「この所、毎日この格好でしてるよね? わたしやっぱり恥ずかしいよぉ」
彼女はそう言って、ミルフィーユの『衣装』を脱ぎ始めた。
「ん〜、でも、オレがミルフィーユ好きだって言ったら、『撮影に使った衣装がある』って
キミが持って来たんじゃないか」
「そうだけどぉ……不安なんだもん……」
「不安?」
「アナタが愛しているのは、わたしなのか、ミルフィーユなのか……。最近のアナタを見ていると、
この衣装があれば誰でも良いみたいな感じなんだもん……」
彼女はそう言って切なげな目をした。バカだな、そんな事あり得ないのに。
ミルフィーユの衣装と彼女の『声』、それが揃って初めて『ミルフィーユ・桜庭』が具現化するのに、誰でも良いなんて事はあり得ないよ。
もちろん、オレが彼女を愛しているのは、彼女がミルフィーユの化身だからではない。
一人の女として、生身の女として、心から愛している。だって、オレは彼女と付き合うずっと前から、彼女のファンだったのだから。
「そんな事ないよ。オレはミルフィーユのフィルターを外した、素顔のキミを誰よりも愛してるよ。でも、ゴメンね、『良子』ちゃん」
オレはそう言って、良子ちゃんの頬に優しくキスをした。
「で、浮気の相手は誰? 仕事仲間? それともプロデューサー?」
「…………『今回は』プロデューサーの人」
恥ずかしそうに彼女は答える。『今回は』、ね……。
「だって、ヤらせてくれたら、イイ仕事くれるって言うから……。立場的にも断れないし……」
懸命に弁明する彼女。そこまで必死にならなくても、判ってるよ。
でも、キミだって本音の一部では、好きで抱かれたんだろう?
本当にエッチだからね、良子ちゃんは。
「いいよ、怒ってないし、そういう事が珍しくない業界なんだろうしさ」
オレはそんな本音を見せずに、理解者ぶって答える。
「でもさ、本っ当に悪いと思ってるんなら、一つお願いがあるんだ」
「え、何? わたしで出来る事なら……」
オレは彼女の耳元でこう囁いた。
「今度はミルフィーユと蘭花相手に3Pしたいなぁ……」