きくは走りながらきょろきょろと目を動かした。回復してから初めての大きな町。建ち並ぶ店屋を見ていると心がうきうきしてくる。前方に旅籠を発見し、あずみの呆れた表情を思い返して思わず笑いがこみ上げた。
 安全のためにも野宿は避けたい、というのが本音だが、あずみをからかって怒られて最後には仕方ないなと許してもらうのが楽しくてたまらないのだ。
 生まれ変わったというのはまさにその通りだった。きくにはそんな子どもじみた性質などなかったはずで、感情のままを顔に出すのもとうの昔に忘れたものだ。仕組みを知り終えた世界は一変し、あちらこちらにあずみの顔をのぞかせてくる。
 あの饅頭、あずみが食ったらどんな顔をするだろう、あの独楽回し、あずみに比べたらまったく下手だ、あそこの……
 きくはぴたりと足を止めた。
 ――あそこの店の、あの簪。もしもあずみがつけてみせたら、誰よりも似合うに決まってる。
 それは硝子細工のいかにも華奢な代物で、細かな飾り玉がしゃらりと揺れる透き通った音まで、あずみのためにあるに違いなかった。
 しかしあずみはつけないだろう。わかっていたが、数分後、きくは支払いを済ませて店を出ていた。
306『同道』5:2005/12/24(土) 13:54:34 ID:KId+TeJm
 布巾に包んで胸元に入れると、心臓が妙に甘く鳴く。
 あずみはどう思うだろう。考えると雲の上を歩いているような心地がした。手早く宿をとって呼びに行こうと思うのだが、簪を渡すまでどんな顔をしていればいいか、まったく途方に暮れてしまう。
 周りのものが見えているようで微塵も見ていない時間が続く。が、ふと視界にその男が現れたとき、きくの思考は瞬時に現へと戻ってきた。
 見間違いではないかと目を瞬く。だが顔の傷まではっきりと確かめられる。男もこちらに気づいたようで、不敵な微笑を浮かべて近づいてくる。
「――あずみはどうした」
 以前あずみを拉致した男、倉石左近は一言そう言った。
「おまえには関係ないね」
 きくは敵意を隠さなかった。斬られたってこの男の尻は舐めない。
「あずみは絶対に渡さない」
 ――おまえにも、おまえの刀にも。
 左近は面白そうに、
「ほお。前とは違う顔つきをしている。おまえもあずみに惚れたか。女としてか? 男としてか……?」
 きくの息が止まった。
「おまえの心がまだ女なら、抱いてやるぞ。今すぐに」
 首筋を這い上がってくる左近の指。向かい合う二人を見た者はそういう仲だと思うだろう。着物さえあれば見た目もほぼ完璧に女なのだ。心の方は言わずもがな。なのに。
 きくは精一杯の虚勢を張る。
「気持ち悪い。手を離してよ。きくはあずみに惚れているんだ。この……きくとしてね」
 しかし握った拳は震えていた。

 自分が男なのか女なのかという問いは、随分前に決着がついた問題だ。
 まぎれもなく女であり、体だけが男なのだ。その証拠に交わってきた相手は男だし、これからも女を抱こうだなんて思わない。
 大部分の女たちと同様にある意味で同性は敵であり、他よりも美しくあるための努力は決して怠らなかった。
307『同道』6:2005/12/24(土) 13:56:33 ID:KId+TeJm
 きくは力を込めて腕を折り曲げてみた。上腕二頭筋が腕立て伏せや素振りの成果をぼこりと浮き上がらせた。
「ああああーっ、俺は一体どうしちまったんだーっ!」
 こんなんじゃ今に女物が似合わなくなる。化粧をしたごっつい男になっちまう。でも鍛錬をやめるわけにはいかねぇ、あずみと一緒にいるために、守られるだけじゃなくて守りたいんだ。
「俺は、俺は……っ」
 あずみを抱きたいのだろうか?
 甘い香りがする白い肌も、あずみのものならば愛撫できる気がした。
「そうじゃねぇーっ! あああ」
 あずみはもうすっかり俺が女だと信じてる。例え勃っちまったって何もしやしない。だから安心してそばにいてくれるんだ。そうだよ、初めの頃は警戒されてたじゃねぇか。今さら拒絶されたら一体俺はどうすりゃいいんだ。
「俺は女だ!」
 でももしも、もしも男としてあずみに惚れていたら? 女友だちのように接していながら、男の獣欲を隠していたら? 命を狙っていた日々のように、あずみをだますことになるのかもしれない。
「それに……」
 刺客だったくせにあずみを抱きたがるなんて、あの傷野郎とどう違うんだ。
「違う! 俺は……っ!」
「きく、さっきから何を騒いでる」
 あずみがふとんから顔を出した。
 きくは硬直し、金魚のように口を動かした。
「怖い夢を見そうなのか?」
 繊細なまつげが気遣わしげに揺れている。きくは耐えられなくなり――すがりついた。
「……あずみが好きだっ! 一緒にいたい! 守りたいんだよ。嘘じゃない! ホントなんだ。本当だよ……何があったって、それだけは絶対に本当なんだ」
「きく?」
「信じてくれよ、あずみが好きなんだ! ……どっちかなんて、わかんねぇよぉ……っ!」
308『同道』7:2005/12/24(土) 13:58:17 ID:KId+TeJm
「きく、落ち着け」
 むせび泣くきくを柔らかく抱きとめ、繰り返し言うあずみ。
「大丈夫だきく、何も怖いものはない。俺が守る。絶対に俺が守るから」
「違う! 守られたいんじゃない、一緒にいたいんだよ! ずっとだ!」
 あずみは瞠目したが、すぐに微笑んだ。
「俺が約束を破ると思うか」
 きくはぴたりと動きを止めて、あずみの瞳をのぞき込む。
 ――ああ、俺が映っている。
 そうだよ、俺が望むのはこれだけなんだ。組み敷こうだなんて思わねぇよ。
 きくがようやく落ち着いたのを見て、あずみは再び眠りにつこうとした。が、ふとんを寄せる手が止まる。妙案が浮かんだというように言った。
「くっついて寝ようか」
 きくは真っ青になった。
「駄目だっ!」
「……きく?」
「駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だっ。俺、あずみにひどいことしちまう!」
 例えばどんなことを? と問われれば答えられるはずもないのだが、狼狽のあまり口走る。あずみはわずかな躊躇も見せず、
「きくは俺を助けてくれたじゃないか。毒矢のときも。刀だって、握っただけで刺したりしなかった。大丈夫だから、一緒に寝よう、きく」
 ――どうやら違う意味で解釈したらしい。余計に共寝をさせる気になったようだった。
 大丈夫だから。
 あずみに言われると本当にそんな風に思えてくる。
 大丈夫。俺があずみを傷つけられるはずがない。
 あずみの腕が背中に回り、足と足とが絡みつく。柔らかなぬくもりにとまどいながら、きくはおずおずと手を伸ばした。
 あずみの背中はひどく薄い。腕も、腰も、剣士としては信じられないほどの細さで、今までよく生き延びてこれたものだ。鍛え始めたばかりの自分の腕の方が、よっぽどたくましいのではないか。
 衝動的に抱き寄せると、二つの豊かなふくらみが存在を強く主張した。きくは身じろぎすらできなくなって、まるで置物のように転がっていた。
 明け方近く、あずみはすっかり眠り込んでいる。きくはというと、半身は麻痺して久しかったが、五感が勝手にあずみを味わっていた。
 ぴくりとも動かないのにその肌の滑らかさがわかる。少女の香りが本能に揺さぶりをかけてくる。両眼はくまなくさまよい、今はつややかな唇に捕まっている。
 のど元に砂が詰まったような乾きがあった。わななく舌を密な粘液が抑圧し、飲み込むつばさえもう尽きた。
 朝焼けに照らし出されたあずみは天女のように輝いている。見つめているとときめきのシャボンが押し寄せて、弾けるどころか次々にふくらんでしまうのだ。
 一晩中石化していたきくの体が、ぎこちなく動き出していた。
309『同道』8:2005/12/24(土) 14:01:55 ID:KId+TeJm
 あずみはきっと甘いだろう。
 そろりそろりと距離を詰める。輪郭がぼやけるほど近づいてから、はた、と気づいた。
 何人もの男どもをくわえ込んできた口。
 あずみが朝焼けの天女だとするなら、自分は蜘蛛のはびこる精液便所だ。

 あずみは異変に気がついていた。
 あれほど陽気だったきくがこのところずっと意気阻喪している。頻繁にため息を吐き出す様といい、深く思い悩んでいるのは間違いがない。
 未だに悪夢を見るらしいのに、助けを求めてくることはほぼなくなった。それは良いことなのかもしれなかったが、何かを隠そうとしているようにも見えた。
 置いて行かれるとまだ疑っているのか。それとも足手まといだと思っているのか。それでも今までのきくならば直接確かめてきたはずだ。
 あずみにはわからなかった。気づかれたくないのかもしれないと考えると、詰問するのもはばかられた。
 そこで、きくが自分から話したくなるまで、毎日一緒に寝ることにした。
 うなされていてもすぐ気づけるし――それだけではない。寂しかったり心細かったり、しないときも。誰かに体を預けて寝るのは、とても心落ち着くことだ。
 きくと時折そうするうちに、あずみはすっかり味を占めてしまっていた。
 一度だけきくの体が反応してぎょっとしたこともあったけれど、あれ以来そんな感じはないし……。
「くっついて寝よう? きく」
 あずみは連夜にこにこときくのふとんに潜り込んだ。
 が、その笑顔も数日のこと。一日、また一日とたつうちに、きくの顔色はみるみる悪くなっていった。目の下にはくっきりとくまができ、歩く足取りもふらふらとおぼつかない。
 さすがのあずみもどうやら自分が追いつめているらしいと勘づき出す。しかし身に覚えはない。以前はきくの方から共寝を申し出てきたのだから。
 こうなると隠し事を問いたださずにはいられなかった。
 あずみはふとんの上にあぐらをかき、どんと自分の胸を叩いた。
「きく、俺に言いたいことがあるんじゃないのか? 何を隠してる?」
310『同道』9:2005/12/24(土) 14:03:24 ID:KId+TeJm
 かかってこい、なんでも受け止めてやる、という覚悟だったが、伝わらなかったようで、きくは己の咽喉を見つめるごとくうつむいている。
「きく、俺が信用できないか?」
 頭を振る。
「どうしても言えないのか?」
 きくは動きを止めて、怯えた鼠のようにあずみを見た。
「言ったらあずみは一緒にいてくれなくなるもの。そんなの絶対に嫌だわ私」
 しなを作って横座り。口元に当てている手は小指がぴんと立っている。馬鹿に女らしい振る舞いをする近頃のきく。
「それも。一体どうしたんだ。似合ってるけど気持ち悪いぞ」
 憤慨するかと思いきや、きくは暗い顔で唇を噛みしめた。あずみは慌てて頭を下げた。
「ご、ごめん。でも本当にどうしたんだよ」
 きくの柳眉がきっと張った。
「女になりたいのさ! でもなりたくねぇんだよ。ああもう」
 あずみはきょとんとしてしまった。きくはにやりと口を歪める。
「俺はっあずみがっ」
 急に泣きそうな顔になり、消え入るような声になった。
「……あずみが好きなんだよ。……気持ち悪いか?」
 あずみは目を瞬いた。
「そんなわけないだろう? 嬉しいよ」
「ばかやろうっ! なんて馬鹿なんだおまえはーっ! わかれよ!」
 きくの呻吟が胸にぶつかる。だがあずみは思考の筋道を見つけることができなかった。
「俺はっ、女なのに……男として、あずみに惚れちまったんだ……っ」
 その一言が、届くまで。
311『同道』10:2005/12/24(土) 14:05:45 ID:KId+TeJm
 きくは背中を丸め、決してあずみを見ようとはしなかった。ぽつりぽつりと話し出す。
「……こんなんじゃ駄目だってのはわかってるさ。ただでさえ役に立てないのに、完全に重荷になっちまう。けど、あずみといると、俺のあそこが……」
 首を振る。
「でも何もしない。あずみが嫌がることは絶対しない。本当に好きなんだ。俺は今まで数え切れないくらいの人間をだましてきたけど、これだけは本当に本当だ。信じてもらえるならなんだってする。気持ち悪いっていうなら二度と触れない。……だから一緒にいさせてくれよ」
 あずみは言葉が出なかった。
 きくが本気であることは疑うまでもない。今日まで気づかせないよう細心の注意を払ってきたのだろう、だからこれほどにやつれてしまって。そして今、何もかもをさらけ出し、静かに裁かれるのを待っている。
 ところがあずみは自分の気持ちがまったくまとめられなかった。きくのためにも旅のためにも、応か否か、はっきりとせねばならないのに。しかし……
「きくは大切だ」
 明確に答えられるのはそれだけだ。
「……俊次郎どのが好きだった。……抱かれてもかまわなかった。だが、振られてしまった」
 そのときぬくもりをくれたのはきくだった。
「女は抱きしめられて甘えるのが一番幸せだって言ったな。それをしてくれたのは……」
 刺客だったのに、仲間を裏切ってまで一緒にいてくれるきく。爺が殺され、勘兵衛様をこの手で殺し、もうひとりぼっちだと思ったときにできた大切な連れ。歩く災厄である身ではなかなか口にできないけれど、約束は、自分にとってもかけがえのないものであったのだ。
「……きくは好きだ。きくとくっついて寝るのも好きだ。でも」
 きくの拳が白くなる。
「わからないんだ。男と女のあれをするような好きなのかどうか。違う気もする、そうかもしれないとも思う」
 曖昧で誠意のない答なのに、何故かきくは心から安堵したようだった。
「いいよ、そんなこと全然! それより、じゃあ一緒にいてもいいんだねっ?」
「いや、試してくれ」
 あずみは間髪入れず告げた。
「俺がどこまできくの気持ちを受け入れられるか。そうすれば俺の心がはっきりする」
312『同道』11:2005/12/24(土) 14:07:23 ID:KId+TeJm
 きくは唖然と目を見開く。
「ば、馬鹿なこと言うなよ! あずみは男がどういうもんかわかってないんだっ!」
「……受け入れられなかったら、俺たちは別れた方がいい」
 これ以上の道行きはきくを傷つけるものにしかならないということだから。あずみは腹を決めていた。失うかもしれない。それでも宙ぶらりんではいられない。
 そっときくの手を取ろうとすれば、渾身の力で振り払われた。
「駄目だ! 俺にはそんな資格ないんだっ!」
 ――何かが砕け、飛び散った。
「きく。おまえまで……そんなことを」
 声が震える。
「一体なんだ、資格って。……俺のことを好きだと言ったじゃないか」
「あ、あずみ……」
「嘘なのか……?」
「違うよあずみ! 信じて!」
 きくの叫びは痛ましかった。あずみは声帯を振り絞る。
「だったら……っ」
 束の間でいい。――抱きしめて、甘えさせて。

 男の精にまみれた汚い口が、とうとう天女の唇を奪ってしまった。
 寸前まで罪悪感に押しつぶされていたのに、今では飢えた獣のあさましさだ。切羽詰まった息づかい、甘い唾液が、脳細胞を煮溶かしていく。
 夢中になってむさぼり息苦しくなって離れれば、とろけた顔と自分の間の粘ついた銀糸にまた熱が上がった。
 その瞳に映ればそれでいいなんて甘っちょろい戯れ言はくそくらえだ!
 あずみのすべてを奪って、奪って、奪いつくして、この胸に閉じこめてしまいたい。俊次郎にも左近にも、誰にも渡さない。俺だけのものだ!
 きくはようやく本来の自分と向かい合えた気がした。
313『同道』12:2005/12/24(土) 14:09:40 ID:KId+TeJm
「好きだよ、あずみ。心から本当だ。信じてくれるまで一生懸命可愛がるからね」
 衣擦れの音が闇夜に響く。あずみの裸体はまだ誰も触れていない輝く新雪を思わせた。冷気のせいか、少し鳥肌が立っている。きくは鳩尾の辺りをそっとなでた。
「できるだけ緊張しないで。俺もある意味初めてなんだよ、余計緊張しちまう。それとももう嫌になった?」
 ――まだ服を脱がせただけだけど。
 少々の揶揄をにじませる。
「……いや、大丈夫だ」
 あずみは律儀に返事をした。
 いたわる姿勢を見せてはみたが、きくはもはや途中でやめるつもりなどさらさらなかった。それどころか決して拒否させないために、一番抵抗が強いだろう場所をさっさと陥落させておくことにした。
 まろやかな乳房をなでながら腿の付け根にすっと指を差し入れる。あずみの顔が強張ったので、ぺろりと耳を舐めてやった。
「……っ、くすぐったい」
 そう素直に反応されるとねぶり尽くしたくなってしまう。
「気持ちよくしてあげるから。ちょっとだけ我慢してみて?」
 指と同時に舌を進めた。あずみの耳孔を押し広げるようにして舐めあげ、時には最奥まで進入し、時には入り口まで引き上げてちろちろと玩弄する。
 あずみは最初こそ笑っていたが、すぐに息も絶え絶えと身をよじった。きくはうっすらと微笑する。解放したように見せかけて、耳の裏に息を吹きかけた。
「んぁ……っ!」
「……可愛い声」
 あずみが恨めしげに見上げてくる、その瞳さえ、なんて扇情的な。
 きくは忍ばせた指が探り当てた女の花芽を、すっとなぞって軽く弾いた。
「や……っ! ああ」
 歯を噛みしめて、くぐもった声をなおも押し殺そうとするあずみ。言われて声を出すのが恥ずかしくなったらしい。
 きくは小さく、聞こえるようにため息をついてみる。
「あずみ、拷問じゃないんだ、ちゃんと声を出してくれないと。わからないじゃないか、気持ちいいのか、本当は嫌がってるのか」
 潤みだした瞳と、紅潮した頬。力が入りすぎて震えるつま先に、形を変えた胸の頂。それらはすべて愛しいものだけれど、それだけでは満足できない。もっと我を忘れてくれないと。全身全霊でこの指に、応えてくれないと。
「……ちゃんと教えて。今の……気持ちよかった?」
314『同道』13:2005/12/24(土) 14:12:32 ID:KId+TeJm
 きくは秘唇の縁をなでてからほんの第一関節、指を差し込み、くるりと回して抜き取った。そしてもう一度、震える突起を指で弾いた。
「ふぁっ! やめ」
 閉じたままの太ももに、あふれ出す蜜の恥ずかしい光がしみ出している。
 きくはあずみの耳に囁いた。
「両方一緒にしてあげる」
 舌と指で、同じ動きを。
 逃げを打つ体にのしかかり、鉄のように硬くなった勃起をすりつける。宣言通りにしてやると、あずみは短い悲鳴をあげて、ぴくぴくと体を痙攣させた。
 整った顔がよだれに汚れる。性に関して真っ白な相手に急ぎすぎたかもしれない。
 あずみが正気に戻る前に、
「……気持ち悪い?」
 ――罠を仕掛けた。
 あずみの首はかろうじて左右に揺れた。
「……男か女かわからない奴に触られてるのに?」
 あずみは息をするので精一杯といった様子だったが、それでもうっすらと微笑して。
「きくはきくなんだろ」
「……そう思ってくれるんだ……、じゃあさっきの、ちゃんと気持ちよかった?」
 あずみの口が閉ざされる。しばらくしてから、こくりとうなずいた。
「よかった! もう一回してあげる!」
「ば、馬鹿やめろっ……んんんっ! やぁ……っ」
 きくにはあずみがああいう聞き方をされれば拒絶できないとわかっていた。もらった言葉はどれも無理矢理引き出したものに過ぎない。それでもとても、嬉しかった。
 あふれる熱誠はすべてあずみのもとへ。この手であらゆる喜悦を与えてやりたい。
315『同道』14:2005/12/24(土) 14:14:44 ID:KId+TeJm
 脱力したあずみの脚を持ち上げて大きく割り開き、抵抗が始まる前に秘裂の沼に鼻を埋めた。ぬらぬらとしたぬかるみはきくを歓迎してくれた。
「あ……っ、き、きく! 何をしている!」
 あずみは慌てて脚を閉じたが、きくの頭を押さえつけただけだった。
「……あずみのここ、どきどきするにおいがする。温かくて、それに……」
「ひゃっ」
「とても美味しい」
 ただ一言で、奥からとぷりと蜜があふれ出す。きくはおぼれそうなほど舐めすすったが、舐めても舐めても際限がない。
「んはぁ……っ、や、あぁっ……ん、く、あああっ」
 あずみの脚が自然と開いてきたので、膝裏が頭と同じ位置に来るよう押し上げてやった。
「こ、こんな……っ!」
「恥ずかしい? でもさっきの恥ずかしいこと、気持ちよかったろ? ほら、きくを信じて」
「ちが……っ!」
 今やぱくぱくと開閉している淫靡な華の上、ちょこんと突き出た突起を弾く。あずみが嬌声をあげるしかなくなったのを確かめて、親指と中指でそろそろと皮をめくりあげる。指が滑って思うようにならなくても、丁寧に、執拗に。
 きくは女性器のことをよく知らないが、その部分だけは男と大差ないはずなので、繰り返し愛撫すればあずみを満足させられるだろうと考えた。
 ようやくむき出しになった中身をちょんと舌でつついてやる。あずみの体が跳ね上がる。
 脚を押さえる役目を膝に回して、空いた方の手で洞窟の中を探索すれば、手のひらに小さな泉ができた。肉襞をほぐすようにかき回し、上の壁を強く押し上げる。
「うあぁぁ……っ!」
 きくはうっとりと微笑んだ。
「今の、気持ちよかった? さっきのは?」
 聞こえているのかいないのか、あずみの反応は返らない。もしかしたら思考力が溶けたのかもしれない。
「じゃあ両方一緒にしてあげるから、どっちが気持ちいいか教えてね」
 上と下から一つの場所を責め続ける。あずみが耳を聾さんばかりの声を出す。
「ほら、どっち?」
 内部の収縮を指で感じる。もっと感じさせたい。もっと、もっと!
316『同道』15:2005/12/24(土) 14:17:00 ID:KId+TeJm
 きくはすでに気が狂いそうなほどあずみの中に入りたかったが、自分の愛撫に敏感に応えてくれる愛しい体を見ていると、そんなことはどうでもいいような気になった。
 次は何をしてあげようか。乳輪をもどかしいほどなぞってみようか、尻のすぼまりをいやらしく侵してみようか。
 欲求は次から次へとわいてくる。できることなら髪の毛の一本一本まで愛してやりたい。
 耳が弱いなら首筋はどうだろうか、と考えて、あずみが両手で顔を覆っているのに気がついた。
「……っく、うう……ふぇ」
 ――泣いている。
 あずみが泣いている。違う、泣かされている。
 きくは途端に頭がくらりとした。
「あ、あずみ……? どうして……? 気持ちよかったろ? あずみ?」
「ばかやろ……っ、おまえなんか……嫌いだ」
 ――一瞬にして。世界は冷たく重いものとなり、一寸先さえ見えない暗闇の帳に閉ざされた。
「な、なんでっ? なんでそんな……。あずみっ、ごめんよ、ごめんよぉ。どうしたら許してくれるんだ? 言ってよ、俺は一体何をしちまったんだっ」
 夢で見た、苦痛の広がる亡者の巣。あずみのいない世界、終わらない悪夢。
 きくは戦慄し、あずみのぬくもりにすがりつく。
「許してくれ。好きなんだよ……好きなんだよ……あずみが好きなんだよぉ」
 涙の粒がまつげを揺らす。きくは固くまぶたを閉じる。
 けして離れないように、腕にしっかりと力を込めれば、華奢な体は身じろぎをして。――まるで鳥が飛び立つように。
「駄目だよ。置いていかないでよ」
 きくは懸命に追いすがった。
317『同道』16:2005/12/24(土) 14:19:03 ID:KId+TeJm
 しばらくして、あずみが消えそうな声で何事かつぶやいた。
「何? なんて言ったの? もう一回言って! お願いだから!」
 きくは汗をかいてあずみの顔をのぞき込もうとしたが、あずみはきくの胸に頭を押しつけてびくともしなかった。
 もうしばらくして、今度はかろうじて耳に届く声で言った。
「寂しかった。……きくが、俺の体に夢中で。俺の心は、置いて行かれて。寂しかった……」
「あずみ……」
「あんな怒濤のような快感じゃなくていい」
 あずみの腕が背中に回る。きくの心に穏やかな海が広がっていく。嵐のような激情は影を潜めて、ただ愛しさだけがそこに残った。
「……すまん。……好きだよ。でも俺はやっぱり。資格……なかったみたいだ」
 きくはあずみを閉じこめていた腕をほどいてやった。
「……もう寝ないと」
 しかしあずみが離れない。
「これで終わりなのか? きく」
 きくは苦笑する。
「あずみが嫌なことはできないよ」
 ――今さら言えたことではないけれど。
「続きがあるんだな? まだ俺は嫌じゃないぞ、今のきくなら。……大丈夫だから、続きを頼む。このままじゃやっぱり寂しいじゃないか」
 きくは硬直し、逡巡した。ぐるぐると考えたが、自分の中心があずみをあきらめるなんてできようはずもない。でも。だが。しかし。
「本当に、嫌じゃない……?」
「ああ」
 結局理性は欲望に敗れた。
 それでも今度は優しく、いたわるように、そっと……触れようと思ったのだが、あずみの秘所はすでに充分すぎるほど濡れていたので、胸や尻も弄ってやりたいとか、首筋も責めてみたいとか? 考えて考えて考えたあげく……
「……今度はちょっとかなり痛いかもしれないんだけど、大丈夫……?」
 あまりにもおそるおそる顔色をうかがったためか、あずみはきょとんとした顔をした。
318『同道』17:2005/12/24(土) 14:21:49 ID:KId+TeJm
「……男と女は痛いことをするのか?」
「……一番最初はみんな痛いんだ」
 きくの心臓が早鐘を打つ。さっき見たあずみの泣き顔が頭から離れようとしない。
「無理はしちゃ……」
「みんながそうなのなら、おそらく大丈夫だ」
 きくはごくりとつばを飲み込んだ。
 ――たっぷりと蜜をまとわせて、そっとあてがう。あとは腰を突き出すだけだというときに、きくは本当にいいのだろうかと躊躇した。
 男をくわえてきた自分の、男に嬲られてきた一物が。果たしてあずみの純潔を奪っていいものか。美しいあずみを内側から汚すようなものではないか。
 かといって他の男に代わられるのは許せない。そんなことになる前にそいつの息の根を止めてやる。
 きくは静かに目を閉じているあずみの頬を軽くさすった。
「……好きだよ。あずみは?」
 望んだ答が返るなら――。
 あずみはまつげを細かに震わせて、その眼差しをゆっくりとこちらに向けた。
「……うん、好きだ」
 きくは同じ意味と信じた。
319『同道』18:2005/12/24(土) 14:23:55 ID:KId+TeJm
「うっ……あああ……っ!」
 無数の襞が侵入を拒み、やがて受け入れ、引き込んでいく。温かな粘液の温度は脳に伝わる頃には沸騰するまでになっていて、あらゆる受容器を鋭敏にする。あずみとの境がなくなる様が、つぶさに理解できるのだ。脳神経が焼き切れるような――歓喜。
 立ちはだかる脆弱な壁を、きくは二、三秒動きを止めて、一気に奥まで貫いた。
「あぐっ……ううっ、くっ」
 愛しくてならないあずみの苦悶。うめきの漏れる口に吸い付いて、固く抱き合ったまま何度もつばを交わし合う。
 ――あずみのために生まれ変わった。あずみの世界に生まれ変わった。……好きだ。誰にも負けないくらいあずみが好きだ。
「動くよ……?」
 きくはゆっくりと腰を揺らめかせた。
「……んっ」
「……痛い?」
 あずみは少し考え、首を横に振る。きくは腰で円を描き、徐々に大きなものにする。あずみの内部で存在を主張するように、襞と襞とをかき分けて。自分がひらいた道を指し示すように丹念に。
「あ、……あんまり動かれると、少し……」
「うん」
 きくは動きを止めて、いたずらっぽく口づけた。
 あずみは目をぱちぱちしたが、やがて華が綻ぶように笑った。
 その不思議な瞳には、両方ともきくの姿が映っている。そしてきくの瞳にも、あずみが映っているに違いなかった。
 二人は長いこと抱きしめ合い、そのうちのんびりと律動し、また動かなくなって、いつまでも一つのままでいた。

 翌朝、まったくもってうぶなことに、きくはあずみの顔が見れなかった。赤くなるわ騒ぐわ逃げ出すわ、それから……怯えていた。
 好きだ、と、昨夜は信じられた言葉が、今朝はとんでもない勘違いのように思える。あずみは行為をちゃんと理解してくれただろうか。自分などと最後までいってしまったと知れば、後悔するのではなかろうか。
320『同道』19:2005/12/24(土) 14:25:35 ID:KId+TeJm
 きくは長々とうなり声を上げ、やっとのことでつぶやいた。
「俺は女だけど、あずみの前でだけは男で、本気であずみが好きだってこと、わかったよな?」
 あずみが首肯する。
「気持ち悪くないか……?」
「いいや。それがきくなんだろう?」
 再現された昨夜の会話を、きくは新鮮な心地で受け止めていた。
 心は女なのに、体だけは男のもので。女になりたくて仕方がないのに、決して女になりきれなくて。なのにあずみに恋をした。以前はあざむいて殺そうとまでした相手に。
 正気を疑われそうになるほどちぐはぐな思考だ。十中八九まともじゃない。だのに。
「そうだよ……それが俺なんだ」
 すとんと胸に落ちてきた。
 もう迷わない。自分が何者か知る人間がここにいる。ただすべてを見せていたなら、それだけで。
 きくは顔を上げてあずみを見た。
「……一緒に旅、続けられるか?」
 その返事は――

 さて旅籠を出ようというとき、あずみは荷物の中に妙な包みが入っているのを発見した。小さくて軽いものだが、布巾で包んであるうえ紐でぐるぐる巻きにされていて、いかにも厳重に封印されている、といった感じだ。
321『同道』20:2005/12/24(土) 14:27:07 ID:KId+TeJm
「きく、これはおまえの持ち物か?」
 一応確かめてみる。互いに心当たりがなければ刺客が忍ばせたということもあり得る。
 が、不審物は目にもとまらぬ早さでひったくられた。
「どどど、どうしてっ、かかか、隠してっ」
 どもりすぎだが何が言いたいかはだいたい察しがついた。あずみは荷物をかき回し、きくの小物袋に穴が空いているのを見た。
「……なんだ、見られて困るものなのか?」
 もう隠し事なんてないと思っていたのに。少しだけ、面白くない。
「行くぞ」
 さっさと歩き始めたら、きくが慌てて追いかけてきた。
「ちょ、ちょっと待ってよあずみ! ちがーう! 違うって! これはねー!」
 あずみは微笑み、足を止めて振り向いた。


終わり。
322名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 14:31:18 ID:KId+TeJm
コテ記憶を忘れんうちに消すためのレス

前のに感想くれた人ありがとう
323名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 00:07:19 ID:tsdKHOi9
描写わかりにくい、いまいち。
324名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 00:21:40 ID:xNKbdf6W
あずみの凛々しさ優しさ、戸惑いや幼さがよく出てるし
きくの行きつ戻りつの心理描写も秀逸だと思う。
エロだけどやさしくほのぼのとした気持ちになれたよ。
ありがとう。
325名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 01:23:44 ID:+11rafNG
>>323
マジ批評感謝
文章書くの難しいわ
>>324
ありがとう
なんかすごい報われた
326名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 19:33:49 ID:3IzSaYzh
正直うきは編の方が好きだけど、きく編もキャラがそれっぽくて良かった。
是非次は兵介あずみをお願いしたい。
本番まで無理にいかなくてもいいので、
27巻二人で海辺のシーンとか彦虎死んで号泣するあずみを抱き締める兵介のシーンとか、その辺で話膨らませて。
自分も書けたら書く
327名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 22:21:34 ID:cNqu++Z0
やるな
328名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 01:36:01 ID:HNVM8Iaa
遣るな
329名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 20:47:35 ID:zRiNrpYa
該当板にあずみスレがないので、あずみのエロ画像をupしようと思うのですが、
いいアップローダー教えてください。up初めてなので、よろしくお願いします。
330名無しさん@ピンキー:2006/02/02(木) 22:51:56 ID:ZekMrv+W
>>302〜321
遅レスながら、GJ!
きくが死んだ場面読んでからずっとモヤモヤしてた気持ちが
やっと晴れた気がした。
331名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 18:00:40 ID:0oceDCcv
>>329
待ってます!(`・ω・´)
332名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 01:47:34 ID:88YoMcRG
保守
333名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 04:05:03 ID:k6h8o+2B
保守
334名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 21:32:33 ID:UPEnmiAg
保守
335名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 21:08:03 ID:RZl1jToX
保守続きでさみしいな
336名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 12:50:36 ID:IMoYjaKm
革新
337名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 03:07:30 ID:hg2M8GuW
「書く」「書きたい」って言ってた人たちご存命ですか
待ってるずっと待ってる
338名無しさん@ピンキー
掻きたい