かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その9】
保守
新年明けて40レス程度だ。存在価値はもう、ない
で?
次スレは人間以外の女の子とのお話スレと合併した方が良いと思う。
保守
665 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/22(火) 03:00:33 ID:bquXAlN0
test
虹の月の教え子たち
青年は安アパートの二階から夜空をながめていた。
彼、灯明寺 刻紀(とうみょうじ こくき)は大学の教育学部に合格し、田舎を出て地方都市に移り住んだが情熱が続かず、卒業前にみずから辞した。
本家が分家がとうるさい実家に戻る気にもなれず、今では塾の講師で家賃などをまかなっている。
夕食時を過ぎて他の住人たちの喧噪も静まり、刻紀は睡魔に襲われ目を閉じた。
まどろむその耳に「しゃらん」と鈴の音がとどいた。
はっと身を起こす。心当たりがあるのか、まっさきに窓の外を見た。
夜空にこうこうと輝く満月が、波打つ水面にうつっているがごとく輪郭をゆらめかせている。
波紋のようにまとう色とりどりの光輪が虹のようだ。
地上では周囲から人の気配が消えている。近所の喧噪、道行く車の音、風まで吹かない。
しゃらん、しゃらん、人の歩調で鳴る音は近づいて、彼の部屋に続く共用の通路で鳴っている。
まさに刻紀が住む部屋の前で音は止まった。
「コクキ講師ーっ、迎えに来たぞー」
少年にしては高く、少女にしては低めな、はつらつとした声が刻紀を呼んだ。
本当に来たなあ、と刻紀は心のうちで独白した。
ちょうど二十八日前の満月の下で、彼は燕美(えんび)と名乗る女性に出会った。
鎖骨あたりまでゆるやかに波打つ黒髪を下ろし、足元まで隠す羽衣のような衣装を身につけた、若い外見に似合わず古臭いしゃべり方をする女性だった。
自分のことを「わし」と呼ぶのだが、裏を見通せない表情に、それが意外とさまになっていた。
燕美は彼に講師の仕事をもちかけた。同時に聞いた事情は信じ難いもの。
彼女は人外の本性をもつ異界の住人であり、後輩を導く指導者でもある。
教え子たちを見聞旅行に引率していたが、虚空回廊の事故により故郷への帰還がかなわなくなった。
ただ生きるだけなら仮の住まいとしている小世界で事足りるが、健全な人格の育成には数多くの他者との触れ合いが不可欠だ。
ゆえにこの世界に降りたい。その助けになって欲しい、と彼に言うのだ。
刻紀が応じると燕美は大きな鳥に姿を変えて、彼をどこぞへと連れていった。
どんな経路を経たのか目を回していた刻紀の記憶にはなかったが、着いたところは緑が萌える大地と青い空をもつ広大な空間。
そこで十数名の少女たちと引き合わされた。
彼女らは和風とも中華風ともつかない装束を身につけていたが会話に不便はなく、持参したわずかな資料で常識の一端を伝えると人並みの飲み込みを見せる。
少女たちの外見や性格はそれぞれに個性的で、かの世に来ればどんな服装が似合うか、どんな言葉遣いが似合うか、楽しく会話したものだ。
初回の講義も終わり、彼を戻すための小部屋に連れていかれた。
床に描かれた簡単な円陣に入ってすぐ、意識の断絶もなく、刻紀は自分の部屋にいた。
その前に告げられたのだ。これから満月の夜には教え子たちに迎えに行かせると。
「コクキ講師ーっ、ここだろう!。ここだよなぁ、だよな?」
彼を呼ぶ声が大きくなり、小さくなり、寸づまる。
相手が困惑する気配を感じ取り、意を決して彼は応えた。
「ここだとも。この声は馬鈴君だね、よく来てくれた。今出る」
講師としての正装、彼には精一杯のスーツを羽織ると刻紀は玄関を開けた。
まず目についた真紅の髪。流れるままに下ろしているのに、ところどころのくせっ毛がはねっかえりな印象をかもしだしている。
刻紀からは見えないが、腰までとどく髪を後ろで縛っていたはずだ。
力強い眉に猫のようなツリ目。ちょっと低めの鼻。ほどよく焼けたクッキーのような褐色の肌をもつ少女が立っていた。
少女と呼ぶには少々長身だ。目線の位置は刻紀のわずかに下。
引き締まった脚のラインがはっきりわかる細身のジーンズにスニーカーを履き、白黄のストライプシャツに黒ジャンパーを羽織っている。
朱に染まったほほに手をあて、なぜか照れていた。
「名前に『君』づけだなんて、あたしはそんなに偉いもんじゃないやい」
目をにんまりと細め、口許がゆるんで、すっかりやにさがっている。
甘言に下心を疑わない、子供の笑顔だ。
「こちらでは目下の相手を『君』づけで呼ぶんだ。慣れた方がいい。それにしてもいい格好だね。馬子にも衣装だ」
「てへへ、コクキ教師に見立ててもらった服だぜ。燕美先生の力添えで化けたんだ」
その場でくるくるまわってみせる。束ねられた後ろ髪が馬のしっぽのようにゆれ跳ねた。
「では行こう。どうやって連れていってくれるのかな?」
「もっと広いところでないと見せられないな。外へ行こうぜ、コクキ講師」
二人は並んで歩いた。馬鈴の一歩ごとにしゃらんと音がする。
廊下を、階段を、月光を遮るもののない屋外へと移動する。
通る者のいない車道に出たところで馬鈴はスキップするように前へ出る。手を広げてふりかえった。
「見ていてくれよ、あたしの本性!」
赤髪が燃えるようにゆらめき、足元から炎が吹き出す。赤く照らされるが熱くはない。
炎の中で少女の輪郭が溶けて色の濃淡が混ざりあう。
時間にして数秒の変化だった。踊る火炎は四足の獣の形へと収束していく。
たてがみや足首に熱をもたない炎をまとう、見事な赤毛の馬がそこにいた。
少女の形をしていたときと同じ声でしゃべる。
「さあ、乗ってくれよ。だれかを乗せるのは初めてだけどな」
馬体は大きい。背は刻紀の目線よりも高い。
くらもあぶみも着けない裸馬によじ登ろうとする刻紀の試みは何度も失敗した。
「とろいなぁ」
じれた馬鈴は刻紀の服の肩口を咥えて、軽々と引き上げる。
無理がかかって、安物スーツの縫い目は嫌な音を立てて裂けた。
「あれっ!。あの、そろ、あたしのせい?」
「大丈夫だよ。燕美さんに連れてかれたときも服が破けたが、帰ったら元通りになっていた。さあ、行こう。お願いするよ」
刻紀はなだめて出発をうながした。
馬鈴は応えて歩きだす。しゃらん、しゃらんと音がする。
刻紀がまたがる馬体がぐぐっと力を溜めて、跳躍した。
しゃんしゃんしゃんと鳴り響く鈴音とともに、馬鈴は空中を駆けていた。
「馬鈴君は翔べるのか!?」
「おうよ!。あの月まで行くんだぜ」
言う通り、躍動する馬体の進行方向はまっすぐ月に固定されている。
振り向けば刻紀が見知った景色ははるか後方にあり、近隣の山並みもすでに越えていた。
「どれぐらい速いんだ!、君はっ」
「ふふん、音と同じくらいさ。というより、あたしは足音そのものなんだ。薄い壁や、細い隙間だって通り抜けられるぜ」
「音速か!。というより波動の性質をもつのか」
それでは真空の宇宙は越えられないだろうと思う刻紀だが、何かがあるはずだと周囲の変化に注意を向けた。
正面の月が、しゃんしゃんと鳴る足音に同調してゆらいでいた。
波紋が広がるように大きさがどんどん増して、虹色の輪が視界を埋めていく。
それが真後ろにまで到達したとき、正面から吹き出した虹の奔流が視界にあふれた。
「通ったーっ!」
馬鈴の歓声が風にのって響いた。気づくとそこは草原、辺りを見渡せる丘の上だった。
太陽はないが昼の明るさの青空の下、地平線まで続く草原には潅木が点在している。
生命感があふれる心地よい風景が広がっていた。
風に吹かれゆったりと歩く赤毛の馬は、炎を吹き、つまずいたかのように崩れ落ちる。
刻紀がつかんでいたたてがみは髪に変わり、またがっていた馬体は汗だくの少女に変わっていた。
単独での変化は衣服を再現できず、風にさらされる焼菓子色の素肌に汗のしずくかきらきら輝いている。
深い呼吸が肩を上下させているが、横顔には苦痛ではなく達成感の笑みが浮かんでいた。
「失礼、すぐ退くよ。疲れたかい?」
返事は行動で返ってきた。
少女の背中が弓なりに力を溜めて、快調を誇示するように跳ね起きた。
「そりゃっ」
「うおっ!?」
刻紀は馬鈴もろともゆるい斜面をころがっていく。少女の笑い声が響く。
「あははっ!、はははっ」
転がり落ちた先で草まみれになった刻紀は、心静めて馬鈴に問いかける。
「それで、ここから皆のところへ行くにはどうすればいいのかな?」
馬鈴は寝転がり、笑いながら身をよじっている。一見、楽しそうだ。
細身の身体は十分な筋肉と適量の脂肪がついて骨張らず、張りのある肌が生気ではちきれそう。
あおむけの胸では小ぶりな乳房が重力につぶれることもなくぷるぷるふるえている。
無防備に脚を開いて、腰を浮かせて、しかし誘っているようでもない。
ときどき笑いが途切れて息を整えるが、またしゃっくりの発作ように笑い出す。
目は涙ぐんでいる。ままならない身体に焦れて、困惑しているとも見えた。
刻紀は燕美の言葉を思い出した。
『刻紀どの、未熟なあの子らがこの世に回廊をつなぐには、本性にもどりて異能を尽くさねばならぬのじゃ。
解放された始原の本能に捕らわれたあの子らを、どうかあなたなりのやり方で鎮めてやっていただけまいか』
「そういえば、発情した馬は人が笑うような顔をして匂いを嗅ぐというが」
刻紀はあおむけの馬鈴を逃げられぬよう組み敷いた。
騎乗するようにひざで胴をはさみ、両手は二の腕を捕まえる。
しっとりと吸いつくような乙女の柔肌の手触りに、刻紀の鼓動がすこし早くなった。
「あはっ、んっ!、んくっ」
逃げるどころか馬鈴は刻紀にしがみついた。
開いたえりもとに顔をおしつけ、すすり泣くように鼻を鳴らす。
だきつく少女の手足にぎゅっと力がこもり、深い吐息とともに脱力した。
「ふあっ、あぁうぅ」
ぐったりと横たわる少女の脚のあいだで水音がする。男の匂いに当てられ馬鈴は失禁していた。
「馬鈴君、しゃべれるかい?」
「おっ、おう。でもよ、なんか変なんだ。股がじんじんして、腰んとこが浮くみたいで頼りねえんだ」
馬鈴にとって何より誇れる自慢の脚が、すがるように刻紀の腰に絡みつく。
そこに何かが足りないのだと、開いた傷口をふさぐように、胎内へつながる入り口を押しつける。
少女の顔は上気していても覇気はなく、ただ困惑し、上目使いに助けを求めていた。
馬鈴前編 終わり
後編へ続く
名前の読みは馬鈴(ばりん)です。
途中GJ!
ヴォッキした
本能の赴くまま野獣のようなセクースが待っているのか!?
続きを激しく期待!
676 :
SS二年生:2005/03/29(火) 06:14:12 ID:ZsbiAMA1
う・・・うますぎる
最高だ。
つーかグッジョブ。超グッジョブ。
凄い上手い作画ですね。デフォルメかかっていない炉がすごいことなってて、変な気分になりそう。
あと、2ページ目で山びこがホヤーッて返ってきてる。天邪鬼はこんときから目つけてたのかな。
>>666-671の続き 虹の月の教え子たち 馬鈴後編
「こうすればいいのかな?」
刻紀(こくき)の指先が馬鈴(ばりん)の背中をすべっていく。
背筋をなぞり、尻の谷間をすり抜けて、まばらな赤い茂みに隠れる浅い谷間を探り当てた。
耳たぶよりもやわらかいひらひらのあいだに中指の腹が埋められて、指先が帽子をかぶった女核をなでる。
それぞれあいだにたぶたぶをはさんだ五本の指が、風をさえぎり人肌の温もりを与えてうごめいた。
「んっ、うん、うんっ!。でも、もっと」
急にしおらしくなった馬鈴は何かをねだる。本人にもわからない何かを。
無情にも刻紀は少女をふりほどき、立ち上がった。
「ああっ!?」
泣きそうな顔でしりもちをつく馬鈴の前で刻紀はネクタイをほどいた。シャツのボタンも外していく。
男の身体への興味に涙を忘れた馬鈴を、隠さず、見せつけるでもなくすべて脱ぎ終わった刻紀が呼んだ。
「さあ、おいで」
刻紀の下半身に好奇の視線を向けていた馬鈴は、今度は彼の表情に目を向けた。
覚悟を決めた男の顔だった。
「おっ、おう。今度は逃げんなよ」
身長差は数センチ。馬鈴の細腕が刻紀の首を捕まえ、刻紀のたくましい腕が馬鈴の身体を捕まえた。
無粋な布地を介さない男の肌は熱く心地よかった。下腹部にはとりわけ熱いものが触れて、少女への情熱が伝わってきた。
身体のうずきと心のせつなさがぶり返す。
「こんなの変だぜ。きっと、あちらの空気に当てられて病気になっちまったんだ」
「病気じゃないさ。証拠にその症状を直してみせよう」
馬鈴を抱く手が背筋をなでる。少女は眉根を寄せて、熱病にうなされているかのように喉を鳴らした。
何度となくくりかえして、嗚咽にも似た鼻声に変わるにしたがい、馬鈴の足腰から力が抜けていく。
男から離れまいと、少女は目の前の鎖骨にかじりついた。
「うっ!」
刻紀の苦悶は馬鈴にとどかなかった。
少女はただ触れていたい、離れまいとしがみついた。乳房がおしつぶされてずきんとうずく。
髪がなでられた。ほどけて乱れる紅髪を、すいて、整え、くすぐる指に、すこし安心してあごをゆるめた。でも離さない。
相手と肌のふれあいをひたすら求める少女は腰が浮いたと感じた。だれかが尻をつかんで持ち上げている。
浮いた脚から力が抜けて、ゆるんだ下腹部から熱いものが染み出し、うちももを濡らす。
股のすきまに何か熱いものが入りこんだ。それはなぜかつるつるすべって落ち着きがない。
それが股ぐらの奥をつつくたび、寒気にも似た感覚が背筋に走り、脚はひくつき身は縮む。縮む身体から熱いものがとろとろ流れ出す。
追い出そうと脚を閉じかけたが、少女の尻をつかむ手が脚にまわって、さらに身体を開かせる。
そして、熱いそれはひとところに食いこんで、貫いた。
「ひいっ、ああああっ!!」
たまらず鳴いてくちが離れた。
強烈な異物感。なのにおなかの底から沸き上がる充実感に身体が熱い。めまいがするほど鼓動は高鳴り、息が苦しい。
「やあっ!、はあっ、あっ!、ひいいっ」
目に汗がしみてよく見えない。少女を治すと誓った男を、二本の手で必死に探る。その必要もなかった。
力強い手が少女を捕まえてくれた。抱き寄せて、なでてくれた。
涙で洗った目を相手の肌でぐりぐりぬぐうと、馬鈴は間近に刻紀の顔を見つけることができた。
「馬鈴君は元気がいいね。痛いとか苦しいとかはないかい?」
「あっ、あっ、あたしどうなっちまったんだよっ!?」
「顔が熱いね。鼓動が早鐘のようだ、肌でわかるよ。気分はどうかな」
「うん、すっごくどきどきしてるけど、ささえてくれてるから楽でいいや。それより、腹ん中で何かがいっぱいになってるんだ。変なんだ」
「それは私だよ。君の女の隙間を埋めれば楽になるかと思ったが、どうかな?」
「コクキ講師があたしの中に?。それって食い物で腹いっぱいになるようなもん?」
「生き物にとって同じくらい大事で、本能に刻みこまれていることさ。実はこうしていると私もたいへん気持ち良いんだ」
刻紀は青草におおわれた斜面に腰を下ろし、上体を起こしていた。下腹に馬鈴をまたがらせている。
馬鈴は刻紀の言葉の意味を理解できずにいた。これから何をどうすればいいかもわからない。ただ相手が自分を快く思っていることは伝わってきた。
そんな少女に男は導きの手を差し伸べた。
「馬鈴君を満たしたいな。身体が求めるままに、望むままにしてくれれば、私が合わせる。言葉にしなくてもいいよ」
「うん。コクキ講師も、あたしのこと好きにしてくれよ」
馬鈴は信じて、すべてを任せた。
男女は位置を入れ替えた。
「あっ!、ふぁあっ、ひゃっ!」
柔らかい青草が馬鈴の背中を受け止めくすぐった。
刻紀の力強い手は馬鈴をがっちり放さず、胎内の充実感はひととき暴れだす。
「あーっ、ああーっ、ひゃああっ!」
押し開かれる鈍痛と満たされる快感を同時に与えられ混乱する意識を、恥じらいを知らない少女の身体は叫びに変えた。
叫ぶくちがふさがれた。何か温かいものが入ってきて、馬鈴は乳を求める赤子のように吸いついた。
「んくっ、ううっ、きゅうっ」
背中を柔草に受け止められ、男の身体で風から守られ、涸れない蜜をくちでむさぼる。
理由は知らずとも、ぞわぞわと身体を駆け巡るしびれにも似た快感が、刻紀が身体をぐいぐい押しつけてくる脚のあいだから生まれてくることに馬鈴は気づいた。
意識して腰を動かした。脚をゆるめて、より深く男を受け入れる。
「ふあっ!、はぁんっ、やっ、あんっ!」
のけぞり、はいた息は悦の叫びになった。
刻紀の動きを受け入れ合わせると、流れこむ喜悦が掛け算になると馬鈴は知った。
馬鈴のくちを満たしていた刻紀が引いて、開けた視界に青い空。少女の脚がひくひくふるえている。
空すら駆けれる脚が宙を蹴る力を失って、しゃんしゃんと馬鈴の具合を鳴り響かせた。
「はあっ、はあっ、んっ、ひっ!、ひいぃっ!」
寄せては引く快感の波に呼吸を合わせ慣れてきたころ、さらなる高波が馬鈴を鳴らす。
心臓近くから生まれたうずきが呼吸を乱し、胸を探る手がごわごわする男の髪を捕まえた。
見れば馬鈴の胸の上、息も荒くむしゃぶりつく刻紀がいる。
すこしがさつく男のくちびるが敏感な乳輪を粟立たせ、遠慮を知らない舌先が乳房の芯をとらえて身体の髄までしびれさす。
ふたりの距離に視界はいらない。目を閉じ、うでに刻紀を掻き抱く。
触れ合う皮膚と粘膜だけの、触覚と聴覚だけの世界に馬鈴はいた。
「あぁ、好き?、あたしのこと、欲しい?。あたしはあんたが好きだよぉ、欲しいよぉ!」
知りたいことだけを簡潔に、思いのたけを言葉にした。
応えはあった。
「君が欲しい。俺の腕の中にいて欲しい」
男は言葉の通りに少女を抱きしめる。
結合はより深く、触れる肌はより広く、心までつながった気持ちになった。生まれてより最高の心地だった
「あっ!、おっ、うっ、いぃっ!、ひいっ!」
思うにならない呼吸で、抱き合う相手の名前を呼ぼうとしながら馬鈴は達した。
下腹から流れこむ、鼓動とも呼吸とも違う波が少女の身体を支配して、息ができない苦しみを快感が押し流す。
上下も認知できない浮遊感の中で、つながる刻紀の身体だけが認識できるすべてとなり、馬鈴の意識は闇に溶けていった。
目覚めたとき、馬鈴の目にはただ広い青空が映っていた。
「あ、ああっ!」
さっと血が引くような喪失感が少女を襲う。最高だと思った時がただの夢や幻だったのかと思うと、涙がにじむ。
心配は無用だった。
「お目覚め、馬鈴君。気持ち良くて、すこし胸を借りてしまったよ」
のんびりした声が少女の名を呼んだ。胸の上から重しが消えて、のぞきこむ刻紀の顔が現れた。
意識の空白は数分。まだ身体すらつながったままだった。
「おっ、おう。いつまでも乗っかってんじゃねえよ!」
言葉とは裏腹に馬鈴の手は刻紀をつかまえ離さない。
人の姿になった馬鈴が、地につけずに歩くなんて中途半端だと思った人の手が、刻紀をしっかり抱きとめられてとてもうれしい。
「私はもともと講義のために連れてこられたはずだが」
「いいんだよ、ここはあたしの小世界だ!。コクキ講師も好きなんだろ。もっといろよ!」
「うんうん、ちょっと仕切り直そうね」
頭をなでて、ほほをなでて、何のまじないかくちびるどうしを重ねてなだめられ、やっと馬鈴は刻紀を解放した。
弾力のある少女の膣が押し出した、男の下半身の見知らぬ器官が意外に大きく目を見張る。
「嘘だろ!、それがあたしん中に!?」
男を受け入れていたところに手を触れ確認すると、白く泡立つ粘液が指について糸を引いた。
「汚してしまったかな?」
刻紀はその手を取りくちに含む。吸いつく舌が皮膚を這いずり、新たな悦を馬鈴に教えた。
「あっ、あたしもきれいにするよ!」
毛づくろいのように奉仕を奉仕で返そうと、少女は自分の中に納まっていた刻紀の器官をつかみ取りくちびるをよせた。
「あうっ」
刻紀の悲鳴と同調して、だらりと下っていた棒が跳ね起き馬鈴のほほを打つ。
狙い直して今度はくちに捕まえた。歯を立てないといった配慮はない。
「ちょっ!、あのっ、やめっ!」
意味不明なわめきよりも口内で暴れる熱い肉竿の動きがおもしろい。薄しょっぱい変な味もすぐ慣れた。
「やめて!、歯は立てないで!、痛いから!」
ようやく言葉に気づくが、人肌のものでくちを満たす心地よさを、すぐには手放したくない。
奥まで目一杯ほお張って口腔をすべる感覚を堪能し、また刻紀に悲鳴を上げさせた。
「これは大きくて立派そうでも敏感で柔らかいんだ。しかも毎日何度も使うものだから、傷がつくとそのたびにしみて痛いったらもう、寝るときも」
馬鈴を座らせ、体験を交えて語る刻紀だが、馬耳東風。
「あたしにゃついてねぇもん。言葉じゃわかんねぇよ」
こっちが大事と言わんばかりに自分の髪をいじっている。少しでもきれいに見られたいと身繕う。
うなじにまわした手でばらけた後ろ髪をまとめて、くいっとひねる。ただそれだけでしっぽのように束なった。
「だったら身体で学びたまえ」
正座して説教していた刻紀が馬鈴を押し倒した。
少女の脚を押し開き、ひざこぞうからうちももにかけて、すうっと舌先を走らせた。
「えっ?。ふぇっ!」
馬鈴は吐息とともに身をよじり、閉じようか迷った脚を開いて刻紀を受け入れた。
「うんっ。はぁ、あぁ、ああーっ!」
馬鈴も初めて見る自身の女陰。
薄紅の茂みに開いたくちびるは蜜のような液体でてらてら光り、中心からたれ落ちる白濁液が褐色のふとももに滴り目立つ。
そこを刻紀の舌先がていねいにぬぐい、馬鈴をふるわせ鳴かせて悦ばせた。
ていねいなのはそこまでだった。
馬鈴が秘める女の泉に誘われて、まとわりつく媚臭に惑わされて、自制に失敗した刻紀は目的を忘れて少女の女陰にむしゃぶりつく。
「あうっ、はうっ、はひいっ!」
馬鈴の敏感なそこに、ところかまわず触れる鼻先、くちびる、踊る舌先。やわらかい媚肉をかき分け、こねくりまわす。
吸われ、すすられ、なめまわされて、やっと許された。
「わかったよ、わかんないけどわかったから、もっとぉ」
息も絶え絶えの馬鈴は、きれいになったそこからまた、薄濁った蜜を滴らせる。
「君は四つん這いのほうが落ち着くんじゃないかな?。なりたまえ」
ぼうっとする頭で従うと、腰をつかまれ尻にぺたりと刻紀がくっつく。
脚のあいだに入った熱い棒が、胎道が隠れる谷間を前後になぞる。知っていて入ってこない。もっとなにかする気だ。
少女の背中に男の胸が重なった。たくましい腹筋が少女の腰に密着して抱擁に等しい安堵感を与え、快楽の堰が開かれていく。
髪が隠していたうなじに熱い息がかかって、甘噛みされた。
「いっ、いっ!、ふひぃ」
うでから力が抜けて、上半身がへたりこむ。押しつけられた鼻先が青草の匂いを嗅いで自分の居場所を思い出した。
「ああっ!、あたしっ、なんでっ、なんでっ!」
「考えなくていいよ。感じるんだ。ほら、私の手を感じるかい?」
脇腹をさする手が身体を登って乳房をつかまえ、てのひらいっぱいを使ってつつみこむ。ちょうど収まる大きさだ。
指のあいだで揉みつぶされるつぼみがぞくぞくうずいた。
「ひうっ!、あうっ、ああっ、あーっ!」
少女は鳴いた。奥底で渦巻いていた本能をはき出すように。
意識せずとも動く足腰が突き出す馬鈴の尻は、後背の刻紀と男女の位置にぴったり合った。
狙ったわけでもないのに馬鈴の女陰は刻紀の男芯を捕まえた。
左右に微妙にふれる尻が、ひっかかっただけの先端を深くへ誘導し、太い根元まで飲み込んだ。
考えなくても身体が動く。確かにこの姿勢が正しいのだと、本能が勝った頭で馬鈴は悟った。
「あっ、まだ、早いっ」
男の勝手な予定を少女の身体は繰り上げさせた。
再び得た充実感をさらに味わうべく、男が収まる胎道を、細くしぼり、奥へと引きこむ。さっきの交わりで身体が覚えた。
女が悦ぶ以上に男も高まり、悲鳴すら漏らしている。
「あっ、うっ、ひっ!」
たとえ思惑が外れたとしても、男はいまさら離れはしないと、少女の身体は確信していた。
もう小手先の愛撫はない。
馬鈴の鍛えられた足腰は刻紀の身体をたやすく振り回し、初めてその機能に目覚めた胎内は男芯を捕まえ離さない。
刻紀の行為もすでに身体任せで、くちびるが触れれば擦りつけ甘噛みし、手が触れれば揉みさする。
ふと、刻紀に心が戻った。
悦び目覚めて、学ばずとも身体が知っていた生命の舞を披露する馬鈴の美しさに打たれて、その耳元にささやいた。
「きれいだ。君がいちばんきれいだ」
「えっ!?、あっ、ふええっ!」
刻紀の言葉がズキンとしみて、馬鈴の鼓動が乱された。感情の堰が切られて、涙があふれだした。
高まるだけ高められた身体に着火して、瞬く間に官能の炎が燃え上がった。
「ひぃ、ひぃっ、いぃぃっ」
泣くような声は細い。寝ていても呼吸を忘れない身体が意志で押さえられないなにかに翻弄されている。
全身がそうだ。握り締める手はふるえ、背筋はつっぱり突き出す尻が男を求める。
刻紀も無事ではいられない。
絶頂が始まった女の身体は男を最高に狂わせる。
本能に刻みこまれた独占欲が、手の内の女をあらゆる方法で拘束しようと手足を操る。
精を放つため深くねじこみ、相手を逃がすまいと抱く腕に力がこもる。
刻紀と馬鈴の心と身体は、たったひとつの目的のために、ひとつがいとなって欠落を埋め合った。
熱に浮かされる男は求め抱きしめて、満たされた少女のほほに涙がつたう。
快悦に硬直している男女の、意志と無関係にひくひく動く結合部から、白濁液がふたりの波長に合わせて染み出し、少女の肌をつたい滴っていた。
身体が、目的を達した本能から解放された。混濁した意識では姿勢を保てず、その場に崩れ落ちる。
安らかな笑みの少女は薄目を開く。馬鈴に理性が戻った。
(あたし、なにしてるんだろ)
姿は変われど自分の小世界に裸でいることは、いつもとたいして変わらない。
決定的に違うのは、ここに他者がいて、しかも肌が密着して、さらに体内に相手を受け入れているのだ。
行為の記憶を元に状況を少しずつ飲みこんでいく。
初めての体験だけに考えはまとまらないが、「感じろ」との刻紀の言葉に従えば、どうすればいいかは簡単に答えがでた。
(あたしがいて、コクキがいて、くっついて。それでいいや)
生命の熱病の名残を楽しむ馬鈴の上で、刻紀が寝息のような深い呼吸をくりかえしている。
「コクキ講師、起きてる?」
「うん、月の下の君はきれいだったなあ」
馬鈴の心がまた、くすぐられた。威厳を忘れた子供のような言葉遣いが可笑しい。
連続の行為に疲れきったのだろう、刻紀の認識に混乱がある。まだ馬鈴の中にいる彼の一部は一時の大きさを失っていた。
(いいさ。コクキ講師がどかなきゃ、あたしも動けないもんな)
馬鈴は刻紀を自分の上位者と認め、心の奥では責任転嫁という甘えを受け入れてくれる保護者として認識した。
けだるく心地よい時間は過ぎて、そして二人は遅刻した。釈明は刻紀の仕事だった。
馬鈴後編 完
688 :
「ど」の字:2005/04/02(土) 10:19:27 ID:0rg9ii+l
グッジョブ!
長編、お疲れ様でした。堪能しました。
ぜひその他の娘との絡みもやっていただけると嬉しいですね。
かなりの良作GJ
>>676 なんというGJ・・・と思ったらNEWCROWNの人でしたか。流石です。
693 :
SS二年生:2005/04/07(木) 21:26:01 ID:iEVRa+Oy
漫画あまのじゃくたん後編うp済みです。
ここまでのSSを
>>2の保管庫に収録しました。
長い事放置しててスマンです。
収録に問題ある方いらっしゃいましたらご連絡ください。
霊によって題名も勝手につけているので変更が必要な方もお願いします。
>>680-687 文章の一行一行が、馬鈴の体内を通して伝わってくるような濃密さ。
思わずこちらの体内の血液も一部分に充血してしまいますた。
つーかですね…
すげえ嬉しいです!!!
霊究者さんが戻ってきてくれて!
文体とか、
>>670最初の数行の設定の懲り具合とか
題名とか(これは勝手な思い込みですが)、もしかして…とは思ってたんですが。
いやあ…本当嬉しいです。他の生徒への指導も楽しみにしてます!
漏れもがんばって新作書こっと!
はぁはぁはぁ・・・すげーグッジョブだよ、超グッジョブ。
あまのじゃくたんが可愛すぎて萌氏にそうになった。
>>693 そこまで言ってもらえると恐縮です。
投稿後に読み直して、作風がナレーション多用に傾いていると感じたので修正していきたいです。
漫画のあまのじゃくですが、挿入シーンが追加されてエロスがぐっとパワーアップしましたね。
頭の中のイメージを画像+文字で出力する能力に長けているんだなあと感じさせられました。
回線が不調なので携帯からですが、土日あたり来れると思います。ではまた。
霊究者氏>
真面目にあの漫画、無償で見せてもらうのが恐縮に思えた。
もしあるようなら次回以降も期待。超GJ。
>>696 それ人違いです。漫画はSS二年生氏の作品です。
>>680-687の続き 虹の月の教え子たち 酸蛇前編
身だしなみを整えた灯明寺刻紀(とうみょうじ こくき)は自室で落ち着けない時間を過ごしていた。
彼が満月の夜だけ講師の仕事を請け負った異界では、こちらと時間の流れに互換性がないらしい。迎えが来る時刻がはっきりしない。
それでも満月が出てから一刻も経たず、世界の気配が変わり、夜空の月を囲んで円い虹が輝きだす。
前回、鈴音を鳴らして登場した馬鈴(ばりん)の記憶から、聞き耳を立てて一分まったが気配もない。
空駆ける赤馬に連れていかれ、戸惑う赤毛の少女を慰めた、現実味に欠ける体験は夢だったのか。
まつことの徒労感に萎える気力を取り戻そうと、最も強烈だった体験を思い出す。
「本人には言わなかったけど、髪をまとめるしぐさなんかぐっと来たなあ。遅刻して叱られたとき、こっちを頼る視線が可愛くて、弁解を頑張れたなあ」
「そうどすか。せんせ、馬鈴なんか庇はって難儀してはりましたが、喜んどったんどすか」
すぐ背後で声がした。小川のせせらぎにも似た澄んだ高音で、しかし抑揚が押さえられて冷ややかだ。
ひゅうと息を吐いてふりむき半身で構えた刻紀の数歩先に、鮮やかな和服に身をつつんだ少女が立っていた。
ひとえの浴衣は藍色の濃淡が陰影をなし、列なる白い飛沫が流れのように描かれて、まるで紫煙にかすむ山水画だ。
帯まで含めてひとつの景色を描いている。着付けで再現できるものではない。異能の成せる技だろう。
「あ、やあ、いらっしゃい、酸蛇(さんだ)君。和装がよく似合っているね。模様がまた見事だ」
「ええ、うちのお気に入りどす」
少女の冷めた声に感情が乗った。
処女雪色の顔にすっと引いた細眉の下、赤茶色の瞳をもつ、目尻が下がった眠たげな目が、満足そうに細められる。
白い肌とは対称的な黒髪は巻いて波打ち、長さは肩に触れないくらい。根元から先端に向けて癖が強まり、縮れ気味に先細る。
右目の上で目に掛からないように分け、ひたいの半分を隠していた。
「あいさつが遅れましたが、お迎えにまいりましたえ」
「うん、ご苦労さま。ところで、どこから入ってきたのかな」
見知った相手だが、どんな異能を持つかまでは明かしてくれていない。
他の皆もそうだ。刻紀が驚く様を楽しみにしているらしい。
「それは、こちらをごらんの通りどす」
酸蛇は上目に刻紀をうかがいつつ一歩横へ退き、背後の壁を指す。
少女の形に穴が開いていた。浴衣のそでやすその部分まできれいになぞって抜けている。
数部屋まとめて貫通し外が見えた。アパート二階の通路に上がってすぐ、刻紀目指して真っすぐ来たらしい。壁板も柱も、金属の配管も関係なしだ。
刻紀は声も出ない。まったく異常に気づかなかった。音もなしにやっってのけたのだ。
「うちが何者か知ってもらうためには、これがいちばん早い思いましたんどす」
少女は涼しい顔で一礼した。してやったり顔だ。
「すごいね。しかし、これは元に戻らなかったらえらく困るな」
「問題あらしまへん。ここは月が映したかりそめの世界ですよって、あちらへの影響はないどすえ」
世界の秘密を語って、自慢を始める。
「うちは触れるものをなんでも溶かせるんどす。ここは燕美先生が月の光陰を利用して創ったかりそめの世界ですよって、特に簡単でしたわ」
「どちらもたいした能力だね。だから同じ『せんせい』と呼んでも私の時とは響きが違うのかな」
「そら燕美先生はうちより一世代先に生まれた年増どすからなあ。でも生まれつきの格ならうちが上どす」
少女はふわっと左手を振った。
壁にぶつかると思えた白く細い指先が、まるで抵抗を感じさせない動きで塗壁へと突き刺さる。
鎧袖一触。壁土は下地ごと黒い塵となって、音もなく宙に溶け消えた。えぐられた空洞から隣室がのぞく。
紙に濃硫酸を垂らすと強力な脱水作用でぼろぼろに炭化するが、その反応を数秒で終わらせ炭すら残らなければこのようになるだろう。
いましがた異能を発揮した左手の、反対側の右手にはなぜか草履をもっていた。足下を見れば、つま先に桜貝。素足だ。
「ああ、外ではきものは脱いで来たんだね」
「ええ、うちは覚えは良いんどす。土足で上がるような無礼はいたしまへん」
自慢そうに胸を張ると、小ぶりな鼻がつんと上向く。
記憶力の良い優等生は、挑戦するまなざしで刻紀に告げた。
「せんせはおっしゃはりましたなあ。男は女の手を引くもんやと。どうかうちの手をとっておくんなまし」
灯明寺刻紀、他はどうだか自己の発言に対する責任感は強い男だった。
一歩、二歩、袖擦れ合うほど歩みより、少女の右手をふさぐ草履をとりあげスーツのポケットにしまう。
意表をつかれて見上げるまなざしを笑みで受け止め、所在なさげに握りを解いた酸蛇の右手に、刻紀の右手がすべりこんだ。
願いがかなって逆に戸惑うきゃしゃな細指は握り返せない。
他はどうだか灯明寺刻紀は弱気な相手に強い男だった。
惑う少女の手をぐいと引っ張り、引けぎみな腰に手をやり抱きよせる。手に柔らかい布擦れが心地よい。
酸蛇は困惑した。目をそらす。
「うちに触れると危ない言うて、わざわざ触れたがる者はおらへんのに、せんせは嫌でないのどすか?」
「私は嫌ではないよ。それよりもうひとつ教えよう。女は自分の手を引く男を自分で選ぶものだ。君はどうする?」
酸蛇はうつむき、合わさる手と手をじっと見る。しばし迷って、刻紀の手を握り返した。
しっかり結ばれた手を介して刻紀は少女を引いていく。
「酸蛇君は玄関の開け方を学ぶ必要がありそうだね。こちらに来なさい」
「はい」
端正な顔に淡い笑みを咲かせて、酸蛇は静々と従った。
白々しい蛍光灯に照らされた安部屋の狭い通路が、少女の表情ひとつで温まる。
ほんの十数歩の花道だった。刻紀は酸蛇の前にひざをつき、足を出すよううながした。
少女は応じて浴衣をたくし上げる。片足を出せばすそが大きく開かれ、薄布の下には下着も襦袢もない。薄暗いが奥まで白かった。
差し出された少女の足を男の手が捕まえ草履を履かせる。動く刻紀の指先を眺め、感じながら、少女はうっとりため息を漏らした。
酸蛇の背後から抱くように立つ刻紀が、たおやかな右手に右手を重ねた。誘導してドアノブもろとも握り締める。
「回転させることでつっかい棒が抜けて、押し引きできるようになるんだよ」
酸蛇のひんやりする右手には、ノブの冷たさよりも刻紀の手の暖かさが印象に残った。
くりかえす動作でがちゃがちゃと金属音が鳴って、押し開いた扉から夜気が流れこんできた。
「よくできてはりますなあ。どないなってるんやろ」
「手にとって見てごらん。酸蛇君ならできるはずだよ」
許され、ドアに差し入れた指先で円くくりぬけば、塵を降らせてドアノブの機構部分がすっぽり落ちてくる。
力を加減した手のひらで転がせば、赤錆のような残渣を散らして噛み合う部品が露出した。
「もういいよ」
刻紀は制止して、強力な酸食の手のうちから部品をつまみ上げた。その恐れを知らぬ行為がまた、酸蛇を驚かせる。
子供っぽい笑顔で喜々として解説を始めた刻紀の顔を、酸蛇は熱っぽいまなざしで見つめていた。
涼しい夜風が吹き始め、二人それぞれの熱を醒ます。
「そろそろ行こう、酸蛇君」
「ええ、せんせぇ。ついて行きます」
酸蛇は刻紀の左手をからみつくように抱いて、男の肩にほほをよせた。
歩くには不自由な姿勢に階段で姿勢を崩すが、男は苦笑するだけで少女を振りほどこうとはせず、より大事にあつかった。
アパート前の車道では狭く不満なのか、酸蛇は桜が満開な夜の公園まで刻紀を連れて行った。
「それでは、うちの本性見てもらいます」
刻紀の手からするりと抜けて、つながっていた指先を名残惜しげに眺めながら、二十歩は離れる。
ひらりと舞うようにふりむいた酸蛇のひたいのすこし先の空間に、ばちんと音を立てて黒光りする鱗が出現した。
ばちんばちんと堅い物を平手で打つような音を鳴らして、鱗が宙に張りつけられていく。
現象は加速し、驟雨のごとく激しい音とともに列をなす鱗が螺旋を描いていく。
少女の姿が完全に隠れて音は止まった。黒山のような塊に、赤茶色の輝きが二つ灯った。目だ。
体長十尋(約18メートル)太さはひと抱えほどもある漆黒の大蛇がそこにいた。
顔がひきつり腰が引けた刻紀だが、今の世に生きる彼にとって獣の脅威は馴染みがうすい。
怖気はすぐに興味に変わり、酸蛇の本性に歩み寄る。
「おもしろいものを見せてもらったよ。触っていいかな?」
もたげた鎌首が刻紀を見下ろし、変化を解く前と変わらぬ声がどこからか響く。
「よろしゅうおます。どうとでもなさっておくんなまし」
人にどうこうできるとも思えぬ巨体が、するすると地を這い刻紀を中心にとぐろを巻く。
べたべた手を触れ爪を立てて、一通り満足した刻紀はくちを開くよう酸蛇に求めた。
間違いなく人を丸呑みできる大くちには、無毒の証拠に、短い歯が合わせて四列、奥まで並んでいた。
「それでは連れていってもらおうか。酸蛇君はどうやって世界の壁を越えるのかな?」
「まずは乗っておくんなまし」
大蛇の首が刻紀の前に平身低頭する。
刻紀はまたがるが手足の置きどころがない。いささか不格好だがやむを得ず、両手両足でしっかりだきつく。
「それでは行きますえ」
とぐろを解いてしゅるしゅる回る大蛇は自らの尾を咥え、継ぎ目のない真円を描いた。
とつじょ、浮遊感が刻紀を襲った。地面と相対位置は変わらぬはずなのに、自由落下しているがごとく肝が冷える。
蛇身の腹と触れる空間は、膨張を続ける宇宙と接続を断たれてばらばらに分解され、膨張と収縮の拮抗が崩れて内側へと落ち込み始めた。
三次元から二次元に、さらに一次元、そして虚無へと折り畳まれる。光を飲み込み返さない真黒色の塵となって宙に散り散り消えて行く。
酸蛇が巻くとぐろの外側から吹き上げ消えて行く空間のかけらは、漆黒の王冠を形作った。
大気圏突入体が摩擦で赤熱のプラズマを引くように、酸蛇は空間の壁を溶解して黒い塵の尾を引いていた。
蛇身が描く円の内側は底無しの闇がのぞき、真に零点の全き虚空は見るだけの者すら冷やさせる。
しかし酸蛇はゆるぎもしない。生来の異能が虚無をねじ伏せる。
闇の中心に輝点が生まれた。ついに穿たれた回廊は、瞬間、虹となって解放された。
黒い塵も、周囲の景色も、視界のすべてを虹の奔流が押し流していく。
ちゃぷんと水音がした。
再び世界が認識できるようになった時には、漆黒の大蛇は水面に浮かんでいた。抱きつく刻紀の手足が水に濡れる。
澄んだ水をたたえる円い水面が青空を映していた。大声を出しても対岸との会話はできないであろうほど広い。
湖畔は木々がびっしり生い茂り、小川が一本流れ出していた。
「よういらっしゃはりました、せんせ。うちの小世界へ」
大蛇はくわえていた自分の尾を離すと歓迎の意を伝えた。
大蛇は身をくねらせて水上を進む。出口の小川を抜けてすぐ、広い本流へと出た。
ここでも岸は密林となって枝が張り出し、上陸できそうな場所はない。酸蛇は這い上がれても刻紀は振り落とされるだろう。
水面を渡る涼しい風は原始の清浄さを保ち、ささやかな水音を打ち消す喧噪もなく、のんびりと時が流れていた。
刻紀は身体を起こして、楽な姿勢をとる。環境を堪能した。
「ここは気持ちのいいところだねえ」
「そうでしょうとも。せんせ、うちの風情をわかってもらえてうれしいわあ」
首の後ろで感嘆する刻紀に、酸蛇は上機嫌で応えた。
蛇行する川の流れを曲がり、下り、大蛇がじゅうぶん日光浴できそうな平たい岩が現れた。扇状に広がる玄武岩が舞台のようだ。
酸蛇は岩に身を横づけると刻紀を移らせ、自らもしゅらしゅら這い上がる。
尾の先をふって水気を飛ばすと、そこからざあっと夕立のような音をたてて、黒い鱗が宙にはじけて消えていく。
大蛇の首があったあたりには、着る物もない身一つの少女が残され、横たわっていた。
けだるげに半身を起こす少女は木漏れ日が目に入り、手をかざすわきのしたから、お椀形の乳房がちらりと見えた。
真っ白いふくらみの先端に桜色の乳輪が控えめに咲いて、ぽつんとつぼみをつけている。
「んっ、うんっ」
もぞもぞと身をくねり、突き出した小ぶりな尻がえくぼをつくった。やわらかそうでいて贅肉がない身体だ。
手で陽光から目をかばいながら、ふらふら立ち上がろうとして、腰が据わらずへたりこむ。
まぶしいほど白い脚は投げ出されて閉じることもできず、女の深部を隠せない。
発毛も着色もほとんどないが、くちびるのように紅く充血して準備を整えつつある女陰は、花弁を半ば開いて、湿った奥を見せつける。
「ああん、おかしいわあ。どないしたんやろ。もう慣れたはずやのに、足が思うにならへん」
もどかしげな声で異常を訴え、物欲しげに刻紀を見上げている。
顔は上気して目は潤み、朱が乗ったくちびるを濡らすように舌なめずりした。
酸蛇前編終り 後編に続く
>>SS二年生氏
漏れはむしろSS保管庫にある
妖怪「垢なめ」タンとその後が気になってます(;´Д`)ハァハァ
>>698-703 いい仕事してます!ツンデレ萌え。
SS二年生氏の漫画も凄いけど、間違った霊究者氏もプロ並の文章だよ。
語彙の豊富さに脱帽。
706 :
SS二年生:2005/04/11(月) 01:25:26 ID:DiD7nTOB
>>705 酸蛇の設定にツンデレってキーワードが入っているんですが、描写から読み取ってもらえてうれしいです。
>>706 素敵な肖像ありがとうございます!
自分の言葉が人に伝わって形になるっていうのは、いつでも感激です。
うををををぅ萌えた。
情緒豊かな描写が最高ですよ
>>706 氏のリアルっぽい炉絵、持ってくところに持ってけば需要有りそうなのになぁ
茜新社のLO系とか。
馬鈴可愛いです
馬体もしっかり描けてるのが素晴らしい。